衆議院

メインへスキップ



第9号 平成14年4月12日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月十二日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 竹本 直一君
   理事 中山 成彬君 理事 鈴木 康友君
   理事 田中 慶秋君 理事 河上 覃雄君
   理事 達増 拓也君
      小此木八郎君    大村 秀章君
      梶山 弘志君    小西  理君
      阪上 善秀君    新藤 義孝君
      根本  匠君    林  義郎君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松島みどり君    茂木 敏充君
      保岡 興治君    山本 明彦君
      井上 和雄君    生方 幸夫君
      川端 達夫君    北橋 健治君
      後藤 茂之君    中山 義活君
      松原  仁君    松本  龍君
      山田 敏雅君    福島  豊君
      土田 龍司君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      西川太一郎君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   総務副大臣        若松 謙維君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   政府特別補佐人
   (公正取引委員会委員長) 根來 泰周君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局参事官
   )            増井喜一郎君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局長)      鈴木 孝之君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十二日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     新藤 義孝君
  梶山 弘志君     小西  理君
  山村  健君     井上 和雄君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     梶山 弘志君
  新藤 義孝君     伊藤信太郎君
  井上 和雄君     山村  健君
    ―――――――――――――
四月十一日
 脱原発への政策転換に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一七三三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長鈴木孝之君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長楢崎憲安君及び金融庁総務企画局参事官増井喜一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 民主党の鈴木康友でございます。どうぞよろしくお願いします。
 まず初めに、今回の改正の焦点であります一般集中規制のあり方について御質問をしたいと思います。
 独禁法制定時に、事業支配力を排除するという目的でつくられたこの一般集中規制でございますけれども、時代の変化とともに、私は今やその役割が随分と形骸化しつつあるのではないかというふうに思うわけであります。今改正で、いわゆる総合商社などの過度の事業支配力を排除するという目的でつくられました九条の二が撤廃されることとなりますが、九条自体も私は根本的に考える時期に来ているのではないかというふうに思います。
 三井住友銀行などという、違った財閥の系列の銀行が合併をして新しい銀行ができるような時代でございます。違う企業グループや系列でも、もう時代の波に抗し切れずに合併をするというようなこともありますし、こういう一般集中規制を残している国というのは日本と韓国だけということで、グローバルスタンダードにも合わなくなっているということもあります。
 あるいは、世の中全体として、事前に規制をしていくという時代から、何か問題や不都合があれば事後的にそれを処理をしていくという事後チェック型へという規制緩和も進んでおります。私は、こうした事前に取り締まることで得られる社会全体の経済的利益というようなものよりも、それによって失われる機会損失の方が大きな時代になっているのではないかと思います。
 そうしたような理由から、この一般集中規制自体の撤廃ということも視野に入れる必要があろうかと思いますが、その点について、まず委員長の御所見をお伺いしたいと思います。
根來政府特別補佐人 本会議でもその点お尋ねがございましたけれども、確かに、この独占禁止法ができました昭和二十二年当時と、それから大改正が行われました昭和五十二年、そして規制改革、構造改革が行われている今日と、経済実態が大きく変化していることは事実だと思うわけでございます。
 ただ、独占禁止法の趣旨というものは、申し上げるまでもなく、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法の禁止、それから事業支配力の過度の集中の防止という二本立てになっているわけでございますが、それでは、現在の日本の経済構造というのは、事業支配力の過度の集中のおそれというのは全くないであろうかということを調査しましたところ、やはり株式の持ち合いとか、あるいはその株式の持ち合いを通じた取引というようなことがまだ存在しておりまして、そういう経済実態から見ると、今直ちに一般集中規制を廃止するというのは時期尚早ではなかろうかということでございます。
 したがいまして、本会議でもお答えいたしましたように、現時点ではまだ廃止する必要がないんじゃなかろうか。おっしゃるように、将来的にはやはり廃止する必要も出てこようかと思います。その点、否定するわけではありませんが、現時点では必要がある、こういう考え方でございます。
鈴木(康)委員 とにかく時代の変化が速いわけでありますから、それに取り残されないように注意をしながら、ぜひこの問題については今後とも取り組んでいただきたいと思います。
 さて、二番目に、本改正によりまして、今回、事業再編などが非常に容易になりますし、そういう意味では企業の国際競争力というものも大いに図られることになると思います。しかしながら、一方で、そうした大規模な企業と中小企業の格差の拡大というものも懸念されてまいります。こうした大競争時代に産業競争力を高めなきゃいけないという国家的な課題もありますし、反面で、日本の屋台骨でありました中小企業の健全な育成ということもさらに重要な課題としてあります。
 一見この矛盾するような二つの課題を抱えながら、そうしたものをともに包含しながら日本はいかなきゃいけないわけですけれども、何らかの形でこうした中小企業政策というものも担保されなければならないと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
根來政府特別補佐人 大きな前提として申し上げれば、独占禁止法というのは、もうこれは十分御承知のように、特定の企業を保護するということではないのでございますけれども、やはり競争というのは強いところと弱いところがあるわけでございまして、その競争条件をやはり平たくするということもある意味では必要でございますし、あるいはその競争というのは、公正な競争ということが大変必要なことでございます。だから、公正な競争を通じて力の弱い中小企業を保護していくということは、ぜひとも我々がやらなければならない問題だろうと思うわけでございます。
 ですから、抽象的に申し上げれば、結果的に中小企業を保護するということを念頭に置いて、公正な競争条件の確保、不公正な取引方法の禁止ということについて力を注いでいるつもりでございます。
 細かく申し上げればいろいろございますけれども、細かく申し上げますか。(鈴木(康)委員「いや、結構です、大体の考え方で」と呼ぶ)そうですか。またお尋ねがあれば細かく申し上げるつもりでおります。
鈴木(康)委員 今、御回答いただきました。公正な競争条件、あるいはそうした土壌の確保というのが大きな役割だと思いますけれども、先ほど申しましたように、だんだんと事後チェック型というふうになってまいりますと、監視あるいはチェックというものが公取の役割としても非常に重要になってくると思います。その点については後ほどまた御質問させていただきたいと思いますけれども、ぜひその観点も踏まえていただきたいというふうに思います。
 さて、三番目に、もう一点、本改正についての御質問をしたいと思います。
 今度の改正で、いわゆる銀行同士の議決権保有制限というものが原則として自由化されることになります。しかしながら、いわゆる金融機関以外の事業会社については従来どおり五%ルールというものが残されるわけであります。しかしながら、金融審議会が出しました銀行の株式保有に関する報告などによりますと、いわゆる新しくできた創業間もない企業あるいはベンチャー企業などに銀行が出資をして、会社が立ち上がるときに支援をするという起業支援が一定の役割を果たしているという指摘もあります。
 御承知のとおり、今後日本は、新たな産業を力強く創造していかなきゃいけないという国家的な課題があるわけでありますが、そうしたことを考えますと、金融会社以外でも、例えばベンチャー企業などへ五%を超える議決権の保有を認めるなどのいわゆる特例措置というものも認めていくことも必要ではないかと思うわけでありますが、この点について御意見をお伺いしたいと思います。
根來政府特別補佐人 確かに、ベンチャー企業に対する金融ということは大変必要なことだという認識であります。
 今の独占禁止法でどういうことができるかということも我々は常に考えているところでございますが、包括的に十一条の適用除外とすることはなかなか難しい問題があるのではないかということであります。
 ただ、十一条一項の五号に、中小企業等投資事業有限責任組合に対して適用除外の規定を設けておる。そしてまた、今般の法律改正によりまして、同条の六号に、一定の民法組合に対して適用除外ということも考慮しておりますので、そういういろいろの仕組みの中でベンチャー企業に対する金融ということを考えていきたい。さらに、お尋ねのように、まだいい方法があればまた将来考えていきたい、こういうふうに考えております。
鈴木(康)委員 少し質問の視点を変えたいと思います。
 次は、下請代金支払遅延防止法についてお伺いをしたいと思います。
 この法律は、言うまでもなく、中小企業が不当な扱いを受けて不利益をこうむらないようにと、先ほど委員長も御回答の中でいただきました、公正な取引というものを確保する、そういう中で中小企業に配慮をするということで制定されているものだと思います。
 私たち民主党は、この法律について、時代に合ったように今改正案というものを提案しています。
 そこで、そのポイントについて御意見をお伺いしたいと思います。
 まず、その第一が、この法律が適用対象としているものでありますが、現行法では製造委託あるいは修理委託のみがその対象になっていますが、今、御承知のとおり、下請仕事というものも、製造業以外いろいろな幅広い仕事があるわけですね。前回のこの経済産業委員会で特許法の改正が行われましたが、そのポイントも、いわゆるコンピュータープログラムのような無体物がその特許の対象に加えられるというものでございました。
 同様に、この下請仕事というものも、今や幅広くサービス産業なども含めて広がっているわけでありまして、当然、映像だとかデザインとか、あるいは今申しましたプログラムなどのいわゆる知的成果物や、あるいは役務の提供というものもその中に入ってくるわけでありますので、こうしたものもこの法律の対象に加えたらどうかという改正案を提案しているわけですが、この点、いかがお考えでしょうか。
根來政府特別補佐人 御提出の下請改正法につては篤と拝見いたしました。ただいま、製造あるいは修理委託以外のものについて広げるということについても、私どもは、それは反対とかいう話じゃなくて、一つの御見解であろうと思うわけであります。
 私どもの方も、その下請法の改正ということを横に置きまして、優越的地位の乱用という見地から、役務の取引について調査を行い、あるいはそのガイドラインをつくったところでございますから、それを法律の中に取り込むということも一つの御見解であろうと思います。
 ただ、役務と申しましても非常に範囲が広いものですから、その範囲の広いものをどのようにこの法律の中に取り込むかというのは一つの問題でございますので、私どもは、今、内航海運について実態調査をやっております。そういうふうな取引の実態、広い役務の実態調査をいたしまして、その上で、さらに法律改正について判断をすべき問題であろうと私どもとしては考えているわけでございますが、提出されている下請法案について、その範囲についてあれこれ申し上げるつもりは一切ありません。
鈴木(康)委員 今、御回答いただいたわけでありますが、私は、製造委託あるいは修理委託という物を伴うものと、そうではない知的成果物、先ほど申しましたデザインですとか設計でありますとか映像、プログラム、こうしたものが、仕事の形態としては親企業から下請企業に発注をされるということですから、そこに違いはないわけでありまして、むしろ今問題になっているのは、物がそこに介在をしている方が非常にわかりやすいんですが、こうした知的成果物というのは、どうしてもそこにいろいろな価値観や恣意的なものが入りやすくなりますので、先ほど委員長が申されました優越的地位の乱用というものが逆に製造なんかよりも起こりやすくなってくるわけであります。
 ですから、そういう観点で、私たちも独自に調査した結果として、いろいろなそうした下請企業から問題点を指摘されて、今回、そうした内容もこの法律に加えるべきだという改正案を出したわけであります。
 もう一度、その点を踏まえて御回答いただければと思います。
根來政府特別補佐人 これは、ただいまお話のありましたテレビの番組の制作等について相当ひどい話があるというような話がございまして、私どもの方で調査いたしまして、役務のガイドラインをつくったわけでございます。
 そういうことで、確かに、おっしゃるように、役務ということは姿が割に見えないものですから、その成果物をどちらに帰属するか、あるいは途中で変更するにはどういうふうになるのかとか、いろいろ優越的地位の乱用的なことが行われているということを聞いているわけでございまして、その点について下請法に入れることについては、私は何ら異論がないわけでございますが、テレビだけというわけにもいきませんので、入れるなら、もう少し取引の実態を調査して広く入れたらどうかなというのが私どもの考え方でございまして、何もそのお考えに逆らうつもりは一切ございません。
鈴木(康)委員 恐らく、その実態も公取さんの方でも把握をしつつあろうかと思いますので、ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。
 さて、この改正案の第二のポイントは、親事業者と下請事業者の関係を規定した資本金区分であります。現行法では三億及び一千万という、どちらかというと大ざっぱな区分になっていますが、これでは実態に合わなくなっている。これは、公取さん自体の調査の中でもそのことが指摘をされているわけであります。
 そこで、その区分を三億円、一億円及び一千万に少し細分化をしようというのが私たちの改正案の第二のポイントでありますけれども、この点についての御所見をお伺いしたいと思います。
根來政府特別補佐人 これは、御承知のように範囲が広がったものですから、その間が広がってしまってどうも落ちつきが悪いということだろうと思いますけれども、これについてもいろいろ実態を調べまして、果たして細かくしてうまく運用できるかという点が私どももうひとつ自信が持てないものですから、よく調べまして、また要すれば法律の改正をお願いすることになろうかと思います。
鈴木(康)委員 あと罰金の引き上げ等々まだ幾つかのポイントはありますが、それは省略をさせていただきたいと思います。
 随分と私どもの方にもいろいろな下請さんから、こういう時期でございますので、親会社から不当な扱いを受けているというような声も伺うわけであります。そうした実態も踏まえて、ぜひまた関係各位の御協力もいただきながら、早期にこの法律を成立させていただきたいと思いますので、また前向きに検討をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 さて、次に、今回の独禁法改正は、時代状況あるいは経済状況の変化に即して、いわゆる競争政策というもの、あるいは一層の規制改革というものを促進させるためのものであると理解をしています。冒頭私も申しましたように、これからの時代の流れとして、事前にいろいろ規制をするのではなくて、事後に何か問題があればチェックをしていくということにいくべきだという方向性については、全く同意見であります。
