衆議院

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第7号 平成13年4月4日(水曜日)

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平成十三年四月四日(水曜日)

    午前十時四十五分開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 青山  丘君 理事 岸田 文雄君

   理事 新藤 義孝君 理事 馳   浩君

   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君

   理事 久保 哲司君 理事 達増 拓也君

      伊藤 達也君    石原 伸晃君

      小此木八郎君    小渕 優子君

      岡下 信子君    梶山 弘志君

      佐藤 静雄君    高木  毅君

      中馬 弘毅君    林  義郎君

      松野 博一君    松宮  勲君

      茂木 敏充君    保岡 興治君

      北橋 健治君    後藤 茂之君

      後藤  斎君    鈴木 康友君

      中津川博郷君    肥田美代子君

      松本  龍君    山内  功君

      山田 敏雅君    石井 啓一君

      福島  豊君    若松 謙維君

      土田 龍司君    大森  猛君

      塩川 鉄也君    矢島 恒夫君

      大島 令子君    小池百合子君

      宇田川芳雄君

    …………………………………

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   経済産業副大臣      中山 成彬君

   経済産業副大臣      松田 岩夫君

   内閣府大臣政務官     渡辺 具能君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   興  直孝君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   高原 耕三君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  西田 恒夫君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境

   局長)          日下 一正君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策

   局長)          太田信一郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 河野 博文君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     岡下 信子君

  中野  清君     佐藤 静雄君

  山口 泰明君     小渕 優子君

  赤羽 一嘉君     福島  豊君

  石井 啓一君     若松 謙維君

  大森  猛君     矢島 恒夫君

  西川太一郎君     小池百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     山口 泰明君

  岡下 信子君     竹本 直一君

  佐藤 静雄君     中野  清君

  福島  豊君     赤羽 一嘉君

  若松 謙維君     石井 啓一君

  矢島 恒夫君     大森  猛君

  小池百合子君     西川太一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)

 石油の安定的な供給の確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五号)




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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省産業技術環境局長日下一正君、経済産業省商務情報政策局長太田信一郎君、内閣府政策統括官興直孝君及び総務省政策統括官高原耕三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北橋健治君。

北橋委員 きょうは、懸案の法案の質問に入ります前に、最近、アメリカ政府が京都議定書に対しまして支持しないと大統領報道官が発言したことにつきまして。

 これは関係方面に大変ショックを与えました。これについては、政府としてもレターを送るなど対応されていると思いますが、アメリカを初めとして先進国では、大変な競争、メガコンペティションにさいなまれながらも努力を続けているわけでございまして、当然、環境への対応については、企業としてもかなりのコストがかかることであります。日本の産業界におきましても、コストをかけてCOP3議長国としての責任を果たすために大変な自助努力をしていただいていると認識をしております。

 したがいまして、経済産業大臣として、今回のアメリカ政府の発言に対して、今後、どのようなアクションをおとりになるか、まずそこからお伺いしたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 気候変動問題というのは、全世界的に積極的に取り組むべき課題だと私は思っております。また、我が国の経済及び国民生活とも、委員御指摘のように、密接にかかわっている重要問題、このような認識を持っております。

 このため、経済産業省といたしましては、京都議定書が、気候変動問題への取り組みと活力ある経済及び国民生活が両立し得る、そういう枠組みを提供するものとなるように、引き続き国際的な対話に積極的に取り組んでいくべきだ、私はそういう基本認識を持っています。

 中でも、世界の二酸化炭素排出量の四分の一を占める米国が京都議定書を締結することは、このような観点から極めて重要だと思っておりまして、米国のブッシュ大統領も、気候変動問題については深刻なものと受けとめ、現在、政権内で本問題に対する対策のあり方を見直し中と聞いております。

 このため、今後、関係閣僚とも協力をしつつ、米国の考えを聴取するとともに、京都議定書が気候変動問題への取り組みと活力ある経済及び国民生活が両立し得る枠組みを提供するものとなるよう、一層対話を深めるべく米国への働きかけを強く行ってまいりたいと考えております。

 このような取り組みの一環といたしまして、私といたしましても、本日派遣される政府訪米団に西川経済産業大臣政務官を参加いたさせました。また、本日、米国のリンゼー経済担当大統領補佐官、あるいは私のカウンターパートでありますエバンス商務長官、さらにはエイブラハム・エネルギー長官に対して、私から書簡を発出する予定でございます。

 経済産業省といたしましては、積極的に米国に働きかけて、そして今回のブッシュ大統領の発言の真意をただすとともに、私どもは、今申し上げたように、二酸化炭素の四分の一の排出量、それだけの影響のアメリカを何とか土俵の中に引き戻すように努力をしていきたい、このように思っています。

北橋委員 ぜひ大臣、その方針で頑張っていただきたいと思います。

 私も、二年前にワシントンに参りましたときに、たまたまアメリカ環境庁のドニガー法律顧問にお会いする機会を得まして、彼は民主党のポリティカルアポインティーでございましたが、大統領選挙の前だったんですけれども、政権がもしもかわった場合に、果たして地球温暖化問題への取り組み、アメリカ政府はどうなるだろうかという懸念を表明されたことを非常に印象深く持っておりまして、やっぱりかという感じがいたしております。

 そういった意味では、これから産業界が十字架を背負うような気持ちで、コストをかけてこの問題に取り組んでいくわけですから、アメリカ政府が世界的な枠組みから外れるとなれば、根本から崩壊してしまう。そういった意味では、断固たる決意を持ってアメリカに対処していただきたいと要望しておきます。

 それでは、基盤技術の法案につきまして、以下順次質問をさせていただきます。

 私どもは、九回党内でこの問題のディスカッションをいたしました。大変に悩ましい議論の過程を経ております。といいますのは、基盤技術の底上げを図ることは非常に大事なことであるということでは、認識は一致しているわけでございますが、これまで同僚委員から質問いたしましたように、過去の基盤技術センターの、いわゆるリターンといいますか資金回収という面におきまして、当初期待されていた十分な成果を上げていない、その総括をどう考えるか。そしてまた、例えば原資につきましては、NTTの配当金収入を産投会計に、これは昭和五十九年、政府・与党の合意で帰属されているわけでございますが、本来ならば、国民の財産ともいうべきこのNTT株の配当金については、一般会計に帰属をさせて、そこから国全体の戦略の中で投資をしていくべきではないか。あるいは、テーマの選定に当たりましても、審議会等でいろいろと、中間段階を含めて、採択のときも含めてきちんとした対応が必要であると言われております。そして、きょうは内閣府の方にもお越しをいただいておりますが、そもそも日本の技術開発につきまして、国家戦略あるいは一元的なシステムといいますか、評価を含めた体制ができているんであろうか。

 こういった諸点につきまして、私どもは、できるならば与党の御理解をいただいて修正を望んだところでございますが、筆頭理事を初め皆様方の御努力によりまして、附帯決議においてかなりそういった議論を盛り込むというふうに聞いております。

 そこで、まず第一に大臣にお伺いいたします。

 失われた十年というふうに、民主党はこの十年間の経済運営を見ているわけなんですけれども、日本の産業競争力なり技術、いわゆる基礎的な分野において特にそうですが、技術力の低下というのは目を覆うばかりの状況になっているというふうに感じておりますが、大臣はどこに原因があったとお考えでしょうか。

 経済産業省もいろいろな制度、補助金、税制、あらゆる政策のスキームを駆使して、この基礎的な、基盤的な技術の底上げについては努力をされてきたと思うのでありますが、どんどん低下をしてきている現状は否めないと思います。原因はどこにあるとお考えか、お伺いしたいと思います。

平沼国務大臣 日本の産業競争力の低下について、どこに原因があるか、こういうお尋ねでございますけれども、委員御指摘のとおり、近年我が国の国際競争力の低下が各方面から指摘をされており、国際競争力の源泉である産業技術力についても、その低下が懸念されております。

 具体的には、情報通信やライフサイエンスといった先端的分野における米国の優位を示す調査結果もございます。また、従来我が国が得意としてまいりましたコスト削減や品質改善にかかわる技術につきましても、アジア諸国の激しい追い上げを受けているのも現実でございます。またさらに、近年において、民間企業の研究開発投資に占める基礎研究費の割合が低下してきておりまして、中長期的な産業技術力の低下が懸念される状況となっております。

 このような厳しい状況を背景としまして、平成十三年三月三十日に閣議決定されました科学技術基本計画において、今後の我が国の目指すべき姿として、国際競争力があり持続的な発展ができる国の実現が、その理念の一つとして明確に位置づけられているところでございます。

 失われた九〇年、こういう御指摘でございまして、確かに、今申し上げたように、いろいろなデータから日本のそういう基礎的な技術力が低下している、こういうことでございますけれども、私どもはその九〇年の中でやはりやるべきことをやってこなかった、一つのツケがある意味では来ているんじゃないか。九〇年代というのは、その前のバブルという形の中で、ともすれば日本国全体がその経済的な繁栄の中で安逸につかってしまって、本来やらなければならないことがなおざりになってきた傾向が国全体であった。そういうことで、ITの関連ですとかそういった問題で米国におくれをとった。

 ですから、あのバブルの最盛期のときには、日本というのはやはりアメリカ何するものぞというような一つの論調がありました。そういう中で、本来取り組むべきところがなおざりになってきたことが一つはあったと私は思いますし、また従来得意の分野でありました産業技術だとか、あるいは品質改善、コスト削減、さらに、ある目標を達成したらそれ以上にやっていく、そういうところが甘かったのではないか。そういうことで、私は、御指摘のとおり、この十年間、大変大きなものを失った、そういうふうに思っております。

 ただ、日本というのは、これは委員もよく御承知だと思いますけれども、そういう意味ではまだポテンシャリティーがあるわけでありますから、そういうポテンシャリティーを最大限に生かしてこの立ちおくれというものを取り戻していく、こういうことで努力をしていかなければならない、そのように思っておりまして、私どもとしては、経済構造改革を初めとして産業技術、そういったもののこれからの取り組みに全力を尽くしていかなければならない、このように思っています。

北橋委員 率直な御所見をいただきまして、ありがとうございました。

 私はこの間の、例えば日米間だけで見ましても、民間の自助努力の世界と政府の支援という二つの側面で見ますと、民間については、バブル崩壊以降、大変なリストラに見舞われまして、基礎的な、すぐに商用化、実用化につながらない分野についてはなかなか予算を獲得するのが難しくなっていった事情というのは非常によくわかるのでありますが、九〇年と九八年の間を見ましても、日本は一八%伸びているんですが、アメリカは何と四一%。これは民間企業の体力というものもあると思うんですが、ここで大事なことは、政府が民間に対してどのようなサポートを行ってきたか、それが日本とアメリカにおいてどのような格差があったかということであります。

 それで見ますと、科学技術白書によりますと、日本の研究開発費全体で見ると、三兆四千九百億円という数字ですから、対GDP比で見ても〇・七〇%、アメリカも〇・七三%ですから、国全体としての研究開発に対するサポートというのは遜色のないレベルにあると思います。ところが、驚くことに、そのうち民間に支援をしている分は、日本の場合は四千三百億円でありますが、アメリカは二兆六千四百億円、六倍強の大変な支援をやっております。

 この中身を見てみると、今回NEDOで新しくやろうとする委託、あるいは補助金という形で相当強烈なてこ入れを政府としてもしているわけです。日本の場合は、大学へ一兆六千八百億円でございます。大変な額であります。政府研究機関に一兆三千八百億円であります。これも大変大きな額であります。明らかに民間に対するサポートがおくれている。このことがやはり基礎的な分野においては特に顕著にあらわれているのではないか。

 ここの点を改善していかなければ、今後大臣が決意を新たに、基盤技術の底上げを図ると言いましても、いろいろと制約が出てくるように思うのであります。そういった意味で、経済産業省としては、民間への支援をふやす、そういうところにシフトをしていかないといけないのではないかというように私は思いますが、どのようにお考えでしょうか。

中山副大臣 お答えいたします。

 基礎的な技術力に関しまして、米国との日本の関係、アメリカに比べてずっと日本がおくれているんじゃないか、こういう御質問でございました。

 確かに、国際競争力の源泉であります産業技術力につきまして、日米の経営者に対するアンケート調査によりますと、情報通信やバイオテクノロジーを初めとする大多数の技術分野におきまして、米国優位あるいは同等という評価がなされているところでございます。さらに、この調査によりますと、我が国はプロセスイノベーションにはすぐれているけれどもプロダクトイノベーションに劣る、このような結果が出ているわけでございます。

 また、科学技術白書によりますと、民間企業の試験研究費の中で基礎研究費の占める割合は低下傾向にありまして、米国との格差がだんだん拡大しつつある、このように指摘されておるところでございます。

 今先生御指摘のように、特に民間企業の研究開発に対する政府負担につきましては、日本におきましては、政府負担合計三兆四千九百億円のうち民間企業に対しての負担は四千三百億円、それに対しましてアメリカにおきましては、政府負担七兆七千四百億円のうち民間企業に対する負担は二兆六千四百億円と三四・一%を占めておりますが、六倍、日本を大きく上回っているという今御指摘のとおりでございます。

 このような厳しい状況を背景といたしまして、平成十三年三月三十日に閣議決定されました科学技術基本計画におきましても、今後の我が国の目指すべき姿として、国際競争力があり持続的発展ができる国の実現がその理念の一つとして明確に位置づけられたところでございます。

 経済産業省といたしましても、科学技術基本計画に基づきまして、これまで我が国が強みとしてまいりましたコスト削減とか品質改善に係る技術の維持向上を図りつつ、我が国産業の発展につながる技術フロンティアの創造に向けた民間基盤技術研究促進などの緊急課題に積極的に取り組んでいかなきゃいかぬ、このように考えておるところでございます。

北橋委員 いろいろと御説明いただいたんですが、もう一遍改めて端的にお伺いしますが、日本の研究開発というのは民間が八割負担しておるんですね。そして、国から民間に対するサポートは、アメリカと比べても六分の一、極めて低いんです。この点を直さないと底上げは難しいんではないかと考えているんです。

 大臣、どういうふうにお考えでしょうか。民間へのサポートがアメリカの六分の一であるというこの現状を変えるという方針をお持ちでしょうか。

平沼国務大臣 やはりこの九〇年代の十年で日米の差が非常に大きく出てきたといったところは、今委員御指摘のように、国から民間へのサポート、そういう面もファクターとして私は考えられると思っております。

 そういう観点からも、いわゆる技術力向上、研究開発、そういう面に対して、やはり民間へのサポートというのは御指摘のとおりこれから力を入れていかなければいけない、このように私は思います。

北橋委員 内閣府の方にお尋ねをいたします。

 今私が申し上げてきましたように、今度の新しいスキームというのは、民間企業に委託という形で大いに頑張ってもらおうという趣旨でございます。つまり、民間へのサポートを充実していこうということでありますが、内閣府は、縦割りと言うと皆さんも反論があるかもしれませんが、各省庁それぞれやっている研究開発を全部見ていらっしゃる官庁だと聞いております。

 そこで、お尋ねをいたしますが、民間のこういった基礎的な技術開発の支援というもの、予算のシェアは日本の場合非常に低い現状できたわけでありますが、それを今後拡充すべきではないかと考えますが、御所見を承りたいと思います。

渡辺大臣政務官 お答えいたします。

 去る三月三十日に、北橋委員も御案内のとおりであろうかと思いますが、向こう五カ年間を見据えました科学技術の基本的政策であります科学技術基本計画が閣議決定を見たところであります。

 この基本計画の中に、科学技術の振興を図るための基本方針が幾つか書かれているわけでありますけれども、ただいま御質問の部分にかかわることとしてはこういうふうに記述されております。「研究開発投資の効果を向上させるための重点的な資源配分を行う。」、それから「世界水準の優れた成果の出る仕組みの追求と、そのための基盤への投資の拡充を行う。」、このような方針が示されております。

 そういう中で、民間の研究開発に関しましても、基本計画の中では、「科学技術振興についての官民役割分担を明確化し、民間に期待し得るものについては、民間の研究開発を促進する環境を整備すること」、こういうふうに書かれておりまして、こういう考え方に基づきまして、民間の研究開発を活性化させるためにいろいろな支援措置を講じているところであります。

 例えば、増加試験研究費の税額控除などの税制優遇措置ですとか、あるいは研究開発のリスクを軽減するための技術開発制度でありますとか、あるいは今進めております産学官連携の仕組みについても大変なる改革を推進しておるところであります。また、産学官の間の情報や人材の交流の改革ですとか、あるいは公的研究機関から産業への技術移転の環境整備ですとか、あるいは公的研究機関の研究成果を活用した事業化の促進、こういったことをやりまして、民間の研究開発を活性化させるべく頑張っているところであります。

 そして、委員御指摘の、シェアという意味ではないんですが、これまで五カ年で十七兆ほどの科学技術関係の経費であったわけですけれども、これを向こう五カ年間で二十四兆に拡大しようとしております。したがって、民間に対する研究開発の支援も大幅に増大、拡大していくだろうというふうに考えております。

 この基本計画が閣議決定されたことを受けまして、内閣府に置いております総合科学技術会議を中心にいたしまして、研究開発の重点化を分野ごとにどう進めていったらいいかということも今検討に着手したところであります。

 内閣府としては、こういうことを踏まえまして、各省で行われている施策が着実に遂行されるように、その総合調整としての役割を果たしてまいりたい、このように考えております。

北橋委員 るる御説明をいただいた中で、民間に対する支援というものも非常に重要で、これから大幅にふやしていきたいという御答弁をいただきました。

 この間の経済運営をめぐる議論の中で規制緩和という議論があるんですが、我々民主党の見方によれば、日本には二つの鎖がある。国が地方を縛る、官が民を縛る、この二つの鎖を解き放たない限りさらなる経済社会の再生はないということを私ども民主党は主張しているんです。

 研究開発の分野については、日本は大学だとか公的機関には相当程度の予算が投入されている、そして全体としての研究開発水準は、アメリカに予算的には余り遜色ないのに、今立ちどまってみると結果的に大変な格差が生まれてしまった。これは研究開発のみならずほかの民間の企業についても言えることだと思いますけれども、やはり規制緩和と大変な競争をして企業の体質を高めてきている。

