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第8号 平成14年11月22日(金曜日)

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平成十四年十一月二十二日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      小西  理君    左藤  章君
      佐藤 剛男君    桜田 義孝君
      中山 成彬君    西川 公也君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      森  英介君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    生方 幸夫君
      小沢 鋭仁君    川端 達夫君
      北橋 健治君    後藤 茂之君
      中山 義活君    松原  仁君
      山田 敏雅君    山村  健君
      漆原 良夫君    福島  豊君
      大森  猛君    塩川 鉄也君
      大島 令子君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣府原子力安全委員会
   事務局長)        小中 元秀君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院長)     佐々木宜彦君
   政府参考人
   (特許庁長官)      太田信一郎君
   政府参考人
   (中小企業庁長官)    杉山 秀二君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十二日
 辞任         補欠選任
  小泉 龍司君     小西  理君
  山本 明彦君     左藤  章君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     小泉 龍司君
  左藤  章君     山本 明彦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)
 独立行政法人原子力安全基盤機構法案(内閣提出第七一号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁原子力安全・保安院長佐々木宜彦君、特許庁長官太田信一郎君、中小企業庁長官杉山秀二君及び内閣府原子力安全委員会事務局長小中元秀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 民主党の鈴木康友でございます。よろしくお願いします。
 まず初めに、少し大きなテーマで大臣にお尋ねをしたいと思います。
 今、我が国の総発電量のうち三分の一が原子力発電に頼っている状態であります。経済産業省としては、二〇一〇年までに原子力発電施設を九基から十二基増設して、さらに発電量を三割伸ばそうという方針もあるわけですね。
 御承知のとおり、京都議定書のCO2削減目標を達成するためにも、原子力発電の必要性というのはこれからも大変に重要になってくるだろうと私は思います。特に、エネルギーを他国から輸入できない日本にとっては、当分の間は原子力発電というのは非常に重要な位置を占めると思いますが、そういう意味では、この原子力発電の推進ということが一つの国策と考えますけれども、その点について大臣の御所見をお願いします。
平沼国務大臣 おはようございます。お答えをさせていただきます。
 御指摘のように、今、電力の約三分の一が原子力によって賄われております。今現在、日本には五十二基の原子力発電所があるわけでございまして、東京などは四割の電力が原子力によって賄われている。そういう意味で、私どもは、今御指摘の中にもありましたけれども、その発電過程においてCO2の排出量がゼロでございまして、また、百三十万キロワットの原子力発電所を考えたときに、もちろん安全性そして国民の信頼をしっかり確保することが前提ですけれども、CO2の排出量が一基当たり〇・七%削減できる、こういうことを考えますと、天然エネルギー資源のない日本にとっては、この原子力というのは、中長期的に見て、やはり必要不可欠のエネルギー源だと思っております。
 安全性をしっかりと担保し、そして今失われた国民の信頼を一日も早く回復する、そういう前提の中で、私どもとしては、原子力の安定供給、そして基本的な考え方はいささかも変わっておりません。
鈴木(康)委員 今、大臣から御答弁をいただきましたが、国の方針とは逆に、裏腹に、どうも原子力推進に対するちぐはぐさというのが目につくわけですね。「もんじゅ」のナトリウム漏えいとか、ジェー・シー・オーの臨界事故、あるいは今回の東京電力の点検の不正疑惑等々、こうした問題が起こるたびに原子力推進のハードルというのはどんどんどんどん高くなる。国のそういう方針とは裏腹にそういうハードルがどんどん高くなるというこのちぐはぐさについて、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘のとおり、国民の信頼と、そしてその安全性に対してしっかりとした担保をしなければならないのに、御指摘のようなそういう事故等が起こりまして国民の皆様方が大変不安になっておられまして、私どもとしては、本当に遺憾、残念なことだと思っております。
 したがいまして、一日も早く国民の皆様方の信頼を回復するには、やはりしっかりとした反省の上に立って、そして今回の事案に関しましても、評価委員会あるいは検討委員会でいろいろ御審議をいただいたところでございますけれども、そういったところをしっかりと踏まえて、そして立地地域の皆様方に御理解をいただく、そういう形で地道な努力を積み重ねて、信頼回復とさらなる安全性の確保、このことにやはり最大限の努力を傾注していく。
 確かに、御指摘のようにハードルは、こういった一連の事案によりまして高くなってきたのは事実ですけれども、私どもとしては、そういう地道な努力と、そして積極的な前向きのそういう体制を構築することによって、国民の信頼と安全性の確保の確立に全力を挙げていかなければならない、このように思っています。
鈴木(康)委員 今、大臣から御答弁いただきましたが、今回の一連の不祥事を契機として、各自治体からかなり厳しいいろいろな要望が国に来ているわけであります。これはやはり、かなり信頼が失墜をしている証左だろうと私は思います。
 自治体というのは、国の原子力政策と住民のちょうどはざまに挟まっていますから、自治体がある意味で今そういう形で苦悩しているというのは、やはり住民の原子力に対する不信が相当に高まってきているということだろうと思うんですね。ですから、そういう意味で、どうしても信頼を回復しなきゃいけない。
 先日、参考人でお越しいただきました新潟県知事の平山さんもそのことを強く申されていたわけでありますから、今回のこの法案の改正もそういうことを根底から見直す意味での法案だと思いますので、この法案に限らず、ぜひ信頼回復に向けての御努力をいただきたいというふうに思います。
 さて、少し法案の審議に移っていきたいと思います。
 私、今までの日本の原子力政策のひずみというのは、どうも理想と現実のギャップを放置してきたことにあるのではないかと思えてなりません。例えばこれまでは、原発のいろいろな施設の部品というのは、何年たとうが何十年たとうが新品同様でなければならない、そういう考えのもとにあったわけであります。経年的に変化をしていくということがほとんど念頭になかった。
 あるいは、人間がやることですから、当然そこには多少の瑕疵があったり欠陥というものが出てくると思うんですけれども、そういうこともあるんじゃないかなということを思いつつも、結局、原子力発電所に関しては、何か完全無欠でなければならないということが前提となってきたわけであります。ここに私は、日本の、今までずっと原子力に対する認識の無理があったんじゃないかなと。
 このことを放置してきた、あるいはこのギャップをそのままにしてきたことによって、そこから発生するいろいろな不合理や矛盾というものが、結局、現場にしわ寄せが来ている、それがいろいろな不祥事やあるいは事故につながっている気がしてなりません。
 現場の技術者の人からは、これまでも、とにかく維持基準がない限り表に出せないことがいっぱいあるんですよと、こういうこともいろいろな人から指摘がされてきたということでありますし、今回の不正の疑惑も、少々ひびがあっても安全が確保できているのであるならば、それは隠しておいた方が会社のためであり、あるいは、事を荒立てなくて済むわけだからという意識が働いていたのではないかと思うんですね。
 これは、今回の件が特殊であるということではなくて、今の特に原子力発電の現場に近い皆さんにはそういう意識がやはり蔓延をしていたのではないか、私は、そこに非常に大きな根本的な問題があるような気がしてならないんですけれども、大臣の御所見をお願いします。
平沼国務大臣 私は、御指摘のことはあったと思っております。
 十月一日に公表させていただいた中間報告でも指摘をしておりますように、原子力発電所において設備にひび割れ等があっても安全に問題なければ異常なし、こう言って国へ報告や公表等を怠ってきた事業者の姿勢というのは、御指摘のような背景の中で起こって、私は、でもこれは問題だ、こういうふうに認識しております。
 一方、御指摘がございましたとおり、原子力発電所においていかなるそういう傷も全くないということを考えるのはある意味では非現実的でございまして、人間が行うことであるので傷はあり得るということを前提に、原子力の安全に関する確保を行っていかなければならない、私はこういうふうに考えております。
 このような観点から、今回の法案では、ひび割れなどがある場合には事前に評価を義務づけるなどの取り扱いを明確にしたところでございます。
 ただ、ここで、私どもは、今までの安全水準を下げる、そういうことは絶対あってはならない、それをしっかりとやはり維持しながらこういった形で事前に評価を義務づける、こういうことを行っていく、それが必要であろう、こういうことで法案の中に盛り込ませていただいたわけでございます。
鈴木(康)委員 今回の維持基準の導入というのは、法案改正の一つの焦点になっているわけであります。
 今回、東京電力のみならず複数の事業者の原子力施設でひび割れというものが見つかったわけであります。これは、今回急に出たというよりも、今まであったものが表に出てきたということだろうと思うんですね。そうした背景をもとに急遽維持基準の導入ということに動かれたわけでありますけれども、引責辞任された東京電力の南社長が、その会見の中で、稼働中の原子力に関する維持基準をできるだけ早くつくってほしいという指摘をされたわけであります。今まで事業者が持っていた問題意識というものが私はここで初めて公にされたというふうに思います。
 ただ、今、あちこちでこういうひび割れというものが表に浮き出た段階で急激に維持基準導入に動くというのは、今大臣は、安全水準を下げるということではありませんよと、それは理解をしても、当然何か安全に関して規制を緩めるんじゃないかということが、国民の皆さんの間にそういう意識が起こってもこれは仕方のないことだと思うんですよ。今までいろいろなところから維持基準導入ということが指摘をされてきたのに、何でこれを放置してきたのかという点、これは私は、行政の不作為として重要な問題だと思うんですね。
 まず初めに、こういう、維持基準を導入してほしいという事業者あるいは各方面からの要望がいつごろからあって、政府の中ではどういう検討がなされてきたのか、その点についてお伺いしたいと思います。
西川副大臣 お答え申し上げます。
 昨年の十二月に総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会におきまして検討が始められまして、六月まで六回検討を重ねてまいりました。そして中間報告というもの、これは、供用中検査で適用する技術基準、こういう提言をいたしたところでございます。
 いわゆる維持基準につきましては、場当たり的に、泥縄式に、この事件が発生したために行ったのではございませんで、ただいま先生もお触れになりましたように、現場の声を私どもは昨年の十二月からくみ上げて作業に入っていた、これが実情でございます。
鈴木(康)委員 昨年の十二月から検討にお入りになったというお答えでございますけれども、アメリカは既に一九七一年に、機械学会、いわゆるASMEというところでこの維持基準がつくられて、一九七三年にはもう実際の運用が始まっているわけですね。日本は約三十年これがおくれているわけであります。
 これまで、昨年の十二月とおっしゃいましたけれども、それ以前にも随分とこの維持基準についての導入の要望があったと思うんですが、昨年までそれがずっと放置をされてきたその原因というのはどこにあるんでしょうか。
佐々木政府参考人 御指摘のとおり、当時の資源エネルギー庁の規制部門におきましても、こうした考え方の導入をできるだけ早く実現したいという検討をしてまいりました。当初、十年ぐらい前には既に、いろいろな重要な機器、構造物の取りかえというものをどういう頻度で行うべきか、こういうことを中心に、いろいろな過去の事故、トラブルのデータの集積を図りつつ、そういう検討も行いました。
 また、日本機械学会におきましても、アメリカの機械学会の検討を日本でも十分そしゃくして検討しようということで検討されてきて、いろいろ我々も議論を重ねてきたところでございます。日本機械学会の方は、二〇〇〇年版で、非常に安全上重要な機器について、第一種の容器、配管についての維持規格の考え方を取りまとめられたところでございます。
 そういう意味で、学会での対応の問題、私ども、いろいろ努力をしながらも、人事の異動であるとか、あるいはその間にいろいろやはり原子力発電所においての事故、トラブル等が発生をした。現実的には、いろいろな対応をしながらも、なかなか難しい情勢を踏んでまいったというふうに理解をしております。
