衆議院

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第25号 平成14年7月2日(火曜日)

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平成十四年七月二日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 伊藤 達也君 理事 栗原 博久君
   理事 竹本 直一君 理事 中山 成彬君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 達増 拓也君
      伊藤信太郎君    小此木八郎君
      大村 秀章君    梶山 弘志君
      阪上 善秀君    根本  匠君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      保岡 興治君    山本 明彦君
      北橋 健治君    桑原  豊君
      後藤 茂之君    中山 義活君
      松原  仁君    松本  龍君
      山田 敏雅君    山村  健君
      漆原 良夫君    福島  豊君
      大森  猛君    塩川 鉄也君
      大島 令子君    西川太一郎君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   参考人
   (財団法人日本エネルギー
   経済研究所常務理事)   十市  勉君
   参考人
   (読売新聞社編集委員)  新井 光雄君
   参考人
   (帝国石油株式会社代表取
   締役社長)        磯野  啓君
   経済産業委員会専門員   中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二日
 辞任         補欠選任
  生方 幸夫君     桑原  豊君
同日
 辞任         補欠選任
  桑原  豊君     生方 幸夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等に関する法律案(内閣提出第九九号)
 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法案(内閣提出第一〇〇号)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等に関する法律案並びに独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、参考人として、財団法人日本エネルギー経済研究所常務理事十市勉君、読売新聞社編集委員新井光雄君、帝国石油株式会社代表取締役社長磯野啓君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。本日は、本当にありがとうございます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず十市参考人にお願いいたします。
十市参考人 十市でございます。
 私は、エネルギー問題を研究している立場から、今回の公団廃止関連二法案に対する意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず最初に、石油公団が果たした役割とその評価という点について簡単に述べたいと思います。
 日本は大変石油依存が高い国でございまして、エネルギー、石油の安定供給ということは極めて重要な課題と申し上げるまでもありません。その面で、石油の自主開発あるいは備蓄、技術面での研究開発、こういう三つの柱を石油公団がこれまで果たしてきたわけでございます。その中で、石油を取り巻く、あるいはエネルギーを取り巻く環境の変化の中で、やはり安定供給と同時に効率性ということが非常に問われるようになったというふうに思っております。そういう点で、三つの点につきまして、私なりの評価について簡単に申し上げたいと思います。
 まず、石油開発政策の問題点ということでございますけれども、石油公団の開発に対しては、大変大きなロスが、損失が発生したということで、大変批判も浴びたわけでございますけれども、私なりにその原因等々を分析して、まず一つは、外的な要因としまして、原油価格が一九八五年から六年にかけて暴落をした、あるいは急激な円高が起きたということで、この時点で原油価格の円ベースで見た価格といいますのが四分の一ぐらいになった、こういう大変大きなリスクが発生したわけでございます。公団が支援をしたいろいろな開発プロジェクトに対して、そういうリスクに対する対応が十分なされていなかったという面がございます。円で調達をし、ドルにして投資をするわけですけれども、またそれを返済するのは円ベース、こういう問題もございます。
 それから、内的な要因としましては、成功払い融資制度の持った問題点としては、やはりハイリスクの事業でございますから、融資という借金でこういう探鉱開発投資をやるということ自体がもともと若干問題があったんではないかと思っております。しかも、七〇%、出資、融資を含めて、失敗した場合にはそのリスクを国が負うということで、それなりにやはり経営上の甘さもあった面も否定できないというふうに思っております。
 とりわけ大きな損失を生んだものとして、国家プロジェクト、いわゆるナショナルプロジェクトという問題がございます。非常に大多数の企業などが参加をして行う大規模な国家プロジェクトとしてやったものについて、経営上の責任体制という面ではやはり問題があったんではないかということが指摘できるんではないかと思います。
 それから、国家備蓄政策につきましては、民間の備蓄の義務と国家備蓄体制と、二本立てで日本の備蓄政策というのは進められてきたわけでございます。備蓄につきましては、日本にとって石油の安定供給、あるいはかつての第二次オイルショック、あるいはこの前の湾岸危機のときも、備蓄があったがために日本の国内でも大変冷静に対応できたという意味で、大変備蓄の重要性というのは評価できるわけでございます。
 ただ、これにつきましても、過去、民間の備蓄から始まり、国家備蓄ということで、日本の場合、国と民間がある程度協力しながら備蓄体制の政策を進めてきたわけでございます。その中で、現在全国八社で十カ所の国備会社があるわけですけれども、その効率性については、改善の余地が十分あり得るんではないかというふうに思っております。
 それからあと、研究開発につきましては、日本の石油開発分野における技術を十分確保しておくというのが、石油、ガスを含めて大変重要なことであると思います。
 ただ、この点について、日本の場合、どちらかといいますと自前主義といいますか、国内で全部開発をやっていこうというような面もあり、効率的な開発が行われたかどうかについては、これから改善の余地があるんではないか。特に、この技術につきましては、実際に油田開発、ガス田の開発を行っていないとそういう必要な技術開発も進まないということ、これが日本の持っている弱点として、欧米のメジャーなどに比べてその辺のハンディがあるということは否めないと思います。
 それでは、今回の制度改革に対してどう考えるかという点について、次に申し上げたいと思います。
 最近の国際石油情勢に対する基本的な認識としてでございますけれども、石油につきましては、この十年ぐらい、お金さえ出せば買える、そういう認識がかなり広がったわけでございますけれども、昨今の九・一一の同時テロ事件、それを契機とします中東地域の不安定な状況を考える、あるいは昨今ですと、アジアの開発途上国、とりわけ中国が大変な勢いで石油の輸入拡大をしております。これからもそういう状況が続いていくということを考えますと、やはり石油といいますのは、戦略商品あるいは政治的な要因で非常に大きな影響を受ける商品であるということは言えようかと思います。
 そういう中で非常に注目されますのは、この数年、三年から四年の間に、国際石油産業におきましては、御承知のように大変な勢いで大型の合併、買収が進みました。石油メジャーと呼ばれる企業間の大型合併が起こり、今やスーパーメジャーと呼ばれるエクソン・モービルですとかあるいはBP、シェルあるいはトタールフィナ・エルフ、シェブロン・テキサコというような五つぐらいの大グループが一挙に誕生したということでございます。
 同時に、産油国の国営石油会社、例えば中国ですとかあるいはインドですとかマレーシアというような途上国においても、国営石油会社をできるだけ民営化の方向に持っていき、国際的に競争できる強い企業をつくる、こういう動きが具体的に実現しております。そういう企業が国、政府と一体となって産油国に出ていっている。中国などは積極的な資源外交ということを進めているわけでございまして、そういう状況が一段と鮮明になってきたということが言えようかと思います。
 そういう観点を踏まえて、今回の石油公団の廃止関連二法案に対する評価ということになるわけでございます。
 まず、開発政策につきましては、政府の関与を従来に比べて縮小する、特に融資についてはそれは行わず、出資で五〇%という形になっておりまして、非常にリスクの高い探鉱事業に対して、リスクマネーの供給というのは国が引き続き行う、ただし、そのやり方については、効率性ということも踏まえ、ある程度縮小といいますか、若干国のリスクの負う比率を小さくするという点については、私は妥当ではないかというふうに思っております。
 開発につきましては、債務保証についても引き続き行っていくということで、やはり開発には大変膨大な資金が要りますから、先ほど申し上げたような巨大な石油企業などとある程度伍して、一緒に組んだりやりながらやるには、そういう開発についての債務保証も必要ではないかというふうに思っております。
 この石油開発政策について、やはり何よりも重要なのは、先ほど申し上げましたように、国際的な競争力を持った中核的な企業というものが日本でも一つか二つか、これはわかりませんけれども、少なくともそういうものが必要ではないかというふうに思っております。
 そういう意味では、今後のあり方としては、現在、ある程度優良な企業を統合化して、その後民営化をしていくということが必要ではないか。ただし、その際、開発事業というのは大変リスクの高い事業でございまして、専門性というのが極めて要求されるわけでございますから、新しいそういう企業の経営については、プロの経営者を登用するなど、思い切った経営体制の刷新というのが絶対、必須条件ではないかというふうに思っております。
 それから、石油備蓄政策につきましては、今回の制度改革で、国家備蓄の政府直轄化、それから国家石油備蓄会社の廃止ということが盛り込まれているわけですけれども、私はこれは、先ほど申し上げた備蓄体制の効率化という意味では極めて適切ではないかというふうに思っております。
 ただ、石油備蓄について、ただ持っているだけということではなくて、これからは、石油市場が非常に不安定、価格の乱高下が起きているということもあり、石油備蓄の機動的、しかも弾力的な運用ということも、国家資産になるわけですけれども、そういうものがある程度担保されるような方式も考えるべきではないかというふうに思っております。
 以上でございます。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、新井参考人にお願いいたします。
新井参考人 読売新聞の新井でございます。
 私はジャーナリストなものですから、十市さんが精緻に全域に触れるようなお話をしたと思うのですが、私は、考え方といいますか、今回の問題になっている石油開発部門の問題のあり方みたいなことをちょっとお話をしてみたいと思います。
 現在のエネルギー問題の置かれている状況というのは、私は、非常に複雑化していて、かつ、エネルギー政策という意味合いでいいますと、不透明であるなというふうに思っています。