 そういう面から見て、実は民主党も、大学にインキュベーター組織を整備して産学官の体制に本格的に踏み込もうという提案をしているわけでございます。大学やそういったところへの投資は重要だと思いますが、予算のシェアだけを見てもやはり官主導できた感は明らかでありまして、そういった意味では、今後ぜひ民間にどんどんテーマを、手を挙げてもらって、そこで厳しいチェックをしてもらう、中間の評価もしてもらって、成果があればバイ・ドールでどんどん社会に行き渡るような、要するに民主導の形に切りかえていってはどうかなと思います。

 そこで、次の質問に移らせていただきますが、内閣府の仕事は全体の総括であります。果たして日本の場合は、これまでよく、省あって国なしだとか局あって省なしと言われてきたのでありますが、内閣府を中心に、そのような省庁の枠を超えた体制ができているかどうかであります。

 この点について、私ども民主党は、政権をとれば直ちに、各省庁縦割りでやってきたものを、内閣府という名称にするかどうかは別にいたしまして、国全体の戦略を立案できる部署に移して、そこで限られた予算を効果的に配分する。そして、外部評価のシステムをきちっとさせて、競争によってどんどんそれの、大学においても競争が必要だし、民間においてももとよりでございますけれども、底上げを図ることが大事だと思っております。今は自公保の政権でございますが。

 そこで、お尋ねをいたしますが、今現在、省庁それぞれやっていますね、農水省だったらバイオテクノロジー、厚生労働省であれば医薬品をめぐる、ここもバイオというもの、先端技術がかかわっております。そして旧通産、旧郵政のやっている基盤技術センターがあります。幾つか、各省庁皆やっていると思うんですけれども、内閣府は、それを限られた予算の中で、きちっと国家的な戦略のもとで、プライオリティーをつけて予算を配分しているのかどうかであります。その辺の評価のシステムというのはどうなっているんでしょうか。

渡辺大臣政務官 お答えいたします。

 ただいま北橋委員の御指摘になりました研究開発における総合性というのは、大変大切な視点であります。国としても、科学技術の総合的、戦略的な推進は重要であるというふうに考えておりまして、このたびの中央省庁再編成の際も、内閣府が、行政各部局で進めております研究施策の推進の統一を図るために、科学技術の開発を総合的かつ戦略的に進めるために、例えば資源配分をどうしていったらいいか、こういった研究開発政策の基本的な部分にかかわる企画立案を行うということにいたしております。

 さらに、具体的に御説明を申し上げますと、内閣府に設置されております総合科学技術会議におきましては、総理大臣の諮問に応じまして、科学技術に関する総合戦略を策定し、そしてこれを科学技術基本計画に結びつけていくということになっておるわけでございまして、折しもこの三月に、先ほど申し上げましたように、基本計画が決定されたところであります。この基本計画を着実に実行していくために、総合科学技術会議では、科学技術基本計画が定めております重点化戦略に基づいて、各重点分野における推進戦略を、これからでありますけれども、作成することにしております。

 そして、そういう推進戦略を踏まえまして、どういう分野にどれだけの予算を配分していくか、そういうことの大きな枠組みを内閣府の方でつくるということにしておりまして、こういう枠組みのもとで、実際の配分に当たりましては、関係機関と連携をいたしていくことにしております。

 また、大規模な研究開発でありますとか国家的に重要な研究開発については、評価を十分行うこととしております。

 まさに委員御指摘のとおり、すぐれた成果を研究の分野で生み出していくためには評価システムが非常に重要であることにかんがみまして、内閣府としても、科学技術システムの改革の中でこの評価システムをどうしていくかということを総合科学技術会議を中心にして考えていくということにしております。

 そういうふうに、内閣府は、総合科学技術会議を中心にいたしまして、いわゆる科学技術に関する司令塔の役割を果たしていって、科学技術に関する総合性、戦略性を高めていきたいというふうに思っております。

 そのために、事務局といたしましても、政策統括官を置きましてその組織を整え、今申し上げたようなことについての立案機能を果たすことにしておりますし、また、総合科学技術会議のもとにいろいろな分野の専門調査会を設けるとか、そういうことによって、私が申し上げた政策立案を実行していくということを考えておるところであります。

北橋委員 渡辺政務官のお話を聞いておりまして、内閣府としても、省庁、いろいろとありますけれども、それをできる限り統合してリーダーシップを発揮できるようにという、そのお気持ち、御趣旨はよくわかりました。

 ただ、現実には、省庁の縦割りというのはまだまだ非常に重いものがあると思っております。現に、今回、NEDOとTAOに引き継ぐわけでございますが、御案内のとおり、農林水産省には生物系特定産業技術研究推進機構というものができておりますし、また、厚生労働省の方には医薬品副作用被害救済・研究振興基金というものがあります。恐らく、どの省庁にもそういった基礎的、先端的な技術開発のためのスキームがあるだろうと思います。

 そこで、評価についても、内閣府としてきちんとやるという趣旨のお話だったんですが、例えば、基盤技術研究センターにつきましても、技術評価委員会というのはつくっているわけです。ただ、ここの評価については、最初のテーマの採択のときにどうであったか、あるいは中間段階でもう少し工夫をすべきだという、審議会の答申も出ているように、要するに、現行スキームとして、この基盤センターの基盤技術については、技術評価委員会というものがあって、そして評価をするシステムがあるわけです。恐らく他省庁のものについても、国の税金を使って支援をするわけですから、それなりに評価システムはあるだろうと思います、それぞればらばらにやっているんですね。それを内閣府というのはどうされているんですか。

 総論として、こういう項目についていろいろと配慮をしていくというのはわかるのでありますが、現実には、民間企業から見れば、いろいろな省庁からいろいろな応募ができるようなスキームができている、手を挙げていくわけです。民間企業といいますか、国民の立場に立ったときに、本当にその評価というのは一元的に行われているとは見えないんですけれども、いかがでしょうか。

渡辺大臣政務官 確かに、委員御指摘のとおり、評価をどうしていくかということは大変重要な問題であります。しかも、この評価は公正に行うことが必要であります。評価の実際に当たっては、私どもは、総合科学技術会議が示しております評価のための大綱的指針に基づいて、各省がまず第一義的には行うものだというふうに考えております。

 その際、申し上げましたように、この評価の仕方といいますか、評価の指針については総合科学技術会議が示すということでありますし、また一方、大規模な研究開発ですとか、その他国家的に重要な研究開発については、総合科学技術会議が必要に応じみずから評価を行うというふうなことをもって評価の適正化を図っていきたいというふうに考えております。

北橋委員 結局、第一義的には各省庁それぞれの所管する法人において評価をしているわけですね。

 そういった意味で、民主党としては、やはり限られた予算を効果的に強力に執行していくためには、一元的な管理のための体制に変換すべきではないかと思います。その事務局には、実体経済をよく御存じの経済産業省が入られてもいいと思うんです、これは私の私見でございますが。この一元的管理という問題についても、私ども、これからいろいろ具体的な事例を今後探して、ばらばらにやっているではないかという問題がたくさんあると思いますけれども、指摘をしてまいりたいと思っております。

 さて、今回、NTTの配当金の問題につきましては、田中筆頭理事の方から、後ほど、技術評価委員会その他重要な論点の中で詳しく質問させていただきますが、昭和五十九年当時、いずれにしても苦肉の策で始めたと思うんですね。なかなか基礎的な分野に予算を回すことが難しいと。当時、羽田孜先生もそのメンバーのお一人だったと聞いているわけです。

 ただ、やはり本来あるべき姿からすると、私どもは、一般会計に帰属をさせて、その中で査定をされて、予算を執行していくのが望ましいと考えておりまして、実は産業投資特別会計法の一部改正案も用意をして、各政党の皆様方に、できれば修正を考えていたところであります。それはかなわなかったわけでありますが、しかし、いずれにしても、NTTの完全民営化というのはもう時間の問題ではないかと思うわけであります。そうなりますと、そのときにその予算をどうするのかという問題があるわけですが、そこで、この際お聞きしておきたいと思います。

 経済産業省と総務省がこのNTT、情報通信の問題にかかわっていると思いますが、これについてはいろいろと利害の対立もあります。あるいは公正取引委員会の議論、あるいは規制緩和委員会での議論、その他たくさんありますけれども、この情報通信の世界こそは最大の雇用創出といいますか、技術革新の世界だと期待をされております。

 そういった意味で、経済産業大臣にまずお伺いいたしますが、完全民営化、私は非常にこれは迫ってきた問題だと思いますけれども、これはいずれ、NEDO、TAO、二年以内に基盤センターを解散すると言っていますけれども、その前後ぐらいに大問題になっている可能性がありますが、大臣としてはどういう御所見をお持ちでしょうか。

平沼国務大臣 NTTの監督につきましては総務省の所掌に属する、このように認識をしております。ただし、経済産業省といたしましては、経済の活性化の観点から、ネットワークサービスがより低廉な価格、より高度な品質で利用者の多様なニーズを踏まえて提供されるための競争環境の整備が重要である、このように認識しております。

 先日のIT戦略本部で決定されましたe―Japan重点計画においては、NTTについて、インセンティブ活用型競争促進方策の導入が次のように示されたところでございます。公正な競争を促進するための施策によっても十分な競争の進展が見られない場合には、通信主権の確保や国際競争力の動向も視野に入れて、速やかに電気通信に係る制度、NTTのあり方等の抜本的な見直しを行うことになっております。

 経済産業省といたしましても、競争環境の整備状況を見守ってまいりたい、このように思っておりまして、委員御指摘のような、そういう流れも確かにあると思いますけれども、競争環境の整備状況、こういう観点でしっかりと見守っていきたい、このように思っています。

北橋委員 総務省の方にもお越しをいただいておりますが、時間が限られておりますが、総務省の方針というのはいろいろなところで、国会答弁なりあるいは総務省の出されている資料を通じて知っておりますけれども、今大臣の御答弁があったわけでございますが、簡潔にお答えいただけますでしょうか。

高原政府参考人 今委員お尋ねのNTTの経営形態の問題でございます。

 簡潔にお答えをいたします。

 三月三十日に規制改革推進三カ年計画というのが決定をされました。「NTTグループの経営形態等については、公正な競争を促進するための施策によっても十分な競争の進展が見られない場合には、通信主権の確保や国際競争の動向も視野に入れ、速やかに電気通信に係る制度、NTTの在り方等の抜本的な見直しを行う。」とされたところでございます。これに従って措置をしていくということになっております。

北橋委員 私は、NTTという企業体が政府の株を持たれているということもあって自由に事業展開ができない点、これは日本の情報通信全体のこれからさらなる前進のためにもいろいろと手かせ足かせになっているんではないかと思います。ただ、その場合に、ライオンと小さなトラのような戦いになっているような分野もございますので、これは競争政策の観点からいろいろ議論があるかもしれませんが、やはり完全民営化というのはもう射程に入っているんではないか。

 となると、基盤センターは二年以内に解散となっておりますが、この問題についても、大臣は見守るということでございますから、それ以上聞いてもお答えは出ないかもしれませんけれども、やはりある程度道筋をつけられないものでしょうか。今後とも総務省との合い議の中で、大臣としては、例えば、これぐらいのタイムスケジュールをとって、こういう条件が整えば民営化すべきではないかといいますか、そういうポリシーをお持ちじゃないでしょうか。もしあれば聞かせてください。

平沼国務大臣 今総務省からも御答弁がありましたし、私からも答弁をいたしましたけれども、一つの大きな、御指摘のような流れの中で、私どもとしては、慎重に見守り、そしてそれに対処していきたい、このように思っています。

北橋委員 わかりました。それでは、このNTTの配当金の扱いについては同僚委員の質問に譲らせていただきます。

 さて、戦略的に今後推進をするべき技術分野あるいは目標を定めるということがうたわれているわけでありますが、これについては何を念頭に置かれているでしょうか。

平沼国務大臣 新しい基盤技術研究支援制度の運用に当たりましては、戦略性、効率性を確保しまして、最新の技術動向を反映させることがかぎになると思っています。そのため、経済産業大臣と総務大臣が共同で最新の技術動向に応じて新制度の運用の方向性を示す基本方針を策定し、例えばバイオテクノロジーの分野やIT分野といった国として戦略的に推進すべき重要な技術分野や、また知的資産の形成や技術移転や新たな研究領域の開拓といった国としての達成を期待する民間の基盤研究促進の目標等を定めることといたしております。

 以上の技術分野や目標等を定めるに当たりましては、この法律の施行後、外部の意見をよく聞いて検討の上で定めてまいりたいと考えておりますけれども、先般閣議決定されました第二期科学技術基本計画と十分な整合性を図りつつ、最新の基盤技術をめぐる内外の動向、知的資産の形成や新たな研究領域の開拓等のいわゆるパブリックリターンの確保という観点に立って、事業の戦略性、効率性が確保できるように策定をしていきたい、このように思っております。

北橋委員 できればこの法案の審議の中でさらに踏み込んだ考え方を表明していただきたかったと思いますが、私の手元には、平成九年五月十六日に閣議決定された経済構造の変革と創造のための行動計画という資料がございます。これは、今後新規に成長が見込まれる十五分野の雇用規模と二〇一〇年の市場規模の予測をしたものでありまして、例えば情報通信関連分野では、百二十万人の人が二〇一〇年までに新たにふえる、そして三十八兆円の市場が百二十六兆円になる。あるいは環境関連でいいますと、七十六万人がふえて十五兆円が三十七兆円程度になる。具体的にこれは閣議決定で文書になっております。

 それ以降、レビューというのは、旧労働省の中で一回短期的なシミュレーションをしたということがございますが、経済産業省におかれましては、旧通産省時代、平成十二年三月の産構審におきまして、今後具体的にどのような分野に力を入れるかということが書かれてあります。

 これから不良債権の処理が進みます。新たな雇用問題が発生してまいります。大変に若年の就職あるいは新卒者の状況も厳しいし、本当にお先真っ暗な状況の中で、これから新規の成長分野に大胆に投資をして、あるいは技術の底上げをして雇用を吸収する、市場を拡大するというのは大変大きな急務だと思います。

 そこで、お伺いいたします。

 これは厚生労働省ともかかわることでございますが、旧通産省時代には産構審の資料によって将来の予測というのはかなりやられていたと思います。これは平成九年以降レビューはないんですけれども、ここで情報通信、新製造技術関連分野、流通・物流関連分野とか新エネルギー・省エネルギー関係、航空・宇宙関係等、これは経済産業省にかかわる問題であります。私は、こういった問題についてレビューをして、やはり将来夢が開けてくるようなビジョンというものをお出しになってはどうかと思うのでありますが、その点についてお考えがありましたらお聞かせください。

中山副大臣 委員御指摘のように、平成九年に取りまとめました旧行動計画におきまして、成長分野として十五分野を挙げまして、各分野ごとに市場規模とかあるいは雇用の規模等を試算したところでございまして、今回、経済構造の変革と創造のための行動計画ということで、昨年十二月に、IT革命の進行とかあるいは少子高齢化の急速な進展という経済社会の変化を受けまして新たな行動計画を策定いたしまして、閣議決定したことは御承知のとおりでございます。

 この行動計画は、創造的な企業活動の促進、高コスト構造、少子高齢化や環境制約を新たな成長のエンジンに変えていく、そのための環境整備などを柱に約二百六十項目の具体的な施策を盛り込んだところでございます。

 具体的には、企業法制の見直しとか雇用システムの改革など産業横断的な環境整備のほか、IT分野では、速くて安いネットワークインフラの整備、中小企業のIT革命への対応、電子契約法制の整備、医療福祉分野では、電子カルテ、地域の医療情報化の推進、介護事業への民間企業の参入の推進、環境分野では、廃棄物処理施設や先端的リサイクル施設の整備など、今後成長が期待される分野における具体的な施策を盛り込んだところでございます。

 この行動計画では、個別分野ごとの市場規模や雇用の目標を数値で示すには至っておりませんが、別途の試算によりますと、経済構造改革が十分に効果を上げた場合、今後十年間で約百四十兆円の経済効果があり、これは三百万人の雇用機会の創出に相当するとの結果を得ているわけでございます。

 今後、この行動計画に盛り込まれました諸施策を初めとする経済構造改革に全力を挙げて取り組んでいく考えでありますけれども、今、先生御指摘のように、常にレビューを加えながら改定を図っていくということにしなきゃいけない、このように考えているところでございます。

北橋委員 ぜひとも、平成九年以来具体的な数字はレビューをしておりませんので、情報修正をして、それとこの基盤技術センターで設ける重点的な戦略分野とが合致して、思い切った投資が進むように努力を続けていただきたいと要望しておきます。

 時間が参りましたが、今回の法案、幾つか問題点がありました。あと数問残してしまいましたけれども、附帯決議の中で、これまで議論されていた中でやはりNTT株配当金の扱いと、技術評価委員会の今後のあり方と、そして技術開発支援の国の体制の一元化という問題については、そこに盛り込まれる趣旨を十分酌んでいただきまして、誤りなきを期して今後進めていっていただきたいと思っております。

 時間が参りましたので、終わります。

山本委員長 田中慶秋君。

田中(慶)委員 私は、民主党の立場で質問をさせていただきます。

 今回の基盤技術センターの問題で、従来のこの制度の総括と責任ということを今改めて、二十一世紀というのはある面では責任というのを明確にしなければいけない。特に、社会的な責任やあるいはまた企業責任ということが明確に問われているわけであります。この基盤センターによる出資が、御承知のように、二千七百二十億の出資に対して特許料の収入といいますか、金銭的にリターンされたものが二十五億円にとどまっているわけであります。そのような結果から、この全体的な総括をどうしているのか、さらに、責任をどう感じてどう対処するのか、明確にしていただきたいと思います。

平沼国務大臣 基盤センターの従来制度についての御質問でございますけれども、同センターは、将来の我が国の国際競争力低下に対する懸念から、委員御承知のように、我が国の研究開発の大宗を占める民間企業を活用して我が国の基盤技術の向上を図ることを目的として、昭和六十年に基盤技術研究円滑化法に基づき設立されたものでございます。

