衆議院

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第18号 平成28年5月18日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十八年五月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江渡 聡徳君

   理事 小松  裕君 理事 後藤 茂之君

   理事 白須賀貴樹君 理事 西村智奈美君

   理事 初鹿 明博君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    岩田 和親君

      大串 正樹君    神山 佐市君

      木村 弥生君    工藤 彰三君

      國場幸之助君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      田村 憲久君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    中川 俊直君

      永岡 桂子君    長尾  敬君

      丹羽 秀樹君    丹羽 雄哉君

      比嘉奈津美君    福山  守君

      堀井  学君    松本  純君

      三ッ林裕巳君    宮川 典子君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      山下 貴司君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    小熊 慎司君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    重徳 和彦君

      中島 克仁君    中根 康浩君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    浦野 靖人君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   厚生労働副大臣    とかしきなおみ君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   外務大臣政務官      黄川田仁志君

   文部科学大臣政務官    堂故  茂君

   厚生労働大臣政務官    三ッ林裕巳君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          千葉 恭裕君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          北崎 秀一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤原 章夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           松尾 泰樹君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       香取 照幸君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     岩田 和親君

  堀内 詔子君     國場幸之助君

  牧原 秀樹君     神山 佐市君

  松本  純君     工藤 彰三君

  郡  和子君     阿部 知子君

  柚木 道義君     小熊 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     田畑 裕明君

  神山 佐市君     牧原 秀樹君

  工藤 彰三君     松本  純君

  國場幸之助君     堀井  学君

  阿部 知子君     郡  和子君

  小熊 慎司君     柚木 道義君

同日

 辞任         補欠選任

  堀井  学君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     八木 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     堀内 詔子君

    ―――――――――――――

五月十六日

 障害者福祉についての法制度の拡充に関する請願(岩屋毅君紹介)(第一八三九号)

 同(亀井静香君紹介)(第一八四〇号)

 同(菅直人君紹介)(第一八四一号)

 同(篠原孝君紹介)(第一八四二号)

 同(関芳弘君紹介)(第一八四三号)

 同(冨樫博之君紹介)(第一八四四号)

 同(中谷真一君紹介)(第一八四五号)

 同(中野洋昌君紹介)(第一八四六号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一八四七号)

 同(船田元君紹介)(第一八四八号)

 同(真島省三君紹介)(第一八四九号)

 同(松田直久君紹介)(第一八五〇号)

 同(宮腰光寛君紹介)(第一八五一号)

 同(山田賢司君紹介)(第一八五二号)

 同(吉田宣弘君紹介)(第一八五三号)

 同(青柳陽一郎君紹介)(第一八七五号)

 同(石川昭政君紹介)(第一八七六号)

 同(石関貴史君紹介)(第一八七七号)

 同(郡和子君紹介)(第一八七八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八七九号)

 同(田島一成君紹介)(第一八八〇号)

 同(辻元清美君紹介)(第一八八一号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一八八二号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一八八三号)

 同(松本洋平君紹介)(第一八八四号)

 同(青山周平君紹介)(第一九二二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一九二三号)

 同(池内さおり君紹介)(第一九二四号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一九二五号)

 同(小川淳也君紹介)(第一九二六号)

 同(大平喜信君紹介)(第一九二七号)

 同(笠井亮君紹介)(第一九二八号)

 同(河野正美君紹介)(第一九二九号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一九三〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九三一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一九三二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九三三号)

 同(清水忠史君紹介)(第一九三四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九三五号)

 同(島津幸広君紹介)(第一九三六号)

 同(田島一成君紹介)(第一九三七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一九三八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九三九号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第一九四〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一九四一号)

 同(畠山和也君紹介)(第一九四二号)

 同(藤野保史君紹介)(第一九四三号)

 同(堀内照文君紹介)(第一九四四号)

 同(真島省三君紹介)(第一九四五号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一九四六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一九四七号)

 同(宮本徹君紹介)(第一九四八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一九四九号)

 同(井野俊郎君紹介)(第一九七八号)

 同(池内さおり君紹介)(第一九七九号)

 同(北村誠吾君紹介)(第一九八〇号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一九八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九八二号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一九八三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九八四号)

 同(島津幸広君紹介)(第一九八五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一九八六号)

 同(高木義明君紹介)(第一九八七号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第一九八八号)

 同(原田憲治君紹介)(第一九八九号)

 同(古屋圭司君紹介)(第一九九〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第一九九一号)

 同(前田一男君紹介)(第一九九二号)

 同(宮本徹君紹介)(第一九九三号)

 同(青柳陽一郎君紹介)(第二〇六〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二〇六一号)

 同(江田康幸君紹介)(第二〇六二号)

 同(島津幸広君紹介)(第二〇六三号)

 同(三原朝彦君紹介)(第二〇六四号)

 同(本村伸子君紹介)(第二〇六五号)

 同(山本有二君紹介)(第二〇六六号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(亀井静香君紹介)(第一八五四号)

 同(石関貴史君紹介)(第一八八六号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一九九四号)

 同(村井英樹君紹介)(第二〇六七号)

 ウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援、B型肝炎ウイルス排除治療薬等の研究・開発促進、肝炎ウイルス検診の推進に関する請願(岡下昌平君紹介)(第一八五五号)

 同(亀井静香君紹介)(第一八五六号)

 同(北村誠吾君紹介)(第一八五七号)

 同(國重徹君紹介)(第一八五八号)

 同(清水忠史君紹介)(第一八五九号)

 同(谷畑孝君紹介)(第一八六〇号)

 同(玉城デニー君紹介)(第一八六一号)

 同(真島省三君紹介)(第一八六二号)

 同(宮腰光寛君紹介)(第一八六三号)

 同(山田賢司君紹介)(第一八六四号)

 同(吉田宣弘君紹介)(第一八六五号)

 同(井上英孝君紹介)(第一八八八号)

 同(今津寛君紹介)(第一八八九号)

 同(うえの賢一郎君紹介)(第一八九〇号)

 同(岸本周平君紹介)(第一八九一号)

 同(辻元清美君紹介)(第一八九二号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一八九三号)

 同(樋口尚也君紹介)(第一八九四号)

 同(小川淳也君紹介)(第一九五一号)

 同(奥野信亮君紹介)(第一九五二号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一九五三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一九五四号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第一九五五号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一九五六号)

 同(遠藤敬君紹介)(第一九九五号)

 同(高木義明君紹介)(第一九九六号)

 同(橘慶一郎君紹介)(第一九九七号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第一九九八号)

 同(安藤裕君紹介)(第二〇七一号)

 同(江田康幸君紹介)(第二〇七二号)

 同(佐々木紀君紹介)(第二〇七三号)

 同(武田良太君紹介)(第二〇七四号)

 同(三原朝彦君紹介)(第二〇七五号)

 公正な賃金・労働条件に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第一八七三号)

 同(小川淳也君紹介)(第二〇七六号)

 障害者総合支援法の第七条(介護保険優先)の廃止等に関する請願(郡和子君紹介)(第一八七四号)

 同(堀内照文君紹介)(第一九五七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇〇一号)

 介護労働者の処遇改善と介護報酬の緊急改定に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第一八八五号)

 同(小川淳也君紹介)(第一九五〇号)

 安全・安心の医療・介護に関する請願(志位和夫君紹介)(第一八八七号)

 同(本村伸子君紹介)(第二〇六八号)

 難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第一九七六号)

 保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一九七七号)

 パーキンソン病患者・家族に対する治療・療養に関する対策の充実に関する請願(橘慶一郎君紹介)(第一九九九号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第二〇〇〇号)

 国の乳幼児医療費無料制度創設に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二〇五八号)

 若い人も高齢者も安心できる年金を求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第二〇五九号)

 国の制度による子供医療費助成制度の創設に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二〇六九号)

 同(本村伸子君紹介)(第二〇七〇号)

同月十八日

 空襲被害者の人間回復のための立法に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一二八号)

 同(池内さおり君紹介)(第二一二九号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二一三〇号)

 同(大平喜信君紹介)(第二一三一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一三二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一三三号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二一三四号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一三五号)

 同(清水忠史君紹介)(第二一三六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一三七号)

 同(島津幸広君紹介)(第二一三八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二一三九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二一四〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二一四一号)

 同(畠山和也君紹介)(第二一四二号)

 同(藤野保史君紹介)(第二一四三号)

 同(堀内照文君紹介)(第二一四四号)

 同(真島省三君紹介)(第二一四五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二一四六号)

 同(宮本徹君紹介)(第二一四七号)

 同(本村伸子君紹介)(第二一四八号)

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二一四九号)

 労働時間と解雇の規制強化に関する請願(池内さおり君紹介)(第二一五〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二一五一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一五二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二一五三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一五四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一五五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二一五六号)

 同(藤野保史君紹介)(第二一五七号)

 同(堀内照文君紹介)(第二一五八号)

 同(宮本徹君紹介)(第二一五九号)

 障害者福祉についての法制度の拡充に関する請願(今井雅人君紹介)(第二一六〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二一六一号)

 同(階猛君紹介)(第二一六二号)

 同(北川知克君紹介)(第二二三九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二四〇号)

 同(野中厚君紹介)(第二二四一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二二四二号)

 同(畠山和也君紹介)(第二二四三号)

 同(松野頼久君紹介)(第二二四四号)

 同(本村賢太郎君紹介)(第二二四五号)

 同(吉川元君紹介)(第二二四六号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(階猛君紹介)(第二一六三号)

 同(山下貴司君紹介)(第二二四七号)

 安全・安心の医療・介護に関する請願(梅村さえこ君紹介)(第二一六四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二二四八号)

 ウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援、B型肝炎ウイルス排除治療薬等の研究・開発促進、肝炎ウイルス検診の推進に関する請願(大串正樹君紹介)(第二一六五号)

 同(橋本岳君紹介)(第二一六六号)

 同(平野博文君紹介)(第二一六七号)

 同(木下智彦君紹介)(第二二四九号)

 パーキンソン病患者・家族に対する治療・療養に関する対策の充実に関する請願(大串正樹君紹介)(第二一六八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一六九号)

 公正な賃金・労働条件に関する請願(玉城デニー君紹介)(第二一七〇号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現を求めることに関する請願(池内さおり君紹介)(第二二二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第二二二六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二二二七号)

 同(宮本徹君紹介)(第二二二八号)

 労働法制の大改悪をやめ、安心して働き続けられる雇用を求めることに関する請願(清水忠史君紹介)(第二二二九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二三〇号)

 若い人も高齢者も安心できる年金を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第二二三一号)

 介護従事者の処遇改善に関する請願(清水忠史君紹介)(第二二三二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二三三号)

 介護保険制度の改善、介護従事者の処遇改善に関する請願(梅村さえこ君紹介)(第二二三四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二三五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二二三六号)

 同(畠山和也君紹介)(第二二三七号)

 同(藤野保史君紹介)(第二二三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 児童福祉法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎国務大臣 ただいま議題となりました児童福祉法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 児童虐待については、子供の命が失われる痛ましい事件が後を絶たないなど、深刻な状況が続いています。最も愛されるべき親から虐待を受けることは悲しむべきことであり、子供の命と権利、そしてその未来を社会全体で守らなければなりません。子供や家庭をめぐる問題が多様化、複雑化する中、新たな子供家庭福祉を構築することが喫緊の課題となっています。

 こうした状況を踏まえ、全ての子供が健全に育成されるよう、児童虐待について発生予防から自立支援までの一連の対策のさらなる強化等を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、児童福祉法の理念の明確化であります。

 全ての子供には、適切な養育を受け、健全に育つ権利があり、その自立が保障されるべきという理念を法律に明確に位置づけるとともに、市町村、都道府県、国の役割と責任を明確化することとしています。

 第二に、児童虐待の発生予防であります。

 市町村は、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行うよう、母子健康包括支援センターの設置に努めることとしています。

 第三に、児童虐待発生時の迅速的確な対応であります。

 市町村は、子供や家庭への支援を行う拠点の整備に努めることとしています。また、児童相談所に児童心理司等の専門職を置くとともに、弁護士の配置またはこれに準ずる措置を行うこととし、政令で定める特別区は、児童相談所を設置することとしています。

 第四に、虐待を受けた子供の自立支援であります。

 養子縁組及び里親の相談支援を都道府県の業務に位置づけるとともに、就学中の二十二歳の年度末までの者を自立援助ホームの対象とすることとしています。

 この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成二十九年四月一日としています。

 政府は、この法律の施行後速やかに、特別養子縁組の利用促進のあり方及び要保護児童の保護措置に係る裁判所の関与のあり方について検討し、必要な措置を講ずるとともに、この法律の施行後五年を目途として、中核市及び特別区が児童相談所を設置できるよう、必要な支援を行うこととしています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

渡辺委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局職員福祉局長千葉恭裕君、総務省自治行政局公務員部長北崎秀一君、法務省大臣官房審議官金子修君、文部科学省大臣官房審議官藤原章夫君、大臣官房審議官松尾泰樹君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長香取照幸君、社会・援護局障害保健福祉部長藤井康弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。比嘉奈津美君。

比嘉委員 おはようございます。比嘉奈津美でございます。

 法案の質問に入る前に、私、先週、ちょうど熊本の地震一カ月目に熊本に行ってまいりましたので、そのお話を少しさせていただきたいと思います。

 熊本市内において、有床二次救急歯科医院、口腔外科を開業している私の歯科大の先輩から現場を見てほしいという連絡があり、足を運んでまいりました。個人歯科医院ではありますが、入院施設もあり、熊本市のみならず、周囲の熊本県各郡市区の歯科からの紹介で、急性重度炎症疾患、外傷有病者、障害者歯科の救急、緊急重篤患者の受け入れ診療を行っている病院であります。特に、年末年始も二十四時間体制の緊急歯科病院でもあります。

 しかし、今回の地震で、診療が不可能な全壊の被害を受けております。建物は傾き、整然としていたはずの診療室や入院室は、余震のたびにぼろぼろと天井から物が落ちてきて、建物のひびは、あちこち余震のたびに大きくなっていっているようであります。

 大きな医療機器や診療台のユニットやCTは外に運び出したものの、片づける当てもない医療器具や日常品をどうすればいいのか、それを見ているだけで非常に精神的なダメージを受けるのだということでありました。今回の熊本の地震は、余震がずっと続いているということが、今までの地震と違う、さらなる心の負担になっているというような現実を見てまいりました。

 このような中、公的な医療機関の復旧は早くめどが立つようでございますが、個人だとなかなか早急に事が運ばない。私が訪ねたのは個人歯科医院ではありますが、これまでの公的病院に匹敵する医療貢献に関して、早期に復旧に力をかしていただきたいという声がありました。

 医療機関というものは、やはり患者さんの、県民の命を守るという意味で非常に重要なところだと思います。特に歯科部門においても、長く続く避難生活で、平常のように歯磨きができないということで、口腔内環境が非常に管理が難しく、多くのトラブルが発生しているということでした。

 治療を待つ多くの県民のためにも、政府にはさらに力強く動いていただきたいなと思います。これは要望としてお聞きいただければよろしいかと思います。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 それでは、児童福祉法等の一部を改正する法律案についてでございます。

 全ての児童が健全に育成されるよう、児童虐待についての発生予防から自立支援までの対策のさらなる強化を図る改正でありますが、児童虐待が起こる背景には、少子化、核家族化の影響による子育て世帯の孤立化、地域の子育ての機能低下、また経済的な問題、さまざまな要因が絡み合っていると考えられます。児童虐待防止法施行前の平成十一年度に比べ、平成二十六年度は虐待が七・六倍、子供の死亡は心中を含めて約百件、このような深刻な状況に早急に対処しなければならないと考えます。

 そこで、早速一つ目の質問でございますが、本法律案の理念規定の中で、児童の権利擁護の位置づけが明確化されたことは非常に画期的な改正だと思いますが、その基本的な趣旨や考え方を大臣にお尋ねしたいと思います。

塩崎国務大臣 今、比嘉先生から御指摘をいただきました児童福祉法の理念規定でございますけれども、昭和二十二年に児童福祉法は最初に制定をされました。そこから、実は、この理念規定自体は見直しをされておらず、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と書いてあるだけで、あとは、全ての国民の責務などが書いてあった、こういうことでございます。

 子供が権利の主体であること、あるいは最善の利益を優先されること等が明確ではないといった課題があったというふうに思います。

 改正案では、子供は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切な養育を受け、健やかな成長、発達や自立等を保障される権利を有することを、まず総則の冒頭、第一条に位置づけをいたしました。

 実は、これまで日本の法律には、民法において、親権、つまり親の権利というのは明確に民法の第八百十八条というところに、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」という形になっておりまして、しかし、その親権を持つ親に虐待を受けるわけでありますから、これに服されたままであったらば救われない、こういうことであります。

 そういうことで、今回、権利という言葉を、日本の法律の中に今までなかった子供の権利を初めて書き込んだということでございまして、その上で、国民、保護者、国、地方公共団体、それぞれがこれを支えるという形でその福祉が保障される旨を明確化したところでございます。

 また、社会のあらゆる分野において子供の最善の利益が優先して考慮されることも明確にもしているわけでありまして、こうした理念のもとで、社会全体で、全ての子供の命と権利、そしてその未来を守って、健全な育成を図っていかなければならないと考えております。

比嘉委員 権利の明確化ができたところで、次に、虐待の発生防止に関してでありますが、私は、母子保健施策を通じた対処が非常に重要だと考えております。かつての子育ては多くの大人の人々に見守られながら開放的に行われていたものが、現在は、相談相手がいない、孤独な育児によるストレスが危機をはらんでいるものと考えます。

 厚生労働省の調査で、うつ病や精神疾患の疑い、ケアが必要とされる妊婦が四万人近くいるということで、妊娠期または出産後の育児不安の軽減への支援は、虐待発生防止に大きな効果を生むものと考えております。

 そこで、妊婦への出産前後の指導を、母子健康施策を通して講じる予防策としては具体的にどのようなことをお考えでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生お話しになりました我が国の母子保健施策でございますけれども、これは非常に完成度が高い制度ということで、国際的にも高く評価をされているものでございます。

 妊娠の届け出をしていただくわけですけれども、いわゆる母子健康手帳の交付の段階ですが、この段階で保健師等による面談というのが行われます。その後、全部で十四回、妊娠期間中は妊婦健診がございますし、その後も乳幼児健診等々、市町村は非常に頻繁に妊婦と接触する機会というものを、この母子保健施策の中で機会が与えられているということになります。

 ということですので、こういった中で、悩みを抱えておられる妊産婦の方を早期に発見する、あるいは相談支援、子育てに関する助言、それから今お話にありました心のケア等、さまざまな保健指導につなげていくということで、妊産婦の悩み、不安を解消していく。このことは、児童虐待の発生予防あるいは早期発見につながるということで、母子保健施策と虐待防止対策は非常に有機的につながっているというふうに考えてございます。

 今度の、今お諮りしております改正案の中では、国、地方公共団体は、母子保健施策を講ずるに当たっては、母子保健施策が乳幼児の虐待の予防及び早期発見に資するものであることに留意をするということを母子保健法上規定を設けまして、母子保健施策と虐待防止対策との関係を明確にいたしました。

 このことを契機としまして、今行われていますさまざまな母子保健施策と児童虐待の防止対策というものを一貫して連携を持って進めるということをもって、児童虐待の発生防止、早期発見に引き続き全力で努めてまいりたいというふうに考えてございます。

比嘉委員 母子施策を充実していただきたいのですが、その一つの例として紹介したいのが、私の地元に、助産師会が運営する母子未来センターという施設がありまして、正常な分娩、リスクの高くない分娩は、そのセンターで助産師さんが行っています。そこでは、生まれてすぐ妊婦さんと一緒に新生児を置くというような体制をとっています。生まれたときからお母さんと赤ちゃんはいつも一緒というタイトルのもと、そういう形をとっています。

 これは昔ながらの家庭での出産の形で、母親と子供のきずなを強くするという意識の中で行われているもので、現在の産婦人科での出産は、生まれたばかりの子供は新生児室、お母さんは入院病棟ということで、退院して初めて二十四時間子供といると、なぜこの子は夜こんなに泣くのだろうと、本当にお母さんたちはこれで精神的に非常に疲れていくというお話を聞きました。最初から、赤ちゃんは泣くものである、こういうものであるということを教えることが非常に重要なことだと助産師さんがおっしゃっておりました。母性をフルに発揮させる環境をつくるということが私はポイントだと思います。

 そして、残念なことに、妊娠しても医療機関を受診せず母子保健手帳もとりに来ない妊婦さんへの対応というものにも、力を入れていただきたいものだと思います。

 そしてまた、虐待をどう発見していくかでありますが、隣のおうちの子が泣き声が異常である、不自然なあざがある、いつも同じ洋服を着て不潔である、保育園などで親が迎えに来たときに帰りたがらない、家に帰りたがらない、おびえた顔をする、そういういろいろな見きわめの具体的なチェックポイントはあると思います。

 私も、歯科医師の視点から、完全に育児放棄、いわゆるネグレクトを発見することもありました。歯ブラシを全くしておらず、虫歯が放置され、本当に重症になって、痛くなって初めて歯科を受診する。軟組織の傷というのは治ります、ちょっとした傷は。ただ、口の中、歯の硬組織である虫歯などはだんだん悪くなっていって、非常に形をとどめるということで、こういう発見にもつながると思います。

 こういう関係機関との連携が非常に重要だと私は思います。この情報提供や通告は秘密義務違反にならないと改めて関係機関に通告を呼びかけ、協力を依頼するべきだと考えます。児童相談所と警察、学校、保育所、保育園、病院などはしっかりと連携をとり、迅速な発見を心がけるべきだと思います。

 では、次に、実際に市町村の支援拠点について、要保護児童対策地域協議会の調整機関や子育て世代包括支援センターとの関係はいかがなものか、お尋ねしたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今般の児童福祉法の改正案におきましては、基礎的な自治体であります市町村が子供や家庭の身近な場所で支援を行うという旨、都道府県、市町村、国の責務を明確にするということで、市町村の責務はこういったものがあるということを明確に規定を置いております。

 一方で、現実の市町村の支援の体制を見ますと、特に在宅での支援を要する家庭への対応という観点でいきますと、やはり地域ごとに差がございまして、ばらつきがあり、必ずしも市町村全体として在宅での支援が十分であるかどうかという点については議論があるところでございます。

 このため、今回の改正案では、市町村におきまして、特に在宅のケースを中心に支援体制を一層充実していくということで、相談、指導、関係機関との連絡調整等の支援を一体的に行う拠点を整備してくださいということで、この整備に努めるという規定を置いたところでございます。

 この拠点につきましては、置き方につきましては、それぞれ市町村ごとに体制、体力もございますので、それぞれの実情に応じて必要な体制を整備していただくということになってございます。

 他方で、今お話しの要保護児童対策地域協議会、私ども要対協と呼んでございますが、これは調整機関ということで、個別に支援を要するお子さん、家庭に対しまして、関係機関との調整とか協力要請、あるいは支援の進行状況の確認、進行管理、あるいは、どこか一つ、責任を持って対応する支援機関を決めまして、そこを中心に行っていくという形で、そういった個別の支援を行う業務を中心に要対協は想定されております。

 その意味では、この要対協に、法律で規定しております支援拠点を置くということはもちろんあり得るわけでございまして、いわば支援拠点をこの要対協の中に置くということも、一つ選択肢としてあるだろうと思っております。

 それから、今回法律で、子育て世代包括支援センター、母子健康支援センターにつきまして、これも規定を置くわけでございますが、これは妊娠期から就学期までの子育て期につきまして、母子保健と一体的な子育て支援を切れ目なく行うというものでございます。

 基本的には、子育て世代包括支援センターは就学期まで、母子保健の射程でされるもののようでございますけれども、支援拠点の方は、それに限らず、就学後を含めまして、虐待などで手厚い支援を要するお子さんについて、全体的な情報提供、相談支援を行うというものになります。そうしますと、この子育て世代包括支援センターをいわば機能拡張する形でそういった支援拠点にしていくという選択肢もあろうかと思っております。

 その意味では、それぞれ機能、役割がございますけれども、支援拠点のいわばベースとして、要対協なり、あるいは子育て世代包括支援センターを置いて、そこの機能拡張によってこういったものをつくっていくということも考えられると思っておりますので、これは各自治体のさまざまな施策あるいは考え方、体制に応じて、適切な形で御判断いただいて、支援拠点を置いていただくという形でお願いしようかというふうに思っております。

比嘉委員 支援拠点とそれぞれの事業がどのような関係にあるのか明確化していくことは、非常に重要なことだと考えます。

 次に、児童相談所の体制強化の中に、都道府県は、児童相談所における弁護士の配置またはそれに準ずる措置を行うものとするとありますが、準ずる措置とはどのようなことか、お尋ねしたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 お話ありましたように、今般、児童相談所における弁護士の配置について規定を置くということにいたしました。

 児童相談所において、児童虐待の相談対応件数、お話ありましたように大変ふえております。その中には、親権との関係でありますとか、さまざま法的に非常に対応が難しい、複雑なケースも非常に多くなっているということで、リーガル、法的な体制というのをきちんと整備するということがやはり求められているところでございます。

 我々が想定しております法律に関する専門的な知識経験を要する業務ということにつきましては、具体的に申し上げますと、例えば、施設入所措置をとる場合に、基本的には親御さんの同意のもとに入れるわけですが、必要な場合には親の意に反して入所措置をとるということが二十八条でできることになってございますが、この場合には、裁判所の承認を得るという手続が必要になります。あるいは、最終的には親権の停止でありますとか親権の喪失について、児童相談所長が審判の申し立てを行うという手続がございます、これも法的な手続。あるいは、さまざまな法的な観点から保護者の指導を行うといったものがございます。

 こういった業務について、児童の安全と健全な成長を確保するという観点から、個別のケースについて迅速的確に対応していくということが必要だ、こういった観点から、今回、弁護士の配置というものをお願いし、かつ、この配置が難しい場合にはそれに準ずる措置を行っていただくという規定を置きました。

 したがいまして、この準ずる措置というのは、我々が想定しております、議論の中でも出てまいりました、法律に関する専門的な知識経験を要する業務が適切、円滑に行うことができるというような体制を確保するという意味におきまして、弁護士の配置と実質的に同等であるような、そういった機能が発揮できるような体制をとるということが必要だというふうに考えてございます。

 現実には、弁護士さんもそれぞれ地域によって数がいろいろございますので、直ちに全ての児童相談所で配置をするということがすぐにできるということは、現場との関係でいえばなかなか難しいかもしれませんが、やはりこういった実質的に機能できる体制をとっていただくということが重要だと考えております。

 これは、現場の自治体や都道府県、あるいは児相といろいろお話ししていますと、例えば、都道府県ごとに複数の児相を持っている場合に、一定人口を勘案しまして、一定の数の弁護士さんをある特定の児童相談所に配置をする、そこが複数の児童相談所を見ていただくという形で、いわば実質的に県全体とすれば配置されているような形で弁護士を確保していただいて、配置されていない児童相談所をその児童相談所が支援するという形でやっていただくというような形もあり得るのではないかというふうに思っております。

 いずれにしましても、この業務は法的な措置がきちんととれるということが必要ですので、いわば弁護士以外の例えば行政職員で対応するというようなことは当然想定しておりませんので、そういった形で、実質的に弁護士を置いて業務が行われるということと同等の支援がとれるような体制を各自治体、都道府県においてはとっていただくということを考えてございます。

塩崎国務大臣 ちょっと追加で御説明申し上げますと、今、二百余りある児童相談所の中で、常勤で弁護士を置いておられるところが三つあります。福岡、和歌山、名古屋。

 私は、今回改正するときに、本来児童相談所には弁護士は必置で、全てに配置をすべきと強く主張いたしましたが、今局長から答弁申し上げたように、アベーラビリティーの面からいってもなかなかすぐには難しいということなので、今回このような形で、準ずると言っていますけれども、基本的には、先ほど御質問いただいたように、今まで、親の権利、親権は民法に明確に定められていたにもかかわらず、子供の権利はどこにもないということで、今回、子供の権利を明確にすることによって法律的な立場からも子供の権利を守れるようにするためには、やはり親との対峙をしないといけないときもありますから、そのときにはやはり法律家たる弁護士がいないと難しい。

 そういう意味では、先駆的にやっていらっしゃる三つのところのお話を聞いてみても、やはり常勤で一緒にやっておられるところはかなり中身も変わってくるということでもございますので、私どもとしては、本当は気持ちは全てに必置、しかし、当分の間こういう形でいくのかなということで準ずるということなので、弁護士以外の方を充てるということは、あるいは、私の例えば愛媛県なんて三つありますが、一人しか常勤で置けないならば、あとの二つについても何らかの形で弁護士が関与する形でやっていただいた方が子供の権利を守るためにはいいのではないか、こういうことでございます。

