衆議院

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第5号 平成14年11月12日(火曜日)

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平成十四年十一月十二日(火曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    小泉 龍司君
      佐藤 剛男君    中山 成彬君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      森  英介君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    生方 幸夫君
      小沢 鋭仁君    川端 達夫君
      北橋 健治君    中山 義活君
      松原  仁君    山田 敏雅君
      山村  健君    漆原 良夫君
      福島  豊君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      井上 喜一君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   参考人
   (東京大学大学院法学政治
   学研究科教授)      中山 信弘君
   参考人
   (社団法人日本経済団体連
   合会産業技術委員会知的財
   産部会長)
   (キヤノン株式会社顧問) 丸島 儀一君
   参考人
   (日本弁護士連合会知的財
   産政策推進本部事務局次長
   )
   (弁護士)        末吉  亙君
   参考人
   (日本弁理士会会長)
   (弁理士)        笹島富二雄君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十二日
 辞任         補欠選任
  佐藤 剛男君     金子 恭之君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     佐藤 剛男君
    ―――――――――――――
十一月十二日
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)
 独立行政法人原子力安全基盤機構法案(内閣提出第七一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 知的財産基本法案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、知的財産基本法案を議題といたします。
 本日は、参考人として、東京大学大学院法学政治学研究科教授中山信弘君、社団法人日本経済団体連合会産業技術委員会知的財産部会長・キヤノン株式会社顧問丸島儀一君、日本弁護士連合会知的財産政策推進本部事務局次長・弁護士末吉亙君、日本弁理士会会長・弁理士笹島富二雄君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず、中山参考人にお願いいたします。
中山参考人 東京大学の中山でございます。
 私は、知的財産戦略大綱の起草委員長を務めましたので、大綱で提唱しております知的財産基本法がこのような形で審議される運びとなりましたことを大変喜んでおります。
 知的財産制度の改革にはスピードが最も重要でございます。大綱が公表されて基本法の準備室が設置されてから三カ月余りという極めて短い時間でこのような基本法案ができ上がったということは、準備室の大変な御努力によるものと考えます。担当者に対しましては、心から敬意を表する次第でございます。
 大綱の基本的な理念は、この国の経済体制を物つくりから情報つくりに変換するということ、すなわち知恵の重視という点にございます。
 従来我が国が得意としてきた物つくり、すなわち、優秀で安い製品を大量に世界に供給するという体制は破綻しつつあります。これにかわる新体制、すなわち情報つくりに適した体制を早急に確立するという必要がありまして、そのためには、知的財産の重視、すなわち知財立国を目指すということが必要になってまいります。大綱は、そのための具体的なプランを提示しているわけでございます。
 情報化時代におきましても物つくりの重要性というのは変わらないわけでございますけれども、ただ、大綱が考えている社会における物つくりとは、物に情報を付加した高付加価値のものを指します。高付加価値製品の価値が高いのは、付加された高度の情報によるものでありまして、しかもその情報は侵害に対して極めて弱いという存在でございます。したがいまして、情報を強力に保護するという必要があるわけでございます。その情報を保護する法律が知的財産法ということになります。つまり、高付加価値の物づくりのためにも知財立国というものは必須であるということになるわけでございます。
 従来、知的財産というのは単なる財産権であると考えられておりましたけれども、ここに参りまして、知的財産制度を経済発展のための有力な手段の一つとして利用しようという考え方が優勢となりまして、それが知的財産戦略の戦略たるゆえんであると考えております。
 知的財産を重視する社会におきましては、新たな創造活動への大きな刺激が存在するということになりまして、それによりさらなる発展が生まれるという、いわゆる創造のスパイラル現象が発生することになるわけでございます。そのことは、我が国企業の国際競争力の強化にもつながると考えております。
 知的財産制度の強化というのは情報化時代の要請でありまして、この流れをプロパテントと呼んでいるわけでございます。この大綱を実施することによりまして、我が国もアメリカにおくれること約二十年でようやくプロパテント時代に突入をしたということが言えようかと思います。この傾向をさらに推し進めていくためには、この知的財産基本法を成立させ、基本法を今後の知的財産に関する政策の北極星とするということがぜひとも必要であると考えております。
 時間の関係で基本法の細かいことは一切省略いたしますけれども、基本法案の内容自体はほぼ大綱の線に沿っておりまして妥当なものであると評価しております。特に、国、地方公共団体、大学、事業者の責務、努力目標というものが基本法では定められておりまして、この問題は、単に官だけの問題ではなく、国を挙げての問題であるということを明らかにしているという点で意義があると考えております。
 大綱は、主として官の施策を中心に記載されております。民間企業の行動は各企業が自主的に行うべきものでありまして、民間企業がなすべきことにつきまして、大綱は細かいことを記述しておりません。しかし、実は、知的財産の活用に関しましては、制度のユーザーである企業の行動あるいは企業の意識というものが決定的に重要でございます。
 基本法の八条では、事業者の責務を努力目標として規定しております。基本法でこのように民間企業の行動について規定することには議論もあったと仄聞しておりますけれども、しかしながら、知財立国は官民一体となって努めなければならないということの象徴として、抽象的な規定ではありますけれども、この八条に規定したということは意義があると私は考えております。
 基本法でございますから、理念的な規定が多いというのは当然でございます。ただ、基本法の中で、実体的に最も重要なものは知的財産戦略本部の設置であろうと考えております。総理を本部長として全閣僚がメンバーとなるということでございますので、大変格の高い機関ということになっておりますけれども、この知的財産本部の今後の活動こそが、大綱に書かれておりますアクションプランが単なる絵にかいたもちに終わるのか、あるいはしっかりと実現できるのかというかぎを握っていると考えております。
 知財本部に関する規定といたしましては、第四章のような形になるということは当然、あるいはやむを得ないと思いますけれども、問題は、本部の具体的な活動内容でございます。常勤の職員を設けるとか、あるいは民間人もその職員に登用する等々の措置を講じなければ実効性はないと考えております。基本法が成立した後の問題ではございますけれども、この点については十分な気配りをしてほしいと考えております。
 知的財産基本法は、知的財産制度全般にわたる基本的な方向を定めた我が国で最初の画期的な法でございます。今までは各官庁ごとに別々に行われていた、ばらばらに行われていた知的財産政策をこのように統一的にとらえるということは極めて大きな意義があると考えております。
 この基本法を柱にいたしまして、今後の日本の知的財産戦略というものが大きく変わり、我が国が二十一世紀における世界の知的財産制度のリーダーとなるということを期待しております。
 以上でございます。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、丸島参考人にお願いいたします。
丸島参考人 おはようございます。丸島でございます。
 それでは、貴重なお時間をいただいて、私の考えていることを申し上げさせていただきます。
 今中山先生からもお話がありましたように、基本法を早く成立させて、本部並びに知的財産の戦略計画を具体的に実行していただきたいというのも産業界のお願いでございます。そのとき、産業界としては、これからの戦略の中に知的財産戦略を最大に活用していこうという気持ちでおります。
 そのとき大事に思っておりますのが、創造性の高い基本的な発明と、それから、それを実際に事業に結びつけるいわゆる改良発明というんでしょうか、この両方が大事だということでございます。とかく創造性の高い発明だけに焦点が行きがちでございますけれども、むしろ改良技術が日本の特徴になっていると思います。これを裂くようなことがあってはいけないと考えております。
 それからもう一つ、最近の風潮として、資産的財産の活用ということで、特許権をお金にかえるという風潮が随分ございますけれども、本来は、やはり企業の事業を強くするために活用すべきということを強く思っております。そういう形で、企業としても知的財産戦略を事業戦略の中に取り込もうという姿勢でおりますが、今回、政府の方にも、企業の国際競争力の強化という視点から環境整備をお願いしたい。
 大綱で述べられた大半の項目がその環境整備に向けられる項目と理解しておりますが、この基本法を成立させて知的財産戦略計画を立てるときにぜひ考えていただきたいのは、産業の競争力の強化ということの理念を最も重視する政策を立てていただきたい、この点でございます。
 なぜかと申しますと、大綱の中にも示されたいろいろな計画項目がございますけれども、とかくすると、各項目別に審議されて、全体像から見るとバランスがとれない方向に行く可能性もあります。そういう意味で、ぜひこの戦略本部が実行力を持って、全体の方向性を間違えないように、そのときに産業の競争力の強化ということを絶えず理念として強くお考えいただきたいというふうに考えております。
 まず、具体的な問題として、競争力強化への知的財産分野の環境整備としては、まず、日本の中で企業が研究開発をしたいという気持ちが起こるような環境整備が必要だと思います。これはどういうことかといえば、投資に見合ったリターンが得られるような環境整備だということだと思います。一方、開発成果が効率的に行えるような環境も必要だと思います。この両方のバランスのとれた環境整備がぜひ必要だというふうに思っております。このことが国富につながることだと私は思います。
 もし、この環境整備が十分に整っていないとすると、企業の戦略からすれば、生き残りのために海外に出ていってしまう、これでは国富につながらない。やはり、日本の国内で研究開発を行いたいという気持ちを起こさせるような環境をぜひつくっていただきたい、こういうことでございます。
 どういうことかといいますと、まず、大綱にも述べられておりましたように、創造戦略それから保護戦略、活用戦略、あるいは人材の件等も書いてございますけれども、創造戦略として今一番産業界でもお願いしたいのは、大学における創造的役割ですね。これは、人の教育あるいは基礎的な研究にプラスして、産業寄りの研究開発もぜひお願いしたい。これは、企業自身が自前ですべてを開発できない、そういう状況にありますので、産業競争力を高めるためには産学連携ということが非常に大事でございます。そういうことで、産学連携が順調にいくような仕組みをぜひお考えいただきたい。そのためには、先生方の発明が基本特許として成立するような仕組みをまず考えていただきたいというのが第一点でございます。
 第二点は、産学連携がしやすいように、先生方の発明を機関帰属にしていただく。その前提としては、日本版バイ・ドール法を積極的に活用できるような仕組みを考えていただきたい、こういうことでございます。
 それから、第二点の活用という視点から見た場合、侵害し得という制度をぜひなくしていただきたい。侵害しては大変だという環境をつくっていただきたいと思うんです。そのために、まず、侵害したら侵害物品が明らかにされてしまうということが大事だと思います。それから、損害賠償は、実損ということは、理屈の上では侵害した方が得だという理屈になるわけですので、実損以上の損害を何か得られるという仕組みがないと、尊重といいますか、知的財産を尊重するという機運が出てこないんじゃないかという気もします。そういう意味で、損害賠償は、実損以上の損害賠償を得られるという仕組み。