 同センターは、このような目的のもとで、民間企業が行う基盤研究プロジェクトに対して出資等による支援を通じて、一つは、国際電気通信基礎技術研究所、ATRや、生物分子工学研究所、BERI等の世界的に評価の高い研究所を輩出いたしました。また、参画した民間企業等の研究者による約二万件の論文、そして約二千件の特許登録等の知的資産の形成も行うことができました。また、プロジェクトに参画をした研究者によるベンチャー企業の創業、こういうことも効果としてあらわれてきたところでございます。また、約二百四十名のポストドクターの受け入れ等による人材育成でございますとか産学連携の促進、こういうことでも顕著な効果があったと思っております。またさらには、特許権の実施許諾等を通じた電子辞書でございますとか翻訳ソフトなどの製品化、これが非常にIT化の中で重要な地歩を占めている、そういう研究成果や波及効果をこれまで着実に上げてきたとは思っております。

 しかし、一方、田中先生御指摘のとおり、従来の制度による出資総額は約二千七百二十億、これに対しまして研究開発会社が上げた特許料等収入は二十五億、こういうことにとどまっておりまして、特許料等収入により金銭的なリターンを期待する仕組みの見直しが、本当に御指摘のとおり、結果的に必要になってきたわけであります。また、この間、平成十一年の企業会計基準の変更もございまして、民間企業にとって出資制度という形での研究開発制度の利用が困難となりました。こういうことも、今回お願いをしている一つの背景にあるわけであります。

 今般、これまでの制度、仕組みを総括してけじめをつけることとしまして、同センターの廃止を初め、従来の出資制度を廃止する、こういうことにいたしたわけでございまして、他方、平成十一年度の産業活力再生法によるバイ・ドール制度の適用を前提とした委託制度に改めまして、より効率的に民間企業の基盤技術研究を促進することが可能な制度とすることによって、産業技術力の強化を任務とする経済産業省の責任を痛感しているところでございます。

 また、新制度においては、基本方針において、知的資産の形成でございますとか新産業の創出など、本制度の目指す目標を提示し、技術動向の変化や産業界のニーズを踏まえつつ、その目標の達成状況について常にレビューを怠らず、その結果を公表して、制度自体の効率性、有効性の確保と国民への説明責任を果たしていきたい、このように思っております。

 本当に御指摘のとおり、特許料の収入等によって賄うということが実効を上げていなかった、こういうことに関してはいろいろな状況があったわけでございますけれども、私どもとしては、本当にそういう意味では、国民の大切な税金を使っていることにもつながることでございますので、そういう反省の上に立って、新たな制度の中で今後の基盤技術の確立に民間企業の力を高めるために努力をさせていただきたい、このように思っております。

田中(慶)委員 少なくても総括、責任という問題については、今の大臣の答弁では私は感じられません。この十五年間で毎年約二百六十億ぐらいの出資をしてきたわけでありますし、そして、それが結果として二十五億の収入というだけのリターンしかないわけでありますから、やはりこれはある面では間違っていたんじゃないか。

 例えばイギリスの場合、行革とかこういう前提を含めて考えたときに、具体的に向こうはもっと明確になっております。例えば出資をするにしても、三年なら三年というものを区切って成果が出なければその責任者を交代させるとか、あるいはまたその趣旨に沿って応募をして、この基盤技術を初めとする、その趣旨に沿った形のものを明確に推進する、こういう形になっているわけであります。

 日本の場合は、ただ決めて、基盤技術、そこにお金だけつぎ込んでいるものですから、戦略がなかった。結果として、二〇〇〇年現在、日本のこの技術力の評価というのは年々低下する一方で、今は残念ながら世界の十七位ぐらいにランクされてしまった。

 こんなことを含めて、もっと厳しく評価あるいは総括をすべきだろう、こんなふうに私は思っているわけでありますけれども、今の大臣の答弁では私は納得できませんね。もう一回答弁してください。

平沼国務大臣 確かに、技術というものに対してその評価というものは、いろいろな観点があると私は思っています。ですから、その技術を高めてそして新しい技術を確立するということは、なかなか一〇〇%評価が出るものではない。ですから、一見むだに見えても、そういうことをやることによっていわゆる底辺が上がって全体的な力がついている、こういう側面もあると私は思っています。

 先ほどるる具体例を申し上げましたけれども、確かにリターンとしては二十五億、こういうことでございましたが、一方ではいろいろな実効も上がっておりまして、これは必ずしも金銭には換算できませんけれども、そういう意味では大きな成果も一方ではあったのではないか、私はこのように思っています。

 ただ、今、英国の評価方法、こういうことの御指摘がございました。そういうことに関しては、確かに我が国の場合は、英国に比べてその手法において違ったところがあり、その辺の評価が徹底していなかった、こういうことは否めない事実だと思って、ある意味では御指摘のとおりだと思っています。

 したがいまして、私どもとしては、国民の大切なその税金を基盤技術のいわゆる新たな創造に向けてそれなりに一生懸命やってきたところでございまして、確かに、御指摘の面の総括、こういう形でやればやはり諸外国に比べてその辺劣っていたところがあった、こういう認識は持っておりますけれども、しかし、それ相応の成果も一方においてはやはり上がっている、そういうことでございます。

 私どもとしては、御指摘のところを反省材料として、今回お願いしている新たな制度の中で、評価方法も含めて、反省の上に立って力強く展開をしていかなければならない、このように思っています。

田中(慶)委員 大臣、日本はかつて、バブルが崩壊する前、エコノミックアニマルと言われたりあるいは技術的にも非常に評価をされてきた。しかし、目標、照準を失ったせいかどうかわかりませんが、今、二千七百二十億という投資をして二十五億だ。そして、立派に評価がされているようなことを言われるわけです。

 論文、確かに二万件というのは多いでしょう。ですけれども、学者を育てているんじゃないんですよ。学術的に評価をするということであるならば、それは学問の分野でやればいい。これは経済産業の立場でやるんでありますから、日本の産業としての基礎、基盤技術のレベルアップをしなければいけないわけであります。それはいろいろな評価があるでしょうけれども、企業でいうならば、特許の専有がどれだけあるかということによっても評価されるわけであります。二千七百というのがこの十五年間ですよ。これは余りにも評価に値しない、私はこのように思うんです。

 ですから、今度は従来の出資方法から委託方法に変えた、こういうことであります。それも理解はできますけれども、大臣、これはもっと厳しく受けとめないと、まして、財政が厳しい中でいろいろな金を、NTTの株の配当金でこういう形のものをやっている。財政が厳しいわけです。本来なら、一般会計に行くべきものですよ。二千七百二十億という金の大きさ、重み。しかし、現実にはその評価は、世界から見て評価されるわけでありますから、それが十七位というのは、その目的は達していなかった。これはもっと十分反省をしていかなければいけないことではないんでしょうか。もう一度大臣の答弁をお願いします。

平沼国務大臣 先ほどの答弁でも、その点、私から触れさせていただきましたけれども、やはり国民の大切なそういう財産というものをNTTの配当という形で基盤技術の確立につぎ込んできた、そのことは事実であります。

 したがって、その辺のいわゆる重要性、大切さということは我々も認識しているところでございまして、やはりそういう中で、御指摘のような成果の面で、繰り返しになりますけれども、実際にそろばん上には載ってこない、そういう成果は、論文だとかあるいは新しいベンチャー企業のその経営者になっているとか、あるいは副次的にいろいろな形で枝葉に分かれて、その培ってきた技術から派生をしてそういうものが生まれてきている。そういうこともやはりきちっと評価をしなきゃいけませんけれども、しかし、御指摘のように、実際に数字にあらわれているのは二千七百億対二十五億ということは厳然たる事実です。

 ですから、そういうことの国民に対する責任というものもやはり我々は感じながら、そして、時代に即応して、新しいシステムの中でそういうおくれを取り戻し、国民の皆さん方にやはり御理解をいただくように努力をしていかなけりゃいけない。そういう意味では、御指摘の点は確かにあった、私はこのように思っています。

田中(慶)委員 そこで、大臣が答弁されました、出資制度から今度委託制度に変えるということであります。

 しかし、この委託制度というのは、官の発想と官の指導でこの委託制度を普通ならば行う。委託というと、国の国家戦略があって、こういう基盤技術の方向を目指したい、そのために財源はこうしましょう、それで皆さん方おやりになる人はと、こういう形でやるのが委託だと思うんです。ところが、今回の基盤技術の失敗から民間のいろいろなものを吸収しようということで、民間のいろいろな発想を採用する、評価をする、そして財源をつける、これははっきり申し上げて委託じゃないですよ。ですから、この委託制度という官の発想、これでまた民間の皆さん方が、この制度を使うには非常に難しい、あるいはまた使いにくい、こういう制度があること自体、極端なことを言えばわかりにくい、これが今回の委託ではないかと思っているわけです。

 ですから、私は、今までの説明の中でも、委託というものをもっと使いやすい制度に変えたらどうだ、もっと基盤技術がみんな蓄積されているものがはっきりと発揮できるような制度を支援することがいいんじゃないか、委託よりはむしろ支援ということが望ましいんじゃないか、こんなことを申し上げてまいりました。役人の頭はかたいものですから、幾ら言っても、理解をしていても、一度活字にするとなかなか直そうとしない。大臣は、先ほどの答弁で、民間の発想等々を含めて採用したいと言われているわけですから、私が申し上げているような委託から支援とか、あるいはもっと使いやすいような形に変えるつもりはありませんか。僕は大臣に質問しているのです。

平沼国務大臣 新制度における支援の形態についてのお尋ねでございますけれども、民間の基盤技術研究の促進、そういう基盤法本来の目的の達成のためには、新制度においても引き続き民間事業者の発意及び創意が最大限に発揮できるものとすることが重要であると私は認識しています。

 他方で、IT分野等、国として戦略的に推進すべき技術分野を経済産業大臣及び総務大臣が共同で策定する基本方針において提示した上で、その分野において民間事業者による発意、創意工夫に基づいた具体的な研究プロジェクトを公募いたしまして、民間の基盤技術研究を支援する、こういうことにいたしております。

 このように、国としての戦略性と民間の発意性のマッチングを図るという意味で、法律上は、民間事業者への支援措置としては委託制度という範疇に属するものでありまして、産業活力再生法によるバイ・ドール規定も委託制度の適用を前提としていることから、この形式とすることが不可欠だ、このように認識しております。

 委託制度につきましては、御指摘のとおり、利用者である民間事業者が委託という名称によって新制度の性格を誤解することがないように、新制度の名称等を工夫して、加えて、民間発意の研究プロジェクトを支援するものであるという新制度の性格について基本方針に明記をいたしまして、それをインターネット等を通じて積極的に周知徹底していきたい、そういうふうに思っております。

 また、従来の出資制度と比べまして、民間事業者の研究の自由度を損なうものであってはならないわけでございますので、研究の柔軟な修正でございますとか、あるいは経費支出の柔軟な変更等を極力可能とすることによりまして、民間の創意工夫というものが最大限発揮できるように研究の自由度を私どもは確保してまいりたい。

 したがいまして、確かに、御指摘のように、委託という文言でございますと、ともするとそういうことがございますので、私どもとしては、今申し上げたような内容の中で、民間の皆様方の自由な発意というのを尊重して、研究の自由度というものを確保しながら、そして皆様方にわかりやすく周知徹底をして、この新たな制度の運用を全力で期していきたい、このように思っています。

田中(慶)委員 大臣が言われていることは私と余り差がないのです。しかし、委託にこだわっているんですよね。はっきり申し上げて、政治は役人のためにあるんじゃないのです。民間のために、皆さんがこの制度を使いやすいようにするために、その発意を明確にするために私は申し上げているわけで、やはり支援なら支援という形の中で、少なくてもその制度の名称変更ぐらい考えたっていいと思うのです。あるいはまた、今の大臣の答弁は、具体的な運用の指針の中で民間の基盤技術促進支援制度という形のものを明確に説明する、こういう解釈でいいんですね。

平沼国務大臣 今、田中委員御指摘のとおり、やはり民間の活力というものを最大限に引き出す、そういう趣旨でございますので、そのような形で私どもは周知徹底していきたい、このように思っています。

田中(慶)委員 この制度が、仏つくって魂入れずなんということにならないようにする意味でも、使いやすく、そして成果の上がることをぜひ期待したいと思います。

 そこで、先ほど来、この研究プロジェクトの評価の問題で、大臣も評価というものを前面に打ち出しているわけでありますけれども、NEDOの問題を初めとして、この評価というものが現在の評価であるならば、これはある面では不透明な部分、ある面では不公平な部分、アンフェアな部分、こういうものが心配されるわけでありますから、やはり国が行うプロジェクトとしてはしっかりと公平公正であってほしい。そのためには、評価委員会制度というものは外部に設置をしておかなければいけないだろう、私はこのように考えているわけであります。

 従来いろいろな評価は内部で評価をし、そのことが結果的にその制度をおかしくしているわけであります。今まで、二千七百二十億というものを投入して、いろいろな評価をしてきたと必ず言われておりました。ですけれども、結果的に内部評価のために、お互いになれ合いですよ。それでは評価にならない、このように考えますので、大臣も評価ということを明確に答弁されているわけですから、評価委員会を外部に置くべきだと私は思いますが、どうでしょうか。

平沼国務大臣 プロジェクトの採択等に関する評価委員会についてのお尋ねでございますけれども、田中先生御指摘のとおり、研究開発の評価の公平性及び透明性の確保は極めて重要だと私どもも認識をいたしております。このため、新制度におきましては、公募した研究プロジェクトの採択等に当たりましては、評価の公平性、透明性を確保するため、外部の専門家から成る評価委員会を設置することにいたしております。

 この外部評価委員会におきましては、研究開発の成果としての知的資産の形成を、客観的かつ適切に評価する評価基準に基づきまして個々の研究プロジェクトの評価を実施してまいります。また、評価のルール及びプロセスにつきましては、可能な限り公開をすることによりまして、評価の公平性、そして公正性を確保していきたい、このように思っています。なお、外部評価委員会の法定化についてどういうふうに考えるかということは今後の課題だと私は思っております。

 NEDOなどの実施機関の運営につきましては、既にNEDOの設置根拠法であります石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律の第二十条におきまして、外部の学識経験者から成る運営委員会の設置が法定されている、こういうことも事実としてあります。

 本運営委員会におきましては、新制度の運用を含むNEDOの業務の運営が外部チェックをされる、このような形で担保される、こういうことになっております。この上で、さらに個別の研究プロジェクトの採択等に関する評価委員会を法定することは、他の制度とのバランスやNEDOの組織の簡素化、合理化要請等の点で困難である、こういう判断もいたしております。

 しかし、評価の重要性については、まさに田中委員の御指摘のとおりだと思っておりますので、私どもとしては、NEDOの行う評価についての公平性、透明性を確保するために、外部評価委員会を設置する旨を経済産業大臣及び総務大臣が共同で策定する基本方針において明記しまして、そういったことをしっかりと確保していきたい、このように思っています。

田中(慶)委員 今、外部の評価委員会をそれぞれ大臣として指針の中で明記されるということでありますが、法的根拠はないんですよね、はっきり申し上げて。やはり私は、こういう問題については法的根拠を明確にさせるべきであろう。一条だけ挿入すればいいんですよね。ですから、この評価というものが正しく、そしてこれからも中立性あるいは公平性等々含めて担保される意味でも、法的根拠というものがぜひ必要である、このように思っているわけです。

 そのことを含めて、でき得るならば、一項目、この本文の間にそのことを挿入することで、より外部評価委員会というものが明確に認知をされ、担保できるんではないかと思いますが、大臣の見解をお伺いします。

平沼国務大臣 前の御答弁をさせていただいた中で、私どもの管轄をしているNEDOの中に、そういう形で外部の学識経験者から成る運営委員会の設置というのが法定をされています。そういうことで、私どもとしては、ある種法定の根拠があるんではないかと思っておりますけれども、今、田中委員の御指摘もございますので、今後の課題として検討をさせていただきたい、このように思っています。

田中(慶)委員 今回の法案というものは、例えばNEDO一つをとってみても、余りにも膨大な組織になり過ぎている。今、特殊法人の見直しというものがいろいろな形で問われているわけです。NEDOそのものも特殊法人でありますから、私は、そういう点で、全体的な見直しというものがされる中で、NEDOに余りにも依存していきますと、今度の評価というものがおかしくなってしまう、こんなことを心配しているわけであります。

 肥大化するNEDO、そして今度の、ある面では、新エネルギーやあるいは産業技術等の問題等々含めて、やはり合理的なあり方を含めて整理統合されることも今検討されていると思いますので、NEDOに頼り過ぎるといけないし、また一方においては特殊法人の合理化等々もあるものですから、相反する部分が出てくると思いますけれども、その辺はどういう理解とどういう解釈をすればよろしいでしょうか。

平沼国務大臣 NEDOの業務の増大、そしてその合理化、それについてのお尋ねだと思います。

 NEDOは、田中先生御承知のように、昭和五十五年、石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律、代エネ法、こういうふうに言っておりますけれども、それによって設立をされました。以来、昭和六十三年の産業技術に関する研究開発体制の整備等に関する法律、産技法と言っておりますけれども、その制定、さらには平成五年の福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律、また平成十二年の産業技術力強化法等により、技術開発業務の充実が図られてまいりました。

 今回、新たな委託制度への移行に当たって、ノウハウを持つ既存の機関であるNEDOに行わせることが効率面からも適切である、このように判断をいたしました。また、NEDOが行う新たな委託制度につきましては、実施体制を可能な限り簡素化するなどの措置を講じてまいりたいと思っております。NEDOの全体の定員も減少させた、こういうこともいたしました。

 なお、NEDOにおける技術開発業務及びエネルギー関連業務以外の業務につきましては、現在、石炭鉱業構造調整等の石炭関連業務及びアルコール製造業務を行っておりますけれども、このうち石炭関連業務につきましては、御承知のように、平成十三年度末に石炭政策が終了いたします。それに伴いまして、一部の経過措置を残して終了することにいたしておるわけであります。また、アルコール製造業につきましても時限的に実施しているものであることから、今後、NEDOの業務は技術開発業務及びエネルギー関連業務を核といたしまして、より一層効率的な機関としていくことにいたしたい、こう思っています。

 いずれにいたしましても、御指摘のように大変大きな形になっておりますので、NEDOの組織、業務につきましては、その合理化、そしてまた効率化の徹底をする観点から、私どもとしては、今後とも不断に見直しを行って、田中先生御指摘の懸念がないように努力をさせていただきたい、このように思っております。

