衆議院

メインへスキップ



第15号 平成27年5月20日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年五月二十日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 後藤 茂之君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 松野 博一君 理事 西村智奈美君

   理事 浦野 靖人君 理事 古屋 範子君

      池田 道孝君    大岡 敏孝君

      大串 正樹君    加藤 鮎子君

      木村 弥生君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      谷川 とむ君    豊田真由子君

      中川 俊直君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    橋本  岳君

      比嘉奈津美君    藤丸  敏君

      細田 健一君    堀内 詔子君

      前川  恵君    牧原 秀樹君

      松本  純君    松本 文明君

      三ッ林裕巳君    村井 英樹君

      阿部 知子君    大西 健介君

      岡本 充功君    中島 克仁君

      長妻  昭君    山井 和則君

      足立 康史君    井坂 信彦君

      牧  義夫君    輿水 恵一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      山本 香苗君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    高階恵美子君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            生田 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  坂口  卓君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  伊佐 進一君     中野 洋昌君

同月二十日

 辞任         補欠選任

  谷川 とむ君     前川  恵君

  堀内 詔子君     池田 道孝君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     細田 健一君

  前川  恵君     谷川 とむ君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     藤丸  敏君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     堀内 詔子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長岡崎淳一君、職業安定局長生田正之君、職業安定局派遣・有期労働対策部長坂口卓君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古屋範子君。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 まず初めに、ブラック企業対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 先週の十五日なんですが、厚生労働省は、従業員に過酷な労働を強いる、いわゆるブラック企業対策について発表をされました。十八日には塩崎大臣から、従業員の違法な長時間労働など、違法残業などを繰り返す大企業への対応について、社名を公表するように、全国四十七都道府県の労働局長に指示を出されたということでございます。

 今回、公表の対象を広げたということで、過重労働を減らしていく、このようなことが期待をされております。

 これまで社名を公表していたのは、是正勧告に従わない、書類送検をした企業のみでありました。二〇一三年に書類送検したのは千四十三件です。労働基準監督署が是正勧告をしたのは十一万二千八百七十三件。勧告の一%にも満たない状況でございました。

 社名公表は、複数の都道府県に支店、営業所などを置く大企業が対象となっております。今回、一カ月間の時間外、休日労働が百時間を超える従業員が一つの事業所で十人以上か四分の一以上で、一年程度の間に三カ所の事業所で是正勧告を受けるなど、組織の問題として社名を公表することになったことで、自発的な環境改善につながるのではないかということが期待をされております。

 企業にとって、やはり社名を公表されると企業のイメージがダウンをするということにつながりますし、ブラック企業だということが認知をされる、イメージの悪化、その後も人材確保が難しくなってくるようなこともあるかもしれません。そのために、違法な長時間労働をこれまで以上に隠そうとするのではないかというようなことも危惧をされるわけです。労働基準監督署の調査能力の向上も求められております。問題企業では、労働時間を改ざんするなど悪質な行為もあったということを聞いております。

 ぜひ、実効性を担保して、ブラック企業対策を強力に推進していただきたいと思います。これについて、大臣の御所見をお伺いいたします。

塩崎国務大臣 今、古屋先生からお話しいただきましたように、このたび、長時間労働で悪質なケース、全国ケースについては社名を公表するということにしました。

 この長時間労働については、もう何度も申し上げているように、本当に日本の労働慣行としても経営のスタイルとしても非常に問題だというふうに思っておりまして、私を本部長といたします長時間労働削減推進本部の決定に基づいて、これまでも働き過ぎの防止に向けた監督指導の強化を図ってまいったところでありました。

 こうした取り組みの一環として、今回、法違反の防止を徹底し、企業における自主的な改善を促すために、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を繰り返す、この繰り返すというような場合には是正を指導した段階で公表しようと。今までは司法手続の場合に、その後、公表するということをやってまいりました。

 この新たな取り組みにつきましては、実効性を確保するために、今お話がありましたように、五月十八日の月曜日に、テレビ電話ではございましたけれども、臨時の全国労働局長会議を開催いたしまして、私から都道府県労働局長に対して、直接、着実な対応について指示を重ねて行ったところでございます。

 こういった労働局を通じての指導監督の徹底によって、長時間労働が早く解消するように頑張っていきたいと思います。

古屋(範)委員 大企業、こうしたブラック企業の企業名を公表していく、大変意義のあることだというふうに評価をいたしております。ぜひ実効性ある取り組みをお願いしたいというふうに思っております。

 公明党も、青年委員会を中心にブラック企業対策には取り組んでまいりました。全国での対話集会なども多数開催をして、多くの働く方々の意見も聞いてまいりました。それが生かされた形で、今、参議院から衆議院に送付をされております若者雇用促進法の中では、法令違反を繰り返す企業に関しては、ハローワークで新規採用の求人を受理しないというような条項も盛り込まれているところでございます。

 それとあわせまして、今回の大企業の企業名公表、ぜひともしっかりと進めていただきたいというふうに思っております。

 次に、無期雇用派遣労働者についてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 無期雇用派遣労働者というのは、有期の派遣労働者に比べますと雇用が安定しているとはいえ、より一層の安定化が求められるところでございます。

 労政審の建議の中で、無期雇用派遣が、派遣契約の終了のみをもって解雇してはならないことを指針に規定すること、また、派遣契約の終了のみをもって解雇しないようにすることを許可基準に記載することが適当である、このようにされております。

 先日の委員会の中で、この建議を踏まえて、無期雇用派遣労働者の雇用の安定がより一層図られるよう適切に対応するというふうに部長も答弁をされていらっしゃいます。

 違反をした場合には、ぜひ許可取り消しというような厳しい措置をとっていくべきだと私も考えます。これについて御所見を伺いたいと思います。

坂口政府参考人 今委員の方から御質問がありましたように、無期雇用派遣労働者の雇用の安定のためにということで、今御紹介いただきました労政審の建議を踏まえまして、私どもとしましては、許可基準というような形に、今お読み上げいただいたような内容をするというようなことで、違反業者についての不許可であったり不更新というようなことを行っていく、あるいは派遣元指針というところにも同じような記載をして、違反事例についての指導を厳しくやっていくということを考えております。

 今委員の方からも踏み込んだ御提案もありましたけれども、私どもとしましても、違反した場合の許可の取り消しということについて速やかな対応ができるようにということに向けて、例えば、許可条件に今あったような内容を記載するというようなことを含めて、その対応をしっかり検討してまいりたいと思います。

古屋(範)委員 許可条件に記載をしていくという答弁でございました。

 ぜひ、こうした無期雇用が、派遣先の契約の終了のみをもって解雇してはならないというところを担保できますように、許可条件に記載をし、徹底して、運用をしていっていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、常用雇用型の派遣労働者を正社員というふうにして求人をしていくのは、応募者に誤解を生じる可能性が高いということが指摘をされております。

 先日、五月十五日の委員会の中で塩崎大臣の方から、誤解を生じるようなケースを把握した場合には適切に指導等をしてまいりたいという答弁がございました。

 この誤解が生じるようなケースというのは具体的にどのようなことなのか、また、適切に指導等をしていくということなんですが、何に基づいて、どう指導していくのか。どういうものが誤解を生じるというケースに当たるのか、これは何らかの形で事前にやはり示しておかなければいけない、このように考えます。この点はどうでしょうか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今御質問がございました点につきましては、従前も御紹介しましたけれども、働く方の募集を行う方についての規定ということで、職業安定法に、まず第五条の三で、労働契約の期間でありますとか労働時間、就業場所等の労働条件を明示しなければならないという規定がございます。

 先ほど御紹介いただきましたような、大臣からもありました、誤解が生ずるようなケースについて指導を行うということでございますけれども、こちらの方は、同じく職業安定法の第四十二条に、こういった労働条件、募集に係る従事すべき業務の内容を明示するに当たっては、応募者、募集に応じようとされる労働者に誤解を生ずることがないように努めなければならないという規定がございまして、こういった規定を根拠にしっかり指導を行ってまいりたいと思っております。

 今、もう一点御質問があった点につきますると、いろいろな募集の形態ということがありますので、網羅的にというのはなかなか難しいわけでございまして、いずれにしても、個別具体的な事案に即して判断する必要があろうかと考えております。

 例えばということで、誤解が生ずるようなものと認められるかどうかということについて申し上げれば、例えば、正社員としておきながら、労働契約の期間が有期であるというようなケースであったり、あるいは、本社の正社員として募集をしておきながら、実際の就業場所は派遣先というようなケース等々考えられるかと思いますけれども、いろいろ個別具体的な事案に即しながら、今後も工夫をしてしっかり指導してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 働く方々を守るためにも、こうした誤解が生じないような厳正な対処をお願いしておきたいと思います。

 それから次に、セクハラ、マタハラ調査についてお伺いしていきたいと思います。

 昨年の十一月なんですが、当委員会におきまして、派遣労働者の方がマタハラ、妊娠、出産を理由に不利益取り扱いを受けるケースが多いのではないかということを訴えました。妊娠、出産が退職とか降格につながるような社会の意識をぜひとも変えていかなければいけない、そのためにも、派遣労働者に対するマタニティーハラスメント、またセクシュアルハラスメント、この実態把握が必要なのではないかということを質問いたしました。

 そのとき、山本副大臣の方から、派遣労働に対するマタハラの実態調査、また労働者全体に対するマタハラの実態調査を実施するとの答弁をいただいております。その後の調査の状況についてお伺いをしたいと思います。

山本副大臣 おっしゃるとおり、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱い、いわゆるマタハラやセクシュアルハラスメントは、女性が希望を持って働くことを阻害するものでありまして、決して許されるものではないと考えております。

 御指摘の調査につきましては、昨年の十一月七日の古屋理事の御質問を踏まえまして、今、実施に向けた調査内容の詳細について鋭意検討を進めさせていただいているところでございまして、具体的には、二つ大きな調査をしようと思っております。

 一つには、女性に対する調査を行わせていただきたいと思います。これは、妊娠等を理由とする不利益取り扱い、セクシュアルハラスメントの経験の有無、内容などです。また、それを経験した際の雇用形態、この中で、今まで派遣かどうかというところが見えなかったわけですけれども、派遣かどうかを含めて全ての雇用形態で調べさせていただこうと思いますし、また、職場の特徴等も調査をさせていただこうと思っております。

 二つ目のカテゴリーですが、企業に対する調査を行わせていただこうと思っておりまして、これにつきましては、妊娠した女性労働者に対する業務上の対処やセクシュアルハラスメント事案に対する対応等を調査することを今検討させていただいております。

 夏ごろにこの調査票の配付と回収を行わせていただきまして、年内には調査のおおよその中身であります概況の公表を行えるように進めてまいりたいと考えております。

 今後とも、こうしたマタハラやセクハラが起こらない社会の実現に向けまして、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 着々と進められているということでございます。

 女性に対する調査は、まず全体を行って、それを雇用形態別に、ですので、この際、派遣社員がどういう扱いであるか、より派遣社員の方が立場が弱いと思いますと受けやすい状況下にあるかと思いますので、そのところもこれからはっきりしてくる。また、企業に対して、社員が妊娠をした場合、どのような職場での対処があるか、今までよりもさらにきめ細かな調査というものが行われていくんだろうというふうに思っております。

 夏ごろ配付ということでございますので、これが取りまとめられましたら、またさらにそれを分析し、妊娠、出産をしている働く女性たちが守られるような、そのような社会にしてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 次に、派遣労働者のキャリアアップ支援についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 労働者のキャリアアップ、また直接雇用の推進を図っていく、雇用の安定と処遇の改善を進めていかなければいけない、これが今回の法改正の大きな柱でもございます。

 派遣労働者については、やはり能力開発の機会が乏しいとも言われております。改正案では全ての労働者派遣事業を許可制とするのであれば、この許可制を生かして、派遣労働者の能力開発を大きくここで進めていくということが重要かと思います。

 派遣労働者へのアンケート調査によりますと、仕事の意欲を向上させる要因として、まずは能力開発、人間関係、仕事内容の満足度が大きく影響している。派遣労働者は、将来を見据えて、職業能力やキャリアをいかに積めるかということを重視していることがうかがえます。

 人材派遣というシステムは、人材派遣会社がキャリア形成支援をしていくことによって、働く人々の能力を高めていく、企業の枠を超えて雇用やキャリアの継続も実現をしていけるシステムであります。この労働者のキャリア形成は、派遣というシステムの大切な社会的機能でなければならない、ますます重要になってくると思っております。

 その具体的な措置として、今回の改正では、キャリア形成支援制度を許可要件に追加していく、派遣元に対して、キャリアアップに向けた教育訓練等を新たに義務づけるということが盛り込まれて、ここは非常に大きな意義がある点であります。

 一方で、このキャリア支援は、既に資格を幾つも取得している、職能も会社経験も豊かな派遣労働者の身分を固定化していくのではないか、正社員になれるキャリアを奪ってしまうのではないかというような、逆の意見もございます。

 キャリアアップ支援を、賃金の上昇、正社員への道が確実に開かれていくような実効性あるものにしていかなければなりません。このキャリアアップ支援をどう実効性あるものにしていくのか、これをどう担保していくのか、この点について伺いたいと思います。

坂口政府参考人 今委員の方から御指摘いただきましたように、派遣労働者のキャリアアップをどう進めていくかということが非常に重要なテーマかと思っております。

 今御紹介いただきましたように、今回、派遣会社の方に、キャリアアップに向けた教育訓練を行うようにということを新たに義務づけるということを行ったわけでございますけれども、その実効性の確保に向けましては、今も御紹介いただきましたけれども、事業の許可要件に、こういったキャリア形成支援制度を有するということをしっかり書き込む。それから、全体として、今回、業界の健全化ということも含めて、届け出制である四分の三の労働者派遣事業者についても許可制に改めるということでございますので、そういった許可制のもとでのしっかりした指導ということを行ってまいりたいと思います。

 いろいろ、派遣労働者の方々のそれぞれの状況に応じて、どういったキャリア形成、キャリアアップを図っていくか、資するものかということについては、なかなかまちまちな部分もあろうかと思いますけれども、派遣労働者のキャリアアップに資するかどうかという観点を見きわめて、しっかり指導していきたいと思っております。

古屋(範)委員 今回、キャリアアップ支援をしっかりと行わなければ許可を取り消すという措置もあるわけですので、そこのところを、真に派遣社員がキャリアアップをしていける、正社員への道も開かれていく、実効性あるものにするために最大限の努力をしていただきたいと思います。

 次に、改正案では、派遣元に対して、派遣先の同一の組織単位での継続就業が三年見込みの有期派遣労働者に、四つの雇用安定措置を実施するということが新たに義務づけをされております。

 この四つのどの措置を講ずるのか。これは当然、どういう希望があるのかという派遣労働者当人の意向、希望を踏まえなければならないと思います。この四つの措置について、派遣労働者の意向または希望を踏まえたものになるのかどうか、この点についてお伺いをいたします。

坂口政府参考人 今委員の方から御指摘いただきましたように、今回、この改正法案では、雇用安定措置という形で四つの措置について、派遣会社、派遣元の方に、新たに一定の場合に法的な義務づけということを行うこととしております。

 今、この四つの中身について、どういった形で派遣元が就業の機会を確保するかということでございますけれども、その点につきましては、労働市場の状況等々でありましたり、派遣元の状況ということも含めまして、いろいろな影響を受けるということもありましょうから、一律にその雇用安定措置の対象を派遣で働く方の希望に応じた措置のみに限定するというのは、なかなか厳しい、難しい部分もあるのかなということでは考えております。

 ただ、今委員御指摘のような形で、可能な限り派遣で働く方の希望がかなえられるようにするということは非常に重要な御指摘かと思っておりますので、希望する措置を確認することが望ましいというようなことを指針において規定するような形でそういった対応ができないかということについては、今後検討してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 やはり、派遣社員の方々がみずから正社員を希望する、あるいは、さらに多様な働き方、派遣という形を希望している、これをどちらも推進していくための法改正であります。ですので、より派遣の方々の意向、希望が実現をしていくような方向で指針をつくり、それに沿って的確に運用をしていっていただきたいと思います。

 次に、改正案の中で、新たな就業先の提供ということが盛り込まれております。派遣労働者の能力、経験等に照らして、これが「合理的なものに限る。」という規定をすることが追加されました。

 これについても、派遣元に対して注意を喚起するなど、非常に評価ができる点であり、これを実効性あるものにしていかなければならないと思っております。

 「合理的なものに限る。」これはどのようなものを具体的に言うのか、その判断基準について答弁をお願いしたいと思います。

坂口政府参考人 今御指摘いただきましたように、今回、さきの臨時国会で廃案になった法案に一定の修正を加えさせていただいてという形で提出させていただいたわけでございますが、その内容として、雇用安定措置として派遣会社が新たな派遣先を提供するということを選択される場合の部分について、派遣で働く方の能力、経験などに照らして合理的なものに限られるという旨を修正によって明記して、つけ加えたということでございます。

 これはまさしく、今議員がおっしゃったように、派遣労働者の雇用の継続の実効性を高めるということで、派遣労働者が受け入れられないような派遣先を提供されるような事態を未然に防止するということをしっかりやっていこうということでございまして、これもケースによってそれぞれ判断をしていく必要があろうかと思いますけれども、例えば、転居を余儀なくされる派遣先を提供されるとか、あるいは、無資格の派遣労働者に対して、有資格者しか業務に当たれないような派遣先を提供されるといったようなケースはこういったことに該当するかと思っておりますので、そういった形も含めて、適切に判断、指導をしてまいりたいと思っております。

古屋(範)委員 この「合理的なものに限る。」ということを、修正を追加したわけでございますので、とりあえず何でもいいから紹介さえすればそれでいいのだということにはならないというふうに思います。やはりその方の能力、希望等に即した、文字どおり合理的な紹介先というものでなければならないというふうに思います。このところも厳正な運用をお願いしたいということを希望しておきます。

 最後の質問になります。

 派遣労働者を直接雇用していく、これを推進していきたいということでありますが、今回の改正案では、派遣先への直接雇用の依頼について、これによって、雇用の安定措置の内容が明らかとなる、派遣元、派遣先、派遣労働者にとってわかりやすい制度になったということが評価できると思っております。

 改正案では、三年に達した有期労働者を派遣先に直接雇用するよう依頼をしたり、また、新たな雇用先を紹介するというような雇用安定措置を求めているわけなんですが、果たして、派遣先が直接雇用の依頼を簡単に受け入れてくれるのかどうか、またさらに、派遣元は、その義務を回避するために契約期間を三年未満にしてしまうのではないかというような懸念もあるわけです。こうした場合、有期雇用派遣労働者の雇用が確保されなくなってしまうのではないか、派遣労働者の雇用安定につながるのか、実効性が不透明だというような指摘があります。

 このように、同一組織単位での継続就業期間が三年見込みの有期派遣労働者に対する雇用安定措置義務を逃れるために、その手前で、三年未満であえて派遣契約を結ぶ事業者に対してはどう対応していくのか、まず、これについてお伺いしたい。

 そして、改正案では、派遣先が三年を超えて派遣労働者を受け入れる場合には、派遣先の過半数労働組合等の意見を聴取するということになっております。そして、この過半数労働組合等が異議を述べたときには、派遣先は、派遣可能期間が経過をする日の前日までに延長の理由を説明しなければならないと規定をしております。

 前回廃案となった法案では、延長した後に説明をすればいいというように誤解する懸念があったために、今回は、説明を、「延長前の派遣可能期間が経過することとなる日の前日まで」と修正をしております。

 延長前に行う、この意義について、最後お伺いをしたいと思います。

坂口政府参考人 御質問を二点いただきましたので、簡潔にお答えを申し上げたいと思います。

 まず、一点目の雇用安定措置の関係でございますけれども、これは、御指摘いただきました義務とあわせまして、今回、一年以上同一の職場に派遣された方については、雇用安定措置の努力義務ということを規定を設けております。

 この制度の趣旨ということをしっかり丁寧に説明して、履行の確保に努めるということがまずでございますけれども、今ありましたような意図的な対応ということは、これは法の趣旨に反するということで、あってはならないかと思っておりますので、こういった形については、派遣会社の方に十分周知をするとともに、悪質なケース等々も見受けられるということもあれば、しっかり重点的な指導監督対象ということで厳しく対応してまいりたいと思います。

 それからもう一点、意見聴取の関係についてでございますけれども、今御紹介いただきましたように、今回、そのタイミングについて、対応方針の説明の時期等について明確化を図らせていただいたところでございます。

 いずれにしましても、この意見聴取ということは、今回、現場での労使間の話し合いということを実質的なものにしていただくことが重要ということで、まさに今委員がおっしゃったような意見聴取でありましたり対応方針ということを派遣期間の制限に達する前にということで、期間の延長について、そういった現場現場での実質的な話し合いを十分持っていただくことをしっかり担保するということで設けさせていただいたということでございます。

 以上でございます。

古屋(範)委員 もう時間でございます。

 派遣労働者の方々が、希望する方には正社員の道を開き、あるいは派遣という形を望むのであればさらに安定化をさせ、そして雇用の環境を改善していく、このためにさらに議論を深めてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 まず冒頭、きょうの委員会の開催について、一言抗議を申し上げたいと思います。

 私たち民主党は、今回の労働者派遣法の審議入りに、まだその前提条件が整っていない、大臣のたび重なる答弁の撤回そして謝罪、そして厚生労働省内部の、担当者によりますたび重なる間違ったペーパーの配付、そしてその撤回や新たなペーパーの提出、本当に私たちは何をもとにしてこの法案の理解をしたらいいのか、何をもとに議論をしていったらいいのか、極めて一人一人の理解が曖昧な、ばらばらな状況の中で、入ることはできないと主張してまいりました。

 しかし、今回、委員長職権できょうの委員会開催が立てられましたので、私たちは、もう本当に苦渋の思いでありますけれども、出席をして質疑に立ちたいというふうに考えておりますが、まず冒頭、委員長、今後このような職権立てによります委員会開催が頻繁に行われることがないように、円満な理事会の運営、そして厚生労働省に対する叱責をお願いしたいと思います。

渡辺委員長 ただいまの御指摘に対しまして、真摯に受けとめ、さらに、今後、公正かつ円満な委員会運営に努めていきたいと存じます。

西村(智)委員 私たちがなぜ労働者派遣法の審議入りは認められないという立場をとっているかと申しますと、やはり、いわゆる一〇・一問題についてのペーパーなんですね。

 この問題は、実は問題でも何でもない。確かに、経済界の側から見れば、都合よく使ってきた派遣労働者を手放さなければいけない、あるいは、それを盾に、労働契約申し込みみなし制度を発動されて、裁判、訴訟を起こされるかもしれないという意味では、そこは問題だというふうに思うんです。

 だけれども、派遣労働者の側から見れば、このみなし制度が発動されるということについて、本当に期待をしている人たちがいらっしゃるというこの現実を考えたときに、私は、一〇・一問題というのは、問題でも何でもなくて、この法案に対する立ち位置をはかる、言ってみれば、物差しというかバロメーターのようなものだというふうに思っております。

 労働者の側から見れば、この申し込みみなし制度というのは、言ってみれば、期待というか待望するものである。しかし、このことについては、このペーパーの中では何ら説明をされてこなかったわけでありますし、非常に重要な点でありますので、このことについて私も幾つか質問をしたいというふうに思います。

 お手元に資料を配付しております。

 大臣、大臣が予算委員会でごらんになったのは、この一枚目の1のペーパー、この一種類であるというふうに理解してよろしいですね。

塩崎国務大臣 足立先生が御質問された二月二十三日の際に配られた、今先生御指摘の、お配りの一番目のこの書面を二月の二十三日に初めて見ました。

西村(智)委員 私たち、昨日の部門会議で担当者からいろいろ事情を聴取いたしまして、昨日の夜に、このペーパーについて、時系列的なことも含めて資料を提出してもらいました。

 その中では、いわゆる一〇・一問題ペーパーについては、適宜リバイスを加えながら使用しているというふうに記載をされていました。適時リバイスを加えて、その都度、この議員にはこのペーパー、この議員にはこのペーパーという形で、全く違うものが配付されていたということですから、それぞれの議員が、言ってみれば、違う理解のもとでこの法案の九月一日施行の必要性というものを理解しているということなんです。

 逆に言うと、私たちは九月一日に必ずしも施行する必要はないというふうには思っていますけれども、そういう理解が個々の個人で別々のものが存在するということなんですけれども、これはやはり大変大きな問題だと思います。

 大臣、適時リバイスを加えながら使用されてきたこのペーパーについては、何種類あるというふうに思っておられるでしょうか。

塩崎国務大臣 いわゆるこの一〇・一問題で作成した資料は、大きく三種類でありますけれども、当初作成した補足説明資料をもとに、適宜編集をした、リバイスをしたものが他に二種類存在いたしますので、合計五種類今あるというふうに思います。

 それは、御要望に基づいて出したものが一番最後にお配りいただいているものだと思います。その手前が、マスコミ用につくるという簡潔版もございます。(発言する者あり)静かにしていただけますか。

 そういうものも含めると五種類ということで、当初の作成資料は、もう御案内のように、法案担当課において、昨年の冬ごろ、法案の施行日の説明を行う際の補足資料として使用する目的で作成されたものであって、それをわかりやすい説明資料とするため、適宜リバイスを行ってきて、三月の十七日の資料というのがあると思いますが、これが、記者に対して派遣法改正案に関して説明をする中で、現行制度のまま十月一日を迎えた場合に起こり得る問題を説明する目的で作成したものでございます。

西村(智)委員 五種類あるということなんですね。本当に、一つの資料がこのように刻々と内容を変えられ、そして、それぞれの議員のもとに別々に配付をされているということなんです。

 それでは、大臣にこのペーパーの中身についてお伺いいたしますけれども、この五枚のペーパー、一体どこが違うんでしょうか。どこが変えられてきて、内容的にその意味を変えてきているのでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げた記者の分は三月の十七日ですけれども、四月二十八日は、部門会議で御要望があったので、正式に厚労省として出してこいということなのでお出しをしたということでありまして、一番最初のものと、あと二つリバイスしたものがあって、あとは記者に、当然これはお配りをすることは説明の際に必要ですし、それで、四月の二十八日は、民主党の部門会議での御要望に従ってやったということを改めて申し上げたいと思います。

 どこが変わったのか、こういうことでありますが、わかりやすい説明資料とするために適宜リバイスを行っていた段階においては、「経済界等の懸念」という見出しが最初のものにはございました。それから、「訴訟が乱発するおそれ」というのが下から二つ目の箱の一番下にございます。こういう記載などを削除し、「予想される問題」という項目も最終版に至るには削除をしているということであります。

 記者説明資料の段階では、これはもちろん「経済界等の懸念」という項目を削除したり、それから、「訴訟が乱発」、それから「訴訟につながるおそれ」、これは表現を変えたということでございます。

 それから、十月一日以降に考え得る状況として例示をしていた二ケースというのが、一番最初にケース1、ケース2というのがありますが、これについては、不用意な表現もあって、また一般的な表現ではない部分がございますので、適正化をしているわけでございます。

 それから、正式見解、一番最後に作成を、要求をいただいてつくらせていただいたものでありますが、この正式見解の資料の段階においては、派遣先の四二%が受け入れをとめるといった誤解を生じるおそれがある表現、これについては記載を削除しているなどの違いがあると承知をしております。

西村(智)委員 違いがあるということは、これは大臣の指示で1のペーパー、つまりは、「経済界等の懸念」というふうに書かれているものから三枚目のペーパーへと変更させたときに、例えば「訴訟が乱発するおそれ」という文言を変えさせたり、あるいは、「(全体の四二%)の派遣の受入をやめる可能性」という、この「予想される問題」のところを削除したりということですので、大臣の理解としても、訴訟が乱発するおそれなどはないし、また、二十六業務の派遣の受け入れをやめる可能性がなくなったというふうに大臣も理解しているというふうに受けとめてよろしいですね。