 それからもう一つは、商品寿命といいますか、最近は事業が大分期間が短くなっております。特許権を発動するのにやはり早期の差しとめ請求というのが必要になると思います。その差しとめ請求が事業分野によっては早期に適用できるようなことをぜひお願いしたいと思います。
 この三点が整ったときに特許権を尊重するという機運が出まして、むしろ裁判所に行くよりは事前の調整がとれるというふうに私は理解しております。
 それからもう一つ、今急いで早急に事を進めるということが盛んに言われているんですが、それも大変結構だと思います。ただ、早急にする余りに内容がおろそかになってはいけないと私は思っております。そういう意味で、早急と内容の充実ということもぜひお考えいただきたい。
 これは、裁判における裁判所の人的拡充を前提として、ぜひ裁判の仕組みの中で侵害訴訟の一回的解決、あるいは先ほど言いました早期に侵害訴訟を終結するための証拠収集の拡充、このとき問題になるであろう裁判の公開というのでしょうか、これに知的財産上の営業秘密がかかわってきますので、裁判の公開という解釈には当たらないということを明確にしていただきたいと思っております。
 それから、時間もないのでちょっと速目に申し上げます。
 もう一つの、研究開発が効率的に行えるような環境整備の中には判決の予見性というのが非常に大事だと思います。そういう意味で、東京高裁も専属管轄にしていただきたい。なおかつ、アメリカのCAFCのように、判決の統一といいますか、判断の統一をしていただけるような仕組みをぜひお考えいただきたい。これは、権利者ではない、権利を尊重する立場からしますと、これが、予見性がないということは研究開発の非常にロスになります。これは国益に相当影響するだろうと思っております。
 それから、職務発明の問題、これも現在の法律解釈では、裁判所で判断していただかないと相当な対価というのは決められないということになっております。これでは、現在の知的財産の活用の慣習からしまして、企業では管理できないということも困っておる事態でございます。そういう意味で、法律で対価を決めるのではなくて、企業と発明者の契約で決められるような仕組みをぜひお考えいただきたいと思っております。
 それから、日本の制度自身も、改革するのも大事でございますが、もう一方では国際的なバランスというんですか、ハーモナイズといいますか、これが非常に大事だと思います。発展途上国間のバランス、それから先進国とのバランス、いわゆる知的財産制度というのは国際活動においてやはりリターンが得られるような仕組みでないといけないということで、海外における模倣品の問題、これも大事な問題でございます。それから、海外から日本に来る模倣品の水際対策、これも非常に大切なものでございます。現在の仕組み以上に、特許権の侵害製品に対しても水際でとめられるようなそういう仕組みをぜひお考えいただきたいと思っております。
 それからもう一つ、ベンチャーの育成ということで、いろいろ施策はとられておりますけれども、特許の流通の過程で権利者が破産するということによって、ライセンシーの地位が非常に不安定である。これを安定するような仕組みをぜひお考えいただきたい。
 時間も参りましたので、ここで終わります。ありがとうございました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、末吉参考人にお願いいたします。
末吉参考人 おはようございます。
 私は、日本弁護士連合会知的財産政策推進本部事務局の次長を務めております弁護士の末吉亙と申します。よろしくお願いいたします。日本弁護士連合会の推薦によりまして、参考人として意見を述べさせていただきます。
 ことし二〇〇二年は、知的財産の本格的な時代を我が国も迎えたのではないかと思います。
 振り返ってみますと、ことし二〇〇二年二月四日、第百五十四回国会における小泉首相の施政方針演説におきまして、初めて知的財産というものが国家戦略として位置づけられました。これを受けまして政府は、知的財産戦略会議を設置しまして、この知的財産戦略会議は、知的財産戦略大綱という知的財産の基本戦略及びそのスケジュールを決定し、表明しました。これは二〇〇二年の七月三日のことでございます。
 さらに、ここ衆議院におきまして、知的財産基本法を御審議いただくことになっているわけでございます。これは大変画期的なことではないかというふうに考えます。昨年二〇〇一年にはここまでのことを予測するということはできなかったのではないかというふうに思っております。知的財産を手がけてきた弁護士の一人といたしまして、私はこの動きを大歓迎しております。
 と同時に、これは千載一遇のチャンスではないかというふうに考えておる次第でございます。なぜならば、知的財産は、これまで国家戦略として検討されたことはなかった、また、それほどの脚光を浴びたということもなかったのではないかと思います。今回、この委員会を含めまして、英知を集めて機動的、集中的に検討され、知的財産制度が総合的、戦略的に整備されることになったのはまさにチャンスであるというふうに考えております。
 私ども日本弁護士連合会も、今回のこの政府の動きには機敏に対応いたしました。ことしの八月二日でございますが、日本弁護士連合会に知的財産政策推進本部、この本部長は日弁連会長の本林徹でございますが、この本部が発足いたしました。
 この知財本部設立の趣旨でございますが、日本を取り巻く知的財産をめぐる諸問題が、高度な政治あるいは経済問題であるのみならず、グローバルに発展する情報社会におきまして、司法分野にとっても極めて重要な課題であるということを私ども日弁連が再認識したため設立されたものでございます。
 ここで、この司法分野での課題というのは、具体的には三点あると認識しております。
 第一に、法曹養成でございます。これは弁護士であるとか裁判官の養成でございます。法科大学院、これはロースクールと申しますが、ここでの知財教育、あるいは弁護士の研修の強化などによりまして、知的財産分野を担う質、量ともに豊かな裁判官であるとか弁護士を養成するという課題でございます。
 第二に、法律の整備でございます。知的財産分野におきまして、国際的水準をリードするような知財立法を整備するという課題でございます。日弁連も、このためには積極的に提言などの活動をする予定でございます。
 第三に、司法制度改革です。知的財産をめぐる紛争の予防と早期の解決のための司法インフラの整備という課題でございます。日弁連も、司法制度改革に積極的に取り組んでおります。
 ところで、知的財産戦略大綱は、極めて短期間の検討期間しか与えられなかったにもかかわらず、広範囲にわたる戦略についての検討を踏まえた大変な御努力によって起草された大がかりなものでございます。
 この知的財産戦略大綱の特色としては、第一に、この網羅的戦略性を挙げることができます。
 第二に、知的財産サイクルの確立を目標にしております。すなわち創造、保護、活用及び人的基盤の充実というサイクルを目標として掲げておるわけでございます。
 第三に、権利の強化に伴う弊害にも着目しております。すなわち、例えば競争政策も重要であるという点、あるいは表現の自由などの重視などでございます。
 第四に、具体的な行動計画でございます。二〇〇五年度までをめどとする集中的、計画的な具体的行動計画を示しております。
 最後、第五に、知的財産基本法の制定、知的財産戦略本部の設置及び知的財産戦略計画の策定までも予定をしているという点でございます。ここに知的財産基本法の背景がございます。
 このような特色を持つ知的財産戦略大綱の精神に基づきまして、今後、具体的な検討作業が適切かつ迅速に進行するということが何よりも重要であります。この点は、中山参考人あるいは丸島参考人と私も全く同意見でございます。
 知的財産戦略大綱の具体的行動計画の具体的な担い手は、総合科学技術会議、文部科学省、経済産業省、総務省、財務省、法務省、司法制度改革推進本部、農林水産省、警察庁、外務省、厚生労働省、金融庁、内閣官房など多岐にわたっております。
 このうち、既に進行しております作業の延長線上での実施が予定される事項につきましては、従前の作業の延長線の中での計画実施が想定されております。例えば、法制審議会におきます民事訴訟法改正作業、あるいは司法制度改革推進本部の十の検討会における検討作業などがございます。
 ちなみに、法科大学院での知財教育あるいは法曹研修の強化などによります知的財産分野を担う質、量ともに豊かな法曹の育成につきましては、司法制度改革推進本部で精力的に検討されるというふうに私ども期待をしております。知財ロースクールなど、重要な論点を含んでおります。
 他方、新たに検討の場が設けられたものとしましては、司法制度改革推進本部に新しく知的財産訴訟検討会というものがこの十月に設けられております。
 日本弁護士連合会といたしましては、これまでどおり、法制審議会、司法制度改革推進本部検討会などにおきまして積極的に関与をしてまいるとともに、検討会あるいは政府その他の諸機関に対しましては、提言を行うことはもとより、知的財産を扱う弁護士の数を画期的に増加させる諸方策の検討を含めまして、さらなる積極的な活動をすることを予定しております。なかんずく、司法制度改革推進本部に新たに設置されました知的財産訴訟検討会で検討される事項につきましては、特に検討、対応が急務でございます。
 以上を踏まえまして、この際、三点要望を差し上げたいと思います。
 まず第一に、知的財産基本法の規定いたします推進計画、あるいは知的財産戦略本部、これは知的財産戦略大綱の精神に基づきまして、適切かつ迅速に計画が実施されることを促進するためのものにしていただきたいという点でございます。日弁連も政策立案に積極的に協力できる体制を準備しております。
 第二に、国会におかれましては、今後も、知的財産戦略大綱の進捗状況につきまして、国権の最高機関として適切にチェックをお願いしたいという点でございます。その際、知的財産戦略大綱の精神が尊重されているという点につきましても、先生方、どうか御確認をお願いしたいという点でございます。
 第三に、司法制度改革と同様に、知的財産戦略も国民各方面の意見を集約しながら、ニーズに応じた透明性の高い戦略実施という点についてお願いしたいという点でございます。これによりまして、国民ニーズに即した、世界に誇れる知財立国というものが必ずや実現するものと確信をいたしております。
 以上の趣旨のもと、十分なる御審議のもと、知的財産基本法が早期に成立することを心から希望いたします。ありがとうございました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、笹島参考人にお願いいたします。
笹島参考人 おはようございます。日本弁理士会会長の笹島富二雄でございます。
 本日は、参考人としてお招きいただきまして、日本弁理士会から意見を述べさせていただく機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
 それでは、日本弁理士会の見解を表明させていただきます。
 日本弁理士会は、知的財産基本法案を支持し、本基本法案が早期に成立することを強く希望いたします。
 その理由と申しますと、小泉首相を座長とする知的財産戦略会議は、本年七月三日に知的財産戦略大綱を策定されました。今後、我が国の国富の源泉となる知的財産のあらゆる面での環境整備に向けた改革断行が必要でありまして、この改革が二十一世紀型の文明構築に向けた国家的事業であると宣明をされました。そして、知的財産立国の実現に向け、具体的な改革工程を付して、太い道筋を示されました。本基本法案は、この戦略大綱の高らかな精神にのっとっておりまして、必要にして十分な内容であると高く評価する次第でございます。
 とりわけ、知的財産の定義を我が国で初めて明らかにした意義は深いものがあります。また、基本理念として、国民経済の健全な発展、豊かな文化の創造、我が国産業の国際競争力強化と持続的発展を図るための知的財産に関する基本的施策が十分に唱えられていると考えます。また、国、地方公共団体、大学、事業者等の責務を明らかにしまして、その連携強化が唱えられていることは大いに評価できるものであります。
 法案は、続いて、基本的な施策を定め、知的財産基本法のもとで具体的な目標と達成時期を定める知的財産推進計画を作成しまして、これを推進するための知的財産戦略本部を設置するといった取り組み方も明示しております。
 短期間にここまで本基本法案を取りまとめてこられた知的財産基本法準備室ほか関係者の皆様に衷心より敬意を表するものでございます。
 ところで、戦略大綱策定後も我が国経済社会の環境は必ずしも芳しからず、また、科学技術の面では、我が国への大いなる勇気づけとなりました小柴、田中両氏のノーベル賞受賞にちなんでは、発明者保護のあり方が議論され、あるいは、我が国の小中学校における理数科教育が欧米との比較の上で低位にあるという統計も明らかになりまして、知的財産の柱となる科学技術の未来への警鐘も示されております。さらには、中国におきましては明年春に世界の知的財産関連の首脳会議が開催予定でありまして、ここで知的財産専門家の強化策も打ち出されると聞いております。
 したがいまして、戦略大綱で示された道筋の実現に一刻の猶予も許されないのが我が国の現状であると考えます。本基本法案が今臨時国会においてぜひとも早期に成立されるよう、国会議員の先生方の絶大なる御協力をお願い申し上げますとともに、関係官庁の皆様の今後の積極的な取り組みに期待申し上げる次第でございます。
 ここで、戦略大綱の精神に沿った日本弁理士会の対応につきまして述べさせていただきます。