田中(慶)委員 ぜひ大臣、NEDOのための今度の法案改正にならないように。とかく、特殊法人を存続させるために今度の基盤技術センターを、ある面では、法律の改正を行って石炭業務やアルコールが縮小するから、そのためにこちらを拡大するんだというようなことであったんでは、日本の技術というものが、技術立国そのものがおかしくなるわけですから、そのことのないように、これはぜひ私から苦言を申し上げておきます。

 そこで、今、大臣も御承知のように、日本の産業構造そのものは、少なくとも九割以上、中小企業ですよね。今度の基盤技術の問題等についても、中小企業の人たちがより使い勝手のいいように。大企業は独自でもできるわけだし、いろいろなノウハウも蓄積されているわけであります。中小企業の皆さん方は、したくても、なかなかそこまでに余裕がない。それが現実だと思うんです。

 ところが、どうでしょう。アメリカは、日本の中小零細企業の技術の優秀さを全部ピックアップしているんです。宇宙衛星のパーツの約二割ぐらいは日本の中小零細企業のものだ。それがなければ成功しないとも言われている。ミサイルの命中率が、初め五〇%がより一〇〇%に近くなったのは、日本の技術を使ったからだということであります。ところが、日本は、その技術がどこにどういう形で集積されているか把握をしていないと言っても過言ではないと私は思います。中小企業の人たちの優秀な技術、そういうものが今危うくなっているわけです。

 なぜかというと、企業の承継あるいはまた後継者育成の問題等々含めて、大変厳しい環境にある。同時に、今、中小零細の人たちは何を求めているんだろう。それは、あすの技術よりもきょうの企業の運営、こういうことでありまして、例えば、制度融資の問題、あるいはまた下請制度の問題等々含めて支払いの問題、こういうことが要求されているわけであります。

 今回の法律、中小企業の人たちが使い勝手のいいようにしても使えない状態であってはいけないわけであります。ところが、今の中小企業を取り巻く環境は大変厳しい、この法律をつくっても、大臣、本当に使えるんだろうか、私は、そんな心配をしているわけです。

 このことについて、どういうふうに客観的に感じられているのかお伺いします。

平沼国務大臣 田中先生が、幾つかの中小企業の非常に優秀な技術、このことについて言及をされました。私も同様な認識を持っておりまして、田中先生と非常に親しい御関係だと聞いておりますけれども、石原慎太郎都知事も、こういう中小企業の持っている大変優秀な技術、このことに着目して、いろいろなところで発言をし、また文章にも書いておられます。

 御指摘のとおり、アメリカというのはある意味では大変戦略的な国ですから、そういうものをリストアップして、そして自国の競争力を高める、こういうことに資しているということも私は承知をいたしております。

 したがいまして、事業所を含めると、日本の中小企業というのは全企業の九九・七%を占めている。言ってみれば、経済立国、工業立国の日本の基盤を支えているのが中小企業でございまして、そこに対して、せっかく伝承されたそういう基礎的な技術、そしてさらにその上に技術開発をしていくということは、御指摘のとおり非常に大切なことだ、このように私は認識しております。

 このため、中小企業による新技術の開発等を支援するための創造技術研究開発費補助金、また中小企業創造活動促進法、これは平成十三年二月までに七千四百二十九件認定をいたしました。そういう認定作業に対するさまざまな支援措置などにより、中小企業が行う技術開発に対する支援を積極的に行ってきているところであります。

 また、平成十一年からは、新たに中小企業技術革新制度、日本版SBIR制度、これを導入いたしまして、研究開発からその成果の事業化まで一貫して支援を行ってきております。

 さらに、物づくり技術とITの融合によりまして、我が国の物づくりの力の向上を図るため、技能の客観化でございますとか、マニュアルデジタル化に関する研究も推進するとともに、産学官連携による中小企業と大学や公的機関との共同研究開発に対して引き続き強力にバックアップをしていきたい、このように思っております。

 今御指摘のように、こういう新たな制度の中で、そういう優秀な中小企業、そこにインセンティブを与えるために、私どもとしてはやはり十分着目をしながらこの施策を進めていきたい、このように思っています。

田中(慶)委員 今大臣が述べられたことを、ぜひあなたのこれからの政治の基本に置いていただきたいと思います。あなたは、今注目の時の人の一人でもあろうと思いますから。

 やはり、中小企業というのは日本の活力だと私は思っております。いろいろな制度をいっぱいつくっているんです。しかし、全然使いにくいのですよ。それは役人のための制度であって、中小企業のための制度じゃないからなんです。そうでしょう。

 今中小企業の人たちは、これからの融資の問題あるいはまた運転資金の問題等々大変困っておりますよ。いろいろな制度があっても、結果的に、それぞれの担保不足であるとか、あるいは今までの営業実績が去年と比較しておかしいとか、債務超過だとか。当たり前でしょう。担保を下げたのはだれなんですか。国の政策として土地を下げたんでしょう。景気が悪くて、かつて小渕さんが失政だとも言われた国の政策を今そのまま持続しているわけですから、よくなるわけないですよ。それなのに、無理難題を言って、その制度が使いにくい、使えないようにしているわけです。

 中小企業が活力を見出すためには、そういう制度も、わかりやすく使いやすく、そしてスピーディーに、これが要求されている。今度の制度も、やはりそういう形にならないと、現実には使えない、こういう結果になりはせぬかということを心配しております。大臣、答弁をお願いします。

平沼国務大臣 中小企業が置かれている立場というのは大変厳しいということ、私も認識を一にしているところであります。

 ただ、中小企業対策について、所管の大臣としてあえて言わせていただきますと、そういう大手金融機関等の、先生御承知のように、大変貸し渋りが起こりました。日本の経済の基盤を支えている中小零細企業に対して、私どもは特別保証制度、こういうものをつくらせていただき、また、田中先生を初めとして皆さん方の御協力をいただいて、この制度を展開してまいりました。

 これにおきましては、三十兆の政府の特別保証をつけて、そして、この三月末で締め切らせていただきましたけれども、百七十万件を超える御利用をいただいて、そして二十七兆五千億の保証をさせていただいて、それによって防がれた倒産ですとか雇用の喪失、これは非常に損失を防いだ、こういう面で成果が上がりました。

 しかし、御指摘のように、研究開発、そういうものに関しては確かに行き届かなかった点も私はあるんじゃないかと思います。そういう意味で、今回は、透明性とそしていわゆる公平性、そういうものをしっかりと周知徹底する、こういうことで私どもは取り組んで、御指摘のそういう不都合がないように努力を続けさせていただきたい、このように思っております。

田中(慶)委員 時間が参りましたので、最後になりますが、総理を初め政府はIT革命と言われております。しかし、現実に日本のITそのものの基盤技術を初めとして全体的に見たときに、IT後進国とも言われているわけです。これはやはり、この基盤技術のしっかりとした対応ができなかったからなんですね。私はそう見ているんです。

 ですから、これをサポートする意味で、あるいは二十一世紀の日本が活力を見出すためにも、今度の法律は、有効に使えば、あるいは使い勝手をよくすれば生きてくると私は思っている。ぜひ、仏つくって魂入れず、こんなことにならないように、役人のための法律じゃない、このことを明確に申し上げ、そして、それぞれ民間の皆さん方が本当にこの法律ができて研究がしやすくなったと言えるような形をできるだけとれるように努力をしていただきますよう要望して、私の質問を終わります。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。達増拓也君。

達増委員 まず、基本的なところから質問を始めたいと思います。それは基盤技術という言葉の問題であります。

 この法律、基盤技術研究円滑化法ということでありますけれども、基盤技術に関する試験研究について円滑化を図ると、第一条の目的に掲げられているわけであります。そもそもこの基盤技術というのは何なのか。といいますのも、科学技術基本法によりますと、第二条二項に書いてありますけれども、科学技術の振興に当たって、研究というものを基礎研究、応用研究、開発研究、こう分けまして、それぞれバランスをとりながら発展させていくと。

 二十世紀後半、第二次大戦後、科学技術というのがそれぞれの国の重要な政策課題の柱の一つになりまして、アメリカにおいても、一九四五年の、バネバー・ブッシュ、ホワイトハウスの科学研究開発局長ですね、そのバネバー・ブッシュのレポートの中で、開発研究というものを基礎研究、応用研究、そして技術の商業化、こういう三つに分け、それぞれ国が果たすべき役割を整理して戦略を立て、それが二十世紀後半のアメリカの科学技術政策の基本として、今でもそれは古典として意義があると思います。

 そういう伝統的な基礎研究、応用研究、開発研究とに分けて戦略的に国の開発研究政策をやっていくということがあると思うんですけれども、そういう中でこの基盤技術に関する試験研究という言葉はどういう位置づけになるのか、まず伺いたいと思います。

松田副大臣 基盤技術に関する試験研究と基礎研究、応用研究、あるいは開発研究との関係についてのお尋ねでございますが、基盤技術とは、基盤法上、利用分野に広がりがあり、国民経済にとってインパクトが大きい技術を指し、こうした性質から、御指摘の基礎研究、応用研究、開発研究といった研究段階でいえば、主に基礎研究段階に該当するものと考えております。

 具体的に申し上げれば、例えば、バイオ関係分野において新たな物質の創製や、さまざまな製薬等に広くつながるようなたんぱく質に係る構造解析技術、あるいはまたIT分野で申しませば、話し言葉による自然な会話を翻訳できる機械あるいは音声による操作が可能な家電製品等、こういったものに広くつながるような音声認識、翻訳等に係る技術、こういったものが一つの具体的なイメージかと存じますが、基盤技術に当たる例だと存じます。

達増委員 基盤技術研究円滑化法の第二条の定義によりますと、基盤技術というものは、経済産業省関係部分のところだけ抜き出しますと、鉱工業の技術のうち経済産業省の所掌に係るものであって、国民経済及び国民生活の基盤の強化に相当程度寄与するものをいうと。ここを読みますと、およそ国民経済や国民生活に役に立つもの、かなり役に立ちそうな技術であれば、何でもかんでも基盤技術というふうに読めてしまうわけであります。

 ですから、今の御答弁にあったように、やはり、古典的な分類の中では基礎研究に比重が置かれているんだというような、もう少し戦略的に整理したような、どういう技術研究を推進するのかというのを示していかないと、そもそも、どの研究にお金を出すのかというのを決めていく、その優劣を判断する、あるいは緊急性、緊要性を判断するのがなかなか難しいことになると思うのであります。

 その点について、今回の法改正案で、総務大臣と経済産業大臣が共同で基盤技術に関する基本方針を定めるということでありますが、それがきちんと戦略的に指針として効果的なものであるかどうか、その辺がわからないとなかなかこの改正案にも賛成、反対を決めかねるのでありますけれども、どういう基本方針が定められることになるのだろうか、そこを政府に伺いたいと思います。

日下政府参考人 先生御指摘のように、基盤技術は基礎研究を中心とした段階でございます。基盤技術につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、利用分野に広がりがあって、国民経済にとってインパクトが大きい技術ということを考えているわけでございますが、さらに、今後、さまざまな産業の発展に貢献する将来の産業の種になるような戦略的に重要な技術分野を特に重点化して支援していくことが、先生御指摘のように大変大切だと考えているところでございます。

 この点につきましては、昨年、現行の制度の評価を行いました産業技術審議会と電気通信技術審議会の合同の専門委員会が報告を出しておりますが、IT分野やバイオ技術分野など、近年国際競争が激化しており、我が国として重要な戦略的技術分野に対して研究資源を集中的に投資する重点化政策が一層重要かつ緊急の課題になっているとの指摘をいただいているところでございます。

 これを受けまして、今回の改正法案におきましては、新たに、経済産業大臣及び総務大臣が共同で基本方針を策定することといたしたわけでございます。

 その基本方針というのはどういうものだというお尋ねでございます。

 具体的には、第一には、バイオ技術分野、IT分野など国として戦略的に推進すべき重要な技術分野でございますし、第二には、知的資産の形成、新規産業の創造など国として達成を期待する民間の基盤研究促進の目標などを指針として提示した上で、実施機関でありますNEDO及びTAOが実施計画を定め、両大臣の認可を受けることといたしたいと考えているところでございます。

 このような措置によりまして、個別の試験研究プロジェクトの評価におきましても、最新の技術動向を踏まえた上での戦略性、効率性を確保していくということで、何を目指しているかが明確になるような基本方針を定めたいと考えておるところでございます。

達増委員 やはり、関係者がばらばらな方向を向いていたのではせっかくの制度もうまく機能しないでありましょうから、この基本方針というものの決め方が非常に重要になってくると思います。

 そこで、一方では、明確な指針として、わかりやすさ、また厳密さのようなものがこの基本方針には必要だと思うんですが、一方で、日本の研究開発、やはりまだまだ物足りないところがあると思っておりまして、これをさらに活性化させていくに当たっては、どうやって、研究者に強い動機を持ってもらって、一人一人の研究者に強いやる気を持ってもらって、研究開発あるいは試験研究にいそしんでもらうかというのが非常に大事だと思うのです。

 ですから、例えば今年度についてはこういう分野を戦略的に基盤技術の研究として取り組んでいくというふうに余りかちっとやり過ぎますと、分野を超えた、あるいは今までだれも考えたことのないような全く新しいことをやりたいという人が参加できないことになってもまずいと思うのですけれども、この辺の兼ね合いをどのようにやっていこうと考えていらっしゃるでしょうか。

松田副大臣 研究プロジェクトの採択に当たっては、研究者のイニシアチブが、あるいはやる気が十分尊重されるように、柔軟な判断が必要な場合があるのではないかという御指摘でございますが、まさにそのとおり、そういった面を十分考えていかなきゃならぬと思っております。

 本法の目的が、民間の創意工夫、活力を最大限に活用して基盤技術研究の促進を図り、我が国産業技術力の強化を図るものであるとの趣旨からいたしましても、やる気と能力のある研究者のイニシアチブを尊重することが大変重要であると我々も考えております。

 このため、先ほども御答弁申し上げましたように、基本方針におきましては、最新の技術動向を踏まえつつ、バイオ技術分野、IT分野等、我が国として重要な戦略的技術分野を示していくこととしておりますけれども、委員御指摘のように、余りに細分化された特定の技術分野を提示し、かえって民間の創意工夫を阻害するといったようなことになっては元も子もございません。そういう意味で、技術動向の変化や産業界のニーズを踏まえまして、柔軟かつ機動的に基本方針自体を見直してまいりたいと考えております。

 また、さらに、個別の研究プロジェクトの採択あるいは評価に当たりましても、外部の専門家から成る評価委員会を活用させていただきまして、最新の技術動向にも対応できる体制を整えてまいりたい、そういうふうにも考えております。

達増委員 最後のところについて、もう少し突っ込んで質問をさせていただきたいのです。というのは、プロジェクトの採択や評価、それをこれからは、鉱工業基盤技術に関してはNEDOがやっていこうというのが今回の改正案なわけでありますけれども、NEDOにそういう体制がちゃんと整っているのかどうか、これを伺いたいと思います。

 やはり、いかなる試験研究テーマにどれだけ投資するかを決めるには、内外の技術動向に関する幅広い知見、また、研究者や研究機関を評価して、そしてまた個人としての、あるいは組織としての力を引き出していくようなそういう識見が必要になってくると思うのですけれども、NEDOについて、その点は大丈夫なんでしょうか。

中山副大臣 お答えいたします。

 NEDOは、昭和六十三年の産業技術に関する研究開発体制の整備等に関する法律、平成五年の福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律、平成十二年の産業技術力強化法等により、産業技術開発制度等の技術開発業務をこれまで実施してまいりました。

 約三百人の研究開発部門の職員体制のもと、さまざまな産学官の連携プロジェクトの実施やワシントン等の海外事務所等におきます調査、情報収集等を通じて内外の技術動向に関する知見、研究者や研究機関を評価する識見等の技術開発のノウハウを蓄積してきておりまして、必要な体制が整っておるものと認識しております。

 以上に加えまして、NEDOにおきましては、従来の技術評価課にかえて平成十三年度に技術評価部の設置を予定しているなど、技術評価体制の強化に努めております。

 さらに、本法案におきましても、基盤技術に関する情報収集等の業務を行うこととされておりますが、今後とも、御指摘のような観点に立ちましてNEDOの体制整備に努めてまいりたいと考えております。

達増委員 今回の改正案によりまして、今まで基盤技術研究促進センターが基盤技術の研究円滑化という業務をやってきた、これをNEDOとTAO、二つの機関に分けて、それぞれ鉱工業基盤技術そして通信・放送基盤技術、今まで基盤技術と一くくりにしていたものを二種類の基盤技術に分けてやっていくというふうになっているのであります。

 NEDOの方が業務として担当する鉱工業基盤技術、この名前についてなんですが、改正された後の四十七条の六でそういう名前になるのでありますが、NEDOの業務を定めている産業技術に関する研究開発体制の整備等に関する法律、この産技法の方では、まさにそのタイトルからしてそうなっているわけでありますけれども、産業技術に関することがNEDOの業務とされているわけです。第二条の定義の中で、産業技術とは、鉱工業の技術のうち経済産業省の所掌に係るものをいうと、定義としては鉱工業基盤技術と同じ定義になっているわけでありますけれども、なぜここで産業基盤技術という名前にしないで、鉱工業基盤技術という名前にしたのでしょうか。

日下政府参考人 お答え申し上げます。

 本改正案における鉱工業基盤技術という言葉と、産業技術に関する研究開発体制の整備等に関する法律、いわゆる産技法における産業技術という言葉との関係についてのお尋ねでございますが、産技法におきます産業技術は、先生御指摘のとおり、鉱業及び工業の技術のうち経済産業省の所掌に係るものとされております。

 一方、本改正案における鉱工業基盤技術とは、やはり鉱業及び工業の技術のうち経済産業省の所掌に係る基盤技術、つまり、基盤技術でないその上の形容句のところは同じ形になっているわけでございます。

 基盤技術であることによりまして、技術の中でも基盤性すなわち利用分野に広がりがあり、国民経済にとってインパクトが大きいという点が、いわゆる経済産業省の所掌に係る鉱業及び工業全般を指す、鉱工業全般を指す産業技術と異なっているわけでございます。