 しかし、そうした中では、やはり公正な競争を担保するために、一方で、当然起こってくるいろいろな違反に対しての厳しい監視体制あるいは取り締まりというものが行われなければならないと思います。特に談合などについては、こういう犯罪的な行為に対しては徹底的に取り締まりをしていかなければなりませんけれども、残念ながら、今の公正取引委員会がこうした面で、監視、取り締まりという役割が万全であるというふうには言えないと思います。
 平成十二年度の実績を見ましても、公取さんが審査をした事件数が二十五件あったという報告がありましたが、その中で告発された事件は一件もなく、ほとんどが勧告あるいは警告といった行政的な手段によって処理をされているということであります。
 こうした、ある意味で今の公取の限界というものが、よく言われるように、どんどん発生する犯罪的行為に対して、人員が不足をしているためなのか、それとも犯則調査権を持たないといった制度的な限界のためなのか、あるいはそうしたものが複合しているのか、その点についての御見解をお伺いしたい。
 また、特に、ことしは人員が四十人増員をされたわけであります。その中でも二十八人が審査官ということでございますけれども、今回の増員によりどこまで実効性が上がっていくのかという点もあわせて、その御見解をお伺いしたいと思います。
根來政府特別補佐人 若干私見に当たりますけれども、私は検察庁から公正取引委員会に参ったのですけれども、検察庁は職員が一万人いるわけであります。それから、各地に地方検察庁、区検察庁というふうにございまして、全国にネットを広げているわけであります。
 ところが、公正取引委員会は、職員が、今度の増員をお認めいただいても六百人、そのうちで審査を担当している者が三百人というような非常に小さい役所でございますし、各地にも八つぐらいしか出先がないわけであります。そういうことで、違反の触角といいますか端緒をつかむのも、自分たちで端緒をつかむということは非常に難しい。結局、内部告発とか申告とかに頼らざるを得ないわけであります。そういう事態から見ますと、やはりもう少し人員をふやすということがぜひ必要ではないかというふうに思っているわけでございます。
 そこで、もちろん、人員をふやしても、人ばかりおってもどうしようもないわけでございまして、能力をつけるということも当然必要でございます。それから、ほかに何かいい手段がないかということも模索しないといかぬわけでございますけれども、私の考え方からいえば、ほかのいろいろの方法を考える前に、現行の方法でどれまでやれるかということをまずやってみて、そして、現行の方法でやれないところについて法律改正をお願いするというのが妥当ではないかというふうに思っているわけであります。
 ですけれども、先ほど挙げられました件数と申しましても、これは一件二百社ぐらいのがあるわけであります。そうしますと、立入検査をするとしましても、話が長くなりますけれども、一社一人しか行けない。一社一人が担当するということでありまして、なかなか人がそろわないということもこれは事実でございます。だから、件数で二十件、三十件ということになりますけれども、内容はもう何百件という件数になるわけでございまして、私は、冗談ですけれども、外見が悪いから会社ごとに件数を上げたらどうだというようなことを言っているんですけれども。
 そういうことで、職員に大変負担をかけて、私どもも心苦しい感じはしているわけでございますが、少ない陣容を最大限に活用して、また一般の国民の方々の御協力をお願いして、やはりこの談合列島というような汚名を何とか晴らしたい、こういうふうに考えているわけであります。
鈴木(康)委員 委員長から、今内部の問題も含めての御回答をいただきました。私も、公取さんの役割というのはこれからますます高まってくると思います。どんどん規制緩和が行われていけば、その分、事後のいろいろな監視やチェックが必要になってまいりますので、私は、政府も、必要なところにはある意味で人員を大幅にふやしていくという策も必要だと思うんですね。要らないところは大胆に切ってということで、めり張りのきいた改革もこれからまた行っていかなければならないと私は思いますので、公取さんなどにおいては、やはり増員という方向でこれから考えていかなきゃいけないと思います。
 さて、時間が少しなくなってまいりましたけれども、最後に官製談合について二、三お伺いをしたいと思います。
 二〇〇〇年度に北海道庁で大きな談合事件が起こりました。これはもう大変有名になった事件でありますが、ほかにも日本下水道事業団の談合事件等、官製談合事件が大きな社会問題化をしています。このように摘発された大きな事件以外にも、例えば、日弁連が調査をしたところによると、予定価格の示唆など、発注者側がむしろ談合を容認あるいは推進をしているようなことが日常的に行われているのではないかということも指摘しているわけでありますが、こうしたことについてまずどう御認識をされているのか、お伺いをしたいと思います。
根來政府特別補佐人 元来、発注者と応札者というのは対立関係にあるわけでございまして、この両者が談合するというようなことは理屈では考えられぬわけですけれども、これも日本特有の話でありますけれども、発注者と応札者がだんごになってやっておるということが最近新聞でもいろいろ見られるわけでございます。
 これは独占禁止法に当たるか刑法犯に当たるかという細かい議論はございますけれども、それはともかくとしまして、ああいう事件を見ますと、何といいますか、発注者と応札者が一緒になってうまいこと仕事を回しているという印象がやはり強いわけでありまして、これは日本では希有な話ではないんじゃないかという認識を持っております。
鈴木(康)委員 委員長もそういう御認識をいただいております。私も、この官製談合というのは大変大きな問題であろう、これは党の方もそういう問題意識を持っておりまして、民主党は、官製談合防止のための法案を提出いたしました。
 時間もございませんので、一点だけ最後にお伺いをしたいと思います。
 談合事件というのは非常に複雑な背景を持っていますので、いろいろな側面からこれを考えていかなきゃいけません。したがって、私たちが出した法案も、予責法の改正あるいは地方自治法の改正、会計検査院法の改正、独禁法の改正、公共事業の入札適正化法の改正など、現行法の多方面からの改正と、もう一つ、入札談合等関与防止法という新法を制定するということによって構成をされているわけであります。この中で、この新法の部分というものが当委員会にも関係してまいりますので、最後に一点だけ、このポイントについて御質問をしたいと思います。
 この新法のポイントは、これまで公正取引委員会の排除勧告というのはいわゆる事業者しか対象にできなかったものが、今度の私たちが提案している新法によって、発注者である官に対して改善措置要求を行うことを可能にするというものであります。
 そういう意味で、今まで漏れていた発注者側に視点を合わせた、むしろ発注者側に大きな原因のあるこの官製談合防止には私は大きく寄与をすると思いますけれども、この点、委員長はどのようにお考えになりますか、御意見をお伺いしたいと思います。
根來政府特別補佐人 私ども、事件を洗っているときに、やはり発注者をほっておいていいのかという問題がございますし、事件に関与した事業者は、発注者に対して何もおとがめがないというのは非常に不公平ではないか、平たく言えば、そういうことを言うわけであります。
 そこで、私どもとしては、やはり発注者に対して何らかの処置を講ずる道がないかということも考えましたけれども、これはもう十分御承知のように、独占禁止法を所管する私どもとしては手の及ばぬところでございます。
 その点について、今おっしゃられたような、民主党でも、あるいは自民党、公明党、保守党においてもいろいろお考えになっているようでございますので、私どもは、国会で十分議論をしていただいて立派な法律ができることを期待しているわけでございまして、これに対して私ども異論を唱える気持ちもありませんし、むしろ結構なことだというふうに考えているわけであります。
鈴木(康)委員 今委員長からもお話ございました、私どもの党だけでなく与党さんの方でもこの法案について御準備をされているということも聞いております。
 ぜひ、関係各位の御理解と御協力のもとに、一日も早くこの法案がいい形で成立させていただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
谷畑委員長 中山義活君。
中山(義)委員 おはようございます。
 根來委員長、何かどうも七月ごろに御退任をされるというようなうわさを聞きましたが、私は根來ファンとしては非常に残念でたまらないんですね。
 実は、もう一つ根來委員長にファンレターが来ておりまして、一つは、いわゆる全国電機商業組合連合会の福田勝亮さんなんです。これは、委員長が、日経で平成十三年七月十五日に、公取委、強化策で対立、事務方の方は政策立案能力をと言うのですが、委員長は違反摘発こそ柱である、このように述べておりまして、大変正しい方向に行っているというふうに私どもも見ているわけでございますが、委員長はそういう気持ちで、強い監視と、ある意味では摘発が非常に大事だというふうに思うのですね。
 今までも民主党としては、人数をふやしてびしびしやってくれと言うんだけれども、今回も若干の増員で、私は、このセクションというのはもっともっと、本来は、何といいますか、警察と同じくらい怖い組織でなければいけないと思うのですね。それがないために今までいろいろなことが出てきた、このように思うのです。
 この福田さんのお手紙には、常に社会は公正で努力するものが報われ、共存できる社会にしていきたい、強い者が勝つのではなく、正しい者が勝つ世の中、いつの時代でも子供たちの未来は輝いていなければならない、これは我々の義務である、との思いで長年にわたり業界正常化に取り組んでまいりましたと。
 つまり、今回の法律にもありますが、日本の商業並びに産業活力を増そうということで合併なりまたガリバーをつくっていこう、そして、いろいろ諸外国に伍して闘っても負けないようにという意味合いも随分含まれていると思うのです。
 しかしながら、規制緩和というのは、同時に、国内に痛みが出ることは間違いありません。「聖域なき構造改革」の中で今一番疲弊しているのは商店街なんですね。
 私たちは、多くのことを今ここで言うあれはありませんが、一つの事例を出して申し上げたい。それは不当廉売でございます。
 私たちの町には、魚屋さんとか八百屋さんとか薬屋さんとか、または酒屋さんとかいろいろありました。何屋さんというものが多かったわけですね。その商店街には町会長さんもいらっしゃる、消防団もいる、婦人部長もいる、青年部もいる、日ごろおみこしを担ぐような睦もいるということで地域を形成しているわけですよ。
 ところが今は、ごらんのとおり、シャッター通りと言われて、多くのスーパーやまたは郊外型のばかでかいスーパーによってどんどん商店街がシャッター通りとしてきてしまう。ここには、やはり我々にも努力とかまたは一生懸命やろうという気持ちがなきゃならないし、何も政府に保護をしてもらおうというのではないんです。同じスタートラインに立たせてもらって同じような勝負ができないか、この努力が報いられないかということを我々は考えているのであって、これからも公取の一つの、一番大事なものとして、政策の立案能力と、それから監視または摘発、この二つのことを、このお手紙によってどういうふうに根來委員長は考えますか。
根來政府特別補佐人 ちょっと誤解を解くために申し上げますけれども、私と事務当局は、そういう点について一切議論をしたことは、そういう点というのは、要するに基本路線について議論をしたことはないのですけれども、どういうわけで新聞はああいうふうに書いたのかよくわからないのです。
 事務当局の方も、事件という言葉を使っていいかどうかは別として、事件をきちっとやらないとやはり公取の地位というのは落ちるということを十分認識しているわけでございまして、そういう認識のもとにやっているわけでございます。どうして私と意見が違ったというふうに書かれたのか、どうも納得がいかないのですけれども。
 それはともかくといたしまして、私も福田さんに何回かお目にかかって、その都度おしかりを受けているわけであります。
 確かに、独占禁止法というのは、先ほど申しましたように、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法を禁じているわけでございますけれども、有機的に動いている経済のごく一部を所管しているものですから、なかなか競争の、ごみといいますか、そういう点について力が至らない点があるわけであります。今度の狂牛病の問題だって、そういう感じがするわけですけれども。
 私ども、もう少し力を伸ばしたいな、手を伸ばしたいなと思いましても、独占禁止法という枠がありまして、どうしても枠を破るわけにはいかない点がございます。そういう点で、いつも申し上げておりますけれども、隔靴掻痒の点があるのですけれども、その独占禁止法を目いっぱい使って、そういう社会のごみ的なところを何とか解消したいというふうに思っているわけであります。
 ただ、そういう言葉は、独占禁止法自体の立法趣旨からいうとちょっと外れている感じがするわけでございますけれども、しかし、外れているとしましても、不公正な取引方法ということについて十分目を光らせてやっていく必要があろうかと思っておるわけです。これは、与野党を問わず、国会議員から、ビールとかガソリンとか電気製品とかいうことについての不当廉売を何とかしろというおしかりをいつもちょうだいしているわけでございますので、事務当局もそのおしかりを受けて十分奮闘しているのでございますが、なかなか難しい法律問題がありまして、それを越えるのが一苦労ということであります。
 そこで、最近の電気製品に限って申しますと、やや不当廉売というのが影を潜めて、むしろ、ビラでうそを書いて客を誘引するというようなこととか、あるいは製造会社が特定の量販店に特定のサービスを、過剰なサービスをするというようなことが見られますので、これは差別対価とかいうことの方向でひとつきっちり回答を出していこうということで事務当局もやっているところでございます。
中山(義)委員 いや、公正取引委員会が怠けているというわけじゃないんですが、現実として、例えば酒屋さんがこの三年間ぐらいで一万二千軒、自殺者が三十五人とか、いなくなった人が二百四十人とか、結果としては、大変公正な、一生懸命やって汗をかいて正しい商売をやっていてもつぶれてしまうということがうんとあるわけですね。
 そこで、ちょっと経済産業省の古屋副大臣にお聞きしたいのですが、産業経済の方でセーフガードを発動しましたね。これは、ある意味ではやはり中小企業を守らなきゃいけないと。例えばネギにしてもシイタケにしても、その産業がつぶれちゃう可能性があるわけですね。その産業がなくなった時点で、今度は中国から今までの値段の倍で来られても、その産業がなければ倍で買わなきゃならないということになりますね。つまり、ある農産物を独占されちゃうわけですよ。これは空洞化するというので困るので、セーフガードを発動して何とかその間に頑張ってもらおうということだと思うんですが。
 そういう意味では、中小企業を守っていくというのは経済産業省の一つの使命だと思いますので、この辺について、これから不当廉売だ何だといろいろ起きてきますよ。だけれども、経済産業省としてはどんなお考えを持っているか、ひとつこれ、お答え願いたいと思うんです。
古屋副大臣 お答えをさせていただきます。
 今委員御指摘のありましたネギ等の農産物三品目、これにつきましてはWTOのルールに基づいて粛々と対応をしたものでございまして、中小企業対策とはちょっと性格が違うものだと思います。ただ、理念的には、ある意味で、地域の力の弱い中小企業者あるいは商店街をしっかり支援をしていくという視点からは同じかもしれません。
 今委員御指摘のように、特に酒屋さん、公取の方も注意件数が二千六百件ぐらいあったということですけれども、その大半が酒屋さんであったり、あるいはほかの業種もございますけれども、現実に全国を回ってみましても、商店街というのは本当に疲弊していますね。実は私も今、経済産業省の副大臣として、全国の中小企業の金融、そしてまた地域の経済の活性化のためにできるだけ現場を回ってヒアリングを行い、あるいは要請活動をしています。
 実は、今週の月曜日も公務出張させていただいて四国に行ってまいりました。ここは、高松市の丸亀商店街というのがありまして、これは大変意欲的な取り組みをしているんですね。例えば、再開発をするときも定借でやるとか新しい試み、そういうチャレンジングなことをする。そして視点は、若者だけではなくていわば高齢者、これから高齢者がふえてきますから、そういうところにも視点を置いた展開をしているということでありまして、私どもは、そういう前向きなところに対してもしっかり支援をしていきたいと思います。
 また、この商店街というのは、やはり江戸時代から続いてきた日本の文化なんですよね。この文化をいかに守るか、もう一度再認識をして、そして我々が支援していくか、こういった視点は極めて重要だと思いまして、そのためにTLOを盛んにつくったりとか、あるいは空き店舗対策だとか、あるいは高齢者のためのいろいろな支援、ソフト、ハード両面で総合メニューをつくって、私どもできるだけ、かつてのにぎわいの文化、そして歩いて回廊する商店街文化、こういうものが再活性化するように全力でお手伝いをしていきたいというふうに思っております。