 弁理士は、知的創造サイクルに一貫して関与することによりまして、我が国の科学技術振興、産業の発展に貢献するという使命を有する我が国唯一の知的財産専門資格者でございます。本基本法のもとで弁理士はこの使命を存分に果たす国民の期待と責任を強く認識しておりまして、戦略大綱の目指す国家的事業の実現に向けて、日々奉仕の精神を持って協力することを惜しみません。
 とりわけ、次のような課題を例示させていただきまして、これらの課題に積極的に取り組んでまいる所存であります。
 まずもって第一番に、私ども弁理士自身のサービス能力向上への取り組みを積極的に行います。弁理士会研修所を改革し、特許庁、大学、裁判所、日弁連等の協力を得まして、知財創造サイクル関係の知識、実務の習得、とりわけ先端科学技術分野、紛争解決、知的財産ビジネスを含めた弁理士の能力の拡充と知的財産の研究活動を行います。あわせて、倫理意識の徹底も図ります。
 第二に、弁理士は国際的な活動を特徴とする資格であります。したがいまして、国際協力への取り組みを強化します。まず、日米欧の三極協力体制への支援を図ります。また、中国の台頭を背景にしてもなお我が国がアジアにおいて名誉ある地位を確保するための抜本的方策の確立に取り組みます。この活動の一環として、東アジア地域における弁理士制度の構築に向けて、現地への働きかけを強力に展開してまいります。また、海外現地代理人団体との提携により模倣品対策に取り組みます。
 第三に、権利利用・活用への取り組みであります。設立が検討されている大学関連の知的財産本部など、大学に期待されている産学官連携などの社会活動に弁理士は従前以上に関与してまいります。また、知的財産の経済的価値評価組織の構築を図ります。
 第四に、いかなる制度もこれを動かすのは人であります。日本弁理士会は、人材育成を最も重要な課題として取り組みます。専門職大学院、法科大学院など知的財産関連人材養成システムの基盤確立を提言し推進してまいります。また、初等、中等教育分野におきましては、教育関係者のみならず、今や総力を挙げて国民全体の関与が必要となっているところ、弁理士は母校に帰りまして、教育者、地方公共団体指導者、学生生徒に対して知財教育の支援活動を行うように努めます。
 これら弁理士の活動を推進するため、日本弁理士会は本年九月に知的財産制度改革推進会議を設置いたしました。今後、この会議は、日本弁理士会が知的財産の専門家集団であるという自覚と責任のもとにおいて、我が国の知的財産制度改革に対して積極的に取り組み、提言や要望を取りまとめてまいります。
 それでは、これらの弁理士の活動を効果的に行うために、本法案の御審議に際して、特に、次の我が国の知的財産専門家の充実を考慮していただきたくお願い申し上げます。
 第一は、本基本法二十二条、人材の確保に関してでございますが、知的財産専門家の養成組織を構築していただきたいと思います。知的財産に携わる者に求められる能力は、知財実務、技術、ビジネス、国際紛争等にかかわるあらゆる局面に的確に対応する必要があります。現在、設立が検討されております法科大学院あるいは専門職大学院等におきます知財教育のあり方等を含めて、我が国の知財専門家を養成するための総合的な取り組みが行われるよう強く希望いたします。
 次に、知財教育を強化していただきたいと思います。
 大綱の理念を将来にわたって具現化するためには、小中学生に対しまして、科学の楽しさを知る創造教育や知財に関する教育をより一層行うことが不可欠です。少子化が叫ばれている昨今ではありますが、逆に、人口が多い社会人から見れば、教育する力は多くあります。弁理士は専門家としてこの教育に取り組みますので、御支援、御協力をお願いいたします。
 それから、特許庁における審査体制の強化を図るのが喫緊の課題であると承知しております。
 審査・審判の促進には、米国に劣らない国家戦略的な審査・審判官の適正な増員を図ることが必要であります。この点、審査・審判官が増員にならなければ、迅速的確な審査・審判は期待できません。
 次に、弁理士の侵害訴訟代理制度への積極的な取り組みのさらなる支援をお願い申し上げます。
 今回、この春に公布されました改正法で、弁理士の特定侵害訴訟代理が条件つきで認められました。弁理士がこの特定侵害訴訟代理を行うための能力担保研修は来年から実施する予定ですが、初年度から実に千三百名の希望者がおりまして、今現在、その予備的基礎研修として、全国九大学の協力を得て、約八百名の法学基礎研修を実施しております。この制度は、必ずや我が国の知的財産訴訟に大いに役立つことになると確信いたします。弁理士の今後の努力をお見守りください。
 最後に、我が国は、明治維新、大戦後に続く大きな改革のときを迎えております。この中で、政府は、政治、経済構造等幾多の改革を実行してまいりました。科学技術を発展させ、知財を活用することによって経済産業を発展させようとする今回の知財改革は、将来、我が国国民が明るく心豊かであり、我が国が世界の中で名誉ある地位を占められるような国づくりへのさまざまな取り組みの一つとして位置づけられます。我々弁理士も、専門とする知財に関する知見を用いて我が国産業発展に尽力すべき覚悟でありますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 以上のような次第で、日本弁理士会は、本基本法案の一刻も早い成立を強く希望いたします。一刻も早く知財推進本部を立ち上げ、早急に我が国の知的財産戦略を策定し、直ちにその実行に邁進していきたいと衷心より願うものであります。
 以上、日本弁理士会の思うところを述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。
平井委員 自由民主党の平井卓也でございます。
 きょうは、参考人の皆様方には本当に早朝より、また、貴重な御意見を拝聴することができまして、ありがとうございました。トップバッターの質問でありますが、個別にはいろいろと聞きたいこともあるのですが、きょうは限られた時間、十分しかありません。それで、中山先生と丸島先生にお聞きをしたいと思うわけであります。
 確かに、行政、立法、司法に大きくまたがっていく問題でもありますし、民間のマインドの問題もある。このプロパテント政策の本質というのが、いろいろな理解があると思うんですが、どうもアメリカ追随型の方向に行ってしまいやしないかなというような懸念も全然ないわけではありません。
 というのは、この十数年日本の状況を見ていると、日本はだめだ、だめだ、だめだ、だめだと言われ続けて、本当にだめじゃないかというふうに思う人たちも結構ふえてきたと思うんですが、今までの日本の政策の中でもすばらしい政策は随分あって、日本は世界第二の経済大国になったという面もあるんだと私は思っています。
 そこで、お聞きしたい。
 これは非常に漠然とした質問になってしまうのかもわかりませんが、日本流の新しい知財を扱う一つの体系というものがどこかにありはしないか。つまり日本流に、日本の強みを生かせるような国家戦略というものを今後構築していく上で、我が道というのもあるのではないかというのが、勉強不足ではありますが、私の感覚的な気持ちであります。
 過去、日本の歴史を振り返ってみても、確かに、産業革命であるとか情報革命であるとか、農業革命もそうかもわかりませんが、創造性の高い発明というものはないが、しかし、それをうまく利用しながら、実際の社会の中でいろいろな新しいサービス、付加価値を生み出して、それを日本の強みにしてきたという大きな特徴があると思います。これは、一五四三年、鉄砲が伝来して以来、日本の文化の中に根づいているもので、これは普遍的なものかもしれないと私は思っているわけで、そういう意味では、日本のその特徴なり日本の特技を生かせるようなこれからの知財に対する考え方というものがあるのではないかと思うわけであります。
 ですから、アメリカと違ったような、確かに、アメリカはアンチパテントからプロパテントに八〇年代にシフトしていきましたけれども、日本も全く同じようにするのではなくて、何かそこにはもう一つ留意する点があるのではないかというふうに思いますので、その辺につきまして、お二人にアドバイスなり御意見を伺えればと思います。中山先生と丸島先生、順次お願いしたいんですが。お願いします。
中山参考人 お答えします。
 アメリカ追随ではいけないという点は、私、全く賛成でございます。特に、ヨーロッパと違いまして、ドイツと違いまして、アメリカの制度は日本の制度とは根本的に違う法システムを持っておりますので、アメリカの例えば三倍賠償とかITCを日本に導入せよという意見がよくございますけれども、私はそれは間違えていると考えております。ただ、アメリカがやってうまくいったその結果、これは大いに参考にする価値はあると考えております。
 一例を挙げますと、例えばボーダーメジャー、税関での措置ですけれども、アメリカはITCという機関を使って行っておりますけれども、結果的に侵害物品をとめております。我が国は、関税定率法二十一条がありますけれども、結果的にはとまっておりません。したがって、ITCそのものをつくるということは私は考えておりませんけれども、しかし、何らかの日本的な工夫をしてとめる必要がある。効果としては、アメリカのものをまねるというものは多々あると考えております。
 じゃ、日本的なものはどうかといいますと、実は、知的財産制度はかなり国際性が強く、国際的にはハーモナイズということが非常に重要でございますので、他の一般の法分野に比べますと日本の特色というものは出しにくい分野と考えておりますけれども、それでもなお、私は、議員のおっしゃるとおり、日本的なものはあると考えております。
 一例を挙げますと、例えば先ほど丸島参考人がおっしゃいました改良発明、これはパイオニアだけを強く保護するのではなくて、やはり改良も保護していかなければ産業全体は強くならない。そのための工夫はどうしたらいいかということも重要でありましょうし、さらには、特許法三十五条の職務発明、これなどは特許法の中に入っておりますので、特許法の条文、特許法の問題であるというふうに考えている人が多いと思いますけれども、実はこれは労働法、日本の雇用関係に極めて大きく依存しております。こういう問題などは、アメリカ一辺倒ではなくて、日本的なものがあってしかるべきであるというふうに考えております。
 そういうわけで、選択の余地というものは他の法分野に比べると少ないわけですけれども、やはり日本には日本的なものもあると考えておりまして、アメリカ追随ではいけない。ただ、大きな流れといたしましては、日本は情報化に向かわなければいけない。これは、アメリカ追随というよりは、むしろ産業構造が世界でそう変化している、その結果であると考えております。
 以上でよろしゅうございましょうか。
丸島参考人 お答えいたします。
 私、おっしゃるとおり、日本的なよさというものは必ず取り入れるべきだと考えております。ただ、基本的には、知的財産の価値観というものを高めない限り、研究開発に投資したリターンが保証されないという点では、これは、アメリカのとってきたいいところはやはり参考にすべきだと思っております。先ほど申し上げたのは、そういう意味で、どちらかというとアメリカのとってきた方策と似たようなことを申し上げましたけれども、これはある程度必要だと思います。
 日本の企業が国際的に、グローバルに展開する以上、やはり国際的に一番知的財産が活用できる国というものに焦点を合わせませんと事業活動ができないのでございます。今まで私ども、グローバルに展開する企業はどこの知的財産を一番重視してきたかというと、残念ながら、日本の知的財産ではなくてアメリカの知的財産ですね、これに影響されてしまうんです。そういう意味で、ある程度グローバルに展開する以上、日本の知的財産も、そのような価値観というんでしょうか、これはぜひ必要だなと。抑止力のある仕組みをやはり背景にしませんと、通常のビジネスが行えないということだろうと思います。
 そういう意味で、アメリカのまねというわけじゃないんですが、グローバル展開から、やはり必要なことは、いい仕組みなら採用してもいいんじゃないかと私は思っております。
 それから、日本的よさ、これは今中山先生もおっしゃったように、日本は、開発者全員が発明者という意識で仕事をしております。創造性豊かな発明はアメリカから出るかもしれませんが、人のやった発明を事業化に結びつける改良的な、いわゆる大勢で一つのものをまとめ上げようという力はむしろ欠けているんだと思うんですね。
 先ほどもちょっと強調して申し上げたのは、やはり日本的よさを残して創造性豊かなものをむしろプラスする感じで日本のこれからの施策をとっていただかないと、かえって日本の産業競争力が下がってしまう可能性があるということで、私は物つくりということを大事にすべきだと思っているんです。そういう意味で、改良技術の日本的強さを生かしつつ、創造性豊かな研究開発ができるような仕組みがぜひ大事だと。
 その点について中山先生とちょっと、職務発明の問題で意見が全く対立しているわけです。結論は同じことをおっしゃっているのかもしれませんが、私は、改良技術を大事にするという意味から、職務発明を法律で対価を決めるというのはなくさないとそうならないと思うんです。
