衆議院

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第9号 平成13年4月10日(火曜日)

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平成十三年四月十日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 青山  丘君 理事 岸田 文雄君

   理事 新藤 義孝君 理事 馳   浩君

   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君

   理事 久保 哲司君 理事 達増 拓也君

      伊藤 達也君    石原 伸晃君

      小此木八郎君    梶山 弘志君

      高木  毅君    中馬 弘毅君

      中野  清君    林  義郎君

      松野 博一君    松宮  勲君

      茂木 敏充君    保岡 興治君

      山口 泰明君    北橋 健治君

      後藤  斎君    鈴木 康友君

      津川 祥吾君    中津川博郷君

      松本  龍君    水島 広子君

      山内  功君    山田 敏雅君

      赤羽 一嘉君    石井 啓一君

      土田 龍司君    大森  猛君

      塩川 鉄也君    大島 令子君

      西川太一郎君    宇田川芳雄君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    西川太一郎君

   参考人

   (慶應義塾大学名誉教授) 深海 博明君

   参考人

   (東京大学社会科学研究所

   教授)          橘川 武郎君

   参考人

   (読売新聞社新聞監査委員

   会幹事兼解説部)     新井 光雄君

   参考人

   (石油連盟会長)     岡部敬一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  後藤 茂之君     津川 祥吾君

  肥田美代子君     水島 広子君

同日

 辞任         補欠選任

  津川 祥吾君     後藤 茂之君

  水島 広子君     肥田美代子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 石油の安定的な供給の確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五号)




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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、石油の安定的な供給の確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 本日は、参考人として慶應義塾大学名誉教授深海博明君、東京大学社会科学研究所教授橘川武郎君、読売新聞社新聞監査委員会幹事兼解説部新井光雄君、石油連盟会長岡部敬一郎君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず深海参考人にお願いいたします。

深海参考人 おはようございます。深海でございます。

 皆様のお手元に発言の骨子というのが配られていると思いますので、この線に沿って十五分以内で私の基本的な考え方を申し上げたいと思います。

 前置きに書いてございますように、私、国際経済学とそれから資源、エネルギー、環境経済学等々をやっておりますので、そういった立場と、それから経済産業省資源エネルギー庁の石油審議会、現在は石油分科会でございますけれども、そういう小委員会の委員長をしておりまして、報告書が出たものについては具体的にお話しすることができますけれども、現在論議しておりますことについては、したがいまして、きょう私がここで申し上げるのは私個人の発言、意見であるというふうに受け取っていただきたいと思います。

 きょう私は皆様方に、今回の法案あるいは法改正案の大きな背景といいますか、なぜそうなったのだろうかというのを私なりに考え、そして法案を私なりに評価してみたい、こういうふうに思っているわけでございます。

 骨子を見ていただきますと、大きく分けまして、Iとして、エネルギー政策全般の中でこの法案を位置づけ考える、IIは、やはり石油備蓄でございますから、石油及び天然ガスと申しますか、そういった政策に立ち入った形で説明をしてみたいと思っているわけでございます。

 そこで、早速本論に入らせていただきたいと思うのですが、まず、エネルギー政策全般、最近の展開から見てどうなのかということでございます。結局、結論としては、個別的にそれぞれの案を見るというよりは、総合的に把握しアプローチしていくことが必要ではないだろうかということでございます。

 具体的には、1でございますけれども、いわばエネルギー政策の基本目標というのが非常に多様化してきているということが重要ではないかというふうに思っております。

 そこにも書いてございますように、これは総合資源エネルギー調査会の総合部会を中心に、今エネルギーの政策の大きな検討あるいは需給見通しをしているわけでございますが、そこに書かれている内容をここに引用しているわけでございます。

 目標といたしまして、ここでは三つのものが挙がっているわけでございます。環境保全や効率化の要請に対応しつつというわけでございますから、いわば環境保全それから効率化の問題、そしてエネルギーの安定供給を実現するというわけでございます。従来はエネルギーの安定供給ということがメーンであったわけですけれども、三つの目標の同時的な達成を図るというのが現在の基本目標となっているということでございます。この点が非常に重要であり、本法案を評価する場合の基礎になるのではないかというふうに私は思っております。

 皆様方もう周知のように、一九九二年の、いわゆるリオ会議と申しますか、国連の環境開発会議、UNCEDでございますけれども、それを受けて当時の通商産業省を中心に設定しました目標は、そこに書いてございますように、三つのEの同時的な達成ということでございます。経済成長、発展の経済のEと、環境保全の環境のEと、エネルギー需給安定あるいはエネルギーセキュリティーの確保のEという三つのEを同時的に達成しよう。それをもっと具体的に書いたものが、現在のエネルギー政策の基本的な再検討のベースに置かれております環境保全、効率化、エネルギーの安定供給という三つではないかというふうに思っているわけでございます。

 もっと根源的な話をしようと思いましたけれども、時間がございませんので、それを総括すると、持続可能な発展のためのエネルギーといったようなものが大ざっぱに申しますと基本目標だというふうに思えるわけでございます。

 ただし、2に書いてございますように、現在のエネルギー政策の中心といたしましては、エネルギーコストの低減ないしは高コスト構造の是正を図るというような意味で、規制緩和や自由化、そして市場メカニズムを活用する形で経済効率性を需給両面にわたって達成しようということではないかと思われるわけでございます。ですから、政策の基本としては、規制緩和、自由化というのが政策の中心だというふうに言われているわけでございます。

 この背景はどこにあるかということを考えてみますと、やはりバブル崩壊後、皆様御存じのように、日本の経済的なパフォーマンスというのは、先進国であるいは世界で今までは最良のパフォーマンスであったものが、先進国の中でも、成長率その他から見れば最悪のパフォーマンスになっている。したがって、日本経済の再生、再活性化を図るという目的で、2のいわば自由化、規制緩和に中心が置かれているのは当然のことだというふうに考えられるわけでございます。

 しかし、自由化、規制緩和が進んでまいりますと、先ほど1で述べました、例えば経済の効率化を達成するということは、必ずしも安定供給の確保あるいはエネルギーセキュリティーと結びつく、あるいは両方が達成されるというのではなくて、その目標間に、あちらを立てればこちらが立たずという関係が生ずる可能性が強くなってきているわけでございます。

 したがって、そういう面から考えてみますと、自由化、規制緩和を推進し、いわゆる効率化を図るというだけでいいのではなくて、そういうエネルギーセキュリティーに関する目標についてマイナス面が出ることを是正するというような意図の一環として、今回の法案改正というのが、これがすべてで、エネルギーセキュリティーの達成だけでいいというわけでは決してございませんけれども、そういったことがなされているのは、まさにこういった点ではないかというふうに思うわけでございます。

 したがいまして、総合的に我々が日本のエネルギー政策、国のエネルギー政策を判断した場合には、一方だけが強調されますと、他方がむしろうまくいかなくなるというような意味で、某新聞のコメントによれば、政策自体が精神分裂症的あるいはない物ねだりだというような批判がされているわけですが、こういうものをある意味では解消するその手だてとして今回の法改正も考えられているのではないかというふうに思うわけでございます。

 多くの論者ですと、自由化や規制緩和のマイナス的な側面が、例えばカリフォルニアの電力問題で今起こっているわけでありまして、そうなると、自由化自体あるいは規制緩和自体に対する根本的な疑問提起というような形になりがちでございます。

 最後に、誤解を避けるために5のところを見ていただきたいと思うのですが、我々に必要なことは、総合的に判断、評価していくことだ。この自由化、規制緩和ということで、結果として、これは今なくなってしまいましたけれども経済企画庁の昨年一月の試算によれば、価格低下によるメリットは利用者にとって一兆四千億円のメリットがあった、こう言われているわけですから、このメリットは非常に大きい。しかし、同時にマイナス面があるので、それをできるだけ相殺し、あるいは対応していく、こういう取り組みが現段階では必要ではないかというのが、私がこのエネルギー政策あるいは今回の法案の改正に対して持っている基本的なスタンスでございます。

 これでは余りに総論的でありますので、次に、後半部分のIIの「石油・天然ガス政策について」に移りたいと思うわけでございます。

 石油政策に関して、まず大きな状況変化があるということであるといたしますと、石油審議会の開発部会の基本政策小委員会でもそういう方向が明示されているわけでございますが、今までは石油中心であったものが、天然ガスも同じように重視して対応策を考えていこうということが一つの方向として出されているわけでございます。石油代替という意味で、化石燃料内の転換あるいは代替というような面を含めて、石油と天然ガスが相伴ってエネルギーの安定供給に資するのではないか。天然ガスの持つ特徴や優位性について皆様方に申し上げるまでもないとは思うのですが、地球環境保全というような意味での地球温暖化、その主要な原因でありますCO2あるいは炭素含有量から見ましても天然ガスはすぐれておりますし、あるいは、中東だけに依存するというよりは、身近なサハリンだとかあるいはアジアにもいろいろな供給源があり、供給が安定化し多様化している等々というような意味でこれを重視していこうということになっているわけでございます。

 石油公団の問題もここの中に入っているわけでございます。その意味で、一つの大きな日本の政策方向というのは自主開発政策。この言葉については、実は国際的に自主開発という言葉を使いますと、外国に行ってこれを文字どおり訳しますと、国連で確立されている天然資源に対する恒久主権の決議を日本は侵害しているなんということが言われがちですけれども、いわゆるここでは自主開発政策ということで考えてみたいわけでございます。

 自主開発政策につきましては、サウジアラビアの利権の延長問題がございまして、その結果として、自主開発政策についてのいわば疑問とかあるいは問題点が指摘されていることは確かではあるのですが、やはり大きな意味で考えるとすれば、個々のケースは置くとして、やはり日本が海外に出ていってそういう石油や天然ガスの開発を行うということの意義は非常に大きいのではないか。それが、エネルギーセキュリティーあるいは供給の安定確保に通じるという面も重要ではございますけれども、世界全体として、ちょっと理念的な話を申し上げて恐縮でございますけれども、ここにも書いてございますように、原油やそれから天然ガスの開発に日本が積極的に参加して供給増大が生ずるということは、世界的な意味での供給増大につながり、日本の貢献になり、それが広い意味で回りめぐって日本のセキュリティーが確保される、こういったことが重要ではないだろうか。

 ただし、基本政策小委員会の報告書の中では、皆様御存じだとは思うのですが、今までは自主開発について一日百二十万BD、バレル・パー・デーだとか、あるいは輸入の三割というような目標が掲げられていたのですが、これはいろいろな意味で誤解を招いたりマイナス効果を持つのではないかというので、単なる数量目標の設定ではなくて、その重要さを考えながら、しかしまた、石油公団に関しましてはいろいろな問題が指摘されているわけでございまして、そういうものを是正して、従来どおりの形ではなくて、また御質問いただければ詳しい説明はしたいと思うのですが、支援制度についても、重点期間、時間的な範囲を明確化して、変更、見直しを行うというような方向が打ち出されているわけでございます。

 時間が来ておりますので、最後に一、二分残された時間を使ってまとめを申し上げたいというふうに思うのです。

 基本的に、石油政策について、一つはやはり日本がおくれて開発に参加する等々で、いわゆる和製メジャーをつくるということはなかなか難しいわけでございますけれども、ここに書いてございますように、強靱な中核的な企業グループを育成する方向をこれから十年間を重点期間として考え直してみてはどうかということでございます。

 それから、石油公団につきましても、先ほどのIで述べましたエネルギー政策の基本的な方向に従いまして、安定供給のためにどんな案件でもみんなやるというのではなくて、資金の自己回転性や効率性、経済性を重視しながら、内部監査を強化するとか、あるいは財務会計処理の改善等々を行い、情報も開示して、ある意味では改組、改善を図りながら、しかし石油公団の役割を考えていこうということでございます。

 最後に結びとして申し上げたい点でございますが、今回の法律案で石油備蓄に関しまして議論が展開されているわけでございまして、ここで私が重要だと思いますのは6の点ですね。いわば石油業法を改正して規制緩和あるいはそういうことをやめる場合に、経済の安定性あるいはエネルギーセキュリティーのためには、的確な情報をつかみ、それを分析、処理していく体制が重要であるわけでございまして、輸入業者の登録制であるとかそういう制度はまさにこの6にかなう側面を持っているのではないか。

 それから、もう一つ。石油備蓄の利用についてでございますけれども、これは緊急事態におけるいわゆる戦略備蓄として使うということが中心でございますが、もう一つ、最近、石油市場が自由化して価格の変動、ボラティリティーが増大しておりますので、それの対応としてバッファーストックと申しますか、緩衝在庫としての利用も今後検討してはどうかというような感じを持っているわけでございます。

 以上述べましたように、エネルギー政策、石油、天然ガス政策に照らして、そういう大きな要請から見ますと、今回の法改正というのはおおむね必要かつ有効なものではないかというふうに判断、評価しております。

 時間になりましたので、終わらせていただきます。(拍手)

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

新藤委員長代理 どうもありがとうございました。

 次に、橘川参考人にお願いいたします。

橘川参考人 御紹介いただいた橘川です。参考人として、石油の安定的な供給の確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案に関する意見を述べさせていただきます。

 法律案そのものについての見解は最後に申し上げることにして、ここでは、このような法律案が登場するに至った背景について、少々詳しく掘り下げてみたいと思います。

 石油産業に限らず、現在、日本のエネルギー産業をめぐっては、規制緩和や自由化など、市場の活用が大きなテーマとなっています。市場を活用し、経済性を確保して、消費者の便益を高めることは、エネルギー産業においても極めて重要な課題であり、大きな方向性としてはぜひともそれを実現させる必要があります。しかし、エネルギー政策を論じるときには、単純に市場の活用による経済性の重視だけでは済ますことのできない二つの問題があります。

