衆議院

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第16号 平成27年5月27日(水曜日)

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平成二十七年五月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 後藤 茂之君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 松野 博一君 理事 西村智奈美君

   理事 浦野 靖人君 理事 古屋 範子君

      尾身 朝子君    大岡 敏孝君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      加藤 鮎子君    木村 弥生君

      小松  裕君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    瀬戸 隆一君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      谷川 とむ君    豊田真由子君

      中川 俊直君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    橋本  岳君

      比嘉奈津美君    堀内 詔子君

      牧原 秀樹君    松本 文明君

      三ッ林裕巳君    宮崎 謙介君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      阿部 知子君    小川 淳也君

      大西 健介君    岡本 充功君

      中島 克仁君    山井 和則君

      足立 康史君    井坂 信彦君

      牧  義夫君    松浪 健太君

      輿水 恵一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君

    …………………………………

   議員           井坂 信彦君

   議員           今井 雅人君

   議員           浦野 靖人君

   議員           西村智奈美君

   議員           山井 和則君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      山本 香苗君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    高階恵美子君

   政府参考人

   (内閣法制局第四部長)  高橋 康文君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            生田 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  坂口  卓君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  長妻  昭君     小川 淳也君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     尾身 朝子君

  豊田真由子君     八木 哲也君

  松本  純君     大隈 和英君

  村井 英樹君     宮崎 謙介君

  牧  義夫君     松浪 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     木村 弥生君

  大隈 和英君     瀬戸 隆一君

  宮崎 謙介君     村井 英樹君

  八木 哲也君     豊田真由子君

  松浪 健太君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     松本  純君

    ―――――――――――――

五月二十六日

 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(井坂信彦君外五名提出、衆法第二二号)

同月二十一日

 難病と長期慢性疾病、小児慢性特定疾病の総合的な対策の充実に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第九九三号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第一〇七〇号)

 新たな患者負担増をやめ、窓口負担の大幅軽減を求めることに関する請願(中根康浩君紹介)(第九九四号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第九九七号)

 同(古川元久君紹介)(第一〇〇五号)

 同(堀内照文君紹介)(第一〇〇六号)

 同(大西健介君紹介)(第一〇四六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇四七号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第一〇六四号)

 同(本村伸子君紹介)(第一〇七九号)

 パーキンソン病患者・家族に対する治療・療養に関する対策の充実に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第九九五号)

 同(中川俊直君紹介)(第九九六号)

 同(中根康浩君紹介)(第一〇一四号)

 同(大平喜信君紹介)(第一〇五八号)

 同(平口洋君紹介)(第一〇五九号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第一〇六六号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第一〇六七号)

 同(馳浩君紹介)(第一〇六八号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(佐藤茂樹君紹介)(第九九八号)

 同(堀内照文君紹介)(第一〇一三号)

 同(宗清皇一君紹介)(第一〇四九号)

 同(高木宏壽君紹介)(第一〇五六号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一〇六五号)

 同(山本拓君紹介)(第一〇八〇号)

 同(島田佳和君紹介)(第一〇八四号)

 同(井坂信彦君紹介)(第一一〇九号)

 同(古屋範子君紹介)(第一一一〇号)

 障害児・者の介護・福祉・医療制度の抜本改正に関する請願(堀内照文君紹介)(第一〇〇一号)

 障害者福祉についての法制度の拡充に関する請願(門博文君紹介)(第一〇〇二号)

 同(上田勇君紹介)(第一〇五〇号)

 同(神田憲次君紹介)(第一〇五一号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一〇六二号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一〇七一号)

 同(島田佳和君紹介)(第一〇八二号)

 同(今津寛君紹介)(第一一一一号)

 同(岡田克也君紹介)(第一一四四号)

 同(岸本周平君紹介)(第一一四五号)

 同(熊田裕通君紹介)(第一一四六号)

 同(山田賢司君紹介)(第一一四七号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一〇〇三号)

 同(宮本徹君紹介)(第一〇〇四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一〇二五号)

 同(池内さおり君紹介)(第一〇二六号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一〇二七号)

 同(大平喜信君紹介)(第一〇二八号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇二九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇三〇号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一〇三一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇三二号)

 同(清水忠史君紹介)(第一〇三三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇三四号)

 同(島津幸広君紹介)(第一〇三五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一〇三六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇三七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一〇三八号)

 同(畠山和也君紹介)(第一〇三九号)

 同(藤野保史君紹介)(第一〇四〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第一〇四一号)

 同(真島省三君紹介)(第一〇四二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇四三号)

 同(宮本徹君紹介)(第一〇四四号)

 同(本村伸子君紹介)(第一〇四五号)

 保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(堀内照文君紹介)(第一〇〇七号)

 安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇〇八号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現をすることに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第一〇〇九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇一〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇一一号)

 同(宮本徹君紹介)(第一〇一二号)

 同(島津幸広君紹介)(第一〇四八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一〇五四号)

 同(堀内照文君紹介)(第一〇五五号)

 全国一律最賃・時給千円以上の実現に関する請願(宮本徹君紹介)(第一〇一五号)

 同(大平喜信君紹介)(第一〇六一号)

 同(本村伸子君紹介)(第一〇八一号)

 安心して受けられる医療の実現を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇二一号)

 お金の心配なく誰もが必要な医療・介護を受けられるようにすることに関する請願(畠山和也君紹介)(第一〇二二号)

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一〇二三号)

 七十〜七十四歳の患者窓口負担を一割に戻すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇二四号)

 全てのウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援とウイルス検診の推進に関する請願(今津寛君紹介)(第一〇六〇号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一一四二号)

 同(吉川貴盛君紹介)(第一一四三号)

 国鉄年金の附帯決議の履行等に関する請願(池内さおり君紹介)(第一〇六九号)

 労働法制の全面改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇八八号)

 同(池内さおり君紹介)(第一〇八九号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一〇九〇号)

 同(大平喜信君紹介)(第一〇九一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇九二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇九三号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一〇九四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇九五号)

 同(清水忠史君紹介)(第一〇九六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇九七号)

 同(島津幸広君紹介)(第一〇九八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一〇九九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一〇〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一一〇一号)

 同(畠山和也君紹介)(第一一〇二号)

 同(藤野保史君紹介)(第一一〇三号)

 同(堀内照文君紹介)(第一一〇四号)

 同(真島省三君紹介)(第一一〇五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一〇六号)

 同(宮本徹君紹介)(第一一〇七号)

 同(本村伸子君紹介)(第一一〇八号)

 憲法を生かし安定した雇用を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一一一九号)

 同(堀内照文君紹介)(第一一二〇号)

 全国一律最賃・時給千円以上の実現を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一二一号)

 同(池内さおり君紹介)(第一一二二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一一二三号)

 同(大平喜信君紹介)(第一一二四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一二五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一二六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一一二七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一二八号)

 同(清水忠史君紹介)(第一一二九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一三〇号)

 同(島津幸広君紹介)(第一一三一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一一三二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一三三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一一三四号)

 同(畠山和也君紹介)(第一一三五号)

 同(藤野保史君紹介)(第一一三六号)

 同(堀内照文君紹介)(第一一三七号)

 同(真島省三君紹介)(第一一三八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一三九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一一四〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第一一四一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(井坂信彦君外五名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第四部長高橋康文君、厚生労働省労働基準局長岡崎淳一君、職業安定局長生田正之君、職業安定局派遣・有期労働対策部長坂口卓君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 先日、与党はもう派遣法の質疑に取り組まれたかと思いますが、我々野党はきょうが委員会での実質的な審議入りということで理解をしております。

 まず冒頭、私も多少かかわりがありますので一言申し上げておきたいと思いますが、例の一〇・一ペーパーについて、きのうの日付で、厚生労働大臣、塩崎大臣の名前で、「今回の労働者派遣法改正案審議における御指摘事項について」という紙が出ております。もう多くを私の方から御紹介等はいたしませんが、これを拝見して、一から六までございます。一から六までございますが、一から四は私は取るに足らない話だと思います。

 何か民主党さんはここに大分時間を費やされた、これまでの一般質疑等でもこの点に時間を費やされてこられましたが、前回も申し上げたように、私はこの紙、要は私が役所から頂戴した紙、これについては全く違和感がありませんでした。

 むしろ、当時、私は、厚生労働省に対して、いわゆる長妻プランや二十四年の法改正、労働契約申し込みみなし制度等に係る経済界の認識、これを教えてほしいということで申し上げたわけでありまして、全く紙について違和感はないし、繰り返しになりますが、予算委員会で私が総理に質問をした際にも、何か厚生労働省からの情報に影響されたことはみじんもない、むしろ、なるほど、経済界の主張はそういう面があるのかということで理解をいたしたことを改めて申し上げておきたいと思います。

 そうした意味では、この二十六日付の大臣の紙、一から四は私はどうでもいい。むしろ五と六、五ですね、しっかりと質疑者の趣旨を深く酌み取って誠実に答弁していくんだ、こういうことをおっしゃっています。まさにぜひお願いしたいと思います。

 今回の派遣法を初めとする労働法制は、まさに日本の労働社会のあり方、日本の産業のあり方、これを決する大変重要な機会だと思っておりますので、真剣に御対応いただきたい、そのように申し上げておきたいと思います。

 この点について、大臣から、審議に向き合う姿勢みたいなもの、塩崎大臣に姿勢というのも大変僣越でありますが、紙が出ていますので、改めて、前半は結構です、要は一〇・一問題はもう私はどうでもいい、むしろ、この派遣法の審議に向き合う大臣の姿勢、御紹介をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今、一〇・一ペーパー問題についてのさまざまな御指摘、そしてまた、その他の委員会運営における私に対する御指摘やあるいは厚生労働省に対する御指摘について、この二枚紙にしてお届けをしたところでございます。

 一から四まではコメントしなくていいということでありますけれども、五、六、これにつきましては、質問の御趣旨を十分酌み取っていないというケースがあって、私にも届いていなかったりすることもございましたので、しっかりとまず質問の趣旨を捉えた上でちゃんとした答えを事前に準備するということで、真摯に御議論いただくための姿勢をこちらもしっかりと持つように、こういうことで反省を込めて申し上げた、こういうことでございます。

足立委員 ぜひよろしくお願いします。

 私、まず冒頭、今回の派遣法の背景にある部分というのは、一言で言えば、民主党政権時代のいわゆる長妻プラン、あるいは二十四年の法改正による労働契約申し込みみなし制度、これについて政府の見解、大臣の見解を改めて聞いておきたいんですが、要すれば、今まで一般質疑でもこの労働法制、派遣法については若干の議論がございましたが、私が大変違和感を持っているのは、私の基本的な構図の理解はこういう構図なんです。

 結局、民主党政権時代に長妻大臣が、二十六業務についての適正化プランですか、そういうのを打ち出された。それによって、あるいはその後、二十四年の法改正、これも民主党政権時代の法改正だと思いますが、みなし制度というのが導入された。労働社会のあり方、労働社会の実態を踏まえない、大変問題のあるプランであり、問題のある法改正だったと私は思っています。

 それに対して、今回の派遣法は、そうした混乱をフォローするというか、混乱をもう一回収束するための取り組みであって、むしろ、民主党時代の長妻プランと法改正によって窮地に追いやられてしまっている労働者の方々をもう一度救済するための法案をせっかく与党が出しているのに、何か民主党は一〇・一問題とかいって騒いで、そしてしっかりとした審議にも入らない、まあ、きょうからですけれども。

 それから、その内容についても若干、私に言わせれば、総理もきのう、安保でレッテル張りとか言っていましたけれども、それはともかくとして、労働法制もぜひ、レッテル張りとか揚げ足取りとか言葉尻とか、そういうことを捉えるのではなくて、あるいはイデオロギー闘争をするのではなくて、本当に労働社会のあり方にとってどういう労働法制が一番いいのかということを真摯に我々も議論していきたいし、政府にもお答えをいただきたい、このように思っているわけであります。

 そうした意味でいうと、今申し上げた長妻プランや労働契約申し込みみなし制度、この民主党時代の制度についての総括、これをはっきりさせないと、またうやむやになるわけです。厚生労働省のお役人さんは、当時も民主党政権の部下ですから言葉はなかなか難しいと思いますが、塩崎大臣、安倍政権の厚生労働大臣である塩崎大臣の、長妻プランやみなし制度に対するある種の総括、これを開陳いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 平成二十二年二月に実施をされたのが、今お話ございました専門二十六業務派遣適正化プラン、今、長妻プランとおっしゃったものでございますが、いわゆる専門二十六業務と称して違法派遣を行う者に対する集中的な指導監督を実施した結果、期間制限に係る行政指導件数が減少したことから、その時点においては一定の効果はあったものと考えるところでございます。

 しかし一方で、いわゆる専門二十六業務の専門性については時代とともに変化をするなど、対象業務に該当するかどうかということを、派遣で働く方や派遣先、派遣会社、それぞれにとってわかりにくいという課題があったというふうに思いますし、それで、本年十月より労働契約申し込みみなし制度の対象となることも相まって、平成二十四年改正、今御指摘がございましたが、この改正の際の自公民の三党共同提出の附帯決議でも、わかりやすい期間制限とするよう早急に検討することが求められていたわけでございます。

 こうしたことから、今回の見直し案では、現行の仕組みを廃止して、業務にかかわらず適用される共通の期間制限を設けて、働く人に着目をしたわかりやすい制度にすることとしたというのが、今回の法改正の、今二つの御指摘になられたことを踏まえた上での対応、こういうことでございます。

足立委員 今御紹介があったように、民主党政権時代にまさにわかりにくい制度になってしまって、労働側にも経営側にも大変いろいろ問題が起こってしまったので今回の法改正に至った面も大きいわけでありまして、今、附帯決議の御紹介もありましたが、ぜひ、労使双方にとってわかりやすい、かつ、これからの未来の、次代の労働社会のあり方をしっかりと皆でつくっていきたい、こう思っているわけであります。

 今、大臣がわかりやすくということで附帯決議を御紹介くださいましたが、私は、今の政府案はわかりにくいと思います。

 冒頭、民主党に対してちょっと言及しましたので、私は何か自民党の回し者か、こう思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう面はありませんが、実は、自民党が公明党さんと調整してつくられたもとの案、これは比較的まだましだったと思うんですが、きょう副大臣がいらっしゃっていて大変恐縮でありますが、公明党の修正によって大変わかりにくくなった、こう私は思っています。

 ただ、この点についてはきょう後半で改めて質問に入りたいと思いますので、私は、今の閣法、今の自公政権、政府が出してきた法案について、決してわかりやすいと申し上げているわけではないので、そこだけ補足をしておきたいと思います。

 中身に入る前に、きのう、我が党の井坂政調代理を中心とする我が党のメンバーが提出をしましたいわゆる同一労働同一賃金法案、これは大変……(発言する者あり)横で高橋委員が、足立さんはこれに賛成なのかと聞かれましたが、当然、党として提出しておりますので、趣旨には賛同しているということであります。

 ただ、大臣、これは大変重要な問題提起だと思うんですね。ヨーロッパの労働社会にあって、いわゆる均衡待遇だけではなくて均等待遇も法制化されている中で、なぜ日本ではできないのかという非常にシンプルな提案なわけでありまして、私は、これについてやはりしっかりと政府の考えをこの法案審議にあってはお聞きしておかなければ、きのう、我々は提出をさせていただいているわけですから。

 詳細はまた、きょう、井坂委員の方から一時間とってじっくりやっていただく予定でありますが、この同一労働同一賃金法案について、特にこれは、日本の労働社会にあっても職務給で働いている人もいるわけですから、必ずしもみんながみんなメンバーシップ制の中で、伝統的な雇用体系の中で働いている方だけではないわけですから、そうしたふえてきている職務給のような、そういう労働者の方々のための環境整備として、いわゆる井坂法案というのは、私はこれはしっかりと向き合って、政府だけではなくて与党もぜひ向き合っていただいて捉えていただきたいと思うんですが、大臣、どうですか。

塩崎国務大臣 これはもう繰り返し、同一労働同一賃金の問題につきましては、重要な考え方であるということは総理も私どももずっと言ってきたことでありまして、今回、井坂法案というネーミングになっていますが、民主、維新、生活の共同提出の法案について、概要を見るだけでも、ここにいわゆる同一労働同一賃金の哲学が入っているわけでありまして、私どもとしても正面から向き合っていかなきゃいかぬとは思っております。

足立委員 しっかり正面から向き合ってくださるということですので、あとは井坂委員にお任せをいたしたいと思いますが、この点について、私、井坂先生に譲る前に大臣にもう一言いただきたいのは、同一労働同一賃金法案というのは、井坂先生も非常に苦労されながらまとめてこられた、結構丁寧につくっている法案なんです。抽象的な概念として、均等待遇というものを日本社会に適用するに当たってさまざまな課題があろうことは私もよく理解ができるわけでありますが、一方で、一歩前進ということも必要なわけで、私は、これから日本の労働社会のあり方を考えたときに、井坂法案に提示されている内容をよく吟味いただいて、何らかの工夫、要は、ゼロ、一じゃないですね、国会は。やはり何かこの法案から酌み取っていただけるものが僕は絶対あると思うんですよ。

 だから、特に今は自公政権は数で大きいですから、握り潰そうと思えば、安保であれ労働法制、派遣法であれ、握り潰すことはできます。できますが、さっき申し上げたように、次代の労働社会のあり方を考えるときに、この井坂法案から酌み取って、何らかの工夫、法制的な工夫です、この法制的な工夫は、坂口部長がきょうおいでですが、厚生労働省の方々がしっかり知恵を出せばいいわけであって、私は大臣に何らかの工夫をやはりお願いしたい、こう思うわけです。

 しっかりと、ゼロ、一ではない、野党の提案を握り潰すのではない、何かやはりそこで一工夫考えてみる、検討してみる、この野党の提案の法案について何らかの検討をするんだと。井坂委員に譲る前に、一言、検討するとお願いします。

塩崎国務大臣 今、足立先生から御指摘がございましたように、今回の、お出しになられたこの法案につきましての同一労働同一賃金については、派遣労働について特に限定して言っておられるように受けとめております。

 そういう意味では、先生も先ほどお話がありましたけれども、労働者の派遣というのは、派遣労働者が従事する仕事の内容が労働者派遣契約の中で、そういうところで明確になっておって、賃金も通常それに対応するものであることから、職務給に適した面もあるということも承知をしているわけでありますが、一方で、同一労働同一賃金の実現のためには解決すべき問題があるということは先ほど先生もおっしゃったとおりで、非正規労働者の均等・均衡待遇の推進に向けて、具体的に取り組みが可能な事項について着実に今実行してきているところであります。

 それは、パートタイム労働者とかあるいは有期雇用契約の場合とか、そういうことをやってきたわけでありまして、今お話がありました同一労働同一賃金のあり方については、政府としては、諸外国における職務給がなぜそうなっているのかとか、いろいろなことをやはり調査研究しよう、こう言っているわけでありますが、今回、こうして法律をお出しいただいたわけでありますので、今申し上げたように、正面から向き合って、何ができるか考えなきゃいかぬというふうには思っております。

 いずれにしても、投げられた球はしっかり受けとめなきゃいかぬというふうに思っております。

足立委員 ありがとうございます。何ができるか考えなあかんということで、検討をいただくということで御答弁いただきました。

 ちょっと次に移りたいんですけれども、もう一言、だんだん聞きたくなってくるんです。

 今おっしゃったように、パートとかには今、均等が入っています、パート労働法。派遣就業というのは非常に、労働者のボリュームとしてはそんなに大きくないかもしれませんが、日本の労働社会のあり方を考えるに当たっては私は重要な法制度だと思っています。今回は派遣法の審議です。その派遣の分野に、均等というものが考慮されるべきような面とか部分というのは全くないんでしょうか。

 要は、正規があり非正規がある、非正規の中にはパートや有期がある、そして派遣もある。そうした中で、井坂法案の最大のポイントは、私の理解するところは、派遣だけ均等が全く考慮もされないということになっている、でも、派遣にあっても均等ということが考慮され得るような側面とか部分とかいうのは、私はゼロじゃないと思いますが、ゼロでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げたように、労働者派遣というのは、労働者派遣契約などで何をするかという仕事の内容について明確になっているわけで、通常、賃金もそれに対応するものということになっておりますから、職務給に適した面もあるというふうにさっき申し上げたわけであります。

 しかし、では、それが全てかというと、パートの場合の均等もやはり条件があってのことだというふうに思いますが、そこの辺は、本当にいろいろなことを経験してきた方と、初めてやる同一労働をされる方が同じように処遇されるかどうかというのは、また今度はいわゆる派遣先の正規の方たちの御意見も多分あるでしょうから、そこのところはやはり課題として考えなきゃいけない問題なので。

 しかし、先生がおっしゃったように、派遣に限って言った場合だったらば、何らかの均等の要素というのはあり得るのではないかという意味においては、私もそのとおりだというふうに先ほども申し上げたところでございます。

足立委員 おっしゃるとおりで、派遣というのは職務給に適する面があるとまさに先ほどもおっしゃっていただいて、今もおっしゃっていただいたわけですが、そうであれば、何らかの工夫、先ほどおっしゃったように、パートであれ、ほかの非正規の働き方であっても、条件をつけながら均等という概念を入れてきているわけです。

 であれば、今回の井坂法案についても、派遣法の審議に当たって、別々じゃないですよ、派遣というのがやはり今焦点になっているわけですから、法案審議だし、井坂法案がターゲットにしているのも実はそこの派遣の分野なんです。したがって、今大臣がおっしゃったように、今、井坂法案を捉まえて何か一歩前進する、その唯一のチャンスというか唯一の機会なわけでありまして、私は大臣には、この後、井坂委員との一時間にわたる質疑の中で、この同一労働同一賃金法案に関する政府・与党の御対応について、ぜひ前向きに、真摯に、真面目に前進をさせていただくようお願いをしておきたいと思います。

 ちょっと細かいことに、具体的な質疑に入りたいと思います。

 まず前半は、今ありました、均等とは言いませんが、今もこの派遣法に規定されている均衡待遇についての議論であります。

 新しい、改正法案の三十条の三に、「均衡を考慮した待遇の確保」という条文がございます。これは、もともとこういうものがあるわけでありますが、この条文は配慮義務となっていますが、これは派遣元に何を求めているんですか。

 きょうは時間も限られているので、端的に言うと、この条項に基づいて行政指導を、要はエンフォースメント、この条項はエンフォースされているんですか。この条項に基づいて厚生労働省は行政指導をされたことがあるんですか。これをちょっとお願いします。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今、足立議員の方から御紹介がありましたこの新第三十条の三でございますけれども、これは今委員からもありましたように、今回、中身についての改正をしたというものではございませんが、派遣元事業主に対して、派遣労働者の賃金を決定する際に、一定の、派遣先との関係での配慮を求めているというものでございまして、具体的には、派遣先に対して、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先労働者の賃金の水準に関します情報の提供を求めるということをした上で、その情報を参考にしながら派遣労働者の賃金の決定をするというようなことの配慮を求めるというものでございます。

 お尋ねの行政指導の関係でございますけれども、この関係について、実際に行政指導を私どもが行った件数ということについてはございませんけれども、私どもとしましては、こういう配慮事項となった事項について派遣元に真摯に取り組んでいただくということで、しっかり丁寧な説明を行い、周知して、しっかりその実現を図ってまいりたいということでございます。

足立委員 今、平成二十四年に入った条文でありますが、平成二十四年以降、この条文に基づいて行政指導をした数字というか数はないとおっしゃったけれども、数字を把握していないだけじゃなくて、そもそも行政指導をしていないという理解でいいですか。

坂口政府参考人 具体的に私どもの労働局の方で行政指導に至った件数もありませんし、行政指導をしたという報告も……(足立委員「事実がない」と呼ぶ)はい、事実、そうしたものはないということでございます。

足立委員 まさに、私も改めて今回均衡待遇というものを焦点にして質問いたしたいと思いましたので、ちょっといろいろ条文を整理しているわけですが、この新しい三十条の三、一応、「均衡を考慮した待遇の確保」と書いてありますが、一体派遣元に何を求めているのか、実はよくわからないんです。

 これは法律ですから、国民がこの法律を受けとめて、派遣元事業主に対して待遇の確保を求めているわけですが、一体何をしてほしいのか、実はこの条文ではわかりません。だから、訓示規定に近い、こういうのを訓示規定とは言わないかもしれませんが、訓示規定に近い条文のような気がいたしております。

 そういう意味では、この三十条の三自体ではなくて、この三十条の三を受けてさらに追記をされているような条文が一層重要だと私は認識しています。

 そして、例えば、今回の改正法で追加をされた三十一条の二の二項に、「待遇に関する事項等の説明」ということで、派遣元事業主は、派遣労働者から求めがあったときは、考慮した事項について説明しなければならない、こういう条文が今回の改正案で追加をされているわけであります。

 これは説明義務ですが、派遣元は何をすればいいんですか。

坂口政府参考人 お答えします。

 今議員の方から御紹介いただきました今回の派遣法の三十一条の二の第二項のところに、派遣元事業主は、派遣労働者から求めがあったときには、先ほどの賃金の決定もそうなんですけれども、そういった決定をするに当たって考慮した事項について派遣労働者に説明しなければならないということでございます。

 これは、まさに先ほど足立委員の方からも御指摘ございましたように、平成二十四年の改正で、先ほどのような、賃金の決定に当たっての配慮義務ということは課したわけでございますけれども、先ほども行政指導の関係についても御紹介しましたが、そういった配慮に当たっての派遣元事業主の取り組みということの実効性をより高める、その過程では、実際に配慮される対象である派遣労働者の方の納得性を高めるという観点で、今回、労政審の建議を経て、こういう形で改正をしているというものでございます。

 具体的な内容としましては、まさしくそういった考慮事項について派遣労働者に説明ということでございますので、例えば、先ほど申し上げました賃金の関係であれば、派遣先労働者の賃金水準の情報等、その均衡待遇の確保のためにどういった事項を考慮したかということについて派遣労働者に対して説明をすることを義務として今回新たに課すというものでございます。

足立委員 そうすると、これは口頭でも、一言こうだと言えばいいわけですね。

坂口政府参考人 説明の方法につきましては、派遣で働く方の求めに応じて説明をきっちりしていただくということが趣旨でございますので、口頭でも構わないと考えますが、その際には、納得性を高めるという趣旨からいけば、丁寧に御説明をしていただくということをお願いしたいということで考えております。

足立委員 政府の考えはわかりました。

 次に、四十条の五項。これも同じような趣旨で、賃金水準について、四十条、「適正な派遣就業の確保等」ということで各項が立っております。その中で五項、今回追加をされたわけでありますが、派遣元事業主の求めに応じて賃金水準等に関する情報、これを提供するように配慮しなければならないというふうに書いてございます。

 これは、派遣元事業主は、もともと均衡待遇については配慮せなあかんわけです。一体どのような情報を派遣元事業主は求めるか。派遣元事業主の求めに応じてですから、派遣元事業主は恐らく情報を求めます。そうですね。求めることを政府は想定しているはずです。どういう情報を派遣元事業主は求めますか。

坂口政府参考人 お答えします。

 今、足立委員の方から御紹介ございました第四十条の第五項でございますけれども、今ありましたように、これは派遣先に対して、派遣先の方での一定の配慮を求めるという条項でございます。

 これにつきましては、これまで努力義務でありましたものを配慮義務という形にし、今回、賃金の関係についての情報提供ということを改正したというものでございますが、これは、先ほどの、派遣元事業主の方で賃金決定に当たって派遣先の状況等を配慮した上で決定するという配慮義務を課しているということの、これまた実効性をより高めるというために、その派遣元事業主の方は、派遣先の労働者との関係での賃金決定の水準の配慮をしようと思っても、派遣先事業主の実際の賃金水準の状況がわからないということでは、なかなか配慮義務の実現につながっていかないという面もあるのでということで、今回、派遣先の方に対してこういった規定を設けたというものでございます。

 具体的には、派遣労働者の方と同種の業務に従事する派遣先の労働者であったり、あるいは、ずばりでなくても、例えば派遣労働者の方が属する職種グループについての賃金の水準の情報ということを提供しましたり、あるいは、派遣先の方で労働者を募集されるというときに、その派遣労働者の方と、先ほど申し上げたような、同じような仕事あるいは同じような職種グループに属する方の募集時の求人条件ということを派遣元に情報提供していただくということをお願いするというものでございます。

足立委員 結局、今おっしゃっていただいた、まあ、労働省令の中身も大体そんなところだろうと思いますが、今おっしゃったように、派遣先の賃金水準もあれば、同じような業種の賃金水準もあれば、あるいは、ここに書いてあるような、ハローワーク等で求人の際に提示をしている求人情報、「募集に係る事項」ですから、求人に当たってハローワークに出している例えば求人票のような情報、そういうことでもいいことになっていますね。

 普通は、派遣元は派遣先の賃金水準を知りたいんですね。でも、この条文だと、派遣先の賃金水準を知りたいと派遣元が求めても、「又は」ですから、このうちどれか、労働省令で定めるもののうち一つでも、例えばハローワークに募集をかけている情報だけでも、これは配慮したことになる。

 多分そうだと思いますけれども、まず、そういう理解でいいかどうか。そんなものでこれは十分ですか。

坂口政府参考人 今委員御指摘ありましたように……(足立委員「簡潔でいいですよ」と呼ぶ)はい。

 先ほど申し上げましたように、同種の業務あるいは同種の職種グループの賃金水準をずばり派遣先の方が情報提供できればよろしいんですけれども、なかなか同じような方がおられない、あるいはそういった方についての状況の情報提供がなかなか難しいという場合には、新規に募集される求人条件というようなものでの同種性の情報ということが提供できれば、それで構わないという趣旨でございます。

 十分かという御質問については、いろいろ、派遣先の方でのどういった情報をするかということについては、最終的には派遣先が提供できる情報を取捨選択して判断するということになっておりますので、そういった形で、派遣先については配慮をしていただくような義務を守っていただくということでお願いするというものでございます。

足立委員 私は不十分だと思いますが、加えて、この条文、先ほど御答弁いただいたように、派遣先の労働者に関する賃金等の情報提供等について、努力義務を配慮義務に格上げをしたと。これは、私は最初、あれ、これは格上げかなと思ったんです。多分、多くの方が、どう格上げなんだろう、こう思ったと思います。

 実は、きょう法制局においでいただいていますね、ありがとうございます。高橋第四部長においでをいただいていますが、努力義務を配慮義務に変えた、これは格下げじゃないんですか。

高橋政府参考人 労働者派遣法におきましては、これまでも、努力義務につきましては、何らかのことを実行して実現することに向けて努力することを求めるものと。これに対しまして、配慮義務は、配慮の対象となりました事項の実現に向けて実際に取り組むことを義務づけるものとして整理をされて、配慮義務の方がよりその程度が高いものというふうに整理されてきておると承知しております。

足立委員 一方で、きょう大臣いらっしゃいますが、厚生労働省の中でも、私もいろいろ調べると、例えば社会保障、例えば年金、例えば確定拠出年金で、以前、社会保障審議会でこういうことが議論をされていて、確定拠出年金にかかわる規定では、配慮義務を努力義務に格上げをすると。全く逆のことが行われているわけであります。

 まず、法制局第四部長、もう一度、その二つは、厚生労働省は、ある分野では格上げと言い、派遣の分野では格上げと言い、全く逆の修文を、またそれを別の分野では格上げと言っているんです。これは、法制的には理解できますか。

高橋政府参考人 法律の条文につきましては、それぞれの法律の目的、趣旨、あるいは各規定で実現しようとする意味等によりまして、適切な規定を設けるように努力しているというふうに承知をしております。

 少なくとも、今回の改正法におきましては、これまでの労働者派遣法における条文の規定のあり方を踏まえまして努力義務等の規定が整備されておるものでございまして、委員御指摘の他法については、またその他法における条文のあり方等についてそれぞれ判断されるべきものだというふうに考えております。

足立委員 これは、すると、内閣法制局の立場としては、それぞれの役所、たくさんありますね、それぞれで考えればいい、あるいは、同じ行政の、同じ厚生労働大臣のもとでも二つあっていい、こういうことですね。

高橋政府参考人 条文の規定の仕方がいろいろあると思いますので、委員御指摘のようにそれぞればらばらということではなく、先ほど申し上げましたように、それぞれの法律の目的あるいは規定のあり方を踏まえて、それぞれ判断を行っているというふうに承知しております。

足立委員 私はこれは大問題だと思っていまして、とにかく役人がこれを読んでいるんじゃないんですから。つくるのは政府ですけれども、これを読むのは国民なんですよ。

 派遣法を読むときはこう読む、全く同じ言葉ですよ、全く同じ言葉を、努力なのか配慮なのかということで、派遣法ではこっちが格上げ、年金ではこっちは同じ条文だと格下げ、こんなことでこの法案が適切にエンフォースされるとは私は思いません。必ずこれは、実際に派遣元、派遣先にやってほしいことをしっかりとわかるように明確にしていくことが不可欠である、こう申し上げておきたいと思います。

 もう時間がないので、公明党問題に移りたいと思います。問題と言ったら怒られますね。

 今回の与党合意で、さまざまな修正がなされました。私は、公明党の修文、これは、先ほど冒頭申し上げたような、民主党を初めとする野党の揚げ足取り、レッテル張り、言葉尻を捉える、あるいはイデオロギー、そうした労働社会の未来に反するような、要は国会にふさわしくない、そうした議論におもねた非常にレベルの低い対応だと思っているんです。

 何で、今回の改正に当たって、派遣就業が臨時的、一時的なものであるという原則を法律案に格上げをする必要があったんですか。

塩崎国務大臣 今、臨時的、一時的を原則とするというところの修正についてのお話がございましたが、これは、労働政策審議会の建議において、派遣労働というのは雇用の安定やキャリアアップの観点で問題などがあることから、派遣労働を臨時的、一時的なものと位置づけることを原則とする考え方が実は示されておったんですね。今回の改正案は、その考え方をより明確にするということでこれを前に出してきた、こういう格好でございます。

 一方で、派遣元で無期雇用される派遣で働く方については、有期雇用で働く方に比べて雇用の安定とかキャリアアップの点で問題が相対的に少ないわけでございますので、今回の改正案では臨時的、一時的の原則の例外と位置づけているというところでございまして、法案の趣旨に反するということではないというふうな理解でございます。

足立委員 今、皆さんおわかりいただけると思いますが、まさに大西委員がそこでおっしゃっているように、これは建議に書いてあった、そのとおりです。でも、今回の法律にあっては、最初の閣法では入っていなかった。それを、何か民主党にわあわあ騒がれたから、この建議の内容を法律の条文に格上げしたわけですよ。

 でも、今大臣がいみじくもおっしゃったように、派遣就業には有期の派遣就業もあれば無期の派遣就業もあるんです。もともと二十六業務と言われていたような専門的なプロフェッショナルもいるんです。そういう派遣も派遣就業なんです。

 ところが、この臨時的、一時的の原則というのは、要すれば、安定性が十分に確保されているかどうかわからない有期の派遣労働者こそ原則であって、より安定性の高い無期雇用派遣労働者は例外であるということを高らかにこの法案で何でうたう必要があるんですか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員がお尋ねになったように、もちろん、派遣労働者の中には無期の派遣労働者、有期の派遣労働者がおるわけでございますけれども、やはり派遣という働き方の労使双方のニーズの中で一番それが機能している、あるいはそういったニーズということになりますし、現実に、実際多数を占めている形態というのが、有期で働いておられる派遣労働者というのが多いということ。

 あと、派遣法制定以来、やはりそういった状態にあるという方々に着目して、派遣の契約、あるいは派遣労働者の保護をどう図っていくかというようなルールを定めてきているのがこの派遣労働法ということでございますので、今回もそういった方にスポットを当てた形で考えれば、やはりそういった方々にスポットを当てたところが原則で、一方で、今回、無期で雇用されるという形で期間制限の例外という形にさせていただくという方について、この臨時的、一時的の原則との関係では例外というような位置づけにさせていただいているということでございます。

足立委員 いわゆる論理的に、部長がおっしゃるのは私はわからぬではないですよ。しかし、政治が、政治でしょう、政治が与党合意で、この無期の派遣労働者というプロフェッショナルな方々は例外であるということを、建議から法律に格上げした趣旨は何ですかと言っているんです。

 加えて、附則の二条の二項では、「通常の労働者及び派遣労働者」という形で、通常の労働者でもないと。

 要は、プロフェッショナルな方々、もともと二十六業務でやっていらっしゃったようなプロフェッショナルな方々は、派遣法にあっても例外扱いされ、それが格上げですね。格上げというのは、建議で書いてあったけれども、それを法律にわざわざ、与党合意で、政治の力でそれを高らかに宣言するようにした。それから、附則の二条二項で、通常の労働者ではない、非常の労働者である、そういうふうにまた法律に書く。これは政治家としておかしくないですかと言っているんです。

 大臣か副大臣か、お願いします。

塩崎国務大臣 今、盛りだくさんの御指摘があったかと思いますけれども、基本は、当初の閣法に臨時的、一時的と書いていなかったじゃないか、今書いているのはおかしい、こういうことでございましたけれども、それについては、さっき申し上げたとおり、建議に基づいて法律をつくるというのが普通……(足立委員「格上げをした理由」と呼ぶ)ですから、それは、もともとそれを原則とする考え方だということで、原則だったわけですね。

 今回も、「運用上の配慮」というところに、臨時的、一時的であることを原則とするということで、そこのところについての考え方を明確にすべしというお声も強いということも配慮した上で、原則であるという範囲内で言っているわけですから、全てが臨時的、一時的と言っているわけではもちろんないのでありますので、そういうことであれば、では明示的に法律の中に入れ込むか、運用の中でということであります。

