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第4号 平成14年11月8日(金曜日)

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平成十四年十一月八日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 竹本 直一君
   理事 谷畑  孝君 理事 鈴木 康友君
   理事 田中 慶秋君 理事 河上 覃雄君
   理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      小泉 龍司君    佐藤 剛男君
      桜田 義孝君    西川 公也君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      森  英介君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    生方 幸夫君
      小沢 鋭仁君    川端 達夫君
      後藤 茂之君    中山 義活君
      松原  仁君    山田 敏雅君
      山村  健君    漆原 良夫君
      福島  豊君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      井上 喜一君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   法務副大臣        増田 敏男君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  平井 敏文君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (特許庁長官)      太田信一郎君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 知的財産基本法案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、知的財産基本法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として特許庁長官太田信一郎君、内閣官房内閣審議官平井敏文君及び文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中慶秋君。
田中(慶)委員 おはようございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表しながら、今般議題になっております知的財産基本法について質問をさせていただきたいと思います。
 最初に、バブルが崩壊して、失われた十年、さらには空洞化が加速的に進んでいる現状を見たときに、その原因は、何といっても、日本の国家戦略というものが今ないのではないかな、こんな実感をしてならないわけであります。
 アメリカでは、御案内のように、バブルが崩壊、あるいは三つ子の赤字と言われたそのときに、ヤング・レポートをしっかりと出して、そこで知的財産というものを前面に打ち出しました。そして、いい悪いは別問題として、保護政策を打ち出し、時にはスーパー三〇一条、こんなことをしながら国益をしっかりと優先的に考えてきたわけであります。そして、国家の再生を図ってきました。
 イギリスでは、サッチャーが中心となって、行政改革をしっかりと進めながら、イギリスの再生を図ってきたわけであります。
 日本は、失われた十年の中で本当に政治がしっかりとして対応してきたんだろうか、こんな疑問を抱かざるを得ないわけであります。
 その一つには、やはり知的財産というものをおろそかにしていた、こんな気がしてならないわけであります。どちらかというと金融問題に走って、基本である、資源がない日本が物づくりをし、付加価値を生みながら何としてでも今日の日本を支えてきた、その中で知的財産というものを、どちらかというと置き去りにしてきていたんじゃないかな。
 このことについて、私は、この経済産業政策、いや、むしろ通商政策として昔はあった。今、それが逆に、どちらかというと金融問題だけに力を入れて、通商政策を見誤っているのかな、あるいは、温度差をして見ると、そちらに力のシフトが少ないんじゃないかな、そんな考え方を思っているわけですけれども、大臣、答弁してください。
平沼国務大臣 まさに先生御指摘のとおりでございまして、アメリカは、今先生がおっしゃられましたように、三つ子の赤字を抱えて、七〇年代から八〇年代にかけては我が国のひとり勝ちのような状況でありました。そういう中で、自分たちは月にアポロを打ち上げて月の石を持ってきた、それだけのものを持っていながら、何で日本の後塵を拝さなければいかぬかというような、そういう思いがあったんじゃないかと私は思いますけれども、プロパテント政策という言葉に代表されるように、戦略を持って、そして八〇年代、一生懸命頑張って、ある意味では黄金の九〇年代を築いた、これは私は、御指摘のとおりだったと思っています。
 日本は、本当にそういう点で、御指摘のように天然資源に恵まれない、戦後の荒廃の中で、やはり一貫して物づくりだという形で、物づくり国家戦略の中で品質の向上等を図り、新しい技術を起こして、そして短期間に世界が瞠目するような形の優秀な製品を生み出す、そういう産業のいわゆる体系をつくってきた、こういうことでございまして、バブルの十年間、確かにこれは、我々日本人全体の反省をしなければならないところでございますけれども、その原点をある意味では忘れたというような形で、浮かれに浮かれた十年間。
 そういう中で、その反省の上に立ちまして、御指摘の知的財産というものは本当に大切だ、まだまだ日本にはポテンシャルがあるんだ、ここでしっかりと地に足をつけて、この知的財産を興していかなければいかぬということで、総理大臣のもとに、本年三月に知的財産戦略本部を立ち上げまして、そして七月には、非常にスピードアップをして、大綱がまとまりまして、その中で、国の戦略として基本法をつくっていこう、こういう形で今この基本法をお願いしているところでございます。
 私どもとしては、本当に先生の御指摘のように、通商政策、そういう面からいっても、ここのところはやはりもっともっとしっかりとやっていかなければならなかった、こういう思いがございます。しかし、繰り返しになりますけれども、日本は潜在力、ポテンシャリティーがありますから、今、こういう形でしっかりとした体制をつくっていけば、必ず世界に貢献できるし、また、物づくり立国としても日本はしっかりとやっていけるんじゃないか、そういう意味では、この法案が一つの大きなポイントになる、私はこのように思っているところでございます。
田中(慶)委員 大臣から知的財産についての基本的な考え方をいただきましたけれども、私は、少なくともこの十年間の反省の上に立って、政治がしっかりとリードしなかったことが原因だと思っております。これは我々も含めてでありますけれども。
 しかし、私たちは、この知的財産という問題について、民主党は五年前から絶えず委員会やいろいろなところで発信をしていた、はっきり申し上げて。しかし、そのことを政府は余り重く見ていなかった。結果として今日を招いたわけでありますけれども。
 若干アメリカの例などを見てみても、アメリカは、軍事産業その他については、そのキーポイントのところは絶対に海外で生産をさせない、こういうことであります。
 あるいはまた、ゼロックスを見ても、先般もテレビで放映されたと思いますけれども、活字の革命といいますか、活字文化のスピードアップを含めて、世界的な特許をとってあの繁栄を見ているわけであります。
 コカコーラを見てください。それは特許じゃありませんけれども、現実問題として、世界戦略をしながら、あそこは、どこでも、どういう形でつくられているかさっぱりわからない、こういうブラックボックスを持っているわけであります。
 IBMは、かつて、世界戦略のために、アクセスをさせないという前提でブラックボックスを十五年オープンされていなかった、こういう形で戦略を立てていたと思います。
 特に、皆さんも御承知のように、マイクロソフトの関係で、ビル・ゲイツ氏は、やはり世界戦略というものは、少なくとも知的産業にある、今は貧しくても、この知的産業がしっかりして、そして世界戦略を立てたならば、必ず豊かな国を目指すことができるという、こんな明言があるわけであります。
 これと同じように、日本はやはりそういうところが欠けているんじゃないか。お人よしかどうかはわかりませんけれども、ある面ではすべてオープンにしておる、こういうことであります。空洞化空洞化とこれだけ悩んでいても、ノウハウを全部持ってよその国に行って、現実には国内が今のような厳しい経済状態になっていることを、担当大臣、経済産業大臣として、このことをどう見ておりますか、どう反省しておりますか。お答えください。
平沼国務大臣 確かに今、空洞化というのは非常に大きな日本の問題になっていることは事実であります。特に一九九〇年、そのころは日本の生産拠点の移動率は六%台でありましたけれども、これが二〇〇〇年には一五%になる、こういうぐらいいわゆる生産拠点は海外に移動しています。それに伴ってこの日本のそういう知的ないわゆる財産というものも、図面あるいはノウハウ等がそれに伴って流出をして大変大きな被害が出ているということも私は事実だと思っております。それは、やはり我が国がそういったところについての認識が非常に甘かったし、また企業においてもその辺の認識が欧米と比べて甘いところが私はあったと思っています。
 そういう反省の上に立って、コカコーラでございますとかIBM、そういう例を田中先生お引きになりましたけれども、その知的財産というものが本当に大切だ、ある意味では遅きに失した感がありますけれども、こういうことを我々としては大切にしなければいかぬ、そして経済界の方々もこれは大切にしなければいかぬ。
 こういう形で、非常に短期間でありましたけれども、大綱ができ、それに基づいて基本法ができ、これから具体的な作業をしていく、これも迅速にやっていかなければいかぬと思っておりまして、そういう意味では、御指摘のような、本当に空洞化等、これは、日本がその辺をしっかりと、私どもが意識していなかった、そういう結果だと。非常に残念であり、また私も政治家の一人として、また現在は経済産業省をお預かりするそういう立場として反省をしながら、ここのところを本当にしっかりしていかなければいかぬ、こういう思いでいっぱいでございます。
田中(慶)委員 かつて日本が日米の自動車摩擦にいたときに、アメリカは政労使で日本にやってきましたね。そして、日本にこの対策を求めました。鉄鋼のときもそうでした。
 日本は今、例えばこの知的産業、すなわち特許というものを余り重要視していないものですから、日本の模倣品が中国にはたくさん出ているわけであります。それは、物づくりだけではなくして、ビデオから何からいっぱい出ている、海賊版みたいな形で出ているわけであります。一方において、中国はやっとWTOに加盟した。
 しかし、そういうときに、少なくても日本の政労使が一体となって中国に行って、このことについて政府に対する申し入れやいろいろな対応をしてもいいと思うんです。年間大体一兆五千億ですよ、日本の損失は。一兆五千億ですよ、あの模倣品によって。こういう認識に対する取り組みというものも、私は、若干この対応が遅過ぎるし、なさ過ぎるんじゃないか。現実にこれらの問題についてどう対応しているのか、大臣の答弁をお願いします。
平沼国務大臣 模倣品、海賊版、これについての御指摘であったと思います。このことは、知的財産基本法案においても、やはり国としてそれはしっかりとここを担保しなければならない、こういうふうに位置づけているところでございます。
 私どもが昨年行った調査によりますと、模倣品の製造の現状を国別で見ますと、圧倒的にお隣の中国が多いわけでございまして、中国が三三%を占めております。韓国が一八%であり、台湾が一七%でございますから、大変大きな比率でこの極東に集中をしている、こういうことで、被害業種も非常に多岐にわたっていることは事実であります。
 御指摘のように、WTOに中国も加盟をしました。したがって、政府としましてはこれまで、TRIPs協定の中の中国レビュー、ここのところでしっかりとこのことは中国側と協議をして、中国側のそういう今の状況というのを改善していく、これはWTOの場を使ってやらせていただきたいと思っておりますし、また、私のカウンターパートでございます中国の担当大臣ともたびたび二国間協議を行っておりますけれども、これについても私は、その都度、こういう通商協議を通じて、このことを強力に中国側に申し入れてきております。
 そして、やはり官民それぞれ一体となった取り組みをしなければならない、こういう御指摘でございましたけれども、この十二月には西川副大臣にも行っていただく予定でございますけれども、民間の反模倣品・海賊版団体の国際知的財産保護フォーラム、これが中国に代表取締役クラスの業種横断的なミッションを派遣して、実態について一つ一つ、我々としてはこの問題を率直に、そして深く中国側と協議をしていきたいと思っております。
 また、中国の中央政府と地方政府に対しても、これまでも行ってまいりましたけれども、取り締まりの強化、こういったことを、アメリカはかつてそういう形でやってきた、こういうお話がございましたけれども、我が国としてもそういう形で官民挙げてしっかりとやっていきたい、このように思っているところでございます。
田中(慶)委員 十二月にこのミッションを出されるということは大変的を射ていると思いますけれども、しかし、そのときに、私は、やはり政労使が一体となってそこに行くことだと思うんです。今まで日本はそういうことは余りやっていなかった、なれていない。しかし、アメリカであろうとヨーロッパであろうと、そういう形で、やはり国益を守るためにはそのぐらいが必要なんです。
 今、その民間という中には、政労使という全体の枠組み、このミッションの枠組みの中に入っておられるのかどうか、確認したいと思います。
太田政府参考人 中国に十二月上旬に参ります。これは、国際フォーラムと政府の者が、官民一体となって行くことになると思います。労働界という意味では参加はされませんが、いずれにしても、労働者の立場も含めて、民間企業、政府の者が中国側に対していろいろと要請をしていくことになるかと思っております。
田中(慶)委員 十二月はまだ遅くないのですから、もう発想を変えて、これだけ厳しい今の実態を国際的にしっかりと訴える意味でも、政労使が参加をすることによって、その厳しさや、あるいはまた、日本における現場等に対する影響力も出てくるわけでありますから、やはりそういうことを含めて私はやるべきではないかな、これは大臣、ちょっとその辺を。
平沼国務大臣 今回のミッションというのは、中国側とのいろいろな協議の中で、そういう陣容でございます。しかし、田中先生御指摘のように、やはり政労使一体となったそういう中国側への働きも必要だと思っておりますので、今回の十二月はともかくといたしまして、私は、そのことはやはり大いに検討して実現するようにしていくべきだ、このように思います。
田中(慶)委員 この日本の今の状態というものは、一番知っているのは政府ではないんです、経営者でもない。それぞれ現場なんです。ぜひその厳しさを例えば金型にしても、みんな図面を持っていって向こうでつくられちゃうんですから。先般、大臣のところに陳情しました精密機械を見てください。日本の大手の精密機械はもう全部ないんですよ。ほとんど、多いといっても三百人規模ぐらいになっちゃったんです。
 これが現実なんですから、こういうことを含めて、やはりその厳しさというものを現場の人たちがそれぞれ訴えることが一番大切なんです。政府は大きな方針を出せばいいけれども、現場というのは、そういうことを含めて、国際的に日本の現状というものはそういうところまで来ているんだろう、何も格好だけつけるわけじゃありませんから、私は、そんなところを含めてやるべきじゃないかな、これは要望しておきます。
 さて、この知的産業というのは、今あらゆる分野で採用しようとしているわけであります。民間の場合においても、例えば金融機関が、この知的産業を担保とした融資、そして知的産業を評価して、企業としての時価総価の算定というものが今始まりつつあるわけであります。日常的な企業経営活動、あるいはまた経済戦略、経済再生というものは、むしろ民間企業が、あすに生き残りをかけてこんな取り組みをしているわけであります。
 そして、特許というものがそういう点ではますますあらゆる分野に影響が出てくるわけでありますから、この特許というものについて、しっかりと今の日本の受け入れ体制を確立しておかなきゃいけないんだろうと思う。はっきり申し上げて、日本は今まで特許というものについては、余りにもこの受け入れ体制が悪かった。
 例えば、特許に対する審査については、どちらかというと、アメリカの約二倍かかっているわけであります。あるいはまた、その月数も、アメリカ等においては十カ月から十五カ月ぐらいでやられております。日本は長いもので三年もかかっている。三年もかかっていたのでは、一生懸命やっている研究者の人たちは、提案をしてから現実に三年もこうやって審査をされたのでは、今の時代の流れについていけないわけでありますから、そういう点では、私は、審査体制というものをしっかりと確立しておく必要があるだろう、こういうふうに思っております。
