衆議院

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第31号 平成27年7月29日(水曜日)

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平成二十七年七月二十九日(水曜日)

    午前十時十五分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 後藤 茂之君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 松野 博一君 理事 西村智奈美君

   理事 浦野 靖人君 理事 古屋 範子君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      加藤 鮎子君    木村 弥生君

      小松  裕君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    谷川 とむ君

      冨樫 博之君    豊田真由子君

      中川 俊直君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    橋本  岳君

      比嘉奈津美君    堀内 詔子君

      前田 一男君    牧原 秀樹君

      松本  純君    松本 文明君

      三ッ林裕巳君    村井 英樹君

      山田 賢司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      篠原  孝君    中島 克仁君

      長妻  昭君    山井 和則君

      足立 康史君    井坂 信彦君

      牧  義夫君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    角田 秀穂君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      永岡 桂子君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房公益法人行政担当室長)      岩田 一彦君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 高野 修一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (財務省財務総合政策研究所副所長)        高田  潔君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  二川 一男君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       安藤よし子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十六日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     長妻  昭君

同月二十九日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     山田 賢司君

  小松  裕君     冨樫 博之君

  三ッ林裕巳君     前田 一男君

  阿部 知子君     篠原  孝君

  中野 洋昌君     伊佐 進一君

同日

 辞任         補欠選任

  冨樫 博之君     小松  裕君

  前田 一男君     三ッ林裕巳君

  山田 賢司君     大串 正樹君

  篠原  孝君     阿部 知子君

  伊佐 進一君     中野 洋昌君

    ―――――――――――――

七月二十八日

 医療法の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)

同月二十四日

 新たな患者負担増をやめ、窓口負担の大幅軽減を求めることに関する請願(牧義夫君紹介)(第三五二四号)

 同(重徳和彦君紹介)(第三五七五号)

 同(藤野保史君紹介)(第三五九七号)

 同(堀内照文君紹介)(第三六四〇号)

 安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員に関する請願(吉川元君紹介)(第三五二五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三六七四号)

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(斉藤和子君紹介)(第三五二六号)

 同(志位和夫君紹介)(第三六七六号)

 じん肺とアスベスト被害根絶を求めることに関する請願(吉川元君紹介)(第三五二七号)

 障害者福祉についての法制度の拡充に関する請願(坂本祐之輔君紹介)(第三五六一号)

 現下の雇用失業情勢を踏まえた労働行政体制の拡充・強化を目指すことに関する請願(畠山和也君紹介)(第三五六二号)

 同(辻元清美君紹介)(第三五七八号)

 全てのウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援とウイルス検診の推進に関する請願(寺田学君紹介)(第三五七六号)

 同(真山祐一君紹介)(第三五七七号)

 同(赤羽一嘉君紹介)(第三五八七号)

 同(大平喜信君紹介)(第三五九九号)

 同(小林史明君紹介)(第三六〇〇号)

 同(石田祝稔君紹介)(第三六一二号)

 同(中川俊直君紹介)(第三六七五号)

 国鉄年金の附帯決議の履行等に関する請願(藤野保史君紹介)(第三五九八号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(金子一義君紹介)(第三六一一号)

 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願(中村裕之君紹介)(第三六一三号)

 社会福祉法等の改正に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三六二九号)

 同(堀内照文君紹介)(第三六三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六七号)

 医療法の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、社会福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房公益法人行政担当室長岩田一彦君、総務省大臣官房審議官高野修一君、法務省大臣官房審議官金子修君、入国管理局長井上宏君、財務省財務総合政策研究所副所長高田潔君、厚生労働省医政局長二川一男君、雇用均等・児童家庭局長安藤よし子君、社会・援護局長鈴木俊彦君、老健局長三浦公嗣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島克仁君。

中島委員 民主党の中島克仁です。

 鼻風邪を引いてしまいまして、鼻声でちょっとお聞き苦しいかもしれませんが、御了解いただきたいと思います。医者の不養生かもしれません。

 本日は、随分間隔はあきましたが、社会福祉法等の一部を改正する法律案、参考人質疑を挟みまして二回目の質疑ということで、前回に引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。

 本改正案は、社会福祉法人の透明性の向上確保、また経営組織のガバナンス強化と、介護人材の確保のための体制整備、これが二本柱となっていると思います。一本目の柱であります経営組織のガバナンス強化、財務規律の強化など、社会福祉法人が一九五一年に創設をされて六十年余り、創設以来の大きな改革という内容となっております。

 過去の歴史の中で、社会福祉法人は言うまでもなく介護や保育、児童養護、高齢者、障害者福祉、我が国の社会福祉事業の基盤となって支えてきたわけでありますが、介護においては二〇〇〇年の介護保険の導入、障害者福祉においては自立支援法、今は総合支援法になりましたが、その導入によりまして措置から個人との契約へと変わり、またさらには少子高齢化、そういう時代背景の中で社会福祉法人を取り巻く状況も大きく変化をして、そのニーズの多様化また複雑化してきた中であります。

 昨今では、一部の社福の不適正な運営が指摘をされて、巨大な内部留保が存在するんじゃないかというような勝手な臆測がひとり歩きをして、社福はもうけ過ぎなどと国民の皆さんにあらぬ誤解を招いてしまっていることは、真面目に地域の公益性に資する社会福祉事業に取り組んでいる社福法人にとっては大変迷惑な話なのではないかなと。

 それで、今回の改革案というか改正案、その前提となります部分についてまず大臣にお尋ねをしたいわけですが、今回の社会福祉法人改革、改正案、その観点ですね。

 現在、環境変化の中で、先ほど言った一部の不適正な社福もあるという、あらぬ誤解というか、そういう状況の中で、今回の改正案が社福全体を厳しく取り締まるということではなくて、非常に真面目に地域の社会福祉事業に取り組んでいる社福をより評価する、そのための今回の改革だということでよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 結論的には、先生おっしゃっているとおりだというふうに思います。

 御指摘いただいたように、昨今、本当にいろいろな変化があって、福祉ニーズが多様化あるいは複雑化をしてきている。社会構造変化のもとでそうなっているわけでありまして、多くの社会福祉法人は、本当に苦労を重ねながら一生懸命やってこられているんだろうというふうに思います。

 公益性あるいは非営利性を備えた社会福祉法人の役割というのは、今後ともさらにその重要性は増してくるというふうに思っているわけで、今回の改革は、先生今御指摘のとおり、法人本来のあり方を徹底するという観点から制度を見直してルールを明確化する、ガバナンスを強化し、そしてまた適正な法人運営を行うことなどを求めて、再投下可能な財産の計画的な活用など、法人みずからが国民に対するいわゆる説明責任を果たしていくということがよりやりやすいようにしていこう、こんな発想ではないかというふうに思います。

 先生が御指摘になったとおり、地域における取り組みをより評価していくというためにもこの改革は資するのではないかというふうに思うわけであって、地域住民の信頼なくしてその地域での社会福祉法人の活動はあり得ませんので、そういった信頼回復のもとで、今後とも地域福祉の担い手としてしっかりと役割を担っていただこう、そういうための改革だというふうに思っております。

中島委員 大臣からお答えいただきましたが、この観点というのは非常に実は大事なところで、前提として大事だ、ただ、先ほど言った一部の不適正な社福がもうけ過ぎだと。これは、私も社会福祉法人にかかわっておりますので、本当に地域においても、社福はもうかるんじゃないのかとか、そういう勝手なあらぬ臆測の中で話をされることがあって、今回の社会福祉法人改革がそういうところを厳しく取り締まるんでしょうと言われることもあるわけであります。

 ただ、これはやはり、どの観点で今回の改革のベクトルがあるのかということは、しっかりと明確に土台としてあったもとに改革をされなければいけない。健全な法人をより評価する、そのためのものなんだということが非常に大前提として本当に強調すべきところなんじゃないかなというふうにも思いますし、各法人も、そのような前提のもとであれば、受け取り方もまた違ってくるのではないかというふうに思います。

 今回、評議員会の設置の義務化や財務諸表報告また公表、俗に内部留保と呼ばれるものが一体どのようなものなのかを明確にしていく、また、行政の関与の仕組みを明確にして全国的なデータベースを整理することによって、今後、統計等もしっかりと統一して管理されて分析もできるというふうに私も説明は受けておりますし、何度も言うようですが、より健全な、本当に地域の公益性に資する社会福祉事業に取り組んでいる法人をより評価していくという前提が非常に重要だということは指摘をさせていただきますし、そのようなことであれば、多少というか、この後質問していきますが、煩雑で煩わしい部分がたくさん今回入っているということですけれども、そのような観点で軸足があればむしろやってほしいという法人はあるのかな、私もそのような声を聞くわけであります。

 私個人としましては、先ほども言いましたように、介護でいけば介護保険の導入、障害者総合支援法の導入、本来であれば、社会環境の変化やそういったさまざまな社会福祉事業を取り巻く環境が変わった時点で、もっと早くやっておかなければいけなかったのかな、遅きに失した感は否めないのかなというふうには思います。

 ただ、一方で、今回の社福改革の中で、現状を把握するためのデータが余りにも少ない。例えば、介護、高齢者福祉、障害者福祉、児童養護、保育など、社福の事業は言うまでもなく多岐にわたるわけであります。

 これは資料の一枚目でありますが、社会福祉法人の事業別法人割合、全体の四〇%は児童福祉事業のみ、二〇%は老人福祉事業のみ、そして一〇%が障害者福祉事業のみ、単独となっています。複数事業は二五%程度というふうになっているわけであります。

 これは、言うまでもなく、それぞれの事業は随分性質や状況が異なると思います。また、保育、児童養護など単独事業所も数多くある中で、それぞれの事業の統計、特徴というのがやはりなかなか出てこないんです。現在のところ、それぞれの業種別での経営状態、実態統計などがない中で、社福全体として一まとめにこのような改革を行うことが本当にいいのかどうかということはやはり疑念はあるわけであります。だからこそ、今回のこういうたてつけが必要になるという言い方もできるのかもしれませんが。

 大臣にまた確認のお尋ねをいたします。現状の実態が細かく分析できているとは到底今、正直言えない状況だと思うわけですが、今回の改正、改革の政策効果を今後どのように判断されるおつもりでしょうか。

塩崎国務大臣 先生今御指摘ございましたように、やはり、社会福祉法人の活動というものをどういう物差しではかったらいいのかということが明確でない、つまり、法制度上のルールが例えば内部留保についてもなかったということで、事業運営の中で財務的な余裕が生じているのではないかということが議論になり、また、財政当局からは課税というような話も出てきたりしていたわけでありますけれども、やはり、財産の内容とか内訳とか使途に関する法制度上のルールがなかったことから、国民、地域住民に対する説明責任を十分果たし得なかったということ、それぞれが独自の努力をされていたという限界の中でやっていたのではないかというふうに思うわけであります。

 今回、これを改善すること、改革することによって、社会福祉法人が保有する例えば財産の内訳、内容について明確なルールを示すという中で、法律上で明らかにする仕組みのもとでそれらを明らかにできる。あるいは、財産についても、社会福祉法人のそもそもの本旨というか目的に即して、保有または再投下に係る法制度上の明確なルールを設けることを今回お示ししているということでございまして、先ほど申し上げたように、説明責任を社会福祉法人がきちっとできるという観点から必要な改革ではないのかなというふうに思っております。

 また、先ほど御指摘のように、社会福祉法人にはいろいろな事業種別あるいは事業規模の法人がある、お配りをいただいた資料でもわかるように。制度の運用に当たってこの多様性というものにも配慮をするということにしておりまして、特に、今からお話があろうかと思いますけれども、小規模法人の負担も考慮をし、改正法案に盛り込まれた全国的なデータベースを構築するに当たって、財務諸表等の統一的なフォーマットを配付する等により支援を行うこととしているわけであります。

 今回の制度改革において、社会福祉法人が保有する財産の内容、内訳を明らかにする仕組みを講ずるとともに、財産につきましては保有または再投下に係るルールを法律上で設けるということによって、社会福祉法人がその公益性、非営利性にふさわしい財務運営を行うことを促すということが今回の法律でできるのではないか、そして、その実態を把握し評価することが社会的にもできるようになるだろうということに期待をしているところでございます。

中島委員 明確なルールが今までなかった。なぜこれだけの長い期間そのようなことができていなかったのか、単純に疑問にも思うところであるわけです。

 そして今、私は、政策効果をどう判断するのかというお尋ねに対して、公益性であり非営利性を、財務諸表等、経営の透明性を図ることでこれをはっきりとさせていくんだということで、比較するものがないというか、それをまさにこれから始めるというところで、先ほど遅きに失したという言い方をしましたが、そういう意味では、先ほど冒頭にも言ったように、非常に健全に本当に地域の公益、社会福祉事業に取り組んでいる法人をまさに実証して、確認というか評価していくということが、ある意味これが政策効果なのか、それとも前提をこれからやることになるのかということだと思います。

 一方で、先ほど大臣からもお答えがあったように、さまざまな性質や特徴がある。そういったものがまじっている社福全体の中で、やはりこれはまだ今後しっかりと、どういうふうになっていくか、きょうの法案の採決もございますけれども、そういった中で、やはりできる限りそういう小規模事業所それぞれの特徴を、無理だからわからないではなくて、しっかりとこの間にも把握をするべく努力をしていただきたい。そして、各自治体が行っている監査やそういったものに対しても、共通のフォーマットづくり、業種別、しっかりと実態把握がなされるように、この間も随時実態分析を厚労省としてもしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 資料の二枚目ですが、これは法人の規模別であります。これは、退職手当共済制度加入割合で見たものですが、これで見ると、職員が百人未満の法人が約九割、二十人未満だと三七%、十人未満の法人も全体の約一割あるわけであります。

 今回の改正案で、理事等の義務と責任を法律上規定していると同時に、評議員会の義務化、これも取り入れられております。これは、理事、理事長に対する牽制機能を果たす目的とされておりますが、これについては、小規模事業所においては経過措置が設けられております。

 さらには、財務諸表、現況報告書などの規定の整備、運営の透明性確保のためのホームページを活用しての公表などが盛り込まれているわけですが、やはりこれは、小規模法人はただでさえ職員が少ない、余裕がないのが現状で、非常に負担が大きいのではないかということは、これもたびたび危惧されていることです。先ほども大臣からもございましたように、小規模事業所が非常に多い社福においてその負担は非常に大きい、そういうことが予想されます。その辺について十分な配慮をぜひお願いをしたいというふうに思います。

 同時に、一定規模以上の法人に対して、ガバナンス強化の目的で、会計監査人を配置するとされております。この範囲、収益が十億円以上または負債が二十億円以上の法人とされておりますが、これもちょっと確認ですけれども、この範囲に決めた根拠と、この範囲に当たる法人、全体のどのくらいあるんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生御指摘のありました会計監査人の設置を義務づける法人の規模でございますけれども、これは、具体的には今後政令で定めるということにいたしておりまして、政令で定めるまでの間、監査費用の負担能力でございますとか、あるいは監査の受け入れに係る事務体制、こういったものを考慮して、専門的な検討を経て決めたいと思っております。

 今、先生御指摘ございましたように、法案立案段階での審議会では、収益十億円以上、負債二十億円以上という一定の目安が議論されております。

 その具体的な根拠といたしましては、収益につきましては、複数以上の施設を運営する、したがって本部機能も有するような規模ということで、収益額十億円以上というめど、そしてまた、収益十億円以上の法人が返済可能なおおよその負債額ということで、負債額二十億円以上というような議論が行われたところでございます。

 こういった一定の線引きをいたしますと、それに該当する法人でございますが、社会福祉法人全体のおおむね一割程度が当たるのではないかというふうに考えているところでございます。

中島委員 私がいただいた資料というか報告では、一割に満たないぐらいだったというふうに思います。

 今回の改正の大きな目玉というか、社福改革のポイントであるガバナンス強化と、同時に、財務規律の強化、透明性の確保を図るという目的。そうであるならば、先ほども言った評議員会等、今回、義務化、経過措置もあるようではございますが、むしろ私、全ての法人に会計監査人を入れること。ただ、これはやはり小規模事業所には負担が大きいということになると思いますが、何かしらの外部監査のあり方、そしてシステムをつくっていく方が、小規模事業所で、例えば理事会があってその理事会の牽制機能を発揮するということですが、本来の理事会の役割が十分に保てれば何も評議員会が本当に必要なのか。理事会がしっかりしていないところは評議員会も、変な話をすれば、同じような組織になっちゃう可能性もあるわけです。

 もちろんコスト上の問題はあるにせよ、やはり、その本来の改革の趣旨であるガバナンス強化、透明性の確保等をするのであれば、例えば会計士さんを雇うには非常にコストがかかる、これを国が支援するのも負担がかかってしまうということであっても、やはりそこは、外部監査のあり方、財務会計にかかわる点検の仕組みというものをしっかりとつくること、これが本当に資することなのだと私は思うわけですが、大臣の御見解をお尋ねいたします。

塩崎国務大臣 今回、透明性、つまり、説明責任を果たすために透明性を高めるルールを設けるとか、それから財務についても法制上のルールを新たに設けることで透明なことをちゃんとお見せするということが大事で、今先生御指摘のように、法人の負担にも考慮をするということを私どもも気を使ってまいったところでございまして、具体的には、例えば財務諸表の公表についても、法人のホームページによる公表のほかに、所轄庁のホームページなどを利用して公表を行うということも可能だというふうになっているわけであります。

 先ほど局長から答弁申し上げたように、約一割のところがこれから会計監査人を置くということが義務づけられるわけでありますが、これも一定規模以上ということでそうなるわけであって、事務処理体制など法人の負担も考えると、全ての法人に義務づける必要はないのではないかという判断のもとでこういう形にしたわけであります。

 今先生御提案があったのは、この費用を国が支援したらどうだ、そして全ての法人に義務づけるということも考え得るんじゃないかというお考えかというふうに思いますが、今申し上げたように、法人の負担などを考慮して、今回のような形で、会計監査人の義務づけということに関しては、一割弱、つまり先ほどの、収益十億円以上、そして負債の額が二十億円以上ということにしたわけであります。もちろん、御自身でおやりになりたいというところは、それはまた何もとめるわけではありませんが。

 それと、先ほどの理事会と評議員会の関係は、言ってみれば、理事会は執行を担うわけで、評議員会はそれを監督するというその仕組みを、小さな法人に関しては例えば評議員を七人以上から四人以上とするということで、それを平成二十九年の施行後三年間はそのようにするというような配慮もしているところでございまして、それぞれ規模に応じた仕組みを考えたところでございます。

中島委員 資料の三枚目でございますが、これは新聞報道された主な社福にかかわる事案の概要というものです。

 これを見ていくと、利益供与の問題であったり財産の私物化等、非常に、確かにひどいなという事案も、これは平成二十六年度の事案、新聞報道されたものでありますが、やはり、今回の透明性、ガバナンス強化、もちろんそういっただけではなかなかこれは後を絶たない部分も出てくるんじゃないか。

