衆議院

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第7号 平成14年11月20日(水曜日)

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平成十四年十一月二十日(水曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      小泉 龍司君    佐藤 剛男君
      桜田 義孝君    中山 成彬君
      西川 公也君    林  義郎君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松島みどり君    森  英介君
      山本 明彦君    渡辺 博道君
      生方 幸夫君    小沢 鋭仁君
      川端 達夫君    北橋 健治君
      後藤 茂之君    中山 義活君
      松原  仁君    山田 敏雅君
      山村  健君    漆原 良夫君
      福島  豊君    工藤堅太郎君
      大森  猛君    塩川 鉄也君
      大島 令子君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院長)     佐々木宜彦君
   参考人
   (新潟県知事)      平山 征夫君
   参考人
   (福島県双葉町長)    岩本 忠夫君
   参考人
   (東京大学大学院工学系研
   究科教授)        近藤 駿介君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)
 独立行政法人原子力安全基盤機構法案(内閣提出第七一号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案の両案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 本日は、参考人として、新潟県知事平山征夫君、福島県双葉町長岩本忠夫君、東京大学大学院工学系研究科教授近藤駿介君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず平山参考人にお願いいたします。
平山参考人 おはようございます。新潟県知事の平山でございます。
 私は、新潟県の柏崎の出身でありますけれども、現在、新潟県そしてまた柏崎では、胸にこの青いリボンをつけておりますけれども、この東京電力の不正事件とあわせまして拉致問題が大変大きな話題となっています。そのこともありまして、ややこの東京電力の不正事件が、ニュースバリューとして拉致事件の陰に隠れている嫌いがございますけれども、私どもにとりましては大変大きな問題だというふうに思っております。
 GE社からの内部告発がありましたけれども、そのことが対外的に発表されるその日まで、直前まで知らない状態でございました。そして、そういう間、刈羽村の村長は、プルサーマルについての地元の集会を二十回開催し、意向集約に努めておったわけであります。そして、最後の集会のその日に、この内部告発の問題が表に出てまいりました。何のためにプルサーマル問題の集会を開いておったのかむなしい感じがするという刈羽村長の言葉は、実感をそのままあらわしていたかと思います。
 安全確保においては、立地の大前提がそこにあるわけでありまして、安全管理に関する虚偽、不正ということは、それだけで長年築いてきた地元との信頼関係が根底から覆ったわけであります。
 原子力発電という特性を考えますと、その内容の重さ、軽さにかかわらず、虚偽の報告に基づいて安全が図られたということについては、その信用が根底から崩れるということであります。特に、その後起こりました格納容器の漏えい検査の問題については違法行為でありまして、安全に直接かかわる点では、それまでの次元とは異なる悪質なものであるというふうに受けとめております。
 なぜこうした事件が引き起こされたのか、事件の全貌の徹底的な解明、究明と同時に、なぜこういう不正が起こったのか、真の原因の究明なくして適切な再発防止対策はないものというふうに考えております。
 立地地域住民の不安と東京電力の責任について申し上げたいと思います。
 私どもとしては、問題はいまだ何も終わっていないというふうに思っております。一連の不正によりまして、立地地域の住民は、かつてない不安とそして不信を覚えております。全号機についてできるだけ速やかに再点検を行っていただきたいというのが偽らざる住民の心情であります。これは最低限の責任であり、信頼回復に向かっての第一歩がそこから始まる。そしてまた、国は、みずからの責任をもって、その点検状況を確認の上、その結果を県民、国民に知らせていただきたいというふうに思います。これは新潟県議会だけではなくて、立地市村議会そして住民の総意であります。
 そして、原子力の安全は、これまで、国による規制と事業者の誠実なる自主点検活動がそのもとでありました。しかし、一連の不祥事でその両面が不備、不明確であったという実態があったわけでありまして、その意味では、事業者のみならず、国の信頼も地元の住民からは失われてしまったということを御自覚いただきたいというふうに思っております。
 今回の法改正案では、定期自主検査を法的に位置づけるということ、それから罰則を強化するということが打ち出されております。事業者による自主点検をめぐる取り扱いが制度上不明確であったということが今回の事件の背景になっていることを考えますと、その措置は必要であるというふうに思います。
 しかし、このことが必ずしも事業者側だけに非があったということを示すものではなくて、国への通報制度、そしてその運用が不明確であったということも問題点としてあることも事実であります。国の責任に帰する要因が少なからずあったことを指摘しておきたいというふうに思います。
 また、これらの規制措置の強化によります効果にはおのずから限界があります。事業者による主体的な、誠実な安全管理を担保するいわゆる企業倫理がきちんと果たされるということが担保される第三の枠組み、企業内でのダブルチェックあるいは情報の公開等々における措置も必要であるというふうに思います。その意味で、発電所地域情報会議の設置ということが議論され、その中に地域住民、特に反対派の人たちも入れたらどうかという議論が出ているのは、一つの検討すべき内容だというふうに思います。
 運転開始後のいわゆる維持基準の議論がされております。自主点検等々で発見されたひび割れ等に対しまして、科学的見地から安全性の評価を行い、そして対策と検討を実施することについては、私としては、その必要性については基本的には理解をしている立場であります。設置時における基準が運転開始後もずっと守られていくこと自体はあり得ないわけでありますから、運転開始後のルールについてきちんと定めておくことが必要であるということは、そのとおりだと思います。
 そうした基準は、欧米各国でも早くから採用されておりますし、我が国においても議論が始まっておったところでありますけれども、逆に言えば、原子力発電が運転開始後今日までの長い期間、なぜこのことが議論され、定められておらなかったのか、そのことについて、むしろ不作為とも言える事柄ではないかという思いをしておるところであります。
 しかし、この時点において、今このことが議論されていることに対して、地元住民からは、不安感があることも事実であります。押しなべて新品同様の機能を維持するということを絶対条件としてもし求めてきたということであるならば、国民にとって、維持基準の採用は安全性として見れば後退というふうに映るわけでありまして、不安を惹起することはある意味で当然のことであります。なぜよりによってこの時期なのかという疑問もあります。
 その批判に対して、その必要性を含め、安全の確保に関する科学的でオープンな議論が十分にされるということ、その結果が国民に適切に説明され、そして理解が図られるということがなければ、立地住民といたしましては、この時期において、そのことよりも、今回の不正事件の全容が解明され、その原因が究明されることがまず第一であるという声が強くなるだろうというふうに思います。
 そして、今回の一連の事件は、安全規制に一元的な権限を持ってその責任を負っておりました国の規制のあり方にも多くの問題があったことを示しているように思います。
 具体的には、自主点検の位置づけ、そして、その結果の取り扱い、それに対する不明確さ、さらには、事業者の自主保安活動に対するチェック体制の不備等々であります。これらの個々の問題に対する法制面での対応といたしまして今回の法律改正が提案されているものというふうに理解しております。
 しかし、今最も問われておりますのは、原子力の安全確保に対し失われてしまった信頼をどう取り戻していくかということであります。
 安全の確保は、原子力施設が立地、存在することの大前提であります。新潟県は、これまで一貫いたしまして、安全の確保が図られるということ、そして地元の住民の理解が得られるということ、この二つを条件に、前提に、国のエネルギー政策に協力をするという姿勢でまいりました。
 安全に責任を持つ国の地元住民に対する説明責任が果たして十分であったかどうか、このことについては、常々これまでも国に対し、表に立って安全性に一義的に責任を持っている国のみずからの口から、地元に対し安全性についての説明を行っていただきたいということを繰り返しお願いしてきた私どもにとりましては、今回の不正事件の発生を振り返ってみますと、やはりそのことが十分でなかったと言わざるを得ないのかなと思います。一連の事件で損なわれた国と事業者への地元の住民からの信頼の回復についてどう行っていくか、このことを真摯に御議論いただきたいというふうに思うわけであります。
 そして、最後のよりどころであります原子力に対する安全は、それを規制する機関に対する信頼そのものであります。そしてそこには、人間同士の信頼関係というものが目に見えた形で築き上げられていかなければならないんだろうと思います。安全規制の実務を所管する原子力安全・保安院の機能の充実強化は、その意味で、もとより必要であるというふうに思います。
 保安院のこれまでの取り組みには、住民の安心あるいは信頼を確保するという視点では、足りないものがあったと言わざるを得ません。今回の一連の事件の中でも、安全・保安院の対応につきましては、なるほど安全については十分の責任を持って行動していたように思いますけれども、住民に対する安心あるいは信頼という問題については、全くその概念として配慮がなかったように私には思えてなりません。
 そして、そのかなめとして、安全規制に係る一つの政策の企画決定を担っております原子力安全委員会との関係におきましても、国民にはその顔が見えず、このダブルチェック体制の意味するものと、そしてその信頼性についての思いが国民、住民には全く感じられないということも、今回の問題から出てきた一つの課題ではないかと思います。
 規制体制のあり方を考えていく中で、現在のダブルチェック体制が本当にきいているのかどうか、そのことについて触れれば、やはり原子力安全委員会は、保安院からの情報をもとにそれをチェックしているだけであって、一つの、独自の安全性に対する哲学なり思いを持って事に当たっていたというふうにはなかなか思えないわけでありまして、このことも含めまして、独立論そのものの議論も重要でありますけれども、ダブルチェック体制を含めた、こうした原子力安全委員会を含めたあり方についても御議論いただきたいというふうに思うわけであります。
 エネルギーの問題は、すべての国民、現在この世に生きている国民の問題だけではなく、将来の世代にわたる問題であります。その意味で、国民の理解と協力なくしてはその円滑な運営はおぼつきません。原子力の利用はその柱の一つでありますけれども、私はこれまで、その政策方針について、国民的な合意の形成が必要であるということを言い続けてまいりました。しかし、いまだそのことは成り立っていないというふうに思います。
 一連の事件の影響は大きく、立地計画地点を中心に、原子力のあり方そのものに対する厳しい議論が起こってくることは間違いありません。今回の不祥事は、プルサーマル問題にとどまらず、日本の今後の原子力の政策そのものに大きな影響を与えるものというふうに思っております。
 冬場の電力の需要期入りを理由に、今住民から要望の出ている点検の早期実現が需要期明けまでもし延びるというようなことであれば、その対応についての不安、そして不信感が高まるように思います。最大限の節電努力をして、一日も早い、可能な限り前倒しな点検をお願い申し上げる次第であります。そのことをもって初めて信頼回復の第一歩が始まるというふうに思います。東京電力の原子炉停止点検により、首都圏におけるこの冬の電力需給に影響が出ることもあり得るという覚悟を私どもはすべきだというふうに申し上げたいと思います。
 エネルギー問題は、国、事業者の、そして立地自治体だけの問題に終わらせるものではないと思います。今こそエネルギー政策に対する国民的な議論を起こし、立地市町村における、村を、町を、市を二分するような地域発展のための原子力発電の誘致が、逆に地域における大きな対立を生んできたということのみに終わることのないように、この今回の東京電力の不正事件から、改めて原子力の立地のあり方について、そして、その安全の確保についてどうあるべきか、大きな視野から御議論いただけるようお願いを申し上げまして、私の参考人としての意見陳述とさせていただきます。
 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、岩本参考人にお願いいたします。
岩本参考人 おはようございます。福島県双葉町長の岩本忠夫であります。
 福島県の双葉地方は、現在、第一原子力発電所が六基、さらに第二原子力発電所が四基、計十基ございます。三十数年間になりますけれども、多少のトラブルはございましたが、比較的順調に、安心、安全な運転を今日まで続けてきたわけでありますけれども、八月二十九日、突然、今平山知事の方からもお話がございましたように、東京電力の一連の不正事件が発生をし、そしてそれを聞きつけることができました。
 これまで地域の住民は、東京電力が、国がやることだから大丈夫だろう、こういう安心感を持ってやってきたわけでありますけれども、今回の一連の不正の問題は、安全と安心というふうに分けてみますと、安全の面では、当初から国やまた東京電力は、二十九カ所の不正の問題はありましても、安全性に影響はないということを言われてまいりました。したがって、安心の面で、多年にわたって東京電力、原子力との信頼関係を結んできました地域の者にとっては、まさに裏切られた、信頼が失墜してしまった、こういう思いを実は強くしたわけでありまして、この面が、何ともやりきれない、そういう思いをし続けているのが今日であります。
 ただ、住民は比較的冷静であります。それはなぜかといったら、現在、第一、第二、十基あるうちの六基が停止中であります。そして、その停止されている原子力発電所の現況からすれば、何とはなしに地域の経済がより下降ぎみになりまして深刻な状態にあります。雇用の不安もございます。
 何となく沈滞した経済状況に拍車をかけるような、そういう重い雰囲気が一方ではあるわけでありまして、原子力と共存共栄、つまり原子力と共生をしながら生きていく、これは、原子力立地でないとこの思いはちょっと理解できない面があるのではないかなというふうに思いますが、原子力立地地域として、原子力にどのようなことがあっても、そこから逃げ出したり離れたり、それを回避したりすることは全くできません。何としてもそこで生き抜いていくしかないわけであります。
 そういう面から、国も東京電力もいずれはちゃんとした立ち上がりをしてくれるもの、安全性はいずれは確保してくれるもの、こういうふうに期待をしているからこそ、今そう大きな騒ぎには実はなっておりません。表面は極めて冷静な姿に実はなっているわけであります。
 今東京電力が、例えば私の双葉町の場合は十七ほどの行政区がありますが、そこで毎日のように今回の不正の問題等についておわびし、同時にまた、この詳細について説明をしております。説明会を見ますと、余り多くの人たちは集まってきません。例えば私の方の行政で、年に一遍、行政懇談会なんかやりますと、四、五十人集まります。例えばそういう地域でも七、八人程度しか集まってこないんですね。いずれはちゃんとしてくれるだろうという思いが、表向き余り大きな関心を示さないということになっているんでしょうか。ともあれ、そういう状況に実はあります。
 しかし、何としても、長いこと信頼関係を結んで、そういう関係で続いてきました私どもの地域の中では、何ともやりきれない気持ちでいることは確かでありまして、国や電気事業者、まさにそういう実態を十二分にとらえながら、大いに反省をし、そして今後絶対かかる不正は再び起こさない、その手だてを何としてもつくっていただきたいというのが私どもの願いであります。
 今回の事業者の自主点検、これに大きな不正があった、報告をしなかった、そして隠ぺいをしたり偽造したりという事柄も中にはあったようでありまして、なぜそのような事柄が起きてしまったのか、事実はなかなかわからないところがあるわけでありますけれども、しかしそこに、国とそして電気事業者の関係の中におけるダブルチェックというものがあったのかどうか。
 かつて私はこういうことを聞いたことがあります。原子力発電所運転当初でありますが、東電代行という点検があったようであります。これは恐らく国にかわって東電が自主点検をやる、点検をやるということだったのかな、今にして思えばそういう感じでいるわけでありますけれども、ともあれ、東京電力が自主点検をやったものをさらに国がある程度の、ある程度のというか、それをさらに二重にチェックをしていくという体制を今後きちんとやるべきではないのかな、こういうふうに実は思っております。
 今回、電気事業法並びに核燃料物質、さらにまたこれらの原子炉の規制について法案が出されているようでありますけれども、点検をやる際にその維持基準というものが、やはり、そう性急ではなくても、そういう姿をつくって、これならば大丈夫だと、そういう検証ができるような制度があってもいいのではないか、こういうふうに私は考えております。
 さらにまた、独立行政法人の原子力安全基盤機構の問題でありますが、私は、従来、推進とさらにまた規制、保安という面を区別しましても、しょせん人間がやることでありまして、表向き規制があっても、どのような独立した法人でありましても、裏でつながっていたのではどうにもならない。したがって、これは点検者もそうでありますけれども、その人間がいかに自己規制をして、そして自分の果たす役割、使命というものを十二分に認識しながら対処をするという基本的な姿勢がない限り、どのような法規制をつくりましてもそれは無に等しいということになりはしないかという危惧の念が実はあるわけであります。
 したがって、私は、電気事業者の点検者においても、また国、保安院の検査官でありましても、人間として、点検者として、検査員としてどうあるべきかという人間の人格とか品格とかというものがやはり大きく問われる、今回の問題にもそういうことが一つ言えるのではないかなというふうに実は実感をしているところであります。
 また一方では、今回の一連の不正の問題等について、国のエネルギー政策やまた原子力政策がこれでもって崩壊したとか、これでもって大きくつまずいたとかということを言われる方もいらっしゃいますけれども、私は、これは政策とは基本的に違う、こういうふうに実は考えておりまして、いたずらに今回の不正の問題を政策の問題にすりかえてしまうというのはやはりおかしいんじゃないかな、こういうふうに自分なりに実は感じているところであります。
 ともあれ、原子力はあくまでも安全でなければなりませんし、地域の方々が安心して過ごしていけるような、そういう地域、環境をつくるということが大きな使命であるというふうに実は考えております。
 もう一つ、この際お願いをしておきたいことは、地域環境の整備であります。かつては、避難道路などという、避難ということをいいながら道路の整備をお願いしたいということは、余り口には出しませんでした。しかし、近年は、どうしても万々が一に備えてそのような道路、周辺の道路の整備や何かをぜひともお願いしたい、こういうことを申し上げてまいりました。常磐自動車道の問題も一つであります。さらにまた浜街道、広野小高線という道路がありますが、これらの道路の整備についても同様であります。
 さらにもう一つ、横軸としまして、福島県の二本松から双葉地域にかける阿武隈山系横断道路という、これはまだ印も何もついておりませんけれども、私たちは、これは避難道路、つまり横軸の骨格の道路としてどうしても必要だ、こういうことでお願いをしているところでありまして、どうぞ御理解をいただきたいというふうに考えております。
 今回の事故を振り返ってみますと、かつて茨城県東海村のジェー・シー・オーの事故、この教訓が果たして生かされているのかどうかということを痛切に感じております。その際に深谷通産大臣が私の方に参りまして、ジェー・シー・オーの施設と原子力発電所の施設は違う、原子力の施設は多重防護策をとっていて、万々が一の事故があっても完全に放射能物質を封じ込めることができる、だから安全である、こういうことを明言されていたようでありますけれども、私も、これには決して逆らうつもりはありませんし、そういう原子炉の体制にはできている、こういうふうに考えておりますけれども、かつての事柄について、十二分それを教訓としてこれから原子力行政に生かしていただきたいとお願いを申し上げまして、私の意見陳述にかえさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、近藤参考人にお願いいたします。
近藤参考人 おはようございます。近藤でございます。本日はお招きいただきましてありがとうございます。光栄に存じます。
 私は、お手元の資料に従いまして、三点について意見を申し上げます。
 第一は、御審議いただいている法案提出の原因となりました問題の発生要因についての私見でございます。
 私は、この原因の第一は、原子炉設置者が、原子炉施設の安全確保活動の社内における管理と検証を行ういわゆる品質保証体制、これを整備、機能させることを怠っていたということ。そしてまた、一九九一年、美浜発電所の蒸気発生器細管破断事故が起きたわけですが、このときに通産省は、この品質保証体制を経営のトップに属するものとして整備することを全国の原子力発電所設置者に提言したわけでございますが、その後のフォローアップを怠っていたのではないかということを指摘したい。
 それから第二は、規制当局が当時、保安検査制度を持たない、それから専門技術的な面で行政資源が不足していたこともあるのでしょうか、安全性を定量化する有力な手段として国際的評価を確立しております確率論的リスク評価、これを重視していなかったということもありまして、その重要な入力となる点検結果や補修活動のデータが持つ規制政策上の意義、これに対する認識が現在より希薄であった。したがって、発電所に運転管理専門官を常駐させていたのにもかかわらず、専門官を通じてこの種のデータを体系的に収集、活用するという活動を行っておらなかった。したがって、結果として、そうした設置者のこの種のレベルの保安活動についての不正を知り得なかったということなのかなということを思っております。
 それから三番目。規制当局は、運転に支障を与えるおそれがある等のあいまいな表現を持つ報告基準を制定しておったり、また、先ほど来御指摘のように、周辺諸国も既に採用し国際常識になっています学術上の知見を踏まえたいわゆる維持基準、この制定を怠って、いわゆる使用前検査の基準を運用によってその維持基準として使うという、規制にかかわる技術的判断の基準というのは、最新の知見に基づき明確にすることというのが基本原則でございますが、この原則に対する忠実さを欠いていたということ。また、私ども関係学会におきましても、このような事態を改善することを求めるとか、あるいは積極的に基準の改正案を学会の規格として提案する、そういう努力を当時は少なくとも怠っていたということも反省として申し上げるべきと思います。
 それから四番目。これは申告制度に関することでございますが、国会によって九九年に新設された安全情報申告制度について、その運用のあるべき姿を広く専門家を集めて検討して体制を整備し、これを的確に運用するという努力がいささか不十分であったということなのかなということが申し上げられると思います。
 第二に申し上げたいことは、この問題の再発防止を図るときの基本的考え方でございます。
 その第一は、規制当局には、原子炉が安全に運転されているということを運転者とは独立に保証する責任がある。それから第二として、運転者によい安全文化を期待するには、規制当局自身がよい振る舞いをしなくてはならない。これは、国際原子力機関等で決められています基本安全原則にもうたわれています国際通念というふうに私は思うわけですが、このことを基本原則として行動しなければならないということを申し上げたい。
 そうすれば、当然のことながら、政府は規制当局に、このことを可能ならしめる適切な行政資源、特に調査、分析、検査等の専門的技術能力を整備するべきでありましょうし、一方、規制当局は、法の定める説明責任の観点から、規制すべき事項と規制しない事項の区別や、合理的かつ明確な安全基準を、最新の知見を踏まえてその妥当性を社会に説明しつつ制定して、以上をあわせて、効果的かつ効率的な行政活動を行うべくということが指摘できることになるわけです。
 第二の基本原則は、設置者の実施する安全確保活動の最大の顧客、最近の品質保証活動では顧客満足ということが重視されますが、最大の顧客は発電所の存在する地域社会であるということを原則とすべしということです。そうしますと、当然のことながら、顧客満足等を目指す設置者の品質保証活動というものにおいては、点検結果とか、あるいは付随するさまざまな補修活動等の安全確保活動の内容を地域社会に対して公開し、丁寧に説明し、その意見をみずからの活動にフィードバックしていく、こういう地域社会におけるコミュニケーション活動を最も重視すべきということがおのずから導かれるからであります。
 それから第三に申し上げたいのは、政府に求められる具体的再発防止対策ですが、これは四つから成ります。
 一つは、設置者が定めて、規制当局が原子力規制法等に従って災害の防止上十分な内容であることを条件に認可する保安規定に、設置者の安全確保活動に係る意思決定の基準とか実施体制、それから設備等の点検、ふぐあいの管理、点検結果の評価基準あるいは記録のあり方等々、さらに加えて品質保証体制、こうしたものをより詳細に規定するということが重要ではないかというふうに考えます。
 第二は、規制当局は、そうして詳細に定められました保安規定に従って、当然のことながら設置者がなす安全確保活動あるいは品質保証活動、これが適切に行われることをみずから確信し国民に説明できる、それを確信するのに必要な限りにおいて、いつでも、どこでも、どこまでも検査する、あるいは監査する、そういう権限を有しているということを明確にした上で、具体的には、当然のことながら、統計的あるいは俗に言う抜き打ち的手法も含めまして、最も効果的にその検査、監査をするということが大事ではないかということを申し上げたい。