 今、特許庁そのものが人的要員が足りなければ、それこそ国家戦略として人をふやす、こういうことをまず大臣は考えるべきだろうと思います。また特許庁も、今行革だからという形で、どちらかというと、一方においては減らしているときだから、ふやすことについてはちゅうちょされている部分もあるんだろうと思います。それは違うと思うんですね。
 この国の再生のために、どこをキーポイントとしてやっていくかということをしっかりつくり上げていけばいいことであって、あるいは、人をふやすということだけではなくして、今、独立行政法人の審議が始まっております。基本的に行革というのは、今までのそれぞれのスクラップ・アンド・ビルドということでありますから、ふやすということも大切でしょうけれども、民間に審査をゆだねることも大切なんです。そういう点では、例えば弁理士などという人たちも、その業界も、しっかりと専門知識があるわけでありますから、そういうところにゆだねてスピードアップすることが今一番大切だろう、このように思っています。
 まして、大臣を初め国はベンチャーを奨励しているんでしょう。そうですね。それから、産学官といいますか、この研究も促進をしている。こういうことを考えて、国家戦略みたいな形でやっているにもかかわらず、もとのこの審査するところがおくれていたのでは何にもならない。だから研究者は、日本で研究をして外国で特許を取るんです。こんなばかなことを平気で現実問題として認めているんですよ。
 ですから、これについて、日本の国家戦略として大臣はどう思うのか、特許庁はこれに今後どう対応するのか、その辺についてお二人の答弁をいただきたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘のとおり、非常に最近は努力をして改善をされてきたことも事実でございますけれども、日本の場合には、審査期間はアメリカに比しては若干長くかかっていることも事実です。二〇〇一年では、審査待ちの期間というのは、日本では平均二十二カ月、アメリカは十四カ月。ですから、そういう意味では、やはりまだ日本は非常に長くかかる、これは事実でございます。
 それから、最終処理期間というのも、ひところに比べれば、これは田中先生御承知のように、随分日本も努力をしてきました。したがって、二十八カ月、米国が二十五カ月、こういうようなところまで来ておりますけれども、しかし、知的財産というものを確立して、そしてこれを国家戦略にする、こういうことであれば、やはりどの国よりも速く、そして確実にやるという体制をつくることは、私はおっしゃるとおりだと思います。
 これまで公務員の人員というものが削減という形で大変厳しい中で、私どもとしては一生懸命増員も図ってまいりましたし、また、アウトソーシングという形で、肝心の部分が漏出をしないというその担保をしっかり守って、随分アウトソーシングとして、そして民間の力、そういうものも活用して、今申し上げたところまで回復してきたことは事実であります。
 また、弁理士の方々もやはりもっともっとこの場に入っていただいて、そして活躍していただく、こういうことも当然つくっていかなければならないことでありまして、そういう意味では、私どもとしては、紛争のときに対しても、紛争というのもありますから、そのときの対応も、弁理士の方々にも参画をしていただけるような、そういう体制づくりというものをしっかりやっていかなければいけない、こう思っております。
 先生御指摘のとおり、非常にこの点は重要な問題ですから、そういう厳しい人員の削減の中でも、必要なものはやはり私はやっていかなければならないと思っていますから、そういう意味では、アウトソーシングを含めて、しっかりと人員の確保というものはこれからも努力をしていかなければならないことだ、このように思っております。
太田政府参考人 お答え申し上げます。
 知的財産立国の実現が国の目標になっているわけでございますが、そのためには、やはりすぐれた技術のまさに事業化のタイミングを逃さずに権利化する、かつ、これを保護、活用するいわゆるプロパテント政策が不可欠であります。このため、御審議いただいております基本法案第十四条におきましても、「所要の手続の迅速かつ的確な実施を可能とする審査体制の整備その他必要な施策を講ずるもの」と規定しているところでございます。
 今後、審査請求期間短縮、これは平成十一年度に御成立いただきました特許法の改正で、それまで七年の審査請求期間が三年になりましたものですから、その短縮に伴って審査請求件数の急増が予想されます。そういう中で、審査期間の長期化が懸念される、これにどうやって歯どめをかけていくかということが課題になっているわけでございますが、そのために、より一層の私どもの業務の効率化を図るとともに、ただいま大臣が御答弁申し上げましたように、必要な審査官の確保、それからアウトソーシングの徹底的な活用、それから審査補助職員、これは私どもの特許庁のOBにも手伝ってもらっているということもございます。審査体制の整備に全力を挙げてまいりたいと思います。
 また、弁理士の貢献ということにお触れになられましたが、迅速かつ的確な特許審査の実現のためには、特に明細書とか翻訳文とか補正書等の作成、それから特許を求める際の発明と先行技術との対比、さらには企業の知的財産戦略に向けたアドバイス、助言、それから審査官、審判官との面接における的確な技術説明等々、やはり弁理士の貢献というのは非常に大きく期待されておるところでございます。
 いずれにしても、あらゆる手段を活用いたしまして、迅速的確な審査体制の整備ということに向かって邁進していきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
田中(慶)委員 どちらかというと、特許庁は、今これだけ時代がスピードアップしている、この認識が若干欠けているのかな、大変長官には申しわけないけれども。そういう点で、やはりできるだけ短縮することが国益につながる、あるいはまた、今の日本の厳しい経済状態を少しでもサポートできる、こういう感覚でぜひ取り組んでほしいな、こんなふうに思っております。
 特に、例えば特許法の問題においても、特許法第二条において、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものを」というふうに定義をされているわけであります。そのために、原則として日本では、製品、技術の発明は対象になりますけれども、サービスとか、あるいはまた、極端なことを言えば、最近インターネットも若干この対象にもなっておりますけれども、情報、インターネットを含めて、あらゆるアイデア、金融ビジネス等々も含めて、特許というものが幅広く今求められているにもかかわらず、日本の特許法では、そのことは、この第二条においては、その問題についてその範囲ではない。
 ですから、今回これだけの問題を検討するわけでありますから、少なくともサービスあるいはソフトを含めて、そういうところの改正もする必要があるだろう、このように思いますけれども、どちらかというと、物づくりでずっと来ました日本の現状ですから、そういうところに、若干この考え方がある面ではおくれているといいますか、そういう感じをしております。
 それらについて、特許庁長官の御説明をお願いします。
太田政府参考人 今田中先生御指摘のように、我が国の特許法では、第二条第一項におきまして、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しております。この定義のもとでは、サービス等の方法のうち、抽象的なアイデア、あるいは人為的な取り決めのように自然法則を利用したものとは言えないもの、また、既に存在していたものを見つけたにすぎない発見のように、技術的思想の創作とは言えないものは発明には当たらないとされております。
 御指摘のように、この発明の定義が、サービス産業等の発展の制約要因になっているのではないかという意見があることは、私どもも十分承知しております。
 一方、このようなサービス等の方法や発見にまで、特許は二十年間継続する排他的な独占権を与えることになりますが、そういうものを与えた場合に、かえって自由な経済活動の発展を阻害する懸念もあります。コンピューターによって実施されるビジネス方法は、私どもの特許法においてもちゃんと特許の対象になるわけでございます。
 いずれにしましても、現在、世界知的所有権機関、WIPOでございますが、私も先々月出席してまいりましたが、各国特許制度の国際調和を目的とした条約、実体特許法条約の締結に向けた交渉が本格化しております。その中で、発明の定義、特許の保護対象をどうするかというのも重要な検
討項目に挙がっております。
 したがいまして、今後の技術革新及び経済社会の変化を踏まえた適切な発明の定義のあり方について、国際的なコンセンサス形成の場において検討を行っていきたい、私ども積極的に発言してまいりたいと思っております。
田中(慶)委員 長官は少しその辺をお調べになった方がいいと思うんです。アメリカでは、もう既にこの特許の概念は日本とかなり違っているんですよ。少なくとも、新規かつ有用な方法とか、新規かつ有用な発見という形で、その対象が、アメリカでは、ソフトを含めて、インターネット、情報、サービスも含めて特許の対象になっているんです、明確に。法律で、あれは何条だったかな、憲法でちゃんと定めているんですから。
 そのことが日本では、これからいろいろな世界の対応をしながら検討しますと。おくれてくるでしょう。特許は、これだけちゃんとしなきゃいけないというこの基本法を出し、これから個別法を出そうとしているときに、そんな悠長なことでいいんですか。答弁してください。
太田政府参考人 おっしゃるとおり、アメリカの特許法におきましては自然法則という制約がございませんので、有用な方法、新規性がないといかぬわけですが、そういうものについても特許の対象となるというふうに理解しております。
 ただ、私どもいろいろと調べておりますけれども、そういうアメリカにおいても、これまでに実際に権利として認められて、それがほかの国のいろいろなビジネス活動に制約となるような特筆すべき実例はないと承知しております。
 それから、先ほど申しましたように、本当にそういう一つのアイデアみたいなものを特許とすることに伴う、逆の、二十年間独占権を与えるわけですから、そういう問題も十分考えなくてはいかぬと。ヨーロッパにおきましても、やはりそういうものについてはネガティブな対応をしているかと思います。
 いずれにしても、先ほど申しましたように、WIPOの場でしっかり議論をしていきたいというふうに考えているところでございます。
田中(慶)委員 若干その辺の調査不足じゃないかと思っていますよ。アメリカでははっきりとうたっているんですよ。
 例えば、先ほど申し上げたマイクロソフトのビル・ゲイツは、特許のあり方、そしてサービス、ソフトを含めて、こういうことを新しい知識として、世界に先んじてそういうことがアメリカの特許の中にはしっかりと位置づけてある、こういうことを明言しているんです。それだけに、国際的に特許の役割というものを果たしているわけですから、日本で、あれはいけない、これはいけない、そんなことをするよりも、具体的に時代の要請にこたえていくことが必要だろうと思います。自然法則がどうのこうのじゃないんです。現実に新しい時代になってきているわけでしょう。
 かつて我々が、今から十年前を考えてくださいよ、インターネットがこんなになるなんて考えていないでしょう。ましてインターネット、三年後のことを考えてくださいよ、半年、一年たったら古いんですよ。そういうときに、いろいろなことを含めて時代が大きく変わっているんですから、あれはいけない、これはいけない、自然法則がどうのこうのじゃないんですよ。
 そのことをしっかりとして――あなたは、極端なことを言えば、自分の、特許庁だけのことしか考えていない。日本の国益や、日本がこれだけ今大変厳しい環境にあることを、新しい一つの知的財産という、特許の問題を含めて戦略本部まで設けるのに、そんな考え方を持ってどうするんですか。答えてくださいよ。
太田政府参考人 お答えいたします。
 知財を活用して我が国の産業の競争力を強めていかなくてはいかぬというのは、もう委員のおっしゃるとおりでございます。そのために特許のあり方、仕組みはどうすべきかということは、常に時代の流れに応じながら考えていかなければならないということは、これもおっしゃるとおりでございます。
 ただ、先ほど申しましたように、ある定義等を変えた場合に、いろいろなまた逆の問題も出てきます。そういうことを総合的に勘案しながら、かつ、特許というのは国際的なものでございますから、国際的な場でやはりコンセンサスを得ていくことも必要かと思います。そういう面をあわせ考えながらしっかり検討していきたいと思っております。
田中(慶)委員 二十一世紀の経済活動を中心にこの知的財産というものが今議論されているわけです。そういうときに、今のような発想では、私は、国民一人一人に、この知的財産に対する重要性を強く認識させたり、あるいは奨励させたり、あるいは社会全体として、冒険的にいろいろなことを含めて啓蒙するときに、絶対的な特許に対する認識なり、そういうことの雰囲気をつくっていく必要があるだろう。
 アメリカの憲法の一条八項八号にそのことは明確にうたっているんですよ、アメリカでは。国民一人一人の知的、創造的活動に邁進できるような環境をつくり出す、憲法にそういうことを含めてうたっているんです。日本でそういうことができないということ自体が、私はおかしいと思う。そのことを特許庁はちゃんと認識しておかないといかぬのだと思いますけれども、特許庁の考え方を。
太田政府参考人 アメリカの憲法に御指摘のような条項があることは、私も十分承知しております。
 知財基本法案を今回提出させていただいたのも、憲法ではございませんが、まさに、知財の戦略的な活用に向けて国全体として取り組んでいかなければいかぬということの一つのあらわれかと思っております。
 私どもも、そういう考え方に基づいて、特許行政について、まさに、産業競争力強化のためにどうすべきかということはしっかり頭の中に入れながら今後とも取り組んでいきたいと思っております。
田中(慶)委員 一歩間違えるととんでもないことになるんですよ。例えば、これは経済産業大臣でいいですけれども、日本のこれだけ厳しい経済環境を見てください。ペイオフの問題もありました。さらに不良債権や厳しい環境、そして今、定期預金をさらに延長することになりました。
 そればかりじゃありませんよね。全体的に年間三万二千の自殺者がいて、中小企業の経営者が一万二千人死んでいる。最近よくわかったこと、もう一つ突っ込んでわかったことは、RCCによって、その取り立てやいろいろなことを含めて、去年約千人が亡くなっているんですよ、自殺しているんですよ。国は自殺を奨励するようなことをするんですよ、現実に。
 だから、これからの企業再生を考えたときに、特許というのはそれだけ重要なことですから、先んじていろいろなことをやらなきゃいけないときに、あれはいけない、これはいけない、そんなことじゃないと思う。よその国でやっていることを、極端なことを言えば、それに追いつき追い越せという発想でやっていかないといけないんでしょう。私はそう思いますよ。
 ですから、こういう一連のことを含めて、特許がこれからの戦略的な考え方でいくならば、大臣、今IT戦略本部とかあらゆることを国は出しておりますよ。ですけれども、今度の知的産業戦略本部というものは、今までのやり方でいくと、国家戦略じゃないと思っております。また従前のような縄張り争いで、いろいろなことを含めてやるようになってしまう。
 ですから、私はかねて、先般も大臣に質問したように、特許権庁というものをつくって、そこでしっかりとした戦略的なものを立てる必要があるだろう、私はそう思っているんです。なぜかというと、それぞれかき集めてきて、責任もない人が、こんなことを言っちゃ大変失礼でしょうけれども、いろいろなことを、これは知的産業の戦略本部だと言ったところで何も出てこないと思いますよ。ですから、まず特許権庁ぐらいつくる、そのぐらいの意気込みでこの問題を処理しなきゃいけない。
 もう一つは、大臣にお願いしたいことは、やはりこれをしっかりと位置づける意味でも、特許に対する認識というものを庁内でもしっかりさせていかなきゃいけないと私は思っておりますよ。なぜ今度は基本法だけ出して個別法というものを出してこなかったんですか。私は、並行してそのぐらい出したってよかったんだろうと思うんです。それはどういう意味か、この二点について大臣に答弁願います。
平沼国務大臣 先ほど来、田中先生と特許庁長官との御論議を聞かせていただいておりまして、私は、こういう大切な知的財産の件、特許の件は、おっしゃるように、一歩一歩先を読んでやる体制は絶対つくっておくことはやはり必要だと思っています。
 アメリカの合衆国憲法にあるということも、やはりアメリカは、それだけ、初代のワシントン大統領以下そういう認識を持っていたし、聞くところによると、あのアブラハム・リンカーンも実は幾つも特許を持っていた、こういうことにもあらわれていると私は思っています。
 ですから、これからはビジネス特許を初めとして、例えば金融取引なんかに関しての特許性が云々されているようなそういう状況の中で、特許庁長官もそういう問題意識を持ってWIPO等の国際会議の場で一生懸命議論をしていると思っておりますけれども、御指摘のようなそういう姿勢というのは絶対必要だと思いますので、私も担当大臣として、その辺はそういう基本的な考え方を持って特許行政、知的財産をやらせていただきたい、こういうふうに思っております。
 いわゆる役所を、ひとつ庁をつくったらどうか、こういう御指摘でございます。今、中央省庁再編に代表されるように、非常に簡素化という中で進んできております。そこで、小泉内閣総理大臣のリーダーシップのもとに、そういう戦略本部が立ち上がりまして、ここは各省庁が全部参画をして、そして、有識者の方にも入ってもらってこの三月から七月まで精力的にやらせていただきました。