塩崎国務大臣 私が見たのは、この一枚目とそれから最後であって、今回の御要望をいろいろ言われた中で初めて見たのが二枚目、三枚目、そして、記者にお配りをしたというか説明に使ったという、事務的にやっていることについても私は特に見ておりませんでしたので、一枚目ということと、それで、これはもう何度も申し上げますけれども、二月の二十三日に足立先生がお配りになった際に、これは不適切な表現がたくさんあるねというので、そこから使わなくなっていたわけであります。

 後に、二カ月ぐらいたってから、民主党の皆さん方から御批判を得、そしてまた、共産党の小池先生から参議院において御指摘を受けたのが四月でございまして、それで最終的には、民主党の部門会議で、正式な厚労省としての説明の資料として紙を出してこいというので、最後に出したということであります。

 今御指摘の、表現をどう思ったのかということでありますけれども、先ほど来申し上げているように、誤解を招くし、言ってみれば、大げさな表現で、不正確であったりということで、今のような表現は控えるようにということでございまして、もちろん、それぞれ全く根拠がないことを言っているかというと、そんなことはないと思いますが、しかし、余りにも表現が不適切だということで、これは使わない方がいいと言って使わなかったということでございます。それで、あえてつくれというので一番最後のを出してきた。その途中の二枚は、適宜、審議の際に説明を必要と感じたときに使わせていただいたものだというふうに理解をしております。

西村(智)委員 今の大臣の答弁を聞いていますと、不適切だというふうには言ったけれども、間違っているというふうには思わないと。そこは微妙なニュアンスの違いだと思うんですけれども、でも、全く立ち位置が違う話だと思うんですよ。

 私たちは、この表現はやはり間違っているというふうに思っています。だから、このペーパーの存在そのものが、今回、労働者派遣法の審議の入り口に立つに当たっては、本当に大きな問題、障害になってしまっているということだと思いますし、また引き続いてお伺いいたしますけれども、この点について大臣は、また誤った、間違った答弁、冒頭の発言を、先日の十五日の衆議院厚生労働委員会、この場でされておられます。

 大臣は、五月十三日の衆議院厚生労働委員会の答弁において、局長、部長が知らなかったと申し上げましたが、実際は局長、部長ともにペーパーの作成について報告を受けており、その発言を訂正して、おわびしますというふうに、冒頭、発言をされました。

 昨日、我が党の部門会議で、厚生労働省の局長が、みずから配付をしていた、手渡していたというふうに発言をいたしました。大臣の先日の委員会での冒頭の発言とそごがあります。これは、報告を受けていたのではなくて、みずから手渡していたという表現が正しいわけでありまして、そういうふうに訂正をしなければいけないというふうに思います。

 再度、大臣、訂正するつもりはありませんか。

塩崎国務大臣 先ほどの、今先生御指摘の点については、局長、部長が、一番最初、去年の冬につくったときに知らなかったというふうに私は理解をしていましたけれども、つくっていて、それを部下が使っているということは知っていたということを私は知らなかったので、大変申しわけなかったということを申し上げたわけであります。それで前言を訂正し、おわびを申し上げたということであります。

 局長が配っていたということについては、五月十五日の厚生労働委員会において、局長は、記憶は定かではなく断言することはできない旨の答弁を行っているというふうに承知をしているわけで、一方で、昨日の民主党厚生労働部門会議において、問題となった当初の資料をリバイスしたものを配付していたということが、この資料を見て、局長は、配ったことがあることを思い出したということで、そのような旨の発言をしたとのことであって、答弁が虚偽ということではないというふうに理解をしております。

 問題となった当初のペーパーについては、私の責任で、繰り返して申し上げますけれども、改めて、一〇・一問題に係る厚生労働省の正式な補足説明資料として示すようにということで御要望が民主党からございましたので、衆参の厚生労働委員会の先生方に配付をしたところでございます。

西村(智)委員 問題は、先日十五日の厚生労働委員会で、大臣が、「局長、部長が知らなかったと申し上げましたが、実際は局長、部長ともにペーパーの作成について報告を受けており、」という発言、これはやはり間違っているというふうに思うんですよ。

 本当はここは、私たちが確認したのは局長なんですけれども、きっちり、それを配付していたということを、言ってみれば、この発言の中では含んでいないわけですから、私は、やはりここは、厚生労働省の中から、済みませんでした、大臣、大臣に先週こういうふうに発言してもらいましたけれども、本当はこういうことなんですと言って答弁を訂正してもらわないと議論が始まらないところだというふうに思います。

 大臣、改めて伺います。

 もう一回、その事実関係をきちんと整理していただいて、この厚生労働委員会でその大臣の答弁を訂正すべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これはもう既に訂正して謝罪を申し上げたわけでありますけれども、去年の冬に局長、部長が知らなかったと私は認識しておりましたけれども、知っていたということで、私は訂正をし、謝罪も申し上げているわけであります。

 局長が言っていたのは、この場で答弁を答弁者としてしておりましたのを私は聞いておりましたけれども、自分では配付した記憶がないということを言っていたのでありまして、私が今回、きのう民主党の部門会議に局長が行って、そこで、これでいくと二枚目のバージョンを見せられて、これを配ったということを指摘されて、そこで本人は思い出したということでございますので、そこについては、私の発言自体は、繰り返し、記憶が定かではなく断言することはできないということを局長が言っていましたよということを申し上げたところでございますので、そこについては訂正をする必要はないと思います。

 ただ、繰り返し申し上げますけれども、最初の時点で知っていたことを私が知らなかったことは、おわびをして訂正したということであります。

西村(智)委員 記憶にございませんと言えば全てが丸くおさまるというわけではないんです。これは今後とも追及をしていきたいと思います。

 ペーパーについて、私は一つだけどうしても聞きたい。

 正式バージョンですと言われたペーパーの中にも、「十月一日以降に想定される状況」として、「訴訟につながるおそれ」があるというふうに書かれています。これは誰が恐れているんですか。厚生労働省ですか。誰が恐れているんですか、「訴訟につながるおそれ」というのは。

塩崎国務大臣 「訴訟につながるおそれ」というのは、誰かが恐れているわけではなくて、可能性という意味であります。

渡辺委員長 西村智奈美君、申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

西村(智)委員 訴訟につながるのがおそれであるというふうには私は思いません。そのことについてもまた改めてお伺いしたいと思います。

 質問を終わります。

渡辺委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民主党の阿部知子です。

 まず冒頭、委員長にお伺いをいたしたいと思います。

 きょうも委員会は職権立てということでありました。

 こうして国会で審議が行われますときに、その審議の前提、あるいは信義、お互いに信頼が必要なものと思いますが、委員長は、この間ずっと職権立てで委員会を立てておられますが、国会審議における信頼性、前提は何であるとお考えでしょう。国会で審議をするに際しての信頼性の前提です。

渡辺委員長 基本的には、与野党の合意ということが前提です。それが信頼のもとだと思います。

阿部委員 私はもちろんそれもあると思うんですけれども、実は、国会という場所は、行政のなさっていることと、私たち立法府にいる議員が、行政サイドがどうなっているの、立法趣旨はこうなんだよ、だから、改革するために、よりよい現場を、例えばこの労働問題であれば労使双方にかかわると思いますが、その状態が、そこでもまた信頼性が生まれるように審議をしていくということなんだと思います。与野党の合意というのは、これは立法府間のものでございます。

 今、何が問題になって民主党から、この審議はとても看過できない、受けられないと申しておるかというと、実は、大事な行政府の対応について非常に疑義が持たれて、そのことが、逆に言うと労働者や経済界に対しても大きな問題を引き起こすのではないか、そういう懸念があるからにほかなりません。もちろん、与野党の合意というのは前提であります。でも、そこだけあれば現場を無視して、あるいは厚生労働省を無視して進んでいいわけでもないと私は思っております。

 もう一度委員長に伺いますが、この間、立法府と行政府の間の信頼は保たれているでしょうか。それが何回も、資料はどうだとか、理事会にこれを出せとか、これを出すまではできないとかいう表現にはなっておりますが、私は、根本は立法府と行政府のあり方にかかわることなんだと思います。委員長の御認識を伺います。

渡辺委員長 私たちは、立法府として議論を深めることが一番大事だ、そのように思っているわけでありまして、公の場で議論することが国民の皆さん方の負託に応えるものだ、そのように認識をしております。

阿部委員 もちろんそうであります。私たちは、代議士と言われるように、代理に議をなす士でありますから、国民の負託を受けてここで論議をしていきます。

 ただ、その前提に、現状がどうであるか、現場がどうであるか、国民の生活はどうであるか、派遣労働者の人権はどうであるか、あるいは、雇用されている皆さんが何らかの支障を感じておられるかなど、現場から照らし出されるものについての情報を土台に審議が行われます。その現場から照らし出されるものを一番早くキャッチすべき立場にあるのは、行政の最前線である厚生労働省なんだと思います。

 この間、なぜこれだけかみ合わないのかというと、その厚生労働省の資料の出し方、あるいは労働者の人権をおとしめるような表現、私は、やはりこれはあくまで不適切だと思います。私は、派遣労働者が故意に二十六業務以外のものを勝手にやって、それで訴訟のおそれ、こんな文章は見たことがありません。そういう前提のもとに立法府が、失礼ですが、しゃあしゃあと論議をするというのでは、私は余りにも人権無視になってしまうと思います。

 委員長として、この間、大変なお裁きだと思います。これだけ対立して、毎回毎回職権立て、委員長もおつらいと思います。でも、その大きな原因はこの厚生労働省の出したペーパーにあり、そのことについて、誠実に、厚生労働省側にも委員長が対応を求め、議論の前提を整えていただきたいと私は思いますが、いかがでしょう。

渡辺委員長 ただいまの御指摘につきましては、厚生労働省、真摯に受けとめまして、ぜひとも適正な資料提出をお願いしたい、そのように思います。

阿部委員 繰り返しますが、適正であるとは、やはりエビデンスベースド、事実に基づいたものであるということであると思います。

 私ども民主党が何を問題としているのかは、厚生労働省の資料が、事実に基づいていないものを、それも幾つかバージョンを変えながら配付されている、これではとても派遣労働者の立場をよくすることもできない、信頼をかち取ることができないと大きく危惧するからであります。

 その前提で、私は、審議の前提条件を整えるという意味でのきょうの質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、質問の一点目。

 基本的に、先ほど委員長おっしゃったように、ここは立法府ですから、政治家同士の話で、それに必要な現状の、現場の取り組みを厚生労働省からお示しいただくわけですが、そこで民主党としては、基本的に、政治家である大臣の御答弁ということを原則にしておりますが、今回については、提供していただきました資料が混乱のもとでありますので、職業安定局長になられますでしょうか、生田さんにお伺いをいたします。

 先ほど、大臣が幾つか御答弁でありましたが、きょう、既に西村委員の方から五種類の違ったペーパーが、それぞれ、恐らく作成された年月日も違いながら提出をされております。

 生田局長に事実の確認です。配られました資料の二枚目は、いつお使いになったものでしょうか。

生田政府参考人 お答えいたします。

 まず冒頭に、今回の一〇・一問題ペーパーの記述につきましては、一般的な説明資料の補足資料としてつくったものでございますけれども、私の精査が不十分なために内容に非常に不適切なものが含まれまして、これにつきましては私の責任でございますので、深くおわび申し上げます。

 その上で、私がある議員の方にお渡ししたというふうに記憶がよみがえってまいりましたのが二枚目のペーパーでございます。

 二枚目のペーパーでございますが、これにつきましては、ことしの一月ぐらいにお渡ししたというふうに考えてございます。

阿部委員 記憶がよみがえって、一月の下旬ごろに配付したのではないかということでございます。

 では、三枚目のペーパーについては、局長は御存じでありましょうか。三枚目のペーパーについてであります。これについては御存じでありましょうか。(発言する者あり)申しわけありません。私の言い方が問題でした。西村さんのお配りいただいたペーパーで三枚目であります。

 私の資料は局長が使われたものを入れてございますが、ここに新たに三枚目のペーパーというのが昨日民主党の方に届きましたので、これについてお尋ねをいたしております。

生田政府参考人 お答えいたします。

 このペーパーにつきましては、昨日、こういう資料があるということがわかりまして、これも議員の方何名かにお配りされているということでございます。

 これ自体は私が配った資料ではないですけれども、承知いたしました。

阿部委員 二枚目のペーパー、すなわち生田局長が民主党議員に配られたペーパーと三枚目のペーパーで一番大きく変わっているのは、大臣が御指摘の、大量の失業者が出るという一行がなくなっているということで、先ほど大臣は、四点にわたって、一枚目の「経済界等の懸念」ということにまとめられたペーパーの問題点を四点御指摘でありましたが、生田さんが配られたペーパーと、きのういただきました新たな三枚目のペーパーで違っておりますのは、大量の派遣労働者の失業ということであります。

 これは、一枚目と二枚目のペーパー、すなわち経済界の懸念と生田さん御自身が配られたペーパーで、生田さんはその内容を、まず御自分で見て変えられたんでしょうか。経済界の懸念のところをとって自分のペーパーは配ったんでしょうか。

生田政府参考人 お答えいたします。

 この当省の作成ペーパーにつきましては、適宜リバイスをするということで、よりよいものに変えていくということを担当課の方で繰り返してございまして、徐々に、問題がある表現というのはなくなってきているというふうに考えてございます。

 そのなくなっていく過程で、今回、最初に私がある議員の方にお渡ししたペーパーで、「経済界等の懸念」というのがとれているわけですけれども、明確に「経済界等の懸念」を私がとれと言ったわけではもちろんないんですけれども、ただ、結果として、十分見ていなかったということなので、私がとれと言ったのと事実上同じ結果にはなっているというふうに思います。

 私自身が本当は資料を精査しなきゃいけない立場なので、受け取ってそのまま渡しているような状態だと非常に問題だと思いますので、今回の件につきましては、本当に申しわけないと思っております。

阿部委員 では、局長は、少なくとも、経済界の懸念という形でまとめられたペーパーが、そういう視点では問題だろうという御認識はなく、ただ、次にリバイスされていたものがこれだったので、これをお使いになったと。

 引き続いて、どなたかはわかりませんが、三枚目のペーパーが使われていて、この三枚目と二枚目の違いは、今度は、さっき申しました大量の失業者の発生ということであります。

 これがこのように変えられたということを局長は御存じでしょうか。三枚目はきょう初めてでしょうか。

生田政府参考人 お答えいたします。

 この三枚目のペーパーは、きょう初めてではなくて、課の者から報告を受けて知ったということでございますけれども、こういうふうにさらにバージョンアップされていたということだと思って……(発言する者あり)済みません、リバイスされていたということだと思います。申しわけございません。というふうに変えられたと思います。

阿部委員 そこが非常に問題で、時の流れのようにみたいに、自然に何か変わっていくものではなくて、やはり、行政府は、より現状に即した情報を立法府にいただきまして、私たちも、よりよくするために審議をしたいわけです。

 何か知らないうちに変わっちゃっていて、それはもしかして、立法府と厚生労働省とのやりとりの中で変わったのかもしれませんけれども、でも、その一つ一つが、先ほど西村委員も御指摘があったように、みんな、各議員にばらばらな認識を与えていくわけです。

 ある程度共通認識がないと、というのは、その共通認識は、事実に基づいた共通認識で、大量の首切りは起こらないという事実と、それから、経済界からの視点だけではなくて、これは政労使ではありませんが、やはり労働者側も一緒に考える、政府も考える、三者の視点だということが、まず事実を共有する前提であると思います。

 こんなことは局長に確認をする必要もないと思いますので、そのことは言い置いて、さて、では、二月の二十三日に足立議員の質問に使われたペーパーを塩崎大臣がごらんになって、ちょっとこれは問題じゃないのと生田局長に御指摘されたのは、いつでしょう。

生田政府参考人 お答えいたします。

 大臣がその資料をごらんになった日に御指摘をされました。

阿部委員 では、そのときの指摘は、どことどこにありましたでしょう。何が問題という御指摘だったでしょう。

生田政府参考人 お答えいたします。

 まず、このペーパーの全体的に不適切、誤解を招くような、客観性に欠けるような表現があるという御指摘がまずございまして、例えばということで、例として、その下にございます「予想される問題」の中の「大量の派遣労働者が失業」だとか、あるいは「訴訟が乱発するおそれ」だとか、そういった点につきまして、例として挙げられました。

阿部委員 そういたしますと、先ほど来問題になっている具体的な二ケースが外れてくるのは、ケース1は、二十六業務だと思って三年以上受け入れていて、実は二十六業務ではないと言われた、ケース2は、三年以上二十六業務に従事する派遣労働者が、派遣先に直接雇用されたいために二十六業務以外の業務を故意に行ったという二つの事案が外れたのは、大臣の御指摘ではなくて、記者会見の前に、公式ペーパーとなるときに外れたんですか。

生田政府参考人 お答えいたします。

 大臣からきめ細かに全て御指摘いただいたわけではもちろんないんですけれども、例えばこういう例もあるということで御指摘いただきましたので、それを踏まえまして、記者用の資料がございますけれども、この資料につきましては、頭の中に大臣からの御指摘もあったものですから、それを踏まえて、そのときは精査をきちんとやって、完成したものを記者の方あるいは論説委員の方にお配りしているということでございます。

阿部委員 そうしますと、それはやらないよりはやった方がいいと思うんですけれども、それまでの立法府への説明は、逆に言うと、そこまで注意を傾注しない。ここはきちんとした方がいいと今おっしゃいましたが、国会議員に対してはきちんとしなくていいんでしょうか。それだから私は国会審議が軽んじられると思うんですね。

 これは恐縮ですが、大臣、いかがですか。記者会見の前にはきちんとしなきゃいけないから目を通したと。ほかは幾種類も、そして、不適切な事案の事例も含めて述べてあるものを、立法府の国会議員には適宜適切に配付したと。これは、一体、行政府として立法府をどう思っておられるんでしょう。

塩崎国務大臣 何度も繰り返して申し上げますけれども、もともと、最初のペーパーは補足説明用に担当課がつくって、必要に応じてだけ使っていたものでございます。それと同じ使い方をしたのが二枚目、三枚目のものでありまして、多少バージョンが変わっていますけれども。ですから、基本的には、大々的に国会で全員に配るとか、あるいは法案説明の際に与党の部会に配るとかいう扱いのものではなかったわけですね。

 一方、記者さんに説明をするのは、当然、これは説明をきちっとする際には、余り詳し過ぎない、審議をするわけではございませんのでということで、なおかつ、これは三月につくって配付をしていますから、当然、二月に足立先生の質問の際に、私がこれはちょっと問題あるんじゃないかということで指摘をしたものですから、その後は使っていなかったわけですけれども、やはり説明することが適切だろうということで、記者に説明する際にはそういう形にしたということであります。

 今先生の問題としている、立法府を行政府は一体どう考えているんだと。この問題については、先生がおっしゃるように、立法府はまさに国権の最高機関で、唯一の立法機関でありますから、ここに対して内閣が提案をする際には、やはり懇切丁寧、そして説明を尽くすということをやるのは当然のことで、先生の御指摘もそのとおりだというふうに思います。

 そういう意味では、我々は、政府として、一般的に、関係者というのはあらゆる関係者をきちっと把握した上で、それぞれの声を反映するようにしていかなきゃいけないと思いますけれども、今回の場合の不適切さは、「経済界等の懸念」というような形で、言ってみれば派遣元、派遣先、そして派遣で働く方々、やはりそれぞれのことをおもんぱかった上で法案を提起していくというのが政府としてやらなきゃいけないことだと思います。それで、その御議論をいただいて立法府で通していただくのは、唯一の立法府として国会が通すわけですから、そこに誠意を尽くした説明をするのは当然のことだというふうに思っています。

 今回、立法府に審議としてお願いをする際に一斉に配ったものということであれば、私も当初から見ておったはずでございますけれども、今回は、適宜必要に応じて説明資料として補足的に使わせていただいていたというものがあって、それが二月の二十三日に表面化した。

 そこで、それ以上はもう使わなかった。その後、御指示に従って一回直したということと、記者さんにお配りをしたということでございますので、先生の御指摘の立法府と行政府の関係は御指摘のとおりだというふうに思います。

阿部委員 神は細部に宿るというんですけれども、誠意を尽くして正面立って説明するときは説明する。でも、そのほかの、その前段でとりあえず説明しておくんだから、それはばらばらのペーパーで、おまけに、本当にこれは事実誤認、大量の失業とか、あるいは故意に二十六業務以外をやる派遣労働者の姿とか、本当にそこに、逆に、神は細部に宿る。そういうことを議員に行政府から告げること自身も私は問題なんだと思います。

 改まってこうやれば、もちろん正論が出て、そこで、ある程度の避けるべき表現とかがとられる。だけれども、具体的にどうなのと聞いたときの説明が、非常に派遣労働者から見ても納得できない表現になっていると私は思います。

 私は、まず生田局長に伺いますが、この二ケースですね、御説明に使われた。生田さんも使ったと思うんですよ。

 この二ケース、例えば、ケース1は、二十六業務かどうかよくわからない、知らないで使っていて、みなし雇用が始まって、さて困るわと。こういうのは本当に訴訟につながっていくおそれが強いのですか。ケース2、二十六業務でやっていた人が三年たって、正社員になりたいから、急にお茶くみを始めるとか、急にほかの業務を故意にやる、そんなケースは、これまで行政指導、監督指導していた中で一例でもあったでしょうか。具体的にそんなケースがあったでしょうか。お願いします。

生田政府参考人 お答えいたします。

 まず、ケース1につきまして、あるいは2につきましても、最終的には問題がある表現だというふうに私ども認識しておりまして、最終的な資料では修正をさせていただいております。ですから、今現在このとおり思っているというわけでは全然ないということをちょっと最初に申し上げます。

 その上で、まずケース1の方から参りますが、「二十六業務だと思って三年以上受け入れていたら、実は二十六業務ではないと認定された。」というケースについての記述です。

 これにつきましては、今回のこの改正内容ともかかわるわけですけれども、現行の派遣法で、派遣先での受け入れにつきまして、専門的な業務などの二十六業務を除きまして、最長三年の期間制限がございます。これにつきましては、厚生労働省としても、現行の法規定の履行を確保するという観点から、専門二十六業務に関する疑義応答集という割と厚いものがございまして、それをまとめまして、各都道府県の労働局に通達をいたしまして指導監督なり、あるいは事業主の方にも、ホームページなんかも使いまして周知徹底を図ってございます。

 ただ、この二十六業務の解釈につきましては、いわゆる二十六業務の専門性につきまして、時代に応じてどんどん変わっていくということで、二十六業務自体を入れかえていく、機動的に入れかえていく必要があるということですとか、あるいは該当するかどうかわかりにくいというふうなお話がございました。

 こういう中で、どのような業務につきましても、該当するか否かにつきましては曖昧な領域があるということがございますものですから、業務単位の仕組み、要するに、二十六業務に該当するかどうかによってルールが違うという仕組みを維持するだけではなかなか制度運用も難しいということがございまして、二十四年の法改正時の附帯決議がございました、そのときの附帯決議でも、労使双方にとってわかりやすい制度となるように、この二十六業務の取り扱いについては見直すという御指摘がございましたし、あと、その後、労働政策審議会での御議論もございまして、今回の改正案では、期間制限の区分を見直しまして、全ての業務に適用される、派遣労働者個人単位と派遣先事業所単位の二つの期間制限に見直すというふうにしたものでございます。

 それから、ケース2につきましては、もう明らかに不適当な記述であると思っておりますけれども、最終的には、派遣先が意図せずに二十六業務ではないというふうに想定されるケースというふうに整理されるものでございまして、もともとの記述が余りにも不適切だというふうに感じております。おわび申し上げます。

 こういったケースにつきましては、労働契約申し込みみなし規定が施行される前の段階で、こういう可能性があるんだということにつきましては指摘しておく必要があるんじゃないかということで、最終バージョンになったときのものにつきましては、こういう必要性があるんじゃないかというふうに今でも考えているところでございます。

阿部委員 こういう必要性の、こういうがわかりません。事案は二例とも不適切だと。

 一例目は、これはもし善意無過失だったら、全然問われませんよ、みなし雇用制度にならなくていいんですよ。だから、皆さんが一生懸命行政指導して、知ってもらえばいいんです。こういうのは二十六業種じゃないから、ファイリングのここも、これだけは、つくるのはそうだけれども、その後は違うからとか、行政指導、周知徹底で済むことですよ。

 二例目は、さっき、私の質問に答えてくれていないけれども、一つでもこんなケースはありましたか。派遣労働者がみずからほかの業務を、正社員になりたいから派遣業務じゃないことを率先してやってと。ないでしょう。逆に、生田局長が心配される、こんな事案があるからというのが一体あるんですか。

 皆さんの行政指導の中で、どうしてもこの壁だけは突破できなかった、自分たちは一生懸命行政指導もした、ひどいものは処分もした、だけれどもこれはうまくいかなかったからということで、そこにもし事例を挙げられるのであれば、この一〇・一問題はそれなりのリアリティーがあったと思うんですね。

 でも、今おっしゃった二例は全然、関係ないとまでは言いませんが、二例目はないですし、一例目も、さっきから申しますように、行政指導で、平成二十二年の民主党政権の要請でやったときからいろいろな指導をしていらっしゃると思うんですね。

 そんな中で、なぜ仰々しく一〇・一問題といってフレームアップして、プラス、事実じゃないケースを出して、プラス、大量の雇用が失われるとおどして、本当にこれは悪意に満ち満ちていると私は思います。

 大臣、ちょっとお伺いしたいんです。

 私の資料の四枚目を見ていただきたいと思いますが、私は、厚生労働行政を信頼して、この二十六業種についても一生懸命周知徹底していただいているという前提のもとにこの資料を出させていただきますが、これは、労働者派遣事業に係る指導監督実施件数というのが出ております。指導監督は派遣元にも派遣先にも、あるいは請負、発注などのおのおので生じるわけですが、派遣、特に二十六業種の業務内容にかかわってはどちらかというと派遣先で問題が起こる場合が多いので、ここの派遣先というのを見ますと、平成二十一年から二十五年に、監督指導件数は全体としてふえてはおります。

 ただし、次のページをめくっていただきますと、大臣、いいでしょうか、私の資料の五です、そのうち期間制限違反は一体どのくらいあるのと。行政指導はいろいろやっていただいておりますが、いわゆる、今、生田さんたちが懸念される期間制限違反はどのくらいあるのというと、年々減っているんですね。減っていますよ、これは間違いなく。この中でさらに二十六業種にかかわるものは一体どのくらいありますか。

 これは坂口さんお願いします。五枚目のペーパーの、例えば平成二十五年度百九十七の期間制限違反のうち二十六業種にかかわるもの。

坂口政府参考人 お答えします。

 平成二十五年度でございますけれども、派遣先の指導監督件数、今委員御指摘のこの資料にありますように、四十条の二の第一項の期間制限全体の違反が百九十七件でございますが、そのうちのいわゆる専門二十六業務と称した違反というものについては五十四件ということでございます。

阿部委員 これは、傾向として全体に期間制限違反は減っている。その中で二十六業種にかかわる期間制限違反はどうですか。私がけさいただいた資料だと減っておりましたけれども。すなわち、全体の期間制限違反の件数も減っている、その中で二十六業種にかかわる期間制限違反も減っていると思いますが、いただいたデータで二十五年と二十六年を比べましたが、割合はどうですか。坂口さんに伺います。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 先ほどお答え申し上げました平成二十五年度は、全体の派遣先期間制限の違反が百九十七件のところ、いわゆる専門二十六業務と称した違反が五十四件ということでございますので、期間制限違反のうちの二七%ということでございます。

