衆議院

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第6号 平成28年3月16日(水曜日)

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平成二十八年三月十六日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江渡 聡徳君

   理事 小松  裕君 理事 後藤 茂之君

   理事 白須賀貴樹君 理事 初鹿 明博君

   理事 山尾志桜里君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    大串 正樹君

      木村 弥生君    今野 智博君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    田村 憲久君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      中川 俊直君    永岡 桂子君

      長尾  敬君    丹羽 秀樹君

      丹羽 雄哉君    比嘉奈津美君

      福山  守君    堀内 詔子君

      前川  恵君    牧原 秀樹君

      松本  純君    三ッ林裕巳君

      宮路 拓馬君    村井 英樹君

      山下 貴司君    井坂 信彦君

      緒方林太郎君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      中島 克仁君    西村智奈美君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    浦野 靖人君

      小熊 慎司君    重徳 和彦君

    …………………………………

   議員           中島 克仁君

   議員           山井 和則君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   内閣府副大臣       高鳥 修一君

   厚生労働副大臣    とかしきなおみ君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   厚生労働大臣政務官    三ッ林裕巳君

   政府参考人

   (内閣官房一億総活躍推進室次長)         大島 一博君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            生田 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局雇用開発部長)       広畑 義久君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       香取 照幸君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  鈴木 俊彦君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     今野 智博君

  谷川 とむ君     宮路 拓馬君

  牧原 秀樹君     前川  恵君

  柚木 道義君     緒方林太郎君

  重徳 和彦君     小熊 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     田畑 裕明君

  前川  恵君     牧原 秀樹君

  宮路 拓馬君     谷川 とむ君

  緒方林太郎君     柚木 道義君

  小熊 慎司君     重徳 和彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中島克仁君外八名提出、衆法第一二号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び中島克仁君外八名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房一億総活躍推進室次長大島一博君、厚生労働省職業安定局長生田正之君、職業安定局派遣・有期労働対策部長坂口卓君、職業安定局雇用開発部長広畑義久君、職業能力開発局長宮川晃君、雇用均等・児童家庭局長香取照幸君、老健局長三浦公嗣君、年金局長鈴木俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは珍しくトップバッターですので、よろしくお願いをいたします。

 昨日の参考人質疑でも指摘があったように、今回、雇用保険法案と一くくりに呼び、かつ、日切れ法案であるというのは乱暴だと思います。来年一月一日施行のものもあり、一つ一つ切り離して丁寧な審議を行うべきでした。ここは、冒頭、指摘をさせていただきたいと思います。

 今法案のもととなった労政審の職業安定分科会雇用保険部会報告では、「現在の雇用情勢は、着実に改善が進んでいる。」こういう指摘から始まっております。雇用保険積立金残高は六兆二千五百八十六億円、二事業は八千三百二十九億円と積み上がり、「雇用保険の財政運営についても、そのあり方を検討する必要がある。」と述べております。雇用保険の積立金が非常に突出している、だから見直しする必要があるんだというふうに読めるわけですね。

 しかし、これも、昨日参考人から指摘があったように、憲法二十七条、勤労権を保障し、失業中の生活の安定という雇用保険の本来の役割を果たしていると言えるのか、ここが問われると思います。

 資料の一枚目を見ていただきたいと思います。

 これは、雇用保険の積立金残高、この青い棒グラフが、現在の積立金がどうなっているのか。一旦は枯渇するのではないかということが、平成十四年のとき、四千六十四億円まで下がって減ったわけですけれども、この後、順調に積み上がっているのは、国庫負担をもとに戻したりとか保険料率を上げたりとか、そうしたことをやってきたことがあるわけなんです。

 私がきょう見ていただきたいのは、黄色の完全失業者の数と、今失業等給付を受けている方の数なんですね。一番最初の年、これが下の、七十万人から始まっております。ですから、当時は給付率四二・一%から始まりました。一番落ち込んだときは二九・二%と、三割を切ったわけですね。その後、一定、非正規労働者にも対象を拡大するなどということで広げてきたわけですけれども、結果として今は二割を切っている、こういう状況になっていると思うんです。

 ですから、これは、この間に、二〇〇〇年、二〇〇三年、法改正があって、離職理由によって給付額も日数も差がつけられる、そして待期という形で制限がつけられる、そうしたことがやられてまいりました。

 ですから、ここだけを見るとどうしても、何か突出していて、これは国庫負担はもう要らないんじゃないか、そういうふうな議論がされがちであります。しかし、単に雇用情勢が改善し、失業等給付の必要性が減ったんだというわけではないと思いますが、いかがでしょうか。

生田政府参考人 お答えいたします。

 雇用保険制度につきましては、失業者の勤労権を保障するセーフティーネットとして必要なものでございまして、今委員御指摘になりました国庫負担につきましても、失業につきましては、国の経済政策あるいは雇用政策の責任をあらわすものとして必要であるというふうにされてございまして、雇用保険法上はっきり書いてあるものでございます。

 今現在ございますこの枠組み自体は非常に大事なものだというふうに認識しております。

高橋(千)委員 大臣に本当は質問したんですけれどもね。

 ちょっと明確な答えではなかったかなと思いますけれども、おっしゃったことは、国庫負担の役割について改めて確認をされたということだと思うんです。それは、私がきっと国庫負担を削っちゃいけないという質問だと思って、多分先を越してそういうふうな答弁をされたんだと思うんですけれども、一つ一つやはり確認をしていきたいということなんですよ。

 もう一つ伺いますけれども、財政審は、今言ったように、国庫負担の一定規模の停止を言っています。しかし、例えば、過去最低の、積立金が四千六十四億円まで落ち込んだ時点、この時点にさかのぼりまして、今やろうとしている保険料率千分の八に固定して、国庫負担も本来の負担額の五五%、そこまで抑えてきて、今の水準まで来た場合に、積立金は維持できていたんでしょうか。端的にお答えください。

生田政府参考人 お答えいたします。

 雇用保険制度につきましては、財政状況に照らしまして、一定の要件を満たす場合につきましては、弾力条項によりまして、雇用保険料率を大臣が変更することができるということでございますので、保険料率を〇・八%に固定するということ自体は実際には起こり得ないわけですけれども、仮に、仮定といたしまして、お問い合わせのケースとしまして、平成十四年度から保険料率が〇・八%で固定されるということにいたしますと、国庫負担が本来の負担額四分の一の五五%であった場合の試算をいたしますと、まず、試算の初年度、平成十四年度末の段階から積立金残高はマイナスとなりまして、ずっとマイナスで推移いたしまして、平成二十六年度末時点の積立金残高は三兆円のマイナスとなる見込みでございます。

 なお、弾力を仮にきかすということで考えますと、平成十四年度以降プラス〇・二%、それから十九年度からは弾力の幅が広がりましてプラス〇・四%になるわけですが、そういった弾力をきかせた場合につきまして御説明いたしますと、平成十四年度から十八年度までは積立金残高はやはりマイナスでございますが、十九年度以降につきましてはプラスに転じまして、二十六年度末で約二兆円の積立金残高となる見込みでございます。

高橋(千)委員 今お答えがあったのは、まず、〇・八%に固定してしまうと既に三兆円のマイナスになっていたであろう、ただ、弾力条項があるので、いろいろ上がったり下がったりする中で、二兆円維持している。そこでとんとんだということだと思うんですね。だから、そこに国庫負担の方をいじってしまうと大変なことになるということが明らかになるのではないかなと思うんです。

 昨年の十二月十八日の第百十回雇用保険部会で、財政運営、今言ったような試算をいろいろな形で出しているわけなんですけれども、やはり、直近の受給者人員の平均は四十七万人、でも、過去十年間で見ると六十一万人、つまり、私が最初に言ったように、受給者というのは本当はもっといたわけですよね、その両方で試算をして、保険料率を仮に下げたとしても三兆円あるいは四兆円残るから影響ないという試算を出している。でも、これはあくまでも国庫負担を維持してのものである、そういうことをちゃんとアピールしていかなければいけないと思うんですね。

 改めて大臣に伺いますが、国庫負担を停止ではなくてやはり本則に戻す、そういう方向で役割を果たしていくべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、国庫負担はなぜもともと導入をされているのかといえば、やはり経済政策の責任を一定程度政府も負わないといけない、こういうことから来ているわけでございまして、今暫定的なレベルになっておりますけれども、国会での附帯決議や国会での議論を通じて見れば、本来のレベルに戻すという方向についての国会の中での御議論もいただいているわけでございますので、雇用保険のあり方については、私どもとしても、原則はやはり法律に書いてあるとおりであろうというふうに思いますので、雇用情勢をよく見ながら、また、他の経済的な要素、つまり財政的な問題等々含めて総合的に判断をしてこれから決めていくということに、私どもの方でも今検討をしているところでございます。

高橋(千)委員 国の経済政策、雇用政策に対する責任ということを改めてお話しされたと思うんですね。そういう点で、やはり本来必要な雇用保険行政をやっているのか、必要な方に手当てをしているのかということが問われる必要があると思うんですね。

 雇用保険部会で、昨年十一月二十五日、意見のまとめというのが出されておりますけれども、この中でこうした指摘がありました。「今まで一万六千円で家族を支えていた人が九千円のところに再就職している。」つまり、一定の所得があった方が実際再就職するとなると、そこまでダウンをしてしまうということでありますよね。「日額の高い層は主たる生計者である場合が多いが、家族のために急いで就職していると考えられる。そもそも労使の保険料が賃金に応じて上限なく設定されている一方、給付に上限があることについてどう考えるか。」こういう指摘があったとまとめに書かれております。

 私、全くそのとおりだと思うんですね。だからこそ、基本手当のあり方が議論されてきたのではなかったか。それが先送りされたということは非常に残念に思って、とにかく早く再就職しなさい、そこにインセンティブを与えることにだけ熱心だったのではないかと思うんですね。

 昨日の参考人質疑でも、全労連のハローワークでの失業者調査の紹介がありました。皆さんのところにも資料が配られたわけですけれども、男女ともに二十代から六十代までの声を拾っているんです。だけれども、共通するのは、仕事を選ぶ基準。長く働きたい、そして派遣や有期でないもの、これが最低の基準なんですね。

 結局それは、今までがそうだったから。少しでも今より安定したものを、そう願うのは普通の感情ではないのか。普通に家族に責任を持ちたい、そうして一定の安定した暮らしをしたい、それだけの希望がかなえられる状況ではなかなかない。それを、こうした実態をモラルハザードだといって、失業給付をできるだけ長くもらおうとしているのは問題だみたいな議論がされてはならないと思うんです。

 一言感想をいただけますか、大臣。

塩崎国務大臣 今、モラルハザードの指摘は適切ではないんじゃないか、こういうお話がございました。

 さっき申し上げたように、経済政策そしてまた民間の経済活動と両々相まって経済の状況というのは決まってくるわけで、私どもにとって大事なのは、今お話があったように、やはり生活をみずからつくり上げていくために働くということが大事でございまして、雇用保険でどういうふうな役割を果たすべきかということは、絶えず状況を踏まえながら考えていかなきゃいけないことだろうと思います。

 それで、例えば基本手当のあり方についてもございますけれども、この間の労政審でも、労働者側、使用者側、いずれも給付水準についてのいろいろな御議論がございました。

 大事なことは、再就職をきちっとしていただくということが大事でございまして、このところ、この基本手当受給者の支給終了までの就職率を見ますと、平成二十四年度が一番最近でございますけれども、一貫して大体五割をちょっと超えるぐらいのところにここ三年ぐらいなっておりまして、そういうことを考えてみると、今回、私どもがお願いをしているような見直しということでいくべきではないのかというのが、労政審の結論を受けての私どもの提案だということでございますので、先生の今のお気持ちはお気持ちとしてしっかり受けとめて、今後また議論を重ねてまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 受給者に対しては、長くもらうとモラルハザードだよといって、そして、なるべく早く就職をしなさいという指導がかかっております。一方で、雇用保険の財政を使っての事業、そっちの方はどうなのか。私は、これこそモラルハザードではないかということを指摘したいと思います。

 今国会、労働移動支援助成金がいわばリストラ助成金になっているのではないかと指摘があり、注目をされています。

 この問題は、昨年三月の予算委員会で私が質問をいたしました。雇用の維持を目的とする雇用調整助成金と、失業なき労働移動という名目で離職者支援をやる、これは全く目的が違うものであり、竹中平蔵氏の号令のもと、二つの予算が逆転し、しかも、大企業に支給できるようになったことで、国によるリストラ支援そのものになったということを指摘いたしました。

 おさらいですが、労働移動支援助成金は、二十七年度予算の三百四十九億四千万円から、百三十二億円と大幅減になっております。これは、実績が予想に比べて少なかったからということが言われておりますけれども、では、大企業、中小企業、それぞれに分けて、件数と人数が平成二十六年から二十七年、比べてどうなっているか、お答えください。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の労働移動支援助成金、再就職支援奨励金の実績、件数と人数でございます。

 多少細かくなりますけれども、平成二十六年度につきましては、大企業は百十四件、二千百九十人、金額は二億四千二百万円、中小企業は三百六十件、二千百二十九人、三億四千八百万円。平成二十七年度につきましては、十二月まででございますけれども、大企業が二百七十三件、六千六百四十七人、金額は十億七千七百万円、中小企業は二百五十八件、二千八百七十二人、金額は五億四百万円となっております。

高橋(千)委員 今、年度ごとに言ったから、聞いているとわかりにくいと思うんですね。要するに、中小企業は三百六十件だったのが二百五十八件、大企業は百十四件だったのが二百七十三件と倍増しているわけなんですね。人数でいっても、二千百九十人だったのが六千六百四十七人、三倍になっている。結局、大企業にとっては使い勝手がよいんだ、そういうことが全体の実績が減ったという中でもあらわれているのではないか、実は狙いが当たっているのではないかということを指摘したいと思うんです。

 そこで、今度は、今年度中にこの労働移動支援助成金の支給対象を拡充するといいます。一つは、送り出し企業に対する支給要件。これまでは、事業規模の縮小、廃止に伴う労働者の離職を対象としていました。今後は、それに加えて、事業転換、事業再編も対象となる。何でもありじゃないのか。どのくらい対象がふえるとお考えですか。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の、この助成金の対象となります事業規模の縮小等についての取り扱いでございますけれども、これは、雇用対策法上の取り扱いと同じく、事業規模の縮小、事業活動の縮小、事業の廃止のみではなく、従来より、事業転換、再編の場合も含まれております。しかしながら、このことが十分に周知されておらず、今後周知を図るべきとの指摘が政府の規制改革会議からなされたことから、今年度中ということで、今般改めてその周知を図ることとしたものでございます。

 なお、厚生労働省のホームページで既にこの周知を行っておりますけれども、事業転換や事業再編を統計上区別しているものではなく、また、今年度の予算の積算においてその効果を新たに織り込んでいるものではございませんので、この措置による効果をお示しすることは困難でございます。

高橋(千)委員 要するに、もともと雇用対策法に基づくものだから、それを今足したんだと。では、何で今足したんですかということですよ。つまり、リストラ助成金と言われると非常に響きが悪いから、いやいや、もともと雇用対策法に再就職援助計画というものがあるから、そのスキームでやっているんだという後づけのことでしょう。

 この再就職援助計画だって、出したって、出したけれどもその後どうなったかということに対しては一切責任がないんですよ、計画さえ出せば。そうじゃないですか。

広畑政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁申し上げましたように、従来よりこの助成金では雇用対策法上の取り扱いと同じく取り扱われておりまして、申請書上、一事業所当たり三十人以上の離職があるという場合でございますと、事業の再編であっても従来より対象としてございます。

高橋(千)委員 ですから、もっと使いやすいことを周知している、そういうことですよね。これは労働新聞で、昨年の十二月七日ですか、一面で報じられたことなわけです。それが徹底されていなかったということで、一層あらゆる場合に、結局、企業が、事業を縮小したい、事業所を閉鎖したい、あるいは中身を再編したい、そうしたあらゆるニーズに応えられるものになっているということではないでしょうか。

 さらに、もう一点。二〇一四年に改正をしておりますけれども、再就職に向けた休暇付与、これに対する給付金も拡充をするといいます。最大で百八十日休暇を付与し、日額八千円、大企業なら五千円付与するというものです。失業等給付の基本手当は上限で日額七千八百円ですよね。ですから、それよりも高いわけです。失業等給付の平均日数は九十日ですよね。それに比べて、百八十日間求職活動をしなさい、それで、リストラを予定しているけれども休んでいい、これこそがモラルハザードではないんでしょうか。

 リストラする人を休ませて、半年もですよ、失業給付よりも休ませて、求職活動という名目で基本手当より多く支給する。おかしくないですか。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、平成二十七年の六月三十日の閣議決定、規制改革実施計画におきまして、労働移動支援助成金の対象者の失業期間を最小限にするため、事業主の、本人に対する再就職支援が、本人の退職が決まり次第できるだけ早い時期から開始されるような仕組みを検討することとされたところでございます。

 このため、今委員御指摘のとおり、平成二十八年度予算案において、事業主が、退職が決定した方に対して在職中から再就職活動を行うための有給休暇を与えた場合の助成について、日額を、現行の七千円、中小企業以外は四千円から、これを八千円、中小企業以外の場合は五千円に引き上げるとともに、その支給の上限日数を現行の九十日分から百八十日分に拡充することにより、できるだけ早期に再就職支援を開始することに対する事業主のインセンティブを高めることとしてございます。

 また、この助成は、退職が決定した方が在職中から再就職活動ができるような有給休暇制度を事業主が設けて、それを運用した場合、その運用に伴って事業主に発生するコストに対して助成するものでございます。このため、労働移動支援助成金は、本人の再就職活動中の生活の安定を図るために本人に対して直接給付される、委員御指摘の失業等給付とは異なる制度でございます。

 最終的な目的は、どちらも労働者御本人の再就職の支援と、同一ではございますけれども、両者を支給額や支給日数の点で単純に比較することはできないことを御理解いただければと思います。

高橋(千)委員 当たり前じゃないですか。単純に比較できないって、私は、失業等給付の方が高くなきゃおかしいと言っているんですよ。企業内失業でしょう、これは。結局、完全失業者にも入らないわけですよ。そうやって半年間休ませて、失業者を出していません、そういう評価になるじゃありませんか。失業なき労働移動というのはそういうことなんですよ。やっていることは同じです。ただ半年間休ませる、給付はしかし国が面倒を見る、これがモラルハザードじゃなくて何なんですか。

 大臣、率直に感想を伺いたいです。

塩崎国務大臣 もともとこの制度が導入をされたのは、産業構造を転換して、新しい、付加価値の高い日本経済にするために、産業構造の転換をスピードアップするとともに、それは当然、人も一緒に動いていただかなければならないということで、労働移動のための支援金を創設した、こういうことだろうというふうに思うんですね。

 そのこと自体は、目的は正しいわけでありますし、むしろ、さらにこれを進めないと、世界はどんどん日本に追いつき、追い越そうとしているわけでありますから、そのことは大変大事なことなので、そういう制度が必要であるということは何も変わらないと思います。

 ただ、今、先生からも御指摘があったように、この有給休暇の問題、休暇付与を延長したりしていますが、いろいろ見てみると、労働移動といいながら、むしろこれは、今御指摘がありましたが、どちらかというと雇用維持型にも近いような、百八十日ということは半年ですから、そういうようなことにもなっております。

 今回わかったことは、この制度を、言ってみれば事実上悪用しているような企業や再就職支援会社があるということもわかってまいったわけでありますし、ですから、これはもともとの政策意図に立ち返って、この制度というものを絶えずしっかりと見直して、目的達成のために役立つ制度にしていかなければならないというふうに思いますので、こういった形でいろいろ御議論いただいて、御提案いただくことをしっかりと受けとめて、直していかなければならないなというふうに思うところでございます。

高橋(千)委員 昨年も予算委員会で指摘をしたことなんですけれども、やはりこれは、最初にパソナの会長である竹中氏がこの問題を、労働移動と雇用調整助成金、雇用維持であるものと労働移動を逆転せよと言ったときに、何の文脈で出てきたかということなんですよ。結局、解雇の議論をしていた、解雇の規制緩和、金銭解決の問題、なかなか難しくて今すぐ出てこないと思いますが、議論していましたよね。その文脈の中で、いかに企業が痛まずに解雇ができるかなと、そんなことをいろいろな議論をしている中で出てきた議論なんです。

 だから、産業構造とかいろいろ言っているけれども、本当は、それを送り出し企業にお願いして、人材会社にお金を払ってやるとか、そういう議論じゃないんですよ。本当に力があり、そして訓練をすることによってバージョンアップできる、キャリアアップできるという人には別のスキームがある、本来はそうであるべきだと思って、これが結局、大臣もお認めになったように悪用につながっているということは重ねて指摘をしたいし、そこは思い切って正していくということをしていただきたい。

 こういう問題は、結局、法律で、国会で議論されるのはほんの一部なんですよ。今私が言ったのは、全部、省令改正とかで、私たちがわからないところでどんどん変えていけるわけですよ。それで倍になったりとか、やはりそういう仕組み自体を見直していくべきだということを指摘したいなと思います。

 それで、重ねますけれども、昨年の派遣法改正のときに強調されたのが、キャリアアップ助成金ですよね。正社員になるチャンスを与えますと。これは必ずなれるわけではないわけですけれども、その一つの目玉として紹介をされました。

 たくさんメニューがありますけれども、その中で、例えば有期から正規に転換、または、直接雇用した場合一人当たり六十万円の支給ということで拡充をされたわけですよね。予算額がどれだけふえ、どれだけの正規雇用を目指してふやそうと思っているのか。

 それから、これにかかわるキャリアコンサルタント、この資格を格上げしたと思いますが、それについてお答えください。

坂口政府参考人 私の方から、お尋ねのキャリアアップ助成金の点についてお答えを先に申し上げさせていただきます。

 議員お尋ねのキャリアアップ助成金でございますけれども、今年度の補正予算に合わせまして、御指摘のように、有期雇用から正規雇用などへ転換した場合の助成額の増額を行いました。

 また、平成二十八年度の予算案におきまして、今年度の支給実績の増加などを踏まえまして、前年度から約百八十九億円増額をいたしまして、約四百十億円を計上しております。

 また、今年度の上半期におきまして、キャリアアップ助成金を活用していただいて正規雇用などに転換した方の実績が約一万六千人おられまして、平成二十八年度におきましては、これを上回る実績を目指すこととしております。そういった状況で、約五万人を予算積算上の計上という形で申し上げております。

宮川政府参考人 キャリアコンサルタントの国家資格化についてお答え申し上げます。

 キャリアコンサルタントは、職業の選択、職業生活設計、職業能力の開発、向上に関する相談に応じ助言指導を行うキャリアコンサルティングの専門家のことでございますが、さきの通常国会で成立いたしました改正職業能力開発促進法に基づきまして、平成二十八年四月より国家資格化がなされるものでございます。

 この国家資格化は、国家試験あるいは登録制度、守秘義務の創設などによってキャリアコンサルタントの質を担保することにより、働く方が安心してキャリアコンサルティングを受けられる環境整備を狙いとしたものでございます。

高橋(千)委員 これは国家資格になるということで、相当厳しいものにしなければならないと思うんですよ。五万人正規を目指すということで、予算も倍増、四百十億ということがありました。

 これもやはり問題があって、昨年の一月二十八日の書き込みですけれども、ある社労士のブログにこんなのがありました。このキャリアアップ助成金は、現在求人応募を検討している、または実際に行っている会社様が活用しやすいものとなっております、今から新しく採用される方を有期雇用契約で採用し、半年後に正社員化を行うといった流れで助成金を活用していくことが多いからですと。

 どうでしょうか。就業規則に正社員登用制度を書き込んでおけば大丈夫と指南しているわけですね。つまり、本来正社員を採用する予定なんだが、最初は有期で採用しておいて、国から助成金ももらえるし、やはりやめてほしいなというときには、これはお試し期間で有期ですからこれだけの限りですよとなって、リスクも避けられてラッキーというお勧めをしている。これも税金の使い方としては間違っていませんか。

坂口政府参考人 キャリアアップ助成金につきましては、その支給要件としまして、事業主の方からは事前にキャリアアップについての計画を出していただいて、その認定をした上で、それに基づいての正社員化ということをしっかり伴っていただいた段階で支給するということにしておりますので、私どもとしては、このキャリアアップ助成金の適正な支給ということにしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 また、最初から正社員を希望されているという方につきましては、若者の適職選択も含めまして、ハローワークの方で、正社員就職に当たっての支援ということも含めてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 ここは絶対そうしたことがないように。最初から正社員を雇うつもりだったら雇えばいいんですよ。それを国の助成金までちゃっかりもらって正社員化しましたなんてことは絶対ないように、これは通達なり指示なりやっていただけますか。

坂口政府参考人 先ほど申し上げましたように、キャリアアップ助成金の適正な支給の徹底ということにつきましては、これまでも地方に対して指示しておるところでございますけれども、再度改めてその適正な支給ということにつきましては徹底の指示を出したいと思います。

高橋(千)委員 確認をいたしました。

 次の課題がありますので、ここは言い切りにしますけれども、今、キャリアアップという言葉、キャリアコンサルという言葉、これは本当にいいように使われちゃっているんですね。もう今、あげくの果ては、正社員に対して自分を見詰め直せと言っている。

 どういうことかというと、雇用保険部会報告では、教育訓練給付、これだってちゃんと税金が出るわけですよね、「労働者が自らのキャリアについて主体的に考え、これに即して職業能力の開発、向上に取り組むことが重要」とされて、日本再興戦略に、セルフ・キャリアドックというふうに位置づけられたんですよね。

 これも実は、去年の派遣法の議論のときにありました。何で三年ごとにかえることをやるんですかと言ったときに、見詰め直し、自分のキャリアを見詰め直すんですという言葉が使われて、非常に、法の緩和をやるときに、都合のいい言葉を持ってきたものだなと思ったんですけれども。

 これが結局、正社員に対しても、自分が望んでいろいろなキャリアアップを目指して訓練したいという方に対しては別ですよ、そうではなくて、自分で自分を見詰め直しなさい、自分の能力はこの程度だよと見きわめろというふうなことも言いたいのかなと言いたくはなりますが、もう本当に、そもそも、上から目線でこうして言っている、セルフ・キャリアドックと言っている、こういうこと自体が、形を変えたリストラ支援になりかねないと指摘をしておきたい。

 積立金は、本来余っているわけじゃないという話をしてきました。雇用保険二事業についても同じなんです。どう見ても、企業の使い勝手を税金で応援しているだけなんだ。これこそがモラルハザードだ。きちんと職業紹介と公的職業訓練、これを中心とした王道を行くべきだ、このことを重ねて指摘をしたいと思います。

 次に、育児・介護休業法について質問します。

 毎年十万人が家族の介護のために離職をする中、介護をしている雇用者二百三十九万九千人、うち介護休業を利用している方は七万二千人で三・二%。しかし、介護休業給付を受けている方は、さらに少なくて、九千六百人にすぎません。

 ですから、今回、給付で六七%まで見ますとしたことは、遅きに失したとはいえ、求めてきたものであるので、評価をしたいと思います。

 ただ、一方、九十三日という上限は変わりません。極めて利用の少なかったこれまでのデータのみで九十三日で足りているとするのではなくて、柔軟に利用できるようにするべきではないでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 介護休業の九十三日の議論でございますが、これはもう先生御案内のように、介護休業は、いわば介護を介護家族がみずから担う、つまり、家族介護を前提に介護休業を求めるということではございませんで、基本的には、公的介護保険制度その他の公的サービスを適切に利用しながら就労の継続をするということで、個々の家族が介護体制をつくる、そのための休業ということで一定期間利用できるようにということで創設されているものでございます。

 今回の改正案の議論の中では、今の制度ですと、九十三日とりますと、一回で九十三日間という形になりますので、なかなか使い勝手が悪いということで、実際に介護を経験された労働者の方は、実際に一週間以上連続して休暇をとった場合、大体、二週間以内というのが七五%、さまざまな分割をとられている方を見ますと、三回までで九〇%がカバーできるということですので、今回は、九十三日を一回でとるのではなくて、介護の開始から、介護されている方が、介護が終わるまでの期間の中で分割をして、三回、九十三日を上限にとるという形で、いわば柔軟に利用できるような形にするという形で今回は改正案を考えたということでございます。

 この点は、事業主側の雇用管理の負担という問題もございますので、法律上の最低の基準ということで、九十三日を分割、三回までということとしたところでございます。

 他方、二十四条では、事業主にさまざまな配慮義務が課されておりますので、個々の企業あるいは労使の交渉の中で、法律を上回る柔軟な制度の導入ということはもちろん可能でございますので、これは、各企業において、そういった形で、労使交渉の中で、あるいは企業自身の努力において上乗せの水準に取り組んでいただくということにつきましては、積極的な取り組みを促してまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 今局長がおっしゃったことは、きのう参考人の中からも意見が出たし、これは審議会の中でも出た話なんですね。家族が離職に追い込まれる前提にやはり家族介護というのがあると。介護休業は、それが目的ではなくて、公的介護保険でやることを、あとは導入のときですとか途中の経過ですとかということであって、本来、自分で介護するというのが前提じゃないんだということを今おっしゃったんだと思うんです。自分で介護するとなったら九十三日じゃとてもとても足りなくて、一年も二年もかかったり三年もかかる、そういうことが実際にあるわけですから。

 だけれども、そういうことを議論しておきながら、では実際に介護がどうなっているかということとあわせて言わないと、同じ厚労省でありながら全く矛盾していると思うんですね。労働者だって介護のために仕事をやめたくはないわけです。

 八年前、この介護離職の問題を私は指摘しました。あのときも十万人でした。そのときに話題となったのは、同居する家族がいるだけで、仕事をしていようが何だろうが生活援助を受けられない。これではやっていけないじゃないかということで、何度も通知を出させて、家族の事情を見て例外を認めさせるということをやってきた。

 だけれども、今はもう生活援助そのものが介護保険ではカバーできないというふうになってきている。要支援外し、あるいは介護度一、二を外す。これはどうやったって、自分でやるなといったってやるしかない、やりなさいという仕組みに介護保険を変えようとしているじゃないですか。大臣、違いますか。

塩崎国務大臣 訪問介護の生活援助につきましては、利用者が単身、あるいは家族が障害、疾病などのために、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものでございますが、同居家族がいることのみをもって利用できないというものではございません。これまでも、同居家族がいることをもって一律に拒否することがないように、自治体に私どもの方から重ねて周知を図ってまいったところでございます。

 それから、後段今お話がございました、いわゆる軽度者に対する生活援助サービス等のあり方について、今、それをなくすのではないかという御指摘がございましたけれども、これは何度も申し上げているように、昨年末の経済財政諮問会議で取りまとめられました経済・財政再生計画、この改革工程表の中で検討事項となっているものでございまして、これを含めて、今、社会保障審議会介護保険部会、ここで次期介護保険制度改正に向けた議論をお願いしているところでございまして、まだ始まったばかりでございます。

 高齢者の自立支援、そしてまた介護の重度化防止というのが介護保険導入の際の理念でございましたから、その理念にのっとって、軽度者の要介護者の生活を支える観点はどうあるべきなのかということ、その観点をしっかりと踏まえて検討を行っていかなければならないと思っていますし、今何らかの具体的な方針が決まっている中での議論をしているわけでは決してないということでございます。

高橋(千)委員 一方では、重度化を防ぐといいながら軽度を外すという議論をやって、一方では、介護休業は必要だけれどもそれは基本は公的介護保険でカバーしてねと言って、これは矛盾しているんですよ。同じ厚労省で議論しているんですから、これは人ごとのような答弁をしないで、大臣がきちんと、公的保険でカバーできる範囲をちゃんと守るんだという立場に立ってください。

 もともとの出発点は介護の社会化だ。本当に、お嫁さんが家庭に縛られて介護をずっとやっている、その中から起きてくる問題から、何とか社会で支えようというところから公的介護保険が始まったんじゃないですか。つくった人たちが本当に喜んでいたのに、今はもう変質してしまったということを声を上げている、そのことにやはりちゃんと立たなければならない。重ねて指摘をしたいと思います。

 次に、子の看護休暇について。これは簡単に答えていただきたいと思うんですが、ぜひ、半日単位でなくて、年五日が少ないというのがまずあるんですが、時間休なども細かくとれるようにしてほしいということがあります。

 それから、育児の時短制度について。これは二つまとめて聞いて申しわけないんですが、小学校の低学年まで引き上げられないか。

 学童保育も時間は短いし、学校行事などでしょっちゅう休まなければならない。結局どうしていますかといったら、年五日はとても足りないので、時短も足りないので、結局年休を使っているというのが実態だということでした。