 したがって、総理大臣のリーダーシップのもとでそれぞれの省庁が一枚岩になってやるということが、私は、それと同等のやはり大きな力を発揮することにもつながる、こういうふうに思っておりまして、この知的財産推進計画にまとめられたことは、本部をいわゆる補佐する所要の陣容を具備したしっかりとした事務局体制、これを内閣官房につくることになっておりまして、これが十分実質的な知的財産戦略の推進機関になる、経済産業省としても、その中でしっかりとした役割を演じて、後顧の憂いのないようにしていかなければならないと思っております。
 それから、基本法をつくって、いろいろ個別な立法はどうなっているんだ、こういうお尋ねでございます。
 知的財産基本法の制定のみをもってよしとする、私どもはこういうふうには思っておりません。知的財産の関連法案につきましては、この国会でまず基本法を審議していただきまして、私どもとしては、次期通常国会におきまして、例えば特許法でございますとか著作権法でございますとか不正競争防止法でございますとか、あるいは民事訴訟法、種苗法、それぞれの関係省庁において具体的に、しっかりと基本法の精神が生かされて、それが円滑に展開できるようなそういう関連法案の整備は通常国会でしっかりとやっていかなければならない、こういうことで今鋭意準備をしているわけでございまして、この件は、こういった形で我々しっかりと対処していかなければならない、こういうふうに思っています。
田中(慶)委員 これは、幾ら大臣とこの問題をやりとりしていても、現実に実効あるものにしていかないといけないわけですから、ぜひそうしていただきたいと思います。
 今、特許庁にお尋ねをずっとしてきたんですけれども、特許がこれからたくさん出てくれば出てくるほど、あるいは国際的になればなるほど紛争というものが出てくる。
 きょうは、法務省から副大臣、増田さんにお見えいただいておりますけれども、どちらかというと、この特許紛争というものを今までは日本は一元的にやっていなかった。それから、はっきり言って、専門の裁判当局も弁護士さんも少なかった。これを、やはり紛争というものを専門的に扱うような特許裁判所の設置をしてフォローアップする必要があるだろう、国際的に対抗する意味でもそういうことが必要ではないか、この考え方をずっと私は主張してきているのです。
 先般、法務大臣はこれらと若干ニュアンスの違ったお話をしておりますけれども、私は、そのぐらいしておかないと、これから日本の特許問題、国益としてあるいは国家戦略としてやるときにはそのぐらい必要だろうと思うのですけれども、副大臣、どうですか。
増田副大臣 田中先生のお尋ねにお答えを申し上げたいと思います。
 特許権等に関する訴訟の迅速化の観点から主にお尋ねがあったと思います。同時に、本会議で御発言なさったのを記憶いたしております。
 そこで、特許権等に関する訴訟事件につきましては、東京、大阪両地方裁判所の知的財産権を取り扱う専門部を実質的に特許裁判所として機能させるため、制度面において、特許権等に関する訴訟事件について、東京、大阪両地方裁判所への専属管轄化や、いわゆる専門員制度を導入するなどの手当てを講ずることを検討いたしております。
 また、裁判所におかれましても、東京、大阪両地方裁判所の専門部に専門性を備えた裁判官や技術専門家である裁判所調査官を集中的に投入することによりまして、裁判所の専門的処理体制を一層強化することなどの措置を講じておられるものと承知をいたしております。
 これらの措置を通じまして、総合的に特許権等の知的財産権関係訴訟への対応が強化され、裁判の充実迅速化が図られるものと期待をして鋭意取り組んでおります。
田中(慶)委員 増田副大臣、日本が、これだけ国際的に今あらゆる面で飛躍をしなければいけない、一時はトップリーダーとして来ました。ところが残念なことに、最近の特許やあらゆることを含めてまいりますと、もう二けた台におっこちてしまった。そういう点では、この紛争処理もそこには一つの原因があるわけでありますから。
 今、東京、大阪にと言いますが、高等裁判所は全国に幾つあるのですか。
増田副大臣 八カ所です。
田中(慶)委員 せいぜい高等裁判所に一つぐらいずつこの知的財産の処理をする部を、そのぐらい、八カ所ぐらいちゃんとしてやるべきじゃないのですか。私はそのぐらいに思っているんですよ。そうでなければ、専門の裁判所をつくる。
 あなたも、いろいろな形で地方行政もやってきたり、企業家としても努力をされてきた。単なる役所の発想ではなくして、今、敏速かつスピードを要求されているのですから、この二カ所で、東京と大阪にその専門的な人を集める、そんなことで処理なんてできませんよ。新しい時代に今向かおうとしているのですから、そのぐらいの考え方を持ったっていいと思うのですが、どうですか。あなた、政治家ですから、政治家としてちゃんとしなさいよ。
増田副大臣 田中先生の考え方と私も大体同じ考え方を持っております。
 そこで、調べてまいりましたが、大体、知的財産権の紛争の七割強は東京、大阪であります。したがって、当面そこを充実して対応していこう。そしてなお、裁判所においては、ここ数年、東京、大阪の裁判所を中心に専門的な処理体制を強化してきておりまして、東京、大阪では、知的財産権訴訟について、平成九年には、専門的、集中的に処理する部が合計六カ部、裁判官が二十五名であったのが、平成十四年には、部が合計九カ部、それから裁判官が合計四十一名となりまして、今、専門的、集中的に処理する体制が整備をされてきております。
 裁判所におきましては、知的財産権等を担当いたします裁判官による研究会を開催したり、若手裁判官を諸外国の裁判所や知的財産研究所に派遣したりするなど、裁判官自身の専門性の強化にも努めているところであります。
田中(慶)委員 少なくとも、官僚の書いたレポートなんて読みなさんなよ、あなた。副大臣制度というのはそのためにつくっているんですからね。ちゃんとしなさいよ。
 東京、大阪、七割と言っているけれども、その受け皿がないから七割なんですよ。地方に分散してごらんなさいよ。そのことをちゃんと考えて、これからスピードアップ、日本も何とかしようというときなんですから、そういう考え方で、役所の考え方じゃなく、あなたは法務省をリードする立場で考えて答弁してくださいよ。まして、さきの国会でも、弁理士もちゃんとそういう形でサポートできるようになった。いろいろなことを含めて、使い切っていないじゃないですか、今まで。
 こういうことを含めて、特に都道府県別に、地方に至っては非常に不便さを感じているのです。現実には北海道から東京まで出てこなければいけないんですよ。そういう問題を含めて、地方にもちゃんとしっかりとしたスタッフと受け入れ場所等、対応できるようにしなければいかぬでしょう。
 自民党を見てください。日本列島改造論からいろいろなことを含めて、地方にもみんな、この工業等制限法だって地方分散するためにつくった法律だったでしょう。ですから、地方に全部あるんですよ、企業というものが。固定資産税も安い、人も安い、いろいろなことを含めて分散していったんですから、そこにいろいろなものが存在しているわけですから、そのことを含めて対応してくださいよ。
増田副大臣 よくわかりました。私自身は、その方向に向かって努力をいたします。
田中(慶)委員 ぜひ政治がリードしてそういう問題に、別に法律に違反するわけじゃありませんから、幾ら法務省だって、やはりそういう形で、古い考え方じゃなく、新しいものにチャレンジするような発想でやってください。お願いします。
 時間も大分なくなってまいりました。これは経済産業大臣にお聞きしたいと思います。
 大臣も御案内のように、物づくり基盤法が整備をされ、日本は、いろいろな形で、文部省やいろいろなところでその価値というものを提唱してきているわけであります。
 ところが、これは僕のひがみかもわかりません。例えば、学者については学士院というものがありますね、学術院、学士院。あるいは芸術家には芸術院というものがあります。ところが、技術・技能者、極端なことを言えば、物づくりをしている現場の立派な職人さん、こういう人たちの殿堂といいますか、こういうものがないんですよ。スポーツにも、野球にも殿堂があるのです。ですから、そのぐらい大きな目標を持って進めるようなものをつくってもいいのじゃないかな。例えば技術院とか技能院とかという形でつくられて、励みになるようなこともすることが例えば知的財産の奨励にもなるのじゃないか、こんなふうに思っておりますけれども、大臣どうですか。
平沼国務大臣 日本は、物づくりが一番日本人の民族性にも合って、それで、戦後、世界が瞠目するような発展を遂げてきました。そういった物づくりを支えてくださった方々が実は非常に高度な技術を持っていて、コンピューターでもできないような、本当に、例えば金型一つとっても、もうミクロン単位でぴちっと合わせる、そういうすばらしい技術者がたくさんおられるわけですね。
 ですから、物づくりのそういう基盤をつくるための法律はつくりました。それから、厚生労働省では表彰制度もつくりました。しかし、例えばドイツなんかにおいては、マイスター制度といって、そういう技能を実習した人が社会的に評価される、そういう仕組みがまだ日本には確立されておりません。ですから、そういうことは非常にいい御提言だと思いますので、私は、この日本は物づくりが原点ですから、そういうことは積極的にこれから取り上げていきたい、こう思っております。
田中(慶)委員 時間が、まだ連絡来ませんけれども、ぼつぼつ終わりになりました。
 いずれにしても、この国の再生というものを考えたときに、知的財産基本法というのは、非常に僕は大切に思っておるし、これはイデオロギーでも何でもない、この国をどうするかという、こんな発想です。
 それからもう一つは、やはりこの知的財産というものが各省ごとにいろいろな形で連携をとらなきゃいけないわけですから、従来のような役所仕事にならないように、ぜひ、本当に戦略本部が発揮できて、リードできるように、これが必ずこの国の再生につながると私は思っておりますので、ぜひ大臣、思い切って取り組んでほしい、要望しますけれども、お答えがあれば答えてください。
平沼国務大臣 全力を挙げて取り組んでまいります。
田中(慶)委員 終わります。
村田委員長 山村健君。
山村委員 おはようございます。
 田中理事の後に引き続いてなんですけれども、早速で申しわけございません、大臣に一言申し上げさせていただきます。
 ことしの通常国会の折に、特許法改正案ですか、そのときに私、質問に立たせていただいて、そのときに、この知的財産基本法の骨格をつくる戦略本部を設置して、各省庁からそれぞれの精鋭を集めて、また民間からもというような形で、その大綱づくりの真っ最中であるというようなお話を聞きました。
 そして今回、その問題点といいますか、今の日本が混迷している原因は、まさに今この国会で問題になっている経済、金融という問題だけじゃなくて、この先が見えないから国民が混乱しているんだ、そんな折に、小泉内閣が誕生し、そして平沼経済産業大臣のもとで知的財産立国という言葉が出てきたんですよ。まさに日本のトレンドはそれじゃないかというような中から生まれた基本法のはずなんですけれども、先ほどの議論を聞いていましても、従来の法律と、従来の法律とという言い方はおかしいですけれども、観点が全く変わっていないんじゃないかなというふうに思うんです。
 そこで、一点なんですが、今回の法律、概論として述べさせていただきたいんですけれども、率直に申し上げまして、縦割り行政の弊害ということを感じたことはないのでしょうかという質問なんです、まず第一点。その一点からまずお願いいたします。
平沼国務大臣 従来、日本の行政というのは、縦割り行政、そして省益あって国益なし、こういうことがよく言われておりました。確かに、一部はそういうことがあったと私は思っておりますけれども、この知的財産の基本法、これはそういった形で描かれているものではない、こういうふうに私どもはまず認識をしております。
 先ほど来の答弁の中でも繰り返させていただきましたけれども、今回は、科学技術立国、これは日本の国是でありますけれども、それを、しっかりとその土台を支えるのは、やはり知的財産というものをいかに守っていくか、そういう認識の中で、今年の三月に、これは小泉内閣総理大臣のもとに、小泉総理自身が本部長になって、そういう縦割りというものの弊害をなくして、そして一堂に会し、有識者にも入っていただいて、七月までの間、本当に濃密な議論をして、そしてこの大綱ができて、その大綱の中の一番のあれが、この知財立国をするためにはやはりどうしても基本法が必要だ、こういうことで今回提出をしてお願いをしているわけです。
 ですから、そういう意味では、内閣の中にそれぞれが、お互いの立場、これが共通の立場として、この国を、とにかくみんなの力を結集してやろう、総理のもとにやろう、そして、内閣の中にみんなから入った事務局を置いて、そういう障壁を乗り越えてしっかりと一つの目的に向かってやっていこう、こういうことでございまして、私どもとしては、御指摘の縦割り、こういったことは絶対あってはならないと思っておりますし、私も担当大臣の一人としてそのことは十分留意してやらせていただきたい、こういうふうに思います。
山村委員 まさに大臣のおっしゃるとおりなんですけれども、今までの立法過程と違うという認識のもとに、今回の基本法案、私が先ほど冒頭に申し上げましたけれども、全く違うトレンドをつくっていく。今までですと、それこそ各省庁から優秀な人材を集めて、そして、今までの現状からスタートしていくという立法をしていけばよかったと思うんです。
 ただ、今までのトレンドといいますか、日本の経済が歩んできた道が間違っていた、それが時代にそぐわなくなってきたという観点から、今日の失われた十年と言われるような事態になってしまっているわけなんですよ。それを見出したのが、今回の知的財産立国という形の新しいトレンドなんですよね。その知的財産立国ということを目指していく、まさに、本当にすばらしいんですよ。ただ、従来の、はっきり申し上げて、官僚の発想でしたら絶対に成立しないなと思って私も見ていました。
 今回、先ほどの答弁においても、同じことの繰り返しになりますけれども、これは非常に大きな問題でして、創造的な人材を養成する、文科省の範疇なんですよ。文部科学省の中で、我々も子供の時代にありましたけれども、発明工夫展とか、そういう、夏休みの宿題といいますか課題の中でそういったものをやってきているわけなんですよ。その時代というのは、ある意味、技術者養成なんです。科学技術立国でもいいわけなんですけれども、子供たちに対して、どれだけ創造力豊かな形のものを夏休みの場でつくらそうかというような指針もあったと思うんです。
 それが、今回の文科省の方のやってみえる生きる力であるとかゆとり教育とかという教育方針が、いわゆる、今までのカリキュラムから比べると三割減ったとは言われていても、その受け皿といいますか代替案として、本当に生きる力、創造力を養成していくという指針が出ているのかというと、残念ながらないように思うんです。その指針というのも、今回の知的財産立国という大綱の中から、戦略本部の中から、今までのシステムである文科省であり教育委員会でありというところへ知らしめていくというか、落とし込んでいくと言うとまたこれは地方分権時代に逆行するんですけれども、そうなっていくと思うんです。
 そういう意味合いから、文化庁であり経済産業省でありというような、従来の特許法そして著作権法、それぞれ所轄の官庁があってどうのこうのという問題じゃなく、本当に広く、文科省から厚生労働からすべてにおいて、今回の知的財産立国、この基本法というのは大きな指針になり得るんです。
 またこれを言うと、私、同僚議員からしかられるんですけれども、まさにそういう意味合いからいいますと、内閣の中で本部をつくって、その中で担当大臣が平沼大臣であってというようなことになると、また、ポスト小泉は平沼なのかみたいなヨイショの質問になってしまってしかられるんですけれども。でも、これはそのぐらい、日本の五年先、十年先、二十年先をリードしていく基本法なんですね。ちょっと演説調になってしまいましたけれども、その辺の気概で大臣に取り組んでいただきたいなと思うんです。
 今回の法案に戻りますと、今回の基本法、それだけ大きなものであるにもかかわらず、その立脚点が物すごく揺らいでいるというか、軟弱じゃないかなというふうに感じるんですよね。本当に混沌とした社会の中で、産業の、製造業の中国への移転であるとか、そういう現象が顕著になってきて、根底に、産業の空洞化といいますか、国際競争力が弱ってしまったな、労働者の受け皿がないな、そんなような状況がここまで顕在化してきた中で、何かないのかという産業政策として出てきたんじゃないのかな、本当にその一点なんですが、その辺の立脚点、いかがですか。
高市副大臣 先ほど、田中委員からの御質疑に対して平沼大臣が率直な反省の弁を申し上げましたけれども、確かに、今先生から御指摘のあったような、さまざまな問題点が顕在化してからの取り組みという意味では、残念ながら少し遅かったかなという気もいたしております。
 つまり、例えばアメリカでは、七〇年代の終わり方から八〇年代にかけて産業競争力が大きく低下してきた。これに対して、八〇年代の半ばぐらいから非常に広範な分野でプロパテント政策が始まって、当時私もアメリカにいましたけれども、コンペティティブネスという言葉が、競争力という言葉が政府のすべての場所にはんらんしていた時代でした。それで、政府、民間、その民間というのはさまざまな研究所であったり事業者であったり、そういったところが一体となって競争力をつくっていこうという流れが八〇年代の後半にばあっと動いたんですね。それに基づいて政策が打たれて、九〇年代から競争力が回復してきた。
