衆議院

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第31号 平成14年10月11日(金曜日)

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平成十四年十月十一日(金曜日)
    午前十時十七分開議
 出席委員
   委員長 谷畑  孝君
   理事 栗原 博久君 理事 竹本 直一君
   理事 中山 成彬君 理事 鈴木 康友君
   理事 田中 慶秋君 理事 河上 覃雄君
   理事 達増 拓也君
      伊藤信太郎君    小此木八郎君
      梶山 弘志君    桜田 義孝君
      西川 公也君    林  義郎君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松下 忠洋君    松島みどり君
      保岡 興治君    山口 泰明君
      吉野 正芳君    生方 幸夫君
      小沢 鋭仁君    加藤 公一君
      川端 達夫君    中山 義活君
      松原  仁君    松本  龍君
      山田 敏雅君    山村  健君
      斉藤 鉄夫君    福島  豊君
      土田 龍司君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    北川れん子君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁長官) 岡本  巖君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院長)     佐々木宜彦君
   参考人
   (原子力安全委員会委員長
   )            松浦祥次郎君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二日
 辞任         補欠選任
  伊藤 達也君     松下 忠洋君
  根本  匠君     川崎 二郎君
  茂木 敏充君     横内 正明君
  西川太一郎君     野田  毅君
同月四日
 辞任         補欠選任
  大村 秀章君     桜田 義孝君
  阪上 善秀君     西川 公也君
  野田  毅君     松浪健四郎君
同月八日
 辞任         補欠選任
  大島 令子君     北川れん子君
同日
 辞任         補欠選任
  北川れん子君     大島 令子君
同月十一日
 辞任         補欠選任
  下地 幹郎君     山口 泰明君
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  北橋 健治君     小沢 鋭仁君
  後藤 茂之君     加藤 公一君
  漆原 良夫君     斉藤 鉄夫君
  大島 令子君     北川れん子君
同日
 辞任         補欠選任
  山口 泰明君     下地 幹郎君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  小沢 鋭仁君     北橋 健治君
  加藤 公一君     後藤 茂之君
  斉藤 鉄夫君     漆原 良夫君
  北川れん子君     大島 令子君
    ―――――――――――――
七月三十一日
 一、経済産業の基本施策に関する件
 二、資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件
 三、特許に関する件
 四、中小企業に関する件
 五、私的独占の禁止及び公正取引に関する件
 六、鉱業と一般公益との調整等に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 経済産業の基本施策に関する件(東京電力原子力発電所における不正記録問題等)


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     ――――◇―――――
谷畑委員長 これより会議を開きます。
 この際、西川経済産業副大臣、高市経済産業副大臣、西川経済産業大臣政務官及び桜田経済産業大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。西川経済産業副大臣。
西川副大臣 このたび経済産業副大臣に就任をいたしました西川でございます。
 委員長を初め委員の諸先生の御指導、御鞭撻をいただきまして、平沼大臣を補佐し、現下の厳しい経済状況の中で、一日も早く日本の産業政策のよろしきを得て経済が回復をいたしますように、微力でございますが努力をしてまいりたいと存じます。
 御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
谷畑委員長 次に、高市経済産業副大臣。
高市副大臣 先生方、おはようございます。このたび副大臣に就任いたしました高市早苗でございます。
 不良債権処理、加速いたしますと、それに伴うさまざまな問題が出てくると思いますので、委員の先生方の御指導もいただきながら、デフレ対策、我が省で何ができるかということを精いっぱい考えながら頑張ってまいりたいと思います。
 それから、私も、委員の先生方と同じように国民の代表であり、また納税者の代表であると思っております。この委員会での御議論を通じまして、先生方の御指摘や御質疑の中で、経済産業省が気がついていない点、それから私自身も気づいていない視点をたくさん与えていただけると思いますので、アンテナを高くして、一人でも多くの国民の声が的確に行政に反映できますように精いっぱい頑張ってまいりますので、よろしくお願いをいたします。
 本当にありがとうございます。(拍手)
谷畑委員長 次に、西川経済産業大臣政務官。
西川大臣政務官 おはようございます。このたび経済産業大臣政務官に就任をいたしました西川公也でございます。
 我が国経済は大変厳しい状況が続いておりますけれども、平沼大臣のもと、しっかりやっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
谷畑委員長 次に、桜田経済産業大臣政務官。
桜田大臣政務官 このたび経済産業大臣政務官を拝命いたしました桜田義孝でございます。
 日一日と深刻化する日本経済の中で、デフレ経済脱却のために本委員会の果たす役割は極めて大切であろうと思っております。大臣、副大臣、政務官ともども協力体制を組みながら、一生懸命働かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
谷畑委員長 経済産業の基本施策に関する件、特に東京電力原子力発電所における不正記録問題等について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁長官岡本巖君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院長佐々木宜彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 東京電力原子力発電所における不正記録問題等について政府から説明を聴取いたします。佐々木原子力安全・保安院長。
佐々木政府参考人 おはようございます。原子力安全・保安院長の佐々木でございます。
 このたびの東京電力におきます不正記録等の問題に関しまして、原子力に対します国民の信頼を根底から揺るがすこととなりました。
 本件に関しては、基本的に、東京電力の企業倫理あるいは技術者倫理の問題に帰するところが多いわけでございますが、しかし、一方、安全規制そのものにつきまして、検査のあり方も含めまして、安全規制のあり方に関しましての多々反省するべき点も多かったと思っております。
 今回、十月一日までに、事案の事実解明、それから、私ども原子力安全・保安院が調査をいたしました申告から公表までの二年間の調査過程に関する検証、それから、今後の再発防止対策、この三つにつきまして十月の一日に公表をさせていただきまして、今全力で今後の対応に取り組んでいるところでございます。
 本日は、先生方に配付させていただきました資料の中で、表題が「原子力発電所における不正記録問題等の調査結果と再発防止について」という五枚紙がございます。これに沿いまして御説明をさせていただきたいと思います。
 この資料の四ページでございますけれども、「これまでの経緯等」というのがございます。
 まず、東京電力の原子力発電所における不正等に係る二十九件の事案の概要ということでございますが、東京電力の福島第一、福島第二、柏崎刈羽の各原子力発電所のうち十三基の原子炉に係る自主点検記録について不実記載等の二十九件の不正の疑いがあることが原子力安全・保安院の調査により判明をいたしたわけでございます。
 これらは、国が直接立ち会って検査する対象ではなく、原子炉の安全性に重大な影響を及ぼすものではないわけでございますけれども、ただし、機器のひび割れ等が現在も残っている可能性のある十一件につきましては、念のため当省が安全評価をいたしまして、直ちに原子炉の安全性に重大な影響を与える可能性はないと判断をいたしまして、八月二十九日にその結果を公表したものでございます。
 シュラウドにひび割れの疑い等のある運転中の原子炉として、福島第一の四号機、あるいは福島第二の二から四号機、柏崎刈羽一号機は、電気事業者の自主的な判断により順次運転を停止いたしまして事実の確認を行うことにいたしておりまして、また、その際、保安院の検査官が立ち会いを行うということにいたしているところでございます。
 調査の経緯でございますけれども、平成十二年の七月でございました、当時の通商産業省に対しまして、米国GEの子会社の元社員から、点検記録の書きかえなどの不正が行われた旨の申告を受けたわけでございます。当時、当省として、直ちに東京電力に連絡するとともに、さらに申告者から新たな申告案件一件を追加情報として得たわけでございます。その後、数次にわたり事実関係の確認を求めてきたわけでございますけれども、調査は極めて難航をしてきたわけでございます。
 当省は、十三年の十一月ごろでございますが、作業を行ったGEの子会社に対しても調査の協力を要請しました。ことしの十四年一月から申告者の情報の裏づけ情報を徐々に入手いたしまして、より確実な裏づけを得ました。改めて東京電力に対して追及を行ってきたわけでございますが、東京電力は、八月に入りまして、申告の案件二件を含めまして不正の疑いがある二十九件があることを認めまして、関係する原子炉の名称等を当省に開示したわけでございます。
 こうした経緯をたどりまして、私どもは、立入検査の実施、東京電力からのいろいろな事情聴取を踏まえまして事実関係の解明に努めまして、「中間報告(案)」を十月一日に取りまとめたところでございます。
 この結果は、一ページに戻っていただきたいのでございますけれども、「経済産業省の調査結果」ということでございます。
 この二十九の事案につきまして分析と評価を行いました結果でございますが、まず、技術基準適合義務等を遵守していなかった可能性のあるものが六件ということでございますけれども、これは、炉心の中に円筒状のシュラウドという構造物がございますけれども、発見されたシュラウドのひび割れに関して、電気事業法の三十九条に基づく技術基準に適合しているか否か事業者として確認すべきであったにもかかわらず、その確認及びその傷の進展に関する評価や継続的な監視の記録等を適切に行わず放置していた、こうしたことから、技術基準に適合しているとの確証が得られない事例があったわけでございます。したがいまして、技術基準を遵守していなかった可能性がある、こういうものと、さらに、関係法令に定められました書類保存義務を果たさなかった可能性のある事例として六件という評価を行いました。
 また、国の通達で国に対して報告すべきことが定められた原子炉の運転に関する重要な機器に対します機能低下、あるいはまた、そのおそれがある故障が生じた場合に該当する可能性があった場合でございますけれども、報告における発見日として事実が起こった日と異なる日付を記載するなどの事例がございました。
 また、私どもは、トラブルがございますと、そのトラブルを水平展開ということで各原子力発電所に反映するというようなことをやっておりますけれども、こうした問題が発生しているにもかかわらず国への報告をしなかった事例として五件という評価をいたしております。
 さらに、事業者の自主保安のあり方として不適切な対応でなかったかということで指摘をいたしたものが五件ということでございます。
 一方、1の(3)でございますけれども、東京電力に、本店への立ち入り、発電所への立ち入りを行いましたが、この本件の事案に関しまして、私どもの評価といたしましては、特に東京電力の社内体制につきましては、いわゆる各部門の間の内部の連絡、部門間相互のチェック体制あるいは全社的な監査体制などが十分に機能していなかったことが私どもの聞き取りでも明らかになりました。このため、品質保証システムが機能せず、過去の保守点検作業の結果につきまして事後的な確認が困難となったり、あるいは関係部門間で共有しておかなければならない情報が共有されない結果となった可能性があります。
 また、こうしたことが、情報を公開した場合、その後の対応が必要になることについての懸念、こうしたことと相まちまして、極端な場合には記録の改ざんや隠ぺいにつながる要因になったと考えております。
 また、今回、私どもの調査を行う過程におきましては、過去の点検記録などについて十分な確認ができない場合もございました。しかしながら、全体の、今回の二十九の案件につきましては、事実の解明について、中間取りまとめではございますが、一応の取りまとめができたというふうに考えております。
 それから、一ページの2でございますけれども、「新たに国に報告された案件」といたしまして、東北電力、東京電力、中部電力、日本原子力発電の発電所のそれぞれの事案におけるひび割れ等でございますけれども、これにつきましては、当省といたしまして、法律に基づく報告徴収あるいは立入検査を実施いたしまして調査を行いました。その結果、明白な不正はなく、安全性評価も実施されているということでございましたが、評価としては、国への報告が望ましかったと考えております。これらにつきましては、引き続き、関係資料の内容を詳細に分析し、事案の解明に取り組んでいく方針でございます。