鈴木(康)委員 私は、そこが問題だと思うんですね。これは一番大事な部分だと思うんですよ。人事の異動とか事故のトラブルとか、そういう姿勢がむしろそういういろいろな問題をこれまで引き起こしてきたわけであります。
 今おっしゃられたように、機械学会の話がありましたけれども、日本でももう以前からこれは検討されているんですよね。実際に、その現場では、ある程度この維持基準的な発想で既に点検保守というものが行われているわけであります。だから、八月末の今回の公表の時点でも、ASMEの規格等に基づく維持基準的な手法によって暫定的に安全宣言がなされているわけでありまして、事実上、現場ではこうした維持基準的な発想で運営が行われてきた、こういう実態があるわけですね。これについては把握をされていたのかどうか。
西川副大臣 先生御指摘のとおり、八月末のこのことにつきまして、東京電力が自主点検記録の際にASMEの評価手法を取り入れているということは、当省として把握してございます。
鈴木(康)委員 ですから、そういう把握をされていたのに、今回、これ、一カ月ですよね、維持基準導入するなんて言い出して。それを放置してきたのは、これはやはり行政の怠慢だと思うんですが、どうですか。
佐々木政府参考人 御指摘の点につきましては、確かに、行政としての真剣な取り組みの継続性という面でもっと努力ということが必要であったと私は思っております。
 私が保安院の院長を拝命いたしましてからこの問題に早急に取り組むべきということで、先ほどお話がありましたように、検査の判断基準をつくらない限りだめだということで、この問題に鋭意取り組んできたつもりでございます。
鈴木(康)委員 今度、この電気事業法改正の法案を見ますと、維持基準のことについては、技術基準を初めとして、必要な事柄がすべてこれは経済産業省令で定めるということになっているわけですね。この法案が仮に成立をしても、結局、具体的なことは全部役所任せになってしまうわけでありますが、これは私は大変問題だと思うんです。
 ですから、まず、これは、だれがこれからどのような手続を踏んで、いつまでにこれを決めるのか、その点についてはっきりさせていただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 原子力設備に係る維持基準につきましては、まず、公布の日から一年以内に策定をする、こういうふうにいたしております。
 当該基準の策定に当たりましては、原子力施設の機器について策定をされました日本機械学会の規格などの民間規格を活用することを考えております。
 この際には、まず、当該民間規格が公正中立性及び合理性を有していることにつきまして、原子力の専門家あるいは学識経験者の方々によって技術的妥当性を評価していただきまして、その検討結果をパブリックコメントに付すなど十分な検討を行いまして、さらに、原子力安全委員会においても議論をしていただく、こういう予定でございます。また、当然、立地の地元関係者の皆様方にも説明を行わせていただくなど、国民各界各層の理解が得られるよう、適切なプロセスを経た上で採用していかなければならない、私はこのように思います。
鈴木(康)委員 これは、大体めどとしてはいつごろこれが整って実際に運用が始まるのでしょうか。
佐々木政府参考人 維持規格全体は、原子力発電設備の機器が非常に広範にわたるものでございますので、安全上重要な機器で、なおかつ今アメリカの機械学会あるいは日本の機械学会で研究が相当進んでいる部分、当面は、私は、第一種機器からスタートしていくということが適切ではないかと考えております。
 めどは、来年の秋、十月一日を目指しておりますけれども、独立行政法人の設立の御審議を今いただいておりますが、この法人が活動をするまでには、少なくとも第一種機器に関しての維持規格はきちんと整備をする必要があると考えております。
鈴木(康)委員 来年の十月の一日めどというお答えが今ございました。例えば、維持基準ができてこれが稼働するまでの間、かなり時間がこれからあるわけですね。
 今、原子力発電施設が随分ストップしていますよね。東京電力の場合は、十七基中十五基がストップしちゃっているわけですけれども。特に、東電さんは原子力発電に依存している部分が非常に高いわけですね。これから冬場の電力需要のピークに向けて、電力の供給というのは大丈夫なんでしょうか。その点ちょっとお伺いしたいと思います。
高市副大臣 現時点におきまして、東京電力の原子力、全部で十七基のうち九基が定期検査や計画外停止で運転を停止いたしております。さらに、この冬場におきましては四基の原子力が定期検査に入る予定となっておりますので、もうこれだけで十三基、東京電力さんに関してとまる可能性があるということです。
 鈴木先生が十五基とおっしゃったのは、さらにこれに加えまして二基について、これは気密試験を行うために年度内に停止させることを検討中と東京電力から聞いておりますので、仮に、今申し上げたすべてが停止をし続けた場合には、三月末の時点で十七基中十五基が停止しているということになるわけです。
 この冬場の電力需給なんですけれども、停止している火力発電所施設の運転の再開、それから、定期検査時期の調整によりまして必要な供給力を確保しようと考えております。
 今申し上げました対策によりまして、何とか安定供給が確保されるんじゃないかという見込みではございます。ただ、かなり寒さが厳しくなってしまって電力需要の増大などの不安定要因もありますので、引き続き需給の動向を注視してまいるということでございます。
鈴木(康)委員 確かに電力供給の一次的な責任は電力会社、事業者にあるわけですけれども、今回のいろいろな一連の問題が電力供給に大きく響いているということを考えれば、これは行政側の責任というものは重大だと思いますので、皆さんやはり不安に思うわけですよね。本当に冬場に突然停電をするんじゃないかとか、一般の方たちはそういう認識をお持ちですから、この点についてはそういう不安がないようにぜひお努めいただきたいと思います。
 さて、今回の電気事業法改正におきまして、こういうくだりがあります。「技術基準に適合しなくなると見込まれる時期その他の経済産業省令で定める事項について、経済産業省令で定めるところにより、評価を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならない。」というふうにされておりますけれども、点検によって発見されたいろいろな事象があるわけですけれども、そのうち何が報告対象になって何が記録保存対象になるのか。それぞれの発電所というのはいろいろな機器があるわけですから、そうした設備や機器の安全上の重要度というものを考慮した適切なルールをつくる必要があると思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
西川副大臣 設備の健全性評価の対象は、事業者が自主検査の際に非破壊試験によって検出されたすべてのひび割れ等でございます。
 健全性評価の結果につきましては、これを記録し、保存することを義務づけるものでございますけれども、事業者の自主検査体制の審査の中でこれを適宜チェックするとともに、国の定期検査の対象設備については定期検査の中でチェックすることとなってございます。
 なお、設備の健全性評価の対象となる機器というのは省令で定めることになっておりますが、評価手法に関する機械学会など学問の世界のお力をおかりしまして、民間規格というものが策定されているものを対象とするように検討してまいりたいと思っております。
鈴木(康)委員 アメリカでは、この維持基準というのは大体三年ごとに改定されているというふうに伺っております。法律でがんじがらめに規制をするというよりも、むしろどんどん技術というのは進歩をしていくわけですから、そうした最新の知見が容易に盛り込めるような仕組みになっている。これは三十年の知恵もあるんでしょうけれども、当然、日本でこれから維持基準をつくっていく場合にもそうした最新の知見等が盛り込めるように柔軟に対応できるような仕組みになる必要があると思うんですけれども、その点はいかがでございますか。
西川副大臣 御指摘のように、最新の知見を規制に反映する柔軟な対応の可能性というものを探ってまいりたいと思っております。
鈴木(康)委員 ぜひ柔軟に対応できるような形にしていただきたいと思います。私は、そのことがむしろ原子力発電施設の安全を担保することにつながるというふうに考えますので、よろしくお願いします。
 それから、次に御質問したいんですが、今回のこの維持基準というのは、法文を見ますと、自主検査の第五十五条だけに適用が明文化をされているわけですけれども、定期検査の五十四条にも適用されるべきではないかと思うんですけれども、なぜこの自主検査の部分だけに適用がされるのか、その点について明らかにしていただきたいと思います。
佐々木政府参考人 事業者が行うべき安全保障活動として自主的に検査をするものを法定の自主検査と、一定の範囲を定めることにいたしております。国が直接立ち会ったり、国が直接記録確認を行います定期検査の項目はその中にも含まれます。
 したがいまして、そういう意味では、国の直接的な定期検査の項目については、主として、機能を確認するということを現場で直接立ち会うことになりますが、分解あるいは開放といったことを容器とか弁でやります場合には、当然これは自主検査になります。その結果の積み上げが最終的に国が直接行う機能検査になります。
 したがいまして、全体としては、法定の自主検査の項目の中に、国が直接見ますよという定期検査の項目も含まれております。こういうことでございます。
鈴木(康)委員 それは完全にオーバーラップするということですか。
佐々木政府参考人 完全にオーバーラップするわけではなくて、法定の自主検査のうち、極めて安全上の重要度の高いものだけを国が直接立ち会ったり記録確認をするということですから、ごく一部を国が直接見る、こういう考え方でございます。
鈴木(康)委員 とすれば、やはり五十四条にも適用すべきではないかと私は思うんですけれども、ちょっと見解の相違がございますので、また御検討いただきたいと思います。
 さて、今度、維持基準が導入されますと、私、今までの原子力発電に対する安全性のイメージというのが根本から変わると思うんですね。先ほど冒頭に御指摘をしたように、今までは原子力発電施設というのは、とにかく完全無欠でなければいけない、一点の曇りもない、ひび一個あってはならない、そういう認識のもとに来たわけでありますけれども、これからは、そういう建前の世界からかなり現実的な方向に移ってくる。むしろ現実の原子力施設の実態というものがだんだん明らかになっていくわけであります。
 そうした中で、いろいろな情報が公開をされて、一つ一つの、例えば欠陥などについても、その重要性というものが判断をされて対処をされてくるわけですけれども、そういう実態、かなり生身に近い形でこれから我々は原子力発電施設とつき合っていかなければいけない。特に、立地地域の住民の皆さん、あるいはその周辺の皆さんは、これから認識をそういう形でしていかなければいけないわけですね。
 こういうこと、安全性に対するイメージが変わるということを、これからどのように国民の皆さんに認識してもらって理解を得ていくのか、その点についての方針をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 重要な御指摘だと思っています。
 そういう意味では、先ほどの御答弁でも申し上げましたけれども、やはり一つは、国民の皆様方に、従来の安全基準を下げるのではないということをしっかりと御認識いただくように、あらゆる努力を尽くすことがまず大事だと思っています。
 それから、原子力の専門家の皆様方でありますとか、あるいは学識経験者の方々に徹底的に検討をしていただいて、その検討結果というものをやはり国民の皆様方におわかりいただくためには、パブリックコメントに付して御理解をいただく努力も同時に傾けていかなければならないと思っているわけでございます。
 また、立地地域の皆様方には、そういった面では、直接出向くなどはっきりとした形で、日本の場合には、特に原子爆弾を二発落とされ、原子力というものに対しては国民の皆様方は非常に不安を持っておられますので、そういった背景も十分考慮してオープンにして、説明責任を果たして、そして御理解をいただく、そういう努力を一生懸命やっていく、こういうことで御理解をいただきたい、こういうふうに私どもは思っております。
鈴木(康)委員 今、大臣がおっしゃられました最初の部分は、私は大変大事だと思うんですね。
 今回の維持基準導入は非常に唐突であったと私は思うわけですね。ですから、今までの安全基準が前提となって、その上に維持基準が導入をされるんですよ。今までの安全基準を決して下げるものではないということでありますが、私は、逆に、今までのそういう厳しい安全基準を下げることになるのではないかという認識がどうも蔓延をしているような気がしてならないんですね。
 そうしますと、やはりそういう不安というものが広がるわけですから、そこは決して今までの安全基準を下げるものではないということをきちっと説明する責任が政府にはあると思うので、その点をぜひお願いしたいと思います。
 さて、今度の維持基準というものが導入をされますと、それに伴って考えておかなければならないのが、いろいろな機器あるいは材料の経年変化の問題だと私は思うんですね。これまで経年劣化あるいは経年変化に対する対策について検討してきた経緯があるのかどうか、もし検討してきたとしたら、どんなメンバーでどのような検討をしてきたのか、お伺いしたいと思います。
高市副大臣 経年変化について検討してきた経緯はございます。初期の原子力発電所の運転というものが大変長期化してきたことを踏まえまして、これは旧通商産業省において検討を行っております。具体的には、専門家の御意見を伺いながら、平成八年に、高経年化に対する基本的な考え方についての報告書を取りまとめて、これを原子力安全委員会に報告いたしております。