比嘉委員 適正、円滑な、必要な措置をよろしくお願い申し上げます。

 最後にもう一つ。予防、防止をしても発生してしまった虐待の中で、親子関係を重視する余り、うちの中への立入調査、あるいは、子供を親から引き離すという、一時保護をするという権利があるにもかかわらず二の足を踏むというようなことがあるということも聞きますが、本法律案では虐待を行った親への実効性ある指導はどう考えているのか、教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 親御さんとお子さんの関係は、先生も御案内のとおり、これはなかなか難しいところがございまして、一方で、それこそ親御さんは親権がございますので、実際に親子だということもありますので、児童相談所としては、基本的には、子供の安全確保を最優先にして対応するというのがこれは基本でございます。

 今回の法律でも、今大臣が御答弁申し上げましたように、子供の権利をきちんと書き、子供の利益を最優先にするという考え方で児童福祉法の理念も書いたわけでございますので、その意味では、児童相談所としては、必要がある場合には、基本的にはためらうことなく子供の一時保護、あるいは、場合によっては親御さんの意に反した強制的な施設の入所措置というものも行っていく、このことは必要であろうと思っておりますし、それは私ども、さまざまな指針等で明確にしてまいりたいと思っております。

 他方で、やはり再発の防止ということを考えますと、虐待を行った保護者に関しましては、いわば継続的にフォローしていく、あるいは、親御さんの指導を行っていくということを通じて、できることならば親子関係を安定させて再統合していくという方向性は一つ一方で余地としては残しながらお子さんの利益を守っていくということが必要だろうと思っております。

 その意味で、児童相談所は、子供の保護ということとあわせて、保護者に対しまして、親子関係が安定して築けるようないわば指導というものを行うということになります。これは諸外国等でもさまざまな親子関係再構築のプログラムというものがございまして、こういったものを私どもも活用しながら、各児相において親子関係の再構築の支援というものを行ってございます。その意味では、迅速な対応、子供の権利の保護ということと親御さんの指導というものはいわば並行して行い、最終的に、統合ができれば統合の方へ、なかなか難しければ、そこは果断にお子さんを保護する措置を講じるということになろうかと思います。

 その意味で、今回の改正案では、児童相談所の体制の強化それから専門性の向上ということもあわせて行いまして、保護者に対する継続的な指導というものを行っていく、あるいは、親子関係再構築のプログラムにつきましても、日本の実情に合わせたような親子関係再構築のプログラムというものも必要だろうということで、これは専門家の方々と御相談しながら、そういったものを開発していくための調査研究を行うということ。

 それから、これも問題になりますが、入所措置をした後、親御さんの再教育をした後、在宅へ帰すというケースがございます。帰した後、実はそこでまた虐待行為が行われるということがありますので、実は解除後の在宅支援あるいは安全確認ということで、親御さんに対する指導あるいはフォローを継続して行うということも必要だと考えてございます。

 この観点からは、実は今回検討規定に入ってございますけれども、保護者指導に関しまして、より一段の裁判所の関与をお願いするということもあろうかと思いまして、これは法務省、裁判所等とも御相談しながら検討させていただくということで検討規定を置いてございます。

 こういった形で、いわば子供の権利の保護ということと親御さんの指導、あるいは再統合の可能性に向けてのさまざまな支援ということを総合的に実施していくという形で、親御さんに対する指導あるいは支援というものを強力に進めてまいりたいというふうに考えてございます。

比嘉委員 親子関係を重視しながら、手おくれにならないような対応というのが一番重要だと思いますので、その辺を前向きに検討していただきたいと思います。

 実は沖縄県は、残念なことに、子供の貧困率が全国一位でございます。これは、県民所得が低いということと、低年齢での結婚、出産、そして離婚、一人親も多く、子供のための時間が多くとれず、教育も思うようにいかない、それからまた虐待につながっていく、そして子供も親と同じような道を歩むという悪い連鎖が起きております。

 虐待する親は、親自身も虐待を受けた体験があるということが多いといいます。その親に対してもしっかりとした心のケアを行い、また、低所得、子供の貧困と虐待はもう一体である、深い関係があるものと考え、根本的な経済的な問題や、一人親の学び直しも含めて、この負のサイクルを切り、子供にいつも声をかけてあげて、見守っていってあげたいものであります。

 目線を変えて、人類も動物の一種と考えれば、根本的に動物の親は子供を虐待しないものであります。人間も愛を持って、優しい動物に戻れるような環境づくりに力を合わせていきたいものであります。

 時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして質問をさせていただきます。

 私も、今まさに子育て世代ということで、娘が二人おります。四歳と二歳でございます。核家族化が進む中で、同じ世代の子育てをされている世代、子育てに不安を抱える声というのも、実は日ごろ大変に多くいただくところであります。

 また、大変残念なことに、児童虐待、こういうケースというのは後を絶たないわけでもございますし、また通報の件数というのも年々増加をしている、こういう状況でございます。

 一億総活躍社会の実現に向けては、こうした子育て世代が孤立をしないような、しっかりと支援の手を差し伸べていくことが重要である、このように日々痛感をしておるところでございます。

 私ども公明党は、以前より、妊娠期から出産、また子育て、一貫して支援を行う、いわゆる日本版ネウボラという仕組みを全国にしっかりと展開していくべきだ、こういうことを訴えてまいりました。

 本法案の中では、母子健康包括支援センターという形でこういうものがしっかりと制度化をされている、極めて大きな意義を有する法改正である、このように考えております。この法律の中におきましては、全ての自治体に母子健康包括支援センターを設置する努力義務ということで措置をされております。切れ目のない相談体制を確立するという意味で、大変重要なことだと考えております。

 他方で、児童虐待で犠牲になる子供の例で非常に多いのが、ゼロ歳、ゼロ日というか、いわゆる生まれたばかりのお子さんが大変残念ながら犠牲になってしまう、こういうケースが多いというわけであります。

 今でも、実際に妊娠をして妊婦健診を受けに来る、あるいは母子手帳をもらいに来る、こういう行政に関してちゃんとアプローチをされる方というのは、では行政の方でしっかり相談に乗っていこうと対応することができるんですけれども、いわゆるそうではない、望まない妊娠をされている方であるとか、妊婦健診も行かない、あるいは手帳ももらいに行かない、こういう方々について、例えば地域でどう把握をしているのか。あるいは、相談体制をつくる、これも非常に大事でありますけれども、今後はどう、例えばアウトリーチというか、こういうことをしていくのか。あるいは、こうした方々について、例えば特別養子縁組のような形にどう結びつけていくのか。

 こういうことを考えると、今後、しっかりこういう、制度としては措置をされるわけでございますので、あとはそれぞれの自治体において体制を確立していくということが重要になってくるのではないか、私はこのように考えております。

 るる述べてまいりましたけれども、まず大臣に冒頭お伺いしたいのは、本法律案で母子健康包括支援センターの設置というものがしっかりと位置づけられた、これについての意義と、先ほど私が説明させていただいたような望まない妊娠によるような児童虐待、こういうものについて、今後さらにどのように対応していくのか、こういう点について、まず冒頭、大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 今お話ございました母子健康包括支援センター、そしてまた、望まない妊娠をされた方々を含めた妊婦の皆さん方そしてまた若いお母さん方、そういった方々にアウトリーチを含めた相談体制が極めて大事だということについて、私も全くそのとおりだと思います。

 地域のつながりが希薄化をされてきている昨今、妊産婦あるいは母親の孤立感とか負担感が極めて高まっている一方で、妊娠期から子育て期までの支援というのは、さまざまな機関が縦割りに、いろいろばらばら今までやってまいりました。関係機関が連携をし、切れ目のない支援を実施するということが大事だということでございます。

 このため、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援を行う子育て世代包括支援センター、これを平成三十二年度末までに全国展開できるように、設置根拠を初めて今回母子保健法に明確に位置づけたわけでございまして、市区町村における取り組みをこれによって一層促進していきたいと考えております。

 このセンターでは、妊産婦等の状況を継続的に把握し、相談などを通じて望まない妊娠であることがわかった場合には、必要に応じて、特別養子縁組など養子縁組に関する相談支援を行う児童相談所等につなぐ、あるいは関係機関と連携をした支援を行うということとしているわけであります。

 また、今回の改正法案におきまして、養子縁組に関する相談支援が児童相談所の業務として確実に行われるように、法律上初めて明定をされたところでございます。こうした業務が確実に実施できるように、平成二十八年四月に公表されました児童相談所強化プランにおいて、児童福祉司などの専門職の配置の充実そして資質の向上を図ることなどを盛り込んでいるところでございます。

 さらに、改正法案におきましては、望まない妊娠をした女性など、出産後の養育について出産前からの支援が特に必要と認められる特定妊婦、これを早期に把握できるように、病院のお医者さんあるいは学校の先生などが、特定妊婦を把握した場合には、市町村に情報提供するように努めなければならないことを盛り込むと同時に、個人情報保護法でどうしても引っ込み思案になりがちだった情報提供についても積極的にできるようにするということにしたわけであります。

 これによって、特定妊婦に関する情報提供を受けた市町村において、子育て世代包括支援センターに配置をされた保健師さんたちなどの専門職が家庭訪問を行う、あるいはアウトリーチによる支援がさまざまな形で実施をされるというふうに考えています。

 こうした取り組みによって、望まない妊娠をした女性に対する相談体制の整備を進めるとともに、特別養子縁組が子供の最善の利益になると認められる場合には積極的な支援が行われるように取り組んでまいりたいと思っていますし、望んだ妊娠についても、当然、孤立をしている妊婦さんあるいは若いお母さんがおられるわけでありますので、そういった方々への支援もしっかりやりたいというふうに思っているところでございます。

中野委員 大臣からさまざまな角度で答弁いただきました。しっかりと制度をつくり、これから自治体が取り組みをさらに進めていけるような支援もこれからしっかりやっていただきたいと改めてお願いを申し上げます。

 今回の法改正の際に、児童相談所の体制強化というものが非常に大きなテーマの一つでもございます。

 私は、実際に、児相で仕事をされている方々にも、いろいろな現場の声というものも伺ってまいりました。児童虐待防止法も制定をし、また、児童虐待の通報の電話、一八九、「いちはやく」、こういうダイヤルもできまして、通報件数というのが非常に増加の一途をたどっている。軽微なものも含めて、通報がかなり上がってきている。しかし、それを受ける肝心の児童相談所の体制というのは非常に脆弱なままである、あるいは、専門家の数も非常に不足をしていて、こういう体制の強化というのを図っていかないと、相談件数というのがどんどんふえていく中で、本当に深刻なケースというのにしっかり対応していけるのか、このような問題意識をいろいろな児相の方からやはり伺うわけでございます。

 厚生労働省におきましても、こうした児童相談所の体制強化というものについてはしっかりとプランを組まれてこれからやっていく、こういうことでございますけれども、具体的にどのような改善を今考えているのかということについて答弁いただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 お話ありましたように、児童相談所、児童虐待の相談対応件数は非常に増加をしております。十一年と比べて七倍、八倍という数字で、児童相談所は、そういう意味でいいますと、どこも非常にぱんぱんの状態ということで、非常に業務が増加をしているという状況がございます。

 もう一つは、実際のケースを見ますと、やはりさまざま困難なケースあるいは複雑なケースというのもふえておりまして、子供の心理面、あるいは健康、発達、それからお話ありましたように法律面での対応等々、量的にも質的にも専門的な知識に基づいた迅速かつ的確な対応というものが求められているところでございます。

 こういった状況を踏まえまして、昨年の末に子どもの貧困対策会議で決定されましたすくすくサポート・プロジェクトに基づきまして、児童相談所における専門職員の配置拡充あるいは資質の向上を図るために、本年四月二十五日に、今先生お話ありました児童相談所の強化プランというものを策定いたしました。

 具体的には、児童心理司、それから医師または保健師、スーパーバイザーといった専門職につきまして、その配置を、今回御提案申し上げております児童福祉法の改正によりまして、法律上に規定を明確に置きます。その上で、各職種ごとに配置基準の設定をする。これも、人口比だけではなくて、実際の虐待の相談対応件数でありますとか、そういうものをあわせた配置を行えるような基準を設定する。

 この前提で、平成三十一年度までに、児童福祉司を含めまして専門職種を全体として一千百二十名増員する。これは、去年、二十七年度の数字から比べますと約二六%の増ということで、非常に定員管理の厳しい中で地方自治体でこれだけの大幅な増員をするということで、この点につきましては交付税措置を行うわけですけれども、総務省さんにも最大限御協力いただきまして、御理解をいただきまして、こういった増員目標を定めまして、計画的に増員を図る。

 あわせまして、児童福祉司等の任用に当たりまして、研修の義務化を行うということで資質の向上を確保するといたしました。また、先ほどから御質問ありましたように、弁護士の配置につきましても法律の規定を置きます。それから、警察等関係機関との連携強化につきましても、警察その他関係機関の御協力を得て連携強化を行うような体制を行うということにいたしております。

 本件につきましては、専門職の配置についての交付税措置等、関係の機関にも多大な御協力をいただいて、児相の体制の強化というものを図りたいと思っております。まず、このプランを確実に達成していくということで、関係機関と協力をして必要な体制を整備して、児相の体制強化、お子さんの最善の利益の確保のために最大限努力をしてまいりたいと思っております。

中野委員 しっかりと強化プランというものがある、これをまずはしっかりやっていく、こういう御答弁でございましたので、しっかり後押しもさせていただきたいと思います。体制強化というのが何より大事だと思いますので、御対応よろしくお願い申し上げます。

 本法案におきましては、社会的養護について、しっかり考え方を優先順位も含めて示している、これは非常に大事な改正だというふうに思っております。

 公明党の児童虐待防止・社会的養護検討PTというPTで提言もさせていただきました。これは、どうしても今まで施設中心であった社会的養護を、やはり家庭あるいは家庭的な養護という流れにしていこう、こういう提言も以前させていただいておりまして、まさに今回の改正というのはこの流れに沿ったものである、このように考えております。

 他方で、児相のお話を伺ったときに少し気になりましたのが、今まで児童相談所というのはどうしても児童養護施設に預けてきたケースが多かったということで、やはり本当に現場の運用というのが、なかなか里親であるとかこういうものについて、児童相談所の方も余りなれていないし、受け入れの体制というのもそこまでしっかりしているのかどうか、こういう不安がありまして、考え方としては家庭養護、家庭的養護ということになっていても、実際の運用がなかなか現場で変わっていかないんじゃないか、こういう不安の声もあるわけでございます。

 里親委託優先の原則というものをしっかり徹底していく、そのためには児童相談所の体制強化ももちろん必要である、あわせて、里親、受け皿の体制への支援というのも今後しっかりと強化をしていく必要がある、このように考えておりますけれども、厚労省から答弁を求めたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生御指摘ありましたように、社会的養護が必要なお子さんたち、保護者のいないお子さんあるいは虐待を受けたお子さんということになりますが、できるだけ安定した、温かい家庭的な環境で養育するということが基本的には重要だと考えております。

 お話ありましたように、今般の法律改正、御提案しております児童福祉法の改正の中で、第三条の二というのを新設いたしました。

 ここで、国や地方公共団体は、児童が家庭において健やかに養育されるよう保護者を支援するということを基本に置きつつ、家庭における養育が困難な場合あるいは適当でない場合には、養子縁組、里親、あるいはファミリーホームといった、家庭に近い環境の中で養育をする、ここの委託をまず最優先、その上で、それが適当でない場合に、施設等における養護、その場合でもできるだけ小規模なケア単位での養育ということで、より家庭的環境に近いところで養育できるようにということで、いわば児童の養護についての優先順位といいますか、関係をきちんと法律上明記するということをいたしました。

 その上で、今お話ありましたように、現実の里親への委託というものを進めていくという観点から、まず、里親制度についてより広く国民に御理解いただくということで、広報啓発あるいは里親の開拓、それから、現実にお子さんと里親とのマッチング、あるいは委託した後の里親に対する訪問支援、最終的にはお子さんの自立支援、こういった、いわば里親で養育を受けているお子さん、そして養育をする里親に対する支援というものを一貫して行うということを、今般、都道府県の業務としてきちんと位置づけるということにいたしまして、この業務が確実に遂行できますように、先ほど申し上げましたような児童相談所強化プランで児相の体制を強化し、児相側できちんと取り組んでいただけるようにということを今回の改正に盛り込んだところでございます。

 あわせまして、里親の支援に関しましては、もちろん児相の支援ということもございますが、現実には、さまざまな知見や経験を有しておりますNPOでありますとか、児童養護施設の中にも里親支援を一生懸命やっている施設もございますので、そういった民間団体の力をかりて、こういったところを通じて里親の支援を行うということもできるようにということで、こういった委託についても可能にできるような規定を用意いたしました。これによりまして、児童相談所、里親、あるいは里親の団体、あるいは民間機関、こういったものができるだけ一体となって、継続的に、断片的でないような支援が行えるようにという体制を準備したところでございます。

 お話ありましたように、現実にそれが動くかどうかというのは非常に重要なことでございますので、これは児相あるいはNPO等々の協力も含めて、こういったものがきちんと現場で動くように、私どももさまざま財政面その他御支援を申し上げて、里親優先原則というものがきちんと現場で機能していくようにこれからも努力してまいりたいというふうに思っております。

    〔委員長退席、小松委員長代理着席〕

中野委員 よろしくお願い申し上げます。

 本法案におきまして、もう一つ非常に児童相談所で大事なことで、全ての中核市においてしっかり児童相談所が設置をできるように、支援の検討というものが中にございます。

 私の地元の兵庫県尼崎市も中核市でございまして、児童相談所はございません。ですので、県が設置して、隣の市にありますけれども、やはり相談件数は非常に多いわけでございまして、ただ、他方、市の方に、児童相談所、これから法律もできるし、設置をぜひしてほしい、こういうお願いをしますと、これは正直かなりハードルを感じているというところなのではないかな、こういう感触でございます。

 専門的な組織、人材の確保、あるいは施設、いろいろございますので、やはり国から、あるいは今設置している県からいろいろなサポートをしていただかないと、なかなか市独自に児童相談所をすぐにつくるということには、後押しがないとなかなか実現をしないのではないか、私はこのように感じておりまして、この点について、しっかりと市を後押しする、あるいはサポートする体制というのをしっかり検討していただきたい、このように思いますけれども、御答弁いただきます。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 中核市、現在、人口二十万以上ということで、平成二十八年四月一日時点で四十七ございます。

 中核市につきましては、現行法の規定上も、当該中核市が設置を希望する場合には、政令による指定を私どもがいたしまして設置をすることができる、一応道は開かれているということですが、実際に、今、中核市で設置をしていただいているのは二市、横須賀市と金沢市ということでございます。

 今回、中核市、特別区において児相を原則的には設置していただこうということで改正をするわけでございますが、実際に中核市の話を伺いますと、今先生お話ありましたように、やはり専門的な人材の確保ということと財政的な負担があるということで、なかなか難しいということがあるということは伺っております。

 今回、私どもは、人口の規模が大きい中核市あるいは特別区につきましては、やはり児相を中心とした支援体制というものをきちんととっていただくということで、できるだけ設置をしていただきたいと思っておりまして、検討規定を置いてございますが、約五年をかけて、全ての中核市、特別区において、希望すれば児相が設置できるようにということで、必要な支援を行ってまいりたいと思います。

 基本的には、やはり財政面の支援、それから専門職の確保ということを進めていくわけでございますが、実際に設置しておられる金沢市とか横須賀市のお話を聞きますと、設置する時点で、やはり、特に人目の支援、その瞬間は例えば県から人を支援してもらったりするわけなんですが、県の御協力がどうしても必要だということと、設置した後も、やはり継続的に児相が機能していくような支援が恐らく要るということが言われております。

 それから、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたが、入所措置だけではなくて、措置解除後の在宅支援でありますとか、あるいは措置に至らないお子さんたちの支援という意味でいいますと、在宅での支援というものをあわせて行うということが必要になります。そうしますと、これは当該児相の業務だけではなくて、他の施策との連携もございますので、都道府県あるいは近隣市町村と情報連携含めて連携体制をとっていくということも必要だということで、恐らく、金目、人目以外にもさまざまな支援が必要になるだろう。

 この点に関しては、今回この規定を置くに当たって中核市市長会とも随分議論いたしましたし、実際の、金沢市、横須賀市が設置をしたとき、設置してもうかれこれ十年ちょっとたつので、自立して児相が経営できるまでにどういった形でいろいろな課題があったかということを少しつぶさにお伺いを、今回もしましたが、さらにもうちょっと詳しく聞いて、こういった地方自治体の御意見も聞きながら、必要な支援をできるだけきめ細かくやっていくということで、五年の間に、希望するところには全て設置できるようにということで支援をしてまいりたいと思っております。

中野委員 やはり、児童相談所の体制強化という意味では、児童相談所そのものがふえるのが一番強化になりますので、ここの支援はぜひお願いをしたいと思います。

 続きまして、体罰の関係で少し質問をさせていただきます。

 私は、今回の法改正の中でも、個人的には本当はもう少し掘り下げられればよかったなという思いもあるんですけれども、今回、児童虐待防止法の十四条の規定が改正をされるということで、社会保障審議会の中でも、体罰など子供の心身への侵害のある罰というものは禁止をすべきじゃないか、こういう提言もなされたわけでございますので、やはり、こういうものはやってはいけないんだ、こういうような考えというのをしっかり示す必要があるんだと思っております。

 ただ、このとき常に議論になりますのが、民法に懲戒権という、八百二十二条というのがありまして、懲戒をする権利がある、これによって、児童虐待をするような方が、いや、これは虐待ではなくて懲戒だ、こういう主張をされるケースもあるやに伺っておりまして、この規定が体罰を許容しているんじゃないか、こういうような指摘もあるんです。

 まず、法務省にお伺いをしたいのが、法務省の懲戒権の解釈として、いわゆる体罰というものは認められない、体罰を許容しているものではない、こういう理解でいいのかどうか、答弁いただきたいというふうに思います。

    〔小松委員長代理退席、委員長着席〕

金子政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、民法には親権者による懲戒に関する規定がございますが、それによりますと、子に対する懲戒は、子の利益のために子の監護及び教育に必要な範囲内ですることができる、こうされております。

 そこで、いわゆる体罰というものが懲戒として認められる余地があるのかどうかという問題ですが、これは、体罰というものをどのように定義するかということにかかっているために、一概に申し上げることが困難なところがございます。

 仮に、子に対する有形力の行使であればどんな軽いものでも体罰だということになりますと、それが懲戒として許容されることが一切ないかというと、そうは言い切れないように思います。結局、それが、子の利益のために、かつ、子の監護及び教育上必要なものと認められるものかどうかによるということになります。

 もっとも、こうした懲戒として許される範囲というのは、社会と時代の健全な社会常識により判断されることになると考えられますので、児童虐待が社会問題として深刻化しているような現状を踏まえますと、その範囲は相当程度限定されていくことになるのではないかというふうに考えております。

中野委員 法務省の見解は、非常にわかりにくい部分もございまして、社会通念上である程度範囲が変わってくるんじゃないかというふうなことでもあります。もちろん、有形力の行使というのは、子供が道に飛び出すときに腕をがっとつかまえるのも、言ってしまえば有形力の行使でありますので、かなり広い概念ではあるんですけれども、ただ、先ほどの答弁を聞いて思いますのは、児童虐待というものが、体罰がだめだという社会通念が広まってくれば、それはもちろん懲戒権の範囲ではなくなるんだろう、こういうふうな印象を受けているわけでございます。

 個人的なことを言えば、懲戒権の根拠規定そのものが本当に必要なのかという議論もやはり将来的にしていかないといけない、こういう思いもございます。もちろん、さまざまな意見がありますので、現段階において直ちにということではないのかもしれませんけれども、そういうことを検討していく必要が将来的にあるのではないかという思いを持っております。

 そういう意味では、厚労省としての意見を伺いたいんですけれども、しつけを名目とした体罰というものは行ってはならないんだ、こういう方針というものをやはり厚労省としてはしっかりと示さないといけないんじゃないか、私はこのように考えますけれども、これについても答弁いただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘の点については、今回、規定を設けるに当たって、専門委員会でもかなりこれは議論がありましたし、私どもが今回この児童虐待防止法に条文を入れるに当たりましても、中でも随分議論しましたし、これはもう、それこそ大臣も一緒になって、どういう規定ぶりができるんだろうかということはかなり議論いたしました。法務省さんの今の御答弁もございましたので、法務省さんとも相談しながら今の規定の仕方をしたわけでございます。

 現行の虐待防止法は何が書いてあるかと申し上げますと、これは御案内のように、「児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。」ということで、暴行罪、傷害罪といったようなところとの関係での規定が現在の児童虐待防止法では置かれているということでございますが、私どもとしては、お話ありましたように、児童虐待、事件が後を絶たないわけですが、現場の意見を聞きますと、これはしつけだということで、しつけを名目にして児童虐待を行うというケースが後を絶たないということになりますと、これはやはりこういったことを一定抑制していくということは必要だということを考えました。

 かつ、今お話ありましたように、体罰一般については、やはり社会通念との関係、あるいはさまざまな考え方、現場の子供の年齢との関係もございますので、今回、いろいろ考えまして、児童虐待防止法上、児童のしつけに関しては、監護、教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならないという規定を置くという形で、いわばしつけに関しての体罰の行使については抑制的な対応をしてもらう、あるいはその前提で現場の児相の職員にも対応してもらうということができるような規定を置いたということでございます。

 実は、その背景には、今ちょっと答弁ございましたが、二十三年に民法の改正がありまして、いわゆる監護権の行使、監護、教育の権利、いわゆる親の親権のところで、親権を行う者は、子の利益のためにこの権利があるというような改正が行われたという経緯もございますので、より子供の利益というものを前面に出した形で、しつけを名目とした児童虐待、児童に対する有形力の行使について抑制的に対応するということで規定を置きました。

 その前提で、では体罰そのものを全面的に禁止するということができるかという、これも我々の中で随分議論いたしましたが、やはり親が子を養育するという行為について法律上どこまでどういうふうに規定をするかということ、それから今の民法上の解釈の問題、それから、やはり体罰の範囲をかなりきちんと議論していかないと全面的に禁止ができるかどうかということはなかなか難しいので、そういったことも考えて、言ってみればぎりぎり書けるところまでということで今回の規定を置いたものでございます。

 その上ででございますけれども、仮に虐待には当たらないというような行為であったとしても、子供に対する有形力の行使ということについては、やはり子供の精神あるいは発達にさまざま悪影響を及ぼし得る可能性があるものであるという意味では、基本的には不適切なものだというふうに考えておりますので、法律上どういう禁止規定を置くかということとは別に、やはり子供に対するそういった体罰といいますか有形力の行使につきましては基本的には望ましくないという考え方を、これはいわば子供を育てるという過程での親御さんの心構えといいますかあり方として、やはりそういった考え方が親御さんの間にも一定浸透していけるようにということで、これは児童虐待だけではなくて、子育て支援全体の施策の中でそういった方向性をきちんと出していくということを通じて今回の法律改正の規定を実効ならしめるということを考えてまいりたいと思っております。

中野委員 そうした取り組みを通じて、やはり将来的な課題として本当にこの規定をどう考えていくのか、こういうことを引き続き検討していかないといけない問題だというふうに私は思っておりますので、またぜひよろしくお願いします。

 ちょっと時間がなくなりまして、済みません、文科省、本当は来ていただいておったんですけれども、最後に問題意識だけちょっとお伝えしますと、社会的養護を受けている、施設に入られている方、進学率を見ると非常に低いわけでありますね。大学等に行ける方が一割程度しかいないということで、これはやはり、厚労省側でもしっかりと支援をしていただいているんですけれども、文科省、いわゆる教育の側からも、給付的奨学金あるいは給付的な措置、こういうものも含めて支援というものを考えていくべきではないのかということでございます。

 時間もございませんので答弁は結構でございますけれども、問題意識としてはしっかり伝えさせていただいて、また御検討いただければと思いますので、よろしくお願いします。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。

渡辺委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 民進党の初鹿明博です。

 きょうは児童福祉法の質疑でありますが、質疑に入る前に一言申し上げさせていただきたいと思います。

 我々民進党は、この間ずっと、保育士の処遇改善法案の審議に入っていただきたいということを要求してまいりました。御承知のとおり、三月の後半にこの法案を出して、もう一カ月以上、二カ月近くがたとうとしているわけであります。与党の皆様方も待機児童の問題は非常に重要だということは認識をしている、そして、安倍総理もそのような発言をしているわけであります。そうした中で、現状、目の前に出ているこの議員立法を審議しない理由は私は全くないと思います。

 そして、この児童福祉法とあわせて質疑をするということも、内々でですが、約束もあったわけであります。委員長としては本当はやりたかったのかもしれませんけれども、与党の側のさまざまな力関係でこういうことになっているということを非常に私は遺憾に思います。

 そして、きょうの委員会の運営ですけれども、この保育士の法案の扱いがなかなか決まらなかったこともあり、趣旨説明をやって、質疑をその日にやって、そして採決に至る、これは異例ですよ。異例中の異例です。