 日本の場合も同じで、アジアのキャッチアップを受けて競争力は大きく低下をしました。しかし、それはもう既に九〇年代に顕在化していたと思いますし、海外の模造品対策ですとかそれから海賊版による被害ですとか、もう既に九〇年代には多数報告されていたと思います。
 こういったことを受けて、確かに政府全体の取り組み、それから事業者や研究者も一体となった枠組みづくりという意味では遅かったけれども、それでも今の小泉内閣になって、この知的財産というものを産業政策にきちっと位置づけていこう、これを受けて、ちゃんと三月に戦略本部がつくられ、七月に大綱ができて、そしてこの国会に基本法が提出された。
 この流れを考えますと、私は、今の政権の取り組みとしては速かった、非常に作業としてはピッチを上げたと思いますので、これから大事なことは、先生がおっしゃったような立脚点に立って、立脚点そのものについて大いに賛同いたしますので、迅速に進めていくことに尽きると考えます。
山村委員 副大臣から、心強いといいますか、率直な御答弁をいただきまして、まさにそのとおりだと思います。今までとは違うといいますか、迅速に取り組んでいただいたということも、本当に従来とは全くこれは違うと思うんですよ。
 ただ、今副大臣の答弁にもあったように、アメリカは、七〇年代後半から八〇年代というところに、いわゆる国家戦略の中で完全にこれを位置づけたわけですよね。日本の台頭というような形で、このままの流れじゃとてもアメリカはだめだよというときに、例えば九〇年代ですと、ゴアさんが出てきて、情報ハイウエーとかいうネット社会というのを構築していったわけですよ。
 それに対して、日本は、では追いつこうじゃないかということをやり始めたら、やっとITという言葉が国民に普及したかなと思ったときには、いわゆるITバブルは崩壊したというような現状で、いまだに国家戦略においても、後追い後追い、いわゆるキャッチアップ型という思想が残っているんじゃないかなと。だから、ここまでおくれてしまったのであれば、次の十年、また世界のトップリーダーになるために、戦略的に仕切り直しをしなければ、本当に日本はこのまま沈没してしまうと思うんです。
 だから、そういう意味からも、今回の基本法、ここまでは本当に速かったです。言ってみればゼロからのスタートですから、一気に追いついただけの話で、ここから先、先進諸国、日本も先進国の一つであるんですけれども、もう一度世界をリードしていくためにというなら、本当に英知を集めて体制を、これは、与野党を問わず人を集めてつくっていかないと本当に滅びてしまうと思うのです。
 そこで一つ示唆があると思うんですけれども、日本の場合、知的財産というような概念といいますと、特許法、実用新案初め、どうしても産業界に目が向いていたんじゃないかなというふうに私は思うんです。
 私は、今までイベントの企画屋であるとか広告とか放送とか、そういうソフト産業に携わってきた中で、どこへ行っても障害になるのが著作権という問題なんですね。著作権をなぜもう少し産業として生かさないのかなというふうに常に疑問を抱いていたことがあるんですけれども、その辺、いかがですか。
 日本の今までが工業立国としてやってきた国ではあるんですけれども、今回、著作権というものに対して大幅な見直しがまず必要じゃないかなと思うんですが、知的財産立国を目指してどのように入れていくのか、ぜひお聞かせいただきたいのですが。
銭谷政府参考人 著作権の問題についてお尋ねがあったわけでございますが、御案内のように、著作権は、著作物とか実演というものについて、これを無断利用から守るための権利を与えまして、創作活動を推進するということを目的としてつくられた制度でございます。
 制度が発足して以来、ただいまのお話にもございましたけれども、芸術作品を中心として、その利用形態も本の出版とか演奏会などに限定をされておりまして、文化芸術的なものとのかかわりが深い制度として発展をしてきたわけでございます。したがって、著作物の創作者、利用者も一部の業界のプロの方に限られるといった傾向があって、一般の方々に対する認識も必ずしも十分ではなかったという側面は否めないのではないかと思っております。
 ただ、先生からお話がございましたように、近年、インターネットやパソコンなど、著作物の創作手段、利用手段が急激に拡大をしておりまして、権利者、利用者の双方が大変多くなってきたということは事実でございます。
 それから、コンピュータープログラムとかアニメーションなど、いわゆるコンテンツと総称されているものは、そのほとんどが著作権によって保護されておりまして、従来、芸術文化の世界で発達をしてきた著作権制度は、近年、私どもの認識といたしまして、経済活動や社会生活との関係を非常に深めている。そういうことで、著作権の問題につきましても、その権利の保護、その利用ということを考えましたときに、産業的な側面での利用促進ということを十分考えていかなければいけないそういう時代になってきたと認識をいたしております。
 その意味で、著作権における契約、流通システムの改善充実、あるいは著作物の利用に当たって契約というものを大変重視する、そういう機運をつくっていくということが、私ども今後の大きな政策課題だというふうに思っております。
 また、国民の皆様方に対しましても、著作権の理解を深めていただくということから、学校教育や社会教育の場を通じまして、著作権思想の普及に努めてまいりたいと思っております。このことは、今回の知的財産基本法の二十一条に、教育及び学習の振興や知識の普及に努めるということも明確にうたわれておりますので、文化庁といたしましても一層努力をしてまいりたいと考えております。
山村委員 確かに、次長の方から、取り組んでいく政策課題といいますか、そういう御答弁いただいたわけなんです。
 一つの例示をさせていただくというときに、アメリカにいわゆるハリウッドという町がございます。これはもう本当に世界に知れた映画産業の拠点なんですよね。一方、日本の映画産業というものは、今実態どうなっているのかということを考えていただきたいんですよ。まさにそれは、ビジネスとしてのキャッチアップでいいと思うんですけれども、結局アメリカの場合ですと、シナリオ一本持って、力のある脚本があれば、金融機関へ持っていけば、よし、これならスポンサーを紹介してあげようとか、そういうシステムとして確立しているんですよね。
 しかも、その脚本の段階で、要するに、公開したらだれだれを、それはプロデューサーがやっておるわけなんですが、だれだれを監督にして、だれだれを主演にして、このようにやろうと思いますとプロデューサーがいわゆるプレゼンテーションをすることによって、ファンドの面におきましても、お金の面におきましても、流通のシステムも含めて、いわゆる末端のビデオ化で何ぼはけるとか、世界公開でどれだけしていく、それで、しかもそれぞれの、シナリオライターであったり役者であったり美術であったり音楽であったりという人たちに対しても、その権利の部分というのがもうその段階ででき上がっているわけですよ。
 しかも、それがそのときだけじゃなく、何においてもその著作権という権利に守られて、だから、どんどんどんどん日本の資本もかなり映画に関してはアメリカに入っているわけなんですけれども。日本の特撮技術であるとか特殊メーキングであるとかといういわゆるアーティストと言われている人たちは、まさに今もう完全にハリウッド、ロサンゼルスといいますか、アメリカを中心に仕事をしているんですよね。余りにも今まで水面下に隠れていてといいますか、産業として脚光を、いかに日本の政府が光を当ててこなかったかというまさに証明だと思うんですよ。
 だから、そういう観点からも、今回の基本法、知的財産立国を目指してという形なんですけれども、知財立国という言葉が出てきて本当に私がほっとしたというのが、科学技術立国とはやはり違うんですよね。
 知的財産というのはやはり人間がベースにありまして、人間の創造力によって幾らでも広がる。労働界のシフトにしたところで、関連業者、一人の天才的な発明家というのは、まあこの間いきなりノーベル賞二人も誕生しましたけれども、そうそう出るものじゃないんですけれども、毎日テレビで流れているドラマであり創作物、ごまんとあるわけなんです。その下で働いている、それぞれの部署の製作会社で働いている人間というのは、本当に十万人、二十万人という単位じゃないんですよね。そのぐらいのパワーが、やはり著作権という制度というのをもう少しビジネス上に生かしていくという工夫をしていただければ、今の雇用対策なんて本当にあっという間に解決すると思うんです。いかがですか、大臣、その辺。
平沼国務大臣 ハリウッドの例をお引きになられましたけれども、著作権でございますとか特許権ということを、いわゆるそういう知的財産権というのをビジネスに生かすということ、その重要性というのは私は御指摘のとおりだと思っています。
 これまでの日本については、御指摘のとおり、企業サイドにもそういった、何といいますか、取り組み、これが希薄な面があったことは私は否めないと思いますし、また、いわゆる役所サイドにもそういった認識というものがやはり乏しかった。だから、御指摘のように、ハリウッドへハリウッドへと、こういう傾向があったことは事実です。
 しかし、一方においては、例えば日本のアニメだとか、あるいはテレビゲームだとかそういうものに関しては、やはり独自のポテンシャリティーを持って、そして世界の中ではトップランナーでいっているということも事実です。だから、そういうことを含めて、こういう知的な財産権というものが非常に大きな産業に育ち、そしてそこから大きな果実が出るようなそういう仕組みを、企業がやりやすいような形をつくっていく、こういうことが私はやはり必要だと思っております。
 そういう意味で、私どもとしては、こういう企業が知的財産に関する戦略的なプログラムを策定できるように、経済産業省として、参考になるべき指針を今一生懸命作業をしておりまして、本年度中にまとめたい、こういうふうに思っております。
 具体的に申しますと、一つは、知的財産権の取得と管理について、二つ目は、そういうノウハウなどの営業秘密はどうやって管理するか、三つ目は、海外への意図せざる技術流出の防止、こういった三つの指針の策定とその普及策に努めて、根っこの面をしっかりしなければいかぬ、こう思っています。
 二つ目は、企業が行う知的財産活動が市場に正当に評価されまして、そして企業の収益性や価値を高めることができるそういう仕組みを構築すること、このことが重要と考えておりまして、当省といたしましては、これは来年度中にということでございますけれども、知的財産に関する情報開示の指針を作成しようと思っております。
 まず手始めに、今年度中にパイロットモデルを策定しようと思っておりまして、企業の秘密管理にも配慮しつつ、具体的な情報開示のあり方について検討を進めていかなければいかぬと思っています。
 それから第三には、企業が知的財産を資産として有効活用できるような環境整備は、おっしゃるとおりこれは必要だと思っておりまして、このため、特許の流通促進策を引き続き講じるとともに、デジタルコンテンツの円滑な流通を図っていかなければならないと思っておりまして、特許等の例えば証券化、そういったものについてもモデル事業の立ち上げをしよう、こういうふうに思っています。
 こうした諸施策の実施を通じまして、今おっしゃったように、企業が知的財産をしっかりとビジネスに生かせるそういう基盤を、環境整備を私どもは行っていこう、こういうふうに思っているところでございます。
山村委員 今大臣から御答弁いただいた内容といいますか、知的財産をそのように本当に産業として生かしていただける、ただ、やはりこれは速やかにお願いしたいなというのが私の本音でございます。
 また例を挙げさせていただきますと、私どもも実は田舎で企画屋といいますか、物が何にもない中で、本当に企画書だけで勝負すればいいじゃないかという考え方、まだちょっと時代を早まってしまったのかなというところもあったんですけれども。
 ただ、そんな折に、以前に、ちょうど竹下内閣の折に、ふるさと創生一億円、そういう命題があったわけですよ。当然、大半のところは、上手に使ったところ、下手なところ、いろいろあるわけなんですけれども、そんな折に、では、その一億円を地域おこしのために何を企画書として立案したらいいんだと。役人の人にはできないような発想で、みんながそれこそコンペティションといいますか、競争の中でできるじゃないかというときには、本当にもう夜も寝ずにといいますか、単なる一億円というインセンティブがあるだけの話なんですけれども、お金じゃない部分で、投資といいますか、みんなで、若い連中が集まって、ああでもないこうでもないと。
 私はたまたま、そういう技術があったかどうか知らないんですけれども、まとめ役として企画書という形に体裁を整えて、そんな中で、ではプレゼンテーションで大手の代理店に負けないようにというような方法論等々も議論し合いながらつくらせていただいた、よき思い出なんですけれども。結果としては、コンペに負けてしまったので、実力がなかったという部分なんですけれども。
 その当時我々の仲間が言っていたのが、結果を審査するのが、申しわけないですけれども、市町村の役人さんのレベルでは、とてもじゃないけれども無理だよね、わからないよねという反省をさせていただいたんです。
 そのときに思ったのが、ではそれが、どこでも多分、地方の若手といいますか、若い世代というのはそういう葛藤の中で生きていると思うんですけれども、では、我々の立てたプランが自分のA市という市では没になったけれども、ひょっとしたら九州の、ひょっとしたら先進的な市長さんのいる別の都市であれば採用されるんじゃないかなという思いもあったわけなんですよね。それには地域愛というか地元愛というのはあったわけなんですけれども。
 では、その企画書というものが公的な機関としてそこにエントリーできれば、それこそ、それは総務省がピックアップしてくれるのか、それぞれの地方自治体がピックアップしてくれるのか、それが企業であったりとかという、そういう機関というのがあったらなというのが、今から十数年前に我々の仲間で本当に思ったことなんですよ。
 今回の基本法ができて、先ほど来田中議員の方からもありますけれども、公的な機関として、本当に知的財産立国という国づくりを新しいトレンドとして各省庁の障壁というものなくやっていこうとするのであれば、これはいきなり結論にもなってしまうんですけれども、やはり推進機関としての知的財産管理省庁といいますか、庁というよりもいきなり省でもいいと私は思うんですけれども、単なる推進本部というのは、これ、正直な話、非常に不安に思う部分があるんです。
 というのは、今の内閣だったら、それは総理が本部長となって、そういう体制で進めますよ、推進しますよと言っていただいたとしても、総理は少なくとも任期があるわけなんですよ。総理がかわってしまったら、じゃ、どうなるんだという不安に駆られるわけなんですよね。それを制度としてしっかりと、特許庁といいますか、知的財産庁というような形、知的財産省というような形として残すことができないのかなと思うんですが、先ほど田中議員からも同じような質問があったんですが、いかがですか、大臣、その辺、考え方として。
平沼国務大臣 先ほど田中慶秋先生の質疑のときにも答弁をさせていただきましたけれども、今、非常にそういう意味では行政改革を進めている。そういう中で、厳しい制約のもとでいかに最大限の効果を出すか、こういう観点に立ちますと、やはり総理が本部長として、そしてその中で、障壁を超えて集中して、国家戦略として大切なことをやっていく、このことを我々はそごがないように完遂をすることが非常に大切だと思っております。
 また、こういう国家戦略でございますから、例えば内閣がかわったときにどうなるか、そういうお話もございましたけれども、IT戦略本部というものも一つとりますと、これも、内閣がかわりましても、やはり中枢のそういう機能として存続をしてさらにそれを活性化する、こういうことにも相なっておりますので、確かに、御指摘のように、そういう庁を設けるということは非常に大きな力をある意味では発揮する、そういうことも言えるかもしれませんが、私どもとしては、やはり総理大臣が本部長で、その中でしっかりとやっていくことが実効につながる、そして、皆様方が危惧されるようなこともないように私どもはできる、こういうふうに思っているわけでございまして、こういう体制の中で、全力を尽くして、担当大臣の一人としてみんなと協力してやっていきたい、こういうふうに思っております。
山村委員 大臣、ここでちょっと、腰が引けるというのは失礼な言い方なんですけれども、本当にリーダーシップを持っていただいて、総理は確かに総括的な部分として、これはトップとしてやっていただかないといけないんですけれども、担当の経済担当大臣が次の日本というようなトレンドを知的財産立国という形でつくっていくんだから、おれにこれだけの権限を与えろよという形のリーダーシップを持っていただいて、それこそ行革の時代ではあるわけなんですけれども、従来型のシステムの行政のあり方というのは要らないわけですよ、それは。
 失礼な言い方ですけれども、コンピューターがこれだけ世に出回ってしまって、一人で何十人分もの仕事ができる時代になってしまって、申しわけないですけれども、それを言ってしまうと私どもも支援団体にしかられるかもわかりませんが、公務員の数というのはそんなに必要ないはずなんですよ、昔に比べたら。では、その人たちがどこへ行くんだと。新しいトレンドさえ見つけてあげれば、どっと仕事はふえるわけなんですよ。まさにこれは雇用対策にもなるわけなんですよね。