中山(義)委員 規制緩和とかグローバルスタンダードと言われて、どっちかといえばアメリカ・スタンダードなんですが、これがどんどん外圧で入ってきて規制緩和されていく。その結果、確かに日本の企業はグループ化して大きくなって、そして外国と伍してやっていけるようなそういう企業ができてくると同時に、今度は、大きな企業と小さな中小企業との大きな差がとんでもない空洞化をつくってきてしまったというようなこともあると思うんです。
 商店街に対する今の副大臣の思い、私もよくわかりましたので、これからも商店街に対していろいろ御支援をいただくというよりも、本当に同じスタートに立ってやりたいと思うんですね。ところが、スタートラインに立っても、どこか不当廉売だ何だと、前の方へちょろちょろっと二十メーターぐらい出ちゃって競争にならないわけですよね。そういう面で我々は、これからも公取にお願いすることはすごく多いというふうに思うんですね。
 それで、根來委員長には、おやめになる前にひとつでっかい仕事をやって、公取の仕事はこういうものだ、こうやってばあんと取り締まったというところを見せていただいて、お願いをしたいと思うんですが、我々はもうファンとして、きょうも前向きな答弁をいただきたいんですが。
 具体的にちょっとお話をしたいんです。これは、先ほど皆さんにお配りした資料ですが、これで、大きなところと中小企業でどのくらいの差があるかというんですね。地域店の、例えばミドリ電化、ネットというと仕入れですね、これよりさらに六一%安いのがミドリ電化の売っている値段なんですね。それからまた、ヤマダというのは、これはよく名前が出る安売りのヤマダですね、これも、大体仕入れ値より四〇%ぐらい安い値段で売っているわけですよ。これなんかは、ちょっと勝負しようと思っても勝負する気にもならないような状況でございまして、問屋さんから電化製品を仕入れるよりも、このヤマダ電機で買っちゃった方が安いぐらいなんですよ。こんなことがあったら商売にならないと思いますよ。
 私ども、このチラシを見ていますと、不当廉売に値するのも随分あるんですね。ですから最近は、先ほどお話しになったように、不当廉売の種類も、ポイント制みたいなことをやっているんですね。今までは値引きをしたのですが、それが余りにもメーカーやいろいろな制約があるので、では、買ったら一五%まけちゃうというようなポイント制度であるとか、この辺について、不当廉売の定義といいますか、要件がありますね、それをちょっと説明してください。
楢崎政府参考人 御説明いたします。
 不当廉売につきましては、公正取引委員会の告示で提示しておりまして、「正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、」という価格の要件でございます。
 通常、電気店なんかは多種多様な商品を扱っておりますので、仕入れ価格を下回っているかどうかといったことが一つのポイントになっております。それから、独占禁止法は競争秩序を維持する法律でございますので、価格水準だけじゃなくて、仕入れ価格を下回って廉売をして、その周辺の小売業者、競争者に悪影響を与える、競争秩序に悪影響を与える、価格要件と影響要件、この二つの要件から判断しているところでございます。
中山(義)委員 今そういうお話がありましたけれども、まさにヤマダ電機というのは、これはずっといろいろなチラシを見たけれども、ヤマダ電機のばかりですごいですよ。これを見ていると、本当に仕入れ値をさらに四割ぐらい安くしているというのは、これははっきり言うと完全に違反をしているわけですね。
 ところが、やはり皆さんの監視の目と、どういう法律でどういうふうにやるのかは私ども詳しくはわからないんですが、処罰をしていない。例えば、警告とか注意とかありますね。注意とか警告なんというのは、もう全然へっちゃらなんです。これを見ているとへっちゃらなんです。注意したって、またどんどん出しているわけですから。これを捕まえるというか摘発するというのは、もっと法的な措置でそういうことができないんですか。
楢崎政府参考人 私、もう少し補足いたしますと、この表でございますけれども、「地域店のネット」、多分仕入れ価格のことだろうと思いますけれども、不当廉売の要件は、他の小売店の仕入れ価格ということじゃなくて、行為をする、例えばヤマダ電機さんとかほかの量販店の、当該小売店の仕入れ価格を下回るかどうかといったことでございますので、今お示しいただいた資料から、この値段が当該量販店の仕入れ価格を下回っているかどうか、あるいはコストを下回っているかどうかについては直ちに判断できませんので、よろしくお願いします。
中山(義)委員 よろしくお願いしますと言われてもね。
 これは、どうやったって勝負にならないというところにやはり問題があるわけですよね。恐らくメーカーの方でも、出したときから、もう小売業者の一カ月七十万ぐらいしか売れないところは相手にしないとか、そういうことをやっているらしいんですよ。だから、メーカーも初めから差別をしてやっているようなことがあるんですね。これをやられたらかなわないですよ。
 先ほど古屋副大臣が、お年寄りや何かに対するいろいろな施策をやはりやって、地域社会のコミュニティーをうんとつくっていくんだと。だから、中の商店街の商売でも、お弁当をつくっていて、ひとり暮らしのお年寄りに持っていった、そういうようなこともやっていたり、いろいろやるんですが、電気製品なんかもそうだと思うんですよ。デジタルのものが多いので、電気屋さんがお年寄りのサービスを、アフターをやっていくとかケアをしてあげるということで売ろうとしているんですが、最近は、このヤマダ電機の売り出しになると年寄りが並んじゃっているというんです。
 結局、余りの値段の格差で、ほかのサービスじゃ通用しないくらいの格差が出てきちゃうんですよ。これではもう勝負にならないんです。このままやっていたら商店街はみんな消えちゃいますよ。そういう日本の文化や伝統を消していいのか、日本の本来のコミュニティーというか、町のそういうにぎわいとか、そういうものを消していいのか、こういう視点から我々は文句を言っているのであります。
 委員長、このチラシなんか見ていますと、もう一つ、これはさっき言われた不当表示ですね。この不当表示も、私ちょっと最近老眼になりまして、ちょっと小さい字なんか全く見えないんですよ。そういう見えないところに肝心なことがみんな書いてありましてね。本当に見えないですよ、これ。すごいのが書いてある。「但し、処分品、限定品、お一人様一台限りの商品、不当廉売品は除かせていただきます。」と、初めから不当廉売品があるということを認めているような。これはちっちゃいんですよ。ほとんどの人はこれは見えないわけ。見えるところは、こういうでかいところでしょう、スプリングセール、何割引きとかね。こういうようなことが完全に法律に違反しているということは、これは間違いないんでしょう。不当表示とかそういうのに相当するんでしょう。
楢崎政府参考人 他店よりも安いということを強調しながら、そして、その安くしますという条件が小さくかつ明瞭でないような形になっている、そのことによって、一般消費者から見て、実際には安くないにもかかわらず、安いというふうに誤認されるということになりますと、不当表示の問題になってくるわけでございます。
中山(義)委員 いや、僕は、もうちょっと取り締まる意欲を聞きたいんですが。そうなっていますと。大体、これが終わったころ、注意したとか警告したと。
 さっきもお話があったように、人数の関係で、事後で何かやってももうやり得になっちゃうわけですね。我々は、前から委員長にお願いしているのは、やり得にならないように、そこが問題だと思うんですね。今までやり得みたくなっちゃうのは、どこに原因があるんでしょう、委員長。
根來政府特別補佐人 今お話のあった件は、具体的な話でございますのでここで何とも申し上げかねますけれども、お話は十分承って、これをやる、あれをやるということになると問題がありますけれども、一般的に申しますと、私どもの方でよく調べまして、どういう問題点があるか。これはやはり、製造業者というものですか、卸売業者の方も当然問題があると思うのですね。どうしてそんなに安く買えるのかという問題が一つあるわけでございますけれども、そういう問題も含めてお話を承ったという前提で処理、処理といいますか、やらせていただくことになろうかと思うわけであります。
 ただ、繰り言みたいなことで申しわけありませんけれども、この不当廉売に対する考え方というのは大変難しい問題がありまして、例えば、今挙げられた電気店も、何回か私どもが対象として取り締まりに当たったことがあるわけですけれども、うちの役所の電話がパンクするぐらい消費者から文句が出るというようなこともございまして、やはりこれは、国民の一つのレベルとか、あるいは企業倫理とか、いろいろそういうことが固まって問題になっているものですから、その辺もひとつ先生方にもよろしくお願いしたい、こういうふうに思っておるところでございます。
中山(義)委員 委員長、今デフレ対策をやっていますね。デフレスパイラルというのは、まさに、向こうが安くしたからこっちも安くしていく、この競争で日本の経済は相当おかしくなっていませんかね。
 古屋副大臣、ちょっとこれは答弁してもらえますか。デフレ対策からいっても、デフレスパイラルに行ってしまいませんかね、どんどんどんどん安くして。どうですか。安きゃいいという今の意見もちょっと若干……。
古屋副大臣 デフレスパイラルかどうかというのは、この不当廉売だけではなくてもっといろいろな要素がありますので、ここで一つの例として出すのはいかがなものかなと思いますけれども、いずれにしても、やはり商売は、決められたルールの中で最大限それを合法的に活用して、コストを削減して、安いものを売って、そしてお客さんを引きつける、これは企業として不可欠なことだと思います。
 一方で、明らかに不当廉売とわかるようなものをやるというのは、これはやはり独禁法上も違反しているわけでございますから、そういった点がもし明確になれば、私どもとしても、公正取引委員会としっかり連携をとって対応をしていくべきだと思っております。
中山(義)委員 本当にそういうふうにしてもらいたいんですが、ある程度利益が出なければ企業というのはやっている意味がないわけですよ。だから中小企業が、自分の仕入れ値より安くほかで、大企業で売られちゃったらもうかなわないわけですね。だから、これが私はデフレスパイラルと。物にはやはり、値段だって、もうけやいろいろなのありますから。ね、委員長、値ごろというのがありますわね、大体。だから、値段があって利益が出てこないと、やはりだめなわけですよ。
 そういう面で、私どもは、正しい、適正な値段をどういうふうにしたらいいかということをお願いしているのでありまして、これからも何らかの形でこういうような問題はどんどん出てくると思うんですね。大企業対中小企業、この縮図の中で、やはり今やっているこの制度がもう一つ踏み込んでできないかどうか。
 だから、委員長、さっき私から言っているように、私はファンですから、七月にもうおやめになるというのは悲しくてしようがないんですよ、何とかここで一発、この不当廉売や不当表示について、残る皆さんにこれだというのを残していってもらいたいと思うんですね。
 それじゃないと、私たちが今言った、何というんですかね、市場を独占されちゃうんですね。今、大体、ヤマダ、和光、ダイクマ、これで八千三百億円ぐらい、コジマが五千二百億円、五社連合というのがあって、これで一兆三千億円。こういう人たちが、大企業でみんな安売りをやっているわけですよ。だったら、町の電気屋さんというのはもうかなうわけないんです。
 そういう面では、もう一度、委員長、この問題についていろいろ御見解を示していただいて、先ほどお話しのように、何かちょっと人数が少ないとか、組織がちょっとまだということがいろいろありましたので、これだけの組織をつくってもらいたい、これだけの人数があれば、民主党さん、やってくださいと言えば、我々も代表に話して、ぜひそういう、もっと積極的なものを出して、公正に商売が行えるようにしたいので、民主党に要望があったら言ってください、ここで。
根來政府特別補佐人 私どもの方は人数が少ないとかいう泣き言はございますけれども、要するに、今の小さな政府ということからいいますと、今の現状から、できるだけ個人の能力を発揮して、一致団結してやはりやるしかないわけでございますから、そういう点で、御要望の点も含めて、厳正にやっていきたいというふうに思っているわけでございます。
 結局、申し上げればすべて泣き言になってしまいますけれども、不当廉売というのもいろいろ法律的に要件があるものですから、だから、その要件を一つクリアするというのになかなか職員が努力しているわけでございます。その辺もひとつ十分御理解をいただきたい、こういうふうに思っております。
 いずれにせよ、きょう御提示になった問題については、広く調査いたしまして、適切な対応がとれれば積極的にとるようにいたしたいと思っております。
中山(義)委員 今、小さな政府というお話がありましたが、国を守るとか治安とか、こういうものに関してはやはり国が絶対やるべきで、年金の問題もそうですが、決まっているわけですね、国がやるべきことは。その中にやはり、一生懸命努力した者が報われるという社会でなければ、小さな政府にした意味がないと思うんですね。何でもかんでも自由にやらせちゃう、強い者が勝つ、弱い者は絶対負ける、負けたら、もう次は、敗者復活ができないというような、そういう制度じゃいけないわけですね。
 金融だってそうなんですよ。大企業は個人保証なんかしていませんよ。中小企業のおやじは全部個人保証をさせられているんですよ。これだって私は不公正だと思いますね。大企業は個人保証しないのに、中小企業のおやじさんは全部財産まで担保にとられて、しかも個人保証して、うっかりしたら命までとられちゃう。だから、さっき言った、電気屋さんだけじゃなくて、酒屋さんも、三十五人もこの三年間で自殺をして、二百四十人もいなくなっちゃった。これは、そういう金融機関からの不当な要求でやはりこういうことになったんだと思うんですね。
 そういう面では、我々は常に、商店街や何かが一生懸命努力して地域で活躍ができる、汗をかけば必ずその報いがあるという社会をつくりたいということで、決して保護をしてくださいと言うんじゃないんです、同等なスタートができるように、また、同じ土俵で勝負ができるようにしてもらいたいんです。
 中小企業の皆さんは決して弱者じゃありません。本当はかなり力もあって、強くて、この国を支えていこうという強い理念を持っている人ばかりなんですよ。その証拠に、経済産業省で安定化資金をやっても、もう次の日から返すなんという人が多いんですね。そのくらい、借りたものを返そうという、そういう意欲もありますし、いろいろな意味で中小企業の方はみんな一生懸命やっているので、ひとつその辺も御配慮いただきたいと思います。
 なお、一つだけ御礼があるんですが、書籍のことでいろいろ、再販のことについては維持していただきまして、私ども文学者としては、文学者というか文学青年ですね、青年といっても五十七ですからあれですけれども。立ち読み専門でございますけれども、立ち読みする本屋さんがないと、我々の教養が少し衰えてきちゃうものですから、やはり本屋さんを維持していく、こういう面でもいろいろ努力をされたので、ここで最後に、根來委員長に、この七月にいよいよということがあるんですかな、やはりやめないでいただいて、力を発揮してもらうのが一番いいんですが、もし、最後に残す言葉があればびしっと言っていただいて、絶対にこの不当廉売や何かを、また公正な取引をやっていく、このようにお願いをしたいと思うんですが。
 最後に一つ、まだやめたくない、おれはどうしてもこの仕事をやりたいんだというのがあったらどんどん言ってくださいよ。そのことは我々がやりますから。どうぞ最後に。
根來政府特別補佐人 何か、私というよりもうちの役所の職員は、今御指摘がありましたように、順風といいますか、長い苦難の中から今や世の中の応援を得てやっているところで、非常に使命感を持ってやっているわけでございます。これは、十数年前までは公正取引委員会というのは片隅に押しやられていたということも事実でございますけれども、今はむしろ応援者が多くて、使命感を持ってやっているということでございますので、これからもひとつ、十分応援いただいて、御支持いただいて、また御指導いただいて、適正な行政をやっていけたらこれ以上のことはないと、私はそういうふうに考えておるわけでございます。
 私個人のことは全く関係ございませんので、ひとつよろしくお願いします。
中山(義)委員 委員長のますますの御発展と御健勝をお祈りして、質問を終わります。
谷畑委員長 後藤茂之君。
後藤(茂)委員 後藤茂之です。
 それでは、早速質問に入りたいと思います。
 独占禁止法は、資本主義経済、市場システムを採用する我が国にとっては、公正で自由な競争を担保するという大変重要な役割を果たしておるわけでありますけれども、そこで、改めてということにはなりますけれども、委員長に独占禁止法の理念を伺いたいというふうに思います。