 このような委員会運営が前例にならないように、丁寧な運営を今後していただきますように、まず委員長に、冒頭、お願いをさせていただきます。

渡辺委員長 この問題につきましては、まず、理事懇でたび重なる協議をしてまいりました。

 まず、各会派とも、この児童福祉法の重要性については、全てが思いが一致しているというふうに判断をさせていただきました。そのために、保育士の処遇改善につきましてはお互いの協議が調わなかったということでございましたので、私の方で、今回は、児童福祉法のお経読みから、そしてまた質疑終局、採決まで判断をさせていただいたところでございますが、今後につきましても、引き続き、やはり筆頭間協議が私にとりましても大変重要な大前提だというふうに思っておりますので、そういった円滑な運営ができるような環境整備をしっかりと進めていきたい、そのように思っておりますので、よろしくどうぞお願いいたします。

初鹿委員 ぜひ、まだこの国会、委員会は三回程度はあると思いますので、その中で保育士の法案をしっかり審議するように、審議入りするようにお願いをさせていただきます。

 それでは、児童福祉法の中身の方に移らせていただきます。

 先ほどからもずっとお話がありますとおり、今回の改正は、深刻な児童虐待について、早期発見、発生予防から、また自立支援まで、一貫して支援の対策を強化していく、そういう中身でありまして、我々民進党としても、しっかりこの法案を成立させて、子供たちの命を守っていきたいという思いを持っております。そのことは共有をしていると思います。

 その中で、何点か、まだまだ十分とは言えない部分、または不明確な部分がありますので、御指摘をさせていただきたいと思います。

 児童虐待というのは、やはり早く発見をされるということが非常に重要であるわけで、さまざまなそういう機会に遭遇をするような職種の方との連携というものは非常に重要だと思います。

 その中で、先ほど比嘉先生もお話を出しておりましたが、歯科医師の役割というのは非常に重要だと思うんです。数年前、私の地元の江戸川区で、岡本海渡君というお子さんが虐待死をするという事件が起こりました。そのときに、最初に通報したのは歯科医師の方でありました。

 このように、歯医者さんが、歯科医師が、児童が虐待をされているのではないか、もしくはネグレクトに遭っているのではないかということを発見するということが非常に多くあるのが現状なんだというふうに思います。

 ところが、児童虐待防止法についても、児童福祉法についても、さまざまな職種の列挙がされているわけですが、例えば、児童虐待防止法の四条、六条、また、児童福祉法では第二十一条の十の五でいろいろな業種が列挙されていますけれども、その中に、医師、看護師等は含まれておりますが、歯科医師がきちんと明記をされていなくて、「その他」というところに含まれてしまっております。

 障害者の虐待防止法については、議員立法でつくられた、成立した当初、二〇一二年ですけれども、当時、私は民主党のこの法案の与野党協議の担当をしておりまして、当時の与党の自民党が今の文科大臣の馳さんで、公明党が高木美智代さんだったわけですけれども、協議の中で、歯科医師を障害者虐待防止法では明記をすることとしまして、明記がされております。

 その際のやりとりの中で、児童虐待防止法もやはり歯科医師をきちんと特出しした方がいいんじゃないかという議論がありまして、それは改正のときに必ずやろうという約束が内々であったわけですが、残念ながら、今回、閣法という形で出てきた結果、歯科医師は入らずに、そのままになってしまっているということであります。

 そこで、まずお伺いさせていただきますが、「その他」で読み込んでいるというのは十分わかっているんですけれども、やはり医師とか弁護士とか、そういう人よりも発見をする可能性が非常に高いわけですから、きちんと明記をした方が好ましい、現状を的確にあらわすのではないかと私は思いますので、歯科医師をきちんと明記するように修正をできないのか、お伺いをさせていただきます。

塩崎国務大臣 児童虐待を受けている子供さんは、先ほど比嘉先生からも御指摘があったとおり、不規則な生活習慣ということで、親がちゃんと歯ブラシで歯を磨かせていないということがあって、虫歯が多いというような傾向があることはよくわかっているわけでございまして、このため、児童虐待の兆しとか疑いを早期に発見して適切な保護あるいは指導につなげるという観点から、歯科医師の先生方の協力というのは極めて大事だということは我々も深く認識をしております。

 他方で、御指摘の各規定は、児童虐待の発生予防とか、あるいは早期発見、迅速な、そして的確な情報収集を図るというものであるわけでございますけれども、これを実効ある形で進めるために、子供の医療、福祉、教育といった分野ごとに最も関係が深い専門職を例示しているということでございまして、法律上、歯科医師等の他の専門職は「その他児童の福祉に職務上関係のある者」などに含まれているものと理解をしておりまして、明示的な規定はしていないけれども、その重要性には何ら変わりはないというふうに私どもは理解をしております。

 法案が成立をした際には、これらの規定の対象に歯科医師が含まれることを通知等において明確化してまいりたい、このように考えているところでございます。

初鹿委員 そう答えざるを得ないのかなとは思いながらも、聞いていて、重要だと言いながら「その他」に含まれるというのは、「その他」にされている側の立場に立つとどうなのかなということを思いますので、私は修正をするべきだということをまず申し上げさせていただきたいと思います。

 では、次の質問に移ります。

 先ほど、中野先生から懲戒権と体罰の関係についてやりとりがありましたので、そのやりとりについて改めて述べることはいたしませんけれども、私も、聞いていてやはりすとんと落ちないんですよね。体罰を一部認めるようなことを言っているわけですよ。体罰もいろいろある、有形力の行使の中には子供の利益につながることもあるかのようなことを言うんですが、子供の利益につながる有形力の行使というのはあるんですか。本当にあると思っているんですか。

 口で言ってわからないから、たたいてわからせる、口で言ってわからないことは、たたいてもわかりませんよ。しつけといいながら、結局、親の、大人の側の感情を落ちつかせるために子供に対して有形力の行使をする、これは体罰だと私は思いますよ。子供にとっては全く利益にならないと思います。

 そこで、きょうは法務省の盛山副大臣にお越しいただいておりますが、先ほどもお答えになっていましたけれども、法務省の民事局長が平成十二年の答弁の中で、懲戒権の中には体罰も含まれるという答弁をしている、それがいまだに、十六年たっても引き継がれているというのが現状なわけで、国際的にはやはり恥ずかしいと私は思うんですよ。恥ずかしいと思いますよ、子供の利益になる体罰が我が国ではありますと国会の中で正式に表明しているわけですから。

 私は、この答弁をまずは取り消しをして、懲戒権の中に体罰は含まれないとはっきりすべきだと思いますが、副大臣、いかがですか。

盛山副大臣 なかなか、この懲戒権という解釈は大変難しいと我々も考えております。

 現行制度のもとでは、子に対する懲戒権は、子の利益のために、子の監護及び教育に必要な範囲内で行使することができると民法上されているところでありますが、懲戒権の行使として体罰が許容される場合があるかどうか、これは体罰の定義をどのように捉えるかによることになるため、両者の関係を一概に申し上げることは困難であると思います。

 仮に、体罰を子に対する有形力の行使と捉えた場合には、体罰が懲戒権の範囲に含まれることはないと断定することは困難であり、それが懲戒として許容されるかどうかは、それが子の利益のために行使されたものかどうか、子の監護及び教育上必要なものと認められるかどうかによるものと考えられます。

 もっとも、有形力の行使が懲戒として許容される範囲は、社会と時代の健全な社会常識により判断されることになるものと考えられるところ、児童虐待が社会問題として深刻化している現状を踏まえますと、その範囲は相当程度限定されることになるものと我々は考えております。

初鹿委員 では、副大臣、具体例を示してください。子の利益になる有形力の行使とはどういうものがあるのか、具体例を今示してください。

盛山副大臣 それは個々のケースに応じて判断することになると思います。

初鹿委員 では、個々のケースということですが、副大臣が考える子の利益になる有形力の行使を示していただけませんか。こういう場合は子の利益になっていますと。

盛山副大臣 我々としては、個々のケースが、いろいろな環境を含めて、それが当たるか当たらないかということになろうかと思いますので、一般論としてお答えするというのはなかなか難しいな、そんなふうに思います。

初鹿委員 答えられないわけですね。具体的なことを示せないで、何となく、子の利益になる有形力の行使というのもあるんじゃないか、そう思っているだけですよ。

 資料を一枚めくっていただきたいんですが、こちらに児童の権利委員会からの日本に対する審査の最終見解をお示しさせていただいております。

 きょうは黄川田外務大臣政務官に来ていただいておりますが、ここを見てください。中略をして、「体罰」、四十七、四十八のところで何が書いてあるかというと、四十八の「委員会は、締約国に対し以下を強く勧告する」、(a)で何と書かれているか。「家庭及びその代替的監護環境を含む全ての環境における、体罰及び児童の品位を下げるあらゆる形態の扱いを法律により明示的に禁止すること」と書かれているわけですよ。法律により明示的に禁止することを締約国に求めているわけですよ。

 我が国は児童の権利条約の締約国ですよね。そして、今回の児童福祉法の改正の第一条に何て書いてあるんですか。この児童の権利条約の精神にのっとりと書いてあるわけです。それでいて法務省は、体罰は懲戒権の中に含まれる、一部は含まれるかもしれない、そういう答弁をしている。

 外務大臣政務官の黄川田さんにお伺いしますが、外務省として、今の法務省の見解は認められるんですか、あのような答弁でこの勧告に応えていると言えると思いますか。お答えください。

黄川田大臣政務官 児童の権利委員会が二〇一〇年に我が国について示した最終見解においては、民法等が体罰への許容性について不明確であることを懸念しつつ、全ての環境において体罰の禁止を効果的に行うことを勧告していることは承知しております。

 同勧告に法的拘束力はありませんが、我が国としては、同委員会の勧告については、関係省庁で検討の上、適切に対応していくとの立場であり、また、我が国は、その後、二〇一一年に、児童虐待防止対策として、民法の関連規定を改正しております。

 その上で申し上げれば、我が国の民法は、親権者が子の監護等に必要な範囲内で子を懲戒することができるものとしておりますが、これは児童の権利委員会から指摘されているような体罰とは異なる概念であると承知しております。また、親権者が許容される範囲を逸脱して子に懲戒を加えたときは親権喪失や親権停止等の原因となり得るほか、懲戒権の行使が社会通念上相当な範囲を超える場合は、刑法上、暴行罪、傷害罪、逮捕監禁罪等で処罰されることになると承知をしております。

 その意味で、我が国において、児童権利委員会から指摘されているような体罰が一般に許容されているということは全くないと理解しており、このような我が国の状況は、同最終見解と矛盾するものではないと考えております。

 引き続き、このような我が国の状況について、児童の権利委員会に対してしっかりと説明してまいりたいと考えております。

初鹿委員 そう答えるなら、やはり法務省は、体罰は懲戒権の中に一部でも認められるようなことを言うべきじゃないんじゃないですか。今の外務省と法務省の言っていることは明らかに矛盾していると思いますよ。世界の国から見て、法務省の副大臣が体罰をはっきりと禁止すると言わないでおいて、それで、ここに書いてある、法律で明示しろということに応えているとは誰も思わないと思いますよ。

 今後は厚生労働省も、児童虐待とかの国際会議とかに出ていったときに、この問題を指摘されてどう答えるんですか。体罰は有形力の行使だと考えたら、子供の利益になることもあるかもしれないから個々に考えなければいけない、そうやって法務省は答えちゃっているわけですよ。私はこれは明らかにおかしいと思うんですよ。

 外務省もしっかりしてくださいよ。ここはきちんと法務省に対して、この勧告に従うために適切に対応していくことを方針としているんだから、法務省はこの平成十二年の答弁を撤回するということを答えていただかないと、このとおりにはならないと思います。

 法務副大臣、もう一回お答えいただきたいんですが、今までのやりとりを聞いて、この答弁を撤回しない気持ちは変わりませんか。

盛山副大臣 先ほどの答弁を今ここで撤回すべき理由は考えられません。

初鹿委員 私は明らかに矛盾をしていると思います。政府の、外務省と法務省の立場、そして、今回、法律で児童の権利条約の精神にのっとりと書いてあることと全く矛盾していると思いますので、法務省には再考をお願いします。

 この問題にだけかかわっていると時間がなくなるので次の質問に移りますが、ここは厳しく言わせていただきます。

 では、時間もあると思いますので、副大臣、政務官、ここで退席して結構でございます。

 では、次に、自立援助ホームについてお伺いいたします。

 今回の改正案で、二十二歳の年度末まで大学等就学中の者は自立援助ホームに居続けてもいい、対象に追加となるということでありました。これは、一歩前進、まあ、半歩前進ぐらいかなと思いますが、やはり学校に通っている人だけに限定をするというのはいかがなものかと言わざるを得ないですね。

 では、場合によって、二十を超えて仕事にも全くついていない、また、ついていたとしてもアルバイト程度でとても自立ができない、そういう人も、対象外だから自立援助ホームから出ていってくださいという扱いをするんですか。いかがですか。

塩崎国務大臣 自立援助ホームで生活をしている方のうちで就学している方については、就職をしている方とは異なって、一定程度の収入を得ることが難しい、二十歳到達時に退所いただくこととすると学業の継続に悪影響を及ぼす懸念がある。このため、今回の法案によって、二十歳に達する前から入所している方のうちで大学等に就学中の方については、最長で四年制大学を卒業する時点まで援助することが可能となるように、二十二歳の年度末まで入所できることとするものとしたわけであります。

 また、自立援助ホームに限らず、児童養護施設等に入所していた方についても、御指摘のような場合も含めて、二十歳到達後も自立に向けた支援が必要な場合には二十二歳の年度末まで引き続き支援を受けることができるような事業に、つまり、予算事業として検討するということとしているわけでございまして、確かに、人それぞれ、置かれた状況や、それまでの、二十になるときまでの、どういう家庭環境で育ってきたか、どういう虐待を受けてきたかなどによって、いろいろなケースがあると思うんです。

 我々は、今回の法改正の議論をする際には、イギリスではコネクションズというのは二十五歳まで場合によってちゃんと対象とするということになっているわけでありますが、いろいろ議論があって、措置という概念が、では二十五までできるかということになると、なかなかこれもそう簡単じゃない、利用という制度があったりするものですから。

 しかし、実質的には、必要な方にはやはり引き続いて、児童養護施設にしても自立援助ホームにしても、使えるような形になるように予算措置でカバーしていこうじゃないか、こういうことでございますので、半歩前進と言わずに、一歩前進と言っていただきたいというふうに思います。

初鹿委員 つまり、そのまま自立援助ホームから出ていけということではなくて、措置ではないけれども一定の財政支援をしていくということの理解でよろしいということですね。

 今、現状でも、二十を超えてなかなかひとり暮らしをするのが困難な場合、そのまま住み続けているのを施設の側がカバーをしているというケースもあるわけですよね。それを、施設頼みではなくて、きちんと支援をする、そういう理解でよろしいということで、ちょっともう一回確認させてください。

塩崎国務大臣 ですから、自立援助ホームだけではなくて、児童養護施設のままでいかれる方も、今は二十まで大丈夫ですけれども、二十二の年度の終わりまでということで支援をしていくということを予算事業でやっていこうじゃないか、こういうことであります。

初鹿委員 ぜひそこはしっかり行っていただきたいと思います。

 やはりいろいろな支援の中で、例えば就労の支援だとか、いろいろな支援がある中で、住まいというのは一番大切で、住まいが不安定であるとやはりその後の生活環境がどんどん崩れていってしまうので、安心して暮らせる、住み続けられるというものをしっかり確保していくことが重要だと思いますので、ぜひその点をお考えになっていただき、対策をとっていただきたいと思います。

 では、次に、今回の法改正で、特別区の児童相談所の設置ができるということになります。私も、二十三区、江戸川区の選挙区でありますので、これは非常に歓迎をしておりますし、地元の自治体も非常に喜んでおります。

 ところが、一つ懸念をすることが、まあ、何点かあるんですが、そのうちの一つ、一番は、財政的な支援がいただけるのかどうかということなんです。

 児童相談所については、地方交付税措置ということでありますよね。東京都は交付税不交付団体でありますから、特別区が児童相談所を設置した場合には、国から財政的な支援は得られないということでいいわけですよね。得られないわけですよね。

塩崎国務大臣 不交付団体の場合のケースをおっしゃっておられるわけでありますけれども、確かに、新たに特別区が児童相談所を設置する場合、例えば専門職の確保とか、こういったときに、特に一時保護所の整備費などの財政面がかさむということで、これが課題になるわけでございます。

 確かに、地方交付税は不交付団体ではありますけれども、例えば、費用がかさむ一時保護所の整備については、国庫補助金の活用に加えて、例えば複数の特別区が共同で設置をするとか、そういうことも考えられるわけであります。

 改正案では、政府は、施行後五年を目途として、希望する全ての特別区が児童相談所を設置できるように必要な支援を行うこととしており、特別区の意見も聞きながら、人的体制の構築を含めて、具体的な支援の内容を検討していくということで、実は私は、中核市と特別区は、自治事務といえども、国会の一致した考え方があれば、必置ということでいくべきじゃないかということを申し上げておったわけであります。しかし、中核市やあるいは二十三区の皆さん方から必ず出てくるのは、やはり、財政的に支援をちゃんとしてくれるのか、人的なものについても支援するのか、こういうことでありましたが、今申し上げたとおり、政府として、支援の内容を、今後五年間の間にしっかりとやっていくということをこれから詰めていくということでございます。

初鹿委員 ぜひしっかり考えていただきたいと思うんです。

 特に、一番最後の資料を見ていただきたいんですが、二十三区というのは、いつも一くくりに、特別区だから財政的に恵まれているだろうという見方をされるんですけれども、やはり私の住んでいる江戸川区などの周辺の区と真ん中の区とでは全く財政力が違うわけですよ。そして、財政力の厳しい区ほど、児童相談所などの相談件数というのは多いんですね。

 見てください。私の江戸川区、ちょっと細かいんですが、江東が児童相談所なんですけれども、そこの江戸川区というところ、千四百十八件もあるわけですよ。同じぐらいの人口規模の練馬区、その上のところですが、九十一件ですよ。こんなに違うんですよ。財政力の強いところでいうと、例えば中央区とか港区とか、港区も二百八十五件です、渋谷区も二百四十二件。だから、七倍とか、それぐらい違うわけですよ。

 それで、二十三区だから同じですねといって、不交付団体だから国の財政支援はありませんよと言われると、我々の区のような、支援が必要な人が多いところほど厳しい厳しい状況になっていくということは、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 加えて、もう一点ですけれども、特別区だけに限らず、中核市も含めて、児童相談所の設置が進む、これは私も非常に望ましいことだと思うんですが、問題は、やはり職員の質が確保できるか、また、量も、きちんと専門的な知識のある職員が確保できるかというのが重要になってくると思います。

 この職員の研修体制をどのようにつくっていくのかということと、あわせて、西側の自治体の方から言わせると、研修センターが横浜にしかなくて、しかも、非常に参加希望が多くて、申し込んでも断られる。この研修の拠点をもう少しふやせないか、特に西側にもふやせないかということが、多分、厚労省にもしばしば言われていると思いますので、この二点についてお答えをいただきたいと思います。

とかしき副大臣 研修センターのことについてお答えさせていただきます。

 今、児童相談所には、相談対応件数がすごく増加しておりまして、職員の専門性の強化が求められております。

 ということで、平成十三年度から、横浜市に子どもの虹情報研修センターを設置させていただきまして、新任の児童相談所長の研修、あと、児童福祉司への指導を行うスーパーバイザーの研修などを行わせていただいております。

 今回の改正案では、職員の資質を確保するために、児童福祉司とスーパーバイザーに研修の受講を義務づけるということと、社会福祉主事が児童福祉司として任用される場合には、国が定める講習会の課程の修了を要件とするということとさせていただいております。

 従来よりも研修の質をかなり担保していきたいということで、やはり研修を受けやすくするというのはすごく大切であるというふうに考えております。ということで、研修の内容とあわせて、研修の実態、体制をどうしていったらいいのか、その向上を、御指摘のように、検討していきたい、このように考えております。

初鹿委員 時間が来てしまったのでここで終わりにいたしますが、拠点も、一カ所じゃなくて、やはり西側の人たちにも配慮をするようにぜひ検討いただきたいと思います。

 質問したいことがまだ残っていたんですが、次回に回させていただきます。

 どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 本日は、貴重な審議のお時間、きょう一日で採決まで行くという、本当に短時間になってしまって残念なのですが、でも、その貴重なお時間の中をいただきまして、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 今回の児童福祉法の改正は、非常に大きな改正であろうと思います。先ほど来の塩崎大臣の御答弁をお聞きいたしましても、まず、子供の権利ということが法文に明記された、これはかつてない大改正でありますし、今ほど初鹿議員がお取り上げになっている、例えば子供への暴力、それが虐待なのかあるいはしつけなのかということ一つをとっても、実は、今回の法改正の二条には子供の意見表明権というものも担保されておりまして、私は深い論議が必要であると思います。

 特に、小児科の現場におりますと、ほとんどの体罰がしつけというふうに親御さんは思ってやっている。しかし、子供は親を本当に大好きですから、その親から与えられるプレッシャーの大きさ、そのことによって自分を本当に価値のないものと思ってしまう傷の深さなど、私は、こうした場できちんと審議され、いろいろな参考人の御意見も聞いて、先ほどの体罰一つ、もっと慎重にやりとりをしたら、きっと子供の本来のウエルビーイング、よりよき生を全うしてもらうために役立つのではないかなと思いながら聞いておりました。

 委員長にあっては、今回、事の運びの中で、短時間できょうこの審議が終わるということには、本来、お気持ち的にはいろいろな思いがあると思いますので、重ねて、子供の権利、子供の福祉という観点からさまざまな審議が引き続いていきますよう、これは冒頭、お願いを申し上げます。よろしくお願いいたします。

 そこで、質問に移らせていただきますが、今回の法改正は、一条に子供の権利、また二条で子供の意見表明を扱い、並びに、三条というところでは家庭的養育というものを大きく取り上げております。

 従来の児童福祉法の中でも、なるべく施設よりも本来の家庭にという流れはあったと思うのですが、今回、三条に明記されて、家庭的養育ということが方向性として位置づけられた。

 さて、塩崎大臣にあっては、この家庭的養育は一体何がその柱というか、考えの柱であるとお思いであるかについて、お尋ねをいたします。

塩崎国務大臣 平成二十三年の七月に「社会的養護の課題と将来像」というのがございました。これまでは、社会的養護の問題については、これをベースにビジョンとして扱って、将来的にどうするかということを考えてきたわけでありますが、正直、私は、今回の改正に基づいて、このときのビジョンを全面的に書きかえないといけないというふうに考えています。それは何かといいますと、家庭養護と家庭的養護の使い方が混乱をしているということで、これをきっちり整理しようということであります。

 実は、例えばドイツでは、法律ではございませんけれども、就学前の施設入所はしないという方針であります。イギリスに至っては、小学校の六年生までは施設には入れない、こういうことが原則となっているわけでありまして、そこで、今回、この三条の二でもって、三つに書き分けました。

 まず第一に、「児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう、」つまり、これは本当の生みの親の家庭において心身ともに健やかに養育、つまり、家庭養育の原型であります。

 それがかなわない場合には、「家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育」、これには、私ども、後で通知で明確にしようと思っていますが、特別養子縁組など養子縁組、そして里親、そしてファミリーホーム。つまり、朝、親と称する人は、家から出ていって、出勤をして、どこかにお勤めに行く、それで夕方帰ってくる。

 それに対して、家庭的養護というのは、先ほどの「課題と将来像」の中では、家庭的養護というのは実は里親まで入っています。しかし、それは違うだろうということで、家庭的養護というのは家庭養護ではないという意味ですので、施設の場合の小規模などについてからが家庭的養護というふうに考えようじゃないかということで、家庭的環境と言っているのは、むしろ、職員が朝来る、そして夕方いなくなる、もちろん泊まりの方もおられますけれども、子供から見たらそういう世界として、峻別をしようということでつくり直したわけであります。

 したがって、これから、私どもとしては、新たな社会的養育のあり方に関する検討チームをつくって、この「課題と将来像」をもう一回ゼロから考え直していこうじゃないか、こんなふうに考えているわけでございます。

 私どもとして、今申し上げた原型が三条の二というところにあって、やはり特定の大人との愛着関係のもとで養育されること、これは一番は本当の親であり、そして、それがかなわないときには養子あるいは里親ということで、自己の存在を受け入れられているというような安心感の中で、自己肯定感を育むということができることが大事だということであり、また、家庭生活の中で人との適切な関係の築き方を学んだり、身近な地域社会の中で必要な社会性を養うとともに、やはり、豊かな生活体験を通じて、言ってみれば生活技術、生活をどう自分でちゃんと築き上げていくかという技術を獲得することができるということを大事に考えて、今のような考え方に整理をし直すということをやらせていただいたということでございます。

阿部委員 大臣の思いのこもった御答弁をありがとうございます。

 私がこの家庭ということを考えますと、恐らく三つの機能を持っていると思います。

 一つは、子供が育つ場として、誰かとの愛着関係、特に濃厚な愛着関係をアタッチメント、つくっていく。それから、大臣がおっしゃった、そこに帰ってくる、帰巣といいますが、巣ですね、一つの守られた場としてそこに帰ってくるようなものがある。そして三つ目は、ここの法文では継続性という言葉で使われておりますが、パーマネンシーという言葉で言われていて、その状態がずっと続いていくという。

 今、御家庭は離婚されたりいろいろありますけれども、でも、子供にとっては自分の守られる場が続いていくんだという思いがとても重要で、その意味において、大臣の御答弁にあったように、これからの子供の社会的養護に、特に特別養子縁組など、里親もお願いするところですが、それよりもさらに一歩進んで、養子縁組をされて、その関係が子供にとっても親御さんにとっても続いていく、そういう思いが持てるような仕組みというのは私は大変重要ですし、大臣がお示しになったイギリスやドイツに比べて、日本がそこはおくれておるというのは実態であります。

 実は、この点に関して、与党でも議員立法をずっと準備されている野田さん、遠山さんなどおられますし、また、私の所属する民進党でも、ぜひ子供たちの最善の養育のために特別養子縁組を何とか実現していきたいという思いを持っておりますので、また大臣のお力もかりながら、そうしたものが法としても準備されていくことを心から願うものです。

 その中にあって、特に特別養子縁組などを考えますと、冒頭の比嘉さんがお取り上げですが、望まぬ妊娠、望まぬというか予期せぬ妊娠、若年の妊娠とか、あるいは暴行を受けたその結果の妊娠などで、お子さんが生まれる前から実はフォローされないと、臨月間際になって、おうちでお手洗いに産み落として赤ちゃんが死んじゃうとか、コインロッカーに入れて亡くなっちゃうとか、そういう事件が後を絶ちません。

 そして、特定妊婦という言葉で最近言われますが、その方たちの支援にかかわる法文は、母子保健法の中には明記をされましたけれども、実は私は、今回の児童福祉法の改正の中に、特に先ほど大臣にお示しした、また御答弁でもあった三条の二の中に、支援される対象として、児童及びその保護者だけでなく、妊産婦のことも入れていただきたい。

 例えば、読み上げさせていただきますと、児童の保護者及び妊産婦を支援しなければならないというふうに児童福祉法の中にも、児童福祉法の方から妊産婦に手を差し伸べるような仕組みが必要になっていると私は思います。

 大臣も御承知のように、従来の児童相談所は、もし妊産婦さんが声をかけたとしても、生まれてからおいでというふうに言われているのが現状です。赤ちゃんはおなかにまだいる、もちろん元気に生まれてくるかどうかわからない、だけれども、元気に生まれるためにも支援が必要だし、そして、それは単に母子保健という範疇だけでなく、児童福祉というところの視野の中にもこうした妊産婦さんへの支援を組み入れた法改正にしていただきたいと思いますが、大臣にあってはいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 おっしゃるとおり、今回、特別養子縁組を児相の業務に位置づけるということは、当然、望まない妊娠がほとんどでしょうけれども、その段階からしっかり見ていかなければ児相は特別養子縁組のことなんかはできないわけで、一番早ければ、生まれた途端に特別養子縁組に委ねるということになるわけでありますから、事実上、私どもとしては、妊産婦についても児相はこれからはしっかりと見ていかなきゃいけないというふうに考えております。

 三条の三で、「国は、市町村及び都道府県の行うこの法律に基づく児童の福祉に関する業務が適正かつ円滑に行われるよう、児童が適切に養育される体制の確保に関する施策、市町村及び都道府県に対する助言及び情報の提供その他の必要な各般の措置を講じなければならない。」という、国のやるべきことということで、この業務に妊産婦の支援が含まれるということを広い意味で私どもとしては解釈をしているところでございます。おっしゃっている、妊産婦をちゃんと児童福祉法でも対象とすべしというのは、私どもの考え方と同じゅうするものだというふうに思っております。