 それから三番目は、規制当局というのは、規制判断に係る技術基準は、安全に関して権限を付託されているわけでございますから、そのリスクを低減する効果の大きさを物差しとして、あいまいさのないものにするということ。そして、その制定に当たっては、公正、公開、公平の原則を踏まえたプロセスで利害関係者の意見を十分参酌して積極的に新知見を取り入れて行うということ。そして、関係学会では、普通こういう基準というのは五年ごとに必ず見直すという見直し規定を持っておりますので、そういう意味では、最新の知見を踏まえて制定されているものが学会知見である、ですから、そうしたものを積極的に活用するということが大事ではないかというふうに考えるわけであります。
 これは、先ほど維持基準のお話がありましたけれども、維持基準についても、そうした意味では、現在学会が既にそうした案を用意しているところでございますので、こうしたものを早急に活用して、国民の理解を得つつ制定していくべきと考えるところでございます。
 それから四番目。保安院は、二〇〇一年一月の設立以来、国民の安全を守る「強い使命感」「科学的・合理的な判断」「業務執行の透明性」「中立性・公正性」を行動規範に据えまして、国民への説明責任を果たすべく、リレーショナルマネジメントを導入して信頼を得るべくの努力をしているというふうに評価をするわけでございます。
 しかしどうも、やはりリスク情報の活用とか基準の整備等に迷いやらおくれがあるところは皆様の御指摘するところでありまして、これは結局のところ、専門的技術能力と申しましょうか、そういう行政資源が不足しているというふうに考えるべきではないか。
 したがって、今後、皆様の期待にこたえた十分な規制活動をなすといたしますと、それが原子力発電所の計画的な運用を妨げるものであってはならないわけでありまして、そういう意味で十分な規制活動の配慮をお願いしたいというふうに考えるわけでございます。
 終わりに当たりまして、原子力発電というのは、我が国の電力供給の三分の一を既に担っており、今後もエネルギー自給率の向上と、それから二酸化炭素の排出量の小さいエネルギー供給システムを我が国に構築していく上で大きな役割を果たすというふうに期待されているところでございます。
 また、国際核不拡散体制の強化にコミットしている我が国におきまして、二国間協定やら国際条約の求める国際約束を踏まえて計画されたプルサーマル計画の着実な実施というのは、我が国の国際的信用にかかわる重大な責務でありまして、今回のことによってこれが大幅に遅延するということは、最近顕在化した北朝鮮の核開発問題に対応しなければならない我が国の国際的立場を弱めかねないなど、我が国の国際的信用にかかわる重大な課題というふうに考えるわけでございます。
 したがって、今回の問題で失墜しました我が国の原子力安全確保体制に対する国民の信頼は早急に回復されるべきであると考えまして、その方策として、この政府提出の二つの法律案は最低限必要不可欠なものと考えておりますことを申し上げて、意見陳述を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどりさん。
松島委員 自民党の松島みどりでございます。
 私は、東京選出の国会議員でございまして、一年三百六十五日のほとんどを東京電力の電力の消費者として暮らしております。そしてまた、きょうこの席に同僚議員、福島県選出の吉野正芳さんという議員からは、事あるごとに、みどりちゃん、この東京の人間が電力を使っていられるのは福島県と新潟県のおかげであると言い聞かされている、そんな状況でございます。
 そうした中で、今、平山知事、そして岩本双葉町長さんのお話を伺いながら、本当に御苦労をかけつつありがたいなと、ほっとした次第でございます。
 と申しますのは、これも確認させていただきたいんですが、東京電力にこのような不正なことがあった、だから今すぐ東京電力出ていってくれ、あるいは原子力などというものをやめろ、そういうおっしゃい方ではなかった。なおかつ、これから冬が寒く厳しくなってくると、早いこと再開しないと、この関東地区において、皆様方の新潟や福島県は東京電力の電力じゃないんですが、我々関東の人間が、停電をするかもしれないということまで御心配いただいたということ、本当にうれしいなと思っております。
 今この点について、これを事として、原発をやめるべきだという声が、勝手に起こす人がいるわけですけれども、私はそれは無責任なことであって、原子力政策の根幹とこのチェック体制の整備というのは別のものであると考えているんですが、平山知事と岩本町長さんにもそのあたりの御確認をさせていただきたいと思っております。
平山参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。
 私どもの今の状況の中で、原子力発電そのものに対する、東京電力の不正事故から、やめろという意見はほとんどないと思います。しかし、信頼関係という点では、これまで推進してきた人ほどそのショックが大きくて、今無力感から立ち上がれないでいるというのが正直なところだと思います。
 それから、反対してきた人から見れば、言ってきたとおりだろうという状況でありまして、まさに本当の議論は実を言うとこれからで、できるだけ早く全号点検をしてほしい。特に、格納容器の密閉度が不正事故によって改ざんされたものであったという過去のことから、現在の数値自体が正しいのかということについては、やはり順番に一つ一つ現在の数値を国の責任において調べてほしいということであります。
 こういったことの対応が遅ければ遅いほど不信感を与えますので、そのことについては、今じっと見ていますけれども、この対応いかんではさらなる不信感が出ることもありますので、早い対応をぜひとも求めたいと思いますし、今ここで議論されています法案等の審議は、先ほど近藤先生からもありましたように、必要最小限のことだと思います。
 そのほかにやらなければいけないこともたくさんあると思いますので、そういったことをスピーディーに対応していただくことでないと、不信感が今より増すという方向に行きかねないという危険性があることも十分御認識いただきながら御議論いただきたいというふうに思っている次第であります。
岩本参考人 お話ございましたことでありますが、確かに、今回の一連の自主点検不正の問題については大きな怒りがあったことは事実でありますけれども、これまで構築されてきました信頼の関係というものを何としてもやはり持続したい。そういう中で、我々行政者はもちろんそうでありますけれども、立地の住民としましても、エネルギーの基地として、とりわけ首都圏に電力を送る、エネルギーを供給する、そういう使命感みたいなものが何となくあるんですね。
 そういう中で、日本のためにも、また自分たちの子や孫が東京に行っている、首都圏に行っている、その子供たちに不自由させないためにもという思いが多分にあると思いますね。したがって、せつないけれども、これまでの信頼関係というものを継続させたい、持続させたい、そういう思いの方がむしろ強いんじゃないでしょうか。
 だから、無条件でそれを黙過するということではなくて、句読点はつけなさいと。そして、このように安全性は確立しておりますということを、そういう姿を具体的に見せて、できるだけ早い時期に立ち上げてもらいたい、平常の運転に返っていただきたい、こういうふうに実は希望しているのが実態であります。
 けさの新聞なんかを見ますと、東京電力、新潟も含めて十七基あるうちに、来年の三月まで十五基とめてしまう、二基しかありません、これでは、一体どうなるのかという心配が実は私どもにあります。
 くどいようでありますけれども、罪は罪として償ってもらって、そして早いところ失地回復をしてもらいたい、その願いが地域にあるということを御理解いただければ幸いであります。
松島委員 ありがとうございました。
 平山知事がおっしゃるように、今まで原子力に理解をし推進してこられた方ほど傷ついておられているということ、そしてまた、町長さんがおっしゃいましたように、首都圏に電力を送る使命感、そして、せつない中でと言われました、本当にその重みを、私も含めて、東京で電力を消費している人間がもっと本当に自覚しなければいけないな、そういう思いでございます。
 そして、近藤教授は、今回この法律改正の中核となるたたき台の委員会のまとめ役でいらっしゃったわけでございます。私、近藤委員長がおっしゃっていることの中で大事なポイントとして印象に残っていることがございます。安全の確保だけでない、信頼の確保というのが必要なのだと。
 その中で二つ質問がございます。一つは、首長さんがおっしゃいました、保安院とそして原子力安全委員会との関係、これはダブルチェック機能を持つのかどうかということ。そして保安院が、企業の検査を受け入れるだけじゃだめで、自分のところとしてのしっかりとした検査をしなければいけない、その体制が実際とれるのかどうかということについての質問が一つ。
 もう一つは、質問というより要望なんですが、近藤教授も東京大学において原子力の工学、これからの原子力技術を担っていく若者を育てる、教育する立場にいらっしゃいます。東京電力という会社は、今回の事件で南社長を含む役員を退陣させた。私は、これは企業としてはそれなりにすっきりした非常に早い決断だと思います。しかしながら、この原子力村、原子力の専門家だけで閉じこもって、プライドを持って、ほかの人に言ってもわからないだろうみたいな態度があったとしたら大変なことでございまして、原子力という極めて専門性の高い、そして非常に重要な分野を担っていく若い方々、そして、もちろん現場に出ておられる方々も含めて、原子力工学の専門家としてこれから精神的にも育て上げるというお気持ちを持っていただきたい。
 以上、二点です。よろしくお願いします。
近藤参考人 第一の点は、原子力安全委員会の持ついわゆるダブルチェックということについて、それが本当に機能しているのかという、あるいはどうしたら機能することになるのかなということかと思いますが、現在の法律上の原子力安全委員会の位置づけは、明確になっていますところは、いわゆる基本設計に関する審査、俗に一次審査と言っていますけれども、一次審査に関して、通産大臣というか所管大臣が、設置許可を与えるに当たって意見を求めるということになって、したがって、これについて、当然省庁における一次審査を踏まえて原子力安全委員会でそれをチェックする、これがダブルチェックという言葉のもとの意味なわけですね。これは、いわば法律上にあることで、これは従前からなされているところでございます。
 あのジェー・シー・オー事故を踏まえまして、原子力安全委員会は、原子力安全行政一般について責任があるという観点から、みずから進んで、省庁の運転管理にかかわる審査の分野にもいわゆる監査の目を光らすということで、そういう活動を最近始めたということでございまして、そういう意味で、私の理解では、現在のシステムというか法律体系の中では、法律を拡張解釈すれば何でもできるということもある、原子力安全行政に関すること一般といえば何でもできるということもあるかもしれませんけれども、いわゆる法律を厳密に解釈する立場からしますと、安全委員会としてどこまでやっていいかということについて、必ずしも明確に定められていないというところで最大限の努力をしているのかなというふうに思います。
 それから、保安院がさまざまな検査をするというところ、みずから保安院に検査能力ありやということが関連しての二番目の御質問と思いましたけれども、私は、これは全体として、先ほど申し上げたことを繰り返すことになる部分もありますけれども、Aさんが検査してBさんが検査してCさんが検査してと、検査を繰り返すことが果たして本当の意味で真実の追求に迫れるのかなということについては大変疑問を持っております。
 大事なことは、検査なりの活動がきちんとした手続を経て、きちんとした検査結果等の、手続からだれがどういう作業をしたということの記録等がきちんと整備されているという環境をつくって、その上でそれを第三者の目で見るとか、そういう監査の機能をちゃんとする。いわゆるISOの品質保証マネジメントの仕組みは国際的にもそういうルールになっているわけでありますから。
 そういういわゆる品質保証の仕組みをちゃんとするということがまず第一であって、検査検査検査といっても、あの人が検査した後また検査させられてと、検査させられる立場になって考えますと、だんだんおかしくなってくるわけです。ですから、それは一回目、二回目はいいとしても、定常的にそういうことをすると必ず検査は、人間は堕落するものですから、私はうまくいかないと思います。
 やはり最初にやる人が、きちんとした体系、約束事のもとにきちんとした検査を行って、きちんとした記録を残す。そして、それがその人の、当事者だけの判断では間違いがあるかもしれないから、ちゃんとした監査機能をかけてきちんとチェックをする。この、ちゃんとやることと監査をちゃんとやる。その監査については、当事者監査、いわゆる自己監査という世界と、それから独立監査といって第三者とか、これは行政でもいいわけですけれども、そういう第三者監査をきちんとする。この仕組みをきちんと設計することが大事であって、例えばスウェーデンですと、国の検査官は、物の検査よりは、その実際の点検作業をした人をインタビューして、この人はちゃんとしたことをやっているという心証をつかむ。そういうことをやって、それでもって国民に対して、いわば、あそこのプラントの安全管理は大丈夫だということを言っているということがあるわけです。
 私は、そういう本当の真に迫るような仕組みをつくるということが大事で、そういう意味で考えますと、現在の保安院の体制で、何人かの方が行って、そういう、親しく話し合ってというような環境ができるだけの資源があるかということについては、いささか私は不安でございます。そういう意味で、行政資源の専門的能力のある、そういう心理学的な学識もある人が検査官になれるような、そういう学術的、専門的、技術的な面での行政資源の充実をぜひお願いしたいということを申し上げた次第でございます。
 それから、第二番目の教育システムの問題。
 教育における原子力村というものをつくる要素になったのは、私どもの学科の卒業生が関係しておるとすれば責任重大であるわけでございますが、私どもは最近二つのことを、一つは、いわゆる高度成長期のように特定の分野を目指した教育システムというものをやめまして、東京大学としては、変化の時代ですから、なるべくさまざまな未来の変化に対応できる基礎的な体力、学力のある学生をつくるということを学部教育の柱に置いていまして、さまざまなケーススタディーを教育の主要手段にしています。ですから、従来のような知識詰め込み型はすっかりやめまして、ほとんど午後の時間は全部ケーススタディーに充てるようにして、工学部もすっかり変わってしまったんですね。
 それからもう一つ大事なことは、倫理教育ですね。技術者倫理というのは非常に重要でございまして、これも工学部全体として技術者倫理教育というものを重視するようになっていますし、それから、これは特に原子力学会とか各学会におきましても倫理規程を整備して、技術者としての正しい振る舞いというものについて相互啓発をするようにしております。
 こういう大学における取り組み、あるいは社会におけるそういう倫理の取り組みというものが、恐らく将来において意味をというか効力を発揮するものというふうに私どもは期待しております。
松島委員 どうもありがとうございました。
村田委員長 田中慶秋君。
田中(慶)委員 参考人の先生方、大変御遠方を含めて御苦労さまでございます。
 今回は、日本のエネルギーの問題、すなわち原子力エネルギーが、今の日本のエネルギーの三分の一を今日まで補っていただいているわけでありますけれども、今般の事故その他の問題を含めて、やはりある面では信頼を失ってきた、原子力に対する信頼というものがゼロになったというか、私は、マイナスからスタートして築き上げていかなければいけないんだろう、このように思っております。
 もう一つは、安全の神話というものが、ある面では非常に疑問視されるようになったのではないか、このように考えているわけでありますけれども、これらについて、大変一番御苦労いただいております地元の知事さん、あるいは原発十基を抱えております岩本町長さんに、その辺についての御見解をお伺いしたいと思います。
平山参考人 先ほども申し上げましたけれども、今回の問題においては二つの問題がありまして、一つは、御指摘のように、安全の神話が崩れたという問題であります。もう一つは、信頼が崩れた、この二つの面があるわけです。
 安全の問題につきましては、当初のGEの内部告発においては、保安院からも直ちに、安全である、そのことをもってすぐに安全のことを問題にすることはないという説明がございまして、我々もそうだと思っていたわけです。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、格納容器の密閉度の国の検査に対する不正事項、裏から空気を入れて密閉度の数字を規定内におさまるようにしていたということになりますと、国の検査における数字、その数値は〇・一二%だったでしょうか、だという数字自体は、実はその前、二%ぐらいあったんだという話が漏れてきているところを見ますと、本当に安全と言われている今、守られている数字自体が大丈夫かということになりますし、その一次的責任を負っている国の検査自体を本当に信頼していいのかということについては、地元の住民の皆さんからは疑念が出ています。これによって安全の神話は崩れたと言わざるを得ないと思います。
 それから信頼については、GEの問題が出たときも、なぜ早く通告してくれなかったかということと、安全であるという説明はそのとおりかもしれませんけれども、安心感を与える、信頼を行うための行動としては、直ちにやはり一番問題の原子力発電をとめて検査をするということの対応をしなきゃいけなかったわけですが、そういう対応がすぐ国の方から出なかった。私どもの方からの要請に基づいて議論が行われたということについては、やはり信頼とか安心という対策に対する配慮は十分でなかった、ここにおいて信頼が崩れた原因があったんだろうというふうに思っています。
岩本参考人 今さら申し上げるまでもありませんけれども、先ほども申し上げましたように、原子力については、地域は何といっても大きな信頼のもとに原子力との共生が続いてきた、運命共同体と言ってもいいくらいの姿になっていたわけですね。
 そういう中で、一連の自主点検の不正の問題、さらに、せんだってそれがあらわになったわけでありますけれども、格納容器の気密データの不正、これは極めて残念なことでありまして、かかる事柄が起きてしまうということは一体どういうことなんだと。これは、実際に自主点検をする者、さらにそれを指導監督する者の、言うならば人間としての倫理観というものがもう欠落しているのではないか、そこをどうするかという大きな問題だというふうに私は考えております。
 私個人が考えてどうにもならないことではありますけれども、ただ、やはり今回の一連の問題を振り返ってみて、東京電力の自主点検を担当する者、さらにまた国の安全・保安院の検査官においても、その人間としての人格というか、人の質、人間の質をどういうふうに高めていくかという、そんな生意気なことは言いませんけれども、ただ、そういう事柄をもっともっとやはり探求していく必要があるのかなと。
 地域としてはこのままずっと信頼関係を継続していきたい、そういう思いが、不信の面はありますけれども、一方ではそういうことがある。つまり、極めて矛盾した複雑な気持ちの中にはありますけれども、何度も申し上げますけれども、とにかくできるだけ早く問題の収束を図って立ち上がっていただきたい、これが大きな願望であります。
田中(慶)委員 そこで、お伺いしたいのは、大変恐縮でございますけれども、近藤先生、私は、今回の問題は、維持基準、要するに設置基準は明確になっているんですけれども、維持基準がなかったところに問題がある。自主点検について法的拘束がなかったわけでありますから、こういうことを含めて、維持基準がなかったところに問題があったのではないかと思いますが、先生の御見解をお伺いしたいと思います。
近藤参考人 おっしゃるとおりと申し上げるべきだと思います。
 現在の維持基準というか、維持に係る判断基準は、使用前検査のときに使う基準をいわば解釈をして、運転状態における設備の健全性を判断するということの解釈をするということが、だれがその解釈権を持っているかという意味のあいまいさがあったこと。結果的には、ですから、物がないものですから、今あるものをうまくいわば使ってやるということになっていたというところが、別の見方をすれば、そういうあいまいさがあったということが最大の問題だというふうに理解していますが、しかし、議員おっしゃるとおりというふうな言い方もできると思います。
田中(慶)委員 本来は、このような残念な不正事件の原因を、先ほどお話しのように、これは、少なくとも全容を明らかにするという面で、国の役割というのは大きいと思います。
 ところが、残念なことに、原子力安全委員会あるいは保安院、こういうことを見ても連携がまずい。それから、特に原子力安全委員会そのものが、ジェー・シー・オーの事故があったり、いろいろな経験をしているにもかかわらず、今日まで目立った行動がある面では見られなかった、こういうことだと思います。結果としてダブルチェックが、やればできるものができなかった、こういうことに起因するのではないか、こんなふうに思いますけれども、専門家の近藤先生、いかがでしょう、この辺について。
近藤参考人 お答えいたします。
 先ほどの松島委員の御質問に対してのお答えと似通ってしまいますが、安全委員会と行政庁が余り連携してしまいますと、一体、チェック機能がないじゃないかと言われてしまうわけで、連携はなかなか難しいと思うんですけれども、安全委員会が目立つようにするのがいいのか、行政庁がきちんとやって、安全委員会は、本当の意味で奥の院で、本当に困ったときだけ出てくればいいのか、そこのところが大事だと思うんですけれども、御指摘のように、現在のような状況におきましては、安全委員会が適切な指揮と申しましょうか、勧告と申しましょうか、行政庁のあり方について適切な勧告をなすということが非常に重要で、その意味で、私は、最近なされました経済産業大臣への勧告というのは非常に重要な内容を持っているというふうに理解をしております。
田中(慶)委員 原子力安全委員会がスタートされて三十数年たっております。しかし、勧告されたのは今回初めてですよ。そういうことを含めて、私は、少なくとも今日まで幾つかの事故があったと思います。そういう点での危機管理というものがないんです。だから、逆に長い間のなれ合いでこのような事故が起きたと私は思っているんですけれども、現場におられる知事さん、この辺についていかがでしょう。
平山参考人 東電におけるこの不正事件が起こった中で、一番最初に私が東電の皆さんからのお話を聞いたときの発言で最もいまだに気になっておるのは、新車のタイヤについては、さらっぴんでこれは安全性が守られているけれども、走り出してどのぐらい摩耗したら取りかえるべきかというこの基準がないことが今回の事故の一番大きな背景にあったんですよ、こういうことをおっしゃった東電側の方がおられて、それは確かに、維持基準という問題がなくてあいまいだったということはそうだけれども、この不正事故が起こったことをそのせいにするというのかと、私としてみればちょっと怒りがそこにわいてまいりました。
 だったら、ちゃんとしなかったということの言いわけがそこにしかよりどころとして、言いわけとして言うことが本当に今正しいのかといえばそんなことはないわけでありまして、なかったからあいまいだったと言うのであれば、では、何によってちゃんとやってきたというふうに今まで我々に説明したんだと言わざるを得ないわけでありまして、そのことにおいて、やはり、この維持基準の問題も含めて、原子力安全委員会、そして保安院、この体制がしっかりしていたかどうかについて私は疑問があると思います。
 ジェー・シー・オーの事故のとき、実を言うと私は、この問題についてはもっと保安院のところの強化をすべきだし、場合によっては独立の議論をきちんと一回しておくべきだったというふうにそのとき申し上げました。しかし、いろいろないきさつがあって今の形になったんだと思いますが。
 今回の事故の中でも、これは真実かどうかわかりませんけれども、私が聞いた話の中では、保安院の体制が限られているので、細々とした問題は余り国の方に持ち込まぬでくれというふうに言われていて、電力サイドは、余り細かいのは一々持ち上げないで自分のところで処理しようという風土が生まれたというふうにも原因の指摘の中にされていることは、やはり今回十分注意して今後の体制の検討に当たるべき事柄ではないかなというふうに思っています。
田中(慶)委員 私は、保安院の点検要員、アメリカでは日本の約倍の原子力発電で約二千九百人、日本では二百六十人ですから、それこそ十分の一にも満たない、そういうところを含めながら、やはり危機管理なり安全というものに対する認識が、国を含めて、少なくとも軽薄だろう、私はこういうふうに思っているんです。
 特に、エネルギー政策そのものがやはり国の政策である。本来ならば、このこと自身、総理みずからが出て、しっかりと、安全なりあるいはエネルギーの問題なり、こういう問題について取り組むべきことが、すべて、例えば原子力の設置の問題についても事業者に全部丸投げ、このこと自身がやはりエネルギー政策としての欠陥だろうと思っております。国みずからが本来ならばやるべき仕事、こういうふうにしていかなければいけないんだろうと思っております。これについて知事にお伺いしたいと思います。
 時間の関係でもう一つお伺いしたいのは、今、維持基準の問題、点検の問題、問われているわけでありますけれども、原子力立地県として組織する協議会があるようでありますが、ここでは、維持基準は国民的理解を得なければつくるべきではないという、こんなことを何かきょうあたり国会に申し入れをするようでありますけれども、その辺について、双葉の町長さん、あそこは十基もあるわけですから、これらについての見解をお伺いしたいと思います。
 もう一つは、近藤先生にお伺いしますけれども、私は、今回の問題というのは、根本的な欠陥があると思うんです。ということは、今の原子力政策は電気事業法に基づいた政策になっております。ですから、極端なことを言えば、火力発電を中心とする政策がこの原因をつくっている。本来ならば独立した形の中で原子力政策、原子力発電の政策を打ち出さなければいけなかったのではないか、そのような法律の基本的な問題、ここに問題がある、私はそのように思っておりますけれども、これらについて先生の御見解をお伺いします。
 それぞれ三人の先生方、お願いします。
平山参考人 平成八年に、福井と福島と私で三県知事の提言というのを行いました。その基本的な趣旨は、国民的な合意、いわゆる原子力発電の問題が国民全体の問題になっていなくて、立地市町村の問題にのみとどまっている、このことについて国においてもしっかり考えていただきたい、そうしないと今後の原子力政策はうまくいきませんよということを申し上げました。
 今回も、この問題が起こった後、小泉総理に直接、拉致の問題とあわせて、この原子力発電の不正事件の問題、しっかり対応しないと今後の国の原子力政策に大きな影響を与えますよということを直接申し上げました。総理は、しっかりやるというふうに私には答えておりますけれども、その後の状況を見ていますと、果たしてそう受け取っているかどうか、まだ私は信頼を完全に戻している状況にはございません。今後ともそのことについてはしっかり見守ってまいりたいというふうに思います。