 といいますのは、創造性豊かな発明とそれから改良的な発明、どちらかというと、改良の発明の方がはるかに数が多いです。富士山に例えて言いますと、すそ野と、頂上にある創造性豊かなものと想像していただけばよろしいんですが、これを一つの法律で相当な対価を決めるという仕組みだけでやっていきますと、訴訟ばかり起きて一つも安定した社会が得られない。今の、みんな協調して改良をやろうというグループ開発の特徴が私は崩れていくと思うんですね。これをなくすためには、やはり創造性豊かな発明についてはそれなりの処遇をするということと、それから開発で、いわゆる、だれでもと言っては語弊がありますが、努力すればできる発明というんでしょうか、これは大多数がそれなんですね、そういうものに対する処遇というものを法律で全部決めていく必要はないだろう。
 それからもう一つは、労働法的な観点から検討すべきという先生のお話があったんですが、私は、労働法からどう関係するのかわかりませんが、現在、昔のような労働環境じゃございませんで、研究開発者というのは結構優遇されていると思うんです。それから企業も、創造性豊かな人材を処遇しなければ自分の企業が成り立たなくなるということは自覚しておりますので、法律で決められなくても、企業自身が今そういう方向に行く時代だと思っております。
 そういう意味で、三十五条の職務発明、法律で相当な対価をということはぜひやめていただきたいと産業界では強く願っております。
 以上でございます。
平井委員 もう時間がありませんので終わらせていただきますが、まだまだ聞きたいことがありました。
 これからこの法案の一刻も早い成立と、あとは、知的財産戦略本部で間違いのない方向性を目指していくということになろうかと思います。また努力していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました。
村田委員長 鈴木康友君。
鈴木(康)委員 参考人の皆さんには、早朝より本当にありがとうございます。民主党の鈴木康友でございます。
 それでは、御質問をさせていただきたいと思いますが、今、くしくも職務発明規定の問題がお二人の参考人から御発言がございました。それについてさらにお話をちょっとお伺いしたいと思います。
 丸島参考人は、今申されましたように、とにかく特許法の三十五条で国が相当の対価というような規定をすることはよくないのではないか、訴訟がふえるもとではないかという御指摘でございますけれども、これはもう全く企業と個人の関係に任せちゃって、そういう方向性すら出さないでおく方がいいのかどうか、まず、その一点についてお伺いしたいのと、それから、中山参考人には、特許法の問題というよりもむしろ労働法の観点からというお話がございましたけれども、その点、もう少し突っ込んで御意見をお伺いしたいと思います。
丸島参考人 お答えいたします。
 基本的には、何もしないでいいんじゃないかと。これは、研究開発者の処遇を高めなければいけないとこの基本法にも入っております。これは発明の対価ということではなくて、研究開発者に対する処遇を高めるというのは、企業としてもやらなきゃならない時代でもあります。各企業はそういう方向で動いていくと思います。そういう意味で、何もしなくても自然にそういう研究開発者の処遇が高まっていく方向に行くと私は思います。そうしないと、いい研究開発者がとどまらなくなるということですので、必ずやそういう方向に行くんだろうと信じております。
 以上でございます。
中山参考人 特許法三十五条をどうしたらいいのかという点は、私はまだ考慮中でありまして、これがいいという結論は持っておりません。
 ただ、私が強調したかったのは、特許法だけの問題ではなくて、これは従業者、つまり雇用関係中に企業からお金をもらう、非常に大きな意味でいえば、給与、本当は給与と言ったら正確じゃありませんけれども、給与の支払い形態のような感じのイメージもあるわけです、法的にはちょっと正確な表現じゃありませんけれども。
 したがいまして、これは、例えば終身雇用制を前提にしているのか、あるいはアメリカのような全くの労働力の流動化というものを前提としているのか、あるいはそのミックスを前提としているのかという点につきましても全く違ってまいります。終身雇用を前提としていればそれなりの支払い方、単なるお金だけじゃなくて、いろいろな面の支払い方もあります。しかし、流動化を前提とすれば、これは恐らく契約自由で、あとはお金の問題ということになろうかと思います。
 したがって、これは大きな、労働法というよりは、将来、雇用関係がどうなっていくのか、あるいは雇用関係をどういうふうに持っていくのかという理念がまずあって、それから出てくる問題である。
 つまり、この問題についてまだまだ議論が足りない、もっともっと時間をかけて議論をしなければ早急な結論は出すべきではない。なぜならば、先ほど言いましたように、特許法だけの問題じゃなくて、非常に大きな日本の雇用の関係、もっと言えば契約社会に持っていくかどうかという、そこまで考えて結論を出すべき問題である、このように申し上げたわけでございます。
鈴木(康)委員 続きまして、笹島参考人にお伺いをしたいと思います。
 審査体制の強化というものが叫ばれていると思います。これからますます知的財産について国を挙げて取り組んでまいるということになると、当然特許の審査についても迅速かつ効率化ということが要求をされてくると思いますけれども、しかしながら、一挙にその審査官を増員するということもなかなか難しい。そこだけ要員をふやすということもできにくいかと思います。
 そういう中で、審査のアウトソーシングという発想もできるかと思うんですが、例えば弁理士の皆さんにそうしたアウトソーシングをお願いして、特許の専門家として審査に協力をしていただくというような考え方もあろうかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
笹島参考人 申し上げます。
 私どもは、アウトソーシングに関しまして、弁理士の力を大いに利用していただきたいというふうなことを申し上げております。例えば、弁理士の調査能力を信用していただきたい、あるいは、弁理士の専門性を利用して審査に多少かかわることはできないものであろうかどうかというふうなことも御提言させていただいております。
 それから、アウトソーシングの、調査のことに関しましては、今は単一の調査機関がありますが、さらに複数の調査機関等を考えていけないものかどうか、その場合に、弁理士の力を使えないものかどうかということを考えさせていただいております。
鈴木(康)委員 引き続き笹島参考人にお伺いをしたいと思いますが、その審査と並んでこれからふえるであろう特許をめぐる紛争処理、これの効率化、あるいは処理の迅速化ということも要請をされているところでありまして、前国会に、先ほどお話の中にも出ました弁理士法の改正の中で、訴訟代理権が条件つきながら認められたということであります。そのときに附帯決議の中に、今後その方向をさらに進めていく、単独受任も含めてその条件を緩和していくということが必要ではないかという趣旨が盛り込まれたわけでございますけれども、基本法ができて、今後、知的財産を国家戦略として強化していくという方向の中で、早期にこの附帯決議の趣旨が生かされていく必要があるだろうと思うんですけれども、その点について御意見をお伺いしたいと思います。
笹島参考人 先ほど私のお話の中に申し述べさせていただいていますとおり、私ども、おかげさまをもちまして、今回初めて、弁護士とともにでございますが、知的財産訴訟に関して代理人となる資格を得られるようになりました。今、基礎研修をやっておりまして、来年から能力担保研修というのが始まりまして、来年にその資格者が生まれます。私ども、一生懸命やりまして、そこでその実績を積みまして、国民、裁判所等々の信頼を得まして、ぜひともその後の侵害訴訟に関する代理の強化ということを図っていただきたいと。まず実績を示しますので、その先にいろいろ考えていただきたいなと思います。
 したがいまして、その附帯決議に書いてありますとおり、その検討する場所を、私どもの進展を見ながら考えていただきたいなというふうに思っております。
鈴木(康)委員 続いて、知的財産を取り扱うその専門家をふやしていくという観点について、末吉参考人と笹島参考人にお伺いをしたいと思います。
 法科大学院、あるいは、今度学校教育法が改正をされまして専門職大学院というものができてくると思いますが、そういう中で、知的財産教育を導入いたしまして専門家をこれから育成をしていく必要があるという点については、これは御両人とも意見が同じだろうと思うんですね。その点について、弁護士という立場あるいは弁理士という立場から御意見をお伺いしたいと思います。
末吉参考人 先生御指摘のとおり、法科大学院及び専門職大学院を通じて、ぜひとも早期に知財の専門家の数及び質を高めていかなくてはならないと私ども考えております。ただ、具体的にどう進めていったらいいかというのは、私自身を含めまして、今後至急検討しながら実践してまいりたいと思います。
 以上でございます。
笹島参考人 今、専門家養成機関としまして、法科大学院それから専門職大学院という二つの機関を明らかにされました。それで、二つについてお答えいたします。
 法科大学院につきましては、現在、知財を強化する形の法科大学院というものを私ども強く希望させていただいております。しかしながら、司法試験という難関を通るために、知的財産の科目を選択科目として選ぶのがどれぐらい可能であるか、この点について議論させていただいております。
 次に、専門職大学院についてですが、法科大学院で生まれてくる知財専門の弁護士というものは、あくまでも紛争処理でございます。今回の大綱にありますように、この問題は、国の経済産業の発展を願うための知財戦略であります。その知財戦略の中で、紛争処理だけではできませんので、私どもは、その発明の創造から知的創造サイクルを完結する型の人間の創造を願っております。
 したがいまして、弁理士も、それから、その他の弁理士以外の専門家のためにも、知財、それから先端技術、それからビジネス、国際性、あるいはディベートできるような人間、そういう者を育てる専門職大学院の中身をお願いしたいなと思っております。そのときに、弁理士制度との関係を、特に試験においてどうなるかということは今後の議論の対象にさせていただきたいと思います。
鈴木(康)委員 続いて、また笹島参考人にお伺いをしたいと思いますが、今、特許庁の方で、審査料のいろいろな改定についての検討をされているということでありますけれども、今後、出願料と登録料が値下げをされて、そして審査料が今度値上げをされるという方針が一つ出されているようでありますけれども、この方向性についてどのようにお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。
笹島参考人 私どもは、会長としまして、大方の会員が審査請求料の値上げに反対の意見を有していることを承知しております。
 本問題につきましては、経産省の産業構造審議会知財政策部会の特許制度小委員会におきまして、我が弁理士会の代表を送り込んで当方の意見を出させていただいております。今のところそういうことでございますが、この程度でよろしゅうございますか。
鈴木(康)委員 最後に一点、中山参考人と丸島参考人にお伺いをしたいと思いますが、今回の知的財産基本法の中で、知的創造サイクルというものが強調されているわけですね。知的財産を保護するだけではなくて、創造のところから、そしてそれを保護し活用するというこの一連の流れが非常に大事であるということであります。
 そうした中で、私ども、今の特許庁をもう少し政策官庁として格上げをして、知的財産権庁みたいな、こうしたサイクルを総合的に取り扱うような組織をつくるべきではないかという考えを持っておりますけれども、その点について、お二人から御所見をお伺いしたいと思います。
中山参考人 私は、かねがね知的財産庁なるものをつくった方がいいというぐあいに考えておりました。
 従来は、特許と著作権その他のいろいろなものと、あるいは種苗法とは違うというぐあいに考えられておりましたけれども、私はやはり、情報化時代における情報保護法であるという観点から、すべてを統一的に把握し、かつ、政策的にも統一的に行うということが必要だろうと思います。基本法は、すべてを統一的に扱うというところに特徴があるわけでございまして、基本法だけではなくて、実際に政策を立案、それから実行していく官庁も実は統合してほしいと考えております。
 しかし、このたびの官庁の統合においても、話すら出なかった難しい問題でありまして、実現可能かどうかわかりませんけれども、私どもはかねがねそういうふうに考えております。
 以上でございます。
丸島参考人 お答えいたします。
 私は、基本的には、そういう官庁ができることを望んでおります。ただ、現実の問題として、知的財産といっても大分幅があるものですから、全部を統合するのが果たしていいのかどうかという点も多少ございます。
 例えば著作権という中でも、文化に非常に近い部分の著作物、それと、コンピューターのソフトウエアみたいに工業に非常に近い著作物、こういったものが存在しているわけですけれども、私は、少なくとも、今、そういった知的財産という中で、いわゆる工業に関連深いものを全部統一するという方が非常に有益だろうと思っております。
 以上でございます。
鈴木(康)委員 時間でございますので、これで終わります。どうもありがとうございました。
村田委員長 福島豊君。
福島委員 公明党の福島豊でございます。
 本日は、参考人の皆様には、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。
 この基本法が成立した後、どういうふうに戦略本部が進めていくのか、そしてまたどういう計画を立てるのか、こういったことが一番大事なんだろうというふうに思っています。その中で、本日御指摘のありませんでした税制のことについてちょっとお聞きをしたいんです。