 比較しまして平成二十六年度でございますが、同じくでございますが、四十条の二の一項違反ということで、全体の期間制限違反の件数が百七十九件でございます。そのうちのいわゆる専門二十六業務と称しました違反の件数が三十二件ということで、パーセンテージで申し上げますと期間制限違反の一八%ということでございます。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

阿部委員 大臣にぜひ御認識いただきたいんですけれども、厚生労働省はよく仕事をしてきたということなんだと思うんですね。

 前段の労働者派遣事業に係る指導監督実施件数はふえているんですよ。やはりこれが行き渡るために指導監督しているんだと思います。そのうちに、期間制限違反、これについては相対にどんどん減ってきているんですね。これは、私はある意味で指導の成果だと思います。プラス、二十六業種にかかわるものも減ってきているんですね。このトレンド、この事実、その中でぼっと一〇・一問題がフレームアップされるというのは、私はやはりエビデンスベースドじゃないと思います。

 厚生労働省の業務を信頼して、こんな白旗を掲げるんじゃなくて、それも事実にないことを引っ張り出して一〇・一ペーパーなんてつくるんじゃなくて、自分たちがやってきた実績をさらに充実していけばいいじゃないかと私は思います。大臣の御認識を伺います。

塩崎国務大臣 もともと、今回の二十六業務についても直すということは、平成二十四年改正の際の附帯決議でわかりやすくということだったわけでありまして、一方で、指導監督も、今先生から御指摘いただきましたように、厚生労働省もやるべきことはきちっとやっているということ、そしてまた、その中にあって期間制限違反が減少傾向にあり、また、中で二十六業務についての期間制限違反が同様に減っているということの中でなぜこんなペーパーをつくったのか、こういう御疑問だったというふうに思います。

 今回の件では、いろいろ種々至らぬところがあって、それは、御指摘で当たっているところについては認め、そしておわびを申し上げたところでございます。

 今回のこのペーパーをつくったのは、十月一日問題というか、十月一日からこの労働契約申し込みみなし制度というのが発動するに当たって、いみじくも、最初に経済界などが、これは派遣元、派遣先、両方だろうと思いますけれども、非常に心配する向きがあったという中で、これは十月一日以降に混乱が起きてはいけないというふうに厚労省の担当も考えて、こういう説明、補足資料ということでつくったのではないかというふうに思います。

 ですから、それ自体の、減ったといえども、まだ百七十九件のうちの三十二件ということでありますから、この中でやはり混乱はないようにしよう、こういう発想だったと思うので、メンションすること自体は、法案説明で必要に応じてあっておかしくはないと私は思いますけれども、今回の当初つくったペーパー、あるいは途中というのがまた新たに出てまいりましたけれども、いずれにしても適切ではない表現、大げさな表現と認めざるを得ないものがあったということはそのとおりだと思いますので、趣旨は外れているわけではないけれども、やった中身がさまざま問題があった、こういうことだろうと思います。

阿部委員 私は、やはり趣旨が外れているんだと思いますね、大臣。

 先ほど申しました、国会が、行政府と立法府とそして現実の労働者や雇用者のことをきちんと把握しながら行われる場であるとすると、特に、この労働関係は昔から政労使と言われて、政府と労働者と使用者側ですね。

 先ほど来申しますように、厚生労働省の実績は、一生懸命やっていただいて、まだゼロにはならないけれども、過労死ゼロではありませんが、違法派遣ゼロに向けて努力をしていただいているんだと思うんですね。

 この期間制限違反のうち、実際に二十六業種にかかわるものが三十二まで減ってきたというのは、やはりそれは努力のあらわれであり、もし経済側から言われたら、いや、こういう指導でもっと頑張って、なるべくこれをゼロにしていって、お互いにこの制度をよくしていきたいと思いますというのが、政労使、政なんですから、政府なんですから、それくらいのプライドを持ってやってもらわなければ、言いなりでは困るわけです。

 まして、四二%の派遣労働者が失業するなんて、もう皆さんのやってきた努力をゼロとみなすような、僕たちは何もやってこなかった、平成二十四年の立法で三年延長になってから何にもやってこなかったと言っているに等しい、私は、大変に悲しむべき実態だと思います。

 それくらいに厚労省には頑張ってほしいし、違法派遣を取り締まって、本当に労働者にとっていい制度にしていっていただきたいときにこういうことが起こって、そのことが非常に残念であるから、審議の前提が崩れていると申し上げております。

 大臣、私は、ほかにもちょっと質問を用意したものがありますが、でも、ここでぜひ大臣が、一〇・一問題というペーパーの配付をきっかけに、もう一度この法案を出し直していただきたい、説明もきちんと共有していただきたいと思います。

 だって、生田さんの御説明の民主党へのペーパー、あともう一つバージョン、どのくらいの人に配られたんでしょうか。それも、労働者をおとしめるような表現のついたものです。

 そして、おまけに、十月一日までにこの法案が通らなくちゃどうしようもないという御指摘なんですね。でも、私は、事実を把握して、本当に労働者保護になる方が、急がば回れなんだと思います。

 大臣、この間の経緯は、出し直しに匹敵するようなものと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げておりますけれども、この法案審議に当たって一番皆さん方に見ていただきたいのは法案そのものであります。法案そのものの説明をするに当たって、補足の説明が必要なときに適宜使っていたということで、そう大量に配ったという話は私は聞いておりません。

 問題があったことも事実ですけれども、しかし、では、その理由は何もなかったのかというと、そうではなかったんだろう。やはりそれなりに理由、そういうケースもあり得るということだからこそ、今、指導件数だけを捉えて、減っているんだから何も心配することなんかないんだということでありますけれども、それは、心配をしている方がおられるということに、心配している人に向かって、あなた、心配することないよと言っても、これはなかなかおさまる話ではございません。

 そこのところは、大量に配って、説明資料の必須資料として配ったならいざ知らず、今のもう既に提出をしてございます法案を御審議いただいて、世の中の言ってみればニーズに応えていただければありがたいなというふうに思っているところでございます。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 大量に配られたかどうかというのは、実は、配った方に聞かないとわからないんですね。だって大臣、それでは今私が生田さんに、何枚配ったのと言って、毎日のように思い出してもらいますか、あの日は三枚、この日は二枚とか。

 私は、そういうことに労力を注ぐよりも、まず事実としては、大臣が気づかれた場が予算委員会でしょう。あれは大きな、国会の中の最高の権威のある場所ですね。そこで使われているということなんですね。

 それから、大臣は、もちろん世の中にこのことで不安を覚える方があるからとおっしゃいましたが、逆に、みなし雇用制度というのは、さきの改正で、労働者保護のために、今まで行政指導であったものをみなし雇用という労働契約に持っていくという大きな法改正で、労働者側の期待も高いわけですよ。大臣、その答弁じゃ、片方しか見ていないと思いますよ。こちら側の、労働者側から見てやはり違法な派遣だったら、あくまで違法な派遣ですよ。それをきちんと雇用契約に持っていきましょうということであります。

 経済側の懸念、あれば、もちろん受けとめねばなりません。だけれども、それだけ持って回って、労働者側の問題というものも、受けとめも、一言も触れられることなくそういう御説明というのは、法案の法文じゃないからといって、立法背景、立法趣旨があるわけですよ。何のための立法か。まして、三年延長しました、その間になされた努力もあるでしょう。個人に着目した派遣制度に見直すというのもその一つです。

 でも、大臣、繰り返しますが、この資料の提出のされ方、これは厚生労働行政に汚点を残す、過失を残すと私は思います。こんなことをしちゃったら、例えば、法案は、正直言って数で成立するかもしれません。でも、それは、厚生労働行政が労働者の信任を得られなくなる重大な事態だと思います。

 私の今の指摘、何人に配ったかなんかはわからないですよ。また、彼を一々追及する気も私はありません。でも、予算委員会の場ですよ。共有される場ですよ。そこで配られて、そして労働者側についての、みなし雇用制度についてのいろいろなメリットに逆に触れられていないじゃないですか。

 出し直してくださいな。どうでしょう。

塩崎国務大臣 労働契約申し込みみなし制度ということについて、これは国会で成立をした法律であって、これは今の与党も賛成をして成立をしたものでございます。

 したがって、労働契約申し込みみなし制度を否定しているということは全くないわけであって、これがあることは、今先生いみじくもおっしゃったように、前回の二十四年のときの同時施行にはなっていないということがあるので、リマインダーとしてもここでお知らせをすることを適宜必要に応じて申し上げてきたというのが事務方のやろうとした意図だったというふうに思います。

 したがって、そこのペーパーについて、私どもは知らなかったわけでありますが、二月の二十三日に出てくるまでに一部使ったことについては大変申しわけないというふうに思いましたが、この一枚目のバージョンの、これは西村先生のお配りになった一枚目のバージョンで、予算委員会で使われたものは、足立先生はむしろよいものとして使われたということでもございまして、我々は、適切な表現だとは思っていませんが、そういう幅広い意見のある中で、今回、派遣法の御審議をお願いしているわけでございますので、ぜひ、そういうことで、御審議をしっかりお願いしたいというふうに思います。

阿部委員 よいか悪いかは、個人の議員の判断もあると思います、スタンスも。でも、これは事実に基づかないペーパーであるということが問題なんです。行政が、事実に基づいたデータを出していただきたい、それが法案審議の前提であると思います。

 私ども民主党が求めているのは、これからの厚生労働省のためにもと本当に思っています。それは、派遣労働者の身分をきちんとしていただくためでもあります。

 本日、私は、中身に深く立ち入らず、ただ、この間の経緯について質問をさせていただきました。数々問題があります。でも、少なくとも、事実を共有する委員会であることを委員長にもお願いして、私の質問を終わります。

渡辺委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本です。本日も質問の機会をいただきました。

 まず冒頭、先週も同じ話をしたんですけれども、職権で委員会が立つというのは大変残念で、私はやはり、議論を深めていくためにも、ぜひ委員長には、各党各会派の合意のもと委員会を開いていただきたいと公正中立をお願いしたのがちょうど先週です。また一週間後にこのお話をしなきゃいけないのが大変つらいけれども、委員長、いかがでしょうか。

渡辺委員長 ただいまの御指摘につきましては、真摯に受けとめ、公正円満に委員会運営が図れるように努力をさせていただきます。

岡本(充)委員 確かに、厚生労働省、やはり、さまざまな資料、大変だと思います、いろいろそろえなきゃいけないというのも。私は別に、いろいろな意味で、作業量をむやみにふやそうと思っているわけではないけれども、しかし、前提となる資料がきちっと出てきてもらわないことには、やはり議論が深まらないと私は思っているんですね。

 さて、その上で、今回、まず質問に先立って、前回の質問で、ちょっと私、確認をもう一回したいことがあります。

 塩崎厚生労働大臣は、前回の質疑で、「今、派遣としての三年以上はいるのかということでありますが、それは、同じ場所で同じ係ではもちろんないわけでありますから、課をかえたらそれはあるかもわからないということでございます。」と答弁をされていますが、これは少し正確性を欠いているのじゃないかと思うんです。このときの話、派遣期間が三年を超える見込みの派遣労働者は、今はいるのか、法改正後はいるのか、これについて、もう一度正確に答弁いただけますか。

塩崎国務大臣 今はおられると思います。

 今後は、三年で一旦期間制限がかかるということでございます。

岡本(充)委員 それは正確じゃありませんね。もう一度しっかり答弁してください。違うと思います。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 質問通告がないものですから、正確に御答弁することがなかなか難しいわけでありますが、今は、二十六業務は三年を超えることは契約としてあり得る。改正後は、今回、期間制限を設けますので、無期雇用派遣労働者、それから六十歳以上の者は対象外となりますけれども、基本的には、原則三年というのが事業所単位であり、個人単位も上限三年ということでございます。

岡本(充)委員 大臣、これは通告しています、きのう、夕方七時。私は、この問いを聞きますよということをお話をしています。したがって、通告していないというのは、大臣、それは間違いだと指摘をさせていただきたいと思います。

 きのうの七時、会議の終わった後に、大臣の前回の議事録の派遣期間の答弁について、期待をされる、期間が三年を超える者がいるかどうかについて、大臣の答弁が正確性に欠けているから、その部分についてはしっかり調べて、そして修正をしてくれという話をしてあります。したがって、通告をしていないということは取り消していただきたい。

 その上で、もう一度確認をしますけれども、それだけではないはずです。今、三年を超えて派遣を認められる者、そしてまた、これから先、この法改正ができたときには、どういった者が三年を超えて派遣をすることが見込まれるのか、これをちゃんと正確に答弁していただきたいと思います。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 質問通告の問題ですが、事務方は先生から質問通告として受けたという認識はなくて、部門会議ないしはその後で、夕方あった会議で、答弁が不正確ではないかという指摘を受けたということでございますし、私どもの手元にございますのは、三行ぐらい先生からいただいた紙があるだけなものですから、私はそれを質問通告だというふうに思っていますので、一行しかない方もおられるので、これは長時間労働につながるので、ブラック霞が関にならないようにぜひ御協力いただいて、できる限り細かな質問通告をしていただくと、我々としても正確な、特にテクニカルな問題に関しては、急に言われてもなかなか正確な答弁ができないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 その上で、その部門会議ないしはもう一つの会合で御指摘を受けたことを受けて答弁をしたいと思います。

 今回の改正案におきましては、有期雇用の派遣で働く方の受け入れを三年までとする事業所単位の期間制限を設け、これを超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には、過半数労働組合等からの意見聴取を派遣先に義務づけることとしております。このため、期間制限の対象となる方を前提にすれば、三年を超える派遣契約は一般に想定をされないというふうに思います。

 また、有期雇用で働く方の労働契約期間につきましては、労働基準法の規定によって、原則として三年を上限とすることが定められておりますけれども、例外として、三年を超える労働契約期間の締結が認められている場合、これは高度の専門知識等を有する労働者の場合などでは、上限五年というのがございます。

 それから、三年以内の労働契約を更新することで雇用期間の合計が三年を超える見込みとなる場合は、想定されると考えておるところでございます。

岡本(充)委員 大臣、それでも正確じゃないと思いますよ。今回の法改正によって、どういった方が三年を超える、いわゆる期間制限を超える期間継続して労働者派遣の役務を提供することができる方なのか、これはきちっと整理をして答弁をしてもらわないといけないと思います。

 三年を超える方はほかにもいますよね。いるはずですよ。それを私は聞いています。

塩崎国務大臣 こういう極めて正確性を求められる御質問は、もう少しプリサイスリーに御通告をいただくと、もう少し正確に答えられると思います。

 少なくとも、今私どもがきのう先生から受けた問題意識に答えるとすると、今申し上げたようなことの中で、例えば、無期雇用派遣労働者と六十歳以上の者等というのがあって、その「等」の中身をお聞きになっていらっしゃるのかどうかということもちょっと定かではないものですから、その「等」には、育児休業とかそういうのがどうもあるようでありますけれども、細かなことがあるようでありますけれども、先生の問題意識をもう少し正確にお聞かせをいただければ、整理をして、御説明を追っていたしたいというふうに思います。

岡本(充)委員 これは、大臣、きちっと、通告していないと言われますけれども、きのう、場所はどこでも、私の部屋じゃなかったですよ、しかし、これはあした聞きますよということを私は言っているわけですから、それはまさに質問通告ですよ。前回の大臣の答弁が正確性を欠いている、だから私はもう一度聞きますよ、こう聞いている。正確性を持って答えてもらいたい。

 三年以上派遣期間を期待し得る労働者とはどういう人か、正確に列記をお願いします。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 今課長にも聞きましたが、今私の方から答えたのが先生の問題意識への答えだというつもりでおるわけでございまして、先ほどの無期雇用の方々とそれから高齢者の皆さん方のほかに幾つか例外的にございますけれども、それを指しているのかどうかということを私も今お尋ねしましたが、それのことであれば条文を読み上げることは可能ですけれども、先生にそれが求められていることかどうかということが余りよくわからないものですから、正確なところということであれば、構わなければ、もし可能ならば、書面で問題をもう少しプリサイスリーにお出しをいただいた上で、こちらから法文解釈をさせていただければというふうに思うわけです。

 その他の派遣受け入れ期間の制限がない者として、さっき言った、産前産後休業とか育児休業等を取得する労働者の業務、それから三年以内の有期プロジェクト業務、それから日数限定業務、これは一カ月の勤務日数が通常の労働者の……(岡本(充)委員「それは三年超えない。三年を超える人だけピックアップしてほしい。一カ月とか一年を聞いているわけじゃない」と呼ぶ)はい。それから、介護休業等を取得する労働者の業務というようなことで、受け入れ期間の制限がないので、どこまでいくかということは、三年を超える場合もあり得るのかなというふうに思いますが、なお正確な問題意識をお伝えいただければ、きちっとしたものでお返しをしたいというふうに思います。

岡本(充)委員 介護休暇で三年を超えることがあり得るということですね。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 介護は九十三日ですから、三年を超えることはないにせよ、いずれにしても、何をお答えしたらいいのかをもう少し正確に言っていただくとありがたいということを繰り返し申し上げているわけであります。

岡本(充)委員 繰り返し言っています。

 三年を超える派遣期間を見込まれる方はどういった方か、きちっと正確に列記をしてくださいという話をしているんです。

塩崎国務大臣 今持ち合わせている答えは、先ほど答えたとおりでございますので、改めて、持ち帰って、お答えを申し上げたいというふうに思います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

岡本(充)委員 ちょっと、これは本当にしっかり調べてもらいたい。

 例えば、学生はどうなんですか。

高鳥委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長代理 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 御通告いただいていなかったので、今にわかに理解をしがたいので、それが三年を超えることにどうつながるのかということが、学生という身分によってそれにどういう影響があるのかということについては、改めて調べさせていただきたいと思います。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

岡本(充)委員 これは本当に、きのう、正確に答えてくれと言っているわけですよ。誰が三年を超えるのか。

 これはもう一つ問題点があるんです。

 法律では、四十条の二の中に、「雇用の機会の確保が特に困難である派遣労働者であつてその雇用の継続等を図る必要があると認められるものとして」、こう書いてあるんですよ。これはやはりほかの法令との対比が必要だと思います。こういう雇用の確保の困難を指摘しているほかの法令との比較がどうなのかという話を聞いているんです。

 その上で、であれば、私は続きが聞きたいところがあるんですが、正確に答えてもらわないとその次が聞けないものですから、これは委員長、どのように次の質問の機会がいただけるのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。大臣が答えられないなら。

渡辺委員長 明確にまず質問をしていただきたいと思います。(岡本(充)委員「いや、質問している」と呼ぶ)この委員会の席上において、質問を明確にお願いをしたい。

岡本(充)委員 三年を超えると見込まれる派遣期間の者は一体誰か。どういう人があり得るか。

塩崎国務大臣 先ほどの四十条の二の二というところで、さっきお読みになった「雇用の機会の確保が特に困難である派遣労働者であつてその雇用の継続等を図る必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める者に係る労働者派遣」というのは、この省令につきましては、六十歳を超える者ということを予定しているところでございます。

岡本(充)委員 では、学生は入らないという理解でいいですか。学生は入らないということでいいですか。

塩崎国務大臣 今のところ考えておるわけではございません。

岡本(充)委員 ほかの法令で、いわゆる雇用の確保が困難な者として学生を対象にしているものがあるんじゃないんですか。そういうものとの整合性はどうなるんですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 他の法令はともかく、ここで申し上げているのは、「必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める者に係る労働者派遣」について言っているので、ここでは六十歳を超える者を想定しているということでございまして、そこのところは、ですから、一番最初に申し上げたように、無期契約の方々と六十歳を超える高齢者の方々ということで想定をしているところでございます。

岡本(充)委員 ほかの法令はともかくとしてじゃなくて、やはりほかの法令との並びも考えなきゃいけない話だということで質問しているわけでありまして、きちっと整理をして、どういった者が三年を超えて派遣を期待でき得るのか、これにお答えをいただきたいと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 繰り返しますけれども、今回の期間制限の、事業所単位それから個人単位ということで、三年を超えるというのは、無期雇用派遣労働者と六十歳以上の者は対象外というのが基本だということは先ほど申し上げたとおりでございまして、条文を先生もおっしゃったので、高齢者について触れているのが四十条の二の二というところであるわけでございまして、我々としては、今さっき答えた、繰り返すことはいたしませんが、派遣、有期雇用で働く方の受け入れを三年までとする事業所単位の期限を設けて、これを超えていけるという人については、先ほど答弁したとおりでございます。

 労働契約はまた別問題でございますけれども、派遣の問題ということでは、そういうことだというふうに思います。

岡本(充)委員 私が言っているのは、労働契約法では対象が違うはずなんですよ。労働契約法における雇用の確保が困難な者となぜこれが違うのか。もし本当に六十歳だけだと言うんだったら、労働契約法とその縛りが違うのはどういう理由ですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 これも繰り返し申し上げてきておるところでありますけれども、労政審の建議に基づいてこの法案はつくられているわけでありまして、この期間制限に関して、三年の期間制限の措置の対象から除外することが適当であるものというものが三つ挙げられています。

 一つは、無期雇用の派遣労働者、これについては法律でもって明定をされております。二番目に出てきているのは六十歳以上の高齢者、これについては、今申し上げたように、厚生労働省令で定める者に係る労働者派遣ということでありまして、三番目は、現行制度において期間制限の対象から除外されている日数限定業務、有期プロジェクト業務、育児休業の代替要員等の業務、先ほど申し上げたことでありまして、これに従って今回の法律立ては行われているわけでございまして、この厚生労働省令という中で触れるのは六十歳を超える者ということで、高齢者については除外をしようということになっているわけでございます。

 他の、労働契約法の話が出ましたが、これは、派遣法の中での書きぶりの中で厚生労働省令に落としている部分についてはこういうことだということで、今申し上げたとおり、建議に従って、六十歳を超える者を入れる予定にしているということでございます。

岡本(充)委員 だから、それは聞いているんです。六十歳を超える者を入れるのはわかりました。

 何で労働契約法における雇用の確保が困難だと想定される者と労働者派遣法で言うところの雇用の確保が困難だとされる者の差異が生じるのか。それは何らか合理的な説明がなければいけないと思いますよ。そういう意味で、合理的な説明ができるんですか。労政審で出てきたものだからというのなら、労政審でどういう理由でそこに差ができるという議論になったのか教えてください。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 質問通告の際にそういう議論をしていただいたということはなかなか、にわかに理解しがたいわけで、今担当の者が言っているのは、労働契約法には雇用の機会の確保が特に困難である労働者であって云々というような表現は見当たらないと言っているものですから、もう少し正確に言っていただければ、きちっと、本当にあるかどうかも見て、そして、比較をせいというならば比較をいたしますが、しかし、今ここで言っているのは、その中の省令で定める者を対象にするとこの法律で申し上げているわけですから、ほかの法律との整合性を考えるかどうかは、派遣の中でこの対象となる省令で書かれるジャンルの人たちがどうなのかという問題が問われるように思われるところであります。

岡本(充)委員 私は、やはり他の法令との比較はする必要があると思いますよ。何で労働契約法で除外される方と派遣法で除外される方に差が出るのかということについては、きちっとここでその理由を明示していただきたい、差が出るのであれば。それは、私は、きちっと、なぜそこに差が生じるのか答弁をする必要があると思います、ほかの法令との差を見る上で。そういう意味で、いかがですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 やや法律論だと思うんですね。

 先ほど申し上げたとおり、雇用の機会の確保が特に困難である方々がどういう方々がおられるのかというのは、それはいろいろあるかもわかりませんが、ここで言っているのは、「困難である派遣労働者であつてその雇用の継続等を図る必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める者に係る労働者派遣」でございますので、そこでは六十歳を超える者を入れる予定にしているので、困難な方々は、それはいろいろおられますけれども、困難である派遣労働者の中での高齢者ということを申し上げているわけでありますので、これはこういうことで御理解をいただければと思うところでございます。

岡本(充)委員 差ができる理由になっていないと思いますよ。

 雇用の確保が特に困難であるという話の中で、では、学生は特に困難ではないという理解でいいということですね。夜は学生をしていて昼は派遣で働いている人はいると思いますよ。こういう人は雇用の確保が特に困難であるというふうに厚生労働省としては考えていない、そういうことでよろしいですね。

塩崎国務大臣 正確な通告を受けていないのでよくわかりませんが、雇用の機会の確保が特に困難である方は、学生というのもまた定義がいろいろ、何歳からのことを言っておられるのかわかりませんが、例えば母子家庭の方々とか、やはりいろいろな方々が、困難な方々がおられると思います。

 したがって、それはそれとしていろいろありましょうが、ここで言っているのは、雇用の機会の確保が特に困難である派遣労働者の中で雇用の継続等を図る必要があると認められるものとして厚生労働省令で指定をする者ですから、それを六十歳を超える者だということを申し上げている。

 確かに、世の中には、雇用の機会の確保が特に困難な方々というのはかなり、例えば、受刑者が刑務所から出てきてすぐに勤めるというのはなかなか難しいということなども含めて、いろいろございます。

 そういうようなことで、今ここでは、派遣の労働者の中でどういう人を期間制限の枠外とすべきかという中に一条を設けているということだというふうに理解をしております。

岡本(充)委員 ほかの法令との差がある場合には、やはり合理的な説明が必要だと思います。

 もう一つ、この委員会の場で指摘をしておきたい。これは確かに、通告していないので、これもきちっと整理して、あわせて答えていただきたいんです。

 今回の法律の三十条の三で、均衡を考慮した待遇の確保をするとき、均衡の考慮が図られていないとしたときに、紛争解決援助制度を利用することはできるのか。これは、パート労働法の二十一条、二十二条との差は何なのか。これもきちっと明確にする必要があると思います。

 今お答えいただけるのであれば、お答えをいただきたいと思いますが、無理なら後でお答えください。

塩崎国務大臣 全く聞いていなかったので、答えることは難しいです。

岡本(充)委員 均衡待遇を求めるという話の中で、均衡待遇調停会議というものを利用した調停が可能なのかどうかということ、均衡待遇を求めるというときに、派遣労働者はこの会議を利用することができるのかということについて、今、後ろに事務方、秘書官もしゃべってみえますから、差があるというのであれば、その差の合理的説明が必要じゃないかと言っているわけです。

塩崎国務大臣 三十条の三に、確かに「均衡を考慮した待遇の確保」というのがございますが、今お話しのようなメカニズムについてのお問い合わせについては、ちょっと聞いていなかったので、改めてお答えを用意しておきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 その差に対する合理的説明をきちっと、ほかの法令との差は一体どこにあるのか、要するに、この法律ではこういったメカニズム、今大臣が言われたメカニズムという話、こっちではこうだという話になったときに、その差について合理的にやはりこの場で説明をする必要があると思います。

 そういう意味で私は聞いているわけでありまして、今のパートの話は、確かに、通告していませんので、ここでぎりぎりやる話ではないと思いますので、この後での答弁を待ちたいと思います。

 もう一つ、私、きょう皆さんにお配りをしている資料の中でも指摘をしたいんですが、いわゆる係と課の話ですね。

 これは二十六条の中で定められているんですが、皆さんにお配りをしているペーパーの一番上に載っていると思います。組織単位という言葉は、「労働者の配置の区分であつて、」ここまではわかります。「配置された労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者が当該労働者の業務の配分に関して直接の権限を有するものとして厚生労働省令で定めるものをいう。」