阿部委員 実は、子供の死亡で一番多いのは、産み落としたその日なんですね。ここがはざまにおっこちてしまって、本当にたくさんの救える命が亡くなっていますから、私としてはぜひ児童福祉法の中にも明記をしていただきたいと望むものです。

 次いで、十一条一項二号というところで、今の特別養子縁組について書き込まれておりますが、ここにも同様に、児童の実方の父母を含んだ支援というふうにはなっておりますが、これはあくまで生まれた後で、すき間を埋めるものではないので、「その他の児童を養子とする養子縁組に関する者」というところ、ここにも、特定妊婦を含む、これをぜひ明記していただきたい。

 これは私が、子供を死なせたくないという思いで、特定妊婦ということが養子縁組の支援の中に含まれる対象なんだということを明記していただきたいと願いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、先生の問題意識は我々と同じゅうするものだということはこの点についても同じであって、特定妊婦は、「その他の児童を養子とする養子縁組に関する者」に含まれているという解釈をしておりまして、その旨が法律上明確ではないという御指摘でございますので、私どもとしては、通知などによってこれを明確にして、特定妊婦も入っているということを明らかにしていこうというふうに思っています。

 それは、さっき申し上げたとおり、特別養子縁組の問題については、もっともっと、妊娠をされたときからそういうことを特に若い方が知っているということが大事だし、大人でも知らない人がほとんどでありますから、私は、今回この法律の改正が成立した後は、きっちり広報も、特別養子縁組について、こういう選択肢があるんだ、無駄な命の奪い方ということはしないでも子供も助かるしあなたも助かるんだということをよくわかっていただくように徹底的に広報をして、特別養子縁組の制度を活用しようというふうに思っています。

 さっき申し上げた「課題と将来像」の中には、特別養子縁組という言葉は出てきません。里親ということしか出てきません。これではやはり順番が少し違うんじゃないかというふうに思っていますので、もちろん、里親も大事な制度でありますから、これはこれで我々は大事にしていきたいと思っていますけれども、特別養子縁組ということを考えれば、特定妊婦、妊娠段階からしっかりとした支援をしていくことが大事だというふうに思います。

阿部委員 私と大臣の思いは恐らく変わることがなく、ただ、私は、さらにそれを法律の中に明記していただくことで周知が図られると思う立場でありますので、大臣が精いっぱい御答弁いただきましたので、重ねて御尽力をいただきたいと思います。

 あわせて、特別養子縁組と呼ばれるものは、これまで民間団体が大半、例えばお医者様が、自分のところに来られた、赤ちゃんを育てられない若いお嬢さんのために頑張って、子供の預け先を見つける等々、いろいろな努力をしてこられた分野であります。

 今回、児童相談所が養子縁組にもかかわるとなったところで、こういう民間団体と児童相談所の情報共有や、あるいは児童相談所同士の、例えば養親を同じエリアで見つけられなくても、他のエリアにはその子を育てられる方がおられるかもしれない、となると、連携ということの強化、情報の共有なども、養子縁組をもっと推進していくために必要となってまいると思いますが、そのあたりに関しては、大臣のお考えはどうでしょう。

塩崎国務大臣 養子縁組を推進するに当たりまして、当事者の意向などを踏まえて、必要に応じて児童相談所間の連携を図るということ、そして、養子縁組を希望する方などに関する情報を共有するということなどで、児童相談所の管轄を越えて対応をすることは大変重要だと思います。その管轄の区域内だけでの程度のことでは、やはり問題解決にはならないと思っております。

 現行の児童福祉法においても、地方公共団体が相互に連携、連絡調整を図らなければならない旨は規定をされているところでございますけれども、おっしゃったとおりでございまして、今回の改正案では、こうした業務が確実に行われるように、養子縁組に関する相談支援を児童相談所の業務として法律上初めて明定するわけでございまして、また、児童相談所の強化プラン、この間、四月に出させていただきましたけれども、児童福祉司等の専門職の配置の充実や資質の向上を図ることなどを盛り込んでおります。

 また、今、民間のあっせん団体との連携がございました。これはやはり情報は多い方がいいわけで、選択肢もふえるわけでありますから、児童相談所間の連携をどうやるかは、このIT時代ですからいろいろなことがあり得ると思いますが、これは厚生労働省もそれに一枚ちゃんとかんでいくということも大事でありますので、子供の最善の利益のためには積極的な支援が、新しい連携の中で民間を含めて行われるべきだというふうに思っています。

阿部委員 これについても、前向きな御答弁をありがとうございます。

 与党がお考えの議員立法でも、また私どもの検討しているものでも、そのようなことも含めて、もちろん個人情報保護には配慮した上で、なるべく選択肢を広げて、ぜひ、子供たちに家庭をプレゼントできるようなことに取り組みたいと思います。

 ポンチ絵でお示しした部分に御質問がございます。ここには、「子育て世代包括支援センターの法定化・全国展開」ということがございまして、これは、先ほどの公明党の議員の方からの御質問にもございましたが、大変重要ですし、前向きなことと考えております。

 私が、ちょっとこのポンチ絵を見まして、実は非常に重要なものが、例えば民間機関などは、先ほどの民間の養子縁組のあっせんをやってくださっている機関も含めて、あるいは女性がDV被害あるいは性暴力の被害があったときに支援してくださっているいろいろな団体やあるいはワンストップ支援センターなども入ると思うのですが、そういうところから、実は若年妊娠の情報とか、母子手帳もとりに行くことができない方の情報が上がってまいります。

 実は、どこかに行きなさいというのは、問題を抱えた妊婦にはほとんど無理というか、そこに行っているくらいなら問題は解決に一歩近づいているんですが、悩んで抱えてどうしようもないという、本当に困難な中にある人を今現状で最も支えているのは、さまざまなNPO、NGO、民間団体が寄与するところが多いわけです。

 大臣が厚労省の責任を預かる方として、こういう子育て世代包括支援センターを、これは正式には母子保健センターという名前になるんでしょうか、そうしたことをお考えのときに、この民間機関の中にはそうしたもろもろの女性たち、あるいはもちろん性暴力というのは女性に対してだけじゃないですから、ぜひ、そうしたことにかかわる支援団体と本当のネットワークを組んでいくというふうに理解してよいのですねという確認をさせていただきたいのと、もう一つ、私は、ここに保育園とか学校も入れていただきたいんですね。

 実は、子育て世代包括支援センターというと、厚労省の扱いだと学齢期前になってしまうと思うのです。でも、子供たちに対する情報がそこでぷつんと切れるわけではなく、特に学校などに行っても虐待の家庭環境というのは変わらないわけであります。ぜひ、大臣が文科大臣とも強力にお話をされて、この子育て世代包括支援センターは学齢期前で終わるものではありませんから、本当に子供の一生のその必要な情報や必要な支援を支えるものとして位置づけていただきたいが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 おっしゃるように、学校との連携というのも、このお配りいただいたものには民間機関は当然入っておりますから、民間との連携というのは当然これはやることが有益だというふうに思っています。ここに教育機関というのが抜けておりまして、それは、しかし、おっしゃるように、例えば高校生の妊娠というのもあるわけですから、当然これは連携していただかないと、学校で排除されるのを助けるみたいなことではよくないわけで、学校も一緒になってやはり支援をしていくということが大事だろうと思いますから、ここは馳大臣にもよく言って、連携をしっかりやるようにしてまいりたいというふうに思います。

 あとは、幼稚園とかちっちゃい子供さんを抱えたお母さんたちをどう支援していくかということにおいても、やはり学校との連携、あるいは教育機関、幼稚園などとの連携、もちろん保育園もありますが、これは極めて大事でありますので、ちょっとこれに明示的には書いておりませんが、当然連携すべきだというふうに思います。

阿部委員 今文科省の方で障害児などについては、その子供さんの学校においてのカルテをつくるというお話ですが、実は小学校に上がって急に障害児になるわけではありませんで、お小さいころから一連の、そして、障害児だけそれをするとスティグマになりますので、私は、ほとんど全ての子供の育ちを支援するための情報がそこに書かれたような、子供手帳でもいいです、子供カルテでもいいです、そういうものとして厚労省と文科省が協力をしていただきたい。そのことによって、本当に子供がいつでもどこでも支えられている、どんな子もということになりますので、大臣の今の御答弁、ぜひよろしくお願いいたします。

 後半の質問は、いわゆる子供たちの死。

 実は、今、多死時代です。死は多くなりました、高齢社会で。でも、子供ということは本来死とは一番遠いところにあるように言われながら、我が社会の中で起こっている子供の死、虐待死も事故死もございますが、これについて、私はもともと小児科医で、小児科医の仲間が四月八日に発表したものがございます。数値的に言うと、年間約三百五十人の子供さんが虐待で亡くなっている可能性があるということを学会で調査、発表をいたしました。

 これは、東京、群馬、京都、北九州などの四自治体をピックアップして、そこで小児科医がカルテなどを自分の病院のものを集積いたしまして、そうすると、二〇一一年に死亡した十五歳未満の子供が三百六十八人いて、そのうちで虐待であったものが二十七人いた、七・三%だと。そうすると、全国で実は年間に十五歳以下の亡くなる子供が五千人ですので、七で割りまして三百五十人という集計を出して、報告しております。

 ところが、厚生労働省が自治体からの報告などをもとにして上げている虐待の児童の死亡の数は、二〇一一年で九十九、二〇一二年度九十、そして直近、二〇一三、六十九ということで、この小児科学会のシミュレーションでやった三百五十という値と厚生労働省が出している値には乖離がかなりあると思うんです。これを見ると、私たちは、見逃されている虐待があるんじゃないかと思うわけです。

 一九七〇年代に始まりましたアメリカのチャイルド・デス・レビューといって、子供の死、いろいろな死があります、それをきちんと、何なのか、なぜなのかを分析していく仕組みということを、いわゆる公衆衛生的と言ってもいいと思いますけれども、感染症もあるでしょう、虐待もあるでしょう、事故死もあるでしょう、これを子供の死としてレビューしていく仕組みについて、もし大臣が御存じであれば、あるいは御興味があれば、あるいは今後それはいいことだと思われるかどうか、この点についてお伺いをいたします。

塩崎国務大臣 いわゆるチャイルド・デス・レビューの制度についてお尋ねがございましたけれども、これは、アメリカ、イギリスなどでの、死因究明として、収集された情報をもとに、死亡事例を検証してその要因を明らかにするとともに、効果的な予防策をつくる、これが大事なんだろうと思うんです。

 本年三月十日に取りまとめられました社会保障審議会の児童部会の新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会、この中でも随分この問題は議論をされたと伺っております。海外で行われているような子供全ての死の検証を行うことができるようなモデル的取り組みから検討すべきであるという提言になっておりまして、この提言を踏まえて、厚生労働省としては、子供の死亡事例の検証について、例えば海外の事例を参考にしたモデル事業の検討など、予防可能な死亡から子供を守るために必要な取り組みについて検討してまいりたいということで、まずはモデル事業でやってみようじゃないかということになっておりまして、この問題は、先生のような問題意識を持ったこの専門委員会の先生方の中で強く御主張があって、それを我々としても受けとめるということにしたところでございます。

阿部委員 子供の死というものを、単に虐待に遭った子供さんの死を検証するだけじゃなくて、子供の死全体を見て、その要因、原因、そして予防というふうに社会全体の取り組みとした上で、その中で、虐待問題も実はもっと発見されてくると思いますし、もっと防げると思いますので、モデルケースでやってみられるということですので、ぜひ前向きにお願いしたいと思います。

 引き続いて、お手元の資料の二枚目をあけていただきますと、「死因究明に係る法制度は複雑多岐」という、一枚の、これは実は自民党の橋本岳先生がおつくりになった資料で、私が拝借をしてここに示させていただきました、大変よくまとまっておりますので。

 子供の死を検証いたしますときに、いわゆる死因究明のための解剖というものも避けて通れません。突然に寝ているときに亡くなって、これが虐待なのか、御病気なのか、はてさて何なのかというのは、状況を聞くことからもわかることもありますが、解剖を伴ってみると、例えば硬膜の後ろに、頭蓋内に血腫があったりして、揺さぶられた跡ではないかとか、いろいろわかってくる場合がございます。そうした意味で、子供の死を社会的に検証しようとするときに欠くことのできない解剖という事態が、我が国において、これは大人も含めてですが、どういう制度になり、また、どこまで実行されているかということを念頭に置くためのものでございます。

 犯罪性のあるものは司法解剖、一番上です。それから、犯罪性が明らかではないが死因とか身元確認をするために行われる解剖以下、こちらは全部行政解剖と呼ばれるもので、その中には、いわゆる監察医務院制度をお持ちの東京都や兵庫県でやっている監察医解剖、御家族に承諾を得て解剖を行う承諾解剖、あるいは病気の場合の病理解剖など、多々ございますが、こう見ただけでも大変に、ややこしいというか分岐をしております。

 しかし、我が国は、解剖率というものを見ると、司法解剖が、全体、例えば二〇一五年で扱われた死体十六万二千八百八十一のうち八千四百二十四で、五・二%。真ん中にあるところの死因・身元確認法に基づく解剖、これは新法解剖、新しい法律の解剖と言いますが、行政解剖の方、新法解剖と監察医解剖、承諾解剖全部合わせても七・二%で、すなわち御遺体のうち十数%しか解剖をされておらないという実態がございます。

 ちなみに、臓器移植などでも、虐待児を排除してドナーにならないようにということで考えておりますが、実は十八歳未満の臓器移植例は十五例ございましたけれども、そのほかに虐待かもしれないといって見送ったのも五十九例あって、そのうち特に虐待を否定できないのが七例あったということなど、実は臓器移植を行う場合は解剖はできません。これは、解剖してしまうと移植できないからです。

 子供の死をめぐっては、死を検証する仕組みの中で特に解剖がなかなか日本の社会のルールの中に根づいていない、そして、重要な臓器移植などにおいても必ずしも排除されないなどの問題があり、改めて子供の死ということを考えて、先ほどのいわゆるチャイルド・デス・レビュー制度を実効性のあるものにしていくためにも、メディカルエグザミナー制度というのがございまして、これは、法医学者とか病理学者を中心に、子供の全ての死を検証しながら、原因解明をしていく、予防に結びつけるという制度でございます。

 幾つかの質問を時間の関係ではしょりましたが、ぜひ、大臣がなさろうとするモデル事業の中に、このメディカルエグザミナー制度、これもアメリカ等々から由来のものでありますが、それを参考にされまして、そして各都道府県に、今のように虐待だけでなく、子供の死検証委員会あるいは死因究明委員会等々を設置してやっていくような方向を考えていただきたいですが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 解剖の仕組みは極めて複雑になっているという話が冒頭ございましたけれども、まさにそのとおりで、特に御遺族の承諾が必要である承諾解剖などはなかなか死因究明には至らない場合があるんだろうというふうに思います。

 そういう意味では、今、全ての、言ってみれば虐待死を見逃さない、そういう制度をつくるべきじゃないかということでございますけれども、おっしゃるとおり、虐待死でありながら、虐待死だという認識をされずに看過されてしまうというのは避けなければならないというふうに思っております。

 全ての子供にとって、当然のことながら死亡事例は依然として残念ながら起きているわけでありますから、先送りをすることなく、全力でこの問題に取り組む。防ぐことができなかった虐待死については、同様の事例が繰り返されないように、見逃さないということが大事なので、第三者の視点から速やかに検証を行うということで、その結果をどううまく集約して次につなげて予防に生かすかということが大事なんだろうと思います。

 今、メディカルエグザミナーのようなケースも参考にせい、こういうことでございまして、おっしゃるとおり、いろいろな仕組みを各国、知恵を出して考えているわけでございますので、今の制度のことも含めて、私どもとしては、今までの検証やいろいろな方針に加えて、今後、しっかりした死因究明ができるような体制について、私どももさらに踏み込んで検証を進めてまいりたいというふうに思います。

阿部委員 済みません、三つくらい質問を一緒にしたために、大臣には御答弁しづらかったかと思います。時間の余裕がないため、お許しください。

 そして、今御答弁にもありましたが、そもそも、我が国において、全ての死に対して死因究明のための基本法が必要だと思います。これは、先ほど橋本議員のおつくりになった資料を使わせていただきましたが、与党の中にも機運がおありかと思います。

 既につくられた法律が二年で、死因究明推進法が二〇一四年の九月で失効しており、今は基本計画になっておりますので、もう一度、推進基本法的なものを、これは立法府にある私どもも野党、与党を問わずやっていかなきゃいけないと思うと同時に、不幸な虐待を防ぐためにとか、潜在してしまってわからない虐待を発見するためにも、解剖というのは前向きに進めていただきたいです。

 お時間がない中恐縮ですが、事案を一つだけ御紹介したいと思います。

 二カ月の赤ちゃんが心肺停止で救急搬送されて、この方は虐待が疑われるということで司法解剖をされました。ところが、この赤ちゃんはインフルエンザとRSウイルス両方にかかってしまったための呼吸停止とわかった。

 実は、司法解剖だと犯罪性云々という、親御さんも疑われなきゃいけない。そうではなくて、本来は、子供の死は全例解剖が原則ですよという社会的なコンセンサスがあれば、私は、親御さんが疑う疑われないにかかわりなく、子供の死を社会は教訓として生かして防ぐんだという仕組みをまずつくって、よりよき子供の生存に向けていただきたいと思います。

 お時間をはみ出して済みません。ありがとうございました。終わります。

渡辺委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民進党の中根康浩でございます。

 二十分という限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。

 改正案の第二条で、「児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。」というように書かれているわけでありまして、ここなんですけれども、今回の法改正は児童虐待の防止のために提案をされているわけでありますが、わざわざここに親が第一義的な責任を負うということを新設事項として書き込んでいる、ここに何か違和感を感じるんですね。

 今までの初鹿さんの議論なども含めて、親が第一義的な責任を負うということが書かれていることによって、場合によっては親の体罰が許容されることがあるということを認めるということになりかねませんし、それから、望まない妊娠ということも再三にわたって先ほどから取り上げられておりますけれども、そういう場合でも、自分で産んだんだから自分で責任をとりなさい、こういうことを言われる根拠にもならないとも限らない。あるいは、本来一時保護など親子分離をしないといけない場合であっても、第一義的責任を負うということが書かれているということによって、親子分離、一時保護などをためらう、あるいは、定員がいっぱいだから諦めさせるというようなことに使われかねない、こういうように思うんです。

 そもそも親の第一義的な責任は何かということと、なぜ虐待防止のために提案されている改正案の中にこの第二条の二項が書き込まれたか、これについて御説明をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 子供は、家庭生活におきまして、保護者から、心身の成長、発達などのため養育を受けるのみならず、将来の社会生活に必要な基本的な行動の基準を学ぶなど、保護者がその子供に対し負っている責任は極めて大きいわけでございます。

 このため、改正案では、保護者は、子供の監護、教育を行うものとして、子供の健全育成についてまず第一にその責任を負うべき旨を明確化したものでございます。

 あわせて、国や地方公共団体は、子供を健全に養育できるように子供の保護者を支援することとしておりまして、子育てに悩みを抱える親などに対して、市町村や児童相談所によって、継続的な養育支援や子育て相談等を通じて、個々の状況に応じた丁寧な支援が図られるよう取り組んでまいらなければならないと考えているところでございます。

中根(康)委員 簡単に言えば、親による家庭という密室の中における子供に対する虐待をどう早期発見したり、予防したり、あるいはその後の適切な措置をするかということが今回の法改正の趣旨だということであるわけなんです。

 ところが、親に第一義的な責任があるといきなり書かれてしまっては、そもそも孤立感を覚えている、虐待に至りかねない状況に追い込まれている親に対して、さらなるプレッシャーをかけるようなことにもなりかねないし、それから、そもそもきょう、趣旨説明から採決まで一気通貫で行うということについては、前例としないということで、厳しく指摘をしておきたいと思いますけれども、きょうの提案理由の説明の中にも、大臣がお読みになった中に、「子供の命と権利、そしてその未来を社会全体で守らなければなりません。」、こういうことが冒頭に書かれているんですね。

 だから、この第二条の二項で親の第一義的な責任ということを書き込む必要は、あえてここで潜り込ませるような必要はなかったんじゃないかということをどうしても感じるわけなんですけれども、これは何か自民党の中から要求があって書かれたということなんですか、それとも政府がこれは必要だと思って書いたことなんですか、どちらなんですか。

塩崎国務大臣 自民党などから何か来て、何か加えたようなことはございませんで、これは厚生労働省でつくった法律改正案でございます。

 それで、現行の児童福祉法の組み立てと、今回御提示をして御審議を賜っているこの改正案との比較をしていただければ、今の先生の御懸念や御疑問は全て晴れるというふうに思っております。

 先ほど申し上げたように、もともとこの児童福祉法というのは、いわゆる浮浪児と一般的によく言われていた、道にたくさんおられた子供たち、あるいは戦争孤児と呼ばれていた人たち、そういう人たちを何とかしないといけないということで、昭和二十二年にできた法律でございます。

 さっきお話がございましたように、理念規定は何らいじられないで来たわけでありまして、第一条はもともと「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」、そして二で「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」ということで、あと、その次は「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」、これしか書いてなかったというのが理念の部分でございます。

 それを、第一条でまず、全ての児童の権利ということを明定し、そして第二条では、国民と保護者と国及び地方公共団体、それぞれの責務を明確に書き分けたということでございまして、そして三条でさらに、これは先ほど申し上げた家庭養育のあり方、そして、家庭養育と家庭的養育、その間に「家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育される」というのが入っておりますけれども、こういうことで理念を書き分けたということの中で、保護者の責務は何だということを書いたときに、このように、児童を心身ともに健やかに育成することであって、それについて第一義的な責任を負っているのは保護者だという、ごくごく自然なことを申し上げていることでございます。

中根(康)委員 ごくごく自然だとはいっても、その自然であるべき家庭の中で虐待が行われる事例が多くて、その親は、社会的に孤立感を味わったり、さまざまな、経済的な理由も含めて、虐待をせざるを得ないような状況に追い込まれている。

 そこを何とかしたいという法律であるのにもかかわらず、親の責任をまたここで強調するようなことをあえてする必要は私はなかったような気がするし、社会全体で守らなければならないということが、私はこれはいいと思うんですね、だが、こういうことの観点が少しずれているから、保育の問題でも、保育所をつくれつくれと言われていてもなかなかつくらない、それは親の責任だよ、親がまず家庭で面倒を見なさいよなんということになってしまうわけでありまして、ここに第一義的な責任がという、あえて新設をする必要はなかったんじゃないかと。もう少しこの点については十分議論をして、必要とあれば盛り込むこともあったかもしれない、けれども、今回の児童虐待の中であえてする必要はなかった。

 僕は自民党が嫌いじゃないんですけれども、功績も認めますけれども、保育やこういうところに関しての考え方がちょっとどうしてもずれてしまうので。

 ごめんなさい、もう十分ぐらいたっちゃったので、済みません。まだ残っている。大臣、時間があったらまた教えてください。

 次の質問に行きます。

 これはテレビの見過ぎだと言われるかもしれませんけれども、改正案で、緊急時の臨検とか捜索手続の簡素化が規定されているんですが、さらに迅速化あるいは早期解決を図るために、児童相談所の職員に、麻薬Gメン、ドラマなんかだと麻取とかと言われていますよね、ああいう権限を与えて、いわゆる虐待Gメンのようなものをつくって、児童だけではなくて、高齢者とか障害者とか、あるいは家庭内暴力とか、あらゆる虐待に強力な権限で対処できるようにすることはできないものかと思います。

 やはりこれを聞きたかったので、済みません、次の質問に移らせていただきました。御答弁お願いします。

香取政府参考人 児童虐待対応につきましては、虐待防止法で臨検、捜索の規定が置かれております。

 この臨検、捜索の規定は、前回の児童虐待防止法の改正で入った規定ですが、保護者の強い拒否とか抵抗があった場合であっても、子供の安全確認のために児童相談所が確実に住居等に立ち入りができるように、調査ができるようにということで、裁判所の許可状を得た上で強制的な実力行使、我々は現場で破錠という言い方をしておりますが、鍵を解いて、場合によっては鍵を壊してでも立ち入って確認ができるという制度でございまして、これ自体は、福祉の体系の中では極めて例外的な、非常に強い規定でございます。

 これは、導入時にさまざま議論がありまして、やはり手続的に瑕疵のないようにということで、再出頭要求をかけ、それでもだめな場合は裁判所の許可を得て実行できるというのが現行の規定でございます。

 今回は、この臨検、捜索までの手続をできるだけ短縮するということで、再出頭要求を経なくても、裁判所の許可を得た上で立ち入りができるという形で実効ならしめるという改正をいたしました。

 麻薬Gメンなんですが、御案内のように、麻薬Gメンは、麻薬等事案、いわば犯罪の取り締まりということで、この方々は、警察官と同様に逮捕の権限とか捜索、差し押さえ等々、いわばそういった警察官と同様の権限が与えられているということになります。

 児童相談所に関しては、もちろん破錠のような権限も一応児童相談所には与えられているわけですけれども、基本的には、子供に関する家庭等からの相談、援助等々、そういった幅広い業務を行う役割の方ですので、Gメンのような、警察官同様の逮捕を伴うような権限を付与するというのは、ちょっとなかなか想定しがたいと私どもは考えております。

 実際に児童相談所が立ち入りとか検査、捜索する場合は、子供の安全確保ということがありますので、現場では、必要に応じて警察の援助あるいは同席を求めておりますし、実際にも、破錠を行う場合には警官の同席を求めております。警察の側でも、事案として刑法事案等になるものに関しましては、迅速的確に事件化の判断をして捜査を行うという体制をとっております。

 したがいまして、児童相談所職員にそういった逮捕権限を与えるというような形はなかなか考えにくいんですが、実際の現場では、事案の緊急性に応じて警察等にも立ち会いをしていただいておりますし、緊急対応もできるようにということで、安全確認、安全確保が迅速に行われるということで、この臨検、捜索の規定を活用して、子供の保護というものに万全を尽くすということで対応してまいりたいと思っております。

中根(康)委員 専門性を養成する、こういうこともこの法案の中に入っているんですが、よく報道される事例として、若い母子家庭の女性、離婚等で母子家庭になった女性がいて、子供がいて、その女性に新しい恋人ができて、男性と同居する、相手の男性は、子供がいることをわかってくれてはいるけれども、しかし、若いものですから、まだおつき合いの方が楽しい場合もあって、二人で遊びに出かけたい、そういう場合に子供が邪魔になったり、あるいは、そういう場合はお母さんが夜の仕事に出なければならないというケースもあったりして、同居の男性は仕事を終えて疲れて帰ってくる、そこに、お母さんは夜の仕事に出かける、子供が残されていて、子供が言うことを聞かない、泣きやまない、そういうあげく虐待に及んでしまう。こういうケースが報道されたりしているんですね。

 こういう場合、専門性を備えた専門家は、こういうケースに対してはどういうアドバイスというか、対処をするということになるんですか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 同居人による虐待のケースは、散見されますというか、結構あります。同居人からの虐待もありますし、もう一つ、今のケースで、先生御指摘のように、母親が同居の男性による虐待行為を、何といいますか、とめないといいますか……(中根(康)委員「黙認する」と呼ぶ)黙認しているということがございます。ありがとうございます。この行為自体は、母親は子供に対する保護義務者になりますので、それ自体が、母親の行為はネグレクトということになります。虐待をしていますので。

 こういう場合は、基本的には、ケースによりますけれども、まずは一旦子供を分離するということを恐らく一般的には行うと思います。まず一時保護なりなんなりで子供を引き取って、その上で、その親御さん、母親なり父親に対する生活指導等を行うという形で、基本的にはまず一旦分離をするということを行うんだと思います。

 その上で、当該お母さんなりあるいはその同居人なりに子供に対する対応に改善が見られないということになれば、それは、一つは、最終的には施設で措置するという形で母子分離をするということ、あとは、配偶者に対して、虐待が犯罪行為である等々、通常の保護者指導の延長線上でお母さんあるいはその同居人に対する指導を行って、ケースによっては警察にお願いをして一定の刑事上の対応をしていただくということになりますが、やり方としては、やはり子供の安全というのをまずとるということで、通常は、まず一旦一時保護をして、その上で親指導を行う、恐らくそういう段取りになると思います。

中根(康)委員 そういう専門性を養成するという意味合いでも、さっき初鹿さんが指摘したように、横浜だけでは研修所は足りない。やはり名古屋か大阪か、あっちの西の方にも早急に設置をしてもらいたいということも要望しておきます。

 今のようなケースでいうと、どこを起点に考えるかなんですが、母子家庭が置かれた経済的な状況、お母さんが夜働きに出かけなきゃいけない、時給の高い夜の仕事に出かけなきゃいけないというようなところに一つの起点を置いたとした場合に、やはり母子家庭に対する経済的な支援ということがどうしても必要になってくる。その意味でも、児童扶養手当、これをもっと増額する、二人目も三人目もふやす、こういうことを我々民進党は提案をしたわけなんですけれども、拒否されてしまった。