足立委員 この点は、山井委員も私と同じ意見なんです。高橋委員も後ろでうなずいていらっしゃいました。

 要すれば、もともと二十六業務で働いておられた方は、今回、より一般的な制度のもとに位置づけられて、その上で、改めてこれは例外であると法律で宣言している、それは政治が宣言しているんです。私は、これは公明党が世論のある種のふわっとした雰囲気に流されただけであって、全く前進じゃなくて後退であると指摘をして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、大串正樹君。

大串(正)委員 自由民主党の大串正樹でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 この派遣法の改正について、改めてお伺いしたいと思います。昨年の臨時国会でも質問させていただきましたけれども、今回は新たな部分も加わったということで、少し掘り下げた質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず初めに、雇用全般の話を少しお伺いしたいなというふうに思っております。

 この法案に関しては与野党いろいろな意見があると思いますけれども、そもそも政策というのは、ある理想の状態に近づけていく、あるいは現状の問題を解決する、そういう趣旨がなければいけないわけなんですけれども、恐らく共通の理解として我々が持っておかなければいけないのは、現在、雇用の形態が多様化していく中で、また、労働人口がこれから減少していく中で、どうやって労働力を確保していくか、そういった問題をやはり我々は共通の認識として持たなければいけないということで、まず三つのポイントがあると思うんです。

 一つは、理想的な雇用の状態を我々はどう考えるか、それから、理想と現実のギャップの中で、派遣労働というものがどのように位置づけられているか、その認識の上で、本法案の改正がその理想に向けてどのようなインセンティブを与えていくかという、この三点についてまずお伺いしたいと思います。

山本副大臣 まず、理想的な雇用というのはどのような状況かということなんですが、政府を挙げて、今、若者や女性、高齢者等を含む全員参加社会の実現ということが重要なことになっております。

 このために、一人一人が、それぞれが、ライフスタイルや希望に応じて社会で活躍の場を見出して、柔軟で多様な働き方を可能としつつ、労働環境や処遇の改善等を図ることによって、質の高い雇用を確保していくことを理想としながら高みを目指していきたいと思っておりまして、今回の法改正案も一つこの中に位置づけているわけであります。

 と同時に、もう一つ御質問がありましたけれども、派遣労働がどのように位置づけられていくべきなのか、こういった理想もありながらどういうふうに位置づけていくべきかということなんですが、もう大串委員よく御存じのとおり、労働者派遣制度というのは、労使双方のニーズというものに対応して、労働力の迅速的確な需給調整という重要な役割を果たしているものだと私たちも認識しておりますが、こうした派遣という働き方には、希望する職種や勤務地、勤務時間等の条件を満たす企業へ入職しやすいこと、ワーク・ライフ・バランスが図られやすい働き方であるという一方で、賃金の水準が、他の非正規雇用よりは高いんですけれども、正社員と比べますとまだ低いということもあり、またキャリアを形成する機会が乏しいといった課題もございます。

 ですので、こうした課題というものに対応しつつ、先ほど申し上げましたけれども、理想とする状況に持っていくためにさまざまな政策を推進してまいりたいと考えておりまして、今回、いろいろなインセンティブというものをこの法改正案の中には書いておりますが、そうしたものも含めて、しっかりとライフスタイルや希望に応じて柔軟で多様な働き方が可能になるようにしてまいりたいと考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 多分、一つのキーワードは多様な働き方という言葉であると思いますし、あとは、それぞれの雇用の環境に合わせて、それぞれの希望がかなえられるような、そういうきめ細かな対応がこれからも必要であろうかと思います。そういう意味では、派遣という形に限らず、いろいろな形の仕事の仕方というのはこれから出てくることも可能性としては挙げられるんですけれども、まずはこの派遣の問題についてもう少し掘り下げていきたいというふうに思います。

 派遣労働者というのは、まず、全体の労働者五千万人のうちの約二%程度、数字でいうと少ないんですけれども、実際の人数は百万人からいらっしゃいますので、決して人数としては少なくはない。そういった派遣という労働者の中で、いろいろなデータを見ますと、とにかく派遣という労働形態は嫌で正社員にしてほしい、そういう希望のある方も半数いらっしゃいますが、残りの半数は、派遣という働き方を、大変いい働き方、自分のライフスタイルに合っているということで、半数近い方が実際は派遣という働き方を続けたいというふうなデータもあるわけでございます。

 今回いろいろな議論がある中で、どうしても争点が、派遣労働者をできるだけ正社員化していこうという話が中心になっているんですけれども、逆に、その議論が集中することによって、今派遣という形態を好ましいと思っていらっしゃる方々にとって本当に不利益にならないのか、その点についての配慮がどのようになされているかについてお教えください。

坂口政府参考人 今委員御指摘のございましたとおり、派遣労働というのが多様な働き方で、希望する方もおられれば、正社員を希望する方もおられるということで、派遣を希望されている方についてもやはりきっちり対応ということで、今回も、待遇の改善あるいはステップアップを図るためという形での対応ということをしっかり盛り込まなければならないという考え方で法案を提出させていただいておるところでございます。

 具体的には、派遣を希望する方に対して均衡の待遇を一層推進するということで、派遣元、先の責任を強化するということ、それから、派遣元の事業主さんの方にはキャリアコンサルティングあるいは計画的な教育訓練というようなことを義務づけることによって、派遣で就業継続を希望されている方についても段階的なステップアップが図られるようにということをしっかり取り組んでいくことが重要であると考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 それぞれの能力がもっともっと高まっていくような形でのいろいろな支援体制が整うということでは、一歩前進ではないかなというふうに思っております。

 そんな中で、先ほども足立委員からの御指摘もありましたけれども、今回、臨時的、一時的という言葉が新たに加わって、我々もずっと読んでいて、臨時的という言葉と一時的という言葉はちょっと似ている感じがするんですけれども、実際に、臨時的、一時的というのが法制上しっかりとどういうふうな定義をされるのか。多分、ごらんになられている方もまだまだその意味がよくわかっていない方もいらっしゃると思いますので、もう一回ちょっと説明をしていただきたい。

 また、多様な働き方を目指していく上で、この派遣という一つの形をしっかりと、それが望ましいという方に対しても維持していく上では、やはり、これが安定している無期雇用の派遣労働者には、先ほどの話もありましたけれども適用されないという形で、しっかりとその状態も守られるということは改めて確認していきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂口政府参考人 今、まず一点目に御質問がございました、この臨時的、一時的という用語と申しますか言葉でございますけれども、一般的な意味合いとしますと、臨時的の臨時というのは定期的なものではないということでございましょうし、それから、一時的ということでの一時ということには、少しの時間とかしばらくというようなことでありますので、今回、こういう派遣労働の利用あるいは派遣労働という働き方について、臨時的、一時的なということを原則という意味合いでいけば、派遣就業が必要に応じて期間を限って行われることが原則であるという趣旨で用いているということでございます。

 二点目に御質問がございましたような無期雇用の派遣労働者につきましては、先ほども御答弁させていただきましたけれども、有期雇用の方に比べて、雇用の安定が図られているということであったり長期的な教育訓練も受けやすいというようなこともありますので、いわゆる派遣という働き方の弊害ということが少ないと考えられるので、この原則の例外ということで期間制限の例外ということにさせていただいたというものでございます。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 冒頭にお伺いしたとおり、理想的な状態に行くために、まず現状で問題は解決していくとともに、現状ある程度安定している方々に対しても、しっかりとしたサポートができるということが確認できたかと思います。

 ただ、これからますます多様化していく、いろいろな議論をしていく中で今回の議論が一番難しいところは、やはり労働の、雇用の形態というのが非常に複雑である。議論をしている中でも、例えば、派遣の話をしているのか、あるいは非正規の話をしているのか、これが若干混乱している場面も多々あります。ですから、正規と非正規という一つの分類の軸もあれば、フルタイムとパートタイムという分類の軸もあるし、間接雇用、直接雇用という分類の軸もある。

 雇用形態を私も一つのマップで整理しようと試みたんですけれども、軸が幾つもあると、どうしても一つのマップ、二次元のマップにはおさまらないなというのが、正直、整理し切れなかったところであるし、それがまた逆に、いろいろな方々からこの法案が非常に理解しにくいというふうに受けとめられるのではないかなというふうに思っております。

 さらに、この派遣という労働形態の特徴として、もともと二十六業務というふうに言われていた極めて専門性の高い人たちから一般的なレベルまで、かなり幅広い人たちが一緒の派遣という形態に含まれているということで、これについては、将来的に多様な働き方に対していろいろな対応をしていかなければいけないということです。

 今、派遣というくくりでのいろいろな調査をされていると思いますけれども、これからの労働のいろいろな情報を集めていくという上では、もう少しいろいろな派遣の中身についても、どんな特徴のある仕事があるかとか、あるいは、それぞれに対して、どれぐらいの割合の人たちが働いていて、そしてどういう処遇に差があるか、そういった細かい調査をこれからしていくことは可能かどうか、お伺いしたいと思います。

坂口政府参考人 委員の方から一連の御質問をいただいていますように、やはり派遣という働き方は多様ということで、派遣で働く労働者の方のニーズというのもまずいろいろということがございます。そういう意味では、どういうニーズで派遣という就労を選んだかというような観点でも、派遣労働者の中にもいろいろな事情があるということがございます。

 それから、今委員の方からもありましたように、どういう仕事につかれているかということについても、専門性が高い仕事から、いわゆる一般の事務であったり物の製造業務についておられる方というようなこともありますので、まさに我々も、労政審等の御議論にも資するような材料の御提供に当たっても、実態の把握ということで、いろいろ、実態調査の政府統計でありますとか、あるいは派遣の関係、許可事業者等でございますので事業報告を受けておりますので、そういった状況ということを御提供しながら、これまでも御議論いただく材料としてきたところでございます。

 いろいろな切り口もある中で、今後もやはり、制度についてのフォローアップも含めてしっかり実態の把握ということをやっていかなければならないと思いますので、そういうことに努めてまいりたいと思います。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 多様な働き方ということを一つのテーマとして考えるならば、やはり派遣という形態の中の多様性についてももう少し細かい議論が必要であろうというふうに思っております。

 それは、本法案の一つの重要なテーマでもありますキャリアアップにも関係していると思いまして、働き方、能力、あるいは課題としている仕事上のテーマによってキャリアアップの仕方というのも非常に多様化してくるのではないかなというふうに思っております。

 いろいろなデータがある中で、では、企業が派遣労働を利用する上でどういう人を雇いたいか、あるいは、どういう理由で派遣労働者を利用するかというアンケートの結果をちょっといただきましたけれども、多くが、やはり一時的、季節的な業務量の増大に対処する、あるいは必要人材を迅速に確保する、専門的な知識、技術を必要とする、こういった答えが多くなっている。

 そうしますと、派遣を採用する一番の理由というのが、採用であるとか教育の手間を省けてすぐに使いやすい、すぐに使える人材を必要としているからというふうに読み取れるわけですが、逆に言うと、誤解されているような、すぐに首が切れるからという理由とは全く逆で、必要な人材をすぐ求める上で、採用に大変な手間が会社にもかかっているわけですが、その手間を省くという意味では、労使ともに非常にメリットのある制度ではないかなというふうに思っております。

 その中でも、やはり、それをさらに質の高いものにしていくためにはキャリアアップが重要であるということでございますので、その中でどういう形のキャリアアップをしていくか、これが本法案の一番大事なところでもあると思いますし、前回もお伺いしたときに、その中身については労政審で細かく議論をしていくというふうにお伺いしたところでございます。

 ただ、先ほど来お話をしておりますように、多様化していくにつれて、極めて専門性の高い人たちのキャリアアップと、あるいは、もうちょっと基礎的な能力を高めなきゃいけないという方々のキャリアアップ、あるいは、もう少し社会的な、もっと基本的なところから社会性を身につけるといったようなレベルのキャリアアップの仕方まで、かなり幅があると思います。

 場合によっては、大学院とかに行って学び直しをしてくることによってさらにスキルを上げる、あるいは、社外の研修、企画を利用して、そういったものでスキルアップをする、あるいは、社内研修、もっと言うと、OJTなどでも十分対応できるようなキャリアアップもあると思うんですけれども、そういう多岐にわたるキャリアアップをまず想定してこれからの議論が進むかどうかということ。あとは、もっと基本的なレベルになると、例えば今、文部科学省とかでも取り組もうとしているキャリア教育というレベル、もっともっと職業観というものを若い世代のうちから身につけていただきたい、そういう部分についても少し連携をしながら、雇用が継続できるように、あるいはキャリアアップに資するような、そういったところを早い段階から連携してやっていけるようなことも検討していただけないかということを、お願いでございますが、いかがでしょうか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員の方からございましたように、先ほども御答弁の中でも触れさせていただきましたように、派遣労働者の方は、働き方についても、あるいは働く方々それぞれの能力の度合いもさまざまということでございます。

 ということで、今回、派遣会社に対して、計画的な教育訓練等の実施ということを義務づけるわけでございますが、まさに今委員から御指摘ありましたように、では、どういったことが派遣労働者それぞれのキャリアアップに資するような内容なのかということについては、一概にはなかなか言えないということでありますので、できる限り、派遣で働く方々の個々の希望とか能力とかというようなことに応じながら、派遣労働者に資する、キャリアアップに資するというような措置がとられることが重要であると考えております。

 そういった意味では、今おっしゃったような、派遣先で行われるようなOJTの活用ということもどう図るかということなども含めて、いろいろ審議会の方でも御議論いただきながら、実効性が上がるような取り組みということをしっかり行っていきたいと思っております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 今ちょっと御回答いただいた中でも、今回の法案は、派遣元にキャリアアップの義務を課しているということでございますが、現実に働いていただいて、それを正社員化していこうというふうな考え方をすると、恐らく職場では、派遣元での教育よりも、実はOJTで、派遣先で教育をする方がはるかに効果的ではないかという場面が出てくるかと思います。

 特に、日本の企業の本当の強みというのは、そういったパッケージで、外での教育ではなくて社内でしっかりと学んでいく、さらにそれが、この後いろいろ議論になろうかと思いますが、職能給という問題、日本の、ステップアップしていく上で社員をどういうふうに育てていくかというところにも関連すると思うので、今回は派遣元への義務づけとありますけれども、できれば派遣先でのOJTというのももっともっと積極的に評価していけるような、そういう考え方もぜひ労政審の方で盛り込んでいただきたいなというふうに思っておりますけれども、いかがでしょうか。

坂口政府参考人 今議員の方から御指摘があったとおり、派遣労働者のキャリアアップを行うためには、実際、就業している場面というのが派遣先ということでございますので、その派遣先での協力ということがキャリアアップを実質にどう図っていくかということについては非常に重要だということで、御指摘のとおりかと思っております。

 そういった意味では、やはりその派遣先で行われたOJTの活用というようなことも含めて、実際にキャリアアップの内容についてもしっかりと盛り込んでいくということも考えられますし、また、派遣元でキャリアアップを図るに当たっても、実際に派遣労働者が派先でどういう形で就業しているか、業務遂行能力がどういう度合いになっているかというような状況というのも、やはり派遣元にも派遣先から提供していただくというようなことで、まさに委員が御指摘あったように、派遣元、先が連携し合いながら、キャリアアップをしっかり図っていくということが重要だということで考えております。

大串(正)委員 ありがとうございました。

 派遣先と派遣元でしっかりと連携をして、キャリアアップを図っていっていただけるということで期待していきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、田中英之君。

田中(英)委員 自由民主党の田中英之でございます。

 私も、大串議員と同じく、臨時国会の際にも、実は派遣法については質問をさせていただきました。引き続きになるわけでありますけれども、こういった機会をお与えいただき、本当にありがとうございました。

 一度目、二度目の派遣法の審議の中で、特に臨時国会なんかではかなり密度の濃い議論があった。しかし、解散・総選挙ということもありましたので、廃案という形になったわけであります。

 前回までの部分というのは、私自身は、個人的にはしっかりと議論ができていたというふうに思っておりますが、今回はまた新しい部分もついておりますので、そういったところの審議も含めて、この派遣法、将来にわたっての労働環境をどのように整えていくかということで大切な部分でありますので、私からもお伺いをしていきたいと思います。

 まず、実は、前回お伺いしたのは、少し大きくお伺いしたような記憶がございます。労働環境全て、ですから、派遣労働法、このことだけじゃなくして、非正規雇用や正規雇用全てを含めて、ではこの派遣労働法というのはどの位置づけにあるのかというようなことから、非正規雇用の方々が正規雇用の方に進んでいく、その支援のあり方、正社員の実現加速プロジェクトとか、また、派遣労働者に至っては、キャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金、この二つであったり、そういった観点で、派遣法の位置づけというものをある意味お伺いしたわけであります。

 その際にも、実は、今回新しくくっついております同一労働同一賃金の均等待遇、この部分のところも少し前回もお伺いしました。そういった意味では、今回新しくその部分が、均衡・均等待遇のあり方を検討するために調査研究を行うと附則に規定されたところでありますので、今回はこの点について少しお伺いしていきたいというふうに思っております。

 まず、これも大きくになります。今回、均等・均衡待遇の確保のあり方を検討すると附則に盛り込まれたということでありますが、その理由からお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

坂口政府参考人 今委員御指摘のように、今回、附則に、検討あるいは調査研究をするということの規定を盛り込ませていただいたところでございます。

 今回の改正法案、先ほども御質問ありましたように、均衡待遇等についてのいろいろな派遣元、先についての責任の強化ということに取り組んでおるわけでございますけれども、今御指摘がありましたような、臨時国会でも、均等の問題も含めて、いろいろなさまざまな御意見もいただいたということでございます。

 そういったことを踏まえながら、この均等の問題、均衡待遇の推進に加え、均等も含めた均等、均衡のあり方ということになりますと、やはりまずは、いろいろその課題の解決に向けて具体的にどういったことを検討していくことが必要なのか、そういった検討を行うためにはどういった材料を集めるべきなのかというようなことについて、やはり諸外国の状況等も含めて、しっかり調査研究等も含めて把握をしていくことが重要だという考え方から、今回、今国会の法案の提出に当たりまして、この均衡・均等待遇のあり方の検討のための調査研究について附則に規定をするということにさせていただいたものでございます。

田中(英)委員 そうですね。前回、このような形では盛り込まれていなかったですけれども、やはり、労労間で格差があったり差別的な取り扱いがあったりという、そういったバックグラウンドもある中でいろいろと意見が出てきましたので、そういう意味では、一度しっかりと調査をし、研究をしていって、どのようなことができるかということで盛り込まれたという意味では、ある意味多くの意見があることを酌み取っていただいてこの法案に盛り込んでいただいたという意味では、私自身は、研究する、また調査をする本当に大きな意義があるというふうに思っております。

 それで、実は自分なりにいろいろなことも考えてみたわけでありますが、派遣労働について、仮に均等待遇の仕組みを導入する際、課題というのは前回質疑したときにいろいろと教えていただきました。

 ヨーロッパなんかと日本では、一つは、職務給、職能給ということでちょっと違いがございます。また、派遣労働の場合は、雇用者と使用者ということで分かれておりますし、そういった意味で直接雇用の部分とは違うということ、また、派遣労働者間の待遇のバランスなんというものも一つの課題としてあるということも伺ってきました。

 自分自身でそこで考えられ得ることを自分なりに考えたわけでありますけれども、例えば雇用に関しては、ヨーロッパなんかでは、どちらかというとフルタイム、パートタイムという分け方、でも日本の場合は、非正規雇用や正規雇用という分け方をしております。派遣労働はこの非正規雇用の中に含まれるわけであります。

 また、給料の査定の基準というのは、ヨーロッパでは職務給、先ほど申し上げましたが、日本の正社員の方は職能給という形で分けられております。

 では、賃金の交渉をどのようにと思うと、ヨーロッパの方なんかでは、産業別に労働協約によって、同じ種類の仕事の賃金の基準というものを一定これは定めておられる。ですから、労働に対する対価というのが同一労働同一賃金、こういったことはできているということであります。

 一方、日本で考えてみたとき、そのような基準はございません。賃金の交渉も各会社ごと、企業ごとで単体でやっているというのが現状であります。ヨーロッパと同様にすることによって、均等ということを全くシステムを変えればできるわけでありますけれども、正直、これまでの均等待遇の議論を聞いている中で、一足飛びに簡単にやっていくことができるのかというと、少し難しい部分もやはりあるのではないかというふうに思っています。

 私自身、そういった意味では、ではどういったことができるのかと考えたときに、なかなか自分の中では職業に対する賃金というものが平等になるというのは思い浮かばなかったわけですが、単純に考えるとすれば、例えば日本の場合、交渉を企業単位で行っているということでありますので、各企業ごとでやれば例えばそういうことは考えていけるんじゃないかというふうにも思います。

 日本は職能給でありますけれども、正社員の方の給料を、職務の関連の賃金と、またそのほか、例えば転勤がありますよ、残業がありますよ、こういったものの有無などといった要素への手当を明確に区分して、派遣労働者の職務関連の賃金の部分と合わせることによって、職務関連の賃金が正社員さんと派遣社員さんであっても同じになってくる、まず賃金の部分では、仕事に対する賃金というのは同じというものが見えてくるというふうに思っています。

 でも、こうやって仕分けをするのは、間違いなくこれだけではないと思っています。そこで、厚生労働省なんかが考える均等待遇というものはどういうものであるというふうにまず考えておられるかということ、今少し例を挙げましたけれども、こういったことが均等待遇と呼ぶことができるのか、また、実際に実行することは、ヨーロッパのようにするには、間違いなく私は少し時間が要るというふうに思っております。でも、一つの企業でやったら、できる可能性が高いんじゃないかというふうに思っておりますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今御質問がありましたように、この均等待遇という問題も、先ほど来出ているように、パート法の問題、いろいろという形で、それぞれに定義や考え方というのも差はあろうかと思いますけれども、そういったことも捨象して考えますと、やはり、職務、仕事の内容等でありますとか人材活用の仕組みなどの要素が同じだったら同一の待遇を保障するというのが均等待遇ということであろうと考えております。

 そういった中で、今委員の方からいろいろな御提案がございました。

 それで、現実に今、先ほどおっしゃったような、職務の部分の賃金と他の要素のところの賃金を区分して、それで職務の関連の部分をそろえていくということでございましたけれども、確かに、そういう形でうまく分類をするという中でそれぞれの物差しをつくり、それで同一の待遇を保障するという動きができてくれば、それは先ほど申し上げたような均等の待遇ということに一歩近づくということであろうかと思うわけでございますけれども、まさに委員の方からも御指摘があったように、やはり、日本の賃金体系という中が職能給中心の中で、どういった形で、トータルとして、オール日本で職務の関連部分を抜き出した物差しをつくっていくかということについては、一概に、簡単にできるというのはなかなか難しいのかなということで感じておるところでございます。

 ただ、加えて、委員の方から多々御指摘がありましたように、それぞれの企業でまさに今委員がおっしゃったような形でのお取り組みをされるということは、それぞれの企業での労使交渉を経ての賃金決定ということでありますので、そういったことは可能であるかと考えますので、そういったことの積み重ねで日本の給与、賃金の考え方、体系がどうなってくるかということは一つの要素かなということは感じました。

田中(英)委員 実はそうなんですね。先ほどもお話がございましたけれども、同じ非正規雇用のパートタイムはパートタイム労働法で均等という取り扱いができているということで比較をしていたんですが、今おっしゃっていただいているように、人材活用の仕組みとか職務の内容、そういったものが例えばパート先の社員さんなんかと同等であると差別してはならないということがあるので均等と。

 直接雇用のこともありますから、そういったことが可能で、では、派遣法は何で無理なのかと思ったときに、実は派遣会社と派遣先というものに分かれてしまっていて、業務というものも、この業務ということに決められているので、渡っての業務がやはりできないということがあるので、そういった意味では、ここに当てはめることができない。

 ですから、先ほども少し例を出した形で、実はこれはほぼほぼ均衡待遇の部類になってくるんですけれども、そういうことぐらいしか私自身は浮かんでこなかったので、事例として御紹介させていただきました。今のお話を聞いていても、やはりそう簡単にはいかないんだなということを私自身は実感いたしました。

 そこで、次なんですが、今回の法案の中に、派遣労働者の均等待遇の導入が難しいのは、一つとして、比較対象になる労働者の特定が難しい。これも先ほどお話がございましたが、正社員のどの方と比較しようかということであります。また、派遣先を移動する場合に派遣先ごとに待遇が変わっていく可能性、前回のときと今回のときと給与面でも変わってしまうんじゃないかということ。それからまた、三つ目になると、派遣先の違いによって派遣元事業主に雇用されている労働者の待遇の不均衡が生じるといった課題。同じ業種の中でも人によっては賃金が違うぞといったことでありますけれども、こんな課題があるというのも事実であろうと思います。

 そこで、先ほど来お話がございましたけれども、今回、派遣労働者と派遣先の労働者との均衡待遇というものの確保のために、賃金等の情報が努力義務から配慮義務に変更されるということになっております。努力義務と配慮義務、この違いを改めてお伺いしたいのと、また、それによってどのような効果が実際あらわれるか、そして、これが均等待遇というところに向けて何かつながる要素があるのか、この点についてお伺いします。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員の方から御質問がありました、派遣労働者と派遣先労働者の均衡待遇の確保のための賃金等情報の提供という問題についてでございますけれども、今委員の方からありましたように、今回、配慮義務に変更するということでございますが、やはり配慮義務というのは、努力するということにとどまらないで、配慮の対象となった事項に何らかの具体的な取り組みを求めるということで私どもとしては考えているということでございます。

 今回につきましては、やはりそういった配慮義務ということを行っていただくために、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する派遣先労働者の賃金水準、あるいは募集時の求人状況といったようなものをしっかり提供するべく配慮をしていただくということでございます。

 そういった形の実現ということを図っていく中で均衡待遇ということの実効性の向上を図っていけるのではないかということで、そういった積み重ねが、今後の均等という待遇に向けて一つ一つのその積み重ねと、あと、そういったもので物差しがどういう形にでき上がってくるのかということにも資するかどうかということが均等の問題にもどう関係していくかということで私どもとしては考えております。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

田中(英)委員 今回、ここは均衡待遇の確保のためということでありますが、まさに均等待遇に何かつながりをしっかりとここで見出していただければ、この価値はあると思いますので、そういった形での取り組みというものに期待もさせていただきたいなというふうに思っています。

 そこで、均等待遇についてちょっと逆の形で聞きたいんですが、実は、均等待遇にすることによって、派遣労働者の安易な利用は抑制できるということも聞きます。正社員との格差をなくすということも聞いております。EU指令のような国際的な考え方に合わせていくこと自体、いいことのように間違いなく聞こえます。

 しかしながら、前回もお話ししましたが、長期雇用などに特徴づけられる日本の雇用の文化がある中で、均等待遇の背景にある職務給、ジョブ型の働き方といったヨーロッパの雇用文化に合わせることに本当に全く問題がないのかなというところは、実は私自身は個人的に思っております。

 例えば、さまざまな職務を経験しながら、長期的な観点から人材を育成していくこと、また、突発的な環境の変化に対応して柔軟に人員配置の見直しを行うことが難しくなってしまうようなことがないであろうかということや、またあるいは、比較的安定的に賃金が改善するような賃金決定の仕組みというものが難しくなったりするんじゃないかな、実はこんなことを懸念するところがございます。

 このような点を考えてみると、均等待遇が直ちに本当に私たちのこの国に制度としてでき上がるのか、なじんでいくのかどうかというのは、なかなか一概にわからないところもあるんじゃないかというふうに私自身は考えています。

 日本のスタンダードというものを進めていくことをやはり逆に考えていただくことが必要じゃないかと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

坂口政府参考人 お答えします。

 今委員御指摘のように、日本の賃金体系が職務給が普及しておらず職能給ということでございますので、先ほど来も大臣も申し上げているように、均等待遇あるいは同一労働賃金という形の方向性、そういった重要課題がある中で、いろいろな課題があるということで申し上げているところでございます。

 そういった中では、職能給が一般的である我が国の中でどういう形でそれを考えていくかということで、今委員おっしゃったように、そういうことを前提にした人材育成であったり安定した賃金の決定であったり、あるいは場合によってはその賃金の決定も、いわゆる年功的な賃金体系そのもののありようというようなものにも絡んでくるのではないかということも含めて、いろいろな形での検討ということもやはり必要な部分もあるのかなと思っておりますので、私どもとすると、やはりしっかりそういった部分の議論、検討にたえ得るような材料も集めながら幅広く御議論をしていただくというようなことが肝要かなと思っております。

田中(英)委員 均等待遇がだめだと言っているわけじゃなくして、本当に丸々その形としたときに日本の雇用文化というものがどのようになるかという、ちょっと心配な点があったので今お伺いしました。

 こんな形で議論していきますと、日本の雇用環境というものを均等待遇に近づけていくに当たっては、やはり幾つかの高いハードルというのがあるのも事実であろうかと思います。

 しかし、今回、改正法の附則に調査研究をしていくということが含まれたから、何らかの形を、また必要な取り組みを着実に進めていただく必要があるというふうに思いますが、今後、その取り組みに向けた決意をお伺いしたいと思います。

山本副大臣 今るる部長の方からも答弁ございましたけれども、均等待遇の実現に向けましては、まずは課題の解決に向けました具体的な検討、議論を行っていくことが重要でありまして、今いろいろと御懸念の点もおっしゃっていただきましたけれども、諸外国において職務給が広く普及している背景や経緯等についても、より詳細な調査研究を進めていくことから始めさせていただきたいと考えております。

 そして、今御指摘のように、改正法附則に調査研究に関する規定が盛り込まれました。着実にこれに対応して進めてまいりたいと思います。と同時に、この改正法案の中に盛り込まれました措置を初めといたしまして、非正規雇用労働者の処遇改善にも着実に取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

田中(英)委員 実は、厚生労働省の皆さんとお話をすると、おっしゃったとおり、諸外国のそういったデータといいますか資料が結構あるのかなと思うと、なかなかないという事実がありました。検討していただく中で、多くの材料を集めていただいて、均等待遇というものが果たしてできるのかできないのかも含めて、しっかりと調査研究をいただきたいなと思います。

 ただ、本当に私が思うのは、日本の雇用文化というもの、みんなで力を合わせて頑張っていこうよというような、この国のある意味では会社の力の源であったようなものがあると思うんですよね。均等待遇にすることによって、そういったものが損なわれてしまう要素があるのであれば慎重に考えていただいて、やはり、ヨーロッパ型ばかりじゃなくして、日本のスタンダードというものをしっかりと構築して、この派遣法を含め、労働問題というものをしっかりと構築いただきたいと思います。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、感謝を申し上げます。

 先ほど何だか公明党問題とか言われておりましたけれども、まず、そこの点を確認させていただきたいと思いますが、今回の法改正で、臨時的、一時的を原則とする旨が条文に明記された、これに対して、条文に原則が盛り込まれることの意義について、まず御確認をさせていただきたいと思います。

坂口政府参考人 今の、派遣労働が臨時的、一時的という原則を今回盛り込んだということでございますけれども、この点につきましては、先ほども大臣の方からもありましたように、労働政策審議会の建議の中でもはっきりと、派遣労働について臨時的、一時的なものと位置づけることを原則とするという考え方は既に示されていたところでございます。

 ただ、臨時国会等の審議の中でも、いろいろこういったものについてはさらに明確化をすべきであるというような御議論もあったということも含めて、自公の方からの修正をすべきというような御要請もあったということも受けて今回盛り込んだということで、まさに、そういう建議の考え方を踏襲する中で、その趣旨ということをこの法律に盛り込むことによって明確にする効果があるということで私どもとしては考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 かつてというか、日本も高度経済成長のときには終身雇用制というふうな形で言われて、会社に入って、その会社で人材を育成して、いろいろな教育訓練をしながら、そして、その人が一人前になって会社を引っ張っていくという、そういった流れがあったのかなと思うんですけれども、もう最近は会社も即戦力の人材が欲しい、そういった状況の中にあって、では、どこで人材を育成していくのか。そういった意味からすると、今、派遣労働者の人材育成をどこがやるのか。

 そういった形から考えると、まさに今回の改正は、派遣元が、派遣労働者のキャリアアップあるいはその能力を向上させていく、そして、向上させながら、希望に応じて派遣先の方に直接雇用を促していく。その好循環を生むためには、やはり派遣元、またそこの派遣労働者が、いろいろな教育訓練を受けながら新しい力を身につけて、それぞれの企業で力を発揮できる、いかにそういった環境に持っていくのか、これが大事なのかなと思います。

 先ほどもありました、二十六業務と言われていましたけれども、その技術的な仕事というのは、どちらかというと無期雇用の形で派遣元がいろいろな技術者を育てながら、そして技術的な仕事として派遣をして、それでその企業に貢献をしていく、そういった方向性もあります。

 もう一つ。しかし、その技術的な方については、やはり大切なことは、今技術は日進月歩で進んでおりますから、ちゃんと派遣元で最新の情報とか最新の知識をしっかりとつけさせてあげて、そしてまたいろいろなところに行ったときにその力が発揮できる、そういった育成というのは大事になってくるのかなと。

 もう一つ。派遣会社から派遣されました、そしてそこで働いていく。やはり自分自身も、直接雇用、この会社でしっかりとした形で自分の人生を設計していきたい、そういうふうに感じたときに、それは、将来、直接雇用に向けての努力が当然必要だと思います。そのために派遣元と派遣先がどういった協力のもとで人材を育成していくのか、こういった課題もあるわけでございます。

 また、もうちょっと自分は派遣を続けたいかな、そういったふうに思う方もいらっしゃる。しかし、今回の改正で、派遣は原則三年、そして例外的に、課をかえるとか事業所をかえる、そういったことで可能になるわけでございますけれども、これも大きな意味があると私は思うんです。

 今まで資材調達の課で仕事をしていました、しかし、課がかわって人事の方に行く、あるいは製造の管理の方に行く、そういった課がかわることによって、いろいろな部門で働くことによって、自分自身の仕事の幅も広がってくる。そういった形での人材育成もでき、そして、あるとき三年たって違うところに行って、ここで自分はもうちょっとやってみたいなと思ったときには、新しい直接雇用に向けての教育訓練もなされる。

 そういったふうにしながら、派遣労働者をしっかりと育成して、将来の日本の経済の成長のための大事な人材を育成していく、このことが大事になってくるのかなと思うんですけれども、このような形で、派遣元の派遣労働者に対するキャリアアップ措置の具体的なあり方についてどのように考えているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員の方からありましたように、今回、改正法案で、派遣会社、派遣元の方にキャリアアップ措置を義務づけるということでございますけれども、今まさに委員の方から御紹介がありましたように、派遣で働く方の態様等々、いろいろあるということかと思います。そういった方に応じた、あるいは希望に応じた形で、そのキャリアアップがその方にどう資するようなものになっていくかということをいろいろ工夫していく必要があるんだろうと思っております。

 まさに今委員が例示として挙げられたような技術系の派遣の方ということで考えれば、比較的、技術系の派遣の方は専門的な部分であり、なおかつ派遣会社との関係で無期雇用で働く方も多うございますけれども、そういった方であれば、一つには、今委員がおっしゃったように、技術系の最新の知識、技術をどう付与するかということと同時に、やはり無期で派遣会社との関係で働く方でありますので、中長期的なそのキャリア形成を派遣会社の方でどう考えて教育訓練を計画的に行うかということが大事かと思います。

 それから、一方で、先ほど御紹介があったように、派遣先での直接雇用を希望するような派遣労働者の方ということになりますと、まさに理想型とすると、派遣元、先がうまく連携をして、派遣先での業務ということを将来的にも考えるわけでございますので、派遣先でのOJTも含んだ教育訓練というようなことをどう工夫していくかということもあろうかと思います。

 それから、最後の、いろいろな職場での派遣就業ということも希望される方ということになりますと、今委員の方からも御紹介があったように、今回の期間制限の三年ということが悪い意味にならないように、まさしくいい意味でキャリアの見詰め直し、あるいは個人のキャリアパスの積み重ねにつながるような形で、そういった対応ができるようにということをどう派遣会社の方でコーディネートしていくかということになると、そういったキャリアパスも含めてのキャリアコンサルティングということをしっかりやっていくというようなことを工夫しながら、このキャリアアップ措置ということをどう工夫していくかということをしっかり工夫していく必要があると考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 先ほどの、派遣は臨時的、一時的、まさに、やはり労働者にとっては、正社員としてしっかりと会社で安心して、安定して働いていく、そのことは非常に望まれるところだと思うわけです。そして、そのためには、制度ということと同時に、やはり個人、一人一人が会社で役に立つ能力、力を身につけていく、そういったことが基本になる。であるならば、派遣元また派遣先がどうやって一人一人のスキルをアップして能力を向上させていくのか、そういった取り組みが進められることが大事になってくる、そのように感じます。

 そこで、具体的な、先ほども一つお話にあったんですけれども、派遣先への直接雇用を望む労働者。

 私も、かつて民間の企業で働いておりまして、どちらかというと派遣労働者の方にもお力をかしていただきながら働かせていただきました。

 社員がいろいろな新しい仕事を標準化して、そして一つのマニュアル化して、それをやっていただいて、また、我々は、次の新しい、違う付加価値のあるそういったものを取り入れて、それをまた標準化して、そういった仕事になるわけですけれども、派遣労働者の方が、今度は直接雇用としてそこの会社で仕事をしていくためには、やはり今までのルーチンというかマニュアルの仕事ではない、創造的な仕事にもチャレンジしなければならない。

 しかし、三年たってから突然どうしますかと言われても、それはなかなか難しいわけで、やはり派遣元と派遣先が、本人の意思を十分確認した上で、意思があるのであれば、適切に連携をとりながら、その会社で即戦力となれるような、そういった教育訓練をしっかりとしてあげることが三年後のきちっとした直接雇用へも結びつく。