根來政府特別補佐人 これは、独占禁止法の第一条に書いておるとおりでございまして、一つは、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止する、あるいは、事業支配力の過度の集中を防止するというような手段をもちまして、最終的には、公正かつ自由な競争を促進する、それから、事業者の創意を発揮させて事業活動を盛んにして、雇用及び国民の実所得の水準を高める、それから、一般消費者の利益を確保する、こういうことになっているわけでございまして、この一条にすべて独占禁止法の理念が規定されている、こういうふうに理解しております。
後藤(茂)委員 おっしゃるとおりだと思います。
 しかし、独占禁止法については、昭和二十二年に制定されて以来、例えば昭和二十八年、五十二年、平成八年、これは制度改正でありますけれども、それから九年、何回かの大きな改正が行われました。それぞれが、今おっしゃった独占禁止法の基本理念に照らして、その時々の経済やあるいは市場の実態に対応し、その時々の時代の要請に対応して改正が図られてきたんだというふうに思います。
 そこで、少し一般的なことを伺いますけれども、歴史をひもといてみまして、それぞれの大改正の経緯やあるいはその改正の前提となった経済情勢の変化、そういったことについて委員長に伺いたいと思います。
根來政府特別補佐人 私から申し上げるのも非常に口幅ったいことでございますけれども、御質問でございますからお答えいたします。
 終戦直後の昭和二十二年にこの独占禁止法というのは制定されたわけでございますが、当時、御承知のように、軍閥と財閥が一緒になって戦争を遂行したということで、財閥解体ということが一つの目的となって独占禁止法ができたものと理解しておるわけであります。
 そして、昭和二十六、七年に講和条約ができまして、それまでは連合国軍の応援で独占禁止法も日の当たるところにおり、公正取引委員会も同じような立場におったわけでございますが、講和条約が成立後、日本の経済というものが大変疲弊しておりましたから、やはり規制と保護ということで、政府の方針がそういう方針で、自由な競争というのは後ろの方へ押しやられたというふうに感じているわけであります。
 ですから、長い間、公正取引委員会としては、不遇といえば語弊がありますが、そういう立場にあったわけでありますけれども、御承知のように、昭和四十八年ごろに石油ショックというのがございまして、あのころに、要するにトイレットペーパーが足りないとか石油が足りないとかいう話がありまして、そのときは商社の横暴というようなことが一つ問題になりました。そのときの社会背景をもちまして、昭和五十二年に課徴金の導入とかいうような大きな改正が行われて、その辺から独占禁止法の強化ということが叫ばれてきたのではないかと思うのであります。
 ところが、日米間の経済摩擦ということがまた背景になりまして、今から十数年前に規制緩和ということが主題になってまいりまして、そこで再び独占禁止法が日が当たるような立場に出てきまして、独占禁止法の自由な競争、公正な競争というのは、そういう規制改革、あるいは最近でいえば構造改革でありますけれども、そういう問題と軌を一にするということで、独占禁止法も公正取引委員会もしっかりやれというようなことで、実態的にはそういうことになっているのでありますけれども、それに応じて法律も改正をしてきました。
 早い話が、九条の持ち株会社の解禁といいますか、そういうこと、あるいは独占禁止法の適用除外の範囲の縮減というようなこと、あるいは一昨年ですか、お願いしました差しとめ請求の導入というようなこと、そういうようなことを次々と入れてきたわけでございますが、これは、私の口から言って少し問題があると思いますけれども、やはり独占禁止法も若干継ぎ当てでやってきたような感じがするわけでございますので、近い将来には整合性のある大改正が行われるんじゃないかというふうに私自身は感じているところでございます。
後藤(茂)委員 今のお話を伺っていると、一つの法制度というものは、歴史の大きな流れの中で、その果たす役割とかあるいは意義というものが大きく変わってくる、時代の要請に応じて変わっていくんだということがよくわかると思います。そして、その中で、法制度について、大きな一つの区切りが来たときにはまた見直すべきだというようなことだろうということも改めて感じるわけでありますけれども。
 一つ具体的に例を挙げて伺いますが、持ち株会社の解禁というのも、独禁法の歴史から考えてみると非常に大きな課題であったというふうに思いますし、その改正の当時は大変大きな議論があったというふうに思います。その解禁をやってみて、現在どう評価されているのか、お考えを伺いたいというふうに思います。
根來政府特別補佐人 平成九年に独占禁止法の九条の持ち株会社の改正が行われたわけでございます。このとき、与野党で大変議論をちょうだいしまして、私ども感謝申し上げているところでございますが、その結果は、九条自体に当たるものは十三社ぐらいでございますか、その波及的影響といいますか、それは非常に大きかった、こういうふうに思うわけであります。
 最近毎日、新聞を見ましても、経営統合とか企業の合併とか、それを見ない日はないわけでございまして、そういうこともこの九条の解禁ということが一つの引き金になっておったのじゃないかというふうに思うわけでございまして、この九条の改正というのは大変経済社会に大きなインパクトを与えたのではないかというふうに理解をしております。
後藤(茂)委員 私も今委員長のおっしゃったとおりの評価をしております。
 今回の改正で、この九条の一般集中規制についてでありますけれども、昭和二十二年の独禁法制定時に、これは先ほども委員長のお話にありました、旧財閥、経済の民主化政策ということを念頭に置いて創設された規定であります。もちろん、企業結合法制について言えば、市場集中規制というのがありますから、それと重なっている部分はあるわけであります。
 しかし、今回の改正においては、市場集中規制と重なる部分はあるとしても、市場集中規制だけではカバーし切れない可能性があるということでこの制度を残すということになっているわけでありまして、恐らく前提として、これまでの話からも明らかなとおり、企業グループだとか株式持ち合いだとか、あるいは系列取引だとか、そういう経済実態についての現状の認識がもとになってそういう判断がなされたのだというふうに思います。
 しかし、私は、今大変大きな国際的な大競争時代になっているわけでありまして、企業グループについても、株式持ち合いについても、はっきり言って、経済の情勢はここ数年でも大変大きく変わってきているというふうに思っております。そして、この制度というのは韓国と日本にのみある制度であります。別にだからといってなくせと言っているわけではありませんけれども、私は、現在、我が国においてはこの制度の歴史的な使命は果たされたのではないかというふうに思っているわけです。
 そして、今我が国が本当に取り組まなければならない喫緊の、しかしまだまだ何年もかかる大きな課題は、グローバル化しているこの国際社会の中で、一体どうやって、欧米の国と比較してみればもう既に二十年はおくれてしまったと考えられる構造改革をきちんとやっていくのか、そのことではないのかというふうに思います。
 本会議において私は質問をさせていただきました。答弁の中に、これは委員長の率直な御発言なんだと思いますけれども、将来のことはともかくとしてという御発言があったというふうに私は記憶をしております。その将来というのは、私は、もうほとんどあすにも迫るそういう将来なのではないかと思っておりますけれども、しつこいようになりますけれども、一般集中規制について、委員長の率直なお考えを改めて伺いたいというふうに思います。
根來政府特別補佐人 先ほども御質問がございましたのでお答えいたしましたけれども、この日本経済の実態というのは持ち合いとか系列とかということが非常に特徴的だ、こう言われていたわけでありまして、その時点では確かに事業支配力の過度の集中ということについて非常な危惧を持つのは当然でありまして、そういうことで一般集中規制を置いたのだというふうに理解しているわけであります。
 そこで、お尋ねのように、そういう日本経済の実態が現在もあるのかどうかということについては、相当変化していることも事実でございまして、系列とかあるいは大きな六大企業集団というようなものは相当破壊されているということも一般常識として理解しているところでございます。
 そういう時代を踏まえれば、私どもの研究会の中でも、もうこの一般集中規制というのは必要ないんじゃないかという意見もあるわけでございますけれども、大多数の意見は、そうはいうものの、系列とか持ち合いとかいうのはまだ完全に解消されているわけではなくて、いろいろ残滓というかそういうのは残っている、だからそれはやはり規制しなきゃならないという意見が多数説でございまして、私もそうだと思うわけであります。
 しかし、そういう残滓というのが本当に払拭されて、また一方では企業倫理というものがきちっと確立された暁には、一般集中規制というものはもう必要がなくなるんじゃないかというふうに思うのでありますけれども、最近の社会事情を見ましても、企業倫理、何も性悪説を言うわけではありませんけれども、企業倫理というのは必ずしも確立されていない、やはり大は小を食っていく、先ほども中小企業の問題も言われましたけれども、そういう傾向があるものですから、やはり一般集中規制というのは今のところは置いておく必要があるんじゃないかというふうな理解をしているわけであります。
後藤(茂)委員 不公正取引とかあるいは一般的な私的独占の規制の必要性については、これはもうもちろんのとおりでありますし、大変委員長には率直なお考えをお話しいただいているというふうに思っておりますけれども、今後の経済情勢の推移をよく見きわめていただいて、また公正取引委員会にもそういう意味で弾力的な検討を進めていっていただきたいというふうに思います。
 話は変わりますけれども、今、世界戦略を念頭にして、各国で合併による巨大企業が次々と出現をしております。また、国際競争力を確保するという国家戦略としても、各業界だとかあるいは各分野におけるナンバーワン企業をつくる、その企業がしっかりともうける、そしてそのもうけた部分をきちんとまた次の技術投資に向けて、そしてその企業やあるいは産業全体が継続的にきちんとやっていけるような、そういう集中と分散の戦略をとるべきだという議論も言われているわけであります。
 世界市場が非常に一体化している中で、国際競争にしのぎを削っている企業がたくさんあるわけですけれども、国内市場における競争条件のみを材料としてもし企業結合の可否を判断するというようなことになれば、国際的競争でおくれをとるということになりかねないということがあると思います。もちろん、現在国内市場における競争条件だけで判断をしておられるということはないということはわかっておりますけれども、グローバル化した世界的競争が急速に進展する中での企業結合のその考え方について委員長にお話を伺いたいと思います。
根來政府特別補佐人 おっしゃるとおりでございまして、やはり国際的な競争力をつけるということについては私どもも全く異論がないわけでございます。
 ただ、国内市場におきまして事業支配力の集中ということが行われれば、やはりそれは問題になるという立場でございますけれども、すべての判断は国際的な、言葉をかえますと、輸入圧力というものも十分考えて企業合併に対して対処しているわけでございます。
 私が公正取引委員会に参った時分は、よく二五%ルールということを言われたわけでございますが、これも若干誤解があるわけでありますけれども、今はその二五%どころか、五〇%でも八〇%でも合併を認めている例があるわけでありまして、これはやはり輸入圧力ということを前提にして判断しているわけでございますので、その辺、御心配はない、こういうふうに考えております。
後藤(茂)委員 そういうやはり新しい国際環境の変化とか時代の要請に適切に対応するということが必要だと思いますし、それからもう一つ重要なのは、対応するということだけではなくて、そのスピードということも非常に重要でありまして、結合審査とかいろいろな議論をするに当たっては、先ほども体制の整備等の必要についての指摘がありまして、それはもちろん前提として我々考えなければいけないことだと思いますけれども、的確、迅速な審議を行っていただく必要があるだろうというふうに思っております。
 それでは、次に話を移したいと思いますけれども、先ほど不当廉売の話、中小企業、商店街の維持というような話から、いろいろな話が出てまいりました。現下の厳しい経済情勢、これは町中に目を移してみますと、ぎりぎりの条件で苦しい経営を迫られている多くの中小企業が、文字どおり悲鳴を上げているという状況であります。そして、下請事業者というのは、どこかに逃れようとしても、もし取引の変更コストというものが非常に大きいときは、これは逃れようもありません。
 そういうことで、例えば買いたたきを例にとって申し上げますと、買いたたきについて言えば、これは不公正な取引の一類型として、優越的地位の乱用ということが独禁法に定められていますが、その特別法として下請代金遅延防止法というのが定められているわけでありますけれども、その四条一項第五号で、禁止される買いたたきの規定というのが定められております。もう当たり前のことですが、そこについて申し上げれば、「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。」というふうにあるわけであります。
 そして、この買いたたきに該当するおそれのある場合として、運用基準に幾つかの事例が示されております。その運用基準の中の事例を二、三紹介しますが、例えばこんなものがあります。一つに、「一律に一定比率で単価を引き下げて下請代金の額を定めること。」これはイにあります。それからウの項目の事例として、「親事業者の予算単価のみを基準として、一方的に通常の対価より低い単価で下請代金の額を定めること。」それからオには、「同種の給付について、特定の地域又は顧客向けであることを理由に、通常の対価より低い単価で下請代金の額を定めること。」このようなことが書かれているわけです。
 このような事例を聞いていますと、そこここの町の中小企業で今まさに起こっている、その起こっていることを聞いているような気が私どもにはいたします。もちろん、対象になるためには通常の対価に比し著しく低いという要件がかかっていなければならないということはよくわかっておりますし、何でもかんでもやれるというわけではありませんが、しかし、現状を考えてみると、先ほどの事例というのは、今、世の中で例のないことのようには思えないという率直な気持ちがいたします。
 買いたたきの違反行為の件数というのは、平成十一年に二十七件、それから平成十二年には四十三件というふうにふえてきてはおりますけれども、果たしてそれで本当に十分と言えるのだろうか。もちろん、中小企業が弱者であるから保護するとか、あるいはベンチャー企業の創業や中小企業を育成するための政策的な後押しをするために独禁法というものがあるわけじゃない、それが法の趣旨でないということは明らかだと思います。しかし、不公正な取引を放置して公正な競争は決して成り立たないわけでありまして、下請代金遅延防止法あるいはガイドラインに基づいて、その線に沿ってしっかりと、的確で、きちんとした執行を図っていく必要があるというふうに思っております。
 公正取引委員会の対応について、委員長の御見解を伺いたいと思います。
根來政府特別補佐人 下請業者というのはたくさんおるものですから、私どもと中小企業庁と手分けをしまして、一つは、書面審査ということをやっているわけであります。書面審査からヒントを得て立入検査などをやっているのが一つでございます。
 それからもう一つは、こういう時代を踏まえて、やはり書面審査だけではなかなか実態をつかみにくいというので、電気機械機器、一般機械機器、輸送用機器メーカーというような特定の業種を選びまして立入検査をしまして、適正な下請というのが行われているかどうかということを調べているわけであります。
 何しろ下請というのは、それ自体優越的な地位と非優越的な地位になっているものですからなかなか端緒がつかみにくい。聞くところによると、公正取引委員会から書面が行くと、その書面を持って親事業者のところへ行って、どう書いたらいいかと聞きに行くような話を私の身内からも聞くんですけれども、そういうことでなかなか聞きにくいわけであります。
 いずれにせよ、下請法には下請業者の保護を図るというふうに書いていますから、下請業者が不利益にならないように適切、厳正にやっていきたい、こういうふうに考えております。
後藤(茂)委員 今、お話ししようと思った下請業者の難しい立場についても委員長の方からお話をしていただきましたので、それだけよく御認識をしていただいているので、しっかりと適正な執行を図っていただきたいというふうに思います。
 次に、改正にかかわる少し具体的な事項について質問と指摘をしておきたいと思います。
 今回の改正によりまして、事業会社についても純資産基準等に基づく報告届け出制度が適用されることになります。これまで、先ほど委員長がおっしゃったように、持ち株会社は十三社あって、その十三社が出していたわけですが、それに加えて五、六十社の事業会社の提出が予定されていると思います。例えば、実質子会社の業務などについての報告などは、提出者にとって結構負担になるようなものもあるのではないかと私は思います。
 それで、合理的な報告届け出内容となるように、この改正の際に改めて見直しをすべきだと考えますが、お考えを伺います。
鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、現行の第九条第六項に基づく報告の内容については、当該報告制度が導入されました平成九年当時は、どのような持ち株会社が出現してくるか必ずしも分明でなかったものでございますので、比較的詳細な報告を求めることになっています。
 しかしながら、負担軽減の観点から簡素化の要望もございますし、また平成九年以降、実際に持ち株会社が設立され、これらの持ち株会社に関します報告によって実際の持ち株会社グループの状況がある程度わかってきたこともございます。
 したがいまして、改正後の第九条第五項の規定に基づきます報告の内容については、第九条のガイドラインの考え方に基づいて、事業支配力の過度集中に該当するかどうかを監視するための必要最小限の事項について報告を求めることとするという観点から見直しをすることとしています。
 今御指摘いただきましたように、実質子会社についても、これまで当該会社の属する事業分野における市場占拠率とか順位等のデータを記載させておりましたが、これらについては記載不要とすること等報告事項を大幅に縮減する方向で考えたいと思っております。
後藤(茂)委員 大変前向きな、具体的な答弁をいただきまして、ありがとうございました。
 それから、十一条の適用除外についてちょっと伺いますけれども、例えばデット・エクイティー・スワップによる一年以内の五%を超える株式保有のようなものについては、これは経済再生のための対策として急を要するメニューの中に入っていると思います。その他緊急を要する事態については、この適用除外の条項を的確に使って対応すべきだというふうに考えますけれども、見解を伺います。
鈴木政府参考人 第十一条の適用除外につきましては、近年、関連法制度の改正等金融業を取り巻きます状況が大きく変化しております。このような変化に迅速に対応するために、今回の改正案におきましては、他の国内の会社の事業活動を拘束するおそれがない場合は、適用除外の内容を公正取引委員会規則で定めることが可能となる規定を設けることとしております。
 このデット・エクイティー・スワップのような問題は、他の国内の会社の事業活動を拘束するおそれがない場合に当たると思いますので、御指摘のような事態について、迅速かつ的確に対応することができるようになるものと考えております。
後藤(茂)委員 デット・エクイティー・スワップについて、一年以内の五%超の取得ということについては、では、入るということでありますね。――はい、わかりました。ありがとうございます。時間がないので結構です。ありがとうございました。
 最後に、総務省から来ていただいておりますので質問させていただきたいと思います。
 総務大臣は、公正取引委員会の所轄大臣ではあるが所管大臣ではないというふうにおっしゃっておられるわけでありますが、総務省は、別にいいとか悪いとかいう意味じゃなくて、独禁法の運用という点からいいますと、利益相反の議論の非常にたくさん出てくる電気通信を所管する大臣であります。所轄大臣であるとして、そして、公正取引委員会の職務というのは法律にも独立性がきちんと明確にされているとはいっても、どうもそういうことを考えると、所轄大臣として本当に適任なのかなというふうに思うわけであります。
 規制改革推進三カ年計画にも、検討すべきであるというような内容が書かれているというふうには思いますけれども、今の総務省の所管を内閣府に移管するということも考えられたらいいのではないか、総務省は行政管理の関係もやっておられるわけですから、そういう観点も含めて、総務省のお考えを伺いたいというふうに思います。
若松副大臣 まず、公正取引委員会でございますが、いわゆる三条機関ということで大変権限の強い独立行政委員会として設置されているわけであります。そういうことで、今委員が御懸念のいわゆる総務省の利益相反ということでありますが、私どもは、その独立性、中立性は法律でもしっかり担保されておりますし、現実には、総務省のビルと公取のビルというのは違うところにありまして、日常的な交流というのはほとんどありません。
 そういう状況でありますので、私は、公正取引委員会は、現在の総務省のいわゆる外局のままでも、独立、中立的に、競争政策の積極的な展開を図り、その特性にふさわしい機能を発揮していくことができる、そのように確信しております。
 公正取引委員会の位置づけにつきましてでありますが、先ほど委員も御指摘のいわゆる規制改革の議論の一つともなっているわけでありまして、今後の検討課題の一つとして認識しております。
 総務省といたしましては、中央省庁等改革推進本部における慎重な検討を得ながら現在の体制となったものであることも踏まえて、引き続き慎重に検討していきたい、また、今後の検討課題の一つと、そのように理解しております。
後藤(茂)委員 総務省に伺うというのも意地悪だったかもしれないと思っておりますが、公正取引委員会がますますこれからきちんと仕事ができるような体制を考えていかなければならないという気持ちからの言葉でありますので、お許しをいただきたいと思います。
 これで終わります。
谷畑委員長 達増拓也君。
達増委員 独占禁止法の見直しであります。
 この独禁法の見直しということについては、独占禁止法研究会報告書、去年十月に出たものでありますけれども、この序論の部分で「独占禁止法の見直しの必要性」というのがありまして、その中で、「特に最近は、経済活動のグローバル化やIT革命の進展等によりその変化は著しいものとなっている。」その変化というのは、我が国経済社会の構造の変化ということであります。
 このグローバル化とIT革命の進展ということが、やはり独禁法を見直していかないとということの一番重要なポイントであると思います。このグローバル化とIT化ということでありますが、これは決して目先の変化ではないと考えます。
 いわゆる長い十六世紀、大航海時代以来の近代資本主義あるいは市場経済というものが大きく変容し、これは進化していると言ってもいいかもしれませんけれども、マルクス経済の言葉を使えば、資本主義の新たな発展段階として、情報資本主義というような段階に入ってきているのではないか。近代経済学の方の言葉を使えば、高度に情報化された市場経済というものが今立ちあらわれてきているのではないか。いわゆるニューエコノミーという言葉がありまして、グローバリズムとITに特徴づけられる新しい経済ということですが、結局そういう大きい変容、進化のことなんだと思います。
 自由党といたしましては、この情報化というキーワードで市場というものをより効率的、公正、強靱、かつ優しいものにしていかなければならないと考えておりまして、自由党日本一新の一環として、独禁政策の見直しを進めていく必要があると考えております。
 今回改正されるところの目玉は、大規模会社の株式保有総額制限というものを廃止し、持ち株会社設立等の制限とあわせて、一括して、事業支配力の過度集中となる会社の設立等の禁止というふうに独禁法第九条を整理することが今回の見直し、改正の目玉でありますけれども、こうなってきますと、ますますこの事業支配力の過度集中という意味が重要になってまいります。
 公正取引委員会は、五年前の改正の際に、いわゆる持ち株会社ガイドラインというものを制定し、「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」ということで、第一類型から第三類型まで具体的に例示しつつ、こういうものが事業支配力の過度集中だとしております。
 これを一つ一つ見ていきたいのでありますが、まず、第一類型。「持株会社グループの規模が大きく、かつ、相当数の主要な事業分野のそれぞれにおいて別々の大規模な会社を有する場合」、この「持株会社グループの規模が大きく、」というのは、「総資産の額の合計額が十五兆円を超えるもの」ということになっております。
 現在、持ち株会社グループ、五年前の法改正以来幾つかできているわけでありますけれども、総資産が十五兆円を超えるようなものというのはほとんどない、NTT関係ぐらいしかないわけでありますけれども、そもそもなぜ十五兆円かという問題であります。
 これは非常にわかりやすく、数字的に、客観的に、ある数字以上になってはいけないという規制の仕方なんですけれども、まず、そもそもなぜ十五兆円なんでしょうか。
鈴木政府参考人 事業支配力の過度集中に該当する場合として、ただいまおっしゃられました持ち株会社グループの規模が大きいことについて、総資産の額が十五兆円を超えるものとされておりますのは、相当数の分野において大きな企業を傘下におさめている、そういった巨大な企業グループということで、我が国におけるいわゆる六大企業集団のうちの最小のものの総資産合計額が約二十一兆円であるところ、このような企業集団のメンバー企業のすべてではなく、そのうちの主要な企業が統合された場合には、この事業規模が著しく巨大であると考えられますので、その辺で十五兆円というふうに定められたもので、ガイドラインで示したものでございます。
達増委員 六大企業集団の中の一番小さいところをもとにして決めたということで、確かに、思い出せば五年前のこの法改正のときに、財閥復活を懸念という議論がありました。私は、五年前の商工委員会での審議の際にも、財閥の復活を懸念するというのは極めてアナクロニズムであるということを指摘したのでありますけれども、実際この五年間、そういう財閥の復活というようなことは起きていないんだと思います。そういう意味で、この第一類型のあり方というのもやはりちょっと考え直した方がいいんじゃないかと思います。
 次に、第二類型について。これは、「大規模金融会社と、金融又は金融と密接に関連する業務を営む会社以外の大規模な会社を有する場合」、持ち株会社が、大銀行と他の不動産会社であるとか商社であるとか、そういう会社を有する場合という類型なんですけれども、これも、古い金融資本的な、マル経でいう金融資本主義が問題だという、そういう古典的な問題意識に基づいた類型じゃないかと思っております。
 といいますのは、最近、トヨタ、イトーヨーカ堂、ソニーといった、これは大規模会社でありますが、そういった会社が逆に銀行業に参入していく、そういう金融以外の分野の会社が金融の中に参加していく、参入していくということが起きているわけであります。
 そうしますと、今、特に金融業界は非常に不安定といいますか、動乱の時代といいますか、今ある大銀行が衰退あるいは破綻し、それに対して、別の産業から参入してきた新しい銀行というものがどんどん伸びていく可能性もあります。結果として、この第二類型に当てはまってしまう。持ち株会社の下に大規模金融会社と大規模会社が入ってしまうことになるケースもあり得ましょうけれども、そういう新しいタイプの異業種への参入ということを抑止、抑圧することがあってはならないわけでありまして、そういう意味で、この第二類型がそういう新しい動きを妨げてしまう危険性がないかという懸念を持つんですけれども、この点いかがでしょうか。
鈴木政府参考人 持ち株会社ガイドラインで規定されている第二類型は、単体総資産が三千億円を超える大規模な会社と単体総資産の額が十五兆円を超える大規模金融会社が同じグループに属する場合に、事業支配力が過度に集中することとなるとしたものでございます。
 このような総資産の額が十五兆円を超えますような大規模金融会社に当たりますのは、いわゆる都市銀行レベルの金融機関でございまして、例えばトヨタとかイトーヨーカ堂、ソニーといった大規模会社が金融に参入する場合でも、持ち株会社を通ずるにしても、あるいは直接株式を保有するにしろ、都市銀行レベルと結びつくというのは考えにくいことでございますので、具体的なことで参入の妨げになるものでないと考えております。
達増委員 今の段階では、新しいタイプの異業種から金融業への参入ということが、大規模金融会社というところまでは至っていないんでしょうけれども、そういう可能性、フロンティアというものは広くあけておいた方がいいんじゃないかと思うわけであります。
 この第二類型というものは、マルクス経済でいう資本主義の発展論で、商業資本主義が、工業資本主義、そして金融資本主義になって、それは必然的に国家独占資本主義、国独資になって、それはもう戦争と革命に至る、だから、金融資本主義はよくないというような、非常に古典的な、マル経的な問題意識が背景にあるんじゃないかなということも気になっておりまして、やはりここは見直していかなければならないと思っております。
 次に、第三類型であります。「相互に関連性のある相当数の主要な事業分野のそれぞれにおいて別々の有力な会社を有する場合」ということです。
 ここで気になるのは、相互に関連性のある事業分野というところで、補完・代替関係というものが挙がっていまして、いろいろな具体的な例示もガイドラインの中にあるんですけれども、最近、コンテンツビジネスとメディア産業というものを統合していくということが活発に行われておりまして、例えば、ゲーム機製造をやるところがゲームソフト制作もやるといいますか、異なる分野が統合されていく。ビデオデッキ製造とビデオソフト制作、さらにインターネットプロバイダー業と映画制作業、これは、アメリカ・オンラインが映画会社やテレビ会社を買収するといった、そういうメディアとコンテンツの組み合わせということが新規産業を拡大し、市場の効率化ということにも役立っているんじゃないかと思うんですけれども、こういったことも、この第三類型、補完・代替関係ということで規制されていくようになるとよくないと思うんですが、この点いかがでしょうか。
鈴木政府参考人 第三類型におきます個別の事業分野が補完・代替関係にあるかどうかは、ユーザーの選択状況等の個々の状況を参考にしつつ合理的に判断する必要がございますが、持ち株会社におきまして事業支配力の過度集中となりますと、既に確立されたような大きな産業分野と申しますか事業分野において有力な企業、しかも、そこの事業分野が関連、補完する関係にあるところを押さえていく、そういった巨大企業グループを規制するものでございますので、ガイドラインの中でも、主要な事業分野についても一定の大きさのある業種ということで、具体的には、日本標準産業分類三けた分類のうち、売上高六千億円を超えます業種で判断することとしているところでございます。
 御指摘の業種は、すべて発展途上と申しますか、日本標準産業分類三けた分類に区分されておりませんので、そもそも第三類型の主要な事業分野に該当しないこととなりますので、少なくとも現段階では、補完・代替関係に当たることはないと考えております。
達増委員 今現在、このガイドラインというものがそれほどふぐあいを生じていないということかもしれませんけれども、この三つの類型を検証して改めて思いますのは、やはり形式的要件で縛る一般集中規制ではなく、実質弊害規定に転換すべきではないかというこの一般集中規制というあり方の問題であります。独占禁止、反トラストということについて、実質弊害規定に転換していくべきではないか。
 といいますのは、統合されて会社が大きくなっていく、企業グループが大きくなっていく場合に、いい集中と悪い集中があると思うんですね。悪い集中は、事業支配、市場支配ということで、市場が非効率的になり、結果、市場が萎縮していく。
 そういう古典的な独占、そういう悪い集中がある一方で、今、グローバル化、IT化という中で、一つは、これは、アメリカのローレンス・サマーズ前財務長官、今ハーバード大学の総長をやっていますが、このサマーズ氏が指摘していますけれども、IT化ということで、初期費用が高く、追加的な製造の限界費用がもうはるかに低い、そういう産業がどんどん伸びている。これは、限界費用を価格にするということでは費用の回収が不可能で、自然独占ができてしまう。アダム・スミスの完全競争モデルが通用しないような産業が今どんどん伸びているということをサマーズ氏は指摘しておりますが、まず、そういうニューエコノミー型産業が拡大しているということが一つあります。
 もう一つは、IT化ということが、いわゆるナレッジマネジメントなどの新しい経営手法をどんどん広げて、企業経営のあり方、統合ですとか集中ですとか、そういう企業経営のあり方についても新しい可能性を広げている。ですから、むしろ集中によって、新規産業の拡大や効率化につながっていくいい集中というものがあるのではないか。
 サマーズ氏は、先ほどの指摘は、実は去年アメリカ放送協会で行われたニューエコノミーにおける競争政策という講演の中で指摘されているんですけれども、同じ講演の中でサマーズ氏は、反トラスト政策の目的は効率であって競争ではないということを言っています。目的は効率であって競争ではない。
 これは自由党的に翻訳しますと、独禁政策の目的というのは、より情報化された市場、情報化という意味でより健全な市場をつくっていくことであって、それを妨げる部分をチェックしていくことが独禁政策の目的である。そういう理念からいたしまして、やはり一般集中規制という形ではなくて、実質弊害規定という形でチェックしていくのが独禁法のあり方として適当ではないかと思うわけですが、この点いかがでしょう。
鈴木政府参考人 独占禁止法の第九条で禁止しております事業支配力が過度に集中することに該当しますのは極めて巨大な企業グループでございまして、この規定がベンチャー企業などによる新規産業の拡大等の妨げになるものではないと考えています。むしろ、中小企業あるいは新規参入を萎縮させるような極めて巨大なグループの存在を規制する、抑制することによって中小企業の自由な活動を守ることになると考えております。