 この平成八年の報告書の中では、高経年化対策の観点から、重要な主要機器について、経年変化に関する技術的評価を行い、その結果、適切な管理を行えば、安全に運転を継続することが可能であるということを確認しております。それから、この報告書の中で、今後、事業者がプラント全体の主な機器すべてを対象に経年変化に関する技術的評価を行い、この評価結果に基づく適切な保全を行っていく必要があるとし、国がこれを評価していくことが必要だとしております。
 この平成八年の報告書に沿いまして、事業者が、初期のプラント三基、具体的には、敦賀、美浜、福島においてなんですが、この高経年化対策として、経年変化に関する技術的評価と長期保全計画の策定を行っております。旧通産省では、平成十一年に、この事業者の高経年化対策は適切であるとする評価結果と、今後の高経年化に関する具体的な取り組みについての報告書を取りまとめて、これをまた原子力安全委員会に報告いたしております。
 その後も、運転開始後三十年を迎える前に、事業者が、今申し上げましたような例と同じ手法で経年変化に関する技術的評価と長期保全計画の策定を行って、これを当省が、専門家の意見を聴取しつつ、評価しているということで、現在までに、最初に評価しました三基に加えて、あと福島第一の二号機、美浜二号機について実施済みということでございます。
 そのメンバーなんですけれども、委員長が東京大学工学部の朝田教授でございまして、あとは芝浦工業大学の飯田教授、それから北海道大学の教授、大学の先生方がずっといらっしゃって、このほかに電力中央研究所の研究主幹の方、たくさんいらっしゃいますが、読み上げはお時間の都合があるかと思います。そのようなことでございます。
鈴木(康)委員 今、経年劣化、経年変化対策について、国の方でもしっかりやっているということでございますが、今回、例えば低炭素のステンレス鋼を採用していますね。比較的新しいシュラウドで応力腐食割れというものが見つかったわけですね。これは、そういうものに強い、経年変化に強いステンレス鋼でこうしたことが見つかったというのは非常に不可解だと思うんです。
 この材料の早期劣化という疑いも指摘をされているわけですけれども、こういったことに対して、きちっと原因究明をすべきだと思うのですが、いかがですか。
高市副大臣 一般的に応力腐食割れというのは、金属材料の種類、それから応力、材料を取り巻く環境の各要素、こういったものが重なって発生するものですが、この発生要因の一つであります金属材料の種類につきましては、ステンレス鋼の中に存在する炭素の量が影響するということは知られております。
 それで、平成六年に応力腐食割れが発生した福島第一原発二号機の炉心シュラウドは、比較的炭素を多く含む材料を用いた規格のものでした。SUS304というものでございました。そのため、金属材料の面では、炭素を少なくした、低炭素化したステンレス鋼、これはSUS304L、それから、さらにそれよりも耐食性のすぐれたステンレス鋼SUS316Lというものが採用されまして、応力腐食割れの発生抑制が図られてきたのですが、去年、福島第二原子力発電所三号機におきまして、この一番いいとされていたステンレス鋼を用いた、つまりSUS316Lを用いた炉心シュラウドでも応力腐食割れが発生してしまったということでございます。
 ですから、原子力安全・保安院では、この件について検討を行いまして、炭素を含む量が少ないステンレス鋼であっても、施工の方法とか、あと炉水の状況によっては応力腐食割れが発生する可能性があるんだということで、去年九月に、同様の炉心シュラウドを有する原子炉を所有する事業者に対して、点検を行うように指示したところでございます。
 ことしの八月に柏崎の三号機で発見されたひび割れというのは、その点検をしてくださいとお願いして、していただいた点検によって新たに発見されたものなんですが、今後も継続して点検を行っていったり、あとは、ひびが発見された箇所からのサンプルを採取いたしまして原因究明を行っていくつもりでございます。
 今回発見されたひび割れに関しましては、原子炉の安全上直ちに問題になるものではないということでございます。
鈴木(康)委員 今、丁寧に御説明をいただいたんですが、結局、その原因というのははっきりしたんですか、はっきりしていないんですか。
高市副大臣 これに関しましては、今御説明いたしましたように、この一番安全だと言われている材料であっても、やはり施工の方法や炉水の状況ではそういうものが発生する可能性があるんだということでございます。
 残念ながら、よその国、他国を探しましても、これよりいい材料というものが、このタイプの原子炉に適応するものとしてはございません。ですから、できる対応としましては、この一番ましな材料を使って安全点検を小まめに行っていく、発見されたらすぐにこれに対応していくということしかないんだろうと思います。
 だから、点検を小まめにして、そして、この法律が通りましたら、維持基準というものをしっかり設けて、必要が出たらきちっと取りかえていくということでしか現在のところ対応の方法がございません。
鈴木(康)委員 まさに、実はそこが問題でありまして、今、考えられるいわゆる最高の材料だと思うんですね。にもかかわらず、やはり条件によってはこうしたひび割れが起こるということでございますから、これは、これから特に稼働年数が高くなる発電所等々は、この経年変化というのは非常に危惧をされてくるわけでありますから、しっかり対策を立てていただきたい。
 これからも産官学が一緒になってこの経年変化対策というものをやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
平沼国務大臣 当然これまでも、いろいろいい材料という形で検討してまいりました。こういう状況ですから、私どもとしては、御指摘のように、産学官が連携をしながら、さらに材質のいい、そしてひび割れが生じない、そういうものは検討をしていかなければならない、こういうふうに思います。
鈴木(康)委員 次に、検査制度全体についてお伺いをしたいと思います。
 原子力施設の検査は、施設検査としての定期検査、今度制度化される見通しになっています定期自主検査、それから保安検査の三本柱になるわけでありますが、こうした中で、総合資源エネルギー調査会の原子力安全・保安部会の検査のあり方を検討する検討会で、検査のあり方として、事業者の保安活動の適切性に重点を置くべきとの指摘がされております。
 こういうことを踏まえますと、将来的には、検査制度全体を、事業者の保安活動のチェックに重点を置く、いわゆる監査型の体系に集約をしていく必要があると思うんですけれども、その方が私は合理的ではないかと思うんですけれども、この点いかがでございますか。
西川副大臣 定期検査と申しますのは、御案内のとおり、格納容器でございますとか非常用炉心冷却系など、安全上特に重要な機能を有する施設設備、こういうものを対象に、国が検査官を差し向けましてその健全性を確認する、こういうものでございますね。
 それから、今回導入いたします定期自主検査は、定期検査対象のものに限らず、国が技術基準を設けている設備の健全性を事業者みずからが確認することを義務づけるものでございます。国と独法で、事業者による自主検査の組織、体制、実施方法、こういういわゆる実施体制というものを審査いたすことにしております。
 また、保安検査は、事業者による施設の運転の方法でございますとか、日常的な保守点検等に関するルールを定めた保安規定の遵守状況を確認する、こういうものでございます。
 委員がただいまおっしゃいました監査型というのは、私が想像いたします範囲では、事業者が施設の検査を自主的に行って、それが適切に行われているかどうかを国が審査をせよ、それが合理的であると。私はよく理解できまして、今回導入する定期自主検査の実施体制に対する国の審査と合致するというか、考え方が近いんじゃないか、こう思うわけでございます。
 一方、国民の皆さんは、依然として、そうした重要なものの検査については国がしっかりやれという、まだそういう御希望が強いという現状におきましては、直ちに一本化をするということは、まことに適切なお考えだと私は思うのでございますが、今の状況にかんがみて、時期尚早のように残念ながら思っております。
鈴木(康)委員 検査のあり方、実態を見ますと、ちょっと保安院のこともお伺いしたかったんですが、時間が来ましたのでそれは割愛をさせていただきたいと思いますが、事業者に今ほとんど依拠をしているわけですよね。大体、事業者の方が知識も経験も進んでいるわけですから。
 先ほど維持基準のことでも申しましたように、結局、いろいろな最新の知見やら新しい技術、あるいは方法というものを柔軟に導入していくということを考えますと、国が余り硬直的なやり方をするよりも、きちっとそれができているかどうかということ、これはやはり国としての責任でございますので、そこはしっかりチェックをしていただかなきゃいけないんですが、ある程度柔軟にその辺は対応する方が、私はむしろ結果としてはいい結果が出るのではないかというふうに思いますので、副大臣もそういう御答弁をいただきましたので、ぜひそういう形で検討をいただきたいと思います。
 時間でございますので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
村田委員長 中山義活君。
中山(義)委員 ちょっと、先週のことになるんですが、知的財産権の問題で、審査料を上げるということは、知的財産権を戦略として用いて日本の技術を向上させていこうということで、戦略本部をつくってやる、これを総理が本部長になってやるというような話だったんですね。我々、この委員会でも大分論議したんです。
 ところが、十八日の産業構造審議会知的財産政策部会、ここでもう審査料を上げるという論議をしているんですよ。私たちは委員会でいろいろな発言をしているんですが、諮問機関で、勝手にそっちでいろいろやっていてどんどん進めていっちゃって、我々の意向とは違うような方向へ行ったら大変困るわけですね。
 どうも総理大臣のやっていることを見ていますと、与野党の、野党だけじゃなくて、与党の議員さんだって随分不満があるんじゃないですか。何か諮問機関でがんがんがんがん進めて、委員会で論議させない、こういうやり方はまずいと思うんですね。知的財産を使って日本の新しい技術を外国に売り出そうというときに、委員会の意見を無視して勝手に諮問機関でどんどん進めていったら、これは我々が無視されているのと一緒ですよ。議会軽視だと思うんですね。こういうことはちょっとやめてもらいたい。終わってすぐ十八日ですから。こんなことをやっていたんじゃ、我々論議できませんよ、せっかく一生懸命やっているのに。
 アメリカは、ヤング・レポートを出したときに、これは一九八五年ですよ。プラザ合意ですよ、このときは。同時に貿易保護をやった。こうして日本からの、どんどんどんどんアメリカに押し寄せてくる輸入品を防いだわけでしょう。そんな大きな戦略でやっているわけですよ。
 日本は、全く戦略的なものがない。すぐ審査料を上げてしまうとか、諮問機関でこうやってしまう。これは小泉さんのやり口なんだと思うんですが、もっと議会もしっかりしなきゃいけない、与野党が文句言わなきゃいけない。我々だけが文句言ったんじゃいけないくらいおかしな話ですよ。これ、答弁してください。
太田政府参考人 お答え申し上げます。
 知的財産立国が国家目標になっております。その実現のために、私ども特許庁の最大の使命は、迅速的確な審査を行うことだと思っております。本年七月に取りまとめられました知的財産戦略大綱におきましても、必要な審査官を確保すること、アウトソーシングの積極的な活用等による審査体制の整備、我が国の出願・審査請求構造の改革、それから早期審査制度の活用等総合的な施策を講ずることとされております。
 これを受けまして、これら諸施策につきまして、私ども、九月から、中山先生おっしゃられたように、産業構造審議会の特許制度小委員会において、総合的な視点に立って鋭意検討を進めているところでございます。去る十一月十五日に開催いたしました第三回小委員会におきましても、これら諸施策について幅広く御議論いただきました。
 特許関連料金制度のあり方につきましても、我が国の出願・審査請求構造の改革のための施策の一環として議論をいただき、料金体系の見直し、さらには出願取り下げによる審査請求料の返納制度の導入、審査請求料の支払い方法等々、広い視点からさまざまな御意見をいただいたところであります。他の施策も含めて総合的な対策を講ずるべく、次回に向けて議論を続けていくこととされました。
 いずれにいたしましても、我が国の知的財産の創造、保護及び活用をさらに推進するというプロパテントの視点に立ちまして、十分な議論を行い、できるだけ早期に結論を得たいと考えているところでございます。
中山(義)委員 私は戦略という話をしているので、個々の戦術みたいなことをいろいろ言ってもね。
 知的財産、いわゆるプロパテント政策を根幹に据えて日本の産業というものを売り込んでいこう、頑張ってやらせよう、こう言うんだったら、もうちょっとこの委員会に、予算はどのくらいあって、審査官はどのくらいふやすとか、抜本的な形を示してくれないと、ただ、ああやって法律を二つ出した、それで言葉が躍って、知的財産戦略本部、いつもそういう言葉だけ躍っているんですよ。しかし委員会には何にも提示されていない、しかし諮問機関の方はどんどん進んでいく。
 ほかだってそうでしょう。道路問題だってみんなそうじゃないですか。これは小泉さんのやり口だというのなら、それはそれで倒閣運動しなきゃいかぬですけれども、我々がやるよりも、与党が今やっていますからそれはそれでいいんですけれども。やっぱりおかしいと思いますね、考え方が。もっとこの委員会でしっかりしたものを見せて、予算がどのくらいかかるのかということをやってもらわなければいけないんですが、一員として、平沼大臣、どうでしょうか。
平沼国務大臣 知的財産戦略会議というのを、中山先生御承知のようにことしの三月に立ち上げて、ここは関係する閣僚が全部入らせていただいて、また専門家、弁護士さんですとかあらゆる各界各層の方が入って、非常に熱心に議論をして、御承知のように七月に大綱というのができました。