 しかし、問題は、そういう仕事をちゃんとやるインセンティブが働かないと、なかなか派遣元も派遣先もそういった一人のための努力が出ないわけですけれども、派遣元また派遣先が連携をとって、直接雇用を希望する派遣労働者にしっかりとした教育訓練を行うためのインセンティブというものはどのような形で考えられているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

坂口政府参考人 今委員の方から御指摘ございましたように、派遣労働者の方の派遣先への直接雇用を推進していくということにつきましては、元、先、それぞれの事情がある中でということでありますけれども、理想の形とすると、できるだけ早い段階から、今委員御指摘があったような派遣元と派遣先の連携を進めていくことがより望ましい姿ということで考えております。

 そういった中で、それぞれのインセンティブ、動機づけをということになりますと、派遣元に関しましては、派遣元の方で、いわゆる先ほど御指摘があったような教育訓練ということをしっかり実施してスキルアップを派遣労働者にさせる。その上で、手数料の徴収が可能ということになりますと、いわゆる紹介予定派遣というようなものを派遣元の方でどう活用をしていただくかということが一つであろうかと思います。

 それから、派遣先につきましては、私ども、予算措置として、キャリアアップ助成金ということで、派遣で働く方を派遣先が正社員として雇用した場合の助成金というものも拡充するというような措置も講じておりますので、そういったことを通じて元、先での直接雇用が進むように後押しをしていきたい、こういうことで考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 紹介予定派遣という制度を使いながら、派遣元としてはそういった押し出しができる、また、キャリアアップ助成金の拡充ということで、受け入れ先の方も派遣労働者の直接雇用化に向けての取り組みが進められる、そういった環境が今後整えられる、そういうふうにわかりました。

 そして、私は、今回の法改正で特に大事なところは、許可制にしたところであると思うわけでございます。つまり、先ほどから申し上げておりますけれども、派遣元がしっかりと派遣労働者の能力、スキルをアップさせていく、そして、将来いろいろなところで活躍できる、そういった人材に育てていく、そのことが今回一番大事である。

 そして、許可制にしたことによって、派遣元が、そういったきちっとした教育訓練、あるいは、派遣先との連携による直接雇用に向けたそういった新しい訓練等が具体的、適切に行われるのか、また、技術系のそういった派遣労働者については、日々進む技術の新しい情報をしっかりと伝えながら、その能力のさらなる向上を維持しているのかどうなのか、そういった点をしっかり見ながら、そういったことができないところは許可を取り消す場合もある。

 そういった方向性の中で、派遣労働者の育成にさらに力が入り、また、そういう一人一人がこれから日本の未来を大きく担う人材に育ってくる、そういった方向性ができるのかと思うわけでございますけれども、許可制という部分でどのようにこの点を捉えているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

坂口政府参考人 今委員の方から御指摘がございましたように、今回の改正法案では、一般派遣事業、それから、今まで届け出で行っていた特定派遣事業の区別を廃止して、全て許可制とするということでございます。

 また、今、重要性について委員の方からるる御指摘ありましたキャリア形成、キャリアアップということにつきましては、派遣会社に計画的な教育訓練を義務づけるということとともに、許可要件としましても、キャリア形成支援制度が整備されていることをしっかり求めていくということを予定しておるところでございます。

 ですから、許可制ということとこれらの義務づけということが相まって、しっかりこういったキャリアアップ措置を図る、環境整備を図っていくということでございますので、まさに今委員から御指摘あったように、そういった措置が講じられていない派遣会社については、不許可、不更新でありましたり、あるいは、取り消しを背景にした強い指導ということをしっかりやっていくことで、その実効性をしっかり担保したいということで考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 今、企業間競争というのは相当激化しているし、企業がグローバル化して、本当に競争の中で仕事をしなければいけない。そういった中で、なかなか企業としても、人材を育成するんだけれども、目先のいろいろな仕事に追われて人材育成まで手が回らない、即戦力の人材が欲しい、そういった状況の中で、派遣元での教育訓練、また、派遣労働者がそういった希望を持ちながら即戦力として直接雇用に結びつくことは、企業にとっても、将来、その企業の中核を担う人材がしっかりとまた確保でき育成できる、そういった意味では大変重要なことなのではないかなというふうに感じるわけでございます。

 一言で派遣労働者と言っても、先ほど言われたように、技術系の派遣労働者、その育成、あるいは、直接雇用を希望する派遣労働者については、派遣元と派遣先が連携をとっての人材育成、さらに、派遣をもうちょっとこれで続けたい、そういったふうに思われる方も、いつまでも同じところでするのではなく、いろいろな部門、いろいろな経験を重ねることによって自分の仕事の幅を広げて、そして自分に合ったところで直接的な雇用を目指す、そういったものにつながる、こういった法律案である。また、私は、そういった方向性にしっかりとしていかなければいけない、このように思うわけでございます。

 最後に、この労働者派遣法の改正において、今言われたように、人材を育成していく、派遣労働者の可能性を大きく引き伸ばしていく、そして、許可制にすることによって、そういったことが行われているかどうかもちゃんと管理監督をしながら、日本の経済の成長を引き上げていく、成長をなし遂げるための人材を、この法制で新しい流れをつくっていくんだ、そういったものにすることが必要であるし、そういったものとしなければいけないと考えておりますけれども、政府の決意、見解をお聞かせ願えますでしょうか。

山本副大臣 御指摘のように、経済のグローバル化や少子高齢化の中で、今後、経済を新たな成長軌道に乗せるためには、人材こそが我が国の最大の資源であるという認識を持っております。

 こうした認識を待った上で、今回の労働者派遣法改正案におきまして、今ずっと御質問をいろいろしていただきましたけれども、派遣で働く方の希望に応じたキャリアアップを図ることができる環境を整備するために、今回、派遣元にキャリアアップ措置を義務づけたわけです。また、許可要件にキャリアアップ支援制度というものをしっかりと位置づけていくわけでございまして、これは大変大きな意義があると思っております。

 こうした取り組みによりまして、派遣で働く方のうち、正社員として働きたい、そういう方には正社員としての道を開いていくとともに、みずからが働き方として派遣を積極的に選択する人にも、派遣を通じてキャリアアップを支援する環境を整備してまいりたいと思っております。

 御指摘のとおり、派遣労働者の方を含め、一人一人の方々、働く方々の可能性を最大限開いていけるように頑張っていきたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 我が党といたしましても、今まで、人材育成に資するキャリアアップ措置が実効性があるものにと。そういった意味では、今いろいろな確認をさせていただき、また、そういう方向で政府も考えていらっしゃるということはよくわかりましたし、また、そのようにしていきたいと思っております。

 ここで一点確認なんですけれども、やはりそのためには、実効性のある制度とするためには、しっかり今の方向性で、ガイドラインというか、そういったものも、具体的なものもしっかりと政府から方向性は出していく、そのことが、派遣元としても安心できますし、また、そういった方向性を出すことによって、よりこの思いが具現化するのではないかというふうに考えるわけですけれども、この点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

坂口政府参考人 今委員の方からも御指摘があったような点につきましては、今後、派遣法の施行に当たって、しっかり考え方を周知するということもございますけれども、派遣元に対しての講ずべき指針というものもございますので、そういった中でもしっかり取り組むなりしながら、しっかり実効性が上がるようにしてまいりたいと思います。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 では、派遣労働者の皆様の可能性が大きく伸ばせる、そんな社会になることをまた目指しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 大変にありがとうございました。

渡辺委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 維新の党の井坂信彦です。

 本日も、前回に引き続きまして、五月十二日の本会議でいろいろお尋ねをした内容ですが、本会議場ではなかなか直接納得のいくお答えがいただけなかった部分が多かったものですから、引き続き、積み残しまたは再質問という形でさせていただきたいと思います。

 本会議でこのようなことをお尋ねいたしました。

 今回、法改正を経て、仮に一生派遣であったとしても、結婚をして、一家の大黒柱として家計を支え、また、子供を育てることができるようになるのか、要は、それだけの、本当に同一賃金あるいは待遇の改善が行われるのか、あるいは、一生派遣ではやはり結婚も子育ても経済的に難しいので、一生派遣はあってはならないと考えているのか、どちらですかということで本会議でお尋ねをいたしました。

 それに対して、総理の答弁が、今回の法改正は、一生派遣をふやそうとするものではありません、また、派遣という働き方をみずから選択する方については、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど待遇改善を図ってまいります、こういうお答えでありました。

 改めて、もっと直接的なお答えをいただきたいと思うんですが、総理答弁は、一生派遣をふやすつもりはないんだ、ただ、仮にそういう人がいても、何とか賃金や福利厚生など待遇改善を頑張るんだ、こういう、私から見れば、何とも中途半端なお答えだというふうに思います。

 改めて、本会議どおりお尋ねをいたしますが、今回の法改正で、要は、望むのであれば、一生派遣でしっかり稼げて、結婚も子育ても大黒柱としてできる、こういう世の中になるのか、あるいは、やはり一生派遣は経済的に問題があるので、あってはならないのか、お尋ねをいたします。

塩崎国務大臣 派遣であっても、非正規労働、正規労働、いずれにしても、いろいろな仕事があって、そしてまた、所得水準もそれぞれやはり、その人の力とか、力の評価、こういうものによって随分変わってくるんだろうというふうに思います。

 派遣労働は、言ってみれば、多様な働き方の一つとして考えているわけで、その中では、正社員を希望する人、あるいは、派遣の中でずっと所得を上げていきたいという人も中にはもちろんおられることはよく現場の方からも聞いているわけでありまして、一口に派遣労働者といっても、所得はやはりまちまちだということがまず第一だろうというふうに思います。

 派遣労働を希望している方の中には一家の大黒柱として家計を支えている方もおられるのは、そのとおりであって、それらの方にはやはり、今回の改正案で、計画的な教育訓練とか、要するに、専門教育というか専門研修を重ねることによって自分の力をつけていく、あるいは、キャリアコンサルティングなどで、法的に義務づけられたわけでありますから、そういう中での待遇改善を図っていくということが行われていくようにしてまいりたいというふうに思っているわけであります。

 一方で、正社員と派遣労働者を比較いたしますと、一般的には、何度も申し上げておりますけれども、賃金等の面で格差があって、派遣のままでなくて正社員を希望する方もおられるので、そのような方については、派遣先に対して、派遣労働者への正社員募集に関する情報提供の義務づけ、それから、キャリアアップ助成金の活用で正社員化の促進もするということでございます。

 いずれにしても、所得水準は、冒頭申し上げたように、やはりその人の持っている力に応じて決まってくるというふうに思いますので、そういうための支援する手だてを、今回しっかり、キャリア形成支援制度という形で、また、それがなければ派遣元として許可が得られないということで、それをきちっとやることを担保するということでございます。

井坂委員 やはり、大変複雑な御答弁で、わかりにくいなというふうに思うわけであります。

 お尋ねしているのは、結局、今、何でこの一生派遣というのが問題視されているかといいますと、それは、大臣がお答えになったように、細かく見れば、もちろん人それぞれ、仕事、業務、能力、そしてそれに従って稼げる派遣の賃金が違います。細かく見れば違いますが、しかし、日本の全体を大きく見れば、やはり、派遣労働の方というのは非常にお給料が低いままである、しかもそれがなかなかアップしないということで、明らかに差がある。この低いお給料のまま、御本人が望もうと望まなかろうと、そういう派遣労働が続いてしまうと、これはなかなか、人生が経済的な面で成り立たないケースが多いだろう、そういう中で、では、一生派遣は問題なのではないか、あるいは気の毒なのではないか、多分こういう議論に今なっているというふうに思います。

 我々は、今回、同一労働同一賃金法という法律を出させていただきました。

 まさに、一生派遣はけしからぬ、あるいは、一生派遣は気の毒だ、かわいそうだ、こういう、今、現状の日本は、そう言われても仕方のない格差があります。そこを根本的に、いや、別に御本人が望めば一生派遣でも、しっかり正社員に負けずに稼げて、一家の大黒柱として結婚、子育てを普通に、問題なくできるんだ、こういう世の中を目指していきたい、こういう思いで法案を出させていただいたところです。

 私が本会議でなぜこれをお尋ねしたかといいますと、今、政府のお立場がやはりこの点に関しても本当にはっきりしません。一生派遣でいいのかともちろん議会で攻められるから、いや、そんなことはありません、派遣をふやすつもりはありませんとか、そういう答弁をずっと繰り返されておりますが、一方で、事実上、一生派遣がふえかねないような法改正を今回されているわけであります。

 政府のお立場が、まさにさっきお尋ねした二択で、いや、別に一生派遣でもしっかり稼げるような国にしていくんだ、問題ないんだというお立場なのか、あるいは、やはり派遣労働では今の日本では稼げないので、一生派遣はあってはならないんだという立場なのか、ここがはっきりしないので、議論が本当に行ったり来たりしているというふうに思います。

 今お尋ねしたことについて、政府の基本的な立場は、やはり一生派遣はあってはならないと考えておられるのか、それとも、一生派遣でも問題のない、こういう賃金構造を今回の法改正でつくっていくんだという立場なのか、お尋ねをしたいと思います。

塩崎国務大臣 派遣だけの話ではなく、一般的に申し上げたつもりでございますけれども、やはり、人が人をどう評価するかというのは、その能力を評価するわけであって、それはどんな雇用形態であっても同じだと私は思っています。

 したがって、派遣を望みながら、一生、家で、大黒柱で家族をしっかり養えるようにするためには、やはり、その力をつけていくということをやりながら、一生派遣のままでいいという方ももちろんおられますから、そういう人もおられていいと思うし、派遣でいくならばそういうふうになった方がいいということは、もう先生おっしゃるとおりで、私もそのとおりだと思います。

 ですから、できる限り、自分で力をつけるために、普通の正社員で就職をしたときには会社の中でいろいろな研修がありますよね、それと同じようにやはりやっていく。これからは、恐らく、どの派遣元がそういう優秀な人材を集めているか、育てるかということまで見られて、あそこの人だったらば安心だなというふうにも言われるだろうと思います。

 一方で、正社員と呼ばれている人たちの中でも、やはりなかなか厳しい処遇の中でいく方もおられるわけで、一家の大黒柱ではなかなかうまくいかないから、共稼ぎでないとだめで、奥様がパートに出るとか、そういうことはいっぱいあるわけであります。

 これも申し上げてきたことでありますけれども、非正規の中で、パートとか、あるいは契約社員、それから派遣、こういう大きな三つの分け方をしてみると、やはりパートが一番安いんですね、時給に換算してみると。それから、契約がその次で、派遣が非正規の中にあっては相対的に高い。しかし、それでも、いわゆる正規と比べるとかなりまだギャップがあるねということで、我々としては、できる限り処遇改善に結びつくように、それは全てやはり評価にかかってくるので、だからこそ、キャリアを積み、そしてまた、力をつけるためのキャリア形成支援制度のもとでいかに人材育成を図っていくかということが大事かということを申し上げているわけでございます。

井坂委員 もちろん、仕事ごとにお給料が変わるのは、これは細かく見ればそうなんですが、しかし、派遣がパートとか契約に比べてまだお給料が高い方なんだと。私もその賃金の比較の表を事前に拝見しております。

 これは通告していないので、資料がなければ仕方ないと思いますが、参考人にお伺いしたいのが、派遣のお給料は非正規の中ではまだましな方だ、そういう数字はありますけれども、専門二十六業務とそれ以外の非専門業務で分けて何か統計をとっておられたりしていれば、数字をいただきたいというふうに思います。

坂口政府参考人 申しわけございません。急な御質問だったので、ちょっと今手元に、端的に申し上げて、専門二十六業務と分けてのものはちょっと今すぐには出ないです。申しわけございません。

井坂委員 いえ、これは通告がなかったので全く問題ないと思います。

 ちょっと私が今御答弁から少し感じましたのは、専門二十六業務、これは、もともと高度な技術を持っている方が先方に、派遣先企業に本当に高い付加価値を提供して、そして高いお給料をいただいて、しかも、専門二十六業務でずっと期間の定めなく働いてきた、こういう方々で、まさに、もちろん一人一人多少幅はあるにしても、しっかり稼いで、一家の大黒柱としてということができていた方も多いだろうというふうに思います。そこに関しては、まさに期間の定めなく派遣ができていた。私は、これをもって一生派遣でけしからぬと言うつもりも全くないんですね。

 一方で、今回、一生派遣で問題だ、けしからぬという話が出てくるのは、非専門業務で、雇用の安定性、それからお給料が非常に低いまま、しかもそういう働き方あるいは雇い方がずっと続くような形だと、これはやはり人生が経済的に成り立っていかないケースが多いだろうというふうに思うわけであります。

 だからこそ、同一労働同一賃金ということで、もちろん、今回の法改正のように、派遣元にいろいろ義務を課して、教育訓練をやったりとか、そういうことは別に否定はいたしませんが、それだけでは決してお給料が満足に上がるということにはならないだろうというふうに思っております。そこの根本的な問題を埋めるために法律を出させていただきましたので、またこれは次回以降、議論をさせていただきたいというふうに思います。

 二つ目に、これも本会議の積み残しですけれども、こういうお尋ねをいたしました。

 同一労働同一賃金について、調査だけでなく、既に明らかな課題に対して、例えば職務定義に基づくジョブ型雇用契約を推進するなど具体的な解決策を実行すべきではないかということで、本会議でお尋ねをいたしました。

 それに対しての答弁が、我が国では、能力、経験などさまざまな要素を考慮して働く方の処遇が決定される職能給が採用されていることが多い、直ちにそうした派遣先の労働者との間で賃金を同一にしていくことは困難だ、このため、今回の法改正では、賃金、教育訓練、福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、まずは均衡待遇を進めることとした、こういう答弁をいただいております。

 これも本当に、お尋ねしたことにもう一度正面から答えていただきたいと思うんですが、お答えはもうよくわかっているんです。職能給中心のこの国だからなかなか難しいんだというお答えに対して、私は、本会議の前段ではそういう話もして、そういう職能給中心という課題が既に明らかなのだから、職能給中心のこの日本の雇用慣行をもう少し職務定義に基づくジョブ型雇用契約を推進するなど、こういう具体的な解決策をやるべきではないかと。

 そもそも、何度もいただいている御答弁ですから、それを踏まえて、こういう課題に対してこういう具体策、例えばこういう具体策が要るのではないですかとお尋ねをしたら、また一つ前に戻ったもともとの御答弁しかいただけておりませんので、再度同じ質問をいたします。通告どおりです。

塩崎国務大臣 非正規労働者の処遇改善につきましては、派遣以外に、パートタイム労働者については、本年四月に施行されました改正法によって、差別的な取り扱いが禁止される労働者の範囲を広げるということをやっております。それから、有期契約労働者については、平成二十四年の労働契約法改正によって、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止することなど、課題解決に向けて、こういった非正規の中でもパートそれから有期契約労働者については、一歩一歩進めてきているわけであります。

 派遣労働者については、今回の派遣法改正によって、例えば、派遣元には、派遣労働者と派遣先の労働者との賃金を比較するための情報が比較的やはり欠けている、この派遣元の情報不足、そして、派遣先の協力がなければその情報不足を解消することがなかなかできない、そうなると、派遣労働者の均衡待遇も推進することが難しいということになってしまうので、そういうことを踏まえて、賃金情報の提供等について、派遣元からの具体的な求めを前提に、派遣先に配慮義務というのを新たに課すこととしているわけでございます。

 このように、均等・均衡待遇の推進に向けて、具体的に取り組みが可能な事項については着実に実行はしているところでございまして、その上で、同一労働同一賃金のあり方についてさらなる検討を進めるために、諸外国においていわゆる職務給が広く普及をしている背景とか経緯とかについて調査研究を進め、そして、もちろん日本の国内におけるあり方についても調査研究を進めていく、こういうふうに考えているところでございます。

井坂委員 今回の法改正で工夫をされたところ、あるいは調査研究を始めていただくところ、それは御答弁いただいたとおりだと思います。

 お尋ねをしているのは、物すごく端的に申し上げますと、同一労働同一賃金のことを質問すると必ず返ってくる答えが、日本はジョブ型じゃないので難しいんだ、端的にそういうお答えばかり返ってくるわけです。であれば、では、ジョブ型を進めるような工夫も、私が具体的に申し上げたように、いろいろあるんじゃないですか、ジョブ型を進める工夫についてもどんどん具体的に進めていくべきではないですかというふうにお尋ねをしておりますので、そこの部分について御答弁をいただきたいと思います。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 ジョブ型雇用契約を推進するなどということで、これを一つの例としてお出しになっておられるわけでありますが、それは一つの考え方だというふうに私も同感をいたします。

 さっき足立先生のときにも申し上げましたが、派遣の場合には、何をやっていただくのかということが割合はっきりしているわけですね、それで労働契約を結ぶわけですから。そういうことになると、一部職務給的な要素が、他の、いわゆるパートとかいう一般的に非正規と呼ばれている方に比べると大分その色彩が強いわけでありますので、そういう意味で、均衡待遇をさらに進めるという中にあって、今おっしゃっているようなジョブ型雇用契約というようなものに近いようなものを推進するというのは、一つの解決の方法かなというふうに思うわけであります。

 パートあるいはさっきの有期契約労働者については、不合理な扱いをするなということとか差別的な取り扱いを禁止するというようなものが、条件つきではありますけれども、もう既に法律に入っているということでありますから、方向としてはそういう方向で努力をするという形で今、法律改正もこれまで累次行われてきているということだと思います。

井坂委員 パートや契約の方はもちろんそうやって法律に明記をされていて、そのことはとてもよいというふうに思っています。

 今回問題にしているのは、やはり派遣法の議論ですから、あくまで派遣がそこの部分が非常におくれてしまっているんではないですか、こういうもともとの問題意識でずっと同一労働同一賃金ということをお願いしているわけであります。

 大臣が今答弁されたように、確かにジョブ型契約も一つの考え方だろう、それの推進も考え方だろうとおっしゃっていただいたのは、大変ありがたいと思います。

 ただ、その後おっしゃった、そういうパートや契約社員や派遣労働の方、こういった方々は、もう既に、仕事の成り立ち上、ジョブ型の雇用契約になっているというふうに思うんです。それは大臣のおっしゃったとおりで、問題は、いつも答弁されるように、その同一賃金の比較対象であるいわゆる正規雇用の方、そっちの方が日本はなかなかジョブ型にはなっていなくて、メンバーシップ型と言われる、会社に入ったら、あとは仕事の内容も、配属先、勤務地も、とにかく会社の言われるまま何でもやりますよ、こういう契約になってしまっているから、そことの比較ができなくて、同一労働同一賃金は日本では難しいんだというのが政府のこの間の一貫した答弁なんです。

 ですから、非正規の部分がジョブ型になっていますと。それは当たり前で、それはそうなんです。正規の方をやはりジョブ型にもう少し変えていく工夫ができるのではないですか、また、やるべきではないですかというふうにお尋ねをしておりますので、この問題、最後にそこだけ、正規の部分をやるべきではないかという提案をしています。

塩崎国務大臣 まさに先生は、これからの新しい時代における働き方の多様化ということにつながるお話をされているというふうに思います。

 そういう意味では、もう既に限定正社員といった働き方あるいは雇用の形態も大分出てきているわけであって、それは恐らく、今先生がおっしゃるような、限定的な中には、職務も限定をするという中で限定正社員という方も多分出てきているんだろうと思うんです。そうすると、それを進めるのは、全てがやっているわけじゃないので、やはり労使の話し合いの中で、その自治の中でお決めいただいて広げていくということではないかというふうに思うんですね。

 ですから、我々は、法律を用意して、土俵を整えて、その中で労使がどういう話し合いをして新しい働き方として何を生み出してこられるのかということは、結果としてその労使がお決めになるわけですけれども、その土俵を整えるという意味では、均衡待遇、あるいはさきのパートとか有期契約の場合の法律の定め方は、言ってみれば土俵を整えるためのものだったということではないかというふうに思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 次の質問ですけれども、これも本会議で、同一労働同一賃金に絡めて、派遣業者による過剰な値下げ競争についての問題意識の有無をお伺いいたしました。

 派遣先企業と契約が欲しい余り、派遣業者が非常に安い派遣料、派遣料の値下げ競争をし出すと、これは当然、派遣料を下げれば、マージンを多少圧縮したとしても、やはり派遣労働者の賃金も非常に下がらざるを得ない。これは、私どもが目指す同一労働同一賃金という考え方と真っ向から逆行する状況になってしまうというふうに心配をしています。

 派遣業者による過剰な値下げ競争の問題点、どうお考えですかという本会議の質問に対して、総理のお答えは、賃金面での派遣先の責任を強化するなど、待遇改善、キャリアアップを支援している、こうした取り組みを通じ、派遣会社の競争によって派遣労働者の待遇が犠牲になることがないように取り組んでいきたい、こういう総理のお答えでありました。

 派遣先の責任の強化というような話もありましたけれども、やはりこれは、派遣元、派遣業者の過剰な値下げ競争、このことを、派遣元自身に対する規制についてお答えがなかったものですから、派遣元に対する規制は不要というお考えなのか、それとも、本会議では言わなかったけれども、やはりそっちの面も何らか考える必要があるというふうにお考えなのか、通告どおりお伺いをいたします。

塩崎国務大臣 派遣料金は、当然のことながら、契約自由の原則のもとで、基本的に派遣会社と派遣先との間で決定をされるということになっているわけであります。その一方で、派遣会社の競争で派遣で働く方の待遇が犠牲になってしまうというようなことは、やはり留意をしないといけないというふうに我々としては思っています。

 このため、例えば、派遣料金の値下げを制限するというような直接的な規制というのは、これはなかなか難しいんじゃないかなというふうに思いますが、現行制度は、これは二十四年の改正のもとでどうなっているかといいますと、派遣会社は、派遣料金の平均額、それから派遣で働く方の賃金の平均額、これを中心に情報公開というのが義務づけられています。

 この事業運営の透明性の確保というものを図る中で、二十四年の改正のときは、適正化というか、今御懸念のような、賃金が犠牲になってしまうというようなレベルまで下がってしまうということを避けるということで、今の、派遣料金と賃金の差がいわゆるマージン率に、後ほどまたいろいろ議論になろうかと思いますけれども、そういうふうになるわけでありますけれども、それが、現在の二十四年改正のもとでは、オープンにすることが、言ってみれば、ある一定程度の抑止力になるはずだということだと思います。

 今回の改正案は、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、均衡待遇を推進することで、派遣で働く方の待遇改善を図ると同時に、派遣会社による計画的な教育訓練等を新たに義務づけるという、先ほどのキャリア形成支援制度を導入するということで、こうした取り組みを通じて、働く人の能力を上げることで、賃金が下がらないようにしていくということにつながるようにしていきたいというふうに考えております。

井坂委員 自由な経済競争、我々も基本的にはそういう考え方ですから、値段に対して余り規制をすべきではないと基本的には思っております。

 ただ、この派遣業界というのはやはり特殊で、普通の商売であれば、工夫して仕入れを安くして、それを安く売るということが、これは自由競争の中で認められますが、派遣の場合は、いわゆるその仕入れに当たる部分が、要は派遣労働者の賃金ということで、やはり、そこを余り自由競争の中で圧縮すると、今いろいろ問題視されていることがよりひどくなるだろう、こういう問題意識を持っておりますので、むしろ、マージンの部分を経営努力で幾ら減らすのか、あるいは幾ら取るのか、ここはまさに経営の自由だというふうに思っております。

 ですから、マージンと派遣労働者の賃金、これはもう完全に分けて考えて、こっちは、それこそ同一労働同一賃金的にしっかりキープをする。その中で、まさに派遣業者の企業としての経営努力の中で、マージンを幾らに設定するのか。もちろん、マージンを高く設定して、そのかわり、非常に高い派遣元のサービスを提供する、こういう商売もあっていいと思いますし、とにかく安くするという競争もあっていいというふうに思います。

 ここをぜひ、こちらの、派遣労働者の賃金にしわ寄せが行かないようにという工夫が私は必要だというふうに思いますので、公開は一定の抑止力はあると思いますが、よりダイレクトな何らかの手だてが要るのではないかということを申し上げたいと思います。

 それから、本会議で、あともう一問だけなんですが、これも全くお答えをいただけませんでしたが、派遣業が媒介となって同一労働同一賃金を意識した企業横断型のジョブ型賃金体系を行く行くはつくっていく、こういうビジョンも持ち得るというふうに思うわけであります。

 大臣も答弁でおっしゃったように、派遣業というのは、基本的に、ジョブ、業務に値札をつける形で派遣労働者を派遣します。複数の派遣先に同じ値札のついた派遣労働者を派遣しますから、その派遣業者、派遣元を媒介として、派遣先、ここでも同一労働同一賃金、均衡・均等待遇というものを意識し出すようになると、ここがジョブに値札をつけて、派遣先ともいろいろジョブごとに値段をそろえていく、こういう作用が私はうまくやれば期待ができるというようなビジョンも持っております。

 そういったビジョンはお持ちですかということを本会議でお尋ねいたしましたが、この部分はほとんどお答えがなかったように思いますので、改めてお伺いをいたします。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げたように、労働者派遣というのは、派遣労働者が従事する仕事の内容というのが、言ってみれば、ある程度特定をされているということが結構多いわけですね。それで、派遣契約の中で明確になっているということがあって、賃金も通常、やはりどういう仕事かによって大体どのくらいの賃金かというのが対応するものであるわけで、そういう意味で、今先生おっしゃったように、職務給に適した面があるということは、そのとおりだというふうに思います。

 派遣業が媒介となってというお言葉をお使いになっておられましたが、職務給が普及する際の下地となる可能性は、確かにそれはあるなというふうに私は思うところでございます。

 一方で、先ほど来ずっと申し上げているように、同一労働同一賃金の実現のためには解決すべき課題もあるわけで、議員御指摘の同一労働同一賃金を意識した企業横断型のジョブ型賃金体系、これについては、まずはやはり、国内の労働市場の中でどういうことが今行われていて、先駆事例がきっとあると思うんですね、そしてまた、それに対して慎重な見方とか、いろいろなこともあろうかと思うので、国内のそういうプラクティスもちゃんと見ながら、海外できっと知恵を出しているところもあるでしょうから、そういうものをしっかり調べて、何が今のジョブ型の賃金体系を、言ってみれば、日本で派遣をまさに介して何ができるのかということを調べていくということが、我々の調査の中身の一つでもあるのかなというふうに思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 次の質問に移ります。

 一枚だけ配付資料を用意させていただきました。平成十五年の派遣法の改正で、当時、自由化業務の期間制限、もともと一年だったんですが、これを過半数代表の意見聴取を行えば三年に延長できることとなりました。まさに、今回問題視をされている、三年、六年、九年と延長が何度でもできるじゃないかと言われている手続とほぼ同様の手続で、当時は一年を三年に延長できる、こういう法改正が平成十五年にありました。

 この間、委員会では、非常に疑問視されているのが、この意見聴取という手続は何か抑止力になるのか、何の歯どめにもならないのではないか、こういう議論がずっとされているわけであります。

 まさに平成十五年のときのことを今見返せば、これが抑止力になるのかならないのか議論ができるのではないかと思いまして、この紙を持ってまいりました。

 この上の段を見ていただきたいんですけれども、過半数労働組合の意見聴取でどういう答えが返ってきたのかというパーセンテージであります。延長すべきでないと言った組合は一・二%。延長してよいと言ったのは三九・五%。いいも悪いも特に意見は出されなかった、これもちょっとどういうことかよくわかりませんが、これが四四・九%。また、意見の聴取は行っていない、これは一〇・八%ということであります。

 ちょっと時間がないので、本当はこのあたりも参考人に数字をまずいただいてからと思っていたんですけれども、これ以外に何か、意見聴取率とか異議率とか延長率とか、こういった数字を参考人でお持ちであれば、まずお答えをいただきたいと思います。

坂口政府参考人 もう委員の方からこの資料を御配付いただいておりますので特にございませんけれども、一点加えますならば、配付していただいた総数が八百四十八ということになっておりますが、この調査全体に対して回答があった企業のうち、具体的に期間制限のある業務について一年を超えて三年までの期間を定めているかどうかという調査がそのもとで、それは、調査の回答があった総数が千六百三十二で、そのうち、定めているという形で、要するに、一年から延長するという意思があったというのが五二%ということで、この総数が八百四十八となっていることをちょっと付言させていただきます。

井坂委員 ありがとうございます。

 このデータでまずお伺いをしたいんですけれども、右にある、意見の聴取を行っていない、一〇・八%というのがあるんですけれども、こういった回答が一〇%あるというのは、どう理解をすべきなのか、参考人にお伺いをいたします。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員からも御紹介ありましたように、前回の改正で、原則一年の派遣可能期間を三年まで延長する際には意見を聞くという手続が規定されたということでございますので、この意見聴取を行っていないという場合については、これは現行法の派遣法の四十条の二の第四項違反ということになろうかと思いますが、ちょっと、アンケートの調査であることから、その個別の、アンケートをしたところの状況ということについては把握はできていないということでございます。

井坂委員 意見聴取をしなければいけないというルールであったけれども、一割の企業は、延長したけれどもそもそも意見聴取を行っていないと正直にアンケートで回答されているということであります。

 これは違反であるという答弁がありましたけれども、こういった実態に対してどのような指導、あるいはこうならないような予防策をとられたのか、あるいは何もなかったのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。

坂口政府参考人 今御指摘ありましたように、このアンケートの対象に対してということについては、先ほども御答弁したようなとおりでございますので、お答えが不可能ということになりますけれども、一般論としましては、この意見聴取を行わないということにつきましては、先ほど御答弁させていただきましたように、現行法令違反ということでございますので、そういった実態が把握できれば、私どもとしては、厳しく指導するということで是正を図っていくということでございます。

井坂委員 今回も、この意見聴取を行うということが、三年、六年、九年とむやみに派遣受け入れ期間を延長できない唯一最大の抑止力だというふうにずっと答弁があるわけでありますけれども、その部分が結局、前回も、そもそももう聴取すらしないまま延長しているところがあるということで、特に何もされていないということでありますから、また今回も同じぐらいの割合で、聴取せずに延長する企業がほっておくと出てくるというふうに思うわけであります。

 余り守らせる気がないのかなというふうにも思ってしまうわけでありますが、前回、こういう、聴取せずに延長している企業が一割以上あった、今回、何もなければまた多分同じぐらいの割合でこういう企業が出てくるというふうに思うんですけれども、その点に関して何かコメントがあれば、お願いします。

坂口政府参考人 今委員御指摘ありましたように、やはりこういう、現行法においても意見聴取の手続を行っていない派遣先があるということでございますので、私どもとしても、しっかり指導をやっていかなければいけないということで反省をしております。

 今回も、意見聴取の仕組みということを、期間制限の三年を延長するに当たって設けております。いろいろな手続、双方向というようなこともございますけれども、まずもっては、今の状況の反省も踏まえて、しっかり派遣先について指導、あるいは勧告、公表も含めて厳正な指導監督を行って、履行を確保するということが一点でございます。

 それからもう一点は、労働契約の申し込みみなし制度がこの十月から適用ということになりますけれども、この労働契約申し込みみなし制度につきましては、意見聴取をせずに派遣可能期間を超えて労働者派遣を受け入れた派遣先ということにつきましては、このみなし制度の適用にもなるということでございますので、そういった点につきましてはしっかり周知を図るとともに、まさに、そういったことになればみなし制度になるということも派遣先にはしっかり自覚をしてもらい、法の遵守ということをさらにしっかり訴えてまいりたいと思います。

井坂委員 ちょっとこのグラフをごらんになって、大臣に全体的な所感を伺いたいというふうに思います。

 前回、一年から三年への延長を意見聴取したらこういう割合だったということであります。

 これを見ると、やはり、意見聴取という手続を間に入れても事実上ほとんど簡単に延長できてしまうというようなことではないかなと思うわけでありますが、この意見聴取が大して実態上歯どめにならないのではないか、事実上、特に反対意見も出ずに、延長し放題ということにならないのかという懸念に対して、大臣のお考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 きょうこれをお配りになられるということで、初めてこれを見たときに、私としては、聴取はしているわけで、それで、正直言って、受け入れ期間を延長すべきではないというところがこれだけ少ないというのに少し予想外の感じを持ちました。

 しかし、冷静に考えてみれば、意見聴取をして、こういうことで、受け入れ期間を延長してもいいが約四割、特に意見がなかったというのは普通は容認ととられると思うので、これでいくと八割ということでありますから、そこはある意味で役割分担ができているのかな。つまり、派遣先のいわゆる正規の職員の方と派遣で行っていらっしゃる方の役割分担ができていなければ、まさに常用代替が起きるということで、かなり敬遠される可能性があるんだろうなと。でも、そうなっていないということは、そうじゃないところについて派遣を受け入れているのかなというふうに思いました。

 一方で、一割、意見聴取は行っていないという今御指摘のところは、懸念が若干、要するに、労使自治として、行われていないのはまずいよねと思いましたが、今回はみなし制度も発動になるということでこれはなくなってくるということになって、しっかり労使自治の中で話し合いをして、今回は双方向で、意見聴取だけではないわけで、一方的に終わるというわけではなくしているわけでありますので、ぜひこのプロセスは大事にしてもらって、民主主義はプロセスが大事ですから、そこのところをしっかりやってもらいたいなということを、これを見て思ったところでございます。

井坂委員 私も、実は大臣と全く同じ感想を持ちました。

 受け入れ期間を延長すべきでないという方が非常に少なかった、一・二%ということですから。私は、事前の感覚ですと、何か半分ぐらいは受け入れ反対というような声が上がるのかなというふうに思っておりましたら、受け入れ延長反対という声はもうほとんどないというのが今の日本の派遣先の企業の実態なんだなというふうに受けとめました。