 これを読んでもにわかにわかりづらいんですけれども、逆に言うと、配置された労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者が当該労働者の業務の配分に関して直接の権限を有しないケースがあり得るのか。何でこんなことを規定しなきゃいけないのか、意味がわからない。これは課のことを指しますとか、そういう答弁を聞いているんじゃないんです。こういった権限を有しないものがあり得るのかどうか、何を縛っているのか、これをお答えいただきたいと思います。

山本副大臣 まず、今おっしゃったことにつきまして、ちょっと御説明をさせていただきたいわけですが、組織単位については、労政審の建議において、業務のまとまりがあって、かつ、その長が業務の配分及び労務管理上の指揮監督権限を有する単位とされているわけでございます。

 今おっしゃったことにつきましては、このうち、法律においては、業務のまとまりがあることと、その長が業務配分の指揮監督権限を有することを規定しておりまして、労務管理上の指揮監督権限を有することにつきましては、省令で規定することを今予定しているわけでございます。

 これが入るのか入らないのかという話なんですが、これは、今申し上げたことによりまして、きちんと範囲を明確化させていただくわけでありまして、この法律の規定と省令の規定の限定が相まって、組織単位の規模は課相当という形になっているわけでございます。

岡本(充)委員 労政審の話も承知しています。これを課相当と読もうと思っているのもわかっています。しかし、これでは課相当と読めないんじゃないかということを私は指摘をしたいと思っていてこの話をしているんです。だから言っている。

 今言った、もう繰り返しません、最後のところ、直接の権限を有しない者が存在するのであれば、これは縛る意味がありますが、有しない者がいないのであれば、これは縛る意味がないんです。有しない者がいるのであれば、その人はどういう人を想定しているのか答えてください。これはしっかり通告してあります。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 山本副大臣。

山本副大臣 二十六条の条文を見ていただくとわかるわけですが、もう先生よく御存じのとおりでございますけれども、その中では、「業務の配分に関して直接の権限を有する」と。直接といった場合に、会社の中ではいろいろな役職の方がいらっしゃいますけれども、例えば部長だとかそういった上の方ではなくて、直接権限を有する者が課長ということなので、課単位ということになっております。

岡本(充)委員 であれば、社長や部長、係長はこうした直接の権限を有しない、こういう理解でいいんですか。

 私は有すると思いますよ。部長が来て、こうしなさいと業務の配分を言えると思いますよ。係長が来て、言うことはできると思いますよ。直接言うことができる人はたくさんいると思います。社長であったって、現場に来て、こうしてくださいと言えると思います。それはおかしいです、答弁として。

山本副大臣 今、課相当と申し上げさせていただきましたけれども、もちろん、おっしゃるように、いろいろな形の業態はあると思います。そういう中で、「直接の権限を有するもの」として、その後もう一回縛るんです。「厚生労働省令で定めるもの」という形になっています。

 ですから、そこで、今おっしゃったようなことも検討しながら、どっちにしても、この法律を通した後の労政審の中でそこのところもしっかりと議論させていただきたいと思っております。

岡本(充)委員 これは課相当の担保にならないんですよ、この話だと。大臣、先ほどから、前回かな、課だとか係だとかいう話もされたと思いますけれども、これは全然縛っていないんですよ。だから、労働者の配置の区分であって、厚生労働省令で定めるもの、こう書けばいいのに、わざわざこう書いているのは、何かを省こうと思っているんです。何かを排除しようとしている。排除できるものないじゃないですか。何を排除しようとしているんですか。

山本副大臣 法律上、ここで課と素直に書ければ一番いいんですけれども、そういうわけにはいかないので、こういうちょっとまどろっこしい言い方になっています。

 もともと、係であったとしても、事業ごとの同一の業務で最小の単位という形で、係という名前は出てきていなかったわけでございまして、ここのところにつきましては、我々としては、きちんと、ここの「直接の権限を有するものとして厚生労働省令で定めるもの」というものを、課相当ということをこの国会の場で申し上げさせていただいているわけでございまして、そこのところでしっかりと御認識をいただきたいと思います。

岡本(充)委員 だから、私が言いたいのは、答弁ではそう言っているけれども、わざわざ条文で書いてあることが課相当と読めないものを、これを課と読んでくれと言っていることに私は無理があると言っているわけです。

 課相当だというのであれば、何をこれは排除されているのか。ここの上段のところで、排除できているものが何かあるのなら具体的例示をしてもらいたい。排除できているものがあるのかないのか、そこだけを答えてください。

山本副大臣 法律を作成する過程におきましては、社長だとか部長といったものは、先ほど先生はそういうこともあるかもしれないとおっしゃいましたけれども、ここの部分については入らないということを認識しております。

岡本(充)委員 直接の権限がないということはあり得ないんですよ。やはり直接の権限はあるんです。だから、この条文の立て方はやはりおかしいと思いますよ。そういう意味で、私は、きちっと、本当に課相当だというのであれば、課相当だと読めるような書き方をするべきだと。これでは、今の話で、係長だって入りますよ。係長だって直接の指揮命令をすることはできる、当然。

 したがって、それぞれきちっと定義をするなら、新しく出てきたんですよ、この組織単位という言葉は。ほかの法令で探したけれども、組織単位という言葉はなかった。したがって、新しく出てきた定義なんですから、きちっとこれは定義する必要があるんじゃないかということをお話ししているわけでありまして、そういう意味で、これは係長と読めない理由がわからない。

 では、お答えください。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 山本副大臣。

山本副大臣 先ほど来よりお話があります、労政審におきまして、ここの個人単位の期間制限につきましては、今の係という単位が、先ほど申し上げました、係という言葉は出てきませんけれども、そういった同一業務をやる上での最小単位というものが狭い、そこのところをさらに広くしようという形で、明示的には書いてございませんけれども、労政審の「就業先を替わることによる派遣労働者のキャリアアップの契機を確保する観点から、業務のまとまりがあり、かつ、その長が業務の配分及び労務管理上の指揮監督権限を有する単位として派遣契約上明確にしたものとすることが適当である。」ということを受けて、我々としては、従来のものより広いものにするということをしっかりと書くために、今回、課相当と言っているわけでありますから、ここに係というものが入るものではない、そういったものではない、従来と同じものではないという認識で提出をさせていただいているところであります。

岡本(充)委員 法律の条文にちゃんと、どういうふうに書き込むかというのは非常に重要なので、これでよく課相当という話になるなと私は思うわけで、書き方は、それこそ法制局と整理をして書かれればいい話ですよ。ただし、これでは、厳密に読んだ場合、大臣、やはりこれは課相当と読めない。恣意的に読む人が出てきてもおかしくない。もっときちっと定めなきゃならない。肝だから、ここも。

 だから、やはり書き方として、いや、最後は厚生労働省に投げているんだから任せてちょうだいという話ではなくて、ここは、最初にお話をしているように、もっと簡単に書けばよかったんですね、それは。だけれども、あえてこういうふうな書きぶりをしてしまった以上は、これは何を排除しているのかわからないという私の指摘に対して、これまでのところ答えていないと思いますよ。

 そういう意味で、この部分を、何を排除しているのか、きちっと条文に基づいて明示をされたいと思います。

 答えられないようですので、委員長、理事会で提出を求めてください。

渡辺委員長 理事会で協議をいたします。

岡本(充)委員 はい。

 続いて、現行法の三十条の条文に基づくさまざまな措置、有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等について、一、二、三あるわけでありますが、それぞれの成果について、どのようなものなのか、厚生労働省が取りまとめるものではないとしていますが、これはしっかり取りまとめるべきだと思いますので、ぜひ、どういった実績があるか御紹介をいただきたいと思います。

 大臣、いかがですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 現行法の三十条の努力義務の実績はどうなのかという御質問だというふうに理解をしましたが、実績につきましては把握をしていないというのがお答えでございます。

岡本(充)委員 したがって、これは、どういうふうに雇用安定措置が機能するか把握もしていないけれども今回法改正するという話はおかしいですよ。だから、どういう事例があるのか、ぜひ、委員長、これは取りまとめをしていただきたい、厚生労働省に取りまとめの依頼をしてもらいたいというのが一つ。

 そして、最後にもう一つ、マージン率の資料もつけています。前回も質問しました。

 マージン率が極めて高い社がいる、どういった実態のマージン率なのか、これも調査をするべきだと思います。きのうの段階でトップテンのリストはお出ししておりませんという返事がけさ方来ましたけれども、お出しをしていませんじゃなくて、どういうようなピンはねをしているのか、これをやはり明示する必要がある。

 したがって、この実績についてもあわせて、大臣、両方の資料、多少時間はかかるかもしれないけれども、出す、調べるということでよろしいですか。

塩崎国務大臣 企業名は当然のことながら出せませんが、高いマージン率の社について、どんなふうになっているのかということは、お調べをしたいというふうに思います。(岡本(充)委員「三十条の件も」と呼ぶ)三十条の努力義務ですか。(岡本(充)委員「実績」と呼ぶ)

 把握できる範囲内で努力をしたいと思います。

岡本(充)委員 では、これについて、理事会でもぜひお取り計らいのほど、委員長、お願いします。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

岡本(充)委員 以上で質問を終わります。

渡辺委員長 次に、山井和則君。

山井委員 五十分間質問をさせていただきます。

 まず最初に、連日、こういう職権という形で、委員会が不正常に、重要広範議案という重要法案であるにもかかわらず行われますことに強く抗議をしたいと思います。

 きょうの西村議員、岡本議員、阿部議員の質問でも明らかになりましたように、虚偽のペーパー、大量の派遣労働者が失業するという、虚偽というより悪質ですね、悪質な虚偽のペーパーを配った上に、局長は、そのことについて記憶にない、記憶にないと間違った答弁を繰り返し、実物を見せられたら、記憶がよみがえってきましたと。そして、虚偽のペーパーの謝罪で出したペーパーに関しても間違いが発覚した。答弁で間違う、答弁で虚偽を言う、虚偽のペーパーを配る、その修正ペーパーも間違い。

 私たちは、ささいなことで怒っているんじゃないんですよ。法改正をしなかったら大量の派遣失業者が生まれる、このペーパーを見たら普通みんな賛成しますよ、これが本当だったら。これは一番法案の根幹にかかわる虚偽じゃないですか。そういう意味では、本当にこれは前代未聞。法案審議の大前提が壊れている。

 おまけに、その事実を知った塩崎大臣は、これを使うなと言うだけで、全く修正のペーパーも指示もその段階では出していない。使うなと言っても、安倍総理を含め、予算委員会のメンバーから多くの議員に配って、説明は終わっちゃっているわけですよ。そういう意味では、本当に審議に入るわけにはいかないということを改めて申し上げたいと思います。

 この一〇・一ペーパーについては後ほどまた議論をしますが、先ほど坂口部長が、派遣労働者を正社員として求人することに関して重要な答弁をされました。その答弁は非常に重要だと思いますので、ちょっと確認をさせていただきたいんですね。

 どういう答弁をされたかということを、ちょっと私もメモしましたので、読み上げます。

 きょう配付しておりますペーパーの、具体的に言いますと、今までから私が質問で取り上げております某人材派遣会社が正社員として派遣労働者を求人しているということであります。それについて、派遣労働者を正社員として求人していいんですかという議論も先ほどございました。これは、誰が考えてもわかるように、根本的な問題ですよね。

 求人というのは一番重要です。若者が人生をかけて求職する。そのときに、例えば私の知り合いの大学生は、とにかく正社員になりたいと。とにかく正社員になりたいということを言っています。そういう意味では、派遣労働者を正社員として求人して許されるのかどうかというのは、これは若者の人生にかかわる非常に重要なことであるということは誰もが御納得されると思います。

 それで、具体的に坂口部長はこう答弁されましたね。具体的にどのようなケースが誤解を生じるようなものと認められるかについては、二つおっしゃっています。

 一つ、正社員としておきながら、労働契約の期間が有期であること。有期であったら正社員はおかしいんじゃないかということを一番目に答弁されています。

 二番目、本社の正社員として募集しておきながら、実際の就業場所を派遣先としていること。繰り返します。本社の正社員として募集しておきながら、実際の就業場所を派遣先としていること。

 多分、この二つを聞いても、皆さんもわかったような、わかっていないようなというふうだと思われますので、確認をします、塩崎大臣。ということは、正社員としておきながら有期であるというのは、正社員として求人を出してはならないということでよろしいですか。

塩崎国務大臣 これは何度も御説明申し上げてきて、わかってお聞きになっているんだろうと思いますが、労働関係法令の上では、正社員という確立した定義は存在をいたしません。ですから、余り、この正社員という言葉を使っていることで、細かい議論はなかなか難しいということだと思います。

 常用型の派遣の方の中には派遣会社に無期雇用されている方もおって、このような方については正社員という呼称が使われている場合も世の中にはあるということだと思います。

 したがって、今お尋ねのように、有期で正社員ということはなかなか考えられないことだというふうに思います。

山井委員 ということは、常用型派遣であれ、有期、一年契約とか二年契約とか、有期の派遣を求人で正社員と書くことは適切でないということでよろしいですか。

塩崎国務大臣 これも何度もお答えをしておりますけれども、誤解を招くので、やめていただきたいと思っております。

山井委員 ということは、残るは派遣の無期ですね。今、有期の派遣は正社員として求人を出すのはだめだという明確な答弁が出ました。残るは無期です。

 では、無期の派遣労働者を正社員として求人するのはオーケーですか、だめですか。

 配付資料二十二ページ、職業安定法四十二条、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書については、「当該募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければならない。」

 無期の派遣労働者を正社員として求人をすることはオーケーですか、だめですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 今お配りをいただいた職業安定法で、「労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等」ということで、これは、働く方の募集を行う場合というのは、労働契約の期間とか労働時間とかそれから就業場所などの労働条件を明示しなければならないので、これによって一般的に雇用形態が判断をされるということですね。

 今申し上げたように、労働関係法令の中では正社員という確立した定義は存在をしないものですから、ですから、今いろいろ先生はおっしゃっていますけれども、もともと正社員というものはファジーな概念なので、そう言っていいのか悪いのかというときには、極めてファジーなことが起きるんだろうと思うんですね。

 常用型派遣の方の中には、さっき申し上げたように、派遣会社に無期雇用をされている方もおって、このような方について、お互いに、あの方は正社員と言うのは私も何度も聞いたことがあるわけですけれども、いや、あれは派遣だろうと私は思いましたが、そういうことを呼ぶ、使う方も中にはおられるということだというふうに思います。

 したがって、先ほど申し上げたように、今の、労働条件を明示しなければならないというこの職安法の求めに照らしてみると、有期で正社員というのはやはりこれは違うだろうなということでありまして、あと、無期がどうなのかという今のお尋ねですけれども、それは、人によってはそういうことを言う人もいるということだというふうに思います。

 いずれにしても、職安法によって、働く方の募集を行うサイドが雇用形態を明示する場合には、応募者に誤解が生じないように努めてもらわなければならないというふうに思います。

山井委員 いや、誤解は生じるんですよ。

 今、大臣、否定されませんでしたね。無期の派遣労働者を正社員として求人するということをだめだとおっしゃいませんでしたね。

 改めて確認しますよ。

 もし大臣がそういう答弁であれば、今後、派遣会社の無期雇用の派遣労働者の求人広告は、全部これは正社員ということになりますからね。これはハローワークもそうなりますからね。ハローワークで正社員ということで就職したら、働くのは派遣労働者の派遣先、無期であればそれでオーケーということです。

 ちなみに、二十一ページの配付資料では、厚生労働省の今までの見解では、ここは正社員ではなく正規労働者ということですが、正規労働者の定義は、直接雇用、そして、派遣労働者として雇用されている者でないことというのを正規雇用の定義として、助成金の定義としています。

 改めてお伺いします。

 ということは、塩崎大臣、派遣先で働く派遣労働者が派遣会社と無期契約であった場合は、正社員として募集、求人広告をしてもよいということですか。

塩崎国務大臣 そういう会社があり得るということは、やはりあると思います。

山井委員 塩崎大臣、大丈夫ですか、そういう答弁をして。無期の派遣労働者は正社員として求人をして本当にいいんですか。

 誤解を招くと私は思いますよ。誤解を招きますよ、どう考えたって。学生が正社員になりたいというのは、言いかえれば、直接雇用されたいということと基本的に同義であって、派遣よりも正社員がいいと思っているわけですから。

 それを、塩崎大臣、無期の派遣労働者を正社員と呼んでいいということを本当に答弁、決定づけられるならば、国会の中で何度も正社員をふやすと言っているけれども、その中には当然、無期雇用の派遣労働者をふやしても正社員はふえることに自動的になるわけですから、それはこの法案審議の前提が崩れるんじゃないんですか。

 塩崎大臣、確認しますが、無期雇用契約の派遣労働者であれば正社員と求人してもいい、かつ、ハローワークでもそういうふうに求人してもよいということでよいですか。

塩崎国務大臣 お詳しい山井先生ですから、わかった上で御質問されているんだろうというふうに思いますが、何度も申し上げますけれども、労働関係法令上、正社員という確立した定義は存在をいたしておりません。あくまでも、今お話があったように、ハローワークでどうなのかと。我々は、何度も、ハローワークで派遣を正社員としてやるようなことはないし、そういうことを我々は政府の政策としても推しているわけでは全くないということは明確にしてきたところでございます。

 今お配りをいただいている、これはキャリアアップの助成金などにも当てはまるわけでございますので、ここに書いてあることでございますが、これは、ですから、当然ハローワークがかむわけですね。ハローワークで、先生おっしゃるように、無期雇用であろうとも、派遣を正社員と呼んで募集をすることを認めることはないということでございます。

 御指摘の助成金における取り扱いというのは、キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、パート労働者といった非正規雇用で働く方々のキャリアアップを促進することを目的として、正規雇用転換などの取り組みを実施した事業主に対して助成を行う制度でございます。これも御存じのとおりだと思いますが、その助成に当たっては、制度の目的に即した助成を行うために、助成対象を明確にする観点から、本助成における正規雇用労働者がどういう方を対象にしているかを説明したものでございまして、今ここにございますけれども、労働関係法令一般における正社員について定義をしたものではないということでございます。

山井委員 それは完全にダブルスタンダードじゃないですか。ハローワークでは定義しているじゃないですか。正社員は派遣労働者であったらだめだ、無期でもだめだと今定義をおっしゃったじゃないですか。ハローワークではだめだと。

 ということは、先ほど大臣は、ハローワークでは無期の派遣労働者は正社員と呼んではならないと。ところが、一般の求人広告ではそこはオーケーということになりますが、確認ですが、それでいいということですか。つまり、ハローワークと一般の求人広告では、そこは政府の見解は違うということですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、正社員という定義は労働関係法令上存在をしていません。

 今申し上げたように、ハローワークで、有期雇用を正社員とか、派遣を正社員と言うことはやっていません。それは、厚生労働省としての政策として、そういうものを正社員とは呼んでいないというのが厚生労働省の解釈であって、申し上げているように、確たる定義がない中にあって我々はそう思っているということでありますし、政策的に誘導したいのも、さっき申し上げたとおり、きちっとした正規雇用ということで転換した場合にキャリアアップ助成金をお支払いするということにしているわけでございます。

 一方で、世の中では、これは山井先生、世の中の方々がどういうふうに言っておられるかとか会話で使っているかとかいうことまで対応するわけにもいきませんから、いろいろな使い方があるのは、これは正社員の定義がないという中で起きてくることでございます。

 したがって、それはいろいろな言い方があって、ですから、皆さん方も派遣の方々とよくお話をしているということでございますけれども、さっき申し上げたように、あの人は正社員だと言う派遣の方がおられるので、どういうことかなと思っていましたが、それは、無期雇用の方は正社員と呼ぶときがどうもあるようだということは私も知っているところでございまして、それがいいとか悪いとかいうことを言ってみても余り意味がないというふうに思います。

山井委員 塩崎大臣、これは学生、若者の人生にかかわる話ですよ。私は、どう考えても誤解を招くと思いますよ。厚生労働省の解釈で、ハローワークではそうはしていないと。でも、一般の求人広告で無期の派遣労働者を正社員と求人するのは別に構わない。それはやはり問題じゃないですか。これは問題。

 でも、今回の法改正で無期の派遣をふやそうとしているんでしょう。この法改正のまさに肝の話ですよ。ということは、この法改正の大きな目的は、無期の派遣労働者を正社員と呼ぶ、そういう社会をつくっていくということになってきますよ。

 ということは、塩崎大臣、今後、求人広告で、派遣先で働く無期の派遣労働者が正社員ということで求人をされるということは、職業安定法四十二条に違反しないということなんですね。大臣。

塩崎国務大臣 私はもう何度も言っていますけれども、一度も、いいとか悪いとかなんとか言っているわけじゃございません。定義が、そもそも正社員については、ない。一方で、無期雇用の派遣の人を正社員と呼んでいる人たちもいたりするということを言っている。

 しかし、我々はスタンスは明確であって、派遣の方々を正社員と呼ぶような雇用の求人は、我々にとっては、ハローワークではとてもじゃないけれども使えませんということを申し上げ、また、我々は、派遣ではない、きちっとした正規雇用の方々をふやそうということで、今回の派遣法においても、キャリアアップを図るなどの教育訓練を義務づけて、許可要件としても、このシステムがなかったら派遣元として許可はしませんよということを初めて全てにわたってやるということを今回御提起を申し上げた。

 むしろ、今回の法改正は、派遣で働く方たちの権利を守る、そして多様化はもちろん図る、キャリアアップそして教育訓練によって自分の処遇をよくする、あるいは正社員になりたい方々にはそのチャンスをより多く与えるということをやろうという法律でございますので、御理解を賜りたいと思います。

山井委員 いや、だめだとかだめでないとか言っていないじゃなくて、委員会というのはそれをはっきりさせる場なんですよ。

 若者のために、これから就職する若者が、正社員だと思って入ったら派遣労働者だった。やはり誤解する人はいますよ。

 例えば、正社員だと思って入ったら一カ月給料が出なかった、なぜなら派遣先が一カ月決まらなかったからという、そういうトラブルも既に起こっています。入って一カ月給料が出ないのに正社員というのはおかしいと思いませんか。それを正社員と求人しているわけですよ。それはやはりおかしいじゃないですか。そういうトラブルが起こっているんです。

 だから、塩崎大臣、ここは職業安定法四十二条に違反するのか違反しないのか、はっきりしてもらわないと、そういう求人広告はふえるんです。だめと言わない限りふえるんです。だめと言わないということはオーケーということですから。

 派遣先で働かれる無期の派遣労働者、その方を正社員として求人広告に入れる、これは職業安定法四十二条に違反しますか、しませんか。イエスかノーかでお答えください。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、職安法は、働く方の募集を行う者が雇用形態を明示する場合には応募者に誤解が生じないように努めなければならないとされておって、誤解が生じるようなケースを把握した場合には、我々としては適切に指導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

山井委員 私は、誤解を招くと思います。派遣労働者を正社員として求人するのは誤解を招くと思います。だから質問しているんです。だから、全ての若者、全ての人材派遣会社の方々にわかりやすく答弁してください。

 無期の派遣労働者を正社員として、派遣先で働く派遣労働者を無期の場合に正社員として求人するのは、職業安定法に違反しますか、しませんか。御答弁をください。イエスかノーかで答弁してください。

塩崎国務大臣 それはケース・バイ・ケースであって、今おっしゃったことだけで違反している、していないということを判断することはなかなか難しいと思います。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、誤解を生じないように努めなければならないということでございます。

山井委員 いや、全く理解できません。ケース・バイ・ケースというのはどういう意味ですか。

 では、どういうケースが無期の派遣労働者でも正社員として求人を出してよくて、だめなケースを教えてください。そうしないと、国民にも誰にもわかりません。大臣。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 ケース・バイ・ケースというのは、行ってみて労働契約を結んだら単なる派遣だったというようなことであるかもわかりませんし、いろいろなケースがあり得ると思うんですね。したがって、それはケース・バイ・ケースで判断をせざるを得ない。

 そのことについて、判断は、これはやはりハローワークでちゃんとやっていかなきゃいけない、厚労省でやるということでございます。

山井委員 それは余りにも無責任じゃないですか。

 これから人生の夢を持って安定雇用につきたいという若者に、行ってみたら、労働契約を結んだら派遣だった。でも、そんなことは、全ての若者が私たちみたいに職業安定法を勉強しているわけではありませんよ。ほとんどの人はわかりませんよ。余りにも今の答弁は無責任です。

 四十二条に書いてあるじゃないですか、「平易な表現を用いる」と。平易じゃない。だから、そこは平易に答弁をしてください。イエスなのかノーなのか。大臣、答弁してください。若者や全ての人材派遣業者がわかるように答弁してください。

塩崎国務大臣 募集というのは必ず結果があるわけであって、結果まで見てみないと何が起きるかわからないわけであって、それをきっちりとケース・バイ・ケースでやはり判断していくというのが厚生労働省の所管行政のやるべきことで、この法解釈もそうだということだと思います。

山井委員 これは大変な答弁ですね。

 無期の派遣労働者を求人で正社員に、もしケース・バイ・ケースとおっしゃるなら、ハローワークでもそうされたらいいじゃないですか。

 では聞きますが、ハローワークでもケース・バイ・ケースで、ハローワークでも無期の派遣労働者で正社員と求人を出していいものがあるんですか。(発言する者あり)今、ないと言っている。なぜ、ハローワークでは正社員と呼べないものを、一般の求人で正社員と出していいんですか。何でダブルスタンダードするんですか。まさに若者が誤解するじゃないですか。大臣。

塩崎国務大臣 何度も申し上げておりますが、安倍内閣も、それから厚生労働省もハローワークも、本来の意味での正規雇用というものを推進しようというふうに、まさに皆さんがおっしゃっている形での正社員というものを考えているのであって、ハローワークでそういうことを進めるというのは我々の政策としてやっているわけでございます。

 一方で、民間の方々がどういう言葉遣いをするのかというのは、職安法で、誤解を招かないように努力をしなければいけないということは法律としてちゃんとあるわけで、我々もそれに照らして見なければいけませんが、誤解を生ずるというのは、書いたものの一行だけを取り出して、それで誤解を招くのかどうかだけというわけではないわけであって、結果としてそれが本当に正社員と呼ぶに値するものになっているのかということを我々はしっかりと見なければいけないんだろうというふうに思います。

山井委員 今後議論を深めていきますが、一つだけ、では例を言います。

 正社員として入社した方が、派遣先が見つかるまでに時間がかかりますよね。最初の一カ月、派遣先が見つからないからということで給料が出ない、こういうのは正社員としての求人でもいいんですか、だめなんですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 極端な話ですが、休業手当を払わないというのはそもそも労基法違反ですから、それはいけません。

山井委員 いや、休業手当って、まだ働き出していないんですよ。正社員として派遣会社に無期雇用を派遣労働者としてされて、まず探さないとだめなんですよ。

 そうしたら、今の話だと、正社員として雇った以上は、派遣先が見つかるまでの最初の一カ月も、見つからなかった一カ月も休業手当を払わないとだめだということですか。

渡辺委員長 とめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 民民の契約でありますから、労働契約がどうなっているのかにもよるんでしょうけれども、しかしながら、正社員だと言って、無期雇用だと言って、それで給料を払わないというのは、それはもともと募集広告をした際の言っていることに偽りありというのに等しいような話であって、それはやはり適切な正社員としての扱いではないというふうになるので、そこは、募集をかけているときのやり方というのは職安法に照らしてみると適切ではないんじゃないかという判断があり得ると思うんですけれども、今、先生も多分思いつきでケースをおっしゃっているんだろうと思うので……(山井委員「思いつきじゃありませんよ。実例ですよ」と呼ぶ)

 これは、極端なケースを言ってもなかなかあれですから、さっき申し上げたように、問題は、正社員という定義がないという中でこういう議論をしていることが実に、なかなかかちっとしたものに到達でき得ないかということだろうというふうに思うので、もう少しかちっとしたものが出てくる御議論をぜひお願いしたいというふうに思います。