 やはり一つ一つ個別に調査されるべき、その監査のあり方。資料の四枚目が、現状の社会福祉法人に対する指導監査についての流れであります。

 一般監査は、運営に大きな問題がない場合には四年に一回、通常は二年に一回ということでありますけれども、やはりこの監査のあり方、これは外部監査も含めてですけれども、こういうような事案が後を絶たないということであると、やはり社福に対するイメージはなかなか変わり得ないのかなという意味で、今御指摘をさせていただきました。

 ちょっと時間がないので質問を飛ばさせていただきます。

 そもそも、今回、やはり内部留保の問題、真面目に切り詰めて、精いっぱい切り詰めてやっと利益を生み出したものが、今回の法律改正案の中で余裕財産というふうに言われて、法人とすれば、いっそそういった努力をもうしない方がいいんじゃないかというような逆進性も働いてしまう可能性もある。

 そもそも、先ほども、前提となります部分で、社会福祉法人の使命というか、公益性や非営利性、それに基づいた地域の社会福祉事業に取り組むということが大前提になるわけですが、公益性を担保する財務規律とか、地域の実情によってこれは随分差があるんだ、これはもう言うまでもないわけでありますが。それぞれの地域の公益性というものをどう評価していくのが適切だと考えられるのか、大臣の御見解をお尋ねいたします。

塩崎国務大臣 地域地域によっていろいろなニーズがあるということは先生御指摘のとおりだろうと思います。

 その地域における需要を踏まえた事業を行うということが社福法人にとっては大事であって、今回の法案では、社会福祉充実計画で地域公益事業を記載する場合には、社会福祉法人は地域の意見を聞くこととしているわけでございます。それから、所轄庁においても、計画の承認に当たっては、地域の需要に照らして適切なものであることを確認するということを行うこととしたわけでございます。

 施行に当たって、先生御指摘の地域における実情を反映した公益性、これが実現をされるということが大事であるわけでございますので、その実情がしっかりと反映されるように、当局としても、また指導、周知をしていきたいというふうに思っているところでございます。

中島委員 今、地域の声を聞くということで大臣が答弁されましたが、この公益性の担保というのは非常に評価が難しい、これは言うまでもないんですね。

 例えば、私の地元山梨県で、長らく、NPO法人ですが、フードバンク事業、フードバンク山梨というのがございました。今もございます。それは「絆」再生事業でやられていたわけですが、この四月から施行されました生活困窮者自立支援法、これに伴って各自治体、委託に変わってきたわけですね。

 そういった事業の中で、これを請け負って、四月から始めた各自治体ではさまざまな委託のやり方があるわけでありますが、社協さんがやり始めたり、従来どおりフードバンク山梨が町村単位で委託を受けたりということで、例えばフードバンク事業、生活困窮者に対する宿泊支援であったりとか食料支援の問題、山梨県においてはフードバンク山梨が全域にわたって、今まで「絆」再生事業であったわけですが、しっかりと取り組んでいたわけです。

 それが今回、その制度自体がどうのというわけではないんですが、そういう状況の各自治体において、もちろん食料支援、これは、そういうものが全くない地域においては、当然、公益性、必要なもの、そういったところに社福が資するということになるわけですが、今回、地域の声を聞くといっても、やはり国の補助事業が上からおりてきたときに、なかなかそこを、地域の声を反映させた公益性、そこにしっかりと取り組む者をどう評価するか、これは大前提として非常に重要になるわけであります。

 完全民間や、先ほど言ったフードバンク山梨も含めて、従来しっかりとやっていた事業が、結果的には補助事業の変化によって社福にすげかわってしまうこともあったり、そうやっていくと、やはり地域の公益性をどう評価していくのかというのは非常に重要なポイントだというふうに思いますし、今回の改正案のみならず、社福がこれから先、こういう時代背景の中でどう目的を果たしていくのか、この辺はしっかりと、今後、地域地域とはいいながらも、やはり国の政策やその補助事業に引っ張られる部分があるわけですから、地域の声を聞くどういう仕組みをつくるのか、公益性とは一体何なのかということは明確にしていく努力が必要だということも指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 時間もないので、これはもう質問にはしませんが、もう一点。内部留保等の問題と同じように、介護事業においては、経営主体間のイコールフッティングの問題もたびたび指摘をされているわけです。

 デイサービスであれば、NPOがやっている、完全民間がやっているデイサービスと、社福が税制上の優遇を受けながらやっているということに対して、これは不公平じゃないかと。今回の改正案で、当然、社福が単独でデイサービスをやっているところはほとんどないわけです。一方ではグループホームをやっていたりとかショートステイをやっている、そういう地域への貢献度が高い事業とともにやることでイコールなんだというふうに私は理解をいたしましたが、それについての御見解と、もう一点、社協さん。

 私は、先日、社協さんで講演をさせていただきました。これからの介護サービス事業に求められるものというタイトルで講演をしたわけですが、これは本当にびっくりしたことですけれども、社協さんの職員から、我々はこれから先どういう方向性で介護事業に携わっていったらいいのか、大変問題意識を持っておられたんです。

 私なりの説明はしたんですが、そのイコールフッティングに対する大臣の考え方と、そして、社協さんが長い歴史の中で社会福祉事業を根差してきたことは前提として、これは私が質問をするというよりは社協の職員の方が大臣にぜひ聞いてほしいと。社協がこれから地域で果たすべき役割について、大臣の御見解をお尋ねして、質問を終わりたいと思います。

渡辺委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、大臣、簡潔に答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 イコールフッティング論がございましたが、経営実態調査をやる中で、法人形態によってニーズがいろいろあって、なおかつ経営実態もそれによってさまざまということでありますから、そこはよく見ていかないといけないということで、調査をしっかり私どもとしてもやっていかなきゃいけないというふうに思っております。

 今回の、公益的な取り組みを行う責務を創設するとか、あるいは計画的な再投下の仕組みを法的なルールのもとで社福にやっていただくとか、あるいは事業運営の透明性を確保するということを導入することによって、他の事業主体では困難な福祉ニーズに対応して地域に貢献するという法人本来の役割を明確化するとともに、公益性、非営利性にふさわしい財務規律が確立されて、他の事業主体とのイコールフッティング論にも応えることができるというふうにしていきたいと思っておりますし、社福自身が果たす役割をしっかりと説明していけるようにというふうに考えているところでございます。

 また、社協でございますけれども、これは、住民とかボランティア団体、民生委員、児童委員、あるいは社会福祉事業の経営者など、地域のさまざまな関係機関の参加、協力のもとで、地域福祉の推進を図るべき役割を担ういわゆる民間団体、社会福祉法人だというふうに位置づけられております。

 このために、社会福祉協議会は、地域全体の課題と社会資源の状況を適切に把握するとともに、関係機関との連携体制を構築する、それから低所得者に対する支援とか、あるいは認知症高齢者等に対する権利擁護など、民間事業者によるサービス提供が難しいニーズに対応するなど、地域福祉全体の底上げを図っていくという公益的な役割を果たすことが求められているのではないかというふうに思っているところでございます。

中島委員 質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民主党の阿部知子です。

 私は、今回の社会福祉法の改正、そもそも最も大きな問題点は何かということで、塩崎大臣に冒頭お伺いいたします。

 日本が江戸から明治へと時代を変えたときに、地域でさまざまな社会事業、社会福祉事業とは当時言わず、社会事業、社会的困難を抱えた方に対しての支援をするための事業が、おのおのの独自性というか、本当にさまざまな努力で行われてきて、それが、昭和恐慌の時代、昭和十三年に、社会が困窮するとともに、そうした事業を行っている皆さんもまた大変になるということで、社会事業法というのができました。

 敗戦を迎えて、GHQの占領下に、果たしてこの社会事業ということをどのように行うか。GHQは、国の責任で行えということを表明いたしました。ところが、我が国には当時それだけの余力がないというところから、昭和二十六年に、社会福祉事業法、ここに初めて社会福祉事業法という名で、今日言われている法改正に続くもとができるわけです。

 さらにまた、平成十二年に、社会福祉事業法、事業法であったものが社会福祉法に変わりました。

 このことにはいろいろな背景がありましたが、逆に言うと、その事業というものについて、きちんと、どういう位置にあり、国との関係はどうであるのかということが、私は今回の法改正で逆転するような危機感を覚えます。

 何かというと、自発性、そして大変努力していただいたこと、それに対して、内部留保が云々、あるいは新しい言葉で社会福祉充実残額云々、そういう形でそれを、簡単に言うと、たたき出せ、吐き出せというような形での事業計画を求めるということは、私は、社会福祉事業、もっと言えば社会事業の精神に反していると思っています。

 その点がこの法律の最も問題であり、地域でそれこそ真面目にもろもろ努力をしてこられた方たちから見れば、何だ国の対応はというふうに思うところであると思います。

 具体的な質問、一問目に参ります。

 そもそも、この法案の立法背景になっておりますいわゆる内部留保問題、これは、いわゆるということがついていることにも明らかなように、一体それは何であるのか、内部留保とは何であるのか、それはまだ未確定なものですよね。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 社会福祉法人の最大の特徴というか他の法人形態との差異は何かというと、やはり税の扱いというのが一番大きいと思います。

 国民の納税義務というのが各主体に課されているわけでありますが、その課税を免除するというにはやはりそれなりの理由がなければいけないし、それなりの説明のもとで活動内容が示されて、その上で課税を免除するという形がとられるんだろうというふうに思います。

 そういう中で、今までこのいわゆる内部留保という問題は、この言葉にあらわれているように、法律上確定した定義がないままに内部留保が指摘をされてきたりしたわけでありますので、このいわゆる内部留保については、調査研究においてもいろいろな意味で使われてきて、各方面から、あたかも社会福祉法人が余裕財産を持っているかのように受けとめられるところがあったというふうに思います。

 この点については、やはり正しい理解のもとに問題の解決を図っていくことが大事だというふうに思うわけでありますけれども、そのためには、何が正しいのか、何が正しい理解なのかということを定めていかなければいけないわけでありまして、そういうことになれば、保有する財産の内容とか内訳とかあるいはどういうふうに使うのかとか、法制度上のルールが必要になってくるわけであって、法人みずからが国民、地域住民に対する説明責任を制度上果たすことができないという今までの状態を脱しないといけない、こういうことだというふうに思っているわけでございます。

 今回は、今お話がございましたが、地方税に至るまで課税をされないということであれば、きちっと説明をしなきゃいけない、しかし、そのための、このいわゆる内部留保を含めて説明する手だてが定まっていなかったというところが最大の問題で、これを明確にしていこうということだというふうに私たちは考えております。

阿部委員 会計の透明化、明朗化だけであれば、立法措置というものが必要とはされないんだと思います。会計見直し、基準見直しでやられればいいわけで。

 ただしかし、この法律のていは、何を言っておるかというと、いわく、社会福祉充実残額等があれば、それを計画的に出しなさいと。これは、井坂さんの質問では、では、なかったらどうなるんですかと。そっちの手配はまるでないんですよね。あればと言うけれども、社会福祉事業をやるには、ない場合もあるし、事業運営に収支差益で赤字の場合もあるし。

 もし今大臣のおっしゃるようなことであれば、本来この法律の成り立ちは、社会福祉事業の抱えるもろもろの制約や困難に対して、あるいは場合によっては、ここで言う社会福祉充実残額などもあるかもしれません、そういうものについて、両方を見た法改正であるべきで、これはあたかも片一方の、余りがあったらこうしなさいねと。本当にそれでは、なかったらどうするんですかと、こういうふうに法立てがつくられれば、事業者は思って当然だと私は思います。

 大臣に改めて伺いますが、一枚目の私の資料を見ていただきまして、今回大騒ぎになっているところの、あれは特養の施設の三・一億円の発生源内部留保であると思いますが、この発生源内部留保、下の水色のところで言われている三・一億には、実はここの次期繰越活動収支差額、すなわち資産のところに入れ込まれている次期繰越活動収支差額というところには、減価償却費などもここに組み込まれていると認識していますが、大臣、いかがですか。

鈴木政府参考人 現行の制度の中身の解説でございますので、ちょっと補足をさせていただきます。

 先生御指摘のとおりでございまして、これは民間の研究機関が調査研究で出しました発生源内部留保の部分、青い点線で囲ってある三、四の部分には、今先生がおっしゃったような、いわゆる減価償却に当たる部分、将来の建てかえあるいは大規模修繕のために留保している資金が入っているわけでございます。

阿部委員 大臣は経済にお詳しいからわかると思いますが、建てかえのための減価償却を資産なんかに置かれたって、動かしようがないですよ。使えないお金ですよ。物は傷むし、古くなるし、建てかえなきゃいけないし。それをあたかも資産とみなして、あなた、こんなに資産があるでしょうと言われたって、全く実態把握にはなっていないんですね。

 そういういびつな視点から物事が分析されて事がスタートするということ自身がおかしいし、あえて厚生労働省に好意的に言えば、そうであるから明朗化して、それは違うんだと言いたいというお気持ちを酌んだとして、では、また担当局に伺います。

 この実在内部留保と発生源内部留保というのは、一体どのくらい差があるんでしょう。さっきの三・一億のところで比べて、よくデータに出てきますね。実在内部留保というと、どのくらいになりますか。お願いします。

鈴木政府参考人 今御指摘ございました発生源内部留保それから実在内部留保、これはいずれも現在の社会福祉法人の法律で決められております会計の仕組みを前提にいたしまして、その中から導き出せるものということで、それぞれ定義を置いて、民間の調査研究所が出したものであります。

 今お尋ねございました規模でございますけれども、これはこの資料にもございますけれども、当時、特別養護老人ホーム一施設当たりということで、法人全体ではありませんが、一施設当たりで発生源内部留保が平均三・一億円、実在内部留保が一・六億円というようなものが示されたところでございます。

阿部委員 同じ内部留保という言葉で二倍の差があるんですね。それをもとに一体どんな法体系をつくろうというのかということなんだと思います。

 さらに、実は今の内部留保のお話は、基本的にはストック、資産の部分であり、事業のフローというところをきちんと押さえていないと私は思います。中島さんも社会福祉法人をやっておられるし、私もかつて病院を運営していましたが、やはりフローの部分とストックの部分と両見合いしないと、事業というのは先の見通しもつかないものだと思います。

 フロー、すなわち事業の部分に目をやれば、恐縮ですが、大臣のお手元の資料の三枚目を見ていただけますでしょうか。これは障害福祉サービス系の経営調査結果、厚生労働省がなさったものから拝借をいたしてつくってみましたが、例えばこれで見ますと、大体どこも給与費が六割から七割。人件費が六割から七割で事業を運営する、これがいかに事業体として大変なことか。差益というか利益を出しづらい構造なんですね。固定費ですし、給与費というのは。

 大臣、今後、いろいろ内部留保について数値を定めてやっていくとおっしゃいますが、事業のフローを見ないと、果たしてどのようにその事業体が運営されていくかはわかりませんし、その重要性について大臣の御認識を伺います。

塩崎国務大臣 先ほど来、いわゆる内部留保の定義の問題についての御疑問を今提示いただいていますのと、事業を運営していく際のフローの出入りの中での大変さということについてもお話がございました。

 今回初めて、こういう内部留保について、純資産額から控除対象財産ということで、例えば、社会福祉法に基づく事業に活用している不動産など、あるいは再生産に必要な財産、先ほど償却の話がありましたけれども、まさに再生産をするために償却も積んでいかないといけないわけでありますから、積み立てをしていかなきゃいかぬ。あるいは必要な運転資金も、これは現金ベースで積んでおかないといけないというようなことがあります。

 それらはフローで見ればどういう形でたまるのかといえば、フローの中での出入りの差額としてたまっていくわけであって、それが何で成り立っているかというと、先生今御指摘のように、人件費がやはり一番多い。お配りをいただいているものでも、六割強というのはこれは障害者の場合ですが、高齢者の場合にはもう少し低いようでありますけれども、これは、不当にそこを抑えれば、今度は内部留保に最終的に残ってくるというようなこともありますので、そこのところをはっきりさせるためにも透明性が大事だということを申し上げているわけで、今回もそこのところのルールもはっきりしようということであるわけであります。

 先生御指摘になっている点の、フローの、特に人件費の中でどれだけ苦労されているのかということの認識についてはそのとおりだと思いますが、私どもは、さっき中島先生の御質問の中でも申し上げたように、もともと多くの先では、それこそ場所によってはかなり厳しい運営の中で社会福祉法人としての活動を続けているわけでありまして、中に、今回、いわゆる社会福祉充実残額と呼ばなければいけない、控除対象財産を除いた資産のたまりというか、そういうものがあるということは、やはり社会福祉法人は税の恩典がある以上、そこのところに本旨に合った使い方をしてもらっていくことが大事だということを申し上げているわけで、それは、どういうフローの中で内部留保がたまっていくのかというのはそれぞれのケースだろうというふうに思います。

阿部委員 今の大臣の御答弁ですけれども、平成十二年に社会福祉事業法が社会福祉法に変わってから、私は、事業についてきちんとフローを押さえたような調査は本当に少ないと思います。

 大臣にさっき私が示しました三枚目を見ていただくと、障害児施設では、フローは、平成二十年などは収支差がマイナスになっております。人件費率が七六・四%だったら、もう収支はマイナスになりますね。これは経験則ですから。

 今回の改正が、事業ということ、事業特性ということ、そこにきちんと着目をしないと、減価償却で積んでいるお金まで資産とみなして内部留保云々と言っていても、身動きがとれない法人が多数出てきますし、何度も申しますが、大臣は、内部留保を含んだ残高、社会福祉充実残額があれば再投資しなさいというふうにおっしゃいますが、その前に、事業全体を見て、一体どのくらいフローの部分でもマイナスが立ったり困難があるかということを見るべきでありまして、その点を大臣、まず明確に答弁してください。今回の改正は、私はそこが一番欠けていると思います。

塩崎国務大臣 これは先ほど来何度も答弁申し上げているように、説明責任を果たすための透明性を確保するということが今回の一つの大きなルールの定めで、したがって、ホームページないしは所轄庁のホームページで財務諸表を明確にする。つまり、それは、フローとストックと両方を明らかにするというのが財務諸表の常識でございます。したがって、経営実態については調査を、先ほど申し上げたように、丁寧に図っていく。

 先生御指摘のように、フローについての調査が少ないんじゃないかというお話がありましたが、これは、報酬改定をする際には、しっかりそういうところもふだん以上によく見ながら判断をして報酬を決めていくということをしなきゃいけないので、それは、事業主体別に、社会福祉法人か、あるいは営利法人がやっているか、それらによってもいろいろ異なってくるわけでありますので、先生御指摘の、今、フローについてもちゃんと把握するようにしなければならないということはそのとおりであって、そのようにやっていきます。

 また、今回、評議員会を明確に定めていくのも、その監督、執行がちゃんと拮抗して、より透明でよりよい経営がなされるようにしていくための評議員会の決定機関化ということを図っているわけでございます。

阿部委員 引き続いて、ちょっと間の質問を飛ばさせていただいて、今、人件費の問題を取り上げましたので、福祉施設等々、社会福祉法人で働く職員の待遇問題を先にやらせていただきます。