 その大綱の中で、やはり基本法というのを一日も早くつくれということでお願いさせていただき、そして、それができた暁には、小泉内閣総理大臣を本部長とする戦略本部を立ち上げる、その中でさらに皆さん方の意見を聞きながら、そういう中でしっかりとした計画をつくっていく。
 その計画というのは、戦略と、こういうふうに言われましたけれども、例えばアメリカにおけるマンハッタン計画のように、ちゃんと時期と、それから予算等もしっかりとそこにつけて、さらに一年に一回は進捗状況を見て見直しを行って、戦略的に効果が上がるようにやっていく、こういうことでございまして、確かに米国に比べては、戦略性の面では今まで大変劣っていたところはあると思います。
 しかし今回、この知的な戦略、知的財産を伸ばしていく、こういうことに関しては、総合的にしっかりとした事務局もつくってやっていく、こういうことでございまして、私もその一員でございますから、今御指摘の点も十分踏まえて、そして、単なる審議会で言う、そういうことじゃなくて、しっかりとやっていかなければならない、このように思っています。
中山(義)委員 今、日本の多くの方たちが、いわゆる中国にやられっ放しで、どんどんどんどん日本の産業技術力が落ちているというような感覚を持っちゃっているんですね。ですから、アナウンスとして、大臣やまたは総理大臣みずから、この知的財産権を使って日本の技術とか産業というものをどんどん伸ばしていくんだ、こういうような意気込みがやはり感じられないというか、それも予算の裏づけとかちゃんとしたものでなければいけないわけですよ。
 これが、そういう諮問機関みたいなものでどんどん進んで、結局は大したことなかったというんじゃ、かけ声倒れですよ。それじゃ困るので、本当に、これで中国へ進出する方々や、または、そういう今の中小企業が新しい技術を磨いてパテントをとって、それを自分の企業の基盤に据えて頑張っていこうという人たちに、何かもうちょっとしっかりしたアナウンスを送ってもらわなければ困りますね。
 とにかく、この委員会を軽視してもらっちゃ困るんですよ。ここは一番優秀な人材がそろっているというふうに私は思っておりまして、大臣にも間違いないアナウンスを送っているわけですよ。だから、我々の言っていることを守ってくれれば、そしてそれをあらゆるところで発表してもらえば、あっ、国会が一生懸命国のことを考えて精いっぱいやっている、この意気込みをもうちょっと外に出してもらいたい。
 諮問機関でちまちまちまちまやって、技術的な戦術論ばかりやっていてはだめだと思うんです。やっぱり戦略的なものをしっかり打ち出さなければ日本の国はおかしくなりますよ。まあ、この問題については以上で。
 それから、エネルギーの問題でも全く一緒なんですよ。アメリカは石油という問題について、世界各国で自分たちで石油の自主開発をしていて、どんなことがあっても石油は枯渇しないように考えているわけですね。ところが日本は、中東に八八%依存していますから、イラク戦争なんかあったら何が起こるかわからない。そこにやはり大変大きな不安があるわけですね。
 今回の問題も、そういう意味も含めて、戦略的なエネルギーに対する考え方というものがどうも根幹にないような気がしてすごく不安なんです。そういう面では、もうちょっとエネルギーに対する根幹、いわゆる戦略みたいなものをしっかり考えた上でこの問題を進めていきませんと大変だと思うんですね。
 要するに、電力の自由化がどんどん進んでいく。ということは、自由化をやる企業とすれば、競争の原理からいえば一番安い、一キロワットアワー幾らでできる、こういう計算になるわけです。石炭が今一番安いと思うんですよ。五・九円ぐらいでできちゃう。では、原発だったらどのぐらいなのか、経済性を言われていますね。それから、日本の自主開発できるエネルギーであることも事実。
 しかし、いろいろなことをこうやって考えてみると、いやあ、原子力というのは、経済性から考えると案外すごいコストがかかっているんじゃないか、そんな気もするわけですね。だから、この原子力発電というものをどういうふうに国民に理解させるかというのは、やはり専門家がわかりやすく言ってもらいたいんですよ。
 先ほど高市副大臣が説明されていました。私はうっとりして聞いていましたけれども、炉心シュラウドとかなんとか言っても、実際難しくてわからないわけですよ。国民に、今原発が十五基とまる、これが何だかよくわからない。あれはいわゆる懲罰でとめられているのか、それとも本当に危険だからとめられているのか、自主的に電力会社がとめているのか、よくわからないわけですよ。だから、常にそういう説明を原子力の部分については、技術的に難しいから、ちゃんとした説明ができる人をやはり雇うべきだと思うんですね。
 僕は、動燃のとき、サイクル機構ですか、お会いしたときにいろいろ言ったんですが、あなたたちは説明が実に下手くそだったんですよ、社長が説明したけれども、何か腰が引けていてたどたどしく、それじゃわかりませんよ。それで、難しい言葉を羅列する。わかりやすく原子力を説明できる人、そして、今起こった事態を簡単に説明できる人がやはり必要だと思いますね。国民にわかりにくい。そういう意味で、大臣、どうでしょうか。
平沼国務大臣 国民の皆様方の信頼が今失墜をしています。その失墜をした背景には、やはりしっかりとしたわかりやすい説明責任というのがなかった、それも原因の一つだと私は思っています。ですから、そういう意味で、今御指摘のように、わかりやすく、そして国民の皆様方の不安を払拭できるような、人材を含めてそういう体制をとるということは必要なことだと私は思っております。
 これまでも各原子力発電所において、事業者の方を中心に、幅広くそういうPR体制をとってきましたし、また、経済産業省といたしましても、立地の地域に人材を派遣して、そして説明責任というのを一生懸命やってきましたけれども、まだまだ足りない部分があると思います。そういう意味では、御指摘を踏まえて、そして御指摘のように、この国会の場でそういう御提案をいただいたわけですから、真摯に受けとめて私どもはやらせていただかなければならない、このように思います。
中山(義)委員 前に雪印の社長が、事があったときにいろいろ説明しているときにも、このときも何か腰が引けていてよくわからないんです。私は、やはり説明をするということは実に大切なことで、説明責任というのは、わかる説明でなければ意味がないんですね。
 今度の東電にしても雪印のときにしても、例えば雪印でも、さっきの知的財産権でいえば、これはブランドですよね。このブランドを失ったというのは、どのくらいだと思いますか。知的財産権の、いわゆるブランドから計算をしてみますと、雪印というのは二千四百億円だったそうですよ。このブランドを説明が悪かったために失ってしまうんですよ。日本の国家の財政からいっても、二千四百億円というのは大変な金額ですね。そういう大きなものを、ブランドを失ってしまうんです。今回、東電もそうですね。どれだけ東電というものにブランドがあったか。それを一気に失ってしまうんです。いかに説明をすることが大切なことか。
 ですから、わかりやすい観点からいえば、実は、保安院というのは国の内部にあるけれども、もう一つ、安全委員会というのは第三者機関で、これは全然違うんだと。しかもこの人たちは、こういう人とこういう人が何千人いて、亀裂があったらこれは将来どういうことを生むのか、どういうことが発生するのか簡単に見抜ける人がいるんだとか、だからこの機関とこの機関があれば安全なんだ、ダブルでチェックしているんだとか、わかりやすい説明をしてくださいよ。私を雇ってもらってもいいですから、ちゃんと説明できるように。やはりそれがないといつまでたってもこの原子力の問題は、あるときに必ず問題が起きるんです、それを説明できないんです。
 例えば警察だってそうですよね。何か不祥事があれば、一つの警察署の不祥事が全国の警察、全部被害をこうむるわけですよ、警察はみんなおかしいと。だから、どこの電力会社でも、一つが何か不祥事をやるということは、日本全国の原発に対して問題を起こすわけですね。
 それから、世界各国にも迷惑をかけているかもしれませんよ。これは大変な問題だと思っている。説明一つで変わってしまう。だから、初めに説明した人が間違って説明すれば大変なことになるわけですよ。そういう面では、やはり説明責任というのはわかりやすく説明することが大事なので、今度の法律でもその辺がすごく肝要なところです。
 まず、自主点検という言葉自身もちょっと私ども、何となくおかしな気がするんですね。もっと、義務づけた、義務だという感じがなければいけないんですね。点検するのは当たり前なんですから。定期的な義務点検であるとか、そういう言葉じゃないと、自主点検という言葉はちょっと、まず何かわからないですね。企業が勝手に、どこの企業だって自分の会社の商品や何かは点検していますよ。その程度の点検なのかなと思ってしまいますね。これは定期的に、義務的に、相当細部にまでわたってやっている点検であるのか、そういう文言一つにしても、これはもうちょっとわかりやすく変えられませんか。大臣、ちょっとお願いします。
平沼国務大臣 そういったことも含めて、私どもは皆様方からお知恵をいただきながら決めていきたい、こう思います。
中山(義)委員 あと、説明の仕方にもう一つ、この国と比べてとか、フランスと比べてとか、フランスも原発をエネルギーの主幹に据えているわけですね。だから、そういうところと比べても日本はこれだけやっているんだと。日本は、自分が定期的に検査をして、しかも保安院の方でさらに国がチェックをして、さらに客観性のある第三者機関がチェックしているから、例えばアメリカより日本の方が進んでいるとか、フランスより日本の方がずっといいとか、こういうのは比較だからわかりやすい。その辺はどうでしょうか。
平沼国務大臣 日本は電力の三〇%でありますけれども、フランスなどは八割近い、そういう大変な原発の国でございます。そういったところの比較検討で日本がどの程度だ、どの程度まで行っている、あるいはそこよりすぐれているところがある、こういう比較検討というのは非常に大事で、過去もそういうデータをお示ししたことがあると思いますけれども、もっとわかりやすくお示しすることは大切だと思いますので、そういう点も私どもは心がけていかなければならない、このように思います。
中山(義)委員 保安院の立場から技術的に聞きますが、私たちは細かいことはわからないんですよ。だけれども、今、例えば日本の国と外国とこの点でこうなんだという、その説明の仕方というのはもっとうまくできませんか。
    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
佐々木政府参考人 いろいろ各国の規制の状況については、原子力安全条約等で、世界各国がお互いにピアレビューをし合うという会合が三年ごとに開かれておりますけれども、日本の今の原子力発電所の総合的な意味でのパフォーマンスでございますが、これは世界各国の中でも非常に高い評価を受けております。こうした世界的な傾向の中で、規制の独立性あるいは効率性といったことも、世界各国でのいろいろなレビューが行われております。
 そうした面で申しますと、多少、私どもの規制のあり方の面において、新しい科学的知見を早期に導入するというような、いわば規制の硬直性といったことがどこまできちんと、規制をいかに効果的に実施するかといった面での課題があるとか、あるいは、あくまでも規制自身が科学的、技術的根拠に基づくものであるということもこれは世界共通の理念でありますけれども、そういうピアレビューの中では、確かに、日本の規制の合理性の面でさらに努力が必要であるというようなピアレビューもございます。
 現実には、我が国の原子力発電所のパフォーマンスは世界的レベルのパフォーマンスでありますけれども、規制がうまくいっているからと私は申し上げませんが、規制自身も常にそのあり方を不断に見直していくということは必要だと感じております。
中山(義)委員 今のは、何ですか、自信を持って、日本は外国よりすぐれているというふうに言ったんですか、それとも、今までのはどうも――反省の弁じゃないですよね。そうしたいというような話じゃない。今、事故が起きたんですから、起きた現実があって、今の発言は、外国よりすぐれているという意味なんですか、それとも、そうしたいという意味なんですか。
佐々木政府参考人 規制が世界でとにかくすぐれているとは申し上げにくいわけでございます。規制をより合理的に、世界の標準に合わせていくということをもっとやらなければいけないと思っておりますから、ここは反省を含めて申し上げたつもりです。
中山(義)委員 反省を求めているんじゃなくて、僕は、どうですかと聞いたんだけれども、やっぱりさっきの発言というのは反省も含めて言ったんだよね、そう思います。
 だから僕は、維持基準をなぜつくらなかったのかという論議を先ほどからしていますよね。ということは、維持基準をつくらなかったということは、電力会社もいろいろな隠ぺい工作だとか、報告しなかったこともあるけれども、やはり基本的には、規制をする、保安がしっかりしていなかった、安全がしっかりしていなかった、安全を考える、規制をする側がしっかりしていなかったわけですよね。
 だから、電力会社が今十五基原発をとめた、これは懲罰的な意味で、地方自治体だって監視して動かせない。この問題と、確かに彼らは罰を受けました。しかし、根本的な問題は、原子力というものを日本のエネルギーの根幹に据えようとしているのであれば、そういう戦略的な意図があるのであれば、やはり保安院の方が本当は一番大きな責任があるんだと思いますよ。そういう認識をお持ちですか。
 それと同時に、では今度維持基準を設けたというのは、今までやってきたことが間違っていたから今度新しいこういうものをつくったんだ、こういうことですね。そうですね。
佐々木政府参考人 余り率直にお答えすると、正直に申し上げると問題かもしれませんが、今までやってきたのは間違いじゃなくて、不明確な部分をきちんと直すべきところは直していく、この姿勢で取り組んでいきたいと申し上げたいと思います。
中山(義)委員 いや、だから私たちも、今までの反省は反省として、今度は、本当にこの次は大丈夫だというメッセージを国民に送らないと、あの十五基の原発はとまったままなんですよ。要するに、あれは懲罰じゃないんでしょう。それとも、あれは危ないんですか。どうしてとまっているんですか。これはちょっともう一度確認します。