 家族責任休暇、こうしたものも議論していいんじゃないかなと思いますが、いかがでしょうか。

香取政府参考人 では、一つ一つ、ちょっと御答弁申し上げます。

 まず、看護休暇の五日の弾力的な取得のお話でございますが、これは審議会でも確かに御議論になりまして、特に労働者側から、時間単位で取得をするといったような細かい取得の仕方ができないかという御議論があったんですけれども、これは、やはり、業種とか業務内容によって雇用管理が非常に難しい業種もある、あるいは代替要員の確保をしなければいけないということもあって、最低の基準として全ての企業に義務づけるという意味で今回法律上セットするわけですが、そこは時間単位までということはなかなか難しいということで、法律上の最低基準ということでは半年単位ということで、一歩前進といいますか、改善をしたわけでございます。

 こちらにつきましても、前の答弁でお話ししましたように、各企業において上乗せはできますので、これは指針等で事業主側の実質的な取り組みを促してまいりたいというふうに考えてございます。

 それから、時短の話でございますが、現在、御案内のように、育児を行っている労働者につきましては、三歳に満たない子に関しましては時短の制度があるわけでございます。

 これは、平成二十一年、前回の改正のときの議論の中で、やはりこれをもうちょっと延ばしてくれというのもありましたが、当時の制度の普及の状況でありますとか事業主側の負担、それから、これを利用する方は現実にはかなり女性の方が多いということもありますので、余り長い期間、短時間勤務ができるということになりますと、今度は逆に、御本人のキャリア形成等にも影響があるということで、むしろこれは、長時間労働の是正をしていくとか、そういったいわば労働時間全体の見直しをしていくということで基本的には対応することが重要であろうということで、この三歳というところは現行のままで維持するということになったところでございます。

 ただし、この点に関しましても、やはり、短時間勤務については、小学校へ入るところまで可能にするような措置というものは努力義務として事業主側にかかってございますので、これは個々の企業の中でできるようにしていただきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 家族責任休暇については、ぜひ御検討いただけるでしょうか。

香取政府参考人 申しわけありません。先ほど、看護休暇で半年単位と申し上げましたが、半日単位。私、言い間違えたので、申しわけありません。

 それから、家族責任休暇でございますが、確かに、我々でも子供を育てますので、学校行事への参加というのはもちろんあるわけなんですが、仕事を休む場面というのはさまざまな場面がありますし、学校の行事ということになりますと、例えば、PTAもありますし、運動会もありますということになりますので、さまざま、かなり実施方法がいろいろあるということがございますので、事業主側の負担ということでこの休暇を一律に義務づけるというのは、やはりなかなか使側の同意も、理解の得られないところもちょっとございまして、ここは、現時点では、そういった家族責任休暇というような形で休暇を設けるというところまでの議論には至っておらないということでございます。

高橋(千)委員 きょうは、この部分は芽出しですので。

 キャリア形成に影響があるというのは、審議会の中で公益委員の方から出てきたものを局長が代弁されたんだと思いますね。やはり、そういうのがするっと出てしまうのが、本人がそう思っていらっしゃるのかなというのはちょっと残念に思うんですよ。女性の活躍とか、政府としては言うんだけれども、結局、休み過ぎると女性の活躍に響きますよ、昇給もできませんよ、そういう議論をしてしまうこと自体がだめなんですよ。

 やはり、これは全体として労働時間を、男性も含めてですよ、男性も含めてちゃんと減らしていくという取り組みの中に、必要なものを、家族責任を果たさなきゃいけないねとか時短必要だよねということをきちんととる中で、当然全体としても下げていかなきゃいけないねということにやはり力が働くような、その先頭に立っていただかなければ、公益委員の代弁ではなくてということを重ねて指摘したい、このように思います。

 資料の二枚目をぜひ見ていただきたいと思うんですが、時間がなくなってきましたので頑張りたいと思います。

 全労連女性部の、妊娠・出産・育児に関する実態調査。「あなたは、過去に流産した経験がありますか?」というのに対して、これは、一回あるが一七%で、非正規は一八・三%で若干多いんですね。二回ある人が四・七%。三回以上の人もいるんですよ。実に四人に一人が切迫流産などを経験している。これは本当に深刻だと思います。職場の理解不足で、産休がそもそも労基法の定めのとおりとれていないとか妊娠中の保護措置ができていないなど、職場環境の改善は本当に急務であります。

 続けて言いますけれども、マタハラの最高裁判決があって、社会的に認知をされて、今回は、人事権のない上司とか同僚の言葉についても防止措置をとるべきとされたことは歓迎したいと思います。

 現場の声を聞くと、残念ながら、同じ経験をしてきた先輩女性から、また産むのかと言われたり、妊娠は病気じゃない、体調管理をしっかりしてと言われるなど、心ない言動があるんですね。驚いたのは、医療・介護職で、初めての妊娠で胎盤剥離で死産した、その方に対して、子供を亡くしていなくなったんだから産後休暇は要らないだろう、欠勤だと言われた、本当に驚きますよね。

 これは間違っています。間違っているけれども、こんなことが平気でやられているんです。一番身近で相談に乗ってくれるべき人から冷たい言葉を浴びせられるこのしんどさ、この職場環境を本当に改善しなければなりません。

 相談体制の確立や、セクハラもマタハラも許されないんだということをきちんと、定義も含め、指針も大事ですが、法定化すべきだと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 セクハラについては、男女雇用機会均等法において定義を規定して、具体的にどういうものがセクハラに該当するのかということは指針において詳細に規定をしているわけでございますけれども、いわゆる今御指摘のマタハラについては、今般の改正法案において定義を規定して、具体的にどのようなものがマタハラに該当するかについては、法案成立後、労使の参画する労政審の議論を経て、指針で具体的な内容を定めることにしているわけであります。

 男女雇用機会均等法や育児・介護休業法というのは、事業主の雇用管理上の責任を明らかにする法律でございます。妊娠、出産、育児休業等を理由とする事業主による解雇、降格などの不利益扱いについては、既に、先ほど申し上げたように、法律で禁止をされているわけであります。

 一方で、今御提案がございましたけれども、つまり、マタハラ、セクハラ行為自体を禁止すべきじゃないか、こういうことでありますけれども、今回、特にマタハラは、主として上司、同僚等の労働者間の行為として発生するものとして捉えているわけでありますけれども、男女雇用機会均等法等で労働者間の嫌がらせ等を禁止することは、実は、事業主に対する義務を定めることによって労働者の保護を図るというこの労働法制の基本的な構図から見てみれば、なかなか先生の御提案については難しいというふうに考えるわけでありまして、事業主に対して、嫌がらせ等の防止をするための措置、これを義務づけることによってこの問題への対応を進めていくというのが今回のこの法律の改正の趣旨でございます。また、そういう枠組みだということでございます。

 他方、労働者間におけるセクハラ、マタハラが許されないということはもう当然のことであって、その旨については今後とも十分に周知を図っていきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 これはぜひ取り組んでいただきたい。指針はもちろんですけれども、法定を目指して知恵を出していただきたいと思うんですね。

 日本医労連の調査で、さっき一部実態を紹介しました。本当に医療、介護の現場は人手不足、みんなそう思っていますよね。その原因は何かということを考えれば、慢性的な人手不足から、時短中なんだけれども夜勤を強要されたり残業させられる、しかも手当もない。これでは、一度出産した方が職場に戻りたくても戻れないんですよ。

 だから、看護師、介護士不足の背景に、やはり出産しても復職して働き続けられる労働条件がないこと、逆に言えば、これがちゃんと整備できると、やめずに働き続けられる、人手不足も解消できるということなんです。ワーク・ライフ・バランスを処遇改善と一体で解決することが人材不足解決の鍵だということで、早急に実態調査を行い、特別対策を行うべきだということを指摘したいと思います。

 ちょっと時間が来てしまったので、そこは要望にとどめますので、通告してありましたけれども、ぜひ大臣、お願いいたします。

 それで、最後のところは説明だけいたします。

 最後の資料、シルバー人材センターについて、シルバーの派遣事業についての資料であります。

 生きがい就労という位置づけがやはり変わってしまったのではないか。年金が減っているのでもう少し働きたいという高齢者のニーズと、安上がりの労働力供給ということが結びついてはならない。この下の方にあるように、介護とか保育の補助ということでシルバーはもっと活躍してほしいという要望が出ているんですね。その補助が当たり前になってしまっては困るということ、ちゃんとした正規でやらなきゃいけないということ、やはりそこは代替になってはいけないということを指摘して、終わりたいと思います。

 済みません、ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 本日もよろしくお願いをいたします。

 鼻声になっておりますけれども、花粉症じゃないかということで、きのう、いろいろな人に指摘をされましたけれども、私は今まで花粉症になったことがないはずなので、私自身は花粉症じゃないと信じて、今も薬も何も飲んでおりません。花粉症でない、思い込んでしまったら花粉症になっちゃうかもしれないので、このままいこうと思っています。

 話はそれましたけれども、きのう、参考人質疑、お忙しい中、五人の参考人に来ていただいて、お話を伺うことができました。非常に、さまざまな角度から意見をいただいて、勉強になった。

 その中で、前回の法案審議の質問のときにも、そのときはとかしき副大臣に答弁をいただいたことですけれども、厚生労働省の中で、育児休暇の取得率の向上を目指すということで取り組みをしていただいていて、それが非常に効果が出ているという答弁をいただいておりました。これは、塩崎大臣も過去に、厚生労働省が隗より始めよということで、やはり、まず担当下である厚生労働省がしっかりとその制度を前向きに導入していく、取り組んでいく姿勢を見せなければいけないということで取り組まれた結果だというふうに思っております。

 私、本会議場の質問で、どれだけ制度が拡充されても使っていただかなければ意味がないので、やはり使っていただく、そういう土壌をつくっていくと。そのためにはどういったことが必要かということを参考人の皆さんにお聞きをさせていただくと、やはり会社自体がその意識を高めて、導入をしていくんだという働きかけを会社自身がしていかないといけない、まさに厚生労働省が今行っているような取り組みをしていくのがやはり一番近道じゃないかということで、参考人の皆さんも答弁をされておりました。

 そこで、これは各委員からも御指摘が再三ありましたけれども、実効性をどう担保していくかということ、これがやはり一番の課題、まずはこれをクリアしないとこの制度が幾らあっても拡充されない、充実されないということになりますので、そういった取り組み、どういうことを今現在していて、これからやっていこうと厚生労働省が考えているのか、もう一度お聞かせください。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 育児休業の取得の促進ということで、今回の改正案では、御答弁でも申し上げていますが、有期の方々、有期労働者の育児休業の取得要件の緩和ですとか、育児休業等の取得を理由とする、いわゆる上司、同僚によるセクハラ、マタハラ等についての防止義務を事業主に課すといったような改正を行います。

 改正案の内容につきましては、法案を成立させていただきました後に、今お話ありましたように、企業の取り組みが非常に重要でございますので、一つは、事業主、いわばトップの方といいますか経営者の方に対するアプローチ、それから、当然、各企業の人事担当者の方に対する説明会、こういったものについては、施行までの間にかなり集中的に行いたいと思っております。それによって、今回の制度改正の趣旨を徹底して、育児休業の取得率が上がりますようにということでやっていきたいと思っております。

 こういったいわゆる周知、広報とあわせまして、私ども、次世代育成支援対策推進法の中で、子育てをちゃんとやっていらっしゃいます企業については、認定マーク、くるみんマークというのをつけてございますが、この中でも実は育児休業の取得というのは要件に入っておりますので、こういった認定制度なども活用しながら、取得促進を図りながら、広報していくということ。

 それ以外に、仕事と育児、介護の両立に関しましては、模範的な取り組みをしていらっしゃる企業に対しましては、表彰制度というものを持っております。

 あと、個別に取り組む中で、さまざまな代替要員等々の支援が必要な企業に対しましては助成金の支給というものを行っておりますので、いわばこの助成金の案内をするというプロセスを通じても企業に徹底をしてまいりたいということで、今後、法案成立後は、企業の取り組みが一層進みますように、広報、あるいは表彰、助成金その他さまざまな行政手法を活用して、徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

浦野委員 省庁では、厚生労働省はもちろん担当省ですから頑張っておられるとお聞きしていますけれども、他省はどうなんでしょうね。他省はどれぐらいやっているか御存じですか。

香取政府参考人 しかとは存じ上げておりませんが、まず、省庁自身が、自分が事業主ですので、これはたしか人事院なり、私どもからもお願いしていますが、各省それぞれで、自分の職員についての取り組みというのはもちろんやっていただいております。

 それと、例えば女性の多い職場、私どもで言うと医療とか介護とか、そういった分野については、私どもも各労働局を通じた指導等を行っておりますし、事業を所管している省庁に対しても協力をお願いするようなこともしておりますので、それぞれ、これは政府全体の大きな方針でもありますので、御協力いただけているものと思っております。

浦野委員 ぜひ一度調べていただいて、数字も公表していただいたらいいと思います。やはり、厚生労働省は担当省だから当たり前だろうというふうに言われてしまったら終わりですので、どの省庁も、国はこうやって率先してこの制度を活用しているんだというふうなことを、いろいろな取り組みがありますけれども、その中で、自分たちは一生懸命こうやって取り組んでいるという姿勢を民間に見せることは大事だと思っていますので、今すぐではないですけれども、また調べて、数字ぐらいは把握をしていただけたらと思います。

 次に、大臣にお伺いをするわけですけれども、その前に、予算委員会の分科会で、私は、保育士の資格を持っている保育の専門官の数が、今、保育問題が非常に大きくクローズアップされている中で、別に今に始まったことではないです、保育問題、待機児童の解消だとかは。前の質問でも指摘をさせていただきましたけれども、その中で、保育士の資格を持った保育専門官が一人しかいない、それをふやすことを考えていないのかということを質問したら、ことし、ちょうど予算案の中で、保育の専門官をふやすということをちゃんと考えていただいていて、今はまだ参議院で予算案が上がっていませんから、最終的にはまだですけれども、衆議院では予算案が通りました。保育の専門官を一人ふやしていただけるということで、大変ありがたく思っております。

 厚生労働省が課題にしている政策分野というのは非常にたくさんありますけれども、その中でも、別に保育専門官が少ないからといって、それに一生懸命やっていないというわけではないですけれども、やはりそういった専門官もたくさんちゃんとつけることによって保育政策も充実させるということもあると思いますので、それは率直にお礼を言いたいだけです。

 ありがとうございました。質問ではありません。

 大臣にお伺いしたいのは、今回のこの法案に限ることじゃないんですけれども、政府が法案を審議する場合、どういう手順で、どういう気持ちで各党にその法案の審議をお願いするのか、それを少しお聞かせいただけますか、基本的なことですけれども。

塩崎国務大臣 恐らく、これは政府提出の法案に限らず、議員立法でも同じだと思いますが、私も議員立法を幾つもやったことがあるのでございますけれども、厚生労働省が提出する法案については、当然のことながら、与党、野党問わずに、また政党の規模にもかかわらず、その趣旨あるいは内容、目的などについて、できるだけ丁寧に御説明を申し上げるということを基本としているわけでございます。

 今回、雇用保険法の改正を含めてお願いをしておりますけれども、国会提出された一月二十九日以降、厚生労働委員会の委員の皆様を初めとする先生方に資料をお配りするなど、また、御要請があれば直ちに説明に伺うということをやっておりまして、先生がおられないときにはお手紙を残すとか、そういうことで、議員会館の方に出向いていつでも御説明に参りますということを書いて置いてきているはずでございまして、こういう対応で関係の議員の皆様方に法案の内容を御理解いただいて、審議の充実を図る、こういうことが基本だというふうに考えておるところでございます。

浦野委員 今の大臣の答弁を、山井さん、どうお感じになりましたか。

山井議員 質問、まことにありがとうございます。

 法案を通すためには、与野党を超えて、全ての党派に賛同していただきたいと思っておりまして、私たちも、今、塩崎大臣がおっしゃったように、要請があれば直ちに駆けつけて説明をこの間させていただいておりましたし、恐らく介護の法案のことをおっしゃっているんだろうと思いますので申し上げますと、三月二日に提出させていただき、三月八日には、与野党の御理解もあって、本会議で趣旨説明をさせていただき、質疑もさせていただきました。また、三月九日の厚労委員会では、この場で趣旨説明をさせていただき、また、三月十一日の厚労委員会では、この場で質疑もさせていただきました。そういうことを通じて、おおさか維新の会の先生方にもぜひ御理解をいただければと。

 今、非常に介護、障害者福祉の人手不足は深刻であります。もちろん、浦野先生がお取り組みになっております保育士の人手不足も深刻でありますし、そういうものをあわせて、趣旨には御理解いただけるのではないかと期待しておりますので、そういう形で今まで私たちとしては説明をさせていただいております。

浦野委員 こういう平場でそういう説明を確かにされております。しかし、その前段、過半数を持っているほど巨大な与党ですら、あれですよ、過半数を持っているということは、実は、別に自分たちだけでも法案を通せるんですよ、強行採決すれば。まあ、強行採決という言葉が正しいかどうかは別にして。採決しようと思えば採決できる。しかし、先ほど大臣がおっしゃったように、どんな少数政党にでも、みずから足を運んで法案の内容を説明して、御理解をお願いします、法案を通してくださいとお願いに行くわけですね。

 私は、別に頭を下げに来いと言っているんじゃないんですよ。法案の審議をしてもらう立場で、法案を出しておられる方々が、特に我々だけだと思いますけれども、おおさか維新の会に、一度も、この法案をお願いしますと来てないんですね。来られてないですよね。

山井議員 私たちとしては、本会議、そしてこの厚生労働委員会でも説明させていただいておりますし、理事会の場で、これからこの法案の審議をお願いしますということを私たちからもさせていただいております。

 ただ、浦野先生がおっしゃる意味は、ちょっと丁寧さに欠けたということではないかと思います。

 そういう意味では、きょう、あとまだ採決まで時間がありますので、もし、ここがわかりにくいとか、こういう修正が必要だということがあれば、採決までの間、呼んでいただけましたら私も駆けつけますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

浦野委員 私個人の問題ではないんですね。政党対政党の話です、これは。政党が法案を出した以上、政党に対してやはり説明をしに来るのが今までのこの国会の形だったと思います。

 たしか山井さんはネクストキャビネットの厚生労働大臣なんですよね、今でも。ということは、民主党が政権をもしとれたとしたらですけれども、あなたが厚生労働大臣となって法案を提出するわけですね。そのときにも、今回と同じように、我々少数政党、おおさか維新の会には法案の説明には行かせないということでよろしいですか。

山井議員 過去のこともいろいろありますけれども、私たちは、とにかく、今、介護の職員さん、障害者福祉の職員さんの人手不足というのは非常に切実ですので、そういうことについて、ぜひ各党、賛同していただきたいというふうに思っております。

 ただ、浦野さんがおっしゃったように、丁寧さに欠けたというのであれば、私たちも、まだ採決はこの後ですので、浦野先生のみならず、おおさか維新の会の厚生労働担当の方にも、説明なり修正の協議に喜んで行かせていただきたいと思っております。

浦野委員 私は、政策的な内容の話は、それは説明には来ていただいてないですけれども、ちゃんと取り寄せて、中身も見させていただいています。

 だから、例えば財源の問題だとか、皆さんは、恐らく、組み替え動議で予算を確保して、その予算の中からこの財源を確保するというもくろみで当初動いていた。ただ、その組み替え動議自体が否決されてしまいましたので、もうその財源の根拠がなくなってしまいました。では、その財源をどうするのかというのが少し見えてこない。財源の確保が見えてこない以上、やはりちょっと、賛成するわけにはいかないかなと。

 もちろん、政策的には、給与を上げていきたい、これは恐らく自民党も同じなんですよ、公明党も同じ。与野党を超えて、その報酬を上げていくということに関しては賛成をされるはずです。しかし、きょうの民主党さんの提案しているこの法案には、態度は、もう皆さん、きょう朝の理事会で示されたとおりになっております。

 私は、政策的な議論をするのであれば、政治的なそういうしがらみを法案の中に持ち込んでほしくないんですよ。私たちは、何でも議論します、ちゃんと。与野党関係なしに、是々非々の政党ですから、いい法案には賛成をします、悪い法案には反対をします。

 しかし、皆さん、今回のこの法案に限って言えば、おおさか維新の会は野党か与党かわからないという理由でさんざん今までいじめてきましたよね。我々は、だから……(発言する者あり)そうですよ。いや、今まで私たちおおさか維新の会は言っています。でも、維新の党も今までそれを言ってきました。でも、維新の党はそうじゃないんですね、扱いが。よくわからないんですよ、皆さんの立場が。

 だから、我々は、別に頭を下げに来いと言うてるんじゃないんですよ。でも、法案の審議をお願いするのであれば、やはり丁寧に、皆さん、民主党がいつも批判する与党のように、低姿勢でやはりお願いをするべきなんですよ。そう思いませんか。

山井議員 私も、この政治の世界に入るまでは老人ホームで実習をしたり、福祉の研究者をしておりまして、その中で、介護職員さんや障害者福祉の職員さんの待遇、賃金が余りにも低いということを痛感して政治家になりましたので、そういう意味では、この法律が成立して、本当に介護職員さんが喜んでいただけるんでしたら、もっともっと丁寧に、もっともっと、平身低頭、お願いをさせていただきたいと思います。

 そういう意味では、採決はまだまだ時間がありますので、今、おおさか維新の会の浦野先生が重要な質問をしてくださいましたので、ぜひこの話を聞いていただいて、自民党、公明党さんにも、党派を超えて、もちろん、各党、仲がいいとか仲が悪いとかあろうかとは思いますが、本当に、介護離職ゼロというのは与野党超えて実現せねばならないテーマですので、ぜひとも、私のこの答弁に免じて、採決のときには全会一致で成立をさせていただけますように、平身低頭、お願い申し上げます。よろしくお願いいたします。

浦野委員 指摘されて初めて低姿勢になるようじゃだめなんですよ。やはり最初から低姿勢でね。

 残念なのは、民主党さんは一度政権をとったことのある政党なんですよ。その政党がこういったことをするということは、非常に私は残念だと思っています。

 山井さんは、言うことを言う人ですけれども、いい人でもあるんです、実際ね。嫌っている人はたくさんいてますよ、山井さんを。でも、僕は、どっちかというと、山井さんと仲がいいと言われている一人なんで、ぜひ、山井さんのような人が責任者になって、政治的なそういうしがらみを超えた、ちゃんとした対応を民主党としてとっていただけるように、責任を持ってやっていただきたいと思います。

 以上です。質問を終わります。

渡辺委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 改革結集の会、重徳和彦です。

 まず初めに、育休関連の質問をさせていただきます。

 私自身、そして改革結集の会は、子供の数が減っていく少子化社会に対して、子供の数がふえていくと書いて、増子化社会を目指そうということを申し上げております。地域が本当に温かみのある地域になって、若い人たちが子供を産みたい、育てたいと自然に思えるような、そんな社会をつくっていこうじゃないか、こういうことを申し上げております。

 昨日も、高校生の子たちが私の事務所を訪れまして、そのときにこの話をしたら、もう目をきらきらさせて、そんな社会になったらいいですねということを言ってくれるわけですね。やはり、こういうわくわくするような、社会に出て働くこと、そして結婚して子育てを楽しむこと、こういう両立できる温かい社会というのは、本当に若い人たちにとっても希望だというふうに私は認識をしております。

 そういう前置きをしまして、育休法の二十三条、先ほど高橋委員からも質問ございました、所定労働時間の短縮措置、いわゆる時短、短時間勤務について質問させていただきます。

 現行制度は、三歳に満たない子が対象なんですね。そして、未就学児、六歳までが努力義務となっております。しかし、三歳になったら親の手を急に離れる、自立するというわけではありませんので、まず六歳までも義務化すべきではないかと思いますし、もっと言いますと、六歳になったら一人で遊べる、一人で留守番できるかというと、これも通常は、その子によって違うかもしれませんが、小学校三年生ぐらいまでは、つまり九歳ぐらいまでは、一人で家に置いてくるとか、一人で子供を外で遊ばせるというのは、なかなか難しい年齢だと思います。

 しかも、学童保育も小学校三年生までという扱いのところが多いわけですが、制度的に、保育所は結構、七時とか八時まで延長保育をしてくれるところもありますが、学童保育は基本的には六時ごろまでということで、むしろ小学校に入ってからの方が時短のニーズは高いという側面もあるんじゃないかと思います。

 こういうことで、先ほど、香取局長の御答弁では、私、資料一で添付させていただいておりますが、これは去年の十二月二十一日の労働政策審議会「仕事と家庭の両立支援対策の充実について」という建議なんですけれども、ここの二行目の終わりから、「短時間勤務制度を利用している労働者の多くが女性となっている現状を踏まえると、」とありますね。つまり、女性が時短制度を使っている、これ以上時短制度を充実させると女性のキャリア形成にかえって支障が出てくるんじゃないかというような指摘だと思います。これはこれで一面としてわかるんですが、ではどうすればいいかということで、ここの建議に書いてあるのは、「男性の育児への関わりを促進していく」とか「延長保育等の保育サービスの充実を図っていく」、そっちが先じゃないかということを言っているわけなんですね。

 しかし、男性の育児参加とずっと言われておりますけれども、これを待ってから時短制度を充実させるとか、それから、延長保育でさらに子供を外に預ける制度を充実させるべきだというのは、さっきの高校生がわくわくする社会とは、私はちょっと、必ずしも一致しないんじゃないかなと。やはり、仕事を早く切り上げて、そして子供と過ごす時間をちゃんと持てる、この方がよっぽど、私、わくわくする社会だと思います。

 その意味で、一応の厚労省の御答弁というか立場は、先ほどの高橋委員への香取局長の御答弁で大体わかったんですが、大臣にあえて政治家としての思いを述べていただきたいんです。

 この基準、労働法制というのは最低基準ということですから、なかなか厳しい基準は設けられないと言いますが、結局は会社任せにするということですから、ここの部分はもっと政府がかかわるべきじゃないかと私は思います。

 今、賃上げ要請というのが、経済界、労働界に政府がかなりコミットされておりますが、それは別に法律に何も位置づけられておりません。そういった政府の役割、権限というのは位置づけられていない。むしろ、本来的な政府の役割というのは、こうした、法制度でさまざまな労働上の規制といいましょうか基準を設けることの方が本来の政府の役割じゃないかと思います。

 そういうことを、私の今申し上げました意見も踏まえまして、塩崎大臣、この三歳までに限定されている時短制度、義務づけが限定されている時短制度、さらに年齢を引き上げるべきではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 一つのお考えとして、先ほど共産党の高橋先生からもお話が出ました。

 確かに、労政審の中では、労働側の御主張は、やはり年齢引き上げということであったようでございます。そして、最終的には、きょうお配りをいただいたようなことで建議がなされているというのが、労政審の、労使の話し合いの結果だというふうに思います。

 いろいろ考えなければいけないことがたくさんあると思います。この建議にも書いてありますけれども、やはり、子育ては男女両方がほぼ平等にその負担をしょっていくべき時代だろうというふうに思います。

 ですけれども、今回の労政審の結論は、この時短については、所定労働時間の短縮措置については三歳まででありますが、同時に、就学までの努力義務というのも課しているんですね。したがって、そこは、義務にするにはなかなか、結論に至るところまでいかなかったなということだったんだろうと思います。

 今申し上げたように、やはり、誰が育児の負担を負っていくかというのは、男性が背負うべきことでありますし、それが実現するまで待っていられないというお考えも、気持ちもわかりますが、しかし、ではいつまで待っていたらできるのかというと、多分、二十年とか三十年とか五十年とかかかっちゃうかもわからない。むしろ、それはやはり、こういう形で合意の得られた、三歳までは権利として少し短縮することができるということにしていく。

 と同時に、ここで大事なのは、やはり、これは安倍総理が、これから三年間、自分たちの安倍内閣にとっては働き方改革が最大のチャレンジだ、こう言っているように、まさに、働き方というのは、暮らしそのものであり、仕事そのものであり、それをどう変えていって子育てをしっかりと御夫婦でやるか。あるいはお一人の家庭ももちろんありますけれども、そういうときには別途また考えなきゃいけない追加的な要素はあります。

 いずれにしても、私は、今回こういう形で三歳まで、そして就学までは努力義務、さらに、さまざまな子育て支援策というのは、放課後児童クラブについてもまだまだ十分じゃない、三年生まで行けるはずが、私の地元でも二年までという学校がまだ幾つもあります。そういうことを考えてみると、やはり総合的に資源配分もし、そして働き方も変えていく、そしてまたそれぞれの地域も変わっていかなきゃいけない、そんなふうに思いますので、とりあえず、今回のことにつきましては、こういう形でお願いを申し上げるということでございます。

重徳委員 大臣、とりあえずというふうに、とりあえず今回はこういうことだという、そのとりあえずをちょっと深読みしまして、今後の可能性には大いに期待したいと思います。温かい増子化社会を目指して取り組んでいただきたいというふうに思います。

 続いて、介護休業なんですが、介護休業、介護休暇、なかなか、取得率が低いということが見てとれます。

 資料の二をごらんいただきますと、この左側の数字、先ほどから出ておりますけれども、介護休業は三・二%、介護休暇は二・三%しか取得されていないということがよくわかります。

 これは原因はいろいろあると思いますが、ちょっと順番を飛ばしますが、大臣にまず一つお尋ねしたいと思います。

 介護休業は基本的に無給の休業でありまして、そこには介護休業給付というものが一定割合で支給されるということで、その支給率も今回引き上げられるということでございますが、その上で、育児休業と比べますと、社会保険料が免除されていないという大きな違いがあります。育児休業は、三年間とれば三年間丸々、給付の方は途中で打ち切られていきますけれども、社会保険料は免除されている、平成十二年からは事業主負担も免除されている、こういうことであります。

 何でもかんでも免除していたら財政がもたないとか、いろいろな御意見はあると思いますが、しかしながら、資料四をごらんいただきますと、まず取得者で比べますと、育児休業を取得している人は八十四万人、介護休業はまだ七・六万人なんですよね。そういう数字を見ても、財政負担がどこまで重いかというのも、育児休業と比べても随分、まだまだ軽いということが言えるかと思います。まして、政府の最重要政策目標の一つが介護離職者ゼロということであれば、こういった取り組みも、つまり、社会保険料を免除するということも考えるべきじゃないかと思いますが、このあたりはいかがお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 社会保険においては、保険料の納付に応じて給付を行うというのが原則でございます。

 育児休業期間中の今御指摘のあった社会保険料の免除、これは大体一千億円、年間でございますが、一方で、免除する期間についても保険料の納付があったものとして、その期間に基づく給付も行うということで、特例的な扱いをしているというふうに考えるべきかなと。つまり、反対給付がちゃんと、本来は両方あるというのが原則だということでございます。

 これは、育児休業が、将来の制度の支え手となる、つまり、社会保障制度の支え手となる次世代の育成につながる、こういうことでありまして、免除した期間に係る給付の財源を被用者保険全体で負担することについて、他の被保険者の方々あるいは事業主の御理解、つまり、拠出者の皆さん方の御理解が得られるということで、これまでこのような形で扱ってきたわけであります。

 一方で、介護休業期間中の保険料の免除につきましては、今申し上げた次世代育成という育児休業と同様の意味合いは少し乏しいわけでございまして、また、特に年金については、保険料の上限を固定してマクロ経済スライドによる給付水準の調整を行っている中で、介護休業者の保険料を免除した上で給付を保障するところまで行うことが、さっき申し上げた、拠出者、他の拠出者、つまり他の被保険者や事業主、この理解を得られるかどうかというのがございまして、年金財政への影響も含めて、慎重にこれはまだ考えていかなければいけないことじゃないか。

 しかし、今御指摘のお気持ちは大事なことでありましょうから、この介護休業期間中の所得保障という観点からは、雇用保険から介護休業給付が支給をされるということで、今回、四〇%から六七%に上げて、介護休業をとっても所得保障は以前よりもはるかに厚遇されるようになるということでございます。

重徳委員 今後、介護休業がどのぐらい取得率が上がっていくかということも見ながら、この点も私は大事な制度設計の一つだと考えております。よろしくお願いします。

 それからもう一つ、介護休業はなぜとりにくいか。制度を見ていくと、資料の三をごらんいただきたいんですが、そもそも介護休業をとる場合の対象家族、法律上は、配偶者、父母及び子並びに配偶者の父母、ここまでは明記されているんですが、このほかに、省令で、この資料三が省令なんですけれども、省令で定めるものを含むというふうになっているんですね。

 この省令、施行規則ということですが、まあ、省令ですね、この第二条を見ますと、「労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫とする。」というふうに書いてあるんですね。つまり、おじいちゃん、おばあちゃんたちをお世話するときに、その働いている方が同居していて、かつ、扶養もしている、これが条件だということなんです。

 最近は本当にいろいろな介護の実態というのがあります。遠いところに離れているけれども、時々訪れて介護をするということもありますし、それから、たくさんの要介護者を一人で抱えている、必ずしも同居しているとは限らない、扶養しているとも限らない、こういうこともあります。

 こういういろいろな実態を見ますと、「労働者が同居し、かつ、扶養している」とまで限定させるような内容の省令は、ここの部分は削除すべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今御説明いただいたように、現在の介護休業等の対象家族には、配偶者、父母、それから子、配偶者の父母に加えて、同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫というのが含まれているわけでございまして、この点について、三世代から成る世帯の減少に伴って、同居し得ない親族の介護を行う事例も見られるわけでございまして、そういうことを踏まえて、今回の改正法について御議論をいただいた労政審の建議では、祖父母、兄弟姉妹及び孫について、同居し、かつ、扶養というこの要件を外すということで合意を見られたというふうに理解をしております。