 維持基準については、御指摘のように、原発協、立地都道府県、今回北海道が幹事でありますけれども、まとめたところでありまして、間もなく国に要望しようということになっております。
 その中におきまして、国の今回の維持基準の議論に対して十分な国民的な理解を得るように、その内容について周知徹底を図って、そうでないと、先ほど言ったように、この事件が起こったから、そこに原因があるんだからつくらなきゃいけないとなると、新車の基準より緩い基準でやるという、安全基準が後退するような心配を住民はしているわけですので、そのことをきちんと、そうでないのならば、ないと。このレベルできちんと守るんだというのならば、そのことを説明して、理解を得られて初めて実施してほしい。
 そうでなければ、単に決めましたというだけではとても、この事件の後に、安易な基準に、次に移っただけだというふうにとられて、信頼の回復はむしろマイナスになるということを申し上げたくて原発協でもその一項を盛り込んで要望しようということにしている次第であります。
岩本参考人 安全基準、技術基準というものと同時に、維持基準を明確にするということが、私は、今日、原子力発電の保守管理等の中から必要なのかなというふうに実は思っております。維持基準が明確になっていれば、地域の方々にもそれを示して、納得のいくような原子力の管理が、また運営ができるのかな、こういうふうに実は思っておりまして、維持基準を定めるというのは私は賛成であります。
近藤参考人 御質問にお答えいたします。
 現在の原子力発電所の規制が電気事業法中心であるところ、母体が火力発電所の事業規制にかかわる法律であるがゆえに原子力に関してはいささかそごを来しているのではないかということでございます。
 御承知のように、原子力発電所の規制、つまり原子炉規制については原子炉等規制法がありまして、それを柱とし、ただ、原子炉規制法というのは非常に大枠ができていまして、設置許可という行為があり、工事認可をしましょう、保安規定を定めましょう、定期検査をしましょう、粗っぽく言いますとそれぐらいしか書いていないわけですね。ですから実態は、そこを省令等に落としていくということが必要になるわけです。
 その際には、電気事業法というのは非常に長い歴史があって、いろいろな意味のトラブルごとに、いわば、パッチワークと言ったら怒られますけれども、それぞれの時点でいろいろなことを差し込んでいますから、それぞれの歴史的な知見の集積であるという意味で大変参考になるわけです、そういうことを考えるときに。ですから現在も、自主点検というのは、本来、保安規定に書いていただいて、そのとおりやっていただくのが趣旨なんですけれども、電気事業法を見るとそういうコンセプトがそこにあるものですから、それを持ってきて使うということもやってきているわけです。ですから、私は、その両方のいいとこ取りをしてやっているというふうに思います。
 ただ、御指摘のように、立法精神が一貫しているかということについてはいささか私自身も問題意識を持っていまして、この法規制小委員会でもその点については随分と議論がありました。法律の専門家からもそういう問題提起がありました。
 そこで、しかし、今回は緊急ですのでこれだけの提言にさせていただきまして、「おわりに」というところを設けまして、そこにこう書いてございます。「我が国に原子力事業が行われるようになって三十年余を経過しており、様々な情勢変化も生じているものと考えられることから、今後、安全規制法制の在り方について更に抜本的な検討が必要になることも想定される。」と書きまして、さまざまな委員から、この関係はいかぬ、あるいは一本化すべきとか、そういうさまざまな御提言をいただいたところについて、今後しかるべきときにこういうことを考えていただきたいという希望をこの表現に盛り込ませていただいたわけであります。
 これについては原子力委員会あるいは原子力安全委員会が発議するのが適切かとも思いますけれども、ぜひ御指導いただければというふうに思います。
田中(慶)委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
村田委員長 漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。きょうは、貴重な御意見をちょうだいしまして、本当にありがとうございました。
 早速質問に移らせてもらいたいと思うのですが、原子力政策におきまして最も大事なものは、やはり立地住民との信頼関係であるというふうに思っております。今回の事件では、一事業者だけではなくて、国との信頼関係もまた大きく損なわれたというふうに認識しております。
 長年にわたって虚偽の報告をしてきた事業者、そしてその偽りを見抜けなかった国の検査体制、そして何よりも、この不正について二年前に国に情報の提供があったにもかかわらず、二年間もこれを地元住民に知らせなかったという国の対応のまずさ。私は、これら一連の行為は、原子力立地地域住民に対する官民一体となった背信行為というふうに言っても過言ではないというふうに思っております。平山参考人がおっしゃいました、安全と信頼が目に見える形で担保されなきゃならない、全く私はそのとおりであると思います。
 今回の事件に関して、関係自治体の皆さんからは二つの提言がなされております。一つは、第三者機関による検査体制の確保、二番目は、原子力安全に関する地方自治体の位置づけの明確化ということが提言されております。
 そこで、自治体の長でいらっしゃる平山参考人と岩本参考人にお尋ねしたいと思います。
 この二点について、なお追加の説明が、補足の説明があればしていただきたい。そして、今回の法改正で皆さんのこの提言、要望が十分に生かされていると思われるかどうか、特に、原子力安全基盤機構、今回新しくつくったわけでございますけれども、これとの関係で十分に皆さんの意見が生かされていると思われるかどうか、参考人の御意見をちょうだいしたいと思います。
平山参考人 一言だけ申し上げたいと思いますけれども、プルサーマルに関して刈羽村で住民投票が行われました。そして、結果的にノーという答えが出たわけです。
 そのときの住民運動の中で、こういう言葉が出ました。一番我々が信頼を置いているのはNPOの皆さんだ、その次は村です、その次は県です、そして最後に電気事業会社と国という順番になっていました。逆に言えば、一番信頼していないのは国であって、その次は事業会社、そして三番目は県、こういうことでありまして、いたくこのことは私どもにとっても厳しい指摘でありました。
 そのときに、国に参りまして大臣にお願いして、現地に国の責任者なり担当者を置いて現実の声を聞くようにしてほしいということで、その後、担当者が柏崎刈羽に張りつくようになりましてじかに声を聞くようになりました。
 こういうことで、安全に責任を持っている国がじかに住民と話し、顔が見える形でのつながりをつくってもらいたいということでスタートした途端に今回の不正事故が起こって、その努力も、緒についたばかりでありましたので、全く無に帰してしまったというのが現状であります。もう一度改めて、このことをどう構築していくか考えなきゃいけないことだと思います。
 その中で、今回打ち出された対策の中で、実を言うと私どもにとって一番わかりにくいのは、原子力安全基盤機構という、これは従来のものが三つ一緒になっているわけでありますから、その中でこれがどういう機能を果たすのか。書いたものは見せていただき、議論を聞いておりますけれども、大事なことは、どういう名前の機構であろうと、本来やるべき検査が、ここにおいて自主点検に対するチェックがきちんと働くものであってほしい。そしてまた、これと安全・保安院との関係、そして原子力安全委員会との関係が縦にどういうふうにつながるのか、横なのか、この辺を、それぞれの役割と機能が立地住民の皆さんにわかるようにしてほしい。
 そして何よりも大事なことは、今回わかったんですが、機構がしっかりしているという問題と同時に、そこにおいてだれがジャッジする責任があるのか、その判断責任が明確にされてそのことができる人がいないと、事が起こったときの判断を間違う。したがって、今回のGEのこういう件についても、通告されたのがその日になってしまったということだろうと思います。
 したがって、私どもとしては、この安全基盤機構について反対するものでは決してありません。きちんとして、今までむしろ前の三つの機関の方がわかりにくいという面はありますから、それはそれとしていいんですけれども、実際にこれが今回の問題を解決する手段としてワークするかどうかについては、見なければわからないと言わざるを得ないと思います。
 それから、第三者機関についても、実はそういう意味での議論を我々もさせていただいておりますけれども、まだ十分見えていないと言わざるを得ないかなと。
 一番難しいのは、実は御指摘の地方自治体のかかわりであります。安全規定の中にどう我々の位置づけを明確にするか。やはりかかわり方を今よりも少し強くせざるを得ない。問題が起こったときに、その情報について我々もすぐに聞いて、必要に応じて、県としての、住民説明等安全の確認のための行動が今より行われるようにせざるを得ないと思います。
 そのかかわり方については、今議論されている国の対応等を見ながら、我々も、今回の一連の事件の原因と究明、分析がされた中で、県としてのかかわり方をどう安全規制の中に盛り込むか検討してまいりたいというふうに思っていますが、その具体的内容については現在検討中でありますので、この場において、こうしたいということまでは申し上げる段階に至っておりません。そのことについては、今後検討の結果、我々の案を要望として出させていただきたいというふうに思っているということでとどめさせていただきたいと思います。
岩本参考人 国の検査、さらにまた電気事業者の自主点検等々がございますが、これと同時に、本県の場合は福島県とさらに所在町ですね、私の方では四つの町がありますが、主としてそれぞれの担当の課長、そして県の担当者が立入検査をやります。
 ただ、その立入検査を技術的にどういうふうに高めていくかということもとても大事なことなんじゃないかなというふうに私は思いまして、それらの自治体が立入検査をする際の技術者を配置、もっと質の高いということでは大変失礼でありますけれども、質の高い技術者をどういうように配置するかということも考慮に入れていただければというふうに実は思っております。
 問題は、原子力発電をいかに安全に維持していくかということからすれば、それはもちろん、国とか電気事業者とか末端の行政とかの、句読点をつけましても、年に一、二回くらいはその三者が共同で共同研究をするとか、いかに安全性を高めていくかという議論を一堂に会してやってみることも決してむだなことではないのかな、こういうふうに実は考えておりまして、いろいろな手法をこれから、もちろん句読点をつけながらそういうものをやっていくことも大切かなというふうに実は考えております。
 以上です。
漆原委員 最後に近藤参考人にお尋ねしたいと思うんですが、今回、維持基準の導入ということになりましたが、先ほど来話がありますように、どんな内容になるのか、これは政令に委任されておりますので、内容の決め方によっては、地元住民は、何だ、現状追認じゃないのかというふうな、かえって不信を起こすもとになると思いますが、この維持基準の内容についてどんな方向で決めていくべきなのか、その辺にお考えがあったらお聞かせ願いたいと思います。
近藤参考人 維持基準の内容、決め方でございますが、まず、維持基準は先生御承知のとおりでございまして、国際的には一九七〇年代後半から議論がされまして、要するにその学問が、いわゆる破壊力学という学問が進歩いたしまして、およそ金属構造物は顕微鏡的に見れば必ず傷を持っている。使用して応力を繰り返していくと、だんだんその傷が大きくなっていって、表面にできることもあるし、内部にできることもあるが、その大きさがある許容限界を超えると寿命が来る、そういうふうなことがわかってきたわけですね。
 したがって、そういうものをもとにして、これは、皆様の乗っておられる飛行機もすべてそういう破壊力学の理論をもとにして、この飛行機のこのぐらいの傷だったらこのぐらい使っても大丈夫だからということでもって、いわゆる信頼性中心に、監査というか品質保証システムというものをつくって運用しているのが現実でございます。
 そうした考え方は、原子力の発電所の構造物の検査についても導入しましょうと、これが世界の常識であり、もうすべて、韓国、台湾、ありとあらゆる国でそういうものを使っていて、日本だけが使っていないという、いわば私ども、学会に身を置く者としては大変恥ずかしい状態にあるというのが現実でございます。
 しかし、先刻来、知事の御指摘にありますように、これを今なぜ急いでということが恐らく皆様の非常に気になるところというふうに思いますので、そのことについて、私は小委員会でも申し上げたわけでございますが、これはまさしく、学会にとっては常識かもしれないけれども、国民にとっては全く、ある意味では非常識な世界であるということを肝に銘じて、その上で、したがって、いかに国民の皆様に御理解をいただくか、このことを一点に精力を集中して、できるだけ公開、透明、そして多くの意見を聞くシステムでもって決めていくことが適切と。
 もちろん、学問の世界ですから、大変説明が難しいことがあるかもしれませんけれども、当初は、きちんとした、相手にわかるような説明資料を十分に用意するということが大前提でございますが、その上で、今申し上げましたような手続を経て決めていくのが適切かというふうに考えます。
 しかし、繰り返しになりますけれども、かといって、だらだらとやるということでもなくて、非常に大事なことでありますし、大変おくれていることでもありますから、これはそういう意味の、緊急措置とも言うべきかな、一週間に一遍、月に四回でも積極的に回数を重ねて、御理解をいただくということを最大のポイントとして、可及的速やかに制定すべきというふうに考えているところでございます。
漆原委員 以上で終わります。大変どうもありがとうございました。
村田委員長 土田龍司君。
土田委員 三人の参考人の皆様には御苦労さまでございます。
 少し重複する点もあるかと思うんですけれども、まず近藤先生には、このペーパーの中でお尋ねしましたので省きまして、知事さんと町長さんにお尋ねしたいと思うんです。
 今回の事件によって、大体想像はしていましたけれども、これほど信頼感が失われて、非常に不信感が高まったという話を今聞きまして、改めて大変びっくりしているところでございます。今後の体制についていろいろ御指摘をされておりますけれども、安全規制のあり方について、経済産業省から原子力安全・保安院を分離したり、あるいはいろいろな方法があると思うんですけれども、知事さんとして、あるいは町長さんとして、今後の安全規制体制のあり方について、御説明といいますかお話をいただきたいと思うんです。
平山参考人 私は、すべて今頭の中に整理されているわけではありませんけれども、今思っております一番目にやはりやっていただかなければならないのは、東京電力における企業倫理の確立といいますか、これなくしてはすべて始まらないわけです。ただし、そのことについてどうやるかは東京電力の問題ですけれども、経済産業省においての主導が当然必要だと思います。社内におけるチェック体制が働かないと保安部門において独走するということの、今回起こった原因がどうやってチェックされるのかわからない、そういうことが第一番です。
 それからもう一つは、情報公開という問題であります。これまでも、細かい事件については一カ月まとめて事後報告、それから、それよりレベルの高いものについては、通常、起こったときに直ちに報告ということになっておりますけれども、基準以上に事前に報告等行ったものもたくさんあるわけですけれども、こうやってみると、やはり隠していたものがあると。なれば、これまでの徐々に拡大してきた情報公開も十分でなかった、都合のいいものだけ出していたんじゃないかというふうに住民の皆さんは疑っております。
 したがって、先ほど申しました、これから行う、反対派の住民でも入れて行うという情報開示においては、起こったことについてはすべて出す、隠すことは一切しない、そこにおいて問題がどうなのかをきちんと解説して、住民の皆さんも、このトラブルについてはこういうものなんだなということがだんだんわかるようにしていって、信頼関係が続くということが最初の大事なことかな。
 その上で、今ここで議論されております維持基準の問題、それからやはり安全・保安院と原子力安全委員会、そして今度できる基盤機構のところの、このチェック体制が今よりもどういうふうに変わるのか、どういうふうにチェック機能が働くようになるのか、このことが見える議論としてきちんと確立されるということが大事だと思います。
 その上で、やはり原子力行政の一番大事なところであります消費者と立地住民との間における信頼関係というか国民的な合意があって、ここがないと、すべての問題を任されて苦労だけさせられているというこの不満が、常にこういう問題が起こると不信となって出るわけでありますので、そのことも、ベースとしての一番大事なこととしてやはり指摘せざるを得ないかなというふうに思っております。
岩本参考人 安全問題について、法律上、どのような規制や基準、または維持基準をつくられても、それを厳粛にとらえて実行するという倫理観とか使命感がもし欠如をしていたらとんでもないことになってしまうのかな。つまり、決められた法もそこでおろそかにされてしまう。私は、やはり人間としてどうあるべきかということがとても大事なことなんじゃないかなというふうに思っております。
 結局、今回の一連の問題については、技術的にどうなのかよりも、つまり多年にわたって築き上げた信頼が一瞬にして崩れてしまったというところに大きな問題があるわけでありまして、これは人間同士の問題であります。
 したがって、一昨日、原子力委員会との意見の交換もやりましたけれども、そこで私は申し上げましたけれども、技術者、とりわけ国の検査官、さらに電気事業者の自主点検に当たる方々の倫理観とか人間性をどういうふうに高めていくかということも含め、同時にまた技術関係も加味しました、改めて人づくりをどうするかという、そういう施設をぜひともつくっていただきたい、これは、私どもは多年にわたってそういう要望をしてまいりました。
 そういう施設をつくればいい、技術者養成、また人づくりの施設をつくればいいということだけではありませんけれども、国はもっと原子力問題について真っ正面から、それらの問題も含めて取り組んでいただくということが大切であろうというふうに私は認識をしております。どうぞよろしくお願いします。
土田委員 情報開示がまず必要で、そしてまた、地域の方々とのコミュニケーションが非常に重要であると。特に、近藤教授からは、コミュニケーション活動が重要であるとおっしゃいました。
 まず、岩本町長さんに伺いたいんですが、先ほど、そういった説明会を開いてもなかなか皆さん集まってこられないのが実態である、町政の話になると五十人集まるけれども、原子力の話になると七、八人しか集まらないというんですが、そのコミュニケーションのとり方について、岩本町長さんにまず伺いたいと思います。
 その後、近藤教授に、概略的に、どうやったらいいのか、具体案についてお尋ねします。
岩本参考人 先ほど申し上げました、東京電力が各地域にわたって説明会をおわびをしながらやっているようでありますけれども、参会者も少のうございます。ただ、これは第一回目でありまして、これからかなり辛抱強く、地域住民との関係をより濃密にするためにしっかりやっていくんじゃないかというふうに思います。
 私は、やはり電気事業者が、とりわけ東京電力が地域の中で今やらなければならないのは、信頼回復を図るための社会活動だというふうに思っているんです。そういうところを東京電力はある程度とらえながら、地域との関係、信頼関係をいかに回復していくかということでかなり熱心に取り組んでいるようでありますけれども、これを続けていく中に、やがて近い将来、本当の信頼関係がまた回復するものと、こういうふうに期待をしておりまして、これは、行政という立場においても一端の責任を痛感しながら、今後、地域の皆さん方ともそういう相関関係をきちんとつないでいきたい、こういうふうに考えております。
近藤参考人 先ほどコミュニケーション活動が重要と申し上げたところ、その方法いかんということでございますが、その目的とするところは、東京電力という言葉を使わせていただけば、東京電力が行っている安全確保活動に対して地域社会の方が信頼できると思う、そういう状況をつくるということでありますから、今、東京電力の立場に立って言っておりますが。
 ですから、その一点で考えますところ、思い出しますのは、カナダでたしか高レベル廃棄物の処分場の議論を、いわゆるデュープロセス、つまり公聴会をやり、意見を吸い上げて、それを踏まえて政府が決定をするという作業を始めたわけですが、結局、まさに公聴会に人はあらわれず、手続はちゃんとやっているんだけれども、実態として本当の意味で住民の声を聞いたことになったのかという反省があって、そのプロセスをほうり投げたということがあります。
 ですから、私は、そういう危機は常にコミュニケーション活動にはあるということを認識に置いて、しかし、信頼されなければ発電はできない、これが基本的な方程式ですから、この中で、しかし、いかにして信頼を得ていくか、信頼を得るためには、心を開いて話を聞いていただかなければならないということを深く念頭に置きながら、個別訪問が適切であると思うならばそれを最大限やっていただいて、とにかく話を聞いていただくということから地道に積み上げていくということ。信頼というのは本当に一日一日の積み上げでしか形成されないものとよく言われますけれども、そのことを肝に銘じて行動していただくのが適切じゃないかなというふうに思います。
 また、もう一つ、先ほど御指摘のように、国の方の信頼の問題もあるわけでして、国が、規制機関として、正しく事業者の安全確保活動の適切さをモニターしているか、説明できるだけの能力と知見と知識を集積しているのかということに対しても、やはり同じと私は考えておりまして、規制当局が、設置者の行っている安全確保活動を十分モニターし、当事者との人間関係を確立して、その適切さを判断して、そのことをまた人の心をもって住民の方に伝えていく、そういう地道な活動の積み重ね以外に名案はないというふうに考えておるところでございます。
土田委員 今回の事件のようなことの再発防止のためには、岩本町長さんがおっしゃったような、最終的には人間の問題であろうと。近藤先生からも同じような話がされました。
 今回、規制を強化しましてさらに厳しく厳しくやっていくわけでございますけれども、そうなりますと、どうしても当事者というのは、国の基準に合致しているんだから問題ないだろうという甘えがそこには出てくるんじゃないか。いわゆる一次的には自分たちの責任でやるんだという自助努力の芽を摘んでしまうおそれがあるんじゃないかという気がしてならないんです。
 ですから、その点についても、今近藤先生からお話が大体ありましたので理解をするわけでございますが、ちょっと近藤先生に聞きたいんですけれども、ひび割れの進展予測、なかなか難しいようでございますけれども、実際にそういったものがあって、その検証をして、検査をしてやっていくのが一番いいんですけれども、これについて、今どういった状態で、今後どういった経験を積んでいったらいいかというふうに考えられますか。
近藤参考人 ひび割れの進展予測でございますが、今問題になっていますのは、いわゆる応力腐食割れと言われているカテゴリーの腐食のモードでありますが、これで難しいのは、どこでいつ発生するかという発生の予測が大変難しいのがつらいところでございまして、いろいろ材料をかえて、こういう材料ならば発生しにくいかなということで努力を重ねてきているというのが現状でございます。
 一方、進展というのは、最近の破壊力学の理論の進歩と、それからコンピューター等の技術の進歩もありまして、進展自体についての予測は、これもまた、もちろん複雑なパス、ガラスがどう割れるかという問題にやや近いものでありまして、実際にこうなるということは難しいんですが、しかし、平均的な病像と申しましょうか、平均的な振る舞いとしてのひび割れの進展についての予測は、一応、実験を踏まえた、これはもちろんやれば実験でデータが手に入りますから、その範囲では、応力場をきちんと決めた実験をやって、データをとり、それをモデル化してということでは、一応、先ほど来申し上げていますような議論にたえる式が手に入っているという理解をしております。
土田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
村田委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 きょうは、大変貴重な時間を私どもの委員会のために割いていただき、本当にありがとうございます。
 私ども日本共産党も、八月二十九日、記者発表があった当日に福島第一原発に入ったのを初めとして、以降、福島第二あるいは刈羽、そして美浜、浜岡、こういう各原発等を調査し、また、自治体の責任者の方とも、いろいろお話を伺ってまいりました。そういう中で一番強く感じたことの一つが、きょうもそれぞれお話もありましたけれども、これまで原発を支えてきた周辺自治体の皆さんが大変不信感を募らせておられるということであります。
 そういうことに関連しながら、きょう質問をさせていただきますが、既に私がお聞きしたい点は、かなりそれぞれから御答弁ありました。ポイントを変えながら幾つかお聞きをしてまいりたいと思います。
 最初に、平山知事から安全体制の上で第一に挙げられたのが、企業倫理の確立ということでありました。私もその点は大変賛成であります。
 今回、私どもの調査の中で一つ印象的に覚えておりますのは、ある自治体当局の方の、電気事業の自由化と原発の安全対策は共存できないのではないだろうかという御発言でありました。今回の一連の不正事件、不祥事件の背景には、トラブルの過小評価とあわせて、やはり検査による原発運転の停止、これに対する強い企業としての懸念、経営効率を高めるという発想があったことは、これはもう明白だと思うんですね。
 この点、企業倫理、今日、私は、東電だけが飛び抜けて企業倫理に欠けているということではなくて、社会全体が、日本食品、日本ハムその他その他、雪印とか、一連の企業倫理に欠ける、もとる、そういうことがこの間相次いでいたわけでありますけれども、そういう、安全よりも効率というのが大きな背景としてあったのじゃないかという点から、これはぜひ三人の参考人の方に、この点からの御意見をいただければと思います。
平山参考人 今御指摘の、自由化等を含めた効率化あるいは収支に対する厳しさから安全性が二番目にされたのではないか、この疑いについては、この不正事件が起こったとき我々も最初に感じたことでありまして、直後の平沼大臣に対する私の要望の中でも、もし国の自由化における企業に対するプレッシャーがこういう事件を起こしたとすれば、国においてもそのことを十分反省する必要がある、こういうふうに申し上げました。大臣は、非常にそのときは厳しい顔をされました。それから、東京電力に対しましても、マネジメント上、そのことが末端に対するプレッシャーになったとすれば、そのことも反省してもらわなければいけないということも事業会社には申し上げました。