西川副大臣 危ないからとめたのではありません。事実を隠ぺいしていたと、その申告があって、それに対する調査が二年もかかったということは反省しております。しかし、危ないからとめたのではありません。
 地元の自治体等からやはり御不安は当然あります、立地県の方々から。したがって、自主的に、反省も込めて、反省というのは事業者ですね、事業者が反省を込めて、とめて点検をする。それに合わせて、私どもの方も検査の体制に不備があったことは率直に認めておわびをしてまいったわけでありますから、したがって、危ないからとめたというのではございません。
中山(義)委員 もともと、保安院がそれをぱっと見つける能力がある、それから安全委員会がそれを見つける能力があるということであれば、本当は問題なかったわけですよ。
 ところが、申告制度によって、今度そういう法律をつくる形になりましたが、本来は、二つすばらしいそういうものをつくるんだと先ほど自信を見せたわけですから、申告制度で申告されるということは恥ずかしいことですよ。だから、内部告発によってわかったのでは、本来は、保安院も安全委員会も何か罰則を逆に受けるべきだと思う。何か内部申告されたら、やはりこれはペナルティーを受けなければおかしいと思う。だったら、いや、もう自分たちは適当にやっても、内部告発というものがあるんだからということになると大変なので、やはりどんな制度をつくっても、発見する能力があるのかないのか。
 我々でも、炉心シュラウドがどうのこうのと言われてもわからないわけですね。先ほど高市副大臣が言ったそういう技術的な難しい話は、もうすべて三百人の方が全部わかっているとか、アメリカは三千人ぐらいいるという話なんですからね。そういう技術が、それから知識が、そういうものはどこでだれが精査をして、その人たちが優秀な人間だとだれが認めるんですか。だれが審査して、例えば第三者機関の人たちは絶対間違わない人ということを、だれが認めるんですか。
 そういうことを認める機関があれば、はっきりこの人は大丈夫だということがあれば国民も安心するわけなんですが、その基準、維持基準の前に、維持基準を維持する人たちの基準をちょっと教えてください。
佐々木政府参考人 今の先生の御指摘は非常に私どもも重要なポイントであり、私どもの職員、特に検査官の資質、本質的に物を見抜く能力、これからの検査が、いわば品質保証がきちんとできているかというような活動をきちんと審査をしていくということになりますと、従前のように、分解や点検をして、その場に立ち会って物を実際に見る、そうした検査のやり方から、人、組織、マネージとか、全体像をきちっと把握できるような検査官としての資質が必要になります。
 私どももこの点については研修のカリキュラムを用意しておりますけれども、今、法的にはいろいろ検査官の資格は決まっております。新しい独立行政法人に携わる検査官も資格要件はきちんと定めたいと思います。ただ、資格だけじゃなくて、おっしゃるとおり、大切なことは、資質の向上のために、たゆまぬ総合的な知識、そして人間力を磨いていく研修という制度は非常に重要だと思っております。
中山(義)委員 私も柏崎へ行ったときに、まず中に入る前に何か一年近く研修するんですよね、あれは。相当時間もかかると思うんですよ。ですから、人員をふやすというのは、やはり、日本の原子力発電を安全に運転するためにはそれだけの人間の力が要るんだということをはっきり提示して、予算なりなんなりをちゃんとつけて、これだけやっているから大丈夫だという表現がないとまずいと思うんです。ただ法律を変えたというだけでは、私は何の意味もないと思うんですよ。
 実際、柏崎へ行ってあそこを見てみますと、本当に研修期間というのはみっちりやっているんですよ。だから、ある意味では、検査する人も東電なら東電へ行って、一緒になって勉強しなければならないわけですね。そこに当然人間関係もできるだろうし、それはいろいろな問題があると思います。しかし、やはり本質を磨かない限りは、点検しても、または発見する力がないということになってしまったら意味がないわけですね。
 研修とかそういうものも、ちょっと私どもに聞かせてください。何かだんだん不安になってきて、ある法律だけを決めればいい、例えば三条機関をつくれば済むというような問題だけじゃないような気がするんですね。その辺、率直な意見をちょっと聞かせてください。
佐々木政府参考人 全く私、今先生の御指摘に心から賛同しております。まさに、組織というよりも人と、それからその人を指揮する責任者との関係が本質的にきちんとでき上がった組織でなければ、その組織自体が信頼されないということは当然でございます。
 確かに今、行政の規制当局である私どもの保安院に対する信頼の失墜ということを十分に意識し、その責任も重大であると認識いたしておりますけれども、私どもは、新たに品質保証全体についての研修カリキュラムも既にスタートをいたしました。できるだけ短い期間に、全国に今派遣されている保安検査官も全部この研修を受けさせようと思っております。それも、第一段階、第二段階といったような、より専門的な研修も受けさせていくようにしていこうと思っております。
 それ以外に、原子炉の基本的な物理でありますとか、法令の研修でありますとか、今、多様な研修プログラムもスタートをさせておりますので、こういったものを活用して、それぞれの職員がそれぞれの能力を発揮できるような形に持っていきたいと考えております。
中山(義)委員 では、今度の法改正によって、人員的なことや何かもしっかり考えてやっていて、予算組みだとかそういうものもよく考えて、だって、人間というのは大変ですからね。千人いたらこれだけかかる。しかも、それも技術者ですから。相当技術能力は高いし、研修もさせなければいかぬし、だから、予算とかそういうものを含めてちゃんとした計画書を出していかないと、やはりそれが説明できなければまたいけないと思うんですよ。これだけの研修をさせます、これだけ予算をつけました、しっかりやっていきますということが伝わらないと意味がないんですよね。
 だから、今言ったように、文言をただ並べてやりますよと言われただけでは私は信用ができないんですが、今の意気込みを買いまして、大臣、もう一度、今の意気込みを、予算をつけてちゃんとやるんだという心構えを見せていただかないと、国民がいつまでたっても原発に対して不信を持ったのでは困るんですよ、日本の場合。その辺、ちょっと御答弁をいただきたい。
平沼国務大臣 保安院長からも、大変重要な御指摘をいただいた、こういう答弁がありました。私もそのように思っておりまして、そういうこれまでの反省の上に立って新しい体制をつくる、こういうことであれば、しっかりとしたそれに必要な経費というものは準備をしなければならない、そういう形で私も大臣としてそこのところはしっかりと担保をしていきたい、このように思います。
中山(義)委員 原発の問題については、やはり本当にこれから日本が原発をどうしていくのかということをしっかり考えなきゃいけない。要するに、経済性にすぐれているから原発をやるのか、それとも、もし石油が枯渇したら大変だから、安全保障という意味でそれをやっているのか、または、CO2を出さない、京都議定書、こういうもののために、世界という全体を考えて、地球のためにやっているとか、そういう理念を幾つかもう一回まとめていただいて、原発に対する考え方をしっかり国が示していただかないと。
 プルサーマル計画のときもそうでした。あのときも、刈羽村へ当然、あのときはもう何ていったって小泉というぐらい人気があったんですから、小泉さんが行って、実際プルサーマル計画でも、あそこの住民を説得するぐらいのことをしないと。大変な問題だと思いますよ、エネルギーというのは。
 今いろいろ道路公団の問題なんかやっていますけれども、もっと大切なのは経済ですからね。経済が行き詰まったら日本の国はおかしくなりますよ、これは。人品が大体卑しくなりますからね、経済が悪くなると。お金がないと人間というのは、何か心配があって、不安があって、何かおかしなことをしちゃうんですよ。だから、そういうことがないように、やはり経済というものを支えているのは電力であるという認識があるならば、原発がどういうものであるか、もう一度しっかりした認識を持ってやってもらいたいんです。だから、CO2を出さない、これだけじゃないですよね。
 今もう一つ大きな問題は、自由化という問題があります。この自由化の中で原発が生き残れるのかどうか。今回も火力発電を稼働させました。それで大体東京電力の利益が一二%ぐらい減ったと言われているんです。まさかこういうようなことで国民にしわ寄せが来たら、ではどうなるんでしょうか。この辺は国はどういうふうに監視をしているか、その辺も聞かせてください。
西川副大臣 先般発表されました中間決算時の年度予想によりますと、東京電力の経常利益及び当期利益は当初の予想をそれぞれ三割弱下回る水準に下方修正しているものの、配当等の利益処分の額は十分に賄える利益水準にある、料金改定を必要とするほどの企業経営への影響は出ていないものと承知をいたしております。
 また、中部電力につきましては、費用の増加を効率化等の経営努力により吸収する見込みでございまして、経常利益及び当期利益の当初の予想を修正しておりません。東電と同様、配当等の利益処分の額は十分確保しているということから、料金改定の必要を要しない、こういうことでございます。
 なお、東京電力と中部電力の火力発電所のたき増し等による影響、いわゆる費用の増加でございますが、それは、東京電力が千四百億円、中部電力が三百億円と承知をいたしております。
中山(義)委員 やはり、何か自分たちのミスが自分の会社にごく降りかかってくる、これは当たり前のことなんです。ただ、公共料金というところに我々は目を置かなきゃいけないのですね。ですから、今回起きたことは企業のミスだけじゃないんです。公共という意味ではやはり国が関与しているわけですから、その維持基準を今までつくらなかった国に責任があることは僕は間違いないと思うんですね。そういう面でのやはり反省は求めたい、こう思うんですが、同時に、エネルギーの中で、もう一度電力の自由化についてもっと深い議論をしてもらいたいんですね。
 電力、安けりゃいいというなら、石炭にしますよ、みんな。だって、現実に、原発がだめだったら火力発電を稼働すれば、やっているわけでしょう。だったら、原発でぎゃあぎゃあ言われて、もし経済性が悪いのであれば、火力発電の方がいいということになりますよね、理論からいえば。そうですよね。今のこういう経済状況でいったらば、電力は安い方がいい、こういう理屈があったとすれば、これは維持できませんよ、原発なんて。
 電源三法にしても何にしても、私が見ても、ああいう公共的なお金、税金を投入しているわけですから、それも含めたらば意外に原発は高いんだ、こういうことにでもなってくると、どうしてこれをやらなきゃいけないのかという問題になってきますよ。ただ、京都議定書や何かのことがあれば、CO2を出さないということなんですが。
 この三つの問題をどういうふうに考えてやっていくのか、もう一回しっかり国で論議する必要があると思うんですが、大臣、これはどうですか。
平沼国務大臣 既にエネルギーの中長期的なそういう基本方針については出しているところでございまして、その中で御指摘の原子力の必要性というものも、今数々御指摘がございましたが、そういった角度から取り上げて、その中にうたっているところであります。
 しかし、御指摘のように、今、こういう状況の中で皆様方も不安に思っておられる、こういう前提でありましたら、今までのそういう一つの基本計画、これをしっかりと国民の皆様方に御理解いただけるような努力はこれからさらに続けていかなければいけない、こういうふうに思います。
中山(義)委員 こういう議論になったのは、もう鈴木議員が維持基準については大分細かく質問してくれまして、大事なところは、項目からすると四項目か五項目、質問をしても、結局ほとんど答弁は大体こういう答えが返ってくる。
 だから、やはりこの論議は、大事なところは、原発をこれから日本が重要な電力の基幹として、基幹的なものにするのであれば、やはり相当な配慮と意気込みがないと、電力がだんだん自由化されて、安い方に行こうとかそういう意識が働いてきちゃうことはもう間違いありません。間違いありませんよ、今度だって火力発電で十分充当しているわけですから。だとすると、自治体でがたがたがたがた言われるんだったら、もう火力発電にしちゃうと。
 ところが、それはどうですか、国が約束したことが守れなくなるわけですね、そうなってくると。CO2はどんどん出る。京都議定書の約束は、国家間の約束であるのに守れなくなってくる。だとすれば、もっと原発に対して、先ほどお話ししたように、ちゃんとした説明ができる人を雇って、ちゃんと国民に説明する。
 それから、何か東電さんがこうやって頭を下げて、ただ後ろ向きに何か言いわけみたいな説明をしても、国民はわからない。やっぱりわかりやすい説明をする人を別に設けて、なぜこういうことが起きた、これはこうやったら防げます、今とまっている十五基も、危ないからとまっているんじゃないんだ、あくまでも自主的に点検をさらに進めて、安全に、国民のためにやるためにとまっているんだとか、そういう説明ができなきゃおかしいんですよ、堂々と。
 ところが、何だか下向きに、言いわけがましいああいう顔を見ていると、あっ、危ないんじゃないかと思っちゃうんです、国民が。そこに問題があるということを何回も指摘しているんですよ。動燃のときもそうでした。サイクル機構も、私も社長にもそういうお話をした。
 それから、やはりこれからの原発というものは、何が危ないのか、危ないことはこうやったら危なくなくなるということをちゃんと説明できなきゃいけないんですね。そういうことを私はもう再三、何回も指摘しているつもりなんですが、どうも答えが返ってこないのです。こういうものもはっきりと、このくらい予算をつけてやりますと、こういうことを表明していただかないと、私たちもいつまでたっても同じ論議を繰り返している。原発は危ないものだ、迷惑施設だ、だから国もお金を出しているんだ、こうなっちゃったのではおかしいわけですよ。
