衆議院

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第34号 平成27年8月21日(金曜日)

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平成二十七年八月二十一日(金曜日)

    午前十時二十三分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 後藤 茂之君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 松野 博一君 理事 西村智奈美君

   理事 浦野 靖人君 理事 古屋 範子君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      加藤 鮎子君    木村 弥生君

      小松  裕君    白須賀貴樹君

      田中 英之君    谷川 とむ君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      中谷 真一君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    橋本  岳君

      比嘉奈津美君    堀内 詔子君

      前田 一男君    松本  純君

      松本 文明君    三ッ林裕巳君

      宮川 典子君    村井 英樹君

      阿部 知子君    大西 健介君

      岡本 充功君    中島 克仁君

      長妻  昭君    山井 和則君

      足立 康史君    井坂 信彦君

      牧  義夫君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    角田 秀穂君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   総務副大臣        二之湯 智君

   厚生労働副大臣      山本 香苗君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    高階恵美子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  谷脇 康彦君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 矢野 康治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  香取 照幸君

   参考人

   (日本年金機構理事長)  水島藤一郎君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十一日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     宮川 典子君

  田畑 裕明君     前田 一男君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     中谷 真一君

  宮川 典子君     新谷 正義君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     田畑 裕明君

    ―――――――――――――

八月七日

 新たな患者負担増をやめ、窓口負担の大幅軽減を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三七五〇号)

 全てのウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援とウイルス検診の推進に関する請願(阿部知子君紹介)(第三七五一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三七五二号)

 同(田中英之君紹介)(第三八四四号)

 同(村岡敏英君紹介)(第三八四五号)

 同(小島敏文君紹介)(第三八五三号)

 同(西村智奈美君紹介)(第三八五四号)

 同(漆原良夫君紹介)(第三八五五号)

 同(金子恵美君紹介)(第三八五六号)

 同(亀岡偉民君紹介)(第三八五七号)

 同(黒岩宇洋君紹介)(第三八八八号)

 障害児・者の介護・福祉・医療制度の抜本改正に関する請願(阿部知子君紹介)(第三七五三号)

 障害者福祉についての法制度の拡充に関する請願(阿部知子君紹介)(第三七五四号)

 同(江崎鐵磨君紹介)(第三八三七号)

 介護報酬引き下げを撤回し、国庫負担をふやして利用料と保険料引き下げを求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三七五五号)

 筋痛性脳脊髄炎患者の支援に関する請願(田畑裕明君紹介)(第三七五六号)

 同(星野剛士君紹介)(第三八四九号)

 現下の雇用失業情勢を踏まえた労働行政体制の拡充・強化を目指すことに関する請願(阿部知子君紹介)(第三七五七号)

 介護報酬引き上げの再改定に関する請願(堀内照文君紹介)(第三八一一号)

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(畠山和也君紹介)(第三八四六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、確定拠出年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本年金機構理事長水島藤一郎君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官谷脇康彦君、財務省大臣官房審議官矢野康治君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官樽見英樹君、年金局長香取照幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大岡敏孝君。

大岡委員 自民党の滋賀県第一区選出、大岡敏孝でございます。

 今回は、質問の機会をいただきましたので、確定拠出年金法等の改正案につきまして、謹んで質問をさせていただきます。

 まず、今回の法律案は、確定拠出年金、つまり、掛金を一定に定めて自身の責任のもとに運用をし、老後に一定の給付を受ける年金、これはDCとも言われておりますが、このルールや仕組みを改善しようとするものでございます。このDCに比較をして、日本でなじみのあった、勤続年数あるいは給料などに基づいて退職後に企業年金を受けたりあるいは退職金を受けたりするものは、確定給付年金、DBというふうに言われております。

 さて、そこで、今回の法案は、要約したものをお手元の資料1に示しておりますが、確定拠出年金、DCにつきまして、利便性の充実や対象の強化を進めています。この大きな視点からの狙いは何でしょうか、教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今回の法案でございますが、働き方の多様化あるいはライフコースの多様化といったものが進む中で、企業年金の普及促進、拡大を図ってまいりたいということで、老後に向けた個人の継続的な自助努力を支援していくということを主眼に置きまして今回の確定拠出年金法等の改正を行うものでございます。

 特に、公的年金の給付と相まって国民の老後の所得の保障を図るという観点からしますと、今お話のありましたDB、DC、私的年金の加入率を上げていくということが非常に重要であると考えておりまして、本法案では、私的年金の加入割合が相対的に低い中小企業に対しまして、その実施を促進するための方策、あるいは、老後に向けた国民個々人の継続的な自助努力の支援を進めていくという観点で、個人型の確定拠出年金の加入可能範囲の拡大といったような内容を柱とした制度改正をお願いしているところでございます。

大岡委員 ありがとうございました。

 次に、資料2をごらんいただきたいと思います。

 今回、加入可能範囲の拡大を進めています。これは大きな改善だというふうに思います。しかし、ごらんのとおり、働き方あるいは職種、立場等によって拠出限度額がばらばらでございます。

 国民からすると、仕事をかえる、あるいは立場をかえるたびに拠出限度額が変化するということになりますが、もう少し国民にわかりやすい仕組みにできなかったのでしょうか。どうしてこのような形としたのか、理由や根拠についてお話をいただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今回、個人型の確定拠出年金につきまして対象範囲の拡大を行ったわけでございますが、これにつきましては、一言で言ってしまいますと、制度をつくって以来拡充してきた中での経緯の中でこういった形になったということでございまして、一号被保険者、あるいは企業年金に入っておられない二号の方等々、それぞれの資格の特性に応じて設定をされてきたというのがこれまでの経緯でございます。

 現在、今制度改正をお願いしている前の形で申し上げますと、自営業者の方々、第一号被保険者の方につきましては、国民年金基金と共通で月額六・八万円という拠出限度額がございまして、この枠の中で国民年金と共通に御利用いただくという形ですし、企業年金に入っておられないサラリーマン等の方、これは現在でも個人型に入れるわけですが、この方々につきましては、ほかの企業年金に入っておられる方、そういった二号の方々が受けておられる税制の優遇と同程度の水準ということで二万三千円というものが設定された。

 今回の拡充に当たりましても、それぞれ拡充された方に応じて設定をするということで、例えば今回三号被保険者の方に拡充するわけですが、これにつきましては、厚生年金保険法の考え方ですと、いわば二階部分、年金の保険料を配偶者の方と共同で負担しているという考え方に立って、企業年金を実施していない方々、今の二万三千円の方々と同じ金額にするという形で設定をしたということでございます。

 御指摘の点は我々も一応問題意識は持っておりまして、今回、事実上全ての国民が個人型に入れる形になりますので、それぞれこれまでの経緯もあって設定してきたということもありまして、税制御当局のお考えもありますので、今後拡充を図る中では、やはり全体として国民に理解ができるような形で整理をするということを、これは今後の課題としてよく政府部内でも検討してまいりたいと思っております。

大岡委員 ありがとうございます。

 課題は認識しつつ一歩前進しているということで理解をしたいと思います。この点につきましてはまた後ほどもお話をしたいと思います。

 次に、限度額のレベルについてお尋ねをします。後ほど、海外の同様の年金との比較あるいは税の話も含めてさせていただきますが、話の流れ上、ここでお尋ねをしたいと思います。

 資料5、資料6をごらんいただきますと、アメリカ、イギリスに比べて、限度額、上限額は低いと考えます。もちろん、一気に上げられないというのは理解できますが、今後、個人や企業が、社員の意識あるいは老後に対する考え方などが変化をしてくると、それに応じて十分な備えができるよう、限度額、上限額を引き上げていくべきだと考えておりますが、政府としてどのような考え方でいるのか、お尋ねをしたいと思います。

香取政府参考人 今回の制度改正では、相対的に実施率が低い中小企業の方々にできるだけ企業年金を普及していただく、あるいは、今申し上げました個人型についてできるだけ対象を拡大するということで、できるだけ多くの方に加入をしていただけるような形にするということを主眼で制度改正をいたしました。

 現在でも、全厚生年金被保険者のうち企業年金に入っておられる方は四割程度ということですので、ここをできるだけ拡大してまいりたいということでございます。

 限度額は、これは私どもも大変重要な課題だと思っておりまして、確かに諸外国、アメリカ、イギリス等ですと、かなり高い限度額が設定されております。

 これについては、余り高い金額だと、金持ち優遇じゃないかという議論なんかも出てきてしまいますので、水準の議論というのは、税務当局とも御議論させていただいていますが、なかなか難しいんですが、先ほど、ばらばらになっているんだからそろえていくべきではないかという御議論もありますし、今後、私的年金といいますか、個人の自助努力で老後を保障するというそのことの重要性というのは高まってまいりますので、やはり今先生御指摘のような点も含めて、これからよく政府部内で議論をして考えてまいりたいと思います。

大岡委員 ありがとうございます。

 次に、資料3をごらんいただきたいと思います。

 今回の改正では、年金資産の持ち運び、いわゆるポータビリティーが大幅によくなっております。これは大変すばらしいことだと思います。

 しかし、よく見ますと、特に中小企業退職金共済とのポータビリティーは、マルといっても条件つきのマル、あるいはバツとなっているものも見受けられるなど、ポータビリティーに大きな課題があります。

 また、この表にはありませんが、中小企業の経営者を対象とした小規模企業共済というものがあります。これは意外と知られておりませんので、私自身も中小企業政策に力を入れている議員の一人として、さらなる周知徹底を進めているところでございますけれども、この小規模共済とのポータビリティーはどうなっているのでしょうか。

 これからは中小企業と大企業の間の労働移動というのがふえると見込まれておりまして、この中小企業退職金共済それから小規模共済との連携やポータビリティーをさらに高めるべきだと思いますが、政府としてどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生お話のありましたように、今回、各企業年金間のポータビリティーについては、大幅にその拡充といいますか、移動が可能になるような制度改正をお願いしているわけでございます。

 御指摘の中小企業退職金共済でございますが、これは、中小企業の従業員の福利厚生ということと中小企業の振興に寄与するということで、基本的には退職金制度ということになってございます。

 企業年金は、申し上げるまでもなく、公的年金の給付と相まって老後の保障、国民の老後の生活の安定と福祉の向上を図るということで、これは年金制度ということになってございます。

 退職金と年金というのは、一種、補完関係にあるものですので、そういう意味では共通する点も多いわけでございますが、制度の成り立ち、趣旨が違うということもございまして、これまでは極めて限定的にしか認められてこなかった。

 今回、一部認めることにしていただいたわけですが、今回は、企業再編等で、違う制度を持っている二つの企業が合併をする、特に、中小企業退職金共済を持っている会社と企業年金を持っている会社が合併いたしますと、現在ですと、この両者の間では全く別だということで移換ができないということになりますので、場合によっては、どちらか片っ方をその段階でやめる、その段階で一時金でお返しをするといったようなことが起こるということで、そういった形になりますと、退職金の観点から見ても年金の観点から見ても、本来の制度目的が達成できないということになるということで、こういった御議論を重ねて、今回は、合併等の場合に限ってこういったポータビリティーを認めていただくということで、お認めいただいたということでございます。

 小規模企業共済でございますが、これも基本的には中小企業退職金共済とたてつけが同じになりますので、これは、同様の理由から現在では認めておられないということになります。

 もともと、企業年金の議論をする中では、やはり退職金と企業年金の関係、いわば退職金の延べ払いのような形で企業年金の設計を、退職金から移行するという形で制度設計をされる企業も多いので、この点は、今後引き続き少し、先生の御指摘のような点も踏まえて、あるいは現場の企業の方々のニーズも踏まえてやはり検討していかなければいけない課題であると考えております。

大岡委員 ありがとうございました。

 次に、マイナンバーとの関係についてお尋ねをしたいと思います。

 かつて、いわゆる消えた年金、年金記録の不十分な管理が大きな問題となりました。今さらこのことの是非や責任について言及するつもりはございませんが、結果として、制度の限界あるいは人員を含む体制の限界などがありまして、四千億円の費用をかけたけれども、いまだに四〇%、二千万件が不明という残念な結果となりました。もちろん、回復されたとされる三千万件につきましても、この整合のやり方がずさんではないかという専門家の意見があることも承知をしております。

 さて、こうした年金の不整合が起きないようにしなければならない、そういう視点からは、私は、公的年金はもとより、私的年金についても早急にマイナンバーを導入するべきと考えております。

 年金の不整合を起こさず、確実に個人個人が自分たちの資産として年金資産を持ち歩ける体制をつくらなければならないと考えておりますが、公的年金、私的年金へのマイナンバーの導入スケジュールについて、それぞれどのように考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 まず公的年金でございますが、公的年金へのマイナンバーの適用につきましては、一応、これまで、今年十月からの番号通知、二十八年一月からの番号の利用開始というスケジュールを念頭に、番号の担当をしております内閣官房とも議論してまいりましたが、利用開始の時期に関しましては、大変申しわけないんですが、今回の年金の情報流出事案がございまして、それの原因究明と再発防止といったような状況も確認しながら最終的に判断するということが必要であろうかと思いまして、現時点ではそういうことになってございます。

 企業年金の方でございますが、これも私ども議論をいたしましたが、二十八年一月のマイナンバー法の施行のタイミングに合わせて導入をするというのは、ちょっとなかなか難しいのではないかというふうに考えてございます。

 これは、導入の可否について昨年来私ども検討してまいったわけでございますが、導入に係る各企業あるいは基金の費用負担の問題、それから保守、運用面の負担の問題、それと、今、厚生年金基金が解散プロセスに入っているということもございまして、五年間の特例期間中の解散というものが進んでいますので、そこの実務との関係というものもございまして、今の段階で二十八年一月からの導入ということは考えてございません。

 ただ、お話がありましたように、マイナンバーの活用は、企業年金にとっても、手続の簡素化でありますとか記録管理等で利便性の向上が非常に大きく期待できるものでございますので、今言ったような問題も今後踏まえて、できるだけ早い段階で導入ができるように検討を進めてまいりたいと思っております。

大岡委員 ありがとうございました。

 大きな一つ目の最後の質問として、今後の企業年金のあり方についてお尋ねをしたいと思います。

 DB、DC、それぞれメリット、デメリットがあるわけでございますが、残念ながら、大企業も倒産をする時代になりました。また、労働移動が起こることによりまして、勤続年数を最大の指標としてきたこのDBの制度に限界が出てきたということも一つの事実としてあらわれてまいりました。

 そうした中、もともと労働債権と思われていたDBも、それが守られないということが一部事例が出てしまったわけでございます。

 それは、皆さん御記憶だと思いますが、JALの破綻に伴う年金の減額、これも、もともと退職金あるいは企業年金は給料の後もらいだ、したがって労働債権だと思われていたわけでございますが、公的支援をするに当たって、当時の国民感情あるいは世論の圧力、さらにそれに流された政治の圧力等があって、労働債権だと思われていたDBも削減をされてしまったわけです。同様の事例が東京電力でも見られるわけでございますし、さらには、それほど個別の事案ではないんだけれども、似たような話として、厚生年金基金の代行返上も根っこは同じ話だというふうに思っています。

 そうした時代になってきたことを受けまして、やはりこれからは、私としては、確定拠出ですから、自分の掛けたものを持ち歩くということによって、会社が潰れようと、あるいは自己都合で退職をしようと、さらにはそういった特殊な事例に遭遇しようと、自分の年金はしっかり守られるというメリットを持ったDCにシフトをしていくべきではないかと考えておりますが、政府としてどのようなビジョンを持っておられるのか、教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 御指摘のように、企業年金は、DBと言われている確定給付型、DCと言われている確定拠出型、二つございます。

 もちろん、釈迦に説法でございますが、DBの場合には給付が確定しておりますので、事後的に掛金の変動が生じることになります。その意味では、企業側がより多くリスクを持っている、あるいは企業側がより多く責任を持っているという言い方もできるかと思います。DCは、それに対しまして、個々人が自分の選択で運用先を指定して、掛金をそこに企業が払い込むという形ですので、いわば個人個人の勘定が確立している制度ということになります。これは両方それぞれ、ある意味ではメリット、デメリットがあるということであろうかと思っております。

 今回審議をお願いしております法律改正の中では確定拠出にかかわる部分の制度改正が非常に多いわけでございますが、他方で、DB、確定給付型の企業年金の制度につきましては、法律上、今回は手続の緩和等のことしか法律事項はないわけですけれども、実は、これにあわせて、法律を伴わない制度改正として、積み立て不足に対応したいわゆるハイブリッド型の確定給付年金の創設等の措置についても検討しておりまして、私どもとしては、DB、DCそれぞれについて必要な改善を行って、企業あるいは個人それぞれが、いわばその特徴を生かして御選択ができるようにという形でそろえようと思っております。

 その意味では、法律改正の事項はDCが多いものですから、DBからDCに全体として移行するのかという御質問がよくありますが、私どもとしては、DB、DCそれぞれメリット、デメリットがありますし、従来はDBが多かったわけですけれども、先生御指摘のような、経済変動等に対してよりDBの方が脆弱だというようなこともありますので、そこはそれぞれの御判断で企業なり個人が選べるように、DB、DCそれぞれについて改善を図り、御判断いただく。その意味では、どちらかというような立場には政府としては立っておらないということでございます。