 しかし、よく考えたら、それもそうかなというふうに今は思っております。

 というのは、派遣先の会社の社員さんは、既に自分たちは正規雇用で雇用されているわけですから、今派遣が来ているあるジョブ、ある仕事がこれからも派遣で埋められようと、それは正社員にかえなさいというふうになろうと、今いる社員さんにとっては余り関係のないことなんだなというふうに受けとめをしたわけであります。

 常用代替を防ぐということで、確かにイデオロギー的には、今いる社員さんがいいと言えばいいんだということになるのかもしれませんが、しかし、今既にいる社員さんは、確かにそんなに目くじらを立てて反対することもないのが実態かなと、この数字を見て私は思ったわけであります。

 一方で、では、こういうことが実際起こってくると、例えば、今回も意見聴取のみでどんどん三年、六年、九年と受け入れ期間は延長できるわけでありますが、今いる社員さんは別に何も損はしません。ただ、そうすると、世の中に、普通だったら正社員で求人が出されるはずのタイミングで、その仕事はまた次も派遣の仕事として三年残る、また次も派遣の仕事として三年残るということで、世の中の求人が、やはり派遣労働が非常にふえてくる、派遣の雇用枠ばかりがふえてくる、これは紛れもない事実だろうというふうに思っています。今いる派遣先の企業の社員さんはそれで全然困らないわけでありますが、世の中全体では非常に困ったことになるのではないか。

 また、本来であれば正規雇用でいけていたはずの仕事が、もうその会社はそのジョブは派遣で回すということになるわけですから、もう派遣の雇用先しかない、仕事先しかないということは、こちら側の、派遣先の正社員には意見を聞きますけれども、本来、本当に困ったことになる人には何も意見を聞けておりませんから、これは、今回、こういうやり方で歯どめといいますが、恐らく、意見聴取をしても、反対という意見は数%になるのではないかなと。三年、六年、九年の延長が当たり前になる、そして、反対意見が出たって、やろうと思えば延長はできてしまうわけでありますから、この意見聴取というのは実は何の歯どめにもならないのではないかという気がしてきたんですね。

 大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 雇用を、正規社員であろうと派遣であろうとパートであろうと契約であろうと、最終的に決めるのは経営者なわけですね。その経営者が何を考えてこういう雇用を、種類としては幾つか形態がある中からお選びになるかというと、やはりそれは会社として、係でも課でも、あるいは部でもいいんですが、どういうモラールを、やる気ですね。(井坂委員「士気ですね」と呼ぶ)士気、これをどういうふうに高めるのかということをやはり一生懸命企業経営者というのは考えなきゃいけないし、考えているので、考えていないところは余り成績もよくないんだろうと思うんですね。したがって、そのときにどういう選択をするかということだと思うんです。

 きょうお配りをいただいたこれの、さっき申し上げたように、役割分担が割合できているのかなというふうに思ったのは、それは、三年、六年、九年と、どんどんふえていくんじゃないかというお話ですけれども、それをふやすかどうかはまた経営者の判断であって、同一労働同一賃金だったら正社員と全く同じだというふうに考える向きもあるかもわかりませんが、必ずしも、経営者も、それから一緒に仕事をされる職員の皆さん方も、そういうふうにはなかなか私は考えないのかなと。正社員の方と派遣の方は少し違うと考えるならば、そうすると、やはりそこにはおのずと、経営判断としても、職場の雰囲気としても、一定の限度というか、そういうものもあるんだろうなと。

 ですから、御懸念のようなことがどんどんふえていくぞということをやって企業経営としてうまく結果が出せるのかというと、私は、なかなかそれは、きっと難しいんだろうなというふうに思う。

 むしろ今は、派遣から正社員にする、その方が優秀な人を採れるということをやっているところもたくさんございますので、そういうところとよく話をしてみると、必ずしも御懸念の向きだけではないなと。もちろん、そういう向きも否定は決して私もいたしませんので、我々もそこはしっかり対応をしていかなきゃいけないというふうに考えております。

井坂委員 今大臣がおっしゃったような、企業経営者が別の経営上の理由で、やはり派遣ばかりふやしたらよくないな、こういう考えは、それはあるかないかわからないですが、そういう経営者ももちろんいるというふうに思います。

 ただ、もう一度端的にお伺いしますが、これまで答弁では、意見聴取手続で歯どめになってそう簡単に三年、六年、九年の延長はできないんだというふうに答弁をしてこられました。ただ、この数字を見る限り、意見聴取をしてもそもそも反対される可能性はほとんどないという実態がある中で、意見聴取手続、これに関しては少なくとも歯どめにはならないということはお認めになられますか。

塩崎国務大臣 いや、私の印象は、先ほど申し上げたとおりで、今の状況で、このアンケート調査から読む限りは、余り、派遣を続けられるのは困るなと積極的に思っている方が多いわけではないというふうに思いました。

 今回は特に、三年たつときには必ずやるということで義務化をするわけでもありますし、そして、説明義務も、意見の中に反対がたくさん出たときにはきちっと説明義務を新たに課す、さらには社員の皆さん方に周知をするという、念を入れて労使自治、社内民主主義を徹底するということでございますので、やはり民主主義というのは手続ですから、手続をさらにプロセスとしてはふやしていますので、そういう意味では、経営者側としてはやるべきことがふえているということにおいて抑止力になるというふうに私は考えているところでございます。

井坂委員 そもそも反対意見が出てくる可能性が非常に低いので、その後の手続がいかにややこしかろうと歯どめにはならないというふうに私は思います。

 時間がありますので、少しまた後日やりたいと思います。

 次の質問は、恐らく最後の質問になると思います。

 ちょっと二問飛ばしますが、専門二十六業務で期間制限なくこれまで働いていた有期派遣の労働者の方、これが今回の法改正ではもう軒並み個人の派遣期間制限がかかってしまって、三年で派遣先を変えなければならなくなります。こういう専門二十六業務の方というのは、十年、十五年とずっと同じ会社で、まさにその派遣先に特化した専門的な業務をそこそこ高いお給料でずうっとやってきた、こういう方も多いというふうに思うわけでありますが、今回の法改正でそれが続けられなくなる、こういう問題をどう防いでいかれるのか。通告どおりです。大臣にお伺いいたします。

塩崎国務大臣 今回の見直し案におきましては、有期雇用の派遣で働く方を対象に、個人単位の期間制限を新たに設けるわけでありますけれども、その目的は、派遣労働が直接雇用に比べて雇用の安定とかキャリア形成が図られにくいという、いつも申し上げている理由で派遣労働に固定化されるということをやはり防がなきゃいけないということにあると思います。

 二十六業種は確かに期間制限がなかった。しかし、その契約自体は決して三十年であるわけではなくて、半年とか一年とかで、その更改時期が来るたびに御心配をされていたと思うんです。ですから、期間制限がなかったから安定的に働けたかといったら、全然そんなことはないケースもあったんではないかな、あるんだろうと私も聞いています。

 したがって、現在、期間制限のない二十六業務、専門業務の派遣で働く方であっても、今申し上げた有期の雇用契約を反復更新するということによって同じ職場で就業を続けていく方は、そういう形の反復更新の方がたくさんおられて、雇用の安定とかキャリア形成が十分に図られているとは私はなかなか言いがたいんだろうというふうに思うんです。

 このために、そのキャリア形成支援制度の適用も含めて、専門二十六業務の派遣で働く方についても、同じ職場においては三年を上限として、一つの区切りとしてキャリアを見直す契機をつくるという考え方だと思います。

 三年を超えて同じ職場で働くことを希望される場合には、派遣元、派遣先、御本人でよく話し合っていただいて、派遣元で無期雇用にされるか、派遣先で直接雇用するということがベストであるわけでありますが、そういったことで対応をいただくことを我々としては期待しているところであって、そのことが一番安定的にいける。

 一生派遣になるじゃないかという御指摘でありますけれども、そういうような形の無期雇用で派遣元に雇われることになれば、それは期間制限はかからないということになりますので、安定的な雇用として成り立ち得るということに私はなるんじゃないかなというふうに思います。

井坂委員 ちょっといろいろ突っ込みたいところがあるんですが、時間もないので、一点だけ、具体的な話なので参考人にお伺いをしたいと思います。

 今大臣は、専門二十六業務は、期間の定めがないとはいえ、有期の契約なので、半年とかごとにそういう契約の切りかえがあるんだとおっしゃいました。そうだと思います。

 以前、自民党の大岡委員の質疑の中で、いわゆる法改正前の二十六業務の方は既存不適格のような扱いになって、法改正前の契約のままなので、ずうっとこれは期間の定めのない派遣が続けられるんだという答弁をしておられます。

 しかし、これは本当にそうでしょうか。今の答弁ですと、契約の切りかえがすぐにやってくるので、法改正後に契約切りかえが来たら、これは期間制限が普通にかかってしまうんだと思うんですけれども、法改正前に、二十六業務、有期で期間の定めのない契約、派遣先にずっと行けていた方は、法改正前だから、法改正後もずうっとそのまま行けるような答弁をかなり明快にされたと思うんですが、その点だけお伺いしたいと思います。

坂口政府参考人 経過措置としましては、法改正の施行前にいわゆる二十六業務で期間制限がないというものについては、法改正後についても期間制限がかからないということではありますけれども、ただ、あのときも御答弁申し上げたように、その当該契約の終了するまではそれが続くということで御答弁申し上げたと記憶しております。

 それで、当該契約につきましては、現行法も、実は、いわゆる駐車場管理とか、そういった一定の、特殊な、二十六業務の中でも一定の部分を除きますと、いわゆる一定の派遣契約期間、派遣可能期間ではなくて、派遣契約期間の上限を三年ということで定めておりますので、その三年ということでの当該契約の終了が来れば、一旦はそこで契約が終了するということでございます。

 ただ、今委員がおっしゃったように、駐車場管理のいわゆる二十六業務等々というのは、労働者数は余り多くないんですけれども、そういった方については、そういった規定もないということを考えると、その部分については、施行後も続く、派遣契約の可能期間制限がかからない。契約も、現行法の契約の三年の上限もかかりませんので、そのまま契約が続くということで、詳しく申し上げるとそういう状況ということでございます。

井坂委員 大岡委員が質問されたのは、要は、既存の二十六業務について、多くの合法な契約は、既存不適格ということで、新法が遡及適用されることなく、派遣期間の上限が適用されないということになりますが、そのとおりでよろしいんでしょうかと聞かれて、御指摘のとおりですというふうに答えておられるわけであります。

 何か、私、これだけ当時聞いたら、今二十六業務の方は、新法になっても、もうずっと今いる派遣先で働き続けられるのかなというふうに受けとめをしたんですが、でも、契約は有期なので、契約の切りかえはすぐ来ますよね。そのとき、それ以降は新法適用で、もう絶対雇いどめになるんじゃないかと思うんですけれども、今の二十六業務の方はずっと働き続けられるとしか読めないような答弁をしているんですが、どっちが事実なんですか。

坂口政府参考人 済みません。ちょっと、当日の答弁メモが今ないので、申しわけございません。

 契約が更改されれば、これは九月一日以降であれば、それは当然、新法が適用ということでございます。

井坂委員 時間が来ましたので、また次回に回しますが、私はこれは、厳しく言えば、ほぼうそに近い答弁をされたというふうに思いますし、非常に良心的に言えば、誤解を受けやすく、しかも、誤解を放置するような答弁をされたというふうに思います。既存不適格なんという言葉を使ったら、今二十六業務の人はずっと働き続けられるというふうに私は受けとめました。大岡委員がどう受けとめられたかは知りませんが、質疑のやりとりを聞く限り、そのような受けとめをされているのではないかなというふうな印象を受けております。

 実態は、有期ですから、すぐに契約更新が来て、今、二十六業務、有期の方も、遡及適用なんという議論をするまでもなく、新法が来れば、すぐに契約切りかえになって、それ以降はもう三年しか今の職場は最長でも働けない、これが実態であるという今の答弁だったと思いますので、これは大変な問題だというふうに思いますから、また次回、議論をさせていただきたいというふうに思います。

 以上です。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 労働者派遣法改正案について、きょうからようやく野党の正式な質疑が始まります。ぜひ、大臣には簡潔かつ明瞭な答弁をしていただけますようにお願いをいたします。

 これまで、いわゆる一〇・一問題ペーパーについてさまざまな議論がありました。大変残念なことだったと思います。

 厚生労働省が、いわゆる労働契約申し込みみなし規定が発動されることについて警戒する余り、派遣労働者の方々をおとしめるような記述をしたペーパーを作成し、そしてそれを配付した。そして、適宜リバイスをして、議員によっては、この議員にはこのペーパー、そしてこの議員にはこのペーパーと、違う内容が記載されたものをそれぞれ配付をして、違う理解のもとでこの法案の審議は始まっているという状況、異常なスタートだとこれは言わなければなりません。

 私は、改めて大臣に正式な謝罪とこれまでの答弁等々の撤回を求めたいということで、野党の方からの要求もあり、二十六日の理事懇談会で大臣からペーパーが出されたわけでありますけれども、率直に申し上げて、これは不十分だと申し上げなければなりません。特に、大臣が不適切な部分があるというふうに判断をした二月の下旬以降、いわゆる一〇・一問題のペーパーの撤回については、その作業がほとんど誠実になされていないという状況は、厚生労働省の組織的な、構造的な問題がそこにあるというふうに私は断ぜざるを得ません。

 まず冒頭、大臣、二十六日の理事懇談会で提出をされた資料について、改めてその真意をお話しいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今御指摘がございましたけれども、昨日、私の名前におきまして「今回の労働者派遣法改正案審議における御指摘事項について」ということで、これまでの数々の不十分な点、不適切な点についておわびを申し上げ、今後の委員会質疑において、誠実に、そしてまた、皆さん方の御質問の真意をよく、まず問取りの段階からしっかりと聞いて、そしてそれに誠実に答えるように役所挙げて努力をするようにということで、役所にも督励をしたわけでございます。

 今回、一〇・一問題につきましては、最終的には何を言っても私の監督責任でございますし、直接的には職安局長の責任でありますけれども、いずれにしても、今回、補足説明資料といえども、いろいろ不適切な表現、あるいは配り方についていろいろ御指導、御指摘を受けたということについて、率直にその非を認めながら、不十分であったところも認めながら、今回、このようなことで、言ってみれば仕切り直しをして、御審議をしっかりお願いしたい、こういうことできのう提出をさせていただいたところでございます。

 なお、それにさらに加えて、きょうお配りをいただいておりますけれども、そのペーパーの中身について、少し不足をしているのではないかという御指摘もあったので、より具体的に解説もつけて、御説明を申し上げる紙を追加でお示ししたということでございます。

 いずれにしても、今回のさまざまな件について私の方からおわび申し上げ、そして、このようなことが二度と起きないように役所にも徹底をさせ、さらに充実した審議が行われるように私を初め厚労省挙げて努力をしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

西村(智)委員 配付されたいわゆるオリジナルといいましょうか、リバイスされて最終バージョンが出るまでの中では、大量の派遣労働者が失業するおそれという記述がありました。この記述が最終バージョンでは削除されているわけなんですけれども、このことについて、これは本当に重大なことだと思います。重大だからこそ、厚生労働省もそこは削除するという判断をしたんだと思います。

 本当に重大なことであるにもかかわらず、削除したペーパーを、ただただ委員のポストに投げ込むということ、ポストに投げ込んだことをもって、配付したからこれで対応済みだということ、こういうふうに本当に言うことができるんでしょうか。

 私は、改めてもう一度、厚生労働省が、こういった事実は決してありませんということで、配ったところにきちんと説明をして回るべきだと思いますし、そこから先、多くの国民、そしてこの委員会を傍聴している皆さんにも、改めてそのことは厚生労働省の責任としてきちんと説明をし直す必要があると思いますが、いかがですか。(発言する者あり)

渡辺委員長 静粛に願います。

塩崎国務大臣 これも繰り返し申し上げてまいりましたけれども、もともとこれは必要に応じてお配りをするという類いのペーパーでございました。中身についてはもちろん今申し上げたとおりでありますけれども、それが二月の二十三日に足立議員の配付資料という形で出てまいったので、そこで私も初めて知ったところでございまして、それ以後は使わないということでやってきたわけでございます。

 最終的なペーパーは、これは民主党の部門会議の御要望もあってつくったわけで、その間、二月の二十三日からは配付をしていないということになっております。

 したがって、今の先生の御指摘で、お配りをした先に対してきちっとすべきだということについては、そのとおりだと思いますので、なおまだきちっと説明ができていないところがあれば、回らせたいというふうに思っております。

西村(智)委員 まだ行われていないんですよ。それは断言することができます。

 この最終バージョンのペーパーでも、実は、訴訟につながるおそれがあるということは依然として記載をされています。このおそれがあるということについても、最終バージョンのペーパーです、私が一週間前の委員会で資料として配付したものですけれども、これについて、訴訟につながることを誰が恐れているのかというふうに質問しましたら、塩崎大臣は、訴訟につながる可能性があるということをおそれと書いているんだというふうに答弁をされたんです。

 私は、おそれというのはそういう意味だったかなというふうに思いまして、いろいろ調べてみたんですけれども、おそれというのは、やはり、よくないことが起こることについて、それを懸念するということ、不安に思うこと、そういうときにおそれと使うんだというふうに一般的には解されているわけなんです。

 だからこそ、塩崎大臣、昨日の理事懇で配られたペーパーの中でも、「誤解が生じるおそれ」というふうに表現された部分があるんですけれども、誤解が生じるというのは確かにおそれですよね、よくないことが起きるわけですから。そういう意味で使われるのが正しい使われ方だと思うんですけれども、訴訟につながるおそれというふうに、やはりあるんだというふうに書かれてしまったら、これはやはり、訴訟が起きることをよくないというふうに厚生労働省が考えているということではないですか。

 私は、依然として、改定された最終バージョンのいわゆる一〇・一問題ペーパーの中にもまだ不適切な部分があるし、これが厚生労働省の、今回改正法を提出するに当たっての基本的な姿勢だとすれば、本当に大きな問題というか、厚生労働省も変質をしてしまったなというふうに言わなければいけないわけであります。

 きょう、私は、我が国と国際機関との関係についてお伺いをしたいと思って参りました。

 大臣もゴールデンウイーク中にはILOにも行かれた。我が国とILOは極めてよい関係をこれまで構築してきたというふうに思います。

 大臣は、ILOとの関係において、さまざまな条約等々がありますけれども、厚生労働大臣として、ILOが制定しておりますさまざまな条約について、基本的にどういう姿勢で厚生労働行政を扱っていきたいというふうにお考えか、その所見をまず先に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 ILOに参加をしている日本で、重要な役割も果たす立場に立っているわけでございますし、言ってみれば、ILOの運営そのものにも協力をしていく立場であります。

 ILO自体も三者構成になっていると聞いておりますけれども、そこのところで行われている議論は、やはり最大限、私たちはしっかり受けとめて、当然、国際機関として、世界の中の秩序を守っていくために日本としても貢献をしていくべきだというふうに思っておりますので、さまざまな条約がございますけれども、それはもちろんケース・バイ・ケースでありますけれども、それぞれ、正面から受けとめて、判断をしていかなきゃいけないというふうに思います。

西村(智)委員 ILO条約百八十一号条約は、民間職業仲介所に関する条約でございます。我が国はこれを批准していますね。確認したいと思います。

山本副大臣 批准しております。

西村(智)委員 この百八十一号条約にのっとって、かつて日本の民間団体から申し立てがなされました。この点について、勧告が二〇一二年の三月二十六日に発表されておりますけれども、この内容について大臣は承知していらっしゃいますか。

塩崎国務大臣 二〇一二年三月にILOが報告書を取りまとめたというふうに理解をしております。

西村(智)委員 報告書という言い方でも、勧告というふうに内容的には私は受けとめられるものだと思っておりますけれども、その中で、大変厳しい指摘が日本政府に対してされているところです。

 例えば、実は二〇一二年の三月二十六日に発表されたこの報告書というのは、その翌々日に日本で労働者派遣法の改正案の修正案が成立をしている日ですので、極めて日にち的には近いところだったわけなんですけれども、この中で、特に登録型派遣と製造業への派遣を原則禁止するなど、派遣労働者の保護を強化する労働者派遣法改正案が修正されて、登録型派遣制度がほとんど変更なく機能し続けることになった、こういったことを非常に重く受けとめていまして、条約の第一条、五条、十一条、こういった条約に適合される法制度とその運用のための措置をとるように日本政府に要請するというふうに、条約を満たしていない部分があるからそれをしっかりと満たすようにということで、日本政府に対する要請が行われているわけであります。

 こうしたことを大臣はどういうふうにお感じになっていますか。

山本副大臣 御指摘のILOの報告書におきましては、日本の派遣制度は派遣元の雇用責任が履行されておらずILO第百八十一号条約に違反しているとの労働組合の申し立てに対しまして、留意するというふうにしたにとどまっておりまして、今御指摘ありましたとおり、条件を満たさないとは断じておりません。

 ILOの報告書におきまして指摘された事項については、二〇一二年の政府による年次報告において見解を示したとおりでございまして、登録型派遣を含む全ての派遣で働く方につきましては、一義的な雇用責任を派遣元に課した上で、労働基準法等の一定の規定については、その適用の特例に関する規定を設けて、使用者である派遣先に対しても当該規定を適用させることとしておりまして、条約に沿う内容となっていると私たちは考えております。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、引き続き、登録型の派遣労働者も含めた全ての派遣労働者の雇用の安定を図ることが重要であると考えておりまして、今回の法改正案におきましても雇用安定措置を設けているところでございます。

西村(智)委員 留意するというふうに確かに書かれている部分がありますけれども、私が今指摘したのは、一条、五条、十一条に適合される法制度とその運用のための措置をとるよう日本政府に要請するですから、そこは違う部分であります。また、その前段としては、派遣労働者に対する効果的保護が欠落している状況に鑑みというふうになっておりますので、今副大臣が読み上げられた部分とは全く別のところを私は申し上げているわけなんです。

 それで、今回の法改正なんですけれども、この報告書の中身に本当に沿ったものになっているのかどうか、そこをやはりもう一回チェックしなければいけないというふうに思うんですね。つまり、登録型派遣労働者の雇用や労働条件、待遇上の権利が確保されているのかどうかということ、ここが問題なわけです。

 そこで、具体的に幾つか伺いたいと思うんですけれども、本当は登録型、有期、無期、いろいろその定義等々もお伺いしたいところでありますけれども、きょうお伺いしたいのは三つです。

 一つは、ILO百八十一号条約十一条(a)、(b)の結社の自由及び団体交渉権について。

 派遣労働者の団結といいましょうか、団体をつくるということ、これは、大臣、どこで保障され、組織をされることになりますでしょうか。派遣労働者はどこで組織をされることになるでしょうか。派遣先ですか、派遣元ですか。

塩崎国務大臣 基本的には派遣元と団体交渉をするのではないかというふうに理解をしております。

西村(智)委員 でも、通常は派遣元で構成されるということはなかなか難しいですよね。実際、みんなばらばらな職場に行かれているわけですし、どういう人たちが派遣元にいらっしゃるのかということを知る機会というのは、私はほとんどないと思います。だから、実質的には、派遣労働者の言ってみれば団結というか団体をつくるということについては、派遣先でないと実際上は難しい。だから、これは派遣先で組織されるということになるんだと思うんです。

 ところが、派遣先で何らか、例えばミーティングとか打ち合わせだとか話し合いを行おうとしたときにも、なかなか、団体交渉という形になりますと、派遣先では許されないというケースが多いというふうに聞いています。

 これは、ILO条約十一条の中にも結社の自由及び団体交渉権ということが記載されている以上は、やはり、結社をするということを求めたことを理由とした雇用及び労働条件上の不利益取り扱い、こういったことの禁止は、派遣先に雇用される労働者と同じように、ひとしく保障をしなければならないというふうに思っていますけれども、大臣、この点についてはいかがお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 先生おっしゃるように、団結をしようと思っても仲間が派遣先にしかいないじゃないかというふうに理解をしたところでございますが、考えてみると、これは、労働条件を決めるのは派遣元と決めるわけで、賃金にしても。そうなると、やはり交渉する中身は、労働条件について交渉するということで、それの改善などのために団結をするということになるのではないか。一人一人条件が違うということは、そのとおりだと思いますけれども、しかし、やはり交渉する相手は、派遣元と交渉するのではないかというふうに私としては考えているところでございます。

西村(智)委員 でも、実際上はなかなかそうならないんじゃないかということを私は申し上げた上で質問をしているわけなんです。ちょっと大臣、ここはもう一回整理をしていただきたいと思います。

 今までにもさまざまな裁判例などもあるんですけれども、派遣先でさまざまミーティングなどをやろうとしたときに、それを理由に不利益取り扱いなどがされる、行われるというケースが実際にある、このことについては認めてくださると思います。

 では、そういったことにならないように、どこで結社の自由というか団体交渉権を保障されるのかということは、今の大臣のお答えだと、何だかふわふわしていて、派遣元なのか、それとも派遣先なのか、どちらにも許されるのか、あるいはどちらにも許されないのか、それも明確ではないというふうに私には聞こえます。

 ここは、団結権、団体交渉権、これは派遣の皆さんにもきっちりとひとしく、派遣先の人たちと同じように保障されるというふうに答弁をいただきたいと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 きょうの御質問ということで、御用意をしていなかったので大変恐縮でございますけれども、労働組合は、さっき申し上げたように、労働条件を維持改善しないといかぬということで、それで労働組合というのはつくられるのが大体目的となっていると思うんですね。そういうことになると、また、働く方が主体となって自主的に結成する団体で、これは、実は場所を問わず、どこにつくってもいいということでございます。

 派遣で働く方が労働組合を結成したり、あるいは既存の労働組合に加入をするということは、その待遇改善に資する可能性が十分ありますから、派遣で働く方を含めた非正規労働者の方々が組織化をされて労働組合をつくるというのは、それはどういう形もあり得ると考えているところでございます。

西村(智)委員 ちょっと時間が迫ってまいりましたので、三つやろうと思っていた二つ目は飛ばしたいと思います。

 三つ目は、母性保護及び母性給付並びに父母であることに対する保護及び給付。妊娠、出産だとかに対して、きちんとILO条約の規定を満たさなければいけないという意味の質問なんです。

 大臣、先日厚生労働省の中で、新米パパの方々を集めて、育休をとるようにというミーティングをやられたそうなんですけれども、私は、言ってみれば、まだ、ママの中でもとりたくてもとれない人たちがたくさんいるし、これは厚生労働省の中ということではなくて、外ということで。まあ、中にもいらっしゃるわけですけれども。ママであっても育休をなかなかとれない人もいるし、私たちも、民主党の厚生労働部門あるいはワーキングチームで、実際に派遣労働者の方々からいろいろヒアリングを行いました。

 そうしたら、私の目の前で、子供さんを抱えた方が、登録型派遣で働いておられて、一年育休をとった、いつ戻ってきますかとしばらくの間はいろいろ連絡があったけれども、保育園をようやく見つけて、よし、これから働けるという状態になったところで、急に、やはりもうあなたは来なくていいですというふうに言われたと。シングルマザーなわけです。どうやってこれから生活をしていったらいいかわからないという、本当に厳しい、大変な状況が、まさに私の目の前でそういうお話を聞いたところなんです。

 そういった中で、私は、トータルで見ても、やはりまだまだこの国のワーク・ライフ・バランスは、とてもとても、未到達だというふうに思いますし、特にこういった非正規、そして今回問題になっている派遣労働の中でも、極めて深刻な問題があるというふうに思うんですね。

 大臣、お伺いをしたいのは、これまでの経過についてであります。過去二十年くらいさかのぼってみて、第一子を出産した前後で女性の就業継続率、要するに、出産する前と後で就業継続をしている女性の比率はどういうふうに変化してきているというふうにお考えですか。

山本副大臣 残念ながら変わっておりません。六割が第一子のところでおやめになっておられます。

西村(智)委員 このくらいのことは、先日厚生労働省の新米パパのミーティングをやられた大臣には知っておいてほしかったというふうに思いますけれども、副大臣が答えてくださいましたが、そのとおりです。ほとんど変化はありません。六割くらいの方がやめておられるということ。

 その中で、派遣の人たち、非正規の人たち、この方々の就業継続割合は、正規の方々と比べてどういうふうに変化をしてきているか、特徴を幾つか言っていただけますでしょうか。正規と非正規を比べて、どういうふうに変わっていますか。

山本副大臣 この委員会でも何度も議論になっておりますが、派遣の非正規の方々の育休の取得率は、正規の方と比べますと、十分の一ぐらいとなっております。

西村(智)委員 このくらいのことも、この委員会でもかつて議論、質問があったし、ぜひ大臣には知っておいてもらいたかったと思うんです。

 つまり、正社員では、育休をとって継続をしている女性は、ほんのちょっとだけれどもふえてきている。だけれども、パートや派遣といった非正規雇用では、育児休業取得者というのはほとんどふえていない、就業継続率もふえてはいません。この点について、厚生労働省としては何らかの対策を打っているんでしょうか。

 今後、私は、今まさに派遣の方々が育休をとるということによって、本当に生計を主として担っていかなければいけない人であってもばっさりと切られて、そして大変苦しい状況になってしまう、そういったことがこれからもやはり起こってくるんじゃないかというふうに懸念をしています。これに対してきっちりと対策をとるべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 非正規の場合の育休の取得条件などはなかなか厳しいものがあるというふうに私も思っておりまして、これは今、省内で、特に一人親あるいは子供の貧困の問題などもあって、調べながら、ここの改善をどうしたらいいのかということを、検討を指示しているところでございまして、先生御指摘のように、非正規の場合にはとりわけ育児休業はとりにくいということは、そのとおりでございますので、これの改善をどうするかということは、今、目の前の大きな問題として捉えているところでございます。

西村(智)委員 派遣法の関係でいいますと、やはりこういった労働条件の保障そして権利の保障が十分ではないわけです。派遣労働者の多くが、特に登録型派遣の多くは女性です。そういった方々が、契約期間中に育休など、介休もそうですが、こういったものは取得できても、もとの職場に戻れないというケースが多発している。結局、雇用を失っているわけなんです。

 この両立支援については本当に、この派遣法の中でも防止策はとっていかなければならないし、また、今、省内で研究会を設置して検討されているというふうに聞いています。ぜひこれらの点についても検討事項の中に含めるべきだ。そして、必ず対策を打つということ、これは法改正のときの附帯決議も出ておりますし、また委員会の決議の中でもありますので、ぜひそのことはやるべきだということを強く申し上げます。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうも質問の時間をいただきました。

 早速ですが、皆様のお手元にお配りをしている資料、一番最後、ようやっと、一週間たって出てきたんですが、いわゆる派遣会社がどれだけのマージン率をとっているかという話であります。

 これは大臣、確認したいんですが、この数字はこういうことですかね。派遣先の会社が、ある派遣労働者に対して、一人当たり、例えば一時間当たり一万円のお金を払っていたと仮定をすると、そのうち八千七百三十円は派遣元の会社に行き、千二百七十円が派遣労働者に支払われる、こういう会社が存在する、こういう理解でよろしいですか。

塩崎国務大臣 マージンの定義でいきますと、そういうことであります。

 マージンの中にどういうものが入るのかというと、社会保険料とか教育訓練費、福利厚生費、派遣会社の社員の人件費など、雇用主として負担すべき費用が全て含まれていて、マージン率が高いという理由だけでは一概に判断が、この会社のあるべき姿は本来こうだというような話は少し、即断はなかなかできない。

 マージン率が高い理由というのは、やはりさまざまあるんだろうというふうに思います。それは個別には派遣会社から聴取によって把握をしているわけでありまして、今申し上げたような教育訓練に使用するためのシステム導入とか、いろいろな形でかなりかかっていたりするということもございますので、いずれにしても、今の数字という意味では、今の例えはそのとおりだと思います。

岡本(充)委員 余りにもこれは大きいと思いますよ、金額として。

 これは、名前も伏せて、どんな業態なのか、それから何人ぐらいいるのか、そういった人数によっても違うと思う。もっとこの内容を詳細に明らかにしていただくべきだと思うし、これはそもそもホームページに公開されているんですよね。

 公開していない会社はありますか。

塩崎国務大臣 事業所への備えつけというやり方もディスクローズの仕方としてございますので、ホームページだけというわけではございませんので、そういう意味では、ホームページに載っていないものがあるかという質問であれば、あり得るということでございます。

岡本(充)委員 公開というのは、事業所の中で見られればいいんですか、我々の目に触れる場所に置いてあるということですか。

塩崎国務大臣 ディスクローズですから、行って見るということは可能だというふうに思います。

岡本(充)委員 であれば、これは公開している話ですから、やはりきちっと、どの会社で、どのくらいの規模の会社で、どういう職種の人なのか、専門二十六業務の人なのか、そういう方だけを扱っているから比較的給与水準が高いんだというのならまだしも、これは、今言ったように、千二百七十円の時給だと思っていたら実は会社に一万円も払っていたというような話であると、やはりちょっとどうかという声が出てくるのも当然だと思います。

 低いところはどのくらいのパーセンテージがあったか、大臣は聞いてみえますか。

塩崎国務大臣 マージン率はかなり幅がございまして、例えば、いわゆる特定労働者派遣の場合でも、大体半分ぐらいが二〇%から三九%というところに入っております。一般労働者派遣事業になりますと、四分の三ぐらいが二〇%から三九%に入っていて、今御指摘の破格に高いというところと、低いところもあって、例えば一〇%以下のところが一般ですと二・四%ございます。それから、特定の場合には一〇%以下は五・八%ございますので、かなり幅がありますけれども、大体、真ん中辺である二〇から三九、ここに入るのが半分ないしは四分の三、こんな感じになっているわけでございます。

岡本(充)委員 前回グラフに出した話でありまして、ほとんどのところはこんなに高く取っていないんですよね。こんなに高く取っている、もらっているお金の本当にごくわずかしか渡していない、こういうところは、やはり何らか問題があるのではないかということで、当然議論されてしかるべきだと思います。

 ぜひ、大臣、資料をつくり直して出していただきたいと思います。

塩崎国務大臣 御疑問は当然だろうと思います。この間の円グラフで見ても、何かこんなに取るところがあるのかという気持ちになるものがあります。

 何で高いのかという中には、例えばさっき申し上げた教育訓練に使用するためのシステムの導入経費がかなり入っているというようなものとか、あるいは派遣先までの出張旅費を入れているとか、いろいろな経費があり得るわけでありますので、今先生御指摘のようなものは、個別の企業については当然それを出すわけにはいきませんけれども、わかる範囲内でそういうケースを少し調べてみたいというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、個別の会社も出してもらって当然でしょう、だって公開しているんですから。どこの会社かというのは公表しているわけですから、それはどこの会社か教えてください。

塩崎国務大臣 いや、申し上げているのは、なぜ高いのかという、コストに何があるのかということを出しているということはないので。マージン率自体は出していますよ。ですから、それが高いところに聞いてみて、どんなふうになっているかということが、感じがわかるように、調べられる範囲で調べてみたいということを申し上げているわけであります。

岡本(充)委員 マージン率、公表しているんですから、数字を出してもらって、それはやはり企業の名前を出してほしい。だって、おかしいでしょう。法の趣旨からして、マージン率が高いところについてやはり国民の目が入るようにこれは法改正したんですよね。そういう趣旨からしてこれはおかしいと思いますので、名前を出してください。

塩崎国務大臣 日本は資本主義、自由主義でございますので、その経営の中身を出せというのはなかなか難しいんだろうと思うんです。派遣の健全性を保つためにマージン率を出せというのは当然のことで、これはもう既にやっているわけですね。

 ですから、それが高いのはおかしいな、何だろうかというときに、今申し上げたように、たまたまその期にシステムの経費が一括入ったとか、そういうようなことであるかもわからないということを申し上げているので、一体、それは何が理由でそういうふうになって高いのかということについては、個別に聞ける範囲内でやはり我々は聞かないといけない。

 そもそも、ですから、これは、法令上、ディスクローズすることが求められているものについては、当然それは出さないといけないと思います。でも、それより下のもっと細かなものについても出せというのはなかなか難しいということを申し上げているわけでございます。(岡本(充)委員「答えてないですよ。名前を出すことです」と呼ぶ)

渡辺委員長 岡本充功君、もう一度言ってください。

岡本(充)委員 名前を出してくださいと言っているんです。公表しているんです。このマージン率はこの会社、このマージン率はこの会社。出せますよね。

 そして、個別の話は、もちろんそれぞれ説明は聞きたいと思いますが、答える、答えないは各社の自由です。ただし、マージン率を出すのは、名前を出すのは当然です。名前を出してください。

山本副大臣 マージン率を出す趣旨というのは、会社名を公表するところに力点があるわけではなくて、派遣労働者の方が、この会社のマージン率がどういう形になっているかということを判断していただくための基準として公表しているわけでありまして、法の趣旨から外れるものだと考えております。

岡本(充)委員 では、法の趣旨としてマージン率を公表する意味が、私が見に行っても見られるんですよ、副大臣。今の論理であれば、会社の中だけで見られればいいじゃないですか。では、何のために表に出すんですか。そういう意味でいったら、これは、やはり我々が名前を知るのは当然だと思います。