 日本のエネルギーにとって原発がいかに大事かということをちゃんと説明できる人がいなきゃだめだ、私はこう思うんですけれども、大臣、再度ちょっと答弁をお願いします。
平沼国務大臣 それは、私もそのとおりだと思っております。
 私どもといたしましても、いろいろな手段を通じて国民の皆様方に御理解をいただくように訴えてきました。それからまた、いわゆる原子力を発電する立地地域の首長さん、そしてまたそれを最大に消費する例えば東京都の石原都知事、こういった方々をお招きして、私も入って、幅広く国民から皆様方にそこに集まっていただいて、そういう討論会もさせていただきました。
 そういったことも、私はまず第一回はやりましたけれども、それを例えば、原子力の立地地域、消費地域、そういったところを交互にやって、そして皆さん方に参加していただいて、賛成派も反対派の方々にも入っていただいて、そして一生懸命努力をすることによって理解していただく。そういったことの予算確保も含めて既にやらせていただいておりますけれども、私どももこれからも努力をしていかなければいけない、こういうふうに思います。
中山(義)委員 ちょっと最後に。
 私ら、修正を本当は求めているんです。これは、やはりわかりやすいという意味では、定期的な検査、自主検査なんという、そういう彼らの自主的なことでやるんじゃなくて、むしろ義務的なものとして位置づける。
 それからもう一つは、やはり保安院の人の、要するにいわゆる推進側も、国も、大臣が今表明されたように、国はどうしても原発が必要だと言うのであれば、それなりの熱意のある、安全性を求めながらこうやって推進している。しかも、これからも原発をやるのかやらないのか、ちょっとわかりませんよ。なかなか今、新しい立地を設けて原発を建設するのはすごく難しい。だけれども、今あるものは絶対に安全性を保つ、少なくともここまでははっきり国民に示すことが大事です。
 それから、さらに、第三者機関でこういうチェックがあるんだ、だから、できればここは三条委員会にして、いわゆる経済産業省の中にあるんじゃなくて、こういうふうにダブルじゃなくてトリプルで検査をしているんだ、だから安全なんですよということを言えるようにすれば、さらに原発は、国民の側にも受け入れられなきゃならないし、その経済効率であるとか、または、どうしても自主的に、原発というのが日本のエネルギー情勢にとって大切だという訴えが伝われば、今度の問題というのは根本から解決すると思うんですが。
 今のままやっていると、いつまでも同じことを繰り返すということで、ひとつここは、本当に原子力発電がこの国に必要で、これは世界各国に約束した国の、その国威にもかかわるわけですよ。何だあの国はと言われないためにも、国の権威にかかわることですから、ひとつその辺も含めまして、できれば国民にわかりやすい、トリプルチェックの最後の安全委員会は、我々は、修正を求めているのは三条委員会ですよ、そういう形で本当にやってもらいたい。それから、それをしっかり説明する人をちゃんと雇ってもらって、予算をつけてやってもらいたい。
 それから、幾ら法律をつくっても、発見できるその人の能力というものをしっかり磨いていただきたい、こういうことを要望しまして、私は質問を終わりますと言いたいんですが、大臣、激励しますから、本当にやってくださいね。総理になってもこれだけは考えてやってください。お願いします。
 以上です。
谷畑委員長代理 山村健君。
山村委員 どうも、長時間にわたるこの原子力の問題、この委員会で質問の機会をいただきましたことをまず光栄と言わせていただいた方がいいと思うんですけれども、質問に先立ちまして、私は、個人的にも本当に敬愛しておりました高円宮殿下が、きのうの夜、逝去あそばされたということは、非常に悲しく思いました。ちょうど、きょうの質問のために勉強中といいますか読み込んでいる最中の報道でございまして、非常に悲しくて、その分、質問の中身が薄くなってしまったのかなということを初めから弁明させていただきますが。
 今回の問題につきましていいますと、大臣にまずお伺いしたいのが、原因の第一因というのは何であるかということをまず問いかけしたいんです。いかがですか。
平沼国務大臣 今回の東京電力の事案というのは、御承知のように、自主点検部分のデータの捏造、改ざん、虚偽報告、こういうことでございます。
 今までの御審議の中で数々出ておりましたけれども、これは、事業者が、ある意味では安易な形でそういう自主検査を行い、そしてこれも、そもそもわかったのは、時間がかかりましたけれども、いわゆる申告があったという形で起こりました。
 そういう意味では、そういう安易な体制、そして安易な考え方、そして、日常マンネリ化したそういう状況の中から生み出されてきた、こういうことを思っておりまして、私どもとしては、やはりそこのところをしっかりとしないと、国民の皆様方の信頼と原子力の安全性が担保できない、こういうことで、ここのところはしっかりと正していかなければならない、こういうふうに思っております。
山村委員 まさにおっしゃるとおりで、今回この法案がこの国会に提出されたというのは、そのような東電の問題があったからということになると思うんですけれども、私が思いますところ、先ほどの高円宮殿下じゃないんですけれども、なぜ私が尊敬しているかといいますと、皇族の中でも、皆さんそうなんですけれども、非常に国際感覚にあふれていらっしゃる方で、その中で、海外に対して、日本人とはと、日本人を象徴するようなお方であったというふうに尊敬しているんです。
 今回の東電の問題だけではございません。昨今、各企業からいろいろな事件が表にあらわれてきているんですけれども、本当に日本人ってどうなってしまったのかなと。先ほど中山議員の質問にもありましたけれども、海外に対して、日本はこれだけすばらしいんだと自信を持って言えるのかと問われたときに、本当に恥ずかしい話、日本人のアイデンティティーといいますか、もともとあった精神性のすばらしさというものがなくなってしまったなというふうに思うんです。
 そんなときに、あえてまた政府が、国がこういう基準を決めて、守らせなければならないというような方向に来てしまっている現状というのは非常に悲しく思うんですけれども、規制緩和と今回の規制、国からの規制というもの、この両論、今並行して世上発しておると思うんですが、規制緩和に対して、大臣の考え方、いわゆる企業がしなければならないものは企業にゆだねる、マーケットにゆだねる、いろいろな方法があると思うんですけれども、それと今回の規制ということに対していかがお考えなんでしょうか。
平沼国務大臣 今回の事案に関しましては、やはり一つは、米国等では三十年前からございました、安全性の水準を下げないという形での維持基準、こういうものを設定していなかったために、自主検査のその面で非常にマンネリ化をして、そしてそういう隠ぺい体質が起こった、こういうことであります。
 したがって、そういう形で維持基準を設けるということが規制緩和という、私どもはそういう形でとらえていなくて、これはやはり安全性という水準を下げないで、やはり人間のやることでありますから、いろいろ材料も劣化をするし、しかしそれは、カタストロフィーに結びつかないそういうものであっても、やはりはっきりとそういうものを公開しなければならない、そういう責任があるのにそれをしなかった、こういう観点が私は必要だと思っております。
 そういう中で、今回、規制緩和という形ではなくて、従来アメリカ等で行っていたことはやはり採用しなければならない、こういう基本的な考え方が一つあるわけであります。
 それからもう一つは、やはり電力の自由化というようなことに代表されるような考え方がございまして、これは、電力のいわば一部を自由化して、そこに競争原理が働いて、そしてその中で消費者に、電力料金の値下げ、こういうような形で一つのフェーバーがあったことは事実ですけれども、しかし、他山の石としなければならないのは、例えばカリフォルニアで起こりました電力クライシス、これは、過度に自由化を進めますとエネルギー源というものに対して破局が起こってしまって、実は大変な国民の迷惑につながる。したがいまして、過度に規制を取っ払って自由化をやるということに対しても、やはり我々は、そういう諸外国の例を見て、そこのところはしっかりと考えていかなければいかぬ、こういうふうに思っています。
 それから、一般的な規制緩和という形で、特に安全性の面では規制を緩和するということは、やはり原子力発電というのは国民の信頼とその安全性を担保しなければいけませんから、そういう意味では、私は、必要な規制というものはしっかりと維持していくという基本的な考え方がなければならない。
 だから、そういう意味では、ただ競争力をつければいい、ただ何でも自由にすればいい、こういうことではない、そういう意味では、安全に対しては、そこのところはしっかりと検討して、しっかりとしたそういう基準の中でやっていくべきだ、こういうふうに私は考えているところでございます。
山村委員 大臣の御答弁のとおり、私なりに思う点からしますと、非常に私は日本人というものにこだわるんですけれども、今日の我々の繁栄、そしてまた失われた十年というもとというのが、今回の問題もそうなんですけれども、今の日本人に一番欠落しているものは、法治国家であるにもかかわらず、法令遵守という大義名分といいますか、社会正義に対してよりも経済性を優先するであるとか、組織内の論理の方が優先するであるとか、勝手に思い違いをしているというような現状が今日のいろいろな事件にあらわれてきていると思うんです。
 今回の質問に当たって、後ほどまた結論といいますか、自分なりの結論というのは見出してはいるんですけれども、いつもいつも質問に立つときに、勉強をし始め、いろいろな書物を読んでいきますと、今回の根本的な原因というのも、いわゆる人間の質、東電の職員といいますか、その下請会社の職員のいわゆる仕事に対するプロ意識の中に、法令を遵守するという部分、一項目だけが欠けていただけの話じゃないのと。その辺が日本人が今まで持っていた思いやりであるとかいろいろな精神性のすぐれた部分だったと思うんです。
 ただ、いつまでも精神論にこだわるわけにはいかないから、今回の法律で維持基準というのは示す必要はあるとは思うんですよね。ただ、結論からいってしまいますと、我が民主党におきましても、安全というものの担保があれば原子力発電も推進するというようなスタンスに立っていると思うんですよ。
 私は地元が例の芦浜で、白紙撤回をさせていただきましたけれども、その選挙区として、そういう原発の問題を三十七年間にわたって、今は三十八年になるのかな、抱えてきた地域でもございます。そんな中で、幼いころから原子力、原子力発電所というものが是なのか非なのか、イメージ的には、原子力発電は怖いから要らないよという世論に子供のころは流されておりました。
 しかし、自分で社会に出て事業を起こして、いろいろな人の意見を聞くと、果たしてこれは必要なのか、要らないのかわからないよな、自分の態度はどのように表明したらいいのと。二〇〇〇年に初めて選挙に出させていただいた折にも、まだその時点では北川知事の方が白紙撤回という結論を出していない時期でもございまして、電力労連といいますか、我々の支持母体も含めて、推進だ、反対か、どっちかと問われたときにも、正直言って答えに窮していたということもございます。
 それだけ情報が少ないんですよ。与えられるものが電力会社からの情報だけ、これはだれが見たって一方的な情報であるでしょうと疑って見ますよね。片や、反対側の運動をしている人たちの情報、これも偏っている、だれが見たってそう思うんです。
 先ほど中山議員の質問にもありましたけれども、原子力、原子力発電というものに対しての教育といいますか、住民教育も学校教育も含めて、どういうスタンスで臨んでおられるんですか。
    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
平沼国務大臣 今御指摘の点は重要な点だと思います。
 国民の方々に原子力の必要性あるいは安全性、こういったことを認識していただく、そのためにはやはりいわゆる青少年にも理解をしていただくことが大切だ、こういうことで、実は文部科学省にもお願いをしたりしまして、原子力の安全性、必要性、そういうことについてパンフレット類をつくり、そういう形で協力をしてやらせていただきました。
 それからまた、原子力発電所には見学コースというものを設けまして、幅広く青少年、学生の皆さん方に実際に原子力発電所に来ていただいて、専門家からの説明、そして現地を見ていただく、そういう形でその安全性とその必要性、そういった努力はずっとしてきたところでございます。
 しかし、今回のような事案が起こって、私どもはさらに反省の上に立って、こういった国民の皆様に対する説明責任、そういうものはもっともっとしっかり果たしていかなければならない、そういうふうに思ってこれからは努力をしていかなければいけない、こう思っております。
山村委員 私の冒頭の質問というのは、実は、国策としての原子力発電所設置といいますか、推進していくという国策を変えるつもりはございませんかという質問をしようと思ったんですよ。それは中山議員の方から聞いていただきましたので、国策として変えることはないということを前提に質問させていただいているんですけれども、そのためには教育というのは当然必要なんです。情報公開も含めて、住民教育、青少年からの教育というのは必要なんですよ。
 ただ、その辺のコストを考えたときに、いわゆる安全を担保するということは、情報公開、いわゆる住民教育ということも含めて考えたときに、単に今新規立地が難しいという社会的な状況じゃなくて、その状況を覆していくということも含めて考えていきますと、非常にコストがかかり過ぎるんじゃないかなというふうな懸念を持っているんですけれども、その辺はいかがですか。
平沼国務大臣 大変コストはかかる、こういうことを思いますけれども、国も、今申し上げたような努力をさせていただいております。