 ことしに入りまして石油業法が廃止になりました。それから、一月末には石炭産業が日本から消えたわけです。さらに言えば、電力の自由化というのが、小売につきましては全面自由化の方向が打ち出されるというようなことがありまして、今回の石油公団の問題もその中の一つかなと考えております。
 これはもう釈迦に説法的になりますけれども、日本は、第一次石油危機の後、私は、エネルギー問題については三つのキーワードを得たのかな。目的と言ってもよろしいのでしょうが、一つのキーワードは、脱中東ということがありました。それからもう一つは、脱石油であったかな。さらに言いますと、これがきょうの問題になろうかと思いますが、日の丸原油の確保、やや大時代的な言葉ではありますけれども、そういう目的があって、この三つを軸にしてずっとその三十年間をやってきたのかな。なかなかうまくできた言葉だと私は思っております。今でもこの三つの言葉はそれぞれに生きているのかな。
 ただし、その後、新しい状況が加わってまいりまして、これは私が勝手につけているんですけれども、経済性、自由化問題もそれに入るかと思いますし、あるいは効率化という言葉で言ってもいいのですが、こういう項目がある。もう一つは、これも周知のとおりで、環境問題という側面からエネルギー問題を見なければならない。さらに言いますと、これは私の発想なんですけれども、社会性といいますか、そういう問題があるかな。一番わかりやすいのは原子力なんかの話でして、住民投票によって拒否されるとか、あるいは、プルサーマルなんかもなかなか首長さんの反対などで、住民の反対などでできない、こういうような社会的な問題がある。新エネルギーといいますと、これは非常に受けがよくて、ポピュラリティーが高いというようなことがありまして、この三つの要素がその後新しく加わってきているのかなと思います。
 脱中東につきましては御承知のとおりで、一度成功したかに見えましたけれども、今、九割程度、中東に依存するような形になっております。
 脱石油につきましては、七割程度から五割程度までの石油依存度の低下ということで、これはある程度成功したかなというふうに考えております。これは、天然ガスあるいは原子力の存在というのが大きかったわけでありまして、それである程度成功したのかなということ。
 最後の問題、これがきょうの問題になるわけですが、では石油開発部門はどうだったのかといいますと、私の考え、判断ですと、やはりこれは成功ではなかった。失敗というふうに言ってしまってはきついのかもしれませんが、余り大きな成果を上げなかった。日の丸原油の確保ということなわけですけれども、あるいは、言葉をかえますと、和製メジャーをつくり上げるんだということで考えられてきたわけですけれども、これにつきましては、さまざまな工夫がこれまでにはあったわけですけれども、どれもこれも見事に失敗してしまったかなというふうに思います。
 その原因等につきましては、多分この委員会でも相当突っ込んだ議論が行われたでしょうし、先ほど十市さんの方からも指摘があったと思うんですが、新聞等で私は拝見することがあって、新聞記者でありながらそうであるのは申しわけないんですが、今回の議論を見ておりまして、若干欠けているんじゃないかというふうなことをちょっと触れてみたいんです。
 それは、日本の石油開発部門というものをどうするかということが余りしっかりとは議論がされていないんではなかろうかというふうに思うんです。確かに、石油公団の巨額の負債問題というのがありまして、堀内さんの指摘によって問題が発生したというふうに承知しておりますけれども、非常に鋭い指摘でして、そのこと自体は大変結構なことだったというふうには思うんですが、その半分の側面の、では一体日本の石油開発という分野をいかなる形に置くのかということです。
 これは、経済産業省の総合資源エネルギー調査会になるんですか、今の石油分科会などで、精製分野あるいは開発分野という形で議論を進めてきたわけですけれども、精製分野につきましては、御承知のとおりで、石油業法の廃止ということで自由化、効率化という方向に行ったわけです。
 私がそのとき思ったのは、そうすると、これが反転して開発部会の議論になりますと、石油公団の話が明らかに問題になってくる。自由化とか効率化という時代の流れに沿いますと、その流れに沿ったままでいきますと、公団廃止というような結論に出るんだろう、導かれるんだろうというふうに考えました。ただ、問題は、それでいいのかどうかということをきちんと議論しておくことだというふうに思うんです。
 石油業法の廃止につきましては、昨年この委員会でも私お話しさせてもらったんですが、そのこと自体は了承するとしましても、国民への伝達という意味では、石油業法廃止ということを承知している国民は余りおりません。一人もいないというのはちょっと横暴ですが、ほとんどいないと言っていいのが現状でしょう。石油が普通の商品になってしまったということが知られていない。今度は多分電気が普通の商品になる。こういう形で自由化がどんどん進んでいるということの認識がないということが問題かと思うんです。そういう観点からいいますと、開発の分野というのは非常に危うい存在であって、もちろん、切り捨ててしまうということも一つの選択かとは思います。
 しかし、これまでの流れから見ますと、石油業法の廃止に並行するような形で、日本の石油産業というものも相当変わってきております。その変わり方がどうなっていくかということは、まだ私自身にもよくわからないところがありますけれども、日本には一貫した石油産業というものはないということです。つまり、開発から精製・販売分野に至るまでのきちんとした石油会社というものは現状一社もありません。バランスが悪いという意味ですね。開発分野の比重がいかんせん低過ぎる。
 ですから、メジャーなんかと比較するのはおこがましいという感じになっているわけでして、一つの考え方としては、それでもいいんだ、税金や何かをつぎ込んでこの開発分野を維持するということにはもう意味がないんじゃないか、石油は国際市場から買えばいいんじゃないかということも一つの選択のありようかとは思います。しかし、それで本当にいいのかどうかということは、きちんとした形でメッセージとしてぜひ出していただきたい。それがこういう立場にいられる皆さんの役割かなというふうに思います。
 では、私自身はどうなのかというと、やはりこれがひょっとするとそうした石油会社を生み出す最後のチャンスかなというふうに思います。この機会を失いますと、これはよく出される例ですけれども、日本には航空機産業というものが事実上ないに等しいわけです。それと同じような状態が石油開発分野にも起きてしまって果たしていいのかどうか、そういう点をぜひ議論の中に入れてほしいというふうに思います。
 これはつけ足しのようになりますが、昨年の五月十七日でしたか、アメリカのブッシュ政権が国家エネルギー戦略というものを出しました。これは、百七十ページぐらいの英文で書かれたものです。日本語の訳ももちろんありますけれども、これを読みますと、あのアメリカが、現状を石油危機以来の最大のエネルギー危機であるということを何度も何度も強調しておりまして、日本はその意味ではかなりのうてんきな国ではなかろうかというふうに感じられます。異常なくらいに石油危機、石油危機ということがこの国家戦略の中に出てきております。
 それから、これは、私は英文は得意ではないんですが、非常に易しく書かれておりまして、普通の人が普通の形でこの本を読みますと、一通りのことがわかるような非常にいい報告書になっております。新聞記者が書いたりあるいは作家が書いたりという形で、各専門家が参加しているというふうに聞きましたけれども、こういうものがある国があるということもぜひ承知しておいていただきたい。ですから、そういうメッセージをきちんとした形で出してほしい。
 ですから、開発問題につきましても同様でして、選択は二つあると思いますけれども、その選択をきちんとしたということを伝えておかなければいけないのではないかというふうに思います。
 エネルギー危機というのが来る、来ないということが議論になっておりまして、それにつきまして自主開発原油がどの程度役立つのかというような議論もあろうかとは思いますけれども、エネルギー政策ということから考えますと、そういう分野にもきちんとした国家の意思が示されるように期待したいと思います。
 以上です。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 次に、磯野参考人にお願いいたします。
磯野参考人 磯野でございます。
 まず、私が社長を務めております帝国石油株式会社につきまして、手短に御紹介申し上げます。
 当社は、昭和十六年に、太平洋戦争が始まる直前に、石油資源の確保が喫緊の重要問題となりましたことから、帝国石油株式会社法に基づきまして、半官半民の国策会社として設立されました。戦後の昭和二十五年に帝石法が廃止されまして、民間会社として再出発をいたしまして今日に至っております。設立以来約六十年間でありますが、この間、戦争あるいはオイルショックなど、エネルギー業界を取り巻きます環境が大きく変化する中で、一貫して我が国の石油開発の最前線で事業を行ってまいりました。
 この間、国内では開発の軸足を石油から天然ガスに移しまして、現在の収益源の柱は国内の天然ガス事業となっております。本年中に全長約千百キロメートルに達する予定の新潟から関東甲信地方に延びますパイプラインネットワークを建設するなぞ、安定的かつ効率的な天然ガス供給システムの構築によりまして、沿線の都市ガス事業者やそのほか大口需要家に、新潟県で生産いたします国産天然ガスを供給しております。
 海外では、昭和四十一年以来数多くのプロジェクトを手がけてまいりましたが、現在では、コンゴ、エジプト、ベネズエラなどで原油、天然ガスを開発、生産しておりまして、来年には、マレーシア、アルジェリアで天然ガスの生産が開始される予定であります。
 本日は、長年石油開発の実業に携わってきた立場から、石油公団の廃止に当たりまして、民間企業の側としての所感を率直に申し上げさせていただきます。
 これまでの石油開発政策の議論をいろいろ拝聴する中で、今や石油は地上でいつでも買えるコモディティーとなったというようなお話もあったかと思います。しかしながら、昨今のOPECの影響力復権、カスピ海周辺等で見られるような、メジャー等欧米企業のエネルギー支配に向けた積極的な戦略展開、それから中東原油への依存を回避したいアメリカのロシアへの急接近等々を見ますれば、石油はまさしく政治性、戦略性を有する物資であることは間違いなく、むしろ、近ごろその性格を再び強めてきているのではないかというふうに考えております。
 我が国のエネルギー資源のほとんどは輸入に依存しておりますし、また、アジアというくくりで見ましても、近年急速に経済発展を遂げつつある中国を初めといたしまして、アジア地域全体の域外依存度が高まっておりますことから、エネルギーセキュリティーの確保は極めて重要性が高いことに変化はありません。したがって、今後も自主開発原油の確保は基本的施策として促進すべきものと存じます。そのためには、国の政策的支援、特にリスクマネーの供給は不可欠であります。欧米メジャー等、国際開発企業との競争が激化する中で、後発の宿命を背負った我が国の民間企業はまだ経営基盤が脆弱でありまして、残念ではありますが、巨大なリスクを負う体力や資金調達力を備えていないのが現状であります。
 これまでの石油公団が担ってきました石油開発支援につきましては、自主開発原油の増加について一定の役割を果たしてきたものの、その運営等については十分でないという御批判があったことも事実であります。特殊法人改革の動きの中で、廃止もやむを得ないのかもしれません。
 しかし一方で、開発政策が必要であることにはいささかの変わりもございません。石油・天然ガス開発に特有なリスクマネーの供給、産油国へのアクセス、技術開発とその活用、情報の収集、分析への支援といった諸機能は何らかの形で維持存続することは、自主開発の推進に不可欠と存じます。