 失礼な言い方になるんですけれども、それも一つの大きな制度上の問題で、官僚の皆さん、よく弊害と言われるのは、一つの事務次官といういすを目指していす取りゲームをしているから、どんどん優秀な官僚が年とともに堕落してしまうといいますか、一般論ですけれども、中にはすばらしい人がいるわけなんですが、年に何回かそういう話も出てくるわけですよ。新しいものをみんなで見つけませんか、フロンティアスピリットをこの霞が関、永田町の中からつくりませんかといったときには、埋もれている素材と言ったら失礼なんですけれども、優秀な頭脳というのはどんどん出てくると思うんです。
 同じく、企業においても、今までのトレンドの中で省かれてしまった人といいますか、もうどこの企業でも、どんどんリストラという形でぜい肉をそぎ落として小さく小さくなろうとしているときに、まさにデフレスパイラルでそのままいっているときに、新しく国の基軸をつくるために、この指とまれと、大臣が自信を持って、そろそろ内閣の中で、私がやりますというふうな声を上げれば、一気に一万人、二万人という規模の優秀な労働者がまず集まりますよ。そこから、知的財産権というのを産業として結びつけていくためにという大きな指針があれば、それが本当に何十万人、何百万人というような雇用対策にもなり、広がっていくわけなんです。
 だから、せっかくわずか一年の間にここまで来たものであるならば、本当に来年じゅうにはそういう組織再編をして、省庁を、本当に再編成になってしまうのかもわかりませんけれども、新しい知的財産庁をつくるからという大義名分のもとに、そのぐらいのビジョンをぜひ示していただきたい。それができるのは、今の小泉内閣の中では、私は、経済担当大臣が一番ポストとしてもおもしろいんじゃないのかな、また、期待できるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、いかがですか。
平沼国務大臣 繰り返しの御答弁になりますけれども、それは、先生のお考えも一つの考えだと私は思っています。
 私は決して腰を引かせているわけじゃございませんで、こういう基本法を審議していただくこの経済産業委員会、ここで私も答弁に立たせていただいているということは、この問題を本当に大きな問題としてとらえて、そして経済産業委員会の先生方にいろいろ御意見を承り、そしてお力をいただいてやろう、こういう気概は持っているつもりでございます。
 そういう意味で、今の御提案のことも含めて、私どもはこれからこのことをしっかりとやっていかなければいけない、こういうふうに思うところでございます。
山村委員 いつまでこの枠組みが続くのかということもわかりませんけれども、これはまた、田中先生、鈴木理事という形で理事とも相談させていただいて、大臣が経済担当大臣として、前向きにといいますか、大きなビジョンのもとに、本当にこれは超党派で国民のことを第一に考えてやるのであれば、我々野党としても積極的に応援させていただきますので、その辺の気概だけはぜひ見せていただいて、ばく進していただきたいなというふうに思うんです。
 それで、次なんですが、ただ、我々が政治の場で理想を求めてという形でどんなにビジョンをつくって、それは選挙というマイナス部分はおいたとしても、前向きに走ろうとしても、どうしても障壁として出てくるのが、やはり従来からの法律という縛りがあるわけなんですよ。
 そこで、今まで知的財産権の中で範疇として論じられてきた特許権、実用新案権、育成者権、意匠権であるとか著作権、商標権等々あるわけなんですけれども、この辺の整理については、それぞれ個別法なんですが、改正も含めてどのように考えてみえるのか、その辺のスケジュールを教えていただきたいと思うんですが、いかがですか。
平井政府参考人 お答え申し上げます。
 先生の御質問は、基本法に関連いたしますと、知的財産の中にどれほどの権利、あるいは定義として含まれるかというのから御説明させていただきます。
 本法案におきましては、知的財産戦略会議の議論を踏まえて、国富を増大させる可能性のあるものをほとんどすべて幅広く知的財産ととらえるべきだということでございまして、御指摘の特許権、著作権等を初め、知的財産を広く定義することにいたしました。
 定義におきましては、具体的な例示も、したがいまして著作物とかあるいは営業秘密を包括的な書き方にいたしました。知的財産の中に多くのものを全部入れているというふうに御理解いただきます。
 したがいまして、個々のそういった知的な創作物が、どの知的財産権法というか、それぞれの個別法で保護されるものかといいますのは、それぞれ特許法、著作権法などの個別法におきます法目的でありますとかあるいは定義、実体経済上の個々の契約の内容とか性格等によって判断されて、それぞれのつかさつかさにおきまして施策が展開されるというふうに考えております。
山村委員 ですので、もしこれが仮に――実は私は、今回の基本法というのは、もうしばらく議論させていただいて、もっともっと本当に基盤の強い基本法にしていただきたいなという思いがあるわけなんですけれども、まさに、今まで全くゼロだった、なかったものをつくっていただいたという点においては非常に評価はさせていただいてはいるんですけれども。
 これは、著作権法、私はどちらかというと著作権の方が得意分野といいますか、現場のレベルでぶち当たってきたところもありまして、例えて言うなら、肖像権であるとかパブリシティー権とか等々という文言にしたところで、日本には今まで、法律という形のくくりじゃなく、裁判所にすべてゆだねてしまっていたわけなんです。では、それをビジネスモデルとして生かしていこうとするときに、法的な決め事がない中で、では何をやっていいんだ、どこまで使えるんだということがすべて民間にゆだねられている、本当に裁判所にゆだねられているという非常にあいまいな状況にあるわけなんですよ。
 ということは、知的財産というものを確立しようとするためには、今までのそれぞれの個別法においても、ある意味では経済産業省管轄の法案に対してはかなりの部分できております。というか、非常に整備された法案だと思うんですけれども、著作権関連の法案というのは全く、我々がCDを買いますと、勝手にダビングしちゃだめだよ、個人使用の場合はいいよということはみんな知っているんですよ。でも、それがいかに重い科料になっているのかとか、特に、最近の場合ですと、コンビニに行ってダウンロードしてしまえば新曲がそのまま手に入ってしまう、しかも何百円というような金額で入ってしまう。だから、日本のミュージシャンというのはもう本当にやる気をなくしていますよねと。売れている歌手というのはどんどん拠点を海外に移してしまっているという現状にもなるわけなんですよ。
 だから、その辺の法体系の整備というのを、これは文化庁に聞いた方がいいのかなと思うんですけれども、スケジュールとしてどこまで真剣に考えていただいているのかなということをもう一度お聞かせいただきたいんですけれども。
銭谷政府参考人 著作権の問題についてのお尋ねでございましたけれども、今回の知的財産基本法の第二章に基本的施策がるる書かれているわけでございますけれども、この基本的施策について、私ども、著作権についても、これをその立場から整理をいたしますと、おおむね五つのことがこの法律の中には盛り込まれているというふうに思っております。
 一つが、今先生からお話がございました、著作権に関する法律ルールの整備というものを進めなさいというのがございます。それから二つ目が、先ほどの御質問にもございましたけれども、いわゆる著作権ビジネスの観点から、著作物等の円滑な流通の促進というものを図らなければいけないということがございます。三点目には、海賊版対策などに代表されます国際的な課題への対応ということがあろうかと思います。そして四点目には、著作権について国民の皆様方に認識を深めていただくための著作権教育の充実ということがございます。そして最後に、五点目には、著作権問題について、著作権侵害などがあった場合の司法救済制度の充実について今後施策を進めなければならないということが書かれているわけでございます。
 現在、文化庁といたしましては、これら五点の問題につきまして、文化審議会の著作権分科会の中に、以上お話をいたしました五つの課題ごとの小委員会を設置いたしまして、それぞれの問題について、迅速な対応をすべく検討を進めているところでございます。
 あわせて、先ほど申し上げました五つの施策のうち、契約システムの改善の研究でございますとか著作権教育事業などにつきましては、直ちにできることにつきましては、既に準備を進めたり実施をしたりしております。
 それから、法律ルールの整備につきましては、損害賠償制度の強化など、著作権法の改正が必要な事項につきまして現在検討を進めておりまして、来年の一月にも報告書をまとめる予定でございまして、その結論を受けて、来年の通常国会に向けて著作権法の改正の準備を進めていきたいというふうに思っております。
 お話に、例示にございました、例えば音楽CDのデジタル録画といったような問題についても、実態の把握、それに対する対応について検討を進めておりますけれども、この問題につきましては、いわゆるデジタル録画・録音については、それを、コピープロテクションを回避するような問題とか、あるいは電子透かし、こういうものを回避するような、そういうことは禁止をするという法律改正も既に行っているところでございまして、これらは、ある意味では世界に先駆けてやっているわけでございますけれども、そういったものの実効性が上がる対応について、それも含めて今検討を進めているところでございます。
山村委員 まさにやっているというふうに答えられましても、今回の本当に根幹をなすのは、私、くどいほど言いますけれども、今までの日本というのは、ハイテク、ハイテクノロジーの方というのにどうしても重心が重かったと思うのです。このネット社会等々に入ってきてからというのは、まさに知的財産立国ということを目指していこうとしたときは、やっぱり人なんですね、感性なんですよ。やはりハイテクからハイタッチへ、これは、ビジネス社会においてはもう本当に二十年も前から言われてきているトレンドなんですけれども、そういう意味から、著作権の法整備。
 また例え話で申しわけないのですけれども、今回、巨人軍の松井選手がアメリカへ行ってしまいますよね。いきなり年俸というのが、同じ野球選手でありながら、同じ野球をしていながら、アメリカと日本で一気に十数倍違ってしまうんです。サッカーの選手においては、とてもじゃないですけれども、プロ野球で言うところの一球団ぐらいの費用をたった一人の選手に、中田であったり、中田はまだそこまでいっていないにしても、プロ野球の球団が三十億とか四十億とか言われているんですよね、売買するのに。サッカーの選手一人のトレードで動くお金というのがそのぐらいの金額なんですよ。
 なぜたった一人の人間がそれだけ価値を持ち得るのか。やはりそれにはビジネスとしてのモデルができ上がっているわけなんですよね、キャラクターグッズから何から。それなりにスポンサーが、ある選手をキャラクターとして使う、それに類するブランド商品をつくるという形であれば、単なるコマーシャル料だけでそこまで収入は得られるわけじゃないんですよ。その辺がすべて契約条項の中に盛り込まれているから、一人の選手のトレードというか移動によって多くの人が経済的に成り立っていく。それが、日本ではプロ野球の選手の中でも余りなじみがないのですけれども、代理人システムという形で、代理人を入れなければそこまでの細かい契約なんかできませんよということで、アメリカの場合、アメリカだけじゃないのですけれども、サッカーの世界においても、スポーツ選手等々、代理人システムというのができているのです。
 ということは、そういう点においての法整備というものが非常に甘いといいますか、これから日本が知的財産立国という形でいくときに、テクノロジーの部分もそうなんですけれども、感性の部分、スポーツ選手、スポーツ、文化という面においても、今までとは違う切り口で著作権法の改正案というのを考えていただかなければいけないのじゃないのかなというふうに思うのです。文化庁の方ではそれなりのスケジュールをもって考えていただいているわけなんですけれども。
 もう一点、関連してになるわけですが、長官の御答弁にもありました、デジタル録画、デジタル録音というこの問題、著作者に対して本当に弊害が大きい。かといって、では国民の方はどちらを望んでいるのかといったら、やはり高画質・高音質のDVDであり、CDがDVDになり、VTRがDVDになり、しかも、それがまたネットでつながってというような形のものというのは、多くの国民が望んでいる技術であるわけなんです。いつもいつも、それは、レンタルレコードがこの世に出てきてから、著作権との問題、著作者との問題ということで、法整備の方が後追い後追いで来ていたわけなんですけれども。
 その辺に関しても、これは大臣にお願いしたいのですけれども、せっかく推進本部という形ができるのであれば、単なる調整機関じゃなく、それをプラス発想できるようなシステム、今、文化庁の方では専門部会という形で、部門会議になるのか、それぞれで専門家の人は話し合っていただいていると思うのですけれども、そこに経済界の人間、ベンチャーを立ち上げた企業の人たちが入ることによって、今の文化行政、著作権を守る側の人たちだけじゃなく、新たにそれがビジネスモデルに変化していくきっかけになると思うのです。
 そういう点を、今回の推進本部といいますか、推進機関として、冒頭に申し上げました縦割り行政という枠組みから離れた観点で考えていただきたいし、しかも、法律の方が後追いじゃなく先取りしていくようなスケジュールで考えていただきたいと思うのです。今、そのスケジュールに上っていた既存の法律を改正していかなければならないと思うのですけれども、その辺の具体的なスケジュールとして、来年の通常国会という流れというのは難しいですか、いかがですか。
平沼国務大臣 この知的財産の戦略本部は、本部長という形で小泉総理が陣頭指揮をしているわけですが、実は、三月からずっとかんかんがくがく議論をしてきた戦略会議というのがございまして、その戦略会議の構成メンバーというのは、関係大臣が全部入ると同時に、例えば著作権の問題では、著作権協会のそういう第一線の方々も入っておられますし、あるいはコンテンツをつくる方々、それから学識経験者、そういった方々がそれぞれまた分科会をつくりながら、いろいろな問題点というものを集大成しながらその議論の場に持ち込んで、そしていろいろな形であの大綱がまとまってきております。したがって、著作権法の問題でございますとか、CDのいわゆる海賊版等の問題、そういう御指摘がございましたけれども、そういうこともすべてその議論の過程の中で実態等があからさまにそこの場に持ち出されて、そして、対応策とか諸外国の事例とか、そういったことも全部いろいろ議論をしてこの大綱がまとまりました。
 そして、その大綱に基づいてこの基本法をお願いしているのですが、戦略本部は当然、そういった戦略会議の方々との連携をここで打ち切ることなく、引き続きやりながら、そういった御意見等も反映して、そこのところはしっかりやれる体制ができていると思いますので、私どもとしては、その体制の中で一生懸命やってまいりますし、通常国会では著作権法の改正等も含めてでき得る限り関連の法案を整備していく、こういう段取りで臨んでいくつもりでございます。
山村委員 具体的に積み重ねていかなければならない改正改正という形の部分は必要なんですけれども。どうしても私、前向きと言ったらおかしいのですけれども、既存のものをある意味否定した状態でといいますか、もう先取りしてしまうもので、いつもその辺がプレゼンテーションが下手で申しわけないのですけれども。
 せっかくこの基本法案ができて、私は、本当にくれぐれも、別に大臣を個人的にどうこうというのでヨイショしているわけじゃないのですけれども、立場として経済産業担当大臣でしかできないということを含めたときに、今回の基本法案にもあるわけですが、産学官共同研究という形の中で、今まで著作権の問題を例に取り上げさせていただいているわけです。
 例えばCDとかDVDとか、ネット上のダウンロードでもそうなんですけれども、その中の最初の部分に課金システムということができるわけなんですよね。その信号さえ落としておければ、イコールそのまま電子マネーの世界にまで行ってしまうわけですよ。一曲当たり幾らという課金システムさえ公的な部分でできるようなルールをつくってしまえば、恐らく今のソフトウエアを開発している人たちにとってみたら、CDの最初の部分にカウントされましたと。それがそのまま、それを言ってしまうと個人情報保護法案等々の問題にも出てくるのですけれども、本人の希望によってはそのまま銀行口座から聞いた分だけ課金されているなというようなシステムだって成り立つわけですよ。
 それがやはりこれからのネット社会といいますか、すべて網羅した状態で、まさに十年後の日本の姿というふうに、日本が世界をリードしていく、そのルールすら日本がリードしてつくってしまえば、恐らく日本標準が世界標準というふうに認定されると思うのです。
 そういう意味合いで、今回のこの基本法といいますのは大きな大きな問題を持っていますし、ある意味、実験的な役割といいますか、省庁の壁を取り払って、新たな経済トレンド、しかも世界をリードしていく、日本の英知が集まるというスタイルになっていくと思うのです。そのぐらいの気概を持っていただいて、従来の発想でないところから基本法に連なるそれぞれ各法というのをつくっていただきたいし、また実施レベルにおいても、いろいろな分野からいろいろな知恵を集めていただくシステム、そしてインセンティブというのが得られるような状況にしていただきたいなと思うのですけれども、大臣におきましては、どうですか。