大岡委員 ありがとうございました。

 次に、海外の年金制度との比較についてお尋ねをしたいと思います。時間の関係上、三つ通告をしておりましたが、一つにまとめてお尋ねをしたいと思います。

 資料の4をごらんいただきますと、これはOECDの調査でございますが、海外先進諸国の年金給付水準の比較が載っています。これを、同様の制度を持っておりますアメリカ、イギリス、ドイツと日本を比べますと、目立ちますのが、この上から四段目の欄に入っております「労働人口の四〇―六五%をカバーする任意の私的年金」という部分が、残念ながら日本は数字が入らないという状況になっています。

 これはやはり大きな問題だと思っておりまして、特に日本では、自営業者、中小企業勤務者、それから第三号被保険者が私的年金の実施率が極めて低いというのが現状でございます。

 このことについて政府としてどのように認識をし、この対応策として、私は、イギリス等が導入をしておりますような私的年金の自動加入制度を導入するべきだというふうに考えておりますが、そうした視点から政府はどのように考えておられるか、教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 今先生御指摘のありました資料、これはOECDが行っている各国の企業年金制度の比較のデータを用いてつくられているものでございますが、諸外国でも、公的年金だけでございませんで、一定の割合を超えて加入率が高い私的年金はいわば公的年金に準ずるものということになっておりまして、よく所得代替率のデータなんかを使うときは、普及率の高い、あるいは義務的な私的年金というような概念もあるようですが、そういった原則加入が認められているような私的年金はいわば公的年金に準じて給付とカウントする。そういった意味では、私的年金と公的年金を合わせて考えるという考え方にだんだんなってきております。

 諸外国の場合は、例えば、労働協約で労使が合意をしますと従業員は全員自動的に企業年金に入るという仕組みでありますとか、あるいは、従業員に私的年金に加入することを企業側が義務づけるような制度といった形で、かなり私的年金に対して、より強い形で加入を促進する制度を持ってございます。

 日本の場合はこれをどう考えるかということなんですが、やはり制度のたてつけあるいは労使の慣行といったようなものが日本の場合にはちょっと状況が恐らく違っているんだろうということで、なかなかそこまで強制をするような形で加入をするというのは、これはもちろん、今後、労使のお考えが変わっていくなり、あるいはいろいろな議論の中でそういう方向は出てくるかもしれませんが、現段階ではなかなか難しいだろうということで、基本的には任意で加入をしていただくという制度の中でできるだけ普及をしていけるような形で、税制面、手続面その他で支援をしていくという形で普及拡大を図っていきたい。

 できるだけ普及拡大を図っていくという考え方にはもちろん立っておりますけれども、現時点では、諸外国のようなところまではちょっとなかなか難しいかなというところでございます。

大岡委員 ありがとうございます。

 私も決して強制加入と言っているわけではなくて、任意のあり方の中で、拒否しない限り自動で加入される、これがイギリスの制度、自動加入と言われている制度でございますが、拒否する権利はもちろんあるわけですし、そこで意思決定はなされるわけでございますので、せめてそのぐらいのレベルをまずは導入していくべきではないかと考えておりますので、今後もこれは取り組みを進めてまいりたいと思います。

 次に、企業年金にかかわる税のあり方あるいはインセンティブについて、本日は矢野審議官に財務省からお運びいただいておりますので、質問させていただきますが、時間の都合上、通告した二つを一つにまとめて質問させていただきたいと思います。

 資料5、6に示させていただいておりますが、諸外国と比べますと、日本でも年金につきましては掛金を出すときから最終的に給付を受けるときまで大幅な税の優遇を受けているということは私も承知をしておりますし、このことは政策的に非常に意味のあることだというふうに思っております。しかし、この資料をごらんいただければわかるとおり、やはりアメリカ、イギリス等に比べますと、税の優遇度合いが弱いと言わざるを得ないのが実態でございます。

 さらに、実態としまして、日本の生活保護受給者の半分は高齢者なんですね。つまり、老後の備えがない方々が生活保護になっている、それによって財政的な支出を余儀なくされているというのが一方の実態でございます。

 そこで、経営的な発想から、損して得とると言うのかもしれませんが、やはり税の優遇をさらに広げることによって老後の備えをしっかりと国民にしていただいて、その結果として、高齢者になったときに生活保護を受けなくてもいいような体制をつくっていくという視点から、せめてアメリカやイギリスと同程度の税のインセンティブによって、年金の奨励を進めて、自助、共助、公助という組み合わせで老後の生活の安定を図り、それを財政再建にもつなげていく。

 私は、この財政再建というのももうこれは譲れない一つの大きな目標だと思っておりますが、この財政再建につなげていく上で、経営的な発想でもって取り組んでいくという考えを私は進めるべきだと思っておりますが、財務省としてどのように考えておられるか、矢野審議官に教えていただきたいと思います。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年度の税制改正におきましては、企業年金制度につきまして、働き方の多様化等に対しまして、老後に向けた個人の継続的な自助努力を支援するという観点から、個人型DCの加入可能範囲の拡大など、個人の自助努力に対する税制上の支援措置、幾つかなされたところであります。

 今先生から御指摘がありましたように、年金制度について、損して得とれという大局的な考え方をという御指摘でございますけれども、先般のいわゆる骨太の方針におきましても、個人所得課税全体につきまして、「総合的かつ一体的に税負担構造の見直しを行う。」ということになっておりまして、今後、政府税制調査会などを含めまして、老後所得保障のための自助努力への支援のあり方、今先生が御指摘のような工夫ができないかといった観点も含めまして、多様な論点を整理していくことになると思っておりますので、まずはその議論を見守ってまいりたいと存じております。

大岡委員 ありがとうございました。

 最後に、全国民の老後の所得の確保のあり方についてお尋ねをしたいと思います。

 私たち自民党は、公的な年金のみで全国民に豊かな老後まで保障するという考え方はとっておりません。あくまで、公的年金はつつましい暮らしに必要なレベル、それから先の豊かさの部分については、自助、共助、公助のベストミックス、ベストバランスでもって実現していくというのが基本姿勢だと認識をしております。

 そうした中、年金の安定を確保するために、現在マクロ経済スライドを実施していますね。これは、ここしばらく長い目で見ますと、実質的には年金は目減りをしていくわけです。だとすれば、今後はこの私的年金の位置づけは極めて重要になりますし、そのため、国民の意識、とりわけ若い世代の意識の変化、意識の改革が極めて重要だと考えております。

 厚生労働大臣として、今回の法案をどのように位置づけておられるのでしょうか。これはゴールなのか、それとも何かを目指しての通過点なのでしょうか。また、今後の国民の老後の所得をどう確保するかにつきまして、国の役割、企業の役割、そして個人の責任についてどのように考えておられるか、最後に大臣にお尋ねをしたいと思います。

塩崎国務大臣 まず、今回の改正法案につきましては、中長期的な公的年金の給付調整が進む中で、公的年金の給付と相まって国民の老後所得の保障を図るために私的年金の加入率向上を図ることが重要だということから、企業年金の普及拡大、そして老後に向けた自助努力をしやすい環境を整備していくというものだと思っております。

 その上で、急速に高齢化が進行する我が国の老後所得保障のあり方を展望いたしますと、まず国の役割としては、老後所得保障の基本となります世代間の支え合いの仕組みでございます公的年金制度、これにつきましては、その持続性を確保しながら、将来世代も含めた給付水準の確保に必要な措置を講じつつ、さらにこれを補完する私的年金、これにつきましては、より多くの方が私的年金でカバーされるような必要な環境整備を図るということが挙げられるのではないかというふうに思っております。

 そして、企業、そしてまた個人の役割でありますけれども、企業については、人口減少の中で、さまざまな私的年金制度を活用して従業員が安心して働ける環境を整備する、そして個人にとっては、人それぞれ異なる老後生活のニーズに応じて、さまざまな私的年金制度を活用して老後の所得保障に向けた自助努力を行うということを期待申し上げたいというふうに思っているところでございます。

大岡委員 ありがとうございました。

 時間でございますので、質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 確定拠出年金法等の改正ということで、この確定拠出年金法等ですけれども、いろいろ課題があると思うんです。

 資料の八ページ目、企業型確定拠出年金を調べていただきますと、一時金で受け取る方が九四%ということで、例えば六十歳で一時的に一時金で全額受け取る、ほとんどの方がそういう選択をされておられる。これは、本来の趣旨からいうと、老後、毎月受け取って、年金として老後の安定に資するという趣旨もあると思うんですけれども、一時金の方がこれだけ多いということは、ある意味では預金の預入金に対する税の優遇、つまり、預金、貯金を優遇する、こういうことになりかねない。これも課題ではないかと思います。

 もう一つは、これは言うまでもなく、今の公的年金の最大の問題の一つは、無年金、低年金問題。では、この私的年金であるDCが拡大することでそれが本当に解決できるのか。つまり、公的年金のほころびをほったらかしたまま自助努力に過度に頼り過ぎると、問題の本質を見誤る。あくまでも補助的な手段として国民の皆さんが選択するというような位置づけで考えていただかなければならないというふうに思います。

 その中で、ちょっと私が気になったのは、今回の改正法案の中に、法律のある条文が削除されております。この理由をお伺いしたいんですが、これまでの条文では、確定拠出年金法、平成十三年施行のものでは、運用の方法を定めている第二十三条では、選択肢の中でいずれか一つ以上のものは、元本が確保される運用の方法として政令で定めるものでなければならないと。

 資料の一ページ目には厚労省がつくっていただいたわかりやすい資料がありますが、これまでは、一つ以上は元本確保型商品を選択肢として入れないとだめよ、こういうことを法律に明確に書いていたのが、それが削除されちゃったというのは私は腑に落ちないんですが、これはいかなる理由でございますか。

塩崎国務大臣 今回の商品提供規制に関する改正というのは、社会保障審議会企業年金部会におきまして、企業年金は労使自治のもとに運営されるものであって、DC制度における運用商品提示の基本でありますリスク・リターン特性の異なる三つ以上の商品という規制に一本化をして、あとは基本的には労使の判断に委ねることが望ましいというふうにされたわけでございまして、これを踏まえた今回の措置として、今の御指摘の変更がございました。

 制度創設から十年以上経過をいたしまして、一定程度制度の普及が進んだ現在では、少なくとも国として特定の運用商品をラインナップに入れることを法律上義務づけることまでは必要ないというふうに考えまして、今回の改正案としているわけであります。

 なお、引き続き労使の判断によって元本確保型の商品を提供することはもちろん十分可能でございまして、また、労使の合意がなければ元本確保商品を外すことも逆にできないということとなっているところでございます。

長妻委員 ちょっと説明になっていないのではないかと思うんです。

 これは自助努力といっても、過去、遠い過去ではないときの段階で問題があったわけですね、厚生年金基金の運用について。そういう意味では、最低限の歯どめになる条文だと私は思います。

 例えば十四ページに、これは東京海上日動からいただいた資料でございますが、ここにいろいろ確定拠出年金の選択肢のイメージ図があるんですが、イの一番にやはり元本確保型というのが書いてありまして、どういう方に適しているのかというと、運用期間がごく短い人。確かに、六十歳とかそれまで掛金を払えるわけで、五十を過ぎたりあるいは四十を過ぎて遅くこの年金に入った方は、株がかなり乱高下したときに元本が割れる可能性も出てくるんじゃないか。そういうような方にこういう商品をきちっと提供するということを法律で義務づけるということが必要だと思います。

 これは、企業によってはうっかりして、商品、私も見ましたけれども、元本確保かどうかというのはなかなかわかりづらいんですよね、私が見ても。そういう意味では、企業が元本確保型がない形だけの選択肢を採用してしまったときに、従業員はわからないままどれかを選んでしまうということにもなりかねないんじゃないか。

 実際に、六ページでございますけれども、これも調べていただくと、今の段階で選択肢は大体十八商品、従業員は大体平均十八の商品を提供されて選んでいるということでありますから、別に十八の中に一つぐらい元本確保型が入っていてもそれは大勢に影響ないというか、何か元本確保型が入っていると余り株に投資しないから、まさかこういう考えはないと思いますけれども、株価を上げるためには余り効果がないから、まあ、そこは落とした方が日本の再興戦略にとってもプラスじゃないか、こういうことは考えていないと思いますけれども、なぜ削除したのか合理的な説明がないとちょっと不安になるんですね。それはいかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、今回これを削除しても、もともと労使自治で、今十八本ぐらいが大体普通だということをおっしゃいましたが、そういう商品提供がなされるわけで、その中に何を入れるのかというのは、それはやはり会社の社員の皆さん方のお考えを踏まえて労使が決められるわけでありますので、そういう場合に、元本の保証をした商品を入れるべきだということを労使でお決めになれば、当然それは入れて構わないわけでございます。

 今回は、要は、政府が特別に何かこういうものを必ず入れなきゃいけないというようなことを決めるのではなくて、それは労使でお決めをいただいた方が自然じゃないかということを申し上げているので、そこは禁止をしているわけでももちろんありませんし、十分これはお話し合いを労使でしていただいた上で、十八本なら十八本入れる中に元本確保商品を入れる場合もあるし入れない会社もあるということが出てきていいということを申し上げているわけで、決して何か元本確保商品を入れるべきではないということを言っているわけでは全くないということであります。

長妻委員 今大臣がおっしゃったのは、元本確保型商品を入れない会社が出てきてもいいというふうにおっしゃったんですが、私はそうは思わないんですね。

 これは、労使のうちの使の方は、やはり株価を上げることが日本経済にとって大変重要な課題だと考えている使がいたとすれば、やはり元本確保型ということではない商品をラインナップした方がいいんじゃないかと。

 そして、労といっても、労働組合がないところが大変多いわけですね。今回は、簡易型といって、従業員百人以下のところにこれを促進するための施策も入っていて、従業員百人以下の企業で労働組合がある企業は一体どのぐらいあるんでしょうか。かなり少ないと思うんですね。当然、労働組合がなくても従業員の代表者と交渉するということですが、これも、ここの委員会でも過去もいろいろ議論がありましたけれども、本当にそれが従業員全体の意思を具現化しているか疑問なケースもあるわけでありまして、これは大臣、考え直していただけないですかね、削除するのを。

 とすると、では、今までは、現在はなぜこの条文が入っているんですか。現在はなぜ入っているんですか。

塩崎国務大臣 確定拠出年金を最初につくる際に、私もまだ若手国会議員でありましたが、一緒にやった記憶がございます。当時は確かに、四〇一kといっても誰も知らない、そういう中でこの制度が入れられたわけでありますけれども、いろいろな議論がありました。ERISA法みたいな法律がそもそもないのはおかしいじゃないか、やはり受託者責任というものを明確にしながらやっていかなければ従業員や被保険者の権利が守れないというようなこともあって、日本型のERISA法を同時に入れるべきだというような考え方も持ってこの法律をつくったという記憶がございます。

 それで、この確定拠出年金法を最初につくったときに、当時はやはりまだいろいろな規制もございました。そして、日本人は、一般的に金融商品による資産運用というのには個人レベルではやはりなれていなかったわけですね。そういうことを踏まえて、少しでも混乱が生じないようにということで、三つ以上の提供商品のうち、元本確保型の商品の一つ以上の提供を義務づけたというふうに記憶をしているところでございます。

長妻委員 今の理由は、その当時は日本人は金融商品において資産の運用になれていないということが理由だということなんですが、その意味でいうと、今でもなれていないというか、当時と今と、国民の皆さんの金融商品の運用に対するスキルが劇的に上がったのかどうかというと、私はそんな立法事実はないと思うんですよね。やはり削除するからには立法事実がきちっと説明できなければならないというのはもう常識でございますので、ぜひこれは修正をしていただきたいというふうに思います。

 そしてもう一つは、今回、この確定拠出年金に入れる方は、従来もそうなんですけれども、厚生年金に入っておられるということが、企業型DCの場合、条件になる。つまり、同じ企業でも、厚生年金に入っていない、つまり国民年金に追いやられている従業員の方は企業型DCには入れないわけですね。

 そういう意味で、以前も田村大臣が国会で御答弁されたように、ルール上厚生年金に入らなきゃいけないのに入ることができない方が数百万人おられる、こういうことが言われていて、その数百万人の方は、企業型DCになっても、同じ企業に勤めていても、そこには入れない、選択もできないということでございますから、これを進めるのもいいんですけれども、そういう数百万人、ルール上厚生年金に入れなきゃいけないのに入ることができない方、この対応も本当に急ピッチで進めていただかないといけないと思うんですが、この進捗状況はどうなっているんですか。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 適用拡大の問題を主におっしゃっているんだろうと思いますが……(長妻委員「いや、適用拡大じゃない。ルール上入らなきゃいけない方が、違法で」と呼ぶ)

渡辺委員長 ちゃんと、質問をするんだったら挙手してください。(長妻委員「だから、さっき言いましたよ。ちゃんと捉えていないんだもの」と呼ぶ)まず聞いてください。

塩崎国務大臣 適用拡大の問題であるならば、これはまず第一歩を進めることになっていて、これからさらにその拡大を広げていこうということを言っているところでございます。