 そのことが原因としてあったかどうかについては、明確な説明はございませんけれども、私どもとしては、背景の一つとしてそれを指摘せざるを得ないというふうに思っていますので、今後の対応の中でそういったことが、企業の効率性よりも安全がまず優先されるべきであるという、このしっかりした認識がされるかどうかについてはウオッチしていくつもりであります。
岩本参考人 電気事業者として欠かせないのは、やはり倫理観とか使命感、さらに日本のエネルギー供給をする企業者としての誇りと申しましょうか、そういうものがあってしかるべきだというふうに思っております。
 社風として確かにそういうものがあるはずでありますけれども、隅々までそのような社の方針というか、電気事業者としてこうあるべきということが徹底されていなかったのではないかな、こういうふうにも実は思っております。
 とりわけ、これまでもお話がありましたように、現場での点検をする立場の職員が本当に使命感を持って事に当たってこられたのかどうかということが一つ大きな問題だというふうに思っております。そして、自分たちが点検をしたものが結果的にどういうふうにあらわれていくのかということを、責任を果たしていくという事柄についてもいささか欠落した部分があったのかな、こういうふうに思っております。
 総じて言うならば、やはり点検者としての、また社としてもそういうことになるのかもしれませんけれども、モラルに欠けていた、こういうふうに言っても言い過ぎじゃないというふうに思っております。
 ある電気事業者の社員が、今回の問題があらわになってある意味ではほっとした、こういう実感を述べておられた方もいらっしゃいます。それは、何ともやりきれない思いが悶々として続いた、ここに今すべてをさらけ出した、うみを出したということで、ほっとしたという気持ちを吐露されていたんじゃないかというふうに思いますが、それは真実じゃないか、こういうふうに思っております。そこから新たな出発がなければならないというふうに、それを私は期待をしております。
近藤参考人 お答えいたします。
 自由化と安全の両立ということでございますが、私、リスクマネジメント、リスク評価とかマネジメントを専門としているものでございますが、最近はビジネスリスクマネジメントという言葉もよく使われるようになってまいりました。
 これはなぜかといいますと、まさしく、自由競争、国際化の中でもって企業が生き延びていくためには、何より企業のリスクマネジメント、リスク管理が非常に重要ということで、こういう言葉が最近よく使われるようになったというふうに理解をしております。私どもが原子力の安全のために開発した手法がそういう分野にも使われるようになっているということかなと思っているわけでございますが。
 この観点で、自由化によって社会の安全のルールが変わるわけではないわけでありますから、むしろ、安全のルールを満たさないことがわかった瞬間に企業は非常に大きなダメージを受けるということで、リスクマネジメントが必要です。したがって、企業におけるリスクマネジメントの最も重要な一つの要素は、社会のルールをきちんと守る、コンプライアンスという言葉を使われていますが、法令遵守ということが極めて重要。
 したがって、私は、自由化によって安全のレベルが変化するということは、安全規制当局がきちんとしている限りにおいてはあり得ないことというふうに考えておりますし、また、諸外国の、自由化が既に進んだ国におきます事例を見ましても、むしろ両立していると言う方が正確だということが言えると思います。
 この場合、大事なことは、安全を確保するために、日々進歩をする学問の成果を積極的に取り入れる環境があるかないか、これが、結局のところ、競争関係においてすぐれた安全性と経済性を達成していくために重要なわけで、これを許すというか積極的に受け入れる、科学的合理性のある正しい考え方を受け入れる社会的風土並びにその規制環境がないと、当事者のモラルが減退をして、結果として、経済性は落ちるし安全性も落ちるという可能性が生じる懸念があります。
 ですから、私は、最初に申し上げましたように、非常に大事なことは、当事者の科学的合理性に立った提案を真摯に検討し、正しいとすれば、それを国民に説明して、それを新しいルールとしていく行政の姿勢、これがこの自由化時代においては非常に重要になるのではないかというふうに考えているところでございます。
大森委員 平山知事は、当時の新聞を振り返ってみますと、大変強い調子で怒りを表明されております。言語道断だ、我々はピエロではないなどとも語ったと言われておりますが、当時、同じ記者への会見の中で、刈羽原発の三号機で計画したプルサーマル計画、これについては、東電不正問題が片づくまでは判断を保留する、当面あり得ないと述べておられるわけなんですが、その姿勢、立場というのは今日変わらないものなんでしょうか、この点お聞きをします。
平山参考人 先ほど申し上げましたように、私は、原子力政策、国のエネルギー政策に基本的には協力していくという姿勢でありますが、その前提は、安全性の確保と住民の理解、この二つであります。
 今回の事件において、少なくとも住民の理解はまず損なわれてしまいましたし、安全性の確認ということも、ある意味ではもう一度確認しなきゃいけない事態も生じているかもしれない。その時点では、実を言うとまだ格納容器の密閉度の問題が出ていませんでしたので、そこまでは申し上げておりません。
 住民の理解は損なわれておりますので、もともと刈羽の住民投票もありましたので、そのことからいくと、今回の事件は極めて信頼関係が損なわれたという意味で、しかも電力会社がみずから損ねてしまったということに立ちますと、プルサーマルについて一度同意しました。同意した後に住民投票が行われてノーという住民投票結果が出ていますので、理解が進むまで待ってほしいという、前提としての住民理解がとれていないということで、その理解が進むまで待ってほしいということを申し上げたのですが、もう一度、この状況を踏まえますと、同意をした以前、直前の状態まで戻さざるを得ないということで同意を撤回させていただいたということであります。そのことは今も変わりません。
大森委員 岩本町長は、私どもの調査の際にも御協力をいただいたわけでありますけれども、九月十日に開かれた福島県原子力発電所安全確保連絡会議で、事務所は地域との密着性や行政との関係が希薄という印象を受ける、緊密な関係を築いてほしい、こういう発言をされたと報道されております。この連絡会議の役割とあわせて、この御発言の具体的な意味ですね。
 それから、あわせまして、先ほど、周辺の道路整備等への要望等も御発言がありました。現実に相当数の原発が今停止をしているという中で、それによる、直接、雇用等の影響がこのように出ているというような点が、もし明らかにできるようであれば御説明をいただけたらと思います。
岩本参考人 今回の非常に残念な一連の不正の問題は、原子炉の停止ということもございまして、何となしに沈んだ、そして寂しい感じがやはり地域全体としてあります。それ自体がやはり人の動き、物の動きにもかなり影響をしております。つまり、活気が損なわれているという状態にあるわけであります。
 先ほども申し上げましたけれども、罪は罪として、それはいち早く前非を悔いて、住民の期待にこたえられるような信頼回復を、みずから電気事業者が社会活動を通じてそれを回復していく、これが当面大きな使命であろうというふうに考えておりまして、今まさに電気事業者は、そこに向けて精いっぱい努力はしているというふうに実は思っております。ただ、その成果はまだまだ確認することはできませんけれども、いずれは立ち上がる日が来るのではないか。そういう日が遅かれ早かれ来ることを期待しているわけであります。
 信頼回復というのはそう簡単にはいかないと思います。その実態を明らかに示していくということが電気事業者の大きな役割でありまして、私ども行政としましても、行政でやらなければならない事柄については力いっぱいやっていきたい、こういうふうに考えております。
 以上です。
大森委員 時間が参りましたので質問を終わらなければならないんですが、どうしても聞きたい点が一点だけございます。
 これは、では平山知事に代表して、代表するわけにはいかないでしょうけれども、お答えいただきたいんですが、今回の事故の最大の教訓というのは、私は、ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社の元社員の告発がなかったら何もわからなかったということだと思うんですね。
 その点で、原子力安全・保安院が事故隠しの発見も調査も是正もできなかったということで、それはやはり、この保安院が原発推進機関である経済産業省の一部門にとどまっているということに最大の問題があるんじゃないか。その点で、これは国際的にも、原子力の安全に関する条約では、推進部門と規制する部門を分けるように定めておりますし、国際原子力機関の勧告でも、安全確保のための独立した規制機関を直ちに確立する必要がある、こういうことを述べております。
 この点で、この保安院についてきちんと、規制部門についてきちんと独立したそういう機関にすべきではないかというのが私どもの提案でもありますけれども、この点、御見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
平山参考人 御指摘の点については、私は実は、先ほど申し上げましたように、ジェー・シー・オーの事故が起きたときには独立させて外に出すべきだという意見で、そのことを私の意見としては内々申し伝えました。しかしながら、いろいろな議論の中で今の形になったわけです。この形については、一番心配しておりましたのは、中途半端である、十分なチェックができるだけの陣容にはなっていない。それから、御指摘のように、中にいることの弊害が起きるかどうか。
 今回の事件の中で、実を言いますと、起こったことは、経済産業省の中にいながら、エネルギー庁と保安院が縦割りになっていた結果、安全という問題が安心という問題まで、ジャッジとしての判断が及ばなかったということだと思います。その結果、大臣のところに上がるのがかなり遅くなってしまった。最終的に安全と安心の両方をマネジメントする大臣がジャッジする状態に至らないでいたことにおいては問題があったと思います。
 したがって、独立させるということと縦割りとは別でありますので、独立させるということにおいて、かえってまたそのことが問題で起こるならば、そのことについて担保される組織でなければならないと思います。
 推進する者と安全を守る者が同じ組織にいていいかという、同じ組織にいてもできなくはないと思いますが、より明確に言えば、独立させる方がいいだろうと思います。しかし、その結果、安心対策と安全対策がばらばらになって、トータルマネジメントができないのであれば、そのことの問題が起こるだろうということで、すべてが組織において解決される問題ではなくて、だれがどういうふうに責任を持ってマネジメントするかということ、管理するかということが、体制として、そして人間として、人としてできるのでなければ、この組織論は一方の解決でしかないだろうというふうに私は、現時点、思っていまして、その意味で、御質問に、独立させるかどうかということに答えよと言われたときには、現在まだ結論を出していないと言わざるを得ないかなと思っている次第であります。
大森委員 ありがとうございました。
村田委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。きょうは遠くからありがとうございます。
 商業用の原子炉が稼働しまして四十年たちます。この間、多くの事故、事件がありましたけれども、その都度報道されてはきましたけれども、マスコミの露と消えてしまってきたなということを感じました。それは、平山知事がきょう冒頭におっしゃいましたように、新潟県では拉致事件の報道の陰に隠れているが、実際は本当に大きな問題であるということをきょうこの場でおっしゃっていただきました。このエネルギー政策、原子力政策というのは国策でございます。私たちは、町で暮らし、また地域で暮らしているにつけても、ひとしく立地県の人たちは共存共栄しなければならないという苦しい立場の中、この明るい電気のもとで生活しているということを、きょう改めて御発言の中で感じさせていただきました。
 そこで、私は、まず平山知事に質問をさせていただきたいと思います。
 知事さんは、九月三日、平沼経済産業大臣に対しまして、四項目の原子力発電所の安全管理体制に関する緊急要請書を出されております。その中で、東電はもとより、事業者の安全管理活動を規制、指導する立場にある国にも大きな責任があり、厳重に抗議すると書かれております。これに対しまして徹底的な究明が求められているということで要請書を出されております。
 二カ月以上たちましたけれども、今回の不正事件に関する徹底的な解明が国によってなされていると思っておられるのか、また、知事さんみずからのこの要請書に対して、現時点で国からどのくらいこたえてくださっているとお感じになっているか、お答えいただきたいと思います。
平山参考人 九月三日の平沼大臣に対する要望という時点と現時点における情勢は若干異なっているところがあります。
 と申しますのは、その後より重要な、先ほど申し上げた格納容器の密閉度の不正事件というのが起こっていまして、我々は、より事態は深刻だというふうに受けとめています。そのことも含めますと、できるだけ早くに全号機をとめて逐次点検をして、密閉度それからシュラウドのひび割れの問題等を含めて、国の調査、点検、みずから行った安全性の確認というものをしてほしいということについては、そのことについての答えはまだないわけであります。したがって、安全についての不安感がぬぐえていない。
 そのことについて、先ほど申し上げましたように、需要期に十二月から入ってくる冬場の中で、柏崎刈羽七号機のうち今三つだけがとまっておりますけれども、あとの四つについては、いつ、どの時点で点検するんだということの日程が出ていないわけでありまして、そのことを踏まえますと、どうしても冬場の需要期に差しかかってくると、うわさでは、これが終わった春になるだろうというようなことを言っています。もしそうであれば、東京でクリスマスツリーがこうこうと照っていて、節電の努力もないまま我々の安全対策をおくらせるようなことがあっては何なんだという声もあります。そのことを冒頭申し上げました。
 あわせて、今回議論されている法的な対応と組織の問題等々については、一定の検討がなされているというふうに思います。組織を外に出すのかどうか、維持基準が要るのかどうか、このことも大きなポイントとして指摘申し上げたところでありまして、国の責任の中での安全・保安院の役割が十分果たされたのか、原子力安全委員会とのダブルチェックは本当にきいていたのかどうか、このことについては今議論が始まったところでありますので、一定の要望に対するこたえがされてきているとは思いますけれども、なお全部の項目について答えが出てきているというふうには思っておりません。
大島(令)委員 県民を代表する県議会からも、国、事業者に対する意見書、知事さんも同様の要請書を出しているわけでございます。しかし、今の御答弁の中で、柏崎刈羽原発全号機を停止して点検をきちんとしてほしいというにもかかわらず、国会では、私の立場としては残念ながら、原子力関連二法案の審議に入ったわけでございます。
 その法案審議の大前提としまして、私は今回の不正の事件に関しては、まず立地県に対しまして、法案に対する内容の説明を求めるですとか法案に対する意見を述べる機会が求められるべきと思っておりますが、この二点に関して、このようなことはございましたでしょうか。
平山参考人 実を申しますと、格納容器の密閉度の調査が行われて、当該号炉の中間的なまとめとして、限りなくクロであるということが発表されました。そのときに、その対応とあわせて、今回の法案の提出を行うということが経済産業省から説明がありました。ある意味でいくと、格納容器の密閉度の福島一号のクロということの対応として出てきたのかなと思うような感じでありまして、今回の一連の中での法案の提出という感じでは、特段の説明として今回あったというふうには認識しておりません。
 また、地元の住民等においても、今回の法案の提出の趣旨と中身についてどれだけ関心と周知がされているかということについては、甚だ薄いだろうと思います。むしろ検査が、できるだけ早くお願いしたいと言っていることがどうなっているのかなということの方にほとんどの関心が今のところあるというふうに申し上げざるを得ないと思っております。
大島(令)委員 私は、今のお話を聞きまして本当に――冒頭、きょうは各党の議員が代表して参考人の皆様にいろいろな角度から質問をしておられます。そういう意味では、私は立地県、特に双葉町長さんにいたしましても、災害ということから避難道路、原発があるわけですからそこから逃れられないということで、苦しいお立場から避難道路の整備とかいろいろな意見を聞かせていただきました。
 そういう立地県がもう引けない状況にある中で、今度の法案は、立地県の皆様にとっては非常に深い関係がある法案に対して、国が立地県の皆様や県民から意見を聞く機会を設けてこなかったということに対して、私はやはり非常におかしい姿勢であると思っております。
 次の質問でございますけれども、私は八月に六ケ所村役場の助役さんに会ってきました。そのときに、必要な安全協定は結んでいる、立入検査はできる、けれども、村役場として検証の技術を村独自に持っていない、だから安全協定を結んでも、検証の技術を村役場の職員、村役場でできない以上、安全協定は意味がない、であるから、青森県に専門職員を派遣して学んでもらっているという言葉を聞きました。
 このことを踏まえまして平山知事さんにお伺いしたいわけですが、九月三日の大臣への要請書の中にも、知事は、事業者の事業活動に対する自治体としてのチェック機能のあり方について、安全行政全体における地方自治体の位置づけを制度的に明確にしてほしいということを書かれておられます。
 今、実際、原発は知事にとっては治外法権化しているんでしょうか。その辺の具体的なところ、法的なところではなく、何か事故や事件があったときに原発の中に立ち入るということは、実際、県にとってはどういう状況なのかを御説明していただきたいと思います。
平山参考人 原子力発電の施設内におけるいろいろなチェックにおいて県は治外法権にあるかどうかということについては、必ずしも御指摘のような治外法権になっているというふうには思いません。
 一義的に安全性に対する責任を国が負っているという建前の中で、安全協定の中で、安全規制の中で県がかかわる自治体の役割というのはそれなりに定められているわけですが、実態として、それが十分、我々にとって今規定上定められているような内容がいいかどうか、これについては今回の不正事件の中でもう一度検証する必要があるだろう。
 それから、これまでの自治体としての行動において、そういうことを我々として十分行ったかどうか、できるにもかかわらず行うことがもしかして足りなかったかどうか、これについては、我々みずからとしてもチェックしなければいかぬ。この二つの面から、今、国の解明と同時に、対策を見ながら、安全規制の中に自治体の位置づけをどうするか議論しているところであります。
 私は、住民に対する安全対策の一次的な責任は国が負っていますけれども、住民に対する安心とか信頼という意味での、安全にある程度かかわってきますけれども、自治体として、住民に対して、今回の事故はこうなんだとか、あるいは、そのことでどうも十分な説明が国あるいは事業会社からされていない場合には、県が場合によっては立ち会い、同席して確認するということも、これまで以上にやはり強化してやっていく必要があればやっていくというのが基本的なこれからの姿勢だろうと思います。
 今回のシュラウドのひび割れについても、県で独自の立入検査を行ったのも、そういう意味で必要だというふうに判断した次第でありまして、規定上の足らざる部分については補うと同時に、規定の中で行われることを十分県としてやってきたかどうか、あわせて検討しながら、自治体の役割をこれまで以上に、住民への安全説明、安心対策として、責任ある行動をとるにはどうしたらいいか、現在検討中のところでございます。
大島(令)委員 再度お伺いいたしますが、今度の原子力関連二法案に関しまして、自治体としての安心、安全性に対するチェック、そういうことを強化するということはこの法案で担保されると思っていらっしゃるかどうか、最後にこのことだけお伺いして質問を終わりたいと思います。平山知事です。
平山参考人 言い方は大変悪いんですけれども、今回の法案は、今回のこの不正事件を考えると、ある意味では、やるべき当然の対策の範囲だろうと思います。
 それから、これで十分かといえば十分でないとも言えるわけで、ほかにもまだやっていただくことはあるというふうに思っています。特に自主点検のところについては、これだけあいまいだったことが原因でありますから、少しきちんとするというのは当然のことでありますから、そのことが法案で担保されるということはある意味で評価すべきだろうと思います。
 しかし、一番の原因であった、背景として何があったのかということについて、そしてその原因の究明が十分まだされていない。特に格納容器の密閉度の問題についてはまだ点検自体が行われていないという状態の中で、我々としては、そのことが、安全対策として国の検査自体がごまかされたということから失った国の安全にかかわる責任と体制について、本当にこれからどうするんだ、このことはまだ見えていないわけでありますので、先ほど言った原子力安全委員会と保安院のところの体制とダブルチェックを、このままでいいのかどうかを含めて、まだ宿題は、たくさんあると言ってはおかしいんですが、残っている。
 法案は、当然やるべきものの対策の最初の部分がきちんと行われているというふうに私としては理解したいと思っております。
大島(令)委員 どうもありがとうございました。
村田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時四十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案の両案について議事を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁原子力安全・保安院長佐々木宜彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田敏雅君。
山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。
 質問に先立ちまして、大臣にちょっと確認したいことがございますので、お許しいただきたいと思います。
 不良債権処理ということで、大変中小企業の方が深刻な事態を迎えております。先日、私は、地元で中小企業の方に集まっていただいて、このたびのセーフティーネット保証制度、それから新事業の挑戦制度の説明会をやりました。その中で、実は、個人保証の問題を私が申し上げましたら、大変皆さんの目の色が変わりまして、真剣なまなざしになりました。
 これはもう大臣よく御存じで、何回も取り上げました。今、ある支店長の話によりますと、一月に二社から三社、中小企業を倒産させている、こういうような話も伝わってきましたので、この個人保証の問題、ぜひ早く、そして確実にやっていかないと、多くの方の命が、きょうこうやって委員会を開いている間にも、なくなられるというような状況が来ております。
 法務委員会でも私は法務大臣に申し上げました。できるだけ早く破産法の見直しをして、自由財産をちゃんと生きていけるように残すこと、この結論を出してくださいと。はい、わかりました、早くやりますというお答えで、当初、来年の三月に結論を出しますということなんですが、大臣がわかりましたと言われた後に、いや、三月じゃなくて来年の夏にしますと、ちょっと反対の、早くしますという答えを期待したんですが、そうじゃない答えが出てまいりました。
 また、破産法部会の議論も、大学の先生と弁護士の方が議論されて、法理論のことを一生懸命やっていらっしゃるんですね。本当に中小企業の個人保証の問題を体験された方とか悲惨なことを目にされた方が意見を申されていないという審議会の雰囲気で、今、私たちが、大臣も御賛同いただいたと思うんですけれども、この、自由財産を大きくふやすということについて、どうも賛成ではない、かたいということのようでございます。
 そこで、大臣、前回も、これは重要な問題だから、ぜひ経済産業大臣として使命を持ってやっていただくということなんですが、どういうふうに大臣が働きかけて、その結果、破産法の審議はどういうふうに変わっていったのか、そしてどういう見通しを今持っていらっしゃるのか、ちょっとお答えいただけますでしょうか。
平沼国務大臣 日本の場合には個人保証というのが御指摘のように非常に過酷なものがございまして、結局、倒産をしてしまうと、前にも御答弁で申し上げましたが、極端に言うと仏壇一つしか残らないというようなそういう状況であります。
 そういう中で、法制審議会におきましても、過去十九回議論をしまして、そしてこの自由財産の件も現行の二十一万円をアップする、こういう合意はできております。そして、その審議会の中には、これは山田先生も御承知のように、中小企業の経営者の方も入っております。そういう中で、私どもは、そういう委員の方なんかもそういう御意見を持っておられますし、また、法務省所管の法制審議会でございますけれども、今、中小企業の本当に厳しい現状で、法務大臣にもよくお願いをし、そして速度を速めていただいて早急に結論を出す、このことが必要だと思っておりますので、私も引き続き法務大臣に働きかけ、努力をさせていただき、また今の実態というものもよく皆様方にわかっていただくように私も一生懸命に努力をさせていただきたい、このように思っています。
山田(敏)委員 具体的に、今後はいつまでにどういう形でやらなければならない、非常に多くの方の命がかかっておりますので、ぜひお願いいたします。
 さて、今回の法案でございますけれども、いろいろ議論がございました。内部告発ということが大きなキーポイントに今回の件はなっているわけですね。もしこのGEの方の内部告発がなければこの件は一切わからなかったという状況があるわけです。しかし今まで、内部告発について非常に後ろ向きというか、重要なものではないというような感じがいたします。
 例えば、今回の内部告発された方の実名が旧通産省の不手際によって明らかになった。このことは、法律の第六十六条の二の二項に、内部告発された方に不利益な取り扱いをしてはいけないという法律の条項がございます。これをやったことは非常に大きな悪い影響がございまして、実名が出る、せっかく内部告発したのに通産省が実名を明らかにするということであれば、これはGEの子会社の方だったらいいんですけれども、もし東電に働いていらっしゃる方だと、もうはかり知れない不利益をこうむるわけですね。私はこれは法律違反だと思いますが、大臣はいかがお考えですか。
 それと、もし違反であるならば、どういう適正な処罰をなさったのか、あるいはなさるおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。