 先般、日経新聞から出版された書物で、こんな事例が報告されておりました。ある企業グループ、知的財産を統一的に取り扱って戦略的に進めていこうということで計画を立てたわけですが、一万近い特許があると。グループ間でこの特許の移転をした場合に、これは寄附とみなされる、利益を生み出さなくても課税されてしまうということで、すべての特許を一元的に集約してそれを戦略的に活用することができないということが示されておりました。
 今回、基本法が成立しました後に、それぞれの企業にとって、どういうふうにこの知的財産を活用するのかということは大変大切なことでございますし、そのためには税制も見直していく必要があるんだろうというふうに私は思っておりますが、この点について丸島参考人の御意見をお聞かせいただければと思います。
丸島参考人 お答えいたします。
 私も、きょうは知的財産という面だけでお話し申し上げましたが、創造という段階で考えますと、おっしゃるように、税制というのは非常に意味を持ちます。戦略大綱ができて環境が整備されたとしても、日本の産業競争力を高める根幹である創造活動が活性化しない限り、かえってこの環境があだになる可能性もあるわけですね。そういう意味で、創造活動の活性化ということが基本になければいかぬ。これは、税制といっても、いろいろな意味での税制、今お話がありましたような管理、活用面での税制もございますが、創造活動そのものに対する税制もあるかと思うんです。そういうことも含めて税制の問題は非常に大事だと思っております。
 特に御指摘の点は、今、企業が分社化したり、いろいろな事業形態を分けて総合的に企業運営をするような仕組みをとっておりますので、そういったグループ全体の知的財産を有効に活用したいというときに、確かに、現在の法律面ではいろいろと障害になることもございます。そういった意味で、産業界からしては、そういうグループ活動に支障のないようにということもお願いしておるんですが、例えば弁護士法七十二条の法律問題ということにも絡んできますし、弁理士法の関係も絡んでくるかもしれません。
 ただ、グループの中の知的財産の活用ということは、税制の問題も含めて考慮いただいた方が企業としては非常に助かるというふうに思っております。
 以上でございます。
福島委員 ありがとうございました。
 先ほど鈴木委員から御指摘ございました特許庁の手数料の見直しの問題でございますが、先ほど笹島参考人から若干御答弁ございましたけれども、こうした見直しを行うということは、特許の出願に当たって、出願する側の行動を変えてしまう可能性があると思うんですね。今回の基本法というのは、知的財産についてよりその充実を図っていこうという発想があるわけですけれども、手数料の見直しの仕方によっては、逆に、それに逆行するような結果を生み出してしまう可能性もあるんだろうと思います。
 その点については、特許の申請について、一番身近でわかっておられて、そしてまた、企業なら企業の考え方というものもよく御理解しておられる笹島参考人から御見解をお聞きしたいと思います。
笹島参考人 審査請求料の問題でございますけれども、非常に頭を痛めている問題でございまして、背景には、私ども、特に私は審査の迅速化ということについて考えていかなくちゃいけないと。日本の知的創造サイクルを全うするためには、権利の創生ということを考えていかないといけないわけでございまして、その前提として審査の迅速化というのがあります。
 その具体的な方法として、いろいろなものが挙がっておりまして、今、審査請求料の値上げ、そして特許料の値下げ、そういうことで考えておられるわけですけれども、私どもとしましては、それもありますが、さらに、審査を迅速にするための補正の制限の解消とかその他の制度的な問題もあわせて考えていかなければいけないのではないかというふうに思っておりまして、内部で必死に議論している最中でございます。
福島委員 どうもありがとうございました。
 最後に国際的な対応ということについてお尋ねをしたいんですが、国際的な制度の構築ということがこの法案の中にも盛り込まれているわけでございます。中国等におけるコピー製品の問題というのは深刻な問題があろうと思っております。
 水際対策を強化すべきだと丸島参考人からの御意見がございました。また、東アジア地域における弁理士制度の創設ということを笹島参考人からも御意見がございましたが、この国際的な対応というものを強化するためにどこが一番大切なのか、この点について中山参考人に最後に御意見をお聞きしたいと思います。
中山参考人 どこが一番かと言われましても、なかなかお答えしにくいのでございますけれども、どうも知的財産制度そのものがもはや一国では成り立ち得ない、国際的調和という点を重視しなければいけないので、恐らくすべての面についての国際的な制度の調和ということが大事になってくるだろうと思います。場合によっては、アメリカの特有な制度についても見直しを迫るというようなことも必要になってくるだろうと思います。
 ただ、委員今おっしゃいました、にせものといいますか、模倣品あるいは海賊版対策は、国際的な調和というよりはむしろ制度の実効性を担保しなければいけない。それが、単に国内だけではなくて海外で行われているそういう模倣品等につきましても行わなければ、もはや日本の知恵、情報は保護されないということでございまして、これは、調和という問題と離れて、日本国の外交のポリシーとして、中国を初め東南アジアに対して、模倣品、海賊版に対しては強く出るということと、そういう製品が我が国に入ってくることに対して、それを水際できちんとしたシステムをつくって防ぐという、この二つが大事だということ。これと国際的調和の問題とは別でございます。
 あと、私自身は、国際的調和で大事と思っておりますのは、特許の審査の共助、さらには、進んでは相互承認だろうと思っております。
 つまり、特許庁の審査はもうこのままでいけばパンクします。世界はどんどんと世界じゅうの特許出願がふえてまいりますので、恐らく早晩パンクいたします。その場合、やはり、例えばアメリカで特許が認められたら日本でも認められるという審査の省力化といいますか、重複を省くという、そちらの方向に強く国際的な調和を求めていくということが肝要ではないかと考えております。
福島委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。
村田委員長 土田龍司君。
土田委員 おはようございます。自由党の土田龍司でございます。
 知的財産の保護ということがかつて求められておりまして、だんだんそれが進展してきまして、最近は、特に今回は、企業戦略、国家戦略としてこの知的財産を大いに活用していこうということになってきたわけですね。そこで、国家戦略としてやっていくわけですから、当然、今話題になっておりますように、この保護というのが極めて重要になってくる。保護を強化しなきゃならないわけでございますが、一方で、知識とか技術とかを共有化しなきゃならない、共有化することを前提とした切磋琢磨が必要になってくるわけです。
 そこで、中山先生と丸島参考人のお二人に伺いたいんですが、これの兼ね合いといいますか、バランスといいましょうか、これをどういうふうにとっていったらいいかというふうに考えられますか。
中山参考人 私もそのバランスが最も重要であると考えております。つまり、独占には必ず弊害が伴う、この認識が一番重要であると考えております。したがいまして、知的財産権強化、これは時代の流れだと思っておりますけれども、知的財産権を強化する以上は、そのチェック機能、具体的には独禁法になると思いますけれども、その強化が欠かせないと考えております。
 アメリカにおきましても、プロパテント時代といえども、やはり、アメリカで最も大事な企業であるマイクロソフトを独禁法でたたく、やっております。これは将来の第二のマイクロソフト、第三のマイクロソフトの出現のためにはやはりそういった環境整備が必要であるということになっているわけでございまして、我が国も独禁法を強化する必要がある。つまり、プロパテント時代はプロアンタイトラスト法時代であると考えております。
 もう一つは、やはり大学の問題でございまして、大学において知的財産の意識を浸透させ、それを、大学における情報を社会に還元するということは極めて重要でございますけれども、他方、大学は知識を共有して発展してくるという面も否定できないわけでございます。したがって、大学における拝金主義というものを排する、あるいは金になる研究だけをするということを排する、そういうことは必要であると思います。
 でき上がって、かつ社会に有益な情報は還元しなければいけないけれども、金になることを目的とした研究というものは、その研究だけを目的とするというのは好ましくない。つまり、むしろ金にならない基礎的な研究を大学はやるんだ、そういうことも重要であると考えております。大綱にはそのバランスのことも書いてございます。
丸島参考人 お答えいたします。
 私は、権利をとるということと活用ということのバランスを考えればいいんだろうと思っているんですね。まず、新しい分野の権利を創設するかどうかということでちゅうちょしないで、どんどん権利は設定するような方向でやるべきじゃなかろうか、これは国策としても大事なことだと思っております。ただ、それを活用する場合はどういうふうにするかという、活用の面で共有というものを考えて、制限するような考えを導入すればいいんじゃないかな。共有を中心にして権利創設をちゅうちょするということは、私は国策的にはよくないと思っております。
 そういう意味で、権利の創設はする、ただ、それを公共とか、あるいはベーシックになるような情報に関連するという場合の権利の活用面でどう制約するか。今中山先生おっしゃったように、競争政策との関係も含めて、活用面で配慮すればよろしいんじゃないかと思っております。
 以上でございます。
土田委員 続いて丸島さんに伺いたいんですけれども、今中山先生から大学の研究についてはということでお話がございました。産業界として、あるいは企業人として、丸島さんは大学の研究機関が何を果たすべきかということについてどう考えられますか。
丸島参考人 お答えいたします。
 私は、大学の先生に、産業界で要請しているような基本的なシーズですね、それを期待しております。今中山先生がおっしゃったように、大学全体を考えますと、教育とか、あるいは基礎的な、あるいはお金にならないような研究というような表現もございましたけれども、それも大事だと思っております。
 ただ、私は、大学の先生が全員が産学連携に参加する必要はないだろうと思っております。むしろ若い研究者、これは今大学の改革の中でも、一定期間の任用とか、若いうちに、研究開発費もいっぱいとれるようにして、自由な研究をさせてそれで成果を出すというような人たちの、全員とはいいませんけれども、そういう方々が産業寄りのことをやっていただくということが非常に大事だと思っております。
 そのとき、産学連携が活性化するための要件としては、特許をとって知的財産化するということも非常に大事なんですが、もう一つは、やはり情報の機密保持の関係なんですね。情報管理ということが非常に大事になってくるわけですから、一般に言う大学が、情報を共有しましょうという考えと、情報を共有しないである特定の人のために情報を活用するという仕組みも考えなきゃいかぬということですから、本来の大学の中の仕組みからいったら、全く相反する仕組みをつくらなきゃいかぬということですので、それを全部、一緒に全部をやるというのは非常に難しいと思いますので、やはり、そういうことをする産学連携に特化する先生と、それ以外のことに関与する先生とに私は分かれていくべきじゃなかろうかなと考えております。
 ぜひ、大学の産学連携への、何といいますか、企業が自前でできなくなった先端技術ですね、こういったものを大学の中から生み出していただきたい。国家予算も、二十四兆円のうち大学の先生方が大分活用されているわけですので、そういうものをぜひ産業に生かしていただきたいなという感じもいたしております。
 以上でございます。
土田委員 もう一度丸島さんにお尋ねするんですが、企業としまして知的財産の経営戦略を推進しなきゃならないわけですが、そういったときに求められる、知的財産に関連する人たち、どういった人たちが求められているのか、あるいはそういった人たちを確保するためにはどうしたらいいのか。
丸島参考人 私は、先ほどもちょっと申し上げたんですが、知的財産の活用というのは、事業を強くするために活用する、そういう視点でいつも考えておりますので、知的財産に関連する人材というのは、私は、事業がわかって、その事業にいかに知的財産を適用すればいいかということがわかる人ということが非常に大事だと思っているんですね。
 専門性からいいますと、いろいろな段階で専門性が求められるんですが、まず企業の中で、全体を、企業戦略の中で知財を活用するようなアンテナ的な才覚のある人と、それから、具体的にそれに基づいて個々の仕事を達成する専門性の高い仕事をやる人たちと、仕事によって特性は分かれるかと思うんですが、そういったいろいろな特性を持った人の集合体が結局企業では求められるんだろうと思います。
 ついでに申し上げては大変失礼なんですが、先ほど大学の話が出ましたけれども、大学でも、基本法の中でも、知財本部を設けると大綱にも入っているわけですね。これはTLOとバッティングすると私は思います。TLOの機能というのは、基本的には第三者にライセンスする機能だけですが、知財の役割というのは、企業の知財部と同じように、大学の中の知財本部が全部やるべきだと私は思っているんですね。そういう意味で、大学の中でも企業の中でも、知財本部という役割というのは、創造から活用まで全部を担わなきゃいかぬということでございます。