 それでは、先生御指摘のように、産業基盤技術と今回の法案の中でせずに、あえて鉱工業基盤技術としたのは、先ほど御指摘のありました第四十七条の二におきまして、電気通信業及び放送業の技術その他電気通信に係る電波の利用の技術のうち総務省の所掌に係るものを通信・放送基盤技術と定義することとの関係に加えまして、NEDOとTAOの行う業務をそれぞれ明確にするという法制的整理の観点から、内閣法制局の指摘もあり、このような書き分け、規定ぶりとしたものでございます。

達増委員 なぜここで言葉の問題にこだわったかといいますと、まさに今答弁の中にあった経緯にあるように、どうも通産省と郵政省の縄張り争いというものがそのまま経済産業省と総務省の縄張り争いとなって、殊さらに基盤技術というものを二つにきちっと分けて、お互い干渉し合わない、他方にちょっかいを出さないみたいな、そういうにおいが漂ってくるような言葉遣いになっているので取り上げたわけであります。

 したがって、これは非常に大事なことだと思うのですけれども、基盤技術を鉱工業基盤技術と通信・放送基盤技術に峻別し、今までセンターのもとでその両方にまたがるようなプロジェクトについても、うまくそれを取り扱ったり、また、これから情報通信技術、ITというものが国の基本戦略としても期待される中で、その両基盤技術分野にまたがるような研究テーマ、そういうものがどんどん出てくると思うんですけれども、そこにはきちんと対応していけるんでしょうか。

中山副大臣 今般、従来の出資制度を委託制度へと見直すに当たりまして、基盤センター設立当時は技術開発関連業務を行っていなかったものの、その後、技術開発について十分なノウハウを蓄積してまいりました既存機関であるNEDOとそれからTAOに新たな委託制度を実施させることが効率面からも最も適切であると判断いたしまして、センターを解散させるとともに、二つの機関に行わせることにしたものでございます。

 一方、今回の法案におきまして、NEDO及びTAOが新たな委託制度を実施するに当たっての指針となる基本方針を両大臣が共同で作成することによりまして、両機関の連携を図ることとしておりまして、両技術分野にまたがるような基盤技術への支援につきましても、緊密に連携して対応してまいりたいと考えておるところでございます。

達増委員 それでは、大臣に伺いたいと思います。

 この基盤技術研究円滑化法ができた経緯は、いわゆる技術ただ乗り論、日本の研究開発はそれなりに国の予算もついており、民間の研究開発も活発ではあるけれども、基礎研究部分が非常に弱く、その部分をアメリカなどの基礎研究をそのままとってきて、それを製品化、商品化をうまくやって経済発展を享受しているのではないか、そういう批判に対して、じゃ基礎研究部分も、民間の活力を利用しながら強くしていきましょうということがこれの経緯になっているはずなんですね。

 ですから、この基盤技術研究促進センターのもとで今までやってきて、資本を投下した割にリターンが少ないという問題が指摘されておりますけれども、それももちろん重要なんですが、そもそも、日本が技術ただ乗り論ということで批判されていたような研究開発の、国全体としての体質の問題が解決されたのかどうかということが、この法律については非常に核心部分だと思うので、この点についての大臣の評価を伺いたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 基盤技術研究円滑化法制定のきっかけとなった、今、達増先生指摘の技術ただ乗り論については、我が国の現状について若干説明をさせていただきたいと思います。

 いわゆる技術ただ乗り論は、基本的には、我が国が実用化に向けてすぐれたパフォーマンスを示している一方で、基礎研究への投資額は少なく、例えば研究者にとって高い栄誉とされておりますノーベル賞の受賞者も少ない等の状況を踏まえまして、日本は外国の基礎研究の成果を応用することのみに熱心で、科学技術を創出する基礎研究には貢献していない、そういう指摘を米国等からされてきた、こういう背景がございました。

 我が国は、外国からのこのような指摘にこたえまして、基礎研究における世界への貢献という観点からも基礎研究費の増加等に取り組んでまいったところでございます。基盤技術研究促進センター事業も、まさにその一翼を担うものでありました。

 その結果、政府の研究費総額に占める基礎研究費率は、基盤技術円滑化法が制定されました一九八五年の三二・一%から、一九九八年には三九%に増加をいたしました。そして、我が国の論文発表数は、一九八〇年代の前半から一九九八年には約二・五倍の約七万三千件となったわけであります。また、論文の質をあらわす指標とされております、他の論文に引用される引用回数につきましても、全世界の論文が引用される回数のうち、我が国の研究者が執筆した論文の引用回数のシェアは、一九八〇年前半から一・六倍の八・七%に相なりました。さらに、「ネイチャー」等の著名な学術誌への論文の投稿は、約二・四倍の五百六十九件、こういったことでふえております。しかしながら、最近十年のノーベル賞受賞者は、米国の三十九名に対してわずか一名でございます。基礎研究分野での成果は、依然としてまだ十分であるとは申せません。また、産業界における基礎研究費率も、景気の低迷等により、現状は下降傾向に相なっております。

 その意味で、国際競争力の源泉たる産業技術力の将来についても懸念されるに至っておりまして、今回の基盤技術円滑化法の改正は、このような状況を踏まえまして、我が国の基盤、基礎研究の抜本的な強化、促進を図ることが最大の目的でございまして、経済産業省といたしましても、我が国の基盤、基礎研究の格段の強化を図るべく、全力で取り組んでいかなければならない、このように思っております。

達増委員 この日本の基礎研究の弱さというのは、一種の構造問題なんだと思います。したがって、そこにお金を注ぎ込めば直るとかいう話ではなくて、この基盤技術研究円滑化法のもとでのさまざまな取り組みについても、それが単にリスクマネーを提供して終わりということではなくて、基礎研究インフラとして国が持っているけれどもうまく民間に活用されていないようなインフラを活用したりでありますとか、またそれは、国やそれから独立行政法人、そこに所属するような研究者、基礎研究をやっているような研究者をうまく民間の基礎研究とリンクさせていくような、今の国と民間の役割の問題や、また、国の大学ですとか研究機関ですとか、そこがうまく産業との連携ができていないとか、そういう構造問題を解決するような取り組みと同時に行われないと、単にリスクマネー提供の事務だけで終わっては、成果がさっぱり上がらないと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

平沼国務大臣 これまでの基盤センターの出資制度においても、そのプロジェクトの多くが大学や国立研究所の研究者からの指導を受けまして、また総計約二百四十名ものポストドクターを受け入れて、産学の人材交流を図りつつ研究開発を実施している等、産学官連携の先駆けとして評価もされてまいりました。

 具体的に例を申し上げますと、大阪府にある蛋白工学研究所、生物分子工学研究所においては、民間のマネジメントのもとで、大学の知恵をかりて、たんぱく質の構造解析という挑戦的な研究開発テーマを設定し、新たな研究領域を開拓するとともに、優秀なポストドクターを大阪大学や京都大学から積極的に受け入れて研究開発を実施する等、強力な産学連携により評価の高い研究成果を上げてきたところでもあります。

 さらに、同研究所は、公的施設の大型放射光施設、SPring8を活用してたんぱく質の構造解析を行う等、国が持つ基礎研究インフラを活用しつつ、効率的に研究開発を実施してきたところであります。

 今回の新たな委託制度におきましても、これまでと同様に、民間企業の発意と効率的なマネジメントのもとで、大学や国立研究所等からも広く優秀な研究人材を集めて、また必要に応じて大学や国立研究所が有する施設も活用しつつ、効率的かつ効果的に研究開発を実施していくことが重要である、そのように認識をしております。

 このために、新たな委託制度の運用においては、以上の観点を十分に踏まえつつ、産学官の連携等、研究開発体制が効果的、効率的なものとなっているかについて十分評価して、試験研究プロジェクトを採択してまいりたい、そういうふうに思っておりまして、御指摘の点、十分配慮してやってまいりたい、このように思っております。

達増委員 この基盤技術研究円滑化法、改正された新しいスキームが、そのような日本の基礎研究の弱さ、そういう構造問題を解決する構造改革の突破口となるような形になるのであれば、賛成してもいいなというふうに思っております。そういう制度の構造改革、加えて意識改革、やはり行政の側も、また研究者の側も、もっと意識を広げて新しい分野に積極果敢に挑戦していける、そういう二十一世紀の日本にふさわしい改正案となることを期待して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 塩川鉄也君。

塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 先日の質問では、基盤センターの出資制度方式の破綻の責任問題について議論をいたしました。その際、基盤センター制度の設計図となった一九八四年十二月の政府・党合意について、基盤センターの廃止によってその第三項目は無効となりますが、NTT株式の配当益を経済産業省と総務省の二つの省で技術開発に充てる部分は有効だとして、この法案で新しいスキーム、すなわちNEDO、TAOに出資し、民間に委託する制度をつくるものだということが改めて確認をされました。

 そこで、既存の研究開発の支援のスキームと今回の新しいスキームの違いについてお聞きしたいと思います。

 基盤センターでの出資事業と日本版バイ・ドール方式と言われる新委託制度の違いは何か、特に受託者、民間企業の側のリスク、自己負担という点での違いは何か、お答えいただきたいと思います。

平沼国務大臣 新たな委託制度が、従来の基盤センター出資制度及びNEDOの既存の委託制度である産業技術開発制度とどのように異なるかという点だと思います。

 従来の基盤センター出資制度につきましては、民間の基盤技術研究を促進するという観点から、これまで、国際電気通信基礎技術研究所、ATRや生物分子工学研究所、BERI等の世界的に評価の高い研究所を輩出したことを初めとして、知的資産の形成等の成果を着実に上げ、我が国の産業技術力強化に重要な役割を果たしてきたと思っております。

 他方で、特許料収入により金銭的リターンを期待する仕組みの見直しが結果的に必要となったこと、平成十一年からの企業会計基準の変更によって、民間企業にとって出資という形での研究開発制度の利用が困難となってきたことなどを総合的に判断いたしまして、基盤センターの出資制度を廃止して委託制度に移行することにいたしました。

 この委託制度においては、新たに、民間のインセンティブを一層高めるという観点から、平成十一年に成立した産業活力再生特別措置法により可能となりました、研究成果として得られた特許権等を受託者に帰属させるといういわゆるバイ・ドール方式を適用するとともに、的確なプロジェクト評価により研究の戦略性及び効率性を確保する観点から、経済産業大臣及び総務大臣が共同で基本方針を策定することといたしまして、この基本方針において、戦略的に推進すべき技術分野、目標等を提示した上で、これに基づいて、個別プロジェクトの採択時、中間時、終了時の各段階で外部の専門家による評価を実施することにいたしております。

 新たな委託制度への移行によって、より効率的に民間の基盤技術研究を促進することを可能としまして、本来の目的である産業技術力の強化に資するものと考えております。

 次に、NEDOが実施している既存の委託制度である産業技術開発制度との相違点でありますけれども、今回NEDOに行わせる新たな委託制度は、成果の懐妊期間の長さや不確実性のため民間がみずから実施することが困難な基盤研究について、民間からの研究テーマの提案を受けて委託により資金供給するものでありまして、民間活力を最大限活用しようとするものでございます。一方、NEDOの既存の産業技術開発制度は、国として行うべき重要な研究開発テーマをNEDOが設定した上で、主に産業技術総合研究所等の国立研究所や大学等と民間を組み合わせて産学官連携プロジェクトとして委託により行うものであり、新たな委託制度とは重複しない、このように私どもは思っております。

塩川(鉄)委員 私がお聞きしたいと思ったのは、受託者、民間企業の自己負担がどうなるのか。今までの出資制度では、三割の出資という形でのリスクを負っておりました。今度の仕組み、支援のスキームでは、いわば国から全額のお金が出る、このように承知しておりますが、それでよろしいですか。

日下政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、従来は研究費の三割を出資の形で民間企業は担うという形でございますし、今回は、委託制度でございますので、もちろん委託制度として、対象経費としてどういうものが対象になるかということはございますが、対象になる経費につきましては民間側の負担がない、こういう形の制度設計でございます。

塩川(鉄)委員 引き続き局長に確認をしたいと思いますけれども、この既存の委託制度と日本版バイ・ドール方式による新しい委託制度の違いはどこにあるのか、お聞きします。

日下政府参考人 平成十一年に制定いただきました産業活力再生特別措置法で日本版バイ・ドール制度をつくっていただいているわけでございます。これは、今回の新たに創設される委託制度だけではなく、現在ございます委託研究につきまして、産業活力再生特別措置法によるバイ・ドール条項が、それぞれの助成制度の、委託制度の目的に照らして、判断はございますが、適用される形になっております。今回、特に新たなこの委託制度は、民間における基盤技術の開発を支援するのが目的でございますし、また、その開発された、研究されました成果が実用化されるというのがまさにねらいでございますので、私どもとしても、まさにこの日本版バイ・ドール制度を適用すべき最もかなったケースだと承知している次第でございます。

塩川(鉄)委員 お聞きしたかったのは、研究成果の帰属が既存の委託制度ではお金を出していた国の方にあったのに、この日本版バイ・ドール方式では企業への帰属になる、こういうことでよろしいですね。

日下政府参考人 先生御指摘のとおりでございます。日本版バイ・ドール制度がなければ委託制度は国の方に成果は帰属する、バイ・ドール方式が適用されますと成果が受託先企業に帰属する、こういう形になるわけでございます。

塩川(鉄)委員 今のお話にありましたように、従来は企業側が三割の出資のリスク、負担を負っていましたけれども、今回から全額国から出してもらえるという形になります。また、研究成果の帰属も、従来の委託制度では国にありましたけれども、今度は企業側への帰属というふうになります。ですから、今回の措置というのは、いわば企業側の出資事業のリスクを取り除き、委託契約の知的財産権を一〇〇%受託者の側に帰属をさせるものです。いわば自腹を切らずに研究成果をすべて懐に入れるという、受託企業にとって大変都合のよい制度ではないかと思います。

 今、全額国の金でやるとなれば、効果的にお金を使うことへのインセンティブがなくなる、こういう指摘の声もあります。いわば甘えが生まれ、むだ遣いにつながるのではないか。

 この点について、大臣、いかがでしょうか。

日下政府参考人 先生御指摘のように、委託制度の場合には、特に評価でございましたり研究の管理が大変重要であろうかと思っております。そういう面で、基本方針などで達成すべき目標ということを定めるとともに、外部評価もしっかりしていくわけでございます。

 また、民間側としては、貴重な研究資源、これは研究者でございます、あるいはマネジメントでございます。そのような研究資源を、直接の経費は確かに国の負担でございますが、他に充て得る研究人材を投入してやっているわけでございますので、民間としても、それぞれの研究についてのコミットメントというのは大きなものがあろうかと思います。

 また、考え方といたしましては、まさに日本版バイ・ドール条項によりまして、その研究成果が委託を受けた企業に帰属する。それをもって、産業化を図りたい、そこに大きなインセンティブがあるわけでございまして、そういう面では、研究を一生懸命やるインセンティブが内在している制度であろうかと考えております。

塩川(鉄)委員 私は、全額を国が出すということが甘えを生み出すことになるんじゃないか、この点をやはり指摘したいと思うんです。

 例えば、私、予算の分科会で商店街政策の問題を質問いたしました。商店街の空き店舗対策について、今まで地元負担がなかったものを、今年度から三分の一の地元負担が導入されました。商店街を励ます政治を行わなければいけないときにこんなことはおかしいと指摘をしましたら、担当の方が、事業の対象となる受益者の方々の真剣な取り組みを促すために地元負担を導入するんだ、いわば甘えを許さないで真剣な努力をするためにお金の負担もすべきだということが、経済産業省の説明だったわけです。

 今回はどうか。体力のある大企業の自己負担をリスクという点で三分の一からゼロにして、それこそ懸命な努力をしている商店街の空き店舗対策での地元負担はゼロから三分の一にする。これは逆さまじゃないか。こういうのを放任していたら、大企業の甘えを生むことになるんじゃないですか。大臣、いかがでしょうか。

平沼国務大臣 商店街との対比を言われましたけれども、今回は、やはり基盤技術というものを伸ばしていかなければならない。そのためには、大企業のことだけをおっしゃいましたけれども、中小企業も含めてそういう形で基盤技術が進展するように、そのために、得られた成果というものを受託者側に果実として与える、それがやはりインセンティブになっているわけであります。

 私どもは、そういう意味では、大企業に限らず、幅広くそういう形でインセンティブを与えていきたい、こういう考え方でございまして、商店街もインセンティブを与えてやっていかなければなりませんけれども、基盤技術開発と商店街を一緒に論じるということは、私どもとしては、ふさわしくない、そのように認識しております。

塩川(鉄)委員 経済産業省の論理での甘えの問題について、同じことを考えればどうなのかということで指摘をしたわけであります。

 私は、この基盤センターでの、前回表に示しました実績を見ても明らかなように、特定の大企業に偏った研究開発支援の仕組みを継続するものだと思います。国家を挙げた大企業技術開発の支援体制づくりであり、大企業の希望する技術開発の費用を国が負担するものになると思います。日本版バイ・ドール方式によって、国民共有の財産であるべき委託研究の成果を一部の私企業に無償で譲渡するものであり、許されるものではないと考えます。

 そこで、アメリカのバイ・ドール法との対比で、日本版バイ・ドール方式の問題点を指摘したいと思います。

 アメリカのバイ・ドール法は、中小企業、また大学、これを優先することを基本としているのではないかと思いますが、その点、確認をしたいと思います。

日下政府参考人 お答え申し上げます。

 一九八〇年に制定されました当初の米国のいわゆるバイ・ドール法の第一の目的は、連邦政府の支援を受けた研究開発から生じた特許権等を大学や中小企業等に帰属させることによって、その利用を促進することであったと承知しております。その後、八三年の大統領メモランダムを契機に、大企業にも対象が拡大されております。

 また、あわせて、かかる措置を講ずることによって、連邦政府が支援する研究開発への大学や中小企業等の参加を奨励するとともに、産官学の協力を促進することにその法律の目的があったと承知をしております。

塩川(鉄)委員 後で加えられた部分はありますけれども、この法律の目的にどういうふうに書いてあるか。

 米国の特許法の追加規定となっているこのバイ・ドール法というのは、特許法第二百条にあるバイ・ドール法の目的の大きな柱として、中小企業の本制度利用の奨励、または中小企業並びに非営利団体、これは大学のことですが、これによる発明の実施化促進をうたっております。