 二ページをごらんいただきたいと思います。「東京電力に対する行政措置」ということでございます。
 先生方のお手元に、「経済産業省」と書きまして、経済産業大臣平沼赳夫名で東京電力南社長あての指示文書が入っておりますけれども、当省といたしまして、東京電力において品質保証システムが適正に機能していなかったこと、とりわけ全社的なチェック、監査体制が十分機能していなかったことを重く受けとめ、十月一日、東京電力に対して、このような事案を発生させたことについて厳重に注意を行いました。また、あわせて、規制上の立場から、特別厳格な保安検査の実施あるいは定期検査の実施等の行政措置を講じることを文書にて指示をいたしたところでございます。これが事実関係でございます。
 二つ目は、二ページの「外部委員会による評価及び改善策の提言等」ということでございますが、これは、東京電力の点検記録等不正の調査過程に関する評価委員会、委員長は前原子力安全委員長の佐藤一男先生にやっていただきましたが、この評価委員会の調査結果によりまして、私どもの行政の行為につきまして一つ一つ検証が加えられ、結果といたしまして、規制として多々反省すべき点があると厳しい指摘を受けているところでございます。
 この評価委員会の方では、総合的な評価といたしまして、こうした事案におけます最も大きな責任は、自主点検記録の不正等を行った東京電力にあるが、同社は社内モラルの再確立や組織体制の改革に取り組み、再発を防止することが何よりも必要である。同時に、保安院により二年間にわたって行われた調査についても、以下に述べるように反省すべき点が多々ある。この本件事案の処理に当たりまして、保安院が、特に技術面を中心とした安全確保の観点から対応してきたが、原子力安全行政に対する信頼の確保、すなわち行政の説明責任に対する認識が不十分であったことに起因するものである。保安院は、本件事案の反省に立った改善策を十分に検討し、早急に具体的な対策を講じていくことが必要であると厳しい御指摘を受けているところでございます。
 指摘の状況につきましては、(1)に「反省すべき点が多々ありと指摘」ということで、1から5まで書いてございます。
 一つは、初期動作、調査手順に関する問題でございますが、早い段階で申告者やその関係者への直接接触を行わなかったことは、調査手順上、問題である。申告者の個人情報保護については、氏名に関する情報など、調査に必要でない情報や個人のプライバシーに関する情報を東京電力に示したことは極めて不適切である。法律に基づく調査権限の行使ということをもっとより早い段階で行使すべきであった。調査期間の間延びについても、さらに期間が短縮できる余地があった。また、より早いタイミングで公表しようという基本姿勢が希薄であったというような御指摘を受けているところでございます。
 また、今後の再発防止等の対策といたしまして、特にこの委員会で御指摘をいただきましたのは、申告があった場合には、それが重大な事故につながる可能性のある事案を早期に発見できる端緒と認識して、その上で、すべての申告案件について、特に安全性及び違法性の両方の観点から、迅速かつ機動的に調査を行うことが求められるという御指摘を受けております。
 そういうことで、保安院が行う調査を監督、指導助言する機関として、外部有識者から成る申告調査委員会を十月八日から立ち上げたところでございます。
 なお、本件に関しましては、調査過程において問題があったということで、当省の、私も含めて関係者が処分を受けております。
 次に、「再発防止策の検討」でございます。
 これにつきましては、原子力安全規制法制検討小委員会、委員長の東京大学教授の近藤駿介先生が取りまとめられたわけでございます。これにつきましては、今回の事案に関しまして、国側の要因として、規制のルールが不明確な部分があるとか、いろいろな御指摘を受けたところでございます。
 そこで、再発防止の検討については、1から7まででございますけれども、今後、原子力安全規制のルールの明確化ということで、事業者が行う自主点検につきまして、記録の保存義務づけあるいは国の審査の導入ということが必要である。二つとして、設備の健全性評価の義務づけと評価基準の明確化が必要である。それから、組織的な不正行為に対する罰則の強化、事業者の安全確保活動における品質保証の確立の義務化、申告制度の運用改善、また、情報の公開、原子力安全規制行政体制の一層の充実という指摘を受けております。
 私ども、こうした再発防止策を受けまして、今後、早急に電気事業法の改正、技術基準の整備、原子力安全規制行政体制の充実、申告調査委員会の運営等に取り組んでいきたいと考えております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
    ―――――――――――――
谷畑委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原博久君。
栗原委員 栗原でございます。お時間をいただきまして、ありがとうございます。
 今、保安院からいろいろ、るる説明がありましたけれども、幾ら説明いたしましても、国民、そして特に原発の立地県の皆さんにとりましては、上のそらの話にしか聞こえません。と申しますのは、「もんじゅ」、ジェー・シー・オー事故など、かつてこのような情報隠し等のいろいろ事件があったわけでありますから。
 そしてまた、原子力というものは、我が国の最も今大事な問題でございまして、例えば、今回、東京電力関係でも、福島、新潟の各原発では、これから核燃料サイクル、リサイクルの関係の問題について一生懸命、プルサーマル計画について、住民からの反対はあるけれども国策としてのそれにやはり協力しなきゃならぬというこれらの県、今三つの県、新潟、福島、福井ですか、関係市町村、約五市町村あるわけですが、これらの自治体の長の方々あるいはそこの理事者の方は一生懸命にやっておるわけであります。しかしながら、今日このような不祥事が発覚いたしまして、残念きわまりないと。
 特に新潟県におきましては、新しい原発、巻原発ということで、巻町では住民投票をして、反対が行われている。また、かつて刈羽におきましても、ラピカとか、原発にまつわる関係でいろいろな問題がある。その中で、柏崎刈羽でも、プルサーマルに協力しようとしても、やはり住民からの問題提起があり、昨年の五月ですか、確かに刈羽村では、住民投票をやりましたところ、ノーとなった。しかし、やはり国のエネルギー政策は重要だということで、議会ではそれに対する決議を行って、刈羽村では、今まで約十五カ所で、村内で一生懸命に村長が対話集会をやっておる。最後の対話集会が終わった八月二十九日に突如この問題が出てまいったわけでありまして、もはやこれによってプルサーマルは御破算だということになっていると私は思うんです。当然、新潟県知事初め各県知事も大変厳しい対応を求めている。
 また、このような結果があらわになっても、二年間も全然自治体に報告も、あるいは連絡もない。柏崎におきましては、エネルギー庁はわざわざ現地事務所までつくってやっている。その中で今回の、シュラウドの機器を初め、循環の機器を初めとするこのような隠ぺい工作は、国と地方自治体、そしてまた立地県の県民との信頼関係を極めて損なったと私は思っておるわけであります。
 そしてまた、そういう中でも、現在、十一案件ですか、こういう問題が起きてもまだ原発が動いているわけですね。今保安院長のお話では、安全性云々という話がありました。しかしそれは、専門家がそうおっしゃっても、原発を誘致する県民にとりましては、やはり、何を言っているんだということになると私は思うんですよ。
 こういう中で、今保安院は、安全問題のいろいろなことについての御説明がありましたけれども、今十一件ですか、原発が動いていますよ。どういう根拠で安全なのか、これを明確に御答弁願いたいと私は思います。
佐々木政府参考人 二十九件の事案のうち、機器の取りかえあるいは修理が未実施の八基十一件につきまして、私どもも、専門家の意見も聴取いたしまして評価もいたしました。
 具体的な解析の手法でございますけれども、シュラウドにつきましては、米国機械学会等で確立されました評価方法に基づきまして、厳しい条件でひび割れの状況やその拡大の見通しを評価いたしております。各炉心のシュラウド溶接線のひび割れは、安全上問題となる長さには達せず、直ちに原子炉の安全性に影響を与えるものではないことを確認しました。
 他の案件につきましても、ジェットポンプの固定用部品のすき間の問題、摩耗の問題等五件ございますけれども、ジェットポンプの主要部材が脱落する可能性は低いわけでございますが、万一脱落した場合であっても、これは、検知し、問題を生ずる前に対応することが可能であると評価をいたしました。
 さらにもう一件、ジェットポンプ計測用配管のひび割れに係る一件につきましては、万一計測用の配管が破断しても原子炉圧力に影響を及ぼすものではない、異常が検知可能であるということで、総合判断をいたしまして、安全上の問題となるものではないということを技術的に評価いたしました。
栗原委員 原発の問題は、技術的なことは我々国民は信頼して、新潟県でも原発の誘致について同意しているわけなんですよ。しかし、あなたが幾らそのような科学的な根拠とか言っても、安全性については今重大な瑕疵がないということだと思うんだけれども、しかし事実、原発の立地県の方だけではなくて、国民全体の八六%が、今あなたが言っていることについては信用できない、納得できないと言っているんです。
 これについて、私は、真摯に反省といいましょうか、この問題は、保安院とか資源エネルギー庁とか東電の問題だけじゃないんですよ。我が国のエネルギーサイクル全体の問題であり、これからプルサーマル計画等についての大きな問題なんですよ。特に、新しくこれから原発を、今私どもの日本の国はまだまだ電力需要が起きてまいりますよ。現在三四%の原子力依存ですが、まだまだ足りない。原子力立地の新しい地域もこれから模索している。全く水泡に帰した問題であると私は思います。
 私は、いつも地元におきましては、そんなに安全ならば原発を東京につくったらいかがですかと。なぜ地方に、原発とか産廃施設とか迷惑なものだけを持ってくるんですかと。あるいはまた、道路問題ですが、いろいろ地方のことで道路問題を言っても、彼らはみんな言うんだ、我々のところにだけ不利な条件を押しつけて、これは中央と地方の一種の差もあると私は思うんです。しかし、今この問題で、国民全体の八六%が保安院の今の答弁は納得できないと。これは、全力を尽くしてこの安全性をやはり追求していただきたいということを私はまずもって大臣にお願いしたいと思っております。
 さて今回の、例えば福島のことでございますが、福島第二発電の三、四号機、ことしの七月に安全検査のレビューの評価では、安全性について信頼性が高いと。ところが、これがいつの間にか撤回されて、何の説明にも至っていない。九二年に東電は、福島第一発電の一号機の定期検査で、格納容器の気密試験で、故意に格納容器に空気を注入しまして、この漏えい率の不正操作をしたという情報があるわけであります。
 この問題は、この不正操作は、今回問題になったシュラウド等の隠ぺい問題でも重大な問題と実は私は思っておるわけでありまして、これについて調査をやっているわけですが、調査が長引けば長引くほど福島県等の立地県の不安が増すわけでありまして、この件の調査はどのように進んでいるか、そして、そこには疑惑があったのかということを明確に御答弁願いたい。
桜田大臣政務官 格納容器は、万が一の事故の際に放射性物質の放出を防ぐ重要な機能を持っているものでございます。このため、国の定期検査に際して漏えいの検査を行っておりますが、福島第一の一号機の格納容器漏えい検査に関する不正の疑いの件について、仮に事実とすれば、重大な問題であるというふうな認識をしているところであります。
 また、原子力安全・保安院は、九月三十日に、電気事業法の報告徴収命令を出し、東京電力から報告の提出を受ける等、事実関係を把握するための調査をしているところでございます。また、この調査については、事実関係に関する情報が極めて乏しいこと、法令の被規制者でない点検作業を請け負った企業からも調査を行う必要があること等により、慎重に調査を進める必要があることから、いましばらくの時間をいただきたい、そんなふうに思います。
 いずれにしても、事実関係の解明を行うべく調査を行っており、不正があれば厳重に調査をしていきたい、こんなふうに考えております。
栗原委員 桜田政務官は常に厳しいお方でありますから、今の御答弁を踏まえて早急に、県民があるいは国民がこの問題について、安心といいましょうか、やはり私は、ひとつ真実を報告していただきたい、そしてまた安全性に万全を期していただきたいと思います。
 次に、今回のこの隠ぺいの問題、アメリカのゼネラル・エレクトリック社の一技術者がこの問題を、二〇〇〇年の七月の三日ですか、保安院の方に報告があった。その後、保安院の方の説明もございましたけれども、かつて、つい一九九九年の東海村の臨界事故を機に、原子炉等の規制法の改正によって内部告発の申告制度の奨励を実はやっておる。そしてそこで、内部告発してもその人を首にするとかおとがめをしないということをちゃんと条文に書いてあるわけでありますが、この勇気ある告発をした方を東電にすぐその翌日に電話で話をする。さらにその後、昨年の十二月二十五日ですか、文書をもって、そしてまた、その検査の記録あるいはこのアメリカ人との会話の記録までも、全部それを名前も記して東電に示したということが情報によってうかがえるわけですが、こういうことはまさしく法律違反でありますね、この方がどういうふうな処分を会社から受けたかどうかは別として。
 このことについて、先ほど保安院の方で、処分云々というふうな話がございまして、内部的に処分がありました。この告発者を守るという立場、そして保安院の法律を守るという立場、このような中で、このような情報を東電に漏らしたといいましょうか、報告した、こういうことについて、私はやはり厳重な処分があってしかるべきだと思うのでありまして、東電では、現職の社長以下歴代のかつての三人の社長さん、経団連の役員もやっている方、みんな職を去って責任をとったわけなんですよ。監督官庁であります保安院に一切おとがめがない、これは、私は、一国会議員という立場と同時に、原発を抱えている立地県の県民を代表いたしまして、これでは納得できない。これについてどのような処分をお考えであるか。