長妻委員 ちょっと私はがっかりするんですが、大臣、全然認識ないですね。

 適用拡大の話でなくて、田村大臣が国会で、ルール上厚生年金に入れなきゃいけない、企業で働いているから、日本国の法律でルール上入れなきゃいけないのに入っていない方、入ることができていない方が推計数百万人おられるというようなことをおっしゃっておられて、その対策、大変重要だと何度も私はこの場で申し上げましたが、大臣、全然認識ないじゃないですか。とんでもない話ですよ。どうするんですか。

塩崎国務大臣 これについては、記録問題のときに随分注目をされたことでありまして、国税との情報共有をして、そしてその対象先、つまり、本来厚生年金に入らなければいけないのに、言ってみれば国民年金に入るように仕向けているような企業が見つけられた場合に、それを見つけるのにまず国税との情報共有をしていくということを始めています。それに基づいて、一件一件ちゃんと入るように勧めているというのが現状でございます。

長妻委員 ぜひしっかりやっていただきたいと思います。

 ですから、今回の法律が、自助努力ができる方はどんどんしていただいて、税の優遇もどんどん受けていただく、ただ、自助努力できない人はそのまま放置されるということがないように、そちらの方も、ほころびもきちっとやっていただきたい。

 そしてもう一つ、きょうはNISCにも来ていただいて、NISCというのは、内閣サイバーセキュリティセンターという、サイバー攻撃を防御する政府の代表機関だと認識しております。

 ちょっとNISCにお伺いするんですけれども、昨日も日本年金機構から、サイバー攻撃に対する対処についての反省点、これが発表されましたが、私の理解では、日本国始まって以来初めて、日本の政府あるいは政府関係機関がサイバー攻撃によって情報がとられてしまった、情報が漏えいした、それが確認された初の事件だと思いますけれども、そういう理解でよろしいんですか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでも政府機関等に対するさまざまな標的型攻撃がございますけれども、今委員御指摘のように、大量の個人情報が流出をしたということが事実関係として確認できたというものとしては初めてのものというふうに認識をしております。

長妻委員 今御答弁ありましたが、これは、我が国政府始まって以来初めてサイバー攻撃によって情報が奪取されたという非常に大きい重い事件でありまして、昨日の日本年金機構の報告書を拝読いたしましたけれども、非常に気になるのは、私が見ただけでも、ルールが定まっていないのでできなかった、こういう趣旨の記述が二十カ所以上、随所に見られるわけで、ルールがなかったからやらなかったんだと言わんばかりの記述が余りに多過ぎるというふうに考えております。

 そういう意味では、一番初動のミスというのが、これも信じられないことでありますが、五月の二十二日金曜日の夜に、帰る職員が自分のパソコンの電源を切らずに帰っちゃった、切り忘れちゃった。それによって、そこから、翌日の五月二十三日の土曜日、大量に情報が漏えいしてしまった。つまり、電源を切るというのはルールになっているわけで、あるいは常識でもありますから、それを切らないで帰っちゃったというようなことから始まって、非常に、ルールがなくても常識で対応できるところがたくさんあったんじゃないかと思います。

 そして、大臣にお伺いするのは、確かに日本年金機構はいろいろ問題が今回ありましたが、やはり厚労省も傍観者ではもちろんないわけで、非常に大きな問題があったのではないか、責任を感じていただく必要がある。

 というのは、厚労省のセキュリティーポリシーに違反した事例が幾つかあるんじゃないのかと思いますが、違反した事例というのはあったんですか。

塩崎国務大臣 今、セキュリティーポリシーに反している例があったのか、こういう御質問でございました。

 結論からいきますと、セキュリティーポリシーどおりにやっていないというケースが厚労省においてもあったと認めざるを得ないと思っております。

 このセキュリティーポリシーに基づく対処手順書では、統括情報セキュリティー責任者、これは情報政策担当参事官ですけれども、これは、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター、NISCですね、などの外部からの情報セキュリティーの事案発生の連絡を受けた場合には、受け付けた事案を確認して、担当局の課室情報セキュリティー責任者、つまり課長とか室長でございますね、に必要な連絡を行うこととされているわけでありますけれども、今回の事案では、情報政策担当参事官室から年金局へ連絡は行われておりましたけれども、それぞれ上司への報告、つまり、参事官あるいは課長に速やかにこの報告が行われなかったという点は、これは反省しなければいけない点であって、現在は、セキュリティー事案については上司への報告を当然徹底するということにしております。

 いずれにしても、先生御指摘のように、セキュリティーポリシーに反する行為があったということは認めざるを得ないというふうに思っているところでございます。

長妻委員 これは私も非常に本当に不可解なのが、五月八日に厚労省がNISCから情報を受けて以降、年金局では、係長一人以外、全然誰とも情報を共有していなかった。五月二十五日になって、やっと係長以外の年金局の人間が知るところになった。Xデーは五月二十日でございまして、この攻撃ウイルスで大量に情報が漏えいしたし、その前日には、日本年金機構は五月十九日、高井戸警察署に捜査依頼を出している。それだけ大きなアクションをとりながら、その時点でも係長しか御存じなかった。

 やはり年金局の係長が課長に報告するというのは、もちろん常識は常識ですけれども、これはセキュリティーポリシーにも明記されていることなんですか。

塩崎国務大臣 これはお配りをいただいているものにもありますが、NISCの報告書の中でも触れていただいておりますけれども、行政事務従事者、つまり係長ですね、これがインシデントを認知した場合には、その者が所属する課室長等に報告をし、課室長等の指示に従う、こう明示をされているわけでありますから、当然、係長が上に、課室長に上げて、そして、それがちゃんと対処をしなければいけないということも定められているわけであります。

 そういう意味においては、厚労省においてもセキュリティーポリシーが守られていなかったということを率直に認めざるを得ないというふうに思っております。

長妻委員 その上で、大臣の責任というのはどういうふうにお考えですか。

塩崎国務大臣 これは何度も申し上げてまいりましたけれども、まず、NISCから報告書が昨日出ました。そして、きのう年金機構の報告書が出て、みずからの目で見たわけでありまして、NISCの方には厚労省の役割についてもお触れをいただいていますが、今の先生が御指摘になったような点は、機構の方の報告書からも、読めば明らかな点があるわけであります。そして、きょう夕方、第三者委員会の甲斐中委員会、ここからの報告書が出てまいります。

 そういうことを踏まえて、私としても、みずからのけじめをどうつけるのかということは考えていかなきゃいけないということを前々からもう既に申し上げてまいっておりまして、きょう、その三つの報告書が出そろうということで、今後、それをしっかりとかみしめて、どのようにけじめをつけるべきかということを考えていきたいというふうに思っております。

長妻委員 以前に比べて厚労省の年金事務に対する関心が薄れているんじゃないのか、指導も甘くなっているんじゃないのかというふうに私は危惧をするんです。

 これは、対策費用を保険料で出すのか税金で出すのか、これも実は責任論に直結する話だと思っておりまして、私が厚労省に、いかなる哲学を持って保険料と税金、支払いを区分するのか、紙を出してほしいと申し上げましたら、二十五ページの紙が出てまいったわけでございます。

 これは私が民主党の部会で受けた説明と若干違うは違うんですが、民主党の部会で受けた説明は、保険料で今回の誤り、ミスの経費を賄うというときには、これはあくまでも日本年金機構の問題で、年金の事務の過程で生じて、そこで背負うべき責任であれば保険料で支払うんだよと。ところが、税金というのは、これは、消えた年金問題のときの処理経費は税金なんですよ、保険料じゃないんですね。税金で払う場合は、国全体が責任を共有して、国全体、国家全体で取り組むべき問題、そういうときには税金で処理の費用を払う、つまり、厚労省を含め、財務省を含め、政府全体の責任として認識した場合は税金なんだということなんです。

 私の理解では、そういう範囲で分けると今回は税金でという気がするんですが、大臣はいかがお考えでございますか。

塩崎国務大臣 これは何度も申し上げてきていることでもございますが、基本的な考え方は、今お配りをいただいたもの、つまり、保険料財源というのは、やはり保険事業の運営に直接かかわる経費、それから税財源は、年金記録問題のときのお話を今いただきましたが、これは国の事務処理誤りによって発生したもので、これに関する経費は国の責任で解決すべきだという考え方で、公費負担という整理をされているわけであります。

 今回の事案につきましては、先ほどNISCからも、初めての標的型攻撃メールによる個人情報の大量流出というケースだということでありますが、今回、先ほど申し上げたとおり、NISCから、それから日本年金機構のみずからの検証、そしてきょう検証委員会から、甲斐中委員会から報告書が午後出てくるというふうに聞いておるわけでありますので、今回の事案に係る対策経費の財源については、この検証委員会における責任の所在を含めた検証結果をも踏まえて、全体の業務量の見通しを整理する等々で検討をしていくべきではないかというふうに思っているところでございます。

長妻委員 今、初めてということを強調されたんですが、標的型メールということなんですが、NISCにお伺いしますが、政府及び政府関係機関に標的型メールが送られたのは今回が初めてなんですか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 政府機関に対するいわゆる標的型メールでございますけれども、これは当然一つだけではございませんで、極めて多数のものが送られてきている状況でございます。

長妻委員 これはいろいろなところに、様子を探るというのか、偵察というか、どこが脆弱性が高いか、こういうのを見ているのかどうかわかりませんけれども、そんなような兆候があるのかどうかということだと思います。

 そして、厚労大臣にもう一つお伺いしたいのは、私が最も心配するのはこの一億人のデータなんですね。被保険者と受給者のデータ、振り込み先の口座番号も金額も入っているコンピューターデータ一億人分があります。これがやられたら、もう国じゅうはパニックに近くなると私は思います。

 当然、インターネットには接続していない、専用線で接続しているというわけでありますが、今はフィジカルな攻撃あるいはUSBによる攻撃等々、いろいろな手段があるわけでありますので、これについて、大丈夫かどうか、ぜひ全面的な点検を。専用線、インターネットに接続していないわけでありますけれども、だから大丈夫というふうに、お役所からはすぐ、大丈夫ですと明確にお答えが返ってくるんですが、私は大変心配でございますので、これは十分点検をしていただくということを大臣に明言いただきたいと思うんですが。

塩崎国務大臣 これは先生よく御存じのことでありますが、今回の年金機構の調査委員会の報告書の中にも、別添資料の四というところに、いわゆる基幹システムと、それから業務で内部処理でやっているインターネットに開かれたシステムと、この二つの系列があって、基幹システムは、この中の情報を持ち出すときには、今回のように共有サーバーに持ち出すときには、必ず一回外部媒体に移して移すということになっていました。

 ところが、共有サーバーに入れたときにはこれはあくまでも一時的であるにもかかわらず、それが残っていた。つまり、ルールはありながら有名無実化していたルールであった。それから、パスワードをかけろということも決まっていましたが、これも守られていないものが多々あった、こういうこともありました。

 したがって、今回、私どもは、まず基幹システムの中にある国民の年金情報そのものはシステム上守られている。いわゆるウィンドウマシンからも見るだけであって、それも生体認証で限られた人しか見られないようになっている。そして、見るだけで、ダウンロードができるようなことはないということでもあります。したがって、即座にやらなきゃいけないことは、共有サーバーに仮に入れて、何らかの発送をしないといけないようなときには、もうインターネットから完全遮断をするということがまず第一。

 そして、今先生御心配をいただいておりますこの基幹システムについても、どのようにして完全遮断ができるのかということも検討するように指示を出しているところでございます。

長妻委員 ちょっとよくわからないんです。

 私が申し上げているのは、そういう役所の説明ではなくて、一億人の被保険者と受給者のデータ、これが入っている大変重要なコンピューターがあって、ネットには全く接続されておりません。専用線でやりとりをするものでありますけれども、これは専用線といえども、細かい手口は申し上げませんけれども、いろいろな手口によって、中の記録を書きかえるとか破壊するとか、別の情報にしてしまうとか、それを奪取するとか、こういうことはあり得るわけで、そういうことがもう絶対にないという盤石なシステムになっているのかどうか、その漏れを再度チェックしてほしい、こういうことなんです。

塩崎国務大臣 今回、NISCの報告書の中にも、業務系端末、つまり基幹システム、これからの外部通信等々について記述がございます。

 そこに、説明どおりの設定となっているというのは、「業務系端末から厚労省統合ネットワーク経由の外部通信は、スイッチ及びファイアウォールにより遮断される設定となっていることをシステム運用業者の説明と資料により確認。また、現地において、NISC職員が説明どおりの設定となっていることを直接確認。」ということをしておりまして、今でも安全ではあるというふうに思っておりますが、先ほど申し上げたように、なお国民の皆様方にもわかりやすく、完全遮断ということをやっているんだということがわかるシステムを検討してみてはどうかということを申し上げているということは、何度も委員会でも申し上げてきたところでございます。

長妻委員 全然わかっていないんじゃないですかね、大臣。

 完全遮断されているんですよ、この一億人のシステムは。完全遮断されているんだけれども、念のために、情報が漏えいする、書きかえられる、こういう攻撃を受ける脆弱性がないのかどうか再度チェックしてほしいと申し上げているんです。

 理事長、チェックしていただけますか。

水島参考人 今回の事案を踏まえまして、当機構といたしましては、今後のシステムのあり方について専門家を交えて検討をしてまいりたいというふうに考えております。

 その中で、一億人のデータを管理いたしております基幹システム、これについての独立性、それから、お客様のデータを扱う業務を行うシステムのあり方、インターネットとの接続の環境、これに関しまして全て見直しを行いまして、あるべき姿を追求するという方向で現在検討を進めているところでございます。

長妻委員 ちょっと曖昧なんですけれども、私が申し上げているのは、見直すとかそうではなくて、一億人のデータが入っているコンピューターへの攻撃の脆弱性を再度チェックしてほしいということを申し上げているので、これは、委員長、理事会でぜひ政府の統一見解をペーパーで出すように御検討いただきたいと思うんです。

渡辺委員長 理事会で協議をいたします。

長妻委員 それと最後に、二十ページでございますが、これは総務省に出していただいた資料ですが、総務省、説明いただけますか。

二之湯副大臣 提出資料は、委員からの要求を受け、総務省が各府省等の協力を得て取りまとめたものでございます。

 提出資料のうち、本人の数が多い上位十の個人情報ファイルにつきましては、本人の数が最も多いファイルは厚生労働省の雇用保険被保険者台帳であり、次いで警察庁の運転者管理ファイルでございます。

 ちなみに、一位の厚生労働省の雇用保険被保険者台帳には一億九千六百万人、二位の警察庁の運転者管理ファイルには八千九百万人、そして、四番目の外務省の、これはパスポートでございますけれども、旅券管理マスタファイルには七千五百五十万人が登録されております。

長妻委員 この際徹底的に政府の調査をしていただきたいと思うのが、私が要請をいたしまして、多くの個人情報が入っているファイルが今インターネットと接続されているのかどうか、接続の環境にあるのかどうか、これをお伺いしたんですが、それはいかがでございますか。

二之湯副大臣 ファイルの詳細が公表されますと外部からの攻撃の対象となるリスクがあるために、公表を差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。

長妻委員 そういうことなんですが、これはぜひ、インターネットと接続、あるいはインターネットと、外部と接続できるようなLAN等々、間接的にも、そういうことについて遮断を原則とするというか、基本的には遮断するというようなことをやはりするべきだと私は思うんですが、NISCはいかがでございますか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日政府で開催をいたしましたサイバーセキュリティ戦略本部におきまして、新しいサイバーセキュリティ戦略の案を決定しております。

 その戦略案の中で、大量の個人情報等重要情報を持っているそういった情報システムについてはインターネットから分離をするという方針を明確に打ち出しているところでございまして、委員の御指摘も踏まえながら政府としても対応していきたいというふうに考えてございます。

長妻委員 これは早急にやってください。

 そして最後に、委員長に再びお願いしたいのは、冒頭、確定拠出年金法の改正案で、元本保証の商品の選択肢を一つ以上という条文が削除されている理由について、立法事実が非常に不明確でありましたので、その立法事実を明確に示すデータ等を含めた資料を理事会に御提出いただければと思います。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

長妻委員 以上で質問を終わりますけれども、やはり、本格的なサイバー攻撃があって、そして事実、情報が漏えいしてしまった。我が国初めてであります。

 これから安全保障の話というのは宇宙とサイバーがメーンになるんじゃないか、こういうふうにおっしゃる専門家もおられるわけで、これからNISCも、予算も人ももうちょっとふやすような取り組みをして、本当に、我が国の個人情報や、機密性の高い、機微に触れる情報が絶対に漏えいすることがないような対策をぜひとっていただきたい、そして、今回の件では厚労省に、大臣御自身の責任もぜひ明確にしていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、山井和則君。

山井委員 四十分間質問をさせていただきます。

 確定拠出年金法、年金について、大きく、法案そのもの、そして今の漏れた年金情報問題、さらに、先日来堀内議員も追及されておられます、再委託によって日本年金機構の業務をされていた従業員の方々が百十人、二月、三月、二カ月分の給料が不払いになっている、そういう問題についても、非常に重要な問題ですので質問させていただきたいと思います。

 まず、長妻議員もおっしゃいましたように、元本保証という選択肢が今回削除される。やはり老後の命綱ですよね。老後の命綱である年金、そしてその元本保証、そういう選択肢は、民間の商品ですら選択肢として入っているわけです。長妻議員の資料になりますが、十二ページ、そして十四ページ。そして、当然、今の確定拠出年金の法律にも入っています。それをあえて削除する。