 やはり、児童虐待をなくしていきたいということであれば、そういう児童扶養手当など経済的な支援も必要だし、もっと言えば、OECDの中で最下位の状況にある子供に対する予算の使い方、お金の使い方、これを根本的に見直していくというような、総合的にいろいろとお金の使い方、資源の使い方を変えていかないと、いつまでたっても小手先の虐待防止ということになってしまって、根本的な解決にならないということでありますので、国ができること、政府やあるいは国会が取り組むべきことは、子供支援に対するお金をもっとふやすということ、ここをしっかりやってもらいたいということを最後に要求、要望させていただきながら、時間が参りましたので、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 本日は、児童福祉法の改正について、二十分ですが、幾つか質疑をさせていただきます。

 まず一点目ですけれども、ちょうど二カ月前の三月十八日に、大臣と、十八歳を過ぎてからの児童養護ということについて議論をさせていただきました。

 当時御提案申し上げたのが、十八歳になって施設を出て、会社に入って、会社でいろいろ問題があったり、あるいは会社もやめなければいけない、そして社員寮も出なければいけない、こういうときに、案外、もといた児童養護施設に相談がすっとできないケースも多いんです、これを解消するためにも、もともといた児童養護施設の職員さん、担当していた職員さんが、月に一度でも二カ月に一度でもいいので、ちょっと最初の二、三年は、退所したOB、OGの子たちに電話一本、本当に三分ぐらいでいいと思うんです、元気でやっているか、会社はどうや、何か問題があったらいつでも遊びにおいで、相談においで、こういうフォローの電話ぐらいは何とか現行の人員、予算の範囲内でできないかということをお尋ねいたしました。

 それに対して、大臣も非常に前向きに、確かにおっしゃるとおりで、「月に一遍電話を入れてフォローを三年間ぐらいするというのは、私はあり得る対処の方法だろうと思います」「そういうところについて何ができるか、児童養護施設協議会ともよく話し合ってみたいというふうに思います。」こういうふうに答弁をいただいたわけであります。

 そこでお伺いいたしますが、今回、法改正、この委員会でいよいよ審議をするわけでありますが、二カ月前にお願いをした、フォローの電話を入れて、退所後もいつでも相談に来てもらえるように、平成十六年改正の趣旨をしっかり実効性あるものにするためにこうした仕組みを取り入れることについて、実現できそうかどうか、大臣にお伺いをしたいと思います。

塩崎国務大臣 まさに、養護施設に入所して、社会に羽ばたいていかれるという方は、先ほど、中根先生おられなくなっちゃって残念なんですが、第一義的責任を負う保護者がいないということでありますから、先生御指摘のように、社会には出たけれども誰も頼る人がいないということで、いろいろな問題があって、それで、今回、少なくとも二十二歳まで、必要な場合にはそのままいてもいいじゃないかということだったりするようなことを考えているわけであります。

 ちなみに、さっきの、第一義的責任を保護者が負うという言葉は、そのまま子ども・子育て支援法、民主党政権下にできた法律でありますが、そこに入っておりますので、ぜひ中根先生にお伝えをいただければと思います。

 先々月の委員会の場でおっしゃっていただいた、電話をするべしというフォローの仕方については、私は大賛成だということを申し上げたわけで、定期的な状況確認については、厚労省と全国児童養護施設協議会を中心に、他の社会的養護関係団体にも声がけをして、議員の提案も含めて、施設退所後の継続的な自立支援が大事だということを伝え、そして幅広く今検討していただいておるわけでございます。

 退所した方が円滑に自立をするためには、必要に応じてやはり継続的な支援というものも必要なので、施設退所後の支援の充実について、全国児童養護施設協議会を含む関係団体の皆様方、退所者御本人の意見も聞きながら取り組んでいこうというふうに思っているところでございます。

井坂委員 理想的には、もちろんこういう退所後のフォロー専門の職員さんがちゃんと配置をされてということだと私も思いますが、ただ、職員の配置が予算的、人員的に仮に難しいというような段階であっても、ぜひ、こういうできるところから、実効性のある一つの手段として取り組んでいただきたいというふうに思います。

 二点目なんですけれども、今大臣も答弁の中でおっしゃった、十八を過ぎても、あるいは場合によっては二十を過ぎてもということで、今回の法改正、またその関連する中で、自立援助ホームの対象、また施設入所後の継続支援が二十二歳の年度末までできるようになります。

 先ほど初鹿議員の方から、これは学生だけに限る必要はないんじゃないかというような質問もありましたけれども、私の方も、少し観点が初鹿議員とはまた別の方向性なんですが、仮に、学生さん、これは二十二歳の年度末、もちろん現役で四年制大学に受かって、そしてもちろん品行方正で留年もすることなくということであれば、二十二歳の年度末で全く問題ないと思います。ただ、私も実は一浪して大学に入っておりますし、また、大学の中でやむにやまれず留年をしてしまうということもないわけではない。こうした中で、二十二歳の年度末というのは、これは本当に全て順調にいった場合には問題ないにしても、一浪、あるいは場合によっては一留、よくあることなので、大学をあと一年で出られるのに二十二歳の年度末でこうした支援が途切れてしまうというのは、これはこれで少し現実的ではないのかなというふうに思います。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、在学中、そして浪人あるいは留年その他いろいろな理由で、これは五年も十年も延長ということになるとまた制度の根幹から変わってまいりますが、二十二と言わず、在学中で、こういう事情があれば二十三歳の年度末というところまでこれは現実的に見てもよいのではないか、また、そこに係る予算というのもある程度限定されてくるのではないかというふうに思いますが、二十二ではなくて二十三ということについて、大臣のお考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今回、今の制度でも二十歳までは延ばすことはできるわけでございますけれども、しかし、到達後も自立に向けた支援が必要だという方がやはり間々おられるという中で、二十二歳の年度末まで引き続き支援ができるようにということで、これは予算事業で対応していこうじゃないかということで、措置の世界ではないけれども、実質的に同じことをやれるようにしようと。ただ、これはもちろん、ただここが居心地がいいからという形で残るようなことは許されないことだというふうに思っています、それは税金を使うわけですから。

 今お話しのように、先生は一浪をされたということですが、私は一浪プラス一年休学をして、二年おくれでございますので、そういう対応があり得るということはよくわかることでございまして、もちろん、今のようなケースをどうするかということについては検討はしたいというふうに思っています。

 さっき申し上げたように、イギリスのコネクションズというのは二十五歳までで、つまり、社会的にまあこれで何とかいけるかなという年齢というのは、二十二とか二十三ではまだ難しい人も中にはおられるんだろうというふうに思います。

 そんなことも考えながら、今の御提案を受けて、少し考えてみたいというふうに思います。

井坂委員 さすが一浪一年休学の大臣の御答弁だというふうに、大変心強く思います。

 ぜひ、本当に現実的な、本当に大臣がおっしゃったとおりで、別に何でもかんでも二十五歳ということがよいとは思いませんけれども、もともとの趣旨である、ちゃんと社会人として働いて自立ができるまではというところと、現実的に二十三がいいのか二十四がいいのか二十五がいいのか、このあたりのボリュームの話もあると思いますので、御検討いただきたいというふうに思います。

 三点目に、本法律案で、大きな流れとして、やはり、社会的養護が必要な児童に対して、できる限り良好な家庭的環境のもとでの養育の推進を国と地方の責務として児童福祉法に位置づけられることになります。これは私はよいことだというふうに思います。

 この流れでいくと、今後は、国としては、里親などの家庭養護の割合をふやしていくことになろうかと思います。一方で、これまでの児童養護施設には、里親などでは対応が難しい、例えば虐待であったり、あるいは重い障害であったり、こういう、里親ではなかなか対応が難しいようなケースのお子さんが施設により集まってくることに、反射的に、結果的になってくるというふうに思います。

 そこで、お伺いをしたいのですが、今後、こういう非常に里親では難しいようないろいろな課題を抱えたお子さんが施設にふえてくる、割合がふえてくる、これに対して、個別対応職員あるいは心理療法担当職員、これまでどおりの配置基準だと、これは人数的にはこれまでと変わらない人数だとしても、一人一人の濃さといいますか、お子さん一人一人の対応にかかる大変さが施設ではより変わってくると思います。ここの配置基準が、私は変更が必要ではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど、ドイツは就学前は基本的に施設には入れないというお話を申し上げ、またイギリスでは六年生まで入れないという話を申し上げましたが、一方で、六年生以降に入る施設では、日本は長い間、六対一を五・五対一にし、今四対一にまで来た配置基準でありますけれども、イギリスの場合には、子供の数よりスタッフの方が多い。ですから、四対一どころの騒ぎじゃないということで、一対二とか一対三とか、そういうことで、先生がおっしゃるように、難しい状況の子供たちの支援をしていくということが施設の役割というふうになっていると私は聞いております。

 現在、施設に入所している児童のうちで、約六割は虐待を受けた経験があり、また三割が障害を有している。そういうことで、傾向は、どちらかというと近年その傾向が強くなっているということだと思っております。

 こうした児童に対して適切な支援をしていくためには、やはり施設において、通常の児童指導員等に加えて、個別の対応ができる職員を全ての施設に配置し、個別の対応が必要となった児童への一対一の対応とか、その保護者への相談支援などを行うことが大事であって、今御指摘の心理療法担当職員でありますが、心理療法を行う必要があると認められる子供さんも当然多いわけでありますから、こういった施設には心理療法担当職員を配置して、専門的なケアを今ももちろん実施しているわけであります。

 この個別対応職員について、既に全ての施設に配置をしておって、現時点でさらなる配置はすぐにはそう簡単ではないというふうに考えておりますけれども、心理療法担当職員については、全ての施設に配置できていないのが現状です。したがって、一兆円と言っていた子育て支援の予算の中の〇・三兆、三千億円程度の消費税以外の財源を確保して実施をする社会保障の充実分、この中で全ての児童養護施設に配置をすることというふうになっているわけでありますので、引き続き財源の確保に努めて、実現を早くしていかなければならないというふうに思います。

井坂委員 財源の問題、これは大きいと思います。ただ、先ほど申し上げたように、理屈の上でも、これまでの体制ではなかなか対応できないぐらい非常に濃い、要は、人数だけでははかり切れない濃い対応が必要になってくる。これは理屈の上で、今回の法改正でそうなってくるわけでありますから、ぜひそこに対応する人員配置というものを優先してやっていただきたいというふうに思います。

 次に、要保護児童対策地域協議会について伺います。

 これまでは努力義務であった要保護児童対策地域協議会における専門職の配置、これが努力義務から今回義務化をされます。ところが、現時点ではどうなっているかといいますと、これは昨年の四月一日時点ですけれども、全体の八〇・四%で配置が行われている。逆に言えば、これは既に財政支援もあるわけです、こういう専門職の配置に対して財政支援があるにもかかわらず、二割の自治体はこういう専門職の配置ができていない。お金の問題ではないんだと思います。

 こういう現状がある中で、今回法律で努力義務から義務に変えた、義務化をしたというだけで、急に全ての自治体で配置ができるのか、私は懸念をしておりますが、いかがでしょうか。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 市町村における要保護児童対策地域協議会、要対協といいますけれども、この調整機関は、支援を要する個々のケースについて、児童相談所や警察、学校、医療機関等の関係機関との調整や協力要請とか、支援の進捗状況などの確認、管理、評価とか、あと、責任を持って対応すべき支援の機関の選定などの業務、結構重要な業務を行っているわけであります。

 これが今度は、法改正によりまして、市町村における要対協の調整機関への専門職配置につきましては、現行法上では努力義務とされておりましたけれども、今回、義務とさせていただきました。さらに、その専門職に研修を課すことにより、責任を持って個々のケースに対応できるように応じていただきたいということで、実効性のある役割が果たせるようにしていただきたいというふうに考えております。

 ということで、この調整機関に配置される専門職は、児童福祉司たる資格を有する者とか、保健師、助産師、看護師、保育士、教員免許を有する者、児童指導員とされておりまして、既に八〇・四%の市町村において配置をされております。

 この専門職は、非常勤でも差し支えないとされており、小規模な町村を含めて全ての市町村で配置することは十分に可能である、このように考えておりますが、今後、平成二十九年四月一日の施行までの間に、地方公共団体の意見も一応聞かせていただいて、専門職を確保するための対応について検討もしていきたいということで、しっかり応援をさせていただきたいというふうに思っております。

井坂委員 この問題、これまでも、財政支援がある中で、しかも置いた方がいいに決まっているのに、しかし二割の市町村が置いてこなかったという実態があるわけです。

 臨時職員も含めて、置けるだろうという見通しでいらっしゃるわけですが、私がお聞きしたところでは、むしろ、やはり本当に、そういう専門職、国家資格を持っているような専門職そのものがなかなか手配ができない、そこが一つ大きなネックになっているというふうにも伺っております。

 方法としては、専門職といったときに、いわゆるこういう国家資格保持者ということに限るのか、それとも、現場でまさに児童福祉を長年やってきた市の職員さんにこういう所定の研修をしてもらって、まさにこの分野のプロ、専門職としてこういう部分に入っていただくのか。こういういろいろなやり方もあると思いますので、ぜひ現実的な対応をお願いしたいと思います。

 最後に、ちょっと飛ばして申しわけないんですけれども、今回の法改正に当たって、各種の専門団体、日本社会福祉士会、あるいは臨床心理士会、弁護士会連合会、こういった各種の専門職の団体が専門委員会のメンバーに入っていなかったという問題があります。こういう専門職団体と連携をしなければいけないにもかかわらず、こういったところの意見聴取が十分にできてこなかったのではないかというふうに指摘をされております。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、これまでのことはもう過ぎた話でありますが、今後、国とこれら専門職団体が協議をする枠組みをつくるなど、連携の強化が不可欠と思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今回、この改正法案が成立したとしても、詰めなきゃいけない課題はたくさんございます。

 例えば、今回、国、都道府県、市町村の役割というのを明確にしました、責任も。その中で、やはり市町村が身近な自治体として支援の中心を担ってもらう。どういうふうにやるのかということについてもしっかり議論していくことが大事で、これについてもワーキンググループを立ち上げようと思っています。

 それから、今の御指摘のとおり、専門性を高めるための、各種専門団体の専門性を虐待対策にも利用させていただくということで、研修や専門性の向上についてもそうだろうと思いますので、それについてもワーキンググループを立ち上げようと思っています。

 そういう中で、今お話しの弁護士会や臨床心理士会、社会福祉士会、そういったところについては、今回の専門委員会では業界代表としてお入りをいただかないということを哲学として貫徹をしただけで、個人の資格でお入りをいただいている弁護士さんなんかもいたわけでございます。

 ただ、日弁連に出してくださいという形では出していないので、これからまさにそういった団体の意見をしっかり聞き、また、これまでももちろん要望書をたくさんいただいておりましたので、それはしっかりと専門委員会でも生かさせていただきました。

 施行後二年以内に、児童及び妊産婦の福祉に係る業務に従事する者の資質の向上を図るための方策について検討して、必要な措置を講ずるということでありますから、引き続き、この専門職団体の意見をしっかりと聞きながら検討を進めたいというふうに思います。

井坂委員 時間が参りました。

 本日、通告でもう一点、西日本にも二つ目の研修拠点をというのも用意しておりましたが、前の委員が質問しましたので、申し上げるにとどめておきます。

 本日はどうもありがとうございました。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。重徳和彦君。

重徳委員 重徳和彦です。

 児童福祉法改正、とりわけ児童虐待についての審議でございます。

 とりわけ、児童相談所、子供の保護、一時保護をするに当たりまして、その親の事情をどうしても考慮してしまって支援がちゅうちょしてしまうというような場面もあって、ことし二月の相模原のような事例が出てきてしまったという認識に立っております。

 きょうは、その意味で、やはり縦割りという問題があったり、あるいは、今、一つの児童相談所がやっていること、これを少し機能を分担するべきじゃないか、適切に役割分担をするべきじゃないか、こういった観点から幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、資料一をごらんいただきますと、今回の法改正の附則で、今後検討することがたくさんあるんですね。ちょっと線を引いてあるところだけを見ても、「裁判所の関与の在り方」、「児童相談所の業務の在り方」、「要保護児童の通告の在り方」、いろいろあるんです。

 この中で、まず、通告についてなんですけれども、児童相談所、基本的には県の機関です、これと市区町村、これが大きく二つに分かれているというふうに見た場合に、やはり児童虐待の通告窓口を一元化するべきじゃないか。今、一八九、「いちはやく」という電話のダイヤルも全国統一でありますけれども、これも基本的には児童相談所への通告なんですけれども、これをやはり一元化して、児相に入った情報は地元の市町村にもちゃんと入る、こういう、窓口を一元化すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 虐待が疑われるケースの通告につきましては、現行法上、通告の抵抗感を取り除き、できる限り早期に連絡が行われるようにするという考え方に立ちまして、市町村、児童相談所等、なるべく身近な地方公共団体で受けることとされております。

 このことにつきましては、通告する側に緊急度の判断を求め、通告先の選択を強いているとして、一八九、児童相談所全国共通ダイヤルを活用することを含め、都道府県ごとに、リスク評価を行うことができる機関に通告先を一元化し、そこで適切な担当機関に振り分ける仕組みとすべきとの指摘がございます。

 他方、このような通告窓口を一元化するという考え方につきましては、なるべく早い段階で多くの情報を得るため通告窓口は多い方がよいのではないか、電話のみで適切な判断ができるか、新たな機関を創設するとその機関との間で連携の問題が生じ得るのではないかといった指摘もございます。

 厚生労働省といたしましては、通告窓口のあり方に関するモデル事業を実施することを検討しておりまして、その評価等を踏まえつつ、虐待が疑われるケースの通告のあり方については、具体的な検討を今後進めてまいりたいと考えております。

重徳委員 政務官が言われるように、両方考え方があるということでありますが、大事なことは、やはり、どこに情報が入ってもそれがちゃんと共有される、そして、単に自動的に共有されるというよりは、それをきちんとさばく役割が大事だと思うんですね。

 そこで、質問ですが、資料二をごらんください。

 今回の法改正によりまして、市町村の協議会、これは要保護児童対策地域協議会、この協議会における調整機関、窓口ですよね、事務局です、そこに、専門的な知識及び技術に基づき事務を適切に行うことができる者として厚生労働省令で定めるもの、これを調整担当者というんですが、調整担当者を置くものとするというふうに定められていますね。そして、調整担当者は、厚労大臣が定める基準に適合する研修を受けなければならないとあります。こういった条項が新しく入りました。

 この調整担当者、極めて肝だと思うんですよ。これは大抵、市町村の一部局だと思うんですよね、児童福祉課あたりが担当だと思いますけれども。そこの調整担当者、これをどういう人材を置くかによって、大きく連携の状態が変わってくると思っています。

 今も、努力義務ではありますが、厚生労働省令で定める調整担当者的なものを置くようになっていまして、それでどう定めているかというのがこの資料三なんですが、児童福祉法施行規則ですね。ここにありますように、「厚生労働省令で定めるものは、児童福祉司たる資格を有する者又はこれに準ずる者として次の各号のいずれかに該当する者とする。」、保健師、助産師、看護師、保育士、教職の普通免許状を有する者、そして児童指導員ですね。

 これは単に資格を示しているだけなんですけれども、こういう資格を持ってさえいれば高度な調整ができるとは到底思えないんです。

 したがって、今度必置となるわけですから、この厚生労働省令、もっと質的な担保もするような要件にするべきじゃないかと思いますし、この研修の中身も、「厚生労働大臣が定める基準」と法律上はなっていますが、どんな基準にするのか、このあたりを教えてください。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 要保護児童対策地域協議会、要対協ですけれども、これは、住民に身近な市町村レベルにおきまして、保護や支援が必要な子供や妊産婦について、市町村、児童相談所、警察、学校、医療機関といった関係機関等が連携し、適切に対応できるよう、情報の共有、連携して支援を行うための方針の策定、具体ケースの支援に関する連絡調整等を行う仕組みでございます。

 その中で、調整機関は、関係機関間の調整、協力要請、責任を持って対応すべき支援機関の選定、支援の進行状況の管理、評価などの業務を担っているところであります。

 この調整機関に配置される調整担当者には、個々のケースに応じて関係機関の対応を統括し、実効ある役割を果たすことができるよう、保護や支援が必要な子供、妊産婦の心身の状況を的確に把握し、適切な支援が受けられるよう、関係機関の調整を行う能力が求められております。

 こうした調整担当者は、現行の省令上、児童福祉司たる資格を有する者、保健師、助産師、看護師、保育士、教員免許を有する者、児童指導員とされております。

 今後の取り扱いについては、施行までの間に、地方公共団体の意見も聞きながら検討してまいりたいと考えております。

 また、受講を義務づける研修の主な内容といたしましては、関係法令に関する基礎知識、保護や支援が必要な子供、妊産婦の総合的なアセスメントとリスク管理の手法、関係機関をコーディネートする知識、技術、個別ケースの管理やカンファレンスの運営方法などを想定しておりまして、専門職の能力向上に資する内容となるよう、今後、協議の場を設置いたしまして、具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。

重徳委員 研修の内容はもちろんしっかりやっていただくわけですけれども、どういう人がこの調整担当者となるのかというのは本当に肝ですから、今の規定のままでは、これは何か、質的なものは全く担保されていないと思います。

 今、三ッ林政務官が言われたように、本当に多岐にわたる、そして高度な業務ですから、これを省令にきちんと位置づける必要があると思っております。省令がそういうものになっていくというふうに考えてよろしいですか。

三ッ林大臣政務官 そのようにやってまいりたいと考えております。

重徳委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、児童相談所のあり方としてよく言われることが、資料四、ことしの三月十日に出された専門委員会の「報告(提言)」の中でも、児童相談所の強化のための機能分化が必要だという提言がされております。アンダーラインを引いてあるところにあるように、「保護機能と支援機能を同一機関が担うことによって、保護後の保護者との関係を考慮するあまり必要な保護が躊躇され、場合によっては子どもを死に至らしめるといった事態が生じている」ということなどなどがありまして、機能を分化させるべきじゃないか、一時保護と、親、家族のその後の支援、これを機能分化させるべきじゃないか、こういう意見が出されております。

 一方で、一番下のところには、「複数機関への分離により狭間に落ちるケースが生じる可能性があるといった意見」もあるという、これは非常に理解される、組織論としては、当然、こういう両方の指摘があるんだと思います。

 しかし、ここまで提言でなされていますけれども、今回の法案には全くこの機能分化については触れられておりません。

 したがって、大臣にお聞きしますけれども、まず、この報告書をどう受けとめておられるのかということと、それから、せめて、児童福祉司さんが、そういった子供の立場、親の立場、両方をおもんぱかって、なかなか、一時保護すらちゅうちょしてしまうというようなケースが認められる場合には、そこはやはり、例えば複数の児童福祉司さんで担当するとか、組織が機能分化というのは大きな、本当に大ごとだと思いますが、現場における改善としては、やはり担当職員を少し手厚くするとか、そういったことが解決策になってくると思うんですが、このあたりの考え方を御答弁願います。

塩崎国務大臣 児童相談所は、児童虐待への対応に当たって、問題の程度とか緊急度に応じて、親子の分離というのを二十八条を含めていわゆる介入でやるというのと、一方で、再統合、これは支援になるわけですが、この両面の機能を担うところがありまして、これを同一組織でやっているものですから、これは児相の方に聞きますと、やはり、親から引き離さなきゃいけない時期に親との難しい関係を乗り越えながらやって、今度は再統合の時期を迎えたときに、そのときに、かつてのことをやはり記憶されていてなかなかうまくいかない、こういうことをよく聞くわけでありまして、この親子分離を行った場合、その後の保護者との関係が非常に難しいという懸念がございまして、児童の迅速な保護、支援に支障が生じるということが間々あるんだということを指摘されているわけであります。

 一方で、これを是正するために児童相談所の機能や組織を分化するということについて、この専門委員会でも大分議論がありました。この考え方について、実施方法等にもよりますけれども、児童相談所の機能のみならず組織も分ける場合には、支援の流れが複数の組織に分断されてしまうということで、かえってエアポケットができて、そこにおっこってしまうケースが出てきちゃうんじゃないか、あるいは、一方で、独立をしておのおのの機能を実現する上で必要となる専門人材や標準的な業務内容等について整理が不十分かつ曖昧というようなことも指摘をされているわけであります。

 だから、いずれにしても、やはりこれは児童相談所の体制そして専門性の強化が必要であることから、四月の二十五日に策定した児童相談所強化プランに基づいて、まず、児童心理司、医師、保健師、児童福祉司への指導、教育を行うスーパーバイザー等の専門職の配置を法律に規定して、そういった指導者をはっきりさせる。それから、職種ごとに配置基準を設定する。あるいは、平成三十一年度までに専門職を合計で千百二十人増員することになっておりますけれども、大幅な増員目標を定める。そして、児童福祉司などの研修義務化によって資質を確保していく。そういうようなことで、いずれにしても、児童相談所の強化を着実に進めつつ、一方で、モデル事業として機能分離をするといったケースをやってみるとか、そういうようなことを今、予算事業で考えているところでございまして、改正法附則の規定に基づいて、児童相談所の機能、組織を含めた業務のあり方について、今後、具体的なモデル事業を使った検討をやっていこうというふうに思っております。

重徳委員 いろいろと現場における試行錯誤、苦悩というものもあると思いますので、それに即して現場の改善がなされるように取り組んでいただきたいと思います。

 もう一つ、きょうは法務大臣政務官の田所政務官に来ていただいておりますが、家庭裁判所も家庭にある意味介入する一つの大きな役割を果たす機関だと思うんですけれども、ちょっと調べてみますと、間接的なかかわり方しか今はないと思うんですよ。

 資料の五をごらんいただきますと、児童福祉法の二十八条に、家庭裁判所は、当該保護者に対し、これは保護者側の指導が必要な場合ですね、保護者に対し指導措置をとることが相当であると認めるときは、都道府県に勧告することができる、勧告までなんです。

 これは今回の法改正とは関係ないところですが、もっと直接的に介入する、指導措置をとる、あるいは治療が必要であれば治療命令を出す、こういったことにまで踏み込んだ対応をして、児童相談所と適切に役割分担をするべきじゃないか、こういう考え方もあるんですが、法務省としてはいかがお考えでしょうか。

田所大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現行児童福祉法第二十八条五項は、家庭裁判所が、都道府県の措置に対する承認の審判をした場合に、児童の保護者に対し指導措置をとるべき旨を都道府県に勧告することができることとしており、家庭裁判所が、児童の保護者に対し、都道府県の指導に従うように直接勧告することができるという制度にはなっておりません。

 現行法がこのような制度をとっているのは、保護者に対する指導措置は本来的に行政作用であるところ、裁判所がこれに従うように保護者に直接勧告することとすると、行政のチェックを行うべき立場にある司法が行政の側に立つということになりかねず、司法と行政との役割分担という観点から問題があると考えているところにあります。

 委員御指摘のように、裁判所が直接保護者に対して都道府県の指導に従うように勧告する制度を設けるべきであるという議論があることは承知をいたしております。

 しかしながら、平成二十三年に民法及び児童福祉法等の改正を行った際にも、社会保障審議会において、「司法と行政の役割分担の中で、裁判所が行政の処分を受けるよう保護者に対して勧告するのは、法制的に難しい面がある」と結論づけられているということを認識しております。

 もっとも、実務におきましては、家庭裁判所が、都道府県の措置に対する承認の審判をし、都道府県に対し児童の保護者に対する指導措置をとるべき旨を勧告した場合に、家庭裁判所の意向を保護者に適切に伝え、家庭裁判所の勧告を実効性あるものにするという観点から、現在、家庭裁判所においては、勧告書の写しをその保護者にも送付するということもあるというふうに聞いております。

 そのような状況のもとで、委員御指摘のような法改正をすることについて、その必要性の有無を考えて、法務省においても、これまでの検討の経緯や実務の運用状況等を踏まえて、さらに検討していきたいというふうに思っております。

重徳委員 現時点ではそういうことなんでしょうけれども、やはり縦割りを超える話として、司法にも介入するべき場面というのはあると思います。

 今、本当に、実質的にはいろいろなこと、言いたいことが山ほどあるのに、非常に間接的にやっている、こういう状況でありますから、建前ばかりじゃなくて、実際にそういう機能をもっと強化するということは大いにあり得る選択肢じゃないかなというふうに思っております。この点についてはまた議論させていただきたいと思います。

 そして、次に、子供を一時保護するに当たりまして、親の声というのがやはりどうしても児相の現場におられる方にはどんどん入ってくると思うんですけれども、子供の立場をもっと代弁する、そういう機能もなければ適切な対応ができないんじゃないか。

 こういう観点に立ちますと、今回の法改正の中で、同じ資料五にありますが、第八条六項、児童福祉審議会に権能を持たせていますね。児童福祉審議会は、児童に対し、その出席を求め、その意見を聞くことができる、こういう改正があるわけなんですけれども、これは実効性があるのかなと思うんです。