 おととし東北通産局がまとめた、東北地域における大学等からの技術移転の促進に関する調査報告書の中でも、アメリカのバイ・ドール法の要約をしております。その中でも、バイ・ドール法の目的として、この制度に対し、中小企業の最大限の参加を奨励することが指摘をされております。ここにアメリカのバイ・ドール法の一番の趣旨がある。このことは明らかじゃないでしょうか。

 その点で、日本版バイ・ドール条項に中小企業優先の規定はありますか、お答えください。

日下政府参考人 先生御指摘のように、米国のバイ・ドール法の当初のねらいというのは、研究成果の効果的な商業化促進のための特許政策を立法することをカーター大統領が求めたことにその端緒があり、八〇年の段階では、それが中小企業及び大学から始まったわけでございます。しかしながら、その後、大企業等にも適用が拡大され、特許政策としての新たな展開を見たわけでございます。

 なぜ米国の場合に、大学、中小企業が最初に掲げられているかと申しますと、研究を、国からのグラントなどによって特許権の保有を認められている対象の多くが大学などの研究機関にあったところによるわけでございまして、それが大学から、ベンチャーである中小企業など、大企業も含めてでございますが、さらに譲渡されて、商業化されることを目的としたわけでございます。

 いわゆる日本版バイ・ドール法におきましては、経済が低迷している中で、新規の技術を利用可能にすること、研究開発能力を高めることを目的として制定され、法律上もそううたわれているわけでございます。そういう面では、中小企業も含めて、そのような新たな技術が利用可能になることにより裨益をするということで、特段、中小企業についての規定はございません。

塩川(鉄)委員 中小企業の規定がないということは、本当に問題だと思いますね。

 さきに紹介をしました東北通産局の報告書作成のメンバーの一人にもなっております東北大学経済学部の西澤昭夫教授は、自身の論文の中で、バイ・ドールシステムのポイントの一つとして、特許のライセンスに当たっては、米国内製造業及び中小企業を優先すると指摘をしております。

 この論文では、興味深い表が掲載をされております。お手元に配付しました資料の一枚目の左側、1の「米国におけるバイ・ドール・システムの形成」、一九九六年の数字でありますけれども、この論文で、バイ・ドールシステムに基づき、各大学が民間への技術移転のためにつくったTLOの活動を取りまとめた報告書であります。

 この表の右側に、「ライセンス先の企業別内訳」というのがあります。ここに創業企業、ベンチャーなどですね、中小企業、大企業と、わざわざ中小企業の内訳を示しております。下に、手書きでありますけれども、いわば中小企業のくくりに入る創業企業、全体の一〇・九%、中小企業五四・七%、合わせて六五・六%、全体のライセンスの三分の二が中小企業に向かうということがはっきりと示されています。いわば、こういうところにもはっきりと中小企業を位置づけているということがアメリカのバイ・ドールの特徴として示されていると思います。

 日本版バイ・ドールというのは、アメリカとは似て非なるものだ。そのままアメリカのバイ・ドールをよしとするものではありませんけれども、もし学ぶのであれば、このような中小企業支援、これこそ学ぶべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

平沼国務大臣 先ほどの答弁にも触れさせていただきましたけれども、我が国のバイ・ドール法というのは、何も大企業をすべて優先してつくったわけではございませんで、そういう意味では、日本のいわゆる企業の大宗を占めている中小企業、ここにも十分配慮をしてつくっているわけでございます。そういう御指摘もございましたので、私どもは十分考えてこれから努力をしていきたい、このように思います。

塩川(鉄)委員 ジェトロで出している「JETRO技術情報」という雑誌の九八年九月号に掲載された論文、「米国の産業技術開発政策の動向」というものがありますが、その中でも、歴史的に、政府出資のプログラムは中小企業を優遇することに力を入れてきたとか、中小企業庁などが、中小企業の技術革新に対する貢献を調査し、革新的技術は大企業よりも中小企業から多く誕生しているとの報告を行っているとか、アメリカの議会は大企業よりも中小企業の方を、国立研究所からの支援を必要とし、またそれに値すると見ている、このように報告をしています。

 政府がやってきたことは、肝心の中小企業の支援を棚上げして、従来型の大企業支援の仕組みとしていわば換骨奪胎したものではないかと言わざるを得ません。私は、中小企業支援に政府が全力を挙げることが必要だと考えます。その点で、経済産業省の科学技術関係経費の総額と、その中での中小企業対策費がどうなっているのかをお示しください。

日下政府参考人 お答え申し上げます。

 平成八年に決定された第一期の科学技術基本計画を踏まえまして、経済産業省としては、政府の研究開発費の拡充に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。この結果、当省の科学技術関係予算は、計画策定前の四千二百十三億から、平成十三年度においては五千七百四十三億と三九%増加しているところでございますし、また、そのうち、特に中小企業を対象としました予算につきましては、同じく平成八年度の百十七億から平成十三年度の百六十五億へと、四一%拡大しております。

塩川(鉄)委員 配付資料の二枚目左側の2の「経済産業省技術開発予算の推移」というグラフを見ていただきたいんですが、この配付資料にありますとおり、経済産業省の産業技術関係予算総額とそのうちの中小企業向けの予算を比較すると、今年度は総額五千百七億円に対し中小企業関係の予算はわずか三%の百五十四億円であります。来年度の予算でも、総額五千七百四十三億円に対し、ことしよりも減った二・九%の百六十五億円にすぎません。二けた近い差がある。

 ここにもあらわれている大企業中心のやり方を改めて、日本経済の柱であり、雇用の面でも八割を占める大きな役割を果たす中小企業支援に大きく乗り出すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

平沼国務大臣 確かに我が国の企業の九九・七%は数の上では中小企業でございますし、雇用も七二%を超える、そういうものを中小企業が受け持っていただいています。ですから、中小企業は言ってみれば日本の経済の基盤を支えている、こういうことが言えると思います。

 今、実際のグラフで示されましたけれども、これは中小企業に限定をした数字でございまして、全体の中にはいろいろなものが含まれておりまして、結果的には中小企業にもそういう研究費が回り回って行くという可能性もあるわけでございまして、確かにそのグラフで見ますと二けた違うという数字でございますけれども、私どもとしては、決して中小企業を軽視しているわけではありませんで、これは中小企業に限定した数字、こういう形で私はとらえるべきだと思っております。

 そして、これからやはり御指摘のように中小企業は、先ほどの田中先生の御質問にもありましたけれども、非常にそれぞれ世界的に優秀な技術を培っている、こういうこともございますので、今後、そういう御指摘も踏まえながら、中小企業に対する研究費、私どもはそのインセンティブを与えるためにも力強くやらせていただきたい、このように思っています。

塩川(鉄)委員 私は、経済産業省の技術開発の予算というのは、さきに指摘をした基盤センターでの出資が特定の大企業に偏っていたのと同様に、一部の大企業に流れていることを指摘したいと思います。

 先ほど見ていただいた2のグラフの右側、3に、「技術開発の委託先大企業上位五社」ということで経済産業省の二〇〇〇年度予算分を出してまとめてみました。日立製作所が一社で五十八億円、三菱電機が四十八億円、東芝四十七億、三菱重工三十七億、川崎重工三十七億と、五社計で二百二十九億円であります。中小企業向けの予算が百六十五億円というのがありましたけれども、いわば三社でこれに匹敵するような数字であります。やはりここは、経済産業省所管の実績ではありますけれども、大半はNEDOを通じて行われていたものであることも指摘をしておきたいと思います。

 私は、基礎研究の重視というのであれば、やはり本当の基礎研究の重視が必要だと思います。東大先端科学技術研究センター長の岡部洋一教授は、今はオリジナルなアイデアに対して具現化する数が少なくなっている、だから、アイデアを生む基礎研究に精を出さないと産業の発展は厳しくなっていく、ところが、バブルが崩壊して以来、企業は基礎研究所を解体しつつあると述べています。

 基礎研究について大学に期待する声がありますが、現状はどうでしょうか。ノーベル賞学者の白川秀樹筑波大名誉教授は、欧米諸国に比べて日本のノーベル賞受賞者数が少ない理由として、違いは研究支援者の数だ、このように述べています。研究支援者は研究業務を支援する専門家だが、欧州各国ではほぼ一人の研究者に一人の割合で研究支援者がついている、一方日本では、研究者八人に対し一人しか研究支援者がいない、研究環境の差はこんなところにあると述べております。

 ですから、この配付資料の一枚目の右の4の「主要国の研究支援者数」を見ていただいても、日本が非常に小さいということが改めて浮き彫りになります。こういうところにこそ適切な予算配分を行うべきではないかと考えます。

 西澤潤一岩手県立大学の学長も、かつて東北大学の学長時代に学長会議の場で、研究支援者、補助職員がなくなったということが、今でいえば物づくりという、現実を見ながら学問を展開していくという新しい学問の誕生に非常におくれてしまったことの原因であると述べています。

 こういう大学や国立研究所、この研究環境の整備、ここに大いに力を入れるときではないか、この点をお伺いしたいと思います。大臣、お願いします。

平沼国務大臣 塩川委員が、今大企業優先という形で、日立製作所等の五十億を超える研究費を列挙されましたけれども、私は十一年間、大企業と言われている日東紡績という企業に所属をしておりまして、そこで技術開発にも従事した経験を持っております。

 日本の場合には、アメリカの産業構造と若干違いまして、大企業のもとにいわゆる研究をサポートする中小企業というのがたくさん付随しておりまして、私はグラスファイバーのタイヤコードの研究開発を約十年やらせていただきました。営業マンの立場でやらせていただきましたけれども、そのときに、やはり日東紡の中で、そういう優秀な技術を持ったグループの企業というものが大変大きく協力をしてくれて、そしていろいろな難問について共同でやった、こういうことがございますので、日立にいたしましても、先ほどの表にいたしましても、そういう中で間接的に研究開発費というのはグループの中に浸透していく、こういう側面もあるんではないか。自分の経験に照らして、数字だけ出して言われると確かにそういう顕著な形になりますけれども、日本の産業構造ということを考えた場合には、間接的にそういう形で中小企業にも研究費が行き渡っている、こういう側面もあるんではないかと私は思っています。

 研究支援者数については、各国によりその意味する範囲がさまざまであることから、私は単純には比較できないものだと思っています。我が国の研究者一人当たりの研究支援者数については、欧州主要国と比較した場合、〇・四人と、約半分の水準となっている、そういうデータもございます。我が国といたしましては、これまで研究支援体制の充実強化を図ってきているものの、研究支援者の推移を見ると、研究者数が増加傾向にあるのに比して、確かに研究支援者数が伸び悩んでいるという状況があります。

 先般閣議決定されました科学技術基本計画においても、引き続き研究支援体制の充実を図ることが明記されておりまして、経済産業省といたしましても、総合科学技術会議と協力をしつつ、関係各省と連携を図りながら科学技術基本計画の着実な実現に全力で取り組んでいきたい、御指摘の点はございますのでそういうところに力点を置いてやっていきたい、こういうふうに思っています。

塩川(鉄)委員 質問を終わります。

山本委員長 大島令子君。

大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。

 基盤技術研究円滑化法の一部改正案につきまして、三月三十日に引き続き質問を行います。

 まず、基盤技術研究促進センターの成果について、経済産業省と総務省に二点についてお伺いします。

 一点目は、特許が活用されてどのようなものが製品化されてきたのか。また、電気通信分野の研究開発における成果はどうであったのか。二点目は、医療福祉分野、とりわけ障害者、高齢者に応用されるような成果はあったのか。また、そのような実用的な製品があれば具体的に示していただきたいと思います。そして、一般マーケットでの製品とは別にごく限られた社会的弱者のために開発された製品があればお示しください。

日下政府参考人 お答え申し上げます。

 センター出資制度における研究成果が製品化に結びついた事例についてのお尋ねでございます。

 電気通信分野の関係につきましては後ほど総務省からお答え申し上げますが、全般について申し上げますと、これは総務省の関係のものも全体含めて申し上げますが、例えば、日本電子化辞書研究所が日本語を自然に理解してコンピューター上で処理する自然言語処理技術を確立して、それが英和、和英電子辞書「電辞海デラックス」というようなもの、あるいは百科事典検索システム「ネットで百科」などの電子辞書や検索システムの製品化に結びつくなど、幅広い分野でこれまで百四十六件の実施許諾実績がございます。

 特に医療分野、福祉分野などではどうかというお尋ねでございます。

 第一の例としましては、生体内の微弱な磁気を計測する技術を確立することによりまして、人の体を傷つけることなく脳や心臓などの生体内の反応をリアルタイムに診断可能な医療機器の実用化に結びついた例がございます。これは超伝導センサ研究所における成果でございます。

 第二には、環境ホルモンなどの環境負荷化学物質を抗体反応を利用して簡便に検出する試薬、試験紙の開発に結びついた例、これは環境免疫技術研究所の例でございます。

 第三には、白血球を増加させる働きをするたんぱく質の構造及び機能を解明したことによりまして、副作用が生じない抗がん剤の開発が期待されている例、これは生物分子工学研究所の例でございます。

 そういうさまざまな医療福祉面の応用が期待される分野を含めまして、成果が生まれているところでございます。

高原政府参考人 電気通信分野についてお答えをいたします。

 まず、コンディショナル・アクセス・テクノロジー研究所というのがございまして、これは、有料衛星放送に係るスクランブル技術やセキュリティー技術を確立して、衛星放送サービスの普及促進に寄与したということで非常に成果を上げております。

 それから、ATRと申しまして、国際電気通信基礎技術研究所というところで、特に音声認識あるいは合成ソフト等の合成技術の研究開発をしまして、この翻訳技術が非常にいろいろなところで活用されておるという例がございます。

 さらには、電気通信案件でいろいろ研究開発した結果、ベンチャー企業も四社ほど育っておりまして、その中の一社、例えばインターネット総合研究所といったようなものは非常に有名なベンチャー企業に育っているといったような例もございます。

 さらに、医療福祉分野でございますが、先ほど申し上げました国際電気通信基礎技術研究所の研究におきまして、医療福祉分野に活用されているものの例として三つございますが、一つは、音声合成データベース技術によりまして、病気で失った声の再生を可能にしたという例がございます。二つ目は、眼球運動の計測とか分析技術をアルツハイマー症候群の診断に活用しているという具体例がございます。それから三つ目は、微小センサー技術によって、上あごにつけたセンサーで電動車いすの操縦を可能にしたという例がございます。

 さらに、別の研究所でございますが、これは移動体通信先端技術研究所というところがございます。ここにおきまして、高温超電導体や超電導を実現するための冷却機に係る要素技術が、医療機器への応用が期待されているという現状にございます。

 以上でございます。

大島(令)委員 ありがとうございました。

 医療福祉の分野でも、本当に限られた障害を持った方に活用されるものがあるということでございます。今後も、そういう座標軸を持って研究されることを期待しております。

 その関係で、これは大臣に質問をしたいと思うんですが、将来的に、女性の起業家が取り組めるようなところまで研究の範囲を広げて委託していく考えがあるのか。また、広げるとしたらどのような範囲なのか。こういう質問をさせていただくのは、研究開発の分野にも女性の研究者の参入が出てきておりますけれども、やはり男性中心だと思うんですね。しかし、製品化されたものとかそういう特許を享受する国民というのは、国会に来ると男性ばかりなんですが、天の半分は女性ですので、こういう質問は女性みずからがやはり申し上げないといけないと思いましてお尋ねするわけです。

 ですから、そういう研究する分野への女性の参画、それともう一つ、女性の研究者が出ることによってやはり女性の視点でいろいろなものが出てくると思うんですね。そういうものに対してどのような考えをお持ちか、お尋ねしたいと思います。

平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。

 研究開発における女性の活用につきましては、平成六年に日本学術会議から、女性科学研究者の環境改善の緊急性についての提言がございまして、重要な課題であると私どもは認識しております。また、研究開発におけるテーマや視点の多様性の確保という観点から、先生御指摘のように、女性が研究開発という分野で重要な役割を担うことは大切なことだ、また期待をされている、私はこのように思っております。

 しかし、現状、御指摘のように、研究者全体に占める女性研究者の割合は、これまで上昇傾向にはありますけれども、平成十一年時点では全体の一〇%にとどまっておりまして、まだ十分とは言えない状況だと思っています。

 先般閣議決定されました科学技術基本計画において、男女共同参画の観点から、女性の研究者への採用機会等の確保及び勤務環境の充実を促進することが必要だ、こういうふうにされております。

 経済産業省といたしましても、科学技術基本計画の着実な実施に向けまして、総合科学技術会議と協力をしまして、今御指摘の点も踏まえて、各省との連携を図りながら、政府一体となって取り組んでいかなければならないと思っています。

 そして、御指摘のとおり、女性の観点から、そういう物の見方というのはこれからますます大切だと思いますから、私はそういう御提案というのは非常に賛成でございますので、力を入れていきたいと思っています。

大島(令)委員 ありがとうございました。

 次の質問でございます。ベンチャー企業への研究支援について質問させていただきたいと思います。

 ベンチャー企業は、独創的な技術とか専門性が高く、革新力に富んだ知識集団型のスモールビジネスとちまたでは言われております。研究開発に携わった研究者がその知見を生かして、これまでに七社のベンチャー企業が創出されたと聞いております。

 そこで、二点質問いたします。一点目、創出された会社の設立経過とその内容、現在どういう実情にあるのか御説明いただきたいと思います。二点目は、ベンチャー企業創出に結びつくような支援体制の運用を今後もしていくべきだと考えますが、見解をいただきたいと思います。答弁は短目にお願いいたします。

日下政府参考人 まず第一に、今までの成果で出てきたベンチャー関連でございますが、基盤センターのこの出資制度の対象プロジェクトに参加していた研究者がその技術的知見を生かして創業につながったケース、これは七社事例がございます。

 具体的には、基盤センターの出資会社でございますヘリックス研究所において研究開発に携わっていた研究者が、バイオテクノロジー関係の技術を利用してバイオベンチャー企業として成功した例などがございます。また、テレマティーク国際研究所において研究に携わっていた研究者が、研究開発終了後にみずからのLAN技術の知見を生かして、我が国で有数のインターネットプロバイダーとなって、米国ナスダック市場に上場している例もございます。