 第一は、エネルギー政策を考えるときには、経済性だけでなく、環境保全やエネルギーセキュリティーも視野に入れなければならないという点です。別の言い方をすると、エコノミー、エンバイロンメント、エネルギーセキュリティーの三つのEを三位一体的に追求する必要があるということになります。

 例えば発電事業では、現時点において、経済性を重視するのであれば海外炭火力の開発を優先的に進めるべきだということになるでしょうが、そればかりを推進すると、二酸化炭素の排出量が増大し、地球温暖化が進行して、環境保全上深刻な問題を引き起こしかねません。

 また、自由化が進行する状況のもとで、日本の電力会社やガス会社が設備投資を抑制することは、経済性の観点から見れば合理的な行動でありますが、投資抑制が長期化すると、サハリンの天然ガスの活用という、日本のエネルギーセキュリティーの向上にとって極めて重要な意味を持つ大きなチャンスを、みすみす逃すことにつながりかねません。

 ただし、この三つのEの問題は、既に深海先生がお話しされましたので、ここではこれ以上立ち入りません。私自身がこの意見陳述で主として取り上げるのは、次の第二の問題です。

 第二の問題は、市場の効能について語るときには、それを引き出すプレーヤーのあり方についても語る必要があるということです。プレーヤーの視点を欠いた市場万能論は、多くの場合、政府万能論と同じくらいの混乱をもたらします。ナショナルセキュリティーと直結するエネルギー産業においてこのような混乱が生じた場合には、それが及ぼす社会的ダメージは大きなものになります。

 一例を挙げれば、同じアラビアン・ライト原油のアジア向けフォーミュラ価格が、欧米向けフォーミュラ価格に比べて一バレル当たり一・五ドルほど割高である、いわゆるアジア・プレミアムの問題があります。

 アジア・プレミアムが発生する一因は、欧米にはメジャーズを初めとして国際石油市場で活躍するプレーヤーが多数存在するのに対して、日本を含むアジアには有力なプレーヤーが余り存在しないという事情に求めることができます。

 確かに、アジア諸国の石油輸入面での中東依存度が近年高まっているのは事実ですが、一方で、中東産油国の石油輸出面でのアジア依存度も、一九八〇年の三四%から九九年の五七%へ急速に高まっていることを見落としてはなりません。相互依存的な状況にありながら、アジア・プレミアムという売り手市場の現実が生じるのは、アジア諸国の側に強力なバイイングパワーを発揮し、市場の効能を引き出すような有力なプレーヤーが十分に育っていないからにほかなりません。

 この有力プレーヤーの不在という現実は、日本の場合、特に深刻です。アメリカの石油専門誌「PIW」は、毎年、世界の石油企業上位五十社のランキングを発表していますが、昨年公表した一九九九年のランキングを見ても、日本の石油会社は上位五十社の中に一社も含まれていません。

 このランキングに登場する石油企業は、一、アメリカ、イギリス、オランダに本社を置くメジャーズ、二、サウジアラビアやベネズエラなどの産油国におけるナショナル・フラッグ・オイル・カンパニー、三、フランス、イタリア、スペインなどの非産油国におけるナショナル・フラッグ・オイル・カンパニーの三つのタイプに分かれます。

 つまり、メジャーズが本拠地を置かない多くの国々は、ナショナル・フラッグ・オイル・カンパニーという国際市場で活躍する強靱なプレーヤーを持つことによって、基本的なエネルギーセキュリティーを確保しているわけです。しかし、このような強靱なプレーヤーは、我が国には存在しません。国際的に見て、日本の石油産業が脆弱であることは否定しようがありません。

 日本の石油産業の脆弱性は、二つの点に端的にあらわれています。

 第一は、探鉱、採掘から成る上流部門と精製、販売から成る下流部門が分断されている点です。日本の代表的な石油会社は、事実上下流部門に特化しており、石油業界の国際的常識であるもうかる上流部門にはほとんど進出していません。これとは対照的に、外国の有力な石油企業の大半は、上流、下流の双方を事業対象とする垂直統合企業であり、一九九九年におけるメジャーズ五社の上流部門の収益は、下流部門の収益五十八億ドルの三・五倍に相当する二百二億ドルに達しました。

 日本の石油産業が上流と下流に分断される出発点となったのは敗戦直後の外資提携ですが、それを固定化したのはほかならぬ石油業法でした。一九六二年に制定された石油業法は、下流の精製部門を重点的にコントロールする政策を採用することによって、上流部門と下流部門との分断を定着させたのです。

 我が国の石油産業が持つ第二の弱点は、石油会社の過多性、多過ぎることと、過小性、小さ過ぎることにあります。日本における石油産業の下流部門全体の規模は、メジャー一社分の規模にほぼ匹敵し、上流部門全体の規模は、ヨーロッパ非産油国のナショナル・フラッグ・オイル・カンパニー一社分の規模にほぼ該当します。もし、我が国の石油産業の上流部門と下流部門がそれぞれ一社に統合されていたとすれば、それらの企業規模は世界有数の水準に達していたことでしょう。しかし、上下流両部門とも、そこに事業展開する企業の数は多く、それらの規模は小さいのです。

 下流について見れば、一九九八年度末の時点で、日本の石油精製元売会社の数は二十九社に上りました。一方、上流についても、石油公団投融資プロジェクトの親会社、最大民間株主である企業とその他の石油公団出資会社との合計企業数は、一九九七年度末の時点で二十八社に達しました。要するに、上下流とも、欧米の一社分に相当する事業規模を我が国では約三十社で分け合っているのです。

 このような石油政策の過多性と過小性が定着する上でも、政府の介入のあり方が大きな影響を与えたと考えられます。下流部門では、石油業法を運用するに当たって、日本政府は、精製業者のシェアを余り変動させないように留意しました。この事実上の現状維持方針によって競争による淘汰は進まず、結果的には護送船団的な状況が現出して、過多過小な企業群がそのまま残存することになりました。この護送船団的な状況は、上流部門でも生じました。石油公団による石油開発企業への投融資は、必ずしも戦略的重点を明確にして選択的に行われたわけではなく、探鉱による量の確保を最優先して、機会均等主義の原則に基づいて遂行されました。このため、小規模な石油開発企業が乱立する結果を招いたのです。

 ここで忘れてならないことは、石油業法にしても石油公団にしても、もともとは日本の石油産業の脆弱性を克服するために導入されたものであるという点です。しかし、結果的には、石油業法にしろ石油公団にしろ、むしろ石油産業の弱さを固定化し、拡張する原因となってしまいました。そこでは、産業の弱さが政府の介入を生み、その政府の介入が一層の産業の弱さをもたらして、それがまた政府の追加的な介入を呼び起こすという悪循環、別の言い方をすれば、下向きのらせん階段、下方スパイラルが生じてしまったのです。現在の日本の石油政策に求められている最も緊要な課題は、この下方スパイラルを断ち切ることです。

 下方スパイラルを断ち切るために、我々は今何をなすべきなのでしょうか。残念ながら、政府の関与を直ちに全面的に停止するという単純な処方せんでは、問題は解決されません。なぜなら、もともと脆弱な日本の石油産業には、体質強化を進め国際競争力を獲得するために必要な経営革新能力が十分には備わっていないからです。現時点において、我が国の石油産業は、ある程度規制緩和が進みながら体質強化が進まないという、一種の閉塞状況から抜け出せないでいます。このような閉塞状況を前向きに打開する活路は、進行中の規制緩和をやめることでもないし、ともかくも規制緩和をすればそれでよしという姿勢をとって、問題を自然解決にゆだねることでもありません。

 前向きな活路を見出す上で大いに参考になるのは、フランス、イタリア、スペインなど、ヨーロッパ非産油国での経験です。これらの国々は、資金面での援助を含む政府の関与をある程度活用しながら、結果的には石油産業の経済的自立を達成し、国際市場で活躍するナショナル・フラッグ・オイル・カンパニーを育て上げました。

 時間がないので詳しい経過は省略いたしますが、ヨーロッパ非産油国の経験は、次のような四つの教訓、つまり、一、政府による支援の存続期間を限定した上で、その期限が到来するまでの間、石油産業の体質を強化するために政府支援を活用することが有効であり、石油産業の経済的自立が達成された後には政府の介入自体を撤廃すべきである、二、上流部門においては、コアエリアを確保することを目指し、既に発見されている油田の買収も含めて、事業を戦略的に展開しなければならない、三、上流部門と下流部門の双方に事業展開する垂直統合企業の構築を目指すべきである、四、同時に、上流部門においても下流部門においても、石油企業の水平統合を進める必要があるという諸点の重要性を伝えています。

 これらの教訓は、そのまま日本の石油産業の進むべき道を示していると思います。さきに申し上げた政府の介入と産業の脆弱性との下方スパイラルを断ち切るためには、政府の関与の期間を限定することが有効です。

 例えば、石油公団を通じて、政府資金を十年間の期限つきで強力なエネルギー企業の出現につながるプロジェクトに重点的に投入するわけです。その対象には、当然、既発見油田の買収も含まれます。期限つきで戦略的な政府支援の結果、垂直統合や水平統合が進み、強靱なプレーヤーが日本にも誕生すれば、政府の介入はもはや必要なくなります。政府介入を期限つきで活用しながら、政府介入そのものが不要となるように産業の体質を強化する、このような柔軟で現実的な発想こそ現在の日本の石油政策に強く求められているものなのです。

 強靱な中核的企業グループの育成を目指す、最近打ち出された新しい石油開発政策は、基本的にはこのような考えを踏まえたものだと評価できます。また、今回の法律案もそのような流れに沿うものだと言えます。国際市場で活躍する強靱なプレーヤーが誕生するためには、石油企業の経営行動を制約してきた石油業法を廃止することが重要な前提条件となります。また、石油公団の業務として、既発見油田の資産買収に必要な資金を供給するための出資を追加することは、上流部門での戦略的な事業展開にとって必要不可欠な事柄です。さらに、石油備蓄義務の履行を強化することは、緊急時対応の基盤拡充を意味するだけでなく、石油消費国としてのバイイングパワーの強化や競争条件の公平化にもつながります。

 これらの観点から、法律案に対する賛意を表明して、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

新藤委員長代理 どうもありがとうございました。

 次に、新井参考人にお願いいたします。

新井参考人 読売新聞の新井と申します。きょうはこういう機会を与えていただきまして、ありがとうございました。本来ですと向こう側の一番後ろに座って聞いている立場なんですが、きょうは、三十年もこの問題に携わってきたということでここにお呼びいただいたのかということでお話をさせていただきます。

 お二人の先生に非常に定量的な、定性的な、しっかりした枠組みの話を展開していただきましたので、私は、仕事柄からいいましても、やや感性的な面からといいますか、感覚的な面からのお話になってしまうかなという気がしますが、その点を御了承ください。

 そこで、ただいま二人の先生もお話をしていましたけれども、現在のエネルギー問題の中で最も核になる部分は何かと私自身が考える点は、エネルギーというものをどこまで普通の商品と考えるか、あるいはどこまで政治的な複雑な商品であるかと考えるかということに尽きるのだと思います。

 この考え方でいきますと、目下の情勢ですと、どちらかといいますと、構造改革とか規制緩和、自由化という大きな流れの中で、石油も限りなく普通の商品に近いんだなというのが今の一般的な考え方の流れかと思います。ですから、当然そういう流れの中では石油も普通の商品であって、法律によって業界を縛り、また商品の性格を縛るというのはもう時代おくれということになったのかもしれません。

 ただ、その中でも若干、残滓のような側面として安定供給は気になるところでありますから、石油の備蓄についてだけは、最終ラインといいますか、最低ラインといいますか、そういう面できちんとした対応をしておこうというのが今回の法律改正の趣旨だと思います。

 石油業法につきましては、御承知のとおり、昭和三十七年の成立以来、二回あるいは三回の石油危機をくぐり抜けてきまして、大きな枠組みで考えますと、それはそれなりにきちんと機能してきた面もなかったわけではないというふうに思います。ですが、逆に言いますと、この法律がある結果、経済産業省と石油業界の間にこの法律を仲立ちにするような形で何となくもたれ合いの関係ができてしまいまして、そのもたれ合いの中で大きな構造改革が生まれるということの機会を失って今に至ってしまったのかなという感じがします。

 したがいまして、石油産業というのは日本にとって極めて重要な産業であるわけですけれども、世界に伍するような産業に発展し得なかったというのは一つにはここに理由があったかとも思いますし、ある面ではこれは日本のエネルギー政策の大きな失敗と言っていいようなことだったんだと思います。

 もちろん事情はありまして、石油会社の中にも、外資系あり、民族系あり、あるいは役所の肝いりのような会社があったという時代もありまして、原油そのものを外国から輸入しなければならないというような特殊な事情がありまして、そう簡単ではなかったわけですけれども、やはり成功と言えるような状態には結びつかなかったということだと思います。その結果、皮肉なことには、特石法の廃止というような形での石油業界の競争原理への促進がありまして、今、日本の石油産業、四グループほどにまとめられたというようなことになりましたけれども、これもあるいはこうした一連の自由化の動きの結果であって、それはそれで評価するべきものだと思います。

 したがいまして、石油業法の廃止というのは、私としても、賛成せざるを得ない状況かなというふうに判断しております。

 ただ、私、この問題で、基本的にはそれでいいんですけれども、最近気になりますことは、先ほど申し上げましたように、最近のエネルギー問題の議論の中で、規制緩和、自由化といった側面に話がちょっと傾斜し過ぎていやしないかというのが最も気になる点です。確かに、価格が安くなれば、それは消費者に還元されるということで歓迎されるべき事態でありましょうけれども、その反面、それによって日本のエネルギーの脆弱性が高まっているという側面が見落とされてしまっているんではないかというのが大変気になる点です。