 それから、委員もごらんになったと思いますけれども、事業者等も、例えばテレビのコマーシャル帯を使って原子力というものの必要性、あるいは安全にちゃんと管理をしているというような形で流しているわけでありまして、私どもとしては、コストは非常にかかると思いますけれども、しかし、不断にそういう努力を行って、国民の皆様方に信頼をしていただき、安全性というものはこういう形でしっかりやっているんだ、そしてこの国の、経済立国の日本にとっては原子力エネルギーというのはやはり必要なんだ、こういうことはしっかりと認識していただく。
 そういう意味では、コストはかかることかもしれませんけれども、努力をしていかなければいけませんし、国としてもかなりの予算をとらせていただいて今までもずっとやってきているわけでございまして、引き続き努力をしていかなければいかぬ、こういうふうに思っています。
山村委員 まさに、コストがかかるというような観点から、ちょうど六月に、エネルギー基本法をここの場で議論させていただいたときにもそうなんですけれども、その後に今回の事件がマスコミを通じて出てきたわけなんですけれども、その辺のことを考えたときに、一つの方法として、私が、もともと中小零細事業者といいますか、どちらかというとベンチャー系という、すき間をいかに広げていくかというような発想の人間であるからかもわかりませんけれども、本当に大きな問題として、エネルギーは必要なわけですよね。
 四十年前、その前になるんでしょうけれども、日本が石油に余りにも依存し過ぎていたらこれからの経済発展というのは望めないというときに、資源のない日本という国にとってみたら原子力というのはもう本当に、わらにすがるじゃないですけれども、原子力ほど日本にとって有益なものはないというふうな方向づけのもとに、国策ということで一直線で走ってきたとは思うんです。
 当時は、多少の危険性といいますか、当時からも情報公開だ何だ、安全性というようなことを住民に知らしめるというようなことも必要だったと思うんですけれども、当時の価値観というのは、やはりお金でもって解決できるじゃないかという考え方がまずあったと思うんですよね。十分に話し合って、住民に理解していただいて原子力発電所をつくっていきましょうよと言うよりも、電源立地特措法だ何だという形で、お金でもって、補助金出しまっせとか、そういうようなやり方で、今日の原子力政策というのは、私は、そういう意味では間違ってきたんじゃないかなというふうにも思うんです。
 であるなら、大きなコストをかけるのであれば、まだまだ、先ほどの議論にもありましたけれども、フランスが八〇%で日本が三〇%というのであれば、新エネルギーにシフトをしていくことに対して、政府からのコストといいますか、予算をもっともっと多大にふやしていくというような発想はないんでしょうか。この場で大臣にお伺いしたいんですが。
平沼国務大臣 日本の場合には、戦後、全く荒廃の中から、いわゆる経済立国、産業立国として立ち上がってきました。それは、エネルギーというのが非常に大切でございまして、石炭から、先ほど御指摘のように石油に置換をいたしました。そして、その石油の依存率というのが一時期は一次エネルギーの七割を超える、こういう状況になりました。
 そうなりますと、やはりエネルギー安全保障上、一つのものに頼るというのはある意味では非常に危険である、このエネルギー安全保障の見地からいろいろなエネルギーを模索した中で、その柱の一つにしようというのが原子力、こういう形で推進をしてきたことは事実です。したがいまして、今、一次エネルギーの中で、かつては七割を超えていた石油というのが五二%に下がり、そして原子力エネルギーが一一、二%、こういう形でその分を補完してきている、こういうことであります。
 そして、さらに今後の問題として、今御指摘の新しいエネルギー、こういったことにも相当、予算倍増というような形で努力はしてきております。
 これはもうよく先生御承知だと思いますが、新エネルギーの太陽光発電でございますとか、風力発電でありますとか、バイオマスですとか、あるいは雪氷エネルギーでございますとか、さらにはこれから期待される燃料電池、こういったものは、今、全部合わせても一次エネルギーの約一%でございます。しかし、これを伸ばしていかなければいかぬということで予算づけをして、今努力をしていまして、これは二〇一〇年にはこの一%を三%に高めよう、こういう基本的な考え方はあるのですけれども、私は、それはもっと、五%、六%に、やはりそのぐらいの形で努力をしていかなければいけない、今そういうハッパを省内でかけています。
 ですから、やはりエネルギーを分散しながら安定供給を図り、しかも、新エネルギーというのは原子力と同じように、その発電時に二酸化炭素を排出しませんから、非常に地球に優しい、そういうエネルギーです。もちろん、まだその規模も小さいですから、新エネルギーというのはコストの面でも非常にまだ高い、そういうところもあります。しかし、技術革新を起こすことによってそういうことも必ず解決できると私は思います。
 また、石油も、今度新しいエネルギー方針の中で、天然ガスの比重を高めていこう。今、石油というのは、これも釈迦に説法で恐縮ですけれども、一次エネルギーで五二%を占めていますけれども、その石油の八八%を中東というところ一カ所に依存しています。しかし、やはりエネルギー安全保障を考えたときに、天然ガスなんというのは、最近サハリンにサハリン1、2というようなものができて、そこは、パイプラインを引いたり船で運んでくれば非常に安定的な、しかも分散型のそういうエネルギーを確保できる。こういったところも我々は力を入れていかなければいけない。
 ですから、御指摘のとおり、そういう新しいエネルギーに関しても我々はしっかりと努力をしていきたい、こういう形で予算措置もこれから積極的にやっていきたい、このように思っているところであります。
山村委員 本当に、三%、五%、六%、それこそ世界に先駆けて、その自然エネルギーに、日本のエネルギー政策はすばらしいねというようなお褒めの言葉をいただけるように、これから変えていただきたい。
 その中で、非常に我田引水的な要素もあるんですけれども、せっかくの機会ですので、持論といいますか、先ほど申し上げましたとおり、私の選挙区には芦浜という問題がございました。三十数年にわたって、電力会社が用地を買収し、地元住民にとっては、賛成派、反対派それぞれが、本当に二代、三代にわたって、その親戚縁者の人間関係もおかしくなるような状況を繰り返してまいったわけなんですよ。それが白紙撤回という形で、先ごろ電源立地の指定も解除されました。
 でも、その地域にとっては今まで夢のような、原発さえ来たら経済的に発展していくんだ、道もつくんだ、トンネルもできるんだというような夢を描いていた、町おこしといいますか、町の経営という、そういうグループもあるわけなんですよね。いまだに、小さなグループと言ったらおかしいんですが、一市町村がそういうような夢を描いております。その夢が一つあるだけで、これは総務省のマターなんでしょうけれども、今回、合併という問題に対して仲間外れにされてしまうとか、そういう現象もあるわけなんですよ。現実的に、不動産として電力会社が取得した広大な土地もございます。電力会社にしたって、では、今のこの経済状況の中でそこを処分するというのも、二束三文どころの話じゃないですよね。
 大臣に対して、新しいエネルギーということで、今サハリンの天然ガスにも目を向けていただいているというときに、日本の大陸棚の太平洋側にハイドロメタンという本当に豊かな資源が眠っているんです。それに対してインセンティブをつけるといいますか、要するに、電力事業者が今ハイドロメタンの開発だ何だとそちらにお金をかけるに際しても、今日の経済状況からしたら非常に難しいと思うんですよ。それに対してインセンティブをつけるというような考え方で、予算をぜひ、研究費、調査費というような形で電力会社を通じて、国がそれを先に開発するんじゃなく、いわゆる民間と共同作業として、土地も人も生かしていくというような方策がとれないかどうか、これから先の話ですけれども、その辺の御答弁をいただきたいんですが。
平沼国務大臣 メタンハイドレートというのは、将来的には大変有望なエネルギー源だと思っています。これは主に海底にありまして、それをうまくどういうふうな形で地上に持ってくるか、こういうことが非常に大きな問題点だったのですが、カナダにおきまして、日本もそこに参画をして、非常に深いところから、固形状じゃなくていわゆるガス状で採掘するということに成功いたしました。
 したがいまして、これは非常に大きな前進だったと思っておりまして、国といたしましても、今調査費をつけまして、さらにこの件は我々は推進をしていかなければいけない、将来のエネルギー源としては非常に有望だ、こういう形です。
 そして、御指摘のとおり、日本の周辺の大陸棚のところにはほとんど無尽蔵で、いろいろな説がありますけれども、二百年分ぐらいのものがある、こういうふうに言われております。
 そういうことで、相当時間のかかる今後の問題です。ようやく取り出すことに実験として成功しました。さらにそれを推し進めていって、事業者と協力をしてそういうことを進めていくということは将来的には可能である、そういうふうに私は思っておりまして、今はまさに実験の段階である、そのための予算というものはつけている、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
山村委員 エネルギー論争といいますか、そういう項目に関して一般論で本当に申しわけないんですけれども、今回の法案について小さなことといいますか、これから詰めていかなければならないこともあります、まだまだ来週にも時間はいただけるそうなんですが。
 今回の法案の中で非常に気になるところ、その点を一点だけ、私なりにちょっとお伺いしたい部分があるんですが、これはいろいろな議員の皆さんも質問があったと思うんですが、一般論としたら、推進する機関といわゆる規制する機関が同じ組織である、それに対してはいかがなものかという疑念はやはりどうしても持つわけなんですよ。
 それに対して、先ほども三条委員会というのが我が党の修正案というようなことで中山議員の方からの発言にもございましたけれども、私なりに思うのは、アメリカのような形といいますか、第三者機関として、本来ですと政府にそういう機関をつくってくださいと、いわゆる保安委員会であったり原子力安全委員会であったり。
 その中で基準を決めるより、本来、これは大臣に申し上げることじゃなく委員長に申し上げることなのかなと思うんですが、調査機関であったりそういったものを、我々も国政調査権という権利も有しているそうなんですが、国会として、そういう組織立って、これは原子力だけじゃないんですけれども、いざというときに国会の国権でもって調査するような機関といいますか、そういうようなことは考えていらっしゃらないかなということをお伺いしたいんですが、いかがですか。
平沼国務大臣 これに関しましては、今般の法律案では、原子力発電所や核燃料サイクル施設などに対する報告の徴収あるいは立入検査の実効性を確保する観点から、虚偽の報告、立入検査の妨害等に対しての罰則を強化するものになっています。
 また、今般の不正事案の解明に当たりまして、保守点検事業者から提出されたデータなどが有益であったことから、原子力発電所などの保守点検を行った事業者に対しても、法律に基づく報告徴収命令の発動をできる規定を新たに設けることにしております。この報告命令に関しても、虚偽報告等には罰則の対象としているところでございます。
 このような意味におきましても、現在でも罰則を後ろ盾とした各種の調査等を行うことは可能でございまして、今後は、今回の法改正によりましてより強化される報告徴収命令や立入検査を機動的に発動して的確な調査を行っていく、こういうことでございます。
 国会に国政調査権がある、こういうふうに言われました。今御指摘の、三条委員会というお話もありました。これに関して、世界各国を見ますと、アメリカ型ですとかあるいはヨーロッパでやっている形、日本のような形態、こういうのがあるわけですが、日本の場合には、中央省庁再編のときにいろいろな議論がありました。
 その中で、先ほど来の御議論にあるとおり、日本は天然エネルギー資源がありませんから、やはり原子力の推進をしていかなければいけない。そのためには立地促進をする。その立地促進をする行政官庁に原子力の安全だとか知識というものがなくて、やたらに推進するということはやはりおかしい。だから経済産業大臣のもとに一次規制のそういう機能を持たせて、さらにそれを担保するために、内閣府に御承知のように原子力安全委員会というものがあって、そこでダブルチェックをする、こういう体制をとらせていただいているわけです。ただ、今そういう御指摘も地方自治体の長からもいただいています。しかし、今回の法律では、そういった面のダブルチェック体制の強化ということをしっかりとさせていただきました。
 そして、今後とも、私どもとしては、今の原子力安全委員会の機能強化でございますとか、保安院のあり方でございますとか、あるいはそういったいろいろな、今のダブルチェック体制のあり方等々について、やはり総合的にこれから検討していかなければいけない、私はこういうふうに思っております。
 そういうことをしっかりとやってまいりますと、国会は、こういう委員会を通じていろいろ御指摘をしていただくというそのことの機能で、国政調査権を発動するということではなくて、国会は国会でやはりチェックをしていただく、こういう委員会等を通じてチェックをしていただく。そして、今のダブルチェック体制をどういうふうに強化していくか、こういうことを総合的に私どもは検討していきたい。
 冒頭申し上げたようなそういう体制は今とっておる、こういうことで御理解をいただければと、こういうふうに思っております。
山村委員 先ほど来の一般論のエネルギー論争でちょっと横道にそれてしまったということもあるんですけれども、今回の法案、これから先を見据えての法案なんですけれども、キーワードというのは、住民に対していかに安全、安心というものを担保できるかということだと思うんですよね。