 もう処分は終わったと言われればそれで終わりだけれども、しかしながら、立地県の方々、それに先ほど私が申したとおり、刈羽の品田村長はあの八月二十九日のそのときまで、我が国のエネルギー政策を思いながらプルサーマルの対話集会を続けておったんですよ。そういう気持ちを思うならば、私はしかるべき処分があってもいいと思うんですが、これについて御答弁をお願いしたいと思います。
平沼国務大臣 まず、答弁をさせていただく前に、今回のこの一連の事案によりまして、信頼と安全というものを担保しなければならない原子力行政におきまして、国民の皆様方の信頼を大変損なった、そして不信感をお与えした、このことは本当に申しわけないことだと思っておりまして、エネルギー行政の責任者として、私は、今まで御協力をいただいた立地県の皆様方を初め国民の皆様方におわびをしなければならない、このことをまず申し上げさせていただきたいと思っております。
 当省におきます先般の処分に関しましては、あくまで厳正中立な立場から、行政サイドにおいてどのような問題があったのか、そういう原因究明でございますけれども、それを虚心坦懐に見きわめることが必要だ、こういう考え方で、私の直属の機関として、有識者の方々、各分野の方々に入っていただきましたけれども、評価委員会を設置いたしまして、原子力安全・保安院の調査過程の妥当性等について御審議をいただきました。
 先般の私どもがいたしました処分は、その評価委員会の中間報告での厳しい御指摘も踏まえまして、行政サイドにも不適切な点があった、このことを率直に認めまして、その上で処分内容を決断したものでございまして、その処分内容については、私は、厳正なものであった、このように思っているところでございます。したがいまして、さらに処分をすべきだ、こういう御指摘もございますけれども、私は、再処分をするつもりはございません。
 その上であえて申し上げさせていただきますと、自主点検記録に関して不正をみずから行ったことを認めている企業において当該責任者をどのように処分したかということと、不正の指摘を受けて調査を行った行政側において、当該調査の過程で不適切さが認められた職員をどのように処分するかということは、比較になじむ事柄ではないと私は考えております。
 また、今お話の中にありました申告者に関する情報に関する御指摘については、具体的に申告者はこの人であると伝えたわけではないものの、判読の可能な署名でございますとか、あるいは氏名に関する情報が含まれた資料、そして情報を東京電力に示したことは、これは事実でございまして、この資料や情報の提示の中で、調査指示に必ずしも必要でない情報を含めて示したことは、結果といたしまして、御指摘のとおり申告に基づく調査過程における対応としては不適切であった、このことは言わざるを得ないと思っております。
 こうした点も勘案をいたしまして、本件の調査過程に関与した関係者につきましては、調査過程における不適切な対応という点に着目をしまして、御承知のように、組織のトップから担当課長まで、国家公務員法上の懲戒処分を含めて厳正に行わせていただいたところでございます。
栗原委員 今大臣からそういうお話がございましたけれども、これからプルサーマルとかをやる場合、やはり国の立場の方々が身を切って初めて立地県の方々の御同意を得られるということで私は申し上げたいと思っております。
 さて、プルサーマル計画につきましてでございますが、この事前了解が先ほど私が申しました新潟、福島、福井で行われ、そしてまた、例えば新潟県では一九九九年の二月に事前了解を行っているんですが、この九月の十三日に、平山知事を初めとする県からは、これはなかったことにする、白紙撤回だということでした。
 しかし、そうでありますが、政府の見解は、プルサーマルをこれからも推進せねばならない、当然だというお立場もわかるんですが、この中で、今私が言ったとおりに、これらの関係各県の自治体、そして住民は強烈に拒否反応を示しているわけでありますが、この中において、我が国の原発をどのようにこれから持っていくか。
 ただ、私は、確かに維持基準等について、アメリカに比べたら我が国の法整備というものはちょっとまだ未熟であったか、それがこういうことで問題も大きくなったかと思っておりますが、しかしながら、それはそれによって許せるものじゃないと思っております。これからの原子力政策全般について、あるいはプルサーマル等の問題について、大臣としてどのような決意で臨むかについてお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 原子力安全に対する基本的な考え方というのは、日常的に保安活動を行いまして、最も身近に潜在的にリスクを感知し得る立場にある事業者が一義的に責任を持って確保するとともに、これを国が適切に確認していく、こういうことが私は絶対に必要なことだと思っています。
 そういう意味で、この十月一日に取りまとめられました総合資源エネルギー調査会原子力安全規制法制検討小委員会の中間報告事案において示された再発防止策は、事業者の保安活動を基本に、国がその実施体制等を確認することによりまして、安全確保の実効性を高め、国民の信頼性を回復することを目指すものでございまして、再発防止策として六つの御提言をいただいております。
 一つは、自主検査を法令上明確に位置づける。検査の結果の記録を義務づけなさい。事業者に対しては、ひび割れ等については、科学的、合理的な根拠に基づく信頼できる手法を用いて評価することを義務づけなさい。それから、組織的な不正を抑止するために罰則を強化すべきだ。それから、先ほど御指摘がありました申告制度の運用の改善、二年もかかる、こういうことじゃなくて、これを徹底的に改善しなさい。五つ目は、品質保証体制が確立されるような制度の整備を行うこと。また、当たり前のことですけれども、地域住民等国民への説明責任を果たすこと。こういうことで、私どもとしては、次期臨時国会に、こういったことを勘案し、そしてこの精神を盛り込んで、法案を提出する準備を進めております。
 また、今後のプルサーマル計画の実施についてでございますけれども、今回の事案によりまして、原子力に対する国民、住民の信頼を失ったことの影響は本当に御指摘のとおり大変大きなものがございまして、プルサーマルを初め原子力政策をめぐる情勢は率直に言って厳しいものがあると思っています。
 しかし、エネルギーの安定供給や地球温暖化防止の観点から、原子力発電の重要性については変わりないことだと思っておりまして、この原子力発電を国民の信頼を得て末永く続けていく上で、私どもはプルサーマルの実施は必要だ、このように認識しておりまして、当省としては、再発防止策を徹底的に実施することをこの再出発点といたしまして、努力を積み重ねて、そして国民の皆様方の信頼を本当に回復する、そして国のエネルギー政策をしっかりと進めていく、こういう決意で臨んでまいりたい、このように思っております。
栗原委員 ありがとうございました。
 立地県の一人といたしまして、今後やはり、謙虚に、粘り強く、該当する方々について説得されるようにお願いしまして、私の質問といたします。ありがとうございました。
谷畑委員長 田中慶秋君。
田中(慶)委員 私は、民主党を代表して、今回の東京電力原子力発電所の不正記録に関する問題について質問をさせていただきたいと思います。
 原子力発電の自主点検に係る不正等の問題は、社会全体の信頼を裏切ることであり、到底容認できるものではありません。また、原子力安全確保については、一義的には事業者の責任であるということは言うまでもありません。しかし、この原子力発電所の検査結果についての虚偽報告、記録改ざん等が行われる素地をつくった要因は、不明瞭かつ合理性を欠いたルールのもとで裁量行政を行っている規制当局側の責任は免れないと思います。
 このような状態から、私は、今回の事案について、原子力安全・保安院の総括と、国民に対する行政責任としての信頼を回復するためにも抜本的な改革と強化、そして所管の責任者である大臣としての考えをまずお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘のように、本当に今回の事案というのは国民の皆様方の信頼を根底から覆すことになりまして、私どもとしては、反省をし、一日も早く国民の皆様方の信頼を取り戻さなければならないと思っております。
 御指摘のとおり、原子力においては、その安全性の確保と、そして今申し上げた国民の信頼の確保というのは極めて重要であり、今回の東京電力による自主点検記録に関する不正等の問題は、エネルギー供給の基幹をなす原子力そのものに対する国民の皆様方の信頼を失墜してしまった、大変私どもは申しわけなく、遺憾なことだと思っております。したがいまして、徹底した事実の解明と抜本的な再発防止策の実施が必要である、まずこのことを考えております。
 先ほども栗原先生の御答弁で触れさせていただきましたけれども、徹底した事実解明を進めるために、評価委員会をつくらせていただきまして、そしてまた、我々独自に立入検査等をさせていただいて、十月一日に調査結果を公表いたしました。
 東京電力に対して厳重な注意を行うとともに、今回の事態の背景には、同社の社内のチェック体制の不備があったことから、特別な保安検査の実施、定期検査の特に厳格な実施等の行政措置を講じたところでございます。
 このような事態の再発防止を図ることが重要であることから、先ほども申し上げましたけれども、次期臨時国会に向けて、事業者による自主点検の法令化と国による審査、設備にひび割れ等がある場合の設備の健全性評価の義務化などを内容とする法案を提出することをさせていただいております。
 これまでの調査過程につきましては、当省自身としても反省すべき点は多々あると認識しておりまして、原子力安全・保安院による本件の調査過程を評価する委員会においても、不適切な点があったということで、関係者を厳しく処分いたしました。
 総理からも私に対して、留任するに当たって、まず第一に、原子力の安全確保について国民の信頼を回復するように万全を期すべきだ、こういう御指示をいただいておりまして、私どもは総合的に、真摯にこの問題を受けとめて、そして国民の信頼性の回復と安全の確立のために私どもは幅広く検討していかなければならない、このように思っております。
田中(慶)委員 先ほど来、安全・保安院の説明もありましたけれども、問題は、みずから反省することなく、事業者である東電だけを矢面にしているということ自体に私は問題があると思うんです。
 今回の問題は、設置基準そのものは明確にはなっておりますけれども、維持基準、実務ルールがないということであります。ですから、法的に申告しなさいとか法的に報告しなさいということは何もないんです。こういうところにいろいろな問題があるわけであります。ですから、今後の信頼回復という問題については、やはり保安院、そこにしっかりとした反省が求められていると思うんです。
 例えばアメリカの原子力を見てください。百二基の中で、安全院、検査を担当される皆さんは、職員が二千九百人もおられるんです。日本は、この安全院に属しているメンバー、二百十九人とか言われているわけであります。十分の一でしょう。
 こういう中で、みずからの安全というものを、国として、原子力行政、あるいはこれからの日本の経済、あるいはまた環境問題も含めて支えるときに、これだけのメンバーだけで本当に、自主点検や定期点検を含めながら安全行政というものができるのかどうか。そういう問題を明確にすることが、県民や国民に対する安全の信頼やそういうことにつながっていくんだろうと私は思うんです。そのことに全然触れていないで事業者のことだけを責めてもしようがない。みずからのことをもう少し省みながら、今回のこれらの事件という問題について、案件についてはもっと明確に反省をする必要があるだろう。どう思いますか、大臣。
平沼国務大臣 原子力発電の立地推進に当たりましては、安全性の確保というのは御指摘のとおり大前提だと思っています。ですから、これからも、国の基幹的なエネルギー政策について、立地地域の皆様方や国民の皆様方の信頼を得ながら推進をしていく、そういうときに、私どもとしては、推進する側が、安全性はよくわかりませんけれども推進させてください、こういうことでは理解が得られないと思っています。
 したがって、原子力安全規制については、エネルギー政策について責任を負う経済産業大臣のもとで一次規制を実施するとともに、客観的そして中立的な立場から、原子力安全委員会が再度安全性を確認するダブルチェック体制が構築されています。
 そして、今御指摘のように、人員的にも、そしてある意味では、こういう問題が起こった、だから能力的にも、改めるところは改めて強化しなければならないんじゃないか、こういう御指摘だと思っております。
 したがいまして、今後は、私どもとしては、地元の方々を初め国民の原子力行政に対する信頼の回復のために原子力安全行政に万全を期すことが必要でございまして、原子力安全規制の強化でございますとか原子力安全委員会との連携の強化、あるいは保安院の独立性のあり方、こういったものを、論点がございますので、すべて総合的に、いろいろ御意見を承りながらこういったことを私どもは総合的に検討し、改めるべきところは改めていかなければいかぬ、このように思っています。
田中(慶)委員 大臣、私は、今回の一番の問題点は、設置基準はあっても維持基準がなかったところに問題があると思うんです。ですから私は、一日も早くそういうルールを確立し、基準を明確にすることだ、そのことが安全に対する信頼の確保につながっていくんだろうと思っております。その維持基準のルールに反したときに初めて罰則があるんですよ。何もないで、報告しなかったと言っても、いや、報告する義務はない、このぐらいは安全だと思っていたと言われたって、それは皆さん方、何も行政指導できないんですよ。ですから、明確にルールを決めることだ、私はそう思っております。
 ですから、今回の問題についても、大臣は、少なくとも評価委員会を、ここに専門委員としてつくるということを言われております。ですけれども、これは内部に幾らつくったってだめなんですよ。はっきりと三条委員会というものをつくって、そこでいろいろなことを明確に指導する。三条委員会ですから、結果的にそのことは国会にも報告する、情報公開をする、こういうことを明確にすることがやはり再発防止や事故防止につながっていくんだろう。
 あなたの考えているこの評価委員会ということも大切ですけれども、大臣のもとに置いたのでは何もならない。外に置いて、そのことを別人格としてしっかりとさせる必要があるだろう、私はそう思いますけれども、大臣、どうですか。