 今後、この同居、扶養要件を定めている省令がございますから、これを改正する方向で、今回の法案を成立させていただいた暁には、労政審においてその方向で御議論いただくということでございます。

重徳委員 わかりました。これは大きな前進だと思います。

 今回のテーマは、本当に、要介護者はもちろんしっかり支えなくちゃいけないんですが、介護する側が、働きながら、離職することなくということでありますので、こういった、一つ一つ、制度には、法律上のレベルだけじゃなくて、政令、省令、さまざまなレベルがあります。さらに、この分野は、企業、経営者側への指導というようなことで厚労省が大きな役割を果たしている部分もあります。こういったことを総合的に行って、取り組んで、育児、介護の環境をしっかりと整えていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 午後一時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時二十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十分開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。堀内詔子君。

堀内(詔)委員 本日は、質問をする機会をいただきまして、ありがとうございます。自由民主党の堀内詔子です。

 今回の質問は、雇用保険法等の一部を改正する法律案が議題であります。まずは、雇用保険制度が日本の働く方々を守る制度として果たしてきた重要な役割について確認させていただきたいと思います。

 我が国は、敗戦の焦土の中、復興に向け、厳しいインフレと社会不安の中にあって、生きんがためにも職がない、そういった状況のもと、失業問題が国を左右する極めて重要な政策課題でありました。昭和二十二年、その苦難の中で、失業保険制度が創設されました。

 それから、幾多の時代の変遷に沿ってこの法律は順次拡充を重ね、今では、育児休業や介護休業の際の給付、自分磨きのための訓練を受けるための教育訓練給付なども創設され、失業のみならず、出産、子育て、介護など、働く方々の一生涯を通じた困難を乗り越えるため、雇用に関する広範囲で総合的な機能を有する保険制度として確実に進んでまいりました。

 この雇用保険制度は、強制加入であります。四千万人以上の働く方と事業主とが保険料を拠出し、支え合う制度です。

 近年、いわゆるアベノミクスの経済成果が現実のものとなってきつつあります。雇用保険の受給者が減少を続けております。平成二十六年度の受給者数は約四十七万人となっているとともに、積立金の残高も六兆円を超える最高水準にあるとお聞きしております。

 これらを踏まえ、これまで一・〇%の負担を〇・八%に、労使ともに保険料負担を引き下げることとしています。このことは、これまでの政府の経済政策のいわば果実であり、心から歓迎したいと思っています。

 一方、少子高齢化が進展する中で、高齢者の方や女性の活躍は喫緊で大切な課題であります。その際、転職や子育て、介護などに直面する働く方お一人お一人をしっかりサポートするため、雇用保険制度はさらに制度の充実を目指していくべきと考えます。

 今回の改正における雇用保険制度の見直しの趣旨及びその内容について、お伺いしたいと思います。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 今回の雇用保険制度の見直しは、少子高齢化の進展に伴いまして労働人口が今減少する傾向の中で、高齢者や女性の方々を初め働く方々がその希望に応じて就業促進や雇用継続を図って、国民一人一人が活躍できる社会、これをつくっていきたいということで法整備させていただきました。

 その内容といたしましては、重点的なものが四点ございます。

 まず一つ目が、高齢者の雇用が進展しているこの状況を踏まえまして、六十五歳以降に新たに雇用された方への雇用保険の適用を拡大するということ。

 そして二番目に、介護を理由とする離転職を防止するために、介護休業給付の給付率を引き上げるということで、これを四〇%から六七%に引き上げていこうと考えております。現在、介護休業給付、これを受けていらっしゃる方は九千六百人いらっしゃいます。

 そして、三番目のポイントは、早期再就職のインセンティブを強化して、再就職手当を拡充していこう、このように考えております。

 そして、この四番目なんですが、これはなかなか議論していただけないんですけれども、円滑な求職活動を支援するために、面接に際して子供の一時預かりを利用する場合の費用を支援する求職活動支援費、これを創設させていただいております。子育て中の方にも求職活動に積極的に取り組んでいただけるような環境を整えていこうと考えております。

 今回は、育児・介護休業法、男女雇用均等法等においても、働く女性の就業支援や離職防止のためのさまざまな措置、これを組み合わせることによりまして、雇用保険制度の改正とあわせて、希望する方が働き続けられる環境、これをしっかりと整えていきたい、このように考えております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 現在、三百六十万人もの六十五歳以上の方々が働いておいでです。雇用する企業の負担やハローワークの機能強化など、特に、高齢者のニーズも踏まえ、多様な就業機会を確保するため、シルバー人材センターがより一層多くの働く機会を提供することが重要だと考えております。

 今後の六十五歳以上の方は、御自身の生きがいのためにも、健康で御長寿でいていただくためにも、従来より一層雇用の場を必要とされていると思います。これからの六十五歳以上の方々の雇用対策の方向性について、お伺いします。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 意欲ある高齢者の方が、年齢にかかわりなく、そして活躍することができる場、生涯現役社会、これを実現することが何よりも重要だと考えております。人口が減少していく中で、我々の国の成長力を確保していくためにも、これはとても大切なことだと考えております。

 先ほど委員にもお話しいただきましたけれども、六十五歳以上の雇用者の数は、現在、平成二十七年で三百六十万人と、これは平成二年のときは八十一万人でして、ここからすごく勢いよく伸びておりまして、平成二十六年、三百二十万人ということで、一年余りで四十万人も伸びているということで、高齢者の皆様の活躍の場をどれだけ提供できるかというのが、我が国の力を伸ばしていく上では大きな力となってまいります。

 これまでも、企業に対して、希望者全員の六十五歳までの雇用確保措置、これを義務づけるとともに、高齢者雇用の積極的な企業への支援、これをやっていこうということで、高齢者が働き続けることができる環境の整備を今までも進めてまいりました。

 今回の法律の中では、六十五歳以上の方への雇用保険の適用の拡大、そして、先ほどお話に出ました就労時間規制の緩和によるシルバー人材センターの業務拡大、これに取り組んでまいります。

 また、このほかには、ハローワークに高齢者向け求人専用の求人開拓員を置くことによる再就職支援の強化、これにも取り組んでいこうと考えております。

 現在、実は、高年齢者総合相談窓口、これは平成二十七年で七十七カ所、全国的にもう既に設置されておりますけれども、平成二十八年度より、この名前を、今仮称でございますけれども、生涯現役支援窓口というふうにさせていただきまして、六十五歳以上の高齢者の再就職支援を重点的に取り組んでいこうと考えております。

 ということで、六十五歳以上の高齢者の雇用、就業支援を充実させて強化していきたい、このように考えております。

堀内(詔)委員 ありがとうございます。

 今回の改正で、ますます高齢者の方々が元気で輝く社会がつくられることを祈っております。

 続きまして、女性の方々についての問題です。

 近年、働く女性の数はふえてきておりますが、出産、育児により離職する女性は約六割もいると言われております。出産、育児を経て、子育てをしながら仕事を続けたいという希望をお持ちの方が働き続けられる環境をつくっていくことは、女性活躍推進や少子化対策にとっても非常に大切な問題となってきております。

 育児休業を取得する方もふえてきてはおりますが、育児休業を取得して継続就業している方の割合は、正規職員の方が四三%に対して、パートや派遣といった非正規雇用の方は四%と低い現状にあります。この現状の改善のためには、特に有期契約労働者の方が育児休業を取得しやすくしていくことが必要であると考えております。

 今回の改正では、有期契約労働者の育児休業の取得要件を見直しておりますが、改正の趣旨と見直し内容についてお伺いいたします。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 育児休業は、育児を理由とする離職をすることを防ぎ、働き続けることができるようにすること、これが大切な制度であります。

 現行の要件のうち、実は、子供が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件については、これは労政審の方で、事業主にとっても労働者にとっても非常にわかりにくいという御指摘を受けました。有期契約労働者の育児休業の取得が進まない一因ではないか、こういう指摘も受けましたので、ここを今回改善していくことにいたしました。

 ということで、子供が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件を廃止させていただきまして、育児休業は原則として一歳まで取得できる権利であることを踏まえ、休業から復職した後、一定期間、六カ月の雇用継続の可能性のある方、すなわち、一歳六カ月までの間に労働契約が終了することが明らかではない者であれば育児休業の対象とするということにさせていただきました。

 一歳六カ月までの間に契約が更新されないことが確実でない方については育児休業を取得することができるように、このように配慮をさせていただきました。

 このような取り組みによりまして、有期契約労働者の方々が安心して子供を産み育てながら継続就業できるような環境をこれからも積極的につくっていきたいと考えております。

堀内(詔)委員 ありがとうございます。

 働く女性のうち約六割、五六・三%の方が非正規雇用となっている現状を見ますと、今回の改正は大変意味があるものと思います。

 また、お母さんになっても女性が働き続けられるようにするためには、単に制度があるだけでなく、制度を利用しやすい職場の雰囲気づくりがとても大切になってきていると思います。そのためには、妊娠、出産、育児休業を取得したことなどにより、いわゆるマタニティーハラスメントなどの精神的負担が女性にかからないようにしていくことが重要です。

 今日まで、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法によって、妊娠、出産、育児休業を取得したことなどにより事業主が不利益な取り扱いをすることははっきりと禁止されていましたが、今回の改正では、それに加え、いわゆるマタニティーハラスメントの防止のための取り組みを事業主に義務づけることとしています。どのような効果を期待しているのでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生御案内いただきましたように、妊娠、出産、育児休業等を理由とする事業主による解雇でありますとか、あるいは降格といった不利益取り扱い、これはもう既に法律で禁止をされております。

 ですが、これもまた先生お話がありましたように、近年は、こういった事業主ではなくて職場の同僚ですとかあるいは上司ですとか、そういった方々からいわゆるハラスメントの行為があって職場の環境が非常に害される、そのことで就業継続が困難になったり、あるいは育児休業を取得することがいわば控えられるといったような事例があって、これが大変問題になっているということです。

 今回の改正では、こういったことのために、妊娠、出産、育児休業等をした者の就業継続が困難とならないように、上司、同僚からの嫌がらせについてもこれを防止しようということで、いわば職場の環境をきちんと整えるという意味において、事業主が一定の防止措置を講ずるということを義務づけるということにいたしました。

 もとより、一億総活躍社会の中では、妊娠、出産、子育てをしながら働いている方々、男性も女性もそうですが、そういった方々が就業継続できる環境をつくっていくということは極めて重要なことでございまして、その意味では、職場環境を害する行為、いわゆるマタニティーハラスメントはやはり非常に大きな問題になります。したがいまして、この防止措置をきちんと講ずることによって職場環境の改善を図っていくということを私どもとしては期待しているところでございます。

 これにつきましては、法案成立後に、事業主に対するさまざまな指針等による指導も含めて徹底をしてまいって、こういった方々が就業継続しやすい職場環境というものを整備してまいりたいと思っております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 マタニティーハラスメントの経験がありますかとお尋ねしますと、約二割の方が経験しているとの調査結果があります。それを雇用形態別に見てみますと、正社員の方が二二・三%となっている一方、派遣労働者の方は四五・三%となっています。このように、派遣労働者の方がマタニティーハラスメントの経験率が高くなっているという現状があります。

 派遣労働者の方についても、派遣元、派遣先とマタニティーハラスメントが起こらないようにしていくことが重要と考えております。どのようにその実効性を確保していくのでしょうか、お伺いいたします。

香取政府参考人 今先生御指摘いただきましたが、昨年、労働政策研究・研修機構におきまして調査をいたしました。

 その調査結果によりますと、今先生お話がありましたように、雇用形態別の不利益取り扱い等の経験率を見ますと、派遣労働者は他の雇用形態に比べて非常に高い、四五%強の方が経験をされているということで、派遣の方についての就業環境の整備というのはかなり重要だということで、今般の改正案では、先ほど申し上げた上司、同僚からの嫌がらせを防止する措置、これについては、雇用している派遣元だけじゃなくて、派遣先の事業主にもこれを義務づけていくということ、それから、育児・介護休業法に基づいて行われております育休等の取得を理由とする不利益取り扱い、これにつきましても派遣先にも適用するということで、派遣労働者についても通常の直用の労働者と同じような措置を講じるということを盛り込んだところでございます。

 この点に関しましては、二十八年度の予算案の中で、全国マタハラ未然防止対象事業、こういう名前の事業を私どもは盛り込んでおるんですが、この中で、事業主の方でありますとか人事担当者の方に対して説明会など集中的な広報を行うということで、法案成立の後、ちょっと集中的な啓発活動をやろうと思っております。

 それから、さらに、本年四月から、各都道府県に置かれております労働局の組織の見直しを予定しておりまして、この中で、雇用環境・均等部という新しい組織を設けることとしております。

 この組織を中心として、マタハラ等のハラスメントについての相談対応を行う、あるいは問題のある企業に対する指導、あるいは個別の問題についての紛争解決援助というものを労働局の中で一体的に行うという形で、こういったことが未然に防げるように、ハラスメント対策を総合的に進めていくということで取り組んでまいりたいと思っております。

堀内(詔)委員 ありがとうございます。

 子供と母を見守る地方自治、子供と母親を支え理解してくださる職場、子供とお母さんに優しい家庭と家族、利益追求という企業の宿命の中でも必ずこの考え方は伝わり、広がっていくものと確信しております。

 次に、介護と仕事について質問を移らせていただきます。

 人は年を重ねる中で、父や母の介護をしながらも、離職しないで済むようになってくれたらいいな、そういう働く方々の願いの声は大変大きなものがあります。今回は制度を大きく改正したと伺っております。

 一方、介護はいつまで続くのか本当に先が見えないことや、介護の原因、疾患の程度、家族の状況など、人はそれぞれの事情を持っていらっしゃいます。さまざまであることから、仕事と介護を両立していくためには、柔軟に対応できるような制度が必要であると考えますが、今回の改正ではどのように対応しておられますでしょうか。

香取政府参考人 介護休業制度でございますが、介護休業制度は、介護保険制度という公的な介護の制度があるということを前提に、御家族の方が休んでみずから直接介護をやり続けるということをいわばサポートするということではございませんで、介護保険その他さまざまな公的サービスを利用しながら、自分の仕事の継続と介護を両立させることができるようにということで準備をした制度でございます。

 お話ありましたように、家族によって状態も違いますし、要介護される方の状態も違う、あるいは働き方も違うということで、介護サービスの利用の仕方や働き方についてはかなりそれぞれ状態が違うということもありますので、仕事と介護を両立させるという意味で用意しておりますこの介護休業制度側は、できるだけそういった多様なニーズに対応できるように、できるだけ柔軟なものにするということで、今般、かなり大きな見直しを御提案しております。

 一つは、現在、介護休業は通算九十三日ということになっておりまして、一回とると、そこから九十三日ということになっているんですが、介護期間が長期化している、あるいは介護保険を使いながら介護をやり続けるということで、これを分割して取得する、介護が終わるまでの間で分割して使うことができるようにということで、三回まで分割してできるようにするということにいたしました。

 それと、介護休業のほかに、年間五日、介護休暇というのがとれるんですが、これは今、一日単位ということになっておりますが、これも半日単位でとれるようにする。

 あるいは、選択的措置義務というのがございまして、介護のために、短時間勤務でありますとか、あるいは柔軟な働き方でありますとか、先ほどの九十三日の休業とは別に、事業主側が何がしかの措置を講ずるという義務がございますが、これにつきましては、従来、この九十三日の間の代替措置だったものを、三年間の間に取得できるという形で延ばすということにいたしました。

 もう一つは、介護が終わるまでの期間については残業の免除をする、申請によって残業の免除ができるという措置を講ずるということで、措置をいたしました。

 これらの措置につきましては、いずれも労政審で議論いたしましたが、事業主側でいろいろな雇用管理等で対応できる範囲内でということでお願いしましたが、かなり今回は使用者側も理解を示していただきまして、かなり大幅な内容の改正ができたかというふうに思っております。

 今後は、この制度をうまく使いながら、介護サービス等とあわせて、できるだけ多くの方々が介護離職をしないで、介護サービスを利用しながら就労を継続できるようにということで、我々も取り組んでまいりたいと思っております。

堀内(詔)委員 ありがとうございます。

 ただいま御答弁いただきましたように、今回の改正では、仕事と介護の両立支援制度について大幅な拡充が図られております。介護を抱えながら働く方々にとって、前にも増して利用しやすいものとなったのではないでしょうか。

 忘れてはならないことは、育児・介護休業法は、業種や規模を問わず、全ての企業に義務づけられるものです。だからこそ、制度が拡充されると、中小企業にとっては労務管理の負担が大きくなるという苦しい課題がございます。円滑な施行に向けて、特に中小企業への支援策を講ずる必要があると思いますが、どのような対応を行う予定でしょうか。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 仕事と介護の両立支援制度の見直しは、これは企業において円滑に実施していただくためには、改正の内容を周知徹底、これがとても大切になってまいります。

 ということで、平成二十八年度の予算案では、企業が、社内研修の実施やリーフレットの配付、介護休業制度の周知、こういったことを徹底した場合に、介護支援取組助成金ということで、一企業当たり六十万円、これは企業規模に関係なく支給をさせていただきます。

 さらに、これに加えて、中小企業につきましては、労働者の介護休業の取得や、その後の円滑な職場復帰に関する介護支援プラン、これを策定して導入していただきますと、そして、その方々が介護休業を取得した場合は、一企業二回までですけれども三十万円、そして、取得した方が復帰した場合は、一企業二回までですが三十万円ということで、助成措置等を盛り込ませていただいております。

 このような取り組みによって、中小企業でも円滑に利用していただけるように支援していきたいと考えております。

 以上です。

堀内(詔)委員 ありがとうございます。

 そろそろ時間が参りますので、最後の質問に移らせていただきます。

 制度が充実しても、介護を理由とする離職を防ぐためには、働く方や事業主の方が介護休業制度や介護サービスについて十分御理解いただき、正しい情報を得ることができるようにすることが重要ですが、どのように取り組んでいくのでしょうか。特に、企業を通じた働く方への周知が重要だと考えますが、いかがでしょうか。

香取政府参考人 先生お話ありましたように、育児休業と比べますと、介護休業は必ずしも認知度が高くないということもありまして、労働者の方が仕事と介護の両立を円滑に進めるためには、きちんとこういった介護等に関する情報が従業員の方に届いているということ、それから、何かあったときの相談の窓口がきちんとしているということが重要でございます。

 この点に関しましては、一つは、市町村に地域包括支援センターというのがございます、こちらでさまざまな相談に応じているわけですけれども、こちらでの対応。それから、労働局においても対応しておりますが、今般、介護サービスでありますとか介護休業、福祉の側の制度と労働政策の制度ですが、共通のパンフレットというのをつくりまして、それを使って市町村サイドあるいは労働局サイドから情報提供したり、あるいは御相談に応じたりという体制を用意しようと思っております。

 それからもう一つは、先生お話ありましたように、やはり直接相談するとなると、普通、大体、企業の中の人事部局ですとかいうところに御相談をされるということになりますので、それぞれの企業におかれまして、自社のさまざまな両立支援制度について従業員に周知をする、あるいは相談窓口を設置するということを積極的にやっていただくということをお願いしようと。

 また、こういった取り組みをして、さまざまな形で事業主に対して、両立支援の取り組みをされた企業に関しましては一定の助成措置を講じるということで、そういったものを通じて企業の取り組みも支援して、市町村サイド、労働局そして企業、それぞれからさまざまな情報発信、相談を受けることでこの利用の促進を図ってまいりたいと思っております。

堀内(詔)委員 ありがとうございました。

 時間になりますので、これで終わらせていただきます。今回の改正によって、アベノミクスの果実が実りつつある中、一億総活躍、老いも若きも、老若男女、活躍できる社会になることを祈って、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、長尾敬君。

長尾委員 自由民主党の長尾敬でございます。

 質問の機会を頂戴しました。委員長、理事、委員各位には心から感謝を申し上げたいと思います。

 我々は立法府におりまして、法律をつくる場所であります。物事には製造責任というものがありますが、果たしてその法律がどのように世の中をよくしていったのか、何が不足しているのか。つまり、法律がしっかりと現場まで運用がされているかどうか、ここまでやはりチェックする必要があると思います。

 先ほどの質疑にもありましたけれども、どれだけすばらしい制度をつくったとしても、それが実施されなければ、やはり意味がない。今回は、介護休業というような観点を中心に、運用徹底、どれだけ企業が協力してくれているかというようなところに絞って質疑を進めさせていただければというふうに思っております。

 社会保障といえば従前は、医療、年金。ただ、そこに介護が加わり、もちろん障害者福祉という概念もあるわけですが、世の中がだんだんだんだん核家族化、少子高齢化。例えば住宅においても、昔は一戸建ての住宅が多かった中、集合住宅、団地、アパート。そうすると、私たちが住んでいる部屋の間取りなんかも、三世代同居という時代を到底想像できないような、こういう間取りが出てくる。

 やはり介護という概念は、三世代同居のころは、きっとおじいちゃん、おばあちゃんが必ず家にいて、家族で、介護という言い方を多分余りしていなかったような気がするんですね。ただ、核家族化が進んで、介護という概念の中で、御家庭だとか、あるいは御家庭の中で同居なのか通勤が遠いのかどうか、あるいは経済的なものでさまざまな介護のプランが出てくる。そこで、ケアマネジャーというものの存在が一番大きくなってくるわけなんです。

 そこで、お尋ねしたいのは、現在の制度の中でケアマネジャーが、仕事と介護の両立という部分、先般の参考人質疑で同じような御指摘がありましたが、今、ケアマネジャーは両立のアドバイスがきっちりとできているかどうか、お尋ねをしたいと思います。

三浦政府参考人 両立支援の観点からのケアマネジャーについてのお尋ねがございました。

 ケアマネジャーは、介護サービスの利用者やその家族の状況などに応じて適切なケアプランを作成する方でございます。働きながら介護する家族がいるという場合には、それぞれのケースに応じて必要となるサービスを利用できるよう支援を行う必要があると考えているところでございます。

 今後、より一層、適切に家族支援が行えるケアマネジャーを養成するという観点から、平成二十八年度から、働きながら介護をする家族に対する視点を盛り込んだ、新しいカリキュラムによる研修を実施することとしているところでございます。

 今後とも、ケアマネジャーに対する研修など、必要な支援を行い、働きながら介護をする家族をしっかりと支えられる枠組みづくりに努めてまいりたいと考えております。

長尾委員 病気を治す医療から予防をする医療というふうに変わっていくと同時に、介護についても、従前の介護ではなく、仕事と両立できる介護というふうに、今お話にありましたように、研修プランの中に今までは入っていなかったということであるならば、今回の改正を通じて、しっかりと時代に応じたケアプランが利用者に提供できるように、徹底を図っていただきたいというふうに思います。

 そして、介護休業制度の定着率及び取得状況、一般論で結構でございます、恐らく休業の取得率は低いということなんですが、なぜ低いのかというところについても御答弁願います。

香取政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、二十六年度に雇用均等基本調査というのを行っております。これによりますと、介護休業の規定、就業規則等の規定がある事業主の割合は、五人以上だと六六・七%、事業規模三十人以上で八八%ということで、皆さん、それなりに制度は用意されているわけですが、一方、総務省さんで就業構造基本調査というのを行っておりますが、これによりますと、介護を行っている雇用者のうちで介護休業を取得した方の割合は三・二%ということで、実際に取得されている方はかなり少ないということになります。

 この少ない理由なんですが、さまざま、私どもが調査をしたりリサーチをしたりする中で、大きく三点ほどあろうかと思っております。

 まず一点は、やはり御指摘ありましたように、介護休業制度の周知といいますか、理解が必ずしも十分進んでいない。利用しなかった方に聞きますと、介護に係る制度がないとお答えになった方が四五%いらっしゃる。いや、あるんですけれども、企業の中にも多分あるんですが、多分御存じない。あるいは、どういう制度なのかわからないとお答えになる方もやはり一三%ほどいらっしゃるということで、やはり周知が少し問題か。

 もう一つは、年次有給休暇の中で対応できているので、その範囲内で対応しているということで、三割ぐらいの方が、年次有給休暇や、企業でよく休暇の繰り越しができるので、ある程度たまった休暇の時間をそれに使うという方で、休暇の範囲内でおさまってしまうという方。

 三つ目は、これは御指摘ありますが、なかなか職場で介護休業をとるということについて理解がない。職場の雰囲気がよろしくないということになるということだろうかと思います。

 それで、今回、先ほど堀内先生への御答弁で申し上げましたが、できるだけ柔軟に取得できるということと、広報を徹底するというのを中心に制度改正を考えたということでございます。

長尾委員 ありがとうございます。

 お配りした資料の二をちょっと見ていただきたいと思います。

 今局長が御答弁いただいた部分で、大体、あらかたあると思います。介護休業を取得しなかった理由、制度があることを知らなかった方が三二・六%、答弁にもありましたが、有休などを取得すれば対処できる、あるいは、収入が減ってしまうかもしれない、同僚に迷惑をかけるのではないか、自分の仕事をかわりに担当できる人が職場にいないためというところです。

 そして、ちょっと興味深いのは、右側ですね、介護に関する職場の相談者は誰かという、これは大企業調査ではあるんですが、「勤務先で話したり相談はしていない」というのが、女性よりも男性の方が圧倒的に多いですね。これも先般の参考人質疑の中に、国がしっかり対応する、企業もしっかり対応する、あと、御本人も抱え込まないでというような御指摘もありました。こういったアンケート調査でしっかり出ているというふうに思います。

 そして、資料の一ページ目、一を見ていただきたいんですが、やはり、こういったいいサイクルが必要だと思います。従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握というのがしっかりとできているかどうか、全ては両立支援を進める上でのこれが出発点になるというふうに思います。また、法定の基準を満たしているか、従業員に周知されているか、利用要件がわかりやすいか、従業員のニーズに対応しているかなどの観点から制度設計の見直しをして、大事なのは、三番「介護に直面する前の従業員への支援」。四番は「介護に直面した従業員への支援」なんですが、今まではいきなり四だったわけです。

 ちなみに、私ごとですが、私も議員宿舎に入らずに電車で通勤しているんですが、けさ、ちょうど隣に御夫婦で座っている方が、急にお父様が倒れられて、子供がもう春休みに入るので、どうしようか、どうしようかというような相談をされていらっしゃいました。

 突然やってくるという部分においては、今までは一、二、四のルートであったけれども、やはり一、二、三、ここの、「介護に直面する前の従業員への支援」というものが私は特に必要なのかな、事後対応型から事前対応モデルへということなのかなというふうに思っております。

 そこでお尋ねします。

 企業内での従業員の介護の実態把握はどれだけ実施されているか。民間ベースあるいは公務員、あるいはこういったものを所管されている厚生労働省さん、またほかの省庁さん、ちょっと教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今お話ありましたように、あらかじめ情報を持っているかどうかで初動がかなり違ってまいりますので、あらかじめの情報提供は非常に重要でございます。

 もちろん、これは基本的には公的な介護保険制度がありますので、市町村サイドあるいは包括センター等で情報提供に努めるわけですけれども、企業にお勤めの方は、やはり企業サイドでそういったことをあらかじめ対応する、雇用管理の中でやっていただくというのが非常に有効だと思っております。

 先ほど申し上げました雇用均等基本調査で、家族の介護を行う従業員をどのくらい把握していますかというのを企業側に聞いております。介護の問題を抱えている従業員がいるかどうかを把握していますと答えた企業は五一・七%で、半分強ということになります。把握の方法はと聞きますと、従業員の自己申告制度で把握をしたというのが六〇%、直属の上司等がいろいろな面談等で把握をするというのが五〇%ということで、この辺で把握をしているということになります。

 そうしますと、やはり、今先生の御指摘のように、面談の場合にはあらかじめ向こうから聞き出すということになりますが、本人から聞いて初めてわかるというケースが多いので、やはりここはもうちょっと前広にというのは御指摘のとおりかと思っております。

 ちなみに、我が厚生労働省でございますが、人事課等に聞いて把握した限りでちょっと御説明申し上げますが、公務員の場合は、六カ月以内の休暇が取得できる介護休暇というのと、年五日の短期介護休暇、介護休業と介護休暇に対応するようなものですが、ございます。六カ月以内の介護休暇を取得した職員は、二十五年度二十六名、それから、短期の介護休暇の取得者は二百三名ということになってございます。これは、全省庁の取得から比べますとちょっとは高い、若干高いといったところですが、なっております。

 私どもは毎年、人事調査等、面談等で上司が部下の人事面談をするんですが、その中で、こういった介護の状況については把握をするということが一応ルールになっております。それとは別に、課長等が職員の事情を把握するために作成する職員の現況届というのがございますが、こちらの中で、もしこういった問題があればあらかじめ申告するようにということで、記述欄を設けて申告していただくというような取り扱いをしているということでございます。

長尾委員 ぜひ、厚生労働省さんですばらしいお手本を見せていただきたいというふうに思います。

 今回の改正で、介護休業制度の分割制度の拡充を図っています。これはすばらしい制度だと思いますが、企業が制度を十分周知徹底していなければ意味はない。介護休暇は介護の準備、体制を整えるための期間であることをしっかりと従業員に伝えるための制度趣旨も含めて、企業がちゃんと理解しておく必要がある、これは何度もお話ししたことですが、こういった周知徹底をするために、どんなふうに取り組んでいくんでしょうか。もう一回お願いします。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 仕事と介護の両立を円滑に図るためには、介護の体制構築のために利用されるものという介護休業制度の趣旨について、企業がきちんと理解し、それを従業員に正しく伝え、従業員が制度を有効に活用していただくことが重要であると考えております。

 このため、育児・介護休業法の施行機関である都道府県労働局雇用均等室において、改正法の周知にあわせ、介護休業制度の趣旨についても丁寧に周知を図ってまいりたいと思います。

 また、地域包括支援センターや労働局において、事業主や、家族の介護を行う労働者に対して、介護サービスに関する情報とあわせ、介護休業制度等に関する共通のパンフレットを作成、配布して情報提供を行うこととしており、このように、さまざまなルートを通じて、企業に対する制度趣旨に関する周知の強化を図ってまいりたいと考えております。

長尾委員 そこで、資料の三番を見ていただきたいんですが、これは、重立った大企業の介護休業の取得数、パーセントではないんですけれども、社名は全部省かせて、白く塗らせていただきました。

 先ほど来の答弁をいただいている中で、周知徹底とかあるいは助成があるとか、さまざまな措置をこれから講ずるわけなんですが、もう既に現行の中で、やっている企業はやはりやっているという実態があります。これはいいことだと私は思います。

 ちなみに、三年間で七百七十四、七百十六、一気に三百三十三、八位が九十五ということなので、比較にはならないんですが、実は上位は、業種的に言うと、介護派遣事業者とか、あるいは介護保険とかそういうものを売っている生命保険会社とか、こういうのがやはり軒並み上に来ています。紺屋の白ばかまではいけませんので、多分、自分たちがお客様に提供するからには自分たちもしっかりやろうというような傾向なんだというふうに思います。

 それで、上位を占めている企業はどんなことをやっているんだということをちょっと調べてみましたら、例えば、介護休職についても最大一年間取得可能であったり、介護のための短時間勤務制度というのももう既にやっている。介護のための勤務時間繰り上げ、繰り下げ、三十分が限度、または繰り下げ、一時間が限度。あるいは、勤務時間が七時間の場合の勤務体系を一つ一つチェックしている。全国転勤の会社の場合は、介護との両立支援をちゃんと勤務地においてできるように、地域型の人事異動に切りかえてみたりとか。既に、介護休職の分割取得というものも実施している企業が多いです。

 それから、人事部の中に専門の部署をつけて、その研修をやる部署というものをつくっている会社もあります。ヘルス研修の実施、年休の取得状況などを得点化して、評価結果については、そこの所属長の評価にも反映をさせているというような実態がございました。

 そこで、こうした先進的に取り組んでいる企業に対して、既に、これからではなく既に取り組んでいる企業に対しては、国はどのような対応をしていくような感じなんでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 お話ありましたように、制度をどういうふうに使うかといいますか、具体的に使いやすくするかというのは、企業の側の雇用管理の取り組みによってかなりできるという部分がございます。その意味では、業種によっていろいろな問題が違いますので、先進的な取り組みをしている企業がどういうやり方をしているかというのをお互いに知るというのは非常に重要でございます。

 私どもでは、一つは、ほかの模範となるような取り組みを推進している企業につきましては、ちょっとおこがましいんですが、表彰制度というのを導入しておりまして、表彰企業の取り組みを表彰を通じて広く広報する、あるいは私どものホームページ等に掲載して広く勧めるということをしております。