 実例を挙げれば、昨年のヨーロッパやアジアで起きた石油ショートによる価格の暴騰というのは、日本のマスコミも多少は報道しておりましたけれども、その実態は見てみないとわからないところがあるということです。私自身は実はその現場に足を踏み入れていませんので何も言うことができないのですが、友人の朝日の記者によりますと、スタンドやなんかに車がずらっと並びまして、日本でそれが発生していればもう間違いなく、彼も石油危機のときに一緒にやった仲間なんですが、間違いなく石油危機そのものであって、多分あの混乱が日本で起こればあの三倍か四倍ぐらいの形で大騒ぎになったろうというようなことを言っていました。こうしたものは本当は目にしなければいけないのですが、現地に行っていませんのでわかりませんけれども、何となく多分、想像はできるかなという気がいたします。

 日本の場合は辛うじて、円高があったりとか石油の輸入の比重が低まったというようなことで、ほとんど無風状態にあったわけなんですが、そういうことが起こり得るような状態が今回の業法の廃止の中に含意されているというぐらいはぜひ意識していただきたいなというふうに思います。

 若干わかりやすい話で恐縮なんですが、私、第一次石油危機当時、通産省の担当をしておりまして、ここに岡部さんおられますので恐縮なんですが、当時、通産省の幹部の方が石油業界は諸悪の根源という言葉を使いました。これには前提がありまして、石油業界の一部の中で、あの石油危機の混乱をつかまえて大もうけしてしまえというようなことなんでしょうか、千載一遇という言葉がありまして、千載一遇のチャンス、要するにこの機会をとらえてもうけてしまえというような話だったと思うのです。それで、石油業界は諸悪の根源というような言葉がありまして、これが私の記憶にとどまっているんです。

 しかし、これを最近の言葉に置き直しますと、多分全く逆の言葉になるんだろう。もうけるチャンスがあるときには千載一遇のチャンスを生かしてもうけなければ、経営者としてはそれこそ諸悪の根源の経営者ではないか、まるで言葉が逆転してしまいまして、千載一遇のチャンスを生かしてお金もうけをした方がいいんではないかというような時代に変わってきてしまっているんではないかという感じがいたしまして、正直、いろいろと時代の変化を考えさせられます。

 それから、公団に絡む話ですが、公団に絡む話はなかなか難しいところが正直あると思います。石油審議会、こちらの方もメンバーなんですが、議論の過程で、精製の問題などの段階では、先ほどの石油業法の廃止を含めまして、規制緩和、自由化ということでばく進しましたが、これに続いて、開発部会になりまして、今度開発の問題になりますと、公団の問題という大きな問題がありまして、これはどちらかというと、議論の過程からいきますと、自由化あるいは規制緩和という方向から大きくそれる問題でありまして、結論的に言ってしまいますと、石油公団をなくすのかどうかという根底の問題に至るというふうに思います。

 しかし、なくすというのは理論的には簡単な結論になるかと思いますけれども、実際には、日本の石油産業全体を考えますと、簡単に開発の分野を切り捨てるのは大変難しいことだと思います。日本の石油開発部門の投資資金というのは実にメジャー一社の開発投資資金にも満たないという状況であって、もしここであっさりと石油公団の問題などにけりをつけますと、もうほとんど日本の石油産業というものは一貫産業としての成り立ちはできなくなるような形ができ上がってしまうわけで、この問題にはかなり慎重に取り組むべきかなというふうに考えております。

 その結果としまして、多少ともこの開発分野にも、競争原理といいますか、効率性といいますか、そういうものを求めることとして、目標値を外すとか、公団に効率性を求めるというようなことが今回の結論だったと思いますけれども、現段階ではやはり私もこれが妥当な線かなという感じがいたします。

 ただ一点、ぜひこういう場でお聞き願いたいのは、深海先生も触れられておりましたけれども、アラビア石油の問題をどう考えるかということが私は開発の分野の問題では一番重要であり、かついろいろなことを我々に教えてくれるのではないかというふうに考えています。この問題は、まだクウェートの権益の分野が残っていますので、詳細に触れることがいいことかどうかわかりませんし、実際私自身が得ている情報でもわからないところが大変多いものですから、余り深く立ち入ることは避けたいとは思いますけれども、この問題を通じて考えますと、いろいろなことが浮かんでくる。

 アラビア石油のサウジアラビアの権益の問題は、簡単に言ってしまえばサウジアラビアの要求が法外であったということであったと思うんですが、しかし、本当に法外であったのかどうかというのはまた別の視点からも詳しく検討されるべきではないか。結論を出す段階では、大勢としては、アラビア石油も一民間企業であるので政府サイドとしてもできることは限られるというようなことであったと思いますが、現にある油田をある意味で放棄したわけでして、これからの開発を進めるに当たってはいろいろな問題を残したのではないか。私自身も当初は、これは経済合理性に従ってやむなしというふうに考えていましたけれども、やはりその後のいろいろな状況を聞きますと、この問題はちょっと今後の日本の開発問題にさまざまな影を投げかけるのではないかというような気がいたします。

 ある担当者の話によりますと、その人自身も自信がなかったんでしょう、十年後か二十年後になって初めてその是非が問われることになるのかなというようなことを言っていたそうですが、私自身も、果たしてあの事態が今後の日本の石油の問題に対してどういうふうに影響していくのか真剣に憂慮したいというふうに思っております。

 最後になりますので、結論的なことを申し上げたいと思います。

 三点あります。今の、エネルギーにかかわる議論は非常に複雑化といいますか難しくなっていまして、どの視点が本当のエネルギー問題の視点なのかということがわかりにくくなりました。私が担当を始めたころは、三つばかりありました。もう古いのでちょっと笑われそうですけれども、脱中東、脱石油、それに日の丸原油の確保、これは和製メジャーをつくるんだというようなことなんでしょうが、こういうような非常に明確な目標がありまして、何となく、この三つの尺度ではかっていますと、日本の石油問題、エネルギー問題はわかるのかなというのがありましたけれども、今はちょっと問題が複雑になり過ぎまして、議論では自由化、規制緩和という方向にシフトしがちなものですから、論理先行型になりまして、非常に危ういという感じがいたします。ですから、議員の皆様方には、できれば明確な、きちんとしたエネルギーについての目標といいますか、考え方の基盤になるようなものをぜひつくっていただきたいというふうに思います。

 二点目は、やはり日本のエネルギー自体の特殊性というものを十分に考慮してほしいということです。G7という先進七カ国がありますけれども、海外と直接的にエネルギーでつながっていないのは日本だけであります。日本は、一次エネルギーの八割を海外に依存しているというやはり特別な状況です。カリフォルニア州で電力危機がありましたけれども、アメリカはメキシコとつながっていますし、カナダとつながっていまして、電気の点でもつながっている。ほかの国も、ヨーロッパの国はもちろん言うまでもありません。その点の状況というものをよく踏まえた議論をしてほしいということです。

 それからもう一つ、これは現場の話をよく聞いてほしいといいますか、現場の状況をよく見てほしいということです。私自身も新聞記者ですし、どちらかというと現場から離れて言葉だけの議論になりがちなんですが、現場を見ますとそこにはいろいろな状況がありまして、そこからくみ上げてくる状況と一方である理論とがぶつかり合うというようなことをしませんと、非常に最近は議論、理論が先行しがちな状況が多過ぎるのではないかという感じがします。例えば、東海村で臨界事故が起こりましたけれども、あれは本社と現場の間にも疎通がなかったのではないか、あるいは電力業界がそこまで目を通すことができなかったのではないかというような問題が私はあったのではなかろうかと思っております。したがいまして、現場からの問題をぜひくみ上げるような議論を展開していただきたいと思います。

 以上、簡単ですが、お願いを含めまして私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

    〔新藤委員長代理退席、委員長着席〕

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、岡部参考人にお願いいたします。

岡部参考人 ただいま御紹介いただきました、石油連盟会長、コスモ石油の岡部でございます。

 本日は、法案審議に際しまして、参考人という立場で石油業界の立場から意見を述べさせていただくことに関して、非常に感謝を申し上げておるところでございます。

 まず、今回の法律改正に関してでございますけれども、全般論といたしまして、石油業界といたしましては、規制緩和、自由化の大きな流れの中で避けがたいものと受けとめておるところでございます。

 既に先行いたしまして行政指導が段階的に撤廃され、そして、後でちょっと述べます一部法律の廃止、さらには運用面での弾力化を通じまして、実質的には、現在、業法廃止の方向で動いておるところでございます。今回それに加えまして、当然のことながら、石油は経済の血液である、社会の燃料であるという視点に立っての石油製品の戦略的性格というものも踏まえまして、緊急時の対応としての法整備、公団法あるいは備蓄法の改正、充実、そういう問題として受けとめておるところでございます。

 実は、先ほど言いましたように、今回業法が廃止になるわけでございますが、我々としては、何らかの形で、内容は変わっても、業法という形があることがやはり石油業界の、エネルギーの大宗をなす我々としてのステータスのような感じがいたすわけでございまして、業法の廃止は寂しい気はいたします。

 基本的には、この業法というものは、昭和三十七年に、戦後の配給制から、貿易自由化、為替自由化という流れを踏まえまして、やはり石油が特性のある産業であるという視点にかんがみて、石油の国内市場の一定割合を国の支配下に置く、そして石油の低廉かつ安定供給をすることが国の責務である、そういう視点で立法措置をとることによって、国民経済の向上、国民経済の発展、国民生活の向上を目指す、そういうことでできた法律でございます。

 その中身の主体は、供給計画を策定する、石油精製業及び設備の許可制、標準価格の設定、生産、輸入計画の届け出及びその輸入に関しての届け出による許可ということでスタートしたわけでございます。

 基本的な問題として、消費地精製、現在では方式と呼んでおりますけれども、当時は一つの主義として、いわゆる消費地に非常に近いところまで原油を運んできて、そこでタンクに入れながら効率的に生産するということが、エネルギーの効率性、安定性からも石油の利便性からもベストである、そういう考え方に立ちまして消費地精製主義というものを基本としたために、結果として、製品輸入に関しては事実上認められなかったわけでございます。

 その後、リファイナリーが中東にできまして、欧米からの一つのプレッシャーがございまして、日本も応分の輸入を促進すべし、そういうことでございまして、特定石油製品輸入暫定措置法というものが、昭和六十年、一九八五年にむしろ輸入の促進という形でできたわけでございますけれども、当時から結果として業界だけが輸入するという形で十年間の歩みがあった。その後、完全な本格自由化の中で、促進としてスタートしたこの法律も、十年の流れの中ではむしろ全面的な輸入門戸開放ということからは障壁であるということで、くしくも皮肉な形でこれが葬り去られた、そういうことによって今業界は本格的な自由化になっておるわけでございます。

 したがいまして、先ほども申し上げましたように、業法上の供給計画を除いた運用面において実質的には既に弾力化しておるということ、今回、備蓄法を改正するということ、公団法も充実するということ、そういうことを踏まえまして、我々としては、市場原理に基づいた業界運営というものを粛々と、厳粛に、冷厳に受けとめて、業界の強靱な体力強化に努めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

 もちろん、石油ショックのときに、緊急二法ということで国民生活安定緊急措置法と石油需給適正化法という二つの緊急時対応としての法律もございますので、その運用と、今回の公団法、備蓄法の改正によって、実質的には安定供給も踏まえた石油の運営というものがなされていくということにおいて、我々としてはこの法律の改正については厳粛に受けとめておるところでございます。

 続いて、せっかくでございますので、ここで少し石油の現状ないしは業界が当面する重要課題二つについて簡単に申し上げたいと思います。

 一つは、石油というものは連産品であるということ。石油ショックのときに原油が四倍になりました。そのときに、原油コストをどの製品にかけるかについては、連産品でございますから、原油からパラレルにあらゆる製品が出てくるということではガソリンにかけようが何にかけようが構わないということで、そこで、行政の一つの方針として、ガソリンが当時はぜいたく品であるということで、これにかけることによって、ガソリン独歩高という、国際的に非常にひずんだ、日本特有の価格体系ができて今日まで及んできたということでございます。現状では、特石法廃止後、海外からいろいろな品物が入ってくることも含めて、国際的な価格ということで、ガソリンも含めてフラットな価格体系の中で、我々は、効率化、市場形成に努めておるところでございます。

 続きまして、これは中国でも、中国の新聞で私は見たこともありますけれども、基本的にやはりこれは、一たん事あれば石油は戦略商品に変わるということについて、各国各様ではございますけれども、十分な認識の中でこの問題に対応しておるということでございます。

 ただ、当時、石油ショックのときは中東を一括して火薬庫と考えておった状況からは、現状中東和平の問題からくる分はございますけれども、それぞれの国々が特性を持ったエネルギー政策というものを中東側としても考えておりますので、それに対応した資源外交というものが必要であるということ、戦略商品としての石油ショックの経験はございますけれども、現状中東を一つの火薬庫と考えるのではない対応が資源外交として必要である、そういうことも考えておるところでございます。

 それから、最近のOPECの再台頭とメジャーの戦略という問題について私見を交えて簡単に申し上げたいと思います。

 一つは、OPECの再台頭ということでございます。

 あのベネズエラの暴れん坊が加わり、サウジとイランという巨大国が手を結び、十ドル割れによって財政的に危機に瀕した悪夢と、先物市場というものが急激に動いていく怖さと、それから、ある程度団結をしてやれば市場に対するインパクトが与えられるという彼らの経験則、こういう三つの問題が加わりまして、彼らは恐らくこれから増減産を繰り返しながら需給対応をしていくのではないか、そういう意味において、現状、一呼吸置いておる、小康状態ではございますけれども、なかなか読めない状況にございます。