平沼国務大臣 先ほどの御答弁でも触れさせていただきましたけれども、これから原子力行政を進めていくに当たりまして、やはり原子力の安全に関して責任を持つ、こういう立場の者が立地の地域の皆様方と直接話をさせていただいてその推進をやっていくということは、私は機能的に必要なことだと思っています。
 そういう意味では、中央省庁再編のときにもいろいろ御議論をいただきました。その中で、内閣府の中の原子力安全委員会、そこにダブルチェックという形で、お互いが連携していこう、こういう体制が中央省庁再編の中でつくられましてやってまいったのですけれども、今回こういう事案が発生しました。したがって、こういう事案が発生したというのはどこに原因があったかということは、先ほど来申し上げておりますように、評価委員会で御指摘をいただき、そしてそういう御指摘に基づいて私どもは法案を整備し、そして再発防止のための対策をとっていかなければならないと思っております。
 したがいまして、私どもとしては、この原子力安全規制の強化でございますとか原子力安全委員会との連携の強化、これをしっかりとしていかなければいけませんし、また、御指摘のございました保安院の独立性のあり方などについて、私どもは真剣にこれから議論していかなければいかぬと思っておりますし、評価委員会の御指摘の中にも、御指摘の維持基準、こういう問題の御指摘もございました。そういったことを踏まえて私どもはしっかりと検討していかなければならない、このように思っています。
田中(慶)委員 そこで、大臣にお伺いするんですが、今、原子力の保安院、この組織の任命者は大臣ですよね。大臣は、そのときに、お伺いしたいのは、専門員としての資格を任命していくのか、あるいはマネジメントという立場でそういう要職、責任者を任命するのか、まずその辺をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 この原子力安全・保安院長というのは、知識的にも能力的にも専門性を有している人が適任でございまして、私どもは、大臣として任命する場合には、その専門性、そして、そういう組織の長でございますから、やはりそういうマネジメント、こういった両面を備えた人材を任命しているところでございます。
田中(慶)委員 私は、ある面では、これは個人的恨みつらみは全然ありません。私の調査なりいろいろなことをしてまいりますと、今の原子力保安院の院長さんは、専門職でしょうか。大学は、土木屋さんですよ。ですから、私は、専門員ですか、マネジメントですかと聞いたのは、そこなんです。少なくとも、保安院の長たる者は、もう少し専門職、しっかりとしなければいけないんじゃないかな、私はそんな認識を持っているんですが、大臣、どうですか。
平沼国務大臣 院長は技術系の人でありまして、そういう意味では、通産省に奉職をして以来、そういう専門知識を涵養する、そういう立場の中でやはり能力を磨いてきた、そしてまたマネジメントの能力もある、こういうような総合的な判断で任命をしたところでございまして、私どもといたしましては、任命したときは、適任である、こういう信念に基づいて任命をしたところでございます。
田中(慶)委員 だれしもが今の大臣の答弁で納得するかどうか。少なくとも、これだけ日本に役人さんが多い中で、その適材適所ということはあるでしょう。でも、やはり日本のエネルギー、日本の経済の原動力の下支えになる原子力発電の保安院のその責任者というものが、やはり選考ぐらいしっかりと、幾ら優秀な人物、まじめな人であっても、知識的な問題も含めて、やはりそういうことも必要じゃないかな。あなたの答弁では、私は、恐らく多くの皆さんは理解に苦しむんだろうと思います。
 特に、この事故によって日本の原子力政策は、少なくともゼロどころかマイナスになって、そこからスタートしなきゃいけないんですよ。こういうことを含めて製造責任ということについて何も触れていない、今回。修理をしたのは事業者ですか。メーカーでしょう。そのことに何も触れていない。事業者のことだけを追及している。まして、みずからの、保安院としての考え方、何のポリシーもない。やはりその辺にむしろ今回の事故になる問題があったんでしょう。そう思いませんか、大臣。
平沼国務大臣 まず、先ほどの私の答弁の中でちょっと補足をさせていただきますと、確かに、そういう原子力の博士号ですとかあるいは学士、そういう関係の院長ではございません。しかし、院長というのは技術的な素養があって、そして、保安院の中にはそういう専門家集団がありますから、そういったところを束ねて総合力を発揮する、そういう観点で適任者である、こういうことだろうと私は思っております。
 それから、今御指摘の点に関して、私どもとしては、今回の問題というのは東京電力の自主点検の部分で起こったことでございます。したがって製造者責任、製造をしたところの調査、あるいは原因の究明、これが弱いのではないか、そこをすべきじゃないか、こういう御指摘ですけれども、私どもは、その電力事業者全部に対して調査をするように勧告をいたしましたし、それから、それを一緒にやる、点検する企業にも同時に調査を私どもは命じているわけでございまして、そういう意味では、私どもとしては責任を回避したわけではございませんし、電力事業者以外にも関連事業者に対してはそういうしっかりとした調査をいたしました。
 ですから、私どもとしては、決して責任を回避するわけじゃございませんけれども、率直な反省の上に立って関連の事業者に対して調査を命じ、そしてそれに対しては徹底的な原因の究明をしていく、こういう体制をとっているところでございます。
田中(慶)委員 ですから先ほど私は、任命権者としてマネジメントを重要視するのか、専門員を重要視するのか、そういうことを申し上げたんです。そのことをしっかりしておかないといかぬと思いますよ、組織の長なんですから。
 さらに、事業者が修理をするんじゃないんですから、そういうことを含めて、やはり維持ルールなり維持基準という中で明確にそういうことがオープンにダブルチェックできるようなことをしておかないといけないと思います。
 まして、今回のこのことによって信頼を失ってくる。例えば京都議定書の問題も、原子力発電所を少なくとも十基から十三基つくらなきゃいけない、でなければCO2の削減ができないということを明確にうたっているわけであります。私は、あのときも明確にこの問題を指摘したと思います。今回のような問題をやはりちゃんとしておかないと、これからの原子力政策そのものが、日本において、幾ら笛を吹けども、お願いしようとしても、信頼という問題について理解ができなければこの問題の解決にならぬと私は思います。
 先ほどあなたは、電気事業者の方の責任、少なくとも東京電力はそれなりの責任をとりました。減俸したからといって、それは私は責任ではないと思います。そうでしょう。役所というところはみんなそうなんです。雪印の問題のときも農水省はどうしましたか。責任、明確じゃありません。責任というものは明確にすることなんです。そのために長たる者が重い責任を持ってやるんですから。
 ですから、少なくとも保安院長を、更迭と言っては大変失礼でしょうけれども、その責任というものを、これから日本の原子力政策を推進するために、国民の信頼を得るために、まして国際的な京都議定書の推進をするためにも、そのぐらいの責任を明確にする必要があるだろう。報酬を一部カットしたぐらいでは私は責任にもならぬと思います。責任というものはそのぐらい重い。まして、今回の問題はそれに値するんだろうと思いますが、大臣、どうですか。
平沼国務大臣 先ほどの答弁でも触れさせていただきましたけれども、これは、戒告という国家公務員のその規定の中では大変ある意味では重い、そういうランクの処分をしたと私は思っています。それに付随して、本人の申し出で減俸をいたしました。本当に国民の皆様方の信頼を大変大きく裏切った、そういう意味では、私どもとしては戒告という非常に重い処分をさせていただいた、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
田中(慶)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、あなたは公務員法に基づいてそういう処分をしたと。官僚国家だからそうなってくるんですよ、はっきり申し上げて。戒告ってそんな責任重いんですか。国民はわかりません。ここにいる国会議員みんなわかりますか。そうじゃないですよ。今世の中が求めているのは、具体的にわかりやすい政治、そういうことなんです。ですから、戒告なんてだれもわからないですよ。そのことを含めて、公務員が模範を示さないと国民の信頼を得ることはできません。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
谷畑委員長 これより斉藤鉄夫君の質疑に入るのでありますが、参考人として原子力安全委員会委員長松浦祥次郎君に御出席をいただいております。
 斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。東海村のジェー・シー・オー臨界事故からちょうど満三年がたちました。あのジェー・シー・オー臨界事故、あのときも原子力に対しての国民の信頼というのは地に落ちたわけでございます。これをどう回復するかということで、この国会でも、その直後の臨時国会で、原子力災害対策特別措置法、それから原子炉規制法の改正、その規制法の改正の中で今回のホイッスルブロアの申告制度もできたわけでございます。それから、原子力安全委員会の抜本改組。このような、ある意味ではこの国会の議論を通して大改革をした、原子力安全に対して抜本改革をした、我々国会議員としてこういう自負があるわけでございますが、今回の事故はそのときの抜本改革が余り役立っていないのではないか、あの改革は一体何だったんだろうか、こういうじくじたる思いでございます。
 確かに、今回対象となりました事案は、あのジェー・シー・オー事故の前の事案ではございますけれども、しかし、今回の事案に対する経済産業省、それから東電、電力会社の対応を見ておりますと、このジェー・シー・オー事故の反省が全く生かされていないということを強く感じ、本当に残念に思う次第でございます。
 私ども、党として調査団を派遣いたしました。九月の十日と十一日、我が党の経済産業部会長の河上理事を団長といたしまして、私も入りまして、福島第一発電所、第二発電所、それから柏崎刈羽原子力発電所に伺いまして、地元の首長さん、それから発電所関係者、実際に超音波探傷等をやっておりました技術者等の皆さんからお話を伺ってまいりましたので、きょうはその方々の声を通して質問をしたいと思います。
 まず最初に、福島の地元四町長さん、富岡、双葉、楢葉、大熊、この四町長さんとお会いをいたしまして、ゆっくりお話をお伺いしました。いろいろな御意見がありましたけれども、共通しての意見は、安全規制の強化、これしかないのではないか、我々地元の人間はここから逃げ出すわけにはいかない、安心したいんだ、その安心のためには今の規制体制ではだめだということが今回わかった、抜本的な安全規制、この強化をしてほしい、このような声でございました。
 そして、具体的には、ここからは私の意訳が入りますけれども、現在のダブルチェック体制、原子力安全委員会と原子力保安院の、八条機関と行政、このダブルチェック体制ではもう根本的にだめで、アメリカのようなNRC、ニュークリア・レギュレーション・コミッティー、このような三条機関として全く独立をして、先ほどの田中委員の質問にもございましたけれども、こういう体制に変えない限り、今回、安全規制を強化する強化すると言っても国民は納得しないのではないか、こういう感を強くしたわけでございます。
 ジェー・シー・オー事故の後にも同じような議論がございました。そのときは、やはりダブルチェック体制というのは日本の風土に合っているんだ、そして、日本の歴史の中で積み重ねてきたもので、これが一番いいんだということになったんですが、私もそれを納得しましたけれども、今回、この非常事態を乗り切るには、このダブルチェック体制を強化しますというだけではもう国民は納得しない、全く新しい規制体制をつくるということしか今回のこの危機は乗り越えられないのではないかということをこの地元の四町長さんはおっしゃったんじゃないかなと思います。この点についての御見解をお伺いいたします。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 私も四町の町長さんにお目にかかり、また議長さんたちにもお目にかかって、じかに御要望等は承っております。今斉藤先生が言われたような同様の強い御指摘がございました。
 今、この原子力の安全体制の確立について大変御議論をしていただき、そしてお力をいただいた、そういう中で、ダブルチェック体制が日本の風土には必要だ、こういう御認識を持たれた、こういうお話も承ったところでございまして、それでは、今、ちょっと状況としては、これだけ信頼を損なった状況の中で、全く抜本的なそういう体制をつくるべきじゃないか、こういう御指摘でございました。
 再三再四、私、御答弁させていただいていますけれども、やはりこれからまだ十一基とか十三基、この国のエネルギー政策で原子力発電所の建設を推進していかなければいけない。また、二十一世紀、展望しますと環境の時代と言われておりまして、安全性さえしっかり担保して国民の信頼をとれれば、百三十万キロワットの原子力発電所一基で二酸化炭素の排出量を〇・七%削減できる、こういうようなことがございます。
 ですから、この中で推進をしていくに当たって、やはり推進側のサイドも、この安全、保安、そういうものに責任を持った人たちが、立地地域の皆様方や国民の皆様方と接して説明をさせていただくということも私は今後とも必要だと思っています。
 しかし、今回の事案の中で、こういった状況になって国民の皆様方の信頼を大変損なったわけでございますから、私どもとしては、やはりこの原子力安全行政に今後層一層の万全を期していかなければいけない、そのためには、原子力安全規制の強化と、そして原子力安全委員会との連携と、それから原子力安全・保安院の独立性、そういったことをいろいろ御指摘いただいていますから、そういったことを踏まえて、国民の皆様方が納得できるそういう体制を、法案整備を含めて努力をしていかなければいけない、こういう基本認識であります。