 さっきから言っている、機能を分離するというようなことをもって一時保護とまた再統合ということを分ける、こういう考え方はわかるんですけれども、児童福祉審議会で意見を聞いて、一体どのように扱われるんでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、相模原の事件で、今、相模原が検証を行っておりますけれども、子供本人の思いをしっかりと受けとめることができなかったということが一つ、一時保護などで子供の安全確保を第一とした対応が実行できなかった、こういう問題があったのではないかと思っております。

 こうした事態を繰り返さないようにするために、今回の改正案では、まず、子供の権利を法律上明確に位置づけて、子供の意見が尊重されて、最善の利益が優先されて考慮されるということを明確化しました。

 また、子供の安全確保を最優先とした対応を行うために、まず、改正案では、子供の安全確保、心身等の状況把握といった一時保護の目的の明確化をするとともに、児童相談所における専門職の配置、さらには、児童福祉司の研修受講の義務づけでキャパシティービルディングをするということを盛り込み、それとあわせて、一時保護を行うべき具体的なケースや考え方を明確化して通知や研修等によって徹底するということで、迅速かつ確実に一時保護などの措置がなされるように取り組まなければならないと考えております。

 今の児童福祉審議会でありますけれども、都道府県の審議会は、例えば、一時保護の延長などについて審議をするなどして、子供自身の権利を擁護していくために、子供や家庭の意見を聞く、つまり、子供本人からも意見を聞くということなどの手続を今回の改正案で新たに設けることにしておりまして、あわせて、子供や関係機関から、行政、つまり児童相談所などの処分等について児童福祉審議会が直接苦情を受け付けるということなども検討していきたいと思っております。

 こうした施策を組み合わせ、子供の思いをしっかり受けとめられるように取り組んでいきたいというふうに考えております。

重徳委員 子供の意見を直接聞くというのは一歩前進だと思いますけれども、結局、それを総合判断するところが今までどおり児童相談所であり、担当する児童福祉司さん一人でやっているということである以上、やはり、両方の仕事、分離と再統合、両方を一人であるいは一つの機関でやらなきゃいけないというのは同じことですから、児童福祉審議会の、機能の検証ということも必要じゃないかなというふうに思っておりますので、今後、施行された後もフォローアップが必要だと考えます。

 さて、次に、午前中に阿部委員からも質問がありましたが、チャイルド・デス・レビューについてお尋ねいたしたいと思います。

 チャイルド・デス・レビュー、厚生労働省が把握をしている虐待による死亡件数は、多く数えても九十件程度、少ないと五十から七十ぐらいの年間件数だというふうに把握をされているようですが、四自治体における調査に基づきますと、推計すると全国で三百五十人ぐらい毎年虐待で死亡している子供がいるんじゃないか、こんな推計があるわけですね。

 また、厚生労働省の研究班の別の調査によりますと、虐待死じゃないかというふうに医療機関が判断したものを児相とか警察に伝えても、そのうちの九割はそのままほっておかれているというか、こういうような話も聞いております。

 このチャイルド・デス・レビュー、死因の究明は、ロサンゼルスでは一九七八年からやっているわけですから、日本で今これだけ大きな問題になっている児童虐待に対する対応としては、今すぐやっても遅過ぎるぐらいのことだと思います。

 先ほど、午前中の塩崎大臣の御答弁によりますと、目的は、もちろん死因の究明だけじゃなくて、予防対策もちゃんとやるんだと。これはごもっとも、そのとおりだと思います。

 一方で、モデル事業をやられるんだ、こういうことを検討しているということなんですが、ただ、今の法律のままでモデル事業をやるというのは限界があると思うんですね。

 なぜならば、これは単なる医療的な死因究明だけじゃなくて、やはり警察の捜査情報も、捜査真っ最中じゃだめかもしれないけれども、一定のめどがついた後にはそういった捜査情報だって提供してもらう必要があるし、あるいは、運ばれた死体を単にお医者さんが見るだけじゃなくて、どういう状況でその子供が死に至ったのかということは、その現場の検証なんかもやらなきゃいけない。こういうことを、果たして医師や保健師がそんなことをやれるんだろうか、能力的にも、あるいは権限としても、そんなことができるんだろうか。個人情報、警察情報、いろいろな壁が現行法上あるんですよね。

 こういったことを乗り越えなきゃまともなモデル事業はできないと思いますが、どこまで本気のモデル事業をやられるんでしょうか。大臣、お願いします。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会から報告書が出ておりまして、そこに、海外で行われているような子供の全ての死の検証を行うことができるようなモデル的取り組みから検討すべきだというふうに指摘がされているわけでございまして、全ての死の検証をするというのはなかなか大変でありまして、先ほど配付をされた資料からも、いろいろな形の、解剖などもあって、了解を得なければいけないということも多々あるわけでございます。

 こういうことで、子供の死亡事例の検証について、例えば、海外でどういうふうなことをどういうふうにやっているのかというようなことをよく参考にしたモデル事業のパターンを考えて実施をしてみるというようなことをしながら、虐待死を含む予防可能な死亡から子供を守るために必要な取り組みについて検討しなければならないわけであります。

 要は、虐待死かどうかがよくわからないものを、それをどうすくい上げて、解明できるようなモデル事業ができるのかということについて、さらに検討を深めていかないといけないなというふうに思っておりまして、何か、これでいくみたいな形で既に決まっているわけではないということでございます。

重徳委員 まだ何かモデル事業のあり方を検討するぐらいの段階かなという印象を受けますね。

 本当に法律上の根拠がなければできないことが山ほどあります。アメリカでも、項目でいうと千七百項目について調査をするというのがチャイルド・デス・レビューですから、生半可なことではありません。

 そして、公表した死因、あるいは死因にまつわるいろいろなことを究明することが予防につながる。予防というのは、死体を見ただけでは予防なんかできないわけですから、したがって、そういう意味では、本気で、省庁横断で取り組まなきゃいけないことですから、この点についても、法的根拠も含めて、これはむしろ立法府側の役割かもしれないというふうに考えておりますので、政府と議会、国会の方で連携して取り組むことができればと考えております。

 最後に、去年十月二十八日に通知が出されました協同面接、これについて、その実施状況をお尋ねします。

 これは、虐待された児童に対しまして、これまでは児童相談所、警察、検察が別々に、縦割りで同じことを、虐待された、一番この世の中で苦しんでいるその子供に対して同じことを繰り返し聞くことで、二次的な精神的被害、これはもう一生引きずります、こういう状況を生み出してしまっているこの縦割り行政を改善するために、去年の五月に、私、法務委員でしたけれども、この厚生労働委員会で塩崎大臣にも御質問差し上げて、その後、その結果として、通知が出されたと思います。

 その三機関を代表して一人の面接者が面接をするということで虐待児童の負担を軽減するというものでございますが、その実施状況、件数、そして、実際にどういうふうにやって、どういうふうな内容で行っているのかということをできるだけ詳しく教えていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 例えば、性的虐待を受けた被害児童など、心に深い傷を負ってしまった、そういう子供さんから被害の状況等を複数のところが複数回聞くという際には、やはり、子供の心理的な苦痛、恐怖あるいは不安を理解して配慮することが必要だ、子供のペースを尊重しながら丁寧に話を聞いていくということも大事、話を聞くことが被害児童にとっては出来事の再体験ともなって二次被害にもなりかねないということでありますから、十分に配慮するということだと思います。

 このため、子供の虐待に関する基本的な対応のあり方を示す「子ども虐待対応の手引き」において、例えば、必要な情報を一人の面接者が集中して話を聞くなどで、同じ内容の話を子供が繰り返ししなくてもいいようにする工夫についてお示しをしてきたところでございます。

 昨年十月、今お話がありましたが、さらなる心理的負担の軽減と聴取内容の信用性を確保するために、都道府県等に対して通知を発出しました。協同面接の実施を含めて、調査や捜査の段階で、可能な限り、子供から同じ内容の話を繰り返し聴取することのないように、面接、聴取方法等について、児童相談所、警察、検察、この三機関で協議をして実施していただくことになりました。

 昨年の十月から十二月にかけての実施状況を見ますと、児童相談所、警察、検察の三機関を代表した一人だけが面接を協同でやったというのが十一件、それから、児童相談所、警察の二機関を代表した一名によっての面接が十三件となっておりまして、今後とも、こうした取り組み事例を分析、評価して、いい事例を周知するということなどによって、虐待を受けた子供の一層の心理的負担の軽減に資するようにしていきたいと思います。

重徳委員 時間が来ておりますので終わります。

 まだまだ取り組みが入り口というものもたくさんあります。横断的な取り組みというのが極めてこの児童虐待の分野は大事ですので、これからも引き続き私自身もフォローアップしてまいります。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。

 きょうは、児童福祉法の改正についてまず問うていきたいと思います。

 最初に、児童虐待に関しての話であります。

 児童虐待は、さまざまな議論があったところでありますけれども、どのようにして児童虐待を把握するのか、虐待の端緒をどのようにつかむのかというのが大変重要だと思うわけでありますけれども、子供の叫び声だ、あざだというような話、きのうも役所の方との議論の中でありました。こうした端緒を誰がどのように、つまり、医療機関だとこういうものが見つけやすい、もしくは近所の方だとこういうものがあるんだ、そういうものをきちっと整理し、それを啓発していく必要性があるんだと思います。

 叫び声だけではない、そしてあざだけではないこうした端緒、厚生労働省、文科省、どういうものがあるか、それぞれ厚生科学研究費もしくは文科の科学研究費で調査をしておりますでしょうか。

塩崎国務大臣 厚生科学研究でそういったことをやっているという事実はございません。まず、そういうことであります。

藤原政府参考人 お答えいたします。

 科研費での調査ということにつきましては把握をできておりませんけれども、学校の教職員が職務上児童虐待を発見しやすい立場にあるというふうに考えておりまして、その早期発見、対応に努める義務があるというふうに考えておるところでございます。

岡本(充)委員 学校の先生は早期発見に努めるといったって、どういうところが端緒かということをやはり示さないと、学校の先生に早期発見してくれといったって、こういうものが端緒につながるんだということがわからなければ、これは端緒にならないわけですよ。そういったものをきちっと調査する、研修をやっているという話はきのう聞きました、ディスカッションしているんです、したがって、ちゃんと答弁していただきたいんですけれども。

 これは、研修をやるときに、やはりどういうものが端緒になるのかというのを、その前段として文科省でもきちっと科研費を使ってでも研究してみたらいかがか、このように思いますが、いかがですか。

藤原政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省におきましては、学校における児童虐待の早期発見を徹底するために、例えば、衣服が汚れている、着がえをしたがらない、理由が不明確な遅刻や欠席が多い、あるいはまた急にふえたといったようなこと、あるいは、保護者において家庭訪問や懇談等のキャンセルが多いといったような、こうした児童生徒の身体や行動、家庭環境の変化について児童虐待を疑うポイント、そうしたものを示して、教職員用の研修教材といたしまして、まとめ、作成をし、各学校に周知をしているところでございます。

 また、あわせまして、学校保健安全法に基づきまして、就学時の健康診断を行っております。その中で、内科検診や歯科検診を初めとする各種の検診、検査が行われているわけでございますけれども、それに加え、就学後におきましても毎年度健康診断がございます。そうした中で、虐待の端緒を発見いたしまして、これを通報していくというふうなことをしっかり徹底していく必要があろうと思っておるところでございます。

岡本(充)委員 きょうは政務官にもお越しいただいていますけれども、私の趣旨は、今、役所の答弁ではなくて、そういう端緒がどういうものがあるのか、こういうものを研究していくべきだ、これは厚労省も同じことです。

 大臣、ぜひ、もちろん学問の自由ですから、強制をすることはなかなかできませんが、文科省も厚労省も関心を持ってもらって、どういうことが端緒になり、どういう人がそれに気づきやすいのか、少し整理をされたらいかがかと思いますが、それぞれ厚労省、文科省、お答えいただけますか。

塩崎国務大臣 児童虐待に関して、厚生労働省が実施をしている福祉行政報告例というのがありまして、児童相談所における児童虐待相談対応件数、これは把握をしております。

 これによって、例えば、警察等からの連絡とか、あるいは相談とか、それから近隣、知人、あるいは家族といった、相談が寄せられた経路別の件数、それから、心理的虐待、身体的虐待、ネグレクトといった虐待の内容別の件数、それから、虐待を受けた子供の年齢構成とか、もちろん男女構成、こういったデータはもちろん把握をしているわけであります。

 具体的にどのような事実をもとに相談を行ったかという端緒について統計的な把握は行っておりませんが、例えば、一般的なレベルを超えるような子供の泣き声、それから逆に大人のどなり声とか、それから、不自然なあざなどの身体的な外傷、子供の特定の場所での放置、玄関前とかよくありますが、こんなものが端緒についてはございます。

 児童虐待の発生予防、あるいは早期発見を徹底していくためには、御指摘のように、的確に実態がどうなっているのかというのを分類分けもきちっとしていくということが大事だと思いますので、そういう意味では、必要なデータをさらに緻密な分析をしていく中で、それが今度は予防、早期発見の手だてにもつながるということではないかなというふうに思います。

堂故大臣政務官 御指摘のように、児童虐待を疑うきっかけを見逃さず、管理職初め養護教諭、学校医、学校歯科医等を含めた校内連携、それから、児童虐待の早期発見や早期対応がより効果的に行われるよう、厚生労働省とも深く連携をとりながら、また、都道府県教育委員会とも連携をとりながら対応していきたいと思います。

岡本(充)委員 対応を聞いているんじゃないです。そういう調査を、研究をされてみてはいかがか、こう言っているんです。

堂故大臣政務官 厚労省と連携して対応してまいりたいと思います。

岡本(充)委員 対応じゃないんです。文科省はやはり自分たちがその当事者、最前線にいるという認識がないといけないですよ、これは本当に。どういうものが端緒かわからずして、どういうものが虐待につながるかということがわからずして研修をやったって、これは困るわけですから、今はどういうものが多いんだというのをちゃんと調査するべきだと私は思います。それをやらないというのはどうかということを指摘しておきたいと思います。

 その上で、児童相談所の虐待相談件数を皆さんにお配りしています。

 これは、そもそも健診を受けるんだといいますが、実は三歳になって以降、六歳、就学前健診を受けるまで、健診はないんですね。自治体によっては別途設けているところもあるかもしれませんが、基本的にないところが多い。

 そうすると、この期間は結構虐待が多いんですけれども、先ほどの話で健診で見つかるんだなんという話を言っていても、この年代の子供たちには機会がありません。また、そもそも健診を受けていない子供がたくさんいて、所在不明児という話が新聞にも載りましたけれども、そもそも健診を受けなくて、しかも、どこにいるかすらわからない、そんな乳児や一歳半、三歳の子供がいるというこの実態、この受けられない期間、そして健診を受けることすらない子供たちに、大臣、どういう対応をしていきましょうか。

塩崎国務大臣 三歳児健診以降、保育園などに通っていない場合には、特にこの就学前の子供について法定の健康診断がないという御指摘がありましたが、そのとおりでありまして、医療機関等の関係機関との接点が他の年齢層の子供に比べると相対的には極めて低いということであります。

 このため、子供と日常的に接している地域住民とか医療機関等の関係機関において児童虐待の兆しとか疑いを早期に発見して、子供や保護者への適切な保護や指導につなげるということは、子供の安全確保や保護者の養育力向上等を進めていく上で極めて重要であるわけであります。

 具体的には、まずは市町村の要対協を活用して、地域の医療機関等の関係機関において児童虐待の早期発見等についての意識の浸透を図るとともに、一般国民向けに、児童虐待の兆しあるいは疑いを示す、先ほど来出ております端緒というか具体的な事例等について周知啓発をしていくことも大事だと思っております。

 今回の法律の改正案の中で、第三十三条の九の二というところに、「国は、要保護児童の保護に係る事例の分析その他要保護児童の健全な育成に資する調査及び研究を推進するものとする。」という条文を入れました。

 これは、やはり国は、保護を必要とする児童の健全な育成のための調査研究を、統計を含めてしっかりと収集をする、あるいは研究をする、この推進をする責務があるということを明記しておりまして、今おっしゃっているような、カバーされていない医療情報、そういったことについても調査をしっかりとやることも私たちは考えていかなきゃいけないのかなというふうに思っております。

 いずれにしても、国がこういった基礎的なデータの収集については責任を持ってやらなきゃいけないということを法律の中に入れ込んだところでございます。

岡本(充)委員 であれば、それはちょっと後段の方の話で、前段の方の、要するに就学前の子供、未就学の子供で、そして、幼稚園、保育園に通っていない子供さん、三歳から六歳、接する機会がない。調査をするといったって、調査をする方法が現時点で法律上定められているわけではないですよね。

 したがって、ここは任意での調査になるかもしれないけれども、既に乳児の場合には、ほとんどの自治体、九九%以上の自治体が全戸訪問していると伺いました。こうした同じような取り組みをこの段階で入れることも含めて、要するに未就学で保育園、幼稚園に通っていない子供さんがやはりどういう状況にあるかというのを把握する、その子供さんがどういう状況にあるかというのを調査するというのも、では、先ほどの条文の調査の中に含まれる、こういう理解でいいですか。

塩崎国務大臣 今回、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、基礎自治体たる市町村が支援の役割を担うということで、例えば、よく児童虐待件数と言っていますけれども、あれは児童虐待対応件数であって、実は、対応を児童相談所がし切れないで家庭に戻してしまうというケースが氷山の下側の部分としてたくさんあるわけです。それを、やはり児相が、在宅措置という形で、在宅に戻すけれどもこれは措置として戻すというときに、市町村が責任を持ってその支援を行うということをやってもらうということを、今回、新たに仕組んでいるわけでございます。

 それと同様に、やはり市町村が、今おっしゃったような、保育園に行っていない就学前のお子さんの健康情報とか健診情報等々を把握していただくように今後はお願いをしていくのが筋ではないかと思いますので、そういったことについても、私どもとしては調査が行き届くように配慮をしていかなければならないのではないかというふうに思っております。

岡本(充)委員 ぜひ早急にそういった調査を行っていただきたいと思います。

 その上で、これは今後の要請ですけれども、健診を受けていない子供はどうなっているのか。もっと突き詰めて、情報を上げてもらうようにした方がいいと思います。その人数、実態等も、ぜひ全市町村にアンケートでも送って、もう一回確認をするべきだと思います。

 読売新聞がかつて報道していたものだと、読売新聞がアンケートをとったら、千七百四十二の市町村が返事をしてきて、乳児で四百九十九人、一歳半で千四百二十三人、三歳で二千二百五十四人、これは読売の調査で、どこにいるかわからない、こういう市町村からのアンケート結果を得たという報道もありました。

 こうした子供がどこにいるのか、どうなっちゃったのか、わからないというようなまま放置をしておくのはまずいと思います。そういう意味で、読売に任せるのでなく、やはり国としてもきちっとこうした未受診の子供の状況把握、これを、大臣、ぜひやっていただきたいと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 今の数字は、どこに行っているかわからないというのは、健診を受けていないという意味ですか。(岡本(充)委員「それで、どこに行ったかわからない」と呼ぶ)

 ということであれば、先ほど申し上げたように、市町村では住民票などでどこにどういう子供がいるかはわかるわけでありますから、それと健診データと突き合わせてみれば、わからない人が誰であるかということは個別に特定できるでしょうから、当然フォローができるわけでありますので、ぜひそういう方向で市町村に対応してもらうように、我々としても相談をしていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 違うんです。国としてきちっとその把握をしてくれと言っているんです。市町村に任せて、何人だと言って、わからないと言っている話じゃなくて、やはりきちっと国として、それも、全自治体、読売が送ったって千七百四十二の市町村がアンケートを返してきているんですから、国もぜひ調査していただきたい。

塩崎国務大臣 実施するのは市町村と申し上げているので、それは国として把握をするというのが、子供たちを守る我々の基本的なスタンスだというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひ早急にやっていただいて、ぜひこの厚生労働委員会でもやはり議論していくべき課題だと思いますので、委員長、理事会でも、そうした数字が出るように御配慮いただきたいと思います。

渡辺委員長 理事会で協議いたします。

岡本(充)委員 さて、続いて、厚生労働省がさまざまな研究をやっています。児童部会の児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会を開いていたり、いずれにしても、「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」というのを一次から十一次まで取りまとめています。その中でも、望まない妊娠というのが一つ大きないわゆる児童虐待のリスク要因としてあるということが書かれていますが、そもそも厚生労働省として、この望まない妊娠というのは一体何を指すんですか。

塩崎国務大臣 望まない妊娠につきましては、いわゆる法令上の明確な定義というのはないわけでありますが、例えば、暴行による妊娠や配偶者以外の方との間での妊娠が含まれるほか、若年妊娠とかあるいは多産などが含まれる場合があると考えられると思っております。

 統計としては、例えば、人工妊娠中絶の件数というのは把握が可能なわけでありますけれども、望まない妊娠をした女性の数を統計的に把握すること自体はなかなか難しいのではないかというふうに考えております。

 しかし、いわゆる望まない妊娠をして悩みを抱える女性がいらっしゃることは事実でありますので、そういった方々への対策としては、まず、御本人にとって望まない妊娠を防ぐことが重要で、学校などでの医師等による健康教室等を開催する自治体を支援する健康教育事業の実施などを通じて、妊娠、出産に関する正しい知識を普及していく、医療機関における家族計画指導や、特に、人工妊娠中絶を受けた際の、その女性への今後の避妊指導の実施の促進を図っていくなどに厚労省としても取り組んでいるわけでございます。

 また、妊娠、出産、育児期において、支援を特に必要とする家庭をできるだけ早く把握して、速やかに、保健、医療、福祉、こういった関係機関による連携した支援を開始することで児童虐待防止につなげていくことが重要だというふうに考えておりますので、相談事業あるいは乳児家庭全戸訪問事業などの実施に取り組んでおりますけれども、さらに、望まない妊娠を含む、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援を提供することで、今回法律の中にも明記をしておりますけれども、子育て世代包括支援センターの全国展開に向けて、市町村の取り組みを促してまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 これは、望まない妊娠というのはどういう事例なのかというのをきちっと調査して、事例それぞれに対してやはり打つべき手だては違うはずなんです。

 したがって、望まない妊娠というのがふわっとして何かよくわからない、だけれども、対策として主に多そうなものだけ手を打っておきましょう、こういうような話。残念ながら、その主に手だてを打っている対象の方の人数もわからない、これでは、政策がうまくいっているのか、いっていないのかの評価ができないんですよ。

 だから、やはりこれは、それは定義は難しいですよ。ここだって、かちっと法律に書けと言っているわけじゃないんです。ただ、厚生労働省として、こういう妊娠は、そして出産、最初は望まない妊娠でも、その後いろいろな家族の展開があって、最終的に望まれて生まれてくる子供もいらっしゃいましょう、だから、生まれてくる段階においても、なお望まない状況のまま出産時期を迎えてしまうという女性の方をどう減らすかということについての対策をとるんですよね。ここを、やはりきちっとターゲットを決めなければ、今大臣の言われているようなふわっとしたような話だと評価できない。

 いろいろな事例があると思います。だから、それごとに対策が違うんだから、難しいかもしれないけれども、努力してみてはいかがですか、大臣。

塩崎国務大臣 おっしゃるとおりなので、努力してみたいと思います。

岡本(充)委員 同様に、文科省も、これは私の配っている資料、「健康な生活を送るために」、高校一年生全員にこれを配っているそうです。

 私も、看護師の養成施設で講師をやっていますから、聞いてみたら、結構皆さん知っていました。やはり関心があるんだと思うんです、看護師になろうかという方ですから。そういう意味では、行き届いていたようです。ことしから一校当たり五十冊に減っちゃった、みんなに届けられなくなったと。

 これは何がポイントかといったら、予算がつくためには、これがいかに政策効果を上げているかということをやはり検証しなきゃいけないと思う。政策の検証をして、効果があるということは、確実に次の施策につながっていきますから。これは配っておしまい。

 また、保健の授業も、きのうぎりぎりやっていたら、百七十ページぐらいの教科書を、二年間で七十時間授業をして終わりだという話でした。その中に望まない妊娠についてということも書いてあります、こう言うんだけれども、さらっと流れていってさらっと終わるという話で本当にいいのか。

 もっと言えば、大学生においての普及啓発、何かする手だてがないのか。大学は自由だと言っていますけれども、そうしたところにも一定の配慮を求めるなど、工夫が必要だと思います。

 この冊子のやはり効果検証、あわせて、今の高校生、大学生等、専門学校もあるでしょう、こうした皆さん方への普及啓発のあり方、ちょっと見直すべきだと思います。

 政務官、お答えいただけますか。

堂故大臣政務官 望まない妊娠を予防するためにも、児童生徒等の発達段階を踏まえた性に関する指導を行うことにより、妊娠、出産に関するライフプランなどについて正しい知識を身につけていただくことが大事だと思います。

 先生御紹介いただきましたように、文部科学省においては、妊娠、出産を含む児童生徒の健康問題を総合的に解説した啓発教材を作成し、全国の高等学校の一年生に対し、配付しているところであります。この啓発教材は、保健学習及び保健指導を実施するに当たり、効果的な指導及び自己学習を行う目的で作成したものであります。

 調査によりますと、当該啓発教材が活用されていると回答した学校の割合は八〇%を超えています。ですから、大いに効果が得られているものと思いますが、文部科学省としては、引き続き、啓発教材の内容の充実や小中高等学校及び大学の教職員の啓発に取り組むなど、社会全体での取り組みも含め、妊娠、出産に関する教育、啓発がより効果的に行われるよう努めてまいりたいと思います。

岡本(充)委員 文科省も望まない妊娠という言葉を使われたけれども、文科省だって定義はないはずですよ。だから、そうしたキーワードを使われるのであればやはりきちっと、どういうものであり、その後どういう大変なことが起こる、もしくは課題が起こるか、こういったことも周知する必要があると思います。

 きのうも議論していましたけれども、望まない妊娠をしないためにと言っていますけれども、その結果がどういうことにつながるのかということをやはり生徒やいろいろな、社会人も含めてですけれども、皆さんに知らせていくのも僕は文科省の重要な役割だと思いますので、そこはお願いをしておきたいと思います。

 それでは、次の課題に行きたいと思います。

 子育て世代包括支援センター、これはつくっていくのはいいんですけれども、いろいろな課題はあると思いますけれども、全国で、こういうサービスはきちっとやる、そしてこういう好事例があって、こういう好事例があるからこういう課題は皆でやりましょう、そういう横串で連なる政策をつくっていかなきゃいけないと思います。数をふやすだけでは、これは残念ながら、こうした多数の市町村がやる中で結構でこぼこができるんじゃないか、こう思うわけですね。

 そういう意味で、市町村の独自性は絶対必要ですよ、だけれども、これはやりましょう、これはぜひ置きましょうと、もう少し事例をきちっと周知する必要があると思いますが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 子育て世代包括支援センターを全国展開していこうということでありますけれども、例えば妊娠の届け出等の機会に得た情報をもとに妊娠、出産、育児に関する相談に応じて、必要に応じて個別に支援プランをつくって、児童相談所、学校、医療機関などの地域関係機関による支援につないで、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を行うということで、そうなるとやはり、ここはすごくうまくやっているというところと、必ずしもうまくいっていないというところが出てきますので、おっしゃるとおり、好事例をしっかりと全国に知らしめていくということは大変大事だというふうに思っております。

 今月の十三日に、和光市を含めて既に子育て世代包括支援センターを実施している市区町村が全国に幾つかありますが、その取り組みを事例集として取りまとめて、都道府県を通じて市区町村にちょうど周知をいたしたところでございまして、引き続き、好事例は全国によく知らしめて、こういったことを学びながら、自分たちのオリジナルなやり方を編み出していただいて、先ほど申し上げた切れ目のない支援を独自に有効にやってもらいたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 ホームページに載せるだけではだめだと思いますよ。やはり、こういうものなんだという通知なり何か文書で出して、きちっとやっていただくということが重要だと思います。五月十三日にホームページに上げたというのをきのう聞きました。それだけではやはり不十分だということを指摘しておきます。

 それともう一つ、里親の数、それから養子縁組の数をふやしていこうという中で、私、何が課題なのという話をしたら、最後のページにありますけれども、課題と取り組みというのをつけています。ここに書いてある課題と取り組み、二十二年の十月にアンケートをとって、これは、そのままとは言いませんけれども、残念ながら、今回の法改正でのある意味取り組みということになっているのは、余りにも間があき過ぎていると私は思いますよ。だけれども、百歩譲って、これが課題だ、これが対策だ、これは今でも続いていると私も思います。しかし、現時点でどうなっているのか、やはり考える必要がある。

 それともう一つ、経済的な支援のあり方、やはりこれは避けて通れないと思います。経済的な支援のあり方、ここをどのように支援していくか。いろいろなものを支援しているんです。塾代だって一月一万五千円払っています、きのう役所の方が言っていました。だけれども、一万五千円で本当にいいのかどうか、こういうのも含めて、やはり周辺の事例を市町村が細かに見て、もちろん塾のない地域もありましょうから、そういうところもある。だけれども、現実に、その地域で育っている子供さんの実態に即したような経済的支援のあり方もやはり検討するべきだと思います。