 はっきり申し上げて、私は、今の基本法の枠組みだけではグローバル化というところまで描いていないように思うのですけれども、その辺の気持ちはいかがなんでしょうか。
平沼国務大臣 この基本法がやはりその一つの大きな原点の柱になると私は思います。そして、これから、この基本法に基づいて、今おっしゃられたそういういろいろな問題についての条件整備、体制整備、こういうものを図っていくことは当然なことだと思っておりまして、そういう意味では、この基本法を原点として、世界をリードするような知財立国になるように、全力を挙げて、そしてお互い協力し合ってやっていくことが必要なことだ、私はこのように思っているところでございます。
山村委員 もう時間も押し迫ってきたのですけれども、そういう気概を、今度は現実の政策、政策といいますか、政策というのはまず予算という担保があって動けるものなんですけれども、WIPOですか、世界の著作権とか知的財産権を扱っていく機関においても日本がイニシアチブをとれるように予算づけしていただいて、そこに日本の英知といいますか、もう役人だけじゃなく、民間からも学界からもどんどんどんどん人を送り込んで、世界のリーダーになっていただきたい、そのように思う次第です。
 時間が参りましたので、以上にさせていただきます。どうも本日はありがとうございました。
村田委員長 松原仁君。
松原委員 まさに今、知的財産というのは大変に大きな時代のシンボルになっていると私は思っております。歴史をひもとくということが我々人間は大事でありまして、過去の歴史の中に多くのことを学ぶのは従来からそのとおりであります。
 私が考えることは、かつて十九世紀、二十世紀にかけて帝国主義の時代というのが世界にありました。帝国主義の時代というのは、これは、それぞれの国が植民地を支配することによって、その国の権益を守り、そして富を獲得していった。まさに、そういった意味で帝国主義というのがあって、かつてイギリスなんかは、日の沈まない帝国と言われるように、全世界にその植民地を広げていったわけであります。時代が変わって、こういった帝国主義というものは今大分なくなってきて、そういったことをやると、これはけしからぬというふうな国際世論もある時代に入ってきているわけでありますが、私は、形を変えてこういった帝国主義は今でも残っているというふうに思っております。
 それはどういうことかというと、従来の帝国主義は、地図上の空間に自分の領地をつくっていく。例えば、イギリスがインドを統治するとか、オーストラリアを統治するとか、カナダをあれするとか、こういうふうな領地を領有することによって、そこの原材料を安く仕入れ、安価な労働力を使い、また市場にし、その中で利益を得てきた。そういった意味において、それは今はないわけでありますが、今はどういう帝国主義があるかといえば、それは、言葉をかえて言うならば、知的帝国主義、まさに知的財産が一つの帝国主義の素材になっていく時代に入っていると思っております。
 それは、特許においても著作権においてもそうでありますが、ゲノムについても、例えば、どんどん特許を上げていく。そういったものが上がっていくと、新しく医薬品会社が医薬品をつくる場合にも、はなから大変ないわゆる特許料を払っていかなければいけなくなる、まさに搾取をされるわけであります。著作権についてもそうでありますが、ディズニーの映画のキャラクターを使って何かをやる場合には、またこれは大変なげたを履かざるを得ない。
 これもある種の植民地と同じでありまして、つまり、従来は、空間的な植民地というものを広げていって帝国主義というものがつくられたわけでありますが、今日においては、そうではなくて、まさに、この知的財産の特許をとる。一回とってしまえば、まだ植民地の方が戦争をやって取り返すことができるわけでありますが、戦争がいいかどうかという議論ではなくて、現実問題としてはそういうのがあった。歴史はそれを教えている。しかし、知的財産は、これをひっくり返すことがなかなかできないというか、基本的にできないわけでありますから、この帝国主義こそまさに、これからの世界を考える上で最強のものになっていく。
 ところが、この分野においては、ゲノムにおいても何においても、日本は大変に出おくれている。先ほど我が党の田中筆頭理事が大臣に対して申し上げたように、まさにこれは、言っているように、本当に我々はおくれているわけであります。つまり、あのときは日本は、言葉は悪いけれども、明治維新のときにおいて、そのいわゆる帝国主義において出おくれをしたけれども、それは、いいかどうかということではなくて、歴史的事実であるけれども、今はそれ以上に、知的帝国主義において出おくれをしているというふうなことを我々は痛感しているわけでありますが、このことについて大臣の御所見をまずお伺いいたします。
平沼国務大臣 確かに、歴史をひもといて、松原先生言われましたけれども、そういう側面はあると私は思っております。日本の場合には、先ほど来の質疑の中でも出ておりましたけれども、戦略としてなかったわけであります。ただ、例えば特許の出願数ですとかそういうことでいえば、日本はかなりアメリカを超すような出願数を誇っております。
 しかしそういう、帝国主義という言葉をお使いになられましたけれども、帝国主義というのはある種の戦略を持ってやるわけでありますが、そういう意味では、私どもとしては、この戦略というものが非常に不足をしていた。しかし、ポテンシャリティーというものがあるわけですから、何もそれで、かつての帝国主義のように変な形で世界を席巻するという形じゃなくて、やはり知的な形で、そしてそういう知的なものを、自国もそれによって非常に大きな繁栄を得るけれども、しかし、それを利用することによって他国にも大きな繁栄をもたらす。そういう意味では、私どもとしては、この知財というものは非常に大切ですから、戦略を持ってやっていく、そういうことが絶対に必要だという形で今回戦略本部というのもできたわけでございます。
 そういう今の現状認識というのは、私は松原先生と一緒でございまして、そういう中で、いかに日本が戦略を持って、そしてこの知的財産というものをしっかりと確保していくか、このことに尽きるのではないか、こういうふうに思っております。
松原委員 今回のこの知的財産についてのまさに認識の部分をもう少し議論していきたいと思っているわけでありますが、実際、そういう中でどういう現象が起こるかというと、まさに、日本の中小企業を含む製造業のいわゆるコストが極めて高いものになる、当然であります。それは、そういった特許料や著作権料を普通より払うことになる。そうなると、そうでない産業も個別に考えるといろいろなものがありますが、結果としては、製造業におけるこれはもう大変なアドバンテージを、英語で言うと逆にディスアドバンテージというんですか、そういうふうな状況になっていくと思うわけであります。
 ですから、私は、日本の国の経済を考えるときに、国策として殖産興業を明治維新でやったように、それ以上に、あえて帝国主義と言うのは、そういった意味では表現が、エキセントリックな表現を使わせていただいたわけでありますが、そういう殖産興業の精神というんですか、これを持って知的なこの分野において、とにかく競争でありますから、先にとった方が勝ちなんですよ。先にとった方が勝ちだという、この認識で話を進めていただきたいというのが第一点であります。しかし、翻って我が国を見ると、我が国はどうもそういう闘争心というのは余り持っていない部分が多い。
 これは著作権の部分になりますが、例えば、私は手塚治虫という漫画家が大変に好きでありまして、これはもうすばらしいと思っておりました。この手塚治虫の「ジャングル大帝」、この間ビデオを見たら、「ライオン・キング」という――「ライオン・キング」というのを、平沼大臣、見たことありますか。
平沼国務大臣 私は、その名前は聞いたことございますし、その「ジャングル大帝」というのは、言ってみればそれの英語版じゃないかなという感じがしておりますけれども。
松原委員 逆なんです。「ジャングル大帝」は日本の方で、「ライオン・キング」は英語版というか、ディズニーがつくったんですよ。
 これを見ると、完全な模造品ですよ。「ライオン・キング」は、日本の「ジャングル大帝」を全くまねしていますよ、と私は思う。多くの人もそう思っている。逆だったらどうなるか。「ライオン・キング」が先にあって、日本の「ジャングル大帝」が後から出たら大変ですよ、これ。けしからぬという話で、すごい損害賠償を受けるに違いない。
 今聞いたら、「ピーターパン」というのは、これは一般の話であったと。ピーターパンの服に緑色の色を塗るというのは、それをやるとディズニーが訴えてくるという話があるんですよ、ある人の話では。赤い色だったらいいと。しかし、「ピーターパン」は、これはディズニーじゃないらしいんですよ、どうも。ディズニーは、ピーターパンに緑色の服を着せたのはディズニーだと。緑色のピーターパンをやると、これは訴訟の対象になる、色で。それぐらいに細かいわけですよ。
 僕はこの間、そういったアニメとかをやっている人に聞いたんですよ。何で「ライオン・キング」のことを手塚プロは訴えないんだ、「ジャングル大帝」は訴えないんだと聞いたら、いや、手塚治虫は、自分のそういう思想が世界に伝播していくことに対しては非常な喜びを感ずる人間ですから、そんな、お金をよこせとかなんとか、そういうことは考えない人間だったのでありますみたいな話を私は聞いたんですが。それはそれで一つの見識でありますが、それでは困る人が多い。逆の場合は必ず物すごいお金が、結果として日本から流れていくわけなんであります。
 それで、産業についてはいろいろな議論があります。私も若干持論を申し上げたいわけでありますが、例えば、ウィンブルドン方式ということをしばしば言う。イギリスのあのテニスコートでプレーをする選手は、それは日本人もいれば中国の人もいるし、全世界から集まる。イギリスは舞台を貸しているんだ、ウィンブルドン方式で繁栄しているからいいじゃないか、こういうふうな話で、それを経済に当てはめて、イギリス経済も、イギリス経済という舞台は提供するけれども、そこにいろいろなところの企業がやってきて繁栄している。多国籍のいろいろな企業が来て、イギリスプロパーの企業は少ないけれども、繁栄している。こういうふうな議論があるわけでありますが、私は、経済のウィンブルドン方式というのは、イギリスにおいて当てはまっても、日本において当てはまるとは思っていないわけであります。
 それは、歴史的、文化的な経過があって、普遍的なものなんというのは現実社会のリアリティーの中では極めて乏しい。つまり、何が言いたいかといえば、イギリスは、全世界に植民地があった。全世界に植民地があって、世界の公用語は今や事実上英語になっている。そういったところがウィンブルドン方式というのと、我々のように、日本語という、私は極めて名誉を感じますが、ある意味で世界でも独特な日本語という言語体系の中で、そして、イギリスのように別に七つの海に植民地があったわけではない日本が、ウィンブルドン方式、できるのか。
 それは、イギリスに対するシンパシーから考えて、たくさんの国は、そこへ行ってやって、最後はシンパシーも勘案して何か行動するだろう。日本において同じようなことをするだろうかといったときに、日本におけるウィンブルドン方式というのは、イギリスのようには成功しないだろうと私は個人的に思っているんです。
 そういったことを考えたときに、今言ったことを羅列して考えたときに、最終的に私は、やはり日本は自国の産業をウィンブルドン方式でいいという議論ではない。僕は、日産、ルノーのあり方がいいかどうかということはきょうは申しませんが、やはり基本は、自国の産業に対して、イギリスやアメリカ以上に、やはり今までの日本の伝統文化、歴史的な経緯を考えれば、もっともっと力を込めてこれを育成していくべきだと私は思っているんです。そういった意味において、今回のこの知的財産の問題というのは極めて重要であるということをまず申し上げておきたいわけであります。
 私は、まず、その中で質問したいことは幾つかあるわけでありますが、今、ドッグイヤーと言われる大変に厳しい環境の中で、実際、日本の知的財産の特許というのがある。特許の審査期間というのはやはり長い。先ほどの質問にも長いという話がありました。アメリカと比べて、またEUにおけるそういったものと比べてどういう状況なのかということをちょっとお伺いいたしたいと思います。
太田政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、知的財産基本法案の目的を達成する上で、すぐれた技術を事業化のタイミングを逃さずに権利化し、これを保護、活用するプロパテント政策が不可欠であると考えております。
 お尋ねの、我が国の特許の審査期間でございますが、二〇〇一年の数字でございますが、一次審査に着手するまでに、審査請求から二十二カ月かかっております。最終処分までに、審査請求から二十八カ月を要しております。
 一方、主要先進国においても、審査の長期化が懸念されておりまして、共通の課題となっております。アメリカにおける一次審査期間は十四カ月、最終処分までは二十五カ月かかっております。それから、欧州特許庁における一次審査期間は二十一カ月、最終処分までは四十六カ月となっております。
松原委員 私は、日本という国の特性を考えると、これは人材立国しかない。資源がそんなあるわけじゃないわけでありまして、レアメタルがとれるわけでもないし、石油が世界へ輸出できるほどとれるような国では全くないわけであります。そういった国においては、まさにこの知的財産が、ある意味で日本の今後の発展、これからの日本の経済の強さ、繁栄のかぎを握るということは、すべての日本人が理解をしているわけであります。
 そういう中において、今おっしゃったような知的財産の審査期間、極めて国際的に見て優位を保っていない。私はやはり、これはアメリカやヨーロッパと同じであるというのでは不十分だと思うのですね。アメリカは資源があるんですよ。軍隊もあるんですよ。日本の場合は、まさに知的財産だけで勝負をしていかなきゃいけない、そういった国であります。
 ウィンブルドン方式は、私の考えとしては、これも平沼大臣に、さっきの話も、私の意見も、ちょっと感想を聞きたいんですが、ウィンブルドン方式が、イギリスのように日本で根づくのかどうか非常に疑問を感じております。そういった国においては、私は、世界で最も最短の審査期間を少なくとも近い将来において設定するべきだ、こう思っているわけでありますが、そのことについて大臣の御所見をお伺いします。
平沼国務大臣 ウィンブルドン方式というのは、私は松原先生と同じような見解に立つものであります。
 バブルの直前にまことしやかなうわさが流れてきて、東京が世界の一大金融センターになる、オフショアマーケットもできる、こういうことで地価が上がり、さらに株価も上がったような経緯があります。しかし、結局はそれは根づかなかったということは、やはり根本的には、日本という土壌にはある意味ではそういうウィンブルドン方式というのは合わなかったのではないか、こういうふうに思っています。
 一方、英国のシティー、これはかつて、先ほども松原先生言われたように、大英帝国は日の没するところを知らず、こういう形で大変な栄華を誇っていたわけでありますけれども、そのときはまさに世界の金融のセンターがシティーだったわけですが、今はまさにウィンブルドン方式で、本当に大家として場所を提供している、こういうような状況になっておりまして、それが果たしていいかどうかという問題はまたあります。
 ですから、私は、日本というそういう歴史を持った国、あるいは島国で、ある意味では一言語、一民族で来てしまった国、そういったことを考えると、やはりなかなかウィンブルドン方式というのは根づかないそういう素地があるのではないかな、こういう個人的な感想を持っているところでございます。
 それから、特許に関する審査に関しては、先ほど特許庁長官がお示ししたそういう日数からも、相当改善されてきたことは事実です。しかし、御指摘のように、日本は知的財産というものを大きな戦略として、武器としてやるということであれば、これはもっともっと短縮をしなければならないと思うのですね。
 シンガポールという国は非常にユニークな国づくりをしている国でありまして、そういったことを、本当に世界で一番進んでいることをしようじゃないかといって、お行きになられたと思いますけれども、例えば、港の管理システム一つとっても、ハードは日本のものを使っておりますけれども、ソフトは全部彼らが独自で構築をして、そして荷役というのは本当に一日以内で全部してしまって、極端に言うと、ニューヨークあるいは横浜港から積むときの積み荷の積み方までコンピューターで制御して効率いいことをやっています。そういうことがあってシンガポールという国の独自性が保たれていると思う。あれは私はある一つの大きな典型だと思います。
 ですから、そういう意味では、私は、この国が知的財産で戦略的にやっていくということに関しては、やはりもっともっと短縮をする努力をしていかなければいけない、そういったことで、今アウトソーシング等でいいところまで来ております。さらに私どもは頑張って、そしてアメリカを凌駕するような審査体制をつくらなければこの大きな世界の中で勝ち残っていけない、こういうふうに思っておりますので、担当大臣として、この辺はさらに努力をしていきたい、こういうふうに思っています。
松原委員 ぜひ頑張っていただきたいと思うわけであります。