達増委員 もうちょっと一般集中規制の話を続けますけれども、今指摘したのは、理念的な観点からの話でありました。
 今の日本の独禁政策、また今までの独禁政策は、古いマルクス経済、古い近代経済、どうもそういうものの影響を受けていて、なぜ独占がよくないのかということについて、一つは、先ほど申しましたように、マルクス経済的に、独占というものは、結局、金融資本主義から国家独占資本主義に至って、戦争とか革命に至る、そういう終末論的なイデオロギーが一つ背景にある。一方で、近代経済学的な完全競争モデルの楽観論、レッセフェール、見えざる手、自由市場というものを実現しさえすればすべては丸くおさまるという、そういう楽観論。相異なる二つのイデオロギーですけれども、その両方が入りまじった形が日本の独禁政策の背景になってきたんだと思うんですね。
 近代経済学の方は、完全競争モデルの果てに合理的期待形成の理論というものができまして、市場に参加するすべての経済主体は、全情報を入手し、合理的に判断して経済行動を決定するという。でも、これはもう本当はあり得ない話。モデルとしては美しいわけで、それはそれで、実際、政策の背景としても有効に機能した部分もあったのですけれども、これは、アインシュタインの相対性理論でいうと特殊相対性理論の世界であって、一方で、やはり一般相対性理論というものが必要だと思うんですね。つまり、合理的期待形成の理論と同時に、それは特殊市場理論でありまして、一般市場理論というものが必要。そのためには、情報という観点で市場の理論を組み立て直すことが必要。マル経的に言えば、資本論というものを情報論という形で書き直してマルクスを超克していく。そして、近経的に言えば、市場、経済の分析を情報という観点から組み立て直す。
 これによりまして、右と左を超えたポスト冷戦時代、ポスト五五年体制の経済理論というものを構築し、自由党はそれをベースに新しい政治をつくっていこうと考えているわけであります。独禁政策においても、独禁政策というものはまさにその理論を適用していく格好の場であると考えておりまして、この一般集中規制の見直しということについても、そういう理論的背景を持ってやっていこうと思っているわけです。
 もう一つ、その理論的背景と同時に大事なのは、日本の事情、日本特有の事情という点であります。これに関して、公正取引委員会は、去年、大規模事業会社とグループ経営に関する実態調査報告書というものを発表しておりまして、日本の企業集団の問題について調査をしました。
 これを読んで思いますのは、日本の企業集団の問題というのは、事業支配力が過度に集中することというよりも、いわばもたれ合いと排除ということが問題なのではないか。支配というよりももたれ合いということが問題であって、今、旧財閥、六大企業集団というものを超えた合併、例えば三井住友銀行の誕生など、そういう動きがあるわけですけれども、これによって新しい統合、新しい集中ができていくということなんですが、それはもたれ合いから離れていく、そういうもたれ合いからの脱皮でありまして、むしろ好ましい傾向だと思うんですね。
 日本のこの独占の問題、欧米、特にアメリカのような支配、ある一人の個人、ある一つの会社、それが強力に、ある事業、ある市場、いろいろな分野を強力に支配することによる弊害というよりは、むしろそういう支配は余りなくて、複数企業の間のもたれ合い、それがその中で不透明なことを引き起こし、そのもたれ合っている集団以外のものを排除していく、そういう形の日本固有の独占の問題というのがあると思うんですね。
 そういう観点からしまして、一般集中規制というのを厳格に運用して、かかるもたれ合いと排除の論理から脱皮して新しい企業のあり方を追求していくことも規制してしまうとかえってまずいと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
鈴木政府参考人 一般集中規制は、今回の改正案によりましても、極めて巨大な企業グループの出現を防止するものでございまして、これは相当数の異なった産業にまたがることを考えておりますが、これによって、企業グループの枠を超えた企業同士の合併を制約したり、規模の小さい新興企業が持ち株会社グループを設立するような場合を規制するものではございませんので、企業間のもたれ合いないしは相互依存の体質から脱皮しようという動きを萎縮させるということはないものと考えております。
達増委員 日本固有の、日本特有の事情ということで興味深いケースとして、JALとJASの事業統合の問題があると思います。
 これについて公正取引委員会は報告を出しておりまして、世間的には、そこで懸念を示したとか問題点の指摘を行ったとか言われているんですけれども、報告書をよく読みますと、実は、問題なのは、既に業界に存在している同調的な運賃設定行動、横並びで運賃を上げたり下げたりするということですね、それや、新規参入による競争圧力の限定性、なかなか新規参入ができないという、そういう既に航空業界に存在する問題が、JALとJASの事業統合でさらに悪化するおそれがあるということであって、新たな統合による集中ということよりも、既にある慣行や規制が問題の本質であって、そこを改善すれば集中自体、事業統合自体には問題はないということになっているんじゃないかと思います。
 必要なのは、運輸行政として、行政改革、規制改革として、業界内のそういう慣行をなくし規制を改革していく、そういうところをきちっとやっていくことが問題の本質であって、事業統合自体には、この場合、改善が伴えば、既存の業界に存在する問題の改善さえあれば集中自体には問題がないという理解でこれはいいんでしょうか。
鈴木政府参考人 ただいまお尋ねのありましたJALとJASの事業統合の件、これは私ども、日本の国内航空旅客運送事業については、その市場を見ますと、当該事業への新規参入が困難な状況にあり、新規参入による競争圧力が限定的なものになってございます。
 大手航空会社は、このような状況のもと、これまでも同調的な運賃設定行動が見られてきたところでございます。本件統合計画が実施され集中度が高まれば、この同調的な運賃設定行動がさらに容易になると考えられ、この点を本件統合の問題点、すなわち、この統合によって集中が進むことによる競争制限的効果として指摘したところでございます。
 こうした市場の状況、新規参入の蓋然性あるいは同調的な運賃設定行動の改善とか、そういった要素の変化によって集中が進むことによるその後にあらわれる競争制限的効果の判断というのは、また検討しなければいけないと考えています。
達増委員 公取としては、既存の環境、既存の規制や既存の業界秩序に基づいてJALとJASが統合したときの変化というのを客観的に分析するということでこういうことになっているんでしょうけれども、立法者としての教訓は、問題は、やはり運輸行政における規制改革をやらなきゃだめだということなんだと思います。
 さて、罰金の話を伺いましょう。
 今回の改正で、罰金が一億円から五億円に上がります。しかし、自由党の情報論的な市場理解に基づきますと、市場というものは、価格を通じて財・サービスと消費者の選好に関する情報の交換を行って、生産と販売、消費と労働に関する集団的意思決定を行う場であります。市場の機能は情報処理と意思決定ということでありまして、これは高度情報社会になればなるほど重要になってまいります。
 経済社会最重要のインフラと言ってもいいこういう市場の機能をゆがめること、それはもう、市場を傷つけるということは社会を傷つけることでありまして、天にあだなす振る舞い、古代日本のアマツツミ、クニツツミとかいうのを使いますと、これはアマツツミに当たる重罪と考えます。そういう意味で、罰金の上限五億円というのはまだまだ低いのではないかと考えますが、この点はいかがでしょう。
根來政府特別補佐人 これは改正前、現行は一億円であったわけでございまして、非常に常識的な言い方で申しわけありませんけれども、一億円が五倍になるというのは、私どもとしても相当思い切った重罰をお願いしているわけでございます。
 御承知のように、刑罰というのは、これも余り言いたくありませんけれども、横並びというのが若干ございまして、その横並びからいってもこの刑罰は、罰金五億円というのは相当重い罰金だと私どもが認識しているわけでございます。
達増委員 けさの新聞は、JAS法、罰金五十万円を一億円にするということが報じられておりまして、やはりそういう市場の健全性を守っていくためには今強い措置が求められると言っていいんだと思います。
 最後に伺います。
 地方有識者と公正取引委員会との懇談会というものが定期的に行われておりまして、去年十月行われたところでは、次のような意見が複数の地域で多数出されたと聞いております。一つは、「談合に対して厳正に対処していくとともに、発注者の関与に対しても有効な措置を採るよう努めるべき。」もう一つは、「不況の深刻化とともに、下請事業者、中小事業者は一層困難な立場に立たされており、公正な競争の確保は重要な課題。」である。この二つの意見に対して、どのように対応していくのか伺いたいと思います。
根來政府特別補佐人 私どもの所管することは、一昔でいえば、大砲、飛行機からラーメンまでというように非常に間口が広いのでありますけれども、その中で一番問題なのは、談合をどうするかということであり、先ほども御説明いたしましたように、発注者の問題をどうするかという問題があるわけでございます。発注者の問題は、幸い国会でいろいろ御議論があるわけでございまして、それを期待しているわけでございますが、談合については引き続き厳正に対処したい、こういうふうに思っております。
 それから二つ目は、これも先ほど来いろいろお話がございましたように、中小企業の保護というと私どもの範疇から外れるわけでございますが、そういう不公正な取引方法ということをどういうふうにして根絶していくかというのは二つ目の大きな問題でございます。
 この二つの問題を主として念頭に置いて厳正に、適正に対処したい、こういうふうに思っているわけでございますので、引き続き御指導をお願いしたい、こういうふうに思っております。
達増委員 終わります。
谷畑委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子です。
 まず、委員長にお伺いします。持ち株会社の解禁後五年を経ての今回の改正の総括について伺います。
 昭和二十二年の独禁法制定以来、一貫して禁止されてきた持ち株会社は、平成九年の改正により解禁されました。その際、改正法の附則第五条において、禁止される持ち株会社の範囲、持ち株会社の事業活動の実態を把握する方法、大規模会社の株式保有総額の制限の対象となる株式の範囲について、施行五年後に政府が検討を加え、必要があれば所要の措置を講ずるとされております。今般の改正案では、この附則に基づいて検討を加えた結果、第九条の二で規定されている大規模事業会社の株式保有制限を廃止し、第九条の持ち株会社規則と一本化するなどの措置がとられているものと理解しております。
 そこで質問ですけれども、平成九年の改正以降、持ち株会社の規定である第九条に基づく報告、届け出は平成十四年三月末現在では十三社にすぎず、検討するのに十分な件数であったかどうか疑問に思っております。平成九年の持ち株会社解禁当時と比べて、日本を取り巻く経済社会状況は大きく変化しております。この五年間についてどのような総括をした結果、今回の改正案につながったのか、具体的に御説明いただきたいと思います。
根來政府特別補佐人 平成九年に、持ち株会社の解禁といいますか、独占禁止法の目的に反しない範囲での改正をお願いいたしました。その際、そういう附則というのがつけられたこともよく承知しているわけでございます。その後、いろいろ研究会を催しまして、また、有識者の御意見を聞きまして、九条の二という一般集中規制についての改正を行うかどうかということについて、内外ともにいろいろ研究したわけでございます。
 おっしゃるように、あるいは先ほどからお答えいたしましたように、その間、我が国の経済状態は大きく変化しているわけでございますけれども、なおやはり系列とか株式の持ち合いというのは完全に払拭されていないというような考え方で、一般集中規制というのは今廃止するのは時期尚早だろうということで、ああいう一律総資産額とか総資本額とかでの株式の所有禁止ということをやめて、九条の言葉に平仄を合わせて改正をお願いしているわけでございます。
大島(令)委員 少し具体的な御答弁をお願いしたわけなんですけれども、さらに質問させていただきます。
 では、これによって、株式所有による企業支配を規制対象として取り上げることができるのかできないのか、引き続きできるのかできないかということを伺いたいと思います。
鈴木政府参考人 一般集中規制も含めまして、独占禁止法の中で、株式を持つこと、あるいは取得することによりまして相手方の会社の意思決定等を支配するということについて、それが、ある市場においての競争制限効果を持つ場合は市場集中規制ということで考えますし、また、他分野の大きな企業等の株式をそれぞれ所有することによって、企業グループとして日本経済の中で悪影響を及ぼすような存在になりますときは、これは一般集中規制、この改正案におきます新第九条で規制、防止を図っていくものでございますので、ただいま先生お尋ねのような株式の所有によるということでは、独占禁止法で引き続き規制が図られることになります。
大島(令)委員 もう一度確認ですけれども、株式所有による企業支配を規制対象として取り上げることはできるというふうに理解してよろしいんですね。
鈴木政府参考人 さようでございます。
 繰り返しになりますが、株式所有という手段によって、市場における競争を制限するとか、あるいは巨大な企業グループを形成するとか、そういった場合に規制対象になるということでございます。
大島(令)委員 それでは、規制緩和の推進とかは競争政策の拡充になるわけですけれども、すなわち、独禁法の運用強化が前提とならなければいけないと思っているんですが、この辺の基本認識はどのように考えておられるのか御答弁ください。
鈴木政府参考人 今回の一般集中規制の見直しに係る法改正によって、一律形式的に大規模会社の株式保有を制限していた第九条の二を廃止し、事業支配力の過度集中という国民経済全体に影響を与えるような弊害の発生を防止するための必要最小限な規制に限定される、これは規制緩和ということで考えておりまして、こうしたことによって、企業による株式保有について自由度が高まることになりますので、経済実態を踏まえた事業再編が行いやすくなるという、その規制緩和による効果は出るものと考えております。
大島(令)委員 いや、私がお尋ねしたいのは、規制緩和を推進するという政府の方針に沿っていきますと、規制緩和というのは、すなわち競争政策を政府は打ち出しているわけですよね、ということは、ますますその競争の中で独禁法の運用強化が前提とされないと、消費者にとっては非常に不利益な事態が商行為の中で生じる、そういう観点からお尋ねしておりますが、その辺の基本的な確認は公正取引委員会としてはどう考えているのかということをお尋ねしているわけです。
根來政府特別補佐人 今まで我が国の経済社会というのは規制と保護ということで進んできたわけでございますが、おっしゃるように、規制改革あるいは構造改革ということで、そういう規制とか保護とかをなくして、事業者等の自由な競争でやる、競争で経済を運営していくという方向に転換しつつあるわけでございます。
 しかしながら、自由な競争というのも無制限に、したい放題するという話ではございませんで、そこにはやはり公正なルールということは必要であろうかと思うのでございます。その公正なルールというのは、すなわち独占禁止法もそのうちの大きな一つでございますから、独占禁止法を適正に運用することによって公正なルールというレールを敷いていく、そのレールの上で自由な競争をやっていくというのが今の社会的構造ではなかろうかというふうに理解しております。
大島(令)委員 では、委員長の御答弁のとおり、独禁法の運用強化がますます前提になるというふうに理解してよろしいわけでしょうか。
根來政府特別補佐人 運用強化というと何かまた厳しい規制を受けるような感じがしますけれども、そうではなくて、公正なルールを決めて、そのルールが守られているかどうかという監視を十分私どもがやっていくということであろうかと思います。
大島(令)委員 では、次の質問に移ります。
 今度の改正案が今後の日本経済の雇用にどのような影響を与えるかということについて質問をいたします。
 大規模事業会社による株式保有の制限が、資本金、純資産額を基準とする一律の総額制限から、事業支配力の過度の集中となる会社の設立を禁止するという、ある意味、実効的と思われる反面、抽象的とも考えられる基準による規制に移行します。公正取引委員会では、現行の「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」、いわゆる持ち株会社ガイドラインを今改正に伴って改正するとしておりますけれども、企業にとってより具体的な基準を示し、透明性を高めることを期待したいと思っております。
 一方、ガイドラインによってどのように基準を明確化するかということは、株式保有に関する総額規制が課せられていた一定規模以上の事業会社にはすべてこれが撤廃される。ということは、事実上は規制が緩和されるということになると思います。