 したがいまして、いわば研究者がスピンアウトすることによって、人を通じた技術移転がなされて、我が国において注目されている高い技術力を有したベンチャー企業を輩出した事例になっていようかと思います。

 第二にお尋ねの、新制度におきましてベンチャー企業が創出されやすいような制度の運用がなされるのかという点でございます。

 新制度におきましては、国から委託されました研究の成果であります特許権などの知的財産権を受託者である民間企業等に帰属させるいわゆるバイ・ドール方式を原則採用することとしているわけでございますから、受託者がその成果を効率的に使えるようにしているわけでございます。

 また、新たな委託制度は複数社の共同出資を前提としない委託制度でございますから、すぐれた研究開発力を有した単独のベンチャー企業も委託先としての対象になり得るものでございます。

 そのような面で、先生御指摘の、新たな制度がベンチャー企業の創出につながりやすいかどうかということで考えますと、従来の制度に比べて、ベンチャー企業、つまり研究成果を生かしてその後創業につながりやすい制度になっていると考えております。

 今後また、この新たな委託制度の運用に当たりましては、新制度の目指すパブリックリターン確保の一環として、研究の評価をする際にベンチャー企業等の新規事業への創出効果といった点も評価項目とする、そういう面で、研究開発だけでなくて、その後ベンチャー企業創出につながっていきやすいか、またつながってきたかどうかということも評価項目とするなど、適切な対応を行ってまいりたいと考えております。

大島(令)委員 政府参考人に質問しますけれども、今までの評価のあり方なんですが、資金回収を期待する制度であったからやはり特許料等の収入によりその成果が評価されてきた。しかし、今度はパブリックリターンを第一義的評価指標とする。

 そういうふうになりますと、委託する会社も、株式会社とかいうことになりますと、今、株式会社は資本金一千万以上でないと設立できない。ベンチャー企業は知的集団と言われましても、一番困難なのは、今まで起業、会社を起こすに当たりまして、金融機関からの融資制度の中で、例えば土地などの物的担保に乏しいのがやはりベンチャー企業の特徴だと思うわけです。

 資金調達の環境改善という観点から、やはりこういった知的財産も金融機関の中で融資の担保条件とする、そういうような新たな考え方も経済産業省が中心になってやらなければベンチャー企業の育成とか運用はできないのではないかと私は考えているわけです。

 ですから、今後、ベンチャー企業というものをこの新しい改正案の中でどう位置づけていくのかということは、その運用の中でやっていきますよといいましても、実際的に、会社を組織する、受託者になれるようなところまでの第二段階的な支援策がないとやはり不可能ではないかということで、改めて見解を伺いたいと思います。

平沼国務大臣 大島委員御指摘のように、ベンチャー企業は一般的に物的担保が乏しいわけであります。そして、民間金融機関から融資が受けにくい状況にあることも事実だと思います。こうした観点から、政府といたしましては、日本政策投資銀行におきまして、新規性のある事業を行うベンチャー企業が特許権やプログラム著作権など、知的財産権を担保にした融資を行う制度を創設いたしました。こうしたベンチャー企業の資金調達を円滑化するための環境整備を行ってきているところであります。

 一方で、知的財産権の客観的な担保価値評価は依然として困難な状況であることに変わりはありません。こうした知的財産権を持った企業の将来性に着目した担保なしのリスクマネー供給を図ることが必要である、このように考えております。このため、株式や社債等を通じた直接金融市場からの資金供給を活性化することが重要であると思っております。

 こうした認識のもとで、経済産業省といたしましては、株式を通じたベンチャー企業への資金供給を活性化させるため、民間資金の呼び水として、投資事業組合に対する公的出資制度の強化を図ったほか、証券市場の活性化にも努めてきているところであります。

 大島委員御指摘のように、今後とも、物的担保の乏しいベンチャー企業が知的財産権等を活用しながら資金調達を円滑に行うことができますように、間接金融、直接金融の両面からの環境整備を積極的に進めていきたい、このように思っています。

大島(令)委員 次に、生活基盤型の産業構造への転換について、経済産業省と総務省、両省にお尋ねしたいと思います。

 現在のような長引く消費不況下にあっては、生活者の視点を生かした商品やサービスにこそ高いニーズが求められていると私は思います。先ほど来の説明の中にございました、生命工学や微小テクノロジーなどの戦略的な技術投資も確かに必要であると思います。しかし、商店街や町工場などの地域で頑張る中小企業とか住民が経営や創出するスモールビジネスに対する戦略的投資も、現在の経済環境の中では優先順位が高まっていると私は思います。そういう中で、生活基盤型の産業ということで二点質問をいたします。

 まず一点目。環境分野では、リサイクルだけでなく廃棄物のリデュース、減量、そしてリユース、再利用が必要になっております。この点の基盤技術の開発について政府はどんな姿勢を持っているのか。二点目は、IT分野でのセキュリティー問題。例えばネット上の個人情報を保護するための研究開発、また携帯電話の電磁波を遮断する技術などについて、政府の取り組み、今後どうしていくのか。二点、伺いたいと思います。

日下政府参考人 先生御指摘のように、循環型経済社会の構築に当たりましては、資源有効利用促進法や容器包装、家電等の個別リサイクル法などによりまして、社会的なルールづくりを進める一方で、多様な三R手法を実現するための技術的なブレークスルーを図ることが求められていると考えております。

 当省におきましては、このような観点から、第一には、リサイクルしやすい素材の開発などの先端的、基礎的な技術や、リサイクルしやすい製品の設計などの共通基盤技術の研究開発、再生資源の用途開発、拡大のための調査研究、ライフサイクルアセスメントなどのモデル的な実証評価などをみずから実施するとともに、民間企業におきます使用済み製品などの再資源化のための独創的な技術開発を促進するため、民間企業などが行う三R技術開発や実証プラントの建設に対する補助などの措置を講じているところでございます。

 今後とも、引き続き、このような三R技術の発展に向けた取り組みを積極的に講じてまいりたいと考えております。

太田政府参考人 お答えいたします。

 IT分野の研究開発、先生御指摘のとおり、例えば次世代のLSIの研究開発等、そういう先端的な技術開発も必要でございますが、同時に、電磁波関連あるいはセキュリティー関連の研究開発等々、生活に密着した分野の研究開発が同時並行的に進展することが重要であると考えております。

 そういう観点から、経済産業省は、例えば電磁波測定・遮へい技術等につきましては、昭和六十三年から電波障害対策に関する調査研究を行っております。種々の電波環境の中で、パソコンとか携帯電話等の情報通信機器がどのような誤作動を起こすのか、またそのような誤作動を防ぐためにどういう対策を講ずればよいか等々の研究を行っております。

 また、セキュリティー技術に関しましては、ネット上で電子化された情報をやりとりするのに際して、個人情報の秘匿等のため暗号技術を利用することが大変有効でございます。また、個人情報の漏えい防止策としては不正アクセス対策も重要ということで、私どもとしては、例えば暗号技術につきましては、我が国のトップクラスの研究者に集まっていただきまして、暗号技術評価プロジェクトを総務省と関係省庁と一緒になって実施しております。また、不正アクセスによる個人情報の漏えい、あるいは成り済ましを防止するという観点から、不正侵入の検知システム、あるいは認証技術の研究開発を進めております。今後とも、そのような努力をしっかり続けていきたいと思っております。

高原政府参考人 先生お尋ねのネットワークセキュリティーにつきまして、総務省といたしましても非常に重要だと考えております。

 具体的には、予算措置をしておりまして、ネットワークセキュリティー基盤技術の推進、高信頼性データバックアップシステムの研究開発、不正アクセス発生源追跡技術に関する研究開発、あるいはネットワーク障害検知技術に関する研究開発といったようなものを予定いたしておると同時に、進めておるところでございます。

 また、通信総合研究所におきましては、不正アクセス分析装置を備えたネットワークセキュリティーの研究施設、危機管理用の安全対策施設、あるいはネットワークを攻撃するサイバーテロの検証実験施設といったものの施設を備えておるところでございます。

 以上でございます。

大島(令)委員 国の委託研究によって得られた特許権というのは、国民全体の知的財産という観点から、開発されたものを死蔵することなく今後も活用していくことを私は期待しております。

 先般、憲法調査会で、ソフトバンク社長の孫正義さんが参考人で見えました。そのときに、週二回、僕のコンピューターにウイルスが入る、ウイルスを出した人を憲法によってぜひ処罰してほしいという政府参考人の話があったわけですが、憲法を改正しなくても、今の総務省の政府参考人の方がおっしゃったような技術が開発されれば必要がないわけですので、ぜひ期待させていただきます。

 最後の質問でございますけれども、中小企業への配慮について政府参考人にお尋ねしたいと思います。

 先ほど来、多くの委員の方が質問してまいりました。中小企業は、日本経済の基盤、事業所数で九九・七%、従業員数では七二%を占め、総売り上げの半分以上を生み出している。やはり中小企業が元気だと日本の経済も活力が出るのではないかと思っているわけです。

 この法律にも、中小企業に対する特段の配慮が附帯決議として一九八五年につけられました。それは、「中小企業が本法の施策を十分に活用することができるよう、その運用に万全を期すること。」とございました。以上の附帯決議に関しまして、これまでどのようなことがなされてきたか、四点について質問します。

 まず一点目でございますけれども、中小企業への制度上、運用上の配慮はどのような形でこれまで実施してきたのか。二点目は、三月三十日の答弁の中で、中小企業にも一定の成果と受益があったということでございますけれども、その出資した研究開発費の総額と、今まで使われてきた費用に対する割合は一体どのくらいであったのか。三点目に、成果としての論文や特許などは幾つあるのか。四点目、これまでの基盤技術促進センターからの業務を引き継ぐNEDOやTAOにおいても、当然この附帯決議という精神が受け継がれると理解していいのか。

 私は、中小企業が本法の施策を十分今後も活用できるよう運用に万全を期していただきたいという立場から、最後に四点質問をさせていただきます。

日下政府参考人 中小企業の利用についてのお尋ねでございます。

 御指摘のとおり、法制定時の附帯決議を受けまして、中小企業による基盤センターの出資制度の活用を広く促す観点から、各地域の旧通商産業局におきまして、相談コーナーを開き、制度のわかりやすい説明でございましたり広報を実施してきたところでございます。

 そのようなことを通じまして、中小企業も含めて公募があったわけでございますが、その採択に当たりましては、公正な第三者による審査を実施して、よりすぐれたプロジェクトの採択ということで採択が行われてきたわけでございます。

 その中で、それでは何社が出資をして、出資総額がどのぐらいかという実績でございます。新規の設立型出資制度の利用をいたしました、センターから出資をしましたのは、百八社ございます。この百八社のうちの十四社の研究開発会社、十四の研究開発の主体におきまして、それへの出資者として三十社の中小企業が出資を行って研究開発をしているところでございます。これらの中小企業が出資をしている研究開発会社に対して、基盤センターの出資総額は九百億円でございまして、中小企業が参加している研究開発プロジェクトの比率は三割強となっているところでございます。

 この三割強の、つまり十四社の研究開発会社の生み出した成果、知的な成果でございますが、論文でいいまして、約半分でございます。特許の登録件数で、六百五十件、三割強でございます。このような成果について具体例を一つ挙げますと、先ほどもお話が出ました、環境免疫技術研究所における環境ホルモンなどの化学物質を抗体反応によって簡便に検出することができる技術などが挙げられるところでございます。

 最後に、先生御指摘の、新しい制度になったときの考え方でございます。

 新しい制度におきましては、NEDO及びTAOが担うわけでございますが、当然、私どもとして、最初の制度創設時にいただきました附帯決議の趣旨を体し、継続しながら行うべきであると考えておるところでございます。

 また、新たな委託制度の運用におきましても、企業規模や形態にかかわりなく、広く民間から公募をして、最もすぐれた研究開発プロジェクトを透明なルール、公正な評価で行っていきたいと考えているところでございます。

 そのために、中小企業の本制度の利用、活用を促す観点から、制度のわかりやすい説明、広報などに一段と力を入れていきたいと考えております。

大島(令)委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

山本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。矢島恒夫君。

矢島委員 私は、日本共産党を代表して、基盤技術研究円滑化法一部改正案に対し、反対の討論を行います。

 基盤技術研究促進センターを通して大企業の基盤技術研究に政府資金を流し込む仕組みは、二千七百二十億円の出資金が事実上回収不能となり、破綻しました。

 本法案に反対する理由の第一は、この仕組みに政府保有のNTT株配当金という国民の財産を投入してきた政府と、センターに会長を送り込み運営を主導してきた経団連の責任を免罪しているからです。基盤技術研究が利益につながりにくいことは当初から明らかであったのに、出資金回収が可能だとしてセンターを設立し、運営してきた政府、経団連の責任が問われなければなりません。

 第二に、本法案は、センター経由の大企業への技術開発投資が回収不能のため、センターの権利義務を承継するTAO、NEDOの資本金を減資するというものであり、国民の財産を食いつぶし、センター方式破綻のツケを国民に押しつけるものだからです。

 破綻したセンター方式の基本設計は、政府保有のNTT株配当金を産業投資特別会計に入れて、財界の意のままに民間技術開発支援に使うという、一九八四年十二月の政府・党合意であります。センター廃止だけでなく、この合意そのものこそ見直されるべきであります。ここを反省することなく、既得権益のごとく事業を承継することは、国民の納得を得られるものではありません。

 第三に、センターの出資事業や現行のNEDOの技術開発の実態から明らかなように、特定の大企業への集中的支援という優遇策に加え、本法案は、大企業の自己負担なしに成果を一〇〇%企業に帰属させるという、一層の大企業優遇の仕組みをつくるものだからです。これは、国民の共有財産を一部の大企業に無償で譲渡するものであり、現代版官業払い下げともいうべきものであり、断じて認めることはできません。

 産業の土台を支える技術開発を国が支援するのは当然です。そのためには、一部大企業の支援策でなく、現に日本の技術を支えている中小企業に対する支援、基礎研究の現場である大学、国研の研究環境整備こそが求められていることを改めて強調して、討論を終わります。

山本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、新藤義孝君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び21世紀クラブの七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。中山義活君。

中山(義)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    基盤技術研究円滑化法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  我が国の基礎研究及び産業技術力強化の必要性は益々増大しており、特に研究開発の大宗を占める民間の創意を生かした基盤技術試験研究の一層の効率的活用を図ることが強く要請されている。

  よって政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 新エネルギー・産業技術総合開発機構及び通信・放送機構に、民間の基盤技術に関する試験研究を促進するための業務を行わせるにあたり、以下の二点に留意するとともに、その趣旨を、経済産業大臣及び総務大臣が策定する基本方針において明記するほか、インターネット等を通じて積極的に広報すること。

   また、両機構の既存の業務との関係を整理・明確化すること。

  1 基盤技術研究促進センターによる出融資制度が両機構による委託事業へと移行することにより支援を受ける民間事業者の発意及び創意が阻害されることとなってはならず、また適正な競争原理を確保することの重要性にかんがみ、広く民間の研究案件を公募するとともに、その運用において民間事業者の研究開発の自由度、独立性の確保に最大限の配慮を払うこと。

  2 研究開発成果の民間事業者における活用の促進に引き続き努めること。

    また、中小企業が本法の施策を十分に活用できるよう、その運用に万全を期すること。

 二 両機構の行う委託事業の案件の採択等にあたっては、両機構の行う研究開発評価の透明性・公平性を確保するため、技術・経営等の外部の専門家からなる機関等に評価を委ね、評価のルールとプロセスを公表することとするとともに、その趣旨を、経済産業大臣及び総務大臣が策定する基本方針において明記するほか、インターネット等を通じて積極的に広報すること。

 三 基本方針については、省庁の所管を超えた学際的、融合的な研究開発に配意し、内閣府のリーダーシップと各省庁等の緊密な連携の下に策定される新たな科学技術基本計画と有機的に連携した整合性のあるものとすること。

   また、研究開発の成果の早期実現とその実用化を促進する観点から、本基本方針については、産業界のニーズにも配慮しつつ、近年の技術革新のスピードにかんがみ、柔軟な見直しを行うこと。

 四 現下の厳しい財政事情にかんがみ、赤字公債依存度を可能な限り引き下げることが求められる中にあって、産投特会に帰属するNTT株式配当収入の有効利用のあり方について不断の見直しを行うことが必要であり、その結果等を踏まえ、両機構の民間基盤技術研究促進事業の財源措置のあり方についても、所要の検討を行うこと。

 五 民間の基盤技術研究に対する十分な支援と、我が国の国際競争力強化に資する技術水準の確保を可能にするため、引き続き研究開発費の政府負担の増加を図ること。また、最近の公的研究機関等における施設の老朽化・狭隘化等にかんがみ、研究開発基盤の整備に努めること。

 六 基盤技術研究促進センターの解散に伴う事業の清算処理については、政府出資金の財源がNTT株式の配当益という国民共有の財産であったことにかんがみ、国民に対する説明義務を十分に果すよう経理を明確なものとするとともに、同センターの保有する株式の処分及び債権の管理・回収にあたっては、最大の成果が得られるようその指導・監督を徹底すること。

 七 新エネルギー・産業技術総合開発機構の組織・業務が、近年逐次拡大化してきている実態にかんがみ、同機構の業務等を適時・適切に見直し、その合理化・効率化の徹底に努めること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山本委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、平沼経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。平沼経済産業大臣。

平沼国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

山本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

山本委員長 次に、内閣提出、石油の安定的な供給の確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 石油の安定的な供給の確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平沼国務大臣 石油の安定的な供給の確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 我が国のエネルギー供給の大宗を占める石油は、国内供給のほぼ全量を輸入に依存しており、その安定的な供給の確保は、我が国のエネルギー政策の根幹をなすものであります。しかるに、今日、国際石油市場の一層の発達等、石油の供給をめぐる経済的、社会的環境に新たな変化が生じております。

 このような状況の中で、引き続き石油の安定的な供給を確保するため、石油産業の需給調整規制を撤廃するとともに、緊急時における石油供給の確保の基盤である石油備蓄制度の強化及びより効率的かつ確実な自主開発原油の確保を図ることが必要であります。