山井委員 これは、時間に限りがありますから今後もやりますが、私は本当にびっくりしました。ハローワークでは、無期も含め派遣労働者は正社員として、そんなことはだめだと言いながら、一般の求人広告ではそれもオーケーという、こんな……(塩崎国務大臣「オーケーなんて言っていない」と呼ぶ)まあ、びっくりしました。

 やはり、余りにも若者や新卒の方々、若い人たちを本当にないがしろにしていると思います。だめとは明確におっしゃっていませんから、オーケーともおっしゃっていませんが、だめともおっしゃらないということは、オーケーと受け取られても仕方がないということで、非常に残念ですが、私は絶対におかしいと思います。絶対におかしいと思います。派遣労働者を正社員と呼ぶことを厚生労働省が黙認する、容認するということは、絶対おかしいと思います。

 それでは、もう一つの質問に移ります。

 今回、私、おとつい、ある四十歳の女性の方から相談を受けました。専門業務の派遣の方です。

 御存じのように、今、四二%、約五十三万人が専門業務、そして、そのうち約八割は有期です。つまり、約四十万人の方々は今まで期間制限がなかった。ずっと、五年でも十年でも、このまま専門業務で働き続けられる予定であった。ところが、今回の改悪によって、この四十万人は三年後に雇いどめ、解雇される。

 実際、先週金曜日、その女性の方のところにある人材派遣会社の方が来られて、こうおっしゃいました。今回、法改正になれば、九月一日から新しい法律になったら、あなたは三年後に雇いどめ、解雇になりますということを、まだ法律が通っていないのに既にそういう話が起こっています。私は、おとつい、その相談を受けました。

 それで、その女性の方がおっしゃるには、お子さんが二人おられる、せっかく専門型だから、永遠にとは言わないけれども、多少派遣の中でも雇用が安定していると思っていた、ところが、三年後にも雇いどめ、解雇と言われてしまったら、自分はどうしたらいいのと。正社員には、今の会社には今までから派遣先に雇ってくれとお願いしているけれども、雇ってもらえない。さらに、新たな派遣先を紹介してもらえるといっても、自分も三年後には四十三歳になるし、九年間働いているから今の時給であって、恐らく次のところは時給が下がる可能性も大だ。さらに、今回の法改正では、次の派遣先も三年終わればまた雇いどめになってしまう、またその三年で次のところに移らねばならなくなる可能性が大だと。

 この女性の方は、人生設計が立たなくなってしまいます、何で、今まで制限がなかったのに、今回の法改正で自分たちは三年後に雇いどめにならないとだめなんですかということをおっしゃっています。

 塩崎大臣、こういう方が四十万人おられるんです。こういう方は、どういうふうに雇用の安定を図ろうと塩崎大臣は考えておられるんですか。切実ですよ。人生設計も狂ってしまう、頼むからこの法改正はやめてください、子供二人をもう育てられないとおっしゃっておられるんですよ。時給も下がって、保育園から遠いほかの新たな派遣先にでもなったら、人生設計が狂っちゃうと。

 塩崎大臣、こういう方に関しては、今回の法改正でどうしてくださるんですか。

塩崎国務大臣 今回の改正案によりまして、いわゆる二十六業務に該当するか否かにかかわりなく、派遣元で有期雇用される方については期間制限の対象となるわけでありまして、期間制限が派遣で働く方の雇用の機会に悪影響を与えないように、個人単位の期間制限の上限に達する方に対して、派遣元が雇用安定措置を実施することを新たに義務づけるということにしているわけでございます。

 また、労働者派遣事業は現在四分の三が届け出制となっておりますが、改正案では全て許可制というふうにしておりまして、雇用安定措置を講じない派遣元に対しては、都道府県労働局において厳正な指導等を行い、義務の履行をしっかりと確保していくこととしているところでございます。

 政府としては、この雇用安定措置の履行確保を通じて、派遣で働く方の雇用の安定を図ってまいりたいと思っていると同時に、先ほど、無期雇用の方をふやそうとしているという話もありましたが、これまでは、いわゆる期間制限がなかったのは二十六業務の方々でございました。これが三九%あったわけであります。

 しかし、今、期間制限と労働契約とのお話を少し一緒に議論されたと思いますけれども、これまでの二十六業務の方々が、期間制限がなかったからといってずっと長い間の契約になっているかというと、必ずしもそうではなくて、一年ごとの契約更新というのがあったり、それは人によってそれぞれでありまして、そういう意味では、期間制限自体はないけれども、派遣労働者として働けるかどうか、つまり、契約更新が行われるかどうかというのは、これはわからなかったわけですね。

 したがって、毎年の更新というようなことであれば、むしろ不安定な雇用形態としてあったわけで、業務は、確かに、二十六業務の中に入っていれば期間制限自体はありませんけれども、しかし、労働契約としては、一年とか二年の方、あるいは半年かもわからない、そういう人たちがずっと契約更新をしながらやっていると、やはりそれはかなり不安定な働き方ということだというふうに思いますので、私どもとしては、きちっとして、無期雇用で働く方については期間制限もございませんけれども、今回、二十六業務というのを、あえてこれをやめて、事業所単位の期間制限と、それから、これは固定化の防止のためでもありますけれども、個人単位の期間制限を設けるという、二つの期間制限にしたということでございます。

山井委員 塩崎大臣、さらっと雇用安定措置があるとおっしゃいましたが、全く実効性はありません。

 繰り返し言いますが、この方も、ほかの私の知り合いで相談に来られている方も、正社員で直接雇用してくれというのは何度も言っていて断られて、それはもう無理です、言っては悪いけれども。無理です。

 さらに、新たな派遣先を紹介してもらうといっても、今までより悪いところになります、もう四十を超えておられる方はほとんど。悪いところになります。だから、雇用安定ではなく、雇用劣化になるんです。

 もちろん、塩崎大臣がおっしゃったように、では無期雇用というわけかというと、専門二十六業務の人、そうじゃないけれども、少なくともこの重たい事実は、法改正がされるならば、あなたは三年後に雇いどめ、解雇ともう言われちゃっている人が出てきているということなんですよ、これは。

 もうお一方、私の知り合いの方からここにお便りをいただいていますが、部分的に読ませていただきます。

 この方は五十一歳の独身の男性で、今回の法案は、中高年派遣社員の人生を壊す法案だ、大反対だと。

 なぜならば、今まで機械設計の専門業務で、十六年間勤務している。十六年間、派遣ながらも専門業務で勤務している。しかし、今回の法改正になると、三年後に雇いどめ、解雇になる。でも、この方はおっしゃっているんですね。専門業務というのはますます、次の派遣先を紹介しますというほど、ころころと似たような仕事はないとおっしゃるんです。

 それで、派遣先に正規雇用してもらうということに関しては、こう手紙に書いてあります。派遣先からは既に、私の年齢五十一歳と学歴では無理と言われています。二番目、派遣元に期間の定めのない雇用に切りかえてもらう、このことについても、この男性の方は、派遣元に聞いたら、派遣元からは私の年齢では難しいと言われていますと。

 いずれにせよ、仕事があるにもかかわらず、強制的に問答無用で首になるということです。十七年間なれ親しんだ職場なのにということなんですね。この方は、結婚もしたかったけれども、もうこれで結婚の夢も諦めざるを得ないだろうということをおっしゃっておられます。

 これは、はっきり言って、二十代、三十代の方だったら、ではほかの派遣先を紹介しましょうとか、派遣元が無期雇用しましょうという可能性はまだ高いかもしれません。でも、派遣というのは、三十五歳定年説ということも言われたりするように、四十、五十になると派遣先は見つかりにくくなります。

 さらに深刻な問題は、四十代、五十代の専門業務の派遣の方は、派遣先や派遣元の中には、もう十年、十五年だけれども、そろそろ切りたい、切りたいけれども、やはりちょっと切るのはかわいそうだなというふうなことがあったりするんですね。ところが、今回の法改正で、三年、全て期間制限を設けると、これを機会として、四十代、五十代の、例えばパソコンだったら女性の方が、まさにおとつい私が御相談に乗った方のように、解雇、雇いどめになってしまうんですね。

 これは本当に、塩崎大臣、もう一回お聞きしたいんですけれども、二人のお子さんを抱えて、四十歳の方が、九年間いい職場で働いておられた。それで、それなりに人生設計を立てておられた。それでも正社員は無理ですよと言われている。それで、その方本人が言うように、新しい職場と言われても、三年後は四十三歳だから、よりいい職場、あるいは同じ待遇の職場も恐らく探すのは難しいだろうと御本人はおっしゃっておられます。もっと言えば、三年後に雇いどめ、解雇と言われたから、今の職場でも働くモチベーションも落ちてきています、あしたからでももう次の職場探しをしないと、子供二人を育てながらやっていけませんと不安に思っておられるんですね。

 塩崎大臣、やはりこの法案は問題があるんじゃないですか。

 そして、あえて言うならば、配付資料にありますように、十一ページ、労政審でもこれは問題になっているんですよね。

 だから、労働側は、専門業務の廃止には反対と言っているんです。実は経営側も、二十六業務全て廃止することは慎重にと。経営側もですよ。おまけに経営側からは、二十六業務で期間制限を受けない派遣労働者の雇用に大きな影響を及ぼす可能性もあり、二十六業務の廃止は求めないと。今言った期間制限のない専門職の人が失業しちゃうから、廃止はやめてくれと労政審で経営側も言っていたわけなんですよね。

 一方では、人材派遣業界からの田村大臣への要望書では、人材派遣協会は、専門業種をなくしてくれという要望書を出しているわけです。

 これは、塩崎大臣、このまま法案を強行することになったら、本当にこの四十万人の特定派遣の方々、一歩間違うと路頭に迷われかねませんよ。例えば五十歳代の専門業務の派遣の方なんか、私も昨日話を聞きましたが、もう多分日雇いぐらいしか、この年だったら新しい職場といっても見つからないんじゃないかとおっしゃっていました。

 そういう意味では、この法案はさまざまな問題点がありますが、一番まず直撃するのは、この法改正が成立をしたら、あるいはしなくても、三年後にもうあなたは雇いどめという話が人材派遣会社から行っている。塩崎大臣、この法案が成立したら、この四十万人の有期の専門業務の方々の雇用が不安定になると私は思います。

 それでは、雇用安定措置とおっしゃいますが、もし二年間であれば、雇用安定化措置は義務なんですか。きょうの配付資料にもありますように、十二ページ、三年ぴったり働いたら雇用安定化措置は義務になっています。その雇用安定化措置もいいかげんですよ、今言ったように全く実効性ないけれども、でも、もしこの方が二年だったら、雇用安定化措置は努力義務だから、今言った実効性のない雇用安定化措置すら、二年だったら講じなくてもいいんですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、労政審で議論を重ねてきて、なおかつ、法案をつくるに当たって、厚労省の中でもいろいろな方々から御意見を聞いて今回の法律をつくらせていただいているわけでございまして、二十六業務についてもいろいろな考え方があって、今の山井先生のお話を聞いていると、一生派遣を勧められているようにすら聞こえるような感じですよね。

 ですから、さっき申し上げたように、期間制限だけではなくて、その人が雇用契約を結ぶ、この労働契約自体がどうなのかというと、これは無期じゃない方がたくさんおられて、たしか二十六業務のうちの八割以上だったかな、が有期ですから、いつも更新していないといけない人たちがテレビのスタジオとかいろいろなところで働いているわけですね。そういう人たちは、絶えず契約について更改がされるのかなという懸念を持ちながらおられるんだと思います。

 したがって、今の、三年で打ち切りだというような単純なことをおっしゃいますが、先生お配りの十一ページの資料を見ても、二十六業務についてはいろいろな考え方がおありだと思います。例えば上から四つ目の方は、二十六業務の維持は困難だということでもありますし、要するに、二十六業務も、随分時代が変わって、やはりこれはちょっと考え方を変えた方がいいんじゃないかというお考えだというふうに思います。

 そこで、我々は今回、さまざまな規制強化をして働く人たちの権利を守り、そしてキャリアアップができるように、そして希望される方には正社員になりやすくするようにさまざまな手だてを設けているわけであって、そのうちの一つが今御指摘の雇用安定措置で、これまでは……(山井委員「ちょっと、質問していることに答えてください。質問を終われませんよ、全く答えないんだったら」と呼ぶ)

渡辺委員長 委員長の許可を得てから発言してください。

塩崎国務大臣 雇用安定措置の御質問じゃないんですか。(山井委員「いやいや、だから、二年の場合はどうなるんですかという質問をしているんですから」と呼ぶ)

渡辺委員長 答弁中ですから。

塩崎国務大臣 二年の場合は努力義務だということでございます。

山井委員 もう一回答えてください。

 だから、努力義務になっているから、では講じなくても罰則はないんですねということを聞いているんじゃないですか。

山本副大臣 罰則はございません。

山井委員 なら、結局それではだめなんじゃないですか。今言っている、実効性がほとんど全くない雇用安定化措置すら義務にもならないじゃないですか。

 今言ったような、三年後に雇いどめになるというふうに通告された方は、三年後に雇いどめになるんだったらもう次の仕事を探さないとだめだと思っていられるわけです。

 では、今回の雇用安定化措置、いつ直接雇用の依頼をしてくださるんですか。いつやってくださるんですか。

渡辺委員長 山井君に申し上げます。申し合わせの時間が過ぎておりますので、質疑はこれで終了させてください。(山井委員「でも、関係ないことを答弁されたから、それは答弁してくださいよ」と呼ぶ)

 山本副大臣、簡潔にお願いします。

山本副大臣 雇用安定措置は、派遣契約が終了する前には必ず実施しなくてはならないという形になっております。

山井委員 これで終わりますが、最後に聞きますが、私が聞いたのは……

渡辺委員長 終わりにしてください。

山井委員 雇用契約の前じゃないんです、塩崎大臣。三年後に雇いどめと言われたから、そうしたら、今から、一年以内でも雇用安定化措置というものは、直接雇用の依頼はしてもらうことはできるんですか。

 というのは、直前に直接雇用の依頼をされても、それまでに違う仕事をもう探さなければならなくなるんです。一年以内でも、直接雇用の依頼は望めばしてもらえるんですか。

渡辺委員長 質問の時間は終了しております。(山井委員「でも、先ほど関係ないことを答弁したからじゃないですか」と呼ぶ)終了しております。(山井委員「答弁してください、それを。最後に」と呼ぶ)

 では、大臣、簡潔に答弁をお願いします。

山井委員 もう一回、終わらせるために言いますが、私が言っているのは、三年後に雇いどめと言われたから、もう次の仕事を探そうとされているわけです。だから、もし直接雇用してもらえるんだったら早く言ってもらわないとだめなんですよ。三年の直前に直接雇用しますと言われたって、もうほかの仕事先を見つけないと、子供のお世話があるから困るんですよ。

 だから、三年の直前じゃなくて、勤め始めて一年後に直接雇用の依頼をしてもらうことはできるんですか。

渡辺委員長 塩崎厚生労働大臣、簡潔にお願いいたします。

塩崎国務大臣 手前で聞くことも可能であります。

山井委員 これで終わりますが、手前で聞くことというのは、全く今の答弁は、どこにも法案にも書いてありませんし、本当ですか。

 今後やりますが、本当に手前で。今の答弁録、見ますよ。では、一年で直接雇用の依頼をしてもらうことは可能ということは、努力義務という法文に反しますからね。

渡辺委員長 山井君、もう時間が過ぎております。終了してください。

山井委員 こういうふうに、本当にこの法案は全然詰まっていないし、さっきの正社員の答弁にしても、一〇・一ペーパーの答弁にしても、審議の前提が整っていないので、まず一〇・一問題等の集中審議を行っていただいて、その後での法案審議にしていただきたいと思います。

 以上で終わります。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。牧義夫君。

牧委員 午前中の質疑に引き続いて質問させていただきたいと思いますが、午前中、最後は山井さんでございました。なぜか私の質問の前は山井さんということが多いんですけれども、静ひつな環境のもとで議論を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 いよいよ、この労働者派遣法、委員会における審議が始まったわけであります。この法案は、私は、情緒的に、あるいはイデオロギー的な、ましてや政治的な駆け引きに扱うべきものではないというふうに思っております。でき得る限り、就労の現場に思いをいたす中で、法律そのものというよりも、むしろ法律の抜け道を悪用されないこと、あるいは、そのことによって派遣労働者が実際の不利益をこうむらないように、この審議を通じて、答弁をいただくことによって労働者の利益を担保していきたい。

 派遣が悪で直接雇用が善であるかのような、こんなステレオタイプの議論からは脱却をして、きちっとした議論を進めていきたいと思いますが、大臣はうなずいておられますけれども、ただ、さはさりながら、では、この法案が本当に完璧なものかどうなのか、いささか疑問というか心配があるからこそ私は今そういうことを申し上げて、その穴をしっかり答弁でもって埋めていただきたい、そういう気持ちでありますので、ぜひともよろしくおつき合いのほどをお願い申し上げます。

 さっき、私、ほかの委員会と出入りをしておりまして、山井委員の質問を一部しか聞けなかったんですけれども、一部聞いたところで、ひょっとしてちょっと何か質問がかぶるのかなと思いましたが、よく聞いてみると全然真逆でありました。

 ただ、誤解のないように申し上げれば、考え方が真逆ということじゃなくて、質問をした内容について、ちょっと質問の角度が違ったのかなという意味で真逆と言ったわけであって、全然、山井さんの考えには共鳴するところはたくさんありますので、誤解のないようにお願いしたいと思います。

 だから、さっきもちょっと山井さんも質問していましたけれども、やはり言葉の定義というものをしっかり定めた上で議論をしないと議論がかみ合わない部分もありますから、そこだけはしっかりと確認をさせていただきたいと思います。

 さっきの大臣の答弁で、正社員という言葉はそもそも法律用語じゃないというお話がありました。そうだと思います。ですからこそ、世間一般に正社員という理解があるのは一体どういう人たちなのかということを、やはりきちっと共通の認識のもとで議論をしていかなければいけないと思うんですね。

 そこで、改めて確認をしたいと思います。

 およそ働き方にはさまざまな働き方があるわけで、派遣か直接雇用かという分類もあります。短時間なのかフルタイムなのかという話もあります。有期なのか無期なのか、そういう話もあります。あるいは、正規雇用なのか非正規なのか、こういう分け方もあると思うんですけれども、これらの言葉の定義について、まず、議論の前提としてしっかりここで確認をさせていただきたいと思うんです。

 正規雇用、非正規雇用の違い、派遣とあるいは直接雇用との違いについて、事務方からで結構ですけれども、簡単に定義をしていただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの御審議の後なので、ちょっと私も法令上のということをまず申し上げさせていただきたいと思います。

 労働関係法令上の正社員等の定義ということにつきましては、先ほども午前中、大臣からも御答弁をさせていただきましたように、労働関係法令上、正社員という確立した定義は存在しない。これにつきましては、労働関係法令上、非正社員という確立した定義も存在しないということがまず基本でございます。

 その上で、先ほども、ハローワークあるいは助成金の取り扱い云々ということもいろいろ出ていたように、一般的には確かに、正社員ということであれば契約期間の定めがないフルタイムあるいは直接雇用等々というようなことが基本のベースの考え方になっているということは事実であろうかと思いますが、これも午前中、大臣が御答弁をさせていただいたとおり、例えば派遣会社の中でも、実際に雇用している大手の例えば技術者派遣の会社とかで、もうほとんどそういった方々が、無期雇用派遣だけれども、御自分たちも含めてそういった考え方で正社員という呼称が使われている場合とかというのは、それはケースでいろいろあるだろうというようなことかと思います。

 それから、非正社員ということにつきましても労働関係法令上の確立した定義がないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、一般的には、いわゆるパートタイム労働者であったりアルバイトであったり、有期契約労働者、嘱託、派遣労働者というような、個別の名称ということではいろいろな名称で呼ばれている方々が、一般的にはよく使われるということかと思います。

 それと、あともう一点は……(牧委員「正規、非正規」と呼ぶ)正規、非正規が今の点でございまして、派遣と直接雇用というお尋ねだったかと思います。

 派遣労働者は、今回、改正法案の派遣法にありますように、いわゆる派遣元である派遣会社と労働者が雇用関係にある中で、派遣会社と今度派遣契約という契約関係にある派遣先が、派遣会社の雇用労働者たる派遣労働者に対して指揮命令を有する関係ということで、そういった関係について派遣法でいろいろな規定を置いているということでございまして、その中では、いわゆる使用者と労働者の一対一の関係のところに派遣先が介在するということでございます。

牧委員 済みません、ついでなんですが、今ちょっと思い出したものですから。通告にありませんけれども、最近、限定正社員という言葉がありますけれども、これは法律用語ですか。

坂口政府参考人 限定正社員という言葉も、実は、全体として多様な働き方を、これは双方のニーズ、労働者の方も、御自分のワーク・ライフ・バランスその他いろいろな事情からいろいろな働き方を望まれるというようなこともあるので、多様な働き方ということについてもいろいろ柔軟に企業との関係も含めて進めていただくというようなことで、いわゆる限定正社員というのもその中に、もともと短時間正社員という言葉もあったんですけれども、それとは別に、今委員が御指摘の限定正社員というと、例えば勤務地を限定する正社員、勤務地だけは限定されているけれども、あと残りは同じような処遇を受ける、それからあとは職務を限定した正社員というようなことを、多様な働き方の態様の一つというような類型で……(牧委員「法律用語かそうじゃないか」と呼ぶ)済みません、申しわけございません。

 冒頭申し上げませんでしたが、それは法律的な定義はございません。

牧委員 わかりました。

 なぜこういうところにこだわるかというと、先ほどの山井さんの話ではありませんけれども、正社員という言葉が世間的にはどういうふうに理解されているかという、その辺のところはやはりきちっと踏まえておかなければいけないなと思うんですよね。

 ですから、今回の法改正で、例えば労働契約の申し込みという言葉がありますけれども、この労働契約の申し込みというのは、ひょっとすると、若い人たちから聞くと、直接雇用ということだけじゃなくて、そこのその他の正社員の方たちと同じような処遇を受けて、同じような福利厚生等々を受けられるというように普通認識されてしまうんじゃないかという懸念があるんですけれども、大臣、そう思われませんか。

塩崎国務大臣 誤解される可能性はあると思います。

牧委員 私は、今回の問題点は実はこの辺にあるんじゃないかと思うんですね。ですから、最初に申し上げたように、直接雇用が善で派遣が悪である、そういうステレオタイプから脱却をして、必ずしも、直接雇用されたらそれがハッピーエンドだという考え方は私は捨てるべきだと思います。

 先ほど来ずっと議論を聞いておりますと、何かそういうステレオタイプの議論に終わってしまいそうなので、あえて別の角度から、私はこういう質問をさせていただきたいと思うんです。

 派遣元の企業が実は非常に優良企業で、社員の福利厚生もきちっとしている、そういった無期雇用の優良企業の派遣元から、ともすると、大企業ではあるけれどもブラックの派遣先に直接雇用されたといって喜んでいて、ぬか喜びしていたら大間違いだったというようなことが実はこれから起こるんじゃないかという強い懸念を私は持っております。

 今回の改正の趣旨は、派遣労働者のキャリアアップだとか、あるいは直接雇用の推進とありますけれども、本当にこのことでいいんでしょうか。派遣元でしっかりと社員教育をしてスキルアップをしている会社もあるんです。そういうところを潰してしまっては、まさに角を矯めて牛を殺す話になってしまうと思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂口政府参考人 今委員御指摘のように、今回の派遣法の改正では、派遣業というものの健全化を図るということで、許可制に統一するということと同時に、今委員御指摘のような形に、派遣労働者の方のための、均衡待遇の確保であったりキャリア形成の支援というような形の強化を行うということでございまして、中身的には、まさにそういった派遣労働者の処遇保護ということをどう図っていくかということでございますけれども、そういった責任を今回派遣会社に義務としてお願いするということでございまして、そういった取り組みをしっかりやっていただける派遣会社にしっかり派遣労働者の保護を図っていただこうという考え方でございます。

 その上で、そういったことを担保するために、許可制ということで、そういった取り組みを派遣会社の方にもしっかりお願いをしたいということでございます。

牧委員 私が申し上げたのは優良な派遣元の事業者のお話をしているのであって、こういうところは、自分のところで社員のスキルアップも図り、派遣先からもし切られたときに、これはずっと抱えているわけですね。抱え切れなくなったらどうなるかというと、その会社が潰れるんです。もうそれしかないんですね。

 だから、今回、派遣契約が切れても解雇してはならないということを許可条件に記載するとありますけれども、そもそもそんなことをする前に、そのつもりは十分ありながら、結果として企業が倒産の憂き目に遭うというような懸念があると思うんです。

 ですから、例えば、キャリアアップだとかあるいは雇用を継続するということを指導しなくても、そんな心配のない優良な派遣元事業主への配慮というのが今回の法改正でどこにあるのか。これまでどおり、例えば大手の派遣先に引き抜きをされても、それを厚労省は容認するんでしょうか。そのことも含めてお聞かせをいただきたいと思います。

坂口政府参考人 明確なお答えになっているか、ちょっと自信がございませんけれども、今委員御指摘のように、もとより派遣労働者の方も派遣会社に雇用されているということでございますので、派遣会社のお取り組みがしっかりして派遣会社が継続していただかなければ、これは元も子もないということでございますので、そういったところがまず肝要であるということは、私どももそのように理解をしております。

 それから、今の二点目の、派遣会社が、無理やり派遣労働者をいわば引き抜くというような局面等々に際しましては、そういったトラブルが生じないようにということで、派遣契約において、一定のトラブルが生じないような取り決めをしていただくことによって、一方的に派遣会社の方がそのトラブルに巻き込まれることがないようにという措置も、今後、対応としては検討してまいりたいと思っております。

牧委員 今回、一般事業者と特定派遣事業者の区別を廃止して全て許可制にする。これは、届け出制よりも、全て許可制というふうに聞くと、何か規制を強めているかのように聞こえるんですけれども、こういう、一見そういうふうに見えるというのは、私は一番くせ者だと思います。

 まず、今回の区別廃止の意味についてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

坂口政府参考人 今回、委員が御指摘のように、また先ほども申し上げましたけれども、派遣事業者について許可制に一本化するということでございますが、現在の成り立ちは一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業という二つに分かれておりまして、後者の特定労働者派遣事業につきましては届け出制をしいているということでございます。

 この特定労働者派遣事業というのはどういう事業者かということでございますけれども、常時雇用される派遣労働者のみを扱う事業ということになっておりますが、その運用に当たりましては、派遣元で無期雇用される派遣労働者のみでなくても、一年を超える雇用の見込みのある有期雇用の派遣労働者の方もその中には含まれるという扱いをしているというのが、まず現行の制度でございます。

 そういった関係もございまして、この特定労働者派遣事業につきましては、今申し上げました常時雇用する労働者のみをということではありますけれども、実態は、有期の雇用労働者の方が相当多く含まれているというような実態にあるということが一点。

 それから、そもそもが許可制ではない、届け出制ということで、許可制の中では一定の許可要件というのもございますので、その許可要件を満たせないということから、いわば特定労働者派遣事業を装っているというようなところもあったりするということも問題点として指摘をされる。

 あるいは、特定労働者派遣事業でのいろいろ雇いどめということも多かったというような指摘も含めまして、これは、今回の法案の提案をさせていただくに際しまして、学識の検討会あるいは労働政策審議会でいろいろ御議論をいただく中で、今申し上げましたようなそういった指摘もあるので、労働者派遣事業の質の向上と健全な育成を図るためには、届け出制での事業を廃止して全ての事業を許可制とするべきではないかというような御意見を賜ったということに基づくものでございます。