 それは何のために行動するかというと、大学でしたら、やはり大学のそういった知的資産をいかに有効に活用するかという視点で考えなきゃいかぬし、企業としては、企業の事業が優位になるような活用の仕方を考えるということでございますので、そういった総合的な考えがとれるような仕組みも組織的にも考えてあげる必要があるんじゃないかと考えております。
 以上でございます。
土田委員 末吉先生に伺いたいと思いますけれども、先ほど、裁判の迅速化という観点から、ロースクールをつくるとか法整備をするとか、あるいは司法制度について改良を加えるとか等々いろいろな御意見がございました。と同時に、丸島さんが、この四十年間、一回も被告になったこともなければ原告になったこともない、裁判に持ち込まないようにするのが大事だというような話をされております。私も非常に同感でして、これから戦略的に知的財産を進めていく上において当然訴訟がふえてくる、それに対応することも大事なんですが、訴訟にならないようにすることが大事だということは当然だと思うのですが、弁護士のお立場として、その辺はどう考えられますか。
末吉参考人 なかなか難しい御質問でございますが、当然、裁判にならないで解決できる能力を法律実務家が十分につけるということも車の両輪として必ず必要だろうと思います。
 ただ、今ここで考えられている裁判の迅速化というのは、余りにも裁判が遅いのではないか、あるいは裁判を早くするための基本的な制度のつくりがまだ不十分なのではないかという問題関心だろうと思います。
 先生御指摘のとおり、裁判と同時に裁判外の紛争解決というのもやはり我々の大きな課題ではないか、御指摘のとおりだろうと思います。
 以上でございます。
土田委員 先ほど、特許申請に時間がかかるという話を弁理士の会長さんからお伺いいたしました。アウトソーシングとかいろいろ方法は考えられるであろうというんですが、非常に緊急性を要すると思うのですが、中山先生、どうですか、この点について、何か方法はないんでしょうか。
中山参考人 特許行政の問題ですので私は詳しくないのですけれども、どうしてもというなら、それは特許庁の人員の増員しかないと考えておりますけれども、これは公務員全体の問題もありましてなかなか難しい。短期的には、やはりアウトソーシングとかあるいは特許庁内の合理化ぐらいしかないんじゃないかと思っております。
 しかし、どれとしてこれが決め手であるというものはないんじゃないか。特許庁外部から見ている素人目の判断でございますけれども、そのように感じております。
丸島参考人 今のに関連して私の考えていることをちょっと申し述べたいと思うんですが、よろしゅうございましょうか。
 私は、先ほどもちょっと触れたのですが、すべて迅速ということが非常に強調されておるのですが、確かに審査すべき件数が多い。これを全件早くやるということは大変労度がかかることです。本当に企業が求めているのは、早くしていただきたいものを速くしていただきたい、そんなに早くないものは遅くてもいいという考えを持っているんです。
 ですから、全件を速くしなきゃいかぬという仕組みは考える必要はないんだろうと私は思っているんですね。そういうことも配慮すれば、もうちょっとやりくりができるんじゃないかと私は思っております。
 以上です。
土田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
村田委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 きょうは、いろいろと本当にありがとうございます。
 最初に、中山参考人、丸島参考人にお伺いをしたいと思います。
 知的財産を戦略に活用する場合に、プロパテント、これは位置づけを重要視しなくてはならないと思うんですが、これまで政府は、プロパテントという形で一連の工業所有権の改正強化を行ってまいりました。
 戦略的に重要なパテントと、その基礎となる研究やあるいは発明を戦略的に進めるという点では、率直に言って、やはりこれは不十分ではなかったかと思うわけですね。したがって、そういうこととの関係で、制度的に権利を厚くすればするほど、先端技術分野で欧米諸国が相対的に進んでいるという中で、我が国の企業が不利な立場に立たされるということがあったのではないかと思います。
 そこで、今回の知的財産基本法案、その中で、「知的財産の創造、保護及び活用」、こう述べているわけでありますけれども、創造の分野での対策がやはり不十分になりがちであるという感じがいたします。
 きのうのテレビでたまたま、ノーベル賞を受賞されたお二人が自民党との懇談の中で、小柴さんが、もうけにつながらない研究にもっと力を入れてくれというようなこともおっしゃっておりました。
 こういうこととのかかわりで、創造の分野での対策、今日の現状等々を含めて、両参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
中山参考人 議員のおっしゃるとおりでございまして、創造がなければその後の知的財産の強化をしても全く意味がないわけでありまして、いかにいい情報、コンテンツをつくるか、これが本当は最大の課題だと考えております。
 しかし、この問題は、極めて重要であることはもう言うまでもないわけでございますけれども、知的財産制度そのものとはちょっと距離があるわけでございまして、先ほど小柴先生の話も出ましたけれども、これなどは知的財産とは関係なく基礎的な研究に資金を投入してほしいということだろうと思いますし、あるいは税制、開発に対する税制をどうかしてほしいとか、そういう非常に広い意味の改革が必要であると考えております。
 大綱におきましても、創造は極めて重要であって重視すべきであるといろいろ書いてございますけれども、しかし、大綱で書き切れない部分が多々ございます。それは、知的財産と関係ないというか関係が薄いというか、そういう部分が、大事でないから書かないということではなくて、余りにも大事過ぎて、例えば科学技術総合会議等々でもうやっておりますので、そちらの方にも配慮をするということで記述が少ないわけですけれども、これは総合的な配慮が必要であると考えております。
丸島参考人 お答えいたします。
 私は、おっしゃるように、創造性を高めるといいますか、創造活動を活性化するというのが大前提にあるべきだと思っております。そうでないと、このプロパテント制度そのものがプラスの方向に回転しない、そう思っております。
 では、今なぜ日本の産業競争力が弱まってきたのかという、ここなんですが、一言で言うと、企業において自前で研究開発が全部できなくなってきたというのが実情だと思うのですね。
 これは、原因がいろいろあるかと思うんですが、一つは、余りにも外部からの評価が厳しくなって、経営者が長期戦略に没頭できないという要素もあるんじゃないか。株主評価が余り厳し過ぎるという点もあるかと思うんです。それで短期戦略をとらざるを得ないという要素も出てきているんじゃないかというのが一つ。
 もう一つは、技術がアナログからデジタルに変化したということによって、自社の技術を長期にわたって開発を進めていても事業化できる確率が非常に低くなってしまった。いわゆる第三者の技術開発に影響される度合いが非常に高まって、余り長期の研究開発に没頭できなくなっている。
 いわゆるネットワーク化、デジタルによってネットワークすると、当然標準化の問題が出ます。標準化の動きにマッチングしないような技術というのは世の中に受け入れられないということで、やはり短期政策の中で、戦略は長期に立てるんですが、短期の中でアウトソーシングができるような環境というのが絶対必要になってくるわけですね。
 そういう意味で、アウトソーシングが日本にないと、日本の企業は開発も外へ出ていかなきゃならない。生産が外へ出ていって研究開発も外へ出ていくようになったら、私は国益が相当損なわれるだろうと思うのです。そういう意味で、研究開発のアウトソーシングは外へ出ていってはいけない、国内で賄うべきだということになると、では、どこへそれを求めるか、これは大学とベンチャーなんですよ。
 アメリカのまねするなということは私もそのとおりなんですが、アメリカがあれだけ活性化したもとというのは、やはり産学連携とベンチャーの活性化からきた影響が非常に大きいんですね。アメリカの企業も、決して長期のものを自前で全部やっているわけではございません。にもかかわらず競争力が高まるということは、そういうアウトソーシング環境がアメリカの中にあるということなんですね。それを日本の中につくりませんと日本の国益は強まっていかないだろうと私は思っています。
 そういう意味で大学における、企業から見たアウトソーシング先ですね、これは技術と人材と両方含めてでございますけれども、そういう環境をぜひ国内につくっていただきたい。そのときに、世界一流のものが大学から出てきませんと、結局産業競争力は高まらないわけですね。
 アメリカもそうなんですが、研究者というのは別にアメリカ人がやっておるわけじゃない。いろいろな国の人がアメリカに来て研究して、成果を残していくわけです。日本の大学なり研究機関も、そういうふうによその優秀な人が来て研究開発して、知的財産を日本に残していく、こういうことも考えていただかないと、早急に競争力が高まるというふうには考えられないんですね。
 ですから、おっしゃるように、創造活動について真剣に取り組みませんと、プロパテント政策の効果は出ないと私も思っております。
 以上でございます。
大森委員 ありがとうございました。
 続いて、これは先ほど来それぞれ御意見の御開陳はあったわけなんですが、第八条第二項に関連して、職務発明の問題、それぞれ基本的な見解といいますか御意見はありましたけれども、改めて私からも伺いたいと思います。
 これは、工業所有権の分野の問題だけではなくて、著作権法の分野でも関連すると思うわけなんですが、お話のあった特許法第三十五条の職務発明規定、ここで第三項あるいは第四項を削除すべきだと御意見もあったわけでありますが、我が国の労使関係の現状あるいは経済情勢を考えると、こういう創造活動を行う者の処遇の確保という見地からこの問題をどう考えるべきか。
 三項、四項を削除することがそれぞれの創造への意欲を喪失させる作用として働く面があるのではないかという面もありますし、雇用関係の中でこの問題を考えなくちゃならないという御意見もよくわかると思いますが、改めてこれは、四人の参考人の方にそれぞれお聞きしたいと思います。
笹島参考人 お答えします。
 日本弁理士会は、この問題に関しまして長い間議論をしてまいりました。幾多の変遷をたどっておりまして、今議論中でございますが、現在のところの見解を申し上げますと、まず、丸島参考人と同様に自由契約という観点から考えていこうというのと、それから、従来と同様に、相当の対価を含んでおります三十五条の維持を、特に従業員の、弱者救済という観点から考えていこうという考え方がございます。その両方の面から選択的に、従業員が選択していけるようにすべきではないかというところが今のところの日本弁理士会の考え方でありまして、今後また変遷をしていくと思います。
 以上です。
末吉参考人 お答えします。
 日本弁護士連合会では、まだこの問題につきまして検討成果を得ておりません。ただ、この問題を考えるに当たっては、二つの点を重要なことではないかと考えております。
 それは、現在の特許法のベースになっております昭和四十一年の恐らく改正作業のときだろうと思いますが、そのときも、工場発明というものが非常に多いのにかかわらず、この職務発明というのはいかがなものかという御議論がたしかあったかと思います。そのような御議論を踏まえてもなおかつ労働政策上お残しになったというこの点、ですから、中山先生が御指摘されたとおり、もう一度労働政策も含めて弁護士会としても意見を考えていきたいという点が一点でございます。
 それから、もう一点は、特許法の三十五条の三項、四項の廃止論というのは、一つは企業側の意向だろうというふうに認識をしております、このままではやっておれぬと。それから、もう一つ注目すべきは、最先端の研究者の方々の中にもこれを廃止すべきという御議論が多々あると認識をしております。
 このような環境をよく踏まえまして、弁護士会としても意見をまとめていきたいと思います。
 以上でございます。
丸島参考人 考えを申し上げます。
 私は、処遇ということを考えますと、今法律で決められている相当の対価というのは、研究者に対する処遇のほんの一部なんですね。その一部のものを法律で保障して、研究開発者の処遇を満足できるのかという問題が基本的にあると思うんです。
 先生から、労働法の問題だとおっしゃるけれども、研究開発者の全部の給与体系とか昇進・昇格とか、そういう処遇の問題は職務発明の三十五条の規定とは関係ないんですね。研究職についていない人たちの企業の中における創造的活動もやはり結構あると思うんですが、そういう人たちは別に法律で対価を保障されているわけでもないということを考えますと、研究開発者の処遇という面から考えると、職務発明の三十五条の規定というのはそう大きな影響を持っていないと私は思っているんです。