斉藤(鉄)委員 ダブルチェック体制をどう改善するかということの検討、これも大切だと思いますが、ある意味でアメリカ型の三条機関、いわばシングルチェック体制、その強化ということも考慮に入れた検討をぜひお願いしたいと思います。
 二番目の質問に移りますが、これは経済産業省と原子力安全委員長にもお伺いするわけでございます。
 刈羽村に行きました。そして品田村長さんとお会いをいたしまして、品田村長さんからは、先ほど田中委員の質問の中にもありましたけれども、新設時の基準だけではなく、運転中の経年変化も考慮に入れたいわゆる維持基準をつくる必要があるのではないか、これがなかったことが今回の問題の根底にあるのではないか、こういうお話がございました。
 そして、東電の原子力発電所の第一線の技術者からもお話を聞きましたけれども、アメリカでは、アメリカ機械学会の基準、ASMEで、セクション3で製造にかかわる基準が定められている、そしてそれとは別に、セクション11で運転時の維持基準が定められている。そして、これは民間基準ですけれども、いわゆる10CFR、コード・オブ・フェデラル・レギュレーションという中にこれが組み込まれる仕組みになっている。この10CFRを見ておりますと、やはり運転時のメンテナンス、またインスペクションということが、基準が書かれております。そして、この基準は、年に一遍ないし二遍、定期的に改定を続けていて、常に最新の技術情報がこの基準の中に組み入れられるような仕組みになっている。まあ東電の技術者でしたから非常に控え目におっしゃっておりましたけれども、現場を預かる技術者としてはこういう基準があると非常にやりやすい、こういう声もございました。
 品田村長さんの声、それからあるエネルギー評論家の中に、これはエネルギーのある雑誌ですけれども、エネルギー評論家が、「「安全上問題がないのに運転停止の恐れがある報告を避け、安定供給の責任を全うする」という、電力マン故の一種の「誠実さが故の罪」から現場作業者・監督者を解放する道でもある。」こういう、ある意味では非常に思い切った書き方がしてございましたけれども、こういう声もございます。
 この維持基準について、経済産業省と原子力安全委員長のお考えを聞きたいと思います。
佐々木政府参考人 御指摘のとおり、我が国の原子力安全規制におきます技術基準は、一定の強度など所定の性能を要求しております。したがって、どのような傷であっても、傷があることによって技術基準に適合しないということであるわけではございません。
 しかしながら、当初からの状態に何らかの変化が起こった場合、技術基準を満たしているか改めて評価を行う必要があります。そういう意味で、これまでそのような評価方法は定められておりませんでした。
 米国におきましては、今先生が御指摘になったとおりでございます。
 我が国におきましても、このような海外動向を踏まえまして、状態の変化を評価する方法についての規格の検討を行ってまいりましたが、導入には至っておりませんでした。米国とは異なりまして、我が国では、米国機械学会のような学会等あるいは規格に係る検討の場が整備されてまいりましたのは最近でございます。
 また、一方、行政におきましても、学会等の民間規格を国の規制基準として取り入れる仕組みが十分でなかったことが原因として考えられます。
 いずれにいたしましても、国民の原子力安全に対する信頼性の回復が大前提ではございますけれども、設備の健全性評価手法によりまして、機器が満たすべき安全水準を維持しているかどうかを判断する、いわゆる維持基準の導入が必要だと考えております。原子力の分野における民間規格の基準として導入することにつきましても、あわせて、学会とも連携をとりつつ、法規制の中にも組み入れて今後検討してまいりたいと考えております。
松浦参考人 原子力安全委員会委員長の松浦でございます。お答えいたします。
 先ほどの御指摘にございますいわゆる維持基準でございますが、私といたしましては、今回の事案はいろいろ多様な条件が重なっていると思いますが、その中の一つが、確かに御指摘の維持基準にあると思います。
 技術基準というのは、もともと科学技術的な知見それから経験に基づいて合理的に設定されるべきものだと考えております。原子力発電所の機器、設備は、建設時には適度の裕度を持って製作、建設されておりますので、運転段階に至りましたときには、それを考えて適切な維持基準に基づいて運営するのが合理的なものだと思います。
 先ほどの保安院長のお答えにもありましたが、我が国では、既に機械学会におきましてそういう維持規格についての御検討が相当に進んでおりまして、本年二〇〇二年にはその第二版ができているということでございまして、そういうものを導入する科学技術的な知見は蓄積しているのではないかと思います。
 なお、今回の事案におきましては、維持基準のほかにいろいろとございますが、その基本の一つに、安全に問題がなければ報告しなくてもいいではないか、そういう判断があったと。この判断は、私も、それによってその記録とか材料とかを隠ぺいしてしまって、それがかなりの期間続いたという、これはある意味で安全文化の問題だと思います。私は、特に、ほんの小さな傷のあるものでも、それを廃棄してしまったというのは、その後の安全研究等の可能性を摘んでしまうことになりますので、そういう点で今回はかなりゆゆしき問題を含んでいるというふうに考えます。
斉藤(鉄)委員 先ほどの隠ぺい、これはもう絶対、幾ら安全という判断を技術者がしたとしても、それを隠ぺいすることは許されない、これは当然でございます。
 その議論になりましたので、私は、どこまで技術者としての裁量が許されるのかという問題をちょっと質問したいと思うんです。
 今回、具体的な事案は溶接部の検査でございます。溶接部の検査は、主に超音波探傷で行われております。私も現場の技術者でございますので、この超音波探傷の資格を取って実際にやったことがございます。超音波を溶接部に入れる。そこから反射波が返ってくる。その反射波の状況を見ながらそれを判断するわけですけれども、もちろんいっぱいいろいろなものが返ってきますので、一次情報としては非常に複雑でございます。その複雑な一次情報を、技術者が経験と資格でそういうものを判断しながら、これは欠陥なんだろう、これは欠陥ではない、問題ないところからの反射波だということを判断するわけです。
 今回、傷と認定されたものの隠ぺい、もちろんこれは許されないわけですけれども、いろいろな報道の中に、その技術者が、これは問題のない反射波であるという判定をしながらも、ある意味では全くのノイズ、それさえも報告をしなかった、すべて報告しなければいけないというふうな、全く非科学的な報道等もたくさんございました。
 私は、技術者たる者、技術者の裁量が許されていい、このように思います。そういう基準でなくては、一次情報をすべてオープンにしろと言われても、そんなことは現実にできませんので、また結果として同じような隠ぺいというようなことになりかねません。この点を、技術者の裁量をどこまで許すか。技術者の誇りとそういうものを考慮に入れたそういう維持基準をつくっていただきたい、このように思います。
 時間がなくなってまいりましたので、最後に、経済産業大臣と文部科学副大臣にお聞きいたします。
 柏崎の西川市長にお会いしました。西川市長も、大変今回の事案、心配をされておりましたけれども、一番印象的だったのは、地元住民として、原子力発電所の安全性、これが一番大事なんだ、そして、その安全性を支えている原子力技術者、その技術者に、今まで、ある意味で原子力に対する不当なバッシング、非科学的な不当なバッシング等が続けば優秀な人が現場に行かなくなる。今、日本社会を根底で支えているこの技術、ここにやはり優秀な人が行くようなそういう社会でなくてはいけない、その点を一番心配しているんだ、このようなお話もございました。
 これからの日本社会にとって、原子力、私は、高速増殖炉までやって原子力を国産エネルギーにすべきだ、このように思っておりますけれども、それには優秀な人材が行かなくてはなりません。そして、国民の安全という意味でも優秀な人材が行かなくてはなりません。現実はそうなっていなくなっているのではないかという地元の西川市長の質問に対して、どのように御見解をお持ちでしょうか。
西川副大臣 原子力は、先生御案内のとおり、資源エネルギーという面も極めて濃厚でございますが、それ以上に、技術エネルギーと申し上げてもいいような点があると思います。そういう意味で、先生御指摘のように、この分野に優秀な人材を確保し育成するということはまことに重要なことであり、しかも、これは、先ほど来の御議論にございますように、原子力の安全性を確保するという意味でも不可欠の要素ではないかというふうに存じております。
 当省といたしましては、この重要性にかんがみまして、産学連携による原子力技術関連の研究開発の環境を改善する、間接的な形ではありますけれども、そういう形で、まず人材を確保していきたい、こう考えております。
 しかしながら、こうした分野に優秀な方々に将来継続的に参入をしていただくという意味では、我が国のエネルギーセキュリティーに貢献をしている、こういう、先ほど先生のお言葉にございますように、技術者としての自負も加えて、そういうものを持っていただく必要があるというふうに存じまして、今回の事件で国民の信頼を失う、こういうことになりましたことは、今、先生の切り口と申しますか、こういう観点からも大変ゆゆしいことである、こう思っておりまして、まずは信頼の回復をぜひ遂げていかなければこの問題のスタートにもならない、このように考えているところでございます。
 なお、広く国民の認識という点で、原子力エネルギーに関する教育も極めて重要でございまして、文科省にもこの点については近年多大な御努力をいただいておりますので、当省といたしましてもできる限り側面的に御支援をさせていただいて、この分野の充実を期してまいりたい、このように考えております。
渡海副大臣 このたび文部科学副大臣に就任をいたしました渡海でございます。私の担当は科学技術を担当しろということでございますので、当委員会にも大変お世話になると思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 それでは、斉藤委員の質問にお答えをさせていただきたいと思いますが、原子力の安全を支えるという意味での技術者を確保する、こういうことが非常に大事だという御指摘だったと思います。
 私どもは、そのことはもちろんでありますが、それのみならず、まず、非常に幅広い分野にわたって、この原子力の研究開発というものは大変重要だという認識でございます。放射線の問題、加速器によるさまざまな分野、ライフサイエンスとか、また、最近のナノテクノロジーの問題、物質・材料の問題、こういう問題も含めて、この技術者、研究者を育てるということは大変大きな課題である、こういう認識のもとで努力をさせていただいておるところでございます。
 ただいまも西川副大臣のお話にもあったわけでありますが、まず、この原子力に取り組んでいただくためには、やはり安全と信頼というものをしっかりとつくっていかなければいけない、この努力を政府一体となってやっていくことが大事でございまして、当省といたしましても、その点につきましてもさまざまな努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
 まず、具体的なさまざまな教育の分野において、やはり子供のころからいろいろ興味を持ってもらう、これが大事だろう、そんな観点もございまして、初等教育、中等教育の中で原子力を正しく理解してもらうような教育をしていく。そして同時に、大学において原子力に関する研究者を育てるということも大変大事でございまして、資源配分の中でそういった施策を講じていきたいということも考えております。
 同時に、原子力に関しては、技術者を対象とした研修制度を現在もつくっておりまして、例えば、日本原子力研究所等による原子力技術者を対象とした研修、また、原子力安全技術センターによる原子力防災管理者の講習等も行っているところでございます。
 今後とも、関係省庁と連携をとりながら協力しつつ、原子力の安全確保に万全を期するように努力してまいりたい、このように考えておるところでございます。
斉藤(鉄)委員 時間が来ましたので、以上で終わりますが、地元の首長さんたちのこの切実な思いをどうかこれからの行政に取り入れていただきたいと思います。
 終わります。
谷畑委員長 達増拓也君。
    〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕
達増委員 日経平均株価が九千円を割り、そしてきのうの終わり値で八千五百円を割る事態になりました。まさに危急存亡のときと言っていいと思います。危急存亡のときのときという字は秋という漢字を書きまして、文字どおりこの秋、日本の国のかじ取りについては、国会としてもよほどの覚悟を持って臨んでいかなければならないと考えます。
 今般の東電原発不正記録問題でありますが、これはエネルギー産業や原子力行政を混乱させたのはもちろんでありますが、日本経済全体、そして国全体のガバナンスに対する市場の不信感を得まして、この問題が発覚した際、日経平均株価も下落した。今の株安にはさまざまな要因が重なっているわけでありますけれども、この東電原発不正記録問題も、その株安要因の一つになっているということを指摘させていただきたいと思います。
 これは、アメリカでエンロンというやはりエネルギー産業の会社の会計不正問題が発覚しまして、それがアメリカの株式市場下落につながったということと軌を一にしておりまして、高度情報化社会最大の敵はうそであります。うそによって国民経済の競争力まで打撃を受ける。思えば不良債権問題という今日本経済を最もむしばんでいる問題についても、これはうその問題であります。
 定義上、不良債権というものは、不良債権が生じた瞬間引き当てが行われて問題にはならないはずでありまして、不良債権問題が存在しているということは、本来不良債権であるのに不良債権でないかのごとく扱われているからこそ不良債権問題というものが続いているわけでありまして、日本のそういう経済社会がうそを容認する、うそとともにあるからこそ、日本がなかなか経済的にも閉塞状況を脱出できず、事態がますます悪くなっている。そういう観点から、この東電原発不正記録問題について質問をさせていただきます。