 現実に審査期間を短くするために、私が聞くところによりますと、例えば、審査の人の数は、日本の審査官の一人当たりの審査処理件数はアメリカの二・二倍というふうな話もあるわけでありまして、明らかに審査官の数をふやさなきゃいかぬ。やはり重点的に、これから勝負するところはそれをふやす、減らすところは減らす、めり張りが大事でありまして、一律減らすなんて議論にはならないわけです。したがって、この審査官、それも二万人、三万人ふやせという議論じゃないと思うんですよ。
 ですから、そういった意味では、この審査官をふやすということは、ほかの省庁の人員を削減しても断固ふやすんだという強い決意が必要だと思うんですが、大臣の決意をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 今までも厳しい中で増員は図ってまいりましたし、先ほど特許庁長官からの答弁にもありましたように、OBの方々はやはり経験を持っておりますから、そういう人たちの、今人生八十年の時代になりましたから、そういった方々のパワーもかりる。それから、できるだけアウトソーシングするという形でここへ来ました。
 しかし、御指摘のとおり、根本的に、いわゆる審査官の絶対数というのは、日本とアメリカと比べると非常に違いがあります。そういう意味では、私は、マンパワーを増強するということは、これから最大限の努力をしたい、こういうふうに思っています。
松原委員 具体的に本当に短期でふやすということを、アメリカの二・二倍の仕事量じゃなくて、アメリカの〇・八倍ぐらいの仕事量になるぐらいにして、やはりそういうところで常に、日本は世界で、さっきのシンガポールの話ではありませんが、最もこれについて熱心に取り組んでいる。そうしたら、ほかの国も日本に来て特許を出そうかというぐらいになるわけですが、それをさせながらもどんどん自分の方も出す、こういうことで頑張ってほしいわけであります。
 一方における弁理士数も、さらに拡大をしていかなければいけないと思います。知的財産の保護を支える人的基盤としての弁理士数の拡大、これについての御所見をお伺いいたします。
太田政府参考人 知財の専門サービスに対するニーズが大変増大している、それに対する供給をきちんと確保していかなければいかぬということで、平成十二年弁理士法改正におきまして、試験内容の簡素合理化、あるいは修士取得者や他の有資格者への一部試験免除等を含む弁理士試験の抜本的見直しを行ったところでございます。
 この新弁理士試験は、本年五月より実施いたしました。合格者は、平成十三年度に比べて百五十一名ふえまして四百六十六名となっております。ちなみに、平成十二年度に比べますと、二百十名ふえております。大変知財に対するニーズもふえております。今後とも、合格者がふえていくものというふうに考えておるところでございます。
松原委員 同時に、弁理士の先生方に対してさらにいろいろな権限が付与されていますが、まだ足りない。
 例えば、いろいろな裁判なんか起こるわけですよ、これがおかしいじゃないかとか。そういったときに、どうしても弁護士さんが一緒に行かなきゃいけないケースとかもあるわけでありますが、ある程度専門的な知識を持っている弁理士さんがそれができるくらいに、弁理士に対して、こういう時代、スムーズに行動できるようなさらなる権限付与もぜひ検討していただきたいというふうに思う次第でありますが、御所見をお伺いいたします。
太田政府参考人 ことしの弁理士法の改正におきまして、訴訟代理権が付与されました。これに基づいて来年から研修が始まりまして、恐らく来年の十二月ぐらいからは弁護士とともに訴訟代理人としての活躍が期待されているところでございます。そのほかに、コンサルタント等を含めて、弁理士の活動範囲を広く規定しているところでございます。
松原委員 もちろん弁護士と一緒に行くべき案件もあるだろうけれども、弁理士だけで行ける案件もあると思うので、できればその辺もさらに踏み込んで検討していただきたいというのが趣旨でありますので、御理解いただきたいと思います。
 私は、同時に、やはり特許、また著作権に関しては、いわゆる実効性の問題というのが問われると思うわけであります。
 今中国と日本が非常に経済的にライバル関係でやっている中で、特に中小企業に関しては、中小企業同士の競争力を比較すると、日本の中小企業というのはまじめにそういったものを守って、海賊版じゃないものを使っているわけですよ。そうすると、いろいろなソフトを入れるにしても、物すごいお金が、やはり製品をつくる上でその負荷、いわゆるコストとして中に出てくる。
 ところが、そうでない場所においては、今言ったように海賊版で対応しているから、コストがはるかに安くなるわけですよ。ただでさえ人件費が高い上に、コストが、片っ方は海賊版を使ってただでやって、片っ方は海賊版じゃなくてきちっと払っている。
 そういったときに必要なのは、こういう模倣品を含めて、やはり対抗措置をきちっとやるのかどうか。それは所管は、関税というのが昔あったんだけれども、スーパー三〇一条という、アメリカはそういうのもやっているわけだけれども、やはりそういうきちっとした対立軸をつくれるのかどうかというのが一つ、これをつくってほしいというのが一つ。
 それと、日本国内に入るのに対して、それを防ぐだけじゃなくて、場合によったら世界のWTOに加盟している国々と連動して、そういうのはほかの国にも水際で入れませんよというぐらいの決然としたことをしていかないと、やはりそういう部分で今の我々の近くの中小企業は大変苦難しているわけであります。こういったことについて、大臣の御所見をお伺いいたします。
平沼国務大臣 大変重要な御指摘だと思っています。
 中国等の侵害国に対する模倣品対策につきましては、民間企業における取り組みに加えまして、政府といたしましてもさまざまな通商協議の機会等も利用しつつ、WTOのTRIPsといった国際条約において認められた権利を最大限に行使して、侵害国に対し権利保護強化のための強力な働きかけを行っているところであります。
 また一方、中国からの特許権の侵害品の我が国への流入を防止するためには、国境措置の改善も非常に重要でございまして、知的財産戦略大綱におきましても、二〇〇四年度までに完全な所要の手続を講ずる、こういうふうにされております。
 従来から、特許権の侵害品については、麻薬あるいは武器等と同様に輸入禁制品として輸入が禁じられているところでございます。経済産業省といたしましては、国境措置の一層の強化に向けて、特許等の権利者自身の関与を高めまして、欧米に比しても遜色のない、安価で簡易で、迅速、実効的な輸入差しとめ制度を構築すべく今関係省庁と詰めているところでございまして、こういった対策を強力にやっていかなければならない、このように思っております。
松原委員 そして、アメリカでは簡易な手続のスモールエンティティーというような制度があるというふうに聞いているわけでありますが、こういったものも、やはり向こうが取り入れているものはそれを上回るものを、日本は知的財産、さっき言った意味で後進していますから、やらなきゃいかぬ。そういった意味で、このスモールエンティティーのような制度を導入すべきというふうに思いますが、これについての御所見をお伺いいたします。
太田政府参考人 先生御指摘のように、アメリカでは、一部技術分野、これはバイオテクノロジー関連に限りまして、小企業、スモールエンティティーの出願について、申請とともに所定の手数料を支払うことにより、優先的に審査着手を行う仕組みがあると聞いております。
 一方、我が国特許制度でございますが、平成十二年七月より、中小企業の出願につきましても、先行技術の開示及び対比説明を伴う申請手続があった場合には、無料で他の出願に優先して審査を行ういわゆる早期審査制度の拡充を行っております。
 これを利用されますと、大体三カ月から四カ月で、審査期間待ちが非常に短縮されて、非常に効果的だと我々は考えているところでございます。この普及徹底を図っていきたいと思っております。
松原委員 ぜひ、普及徹底を図りながら実効性のあるものにしていただきたいというふうに思うわけであります。
 そもそも、特許を出す場合に、これは特許として認めるかどうか、ストライクゾーンというのがあるわけであります。私は、この際申し上げたいことは、さっき田中筆頭理事の発言にもありましたが、そういったストライクゾーンがどうもアメリカの方が広い。日本の場合は自然云々というのが入っている、こういうふうな話がありましたが、私は、このストライクゾーンも、世界で最も広いストライクゾーンを設定するべきだと思うんですよ。
 期間の短縮化、ストライクゾーンの世界最大の、日本はここまでストライクゾーンだというぐらいにして、日本の企業からのそれを上げていくべきだ。もちろん、後でそれは訴訟等もあるというふうに聞いていますが、それでも私は、それをやることが日本にとってメリットがあるというふうに思っておりまして、このことについてちょっと御所見をお伺いいたします。
太田政府参考人 ストライクゾーンという御指摘がございました。
 現時点におきまして我が国の、専門用語でいいますと補正制度でございますが、この運用がアメリカやヨーロッパに比べてやや硬直的なのではないかという御指摘があることは十分承知しております。こうした御指摘を踏まえまして、補正制度の運用につきましても、現在、産業構造審議会知的財産政策部会の場で検討を行っているところでございます。なるべく早く結論を出したいと思っております。
松原委員 要するに、そういう意味で、特にバイオとかいわゆるITの先端の分野においてはストライクゾーンを広げておくということが僕は大事だろうというふうに思っているわけでありまして、私は、やはり産学官の連動というのが今一番大事だと思うんですよ。
 特に、所管する現場の皆さんが、お役人の意識ではなく、一緒になって、おれも一緒に汗をかくから何とかしてこれを特許にしよう、こういう前向きな意識でやるということが実は大事でありまして、お役人が机の前で踏ん反り返っているような感じで、ちょっとこれはおかしなところがあるからまたもう一回出し直して、時間をかけてやりましょうみたいな、そういう話ではだめだと私は思うんですよ。
 そういった意味では、最後に大臣の決意を聞く前に、担当の、現場の思いとして、これからはもっとサービス精神に努めて、どんどんと特許を出すように私は頑張るという決意をひとつ聞かせてくださいよ。
太田政府参考人 知的財産をまさに戦略的に活用することが産業競争力の強化につながると思っております。私ども特許庁も、まさに、単に審査をするだけではなくて、産業政策的な観点も含めて、ユーザーフレンドリーな考え方に基づきまして特許行政を行っていきたいと考えております。
松原委員 ユーザーフレンドリーでない部分の話が聞こえたらすぐにそれは言いますから、きちっと徹底して日本の、だから、硬直した役人の意識じゃないと思うけれども、まさに坂の上の雲の時代のああいう意識で、殖産興業の意識で、一緒になってやるんだ、八幡製鉄所を最初につくったように、そういう意識でやってほしいということであります。
 最後に、こういった全般についての大臣の決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
平沼国務大臣 質疑を通じて大変有意義な御指摘をいただきました。この知的財産、この戦略というのは日本にとって本当に大切なことでございますので、御指摘を踏まえて全力で頑張ってまいりたい、このように思っております。
 ありがとうございました。
松原委員 以上で終わります。ありがとうございます。
村田委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 最初に、この法案の主務大臣についてお伺いをしたいと思います。
 この知的財産基本法は、準備室が内閣府に置かれるなど、内閣府が中心になって進めてまいりました。当然、審議に際しては総理または官房長官が当たられると思っていたわけでありますけれども、本会議での趣旨説明及び本委員会での答弁に関しては経済産業大臣が担当しておられます。これがなぜなのかというのが第一問であります。
 本法案で知的財産の定義については、いわゆる工業所有権から著作権など一定の広がりがあるものも規定しております。現在の政府の縦割りの所管からいえば、例えば、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるものなど、これは経済産業大臣の所管を超える部分も含まれているんじゃないか、平沼大臣の人となりは別にして、知的財産という広い概念といいますか、省庁横断的なテーマについて審議するものであり、少なくとも官房長官が答弁すべきじゃないかということがまず第一の質問ですが、なぜ経済産業大臣がこれを答弁されるのか、まずお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 この法律は、国が行う基本的な施策として、大学等における研究開発の推進、あるいは特許権等の権利の付与の迅速化、訴訟手続の充実及び迅速化、さらには、国内及び国外における権利侵害への措置を規定するなど、関係する省庁が御指摘のように非常に多岐にわたっているわけであります。
 このため、政府全体をたばねる内閣官房において本法案を策定することになったわけでございますけれども、この法律は、国全体で知的財産の創造、そしてその保護及びその活用に向けて取り組むべき基本的な施策を規定したものであることから、特定の主務大臣というものが定められていないわけであります。
 また、本法案は、我が国の産業の国際競争力の強化、そして持続的発展に寄与することを目的とするものであることから、本年の十月十八日の閣議の場で、国会対応については私経済産業大臣がしてほしい、総理大臣から私にそういう依頼がございました。
 私としては、そういった一つの経緯、そういった考え方に基づいて、本法案の担当大臣として、そして経済産業副大臣、政務官等とも協力をしながらその責務を全うしたい、このように思っておるところでございます。
大森委員 御答弁にもありましたように、本法案の最大の目的が、我が国産業の国際競争力の強化ということにある、だから経済産業大臣が主答弁大臣となるんだというお話でありますけれども、確かに目的にもそういうぐあいに規定をされております。
 さらに、我が国産業の国際競争力の強化だけじゃなくて、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出、こういう全体の流れから見たら、知的財産といっても、これはかなり特化されているんじゃないか。つまり、その中心がいわゆる工業所有権、著作権に関する部分も、商業化の観点からのデジタルコンテンツやデザインなど、いわゆる商売になるかどうかということが中心であって、著作権全般の創造あるいはその保護という課題はこの法案の視野から結局外れてしまうんじゃないかということに今の大臣の答弁からもなると思うんですが、その点、いかがでしょうか。
高市副大臣 例えば、発明ですとかそれから商標、著作物その他のすべてを含む概念としての知的財産といったものというのは、従来、個別の法律で定義されていたものだと思います。
 今回、この法律案によって、知的財産とは何かということを割と具体的に定義していると思いますが、この趣旨は、この法律案では二章に基本的な施策というものが書いてあります。国が責任を持ってこういったことを行っていくんだという施策を書いているものですから、その施策の対象となるものをまず明らかにしたいということでかなり具体的に書いていると思います、例示も含めて。
 それから、かなり限定されているんじゃないかというような御指摘でしたけれども、むしろ、この定義をするに当たっては、知的財産の創造、保護、活用の促進の対象ということですから、できるだけ幅広いものを目指して定められたものと、その配慮をしたと考えております。
大森委員 そうしますと、例えば、人間の創造的活動により生み出されるものということでは、一般的に芸術文化があるわけなんですが、文化芸術振興基本法があります。あわせて、科学技術基本法も最近つくられました。これらの基本法とこの今回の基本法との関連、あるいは異同あるいはすみ分け、これはどのように認識をされているんでしょうか。
平井政府参考人 御指摘のように、それぞれ芸術文化等各般の法律等がございます。ただ、この知的財産という、ある意味では財産権という経済上の権利、利益等に着目して経済活性化を図っていくという観点からの大きな枠組みでございますので、法律の対象としては重複しておりますが、その法律の目標、施策については重複がないという分類で考えております。
大森委員 目標にかかわって申し上げますと、この法律で、知的財産の創造に重要な役割を果たす「大学等」、これはたびたび出てくるわけなんですが、その中身というのが、「大学及び高等専門学校、大学共同利用機関、独立行政法人であって試験研究に関する業務を行うもの、特殊法人であって研究開発を目的とするもの」、さらに「国及び地方公共団体の試験研究機関」と規定されている。そういう意味ではかなりこれは限定されているわけですね。つまり、この法案が対象としているのは、人文科学ではなく自然科学をターゲットにした施策である。
 そういう産業競争力強化あるいは付加価値の創出、こういう目的規定とあわせて考えますと、この法案は、知的財産基本法と呼ぶよりは、知的財産の利用による産業競争力強化法というのがこれは適切な名称じゃないか、そういうぐあいに考えますけれども、大臣、いかがですか、その点は。
平沼国務大臣 それは一つの御指摘だと思っておりますけれども、私どもとしては、この国にとって、知的財産というものを戦略として位置づけることによってそれを推進することが経済の発展そして日本のためにいいことである、そういう形で私どもとしては基本法とさせていただいているわけでございます。