 OPECについてはそういうことでございますが、最近のメジャーの戦略ということとの関係がございます。

 レイモンドというエクソンの会長が言っておるわけでございます。我々は巨象のような巨大な企業規模だけれども、現在は、世界における原油の八〇%以上を国が占めておる、したがって、中国が、インドが、国ごと、石油を開発という形でとりに行く状況の中で、メジャーとしても、エクソン・モービルの合併は、二千五百カ所のSSを、下流における問題を犠牲にしてまで川上の戦略として合併しておるわけでございます。また、BPアモコにアルコが加わることによって、これから天然ガスの時代であるということで、ガスに対する戦略ということも含めて、アルコを取り込んでBPアモコアルコグループというものができた。そういうこともございまして、メジャーとしては大きいけれども、中東の最近のOPECの大きさというものを考えれば我々は象に対するネズミかもしれない、そんなことも言っておるわけでございます。

 そういったOPECの再台頭と、それに関連したメジャーの戦略というものを私はそういうふうに見ておるところでございます。

 日本としてのこれからのセキュリティーの問題でございますけれども、もちろん、緊急二法、備蓄法の改正に加えまして、公団法の改正による既存油田への対応もございます。ただ、残念ながら、現在、世界を見ましたときに、効率的な油田がさらに挙がってくるとは思えません。しかしながら、メジャーも含めて開発段階の会社がより効率的な油田に資金を投下していこうとする過程の中では、必ずやそこに我々なりに手に入れるものが出てくるかもしれない。あるいは、あくまでも金額が大きいので、お互いに協調し合って金を出して開発しようではないかということも出てくるかもしれない。そういうことも含めて、既存油田に対する今回の公団の対応というものは、私は歓迎すべき問題であると思っております。

 しかしながら、メジャーは今回、先ほど言ったような戦略も含めて、二兆円の利益を、エクソン・モービルについてはあり余るほどの利益を川上で上げておる。十ドル原油で疲弊したOPECも、一息ついて財政上豊かになって、軍隊も含めて給料を上げておる。そういったような状況の中で、ひとり我々は川下だけの問題で苦しんでおるわけでございます。今、自主開発原油はわずか一五%にしか達しない、それが日本の頭でございまして、我々は、頭もないような胴体以下の形で、国内における必死の企業努力を続けておるという状況でございまして、この開発の問題に手を入れるためにはどうしても公団によるバックアップ体制なかりせば、巨額の投資、それに関するリスクの問題も考えますと、どうしようもないということでございます。

 今、公団がいろいろ不良債権問題ということで取りざたされておりますけれども、当時ドル融資がなかった、円融資で三百円で融資をした、当時エクソンですら百ドルを見込んだ状況の中で、四十ドルから五十ドルという原油代をベースにすれば必ずや収益が成り立つという、日本全体がのろしを上げたような開発熱によりましてスタートしたという問題がございます。今日、その為替の三百円が約百二十円になって、借金が三倍になる、あるいは原油代がなかなか上がらない、加えて、税金という問題に金利がついていることからくる債権の問題もございます。今、そういう状況の中で、開発会社は全体的に苦しんでおる。これを不良債権と呼ぶのかどうかについてはわかりませんけれども、そういう経緯があっての現状の開発会社の苦しさであるということも付言をしておきたいと思います。

 それから、エネルギーのベストミックスということでございます。

 これからのセキュリティーの問題については、石油ショック当時は、火薬庫である中東からいかに逃げるか、あるいは、石油をいかに軽減するかということがセキュリティーのすべてだったわけでございます。現状におきましては、少なくとも、環境問題も加えて、石油を大宗としながらもエネルギー全体のバランスをどういうふうに考えるか、どこからどういう格好で油あるいはガスをとっていくかというようなこと、新エネルギーの開発をどうするか、そういったようなことも含めたエネルギーのベストミックスと、それから、先ほど申し上げました中東に対しては、一国として考えるのではなくて、それぞれの国特有の資源外交をしていく、この二つが相まってこれからのエネルギーのセキュリティーが図られていく、私はそういうふうに考えておるところでございます。

 それから、最後になりましたけれども、当面の課題ということで、環境問題と石油税の問題について簡単に申し上げたいと思います。

 環境問題につきましては、一つは、環境保全ということで、公害問題に端を発する、工場運営におけるSOx、NOx等あるいは排水、要するにそういうものを含めた対応をやっていくということ。それから、ガソリン、軽油その他に関して硫黄分を取り除いていく、そういったような環境に優しい商品をつくっていくという二つの問題がございます。この問題につきましては、我々はここ十年間で約一兆五千億前後の投資をしながら世の中の皆様にこたえておるところでございます。

 それからもう一つは、地球環境問題ということでございます。

 これはグローバルな問題でございますけれども、二十一世紀は本当に地球環境問題をどのように考えていくかということが大事な問題でございます。我々は、経団連の指導によります自主行動計画によって、トータルとはいきませんけれども、というのは、やはりガソリンを使えばそれなりの製品を我々は供給しなければならない、しかし、その製造過程において、少なくとも省エネを含めて、自主行動計画によって単位当たりの炭酸ガスの発生を防いでいくということにおいて、一九九〇年比の自主行動計画における一〇%の削減については現状においてほぼ果たしつつあるという状況を付言しておきたいと思います。

 最後に、石油税の問題がございます。

 石油税の問題については、まず巨額であるということ、消費税も含めて約六兆円になんなんとする問題でございます。と同時に、多重・多段階であるということ。つまり、原油の段階に石炭対策でかける、次に石油税という形で、備蓄あるいは開発のための財源として取る、それからガソリンはガソリン税をかける、軽油には軽油税をかける、それも庫出税か引取税かというような形で、税の体系が地方税、国税と、税の性格も含めて違う。そういう問題も含めて多重・多段階である。それに加えて、消費税導入のときに、少なくともタックス・オン・タックスということでそこに不合理、不公正な問題も起こってきたということで、巨額、多重・多段階、不合理、不効率という形の税の問題を我々は今冷厳に受け取りながらも苦しんでおるところでございます。

 これからいろいろな環境問題からくる税の問題も、財源面から、あるいは抑制効果から、あるいは国民一人一人の環境問題に対する意識高揚の問題を含めて浮揚してくるかと思います。しかし、この問題に関しましては、まずは現在のそうした巨額以下申し上げました税金の問題を見直しながら、そして新しい日本の税体系の中で環境税の問題を考えていくことが必要であるということを最後に申し上げて、私のコメントにさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。梶山弘志君。

梶山委員 自由民主党の梶山弘志でございます。

 参考人の皆様、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本日はどうもありがとうございます。

 限られた時間ですので、早速質問に移らせていただきます。

 それぞれの御意見の中にも入っておりましたが、改めてお聞きをいたします。

 役目を終えた法律を総括するところから将来のエネルギー政策が生まれてくると思うのですが、今回の法改正で、昭和三十七年に強靱な民族系石油産業を育成する目的で制定をされました保護主義的な色彩の強い石油業法が廃止となります。この法律の所期の目的は達成されなかったのではないかと私は思っておりますが、この点につきまして、先ほど新井参考人の方からははっきりとした御意見を拝聴いたしましたので、深海参考人、橘川参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

深海参考人 今御質問いただいた点でございますが、総合的と個別的と両方ありますので、評価はなかなか難しいと思うのですが、先ほど橘川参考人も明確に説明されていましたように、意図した、いわば和製メジャーをつくるということは客観的な事実としても残念ながら達成されていないということでいいますと、梶山先生から今質問をされましたような意味でいえば、目的を十分果たしたとは言えないというのが率直な評価ではないかと思います。

橘川参考人 私も同意見でありますが、もともと無理があったと思います。つまり、上流と下流が一緒でないと強い会社はつくれないのに、下流に絞ったというところに問題があった。当時としては外資提携の形からいってしようがなかった面はありますが、七〇年代に入りまして、メジャーズの力が落ちてきました。にもかかわらず、古い枠組みのままの法律が残ったというところに問題があったと思います。

梶山委員 今回の法改正も含め、最近の石油産業における規制緩和は、国際石油市場発達の中で我が国石油産業が構造改革を進めて競争力を強化していくこと、そしてこれにより高コスト構造を是正することを期待して行われてきたものと理解しておりますが、残念ながら、十分な国際競争力を持つには至っていなかったように見受けます。

 一〇〇%石油を海外依存している我が国のエネルギー安全保障の観点から、このようなときに石油業法を廃止しても大丈夫なのか。また、今後石油政策を考えていく上で外資系そして民族系という概念は不要となったのか。この二点について、深海参考人、橘川参考人、新井参考人の御意見を拝聴したいと思います。

深海参考人 今おっしゃいました点に関しまして、私の意見は、最初に全体的な位置づけで申し上げましたように、いわば多様な目的、ある意味では石油産業の効率化を図る、環境保全それから安定供給を図るというような意味で、まず効率化その他を図るというような意味で、あるいは橘川参考人が既に説明されましたように、今までのような下方スパイラルといいますか、そういうものを打破するという意味で、あの業法を廃止するということの意味はあろう。

 ただし、その場合に、では業法を廃止すれば問題が解けるのか、今のような御質問の内容と関連していいますと、その一環として、セキュリティーの確保というような意味で備蓄法その他を考えているということでございますし、あるいは開発というような意味で考えるといたしますと、公団の内容拡充あるいは変化させていくというような形で、パッケージとして対応が行われているということを考えますと、私は、業法を廃止してもそれほど大きな影響はないのではないかというふうに考えております。

 以上です。

橘川参考人 業法に関してはなくしても大丈夫だと思います。その分備蓄法、公団法を強化することによって目標は達成されるのではないかと思います。

 外資系と民族系の区別ですが、この区別の意味はなくならないと思います。現実に外国資本がかなりのパーセント入っている会社は、業績は悪くなかったにもかかわらず、経営形態が非常に変わってしまったというようなケースもあります。一方で、たまたま外資が撤退したことによってフリーハンドが整った会社もあります。そういう意味で、外資系、民族系という区別は意味を持つと思いますが、そのことが今までのような業法のフレームワークを必要とするという結論にはならないと思います。

新井参考人 大変重要で、かつ大事な問題かなというふうに思います。

 安定供給の方ですが、大丈夫といえば大丈夫なんでしょうし、だめといえばだめかなというふうに、ちょっとあいまいな答えになります。国際的な枠組みはどんどん広がっているわけですので、日本が経済的に発展して、自然と油が買えるんだというような市場が形成されるのであれば、その場合は大丈夫なのであろう。だめな場合はどうかといえば、そうでない場合はだめなのではなかろうかということです。

 変な言い方ですが、今のところ、石油会社には相当な、責任感覚といいますか、経営責任感覚があると思います。

 先日いい話を聞きました。これはLPGの話なんですが、LPGをあるところでちょっと余った分を確保した、日本に持っていくのは当然なんだが、アメリカの方が高いので、アメリカの方に持っていってしまえばある程度の利益が出る、しかし、やはり日本の方が大事なので日本の方に持ってこようというような判断があったということを当事者から聞きました。

 そういうぐあいに日本というものを中核にして考えるというふうであればいいのでしょうけれども、資本の論理からいきますれば、会社がもうかるということであれば、そのLPGをアメリカの方に持っていってしまった方がいいわけでして、そういうところの判断が揺れてくるということであれば、問題が起こるという側面もなくはないのかなと私は考えております。

梶山委員 二十世紀が各種産業や科学技術発展の世紀だとすると、二十一世紀は一度立ちどまってでも後世に残す地球環境というものを考えていかなければならない時代であると思っております。先ほど岡部参考人の意見陳述の中にもありましたが、石油業界の先を見た地球環境対策には敬意を表する次第でございます。

 環境そしてエネルギー安全保障という観点から、エネルギー源の多様化ということが求められておりますが、また、現実に国全体で模索をしているところでありますが、欧米のメジャーズの再編の動きを見ましても、必ずしも石油に限らず、天然ガスも経営の重点に位置づけるなど、いわば総合エネルギー企業化を志向することにより、経営基盤強化を図っているように見受けられます。

 また、今回の法改正で石油公団業務に天然ガス開発支援を加えたことは、国としても、石油業界の上流、下流を含めた電力、ガス等のエネルギー業界の再編を促して、総合エネルギー企業化を期待しているのではないかと思うのですが、石油業界としては今後どのような経営戦略を進めていくことをお考えになっているのか、そして将来的に我が国石油産業がどのような姿になっていくべきとお考えになっているのか、岡部参考人に御所見を伺いたいと思います。

岡部参考人 先ほどちょっと申し上げましたけれども、特石法の廃止、輸入の自由化によりまして、経営手段の幅が広がった、輸入があれば当然輸出もあるという考え方の中で、設備をうまく効率的に使いながら、輸出入も考えていくという一つの経営の視点がございます。

 それから、かつてカルガリーで世界石油会議がありましたときに、石油会議でありながら天然ガスで沸いたわけでございます。それは、石油化学も含めて、かなり石油から天然ガスに、クリーンエネルギーとして代替していくという流れがあるようでございます。日本の場合、石油化学のナフサの原料を簡単にガスにかえられるとも思えない状況を考えますと、電力も含めた重いところが天然ガス化していく、そういう状況の中で、軽いところは受け持っていく。そうなりますと、原油が一定でございますから、いかにその中から重いものをさらに軽いものに仕立て上げていくかという、需給構造の変化に対応した設備投資を含めた問題が非常に大事であるということ。