 もう一つ、私ども、「両立支援のひろば」といういわばサイトを運営しておりまして、ここは企業が、私はこんなことをしております、この業種ではこんな取り組みがありますということをそれぞれアップして公表できるということで、そういういわばフォーラムのような場所を用意しておりまして、そちらに積極的に上げてもらうという形で、こういったサイトで公表した取り組みというのは、そういう意味でいいますと同僚企業や近い業種の企業さんには大変参考になるということで、こういったものを通じて好事例の提供、検索情報提供、共有というものができるようにということで御支援を申し上げているということでございます。

長尾委員 ぜひとも、そういった先進的な好事例については積極的に公表していただければというふうに思います。

 例えば、外資系の企業でこんな企業がありました。年間百時間分の介護サービス費用を会社が全額負担。これは、目的は、仕事に集中できる環境づくりに焦点を当てたということです。なるほどなと思ったフレーズは、要は、優秀な人材を外に流出させたくない。ある意味この姿勢は、企業の姿勢として私は本当にあるべき姿だというふうに思います。確かに、それができる企業だからやっている、また、それがあるからさらに優秀な企業になっていくんだろうなというような気がいたしております。

 時間もなくなってまいりました。ちょっと一個質問を飛ばします。介護職員の処遇改善、対案も出ておりますので、これまでの介護職員の処遇改善に関する政府の取り組みについてお伺いします。

三浦政府参考人 介護職員の処遇改善について御質問をいただきました。

 平成二十七年度の介護報酬改定におきましては、一人当たり月額で一万二千円相当の処遇改善加算の拡充を行っております。平成二十七年の十一月の時点では、約七割の事業所がこの加算を取得しているという状況でございます。

 加算の効果につきましては、現在実施している介護従事者処遇状況等調査において詳細を把握しているところでございまして、今月中に公表したいと考えております。

 処遇改善の進捗状況を踏まえまして、必要な財源を確保しつつ、その取り組みについて引き続き検討していきたいと考えております。

 また、介護人材の確保につきましては、処遇改善のみならず、勤務環境などの改善も同時に進めていく必要があると考えております。

 平成二十七年度補正予算及び来年度予算におきましては、介護福祉士を目指す学生さんに、介護職に五年間の勤務をすることによって返済を免除する奨学金制度の拡充に加えまして、一旦仕事を離れた方が再び仕事につく場合に、介護職に二年間勤務をしたということで返済を免除する再就職準備金貸付制度の創設、また、地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして、働きやすい職場づくりに取り組む事業者のコンテスト、表彰の実施、介護施設などにおける職員のための保育施設の開設支援の実施、介護ロボットの活用促進や、ICTを活用した生産性向上の推進などに取り組むこととしております。

 介護離職ゼロの実現に向けまして、これらの取り組みを着実に推進していきたいと考えているところでございます。

長尾委員 これまでの政府の処遇改善に関するお取り組みに対して、今回、野党の皆さんから、介護・障害福祉事業者の人材確保のため、賃金を改善する措置を講ずる事業者に対して、当該措置に要する費用に充てるための助成金を全額負担して支給するという法案が提出されているので、ちょっと触れたいと思います。

 やはり国費、午前中ちょっと盛り上がったんですが、御説明あったんですかね。それはいいとして、一千八百億円の恒久的な財源をどう確保していくのかというところに私は疑問を持ちました。

 また、平成二十四年三月の二十八日に厚生労働委員会で当時の小宮山厚生労働大臣が、「今回、交付金から報酬改定に入れたことで継続的に恒久的にできる」、あるいは、「今回、介護職員の処遇改善を介護報酬に取り込んだのは、毎年毎年つなぎつなぎでは先の見通しがなくてなかなか職員を雇えないというような現場からの声も踏まえて、恒久的なものとしてちゃんとやるために介護報酬に取り込みました。」という答弁があるわけです。

 今回の改正は、この答弁に対すると、処遇改善を図る観点から、民主党政権下の、介護報酬改定において介護職員の処遇改善を対応していくということに私はこれは矛盾しているんじゃないかなということを指摘させていただきたいと思います。

 あとは、全額国費で設けるということですので、都道府県にとっては新たな事務負担が発生する。また、特別助成、六千円だったと思うんですが、医師や看護等の他職の賃金に充てることがやはりできるわけですので、運用によっては、介護職員と他職の賃金格差を拡大させるおそれもあるんじゃないかなということをちょっと私は指摘をさせていただきたいというふうに思います。本来であれば、御質問して、答弁いただければよかったんですが。

 いずれにせよ、一億総活躍社会の実現に向けて、重要な一歩でございますので、しっかりとこれが周知徹底できるように、皆さんと頑張っていきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 昨日に引き続きまして質疑の機会をいただきましたこと、御礼申し上げたいと思います。

 今回の雇用保険法の改正についてですが、今回の法案の中には、育児と仕事の両立、また介護と仕事の両立、さまざまな措置が含まれております。その話をするときに、どうしてもやはり待機児童の問題に触れざるを得ないというふうに思っております。

 保育園落ちたという匿名のブログがございました。ただ、匿名ではありますが、その後ろにある多くの方々の声、同じような立場で、また悔しさがあったり腹立たしさがあったりという中で、それを我々、しっかりと真摯に受けとめて取り組んでいくべきだというふうに思っております。

 大臣も署名を受けられて、これはもう党派を超えて取り組むべき課題だというふうに思っておりまして、昨日、我が党でも、待機児童対策推進PTというものを立ち上げて、第一回目の会合を開かせていただきました。

 ところが、この議論の中で、私、非常に違和感があるのは何かというと、軽減税率か子育て支援かという議論がなされている点でございます。

 保育の受け皿をつくっていこうという話、これはもともと、待機児童と今言われておるのは二万三千人というふうに言われておりますが、潜在的な待機児童の皆さん、たくさん恐らくいらっしゃるだろうということで、まず四十万人の保育の受け皿をしっかりと確保しよう、当初こういう計画で、こういう意義も含めて、子ども・子育て支援のための一兆円の計画を考えていた。現時点で七千億円は措置するということになって、さあ、では、残り三千億円をどうするかという話になったわけですが、ここで、果たして低所得者対策が大事なのか、あるいは、残り三千億円、子育て支援が大事なのか、どっちをとるんだ、こんな変な議論に今なっているわけです。

 冒頭、私は、まず政府の決意を伺いたいんですが、四十万人分の保育の受け皿、この当初の予定がありました、ところが、現場でさまざまな声があって、切実なママあるいはパパの声があって、この声を受けて、受け皿の確保、これを加速化しようという決意をされたわけです。そしてまた、拡大しよう、四十万人からさらに十万人分上乗せして、五十万人分の受け皿まで拡大しようというふうに、この自公政権で方向性を定めていった。

 この措置できていない三千億円の財源について、これは主に保育の質の部分に当たるわけでございますが、保育園をふやして、受け皿をしっかりとふやして運営していくという量の部分ではないわけですが、もちろん、質の部分というのは当然大事です。三千億円、我々も、与党としても責任を持ってしっかりと努力していかなければいけないというふうに思っておりますし、とりわけ、この三千億円の中でも、保育園をふやす、受け皿をふやすということに少しでもつながるような部分があれば、そこは特に優先的に予算を確保すべきだというふうに思っております。

 その上で、主に質の向上分である不足分三千億円というのが今現在確保できていないわけですが、確保できていないからといって、五十万人分の保育の受け皿を新たにつくっていこう、この決意が当然揺らぐこともないし、また計画が後退することもないんだというこの思いをまず伺いたいと思います。

高鳥副大臣 伊佐委員にお答えをいたします。

 平成二十八年度予算案におきまして、消費税率が据え置かれる中で、厳しい財政状況にもかかわらず、〇・七兆円ベースの必要額をしっかりと確保したところでございます。

 保育の受け皿につきましては、子ども・子育て支援新制度に基づく市町村の積極的な取り組みによりまして、平成二十九年度末までの整備量は約四十五・六万人分に達する見込みであることに加えまして、事業主拠出金制度を見直して、そして企業主導型保育事業により最大五万人程度の受け皿の拡大に取り組み、五十万人の受け皿を確保することといたしております。

 政府といたしましては、平成二十七年度補正予算や平成二十八年度予算案による施設整備補助や保育人材の確保対策など、あらゆる手段を駆使して、待機児童解消に向けて、五十万人に上積みした平成二十九年度末までの整備目標を確実に達成してまいりたいと考えております。

伊佐委員 あらゆる手段を講じて五十万人分しっかり確保するんだという強い決意、子ども・子育てを担当していただいております内閣府の高鳥副大臣よりお話をいただきました。

 私がぜひ御理解いただきたいというふうに思っている点は、子育て支援というものにはいろいろなニーズがあると思っております。当然、保育園をふやす、受け皿をふやすということも大事です。それ以外にもさまざまなニーズがあって、いろいろな声があって、当然これにもしっかりと政府は対応していただかなければいけないというふうに思っております。

 そこで、今回、新三本の矢と言われる中で、このさまざまなニーズ、子ども・子育て支援に対して、新たに幾らの予算を計上したのか。つまり、もともと考えていた一兆円のうち、この七千億円分やりますよという話以外に、別建てでどういうような予算を用意しているのかという点についてお答えいただければと思います。

大島政府参考人 第二の矢、夢を紡ぐ子育て支援の関連の予算としまして、国と地方を合わせた公費ベースでございますが、平成二十七年度補正予算で、整備費など三千三百七十億円、それから平成二十八年度予算案におきまして三千六百四十億円の増額、合わせて七千億円の拡充でございます。

伊佐委員 この七千億円という予算、これはよく、誤解を受けるといけないので申し上げると、一兆円の中の七千億円とさらに別で、今回七千億円を子ども・子育てのためにしっかりと措置していくんだというお話でした。当然、この別建ての七千億円の中にも、さらに加速化しようという加速化プランの予算もあれば、保育士の確保についての予算もある、また、先ほど言及された企業主導型の保育の拡大など、さまざまな予算も入っているわけです。

 これは、当然、保育の受け皿をふやすというときに、箱だけじゃだめだ、保育士もふやさないといけない、こういうふうに野党の皆さん御指摘されるわけです。それはもっともな御指摘だというふうに思っております。

 そこで伺いたいのは、今厚労省は、保育の人材が今九万人分足らないというふうに言われておりますが、これに対して人材確保という観点でどのような取り組みを行おうとしているのか、伺いたいと思います。

三ッ林大臣政務官 伊佐委員にお答えします。

 御承知のとおり、四十万人分から五十万人分へと拡充する保育の受け皿拡大を確実なものとするため、追加で必要となる九万人の保育人材の確保に向けて、就業促進や離職の防止など、総合的対策で万全を期してまいります。

 保育の現場で働いている方々の処遇改善については、平成二十七年度の当初予算において、消費税財源を活用した三%相当の処遇改善を行っているところであります。今後とも、財源を確保しながら、さらなる処遇の向上に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、平成二十七年度補正予算や平成二十八年度当初予算案において、保育士を目指す学生に、卒業後、保育士として五年間の勤務で返済を免除する奨学金制度の拡充、一旦仕事を離れた人が再び仕事につく場合に、保育士として二年間の勤務で返済を免除する再就職準備金の創設、そして、保育現場の厳しい勤務環境の改善のため、保育補助者の雇い上げ支援や、ICTの活用による業務の効率化などの対策により、就業促進や離職防止に取り組むこととしております。

 必要となる保育人材の確保に向けて、これらの取り組みを着実に推進してまいりたいと考えております。

伊佐委員 こうした保育の人材の確保というものも含めて、さまざま、着実に前に進めていくんだというお話でした。

 当然、よく言われる話ですが、政治は結果だというふうに言われております。総理も、参議院の予算委員会の中でおっしゃっていたのは、待機児童ゼロを必ず実現していくというふうに、明確に、結果として発言をされておられます。

 そういう政府に対して我々も全力でバックアップをしてまいりたいというふうに思っておるわけですが、先ほど申し上げたように、我々が看過できないのは何かというと、子育て支援を充実するべきなのに軽減税率が横やりで割って入ってきたんだ、それで子育て支援が充実されないんだ、こういうような主張をされていらっしゃって、これは非常に看過できないと思っております。

 そもそも、消費税を導入するという段階で、逆進性の問題がある、つまり、低所得者の皆さんの負担が重いので、これを何とかしなきゃいけない。三党で話し合って、低所得者対策として軽減税率も選択肢として合意をしたわけです。今さらそういうことをおっしゃるのであれば、では、なぜそのときに言わなかったのか。しかも、当時民主党政権でした。

 この委員会でも発言があったのは、軽減税率は金持ち優遇だというふうに、累次発言が野党からございました。軽減される額というのを比べたら、お金持ちの方がたくさん軽減される、こういう話だったんですが、でも、これは変な話で、そもそもお金持ちの方がお金をたくさん使うので、消費税をたくさん払うわけです。消費税をたくさん払うのはお金持ちなんです。消費税をたくさん払うお金持ちの方が消費税の負担が大きいということになってしまうわけです。そうすると、逆進性の議論にならないんです。

 そうじゃなくて、低所得者の方が、金額じゃなくて、生活費に占める税の負担が大きくなる、だからその負担感をどうするかというのが大事だ、そもそもこういう話だったはずなんです。金額だけ比べれば、では低所得者対策なんて必要がなくなってしまう、こういう変な、議論の逆転になってしまう。

 財金委員会じゃありませんのでこれ以上議論はしませんが、ともかく、我々が見過ごせないのは、そもそも合意しているはずの低所得者対策をもって自公政権は子育て支援を軽視していると言うのは全くおかしい主張だというふうに思っております。

 限られた年金の中で何とかやりくりされている高齢者の皆さん、こういう方々のために政策を打ったからといって、では子育て軽視ということになるのか。介護政策を一生懸命やったからといって子育て軽視になるのか。私は理解できません。

 改めて大臣に最後に伺いたいのは、厚生労働行政は非常に広いわけでございます。関係する世代あるいはあらゆる立場の方々のための政策を今さまざま打ち出されていらっしゃるわけですが、その優先順位、これが一位で、これが二位で、これが三位、こういうふうに決められるものじゃないと私は思っております。しかし、子育ての支援政策というのは最も優先順位の高いものの一つなんだということをはっきりと明言していただきたいと思います。

塩崎国務大臣 我々政治家は、ひとしく将来世代に責任を負っているというふうに思います。

 ことしの一月のダボス会議でも、主要先進国の中で改めて感じたのは、これは総理がよくおっしゃることでありますけれども、人口問題に初めて正面から向き合って、これに挑戦するんだ、こういうふうに言っておりますけれども、改めて考えてみると、世界の中で、人口が減り、労働人口も減り、高齢化が進み、さらに少子化も同時に進んでいる、こういう国は実は先進七カ国の中でも日本だけであります。

 その人口問題の、一つはもちろん高齢化でありますけれども、しかし、この四つの問題を同時に解決するために必要不可欠なのは、やはり将来の世代がちゃんと元気でこの国を担っていただけるだけの力を持ち続けてもらえるということであって、そのことを考えてみれば、私たちが今、一本目の矢は経済を再生するということでありますけれども、二本目、子育て支援、そして三本目、主に高齢者というか、介護離職ゼロと言っていますけれども、社会保障を安定化させる。最終的には、社会保障を安定化させるということが可能になるためにはどうしたらいいのかということを考えれば、やはり活力ある国になるしかない。

 そのことを考えてみると、私たちは、若い人たちが元気で頑張れるという国にしていかない限りはうまくいかないわけでありますので、どれが順番として優先順位が高いのかということよりも、今本当に大事なことは、少子化対策、待機児童ゼロを含めて、未来への投資というか、子供たちの育ちをしっかりと支えていくということが、中長期的にも日本がこれからまた安定した国として、みんな活力ある、そして納得のいく人生を送ることができる国にもう一回なるためには、やはりここで少子化対策をきっちりとやっていくということが大事であって、そういう意味では、私どもとしては、今大変保育園が少ないということで困っていらっしゃる方々がたくさんおられるわけであって、それは私たちはしっかりと寄り添いながら、どういうふうにしていくのが一番早く、そしてよく解決の道を探し得るのかということをやっていかなきゃならないと思います。

 もう既に三年間、これまでにないペースで保育の定員はふえてきているわけでありますが、新しい制度が去年の四月からスタートしたということもあって、申込者が予想以上にふえているということで待機児童が少しふえていますけれども、いずれにしても、これまでの三年間の上に、さらにこれからしっかりと、待機児童ゼロに向けて、この解消を加速化して、そして、皆さん方に安心して未来を担ってもらう子供さんたちをしっかりと育ててもらう、このようにやっていかなきゃいけないと思います。

 やれ三千億が先か六千億が先か、そんな問題では全くなくて、やるべきことはしっかりとやっていくということが我々責任ある政権としてのやるべき道ではないかというふうに思います。

伊佐委員 やるべきことをしっかりやると。

 まさしく日本は世界の中でも未曽有の挑戦を今たたきつけられているという状況の中で、いかにこの未来への投資をしっかりと充実させていくか。これは予算委員会でも私も総理に質問させていただいたときに、総理もはっきりとおっしゃっていただきました。この未来への投資を拡充するんだ、安倍政権は拡充するんだという言葉をおっしゃっていただきました。しっかり我々与党としても気を引き締めて、結果を出してまいりたいというふうに思っております。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 今回の、有期雇用の育休取得について質問させていただきます。

 現在の状況ですが、パートあるいは派遣という方々が育休後に仕事を継続できたのはわずか四%だという数字、正社員の皆さんが育休をとった後、仕事に復帰できたのが四三%なので、大体十分の一だというふうに言われております。

 もちろん、パートあるいは派遣の皆さんと正社員、いろいろな条件の違いが当然ありますので、雇用条件の違いがあるでしょうが、果たしてこの十倍の差というものが合理的に説明ができるのかどうかという問題じゃないかと思います。私はそこはやはり難しいと思っております。

 今回の法改正は、こうした状況を変えよう、条件を緩和しようと。ただ、条件を具体的に、ではこの条件がこうなりますよということになったとしても、なかなか国民の皆さんに届かないかもしれませんので、少し具体的なお話をしたいと思うんですが、こういう場合はどうなるかというところでお答えいただきたいと思います。

 例えば、派遣社員の方がいらっしゃいました。この方は六カ月単位で契約を更新されている。その契約の更新は、その都度判断しましょうというような契約事項になっております。だから、そのときにならなきゃわからないんだけれども、その都度判断しましょうと。二年間働かれたところで、三年目に入った、そこで子供を授かった。派遣元に育休をとらせてほしいというふうに伝えたところ、前例がないからだめだというふうに言われた。では産休はとってもいいけれども、産休が終わったらやめてねというふうに言われた。

 こういうケース、こういう場合は、現行法上ではどういう取り扱いになって、そして、今回の法改正ではどういう取り扱いになるかについて説明願います。

香取政府参考人 ただいま先生が御指摘になったケースでございますが、まず、現行制度、現行の育児休業の取得要件は、申し出時点で一年以上継続して雇用されていること、二つ目は、子が一歳に到達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること、三つ目が、二歳までの間に更新されないことが明らかである者を除くこと、こうなっています。

 今の御指摘のケースですと、一年以上雇用継続はありますが、一歳に到達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれるというところで、契約期間が六カ月ということになりますので、一歳の時点では引き続き雇用されることは明らかではないということになりますので、現行制度ですと、今のような取り扱いを事業主さんがされても、それは法律には違反しないということになります。

 他方、新しい制度にしますと、今度は、一歳に到達する日を超えて引き続き雇用されることの見込まれることという要件を廃止しますので、簡単に言うと、確実に雇いどめをされるということが明確でない限りはとれるということになりますので、改正後の制度ですとこれは育児休業をとれることになりますので、あなたはとれません、やめてくださいと言うのは、法律に違反するということになります。

伊佐委員 こういうケースは今回の法改正で救われるという例でございました。

 つまり、ポイントは、まず一年以上働いているという点と、契約の内容、契約事項に、大抵の場合は、契約更新はその都度判断という言葉が入っている場合が多いですが、これがあれば実は救われるという状況じゃないかと思っております。

 ちなみに、今のケースはマタハラには該当するんでしょうか。

香取政府参考人 今のケースは、育児休業を申し出たことを理由に雇いどめないしは解雇の意思表示をしているということになりますので、これは明確に不利益取り扱い禁止に触れますので、いわゆるマタハラ規定にひっかかるということになります。

伊佐委員 つまり、育児休業もとれる可能性が非常に高くなるし、そもそもこれはマタハラにも当たるということでした。

 では、ちょっともう一つ、今と全く同じ条件です。六カ月で更新する、契約更新はその都度判断、二年間働いている。このときに、さっきは前例がないからだめですという言われ方をしたんですが、今度は、育休から復帰するとき景気がどうなっているかわかりませんね、その状況によっては雇用がそもそも継続できるかわからないので、だからとれないですよというふうに言われた。

 では、こういう場合はいかがでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今のケースも先ほどと同じことでございまして、育休明けのときに、一歳六カ月の一歳の段階のときに、もう契約をしないということがあらかじめ明らかでない場合ということになります。

 現行制度ですと、契約が更新されることが見込まれていないとだめだということになりますので、今のケースは育休を与えなくても法律には違反しませんが、改正後は、継続しているかどうかわからないということは、確実にあなたはもうやめていただきますということがあらかじめ明らかでないということになりますので、改正後の制度ですと、育児休業は取得できるということになります。

 まさに今言ったようなケースが、制度改正前と後とで取り扱いが変わる一つの例ということになります。

伊佐委員 そうなんです。

 つまり、今回の法改正の大きなことは、さっきは前例がないからだめと言われた、今回は、景気がどうなっているかわからないから、そもそもそのときに雇用しているかどうかわかりませんと、いろいろな言われ方がありますが、実は、会社からどういう言われ方をするかというのは余り関係ない。大事なことは、一年以上これまで働いてきたかどうかという点と、あるいは、契約の内容で、例えば契約更新は二回までですと決まっている場合はまた別なんですが、そうじゃない限りは、その都度やりましょうというような状況になっている場合は、今回はこの法改正によって多くの方々が育児休業取得が可能になるという点を具体的に説明いただきました。

 今回の、有期の皆さんに対する育児休業の取得についてですが、私は同様に、企業側に対しても、企業側の負担というものともしっかりとバランスはとっていかなければいけないんだろうなというふうに思っております。

 先ほど堀内委員もこの件について、中小企業の支援という形で言及されておりましたが、企業の規模、サイズが小さいほど、育休であったり、あるいはさまざまな、短時間勤務であったり、あるいは残業の免除であったり、こういう適用が少ないというデータがあります。

 有期の皆さんが育休をとれるかどうかについて、アンケート、実際の調査をしたところ、三百人以上の企業だったら五一・六%の取得率、半分を超えていた。ところが、百人以下の企業だと一四・八%、大体三分の一以下ぐらいになるわけです。

 なぜなかなか難しくなるかというと、企業の皆さんがおっしゃっているのは、休業中に代替要員の確保というのが難しいというお答えであったりとか、あるいは復帰したときの仕事の確保が難しいというような話。中小企業の皆さんには中小企業の皆さんの事情があるわけです。

 そこで、お伺いしたいのは、育児と仕事の両立、介護と仕事の両立も含めて、中小企業あるいは零細企業の皆さんの負担を考慮した上で、何らかの配慮、支援が必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、小松委員長代理着席〕

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘の点は、今回の法律改正の審議をいたしました労働政策審議会でも、使用者側から、今回は非常に大幅の制度改正を行う、特に介護休業については大幅な制度改正をするということで、企業側の負担が問題になります、特に中小企業はなかなかついていけないので、その点は配慮してくださいということでかなり議論がありましたが、最終的には、大きな、国全体の政策の方向、あるいは少子化対策や仕事の継続、両立支援の観点から、使側も合意いただいて今回の制度になったということでございます。

 そういった経緯も踏まえまして、やはり中小企業において円滑に実施していただけるような手だては講じなければならないと考えております。

 一つは、改正内容をきちんと周知徹底して御理解をいただく、これはまずやらなければいけないということで、二十八年度予算で、社内研修を実施したり、あるいは介護休業についてさまざまな周知徹底を図るという取り組みをしていただいた場合に助成措置を講じるということを一つ用意してございます。

 それから二つ目は、特に男性の休業取得がなかなか進みませんので、これについては別途企業に対する助成措置を講ずるということを考えております。

 さらに、中小企業につきましては、特に中小企業に対する取り組みの支援ということで、育児休業取得の場合の代替要員でありますとか、あるいはその後の職場復帰に関する支援、これは育児休業の場合も介護休業もそうですが、こういった支援などの取り組みをして、実際に労働者が休業を取得した場合について一定の条件で助成措置を講ずるといったような措置も講ずることで、特に中小企業にはちょっときめの細かい助成措置を用意するということで考えてございます。

 やはり中小企業で働いている方々がきちんととれるということになりませんと、かなり多くの方々、労働者の方の多くの方々は中小企業にお勤めですので、ここについてはぜひきちんと円滑にできますように、事業主の努力も促するということもあわせて、さまざまな助成措置を講じてまいりたいと思っております。

伊佐委員 中小企業の皆さんへの支援も、今回これに合わせてしっかりと拡大していくというお答えをいただきました。

 今回、さまざまな制度に新たに取り組んでいくわけですが、さまざま充実をしていくわけですが、果たして現在それらが、では、今ある制度はどれぐらい利用されているのかという話です。先ほど長尾委員の方からの質問でも、そもそも我々がつくった法律の製造責任というのがあるんだから、しっかりと、どれぐらい使われているか、執行を見ていかなきゃいけないよというお話がありました。

 アンケートをとりますと、どんな制度を利用していますか、一番多い答えは、何も利用していませんというのが一番多いわけです。次に出てくるのが、有休をとっていますよという答え。その後は、半日単位の休暇制度とか、遅刻、早退で使っていますとか、つまり、育介法などで整備されているようなものはなかなか使われていないというような状況です。

 これは、せっかく充実させるわけですから、使われないならどうしようもないわけで、なぜまずそもそも使われていないのかという質問を先ほど長尾委員もされました。そもそも、利用者の皆さんは知らない場合が多いんだというお答えでしたけれども、ほかにもし何かつけ加えることがあれば。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 基本的には先ほど申し上げましたとおりでございまして、特に、育児休業はそうでもないんですが、介護休業はやはり、制度が十分理解がないので、お話ありましたように、利用していませんという答えの方が多い。しかも、何で利用しないんですかと聞くと、自分の会社にはそういう制度がないとお答えになったり、わからないとお答えになったりする方が多いということで、これはやはり、十分周知をされていないということがあるということもあろうかと思います。

 もう一つは、これは先ほど御答弁申し上げましたが、特に介護休業の場合は、有給休暇の範囲内で対応するというケースが多い。それは、これも先ほどの長尾先生の御質問にありましたように、なかなか相談をしないということなので、自分の手元にある有休の範囲内で、つまり、そういう制度を使わないで自分で使える範囲内でということで有休を使ってしまうということがあるということでありますので、やはりこれは、周知徹底をすることと、よく事前に企業側あるいは自治体側で制度を周知して、事前に、そういう事態になる前に、さまざまな形で御相談できるようなルートをつくっておくということが、非常にこういった制度を使っていただくためには重要ではないかというふうに考えております。

伊佐委員 昨日の参考人の質疑の中でもまさしくこれが議論になったわけですが、つまり、介護というのは突然やってきて、しかもいつまで続くかわからないという中で、では、いざ介護するという段階になったときに、どういう制度があるかというのがわからないままであれば、結局、一人で全部介護を抱え込んでしまうというような状況になる。

 では、どうやってこの普及啓発、事前教育という言葉もございました、事前にしっかりと知っていただくという、これをどうやってやっていくかということですが、先ほどのお答えでは、地域包括センター、まさしく介護のところと、あとは、都道府県の労働局雇用均等室と連携していくんだというようなお答えもありました。

 ちょっと先ほど出てこなかった点で質問させていただきたいんですが、私が思いますのは、結局、どこどこに行けばわかりますよというのではなくて、多面的にやはり普及啓発していかなければいけないというふうに思っております。それが、そういった、地域でやるのか、あるいは教育でやっていくのか、あるいは会社でやっていくのか、いろいろなそれぞれの多面的な取り組みを連携してやっていくのが私は大事じゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

香取政府参考人 その点は御指摘のとおりでございまして、情報提供あるいは相談ということになりますと、一つは、先ほどからお話があります市町村の地域包括センターということになります。

 ここは、実際の具体的なサービスにつないでいくようなマネジメントにつながるところですので、ここはもちろん重要なんですが、それ以外にも、通常の労働者が日常生活の中で何かあったときに接触する相手ということになりますと、基本的には自分の企業の人事部局ということになります。あるいは私どもの労働部局ということになりますが、そういうところが基本的には連携をして、ワンボイスで、何かあったときにどこに行っても対応できるという体制をとるということが必要ですし、例えば企業でも、自分でさまざまな制度を持っておられる企業もありますし、あるいは、そういう相談であれば市町村のどこどこの窓口に行けばよいということで、そもそも包括センターもなかなかそういうことがないと行かないところですから、そういったものを相談で提供するということも大事かというふうに思っております。

 特に、企業の側でさまざまな情報提供や御相談に応じるということは非常に重要なので、私どもでは、企業における仕事と介護両立の実践マニュアルといったような、こういうマニュアルを用意しまして、各企業の人事部局の担当の方ですとかそういった方に、広く研修をしたり、そういったものを御提供して、実際の企業内部での研修やいろいろな情報提供に活用していただくということができるようにというようなことも行っております。

 いずれにしても、さまざまな窓口で、いろいろなところで相談ができる、身近なところでできるという体制をつくることは先生御指摘のとおりですので、そういった環境をきちんとつくって、皆さん就業継続ができるようにということで努力をしたいと思っております。

伊佐委員 ぜひ、さまざまな部署と連携して取り組んでいただきたいというふうに思っております。さまざまな制度を充実したとしても、知られていないと、使われないと意味がないという根本的なお話だと思うんです。

 もう一点、これも根本的な一つの課題だと思っておりますが、そもそも、働き方改革が行われないと、結局なかなか制度が生かされないということもあろうかというふうに思っております。

 どういうことかというと、今回の法改正で、例えば、短時間勤務あるいはフレックスタイム制度、これを九十三日間の介護の期間から外しましょうということになりました。また、所定外労働の免除、いわゆる残業の免除というものも設定された。育児も同じわけですが、三歳までの時短というのがまず基本であって、フレックス制度、さまざまな措置というのがなされているわけですが、これはどれも、そもそも残業を前提としている職場であれば成り立たないわけです。

 長時間勤務というのが是正されないままで、幾らいろいろな制度を詰め込んだとしても、結局、それは絵に描いた餅になりかねないということだと私は理解をしておりまして、仕事と介護の両立支援、当然、育児と仕事の両立支援、このどちらにおいても、残業を前提とした働き方を変える必要がある。

 働き方改革について、政府の取り組み、御答弁いただければと思います。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のとおり、仕事と育児や介護の両立を図るためには、長時間労働の是正など、働き方改革が重要と考えております。

 このため、厚生労働大臣を本部長とする長時間労働削減推進本部を立ち上げ、働き過ぎを防止するため、長時間残業に関する監督指導を徹底する、業界や地域のリーディングカンパニーのトップや経済団体等に対して、直接、長時間労働の削減や年次有給休暇の取得促進について働きかけるなど、対応を強化しているところであります。

 その上で、現在提出している労働基準法改正法案では、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進めるため、確実に年次有給休暇が取得できる仕組みの創設、中小企業における割り増し賃金率の引き上げ等を行うこと、そして、フレックスタイム制を拡充し、清算期間の上限を一カ月から三カ月に見直すことを盛り込んでいるところであります。

 このような働き方改革を進めていくことにより、育児、介護を行いながらしっかりと働き続けられる職場環境の整備に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 時間の都合上、これは最後の一問になるかと思いますが、地方創生との関係について伺いたいと思います。

 と申しますのは、今回、今ある就職促進給付の中で、移転費と言われるものと広域求職活動費というものがあるんですが、実は、これがなかなか使われていない状況にあります。

 といいますのは、例えば、UターンとかIターンとかJターンとか、こういうものをしたいということでハローワークに相談に行く、遠くの企業に就職活動をしに行く場合、この場合は交通費とか宿泊料が出ます。これが広域求職活動費と言われる制度ですが、二十六年度、支給されたのは七十三人という状況です。また、就職が決まって、では引っ越しが必要になったというときに、そうなったら、本人の移動費もそうですし、移転料もそうですし、また手当まで措置される、これが移転費と呼ばれるものですが、これが支給されたのは三百九十六人という状況です。

 実は、私もこの制度を知りませんでした。今、安倍政権、自公政権で取り組んでいるのは、地方創生、若者のUターンあるいはIターン、Jターンというものをどんどん促進していこうということになっているわけですが、もしそれであるなら、ハローワークにおいてももっと積極的に、広域のいろいろな職業紹介というのをしっかりできるんですよ、やりますよというアピールをもっとしていただいた方がいいんじゃないかな。また同時に、もし広域で就職活動あるいは就職が決まったときにはこういうような制度がありますよというものも、もっと宣伝されるべきじゃないかというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。