 こうした取り組み事例と同様に、これはもう一度検討し直して広げていく、その取り組みに、大臣、指導力を発揮していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 里親制度というのは、極めて有効かつ大事な制度だと思っております。

 こういうことで、今回の改正案では、児童福祉法の第三条の二を新設して、家庭における養育が困難であるまたは適当でない場合には、まずは家庭における養育環境と同様の養育環境で養育されるように、養子縁組や里親等への委託を進めるということを先ほども御説明したとおりであります。

 里親への委託については、まだまだやはり社会的には認知度が低い。里親として登録されている方が、なかなか少なくて伸びない。児童相談所が里親委託業務に十分かかわることがこれまではできていませんでした。個別の里親への支援が行き届いていない部分がある児童相談所がやはり全国に見られるわけでありますので、今般の改正法案においては、里親の開拓から子供の自立支援までの一貫した里親支援を都道府県の業務として位置づけて、その推進を図ることとしております。

 今回の専門委員会でも随分議論があって、やはり、別途、里親制度そのものの改革案、改善案というものをつくろう、今の名称もこのままでいいのかどうかということを含めてやろうということでございましたので、私としても、この里親制度については、厚生労働省の中においてワーキンググループなり検討会をつくって、今の処遇の改善、支援の充実についてのお話を今いただきましたけれども、この里親手当の問題を含めて、そしてまた、大学に進学した場合の費用の支給を行うこととしておるところでございますけれども、さらに今何が可能なのか、何をすべきなのか、そういったことを含めて、検討の場を設けて、検討を深めてまいりたいと思います。

岡本(充)委員 ぜひ、それをまた周知してください。

 終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 冒頭、熊本地震対策について伺います。

 障害福祉サービスの事業所の報酬は日割り計算です。被災地では、発災後、利用者が通所できなかった四月の後半、報酬が請求できず、このままでは運営費が激減をして、存続の危機に立たされるという事業所も少なくありません。

 利用者二十六人のある施設は、通常の給付が月二百五十万から三百万円のところ、四月計算分は百二十万円程度の減額になりそうだといいます。このままでは七人の職員の人件費が払えない。

 当然、その間は職員は必死で働いていたわけです。地震直後から、通所利用がなくとも、利用者の安否確認、避難所での生活支援、障害が原因で避難所を移るときの付き添いや移動支援などに追われていました。利用者欠席時の加算制度もありますけれども、これは上限がありまして、なかなか助けにならない。

 この間、私は、東日本の際には通所がない期間であっても安否確認等の支援を報酬上評価するということがありましたので、同様の措置をということで求めてまいりました。その内容の通知がきのう発出されたと伺いました。どのようなものでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の熊本地震における障害福祉サービス等の提供に関します報酬上の取り扱いにつきましては、発災以降、何回か事務連絡等を発出したところでございます。

 今先生御指摘の件につきましては、やむを得ない理由により、利用者の避難先等におきまして安否確認や相談支援等のできる限りの支援の提供を行った場合は、これまでのサービスといたしまして報酬の対象とすることは可能であるといったような、そういった事務連絡を出してございます。

堀内(照)委員 大臣、この点で三点確認したいんです。

 一つは、四月請求分は五月の十三日までとなっておりまして、過ぎております。多くのところでは、四月の後半、特に通所がなくて大変でありました。今からでもこれを請求できるようにして、しかも、その支払いを間に合うようにさせるべきだと思うんです。翌月請求にのせたのでは支払いは一カ月おくれになりますので、その間の運営が大変になりますから、これをしっかり間に合わせる。

 二点目は、請求実務も大変です。概算でも請求が可能かどうかということを確認したい。

 三つ目には、周知徹底です。安否確認等でもサービス提供として請求できるということや、取り急ぎ概算でも請求できるんだということも含めて、事業所がよくわかるように、丁寧に、そしてきちんと行き渡るように周知徹底をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今回の震災で避難所などにおいて生活を余儀なくされている障害のある方、この方々に対してできる限りの障害福祉サービスが提供されることが極めて重要だと思っております。

 このため、例えば、居宅介護を避難所等の居宅以外の場所において提供した場合も報酬の対象とするということ、それから、被災によってサービス提供記録などがなくなった場合等では、今お話がありましたが、概算で報酬の請求を行うことを可能とするということ、それから、必要に応じて、請求の期限を過ぎて請求することも可能とするということを、弾力的な運用として、事務連絡においてこれが可能であるということをもう既に発出しておるところでございます。

 こういうことでありますので、障害福祉サービス等事業者が被災をされた障害のある方々に滞りなく必要な支援を提供できるように、これまで複数回発出してまいった報酬の取り扱いに関する事務連絡などについての内容をしっかりとさらに周知することによって、円滑なサービス提供と請求手続が行われるようにしたいというふうに思います。

堀内(照)委員 ちょっともう一つ確認したいんですけれども、概算といった場合には、記録が紛失した以外にも、今言いましたように、もともと当初あった計画以外にも、避難所でのいろいろな安否確認等のことも報酬上評価するというお話でしたので、そういうことについても概算でいいのかということと、支払いを間に合わせるという点でも答弁がございませんでしたので、その点をちょっと確認したいんです。

藤井政府参考人 繰り返しの部分もちょっとあろうかと思いますが、何点か御答弁申し上げます。

 今回、事務連絡を何回か出してきておりますけれども、具体的な内容といたしまして、避難所において居宅介護等を提供した場合も報酬の対象とすることができるというようなこと。

 それから、やむを得ない理由によって、利用者の避難先等におきまして安否確認とかあるいは相談支援等のできる限りの支援の提供を行った場合につきましても、これまでのサービスとして報酬の対象とすることは可能であるということ。

 それからまた、被災によりましてサービスの提供記録等が滅失したり毀損をしたりしたような場合、それから、地震発生直後におけるサービスの提供内容につきまして十分に事業所の方で把握することが困難であるような場合に概算請求ができるというようなこと。

 また、四月以降のサービス提供分に係る障害福祉サービス等の請求につきましては、個別の状況を踏まえてでございますけれども、必要に応じて過誤請求等で修正をしていくようなことができるといったようなこと。

 そういったことを周知しているところでございます。

堀内(照)委員 ぜひ、今言いました三点、努力していただきたいと思います。

 続いて、法案について質問します。

 幼い命が犠牲になるなど深刻な児童虐待の問題の解決へ、関係機関の体制強化は急がれるし、重要な課題であるということは言うまでもありません。このたびの法改正もそのためのものだとされています。しかし、実際改善に資するかどうかということを見ていきたいと思うんです。

 今回、法改正で、児童相談所と市町村の役割分担がうたわれ、市町村が、通報窓口にとどまらずに指導や支援などを行うということが明文化されました。加えて、児童相談所の権限強化の一環として市町村への事案送致が盛り込まれるなど、市町村の役割が格段に重くなっております。しかし、果たして市町村はそれに対応できるのかということが問題だと思うんです。

 現状、市町村の体制はどうなのかということで、お聞きしたいのは、市町村の児童家庭相談業務の窓口の設置場所及び各市町村の要保護児童対策地域協議会、要対協の調整機関の設置場所のそれぞれについて、上位三つの部署とその割合を示していただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 平成二十六年一月に、厚生労働省で、市区町村における児童家庭相談業務の実施状況等の調査結果というのを公表しております。

 二十四年四月一日現在の市区町村における児童家庭相談業務の主たる相談窓口の設置場所ですが、一番多いのは児童福祉の主管課、これが四九・三%、二番目が児童福祉と母子保健の統合課、課を統合している場合ですね、この課が窓口になっているというのが二三・二%、福祉事務所、これは福祉事務所の中の家庭児童相談室等ということになりますが、これが三番目で一四・二%となってございます。

 同じく、二十七年三月に、子どもを守る地域ネットワーク等調査結果というので、要対協、要保護児童対策地域協議会について調査をしておりますが、二十五年四月一日現在で要対協の調整機関の設置場所の上位三つとその割合ですが、児童福祉主管課が五九・五%、児童福祉・母子保健統合課が二六・五%、三番目が福祉事務所、家庭児童相談室等ということになりますが、これが五・五%ということになってございます。

堀内(照)委員 これは、社会保障審議会児童部会のもとに置かれた新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の委員だった加藤曜子教授も調査しておりまして、きょう資料でつけております。今ありました市町村の窓口の方は二十四年四月一日が一番最新の数だということで、加藤先生のものは要対協も二十四年の数字であらわしています。

 左と右にそれぞれ、市町村の窓口、要対協の調整機関ということで、それぞれの設置場所なんですが、今答弁ございましたように、おおむね児童福祉主管課がともに五割前後、児童福祉・母子保健統合課が二五%前後、それから福祉事務所は、二十五年度は若干数字が動いていましたけれども、一〇%前後ということで共通しておりまして、加藤先生も、おおむね相談担当の設置場所と調整機関の設置場所は同じ部署に置かれて同じ人が担当していることが多いと推測されるとしております。

 さらに、別の角度から見てみたいと思います。

 市町村の相談窓口の担当職員について、児童福祉司、そしてそれと同様の資格を持つ者の割合について教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘の調査報告でございますが、これによりますと、二十四年四月一日現在の市区町村における児童家庭相談業務の主たる相談窓口の職員のうち、児童福祉司及びそれと同様の資格を有する者の数は千六十六名ということで、これは、主たる相談窓口の職員に占める割合は一二・九%ということになってございます。

堀内(照)委員 この児童家庭相談に従事する方は非常に大事な役割を担っているんだと思います。援助に必要な社会福祉などの制度に精通し、そしてまた、深い人間理解のもとで、支援が必要な方にその意思がなくともアプローチをしっかりし、的確に対処する、虐待の危険性、緊急性を判断して必要に応じて児童相談所への送致を行うなど、独特の専門性が求められると思います。そうした専門家の配置がとりわけ急がれると思うんです。今一二・九%だということでした。

 私も見ましたけれども、市区町村別や人口規模で見ると、町や村になるとなお比率が下がっていくと思います。人口十万未満の市でも、担当者の四人に一人が一般事務職が当たっている。町や村では半数近くが一般事務職じゃないかと思います。

 もう一点確認したいと思います。

 市町村の相談窓口業務に従事する職員の正規、非正規の割合、専任、兼任の割合もお答えいただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 同じく、市区町村における児童家庭相談業務の実施状況等の調査報告、これの二十四年度のものでございますが、二十四年四月一日現在で、市区町村における児童家庭相談業務の主たる相談窓口の職員のうち、正規職員が五千四百八十七名で六六・三%、非正規職員は二千七百九十四名で三三・七%でございます。

 同様に、専任、兼任でこれを見ますと、専任職員が四千八十四名、四九・三%、兼任の職員というのが四千百九十七名で五〇・七%ということでございます。

堀内(照)委員 おおむね三人に一人が非正規で、専任、兼任でいうと半々ということになると思います。

 傾向としては、これも市町村別のを見ましたら、正規率が高いと兼任が多くなる、専任が多いところでは非正規率が高いということになっています。

 私がお話を伺った名古屋市では、児童相談所と兼務する形で、経験のある児童福祉司を各行政区の窓口に配置して、行政区の職員とその方と二人体制で事案に対応できるように連携しております。これは設置主体が同じ市長である政令市だからできることでありますが、そういう意味では先進的な取り組みをされているんだなと思いました。しかし、それでも区役所の方の職員は嘱託が多い。正規になるとどうしても兼任になる。嘱託だと二人でペアで行けるけれども、正規職員がペアの場合は、他の業務との関係でなかなか事案に当たれない。結局、児童福祉司の方が一人で駆け回るということになっている。政令市、比較的体制が厚いと思われるところでもこういう実態なんだと思います。

 そういう市町村に、通報窓口にとどまらずに、地域でのさらなる支援を担わせる。その上、児童相談所から市町村への事案も送致される。

 この事案送致ですが、児童相談所が扱うべき事案と市町村が扱うべき事案というのはどういう基準で区分けされるんでしょうか。

香取政府参考人 児童虐待への対応で、都道府県、児童相談所と市町村の役割分担でございますが、これは基本的な考え方は、先ほど大臣からも御答弁申し上げていますが、市町村は、基礎的な地方公共団体ということになりますので、身近な場所における支援相談、児童相談所は、より専門的な知識、技術や広域的な対応ということになってございます。特に市町村は、先ほど大臣からも答弁ございましたが、在宅の支援といったようなこともありますので、そういった身近な支援を行うということになってございます。

 現行法上は、市町村から児童相談所に対する事案送致の規定というのはあるわけですが、今般、この逆の規定、児相から市町村への規定というのを置くということにいたしております。これは、個々のケースに応じて適切な機関における対応がなされるようにということで、双方向の規定を置くということにいたしたところでございます。

 具体的な送致の事案の考え方でございますけれども、申し上げましたように、在宅での継続的な養育支援というのが必要なケースでありますとか、あと、事案によっては、虐待事案であっても、市町村が行っておりますいわゆる地域子育て支援事業等の子育て支援事業を使って対応していくという方が適切な場合、あるいはそちらで対応できるようなケースといったような、身近な市町村で継続的な支援ができるものについては、基本的には市町村の方に送致をいたしまして対応していただくということを考えてございます。

 この場合、これは専門委員会でもここはかなり議論になって、きちんとやりましょうという話になったところですが、市町村と児童相談所の間で漏れが生じる、あるいはそごが生じる、あるいは、どっちでやるんだということで調整がうまくいかないというようなケースがあるということになってはいけませんので、私ども、国、厚生労働省におきまして、この振り分けに関しては、共通の基準となるアセスメントのツールをつくって、これをお示しして、これに沿って地域ごとに分担を決めるという形で、両者の連携をきちんと図っていくということをいたしたいと思っております。

 特に、やはり漏れが生じたり、そごを生じるということはあってはならないので、こういった仕組みを通じて、児童相談所と市町村の間で事案がそごなくきちんと役割分担ができるようにということで対応してまいりたいと考えております。

堀内(照)委員 これは事前にもちょっといろいろやりとりしたんですけれども、なかなかはっきりわかりにくいんですね。専門性があるものは児相なんだ、身近な場所で、在宅支援、継続的な支援が必要なのは、虐待の事案であっても、今のお話ですと市町村になるということです。

 そうなると、措置が必要なことは、当然これは児相にしかできません。しかし、それ以外の在宅や地域支援のものは市町村に行くということになると、今、虐待相談は全体で八万件ですけれども、措置にかかわるのは一割程度だったと思いますので、かなり多くのものが市町村になる。とてもこれを受け入れられる体制に現在ないと思うんですね。自治体によっては、当然、体制に大きな格差もあります。これを無視して一律にというわけにいかないと思うんですね。

 結局は、受け入れる自治体の力量によって、送致できるかどうかということになると思うんですが、その点は。とにかく一律というわけにはいかないと思うんですが。

香取政府参考人 御指摘の点は、私どもも、県と市町村の役割分担ということで考えております。

 アセスメントツールは基本的な考え方をお示ししますが、お話しのように、例えば、県と市町村といった場合でも、町村の場合と市の場合とありますし、中核市のように、いずれは児相をみずから設置するというような体制まで来ているところとございますので、これは市町村側の受け入れ体制との関係で、ある程度児相の側で出張って抱えるということも当然あり得るわけです。

 基本的な考え方をお示ししますが、ここはやはり、大事なことは、押しつけ合いみたいなことが起こらないようにするということが重要ですので、基準に従って各市町村と都道府県の間でお話をしていただいて、アセスメントツールを頭に置きながら、そごが生じないように役割分担をするということでお決めいただくということだと思っております。

堀内(照)委員 いずれにしても、市町村のところでかなりの厚い体制や専門的な人員配置というのがやはり必要になると思うんですね。現状は、今ずっと見てきたとおり、なかなかそうじゃない。

 今度の法改正で、例えば、子育て世代包括支援センターの設置が努力義務となり、保健師、助産師などの専門的職員を一人置くようになるとか、児童等に対する必要な支援を行うための拠点を整備しなさいですとか、それから、要対協でも専門職の配置を義務づけるということにはなっているんです。

 しかし、これも先ほども議論もありましたけれども、要対協は既に八割で専門職を置いていますし、子育て世代包括支援センター、恐らくこれは母子保健センターなどが母体になるんでしょうが、母子保健センターでいえば、既に専門家はいるわけでありまして、しかも、そうしたところが拠点とも位置づけられるということになるわけですから、新たな仕組みづくりはいろいろ法定されるんですが、実質的な人員配置という点でなかなか手厚くならないなという思いがあるわけです。

 そういう中で、法案が求めているような、在宅や地域での指導などを行うようなふさわしい体制を市町村で築いていこうと思えば、より実動部隊がやはり必要ですし、手厚い、正規での職員配置は欠かせないと私は思うんです。さきの加藤教授も、ある新聞紙上で、虐待の問題は親の就労や精神保健なども絡む家族の福祉問題、経験と専門性を持つ職員の常勤配置が責任ある対応につながると指摘されています。

 そうした実効ある体制にしていくためにも、これは大臣にお尋ねしたいんですが、専門職も含めた職員の配置基準を定めて、それを裏づける財政措置がやはり必要じゃないかと思うんです。市町村の体制の実態という点では、今紹介いただいた市町村の相談窓口業務については平成二十四年の調査が最新なので、最近の状況もしっかり調査もやって、つかんで、配置を強めていく、このことが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、堀内委員御指摘のように、今回、措置権限を持つ児相を持っている都道府県ないしは政令市等々と、それから市町村の有機的な役割分担というのがやはり大事だろう、特に市町村については、子供に一番身近な行政として、支援に役割を今まで以上に果たしていただくということでございます。したがって、今の現状のままでそれをやっていただくということではなかなか大変であることは御指摘のとおりで、私たちもそれはよくわかっているところでございます。

 今、押しつけにならないようにという局長からの説明でありますけれども、やはり今、児相は児相で、それこそ案件でぱんぱんになって、さっき申し上げたように、児童虐待対応件数で、対応できない方が多いということで、その対応できない部分で家庭に戻して不幸なことが起きるということの繰り返しが多いわけでありまして、そうならないようにするために市町村に新たな役割を担ってもらおうということでありますので、今回、この送致の場合にも、押しつけではなく、やはり納得をして受けてもらっていくということが大事で、児相が忙しいから回しちゃおうみたいなことでは、とてもではないけれども命を守ることにはならない、こう思っております。

 それで、今、配置基準それから財源措置の話がございました。

 私どもとしては、今回新たに市町村に期待をし、またお願いをする役割が個々のケースごとに適切に果たされるように、先ほどお話し申し上げた児相から市町村への事案送致の規定を設けるとともに、市町村において、特に在宅ケースを中心とする支援体制を一層充実するため、相談、指導、関係機関との連絡調整等の支援を一体的に提供する拠点の整備についても努めることとしているわけでありまして、先ほども答弁申し上げましたけれども、在宅措置という新しい発想も入れ込んでいこうということでございます。

 市町村における子供、家庭への支援の体制について、市町村によって取り組み状況に差が見られることから、今お話がありましたように、実態をよく調査をして把握をして、その上で、市町村レベルでのこうした取り組みを進めるべく、予算面を含めて具体的な支援のあり方を検討しなければならないというふうに考えております。

堀内(照)委員 調査、把握ということも言われました。現状のままでは大変だという認識も述べられました。それで法改正で強化も幾分するんだということですが、それでは法案が求めているような市町村の役割というのは、今有機的な役割ということも言われましたけれども、なかなか果たせないんじゃないかというのが私の問題提起でありまして、ぜひ職員の配置、市町村のところでの手厚い配置を具体化していただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 次に、今、児相もぱんぱんだとおっしゃった、児相の体制の問題です。

 今年度予算では、人口百七十万人の標準団体当たり、職員六十一人、そのうち児童福祉司が三十六人の配置に加えて、児童福祉司三人の増員ということの措置をとっています。

 法案では、児童心理司、医師または保健師、児童福祉司のうち他の児童福祉司の指導、教育を行うスーパーバイザー、こういう配置も義務づけています。

 さらに、このたびまとめられた児童相談所強化プランでは、人口四万から七万人に一人の配置とされてきた児童福祉司を四万人に一人とした上で、相談件数も加味して、平成三十一年度までに五百五十人程度の増員を目標としているということであります。そのうちスーパーバイザーは百十人ふやすんだ、児童心理司や保健師も増員するということであります。

 伺いたいのは、児童福祉司の増員なんですが、人口四万人に一人ということにするということですが、既に達している自治体もあると思います。幾つになるでしょうか。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 児童福祉司の配置基準につきましては、今お話ありましたように、現行おおむね四万から七万に一人というものですが、今回、今お話しのように、プラン等々で増員をするということになってございます。

 現状で人口四万人に一人以上の割合で児童福祉司が配置されているところでございますが、児童相談所単位ではちょっと把握しておりません。都道府県あるいは政令市単位ということになります。複数児相を置いているところもありますので、県単位ということになりますけれども、人口四万人に一人以上の割合で児童福祉司が配置されている自治体は、児相を置いている都道府県、政令市、それから二つの中核市の中で二十四都道府県市ということになります。これが二十七年四月一日の数字でございます。

堀内(照)委員 具体的には、十二府県十政令市二中核市になると思います。その中には、神奈川県や京都府、大阪府、福岡県、また、さいたま市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市と、都市部も多くあります。相談件数も加味するにしても、こういった都市部で既に達しているわけですから、どれほどの増員になるのかなと思うわけであります。

 全国の児童相談所の数は二百カ所余りでありまして、強化プランで五百五十人ふやすということでありますが、一カ所当たりにすると、単純に割りますと平均で二、三人の増員にすぎないわけです。そういう規模の数ですから、今既に達しているところでは、恐らく相談件数ということでは深刻な場合があって増員が求められているんであろうけれども、果たしてどれだけふえるんだろうかと思うわけです。しかも、五百五十人の増員というのは、スーパーバイザーも、初期対応に当たる職員も全て含んだものであります。

 心中以外の虐待死事例が発生した児童相談所における当該事例担当職員の受け持ち事例数というのが発表されていますが、一人当たり平均百九・一件、うち虐待事例の担当は平均六十五件だったということでありますが、この負担を軽くするということが大事なんだと思います。

 大臣に伺いたいんですが、実際に事案を担当している児童福祉司さんをしっかりと応援していく、そういう増員にしていくためには、現場の職員配置の実態もよくつかんで、さらに思い切った増員が必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 子供や保護者への直接の指導などを担う児童福祉司、これについて、児童相談所強化プランを四月に出しましたが、その中で、配置基準については、人口当たりの数をふやすとともに、人口だけではなくて、やはり児童虐待相談対応件数を考慮することとして、その件数に応じた児童福祉司の加配を可能とする、それから、平成三十一年度までの四年間で全国で五百五十人程度の増員を目指す、これは平成二十七年度と比べると一九%増となるわけでありますけれども、こういう増員を目指すこととしておりまして、この配置目標に向けて、必要な地方交付税措置がなされるものと承知をしているわけであります。

 こういった取り組みで児童福祉司の配置の充実を図り、児童虐待発生時に迅速的確な対応が今後なされるようにしていかなければならないと考えているところでございます。

堀内(照)委員 先ほど大臣もおっしゃいました、もう既に児相がぱんぱんになっているということを本当に解決していく上では、まだこれでは足りないんだと私は思いますので、ぜひ検討して進めていただきたいと思うんです。

 増員を図るだけではうまくいきません。専門職採用していない自治体も多い中で、児童福祉司さんの平均勤続年数が二、三年、そういう実態もあります。若くて経験の浅い職員、児童福祉司さんがふえている中で、経験のある児童福祉司、いわゆるスーパーバイザーが非常に重要になっていると思うんです。

 現在の運営指針では、スーパーバイザーは、児童福祉司五人に一人、経験十年となっていると思います。この指針どおりのスーパーバイザー、現時点で全国に何人いて、それはスーパーバイザー全体の何割に当たるんでしょうか。

香取政府参考人 スーパーバイザーでございますが、現行の児童相談所運営指針におきましては、児童福祉司としての経験、少なくとも十年以上の経験を有するなど相当程度の熟練を有している者ということで、こういった方を、教育・訓練・指導担当の児童福祉司、通称スーパーバイザーと私ども呼んでおります。その意味では、必ず十年以上の経験がなければならないというかたい縛りをしているわけではございませんが、相当程度の熟練ということでございます。

 スーパーバイザーは、二十七年四月一日現在で四百六十九名配置してございます。

 スーパーバイザーの中で十年以上の人がどれくらいいるかという数字はちょっと把握しておらないわけでございますが、逆に、児童福祉司全体の中で十年以上の経験のある方がどれくらいいるかということで申し上げますと、同じく二十七年四月一日の時点の調査で、児童福祉司が全体で二千九百三十四名、そのうち四百九十四名が十年以上の経験者ということで、比率でいうと約一七%ということになります。

堀内(照)委員 自治労連の調査なんですが、十年経験のあるスーパーバイザーは一六%だということです。五年の経験の人は五割になるんだ、三年未満の人は二割だということであります。

 このスーパーバイザー、今度は経験がおおむね五年ということで、研修を受けるということも義務づけて、スーパーバイザーとしてしっかり働いていただくということになるんだと思います。国は児童福祉司をふやす方向であり、その育成環境の整備は急務です。スーパーバイザーの役割はますます大事になっていると思います。

 今度は大臣に伺いたいんですが、それだけに、スーパーバイザーの配置、現在参酌基準を置いているということですが、それにとどまらずに、やはり一般の児童福祉司とは別建てで、基準をしっかり設けて、交付税措置の算定基礎にもきちんと盛り込むということが必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今回の改正案では、児童相談所の体制強化それから専門性向上を図るために、一時保護や施設入所などの措置など、子供の命にかかわり得る行政権限を適正に行使するということができるように、児童福祉司の指導、教育を行うスーパーバイザーを法定するということを行ったわけであります。

 児童福祉司とは別に、スーパーバイザーの配置について、政令で定める基準を参酌して都道府県が定めることとしておりまして、現在、児童相談所運営指針、これは局長通知でございますけれども、これを定めておりまして、その中の、児童福祉司おおむね五人につきスーパーバイザー一人と同様の内容を政令で定める方向で検討しているところでございます。

 今後、平成二十八年十月の施行に向けて、配置の基準を政令で定めてまいりたいと思っているところでございます。

堀内(照)委員 国がしっかり責任を持つという点で、ぜひ踏み込んでいただきたいと思っております。

 ちょっと時間がありませんので質問を飛ばしたいと思うんですが、指摘だけにしておきたいと思うんですが、法案では、児童心理司や保健師の配置も法定されます。しかし、児童福祉司のような配置基準があるわけじゃありません。

 これについては、全国児童相談所長会の要請書も実は厚労省に出されておりまして、児童心理司については児童福祉司三人に対して二人の割合での配置、精神科医や保健師を全ての児童相談所に最低一名の配置をという要請も出されていると思います。

 ぜひこういう点でも配置基準が必要じゃないか、これをちょっと質問したかったんですが、時間の関係で、こういうことが必要だということを指摘にとどめたいと思います。

 それで、今度の法案の検討規定の中に、これは先ほども少しありました、児童相談所の業務のあり方について掲げられています。これは何を検討されるんでしょうか。

香取政府参考人 御指摘の、施行後二年以内に児童相談所の業務のあり方について検討するという規定でございますが、これにつきましては、きょう、先ほど委員会の御質問でもありましたけれども、児童相談所は、児童虐待への対応に関しましては、問題の程度あるいは緊急度に応じまして、一方では親子分離といいますか介入をするという面と、その後の再統合、支援ということになりますが、両面の機能を持っているということになっております。これを、一つの組織の中で両様の仕事をしているということで、現場からは、一旦分離した後、再統合のプロセスの中で、保護者との関係でいろいろなトラブルが生じるというようなこともありまして、児童の迅速な保護あるいは支援に支障が生じているという御指摘があります。

 他方で、これにどういった形で対応するかということで、では、児相の機能あるいは組織体制を分離するか、分化するかという御議論もございました。

 これについては、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたが、機能をどういうふうに切り分けるかということと組織の体制をどうするかということについては、これはやり方はいろいろあるんですが、機能的な分離というのはやはり必要であろうということで、実際に機能分離した児相もかなりあるわけですけれども、組織体制も含めてどういうふうにするかということになりますと、支援の流れの中でやはり谷間に落ちるケースが出るといったようなこともありますので、ここはなかなか、どういうふうに児相の業務の中でこの二つの機能を振り分けて全体として機能するようにするかということについて、少し議論が要るだろうと。