 今回の法改正で、障害分野の福祉職員等退職金共済制度への公的助成が廃止をされることになります。今の大臣の御答弁でも、人件費の問題がフローの中で極めて重要で、そこが収支差益にも反映してくるということを共通理解していただきましたので、私は、今回の福祉職員等退職金共済制度への公的助成廃止は大きな過ちであると思います。

 資料を見ていただきまして、終わりから二枚目、大変細かい字で恐縮ですが、資料の六というところを見ていただきたいと思います。

 平成十八年に介護職員の共済制度への公的助成は打ち切られました。そのときは、介護保険等々との兼ね合い等、その後、いろいろな加算、特に介護福祉職員の待遇改善加算などもあったこともあるやもしれませんが、十八年で打ち切られた。

 今回、福祉分野で打ち切ろうということの背景に、民間事業者と社福との法人比率がほぼイコール、障害福祉分野でサービス提供をする社会福祉法人と株式会社の数がイコールになったから、福祉分野の職員の退職加算もやめていいだろうというふうに御説明がされています。もう一つは、障害者制度がそれなりの落ちつきを見せたからということです。

 この細かい表は何かといいますと、では、どんな事業分野にいわゆる株式会社が、営利法人が参入しているか、どんな事業分野を社会福祉法人がやっているかということがより詳細に区分けされるためのものであります。

 平成二十二年を見ていただきまして、さらに二十四年と比較していただきたいのですが、この中で、とりわけ営利法人がふえましたのは、居宅介護事業、重度訪問介護事業などの居宅系であります。

 例えば、平成二十二年で営利法人六千七百三十、平成二十四年、わずか二年間で一万二千五百八十五。重度訪問介護事業も同様で、平成二十二年六千百十二、そして、重度訪問介護事業の二十四年が一万一千九百五十。すなわち、二年間で二倍に数をふやしている営利法人が主にやっている事業は、居宅系のこの二つ。

 さらに、下の方に移っていただきまして、デイサービス事業、これが、平成二十二年で二百六件、平成二十四年で八百十一件、四倍にふえております。あるいは、就労支援のA型、これが、八十件からふえまして五百十二件。

 すなわち、営利が入っている事業の分野はほぼこの四つに限られており、そこがふえておるわけです。施設で働く福祉職員の退職時の共済加入に公的補助がなくなることの根拠にはならない。事業形態が違うのです。

 民間が入りやすい事業、それは撤退しやすい事業でもあります。ところが、重度の障害のある子がいる施設、あるいはある者がいる施設、ここは、事業から手を引くこともできず、しかし質のよい職員を確保しなければならず、退職金においてさらに事業体が積み立てていかねばならない負担というのは極めて過大です。

 違う事業におのおの参入しています。何がイコールフッティングなのですか。イコールフッティングとは何でしょう。大臣。

塩崎国務大臣 今回、社会福祉施設職員等退職手当共済制度を見直すということにしているわけでありますけれども、職員処遇の向上に今重要な役割をこの制度自体は果たしていることには変わりはないわけであって、今後とも制度を安定的に運営して維持していくことが必要だというふうに我々はまず考えているところであります。

 また、この共済制度は、基本的には社会福祉法人のみを対象とし、公費助成を行うことにより運営をする制度として創設をされているわけですけれども、この間、措置から契約への移行とか、多様な事業主体の参入とか、福祉サービスの供給のあり方が大きく変化をしてきたわけでございます。他の事業主体との、今お話がありましたイコールフッティングが求められている。

 前回、十八年の際には介護関係施設、事業についての公費助成を廃止したわけでありますけれども、当時は、障害者関係施設、事業の公費助成をどうするかという議論があった際に、障害者関係施設に係る制度移行がまだ途上であったということ、それから、介護関係施設、事業のようにはまだ、今先生御指摘のように、最近特に民間の営利企業もたくさん入ってくるようになってきたこの障害関係のサービスであるわけでございますけれども、他の経営主体との関係が十八年当時はまだまだ少なかったということもあって、そういうことで見送ったわけであります。

 今回は、かなり全体として見ると多様な事業主体が入ってきているということで、社会福祉法人以外の事業主体の参入を見届け、なおかつ、社会福祉法人の経営がほとんどである障害者支援施設での例えば夜間ケアも、営利法人など他の事業主体が相当の割合になっている生活介護あるいは就労移行、就労継続支援などの日中活動事業と一体的に実施をされている点も考慮をする必要があるというようなことから、今回、公費助成を見直すべきではないんだろうかということを申し上げているところでございます。

阿部委員 大臣、今私が説明しただけでは、私の趣旨がよくおわかりにならなかったと思うんですよ。福祉の一種というのは社会福祉法人しかできなくて、主に施設入所系の仕事ですね。最近、株式会社が入ってきているのは、訪問で、在宅で居宅介護とか重度訪問介護事業で、この居宅というか、そちらと施設系とはやはりおのずと労働の質も違うし、そして、逆に言うと、いい職員を、長期的に継続的にいてもらわなければ困るという問題が、私は実態が違うと思うんですね。

 大臣、最近、精神障害の方の入所施設やあるいは重度の障害者施設で、いわゆる虐待問題が大変深刻になって起きていますよね。そうすると、そこで一番大事なことは、いい職員を、利用者さんとの関係もよくしながら質を上げていくことなんですね。私は、この改正によって特に施設系の職員が補充できなくなる、正直言うと今でも大変なんです。

 この退職金の問題だけじゃなくて、もちろん賃金もありますよ。でも、退職金共済がこれで公費助成がなくなると、運営事業体は一人につき約十四万円くらいの負担増になるわけです、退職金を積み立てていくのに。ただでも施設系が大変だ、いい職員が確保できない、だから、今回の公費助成の打ち切りというのは余りにも事業実態を見ていない。民間事業者が入ってきた分野と、従来の第一種としてやっている分野は違うということなんですね。

 そこを見ないで乱暴に打ち切っていって、本当に私はそれが立法背景があるんだろうかと思います。この間の厚生労働省のやり方は大変乱暴です。その大きな理由は、事業を見ていないからですね。

 大臣がおっしゃった、介護職員の実態が、打ち切られたことによってどのように変わったかというのが、最後の私の資料です。見ていただきたいですが、平成十七年、ここはいわゆる特定介護保険施設等という区分がないための数字なので少し違いますが、十八年から二十六年まで、いわゆる共済に入る方の数というのは、介護職員、どんどん減ってきているんです。おわかりでしょうか。

 すなわち、介護福祉をやっている事業者が自己負担で共済に入るということが少なくなっているのではないかと私は思います。結果、何が起こるかというと、長期の退職時まで見越した労働力としてではなく、パート、アルバイトなどの形で補充していくことになります。

 この平成十八年から二十六年までの、いわゆる特定介護保険施設等職員数の推移で、これは退職手当共済法上に算定されたものですが、もちろん退職していく人がいるから減ってはいくかもしれません。でも、施設が自分の雇った職員をみんな共済に自前の負担で入れておれば、この数は減らないと思います。大臣は、これはどう見られますか。

塩崎国務大臣 先生、資料をお配りいただきましたように、この共済制度に加入をいたします介護関係施設、事業の職員数、これは、制度改正前の平成十七年の二十八万七千五百四十四人に対して、平成二十六年が二十五万三百四十五人ということで、三万七千百九十九人減っているというふうになっていることはそのとおりだと思います。

 この減少はなぜなのかということでありますけれども、公費助成が維持されている制度改正時の既に加入をされていた方々が、今先生から御指摘もありました退職によって減少するとともに、法人経営者が退職金制度を他の制度も含めて選択した結果、この共済制度の新規加入者が減少したというところもあるわけでございます。

 また、補充に関しては、先生御指摘のように、確かにこの制度のままでいこうと思えば変わってくるわけですけれども、今回、既に加入されている方は引き続き公費助成は維持をすることになっていることは申し添えておきたいと思います。

 なお、介護関係施設、事業に係る新規加入職員数というのは、平成十九年度以降、毎年度約二万五千人から約二万八千人の規模で、介護関係施設、事業の加入職員数は約二十五万人でそれぞれ推移しておりまして、公費助成の廃止後も社会福祉施設職員等退職手当共済制度が引き続き選択をされている実態があるわけであります。

 それから、社会福祉法人が、営利法人がやっているデイサービスとかそういうようなものも同時にやっているということもかなり進んできているわけでありまして、そういう際に、やはりイコールフッティングをどう考えるのかということも同時に考えなきゃいけないということと、やはり処遇改善について、つまり人材を確保する、それについては報酬体系の見直しの中でも考えていくということを我々は処遇改善加算などで手を打っているわけでございまして、それが十分とはもちろんまだ言い切れるとは思いませんけれども、できる限りそちらの方向でいこうというふうになっているわけでございます。

 人材確保は先生御指摘のとおりとても大事であって、ではそれをどうやってやっていくのかということは、それは絶えず考えていかなければならないというふうに思うところでございます。

阿部委員 今の大臣のお答えは、要約すると二点あったと思います。退職金問題について、他の制度を利用しているのではないか、あるいは、介護保険ですので、営利も一部事業体が手を出してそこでもやっているのではないかと。後段は別にこの職員数の増減ということには余り影響いたしませんので、前段おっしゃった、他の退職制度なんて本当にあるんでしょうか。私はこれはきのうもレクのとき伺いましたが、本当にそんな調査をしているんでしょうか。

 私が一番懸念するのは、正規の職員としてではなくて、不安定な身分になって、退職時の処遇もないというふうになっていったのでは、ますます、介護ですら、介護は大臣もおっしゃったように一部営利化しているところもあります。それですら身分は不安定になるのに、先ほどの障害関連施設でいえば、特に一種の入所施設等々の職員の補充もままならないし、私は、極めて深刻な、本当に一方で虐待は起きる、職員の待遇は悪い、そういう状況に日本の福祉を置くことになると思います。

 大臣、これから、共済への補助を打ち切ってから考えるのでは遅いのです。その途端、そこが新しい職員を補充できなくなるかもしれません。既に今でも入所系施設はそれが非常に困難だと言われています。そこの御認識はおありですか。最後にお願いします。

渡辺委員長 既に申し合わせの時間が経過しておりますので、大臣、簡単に答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 十八年の改正の際にも、新規採用職員を共済制度にさせたかどうかということについても動向調査を行ったわけでございます。その際、いわゆる中退共、中小企業退職金共済制度に加入するとか、あるいはその他の県の退職共済会などに加入をするとか、法人内部で退職金準備金として積み立てるなどの対応を講ずるということとしておりまして、各法人において経営状況等を踏まえて適切な制度等が選択をされていると考えておるとともに、今回も前回改正時と同様に調査を実施するというふうに考えているところでございます。

阿部委員 事が後では、私は違うと思います。

 終わらせていただきます。

渡辺委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 それでは、質問をさせていただきます。

 きょうは、社会福祉法等の一部を改正する法律案が議題でありますが、お手元にお配りをさせていただいていますように、これは厚生労働省が法案説明で配っているペーパーです。今回、財務規律の強化が一つの柱になっていて、いわゆる内部留保の明確化というのをうたっています。

 今回、法律用語として内部留保という言葉は出てきてはおりませんし、法律用語としては、かぎ括弧つきで「社会福祉充実残額」、こういう書き方にはなっていますが、内部留保という考え方を、今回の法律で示しているような、「当該会計年度の前会計年度に係る貸借対照表の資産の部に計上した額から負債の部に計上した額を控除して得た額」、そして、この額が、次に言う、「基準日において現に行つている事業を継続するために必要な財産の額として厚生労働省令で定めるところにより算定した額」、五十五条の二の一号、二号でありますけれども、これを上回った金額について内部留保と考えるという厚生労働省のこの考え方、私は、政府の中ではこれは統一的な見解になっていないんじゃないかと思うんです。

 きょうは、内部留保という概念を持ち得る役所の方々にお越しをいただいていますが、それぞれ、このような考え方でいいという御理解か、お答えをいただきたいと思います。

金子政府参考人 私からは、法務省の所管する会社法と、それから一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、この二つの法律における法人に関してお答えいたします。

 内部留保という文言は、いずれの法律におきましても、法律の条文上は用いられておりません。講学上の概念であるため、その定義が厳密に決まっているわけではございませんが、一般的には、法人に蓄積された利益ということを指して用いられることがございます。

 一番典型的な法人である株式会社について具体的にお答えしますと、内部留保の文言は、貸借対照表上の純資産の部の利益剰余金、もう少し詳しく言いますと、利益準備金とその他の利益剰余金の合計額を指して用いられるのが一般であるようでございます。

岩田政府参考人 お答え申し上げます。

 私からは、公益法人に関する内部留保ということでお答えさせていただきます。

 公益法人改革につきまして、御存じのとおり、いわゆる内部留保についてさまざま議論がございました。その議論を踏まえまして、平成十八年に成立いたしました公益認定法におきましては、内部留保という文言はございませんけれども、遊休財産に関する規制という形で規定が設けられてございます。

 具体的には、公益法人が保有しております財産というものは、公益法人の存在意義であります公益目的事業にきちんと使っていただきたい、最大限有効に使っていただきたいということを確保するという観点から、遊休財産の額が当該法人の公益目的事業の一年分の支出を上回るものではないことということを公益法人の認定及び監督の基準として設けているところでございます。

高野政府参考人 お答えをいたします。

 私からは、独立行政法人についてお答えを申し上げます。

 独立行政法人は、非営利の法人ということでは公益法人や社会福祉法人と共通の部分がございますが、社会福祉法人等とは異なりまして、法律に基づき政府が設立をいたします公的な法人ということでございます。

 その独立行政法人でございますけれども、独立行政法人通則法及び各個別法に基づきまして、公共上の事務等を実施する公的な法人でございます。このため、貸借対照表上の純資産の部の積立金につきましても、主務大臣の認可を受けた公的な業務に用いるというふうに使途が制限されてございます。

 したがいまして、お尋ねのいわゆる内部留保に当たるものはないというふうに考えてございまして、そのような定義も置かれてございません。

 以上でございます。

高田政府参考人 お答えいたします。

 財務省は、法人企業統計を所管しております。民間企業の内部留保のデータとしては、財務省の法人企業統計年次別調査による利益剰余金が用いられることが多いと理解しております。

岡本(充)委員 ということで、みんな、利益剰余金の話はあるんですけれども、二にある、基準日において現に行っている事業を継続するために必要な財産の額というのを計算して、それをもとにして内部留保を出している役所があるならば答弁をいただきたいと思うし、ないのであれば手を挙げなくて結構です。

 ということで、誰も手を挙げないんです。

 つまり、何で厚生労働省だけ、この、基準日において現に行っている事業を継続するために必要な財産の額として厚生労働省令で定める額、五十五条の二の第二号を入れているのか。統一されていないじゃないか。何でこれで閣議決定されるのか。おかしくないですか。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 ざっくり言えば、事業を継続してもらうということがその地域地域の社会福祉ニーズに応ずるためには必要なわけであって、そのために、今回、純資産から控除対象財産、これは内訳はまた定義をされておりますけれども、それを差っ引いた額を社会福祉充実残額ということにしているわけであります。

 内部留保の概念について、今まで一般的な定義がなかったということが問題でありますが、今各省からお話があったように、政策目的に応じて定義をすることが可能だということが今は導き出せる結論なのかなというふうに私は聞いていて思ったところでございまして、私どもはそれを今やっているということです。

 いわゆる内部留保については、社会福祉法人について、社会福祉法人が事業運営の中で財務的な余裕を生じさせているのではないかという問題意識も数々指摘があったわけでありますので、今回、いわゆる内部留保の内容、内訳を明らかにするために、今申し上げた、貸借対照表上の純資産の額をもとに、その額から社会福祉法人が現在の事業を継続するために必要な財産額を控除するということによって再投下可能な財産額を明確化したということであり、また、再投下可能な財産がある場合には、社会福祉充実計画を策定して、計画的に社会福祉事業の拡充等に活用することを義務づけるということにして、この社会福祉法人という、法律でつくった法人の目的に合致した政策に使ってほしいということを示しているところでございます。

岡本(充)委員 それは答弁になっていないですよ、大臣。

 何で現に行っている事業を継続するために必要な額を見合いとして見るのか、それを聞いているんです。

 では、会社は継続して事業をやらなくていいんですか。大臣、こっちを見て話を聞いてください。いいんですか。そういうわけじゃないでしょう。やはり、みんな、現に継続して事業をやっていかなきゃいけないんです。それをあえてこうやって、言い方は悪いですけれども、統一していない見解を厚生労働省が持ってきているという、その理由が私にはわからない。時間がないので向こうに余り聞けないですけれども、それぞれきょうお越しになっている方にむしろ逆に聞きたい。

 何で、この五十五条の二の二号に当たるような規定を、会社法や、また公益法人、こういったところは見合いとして見ていないのか。それについて、厚生労働省はどのように今回他省庁と協議をしてこれを定めたんですか。その協議について少し説明してください。

鈴木政府参考人 まず、先生、内部留保について各省にお聞きをいただいておりますが、先ほど言及がございました今回の法案の五十五条の二の一項一号、二号でございますけれども、各省からお答えになりました、各省が把握しているあるいは概念をしているいわゆる内部留保でお答えになった中身は、この法案で申し上げれば、五十五条の二の一項の一号に該当する額の部分をそれぞれおっしゃったんだろうと思っております。

 したがって、いわゆる内部留保というものは何かということを、同じようなお問いかけをいただければ、この社会福祉法人の制度におきましては、五十五条の二の一項一号の額であるというふうに、この法案を提出した時点では認識しているというお答えになると思います。

 その上で、なぜ、二号というものを今回新たに定立して、その差額を社会福祉充実残額ということで明らかにしなければならなかったかということでございますけれども、これは、先ほど来大臣が御答弁申し上げておりますように、社会福祉法人が事業を継続していく中で利益が発生いたします。これ自体はどんな事業体にも発生するわけでございますけれども、その集積であるところのストックについて、その内訳を明らかにするルールがなかった。そのルールがなかった上に、そのストックにつきまして、使途についてのルールもなかった。それが原因といたしまして、世の中で、社会福祉法人が不要な財産をため込んでいるのではないかという誤解を生じさせてしまった。

 こういう事態に対しまして、この事態は恐らく社会福祉法人特有の事態であろうというふうに私は存じ上げておりますけれども、これに対しまして、立法的な解決手段として今回御提案申し上げましたのが五十五条の二、一項一号、二号のスキームであるというふうに御理解を賜ればと思います。

岡本(充)委員 であれば、局長、皆さんに配ったこのペーパーは、「内部留保の明確化」、そして「社会福祉事業等への計画的な再投資」じゃないんですよ。これは、内部留保を明確化して、内部留保を投資するんじゃないんですよ、内部留保からさらに除した額を再投下するんです。だから、この書き方はおかしいんじゃないですか。

鈴木政府参考人 この説明資料、先生から御提出いただきましたものの記述の組み立てでございますけれども、これは、先ほど申し上げましたように、世の中で、いわゆる内部留保を社会福祉法人が非常にため込んでいるのではないかということで問題になりましたので、その問題に対する答えだということで、この一番の(3)の見出しのところには、「いわゆる内部留保の明確化」ということで書かせていただいた。その上で、具体的に法案でやりましたこと、これを下の白丸三つで書いてございますけれども、その中で特に該当部分、二つ目の丸でございますが、ここにございますように、社会福祉充実残額、括弧、括弧、の明確化ということで、法案で具体的にやった中身はこの五十五条の二の一項一号、二号のスキームである、こういった説明の資料になっておりますので、その点につきまして御理解を賜りたいというふうに思います。