 それから、軽油を含めて低硫黄化することによって、極力欧米以上の環境に優しい商品をつくっていく、そういう考え方が必要でございます。そういうことを考えていけばいくほど、販売は別であっても、そこにいくまでの供給体制においてはかなり設備投資も含めた効率化をしていく必要があるということで、四つのグループが今できたわけでございます。マークはそれぞれ掲げておりますけれども、そこにいくまでの供給体制においては、これからさらに深度化、高度化という形で、組み合わせは既にできたわけでございますから、その中におけるいろいろな経営戦略的な対応をしていくことになると思います。

 ただ、先ほど申し上げましたように、川上に関しては、例えば、今サウジアラビアがこの九九年に六十万バレルの大型油田を開発いたしました。これは二千五百億でございます。それを簡単に二年間で彼らは回収して、もうただのような形になっている。それが、先ほどレイモンドの言ったサウジの強さ、OPECの強さということになるわけでございます。そういう面からも、開発の問題にはなかなか頭をつけにくい問題がございますけれども、これに関しても、やはり単独では難しいということで、共同で対応していく必要もあるというようなことを考えておるわけでございまして、非常にこれからは選択の幅が広がった。

 しかし、市場がベースである。その市場が、不公正であったり投機的な市場の乱用であったり不透明であったりしてはならない。そこに、市場の見えざる手に対する見える手としての政府の役割というものが、業法を別にしても、規制を別にしてもあるということを私はベースには期待しながら、我々としての企業努力を続けていこう、こういうふうに考えておるところでございます。

梶山委員 次に、石油備蓄の件について質問をさせていただきます。

 国家備蓄の概念として、直接的、物理的な供給途絶を想定していることは当然ですけれども、国際的な石油市場の動きを視野に置いた備蓄の活用ということも重要であると考えております。先ほど深海先生からもお話がありましたが、原油価格が高騰したような場合、非産油国そして消費国の連携をとった上で、備蓄の放出をしてもいいのではないかと思います。

 昨年九月にアメリカでも戦略石油備蓄の放出ということがありましたけれども、我が国でこれを行う場合の問題点、障害等がありましたらお聞かせ願いたいと思うのです。深海参考人、橘川参考人、新井参考人にお聞きをしたいと思います。

深海参考人 今の御意見、私は基本的に賛成したいのです。

 ただし、やはり備蓄の目的はエネルギーセキュリティー、そういう面で、今までは、備蓄した石油というのは戦略備蓄であり、最後のよりどころとして放出するという考え方であったわけでございます。ただ、最近、石油の市場化が進んできて、その市場メカニズムが活用されるというような形で、非常に価格変動、ボラティリティーが大きいというような意味で、バッファーストック的な意味での伸縮的な活用というのが行われたらいいのではないかというふうに思うわけでございます。

 この意味では、国家備蓄をそういう形で簡単に使っていいのかどうかという問題があろうかというふうに思いますので、今後、そういう方向も踏まえて、改めて再検討というか詰めていくという必要性があるのではないか。基本的には、私はその線が望ましいのではないかと思っております。

橘川参考人 備蓄を戦略的に活用するという御意見には賛成です。しかし、そのためにも備蓄制度に対する透明性を高める必要があるわけで、同じ業者で備蓄している会社としていない会社があるというような状況はなくすべきだと思います。

 それから、もう一点つけ加えますと、アジアの中の日本なわけで、アジアの備蓄が弱いという問題を日本としてもこれからは気をつけていかなければいけないのではないかと思います。

新井参考人 基本的な流れとしては、多分そういうふうになっていくのかなというふうに考えるわけですけれども、やはり深海先生も御指摘されていましたけれども、安易にこれを使うような状態になりますと、大きな自由化とかそういう価格変動が前提となる中に入っていくわけですので、そういう基準づくりや何かというのはなかなか難しいのではなかろうかというふうに思います。基本的にはいいとしましても、その辺のところの検討は十分必要かというふうに思います。

梶山委員 今の橘川参考人のお答えの中にもあったのですけれども、これから石油需要が伸びていくアジア地域の石油備蓄体制の整備が我が国のエネルギー安全保障上極めて重要な意味を持つと考えておりますが、この点につきまして我が国としてどのような取り組み、貢献をすべきと考えるのか、この点につきまして、同じくお三方の御所見を伺いたいと思います。

深海参考人 総合資源エネルギー調査会総合部会のもとにエネルギーセキュリティーワーキンググループというのがございます。

 今、日本は、IEAの加盟でそういう備蓄義務を負っておりますし、かなり多くの国家備蓄と民間備蓄を持っているわけでございます。OECDに加盟いたしました韓国というのも、そのIEAに参加すればそういう義務がある、あるいは中国が備蓄を考え出しているというわけでございますが、橘川先生からも話がございましたように、アジア全体ではそういう形での備蓄に関する強化あるいは制度というのが必ずしも十分ではなく、これからやっていくというような状況でございます。

 ですから、そのような意味で、日本の国内で我々が備蓄をどうするのかというのと同時に、そういうアジア地域の備蓄強化のノウハウであるとか、あるいはソフト面、ハード面を含めての協力というようなことをこれから真剣に考えていかなければならないのではないかという趣旨で、現在、エネルギーセキュリティーワーキンググループで最終的なまとめをしているところでございます。

橘川参考人 備蓄に関しては余りつけ加えることはありませんが、備蓄だけではありませんで、そのほかにも、例えばアメリカとヨーロッパにある石油の市場がアジアには十分成立していない問題があります。先ほどのアジア・プレミアムの問題ですが、それとか環境問題、特にCO2も重要ですが、ローカルな、もともと日本ではクリアしたようなSOxやNOxの問題をアジアでどう解決していくのかというところでも、エネルギー問題で日本を含むアジアがもっと協力できる余地はたくさんあるのではないかと思います。

新井参考人 これも非常に重要な問題だというふうに思います。石油ショックといいますと、我々は一次ショック、二次ショックをぱっと連想しますが、アジアにとっては石油ショックは、今回の湾岸戦争のときのショックが初めてのショックということだったようです。

 というのは、以前の第一次ショックのときには、まだまだアジアは石油の消費量が少なかったものですから、一次ショックの方はショックでなくて、今回の事態に至って初めて、これは石油というものは大変なことだということになって、備蓄の問題も意識されたというふうに聞いております。石油公団なんかも、たしかセミナーなんかを開いて、何かノウハウ的なもので役立つことをというようなことをおやりになってきたように思います。

 個人的に議論した過程でいいますと、例えば私自身は、アジアの国と共同で備蓄なんかも持てないかというようなことをちょっと提案したこともあるのですが、実際になりますと、これは最後の最後の手段なものですから、国の外に日本の備蓄を持つというようなことが適切かどうかというような議論にもなりまして、なかなかこういう問題は難しい。

 それと、手段的にはODAや何やらを使って何かできないかということなんですけれども、なかなかアジアには余裕がないので、実際に今度また大きな危機が起こったときに、日本だけには潤沢な石油があって周辺諸国にそれがないというアンバランスなんかあった場合には、正直、一体どういうことになるのかというようなことも懸念材料になるかと思います。

梶山委員 質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 参考人にお願いしますが、時間の関係もありますので、答弁はできるだけ簡潔にお願いいたします。

 松本龍君。

松本(龍)委員 民主党の松本龍であります。

 きょうは、公私ともに大変御多忙の中、参考人の皆様には深い見識と貴重な提言をしていただきましたことを、民主党を代表して心から感謝を申し上げたいと思っております。

 早速本題に入りますけれども、その前に、時代認識といいますか、そういうものをちょっとお伺いしたいと思うのです。今、新井参考人が、アジアにとってのオイルショックは九〇年代以降だというふうに言われました。私も、一九七三年、オイルショックがありましたけれども、実は目に見えないオイルショックというのがベルリンの壁の崩壊以来あったのではないかというふうに思っております。

 というのは、浅薄な歴史学者は、資本主義が勝って社会主義は負けたんだというふうに言いましたけれども、私、あのとき、マーケットがグローバル化する、つまり東側が西側に入ってくる、北に南が来る、つまり二十億、三十億の民が同じマーケットで、さまざまな混乱が起きてくる、これはすごいことだなというふうに思いました。さらに、東アジア、南アジアの経済的な発展等々含めて今日まで来たわけですけれども、一国マーケット主義というか、一国市場主義はもう通用しなくなってきた状況が今日露呈している。そういうときに日本はどうであったかというと、シューマッハではありませんけれども、うたげの最後の名残を満喫していて、そういうことに余り気がつかなかった。そのまま眠りから覚めずに今日まで来たんだろうというふうに思っております。

 深海参考人にお尋ねをいたします。

 せっかくの機会ですので、私、先生の書かれた文章を読んで非常に興味深く思ったのです。石油というのは大変質のいいエネルギーである、したがって質のいいエネルギーはある用途に限定していってノーブルユースをしていく、そしてさまざまなベストミックスを考えていきながら、これからの中長期的な戦略を考えていかなければならないということを読んだのですけれども、そのノーブルユースということ、そして環境というものを考えたときに、これから、五十年先は大丈夫だと思いますけれども、その間に準備をしなければならないことに対して、何か御提言がありましたらお願いをしたいと思います。

深海参考人 今話がございましたように、化石燃料、とりわけ石油というようなものを将来大きくどう考えるかということでございまして、エネルギーとして燃やしてしまっていいのか、そして原材料だとかその他にも使える石油をその他の用途にとっておくのかどうかということもございます。

 それから、天然ガスについても、実は天然ガスというのは非常に良質のエネルギーであるわけでありまして、先ほど話がございましたように、世代間の公平、持続可能性というようなところを考えてみますと、今は石炭はみんな敬遠して、石油、天然ガスへシフトしているわけでございますが、一番豊富なエネルギー源であり、C部分が多いことは確かではあるのですが、クリーンコールテクノロジーみたいなものをできるだけ開発して、先ほど岡部参考人からも話がございましたように、ベストミックスのユース、そういうものが大変重要ではないか。

 それで、ちょっと長くなって恐縮でございますが、私、今エネルギーの選択に関して重要だと思いますのは、通常は、量と価格と質といいますか、環境の面が問題になっているのですが、時間という要素をもっと明確に組み込む必要性がある。

 今の御質問に正確に答えるとすれば、これからは、再生可能エネルギーあるいは新エネルギーと言われるものを利用するということは重要なのですが、それが現実に使えるようになるまでの時間がどれくらいかかるのか、あるいは経済性を達成するにはどうすべきか。そういう計画のもとに、時間的な中長期をも考慮して、化石燃料だけではなくて、明確なエネルギーのベストミックス、そういう壮大なプランを考えてやっていくというようなことが基本的なエネルギー政策になるのではないかという感じを持っております。

松本(龍)委員 ノーブルユースというのはベストユースだというふうに私も思います。これからもいろいろな貴重な提言をお願いしたいと思います。

 橘川参考人は、私と大体同じ世代ですね。先ほど来、上流、下流の話が出てまいりました。この委員会も、先般質疑があったのですけれども、そこのところの話が出てまいったわけです。

 どうも今までの話を聞きますと、学校の遠足のような感じで、上流は危ないから余り行かない方がいいよ、下流は安全だからその辺で遊びなさい。機会均等とか言われましたけれども、おやつもみんな同じものを与えますよというところで脆弱化してきた。つまり、政府が介入する。脆弱化する。その脆弱化を立て直すためにまた介入をしてくる。何かこの悪循環でずっと来たというふうに先ほど言われましたけれども、今深海先生もおっしゃったように、スピードだと思うのです。私は、これからの政治にとっても経済にとっても大事なことはスピードだと思うのですけれども、期間を限定してやるべきだというふうに言われました。私は全く同感でありますけれども、そこのところをもっと深く掘り下げてお話をしていただきたいと思います。

 それと同時に、岡部参考人にお聞きをしますけれども、深海参考人は強靱な企業が要る、橘川参考人もまさに強力なプレーヤーが要るということを言われました。そういう意味では、プレーヤーとしてこれからなすべきこともあわせて岡部参考人にお伺いしたいと思います。

 まず、橘川参考人から。

橘川参考人 例えば、日本の石油公団は一九六七年にできました。ドイツなどはそれより二年おくれてできたわけです。ところが、ドイツの方は上流部門の自立を達成して政府の助成はなくなりました。

 なぜ違うかというと、目標が違っていたと思うのです。日本の場合には、一種、石油がないという強迫観念がトラウマのようになって、ともかく量を確保するというところに目標があった。企業としての強さを育てるという観点が入ったのは、ごく最近のことだと思います。

 そういう意味で、目標をそこに置きかえて、スピードをとるために十年という期限をセットして石油開発政策を進めていくということが非常に重要なのではないかと思います。その目標のセットがちょっと今までミスマッチだったのではないかというふうに私は考えます。

岡部参考人 先ほどおっしゃいました強靱ということでございますけれども、特石法の廃止、業法の廃止によりまして海外から生産された品物が入ってくる。それも韓国なり東南アジア、とりわけシンガポールということであって、アメリカとかあるいは中東から入ってくるわけではございませんで、まず、アジアを踏まえた中でのリファイナリー関係の競争力を確立することによって輸入品に対して国内の品物を切り詰めていくということが一点。

 それから、もともと、国内における販売に関しては、流通も含めて、これは日本特有の問題でございます。海外との競争というわけではございませんので、それは、それなりの需要家に対する収益の還元というようなことも含めて、サービスも含めた効率的な販売をしていくということが流通も含めて大事なことであろう、そのように思っております。