塩崎国務大臣 先ほどの答弁、私はちょっと訂正をしないといけないと思います。

 誰が行っても見られるとさっき申し上げました。それは必ずしも正しくなくて、そういうことではなくて、この法の趣旨は、派遣元事業主は厚生労働省令で定めるところによりマージン率を出せということなんですけれども、これは、「あらかじめ関係者に対して知らせることが適当であるものとして厚生労働省令で定める事項に関し情報の提供を行わなければならない。」ということになっておりまして、厚生労働省のホームページに載っている場合には、名前とマージン率が当然載っています。

 ですから、これはわかりますけれども、先ほど申し上げて、訂正しておわびをせないかぬのは、事業所に備えつけておけばいいというのも選択肢としてあるので、その場合は、必ずしも誰が行っても見せてくれるということではなくて、あらかじめ関係者に対して知らせることが適当であると認められているものでございますので、関係者であることが見るための要件ということになるということでございます。

岡本(充)委員 では、その答弁は変わらないわけですね。確認ですけれども、いいんですね。

 法改正をして、マージン率を開示することになったんじゃないんですか、二十四年改正で。そういう意味では、これは開示をして、それぞれの、もちろんホームページに載せているところも、やり方は幾つかあろうとも、これは、まさに法の趣旨として、余りにぼったくりをしているようなところはまずいからこれは改正したんじゃないんですか、大臣。

塩崎国務大臣 こういうこともあるので、ぜひ政府の人間も置いておいてくれれば、もう少し正確な答弁ができると思うんです、細かなことが。

 今申し上げたように、事業所には備えつけなければならないということになっていて、厚労省のホームページなどに載せるのは、それは意思で載せるのでございます。

岡本(充)委員 厚労省のホームページとは言っていません。大臣、それは違います、答弁が。訂正してください。

塩崎国務大臣 それぞれの会社のホームページであります。

岡本(充)委員 それは、載せる載せないはその会社の自由ですけれども、では、今お話をしているように、このマージン率を公開するという立法趣旨は何ですか。

塩崎国務大臣 この意義は、派遣元事業主の透明性を確保することによって、派遣労働者による派遣元事業主の適切な選択や派遣労働者の待遇改善等に資することが期待をされるということでございます。

岡本(充)委員 それじゃ選択できないじゃないですか。

 選択ができるというのは、その派遣会社に行く前に、もしくはその派遣会社に所属していない者がほかと比較ができるから選択ができるんですよ。その派遣会社にしかいなければ、ほかの会社が見られなければ、選択のしようがないですよ。法の趣旨とそれは違う。

 立法趣旨は、派遣労働者が選択をするためにこの法改正をしたんですよ。その会社に所属していなければ見られないんだったら選択のしようがないじゃないですか。どうやって選択するんですか。

塩崎国務大臣 その派遣元に行って派遣の労働者になろうとする人は関係者になりますので、それを見ることになります。

岡本(充)委員 どういう根拠で関係者になるんですか。会社を構成する者ではありません、外部の人間です。どういう根拠に基づいて関係者になるのか説明を求めます。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、派遣元事業主の透明性を確保することによって、派遣労働者による派遣元事業主の適切な選択や派遣労働者の待遇改善等に資することが期待されるわけで、そこの派遣元でその派遣労働者になろうという人は、この対象になるということでございます。

岡本(充)委員 どういう法令に基づいて関係者になるんですか。雇用の関係がない人間が関係者となる、その根拠の法律を示してください。(発言する者あり)

渡辺委員長 静粛にしてください。(発言する者あり)とめる判断は私がいたします。

塩崎国務大臣 こういう細かい通告をいただいていなかったものですから、申しわけないわけでありますが。

 さっき申し上げた派遣労働法の二十三条の五号の中で、派遣元事業主は厚生労働省令で定めるところによってマージン率などを公表しないといけないということになっていますが、それで、「あらかじめ関係者に対して知らせることが適当であるものとして厚生労働省令で定める事項に関し情報の提供を行わなければならない。」と書いてありますから、この派遣業法の法律に基づいてこれを備えるということになっているわけでございます。

岡本(充)委員 答えていないんです。

 まだ雇用されていない者がその会社の関係者となる、その根拠の法律はどこにあるんですか。それは関係者ではないはずです。まだ雇用する前です。厚生労働省に就職の門をたたいている人が厚生労働省の関係者ですか。違うはずです。

 もう一度、どこに根拠の法令があるのか、その者が関係者となるというその根拠を示していただきたいし、もう一点、待遇改善と言うのであれば、さらにやはり比較検討ができなきゃ話にならないんですよ。比較検討がしづらいシステムになっているのはおかしくないですか。

 法令を答えてください、法令を。

塩崎国務大臣 派遣元を幾つか選んで、その中から選ぼうとされる方は、その全てに行けばそれを見られるということになる、関係者ですから。したがって、それで比較検討ができるということになると思います。

岡本(充)委員 どこに関係者となるという条文があるのか、法令の何条のどこだと言ってください。

塩崎国務大臣 これは、さっきから申し上げているように、関係者に対してというものの中に希望者が入るということを言って、法の趣旨からいって、二十三条の五号に入っていることが、関係者として、希望する人が含まれるという解釈でございます。

岡本(充)委員 会社にまだ採用されていない人がその会社の関係者となるということは、社会通念上考えても一般的ではないと思いますが、ほかにそういった事例はありますか。採用されて初めて関係者でしょう。では、採用される前に関係者だという事例があるなら示してください。それはおかしいですよ。

 ちゃんと比較検討しろと言ったら、全部の会社を回れと言う。大臣、冷たいですね、その話は。大変ですよ、そんな、各社を全部回っていたら。どれだけ交通費がかかるんですか。比較検討しやすいようにしてあげるのが厚生労働省の役割じゃないですか。比較検討できるようにしてあげてくださいよ。(発言する者あり)

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 もう少しプリサイスに事前に通告をいただくと、もう少し正確な答えができるので、ぜひ次からはそうしていただきたいと思います。

 公表のあり方について今御指摘がございました。

 平成二十四年の改正法による改正事項の中に、いわゆるマージン率の公表というのが入っていたわけでありますが、これについては、今回の改正の検討を行った労政審では、やはり議論になっておりまして、その見直しの是非について議論をしたわけでございますけれども、平成二十四年十月に施行されたばかりであって、建議においては、施行状況についての情報の蓄積を図りつつ、見直しについて引き続き審議会で検討を行うことが適当というふうに昨年の十一月に議論が行われております。

 いわゆるマージン率の提供というか、どう見せるかという方法を含む平成二十四年改正法による改正事項については、今御指摘がありましたように、確かに、ホームページに載せているところもありますが、備えておけばいいということで、備えているだけというところが多いようでありまして、そうなると、やはり選ぶという利便性を考えると、ホームページで見られればみんな見れてしまうわけですけれども、なかなかそうなっていないということでありますので、このことについては、この建議においても、引き続き審議会で検討しようということになっているように、できる限り早く、この改正をどうするかということについて検討を行うことが適切だというふうに思いますので、労政審において、この法律をお通しいただいた後、議論をぜひしていきたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 施行からの期日が短いと言うけれども、施行する前に変えてしまおうという今回の話ですから、私はどうかと思いますけれども。施行の状況を見る前に変えようと言っている条項があるじゃないですか。だから施行前に……(発言する者あり)いや、ありますよ。後ろからちゃんと秘書官がお話しされているように、あるんです。

 そういう意味で、施行する前に変えてしまうという話になる話とは別に、もう一回だけ聞きます。

 改正法の趣旨を反映した場合に、今厚生労働省がとっている、置いておくだけでいいというのであれば、先ほど大臣が言われた、労働者の便益にならない公開の仕方をしているわけですから、これは直ちに変えさせるべき話であり、なおかつ、ここに名前を出すべきだと思います。それについて改めて御答弁をいただきたい。

 つまり、先ほどの法改正の趣旨を体現していない厚生労働省令になっている。変えるべきじゃないですか。

塩崎国務大臣 これは、民主党政権時にできた改正法で、マージン率の公表をしようということで、そのやり方が現状でございます。それがまず第一点で……(岡本(充)委員「公表していないじゃない」と呼ぶ)いや、ですから、それは二十四年の法律のとおりやっているのが今の状況でありますので、これについては、先ほどお話し申し上げたように、労政審の中でも、建議の中で、施行状況についての情報の蓄積を図って、情報の蓄積を図るということは、まだ蓄積をしようと言っているわけですから、見直しについて引き続き審議会で検討しようということが政労使の話し合いの中で建議として出てきているということでございます。

 今、先生の御指摘を私も改めて考えてみれば、それは公表の仕方ですから、できるだけ早くすべきだろうと思いますが、しかし、我々だけで決められる話ではございませんので、それはやはり、どういうニーズがあって、どういう不利益もあり得るかもわからない、さまざまなことを検討した上でやらなきゃいけないというふうに思いますので、先生の御指摘はそのとおりだと思いますが、法律を通していただいた後、早くこれを直していくということが大事かなというふうに思っております。

岡本(充)委員 早急にこれは見直さないといけないと思いますよ。

 その上で、これだけ高いマージン率のところは、やはり、まさにさまざまな課題があるはずです。どのような業態なのか、そして何人ぐらい雇っているのか、実際に払っている給与はどのぐらいなのか、こういうことをつぶさに判断をしなきゃいけないと思います。

 そういう意味で、この企業名についても公表を求めたいと思いますので、委員長、お取り計らいのほど、よろしくお願いします。

渡辺委員長 理事会で協議をいたします。

岡本(充)委員 続いて二点目。

 済みません、きょうはこんなに一問が長くなると思いませんでしたので、少し、大臣、そう言われますけれども、かなり詳細に通告したんですよ、今回。なおかつ、お越しいただければ説明しますとまでお話をしていますが、お越しをいただいておりませんので、それはぜひ、この場でも指摘をさせていただきます。

 その上で、きょう皆さんにお配りをしているペーパーの五ページ目、厚生労働省から出てきたものであります。「現行の労働者派遣法第三十条に定める有期雇用派遣労働者等への雇用の安定等の措置の事例について」、これはいつ調べたんですか。

 秘書官の話ばかり聞かないで、私の質問を聞いてください。

 これは、日付が入っていないんですけれども、いつ調べたものですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 山本副大臣。

山本副大臣 五月二十日の厚生労働委員会で岡本議員からの指摘を受けて、すぐに取りかからせていただきまして、出させていただきました。

岡本(充)委員 だろうと思うんですね。私、これは最近調べたんだと思います。しかも数をかなり絞って。

 これは、どうしてこの五社を選んだんですか。どういう基準ですか。

山本副大臣 先進的な取り組みをやっているところということで、製造系の派遣会社二社、事務系の派遣会社二社、技術系の派遣会社一社の計五社のヒアリング等によりまして調査を実施させていただきました。

岡本(充)委員 どうしてそれを選んだか。恣意的に選んでいるだけじゃないですか。

 三十条の話は雇用安定化措置ですよ。雇用安定化措置、今の現行法でどのように機能しているのかを把握してもいないのに今回義務をかけるんですよ。ひどい話ですよ。

 先週の二十日の私の質問を受けて初めて調べてみたと。努力義務はどうなっているか初めて調べてみて、それで五社だけ調べて出してきましたけれども、結果として、法律には、義務をかけるんですからね。義務をかけるような話を、事前に調べもせずに義務をかけるなんというのは、私はとんでもないと思いますよ。そういうような、はっきり言いますけれども、雇用安定化措置がうまくワークしているかどうかもわからない、どうなっているかもわからない。

 しかも、いただいたペーパー、これはきのうの深夜にもらったものですから私も目を通しただけですけれども、例えば、左側に「代表的な事例」と書いていますが、では、無期雇用の機会の確保はこの結果なされているんですか、このA社、B社。どうですか。

山本副大臣 法律の第三十条の第一項の無期雇用の機会の確保及びその提供は、五社中三社で実施されております。

岡本(充)委員 無期雇用に何人転換されたんですか。

山本副大臣 今回調べさせていただきましたのは制度の有無ということでございまして、何人というところまでは調べておりません。

岡本(充)委員 結局、雇用安定化措置、これがうまくワークするかわからないんですよ。見てくださいよ。全ての派遣労働者に対して、ホームページで告知ですよ。さっきの話と一緒。私も見られるんでしょう、このホームページ。派遣労働者のためじゃないじゃないですか。私も見られるところですよ。

 これこそ派遣労働者の皆さんに見えるところに持っていくべき話を、ホームページに出しています、公募しています、勝手にどうぞ応募してください、こういう話だったら、これは会社の努力ですか。

 二番目、「一定の勤務経験と教育訓練、資格取得により職務等級が上がることにより」、どうしてこれが無期雇用になるんですか。職務等級が上がったら無期雇用になるんですか。違うでしょう。書いてきている話が全然違う。無期雇用に転換をする、その取り組みが、事例を出せと言ったら、職務等級が上がる話を出してきているんです。もう全然このペーパーはなっていない。

 そういう意味で、きちっと、三十条の定める現行法のその実施状況をしっかり調べるべきだ。そうじゃなかったら、こんな義務をかけちゃかわいそうでしょう。どういうふうになっているかもわからないけれども義務をかけるなんということがあっていいんですか。

 そういう意味で、この再提出を私は求めたいと思いますけれども、委員長、お取り計らいをお願いします。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

岡本(充)委員 続いて、今後皆さんに義務がかかるといった、新しい三十条の二項の該当となる派遣労働者数の見込みについてお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今回の改正法案によって、いわゆる二十六業務に該当するか否かで上限が異なる現行の期間制限を廃止し、新たに派遣労働者個人単位で三年という期間制限を設けることとなっているために、雇用安定措置の対象者数を厳密に予測するというのはなかなか難しいというふうに思います。

 あえてお答えをするとすれば、現在、同一の業務で継続して働く期間が三年を超える方は約二五%でございまして、改正後も大きな変化がないと仮定をした場合には、このうち派遣元に有期で雇用される方は少なくとも義務の対象となるわけでございます。

 いずれにせよ、今回の改正によって、三年間の雇用見込みがある労働者について雇用安定措置を新たに義務化すること自体に意義が十分あるというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 人数を聞いています。人数を答えてください。もう時間がないんですから、人数だけで結構です。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、厳密にこれを予想するということはなかなか難しいということでございます。

岡本(充)委員 義務をかけるのに何人の人に影響が及ぶかもわからないなんという話は、私はやはりおかしいと思いますよ。義務ですからね。そういう意味では、義務がかかっている人の人数はきちっと出していただきたい。

 それも最後にお話をし、とにかく、マージン率の厚生労働省令と法律の趣旨がずれていることについては、今後とも私は指摘をし続けたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民主党の阿部知子です。

 本日は、五月二十六日付で、塩崎大臣の名前で、「今回の労働者派遣法改正案審議における御指摘事項について」というペーパーが出されましたが、私は、この間の経緯、何度か指摘を申し上げて、きちんとした国会としての審議が成り立つ前提ということでこうした指摘、そして、それにのっとってこういう大臣のおまとめが出たものと思っております。

 その中で一点だけ確認をしたいと思います。

 私は、議員ごとにいろいろなペーパーが違ったということも問題とは思いますが、最も問題な点は、派遣労働者に対して、二十六業務にある人が故意にその業務以外のことをやったというような事例を厚生労働省が事実無根に取り上げられたということだと思います。

 これは、派遣労働者に対して、あるいは派遣労働者と厚労省、行政との信頼を失うことになりますので、特段、この点については大臣が派遣労働者の皆さんに対して、厚生労働省はあなた方が故意にこういうことをやるというふうには思っているわけではないと。不適切な表現とありましたが、これは不適切を超えて、やはり人権を冒涜する、派遣労働者の権利を、その人の存在を冒涜するものと思います。あなたがわざとやったんでしょう、そういう表現になっております。これは行政としても失格だと思います、信頼を失ってしまうから。

 この点については別途明確に謝罪をしていただきたいですが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 故意というのが不適切であることはもう御指摘のとおりで、申しわけない限りで、私からも重ねておわびをしたいというふうに思いますが、理事会に対して、このような形でということで昨日お出しをしたところでございますので、あとは委員会がお決めになることかなというふうに思います。

阿部委員 大臣が派遣労働者の皆さんに対して謝罪をするかどうかを委員会が決めるんじゃないんだと思います。これは、大臣にとっても厚生労働行政にとっても大きな汚点になるので、ぜひ、大臣の基本スタンスを労働者の皆さんに対して、これは謝罪という形でお示しをいただきたい。

 私たちは、立場があって、要求をしたりいろいろな表現もすることがございます。ただ、ここで起きたことは派遣労働者に対する冒涜、この点は私たちが云々ではないんだと思います。そこに大臣が気がついていただくこと、これが厚生労働行政の信頼の第一でありますので、私は再度強く求めますが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 先ほどおわびをしたと私は思っておりますが、どのようにしたらよろしいでしょうか。

阿部委員 大臣、素直にそうおっしゃっていただいて、私は、やはり派遣労働者の皆さんに対して厚生労働省がとった表現は不適切であったと、それこそ先ほど来の厚労省のホームページに載せるなり、あるいは大臣がどこかの場で記者会見でお述べになるなりなさった方が、変な話ですが、本当に厚労省のためだと思います。信頼を失えば、どんないい法案を出しても、やはりそこに信なくば立たずだと思います。

 今私は二つ提示しましたが、ぜひ、厚労省ホームページ方式、あるいは大臣が記者会見の中でお述べになる。そのことが伝わると思いますし、信頼を回復していただきたいと思います。

 引き続いて、きょうから派遣法の審議に入るという認識でやらせていただきます。

 大臣、まず一問目。今回の法改正、平成二十七年の一月に公明党と自民党で合意をされて、その一番大きな合意点は、今回の改正も含めて、いわゆる派遣労働というものが臨時的、一時的なものであるというふうに考える、それでよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 今回、改めて、秋の臨時国会のときの案を修正いたしまして、第二十五条に、「臨時的かつ一時的なもの」ということで、派遣就業について定義をしたところでございます。「運用上の配慮」という中でお示しをいたしたわけで、それが原則としてお示しをしたということでございます。

 もともと労政審の建議では、派遣労働を臨時的、一時的な働き方と位置づけることを原則とするとともに、派遣労働の利用を臨時的、一時的なものに限ることを原則とすることが適当とされておったわけでありまして、今回の労働者派遣法改正案は、今御説明申し上げましたが、今の建議の考え方を踏まえたものでございまして、派遣先における派遣労働の利用と派遣労働という働き方の両方について臨時的、一時的というものを原則とする就業の仕方ということで定義をしたところでございます。

阿部委員 では、その原則が原則になるだろうかどうだろうかというところで、三年たつと、有期の派遣労働者の場合には、派遣先の多数組合の意見聴取を行って、そこで三年以上どうするかということを決めるということを、先ほど井坂議員との御質疑で討議が繰り返されたと思います。

 そのお話を伺いながら、私も同じ点を思いました。これは、ほとんどの多数組合というか過半数労働組合というところが、意見聴取をちゃんと行っていない一割は、これはみなし雇用が適用になりますから法令違反になりますけれども、それ以外の部分でも、ほとんどがそのまま継続というふうに判断をされるわけですね。

 そうすると、よく言えば、先ほどの御指摘で、すみ分け、派遣労働の皆さんと正社員、その会社の常用雇用の人はすみ分けているとも言えますが、逆に、裏返すと、その派遣労働の皆さんは、三年、六年、九年、ずっととなるのではないか。とても臨時的、一時的ではないのではないかということが、逆にいただきました資料から明らかになってくると思うのです。

 大半は三年の節目で次も了とするということですから、そうなると、実は、三年チェックルールというのが本当に意味をなすのかどうかですが、その労働が臨時的、一時的となるのかどうか、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 これは、先ほども井坂先生に御説明をいたしましたけれども、今回は、これまでのいわゆる常用代替防止のための事業所をベースとする期間制限、これに加えて、個人単位でも固定化を防止しようという、言ってみれば、これまでの派遣労働にありがちな弊害としての常用代替と、それから、個人が一生派遣と呼ばれているような問題にさらされないようにしようということで、二つの新しい規制を設けて、それを組み合わせていこうということでございます。

 ですから、今の、三年、六年、九年ということをおっしゃいましたけれども、二十六業種であればなおさらのこと、今までは、言ってみれば立ちどまって考えるという機会が全くないままにいく可能性があった。しかし、これも申し上げたように、労働契約自体は、意外に短い有期契約の中で反復契約をしているということになっていますので、極めて不安定であることは間違いないのでございます。

 そういう意味で、今回の、三年で、個人はそのまま続けることはもうできないということでございますけれども、事業所として派遣を受け入れるかどうかということに関しては、今までの意見聴取ということだけで済んでいたものにさらに説明義務、反対意見が出たときには説明義務、そして周知義務というものも課して、その三年の、言ってみれば、けじめをつけることにより大きな意味を持たせるということによって、安易な継続がなされないようにこの規制を導入したということでございます。

 もちろん、個人は、そのまま同じ係で続けるようなことであれば、前は同じ係じゃなければ続けられましたけれども、今回は、課単位でもかわらない限りは個人もできないということになるわけでございます。

阿部委員 事業所にとっては、引き続いてやることの説明義務は求められるといっても、先ほど厚労省からいただいた資料、すなわち、井坂さんがお示しになったように、ほとんどの事業所の過半数組合は、それでいい、オーケーなんですよね。それでいいということは、継続はオーケーというのが現状です。だから、三年目の歯どめには、事業所単位ではならないだろうと。

 今度、個人の側に目を転じれば、確かに、同じ職場に六年も九年もいられなくなります。ただ、転々とするだけかも、あるいは、同じ職場は、Aさん、Bさん、Cさんがくるくるかわるだけかもしれません。

 私は、今度の改正が、本当に、大臣が当初答弁された臨時的、一時的というものをうたいながら、そうはなっていない、その点が大きく問題だと思います。

 何度も申しますが、三年で見直しても、ほとんどの過半数組合がイエスと言っているんですから、何でそれで歯どめになるんですか。実績が物語っているじゃないですか。どうですか、大臣、もう一度。

 これは、こういう実態、実績を厚労省からお示しいただきましたので、きょうの私の質問外のことですけれども、あえてお伺いをいたします。よろしくお願いします。

塩崎国務大臣 先ほどの井坂先生との議論でも繰り返し申し上げたわけでありますけれども、やはり先ほどのアンケートの調査の結果をどっち側から読むかということで随分変わってくると思うんですよ、解釈が。

 私は、意外なほど反対される方が少ないんだなということを読む中で、これは、その業務に関して派遣の方が来てくださっていることに関して、常用雇用の、いわゆる正社員の皆さん方の受けとめは余り違和感を感じておられない、つまり、役割分担がなされる範囲内で派遣を受け入れられているのかなというふうに私は受け取ったわけでございます。

 しかしながら、一生派遣と呼ばれているようなことが、例えば二十六業種だって、これは一生派遣ということもあって本当にいいのかということで、それも、実に弱い立場で、先ほど数字を改めて見ますと、四割以上が三カ月以内の雇用契約で、それを反復契約、更新をしている。

 ですから、言ってみれば、三月以内に必ず契約更新をしないといけないままに、期間制限がないということで、何となくずっといくかなと思っていらっしゃるかもわかりませんけれども、契約はまた別途の問題、規制の問題とはまた別でありますから、そこが不安定であるということも我々は考えなきゃいけないので、だからこそ、キャリアアップ、キャリア形成支援制度によって御本人がやはり価値を上げていくということが一番大事だということを申し上げているわけでございます。

 単純に、三年、六年、九年、どんどんいっちゃうじゃないかという話とはむしろ逆で、三年ごとに必ず一回立ちどまって考えてもらう、ハードルを少し高くしたということをやはり考えていただかなきゃいけないし、ちゃんと会社もその義務を果たさないといけなくなるということでありますので、それなりのやはり意味というのがあるからこそ、こういうものを導入しようということを御提案申し上げているわけであります。

阿部委員 常用代替防止のための三年ごとのチェックは、派遣労働者側の保護、あるいはその派遣労働者側を守ることには直結しない、すなわち、常用代替防止をするために三年ごとに見直して、そして、ほとんどが異議は申し立てないでそこは続いていく。

 今回、大臣がおっしゃる法の目的のいま一つである、派遣労働者個人を本当にこれが守る法改正になっているかどうか。大臣は、三年ごとのハードルというのはどういう意味で使われたのか。その受け入れ先の、派遣先の会社について三年ごとにもう一回考えてみようという意味で使われたんだと思いますけれども、もう一方の意味で、労働者個人について三年ごとに立ちどまって考えるというのであれば、逆に、立ちどまって考えて、そこにいろいろな受け皿があって、現実、可能性がないものであれば、ただ立ちどまって茫然としてしまうということに私はなると思うんです。

 今回の改正は、逆に、個人の派遣労働者がキャリアアップすること、あるいは、三年ごとに首を切られるからそこで付加価値をつけることなどをやっても、果たして雇用に結びつくかどうかが大変に見通せないものだと思います。後ほどこの点についてはまたお尋ねをいたします。

 今の、臨時的、一時的ということについてもう一つだけ。

 大臣は、これは原則臨時的、一時的だとおっしゃいました。いわゆる無期雇用派遣については例外でしょうか。派遣元と無期雇用契約を結ぶ派遣労働者は、臨時的、一時的ということからすると、例外と考えてよいでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、個人単位の期間制限と事業所単位の期間制限、二つありますけれども、個人で見ますと、無期雇用派遣労働者とそれから六十歳以上の者は対象外とするということで厚生労働省令に明記をする予定でございます。

阿部委員 例外だと今おっしゃりたかったんだと思いますが、この無期雇用派遣で臨時的、一時的なものの例外となる方は、そしてなおかつ労働が安定して継続する方は一体どのくらいおられるんでしょう。

 まず、無期雇用派遣の人がどのくらいいて、その中で、今度は派遣先との契約がさらに無期である、無期、無期、すなわち、派遣元でも無期、そして商取引の中の派遣の労働実態としても無期、これはどのくらいおられますでしょうか。

坂口政府参考人 まず、派遣元との関係での無期につきましては全体の一七%ということでございますが、契約の方については、こちらとしては把握してはおりません。

阿部委員 私は、それも問題だと思うんですね。

 後ほど坂口さんにちょっと、以前の委員会での質疑の答弁について問題としたいところがあるので伺いますが、大体、こういう法律をつくるときに、例外がどのくらいあるんだろうということを確定すべきだと思うんですね。

 派遣元で無期雇用は一七%だと。今度、この無期雇用の派遣労働者が相手と契約しているのがまた無期というのは一体どのくらいあるのか。そのボリュームを見て、これは例外だろうとか、これは原則だろうとかいうことも成り立つと思うんですね。

 坂口さん、この次までに調べてくれませんか、無期、無期。どうでしょう。

坂口政府参考人 ちょっと私どもの方の手元にある報告等でこれを集計することによっては直ちにわからないということなので、今の段階ではお約束はしかねます。

阿部委員 要は、皆さんは調べようもないし、調べてもないし、実態がわからないものを法律に織り込むということなんですね。

 派遣労働の問題というのは大変入り組んでいるし、今言ったように、派遣元で無期、派遣先でどうなのかというのは、全く厚労省は状況を把握しておられないですよ。

 さっき塩崎大臣が、派遣先では三カ月か六カ月かとおっしゃっていただいたけれども、この無期雇用の人たちだって、派遣先の契約によっては決して安定はしていないんですね。大臣、どうですか。

塩崎国務大臣 これは、平成二十四年に、サンプル数が四万四百八十六で、二十六業務の、今先生お尋ねの派遣契約期間別のアンケート調査というのをやっています。

 これを見てさっき申し上げたんですが、一番多いのが三十日から三カ月まで、三十日超三カ月以内、これで四二・一%です。ですから、半分弱は三カ月以内の契約をずっと繰り返している。これは、期間制限がないといいながら、ずっと三カ月ごとでやっている。

 先生お尋ねの、無期で、二十六業種は無期ですけれども、期間の定めなしというのは一・一%でありまして、三年超でも一・二%、一年から三年でも七・〇%。ここまで足し上げて、一年超でいっても、九%強。一割弱しか一年超の契約期間を持っている方はおられないということでございますので、先ほど申し上げたとおり、期間制限の問題よりも、契約で御心配をされる方がかなり多いのではないかということを申し上げたのは、この数字を見てのお話でございます。

阿部委員 私が申し上げたかったのは、今大臣の御答弁のとおりで、派遣元は無期雇用でも、派遣先は、半分くらいが短期の派遣を繰り返して、決して安定ではない。この実態も踏まえて、今回の法改正がどうであろうかということも含めて考えていかなければならないんだろうと思います。

 そして、あえて申しませば、坂口さんはここの担当の官僚として責任答弁をする立場にあるので、今大臣がおっしゃったような情報を共有していただかないと困ります。私の質問時間も無駄になります。わざわざ出てきて御答弁してくださったんですから、責任ある答弁でないとやれません。気をつけてください。

 次に、今大臣がおっしゃってくださいましたが、私は、今回のこの改正が、派遣労働者の保護ということから見てどうだろう、臨時的、一時的、そして無期雇用ですら不安定な派遣労働者全体から見てどうであろうかという観点からお伺いいたします。

 二〇一二年改正におきまして、これは民主党政権下ですけれども、初めて派遣法の法律の中に派遣労働者の保護ということを明記して、法改正を行いました。

 その観点から、大臣、今回の改正で派遣労働者の保護に資する点というのは、お手元に置いてございます私の資料の一つ、一枚目、雇用安定措置の内容、一、二、三、四、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用、その他安定した雇用の継続を図るための措置と考えてよろしいでしょうか。派遣労働者のための施策です。

塩崎国務大臣 今回の改正案では、先ほども申し上げたように、まず、事業所単位だけだった期間制限に個人単位の期間制限を加えるということは、先ほど来申し上げているように、個人の方が意に反して派遣のままでいってしまうということに、立ちどまって考える機会をつくるということで、個人単位の期間制限も課して三年を上限としたところでございまして、これも個人の保護ということだと思います。

 それから、派遣で働く方には、三年という節目節目で今申し上げたようなことをやるとともに、もう一つ大事なのは、派遣労働への固定化を防止するというために、先ほど来繰り返し申し上げておりますけれども、やはりパワーアップというか、キャリアアップを図っていくということが大事でございまして、そういう意味では、派遣元が実施する計画的な教育訓練というのは、まさに派遣労働者の保護の仕組みだというふうに思います。

 今回の改正案においては、派遣元に、雇用安定措置、今お示しをいただきましたが、これ以外にも、キャリアアップ措置を義務づける。そしてこれは、全体を許可制にしますので、このキャリア形成支援制度を持っていないものは許可要件を満たしませんから、そもそも入り口ではねられるということで、派遣労働者の保護が図れるわけでありまして、そのことが最終的に雇用をするしないの決定権を持つ使用者側の判断に言ってみればプラスになるようにすることが大事で、それは、正社員になりたい方は正社員になるためのバックアップ材料になりますし、それから、派遣のままがむしろ今はありがたいという人は、その処遇が上がっていくようにしていくということのためにこういうことをやっているわけで、これも派遣労働者の一層の保護を図る手だてだというふうに思っているところでございます。

阿部委員 大臣は、また、立ちどまって考えるとおっしゃいましたが、派遣労働者が立ちどまって考えて、いい道が本当にあるのか、準備されているのかどうかの方が問題ですので、私がこの間何人かお目にかかった派遣労働者の方の声を少し伝えたいと思うんですね。

 特に大臣が例に出された、例えば二十六業種などある程度専門性があるという方でも、四十代、五十代となってきますと、ここに挙げている四つの措置、例えば派遣先に直接雇用の依頼をしても、もう年齢がちょっとねと言われる。

 そして、新たな派遣先の提供といっても、これも、例えば自分の特技、特別なスキルを求めるところは自分の生活圏の中になかなかないかもしれない、遠隔地かもしれない。そうすると、今までは、二十六業種でずっとその地域である程度勤めてきたけれども、そのスキルが特別であるがゆえに、ニーズが全国規模に広がっていたりする。そうすると、これもまた新たな派遣先の提供に結びつかない。

 三番目の、派遣元での無期雇用ってこれ何だと思ったら、派遣労働者としてじゃなくて、何かバックヤードに入るみたいな、派遣元で無期雇用はしてくれるけれども派遣労働者じゃないという、こんなの解決策なんだろうかと。

 それで、先ほどのキャリアアップ。

 大臣、これは派遣労働で働いている皆さんにきちんと意見を聞いてみてほしいんですね、どれが利用できるだろうと。大半は、経験年月が長くてキャリアがあればあるほどどれにもひっかからなくなってくるという、非常に矛盾したところにはまり込んでしまっていると思います。

 そして、例えば、これは坂口さんに答弁してほしいんですけれども、二十六業種の人で、無期雇用になれば、何かその後もずっと仕事が続くような答弁でありました、以前。

 でも、違いますよね。無期雇用で、相手との契約も無期でなければ、ずっとは続かないですよね。どうですか。

坂口政府参考人 今委員御指摘のように、派元との契約の無期雇用が無期であったとしても、派遣契約が派遣元、先の間でずっと続かない限りは、その派遣先での就業がずっと続くということにはならないということでございます。

阿部委員 そうであれば、坂口さん、ちょっと御自身の答弁を読み直してみて、誤解を招きますから、次回また私はお尋ねしますから、きちんと真意が伝わるように。言葉は非常に大事なんですね。あなたの答弁だと、特に無期雇用で二十六業種であれば、その後もずっと安定できるというふうにとれるんですよ。

 もう一つ、さっきの宿題に加えて、データがないから出せないとおっしゃいましたが、無期雇用で無期派遣の人の数もわからない。無期雇用で、その人は派遣元に無期雇用なんだけれども、例えば、賃金は仕事がないときも保障されているのか、病気のときはどうか、出産、育児休暇をとったらどうか。派遣元で無期雇用、例外的と言われる人たちの労働実態、何のデータも厚生労働省はお持ちじゃないんですね。

 大臣、私の言っているのがわかりますでしょうか。無期雇用で、派遣元に無期で雇われている、これは皆さん、もしかして一見いいと思っておられるかもしれないが、実態がわかっていないんです。無期、無期の契約の人の数もわからない。それから、派遣先の仕事がないとき、賃金はどうなっているんだろう、派遣元で無期雇用だったら基本給くらいあるんだろうか、あるいは休暇はどれくらいとれるんだろうか、出産はどうなるんだろうか。

 大臣、サンプルでいいですから、これをこの審議中にぜひ調べてください。こんな相手のわからないというか、実態のわからないものでこの法案が成立していくというのは、私はおかしいと思います。厚労省の役割だと思います。

 派遣元で無期契約の方の労働実態、いかがですか。

渡辺委員長 既に時間が経過しておりますので。(阿部委員「はい、結構です。大臣に一言だけお願いします」と呼ぶ)

 簡潔に答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 でき得る範囲内でやってみたいと思います。

阿部委員 意味のある審議になるよう、よろしくお願いいたします。

 終わります。

渡辺委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 このたび、急遽、厚生労働委員会に移籍になりました。委員長初め理事、委員の皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 初めてでありますので、ちょっと基本的なこともお聞きすることをお許しいただきたいと思います。

 塩崎大臣、午前中から午後に至って初めて派遣法の議論をお聞かせいただいて、私自身、ちょっと大臣の基本的な御認識をお聞きしたいんですが、今の日本の雇用市場、雇用政策の状況に対する危機感、非正規労働が四〇%です、働いても食べられないと言われている人もいる、そういうことに対する危機感なり、その厚生労働行政、労働行政を担当する大臣としての熱意、気迫のようなものが全く伝わってこない。

 株式市場に年金資金を突っ込むというときの大臣の熱意は、相当なものを感じていました。これは、現在の労働市場に対するある種の危機感を共有していただく、あるいはその先頭に立っていただく必要があると思いますが、どういう認識で今おられるんですか。その点、ちょっと聞かせてください。

塩崎国務大臣 一概に、労働政策全般に対する認識ということで、なかなか難しい、大きい話であります。

 今、私どもの日本の抱えている経済の問題というのは、いろいろな言い方があると思いますけれども、基本的には、過去、この二年半ぐらいは随分好転をして、逆転をしてきたと思いますけれども、それまでの歩みは、相当な閉塞感に押し込められて、雇用の面でもいろいろな、希望者が働きたくても働けないというようなことがありました。

 それが今どうなっているかというと、雇用の全般的な改善は明らかであって、賃金も上がり始めている。こういう好循環が始まっていることは、やはりこの二年半の大きな前進だというふうに私は思っているわけであります。どこに行っても人手が足りない。私ども国会議員のところに、かつてはよく就職の相談が来ましたが、今は割合限定的な案件しかなかなか来ないということであります。

 ですから、そういう意味では、大きな方向としては、私は、かつてよりいい方向には行っていると思います。

 しかし一方で、子供の貧困や一人親家庭の問題、そういう中で、働く方の、特に女性の賃金、非正規雇用の賃金の相対的な劣後している姿というのは、これはほかの国ではないほど問題があるというふうに思っています。

 今、非正規労働の話、後でまた出てくるのかもわかりませんけれども、ふえてきている大きな要因は高齢化であるということは間違いないわけでありまして、長くなるのでやめますが、その辺についてはまた申し上げたいと思います。

 今問題なのは、二年半前までは、なぜ日本の経済がこれだけ弱くなったのかということを考えてみると、やはり産業が弱くなり、企業が弱くなり、競争力が全般的に落ちた、その中で労働生産性が落ちていく。それを反転、逆転していかなきゃいけないという中で、労働政策もできるだけ多様性を持って、世界に勝てる経済になるための働き方、そしてまた働く人のニーズも随分変わってきていますから、子育てをしている人たちから始まって、若い人たちも含めて、どうやってそのニーズに合った働き方をしていくかというのは、これは不断の、やはり我々の仕事の一つとして、国会でできることは、政府でできることは全てやっていかなきゃいけないというふうに思います。