岡本(充)委員 見出しは、でもそうなっていないんですよ。センセーショナルに書いてわあっと、これをやりましたと言われているけれども、やはりこれは、本来は正確に書くべきだったし、内部留保という概念をどういうふうに決めるかというのは政府で統一見解をつくっておかなきゃいけないと私は思いますよ。大臣、それはいかがですか。

塩崎国務大臣 確かに、やや誤解を招くかもわからないということを今先生の御指摘を聞いていて思ったところでありまして、内部留保を明確化するということについては、間違いなく、今までルールがなかったので、物差しがなくて、何を内部留保と言っているのかわからないままに批判があったりした、そのことについてはやはり明確化すること自体は正しいんだろうと思います。

 しかし、一方で、その内部留保の中に今の事業を継続していくために必要なものも入っちゃっている。それは例えば、さっきお話が出ました、阿部先生から出てきた減価償却とかそういうような、事業の遂行に必ず将来必要だというものについては、これはやはりこれで必要なので、これも今すぐ再投資せいということを言っているわけではなくて、ここのところは、中ポチでありますけれども、「いわゆる内部留保の明確化」、それ自体は正しい表現だと思いますが、「社会福祉事業等への計画的な再投資」が、あたかもこの内部留保を投資せいというかのようにもとれるかもわからないということを今先生御指摘になったとおりなので、それはそうではないということで、我々は、いわゆる純資産、そこから基本金とか国庫補助金等の特別積立金とか、そういうものを引いた、いわゆる内部留保だけれども、そこからさらに必要な控除対象財産を引いて残ったものについては、この社会福祉法人の目的に合致した使途に使うべき、つまり、それが社会福祉充実残額として定義をされるという、定義を申し上げているということに私たちは注意をしなければいけないと思います。

岡本(充)委員 各省庁としっかりそこはすり合わせをして、これから内部留保を明確化していく上で、この次の法改正もきっとあるでしょう、そういうときにもやはりしっかりすり合わせはしなきゃいけないと思いますよ。

 その上で、五十五条の二について、もう少し細かな条文の中について聞きたいと思います。

 この条文の中では、「当該会計年度の前会計年度の末日において現に行つている社会福祉事業若しくは公益事業の充実又は既存事業以外の社会福祉事業若しくは公益事業の実施に関する計画」を社会福祉充実計画として出せと言っています。作成しろと。

 これは、期間は具体的にどれだけを想定しているんですか。

鈴木政府参考人 今御指摘ございました、法案の五十五条の二第三項の計画の期間でございますけれども、これは、具体的には、それぞれの法人によってこの射程に置く期間が異なってくるだろうというふうに考えております。したがって、この法律上は、何年でなければならないという期限の期間は置いていないところでございます。

 その理由は、この社会福祉充実残額の状況でございますけれども、これは、各法人の運営状況、財務状況によってさまざまでございますので、非常に少額な部分から、あるいはゼロの法人から、非常に多額な法人までございます。そういった社会福祉充実残額と、それから、それを投下する地域のいろいろな福祉ニーズ、その状況に応じてこの使途に係る計画の期間というのが決まってまいりますので、これをあらかじめ法律において何年といったような期間は置いていないというふうに御理解を賜りたいと思います。

岡本(充)委員 合理的に考えてどのぐらいを想定しているのかということを問うているんですが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 これは、押しなべて平均というその御議論が適切かどうかというと、必ずしも適切ではないのではないかと思います。

 繰り返しになりますけれども、法人ごとに、社会福祉充実残額がゼロの法人もございますれば、あるいは非常に多額に上る法人もあるかもしれません。それが変数の第一項目めでございますが、二項目めの変数としては、その法人が所在する地域の福祉ニーズの状況、非常に例えば待機老人が多い、あるいは待機児童が多いといったことで、非常に急速にいろいろな福祉サービスの拡充が求められる地域と、それからある程度充足をしているような地域、また、サービスに投下すべき対象期間が変わってくるということもございますので、これは、そういった概念のもとでの計画だということで御理解を賜りたいと思います。

岡本(充)委員 これは、大臣、おかしいなと思うのが、五十五条の二の最後にこう書いてあるんです。「ただし、当該会計年度前の会計年度において作成した第十一項に規定する承認社会福祉充実計画の実施期間中は、この限りではない。」と言って、五十五条の二が適用されなくなる。

 これは、実施期間がどれだけでも長くできるという話になったら、結局、この五十五条の二がきいてこない期間がすごく長くなる、こういう理解になっちゃうんですよ。だから、これはやはり、合理的な期間はこのくらいだというのをあらかじめ示しておくべきじゃないか、こう思うんですけれども、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 今回、新たにいわゆる社会福祉充実計画というものをつくるということで、このプロセスもきちっと、計画を住民の意見を聞いた上でつくって、それから意見聴取を公認会計士等から行って、評議員会での承認を得て、所轄庁の承認を得る、計画に沿った事業を実施するということであるわけでありまして、今先生からお話があった、もう既にある計画との関係については、このところはしっかり整合性を持っていかなければいけないということを、今御指摘を受けて思ったところでございます。

岡本(充)委員 それは、大臣、答えていないです。これでは、計画が、結局、五十五条の二がきかない期間が幾らでも設定できるということですよ。それでいいんですか。やはり合理的な期間を示せと言っているんです。大臣です。

鈴木政府参考人 まず補足をさせていただきます。

 先生の御指摘は、法人が恣意的にこの計画期間を定めた場合はどうするんだ、そうした場合にこの五十五条の二がきかなくなるではないかという御指摘だと思います。

 したがって、そこの部分につきましては、所轄庁の承認に係らしめているところが機能するということでございます。その所轄庁の承認につきましても、私ども、当然、具体的なガイドライン、これをきちんと決めてまいらなければならない、それによって、例えば、そんな法人は余りないと思いますけれども、恣意的に、いたずらにこの期間を延ばすような法人が出てくることを防がなきゃいけないと思っています。

 ただ、その基準をつくる上で、繰り返しになりますけれども、具体的に何年といったような数字でもった年限というのはなかなかこの計画上なじみにくいのではないか。したがって、この期間の考え方についてきちんと明確なガイドラインをつくって、それに基づいて所轄庁が適正に承認ができる、それによって先生御指摘のような事態が防げる、こういうことをきちんと実行してまいりたいというふうに考えております。

塩崎国務大臣 今局長からも答弁あったように、不合理な、非現実的な期間を定めて社会福祉充実計画をつくった、もう実施してしまっているというようなことがあってはならないわけでありますから、それがどのくらいの期間を定めるべきかということについては、この法律成立後にしっかりと審議会で諮っていただかなければいけないなというふうに思っております。

岡本(充)委員 計画を出しなさいと命ずるわけですから、合理的な期間は大体このくらいだというのは、それはやはり示すべきです。それを決めていなかったというのは、やはりこの法律は詰まっていないんじゃないかと思わせるわけです。

 続いて、同じく条文。この計画を充実させるためには、「当該会計年度の前会計年度の末日において現に行つている」という、つまり、前会計年度の末日に行っている事業に付加しなさい、もしくは充実しなさいという話です。

 前日に、この一日に限ってしまうと、この一日の事業が少なければ、当然、現状の事業、その前々日の事業と同じものを出したって、この法律上、充実したと言えちゃうんですよ。何でこの末日一日に限ったのか。

鈴木政府参考人 これは「末日において現に行つている社会福祉事業若しくは公益事業の充実又は既存事業以外の社会福祉事業若しくは公益事業の実施に関する計画」でございますので、今先生おっしゃったのは、その前段の「前会計年度の末日において現に行つている社会福祉事業若しくは公益事業」、その後に、既存の……(岡本(充)委員「「又は」でしょう、それは」と呼ぶ)はい、「又は」です。(岡本(充)委員「かつじゃないんだ。だから、前段だけでいいんだ」と呼ぶ)

 大変技術的で恐縮でございますけれども、法制上、これは、及び、またはのまたはという「又は」でございますので、アンド、オアということで御理解を賜ればと思います。

岡本(充)委員 だから、アンド、オアだからこそ、前段だけでいいわけですよ。

 末日に現に行っている事業を見て、それと比較して充実したと言えちゃうというたてつけになっているのは、これはやはりおかしいんじゃないんですか。これは「又は」ではなくて、かつにするなり、もしくはもう少し縛りをかけておかなければ、末日一日だけ見るだけになるじゃないですか。何でこれを末日だけにしたんですか。

鈴木政府参考人 大変技術的なお話になって恐縮ですけれども、論理的には、これは、前会計年度の末日において現に行っている事業、これを既存事業と呼びます。そうしますと、この末日においてやっていない事業、先生御指摘の一日違いでもやっていない事業というのはこの既存事業以外に入るわけでございます。

 これは法制上、及び、またはということでございますので、これは、どちらかが存在すれば、それについての計画を作成して出しなさいということでございますので、脱法的に、例えば既存事業については目をつぶりますというような計画をつくるということはできません。これについては、具体的な所轄庁の方の承認のガイドラインでもまた明確にお示しをしたい、あるいは、成立いたしましたら、施行通知の中でも誤解のないようにお示しをしたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 では、局長、「末日」が係っているのは、「前会計年度の末日において現に行つている」という言葉が、「又は」の以降にも係っていますでしょう。したがって、会計年度の前日にやっていない事業は今回充実したと言えちゃうんじゃないかと言っているわけですよ、これだと。現に末日にやっていない事業であれば、その前日までやっていたとしても、それは充実したと言い切れちゃう。

 やはり、末日だけではなくて、もう少し幅を持って見るべきじゃなかったかというふうに問うているわけなんです。

鈴木政府参考人 この条文上の理解でございますけれども、これは先生の御指摘にあったことではございませんで、この「前会計年度の末日」というのは「現に行つている社会福祉事業若しくは公益事業」にまで係るということでございます。

岡本(充)委員 私が聞いているのは、末日だけじゃなくてもっと幅を持って見るべきじゃなかったか、何で末日にしたのかと聞いているんですから、そこを答えて。もっと幅を持って見れば、いろいろやっていることを幅広く見て、さらなる充実が見られるんですよ。この末日一日だけ見ていたら、この日だけなんですよ。何で幅を持って見られなかったのか、こう聞いているんです。

鈴木政府参考人 大変技術的な話になって恐縮でございますけれども、これは、末日と一日でとるのでなければ、ではどのぐらいの期間でとるのかといったまた問題も生じます。そういった問題を避けるために、今まさにやっているということで、一日、末日の時点でまず押さえまして、それ以外のものは既存事業以外だということで整理をして、この二つのカテゴリーをきちんと法律上位置づけることによりまして、抜けや漏れがないように条文を整理したということでございます。

岡本(充)委員 私は、これはやはり、もう少し幅を持って、どういう事業をやっているかという評価をしてあげないと、一日だけで評価をするというのは無理があるんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。

 時間がありますので、次の質問に行きたいです。准介護福祉士の問題に行きます。

 准介護福祉士、これはそもそも、日本人でない場合、どういう資格でこの日本に存在する人を想定しているのか、法務省にお答えいただきたいと思います。

井上政府参考人 御質問の趣旨が外国人の准介護福祉士の受け入れの制度とか在留資格の存否ということでございますれば、現在のところ、そのような制度はないわけでございます。

 ただ、経緯といたしまして、フィリピンとの経済連携協定に基づくいわゆる就学コースの介護福祉士候補者が准介護福祉士の資格を取得した場合には、同協定に基づくということでその在留を認めることとしている、そのような状況にございます。

岡本(充)委員 これは、法律を出して、大臣、結局、外国人の方で准介護福祉士になる方が出てくるということを想定しているのにもかかわらず、どういう在留資格でこの人たちがいるのか。つまり、この資格が永続的に就労可能かどうかということがわからないという状況のまま現法案が出されている、こういう理解でいいんですか。

塩崎国務大臣 今、准介護福祉士の在留資格についてのお尋ねがございましたが、この准介護福祉士につきましては、他の関連する制度において准介護福祉士をどのように取り扱うかについて決定していなければ准介護福祉士制度が施行できないものではないというふうに考えてございます。

 また、准介護福祉士制度は、養成施設卒業者への国家試験の義務づけに伴って実施をされるものでございまして、今回の改正案では、施行時期は、国家試験の義務づけの完全施行の時期に合わせて、平成三十四年度としているところでございます。このため、平成三十四年度までの間に、今フィリピンの話が出ましたけれども、フィリピン政府との協議を進めるとともに、介護福祉士の機能や養成のあり方を含めて介護人材の機能分化のあり方に係る検討を進めるということにしておりまして、こうした中で、准介護福祉士制度のあり方自体についても検討をさらに加えていくということとしているわけであります。

 御指摘の在留資格上の取り扱い、この問題につきましては、平成三十四年度の施行時期までの間に、フィリピン政府との協議状況、あるいは准介護福祉士制度の先ほど申し上げたような具体的な内容に係る検討状況等を踏まえて、関係省庁と連携をして検討すべき課題ではないのかというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 大臣、その後段のところは本当は法務省が言うべき話ですよね。どういう在留資格にするかを検討するのは法務省なんですよ。

 結局、そこの協議を十分しないままこの法律が出てきているということについての問題意識を私は言っているのであって、これは、実はほかのことでも言えるんです。

 きょうお配りしたペーパーの裏面の方ですけれども、これは「役員報酬・職員給与の支給状況」ということで、厚生労働省が、民間のシンクタンクで調査したものだということで、理解を深めるための資料としてこれを議員に配られました。

 ところが、これを見てみると、足し合わせると、本来法人に必要な理事の数の六人にならない。五人以下だと。つまり、法律上六人いなきゃいけない理事が、一体どこにいるのかわからない内容になっちゃっているんですね。それで、厚生労働省でこういう資料はないのかと言ったら、これはないんですよ。つまり、これまで社福の実態等を厚生労働省がみずから調べてきたことがないんじゃないかということを疑わせるものなんですね。

 それで、私はきょう大臣に聞きたいんです。

 今回、この法律を国会に審議をお願いするに当たって、厚生労働省みずから調べたものというのは一体どういうものがあるのか、お答えをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今先生お配りをいただいた調査結果は民間のシンクタンクが調べたものでございますが、法人の役員についての理事の専任とか、施設職員の兼任の状況とか、報酬、給与の支給状況を質問して、法人が回答したものであって、いわゆるアンケート調査をしているということだと思います。

 法人が役員の一部についてその状況を記載していない場合であっても、当該回答を除外することなく集計をしているということで、この状況を記載した役員の合計数が今六人を下回っているじゃないかという御指摘がありましたけれども、その理由は、そういう形で集計をしたがゆえにそうなっているのではないかというふうに思っているところでございます。

岡本(充)委員 みずから調べて、こういう実態があるから今度の法改正なんだという、その実態、厚生労働省みずから主体的に調べたものは何があるんですかと聞いているんです。大臣です。

鈴木政府参考人 施策のファクツに関することでございますので、補足をさせていただきます。

 基本的に、社会福祉統計調査でございますとか、あるいは、先ほど来いろいろ御議論に出ております各種事業の経営実態調査、こういうものについて厚生労働省として実施をし、データを整理して、またこの法案の立案に臨んだということでございます。

 ただ、一点御理解賜りたいのは、そもそも社会福祉法の構造の中で、今先生から御指摘のありました問題も含めまして、いろいろな社会福祉法人の運営実態に関するデータが国の方にきちんと義務的に上がってくる構造、仕組みになっていなかった、これは私どもも反省すべき点でございますけれども、これを一刻も早く改善して、現状を国民にきちんと御説明できるようにする。

 これもまた法律上対応が必要なことでございますので、そういったような全体の事情のもとに今回の法案を提出させていただいたということでございます。

岡本(充)委員 法律の義務上の規定がなければ調べられないわけじゃないんですよ。やはりこれは、再三話題になっている、職員の給料もそう、理事の数だってそう、さらに言えば経営状況だってそう。こういったことをきちっとこれまで、いや、義務がないから調べなかったじゃだめなんですよ。

 ここはやはり、緩かった、法律の詰めも、法務省ときちっと協議をして、例えばどうするかとか、准介護福祉士という人が出てきたら一体どういう状況になるのか、そういうことを想定し、調査をした上で法律改正をするべきだ、私は本当にそう思います。

 そういう意味で、今回、私は、採決、非常に複雑な気持ちです。それを私は最後に述べさせてもらいたいと思います。

 大臣、ぜひ、今後とも、こうした法律改正をするときにはしっかり調査をして法律を出してくる、その決意を最後にいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 この法律に限らず、確かに、実態調査が行き届いていないというケースが間々あるということは私も感じるところであって、恐らく先生も厚生労働省におられた際に感じられたと思いますので、これは、立法府の人間は特にそういうところできっちり指摘をしながら、私ども、行政府に今私はおりますから、これについては、他の法律についても調査をできる限りした上で、実態を踏まえた法律改正を行っていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 きょうはこれで終わります。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 きょうは、社会福祉法人、社会福祉法ということで、大変重要なテーマだと思っています。我が党はもう賛否は決まっていると思いますが、大変、今回政府から出てきましたこの法案、大きな前進だと思います。これまでの社会福祉法人のあり方については、ある種の規範というか規律というか、そういうことについて、これでいいのかなと、やはり国民の皆様からも若干疑問符がついていたわけでありまして、私は大きな前進だと思っています。

 ただ、社会福祉法人の箱を、箱というか入れ物を、これを使ってこれからどういうふうに地域のさまざまな社会福祉事業を展開していくのかということについては、大変深刻なというか、テーマがあって、きょうはその幾つかを確認させていただきたいと思います。

 特に、社会福祉法人というのは何なんだという、きょうは冒頭からちょっとそういう質問をさせていただきたいと思います。

 きょう午前中の委員の方々からも、阿部委員初め、過去の経緯をずっと御紹介が、委員からもありましたし、政府からもありました。

 これまで一体、社会福祉法人というのは何のためにこれがあって、今回の改正でそれは変わるのか変わらないのか、今回の改正の前と後を、分ける必要がなければ分けなくてもいいですが、前と後を意識していただきながら、社会福祉法人というのは何のためにあるのか、これを改めて御紹介いただきたいと思います。

 こういう御質問をさせていただくその問題意識は、私は、究極的には、社会福祉法人はなくてもいいと思っているんです。ちょっと、怒られるかもしれませんが。

 要すれば、先ほどまさに大臣もおっしゃられたように、これは税制の話が非常に大きいわけですね。どういう箱で、どういう箱というのは法人制度です、どういう法人制度で社会福祉事業を支えていくのかというときに、本当にこの社会福祉法人という形がいいのか、今さまざまな社会保険制度の中に、きょうも午前中もありましたように、営利事業も入ってきています。こういう中で、この社会福祉法人という入れ物を維持することの意味ですね、これをきょうは確認させていただきたい、こういう趣旨であります。