平沼国務大臣 平成十二年十二月二十五日に、当時の資源エネルギー庁から東京電力に対しまして、申告者を特定し得る情報を東京電力に伝達したことについては、事前に申告者からの手紙の中で、関係者に対し身元を明らかにしてもよい旨の意思表示がなされていた、そのことは事実としてありました。最初の段階では、再就職先が決まっていないので身分を明らかにしないでほしい、こういう意思があったようでございますけれども、再就職先も確定をして、身元を明らかにしてもよい、こういう意思表示があった、これは事実でございます。ですから、申告者本人との関係では約束違反の問題はなかったと考えております。
 また、申告制度に関する法令においては、事業者に対して、従業者が申告を行ったことを理由に不利益な取り扱いをすることを禁止する旨規定しているものであることから、保安院から東京電力に対して行った情報伝達については、同法令との関係で問題となるものではないと考えております。
 しかし、調査のために必ずしも必要でない個人情報を東京電力に示したことは、私は適切であったとは思いません。やはり、この申告制度を守るという観点からも、それからまた申告者保護の観点からは、その場合、例えば当人の同意が得られていてもそこにマスキングをするとか、そういった形で対応をすべきだったと私は思っています。
 ですから、今前段で申し上げたようなそういう状況から、私どもとしては、処罰等そういうことはしなかったわけでございますけれども、しかし、厳重に注意をして、申告制度を損なうようなそういったことを二度と行わない、そういった形で私どもは内部体制をしっかりする、こういう形にいたしております。
山田(敏)委員 これは、告発者個人に対する問題はなかったということなんですけれども、しかし、名前が明らかになるという報道は、やはり、東京電力初めこれからいろいろな問題がもし起こったときに告発をしようという人たちの勇気を大きく損なったことは事実でございますので、この点をしっかり考えていただきたいと思います。
 さて、アメリカやヨーロッパには、この内部告発が社会全体にわたってしっかりと法制化されております。数々の社会正義がこの内部告発の制度によって行われております。
 今回、我が国の法律の中で内部告発を特記してあるのは恐らくこの原子力関係の法律だけだと思うんですけれども、それぐらい重要であるという認識だと思うんですが、残念ながら今日まで、電力会社の中の方から内部告発がまだ一件もないということをお伺いしたんですが、これは、これだけたくさんのことがあるにもかかわらず一件もないというのは、どういうふうに分析をしていらっしゃるんでしょうか。
佐々木政府参考人 原子力施設に関しましての申告につきましては、平成十二年、当時の資源エネルギー庁が受けました二件の申告の後、本年八月二十九日、これらの事案を公表するまで新たな申告はございませんでした。
 その後、私どもは今七件の申告を受け付けております。新たに設置をいたしました外部有識者から成る申告調査委員会に、処理の方針、公表の方針を御審議いただきながら調査を進めております。これら現在調査中の七件につきましては、委員会の方針によりまして、現時点では、申告者が電気事業者の従業者であったか否かも含めて、その内容、特に、申告者に関する情報を御説明することは現段階ではできないということを御理解いただきたいと思います。
 確かに、原子炉等規制法の改正によりまして、申告者保護に関する規定も施行されましたが、今まで申告の件数が少なかったことは事実でございます。その理由について、難しいことかと思いますけれども、確かなことは申し上げられませんが、申告制度そのものが、今先生がおっしゃったように、これまでの日本の社会になじみが薄く、制度の存在あるいは意義が十分に認識されていなかったことも一因ではないかと考えております。
 私ども原子力安全・保安院といたしましては、今回の反省を踏まえまして、外部有識者から成ります申告調査委員会を設置して、申告者の保護を図りつつ、的確に処理を行う体制を今整えたところです。ホームページにも申告に関するページを設けまして、申告制度の周知にも努めているところでございます。
山田(敏)委員 内部告発という制度はこういうものがあって、そしてこれは公共の福祉になる、そして内部告発をされた方は必ずこういうふうに守られるということを周知徹底しない限り、これは何も起こらないんですよ。今御自分でおっしゃったんですけれどもね、ホームページで公開していますと。それで終わりですよ。今内部告発をしようという人は、大変な勇気を持ってやらなきゃいけない。
 そうしたら、やはり各電気事業者に対して、これを周知徹底しなさいと、今言いましたね、内部告発はこういう制度です、こういう手続です、それに対して、内部告発された方は必ず、こういうふうな制度で、法律で守られますということを周知徹底しなきゃいけないでしょう。今おっしゃったのは、ホームページに書いてありますからこれでいいです、大臣、どう思われますか。
平沼国務大臣 ホームページだけと、こういう御指摘でございますけれども、私どもとしては、そういう趣旨でそういう制度をつくっている、こういうことは電気事業者にも言っておりますし、まだそこが十分でないとしたら、そういう制度をつくったということを周知徹底し、さらに電気事業者も問題意識を持ってもらうように努力をしていきたい、このように思います。
山田(敏)委員 三菱自動車のリコールの問題、これは、事故でたくさんの方が命を落とされました。これは、内部告発があって初めて欠陥車であるということを三菱自動車は認めた。あれは、内部告発がなければさらに多くの方が事故で命をなくされた。雪印もそうですね。内部で作業をしている人が告発して初めてわかった。これは非常に重要な制度です。特に今回の原子力に関することについては大変重要ですので、今大臣が答弁されたように、早急に周知徹底をするということをお願いいたします。
 さて、もう一つの問題は、今回の法改正によって――今まで事故が起こると、規制を厳しくしました、罰則を少しきつくしました、管理をしっかりしましたという延長線なんですけれども、本当にそれで問題の本質をついているのかどうか。今までずっと繰り返してきたわけですね。
 今回の問題は、告発があってから明らかになるまで二年間かかったわけですよね。アメリカでは一週間以内に、これは事実であるかないか、すべて解明する。今回の場合、二年間かかったんです。この理由はもう大臣は御存じだと思うんですが、東京電力が調査に協力をしなかったんです。質問したことに対して答えなかったんです。だから二年間かかったんです。これはどう思われますか。
平沼国務大臣 私が最後の通産大臣に就任しましたのが、たしか平成十二年の七月四日だと思っておりますけれども、告発は、たしかその前日にあったと思うんです。そして、私のところに連絡があったのが約二年を経過しておりまして、私は、たしか八月二十八日に、実はこういうことがある、こういうことを聞きまして、それはもう大変な事案だからすぐ公表しろ、こういう形で公表をさせていただきました。
 二年かかったということは、評価委員会の御指摘にもあるとおり、本当に長過ぎる、こういうことで、今御指摘のように、東京電力が協力をしなかった、こういうこともありますけれども、やはり当省のそういう体制にも問題があった、このように私は思っております。
山田(敏)委員 新潟県刈羽村のラピカの事件を大臣はよく御存じだと思うんですね。一年間やりました。大変な工事の不正がございました。十三万円の畳は実は数千円の畳だったとか、最高級の京がわらが一枚二百円のかわらだったとか、図書館の机が百万円だとか、もうとんでもないことがございましたね。これはもう全く、普通の市民が考えてもとんでもない話なんですね。
 これは、電源三法交付金というお金が支払われましたので、当然通産省は、四回にわたって延べ九名の方が検査に入って、そして工事を見て、図面を見て、どこも問題ありません、ではお金を払いましょうといって八十億円近いお金が支払われたわけですね。ところが、市民が見ただけでもこんな不正がわかる。結果をあけてみたら、三百カ所、補助金を出す内容と実際に工事をやったことが違っていた。この三百カ所の違いをただの一件も発見できなかった。延べ九名の方、四回現地で調査された。
 これはどうしてですかというふうに申し上げました。当時の古屋副大臣が、では調査をしますということで、調査結果を私にいただきました。忙しくて見る暇がありません、図面はこんなんです、現場を見るのは一時間がもう精いっぱいですと。でも、現場を見たら、こんな、十三万円の畳か六千円の畳か、そんなのすぐわかりますよね。庭が全部総御影石で、行ってみたらただの石ころが置いてあるわけですから、それは簡単にわかるんですね。それで、書類がたくさんあるので、一枚か二枚何か引き出して、これで抽出的に検査した、これで問題がないから全部問題ない、こういうことだったんですね。
 そこで、問題は、数十億円ぐらいの不正があると思うんですけれども、では、どうやって特定するか。工事が完成した竣工図面というのがあるわけですね。それがあれば、これはただの石ころか、三百円のかわらかわかるんですね。この竣工図面が紛失しましたと。それでは、最初に補助金を認可したときの、補助金を申請したときの図面があればいいわけですね。実際とこれを比較すればいいんです。その申請した図面は紛失いたしました、こういってゼネコン側は答えたんですね。
 これに対して、通産省は、国民の血税を八十億円払ったわけですから、責任があるんですね。しかし、その責任は全く果たせなかった。この原因は、一言で言ったら調査する権限がないからなんですよ。本当だったら、これは起こった次の日にゼネコンのオフィスに行って、机を全部あけて、金庫を全部あけて、ありとあらゆる証拠を集めればこの不正は簡単にわかることなんですね。これは捜査権限がないということなんですね。
 私の質問にも、質問通告いたしましたけれども、この原子力発電所というのは数十万人の方の命にかかわることです。これは、電源三法交付金はお金の不正ということだったんですけれども、その次元とこの原子力の問題は次元がはるかに違いますね。アメリカ及びヨーロッパは、今この原子力発電所の検査、検査体制、検査する権限、これは格段に違うんですよね。よくおわかりになると思うんですけれども。
 この際、これを真剣に考えて、捜査をする、捜査権限というんですね。今おやりになっているのは、立入検査というのをおやりになっているんですね。立入検査というのはどうやってやるかというと、済みません、あさって行きますからよろしくと言って、あさって立入検査へ行きましたと。それは、図面があれば全部その間に隠せと。その点について、大臣どう思われますか。
平沼国務大臣 大変、二年もかかった、こういうことでございまして、強制調査権等がないことを問題にされていると思うのですけれども、私どもとしては、調査過程について、私直属の委員会を設けて評価を行わせていただいたところです。
 その委員会の中間報告では、当初申告処理に当たった資源エネルギー庁及び平成十三年一月以降にこれを引き継いだ原子力安全・保安院が、申告の内容が事実だとしても、安全上問題はなく、法令違反の可能性も低いと判断したために、調査への取り組みが不十分であって、早い段階での法律に基づく処理が行われなかった、こういうふうに厳しい評価を下しているところでございます。
 すなわち、本件につきましては、私どもは、御指摘の強制調査権等がないことが処理を困難にしたのではなくて、申告制度に対する不十分な認識に基づく処理が問題であった、このように認識しておりまして、そのために、原子力安全・保安院では、申告案件の処理につきまして、外部有識者から成る申告調査委員会の監督のもとで処理を行う体制を整えました。今後、この委員会の指導助言を受けながら、法律に基づく報告の徴収や立入検査を機動的に行うことにより的確な処理に努めていきたいと思っています。
 また、今回の法律改正によりまして、報告徴収対象を点検の事業者に拡大しましたり、罰則ということを言われましたけれども、罰則を強化するなどの措置を講じることにいたしておりまして、こうした対策も的確な申告処理に資すると思いますし、安全確保という、非常に、二年も要し、そして国民の皆様方の不信を招いた、こういうことで、私どもは、こういったことの改善を通じてしっかりと担保できるものと、このように思っているところであります。
山田(敏)委員 大臣、よく考えていただきたいんですけれども、今、二年間にわたって、これはこういう問題がありますから出してください、いや、出しません、では調査してください、わかりましたといって、出してきたのは虚偽の調査結果、会社がつくったものであった。これに対して、ああそうですかと受け取ってやってきたからこういうことになったんですよね。
 これが本当かどうかは、今言った強制調査権があれば、直ちに入って、それを全部調べれば、これが本当かどうかは一日でわかるんですね。これがあるかないかというのは、物すごい大きなことなんですよ。今おっしゃったのは、以前と何ら、解決になっていないんですよね。
 前も同じなんですよ。これはどうですか、はい調べました、どうぞ、いただきましたと。では、これが本当かどうかどうやって確認するのか。いや、これが正しいと信じておりますと。前もそうだった。二年間にわたって、いただいた資料は、これは正しいと信じておりますといってやったから二年間もかかったので。
 これは、最初に言いましたように、数十万人の人の命がかかっているということは、全然法律の次元が違うんですよね。ですから、ちょっと大臣、今答弁されたんですが、もう一回よく考えていただいて。
平沼国務大臣 今回の、申告に基づく事案というのは、自主検査の部分でございました。そういう自主検査というその範囲の中で、私どもは、先ほども答弁で申し上げたように、自主検査の範囲で、それほど重大ではないというような判断がある、だからそういう中でずっとやってきました。
 しかし、今度、法改正の中で、そういう自主検査というものもやはり厳密にやっていかなければいけない、まして定期検査というものはより厳格にやっていかなければいけない、こういう形で、私、御指摘の点、よくわかります。本当に、たとえそれが自主点検の範囲のものであっても、それが何らかのことで拡大をしていって、そしてそれがカタストロフィーに結びつくというようなこともありますから、そこのおっしゃる意味は非常によくわかりますので、私どもは、そこのところはこれから、今までもこの事案を通じてきちっとしましたし、それから、今までは、委員も御承知のように、罰則も非常に軽度なものでした。しかし、そういうものに対しても非常に重い形にいたしました。
 さらに、私どもとしては、御指摘の点も踏まえて、そして場合によっては厳密な検査をするというようなことでしっかりと担保していかなければいけない、こう思います。
山田(敏)委員 ラピカのときに大変歯がゆい思いをしたんですね。図面がありませんと言われたら、もうそれで終わり。それでは問題の再発防止とかそういうことはもう何もできない。
 今回も、国の定期検査のときに、この本をいただきましたが、この年報に報告が全部書いてありますけれども、ほとんど異常なし。それは異常なしなんですよね。これは、やる前に自主的にやって、異常なところを全部直して、異常なし、こうやったんですね。だから、直したところのデータがないから、これは問題の再発防止にはならないんですね。これを防ごうと思ったら、やはり今の次元の違う考え方をしないと、私は根本的な解決にはならないと思います。
 最後の質問なんですが、刈羽村の方々のプルサーマルのときの住民投票がございました。そのときに、反対の住民の方十人が私の部屋に来られました。プルサーマル、どうして反対なんですかと聞きましたら、不安だから反対ですと。じゃ、どうして不安なんですか、それは情報公開がないから不安ですと。それじゃ、どの情報公開があったら不安じゃなくなるんですか、不安じゃなくなったら、じゃ賛成なんですねと、こういうことになりますから。そして、どの情報公開ですか、これは答えられないんですね、こんな複雑な技術、専門の技術者でもわからないような。
 じゃ、どこの情報公開をいただいたら安心して暮らせるのか、プルサーマルに反対しないでできるのかと。本当にその場で私、紙と鉛筆出したんですよ、書いてください、僕が責任持ってその情報公開やりますからと。ところが、書けないんです。それはそうですよね、普通の主婦の方が、原子力発電所の情報公開、こことこことここがわかったらこれで安全ですということにならない。しかし、住民の方は不安だなと。不安というのは、何か隠してあるんじゃないかという意味なんですよね。
 そこで今回、情報公開というのは非常に重要視されるというような御答弁がございました。情報公開は非常に難しいですよね。全部公開してやるとさらに不安をあおることになるし。ですから、どこまで、どういう手順で、どういう情報公開をすれば住民の方は不安がなくなるということをちょっと明快に議論して出していかなければいけないと思うんですが、その点はいかがですか。
平沼国務大臣 今、刈羽村の住民の、周囲の方々のそういう不安、そのお話をしていただきました。大変私も参考になったと思います。
 今回の一連の事案で、そういう立地地域、また国民の皆様方の不安感を大変助長してしまったことも、私どもは非常に責任を感じております。
 原子力に対する国民や地域住民の信頼を回復していくためには、やはりきちっと説明責任を果たすことが私は重要だと思っています。規制当局である保安院は、今御指摘のように、やはり国民の皆さん方の視点に立って、透明性を向上させてわかりやすく説明することが私は重要だと思っています。
 保安院では、これまでも、事故やトラブルだけではなくて、いわゆる許認可や検査などの日常の活動もホームページなどを通じて公開する、これも委員よく御承知だと思うんですけれども、リレーションシップマネジメント、こういうのを行ってきました。今後は、重要な事項について対外公表をするなどの際は、幹部職員が、刈羽村なら刈羽村、そこに実際にお訪ねをして、やはりきちっと説明をして、そして安心をしていただく、こういうことが積極的な情報公開として、手段として私は必要だと思っております。
 それからまた、外部からの評価を進んで受けさせていただいて、その評価が規制活動の質的向上につながるように取り組みを行っていく。それから、国民や地域住民との間でやはり日ごろのリレーションシップ、良好な関係を築くことも信頼が回復することだと思っています。
 ですから、私どもとしては、御指摘のように、原子力関係のそういう情報公開の中では、例えば、対外的にプルトニウムなんかの量というのは原子力爆弾なんかに結びつく、そういう、やはり国として、国際的にも守らなければいかぬことでありますから、そういうことはともかくとして、定期検査の結果についても、国民や地域の住民の信頼が得られるように、公表についての方針をきちっと整理しまして、そして、原子力について知識を持たない方々でもやはり理解ができるような形で、私どもは、そういう積極的な情報公開のシステムをぴしっとつくっていかなければいけない、そういう体制をとらなければいかぬ、このように思っております。
山田(敏)委員 時間が参りました。質問を終わります。
村田委員長 生方幸夫君。
生方委員 民主党の生方でございます。
 まず最初に質問させていただきたいんですが、そもそも、今回の法改正が何のために行われるのか。第一の目的が、一連の電力会社の不祥事があったわけですから、その不正を防止するために今度の電気事業法の改正があるのか、あるいは、今とまっている原発を早期に稼働させなければいけない、そのために維持基準を早急につくらなければいけないという意図なのか。そもそも、今度の法改正の目的、そこからお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 今般の一連の不正行為については、事業者の自主点検が法令に位置づけられていなかったこと、あるいはひび割れ等のふぐあいを評価する手法が不明確であったことが、適切な対応がなされなかった要因の一つだ、このように思っております。
 このようなことから、今般の法律におきましては、事業者に対して、定期的な自主点検を義務づけるとともに、仮にひび割れを見つけた場合には、設備の健全性に問題がないかを評価させることにしているわけであります。
 今般のような不正事案の再発防止のためには、これらの対策を可及的速やかに実施することが必要と考えている、これが一つのポイントでございます。
 その実施に当たっては、健全性の評価基準の整備等にある程度時間がかかる、こういうこともございますので、私どもとしては、そういう中で、この一連の事案の反省に立って、その問題の究明と、それから国民の皆様方の信頼回復、そして、例えばこの維持基準というような問題がございますけれども、そういったものも、やはり設備の健全性にその問題があるかないか、そのことを的確に評価する、そういうシステムを確立して、私どもとしては国民の皆様方の信頼を回復する、そのことが今回の法律の趣旨でございます。
生方委員 午前中に新潟県の知事がお見えになっていろいろお話をしてくれました。それからきのうは、福島県に議員の有志の方が行って、佐藤知事にお話を伺ってきました。そこで一様に出されるのは、安全がきちんとまだ確認をされていない時点でこの維持基準を導入してそれを急ぐことの意図の裏には、結局、今とまっている原発を早目に稼働させなければいけないんじゃないかと。
 ある新聞によれば、その維持基準というものがもし日本で導入をされていれば、今回のこの程度の事故だったら原発をわざわざとめる必要もなかったんじゃないかというような意見が電力会社から実際に出されているわけです。
 そういう意見がある中で維持基準というのが導入されれば、この程度ものであればすぐ稼働させていいんだということになってしまって、住民が必ずしも安全性にきちんとした信頼を置いていない時点で稼働してしまうのではないかというのを一様に、新潟県の知事の方も福島県の知事の方も心配をしていたわけです。まあ、維持基準についてはこれから質問を伺いますが。
 とにかく、まず、一番大事なのは安全性の確認であって、稼働させることを優先させるためにこの事業法を通すのではないということを、まず御答弁いただきたいと思います。
平沼国務大臣 先ほどの御答弁でも申し上げましたけれども、もちろん、その安全性をやはりしっかり担保して、そして国民の皆様方に安心をしていただく、そのことが今回一番大切なこと、こういう認識でございます。
生方委員 もう一点だけ重ねてお伺いしますが、東京電力、電力会社の場合は今度の一連の不祥事について社内調査も行い、もちろん全部終わったわけじゃないんですが、一応の処分をしているわけですね。これは、安全点検の場合には当然国の保安院の方も同席をして、安全であるというようなことを今まで言ってきて、電力会社の側のいわば不正行為というのを見抜けなかったという、私はやはり保安院側に責任もあると思うんですね。
 電力会社側は電力会社側なりに一応の処分をしている。ところが、国の側は一向に何ら処分をしていないということでありますと、国の側にはその検査、点検をするときの監督に全く誤りがなかったのかということになれば、私は、あったというふうに思うんですね。それをきちんと国民の皆さん方に示すためにも、どういう処分がいいのかわかりませんが、きちんと適切な処理をするべきだというふうに考えますが、いかがでございましょうか。
平沼国務大臣 今回の原子力安全・保安院による対応につきましては、厳正中立な立場から、どのような問題があったのかについて虚心坦懐に見きわめることが重要であるとの考えから、私直属の組織として、御承知のように、外部の有識者から構成される評価委員会を設置いたしまして、その調査過程の妥当性などについて御審議をいただいたわけであります。
 そして、その評価委員会の中間報告での厳しい御指摘を踏まえまして、規制当局である当省の側にも不適切な点があったことを率直に認めました。その上で、関係職員の処分を行ったものでございまして、その処分内容については、私どもは厳正なものであったと確信をしております。
 私といたしましては、申告処理体制の整備や自主検査の法定化など、今後このような問題の再発を防止するための対策を早急に講じることによりまして、原子力の安全確保に万全を期すという規制当局としての責任を全うしていかなければいかぬと思っておりますし、私も担当の大臣として二年、そういうことで国民の皆様方に大変御迷惑をおかけいたしましたので、私自身もやはりこれはという形で、給与の自主返納等させていただいたところでございます。
生方委員 私は、基本的には、経済産業省の下に保安院がある、それから、今度の新機構も保安院のまた下に置かれるという形で、原発を推進する側と、いわば安全をチェックする側が同じ省庁の下に置かれているというのは、やはり公正を期するという意味からも余り適切ではないんじゃないかと。やはり私は、これは分離をして内閣府に置くとか環境省の下に置くとか、あるいは公正取引委員会的にもう全く独立したものにしてしまうとかいうふうにした方が、国民の側から見ればきちんとしたチェック体制がとられているんだということになると思うんですけれども。
 なかなか、一省庁の下にできているものを分離させるというのは、大臣の口から分離させますよと言うのは大変なことだと思うんですけれども、国民の意見としては、やはりその方が安全性がより確保されるというふうに、そういう声も実際に多いわけでございますから、その辺は御検討、今後ですけれども、するつもりがあるかどうか、お伺いしたいんですけれども。
平沼国務大臣 この中央省庁再編に当たりまして、そこのところが議論になったことは御承知のとおりであります。そのときに、よい方法だということでダブルチェックシステムという形になりました。
 日本においては、天然資源、特にエネルギー資源がないわけでございますから、一方においては、エネルギー政策上原子力の推進を図らなければならない。そうなりますと、推進に責任を持つ方に全く原子力に対する知識が、あるいは安全性に対する知見、そういうものが不足しておりますと、進める側でそこは無責任ではないか。
 したがって、私のもとに第一段階として原子力安全・保安院というのを置いて、そこで第一次的なチェックをする。同時に、内閣府の中に、これはダブルチェックシステムのここが一番のもとですけれども、原子力安全委員会というのを置いて、そこは安全を担保する、こういう形で進めてきたわけであります。したがいまして、このダブルチェックシステムを、そういう選択の中で私どもとしてはそれを実行してきたわけです。
 しかしながら、今般の事案によりまして、原子力の安全に対する信頼性が損なわれたことは大変遺憾なことだと思っておりまして、今後、私どもとしては、地元の方々を初め、原子力行政に対する信頼の回復のために原子力安全行政に万全を期すことが必要だと思っておりまして、原子力安全規制の強化、それから原子力安全委員会との連携の強化とか、それから保安院のあり方、こういうことについては、さまざまな御意見を承りながら、今後総合的に私どもは検討をしていきたいと思っております。
 その一環として今回御審議いただいている法案は、保安院の行った許認可や検査について、毎年度原子力安全委員会に対して当省から報告を行って、その意見を聞いて必要な改善措置を講ずる、こういう仕組みを設けているところでございまして、御指摘の点は非常に重要な点でございますので、今後総合的に私どもは検討していかなければならない、このように思っています。