 先ほど、こういう年金に対する知識や関心が高まったからと。私はそんなことないと思いますよ。それは塩崎大臣は株はかなり詳しいのかもしれませんけれども、そんなの、一般の方々、株をやっておられない方も多いし、それはわからないですよ。そういう意味では、何かどんどんどんどん株価を上げるために誘導しているのではないかという疑念を持たざるを得ない。ですから、先ほど長妻委員も立法事実を出せとおっしゃいました。

 ぜひとも、少なくとも、この確定拠出年金の法案、問題点は多々あると思いますが、その中でも、元本保証を削除する、その部分については修正をしていただきたいと思います。それは、やはり元本保証をしてほしいという人は多いと思いますよ、株は上がるか下がるかわからないんだから。神のみぞ知るで。

 それで、確定拠出年金法については後ほど戻りますが、長妻委員に続けるために、きのう出てきたNISCと年金機構の調査報告、これだけ私も読ませてもらいましたし、昨日の水島理事長の記者会見、一時間ぐらいありましたけれども、映像で私は全て拝見をさせていただきました。

 長妻委員の指摘と私の指摘は同じなんですが、きょう検証委員会の中間報告が出るそうです。その内容は私もわかりません。でも、私の感想を言うならば、最も明らかになったのは、厚生労働省の無能さじゃないでしょうか、塩崎大臣が何もやっていなかったということじゃないでしょうか、この資料を読みましたけれども。

 そこで、この資料を見てください。私の配付資料の中の十ページに出ておりますこのパネル、NISCの調査報告書の中の四ページです。ここに、黄色くなっておりますが、つまり、二十日に端末一台が不正プログラムに感染して、そして、今回の百二十五万件は二十一、二十二、二十三、この三日間なんですよね。ここが勝負だったわけです。逆に言えば、二十三日には既に百二十五万件は流出しちゃった。ある意味で終わっちゃったんですよ、この問題は。

 塩崎大臣にお聞きします。

 塩崎大臣は、この二十三日までにこの事案について監督官庁の責任者としてどういう対応をとられましたか。二十三日までに何をやりましたか。

塩崎国務大臣 私が二十八日に初めて一報を聞いたということを御存じの上でお聞きになっているだろうと思いますけれども、当然その時点では私は全く情報は持っていませんでしたので、対応も特にしているわけではございません。

山井委員 今お聞きになられたとおり、話にならないんですよ。八日に始まって、二十三日に百二十五万件出ている。でも、全く大臣は二十八日まで知らなかった。これは大臣、被害者だと思わないでくださいよ、そういう官庁の責任者があなたなんですから。セキュリティーポリシーにもこれは違反しているんですよ。監督官庁なんでしょう。

 塩崎大臣は知らなかった、知りませんでした、そして、やっと係長が樽見審議官や赤澤課長に上げたのが二十五日、全て終わった後。では、二十三日に百二十五万件が漏れるまで、厚生労働省としては、監督官庁としてどういう指導監督をしたんですか、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 これは、きのうの年金機構の報告書にもございますが、手順書に従った手順はとっていましたが、残念ながら、しかるべき、上司への報告という大事な手順が抜けていたということがございました。

 しかし、例えば五月の八日でも、異常な通信をしている端末を特定して抜線をするという定められたルールは守られていたわけでありますが、先ほど申し上げたとおり、そのルールだけで全部がうまくいかないということは結果としても明らかであるわけでありまして、ルールの事前の設定の欠如ということも含めて、さまざまな反省すべき点があったというふうに思っております。

山井委員 この配付資料十枚目、このパネルにもありますように、NISCの今回の報告でも指摘されています。厚生労働省は、報告・対処手順を整備しているが、連絡を受けた担当窓口から、責任者、課長等の幹部に報告が上がっていなかった。

 そして、セキュリティーポリシーではどうなっているかというと、NISCの報告書の十五ページ、私の配付資料の十一ページ、どう書いてあるか。先ほど長妻委員の質問にもありましたが、「行政事務従事者が、インシデントを認知した場合には、その者が所属する課室長等に報告し、課室長等の指示に従う。」ということがセキュリティーポリシーでなっている。具体的に言いますと、この配付資料十一にありますように、機構において発生したインシデントについては年金局の事業企画課長に上げる、そして、NISCなどからの通知については情報政策担当参事官、情参室の参事官に上げる。

 ということは、塩崎大臣、その情報が上がっていなかったということは、セキュリティーポリシーに違反していたということでよろしいですね。

塩崎国務大臣 これは、先ほど長妻委員にも御答弁申し上げたとおりでございまして、セキュリティーポリシーに基づけば、本来、参事官そしてまた課長が必要な連絡を行う、そして対応すべきでありましたけれども、それを、係長レベルから上がってこなかったがゆえに、やっていないという意味において、ポリシーに反していたということを率直に先ほども認めたところでございます。

山井委員 これは深刻ですよね。セキュリティーポリシーに違反して、情参室の係長と年金局の係長、二人が情報を抱え込んで十八日間上げなかった。その間に百二十五万件が流出しちゃった。厚生労働省、監督責任を何も果たしていないじゃないですか。何にもやっていないじゃないですか。私はひどいと思いますよ。

 五月八日から始まったことに関して、例えば十九日の日には何があったか。この配付資料の後ろから二ページ目、十三ページ。機構が、不審なメールの集中攻撃があって、とうとう五月十九日には高井戸警察署に相談及び捜査依頼をしているんですよ。これはただごとじゃないですよ。警察に捜査依頼をした、その報告を、機構はきっちりと厚労省の情参室の係長と年金局の係長に言った。これはもう大問題ですよ。にもかかわらず、二人は上に上げなかった。一人じゃないですよ。年金局の係長だけが上げなかった、ミスった、そうじゃないんですよ。年金局の係長も上げなかった、情参室の係長も上げなかった。これは個人の問題じゃないですよ。

 もっと言えば、配付資料のラストにありますように、十八日間年金局の係長が課長に一言も言わなかったとなっているけれども、この課に私たちも訪問しました。赤澤課長の目の前に係長が座っているじゃないですか、三メートルのところに。電話一本したらわかるじゃないですか、これは大変なことになっているということぐらい。

 だから私は、参事官や課長に本当に報告しなかったのか、あるいは、報告しなかったにしても、横にいるんだから。これは、民間企業だったら、私、厚生労働省、潰れると思いますよ。警察沙汰が起こって、年金情報が漏れているかもしれないという大事件が起こって、その会社や事業所にとってそんな大問題が起こってお客様に迷惑がかかる、警察に捜査を依頼するようなことが起こって、係長二人がそろいもそろって上司に報告しない。こんな会社、潰れますよ、確実に。あり得ないですよ、それは。それは一日、二日じゃないんですよ、十八日間もですよ、目の前の席にいて。

 これは塩崎大臣、年金機構ももちろん私は問題は大きいと思いますよ。でも、私は、年金機構も問題は多いと思いますけれども、十八日間も、おまけに警察に捜査依頼したことまでも上司に上げなかったという厚生労働省の方がより今回責任は重いと思いますが、大臣はどう思われますか。

塩崎国務大臣 日本年金機構法の第一条には、この年金事業は、厚生労働大臣の監督のもとで、厚生労働大臣と緊密に連携をして行うべきと書いてあります。

 したがいまして、先生の今の御指摘は私も全く同じ認識であって、この問題の根深さというものを、これは年金機構だけの問題ではなくて、年金局側の問題あるいは厚労省側の問題としてもしっかりと受けとめて対処をして、この体質改善を図っていかなきゃいけないということを、私も内部も含めて申し上げてきているところでございます。

山井委員 失礼になるかもしれませんが、これはもう話にならないですよ、こんな重要なことを担当係長二人ともが課長に十八日上げなかったら。年金だけの問題じゃないですよ。そんな組織は日本じゅう探してもあり得ませんよ、本当に。仕事をする気があるのか。もっと言えば、私は、課長なども知っていて、参事官も知っていて、そのことを知っていたと言っていないんじゃないかという疑念も申しわけないけれども少しは持っておりますが。考えられないじゃないですか、目の前に座っていて、十八日間、これだけの大問題が起こって。

 それで、もう一つ重要なのは、NISCの報告書の、ここにありますように、どう書いてあるか。

 NISCは不審メールを解析して逐一厚生労働省に送っているんですよ、対応してくださいと言って。そして、この一番命中した大問題のメール、五月二十日のメールに関しても、五月二十一日の夕刻に厚生労働省参事官室に提供しているが、ここからが重要ですよ、「これらの解析結果には不正プログラムの接続先に関する情報が含まれていた。」NISCは、対応してくださいよということで、接続先の情報も教えているわけですよ。にもかかわらず、係長はそれを課長にも上げていない。これはどういうことですか。

 この時点で対応できていたら、百二十五万件全部とは言いませんが、この機構の報告書の、配付資料十二ページ、ここにありますように、ポイント四、五月二十一日、「NISCの解析結果に基づくフィルタリングを行わなかった」「(不審URLへの通信の遮断)ができていれば、以降の情報流出が防止できた」。これについても、情参室に来ているんですよ、厚労省にまずNISCからの第一報が来ているんですよ、にもかかわらず、厚労省は、微動だに、何にもせずにスルーしているじゃないですか。

 塩崎大臣、私、これはひどいと思いますよ。きょう検証委員会がこういう点をどう評価するのか私はわかりませんが、塩崎大臣に違う観点からお聞きしたいんですけれども、今回、NISCは調査報告書を出しました。機構も調査報告書を出しました。検証委員会は出します。なぜ厚生労働省は、自分たちで、ここが問題だった、ここが問題だった、もちろん検証委員会も重要ですよ、全く自己検証、自己反省、自浄能力を示していないじゃないですか。

 塩崎大臣、今からでもいいですから、厚生省は厚生省なりに、今回、こんな不祥事に対して何にも動かなかった、監督責任を全く果たさなかったということに関して、検証委員会の検証だけじゃなくて厚生労働省としても私は検証すべきだと思います。いかがですか。調査して検証すべきだと思います。

塩崎国務大臣 まず第一に、私どもがまずやったことは、第三者委員会の甲斐中委員会に徹底検証をお願いするということをやりました。それがきょう夕方出てくるというふうに理解をしているわけであります。

 一方で、私ども厚労省の中も、当然、今回の事案を通じて明確になった厚労省のさまざまな問題、これについては山井議員とそう認識は私は変わっていないと自分で思っておりますが、こうしたことを踏まえた上で再発防止策は当然議論を重ねてきているわけであって、それは、まとまり次第、やはり皆様方に見ていただくということは当然のこととしてやらなければいけないと考えております。

山井委員 申しわけないですけれども、旧社保庁や日本年金機構がやはり非常に問題が多いということは残念ながら事実なわけですよね。だからこそ、厚生労働省がきっちりと管理監督、指導するという責務を負っているわけです。

 だから、私は、今回の漏れた年金情報の問題で一つ明らかになった本当の問題点は、その管理監督を全く厚生労働省がやっていなかったという厚生労働省の無能さ、それが残念ながら明らかになったと思いますが、私が一つ危惧しているのが、何か、年金局の担当者とか機構の担当者とか機構関係者を処分したりして、トカゲの尻尾切りで、あんたたちしっかりしなさいよと言って終わる問題じゃないと思いますよ。

 私は今のストーリーを聞いてもらったらわかると思いますが、全く仕事をしていない、全くこれに対して機能を一切しなかったのは厚生労働省であり、その責任者は塩崎大臣ですからね。私はこの事案の中で一番責任が重いのは塩崎大臣だと思われますが、塩崎大臣は御自分のこの責任についていかが考えられますか。

 そして、きょう中間報告が出ます。今までから、検証委員会の結果を見て御自分の給与とか賞与とかいろいろ、そんなことも含めて責任のとり方を決めるとおっしゃっていましたが、最終報告がいつ出るのかわかりませんから、この中間報告をもって塩崎大臣もその責任をとるということでよろしいですか。

塩崎国務大臣 これはもう先ほど来申し上げているとおりであって、年金機構の業務というのは全て厚生労働大臣の監督のもとでやられるものであります。それも、ただ監督のもとではなくて、緊密な連携のもとでやらなければいけないと日本年金機構法第一条に書いてあるわけでありますから、当然のことながら、大臣として、監督者としての責任は重いということは私は何度も申し上げてまいりました。

 そして、けじめについてまた再びお尋ねをいただきましたが、これについても先ほど申し上げたとおりであって、きょう、甲斐中検証委員会、ここがどういう、厳しい指摘をしていただけるのか、これを踏まえて、今後どういうけじめをつけるべきかということを、私としてもそしてまた厚労省としても考えていかなければならないと思っていますし、年金機構の方も同様に、この検証委員会の報告書を受けて、今後どうすべきかということをさらに考えていくことになるというふうに私は理解をしております。

山井委員 最終報告がいつ出るかわかりませんので、今の答弁で、中間報告が出たら塩崎大臣も御自分の責任、処分を明らかにされると理解をしました。

 ただ、一つ申し上げたいのは、第三者委員会とおっしゃいますが、この検証委員会の事務局長の方は、すばらしい方ではありますけれども、厚生労働省の顧問でありまして、厚生労働省の顧問の方がこの検証委員会の事務局長ですから、第三者委員会という言い方は私は当たらないというふうに理解をしております。

 それで、今、塩崎大臣、第一条に日本年金機構と緊密に連携をとることと書いてあったけれども、日本年金機構側は何と言っているか。係長に連絡したのは、係長でとまっていると思っていなかった、窓口が係長で、厚労省の係長に連絡したら全部上司に行っていると思っていましたよと言っているわけですよ。当たり前じゃないですか、そんなもの。仕事ってそういうものでしょう。これだけの重要な問題で、どんな組織ですか、担当者に連絡したら、上司に一切連絡しない。私は、本当にこれは首をかしげるし、もしかしたら、失礼な話ですけれども、やはり上司まで連絡は何らかの形で行っていたんじゃないかとすら疑わざるを得ないですよ。そんな組織聞いたことありませんから、私、世の中で。

 もっとやりたいんですが、時間に限りがありまして、それで、もう一つ、あり得ない話で、堀内議員も今までから取り組んでおられましたが、日本年金機構の業務を和歌山、大分、福島でやっている百十人の方々の給料が未払いになっております。配付資料の七ページです。二月分が支払われなかった、そして三月分も払われなかった、百十人分。二月、三月、払われていない。そのことを機構も厚生労働省も三月二十五日には把握しているんですよ。これはもう大問題です。

 私、今回、この被害者の従業員の方にもお目にかかりました。そして、これだけ資料もいただきました。入力作業、封入作業、発送作業、本当に現場では、非正規の、それも女性の方々が、安い給料で必死になって、日本の年金を支えるために、遅い日は十時、十一時まで働いて支えてくださっているんですよ。それだけでも私は申しわけないと思いますよ。おまけに給料二カ月分を払わない。払わないだけでも大問題だけれども、そのことを機構と厚労省に三月に言って、今何月ですか。八月。五カ月たっても払われるめどすら立っていない。こんなことがあり得ますか。

 機構の言いわけはここに書いてありますよ。受託先企業の問題です、知らないうちに受託先企業が再委託していました、その二人と連絡をとってください、いや、トンズラしています、捕まりません、頑張って捕まえてください。何ですか、それは。やっている仕事は、やっていた仕事は、日本年金機構の仕事ですよ。

 だから、私、塩崎大臣に申し上げます。はっきり言って、二カ月分の給料が入ってくるめどがないんですよ。一般企業でも許されませんよ、そんな話は。でも、これは、日本年金機構の仕事をされていて、今もされている方々ですからね。厚生労働省は知らぬ顔できるはずないですよ、こんなもの。日本の恥ですよ。

 それで、塩崎大臣、いつ百十人の方々に賃金を払ってくださるんですか。塩崎大臣、お答えください、いつというのを。

塩崎国務大臣 この件に関しましては、本年三月下旬に、日本年金機構が封入、封緘業務等を委託しておりました会社から、本年四月以降の業務の履行ができないとの申し出があったことによって、本年三月末日で同社との契約を解除したということだと理解をしております。

 また、機構の方では、同社との委託契約の解除に伴って、これらの封入、封緘業務等に当たっていた従業員の方も三月末で仕事を失うことになったために、引き続き勤務を希望される方について、四月一日以降、直接雇用を機構の方でしたものでございます。

 今般、年金業務という公的な大事な業務において二カ月分の賃金の未払いという事態が生じたのは、これは極めて遺憾なことであって、いずれにしても、この賃金不払いという労働基準法違反に対しては厳正に対処をするとともに、今後こうしたことが生じないように、委託業者の選定、管理を適切に行っていただくよう機構に対し強く求めていかなければならないというふうに考えております。

山井委員 全然厳正じゃないじゃないですか。つい最近の話じゃないですよ。三月から給料を払ってもらえないと言って、それは困るに決まっているじゃないですか。二カ月分給料が入らなかったら、皆さん、生活に困るでしょう。おまけに、やっているのは年金業務ですよ、公的な、国家的事業の。全く厳正じゃないじゃないですか。放置しているんじゃないですか。