小川委員 経済のことを考える人は政権内に必要だと思います。しかし、塩崎大臣にはこれにあらがう形で、時に労働者の立場に立ち、労働者の保護なり雇用市場の安定なりのために闘っていただかなきゃいけないんですよね。個人的な御趣味は別ですよ、どちらに関心があるのか。しかし、厚生労働省の大きな務めはそれですよ。ちょっと一度、設置法をよく読み返してください。きょうは読み上げませんけれどもね。

 それから、認識で、きのうも事務的にお聞きして、同じことを大臣はおっしゃるが、現在非正規がふえているのは、高齢人口がふえていることはあるでしょう。しかし、最大の問題は若い世代ですよ。

 これはきのういただいた数字なので、御紹介しておきます。平成元年、平成に入ってから比較しましょう。お手元にも数字があるんでしょう。平成元年の十五歳から二十四歳の正社員、五百二十四万人。直近、平成二十六年の十五歳から二十四歳、二百四十四万人、正規雇用が半減ですよ。逆に、六十五歳以上、平成元年三十八万人、二十六年八十六万人、三倍増ですよ。

 二十六年たっていますから、昔正社員だった人がそのまま正社員という人もいるんでしょう。しかし、高齢者の割合がふえている、高齢者が非正規雇用でふえているから非正規がふえているんだなんという認識は、全くもって勘違いだと思いますよ。だからこそ、この問題は深刻なんだ。だからこそ、その立場に立って、今回の派遣法も丁寧に議論する必要があるんですよ。

 しかも、厚生労働大臣には、さっき読み上げないと言いましたが、念のため読み上げますよ。厚生労働省の第一の任務は、第三条、国民生活の保障ですよ。労働条件その他、労働者の働く環境の整備だ、職業の確保だ。所掌事務の第四条五号には労働組合その他労働に関する団体に関する連絡調整、労働者の団結する権利、団体交渉その他の団体行動する権利の保障に関すること、労働関係の調整に関すること、これが厚生労働大臣の務めです、職責です。その立場に立って、御答弁をぜひいただきたいと思います。

 それで、ちょっと本題に入りたいんですが、先ほどの岡本委員の示した数字、私、改めて、恥ずかしながら愕然としています。マージン率八七%とは何ですか。搾取そのものじゃないですか。人身売買とも言えるような数字じゃないですか。

 まさに、この数字を見て、一概に言えませんとか、評価は難しいとか、分析はまだだとか言っている感覚そのものが、これだけ日本の労働市場を弱体化させて、雇用不安、生活不安、将来への心配を深く蔓延させている大きな原因じゃありませんか。厚生労働大臣、この数字を見て、即時に、瞬時に、異常だ、おかしい、余りにもひどいと、厚生労働大臣の人権感覚に対する感度が問われているんじゃありませんか。

 これは即中身を調べて、これは八七%、割合ですよ。実額で幾らもらって、そのうち幾らピンはねしているのか、すぐ調べて委員会に御報告いただくということを御答弁いただきたい、お約束いただきたい。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、これにつきましては、調べられるだけのことはやって、お調べをして、御提示を申し上げたいということを先ほど岡本先生にも申し上げたところでございます。

 先ほど設置法のことをおっしゃったんですが、先生御存じで飛ばしたんだろうと思いますが、「国民生活の保障及び向上を図り、」その後、「並びに経済の発展に寄与するため、」という大きな目的が第三条に入っていることも忘れないようにしていただきたいというふうに思います。

小川委員 その「経済の発展に寄与するため、」では、その後を読みましょう。「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上」なんですよね。お互い都合のいいところだけつまみ食いするのは、では、やめましょうか。

 しかし、では今の大臣の御答弁を前提にすると、時によって、経済の発展のために、雇用環境の悪化につながり得る規制緩和を大いにやっていくということですか、厚生労働省。違うでしょう。

塩崎国務大臣 この第三条、先生はお役人出身ですからよくわかっていて、私は民間から来ていますからよくわからないところがありますけれども、第三条の「任務」のところが、「厚生労働省は、国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、」というのが大目的なんですね。これが目的ですよ。

 これは、厚生省と労働省が一緒になったので、この「経済の発展に寄与するため、」という意味合いのことは労働省側にあったんです。それを一緒になったときに設置法の中に両方入れ込んで、目的はですよ、ということで、その後、「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることを任務とする。」ということ。

 先ほど小川先生は、経済に関心を持つこと自体にいかがなものかという感じのことを何か言われたような気がしないでもないんですが、やはり経済が悪くなる中で働く人たちの条件がよくなることはまずないんだろうと思うんです。ですから、経済もよくなって働く人たちの条件もよくなるということが私は大事だというふうに思っていますので、そこのところはぜひ御理解を賜れればというふうに思うところでございます。

小川委員 閣僚としておっしゃりたい気持ちはわかりますが、ぐっとこらえなきゃいけない一言もありますからね、よく読んでいるとか読んでいないとかも含めて。

 そのことは指摘した上で、大臣、やはり今、これは日本だけじゃないと思います、世界じゅうそうだと思いますが、経済がよくなっても、昔はそれに合わせて国民生活はよくなったんですよ、今は、時々経済がよくなっても、必ずしもそれに一般国民の暮らしがついてこないという構造問題にどの国もさらされている。

 そこで、まさに厚生労働大臣には、それがなぜなのか、どこに問題があるのか、どうすればいいのかというところに苦悶していただくことが厚生労働大臣の第一義の務めだということをお願いかたがた申し上げているわけです。

 私は、維新の党が提出された同一労働同一賃金の法案、これは極めて、大いに評価をする立場でありますし、ともにその方向で戦っていきたいと思っています。

 それで、余りにもこの議論も軽薄なので、大臣、少し御見識をお伺いしたいんです。

 今の雇用市場が二極分化していること、きのうも厚生労働省、過労死防止大綱に向けての議論が大詰めを迎えられたという報道がありました。狭き門をくぐった正社員は、無制限な働き方とそして過労死寸前のぎりぎりの生活を強いられているという、一方の極端な例が多発しています。一方、この狭い正社員の門をくぐれなかった人たちは非正規雇用の形に追いやられ、一たび追いやられたら、一生賃金が上がらない。一生その世界で、家族生活を営むことも思うようにならないという状況下に置かれている。この二極分化ですよ。私は、これは本当に立場を超えて話し合わなければならないことだと思うんです。

 さっきおっしゃっていたジョブ型雇用と、そしてメンバーシップ型雇用。ちょっとわかりにくいので、日本の雇用は極めて身分的なんですよね。正規と非正規という形で、身分雇用型に二分化されている。さっき申し上げました、正規は過労死、非正規は人生設計が立たない。いずれも不健全な形に追いやられている。なぜこうなったのか。

 これは私、一つの持論なんですが、私見も入ります。

 これは「非正規大国」という本なんですね、日本について書いている。昔、非正規労働、正社員という言葉を政府が初めて使ったのは一九八〇年代だと書いてあります。当時、正社員が九四%だったんだそうですね、そのころですよ。恐らく五〇年代から六〇年代、六〇年代から七〇年代、人口増大、経済成長、新卒採用、年功序列、そして退職一時金、そして心配のない年金という形で、全ての税制、雇用の仕組みが設計された。

 しかし、矢印は逆回転を始めています。にもかかわらず、基本的な社会保障とそれを支える諸税制の仕組みが変わらない。そのはざまに煩悶しているのが日本の雇用市場じゃありませんか。

 それで、具体的に一つ指摘したいのは、退職金税制なんですね。

 新卒時に、若くして馬車馬のように働かされ、そして給与の後払いのような形で、三十年後、四十年後に退職金を受け取る。その退職金に対しては、例えば二千万もらっても三千万もらっても、税金は二十万、三十万です。もしそれが普通の給与所得であれば、一千万、一千五百万は税金で持っていかれる。それはそうでしょう。若いときは安月給で働いて、三十年、四十年、一つのところで勤め上げて、そして最後の報酬で退職金をもらい、税負担はほとんどなくというような、先進国にはこんな仕組みはありません。

 こういう遺物を一方で残しながら、さらに、雇う側だってそうですよね。昔の社会保険料は収入の三%ですよ。これを労使折半していた。今、三〇%を労使折半しています。払えないんですよ、社会保険料だって。

 こういう企業別の社会保障制度、そして異常に優遇する退職税制、こういうものを放置したまま、ジョブ型雇用もメンバーシップ型雇用もあったものじゃない。このままだと、正規も非正規もどんどん二極分化して、片や過労死、片や人生設計が立たない。こういう状況はどんどんこれからも悪化し、深刻化すると思います。

 なぜ日本の雇用思想がここまで不公平で、不安定で、そして二極分化しているのか、その点について、今、私の私見も含めて、一端を申し上げました。

 大臣、ちょっと、私の私見に対してで結構ですが、御認識、御答弁いただけませんか。

塩崎国務大臣 変わり行く世界経済の中で日本がどう生き残っていくかという中で、対応していることと対応していないこと、そしてまた、高齢化が進み少子化が進む、これについても、対応していること、していないこと、確かに御指摘のとおり、遺物として残っていて、今の新しい例えば働き方あるいは企業の活動の仕方、これに合っていないまま来てしまっているというところはたくさんある、私は同感でございます。

 もちろん、例えば今女性の活躍法案を御審議いただいておりますけれども、これに関して、女性が活躍することに関してもやはり税制の問題が深く大きくまたかかわっていて、今は人手不足ですけれども、十二月になるとさらにそれがひどくなるのは、やはり百三万円の壁であり、そして百三十万円の壁であったりするわけで、そういう中で、働きたいけれども働かない方が有利かなと思っていらっしゃる専業主婦の方がパートの途中で年末の方になると出てこなくなるということで、むしろ経済実態にとっては大変なマイナスに、出てきていただけないということで困るような現場がたくさんあるというようなことも聞いているわけであります。ですから、退職金税制の話、今、大変重要な問題を御指摘いただいたというふうに思います。

 そういうことを考えてみたり、社会保険料は今もそのとおりでありますが、社会保障と税の一体改革でその取っかかりを自公民でつくったと思いますけれども、これはまだ道半ばでありますから、さらに新しい時代にふさわしい、そしてまた少子高齢化のピークを乗り越えられるだけの備えというものを我々は歳出歳入両方の面から考えていかなきゃいけないというふうに思いますし、翻って、厚生労働省の労働政策という意味でも、今申し上げたように、働くことについての、言ってみれば障害になっているものについては、できるだけ早くにそれを解消していくために努力をしていかなきゃいけないというふうに思います。

小川委員 ごめんなさい、ちょっと時間がかかり過ぎました。ありがとうございました。

 ただ、派遣法の議論がきょうはもちろん一番大事なことなんですが、少し、やはりやや視野を広げて、そういう構造問題をしっかり背景に見据えて議論しないと、極めて各論に落ち込むし、本当の解決方法は見えてこないということを申し上げたかったわけです。

 そういう状況の中で派遣法を議論しなきゃいけないんですが、臨時的、一時的だと言いながら、さっき阿部先生も御指摘になられました、臨時的、一時的と言う以上、三年というのは長過ぎるでしょう、原則三年というのは。無期限に更新できるなんというのはあり得ないでしょう。私は、一年でも長いと思いますよ。

 私も想像しましたよ。自分の事務所で、例えば、一時的、臨時的に欲しい雇用というのは、どういうときにどういう人が欲しいかなと想像しましたよ。あり得ないですよ、三年間なんて。これは常用雇用だ。一年たって、それが三年まで延長できた際には常用雇用にしなさいという建前でやってきたはずです。それを原則三年、無期限に更新できる、それは常用雇用そのものじゃないですか。

 今申し上げた大きな観点からいって、今回の派遣法改正は、全くもって厚生労働大臣が提出するものとは思えない。百歩譲って、経済産業大臣が出してきた、それに対して厚生労働大臣が戦っているという構造なら、これはまだうなずける。だけれども、全くもってこれは欺瞞でしょう、これで労働者の権利を守りますとか、正社員化を進めますとか。まさに派遣の常態化だ。これによって、さらに派遣によって賄われる労働はふえる、そこにつく若い人たちもふえる、生涯に対して人生設計が立たない人たちもふえる、日本社会はさらに弱体化する。

 この十年、二十年、厚生労働省がやってきた派遣法だって、最初は十三業務でしょう。それを拡大に拡大し続けてきた。最初はポジティブリストだった。極めて簡便なネガティブリストに変えた。原則と例外を入れかえた。そして、今度はついに期間制限も外して、業務制限も取っ払う。まさに派遣の常態化、常用化であり、雇用市場に決定的に不安定さ、不信感、不安感、格差感、場合によっては、派遣労働者の方がよくおっしゃるんですよ、人間としての尊厳を侵されている、そういうものを助長する法案じゃありませんか。

 具体的にお聞きします。

 労働政策審議会において、私、これは西村理事が指摘された極めて重要な点だと思うんですが、派遣業者の意見を聞きましたか。派遣労働者の意見を聞きましたか。それだけちょっとお聞きします。

塩崎国務大臣 私は去年の九月から今の立場に立っておりますけれども、もともと私の後援会や友人の周りにいろいろな職業の方がおられて、中には派遣の方も、特に女性に多いわけでございますが、男性もそういう方々がおられるということをわかっております。

 それから、それとはまた別に、私どもとしては、まず、正式に省としては意見をちゃんと、派遣労働者の声を聞いたかという意味においては、労政審でも、労働者代表の方、派遣労働者を含む労働者全体の代表という立場から御議論をいただいているわけでありますから、そういう立場で聞いているとともに、私のオフィスにも実際に来ていただきました。

 連合の方にも御協力をいただいてお話を聞いたこともありますし、それとまた別途、別のルートで、やはり派遣労働で働いていらっしゃる方々に、それぞれ特徴のある方々でありましたが、おいでをいただいてお話を聞いて、いずれの場合も大変参考になったわけで、同時にわかったことは、極めて御意見に幅があるということもよくわかりました。

 それは何度も申し上げているように、正規労働になりたいと思っていらっしゃる方と、派遣でないとむしろ困るという方がおられるという、両極端に分かれているということも同時にわかったところでございまして、今お話をいただいたように、一つの価値観で判断するということはなかなか難しいほど、いろいろな方々が派遣で働いていらっしゃるなという印象でございます。

小川委員 いろいろなルートで意見を吸い上げられることは大事だと思いますが、公式に労働政策審議会があるわけですから、そこでどういう形で、事務的にお聞きしたら、個人情報にかかわるので、聞いたことの詳細なり、あるいはどういう人から聞いたかという報告はありませんでした。

 個人名は結構です。どういう人から議論をあるいはヒアリングをして、そしてどういう意見が上がってきたか。それはぜひ、大事なことですから、この委員会に資料として提出をしていただきたい。委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

小川委員 きょうは最初ですので、私も、積年の思いもありまして、少し持論が先行して申しわけなかったんですが、大臣、日本の労働者の権利は、やはり私は十分に守られていないと思います。

 今回、労働政策審議会でも、連合さんは労働者を代表して頑張ったと思います。でも、連合の組織率というのは、大臣、どのぐらいか御存じですか。席上で結構です。(塩崎国務大臣「一七%」と呼ぶ)そうなんですよね。二割切っているんですよ。つまり、全勤労者の二割、大企業の正社員が中心ですよね、どうしても。そういう方々の声は何とか集約しようということに努力はしているし、一定の力は持っている。

 しかし、派遣労働者の方々を含めて、先ほど西村理事の、派遣先で労働組合をつくるのか、派遣元で労働組合をつくるのかというお話がありました。両方とも非現実的ですよ。一緒にいない人たちが団結するなんてあり得ない。行った先で、極めて少数派で弱者の立場に置かれている人たちが団結したところで、力を発揮するというのはあり得ない。

 私はやはり、まさに日本に本当の意味での企業、業態横断的な労働組合が結成されるべきだと思いますし、それなくして二千万の非正規雇用の方々の置かれている現状なり声なりを国政なり法制度に届けることはできない。

 そこで大臣、これもぜひ御存じであれば改めて御認識をいただきたいし、御存じでなければぜひこの際頭に入れていただきたいんですが、これから先モデルにすべき国柄の一つの参考例として、やはり北欧諸国のような、高成長、高負担、高福祉を三位一体でなし遂げているような国があります。そういうところは、労働組合の加入率というのは九〇%を超えているんですよね。なぜか。基本的に、職業紹介、職業訓練、そして失業給付、失業時の支援、これは労働組合がやっているんですよ。私も詳細はよく調べなきゃと思っていますが、基本的に労働組合こそが、そういった社会的な、より公的な機能、権能を担っている。ですから、みんなが参加をして、そして一定の社会的勢力として力を発揮している。

 この間の二十年の歴史からいえば、これだけ労働者の権利がないがしろにされてきた二十年でした。そして、社会はますます不安定化している。もはや厚生労働省に雇用政策の枢要部分を担っていく資格もないんじゃないか、私はそう思っています。将来的に、厚生労働省から剥がして、労働組合に職業紹介、職業訓練、そして失業給付を含めた労働者のための公的な権能を担わせていく方向感すら持つべきである、そのことを強く主張して、ひとまずきょうは、最初の質問でしたけれども、終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 私の前回の質問は一般質疑の中での派遣法の質問ということでしたので、きょうからこの派遣法について質問させていただくということで、これから先、何度も質問に立たせていただきたいと思っていますので、まず冒頭、しっかり審議時間をとっていただいて、慎重審議をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 それから、先ほど来見ていると、与党席、特に自民党席、空席が目立ちますよね。これは、与党として、このいろいろな課題のある法案を本当に通そうという気があるのかと、私は非常に不信感を感じております。我々も席を外すことはありますよ。ただ、野党はやはり数が少ないですから、かなり委員のかけ持ちもしています。先輩の理事の皆さんはしっかり座っておられるけれども、二期生とか若い人たちが全然座っていないですよね。これはしっかり、やはり真剣にやっていただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。

 まず、前回の委員会での議論の続きから始めていきたいと思います。

 前回、塩崎大臣、山井委員の質疑の中で、無期雇用の派遣労働者の求人広告で正社員として記述をして募集することの可否について、それはケース・バイ・ケースだというような御答弁がありました。ということで、では、ケース・バイ・ケースなら、一つのケースを私から申し上げます。一般論で結構ですので、これがいいのかどうなのか、お答えいただきたいんです。

 派遣元での無期雇用ではあるけれども、派遣先が決まるまでの間給料が支給されないようなケース、これを正社員として募集を行うことというのは、職業安定法第四十二条で言う、労働者に誤解を生じさせるような表現を用いていることに当たって問題なのかどうなのか、端的にもう一度お答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今、給料を払わないというお話、派遣先が決まらないうちは払わないということで、それを正社員と呼んだ場合の是非ですね。

 それはやはり不適切ではないかなというふうに思いますね。給料を払わないということは、行ってみて契約をした後にわかるというようなことでは、それは話にならないということだと思います。

大西(健)委員 我々もそのとおりだと思いますし、前回の山井委員の質疑のときにも、松野理事がまさにやじで、給料を払わないんだったらそれは正社員じゃないだろうとおっしゃっていました。また、きょうはいらっしゃらないかもしれませんが、我々の部門会議で改めて生田局長に来ていただいたときに、こういうケースはどうなんだと言ったら、局長も、それはやはり正社員と呼べないだろうということであります。

 まさに、無期雇用でも、派遣先が決まるまでの間給料が払われない、これは正社員と呼べない、こんなことは私たちに言わせれば当たり前のことなんです。

 ただ、大臣は、都合が悪くなると、正社員というのは法律上の定義がないんだということを言われます。私たちは、正社員というのは少なくとも期限の定めのない直接雇用、これが正社員だというふうに思っています。間接雇用の派遣労働者を正社員と呼ぶのはやはり許されないんじゃないかというふうに思っています。

 そうしないと、なぜかというと、政府は今回の法改正で正社員がふえるふえると言っているんです。でも、今言ったような、まさに派遣元の無期雇用でも正社員だというふうな話になってくると、それも正社員なのかと。これは多分、一般の国民が受け取る受けとめ方は違ってくるというふうに私は思うんですね。

 この点についてお聞きをしていきたいと思うんですけれども、お手元に五月十七日のNHKの日曜討論、自民党の稲田政調会長の発言、これが我が党の厚労部門会議で話題になりました。

 これは厚労省が出してきた資料ですけれども、五月十七日の日曜討論、稲田政調会長御発言というのが囲みで書いてありますけれども、これで、部門会議でも問題になったのは、稲田政調会長が、三年目に正社員への道を開く、こういうふうにおっしゃっているんです。

 これはまさに、聞いた人たちは、テレビを見ている人たちは、三年たったら正社員になれるのか、それはいい法改正だなというふうに思うかもしれないんですけれども、雇用安定化措置の中には、先ほども出ていましたけれども、派遣元での無期雇用も含まれる、あるいは新たな派遣先の紹介も含まれる、本当に実際に派遣先で直接雇用、正社員にしてもらえる人というのはごく一握りであるにもかかわらず、こういう発言を聞くとあたかもみんな正社員になれるんだというふうに思ってしまうと私は思います。

 もう一つ私が問題だと思うのは、線を引いておきましたけれども、これは完全に間違いの発言だと思うんですけれども、「均等待遇ですとか、」とか言っているんですよね。

 この法案は、もう繰り返しここでも議論されているように、我々は維新の皆さんと一緒に同一価値労働同一賃金法を提出していますが、この法案は均等待遇については調査研究にとどまっているわけですよ。ですから、これは明らかな間違いなんですけれども、与党の政調会長ですよ、与党の政調会長が公共の電波を使って発言して、テレビを見ている多くの国民をミスリードさせている、これは私は大変な問題だというふうに思います。

 担当大臣として、稲田政調会長のこの発言は間違いだということをここでしっかり確認していただくとともに、政調会長にもう一度しっかり説明していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、大西先生御指摘のように、私も、これはちょっとテレビを見られなかったものですから、後ほどこれで気がつきましたが、「その均等待遇ですとか、」と書いてあるのは、やはりこれは均衡待遇の間違いだというふうに思います。そのとおりでございますので、稲田政調会長はもう既にお気づきだろうと思いますので、改めて確認はしておこうというふうに思っていますし、もう一回説明をしなきゃいけないほど理解していないわけではなくて、単純なミスだというふうに思います。ということでよろしいですかね。

大西(健)委員 いや、私はちょっと怪しいと思いますし、やはり政調会長自身が余り十分に法案の内容を理解されていないから、政調会長自身も、正社員がふえる、正社員になれる法案だと思ってもしかしたらしゃべっているんじゃないのかなと。そうじゃないんだと。

 まさに、先ほども申し上げましたけれども、派遣元での無期雇用だとか、あるいは新たな派遣先の紹介、本当に正社員にしてもらえるのは一握りなんです。それが、三年たったら正社員への道が開かれるとか、均等待遇も含んでいる、そんないい法案なんですということを公共の電波を使って与党の政策責任者がしゃべっているというのは、やはり私はおかしいというふうに思います。

 ちょっと時間の関係がありますので、次に行きたいと思います。

 次に、資料の二というのをごらんいただきたいんですが、これは派遣法改正案による派遣労働者への影響。これも厚生労働省作成の資料ですけれども、法改正によって変わる部分というのは、専門二十六業務のうち有期契約の方は、今までは、ここに現行法における期間制限なしと書いてありますけれども、これがありに変わっていくということで、そのことによって期間制限を契機とした雇いどめが起こるおそれがある。

 そして、では、この部分に当たる労働者がどれぐらいいるのかというと、専門二十六業務に従事する労働者は全体の約四四・九%。そのうち、では有期の雇用はどれぐらいかというと、そのうちの約八六・七%ということですから、掛け合わせると約三九%。全体の大体四割ぐらいが、なれ親しんだ職場で安定的に働くことが難しくなる可能性、おそれが私はあるのではないかというふうに思っています。

 実際に、こうした懸念というのは、これまで特に専門的技能を有する派遣労働者を多く使ってきた職場から既に幾つか上がってきています。

 その例として、次の資料ですけれども、資料の三、これは東洋経済オンラインの記事ですけれども、タイトルにあるとおり、「派遣法改正でITエンジニア三十万人に迫る危機 雇用環境がますます不安定に」。この資料の右側の方を見ていただくと、まさに、同じ職場で安定的に働き続けられない、これまで情報システム開発については専門二十六業種のために派遣期間制限が原則なかったが、今回、派遣法改正でそれが撤廃されると、同じ職場で安定的に働き続けることが難しくなる可能性があるということです。

 それから、次の資料ですけれども、例えば、これはなるほどなと思うんですけれども、テレビの業界。産経新聞の記事ですけれども、「TV業界戦々恐々」、「派遣労働見直しで最長三年」。線を引いた部分ですけれども、これはまだちょっと法案提出前の話ですけれども、派遣スタッフの中には、番組創設時から中心にいて、その人がいなくなれば番組が死ぬほど重要な人がいる、最終報告書のとおり改正されれば、現場にとって死活問題になると。

 つまり、テレビの制作現場というのは、テレビ局の社員というのはごく一部で、実際その実務を担っているのは派遣スタッフ。社員は何をやっているかというと、派遣スタッフへの指示とか査定が主な仕事であって、経験豊富な派遣スタッフがいないとこういうテレビの制作現場が回らない、これが生の声なんです。

 そして、この記事の中をもうちょっと見ていただくと、制作会社関係者の声として、無期契約を結べるのはプロデューサーやベテランの一部に限られるという意見が紹介されています。

 つまり、厚生労働省は、一〇・一問題ペーパーをつくって、労働契約申し込みみなし制度が発動されれば大量の失業者が出るというふうにあおっているんですけれども、実際には逆じゃないか。今回の法改正をやると、専門二十六業務にも個人単位の期間制限が適用されることで、雇いどめが起こる可能性があるんじゃないかというふうに思います。

 この専門二十六業務の雇いどめ、これが起こるおそれということと、それから、今私が紹介したように、既にIT業界とかテレビ業界とかでこういう懸念が生じているわけですけれども、これにどう具体的に対処するつもりなのか。この二点について大臣から御答弁をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 その前に、さっき稲田政調会長の話が出ましたが、これは同じテレビ番組の途中で、こういうことも言っています。附則の中で、この均等待遇と均衡待遇についてきちんと調査をするという附則を設けましたと言っていますので、その違いが何であるかはわかっていますので、先ほどのはやはり単純なミスだというふうに私どもは思っています。

 そこで、今回の見直し案におきましては、有期雇用の派遣で働く方を対象に個人単位の期間制限を設ける目的は、派遣労働が直接雇用に比べて雇用の安定とかキャリア形成が図りにくいといういつも申し上げていることなどから、労働者が派遣労働に固定化することを防ぐことにあるわけであります。一生派遣とよく皆さん方はおっしゃいますが。

 現在、いわゆる二十六業務で働いている派遣労働者であっても、有期の雇用契約を反復更新することによって同じ職場で就業を続けている者は多数おられまして、雇用の安定やキャリア形成が十分図られているとはとても言いがたいという状態であるわけであります。

 このことから、いわゆる二十六業務で働いてきた派遣労働者についても、同じ職場においては三年を上限として、キャリアを見直す、そういう契機としたものでございます。

 また、今回の改正案では、上限三年に達する見込みがあるときには、派遣元に対して派遣先の直接雇用の依頼等の雇用安定措置を義務づけておって、この措置を確実に講ずることによって、雇いどめというのが起きないようにしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

大西(健)委員 さっきも言ったように、例えば無期契約をしてもらえるのは、テレビ業界でいえばプロデューサーとかベテランの一部ということだと思うんですよね。それから、テレビ業界でいうと、今みたいな派遣先での正社員なんというのはちょっと望めないんじゃないんですかね。番組の制作スタッフが大手のテレビ局の正社員になれるというのは、現実問題としてはなかなか難しいんじゃないのかなというふうに思います。

 では、もう一つ具体的なことを聞いていきたいと思うんですが、先日、厚労省本省で働いている派遣労働者の数、それから、その中に三年以上同じ部署で働いている人がいるのかというのを聞きました。

 そうしたら、次のページですけれども、資料の五というのが出てきたんですね。本省だけだと一名しか派遣労働者はいらっしゃらないそうです。だから、ちょっと少ないなと思ったんです。でも、この一名がまさに三年以上同じ部署で働いている方なんです。ではこの人は何をやっているかというと、聞いたら、労働保険の適用徴収システムを担当しているシステムエンジニアなんですよ、まさに。

 では、こういう方を、今度この法律ができれば、三年たったら厚労省の職員にするんですか。どうなんですか。

山本副大臣 現在受け入れている派遣労働者につきましては、派遣元会社との雇用契約の期間の定めのない者でありまして、改正派遣法におきましても派遣期間制限の対象外となると承知しております。

 厚生労働省といたしましては、少なくとも労働者派遣契約の期限であります平成二十八年三月三十一日まで、労働者の派遣を受け入れたいと考えております。

大西(健)委員 後で理事に確認していただきたいです。私は大臣答弁しか認めませんと通告の紙にはっきり書いていますから、副大臣の答弁は許さないでください。お願いします、委員長。

 それから、今そういうお話でしたけれども、無期雇用でということでしたけれども、でも、先ほどの大臣の答弁だと、さっきのテレビ局の人の場合だと、三年たったら正社員にしてほしいとおっしゃったじゃないですか。でも、厚労省だって正社員にはやはりできないんですよ。正社員にできないんです。

 あるいは、これは公務員の場合、採用試験等々ありますからそう簡単ではないというふうに私は思いますし、例えば地方自治体も含めれば、公務労働の中にも多く派遣労働者というのはいると思われます。そういう方が、では三年たてばみんな公務員になれるのか。なれないですよね。結局は派遣としての無期雇用が続くだけなんですよね。だから、まさに正社員になれる改正でも何でもないわけです、そういう人たちにとっては。

 では、そういう役所ができないことを民間に義務づけるのかという話なんですね。厚労省のSEの方の場合も、例えば新たな派遣先をもし紹介される場合であれば、さっきも話が出ていましたけれども、引っ越ししなきゃいけないみたいな話も出てくるかもしれません。それよりも、やはりなれた職場で精通した仕事をする方が私もいいというふうに思います。それが厚労省にとってもハッピーだと思います。

 ですから、もともと派遣というのは特殊な技能を持っている者に限って認められていたのを、どんどんどんどん対象範囲を広げていって、そして最後には、業務に関係なく個人単位の期間制限を認める仕組みになるから私はこういう矛盾が起きてくると思うんです。

 本来、専門的な人というのは、なれ親しんだ仕事をずっと安定的に、まさにずっと仕事が続けられると保障されている方がいいんですよね。ですから、そういうのを残さないで個人単位にというように切りかえている方が私はおかしいんじゃないかと思うんですね。

 その中で、IT業界でいうと、特定労働者派遣の廃止、これがこの状況に拍車をかけているというふうに思います。IT業界では、システム開発や運用の現場で、中堅、中小のITベンダーやソフト会社から派遣される技術者によってそういうのが支えられている。長期のシステム開発プロジェクトでは、開発工数が予想以上に膨らんで、途中で派遣技術者を緊急増員することも珍しくない。こうした派遣元が特定労働者派遣事業者だった場合には、法改正後は、資産要件等厳しい要件をクリアしなければならないので、労働者派遣事業の許認可を取得するのが困難になって、事業継続ができなくなるんじゃないか。

 つまり、何が言いたいかというと、今回の法改正というのは、労働者派遣事業を許可制にすることで中小の派遣事業者がどんどん淘汰されて、そして大手の事業者への寡占化が進むんじゃないか。言い方をかえれば、大手にとって有利な、そういう法改正だというふうに私は思っています。

 そこで、資料の六というのをごらんいただきたいんですけれども、これは二段になっていますが、上の方が派遣労働者の推移。派遣労働者の数自体は、平成二十年度以降というのは、二十年度がピークで、大体その後は減ってきています。下の方のグラフなんですけれども、下のグラフは派遣元事業所数なんですけれども、これもほぼ横ばいなんですね。横ばいなんですけれども、内訳を見ると、折れ線グラフの方ですけれども、特定労働者派遣事業者はふえて一般労働者派遣事業者数は減っているということなんです。全体は横ばいなんだけれども、特定派遣がふえて一般派遣事業者は減っているということなんです。

 次のページなんですけれども、このグラフをもとに、平成二十六年度の一事業所当たりの派遣労働者数というのを計算してみました。これは単純に割り算しただけですけれども、さらに言えば、特定労働者派遣の労働者数の一部というのは許可制の一般労働者派遣事業者からの派遣も含んでいると思われるので、実際には、特定労働者派遣事業者一事業所当たりの派遣労働者数というのはもっと小さくなると思いますけれども、この計算で見ても、特定派遣の方は、一事業所当たりの派遣労働者が四・一人みたいになっちゃうんですよ。

 この数字は、ざっとした計算ですから正確性はちょっとないかもしれませんが、少なくともこれからわかることというのは、特定労働者派遣事業者というのはかなり小規模なものが多いんじゃないか。ですから、今回、許可制に一本化されると、そのかなりの部分が淘汰をされるというふうに思われます。

 この法改正で中小の特定労働者派遣事業者が淘汰をされて大手事業者への集約が進む、そういう理解でいいのかどうなのか。それから、この数字でいくと、大体、今、特定労働者派遣は六万七千を超えるぐらいあるわけですけれども、このうち幾らぐらいが、許可制に一本化された場合にちゃんと許認可がとれると厚労省として見込んでいるのか。その二つについて御答弁をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今回、全ての派遣会社が許可制ということになるわけでありますが、このため、現在、届け出によって事業を行っている特定労働者派遣事業の五万六千六百八十六事業所が許可に移行するかどうかの検討が求められているわけであって、このうちで事業実績のあった事業所の割合というのは四八・五%にとどまっておりまして、二万七千四百九十五事業所でございます。これらが、事業の継続を行うと仮定した場合、許可の申請を検討するのではないかと考えているわけであります。

 いずれにしても、三年の経過措置を設けているわけでありますが、その間は従来どおり事業を行えるようにするとともに、小規模派遣事業者に対しては暫定的な配慮措置、資産要件などについて配慮措置を設けておるわけでございまして、多くの事業者が円滑に許可に移行できるようにしていかなければならないというふうに考えているところでございます。

大西(健)委員 今の御答弁というのは、では、特定派遣のうち実際に事業実績があるのが半分ぐらいで、そのほとんどが許可をとって移行していくという御答弁でよろしいんでしょうか。

 私が思うのは、多くのところは、今言ったように、人数でいっても一事業所当たり四・一人とか、かなりちっちゃいところですよね。資産要件もかなり厳しくなってくる、あるいは、キャリアアップ措置とか雇用安定化措置とかいろいろな義務がかかってきて、そういうことができるところというのは、かなり小さいところでは難しいと思うので、小さいところはばたばたと店じまいして、それを大きいところが、大手が集約していくというような形になるというのがこの法改正ではないかと思っているんですけれども、そういう理解じゃないんですか。ほとんどみんな、小さいところも全部許可をとるというふうに厚労省として見ているのか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、この二万七千四百九十五事業所が全部移行するだろうという予想を申し上げているわけではございませんで、これが事業の継続を行うということを仮定した場合は、これらの事業所が許可の申請を検討するのではないかということを申し上げた、仮定の話でございます。

 規模と存続性の問題についての御指摘がございましたけれども、私どもとしては、今回、許可制にすることによって、派遣労働で働く人たちが保護をきちっとされるようにしていくということ、そして質を上げていくということが何よりも大事でございまして、先ほど来申し上げているように、その一人一人の独自の価値というものをどう上げていくかということが一番求められていることなので、そこについて、やはり働く人たち中心に考えていかなければいけないのではないか、そして、日本の労働市場の、言ってみれば質を担保していくということが大事なのではないかなというふうに思うわけでございます。

大西(健)委員 私は、やはり小さいところというのは非常に難しくなってくる、そういう法改正じゃないかと思いますし、そうした場合に、さっき言うように、例えばIT業界とかでは、そういう小さいところが主流になって人を派遣しているわけですよね。そういうところがどんどん店じまいしていくと、さっき言ったような懸念が、IT業界とかで、専門二十六業務の三年の期限が新たにできることと相まって、非常に現場の混乱をもたらすのではないかというふうに見ています。

 そこで、もう一つ、そこの部分についてもうちょっと聞きたいんですけれども、三年間の猶予期間があるということですけれども、そうはいっても、例えば皆さんの一〇・一問題ペーパーでいえば、まさに労働契約申し込みみなし制度、三年間の猶予があったにもかかわらず、今になって慌てて、このまま十月一日を迎えたら大変なことになるとか言っているわけですから。

 ですから、これはそれぞれの事業所にとって言えば、この先、商売を続けるか畳むのか、これにかかわる大改正ですよね。それから、そこで雇用される派遣労働者にとっても、もし派遣元がなくなるということになれば別の派遣会社を探さなきゃいけない、生活に直結する問題です。

 そういう意味では、十分な周知期間が与えられるのが私は当然だというふうに思いますが、周知期間を含めて、成立から施行までに十分な準備期間、これが当然必要になるだろう。仮に法案が成立したとしても、現在の九月一日という施行期日で本当に間に合うんだろうか。

 資料の八というのをごらんいただきたいんですけれども、これは、過去の労働者派遣法の法改正のとき、成立から施行までどれぐらいの期間があったか。例えば、平成二十四年の改正のときは約六カ月。大体、最低でも半年近く、こういう施行までの準備期間をとっているんです。