    〔小松委員長代理退席、委員長着席〕

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、ハローワークは、全国五百四十四の拠点のネットワークによりまして、最寄りのハローワークで日本各地の仕事を探すことができます。また、全国から働き手を募集することができます重要なインフラと認識してございます。

 地方創生では、先ほどおっしゃいましたように、特に東京一極集中の是正が課題とされているところでございます。東京、大阪の二つの大都市圏のハローワークに地方就職支援コーナーを設置し、地方への就職を希望する方に、地域の生活情報や移住相談も含めた職業紹介を実施しております。

 また、その他の地域のハローワークでも、広域の職業紹介に加えまして、地元自治体と雇用対策協定を締結し、ハローワークの全国ネットワークを生かしまして、UIJターンの促進に貢献するなど、移住希望者向けの総合的な支援を行ってございます。

 職業安定法におきましては、できる限り住所の変更を必要としない職業を紹介することを原則とすることとはされてはおりますけれども、御本人の希望や能力を踏まえまして、今回の雇用保険法の改正案により拡充することとしております御指摘の広域求職活動費等を積極的に周知し、活用していただくことなども含めまして、地方創生に資する広域の職業紹介を推進してまいることを考えてございます。

伊佐委員 時間になりましたので終わりますが、これは、希望する人を待つんじゃなくて、ぜひ積極的に打って出ていただきたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 きょうは、雇用保険法等の一部改正案ということで、私は、育児・介護休業法について主に質問させていただこうと思います。

 今回の法律、やはり五本の法律が一本に取りまとまっているということは、十分な審議が難しいのではないかなというふうに思うんですね。本来であれば分けて議論するべきであったということをまず冒頭申し上げておきたいと思います。

 それで、育児・介護休業法については、労政審等でもさまざまな議論がなされまして、建議が取りまとめられました。その中において、このように書かれております。

 「労働者の仕事と育児の両立に関しては、その困難さが、女性の継続就業及びその活躍を阻害する一因となるとともに、子どもを持ちたいという希望を妨げ、少子化の要因の一つともなっている。」ちょっと途中は省略しますけれども、「とりわけ、パートタイム労働者・派遣労働者等が、育児休業を取得しながら継続就業をしている割合が、正規雇用労働者と比較して低いという状況にあり、」、比較して低いなんという状況ではなくて、これは過日、私が大臣に質問したときに、正規の女性の育児休業取得率がどのくらいで、非正規の方の取得率がどのくらいでというのをお答えいただけなくて、当時の山本副大臣が慌ててレスキューに入ってくださったというときがありましたけれども、とにかく低い。「その中でも有期契約労働者の育児休業取得促進が求められているところである。」と。「加えて」、「男性の育児休業取得率は低く、男性の職場での両立支援制度の利用促進のための取り組みが必要となっている。」これは非常に重要なことだと思います。

 我が国は、ILO条約百五十六号、それから勧告も百六十五号と受けておりますね。この中では、「直接的であるか間接的であるかを問わず、婚姻していること又は家族的責任に基づく差別待遇を防止するための措置が採用され及び適用されるべきである。」というふうにも書かれております。つまり、働き方にかかわらず、全ての人たちが仕事と生活、家族的責任との両立を図られなければならないという趣旨であると私は理解をしております。

 そこで、一問目、お伺いしたいのは、この育介休法は、雇用している労働者のみならず、雇用しようとする労働者も対象とすること。したがって、募集、採用段階での差別からの保護も含むというふうにすべきだと考えますけれども、見解を伺います。

塩崎国務大臣 今、西村委員からILO百五十六号条約についてお触れがございました。

 これは、一九九五年に日本も批准をして、御指摘のとおりでありますが、アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダ、イタリアなどはまだ批准をしていないようでありますけれども、今お話があったとおり、家族的責任を有する男女の労働者についての条約ということでございます。

 そこで、今お尋ねでございますけれども、育児・介護休業法についてお尋ねがございました。

 基本的に、この法律は、育児休業そして介護休業など、育児・介護休業法の制度の利用を通じて労働者が仕事と育児や介護の両立を図ることのできる環境を確保することを目指しているわけでありまして、このため、育児・介護休業法において、労働者がこれらの制度を確実に利用できるように、育児休業の取得等を理由とする解雇、降格など不利益取り扱いの禁止が定められているわけであります。

 一方で、今お話がございました、雇用の手前で、つまり募集とか採用とかそういう段階のことでございますが、労働契約締結前の雇用関係がない段階でございますけれども、そしてまた、事業主には採用の自由が存在しているということを考えてみますと、不利益取り扱いの対象とはしていないというふうに理解をしております。

 一億総活躍社会を目指す中で、子育てをしながら働きやすい環境の整備をしていくことは、当然、大変重要な課題でありまして、今般の法改正でも、いわゆるマタハラの防止措置の義務づけ等を盛り込んでいるところでもありまして、今後とも、妊娠、出産、子育て等を経ても働きやすい環境の整備に全力で取り組んでいかなければならないというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 今の話は、やはり、「私活躍出来ねーじゃねーか。」ということにつながってくるんじゃないですか。

 一億総活躍というのは、これから働こうとする人も、それから、これから子供が生まれようとする人も、実際に今そのような状況で働き続けている人も、全ての人たちが仕事と家族的責任を両立できるようにしなさいというのが、このILO百五十六号、それから百六十五号勧告、ここが求めていることなんですよ。今の話をそれは対象外だというふうに言ってしまったら、これはまた一億総活躍とは逆行するということになると私は思います。

 ですので、今の話は、これ以上大臣に聞いても答えは返ってこないと思いますので、答弁は求めませんけれども、ぜひこれは今後の課題にしてもらいたい。一億総活躍という看板を掲げるんだったらなおさらのことです。そこは強く申し上げたいと思います。

 それで、次の質問なんですけれども、育介休法では、権利行使を理由とする不利益禁止と家族的責任を有する労働者に対する配置への配慮、これを求めております。

 私は、ここはもう一歩進めて、家族的責任を理由とする差別や不利益を、事実行為、これはハラスメントを含めて、禁止する方向に進めていくべきではないかというふうに考えております。理由は繰り返し申し上げませんけれども、条約がそのことを日本政府に求めているからであります。ぜひその方向で、この育介休法というのを、雇用継続が目的であるというところからもう一段上に上げて方向性を見出せるように検討してもらいたいと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 先生がおっしゃっておられるILOの条約に関連をして今の日本の不利益取り扱いに関する規定ぶりというのを見てみますと、おっしゃるように、特に雇用関係に入る前の、先ほどお話しのように、そこの規定ぶりについては規定がないというところが幾つかありますし、また、雇用関係に入った後も、婚姻あるいは家族的責任を理由とする差別の禁止というのがない。ですから、小さい子がいるから降格させるとか、この類いのことについての禁止規定がないということがございます。

 仕事と家庭の両立、確かに一億総活躍社会づくりには不可欠のことでございまして、私どもはそれなりに全力で取り組んでいるわけでありますけれども、現在は、御指摘をいただいたような、家族的責任を有することを理由とする差別の禁止、あるいは不利益な事実行為に対する禁止によってではなくて、育児・介護休業法に定める制度を労働者に確実に利用できるようにすることによって仕事と家庭の両立の実現を図るというのが今の政府のアプローチで参っているわけでございます。

 御指摘のような御議論があることはよく承知をしているところでございまして、先生がそれを強くプッシュしていることもお聞きをしておりますけれども、問題は、労政審における議論も含めて、これが大きなコンセンサスに今なっているかというと、まだそういうところまで行っておらずに、今回もこういう形の法改正をお願いしているわけでございますけれども、この問題に今御指摘をいただいたことについても引き続き議論を行っていくことが必要ではないかというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 大臣も、この法律の制度的な限界、それから、それが日本の今の雇用慣行から生じていることをお認めになった答弁だと私は思いました。

 実際、今現場で何が起きているか。今回、有期契約の方々も育児休業を取得できるということになりましたけれども、私は、これによってどのくらい進むのか、期待も半分、それから心配も半分、両方あるんですね。

 実際、日本の雇用慣行でいえば、やはり、もう何度も申し上げますけれども、性別役割分業の中で、男性が長時間ばりばり働いて、それから女性の方は家事や育児や介護を担う。しかも、そこに加えて女性の活躍促進ですから、それに加えて、また働けということになりますよね。そうすると、もう本当に大変な言ってみれば家族的責任がかかってくる。

 しかも、働けと言われた女性たちにどのような雇用環境が待ち受けているかといえば、やはり、例えば、一旦リタイアしてしまうと正規の職というのはなかなか難しいですよ。短期間のつなぎで契約とかあるいは派遣とかいうことにならざるを得ない。そしてそこで、事業主の方からは、何かあれば、機会があれば、ちょっとかえたいということで人員整理の対象にすぐなってしまうということがあることが問題で、今回の育児・介護休業法、私は、先に申し上げますと、評価する面はそれはあります。だけれども、もう一歩進めて、雇用の継続、今現に雇用が継続されている人たちの雇用の継続を目的とするというところからもうちょっと広げてもらって、さっき大臣もおっしゃいました、家族的に責任を有する人たちが仕事との両立がきちんと図れるようにという、そういう意味での対象を拡大するという方向に向けて議論をぜひ始めていただきたい。

 その点については、大臣、いかがですか。もう一度答弁ください。

塩崎国務大臣 今、いわゆる雇用の継続を旨とする制度から一歩踏み込め、こういう御指摘をいただいたというふうに思います。

 大変申しわけございませんけれども、繰り返しになりますが、この育児・介護休業法は、育児休業等の制度を設けるべきことを定めることによって、育児や介護を行うことにより雇用が中断されることにならないように、労働者の雇用の継続を図り、これによって労働者の仕事と育児や介護の両立を図ることを目的としているという体系でつくられた法律でございます。

 これは実は、かつて西村先生と議論した際に、例えば里親とか、そういう関係の親子、あるいは親子に準ずる場合のことについても、いろいろ、今はやはり雇用継続ということで話が組み立てられているということもありまして、なかなかうまくいかないということで、これは根本的に、根っこから少し考え直さなきゃいけない部分もあるんだろうと私は思っていますということを申し上げたことを記憶するわけであります。

 育児・介護休業法の今申し上げたような趣旨を変更するということは、さっき申し上げたように、この育児・介護休業法の言ってみれば法的組み立ての根幹にかかわる議論でございまして、もちろん、それを変えようということは十分選択肢としてあるわけでありますが、そういう意味では、国会の中あるいは社会のコンセンサスを得ていくということが大事でございますので、労政審でそのような合意が得られるような形に持っていくとするならば、さらに議論を深めるということが大事なのかな、そんなふうに思うところでございます。

 なお、例えば有期契約労働者の育児休業取得要件の見直しについて、育児休業制度は雇用の継続を図るための制度であるという趣旨を今回はやはり維持しながら、その中で可能な限り要件緩和をするということになったわけでありまして、育児休業の取得等を理由とする事業主による不利益取り扱いの禁止に加えて、上司、同僚から行われる嫌がらせ等についても防止措置義務というのを新たに設けるという形で、現行の法律の考え方の範囲内で可能な限りの制度見直しを行っておりまして、これらの規定を通じて、仕事と育児や介護の両立ができるような環境整備に最大限の努力をしてまいりたいというふうに思うところでございます。

西村(智)委員 のらりくらりの答弁なんですね。

 派遣や有期の方々、出産して職を失っている方はやはり多いです。現行法ではとれないことになっていますので、これから改正してとれる人が一人でも二人でも出てくればいいというふうに思いますけれども、実際に職を失っている、職を失っているから子供は預けられない、これは保活の話もありますけれども、子供を預けられない、預けられないから働けない、こういうジレンマ。何と言ったらいいんでしょう、なかなか脱することのできないアリ地獄のような状態ですね、そこに今あるんだという実態を、大臣、ここは、直視をすれば、今のようなのらりくらりではなくて、きちんとそこは、目的含めてもう一段進めて議論をしますという答えが返ってきて私はしかるべきだというふうに思います。

 それで、ここで次の質問は、建議に、子育て世帯のことについて、延長保育等の子育てサービスの充実を図っていくというふうに記載をされているところがございます。

 それは、「育児のための所定労働時間の短縮措置等の対象となる子の年齢の引き上げについて」というところなんですけれども、まずは「保育サービスの充実を図っていくことが重要である。」ということなんですけれども、そのためにも、やはり先ほどのつながりもありますが、待機児童の実態、それから保活の実態、これはやはりきちんと調査をしておく必要があるということで、大臣もこれは調査をするというふうに答弁をされました。

 現状で、どういう方法によって、どういう人たちを対象に調査をすることになっているのか、それをお答えください。

塩崎国務大臣 前回のこの委員会の議論でも、特に保活の調査について申し上げましたけれども、それ以外にもいろいろ調査すべきことがあるということだと思います。

 保育行政を進めるに当たっては、やはり利用者のニーズというもの、それから、一方で、これは多くは市町村が運営をしているわけでありますけれども、市町村がつかさどっている、あるいはみずから運営をしている、そういうところの実情というのを的確に把握していかなければならないと思っています。

 このため、まず、これは、保育園などの利用に当たっての難しさ、困っていらっしゃること、改善提案等々、国民の声を幅広くいただけるように、私ども厚生労働省のホームページに近々そういうコーナーを設けて、意見募集をぜひお願いしたいというふうに考えております。

 それから、いわゆる保活、例えば、育児休業を早目に切り上げて比較的入所しやすいゼロ歳児で入所をする、あるいは、ポイントを上げるために認可外の保育園に入所したりするという保活の実態調査につきましては、この間は山尾先生から、サンプル調査でもいいからやるべし、こういうことで、やりますということを申し上げたわけであります。

 今、どういう調査の手法、あるいは対象者、また、お尋ねする項目、この詳細を鋭意詰めているところでございまして、そう時間を置かずに保活についての実態調査も行ってまいりたいというふうに考えております。

 それから、さっき申し上げた、市町村がいろいろ情報とか意見を持っておられるわけでありまして、また、逆に提案をしていただけるかもわからないということもあって、普通は都道府県を通じていろいろやっていますが、市町村から直接にいろいろな御意見あるいは情報をいただけるような特別のメールアドレスを開設しようということも決めておりまして、もう近々それもスタートすることになっております。

 また、入所決定が、今、三次決定ぐらいまで来ているようでありますけれども、この月末に向けて、今、待機児童の解消に向けて市区町村が鋭意頑張っていただいております。その作業が一段落した四月の早い段階で、各市町村と意見交換の場を設けようというふうに考えておりまして、今後の施策の中で、それらからの上がってくる声をぜひ生かしていきたいというふうに考えております。

西村(智)委員 私がきょう質問している趣旨は、やはり現行の育休法の目的規定のままだと、どうしても、対象に入らない人たち、それから子供たちが出てくるのではないかということが懸念されるので伺っているわけです。ぜひ実態調査はしっかりと、サンプル調査でも結構です、やっていただきたいと思います。

 その上で、保育基準は、より広範囲な子供たちを対象にできるようにすること。また、労働市場への参入を予定している親、つまりこれから働こうとする人たちも保育サービスを受けることができるようにすること、これは条約の勧告にもあります。また、障害のある子供さんを持つ親が、保育サービスを受けられないために待遇を不利益に変更させられたり、雇用を失ったりというふうにしないようにするということを確保すべきである。ここは、ちょっと時間がないので要望だけ、要求だけ申し上げておきます。

 それで、さらに深刻なのは、私は一人親世帯だと思っています。

 今回、建議においては、この一人親世帯、一人親に対する記述として、このように書かれています。「経済的支援や子育て支援をはじめとする様々なニーズがあることを踏まえ、子の看護休暇の日数や育児休業の期間の延長により対応するのではなく、」「総合的な支援により対応すべき」ということなんですね。

 しかし、私は、これではやはり不十分だと思います。一人親の現状は、何か本当に、時間給で働いている方も多いですし、ダブルジョブ、トリプルジョブも少なくありません。実際に私もそのような方からお話を伺ってまいりましたけれども、つまり、そういう人たちというのは、時間給で働いていると、休めば休んだだけ給料が減っちゃうわけですよね。そうすると、これまた別の話になりますけれども、児童扶養手当の現況届を出しに行くのも、これは時間がかかったりしてその分休まなきゃいけないから、その分マイナスが生まれちゃったりしているんですよ。

 配偶者の支えなく家族的責任を負担しているわけですから、そういったことを理由として不利益な取り扱いを受けないように、それを禁止すること、それから、自立して生計を営まなければならない立場に配慮して、不合理な労働条件の格差を解消すること、それから、合理的配慮に欠ける雇用上の不利益を受けないということ、こういった権利を私は徹底する必要があるというふうに思います。

 これについて、大臣はいかがお考えでしょうか。それこそが一人一人の実態に寄り添った政策だと思いますけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 今の御指摘は、先ほど冒頭に先生が御指摘になられたILOの条約にも深くかかわることだというふうに思っています。

 いわゆる一人親であるがゆえに差別をされるということを禁止するという考え方だというふうにも思えるわけでございますので、そのような考え方について、先ほど申し上げたように、今の法的枠組みの中では禁止規定がないということでございますので、そこをどう考えるのかという問題だろうと思います。

 一人親を含めて、今の育児・介護休業法は、労働者が育児休業制度等を確実に利用できるように、育児休業の取得などを理由とする解雇などの不利益取り扱いを禁止するということを規定するということがまず第一点。それから、今回の法案におきまして、先ほども申し上げましたけれども、上司、同僚などが育児休業の取得等を理由として嫌がらせなどを行うことについても、事業主が防止措置を講ずる義務を課すということにいたしました。

 今お話がありましたように、先生がこうすべきという、一人親がゆえの差別の禁止ということを法律に書き込めということだろうと思うんですが、一人親であるかないかにかかわらず、家族的な責任を有することを理由とする差別の禁止を現行法上規定するというのは、さっき申し上げたように、私もいろいろ、以前に、いわゆる里親とかそういうところでの問題などを申し上げましたけれども、現行の、今の法律の枠組みでいきますと、今先生が御指摘のような差別禁止の形にはなっていない法的枠組みの中で、それを規定するということに挑戦をしないといけないことになるわけで、それについては、さっき申し上げたように、労政審の中でも、なかなかこれは、意見の一致が見られている、あるいは議論が深められたということも余りまだお聞きをしておりませんので、これは、引き続き、先生の御指摘も踏まえて議論を深めていくということが大事なのではないかというふうに思うところでございます。

西村(智)委員 均等分科会では、子の看護日数について、延ばすという議論はあったんですね。私は、ぜひ、大臣が論点を明らかにしていただいた上で、均等分科会で議論が進むようにしてもらいたいというふうに思います。

 あわせて、仮に子の看護休暇の日数を延ばすということであれば、これはやはり経済的には損失は出てくるわけです。つけ加えての質問ですけれども、そういった家族的な責任、例えば看護のための欠勤、こういったものに対する雇用保険からの所得保障、これは一人親家庭にとっては本当に切実な問題だと思います。大臣はどうお考えですか。

塩崎国務大臣 雇用保険制度というのは、一定以上の労働時間を超えた働く方を広く被保険者として、保険料を負担する被保険者の失業とかあるいは休業による所得喪失リスクに備えるためのものでありまして、給付の対象とするためには、保険料の負担者を初め、広く社会的なコンセンサスを得ることが必要であるわけであります。

 このため、一人親家庭であることに着目をしたいわば福祉的な給付を雇用保険において行うことにつきましては、保険料の負担をされる方などの理解を得ることが必要でありまして、なかなかそれは、そう簡単ではないかもわからないというふうに私どもは考えておりまして、ここは少し、負担という考え方を慎重に検討を深めていくことが大事なのではないかなというふうに思っております。

 一人親の就業を通じた自立支援については、昨年十二月に、私ども、すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクトというのを決めたことはもう御案内のとおりでありますけれども、その中で、子育て、生活に関する内容から就業に関する内容までワンストップで相談できるような体制を整備することから始まって、放課後児童クラブ等の終了後に学習支援等を行うことが可能な居場所づくりなどなど、一人親家庭の就業の促進に全力を挙げようということでいろいろ政策を入れ込んだわけでございます。

 法律が、今先生の御指摘になった方向で、議論で結論が出ないとしても、やるべきことは直ちにやっていかなきゃいけないということでございますので、今そのようなことで対処させていただいているということでございます。

西村(智)委員 言葉も出ませんけれども、ぜひ検討していってもらわなければ困ります。

 それで、介護休暇の方に質問を進めますけれども、介護休暇、それから介護の半日休暇の場合、これは所得の保障がないということになっています。このことについては、私は、一人親に対する支援と同様に、今後の検討課題とすべきだというふうに考えますけれども、これについての大臣の考えはいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 介護休業につきまして、この期間中に賃金収入の全部または一部を喪失する状態を放置することは、失業にもつながってしまうので、失業に準じた雇用保険制度上の保険事故と保険の世界では捉えるということで、介護休業給付を雇用保険から給付しているということになっているわけでありまして、例えば、介護休業を五日間など短期間取得をして介護休業給付を受給するということも可能でありますけれども、これは、介護休業が制度上、長期間取得できるものであることによるものでございます。

 他方で、介護休暇、この休暇の方は、介護休業とは別に、より短期の休業ニーズに対応するために取得をすることができるものでございます。この介護休暇については、給付の対象とするか否かについては、今回御提案申し上げている中でもお示しをしているように、失業リスクをカバーする雇用保険制度の基本的な考え方、先ほど申し上げたとおりでありますが、これを踏まえて議論され、今回はこのような形にさせていただいているわけでございます。

 引き続きそれは検討はすべきでありますけれども、なかなか一筋縄でいくことではないというのが今までの議論の結果ではなかろうかというふうに思っております。

西村(智)委員 一筋縄ではいかないということはわかった上で質問をしていますので、前向きなのか後ろ向きなのかということを答えていただければ十分なんです。長い答弁は結構です。

 それで、有期労働者の育児休業について伺いたいと思います。

 今回は、本当に、十倍という開き、格差のある正規、非正規の育児休業の取得率の差、これを、ようやく着目していただいて、一歳六カ月まで雇用の見込みがある場合は要件を満たしますよということになったんですけれども、この期間の満了ということ、あるいは契約の更新の有無ということについて、やはり私は確認をしておかなければいけないことは幾つかあると思います。

 それぞれ聞いていると時間がないので、全てまとめて聞かせていただきますけれども、要は、こういう場合は育休の取得の要件を満たしているという判断でよろしいかということで、三つ申し上げます。

 一つ目、過去、契約更新の実績があったり、同種の労働者が契約を更新して働いている場合、これは、契約が満了することが明らかでない、つまり要件を満たすというふうに考えてよいか。

 二つ目、業務の基本的な性質が臨時的、一時的でない場合には契約満了が明らかでないものと判断してよいか。要件を満たすかどうか。

 三つ目、日本の有期雇用活用の実態は長期、臨時となっています。要するに、通常、恒常的に必要な職務であっても臨時というふうに雇用管理区分をやって、しかし、結果として長期に雇用し続けるということになっているために、原則として、契約満了が明らかでないというふうにその場合は推測する、そういうふうに判断してよろしいかどうか。

 三つ一緒にお答えください。短くお願いします。

塩崎国務大臣 三つのケースについてお尋ねがございました。

 まず、一つ目、二つ目でございますが、契約更新の実績があったり、あるいは同種の労働者が契約を更新して働いている場合、それから、業務の基本的な性質が臨時的、一時的でない場合であっても、労働契約に更新回数や契約期間の上限が設定されていることも考えられますので、一律に契約が満了することが明らかではないと言うことはできないと考えているところでございます。

 また、育児休業や介護休業が取得できるかどうか、これにつきましては、原則として、個別の労働契約の内容を踏まえて判断をされることになります。

 したがって、先ほど御指摘をいただいた三番目のケースの場合には、日本における有期契約雇用の活用の実態がどのようなものであったとしても、そのことをもって、個別の労働契約について契約満了が明らかでないものと推測することは困難であるというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 ぜひ、難しいのはわかりますけれども、ここのところがポイントだと思うんですよ。要は、法律が成立したら、省令や指針、ガイドラインということになっていくわけですよね。そこでの書き方が問題なので、もう一回聞かせていただきたいと思います。

 一番目と二番目のケース、これについては、では、省令なり指針なりに書いていただけるということでよいでしょうか。

 三番目については、困難ではあるけれども、要するに、実態を見て、あるいは雇用慣行に照らして、できる限り対象とすべきだということを指針で書くというふうに、大臣、約束していただけませんか。

 実態というのは、個々の雇用の実態じゃなくて、日本の長期雇用の実態。臨時的、一時的。

塩崎国務大臣 今聞こえてきたのは、日本の雇用慣行みたいな形のことを御指摘になられて、その考え方も一つあろうかとは思いますが、これは労働契約でありますので、やはり実態を踏まえて判断をしていくということが原則だろうというふうに思いますので、先ほど御答弁申し上げたように、なかなか、歯切れが悪いわけでありますけれども、そういう形で整理をさせていただくということかなというふうに思っております。

西村(智)委員 いや、本当に歯切れも悪いし、答弁も何かよくないですよ。

 ここのところがポイントなんですよ。大臣、わかっておられますよね。有期契約の方の育休の取得、ここの書き方を間違えると本当におかしなことにまたなりますからね。

 あわせてぜひ、ちょっときょうは答弁いただけなかったですけれども、引き続き問うていきたいというふうに思います。

 もう時間も少なくなってまいりましたので、昨日参考人質疑がありまして、その中で堀越参考人から御指摘があったことについて伺いたいと思います。

 彼女は、ケアラーといって、介護を御家族で担っている方々の全国の団体を組織しておられるんですけれども、ちょっと最近介護の担い手が変質してきたと。変質というのは、高齢の方が介護するのではなくて、例えば、子供さん、お孫さん、若い人たちも、例えば小学生の人でもおじいちゃんやおばあちゃんの介護をしているというケースもあるし、十代、二十代で、これから就職だとか学校を卒業する時期だというような若年層も介護に当たっているということなんです。

 私、その実態を伺いまして、やはり、就活なんかを含む、介護を実際にやっている方々のライフステージに合わせた支援をやっていく必要があるのではないかというふうに思いました。それについてどうお考えになるか。

 それともう一つ、やはりここは若年層では特にという話になってくるんですけれども、育児休業と同時に、社会保険料の免除、これによる資格の継続を、特に若年層なんかはしていかなければいけないということなんです。これについて、今後の検討の方向性について、ぜひやってほしいという思いで伺いますが、いかがですか。

渡辺委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いをいたします。

塩崎国務大臣 介護の重要さと、介護休業という雇用保険の世界の中での制度とは、少し峻別をして考えていかなきゃいけないんだろうと思うんです。

 先生の御指摘していることは大変重要なことであることはよくわかりまして、介護休業は、対象家族を介護する働いている方々について、今、年齢を問わず取得することができるということで、若い人たちでも働いていればできるという雇用保険の世界のことだと思います。

 また、就活を行っているような学生さんなどの若者を含めた家族の介護を行う方々に対しては、これは地域包括支援センターとか労働局において介護サービスや介護休業制度などについてはお披露目をして、啓発もしておりますし、また、地域包括支援センターにおける相談体制をもちろんやっているわけでありますけれども、制度ということであれば、なかなか難しいかな。

 それから、社会保険料の免除のお話でございますけれども、これについては、保険料の納付に応じて給付を行うというのが社会保険の原則でありますので、育児休業期間中は、保険料を免除する一方で、免除する期間についても保険料の納付があったものとして、その期間に基づく給付を行うという特例的なことを、育児については、休業期間中、やっているわけであります。

 しかし、これは、さっきもちょっと答弁申し上げたように、これからの、将来の制度の担い手となるような次世代の育成という観点から、免除にした期間に係る給付の財源を被用者保険全体で負担していただくということで御理解をいただいているわけでありますけれども、介護休業の期間中の保険料免除については、なかなか、今と同じ、パラレルの議論は難しいのではないかというふうに思っております。

 それはやはり、負担をされている方々、拠出をされている方々の御理解を得るということが大事でありますので、年金財政への影響も含めて、今のような形の御提案は少し慎重に検討すべきかなというふうに思います。

西村(智)委員 ありがとうございました。終わります。

渡辺委員長 次に、郡和子君。

郡委員 久しぶりに厚生労働委員会に戻ってまいりまして、塩崎大臣といろいろやりとりができるなと大変期待をして、この委員会の席に座っておりました。民主党の郡和子です。

 ところが、私、質問に入る前に、先日、この場所で我が党の山尾議員と大臣とのやりとりを聞いていて、御自身の息子さんの例を出されて、保活に対して大変だということに理解を示されたわけですけれども、大臣も思わず口を滑らせて失敗だったなと後悔されていると思うんです。

 区内の認可保育所に入れなくて、区外の認証保育園に二十万かけてと、その二十万という額のことを言っているわけではないんです。二十万という額も、これは大変なことなんですよ。一般の方々では手が届きません。それだけじゃなくて、その大変だという状況を身近なところでお聞きになっておられながら、それに対して、それこそ厚生労働省、保育を所管するトップでいらっしゃる大臣がそのお話を聞いたときに、そんなことになっているのか、これは大変なことだな、調査しなくちゃいけないんじゃないだろうかと思われなかったということです。

 それで、こんなに騒ぎが大きくなって、そして調査をされるということ、これは、私はこの御発言は大臣御自身が、身近なところにある教材を生かし切れない、厚生労働大臣としての素養や資質に問題があるということをみずからおっしゃったのと同じだと思ったんです。

 そして、その件で困っておられるお母さんたち、ママさんたちにまずは謝罪すべきだったんじゃないでしょうか。あのとき、こういう話を聞いたとき、もっと早く手を打たなければいけなかったな、そういうふうにおっしゃられるべきだったということを冒頭申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。

 今、西村委員とのやりとりでもございましたけれども、育児休業法、介護休業法の改正の問題で、有期契約労働者の取得要件が改正されること、これは一歩前進だというふうに受けとめているんですけれども、そもそも正規労働者には課されていない条件、要件をつけるということ自体、労働契約法二十条で期間に定めのあることによる不合理な労働条件の禁止が定められているわけですから、これを考えても問題があるんじゃないだろうかというふうに私も認識をしております。

 きょう資料をお配りしましたけれども、有期契約労働者は四%しか育児休業を取得しておりませんし、八日の衆議院の本会議で、この要件の緩和で新たに六万人の育児休業取得者がふえるというふうに御答弁をされた。そして、先日、柚木委員も質問し、今、西村委員も確認をさせていただいたわけです。

 先ほどの確認の一と二については、指針でしっかりと明記をされるということでよろしいんですね。確認です。

塩崎国務大臣 法律成立後、労政審で御議論いただいて、指針をつくらせていただくということになっております。

郡委員 契約書の中に、契約更新しないというふうなことがあっても、反復更新をずっと続けてきた場合は、これは継続雇用だというふうな、無期契約労働者だ、そういうふうにみなされると私は思いますので、この点、ぜひ周知徹底をされていただきたいというふうに思います。

 次に、現行の育児・介護休業法、育介法の二十四条の二ですけれども、家族を介護する労働者に関して、「その介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずるように努めなければならない。」というような条項、条文が設けられているわけです。もう既に法律の中に休業期間を超えるニーズも認めているというふうに読めるのだなというふうにも思います。

 今回は、この法改正の中で、九十三日、これは短いんだ、大幅に延長すべきだ、こういう議論がたくさんあったわけですけれども、それでもなお九十三日にとどまったのは、私はやはり不十分だというふうなことを言わなくちゃいけないと思っています。

 私の資料に入れましたけれども、連合が行った調査であります、これをごらんいただけますと、資料の三というふうに振っておりますけれども、九十三日を大幅に上回っているんです。

 法律に定める最低基準の権利では介護ニーズにたえられない労働者がいるので、企業には弾力的な配慮が求められるわけであります。そうした配慮を講じないまま、欠勤を理由に労働者を不利的に処遇したり解雇等の処分をすることは許されないと書き込むべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

 弾力的対応を明記すること、そして、そのことによる不利益取り扱いは配慮に欠如した取り扱いであることを明らかにすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほどお触れをいただいた育児・介護休業法第二十四条でありますが、事業主は、家族を介護する労働者の介護休業や介護休暇などについて、介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずるよう努めなければならない、こうなっているわけであります。

 この努力義務に関して、事業主が講ずべき措置について定めた指針がございまして、そこで、介護する家族が介護サービスを利用することができるまでの期間が九十三日を超える場合があること、二つ目に、介護休業日数が九十三日を超えている場合でも、再び当該労働者による介護が必要となる場合があること、三番目に、介護の必要性の程度が変化をすることに対応して、制度の弾力的な利用が望まれる場合があることなどに留意をして、必要な措置が講じられることが望ましいというふうになっているところでございます。

 このため、今お話がございましたが、法律の定める最低基準を上回る柔軟な制度の導入や柔軟な運用について、全国の都道府県労働局雇用均等室において、各企業での積極的な取り組みを促してまいりたいと考えているところでございます。