 塩崎大臣、いつ払うのか。これは、私は、年金の信頼にもかかわるし、日本の厚生労働行政の信用にもかかわると思いますよ。ああ、賃金不払いでいいのか、そういうふうに思われかねませんよ、これは。単なる受託先企業の話にはなりません。禁止されている再委託を見逃していたのは厚生労働省なわけです。

 ですから、厳正にとおっしゃるんだったら、改めて答えてください。めどでいいですよ。いつになったら払ってもらえるんですか。こんなことを許されていいんですか、賃金不払い。今もその方々は年金の仕事をされているんですよ。許されていいんですか、こんなことが。いつをめどに払われるのか、それぐらい、厚生労働大臣は、もう五カ月もたっているんですから、言う責任があるんじゃないんですか。いかがですか。

塩崎国務大臣 大変悪質な事案であることは、もう言うまでもないと私も思っています。

 ただ、民間の企業の資金繰りや支払いの問題でありますので、いついつまでにということを私どもが申し上げるのはなかなか難しいと思っております。

 基本的には、賃金の未払いにつきましては、事業主と労働者の問題であるわけでありますけれども、労働者保護の観点から、賃金の未払いが生じている事業場で働いている方からの申請に基づいて、未払い賃金立てかえ払い制度というのがございまして、これが適用できるか否かについて厚生労働省としては調査を行っているところでございます。

 これは、企業倒産に伴って賃金が支払われないままに退職を余儀なくされた方に対して、一定の要件を満たした場合に、未払いとなっている賃金の八割を、限度がございますけれども、基本的には八割を国が事業主にかわり立てかえ払いをすることができるという制度が、今申し上げた未払い賃金立てかえ払い制度というものでございます。

 これを、どういうことができるのか、適用できるのかできないのか、こういったことについての調査は当然行っているわけでありますが、先ほど申し上げたように、あくまでも民間のことであり、また、今申し上げたのは企業倒産になった場合の制度でございますので、今まだそのような事態には至っていないというふうに理解をしておりますので、これはやはり、払える限りは払ってもらうということを、労働基準法にのっとって厳正に対処していくというのが、厚生労働省としての当然とらなきゃいけない立場でございます。

山井委員 仕事は、日本年金機構の年金の仕事をやってもらっているんですよ。全く関係ない話じゃないんですよ。監督責任というものをどう考えているんですか。そういう悪質なひどい会社を選んだのは、機構であり厚生労働省なんですよ。おまけに、禁止されている再委託を放置していたのも厚生労働省と機構じゃないですか。その監督責任をどう考えているんですか。一般的な話じゃないんですよ。

 これは、申し上げますが、昨年の十一月に、余りにも残業が多過ぎる、もう仕事をやっていられないということで問題になりまして、それで会議が開かれました。その場所に、この共栄データセンター、そしてKDCキャリアコンサルティング、こういう会社の関係者等々も来て議論をしたときに、和歌山の年金事務センターの機構の担当者も来た。その中で、再委託されていることは去年の十一月には知っていたはずじゃないですか。その時点で禁止されている再委託がされているのはおかしいと手を打てば、未払い、二月、三月は起こらなかったはずでしょう。

 これは機構でも厚生労働省でもいいですが、昨年十一月の時点で再委託されていることを御存じだったんじゃないですか。

水島参考人 御指摘の点について、私どもといたしましても調査をいたしました。

 その結果でございますが、確かに十一月の時点で共栄データセンターの事業主が事務センターに来訪したということは事実だということでございますが、その際、御指摘のような点について会話が行われたということについては、ないということでございました。

山井委員 私は、元従業員の方々からは、その再委託の話を年金事務センターの和歌山の機構の方にはされたという話をお聞きしております。

 きょう配付することはできなかったんですが、私の手元に、KDCキャリアコンサルティングの社員なのに、実際、その機構の現場では共栄データセンターという名札で仕事をしているということや、さらに、誓約書ですね、KDCキャリアコンサルティングに雇われるけれども、共栄データの指示のもと働いてください。つまり、これは偽装請負だということなんですよね。

 これは偽装請負じゃないか、違法派遣じゃないかと思いますが、このことは四月に厚生労働省も把握しているということですが、偽装請負ですか、違法派遣ですか、結論は出たんですか、いつ出るんですか。

塩崎国務大臣 日本年金機構におきまして、共栄データセンターとの連絡を試みておるわけでありますけれども、連絡がとれておらない、そして、同センターとKDCキャリアコンサルティングとの関係について直接確認はとれていないというふうに理解しております。

 しかしながら、労働者や現場の監督責任者からは、KDCコンサルティングの社員である旨を聴取していたことを確認はできました。

 本事案についての都道府県労働局の対応については、現在、事実関係を調査中でございまして、詳細は差し控えさせていただくわけでございますけれども、仮に偽装請負や違法派遣の事実が判明した場合には、当然のことながら、これは都道府県労働局において厳正に対処することといたすことになるわけでございます。

山井委員 本当にゆるゆるですね。

 三月二十五日にこれは発覚しているんですよ。五カ月たっているんですよ。十一月にも問題が起こっている。未払い賃金は払われるめども立っていない。偽装請負かの調査もまだ終わっていない。その理由が、会社と連絡がとれない。ここにホームページもありますが、会社はやっていますよ。何が連絡がとれないですか、五カ月間も。行ったらいいじゃないですか。何をやっているんですか。

 私は、本当に恥を知れと言いたいですよ。こんなことをやっているから日本の年金の信頼が落ちていくんじゃないんですか。年金の仕事をしている人が賃金を払ってもらえない。それを厚生労働省に言っても、五カ月たってもらちが明かない。こんな無責任な話がありますか。

 もう時間がないので、これはまた来週水曜日にやりますから、そのときまでに、どうやって未払い賃金を払うのか、ちゃんと回答を聞かせてください。当たり前でしょう、そんなものは。

 それで、議論がかわります。

 確定拠出年金に入りますが、ガバナンス改革の法案、もう時間がないので言いますが、GPIFの株式運用比率一二%を二五%に上げるときに、塩崎大臣は、ガバナンス改革も一体にしないとだめだと言って、法案も出すと言ったけれども、厚労省の年金局の反対に遭って頓挫している。もう、国会は九月二十七日ですよ。年金部会を開いて検討すると言うけれども、年金部会なんか開かれるめどはないじゃないですか。ガバナンス改革の法案を今国会で出すんですか、出さないんですか。そのことを、この確定拠出年金の法案の審議の最中には明言してください。それぐらい言ってください。賛否に影響します。

 それと、GPIFがどんどん、八兆円、四%ぐらい、この間、国内株式を買いましたが、三月末で二二%買いました。六月末で二三、四%にいっているんじゃないかと推定されていますが、六月末でのパーセンテージは八月末に発表されます。昨年は八月二十九日。

 これがもし二三、四、五にいっていたら何が問題かというと、ベンチマーク、中心値は二五%ですから、そこまでGPIFが国内株を買ったら、今度は売りに出ないとだめかもしれないんです。そうしたら株が落ちてしまうかもしれないんです。これは非常にセンシティブな問題です。

 つまり、何が言いたいかというと、確定拠出で、確定給付じゃないですよ、確定拠出で、株買え、株買えと言っている割には、今、GPIFで国内株式の運用比率を上げて、官製相場で株価を押し上げているんですよ。企業実態以上に株が上がっているおそれがある。そういう意味では、六月末で何%まで国内株式がいっていたかというのは非常に重要な情報ですので、これも審議が終わるまでにぜひ出していただきたい。できれば来週水か木に出していただきたいと思うんです。

 ガバナンス改革はどうするのか、そして、法案を出すのか出さないのか、もうそろそろ言ってください。それと、この六月末のGPIFの国内株式の割合はいつ発表するのか。塩崎大臣、お答えください。

塩崎国務大臣 このガバナンス改革でございますけれども、法人形態の変更も含めたGPIFのガバナンス体制強化については、昨年の「日本再興戦略」改訂二〇一四を踏まえて、社会保障審議会年金部会において法改正の必要性も含めて御議論をいただいておりまして、そこでの議論の内容を踏まえて検討することとしております。

 年金部会におきましては、昨年秋から検討作業班を設けて検討が進められ、その議論の要約が年金部会に報告をされたと承知をしております。検討作業班及び年金部会では、さらに御議論を深めていただく必要があると私は思っております。

 今国会での対応につきましては、まだ御審議をお願いしている法案が幾つか控えておりまして、また、年金部会においても今後十分な議論を重ねて取りまとめていただく必要があることを踏まえて、適切に判断をしていくというふうになっていくと思います。

 それから、GPIFの第一・四半期、四―六の運用状況の公表につきましては、八月末をめどとされておりまして、具体的な公表日時についてはGPIFに委ねられているものと承知をしているところでございます。

山井委員 時間が来ましたのでまとめに入りますが、私は今質問したことというのは全部関連していると思うんですね。要は、係長が上司に上げなかったんじゃないか、漏れた年金情報で。もちろん、大臣にも上がらない。年金局と塩崎大臣、うまくいっていないんじゃないんですか。

 結局、株式運用比率を上げるということは、今までは本当は反則わざみたいな話だったんですよ。それは株価は上がるに決まっていますよ。でも、国民の年金、虎の子であるものを株にどんどん上げていくというのは、年金局は基本的には非常に慎重なんですよ。おまけに、GPIFを合議制にして、その権限を奪う。それは、年金局と塩崎大臣、けんかになりますよ。その結果、ガバナンス改革の法案の行方は見えない。塩崎大臣がガバナンス改革せずに株式比率だけ上げるのはリスクがあると言っていた、リスクのある状態になっている。

 そういうことがあるから、機構と係長の連絡もうまくいかず、係長も上に上げず、局長や課長からも塩崎大臣に情報も上がらない、さらに、百十人未払い賃金があっても、五カ月たっても厚生労働省も全く動いていない。

渡辺委員長 山井君に申し上げます。

 既に持ち時間を終了しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 こういうことだから、年金の信頼が失われるんです。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 午前中に続いて、質問をさせていただきます。

 きょうは企業年金に関する法案でありますが、ちょっとその前に、午前中にも若干出ましたが、年金情報流出の問題、これは改めて集中審議がセットされるやに伺っておりますので、本格的にはまた改めてその場で申し上げたいと思いますが、きのう、NISCの報告書が出て、また機構の報告書が出て、また、検証委員会の報告書も、きょうの午後ですか、出ると伺っております。

 その中で、一部報道で、マイナンバーとの接続の問題について、タイミングをちょっとおくらすというような報道、きょう午前中もその御答弁をいただいていますが、もう一度、今既に何を決められたのか、特に年金とマイナンバーのスケジュールのところ。これは通告をちゃんとしていませんが、どなたが適当なんでしたっけ。適当な人がいないか。どちらでも。大臣でも結構ですよ。

塩崎国務大臣 マイナンバーの件でありますけれども、これは先生、ずっと前からいろいろ御心配いただいておりますが、国民の皆様の生活にとっては極めて重要な制度であると思っていますし、引き続き、関係省庁と連携して、個人情報の保護に万全を尽くしながら、マイナンバーに対する理解を深め、前に進めるようにしたいということでございます。

 現時点において、現行、十月の番号通知、平成二十八年一月からの番号の利用開始というマイナンバーの全体スケジュールについては影響がないと承知をしておりますけれども、年金分野でのマイナンバーの利用開始時期につきましては、本件の原因究明、今回の機構の個人情報の流出問題、この原因究明と再発防止策の状況を確認した上で最終的に判断をする必要があるというふうに引き続き考えているところでございます。

足立委員 ごめんなさいね。年金分野の運用というか利用というのは、いつの予定がいつになるんですか。

香取政府参考人 これは最終的には番号サイドとの調整になりますが、もともとは、今大臣から御答弁申し上げましたとおり、二十八年一月からでしたか、利用開始をするという番号全体のスケジュールに合わせて年金もそれで動かすということで来たわけですが、今般の事案がありまして、マイナンバーにはさまざまな影響が出る、あるいは国民の皆様方のいろいろな御不安もあるということで、本件事案の原因究明なり、ある程度再発防止を見きわめた上で考える必要があるのではないかという議論になっていて、そこはまだ最終的に私もどういうふうに整理をされたか伺っていませんが、少しそこは今まだ調整をするというような段階ではないかというふうに思います。

足立委員 それはだから、ごめんなさいね、準備不足で。内閣府が決める仕事なのかな。じゃないのか、厚労省か。ちょっとお願いします。

樽見政府参考人 マイナンバーの準備ということで、内閣官房の方でその辺の仕切りをつけていただいているというふうに承知をしております。

足立委員 要すれば、しっかりと直さないとというか、検証したり対策を講じたり、しなければいけないことがあるのであれば、当然それはしっかりやっていっていただきたいと思うんだけれども、それは何か、要は政治的な問題なのか技術的な問題なのかということをちょっと確認しておきたいんです。

 政治というのは、要は、いろいろな関係者の御理解とか、そういう国民の懸念とか、あるいは国会でのいろいろな状況とかから来ているものなのか、こういう技術的な問題は潰してから運用開始した方がいいぞということで、事務的にも、これを潰して、少しおくれるけれども実施していこうという、どっちなんですか。ちょっと質問が悪いですか。予習していなくて済みません。

樽見政府参考人 なかなか難しい御質問でございます。

 まさに、マイナンバー法の審議、参議院の方での御議論の中でそういう御議論があるというふうに承知をしてございます。

 ただ、基本的には、このマイナンバーを施行する、実施するということに当たりまして、年金の関係で不安がある、心配だというような声がないようにしっかりとしてからマイナンバーの利用を年金で行う、そういう議論であるというふうに承知をしているところでございます。

足立委員 私がこうやって申し上げている趣旨は、いろいろな国会との調整ももちろん、行政ですから当然あると思うんですが、実際に課題があって、それを直すために時間がかかるのでタイミングを検討するということであればわかりますが、何か、説明不足で、政府が国会に対してあるいは国民に対して十分に説明することに成功していないためにおくれるのであれば、それはつまらないなというだけの話でありまして、質問が悪いかもしれませんが、ちゃんとそれは、延ばすなら延ばす、その間にこれをやるんだということがあるのか。お願いします。

樽見政府参考人 これは六月の予算委員会での甘利大臣の御答弁でございますけれども、原因究明と対策、防止策といった、そういう検討の経過を見ながら、予定どおり導入するのか、若干ずらした方がいいのか、検証結果によるものと思っておりますという御答弁をされてございます。

 昨日、年金機構の方での調査委員会の報告というのが出ました。それから、きょう厚労省の第三者の検証委員会の御報告をいただくということになるというふうに承知をしてございますけれども、そういったものも見ながら、どういうところを改善していくか、また、それによって、先ほど申し上げましたように、皆様方の不安感というものをなからしめていくにはどうしたらいいか、そういうことを検討した上での判断ということになろうと思っております。

足立委員 まあこのぐらいにしておきますが、私の趣旨は、検証して対策を打つというのは、私は今回の年金情報の問題については結構難しいと思っていて、要すれば、簡単に対処できるのであればここまで引きずっていないわけで、年金機構の問題あるいは年金記録の問題は、そう簡単な問題じゃないと思うんですね。

 だから、検証して抜本的な対策を打つということでは当然やっていくわけだけれども、それが、対策が完了して、年金機構あるいは年金情報というものが本当に隆々と、国民の皆様に安心していただけるような状況になるのはそんな簡単じゃないんじゃないかなと思っているものですから、変にタイミングを、要は、マイナンバー制度の運用について余りひっかけると政治的には引きずる期間が必要以上に延びるんじゃないかなと、別に野党ですから余り心配しなくてもいいんですが、心配しているということでありますので、これはそれぐらいにしておきます。

 いずれにせよ、この問題は、今のマイナンバーのことも含めて、集中審議でまた取り上げさせていただきたいと思います。

 それから、今回の企業年金の法案の内容に入りますが、きょうは、午前中の質疑を伺っていて一つちょっと腑に落ちなかったところだけ、ちょっと通告外かもしれませんが、教えて……(発言する者あり)だめ。可能であればですが。

 民主党の皆さんが元本保証について取り上げて、あたかも何か塩崎大臣が非常によこしまなことを考えていて、それで、できるだけお金がマーケットに流れるように、本来国民の皆様を守るために必要な元本保証がどうのという規定をあえて削除したという若干乱暴な議論があったんですが、僕はちょっと、実は理解できなかったのは、もし従業員の方が元本保証を望むのであれば、経営者の方は、労使でちゃんと話し合って元本保証を入れたらいいですよね。それで、使用者側は元本保証を入れないでおくと何かハッピーなことがあるのかなというのがよくわからなくて、高橋委員に、あるんですかねと聞いていたんですけれども、ちょっと明確な御答弁がなかったんですが。

 これは、経営者側にそういうインセンティブ、すなわち、経営者側に、できれば労働者側を、物を言わせずに、元本保証を排除しておく何かモチベーションというかインセンティブは働いているんでしょうか。どうでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、ちょっと事実の関係を整理しますと、今のルールはどうなっているかというと、DC、確定拠出の場合は、最低三つ以上の商品を提供して、投資教育をした上で加入者が選択する、こうなっております。必ず一つ元本保証型を入れなさいというのが今のルールです。