 産業競争力強化という側面だけではなくて、やはり全般的な知的財産というものを高めていく、そういう中で知的財産のところに焦点を当ててやる、こういう形で、決して限定的な、今おっしゃったような産業競争力を高める、こういうことに限定されるものではない、私はそのように認識しております。
大森委員 私は、この法案の目的に掲げてある、明記されている点からいっても、これまで申し上げた点からいっても、これが直接人類社会の進歩発展に貢献するそのためのものであるというぐあいには、この法案全体を通しても、あるいは答弁全体を伺っても理解できないということを申し上げておきたいと思います。
 この法律については、基本法ですので、個別の、創造、保護、活用についての施策ということは今後になるわけでありますけれども、そのために、今後、戦略本部の設置、あるいは推進本部が推進計画をつくるということになっているわけなんですが、この戦略本部は何名で構成され、だれが任命をするのか、特に、有識者というのはどんな分野から何名任命されるか、さらに国会及び国民との関係はどうなるのか、この点、お聞きをしたいと思います。
高市副大臣 この法律によりまして設置される知的財産戦略本部でございますけれども、これは総理大臣を本部長といたしまして、すべての閣僚及び知的財産に関しすぐれた識見を有する民間有識者から構成されるということで、構成はそういった方々でございます。このうち、民間有識者たる本部員の任命でございますけれども、これは、人数も含めまして、この法律成立後に決定されることになります。
 民間有識者を本部員とする趣旨でございますけれども、やはり知的財産というものの源であります大学などの関係者には絶対入っていただかなければいけないですし、あと、知的財産保護において非常に重要な役割を担う法曹界の関係者、それから、知的財産の効果的な活用で経済発展をもたらすという意味では事業者といった専門的な知見を生かしていきたいということで、民間の有識者というのは、今申し上げましたような分野から想定しているようでございます。
 国民との関係ということでございますけれども、まずは、民間の有識者の方々が本部員として入られるということで、国民の代表的な方はそこに入ってこられるということと、それから、推進計画を定めていくに当たっては、パブリックコメントの募集をすることとなっております。
 それで、推進計画が策定されるまでにまずパブリックコメントを行うわけですけれども、策定されてしまった後のことですが、策定された後も、インターネットの利用ですとか、広報紙も通じてですけれども、速やかに公表して、これに対する御意見をまたいただくことになります。
 そうしますと、この推進計画というものは一応三年間というタームではございますが、毎年推進計画の検討、チェックを行っていくわけでございますので、このときに、その広報に対して寄せられた御意見を反映させていこう、今の段階ではこういうことになっております。
大森委員 国会との関係については述べられなかったわけなんですが、やはり国会とは有機的な関係、無関係で、そういうパブリックコメント、一定の聴取等はされるにしても、国民生活の実態あるいは経済の実態からかけ離れたものになる、そういう危険性、おそれもあるのではないかと思います。
 この推進計画というのは、当然、知的財産戦略大綱を具体化するという理解でよろしいんでしょうか。
平沼国務大臣 戦略大綱の中で、この基本法というものをやはり早期に成立をさせるべきだ、こういう御意見があり、そして今お願いをしているところでございまして、もちろん大綱に書かれていることは生かしていかなければならない、このように思っています。
大森委員 そこで、戦略大綱のこの背景となっている知的財産をめぐる現状認識についてお聞きをしたいと思います。
 戦略大綱は、現状を「情報創造の時代」と位置づけて、「経済・社会のシステムを、加工組立型・大量生産型の従来のものづくりに最適化したシステムから、付加価値の高い無形資産の創造にも適応したシステムへと変容させていくことが求められている。」と述べて、第一章の「現状と課題」の部分では、「我が国産業の国際競争力低下への懸念が急速に高まっている。」とした上で、その中でも、「自動車、精密機器分野に見られるように、独自技術を武器に世界市場で高いシェアを獲得している製品・サービスを提供している企業も少なくない。」と言って、知的財産立国の必要性を強調しているわけですね。
 戦略大綱がここで指摘している自動車や精密機器の分野、まさにこれは、戦略大綱が、変容させるべきと指摘している加工組み立て型物づくり産業の最たるものであると思うのですね。戦後、日本の半世紀以上にわたる産業の歴史の中で、まさにこの部分を最重点に振興策をとってきた、そういう部分であると思うのです。
 競争力の低下というのは、我が国の産業、特に製造業が、低廉な労働コストを求めて生産拠点を国内から海外に移動させる、そういう動きとまさに時を同じくして起こっているわけです。知的創造のサイクルも物づくりのフィールドを破壊させたままで、こういう知的創造サイクル、そういうものは期待できないんじゃないか、完成させることはできないんじゃないかと思うのです。産業空洞化、中国等の追い上げがある、物づくりが行き詰まったから今度は高付加価値の知的財産立国でいこうなどというのは、極めて私は短絡的な、物事の本質を見ない対応ではないかと思うのです。
 今、この大綱にも出てくる自動車にしろあるいは精密機器にしろ、物づくり、製造業、その確固たる基盤があったからこそ知的な大きな成果、世界にも誇るような成果を得ることができたんだという辺が、この間の大きな教訓といいますか、この点をしっかり見なくちゃいけないと思うのですね。ですから、仮に物づくりをしないで知的ライセンスの収入だけで日本が今後いこうというのは、もしこういうのが仮にあるとすれば、これはもう亡国の道にもつながってくるんじゃないかということを強く感ずるわけであります。
 知的財産立国を本当に実現させるためにも、無秩序な大企業の海外進出を抑えるということが不可欠じゃないか。企業のリストラとか、雇用と地域経済を守る、国民の懐を本当に暖めていく、そういうことをやってこそ知的な成果を期待できる、展望を切り開くことができるんじゃないかと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 日本の戦後、世界が瞠目する発展を遂げてきた物づくり、今、自動車あるいは精密機械、こういうふうにおっしゃいましたけれども、決してそれを捨て去るということではございません。これは相変わらず世界の中でトップの地位を維持しております。あるいは家電製品も、やはり物づくりの技術というのは潜在力があります。
 そういったところも高めつつ、そして例えば、新しく出てくる、これから大きく伸びるバイオテクノロジーですとかの先端技術分野、これは今欧米と激しい競争をする一方で、今おっしゃったように低廉な労働コストを背景としたアジア諸国の急速な追い上げを受けているわけでありまして、そういう厳しい経済情勢にあることにかんがみますと、今築いたものの上に、さらに今後はこの知的財産を重視して、知的財産の創造と活用によって活力ある経済社会を実現して国際競争力を高めるということは、我が国の経済を中長期的に見れば絶対必要なことだと思っておりまして、これをしっかりやることによって御指摘の空洞化も防げる、私はこういうふうに思っておりまして、これは、政府を挙げて戦略的にそういった認識で取り組むためのものである、このように思っております。
大森委員 もともとカルチャー、文化自体が耕すということの中から生まれているわけでして、ぜひ、物づくりあるいは製造業、そういう基盤があってこそ知的な成果を本当につくることができるんだ、そういう視点を決して忘れてはならない。そういう意味でも、企業の社会的責任をきちんと果たさせていくということは極めて重要ではないかと思います。
 具体的な点で聞きますが、先ほど来議論もされておりますが、法案の「第二章 基本的施策」の一つ、第十四条で、「権利の付与の迅速化等」として、「審査体制の整備その他必要な施策を講ずる」、こうなっております。戦略大綱の中で、例えば、「第二章 基本的方向」「保護戦略」の中で、「審査期間を国際的な水準とすることが是非とも必要」「最低限、国際的に見て遜色のない迅速かつ的確な審査の実施に向けた取組を推進することとし、二〇〇二年度中に二〇〇五年度までの計画を作成する」、こういうぐあいになっております。
 この問題は、私は先国会でも取り上げて、先ほどの大臣の答弁にもありましたが、審査官の増員に苦しい中で最大限の努力をするという答弁をいただきました。あのときも指摘をしたわけですが、例えば、そういう最大限の努力をしているにしては、九八年から二〇〇二年まで四年間でわずか二十七名しかふえていないんですね。一方で、アメリカは、九八年から、これは二年間ですけれども、二年間で五百四十九人ふえている。欧州の方は、二年間で五百五十一人ふえているわけですね。日本の方は四年間でわずか二十七人、欧州、アメリカは二年間で五百名以上の増員と、余りにも大きな違いが明らかになったわけであります。
 今度、法案で、今回の戦略大綱でこういうことがうたわれたということは、こうした状態を抜本的に改めて、欧米並みに審査官をふやすということなのか、明らかにしていただきたいと思います。
 あわせて、これは最大限の努力をするという答弁をなさっているわけですが、審査期間の短縮とかあるいは審査官の増員とか、この二〇〇五年度までの計画の中で数値目標としてこれを明らかにすべきじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
平沼国務大臣 十四条に関して、権利付与の迅速化、このことにお触れになられました。
 我が国の特許出願件数というのは世界最多でございまして、近年においても毎年三%程度の増加を続けているわけであります。また、審査請求される出願の全出願に占める割合も年々高まっている、そういう背景がございます。このため、こうした傾向が今後も持続すると仮定いたしますと、出願の増加と審査請求される割合の増加とが相まって審査請求件数が一層増加される、このように予測されます。
 加えて、昨年十月より施行された審査請求期間の短縮の影響も勘案すれば、審査請求を行う企業等の行動にもよりますけれども、先ほどの仮定のもとで試算すれば、三年後の二〇〇五年には審査請求のピークを迎えまして、その前後数年間にわたって審査請求件数は極めて高い水準になる、こういう背景がある、それは御承知のとおりだと思っています。
 知的財産立国の実現には、すぐれた技術を事業化のタイミングを逃がさずに権利化しまして、これを保護、活用するプロパテント政策がやはり不可欠なことでありまして、このため、知的財産基本法第十四条において、「所要の手続の迅速かつ的確な実施を可能とする審査体制の整備その他必要な施策を講ずるもの」、こういうふうになっているわけでございます。
 今後、今申し上げたように審査請求期間の短縮に伴う審査請求件数の急増が予想される中で、特許審査期間の長期化が懸念されます。この状況に対処するために、特に審査請求件数が増加すると予測される二〇〇三年度から二〇〇五年度にわたる特許戦略計画を今年度中に策定し、より一層の効率化を図って、必要な審査官の確保、これは先ほど数字をお示しになりましたけれども、二〇〇一年度では、少ない、こう御指摘があるかもしれませんが十六名、二〇〇二年度ではプラス二十二名、二〇〇三年度は四十二名の要求をしておりまして、二〇〇五年まで私どもでできる限り努力をしてこの増員を図っていきたい、こう思っております。
 それからもう一方、やはりアウトソーシング、そういった導入ですとか、先ほども触れましたけれども、OBの皆様方のパワーを活用する、審査補助職員の活用による審査体制の整備にも全力を挙げていかなければいけない。例えば外注の予算、こういうことでは、具体的な数字を申し上げますと、二〇〇〇年度は百十億円、二〇〇一年度はそれを百四十億円にしまして、さらに二〇〇二年度にはそれを百六十億円にする、こういう形で充実を図らなければいかぬと思っています。
 これに加えまして、啓発等を通じて制度を利用するユーザーの審査の迅速化への協力を求めるなど、国際的に遜色のない、迅速かつ的確な審査を目指して、総合的な取り組みを進めていかなければならない、こういうことでございます。
 いずれにいたしましても、そういう意味では大変厳しい状況になりますし、また、特許庁の職員の皆様方も大変過重な労働の中で頑張っていただいている、そういうことを考えていけば、厳しい中ですけれども、私は、人員の確保を優先的に進めていかなければいけない、このように思っております。
大森委員 今の御答弁でも、それから戦略大綱の具体化の中でも、今後の整備体制の強化という点では、やはりアウトソーシング、外部発注が中心になっているわけですね。これは、前回の委員会でも指摘をしましたように、私、大変問題が多いと。特に特許権という、それを通じて排他的な独占権を保障するということからいえば、その審査の的確性が強く求められると思うのですね。そのことがこういう特許権あるいは排他的な独占権の保障ということへの信頼と社会的な合意をつくることになると思うのですね。それを安易に、審査官をふやさないでアウトソーシングだけ、あるいはOBだけということになれば、その原点があいまいになると思うのです。
 加えて、私も昨日、当局者の方から伺ったのですが、定量的にはまだ出されていないけれども、実際に、ではどちらがお金がかかるかという点でいえば、外部発注の方がお金はかかるということを証言されているわけです。
 であるならば、この問題になれば必ず定員法が出てくるわけでありますけれども、定員法の趣旨からいっても、もし審査官の方がお金がかからないということであれば、それは当然、知財の保護、またそういう趣旨にもつながるわけでありますから、思い切ってこの定員法の見直しを、これは先ほどもお話がありましたけれども、行って、思い切った審査官の増員とその数値目標をきちんと据えるべきだと私は思いますが、重ねてお答えをいただきたいと思います。
平沼国務大臣 大森先生から、前国会におきましても、この定員等の問題について、そしてアウトソーシングの問題についても御意見がございました。
 私どもは、この特許という、そういう権利を守ることが非常に重要な案件でございますから、アウトソーシングの場合についても、そこは十分その権利が守られるようなことを担保しなければならないと思っています。また、定員に関しましても、今大変厳しい中でやっておりますので、私どもとしては、今の中でできる限り努力をして、そしてこの定員の確保に努めていきたい、こういうふうに思っております。
 法律、定員法、こういうことをおっしゃいましたけれども、今やることは、この中で全力を挙げて少しでもふやしていく、こういう形で私ども頑張っていきたい、こういうふうに思っております。
大森委員 もう時間がなくなりましたので、最後に一問聞きたいと思いますが、法案第八条第二項、「発明者その他の創造的活動を行う者の適切な処遇の確保」というのが盛り込まれていまして、これは、特許法で言う職務発明規定を見直すということになるのでしょうか、また、著作権法の職務著作、法人著作の規定を見直して従業員の立場を強化することを意味するのかという点とあわせて、この間の議論の中で、財界関係者からは、特許法三十五条の職務発明規定について、第三項、第四項を削除して、会社と労働者が契約で決められるようにすべきだというような意見も出ているわけでありますけれども、こうした、従業員である発明者の権利を取り上げてしまうというような改悪はやるべきではない、これは知財保護の観点からもそういうことはすべきじゃないというぐあいに考えますけれども、この点のお考えを聞いて質問を終わりたいと思います。
太田政府参考人 大森先生から御指摘がございました現行特許法上の三十五条でございますが、職務発明規定は、発明は発明者の財産であるという原則のもと、発明者を保護し発明意欲を刺激するとともに、一方、その給与その他の資金的援助をなした使用者との間の利益を調整するための規定であると私ども理解しております。
 昨年五月に出されたいわゆるオリンパス光学事件の高裁判決において、使用者が支払った対価が相当額に満たない場合には、従業者は事後的に相当な対価を請求し得るとの判決が出たことをきっかけに、産業界から、一度定めた対価の額の安定性を損なう可能性があるとして、現行の職務発明規定の見直しの議論が提起されました。一方で、現行の規定を改定すると、発明者である従業者に不利に働くという議論も提起されているところでございます。
 経済産業省といたしましては、ことし九月に第一回を開催いたしました産業構造審議会の知的財産政策部会の小委員会におきまして、二〇〇二年度中に、企業における実態、従業者等の意識、各国の制度、実態等の調査を行うこととしております。
 その結果を踏まえて、発明者の研究開発へのインセンティブの確保、企業の特許管理コストやリスクの軽減、さらには我が国の産業競争力の強化等の観点から、社会環境の変化を踏まえつつ、改正の是非及び改正する場合にはその方向性について検討を行い、二〇〇三年度中に結論を得ることとしているところでございます。
大森委員 いずれにしろ、そういう従業者のつくり出した知的財産を経営者が一方的に取り上げてしまう、収奪してしまうような乱暴なやり方は絶対にやるべきではないということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
村田委員長 次回は、来る十二日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四分散会


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