 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の原子力安全規制法制検討小委員会の中間報告によりますと、「今般の事案の原因と背景」というところに、「事業者及び国に共通する要因」というのがありまして、そこに「事業者が規制当局に的確に情報提供を行うことをためらわせるところがないかどうかを時に応じて自己評価する必要がある。」との指摘があります。
 これは、東京電力の報告書を見ましても、国へのトラブル報告はできるだけ行いたくない、そういうムードが会社の中に助長されていたという指摘がありまして、つまり、事業者がうそをつく、そういうことを助長するようなところが規制当局側にもあったのではないかという指摘だと思います。
 これは、不良債権問題も、規制当局、金融当局との癒着、なれ合い、何とかしゃぶしゃぶという事件もありましたけれども、そういう中で不良債権問題といううそがうそを呼ぶ問題が広がっていったわけでありまして、それと同じような構造がこの原子力発電事業においても事業者と規制当局の間にあるとしたら問題でありますので伺います。いかがでしょうか。
平沼国務大臣 達増先生にお答えをさせていただきます。
 経済産業省といたしましては、信頼される行政の観点からは、国民のエージェントとして、審査等の結果知り得た情報を技術的、専門的な事項も含めて公表していくことが重要だと思っております。
 ただし、御指摘がございました中間報告案でも述べられているとおり、情報提供を受けるに際しまして、提供すべき情報についての基準でございますとか情報提供すべき理由などが明確でなければ、事業者から的確な情報提供が行われない結果となるおそれのあるところでございます。そのため、規制当局としては、情報提供についての基準や理由などが明確になるようにやはり不断に見直しを行っていかなければならない、このように認識しております。
 また、提出された情報につきましても、安全上全く問題がないものも含めてさまざまなものが含まれますけれども、国においては、科学的、合理的な分析と評価を加えた上で、誤解を招かないような形で公表することによりまして説明責任を果たしていくことが必要であると考えておりまして、私どもとしては、今回そういった事例がございました、そういったこともよく反省をいたしまして、基本にのっとってやっていかなければならない、このように思います。
達増委員 今回の事案については、東京電力、その事業者の側におきまして、安全だと思ったので報告すべきところをしておかなかった、記録すべきところをしておかなかった。これについては東京電力も、現社長を初め歴代社長一斉に責任をとって辞職するということでありまして、深く反省しているようにも一見見えるのでありますが、この東京電力作成の報告書を見ますと、自分たちがそういうことをしたのにもこれこれこういう事情があるという弁解がかなり多く書かれておりまして、かつ、自分たちだけが悪いのではないというような結論が書かれております。
 この、安全だからといっていいんだと、事業者の、しかも一部現場の判断で、安全だからいいんだというやり方はジェー・シー・オー事故と同じでありますから、現場は安全だと思ってバケツでウランをまぜて臨界を起こす、それが事故につながったわけでありますから、現場が安全だと判断したからそれでいいという論理は決してあってはならないことではあります。
 他方、そういうあってはならないことが起きてしまう事情について、この東京電力作成の報告書の中には次のようなくだりがあります。
 「原子力発電所の点検・補修の現場をめぐるさまざまな事情を背景に「国へのトラブル報告はできるだけ行いたくない」という心理が生まれ、それに「安全性に問題がなければ、報告しなくてもよいのではないか」という誤った考えが加わって、」云々。「当社の原子力部門の社員たちが行ってきたことは、社会の信頼を裏切る行為であり、弁解の余地はない。ただ、こうした行為を防ぎきれなかったこと、また、それらを助長した組織の風土の問題については、」「当社が全体として考えるべき点が多い。」その次であります。「ただ、こうした行為が行われるに至った背景には、当社だけでは解決できないものが多く存在することもまた事実であった。」これは、暗に政府の側にも多くの要因があったのではないかと指摘したものと思われますが、この点、どう考えるでしょうか。
佐々木政府参考人 東京電力の調査報告書におきまして、閉鎖的な組織風土などが問題の背景であったということを指摘する一方、トラブルに関する報告義務について報告が必要なものかどうかの境界が明確でないということや、原子力発電所を建設する際の合格基準と運転開始後に維持すべき技術基準とが同じであったことなどについても問題の背景の一つとして指摘しております。
 私ども、当省の原子力安全規制法制検討小委員会におきましても、今般の事案が発生した背景として、トラブル情報等の報告徴収の基準に不明確な点があったことや、技術基準の設計時、建設時及び使用時への適用ルールに不明確な点があったことなど、国側の規制制度の運用が明確でなかったことが一つの要因として指摘されたところでございまして、私どもは、反省すべき点は反省しつつ、ルールの明確化などの対策を早急に講じてまいりたいと考えております。
 ただし、今回の問題の背景については、このような国側の要因だけでなく、品質保証体制の不備といった事業者側の要因、あるいは説明責任に対する認識の欠如といったような事業者及び国に共通する要因といったさまざまな要因があったとの御指摘もいただいているところでございます。
 今後、国及び事業者ともに、このような御指摘を真摯に受けとめ、それぞれ適切な対策を講じることにより、一刻も早く原子力に対する国民の信頼を回復するよう全力を傾けてまいりたいと考えております。
達増委員 今の答弁の中にも、これからチェック体制についてルールを明確化していかなければならないという指摘がありましたけれども、東京電力の報告書に、これは重要な問題を提起していると思われるところがあるんです。それは「前例のないトラブルへの対応」というくだりであります。
 東電の報告書「今回の不適切な取り扱いが行われた動機・背景等」という章の中、「定期検査期間中にトラブルが発見された際の社員の心理と対応」という節の中に「前例のないトラブルへの対応」という項目があります。これは非常に重要なところを指摘していると思うんですけれども、前例があれば、報告すべきかどうか、それは前例に従えばいい、記録すべきかどうかもいいんですが、前例のないトラブルが発生したときに、さてこれを記録すべきか、報告すべきか。
 前例のないトラブルがあった場合に、次のような指摘がしてあります。「国への報告を行えば、プレス発表、さらにはトラブルの対策が必要となる。」「一方、わが国初の修理方法については専門家の検討を経て国に認めてもらうことになっており、定期検査工程への影響が必至となる。」「さらに、原子炉内の作業環境は特殊であるため、修理方法の開発に時間的見通しを立てにくい。」「したがって、修理の見通しの立たないまま国に報告すれば、最悪の場合、修理方法が確立されるまで何年でも原子炉はとまったままである」ということで、安全上必要であれば何年でもとめることは必要なんでありましょうが、そこが科学的、合理的な範囲を超えて、規制当局側の保身から過剰に慎重になって、事業者に対して科学的、合理的な根拠を超えて原子炉をとめろとかそういうことになったら困る、そういう事業者側の強い不信感がこのくだりにうかがわれるわけであります。
 いろいろルールを明確化していくのはいいんですけれども、前例のないトラブルということについてはなかなか前もって、こういうときにはこうすべきというルールを決めにくいところだと思うんです。この点こそ、事業者と規制当局の間で本当に信頼関係というものをつくっていって、必要であれば第三者、科学者の意見などを求めながら、原子炉をとめることが必要な場合でも、本当に科学的、合理的範囲内で行われるような、双方が納得できるようなそういう検査、安全確保の仕組みをつくっていかなければならないと思うんですが、この点、いかがでしょう。
佐々木政府参考人 今御指摘の件については私は全くそのとおりだと考えておりまして、保安院の安全規制におきましても、従来から、いろいろ科学的、技術的な根拠に基づく合理的な規制を目指してきたつもりでございます。いろいろな新しい案件に対しましても、新しい知見を反映し、技術を集積するといった意味からも、専門家の御意見も反映して対応してきたつもりでございます。
 東京電力の報告書に書いてありますような前例のないトラブルについてということでございますけれども、ただ申し上げたいことは、そもそも原子力に携わる者が、できるだけ問題を公表したくない、公の場での議論にさらされたくないという考え方を有していること自身、原子力発電の安全確保を図り、国民の信頼を得ていく上でこれは問題である態度と考えております。
 原子力に携わる者の意識革命あるいは価値観の転換が求められていると思いますが、新しい知見に積極的に努力をし、現場の技術者がそれを求めていけるようなルールの明確化といったことは当然必要でございまして、そのための最大の努力を早急に、速やかに行いたいと思っております。
達増委員 原子力安全・保安院がモットーとしていこうという科学的、合理的な検査の体制、この科学的、合理的なアプローチというものは、検査当局はもとより、事業者、さらには国民も共有すべき原子力というものに対する基本姿勢だと思います。
 そういう観点からおやっと思ったのですが、新聞報道によりますと、福島県で核燃料税を今度二倍にするということが報道されておりました。七%であった現行税率、これが実効税率で一三・五%に上がり、また、いろいろな従価税、従量税などの制度の改正によりまして最終的には一六・五%になるというような報道がございました。
 今回の不祥事を受けての懲罰という趣旨でこのようなことが行われるとしたら、これは極めて非科学的、非合理的なことだと思っておりまして、必要なことは科学的、合理的な安全の確保が行われること、その積み重ねによって安心というものが得られることだと思っておりまして、お金で解決できる問題ではないんじゃないかと考えているんですけれども、政府の方、この点、いかがでしょう。
岡本政府参考人 今回の福島県の核燃料税の増税、七%から一三・五%に引き上げるという件は、県の説明によりますと、原子力立地に伴う財政需要の増大を背景とするものでございます。本年六月に県議会に提案をされ、七月に可決をされ、その後、地方税法に基づきまして総務大臣への同意申請が行われたものでございます。したがいまして、今回の核燃料税の増税と東京電力による不正記載とは直接的な関係はないものと私ども理解をしております。
 ただ、今回の増税につきましては、当省としては、納税者の納得を得ないままに大幅増税を行うことの問題点、さらには、こうした動きが他の原子力立地地域に波及するおそれを心配しておりまして、エネルギー政策の観点から、強い懸念を大臣を含めて表明してまいったところでございます。
 しかるに、本年九月に、地方税法に基づきます総務大臣の同意が行われたところであります。なお、その際に総務大臣からは、納税者である東京電力に対する十分な説明を行うこと、それから、条例の妥当性について検証を行い、必要に応じて見直しを含め検討することを福島県知事に強く要請されたというふうに承知をいたしております。
 私どもとしましては、今後、福島県と東京電力との協議等を引き続き注視してまいりたいと考えております。
達増委員 最後に、申告制度のあり方について質問します。
 今回の事案では、申告の取り扱いについて、時間がかかり過ぎたでありますとか、申告者のプライバシーの保護について問題があったと指摘されておりますけれども、今後のこの申告制度のあり方について政府の考えを聞きたいと思います。
西川副大臣 法制検討小委員会中間報告案において提言されておりますとおり、申告は、重大な事故につながり得る事案を早期に発見できる端緒ととらえるべきであり、すべての申告案件について、特に安全への影響及び違法性の両方の観点から、迅速かつ機動的に調査を行うことが必要でございます。
 こうした認識のもと、当省におきましては、申告に関する調査手順方法の明確化を図るとともに、外部有識者から成る申告調査委員会を立ち上げるなど、申告事案の処理体制の整備を進めているところでございます。
 外部の有識者から成る申告調査委員会につきましては、既に十月八日に第一回委員会が開催をされまして、現在六件の案件について事務局より報告がされ、処理が進められております。
 今後の申告の処理につきましては、本委員会において御審議いただく方針に従って適切に対処してまいりたいと存じております。
達増委員 終わります。
栗原委員長代理 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 我が党は、この東電不正事件にかかわり、東電だけではなく、一連のトラブル隠しのある電力会社の調査を行ってまいりました。福島第一、福島第二、柏崎刈羽、それから、日本原電の敦賀、東北電力の女川、中部電力の浜岡、これに加えて、関電の高浜の調査なども行ってまいりました。
 私自身も、福島の第二原発とそれから東北電力の女川に足を運んで、原発立地自治体の首長さんの話も伺ってまいりました。厳しい批判の声が寄せられたわけです。
 福島第一の立地地に当たります岩本双葉町長さんも、町長になって十七年たつけれども、十七年のそのときからずっと東電にだまされ続けてきた、裏切られた思いだ、国は安全だと言うが、住民の気持ちがわかっていない、こういうことをおっしゃっておられました。福島第二の立地自治体であります草野楢葉町長さんも、今まで東電との信頼関係は厚かったし、国もきちんとしていると思っていたのに、国は一体何をやっていたのか、国のチェックが甘過ぎるのではないかと、ここでは、東電の不正とともに、国の対応に対し厳しい意見が寄せられてきているわけです。
 平沼大臣は、八月三十日の記者会見でも、今回の事件について、「全く言語道断だ」、経済産業省として「徹底的かつ厳正に調査を行って、全容の解明をしてまいりたい」と。この決意は変わっておられないと思うわけです。
 そこで大臣にお聞きしますが、十月一日、大臣から東電に対し厳重注意の指示文書を出されました。これに対し、原発立地自治体の首長さんから厳しい意見が出ています。この処分が発表された翌日に、私は女川原発に行きました。そこで、安住女川町長さんは、大臣は東電に厳重注意だけなのか、体質をがらりと変える、けじめと言うが、これでいいのかと思う、それぐらい大きい問題ではないか、こういう声や、木村牡鹿町長さんは、東電に注意のみというのは生ぬるい、もっと厳しくやってこそ住民は安心をする、こういうふうに述べておられたわけですね。