 一方、民間企業側も、これまで国の支援を受けながら十分な成果を上げていないことを重く受けとめねばならないと思っております。過去の取り組みに関しまして反省しなければならないと思っております。
 当社といたしましても、海外の過去の石油開発事業の実績は、収益面では決して芳しいものではありません。国による支援が七〇%まで可能だということで判断が緩んだとは思っておりませんが、結果的に成果が出ていないのは確かでございまして、反省いたしております。
 また、いわゆるナショプロは、多数の関係者が少しずつシェアを持つ形によりまして、責任の所在が不明確になるという問題があったという感もぬぐえません。
 当社の場合、これらの過去の反省に立ちまして、平成十二年八月の石油審議会の中間報告より一年ほど前に、海外事業戦略の抜本的な見直しを実施いたしました。具体的には、それまでは、探鉱プロジェクトを中心として世界じゅうにビジネスチャンスを求めてきた方針でありましたが、これを大きく転換いたしまして、海外事業での経験、ノウハウの蓄積を最も有効に生かすべく、南米及び北アフリカに重点地域を絞りまして、事業形態も探鉱だけではなく、サービス事業、資産買収、ガス開発事業など多様なタイプの事業を組み合わせながら、海外における事業基盤の確立を目指しているところであります。
 実際に、ベネズエラにおきまして八年間オペレーター企業として操業を行ってきた中で、確かな手ごたえを感じ始めております。その経験から、産油国に根を張るためには単に投資をするだけではだめでありまして、操業現場を持ってオペレーターシップをとることによりまして、産油国側の雇用の創出等を通じまして現地政府等に十分認知されることが、次の案件獲得のために非常に重要だと感じております。
 また、技術力は、優良プロジェクトへの参加や事業採算の改善の面でも重要でありますが、特にオペレーターとして認知されるために不可欠な要素であります。石油公団に蓄積された石油開発技術の活用ができるということは大きな力にはなりますが、一方、同時に、総合技術である石油開発技術力を涵養するためには、操業現場の経験を積むことができるオペレータープロジェクトをふやしていくことが技術力の向上に有効であると考えております。
 例えばベネズエラの例をとりますと、この地域を真のコアエリアにしていくためには、既発見未開発油田の買収なぞの形で、生産のアセット、資産を手に入れることから出発していかなければなりません。そのためには巨額の資金調達を行う必要がありまして、国による債務保証制度による支援が不可欠となります。これは当社に限らず、石油開発業界に共通した現状でありまして、債務保証制度の存続は各社の共通関心事でございます。今回の法案でその保証限度額が六〇%から五〇%に下がったことは残念ではありますが、制度として残していただいたことは大変ありがたいことだと感じております。
 以上のように、官民ともに反省すべき点は正し、真摯に努力を重ねていくべきでありますが、民間企業側には、海外での開発事業に取り組んでいく強い意欲がございます。技術力も備えております。ただ、いかんせん、海外企業と対等に競争していくためには政策支援による後押しが必要でありますので、そこのところはぜひ御理解をいただきたいと存じます。
 また、私のこれまでの経験からしまして、世界に伍して開発事業を展開していくためには、我が国にも、ある程度の規模と総合力を有し、国際的にも認められるような中核的企業グループが必要だと認識しております。そして、そうした提携なり統合といったプロセスは、あくまでも民間企業がそれぞれの戦略に基づいて自主的に行うことが効果的であり、その結果として、多様な形で自立性を備えた、より力がある企業グループが形成されていくことになるのではないかと考えております。
 最後に、石油開発企業の上下流での統合という御意見がございますが、私個人といたしましては、開発業界の現状にかんがみ、まずは上流部門での水平連携または統合を模索して、上流部門での力をある程度つけるということが先決であると考えております。また、そうした形ができたときにも、できるだけ多くの民間資金を開発事業に呼び込んで、民間企業の活力を引き出していくことを念頭に置いた支援のあり方を追求していくことが肝要であると考えます。
 以上でございます。(拍手)
谷畑委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原博久君。
栗原委員 大変参考になる参考人の方々のお話を賜りまして、ありがとうございました。
 お話を聞きますと、行き着くところ、やはり、石油公団の廃止に伴いまして、自主開発に対して国の支援は大丈夫かというようなことだという一語に尽きると私は思っています。
 私、実は新潟県の新津の出でございまして、磯野さんの帝国石油、私ども新津で多くの方々が帝石にお世話になり、また、新潟の各地域からの天然ガスが関東圏あるいはまた長野などに供給されておりまして、そういう天然ガスを生産している地域として大変誇りに思っているわけですが、ぜひひとつ今後とも帝石が私ども地元のためにも、また国家のためにも貢献することをまず御祈念したいと思っております。
 お三方から今お話を聞きまして、中東に依存している石油でございますが、これは中東依存から他の地域ということで、いろいろと各地区で開発に御努力はされたと思うんですが、やはり重点的に開発コアを決めなきゃ、なかなか効率のいい開発もできないということもあったかと思うんです。
 先ほど新井参考人からもお話ございましたけれども、ブッシュ大統領は昨年の五月のエネルギー戦略で、大変厳しく、深刻な形で訴えているわけですね。ところが、我が国は、どうも石油は、特にことしの石油業法の廃止によって製油所もみんな自由化になりましたから、何か水のように輸入できるような感を持っている点も否めないと思っております。
 そういう中で、いかにエネルギー外交を進めるか、そしてまた、今イスラエル、パレスチナのあのような紛争の中で、アラブの方でも石油を一つの戦略に使うという動きもありましょうし、あるいはまた、磯野さんのおっしゃったベネズエラにおきましても、先回はあのようなクーデターもあったわけでありますから、こういう中でいかに自主開発を行うか、これはやはり国の外交にもかかわってくると私は思うんです。
 例えば磯野さんは、やはり地道にこつこつとベネズエラの皆さんと話をして、重点的に投資をしてすぐ回収するのではなくて、気長にその国の民情のつき合いをしながら開発するということはまさしく大事なことだと私は思うのであります。
 そこでお聞きしたいんでございますが、正直申し上げまして、今回のこの法律の改正によって、今までの融資はもうなくなる、そしてまた債務保証が五〇%ということになって、自主開発に対して間口が大変狭くなってくると思うんですが、こういう政策で本当に日本の安全が保障される石油政策がとれるかどうかということを、大変端的な質問でございますが、各参考人の方からお聞きしたいと思いますが、まず十市参考人どうですか。
十市参考人 大変難しい御質問なんですが、基本的には、先ほど申し上げましたように、国際的に通用する強い石油開発会社をつくるかどうかということに依存していると思います。ですから、その方向に向けてこれから政策を展開していく必要があると思います。
 それと一点、今回の制度改革で、リスクマネーの供給の額といいますか比率が減ったわけですけれども、本来的には石油開発というのは非常にハイリスクですから、オウンリスクでやりますので、私が従来から言っておりますのは、税制面でも、こういうリスク事業に投資をして、もし失敗した場合には、税制面でそれをある程度面倒を見るといいますか支援する、そういうこともあわせてやるべきではないかというふうに思っております。
新井参考人 なかなか難しい御質問だと思います。石油公団、三十四年ぐらいの歴史がありますわけですので、その間の努力の結果がどうだったかという評価になるわけで、これからどうなるのかという見通しになるわけですが、やはり半々以上は、積極的に自主開発原油というものを維持する方向に行くべきであろう。ただ、時間的な考え方をどこか導入して、きちんとこれまでにこういう形にならない場合はそうしないというような措置が必要なのかなというふうに思っております。
磯野参考人 確かに減るということはやりにくくなるというのが一般的ではございますが、このために我々開発業者の意欲が鈍っているということはございません。努力してやっていこうという意欲はございます。
栗原委員 きょうの新聞に、実は中国が最新鋭の潜水艦をロシアから八隻購入したということで、台湾海峡の問題あるいはまた東南アジア地区の国防上の問題がいろいろ指摘されると思うんですが、今中国は大変産業が進んでおります。どんどん中国に生産工場ができ上がり、また、私ども日本からも、産業空洞化も言われているように、移っておりますが、その中で、現在アジア地域の石油の需要というのは、特に中国がどんどん生産をして需要がふえてまいりますと、もう輸入国になっているわけですから、将来一層中東の石油の奪い合いが出てくると私は思うんですね。
 また、当然東シナ海におきます大陸棚における石油の開発なども、私が今申し上げた潜水艦の導入も、そういうことも、南沙諸島とか尖閣諸島とか、この周囲における油田開発にも私はやはり影響を受けるのじゃなかろうかと思っておりますが、私ちょっとよく知らないんですが、これから中国のこういう油田開発と、あるいはまた中国がこれから爆発的に産業構造が拡大して石油需要が高まってくる、こういうことについてどのように対処すべきかということについて、もし新井さん、おわかりになったらお話しできませんか、自主開発を含めて。
新井参考人 中国の問題というのは余りにも巨大で、ある想定をしてやりますと、中国が韓国程度の経済レベルになりますと、世界じゅうの油をそこに全部注がなければいけないというような状況になるということになって、我々も余り想定しないということになってしまうわけですけれども、これをどう考えるかということは、多分食料問題や何かを考えまして最大級の問題なんだろうというふうに思います。
 ただ、どういうふうに対処するかということでありますけれども、これはなかなか、こうすればこういうふうになりますよというぐあいにならないわけで、ただ、中国の近海における行動を見ていますと、西沙、南沙群島周辺における海底石油の開発などは、ある意味で非常に物騒な面もありますように感じられまして、大きな問題であるということは全くそのとおりでありますけれども、どうするのかということについては、残念ながら私は解答はちょっと持ち合わせておりません。
栗原委員 まだ一分ばかりありますので、磯野参考人に、今新潟でも油田開発でいろいろ試掘、探鉱をされているようですが、せっかくの場でございますので。
 私ども新津に中野さんの油田があるんです。最近おとめになったようですけれども、石油の里といいまして、私ども誇り得る石油の地帯でありますので、ぜひひとつこういう油田をサンプル的に歴史に残すような形で何かいい方法はないか、ひとつ今後検討してくれませんか。この席をおかりしてお願いして申しわけありませんが、よろしくお願いします。
磯野参考人 新潟県の新津というのは私どもの会社にとってもふるさとでございますので、おっしゃられる方向でいろいろ考えてみたいと思っております。
栗原委員 ありがとうございました。
谷畑委員長 鈴木康友君。
鈴木(康)委員 本日は、三参考人の方には本当にありがとうございます。
 それでは、まず初めに、昨年から今回の石油公団法等の廃止に至った経緯について端的にお伺いをしたいと思います。
 実は、今さら申し上げるまでもなく、昨年も、石油業法の廃止あるいは石油公団法の改正という議論がなされました。そのときには、委員会の全体のトーンとしては、国の開発に関する関与というのはやはり必要だろうということで、ある意味で石油公団の機能を強化いたしました。既発見油田の買収等を可能にしたわけです。その法律が成立をした直後に、逆に今度石油公団を廃止するという流れになってまいりました。
 そして今回、この石油公団廃止についての議論がなされているわけですが、この一年の石油政策あるいはエネルギー政策に対する一種の混迷に近いような、行革の流れはあったにせよ、この点について、各参考人の方から一言ずつ感想なり意見をお伺いしたいと思います。