 質問でございますけれども、今回の規制緩和は、グローバル化が進展する中で、攻勢を強める外国資本に対する日本企業の競争力強化をねらっているものなのか、それとも純粋に国内経済を活性化することを目的としているのか、伺いたいと思います。
 もう一つは、事業持ち株会社を含めた持ち株会社による企業統合は、一般的には経営の効率化につながり、競争力の向上につながると思いますけれども、今回の株式保有規制の緩和の結果、雇用は確保されるのか、これらの点に関して、公正取引委員会の認識ですとか、今後の、この法が施行されての後の見通しに関して見解を伺いたいと思います。
鈴木政府参考人 今回の法改正は、独占禁止法の観点からも、事業支配力の過度集中防止のために必要最小限の規制に限っていくということでございまして、この点について、独占禁止法、一般法として適用されるものでございますので、まず第一の点の、外資の攻勢に対して国内企業の競争力を確保するとか、そういった特別の目的があるわけではございません。
 また、そのような改革によりまして、企業におきまして経済実態を踏まえた事業再編が行いやすくなるという効果は出るものと考えられます。
 これによって企業の事業展開の選択肢がふえることは考えられますが、それ以降、その事業の発展等は、またその市場における競争をクリアしていくものでございますので、その結果、直ちに雇用に対して一定の方向の影響が出るとまでは言えないものと考えております。
大島(令)委員 しかし、法律が改正されるということは、自由経済の中で会社はいろいろな法律の制約のもとに活動をするわけで、一定の影響というのは私は出てくると思うわけなんです。ですから、必要最小限の規制緩和なので、外国資本に対する影響ですとか日本企業の外国資本に対する競争力の強化とか、余り関係はないという御答弁でしたけれども、では、なぜ五年後に附則に基づいて粛々と改正するのか、その辺の背景が少し私にはわかりにくいので御説明いただけないでしょうか。
鈴木政府参考人 平成九年に持ち株会社の原則禁止を改めましたとき、その後の経済状況の中で、例えば持ち株会社を解禁したことによって日本経済の中に何か悪影響が出るのではないかという心配、懸念をされることもございましたし、あるいは、その後の経済状況の変化によって現行法の一般集中規制というものの必要性が少なくなっていくのではないかといった経済実態の変化、それから、平成九年の改正法の施行効果の状況等を見るのに、当時の考え方としまして、五年という期間を置いて見直すということになったものでございます。
大島(令)委員 では、先ほど達増議員も航空業界の統合問題に触れましたが、私は違う観点から少し御質問させていただきます。
 日本航空、JALと日本エアシステム、JASが昨年発表しました持ち株会社の設立による事業統合計画について、公正取引委員会は、去る三月十五日に、一定の取引分野における競争を実質的に制限、独禁法の第十条に抵触することになるおそれがあるという指摘を行いました。この指摘を行うに当たっては、公正取引委員会は、大手企業数が減少することにより航空運賃の同調的な設定が容易になるなど、主に価格の側面からの影響を中心に検討を加え、JALとJASの統合により競争が制限される結果、一般消費者に不利益を及ぼすおそれがあるとの判断を下したと私は理解しております。
 しかし、昨日、四月十一日の新聞報道によりますと、三月末以降、両社は修正統合計画を示して調整を進めた結果、統合に伴う合理化効果により運賃の引き下げが明確になれば競争制限につながる事態は回避できるとして、統合承認へと報道されているわけなんです。
 飛行機を利用する私たち一般消費者にとっては、確かに航空運賃ということは大きな関心事ではございますけれども、最も重要な問題は航空輸送の安全性ということ、航空運賃の価格というよりは安全性というところに私は関心があります。私と同じ考えの人も多いと思います。
 それで、自由化と安全性の確保の関係はよく議論となる問題でございますけれども、今回のJALとJASの事業統合計画が実現した場合に、機体整備業務なども含め、航空輸送の安全性の確保という観点からどのような影響が生じると考えているのか、認識を聞かせていただきたいと思います。
根來政府特別補佐人 日本航空と日本エアシステムの合併といいますか、経営統合の経過については御承知のとおりでございますけれども、ただ、ちょっと訂正させていただきますが、まだどちらに方向を向けるかということについて委員会でいろいろ協議した事実はございません。だから、今の時点では、まだ中間的な意見を出したという段階でございまして、その意見に対して当事者会社からいろいろな意見が来る、こういう段階でございます。
 そこで、安全性ということでございますが、私どもが検討する場合に、運賃だけではなくて、もちろん、運賃と裏腹にある安全性ということも一つの競争条件でございますから、これも十分念頭に入れて検討しているわけでございますので、決して安全性がどうでもいいという話ではございません。
 ただ、今の安全性に関連して、機体の整備などを新規参入者に日本航空あるいは日本エアシステムがサービスするという話は、これは安全性と余り直接関係のない話でございますので、その辺、申し添えさせていただきます。
大島(令)委員 私は、新聞報道を例に挙げましたけれども、この中に、新規航空会社からの機体整備を積極的に受託するなどということで一部報道されておりまして、統合承認へという含みを持たせた報道になっておりまして、質問の中でも、確定したということで取り上げているわけではございませんので、御理解いただきたいと思います。
 そこで、修正計画の中に、機体整備を積極的に受託するということは、先ほど委員長から安全性も競争条件の一つであるという御答弁をいただきまして私は非常に安心したわけでございますが、今後もそういう側面を重視して引き続き検討をしていただきたいと思っております。
 次の質問に移ります。
 公正取引委員会の調査権限の強化について委員長にお伺いします。
 独禁法の違反者に対しまして、罰金など司法上の措置である刑事罰を科すには、公正取引委員会から検事総長に告発しなければなりません。公正取引委員会は、独禁法の専門的な運用機関として、違反行為を犯罪として積極的に告発するということが近年とても期待されていると思います。
 実際に告発されたケースは少ないと思いますけれども、平成二年に公正取引委員会が告発方針を公表して以降、これはわずか六件にとどまっております。入札談合、価格カルテルなどを含むカルテルについて審査した事件数は、平成十二年度だけでも二十五件ありましたけれども、告発に至った事件は一件もなく、ほとんどが勧告あるいは警告などの行政的手段によって処理されております。
 これは、公正取引委員会が専ら告発を目的とする犯罪調査権限を付与されていないという制度的な問題が原因とも言われております。実際、ポリプロピレンの価格カルテル事件においては、公正取引委員会内部では告発すべき重大犯罪であるとの認識があったにもかかわらず、犯罪として起訴するには証拠が不十分などの検察側の判断から告発が見送られたことが伝えられております。
 入札談合、価格協定等のカルテルや参入制限行為等については、直接的な証拠が残されていることは少なく、犯罪調査権限を持たない公正取引委員会にとっては、証拠収集など摘発のための審査が困難なものとなっていると思っております。
 違反行為の捕捉率を高めるためには、公正取引委員会にも国税当局ですとか証券取引等監視委員会のような犯則調査権限を付与することも検討すべきと思っておりますが、当事者の公正取引委員会としては、この件についてどのように考えているのか、お願いいたします。
根來政府特別補佐人 二十一世紀の競争政策を考える懇談会、そこからいただいた提言の中にも措置体系の見直しという項がありまして、いろいろ提言をいただいているわけでございます。そのいただいている中に犯則調査権限の導入という項もあるわけでございますが、これは私どもの方でやはり慎重に検討させていただくことであり、成案を得られればこの国会で御審議をいただきたい、こういうふうに思っております。
 ただ、私、非常に個人的なことで、私も検察庁におり、また公正取引委員会に職を奉じているもので、二足わらじみたいなものですからどちらが正しいとも言いかねますけれども、事件というのはなかなか難しいわけでございまして、これは政治的とか行政的にやれる話ではなくて、やはり証拠の問題になるわけでございます。
 御承知のように、刑事事件というのは、伝聞証拠等は禁止されているわけでございます。一方、行政手続は、伝聞証拠でも何でも実質的証拠があればいいということで、証拠の評価が全く違うわけでございます。そこが難しいところでございます。また、独占禁止法は、直接公正取引委員会に責任追及というような立場を与えていないわけでございます。そういう法律全体の問題も一つあるわけでございます。
 そういう点がいろいろございますので、やはり慎重に部内でも検討し、また有識者の御意見もお伺いし、また成案を得られれば国会でも御議論をお願いしたい、こういうふうに思っている次第であります。
大島(令)委員 話は一般的なことでございますけれども、国税当局というのは日本の税を集めるところでございますから、査察権ですとか捜査令状を持って朝七時、六時ぐらいから、疑いのある、もう証拠があるということで踏み込んでやるわけです。それは、税金というところで全く違う法律のもとに行われているわけですけれども、一般の私たちから見ましたら、個人とか法人が行った脱税事件に関しましては非常に強い権限を国税庁は持っております。
 しかし、企業に対する調査権限、企業に対して取り締まる、これは法律は独禁法ということでございますけれども、これによってやはり社会的に不利益を消費者が受ける場合もあるわけでございますので、そういう、全体的な社会の中のルールから、個人がやったことに関してはきちっとした法律のもとに、しっかりとした証拠のもとに処罰を受ける、しかし、企業が行ったこういう問題に関しては比較的手ぬるいなという印象を私は受けるわけなんですね。
 そういう観点から、今後の課題とは、委員長が御答弁されましたけれども、先ほど中山委員の質問の中で、現行法でやってみてその後法律改正をという御答弁も同じ趣旨の質問でございましたけれども、改めて、国税当局や証券取引等監視委員会のような犯則調査権限が付与されることに関してどのように考えているか、もう少し踏み込んだお考えを聞かせていただけないでしょうか。
根來政府特別補佐人 まことに個人的な話ですが、私も、検察庁におりますときに財政経済係検事をやりまして、脱税事件も何件かやっております。国税局と非常に密接な関係を持ちましてこういう事件を今のようにやれたわけでございますが、それには長い歴史がありまして、いろいろ研究をし、そして今になって実ったということもあります。
 脱税事件というのは、要するに脱税したお金をどこかに隠しているものですから、これを見つければ問題がないわけですけれども、談合というのは、最近はもう本当に上手に談合するものですからなかなか証拠がつかみにくいということでございます。また、犯則調査権限の調査というのは裁判所から令状をもらうわけでございますけれども、令状をもらうときに、私どもは、談合事件については、どういうふうな疎明資料を裁判所に持っていくかということから考えなければいけないといういろいろ技術的な問題がございますので、先ほど申し上げたように、慎重に考えさせていただくということを申し上げたわけでございます。
 先ほど、現行制度できちっとやってからということを申し上げましたけれども、あれも欲しいこれも欲しいということではなくて、私どもは、やはり足元を固めて、現行制度でできるだけやって、そしてなおかつ足りないところは補充していくということを考えないと、あれも欲しいこれも欲しいという態度は役所としてはやはりまずかろうということで申し上げたわけでございますので、御理解賜りたいと思います。
大島(令)委員 私も、地方議員のときに、大きな公共事業、そういうときに私にも入札時における談合の電話が入ってきたり、また文書で寄せられたりすることが複数回ございました。そこを議会の全員協議会で諮りまして、首長も公正取引委員会に訴えたからということで、一たんその入札を見合わせて、翌々日ぐらい、公正取引委員会から、事実はないということで入札が行われた。
 そのときに、やはり公共事業ですから私たちの税金でやるのに、そういう情報が寄せられたにもかかわらず、そのことに対する機関というのが公正取引委員会しかないわけでございますよね。そういう歯がゆい思いを私も経験しましたので、ぜひこの面に関しまして、今後少し積極的な御検討をいただけるといいなと思っております。
 それにしましても、先ほどの御答弁の中で、体制が六百人、そのうち審査する方が三百人、八つの出先機関しかないということでございまして、そういう側面もあるということを踏まえつつ、やはりこれからの経済社会の中で公正取引委員会にどういう役割が求められているのかということも考えた上で、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 以上で終わります。
谷畑委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今回の独禁法改正の起点となったのが、五年前の九七年の法改正であったわけです。この九七年の改正で、持ち株会社の設立、転化の全面禁止から、原則自由、例外禁止に改められました。
 この改正後の五年の間に、法律上届け出義務のある持ち株会社の設立は十三社、そのうちの八社までが金融持ち株会社でした。巨大な金融会社グループが生まれています。同時に、届け出義務のない持ち株会社も多数誕生して、さらに、今後設立予定のものも、公取の調査でも数十社に上ります。日本の金融界や産業界に合併や買収、会社の分社化、会社分割など、企業再編の巨大な変化がつくられるきっかけとなったのが五年前の法改正だったと思います。
 そこで、委員長にお聞きします。
 そもそも一般集中規制が規定をされている根拠は何なのか、どのような弊害があると想定をしているのか、お聞かせください。
根來政府特別補佐人 先ほど申しましたように、独占禁止法の一条に、事業支配力の過度の集中を防止しというような文言があるわけでございます。その文言を受けて、一般集中規制あるいは市場集中規制という二つの柱を立てまして、一般集中規制では、文字どおり一般的な規制を行っているわけでございます。
 これは、理解するところでは、国民経済全体における特定の企業グループへの集中等を防止するものでありまして、事業支配力が過度に集中する企業グループが形成されることによって排他的な取引関係が形成される場合には、事業者の市場への自由な参入や価格、品質、サービスを中心とした公正な競争が妨げられたりすることにより競争にゆがみが生じ、ひいては国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げになるというふうなことを考慮いたしまして、そのような弊害を防止するために定めたものと理解しております。
塩川(鉄)委員 そこで、この純粋持ち株会社の解禁という五年前の法改正後を見たときに、大規模な企業の結合関係が強まるような事態が生まれてはいないだろうか、この点どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。
根來政府特別補佐人 確かに、形上は大きな企業ができているということは否定するわけではありません。
 また、金融機関については、御承知のように、合従連衡というか非常に大きくなっているわけでございますが、その大きくなったことについては、私どもは、法の趣旨に反しないかどうかということについて十分監視の目を光らせておりますので、現時点ではそういう弊害が起こっていないものと承知しております。
塩川(鉄)委員 公正取引委員会が、主要な企業結合が行われた際の新聞発表が行われているわけですけれども、そこで、その中でも紹介されているのを幾つか数字で確認をしたいんですが、例えばみずほグループについて、持ち株会社の設立に当たっての事業統合ということで、この文面にもありますけれども、上場企業全体に対するこのみずほグループの融資先数の割合、また、融資が一位となる割合というのはどのくらいか。
鈴木政府参考人 恐縮でございますが、ただいま手元にちょっとデータを持ち合わせておりませんので、後ほど調べさせていただきます。
塩川(鉄)委員 確認までですので、私の方で紹介しますと、このみずほグループ三行の合計を見ますと、上場会社約二千三百社のうち、みずほグループは、約千六百社、約七〇%に対して融資を行うこととなります。また、このうち、みずほグループに合流した三行からの融資額の合算が第一位となる上場会社は約七百社で、上場会社全体の三割を占めるという大きさのものです。
 同様に、東京三菱グループで見ますと、上場企業全体に対する融資先数の割合は八〇%に上ります。融資一位の割合というのは一二%。三井住友銀行グループで見ますと、上場企業全体に対する融資先数の割合は六〇%、融資一位の割合が一五%、このような状況です。そして、三和銀行系のUFJグループと合わせて四大銀行グループとなりました。六大企業集団と言われる大企業集団に大きな変化が生まれています。