松本(龍)委員 橘川参考人がお書きになった松永安左エ門先生の本を私も読みましたけれども、電力が九電力になってことしでちょうど五十年になるわけです。政治家、経済界、役所あるいは消費者団体の反対を押し切って、本当に松永さんは今日の日本の礎を築いたというふうに思っております。そういう意味では、政府、また民間企業ということもありますけれども、お互いに努力をしていかなければならないなということを改めて感じております。

 新井参考人にお伺いをしますけれども、最後の方に言われました現場の声をもっと聞いてほしい、くみ上げてほしいということ、三十年間ウオッチをされている新井参考人と我々のギャップがありまして、どういうことなのかということをちょっと掘り下げてお話をしていただきたいと思います。

新井参考人 これは多分、いろいろ展開していきますと一冊の本が書けるぐらいに大変な話だと思いますが、一番実感を込めて申し上げることができると思いますのは、五年ほど前、新潟県の巻町で原子力発電の住民投票がありました。そのときに、私、やはり現場に行っていたんですが、非常に参考になることがありました。住民投票で原発反対が多かったわけですけれども、実を言いますと、そこの地域は電力を東北電力管内で最も使っている地域でして、取材しながら町の人たちに聞きまして、そのことを御存じですかと言いますと、知りませんと言ったんです。

 そういうことで、現場に行きますとさまざまなものが見えてくるというのは、体験的に言いますとそういうことでして、頭の中でいろいろ議論していますとちょっと間違っちゃうこともあるんですが、現場に行きますとそういうことがよくわかるということです。ジェー・シー・オーの問題についても同じような感じで、もう少し現場に目を注ぐことが、間接的な形での責任としての電力会社や、むしろその本社そのものといったところでもそこを軽視するようなことがあったんではないかという考えがあるものですから、申し上げたわけです。

松本(龍)委員 時間がもうありませんので、端的に申し上げます。

 先ほど、アジアにおける日本の役割ということをそれぞれ言われました。また、天然ガスの重要性もそれぞれ言われました。アジアにおける公害先進国といいますか、NOxやSOxの問題、環境の問題があります。そういう意味で、アジアにおける日本の役割。それともう一つ、天然ガス、中山理事は石油天然ガス公団にしろ、名前を変更しろということまで言っておるぐらいやはり重要性があると思うんですけれども、その辺も含めて、簡単にお一方ずつ発言をお願いしたいと思います。

深海参考人 今おっしゃったように、日本だけではなくてアジア全体あるいは東アジアを中心に考えていくということはすごく重要だというふうに思うわけであります。

 それで、きょうの質疑は、ちょっと別のところに触れて申しわけないのですが、エネルギーの供給側面、とりわけ石油、天然ガスというものに集中しているわけでございます。日本は、公害防止を含めてエネルギーの有効利用にも非常に進んだ面を持っておりますので、むしろ、環境、エネルギー、それから経済効率という三つの目標達成のためには有効利用、節約技術というものも大変重要ではないかと思いますので、供給面もさることながら、そういった面も含めて広く日本の貢献を考えていくことができたらいいのではないかというのが私が特につけ加えたい点でございます。

橘川参考人 サハリンの天然ガスの問題に絞ってお答えいたします。

 私、サハリンの天然ガスはいわば日本にとっての北海油田に当たるような位置にあって、できればパイプラインでこれを日本で活用するのが非常に重要だと思います。ただし、自由化が進み、最大の需要産業である電力やガスが設備投資を抑制するというのも私企業としてよくわかります。まさに政策の出番でありまして、それぞれのプレーヤーが合理的なことをやっているんだけれども、合成すると結果として大きなチャンスを逃してしまったということがないように、ぜひ国会議員の皆さんの御活躍を期待しております。

新井参考人 橘川先生と同様、天然ガスの問題はサハリンの天然ガスが日本に入ってくるかどうかということが、もっと広く考えて、多分現実的な緊急の問題としてはこれが最大の課題と言っていいんだと思います。

 ただ、よほど慎重にやらないといけない面もあるというように思います。イギリスにはダッシュ・フォー・ガスという言葉がありまして、ガスへの急傾斜が問題を起こしたというような面もありますので、その点は考慮しておくべきかなというふうに思います。

岡部参考人 例えばEUにしましても、アメリカを中心にしたNAFTAにいたしても、経済圏という形ではくくりがあっても、事エネルギーということに関してはやはり各国各様の対応がどうしてもあるというのがエネルギー問題ではないかと思っております。

 それだけに、我々としては、確かにアジアということではございますけれども、アジアに十分な統計が中国も含めて整備されていないということ、中国は大国で環境も含めて国ごとなかなか協調体制がとりにくいということを考えますと、まずはやはりアジアの中の核である我々がどのような形をとるかということから考えていかないと、アジアの小国はほとんど協調ということになりますと日本に対する技術、資金の依存型という格好になってくるということでは非常に難しい。

 そんな中で、最近、通産省の方も積極的にやっていただいてサウジとの間で産消対話が進んでおりまして、昨年サウジにおいて、サウジは議長国でありまして、来年は日本において産消対話が行われるということでは、石油は今回は生産国が平和の中で価格の高騰という形のミニショックであったということを考えますと、彼らも十ドルでは困るけれども三十ドルでは高過ぎる、二十五ドル前後のところにいかに持っていくかということにおいて消費国とのコンセンサスを得ながら対応していこうということにおける産消対話ということがこれからのエネルギー問題として非常に大事であろう、そのようには私は思っておるところでございまして、来年度の日本が議長国としての産消対話に期待を持っておるところでございます。

松本(龍)委員 それぞれ貴重な御意見をありがとうございました。心より感謝を申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 達増拓也君。

達増委員 参考人の皆さんの意見陳述の順番に質問をさせていただきたいと思います。

 深海参考人に伺います。深海参考人の陳述の中で言及されました緩衝在庫についてですけれども、値段が高くなったときに在庫を取り崩して値段を下げるというのはこれはわかるんですけれども、その逆も念頭に置かれているのかどうか。例えば、値崩れが生じた場合にある程度在庫、備蓄の義務づけを高めることで値崩れを防ぐといったような、そういう価格の異常下落に対するバッファーということも念頭に置かれているのか、伺いたいと思います。

深海参考人 いわゆる緩衝在庫として備蓄を利用するという側面から申しますと、価格が高騰したときはこれを放出するというわけでございまして、そして、価格が下がってまいりましたら放出したものをいわば補てんするという形。ですから、今おっしゃったような意味で、安くなるから支えようというよりは、どちらかといえば備蓄部分を補てんする、そういうことになろうかというふうに思うんですね。

 石油に関してはそういう形での運用はやられておりませんで、戦略備蓄であるわけでございますが、他の資源についての話でありますと、レアメタルの場合、日本でも価格高騰があってあるレアメタルについてそういう操作をした経験があるわけでございます。

 そのような意味で考えてみますと、いわば備蓄というのはただではなくて、備蓄のコストというのがかかるわけでございますが、もしバッファーストックで高いときに放出し安いときに買うというようなことになりますと、全部の備蓄費用が出てくるというわけではございませんけれども、備蓄費用のある部分をそういう操作によっていつも持つことができる、そういうメリットもあるのではないかというふうに思います。

 ただし、誤解を避けるためにもう一回だけ言っておきたいのですが、バッファーストックとして、適宜石油備蓄を利用するかどうかということについてはこれから議論すべきであろうと思いますが、緩衝在庫として使うという意味からいいますと、そういった操作が行われ、またある種の収益が上がるということにもなろうかと思います。よろしゅうございましょうか。

達増委員 値段がどんどん下がっていくことは、消費者にとってはいい話なのでありますけれども。ただ、私は地元が岩手県なのですけれども、ガソリンスタンドをやっている皆さんに話を聞くと、やはり値崩れという言葉で表現しているわけであります。

 橘川参考人に伺いたいのですけれども、橘川参考人は、今の業界全体の様子について、規制緩和は進むけれども脆弱性というものが残って一種閉塞状態にあるというようなことをおっしゃっておりましたが、地元でガソリンスタンドをやっている皆さんに聞くと、やはりそういう感じでありました。一種の兼業農家化といいますか、ガソリン、軽油を売ることだけではもう経営が全然成り立たないような状態になっている。岩手の場合ですと、ガソリンと軽油を足して一SS当たり月に平均大体百キロリットル売れるのだそうでありますが、今はもう一リットルから十円ぐらいしか利益が上がらないので、百キロリットル売っても百万円の収入、平均すると四、五人ぐらい働いていますから、もう人件費を出せるかどうか、光熱費とか設備とか考えますと、どうしてもいわゆるパパママショップのような、家族だけで細々とやっていくしかないような、したがってかえって脆弱になっている、そういう混乱の中にあるという状況なのだと思います。

 これが近々どのように解決されていくか、改善されていくか、結局淘汰という方向で進んでいくのか、それとももう少し別の何か、すみ分けのような工夫、構造の変化が起きてくるのか、その辺、今苦しんでいる皆さん、何かその先の見通しがあればいろいろ我慢できるかもしれないのですが、そういう今後の見通しのようなところ、特に下流のもう最下流、消費者との接点のあたりについて伺いたいのであります。

橘川参考人 私の認識では、淘汰はもうかなり進んでおりまして、ある意味で、今残っているSSは何らかの競争力がまだあるところではないかというふうに思います。

 そして、将来の問題なのですが、エネルギー政策の面から考えますと、実は、日本のガソリンスタンドがたくさん整っているということは、逆に強みになる可能性がありまして、例えば天然ガスへの転換だとか燃料電池だとかというときに、日本の将来のエネルギーを支える貴重なインフラになる可能性があると思います。

 問題は、そういうふうにうまいぐあいにソフトランディングを行うことができるかどうかという政策の組み方の問題だと思います。

達増委員 次は上流の方の話を伺いますけれども、新井参考人に伺いたいと思います。石油公団の問題であります。

 石油公団をずっとウオッチされてこられて、いろいろな問題点なども見えてきていると思うのですが、強靱な石油業界、強靱な企業をつくっていく場合、世界のメジャーやナショナル・フラッグ・カンパニーと対抗して、その開発、自主開発やあるいは既存油田の買収、そういったことを戦略的にやっていく、今回の法改正でも、石油公団にそういう役割が期待されて、民間企業とともに戦略的にそういうことを進めていくことが期待されているわけでありますけれども、果たして、今の体質で石油公団が業界とともにそういう上流部分、上流がうまくいきさえすれば収益が非常に楽になるはずなのでありますけれども、その点いかがでしょうか。

新井参考人 大変私は難しいというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、日本の開発費を全部合わせてもメジャー一社というような状況の中で一体どの程度ができるかということを考えますと、ある程度限度が見えてくるわけでして、そこで大きな夢が開くような話というふうには簡単にいかないのだろうと思います。ただ、カスピ海の原油開発とか、アフリカにおける開発とか、いろいろ地域によって開発の余地のあるところも出てきておりますので、そういうところで何かうまくいくような話があるのかということを期待します。

 ちょっとジャーナリスティックに申し上げますと、ぜひ成功例というものを本当につくってほしい、公団ありきでそれがうまくいったということがこれまでなかったというのが若干残念なところでございます。

達増委員 では次に、岡部参考人に、業界の今後の見通しについて伺いたいと思います。

 強靱な業界をつくっていく、強靱な企業を育てていくということでの規制緩和が進んで、今回の法改正にもなるのでありますけれども、今、四グループ体制、特にコスモ石油さんは日石三菱さんと提携して業界シェア四割ということで、そういう大きな力も業界の中に出てきている。これが今後、国際的な競争の中で、強靱に上流の方でも下流の方でもやっていけるように、さらなる業界の再編のようなことが進んでいくのか、あるいは、それぞれのグループがまた独自に力をつけていくのか、その辺の見通しについて伺いたいと思います。

 また同時に、なかなかそう簡単にいかないということであれば、どういうことが課題になっているのか。見通しと課題について伺いたいと思います。

岡部参考人 アメリカの場合は、合併がありましても、ブランド力というものが非常に強くて、それぞれブランド力を大切にした商売が続いておる状況であります。日本の場合は、日石三菱は合併でございましたけれども、基本的にはマークを掲げながら、物流までの、原油調達、それから、備蓄をして、生産をして、流通をして、消費者の皆さんに行く直前までのところ、ここまでの問題について、いかに競争力を持つかということは国内における問題として考えているところでございます。

 ただし、そこに行くまでの、精製段階においては、先ほど申し上げましたけれども、製品輸入をするアジアにおけるシンガポール、韓国をにらんだ中での精製コストに関しては、外形的に考えたら、人数も含めて基本的にはそんなに差はないと思うのですけれども、人件費高とか環境問題に対するコスト、そういういろいろなことを含めてどうしても劣る部分がございまして、その辺のところをどんなふうにこれから切り詰めていくかを考えていくということでございます。

 ただ、先ほど御指摘がございました日石三菱、当社とのグループも含めて、現在四つのコアな供給グループというものができたということでは、まず、供給体制に関しては、これからは環境問題も含めて共同投資その他いろいろな形で、さらに今の単なる提携から少しでも進んでいくことが、要するに競争力をさらに強めることになる、そんなふうな認識を持ってお互いに健闘し合っているところでございます。

達増委員 それでは次は、橘川参考人にもう一度質問したいと思います。今の岡部参考人への質問の続きであります。

 そのように大分統合再編も進んできているのですが、橘川参考人は、やはりメジャーやナショナル・フラッグ・カンパニーに対抗するには、日本も一つに企業グループが統合していくくらいの再編が必要というふうに考えておられるのでしょうか。