 まず、そもそも、どういう商品を選択肢としてお示しするかということは、労使で相談をして決めるということになっています。

 もともと、確定拠出法をつくったときの議論でも、先ほど大臣からも御答弁があったように、リスク・リターン特性の分散が行われるよう、商品は三つ違うものを並べるというのが基本的な考え方、当時からその考え方、今回はそれを少し明確にするわけですが。

 そのときに、当時はまだ、いわばこういった金融商品で運用するということになれていないということや、長らく国策として貯蓄の奨励というのをやってきたということで、貯蓄以外のそういった資産の管理運用についてなかなかなじみがないということで、必ず一つ元本保証型を、元本保証型というのは、結局、素人的に言うと定期預金ということになるんですが、入れてあったということです。

 今回は、基本的に、それはちょっと過剰規制なので、労使合意でどういう商品を三つ選ぶかということは決めましょう、必ず一個元本保証を入れるというのはやめて、労使の合意に任せるというふうにしましょうということです。

 この場合、今もう既に動いている確定拠出の中には元本保証が入っている基金があるわけですね。これは、外すためには、除外をしなきゃいけないんですが、この場合には労使全体の合意が必要ですので、今あるものを外すというのは労使の合意がないとできません。なので、これから選択をしてつくる人にそういう規制はかけませんという意味なので、そういう意味でいうと、今いる人に不利益とか、意思に反して元本保証が選択できなくなるということはありません。

 あと、元本保証を入れることそれ自体に企業側にメリットがあるかどうかということですが……(足立委員「入れないことです」と呼ぶ)入れないことのメリットというのは、そういう意味でいうと、企業経営上あるいは福利厚生上の観点からすると、そこは多分なくて、労使合意の中で、どういうものを従業員側が望むかということとの関係で選択をするということになると思うので、その意味では、あえてそういう方にバイアスがかかる、労使の合意といったときにバイアスがかかる、あるいは使用者側がかけるということは余り考えにくいのではないかと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 いや、私も、今御答弁いただいたことについて、思いつかないものですから、局長も思いつかないということであれば、きっとないんだろうなということで。

 どうしても、午前中の審議にもありましたが、何か、経営者は悪いやつだとか、大企業は悪だとか、アメリカは陰謀か何かしているとか、そういういわゆる広い意味での陰謀論というのが国会にはたまにあるわけですが、陰謀論に基づく議論というのは非常に軽薄でありますので、もっとリアリズムというか、実態に即した議論をやっていくことが本当に大事であると思っています。

 そういう意味では、今、この点についても、別にその規制をあえてそこで続ける必要はもうないのかなと私は感じているところであります。

 法案全体については、浦野委員もまたこの後質疑されますが、私は全般的にすばらしいと思っていまして、実は、この企業年金は、先ほど大臣からも御紹介がありましたが、私も経済産業省の経済産業政策局というところで役人をやっていたときに、大臣も本当にお若くいらっしゃって大活躍を、今でも活躍されているわけですが、当時、長勢甚遠先生がいらっしゃって、一生懸命党の方でやっていただいて、我々、経産省に、特別に、企業サイドの、そういう労働問題というか年金とかをいろいろ見る部屋をつくりまして、そこに山田宗範さんという私の先輩、副大臣もよく御存じだと思いますが、実は当時、もっと若い時代ですけれども、直接お仕えして、私もその仕事を同じチームでやっておりました。

 だから、四〇一kというのは本当に自分の職業生活の一つのページになっているものですから、この分野がこうして発展してきているというのはすばらしい、ちょっと何かしんとしていますが、本当にそう思っているわけであります。

 ただ、今回の法案に当たって、大臣にもぜひはっきりと申し上げていただいた方がいいんじゃないかなと私が思うのは、法案の趣旨にもあるように、これはやはり、マクロスライドを初めとして、公的年金が目減りしていく流れはあるわけでありますので、それを補完する形で企業年金を充実させていこう、これが国民会議も含めた一連の政府の大きな方針である、こう思っているわけです。

 すると、いわゆる公助、共助、自助という議論でいったときに、公的保険が仮に共助だとすれば、この企業年金というのが自助的な性格が強いとすると、年金分野における政策の方向が、共助中心から、より自助を重視するというか、自助のウエートが大きくなると捉えていいんじゃないのかなと思うんですが、大臣、それはそういうことでよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 今お話があったように、公助、共助、自助という分類を仮にした場合にどういう色分けに今回の法改正はなるのか、こういうことでありますけれども、これはもう言うまでもなく、確定拠出年金の加入者の範囲の見直し、広げる、それから小規模事業所の事業主による個人型の確定拠出年金への掛金の納付制度の創設などを行っているわけでありまして、働き方の多様化などに対応して、企業年金の普及拡大を図るということで、老後に向けた個人の継続的な自助努力を行う環境を整備する、言ってみればバックアップする、こういう目的だというふうに理解をしております。

 企業年金制度などは、拠出時、運用時、そして支払いのとき、それぞれ税制面で支援をしているわけでありますけれども、今回、これは、老後所得確保に向けた自助努力のインセンティブとなるように、いわば自助の支援をするという位置づけというふうに理解をしております。

足立委員 大臣から今御答弁いただいたように、今回の制度はそういうことだと思うんですが、私がぜひもう一言踏み込んでいただきたいのは、厚労省の、厚労省というか、国の、政府の年金政策全体で見たときに、共助中心であるものが、自助のウエートがふえる、要は、共助から自助というウエートの変化が政策論としてある。あるというか、私はあると思うんですが、それははっきりあると言っていいですね。言っていいですねというか、ちょっと局長、事務的にはどうですか。

香取政府参考人 まず、自助、公助、共助については、プログラム法もそうだったと思いますし、国民会議の報告などでも、自助、公助、共助の適切なバランスの組み合わせで国民の生活を保障するという考え方に立っています。

 その意味でいうと、皆保険あるいは皆年金という制度を日本は堅持しているわけですから、いわば社会保険制度に基づく、そういう意味でいえば、共助を中心とした社会保障制度をまず根幹に据えるという意味では、多分、共助がまず基本になるというのは、そこは、共助というのは言ってみれば自助をベースにお互いに助け合うということですから、一種、自助の共同化ということでもあるわけですが、その意味では、共助が中心だという考え方はやはり変わらないのであろうと思います。

 ただ、年金制度については、御案内のように、少子高齢化が進む中で、世代間の負担と給付のバランスをとっていくという考え方で、長期的な持続可能性という観点から、マクロスライドという制度を入れている。それによって、いわば持続可能性のある、共助の世界での年金制度の保障をするということになりますので、それに合わせて、自助をさらにそれに上乗せする形で個々人の努力を支援するということですので、共助と自助の関係は、ゼロサムということではなくて、共助を基本に、やはり自助でできるだけ上乗せをすることができるように、自助努力の御支援を申し上げる、多分そういう整理になるのではないかと思います。

足立委員 そういう答弁しかできないと思いますが、でも、実際は、あらゆる政府の打ち出している紙を見ても、公的年金のマクロ経済スライド等の適用を背景に公的年金の給付水準が調整されていくという厳しい認識がまずあって、よりそれを補うところの企業年金の役割が大きい、ますます大きくなっていくということになっているわけですから、私は、共助を中心とするというところを別に否定するわけではありませんが、共助と自助のウエートは変わってきている、こう思うわけであります。

 なぜこういうことを申し上げるかというと、公助、共助、自助ということでいうと、実は、今は自助の話だけしましたが、公助の話もありますね。すなわち、税がどんどん入ってきている、一体これは保険かと。公的年金はどこまで保険かという議論が別途多分あって、これは時間もないので余り聞きませんが、共助中心であったものが、これからも引き続き共助が中心だとはいえ、自助のウエートを強めていく、あるいは、税をどんどん入れるから公助的性格も強まっていくとすると、本当は共助中心の制度がだんだん崩れていっていて、両サイドから崩れていっているのが現状。それを別に悪いとは言いませんが、現実はそういう厳しい中でそういうふうになってきている、こう思うわけです。

 なぜ私がこの点をきょう強調させていただくかというと、例えば、今回充実をするところの個人型DC、通告の六番目に飛びますが、今でも個人型DCがありますね。これは、個人型DCに入ることができる国民の皆様、有資格者の中で今入っている方はどれぐらいの割合ですか。

香取政府参考人 今回、適用の拡大をいたしますが、今の、現状制度で申し上げますと、平成二十四年度末で加入することのできる方は約四千万人いらっしゃるわけですが、入っておられる方は、二十四年度末で約十五・八万、二十五年度末で十八・四万ですので、〇・四%あるいは〇・五%、そういう意味でいうと、極めて少ない水準でございます。

足立委員 結局、政府が、いやいや、共助中心なんだよねと言い続けているので、みんな、自助だとか言われてもよくわからないし、かつ、それが何か、DCだとか個人型だとか何だとか言われるものだから、真面目に時間をとって勉強しないと正直わからないと思うんですよね。

 その結果として、今局長から御紹介をいただいたように、一%もないわけでありまして、気がついた人は使っているけれども、ほとんどの人はその制度の存在さえも気がついていない。まあ、気がついた上で、わかっていた上で入っていない方ももちろんいらっしゃいますよ。

 そうだけれども、基本的には、その制度は大変メリットがある制度で、私は、気がつけば入った方がいい、個人的には。もし掛金というかあれをする余裕がある方は絶対入った方がいい、こんないい制度はないというのが実態なんだけれども、政府は共助中心だ、共助中心だと言うものだから、自助のところに努力をする方が極めて少ないのが現状なんです。

 だから私は、やはり、こういう法律を成立させていくに当たっては、これからは自助も大事な時代になっていく、だから自分でよく勉強していただいて、何千万人の方が入る余地があるんだから、入ったらこんないいことがありますよということをもっともっと国民の皆様に制度のリアルなメリットをちゃんと伝えていくべきだと思っているわけであります。

 もう時間がありませんが、きょうは、午前中、大岡委員も御紹介されていたような、イギリスで、自動加入ですか、ああいう話は私は本当に、なぜやらないのかなと思うんですが、これはいろいろあるんでしょう、事務的には。いやいや、まだそれは遠い将来でみたいな感じが多分事務的な現状だと思うんですけれども、ちょっと勉強不足で、なぜ日本では、英国で行われているような、基本的には自動的にみんなが入るような制度がとりにくいのか、ちょっと教えてほしいんです。

 今回、特にポータビリティーがほぼ完備をされます。あの表を見ると、この法案の中身を見ると、みんな入った方がいい。私は、自分の事務所のスタッフにも資料を見せて、法案が成立したらすごく便利になるからみんな個人型DCをやるといいんじゃないのと言って、みんなにこの制度を紹介しています、自分の従業員に。

 ところが……(発言する者あり)使用者、もちろんですよ、それは。もちろんですが、局長、制度的にそれはなかなか難しい、遠い将来というか、課題であるというのは、なぜすぐにこれはできないんですか。

香取政府参考人 まず、おっしゃるように、国によって、日本と同じように任意の形をとっている国と、かなり強制に近い形をとっている国とございます。

 任意の形の国ですと、日本が今、二号の方のうち三階部分、企業年金がある方が三五%程度ですが、大体四〇とか四五とかその程度。アメリカとか、お話のあったイギリスとか、強制的な措置を講じている国ですと、八〇%くらいになります。

 多くの場合は、一つのパターンは、労使協約を結びますと、いわば労使協約の効果が従業員全員に及ぶ、例えば、労働組合がオーケーと言うと従業員全員が自動的に入るという仕組みをとるという国がございます。もう一つは、事業主側に本人が拒否しない限りは入れさせる義務があるという形で、事業主に義務をかける、イギリスのスタイルはこのスタイルですが、みたいなことをやっています。

 日本の場合ですと、例えば、労働組合と契約すると自動的に全員入るというのは、労使のいわば慣行がかなり日本とは違う、職制なんかも多分違うんだと思うんですが、そういう要素がありますし、後者の場合には、かなり企業側に義務づけをかけることになりますので、それは、一つは、労使合意という意味でいうと、そこまでの形が労使でとれるか、あるいは、従業員側自身がいわば強制的に入らされるという形になりますので、そこをどう考えるかということもあります。

 もちろん、そういった形である程度、強制とは言わなくても、自動的に入るような形というのは制度的には考えられるんですが、ちょっと、今の段階ですと、そこまで一足飛びに行くというのはなかなか現状の日本の労使慣行等々からすると難しいのではないかということで、少し将来の課題にさせていただいているということでございます。

足立委員 ありがとうございます。よくわかりました。

 もう時間が来ましたので終わりますが、今、委員の一部の方から、事業主も払うんだぞ、こういう何か不規則発言がありましたが、今回できる制度で、追加の掛金拠出も可能になる、こういう制度もあります。私の事務所は、できるだけ従業員というかスタッフの意見も聞いて、可能であればその追加の拠出も含めて従業員の福利を考えていくことをお誓い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 維新の党の浦野靖人です。

 相変わらずお騒がせをしております、足立さんがですけれどもね。

 最近、ちょっと個人的に非常に腹立たしいことが起こりまして、その怒りがおさまっていないわけですけれども。

 今、足立さんが従業員の話をしました。これは、私も足立さんと同じように、わからないことがあったら高橋さんによく聞くんですけれども、私たち国会議員も個人型のは入れるということなんですかね。ちょっと質問通告していないですけれども。

香取政府参考人 国会議員の方は、会社とかをやっておられる方は二号になっている方がいらっしゃるので、それはちょっとあれですが、ほとんどの方は国民年金一号被保険者でいらっしゃると思いますので、現在でも個人型の確定拠出年金に加入することができます。

浦野委員 であるなら、やはり、この法案を通そうと言っている与党の皆さんは、自分たちが推し進めるこれに入った方がいいんじゃないかと思ったりもするんです。それは選択の自由がありますので、これ以上は申し上げませんけれども、本当にいい制度であれば、選択肢として我々の立場にある人間も選べばいいんじゃないかなというふうに、それは率直に思います。

 質問に入りたいと思います。

 今回の法案で、事業主に継続投資教育の努力義務というのを課して、今までは配慮義務を課していたんですね、それを今度努力義務とするということなんですけれども、この点について、今まで認識している問題点がもちろんあるからこそこういうふうに変えるわけですけれども、その点のところを少しお聞かせいただきたいと思います。

香取政府参考人 今の御質問は、継続投資教育というふうに我々が御説明している部分のことだと思います。

 確定拠出は、既にもう御案内と思いますが、企業側が商品を提示して、その中から御本人が選択をして、選択したその商品に企業が掛金を払い込んで積み立てていくという制度になりますので、いわば御本人が選択をする、御本人一人一人の勘定が立つというのが確定拠出なので、選択をするために必要な情報提供をする、リテラシーを上げるための情報提供をするということが事業主側の一つの義務になっています。これを投資教育と呼んでおります。

 制度を始めるときには当然これはやっていただくわけで、これは現在でも努力義務になっておりまして、当然、始めるときはほぼ一〇〇%の企業の方がそれをやって、その上で従業員が選ぶという形になっております。

 他方で、当然、経済環境も変わりますし、新しい商品もできてくる、労使合意で商品が追加をされるということがありますので、途中で変えることができる。これは当然、本人が選んでいますので、変えることができる。法律上は、少なくとも三カ月に一度は変えることができるように配慮しなさいと書いてあります。そうしますと、最初だけではなくて、その後についても必要な情報を継続的に従業員に提供するということが恐らく望ましいということになります。

 この部分は現在は配慮義務と書いてありまして、現実には六割程度の企業の方はやっておられますが、一〇〇%ではないということで、ここの部分について、年齢がいけば、例えば二十代で選択する商品と三十代、四十代で選択する商品は当然選択基準が変わってきますので、いわば継続的にアップ・ツー・デートな情報を提供することができるように義務を強化するという意味で、今六〇%程度のところについても、当初と同様にきちんとやっていただこうということで、ある程度義務を強化するという趣旨で今回この部分の制度改正をするということをお願いしているということでございます。

浦野委員 もちろん、こういうことを事業主がやろうとすれば、僕がちょっと気になっているのは、費用負担とかがどれだけ発生するか。全くなしでやれるというのはちょっと思わないですし、少々やはり費用がかかるんじゃないか。それもあって、配慮義務だし費用もかかるからやっていないという企業もあったのかなと思うんですけれども、その費用負担の部分については、努力義務になることによってやっていかないといけない会社もたくさん出てきますから、そこら辺は何か手当てを考えるんですか。

香取政府参考人 お話しのように、企業の側にそういう配慮をお願いするということになりますので、その意味では、一定のコストなり事務負担が企業側には発生するということになります。

 できるだけ主体的にこういった継続的な投資教育に取り組んでいただけるように、実はこの部分については各企業はいろいろな工夫をされておられます。要するに従業員への情報提供ということですので、工夫をされておりますので、そういったいろいろな工夫を好事例として紹介していくということで、特にこれは企業年金連合会がこういったお手伝いをさせていただいておりますので、そういった機関を中心にそういった好事例の紹介をするということ。

 あと、今申し上げました企業年金連合会にこの投資教育の部分についていわば委託をする。簡単に言いますと、一社一社でやると大変なので共同でそういった投資教育の場を設ける、そういった場を企業年金連合会等が受託をして行う。