生方委員 確かに、ダブルチェックの体制になっているんですけれども、原子力安全委員会の方が必ずしも十全に機能していなかったんじゃないか。保安院からの報告を受けて点検するだけで、自分たちできちんと安全性を担保するというふうにはなっていなかったということで、機構的には確かにダブルチェックになっているんですけれども、実際は保安院がほとんどやっていたというのが現状ではなかったかというように思いますので、今大臣から総合的にこれから判断するということでございますので、先ほども新潟県の知事の方から、この原子力安全委員会と新機構と保安院との関係がどうなっているのかよくわからないというような意見も出されましたので、一番大事なことは、その安全性がいかに確保されるのかというのが大事でございますから、独立をさせるというか、経済産業省から離れさせるということも含めてぜひとも御検討いただいて、国民の皆さん方が安心できるような安全チェックの体制をつくっていただきますようにまずお願いを申し上げておきます。
 それから、今度の法改正で維持基準というのが導入されることになった。午前中の委員会でも東大の教授の方が、維持基準というのは国際的にほとんどが導入されているものであるから日本でも導入をされるべきだというような意見を述べられましたが、その維持基準そのものがどういうものであるのかというのが残念ながら我々には示されていないわけで、今後政省令によって定めるということになっておるわけですが、そうなりますと、その維持基準が適切であるのかないのかというのは今この時点で判断のしようがないわけですよね。したがって、維持基準というのが一体どういうものであるのかという概要をお知らせいただきたいと思います。
西川副大臣 大事なことは、維持基準を導入することによって従来の安全水準を引き下げるなどということを一部におっしゃっている方がいますけれども、決してそういうことではない。絶対そういうことではない。
 供用を開始した原子炉のふぐあいが出る、例えばひび割れが発見されたとかそういうようなことに対して、従前、これをチェックする基準がなかったということは事実なんですね、残念ながら。これは申しわけないと思っておりますけれども、それを整備していく。そのためには、ただいま先生御指摘の、客観的に見て信頼のできる規矩を設けなければいけないということは、これは当然でございます。
 アメリカ機械学会の基準でありますとか、これは、機械というと誤解をされる方がいて、いわゆる一般の工作機械とかその程度のものだと、そうじゃなくて、原子炉そのもの、原子力施設そのものを機械と見て、それに適合する、こういうものを明確にやっていきたい、こう思っておりますが、具体的内容につきましては、政府参考人からお時間をいただいて、今詳しく答弁をいたさせます。
佐々木政府参考人 法案におきましては、評価の具体的な方法については省令で定めることにしております。
 ひび割れ等が検出された場合でございますけれども、省令では、まず検査の方法を定めなければいけないと考えております。まず、超音波あるいは放射線などを用いまして、構造物の表面あるいは内部にある傷の存否、その大きさ、深さを検出できる非破壊検査の方法を定める必要がございます。
 この非破壊検査の結果、ひび割れ等が検出された場合に、その時点では法律に定める技術基準に適合するものであっても、将来そのひび割れ等の大きさや深さが進展して技術基準に適合しなくなる場合があります。こうした場合には、一定の方法により当該ひび割れ等の進展予測を行い、どれくらいの期間を経れば技術基準を満たさなくなるかを工学的に評価すべきこと、こうしたことを省令で定めることといたしております。
 こうした維持規格につきましては、米国の機械学会では一九七〇年代から策定されておりまして、一九九〇年代になりましてから、米国の原子力安全の規制当局でも規制基準として活用しておるものでございます。
 こうした動向を踏まえまして、我が国におきましても日本機械学会が、米国機械学会規格を参考として、我が国独自の技術的知見も反映しつつ、二〇〇〇年の五月に、原子力の圧力容器など原子力施設の機器に対応いたしました健全性評価の規格を策定しております。
 今般の法案に基づきまして、原子力発電設備の健全性評価に関する規制基準を整備したいと考えておりますけれども、この基準の策定に当たりましては、こうした規格につきまして、規制当局自身といたしましても、これらの考え方が十分科学的、合理的なものか、公正な手続、透明性も確保し公開のもとでもやりたいと考えておりますけれども、十分手続を経て評価をした上で、国の規制として活用していきたい、その妥当性を判断してまいりたいと考えております。
生方委員 維持規格というのは、欠陥評価基準というふうにも言われていると聞いております。
 確かに、自動車だって、一部にひびが入っていても、別にそれが即事故に結びつくということにならないのは明らかで、自動車のどこかに傷があったからといって、その自動車を走らせてはいけないということにならないというのはわかりますけれども。
 原子力は、原子力発電所そのものが、今現在、三十四年間しかまだ動いていないわけで、それほど長い歴史があるわけではございませんよね。廃炉にしたのが幾つかしかないような時点でございますから。まだ必ずしも、もう何代にもわたって原子炉というものが使われてきて、こういうひび割れであればこういう事態が起こるであろうというようなことが十分にもう検証されているのならいいんでしょうが、恐らく検証はされていないわけですよね。原子力ですから、どういうことが起こるのか、ほかの一般の機械とはやはりもちろん違うわけですから。
 先ほど保安院の方がおっしゃいましたが、原子力発電所そのものからももちろん検査をしているということなんですけれども、これは厳しくしても厳しくし過ぎることは決してないと思うんですね。実際にいろいろな事故が起こっているわけで、これは大丈夫だろうというもとに行っていったらそういう事故になっちゃった。
 それは、一つの見方としては、維持基準がないからそうだったという見方もできるし、維持基準を軽くしてしまうというか、普通にそういう軽いものができてしまえば、その維持基準さえクリアしていればいいという形で、新たな事故の心配が起こってくるということもあるので。
 原子力というのはそれこそ、車ももちろん、欠陥があってぶつかったら人が亡くなりますから大変なことですけれども、原発の場合は、一たん事故があれば、これはもう取り返しのつかないことになるわけで、この維持基準というのを、我々は残念ながら素人ですから、維持基準がきっちりできて、本当にそれで十分安全が担保されたのかどうかというのは、これはわかりようがないわけでございます。
 聞くところによれば、アメリカでは、維持基準が導入されたことによって原発の稼働率が倍に上がったという話もあるんですね。それでも事故が起きなかったじゃないかというようなこともあるかもしれませんけれども、倍に上がったというのを見て、日本でも維持基準を早目に導入すれば、現在はもう事故がありましたので、不正があったのでずっととめられているのが、稼働させるようにできるんじゃないかというようなこととか、先ほど申し上げましたが、維持基準さえできていればこの程度のことで原子炉をとめる必要はなかったというような意見も出ているわけで、これを客観的にどういうふうに、我々が安心できるようなものができるのか。
 指摘をさせていただきたいのは、今、維持基準の導入を急ぐということは、どう見ても、知事さんなんかの発言を見ても、今とまっている原発を早目に動かしたいからというのが一番大きいんじゃないか、あるいは、どさくさに紛れて維持基準を早目に導入してしまえば稼働率が上がるのではないか、これでは全く逆じゃないかと。どうしたらその安全を担保できるのか、安全が確保できるのかという議論をしているときに、維持基準というのを、一般に、我々も素人ですから、唐突にこういうものが出てきて、これを導入しようとしているんじゃないかというようなそういう心配があるわけですね。
 したがって、これは行政に対する信頼とも関係をしてくると思うんですけれども、専門的であればあるほど、国民の方たちがそれを納得するか納得しないかというのは、行政当局や電力会社の真意というんですか、やはりそれにかかっていると思うんですね。
 それを保安院の方に言わせると、非常に言葉が難しくなってきて、我々も、聞いていても、それが正しいのか正しくないのかというのは、残念ながらそういう知識を持ち合わせておりませんので判断できないわけです。それは広く国民もそうであるわけでございますから。
 私は、維持基準というのを今すぐ急ぐというのを、やはりもっと広く、専門家も、もちろん専門家を中心に議論はするんですけれども、専門家や地元の方たちや電力会社、我々利用者のすべてが納得できるような形で導入するべきであって、今この時期にさっと急いでやるべきではないというふうに私は思うんですが、いかがでございましょう。
平沼国務大臣 原子力行政の一番守らなければならないのは、やはり安全性をいかに確立するかということと、それから、それに基づいて国民の皆様方の信頼を得るか、このことに尽きると私は思っています。
 そういう意味で、この維持基準については、拙速は許されない、こういうふうに思っています。ですから、そういう意味では、民間規格を活用しつつ策定することにしておりますけれども、その規格が科学的、合理的で公正なものとして国民の信頼を得られることが必要だ、このように思っております。
 経済産業省といたしましては、民間規格を採用する際には、当然でありますけれども、原子力の専門家でございますとか学識経験者の方々によって、その技術的妥当性をまず評価していただきまして、その検討の結果をパブリックコメントに付すなど十分な検討を行って、そしてさらに、原子力安全委員会でも御議論をいただく、そしてまた、地元関係者にもそのことはしっかりと説明をさせていただく。そういった国民各界各層の御理解が得られるように、やはり適切なプロセスを経た上で採用していく、このことが必要だと私は思っておりまして、やはりこのことで拙速は許されない、このように思っております。
生方委員 維持基準を省令で定めるというよりも、仮にそういうものがきちんとできてきてコンセンサスが得られるのであれば、やはりそれを国会で、この場できちんと議論をして決めた方がいいのではないか、もちろん、参考人等も呼びながら。法律で決めるべき内容ではないかな。省令で決めちゃいますと、我々はそれを見るだけの話になってしまいますので、そこは広く、この場がいいのかどの場がいいのかわかりませんが、法律で定めるべきではないかというふうに私は考えますが、いかがでございますか。
平沼国務大臣 法律で定めるということも一つの考え方と思います。しかし、今私が申し上げたようないろいろな手続を経て、そしてしっかりと対策を講ずれば、省令でも十分担保できる、こういうふうに私は思っております。
 私どもとしては、まず、学識経験者でございますとか原子力の専門家ですとか、そういった方々の御意見をしっかりと聞き、御検討いただき、原子力安全委員会でも検討していただき、さらにパブリックコメントに付していろいろな御意見をいただいて、その上で決めていく。そういう中では、私どもとしては慎重にやっていきたいと思っております。
 法律に関しましては、私どもとしては、今の段階では省令で十分担保できると思っておりまして、そこは御理解をいただければと、このように思います。
生方委員 先ほど大臣がおっしゃいましたように、国民がちゃんと納得できるような、情報公開もなされながら、維持基準というものがどういうものであるのかというのを広く国民が納得をするような形であればそれで結構だと思いますが、納得をしない時点で省の中だけで決めてぽっと発表されたのでは、なかなか、今度のこういう不正事件があった後ですから、不正を防止するという意味からも大事な点でございますので、十分御考慮をいただきますようお願いします。
 それから最後に、この維持基準を導入されることによって、例えば、この原子炉は五年間大丈夫ですよというようなことが維持基準の中から出てきちゃったとすると、今まで定期点検は一年プラスマイナス一カ月ですかのうちに定期検査を行うということになっているのが、五年は大丈夫だということになったら、定期点検の期間が長引いちゃうんじゃないかというふうに心配する方もいらっしゃるんですけれども、その定期点検の期間を、維持基準が例えば導入されることによって短目にするとか、この法律の中では省令で定めるところにより定期点検を行うというようになっていますが、現在の定期点検の期間を長目にしたりするということはないでしょうね。
西川副大臣 今般の法改正では、電気事業法の五十四条に指摘をされております「省令で定める時期ごとに、」の前に「経済産業省令で定めるところにより、」こういう文言をこの法案で追加いたすわけでありますけれども、この趣旨というものは、ただいま先生から御指摘がございましたように、間隔をいたずらにあけるのか、こういうことではございませんで、定期検査の間隔につきましては、現行の規定におきまして、いわゆる「省令で定める時期ごとに、」こういうふうになっておりまして、施行規則におきましては、先生も今言及をしていただきましたが、決まった期間、すなわち十三カ月を超えないごとに実施をするというふうになっております。
 そこで、総合資源エネルギー調査会におきまして、これらの制度につきまして検討を行っていただきまして、平成十四年六月に取りまとめられました報告書の中で、個々の点検、検査項目がどの頻度で行われるかということにつきましては、安全上最も有効であるかどうかという観点から評価をして、その評価に基づいて検査項目の間隔を定めるべきである、こういう報告をいただいておりまして、この報告の趣旨をしっかりと踏まえまして、定期検査の間隔につきましては、十三カ月を超えない、こういうことできちっとやっていきたいと思っております。
生方委員 先ほどの意見陳述を聞いても、地元の方はまだまだ不安が抜けていないというようなことでございますから、今とまっている原発が稼働する際には、地元の同意がなければ稼働させないということを、最後に大臣、お約束をしていただきたいんですが、いかがでございましょうか。
平沼国務大臣 今、定検を含め、今回の事案でたしか九基停止をしております。また、さらにこれから定期検査に入るものもあります。そういう中で、私どもはしっかりと検査を行いまして、そのことは十分地元の方々にも説明責任を果たさせていただきたい、こういうふうに思います。
生方委員 これで終わりますが、何しろ安全が大事ですから、夏の電力が足りないからということで稼働させるんじゃなくて、夏、暑さを我慢してでも、安全性の方は大丈夫だ、安全性の方が重要だということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
村田委員長 土田龍司君。
土田委員 今回の東京電力の事件に発しましていろいろ出ております。きょうも、午前中の参考人質疑で、平山県知事や、あるいは学者の方からもいろいろな意見を聞いたところでございます。
 まず、一次的には事業者の責任であるということはもう当然でございますけれども、しかしながら、原子力発電所の検査結果について虚偽の報告あるいは改ざんをするような素地をつくってしまった、これについてはやはり、不明確なあるいは合理性を欠いたルールのもとでのあいまいな裁量行政がその下地にあるんじゃないかというふうな感じがしているわけです。
 そこで、今大臣は、繰り返し国民の信頼を取り戻すんだということをおっしゃっていますし、全くそのとおりでございますし、この点についてはあらゆる努力をしていかなきゃならないと思うわけでございます。
 きょう、委員会で質問があって、今週の金曜日にやって、また来週の水曜日にやりますけれども、基本的なことについて今何回も似たような質問がございましたけれども、一歩踏み込んだような形で質問をさせていただきたいと思います。
 まず、最初のテーマとしては、やはりダブルチェック体制が本当にどうなのかという問題だと思うんです。
 特に、青森県知事からは、分離独立によって前向きな対応が得られない場合は、使用済み核燃料の搬入を阻止するんだというような厳しいことを言っている方もいらっしゃるわけでございます。このような意見を真摯に取り上げて、今大臣の答弁では、ダブルチェックは非常に機能をしていると思う、しかしながら、総合的に判断して、これからも検討していきたいというふうなことを答弁されておりましたが、アメリカの原子力規制委員会の一元的な取り組み方、私はむしろこの方が責任が明確になってはっきりするように思うんですけれども、これについて、相対的な評価といいますか、どのように考えておられますか。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 米国のようにエネルギー資源の豊かな国とは異なりまして、我が国におきましては、エネルギーの安定供給に資する原子力というのは、基幹的なエネルギーとしてその導入を進めていかなければならないわけであります。そのような原子力政策を推進していくに当たりましては、安全性の確保というのは、何回も申し上げておりますけれども、大前提だと思っております。
 そのため、安全性は知りませんけれども推進をしますということでは、立地の地元の方々や国民の皆様方を含めて理解を得ることは困難でございまして、エネルギー政策に責任を負う経済産業大臣が安全規制も含めて責任を持って実施する現在の体制というのは、先ほども御答弁で申し上げましたけれども、中央省庁再編に当たっても議論をしまして、我が国の実情に照らして適当である、こういう判断をしてこういうダブルチェック体制でやらせていただいています。
 また、米国のような、御指摘の、単独の規制機関に安全規制の実施をすべてゆだねているわけですけれども、日本の場合は、ゆだねるのではなくて、規制機関による安全規制の実施について、客観的、中立的な立場から監視するという我が国のダブルチェック体制は、原子力の安全体制について万全を期すだけではなくて、国民の信頼を確保する観点でも、私どもは、いろいろ議論をしたところでございますけれども、合理的だ、このように思っております。
 今後は、このような我が国の実情等を踏まえたダブルチェック体制について、その実効性を強化していくことが重要であると考えておりまして、今回の法案におきましても、規制機関が原子力安全委員会へ報告をし意見を求める、こういったことをしっかりと制度化して万全を期していきたい、そういうふうに思っておるわけでございまして、我が国のそういう状況に照らして、私どもは、合理的だ、このように思っているところでございます。
土田委員 今回の案件に関して、平沼大臣のもとに評価委員会がつくられ、改善策が提言されたわけでございますけれども、この評価委員会は、今回の事件に関しての評価あるいは処理過程、これを提言したわけでございますが、今後については、保安院の活動全般を対象とした、例えば学識経験者なりあるいは地方自治体の方や市民代表の方も入れた、外部的な、客観的な評価をする組織をつくってもいいのかなという感じがするわけですね。
 広く国民の理解を求める上でもこれは大事なことだと思うんですけれども、透明性を図る、あるいは実質的な安全性を確保するという観点から、こういった点はどういうふうに考えられますか。
平沼国務大臣 土田先生御指摘のような、外部の学識経験者等による規制活動の評価と、それによる質的向上などについては、原子力安全委員会が、公開の原則のもとで、規制機関による安全規制の実施について客観的、中立的な立場から監視する、こういうダブルチェック体制によってその確保が現在でも図られている、このように思っております。
 そして、今回の法案では、規制機関が原子力安全委員会へ報告をし意見を求めることを、先ほどの御答弁でしましたけれども、制度化するとともに、その意見を踏まえて必要な改善を図ることとしておりまして、このようなダブルチェック体制の実効性をさらに強化することにより、透明性の確保と規制活動の質的向上が図れるものと思っております。
 当省といたしましても、重要な事項について対外公表するなどの際には、幹部職員が地元に出向いて説明するなど積極的に情報発信を行うこととしておりますし、また、学識経験者でございますとか地方自治体、市民団体など外部の方々の評価にも謙虚に耳を傾けまして、みずからも規制活動については透明性の確保と質的向上に努めてまいる、こういうことで私どもは対処していく、こういうふうに思っております。
土田委員 次に、地方公共団体の位置づけについてお尋ねしたいと思いますけれども、きょうの参考人質疑ででも、新潟県の平山知事からは、ぜひそうしてもらいたい、自治体の責任あるいは立場、あるいは仕事といいますか、こういったことを明確にしてもらいたい、新潟県としても近々、まだきょうは言えないけれども、政府に対してそういったお願いをするんだというふうにおっしゃっておりました。
 確かに、今回の事件が発生してから、自治体に対する情報公開がなされず、あるいは連絡がおくれたためにいろいろな問題が発生しているわけでございまして、自治体に対する明確な位置づけについてはどうされますか。
平沼国務大臣 原子力につきましては、国民の安全を確保していくためには、御指摘のように、国による取り組みだけではございませんで、やはり地方自治体とも協力をしながら万全の対策を講じていくことが不可欠だと考えております。
 御承知のように、現在でも、原子力災害発生時の現地本部となるオフサイトセンターの建設や地域における防災計画の策定といった原子力災害対策を初めとして、既に地方自治体は原子力安全行政において重要な役割を担っていただいております。
 そのため、国としても、原子力安全規制の実施に当たっては、地方自治体に十分に情報を提供して、その理解を得つつ連携をとっていくことが必要であると考えているところでございます。
 しかし、今回の不正問題への対応に当たっては、地方自治体への連絡のおくれ、これは御指摘のとおりですけれども、不適切な点があった、こういうことは率直に反省をさせていただいて、私どもとしては、今後、積極的な情報発信あるいは意見交換、そして地方自治体との連携を強化してまいりたいと思っております。
 午前中の参考人の質疑の中で平山知事からもそういうお話があった、こういうふうに承っておりますので、私どもとしては、さらにこういう問題について地方自治体の皆様方と建設的な意見交換を行って万全な体制をとっていくように努力をしていきたい、このように思います。
土田委員 次に、情報公開のあり方、やり方についてお尋ねするんですが、同じく平山知事からも、もう絶対必要条件だというふうにおっしゃって、今回の事件についても激しい怒りを覚えているんだという厳しい指摘がございました。何といいましても、やはり、社会的なチェックシステムをつくらなきゃならない、あるいは、こういったことを有効に活用させていかなきゃならないというふうに思うわけでございますけれども、そのために、社会的な監視システムあるいは今後の情報公開の方法、こういったものについてはどう考えておられますか。
西川副大臣 情報公開につきましては、原子力の安全性というものを国民の皆様に、また特に立地地域の住民の皆様に御理解をいただき、信頼をしていただくことが何より不可欠でありまして、そのためには、透明性というものをしっかり確保していかなければなりません。
 従前、定期検査が済みますと、プレスにきちっと発表しておりますし、それから公開の場所で開かれる原子力安全委員会を、公開でございますから一般の方にも見ていただきますし、その後きちっとこれもプレス発表してございますし、それから年報も出させていただいているというふうに従前から努力をいたしておりますが、ただいま、社会的にもチェックをきちっとできるようにしろと。先ほど山田先生から保安院長がおしかりを受けましたが、単にホームページでリレーションシップマネジメントというようなことをやるだけにとどまらず、もっと積極的にやれと。
 そこで、私どもとしては、幹部職員を地元に行かせて説明を十分自治体の方々や住民の方々に申し上げる、それから外部からの評価を進んで受ける、そして、その評価を規制活動等の質的向上につなげるように取り組む、こういうことをやっていく。
 それから、今般の法案によりまして、安全規制の活動全般について、これは新しいことでありますけれども、原子力安全委員会に報告をして御意見を求める、これは大変重要なことだと思うのでございます。
 時間が長くならないように簡単にしますが、この間、福井の大飯原発で事故があった場合を想定して訓練をしたわけでありますが、その際にも、原子力安全委員の方々に、本部長であります私や栗田知事のすぐそばに座っていただいて、すぐ適切な御意見をいただく、そういう訓練もしたりいろいろしておりまして、この原子力委員会に報告をして意見を求めて、これをきちっとやっていくということを制度化する、あわせてこれを公開する、ここが大事なことでありまして、こういうようにして情報公開をクリアにしていきたい、こう思っております。
土田委員 次に、維持基準導入に向けた取り組みと、あるいは国民の合意形成についてお尋ねするんですけれども、情報公開が明確な形でされていくわけですね。そうした中で、国民の理解を深めなければなりません。立地している自治体については特にそういったことが必要になってくると思うわけでございますけれども、そういった情報公開をされた上で、国民各層の理解促進に向けたこれまでの具体的な取り組みと、国民の合意形成に向けた方法について具体的にお尋ねしたいと思います。
佐々木政府参考人 今御指摘の維持基準につきましては、民間規格を活用しつつ策定したいと考えております。その際、当該民間規格が科学的、合理的で公正なものとして国民の皆様の信頼が得られることが必要でございます。
 私ども、この民間規格を採用する際には、原子力の専門家や学識経験者の方々によりまして技術的な妥当性を評価していただき、その検討の結果をパブリックコメントに付すなどの十分な検討を行い、また原子力安全委員会においても議論をいただく予定にしております。また、地元の関係の方々にも十分な説明を行うなど、国民各層の理解が得られるよう、適切な公開のもとでのプロセスを経た上でこうした技術基準の策定を考えていきたいと考えております。
土田委員 今、維持基準を公平、公正、公開のプロセスで策定していくんだというふうに話がございましたが、今回の改正で、五十五条において、評価手法は経済産業省令で定める、国会の関与が及ばないという規定になっているわけですね。今も質問が出ておりましたけれども、本案成立後の維持基準の策定プロセス及び公平性、公正性を担保する具体的な方法は何を考えておられますか。
佐々木政府参考人 維持基準そのものは専門的な技術的事項が多く含まれておりますので、法令上の扱いでは、これを省令で定めることということに委任されているものでございます。
 私どもは、この省令の策定作業に当たりまして、単に技術の専門家のみならず、いろいろなステークホルダーの方々にも御参画をいただき、いろいろな御議論を公開のもとでいろいろ実施し、そしてまた、原子力安全委員会にもお諮りをする等の、幾多のそうした議論の場のプロセスを経て策定作業を進めていきたいと考えておりまして、その過程の中でも、地域の方々にも十分考え方を御説明していくといったようなプロセスも経たいと考えております。
土田委員 健全性評価のあり方について、当然、国民の信頼を得るためには、ひび割れ予測あるいはひび割れの進展予測、こういったことを正確にとらえる必要があるんじゃないか。特に、事業者にとってこういった評価能力が備わっていなければならないというわけですね。