 特に、機能を独立させた場合に、人の配置でありますとか、あるいはそれを前提とした業務分担、あるいは標準的な業務のプロトコルをどのようにつくるか、この辺についてやはり一定整理が必要であろうということで、こういった問題意識を踏まえて、一方で、今回、児相の体制強化で職員等専門職の配置の増員をするわけでございますが、そういったことも踏まえて、今後児相の業務のあり方について全体的に見直していく、あるいは、分離と統合の機能、それをどのように組織の中で役割分担し、機能分化をしていくか、この辺について、少し現場の意見も聞きながら、あるいは専門家の方の意見も聞きながら検討していくということで、今回はこの二年以内の検討規定というものを設けた、そういうことでございます。

堀内(照)委員 命を守るというのはもちろん最優先にしなければなりませんが、そのための保護機能を強化する余りに、今ありました、支援と切り離すということで果たしていいんだろうか、いろいろな受けとめがあるんだと思います。

 二年以内の検討規定なんですが、大臣、国が出した児童相談所強化プランや市町村の体制強化も、二年以内となりますと途上であります。

 児童相談所のあり方、市町村を含む虐待対応の体制を大きく変える内容を含んでいるだけに、今もありましたように、現場の実態をしっかりつかんで、専門家の、現場の方々の意見も聞いて、結論を急がないということが大事だと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 現場の声は何においても大事でありますけれども、どこを現場と考えるかというのはいろいろあって、もちろん、児相、それから市町村の現場、要対協、学校等々、やはりしっかり私たちは考えていかなきゃいけないし、よく話を聞かなきゃいけません。

 今般、私どもには、児童虐待については総合調整機能が厚生労働省になりましたので、我々は、さらにそういった関係するところにしっかりと情報を得られるようなパイプをふだんから持って、現場の声をしっかりと受けとめながら今後の業務に当たっていかなきゃいけないというふうに思っております。

堀内(照)委員 時間が来たので終わりますけれども、読売新聞が昨年秋に「児童虐待の深部」という連載をやっていまして、そこで、ある小児科医の言葉が紹介されています。

 小児科医は親の話を信じて診察するけれども、虐待対応では疑ってみなければいけない、でも、親と敵対すれば治療もできなくなる、そういう葛藤も描かれて、本当に子を傷つけたい親はいない、病院に連れてくる親は心の中でSOSを発している、虐待通告は親への支援の始まりでもあるんですと、まさに保護と支援が一体であるということを語っている。

 大阪の児相の方の言葉も紹介されています。ここは親を追及し、懲らしめる機関じゃない、子供たちが振り返ったとき、大事に思ってくれるところがある、人生捨てたものじゃないと思ってもらえる場所でありたいと。

 最前線で取り組んでいる方々の言葉は非常に重いと思います。児童福祉の専門性というものを深く捉えるということが大事だと思いました。

 まずは、やはり市町村及び児相の体制強化が抜本的に求められているんだと思いますので、そのことも指摘して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十八分開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。浦野靖人君。

浦野委員 よろしくお願いをいたします。

 きょうは、もう私のライフワークと化しつつある児童虐待の関連の法案質疑ですので、しっかりとやっていきたいと思います。

 一つ目なんですけれども、この法案で必置にはなりませんでしたけれども、今、現行でも、中核市では児童相談所を設置することはできます。ただ、ふえてこなかった理由というのをしっかりと認識しないと、これからふやしていこうとしている中で、何が原因だったのかというのはしっかりと認識をしていかないといけませんので、その点を一度お聞かせください。

香取政府参考人 答弁申し上げます。

 今御指摘ありましたように、現行法上でも、希望する市は、政令で指定をいたしますと児童相談所を設置できるということになってございますが、現在は、中核市、四十七ございますが、このうち、設置している市は、横須賀市と金沢市の二市ということでございます。

 今回、中核市での児相の設置につきまして、専門委員会等でも御議論がありました際に、中核市市長会の方ともお話をしまして、中核市市長会の方から、これについては、緊急提言、要請等が出ております。

 その中で、中核市の方々は、児童相談所の設置の拡大につきましては自分たちも積極的に考えてきたところでありますが、これまでは、国による中核市への財政支援が不十分であること、それから、専門人材の確保、育成が極めて困難な状況にあることからなかなか設置が進まなかったということを話しておられまして、私どものさまざまな議論の中でも、やはり専門人材の確保ということと財政的な負担というのが、一つ、中核市の設置がこれまでなかなか進まなかったことの大きな背景にある課題であったというふうに考えてございます。

浦野委員 さっきも言いましたけれども、必置化が見送られて、施行後五年を目途に必要な措置を講ずるという検討規定ということになったんですね。省庁の方とお話をしている中で、大臣もこれは必置すべきだという御意見だったというお話だったんですけれども、私も大臣と同意見なんですね。

 後で大臣にもそこをちょっとお聞かせいただきたいのと、この五年という、五年後に向けてそういう整理をしていくという認識なのか、それとも、五年待たずしても、もう条件が整ってしっかりできるところから前に進めていくという認識で厚生労働省が考えているのか、その辺の確認をしたいと思います。

香取政府参考人 今回は、今お話がありましたように、法案の、改正法の施行後五年を目途として、中核市、特別区が児童相談所の設置ができるように、その設置に係る支援等の必要な措置を講ずると書いてございます。

 これにつきましては、中核市側もそういうお考えですが、基本的には、準備ができるところについては、希望するところについては設置していただきたいと考えておりまして、五年を待つというよりは、五年のうちに基本的には希望するところが全て設置していただけるようにということでございますので、五年を待つということではないというふうに考えてございます。

 もちろん、支援に当たりましてはさまざまな、先ほどの財政的な支援、それから、人目の、専門人材の確保以外にも、実際に今設置しておられる金沢市とか横須賀市の意見を聞きますと、やはりその後も継続的にきちんと中核市の児相を機能していくためには継続的なさまざまな支援ということも必要ですし、あるいは、実際の措置以外に今度は市町村とのいろいろな、送致の関係とかも出てまいりますので、都道府県の支援、あるいは近隣市町村等の体制整備ということがございますので、そういったことを行いながら、できるところから順次設置をしていっていただきたいということで、その意味では、できるところから速やかにということで基本的には考えているということでございます。

塩崎国務大臣 以前にも申し上げましたけれども、今、この児童福祉の専門人材も人口割りで、何人に一人ということで決まっています。そういう意味では、児童虐待の問題が起きるのは、やはり全国どこでも同じように起きるわけでありますから、そうなれば、一定程度の人口に一つの児相があってしかるべき、こういうことで、私は本当は必置にすべきだということでありましたが、自治事務ということでもありますので、裏から書いたような形で、今回、この施行後五年をめどとして、中核市及び特別区が児童相談所を設置することができるように、その設置に係る支援その他の必要な措置を講ずるものとするということで、裏から書いたようなことになっておりますが、気持ちの上では、どんなに遅くても五年のうちに全ての中核市そして特別区に児相ができるようにするべきではないか、そのための政府の支援もしっかりとやるべきだ、そういうことを、思いを込めてつくったこの法文でございます。

浦野委員 通告では四つ目にしているんですけれども、同じように、包括支援センターも、今回、法案の中で書いてあります。包括支援センターは、実は財政的な予算はしっかりととってあって、予算的には大丈夫だったんですけれども、実際は思っていたよりふえなかったということなんですね。その原因については、何が主な原因だったかというのはわかっておりますか。

香取政府参考人 この子育て世代包括支援センターでございますが、きょうの審議でも御答弁申し上げましたように、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行うということで、これは平成二十七年度から、今回の子ども・子育て支援新制度の中にあります利用者支援事業というものを活用して実施したということで、その意味では、二十七年度からつくっているものでございます。

 今お話ありましたが、二十七年度予算では百五十市区町村の予算を準備いたしましたが、現時点では百三十八、実施率といいますか、百五十に対する比率でいいますと、九二%という形でございます。百五十には達していなかったわけでございます。

 実際、この件に関しまして、今回、法定化するに当たってさまざま御意見を伺いましたが、一つは、保健師等の専門職を確保してこの包括的な体制を実施していくということに当たって、やはり人材の確保について確たる自信がないということ、それから、やはり、二十七年度から始めたものでもございますので、まだ趣旨とか必要性について自治体サイドで必ずしも十分な理解が得られていないというような背景があったのではないかというふうに思っております。

 それもありまして、昨年の九月に、まさにこの改正の議論をしている最中だったわけですが、このセンターの意義や役割等につきましては、各自治体に対しまして改めてその趣旨を周知いたしまして、市町村保健センターに今配置されております保健師等の積極的な活用をお願いするということもいたしましたし、それから、これも先ほど御答弁申し上げましたが、今月の十三日に、既にセンターを設置しております市区町村、大きいところ、小さいところ、さまざまございますが、好事例の周知というものを行ったところでございます。

 今回、法律にきちんと位置づけますので、そのことも踏まえて、改めて趣旨や必要性等につきまして広く周知いたしまして、全国展開ができるように努力してまいりたいと考えております。

浦野委員 児童相談所とか支援センターに共通する財政的な措置、これは国が努力をすればそのうちちゃんとつけられるだろうと思うんですね。

 ただ、やはり、人材確保というのは、国が幾らやると言っても、これは一から育てていかないといけないのでなかなか時間もかかりますし、これはもう保育士問題と全く同じ構図だと思うんですね。必要だからこういうところをふやしましょうと言っても、やはりそれを支えるのは人材なので、人的資源が今以上に、相当必要になる。

 今回、四年で千人、児童相談所の機能を充実させるためにふやすということをおっしゃっていますけれども、これもかなり、これこそ一番ハードルが高いというか、真っ先にこれから千人以上ふやしていかないといけないところなんですけれども、この点については、今どういうふうに国は対応しておりますか。

香取政府参考人 御指摘のように、人材の確保は一定の時間がかかるということではあろうかと思っております。

 今回、児童相談所の機能強化ということで、この間、ずっと児相は、児童虐待対応、複雑困難なケースがふえているということで、大変負担が大きいということもございまして、人材の確保ということで、今回、法律改正でさまざま児相の業務の追加もいたしますが、これも御答弁申し上げていますように、全体で千百二十名の増員を行います。これは交付税措置を含めて総務省さんにも多大な御協力をいただいたわけでございますけれども、この中で、児童心理司、医師、保健師、スーパーバイザー、これについては法律上の規定を置きます。それから、配置基準も設定いたしまして、あと、児童福祉司等の登用に当たっての研修の義務化といったことも行ってまいりたいと思っております。

 これについては、やはり、人目の確保ということが大変なので、その研修等も含めて、時間をかけ、といっても向こう四年間ということですけれども、できるだけ研修等を通じて必要な人材を確保していく。あるいは、処遇等の面でも配慮して、特に、交付税措置されているわけですけれども、補助金等で手当てできる部分については私ども手当てはするということで、少し時間はかかりますけれども、粘り強く、人材確保に努めて、必要な人間を確保してまいりたいと思っております。

浦野委員 私が大学生で保育士、幼稚園教諭の免許を勉強したときに、児童心理の専門職というのはもっとふやすべきじゃないかという議論がもう既になされていました。もう二十年以上前の話です。

 だから、そのとき既にそういうお話がされていた。児童心理だけじゃないですよ、ありとあらゆる、こういった福祉職というのは不足するというのは二十年以上前からもう目に見えていた話で、養成学校でもそういう危機感をすごく持っていたんですね。結局はそれがなかなか、ニーズがふえたのか、ふえてしまうスピードが速かったのかどうかわからないですけれども、結果的には対応し切れていない現状があるというのは非常に残念なことです。

 二十年以上前からそういった指摘はもう養成学校ではなされていたことでしたので、それはやはり、しっかりと国も人材の育成を考えて、今、保育士では、保育士資格を持っていない人でもできるようにというような議論とかもなされています、何の資格もない人たちが児童相談所でそういう仕事に携わるようにならないといけなくなるようなことになる前に、しっかりと専門職の方を育てていただけたらと思っています。

 次の、児童相談所における弁護士配置なんですけれども、私は二十四時間体制で対応していただけたらなと思っているんですけれども、そこら辺のところをちょっと詳しく教えてください。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 児童相談所に、今回、弁護士の配置ということで規定を置くことにいたしました。

 児相は、虐待対応件数がふえておりますし、これも大臣からも御答弁申し上げていますが、やはり法律的に対応すべき事案というのがかなりふえている、それから、子供の最善の利益、権利を守るという観点からしますと、親権との関係等々でやはり法律的なサポートというのはかなり必要になるということで、法律的な、専門的な知識経験を要する業務というものをきちんと確実に遂行していくということで、今回、弁護士の配置ということを法律に規定し、それが難しい場合であっても、それに準ずる措置を講ずるようにということで規定を置きました。

 現在の弁護士の児童相談所における配置状況でございますけれども、一応、私どもの方で法的対応機能強化事業ということで、これはどちらかというと、委託をしたり雇い上げをしたりした場合の費用ということで一定の助成を行っているところでございますが、これも使いながら、児相の方で弁護士を今現実にどのぐらい配置しているかということでございますが、児相全体で二百数カ所ございますが、三カ所では常勤として弁護士を配置していただいております。

 これは午前中の答弁でも大臣から答弁申し上げましたが、常勤を配置していただけている児童相談所は、この弁護士、非常によく機能していただいていまして、非常に好事例だと思っております。

 これ以外に、非常勤で配置をしている例、それから、弁護士事務所といわば契約をして必要に応じて御支援をいただくという形をとっているところ、それから、県の弁護士会の推薦をいただいてそこと契約をしているというような事例がありまして、こういったことも含めれば、一応、全ての児童相談所では、何らかの形で弁護士さんに関与をしていただいて、こういった業務を進めているという状況にございます。

 ただ、今後のことを考えますと、また、法的な対応の業務の重要性ということを考えますと、これは、必要に応じて確実に迅速な対応ができるようにきちんと弁護士を確保する必要があるということで、今回こういう規定を置いたわけでございますが、やはり実際には、そもそも弁護士の数ということでいっても、地域差もありますし、そういった地域の状況もございますので、必ず全部常勤できちんと一斉に置くということは、なかなか、現実問題、困難だということで、今回のような、一応、一定の、準ずる措置という形で手当てをすることにしました。

 やはりこれは、本来の趣旨から考えれば、きちんと弁護士が配置されて法的な措置がとられていると同様の機能が果たせるような対応ということをお願いするということで、これは弁護士会その他関係団体にもかなり御協力をいただかなければならないと思っておりますが、そういった御要請をすることも含めて、確実に配置ができるように、私どもとしても対応を考えてまいりたいと思っております。

浦野委員 弁護士さんがいないわけではないとは思うんですけれども、常勤という形でいていただける方がなかなかいてないことだと思うんですね。

 ここでもやはり、この話をずっと聞いていると、何か、日本にどれだけ人がおらへんねん、人材がおらへんねんというイメージになりますけれども、そんなことはないと思っているので、これからも、国もしっかりとチェックをしながら対応していただけたらと思います。

 次の質問ですけれども、通告、相談窓口の一元化、これは、これまでもいろいろと議論がされていますし、私はもちろん児童相談所が担うべきだと思っています。ただ、人材不足というのはもう本当に、人材不足じゃないですね、人手不足ですね、もうやはり顕著ですので、ここら辺は、もちろん、今現在もどうしたらいいかという議論が審議会等でなされていて、何とかしないといけないよねという認識は国の方もしていただいているみたいなんですけれども、どうなんですか、今現在の検討状況というのをちょっと教えていただけたらと思います。

香取政府参考人 虐待が疑われるケースの通告に関しましては、今の現行法の考え方は、虐待防止法上、何人も虐待が疑われる事態を見た場合には速やかに通告をする義務があるという形で、全ての国民に、こういったことについてはちゃんと通告をしてくださいという規定が置いてございます。

 そのこともありまして、通告することに抵抗感がないように、それと、できるだけ、疑いがあったときには通告してもらうということで、早く連絡してもらえるということで、基本的には、市町村、児相、警察、ある意味では身近なそういった公共機関に通告をしていただくということで、どこでもそれを受けるという形になってございます。

 最終的には、通告を受けた機関が要対協等を通じて情報共有し、基本的には、最終的には児相で対応するという形で今動いているわけでございますけれども、これについては、もちろん、一本化、どこかで一元的に受けるという議論は当然ございます。

 ただ、この議論については、やはり、今の体制については、どこに連絡するかということについて通告する側に緊急度の判断を求めているということになるということで、どこかに一元化をする、児相なり都道府県に一元化をして、そこで受けたものを振り分けて、適宜対応する、適切に対応するということで一元化をするという議論があるということでございます。

 これについては、やはりちょっと、今先生もお話がありましたように、両様ございまして、できるだけ早い段階で、ハードルの低い形で通報いただくという方がいいのではないかという議論もありますし、一元的に受けましても、電話だけだと必ずしも適切な判断ができないということになりますので、一本化することのメリットというのはそんなにないんじゃないかという議論もございまして、あるいは、一元化するためには、一種、そういう新しい窓口機関をつくるという議論になりますので、そのこと自体がまた、ちょっと屋上屋かという、さまざまな議論がございます。

 私ども、一八九をつくりまして、一八九は基本的には児相につながることになっているんですけれども、実は、一八九をつくりまして、児相に対する電話の受電は桁違いにふえているということもありますので、実際には、やはり相当な通報の背景があるということもあります。

 ということもありますので、私どもとしては、通告窓口のあり方については、その後の受けた情報をどのように共有して振り分けるかということも含めて、少しモデル事業のようなものをつくって、その中で、確実に、気軽に通報していただけるということと、そごがないように通報を受けた事案について対応できる体制というのを、全体としてうまく回るようなやり方はどうかということをちょっと考えているということで、そういったモデル事業を今回用意いたしまして、その中でちょっと窓口については考えたいと思っております。

浦野委員 最後の質問になりますけれども、里親制度について三点ほど。

 一つ目は、里親という言葉が与える今までのイメージが、余りにも日本は、何となく後ろめたいイメージが何か残っていて、里親と言われると何か取っつきにくいみたいな感じになってしまうんですけれども、都道府県では、里親という名前じゃなくて、名称を変えてもう少し取っつきやすいようにしているところもあります。国でもそういったことを考えた方がいいんじゃないかということがまず一つ。

 二つ目は、児童相談所間の連携というか、温度差ですね。

 今、養育里親なんかだと、別の地域の児童相談所を介して養育里親の依頼とかが来たりします。そのときに、実際に私の家に来た里子ちゃんのときにあった話なんですけれども、詳しい情報が、児童相談所が二つ介されることによって、全く届かないという事態が起きたんですね。ふだんはそういうことはないんだろうと思っているんですけれども、それも、横のつながりがまずいのか、それとも児童相談所のレベルが低かった、担当者のレベルが低い高いがあるのか、それはちょっとわからないですけれども、でも、そういったところ。

 実は、民進党さんの修正案の中に連携の部分が含まれていましたけれども、これは私、児童相談所のスキルアップも重要ですけれども、やはり横の連携というのは、これからもっともっと、里親制度を充実させていくにはやらないといけないと思っていますので、その点の指摘。

 それと、公務員の皆さんの育休ですね。特別養子縁組の監護期間中に、民間は育休をとれるようになりました。それで、公務員の皆さんは実はとれないということで、三重県が条例でそれをできるように変えました。この件について、国の方はどういうふうに対応されるかというのをお聞かせください。

香取政府参考人 社会的養護の中における里親の位置づけにつきましては、これはもう先ほど大臣からも御答弁申し上げていますように、日本は施設養育が非常に多いという歴史の中で、やはりできるだけ家庭に近い環境で養育を行うということで、里親を中心に考えていく。今回、法律改正の中でもそのことをかなり明確に、きちんと書いて、里親支援ということでやっていきたいと考えております。

 まず、名称の話でございますけれども、今回のこの法律改正に先立ってずっと検討していただきました新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告の中でも、里親という名称については、これはお子さんの一定期間の代替養育を行うものだということで、その機能、役割をきちんと誤解なく伝えるということと、やはり地域社会の中で里親の役割あるいは里親の位置づけというものをきちんとしていくという意味で、名称については検討すべきだということを言われております。

 実際、今お話にもありましたように、自治体では、公募等によりましてもうちょっと親しみやすい名称をつくるということで、そういった名称を使いながら里親の開拓、支援を行っているという自治体もございますので、これは実際に里親をやっておられる里親会の皆さんの御意見なんかも聞きながら、名称あるいはこういった里親の社会的な認知の拡大ということについては、少し検討してまいりたいと思っております。

 それから、児相の対応ということでございますが、これは先ほどの専門委員会の中でも議論されていますが、もちろん積極的に里親の支援をしていただいている自治体もございますけれども、やはり、自治体によって、実際の里親の委託率なんかを見ると、かなり差がありますので、これはちょっと、児相の側でも、少しそういう意味でいえば温度差があるのかなと。

 その背景は、もちろん受け入れ側の社会の認知度の問題もありますので、現実に自分のところで抱えている登録の里親の数がなかなか多くない、あるいは、児相自身が大変忙しいので里親委託について十分支援が行き渡らないといった問題があろうかと思います。

 ということで、今回、里親については、きちんと法律上位置づけ、その役割、機能、位置づけを強化するということもあわせまして、広報啓発、里親の開拓、マッチング、それから、委託した後の里親に対する支援ということ、最後はお子さんの自立支援まで、一貫した里親支援をきちんと法律上、都道府県の役割ということで位置づけ、その上で、それが確実に実施できるように、先ほどの児相プランの中で、人の配置をしていくということで対応したいと思っております。

 これについては、お話ありましたように、里親の方とその子供の住所がずれていることは幾らでもあるわけなので、児相間の連携というのも非常に重要ですので、そのことも含めて、今後、児相の業務指針等をきちんとつくっていくわけですけれども、その中で明確に書いて、この点については力を入れて対応してまいりたいと考えております。

千葉政府参考人 国家公務員関係についてお答え申し上げます。

 現在、国家公務員の育児休業法につきましては、お尋ねの特別養子縁組の監護期間中の子につきましては育児休業の対象となっておりませんが、民間法制におきましては、本年三月の育児・介護休業法の改正によりまして、来年一月一日を施行日として、特別養子縁組の監護期間中の子などが育児休業の対象となるよう措置されたと承知をしております。

 こうした民間法制の状況を踏まえまして、人事院といたしましては、国家公務員についても特別養子縁組の監護期間中の子を育児休業の対象とすることにつきまして、所要の検討・準備を進めてまいりたいと考えております。

北崎政府参考人 地方公務員についてお答え申し上げます。

 民間法制の今回の措置を踏まえまして、先ほど人事院から答弁がありましたように、国家公務員の対応については、人事院において検討・準備が進められているものと承知をしております。

 私どもも、地方公務員の勤務条件につきましては、地方公務員法二十四条において、国家公務員等との均衡の原則が定められております。

 今後、人事院の検討状況も踏まえながら、地方公務員育児休業法における取り扱いについて、適切に検討して対応してまいりたいと考えております。

 以上であります。

浦野委員 ありがとうございます。よろしくお願いをいたします。

 きょう、先ほどの民進党の岡本委員の質問の中に、把握をできていない子供たちがいてるということ、これは、大阪で子供二人が餓死をした非常にショッキングな出来事がありましたけれども、この子供二人は、転出先から住民票が移っていなくて、把握し切れていなくて、それでああいうことになってしまったんですね。

 だから、転出届というのは、住民票というのは、自分たちが出さないと移動しませんので、実はそうやって把握し切れなくなっていっている子供がたくさんいてるということを、ここを何とかして、そのときも私たしか質問をしたと思うんですけれども、そこを何とかしないといつまでたってもこういう問題は解決しませんよということをたしか私も言わせていただいていたと思うので、これはぜひ認識をそういうふうにちょっともう一回していただいて、少なくとも、そういう小さい子供たちが所在不明になるようなことにだけはならないように、ちょっと仕組みを考えていただけたらと思っています。

 もう一つ、同じく岡本先生がおっしゃっていた、どういうのが虐待のサインかというのを、これは養成校ではちゃんと教えていますよね。児童家庭局とかが、子供の虐待対応の手引とか、そういうのをつくってやっていますよね。まだそういうものはあると思いますので、そういう材料、それは養成校だけが使っているだけかもしれませんけれども、そういったものもしっかりと、卒業していっている人たちももう一回再認識をしてもらえるように、そういうのも使っていっていただけたらと思っています。

 以上です。ありがとうございました。

渡辺委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 この際、本案に対し、初鹿明博君外一名から、民進党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。郡和子君。

    ―――――――――――――

 児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

郡委員 ただいま議題となりました児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民進党・無所属クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 厚生労働省の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」によれば、虐待死の事例の中でゼロ歳児が占める割合は高く、そのような事例では、いわゆる望まない妊娠であるケースが多いことがわかっています。そのため、一人で悩みを抱えている妊婦や産前産後に心身の不調に陥っている妊産婦に対し、適切に支援を行うことが重要であり、ひいては児童虐待の発生予防に大きく寄与することから、母子保健法のみならず、児童福祉法においても明確に規定されるべきと考えます。

 また、児童虐待の早期発見は、事態の深刻化を防止するために極めて重要であり、本法律案において、支援を要すると思われる児童等を把握した医師、看護師、児童福祉施設の職員、学校の教職員その他の関連職務の従事者が当該児童等の情報を市町村に提供するよう努めることとした点は評価できます。しかし、児童虐待を発見しやすい立場にある者は、彼らばかりではありません。

 特に歯科医師は、学校での歯科検診等において児童の生活状況や栄養状況をつぶさに知ることができ、ネグレクトを含め児童虐待の早期発見にとりわけ大きく貢献することができる職種の一つであり、条文上においても歯科医師の役割を明記すべきであると考えます。

 このような認識のもと、本修正案を提出した次第であります。

 次に、本修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう、国及び地方公共団体の責務に妊産婦を支援することを加えること、第二に、要支援児童等と思われる者を把握したときに当該者の情報を市町村に提供するよう努めなければならない者として、歯科医師を明記すること、第三に、児童相談所は、養子縁組の援助等の業務に関し、必要な情報を共有すること等により相互に連携を図りながら協力するものとすること等であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

渡辺委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、児童福祉法改正案並びに民進党提出の修正案について、賛成の討論をします。

 初めに、一言、委員会の運営について意見を述べます。

 厚労省所管の法案は非常に多く、かつ、重要であるため、審議日程については与野党の協議、協力が欠かせません。野党は、共同提案の保育士等の処遇改善法案の同時審議入りを求めていましたが、一致を見ないまま、閣法である本案のみ趣旨説明から採決まで一気通貫で処理されることが職権で決められました。本来、参考人質疑も行い、十分な審議を行うべきでした。極めて遺憾であります。

 また、障害者総合支援法案の参考人質疑において、ALS協会の岡部氏の陳述が実現しなかったのは残念でなりません。事実は、渡辺委員長の采配により、連休前に岡部氏本人への出席要請は出されており、時間を有効活用するための配慮事項等を質疑者にも通知していました。法案は、コミュニケーション支援が大きな論点の一つであり、まさに当事者の意見を聞くべきでした。厚労委員会の権威を著しく傷つけることとなり、今回の教訓を踏まえ、今後は当事者参加で法案を深めていけるよう強く望みます。

 法案に賛成の理由の第一は、第一条の理念規定が、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、」との文言が入り、子供は保護の対象ではなく権利の主体であることが明確にされたことです。

 二〇一四年度の全国の児童相談所で受けた児童虐待相談件数は八万八千九百三十一件、五年間で倍になっています。死亡事例は六十三件六十九人もあり、余りに痛ましい事件が続いています。職員増員のペースを上回る相談件数であり、市町村への通報が児童相談所と同程度になってきたことから、身近な市町村で適切な対応がとれることは望ましいことです。また、本法案による、妊産期から子育て期までの支援を行うセンターの設置や、児童相談所への専門職の配置、里親支援などは、必要な施策です。

 一方、全国市長会など、新たな体制整備や財政負担が生じる地方自治体からは、国による支援措置が不明確、課題を整備し、十分な検討を行うよう意見書が出されています。これらの懸念に対しては、問題を先送りしました。財政措置のないまま義務づけが先行すれば、経験のない非常勤職員に頼らざるを得ず、理念規定とはほど遠いものになります。ふさわしい体制づくりへ国が責任を果たすべきです。

 十八歳以上の者に対する支援は、児童養護施設入所者や里親に委託されていた児童についても、自立援助ホーム同様、二十二歳の年度末まで支援を受けられるようにすべきです。

 報告書は、「自分から声をあげられない子どもの権利が確かに保障されているかを監視するためには、第三者性を有する機関の設置が求められる。」と指摘しています。国連子どもの権利委員会から三度にわたり勧告を受けていながら、当面は都道府県児童福祉審議会を活用するとしています。子供の最善の利益を明記した趣旨からも、待ったなしで具体化するべきです。

 なお、民進党の修正案で提案された養子縁組に関する相談、援助などに特定妊婦を加えることは、望まない妊娠から子供の命を守る上で重要な措置であります。歯科医師の協力など、いずれも必要であり、賛成とします。

 以上、討論を終わります。(拍手)

渡辺委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、初鹿明博君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

渡辺委員長 次回は、来る二十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十七分散会


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