十市参考人 石油公団の組織自体は今回廃止をされるわけでありますけれども、主要な機能につきましては新しい機構で引き継がれ、しかも新しく効率的にやろう、そういうことだと思います。
 公団自体がなくなること自体については、私は必ずしも賛成ではございません。現行の組織のままでも十分効率化ということはできたかもしれない。ただ、国の全体の行政改革の一環として今回の措置がとられたということは、結果的にやむを得ないかなというふうに思っております。
新井参考人 公団法の改正のときの仲間内の議論というような形でのお話としますと、やはり石油公団は残しておいて、十年程度でやめるとか、成果がなければやめるとか、そういうような措置の方向もあったのかな、先ほどちょっと申し上げましたが、私はそのように考えておりまして、文字どおり、今の石油政策はやや混迷ぎみだと思っております。
磯野参考人 正直言いまして、今先生がおっしゃいました経過は、困惑したというか、そういうことはございます。
 しかし、今回の公団の廃止というのは行革の中でやむを得ないことであると思いますが、石油政策はそれとは別にしっかり考えていかなければならないというふうに思っております。
鈴木(康)委員 次に、新井参考人にお伺いをしたいと思います。
 参考人がお書きになった記事の中で、石油公団が必要かどうかという議論の中で、石油公団が今までやってきたことを考えるとどうも風当たりが強い、ただし、石油開発をやめてもいいんだという議論は少ないのじゃないか、そのときに一つのポイントになるのが人事であるという書き方をされているところを私は拝見させていただきました。
 それは端的に言うと天下りの問題だろうと思いますが、公団総裁は歴代通産OBが多い、あるいは開発会社の社長もかなりの数を占めている、こういう御指摘の中で、こういう点を改革していけば、あるいは改善していけば国の関与がスムーズにいくのかどうか、あるいはもっとほかに、自主開発をスムーズに進めていくための国の関与の仕方がスムーズにいくためのポイントがあるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
新井参考人 人事の話というのはなかなか難しい話だと思っております。天下り人事がすべて悪いのかどうかと詰めていきますと、なかなか答えが出てこないんですが、ただ、李下に冠を正さずというような言葉がありますように、石油開発部門につきましては、若干といいますか、相当やはりそれが目立つということは事実だと思います。
 それが実際に悪い方に機能しているのかいい方に機能しているのかはともかくとしまして、言葉を選んで言わなければならないんでしょうが、世間から見ればこれはおかしいというふうに思わざるを得ないのが現状だと思います。アラビア石油という石油会社がありますが、その歴代社長が実質的に経済産業省のOBであるというようなことも、決して世間から見れば通常の会社というふうには言わないのはやむを得ないんだろうというふうに思っております。
鈴木(康)委員 今回、特殊会社についての法案は出てきていないんですが、いずれこれは出てくるでしょう。
 その考え方でいきますと、特殊会社をつくって、その傘下に今ある優良な開発会社をおさめて、軌道に乗った時点で、これは一〇〇%政府が株を保有しているものを放出して完全民営化を果たしていく、そういう一つの流れが考えられているわけですが、このやり方で本当にいわゆる和製メジャーなる強力な上流部門における開発会社というものができるのかどうか。
 先ほど新井参考人は、今回がそういうきちっとした開発会社をつくっていく最後のチャンスだというお話もありましたが、今の考え方でそうしたものがうまくいくのかどうか、この点について十市参考人と新井参考人からお話をお伺いしたいと思います。
十市参考人 一つは、やはり石油開発というのは大変リスクの高い、グローバルな、極めて国際競争の激しい世界でございますから、これまでのように、日の丸原油という名前に象徴されますように、日本勢だけでやるのが本当にいいのかどうかという点をもう一度考えるべきだと思います。
 最近の例で申し上げれば、日産のゴーンさんですとかワールドカップのトルシエさんじゃないですけれども、いわゆるそういう経営のプロであれば必ずしも日本の国籍にこだわらずやるというようなことも、一つのやり方として、グローバルな競争に勝っていくためには、そういうことも視野に入れてやっていくべきではないかというように思っております。
新井参考人 見通しをつけるのは非常に難しいことと思います。
 石油公団発足以来三十数年の成果というのはあるわけですが、今になってこれでうまくいくんだという保証はできないかもしれませんが、私が最後の機会というふうに言っているのは、本当にこのときをずるずると逃してしまった場合には一体どうなるのかということをきちんと判断しておかなければならないということでして、そういう言い方をすると、評価すれば五分五分だという以外にはありません。
鈴木(康)委員 磯野参考人にお伺いをしたいと思うんですが、特殊会社のもとに開発会社が結集をされ、ある意味で巨大な企業体ができるということに対しては、民間事業者としてどのようにこれを考えられているのか。強力な商売がたきが出てくると考えるのか、あるいは一つの牽引車が日本に誕生するからこれは好ましいことだというふうに考えられるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
磯野参考人 私は、先ほど申し上げましたとおり、やはり中核企業グループといいますか、ある力がある企業が日本の石油開発というのをやっていくことが必要だというふうに思っております。
 ただ、今度の特殊会社につきましては、なかなかイメージがわきませんので、これがどうだということはちょっと申しかねるわけでございますが、後段の御質問の、仮にそれが中核グループといたしますと、これが商売がたきになるのか牽引車になるのか、これは、どっちかというと僕は後者だと思っております。
 と申しますのは、自動車業界とかのようにシェア争いをするとかゼロサムじゃないわけですね、我々の業界は。ですから、公団の支援も若干減ってくるという中でやっていくとすれば、やはり国内にリスク分散のためにパートナーを求めなきゃならないとか、そういうような問題もいろいろありますので、そういう面では後者だろうというふうに思っております。
鈴木(康)委員 引き続き磯野参考人に御質問したいと思いますが、コスモ石油の会長兼社長の岡部さんが、ある記事で、公団の機能はもう終わったかもしれないという発言をしている。あるいは、昨年のたしか朝日新聞だと思いますが、出光の社長が、国の石油開発に関する関与の仕方として、税金を大量に使って出資をしたり融資をするのはよくない、むしろ民間が開発をしていくのを、例えば先ほど十市参考人もおっしゃられましたけれども、税制面で後押しをしていく、そしてどういうところで開発をしていくのかとか、参入あるいは撤退、こうしたものも民間企業がもっと自由にできるようにしていただきたい、そういうものに対して国はむしろ後から税制面等で後押しをする、協力をする、そういう体制がいいんではないかという御発言をされています。
 これは、税金を使った今までの支援体制でなくて、そういうものを縮減していって、もっと制度面等で民間企業の活力を生かすような、そういう関与の仕方にしてほしいというような、ある意味で民間に任せろというメッセージにも思えるんですが、同じ民間事業者として、こうした意見に対してどのような御意見をお持ちか、お伺いしたいと思います。
磯野参考人 特別措置法といいますか、そういう税制で支援にかえるということにつきましては、今業界が目指しております方向が、先ほどもちょっと申し上げましたが、私どもが石審の中間答申の一年前にやった方針転換が、これは私どもがそういうふうにしろと主張したわけではないんですが、石審の中間報告自体も、コアあるいは既発見未開発、資産取得という方に出てきております。したがって、これは、ある意味では大方の考えがそうなんだということであろうと思います。これは、石油鉱業界のみならず、学識経験者の方も入られた基本政策小委員会で出た方向が同じだったということであります。
 そういたしますと、これは資産の取得でございまして、資産ができるまでは、持っている人が探鉱をして、成功をして、ですから、そこの探鉱費だけじゃないわけですね。ほかの不成功費も持って、それである開発をしたものを買うわけですから、これは非常に高い金を一時に出すことになります。そういたしますと、これは、保証能力といいますか資金調達能力といいますか、今まさに前よりかそのウエートが高くなってきているということでありますので、これについて税制というのはちょっとなじみにくいのではないかというふうに考えております。これは、私がそう考えているんです。
 それから、もう一つは何でございましたでしょうか。失礼しました。
鈴木(康)委員 出光の社長が、どちらかというと民間がもっと主体的に石油開発に対して、撤退、参入も含めて可能になるように、国の関与を少なくする方がいいんじゃないかというような発言をされているということについてですね。
磯野参考人 私どもは、それは実際そのとおりだと思います。お国の方もこれから今までみたいなことはないはずであろうと思っておりますし、とにかく民間主導ということでやっていくべきであろうというふうに思っております。
鈴木(康)委員 時間も迫ってまいりましたので、最後の御質問になろうかと思いますが、今回、リスクマネーの供給の中で、出資のほかに債務保証というのが可能になるということであります、独立行政法人の機能としてですけれども。
 これについては、堀内総務会長あるいは石原行革大臣はどちらかというと否定的であったというふうに考えておりますが、この債務保証の機能をつけることによって、私も、これが減免つき融資を廃止するということの意味を薄めてしまうのではないかという危惧を持っているわけであります。
 この点について、債務保証についてお三方から御意見をいただきたいのと、出資そして債務保証もですけれども、五割以下という基準が設けられましたけれども、この基準について、その妥当性について、一言ずつ御意見なり御感想をお伺いしたいと思います。
十市参考人 債務保証につきましては、今の日本の石油開発会社が非常に財務体質が弱い、弱体だという前提である限り、やはり債務保証制度を残さない限りなかなか自主開発は進んでいかないという意味では、必要だというふうに思っております。
 ですから、いずれ財務基盤の強い企業が出てくれば、そういう制度の見直しということは必要になってくるのではないかというふうに思っております。(鈴木(康)委員「五割は妥当ですか」と呼ぶ)五割につきましては、現在より若干下がるわけですけれども、最低限五割というのは必要な水準ではないかというふうに思っております。
新井参考人 きちんとした中身の検証をしながらであれば、妥当な線だと私は思っております。
磯野参考人 先ほど申し上げました資産取得というのは、一時に大きな金が一遍に出るということで、財務基盤がかなり強くないとできないということで、そういう意味で債務保証はぜひお願いしたいと言っているわけです。
 それから、当然これは中身をちゃんと見なきゃいけない。五割というのは、我々にすれば多ければ多いほどいいのでございますが、しかし、五割という意味は、民間も当然のことながら五割持つわけです。それは開発会社にとりましてやはり大きなリスクになるわけでございますね。そういう意味で、これは内容がいいかげんにいくはずがないわけでございまして、その点はひとつ御理解をいただきたいというふうにお願いいたします。
鈴木(康)委員 時間でございます。どうもありがとうございました。
谷畑委員長 河上覃雄君。
河上委員 公明党の河上でございます。
 お三人の参考人の方々には、お忙しいところ大変ありがとうございます。