牧委員 全ての事業者を許可制にするのはいいんですけれども、私がお聞きしたかったのは、先ほどお話があったように、届け出制とはいいながら無期雇用であったり、派遣契約を切られた瞬間に外へ放り出してしまうような業者じゃなくて、きちっとその会社の中で常時無期雇用で、しかも正社員としての福利厚生もしっかりしている会社が、どうしてそういった事業主に対する配慮というのがないのかということを私はお聞きしたかったんです。

坂口政府参考人 まず、全体の構成としますと、特定労働者派遣事業の中にも、現行の事業者の中にも今議員が御指摘のような事業者の方もそれはおられるということだと思いますが、全体を総じて御議論していただく中では、やはり、一部届け出制という形が残っていると、そこに入り込んでしまわれる事業者も出てきてしまうのではないかという御議論の中で先ほどのようなことであります。

 ただ、今届け出制で行っておられる事業者が許可制に急にすぐ入れかわれるのかというと、なかなかそれは難しい部分もありますので、かつ、中には今議員が御指摘のような優良な形でやっていただいている特定派遣労働の事業者もおられるので、そういった方々が急に許可制に移り変われないということではいけないだろうということで、今回も、御指摘のようなことも考慮しまして、法律の中には、特定派遣事業を行っている事業者については、一定の激変緩和措置を設けようということで、施行日から三年間は、許可を受けなくても引き続き常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業を行うことができるというようなことを激変緩和措置として設けます。

 また、小規模の派遣元事業主に対しては、さらに、先ほど申し上げました許可要件に例えば資産要件等の要件がございますけれども、そういったものについても、常時雇用する派遣労働者の人数が少ない事業主について、一定の、軽減するなどの配慮措置が考えられないかというようなことについても今後検討してまいりたいと思います。

 それからまた、この法案を成立させていただいて全体として許可制に移行するということになれば、先ほどおっしゃったような優良な特定派遣の事業者さんも、では、どうやって許可制へ移行したらいいんだ、どういったことが必要なんだというようなこと等のいろいろお悩みもあるだろうということもありますので、そういった、特に特定労働者派遣事業を営まれる中小の事業主さんには、移行のための情報提供等、セミナーを行って支援をしていくというようなことも考えてまいりたいと思っております。

牧委員 なかなかちょっと、私の舌足らずなのか、私が聞きたいことが十分伝わっていないのかもしれないんですけれども。

 要は、移行措置ももちろん考えていただいているということ、それから、大規模、小規模という違いについても言及されましたけれども、私はむしろ、大規模とか小規模とかということよりも、その中身が優良なのか優良じゃないのかということを厚労省としてしっかり見きわめていただいて、優良なところをどう育成していくかということについてもやはり考えていただかないといけないと思うんですね。

 なぜならば、優良なところというのは、しっかりと社員教育をしながら育て上げていくわけです。キャリアアップ、スキルアップをさせているわけですね。だからこそそれなりのコストもかかるし、今度、派遣先にはそれなりの派遣料を要求しなければ成り立たない仕事になるわけです。

 ところが、今回、平準化してしまって、全部許可制にしてしまって、これは、固有名詞は挙げませんけれども、それこそ大きな派遣業者、全部許可制で、登録制でというようなやり方をされると、全部それは低い方へ低い方へ当然流れていくわけで、使う側の派遣先の企業というのは、これまでのそういうスキルアップしてきた会社の社員というのは、むしろその会社を潰してしまって、別の形で直接雇用した方が得だというようなところも出てくるんです。必ずその動きがありますから。

 その上で、大手の本当の、本当の派遣と言っては変ですけれども、登録しておいて、派遣切りになったらすぐ解雇するというような、そんな派遣労働者の水準にまでその今までスキルアップしてきた人たちをおとしめることにならないか、そういう懸念をしているわけです。そのことについて。

坂口政府参考人 失礼いたしました。先ほどの、特定の話と一般の話にちょっと私がとらわれ過ぎた御答弁をしてしまいまして申しわけございませんでした。

 今委員御指摘のように、やはり、派遣事業者の中でもいろいろな取り組みを一生懸命御努力をいただいておる事業者という方々がおられるわけでございますので、できるだけそういった事業者、どういったところが優良なのかというようなものを一定の基準をつくって、そういった優良事業者を認定していくというような制度については私どもも現在取り組み中でございますし、そういったところを明らかにすることによって、今委員御指摘のような、いろいろ、キャリアアップあるいはそういった取り組みを健全に行われておられる方があからさまになるような取り組みをして、そういった事業者の応援をするというような取り組みをしっかりやっていきたいと思っております。

牧委員 そのようにぜひ進めていただきたいと思います。

 繰り返しになりますけれども、今回の法改正というのは、与野党の議論を聞いておりますと、派遣先、派遣元、派遣労働者の三者の構図の中で議論をされておりますけれども、最終的に究極の目的である労働者側の保護の観点から、やはりいろいろ別の角度からも捉えるべきだという観点で私はこういう質問をさせていただいたわけで、これは単なる派遣先、派遣元、派遣労働者の三者の構図でなくて、つまりは、派遣元にもいろいろな派遣元もあるし、派遣先にもいろいろな派遣先があるということの認識からスタートしなきゃいけないと思うんですね。

 ここで、派遣先の労働契約申し込みについて再度確認をしたいと思うんですけれども、派遣先による労働契約申し込みというのは、どんな労働契約になるんでしょうか。

坂口政府参考人 今委員御指摘の関係は、労働契約申し込みみなし制度ということでよろしゅうございますでしょうか。

 この点につきましては、午前中も御議論がございましたけれども、これは平成二十四年の派遣法の改正で盛り込まれた制度でございます。

 これにつきましては、派遣先が労働者派遣の受け入れに当たって一定の違法な派遣を受け入れている、例えば、無許可の事業者から派遣を受け入れるとか、あるいは派遣の禁止業務、建設でありましたり港湾運送業務というような形での禁止業務について従事させる派遣を受け入れた場合、あるいは期間制限に違反して派遣の役務の提供を受けた場合、それから、いわゆる偽装請負等というような形での派遣の受け入れと申しますか、偽装請負の受け入れをした派遣先についての問題ということで、そういった受け入れをした派遣先につきましては、派遣先から派遣労働者に対して直接労働契約を申し込んだものとみなされるという制度でございまして、ことしの十月一日から施行する予定になっているということでございます。

牧委員 いや、それはわかるんですけれども、その申し込みの内容、それがどういう雇用形態で雇用するという内容になるんでしょうか。有期なのか無期なのか、あるいは正社員という言い方は法律にないのかもしれませんけれども、どういう雇用形態の申し込みになるのかという質問です。

坂口政府参考人 現行法の体系の中では、労働契約申し込みみなし制度につきましては、無期契約、有期契約にかかわらず適用対象となっておりますけれども、全体として労働契約をみなすということでございますけれども、これは、違法派遣を受け入れた時点で、当該派遣労働者の派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とする申し込みをみなしたものとするという制度でございます。

牧委員 いわばその派遣元の条件であればいいということで、直接雇用であれば、それでその要件は満たすという解釈でいいわけですよね。

 私は、ここに非常にこの法律の逆に抜け道というか落とし穴があるんじゃないかということを、最初に立ち返って申し上げると懸念しているわけで、直接雇用が善で派遣が悪だ、こういう考え方から少し離れていただくと、必ずしも、大手の企業、派遣先に直接雇用されればそれでハッピーエンドかというと、実は大間違いだという事例が多々あります。

 きょうはお配りをしませんけれども、これはネットから拾った記事です、ビジネスジャーナル。「嘘だらけの「正社員への登用試験」が不幸な人を量産!合格しても正社員になれず、低い合格率」、こういう記事があって、これは要は、五年を超えて働く有期契約社員に対して、契約期間を限定しない無期雇用に転換することを義務づけようという、民主党政権時代の法改正でこういうふうになったわけですけれども、実際直接雇用されてみたら、五年を超える直前に正社員への登用試験を受けさせられて、そして不合格になる、不合格になるように仕組まれたような、そんな社内の試験であった、そういう記事であります。

 引き続いて、今回の法改正によって、今後、派遣社員についても似たようなことが起こるんじゃないかという懸念がありますけれども、その辺についての認識はございますでしょうか。

坂口政府参考人 今回の派遣法改正につきましては、派遣先の方にも一定の責務を課すということでございますし、派遣労働者にももろもろ、いろいろな責任を今回課すということでございますので、そういった制度がいろいろ悪用されたり、あるいは脱法的な行為が行われないようにということについて、私どもとすると、行政でございますので、しっかり周知をし、しっかり指導監督していくということかと思っております。

牧委員 よほどしっかりしていただきたいと思うんですね。

 しかも、これは大きな企業で実際まかり通っている話なわけですよ。その辺、認識しているのか、していないのか。それから、しっかりやっていきますと言っても、それが本当に担保できるのかどうなのか。本当に言い切れるんですか、それを。そこをちょっとお聞かせください。

坂口政府参考人 その点につきましては、先ほども、午前中にも指導監督状況を一部御報告申し上げましたけれども、御質問に対してお答え申し上げましたけれども、現在もやはり派遣法を遵守していない事業者がいるということは事実でございますし、今委員御指摘のような事業者が存在しているということについては、私どもとしても十分認識した上で、しっかり指導監督、周知も含めて対応していかなければいけないと思っております。

牧委員 もう一つは、法令を遵守するにしても、もう既に起こっている事象ですけれども、派遣社員を切ってしまう。派遣社員を切ってしまって、先ほど申し上げたような特定事業者に関しては、きちっと優良な事業者であればあるほど、社員を継続して抱える負担というのが非常に大きいわけです。それをもって自然淘汰を待っているというか、スキルを持った派遣労働者が路頭に迷うのを待った上で、非常にいい条件でそういう人たちを拾い集めようという、そういう動きがあるということは御認識しているんでしょうか。

坂口政府参考人 個別のそういった状況を直接という形では、私どもとしては今の段階では把握はしておりません。

牧委員 ぜひとも一日も早く把握をしていただいて、多分把握されているんだと思いますけれども、私はきょう、直接、そういった寄せられた嘆願について時間があれば読み上げて聞いていただこうと思いました。ただ、派遣先が優位な立場にある大きな会社ですので、ここでそういう話をすると迷惑がかかってしまう可能性もありますので、それはあえて申し上げませんけれども、本当に大きな、政府も株を何十%も保有しているような大きな会社でも、そういうことが既に起こっているわけであります。

 そして、今回の法改正の動きに先駆けて、昨年、これは流れたわけですからね、昨年末からこの三月までの間に、派遣先から契約をどんどんどんどん切られているわけです。契約終了が続くと、正社員ですから、完全に倒産してしまう。この社員というのは、さっき申し上げたような福利厚生もきちっと会社でやっている、そんな社員であります。創業から四十数年間、これまで、社会保険等、福利費も毎年六千万円国庫に支払って、黒字経営をしてきた会社であります。相手は大手の通信会社ですけれども、そこまで言っちゃうと、政府が株式を保有しているということで、わかってしまいます。

 ただ、これはN社だけじゃなくて、全ての、ほかの通信キャリアも同じようなことをやっているというふうに聞いております。いろいろ、家族割だとか、かけ放題だとか、市場で熾烈な競争をしているからそういうことになるのかもしれませんけれども、私は、これは看過できない話だなと思っております。

 この業界だけで、建設あるいはその通信の関係の工事業者、本当に数百万人の特定派遣労働者、社員が今犠牲になろうとしているというようなお話もございますけれども、何かそういう情報があるのであればお聞かせください。

坂口政府参考人 情報と申しますか、ちょっと個別の点については、議員御承知のとおり、お答えは差し控えさせていただきますけれども、委員が今御指摘のような例が、一般的な形で派遣先がそういった行動をし、それで、それを通じて派遣労働者あるいは派遣会社、一生懸命取り組んでおられる派遣会社も含めて、そういった方々にいろいろ労働者保護の問題が出てくるということは、これはいけないということでございます。

 今おっしゃったような事案の流れの中では、例えば派遣先が派遣契約の途中で一方的にその派遣契約を解除してしまうというようなことになれば、現在も労働者派遣法の中に、そういったケースについては、本来は派遣先が、派遣労働者の新たな就業機会の確保であったり、あるいは、休業手当を派遣会社が支払う場合の費用負担をするとかというようなことをしっかり果たしていただかなければならないわけでございますので、そういった点も含めまして、そういった事案につきましては、私どもとしても厳正に対応をしてまいりたいと思います。

牧委員 言わんとするところはよくわかるんです。そういう答え方しかないと思うんですけれども、私の質問は、今局長が言われたような答弁だと、まさに派遣先の思うつぼというか、派遣契約の途中でそれを切ってしまうということが例えば法に触れるということであれば、派遣先は、しっかり責任を持ってその人たちを派遣元にいたときと同じ条件で引き受けましょうということになったとしますよね。そうすると、派遣元から、派遣元に対するマージンを払わずに直接引き抜くことができちゃうわけですよ。そのことを私は申し上げているんです。

 今回のこの法改正の見過ごしてはならない点は、私はそのことに尽きると思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂口政府参考人 申しわけございません。

 一部繰り返しになる部分もございますけれども、そういった形で今度逆に派遣先が派遣労働者を引き抜くということ、これ自身、民民の契約ですので、一方的にそれをいけないというわけにはいかないんですけれども、先ほども申し上げましたように、そういったことが、一方的に派遣会社がかぶってしまう、あるいは、それが派遣労働者にも結果的にしわ寄せが行ってしまうというようなことにならないようにということで、先ほどのような派遣契約での一定の定めも含めまして、私どもとしましても、そういった派遣先の取り組みについては注視をして、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

牧委員 これも繰り返しになってしまいますけれども、今回のこの法改正で私が申し上げたかったのは、優良な派遣元事業主がこれからどんどんどんどん倒産の憂き目に遭う、そこにいる優良な社員が失業する、その失業した社員を口を大きく待ち構えているのがブラック大企業とブラック大派遣元事業者だということを私は申し上げておかなければいけないと思いますし、そのことに対する対策をしっかりとっていただきたいと思いますので、大臣には、今のやりとりをお聞きいただいての所見をお話しいただければ幸いでございます。

塩崎国務大臣 先ほど来お話がありましたように、また、先生が冒頭におっしゃったように、今回、みなしが話題になりましたけれども、午前中の議論では、これこそブラック企業ではないちゃんとしたところへの、労働者の行くべき道だみたいな感じの御議論が多かったわけですけれども、必ずしもそうでもないということがあり得るということであって、派遣契約と同じ労働条件で直接雇用をするということですから、週三日のパートということもあり得るわけでありますので、そういうことを考えてみると、派遣で働くこと、それから正社員になること、いろいろな働き方があり得るわけですけれども、あらゆる働き方において、働く人たちが、その権利が守られて、希望に合った働き方ができるようにしていくということが大事なんだろうと思います。

 そういう意味で、今お話がございましたように、派遣元そして派遣先について、そしてまた働く人たちの立場というものをしっかりと考えた上で、とりわけ今回は全て許可制ということで、許可制にすればいいというわけではないという話もありましたけれども、それもそのとおりで、しかし、許可制であるということは指導監督がしやすい、あるいは最終的には許可を剥奪するということもあるわけですから、そこで行政の果たすべき役割というのはより大きくなって、先生が御心配になっているようなことが起きないための指導監督というものをやっていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。

牧委員 しっかり指導監督していただくようにお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 維新の党の井坂信彦です。

 ちょっと質問に先立ちまして、委員長に一点だけお伺いをしたいことがあるんです。

 午前中も、それから先週も、大臣の答弁がたびたびとまるわけであります。私は問題だと思いますが、しかし、とまるのは、もう現状そうなので仕方がないと思いますが、その都度、野党側から本当に何度も言われるまで委員長が時計をとめてくださらないのは、これはどういう理由があってなのかをちょっとだけお伺いしたいと思います。

渡辺委員長 質問の内容と答弁の状況の中で、私の方の判断で、大臣が答弁する状況にあるというときには、あえてとめておりません。ただ、協議をしている状況が長引く関係であれば、これはとめております。それは私の方の判断でやらせていただいています。

井坂委員 もちろん、すぐ、もう間もなく立ち上がりそうだというときに、たった一秒、二秒時計をとめることは、これは私もやり過ぎだというふうに思いますが、もう本当に、明らかに十秒、二十秒とまりそうだということが多いときには、委員長、今おっしゃったような御判断で、迅速にとめていただきたい。これは与野党を問わず、質問者が与党であっても野党であっても、立法府の方を向いた委員会運営ということで、ぜひよろしくお願いをいたします。

 質問に入らせていただきます。

 本会議質問でこういうことをお尋ねいたしました。非正規労働者は正社員に比べて安く雇えて解雇もしやすいとなれば、企業側の経営判断が非正規をふやす方向に傾くのは避けられない、企業が派遣を初めとする非正規を雇いたがることと、日本の労働法制における正社員の解雇規制との関係について、総理の見解はというふうにお尋ねをしたところ、総理の答弁で、解雇ルールは正規にも非正規にもひとしく適用される、紛争が生じれば、このルールのもとで、働き方の実態に即して司法判断される、こういう本会議の御答弁がありました。

 そこで、大臣にお伺いをいたしますが、企業が派遣を初めとする非正規を雇いたがるということと、日本の労働法制における正社員の解雇規制とは関係ない、こういう御答弁でしたが、これは本当に無関係だという御認識なのかどうか、お伺いをいたします。

塩崎国務大臣 今、不規則発言的に申し上げましたけれども、時計をとめることをおっしゃいましたが、お願いは、できる限り細かく事前通告を質問に関してしていただくと、いきなり条文か何かで細かいことを聞かれても、それは通告のない場合にはなかなか答えられないものですから、ぜひそういうところで、言ってみれば国会の暗黙のルールでありますので、ぜひそれを守っていただきたいというふうに思います。

 その上で、今の御質問に対して、解雇に関する一般的なルールでございます解雇権濫用法理は、いわゆる正社員にも非正規雇用の方々にもひとしく適用されるものでございまして、法制度として解雇に関するルールが異なるものではないというふうに思います。

 その上で、例えば整理解雇に際して、裁判において、いわゆる正社員について幅広い解雇回避努力が求められるのは、正社員の場合、勤務地とかあるいは職務が限定されないことが多く、配転とか出向など企業の幅広い人事権が認められている結果、みずからの雇用の継続に対する期待権が強まるためでございます。

 このように、我が国の働き方の実態が、雇用保障のあり方に影響しているものであって、法の制定改廃によって左右されるような性格のものではないと考えているところでございます。

 なお、派遣を含む非正規労働については、ワーク・ライフ・バランスの観点等から、みずから望んで選択する労働者も一定程度もちろん存在をするわけでございますが、それに加えて、企業が必要な労働力を迅速に確保できるなど、労使双方にニーズがある、そういう働き方として増加してきた側面があると考えているわけでございます。

 また、労働市場が引き締まり、新たに雇用される方が増加する中で、非正規雇用労働者の数も増加をしているわけでございますが、これは、高齢者がふえる中で、六十五歳までの雇用確保措置が実施をされて、高齢者層でこの非正規雇用が増加をしている、それから、景気回復に伴って、これは主に女性を中心にでありますけれども、パートなどで働き始める方が増加をしているなどの要因が多いのではないかというふうに思います。

井坂委員 日本の雇用労働慣行によってそういう非正規だけが解雇されやすいということが起こっているのであって、法律によるものではないという御答弁でありました。

 私は、本当にそういう御認識でいいのかなというふうに思っております。実態だけで解雇のされやすさが変わっていて、法律は平等だからそれでいいんだ、そんなことを言ったら、何だって実態に法律を適用して世の中が変わっていくわけでありまして、実態と法律のセットで、それがいわば労働法制として日本の労働のあり方を決めているというふうに思います。法律が一緒だから、実態が違うのは法律のせいじゃないんだというのは、本当にそういう御認識でいいのかなと、本会議で答弁をいただいて思ったんです。

 これは、事前に担当の方とも随分議論をして、どういうお尋ねの仕方をしたらきちんと伝わるのかなというような話までした上で、全文通告を本会議ですからしているわけですよ。そこが、何か紋切り型の、完全な入り口論で、法律が一緒だから無関係なんだみたいな答弁をされて、私は本会議場でびっくりしたわけでありますけれども、本当にそういう、要は労働慣行の問題であって、大臣の御認識では、これは法制度とは無関係なんだと。その御答弁を突き詰めると、法制度をいじってもこの問題は解消できないということになってしまいますけれども、本当にそういう御認識なんですか。

塩崎国務大臣 いわゆる解雇権濫用法理について、今申し上げたとおり、これは正社員とそれから非正規雇用の皆様方との間で適用の仕方が異なるということはないということを申し上げているわけでございまして、この上で、具体的なケースでどうなるのかということはそれぞれだろうというふうに思っているということを申し上げているところでございます。

井坂委員 その法理も含めて、大臣が、適用されている法制の文言そのものは一緒だという、そこだけ切り出して一緒だというふうにおっしゃるので、では、そこの文言は一緒だとして、法理で、実際に裁判になったら、もうあからさまに違うわけですよね。これは自民党さんとの先週金曜日の質疑でもそういう話になっておりました。

 実際に、同じ法律が文言上適用されていたって、派遣労働者がまず真っ先に切られる、むしろそれをすべしという裁判上の取り扱いになっているという議論が先週金曜日にあったとおりでありますけれども、そこまで含めて、裁判での実際の扱われ方まで含めて法制度だというふうに私は当然思っております。

 その入り口論で、何か同じ文言が適用されているからみたいな話じゃなくて、実際、そういう裁判も含めて、非正規労働者の方が明らかに解雇をされやすいという現状が今の日本の労働法制の中であるのではないですか、それと、実際、質問したとおりでありますけれども、だから、非正規労働者は解雇されやすい、しやすいから、一般企業はほっておくとそっちの低きに流れてしまうのではないですか、そこの両者には関係があるのではないですかというふうに、そういう問題意識を当然お持ちだろう、現場の担当者の方とはそういう議論もしておりますので、お持ちだろうと思ってお尋ねをしているんですが、そうではない、関係ないということですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、この法律自体は、そしてまた法理自体は変わらないわけでありますが、働いている方に求められていることというものが幅があって、そこで、裁判においても間違った結果が出てくるということだということを申し上げているわけであって、それが雇用の実態というか、そういうところが、期待権がどれだけあるのかということが左右をしてくるんだというふうに答えているところでございます。

井坂委員 それはもう先週金曜日、私も議事録をよく見ましたので、その理屈は私もよくわかっているんです。同じ法律、同じ法理を適用しても、実際に正規労働者の方が、自分は首にされにくいだろうという期待、配置転換とかいろいろあって、さすがに直接首にはなりにくいだろうという期待をより多く持っている現状があるので、裁判の方もそれを見越して、正規労働者は真っ先に首にしてはいけませんよ、そういう裁判上の取り扱いになっている。仕組みはよくわかっているんです、今大臣のおっしゃったとおりですが、そこまで含めて、今の法律では明らかにそういう差がついてしまっていることについて、一緒だ一緒だという答弁しかおっしゃいませんけれども、明らかに差があるんです。

 非正規労働者は解雇されやすい、企業からしたら解雇をしやすい、こういう現状がある中で、そこに関してほっておいたら、企業は、だったら、解雇もしやすい、給料も、現在の日本では大抵の場合、正規労働者より安い非正規労働者に、低きに流れるのが自然の道理じゃないですか、両者の関係はあるのではないですかと繰り返しお尋ねをしているんです。

 その仕組みの御説明ではなくて、関係があると認識しているのか、ないと認識しているのか。これはもう本会議のときからずっと同じことをお尋ねしておりますが、お答えをいただきたいと思います。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 先生は恐らく、要するに、非正規の方が解雇されやすいという結論を導き出したいんだというふうに思うんですが、実態がそういうことが多いかもわからないという意味においてはそうかもわかりませんが、今申し上げているのは、法理の適用の仕方と、それから、では、なぜ裁判などにおいて正社員の方が、さっき言った、幅広い解雇回避努力が求められてしまうのかということに関しては、実態の違いを申し上げているわけであって、申し上げているというのは私が言っているんじゃなくて、実態がそのような結果をもたらしているのであって、逆に言えば、極端なことを言えば、非正規でも、求められているものが一般の正規の社員よりも多いケースというのがないことはないかもわからないんですね、理論上は。ですから、そういう場合には、結果は必ずしも、今、一般的に思われているような結果になるということはないかもわからない。

 ですけれども、今申し上げているのは、あくまでも法理の適用の仕方と実態のあり方というか現状というものを申し上げているわけで、結果としてどうなるのかというのは、それは、一般論を導き出して、非正規の方が解雇しやすいというようなことを私が言う立場ではないんだろうというふうに思います。

井坂委員 何か根本的なところになると思いますけれども、大体世の中いろいろなことが、でこぼこがあるわけですよね、非対称というか。正規雇用の方は今の日本の裁判では解雇は後回しになります、非正規労働者は解雇を先にしなさいということに、ほっといたら今の裁判ではそうなります。

 これに限らず、どんなことでも、でこぼこがあって、イコールじゃないところがあって、そこに我々は法律をつくって、でこぼこをならして公正にしましょうという、そのために法律をつくる場合がほとんどだと思うんですね。適用される法律がべたっと一色で一緒だからあとはいいだろうみたいな、そんな議論をし出したら法律の議論は私はできないというふうに思います。

 先週金曜日の自民党の大岡議員なんかはもっと明快に聞いておられましたけれども、正規労働者と非正規労働者の裁判で解雇されやすさに明快な格差がある、この格差は問題じゃないかというふうにまで、はっきり自民党さんは質問をされて、でも、答弁ではぐにゃぐにゃおっしゃって、格差があるかないかの御認識もおっしゃらないし、まして、それをどうするかの対応策もおっしゃらない、こういう状況なんです。

 私は、別に格差どうこうまでは言いませんけれども、ただ、現状、差がありますねということを答弁していただきたいんじゃなくて、現状、差があるのに、法律は差を埋めるような法律に全くなっていないですね、その結果、非正規労働者を雇った方が企業にとって得だみたいな状況になっているんではないですか、こういうことをお聞きしているんです。

塩崎国務大臣 我が国の労働市場の課題の背景に、雇用が安定し賃金も高いけれども、働き方の拘束度が高く長時間労働等の課題があるいわゆる正社員、それから、雇用が不安定で賃金が低く、能力開発の機会が少ないという課題がある非正規雇用の働く人たちという、働き方の二極化があることは、それは事実だというふうに思います。

 それで、正規、非正規の二極化というものをできる限り解消して、雇用形態にかかわらず安心して生活のできる、そういう環境にするということについては、勤務地とか職務それから職種を限定した正社員など、多元的な働き方の普及拡大というのを今やっているわけですね、多様な正社員とかいうことを言われていますが。それはそれとして大変重要な方策の一つであると思います。

 その背景は、今先生おっしゃったように、歴然としてやはりでこぼこがあるということだと思うんですね。そういうことで、政府として、多様な正社員制度を導入する企業に助成をすることによって、このでこぼこ、ギャップを埋めていくということをやっているほかに、多様な正社員のモデル就業規則をつくるとか、それから導入を希望する企業に対するコンサルティング等に取り組んでいくというようなことをやっているのは、まさに先生おっしゃるような、ギャップを解消する努力としてやっているということで、その認識の前提は、確かにそういう違いはありますねということだと思うんですね。