 今回、もう一つ、資料の次のページ、九として、では、平成二十四年改正のときの六カ月のときに、成立から施行までどんなことをやったのかというのを出してもらいました。

 ちょっと簡単なものですけれども、例えば、労政審の審議に大体一カ月を要している。今度は、労政審の審議結果を受けて、それを政省令に落として公布するまでにやはり一カ月ぐらいかかる。そこからさらに周知期間で二カ月。どんなに急いだって、やはり四カ月ぐらいは必要なんじゃないかというふうに思うんですね。

 現在、これは、きょう私も初めてこの派遣法の審議ということで質問させていただきましたけれども、衆議院の審議はまだ始まったばかり。今後、参議院の通過まで考えると、成立してから九月一日まで、どう考えても三カ月ないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、これだけのことを本当にできるんでしょうか。

 しかも、今回の法改正は、過去の改正を上回る大きな、本当に先ほど来言っているように大きな法改正なんです。

 そう考えると、これはどう考えても、やはり施行期日を修正しなければ間に合わないというふうに思うんです。施行期日を修正していただければ、皮肉なことに一〇・一ペーパーというのは要らなくなるわけですけれども、ぜひ施行期日を修正されたらいかがでしょうか。そうじゃないと無理だと私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほども御答弁申し上げたように、今回、この法律に関しましては、三年の経過措置というのを設けてございます。その間は、従来どおり今の事業者は事業が行えるようになっておりまして、今御懸念の小規模な派遣事業者に関しては、先ほど申し上げたように、今回、事業の財産的基礎となる資産要件なども要求しておりますので、暫定的な配慮措置を設けるということで、多くの事業者がそのまま続けられるように、そしてまた新体制に移行ができるようにということで配慮をしているところでございます。

 もともとこの法改正は、計画的な教育訓練を新たに派遣元に義務づけるなどの、今先生がおっしゃったように、かなり大がかりな改正をお願いしているわけで、派遣で働く方の保護を図るための法案だと私たちは思っています。

 ですから、できる限り早く施行することが派遣で働く方のことを考えれば必要だというふうに思っているわけでございまして、平成二十四年改正の際の、自公民の三党で合意をいたしましたときのこの合意を踏まえて、期間制限をわかりやすいものとして今回の改正に入れ込んだもので、この十月一日施行の労働契約申し込みみなし制度が、こちらの派遣法の施行に伴って混乱がないように、円滑に施行できるようにということを整備していくために見直しを行うこととしておりまして、この観点からも、十月一日より前に改正法を施行するということが望ましいと考えておるわけであります。

 改正案が成立した場合には、労政審に速やかな御審議に御協力をいただいた上で、全国の都道府県労働局に加えて、関係団体等にも御協力をいただくことを予定しております。改正案の円滑な施行に努めてまいりたいと思っているところでございます。

大西(健)委員 時間が来たのでやめますけれども、要は、三年の猶予期間がある許可への一本化は除いても、ここの審議でもいろいろなことを言うと、今後、政省令で細かいところを決めますとか、労政審で話し合ってもらわないと決められませんとか言っているんですけれども、さっき言ったように、労政審でやるだけでも一カ月、その労政審の結果を受けて政省令に落とすのにも一カ月、その政省令の公布期間にもまた一カ月、二カ月と必要なんですよ。

 そもそも、この国会の会期末はいつですか。会期の延長を前提としてこの審議をやっているんですか。そうじゃないでしょう。だから、そもそもやはり無理があるんじゃないかということを申し上げて、私の質問を終わります。

渡辺委員長 次に、山井和則君。

山井委員 山井です。四十分質問をさせていただきます。

 まず最初に、昨日、理事会に提出されたこの一〇・一虚偽ペーパーのおわびなるものでありますけれども、これについては、大量の派遣労働者が失業する、そういうとんでもない不正確なことを書いている、そのことに関する明確な謝罪もない。

 さらに、何よりも私が驚きましたのは、けさの答弁でも、二月二十三日にこのペーパーがおかしいということを塩崎大臣が気づいてからも、これを配付した先には一切、大量の派遣労働者が失業するというのは間違っていましたという取り消しの説明は全くしていない。

 本当に、間違っているとわかりながら、虚偽のペーパーを配って、その虚偽が発覚したにもかかわらず、間違っていますよという説明をこの時点においても行っていない。私は審議の前提が崩れていると思います。

 ぜひ、その間違った内容のペーパーを配った人に謝罪をして、間違っていました、この法案が通らないと大量の派遣労働者が失業しますなんということはありませんということを、まず配った相手に謝罪して、説明して回っていただきたい。その後でないと審議には入れないと思います。当然だと思います。

 さらに、この件について私は今まで三回ぐらい質問していますが、このことについて、局長が、ペーパーを配付したか記憶にないと言っていて、次回には、記憶がよみがえってまいりましたと言って、配付したと言った。その質問時間もぜひ返していただきたいと思いますので、ぜひともそのための一般質疑も補充をしていただきたいと思います。もうこのことは、本当に時間がもったいないので、これ以上は言いません。

 さらに、けさ足立先生の方からも、同一労働同一賃金推進法、均等待遇を推進する法案、足立先生によりますと井坂法案を昨日提出したわけであります。これについても、世界の常識は、均等待遇という前提のもとで臨時的、一時的に派遣労働をやっていくというのが、EU、フランス、ドイツ、韓国、世界の常識です。にもかかわらず、本法案では、均等待遇、同一労働同一賃金という前提がないまま一生派遣に拡大する、世界最悪の法改正、世界に類を見ない法改正であります。

 それで、このことについて、一つ、これも指摘だけしておきます。

 先ほど井坂議員が、ちょっと個別名を出して恐縮ですが、自民党の大岡先生の質問のことをおっしゃっていました。ここに議事録がございます。大岡先生は悪くないんです、答弁のことを言っているだけですから。

 五月十五日、大岡先生は、「既存の二十六業務につきまして、多くの合法な契約は、いわば建物でいえば既存不適格ということで、新法が遡及適用されることなく、派遣期間の上限が適用されないということになりますが、そのとおりでよろしいんでしょうか。」と。つまり、専門二十六業務でも、今まで期間制限がなかった方はこれからも期間制限がなくていいんですかということを質問したら、坂口政府参考人は、御指摘のように、「派遣期間の上限なく派遣される方もあり得るということでございます。」というふうに、否定していないんですね。

 別にこれは大岡先生の質問は悪くないんですよ。答弁がいかにも、そのとおりですという答弁になっちゃっているわけです。

 これは、四十万人の方が三年後に解雇されるのか、されないのかという、四十万人の方の人生がかかっている議事録の割には、井坂先生がおっしゃるように、普通に聞けば真逆に聞こえるんです。大丈夫ですよ、三年後、首を切られませんよという、この答弁も理事会で精査をしていただきたいと思います。

 委員長にお願いします。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

山井委員 それともう一つ、本会議で井坂議員の質問に対して、これも議事録が出てきておりますが、この雇用安定化措置で本当に正社員がふえるのかという質問に対して、キャリアアップ助成金などの拡充とか、キャリアアップ助成金で正社員をふやすということを答弁しておられます。

 きょうの配付資料の十四ページを見てください。確かに、キャリアアップ助成金、特に有期から正規、あるいは無期から正規に、五十万、四十万、三十万出すのに加えて、派遣労働者が正規になったら三十万円上乗せになるんです。

 問題は、予算獲得のために、積算で何人分で予算要求しているかということなんです。塩崎大臣、ここにペーパーがありますが、派遣労働者を正社員にするための、この三十万円上乗せのキャリアアップ助成金、大体何人の予想で予算要求しているんですか。

山本副大臣 平成二十七年度予算におきましては、派遣労働者を含む非正規雇用労働者を正規雇用に転換する事業主に対する助成金として、積算上は、支給対象人数は約二万五千六百人、約百三十億円を計上しております。

 その中で、御存じでおっしゃっていると思いますが、予算額には派遣労働者分として内訳をつくっているわけではございませんけれども、積算上は、派遣労働者分として約三千三百人、約二十四億円を計上しております。

 ただ、これは派遣労働者分の上限となるわけではございませんで、キャリアアップ助成金全体の予算の約二百二十一億円の中で、そこがふえてくれば、三千三百人以上のものも必要な支出というものを行うことができる形にさせていただいております。

山井委員 びっくりしましたね。正社員化、正社員化と言いながら、予算獲得は三千二百七十五人。百二十六万人いるんですよ。百二十六万人のうちで、三十万人ぐらい正社員にしたいと考えているのかと思ったら、三千二百七十五人。〇・二%、五百人に一人じゃないですか。五百人に一人。つまり、言っていることとやっていることが違うじゃないですか。

 それで、お聞きをしたいと思いますが、もう一つ私が驚きましたのは、前回、無期雇用の派遣労働者を正社員として求人広告していいのかという質問をしました。先ほど大西議員も質問されましたが、それに対して、ケース・バイ・ケースとおっしゃったんですね、前回の答弁で。

 塩崎大臣、明確にお答えください。

 ケース・バイ・ケースということは、無期雇用の派遣労働者の求人広告で、どういう場合は職業安定法四十二条の誤解を招かない広告に当たるのか当たらないのか。ケース・バイ・ケース、どういうケースが正社員の求人広告はだめ、どういうケースはオーケー、その説明をしてください。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、労働関係法令上、正社員という確立した定義というのは存在をしません。常用型派遣の方の中には、派遣会社に無期雇用されている方もおられて、このような方については、その会社の中などで正社員という呼称が使われている場合もあり得るということを何度も申し上げております。

 ただし、このような場合であっても、職業安定法によって、働く方の募集を行う者が雇用形態を明示する場合には、応募者に誤解が生じないよう努めなければならないというふうに定められているわけでございます。

 誤解が生じるようなケースとしては、例えば、正社員として募集をして、就業場所を配属先等としているなど、明示している労働条件などから派遣労働者として働くことがわからないケースが考えられるわけでございます。

 労働関係法令上の正社員がないために、職業安定法第四十二条の規定に違反するか否かの判断はなかなか難しいわけでありますが、一般的に正社員の中に無期派遣労働者は含まれないと理解をされていると考えられることに加え、実際にわかりにくいとの声もいただいているところでございますので、実際にどのような点が誤解を生じさせやすいのかなどについては、これは早急に検討して、問題点を明らかにした上で解決策を考えたい、このように考えているところでございます。

山井委員 これは、もしかしたら皆さん、ちょっとわかりにくかったかもしれませんが、今、すごい答弁をされたわけです。

 ここの八ページにありますように、既に人材派遣会社は、「正社員(派遣)」という求人広告を出しているんです。「正社員(派遣)」ですよ。意味わかりますか。それで、「正社員(無期雇用派遣労働者)」となっているんです。

 塩崎大臣に確認します。

 昨日、答弁書というか、私が一週間前に書面で聞いたことに対してペーパーが返ってきています。そのペーパーがこちらにございますから、今の答弁どおりですので、確認をしますが、こう答弁されたんですね。無期雇用で正社員とだめな場合は、明示されている労働条件等から派遣労働者として働くことがわからない、つまり、派遣労働者とわからずに正社員とだけ書いていたら、これは職業安定法四十二条違反。

 塩崎大臣、お聞きします。ということは、ちゃんと派遣ですよと書いてあったら、正社員として求人広告、無期の場合はしていいということですか。

塩崎国務大臣 これは、先ほど私が答弁申し上げたのとほぼ同様のことを答弁書ではお返ししたというふうに思います。

 ですから、それは、全く誤解を生じるようなケースというのはだめだということを申し上げているのであって、それで、今申し上げているように、もともと職業安定法には、応募者に誤解が生じないように努めなければならないというふうに書いてあるわけでございますので、誤解を招くことが間違いないようなケースはだめだということを言っているので、ケース・バイ・ケースと言っているのは、だめだということを、今、答弁書でも同時にお答えをした明らかなケースを返したわけでございます。

 先ほどお配りをされたものとか、個別のケースについては、私どもとしては……(山井委員「答えてください、質問に。委員長、もう一回質問します」と呼ぶ)

渡辺委員長 山井和則君。

山井委員 塩崎大臣、私は平易に聞いているんです。

 つまり、明示している労働条件等から派遣労働者として働くことがわからなかったらだめということは、派遣労働者です、これは無期の派遣労働者ですと明記してあったら、正社員として求人広告を出していいということですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、今、極めて部分的におっしゃったわけですが、それは、先ほどの契約などで、行ってみたら全然違うとかそういうこともあるので、ケース・バイ・ケースということを申し上げているので、ですからこそ、先ほど御答弁申し上げたように、早急に検討して、問題点を明らかにした上で解決策を考えたいということを申し上げている。

 そこの部分をすごいことを答弁したと言っていただいたのかと思ったら、ちょっと違うかもわからないなと思って、少し違うかなということなんですが、私どもとしては、問題提起はしかと受けとめて、今、このような形で実際にどのような点が誤解を生じさせやすいのかということについてしっかりと検討しよう、それも早急にやろうということを申し上げているわけであります。

 これは、私どもとしても、我々が考えている正社員の中に派遣は入らないということは、これも繰り返し申し上げて、キャリアアップ助成金も、ですから派遣は入らないということも明快に申し上げてきているわけでありまして、私どもが考えている、そして望ましい正社員の中に派遣は入っていないということは繰り返し申し上げております。

 ですから、ここまではっきり、我々のスタンスはそうですから、あとは法解釈の問題で、ケース・バイ・ケースでどう考えるのかということなので、大事なことは、政策誘導としてどっちに行こうとしているのかというのが私はとても大事だと思いますが、グレーゾーンで御懸念が示されているわけでありますので、早急に検討して問題点を明らかにして、どのような場合に誤解を生じさせやすいのかということを検討したいということを申し上げているわけでございます。

山井委員 早急とおっしゃっていますが、これはもう法案審議を始めようとおっしゃっているわけですから、あしたの理事懇までに出していただきたいと思います。

 なぜならば、私は、これは昨年の秋から厚生労働省に言っていますし、三月にも予算委員会で、既に塩崎大臣に二カ月前にも質問していますから、きのうきょうの話じゃないんです。半年前から厚生労働省には言っていますから、このことは。

 委員長、あしたの理事懇までにこれを出してもらえますようにお取り計らいください。委員長に言っています、今はまず。まず委員長に。

渡辺委員長 まず、ちょっと大臣、答えてください。(山井委員「まず委員長が答えてください。まず委員長」と呼ぶ)

 それは、まず大臣に言ってください。(山井委員「理事会で協議しますと言ったらいいんですよ。委員長に要望しているんです」と呼ぶ)

 あしたまでという、そういった一つの期限を決めていくことは基本的に難しいんですが、理事会で協議をいたします。

山井委員 わかりました。

 塩崎大臣、これはささいな問題じゃないですよ。つまり、今回の法案では、雇用安定化措置で、派遣会社が雇う無期雇用に誘導すると言っているんですよ。その誘導する人たちは、今の塩崎大臣の答弁でいえば、求人広告では正社員と求人していいということになるんですよ。おかしいじゃないですか。

 塩崎大臣、もう一回明瞭に聞きます。無期雇用の派遣労働者で正社員として求人広告してもいい場合があるんですか、ないんですか。

 私は、全くだめだと思います。なぜならば、求人広告においては、派遣労働者ではなくて直接雇用でないと、正社員という求人広告は使うべきではないと私は考えますし、今までもそうだったと思います。それが社会的通念だと思います。塩崎大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、今、正規社員ですか、無期派遣と書いてある場合はいいかとおっしゃっていますけれども、それだけしか出さない募集というのはないわけでありまして、ですから、それはトータルで考えて、ケース・バイ・ケースだということを申し上げているわけです。

 ですけれども、実際にわかりにくいという声もやはり多いし、何度も言いますけれども、我々は、正規雇用という我々がイメージしているものに派遣は入ってきませんということを申し上げているので、それははっきり、キャリアアップ助成金も派遣は対象としないということを明快に繰り返し繰り返し申し上げているわけです。

 ですけれども、それでもいろいろ誤解を、だって、そもそも正社員という言葉に定義がないわけですから、いろいろな人がいろいろな形で使っているわけです。それを一人一人追いかけていって、それは間違っていますよと言うわけにはいかないので、そこで、しかし、そうはいっても、公共政策として問題があって、誤解を招く、あるいは実際にわかりにくいという御指摘があるということなので、実際にどのような点が誤解を生じさせやすいのかなどについては、早急に検討して、問題点を明らかにした上で解決策を考えたいということを申し上げているところでございます。

山井委員 これは、検討というか、既にそういう広告は出ているんですよ。応募している人もいるんですよ。おまけに、万が一この法案が通って無期雇用に誘導するようになれば、この無期派遣労働者で正社員の求人広告はこれからどっとふえますよ。オーケーならば、ふえますよ。だめだったら、ふえませんよ。ですから、明確に答弁していただきたいんです、塩崎大臣。

 これはもう既に始まっているんですから、そういう広告が。今既にある、無期派遣労働者は正社員として求人広告している。またそれを、次から次へと新たな派遣会社もそういう求人広告をしようとしている。

 ですから、塩崎大臣、お答えいただきたいんです。それはオーケーなんですか、だめなんですか。明快に。

塩崎国務大臣 何度も申し上げているように、職業安定法四十二条に照らしてみて誤解を招くかどうかの判断は、ケース・バイ・ケースで、全体を見て考えるということであります。

 先ほど申し上げたように、その一方で、正社員という、我々政府としての、厚生労働省としての向かうべき方向は明快にしながら、今のような問題についてのお声はしっかりと受けとめながら、早急に、どこがどのような点で誤解を招きやすいのかということをよく考えて、問題点を明らかにして、もし問題があるならばやはり解決をするために我々としても解決策を考えよう、こういうことを申し上げているわけであります。

山井委員 ダブルスタンダードで、おかしいですよ。明確に派遣労働者は正社員じゃないと言いながら、何で求人広告で派遣を正社員と書くのがだめだと答弁できないんですか。おかしいじゃないですか。全く理解できません。

 求人広告というのは、若者や人の人生にかかわるんですよ。正社員と思ったら安定していると思うじゃないですか。それを、派遣労働だったら安定していないじゃないですか。

 実際、リーマン・ショックのときに無期雇用の派遣労働者がどうなったか。実際、七七%は解雇になっているんですよ。無期雇用といっても、派遣の場合は、ちょっと経済不安になったら七七%解雇で、全然安定していないんですよ。

 にもかかわらず、無期の派遣だからといって、正社員という求人広告を今も野放しにされていますよね、半年前から私が提案しているにもかかわらず。ということは、結局、それを認めているということに既になってしまっているんですよ。

 おまけに、正社員化する正社員化すると言いながら、この無期の派遣労働者を正社員として求人することを容認するのであれば、この法案の目指すべきところ、つまり、雇用安定化措置で派遣元に無期雇用してもらう、その方々を、派遣社員なのに正社員と呼ぶということになるわけですよ。とんでもない話ですよ。あくまでも正社員は直接雇用ですよ。

 塩崎大臣、正社員は私は直接雇用だと思います。なぜ求人広告だけ正社員は直接雇用でなくていいんですか。なぜですか。塩崎大臣、答えてください。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、労働関係法令上、正社員の定義はございません。

 したがって、法律論として今申し上げているのは、トータルで誤解を本当に招くのかどうかということの解釈が職業安定法第四十二条に照らしてみて当てはまるかどうかということが問題であって、これは、私どもとしては、ケース・バイ・ケースで、トータルに一つ一つのケースを判断していかなければならないということを申し上げているわけであります。

山井委員 これは仮定の話をしているんじゃないんですよ。実際、そういう求人広告が以前からあるということをやっているのに、何も動かないじゃないですか。

 さらに、このテーマについては、根本的な厚生労働省の方針転換になってしまうわけです。派遣労働者を求人広告で正社員として認めるということは、事実上、派遣正社員、何でも正社員、名ばかり正社員ということに、これははっきり言ってなりますよ。誤解を招きます。

 実際、いろいろなホームページでは、正社員で安定していると思ったら、先ほど大西議員が質問したように、派遣先が見つかるまで給料が出なかったとか、正社員で安定していると思ったら、派遣先がなくなったら給料が出なくなったとか、そういうトラブルは既に起こってしまっております。このことは引き続き議論したいと思います。

 その次に、二十六業務の専門業務の件ですが、きょうも配付資料でお配りをしておりますように、今回、この二十六業務の四十万人については、規制強化になっております。つまり、今まで無制限で、期間の定めなく働けていた人たちが、制限ありに、三年で解雇をされることになります。そして、その方々は、期間の定めのない二十六業務の中で、有期の方は約四十万人です。この四十万人の方が、三年後には基本的に解雇されることになります。

 私、きのう、ある五十代の女性の方に会いました。その方は、きのうの昼、人材派遣会社から、あなたは今回の法律が通ったら三年後に解雇になりますということを通告されました。丁寧にその派遣会社は、三年後に上限が設定されるという法律には従わねばなりませんので、申しわけありませんが、法令遵守のためにあなたを三年後には解雇しますということをおっしゃったわけであります。

 でも、おかしいと思いませんか。その方、パソコンとか専門業務で十五年間もシングルマザーとして働いてこられた。法改正がなければそのまま働き続けられる可能性も高いし、十五年ですからね、職場の友達もいっぱいいる。ところが、この法律が成立すれば、何で三年後に解雇されないとだめなんですか。その方は、私の十五年間を返してほしい、何で法改正で自分が解雇されないとだめなのかということを訴えておられました。

 さらに、もうお一方、私は先日お目にかかりました。五十代の男性、精密機械の専門業務、十七年間働いておられた。その方も二十六業務で、今のままだとずっと、当分働き続けられる。でも、その方も、この法律が通れば三年後に解雇になります。

 その方は丁寧に聞かれたそうです、正社員に雇ってもらえませんかと。そうしたら、あなたの五十代の年齢では無理ですと断られた。そして、派遣元に直接雇用の依頼、無期雇用も依頼された。しかし、あなたの年齢ではだめですと断られた。それで、その方は親の介護もされていて、そして、精密機械の二十六業務というのはそんなそこらじゅうにある仕事じゃないから、新しい派遣先ということになれば大幅に賃金が下がるということになってしまう。

 塩崎大臣、私は思うんですが、四十万人の有期の専門業務の方々、先ほど大西議員が、SEの方々、テレビ業界の方々もおっしゃいましたが、この方々が三年後に上限で解雇されてしまうというこの四十万人問題、これはこの法案の欠陥じゃないですか、欠陥。救済できるめどはあるんですか。

 塩崎大臣、今私がお話ししたような五十代の専門業務の方々、三年後に解雇されるこの方々は、どういう救済をしてくださるんですか。

塩崎国務大臣 まず、無期雇用の派遣で働く方については、今回の改正によって期間制限の対象外となるわけでありますので、同一の派遣先で働き続けることができることとなるわけであります。

 個人単位の期間制限が課せられる有期雇用の方については、派遣期間の上限に達することによって雇いどめのリスクというものが今問題にされているわけでありますが、これらの方には、派遣会社に対して、派遣先に対する直接雇用の依頼等の雇用安定措置というのがまず義務づけられていること、それによってこのリスクを低減することがまず第一。

 それから、労働契約法に基づいて、同一の使用者との間の有期労働契約が反復更新されて通算五年を超えたというようなときは、これは御存じのように、労働者の申し込みによって派遣において無期労働契約に転換ができて、その時点で期間制限の対象外となるということになることから、同一の派遣先で働き続けることが可能になるということでございます。

 また、御案内のように、個人単位とそれから事業所単位の期間制限がございますので、先ほど申し上げたように、もちろん無期になることが一番近道ということではございますが、今のようなやり方もあって、そして、個人単位でありますれば、同一の組織単位じゃないところであれば継続することも可能だということもあることを申し添えておきたいと思います。

山井委員 塩崎大臣の答弁は机上の空論なんです。みんな、三年後、路頭に迷うのではないかと、本当に人生の不安に苦しんでおられるんです。

 先ほど言った五十代の女性の方もシングルマザーですよ、お子さんを育てておられる。十五年間ずっと働いてきたところを、新しい派遣先というのは、今まで十五年間働いてきたから今の賃金であるのであって、五十代で新しい派遣先に初めましてと行ったら、賃金も待遇も大幅に下がるんです。

 だから、塩崎大臣、私が聞いているのは、既にこの方々は、残念ながら、正社員も無理、派遣元の無期雇用も無理ですと言われているんです、五十代だから。そういう人はどうなるんですか。

塩崎国務大臣 これは阿部先生のときにも申し上げましたけれども、もともと安定的な雇用であったかどうかということも、今取り上げられた雇用のサンプルは、例はあると思うんです。

 先ほど申し上げたように、この二十六業種の業務の中でも、派遣契約期間というのが極めて短い、反復契約をしているということを申し上げました。ですから、もともと、期間制限がないというところだけを見て安定的だとお考えになるところも、実は必ずしもそうではないことが十分あって、先ほど申し上げたように、二十六業種全体でいくと三カ月以内というのが四三%強ですから、かなり、三カ月でずっと派遣契約を更新しないといけないということがあって、いつそれは切られるかもわからないということも同時にリスクとしてございますので、そういうこともあわせ考えてみていかなければいけないというふうに私どもは思っております。

山井委員 確かに、有期の専門業務といっても、雇用が永遠に安定しているかどうかはわかりません。でも、一つ言えるのは、今回、法改正になれば、確実に三年後に切られるということなんです。だから、この方々は、何を余計なことしてくれるのと言うわけですよ。法律さえなかったら、あと三年、五年、働き続けられる可能性もあるんです。

 さらに、今回のこの法案というのは、労働政策審議会で、連合からもこの部分に関しては反対意見がついておりました。つまり、労働政策審議会で反対意見がついているにもかかわらず、しっかりと労働側の合意も得ずに法案を出してくるから、いざ法案審議になったら、四十万人の有期の専門業務の方々が路頭に迷うかもしれない。

 私は、こんなことは法案審議の段階で議論するどころの話じゃないと思いますよ。こういう根本的な問題は、労働政策審議会で労働側ともしっかりと協議をして、反対意見がつかないようにして、そして、こなれたものを国会に出してくるというのが今までの日本の労働政策のよき伝統だったんじゃないんですか。

 これは、でも、塩崎大臣、この四十万人の中で、正社員にもなれない、無期雇用にもなれない、こういう方々、つまり非常に厳しい状況になる方は、四十万人のうち何万人ぐらいだと思ってこの法案を提出されたんですか。塩崎大臣、お答えください。

塩崎国務大臣 それは先生、四十万人が、どういう扱いになる方がどのくらいおられるかということを正確に予想せいと言われても、それはなかなかできないことで、生きた経済でございますし、そこは、無期にどれだけなれるのかとか、そういうこともあるわけですけれども、我々としてはやはり道をつけておく、あとは、それぞれ、雇う側と働く側がどういう話し合いをして決まるのかということがあって初めて結果が出ることでございますので、私どもとしては、今申し上げたような道をつけるということが我々としての政策責任ではないかというふうに思っております。

山井委員 塩崎大臣、この法案で直撃を受ける四十万人の方々の人生がかかっているんですよ。何万人がどうなるかはわからないと。わからない法案なんか出さないでくださいよ。

 五十代の方、正社員にはそう簡単になれませんよ。無期雇用も派遣元では無理ですよ、はっきり言いまして。そういう方々にとっては不利益変更じゃないですか。そういう不利益変更の方が何人出るのかもわからない。失業するかもしれない。日雇い派遣になるかもわからない。わからないのに法案を出しているんですか。余りにも派遣労働者に対してそれは冷たいんじゃないですか。失礼じゃないですか。

 塩崎大臣、ほかの聞き方をしましょう。今までの日本の歴史上の労働法案の中で、その法案によって解雇をすることになる、解雇される方が万単位で発生する、そんな法案、過去、日本の歴史上ありましたか。

塩崎国務大臣 私どもは、そういうことになるということを想定しておりませんので、比較のしようがないと思います。

山井委員 ちょっと待ってください。今、おかしい答弁をされたんじゃないですか。

 専門二十六業務、四十万人は、三年上限を決めるという法案ですよ。ということは、三年後に解雇されるということですよ、この法案は。それを、解雇されるとは想定しておりませんという答弁はおかしいんじゃないですか。

 大臣、三年上限ということは、基本的には三年後に解雇される可能性が大ということですよね。いかがですか。

塩崎国務大臣 余り単純化していただくと、大勢の方が来て聞いておられるので、誤解をされるので。

 雇用安定措置というものを、何度も繰り返し御説明を申し上げました。こういうものもございますし、先ほど申し上げたとおり、個人単位の期間制限についても、いろいろなケースがあり得るということを申し上げてきているわけでありますので、そこのところは余り単純化し過ぎない方がいいと思います。

 もう一つ大事なことは、これはもう山井先生が一番強くおっしゃってきたのは、一生派遣はだめだ、固定化もだめだということをおっしゃってきたわけであって、なおかつ、いつ雇いどめになるかわからないというお話をされていましたが、先ほど申し上げている二十六業務の中でも、驚くほど大勢の方々が短期の契約でくるくると契約を更新されている、ですから、極めて不安定であって、これをどう安定化するかということも考えなきゃいけない。

 それは、やはり基本はその人の力を、価値を上げるということが大事なので、人材育成という言葉を皆さんおっしゃいますが、この人材育成をちゃんとした必須の仕組みとして持っていなかったのが今までの派遣の仕組みでございます。

 これは、民主党政権時代も、二十四年のときにも改正をされましたが、そのときにも入れ込んだわけでもなかったわけであって、大事なことは、この派遣制度を、山井先生といえども、よもやゼロにしようというわけではないと思いますが、今、我々がいつもやらなきゃいけないことは、きょうよりもあすをよくする、あすよりもあさってをよくするということが大事なので、この法律はまさに今までのものよりずっとよくなるものをお出しして、これでまずいってみようじゃないかということを申し上げているんです。

 これで、ずっと後変わらずにいけるだのようなことを申し上げてはもちろんいないわけでございますので、そこは謙虚にやっていかなければいけないなというふうに思っているところでございます。

渡辺委員長 既に時間が経過しておりますので、質疑は終わってください。

山井委員 時間が来ましたので締めくくらせていただきますが、残念ながら、塩崎大臣のおっしゃっていることは机上の空論なんです。四十代、五十代の方が、三年が終わって正社員に何%の方が雇ってもらえるんですか、何%の方が無期雇用に派遣元で雇ってもらえるんですか。そんなこと、現場の方々の声を聞いたら誰でもわかるじゃないですか。全然、机上の空論ですよ。

 それに対して全く楽観的なことを言って、そして、三年後に四十万人の方々が、上限が決まって解雇される、その救済措置も考えていない……

渡辺委員長 時間が終了しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 こういう欠陥法案をこのまま通せば本当に問題ですし、そういう救済措置もないということは、私は、審議する以前の欠陥法案だと思います。

 以上です。

渡辺委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 冒頭、この間の問題について一言述べたいと思います。

 いわゆる一〇・一問題のペーパーの問題や、質疑の中で大臣初め当局の答弁などをめぐって、これらの問題の整理と謝罪をということで、先週金曜日の委員会が飛びました。きょうは、その整理、謝罪を受けての委員会でありますが、そもそも、この法案がこれまで二度にわたって廃案に追い込まれたのも、国民の反対とともに、条文のミスですとか、答弁がころころ変わるといった問題があったわけです。今回だけの問題ではありません。この問題の根底にあるのは、十月一日のみなし規定を効力なきものにせんがために事を急いでいる中での、余りにずさんな対応のあれこれだということではないか。

 一応、大臣の謝罪があり、その中では、議員によって異なる資料を用いたことや、事実に関する的確な報告がなされてこなかったということなどは言うものの、それが国会での審議を余りにも軽んじていることへの言及や認識は定かではありません。結局、この謝罪が、今後審議を進めて九月一日施行に間に合わせてくださいというものであるならば、それは違うし、引き続き、国会軽視も甚だしいと言わなければなりません。

 本来、問題の重みを考えれば、こんな法案は撤回すべきだと厳しく抗議をして、質問に入りたいと思います。

 きょうは、そもそも論からやりたいと思っています。

 派遣労働の原則は、常用代替の禁止、臨時的、一時的雇用に限るというところにあります。定義や言葉の問題もこれまでこの委員会で議論になってきましたけれども、では、そもそも雇用の原則とは何なのかということであります。

 戦後、労働法制が確立していく中で、労働者供給事業や中間搾取についてどういう規定が盛り込まれたかということをお答えいただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今御質問の労働者供給事業並びに中間搾取の関係でございますが、まず、労働者供給事業でございますが、こちらの方は、職業安定法の第四条第六項におきまして定義を置いておりまして、労働者供給とはということで、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第二条第一号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。」と規定されております。

 その上で、委員御指摘の労供の関係の問題として、職業安定法の四十四条でございますけれども、同法四十五条に規定する場合を除くほかということでございますけれども、「労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」と規定することによりまして、労働者供給事業は原則として禁止されているということでございます。

 また、続きまして、中間搾取の関係でございますけれども、こちらの方は、労働基準法の第六条におきまして、「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」ということで、中間搾取の排除について規定をされているというところでございます。

堀内(照)委員 ですから、雇用は直接雇用がやはり原則であって、あくまで派遣というのは例外だと。

 ところが、一九八五年、派遣労働の導入以降、九九年の原則自由化、二〇〇三年の製造業解禁など、規制緩和が重ねられる中、本来正規雇用の職員が担うべき恒常的な仕事を派遣労働者が行うという意味で、実態として常用代替がかなり進んできた。

 本会議での質問で、私は、総務省の調査も引いて、正規がこの間五百万人減る一方で、非正規が一千万ふえたと指摘をしました。派遣労働者数を見ても、九九年の原則自由化後、三十万から五十万人規模で推移をしてきた派遣労働者数が、製造業解禁で八十五万、百六万人と急増し、〇八年、ピーク時には百四十万人。リーマン・ショック後、減ったとはいえ、百万人前後で推移をして、現在、百二十万人であります。

 個々の職場でもそうした状況が広がっています。沖電気の職場を明るくする会というところが発行している職場新聞によれば、沖電気埼玉県本庄工場では、リーマン・ショック後の二〇一〇年から二〇一四年にかけて、正社員がおよそ半分に減る一方で、派遣労働者はふえ続けて、ついに職場の六割近くを占めるに至っております。

 この間の派遣法のたび重なる改悪がこうした常用代替を進めてきたという認識が大臣にはございますでしょうか。

塩崎国務大臣 労働者派遣法につきましては、常用代替防止の原則を維持しながら、経済産業構造の変化に応じて、派遣で働く方の一層の保護と雇用の安定を図りながら、働く方々の多様なニーズに応じた働き方の実現を目指して、累次の改正を重ねてきたところでございます。

 長期的に見れば、昭和六十年、一九八五年の労働者派遣法制定以降、派遣労働という形態が多様な働き方の一つとして定着をしてきたことは、これは事実だろうというふうに思います。

 一方で、労働者派遣事業報告によりますと、平成二十年度以降、派遣で働く方の人数は減少傾向にあるということでございまして、いっとき、平成二十年ですかね、二百二万人でしたけれども、平成二十六年、百二十六万人ということでございます。

 派遣で働く方の中には、正社員を希望する方もいれば、臨時的、一時的な働き方として派遣をむしろ積極的に選択している方も同数程度いるところでございまして、厚生労働省としては、正社員を希望する方については、正社員への道が開かれるようにする、同時に、みずからの働き方として派遣を積極的に選択している方については、その待遇、処遇の改善などを図ることが重要だというふうに考えているところでございます。

堀内(照)委員 多様なニーズとおっしゃるんですけれども、厚労省自身の調査の中で、就業形態別に問うているものがあるんですけれども、なぜ今の就業形態を選んだのかと。自分の都合のいい時間に働けるからとか、家事、育児などと両立しやすいからということなどの項目はあるわけですが、派遣社員の中では、むしろそういうことで派遣についたという人は二割ぐらいなわけですね。一番多いのは、やはり正社員として働ける会社がなかったということで、派遣労働者の四四・九%がそう答えています。

 正社員になりたいけれどもなれないという、選びようのない状況をつくっておきながらニーズと言うことは、やはり許せないと思うんですね。派遣労働者のニーズがあるんじゃなくて、正社員になりたいというニーズにこそ応えるべきだと思います。

 先ほどの沖電気の、ある四百人の職場では、派遣社員がやはり急増して、正社員が一割、派遣社員が約三百人、七五%にまで達しているというところまであるというんですね。二十四時間操業の現場で、派遣労働者が生産の主力になっている。直接雇用の原則に立ち戻って、本当に派遣労働を一時的、臨時的なものに厳しく限定し、直接雇用に向けた法的縛りこそやはり強めなければならないというふうに思うわけであります。

 ところが、法案は、その担保となる期間制限を、実際には効力なきものにしようとしています。

 前回、質疑の中で、事業所単位での期間制限延長にかかわって、過半数労働組合の意見聴取について伺いました。

 ちょっと答弁が余りすっきりしなかったので、理事会で御協議いただいて、厚労省の見解を整理していただきまして、そこには、「過半数労働組合等が拒否した場合であっても、派遣先が適切な手続に則って意見聴取をしようと働きかけたと客観的に認められる場合には、派遣先が意見聴取を怠ったとは考えにくいため、意見聴取義務違反にはならないものと考えております。」というものでありました。

 つまりは、意見聴取が行われなくても、働きかけが行われていればいいということでいいんでしょうか。

坂口政府参考人 お答えさせていただきます。

 まずもって、今回の改正案では、理事会のペーパーにも書かせていただいたとおり、「派遣先の事業所単位の期間制限を延長する際には、派遣先は過半数労働組合等の意見を聴かなければならない」ということがまず義務づけられているということでございますので、それが大前提ということでございます。