郡委員 今回の改正は、不利益取り扱いを効果的に防止して、不利益取り扱いを受けてしまった労働者の権利の回復、これを法的にちゃんと認める、法的根拠とする改正であるべきであって、介護離職ゼロということを掲げるのであれば、このことが試金石になるのだろう、そういうふうに思うということを申し上げたいと思います。

 一方、では、基盤整備はどうかということについて議論をさせていただきたい。

 厚生労働省は、介護離職ゼロへの取り組みとして、二〇二〇年初頭までに自治体がおよそ十万人分の在宅・施設サービスの整備を前倒し実施できるように支援する、それとあわせて、およそ二万人のサービスつき高齢者住宅、サ高住と言われる、この整備を実施するというふうにされているわけです。

 その中身を見てみますと、特別養護老人ホームは、二〇一五年から対象者が既に制限されています。要介護三以上でないと新規の利用ができません。厚労省は、要介護三から五の在宅の特養待機者、これはおよそ十五万人とされているようですけれども、入所要件を絞って、特養待機者数を削減しているというふうに受け取れます。

 また、介護離職、転職者は年間およそ十万人いらっしゃるわけですけれども、この六割は、仕事を続けたかった、やむを得ずの離職だった人たちであって、そのうち、介護サービスを利用できなかったためにやむを得ず離職したんだという人を一・五万人と見積もっておられるようです。

 特養待機者のために年間およそ一万人の入所枠が必要で、特養に申し込みをしていなかったと考えられる方のためにまた年間およそ五千人の入所枠が必要と、細かく細かく見積もりを立てておられます。

 しかし、この対策とあわせて、私が申し上げたいのは、介護する家族の就労状況や特別養護老人ホームへの入所申込者の実態を調査分析した上で、具体的にサービスの見込み量に反映することが重要となってくるというふうに指摘をしているんですね。おや、実態を調査分析してこのような数字をお出しになったんじゃないのだろうか、そう思って読んでいましたらば、実はこれからだ、特別養護老人ホームへの入所申込者の状況等について、より詳細に待機の実態を把握する必要があるため、全国調査を実施することを予定しているということでありました。

 今回の緊急対策によって打ち出された介護離職、特養待機者への対応のための十二万人分の介護サービス基盤の前倒し、上乗せ整備の方針は、その根拠となる詳細な実態把握とそして検証もないまま打ち出されたのでしょうか。どうなんでしょうか。

塩崎国務大臣 まず、結論から申し上げれば、今回のこの十二万人の上積みでございますけれども、これについては平成二十五年度に既に調査を行っておりまして、それに基づいて、自宅待機者が十五万人いる等々ですね、要介護度三以上の特養自宅待機者が十五万人いるとか、そういうことでやっておりまして、今お話がございました、来年度、二十八年度に実施をするというのは、二十五年度に引き続いて行うということで、改めてさらに詳細に実態を把握しようということを申し上げているわけでございますので、何の根拠もなしにいきなり言い出したわけではないわけでございます。

 なお、今、施設系あるいは居宅系のお話をいただきましたけれども、今回、私どもの試算に当たって、割合我々の想像以上に大きな問題は、実は、職場での働き方において、離職を余儀なくされることになってしまったということがあって、サービスも用意をするということが大事で、これはこれで精いっぱいやるわけでありますけれども、同時に必要なのは、やはり、職場での働き方を変えることによって、介護が原因でやめなきゃいけないようなことがないようにしていかなければいけないということを同時にやっていかなきゃいけないということを、特に強く感じているところでございます。

郡委員 その上で今回の改正法が出てきたという位置づけなのでしょうけれども、でも、現場がどういうふうになっているのかについては、さらに詳しく見ていただかなくちゃいけないと思います。

 特養以外で、老人保健施設、中間施設という位置づけですけれども、平均利用日数は四百十二日で一年前後でありますし、認知症のグループホーム、これは二〇〇六年度以降地域密着サービスになって、各地域での偏在が多いんですね、指定自治体の住民しか利用できませんし。小規模多機能型居宅介護、これも事業者数四千九百五、利用者は九万一千人程度、これも都道府県ごとに普及の状況にばらつきがあります。

 私はこの小規模多機能はとても心強いサービスだなというふうに思っていたんですけれども、しかし、なかなかふえませんね。これは、ケアマネとの関係が絶たれたり、それから単価が低いというようなこともあって、なかなか広がっていないようでありますし、利用者にとっては、月決めの包括払いの負担が大きくなってしまう。また、事業者にとってはというと、訪問、通い、宿泊というセットサービスの介護報酬、これが低いということもあって、なかなか、介護離職をなくす、支える基盤になるのかどうかというのはわかりません。

 このほかにも、医療ニーズの高い看護小規模多機能型居宅介護、それから、巡回・随時対応型訪問介護看護、これは医療ニーズの高い方々への居宅介護とそれから巡回型のものですが、これも利用者がそれぞれ五千人、また一万三千人程度で、地域包括システムを実現するために、つまり、在宅でのみとりをするためには、介護保険に医療系のサービスを充実させる必要があるというふうに説明されているわけですけれども、これらのサービスは、利用者がふえていないにもかかわらず、補助金による整備強化がずっと続いているんですね。

 この実態調査、検証、しっかりやられているのか、私は甚だ疑問だというふうに思っています。

 また、特定施設入居者生活介護、転落事件がございました。連続転落死事件、それからまた入浴溺死事件、これの摘発によって、夜間勤務を中心に職員の配置基準が問題視されているわけですけれども、有料老人ホームを展開するベネッセスタイルケアの報告では、介護職員について、妊娠、出産を契機とする離職率が高い、夜勤ができないために非常勤を選択する社員が多い、中途採用者のおよそ三〇%は介護の未経験者だというようなことだったということです。

 今回の緊急対策ですけれども、こうした各介護サービスの実情や、また検証、評価をしっかり行った上で進められるべきものと思います。先ほど、二十五年に調査したんだということですけれども、やはりしっかりと調査した上で、この見直しについても御検討いただければと思います。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今お話しいただきましたように、今回の緊急対策でも、さまざまなニーズに対応できるように、今お読み上げをいただきましたようなさまざまなサービスを考えながら整備していこう、こういう計画を立てているわけでございます。

 使い勝手が悪いというお話がございました。この間、介護報酬の改定をいたしましたけれども、その際には、当然さまざまな角度から現状どうなっているのかということを調べた上で、それぞれの収支差をよく見て、そして事業所がどれだけふえているのか等々、あらゆる面から見た上で介護報酬を決めさせていただいているわけであります。

 例えば、介護老人保健施設はリハビリテーションなどによる在宅復帰を念頭に置く施設でありまして、平成二十七年度介護報酬改定においても、在宅復帰機能の強化をさらに評価させていただいたわけであります。

 それから、認知症グループホームについてもそうでございますが、地域密着型サービスでは、平成二十三年の介護保険法改正によって、他の市町村の住民も利用できるよう、市町村長間の包括的な同意のみで互いの市町村の事業者を利用可能というふうにもう既にしているわけでございます。

 それから、小規模多機能型の居宅介護、なかなかふえないというお話がありましたが、平成二十七年度の介護報酬改定において、頻回の訪問、回数を多く行く訪問や、みとりを行った場合の加算を新設するというようなことで、御指摘をいただいておりますけれども、それらについては既に改善をして、それぞれ利用をいただいているということでございます。

 今後とも、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けることができることが大事でありますので、施設・在宅サービス等のさまざまなニーズに対応できる幅広いサービス供給体制を確保していきたいと考えているところでございます。

郡委員 そもそも仕事と介護の両立のためには、どんな介護サービスが必要なのかということを私は申し上げたいんです。

 最も実態に即した回答を持っているのは、多分、関係者の一人であるケアマネジャーさんじゃないかなというふうに思います。ケアマネジャーさんが介護と仕事と両立するために必要なサービスは何と答えておられるか、御存じでしょうか。

塩崎国務大臣 今、ケアマネジャーの重要性についてお話をいただきました。極めて重要だと思います。

 介護サービスの利用者、それからその家族の皆さん方については、状況がそれぞれでございますので、それぞれの状況に応じて適切なケアプランがつくられなければならないということでありまして、働きながら介護をする家族がいる場合には、特に仕事と介護の両立にも配慮をするということが大事であります。それぞれのケースに応じて必要となるサービスを利用できるようにすることが重要であります。

 厚生労働省の調査ではございませんけれども、中央大学の佐藤博樹先生の行った調査によれば、ケアマネジャーが仕事と介護の両立のために拡大する必要があると思っている介護サービスとして、ショートステイ、それからデイサービス、ホームヘルプ、こういった代表的な在宅サービスに加えて、介護保険給付外の、地域の見守り支援などが挙げられていると承知をしているところでございます。

 また、介護離職ゼロでは、二〇二〇年代初頭までに、現行の介護保険事業計画等に加えて、約十二万人分の在宅・施設サービス等を上積みして約五十万人分に拡大するということは先ほど来お話が出ているとおりでございまして、そのような形で、量、質ともに介護についてしっかりと、また仕事と両立が可能なように進めてまいりたいというふうに考えております。

郡委員 今大臣からお答えいただきました佐藤さんの報告による、ケアマネが、何が働きながら介護するときにサービスとして拡大すべきものかということ、資料の四に入れさせていただいております。おっしゃっていただいたように、ショートステイ、デイサービス、ホームヘルプ、また地域の見守り支援、こういったようなこと、それから介護者の家事支援サービスというようなことですね。

 暮らしの支援、生活援助、これは欠かせない必須のサービスであるというふうに思っているわけです。にもかかわらず、二〇一五年から二〇一七年度にかけて、要支援一、二のホームヘルプサービス、デイサービス、これが給付から外されました。市区町村の地域支援事業、介護予防・日常生活支援総合事業、通称総合サービスに移行することになったわけであります。

 厚生労働省は、財源構成は変わらない、多様なサービスが利用可能になるというふうに説明をされましたけれども、二〇一五年の十二月段階でこの総合サービスの利用者は三・四万人足らずです。みなし指定事業者、つまり現行の事業者によるサービス提供が九割を超えているんです。六割の市区町村が、二〇一七年度からこの地域支援事業への移行を実施する予定なんだけれども、なかなか踏み出せないでいる。要支援一、二の総合事業への実態が明らかにされていないわけです。

 これをさらに移行を進めていくという構想は、介護保険の被保険者に対して不誠実と言わざるを得ないと思うんです。今後増加してくる要支援、要介護の実情、これに照らして、不可欠となる生活援助サービスである要支援一、二の方々に対するホームヘルプサービスそれからデイサービス、この総合事業への移行は停止をして実態を検証していただきたいと思いますが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 地域支援事業に移行をしたのは去年の四月でございまして、これは二十九年の四月に全ての市町村が移行するということになっておりまして、今、大体六分の一の市町村が移行を既にしているわけでございます。

 二十六年の介護保険法の改正で創設をしたこの事業でございますけれども、要支援に対するサービスを介護保険の対象外としたのではなくて、地域の実情に応じてきめ細かなサービス提供を可能としたということ、さっきお読み上げをいただきましたけれども。

 従来の訪問介護あるいは通所介護に相当する専門的なサービスを必要とする方には、これまでの事業者からこれまでと同様に同じサービスを受けることとしながら、一方で、それ以外にも、NPOあるいは民間企業など多様な主体によるサービスを本人に、本人のさまざまな状況がございますので、それに合わせて柔軟に地域地域でお選びをいただいて実施をしていただくということになっているわけであります。

 このように、本人の状況やあるいは希望に応じてサービスの選択肢が拡大をしたとお考えをいただくべきかなというふうに思っておりまして、使いづらくなっているとの御指摘は当たっていないのではないのかなというふうに考えております。

 なお、厚生労働省としては、制度が円滑に実施されるように、引き続き丁寧に市町村支援を行ってまいりたいと考えております。

郡委員 大臣、今、官僚の方々が書かれたのかもしれません、実際、ちゃんとどうなっているのかお調べいただきたいと思いますよ。各地域地域で偏在が生じているんじゃないですか。だからこそ、ちゃんとその状況を見て、もう一度お調べになって、これはストップしていただけないかとお願いしているんです。

 次に参ります。

 経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針二〇一五についてでございます。軽度者に対する生活援助サービス、福祉用具貸与、これらが見直しをされたり、地域支援事業への移行を含めて検討を行うという方針でございます。

 それから、財政審が二〇一六年度の予算編成等に関する建議で、医療・介護提供体制の改革として、ホームヘルプサービスについては、「介護保険における軽度者に対する給付のうち、生活援助サービスについては、日常生活で通常負担する費用であり、介護保険給付を中重度者に重点化する観点、民間サービス事業者の価格・サービス競争を促す観点から、原則自己負担化すべきである。」と提言をされました。

 いわゆる骨太の方針で出されている軽度者というのは誰のことでしょうか、定義を明らかにしていただきたい。同じく、財政審の建議のホームヘルプサービスに関する提言部分に言うところの介護保険における軽度者とは具体的に誰のことでしょうか、介護認定ランクと世帯状況も含めた定義を明らかにしていただきたいと思います。それから、日常生活で通常負担する費用というのは一体何を言っているんでしょうか、具体的な説明をしていただきたい。

大岡大臣政務官 郡先生にお答え申し上げます。

 まず、御指摘の軽度者でございますが、特に定まった定義はございませんので、まるでとんちのような答弁になってしまいますが、軽度者でございますので、中重度者ではない人。では、中重度者とはどういう人たちかといいますと、現在の方針としまして、特別養護老人ホームに入れるのが要介護三以上、これは中重度者のみ入れるという方針でおりますので、中重度者ではない人としますと、要介護二以下の方ということを想定しておりますが、最初に申し上げましたとおり、特に定まった定義はございません。

 あわせて、先生から御指摘いただきました、日常生活の通常負担する費用というのは一体どういうものを想定しているのかという問いでございますが、これは、日常的に生活援助サービスで実施されます掃除、洗濯、調理などを想定しております。

 今回、若干誤解があったかもしれないので申し添えますと、「原則自己負担(一部補助)化すべき」ということでございまして、原則自己負担が大きく書かれていて、(一部補助)になっておりますので、そちらを強くちょっと見え過ぎちゃうかなというところがあるんですが、大きな視点から申し上げますと、介護保険も、御案内のとおり、高齢者が多くなり子供たちがまだまだ少ない、また、日本の潜在成長力が低いままとどまっているという状況からいたしますと、もちろん、私たちもいろいろなサービスをしたいわけですが、一方で、持続可能性を考えますと、高齢者の方々にも一定の抑制をお願いしなければならないという背景から、そういった問題意識から財政審において提案がなされたものでございますので、できるだけ無理のない範囲で、高齢者の方々も自分たちが、それはサービスは使いやすい、例えば日常生活で一時間単位当たり二百円ちょっとで使えるとしますと非常に使いやすいわけでございますが、使えば使うほど次の世代にしわ寄せが行くということも御理解をいただきたいという思いで建議させていただいたものでございます。

郡委員 やはり現実をごらんになっていないんだと思いますよ。軽度の方々でも、こういうふうなサービスがあるから現状維持で、いいんです。なくなったらば重くなってしまうんです。かえってお金がかかってしまうということ。これまでずっと例があるじゃありませんか。

 厚労省に聞きます。今の財務省の考え方に同意されるんでしょうか。

 二〇一六年度中に結論を得るために、先月、二月の十七日に社保審の介護保険部会が再開をされました。この財政審の建議について、どんなふうに考えておられるんですか。

塩崎国務大臣 何度か申し上げておりますけれども、介護保険というのは、スタートのときから私もかかわっておりますが、高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐ、これが理念でございます。

 したがって、高齢者が自立をして、そして重度化を防ぐということをどう実現をしていくのかということがとても大事であって、そのためにも、介護保険制度そのものが持続をしていかなければならないことは間違いないわけであります。

 今の、自立、そしてまた重度化を防ぐということを考えてみると、二月に私は和光市に行ってまいりましたけれども、介護予防と自立支援、このケアマネジメントの取り組みは大変すばらしいことは、多分、もう先生も御存じのとおりだと思います。

 こういう形の、介護保険の言ってみれば原点に立ち返ったことをやりつつ、今の軽度者に対する生活援助サービスなどのあり方については、これは、財政審というよりは、私どもから見れば、経済財政諮問会議において取りまとめられました経済・財政再生計画の改革工程表において、検討事項というふうになっておりますので、社会保障審議会の介護保険部会で、今の考え方にのっとって御議論を今賜っているわけでありますので、軽度の要介護者の生活を支える観点を踏まえつつ、しっかり検討していただきたいというふうに思いますし、私どもも検討をしてまいります。

郡委員 知り合いのケアマネさんにまとめていただいたものがあるんです。ちょっと読ませていただきますね。

 介護度二、八十六歳の方ですけれども、訪問介護、生活援助三を週二回利用し、主に掃除、居室、ポータブルトイレ、浴室、洗濯などのサービスを受けているんです。福祉用具は、介護用ベッドと附属品、起き上がり機能を使ってベッドから起き上がりをしないとできないという方だそうです。

 この方は、全額自己負担とされちゃったらばどうなるか。福祉用具の利用と生活支援で何とかひとり暮らしを維持できているのに、負担をふやすことは心理的な圧迫も多い。

 それから、幾つか紹介させていただきますけれども、七十九歳、要介護一の方です。本人は調理などを自分でするので、主に、浴室、トイレ、部屋の掃除と、困難な家事の支援を行っている。福祉ベッド、ベッドの附属品を福祉用具として利用されている。独居で、家族が遠くに住んでいるので、介護としては当てにならないが、相談には乗ってくれているようだ。

 全面自己負担になった場合、膝を手術された後、腰痛のために体を曲げることができない、トイレも、やっと座ることができている状態だ、医療費などで避けられない出費もあるので、自己負担となったら、福祉ベッドの利用はできなくなり、訪問介護での家事支援も利用できなくなる。自宅での環境は困難だというふうな、もう本当にたくさんの例を御紹介いただいているんです。

 こういう実態をお考えいただきまして、介護切り、ぜひこれはやめていただきたいというふうに思うんです。

 時間がもうわずかになってしまいましたので、ちょっとサ高住のことでももう一問質問を考えていましたけれども、飛ばさせていただきます。

 厚労省の委託調査、仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査によりますと、介護離職した人が見ていた父母の要介護度が高かったというわけではございませんでした。

 また、就労者の介護の頻度を介護項目別に見ますと、定期的な声がけや食事の支度、掃除、洗濯などの家事、排せつや入浴介助と、ホームヘルプサービスの需要をふやすことが負担軽減になることがわかる、そういう資料を私は一番最後につけ加えさせていただきました。このグラフがそうでございます。

 介護を必要とする父母の状況、そしてまた、その認知症の有無について書いたものなんですけれども、その前に、資料五と六ですか、あわせて見ていただきたいと思うんですけれども、こういう状況なんですよ。

 ここのところをフォローしなければ、介護離職ゼロというのは、それこそ絵に描いた餅にしかならない。真逆の方向を厚労省も言っておられると思うんですけれども、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 そのようなことは全く言っておりません。

 さっき申し上げたように、介護保険の原点は、高齢者の自立と、それから介護の重度化を防ぐということが一番大事で、それはやはり、その御本人の言ってみれば人生の問題をどう大事に扱って、尊厳を持って生き続けていただくか、こういうことでございます。

 同時に、私どもにとって大事なことは、制度がちゃんと皆さん方の御協力で持続可能になるということも大事なわけでありますので、そういう観点から、きめ細かく、ニーズを見ながら私たちは対応をしているところでございますので、引き続き議論を深めてまいりたいというふうに考えております。

郡委員 理念は同じなんです。だけれども、実際にやっている施策はいかがなんですかというふうに申し上げているんですよ。

 今御紹介申し上げました、仕事を続けながら介護に当たっている方々が最も必要としているサービス、そして、これから先の介護に必要ないろいろな打ち合わせをしたり何だりするために、今回、介護休業を、それこそ所得保障もつけていただきました。だけれども、その根幹になっている、最も必要とするサービスを次々切っていったらばどうなるのですかという問題意識を私は申し上げたわけです。

 しかも、二〇一五年の補正予算、四百四十四億円、離職した介護人材を呼び戻して、学生への修学資金援助、それから、介護の未経験者の中高年など地域住民の参入促進を目指しておられるということですけれども、果たして人材が集まってくるのかどうか、甚だ疑問だと言わざるを得ないと思います。

 結婚が決まったので退職するという、新しい寿退社が男性介護職員の中に広がっているわけです。介護職の処遇改善の議員立法の提出者、まさに本丸に切り込まなきゃいけないと思いますけれども、いかがですか。

山井議員 今大臣や政務官の答弁を聞いていて、あきれました。まさに、介護離職倍増政策を今とっておられる。外国人に任せるとか、要介護切りをやって、事もあろうに、女性を中心とする家族に仕事をやめて介護をさせようとする。介護保険の理念である介護の社会化に真っ向から反するわけであります。

 まさに郡委員おっしゃるとおり、本丸というのは、今、介護職員がおられないんです。サービスを受けたいと思っても、ホームヘルパーが来ない、特養が建てられない、ショートステイが閉鎖されている。これには、外国人労働者を使うということではなくて、賃金を上げることが本丸なんです。にもかかわらず、昨年四月は実質過去最大の介護報酬引き下げを行っている。

 そういう意味では、月一万円ではありますが、今回の介護職員の賃金引き上げ、この法案をぜひとも成立させて、与野党の皆さんに賛同していただいて、国を挙げて介護職員の待遇改善に取り組むんだ、この意思を示していくことが絶対に必要だと確信をしております。

 与野党の皆さん、ぜひとも御賛同をよろしくお願いいたします。

郡委員 ありがとうございます。

 まさに介護の現場は成長産業であるということを安倍総理もおっしゃっていらっしゃったわけです。介護離職ゼロを実現していただくためには、先ほど山井提出者が話されたように、介護職員の処遇改善がまずあるということだと思います。施設をつくればいいというものではございません。そのことを強く申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 引き続きまして、私からも質問させていただきます。

 きょうは、通告をしていないんですけれども、いわゆる春闘の集中回答日でありました。

 いろいろな報道がありますけれども、大臣は、今回の春闘の集中回答日であるきょう、金属労協などを中心に回答があったと聞いておりますけれども、どのような所感を持たれておられますか。

塩崎国務大臣 きょうまだ数字を私は見ていないので何とも言えませんが、きのうまでの感覚で物を申せば、アベノミクスで経済がかなり、デフレを脱却し得るところまで来て、それぞれの企業もそれぞれ御努力をいただいているということなので、これまで二年間、ベースアップを含めて賃上げに御努力をいただいてきた、ことしもぜひそれに続いて、総理はよく、それを上回ってとおっしゃっていますが、ベースアップが行われることを期待申し上げたいと思います。

 きのうまでにお聞きをしている限りでは、特に非正規の賃金について引き上げる、今までになく引き上げるという動きが見られているという話も聞いておりますし、中小企業でもかなり御努力をいただいているというふうに思っておりますが、地方のことを考えれば、やはり非正規あるいは中小企業、そういったところのベースアップについて、いい結果が出ることを期待したいというふうに思います。

岡本(充)委員 そもそも要求が去年を下回っているというのは、やはり物価の上昇がそれだけ現実に起こっていない、デフレからの脱却ができていないということの裏返しでもあると私は思いますよ。

 また、今回、報道によると、トヨタは三千円の要求に対して千五百円、それ以外でも、日立やパナソニックなども三千円の要求で千五百円、新日鉄は四千円で千五百円、こういう話だというふうに報道されています。

 報道によりますと、豊田章男氏は、経営環境の潮目が変わった、こう述べられたという報道もあるようであります。

 大臣、やはり、経営環境の潮目が変わったと経営のトップが言われているというこの状況をどう思われますか。

塩崎国務大臣 経営者は当然、特にトヨタやグローバル企業は全世界を見て経営をされているわけでありまして、それをもって、みずからのやはり経営の方針を決めていくということであります。

 今、アメリカの経済は、指摘をされるほど悲観的にならなくてもいいのかなという評価が最近はよく聞かれておりますけれども、その他、中国を初めとする新興国、あるいはEUなども、やや、やはり今までの流れとは少し違うということはよく指摘をされているわけでありますし、それは金融政策を見てみれば大体わかるわけで、アメリカは、ヨーロッパとは逆に向かっているということで、むしろポジティブな話でありますけれども、世界は必ずしもそうでもない。

 そんな中で、日本がどう動くかということは、実は世界からも注目をされているので、なおのこと、日本の経済の再生に向けて努力をしなければいけないというふうに思います。

岡本(充)委員 大臣、得意の金融政策の話にされましたけれども、やはり、労使の関係において、賃上げができるムードが遠のいているということを、まさにこれは経営側から発言があったということでありまして、そういう意味では、残念ながら、大臣が言われるような、経済の好循環や、また、いわゆるデフレからの脱却が見えてきたですか、いずれにしても、そうした状況ではないということをまさに民間が言っている、こういう状況であるということを私は指摘しておきたいと思います。

 実は、このまま質問に入りたいところではありますけれども、もう一つ、私、先ほどの郡議員との質疑の中で、ちょっと指摘をしておかなきゃいけない。いや、通告してないからいいですよ、皆さん、そんなに慌てなくても。落ちついてください、安心してくださいか、通告していませんから。

 在宅強化型老健施設それから在宅復帰・在宅療養支援機能加算算定施設、こうしたものが、なかなか今ふえていないんですよ。でも、大臣、先ほど、こうした介護報酬改定の効果がこれから出てくるやの答弁をされておりましたけれども、また、私、質問の機会があると思います。公開の場で質問通告しておきますけれども、こうした加算が実際どれだけの施設でとれているか。少ないんです。結果として、想定をしていた効果を発揮していないんじゃないかという観点で、私は今後、質問させていただきたいと思います。大臣もよくその点について事務方から聞いておいていただきたいと思います。

 では、本題、労働移動支援助成金についてお伺いをしたいと思います。

 お配りをしております資料は、もう皆さん何度も目にされている話でありましょうけれども、今回のこの制度は、私は大きく言って二つ問題があると思っています。

 一つが、繰り返し言われている、「送り出し企業」と書いてありますけれども、社員の退職が出る企業。そして、離職をした方が、この矢印のように再就職ができればこれはいいのでしょうけれども、実際には再就職できていないという問題が大きい。それからもう一つが、やはり、離職に至る経緯が残念ながら本当に合法なのかということについて、疑いを持たれるケースがあるんじゃないかという指摘がこの委員会でも繰り返されています。

 この制度は、最後にもう一回聞かなきゃいけないんでしょうけれども、まず冒頭聞きますけれども、政策目的と、そして実際にその結果について、大臣、うまくいっている制度だというふうに御認識でしょうか。

塩崎国務大臣 もともとこの政策は、かつて、行き過ぎた雇用維持型の政策から労働移動支援型の政策への転換を図ろうということで、それは、産業構造を変えていく、変えないといつまでも収益力のない、生産性の低い産業構造のままでいってしまって、それは賃金の上昇にも生活水準の向上にもつながらない、こういうことで、付加価値の低い産業から付加価値の高い産業へ変わっていくということをバックアップするとともに、労働政策にあっては失業なき労働移動を促進するということが重要だという問題意識から、この労働移動支援助成金というのは、他の、今申し上げたような政策目的に合致する政策とともに導入をされたというふうに思っています。

 この労働移動支援助成金につきましては、この目的を達成するために、企業が事業縮小などのリストラを行う場合に、これらに伴って離職を余儀なくされる方に対して在職中から再就職支援を行う、それに対して助成をするということで、今、政策評価のお話がございました。

 現在のところ、早期就職者の割合、つまり本助成金の対象者のうち三カ月以内に就職した者の割合、あるいは利用者の満足度などを指標として、目標値を定めて事業の評価を行っております。

 今後は、例えば、助成金の政策評価をより厳密に行うために、就職率とか、離職から再就職までの期間、あるいは労働移動前後の業種などについての評価も行うことも考えられるところだというふうに思っています。さらに、労働移動前後の雇用の質についても確認をする観点からは、例えば、移動前後の雇用形態あるいは賃金などの点から評価することも考えられると思っております。

 どのような政策評価が適当であるかについては、今後よく、さらに検討を深めていかなければならないと考えているところでございます。

岡本(充)委員 だけれども、この制度を入れるときに、総理も当時の厚労大臣も、成熟から成長産業へとか、失業なき労働移動だとか、キャリアアップだとか、収入確保とか、こういうキーワードを使って説明をしていたんですよ。これはどれも実現できていないじゃないですか、現に。

 二ページ目を見てください。これは本会議でも私は言いましたけれども、現に、十二月時点六百一人の方が、二月時点でも五百七十人を超える方が、職も失って、雇用保険も受けられない、中にはこの再就職支援も受けられていない方がいらっしゃるんでしょう、大臣。

 これだけの方が現に年末に路頭に迷っていた。これはやはり制度に問題があった、結果としてはそう言わざるを得ない。そこはまず認めてもらいたい。これだけの方が失業するとは思わなかったでしょう。それはどうですか。これは想定どおりの結果ですか。

塩崎国務大臣 先生、今の、六百一人というまだ再就職をされていない方々についての御指摘でございます。

 もちろん、これがゼロになるということがベストだとは思いますけれども、もともと、この制度は新たにつくったものでございまして、この制度がなかりせば、むしろ、こういう再就職支援は行われていなかったわけでありますので、こういった方々が何の支援もないままにリストラに遭うということも十分あり得たわけでございますので、確かに六百一人という数字はございますけれども、私どもとしては、これをできる限り少なくしていくためにも、この制度を活用して、失業なき労働移動というものを実現していくことが、経済社会的に見ても一番これがスムーズなトランジションだろうというふうに思うわけでございます。

 そういうことでございますので、これをゼロにできていないということで全て政策が間違っていたということには私はならないのではないかというふうに思うところでございます。

岡本(充)委員 六百一というのは想定の範囲ですか。つまり、三千三百人のうち六百一人、二割近い方が職なく、雇用保険なく年末を迎える、これは予想どおりの数字ですか。想定された範囲ですか、それとも想定外に多かったか、大臣の感想を教えてください。

塩崎国務大臣 これは、今お話し申し上げたように、再就職を果たした方が二千七百三十人おられるわけでありますので……(岡本(充)委員「二千七百三人ですよ」と呼ぶ)私どもの今持っている三月十五日時点でいきますと二千七百三十人となっておりまして、これは八割を超えておりまして、再就職できなかった方がさっきの六百一人から五百七十四人に減っておりまして、私どもとしては、それなりの数字になっているのではないかというふうに思っているところでございます。

岡本(充)委員 それなりの数字ですか。二割の方が再就職できないことがそれなりの数字でいいんですか、大臣。この制度は、ある意味、労働移動を促す、その目的で設置されたお金ですよね。労働移動を促すんですよね。移動できていない方が二割いることが、想定をされたそれなりの数字。冷たい話ですね。

 本当にこれがそれなりの数字、もう一回おっしゃるなら、それなりの数字だと言ってください。もうそういうことだというふうに私も理解します。

塩崎国務大臣 若干訂正させていただきたいと思いますが、さっき二千七百三十と言いましたけれども、二千七百三でございまして、八割は変わらないところでございます。

 先ほど申し上げたように、もともとこれは、会社内で、景気が悪かったりなんかするときに、雇用を、ずっとじっとしておくということにお金を使うのではなくて、労働移動をして次の職場に移れるようにしようというのがこの政策であるわけでございまして、これがもしなければみずから探す、まあ、会社が探していただければそれは一番よろしいでしょうけれども、必ずしもそういうふうになっているとは思えませんので、そういう意味で、政策メニューとして加えることは何らおかしいことはないし、むしろ、これから新しいベンチャーをたくさんつくったりすることで、大きい企業からそういう新しいベンチャー企業などが生まれ出るところに人が移っていくことなどは幾らでもあるわけで、これは世界至るところで起きていることでございますので、そういう意味で、それを移動しやすく情報提供もやるということについては、何ら政策目的としてはおかしくないと私は思っています。

岡本(充)委員 六百一人というのはそれなりの数字ということで本当にいいんですね。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、八割の方々が再就職ができたというところを見ていただくことが大事で、なお、残った方々については、ハローワークを含めて、私どもは、当然のことながら、厚生労働省は労働者保護というのが設置法にもしっかりと明記されているわけでありますから、それについて、この数字がいいとか悪いとかいう問題ではなくて、政策として労働移動を失業なくやっていくことに邁進をしていくということが大事だということに尽きるというふうに思います。

岡本(充)委員 ひどい話ですね。大臣、そういう答弁をされるとは思わなかった。やはり二割の方に寄り添うのが大臣の仕事ですよ。

 もう一回発言される気はありますか。もうないということなら、そういう方だ、二割の方に寄り添わない、そういう大臣だと我々認識しますよ。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、厚生労働省の使命の一つに労働者の保護というのが明記をされているわけでありますので、再就職できない方々については、当然、私どもでいえばハローワークがございますから、一日も早く再就職ができるように、引き続き私どもも全力でお手伝いをして支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 そんなのは、この制度で離職しなかった方についても同じことが言えるんですよ。(塩崎国務大臣「これは離職の制度じゃないから」と呼ぶ)離職をしているんですよ。離職をしているんですよ。現に離職が発生しているんですよ。離職の制度じゃないと言うけれども、移動できていない人が二割いるんですよ。