 まず、先ほど申し上げた、今回の改正に前後して、社会福祉法人というのは何なんだと端的に解説をいただきたいと思います。大臣、お願いします。

塩崎国務大臣 今、社会福祉法人とは何ぞやという大変大事な御質問を受けたと思います。

 さっき申し上げたように、税制が大きいというのはそのとおりであって、法人税、都道府県民税、市町村民税、それから事業税、そして固定資産税、全部かからないというのが社会福祉法人であって、学校法人なんかもそうでありますけれども、一方で、公益社団法人とか公益財団法人は、固定資産税はやはりかかるんですね。それから都道府県民税、市町村民税も均等割はかかるということで、相当税の優遇を受ける。

 それであるならば、規律もやはりきちっとしていないといけない。その割には、やはり、慈善事業とか、かねてから言われていたようなことで、何となく許されてきてしまったというところがあって、いろいろ内部留保が今回問題になって、あるいは、何で社会福祉法人の人が高級車に乗っているんだとか、いろいろなことを指摘を受けるようになったわけであります。

 福祉サービスというのは、措置から契約への転換が行われて、高齢者福祉事業、障害福祉事業などを初め、営利法人も、多様な経営主体というのが福祉サービスに参画をするようになっています。なっているがゆえに、社会福祉法人はなぜ別扱いなのかということを考えなきゃいけない。

 急速な少子高齢化や地域社会の変化、家庭制度の変化、福祉ニーズがそういうことに基づいて多様化、複雑化をしている。それから、生活困窮者への対応とか地域における支え合い、既存の制度ではなかなか対応できないということで、この四月から、生活困窮者自立支援法がスタートしたりしております。

 そういう中にあって、社会福祉法人は、今申し上げた税制優遇のもとで、公益性の高い法人として、非営利の組織として、社会福祉事業の実施を主たる目的として、支援を必要とする者に対してその必要に応じて無料ないしは低廉な料金で福祉サービスを提供するという、営利法人など他の事業主ではなかなか対応できないそういう取り組みを積極的にやっていただこう、こういう法人だというふうに思いますので、その役割自体はますます重きをなしていくのではないかというふうに思います。

 今回の法案は、こうした状況を踏まえて、社会福祉法人の本来のあり方を徹底する観点から、社会福祉法人の地域における公益的な取り組みの責務の明確化など、諸般の措置を改めて講ずるということにしたところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 私の問題意識をより御理解いただくために、ちょっと問いの順番を変えまして、五番目に通告をさせていただいている配当の話をちょっとさせていただきたいと思います。

 今大臣とやりとりさせていただきましたように、法人制度というのは、やはり税制が非常に重要なテーマだ。加えて、非営利だという議論が必ず、医療であれ、介護の一部であれ、あるいは福祉であれ、出てくるわけでありますが、会社でも、配当していない会社は実際にあるし、別に構わないんですね。あるいは、会社法制のもとでも、別法で配当制限を、規制をかけることはできます。

 だから、端的に言うと、社会福祉法人という法人の形態をとらなくても、税法と、それから、別途講じられている、社会福祉法人でも分野ごとにさまざまな規制がかかっていますね、そういうある種の行為規制、要は、社会福祉法人という箱を、箱ありきではなくて、分野ごとにさまざまな行為規制を講じる、場合によっては配当規制を講じる、そして、しかるべき事業内容の者については税制を講じる、こういうことが私はできるんじゃないかなと思うんですね。

 実は、これは参考人質疑の際にも、明治安田の松原参考人に、こういう私の問題意識からすると、社会福祉法人の皆さんと一緒に福祉の仕事をしている営利会社、この営利会社については、分野によっては、特に公的なお金で社会保険等のいわゆる社会保険事業を行っている者であれば、それは営利会社であっても配当させたらあかんのじゃないかと。医療でも介護でもそうです。八割、九割が公的なお金で賄われているマーケットです。そこで社会福祉法人の皆さんと一緒に事業をやっている会社があります。配当している会社がありますね。これは本当は、もとは税金あるいは保険料なんですから、配当制限をすべきではないかという議論を松原参考人に申し上げたら、それはそうだとおっしゃったかどうかは忘れましたが、大体そんなような、肯定的な御回答をいただいた、こう思います。

 これはまず、どうでしょう、この点。そういうことをすべきではないかと私が問うと、どういう御答弁になるでしょうか。

鈴木政府参考人 今のお尋ねでございますけれども、社会福祉法人は、御案内のように、社会福祉事業を主たる目的とするために設けられた法人でございます。それを前提としまして、今、社会福祉事業が地域でニーズを満たすためにどういう供給体制を全体としてとっているかということで申しますと、必ずこの担い手が地域にきちんと存在しなければならない。その存在を保障する、あるいは事業の継続を保障する枠組みとして社会福祉法人がある。したがいまして、例えば残余財産の規制でございますとか、あるいは日々の運営その他、財務も含めまして、非常に強い規制に服している。御案内のとおりでございます。

 ただ、社会福祉事業のニーズを満たすためにそれだけでいいかといいますと、社会福祉のニーズがだんだん多様化、高度化してきましたし、複雑化しております。そうすると、多様な主体にここに入っていただいて、それぞれ多様な主体の運営ルールのもとで住民の福祉ニーズをきちんと満たしていく。これが平成十二年に始まりました介護保険からこの方の流れであろうと思っております。

 したがいまして、社会福祉法人をコアにいたしまして多様な主体がそこに参入することによって、全体としての地域の福祉ニーズを満たす供給体制になっている。

 そういうことで考えますと、基本的に、社会福祉事業であるからといって全て配当を規制するというようなことではなくて、配当を許されている法人、そういったことを前提とした、柔軟な運営をする法人の存在も前提としながら、全体として地域の福祉ニーズを満たすような供給体制をつくり上げていく、これが一番適切ではないかと思っておりまして、そういう考え方のもとに、コアとしての社会福祉法人の法制を今形づくり、今回の改革でそれを一層徹底したということでございます。

足立委員 御答弁はわからないではありません。特に、介護等、ぐっとそのニーズが広がって、そして、それにサービスを提供していかなければならない、サービスを提供する者を確保しなければいけないときに、既に地域で事業をやっておられた、営利というか、普通の個人事業主を初めとした、あるいは法人成りをしている、そういう方々に、その介護の分野で頑張っていただく。

 こういう、彼らの力をかりるという意味ではよく理解ができますが、今回の法律は、まさに社会福祉事業のそもそもの、もっと振りかぶった、法人制度のあり方を議論しているわけですから、暫定的な、とりあえず事業を立ち上げるときの議論ではなくて、本当に恒久的に、これはどういう制度であるべきかということを考えたときにどうか、こう私は考えるわけであります。

 特に、この法案も、法律の半分は、先ほど大臣も、午前中おっしゃったイコールフッティングという議論が出てきますが、では、今申し上げた、それぞれの事業の分野でイコールフッティングということが本当に確保できているのかということがあります。

 きょう、関係局長にもおいでをいただいて、大変お忙しい中、恐縮でございますが、例えば、きょう午前中の資料でいうと、中島先生が御紹介された円グラフ、これがわかりやすいと思います。これは社会福祉事業と書いていますが、要すれば、児童福祉、老人福祉、障害者福祉、さまざまな福祉分野がある中で、例えば保育をとっても、私の地元でも営利の保育園が参入してきています。市役所もそういう前提で今ハンドリングしています。

 例えば、保育事業に携わる事業主体について、これは本来、私が申し上げたような意味で、税制上、保育事業だけをやるのであれば同じ扱いの税制を適用すべきだと思いますが、そうなっていますか。確認です。

安藤政府参考人 保育に携わる事業主体の税制上の取り扱いについてお答え申し上げます。

 保育所の設置運営主体につきましてはさまざまな法人形態がございますが、社会福祉法人につきましては、収益事業により生じた所得に限り法人税等が課税されるということになっております。

 社会福祉法人が行う保育所運営に係る事業は収益事業の範囲には含まれていないということですので、社会福祉法人が行う保育に関する事業において収益が生じた場合に、法人税は非課税となるということでございます。

 一方で、例えば株式会社には、そのような非課税措置は講じられておりません。

 また、同様に、社会福祉法人と株式会社との間で税制が異なるものとしては、法人住民税、法人事業税等があるということでございます。

足立委員 御紹介いただいたとおりでありますが、同じ事業をやっている。そうですね、同じ保育事業や保育園を経営している。

 なぜ今局長が御紹介をくださったような違いが合理的だとされるのか、ちょっと御説明できますか。

鈴木政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、例えば株式会社につきましては、事業をやりまして、それによって出てきた収益、その蓄積につきまして、基本的に株主に対する配当ができるということでございます。その上で、さらに、事業からの撤退をするときに、残余財産等につきましても基本的にその株式会社が自由に処分をするということでございます。

 したがいまして、ある地域で保育というものをきちんと確保していこうというような、最低限の保障といいますか、供給体制を保障する上で、例えば株式会社だけにこれを頼っておりますと、その地域で保育に欠けるという事態が実際に生じる。

 そういう事態を防ぐために、社会福祉法の中で社会福祉法人という特別な形態をつくりまして、ここは撤退が自由にはできない、仮に事業を撤退する場合にも、廃止する場合にも、残された財産につきましては、同種の社会福祉事業に使う、あるいは、国庫に帰属させて、国がその地域できちんと保育を継続するために使う。

 こういったようなことで、おのずと法人の運営の成り立ちが違うということでございまして、税の扱いも、したがって、それに応じた扱いといたしまして、株式会社と社会福祉法人の、非課税、優遇措置とで分かれている、こういう理解でございます。

足立委員 今おっしゃった説明はよくわかりますよ。

 すると、保育事業にあっては、今局長がおっしゃった両方のタイプ、地域に根差して、容易に退出もできない、財産についても継承される、そういう事業形態と、そうではない、配当できる、容易に退出ができる、そういう事業形態が混在をしているわけですね。

 それは、地域の保育事業ということを考えたときに、ちょっと保育に絞らせてください、話がややこしいから、御答弁はどなたでも結構ですが、これは、わざと両方のタイプを置いているということですか。それか、経緯上、これはまだ途中の段階で、いずれどちらかのタイプに統合していくのか。

 これはやはり、経緯とすると、改めて解説する必要はないと思いますが、もともと措置で行われてきた分野ですから、どちらかというと、地域に完全に根差していたわけです。そこに営利会社の参入を認めてきた経緯がありますね。

 そういう流れでいくと、その流れを延長すると、どちらかというと、二つのタイプ、地域に根差しているタイプと営利タイプとあるとすれば、営利タイプにシフトをしてきたわけですから、その流れはこれからも、参入を認めてきたわけですから、それはふえていっていいと考えているのか。やはりそれは、地域に根差して、社会福祉法人が担うべき領域があって、あるいは、会社の参入は間違いだったんだ、保育事業というのは地域に根差しているので、改めて今回の社会福祉法改正に伴いそういった部分をもっと強化していくんだと。

 これはどっちを向いているんだということを知りたいわけでありますが、いかがですか。

鈴木政府参考人 まず、先生、経緯とおっしゃいましたので、確かにこれは流れがございます。

 昔、社会福祉事業は、御案内のように、社会福祉法人あるいは行政だけしかできない措置の世界でございましたけれども、サービスが普遍化いたしまして、例えば介護にいたしましても、誰でもが介護を受ける、そうしたときに、介護に対する権利性のようなものも一定認めていかなければならないということで、その中で、基本的に、地域のニーズをきちんと満たしていくためには、多様な主体の参入を認めていかないとニーズの充足ができないだろうと。

 そういう観点から、社会福祉法人というコアはしっかり残しつつも、さらに、その地域のニーズにより柔軟に対応していくために、例えば株式会社その他の営利法人の参入も認めていって、それで、地域において重層的なサービス供給体制ができてきた。保育も、大なり小なり同じような事情があると思います。

 ただし、それが行き着く先がどこであるのか、あるいは、営利法人が多いのがファイナルアンサーなのかどうか、こういうことでございます。

 それは、基本的には、事業の性質、それから地域の福祉ニーズの状況によると思います。ただし、社会福祉事業である以上、やはり当該地域においてその主体が全くないということはあってはなりませんので、それに対する最低の保障の仕組みが社会福祉法人制度である、こういうふうに理解をいたしております。

足立委員 今鈴木局長がおっしゃった御答弁は、社会福祉法人を見ていらっしゃるというか、所管をしていらっしゃるお立場からすると、その制度をどう維持あるいは発展させていくかということが使命ですから、いろいろな今御答弁があったように、社会福祉法人が地域においてコアになってやっていく、一つの御答弁だと思います。

 ただ、私が気になるのは、それぞれの分野に、先ほども安藤局長も御答弁いただきましたが、例えば保育事業ということを考えたときに、保育事業とはどうあるべきなんだという問題設定の中に、今局長が御答弁されたようなことはあるのかということなんです。

 今鈴木局長から御答弁いただきましたが、例えば安藤局長は保育事業を見ていらっしゃるわけです。保育事業とはこうあるべきだというところから、今鈴木局長がおっしゃったような、やはり真ん中に、コアというのは日本語で何と言うのか知りませんが、コアとして社会福祉法人があくまでも事業に貢献していただいて、ある種、その多様なニーズに応えるために営利会社も参入していただいている。これは、保育事業としてそうあるべきだということですか。ちょっと確認です。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 保育につきましても、一定の社会的な支援が必要な方々について、欠くことのできないサービスを提供するために行われているものだというふうに考えております。

 したがいまして、その中心的な担い手が地域に存在すること、また継続的に事業が実施されるという保障が一定あること、それは大事なことだと思っておりますので、基本的に鈴木局長の答弁と同じような考え方を持っております。

足立委員 すると、私は、もし、保育から離れてもいいですが、仮に地域において社会福祉事業を考えたときに、コアとなる部分はこれからも社会福祉法人にやっていただいて、コアじゃない部分については営利会社の参入を認める、こういう形でやっていくのであれば、これは、それぞれ、例えば保育事業でも、こういう保育事業は社会福祉法人にやっていただく、そうでない部分は営利でもいい、こういうのが私は普通だと思います。

 主体によって、税制は違いますが、実施していただく保育事業に、規制体系上、差がありますか。安藤局長、どうですか。

安藤政府参考人 主体ごとに保育事業の中身に差があるということではございませんので、サービスに厚みが生じる、そういうことだと思っております。

足立委員 よくわからないと思うんですね。

 大臣、どうですかね。いやいや、どなたでも結構ですが、私が申し上げていることは伝わっていますかね。要すれば、同じ事業をやっているのになぜ税制が違うんですかと。大臣、ちょっと。何か質問おかしいですか。

塩崎国務大臣 これまでは、福祉の類いは押しなべて措置でかつてはやっていて、行政が一定担って、社会福祉法人の社協などに依頼をしてやっていたというような時代がずっとあったわけですね。どこで転換したかというと、介護保険を導入した際に、民間の主体を入れるべきかどうか、これは、村山政権時代に、私ども自社さ政権で福祉プロジェクトチームというのがあって、私もそのメンバーで、さんざん議論をした末に、反対派もたくさんおられましたが、民間の主体を入れようということを決めました。

 それはやはり、先ほど来答弁しているように、担い手が、これから保険化をして、社会化をしていこうということですから、なかなかそれでは賄い切れないという中で、議論の末に、民間に今後は参加をしてもらおう、民間というのは営利企業にですね、ということでやったものだと思います。

 ですから、保育を今例に取り上げておられましたが、これは介護でも同じことであって、社会福祉法人でないとできないものというものを残しながら、そうじゃないサービスで民間が提供してもおかしくないもの、あるいは費用負担面でいってもやはり民間ではなかなか提供できないものは社会福祉法人に引き続き担ってもらう、それは税で恩典があって優遇されていれば、それだけの価格競争力が言ってみればあるわけですから、そういうところでの提供をすることができるだろう。そういう組み合わせを考えていこうということで導入したのではないかと私は理解をしております。

足立委員 私は、大臣がおっしゃることはわからないではありませんが、日本の社会保険、医療保険、介護、きょうは老健局長もまた医政局長もおいででありますが、社会保険は、基本的には財源は公、公的な財源、しかしサービスの提供体制は民間、これは日本に独特の制度であって、この日本の特徴を生かして、活力ある効率的で質の高い社会保険サービスを提供していくというのが、我々がやはりとるべき道だと思うんですね。

 その中で、民間に事業を担っていただいているそのマーケットで、イコールフッティング、すなわち、法人税の有無を初めとして、税制が全く違う、同じ事業をやっていても、その経緯、あるいは冠が、あるいはその箱が、社会福祉法人か会社であるかによって違うというのは、私は大変問題だと思っています。

 こういうものを抜本的に解決することがやはり自民党ではできないだろうなということで生まれたのが維新の党なんです、一応PRをしておくと。なかなかこういう抜本的な議論は、これまで政権を長らく担ってこられた自民党ではできないと思います、正直。

 ただ、きょうは傍聴の方もたくさんおいでいただいていますから、私は必ずしも株式会社の参入論者じゃありません。今申し上げたように、同じ事業なのに競争環境に違いがあるというのは混乱を招きますよね。もし無税、非課税を社会福祉法人に認めるのであれば、そこに参入している会社についても配当規制をした上で無税にすべきだと思うし、もし会社の参入を認めるのであれば、そちらにむしろ合わせていくべきだと私は思っているわけであります。それは私の意見ですから聞き流していただいて。聞き流すしかないですよね。

 もう時間が最後の方ですが、今回の法改正は、今私が申し上げたような考え方に沿うと、実際に今、社会福祉法人で事業をされている方の中には、あなたは地域のコアの事業主体なんだから、全てその持てる財産は地域に還元してくれということで、いろいろな思いで蓄えてこられた虎の子を供出させる、こういう法案になっています。それはそれで、きょう冒頭、大臣から御紹介があったように、一定の意義があると私は大変賛同するところなわけです。

 一方で、そのつもりがない方もいらっしゃると思うんです。まさに地域で、会社と同じように、コアとおっしゃるから、コアじゃない領域があるとすれば、そういう領域で普通に保育事業をやる、あるいは障害者の方のケアをされている、あるいは介護事業をされている、そういう社会福祉法人について、今回の法改正についていけないぞ、ついていけないわという法人は、例えば会社に衣がえをするような出口を、制度上大変難しいのはわかっていますが、私が申し上げているのは、理念、思想として、政策思想としてそういう措置が必要ではないですか、こう思うわけでありますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 まさに、先生おっしゃるように、社会福祉法人がどうして財産を保有しているのかということでございまして、社会福祉法人は、基本的に社会福祉事業を充実発展させる、あるいは維持するために保有をしておられる。

 しかしながら、これは繰り返しになりますけれども、保有している財産の中身、内訳、そして何に使うかという使途、ここに関するルールがなかったので、非常に保有の状況が不透明だということでございました。それを社会福祉法人の本旨に従ってきちんとルール化をするわけでありまして、ためようと思ってためておられた法人について、ためようと思っておられた本旨に従ってルール化をするわけでございますので、基本的に、ガバナンスの強化にしても、財務規律の強化にしても、これについて、ついてこられない社会福祉法人というのはないんだろうと思っております。