 こうしたことから、政府といたしましては、このたび、石油業法を廃止するとともに、石油備蓄法及び石油公団法を改正するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、石油業法の廃止であります。

 これは、需給調整規制を廃止し、市場原理を一層導入することにより、石油の安定的な供給という重要な役割を担う石油精製業者等がみずからの創意工夫により強靱な経営基盤を確立することを促進するものであります。

 第二に、石油備蓄法の改正であります。

 その改正の第一点は、同法の題名を石油の備蓄の確保等に関する法律とすることであります。

 第二点は、石油精製業者等による石油備蓄義務の履行の確保の強化等を図るため、石油精製業、石油ガス輸入業、石油販売業を届け出の対象とするとともに、石油輸入業を登録の対象とすることであります。

 第三点は、石油公団が保有する国家備蓄の的確な放出を確保するため、経済産業大臣は、石油の供給が不足する等の事態が生ずる場合において、石油公団に対してその備蓄に係る石油を譲り渡すことを命ずることができるものとすることであります。

 第四点は、石油備蓄の放出の実効性をより確実なものとするため、経済産業大臣は、基準備蓄量を減少し、または石油公団に対し備蓄の譲り渡し命令を行う等の場合に、石油精製業者、石油輸入業者及び石油販売業者等に対し、指定石油製品の生産予定量等の報告をさせ、当該報告に基づき生産予定量の増加等の措置をとるべきことを勧告し、正当な理由なく勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとすることであります。あわせて、経済産業大臣は、緊急時に国民が的確に対応できるよう、必要な情報を国民に提供するものとすることであります。

 第五点は、石油備蓄義務の履行の確保の強化を図るため、罰則に係る規定の整備を行うことであります。

 第三に、石油公団法の改正であります。

 その改正の第一点は、より効率的かつ確実な自主開発原油の確保を図るため、石油及び本邦周辺の海域における可燃性天然ガスの採取をする権利等を譲り受けて採取を行うために必要な資金を供給するための出資を行うことを石油公団の業務に加えることであります。

 第二点は、石油公団が保有する国家備蓄の的確な放出を確保するため、経済産業大臣の命令に基づいて石油備蓄の譲り渡しを行うことを石油公団の業務に加えることであります。

 以上が、この法律案の提案理由及び要旨でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁長官河野博文君及び外務省経済協力局長西田恒夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 今回の法改正が成立すれば、我が国の石油政策の基本法でありました石油業法が廃止されます。この石油業法は、我が国の石油の安定供給に多大な貢献をしてまいりました。しかし一方、役所と業界の相互依存体質、国際競争力の欠如、欧米より高い、ガソリン等の価格高を生み出してきたと指摘されております。今回の石油業法の廃止に当たって、この法律の評価を明らかにしてください。さらに、どういう反省のもとに今回の法改正に臨んでいるのかを明確に説明していただきたい。

 関連して、国民として関心があることは、例えば、石油業法という需給調整体制が廃止をされ、ガソリン等が安くなるかどうかであります。昨年三月の一ドル百七円をベースにした資料によりますと、日本のガソリンが税抜き価格でリッター四十一円、一方、アメリカが三十一円、英国が三十三円、フランスが三十円、ドイツが二十五円、これが今回の改正でどこまで安くなるのか、価格低下の圧力となるのか、こういう観点について、副大臣の答弁を求めます。よろしくお願いします。

中山副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 石油の安定供給を確保するため、過去、石油業法に基づく精製業の許可制等、需給調整規制を実施しており、こうした中で石油産業における競争がある程度抑制される面があったことは事実でありますけれども、こうした規制につきましては段階的に緩和してきたところでございます。

 また、過去の石油危機時におきまして、国民生活の安定確保、便乗値上げ防止等の観点から、石油製品価格に関する行政指導を行っております。しかし、かかる指導は昭和五十七年以降はなされておらず、石油製品価格は、国内の需給動向や国際的な原油価格の動向等を踏まえ、各石油各社がみずからの判断により設定していると承知しております。

 今般の法律案におきましては、これまでの累次にわたる規制緩和の総仕上げといたしまして、石油業法を廃止することにしております。これを契機として、一層構造改革に向けた企業の創意工夫や迅速な意思決定が促され、国際的な競争の中で石油の安定供給を担うことができる強靭な石油産業の形成が図られることを期待しております。

馳委員 続きまして、石油の安定供給、ひいてはエネルギーセキュリティーの観点から、国家備蓄について質問をいたします。

 私は、昨年三月、参議院の経済産業委員会におきまして国家備蓄の先行放出について質問をし、この国家備蓄分の先行放出の事態に備え、国家備蓄の積み増しを提案いたしました。そのときの茂木敏充政務次官の答弁が、IEA加盟主要国の平均水準より五日から七日分不足しており、その分の積み増しを検討しているという答弁でありました。

 あれから一年が経過をして、この点についてどういう結果になったのですか、教えてください。

河野政府参考人 御説明申し上げます。

 御指摘のように、石油の供給途絶時などの緊急時におきまして、その初期的な段階におきまして市場の安定化を目的といたしまして、IEAの加盟国が協定上の備蓄義務であります九十日分の備蓄量を超えた分を協調して放出する場合があるということでございます。御指摘のように、この協定上の備蓄義務を超えた分の備蓄量をIEAの加盟主要国と比較いたしますと、我が国の場合、この備蓄水準は、その主要国の平均を確かに五日分程度、すなわち五百万キロリットル程度下回っているという状況にあるのでございます。

 この点につきまして、平成十一年八月の石油審議会石油部会の報告におきまして、IEA加盟主要国平均を下回らないようにすることを当面の目標とすべきであるという提言をいただきまして、検討してきたところでございます。

 この検討の結果を受けまして、私どもは、平成十三年度から国家備蓄の新規積み増しに着手をするということにいたしまして、平成十三年度につきましては、約百万キロリットルの国家石油備蓄積み増しを行うべく所要の予算措置を講じたところでございます。

馳委員 所要の予算措置を講じたところでありますとおっしゃいましたが、今般の財政状況にかんがみながらも、具体的には、五百万キロリットル積み増しをする、これを明確にするんだということの確認をさせていただきます。それでいいんですね。

河野政府参考人 石油審議会での御提言は、日本はIEAの主要国の平均に比べて大体五日分、五百万キロリットル程度下回っている、これをどういうふうに埋めていくかということでございますが、これは、毎年度毎年度予算を具体化していきませんと、最終的にそこにたどり着かないわけでございます。したがって、まず十三年度につきましては、百万キロリットルを積み増すということで対応したということでございます。

馳委員 では、次の質問に移ります。

 この国家備蓄の維持管理費が年間三千億円前後かかっているということであります。そして、この維持管理が、石油備蓄の効率的運用の名目から三セク方式を取り入れた八社から成る石油備蓄株式会社に任されております。

 そこで、質問いたします。

 この備蓄会社の本社が備蓄基地の現地ではない東京の一等地にある妥当性はあるのでしょうか。また、天下りの批判もあるところで、どのようにこの点の改善がなされているのでしょうか。維持管理費に年間三千億円前後かかっているという、この費用対効果の観点からの御答弁をお願いいたします。

河野政府参考人 御指摘のとおり、国家備蓄事業を実施するに当たりまして、多額の費用を使わせていただいております。私どもとしても、できる限り効率的に国家備蓄事業を進めていくべく、コスト削減に取り組んでいるところでございます。

 これまでも例えば、民間の余剰タンクをできるだけ有効に活用するとか、あるいは国家備蓄会社を効率化するとか、また規制緩和の実現によりまして国家備蓄基地の施設の検査費用をできるだけ軽減させていただくとか、あるいは調達金利の低減努力でコスト削減を図る、こんなことをしてまいりました。

 その結果、近年の金利が比較的低いということもございますけれども、さらに加えまして、国家備蓄基地建設の終了に伴います減価償却あるいは借入金の償還の進展、こういったこともありまして、平成八年度の予算で三千四百十四億円、これがピークでございまして、平成十三年度予算では二千七百三十億円ということで国家備蓄予算の効率化を達成してきているというふうに考えております。

 なお、国家備蓄会社が東京に本社を置いている点につきましては、平成十年度の国家備蓄の目標五千万キロリットル達成までは、国家備蓄会社の主な業務というものが、会社の組織を整備するですとか、あるいは基地を建設することですとか、また資金を調達するということで、石油公団とか、あるいは国家備蓄基地の中核となります民間企業、それから建設・設計企業、こういったところとの調整業務が主体でございましたので、こうしたことを円滑に実施するために東京にいたということでございます。

 ただ、今後は、五千万キロリットルを達成しておりますので、地元官庁ですとか、あるいは地元の経済界、そして地元の住民の皆さんとの調整とか連携が必要だということで、基地の安全かつ効率的な運営、さらには緊急時の円滑な払い出し業務、これが中心業務になりますので、複数の基地を有します日本地下石油備蓄は例外といたしまして、七社につきましては平成十四年度末までに本社の地方移転を実施する予定とさせていただいております。

 また、国家備蓄会社における省庁出身者のお尋ねがございましたけれども、国家備蓄会社におきましては、各種法令を遵守しながら、施設あるいは原油を維持管理する業務、あるいは地域社会と関係機関との連絡調整、こういった業務内容を踏まえまして、それぞれの個人の経験、能力に基づいて適材適所で人材を配置させていただいているというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、経済産業省といたしまして、今後ともこの国家備蓄事業のより一層の効率化に向けて最大限努力をさせていただく覚悟でございます。

馳委員 この点に関しまして、今の答弁は限界があるとは思いますけれども、今後とも継続して、本社の移転等に関しまして、あるいは天下り等の人事問題については厳しく指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、石油公団の業務追加について質問をいたします。

 今回の改正で、公団の業務として既発見油田の買収が追加されました。この点も、昨年参議院で私が質問の際に提案をさせていただいた点でもあり、非常に評価をしているところでもあります。

 問題は、売却対象となる油田の有望性に対する評価をどのように行い、だれがそのリスクを負うのか。石油公団の出資に裏書きされた無責任な油田買収が行われないようにするための明確なルールが必要ではないかと思いますが、この点についての政府の考え方をお聞かせください。

中山副大臣 現在、石油公団におきましては、中立的な外部有識者から成る経営諮問会議において、石油公団の業務改善のあり方について意見を伺っており、さらに探鉱投融資プロジェクトの審査について定量的評価を導入し、効率的かつ効果的な自主開発を進めております。

 以上に加えまして、今後は、探鉱投融資プロジェクトの新規採択に当たりましては、石油公団において、経営諮問会議に毎年の採択方針を諮るとともに、事前に経済産業大臣の承認を得ることといたしております。また、経済産業省は、採択方針を総合エネルギー調査会に付議するとともに、採択案件を報告することとしております。

 資産買収案件の採択の審査に当たりましても、このルールにのっとり、厳正なプロジェクトの審査を行ってまいる所存であります。

馳委員 関連してですが、買収油田の有望性の情報も含めて、石油等の開発において情報収集能力の向上が石油審議会等でも指摘されているところであります。

 そこで、政府では今後どのようにして海外における油田等の情報収集、そして分析能力向上体制を強化していく所存でしょうか。政府のお考えを聞きたいと思います。

 石油戦略は日本の外交戦略と表裏一体であります。平時からの情報収集体制の整備、これは石油の輸入、生産、販売、在庫等の実績を月ごとに数字でしっかりと把握しておくことがまさしく戦略的な対応になると思いますが、政府としての考えをお聞かせください。

中山副大臣 御指摘のように、平成十二年八月の石油審議会開発部会中間報告におきまして、他の政府機関との連携、交流、外部専門家の活用等により、石油等の開発に係る情報収集、分析機能を強化すべきとの提言を受けたところでございます。

 これを踏まえまして、政府としては、現地の大使館や石油公団事務所等の活用、産油国協力を通じた平時からの産油国との関係強化、国内企業やメジャーとの接触等を通じて情報収集能力の向上を図り、石油の安定供給の確保に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

馳委員 テーマをエネルギーの安全保障にして質問をしたいと思います。

 昨今の原油の値上がりを見ておりますと、原油はまだまだ戦略物資であり、今後のアジアの需要増を考えると、我が国の積極的な政策転換が求められます。

 そこで、一つ提案いたしたいのですが、ODAの使い方であります。すなわち、アジアの石油備蓄は進んでおらず、アジア全体の石油供給の安定のために、例えばODA予算を活用して石油備蓄の勧奨に努めていく必要があるのではないかと思います。

 この点について、ODA以外の独自施策につき経済産業省から、ODA予算につきまして外務省からお聞きをしたいと思います。

河野政府参考人 それでは、経済産業省の方から、ODA以外の点についてお答えをさせていただきます。

 御指摘のように、我が国のエネルギーセキュリティーの確保を図っていく上では、アジア諸国における石油備蓄に対する取り組みをできるだけ勧奨いたしまして、アジア地域全体を視野に入れましたエネルギーセキュリティーの向上を図っていくということが重要だと思います。

 そのため、従来から、中国あるいは韓国と、石油備蓄に関します情報交流を進めてきております。昨年十月のASEAN経済閣僚との会議におきましては、これはマルチでございますけれども、ASEAN諸国の備蓄体制強化に向けた取り組みを支援するため、専門家の派遣などを通じた技術協力を行う用意がある旨表明したところでございます。

 また、現在、総合資源エネルギー調査会におきます総合的なエネルギー政策の検討の中で、アジア地域のエネルギーセキュリティーの確保のあり方についても御審議をいただいているところでございます。

 こうした御議論も踏まえながら、石油備蓄に対するアジア諸国の考え方やニーズをできるだけ聞き取りまして、各国における石油備蓄制度創設に向けたより具体的な協力あるいはその他、アジア地域のエネルギーセキュリティー向上方策につきまして、具体的な要請があれば、資金協力の活用も含めた幅広い検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

西田政府参考人 お答えいたします。

 九九年八月に策定いたしましたODA中期政策におきまして、地球規模問題への取り組みを重点課題の一つとして掲げておりまして、その中で、エネルギーにおけるODAを通じた取り組みの重要性についても言及をしているところでございます。

 すなわち、途上国におきましては、経済発展を実現するためにもエネルギーを確保することが重要であります。また、エネルギー問題は、地球環境問題への対応及び持続可能な開発の達成とも密接に関連する地球規模の課題であるからであります。また、委員御指摘のとおり、エネルギー資源等の対外依存度が極めて高い我が国にとりまして、本分野での協力は資源の安定供給確保の観点からも重要であると認識をいたしております。

 このような基本的な認識に基づきまして、エネルギー分野におきましては、これまで、途上国におけるエネルギー関連のインフラ整備のうち、民間あるいはODA以外の政府出資金で、対応が難しい案件への支援、あるいは省エネや再生可能エネルギーの利用促進、より環境負荷の少ない石炭技術の導入等に関する協力も実施してきております。

 ちなみに、九九年度におきまして、無償資金協力で約四十六億円、円借で約千百二十七億円の協力を実施いたしました。また、エネルギー管理ないし省エネ推進にかかわる技術協力も実施しておりまして、九九年度には三百十八名の研修員を受け入れており、また七十二名の専門家も派遣をいたしております。

 他方、石油備蓄そのものに関する協力につきましては、これまで途上国側からの要請がなかったということもあり、実績はございませんが、委員御指摘のとおり、エネルギー問題、とりわけ備蓄の重要性にかんがみまして、先方政府の意向、あるいは開発上のプライオリティーをも踏まえつつ、ODAを通じていかなることが積極的かつ可能であるか、真剣に検討してまいりたいというふうに考えております。

馳委員 最後の質問をさせていただきます。

 脱石油、脱化石燃料対策について質問をいたします。

 脱石油化が叫ばれて、その改善が進んでおりますが、欧米に比べおくれていることは論をまちません。そこで、私は天然ガスへの転換を参議院時代から唱えてまいりました。北東アジア天然ガスパイプライン建設等を訴えております。しかし、問題は、天然ガスの需要を確保、拡大しなければ、これも夢のまた夢でしかありません。

 そこで問題にしたいのが、天然ガスの需要確保策として、燃料電池で動く自動車の一次エネルギーとして天然ガスを使用することを提案したいと思います。

 二〇〇一年一月二十二日に出されました燃料電池実用化戦略研究会報告によれば、我が国は、インフラ投資がかからない点からガソリンを使った燃料電池車の導入を進めておりますが、天然ガスを使って製造される硫黄等の不純物を含まないGTLによる燃料電池車もあわせて同等に導入すべきではないかということを提案したいと思います。

 ガソリンに比べ脱硫技術の投資、すなわちクリーンガソリン化は必要ありませんし、ドイツが導入決定したメタノールに比べ、天然ガスはインフラ整備が少なくて済みます。そして、何より石油代替効果が大きいからであります。ガソリンの使用を否定しませんが、天然ガスも同等に扱うべきと考えますが、いかがでしょうか。

河野政府参考人 ただいま先生御指摘になりました、また御引用になりました本年一月に取りまとめられました燃料電池実用化戦略研究会報告、ここにおきましては、燃料電池自動車の燃料選択の現時点における見通しということで、近未来におきましては、ガソリンの車上改質技術が確立された場合には既存の燃料供給インフラが活用できるということで、硫黄等を含まないクリーンガソリンが主要な燃料として選択される可能性が高いという見通しを示しております。

 また同時に、同じく天然ガスから合成される液体燃料でありますGTLにつきましても、クリーンガソリンと同様に既存インフラを活用できることに加えまして、御指摘の石油代替というエネルギー政策上の意義も極めて大きいということで、燃料として選択される可能性があるという見通しをあわせて示しております。

 ただ、GTLにつきましては、ガソリンのクリーン化に比べますと、低コスト化ですとかあるいは量産化に向けた技術的課題がまだ多いという実態にあるように思います。燃料製造設備の整備が必要である、こういったこともありますので、今後、私どもといたしましては、当省で策定いたします燃料電池技術開発戦略にきちんと位置づけをいたしまして、その上で、まずは燃料製造技術の確立、製造から利用までの一連の過程におけるエネルギー利用効率の見きわめ、低コスト化、量産化技術の開発、こういったことを行ってその実用化に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

馳委員 終わります。

山本委員長 次回は、来る六日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十三分散会




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