 この十月一日の東電あて文書にも、記録の改ざんや隠ぺい、虚偽報告の事実がある、つまりうそやごまかしがあるのに、何で刑事告発や行政処分もなく、厳重注意といういわばおとがめなしなのか不思議でならない。この点について大臣にお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 塩川先生にお答えをさせていただきます。
 当省といたしましては、これまでの調査結果を踏まえまして、法令に照らして判断をいたしましたところ、八月二十九日に公表した二十九案件の事案のうち、技術基準適合義務や、これは五件でございます、記録保存義務、これは一件でございますけれども、それを遵守していなかった可能性があり、法令上問題となる可能性があるもの、これが今申し上げたように六件ございました。
 しかしながら、法令に照らして精査をいたしましたところ、これらについては、現在修理等が済んでおりまして、技術基準に適合していたり公訴時効が完成するなど、法令上は技術基準適合命令などの行政処分あるいは刑事告発を行うことは困難であるという認識に至ったところでございます。
 しかしながら、今回の東京電力による事案については、同社の安全に対する姿勢に疑いを招くものでございまして、原子力に対する国民の信頼を根本から崩すものであったことから、同社に対して厳重注意を行ったところでございます。
 また、東京電力におきましては、全社的な監査体制及び経営幹部への情報伝達が適切に機能していなかったなど、安全について組織的に確保する品質保証システムが機能しておりませんで今回の事案を発生させたと考えられることから、同社に対しまして、品質保証システムの再構築など再発防止策の実施を求めることといたしました。
 さらに、国といたしましても、今回のような不正があったことを踏まえて検査等を強化することといたしまして、特別な保安検査の実施、定期検査の特に厳格な実施等の行政措置を講じることによりまして、東京電力による安全確保活動を厳正に確認することとしております。
 二十九案件以外の事案につきましては現在鋭意調査中でございまして、万が一法令等に違反するものがあれば、これは厳正に処分をしてまいりたい、このように思っております。
塩川(鉄)委員 うそやごまかしがあったのに罪に問われない、この点が不思議でならない、納得がいかないというのが、私もそうですし、国民の皆さんの共通する思いだと思うんですね。
 その点で、自主点検記録にかかわる問題だから、法の外だから云々という説明を聞きましたけれども、私、この二十九件の中を見ていきますと、電気事業法の定期検査にかかわる事例もあるわけですね。
 例えば、福島第一原発の一号機の炉心スプレースパージャーのクランプの取り外しというのは、定期検査の最中の話のことです。電気事業法の百二十条八号には、定期検査を拒み、妨げ、または忌避した者は刑事罰に処するとなっているわけです。定期検査をごまかした者は罪に問われるんだとはっきり書かれているわけですね。
 このスパージャーの件ですけれども、四カ所あるスパージャーのうち、一カ所が九三年にひび割れがあった。それで、クランプと言われる取りつけ金具の設置をその四カ所にしたわけですね。九六年の定期検査の時点で、その場所は定期検査の対象になりました。ですから、検査の直前に取りつけ金具のクランプを外して定期検査を受けた。定期検査を終わると、今度は新しいクランプ、取りつけ金具をつけて運転再開をしているわけです。
 これは、東電の報告書でも、定期検査時に取りつけたクランプが発見されないよう作為をしたと、はっきり問題を認めているものであります。こういった行為というのは、電気事業法百二十条八号にある、定期検査を妨げ、忌避する者となる違法行為に当たるんじゃないですか。いかがでしょうか。
佐々木政府参考人 非常時に炉心に水を放出する炉心スプレースパージャーにつきましては、おおむね十年に一回、定期検査に際して外観検査を行うこととしております。
 福島第一原子力発電所一号機の九六年の定期検査では、四基の炉心スプレースパージャーのうち、ひび割れの発生していない方の二基がそのとき検査対象でありました。東京電力がクランプ補修を行った炉心スプレースパージャーは検査対象外ということでございました。この定期検査時に当該スパージャーからクランプが取り外されまして、補修前の状態に戻されておりましたので、検査対象となっておればひび割れが発見されていた可能性はあります。
 このスパージャーのクランプ取りつけ修理は、法令上は認可や届け出は不要でございましたけれども、九九年に国の認可を受けて取り外したクランプを再び取りつけることにより当該スプレースパージャーの修理が行われ、現在は修理済みとなっております。
 いずれにせよ、クランプによる修理を国に報告、相談せず、さらに、事態が発覚しないよう定期検査においてクランプを一たん取り外し、再度取りつける、当初の不適切な対応につじつまを合わせるために事実の隠ぺいを繰り返したことにつきましては、そもそも品質保証の観点から適切でなかったのみならず、原子力安全に対しての信頼を損ねる行為だったというふうに考えております。
塩川(鉄)委員 質問に答えていないんですよ。
 私は、ひびのあるなしを定期検査でごまかしたというのを聞いているんじゃないんですよ。その安全性を云々する以前に、検査の対象となるところが、運転中はクランプをつけていたのに定期検査のときには外していたというその事実を言っているんですよ。定期検査そのものをごまかしているんじゃないですか。定期検査をごまかしている、国をだましているわけですから、これが何で検査を妨げる行為に当たらないんですか。違法行為じゃないですか。
佐々木政府参考人 今申し上げましたように、四基ある炉心スプレースパージャーを、十年間に一〇〇%実施をする、二基、二基実施をする、たまたま九六年の検査対象外であったということで実施していないということでございます。
塩川(鉄)委員 四つのスパージャーに全部クランプをつけていたわけでしょう。そのうちの二つを検査したわけですよね。クランプを取りつけていた運転状態のものを、とめた定期検査のときには外していたわけでしょう。さらには、再開するときにはクランプをまたつけたわけでしょう。定期検査時の状態をごまかしていたわけじゃないですか。運転状態と違うものを点検させられているんですよ、国は。国がだまされている話でしょう。それは検査を妨げる行為じゃないんですか、違法行為じゃないんですか。
佐々木政府参考人 私どもは検査を妨害する行為とは考えておりませんが、いずれにしても、こうした隠ぺいについては品質保証の観点から適切でないと判断をいたしております。
塩川(鉄)委員 とんでもない話ですよ。何で妨害する行為じゃないんですか。現状と違うものを見せられているんですよ。安全性云々以前の、国をだますような行為を行っている。これが何で、妨げ、忌避する行為に当たらないというんですか。おかしいじゃないですか。検査をごまかす者に危険な原発を運転させていいのか、これが国民の皆さんの率直な怒り、疑問なんじゃないですか。
 定期検査をごまかした場合については罰則がかかるという、こういった百二十条の八号を何で適用しないのか。大臣、いかがですか。
平沼国務大臣 これは、今佐々木原子力安全・保安院長が言ったように、四基あって、そのうちの二基が検査、こういう形で回っておりましたから、その中で我々はそういう形で判断した、こういうことだと思います。
塩川(鉄)委員 改めてどうですか、院長。
佐々木政府参考人 今回の、今御指摘の九六年の定期検査時には、この当該スパージャーからクランプが取り外されておりまして、補修前の状態に戻されておりましたが、検査対象となっていればひび割れが発見された可能性はありました。そうした場合には当然、検査の忌避や妨害といった可能性も、それはありますが、前回は四基のうち二基を対象にしまして検査をいたしましたので、当該、今御指摘のひび割れのクランプ補修を行った炉心スプレースパージャーは検査対象外となったわけです。
栗原委員長代理 佐々木院長、もっとわかりやすく答弁してください。
    〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
塩川(鉄)委員 要するに、定期検査の対象となっている部分について、運転中はクランプをつけていたのに、定期検査のときに外しちゃったんでしょう。国の定期検査をごまかしたんじゃないですか。で、定期検査が終わって運転を再開したときにはまた新しいクランプをつけたんですよ。定期検査はきちっと調査しなくちゃいけないのに、運転再開時と違う状態のものを見せられているんですよ。国をごまかしている行為だ、妨げている行為じゃないんですか。
佐々木政府参考人 そもそも、このスパージャーのクランプの取りつけ修理、これは法令上の認可や届け出は不要でございます。九九年には国の認可を受けたわけでございますけれども、そもそも法令上の扱いとして、クランプがついていようがついていまいが、それは定期検査上の検査の妨害には当たらないものであります。そもそも法的にはそういう扱いになっております。
塩川(鉄)委員 そこが納得いかないと言っているんでしょう。定期検査という、自主点検も含めれば五百項目あるようなそういう中で、それも立会検査ですよ、五百のうち二十の、一番重要な部分のこのスパージャーの検査のときについて、現状と違うものを見せられているんですよ。ひびのある云々以前の話じゃないですか。何でそんな、だまされているのに怒らないんですか。国がだまされているんじゃない、国民がだまされているんですよ。だからこそ信頼がおけないと言っているんでしょう。この問題について、何ではっきりこのことを、だまされているという問題について、この立場から、この条項からきちっと違法行為だという指摘をしないんですか。
佐々木政府参考人 このクランプの問題、炉心スパージャーの定期検査における確認行為というのは、現実には国の検査官は炉の中に入ってそれを見ているわけではございません。供用期間中におけます事業者が自主的にやった検査を定期検査として私どもが記録の確認をしているものでございます。
 したがって、私どもといたしましては、クランプを取り外したとか取り外していないとかというような記録は、そのときは確認できておりません。そういう意味で、今そのこと自身が定期検査の妨害になるかならないかというお話については、それは記録の確認をしておりますので、そういう妨害といったことにはならないと申し上げているわけです。
塩川(鉄)委員 記録確認を含めて、五、六十項目という重要な部分の検査でしょう。そこについて改めてこういう事実が明らかになって、東電もその事実を認めているわけでしょう。その時点から、ああ、だまされていたのか、許されないことだ、国の定期検査を妨害する行為だったという立場で、改めてこの告発に向けた取り組みをするつもりはないんですか。
佐々木政府参考人 仮に、九六年にそのことが判明しておれば、今先生御指摘のとおりでございます。しかしながら、既にそうした事態から三年以上経過をしておるという法的な実は問題もあります。
塩川(鉄)委員 国民の前には、怒りはこれじゃおさまらないですよ。こういった、現在においても、さまざまな問題点が指摘されるについて、十分な国民の前に説明もない。さらには、具体的な、それぞれの二十九件、かかわりについて、だれがこういった行為を指示したのかについても明らかになっていない。報告書を見てもどこにも出てこない。私は、その点でも、改めて経済産業省じゃなくて第三者のきちんとした機関が全面的な調査を行うことが必要だと思いますし、また、独立した規制機関を設けるということも、当然のことながら地元の要望から含めて行わなければいけない、このことを強く求めるものです。
 その上で、この問題についてやはり真相を委員会としても徹底解明する上で、委員長にもぜひ要望したいわけですけれども、一点は、この当事者、東電の当事者からの事情をきちんと聞く機会として、南社長と調査を担当した勝俣副社長と原子力部門の実質的な責任者を長く務めてきた榎本前副社長を国会に呼んで、参考人としてきちんと事の次第を明らかにしていただく、こういう機会を設けていただきたいと思いますし、あわせて、関連する資料、東電、保安院、それからGE、告発者、そのやりとりについての手紙などの文書をきちんと国会に出してほしいと思いますし、安全性を評価するバックデータについてもきちんと当委員会に提出をしてもらいたい、この点についてぜひお諮りをいただきたいと思います。
谷畑委員長 委員会の理事会でまた協議していきたいと思います。
塩川(鉄)委員 終わります。
谷畑委員長 北川れん子さん。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子と申します。よろしくお願いします。
 先ほどの塩川委員の発言からも、保安院の真相を追及しようという熱意というものが欠けているというのがまざまざと浮かび上がったと思うんですが、私は、今回、維持基準を導入ということにすべての方が前向きだということをこの議論経過でわかったわけですが、この維持基準導入におきまして、電気事業法の改正という形で導入されるおつもりなのかどうか、まず第一番目にお伺いしたいと思います。
高市副大臣 お答えいたします。
 御指摘のいわゆる維持基準でございますけれども、これは、供用中の原子力発電設備の構造物にひび割れなどが発生した場合に、当該設備が安全水準を維持しているかどうかを評価することが必要なので、このような健全性評価の手法ということを法令上位置づけることを検討しております。ですから、先生おっしゃいましたように、具体的には、考えられるのは、電気事業法三十九条に基づく技術基準を定める省令の拡充でありますとか、それから事業者に健全性の評価、この実施をきちっと義務づけるための電気事業法の改正ということが予定されると思います。
北川委員 ということになると、省令改正か告示をつくるということで、国会の関与という形を取り除かれるという心配が私はあるんですね。
 大臣にお伺いしますが、電気事業法の改正という形でお取り組みになる気はないかどうか、お伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 北川先生にお答えをさせていただきます。