 一方で、それとは別に、小規模な法人に過大な負担がかからないようにいろいろな配慮措置はする、これは当然でございますけれども、今回やりますガバナンスの強化、あるいは透明化、財務規律の強化自体について、社会福祉法人がそもそもついてこられないということは基本的にはないんだろうと思っておりまして、したがいまして、先生のおっしゃる出口のような議論というものもまた、現在政策的に必要性というのはないのではないかなというふうに考えてございます。

足立委員 時間が参りました。

 言葉がちょっと適当じゃなかったかもしれませんが、我々が政権をとったらしっかりとそういう抜本的な制度改正に取り組むことをお誓い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 維新の党の浦野です。よろしくお願いします。

 いつも足立さんの後に質問するのはやりにくいなと思うんですけれども、きょうは大丈夫かなと思ったら、最後にまたちょっと保育関係の話になりましたので。でも、足立さんが言っていることというのは、非常に、私もある程度納得のいく話なんですね。

 というのも、社会福祉法人が経営している保育園は社会貢献だ、地域貢献だと言われていますけれども、では営利企業がやっている保育園はそうは言われないのかというと、そうではないはずですよね。やはりそれは、どういう経営主体が運営をしていようが、保育園というのは社会貢献であり、地域への貢献であるという立場は変わらないはずなので、そういった意味では、課税、非課税、イコールフッティング、そういった言葉の中に含まれているいろいろな福祉のあるべき論というのは非常に議論をこれからもしていかないといけないかなというふうには思っています。

 ただ、営利企業の方々が保育園をやっているからといって、我々社会福祉法人で保育園を経営している人間が、それをけしからぬと言うことも僕はちょっとそれはおかしいかなと実は思っています。

 それはやはり切磋琢磨して、別に社会福祉法人の保育園の中でもお互い同じような運営をしていて切磋琢磨はもちろんしていますけれども、民間企業が参入することによって、そういう切磋琢磨することによる質の向上、サービスの向上というのは一定あるんだろうと思っていますので、そこら辺はやはり、これからまだまだ子供が減っていく中で、こういった、特に保育園なんかはどういうふうにやっていくべきなのかという議論は必ずまたしないといけない時代がやってくるだろうというふうには思っております。

 足立委員の質問の後を受けて、言いたいことを言わせていただきました。

 質問に入らせていただきますけれども、きょう午前中の中島委員の資料にもありました、社会福祉法人といっても本当にさまざまな事業体系があります。特に、今回の法案は社会福祉法人、社会福祉法人というふうに一くくりで議論をされていますけれども、社会福祉法人の中でも、会計の処理の仕方が業種によって全然違うというのはもう皆さん御存じのとおりだと思います。

 今回、私も、例えば保育園の例が一番わかりやすいので挙げますけれども、保育園なんかは、内部留保という言葉が適当か適当じゃないかというのはおいておいて、ここではわかりやすいように内部留保と言いますけれども、内部留保というのは、保育園なんかは会計上一定のルールに従ってプールできる留保金は限られていますよね、計画をつくってその計画に基づいてためていく。計画してためた以上のものはためてはいけませんよというようなルールを一応つくってありますよね。

 今回、新たな福祉事業に回す資産、再投下する資産というのは、自分たちの保育園で定めているルールを、要は、例えば五千万ためますというのを計画で決めた、ことしで五千万たまりました、そこから再投資の公益事業をしていってくださいねというふうなことを今この法律でおっしゃっているのかどうかというのを確認したいと思います。

鈴木政府参考人 今御指摘ございましたように、例えば保育事業につきましては、保育事業のルールといたしまして、先生おっしゃったような内部留保の仕方、積み立ての仕方について一定の規制がございます。具体的に申しますと、人件費の積立資産とかあるいは保育所の施設設備の整備積立資産とか、こういったものにつきまして、法人が計画をつくって積み立てるという制度が今あるわけでございます。

 しかしながら、この資産について、どの程度が適切なのか、そしてそれをどういったことに使っていくのかという細かい使途になりますと、これは必ずしも保育所でも確立したルールがあるわけではございません。保育所はそれなりに、今先生御指摘あったように決められておりますけれども、そのほかの高齢者福祉あるいは障害福祉になりますと、そういったものもつまびらかに決まっていないような事業分野もある。これに対しまして今回私どもは、基本的に、繰り返しになりますけれども、保有資産の内容、内訳のルール、そしてそれをどういうところに充当していくかのルールをつくるということでございます。

 その上で、今先生お尋ねありました、今保育所が積み立てている人件費の積立資産あるいは施設整備の積立資産、これにつきましても、基本的に、今回のスキームを通じまして、例えば人件費の積立資産でございましたらば、社会福祉充実計画の中の、例えば今の社会福祉事業を充実させる、その中には人材への投資というものも入っておりますので、今回の改正後のスキームを通じてそういった先に使われていくわけでございます。

 それから、施設設備の整備の積立資産につきましては、むしろ、現在の事業を継続していくために必要な資産、例えば建てかえの資産でございますとか修繕の資産でございますので、今回の法律のスキームで申しますと事業継続に必要な財産ということで仕分けをされます。

 したがって、現在保育所に適用されているルールの延長上に、さらにそれを徹底するような形で、私どもは今回こういった規律をつくったというふうに御理解をいただければと思います。

浦野委員 実は、現行法上でも社会福祉以外への投資というのは不可能ですよね、現在のルールでも。だから、わざわざこうやって使いなさいと言わなくても、実は、それはいつ使うかという問題はありますけれども、目的外、福祉以外に使えないというのはもともとのルールなんですね。

 先ほど答弁の中でおっしゃったみたいに、保育園以外の社会福祉法人は、目的をつくって、枠をつくってためていくということを今現在は行っていません。それは、介護保険を入れたときにそういうふうにルールを変更したというふうにちょっと記憶をしているんですけれども。

 ただ、もともと国が社会福祉法人に経営努力を求めて、頑張ってくださいという通達を以前に出して、それで頑張った社会福祉法人がたくさんあって、その頑張った社会福祉法人の内部留保を今回こうやって責め立てられているというのが現状なんですね。私は、だから、そこはちょっとおかしいんじゃないか、国はもっとはっきりと、あの話が出たときに反論すべきだったんじゃないかなというふうに今でも思っています。

 例えば、逆に、そういった保育園以外の経営主体を持っている社会福祉法人に対して保育園と同じようなルールを適用して、もっと、必要な資金は資金としてちゃんと積み立てておく、残しておくというルールを復活させるというふうな方が実はわかりやすかったんじゃないかと思っているんですけれども、その点については、なぜ前のルールに戻していないのか。というか、ためなあかんものはためていく、それ以上のものはためてはいけないよというルールにした方がよかったんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがですか。

鈴木政府参考人 今御指摘のあった点について若干整理をさせていただきますと、まさにおっしゃるように、社会福祉法人につきましては、保有資産について、社会福祉法人の外にこれを持ち出したり、あるいは収益事業その他社会福祉事業に関係のないことに使うということはできないというのは御指摘のとおりでございます。

 そうしたきちんとした社会福祉法人の本旨に根差します基本は維持した上で、さらに、今も御指摘がございましたように、保有資産について、措置の時代にはこれはある意味がんじがらめに縛っておりまして、幾らまではいいけれども幾ら以上はだめだとか、あるいは繰り越しについても何%まではいいけれどもそれ以上超えたらだめだとか、非常に、ある意味箸の上げおろし的な規制がかかっておりました。

 これについて、やはり社会福祉法人も、柔軟な、自主的な、自律的な経営をしなければ、これからきちんとした安定した事業が運営していけないだろうということで、平成十二年からこの方、先生おっしゃるように、いろいろな緩和をしてまいりました。その結果、基本的に、保有財産というものが積み上がっていった面があるというのは御指摘のとおりだと思っております。

 今回やりましたことは、第一点目に申し上げました、法人の外にいたずらに資金が流出するようなことは断じて認めない、社会福祉事業のためにつくった法人であるという基本は守りつつ、そして、かつ、経営の中でどの程度、さじかげんで、生じた利益についてこれを保有するかということについては箸の上げおろしはしない。そういった方向性は維持した上で、さらに今回やりましたことは、これまで措置されてこなかった分野でありますところの、先ほど来申し上げております、法人がそういった一定の自由度を持った経営によって保有してきた、蓄積された資産について、その資産の中身、内訳をきちんと仕分けをして国民の目に見えるようにしていただきたいということが一点と、それだけでは足りませんので、その資産を何に使うために保有しているのかということについての説明もできるようにしていただきたい、これが今回やりました新しい措置でございます。

 したがいまして、今回の措置は、むしろ従来から取り組んでまいりましたことの延長線上にあると思っておりまして、仮に先生御指摘のようにこれを従来の形に戻すということになりますと、二点目に申し上げました、法人が財産を保有するに当たって箸の上げおろしまで、例えば何円以下ならばいいけれどもそれを超えてはだめですとか、あるいは繰り越しについてもパーセンテージで基準をつくるとか、そういったことで経営の自由度をかえってそぐことになりますので、必ずしもそういった方向ではなくて、これまでの方向性を維持した上で、さらに国民に対する説明責任が果たせるような新しいルールをきちんとつくって、それで経営の自由度と国民に対する説明責任を両立させていく、これが今回の改革の考え方でございます。

浦野委員 経営の自由度と安定運営、この二つ、相反するような話を両方追い求めないといけないのが社会福祉法人なんじゃないかなというふうにも今答弁を聞いていて思ったんですけれども、経営の中身の透明性を高めるという点では、今回の法案でも書かれています。

 もともと、どんなにちっちゃい法人でも、午前中の資料にもありましたけれども、本当に十人に満たない施設もたくさんあります、そういう法人でも、都道府県には必ず毎年、決算を行って、報告がしっかりと上がっています。それをこれからもっと積極的に公開してくださいということになるだけなので、この部分に関する事務負担というのは、実は僕は法人には余りないかなと。インターネットに詳しくないとか、そういう部分はありますけれども、そんなのはすぐに解消できる。そんなに大きな負担にはならないと思っています。

 ところが、今回の公益事業の計画、実行なんかは、やるとなれば恐らくまた法人に対しての負担というのは非常に大きくなります。そっちの方がむしろ大きいんじゃないかと思っています。

 負担の大きい小さいでいえば、恐らくこの公益事業の方が大きくなってしまうんじゃないかなという心配と、それと、一つ目の質問にもかかわりますけれども、内部留保がしっかりない中で、そういうもの関係なしに、余裕があるなしにかかわらず、この計画をつくって実行していかなければならないのか、必ず社会福祉法人はそういった取り組みをしていかないといけないのかどうかということについて、もう一度はっきりと答弁をいただけたらと思います。

鈴木政府参考人 今御指摘がございました、いわゆる社会福祉充実計画についてどの程度まで義務があるのかということでございますけれども、これは法案にも明記してございますけれども、一定の純資産がある中で、事業の継続に必要な費用を控除いたしまして、それでなお余裕の財産がある場合にこの社会福祉充実計画をつくっていただく。したがいまして、まずこの段階で、事業を継続していくためにいっぱいいっぱいで残額がないんだという法人も確かにいらっしゃると思います。こういう法人については、計画を策定する義務はないわけでございます。

 一方で、多少の額であれ、あるいは大きな額であれ、残額があったということになりますと、計画をつくっていただきます。

 この計画をつくるときに、優先順位というものもこれまた法律上明確に決めておりまして、まずは法人の本旨であります社会福祉事業の充実に使っていただきたいということでございます。直ちに公益事業をやりなさいということではございません。

 したがいまして、まずその段階で、自分の本旨である社会福祉事業を継続、充実していくために必要、そのためにこれだけ使うという段階で計画が終わる法人も相当いらっしゃるんだと思います。さらに余裕の財産がある場合、地域にニーズがある場合について、地域公益事業に取り組んでいただく。

 こういう順で、計画の策定の義務の有無、それから策定の内容というものを法律に記述をいたしておりますので、法人の現在置かれております状況、財務状況、財力の状況に応じて、無理のない計画づくりというものが法律上はできることになっているのではないかというふうに考えております。

浦野委員 その点は本当に危惧をされている法人がたくさんありまして、やはり、例えば都道府県、市町村からやってくださいと言われたら、やらざるを得ないんじゃないかというふうに思っている法人もたくさんあります。そこは、これからこの法案が前に進む段階で、社会福祉法人に対してその部分はしっかりと説明をしていただけたらなと思っています。

 次の質問ですけれども、社会福祉法人の会計というのはほとんどが人件費で消費されていきます。これも午前中に、ある程度の、どれぐらいかという数字が出ていました。六割から七割という数字が出ていましたけれども、六割というのはちょっと僕、そんなに低かったかなと若干思ったんです。私のかかわっている保育関係でいえば、やはり七割以上が人件費で、八割から八五%ぐらいまで人件費が膨らむとかなり経営が厳しくなってしまうというのが僕らの知っているデータというか、大体の数字なんです。

 例えば、人件費を抑制して、抑制をすればもちろん余剰金はふえます、人件費を抑制した上でできているような余剰金を使って公益事業をやりなさいという話になれば、本末転倒になってしまいます。それはやはり避けるべき。今、法律の中にも、人件費にちゃんとまずは充ててくださいというふうに書いてあるという答弁もいただいていますけれども、であるならば、私は、一定の人件費割合というのを、最低基準みたいなものを定めてもいいんじゃないかなというふうに思っています。

 さらに、法案の中には、これからデータを収集してビッグデータとして活用していきますという、これもこれまでの質問の中にありましたけれども、そういうデータを国が持っていなかったこと自体がちょっと僕はびっくりだったんですね。都道府県に毎年必ず法人は決算を上げていますから、都道府県はみんな持っているはずなんですよね、数字をちゃんと。それが国にちゃんと収集されていなくて、では今までどうやって社会福祉の予算を的確に計算できたのかというのは非常に疑問なんです。

 そういった部分、人件費の割合と、データベースを持っていなかったというのを、ちょっと答弁をいただけたらと思います。

鈴木政府参考人 人件費を適正に設定してきちんと処遇を改善していくというのは、これはもうまさに基本中の基本で、一番大事なことであると思っております。

 その中で、今先生御提案ありましたように、最低の人件費割合みたいなものを定めたらどうかということでございますけれども、これは実はなかなか難しい問題がございまして、費用の面で定めると申しますよりは、基本的に、まず各事業で、事業の規制の中で最低限の人員配置の基準というものをきちんとつくっていくというのが基本でございます。

 その上で、それぞれの職員さんの処遇につきましては、これは基本的に、社会福祉法人といえども民間の法人でございますので、やはり労使間において決定をするというのがまずは基本であるということだと思っております。

 仮に、行政が人件費割合みたいなものを設定できるかどうかということを考えてみますと、なかなか難しい面がございまして、具体的には、人件費の水準自体、これは御案内のように、事業の種別あるいは地域によってもさまざまでございます。それから、これが分子だといたしますと、人件費割合の分母の方の費用とかあるいは収益でございますけれども、これもまた事業によって、あるいは経営の効率性によってもさまざま変わってまいりますので、やはり一律の数値的な基準みたいなものでつくっていくというのはなかなか難しいかなというふうに思っております。

 したがいまして、これは、そういった一律の一刀両断というよりは、労使間の話し合いも含めて、不断の努力を行政もそれから労使ともにしていくということであると思っておりまして、そういう観点からは、地域医療介護総合確保基金の活用でございますとか、あるいは今般の介護報酬を活用いたしました処遇改善加算とか、そういったような不断の努力を重ね、事業者においても適切な人件費、処遇の設定に努めていただく、これに努めていくということではないかと思っております。

浦野委員 最後の質問です。

 これから社会福祉法人が公益事業をしていきます。参考人の方の中で、大阪でそういうことを実際にやっている事例も出していました。これは、今は、本来は行政がやらないといけない、手の届かないところにこういった公益事業として社会福祉法人が助け船を出している。国は、この今やっている事業とかを国の事業として最終的には引き継いでくれるのかどうかというのは、非常に大きな一つの終着点の議論になると思うんですけれども、その点についてはどうお考えですか。

鈴木政府参考人 今先生御指摘ありましたように、例えば大阪において、社会福祉法人の方々が自主的な努力で、今回の法律の枠組みでいいますところの地域公益的な活動をやっていらっしゃるということは十分よく承知いたしております。これはまさに、社会福祉法人の本旨に従って、地域で必要とされるきめ細かな福祉ニーズに応える取り組みをしていただいているということだと思います。

 御質問は、では、こういったものをずっと法人の自助努力に任せっ放しにするのかということだと思っておりますが、結論から申しますと、それは任せっ放しにするのではなくて、やはり、国とか地方公共団体は、本当に支援が必要な人々に対しまして支援を制度化する、あるいは事業化するという責務がございます。この責務は、今回の法案のスキームによってもいささかも後退するものではないというふうに考えております。

 したがいまして、例えば今大阪で法人の方々が続けていただいている取り組みにつきまして、やはりこれは、例えば自治体、あるいは場合によっては国において制度化、事業化が必要だという判断が行われるときが来れば、それはきちんと制度化、事業化をしていくということであろうと思っております。

浦野委員 今こちらの方からも、ええっ、本当かよみたいな声が出ていました。私は、それを確認するためにも今局長に答弁をいただきました。

 さらに、そのええっという言葉を払拭するために、大臣にもその点の部分、通告はしていませんけれども、もし、きっちりと国が、それはいつからそういった事業を行政がやりますということはなかなか難しいでしょうけれども、しっかりと前向きに、そういう社会福祉法人がやる公益事業を最終的には行政の責任でやるんだという言葉をいただけたらと思いますので、一言お願いをいたします。

塩崎国務大臣 突然のことでありますが、先ほど局長が答弁申し上げたとおりだと思いますけれども、国とか地方公共団体が、国民それから住民全体の観点から、福祉支援の必要性に応じて、地域のニーズに対応した福祉サービスをどう提供していくかということで、適切な制度を設け、また予算をしっかりと組み立てていくという役割を果たしていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。

 社会福祉法人のあり方については、先ほど来、足立先生を含め、いろいろ位置づけが根本から問題提起をされて、それなりにやはり大事な議論だと思いますけれども、地域における公益的な取り組みとして実施しているものについては、国民あるいは地域の皆さん方のニーズを踏まえて、必要と判断されるものについては、国や地方公共団体がみずから判断をして、そして制度化、事業化を図っていくということが必要だろうというふうに思うところでございます。

浦野委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

渡辺委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 七月十日の参考人質疑で、全国社福法人経営者協議会会長の磯彰格氏は、法人経営というものに今まで以上に襟を正していく、二つ目に、国民の皆様が感じておられる我々に対する誤解を解いていきたいと述べて、次のように発言されました。

 ほとんどの法人で、大なり小なり、地域における公益的取り組みを既に行っております。

  さまざまな背景があり、そのような取り組みを社会福祉法人は社会に対しアピールすることなく、つつましく実施してきました。その結果、国民から、地域のために社会福祉法人が必要な存在だと認識をいただけなかったのかもしれません。