 制度の目的に沿って移動できていたら大臣がおっしゃるとおりですよ。だけれども、移動できていない方がいるんですよ、現に。失業している人がいるじゃないですか。それが一日、二日じゃないんですよ。これだけの方が雇用保険も給与もなくして年末を過ごしたこと、それも、ある意味冷たく切り捨てる、どうぞハローワークでこれからも支援しますから頑張ってくださいというだけの話。

 私はやはり、思ったより多かったな、考えていたより多くの方が失業しているという現実に対して対応をとらなきゃいけないと思っている、こういう答弁が大臣から出るべきだと思いましたよ。大変残念だと思いますよ。いたし方ないということであろうということであれば、もうそういうことだと。

 では、もう一回、心ある答弁をしていただけますか。ではお願いします。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、これは新しい政策ツールとして、私どもは失業なき労働移動ができるようにというお手伝いをする制度としてつくられたわけでございます。

 それは、もしこの制度なかりせば、それぞれの会社がリストラをされるわけで、この制度があったからリストラをしたわけではないわけであります。そこのところを、聞いていらっしゃる皆さん方も誤解されるといけませんので。

 この制度のためにそれぞれの会社がリストラをしたということは全くないのでありまして、私どもはちゃんとそういう計画も、そして、組合との間での合意を得た上でのリストラについてだけ対象としてきたところでもございますので、どうぞひとつ、そういう意味で御理解をいただけるように。

 これは私どもが、単純なリストラをされてしまうのではなくて、そういう方々の再就職をできるだけ早く探して失業なき労働移動になるようにしていくというのがこの政策目的であり、また、それをやらせていただいて、先ほど申し上げましたけれども、当然、早期就職者の割合を高めていくとか、それから、就職率、離職から再就職までの間の期間等々、私どもは見ていかなければならないと思っておりますので、今、岡本委員がおっしゃるような、この制度があったから失業が起きてしまったということでは全くないということを御指摘申し上げたいと思います。

岡本(充)委員 私、まだそこのことを聞いていないんですよ、大臣。就職できていないということについてどう思うんだと。つまり、離職のところは聞いていないんです。これから聞くんです、それは。大臣、答弁を先読みし過ぎです。私が言っているのは、就職できていないということについてどう思うか、こう聞いているんです。したがって、六百一人の方が就職できていないんですよ、ここを聞いているんです。離職をしたことについて聞いているんじゃないんです。

 大臣、そこは本当に、みずからの心のこもった答弁をしていただきたかった。残念。

 では、次の質問に行きます。

 私がお配りしているこの資料、バーが引かれているところがあります。ここのバーの引かれているところ、結局、では、二千七百三人の内訳も、一体どういうところに勤めているんだ、これは知りたいですね。二十六年度のこの助成金、それから二十七年度の助成金、それぞれについて、二月末日時点での、ここでバーになっている、二枚目のページ、数字を埋めるのに資料をいただきたいと思いますが、いつまでにいただける予定でしょうか。これはもうきのう聞いております。

塩崎国務大臣 今、この横棒が引かれているところについての中身ということでございますか。(岡本(充)委員「はい」と呼ぶ)

 来週いっぱいぐらいまでに何とか御提供できればということで努力をしているというふうに今聞きました。

岡本(充)委員 ぜひ理事会でもこれは協議をしていただきたいと思います。

渡辺委員長 理事会で協議させていただきます。

岡本(充)委員 その上で、離職の経緯のところを確認したいんですが、これまでも我が党の部門会議等で厚生労働省の担当者からの説明もありましたが、退職か再就職先を探せ、もしくは自分の再就職先を探すという業務命令は適当ではないというお話を聞いてはおりますが、出向先を探せ、これも同様に適切ではない、そういう業務命令だという理解でよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 退職か、あるいは再就職先を探すか、あるいは出向先を探すか、今、こういうお話が業務命令などで出ているのは不適切ではないのかという御質問だと思います。

 もちろん、個々の事案において、これは民事の問題で、人事権の濫用があったか否かについては、これは最終的には司法で判断をされるということでございますが、同時に、先ほど来申し上げているように、私ども、労働者保護というのを使命とする厚生労働省ですから、当然、こういったものには、よく見ていかなければならないと思っています。

 働く方々が安心して働ける環境を整備する、この面では、人事権を濫用して、自分の再就職を探せとか、あるいは出向先を探せとかいうことを命じるというのは不適切だと考えております。

岡本(充)委員 そこで、今度三枚目、これは理事会提出資料で、これは委員長にもお願いしておきますが、理事会提出の資料ですから、理事会での協議だという話ですけれども、提出の資料ですから、それをさらに加工しろというのは私はどうかというふうに思っております。それは委員長に申し上げておきたいと思いますし、理事間の協議だということでありますが、あくまで理事会提出資料だということは指摘をしておきたいと思います。

 その上で、概要の(1)の四ポツ目、「今回の機会を捉え、再確認したが、法令を遵守し、法的に問題のない手続きを踏んだ上で実施していると認識。」とこの会社は答えております。

 面談をされた厚生労働省、このときは聞いただけという話でありますけれども、この認識について、今この会社がどういうふうな認識でいるか、この認識はやはり問題があったと言わざるを得ないと私は考えていますが、その点について確認をしていただけますか。つまり、三回目の面談ということになるんでしょうけれども。二回目がその裏ですね、「ヒアリング及び啓発指導の概要」と書いていますが、確認の上、啓発指導をもう一回されるということでよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、理事会提出資料は、十二月の二十二日に行われたヒアリングについてメモられたものだと思いますが、この中での今の、認識ですね、この会社の認識についてでありますが、啓発指導をさらに行え、こういう御提案をいただきました。

 昨年末に、十二月二十二日に行いましたけれども、先般、二月の二十六日にも再度この会社を呼びまして、厚生労働省で、さまざまな資料の提出を求めるとともに、退職勧奨のほか、配置転換あるいは出向、今先生からお話がございました、それから能力不足を理由とする解雇等に関する裁判例を示して、厳しく啓発指導を行ったところでございます。

 王子ホールディングスのこの会社、報道されておりますが、こうした啓発指導の内容についてはしっかりと受けとめていただいているものと理解をしておりますし、先ほど申し上げたように、この認識が示されたのは十二月二十二日でありますから、その後に、また二月二十六日に呼んで啓発指導を行っておりますので、もう一回呼ぶ必要は私はないんだろうというふうに思います。

岡本(充)委員 であれば、その啓発指導がどのようにうまくいったか、当然この理事会に出していただけるということでよろしいですか。

塩崎国務大臣 メモが残っているのかどうか確認をした上でお答えをしたいと思います。

岡本(充)委員 それは、だって、おかしいでしょう。

 一回目があって、二回目がないということはないはずですよ。そのとおりでしょう。あるんですよ。

 では、委員長、お願いしますね。

渡辺委員長 理事会で協議をいたします。

岡本(充)委員 そうしましたら、それを見た上で、再度の必要性があるかを私も確認をしたいと思います。

 その上で、六ページ目に行きたいと思います。これは、我が党の部門会議等で要望されていた、労働移動支援助成金に対する労働者側のアンケートです。

 ここに「退職勧奨を受けた際の状況」ということで、九人の方が、再就職支援会社への出向を命じられたり、再就職探しを命ぜられた、こうした退職勧奨を受けたと答えています。また、そもそも、一番上に、「1解雇」が六人いた、こういうふうに書いています。

 こうした皆様方に対して、厚生労働省、どう対応していくつもりですか。

塩崎国務大臣 ちょっと語尾がよく聞こえなかったものですから、今、質問事項を確認しておりましたが、解雇六人をどう受けとめるのか……(岡本(充)委員「違う、解雇六人だけじゃないでしょう」と呼ぶ)

 まあ、今御提示いただいたこのアンケート集計結果についてだろうと思いますので、これについて申し上げますと、御指摘のアンケートは、労働移動支援助成金の支給対象のうちで、平成二十七年十二月末からさかのぼって五百人分について行った、御本人宛てに郵便で送ってお答えをいただけるようにしたものでございまして、このうち、平成二十八年三月十四日までに回答をいただいた百九十二名分の中間集計を行ったものでございます。

 集計の中身を見ますと、前の会社をやめた理由として、希望退職への応募と……(岡本(充)委員「中身を読まなくていいです。どう対応するかだけ教えてください」と呼ぶ)まあまあ、回答された方が百四十五名と最も多く、事業主からの退職勧奨と回答された方は十七人、それから、このうち本人が退職強要と受けとめたと回答された方が六人おられたわけでありまして、御本人が退職強要と受けとめている場合であっても、退職強要があったか否かは民事上の問題でございますので、先ほど来申し上げているように、これは司法の場で最終的に御判断をいただくべき問題だと思っております。

 今後、御本人にアンケート回答へのお礼状を送る中で、こうした方々には、個別労働紛争解決制度などの案内を同封して、同制度の利用を御提示申し上げて、御希望される場合には可能な限り丁寧に対応をしてまいりたいと考えているところでございます。

岡本(充)委員 だけれどもね、これはきのうのレクでも言ったんですよ。今度は、六百一人は仕方がない、解雇された人は裁判を起こせ、ADRで解決しろ、弁護士雇え、それはなかなか無理ですよ、会社側は弁護士が出てくるんだから。こっちは、労働者がみずからADRの場に出ていくというのは、もう明らかに私は不利だと思いますよ。

 それをやれという大臣のお話、冷たい話ばかりですね、本当に。もう本当に残念でならない。こうした答弁、役所が書いてきたもの。私は、大臣、それはやはりいろいろな問題があるだろうからできることを一生懸命探します、こういう姿勢を示してもらえると思いましたよ。役所の答弁を一生懸命読んで時間稼ぎされるのもいいけれども、しかし、ハートのある答弁をしてもらいたい。大変残念ですよ、本当に。

 続いて、私は、厚生労働省の施策の事業の中で、こうした人材派遣業や有料職業紹介業者への委託の状況を今調べてくれという話をしました。二十六年度、三十四億円程度のお金が厚生労働省から支払われているやの報告を受けておりますが、これは、ほかの年度と比較をする資料を早急につくってもらいたいと思います。いつまでに出していただけますか。

塩崎国務大臣 これは、既にお答え申し上げていると思いますけれども、あすまでに提出するように努力をする旨、回答をお届けしているというふうに理解をしております。

岡本(充)委員 そういう話ですから、ここで確認をしておきたいと思いました。

 では、その上で、こうした話でもう一つ私が気になるのは、七ページ、今回の予算で、生涯現役起業支援助成金。

 これは、高齢者の皆さん方に起業してください、起業して誰か雇用してくれたら、採用の経費を見ますよという話です。高齢者の起業が目的なのか、それとも雇用が目的なのかわからない。起業が目的だったらこれは中企庁にやってもらう話だし、もっと言えば、雇用が目的だったら何で高齢者の起業に限るのか私はわからない。

 もっと言えば、これは私、国会で指摘しておこうと思ってわざわざこれを出してきたんですけれども、この事業の要件をこれから決めていくんでしょうけれども、高齢者に起業を促して、銀行は今マイナス金利ですよ、大臣、聞いてください、マイナス金利ですよ。貸し出す先がない。高齢者が起業してくれて、そこで、貸してほしい、融資する、焦げつく、大切な老後の資金が失われる、こういう話になって、高齢者の皆さん方が虎の子を失う、こういう話になったら、これはえらいことですよ。要件は慎重にやるべきだと思います。

 それについて、大臣、どう思われますか。

塩崎国務大臣 まず第一に、高齢者というと、何か六十以上ばかりだとお思いになるかもわかりませんけれども、これは四十歳以上でございまして、特に四十歳から五十九歳の場合には、助成率が二分の一、上限百五十万円、ただし、六十歳以上であれば、助成率は三分の二以上、上限二百万円ということになっております。

 実は、そもそも、いや、これは起業を応援するならば中小企業庁でいいじゃないか、こういう御指摘をいただきましたけれども、それは私どもは、雇用をつくるという意味でも起業は応援をしていくべきだと思っておりまして、今、医療系のベンチャーの懇談会を立ち上げて、医療系のベンチャーを応援していこうということもやっているわけでございます。

 そこで、今御心配をいただいておりますけれども、四十歳以上の方々が起業することをなぜ我々は後押しするかと申し上げますと、実は今、アメリカの新薬の半分以上はベンチャー企業がつくっています。この間のC型肝炎の、日本でも大変高い値段のついたものがございますが、ああいうものもベンチャー企業から生まれてきたものでありまして、そこに行く方々は、あるいはつくっている方々も、中には、実は大手の企業から独立するとかそういうような形の方もおられますし、もちろん中小企業の方も、あるいは、全然、研究職からいきなりやるという方もおられます。

 いずれにしても、私たちは、あらゆる年代の人たちにチャンスを与えたいというふうにも思っていますし、チャンスを生かそうとする方々にはやはり応援をしていきたいと考えているわけでありますので、何歳になろうとも起業はしていただくと、やはり雇用にもプラスだという、私どもにとって大事な政策目的にも合致をするということでありますので。

 先生がおっしゃるように、条件が余りしっかりしていないで無計画なものにお金をつける、それはやはりよくないと思いますので、そういう中身はしっかり私もよく見てまいりたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 銀行が融資をするという前提で、銀行がその中身をチェックしているんだなんという、銀行に投げちゃだめですよ。銀行は、これから先、貸出先を一生懸命探したいわけですから、担保のお金があれば、多少リスクのものでも銀行は融資するかもしれません。そうしたら担保がなくなる。担保がなくなったら老後の資金がなくなるということですからね。

 だから、私は、この委員会で指摘しておきますから、ぜひとも大臣、注意をして対応してもらいたいと思います。

 時間が限られてきて、重要な質問ができなくて残念ですが、私、どうしても質問しておきたいことは、介護休業制度で、高齢者の介護は想定がされているけれども、子供の介護について想定が十分されていないと思います。

 次に向けての論点として、私は、やはり子供の介護は高齢者の介護と違う特質を持っていると思いますから、こうした、子供の介護をする親に対しての休業のあり方、それから資金的なサポートのあり方、これは雇用保険を使うかどうかを含めて、ぜひ検討してもらいたいと思います。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 確かに、育児・介護休業法の第二十四条でも、事業主は、言ってみれば、義務化されている以上に、みずから必要な措置を講ずるように努めなければならないということになっておりまして、その中に、今御指摘をいただいた大事な論点である、子供の介護をする場合というのがあって、法律の水準を上回る柔軟な制度の導入について、全国の都道府県労働局雇用均等室にも、しっかり各企業での積極的な取り組みを促すように言っていきたいと思います。

 子供を介護する場合については、やはり高齢者の場合とはまた違う観点が必要だと思いますので、そういう意味では、どのような支援が必要なのかということをよく私どもも研究をしなければいけないというふうに思いますので、大事な論点をいただきましたので、しかと受けとめて検討していきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 ようやっと前向きな答弁をいただいて。塩崎大臣、頼みますよ、お願いしますよ。

 その上で、もう一つ。その中でも、雇用保険の給付の金額に上限を設けているんですけれども、上限を撤廃したときの保険財政への影響というのもやはり検討するべきじゃないか。それは先ほどと同じで、もし長期に介護給付もしくは育児休業給付を出すということになったり、もしくは失業給付でも同様でありますけれども、出したときにどういう影響があるか、そういうことも含めて検討するべきではないかというふうに思いますが、それはいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは少し今までと趣の違う御指摘をいただいておりますけれども、二十六年の雇用保険法の改正において、育児休業給付の給付率を休業開始後六カ月に限って引き上げたのは、女性だけではなくて、特に男性の育児休業取得を促進するということを趣旨としていたものであります。一方で、育児休業給付、これは、休業を失業に準じた保険事故と捉えて給付を行うものであるために、給付水準は、より深刻な保険事故に直面している失業者に対する給付とのバランスも考慮しながら決めていく必要があるわけであります。

 このため、失業者に対する基本手当に上限額を設定していることを踏まえれば、育児休業給付のみ上限額を撤廃するということは、制度上のバランスをなかなか欠くのではないのかということで、ふさわしくないのかなというふうに考えておるわけでございますが、とともに、高所得者のみを優遇する結果ということにも注意を払っていかなければならないんだろうというふうに思います。

岡本(充)委員 したがって、そういうところがあるから、そしてまた、保険財政にもどういう影響を及ぼすのかを含めて、ちゃんと検討してくださいねというお願いをしているんですから、それは検討していただけるんですね。

塩崎国務大臣 それは検討したいと思います。

岡本(充)委員 時間になりましたから終わります。

 最後に一つだけ指摘。

 平成二十九年度末に待機児童を解消すると本会議で答弁されましたね。二十九年度までもう限られた時間の中で、保育士の確保も進んでいないし、待機児童の数も減っていないという状況があるということをしっかり見据えていただいて、私は、少しやり方を変えないと達成できないということもあわせて指摘をした上で、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿明博です。

 きょう十番目の質疑者ということになりまして、先に質問をされた方も多くいたので、多少重複するところがあるんですが、少し確認も含めて、今までの答弁のおさらいもさせていただきたいというふうに思っております。中には、質問を聞いていてもう一回確認したくなったこともありますので、通告していないことも出てくると思いますが、その辺は御了解をいただきたいと思います。

 まず最初に、きのう参考人質疑がありまして、私も聞いていて、非常に参考になったなというのを本当に感じました。塩崎大臣、聞いていなかったと思いますが、ぜひ一度資料を取り寄せて、目を通していただきたいなと思います。

 その中で、私がはっと思ったことが一つありまして、それは、中央大学の佐藤博樹先生と、あとケアラー連盟の代表である日本女子大学の堀越栄子先生が指摘をしていたんですが、介護保険の被保険者に四十歳でなりますよね、その四十歳になったときに、何の連絡も来ないし、そこでの事前の教育とか、情報の提供とか、制度に対しての周知とか、そういうことがほとんどされていないのは問題ではないか、そういうお話があったんですね。

 それで、きのう配られた佐藤先生のパワーポイントの資料の五のところ。

 ここはちょっと私もびっくりしたんですけれども、びっくりしたというか、ああ、なるほどなというか、思ったんですが、公的保険制度の認知度、あなたは公的介護保険の被保険者ですか、介護保険料を支払っていますかという質問に、全体で大体、全体も四十歳以上も大体同じぐらいなんですが、三割の方は、いいえ、払っていないと答えていたり、わからないと答えたりしているわけですね。四十歳以上で払っている人でも、三割の人は、自分が被保険者かどうかわからないと答えているんですよ。

 この結果を見て、まず大臣、どう感じるのかということと、やはり四十歳のときに制度の周知をきちんとして、事前の心構えというのを持ってもらうというのは非常に私は重要ではないかと思いますので、その点についてもどう考えているのか、お答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 社会保険制度というのは、保険料と税と、そして医療系、介護系の場合には自己負担というのがあるわけで、この三つだけしか財源はないということで、それを払ってくれるのは実は政府ではない、あるいは地方公共団体でもない。個人か企業か、そして御本人かということであります。

 前もこの問題を指摘を受けたことがございまして、ああ、なるほどなというふうに思いましたし、今先生からの御指摘でその重要性ということを改めて認識をしますが、助け合いの仕組みであるのに、助け合っている自分がよく知らなかったというのでは助け合いにならないので、これはやはり周知をしていかなければならないんだろうというふうに思います。

 当時は、四十歳からにするか、あるいは六十歳からにするか、あるいは二十からにするか、さんざん自社さ政権のときに議論をして、最終的に、老人保健法が対象とする四十歳からにしようということになりました。

 しかし、残念ながら、これは大体、天引きで引かれる方が多いものですから、そうなると、これに気がつかないままに今お話しいただいたようなことになっている。今拝見をしましたけれども、多くの方が、自分が介護保険料を払って、今の介護を受けていらっしゃる方の言ってみればサポートをしているということに気がついていないということであるならば、これはやはり正直、四十歳からそうなる、あるいは二十から年金も医療の保険も払うんだということを含めて、子供のときからやはりしっかりと理解をしていただくように努力をしないといけないのかなというふうに改めて思ったところでございます。

初鹿委員 堀越先生がこういうお話をしていたんですよ。四十歳になっても保険証が来ないんですよね。保険証が来ないから気づかないんですよ。

 考えてみたら、私も、四十歳になって払い始めているわけですけれども、引かれているのに気づいたのは半年後ぐらいになって、改めて考えてみたら引かれているわということに気がついたのを今思い出しているんですが、そういう方というのはすごく多いんだと思うんですね。

 ですので、やはりこの周知徹底というのは非常に重要だなということをぜひ認識していただいて、何らかの対策をとっていただきたいと思います。

 加えて言いますと、四十歳の被保険者の方、ただ保険料を払っているだけのように思われているんですけれども、そうではないですよね。四十歳から六十四歳までの方でも、特定疾病に該当すれば介護保険のサービスが受けられる。でも、この制度を知っている人が、では果たしてどれだけいるんだろうかということなんですよ。

 先ほど午前中に、ちょっと厚労省の方にそういう調査をしたことがあるのかというのを伺ったんですが、どうもそういうアンケートをしたことがないらしいんですね。回答は、難病の方等が相談に来られたときに、制度のすき間にならないように、その方に当てはまる制度、サービスを提供するというような回答が出たんですけれども、どこかの窓口にでも行って、困っていますということを言わなければ、多分、知らないままに過ぎていっている人は多いんじゃないかと思うんですよ。

 介護離職をしている方の中に、例えば自分の配偶者の方が四十代、五十代で特定疾病に当たるような病気になって、本来なら介護サービスが受けられるけれども、そのことを知らないで、結局、自分が離職して、自分が在宅で介護を担っているという方が少なからずいるのではないかと思うんです。

 ですので、まず、どれぐらい周知がされているかという調査を行ってもらいたいと思います。

 実は、ネットでいろいろ調べてみたら、第一生命経済研究所が二〇一二年に出している介護に関する知識の程度のアンケートというのがあって、そこで、四十歳から六十四歳の人は、加齢に伴う病気が原因で介護が必要になった場合にのみ公的介護保険サービスが受けられるという問いがあって、知っているという答えは二六・六%なんです。四人に一人しか知らないわけですよ。ということは、四人に三人は知らないで、実は受けられるサービスを受けていないという人はたくさんいるんじゃないかということが容易に想像ができると思いますので、この点の周知と、あとやはり、これで離職している人がいるかもしれないということもちょっと頭に入れて、今後どうするのかということを考えていただきたいと思いますので、御回答をお願いいたします。

塩崎国務大臣 大事な論点だと思います。

 どういうふうに調べるのがいいのかも含めて、そして、やはり周知徹底をする。そして、さっき申し上げたように、正直、何となく政府が何でもかんでもやってくれると子供たちに思われるのもいけないので、みんなでつくるこの国だということをわかっていただくためにも、教育現場でもこういったことが伝わるようにもしていかなきゃいけないと思いますが、まずは厚生労働省において、どういう形かはよく詰めたいと思いますけれども、調査をし、なおかつ周知徹底の方法を考えていきたいというふうに思います。

初鹿委員 ぜひ、どの程度の認知度があるのかというのはしっかり調査していただきたいと思います。

 では、ちょっと具体的な中身について伺ってまいりたいと思います。

 午前中から何度か質問がされておりますけれども、ちょっと気になるので、もう一回、介護休業の期間を、九十三日の三回までの分割取得ができるということにしたその理由を、御説明を簡潔にしていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 最終的には労働政策審議会でこういう結論になったわけでございますが、介護休業は、労働者がみずから介護に専念するために利用することを想定しているものではなくて、介護を要する家族を支える体制を構築するために一定期間利用をしていただく、そういう想定でつくられた制度でございます。

 今回の改正案では、介護を経験した働く方々が一週間以上連続して休んだ日数は、二週間以内という方々が七五%だった、それから、回数は三回までという方々が約九割を占めておりましたことを踏まえて、事業主の雇用管理の負担も考慮した上で、法律上の最低基準として、介護休業の期間は現行どおり通算九十三日、そして分割の回数は三回までとしたところでございます。

初鹿委員 まず、三回までで九割がカバーされているということで三回ということなんですが、やはり、ここでも残りの一割の人のことが見えていないのかなというのは非常に残念だなと言わざるを得ません。

 恐らく、残りの一割の方や、また、三回までは九割かもしれませんけれども、結局、三回以上とりたい人は離職をしているんじゃないんですか。だから十万人の介護離職になっているんじゃないかということを私は想像するんですけれども、そういう発想になぜ立たないのかなというのを少し私は疑問に思うところです。

 ちょっとこの話は一回後に置いておいて、何度も説明を聞いていると、大体、九十三日の期間というのが、施設に入所をするまでにかかる期間が九十三日ぐらいだという御説明をしているわけですよ。

 介護休業というのは、段取り休業だという言い方をされている先生たちもきのうおりましたけれども、まさに、介護サービスを受けるための段取りをするのに役所に行ったり、いろいろな手続をするのに時間が必要だから休むということだと思うんです。

 それはそれで私も理解はしますけれども、あくまでも施設に入所をするというのが前提のように聞こえて、もともと介護保険のサービスをスタートしたときに、在宅での介護というのを充実していこうというものだったと思います。厚生労働省も、地域包括ケアシステムというものをつくって、施設から在宅へを促して、在宅で介護を進めていこうということをモデルとしてきたように感じるんですけれども。

 なぜ施設に入るまでの期間の九十三日というので介護休業の期間を設定しているのか、これは在宅よりも施設に入所をさせるということを進める方向になっているのか、この辺をお伺いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今先生がおっしゃった、施設に入るまでに九十三日というのは、どこから引用されてこられたのかなということをちょっと今聞いていたものですから、それであれなんですけれども、それは労政審に書いてあったわけではないですよね。(初鹿委員「説明に来られた方がそれを大体言っていましたので」と呼ぶ)

 いずれにしても、家族の介護を行う働く人たちが就業を継続するために、少なくとも、介護に関する長期的な方針を決めるまでの間、当面、家族による介護がやむを得ない期間について休業できるようにするということが必要であるとの観点から、家族介護の必要性、さっき申し上げましたけれども、その必要性と、それから事業主の雇用管理、つまり、雇っている側の人たちの、お休みをされたときの穴埋めをどうするのかとか、そういう負担を考慮して、対象家族一人につき九十三日の範囲内で要介護状態に至るごとの介護休業が認められているというものだというふうに私は聞いておりました。

 今、そういうものだということでございまして、施設に入るまでと決め込んだわけではございませんので、御理解を賜れればというふうに思います。

初鹿委員 そうであるならば、先ほどから何人かの議員の方が質問をして指摘をしていますが、要介護一、二の生活援助サービスを切るというようなことがあったら、それは介護離職が進むことになるということ、これをちょっと頭の中にちゃんと入れておいていただきたいんですよ。

 要介護一、二でも認知症の方はいるんですね。その人たちは施設には入れません、在宅です。そこで、生活援助サービスもなくなって、人が出入りをしなくなったら、認知症の方は、場合によっては徘回をするようになったりするかもしれませんし、非常に私は家族にとっては心配だというふうに思うんですよ。

 そうなってくると、それこそ、九十三日どころの話ではなくて、やはりずっと自分は在宅でいなければいけないのかなということになりかねないわけですから、先ほども質問がありましたけれども、要介護一、二の生活援助サービスを簡単に切るなんということをしたら、結果として、将来、金がかかることにもなるし、介護離職ゼロを目指すところからは大きく後退をすることになると思いますので、ここは、要介護一、二を切るということはしないということをぜひはっきりと言っていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは社会保障審議会の介護保険部会で議論が始まったばかりでございまして、何度も申し上げているように、これは要介護度一、二の軽度の方々の生活支援について切るということを初めから決めているわけでは全くございませんで、それは、先ほど来ずっと御説明しているように、経済・財政再生計画の中の改革工程表において検討事項とされていることを議論してもらっているわけです。

 我々は、やはり大事なことは、介護保険というのは高齢者の自立支援そして介護の重度化防止でありますので、それに資することを私たちは考えていくということでありますので、何かアプリオリに物事を決め込んだ上で議論するだのようなことは私たちは全くやっておりません。

初鹿委員 私から言わせれば、検討すること自体、必要がないんじゃないかというふうに思いますので、あえて言わせていただきました。

 次に、三回の分割についてなんですけれども、三回分割ができるようになったこと自体は、私は前進だとは思うんです。ただ、三回でいいのかどうか、また、九十三日でいいのかどうかということになるんですが、例えば、介護の期間が長期化したときに、平均は四年十カ月だということですが、これが五年だったり、十年だったり、または十五年だったりになったときに、では、九十三日で使い切ってしまったら、その後に何かが生じたときにどうするんだろうか、結局、そこでやめざるを得ないんじゃないかというふうに私は思うんですね。

 例えば、介護休業を九十三日とって、その間に特別養護老人ホームに入れました、よかったよかったと思っていたら、何らかの病気や風邪をこじらすとかいろいろなことがあって、入院をするようになることもあるわけですよ。場合によっては、入院先で胃瘻をすることになる、そうしたら、特養に戻ろうと思ったら特養で戻してもらえない、ほかのところを探してとなる。そのときに、九十三日を前に使い切っていたら、休めなくなりますよね。

 これは、長期化していったら、そういう場面というのは何度も来るような気がするんですよ、何度も何度も。そのときに、三回の分割で果たして足りるのかというのと、九十三日使い切ってしまっていたら、結局、介護離職せざるを得なくなる。

 そこで、私からの提案なんですけれども、平均で四年十カ月ということですから、平均を超えるような、例えば五年以上の長期にわたって介護をしている場合、五年でも七年でも十年でもそこは決めだと思いますけれども、長期化した場合に、九十三日のこの日数を一回リセットして、五年目からまたもう一回九十三日が取得できるようにするとか、長期に介護をする人に対する対策というのをちょっと考えていただきたいと思います。

 先ほどの岡本議員からの、子供の介護の場合もそうだと思いますけれども、二十年介護することになるかもしれない、三十年になるかもしれない、そういう人たちにとって、九十三日で、それをとったらそれ以上とれないとなると、やはり最後の何日間かは残しておかなきゃいけないんじゃないかという意識にもなってしまうと思うんです。

 ですので、五年でも七年でもいいんですけれども、どこかで一回、九十三日をリセットできるようにできないものか、検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、さまざまなケースをお取り上げいただいて、御提案をいただいたわけでありまして、それぞれ、そういうケースは十分あり得るわけでありますし、今、そういう初鹿先生のようなお考えをお持ちの方もおられることは十分あり得ると私も思います。

 思いますが、まず、休業そのものは労使の話し合いで決まるもので、さっき申し上げたように、お休みをしないといけないという介護のニーズというのは、これはもう厳然としてあって、私の家でも同じことが起きていますが、家内が仕事がなかなか続かなくなるということに今なっていたわけでありますけれども、その雇ってくれているところ、働いているところの事情と御本人の事情との折り合いをどうつけるかということが問われている問題です。

 今回、労政審でもそこのところをいろいろ議論をしていただいて、九十三日は変えずに、三回、分割でとれて、なおかつ、介護休業給付については、今まで四〇%だったものを、これは雇用保険のやはり助け合いの仕組みですけれども、六七%にするということで、労使の話し合いで折り合ったというところが今の現状です。

 そうはいったって、介護が長期化したときには困るじゃないか、そのとおりのことは十分あり得るわけでありますので、そこで、今回、分割取得ということを入れ、そして、残業免除というのを初めて今回創設をいたしましたが、これは、介護が終わるまで残業は免除をするという、言ってみれば、働く者の権利というものができたわけであります。

 したがって、長期に、九十三日以上にわたって休むことが必要だということについてはよくわかるところでありますけれども、そうなると、働いているところの会社側が何と言うかということで、そこで、さっき申し上げているように、休業法の第二十四条で、会社独自の配慮ということができるように努力義務化をされているわけですから、そこのところで、まずは会社ごとにやっていただくということがあるわけです。

 しかし、これから本当に高齢化が進む中で、国としてどう考えるのかということは、絶えず考えていかなきゃいけないというふうに思います。

初鹿委員 もうちょっと簡潔にお答えいただきたいと思います。

 確かに、おっしゃりたいことはわかるんですけれども、事業主の方の判断に任せると、長期化して、九十三日使ったのに、さらにもう一回というのはなかなか難しいんだろうと思うので、だから、やはり法律である程度義務化できるようにしてほしいという趣旨で言っておりますので、今後の検討課題だとは思いますけれども、この長期にわたって介護する人たちに対する視点というのも忘れないでいただきたいと思います。多分、その人たちが残りの一割に該当していると思いますので、そこは忘れないでいただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきたので次に移りますが、今度は介護休暇について伺います。