 今でも事務処理機関に、金融機関に委託することはもちろんできるんですけれども、自分の金融機関と隣の金融機関と違うとか、そういうのがありますので、そういった共同でやるような形で企業年金連合会がまとめて請け負うというような形が今度できるようにということで、そういった形で、できるだけアウトソーシングといいますか、共同で実施をするような形で事務負担の軽減を図るということも今回あわせてやっていきたい。

 全体として、これは企業にとっても従業員にとっても、中長期的にはきちんとした投資判断ができて適切な運用商品の選択ができるということは両者にとって好ましいことですので、できるだけそういう形で中小企業等でもできるような支援を講じてまいりたいと思っております。

浦野委員 これまでの委員の質問の中にもありました、元本確保型の商品についての話ですね。これは、多様な商品を提供できるようにという措置の中で、今までは提供義務を課していたのを廃止するということです。

 議論の中でいろいろと説明をされていたので大体のみ込めていますけれども、要は、事業主、これを利用する皆さんが、それも含めて自分たちの意思で選択をできるようにするということですよね。

香取政府参考人 先ほど足立先生にも御答弁申し上げましたが、考え方は、必ずそれを一つ入れなさいといういわば公的な規制をかけるというやり方はちょっと過剰規制だろう、それは、入れる入れないも含めて、基本的には労使の御判断で決めてくださいと。私どもとしては、法律制定当初の解説書等にもありますが、リスク・リターン特性の違う、いわば違いのある三つの商品、少なくとも三つ以上の商品を示してその中から選択をする、そこのルールを決めて、あとは労使で決めてくださいというのが今回の考え方。

 なので、当然、労使の合意で元本保証型を入れる、あるいは元本保証型を例えば二つ三つ並べるというのは当事者の判断でできるということと、先ほども申し上げましたが、今既に選択されている企業からそれを外させるということではありませんで、今あるものについては当然選択された方がいらっしゃるわけなので、除外についてはかなり実際厳しい手続がありますので、そこは、これから選択するという人について、そういう、労使合意にお任せをするというルールをつくりますということでございます。

浦野委員 元本確保型の商品に絡んで、デフォルト商品の運用方法についてという項目がありますね。これも今回、法律上の定めをいろいろやりますけれども、この理由についてちょっと説明をお願いします。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 デフォルトといいますのは、ちょっと御説明しますが、申し上げたように、確定拠出は加入者が商品を選ぶということになっていますので、幾つかあるものの中から選んでいただく。選んでいただく前提として、企業側がきちんと投資教育を行う、あるいは、運用商品の提示についていろいろな規制がございますけれども、そういったものもきちんとしまして、選択しやすい環境をつくるということになるわけですが、それでも最終的に選択をされない、これは、しない、されない、できない、いろいろな理由がありますが、選択をしないという方がいらっしゃいます。

 そうすると、そういった方については運用ができませんので、言ってみれば当座預金みたいなところにずっとお金がたまってしまうことになります。御案内のように、当座預金は口座管理手数料がかかりますので、いわば目減りをしてしまうということになりますので、そういった方の場合には、あらかじめ指定した運用方法というのを労使の合意で決めておきまして、選択されない方はそこに行きますよという形をつくるということになっております。

 実は、これについては今までは法令上の規定が整備されておりませんで、いわば通知で、デフォルト商品についてはこういう運用の仕方をしてくださいということで、通知レベルで私ども御指導申し上げていたわけですが、今回、これについてきちんとして、運用方法の内容の周知でありますとかそういう選択について法令上の規定を整備しまして、手続上も整備しまして、きちんとそういったデフォルト商品についてのルールを法律上定めるということをいたしたいということでございます。

浦野委員 もちろん、デフォルト商品は、今説明されたように、やはり安定性が一番確保されないといけないということで、元本確保型が九八・三%と、ほとんど確保型になっていますよね。だからこそ、選べないとか、いろいろな理由で選ばなかった人はこれをという形になっているんだと思います。

 それは、逆に、欠損しないように、安定的な運用ができるようにということだとは思うんですけれども、そういったいろいろな商品を事業主に提供していく年金の運営管理機関、これは主務大臣への登録制ということで、今現在百九十何個かあったと思うんですけれども、これも、選定をする場合に、五年に一回でしたか、もう一回ちゃんと見直しをして、自分のところがやってもらっている機関が大丈夫かどうかというのをちゃんと選定してくださいねという、事業主に対する努力義務規定というのができましたよね。

 私、もちろん、自分たちの年金を守るための自己防衛も含めて、それはやるべきだとは思うんですけれども、でも、例えば中小企業の方々からすれば、主務大臣にちゃんと登録されていて、それが言うたら信頼の裏書きになっているわけですから、登録している企業だったら大丈夫だろうと多分思うんですね。だから、僕は、それだったらやはり国も登録企業をきっちりと、一定の評価を国がちゃんとしてあげて、事業主に対して、この企業はちゃんと運用もやっていますよというお墨つきを定期的にちゃんとやってあげたらいいんじゃないかと思うんですけれども、その点についてはどう思われますか。

香取政府参考人 運営管理機関でございますが、運営管理機関は、今先生お話がありましたように、企業と契約といいますか委託を受けまして、商品をお示しし、選択していただいて、掛金をお預かりして運用する、まさにそういった実務をやっている、多くは金融機関ということになるわけですが、ありましたように、定期的に見直しをするということになっているんですが、日本の企業型の確定拠出を見ますと、運営管理機関の変更というのは実際にはほとんど行われていないというのが実態でございます。

 商品選定についても、実は、実施企業、それから運営機関のほとんどを占めている金融機関との、企業の取引関係なんかで大体決まってしまうというケースが多くて、そうしますと、例えば商品の内容、日々いろいろな、年々新しい商品ができるので商品の差しかえがあったりするわけですが、その内容でありますとか、当然運用の手数料もかかるわけなので、そういった面で、必ずしも加入者といいますか基金側にとって最適な選択がされているかどうかというのは実はちょっと問題があるのではないかという、これは審議会等でも御指摘をいただいていて、最初に会社の取引関係で決まった金融機関でずっと続いているというようなことがある。

 今回は、そういったことも踏まえて、労使双方で運営管理業務の委託の実態を見てきちんと評価をして見直しをするように、それで加入者の利益を最大限に優先した判断ができるようにということが今回の趣旨でございます。

 お話ありましたように、運営管理機関につきましては、私ども厚労省と金融庁に御登録の申請をいただいて、私どもが業務体制を審査した上で、問題ないということであれば登録をするということになりますので、その意味では、登録制ではありますけれども、一応、私どもの方で一種お墨つきを与えているようなことになってございます。

 そういうことでございまして、私どもとしても、運営管理機関につきましては、確定拠出年金法の規定に基づきまして、事業年度ごとに業務の状況についての報告書というのを出していただいております。その状況を継続的に把握いたしまして、業務上の問題等がある場合には指導を行う、場合によってはいろいろな報告徴収もできるという規定も一応用意されております。

 今回、企業側にもこういった形で努力義務を課すということになりますし、これから確定拠出の普及拡大をしていきますと運営管理機関の業務範囲も拡大していくということになりますので、私どもとしても、今回の法律改正にあわせて、私どもが今持っておりますさまざまな権限をきちんと使って、業務の適正な遂行ができますように、特にこれは金融庁さんと協力をしながらやるということになりますが、きちんと今後の対応を図るように具体的に準備を進めてまいりたいと思っております。

浦野委員 ここで一番気になるのは、運用実績なんかはやはり気になるんですよね。

 実際、今どんな状況になっているのかというのを、私、資料でいただいていますけれども、もしよろしければ、局長の方から大体の説明をしていただけたら。

香取政府参考人 確定拠出でよろしいですか。(浦野委員「DCの利回り」と呼ぶ)

 DCにつきましては、これは制度創設からずっと、十数年たちますが、順調に増加をしております。二十五年末段階で資産残高が約八・六兆円でございます。

 現在の運用の資産配分を見ますと、先ほどからお話が出ております、いわゆる預貯金等の元本確保型が大体六割、その残りは投資信託等の有価証券ということになります。

 運用実績なんですが、実は、全体の四五%が運用利回り一%以下ということになってございます。他方で、一〇%を超えるものが八%になっているということで、実はちょっと両極端に振れているという実態があります。

 企業は、当初、制度を導入するときに、その掛金水準、確定拠出なので掛金が決まるわけなんですけれども、当然、DBと違って、最終的な給付から逆算して保険料が決まるわけではないわけですが、確定拠出ではありますが、一応、ある程度、最終的に給付する水準を想定して掛金を設定するわけです。その場合、各企業、これは設定している場合もしていない場合もありますが、一応、想定利回りを頭に置いて、それを前提に掛金水準を決めるとやっております。

 今、各企業、各基金を見ますと大体二%ぐらいで設定をしているということになりますと、平均をすると二%を超えているところもありますが、申し上げたように、一%以下の運用構成のものが四五%あるということになりますと、実は、当初想定したような給付水準に達しないということになります。

 この大きな原因の一つは、やはり、いわゆる元本保証型、要するに定期預金で運用している場合がかなり多いということで、定期預金の利率は御案内のように一%以下ということになりますので、その意味でいいますと、元本保証型といいますか定期預金の構成比率が高いと、全体としては想定利回りに達しない。現実にはそういうことが起こっている。

 これまでのように、ずっとデフレが続いて、物価がそもそもゼロとかマイナスであれば、ちょっとでも利息がついていればプラスになるわけですが、例えば物価が二%で動くということになりますと、定期預金一%で十年、十五年回しますと、実は、名目額は割れていませんが、運用負けをして元本割れをする、目減りをするということにもなりますので、そういったことも含めてよく労使で判断をいただいて、運用の提示をする商品の選択、あるいは個々人の加入者の選択というものをしていただけるようにということで、そういったことを通じて全体の運用の改善を図っていくということが多分求められるのではないかと思っております。

浦野委員 今の答弁は、要は、元本確保型を今まで義務づけていたこともあるし、デフォルト商品として指定したこともあったので、やはり非常に割合がふえてしまって、それを利回りがもっといいものに回してもらえるように回してもらえるように今回の改正をするのかなと私なんかは感じたんですけれども。

 午前中に、長妻委員の質問の中で、まさかそういうふうに運用させるためにこれをやるんじゃないよねという質問もありましたけれども、損をしてしまう、元本確保でも元本割れしてしまう事態もあるわけだから、運用実績として、私は、一〇%以上の利回りがあるのが構成比でいったら八%近くあるというのは、結構すごいなと。そのほかでも、大体、細かい数字になりますけれども、二から三%でも八・四とか、一から二%でも八・九、結構運用実績が出ている部分もあるんですよね。だから、そういったところに自然と、選択した結果そっちに流れていくようにするんだろうなというふうに今回の改正で私個人は思ったんです。

 これは、そうですというふうに大臣は言えないかもしれないですけれども、これから確定拠出年金、国が目指している方向性というのをもう一度お聞かせ願えたらなと思っておりますので、大臣、よろしくお願いをいたします。

塩崎国務大臣 先ほどの足立先生の議論の中で、公助、共助、自助というのがありましたが、先ほど申し上げましたように、この確定拠出年金というのは、やはり自助努力の支援をするということで、より人生の将来像に安心感が持てるように、その仕組みではないかというふうに思うわけであります。

 今回、一号被保険者、二号被保険者、三号、いろいろおられて、今まで確定拠出年金ができなかった例えば公務員であるとか三号被保険者とか、その他いろいろありますが、できる限りみずからの選択でもってみずからの老後の所得を保障できるようにしよう、こういうことで制度を拡充しようということであるわけであります。

 加入者の年金資産をどう運用していくことが望ましいのかというような観点も今お尋ねの中にあったかと思うわけでありますけれども、やはり長期の観点から、物価変動などをちゃんと織り込んで対応しつつ、将来における十分な年金給付の確保が可能になるように運用されるということが当然のことながら望ましいわけでありまして、このため、確定拠出年金における運用においては、異なるリスク・リターン特性を持つ運用商品をできる限り適切に組み合わせる、いわゆる分散投資というものを行うことによって、リスクの軽減と安定的なリターンとをバランスをとっていくことが重要だというふうに思っております。

 このような観点も踏まえて、今回の改正におきましては、運用商品の提示に関する規制の見直しとか投資教育の充実など、加入者がみずから運用商品の選択をしやすい環境整備、そのことが、言ってみれば、自助努力のお手伝いを国がしながら、自分の道を選べるようにするための担保措置をするということだというふうに思います。

 こうした環境の整備を通じて、加入者が長期にわたる安全かつ効率的な運用をそれぞれ行って、老後に向けた安定的な年金資産形成を行うことができるように支援していくというのが確定拠出型年金のあるべき姿かなというふうに思うところでございます。

浦野委員 ありがとうございます。

 もう少し時間がありますので、来週の水曜日、年金の問題を集中審議する予定になっていますけれども、もう既に党のバッターが決まっておりますので、私、質問に立てませんので、ここでちょっとだけ言っておきたいことを言わせていただきます。

 きょう、これから、この後に中間報告が出てきます。その中間報告の中身というのがどういうものかというのは非常に興味がありますし、それを受けての集中審議ですので恐らく充実した審議になるとは思いますけれども、よく責任問題が言われます。もちろん、大臣も、厚生労働省全体として責任があるということはもう既にお認めになっておりますし、機構の皆さんも、理事長を初め、責任があるということはもう明言をされております。

 私は、この対策にかかった費用がどういうふうにして捻出されるのかというのは非常に問題意識を持っていまして、もちろん、今どう思っているかわからないですよ、今どう思っているかわからないですけれども、もしかしたら税から充当していくということに普通はなってしまうんだろうと勝手に想像するわけですね。

 でも、私は、このことについての対応で今トータルで費用がどれぐらいかかっているかというのが、まだそれはきっちりとわからないですけれども、その費用は、やはりなるべく機構の皆さんに負担をしていただくべきというのが筋だと思っています。

 もちろん、機構の役職の方々が給料をカットする、報酬を返納する、そういった取り組みはされるでしょうし、しなければいけません。さらに、全員が全員、要は、人為的ミスを起こすようなそういう寝ぼけた人ばかり、職員が全員そういう人じゃないというのはもちろんわかっています。でも、やはり自分たちの身に火の粉がかからないと、そういう危機感というのは改まらないと思うんですね。

 私は、だから、機構全体で給与をカットしていただいて、そのカットしていただいた給与で今回の対策費に充てていただくというのを最低限していただかないとだめなんじゃないか。機構の役職についている人たちだけじゃなくて、やはり全体で給与をカットして費用に充てていただく、そういうことをしていただかないと僕はだめだと思っていますけれども、もしそのことについてお言葉があるのであれば、大臣。

塩崎国務大臣 これは何度も申し上げておるように、厚労省も私を含め、そしてまた年金機構も水島理事長を含め、今回の事案についてけじめをつけなきゃいけないということは、もう申し上げてきたとおりであります。それは、年金機構法にありますような、私ども厚労省にとってはしかるべき監督と、そしてまた機構の側にとっては、厚労省との連携の中で事業を適正にやるということについて結果責任を負うということだと思います。

 今、機構の方々、職員も負担をすべきだということでございますが、貴重な御意見としてしかと受けとめて、また今後考えてまいりたいというふうに思います。

浦野委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、法案のみでお願いをいたします。

 日本再興戦略二〇一四においては、「豊富な家計資産が成長マネーに向かう循環の確立」という文脈の中で確定拠出年金について語っております。

 資料の一枚目に「年金制度の体系」をつけておきました。いわゆる三階部分と言われる企業年金は、確定給付企業年金、DB、厚生年金基金を合わせて今八十四兆五千億円あると聞いております。また、確定拠出年金、DCが八兆六千億円、このうち個人型DCは九千億円と聞いております。国民年金基金三兆六千億円と合わせれば百兆円の市場が今現実にある。GPIFの積立金残高が百四十兆円で、世界最大の機関投資家と言われていることと比べても、まさに豊富な資産であり、しかし、今まだないところが随分あるわけですよね。三階部分がないところ、それどころか、一階の国民年金しかないところにも拡大をしようというわけですから、まさに巨大なマーケットと言えるのではないかと思っております。

 そこで、「改正法案の最大の注目点は、個人型DCの加入対象者を拡大し、基本的には公的年金の加入者全てが確定拠出年金の加入対象者となることである。」これはみずほ総研の言葉なんですが、そういうふうに業界は見ているわけですね。

 大臣は、この点、どのような認識を持たれているでしょうか。

塩崎国務大臣 今回御審議をいただいております法案は、いわゆるライフコースとか、あるいは働き方の多様化が進む中で、企業年金の普及拡大を図るとともに、老後に向けた個人の継続的な自助努力を支援するため、確定拠出年金等の法改正を行う、こういうものだというふうに思っております。

 特に、公的年金の給付と相まって国民の老後所得の保障を図る観点から、先ほど来いろいろ出ておりますけれども、私的年金の加入率向上を図ることが重要だというふうに考えておりまして、その観点から見れば、個人型の確定拠出年金の加入対象者の拡大は一つの大きな柱であるというふうに認識をしているところでございます。