 十市参考人と新井参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、アジアの石油の輸入が急増している実態について、今後のエネルギー需給を考えた場合に、アジア地域の需要増というものが我が国の安定供給に大きな影響を及ぼす可能性がある。また、アジア地域の国々は、我が国のように石油危機を実質的に経験いたしておりません。そのため、エネルギー安全保障上の不安がないとは言い切れない、あるかもしれないというふうに考えるわけですが、この観点から、我が国としてアジア諸国に対して、エネルギー安全保障を強化する上からどのような働きかけあるいは協力がおありとお考えになられますか、それぞれ御見解をいただきたいと思います。
十市参考人 さまざまな手段があると思います。まず、エネルギー安全保障という面では、やはり備蓄体制の整備ということで、日本は十分な備蓄を持っておりますけれども、最近韓国がやっとIEAに加盟する九十日の備蓄水準をクリアした。中国はこれから備蓄制度といいますか備蓄体制をつくろうとしておりますので、その点については日本は知的支援を含めて技術支援等々をやっておりますが、この分野は、アジア地域として備蓄体制を整備していくということは大事だと思います。
 それと、さまざまあると思うんですけれども、一つ、アジア、日本を含めて中東依存が高まるというのはこれは避け得ない事実ですけれども、少しでもそういうものを低下させるためには、やはり極東ロシア、東シベリアですとかあるいは極東地域、サハリンを含めてこういう極東ロシア地域の資源開発等を推し進めることによって、相対的に中東石油への依存を低めることができるという意味で、石油・ガス開発、また難しい問題はたくさんございますけれども、そういうものを取り込むことが、やはり日本を含めてアジア地域のエネルギー安全保障に寄与するというふうに思っております。
新井参考人 大体十市さんがお答えになったこととタブってしまいますので、若干観点を変えますと、アジア地域でも、ぼつぼつではありますが、原子力の開発が少しずつは進んでおります。この前ベトナムから原子力代表団が来られたのでお会いしたんですが、あそこでも二〇一七年ぐらいまでには持ちたいというようなことがありました。この視点も一つ入れておいていいのかなというふうに考えます。
河上委員 いわば協力の一つで備蓄の問題がございました。我が国は百六十日分、韓国、台湾、中国などは正直言えばこれからという実態にあると思っておりますが、昨年十月のAPEC首脳会議でも共同備蓄が議論になりました。この共同備蓄ということでもいいんですが、何らかの形でアジア地域における地域的なくくりが必要なのかなということに対する御見解をそれぞれいただきたいと思います。
十市参考人 今の先生御指摘の点につきまして、APECでアジア地域のエネルギー安全保障に対する取り組みが今進みつつあると思います。そういう意味で、共同備蓄まで一挙にいくのはなかなか難しいと思いますけれども、例えば日本の沖縄などは台湾ですとか中国に大変近いわけで、ああいうところの施設を備蓄にある程度利用するとか、そういうこともアイデアとしてございますので、共通の認識、意識がだんだんそろってきておりますので、地域的な協力の可能性というのはだんだん高まってくるんではないかというふうに思っております。
新井参考人 備蓄の議論は何度かしたことはあるんですが、共同備蓄というのはやはりその先にある話で、安全保障上というふうに考えるのであれば、個別的な国の単位で対応し、その上でということになるんだろうと思います。
磯野参考人 備蓄につきましては、私、知識がございませんので、お答えを控えさせていただきたいと思います。
河上委員 私も磯野さんを除きましてお二方にと申し上げたんですが、済みません、失礼いたしました。
 ちなみに、もう一点だけ新井参考人にお伺いしたいんですが、行く行くの段階、共同備蓄という考え方を採用したとしますと、最大の障害は何だとお考えでしょうか。
新井参考人 危機的な状況できちんとした、国と国がイーブンな対応ができるかというのは、なかなか難しいことになるんではないかと想像いたします。
河上委員 ありがとうございました。
 磯野参考人に一点だけお伺いいたします。
 これまでの公団の支援スキームについてどのように思われますか。端的に御質問しますが、また損失の原因についてお答えいただきたいと思います。
磯野参考人 これまでの、過去のでございますか。やはりそれなりに原油はふえましたけれども、残念ながら御指摘の点があった。この点の中には、やはりナショプロ的な経営責任体制が十分であったかという反省はしなきゃならぬと思います。
 それからもう一つは、初めに十市参考人もお触れになりましたように、為替、油価というところで非常にアンラッキーだったという面は、かなり大きなプロジェクトで、あることも確かだろうと思います。ただ、やはりこういうものを乗り越えていってもらわなければなりませんので、我々もこれは責任があるわけですし、ともに何とか頑張っていきたいというふうに思っております。
河上委員 参考人の皆様には大変ありがとうございました。
 終わります。
谷畑委員長 達増拓也君。
達増委員 参考人の皆様、ありがとうございます。
 まず、十市参考人に伺いたいと思います。
 質問は、今ロシアを中心に大きく変化する国際エネルギー情勢のもとで、日本がいかなる役割を果たすべきかということであります。
 本当に最近のことでありますけれども、ロシアが原油の生産量をどんどん拡大し、またカスピ海沿岸の油田、ガス田についても、欧米等に開かれた対応をどんどん進めるようになってきていると思います。
 そしてまた、安全保障面でも、ロシアは、EU、ヨーロッパとの間でNATOに一部参加するといった動きを示し、またアメリカとロシアの対話も、九月十一日テロ以降、テロとの闘いという中でアメリカとロシアのパートナーシップというのは非常に進んでいます。
 そして、先週、これはある意味衝撃的だったと思うんですが、ロシアがG8に正式加盟ということで、来年のサミットはロシアで行われてしまう。もともとサミットはエネルギー問題を話し合うためにランブイエ、フランスで始まったわけでありますが、ぐるっと回ってまたエネルギーの問題。これは、安全保障とエネルギーとでロシアの役割というものが今欧米にとって非常に重要なパートナーになってきた、そういう中で日本の役割が相対的に落ち込んでいるということだと思うんです。
 ロシアを中心に、安全保障とそしてユーラシア大陸におけるエネルギーの問題、こういった国際情勢が大転換する中で、日本が蚊帳の外に置かれているのではないかと思うんですけれども、日本としていかにこういう情勢に関与していくべきか、いかなる役割を果たすべきか、伺いたいと思います。
十市参考人 ただいまの御指摘の点につきまして、二点申し上げたいと思います。
 一点は、やはりロシアとの関係で、先ほどちょっと触れましたけれども、極東地域の資源開発という点について、日本も、もちろん今いろいろな取り組みがなされておりますけれども、この分野でも積極的な対応、もちろん最終的には企業が決める判断でございますけれども、やる必要がある。
 それともう一点、グローバルな観点から申し上げますと、アメリカ、ヨーロッパがますますロシアとの連携を強めるということで、特にアメリカは中東依存を今回のテロ事件以降下げていきたい、そういう中で、これまで欧米のメジャーズが中東において圧倒的に大きな影響力を持っていたところに、若干そこに、バキュームじゃないですけれども、アジア勢、日本を含めて、積極的に参加していける余地が出てきた。中東の産油国も、日本を含めてアジアにかなり期待をする。そういう意味では、両面、対ロシア、対中東という意味で、日本がここで積極的な対応をとるいいチャンスかもしれないというふうに思っております。
達増委員 次に、新井参考人に伺いたいと思います。
 先ほど意見陳述の中で、新井参考人は、日の丸原油の確保という重要な課題があったにもかかわらず、その開発政策は成功じゃなかった、失敗と言わないまでも成功じゃなかったとおっしゃいました。「失敗の本質」というタイトルの本がありますけれども、不成功の本質ということを今追求していかなきゃならないんだと思います。
 私が今までの議論の中で考えておりますのは、やはり石油公団体制の官民の中途半端な役割分担、それはもたれ合いということでもありまして、官は官で、決定的な役割を避け、民間主導、民間主導ということでやっていて、民間は民間で、やはりどこかで官に対する甘えというものが残って、その結果として、成功とは言えないというような状況だったと思うんですが、今回の石油公団廃止関連二法によりましても、その不成功の本質、官民の中途半端な役割分担、イコールもたれ合いということは変わらないと思うんですね。
 もっとリスクマネーを民間がみずから調達できるような新しい制度をつくるわけでもなく、一方、国家としての戦略を高度化していくわけでもなく、その点、非常に中途半端な、改革の名に値しないんじゃないかと自由党は思っているんですが、この辺、どうお考えになりますでしょうか。
新井参考人 確かに、制度的な側面でいいますと先生おっしゃるとおりで、何も変わっていないじゃないか、むしろ強化されたんじゃないかという側面もあろうかとは思います。
 ですが、石油公団廃止という形でこれだけ関心を持たれたということでありますから、そう簡単に同じような体制でいけるというものではないんではないかと考えています。
 これは何度も申し上げますように、これがある意味で開発分野が成り立ち得るのかどうかということの最後の局面というふうに考えますと、そうした面で、こういう場面も含めまして、きちんと見ていくということで多少は違うんじゃないかというふうに考えております。
達増委員 次は、磯野参考人に伺います。
 石油公団というものの一定の役割を果たしたと先ほど陳述の中でおっしゃいましたけれども、その石油公団の役割、リスクマネー供給というものが、体力のない日本の石油関連企業にとってはそういうリスクマネー供給というものが不可欠だと先ほど述べられたと思います。
 ただ、さまざまな市場の自由化あるいは市場の高度化、それは金融市場も含めてですが、ITを駆使したいろいろな手法も開発されまして、ディスクロージャーなども積極的にして、会社の信用力でベンチャー的な資金を集めていくということは、昔に比べるとかなりやれるようになってきていると思うんですね。
 ただ、そのためには、先ほど税制の改革というお話も出ましたけれども、経済産業省、一般のベンチャー企業にはさまざまなベンチャー支援ということをやっているんですが、石油開発というのは一種究極のベンチャーのようなところもあると思うんですけれども、そういったところを工夫していけば、公的資金でリスクマネー調達というほかにも、民間の力、民の力でリスクマネー調達という可能性があると思うんです。
 ただ、現実には、いろいろ難しい、困難なところがあって、なかなかうまくいかないんでしょうが、その辺の、ベンチャー的な資金を民間ベースで集めていくことの困難性というのはどの辺にあるのかを伺いたいと思うんです。
磯野参考人 御指摘の例に完全に合うかどうかはちょっと自信もないんですが、アメリカではオイルプログラムというのがございます。これは、アメリカは割合小規模な油田、ガス田が今でもかなりあるわけで、それを対象とした国内での、井戸を一本掘るのを失敗するか成功するかということで、これはいわばベンチャーというか宝くじみたいなところもあるんですが、金を個人から出し合いまして、成功すれば配当があって、しなければだめになる。
 こういうようなことでは、やはり今自主開発を考えるというとき、これはいろいろ政策的にも考えなきゃならない。それは、脱中東といいましても、これは現実問題、脱中東というのは果たしてそれだけでいいかというと、なかなかできない。やはりその中でも中東ともやっていかなきゃならない。それから、御指摘のようにロシア、そういうこともある。そういう大きな戦略の中で考えることにはちょっと適さないのではないかというふうに考えております。
 ただ、そういうことも、これはある意味では全然意味のないことではないんじゃないのかなというふうに思います。