 介護休暇は、年五日で、半日単位で取得ができるということでありますが、これは何か中途半端だなと思うんですよ。何で五日なのかというのがいまいち不明。

 きのうの堀越参考人からのお話でも、ケアマネとモニタリングを月に一回やるわけですよ。毎月一回やるんですよ。毎月一回やったら、十二回なわけですよね。だから、少なくとも年六日、場合によっては、できれば、年十二日やって、モニタリングにきちんと休暇をとって行けるようにしたらどうですかと思うんですよ。それが合理的だと思うんですよね。

 きのうのお話でも、結局、休めないから日曜日とか土曜日とかにこのモニタリングの日を入れて、結局ケアマネの方がそれに合わせて行かなきゃならなくて休暇がとれなくなって、ケアマネの方の労働環境もやはり悪化をするようになるわけですから、そのことも考えて、僕はこれは年五日じゃなくて年六日か年十二日にする必要があると思いますが、モニタリング期間にきちんと合わせる必要があると思いますけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 今、ケアマネのモニタリングを根拠に、十二日とか十日とか、こういう御提案をいただきました。

 先ほども申し上げましたが、今回の育児・介護休業法の改正案では、介護休暇について、柔軟な休暇取得の必要性と、事業主による雇用管理の負担、つまりこれのバランスを考慮して最終的に五日ということが決まったわけです。

 これは実は、子供の看護休暇制度というのがございますけれども、小学校就学前の子一人につき年五日ということになっております、二人いれば十日ということになるわけでありますけれども、そういうことも参考にして、労政審で、先ほど来申し上げているように、これは働く側だけでは決められませんし、一方で使用者側だけで決めるわけにもいかないので、そういう形で決まったということでございます。

 確かに、ケアマネの問題に合わせるべきというのは一つの考え方だろうと思いますが、今申し上げたような経過でこうなったということでございます。

初鹿委員 子供の看護休暇に合わせてといいますけれども、子供の看護をしている人は、別に毎月何かが必要だと必ずなっているわけではないわけで、介護保険を使っている人は毎月必ずモニタリングがあるということは決まっているわけですから、それに合わせる方が合理的だと思うので、修正をぜひしていただきたいなということをまずお願いさせていただきます。

 ちょっと時間がなくなってきたので、今度は育児休業についても二点ほどお伺いさせていただきます。

 まず、育児休業は一歳まで一回となっているんですよね。一歳までの間に通算で一年間で一回となっているんですが、これはまず年齢を一歳までで区切るのをもう少し広げられないかということと、一回のみの取得ではなくて、回数を何回かに分割できないかということを提案させていただきます。

 幾つか理由があるんですが、私が特に感じるところは、例えば発達障害のお子さんがいる御家族の場合、発達障害かどうかがわかるのは、二歳児健診とかで何となくあれっと言われて、疑いがあるんじゃないかとかそういうことになってくるわけです。二歳児とか三歳児の健診で。

 そのときに、例えば幼稚園や保育園に入っていたとしても、病院に連れていって診断をもらったり、また療育先を見つける、そのためには役所に行って受給者証をもらって障害福祉サービスを受けられるようにするとか、そういう段取りをしなきゃならなくなるわけですね。

 そのときに、この育児休業というのは全く使えないんですよ。全く使えないんですよ、一年で一歳まで一回ですと。ですので、これを年齢の対象を広げたり回数をふやしたりすることを検討していただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先生今御指摘のようなケースがあり得るということは十分わかるわけでございますが、何度も申し上げて大変恐縮ですけれども、働く方々の代表と使用者側との話し合いの中でこういう形で最終的に決まったことでございますので、今回はこれで御理解賜りたいと思いますけれども、しかし、これは絶えずそういう問題が、先生が御指摘のようなことはあり得ますので、検討はさせていただきたいというふうに思います。

初鹿委員 次に、時短ですけれども、時短の制度、先ほども重徳議員からも質問がありましたが、やはりこれは、三歳までじゃなくて、小学校の三年生までにするべきだと思うんですよ。

 三歳までですけれども、保育園に入れれば、しかも延長のある保育園に入れれば、時短をする必要がないんですよね、はっきり言ってしまえば。ところが、学童保育に入れたときに、今まで八時まで預かってくれたところが六時までになって、困ってしまう親御さんが物すごい多いわけです。そこに時短の制度が使えれば、三年間、子供が学童保育に行って、三年なのか一年なのか、自分でお留守番できるようになるまでの間時短が使えれば、お母さんたち、お父さんたちにとってはかなり有意義なことになるんだと思うんですね。

 これは、三歳で切っている理由は私はないと思うんです。時短を広げたからといって、ずっととるわけじゃないわけで、必要なときにとるということを考えたら、私は、これは小学生になったときの一年生の瞬間というのが一番必要だと思うので、この時短についても年齢の拡大を行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

渡辺委員長 既に持ち時間が経過しております。答弁は簡潔にお願いします。

塩崎国務大臣 結論だけ申し上げれば、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、使用者側と労働者側の話し合いの中でこういう形で決まったわけでありますが、そうはいいながら、小学校就学の初めの、二、三年ぐらいまでに達するまでの子を養育する働く人たちについては、所定労働時間の短縮措置を講ずるというのは努力義務となっているわけでありますので、これもやはり企業の自主的な制度として導入をしていただかなければ、これはコンセンサスを得た労政審の中での結論でございますので、問題意識はよく理解ができるところなので、受けとめてまいりたいというふうに思います。

初鹿委員 本当は、国会でこうやって審議をする中で、大臣もある程度それはわかるねということになったら、修正をすることが私は立法府の役割だと思うんですよ。労政審で決めたからそのまま絶対通しますというのが何となく今までの習慣で来ていますけれども、やはり、国会の質疑の中で指摘をされて、お互いにそれはそうかもしれないねということがあったら、私は、修正をするということを本来ならやるべきだということを最後につけ加えさせていただいて、これで質問を終わります。

 ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 皆様、遅い時間までお疲れさまです。あと三十分、おつき合いをいただきたいと思います。

 本日は、政府が目指す失業なき労働移動ということについて、そして、後半、時間があれば、高齢者の今後想定される新しい働き方についてお伺いをしたいと思います。

 まず、政府が目指す失業なき労働移動、これは成熟産業から成長産業への労働移動ということを意味しているのか、お伺いいたします。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 第四回の産業競争力会議におきまして、安倍総理の発言でございますけれども、成熟産業から成長産業へ失業なき円滑な労働移動を図る、このために、雇用支援策を雇用維持型から労働移動支援型へ大きくシフトさせていきたい、こういうふうに発言をなさいました。

 これを受けまして、政府といたしましては、産業構造の転換に対応して労働者のスキルアップを図っていこうということで、成熟産業から人材を必要とする成長産業へ円滑な労働移動を行っていくこと、これがとても大切だというふうに考えております。

井坂委員 ところが、今国会で問題になっている労働移動支援助成金、これは、平成二十六年度中に再就職支援を開始した、そして年度末までに無事に再就職できた方、六百五十一人、このデータをきょうは議論したいんですけれども、この六百五十一人は、結局同じ産業分類、つまり、同じ業界の会社に再就職した人が三百六十八人おられます。要は、半数以上が労働移動をしていないということになっているわけでありますが、大臣、これは、お伺いしますが、労働移動支援助成金の名前のとおりに、残念ながらなっていないのではないでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、個別に、子細に見てみないと、どういう企業に行ったのか、どういう業種のお仕事に行かれたのかは、今のざっくりした産業分類ではよくわからないんだろうというふうに思います。

 例えば、同じ電機産業でもいろいろでございますし、企業はそれぞれございます。それぞれの企業が付加価値をどう上げて、収益力を上げ、生産性を上げていくかということが問われているわけでありますので、我々としては、全体としての生産性あるいは収益力を上げて競争力を増して、そして、そこで働く人たちの賃金を上げてもやっていけるだけの強い企業になってもらうことが大事なので、今お話がございましたけれども、同じ製造業の中でも、同じ産業分類の中でも、いろいろなケースがあり得るのではないかなというふうに思います。

 いずれにしても、さっき申し上げたように、今回の助成金があるがためにリストラになったということではないということは、改めて申し上げたいというふうに思います。

井坂委員 大臣、そうまでおっしゃるのであれば、同じ産業分類の中でも望ましい移動はあるかもしれない、逆にそういうデータはとっておられるんですか、労働移動がちゃんと果たされたというデータはとっておられるんですか。

塩崎国務大臣 今のところは大分類で見ているので、細かなところは私どもとして持ち合わせていませんが、いずれにしても、労働組合との話し合いの中で再編計画ができるということを前提にスタートしたこの制度でございます。

    〔委員長退席、秋葉委員長代理着席〕

井坂委員 大分類では労働移動したかどうかはかれないと答弁されながら、大分類以外では成果測定をしていないということであります。

 私は、やはり役所の仕事は、一事が万事、こういうことが多いと思うんですけれども、成果測定、ちゃんと政策の当初の目的が果たされているのかどうか、大分類で測定できないとおっしゃるのであれば、小分類で測定をすべきでありますし、それをしていないのであれば、大分類じゃわからないという答弁はされるべきじゃないというふうに思います。

 加えて、別の政策ですけれども、求職者支援のための職業訓練受講給付金というものがあります。これは、実践コースというところで成長分野が指定されて、例えば、ITの訓練を受けた求職者は、就職に成功した人の七七%がIT分野に実際に就職している、医療事務は七八%が医療事務へ、介護福祉コースの人は九一%が介護福祉へ、デザインの人は六四%、トータル平均で七八%の人が訓練した分野に就職をしている。一方でこういう政策もあるわけであります。

 私は、これはある程度狙った効果が出ているというふうに思いますが、にもかかわらず、平成二十三年、二十四年には利用者が年間十万人ペースだった政策が、徐々に減って、平成二十七年度は年間四万人ペースしか利用されていない。

 大臣にちょっとお伺いしますが、これは細かい具体の政策の話はお伺いしませんが、要は、労働移動ということを真剣に目指すのであれば、私はやはり職業訓練を充実させるのが王道だというふうに思います。職業訓練なしで、早く再就職しろとだけやっていても、これは成長産業への労働移動は不可能だというふうに思いますが、大臣の政治家としての御所見を伺います。

塩崎国務大臣 職業能力を新たにつけて転職していく、新天地に赴くということは、大変大事な論点だと思います。

 私はそのとおりだと思いますし、これからは、よく言われているAIとかIoTとかいう時代の中では、今では想像できないような働き方の変化が出てくると思いますので、そういうときには、やはりみずからの能力を新たにつけるということは年齢にかかわらずやっていかなきゃいけないことだろうというふうに思いますので、御指摘はそのとおりだというふうに思います。

井坂委員 私は、なるべく早い再就職というのはもちろん大事だというふうに思います。ただ、私は実は労働移動ということも大事だと思っておりますので、真剣にそれをやるならば、先ほど申し上げた成果測定もしっかりしながら、やはり、違う分野に移るということは、その間に新たな技術、能力の獲得というものは必ずあるはずですから、そこを抜きに再就職支援奨励金のようなやり方だけでやっていくと、あおられて早くは就職するけれども、結局もとの産業へというような形に、これは論理的にもそうだし、結果としてもそうなっているというふうに思うわけであります。

 もう一点、この労働移動支援助成金についてですが、これは、再就職に成功した人、先ほど申し上げた六百五十一人でも、以前の給料よりふえたという人はわずか一一%、給料が八割以下になってしまった人が何と六五%、給料が六割以下というとんでもない状態になった人も二四%いらっしゃるわけであります。

 この再就職先の賃金が平均で退職前の七五%という現状は、これは労働移動という何か横滑り、横移動のイメージとは随分違って、むしろ、一人一人の人生を真面目に見れば、人生を破壊しかねない大幅降格ではないかというふうに思いますが、大臣、問題は感じられませんか。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げさせていただいたわけでありますけれども、この制度自体は、もちろん失業をつくるためのものでもないし、むしろ移動を応援するということが主眼であるわけでございます。

 今お話がありましたように、助成金による再就職支援の対象となった方で二十六年度末までに再就職された方の賃金、七五%程度ということがございますが、雇用保険を受給して再就職した方のうち、いわゆる一般の、失業されて再就職された方、この労働移動支援助成金の対象者と大体同じぐらいのもとの賃金水準の方について比較をしてみました。

 そうしますと、離職前賃金に対する再就職後の賃金の割合というのは七一%となっておりまして、これが一般の、雇用保険をもらっていらっしゃる方が再就職した場合の数字でありますけれども、これだと七一でございますので、約七五というのは、若干それよりも高いということだと思います。

 これらの賃金のデータは、離職前の賃金に超過勤務手当が含まれて、再就職後の賃金には含まれていないわけで、減少幅が大き目にやはり出てしまうということはあろうかと思いますが、現時点で、平成二十六年度の労働移動支援助成金による再就職支援の対象者のうちで、労働移動に伴って賃金が上昇した方が一一・一%おられるということで、決して多いというわけではございませんけれども、そういうケースもあって、産業構造転換に向けた政府全体のいろいろな施策の推進と相まって、賃金が上昇する形での労働移動の拡大を図っていくことが大事だというふうに思っているところでございます。

井坂委員 平成二十六年度中に再就職支援を開始して二十六年度末までに再就職できた方、六百五十一名について、これまでデータを挟んで議論してまいりましたが、実は、平成二十六年度に労働移動支援助成金の対象となった方は三千三百四人おられます。そのうち、年度末までに再就職できたのが六百五十一人で、わずか一九%、正社員になれたのはわずか一四%という数字です。さらにもう一年たって平成二十七年十二月末になっても、いまだ非正規にすらなれていない未就職者がいまだ一八%残っているという状態であります。

 先ほどは、無事にちゃんと二十六年度末までに再就職できた方のお給料も平均七五%まで下がっていますよという議論でありましたが、そもそも再就職自体もはかばかしくない。一年以上、一年半、二年近くたってもまだ一八%未就職者がいる、この政策において、いるということであります。

 大臣、これは、失業なき労働移動とおっしゃいますが、失業なきという部分も結果としては看板倒れになっているのではないか。また、労働移動という部分も、残念ながら、大半は同じ産業に再就職をしておられ、こちらの部分も看板倒れになっているのではないか。このダブル看板倒れで、私は、狙った成果が出ているとは言いがたい状況だというふうに思います。

 この政策、私は労働移動は必要だという立場でありますが、全く成果は出ていない、少なくとも狙ったとおりには出ていない、根本的に考え直す必要があるのではないでしょうか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げておりますけれども、我々は、やはり労働移動は産業構造の転換にとって不可欠であって、そのためにこそ、先ほど御提案をいただいたように、技能を磨く、新たに取得する、そういうこともやはり支援策としてセットでやるということも、もっと力を入れないといけないということで、基本的な方向性は、さらにこれは加速をしないといけないぐらいだろうというふうに思っています。

 今の井坂先生からのお話も、先ほど来のお話も、この制度なかりせば、単純にリストラをされることになって、御自分でお仕事を、次の職場を探さないといけないということになっているわけでありますけれども、我々は、それをやはりバックアップして、できる限り早く次の職場を得られるようにする。

 当然、御自分のエクスパティーズを大事にするようにすれば、大体同じようなところに、同じようなというのは、同じ自分のエクスパティーズが使える産業に行くのが普通でございますので、全然、全く違うところに行くということは余りないんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、私は、六百一人残っているじゃないかということで、これが失敗だということでありますけれども、しかし、むしろそれは、ポジティブな面も御評価をいただいて、八割の方が再就職できておられるということも大事な一面であるということをお考えいただき、いまだに再就職が決まらない方々については目いっぱいの応援をしていくということが、厚生労働省としても大事なんだろうというふうに思います。

井坂委員 一年目で再就職が決まった人は一九%、二年目でようやく八割方決まってくる、こういう数字だというふうに思います。要は、失業なき労働移動とおっしゃるには看板倒れではないですかということであります。

 加えて、労働移動というところで、先ほど、ほかの、ITとか介護とか別の政策とも比べましたけれども、大臣がやはりおっしゃるように、何もしなければ、それは、自分の能力の生きる、もとの産業に就職するというのが、これは当たり前の選択になってしまいますから、労働移動とおっしゃるのであれば、やはりその間には、きちんと明確な意図と、しっかり効果を持った職業訓練が必須であるというふうに思います。

 そんな中で、今回、この労働移動支援助成金が、厚労省みずから適切ではないと今後通達を出さざるを得ないような使われ方をしたわけであります。今退職したら退職金を上乗せする、ただし、断ったら、あなたの次の仕事はあなた自身の職探しですよ、こういうふうに言われて、どちらを選んでも、結局、次の仕事を探さなければならない、こういうことが実際に起こったわけであります。

 ここで大臣にお伺いいたします。

 業務命令で職探しをさせられ、そして、仕事が見つからないと、業務の成績が悪いといって、それこそ解雇される。しかし、労働者みずからが自分の次の職探しを行うということは、これは労働契約法上の労務の提供にはどう考えても当たらないのではないかというふうに思います。これはもう言わずもがなで法律には書いていないと思いますけれども、実際、法律を幅広に解釈してこういうことが行われたわけで、この法律の中に、みずからの次の職探しというのは労働契約法上の労務の提供、労働には当たらない、入り得ないということを明記すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

    〔秋葉委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 前回も近い御提案があったかというふうに思いましたが、働く人がみずからの次の職探しを命じられて職探しを行っても労務の提供に当たらない旨を労働契約法に明記するという御提案だったと思いますが、労働契約法というのは、釈迦に説法でございますけれども、民法に由来をいたします労働契約、民民の労働契約の原則や、確立をいたしました判例法理、いろいろな法理がありますけれども、これを定める基本法というふうに考えるべきではないかというふうに思います。

 判例法理が確立をしていない事項についてどこまで規定できるか、慎重にこれは検討をしないと、みずからの次の職探しという言葉でも、なかなかこれはいろいろなケースがあり得るんだろうというふうに思いますので、これは労使双方の十分な合意形成をしていただくということが必要なのではないかというふうに思いまして、さまざまな課題があって、率直に申し上げると、なかなか一筋縄ではいかないというふうに考えているところでございます。

井坂委員 大臣の今の御答弁ですと、自分の次の職探しというのが、レアケースであっても、場合によっては労務の提供に当たるケースもあり得るからということでしょうか。

塩崎国務大臣 いや、そのようなことを申し上げたつもりは全くございません。

 先ほど、これは岡本先生のときにお答え申し上げましたけれども、私どもは労働者保護を使命とする役所でございますので、当然、労働者の立場というものを守りたい、こう思っているわけであります。

 先ほども申し上げたとおり、自分の再就職先を探せ、あるいは、先ほど、出向先を探せというようなことも含めてというお尋ねがございましたけれども、こういうことを人事権を濫用して命じるということは、これは明らかに不適切ではないのかというふうに思われますので、企業の労務管理が適切に行われて、働く方々が安心して働けるように、私どもは、啓発指導に用いられるパンフレットを既に改定することとしておりますし、企業に対する啓発指導はしっかりと行っていかなければなりませんし、もう既に、先ほど来、理事会提出資料の中での対象企業についても、二回にわたって啓発指導を行ったところでございます。

井坂委員 大臣、その出向先を探せというのは、自分の、あなたの次の仕事を探しなさいというのとは、もう一段階、私は違うと思うんですよ。出向先を探せというのは、本当にごくごくまれに、ある種の営業活動みたいな要素が入り得る可能性は私はゼロではないかなというふうに思いますけれども、少なくとも、あなたの次の仕事、あなたがこの会社をやめて次に行く仕事を探しなさいというのは、これはもうどう考えたって労務の提供になり得ないし、もしそれが労務の提供になり得るんだったら、求職者イコール労働者ということになって、とてもおかしなことになってくるというふうに思います。

 ですから、出向先とまぶされましたけれども、出向先の話はきょう議論しておりませんので、あなたがこの会社をやめて次に行く仕事、次に行く職場を探しなさいというのは、これは労務の提供、労働には当たらない、これは多分、もうこの中で誰もがそう思っている、言わずもがなの当たり前だから法律に書いてないんですけれども、今回、法律が悪読みされてこういうことが起こっているわけですよ。立法事実があるので、いっそ書いたらどうですかというふうに思うわけです。これは判例法理がなきゃわからないとかの話じゃないと思います。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 これは、言うまでもないことで、釈迦に説法でございますけれども、この労働契約法というのは、先ほど申し上げたとおり、労働契約の原則とか判例法理を定めたものでありまして、もともと、この労働契約は民民の契約でございます。その中で、どういう形で、人事権を濫用までして、今先生は労務ではないことを強要しているということをおっしゃっていますが、そういうことをやっているのかということは、それぞれの状況に応じて、やはり会社側と働く方御本人との間でいろいろなやりとりがあろうかと思います。

 それを、今先生が表現をされた言葉で全て法律になれるかというと、なかなかそれは、そういうことにはなりませんので、やはりここは、民民のことは司法に判断をいただくというのが大原則でございますので、そこは、我々は逃げているわけでも何でもないわけで、必要なときに啓発指導は間違いなくやるということが私たちとしてのとるべき政策手段だというふうに考えております。

井坂委員 ちょっと話が戻ってしまったんですけれども、要は、最後、ケース・バイ・ケースで司法の判断だとおっしゃるということは、大臣の頭の中には、次の仕事を探すのが労務だ、労務の提供だ、労働だと言い得るケースがあり得るというふうに思っておられるからそういう答弁になるんですね。

塩崎国務大臣 全くそんなことは申し上げておりませんで、先ほど申し上げたように、人事権を濫用して自分の再就職先を探せと命じることは不適切だということを申し上げているわけでありまして、ただ、いろいろなケースがあり得るわけでありまして、それは行政の私ども厚生労働省が判断をして決め込む立場にはないということで、民民の問題について行政がいきなりやるような官僚統制、社会主義国家では日本はないというふうに思います。

井坂委員 民民の契約でも、法律でちゃんと最低限の枠が定められて、その中で契約が行われるわけですよ。そんなことを言い出したら無法地帯になってしまいますから。

 普通はこんな言わずもがなのことは書かなくたっていいわけでありますけれども、実際こういうことが起こって、ちょっと大臣の御答弁だと、そういう職探しが労務に当たるケースもあるということが念頭に多分おありでそういう答弁になるんだろうというふうに思いますけれども、私はやはりいろいろ考えてもあり得ないというふうに思いますから、あり得ないことはあり得ない、これは労務の提供ではないと書いても、はなからあり得ないことをただ要は確認のために書くだけの条文になりますから、民間を縛る要素は一切ないというふうに私は思いますよ。

 あと二点議論したいんですけれども、大臣は、では、実際、厚労省に責任があるなしは別にして、こういう王子ホールディングスさんのような、中で納得のいかない退職ということになってしまった方に何か手だてはないのかとお尋ねをすると、個別労働関係紛争ということで、それの紹介、説明ぐらいならできますというふうに答弁をされました。

 この個別労働関係紛争の法律第三条には、都道府県労働局長は、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者、事業主に対して、情報提供、相談その他の援助を行うものとするというふうに書いてあります。

 この「その他の援助」というところを読んで、王子ホールディングスに、今後ほっておいたら個別のあっせんが多発しますよ、そんな個別あっせんを労働者一人一人とするよりも、企業として一定の方針をまず示されたらどうですか、こういうアドバイス、これは何ら法に違反しないので、厚労省が王子ホールディングスに私はできるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第三条について御説明いただきましたけれども、これは、働く方や事業主から照会があった場合に、その照会内容に応じて法令や裁判例の情報提供をしたり相談に乗ったりするということで、関係する機関に取り次いだり、そういった趣旨の規定でございます。

 現在、御指摘の会社から退職された方から相談がなされているということはございませんけれども、相談が仮になされた場合は、必要な情報提供を行うとともに、個別労働紛争解決制度の助言や指導、あっせんを促していきたいというふうに考えております。

 また、このたび、御指摘の会社から退職された方に対するヒアリングの検討を行っているところであります。その中で、個別労働紛争解決制度について周知を行うとともに、御本人がこの制度の利用を望まれる場合は、お一人お一人丁寧に対応していきたい、このように考えております。

井坂委員 この法律をよく読むと、別にあっせん制度を使ってください使ってくださいと紹介する趣旨ではなくて、むしろ個別労働紛争の未然防止、それから当事者間での自主解決が目的になっているわけですね、この第三条の部分は。何か、窓口に来ないとこれが発動しないなんと読める部分は私は一個もないと思います。

 まず、窓口に来なきゃ何で発動しないのか。別に制度の紹介だけなんて全く書いていなくて、要は未然防止のための援助をしたらいいと思うんですよ。いかがですか。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の三条のところなんですけれども、やはり、これは積極的にこちらから働きかけるということではなくて、ある程度、照会内容に応じて、相談に乗ったり、関係機関に取り次いだり、情報提供をしたりということで、未然に防ぐということでこちらがアクションを起こして、どういった形でアクションを起こしていっていいのかという基準もはっきりしないところでございますので、まずは御相談を受けて、それで対応を考えさせていただくということになると思います。

井坂委員 同じく、四条に、都道府県の労働局長は、個別労働関係紛争に関して、当事者の双方または一方から解決につき援助を求められた場合は、必要な助言または指導をすることができると書いてあります。

 これは、仮に労働者側から相談があった場合も、企業側、労働者側、どっちにも指導助言ができるという内容だというふうに伺っておりますが、そのときに、指導助言の内容が、要は、Aさんが何か助言を求めたときに、Aさんとこの王子ホールディングスとの一対一の関係の、ここだけを指導助言しなければいけないというふうには特に読めないというふうに思います。類似の、要は、Bさん、Cさん、何十人も同じことを王子ホールディングスはやっているわけで、Aさんから相談があったら、王子ホールディングスに対して、まずは対Aさんのことを指導助言すべきだと思いますが、同時に、あなた、Bさん、Cさん、何十人も同じことをやっているでしょうと。

 ここの部分は、また別途、別に訴えがなくても企業としてちゃんと真面目に対応してくださいよ、私、これぐらいの指導助言は現行法でできるというふうに思いますが、大臣、これは通告どおりですが、いかがですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、今の個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の第一条には、「この法律は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争について、あっせんの制度を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。」こうなっておって、今の三条、そして四条で、「双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、」ということで、「個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をする」ということになっているわけで、この助言指導は、法違反の是正を図るために行われる行政指導とは性格が異なるわけでございまして、個別労働関係紛争は、先ほど来ずっと申し上げているように、民民、私人間の問題でございまして、当事者の求めに基づいて実施をすることが前提というふうになっています。

 個々の労働者からの申し出を受けてということが基本だろうと思いますけれども、あらかじめ行政が事業主に予防的な助言指導をすることは、この法律の枠組みの中では予定をされておりません。

 ただ、何もしないのかといったら、そんなことはなくて、既に二回にわたって、この会社には啓発指導も、呼んで、やっているわけでございまして、これは行政法規に基づく指導とはやはり違うわけでございます。

 このたび、今御指摘の会社から退職された方に対するヒアリングを検討しているところでありますので、その中で、先ほど来申し上げているように、まずADRの制度を周知するとともに、制度の利用を望まれる方にはやはり丁寧に対応をして、何が一番いい方法かということも含めて、御相談にあずかっていきたいというふうに思っております。

井坂委員 もう終わりますが、昨晩、すごくがっかりしたことがありました。当局の方にこういう質問を投げかけたら、いや、難しいと思います、ただ、難しいと言える根拠が思い当たらないので、ちょっと根拠をきちんと調べてお答えしますと、電話口でそういうやりとりだったんですね。

 それは、法律を、できない理由を探そうと思えば幾らでも見つかるというふうに思います。ただ、一方で、特に強制性のない指導助言ですから、なるべく幅広に解釈をして、やろうと思えばできることだっていっぱいあるというふうに思うんです。ぜひ、法律を最大限解釈して、できない方向じゃなくて、本件は、何ができるか、何ならできるかという、親身になって救済に当たっていただきたい、このことだけお願い申し上げて、終わりにいたします。

 どうもありがとうございます。

渡辺委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 この際、中島克仁君外八名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 衆議院議員中島克仁君外八名提出の介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案につきましては、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。中島克仁君。

中島委員 私は、民主・維新・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案に対して賛成、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案に対しても賛成の立場から討論を行います。

 雇用保険法等改正案は、介護、育児と仕事との両立支援に一定の前進が見られるため、賛成をいたします。ただし、必ずしも十分とは言えない内容であり、今後、介護休業や介護休暇の日数をふやすことなど、ニーズに即したさらなる法改正を検討すべきであります。

 雇用保険法等改正案により介護休業を少し充実させたからといって、介護離職をゼロにできるはずはありません。介護離職を減らすために真っ先に行わなければならないことは、必要な介護サービスの充実、それを支える介護職員の処遇改善です。

 私たちは、野党五党が提出した介護職員等の処遇改善法案を成立させ、介護職員の賃金を引き上げることが不可欠であることを訴え続けてまいりました。それにもかかわらず、与党の方々の賛同が得られず、成立の見通しが立っていないことは、極めて残念でなりません。

 また、私たちは、本委員会で厚労省に労働移動支援助成金をめぐるリストラ問題への対応を求めてまいりました。労働移動支援助成金を支給されている企業から委託をされ、再就職支援会社が行っている解雇ビジネスの被害者は、多数おられます。安倍政権が労働移動支援助成金を拡充して悪質な会社の背中を押してきたわけですから、安倍政権が被害者に救済策を提示するなど、抜本的な解決策を示すのが筋です。

 しかし、厚労省からは十分納得のいく解決策が示されておりません。人生を狂わされた当事者の方々がどんなにつらい思いをされたか、全くわかっていないとしか思えません。

 政府・与党は、「保育園落ちた日本死ね!!!」と題したブログに対する安倍総理の冷たい対応を取り繕うことに躍起になっております。だったら、子供を保育所に預けられないお母さんたちのせっぱ詰まった状況を打開するため、保育士等の処遇を改善して、人材を確保することに傾注すべきです。

 私たちは、保育士等の給与を引き上げる法案を準備しております。与党の方々にも御賛同いただけるものと確信をしております。

 最後に、私たちは、介護職員と保育士等の処遇改善の実現を求めるとともに、参議院でも労働移動支援助成金の問題を徹底的に追及していくことを申し述べ、賛成討論を終わります。

 以上です。(拍手)

渡辺委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、雇用保険法等の一部を改正する法律案について討論を行います。

 最初に、本案は、雇用保険法に加えて、育児・介護休業法、男女雇用機会均等法、高齢者雇用安定法など、広範な労働者の働き方に影響を与える改正案であり、各案とも十分な審議が求められていました。一括で、しかも日切れ法案として短時間の審議で採決するというのは、極めて乱暴であり、強く抗議したいと思います。

 本案では、介護休業の分割取得を可能にしたことや、有期契約労働者の育休取得対象を広げること、介護休業給付の賃金日額四〇%を六七%まで引き上げるなど、一定の改善と言えます。マタニティーハラスメントについても、人事権のない上司や同僚まで対象を広げ防止策を義務づけたことは、必要な措置であり、総合的に判断して、今回の法案には賛成とします。

 その上で、幾つか意見を述べます。

 雇用保険では、「現在の雇用情勢は、着実に改善が進んでいる。」という労政審建議の認識のもと、基本給付の積立額が六兆二千億円余という高い水準にあるとして、保険料率を〇・二%引き下げるとしました。しかし、基本給付は、離職理由による給付制限など、たび重なる給付日数や給付額の削減によって、失業者の二割しかカバーできていません。

 参考人質疑では、生活保障としては十分でないために条件の悪い仕事につかざるを得ない実態が示され、給付の不十分さが雇用を劣化させているとの指摘がありました。また、就職促進給付の拡充が条件の悪い仕事への早期就職を促す手段とされてはなりません。

 前回法改正時に附帯決議で課題とされた、生活安定機能を充実させるための基本手当の改善に直ちに取り組むべきです。そのためにも、国庫負担は本則二五%に戻すべきであります。

 高年齢雇用者が増加していることから、六十五歳以降に新たに雇用された者への雇用保険適用が拡大されます。保険料が徴収される一方で、給付は従来どおり一時金とされました。雇用労働者とするのであれば、一般被保険者と同じ給付水準とすべきであります。

 高年齢者雇用安定法のシルバー人材センターの業務の緩和が、本来の生きがい就労の役割を逸脱し、低賃金で劣悪な労働条件の雇用を広げることにつながりかねません。このような規制緩和はやめるべきです。

 最後に、五野党共同提案による介護・障害福祉従事者の処遇改善を目指した議員立法に与党らの賛同が得られなかったことは、非常に残念でなりません。

 安倍総理が、介護離職ゼロをうたって、一部でも介護休業や所定外労働の免除など、仕事と介護の両立を目指して改善を行うのでありますから、その支え手であり、深刻な人手不足となっている介護・障害福祉従事者の処遇改善には党派を超えて取り組むべきではなかったでしょうか。

 これで終わりとせず、引き続き与野党の努力を呼びかけるとともに、日本共産党としても、人間らしく働けるルールづくり、男女とも仕事と家庭の調和が図られる社会を目指して奮闘する決意を述べて、討論といたします。(拍手)

渡辺委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、中島克仁君外八名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時三十九分散会


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