 ただ、前回、委員から御質問ありましたように、過半数労働組合が、そういった意見聴取について、派先が適切な手続にのっとって働きかけたと客観的に認める場合に拒否したという場合についてということでございましたので、そういった場合につきましては、派遣先が意見聴取を怠ったとは考えにくいため、意見聴取義務違反にはならないということで考えておるというところでございます。

堀内(照)委員 結局、これでは、派遣先の労働者代表が異議を唱えようが意見聴取を拒否しようが派遣先の意向どおりにできるということで、本当に何の歯どめにもならない。実質はもう努力義務ということであります。

 労働組合の意見聴取にかかわってもう一点なんですが、実際の労働組合の組織率は二割を切っているわけです。労働組合のない事業所での過半数代表者の実態も、選挙で選ばれたというのは八・三%にすぎません。会社が指名したというのが二八・二%。社員会、親睦会などの代表が自動的に過半数代表者になったというのが一一・二%です。先ほど、井坂さんの資料の中で、反対が少なかったり、特に意見が出されなかったという背景はここにあるというふうに思うんですね。

 でも、こういう実態の中で意見聴取が行われて、それが正当な手続と言えるんでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 意見聴取に当たっての過半数代表の取り扱いということでございますが、この点につきましては、この法案の提出に当たって御議論をいただいた労働政策審議会の建議におきましても、「適正な意見聴取のための手続」ということで、「過半数代表者は、管理監督者以外の者とし、投票、挙手等の民主的な方法による手続により選出された者とすることが適当である。」ということとされておりまして、私どもとしましても、このような取り扱いで取り扱ってまいりたいと考えております。

堀内(照)委員 今の労基法上の省令でも、会社の指名はだめだというふうになっていると思うんですが、それでも三割近くが会社の指名だという実態なんですね。

 しかも、今、建議の中身で、民主的な方法ということをおっしゃいましたけれども、挙手でもいいんだということであります。これでは、会社の意を酌んだ結論にしかならないんじゃないですか。

坂口政府参考人 今議員の方からも挙げられましたけれども、労働基準法上の過半数代表の選出のあり方についても同様の取り扱いをしているところでございまして、挙手も含めて、しっかり管理監督者以外の形の者を過半数代表として選ぶということでの民主的な方法での選出方法ということで、適当であるということで私どもとしては考えてまいりたいと考えております。

堀内(照)委員 本当に会社の意を酌んだ代表しか選ばれないんじゃないかというふうに思うわけであります。

 それで、もし、そこの正当に選出されない代表者が意見聴取をされたという場合には、やはりこれは期間制限違反として、みなし規定の対象となるんでしょうか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのように、今回の改正案では、期間制限の規定を設けておりまして、その手続としての過半数組合、あるいは過半数組合がおられない場合は過半数代表という形での意見聴取を義務づけておるところでございますが、派遣先が過半数労働組合等の意見を聴取せずに期間制限を違反して派遣労働者を受け入れた場合ということになりますと、一定の手続違反を除きまして、労働契約申し込みみなし制度の適用の対象となるということで私どもとしては考えております。

堀内(照)委員 いや、聴取せずじゃなくて、聴取した相手が正当に選出されていないという場合はどうなのかということなんです。

坂口政府参考人 労働契約申し込みみなし制度の適用の対象外となります手続違反の範囲につきましては、今後、労政審で議論を深めていただきたいということでは考えておりますけれども、今も御質問のあったような、過半数代表者が民主的に選出されていない場合というようなことになれば、これはやはり、意見聴取の手続の中でも、意見聴取を行っていないものと同視し得るような重大な手続違反ということで考えられるかと思いますので、私どもとしては、現段階では、労働契約みなし制度の適用の対象になるということで考えております。

堀内(照)委員 意見聴取しなければならないというのは、これは法律の大前提ですので、それが正当な代表でないということになれば、ここはきちんと、もちろん、みなし規定の対象とすべきであります。

 同時に、そういった代表が正当かどうかというのが派遣労働者にはわからないわけですね。それで、意見聴取や説明の際、その内容について記録し、一定期間保存するとともに、派遣先の事業所において周知するということになっていると思うんですが、そこにぜひ、労働者代表が正当な資格を持っているのかどうか、選出方法についても記載すべきだと。そのことによって、正当な選出を行っていく担保、縛りにもなると思いますので、そのことも指摘をしておきたいというふうに思います。

 適正な手続さえ踏まないのは、期間制限違反になって、みなし規定の対象になるのは当然であります。しかし、手続さえ踏まえれば、もうとにかく、いろいろ反対があっても説明さえすれば期間の延長は可能なわけで、そこには本当に歯どめがないわけですね。

 井坂さんの資料の中で、実際には反対する労働者代表、労働組合は少ないじゃないかというのがありました。そういう一面というのは確かにあると思うんですね。

 前回、私は、医療材料の配送で働く、冷蔵庫の中で過酷な勤務をしているという労働者の例を紹介しましたが、そこの現場もどんどん派遣に置きかわっていったわけですね。やはり、そういうきつい仕事は、正規労働者が嫌がる過酷な仕事を使い勝手のいい派遣に置きかえていくということはあるわけで、そういう点では、本当に労働者保護というのなら、何より、一番の当事者である派遣労働者の意見こそ聞くべきではありませんか。

坂口政府参考人 一連のお尋ねの、この意見聴取、事業所単位の期間制限の関係ということは、これは、派遣先において正社員から派遣労働者へのいわゆる常用代替ということが起きないようにということの、防止を目的として、このような形で、同じ事業所における継続的な派遣労働者の受け入れについて期間制限を課すということとしておるものでございます。

 そういった制度の趣旨に鑑みますと、この意見聴取をする相手方につきましては、やはり派遣先の労働者の方々から成る過半数労働組合等からの意見聴取を義務づけるということをその趣旨としております。

 そういう関係上、やはり派遣労働者御本人につきましては、こういった意見聴取という対象としては取り扱わないということで、ただ、派遣労働者御本人に対しても、いろいろな形でその保護ということをしていくということは重要という観点がございますので、今回の改正法案につきましては、派遣会社、派遣元の方にいろいろな一義的な雇用責任というものを課して、派遣労働者の保護ということをしっかり担保してまいりたいということで考えております。

堀内(照)委員 派遣労働者に派遣先企業との団体交渉権を認めるなど、派遣労働者の声が反映される仕組みがやはり必要だということを指摘しておきたいと思います。

 事業所単位での期間制限といっても、結局は、やはり何の歯どめもありません。三年、六年、九年と続けば、きょうもいろいろ議論がありましたけれども、結局、このどこが臨時的、一時的なのかということを私も聞こうと思っていたんですが、既に大臣の答弁もありました。

 そこで、先ほど、個人単位でも期間制限があるんだということも大臣はおっしゃいましたけれども、これは楽天リサーチ株式会社が二〇一三年三月に調査をしているんですけれども、期間制限抵触後に部署変更した人のうち、この法案で規制の対象となる係の異動ですね、同じ課、グループの中での異なる係、チームへの異動だという人は二一・八%にすぎません。今でも八割近い人が、課や部、事業所を超えて部署変更して、派遣延長になっているわけです。しかも、その半数が、仕事内容はほとんど変わらないと答えているんですね。

 ですから、事業所単位での期間制限も三年、六年、九年と続くし、個人単位の方も、いや、係の異動を今度規制するんだといっても、実際にはもうほとんどがそういう条件はクリアしていて、しかも、半数の人が同じ仕事内容なんだということでは、本当に、個人単位の制限といっても、これは何の歯どめにもならないんじゃないか。これを組み合わせると本当に一生涯派遣ということにやはりなりかねないんじゃないですか。これは大臣にぜひ答弁いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 これも繰り返し御答弁申し上げておりますけれども、今回の改正案では、派遣先に対して、同じ事業所における継続的な有期雇用の派遣労働者の受け入れは三年までという事業所単位の期間制限を課すということとし、三年を超えて受け入れる場合には、先ほど来お話で出ております過半数組合等からの意見聴取を義務づけるということになっております。

 この事業所単位の期間制限は、言うまでもなく、雇用が不安定な有期雇用の派遣で働く方の当該事業所での受け入れは一律三年までとすることであって、過半数労働組合の意見を聞いて延長することは可能でありますけれども、その延長後の受け入れは改めて三年間の期間制限が課せられるということで、今、事業所単位でも三年、六年、九年という話が出ましたが、やはり新しく、改めて始まる三年間の期間制限が課せられるということだと思います。

 個人もそれは同じことであって、同一の組織単位で上限三年ということであるわけでございまして、なかなか、課単位ということで言っておりますけれども、新しい課に移るために必要な技能というか知識とか、そういうものもあるわけでございますので、これの取得を進めるために私たちはキャリア形成支援制度というものも設けているわけであります。でありますので、その次に正社員にステップアップをする、あるいは無期雇用になる等々のためには、やはり力をつけていくということが大事ではないかなというふうに思うわけです。

 ですから、事業所単位、個人単位、それぞれの三年間の受け入れを臨時的、一時的な利用として取り扱うわけでございまして、結果として、事業所にあっては、常用代替の観点で問題がないという延長がされた期間を通算しても、臨時的、一時的と考えているものではないわけであって、個人単位については、やはり一旦立ちどまって、ここで考えて、もちろん雇用安定措置のもとで幾つかの選択肢がございますので、そういうことで、一生ずっと派遣でいく、固定化をするということは避けていくということが基本だというふうに考えております。

堀内(照)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、先ほど阿部さんとの質疑の中で大臣が、三年ごとに考えてもらうハードルを少し高くしたんだとおっしゃったんですよ。少しというところにそのニュアンスが出たのかなと私は思ったんですけれども、結局、いろいろ制限だと言っても、軽々と乗り越えられるハードルなわけなんですね。だからこそ、私は、組み合わせたら本当に三年、六年、九年とずっと派遣ということになるじゃないかということを指摘したわけです。

 キャリアアップということもおっしゃいました。キャリアアップについて、厚労省は正社員化を含むキャリアアップだということで説明をされております。

 しかし、法案の条文では、派遣元事業主に教育訓練等の実施を義務づけ、職業生活の全期間を通じその有する能力を有効に発揮できるように配慮しなければならないとか、職業生活の設計に関し相談の機会の確保などを行わなければならないというふうにあるんですが、どこに派遣労働者が正社員化される措置が含まれているのか。これは政府参考人でも結構です。

坂口政府参考人 今委員御指摘のように、今回の改正法の第三十条の二でございますけれども、派遣元事業主について計画的な教育訓練を義務づけているというものでございます。

 この点につきましては、今お尋ねございましたが、職業能力を向上させて正社員となる可能性を高めるというためには、現在の派遣の仕事をするに当たって必要な能力でありますとか知識のレベルアップを図っていくということがやはり一番の近道だろうということでございまして、そういった観点から、今回の改正法案で計画的な教育訓練などのキャリアアップ措置というものを義務づけることによって、正社員化にもつながっていくということで私どもとしては考えているということでございます。

堀内(照)委員 近道だとかつながっていくということなんですけれども、保証という点では示されなかったと思うんですね。

 キャリアアップを図ったりスキルを身につけないと正社員になれないということじゃないと思うんですね。もともとキャリアがないから派遣労働にとどまっているというわけじゃないというふうに思うんですね。専門二十六業務は、そもそも高度な専門性を持つ仕事です。

 私がお話を伺った四十代の女性は、もともと外資系で通訳の仕事をばりばりして働いていた。安定した雇用と思っても、結局派遣しか求人がない。この二十年を振り返ってみたら、結局、安上がりで、雇用の調整弁として使われてきたんだと。

 ある製造業で働いてきた男性は、二十四時間操業で、気温が四十度近くにも上がる過酷な現場で、十二時間二交代の勤務をこなしてきた。この方は偽装請負から派遣とずっと働き続けてきたわけですが、正社員よりもベテランになっていく。機械音を耳で判断して、きょうは機械の調子が悪いから回転数を落とそうとか、湿度なども考慮して、材料をまぜるタイミングやまぜる時間を秒単位で調整するなど、感覚、技術を研ぎ澄ませて、三〇%だった不良率を五%にまで減らすなど抜群のスキルを有していましたけれども、それでも派遣だったんです。

 キャリアアップして正社員と言いますけれども、キャリアがある人は、正社員になるためにはあとは何が足らないというんでしょうか。努力なんでしょうか。これは自己責任の世界なんでしょうか。大臣、お願いします。

塩崎国務大臣 これはきょうも何度もお答えを申し上げたところでありますけれども、雇用関係というのは、最終的に、使用者側が働く人を雇うという格好になるわけでありまして、その際に、法律で義務づけることと義務づけられないこととございますので、最後にどういう形で選ぶかというのは、やはり使用者が雇用をどういう形で決めるかということにかかってくるわけでございます。

 私どもとして大事なことは、制度として、できる限り、相対的に弱い立場にある働く人たちの立場が守られるということが大事であって、それを私たちは、先ほど来申し上げているように、これまでの派遣法のたてつけよりもはるかに、一人一人の働く人たちの能力アップと、それから、立場を守るということに関しては、雇用安定措置もそうですし、それからキャリア形成支援制度も、同じように、その人の価値を上げるということで、そういうことをやはり重ねていくための、よりやりやすい仕組みということをつくるのが、私たちの公共政策としての責任だろうということを申し上げているわけでございます。

 先ほどから申し上げているように、正社員に間違いなく一〇〇%なれるというようなことを保証できれば、それはそれにこしたことはございませんけれども、やはりそういうことは、この自由主義の、資本主義の世界の中、日本の中でやることはなかなか難しいということで、最大限、そういう可能性が出てくるような手だてを私たちとしては御用意をしているというのが今回の法改正だというふうに思います。

堀内(照)委員 使用者が雇用を決めるというふうにおっしゃいました。そのとおりで、足りないのは派遣先企業の雇用責任だと私は思うんですね。

 それで、先ほど紹介した男性は、結局首切りに遭いまして、培ってきた技術が生かせないのが悔しいとおっしゃっています。こういう働かせ方が、物づくりの日本の技術も低下させている。つまり、後輩が入ってきても、自分のスキルを教えられない。教えたら、自分より時給の安い後輩にかわっちゃうんじゃないかということで、教えられなかったと言うんですね。

 キャリアアップと言うけれども、派遣労働の制度そのものが労働者のキャリアに傷をつけていると言わなければならないというふうに思うんですね。派遣先企業の雇用責任、臨時的、一時的というんだったら、そこをしっかり厳しく限定して、正社員化への道を本当にしっかりとつけていく。直接雇用の大原則に戻るということを厳しく求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 まず、今回の法案の大きな特徴の一つに、派遣期間制限を個人単位と事業所単位という二つのカテゴリーにして、一定の条件のもとに基本的に上限をなくしたというのがあると思います。これは、労政審の建議をまとめる際、使用者側からも、業務ごとの制限ではなく、個々の派遣労働者ごとの就労期間の制限とすることとされたものであります。しかし、労働者側は反対であったと思います。

 大臣に伺いますが、なぜ個人ごとの派遣期間制限にしたのでしょうか。

塩崎国務大臣 現行制度における期間制限については、一つは、いわゆる専門二十六業種、きょうは随分これについての議論が行われましたが、これに該当するかどうかが実はわかりにくいという指摘がございました。それから、業務の専門性が時代とともに変化をするために制度が不安定であるといった指摘がなされているところでございまして、平成二十四年の労働者派遣法改正法案に対する国会の附帯決議においても、わかりやすい制度となるように、速やかに見直しの検討を開始することが求められたと思っております。

 こうした背景から、今回の改正案では、わかりにくいという指摘がある業務単位の期間制限を廃止し、働く人に着目をした、よりわかりやすい制度として、個人単位と派遣先の事業所単位の二つの期間制限に見直すこととしたところでございます。

高橋(千)委員 大臣、全然答弁になっていませんからね。

 わかりにくいというのは、前段におっしゃったのは専門業務の話でしょう。それは、この間ずっと一〇・一ペーパーで議論してきた。そのことを今言っているのではないんです。

 だけれども、後段のところは、個人ごとの派遣期間制限になぜしたのか。その方がわかりやすい、逆に言うと、わかりにくいということでなったという話なんですけれども、何でこんな議論が急に出てきたのかということなんですね。

 十五日の本委員会で公明党の伊佐委員が、個人ごとの派遣期間制限が派遣労働者の保護につながるんだという質問をされました。では、どちらの側からこの考えが出てきたのかと思うんですよね。

 さっき言ったように、労政審の中では使用者側から出てきているわけです。建議に先立つ、あり方研究会、平成二十五年八月二十日の報告書の中にも盛り込まれましたし、規制改革会議は十月に、「有期雇用派遣労働者に対する個人レベルの期間制限は、規制改革会議の主張に沿ったものであり、堅持されるべき」としていた。つまり、労働者側は反対しているけれども、使用者側はどっちも、派遣元も先もこれは歓迎しているんですよ。そこから来ている。

 なぜかというと、結局、大臣はいつも、これまで事業所単位だったと表現していますが、業務単位ですからね、業務単位ということでの期間制限しかなかったわけですよね。それがはみ出せば、つまり、一人が三年でなくても、六カ月だったり五カ月だったり一年だったり、足していってはみ出せば、要するにオーバーしちゃう、そこで雇用契約申し込みをしなさいと。そういう、期間制限に触れるよということがあって、これは非常に厄介だな、だから個人単位にした方が楽だ、わかりやすいし被害が小さい、そういう使用者側の論理ではなかったんでしょうか。

 保護ではないと思いますが、お答えください。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員御紹介いただいたような、使用者あるいは有識者の会議等の経過があったということは事実かと思っておりますが、ただ、最終的な形で労政審で御議論をまとめていただいた形は、先ほど大臣が御答弁しましたような形での、個人単位も含めての期間制限ということをパッケージで、しかも、その業務単位の期間制限についても、業務単位の方は単に廃止して人単位の個人単位に移ったということだけではなくて、事業所単位の期間制限ということも残した上で、わかりやすくした形で、個人単位の期間制限とパッケージで期間制限を設けたということでございます。

高橋(千)委員 さっき紹介した、個人単位にしたのは保護のためであるという議論のときの坂口部長の答弁は、三年という個人単位の期間制限によってキャリアアップにつなげていただく、節目節目にちゃんと自分のキャリアの見詰め直しをしていただくと答えています。確かに、省庁でも三年というのは一つの異動の節目だ、それが一つの参考になりましたなんということを説明を受けたこともありますけれどもね。

 だからといって、三年でキャリアアップということではなくて、課を横滑りしていることもあるわけですよね。なぜ三年ごとの期間制限がキャリアアップにつながるんですか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 前回の答弁の中でもそのようなお答えをしたかと思っておりますが、まず、この三年の個人単位の期間制限というのは派遣労働者の固定化を防止するということでございます。

 その意味では、今御紹介もいただきましたけれども、いわゆる正規の方々のキャリア形成、あるいはそういった人事の異動ということも、二年から数年というようなタームで、キャリアを積むに当たっていろいろな仕事を移り渡ってキャリア形成を図っているということもございます。ということで、やはりこの三年という形で課でくくって一つの見詰め直しをしていただくということが、この派遣への固定化を防ぎ、かつキャリア形成にも資するということで考えたということでございます。

高橋(千)委員 見詰め直しとか、本当にずっと答弁を聞いていて驚いたんですよね、いつからそういう議論になったんだろうと。一方では、臨時的、一時的と言っている。

 実際に、三年で何でキャリアアップなの、横滑りするじゃないかと言ったときに、一回では難しいかもしれないけれども、いろいろなところを回って経験を重ねればそれはキャリアアップにつながりますという説明を私は受けたんですよ。そうすると、本当にこれは、何度もきょうも指摘されているように、臨時的、一時的が原則と幾ら書き込んでも、完全に、やろうとしていることが矛盾しています。書いたからこそ、さらにこれを自己否定していることにもなります。大臣、その意味、おわかりでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど個人単位の期間制限のことについて私から説明申し上げたときに、やはり、課をかわるということはそれなりに新しい分野を学ばないとなかなかできないということが、私もサラリーマンをやっておりましたが、課というのはやはり全然違うときが多いわけでございまして、そういうようなときに備えて、このキャリア形成支援制度をしっかりと持っているかどうかを確認した上で派遣元を許可するということにしているわけでございますし、三年目の節目節目の際にやはりステップアップをするというきっかけとしても、この三年ごとの自身のキャリアについて考える機会として、固定化防止をするということが私どもの考えでございます。

高橋(千)委員 固定化防止とおっしゃるんですけれども、個人の派遣期間を制限するというこれまでにない考え方なわけですよね、期間を管理するという。これまでは、派遣事業者が期間制限に抵触しますよと言わなきゃいけなかった。だけれども、もう個人だから、誰さんはこの三年間きちっと働いてもらったわ、次は別の部署に行ってさらに働いてもらう、これは派遣労働者の特定につながるのではないか。派遣法が禁止している特定につながりませんか。

坂口政府参考人 今委員御質問ございました特定目的の行為というのは、いわゆる派遣先がその派遣労働者の特定をしないようにということで法律で努力義務を課し、指針でも一定の、してはいけないということで書いておるということかと思います。

 今回の個人単位の期間制限の派遣労働者ということについては、個々の派遣労働者について、一定の同じ職場での課についての継続的な就業を制限するということでございますので、派遣先が、ではAさんがいい、Bさんがいいというようなことを指定することを規制しているということではないということでございますので、課単位の期間制限ということ自体が、特定目的を制限している、派遣労働者の特定を制限しているということと相反することではないということで考えているところでございます。

高橋(千)委員 これまでは、その業務に派遣労働が必要だ、それはあくまでも臨時的、一時的ですよ、最大でも三年、そういう考え方だったから、その三年の中に何人派遣労働者が入っているかというのは、本来は派遣先は関知しない。だから、雇いどめがあっても、自分たちはリストラしたんじゃないんだ、派遣契約打ち切りなんだ、そういうことを言ってきたわけですよね。それが、派遣労働の間接雇用ということの最大の問題だったと思います。

 だけれども、それを特定したいという使用者側の要望が非常に強くて、事前面接の解禁ということも一度は議題に上りました。しかし、今それを、労政審を経て、結局は今回盛り込まなかったわけですよね。

 やはりそこを本当に大切にしなければ、結局、使い勝手のよい、とても有能な人はずっと派遣で働いてもらいたい、そうじゃない人は契約が切れればそれで気持ちよくお別れできる、そういうことになってはならないというために議論してきたんだということを強く指摘したい。これは当然否定するとは思いましたけれども、特定につながるということを一つ指摘しておきたいと思います。

 そこで、最大三年といっても、初めから三年間の契約を結ぶとは考えにくいと思います。有期雇用契約だってそうですよね。さっき大臣もお話しされました。今専門業務をやっている人だって三カ月だったり、そういう人が多いですということを言っていると思うんですね。そうすると、半年とか一年契約を反復して契約することを意味していると思うけれども、どう考えますかということと、それを反復雇用していても三年継続してというのは、どういう場合にそれをカウントしますか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員の方からありましたように、現実の有期派遣労働者の実態、あるいは、今回も三年を上限としての期間制限ということが盛り込まれ、その対象となるということから考えると、まさに委員御指摘のように、三年を超えるような派遣契約というのは一般には想定しにくいというような状況になるのかなと思っております。

 したがって、これまた委員御指摘のような形で、短期と申しますか、一定の期間を定めた派遣契約が反復されるというようなことが起こってくるということかとは思いますけれども、派遣契約が短期で反復されるという場合についても、現実には三年の期間制限ということを当てはめてまいるわけでございますが、これにつきましては、現行制度におきましても同じような問題は生じるわけでございます。

 この点については、現行制度でも、直前に受け入れていました労働者派遣の終了と新たな労働者派遣開始との間の期間が三カ月を超えない場合については、継続して労働者派遣を受け入れているものとみなして取り扱って、この期間制限等についても当てはめているということがございまして、今回の改正後の期間制限のあり方についても、こうした現行制度のありようということも踏まえて、労政審において議論していただき、はっきりさせたいということで考えております。

高橋(千)委員 現行の派遣制度の期間制限の場合に、三カ月が今いわゆるクーリング期間である、だから、それを超えない間があいたとしても、例えば間が二カ月だったとしても、それが繰り返していたら全体として継続して三年と見るんだ、そういう趣旨だったと思います。

 そこで、労働契約法の改正の際に、五年以上反復雇用した際の無期転換ルールを定めました。そのときも質疑でただしたんですけれども、そのときもやはりクーリングというのはあるんですよね、有期。これは、一年契約なら半分の半年、ただし、半年契約ならその半分の三カ月というふうな形でクーリング期間を置けば、何年でも有期契約を結べることになるんじゃないか、そういうことを指摘しました。

 問題は、その有期の場合の半年と、今回の派遣の場合は三カ月なわけですよね。だけれども、今回想定しているのは、派遣労働者だけれども有期労働者なわけです。そうすると、このクーリングはどうするんですか、有期に合わせるんですか。どのように考えるのか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 今委員の方から御指摘がございましたように、労働契約法の無期転換ルールにおいてのいわゆるクーリング期間というものにつきましては、これを認めない場合には同一の企業で再雇用を希望する労働者の方の職業選択の幅も狭められてしまうというような問題の観点から、認められることとされたということで承知しておりまして、また、そういった無期転換ルールを導入する効果と労働者の雇用機会の確保のバランスを図って、審議会での建議を踏まえた形で、原則六カ月ということで、先ほど委員御指摘のような形になっておるかと承知しております。

 一方で、先ほど私の方で御紹介しました、現行制度の労働者派遣制度におけます三カ月といういわゆるクーリング期間ということについてでございますけれども、これも、常用代替等の趣旨に鑑みて、同一の業務についての二つの派遣労働との間の空白期間というものがどの程度の長さであれば継続していないと認めることが適当かということを御議論いただいた上で設定をしたというものでございます。

 このように、クーリング期間の考え方は、それぞれ考え方もあって、経過もあってという形で定めておるということでございますので、一義的に労働契約法に基づくクーリング期間に合わせるということは考えておりませんで、今回の改正法案により新たに法的に義務づけることとされている期間制限に関するクーリング期間のあり方につきましては、やはり、どちらかというと従来の労働者派遣の制度におけるクーリング期間ということを踏まえながら、今後、労政審において議論を深めていただきたいということで考えております。

高橋(千)委員 ちょっとびっくりしたんですが、そうすると、二つの期間が、有期雇用派遣労働者なのに二つの概念があるということですか。

坂口政府参考人 これは、個人単位の期間制限も設けられるということはございますけれども、今回の期間制限は、事業所単位と個人単位の期間制限、二つの期間制限ということをあわせて全体として期間制限の制度を設計しているということもございますので、そういった全体のこの派遣制度における期間制限のあり方ということを、従来の考え方を踏まえながら私どもは考えてまいりたいということで考えております。

高橋(千)委員 全く理解できませんね。二つの考え方が並び立つと。

 どちらも、結局、上限を決めながら、クーリングを置けばずっと働かせるということが可能になる制度であるわけですから、これは非常に慎重に検討する必要があると思うんですね。

 それで、だけれども、有期雇用派遣労働者ですから、何度も聞きますけれども、三年を一回延長してもう三年となったときに、いよいよ無期転換の対象となり得る場合もあると思いますけれども、これを確認します。

岡崎政府参考人 御指摘のように、労働契約法につきましては、派遣労働者にも当然適用されます。

 したがいまして、最初三年で、もう一回更新したときが三年ということであれば、これで六年を超えますので、その期間中に無期転換を申し入れれば、その六年目が終わった段階で無期契約に転換する、こういう形になります。

高橋(千)委員 確認をしました。

 ただし、実際には、政府がつくった制度で無期転換をやるのは嫌だということで、途中でいろいろ契約を切られるとか、さまざまなことがあるのかなと思っておりますが、そういう趣旨でつくったわけではないわけですから、ここはしっかりと生かしていただきたいと思っています。

 ただ、さっき言った労働契約法の改正のときに、期限の決まった研究やプロジェクトなどは最大で十年まで延長できると改正されたわけですよね。派遣法の有期プロジェクト業務については、業務取扱要領により三年以内と書かれているわけです。そうすると、今回の法改正に当たっての研究会の報告書では、今言ったように、終期が明確であれば三年に限定する理由はない、この規定を変更することも検討してよいと提言を出されている。これも横並びで考えているのか。

 いろいろいろいろ、節目節目とか言っているそばから、最初から五年でいいんじゃないかとか、そういう議論がされているということなんですよね。これはどう考えますか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今の委員御質問の、期間制限との関係での有期プロジェクト業務に関しての派遣ということでございますが、この点につきましては、その後、労働政策審議会においても御議論がされて、労働政策審議会の建議の中におきましても、「有期プロジェクト業務に係る派遣については、終期が明確である限り派遣期間を制限しないことが適当である。」という形で建議がなされておるということで、私どもとしましては、この建議を尊重した取り扱いということを考えておるということでございます。

高橋(千)委員 ということは、五年もありということですよね。

坂口政府参考人 終期が明確である限りは、これまでの三年以内という制限は考えないということでございます。

高橋(千)委員 結局、制限といっても、本当にいろいろな角度から穴があいているということが改めてわかったかなと思っています。

 そういう中で、今回、特定有期雇用派遣労働者という名称が初めて規定されたわけであります。その趣旨、簡単にお願いします。

坂口政府参考人 特定有期派遣の関係でございますけれども、特定有期雇用派遣労働者でございますが、これは、今回の改正法案におきまして、いわゆる雇用安定措置を設けるという規定を設けたところでございますけれども、その対象者の限定という規定の中でこの特定有期雇用派遣労働者ということを設けたということでございます。

 具体的には、これは、雇用安定措置の努力義務の対象者としまして三種類の対象者を規定するということにしておりますけれども、このうち、派遣先の同一職場で一年以上仕事をする見込みがある派遣労働者につきまして、委員お尋ねのこの特定有期雇用派遣労働者ということを法律上定義したというものでございます。

高橋(千)委員 努力義務であっても一定の雇用安定措置を設けた、それ自体は確かに一定意味があるかもしれません。

 ただ、二十五年の十一月七日の労政審で、派遣業界のオブザーバーがこう言っていますね。「少なくとも派遣法には努力義務と規定されていて、禁止されていない」、つまり、皆さんが言うところの努力義務というのは、禁止じゃないんだ、法律違反ではないんだということで軽視されている、これが実態だと思うんですね。

 だけれども、片や期間制限が来ましたよと言われ、片や雇用安定措置は努力義務ですよ、これは間尺に合わないわけなんです。私たちが、期間制限を厳密にやれとよく言いますよね。でも、そうすると、期間制限が来たから切られちゃうじゃないかという議論になっちゃう。それを、厳密にやって切られればいいという話をしているんじゃないんです。本来は、最初に言ったように、業務に必要なところにだけ派遣労働者を入れてきたものが、どんどんその必要な業務を膨らませてきてしまったから、それが本当に当たり前の働き方になる方がふえてきた中で起こっている矛盾なんだ、このことを本当に認めなければ、だからこそ派遣労働者の保護という名前もつけて、そこに歩み出したわけですからね。

 ここを、本当に書きましたと、書いただけで、努力してくれたからいいんですというわけにはいかないんです。大臣、そこは意味わかりますか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 これまで、努力義務の対象者としても、その努力義務が履行されてこないというようなことがあって、今回、それがきちっとされるようにということで特定有期雇用派遣労働者を初めて規定したということで、御指摘をいただきましたが、これがきちっと履行されるようにしていかなければならないというふうに思っております。

高橋(千)委員 私が言いたいのは、本当に、原則を書くじゃなくて、原則に戻れということを言っているんです。直接雇用がもともと原則で、例外だったのが、例外の方が原則になっちゃった、逆転しているから今起こっている問題だと指摘をしたい。

 それで、今回、前国会で修正案が出されて、それを取り込んだ形で、附則の第二条第二項に、「雇用慣行が損なわれるおそれがある」場合、要するに速やかに見直すということが書き込まれましたよね。この「雇用慣行が損なわれるおそれ」とは、具体的にどういうことを意味していますか。

塩崎国務大臣 今、附則第二条第二項、「雇用慣行が損なわれるおそれがある」というのは具体的に何を指すんだ、こういうことでございますけれども、この御指摘のケースについては、正社員が派遣労働者に取ってかわられる常用代替が言ってみれば常態化する、そういうような状況を想定しているものだというふうに我々は解釈をしております。

高橋(千)委員 もう少し数字的なイメージで言ってくださいますか。

坂口政府参考人 お答えいたします。

 この規定につきましては、法律の規定においても、正社員と派遣労働者の数の動向などを踏まえというような規定をしております。私どもとしましては、こういった正社員あるいは派遣労働者の数の動向というようなものについて、いろいろな統計データ、事業報告等も含めてデータを集めた上で、労働政策審議会等の意見を踏まえながら判断をしていくということを考えております。

高橋(千)委員 これはすごく大事なことなんですよね。何にもイメージが湧かない。今いる派遣労働者が例えば百二十七万人、これが倍くらいになるという意味なのか、置きかえと言っちゃったから、もうがばっと今の正社員の半分くらいを言っているのか、大分違いますよね。

 だけれども、そこをまずはっきりさせてほしいと思うんですが、一番おかしいと思うのが、要するに、派遣がふえたら、派遣が正社員に置きかえになったら制度を見直す、平たく言うとそういう意味ですよね。これは、何度も何度もふえるんですかと質問した方がいらっしゃるので、多分そういうふうな項目を書いたと思うんですけれども、日本型終身雇用が本来の雇用の形と思っているからこういう表現にしたということになるわけですよ。

 そうすると、多様な働き方を認めるとか、派遣労働者のニーズがあるとか、キャリアアップするからいいんだと言ってきたことと完全に矛盾するんです。つまり、政府が言うような派遣労働者なら、本当はふえてもよいと言わなきゃならないんですよ。なのに、ふえたらやはりまずいと言っているんです。これは根本的な法律の欠陥だと思います。修正したことで全く矛盾しているんです。違いますか。

坂口政府参考人 この点につきましては、先ほど来大臣等も答弁しておるような形で、私どもとして、それぞれの働く方のニーズに沿って多様な働き方を推進していく、そのような道をいろいろな形でサポートしていくという考え方に変わりがあるということではございません。

 ただ、前国会での御議論等も踏まえながら、もともとこの派遣法につきましては、検討規定ということで、施行後三年を目途とした形での施行状況を勘案した検討を加えての、必要があると認めるときにはという形での検討規定があったわけでございますけれども、先般来の臨時国会等の御議論を踏まえて、その上で、こういった、先ほど申し上げたような形での常用代替が常態化するというような状況になれば、これは日本の雇用慣行が損なわれるということも考えられるので、これにつきましては、もともとあった検討規定にかかわらず、速やかに検討を行うということで整理をしたということでございまして、多様な働き方を推進するということとの関係でのそごはないものと考えております。

高橋(千)委員 徹底審議か、さもなくば廃案を求めて、終わります。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 次に、井坂信彦君外五名提出、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案を議題といたします。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。井坂信彦君。

    ―――――――――――――

 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

井坂議員 ただいま議題となりました労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案につきまして、提出者を代表して趣旨説明を行います。

 我が国では、いわゆるバブル経済の崩壊により、景気が長期にわたり低迷する中で、非正規労働者は増加傾向にあります。

 現在、役員を除く雇用者に占める非正規労働者の割合は三分の一を超え、その賃金は正規労働者の賃金の約六割の水準にとどまっている状況にあります。

 非正規労働者については、第一に、景気が低迷すると正規労働者に比べて雇用調整の対象となりやすく、雇用が不安定であること、第二に、正規労働者に比べて賃金水準が低く、継続勤務による賃金上昇の機会も少ないなど、経済的自立が困難であること、第三に、正規労働者に比べて職業能力開発の機会が少ないことから、技能の蓄積や能力の向上の見通しが立たず、正社員への転換も困難であることなどの問題点が指摘されています。

 加えて、このような非正規労働者と正規労働者の待遇や雇用の安定性についての格差が社会における格差の固定化につながるのではないかと懸念されております。

 そこで、我々提出者は、格差の固定化につながる状況を是正する趣旨から、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を重点的に推進し、もって労働者がその雇用形態にかかわらず充実した職業生活を営むことができる社会の実現に資するために、本法律案を提出いたしました。

 以下に、本法律案の概要を御説明いたします。

 第一に、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策は、労働者が、その雇用形態にかかわらずその従事する職務に応じた待遇を受けることができるようにすること等を旨として行われなければならないことを基本理念とすることとしております。

 第二に、国は、この基本理念にのっとり、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を策定し、及び実施する責務を有することとしております。

 第三に、国は、労働者の雇用形態による職務及び待遇の相違の実態等について調査研究を行うものとすることとしております。

 第四に、国は、雇用形態による待遇の相違が不合理なものとならないようにするため、事業主が行う正規労働者及び正規労働者以外の労働者の待遇に係る制度の共通化の推進その他の必要な施策を講ずるものとすることとしております。

 第五に、政府は、派遣労働者について、派遣元事業主及び派遣先に対し派遣労働者の待遇についての規制等の措置を講ずることにより、派遣先に雇用される労働者との間においてその職務に応じた待遇の均等の実現を図るものとし、このために必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内に講ずるものとすることとしております。

 最後に、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨及びその概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

 以上です。ありがとうございました。

渡辺委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、明二十八日木曜日午前九時、参考人として中央大学経済学部教授阿部正浩君、一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部長高橋弘行君、派遣ユニオン書記長、NPO法人・派遣労働ネットワーク事務局次長関根秀一郎君、株式会社リクルートホールディングス専門役員リクルートワークス研究所所長大久保幸夫君、自由法曹団常任幹事・弁護士鷲見賢一郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十八日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十八分散会


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