 この三井住友銀行設立の際の公正取引委員会の記者発表文の中を見ましても、企業集団内の事業者同士の結びつきが維持強化されるとの見方が多く、企業集団に属していることをもって取引先等の選別が行われ、排他的、閉鎖的な取引関係となるとの懸念の声を紹介しております。
 これに対し、当事者の銀行側からの申し出には、排他的な企業集団を形成する意図は持っておらず、白水会、二木会それぞれに対応するグループの社長会に属する企業間の統合を支援、促進していく考えはなく、新銀行が主導的に白水会、二木会内の事業者間の結びつきを拡大強化するような動きをすることはないと答えていたわけです。
 しかし現実には、この三井銀行系、住友銀行系の統合の中で、ゼネコンにおける三井建設と住友建設の統合の話なども進んでいるわけです。当事者の言明とは違うようなことが実際に起こっています。
 公取が昨年にまとめた企業集団の実態についての調査報告書を見ても、銀行の統合が今後の企業集団に与える影響を見ると、旧財閥系の企業集団の三井グループ、住友グループでは、現在の企業集団が維持継続されるという声が四〇・七%、関係も深まるようになる三七・〇%ということで、合わせて八割近くがこの関係の深まりを指摘しています。それは、旧財閥系集団では、集団としてのブランドに価値が残るとする企業が多いので、銀行の統合がむしろ両グループの関係をより親密にする可能性があると見られているわけです。
 同様に三菱グループについては、主な統合銀行がともに三菱グループメンバーであることから、九〇・九%が、現在の企業集団が維持継続されるという点での企業集団の強まり、維持という声がここにも紹介をされているわけです。
 そういう点で、九条の問題ですけれども、九条のガイドラインの例えば第三類型との関係で、金融分野、銀行、生保、損保などの事業分野で、この三井住友銀行グループや、あるいは東京三菱の銀行グループの現状、第三類型に照らしてどのように見ているのか、お聞かせください。
鈴木政府参考人 この第三類型につきましては、相互に関連のある事業分野で有力な企業を傘下におさめるということで、現在のところ、相当数の点から、今御指摘のようなグループについて、禁止される持ち株会社に当たるとは考えられない状況でございます。
塩川(鉄)委員 例えば三井住友で見ますと、銀行においては、二〇・五%のシェアで二位、生保においては、住友生命が一四・三%で三位、損保では、三井住友海上で一六・八%で二位、こういった大きなシェアを占める状況というのがあるわけです。
 持ち株会社グループの子会社の定義そのものも狭いということもありますし、この九条ガイドラインに必ずしも当たらないということをお聞きするわけですけれども、本当にそうなのかということが問われていると思うんです。金融が金融を支配することへの懸念の検証というのも、この時点に立って改めて必要ではないかなというふうに思っております。実際、ガイドラインには法的な拘束力がないということもありますし、率直に言って、独禁法の報告書でも、持ち株会社ガイドラインの見直し、検討を提起しているわけであります。現状追認で、大企業の事業再編の都合に合わせてガイドラインを変えていくということでは、とんでもないことだというふうに思っております。
 そこで次に、十一条の問題についてお聞きします。金融会社が金融子会社を持つということは、九七年十二月の十一条ガイドラインで可能となりましたが、そこで、この十一条そのものにはどのように書かれているのか、この点を確認したいと思います。
鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 現行の第十一条におきましては、「金融業を営む会社は、他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五を超えて有することとなる場合には、その議決権を取得し、又は保有してはならない。」ということで、他の国内の会社ということでございますので、金融会社も含めての規定のしぶりになっています。
 今回の改正案におきましては、「銀行業又は保険業を営む会社は、他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五を超えて有することとなる場合は、その議決権を取得し、又は保有してはならない。」ということで、その前に、他の国内の会社ということの意味につきまして、改正法案の第十条の第二項におきまして、「銀行業又は保険業を営む会社が他の国内の会社」といった場合、括弧書きにおきまして、「銀行業又は保険業を営む会社その他公正取引委員会規則で定める会社を除く。」とありますので、ここで、今回の改正案におきまして、銀行業または保険業の金融会社が他の会社の株式を持つという点において金融会社が除かれるということになるわけでございます。
塩川(鉄)委員 ということは、今回の法改正案前は、これまでというのは、法に適合しないような事態になっているということですね。
鈴木政府参考人 これまでにおきましては、私どもの運用の考え方として、金融業に密接な関連のある会社等を含めて、五%以上持ってもいいという場合を定めて、あるいは認めているわけでございます。
塩川(鉄)委員 公正取引委員会の独禁法研究会のメンバーの研究者、学者の方からも、立法に近いとも言える大きな運用の変更がなされた、こういう指摘がされているわけですね。
 法にないことがガイドラインで行われているということじゃないですか。十一条には、事業会社と金融会社を区分するというふうに書いてあるんですか。どうですか。
鈴木政府参考人 銀行の方は、第十一条におきまして、そのただし書きにおきまして、「ただし、公正取引委員会規則で定めるところによりあらかじめ公正取引委員会の認可を受けた場合及び次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。」として、ただし書きに基づいて認めておるわけでございます。立法にないということではございません。
塩川(鉄)委員 しかし、こういう重大な事業会社と金融会社を区分するという問題について、では、国会ではどういう議論がされたんですか。九七年の法改正のときに、こういった議論はされていますか。
鈴木政府参考人 私の記憶する限りでは、国会において議論はされていないというふうに考えております。
塩川(鉄)委員 国会での議論はされていないこういう重大問題というのを、公取の裁量だけでやっているということですか。その点が今問われているんだと思うんです。
 そもそも、この五%ルールの持っている意味というのを改めて考える必要があると思うんです。この間、ダイエーやマイカル、長崎屋など流通大企業の再編などもありますし、ゼネコン各社の再生に大銀行の影響力が大きくあらわれているわけです。ですから、五%未満の持ち株比率であっても、資金力をバックにした大銀行の影響力がいかに大きいかというのは、この間の企業再編を見ても明らかだと思うんです。もちろん、メーンバンク自身が不良債権処理の中にあるわけですけれども。
 しかし、例えばこの間破綻した工作機械メーカーのしにせの池貝鉄工、これはメーンバンクは興銀ですけれども、この興銀から歴代三十年間にわたって社長や会長が役員として派遣をされている。ですから、いわば興銀の都合で破綻をさせられた、この声というのは大きく上がっているわけですね。実際に、労働者の退職金なども確保しないで、興銀がとにかく自分の都合のいいときにつぶして取り立てる、こういう問題がある、こういうことも指摘をされているわけです。
 ですから、今研究者からも、ガイドラインによる十一条の解釈の変更は公取の自由裁量による法の適用除外にほかならず、この適用除外によって十一条の無力化がもたらされたことは、裁量権の逸脱もしくは乱用としてとらえるべき問題だ、こういう声も出ているわけです。
 四年以上にわたって、違法状態に当たるようなことを行ってきたということじゃないですか。改めて、根來委員長、どうでしょうか。
根來政府特別補佐人 違法状態をやってきたと言われると、ちょっと私どもも納得できないんですけれども、法律の立て方が、公正取引委員会の規則で定める場合というふうに書いているものですから、そういうふうな運用をやってきたというふうに思うわけであります。
 また、ガイドラインにつきましても、私も法律を勉強した者として一つ感じを持っているんですけれども、独占禁止法というのは極めて抽象的な規定が多いわけですね。だから、抽象的な規定をどういうふうに解釈するかということについてガイドラインで決めているわけでございます。
 私も、初めはガイドラインで決めるのについて若干違和感があったわけでございますけれども、これはやはり、経済というのは動いているものですから、動いている経済をどういうふうに捕捉するかというのは、法律で大枠を決めていただいて、そして公正取引委員会が細目を決めていくというふうにしないと、なかなかうまいこといかないんじゃないかという感じから今の立法を容認しているわけでございますけれども。
 十一条も、そういう意味で、公正取引委員会に委任されているものと私は解釈しております。
塩川(鉄)委員 金融会社が金融子会社を持つということになれば、それぞれの持ち株によって事業会社に対する支配力が一層強まるという事態が生まれるわけです。そういう点でも、こういった重大な問題について国会に諮って議論してこそ、多くの国民の皆さんにも事態もよく見え、この論議そのものが国民的なものになっていく。そういった法改正そのものが、この五年間、独禁法改正だって何回か出されたわけですね、そういうときにも持ち出されないで、五年間放置して、公取のガイドラインで公取の裁量のままに行われていた、この点が重大問題だと思うんです。
 そういった公取のあり方について、国民的な信頼、その根拠そのものが損なわれているような事態、これが生まれているというふうに言えると思うんです。金融コンツェルンが生まれるのではないかという危惧の声もあるわけですから、こういった事態に対して、やはりふさわしい措置をとるということが求められていると思います。
 次に、この間の独禁法の改正を通じての持ち株会社の一番のねらいの問題ですけれども、この点については、五年前の法改正の際、経団連の競争政策委員長の弓倉礼一氏がこのように述べていました。持ち株会社のメリットの最大のものは、新規事業部門への展開の促進と企業リストラクチャリングの円滑化にある、このように端的に述べておられます。
 率直に、持ち株会社がリストラのてこにされている、このことが、お手元に配付をしました資料でも紹介をしておりますけれども、例えば、この「四大銀行グループの従業員数の推移と削減計画」を見ても、みずほグループでは、九七年三月期、従業員数三万七千七百六十八人に対し、〇一年三月期は三万二千四百九十二人で、五千二百七十六人の減、それから、公的資金投入にかかわる経営の健全化のための計画によって、〇五年度までにさらに六千九十二人を減らして二万六千四百人の体制にする、こういったのが挙げられております。UFJでも同様に、九七年三月期、三万三百七十四人が、〇一年三月期では二万五千五百十二人、四千八百六十二人の減、経営健全化の計画との関係で、三千五百十二人さらに減らして、〇五年度には二万二千人にする。こういったことが三井住友、三菱東京ともあわせて行われてきています。
 そこで、このようなリストラの問題で、私は、やはり今の政府全体が企業のリストラを後押しするような仕組みをつくっている、その点で産業再生法もその一つだと思います。
 金融庁にお聞きしますが、産業再生法に基づき登録免許税の減税を受けたこの減税額の上位五社の社名と減税金額をお聞かせください。
増井政府参考人 お答え申し上げます。
 産業再生特別措置法に基づいて計画認定をいたしました金融機関及び減税額上位五社でございますが、みずほフィナンシャルグループ百四十二億円、三菱東京フィナンシャル・グループ六十三億円、UFJグループ五十五億円、大和銀ホールディングス四十二億円ということになっております。
塩川(鉄)委員 五番目に、三井トラスト・ホールディングスが十四億円ということで挙げられています。
 二枚目の配付資料でも紹介をしておりますけれども、それぞれに対応して、「産業再生法計画認定企業と登録免許税の減税額・リストラ計画」を一覧にしてあります。そういう点でも産業再生法というのが大銀行のリストラ応援の仕組みだったのじゃないか、こういうこともこういう数字からうかがい知れるのではないかというふうに私は率直に思うわけであります。
 持ち株会社についての調査報告書の中のアンケートでも、連結納税制度や会社分割法が整えば持ち株会社化を目指すという声が多数寄せられております。これまでのNTTやこれら大銀行から全産業に持ち株会社化が大規模に進もうとしているときだと思います。
 例えば鉄鋼業界では、川崎製鉄とNKKの持ち株会社化が進行中でありますし、もう一方で、新日鉄を中心に住友金属や神戸製鋼所などとの事業提携が進められています。こういった持ち株会社化の動きについて鉄鋼労連も、持ち株会社化に当たって、労使関係についての懸念の声を上げているというのが実際であります。そういう中で、来年にも持ち株会社化を目指しているのが住友金属工業であります。
 御紹介しますと、ことしになって会社が発表しました「カンパニー制の導入に関する件」という文書がありますが、住友金属工業がつくっております「変革と再生」実行プランに基づいてコスト改善施策を計画どおり完遂する、これとともに、純粋持ち株会社体制への完全移行については、連結納税制度等法令整備の状況や事業環境等を総合的に勘案し、グループとして最適の時期を決断する、そのねらいとする体制の構築については何としても早期に実現する必要がある、そういうことで、この四月一日よりカンパニー制を導入した、このように述べています。具体的には五つの、大まかには四つのカンパニーをつくる。鋼板・建材カンパニー、鋼管カンパニー、交通産機品カンパニー、電車の車輪などですね、それからエンジニアリングカンパニー、こういうふうに再編成をするということが挙げられているわけです。
 これはやはり、カンパニー制に向けてこの間大きなリストラが行われました。そして、カンパニー制を経て将来の持ち株会社化、純粋持ち株会社化という流れがつくられているわけです。この間、「変革と再生」プランに基づいて子会社、関連会社への出向者九千人をすべて転籍させるということが行われてきました。そういう中で給与が三割減をする、そういったのが全体の実態であります。
 この「変革と再生」プランの全コスト削減効果というのは三百五十億円と試算をされていますけれども、うち、労務費の削減分が三百億円です。九千人分の出向者、子会社、関連会社へ出向した労働者の本社との金額の差、これを補てんする額というのが九千人分では三百二十九億円ですから、コスト削減策のほとんどすべてが出向者の資金の差額補てん三百億円の削減であり、この住金の「変革と再生」プランというのは、文字どおり賃下げ、人減らしの計画に当たっているのではないか、このことがねらいとしてもはっきりうかがえるのではないでしょうか。
 私、あわせて、下請の業者の皆さんのお話も聞きました。構内下請一本のある業者さんなども、ピーク時六台のトラックが今現在二台だ。どんどん仕事も単価も下がっている。単価は七掛け、量も七掛けで、売り上げは半分以下に陥っている。そういう中で、この間、単価の二割削減、ことしからさらに一割削減という話も出ているわけです。
 そこで、最後に公取委員長と大臣に伺いたいと思います。
 公取委員長には、このような単価の切り下げの問題について、一方的な単価の押しつけは独禁法の優越的地位の乱用に当たる。この実態をよく調査し、しかるべき是正措置をとるべきだと思いますが、その点を伺います。
 それから、平沼大臣には、経済産業省自身が、かつて産業政策局長のもとにあった企業法制研究会などで持ち株会社化を推進してまいりました。さらに、産業再生法でのリストラ促進策もあります。私は、国民生活、中小企業、日本経済を考えても、この持ち株会社化の推進という方向を見直すべきではないか、このことを率直に思います。その点での大臣の見解を伺いたいと思います。
根來政府特別補佐人 前々から繰り返し申し上げておりますように、いわゆる下請法につきましては、中小企業庁と協力いたしまして、厳正にかつ積極的に対処いたします。ですから、今のような事案を含めて厳正に対処するということを申し上げておきます。
平沼国務大臣 近年、経済のグローバル化の進展でありますとか国際競争の激化等、我が国企業をめぐる環境は大きく変化をしております。こうした中で、迅速な意思決定やみずからの得意分野、新分野への経営資源の重点配分などを円滑化する持ち株会社形態は、我が国企業にとっても極めて有意義な選択肢であると私は考えています。
 このため、持ち株会社設立が解禁されて以来、我が国企業の中にも持ち株会社形態を採用する企業が相当あらわれている、こういうふうに承知しております。
 したがいまして、今後とも我が国企業が、持ち株会社形態の採用を含めて、最適な企業組織形態を選択して国際競争の中で的確な企業経営を展開していくことを期待しております。
 しかし、御指摘のように、いろいろそういう厳しい面もあるわけでありますから、そういうことに関しては、私どもも企業側といろいろ相談をしながら、そういう過度なものが起こらないように努力をしていかなきゃいかぬ、こう思っています。
塩川(鉄)委員 終わります。
谷畑委員長 次回は、来る十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.