 また、正社員を含めた働く方々の働き過ぎの防止のための取り組み強化というのも重要な課題で、長時間残業に関する監督指導の徹底とか強化とか、こういうこともやるということで、これは正社員でも正社員じゃなくても同じように長時間労働を強いられるというようなこともあり得るということで、ここについてはギャップはないかもわかりませんが、その他の面では確かにあるかもわからないということ。

 いずれにしても、方向としては、正規、非正規の二極化というものをどれだけ解消するかということと、しかし、それは、働く側と働いてもらいたいと思っている企業側のニーズというものがやはりあって、その間のギャップをどう埋めていくのかということを我々としては政策的に引っ張っていかなければいけないんじゃないかというふうに思います。

井坂委員 委員会室の諸先輩方も、今の答弁を聞かれて、本当に聞いたことに答えているというふうに、これは与野党を問わず、思われるんでしょうか。

 お聞きしていることはとてもシンプルです。自民党さんなんかはもっと直接的にお聞きをしておりましたけれども、正社員という言葉は定義がないとおっしゃいますから、正規労働者と非正規労働者の解雇のされやすさに、裁判も含めて厳然と差があるのではないですか、そこに問題があるのではないですかと何度お聞きしても、今のお話なんて、二極化、では、一階と二階があって、中二階で今度限定正社員を置くからそれでいいんですみたいな、いや、一階と二階のこの高さの差があるのが問題じゃないですかと聞いているのに、中二階をつくるとか、中二階の話をされて、それが一体何の答弁なんですか。

 時間がないので、また私、質問に立たせていただきたいと思いますから、この問題も引き続き、また日を改めてさせていただきたいというふうに思います。

 続きまして、臨時的、一時的という今回新たにつけ加えられた原則についてお伺いをしたいと思います。

 昨年秋の法案から、このたびさらに修正をされまして、派遣は臨時的、一時的という原則が明記をされました。これはわざわざ今回つけ加えられたものですから、明確な意図、目的があるはずです。

 派遣は臨時的、一時的という原則は誰のためのものなのか、また、臨時的、一時的でないと誰にどのようなデメリットがあるのか、これも通告どおりです、大臣にお伺いをいたします。

塩崎国務大臣 派遣労働というのは、直接雇用に比べて、もう何度も言っていますけれども、雇用の安定やそれからキャリアの形成が図られにくいという面があって、今回の改正案では、派遣労働を法律上も臨時的、一時的な働き方と位置づけることを原則とするとの考えのもとで、今回、期間制限については、二つの期間制限に見直すということにしているわけであります。

 個人単位の期間制限は、同一の派遣労働者の同一の派遣先の職場、今回は、先ほど議論になりましたが、課単位への派遣は三年までとする制限を設けるものであって、派遣労働者が同一の派遣先の職場に固定化してしまうという懸念に対応するものであります。

 派遣先の事業所単位の期間制限は、同じ事業所における継続的な利用は三年までという期間制限を設けるためのものであって、派遣受け入れを無制限に認めることによって派遣先の常用労働者が派遣で働く方に代替してしまうという懸念に対応するものでございます。

 今回、個人単位の期間制限を設けるというようなことも含めて、臨時的、一時的な働き方ということを法定して明確にするということは、当然これは、一義的にはやはり働く人のためということではないかと私は考えております。

井坂委員 お聞きしたのは、誰にどのようなデメリットがあるかということで、最後にさらっと働く人のためというふうにおっしゃいましたけれども、そこはさすがにもう少し詳しく、働く人といっても、常用代替を心配する派遣先の正規労働者の方のことを指しておられるのか、派遣社員のことを指しておられるのか。派遣社員といっても、派遣で働き続けたいと思っておられる方と、できれば正社員になりたいけれども仕方なくという方と、少なくとも三パターンぐらい、働く方というときに、この派遣法に関してはあるというふうに思うんです。

 臨時的、一時的と今回わざわざ足されたのは、これが守られないと誰にどのようなデメリットがあると思うから、今回あえてつけ足されたんですかというふうにお尋ねをしております。

塩崎国務大臣 少し丁寧さを欠いたので申しわけなかったんですが、当然、まず、派遣で働く派遣労働者。つまり、これは規制法でございますので、労働者の保護法ではないわけでありますが、それは、結果としては、まず一義的に、派遣で働く人たちが対象であり、一方で、常用代替と呼ばれているように、派遣先での同様な働き方をされている人たちのことについても考えての臨時的、一時的ということでございます。

井坂委員 誰にということは今明快にお答えをいただいたと思いますが、もう本当に、通告で、誰にどのようなデメリットがあるんですかと、とてもシンプルにお尋ねをしています。

 例えば、常用代替の方は想像がつきます。派遣先の正規社員の方が自分たちの働く椅子が失われてしまうというデメリットを防ぐために臨時的、一時的というのがあるんだというふうにわかりますけれども、派遣労働者にこの臨時的、一時的というのがないと、どのようなデメリットがあるんでしょうか。

 これは、派遣を望んで、派遣でやり続けたいという労働者の方もおられますし、派遣は実は嫌だけれども嫌々という方もおられますから、これは多分、全然別の話になると思いますので、そういう意図で、誰にどのようなデメリットがあるのかというふうにお尋ねをしております。

塩崎国務大臣 派遣先の労働者については、これは明らかだと思います。

 派遣の方は、今先生おっしゃったように、派遣のままでいきたいという方、いや、むしろ派遣の方がいいんだという方と、派遣からいわゆる正社員、正規雇用になりたいという方で、今の後者の方はわかりやすいと思うんですね、臨時的、一時的と。

 もう一方の方については、一定のランクに固定化をするとか、そういうようなことは望んでいるところではないというふうに思いますので、それで今回は、キャリア支援制度を設けているように、やはり一定のところでとどまってしまうということがないようにしていくということだと思いますし、しかし、三年の個人の期間制限を設けるというのは、やはり三年の一区切りで立ちどまって考えていただくということも大事な要素だというふうに考えているところでございます。

井坂委員 派遣をずっと続けたいという方にとっても、臨時的、一時的原則を課すことで、定期的に派遣の仕事を、職場をやめて、それをきっかけに、また次の、よりステップアップした仕事に移れるようにしてあげた方がいいだろう、それがないとデメリットだろうという御趣旨の答弁かというふうに思います。

 臨時的、一時的に関してもう一つ、本会議でお尋ねをして、残念ながら余りお答えがいただけなかった問題があるんですが、こういうふうにお尋ねをいたしました。

 派遣受け入れ期間の延長、いわゆる事業所単位の三年というのが、今回、労働組合や過半数代表に意見聴取すれば六年、九年と延長ができる、そこが緩和されているのが我々野党側からしたら一番問題視をされているわけでありますが、その部分。この派遣受け入れ期間が延長できてしまうということは、今回の臨時的、一時的原則と矛盾するのではないですかというふうに本会議でお尋ねをしたところ、総理の答弁は、派遣受け入れ上限の延長は、これは、意見聴取を義務づけて、反対があれば対応方針も説明しなければならないなど、いろいろかかっているので、恐らくおっしゃりたいことは、簡単に延長できないので原則一時的と言って差し支えないんだ、こういう御答弁だったというふうに思います。

 そこで、大臣に更問いでお尋ねをしますが、簡単に延長できないから、延長できる仕組みは今回新しく入ったけれども、しかし、それは原則的にできないようになっているから臨時的、一時的原則とは矛盾しないんだという答弁でありますが、では、延長する企業がたくさん出たり、あるいは延長が世の中で濫用されたら、これは一時的原則違反ということになるんでしょうか。

塩崎国務大臣 基本的には、総理が答弁申し上げたラインと変わらないというふうに思っております。

 今お話があったように、派遣先に対して、同じ事業所における継続的な有期雇用の派遣労働者の受け入れは三年という事業所単位の期間制限を課すというのは、これは常用代替防止であるわけでありますが、この三年の事業所単位の期間制限を課すこととして常用代替を防止しようということでありますけれども、それは、三年を超えて受け入れようとする場合には、過半数労働組合からの意見聴取を義務づけることとしていることがゆえに、常用代替を抑制するという格好になっているわけであります。

 こうした仕組みの趣旨というのは、もう言うまでもない、派遣労働者が派遣先の労働者を代替することの防止を図るということとともに、その受け入れを法律で一律に制限するのではなくて、職場をよく知る労使の判断に委ねようというものであるわけでございます。

 それから、意見聴取について、反対意見があったときには、事前に対応方針の説明をきちんとするということなど、労使間で実質的な話し合いができる仕組みをつくることとしているわけであって、単純に延長可能だということではないわけでございます。

 このようにして、派遣の受け入れは原則臨時的、一時的なものに限るということと、今の延長可能ではないかということとは、必ずしも矛盾しているものではないというふうに思うところでございます。

井坂委員 ですから、原則一時的ということで、しかし、その手続が実効性があるかないかは議論がありますが、きょうは私はそれはおいておいて、延長手続を踏めばできるわけです。

 そういうことが世の中で濫用されてしまったら、法律に書いてある臨時的、一時的原則とは明らかに違う状態になると思いますけれども、それは臨時的、一時的原則違反ということに、延長が濫用されたらなってしまうんでしょうかということをお尋ねしています。

坂口政府参考人 お答えさせていただきます。

 今議員お尋ねの事業所単位の三年の期間の延長ということでございますけれども、先ほど大臣からも御答弁させていただきましたように、まずもって、臨時的、一時的ということで、今回、事業所単位の期間制限については三年という期間の上限を設けるということが原則としてあって、その上で、先ほど大臣が御答弁しましたように、過半数組合からの意見聴取を義務づけた上で、一旦その三年というのをリセットして、次のまた三年間ということで、臨時的、一時的ということでまた三年ということで考えていくということでございますので、今委員が御指摘なさったようなケースが臨時的、一時的でなくなってしまうということではないということでございます。

井坂委員 これはちょっと大臣にお伺いをしたいと思いますが、労使で合意があれば、三年を六年、九年と、派遣受け入れ期間を延長できるわけであります。

 ただ、今の御答弁ですと、それは延長ではなくて、三年で一時的受け入れを一回リセットして、また次の三年間新たな一時的受け入れを始める、またそれを六年目でリセットして、また次の三年間新たな一時的受け入れを始める、そういう理屈だということでありますけれども、労使が合意すれば、六年やっても九年やっても何十年やっても、その派遣受け入れは臨時的、一時的とみなすという今の御答弁ですけれども、それで本当によろしいですか。

塩崎国務大臣 今回は、三年で、二十六業務も含めて、一旦立ちどまって、働く側も、それから企業側も考えるということで、今回、期間制限に事業所単位のまず原則三年ということで、意見聴取ということも労使民主主義のために設けたわけで、そこで労使ともに考えていただくということです。

 それから、もちろん、個人単位は初めて導入をするわけで、そこでも、個人についても固定化をしないようにという、臨時的、一時的な働き方の原則というものを確認するという格好だろうというふうに思います。

 したがって、今私からも申し上げたとおり、今回の期間制限が延長可能ということでありますけれども、それと、やはり制度として、この三年の期間制限を設けて、一旦考え、なおかつ、労使でともに考えるという機会をつくって、そこから先どうするかを考えるわけでございますので、そこのところは矛盾をしないというのは、私も先ほど答弁したとおりで、今の部長も同じことを言っているというふうに理解をしました。

井坂委員 今の御答弁は、私はやはりさすがにおかしいというふうに思います。

 労使合意があれば、長い期間やっても、それを臨時的、一時的だとみなしていいんですかというふうにお尋ねをしています。

 労使合意さえあれば期間は問わないという話であれば、そんなものは、臨時的、一時的原則なんか今回わざわざ足す必要は逆にないというふうに思いますよ。わざわざ明快な目的があって足されて、それなのに、労使合意さえあれば、六年やっても、九年やっても、十二年やっても、それが臨時的、一時的だとみなされるんですかと言ったら、事務方はみなすんだとおっしゃるので、本当にそんな理解でいいんですかというふうにお尋ねをしています。

 それはもう、何年やっても、労使合意があれば、それ全体を臨時的、一時的だというふうに政府はみなすということですか。

塩崎国務大臣 今、先生、合意とおっしゃいましたけれども、これは合意ではなくて意見聴取でございます。

 しかしながら、先ほど申し上げたように、原則臨時的、一時的という考え方については大事にしようということで、今回、あえて、今まで入っていなかった臨時的、一時的という言葉を法律の中に入れ込んだわけでございまして、原則としての考え方は、事業所単位の三年、それから個人についても上限三年というものを規制として新たに導入するということをやっておりますので、これは先ほど来申し上げているとおりだというふうに思っております。

井坂委員 また日を改めてこの法案の全体像について議論をしたいと思いますけれども、私は、本法案はすごくちぐはぐなところが今目立ってきているというふうに思います。

 それは、よく言えば、労使また与野党各党、各方面に目配りをした結果、相反することが平気で並んで書かれていたり、あるいは、もっとはっきり申し上げれば、安倍政権としてやりたいことははっきりあるのに、要は、派遣をもっと、本当に使いでのいい労働力としてやりたいと。別にこれは、いい悪いは判断が各党で分かれると思いますけれども。はっきりやりたいことがあるのに、全然それと真逆な規制を入れたり原則を入れたりしているものですから、本当に、矛盾をしている部分が幾つも幾つも法案の中に衝突、コンフリクトが起きているというふうに私は思います。

 全体像とか各種矛盾、またその原因については、また日を改めて議論をしたいというふうに思います。

 最後に、これも本会議でお伺いをしたことでありますが、雇用安定化措置で、派遣業者が自分のところの派遣労働者を派遣先に直接雇ってくださいと直接雇用の依頼をすることを四つの選択肢の中の一つでやるようにというふうに書かれております。

 本会議でお尋ねしたのが、派遣労働者が派遣先企業に直接雇用をされるときに、これは、派遣業者は、ただ単にほっといたら損ですから、自分のところの優秀な派遣労働者が派遣先に行ってしまったら損ですから、何らかの明快な派遣業者に対するインセンティブが必要ですねということを本会議でお尋ねしました。

 そのお答え、大臣が本会議で答弁されておられますけれども、派遣先から派遣労働者を引き抜かれたら派遣業者が紹介手数料をもらえる規定を派遣契約に義務づける、こういう答弁をされています。

 参考人にまず確認をしたいんですけれども、この紹介手数料をもらえる規定、これは、契約で書いて実際紹介手数料をもらえるのは、派遣業者が職業紹介の許可を受けている場合、その受けていることが前提になるのか、それとも、職業紹介許可は関係ないのか、お伺いをしたいと思います。

坂口政府参考人 今委員のお尋ねは、紹介手数料、そういった取り決めの例示として挙げさせていただいて大臣が御答弁したわけでございますけれども、紹介手数料というワーディングでございますので、これにつきましては、民営職業紹介事業における紹介手数料ということでございますから、民営職業紹介事業の許可を受けるということが必要、前提ということでございます。

井坂委員 大臣にお伺いをしたいんですが、本会議、もうこれは全文通告して、その上で答弁をつくっていただいていますから、本会議でどうお尋ねしたか、正確に申し上げます。

 私が本会議でお尋ねしたのは、「派遣労働者が派遣先企業に直接雇用されるとき、派遣業者も得をする明快なインセンティブ、動機づけが必要です。 派遣業者が職業紹介の許可を受ける以外にどのような工夫が考えられるのか、大臣の答弁を求めます。」こういうふうにお尋ねをしています。

 なぜこうお尋ねしているかというと、それは、紹介派遣をやってくださいみたいな話が事前に担当の方とのやりとりであったので、それはそれで一つ、紹介派遣までちゃんと許可をとれている業者はそれでいいでしょう、ただ、とれていない業者が大半なので、そういうところに対してのインセンティブは必要でしょうということで、職業紹介の許可を受けている以外の業者のインセンティブに絞ってわざわざお尋ねをしているわけであります。

 そこまではっきり書いて、前日の昼に全文通告して、それで何でその結果の答弁で、職業紹介の許可を受けた場合のインセンティブの答弁が返ってくるのか。私は、本会議場で、ふだんは温厚な性質でありますけれども、この部分は大変憤りを感じました。

 何のために通告をしたのか。ここを除いて、これ以外のインセンティブと言ったのに、除いた部分のお答えをなぜそこで答弁されたのか、お答えをいただきたいと思います。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 派遣元に対するインセンティブということであれば、恐縮でございますけれども、今申し上げた、民営職業紹介事業の許可を受けておくということ以外には、特に手だてを御用意申し上げているわけではないということでございます。

井坂委員 当然、現実がそうであれば、そういう答弁をしていただくべきであったというふうに思いますし、ないのは問題ですねというふうに私は思いますので、そこから先の議論につながるわけであります。

 私はここでこういうふうに再質問する機会があったからいいですけれども、本会議で、わざわざ本当に条件を限定して、しかもそんなにややこしい条件じゃないですよ、意図も明快ですよ、それがないとそんなことをやる派遣業者はいないでしょうという話から始まっている話ですから。

 ないならないで、ないですと、何か考えたいですとまで言っていただければうれしいですけれども、その現状をお聞きしたのに、全然違うことを御答弁、しかも、本会議で、時間をかけて答弁を作成されたというのは、私は、大変不誠実であるし、意図的にされたんでしょうから、大変憤りを感じているところであります。

 時間もあれですけれども、午前中、またこの午後も、やはり答弁がよくとまるわけであります。午前中については、大臣はこうおっしゃいました。通告が不正確だ、細かい通告がされていないからその場で考えなきゃいけないんだ、こういうことをおっしゃいましたが、しかし、私は本会議では質問部分以外でも全文通告して、なお、お聞きしたことと全然違うことをお答えになったのが、きょう掘り返しただけでも三つ四つあるわけであります。

 私は、午前中大臣がおっしゃったこと、そういう状況の中で大臣が答弁に時間がかかってしまう現状の中で、そのことを棚に上げて、質問通告が悪いかのごとき午前中の御答弁は、これは撤回をしていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 午前中は実際にほとんどと言っていいぐらい通告がなかったので、それはそれで私が申し上げたとおりだと思いますが、今の井坂先生のお話は、やはり質問をきちっと受け取ってきていないという疑いを私も持たざるを得ないので、理解をもうちょっとちゃんとして、先生の問題意識を踏まえるとともに、きょうのことでも、以前の御質問と同じ答弁では先生も満足をするわけがないのであって、そういうことを考えてみると、今回のことも含めて、十分先生の真意を受け取ってこなかったということで、申しわけない限りでありまして、今後、しっかりとその御真意を踏まえた上で把握をして、そしてそれにきちっと答え得るだけの準備をしたいというふうに思います。

井坂委員 今、私に対してのということでありましたけれども、午前中に関しても、それは通告がどの程度の細かさであったかは私はわかりかねますが、ただ、しかし、要は、答弁がとまってしまう理由が通告側にありというそのお考え自体が私は大変問題だというふうに思います。

 実際、ちゃんと通告をしていたってお答えにならないこともこれまでも多々ある中で、質問者の、これは別に与野党を問わずだと思いますけれども、答弁をされるお立場にあって、質問が悪いから答弁がとまるんだみたいなことは、これはやはり、私に対してだけでなくて、委員会に対して正式に撤回をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 私が受け取っていた紙での質問通告というのは、何行かとか一行とか、そういうものなものですから、質問通告が少ないなということでございまして、それについては私が申し上げているとおりだと思っています。

 先生が今御指摘になった点については、明確に出していながら、それを受け取って帰ってこられなかったということは、やはり、足らざるところをこれからしっかりと埋めていかないといけないなというふうに思いますので、その点については申しわけないというふうに思うわけで、今後改めたいというふうに思います。

井坂委員 誤解があるとあれなんですけれども、私に対して謝っていただきたいという趣旨ではなくて、やはり委員会のあり方として、質疑者に問題があるから答弁ができないというような御発言は私は撤回をしていただきたいというふうに思います。

 いつも通告が短くて、それだけが理由でいつも答弁が難しいのであれば、その理屈も成り立ちますけれども、通告が粗くても詳しくても、やはり正面からお答えいただけないことは多々ある中で、あたかも通告側が悪いかのようなことを随分はっきりおっしゃった。もっとひどいなと思ったのは、何か、思いつきで質問されたのでみたいなことまでおっしゃったので、それは、別に私に対してではなくて、そういうお気持ちで答弁をされている、しかも、御自身の側に理由があるということはお認めにならないということ自体、私は大変問題だというふうに思っております。

 私に対してどうこうしていただきたいということではなくて、厚生労働委員会に対して、質問者が悪いとか、通告が粗いとか、思いつきの質問だから答えられないとか、そういうお考え方自体を改めていただきたいし、先ほどの発言は委員会に対して撤回をしていただきたいという、これだけの趣旨ですので、最後にそれだけお伺いをいたします。

塩崎国務大臣 いつもいつもそうならばいざ知らずというお話でありますが、かなり私ども、想定問答をつくるというのは、本当に想定問という、いわゆる質問が来ていなくて想定問で、ツイッターを読んで多分こういうことを言ってくるんじゃないかとか、そういうことを随分やっています。だからこそ長時間労働になっているというところもあるので、ぜひここは、一緒に中身のある議論をするために、細かいことについても大事なことがたくさんありますから、細かいことはぜひ、全てを必ずしも網羅してわかっているわけではないかもわからない私だけではなくて、政府の局長やら部長やらも呼んでいただいた上で御議論をいただいた方が中身のある議論になると思います。

 かなり法的にもテクニカルなことが大事だということも結構あるわけですが、なかなか微妙なところで理解をしていないままに答えるということもあり得ますので、委員会のあり方ということであるならば、正直言って、大臣しか答えないというような委員会というのもなかなかほかにはないようでございますので、そこのところを、厚みのある議論をするためには、委員会のあり方としてもぜひ考えていただきたいと私の方もかねてから思っておったところでございますので、ぜひそういうことも御理解をいただきたいというふうに思います。

 撤回しろということでありますけれども、それについては、井坂先生の問題について申し上げたことではございませんので、今は井坂先生に対してお答えを申し上げるということでお許しを賜れればというふうに思います。

井坂委員 問題がたくさんある法案だと思っておりますけれども、それでも、またいろいろ建設的な議論をしていきたいというふうに思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

渡辺委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 まず冒頭、きょうの委員会が委員長職権で開催されたことに強く抗議をいたします。

 そもそも、本法案は二度も廃案になっております。それにはそれなりの理由があります。厚労省の説明不足や単純ミスも、そして国民の世論も、いろいろな問題があってこうした経過をたどっている。それを粛々と審議入りする、そのこと自体が問題なんです。廃案にすべきだ、冒頭強く訴えたいと思います。

 そもそも、十二日の本会議で、我が党の堀内議員に対し総理は、施行日については、円滑に施行するため、周知期間等を踏まえたものであり、みなし規定を実質発動させないためとの指摘は当たりませんと答弁をしました。

 十五日の本委員会で、同じ答弁を大臣がされたわけですけれども、さらに堀内議員から、では周知期間が要るというんだったら九月一日となぜ急ぐのか、もう目の前に迫っていると問われて、ちゃんと答弁していないんですね。

 誰が考えたって、もう間に合わないじゃないか、そう思うじゃないですか。間もなく六月になろうという。これは幾ら何でも早過ぎるし、言うように、周知期間が全く足りないのではありませんか。

塩崎国務大臣 今、周知期間が足りないのではないかという御指摘でございました。

 今回の労働者派遣法の改正案は、計画的な教育訓練を新たに派遣元に義務づけるなど、派遣で働く方の保護を図るための法案であるため、できる限り早く施行することが私どもとしても望ましいのではないかというふうに考えておるところでございます。

 また、今回の改正案では、平成二十四年改正の際の自公民三党の附帯決議を踏まえまして、期間制限をわかりやすいものとすることで、本年十月一日施行の労働契約申し込みみなし制度が円滑に施行できる環境を整備していくための見直しを行うこととしており、この観点から、十月一日より前に改正案を施行することが必要であると考えているところでございます。

 改正案が成立した場合には、労働政策審議会に速やかな政労使による御審議に御協力をいただいた上で、全国の都道府県労働局に加えて関係団体等にも周知に御協力をいただくことを予定しておりまして、改正案の円滑な施行に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

高橋(千)委員 とても答えになっていないどころか、一〇・一、結局、みなし規定があるから、これを早く施行しなければならないということをお認めになったと思うんですね。

 これまでは関係ないと言っておきながら、結局、みなし規定がそのままこの法案が通る前に発動してもらっては困る、そう認めたと同じじゃありませんか。

塩崎国務大臣 今申し上げたとおりでございまして、さまざまなことを総合的に判断して、タイミングとして、十月一日からのみなし制度の施行も踏まえた上で、九月の施行ということをこの法案についてはお願いを申し上げているところでございます。

高橋(千)委員 本当に重大な答弁だと思いますよね、お認めになったと。

 昨年の通常国会提出の際は、ことし四月一日施行、それ自体も私は相当急いでいるなと思ったんです。そのときも、だけれども一年あるからと多分思っていたんだと思うんですね。臨時国会でも、十一月まで議論したにもかかわらず、やはり四月一日施行を目指している。全てが、今大臣がおっしゃった一〇・一に向かっていたのだと明らかになったと思います。

 そもそも、労政審の建議が出されたのは昨年の一月二十九日、そして翌月の二月二十一日には、要綱を取りまとめ、労政審に諮問して、二十八日にはおおむね妥当と。そして、三月十一日には法案が提出されるというスピード処理でした。だからこそ条文ミスを招いたのではありませんか。

 しかし、労政審そのものは、派遣業界の代表がオブザーバー参加して、発言も許された。内容は業界はよく理解していると言えなくもないんですね、これは皮肉ですが。業界の意見が大分尊重されているんです。なので、労政審の建議には、労働者委員からは、「当部会の運営について、直接の利害関係を有する派遣元事業主が非常に多くの発言を行う等、委員以外の構成員と委員の発言機会のバランスに懸念があった」とされ、今後は慎重にと明記されたところです。

 改めて伺いますが、こうした経過をたどった法案だからこそ、もっと慎重に審議し、施行日も急ぐ必要がないのではありませんか。

塩崎国務大臣 もう先ほど申し上げたとおり、今変わり行く経済情勢も踏まえ、一日も早くこの法案を御審議いただいて、御成立をお願いした上で、九月一日の施行をよろしくお願い申し上げたいというふうに考えます。

高橋(千)委員 今、大臣、経済情勢も踏まえとおっしゃったのは、多分、そういう業界のいろいろな要望もあり、早くやらなくちゃなという思いがにじんでいる答弁だったのではないかと思いますね。

 それで、一〇・一ペーパーについて議論をしていきたいと思うんですが、中身の議論もしたいんですが、まずその前に、余りにもこの間の経過は不誠実だ。後世に残る委員会での議事録で、答えたことが全く信用できない、ゆゆしき事態ではないでしょうか。

 一〇・一問題のペーパーが何種類あるのかという問いを用意していたんですが、午前の部で、阿部委員の質問、それから西村委員の質問に対して、五種類であるということを答弁されたと思います。大きく分けて三種類、理事会にはそういう説明だったんです。それが、後から後から出てきまして、きのう数えたら五枚。

 ただ、五枚なんだけれども、厳密に言いますと、足立委員が予算委員会で配ったものと、民主党の部門会議に出されたものは、二十六年冬に厚生労働省内において作成という文字が入っているということでは、厳密に言うと違います。でも、わかりやすくするため、五種類で進めていきたいと思うんです。

 確認をしたいと思うんですが、まず最初は、ちょっとおさらいをしますよ、昨年の冬、経済界の懸念を書いたものである。西村さんの資料、お許しを得て皆さんと確認をしたいと思うんですが、経済界の懸念を書いたものが昨年の冬である。