達増委員 それでは、また十市参考人に伺います。
 先ほど、質疑への答弁の中で、今回の石油公団廃止、いわゆる廃止ということについては、政府のそういう行革の方針ゆえやむを得ないところもあるというような答弁をなされたと思いますが、行革の論理とエネルギー戦略の論理ということについて伺いたいと思います。
 今回のいわゆる石油公団廃止ということについては、行革の論理が先行し、エネルギー戦略の論理というのがなおざりにされていると思うんですね。特に、石油公団廃止という言葉が躍っているわけですけれども、実態としては金属鉱業事業団と一緒に独立行政法人になるわけでありまして、決して廃止されるわけではない。主要な業務は存続するわけでありますから、どうもパフォーマンス的な行革の論理というものが先行して、本質的には、なぜ石油公団というものが成功とは言えなかったのかというところに立ち返って、開発政策の戦略的な改革をしなければならなかったと思うんです。
 この点、今回の改革ではいま一つそういうエネルギー戦略の論理というのが足りないと思うんですけれども、この辺、いかがお考えでしょう。
十市参考人 今回の二法案だけでは極めて不十分でございまして、先ほど来議論に出ております特殊会社を含めて、今後、日本の開発政策をどうするのか。やはり答えは、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、国際的に通用する強い石油開発企業を日本としてつくるということが目的でございます。それに至るプロセスはまだ明確になっていないところで、そこが達成されない限り、今先生が御指摘のように、行政改革という、そちらだけの視点でやるのは極めて問題ではないかというふうに思っております。
達増委員 次に、新井参考人に伺います。
 新井参考人は石油審議会や総合エネルギー調査会にも御参加されていますけれども、今回、石油公団が金属鉱業事業団と一緒になって独立行政法人になりますと、独立行政法人通則法というのがありまして、経済産業省の中に独立行政法人の評価委員会というものを置いて、その評価委員会が、独立行政法人の中期目標ですとか計画でありますとか、また業績であるとかをチェックするようになる。
 ただ、そこは、独立行政法人というのは行革の論理で出てきたものですから、むだ遣いをしていないかとか、ちゃんと質の高いサービスを提供しているか。石油公団の場合は国民向けサービスというのをやっているわけじゃないから、変な観点になるんですが、どうも財政の論理といいますか、むだ遣いをしないように、そして質の高いサービスを提供せよという行革の観点からのチェックばかりが先行して、本来、石油審議会なり総合エネルギー調査会なり、エネルギー戦略を担う部門がチェックしていかなければならないところがなおざりにされるおそれがあると懸念しているんですが、この辺、どうお考えになるでしょうか。
新井参考人 多分、先生の御懸念のとおりかとは思いますけれども、しかし、逆に言いますと、石油政策とか戦略とかいう方向にシフトした結果が、現在の公団廃止みたいなところになったという側面もあるわけでして、全く違った側面から物を見ておくポジションができるというのは、それはそれで意味があることだと私は思います。
達増委員 新井参考人にもう一つ伺いますけれども、今回、自由党は、有事法制の対案として安全保障基本法、非常事態対処基本法というのを出しまして、エネルギー危機管理についても、内閣が非常事態関連の基本計画として、平時からそういう基本計画を立てて出しておかなきゃならないということを盛り込んだ法案を出しています。
 エネルギーセキュリティーという観点からすれば、やはり内閣のもとで、総理直轄で非常に強力な危機管理の体制をふだんからつくっておく必要があると思うんですけれども、ともすれば経済、産業の枠の中だけでエネルギー政策が進んでしまうわけですけれども、この辺、もう少し国家戦略として内閣のレベルで取り組むべきところがあると思うんですけれども、この点についていかがお考えでしょうか。
新井参考人 物すごくもっともな御意見であると思います。日本のエネルギー政策に欠けているのはそのような視点でして、自給率が極めて低いというにもかかわらず、そういう視点から考えずに経済的な視点のみから考えられているのが議論の深みを薄めてきたのであって、先生おっしゃるとおりだというふうに考えます。
達増委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。
 終わります。
谷畑委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、お三方から貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 最初に、十市参考人にお伺いいたします。
 今回、石油公団廃止関連法案ということで、そういう点では石油公団の歴史的な総括ということが問われてくると思います。
 先ほどのお話の中でも、ナショナルプロジェクトの問題を指摘されておられました。巨額の損失を生んだナショナルプロジェクトと経営責任体制ということで、当時の油価の問題や為替の問題はあると思いますけれども、やはり経営責任体制、いろいろな石油公団、経済産業省の指摘を見ても、幹事会社が不在だったということも言われておりますけれども、そうであればこそ、なおさらそのときの石油公団の責任というのが大いに問われるのではないかと思うわけです。
 そういう点でも、ナショナルプロジェクトの問題に当たっての石油公団の責任についてどのようにお考えなのか、最初にお伺いしたいと思います。
十市参考人 大変難しい問題でございますけれども、やはり最終的には、経営的な判断、場合によってはやめるという決断がなかなか難しい。過去、そういうことで、ある意味ではそれを継続したことによって損失が膨らんだということがある。そういう意味で、経営判断といいますか、そういうことを十分に行える体制に必ずしもなかった面があったというふうに今考えているわけでございます。
塩川(鉄)委員 続けて十市参考人にお伺いします。
 参考人の意見陳述で、国家石油備蓄会社の非効率性ということも指摘をされております。先日も、国家備蓄会社の保全業務に関連して、中核エンジニアリング会社に対し公正取引委員会から是正の勧告が出されました。そのときに、当事者の日石菱油エンジニアリング会社から、新聞報道によりますと、競争は行われていないんだ、あるいは入札は形式上のもので実質的には随意契約だ、違反を問われる余地はないと認識しているという報道がされています。
 各備蓄基地に対応して中核会社が置かれて、その中核会社のもとに中核エンジニアリング会社が置かれている。ほとんど、五〇%、一〇〇%出資の子会社ですけれども、そういった国家備蓄基地に対応した中核エンジの配置ということ自身に、こういった問題が起こる背景があると考えるわけです。
 私は、こういうところにも国家備蓄業務における非効率性が率直にあらわれているんじゃないかなと思うんですが、その点について参考人のお考えをお聞きしたいと思います。
十市参考人 冒頭のところで述べましたように、備蓄につきましては、民間備蓄の義務化から始まって、それが国家備蓄ということで、日本の場合、民間企業と国がある程度二人三脚で来た歴史的な背景があると思います。そういう点で、中核会社方式ということがずっと続いてきたと思います。
 今先生が御指摘のように、個々のいろいろな具体的な業務の内容の面で、中核企業がやった方がより効率的な仕事もあるでしょうし、そうではなくてもっとオープンな競争でやった方がいい、その辺は、具体的な個別の業務ごとにその点を区分けをしてやるべきだと思います。私は、余り細かい答えを存じ上げませんけれども、そういう点はあろうかと思います。
塩川(鉄)委員 そういう区分けという面でも、今後具体的に検討も求められているということだと思います。
 新井参考人にお伺いします。
 先ほども出されておりました天下りの問題ですけれども、特に、業界団体である石油鉱業連盟の役員の三分の一が通産OB、私も本委員会で指摘をしましたが、石油鉱業連盟の歴代会長が十数年間にわたって通産OB。そうしますと、業界としての自主性という面からも問題がありはしないかというふうに率直に思うわけです。こういうのがもたれ合いを生む、そういう点でも、業界としての自主性も問われる事態だと思うんですが、そういう現状について率直な御意見をお伺いしたいと思います。
新井参考人 その点、先ほど別の質問を受けたと思うんですけれども、原則として私もそう考えております。会社の社長となれば、形ということになるんだと思いますが、個々の人の資質の問題と同時に、言葉がちょっと不適切かもしれませんが、李下に冠を正さずみたいなのがあるはずでして、もたれ合いの構造ができ上がってしまうのも、少なくともそうと疑われて仕方のないような土壌ができてしまうということであって、原則としてそうであろうかというふうに思います。
塩川(鉄)委員 磯野参考人にお伺いします。
 民間主導での業界の取り組みということをおっしゃられておりました。そういう点でも、私、今もお話ししました天下りの問題、それから、私が率直に指摘をしたいのが、石油鉱業連盟などからの政治献金が自民党などへ出されている、こういう点でも、ある意味で、天下り、政治献金というのがもたれ合いを生む背景になっているんじゃないか、こういうふうに考えるわけです。
 そういう点でも、民間主導ということを参考人もおっしゃっておられるのであれば、こういった天下りもやめた方がいい、政治献金もやめた方がいいというふうに率直に思うわけですけれども、その点いかがでしょうか。
磯野参考人 政治献金につきましては、石油鉱業連盟というのは会員が二十一社ございまして、会費規模というのは年間大体二億円の規模でございます。そのうちから一千万円を御理解ある政党への、これは当然法律にのっとった形でございますが、献金といいますか、それからパーティー券とか、それに使っておりますので、これは違法性はないというふうに考えております。
 それから、天下りの問題でございますが、当社、実は一人、常務に経産省OBの方に来ていただいております。これは、うちの場合には当社からお願いしまして、海外経験、それからやはりポリティカルリスクなんということも非常に重要なことになりますので、そういう交渉力、これがございますので、いつもお願いして来ていただいておりますが、非常によくしていただいていますので、何人目かのお願いということになっております。
 そういう意味で、民間活力と天下りが、民間活力をうんと助けるという意味の天下りというのは、これは結構な話であろうというふうに思っておりますけれども、うちはそういうことで、お役人じゃないといかぬということはないんですが、それは民間の方でもそういう能力の方はいいんですけれども、なかなか探しにくいということがありますので、そういうことでお願いしております。
塩川(鉄)委員 今後の問題で何点かお伺いしたいと思うんですが、特に特殊会社法案が先送りということで、将来の石油開発のあり方がどうなるかということが、委員会の議論の中でもなかなか見えてこないということがあります。
 そこで、石油審議会の開発部会の基本政策小委員会の中間報告で中核的企業グループのことが議論され、提起をされました。この委員会の中でも、この特殊会社というのが、中核的企業グループが期待をされるということを大臣がおっしゃられたり、特殊会社が和製メジャーであることが期待されるとか、そういう点では、中核的企業グループと和製メジャーと特殊会社と、どういう関係にあるのかということがなかなかよく見えてこないというのが率直なところです。
 そこで、新井参考人に、この石油審議会の小委員会の委員をされていた経緯もありますので、この中核的企業グループというのはどういうものなのか。いろいろ議論の中で、元売など下流を中心にしようというのか、あるいは、電力とかガスとか商社とか、こういったものが連携しながら大きくなっていくというのか、イメージがなかなかはっきりしないなどと言われてきたわけですが、この中核的企業グループというのを具体的にイメージするとどういうものなのか、その点について御意見を伺いたいと思います。