 午前中に私は近藤教授に質問をしたんですけれども、ひび割れ予測はなかなか難しい、ひび割れの進展予測については、実験することによってある程度可能になってくるというようなことをおっしゃっておりました。
 現実には、そういった事故があって、それを実際に検証する方が一番手っ取り早いわけでございますけれども、発生件数が非常に少ないわけですので、検証実例が少な過ぎるということですね。そのためには、やはりこの技術情報の蓄積と共有化をしていかなければならないんじゃないかなという感じがするわけです。実際に応力腐食割れが起きにくい材料を使っているにもかかわらず、シュラウドにおいてひび割れが見つかったということもあるわけで、技術的になかなか完成されていない部分があるんじゃないかなという感じがしております。
 こういった状況において、正確な進展予測を行うことはなかなか難しい面があると思うんですけれども、正確な進展予測を可能にするための環境整備、あるいは事業者において適切な評価が行われるような、そういった担保をするための具体的な方法を考えておられますか。
佐々木政府参考人 亀裂の進展予測手法そのものは、今先生おっしゃったように、近年の破壊力学の発展の中で相当の知見が集積されてきていることも事実でございます。
 日本の国内のみならず、海外でのいろいろな原子炉でのこうしたひび割れ等の実績のデータ、あるいは加速試験によります実験のデータの収集等でございますけれども、こうした手法を確立してまいりましたのは、やはり米国の機械学会が規格を定めてかなり先行してきております。この米国の機械学会の考え方というのは、フランス、ドイツ等のヨーロッパの原子力炉の保有国におきましてもこうした規制の考え方を大筋として取り入れていることも考慮いたしまして、日本の場合も、私どもは、この米国機械学会のベースを、日本の機械学会でも独自にいろいろ検討しておるものでございますので、まずこれをベースにしなければいかぬと考えております。
 確かに先生が御指摘のとおり、材料によっても異なりますし、そのひびの原因が、疲労であるとか振動であるとか、あるいは今おっしゃった応力腐食割れであるとか、こうしたものが材料によって微妙に違う、その使用の条件によっても微妙に違うというのは先生の御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、私どもといたしましても、こうした今の日本の機械学会でいろいろ定めて検討してまいりましたものも、一度、客観的、合理的にいろいろ御議論をしていただきたいと思っております。確かに、不確かな要素というものがやはり行政的には考えられるといったようなものについては、より安全サイドに考えて定めていくといったような配慮も必要でございますし、そこは技術的にまず真摯にきちんと議論をするということが大前提であるということは申し上げたいと思います。
土田委員 不正の再発防止のために、独立行政法人の質的な向上、検査する人の質的な向上あるいは公平性の担保ということが非常に重要であると思うわけでございますが、原子力事業を行う法人の役員が独立行政法人の役員になることはできないというふうに規定した理由は何でしょうか。
佐々木政府参考人 独立行政法人原子力安全基盤機構は、原子力施設の検査を行うなどによりまして、原子力の安全の確保のための基盤の整備を図ることを目的としております。国の行う原子力安全規制の一端を担う組織として、公正中立な運営の確保が求められているところでございます。
 このため、本法案におきましては、この機構が行う原子力安全規制業務に関して、電力会社を含む原子力事業を行う者などの被規制者の役員が、本機構の長ほか機構の役員を兼務することを禁止することにより、原子力安全規制の公正性、中立性を確保することとしているものでございます。
土田委員 そうであるならば、役員を除く職員はなぜそういった規制にしないんでしょうか。
佐々木政府参考人 こうした規定は、独立行政法人の役員の欠格事項としてこうした被規制者等の役員を規定するという書きぶりについては、規制業務に関係する他の独立行政法人に関する法律でも一般的な書き方でございます。
 今申し上げましたように、この機構の公正性や中立性をより担保するという観点からは、被規制者の役員のみならず、その職員であっても、この機構の役員となることは望ましいものではないと考えております。この機構の役員の選任に当たりましては、当省としても適切に指導してまいる所存でございます。
土田委員 次に、人事交流についてお尋ねをするんですけれども、やはり原子力発電所の立地地域の自治体の方々がより信頼感をあるいは安全性を理解するために、人事交流も一つの方法だというふうに考えるわけです。例えば、国の原子力安全行政機関や独立行政法人に町役場の職員の方を出向させるとか、そういったことによってより理解が深まる、あるいは信頼感が高まるということも想定されるんですが、こういったことは考えておられませんか。
佐々木政府参考人 私どもも、今先生の御指摘のような考え方には賛同しております。
 原子力安全・保安院におきましては、現在既に、原子力発電所が立地する自治体からの職員の受け入れを行っているところでございます。これは、立地の自治体の職員を保安院に派遣して、原子力安全規制や防災対策についての実務経験を積ませて専門知識を習得させたいという御希望があることを踏まえて、そのお申し出により、私どもも受け入れをさせていただいているところでございます。
 保安院としては、今後も、関係自治体からの職員の受け入れの要請がなされました場合には、前向きに検討してまいりたいと思います。
 また、設立を案として出させていただいていますが、機構での受け入れにつきましても、発足後の機構の人事方針に基づくことになりますので、現時点で見解を示すことはまだ時期尚早ではあるかと思いますけれども、こうした行政あるいは機構、自治体との関係での人事交流というのは意義が高いものと私たちも考えております。
土田委員 現在実施されている人数はどのくらいあるものでございますか。
佐々木政府参考人 まだ少なくて恐縮でございますけれども、自治体からの受け入れでは、石川県からの行政研修員、それから、福井県から安全審査官を、それぞれ自治体の御要望に応じまして、石川県の場合には原子力防災課の方へ、福井県の場合には原子力発電安全審査課の方へ受け入れております。
 また、私どもも、自治体からの求めに応じまして実は人を出しておりまして、石川県には環境安全部の原子力安全対策室長として出しておりますし、青森県には商工観光労働部の資源エネルギー課の副参事として私どもの職員を派遣しているところでございます。
土田委員 いかにもたくさんの人事交流が行われているように聞いたんですが、要するに、まだ二人だということですね。これからそういった要望があれば前向きに進めたいということですね。
 さて、最後の質問でございますけれども、今回の独立行政法人に対するいわゆる天下り、これがまた行われるんじゃないかという心配があるかと思うんです。大臣は、原子力安全行政について、公平性の担保ということも当然考えなければならないわけでございますが、この件についてですけれども、天下りについてどういうふうに考えておられますか。
平沼国務大臣 今度の独立行政法人ですか。(土田委員「今度の独立行政法人。はい」と呼ぶ)
 原子力という非常に専門的な、そして安全性に関与して、また国民の信頼を得るということであれば、やはりそこには相当の知識経験、そして知見、専門的知識、そういうものを持った人が必要であるわけであります。しかし、いたずらにすべてが天下るということではなくて、やはり本当に必要な、そして、その独立行政法人の中でその知識と経験が生かせる、そういう観点で私はやるべきだと思っております。
 今、国民の皆様方が公務員の天下りというものを大変批判をされています。しかし私は、公務員の天下りというのは、公務員の勤務体系のあり方、これからの高齢化社会、少子化、そういったことを総合的に検討しながら、その中でやはり国民の納得が得られるようなことをつくっていくべきだと思っておりまして、独立行政法人もその例外ではないと私は思っておりますけれども、やはりその役に必要な人材であれば、今度できる独立行政法人にそういう人が入ることは私は構わないと思っています。
 しかし、それが過度に過ぎて国民の批判が起こるようなことであってはならない、そこにはおのずからしっかりとした節度がなければならない、このように思っています。
    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
土田委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
谷畑委員長代理 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 午前中の参考人質疑におきましても、一連の不正事件の全容解明を求める声が寄せられました。新潟県の平山知事も、今回の一連の事件で安全神話は崩れた、信頼が崩れた、真相究明がなければ真の信頼回復はない、このように強く述べておられたわけです。私はその点で、まずこの大前提として、真相解明が行われたのか、その努力を経済産業省、国としてしっかりやったのかどうかということを問いたいわけです。
 九月七日付の朝日新聞に、国の検査官がトラブル隠ぺいに関与したという証言が出されていました。紹介しますと、笛木さんという東電の原子力管理部門に所属していた方が、七〇年代の話として、原発の再循環ポンプの配管でインディケーション、兆候が見つかった、これくらいなら大丈夫と評価をして、国から次の一年間の運転許可を得ようとした。その際、インディケーションありと報告書を出そうとしたら、国の検査官からこれでは受けられないと突っ返された、こういう話ですね。このため、笛木氏らは報告書を異常なしと書きかえた。検査官は、運転はいいが、インディケーションはだめだ、この話がもし表に出たら、こっちは知らない、こんなことも言ったということが報道されているわけです。
 この件について、これを受けた九月十日の記者会見の場で、平沼大臣御自身が、記者から、七〇年代、通産省の検査官が隠ぺいにかかわっていたのではないかと問われて、今事実関係を調査することにいたしておりますと述べていたわけですけれども、調査の結果はいかがでしょうか。
    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
平沼国務大臣 塩川先生にお答えをさせていただきます。
 御指摘の報道は、東京電力の元幹部が、今新聞を読んでいただきましたけれども、インディケーションありとの報告書を提出しようとしたところ、国の検査官から、これでは受けられないと突き返されたと発言したとの内容です。私としては、これは、原子力安全・保安院に対して、本件についても厳正に調査するように指示をいたしました。
 原子力安全・保安院は、東京電力の一連の事案に関し、立入検査や関係者からの聞き取り等により徹底的な調査を行い、十月一日にその結果を中間報告として取りまとめました。本件についても、一連の調査の中で、報道された一九七〇年代半ばころの検査記録が残されていないか等の調査を行いましたが、三十年近く前のことでございまして、関係する検査記録が保存されておらず、また、報道にある事実を特定することも困難でありまして、報道されたような事実は確認できませんでした。
 いずれにいたしましても、経済産業省としては、原子力安全規制法制検討小委員会の報告におきまして、東京電力の不正事案の発生の一因として、現行技術基準の適用ルールに不明確な点があったことが指摘されていることなどを踏まえまして、原子力安全規制に関する法令の運用については、国の許認可の要否、国への通報の要否などをできるだけ明確にして、制度の透明性を確保するように努めていかなければならないと思っております。
 また、原子力安全・保安院においては、職員が一丸となって、厳正中立を旨として日々行政に当たっているものと考えておりますが、私といたしましても、職員を厳正に指導していかなければならないと思っているところでございます。
塩川(鉄)委員 大臣のお話でしたら、厳正な調査を指示した、記録が保存されていない、そのような事実を確認していないということですけれども、この実名も報道されている方、その後、東電の原子力発電所の所長もされた方ですけれども、この御本人に事情はお聞きになったんでしょうか。
平沼国務大臣 報道されました東京電力の元幹部を含めまして、当時の関係者から事情を聴取いたしました。報道にある、インディケーションを異常なしに変えさせたというような事実は、本人から聞いたところ、確認はされませんでした。
塩川(鉄)委員 笛木さん御本人から確認をされたということについて、なぜ国民の前に報告をしないんですか。
佐々木政府参考人 私どもといたしましては、新聞記事の事実がどういうことであるか、一応御本人にもお聞きする必要があると考えましたけれども、全体的には、御本人の御記憶自身も不確かなものでございましたけれども、どなたと接触したかはお聞きしましたけれども、その方は既に亡くなられていらっしゃる方であることも確認をいたしました。
 いずれにしても、新聞の記事に書かれているそのままの言い方をしたわけではないんですよというようなお話はお聞きしましたけれども、一連の今回の事案の中で取材を受けたということは私どもも確認をいたしたところでございます。
塩川(鉄)委員 例えば、私どものしんぶん赤旗でも御本人に取材をして、検査官から、異常ありという報告書なんて受け取れないというのは何回かあったと言っているんですよ。そういうことも確認されていますか。いかがですか。
佐々木政府参考人 確かに、ほかにもありますということでございまして、いつごろであるかは自分自身ももう明らかではない、ただ、再循環系の配管の問題でありましたということでございました。
 これはまた新聞の記事とは全く違いまして、傷というものを私どもの技術の顧問会にかけて、結果的にはこの傷自身について、何ら安全上の問題がないという結果になっているということでございました。
塩川(鉄)委員 大臣、平山知事の話にもありましたように、信頼が崩れた、真相究明がなければ真の信頼回復はないわけですから、今言った事実関係についてきちんと国民の前に報告をする、保安院なりの文書できちんと今の院長の報告の中身について国民の前に明らかにするということは約束してもらえますね。
平沼国務大臣 既にこの国会の場でそういうことは申し上げました。また、私も、そういう形で、記者会見で、厳重に調査する、こういうことを申しているわけでありますから、いずれ機会を得て、今ここで申し上げたようなことは言わせていただこう、こう思います。
塩川(鉄)委員 きちんと報告、文書という形で国民の皆さんにわかるような形でやってもらわなければ納得ができないということだと思うんですね。この一つをとっても、真相解明という形で保安院がどういう努力をしたのか、国民の皆さんは納得できないままにある、そのことは率直にこの機会に改めてお話をし、訴えておきたいと思っています。
 その上で、この間の不正事件というのは、電力会社だけではなくて、日立や東芝など、原発メーカーも不正に関与していたということが明らかとなりました。電力会社と原発メーカーのもたれ合い、真相隠しの実態が浮き彫りとなったわけです。例の東電の格納容器の密閉性試験につきましても、東電だけではなくて、保守点検をしている原発メーカーでもある日立が関与をしているということもはっきりしているわけです。
 また、先週の十一月十五日の各電力会社の中間報告でも、東京電力が一九八九年に福島第二原発三号機で行った補修工事について国に報告せず、昨年になって初めて工事をしたという虚偽の説明をしていたことが明らかになりましたが、これについて、工事を請け負った東芝に対しても、つじつま合わせのための事実と異なる報告書を作成するよう指示していた。それを受けて、東芝はうその工事報告書を作成したわけです。
 こういったように、電力会社に対する不正をきちんと正すと同時に、原発メーカーの不正に対してもきちんと対処する必要がある。今回の法改正というのは原発メーカーの不正にはどのように対処するのか、この点をひとつ確認したいと思います。
佐々木政府参考人 現行の法令でございます電気事業法あるいは原子炉等規制法は、事業者あるいは設置者を規制しているということで、いろいろ、法の限度ぎりぎり、我々としても何ができるかを徹底的に追求させていただきましたが、今回の法案の改正におきましては、報告徴収という形で、実際に電気事業者などが保守等の工事を行ったとき、その点検保守に直接携わった者に対しても、必要があると認めるときには報告徴収を求めることができるという規定を入れさせていただくとともに、そこに虚偽等がある場合には罰則規定も盛り込ませていただいて、そうした法案の提案をさせていただいているところでございます。
塩川(鉄)委員 保守点検事業者、これは原発メーカーになってくるわけですが、この保守点検事業者からの報告徴収、国にとって、原発メーカーも安全規制の対象としてこれからしっかりやるということになるわけですけれども、この上で、国民は今規制機関の強化を強く求めています。
 今回の法案でそういう規制機関の強化につながるのかということを率直にお聞きしたいのですが、新たに発足をする独立行政法人原子力安全基盤機構は三つの組織を統合するものになるわけですが、財団法人原子力発電技術機構、NUPECと言われているところですね。それから財団法人発電設備技術検査協会、略称発電技検というふうにお聞きしていますけれども。それに加えて財団法人原子力安全技術センター、このそれぞれの業務を統合し新機構が引き継ぐとなっているわけです。
 このそれぞれの財団法人についてお聞きしたいのですが、最初に、財団法人発電設備技術検査協会の基本財産の寄附者、民間の寄附者があるわけですけれども、どういうところかをひとつ御紹介いただきたいと思います。
佐々木政府参考人 財団法人発電設備技術検査協会の設立時の基本財産の寄附団体、出捐団体と言っておりますが、北海道電力株式会社など電力会社九社及び電源開発株式会社、それから重電機メーカー、日立等六社となっております。
塩川(鉄)委員 電力会社と原発メーカーということであります。それが基本財産の寄附者であります。
 その上で、この基本財産寄附企業からの発電技検への出向者は合計何人になるのか、お聞きしたいと思います。
佐々木政府参考人 この基本財産寄附団体から本協会に出向している職員の数は、平成十四年の十一月一日現在で五十一名となっております。
塩川(鉄)委員 二百名ぐらいの組織の五十一人が電力会社、原発メーカーからの出向者、要するに技術者はその人たちが中心でやっているということになるわけですが、続けて、財団法人原子力発電技術機構、NUPECの設立時の基本財産に係る寄附金団体はどこでしょうか。
佐々木政府参考人 NUPECの前身であります財団法人原子力工学試験センターが設立されましたのは昭和五十三年一月でございますが、この時点での基本財産の寄附団体は、電気事業連合会、社団法人日本電気工業会及び社団法人日本建設業団体連合会の三団体でございます。
塩川(鉄)委員 このNUPECの基本財産の寄附金団体というのは、要するに電力会社とそれから原発メーカーとあと建設に係るゼネコン、この三団体になっているわけです。それ以後、この三団体傘下の六十七の企業から合計して八億三千七百万円の寄附がこのNUPECに寄せられているわけです。
 続けて、このNUPECの人員のうち、電力会社、原発メーカーなど、基本財産の寄附金企業からの出向者は合計すると何人でしょうか。
佐々木政府参考人 当初の寄附団体である先ほどの三団体からの出向者はおりませんが、その後、現在までに民間企業六十九社からの寄附を受けております。この企業等からは今、合計二十六社、百四十五人がこのNUPECに出向を受け入れております。
塩川(鉄)委員 資料を配付させていただきましたが、今御紹介しました発電技検とNUPECへの電力会社、それから主な原発メーカーからの出向者の人数であります。
 例えば東京電力などは、発電技検に二名、NUPECに十七名。関西電力は、発電技検に三名、NUPECに九名。それから原発メーカーの日立は、発電技検に十七名、NUPECに三十一名。東芝は、同様に十三名と二十六名。三菱重工が、九名の二十三名ということになっているわけです。
 原発関連のこの二つの社団法人に、業界からの出向者が多数を占めているわけですね。いわば技術者のほとんどが、こういった電力会社、特に原発メーカーからの出身者に今占められているわけです。
 そこで、今回の新機構立ち上げのきっかけとなったのが公益法人改革でありますけれども、この公益法人改革の実施計画では、原子力安全規制の被規制者からの独立性、中立性の確保を図る。被規制者、規制される側からの独立性、中立性の確保を図るために独立行政法人を設置するとあるわけですけれども、人も財産も、電力業界、電機業界、建設業界といった、いわば原発一家丸抱えの二つの組織が独立行政法人原子力安全基盤機構のいわば中心部隊になる。これでどうして独立性、中立性が確保できるのか。率直にお伺いしたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 財団法人発電設備技術検査協会は、国の検査官が試験記録を確認する項目でございますとか、国の検査官が事業者の点検結果を確認する項目につきまして、事業者が試験や点検を実施する際に立ち会っておりますけれども、法令上は第三者機関の立ち会いを義務づけているわけではなくて、これは、電力会社の自発的な判断により、同協会との任意の契約によって行われているものでございます。
 したがいまして、国としては、同協会が立ち会いを行った項目についても、定期検査の一環として、国の検査官が試験結果やその手順、点検結果を記録により確認して、法令への適合性を確認しております。
 なお、同協会は、民法第三十四条に定める公益法人として設立をされておりまして、一定の中立性は確保されていると考えておりますが、立ち会いの実施に当たっては、対象事業者からの出向者等、何らかの関係のある職員が当該事業者の定期検査に立ち会うことを禁止する等、第三者機関としての中立性、公平性を保っている、このように承知をしておりまして、私どもとしては、その辺は御懸念に及ばない、このように思っております。
塩川(鉄)委員 今の大臣の答弁は、定期検査の検査記録確認における第三者機関の立ち会いについて、発電技検の扱いをどう考えるのかということです。
 その前提として、今言った、公益法人改革において独立性、中立性を確保できるのか、このような原発メーカー、電力会社の人員、財産を引き継ぐような組織でできるのか、この点について、保安院長、いかがでしょうか。
佐々木政府参考人 今回、法案で提出をさせていただいております独立行政法人は、幾つかの業務を考えておりますけれども、例えば検査といったような業務はその一つでございます。
 今、先生御指摘のような、特に公正中立性、また、国の規制を支えるといった意味では、こうした業務については、いわゆる民間から出向された方が新たに独立行政法人にそのまま出向の形でいらっしゃるということは好ましいことではない、これは当然のことでございます。
 また、独立行政法人は、その他原子力の防災関係の業務でありますとか、あるいは安全解析のクロスチェックでありますとか、各種の調査研究等も実施する予定にしております。
 こうした部分については、一定の部分については、専門家であるといったその人の能力を生かしてメーカーから出向されている方が独立行政法人の方にいらっしゃるというケースはあると思いますが、私どもの基本的な考え方は、あくまでも、独立行政法人は新たに設立されるものでございますから、特にNUPECにつきましては、そこで一度退職をされて、新たに独立行政法人の人となる、転籍をされる、そういった方が基本的に中心になるべきであると思っております。
 ただ、いろいろな業務がございますので、こういったことをとにかく厳しくやらなければいけないのは、特に検査の業務についてはまさに厳しくやる必要があると思っておりますが、それぞれの専門のいろいろな事業の中身によりましては、一部出向ということが認められてもいいかと思いますが、その辺は今後十分検討をしていきたいと考えております。
塩川(鉄)委員 一部出向という点でも大問題だと思いますね。当然のことながら、規制される側の人間が規制する組織の一員となるわけですから、そんなことを認めるわけにいかない、それが国民の皆さんの思いじゃないでしょうか。
 同時に、個々の技術者の方につきましては、今回の事件の発端の内部告発にありますように、良心を持って仕事をされている方もいらっしゃる。それは当然のことだと思うんです。でも、問われるのは、やはり会社、組織として不正を行っていた、この体質の問題が問われているわけですね。こういった原発メーカーの不正問題に対して是正をする体質というのは、これは是正をされたのか、このことが問われているんじゃないですか。
 日立の関与した格納容器の密閉性試験の不正事件についても、まだ真相解明というふうになっていないですよね。保安院としても、あるいは東電としても、まだきちんとした報告書が出ていないものですし、先週明らかとなった東芝の不正事件についても、いよいよこれから本格的に解明をしようという段階だと思うんです。
 原発メーカーの不正の関与について、まともな是正措置もとっていない段階で、新しくできます新機構におきましては、こういった原発メーカーの中からたくさんの方に協力をしてもらいますというのでは、どう考えても国民の皆さんの思いにしっくりこたえるような中身に到底行かないような実態じゃないですか。独立性、中立性を確保するものにならない。これじゃ、国民は納得できない。
 私は、独自に専門家を養成するようなことを国としてきちっと行う、国が専門家を養成する、こういうことが必要なんじゃないかと思うんですが、その点、どうですか。
佐々木政府参考人 おっしゃるとおり、国として専門家を今後とも養成していくことは極めて重要なことであり、大切なことだと思っております。
 ただ、先生、今私が御説明した中で、再度ちょっと申し上げたいのでございますけれども、検査官として独立行政法人において業務をする方について、メーカーからの出向という形をそのまま受け入れるということは毛頭考えておりません。これは申し上げたいと思います。
 ただ、原子力の防災業務等、いわばいろいろな予測計算をするであるとかそうした業務で、その専門の方がたまたまそうしたメーカーの方であるといったような方の場合に、転籍をされるか、あるいは母体を通じて出向されるかといった個々のケースの場合に、それは全く一〇〇%否定するものじゃなくて、あり得ることだということを申し上げたわけでございます。
塩川(鉄)委員 防災業務などは、新しい機構がやらずに、原子力研究所などほかの機関できちっとやればいいじゃないですか。規制する機関の中に規制される側の人間がいるということ自身が大問題だ、そのことを指摘したいと思います。今まで専門家を養成してこなかった責任も問われているということをつけ加えたいと思います。