 二枚目は、一月ごろに民主党議員に示された内部的な文書である。経済界の懸念という言葉は取れていますけれども、ほぼ内容は同じであります。

 また、三枚目は、二月ごろにまた同じように配られた紙である。ここでは、今度は、「予想される問題」「大量の派遣労働者が失業」などという囲みの部分が取れているわけであります。

 そして四枚目が、三月十七日、記者レク用のものである。

 そして最後が、各部屋に配付されたもので、五月になってから大臣の了解を得たもの。

 伺いますけれども、この経過が間違いないか。そして、大臣が見たものは一枚目だけである、了解をとったのは五枚目だけである。確認をしたい。

塩崎国務大臣 今先生がお話しになった中で、基本的には、五種類というか、大きく分けて三種類で、最初に担当課がつくって配り始めたものが少しリバイスをされているのが二種類あった、一月と二月に配られたものとしてあったということで、それに加えて記者レクのためのもの、そして最後が民主党の部門会議からの要請でつくらせていただいたもの、こういうことであります。

 今、さっき、五月に入ってとお話がありましたが、これは正確ではなく、民主党の部門会議で出たのは四月の二十八日の火曜日でございまして、正式な厚労省の見解を紙にして十七時までに持ってこい、こういうことでございました。そこで、私の了承を得て、同時に、私から局長、部長、課長には厳重注意をしたということで、四月の二十八日が最後のペーパーの、作成をせいということで、厚生労働省としての見解としてまとめさせていただいたものでございます。

高橋(千)委員 大臣、ここは事務方でよかったんです、きちんと確認をしたかったので。大臣にこの後もう一回質問します。

 私が聞いているのは、一枚目のペーパー、つまり、「厚生労働省内において作成」というクレジットが入ったものが四月二十八日の民主党部門会議に出されたものであって、最後の紙は五月一日である、私は、きのう説明を受けて、そういうふうに聞いています。また虚偽の説明になるんですか。もう一回整理をして、そして、大臣が了解したものは最後の紙だけであると。いいですか。確認。

坂口政府参考人 ちょっと資料が、西村先生の資料ということでよろしゅうございますでしょうか。(高橋(千)委員「はい、同じものですから」と呼ぶ)

 西村先生の資料の一枚目につきましては、これは、先ほど大臣が御答弁しましたように、事務方の方で二十六年の冬ごろ作成したものについて、二十七年二月二十三日の衆議院予算委員会の維新の足立康史先生の質疑の際に問題ペーパーが配付されたということで、大臣がその時点でごらんになったということでございます。

 それから、五枚目のペーパーでございますけれども、このペーパーにつきましては、大臣の指示により最終的につくった正式な厚生労働省の見解ということでございますけれども、経緯につきましては、今大臣が申し上げたとおりで、二十七年の四月二十八日の火曜日に、朝の民主党の部門会議で正式な厚労省の見解を紙にして提出するように御要求がございまして、その後、資料をつくった上で、同日の夕方の民主党の非正規雇用・ワーキングプア対策チームにおいて御提出をした上で、衆参の厚労委のメンバーの方々に四月三十日、五月一日に配付をさせていただいたということで、議員の方から五月一日という御指摘が出たんだと理解しております。

高橋(千)委員 そういうことなんですよ。だから、各部屋に配られたけれども、それは部門会議と同時ではないわけですから、なので、私が最後の紙は五月一日と言ったのは当然なわけですよね。

 それで、私はここで二つ問題を指摘したいなと思うんです。

 一つは、午前中に阿部委員からも指摘をされたように、相手によって表現を使い分けている。きのう、記者に対して説明することと議員に対して説明することとは違うのでと。どう違うんだろうというのがわからないんですね。

 それで、例えば山井委員から資料をくれと言われて、山井委員がいつも大量の派遣労働者が失業するじゃないかと指摘するから、そこを取った資料を配った、だけれども、ほかの人にはちゃんと書いているものを配っている。そうすると、山井さんにしか通用しない資料を配ったら意味がないじゃないですか。全く国会の審議を形骸化させるものになる。違いますか。

坂口政府参考人 まずもって、当初のペーパーにつきまして、補足資料として作成したものでございましたが、説明に必要ではない表現、あるいは客観性を欠いた表現などがあったということであるにもかかわらず精査等をしなかったということで、私自身、担当部長として、まことに申しわけございません。真摯におわびを申し上げます。

 今委員の方から御指摘ありましたペーパーにつきましては、全体としては、先ほど大臣の方からも御答弁させていただきましたような、時系列的に、当初の西村先生の配付資料の一番のペーパーがあり、それで、これも午前中大臣の方からも御答弁させていただきましたけれども、私ども事務方として配付する補足資料について、わかりやすく適宜リバイスを加えるというようなことは、これは本資料に限らずかとは思いますけれども、そういった形でリバイスしてきたということで、西村先生の、大きく分けての三種類目の二ページ目と三ページ目というようなことがあったということで、私どもとすると、そういう時系列的な形で適宜リバイスをさせて資料を作成していたということでございます。

 四枚目の、記者の方々に御説明をさせていただくという形でつくりました資料は、先ほども、時系列のときにも出ました、二月二十三日の足立議員の資料の配付ということで大臣の目にもとまり、大臣からも、この内容について、内容が不適切ということでの御指摘等もあったということで、その後は使用していなかったということでございますけれども、その後、三月十七日ごろでございますけれども、全体の派遣法の改正法案について記者の方に説明する資料の一つとして、そのときの指摘等も反映した上で作成したという資料でございます。

高橋(千)委員 まず、謝罪するときくらい原稿から目を離したらいかがですか。何度も同じことを繰り返しているんでしょうからね。そのこと自体が誠意がありませんよ。

 それでは、大臣に伺いますけれども、何で大臣は、この経緯について、まるで理解を示しているようなことを言うんですか。逆じゃないですか。本当にこんなことをやらせてはいけないという、もっと怒ってもいいんじゃないですか。

 大体にして、四月二十三日に参議院の厚労委員会で小池議員がこの問題を指摘したときに、二月二十三日の予算委員会で気がついた、後、不適切だと思ったから使わないようにと言ったと言っているわけでしょう。なのに、三月十七日に記者レクをやっているわけですよ。それについては、大臣、知らないでしょう。記者にレクをするということは、それで報道されるわけですよ。不特定多数の膨大な国民に情報が行くわけですよ。

 だけれども、発端は、不適切だと大臣が思ったものなんです。幾ら見直しをしたとしても、それを大臣に断りもなく使っている、そういう事態を何とも思わないんですか。官僚の言いわけを大臣が言うのではなくて、絶対にこんなことがあってはならない、そういう立場に立つべきではありませんか。

塩崎国務大臣 足立先生が二月の二十三日の予算委員会でお使いになって私は初めて気がついたわけでありますが、その際に、ポイントとなる問題箇所については指摘をしておったわけであります。要するに、今まで皆さんにお配りをしたわけではないけれども適宜使っていたということで、こういう形で足立先生がお使いになられたわけですから、そういう意味で問題点を指摘しました。

 その後、使わないようにということになっていたわけですが、その問題点指摘を受けて、局長まで上げて決裁をしたものとして、記者の皆さん方に御説明を申し上げるときの追加資料の一つとしてこれを加えたということでございまして、おっしゃるとおり、最初の、大量の派遣労働者が失業とか訴訟が乱発するとか、余りにも大げさで不正確で誤解を招くようなことを書いていたものですから、そういうところを直すということで、三月の記者レクの際にはそれを直したものとして出したということだろうというふうに、私は、この点については直すべきところを直しているというふうに思っておりますし、それは当然、私の指示には従うものだというふうに思っておりましたので、そういうことで、これについては特に、怒れということでありますが、なかなか怒れない性格でありますので、怒っていないということであります。

高橋(千)委員 ちょっと、本当にいいんですか。参議院での答弁もおかしいことになっちゃうわけですよ。だって、三・一七に使っていたのを知らないんでしょう。

塩崎国務大臣 だから、問題を指摘したわけでありまして、それを直して使っているということでありますから、その範囲においては問題はないのではないかというふうに思います。

高橋(千)委員 はっきり言って、大臣の資質を問いますよ。

 国会の会議録を何だと思っているんですか。

 私は、国会の会議録は本当に大切にしているんですよ。何年たっても、やはり振り返って、そのときこういう指摘をした、こういう答弁をした、それがこうやって前進している、そう思いますよ。

 だけれども、今振り返っても、うそばかりじゃないですか。知らなかったと言っていたけれども知っていたとか、幾ら何だって、かばんに入れていたが示したかどうかは記憶にないとか、よみがえりましたとか、そんなこと言わせていいんですか。そういう議事録が次から次へと積み上がっていって、これで法案の審議をやりましたと。

 大臣、本当にそれでいいんですか。もう一度振り出しに戻るべきではありませんか。(発言する者あり)

渡辺委員長 静粛にお願いします。

塩崎国務大臣 このペーパーについての中身が不適切であったということは率直に認めて、二度とないようにということで局長以下にも指摘をしているわけでございますし、また、ここで繰り返し、私も、まことに申しわけないということで皆様方におわびを申し上げてきているわけでありますので、そのことについては、そのとおりでございます。

 しかし、法案そのものについては、ぜひこの審議をお進めいただいて、中身の議論を深めていただくと大変ありがたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 中身の議論が深まらないと言っているんですよ、資料が違うんだから。

 委員長、それを踏まえて、これまでの質疑は、単純に、法案質疑を何時間やりましたとカウントしない、そのことを踏まえていただきたい。お願いします。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

高橋(千)委員 それでは、一〇・一ペーパーの中身について議論したいと思います。

 私は、はっきり言って、この五枚目の……(発言する者あり)中身じゃないですか。何を言っているの。法案そのものでしょう。施行日は法案ですよ。ごめんなさい、こんなことを言っている場合じゃない。

 五枚目は統一見解なわけですから、私は、そのこと自体に非常に問題があると思っております。

 一つ一つ聞きますけれども、違法派遣には、ここの囲みにあるように、禁止業務、無許可派遣、期間制限、そしていわゆる偽装請負の四種類があるわけですけれども、これはわざわざ点々をしていますよね、なぜ二十六業務だけが一〇・一問題なんですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員御指摘のように、労働契約申し込みみなし制度の対象となる違法派遣の類型、この四種類あるわけでございますけれども、平成二十四年の改正法の国会審議の附帯決議にありますように、この類型の中の一つとしてある派遣可能期間にかかわる部分につきましては、いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかということで派遣可能期間の制限が制度的に成り立っているということで、わかりにくいという指摘がありました。

 そういったわかりにくいということに端緒を発してこういった状況が生ずるということで、他の分野ということになりますと、港湾、建設業務というようなものであったり、無許可かどうかというような形である程度わかりやすいという形で、この二十六業務の該当の有無についてはわかりにくいということでこういった問題が生ずるということで、このような記載にしておるというところでございます。

高橋(千)委員 二十六業務というのは政令事項なんですよね。

 そもそも、何でそれを期間だけの話にしちゃうんですか。もともとは、出発点は十三業務でしたよね。それから十六、九六年に二十六になりました。それから、もともと期間制限はありました。九カ月だった。それが九〇年に一年になって、二〇〇三年には期間制限がなくなった。そういう経過をたどっているわけですよね。

 業務の内容は、確かに時代によって、とても専門とは呼べない状態になる。当たり前ですよ。三十年前だったら、パソコンどころかワープロでもなく、タイプの時代だったから、タイピストが専門業務だったりとか。そういうことがあって、だったら、この政令事項の中でわかりやすくちゃんと議論すればよかったのではないでしょうか。

坂口政府参考人 今委員御指摘のように、いわゆる専門二十六業務につきましては、期間制限ともども、今議員が御指摘のような変遷を経てきたということでございます。

 ただ、午前中も大臣等から御答弁させていただきましたように、また、二十四年の改正時の附帯決議にありますように、やはりこの二十六業務については、専門性というものが変わってくるというようなこと、あるいは、二十六業務の該当業務とあるいはそれに付随する業務というようなもの、二十六業務以外の業務をあわせてやるというようなことも含めて、わかりにくさがあるということで、午前中も御答弁を申し上げましたように、政令であるいわゆる二十六業務という部分についての法の施行ということについても私どもも努力はしておるところでございますが、やはり非常に、そういった部分では、政令の規定の上で、現場現場での労使の御理解としてこの二十六業務の該当についてのわかりにくさがあるのではないかということで、このような取り扱いということにさせていただいたということでございます。

高橋(千)委員 見直しは言われていたけれども、廃止しろとまでは言っていないということなんですよね。

 私は、専門業務の問題は何回も質問をしているし、その業務を限定化ということも言ってきました。期間制限の問題だけに、そして一〇・一でみなしが発生したら困る、そこにぐっと集約されていくのは、結局、もともと専門業務なんかではない働き方を、専門業務をかたって働かせていた偽装専門業務があったからこそなんですよ。これだって、結局、業界の都合じゃないですか。それをちゃんと、ごっちゃにしちゃいけないと重ねて指摘をしたいと思っております。

 それで、そもそも現行の、平成二十四年法と言われておりますけれども、本当にこれも大変ないわくつきな経緯をたどりました。

 審議入りは平成二十二年四月十六日の本会議、長妻大臣のときでありました。初めて派遣労働者保護を冠した名称に変えたのもこのときです。しかし、成立したのは、二年たっているんですね、平成二十四年の三月二十八日。自公民三党修正で、登録型派遣、製造業派遣の原則禁止を削除、日雇い派遣の禁止の緩和、そして、申し込みみなし規定の施行を三年先延ばしするという修正案が成立し、まさに政権交代の成果は自公によって打ち消されてしまったのです。絶対に忘れることはできません。

 そのとき、あえてお名前は言いませんが、今与党の、当時は野党の議員の方たちが、労働者が自分の雇用主は派遣先だと主張すればそのようになってしまう、違反が恣意的につくられるおそれがある、使用者代表委員から、そもそもみなし規定は企業の採用の自由や労働契約の合意原則を侵害することからも反対だなどと反対意見が相次ぎ、この規定を削除せよと迫りました。みなし規定そのものを削除せよと。

 修正案の提出者だった田村前大臣も、特に、不意打ちで、急にだめだからといってみなし雇用という話になれば、もう怖くて派遣という一つの形態を選べないというような話も我々も聞いてまいりましたと繰り返し答えているわけですね。

 ですから、一〇・一ペーパーに書かれていることは、当時、現在の与党議員が業界の意向を代弁して述べたことにすぎないのです。その後も経団連などが述べているところです。

 しかし、みなし規定は、派遣先が違法だと知らなかったらみなしは成立しないと書いてあるではありませんか。ここで言われているような、前大臣が言っているような、不意打ちを食らって大変だなんということがやたらと起きると厚労省は考えているんですか。

坂口政府参考人 今委員御指摘のような形の経過を踏まえまして、平成二十四年の改正法の審議の際に一定の修正が加えられて、この労働契約申し込みみなし制度というものについて施行日を三年おくらせて二十七年十月一日ということでございますけれども、その経過についての詳細は、議員間での御修正の協議ということであったかと承知しております。

 この雇用申し込みみなし制度につきましては、今委員御指摘のように、派遣先が善意無過失の場合については、ただし書きによって、みなし制度が適用にならないということでございますが、ただ、単に派遣先の事業者が例えば法律を知らない、二十六業務が何か知らなかったというようなこととか、そういったことも含めて、意図せずに二十六業務でないというようなことというのは善意無過失ということには認められないかと思料いたしますので、派遣先が意図せずに二十六業務でないという形での善意無過失でないようなケースというのは、いわゆる二十六業務にかかわる派遣可能期間制限の違反の事象としてはやはり起こり得る、あるいは、こういったわかりにくさということで想定される状況があるということかと承知しております。

高橋(千)委員 例えば、これから許可制になるわけですから、無許可の派遣業者がいかにも許可業であるかのように装って、違法派遣だということが発覚した、そんなこと全然、だまされたという形で派遣先が訴えたり、そういうことはあると思うんですよ。まさにそれは善意の過失である。

 だけれども、今の部長がおっしゃったことは矛盾していると思うんですよ。二十六業務が何か知らなかった、何か知らなかったら二十六業務で採用するわけないじゃないですか。知っているから二十六業務で採用するんです、契約するんですよ。まして、今盛んに疑義解釈が来ていると言っているじゃないですか。疑義解釈して、あなたのところは大丈夫ですよと言われたら、こんなこと、不意打ちを食らうわけないでしょう。違いますか。

坂口政府参考人 今委員御指摘のように、いわゆる二十六業務等々につきましても、当時、あるいは二十四年以前から、いろいろ適正化ということについても努力をしてきたわけでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、二十六業務というものについては政令で定められ、あるいはその中身についても要領等でも定めているわけでございますけれども、やはりその幅という部分ではわかりにくいという部分であったり、先ほど申し上げたように、二十六業務以外の付随的な業務を行わせているというようなケースも含めて、こういった善意無過失との関係も出てくる可能性もあり得るということもありまして、非常にわかりにくいという状況になっているということも考えられ、こういった形でのわかりにくい部分があるということで申し上げます。

高橋(千)委員 もうこれは言い返す必要はないと思う。さっきのと同じことですよ。わかっていてやっているんですから、わからない人は疑義解釈をやっているんですから。本当に善意だったら無過失でいいんですから。それを理由に一〇・一を大騒ぎしている、このこと自体が非常に問題だと言わなければならないと思います。

 それで、実は、さっき紹介したのは、平成二十三年、二〇一一年十二月七日の同じ本委員会なんですけれども、当時、柿沢未途委員に対して、田村提出者、そのときは大臣じゃなくて提出者ですよね、野党ですが、こんなふうに言っているんですね。「この三年の間に、このみなし規定自体がなくなるということも含めて、労政審の方でしっかりと議論をいただければありがたい」、つまり、修正案を出して施行を三年延ばしたことは、なくなることを期待していると正直に言っているんですよ。

 それを受けて柿沢委員は、「自民党の修正案提出の真の意図というのは、事実上、これまで継続審議を重ねてきた政府提出の派遣法改正案というのを極めて廃案に近い状況に持ち込む、」と指摘をして、うなずいておられますねとまで言っているんです。

 極めて廃案に近い状態、施行日を延ばし、検討規定を設け、結局それは廃案にする、それが狙いだと言った。まさに私はそのとおりだ、本当にこの評価は正しいと思っております。

 今回の一〇・一問題、まさに同じじゃないですか。みなし規定を事実上なきものにする、それが一〇・一問題の核心だ。大臣、違いますか。

塩崎国務大臣 そのようなことは、私ども、全く考えていることではございません。

高橋(千)委員 では、そういうことを考えていないと言うんだったら、少しでもみなし規定が施行されてから、状況を見て、問題があれば整理する、こういう立場でいいんじゃないでしょうか。

 昨年、労働契約法の審議がありましたよね。あのときに、実は労働契約法の無期転換ルール、これは平成二十五年四月に契約法自体は成立しているんですが、無期転換ルールは平成三十年なんですね。まだ効果が、これから施行になる。そのときに、いわゆる高度専門業務の有期の場合は最大十年までということで改正がされた。

 そのときに、我が党の小池議員が、法律の効果が及ぶ前に新しくその部分を改正した前例はありますかという質問をしました。それに対して、前例はありませんと答え、強いて言えば、今審議されている派遣法がそうですとお答えになっている。でも、その派遣法は廃案になって今にあるわけですから、結局、前例のないことをやったんです。

 本当に、一度やったら何度でもやっていくという立場ですか。まずは、施行日を見て、施行させて状況を見る、そういう立場に立ってもいいじゃないですか。今、みなしをなくすのが問題だとは言っていないわけですから。大臣。

塩崎国務大臣 それは先ほど申し上げたとおり、みなしの制度について、これをなきものにしようだのようなことは全く考えていないということを申し上げているわけです。

 先生がおっしゃるように、施行してからもちゃんと見ておけということは、それは間違いないわけで、施行になってからその施行状況を見ていくことも当然必要なことだと思っておりますが、それと、施行を九月一日でこの派遣法の改正をお願いするということとはまた別問題で、それはもう先ほど御答弁申し上げたとおりでございますので、何とぞひとつよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

高橋(千)委員 よろしくと言われても、承服できません。やはりもとに戻すべきだと思います。

 一方では、本委員会でこうして三度目の派遣法案が議論されている。我々は審議入りするべきではないと議論しています。その最中に、四月二十四日、五月十八日と、労政審労働力需給制度部会が開催されております。議題は何か、また、この部会でこの一〇・一ペーパーについて意見があったと聞いておりますが、具体的に教えてください。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 本年の四月の二十四日と五月の十八日に、労働政策審議会の職業安定分科会需給制度部会というものを開催しております。その際に、この労働契約申し込みみなし制度について御報告を申し上げたところでございます。その内容につきましては、労働契約申し込みみなし制度について行政解釈を示すというものでございます。

 労働契約申し込みみなし制度につきましては、いわゆる民事的な効力を有する規定ということでございますので、最終的には司法の判断によるというものでございますが、やはり現場での理解、混乱の防止のために、先ほど申し上げましたような形で、労使双方からも、一定の範囲での行政解釈を早目に示してほしいということもございまして、この両日に、議論も含め、御意見等も承りながらでございますけれども、この行政解釈についての一定の御報告をしたものでございます。

 それから二点目の、先ほどの一〇・一問題にかかわるあのペーパーにつきましても、労働側の委員の方から、そういったペーパーについて配付されたことの不適切さ等についての非常に厳しい御発言があったということでございます。

高橋(千)委員 今、労働側からも厳しい意見があったということをお認めいただいたと思います。

 山井委員が質問主意書を出して、みなし規定の行政解釈をいつ出すのだというのに対して、早く出しますと言って審議会が始まったということは聞いておりますが、しかし、これは本来は、多分、皆さんにしてみると、昨年成立していれば、こんな時期がまるっきり重なるということは考えていなかったのかもしれません。

 しかし、そうはいっても、今議論されているのは、昨年の法案に対して、一月三十日の与党政調会長合意なる修正を入れ込んだ法案であります。ですから、その入れ込んだ法案の部分については労政審を通していないじゃないかという指摘に対して、労政審の枠内だからと答えているわけですよね。一方では、その労政審を粛々とやっている。どういうことなんでしょうか。

 疑義解釈だとか、一〇・一問題で指摘されていることもきちんと議論して整理するべきではないんでしょうか。それとも、法案成立はもう決まったことだから、前提だから、そういう形で審議しているんですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁させていただきました労働政策審議会需給制度部会に対しての行政解釈の御報告というものでございますけれども、これにつきましては、派遣先が違法行為を行った場合について、どのような労働条件で申し込みが行われたとみなされるかというようなことについて解釈を示すという形での御報告をしたということでございまして、内容的には、労使からも求められていたということでございます。

 という状況でございますので、この御議論につきましては、違法の類型について、どのような行為が違法ということを解釈を示したものではなく、かつ、現在、この改正法案について期間制限の見直しも含めて御審議いただいておりますので、当日の配付資料におきましても、違法行為の類型につきましては現行制度をもとに記載をして、法改正を前提としたというものではなく、先ほど申し上げましたような、どのような労働条件で申し込みが行われたとみなされるか等についての行政解釈について御報告し、御意見を賜ったというものでございます。

高橋(千)委員 しかし、国会の議論がどういうふうに着地するかはわからないわけですよね。廃案になるかもしれないし、修正がまたかかるかもしれないし。違いますか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、委員御指摘のように、違法類型そのものについては、今回の、御提出し、現在御審議いただいておる法案にかかわることでございますので、その点について、法改正を前提にした御議論は審議会の方ではしていただいていないということで先ほど御答弁をさせていただきました。

 具体的には、今議員の方から、先ほど来、一〇・一問題との関係では期間制限違反の部分もございますけれども、今回の改正法案におきましては、先ほども別の方のときの御議論にありましたように、届け出制について許可制に一本化するということもございまして、現行法では、違法行為の類型については無許可、無届けの派遣の受け入れということでございますけれども、そういった点についても変更になるということもございますが、御議論いただいたのは、あくまで先ほど申し上げたような点についての行政解釈についての御報告をし、御意見を賜ったというものでございます。

高橋(千)委員 やはり、こういうプロセスの一つ一つが余りにも誠実でないと言わなければならない。労政審をこれまでは三者構成でやってきたんだと議論をしておきながら、肝心のところで、別にもう十分足りている、そして、あとは行政解釈だけやればいいんだ、お任せすると。

 でも、そうじゃないと思うんですよ。今議論をしていることは、だって今、私はまだ専門業務の中身だってしゃべっているわけじゃないし、まだこれからいろいろな議論があるわけですよ。そこと大きくかかわっていくんだというときに、もう決まっちゃったわけでしょう、これは。これで終わったというわけですよ。そういうやり方が不誠実だと思うんです。

 そこで、この中身について一つ質問します。

 労政審で決まったみなし規定の行政解釈、これは、申し込んだとみなされる労働条件の内容です。これは、前の、つまり、みなしが発生する直近の労働条件、それを直接雇用という形に当てはめるわけですよね。そして、労働契約の期間は、労働契約に含まれる内容がそのまま適用される。つまり、直近の契約が一年なら一年、三カ月なら三カ月。後は切られるんですよ。そういうことが、この解釈を見ると書いてあります。

 だけれども、これは長妻大臣、小宮山大臣に対して私は同じことを繰り返し質問し、確認をしました。反復雇用を繰り返して、実質、期間の定めのない雇用と同じように働いていた労働者が、直近が三カ月の雇用契約では、直接雇用となっても三カ月で切られるのかという問いに対して、実質的なことも判断していく、つまり、三カ月がずっと続いていて何年ですよ、そういうことをちゃんと認めるということを答弁しているんです。

 何にも反映されていない。どうですか。

坂口政府参考人 今、委員の方から御指摘ございましたように、この労働契約申し込みみなし制度による、みなされる労働契約の申し込みの内容でございますけれども、これにつきましては、違法派遣のあった時点における派遣元と派遣で働く方の労働条件と同一の労働条件になるということでございます。

 今、当時の国会の審議等も踏まえて議員の方から御指摘がございましたけれども、そういった御指摘の場合については、例えば、自動更新とすることが合意されているかどうかによっても異なるということでありますから、まさに委員が今おっしゃったように、実質的な判断ということで判断されることになるということでございます。

高橋(千)委員 それをどこにも書いていないんですが、どこで担保してくださいますか。

坂口政府参考人 こういった考え方については、当時ないし私も先ほど答弁をさせていただいたということでございますが、行政解釈として示させていただいたものについてということになりますと、先ほど来申し上げましたように、今回、この労働契約申し込みみなし制度につきましては、本質的には民事的な効力を有する制度ということで、最終的には司法の判断になるということでございます。

 今回、労使からの御意向もあって、できるだけ、司法判断に最終的にはなるんだけれども、基本的な部分について、一定の行政としての考え方というものも明らかにしてもらいたいということで、させていただいたということでございます。

 今の点につきましては、先ほど申し上げましたように、実質的な判断ということで、個別具体的に実態に応じてまさに実質的な判断がなされるということではあるわけでございますが、そういった性格からいくと、最終的には司法の判断ということになりますので、行政解釈としてします通知の中身からは割愛をさせていただいたというものでございます。

高橋(千)委員 実質的なことで判断していくということを重ねて答弁されましたので、そこを確認したいと思う。

 ですから、本当にこれは言えば切りがないくらいいろいろな問題があって、全然この先、問いが残ったんです。だけれども、その中でも、貴重に残してきた大事なものを本当に乱暴に打ち消されるのではないか、そういう、何といいましょうか、怒りでいっぱいであります。

 改めて、さっき言ったように、審議をし直して、今のみなし規定をしっかりと生かしてやってみる、そういうことを訴えて、終わりたいと思います。

渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.