新井参考人 具体的イメージでこうだと明示できるものは私も持ってはおりません。
 ただ、状況を考えますと、今、エネルギーの自由化が急速な勢いで進んでおります。電力もそうですし、石油業法が廃止になりましたから、石油業界も同じでしょう。そういう形で、今までにないような石油、エネルギーの関連する環境というのが大きく変わってきていまして、その中からどういう形で生まれてくるかということは言えないわけですが、一方、逆に、そうしたものが生まれるような環境が整ったということだと私は考えております。
塩川(鉄)委員 重ねて新井参考人にお伺いしますが、和製メジャーという言葉は以前から使われていたかと思うんですが、歴史的に、この和製メジャーというのはどういうものを意味していたのかというのを、少しさかのぼってのお話で恐縮ですが、お聞きしたいと思います。
新井参考人 最初の意見のときにも申し上げたと思うんですけれども、日本には石油会社の一貫石油会社、開発部門から精製、販売にまで至るような会社が事実上今でもないに近いわけです。ですから、和製メジャーのイメージというのは、開発分野も持ち、精製・販売分野も持ち、そのバランスで展開していく会社だというふうに考えています。
塩川(鉄)委員 十市参考人に伺います。
 この中核的企業グループに関連してですけれども、先ほども言いましたように、平沼大臣は、特殊会社そのものが中核的企業グループの担い手となることを期待しているということをおっしゃっておられます。それから、今後、開発関連資産を切り分ける際に、四つの留意点というのを述べておられて、そういう中に、特殊会社というのは国際的な石油・天然ガスビジネスを自律的に展開することを予定しているところだ、こういう表現で、いわば特殊会社の範囲を限定するような答弁もされておられるんですけれども、これが、この間議論されているような中核的企業グループとの関係で、特殊会社をどういうふうにイメージしているんだろうか、その辺で、十市参考人の率直な御意見をお伺いしたいと思います。
十市参考人 私の理解は、基本的にやはり上流、開発部門での企業の統合を図って、それを中核企業というふうに考えている、私もそういうふうに思っております。
 いわゆるメジャーというのは、上流から下流まで全体としてのイメージでございますけれども、少なくとも、上流企業として、ある程度自己資金で探鉱開発などができる、そういうふうな財務基盤をきちっと持った企業をつくるというのが、日本としても中核企業として望ましい姿ではないかというふうに私は思っております。
塩川(鉄)委員 磯野参考人にお伺いします。
 二点お聞きしたいと思うんですが、磯野参考人として、中核的企業グループというのはどのようなものをイメージされておられるのか。
 それともう一つ、歴史的な問題ですが、帝国石油そのものも、一九四一年、国策会社としてスタートして、その後民間会社になりました。戦後の歴史におきましては、石油資源開発がやはり国策会社でスタートして、公団の出資比率は高いですけれども、民間会社としての活動をされております。
 今回も、開発関連資産を何らか取りまとめて、特殊会社として将来民営化するんだといいますと、出たり入ったりするような歴史的な経過があるわけで、こういった開発政策のあり方を歴史的に振り返ったときに、今、今回の特殊会社というのをどのようにごらんになっておられるのか、その二点をお伺いしたいと思います。
磯野参考人 まず、中核会社についてでございますが、私も、十市参考人と同じように、まず上流部門の提携あるいはどういう方法かによって力のあるところをつくるということが先決であると思っております。
 先決であるという意味は、それで終わりかどうかはその後の問題だということであります。と申しますのは、今開発業界はかなり技術も分散しておりますし、かなり分立の状態といいますか、やはりそこで一つの上流としての力をできる形にしておくというのがまず先決である、そういう意味での中核会社、したがって上流ということでございます。
 それから、当社、帝国石油は、昭和十六年にできて、二十五年に民営化。十六年にできたときは、まさに第二次世界大戦に備えるといいますか、これは九月にできたわけですが、十二月に開戦になっております。そういうことで、それは政策といえば政策だと思うんですが、二十五年は、これは占領下で、混乱時といいますか、そういうような中での帝国石油株式会社法の廃止ということで、これが民営化ということでございます。
 それで、石油資源さんにつきましては、これは昭和三十年に私どもから探鉱鉱区等を出しまして、国家からお金も出してもらって石油資源ができたということであります。
 したがって、そういうことで、国内の石油開発を、石油資源ができたとき、私どもができたときどうするかというのがまずメーンテーマであった。戦争中はパレンバンとかそういうところも行って先輩がやったわけでございますが、しかし、とにもかくにも核は国内ということで、パレンバンでずっと海上の制海権を持っていれば、もちろん向こうの方が大きいわけですけれども、制海権がないことからやはり国内ということで来て、それで石油資源さんが我々から分かれられたときも、やはり国内ということであります。
 今回とはそういう面では若干違うのではないかというふうに思いますが、公団がいろいろ今まで一生懸命された中で、せっかく成功した案件、あるいは損はどうしても切らなきゃならない、売るにしても切らなきゃならないとすれば、それを持っている方がいいのかどうかということは、それはよくよく考えた上でやらなきゃなりませんので、そういうことで、そういうものが仮にこれからの石油開発の一つの大きな力になれるとすれば、やはりそこは、何でも売っていくということじゃなくて、慎重に考えるべきであろうというふうに考えております。
塩川(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。きょうはありがとうございます。
 まず、法案に即して、それぞれ三人の参考人の方に御意見を伺いたいと思います。
 石油公団の廃止後、特殊会社が設立されます。この特殊会社が、石油公団が現在所有している資産を評価、処分してそれを引き継ぐことになりますけれども、特殊会社をどのような規模にするかによってもその資産の処分の仕方が変わってくると思っております。
 私は、石油公団にこれまで膨大な税金が投入されてきたことと、泉井事件など政治家や官僚のあり方が取りざたされた事件の発覚などがありました。そういう石油公団の歴史を見れば、公団の所有する資産は国庫に返すべきだと考えております。
 石油公団の所有する資産は今後どのように処分するのが妥当と考えるのか、お考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
十市参考人 私は、日本の石油政策、エネルギー政策を考える上で、やはり上流部門において国際的に競争力のある企業をつくる必要があるだろうというふうに思っております。
 そういう意味では、石油公団が持っております上流部門の権益を全部国庫に返すということは、清算をするということに近い形になるわけでして、これは長い目で見て日本にとってプラスにならない。むしろ、逆に言いますと、そういう強い企業を持つことが、結果的に、国にもう依存しないで石油産業としてやっていける。そういうものをつくるという意味で、今まさしく新井参考人が言われたように、最後のチャンスだというふうに思っております。
新井参考人 基本的には、十市さんのおっしゃっておったことと同じになるんだと思います。ここで最後のチャンスを生かすのか生かさないのかという視点から考えないと、この問題は解答が出ないというわけで、私としては、国庫に返すというようなことは早急にやるべきではないというふうに思っております。
磯野参考人 先ほどもお答え申し上げましたとおりでございますが、やはりせっかくここまでやってきたもの、これを売って国庫に返納するというのも、これは非常に合理的だと思いますけれども、もう少し広い見地で、日本のエネルギー政策の中でどうしたらいいかということは考えるべきではないかというふうに思います。
大島(令)委員 では、磯野参考人にお伺いいたします。
 磯野参考人は、「二十年あれば次のガス田は見つかる、という前提では中長期の経営方針は立てられない」と二年前の週刊東洋経済で述べられております。
 石油公団では融資して二十年以上経過しても実を上げていないところもありますが、公団廃止後、独立行政法人になってから、開発分野はその業務にどのような工夫がなされるべきとお考えでしょうか。
磯野参考人 恐れ入ります。先生、東洋経済に載りましたのをもう一回お願いします。
大島(令)委員 「二十年あれば次のガス田は見つかる、という前提では中長期の経営方針は立てられない」と。二年前の雑誌ですので、御記憶ございませんか。
磯野参考人 二十年埋蔵量が欲しいという意味で言ったんだと思います。私はそういう考えでおります。
 企業が、開発会社が中長期の計画を立てるときには、埋蔵量が二十年、二十年というのは、一年の生産量で全体の埋蔵量を、その会社が持っている埋蔵量を割ったもので、RPといいますけれども、それがないとちゃんとした計画は立てられないという意味で言ったんであろうというふうに思います。
大島(令)委員 では、開発分野は今後、独立行政法人になりますけれども、どのような工夫がされるべきかというお考えを聞かせていただけないでしょうか。
磯野参考人 民間の方としての開発会社ということでしょうか。
 冒頭申し上げましたように、これは、私どもも一生懸命やってきたつもりでございますが、やはりこういう結果になったというのは反省しなきゃならないというふうに思っておりますし、そういう意味で反省もしておるわけでございますが、その反省の結果というのが、事業の多様化とかそういうことであるわけでありますし、やはりプロジェクトの厳選ということに尽きると思いますし、そのプロジェクトの評価の技術というのは、今までこれだけ苦労している中でかなり蓄積されているとは思っております。
 それから、公団の保証が、今リスクマネーは七割までということ、それから保証は六割までというのが両方五割までというふうに下がるのは、下げろとおっしゃられる意味というのは、やはり民間も同様の負担を負っていけということだと解釈しております。
 それで、これは民間にとりましては非常に大きなリスクになるわけで、そういう意味では、これは今までがやっていないということじゃないんですけれども、より厳しい形でやっていくということにしなきゃいかぬというふうに思っております。
大島(令)委員 今の御意見を踏まえて、より厳しいということでございますので、帝国石油の社長さんというお立場で、今後、この法案が通ったとしたときに、どういう工夫がより一層求められるのかという御教示を私はお聞かせいただきたいと思っているわけなんです。
磯野参考人 予算額もかなり減ると思わなきゃならぬと思います。
 それで、そういう中で、一方、今プロジェクトはかなり多く出てきております。したがいまして、プロジェクトの選択というものがやはりなされる、選別でございますね。これは当然、プロジェクトのスケールもありましょうし、政策的意図、それは国家戦略的な意義というところの見地からされると思いますが、こういうものと、それから企業にとってすぐ金になるといいますか小さいといいますか、そういうものを組み合わせていくように恐らくなるというふうに思います。
 それから、冒頭申し上げましたとおり、私どもとしましては、ちょっと細かいことになりますので申し上げにくいんですが、かなり海外戦略というのを、とにかく世界じゅうどこでも行ってとれた鉱区を掘るというような、探鉱から入っていくのがほとんどだったのを、ある地域、うちですと南米とアフリカでございますが、ここに絞りまして、そこで、具体的に言いますと現地のガス事業をして、現地に腰をおろす、根を張る、そういう中でプロジェクトを発掘していくというふうに変えております。この手ごたえは、冒頭申し上げましたが、かなり出てきているということでございます。