 その上で、発電設備技術検査協会、発電技検の関係ですが、定期検査の検査記録確認については、第三者機関の立ち会いと称して、一九八〇年から発電技検が立ち会ってきました。この発電技検というのが、電力会社、原発メーカーがスポンサーの組織になっているわけですけれども、こういう発電技検の立ち会いがどうして第三者機関の立ち会いなのかということについて、先ほど大臣から先駆的に御答弁をいただきまして、電気事業者と同協会の任意の契約によるものだ、国が義務づけているものではないけれども、一定の中立性の確保というところで努力をしているという趣旨でのお話がありました。
 その上で重ねてお聞きしたいわけですけれども、これは資源エネルギー庁からいただいたリーフレットで、「原子力発電所の定期検査」というものです。これは、中を開きますと、定期検査項目がこういうふうに紹介されています。ここに「立会検査」「記録確認検査」「事業者点検結果確認」とありまして、わざわざ括弧して、第三者機関立ち会いというのも入っているわけですね。このリーフレットの別な部分には「定期点検における第三者機関の活用」と書いてありまして、そこにもわざわざ、その第三者機関というのは発電技検ですよということが資源エネルギー庁のパンフレットにきちんと書いてあるわけです。
 わざわざ、第三者機関の立ち会いとして発電技検を御指名でやっているわけですよね。任意の契約とはいいながら、実際上は通産省がお墨つきを与えてやっているんじゃないですか。その点はどうですか。
佐々木政府参考人 法的には、指定といったような行為によってこの第三者性を担保しているものではございません。
塩川(鉄)委員 いや、問題は、資源エネルギー庁のリーフレットに、わざわざ御丁寧に、第三者機関の立ち会いは発電技検ですよと書いてあるわけでしょう。法的にあればなおさら問題ですけれども。要は、民民の任意の契約といいながら、実際には特定した業者を指定しているわけじゃないですか。これはおかしいと思わないんですか。
 今、資料をお配りしましたけれども、A3の資料で、左側が今私が示したリーフレットの定期検査項目です。A、B、C、Dとありますように、BとCのところに、小さく括弧して「第三者機関立会」とあります。これに加えて、右側の表ですけれども、これは原発の定期検査の際の標準要領書と言われているものです。ここにも、見てほしいんですが、国の定期検査にかかわるこの用紙に、表の一番上、「適用区分」とあります。C、これは左側のCと対応するわけですけれども、「事業者の自主点検項目」、括弧して「発電技検立会」とはっきり書いてあるじゃないですか。
 国の定期検査の検査項目の用紙に、任意の契約と言われている発電技検の名前がわざわざ書き込まれている。おかしいじゃないですか。いかがですか。
佐々木政府参考人 この発電技検という団体そのものは、昔は火力等のボイラーあるいはタービン等、溶接関係のいろいろな検査をする主体として設立をされて、その後、非破壊検査等の技術者も相当抱えることによって、技術的な研さんを十分に積んできた団体でございます。
 確かに、おっしゃるように、最近は、保険会社がそうした検査をするとか、そういう会社も出てきておりますけれども、原子力発電所の定期検査においての膨大ないろいろな作業の検査の中でも、特に非破壊検査の部門において、この発電技検の技術者が有している技術能力は高いと電力会社も評価をしていると我々は聞いております。
 そうした中で、電気事業者と、この発電技検自身もこうした技術者、専門家を養成して育ててきた団体でございますので、任意の契約によって第三者性を持たせているというふうに理解をしております。
塩川(鉄)委員 任意の契約といいながら、発電技検立ち会いとはっきり書いているでしょう。これが任意なんですか、国にとっては。もう特定の業者を御指名ということじゃないんですか。その点はどうなんですか。
佐々木政府参考人 このパンフレット自身は、確かに事実関係を書いてございます。そうした意味では、確かに先生御指摘のとおり、これが、我々自身がこれを指定しているような行為に……(塩川(鉄)委員「検査項目の用紙に書いてある点検についてはどうですか」と呼ぶ)これは、今現実に、事実、契約を行っておりますから、国として、こうした第三者である発電技検が行ったものである場合は記録を見るということにしている項目もございます。おっしゃるとおり、これは事実でございます。
塩川(鉄)委員 私、最後に一言申し上げて終わりにしたいんですが、一九八〇年に、定期検査の立ち会いについて一部第三者機関の立ち会いということがありました。その前の七七年の八月二十四日付の日経産業新聞にこういうふうに書いてあります。通産省資源エネルギー庁は、原子力発電所の定期検査期間を短縮するため、政府による検査業務の一部を委託する方向で検討を始めた。これは、原発が増加している一方、政府側検査官の大幅増員は今後望めず、検査業務も停滞するとの考え方によるもので、具体的には、発電用熱機関協会への業務委託が有力視されている。
 この機関協会は今の発電技検協会のことですが、定期検査期間の短縮を図るために、いわば電力会社サイドに立って国が定期検査の手抜きを図るために、第三者機関と称して発電技検を使ったんじゃないか。これでは、定期検査をいわば民間に丸投げするような実態で、国民の皆さんが望む規制強化の方にもつながらない、そのことをはっきり述べて質問を終わります。
村田委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 大臣にまずお尋ねいたします。
 私は、原発に批判的な市民団体ですとかNGOの方々と、大臣に申し入れをよく行ってまいりました。先般も、この事件が発覚してから、十月十八日に大臣室で、そこにお見えの原子力安全・保安院長、そして資源エネルギー庁長官同席のもとに申し入れをさせていただきました。いろいろな団体からの申し入れ文がございますけれども、大臣はその席で、大体、御自分はいつも二十日間以内ぐらいに回答を出すというふうにおっしゃいました。きょうの時点で私もいただいていないし、NGOの方々からも、いただいていないということでございます。
 今度の事件、きょうの午前中の参考人質疑でも、やはり国民の理解が必要だということで、新潟県の知事さんも言っておられました。そういう意味では、大臣に直接私たち国会議員や市民団体の方がお会いするというのは、直接意見を申し上げられるということで非常に意義のあることだと思っているわけなんです。こういうふうに私たちも努力をして、お忙しい大臣にお会いして、いろいろな気持ちを直接申し上げる機会をつくっていただいたにもかかわらず、きょうの段階になってもお返事がいただけないということに関しまして、どういう理由なのか御説明いただけないでしょうか。
平沼国務大臣 お会いして、私は、いつもお申し込みがあるときには誠意を持って対応させていただいています。そういう中で質問書をいただいて、私は事務方の方に、これは御回答するようにと、こういうふうに言ってあります。それがまだだということは、私、大変うかつなことで、今初めて承りました。これは早速調査をいたしまして、もしおくれていることであったら本当に申しわけないことだと思って、速やかに御返事をするようにさせていただきたいと思います。
大島(令)委員 一カ月たちましたけれども、返事をいただいていないわけなんですね。大臣が、今調べて速やかにお返事くださるということでしたら、まあ少し安心はするんですが、やはり私たちは、大臣との信頼関係の中で、こういう会議録も残して、必死で私自身も苦手なこの原子力の問題を勉強しながら、こうして責任を負いながら、原子力に批判的な人たちの御意見にも耳を傾けながら、私も自分なりの責任を果たそうと思ってこの委員会の場にいるわけなんです。
 そこで、福島県の知事が、新聞報道によりますと、維持基準導入について国に慎重な検討を求めるという要望書をまとめたというふうにあります。知事さんも県民、国民の代表でございます。いろいろな原発に対して運動している人たちも国民でございます。そうしますと、今後こういういろいろな要望書が大臣あてに上がってまいりますけれども、これらはどのように取り扱われ、ここに書いてある意見というのはどのように政策に反映されるんでしょうか。
平沼国務大臣 私のところには、いろいろな事案で全国から、そしてあらゆる団体から御要望書が来ます。そういったことに対しては、まあ千差万別あるわけでございまして、どう見ても御返事する必要のないようなそういう文書もやはりあります。それはそこで私どもは精査させていただきますけれども、私どもが判断をして、これは御返事する必要がある、こういう判断に至ったら私は返事をさせていただいているわけでございまして、福島県知事からのそういう、今維持基準のお話がございましたけれども、これに関してそういう御要望が来た場合にはちゃんと説明責任は果たさせていただく、そういう形でやらせていただきたいと思っております。
大島(令)委員 それでは、法案に対する質問に入ります。
 今回の法改正は、東電の不正事件への対応、提案理由説明の中でも、大臣は、不正防止としての法改正だと提案説明の理由を話されました。あたかも不正防止に向けて検討されたように、今度の維持基準、健全性評価基準と、あと独立行政法人原子力安全基盤機構の設置がうたわれておりますが、私は、この事件が起きたからこれらを前倒しにしたというふうに理解しておりますが、大臣は、あくまでも不正防止のためにこの原子力関連二法案を提案されたんでしょうか。
平沼国務大臣 大島先生にお答えさせていただきます。
 今般の一連の不正行為というのは、事業者の自主点検が法令に位置づけられていなかったために、自主点検で発見されたひび割れの兆候が放置をされたり、適切な記録の保存がなされていなかったものであります。加えて、ひび割れ等のふぐあいを評価する手法が不明確であったことも適切な対応がなされなかった要因の一つであると考えられます。
 このようなことから、今般の法案におきましては、事業者に対しまして、定期的な自主検査を義務づけるとともに、仮にひび割れを見つけた場合には、設備の健全性に問題がないかを評価させることといたしております。また、事業者が行う定期的な自主検査につきましては、それが適切に実施されるように、独立行政法人原子力安全基盤機構がその実施体制を確認することとしたものであります。
 国民の安全を守るためには、今般の不正事案の再発防止策として、これらの対策の可及的速やかな実施が必要と考えておりますけれども、実施に当たっては、健全性の評価基準の整備等にある程度の時間がかかることから、その施行にある程度の時間をとったものであります。
 また、独立行政法人についても、当初は平成十六年の設立を予定していたところでございますけれども、今回の対策と実施時期を合わせるため、半年程度の設立の前倒しを検討しているところでございまして、私どもは、維持基準を急ぐ、こういう観点で早めた、こういうことでないことは御理解をいただきたいと思います。
大島(令)委員 大臣、維持基準を早めることではないということで今御答弁されましたけれども、これは二〇〇二年二月から検討が始まり、健全性評価基準に関しましては六月十九日に既に中間取りまとめが打ち出されております。また、先ほどおっしゃいましたように、原子力安全基盤機構の設立は、ことしの三月二十九日に既に閣議決定されました公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画に基づいて、来年度一年間、設立準備を進め、維持基準の導入とともに、二〇〇四年四月から新法人の業務を開始する計画だったはずですね。
 しかし、この法案が通りますと、私が政府から聞いたところによりますと、この独法は来年の秋から適用されるということで、当初の計画から随分前倒しというふうに、私は、きちっとした政府からの資料によって読み取れます。そして識者からも、安全規制の効率化がこの法案の改正の目的ではないかという批判もございます。今大臣が答弁されたのは、この法案の改正案のポイントに書いてありますポイントをただ御答弁いただいたような印象を私は受けました。
 改めて、不正防止なのか、今回の法律改正によって、一連の原子力発電所に関するいろいろな疑惑とかデータ改ざん、そして国の原子力安全・保安院のあり方、こういうものに幕引きをするのではないかという御批判がありますが、こういう御意見に対して、大臣はどういう御所見をお持ちでしょうか。
平沼国務大臣 まず、今の御質問に答弁させていただく前に、質問書に対して返事がなかったという御指摘でしたけれども、今事務的に調べましたら、大島先生と一緒にお越しいただきました北川れん子先生の事務所に十一月一日付で持参をさせていただいている、こういうことでございますので、ちょっと御調査をいただければと、こういうふうに思っております。
 それから、いろいろな御意見があるからどうか、こういうことでございますけれども、私どもとしましては、先ほど来の答弁の中でも申し上げましたけれども、この維持基準というのは、何も今ある安全基準を下げるという形ではなくて、それをちゃんと維持するという形、しかも、それを実施するに当たりましては、これは、原子力の専門家でございますとか学識経験者ですとか、そういった御意見、検討をいただき、そして、そこに出てきた一つの案というものをさらにパブリックコメントにかけて、そして国民の皆様方にも参加をしていただいて御討議をいただく。そして、さらに原子力安全委員会のそういった検討を経てということですから、何もこの法律ができてそれを前倒しですぐやるという形ではなくて、私どもとしては、やはりあくまでもこの不正を防止する、国民の皆様方に安心をしていただく、そういう観点であるわけでございます。
 それは、いろいろそういうことを言われる方があるかと思いますけれども、私どもは、先ほどの御答弁の中でも、拙速は許されない、こういうことを申し上げておりますが、そういう拙速でやるということではない、こういうことはぜひ御理解をいただきたい、このように思っております。
大島(令)委員 申し入れに対する回答が同僚の北川議員のところに届けられたということでございますが、非常に事務方は失礼ですね。
 大臣へのアポイントメントは私がとりました。私が、当日、三十分の面会の議事進行をさせていただきました。私と大臣の間でそのような約束をさせていただいたことが、どうして私の事務所に届かずに、同僚の北川議員のところに行ったのか。
 そこに事務方の方がいらっしゃいますので、お答えください。これは私の名誉にかけて質問します。
平沼国務大臣 確かに、私に大島先生の名前で会見を申し込まれました。そこにまず行くことは当然で、御指摘のとおりで、お怒りのとおりだと私は思っております。
 そういう意味では、今問い合わせたばかりですから、もしそれが事実としたら、私は責任者として大島先生に心からおわびをしなければなりません。そのことが事務方のもし手違いであったら、私は厳重に大島先生に謝罪をしながら、ちゃんとお届けをさせていただきたい、こう思っています。
大島(令)委員 では、大臣、この件に関しましては、委員会の最中でございますので、きちっと事実関係を調べて、私のところにお返事を下さい。
 重ねて申し上げるならば、複数の団体から申し入れ書が行きましたので、すべてにわたってかどうかも事務方に調査していただくように言ってください。
平沼国務大臣 そのようにさせていただきます。
大島(令)委員 では、法案の質問に戻ります。
 今改正案は、事業者によって任意に実施されている現行の自主点検を、法令上に定期自主検査として位置づけることになっております。
 これは保安院長に質問いたしますが、定期自主検査をすることによって何がどう改善されるのか、具体的に御説明ください。
佐々木政府参考人 今般の一連の事案では、事業者が自主的に行うこととされておりました点検において、ひび割れが十分に調査されずに放置されたり、記録が改ざんされたり、あるいは記録がなかったりしたという事案でございました。その内容が安全に直接かかわらない場合でございましても、原子力の安全確保体制としては問題であるとの反省に立ちまして、国民の皆様の信頼を確保できる体制確立のために今回の法改正を提案させていただいております。
 具体的には、原子力発電所の安全確保についての第一義的な責務は事業者にあるとの考え方を基本としつつも、事業者がその責任を適切に履行しているかどうかを国が適切にチェックする仕組みを確立するものであります。このような改正によりまして責任体制が明確化するものと考えます。
 なお、仮に事業者が当該定期自主検査を行わない場合には、今般の改正によって罰則がかかることになります。
大島(令)委員 今の御説明ですと、問題とされましたデータの記載の改ざんはどう改善されるんでしょうか。きょうの午前中の参考人の方々の御意見でも、双葉町長だったと思うんですが、人がやる、人間がやることである、それを強調されておりました。今回のケースもそうでございます。
 ですから、今保安院長は、検査結果の記録とか保存が義務づけられる、内容が検証可能になるというふうに私は説明を聞いたと思いますけれども、記録保存以前に問題があったわけですから、記録する時点で第三者の監視等が必要であると私は思うわけなんです。
 このような観点から、これはどのように改善されるのか、改めて御説明をお願いします。
佐々木政府参考人 私どもも今いろいろ考えていかなければいけないと思っておりますけれども、記録の管理、保存のあり方でどういう内容を求めていくかということについては、慎重に検討していきたいと思います。
 例えば、記録につきましては、保守点検を実際にやった方々からの記録もございましょうし、それを電気事業者の中で、発電所の中で合議をとって、これについては安全であるという評価をしましたという記録もあるでしょう。それらの照合ができるような体制での記録をきちんと保存させるとか、あるいは検査のやり方につきましても、記録の保存の状況につきまして、抜き打ちあるいは抜き取りといったような検査の方式を行うことによりまして、記録の整合性を今回は確認する検査をやる、そういったやり方もあるでしょう。その上で記録の保存義務に対しまして罰則の強化をしたことは、そうした記録そのものを改ざんするといったような行為に対しての一定の抑止力は働くものと考えております。
大島(令)委員 私は、今回の問題は、事業者の点検した記録、そういうものが結果的には、客観的に、何も、だれも関与できなかったというところに原因があると思っているわけなんです。この法律改正によりますと、事業者、経産省、保安院、その三つのルートだけで、第三者というものが客観的にアクセスできるところがこの法律を見てもないわけなんですね。
 改めて保安院長に質問をいたします。事業者の実施する設備の健全性評価、自主検査体制の審査の客観性です。
 先ほど来、公正とかいう言葉が出ましたけれども、公正というのは、だれが何をもって公正とするかという判断がありませんので、私は、客観性がどのように保障され、だれから見ても、客観的にそれが、アクセスできるものがこの法案に担保されていなければ、同じようなことはまた起きると思うわけなんです。どうでしょうか。
佐々木政府参考人 客観性の担保についてということでございますけれども、いろいろな記録については、国自身が確認しなければいけないものについては国が定期検査として確認もいたします。
 また、定期自主検査あるいは健全性の評価といったようなことを、具体的にどういう行為をしたか、その実施した組織、実施の方法、その工程管理等の記録につきまして、これを独立行政法人にもやらせるという提案をさせていただいているところでございまして、独立行政法人が実施しました審査は国に通知をされまして、国において事業者の体制を総合的に評定をするというようなことも考えているわけでございます。
 こうした対応によりまして、事業者が行う定期自主検査あるいは健全性の評価については、客観性を持たせることが十分可能と思いますし、また、その結果を公表し、十分に周知し、また、その説明を十分果たしていくということは求められていると思っておりますので、そのことについては十分今後対応をしてまいりたいと考えております。
大島(令)委員 事業者とメーカーと保安院だけで行ってきた結果が今回の東電の不正事件となったわけで、その評価をどう客観的にできるかがこの法律改正のポイントだと私は思っているわけなんです。
 今回も、事業者と、独立行政法人の原子力安全基盤機構、国がかかわることになっております。この独立行政法人の予算も電源特会から一部支給されると聞いております。これまでの体制と構成員がほとんど変わらず、言ってみれば、再び密室の評価体制になることが予測される中で、どのように客観性が評価されるのか、私は納得できません。ですから、評価する機関に原子力発電に批判的な専門家を導入するなど思い切った策が重要である、私は、それが原子力行政に関する信頼回復になると思うわけなんですが、いかがでしょうか。
佐々木政府参考人 先ほどの御説明でもう一つ大事なポイントを申し上げなければいけなかったわけでございますけれども、行政庁が実施している規制行政について、内閣府原子力安全委員会のきちんとしたチェックを受ける、これは、もちろん公開のもとできちんといろいろな御指摘も受け、監査も受けるというやり方でのチェックを受けておるわけでございます。
 また、私どもも、行政上で発見をいたしましたいろいろなトラブル等については、公開のもとでの専門家の御意見もいろいろ伺った上でいろいろな行政対応もしているところでございまして、その意味では、いろいろな方々の御意見を伺いながら、それも公開のもとで実施をしているというふうに考えております。
大島(令)委員 ここに、今回の東電のデータ不正事件に関しまして国が行った処分の資料がございます。
 これは、国家公務員法上の懲戒処分を含め、厳正に処分を行ったということで、佐々木保安院長も一カ月十分の一の俸給月額の返納、大臣は二カ月分、月額十分の二の給与の自主返納ということでございます。これが、結果的には、原子力行政に対する不信、いろいろな形で大きな事件となりましたけれども、その責任ということでございますね、目に見える形での。
 私どもから見ますと、結果的に国も保安院も事業者もまずかった、だから、保安院にも問題があったということでこういう処分を受けているわけなんですが、一度なくした信頼というのはなかなか取り戻すのは難しい。そういう中で、保安院の責任者としての院長は、一カ月の給与の十分の一の返納を一カ月分、これだけなんですよね。そして、この法改正。私は、これで国民が納得するのか。
 そして、これは新聞に報道されたんでしょうか。少なくとも、私が読んでいるマスコミではちょっと見かけていないわけなんです。このことを国民が知ったならば、そして、立地県の方々が知ったならば、今度のことは、法改正も、本当に幕引きというふうにしか受けとめられないんですね。これだけで本当に責任を果たしたと言えるんでしょうか。
 では、これは保安院長と大臣にお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 給料だけのことをおっしゃられましたけれども、実は、佐々木原子力安全・保安院長は大変重い部類の戒告という、公務員としては非常に重い、それにあわせて給与の自主返納、こういう形でございます。
 それから、当時関係をしていて、今は別の職についている、例えば、当時は保安院次長であって、商務流通審議官の望月につきましても訓告、それから、例えば、今九州の経済産業局長になっておりまして、当時は資源エネルギー庁の計画課長の西村が厳重注意、あるいは、今製品安全課長になっております平岡、これも訓告。それから、防衛庁に今行っております大井に関しましては、これは防衛庁にお願いをして防衛庁で処分をしてもらって訓告、こういう形に相なっております。
 私自身も給与の自主返納をさせていただいて、月額二割二カ月分、少ない、こういう御指摘があるかもしれませんが、この分二カ月はマイナスであるということも御理解をいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 昨年の一月から、原子力安全・保安院長に大臣から指名を受けまして取り組んでまいりました。厳しい先生からの今の御指摘でございますけれども、こうした規制行政の実務責任者としての責任を十分に感じているところでございます。
 ただ、私としては、この自分の責任を全うするためにも、今回の一連のこの事案を反省しつつ、この再発防止のために何とかいろいろな対応を早急喫緊にやる必要があると考えているところでございまして、何としてもこれを軌道に乗せるまでは私自身の使命でもあり責任であると感じておりまして、鋭意しっかりやらせていただきたいと考えております。
平沼国務大臣 ちょっと御答弁で漏れてしまったのがありましたけれども、これは、処分をしましたときに新聞に全部発表をいたしました。したがいまして、この処分の内容については公知の事実に相なっております。
大島(令)委員 私は、国家公務員の戒告、訓告、厳重注意がお一人お一人の公務員の方の将来退職するときにどういうふうに影響があるのかわかりませんので、戒告という言葉の説明がないと納得できないわけなんですね。
 これは、本当に紙だけなんです。では、退職金とかいろいろあるんですか。でも、刑事事件でしたら、例えば前科一犯とかいろいろありますけれども、国家公務員の中でどういう位置づけなのか説明していただきたいと思います。保安院長に、戒告処分というのはどういうものか私はわかりませんので、教えていただきたいと思います。しかし、東電の南社長はやめました。民間企業です。戒告というのはどういうことなのか、教えてください。
平沼国務大臣 御本人から言うというのはあれですけれども、国家公務員として、戒告あるいは厳重注意、懲戒というのは、実際の金銭とかそういうものはつきまといませんけれども、やはり国家公務員としての経歴上大変大きな意味があるわけでありまして、これは金銭では換算はできませんが、経歴上大変大きな意味を持っているということはぜひ御理解をいただきたい、こういうふうに思っているところでございます。
 それから、これは保安院長と同じことですけれども、保安院長も、これは自分自身大変な責任を感じて、つらい思いで、そして、私も見ておりまして、本当に不眠不休で頑張って、しっかりした体制をつくって、そして国民の皆様方の信頼回復、これが自分の今の一番の務めだということで一生懸命頑張っているということも御理解をいただければと、こういうふうに思います。
村田委員長 既に質疑時間が終了しておりますので、簡潔にお願いします。
大島(令)委員 済みません。
 経歴上ということで、最後に一言申し上げますけれども、この法案は、やはり原子力発電所の安全、危険性の問題、命にかかわる法案を審議しているわけです。一人の国家公務員の人生の経歴上の問題と人の命が多くかかっている原発の問題、私はやはり問題を別に考えた方がいいと思います。
 時間が来ましたので、これで終わりにします。
平沼国務大臣 今回の事案というのは、御理解をいただきたいのですが、あくまでも自主点検の部分で起こりました。ですから、国民の信頼と安全性を担保するということは第一義ですけれども、東電の処分と、民間の、虚偽の報告をして事実を隠ぺいして、そして捏造した、これと自主点検で起こった我が方の処分、やはりそこは区別して判断をしていただきたい。このことを担当大臣として私はお願いをしたいと思います。
 ただ、原子力の安全と信頼というのは第一義ですから、それは一生懸命守っていきます。
村田委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会


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