橘川参考人 必ずしも一つではないですが、なるたけ少ない方がいいということになると思います。

 一つだけつけ加えますが、その場合、例えば石油の上流と下流という組み合わせだけではなくて、石油の上流とあるいは電力、ガスというような総合エネルギー的な展開も、特に天然ガスの問題を軸にしてあり得るのではないかというふうに思います。

達増委員 それでは最後に、深海参考人に、これは環境問題について伺いたいと思います。

 やはり、三つのEの連立方程式でやっていく場合、それぞれに手段が伴えば、三つの目的に三つの手段で、経済学ではポリシーミックスが成り立つような格好になるのですが、環境面で合理的な選択に持っていくには、結局、経済性でいけばやはりガソリンが安くて簡単ですから、ガソリン、石油がどうしても使われてしまうのでしょうけれども、やはりそこは税制によってコストを高めていくというような微調整が政策としてなっていくのか、あるいは直接規制、CO2排出量規制のような数量規制の形になるのか。全体のポリシーミックスの中で、環境の部分についてどういう政策が妥当なのか、伺いたいと思います。

深海参考人 今の御質問に関して、立場によっていろいろあろうかと思うのですが、基本的に三Eで、しかもいわゆる経済発展とかあるいは効率性を追求する、そして市場へのゆがみが存在しないように考えるというようなことであるといたしますと、やはり炭素税とか環境税というような経済的な措置によることが望ましいというのが、私どもが研究しております経済学からも出てくるところであります。

 最終的には、いろいろな業界の方々、あるいはそれによって決まるとは思うのですが、筋を通して考えるということであれば、やはり環境問題というのは外部不経済ということでございますので、その内部化を図る。しかも、規制措置ではなくて、いわゆる経済的な措置。その場合に最も我々がいいと考えておりますのは、何らかの課徴金とか税とかいうようなものになるのではないかというふうに思っております。それは簡単に達成できる、あるいは皆さんの合意がなければ実現できないわけでありますが、今の御質問を正面切ってとらえるといたしますと、どちらかといえば、経済的な措置によりそういう外部不経済性を内部化する意味で、税による対応というのが最も望ましいというふうに私は考えております。

 以上です。

達増委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 大森猛君。

大森委員 日本共産党の大森猛でございます。きょうは、四人の参考人の皆さんには、御出席をいただきありがとうございました。

 最初に、深海参考人、新井参考人にお聞きをしたいのですが、今回の石油業法の廃止は、一言でいえば需給調整を市場メカニズムに任せるということにあると思うのです。それとの関係で、先ほど深海参考人は意見陳述の中で、環境、効率性、そして安定供給、この政策目標間のトリレンマが顕在化しているという言葉も使われました。

 今、総合資源エネルギー調査会では、長期需給見通し、これを検討しているわけでありますけれども、COP3で日本が国際公約をしましたCO2の削減目標を達成することと、この石油製品の需給を市場メカニズムに任せるということは、当然これは考慮されなくてはならないと思うわけなんですが、まずこの点でのお考えと、またこの目標を達成していくためにはどういうことが必要になってくるのか。この二点、お二人の参考人にお聞きしたいと思います。

深海参考人 今御質問いただきました点は、大変重要な、核心的な部分ではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、いわば市場の自由化を図るということは、効率性を増大させる、あるいは高コスト構造を是正するというものがあるわけでございまして、長期エネルギー需給見通しの改定作業を今やっているわけでございます。

 そこで、経済モデルを使って、原子力発電が二十基というようなものが今は十三基程度である、それからいろいろな可能性、今確実に実行できるものを入れて、二〇一〇年にコストミニマイゼーションという形でどうなるかということをやってみますと、実は、本来ならば一九九〇年のエネルギー消費あるいはCO2排出量のレベルに戻すというのがエネルギー政策の今第一の目標になっているわけですが、炭素で二千万トンふえてしまうという結果になっております。これはなぜかといえば、現在の価格システムの中では安いエネルギーを当然使いますから、石炭の消費がふえてしまう、こういう状況になっているわけでございます。

 したがいまして、今御質問いただいたような意味で三つを何らかの形でコンシステントに、同時的に達成していくという意味でいえば、ただ自由化をするというだけではなくて、何らかの形でそういうCO2の、あるいは環境保全を達成するための措置を組み合わせていかなければならないというようなことになろうかと思うわけでございまして、きょう私が全体として話をさせていただきましたような意味で、この三つの目標を総合的に達成していくという形でどうすべきかというような意味でいいますと、非常に政策を総合的に推進していくことが必要ではないのかということが言いたいポイントでございます。

 そのような意味でいえば、特に自由化をした場合に、私のメモの5のところに書いてあるわけですが、利用者としては価格低下によるメリットを受けるわけですが、セキュリティー上の問題もあると同時に、石油業界、先ほど体質が弱いという橘川参考人からの話がございましたけれども、競争が激化した中で考えますと、やはり収益性を確保できないとかいろいろなマイナス面が出てくる。そうすると、日本の石油産業、業界をどうすべきかというような意味でのそういった産業的な配慮も要るのではないかと思われるわけでございまして、総合的な政策と同時にそういうポイントをあわせた形、ですから、総合的な、複雑な政策体系を考えざるを得ないのではないかと思っております。

新井参考人 前段のお話につきましては、なかなかこれも難しい話といいますか、市場メカニズムというものにこたえ得る部分といいますか、それを担保していく部分というのは、多分自己責任の部分がそれだけふえるということだと思います。その部分が、日本はまだまだ若干未成熟なのではなかろうかと思っております。

 カリフォルニアのエネルギー自由化ですが、九六年の自由化法が成立するときには、もう環境学者も政治家も全部こぞって、それこそ大喜びで歓迎したわけですけれども、結果としてこうなるということでありまして、この点が問題かなというふうに思います。

 それから、長期需給見通しですけれども、これはCOP6の合意形成がアメリカの脱落で完全になくなりましたので、これをつくるというのはなかなか大変なことだというふうに思います。

大森委員 次に、岡部参考人、橘川参考人にお聞きしたいのです。

 先ほどの陳述の中でも、巨大メジャーと日本の企業との格違いな状況もお話があったわけなんですが、今後完全自由化が進む中でこういう巨大メジャーが我が国の市場に進出すると、どういう状況が予想されるか。そういう中で、我が国の石油企業はそれに伍していくことができるかという点ですが、お聞きしたいと思います。

岡部参考人 メジャーの言によれば、あくまでも日本において投資はしておるけれども、日本の国内におけるルールの中でやるということですから、原油代をダンピングしてもうけているから、日本の中で市場のルールを無視してシェアをふやす、そういうことではなくて、基本的には最強の競争力を持った市場が形成されていくという考え方の中で、彼らもそれなりの要するに効率化をしていく。ただ、有限会社をつくったりいろいろな形で、我々から見たらわかりにくい形をとるということについては、やや問題はございますけれども、あくまでもそういうことでございます。

 ただ、こういうことがございます。先ほどアジア・プレミアムの問題がございましたけれども、それを別にいたしましても、日本においてはサウジの原油を買うよりもUAEとかクウェートの原油を買う方が、ネットバックとして十セントから三十セントぐらい基本的には割安でございます。それを私はサウジに問題提起をしました。それは日本における保険料だと言われたということ。そういう中で、サウジの油は基本的にはアジア・プレミアムより安い原油ということでアメリカに取り込んで、日本では、比較的日本の中では有利な、サウジの油ではないUAE等の油を仕入れることによって、結果的にグローバルで一番効率的な原油を調達しているといったような戦略はございますけれども、基本的にそれ以外のところでは、日本の中で今かいま見える戦略はない。あくまでも日本の中における競争である。しかし、外資的、アングロサクソン的ですから、非常に市場の競争の形が厳しいということでは、それを冷厳に受けとめて我々も努力をしなければならない、そんな感じでございます。

橘川参考人 私、経営史という歴史をやっている人間なんですが、既に石油業界に関しては、貿易、資本の自由化の以前から、あるいは戦前からもう既にメジャーは日本に進出しているんだと思います。

 むしろ、今立てられている問題は逆でありまして、日本の会社が、石油会社にしても電力にしてもガスにしても、国境の壁の内側でしか活動していないというところに問題があって、今度の新しいスキームでは、国際企業としていかに日本の企業が変身していくのかということが問われているような気がいたします。

大森委員 いずれにしろ、大変厳しい市場競争になるというお話もあったわけなんですが、そういう中で、先ほどは千載一遇という言葉も出てまいりました。

 そこで、新井参考人にもお聞きをしたいんですが、当時私も、事務局でありますけれども、一九七三年に国会に参りまして、ちょうどその折国会で、千載一遇、当時は一大流行語にもなりました。あわせて、退蔵物資の摘発とか売り惜しみというような言葉も当時は出てまいりました。そういうこともかつて経験したわけなんですが、先ほど新井参考人の意見陳述の中で、ヨーロッパの昨年の石油危機に関連して、友人の方のお話として、日本でもしそういうことが起こったら二倍、三倍になっただろう、そういう規模の大変な状況がつくり出されたんじゃないかというお話がありました。

 そこで、今回、石油業法の廃止という中で、日本ではこういうことは起こらない、そういう保証があるのか、日本がこのヨーロッパの教訓から学ぶべきものはあるのか、そこらのお話をちょっとお聞かせいただけたらと思います。

新井参考人 そうなるなんということはまず言える話ではありませんけれども、大事なことは、多分そうなり得る可能性がありますよということの認識を国民がどこまで持てるかなということだと思います。

 ちょっと長くなりますが、四、五年前ですか、EUの農業問題で、フランスで農民の物すごいストライキのようなものがありました。ちょうどあのときは、私、一カ月ばかりフランスをずっと回っているときでございました。高速道路で燃えている車や、バリケードが組まれていまして車があちこちでぶつかっているというような非常な事態で、本当に私にとっては革命的な事態だったわけですけれども、国民性の違いといいますか何といいますか、そういう形で比較的冷静に国民が受けとめている。

 ところが日本では、この前お米がちょっと不作のときがありました。あのときにお米屋さんからお米がなくなってしまうというような、非常に日本人は過剰に反応するところがあるのではないかと私は思いますので、その辺のところで、何かが起こったときの問題というのは若干心配という感じが正直いたします。

 そのことを認識しながら、先ほど申し上げました自己責任の話と同じように、皆がしなければいけないんじゃなかろうか、こういうふうに思っております。

大森委員 今回の石油公団法の改正で、既発見油田の資産買収なども対象になることになったわけなんです。これは岡部参考人にお聞きをしたいと思うのですけれども、先ほど陳述の中でもありました。私ども、常識的にはそういう既発見油田で将来性有望なものについては簡単に手放さないんじゃないかという気がするわけなんですが、具体的にそういう適切なプロジェクトはあるのか、事業として可能性はあるかどうか、先ほど陳述にありましたけれども、重ねてお聞きをしたいと思います。

岡部参考人 これは言明ということではなくて、私の会社の経験においては、小さい油田ではそういう経緯はございました。しかしながら、大きなところで考えましたときには、メジャーが資金不足、技術不足を考えて日本をパートナーに選ぶとか、そういう問題についてはなかなか難しいのではないか、そんな感じがいたします。

 ただ、天然ガスに関しましては、先ほどちょっと話が出ましたけれども、サハリンに関しまして、むしろ日本勢、エクソン勢が入ることによって、対ロシアとの関係における一つのパワーもできて、それが現在進んでおるという状況はございますけれども、これはまた別の視点であろうというふうに思っております。

 それでございますから、天然ガスが中心ではないかというような感じがいたしますが、石油に関しても、基本的にはないような感じがいたしますけれども、やはりそういう問題が全くないとは言えないという状況を踏まえて、やはり公団の枠を広げた対応ということが必要であろう、そんなふうに思っております。

大森委員 時間がありませんので、最後の質問ですが、これはまた岡部参考人にお聞きしたいんです。

 先日、当委員会での審議の中で私、ガソリンスタンドの問題を取り上げました。この中で、自由競争というのであれば、公正な競争と市場の透明性、こういうものをとりわけ自由化推進の中で確保することが必要じゃないかということで、エクソン・モービルがこれまで二社、三社に対して仕切り価格とその適用のルールを公表していた、いろいろな事情で最近中止になったわけですけれども、この際、元売各社がこういう仕切り価格とルールの公表、あるいは公正な価格競争を行う条件整備、そういうものが重要じゃないか、このことを差別対価あるいは不当廉売との関係で私は取り上げたわけなんですが、この機会にぜひ岡部参考人のこの点での御意見をお聞かせいただきたいと思います。

岡部参考人 欧米と違いまして、日本の場合はかなりの部分が我々の経営体と流通経営体とが別組織であるということ、別経営であるということ。そして、どちらかといえば、流通の方は中小企業的な経営という厳しさがある。そういう状況の中で、今回、自由化になりました後、我々も三万六千人おった人間を二万四千人、そしてスタンド側も六万のスタンドの効率化を急ぎながら五千五百カ所の閉鎖ということで、一カ所四人としますとやはり二万人ぐらい。ということは、業界全体で三万人を超える雇用喪失という考え方の中で新しい事態に我々は努力をしておる状況でございます。

 そんな中で我々、先ほど言いましたように、東南アジアの精製会社に勝てるだけの競争力をつけて、まずは競争力のある形の仕切りをルールを持って特約店の皆様に提示をする。特約店の皆様は、どちらかといえば今までガソリン中心の商売でございましたから、それだけに、例えば洗車だとか潤滑油だとかタイヤだとか、あるいは車検整備だとか、そういう問題に対しまして、法の緩和整備もございまして、現在必死にそういう問題にも取り組んで、ガソリン独歩高の、ガソリン収益偏重型から、バランスのとれた要するに収益構造に変えようと死に物狂いでございまして、それを我々も基本的には承知をし、受けとめて、やはりそれぞれのグループで基本的にはルールの透明化の中でやっておるつもりでございます。