 ですから私は、処遇という点では、これは、そういう優秀な人たちを維持しなければならぬという企業は処遇をせざるを得ないわけですから、この辺は企業の自由競争に任せていい範疇で、法律で処遇を決めることはないだろう。現在でも、発明の対価を、法律で相当の対価をと言っていますが、処遇は、企業は自身で決められるようになっているわけですね。現実に、研究開発者を処遇するというのは、発明対価よりももっとほかの面の方がウエートが絶対高いんです。
 そういう意味で、私は、発明の対価だけ残したって企業研究者の処遇には余り関係ないんじゃないかということも含めて、三十五条の撤廃をさせて、企業でそれぞれ独自の仕組みをつくって、優秀な研究者をどんどん入れるようにする競争をさせたらいいんじゃないかというふうに考えている次第です。
 以上です。
中山参考人 私の考えは先ほど申し上げたとおりでございまして、この問題についての答えはまだ出ておりません。
 といいますのは、企業の自由に任せれば非常にいい結果が出る可能性も極めて強い、アメリカなんかはそういうことになっていると思いますけれども、強いだろうと思いますけれども、果たして日本の多くの人がそれを望むかどうかは、私にはわかりません。
 先ほど処遇という話が出ましたけれども、もちろんそれを考えて、すべて考えて対処しなければいけない。そういう場合に、先ほど申し上げましたように、終身雇用制を前提とするのか、あるいはアメリカのような契約社会を前提とするのかという点につきましても、全く異なってまいります。
 最近、労働法関係者も、あるいは雇用問題の専門家もやっとこの問題について注目をして研究を始めてくれるようになりました。従来は特許法学者しかこれを研究しておりませんでしたけれども、労働法関係者も研究を始めてまいりました。したがって、そういうものの研究を待ってやるべきである、早急な結論を出すのはまずい、稚拙な結論はまずいと考えております。
大森委員 最後に、時間がなくなりましたので、中山参考人に、特に戦略本部の作業にも加わってこられた参考人に二点だけ簡単にお聞きをしたいんです。
 一つは、第十条、競争促進への配慮の問題で、これは主語がないわけで、これは、何人もということになるかもわかりませんが、独占という問題と公共の利益、これは先ほどもお話がありましたように、一見矛盾するような問題で、何人もというような形よりは、積極的にここは、施策として配慮をいうのであれば、国や地方自治体がそういう施策を行うということを明確にした方がいいのではないか、責任を明らかにした方がいいのではないかという点と、あわせて、政府の方は、登録された特許権、これが休眠特許というような形が多いという評価もしているようでありますけれども、この点について御意見がありましたらちょっと御見解を述べていただけたらと思います。
中山参考人 十条でございますね。これは、あるいは御質問の趣旨をちょっと取り違えているかもしれませんけれども、先ほども申し上げましたように、独占というのは必ず弊害を伴う、したがって、その対抗措置を考えなければいけないという一般理念を書いているのではないかと思われます。
 大綱におきましても、特に具体的に公正取引委員会に対してあれこれやれということは書いてございませんけれども、しかし、競争政策的な配慮、独禁法的な配慮を忘れてはいけない、それは重要であるということを述べているにすぎない、にすぎないというか、それが大事であるということを述べているわけでございまして、具体的にどうこうしろということを書いているわけじゃございませんので、これでよろしいのではないかと私は考えております。
 将来、もし何か問題が生じた場合には、もちろん具体的に公正取引委員会が何らかの措置をとるということになろうかと思われます。
 第二点は、先生ちょっともう一度……(大森委員「休眠特許が多いんじゃないかということについてのもし御見解があれば」と呼ぶ)はい、わかりました。確かに多いと思われます。したがって、それを活用するということも重要な課題であると考えております。
 そのためには、では一体どうしたらいいのかということでございますけれども、それは、例えば知財のマーケットを確立する。そのためには、まずその前に、知財の評価の方法を確立する等々のことが必要になってくるかと思います。あるいは知財の信託、これは信託業法を改正しなければいけないわけですけれども、信託の問題ということも考えられますし、あるいは知財の証券化とかいろいろな手法を用いて休眠特許を何らか有効活用するということが考えられるというふうに考えております。
大森委員 どうもありがとうございました。
村田委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。きょうは、御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 まず、私は、末吉参考人にお伺いしたいと思います。
 知的財産戦略大綱ですと、東京と大阪の地方裁判所の専門部を実質的に特許裁判所として機能させるため、特許権、実用新案権等に関する訴訟事件について、東京、大阪両地方裁判所への専属管轄化を図るとしております。そして、二〇〇三年の通常国会には、そのための法案を提出するとしております。このことについて日弁連は反対をされておりますが、その最大の理由を御説明していただきたいと思います。
末吉参考人 お答え申し上げます。
 日本弁護士連合会は、御案内のとおり、強制加入の団体でございまして、日本弁護士連合会のもとに全国単位会の各会員がおります。当然、管轄の問題は地域性の問題とつながっておりまして、知的財産関係の訴訟とはいえ、東京、大阪のみに管轄があるとすることは、東京、大阪以外の地域における経済活動等、司法問題につきましてもいわば管轄がなくなってしまうという心配から反対意見が多く、連合会としては反対の意見を差し上げたところでございます。
 以上でございます。
大島(令)委員 では、弁理士の訴訟代理権の付与につきまして、中山参考人と笹島参考人にお尋ねしたいと思います。
 今後、知的財産紛争が増加するにつれ、紛争処理も増加すると考えられます。知的財産関連紛争はすぐれて技術的であり、かつ迅速な処理が求められると思います。
 このような問題に対応するためには、弁理士に知的財産関連訴訟の訴訟代理権を付与すべきとの議論について、中山参考人は、工業所有権審議会では賛否両論の熱心な議論が行われたというふうに聞いております。その結果、審議会の中では、弁理士の訴訟代理権の付与について、まず一点目は、民事訴訟法実務に関する十分な試験、研修の実施ですとか、厳格な職業倫理の確保を条件とするというその基本的な方向については意見の一致を見たということですが、訴訟に携わる弁理士の司法制度における位置づけ等については、具体的な検討の必要という結論にとどまっていると聞いております。
 具体的に中山参考人にお尋ねしたいのは、工業所有権審議会で賛否両論があって、司法制度改革の中で弁理士が、今後その訴訟代理権の付与に対してどのように参加するのか、そういう観点から、どのような賛否両論の意見があったのかお聞かせいただきたいということでございます。
 そして、笹島参考人におきましては、実績としまして、弁理士には八十年以上の、訴訟代理たる、訴訟補佐の制度的歴史があると聞いております。そして、今年、弁理士法の改正が行われまして、弁理士に付与された訴訟代理権は、範囲においては著作権や発明者の権利等には及ばなかったわけですが、弁護士が受任する事件に限られては実質的に訴訟補佐ができるようになったわけですね。これは、特定侵害訴訟代理権が条件つきで認められたということでございます。
 しかし、アメリカにおいてはパテンター等に、特許弁護士ということですか、それに類する人たちが活躍しているということでございます。そういう外国の状況にもかかわらず、弁理士の方たちは今一生懸命、きょうのお話の中でも、能力を担保する研修、基礎研修でいろいろ精進されている、希望者千三百人ありましたけれども、現在八百人の方がこのために勉強をされていらっしゃる、こう聞いております。
 そういうことであるならば、今回の訴訟代理権を獲得することが実績というふうに見てもいいのではないかと私は思いますが、この件に関して、弁理士会としての見解を聞かせていただきたいと思います。
中山参考人 審議会での議論についてはちょっと調べてまいりませんでしたので正確なことは申し上げられませんけれども、もし私の記憶が間違えていればお許し願いたいと思いますけれども、基本的には、やはり弁理士の裁判における能力の問題だろうと思います。
 弁理士の多くの方は理系出身でございますし、特許法についてはもちろん試験を受けて詳しく知識を持っておりますけれども、訴訟というものは特許法だけではどうしようもないわけでありまして、民法や訴訟法等が当然必要になってまいりますし、あるいは法律全体を見渡すリーガルマインドというものが必要になってまいります。恐らくそういう議論だったのだろうと記憶しております。
 しかし、それを克服するためにやはり研修を行い、そして、そのための能力担保をするための試験を行うということであのような法改正になったわけでございまして、これからの弁理士は、制限つきとはいえ、訴訟に大いに関係してまいります。そして、それで十分能力があるということが示されればさらに一歩進むということも十分考えられるわけでございます。
 予習をしてきませんでしたので、この程度でよろしゅうございましょうか。
笹島参考人 お答え申し上げます。
 私ども、今回、弁護士とともに特定の侵害訴訟の代理人となり得る資格を得たということは、世の中の希望と、それから実績と、それから、これからの社会の変遷を予見した内容で認められてきたことでありまして、非常に感謝申し上げております。しかしながら、その過程におきまして、今まで補佐人でやってまいりまして、単独で訴訟代理をやってきませんでしたのでまだまだ未熟であろうということで、今回、種々の制限のついた訴訟代理権となったことだろうと思います。
 しかしながら、私どもは、その現在の立場を大変高く評価しておりまして、日本の知財訴訟は、弁理士と弁護士とともに力を合わせてやってまいりまして、アメリカ等に負けないようなシステムをつくっていきたい、そういうふうに思っております。
 しかしながら、ユーザーサイドから考えますと、弁理士は、発明の創造から権利創生までずうっとやってきまして、知的創造サイクルの終端に行きますと途端に、弁護士とともに、一緒にしなければいけないということになりまして、ユーザーの経済的負担、それから時間的な負担がかかってくるわけでございます。したがいまして、その終端におきましても、弁理士で間に合うものは弁理士でしていった方がいいのではないか。そういうことで、弁理士の単独で訴訟をやる権利、それから弁護士、それから、もっと大きな事件になれば弁理士と弁護士の共同大弁護団が構成されることも考えられます。
 このような三態様の中で、ユーザーが選択できる制度、こういうことが望ましいのではないかというふうに思っておりまして、私ども今一生懸命、弁護士と一緒に共同してやる訴訟の代理について実績を残して世の中に認めていただきたいなというふうに思っております。
大島(令)委員 では、丸島参考人にお伺いしたいと思います。
 金融制度についてなんですが、金融機関はこれまで有形の担保に固執してきて、不動産などの担保がなければなかなか資金提供してくれない、これはキヤノンさんのような大企業ではなくて中小企業ということでございますけれども、やはりこの法律はベンチャー企業とも関連しますので、そういう観点から、今の土地担保主義から、経済産業省も、こういう無形の知的財産に対してもやはり金融機関が資金提供をするべきではないか、そういう方向を出しております。
 そういうことで、企業者側の立場から、今後金融機関に期待すること、ベンチャービジネスにとって個人投資家の活躍が期待できるような、個人投資家を育てるような施策に対して、政府の側にとってどのようなものが望まれるのか、御意見を聞かせていただければと思います。
丸島参考人 考え方を申し述べます。
 知的財産を担保という形で考えるということは、不動産の場合に比べると非常に難しさがあるんじゃないかと私は思っておるんです。
 方向性は非常に結構だと思うんですが、知的財産の性格は、独占実施権があるのではなくて排他独占権という性格で、人の実施するのを排除する権利ではあるんですが、そのものを実際使えるという保障はないんですね、特許をとったということでも。そういう意味で、資産価値を評価するのに非常に難しさがあるなと私は感じているんですね。
 そういう意味で、不動産と同じような形で、固定の価値があるから幾らお金を貸す、担保にとるというような仕組みを考えると、すべてのベンチャーさんの資産を評価するのに非常に難しさが出てくるんじゃないかなと。
 今考えていらっしゃるのは、実績がある知的財産を評価して、資産化してお金を貸そうというようなことを考えていらっしゃるようなんですが、私は、むしろ実績のない知的財産に対していかにお金を提供するかというのがベンチャー育成のために大事だと思うんですね。そういう意味で、資産化して担保という感じよりは、私は、ベンチャーキャピタルというんでしょうか、やはりちょっと冒険性を持って育ててあげるという仕組みが日本の中にあるべきだと思うんですね。
 それともう一つ、これはお金の問題だけじゃなくて、本当にベンチャーを育成するならば、私は、先ほど出た遊休特許の開放なんという問題じゃベンチャーは育たないと思うんです。もっと積極的な施策も必要だろうと思っております。