何というか、悲壮感のようなものを感じました。

 そこで、大臣に感想を伺いたい。

 これまで議論されてきた社会福祉法人の地域における公益的取り組みというのは、そもそも行っている、地域に貢献していると思っておりますけれども、認識を共有するでしょうか。

塩崎国務大臣 午前中にも申し上げましたけれども、多くの社会福祉法人においては、今御指摘をいただいた、参考人としておいでをいただいた磯さんのように、みずからの判断でいろいろなことをやっておられるんだろうと思います。

 しかし、戦後長い歴史があって、事業法という、事業という言葉がなくなったということがあれども、なかなか、いろいろな意味でルール化がされていなかった、法的な枠組みがないままに来て、あらぬ誤解を招くようなこともたくさんあったわけでありまして、そういう意味で、今回法律としてお出しをさせていただいているということであります。

 社会福祉法人は、言うまでもなく、社会福祉事業の中心的な担い手としての役割を果たすだけではなくて、営利企業など他の事業主体では困難な福祉ニーズに対応するということが求められる法人であって、社会福祉法に基づく公益事業として、地域の幅広いニーズに対応する取り組みを講じているということを我々もよく認識しているところでございます。

 人口構造の高齢化とか地域社会の変化あるいは家族の変容、こういったものに伴って福祉ニーズが多様化、複雑化してくるということについては繰り返し申し上げているわけでありまして、そういう中で、むしろ社会福祉法人の役割は増しているのではないかというふうに思います。

 こうした状況を踏まえて、何といっても、税の優遇措置が与えられているという公益性の高い非営利の法人としてのあり方を徹底して、その役割を明確化する観点から、地域における公益的な取り組みを行う責務を今回法律上規定するということとしたところでございます。

高橋(千)委員 いろいろなことをおっしゃったので、まず一つ目の、認識を共有するかという点においては、多くの法人がみずからの判断でやられているという答弁だったと思うんですね。

 それで、なぜ本法案が、二十四条の二項、「経営の原則等」に、地域における公益的な取り組みを改めて義務づける、今までやっていると言っておきながら、なぜそれを義務づけなければならないのか。お願いします。

鈴木政府参考人 今回、二十四条二項の経営の原則に、地域における公益的な取り組みを責務規定として置いた趣旨でございますけれども、基本的には、社会福祉法人は、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、社会福祉事業の中心的な役割を果たすだけではなく、営利法人など他の事業主体では対応できない幅広い福祉ニーズに積極的に対応する、こういう位置づけで、その必要性もますます求められているわけでございます。

 今先生おっしゃったように、先日の参考人もおっしゃっておられましたけれども、さまざまそういった取り組みをしておられる、しかしながら、それがなかなか国民の皆さんに御理解いただけていないということもございます。

 したがいまして、今回の法律改正の中では、そもそも社会福祉法人の位置づけ、責務に内在しておりますこういった地域における公益的な取り組みについて法律上も明記をいたしまして、こうした取り組みが広く行われる、そういった努力義務もあるし、そういうこともやっておられるということを国民の目に見える化するという趣旨から、この責務規定を設けたところでございます。

高橋(千)委員 内在していることを評価して支援をするというんだったらわかるんですけれども、見えるようにやれよ、しかも、それは無料、低額でやれという話ですから、全然方向が違ってくると思うんです。

 それで、資料の一枚目を見ていただきたいんですが、これは四月十七日の社会・援護局福祉基盤課長通知、「社会福祉法人の「地域における公益的な取組」について」。

 これは七月八日の本委員会で我が党の堀内議員が取り上げた文書そのものなんですけれども、なぜこの法案が成立する前にこのような通知を出したのかという議員の質問に対して、大臣は、「現行の法体系のもとでも、地域における公益的な取り組みについて、社会福祉法人の本旨に即して積極的に取り組むことが求められている」と答弁したわけです。

 私、これは答えにはなっていないと思うんですね。だって、現行でできていれば何もあえて法改正をする必要はないわけですから。それを、法改正を待つまでもなくといって通知を出したということの意味は何なのかということなんですね。

 それで、通知の中の真ん中ら辺に書いていますけれども、「社会環境等の変化に伴い、その位置づけは変化し、」「今日的な意義は、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的役割を果たすとともに、他の事業主体では対応できない様々な福祉ニーズを充足することにより、地域社会に貢献していくことにあります。」これは、今大臣が読み上げたこととほぼ同じ文章です。

 それで、「「規制改革実施計画」においては、「一定の事業規模を超える法人に対して、法令等での義務付けに先駆けて」、法律が通るか通らないかを待たずにやれということですよね、「社会貢献活動の実施を要請する」こととされています。」と説明しています。

 それで最後に、「このような取組を行うことは、法整備を待つことなく、社会福祉法人がその本旨に基づき果たすべき社会的使命です。」とまで言っている。

 しかし、いつから社会貢献活動が社会福祉法人の本旨になったのか。その根拠は現行法のどこにありますか。

塩崎国務大臣 社会福祉法人は、社会福祉法の第二十四条におきまして、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を行う存在として位置づけられておりまして、それに基づいて、先ほど来申し上げているように、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的な役割を果たす、そして同時に、地域におけるさまざまな福祉ニーズに対応するとともに、制度のはざまにございます多くの人々、こういった方々への支援を行うことが求められているというふうに考えております。

 また、こうした公益的な取り組みは社会福祉法の第二十六条の公益事業として行うこととされておりまして、今回の改正におきましては、人口構造の高齢化、そして、地域社会や家族の変容に伴って福祉ニーズが多様化、複雑化する中で、社会福祉法人の役割がますます重要になってきていることを踏まえた上で、税制優遇措置が講じられている公益性の高い法人としてのあり方を徹底する観点から、地域における公益的な取り組みを行う責務を法律上規定するということにしたものでございます。

高橋(千)委員 ちょっと今、局長に確認をいたしますけれども、根拠法は何かと私は聞いております。

 二十四条を最初におっしゃいました。これは、主たる担い手として云々というのは、結局、例えば介護であれば介護報酬を受けて事業を担っている、そういうことを趣旨として言っていると思うんですよね。

 今の、はざまというのは別な話ですよね。制度のすき間を担うというのを大臣がもし二十六条で読んだとするならば、その根拠になり得るのか。しかも、これを広い意味でなり得るとすれば、「経営する社会福祉事業に支障がない限り、」と書いている、そういう意味でよろしいでしょうか。

鈴木政府参考人 ただいま大臣が御答弁申し上げたとおり、法律的な本旨の根拠でございますけれども、現行法の二十四条でございます。

 この二十四条は、平成十二年のいわゆる社会福祉構造改革の際の法律改正で新設をされたものでございまして、その際、この二十四条に基づきます公定解釈といたしまして、これは種々の解説書等にも明記をされておりますけれども、社会福祉法人は、制度のはざまに落ちてしまった人々を救済していくために、創意工夫を凝らした福祉経営を行いつつ、社会福祉サービスの供給確保を中心に担う高い公共性を有する特別な法人類型である。こういうような趣旨につきまして、こういうような趣旨というのは、制度のはざまにいる方々に対して救いの手を差し伸べる、こういう趣旨につきまして、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を行う、こういう規定ぶりとしたものである。

 したがいまして、ほかの主体ではできないような、制度のはざまにいるような方々の支援も含めて地域における福祉需要を満たす、これを本分とする存在として捉えられるべきものが社会福祉法人であり、それを社会福祉法上、二十四条においてこのように規定したというのが公定解釈でございます。

高橋(千)委員 今、行いつつと言ったわけですから、解釈を読み上げましたけれども、それが主たる任務ではないでしょう。はざまをやるのが主たる任務なんですか。

鈴木政府参考人 今御答弁申し上げたとおり、主たる任務は社会福祉事業でございます。

 したがいまして、今回の法律の中でも、地域公益的な活動はあくまで責務として位置づけられておりますし、それから、社会福祉充実計画の検討の順位の中でも、地域公益的な活動を一番に置いているのではなく、やはり社会福祉法人の本分であります社会福祉事業を維持し、充実していく、これをまず第一に検討していただき、さらに財務的な余裕、地域のニーズがある場合に、本旨に基づいて地域公益的な活動に充てていただく、こういったことを法律上も位置づけておりますので、従来からの社会福祉法に基づく考え方を踏まえて今回の措置も講じたということでございます。

高橋(千)委員 何か主たる任務が逆立ちしたような議論をしては絶対ならないと思うわけです。

 やはり私は、本旨は憲法二十五条そのものだと思うんですね。社会福祉法人は民間法人であります。でも、憲法二十五条に基づく国と行政の担う仕事を実施している。だから、憲法八十九条の「公の支配」に属する法人として、行政からの補助金や税制優遇を受ける一方で、基本的に社会福祉事業のみを経営すべきという原則論のもと、所轄庁の指導監督を受けてきたというのが経緯だと思うんですね。この文章は、あり方検討会の報告書をそのまま読みました。

 優遇されているところばかりが強調されているけれども、決してそうではない。だからこそ、社会福祉法第六十一条、「国及び地方公共団体は、法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し、又はこれらの者の財政的援助を求めない」と定めているのではないでしょうか。ここはリンクしているんじゃないかと思うんですね。

 だから、社会の環境が変わったからといって、それをなぜ社会福祉法人の本来任務と言うのか。しかも、補助金を受ける制度の対象外のことをやれという意味ですよね。公の支配に属しない慈善事業や博愛の事業をやるべしと言っているのと同じ、解釈改憲みたいなものになると思いませんか。

鈴木政府参考人 社会福祉法人が事業をしていくに当たりまして、その全てを補助金に頼るということであると、それはそういうことではないと思います。

 社会福祉法人は、補助金を初めさまざまな財源も活用しながら、しかし、自分の経営努力も含めて、さまざまな工夫をして地域の福祉ニーズに応えていく、これがやはり社会福祉法人の本旨でございまして、それについて、社会福祉法に先ほど御答弁申し上げたような形で位置づけられているということでございます。

 したがいまして、そういったことを改めて今回法律上明定して、内在しているものを確認したということでございますので、今回の措置によりまして直ちに、例えば先生が今おっしゃいました社会福祉法六十一条との抵触問題といったものは生ずることはないものというふうに考えてございます。

高橋(千)委員 昨年のあり方検討会の報告書では、非営利法人としての社会福祉法人について、「社会福祉法人、ボランティア、NPO、住民団体といった非営利組織は、1政府の失敗の補完機能、2市場の失敗の補完機能を担っている」と書いてあります。

 政府の失敗というのなら、それを制度化せずに、社会福祉法人に転嫁をするというのはおかしい。制度のすき間がどうしてもあるというなら、なぜそれを無料、低額で行え、それが本来任務となるのか、到底納得できません。

 しかも、参考人がそれぞれ語ったように、大臣も先ほど認めた、大なり小なり地域貢献を行ってきたとそこで認めているんですよね。なのに、それを何か責務規定にしなければならないというのはおかしいとさっきから議論しています。

 そこで、四・一七通知にもあるように、毎事業年度終了後に所轄庁に届け出ることになっている現況報告書の中に、「地域の福祉ニーズへの対応状況」に記載しなさいということを求めています。だけれども、この対応状況というのは、今つくったものではなくて前からあるわけですよね。そうすると、取り組みの状況はどのようになっているでしょうか。

鈴木政府参考人 今御指摘ございましたように、現在の仕組みにおきましても、毎事業年度終了後に所轄庁に現況報告書を届け出ていただいておりまして、その中には「地域の福祉ニーズへの対応状況」というものを記載するように求めているところでございます。

 しかしながら、今の社会福祉法の仕組みにおきまして、今御指摘のあった「地域の福祉ニーズへの対応状況」、この資料、データについても実は所轄庁どまりでございまして、基本的に、自動的に国の方まで上がってくるような法律上の仕組みにはなっておりません。それ自体一刻も早く改善すべきことであり、こういったものについてきちんと整備をしていかなければならないというふうに思っております。

 したがいまして、今の御質問に対する直接のお答えとしましては、国として、こういう具体的な全体の状況であるというものを直ちにお答え申し上げるものはございませんけれども、今回の改革におきまして、集計したデータについてデータベースをつくって、国としてあるいは各地域としてきちんとそれを国民、住民の前に御説明できるような仕掛けをつくろうということで、今回の法案を提案させていただいております。そういうことで御理解を賜りたいと思います。

高橋(千)委員 結局、欄はつくっている、その書く欄は。みんなそれぞれ頑張っている。だけれども、それが結局、見てもいない、集計もしていない。わかっていないのに、もういきなりそれを義務化、皆さんは責務規定とおっしゃいますけれどもね。しかも、内部留保が、福祉充実残があれば地域公益事業に再投下せよというのは、余りにも乱暴ではないですか。

 さっきから言っているように、六十一条は、肩がわりさせてはならないということと同時に、不当な関与を行わないと書いているわけですよね。不当な関与じゃないですか、実態もよくわからないでやりなさいと言うというのは。違いますか。

鈴木政府参考人 まず、データとして自動的に国へ上がっていく仕組みがないので、これを改善するという点については御理解を賜りたいと思っております。

 その上で、今回の仕組みについては、法人の財政状況にかかわりなく、とにかく義務として、例えば無料、低額による地域公益的な取り組みをやれということを規定したものではございません。

 繰り返しになりますけれども、事業継続に必要な財産というものをしっかり適正に確保した上で、さらに財務に余裕がある場合について、そして地域にニーズがある場合にはまず社会福祉事業、そしてさらに財務的な余裕、地域のニーズがある場合に地域公益的な取り組みということで、あくまで法人の置かれた財政状況に応じて適切に措置をとっていただけるような仕組みを講じておりますので、必ずしも不当な関与といったことではないというふうに思っております。

高橋(千)委員 それは、充実残があって余裕がある場合と、一般的に責務規定を置いた場合と、二種類あるじゃないですか。お金があってもなくてもやるべきだというふうに書いたわけですから、そのことを言っています。

 それから、その余裕の中身がまだ決まっていないのに、そして今の、さっきから言っているように、仕組みがないんだ、まだ頑張ってやっている状態がわかっていないと。だったら、それをつくってから議論しなさいよと言いたいわけですね。

 今わかっているのは、社会の誤解だとか世間の風当たりが強いと言っているけれども、それだってつくり出された議論じゃありませんか。

 キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹の松山幸弘氏が、この方はあり方検討会の委員でもあるわけですけれども、二〇一一年の日経新聞に、「黒字ため込む社会福祉法人 復興事業への拠出議論を」とか、「純資産は十三兆円規模 優遇に見合う役割果たせ」というコラムが出発点で、「社会還元しなければ優遇受ける資格なし」とまで指摘をして、二年前に出された、特別養護老人ホーム一施設当たり平均約三億一千万のいわゆる内部留保があると言われ続けてきたわけですね。

 だから、風当たりをつくってきたんですよね。みんながそう思っているわけじゃないですよ、お世話になっている方たちがいっぱいいるわけですから。全く逆立ちしていると思うんです。

 確認をしますけれども、この調査は全数調査ではありません。また、明確な内部留保の基準がない中での調査ではあるけれども、そういう中で得られた結果は、実在内部留保額が多いと判定された特養は約三割であり、少ないと判定された特養は約五割であった。つまり、少ない方が多かった。間違いないですね。

鈴木政府参考人 今先生の引用された調査については、そのような記述があったかと記憶しております。

 いずれにいたしましても、この実在内部留保という中に、先ほどの質疑でもございましたけれども、実は、事業継続に必要な財産まで含まれる、例の三・一億の中にはそういうものも、現在事業に使っています土地建物の価額まで含まれるということでありまして、それ自体非常に、一定の限界のある、ある意味で不十分な調査であったろうと思います。そういう中で、さまざまメディアからの御指摘もありまして、社会福祉法人の財務運営に対する疑念が、これは事実として国民の皆さんの間に生じてしまったということだろうと思っております。

 しかしながら、それに対してエビデンスを持ってきちんと反論するようなスキームが今の法制上ございませんので、これは、本当に真面目に事業を展開しておられる社会福祉法人の皆さんにとっても非常に不幸なことである、この状況を一刻も早く改善しなければならないということで今般の仕組みを御提案申し上げておりますので、その点につきましてはどうか御理解を賜りたいと思います。

高橋(千)委員 明確な定義がないから、あるいは必要な財産まで含まれているから、法律をつくって証明していくんだと。

 これは議論が逆立ちしていると思います。立法事実がない。それをきちんと証明する努力をしながら、法律が必要であれば別途検討していけばいいのであって、法律をつくって、しかも、議論の中では詳細なことは出てこないわけですよね、後で省令で落ちていくわけですから。それで、内部留保が実はないことを証明せよみたいな、そういう理屈は全く逆立ちしていると言わなければならないと思います。

 さらに、これは特養ホームの数字なわけですよね。今数字がないのに、保育も障害福祉も、社会福祉法人全体が対象となるのはなぜですか。

鈴木政府参考人 社会福祉法人の事業なり財務の状況をきちんと国民の皆さんに御理解いただくためには、やはり全国統一の、しかも、いろいろな事業の種類にかかわらず、しっかりした、客観化された、統一された基準のもとに、それぞれの法人が保有している財産の内容、内訳、そして事業継続に必要な額とそれ以外の額、こういったものをきちんと算出できることは必要だと思っております。

 こういうものをきちんと実行するためには、やはり法制上の仕組みとしてこれを位置づける必要がございますので、今般、事業の種類にかかわらず、これを法制上位置づけて、それによりまして、全ての社会福祉法人につきまして国民の皆さんに御説明できるような形でデータをそろえていただく、こういった取り組みをしたいということでございます。

高橋(千)委員 誤解が解ける、説明ができる時点になって、法人がもたなくなっているかもしれないですよね、このようなやり方では。本当にそれを指摘したいと思います。

 資料の二枚目を見ていただきたいと思います。これは、介護事業を実施している大手株式会社の売上高及び営業利益の推移を、五年分の変化、これはグラフもちょっと調査室にお願いをしてつくっていただいたわけですけれども、よく聞く名前がベストテンに入っております。見てわかるとおり、増収増益をしているわけなんですね。

 原本のみずほ銀行産業調査部の分析によりますと、例えば二〇一三年度の大手十グループの連結業績は、介護サービス利用者の増加や既存施設の入居率向上、拠点数の拡大等により、売上高は前年度比六・七%増の四千九百三十二億円を計上、営業利益については前年度比七・七%増の三百八十四億円を計上している。大手十グループのうち七グループが増収増益で、トップのニチイ学館は売上高千四百六十七億円、営業利益百二十八億円、これは過去最高を記録しているということであります。

 そこで伺いたいのは、確かに税の扱いが違うとはいえ、原資は公費である、ここは違いはないわけですよね、なのに、株式会社が介護事業分野で利益をこんなにも上げているというのはなぜだと思いますか。また、社会福祉事業を担う事業者として、国は何も言えないのでしょうか。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、民間の営利企業が福祉関係事業に参画をするかどうかということについては、介護保険の導入の際にさんざん議論をしたわけでありまして、その際から導入するということになりました。