 ただ、現象的には、どうも軽油の脱税があってみたり、あるいはガソリンの商売と軽油との商売の複合でなかったりというようなこともございまして、それぞれのSS、それぞれの特約店の経営体の中身によって苦しさの度合いが違うということはございますけれども、基本的に私の視点では、透明な、公正なルールの中で少なくとも市場形成に努めておるということだけは申し上げておきたいと思っております。

大森委員 終わります。ありがとうございました。

山本委員長 大島令子君。

大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。

 四人の参考人の方々には、貴重な意見を聞かせていただきました。ありがとうございます。

 まず、私は、岡部参考人に質問させていただきたいと思います。

 石油の供給をほぼ全面的に海外に依存している我が国にとりまして、本法案によりまして市場原理にすべてをゆだねるということに関しまして、私は問題も少なくないと考えております。そういう観点から、今後の業界の役割、それとどのような政策をやはり業界として求めていきたいか。もう一点は、石油公団の今後のあり方を含めて、日本の石油開発のあり方をどういうふうに岡部参考人の立場から考えているのか伺いたいと思います。

岡部参考人 これからはやはり、グローバルには、市場の力と環境問題への対応と技術革新という三つどもえの中で経済は動いていく。そういうことになりますと、我々ひとり石油業界が標準価格めいたものを、公定価格めいたものを持ってやるということはどだい無理な話でございまして、あくまでも市場の原理、市場の力を利用して対応していく。

 ただ、その市場が、行き過ぎて過熱したりライオンの顔をした市場ではなくて、しかし仏の顔をした市場でもない、人間の顔をした市場というものがどういう形で形成されていくか。そのためには一つは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、見える手としての政府と見えざる手としての市場の力というものが、全く政府の見える手というものがないままにやるということは問題でございまして、そこには、統制とか規制ではない市場設定に対する考え方というものが底辺にあってしかるべきであると思っております。

 しかしながら、基本的にやはり市場原理でいかざるを得ない状況の中で、先ほど申し上げましたが、海外から輸入する品物、原油が入ってきて我々がつくる、それから海外でつくった品物が製品として入ってくる、基本的に性状も同じである、とすれば、そこでは競合関係があるわけでございますから、これには勝つ形で対応しなければならない。あとは、日本の中における市場形成の中で、スタンドが六万カ所が多過ぎるとかなんとかいいますけれども、そこにはたくさんの中小企業の方々もいらっしゃる状況の中で、ソフトランディング的に、やはり競争力のないところはある程度御辛抱いただきながら淘汰されていき、生き残るところについては、やはり頑張っただけの評価をいただいて依然として一つの流通機構の一翼を背負う。

 こういう形になっていくことがベストな方向でございますから、私は、自律的な産業秩序の形成、そのためには石油業界の一円の重みは非常に大きい、一円というものは業界全体で二千五百億にも相当いたしますので、その大きさというものも主張しながら、一円の重み、自己責任原則、自律的な産業秩序の形成ということで、お互いがあうんの呼吸の中でそれぞれが対応していくならば、一つの秩序ある新しい収益構造というものができるものと確信いたしております。

 それから、公団の問題でございますけれども、当社もちょっと関係はございますけれども、三百円の投資をして、ドル借りではなかったということで、現状日本経済が強くなって約百二十円になったということでは借金が三倍になってしまった。それから、当時、先ほど言いましたけれども、アメリカでも見込んだ百ドルというふうにはいかないまでも、四十ドル、五十ドルを前提にしながら対応したということ。三番目には、この石油税という税金を財源といたしまして、税でありながら、開発段階、つまり原油が入らない段階からこれに、これはいろいろな経緯がございますけれども、金利がついた、しかもその金利が結構高かったということも含めて、そういった過去の二つの問題を背負っての現状の各開発会社の苦しさがございます。

 しかしながら、現状の為替と現状の原油代をベースにいたしますと、そこそこの事業体制はしけていけるわけでございますから、少しでもやはり公団のバックアップ体制を活用しながら、やはり効率的な原油の開発ということについては全く皆無であってはならない。私は、少しでもやはり自主開発原油をかさ上げしていくことが必要である、そのために改めて公団のバックアップ体制を強調しておきたいと思います。

 以上でございます。

大島(令)委員 それでは、日本のエネルギー政策は今後どうあるべきかという広い視点に立った質問をさせていただきたいと思います。

 二回のオイルショックを経験した日本は、エネルギーの安定的な供給イコール石油の安定的な確保イコール石油備蓄という、現実的な問題を抱えながら今までやってきたと私は考えております。しかし、地球温暖化問題への対応ということは極めて重要な問題であると先般の委員会でも大臣に質問させていただきました。エネルギーの源が石油だけではないということは、もう世界の共通認識に立っていると思います。

 四名の参考人の方々に共通の質問をさせていただきたいと思っておりますが。

 まず、EUは、地球環境問題と大きく関係する再生エネルギー源を総エネルギー消費に対して六%から一二%に倍増させるとした白書を、COP3が開催された今から三年前の一九九七年十二月に対応を既に終えていたわけなんです。そしてまたEUは、再生可能エネルギー技術の潜在力が世界のエネルギー需要の五〇%を賄うことが可能であるとし、二〇二〇年に向けて具体的なアクションプログラムの実行に移っているわけなんですね。

 そういう観点から考えますと、本法案の改正が以上の問題をカバーできるかどうか。どういう考え方か、一点目、聞かせていただきたいと思います。

 それと、二点目は、石油にかわる代替エネルギーは、四名の参考人の方々はそれぞれどういうものがあると考えていらっしゃるのか。

 三点目。エネルギーの八〇%を輸入している我が国にとって、ライフスタイルを国民全体が変えていく発想とか、いわゆる経済発展イコールエネルギーの大量消費という時代から、エネルギーを余り使用しない形の産業の振興も可能ではないか。例えば、食料の自給率が今三五%なんですが、輸入ということもまたエネルギーの消費でございますので、自給率を高めるとか、そういった観点も必要だと思うのですね。しかし、ここの資料にございますエネルギーの項目ですと、一九九九年度は、産業で四九%、民生、家庭業務で二六・一%、運輸、これは乗用車、貨物で二四・九%なんですが、二十年後のエネルギーの消費の構成比は、産業が四四・四%と五%ほどしか下がっておりません。民生は三二・三%で、七%ほど上がっておりまして、運輸は二三・二%ですから一・五%下がっているわけでございます。

 こういうふうな総合的な観点から以上三つの質問をさせていただいて、法案審議の参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

深海参考人 それぞれ非常に大きな問題ですので、答えると時間を超過してしまいますので、端的に申し上げたいと思うのです。

 第一点でございますけれども、これは、法案の改正趣旨にもございますように、石油の安定的供給確保のための石油備蓄法等の一部を改正するというわけでございまして、いわば石油ないしは天然ガスを含めて、そういった限られたエネルギー、特定のエネルギーについて、しかも自由化、規制緩和した場合に、例えばエネルギーセキュリティー、安定供給を確保等々という側面でどうトレードオフの関係を是正するかという限られた法案でございますので、これだけで、今大島先生が指摘されたような意味での全体的なエネルギー問題に対応することはできない。やはり限定された意味を持っているというのが一つでございます。

 それから、石油代替エネルギーとしてどうかということでございますが、これも、一体どれくらいのタイムフレームというか、時間的な長さを持ってということになろうかと思います。当面、石油と天然ガス、化石燃料間の問題もございますし、それから、できれば自然エネルギー、再生可能エネルギーというようなものでございますが、これもコストあるいは技術開発の点で、二〇一〇年というような短期ではなかなか難しいのではないか。

 私は、エネルギーがどうなるかということは、一世紀後とか二世紀後という意味で言えば、やはり水素経済に移行するようになろうというふうに思っております。今度は水素はどこからとってくるのかということになるわけで、これは太陽光発電とかあるいは太陽エネルギーを利用して、水の電気分解で水素が得られるというような形が究極的な到達点だろうと思うのですが、それに至るまでには非常に長い時間がかかるというふうに思っております。

 それから、ライフスタイルとの関連で、今後どうなっていくのかということの問題でございますが、やはりこれは一つだけ大島先生に申しわけないのですが、日本だけで考えることができるのかということ。日本は産業構造を高度化し、いわばエネルギー多消費産業、基幹産業みたいなものをアジアやその他にトランスファーしても、アジアが今度は効率的に利用できて、地球全体としてどうかというような問題がございますので、そういった意味で、有効利用、節約等々、あるいは省エネ技術をいわば開いていく等々というような日本の将来展望をやはり大きな世界の枠組みの中で考えて、今おっしゃったような意味で、省エネあるいは経済成長、経済発展とエネルギーとの結びつきをできるだけ緩めていくというような、これは長期になるわけでございますが、そういう形で基本的には対応していくべきだと考えております。

橘川参考人 再生エネルギーをふやすこと、ライフスタイルを変えること、一般論としては賛成なのでありますが、先ほどからここで議論になっているように、時間の問題というのがあると思います。

 もし我々がこの法案をめぐって、ターゲットとしている時間が十年だとすると、それだけにかけるのでは問題は解決しないのではないか。私は、この十年間で、もし今の温暖化の問題あるいはエネルギーセキュリティーの問題を考えますと、ターゲットとして浮かび上がってくるのはむしろ天然ガス。EUから学ぶべきことは、ロシア及びアルジェリアから、二つの供給源からパイプラインをくまなく張って、日本の大体倍ぐらいの天然ガス依存度であるというような点の方が、現実的な目標としては重要なのではないかというふうに考えます。

新井参考人 最初の御質問も多分新エネルギーはどうなるかということだと思うのですが、大いに期待したいというふうには思いますけれども、私は若干気になりますのは、新エネルギーが取り上げられるときに、どれほど多くても三%とか四%とかというレベルの話が、残りの九十何%かの話と置きかえられてしまって議論されますと、根幹のところがおかしくなるかなというふうに思っております。

 それから、石油にかわるエネルギーとして最も期待できるもの、いろいろありますし、日本の場合は、やはり陳腐ではありますが、できるだけ多くのエネルギーを多様に使っていくということだと思うのです。特に気になりますのは、この前のWECの報告を見ましたところ、世界では十億人の人が商業エネルギーを使っていないという現実があるわけで、先進国の日本としてもある程度、原子力を含め先端的なエネルギーを使っていかなければいけないのかと思います。

 それから、需要構造につきましてはこれからやはり電力化がどんどん進むのだろう。IT化がありますし、高齢社会化も電力を必要としますし、その点を十分考えておくことが必要かというふうに思います。

 以上です。

岡部参考人 一つは、新エネルギーに対する問題でございますけれども、実は、世界一の風力発電のドイツでございますけれども、現在六百十万キロワットで日本は八万三千キロワットしかない。約七十倍の風力を誇っておりますけれども、そのために、ある地域における電力会社が、それをつくった人から高い値段で買い取ることによって補助金が出る、それがその電力会社の地区ではもたないということで、全国で法律を変えることによって、風力発電に対してある補助金的な高い値段で買うことを考えるようにした。

 といったようなことも含めて、この新エネルギーの問題というのは、時間とコストと技術、その三つどもえの問題なくしてはいかないという状況の中で、現在の長期見通しでも、わずか一%のものが二%にいくかどうかということでございまして、非常にオーダーの小さい問題がこの十年の問題としてはある。二十年、三十年といけば、相当可能性というものが、知恵を出していけばというふうに思いますけれども、現状はそういうことでございます。

 我が石油業界といたしましては、コジェネという形での熱電、熱と電力とを併用しながらの供給ということを考える省エネの問題とか、あるいは燃料電池の問題で、特に定置型の燃料電池については、それぞれで研究を進めておる。いわゆる移動型の燃料電池という問題については、メジャーも含めて、いろいろな考え方がございまして、我々としては、インフラのあるガソリンスタンドを利用しながらの燃料電池供給体制の方向に行くことを願いながら、議論もし、検討もしておるところでございます。

 それから、環境問題からの視点でございますけれども、今回の法律が改正されました後、基本的には、今回はあくまでも石油に限定した問題で、わずかに公団問題としての天然ガス問題があるだけだということでございますから、あくまでも、石油も含めて、エネルギー全体の問題ということになりますと、先ほど深海先生がおっしゃいましたように、現在長期エネルギーを見通しつつございます。

 ただ、そんな中で、残念ながら、基準という形で現在持っております計画というものは、原子力発電が二十基ができない、十三基にする。それから、石油と石炭を考えたときには、石油を一といたしますと、一・三倍の炭酸ガスが出るのだけれども、限界的な効率を考えれば、つまり、設備をつくれば石油の方が設備が安いという問題がございますけれども、現状の設備の活用を考えれば石炭の方が割安であるということで、まず、効率をベースに置けば、どうしても一・三倍の炭酸ガスの石炭が中心にならざるを得ない。

 そんな形で、まずは基準的な長期計画をつくって、そこからCOP6の行方を見ながら炭酸ガス問題に対する対応ということで、日本のエネルギーベストミックスを、今度は対策つきという格好で考えていくステップになるのであろう、このように思っております。

 それから、最後になりましたけれども、そういう状況の中で、エネルギーのベストミックスの問題が非常に大事でございますけれども、今ライフスタイルの問題がございましたが、やはり国民一人一人が環境問題に対する意識の高揚ということを考えていかなければならないということ、そのためにどうするかということも、一つ国の指導力としてあるのではないか、そんなふうにも思っておるところでございます。

大島(令)委員 どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会




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