 今回の法改正によりまして、結果として資産運用の活性化につながる可能性もあるわけでございますが、本法案の目的は、あくまでも、企業年金の普及拡大や老後に向けた継続的な自助努力の支援、繰り返して申し上げてまいりましたけれども、この自助努力の支援を目的としたものでございます。

高橋(千)委員 公的年金と相まってとか自助努力の支援、これは私が先ほど読み上げた再興戦略の中の文脈に出てくるわけで、一つ一つこれは後で議論していきたいんですが、一つの大きな柱だとおっしゃいました。

 ですから、先ほど来議論があって、四千万人の対象者が今現時点でいる中で、わずか〇・五%。それを、全ての、今のここの「年金制度の体系」にある六千七百十二万人をターゲットにして、〇・五%がですよ、するということが可能になるわけですね。そういう点での、大きな柱ということをおっしゃられましたけれども、巨大なマーケットが開かれるということだと思っております。

 この確定拠出年金制度が始まったのは二〇〇〇年であります。私は二〇一〇年の法改正のときにも質問しているんですけれども、その直前に、年次改革要望書の中でアメリカが、DCへの拠出を労働者にもと要望をしておる。そのときも既にこのような話をしましたけれども、結局、先ほど足立委員がアメリカの陰謀だと言う人がいるとか言っているわけですが、陰謀ではなくて、表から、正面からアメリカが要望して、結果としてそうなっているということをあえて指摘をしておきたいと思います。

 私がそのとき指摘をしたのは、企業が責任を持たなくても済む確定拠出年金にまさか一本化しちゃうなんてことはありませんよねと。そうだと言ったんじゃないですよ、ありませんよねということを聞いた。そのとき民主党政権でございました。藤村副大臣が、いや、そんなことはまずないと強調されて、確定給付型の企業年金が依然として中心的役割を果たしていると答弁をされたわけです。

 しかし、めくっていただきたいと思うんですが、二〇一〇年ですけれども、もう五年たっていますけれども、それ以降、DBは下り坂になっているわけです。その一方で、企業型DCはどんどん伸びて、今や四千四百三十四規約、加入者五百五万人に伸びているわけであります。

 そこで伺いますが、今回は、百人以下の小規模企業を対象にした簡易型DCの創設、また個人型DCに対して小規模事業主が掛金を納付する、そういう制度を創設するわけですよね。これでまたさらにどのくらいの伸びを見込んでいるんでしょうか。

香取政府参考人 二十三年以降、今のお話で、確定給付型の企業年金の加入者は減少傾向にあるわけなんですが、特に中小企業の企業年金の実施割合は低下をしてきているということで、実は中小企業、規模の小さい企業が企業年金を持ち切れなくなっている、あるいは新しくつくることが困難になっているというのが恐らく現状ではないかと思っております。

 その意味で、できるだけ中小企業の方々にも三階部分を保障するという意味で、企業年金を普及していく、拡大していくということは、多分この措置はとても重要なんだろうと思っております。

 今回、百人以下の小規模企業については、いわゆる簡易型という、手続を簡素化した確定拠出型を用意する、あるいは、それもできないさらに小さいところについては、従業員が入っている個人型の確定拠出に対して事業主がいわば合わせて拠出をするという形で、いわゆるマッチングの逆のような形になりますが、従業員個人個人の自助努力を企業が個別に支援するような小規模事業主掛金納付制度というものをおつくりして、支援をしたいというふうに思っております。

 今回の制度をつくることで、できるだけ多くの中小企業で三階部分ができるようにということで御支援したいと思っておりますけれども、もともと、今減少傾向にあるということもありますし、個人型は、先ほどからの答弁で申し上げていますが、非常にまだ加入割合が少ないということ、もう一つは、そもそも任意の制度だということもありますので、何か目標を立てるとか、あるいは、ここまで持ってくるというような数量目標というものを用意してやるということは、なかなか行政としては難しいと思っておりまして、できるだけ多くの中小企業がつくれるように御支援を申し上げる、基本的にはそういう方針で臨みたいと思っております。

高橋(千)委員 目標はなかなか言えないというお答えでした。

 現実に、今、中小企業が、企業年金どころか退職金もそもそも制度として持っていない、そういうところに、こうしたDCに一定の掛金を若干出すことによって、あるいは簡素な制度にすることによって、それが、今までなかったものがふえていくということだったらとてもいいなと思うんですけれども、もともと力のある、DBをやっているような企業が、いやいや、うちも簡素な方でお願いよ、そういうことを別に狙っているわけではないですよね。ただ、そういう議論もあったと思いますが、いかがでしょうか。

香取政府参考人 DB、DCに関しては、本日の御答弁の中でも申し上げておりますが、私どもとして、例えばDCに移行させる、あるいはDBを維持するというような考え方には基本的に立っておりませんで、それぞれの企業の労使の御判断でやっていただくということになります。

 ただ、制度設計の特性として、DBは、給付が決まって掛金がそれで変動するという仕掛けになりますので、いわば事後的な経済変動ですとかあるいは平均寿命の伸びでありますとか、そういった社会経済変動が全て掛金に反映されるということになりますので、企業は責任を持ちますが、企業もかなり大きいリスクを負うことになります。特に、今の企業会計基準ですと、例えば運用利回りが、予想利回りが下がると、その分、足元で債務認識をしないといけないということになりますので、非常に企業会計に与える影響が大きいので、DBに関して言うと、かなり体力のある企業でないと、現実問題、維持できなくなるということがございます。これは今回の法律改正の中には出てまいりませんが、DB。

 他方、DCは、個人が自分の責任で掛けていく、企業はそれを支援するという制度ですので、先ほどの御質問にもありましたが、個人個人の給付はある程度保証されるわけですが、責任も個人が持つということになります。

 今、これは審議会の議論や政府、党等の方針というものがありますが、DBとDCのいわば中間型のような、ハイブリッドのような新しい制度を用意するとか、いろいろな形で、リスクを分散するような形でつくりやすいものをつくっていくという形で、DB、DC、それぞれの制度設計を生かしながら新しいそういった形もつくっていく、そういった形で全体として上げていくということを考えていますので、DBからDCに移行させるためにDCをつくりやすくするというような趣旨で私ども臨んでいるということではございません。

高橋(千)委員 企業の側にとっては結構リスクが大きいからということで少し置きかえが進むのかなという懸念を持って、あえて指摘をさせていただきました。

 新しい制度の議論がもう始まっているわけですよね。今おっしゃったハイブリッドの問題なんかも、加入者と使用者がともにリスクを分け合おうじゃないかみたいな議論があったりとか、いわゆる確定給付だけれども、将来、JALのように約束した年金を割ることもそれはあっても仕方がないんじゃないかとか、そういう議論は既に始まっているわけですよね。そのことに対して非常に懸念を持っておるわけでありまして、これはまたそういう機会に議論していきたいなと思っております。

 そこで、厚生年金基金の特例解散を認める法改正、二〇一三年に行いました。現在の基金数、解散や代行返上がどのようになったのか、また、この一連のてんまつをどのように見ているのか、伺います。

香取政府参考人 厚生年金基金につきましては、二十六年四月から、公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律、一昨年の法改正で、基本的には制度を畳む方向になってございます。

 二十五年度末、二十六年三月時点で五百三十一基金が、法施行直前の段階ですね、存在しておりました。二十七年七月末現在で百十五の基金が解散をいたしました。二十一基金が代行返上いたしまして、代行部分を返上して、残りの資金で確定給付型の企業年金に移行してございます。

 残り三百九十七のうち、かなりの部分は基本的には代議員会等で解散または代行返上の方向に向けた議決を行っておりまして、基本的には解散、代行返上の方向で動いております。一部、存続を予定している、あるいは、まだ方針が未定というところも若干残ってございますけれども、全体としては、基本的には五年間の期間の中で解散ないしは代行返上で他の企業年金に移行するという方向で動いている。

 その意味では、法律改正の後、順調にという言い方も変ですが、法律の想定どおりに、少しずつ、基金はそれぞれ身の振り方を決めておられるということだと思います。

高橋(千)委員 この質問をしたときにちょうど香取局長もまた答弁をしているわけですけれども、実は、これは特例解散ということで、去るも地獄、残るも地獄の状態だったわけですよね、実際には。

 私が取り上げたニットの基金などは、本当に景気が悪化していく中で、どんどんどんどん抜ける方が多くなっていく、そうすると、残ったところに積立金の準備の分がどさっとかかってきて、給料よりも多く払わなきゃいけない、だから、返すためには一括して返さなきゃいけない、これは大変だというふうな議論があったわけで、それで三十年かけて返していこうという特例制度をつくったんだけれども、この資料の三枚目を見ていただくと、特例解散基金数、二十六年度で二十八、その後四と四くらい、この程度しか実際はない。

 局長は今、一応順調にとおっしゃったけれども、思ったよりも特例を使わずに代行返上なり、あるいは存続、要するに一定余力があって存続をしているところがあったと思っているわけですね。

 やはりそれは、私があのときのてんまつをどう見ているかと伺ったのは、何であのときあれほど大変なことになったのか。発端はAIJの投資顧問問題が大きくクローズアップされた結果だったんですけれども、結局、責任準備金を積まなければならない、国際会計基準である程度余力がなければならないんだけれども、それから見ると全然足りないよと。なぜ足りないのかというときに、予定金利を五・五%に積まなければ絶対その準備金は足りないことになっている。絶対無理なのに、今の金利が非常に低金利であるにもかかわらず、やっていますというふうなことを見せかけたというのがAIJの問題であった。そして、AIJにかかっていない厚生年金基金もそういう目標を持たざるを得なかった。だから、現実と実態の乖離が激しくあったわけですよね。

 そのことをわかっていながら、打つ手がなくて放置をした、その責任はきちんと認めなければならないと思うんです。そうじゃないですか。

香取政府参考人 この御議論は二年前の法案のときに高橋先生としたかと思うんですが、基本的には、予定運用利回りをどのように設定するかというのは代議員会の決議で規定をする、例えば五・五、あるいはその昔であれば四・六とか七・幾つという時代もありましたが、そういった数字を時々の状況に合わせて基金の中できちんとお決めいただくということがきちんとできなかったということで、それは、基本的には、私どもは、労使の合意で運用される基金ですから基金の責任だということですけれども、きちんと指導ができたかどうかということであれば、私どもも幾つかの反省点はあったのではないかというような趣旨の御答弁を申し上げたかと思います。

 今回、今お話のあった特例解散、先ほどちょっと数字を申し上げませんでしたが、特例解散が三十六で解散基金が百十五ですから、二割強ぐらいが特例解散を使っているわけですが、法律が通ってから、現在、基金はそれぞれ解散なりあるいは代行返上して移行する手続をとっておりますけれども、やはりこの間、安倍政権になりましてアベノミクスの効果がありまして、株価あるいは債券も含めて、厚生年金基金が持っておられた資産がかなり財政状況がよくなっているということもありまして、実は、解散時点で必要になってきますいわば責任準備金との乖離がかなり小さくなっていて、あの当時代行割れをしていたといった基金でも、かなりの部分、代行返上が可能な形になってきているということで、この間の経済状況の好転というのが今の状況に結果的には少しプラスになっているのではないかと思います。

 先ほど順調にと申し上げましたのは、最終的に解散したのは百十五ですが、一応、解散の内諾までとれているところ、あるいは代行返上の内諾がとれているところが全体で四百、三百九十七ございますので、その意味では、基本的には、基金としては今後の方向性については方向が見えてきていて、あとはいろいろな形で具体的な手続をとる段階に入っているという意味で、何といいますか、順調にと言うとちょっと、日本語は難しいんですけれども、着々と前に進んでいるということではないかと思いますということで申し上げました。

高橋(千)委員 思いのほか時間が足りなくなって今困っているんですけれども、なので、今、ここの問題はあと一つだけ、確認で答えていただければありがたいかなと思うんです。

 結局、瞬間的にアベノミクスで状況もよくなった、好転した、その際に解散しちゃった方が後々楽よねという判断もあったと思うんですね。結局、でも、その後に政府が検討していたのは、厚生年金基金の受け皿はDCなんだと思っていたわけですけれども、そこのところは思いのほか進んでいないというか、把握もされていないということでした。

 これはやはり、かなり痛い目に遭ったからまたリスクをとって運用云々というのはなかなか厳しいなというのが現実なんじゃないかなと思いますが、そこら辺、一言だけ。

香取政府参考人 済みません。では、ちょっと数字だけ申し上げます。

 先ほど、百三十六基金の解散を申し上げましたが、解散基金のうち、上乗せ部分を持って解散した基金は百ございます。このうち二十二は、先ほど申し上げましたように、確定給付型の基金に移行しました。基金を構成する企業、総合型が多かったので複数の企業が入っているわけですけれども、基金の中の一部の事業所が確定給付型に移行する基金あるいは移行を予定している基金が六十一、加入者への分配を予定している、分配するということは解散するということになりますが、これが九、検討中が八ということになりますので、その意味では、何らかの形で、残った資金を使って他の企業年金に移行している、あるいは移行する予定のところというのが大半を占めるという状態ではないかと思っております。

高橋(千)委員 ですから、DCが受け皿ではなかったということで確認をしたかったんです。当然ですよ、基金の中には、一定規模があって、余力があってDBに移れた、そういうところもあったということを踏まえて質問しておりますので。

 これは、ちょっと問いがまだいっぱい残っておりますので、ここは指摘にとどめたいと思います。

 そこで、少し飛ばします。

 日本証券業協会などは投資アドバイスを導入すべきだと言っているわけですよね。これは、特定の金融商品を勧めることは金融商品取引法で言うと投資助言に当たるし、確定拠出年金法の百条の違反にもなると思うんですよね。証券業協会は、いやいや、別に個別を勧めるわけじゃないんだ、アドバイスは必要なんだということを言っている。政府はどう考えていますか。

塩崎国務大臣 日本証券業協会が投資アドバイスを導入すべきと、こういうことを今御質問いただきましたが、確定拠出年金法におきましては、個別の商品に言及せずに一般的な投資の知識を向上させるための投資教育を行うこととされている一方で、加入者の不利益となる運用商品を過剰に勧めるリスクを避けるために、運営管理機関が特定の運用商品を勧奨することは禁止されているというたてつけになっているわけであります。

 日本証券業協会が提案をしております投資アドバイスは、確定拠出年金の運用商品について、専門知識を有する法人が加入者に対して個別の商品の選び方を提案するものと承知をしているわけであります。

 投資アドバイスの導入については、特定商品の勧奨を禁止する確定拠出年金法上の規定や、金融商品取引法上の投資助言業務との関係など、整理すべき課題があり、慎重に検討する必要があると考えております。

高橋(千)委員 これは二〇一三年三月のDC法令の解釈通知改正のときに既に議論になって積み残しになったものでありますから、今後浮上してくるおそれがあるのかなと思って指摘をいたしました。

 実際にモデルとしている米国の投資アドバイスは、個別商品に言及するものであるということで、そうなってしまうと、本当にどこに区別があるのかなということがあるわけですよ。つまり、本当に個人の中のいわゆる自由な投資と、今やっているDCやDBというのは政府が減税措置をした中での一応、一定の規制を持っているわけですから、それとの境目がなくなってくるんじゃないかということを指摘したいと思うんです。

 その点でもう一つ伺いたいのは、マッチング拠出。これは前回の法改正で行ったわけなんですけれども、企業型DCというのは本来は企業が掛金を払うものなんだけれども、企業が許されている範囲、つまり、今言った減税の範囲、残りがあったら加入者が払ってもいいというものであります。それを、上限を撤廃するべきだという意見もございます。本来、賃金の後払いである企業年金の性格を変えるものであり、これは認めるべきではないと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 いわゆるマッチング拠出は、企業年金が従業員の福祉の向上を図るものであって、事業主拠出が基本であることから、事業主の掛金負担が従業員に転嫁をされて従業員拠出が基本となることがないように、事業主の拠出を超えて従業員が追加で拠出することができない仕組みとしております。

 マッチング拠出の規制につきましては、社会保障審議会の企業年金部会におきましても、規制の存廃についてさまざまな意見があり、今後の検討課題と整理をされておりまして、厚生労働省としては、こうした整理を踏まえながら、引き続き議論を行っていく必要があると考えております。

高橋(千)委員 あとは要望にとどめます。

 これで終わりますけれども、この審議会の中で、全銀協が上限を撤廃すべきだと言っていることに対して質問が出て、極端な話で、事業主が千円で従業員が五万円、こんなことだって認めるんですかというのに対して、結果として、イエスですと答えているわけなんですね。そうすると、事業主の負担が限りなく少なくなって、リスクを従業員が負うということだってありなんだという議論が現実にされている。

 やはりこれは、大臣の答弁の中にもあったと思うんですが、もともとなぜ不可にしたのかということをちゃんと踏まえないと、これでは、本人の拠出を任意として、その運用方法までみずから選択しちゃうとなったら、貯蓄とどこが違うんだということになっちゃって、全く境目がなくなってしまうという点で、やはりこれはきちんと分けるべきだということを指摘したいと思います。

 最初にお話をした公的年金との関係について質問する予定でしたが、全く時間がなくなりましたので、次の機会にしたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次回は、来る二十六日水曜日午前九時十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十六分散会


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