 介護保険は、基本的には民間活力も生かしたサービス提供が行われるものであって、介護報酬については、御指摘のように、株式会社の実態も含め、介護サービス事業者の経営実態等を考慮した上で報酬設定というものが、調査をした上で行われているわけでございます。

 今般の社会福祉法人の見直しにつきましては、社会福祉法人の有する公益性と非営利性の性質を踏まえた上で行われるものであって、逆に、株式会社がもうけ過ぎじゃないかというお話を今いただいたわけでありますけれども、先ほど、これまた足立議員の際に局長から答弁したように、株式会社というのは株主による出資と持ち分がその本質であって、その特性を生かした効率的な事業運営が特徴であって、この効率的な事業運営を、社会福祉法人にもいい意味での影響をもたらしてくれるかという期待もあって導入したわけでありますけれども、株式会社に今度配当規制を課すとかいうようなことは、このような株式会社の本質からしてなかなか難しいわけでございます。

 また、高齢化等に伴って福祉ニーズはふえる一方であり、また多様化も進むわけであって、これを踏まえて、営利法人を含めた多様な経営主体が参画する中でサービス供給の確保を図るということが政府としても担保をしなければいけない大事な要素であるわけであって、配当を制限した場合には株式会社の参入の阻害になるということにもなりかねないということで、政策的に難しいのではないかというふうに思います。

高橋(千)委員 それは足立委員が質問したことであって、私は何も配当規制が云々なんてことは言っておりません。

 まず、株式会社がなぜ介護の分野で利益を上げていると思いますかと聞いたんです。

三浦政府参考人 御案内のとおり、介護保険のサービスの事業を展開している事業体といたしましては、先ほど来ございましたような社会福祉法人もございますし、また医療法人、あるいはこのような株式会社を含めた営利法人、多様な事業主体がございます。

 そういう中で、やはり民間の経営努力というものもあろうと思いますし、何よりも、介護保険のサービス自体が高齢化の進展に伴いまして拡大しているという状況もございます。

 それとあわせて、きょう委員のお示しいただいた資料というのは、まさに表題に書いてありますように、大手の株式会社ということもございまして、やはり、これは推測ではございますけれども、例えば規模の経済ですとか、そういうものも影響している可能性はあるだろうというふうに考えております。

高橋(千)委員 まず、同じ原資なのに、なぜ利益を上げているのか、そこからちゃんと議論しなければだめだと思うんですね。

 やはり、今ちょっとおっしゃっていただきましたけれども、スケールメリットというのがあるんだろうと。そのことについても、次の法案にも非常に関係してくる、社会福祉法人に対しても規模の拡大を求めているという議論がありますよね。

 特徴があるのは、介護報酬が改定されれば、利益の上がる事業にシフトするわけですよね。点数が高い方にどんどん変えていく。二十四時間の方がよければそっちに行く。だけれども、社会福祉法人には使命がありますから、簡単には移せないわけですね。まして撤退なんて簡単にはできません。そこが決定的に違うと思うんですよ。もうからないと思ったら撤退もできるし、あるいは、もうかると思えば集中もできる。そこにやはり大きな違いがあるだろうと。

 もちろん、持ち分の問題だとか、そうしたこともあると思うんですけれども、ただ、そこに対して国が何も言えないのかと言ったのは、具体的なことを言ったわけじゃなくて、だけれども社会福祉事業を担う事業者でしょうということを言いたかったわけなんです。

 例えば、参考人質疑で、内部留保の調査の事務局を務めた明治安田生活福祉研究所の松原由美氏は、「一部の社会福祉事業に営利法人が参入しておりますけれども、それは、供給量確保と多様なニーズに応えるためでありまして、この事業で利益最大化だとか配当拡大を狙ってもらうことが本旨ではございません。社会福祉事業においては、営利法人であっても、非営利組織的考えに基づく経営が求められると思います。」と述べております。

 これは当たり前のことですよね。大臣、いいですか。

塩崎国務大臣 基本哲学としてはそのとおりだと思います。

高橋(千)委員 そういうことなんですよ。最低そこを認めなければ、社会福祉事業を担っているんだから、そして原資は公費なんだから。そこを、だけれども民間企業だから何も言えないんだということを一方では言っておきながら、そっちに合わせなさいと、法人を。その議論がおかしいと言っています。

 実際に、介護事業における虚偽の指定申請や不正請求などによる指定取り消し処分の七割から八割が営利企業なわけですよね。だから、やはり、イコールフッティングというなら、まずこういうところからきちんと正していくということが必要なのではないかと指摘をしたいと思います。

 問いが非常に間に合わなくなっておりますので少し飛ばしますけれども、内部留保と並んでダブルパンチなのが、介護報酬引き下げの根拠となったいわゆる収支差八・七%という数字であります。

 これについてはこれまでも指摘をしてきたところなんですけれども、全体では二・二七%マイナスと言われているけれども、介護職の処遇改善分などを引きますと四・四八%で、過去最大と言われているわけです。ですから、例えば特養一カ所でも月五十万以上の減収、それ一年分ですから、法人全体としては、いろいろな施設をやっていますので、数千万にもなる減収はざらにあるということです。

 そういう中で、実は、収支差をはじき出した経営実態調査は、これは三月のデータだけで見ている。そうすると、これでは、ボーナスみたいな支出がないかわりに公費などの収入は入ってきていて、年間ではむしろプラスが立つ月なんだ、そこだけを切り出して調査したというなら、実態と違うのではないかということが一つ。

 それから、報酬引き下げの影響は大きいわけですから、内部留保云々の前に、その影響があるやなしや、その実態を見て、三年を待たずに対策を打たなければならないわけで、まずそこをきちんとやらなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、介護事業経営実態調査の収支差についてお話がございましたけれども、今回の介護報酬の改定は、さまざまな要素を勘案して、総合的に判断をして改定をしたわけでありまして、当然のことながら、介護職員の処遇改善とか物価の動向、事業者の経営状況、それから地域包括ケアの推進の必要性等々、さまざまな要素がございました。

 介護事業者の経営状況を把握するための調査というのは、直近の収支状況を報酬改定に反映させるために、改定の前年の三月時点の収支の状況を調査してまいりましたけれども、介護給付費分科会の委員等からは一年分の収支を把握すべきなどの御意見も頂戴をしておりまして、現在検討を進めておるところでございます。

高橋(千)委員 検討を進めておるという答弁でした。だったら、これは一遍にやらないで、つまり、今の法案を一遍に施行しないで、この調査をきちんとやって、影響が出ないんだ、むしろ十分やっていけるんだというのであればわかりますよ。そうじゃなくて、片や内部留保もある、片や収支差もあるといって、一遍に、充実残を使いなさいというふうな議論をしないということを指摘したいというふうに思います。

 それで、御案内のとおり、社会福祉法人は人件費率が六割から七割なわけですよね、前から議論されている。それで、加算は介護職のみであるために他の職種への加算を全くしないということはなかなかしにくいというのが現場の声です。ある施設長は、全体の三分の二くらいが介護職で、その他の職員には半分は少なくともアップしたいかなとか、そういうことをおっしゃっておりましたけれども、何らかの対策をとるためにはやはり身銭を切らざるを得ないということなんですよ。

 そういう中で、担い手の確保が、その上さらに地域貢献もしなさいとなると、さらに困難になるのではないでしょうか。

鈴木政府参考人 先ほども御答弁したとおりでございますけれども、今回の社会福祉充実計画を通じます地域公益活動についての取り組みは、何か、財源がないのに、そこを捻出してぜひともやらなければならないといった義務づけをするものではございません。あくまで、その法人の財政状況に応じて無理のない計画をつくっていただく、言葉をかえて言えば、その法人が保有している資産の使い道について説明する計画をつくっていただくということでございます。

 したがいまして、今先生御指摘ございましたように、これによって、ある意味優先順位が一番高いとも言える担い手の確保が困難になるといったようなことはないものと考えております。

高橋(千)委員 無理のない計画をつくるとか説明するとか、そういうこと自体が大変な負担になるということを指摘しています。

 今だって、介護の職場を選んだ理由のトップは、やりたい職種、つまり、やりがいなんですよね。だけれども、慢性的な人手不足で、そのやりがいや仕事のおもしろみをわかる前にやめてしまうというのが実際のところである。

 例えば、三対一の基準では到底対応できない、食事させ、トイレに行き、風呂に入れて寝かせるだけで精いっぱいだ、利用者を人間として扱うことができない、職員が少ないために夜勤明けの職員が入浴介助をしている、こういう実態がるる訴えられているわけですね。だから、お金は出ないんだけれども二対一の配置、それでも不十分だという中でやっている施設も多いわけです。

 だったら、残ったお金を云々かんぬんと言う前に、むしろ、配置基準を厚くして基本報酬を上げることで担い手を確保することが、本来まずやるべきなのではないでしょうか。

塩崎国務大臣 今、三対一、二対一の話がありましたけれども、介護施設につきましては、利用者の状態に応じて弾力的な対応を可能とするために、最低基準を設定して、入所者の数三人ごとに一人以上の介護・看護職員の配置を定めているわけでございます。

 一方で、介護報酬につきましては、当該サービスに要する平均的な費用の額を勘案して設定することになっておりまして、最低基準の配置職員数をベースに積み上げを行っているわけではございません。

 例えば、要介護度が高い入所者に対しましては手厚く報酬が設定されているほか、二十七年度の介護報酬改定におきましても、重度の要介護者や認知症高齢者等に対し要した手厚い介護につきましては、各加算において評価の充実を行っているわけでございます。

 さらに、今後、介護ニーズの拡大が見込まれる中で介護人材を確保するためには、参入促進、そして資質の向上、労働環境、処遇の改善のための取り組みを総合的に進めることが必要であって、介護職員処遇改善加算、この一万二千円相当の拡充を行うというのも今回の改定の際の大きな柱になっているわけでありまして、この運用の厳格化を図って、介護職員の処遇が着実に改善されるように、引き続き都道府県と連携しながらしっかりと運用してまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 加算ではなく、私がきょう指摘をしたのは、本当に必要な配置をちゃんと国が認めるべきだということ、そこから始まって、処遇の改善というのがきちんと見積もられていくんじゃないかということを指摘しています。そういう立場に立たずに、余裕があるところは処遇改善に再投下してもいいよというふうな議論が若干あるわけですが、それはやはり逆立ちしているんだろうと言わなければならないと思います。

 きょう、本当は、さっき浦野委員が質問をした国の責任と社会福祉法人の肩がわりの問題について、もう少し具体的に介護の問題で指摘をしたかったんですが、時間が来ましたので、やはり質疑は続行するべきであると重ねて指摘をして、終わりたいと思います。

渡辺委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 この際、本案に対し、岡本充功君外一名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。岡本充功君。

    ―――――――――――――

 社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岡本(充)委員 ただいま議題となりました社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、第一に、社会福祉法人は、社会福祉充実計画に社会福祉充実事業の規模及び内容を記載するに当たっては、当該社会福祉法人が行う社会福祉事業に従事する者の処遇について、民間事業者の従業員の給与その他の事情を考慮して必要な改善措置を記載するよう努めなければならない旨の規定を追加すること。

 第二に、障害者支援施設等の業務に従事する被共済職員に係る退職手当金の支給に要する費用を国の補助等の対象から除外することとする改正規定を別に法律で定める日まで施行しないこととすること。

 第三に、政府は、平成三十二年度までに、改正後の社会福祉士及び介護福祉士法の施行の状況、介護サービスに従事する者の処遇の改善その他の介護サービスに従事する者を取り巻く状況の変化等を勘案し、養成施設を卒業した者に係る介護福祉士となる資格の取得に関する制度の見直しについて検討を加え、必要があると認めるときには、准介護福祉士の制度の導入に係る改正規定の施行の延期及び養成施設を卒業した者に係る介護福祉士となる資格の取得に関する経過措置の期限の延長を含め所要の措置を講ずるものとする規定を追加すること。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

渡辺委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

 この際、岡本充功君外一名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 衆議院議員岡本充功君外一名提出の社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。堀内照文君。

堀内(照)委員 私は、日本共産党を代表し、社会福祉法等改正案に反対の討論を行います。

 社会福祉法人は、家族関係者の血のにじむような資金づくりの上に成り立ち、ぎりぎりの運営を強いられています。当事者、家族、職員などから寄せられる、内部留保などどこにもない、せめて実態を把握してから議論してほしいとの訴えは当然であり、七時間の質疑で採決するなどあり得ません。

 以下、反対の理由を述べます。

 第一に、実態のない内部留保を前提に、営利企業との公平性を強調し、全ての社会福祉法人に無料、低額の福祉サービス提供の責務を課すとともに、余裕財産の地域公益活動等への投下を義務づけています。

 これは、格差、貧困の拡大や社会福祉制度の後退などで生じた問題への対処を社会福祉法人の慈善的事業に肩がわりさせようとするもので、さらなる制度後退につながります。

 重大なのは、利用者への支援の質、量の低下、労働者の処遇悪化につながることです。現在の報酬単価、職員配置基準は、人として当たり前の生活を保障するにはほど遠い水準です。それを放置したまま新たな責務を課すことなど許されません。

 第二に、福祉従事者の労働条件の一層の悪化をもたらすことです。

 障害者施設への退職共済の公費助成を廃止することは、人材確保に逆行します。極めて低い賃金水準の上、退職金も保障されなければ、人手不足に拍車をかけることは明らかです。

 フィリピンEPAのため導入された准介護福祉士資格は、介護職全体の労働条件引き下げにつながるもので、廃止すべきです。

 参考人も語られたように、社会福祉法人には、資金を集め、自主的、先駆的に事業を立ち上げ、制度化をなしてきた歴史があります。重度障害を持つ子供たちの卒業後の進路先がなかった時代から作業所づくりを続けてきた女性から、手紙をいただきました。

 受け入れてくれるところがないのなら、行ってきますと毎日出かけていく場所を自分たちでつくるしかないと、学校の先生方や地域の方々の力をかりて社会福祉法人を立ち上げ、作業所をつくってきました。

 障害のある子供を抱えながら、バザーを初め、さまざまな資金づくりに身を粉にして取り組んできました。我が子たちがさまざまな仕事に取り組み、社会の一員として頑張っている姿に接し、私たちも喜びを持てる親に成長させてもらいました。そして、社会資源を私たちの手でつくり上げてきたことに誇りを持ってきました。

 しかし、今は、運営は厳しく、人手不足も深刻です。我が子たちのあすが続くのか、本当に不安です。

 内部留保なんてとんでもありません。福祉現場が人間らしく暮らせる場となるよう、徹底した改善こそ望みます。

 社会福祉制度が国民の権利であることを否定し、公的責任を投げ捨てるとともに、社会福祉法人の役割の変質を迫る本法案は廃案にすべきであることを指摘し、討論を終わります。(拍手)

渡辺委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、社会福祉法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、岡本充功君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 この際、本案に対し、高鳥修一君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。西村智奈美君。

西村(智)委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 社会福祉法人の経営組織のガバナンスを強化するには、評議員、理事等の人材の確保や会計監査人の導入等、新たな負担も懸念される。このため、特に小規模の法人については、今後も安定した活動ができるよう、必要な支援に遺憾なきを期すこと。

 二 いわゆる内部留保の一部とされる「社会福祉充実残額」を保有する社会福祉法人が、社会福祉充実計画を作成するに当たっては、他産業の民間企業の従業員の賃金等の水準を踏まえ、社会福祉事業を担う人材の適切な処遇の確保に配慮することの重要性の周知を徹底すること。

 三 事業の継続に必要な財産が確保できない、財産の積み立て不足が明らかな法人に対しては、必要な支援について検討すること。

 四 地域公益活動の責務化については、待機児童、待機老人への対応など本体事業を優先すべきであり、社会福祉法人の役割と福祉の公的責任の後退を招くことのないようにすること。社会福祉法人設立の主旨である自主性と社会福祉事業の適切な実施に支障を及ぼすような過度の負担を求めるものではないことを周知徹底すること。

 五 所轄庁による社会福祉法人に対する指導監督については、一部の地域において独自の取扱いが散見されるとの指摘もあることから、国の基準を一層明確化することで標準化を図ること。

 六 現下の社会福祉施設における人材確保が困難な状況に鑑み、介護報酬、障害福祉報酬の改定による影響を注視しながら、職員の処遇の実態を適切に把握した上で、人材確保のための必要な措置について検討を行うこと。

 七 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の公費助成廃止に当たっては、職員確保の状況及び本共済制度の財務状況の変化を勘案しつつ、法人経営に支障が生じないよう、障害者支援施設等の経営実態等を適切に把握した上で報酬改定を行うなど必要な措置を講ずるよう検討すること。

 八 准介護福祉士の国家資格については、フィリピンとの間の経済連携協定との整合を確保する観点にも配慮して暫定的に置かれたものであることから、フィリピン政府と協議を進め、当該協議の状況を勘案し、准介護福祉士の名称、位置付けを含む制度の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずること。

 九 介護職員の社会的地位の向上のため、介護福祉士の養成施設ルートの国家試験義務付けを確実に進めるとともに、福祉サービスが多様化、高度化、複雑化していることから、介護福祉士が中核的な役割及び機能を果たしていけるよう、引き続き対策を講じること。

 十 介護職員の処遇については、正規・非正規、フルタイム・パートタイム等にかかわらず、均等・均衡待遇を確保するよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

渡辺委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、塩崎厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

渡辺委員長 次に、内閣提出、医療法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 医療法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎国務大臣 ただいま議題となりました医療法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 高齢化の進展に伴い、患者の疾病構造は多様化しており、患者一人一人がその状態に応じた良質かつ適切な医療を安心して受けることができる体制を地域で構築することが求められています。

 このため、昨年成立した改正医療法に基づき、平成二十七年度から、各都道府県において、地域医療構想の策定を進め、医療提供体制の整備を図ることとされておりますが、そのための一つの選択肢として、地域の医療機関相互間の機能の分担、連携を推進し、質の高い医療を効率的に提供するための新たな法人制度を創設することが必要です。あわせて、医療の公共性に鑑み、医療法人の経営の透明性を一層高める等の必要があるため、この法律案を提出した次第です。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を説明いたします。

 第一に、医療機関の業務の連携を推進するための方針を定め、当該方針に沿って、参加する法人の医療機関の業務の連携を推進することを目的とする一般社団法人を、都道府県知事が地域医療連携推進法人として認定する仕組みを創設することとしています。地域医療連携推進法人には介護事業等を実施する非営利法人も参加することができることとし、介護との連携も図りながら、地域医療構想の達成及び地域包括ケアシステムの構築に資する役割を果たすこととしています。

 第二に、医療法人の経営の透明性を高めるため、一定の基準に該当する医療法人の計算書類について、会計基準に従った作成、公認会計士等による外部監査の実施、公告等を義務づけることとしています。また、医療法人の役員がその任務を怠った場合の責任を明確にし、医療法人の適正な運営の確保を推進することとしています。

 このほか、医療法人の分割に関する規定を整備するとともに、社会医療法人の認定要件の特例等を設けることとしています。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日としています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

渡辺委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会


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