 と申しますのは、ソフト関係のベンチャーですと、自分の創造したもので第三者から影響はされないわけですけれども、ハード系のベンチャーの、実際に物をつくろうとしたときは、御自身で発明したものだけでは事業にならないんですね。その事業化に際しては、第三者の持つ知的財産というのがいっぱい必要になってくるわけです。そういう意味で、事業化するベンチャーというのは大変だろう。大企業でも新しい事業に参入するというのは非常に大変なんですね。それと同じように、ベンチャーはもっと大変だと思います。ですから、ベンチャー育成と一言で言うんですが、ベンチャーのあり方も考えないといかぬだろうと私は思うんですね。
 例えば、合弁で立ち上げるとか、何かベンチャーの性格も、開発型ベンチャーとか、開発成果を売ってまたさらに開発するとか、そういったいろいろな形も考えてベンチャー育成を考えるべきだろう。一律的に事業化を目指すベンチャーだけだと、では事業化するとき第三者権利をどうそのベンチャーに対して考えてあげるのか。資金も大事ですけれども、第三者の知的財産も相当影響するんですね。ですから、そういうことを考えてベンチャー政策をとりませんと成功しないんじゃないかと私は思っております。
 以上です。
大島(令)委員 ありがとうございました。
 では、最後に、中山参考人にお伺いします。
 この法案には大学の責務が盛り込まれております。最近の報道では、学生の学力の低下が言われております。これは大学にとっても悩ましい問題であると思います。また、国公立大学も独立行政法人化ということで、学長さんたちもどのようにして研究開発費の予算をとるかということで悩んでいるというふうに聞いております。
 現実的に、人材の育成とか研究に対しましてこの法案が実効あるものになるために、国公立大学、大学の研究というものに対して、国に対して、どんな側面から今後、今の大学の改革の流れの中で、国はするべきではないかという個人的なお考えがあれば聞かせていただきたいと思うんですが。
中山参考人 昔から私はこう思っているんですけれども、国が一番すべきことは規制緩和、余り関与すべきではないということだろうと思います。
 これは発明の問題に限らず、我々国立大学の教官が何かをしようと思うときに必ず突き当たるのが国の規制でありまして、あれやっちゃいかぬ、これやっちゃいかぬという、海外では想像もできないような規制のもとで行っております。
 知的財産に関しましては、しょせんは、民間企業でもわかるとおり、これは利益を生むための道具でございまして、そういうものを大学に一部に持ち込もうというときには、やはりこれは自由にしてもらわなければだめだというのが基本だろうと思います。
 それから第二に、やはり大学というのはそもそもが営利のための目的じゃございませんので、そこへ知的財産制度の考え方を持ち込むということは、やはり知的財産本部、これを立派なものにしていかなければいけない。これも将来的にはやはり自立が好ましいと思いますけれども、とりあえずは、やはりこれに対する支援というものを十分に行わなければこの活動はうまくいかないと思います。
 ただ、これは国の問題というか、大学の問題なんですけれども、国が予算をつけるといえば、必ず大学は、大学というか、あらゆるところがそうですけれども、手を挙げて予算をもらう、それを消化するというので終わる場合が多いわけですけれども、大学側といたしましても、やはり社会に還元すべきものは還元する義務がある。大量の国費を導入して、社会に還元すべき情報、具体的に新しい技術を持ちながらそれを還元してこなかったという点を反省し、大いに還元していく必要がある。大学側はそういう意識を持つ必要があるだろうと思います。
大島(令)委員 どうもありがとうございました。
村田委員長 井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。きょうは参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。
 大変時間が限られておりますので、私は丸島参考人と末吉参考人にお聞きをしたいと思うんです。丸島参考人には二問、末吉参考人には一問であります。さらに時間が余れば、丸島参考人にもう一問御質問させていただきたいと思います。
 そこで、丸島参考人にお伺いしたいのは、いかに制度が完備されましても、知的財産権、私は主として産業用の特許権等を言っているのでありますけれども、それが侵害されているという事実をつかまなければ保護されないわけですね。日本の国内におきましては、それぞれの企業が監視をしておりますから、これは侵害の事実というのは比較的容易に突きとめられると思うのでありますけれども、外国、例えば中国なんかは大変難しいと言われているわけですね。
 そこで、ちょっとこれは適当であるかどうかわかりませんが、まず、キヤノン株式会社は海外でこの特許権侵害の事実を突きとめるための組織といいますか、それをどの程度やっておられるのかということが一つと、それからもう一つは、そうはいいましても、これは民間会社が個人的に中国なんかで活動するというのは非常に限界があると思うんですね。ですから、私は、半ば公的な何かの組織できちんと摘発をしていかないといけないんじゃないか、こういうぐあいに考えるんですが、これらの点についてのお答え。
 それからもう一つは、研究開発についての税制の問題。このまとめられたのによりますと、丸島参考人は、どちらかといいますと研究開発促進のために政策減税をお考えのように思うのでありますけれども、研究開発というのは成功するかしないかわからないんですよね。だから、企業としては非常に慎重にならざるを得ない。特に昨今の企業経営の環境というのはそうだと思うのであります。
 私は、この研究開発のためには、どちらかというと法人税そのものの減税の方がいいんじゃないかと思うんですよね。税金を納めているような企業に力をつけさせる、こういうことなんですね。税金を納めている企業というのは限られているからいいじゃないかということもありますが、私は、どちらかといいますと法人税本体の減税の方が、より研究開発を促進していくという視点からは有効じゃないかと思うんですが、この点についての御所見をお伺いいたしたいんです。
 それから、末吉参考人には、この基本法が成立した後もなお立法の整備が必要だというふうなことを述べておられましたが、どんなことを今考えておられるのか。差し当たってはこれとこれとこれについては早い立法の整備が必要だというようなことがあればお聞かせいただきたいということであります。
 以上であります。
丸島参考人 お答えします。
 まず第一点目の、権利侵害をどうして発見しているのかという御質問でございますが、権利侵害ということですと、これは先進国の中でも当然監視体制はとっております。
 具体的にどうやっているかというと、ライバル会社の新しい商品を購入して商品を分解して、私どもの知的財産をどれだけ使っているかということを、目ぼしい商品が出るたびにそういうことをやっております。ですから、これは先進国であれ発展途上国であれ、同じような形でやっております。
 ただ、今御指摘になった大きな問題というのは、模倣の問題だと思うんですね。これは特許権侵害という問題とちょっと異質でございます。特に中国の場合は、御承知のように、司法がそう機能していないと私は理解しておるんですが、そういう意味で行政的処置をお願いしておる。実際の模倣現場をつかまえて、見て、情報提供して、それは確かにその物は押さえていただける、行政的には処置していただけるんですが、費用を全部こちら側が負担して、現場まで押さえて情報提供して、それで押さえてはくれるんですが、結局金銭的補償は何も得られないわけですね。これですとモグラたたきの連続になってしまって、根切れになってしまう。そういう意味で、企業の努力だけでは限界が来ているように思います。
 そこで、模倣品対策としては、国家的な後押しというんでしょうか、そういう二国間の外交を通じての処置も企業としてはお願いしたいなという気持ちでいろいろ発言もしてまいりましたし、今もその気持ちは変わっておりません。
 それから、第二点の減税でございますが、おっしゃるように研究開発そのものが成功するかどうかわからぬということですから、そういう研究開発に対する減税ということは非常に大事な点だと思っております。
 今、生産減税というふうにおっしゃられた意味は、できたものの生産のときのという意味なのか、ちょっと……
井上(喜)委員 いや、政策減税です。政策減税といいますのは、例えばその研究開発費だけを特別に見るということですね。政策減税です。焦点を絞って減税をするということです。
丸島参考人 どちらが効果があるのか、私、具体的には減税の方は詳しくないのでちょっとわからないんですが、ただ、成功するかどうかわからぬ点に対して研究開発費をいっぱい投入する、これは相当な勇気が要ることですから、そういうものをバックアップしていただく減税というのは必要じゃないのかなと考えております。
 その程度でよろしゅうございましょうか。
末吉参考人 お答え申し上げます。
 私が考えておりますところは、一つには、特許法など、いろいろここまで合理的に随分改正をいただきました。これに加えまして、侵害訴訟の中で無効判断をどうするかという点、及び今の裁判所の調査官がかかわっておられるところを、もう少し専門的な委員ということで制度化をいたしまして、審理にコミットできるような制度改正が考えられるのではないかと思います。
 それから、これは大問題だと思いますが、先ほど来、営業秘密の重要性についていろいろな方々から御指摘がございましたけれども、裁判の公開と営業秘密をめぐる訴訟における審理、これをどう調和をとってやっていくかという点が大きいのではないかと思います。
 また、これは当委員会とちょっと関係がないかもしれませんが、私、法曹養成の問題も極めて大きな制度改革の課題だろうと思っておりまして、先ほど弁理士の担保研修のお話が出ましたが、この担保研修は、ある意味で弁護士と弁理士の一つの大きな共同作業でございます。これを通じまして、弁護士側も知的財産を専門とする弁護士をどう育成していくか、さらには知的財産の専門家も、特に裁判官、これをどのようにふやしていくかという点につきましても、今後いろいろ考えてまいりたいと思います。
 以上でございます。
井上(喜)委員 若干時間があるようでありますので、丸島参考人にもう一問お願いしたいんですが、産業の空洞化、とりわけ製造業の空洞化というのが最近言われておりますが、さらに最近では研究開発の空洞化が、ちょっと述べておられましたけれども、大変進行しつつあるというふうに思うんですね。
 この間も財務省の主税局の人たちと話をしますと、今度、研究開発での四分野、ITとかライフサイエンスだとかゲノムだとか環境、これらについて、どういうような研究開発の状況になっているのか、どういうような税法上の特例措置がとれるのかというふうなことを聞き取り調査したらしいんですね。そうしましたら、出てきたのはITだけだというんですよ。今言われているような、そういうライフサイエンスだとかナノテクノロジーなんかに関連した研究開発は出てこなかったというんですよね。
 私は、減税の要件というのをかなり厳しくしたというようなこともあるいはあるのかもわかりませんが、恐らく研究開発の空洞化というのが、つまり海外へ行くといいますか、成果品を買うようなことになりつつあるんじゃないかというように思うんですが、空洞化を防ぐために、大学の研究の深化でありますとか、あるいはアウトソーシング先の充実みたいなお話をちょっとされましたが、本当に何をきちんとすればいいのか。今言われたようなこと、前の質問者に対してお答えになられたようなことでいいのか、もう一度、再確認の意味で私質問させていただきます。
丸島参考人 非常に難しい点が多いとは思うんですが、基本的には各国、やはり自国の競争力を強化するために国策を練っていると思うんですね。
 例えば、自分の国を栄えさせるためには最先端の技術は外には出さぬ、こういう政策もあり得ると思います。そうなってきますと、外に求めればいいというアウトソーシングを外国に求めていっても求められないという事態も来ると思うんですね。私は、そういう意味で、日本の国益を考えれば、日本の中でそういうアウトソーシングができる環境をつくることが絶対必要だ。ただ、そのときに、いいかげんなレベルのものしか求められなかったら、これはやはり産業競争力は高まらない。ですから、世界最先端と競えるぐらいの、そういう技術をアウトソーシングできる環境が欲しいというのが、実際、産業界が求めている内容だと思うんです。
 そういったものを今の大学でできるのかという心配も先ほどの御質問の中に多少入っていたと思うんですけれども、私も、いろいろ大学改革の中でお話を聞いていると、すぐにはなかなか難しさがあるよと思うんですね。
 そういう意味で、急場しのぎではございますけれども、外国人の研究者もどんどん招聘して日本で研究していただくということも一緒に含んで、そして成果を日本に置いていただく。それで日本の国益にかなうということをやはり並行してやっていかないと、日本のアウトソーシング環境というのはやはり世界一流の環境でなければこれは競争力は高まらない、この辺が一番大切なところだと思うんですね。中途半端の運用をしますと、結局効果が出ないと私は思っております。
 以上です。
井上(喜)委員 どうもありがとうございました。終わります。
村田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 次回は、明十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十一分散会


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