大島(令)委員 新井参考人にお伺いします。
 新井参考人は、石油公団の廃止後、ちょっと法案に即しての質問でございますけれども、独立行政法人と特殊会社はそれぞれどのような役割分担を持つとお考えでしょうか。
 というのは、通産省が石油公団を支配し、石油公団が石油開発会社を支配するという構造では、効率の発想は出てこない、税金は石油開発のためではなく天下りポストの確保に使われているという批判もあながち否定できないと、執筆された著書で一部述べられております。
 今法案をごらんになりまして、この独立行政法人に引き継がれるものと、あと特殊会社に引き継がれるものがございますけれども、それぞれどのような展望を持ってこの二つのものが運営されるべきと考えられているのか。特に私がお伺いしたい展望というのは、どのような体制でこの二つの独立行政法人と特殊会社ができ上がればいいのかという、そういう会社の役員とか体制なども含めた観点からお聞かせいただきたいと思います。
新井参考人 なかなか具体的にお答えしにくい質問のように私は思うんですけれども、やはり一番大事なことは、今回の議論に出ていなかったように思うんですが、透明性をいかに高めるかという、ちょっと嫌な言葉なんですけれども、そのことに尽きるんじゃないかと思っています。
 公団の問題も、そうした点で隠ぺいされた部分が相当あったがゆえに、それが暴露されるというような形になったわけでありまして、最大の問題は、議論されておりませんけれども、税金が使われるという話、ちらっと出ましたけれども、自動的に使わなければならないような税金が流れ込んでいるというような構造がそもそもの間違いであったということであって、きちんと評価されていれば、今回の法律改正もそれなりに意味があると私は考えております。
大島(令)委員 十市参考人に伺います。
 中国での需要ということに触れられました。私も、ある国土交通委員会を何か傍聴したときに、中国が今の割合で自動車の数がふえたときに、三十年後、非常に人口も多いわけですから、石油が日本に来なくて中国に行くんではないか、日本は、路面電車など、または燃料電池ですとかそういう方向に車の研究も進まなければならないという話を聞きました。
 アジアの中で、今後、展望としまして、石油がどのような割り振りの中で需要、消費がいかれるのか、そういうことを仮定として考えたときに、今度の法案でここだけはきっちりと組織をつくらなければいけないというところがございましたらお教えいただきたいと思います。
十市参考人 大変難しい御質問ですけれども、今先生御指摘のように、中国は大変これから石油の輸入をふやしていくでしょうし、これはもっとふやしていくと思います。
 その中で、最近中国は、国を挙げて中東産油国に合弁事業をどんどん進めております。そういう意味で日本は、残念ながら、アラビア石油の問題を契機として、むしろプレゼンスが弱まっているという状況であります。
 そういうことを考えますと、これも先ほどのところでちょっと触れた点でございますけれども、やはり中東地域で日本の石油会社がしかるべくプレゼンスを持ってやれる力を持っていないと、長い意味で日本の石油の安定供給という面では若干心配がある。そういう意味で、今申し上げた点を今回の制度改革によって強化するような方向をぜひ目指すべきではないかというふうに思っております。
大島(令)委員 新井参考人にお伺いします。
 私は日本に原発がなくなればいいなと思っている立場でございますけれども、先ほどエネルギー政策の中で、最近いろいろな、経済性、効率性、環境問題、そして新たに社会性ということで、プルサーマル計画に対する反対運動、住民投票があるということも触れられました。
 今後、日本のエネルギー政策、これはいろいろな長期計画とか基本政策を国はお持ちでしょうけれども、展望としまして、この法案を通しまして、エネルギーを、原子力政策に大きく傾いていってしまう法案になっていくのか、その辺のバランス的なようなものを、御自分のお考えで結構でございますので、聞かせていただけないでしょうか。
新井参考人 何か先生の御質問はなかなか難しいんですけれども、開発を大事にしろということは、ある意味では原子力をある程度抑制できるということに単純にはなってしまうんだと思います。日本のエネルギー政策、大きく考えまして、先ほどから申し上げましたように、極めて複雑になってきていまして、さまざまな要素からすべて検討しなければならないように、三次方程式や四次方程式を解くような話だと思います。
 先生、原子力は御反対の御様子ですけれども、であれば、環境問題のCO2問題はどのように解決なさるのかという問題が出てきまして、そのバランスを考えるだけでも、なかなかうまいぐあいの調整ができなくなってしまうというようなことかと思いますので、解答は私は持ち合わせておりませんと自信を持って言える感じがします。
大島(令)委員 終わります。
谷畑委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 御苦労さまでございます。私が最後の質問者でございます。一問ずつ参考人の皆様にお尋ねをしたいと思います。
 まず、十市参考人に伺いたいんでありますが、中東情勢を日ごろからフォローされていらっしゃいまして、きょうもお触れになっておられましたけれども、今後の中東に対する資源外交についてお伺いしたいと思うんです。
 パレスチナ情勢は引き続き不安定で、米国も、悪の枢軸発言以来、対中東政策についてはダッチロールを続けているように見えるんですけれども、いずれにしても、アメリカでありますとか主要ヨーロッパ諸国は、伝統的に中東諸国にアクセスを持っておりますし、また軍事政策も、ある意味ではカードとして使えますよね。
 ところが、我が国はそういうものがないわけでありまして、日本の資源外交、手段が限られている中でいかに取り組むべきか。私は、議員外交も含めて、多面的な外交を強化していかなきゃいけないという意見を持っておりますが、この点についてお尋ねをしたいと思います。
十市参考人 今御指摘のように、日本は中東との関係においては、いろいろなとるべき政策手段といいますか、それが大変限られておる。ただ、これまでも経済分野でさまざまな協力関係をやっております。
 最近の大きな動きとして、これも先ほど若干触れたわけでございますけれども、中東の国も、これまでのようにアメリカ依存、過度にアメリカに依存するということに対する反省といいますか見直しの機運が出ておりますので、やはり石油という分野で考えますと、中東とアジアの結びつきというのは圧倒的にふえておりまして、これからますます強まりますから、そういう意味で、日本が中東地域において、単にエネルギー分野だけではなくて、科学技術あるいは医療とか、さまざまな多面的な協力関係を強めていくということが、アジアと中東、日本と中東の相互依存関係を強めていくことになるんではないかというふうに思っております。
西川(太)委員 新井参考人にお尋ねをいたすわけでございますが、先ほどの陳述の中で、日本の石油開発について、いわゆる開発分野の比重が低過ぎて、こういう形での和製メジャーはあり得ないという御趣旨の御意見があったと理解をいたしたわけでございます。
 私の限りあるあれでございますが、先生のお書きになったものを読ませていただいた中で、販売の自由化については余り御賛意を示しておられないというような御意見を持っておられるやに理解をしましたのですが、要するに、私がお聞きしたいことは、現在の石油政策というのは、自由化の方向だけじゃなくて、安定供給でありますとか、それからセキュリティーの面でありますとか、こういうものに十分軸足を置いていかなきゃいけないわけでありますけれども、先ほどの御意見の中で、いわゆる開発から最後の精製、小売、こういう一貫したメジャーをつくる最後のチャンスである、こういうふうにおっしゃっておられるわけでありますけれども、現段階で、特に精製、元売の収益力を向上させて、その資金力でメジャーのようなものをつくるということは不可能でございましょうか。どんな御意見でございますか、お聞かせをいただきたいと思います。
新井参考人 現状では多分相当難しいのかと思います。
 石油業界の販売姿勢というのは、売れるときはどんどん売っちゃってということでして、昔をちょっと振り返りますと、為替差益の還元問題がありました。あのときのお金あたりをうまく使いますと、あるいはその時点ではチャンスがあったかなというふうに今になって思いますけれども、現状では、多分、これだけの高いリスクマネーをそこから出してスムーズにいくというふうにはなかなか思いにくいと思います。
 それでも一部そうした努力はなされているわけでして、可能性が全くないとはしませんが、やはり結果的には政府のお金の支援も必要になるのかなというふうに考えておりまして、一点だけ強調させていただきますが、私は、何が何でも必要だと申し上げているわけではなくて、決断として開発分野をどうするのかということをきちんと考えるべきだと申し上げているわけです。
西川(太)委員 最後に、磯野参考人にお伺いをしたいのでございますが、余談ですけれども、私も参考人の学校の後輩なんですが、学生時代に出光さんの、御先代の講演を聞いて、いわゆる日の丸原油、私は石油会社に勤めたいななんて思ったこともあったんです。
 それはちょっとそれとして、我が国の上流部門、石油公団による支援も失敗し、中小の開発企業が乱立して全く発展しなかったという論調が一見強いように最近思うんですけれども、しかし、他方、御社を初め成功事例も見られるということも事実であります。
 率直に言って、欧米のメジャーと我が国の開発企業の差はどこにあるとお考えでしょうか。また、我が国が石油・天然ガス開発の中核的な企業を創成させることに異論はないものと思われるわけでありますけれども、中核企業の創成のためにはいかなる方策が考えられるでしょうか。そのために石油公団後の国の果たすべき役割は何だとお考えでしょうか、お尋ねをしたい。
磯野参考人 欧米の、メジャーじゃなくて、やはり石油の後進国であるイタリアのAGIP、フランスのトタール、DEMINEX、そういうところとどこが違うかというあれは、一つには、AGIP、DEMINEXというのも国営であった時代にみずから創業しているわけですね。これはやはり違うと思います。
 それからもう一つは、彼らは旧植民地とかそこで、親しいところといいますか、圧倒的にほかの国よりか政治的に親しいといいますか強いといいますか、そういう地域で、AGIPであれば、イタリアのポー川のガスというのもありましたけれども、外国ではアフリカ、そういう強い地域でコアエリアを持って、それがコアエリアとなって出ていったというところが大きく違うというふうに思います。
 それから、もう一点の御質問……
西川(太)委員 石油だとか天然ガス開発の中核的な企業を創成させるためにはいかなる方策が考えられるか、またそのために国の役割はどうあるべきか、こういう点になっております。
磯野参考人 これはやはり何でも提携すればいいということではなくて、企業の戦略が合うところ、あるいは補うところ、これが提携して、提携効果というのが出て、力がある会社ができると思います。
 したがいまして、お国としては、そのような方向へやわらかい御指導といいますか、やはりこれは自主的にしませんとなかなかそういう提携の効率というのは上がりにくいということを申し上げようとしたわけでございます。
 以上でございます。
西川(太)委員 ありがとうございました。
谷畑委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人各位の先生方におきましては、お忙しい中出席していただきまして、貴重なる意見を発表していただきました。本当にありがとうございました。委員会を代表してお礼を申し上げます。
 次回は、明三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時八分散会


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