 先ほど来述べておりますけれども、原子力安全規制法制検討小委員会の中間報告案では、一つは、構造物にひび割れ等の欠陥が発生した場合に、事業者みずからが設備の健全性について適切に評価をすることを法令上の要求事項とするとともに、二つ目は、事業者が行う評価が明確なルールのもとで実施されるよう、国は、民間規格の活用を含め、科学的、合理的な根拠に基づく信頼できる基準を整備することが必要である、こういった旨の提言がなされているところであります。
 この提言の趣旨というのは、設備の劣化についての評価の手法をより明確化するとともに、当該評価の実施を事業者に義務づけるために法令の整備を行おうとするものだ、こう思っております。
 当省といたしましては、この提言に沿いまして、原子力安全規制に対する国民の信頼回復を早期に得ることを第一に、所要の法律改正の必要性を含め検討を進めてまいりたい、今このように思っております。
北川委員 いろいろおっしゃったということは、電気事業法の改正でやろうとは思っていないということだろうと思うんですが、私は、その点はすごくおかしいと思います。最低限、電気事業法の改正という形での維持基準の導入ということでなければ、この問題の解決に何ら前進というものは見られないという点で次からを述べさせていただきたいと思うんです。
 中間報告でも、安全評価というよりは許容欠陥の評価の義務化という言われ方をしております。そういう点において、今回の東電問題の中から浮かび上がった点でお伺いしたいんですけれども、事業所に記録帳、よくデータログと言うわけですが、データログはあったのか、そして、そのデータログを保安官は見ていたのか、習慣的に見るということをちゃんとルール化されていたのかどうか、この辺をまずお伺いしたいと思います。
佐々木政府参考人 原子炉等規制法に基づきまして事業者が定める保安規定におきましては、管理区域から物品を持ち出す際に、当該部品の表面の汚染が法令上の制限を超えていないということを責任者が確認することが定められております。そういう意味では、事業者は、この確認を行うため、持ち出される物品、こうしたものの表面の汚染の状況について記録を作成するということが一般的でございます。ただし、記録すべき項目について保安規定上の定めはありません。また一方、物品の持ち込みに関して記録を行うことについて保安規定上の定めはございません。
 国の原子力保安検査官は、保安規定の遵守状況を確認する保安検査に際して、物品の表面の汚染の確認が適切に行われているかどうかを確認するという観点での記録を必要に応じて抜き取って確認をいたしております。
 しかしながら、管理区域内でいろいろ行われている修理には国の認可または届け出が不要なものも数多くございますけれども、仮にいろいろな物品についての持ち出しが特定できたとしても、どういう用途に使われているものかまで特定できることは困難だと考えております。
北川委員 では、データログはないに等しかったということを今言明されたというふうにお受け取りをいたしましたけれども、それでよろしいでしょうか。
佐々木政府参考人 事業者はいろいろなデータログを持っていることは承知しております。ただ、私どもの常駐しております国の保安検査官が見るべきものについては、必ずしもそうした物品について全部見ているわけではなくて、いわゆる任意に、表面、いわゆる汚染の状態のあるものが管理区域を行き来したかどうかを任意に抜き取って見ることはあるということでございます。
北川委員 不正と隠ぺいを見抜くには、これはとても重要な点だと思います。
 次にお伺いしたいんですが、八月三十日、国の方は各電力事業者に自主点検の総点検をやるようにと指示をしているわけですが、この中で供用中というふうに明記してあります。供用中というのは、建設中、そして廃炉以外を供用中の原子力発電所というんですね。
佐々木政府参考人 おっしゃるとおりでございます。
北川委員 そうしましたら、東京電力のBWRのシュラウド、そしてまた関西電力のPWRの圧力容器の上ぶた、取りかえたもの、供用中の原子力発電所から取りかえたもの、これも点検内容には入りますね。
佐々木政府参考人 供用期間中におきます修繕、改造工事、物によりましては法律に定められます工事計画の認可あるいは届け出が必要なものもございますし、事業者の自主的な判断で行われるものもあります。
北川委員 取りかえられたシュラウドや取りかえられた上ぶたは、今の御答弁、ちょっと的確な御答弁ではなかったと思うんですが、自主検査の内容物として見て国はそういう指示を出しているというふうに今の御説明に対して思ってよろしいんでしょうか。
佐々木政府参考人 今御指摘の炉心シュラウドにつきましては、取りかえのときは、当然国の工事計画の認可が必要でございます。
 点検については、これは自主保安の自主点検にゆだねられておりますけれども、炉心シュラウドにつきましては、過去、スイスあるいはアメリカにおきますいろいろのトラブル事例を反映いたしまして、技術的な、いろいろ検討して、私どもから事業者に対して点検を何年の計画でどれを見なさいという指導もいたしましたし、福島第二の三号機において新しい材料になった、その中でもやはりクラックが発生しているというような事態にかんがみまして、水平展開のための行政指導もいたしまして、何らかの異常があれば報告をしていただきたいというような指導をしました。
 そして、一方、今、PWRの上ぶたでございますけれども、これも当然取りかえに際しては工事計画の扱いが必要でございます。
北川委員 ちょっと不明確でわかりにくいですが、私流に言うと、自主点検の内容物に入るというふうに保安院長は言われたというふうに受けとめさせていただきます。
 そこで、この自主点検の生データ、この情報公開というのはとても必要だというふうに思いますが、東京電力が八月三十日までにした自主点検の生データ、そして八月三十日以降各電力事業者に指示された生データ、その公開を求めたいと思いますが、経済産業大臣はどういうふうなお考えでいらっしゃいますでしょうか。
佐々木政府参考人 原子力発電所におきますいわゆる法律や、行政指導、通達に基づきます事業者からの報告は今すべて公開をいたしているところでございますが、今回、報告のルールが明確でなかったとか事業者の判断にゆだねられているとか、そういう問題が一つございます。
 二つ目は、原子力発電所におきます通常でないような異常な状態、小さな傷とか小さなトラブルにおきましても、これをやはりきちんと公開、透明性のもとでやっていくべきという御議論の中で、その全体の仕組みをどうしていくかということを検討いたしているところでございますが、特に、例えば配管で何らかの傷があった、これは新しい材料であったが、技術的には予測していない事態であったというようなケースでは安全上の評価をする、このこと自身は、安全上の問題でないとした場合には国への報告には上がってこないというようなことになり得るわけです。
 しかしながら、そうした情報もお互いに、これは国民全体の間で共有をすることによって学問の世界からもアプローチができる、あるいは事業者間でそうした情報を共有できる、国民の皆様にも原子力発電所で一体どういうことが事象として起きているかということも御理解していただく。したがって、そういう情報をすべて透明性のもとに公開をしていく仕組み、そして、それらを分析したり、そのデータといったものを役に立てて新しい技術に反映していくとかそういう一つの大きな仕組みに変えていかなければいけないということは、今回の反省の一つでもあると思っております。
 したがって、今先生がおっしゃった自主点検の結果の生データを全部出せとか、そういうことになりますと、極めて膨大なものでございます。本当に必要なものについてきちんと公開、透明のもとでやっていく仕組みを考えていきたいと思っております。
北川委員 抜き取りされた部分で考えるということが危険だということが今回の東京電力の事例だったと思いますので、膨大であろうがなかろうが、全データを出してやはり問うべきではないか。それは、地元住民の皆さんの怒り、また首長さんの怒りに通ずるものだと思いますので、範囲を決めずに、すべて、膨大であろうが出していただきたいということを再度要望いたしたいと思います。
 次にお伺いしたいんですが、損傷が発見された場合、その原因の検査のためのルールというものは今あるんでしょうか、ないんでしょうか。
佐々木政府参考人 御指摘のように、確かに不明確な面があります。いわゆる原子炉を安全に運転するための機能の低下につながるような損傷については、これは法律もしくは通達に基づいて事業者から報告が参ります。その時点で、私どもは、そのことの技術的な意味、安全の評価について、専門家の意見をいろいろ反映しながら対応することにいたしております。
 一方、そうした段階でないというものについては、事業者の事業所におきまして、どうした補修が対応すべきことであるかとか、技術的に安全をどう評価するかということを事業所の中で判定をし、意思決定をしていくということになっているわけでございます。
 しかしながら、今回の東京電力の二十九案件の中で、幾つか私どもも調査をしてみた結果、そうした機能が働いていなかったという事実が幾つかあることは認識しているところでございます。
北川委員 ルールが不明確だったという点において大臣にお伺いしたいんですが、維持基準導入以前の状況に日本があるということではないかというふうに私は思ったのですが、大臣は、先ほどの保安院長の御答弁をどうお聞きになりましたでしょうか。
平沼国務大臣 私どもの基本的な考え方として、今維持基準の議論がいろいろ出ておりますけれども、安全のレベルというものを下げるということであってはならない。したがいまして、この維持基準導入に関しては検討小委員会のそういう評価もいただいておりまして、ですから、そういう中で、この維持基準というものは、現在のレベルを、基準があってそれを下げちゃうというようなことじゃなくて、しっかりと国民の皆様方に納得いただける、そういう形でこれから総合的に検討していかなければいかぬと思っておりまして、佐々木保安院長もそういう趣旨で申し上げている、こういうふうに思っております。
北川委員 NGOやNPOは、この維持基準導入に関しては、時期尚早である、または強烈な反対を、声明を既に上げていらっしゃるところもあります。
 実際、社民党としては、前提条件がない中での維持基準導入というのは、あらゆることへの規制緩和にしかならないという点において、そして不明確な点を持ち込むといった点の懸念において、反対という立場をとっております。維持基準導入という前提の中には、先ほどのデータログなどの整備がちゃんとできているかとか、全面情報公開がなされるか。
 そして、内部告発の件なんですが、これは、少なくとも内部だけではなくて、だから、GEだったらGEに、例えば電力会社の人が電力会社にという形態しかあり得ない内部のあり方ではなくて、やめた人、そして以前に関与していた人、そしてまた、ほかの、孫請や下請の労働者の方からという意味においては、外部の告発、そういうことを受け付ける、そして、その人たちの身の保全が守られる、そういうあらゆる保護の環境整備が整わない限り、維持基準導入というのは机上の空論であろうというふうに私どもは思っているわけですけれども。
 大臣は、先ほどの御答弁、ちょっといつもの大臣じゃなくて明確じゃなかったなという気がいたしておりますけれども、今回の不正と隠ぺいの体質というものは、日本の保安官制度、せっかく二〇〇〇年に導入されたわけですけれども、これが機能していなかったのではないか、そのことが如実に検証されたことなのではないかというふうに思うわけですが、その点、大臣はどう考えていらっしゃいますでしょうか。
平沼国務大臣 原子力発電所などの各所在地には原子力保安検査官が御承知のように常駐をしております。原子炉等規制法に基づきまして、事業者が運転や保安活動について定めて認可を受けた保安規定の遵守状況について、年四回の保安検査に当たっております。また、日常においては、施設の巡視点検や運転状況を確認するなど電力会社が適切な保安活動を実施している、そのことを監視しているわけです。
 原子力保安検査官は、ジェー・シー・オーの事故を踏まえまして、平成十二年の原子炉等規制法の改正により設置をされたものでありまして、改正前にはその前身である運転管理専門官四十一名が配置されておりましたけれども、これを九十九名に増員をして体制の強化が図られたところであります。
 原子力保安検査官の資格要件については、二年以上の保安行政実務経験を有すること、原子力保安検査官になるに際しては、原子炉の原理、保安活動や関係法規等に関する研修を受講することを任命の条件としております。また、品質保証の標準的な考え方及び品質保証監査の方法についての研修も実施しております。
 そういう意味で、万全を期してきたわけでございますけれども、しかしながら、今般の事案を受けまして、原子力安全規制法制検討小委員会の中間報告案におきましても、検査制度の実効性を向上するための検査方法の改善、あるいは検査官の体系的な研修などにより検査官の資質の向上や体制強化を図るべきとの指摘が行われました。
 経済産業省といたしましては、このような指摘を踏まえまして、原子力の信頼確保の上で重要な役割を果たす検査の一層の充実に取り組んでまいらなければならない、このように思っているところであります。
北川委員 率直にお伺いしましたので、なかなか、そう、そのとおり不正があった、隠ぺいの体質があったというふうにはお認めになりにくかったのだと思いますが。
 九月十六、十七のIAEAの会合の席で、原子力安全委員会はこのことを聞かれたらしいんですが、その中において、なぜ原子力発電所をとめてすぐ炉内の損傷を調べなかったのか、その権限をどうして原子力安全委員会は発動しなかったんだろうということで、日本の体質は何なんだろうという逆疑問を投げかけてしまったという情報も得ておりますが、経済産業大臣におかれましては、この不正と隠ぺいの体質が何から起こっているのかということに対して、もう少し御自身の考えを深めてみようというお気持ちがあるかないかを最後にお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 私は常々申し上げておりますとおり、原子力行政、これは国民の信頼をいかに確保するか、そしてまたその安全性というものをいかに担保するか、こういうことにかかっておりますので、私は、自分なりにこのことはしっかりと認識していると思っております。
北川委員 終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後零時五十三分散会


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