 今、制度上は確かにダブルチェック制度、省庁としては、大臣としてはそのように考えている、政府としてはそのように考えている、それはそれで結構なんですよ。でも、我々、議員というよりも生活者の立場から見たときに、隣の原子力発電所、ちょっとおかしいぞ、こんなうわさを町で聞いてきたぞと、地方議員であったりとか、一市民であったにしてもすぐにでも見に行ける、子供がちょこちょこっと原子力発電所の中へ、ちょっと見学させてください、学校のいわゆるゆとり教育の時間内に見せてくださいというときでも、本当に簡単にわかるような施設であってもらいたいし、それがまず、安心、安全というものに対して一番の早道だと思うんです。
 我々にとりましても、原子力に関して、科学技術に対しての専門家じゃございません。でも、生活者の立場、有権者の立場といいますか、多くの住民の立場に立ったときには同じような目線で、じゃ、もっとわかりやすく説明してくださいよとか。今どれだけ必要な人材等々はあるとは思うんですけれども、もっともっとわかりやすく、まあ、それを我々自身に、選挙に置きかえてみましても、選挙のときには、いかに住民にわかりやすく説明するかということに労力を要するわけなんですよ。
 この委員会の議論等々を聞いていますと、非常に難しい横文字であったりとか、さも専門家になってしまったかなと勘違いするような議論ばかりどんどんどんどん進捗してしまいまして、肝心の住民サイドが、今回の事故、事故といいますか事件におきましても、そこに住んでいる人たちは、この間、福島県の町長、新潟の知事であるとか、それぞれ首長に参考人として出席いただきましたけれども、やはり住民の立場に立って政治家というのはまず考えなければいけないと思うんです。
 もっともっとわかりやすいシステムといいますか、しかも簡単にいつでもどこでも見に行ける、それには、じゃ、議員の判こが必要ですよ、議員の推薦があればいつでもそれに対してはお答えしますよというようなシステムというのも織り込んでいただきたいなというふうに思うんです。
 次の質問に行きたいと思うんですが、原子力安全基盤機構についてお伺いしたいんですけれども、これも多くの議員の皆さんが質問させていただいているんですが、条文にも書いてございます。役員、職員に対してなんですけれども、これは経産省の方からの天下り人事といいますか、出向というのはあり得る組織なんですか。
佐々木政府参考人 原子力安全基盤機構の人員構成につきましては、法案成立後に検討していくことになりますが、役員、職員は、その職務に求められる資質を備えた適切な人材を充てることが重要であると考えております。
 この機構の業務は原子力安全行政に関するものでありまして、こうした行政経験を有する現役の公務員、あるいは退職者の中に適任者がいれば、出向や再就職によりその任に当たってもらうことは十分あり得ることと考えております。
 しかしながら、国民の皆様から厳しい批判があることを常に念頭に置きまして、節度を持って当たることが重要であることは当然であると考えております。すなわち、職務の内容に応じて必要な専門知識を備えた適切な人材を確保する、こういう観点から、今後、適材適所の考え方で人材確保と人材配置のあり方を検討してまいりたいと考えております。
山村委員 その人材の中に、一つこれはお願いしたいのが、確かに、原子力の安全基盤機構というような、本当に専門職として、先ほど来いろいろ言われておりますけれども、学習しながら、いろいろな情報を取り寄せながら、科学的な知識というものを持っていないと務まらないというのは、難しいというのはわかるんですけれども、その中にぜひ入れてほしい人材としては、広報官といいますか、いわゆるいかに上手に説明できるか、説明責任を果たせるかというプロフェッショナルな人材というものもぜひ加えていただきたいということを一つの要望として申し上げさせていただきたいんです。
 それと、いろいろ世上批判のございます天下りというような言葉に象徴されるわけなんですけれども、専門知識を持った人が別の組織に異動する、それは決して悪いことじゃないんですよ。世間が批判しているというのは、経済産業省を退職したときに退職金を何千万もらいます、二、三年出向した先、天下った先で二、三年勤め上げたらまた何千万という退職金をもらえます、そういうシステムに対して批判があるわけでございまして、五十数歳、五十二歳なのか五十五歳なのかわかりませんけれども、それなりの専門知識を有して本庁から外れてそちらの基盤機構の方へ天下りという立場で移られましたと、でも、生涯を通じてその人は、原子力のプロフェッショナルというような形で日本の原子力行政を推進していく一翼を担っている本当に有用な人材であれば、失礼な言い方ですけれども、公務員給与よりも高い給与でもいいと思うんですよ。それにつきましても堂々と説明責任さえ果たせば私はいいと思うんです。
 そういうことを踏まえましてこれからの人選、そしてシステムということをぜひともお考えいただきたいな。だから、キーワードとしては、安全というものの担保というのは情報公開なんですよね、いずれにおきましても。
 その中で、今回の法案の中にありますが、これもごくごく一般的なことなのかもわかりません、公務員の世界におきましては。業務上知り得た内容、いわゆる守秘義務というのがあるわけなんですけれども、秘密の保持義務に関して質問をさせていただきたい。
 今回の事件の発端というのも内部告発からなんですよね。BSEの問題にしろ何にしろ、昨今の本当に日本社会をおかしくしているのは、冒頭からも言わせていただいていますように、日本人がおかしくなってしまっているのも、遵法精神というものの欠如もあるんですが、内部告発という手段に対して今回の法案、何らかの救済措置といいますか、考えていらっしゃるのかどうかお聞かせいただきたいんですが。
西川副大臣 本機構は、非公務員型独立行政法人ではございますけれども、国の検査事務を行うことなどから、その役職員には、今回の法案では国家公務員と同じく守秘義務を課すことになっております。
 国家公務員法上の守秘義務、秘密保持義務というものと告発との関係につきましては、ちょっと専門的になりますが、昭和二十八年に人事院管理局法制課長名で出された解釈に依拠しておりまして、告発の内容に職務上の秘密に属する事項が含まれている場合においては、その部分が国家公務員法第百条違反、すなわち秘密保持義務違反となることもあるとされておりまして、同時に、職務上の秘密に属する事項であるかどうかは、具体的事案について判断されるほかはないともされており、本機構につきましてもかかる解釈が同様に適用されるものと私どもは考えております。
 しかし、一方、同機構を監督する立場にある我が省に報告がございますれば、当省職員は守秘義務を果たしながらも事実の解明や事態の改善に向けて対処をしていくことが必要であることは当然でございまして、こうした場合に、経済産業省に報告をいたしました本機構の役職員が守秘義務違反に問われては意味がございませんので、それは問われないようにしたい、こういうふうに思っております。
山村委員 いろいろな報道によりますと、内閣府の方で、来年の通常国会等々で公益通報者保護制度というような立法措置というのを考えてみえるようなんですけれども、それに先駆けまして、まさに国民の安全と、いわゆる原子力というのはイコール安全、安心というキーワードはついて回るわけなんで、今回の条文の中には、秘密保持というものは必要なんですけれども、制度として、二度と同じ過ちを繰り返さないように、いわゆる内部告発というと日本では余りイメージ的によろしくはないわけなんですけれども、公益を保護するためにいわゆる内部告発をする人間というものに対しての制度というのもぜひお考えいただきたいというふうに思うんです。
 時間も参りましたので最後に、今回の事件も含めてですけれども、休止している原子力発電所というのが十五あるわけですか。それらの地域に対しまして、本来ですと稼働して何ぼの世界、いわゆる経済波及効果というものはあったと思うんですけれども、現状、休止している状態の中で、何らかの救済措置ということをやってみえるのかどうか。やっているのであればそれで結構なんですが、ないのであれば何らかの措置を考えてみえるのかどうかだけ最後にお聞かせいただきたいんですが。
高市副大臣 いわゆる立地地域に対する支援と呼ばれるものは、電源三法交付金、これがございます。この交付金制度は、新規立地のときだけじゃなくて、発電所が運転を開始してからそれ以降の段階も支援を続けております。
 具体的には、電源地域産業育成支援補助金というものもございますし、特に原子力発電所の立地地域については電源立地特別交付金というものを道府県、市町村に対して交付しているところで、この交付期間というのは、発電施設などの着工から運転を終了するまで継続的に交付ということでございますので、休止中の発電所を抱える地域においても続けられております。具体的には、新潟県、静岡県、福島県、宮城県、今年度の交付予定でございます。
山村委員 どうもありがとうございます。
 では、質問を終わります。
村田委員長 山田敏雅君。
山田(敏)委員 山田敏雅でございます。
 質問に先立ちまして、緊急の、喫緊の課題が、年末を控えて中小企業のことがございますので、二点だけちょっと確認をさせていただきたいと思います。
 中小企業の事業主が銀行から融資を受けるときに無理やりに個人保証を全部つけさせられるわけですね。この問題が今、前回にも確認いたしましたけれども、どうも破産法の改正が私どもが意図する、中小企業が倒産したときに事業主が身ぐるみはがれて次の日から御家族の方々ともども生きていくことができないという問題を解決する方向に向かっていないのではないかと思いまして、ちょっと一点だけ確認させていただきます。
 今の議論、破産法の改正というのは、個人でお金を借りてそれに対して個人保証したケースと、中小企業者のように事業に対して個人保証した場合、こういうケースがあるんですが、それを法体系として一つのものとしてやりますので、どうしても債権者を保護するという観点が強くなります。したがって、破産したときに自由財産を残すのが、現在の二十一万円から、三カ月程度ということで、それで計算しますと六十二万円、こういうことに落ちつくということです。これでは中小企業の方が、優秀な方がもう一回再起をするという、いつも大臣がおっしゃっている趣旨からして、何の意味もない改正になってしまいます。
 アメリカでは約四百万円を自由財産で残そうということが法律で決まっているわけですけれども、この問題は、そもそも銀行が、大企業の経営者にとっては個人保証というのは一切ないわけですよね、中小企業に対して個人保証を要求する。こういう優越的な地位を利用して取引をするというのは公序良俗に反することですので、ドイツなんかでは禁止されているんですね。
 ですから、個人保証の問題は、今後の方向として、政府系金融機関を初めとして個人保証をやめる方向で融資を持っていくべきだと私どもは考えておりますけれども、この点について御答弁いただけますでしょうか。
杉山政府参考人 ただいまの件、一昨日も本委員会で大臣がお答えをなされているわけでございますが、先生御承知のとおり、現在、法制審議会の倒産法部会で、自由財産の範囲の見直しを含めまして破産法全体の見直しが行われているということでございます。これには、実際に事業をなさっておられます中小企業の団体の方、中小企業の経営者の方、それから私どもの担当課長が関係官という格好で参加をいたしております。
 私どもの方からは、自由財産の見直しに当たりまして、自由財産の範囲につきまして、再チャレンジを可能にするというような観点を踏まえまして、大幅に金額を引き上げてほしい、あるいは、破産の原因や破産後の生活状況など、中小企業の固有の特性を考慮しまして、裁判所の裁量によって範囲の拡張ができるようにするといったことにしてもらいたいというような主張をいたしておるわけでございます。
 十月の四日に、この部会で中間試案がまとめられました。その中では、具体的な金額は触れておられませんが、現在の二十一万円の額というものを引き上げるということ、さらに、破産者の生活状況などの事情を考慮して、裁判所の裁量によって範囲の拡張を可能にするといったようなことが記載をされておりまして、中小企業の事情に配慮した検討が進められているというふうには考えております。
 したがいまして、私ども、自由財産の範囲の拡大といったような方向を中心にいたしまして、中小企業の点について十分な配慮が行われるように、意見を引き続き述べていきたいというふうに考えておるところでございます。
 それから、先生、個人保証について、そういう制度を改めていくべきだというような御議論でございました。
 私ども、基本的に、中小企業の場合には、企業の資産と個人の資産とがいわば混然としている場合も多いわけでございまして、経営者の個人保証が求められるというのはある程度避けがたい面があるというふうには思っておりますけれども、しかし、それが持つ反面の問題もあります。したがいまして、個人保証に依存をしない資金の調達手段というものを順次拡充をしていく必要があると考えております。
 そのために、例えば中小企業総合事業団によるベンチャーファンドへの出資事業を拡充するとか、あるいは、これは大臣の強い御指示で始めておりますけれども、いわゆる新創業融資制度、これは無担保無保証、さらに個人保証もないというような格好での融資をするという制度を拡充するとか、あるいは、信用リスクを保証ではなくて金利でカバーするというような格好を進めていくために、中小企業信用リスク情報データベース、これの整備を拡充しまして、そういった金融機関の慣行を進めるといったようなことについて今努力をしているわけでございまして、そういった方向での努力は引き続きやっていきたいと考えております。
山田(敏)委員 議論が進んでいてよくわからないということなんですが、もし金額が決まった場合、例えば六十万に決まったということになれば、もうほとんど中小企業者にとって意味のない改正になってしまうわけですが、そのときに経済産業省としては、大臣の強い意思をもって、今いろいろな中小企業の方がもう一回チャレンジをするということを検討なさっているということですから、やはり何らかの別の手だてをとる必要があると思うんですけれども、大臣はいかがお考えですか。
平沼国務大臣 昨年の秋の臨時国会で、今長官からも御答弁させていただいたように、企業を立ち上げる場合には、個人保証もないという形で新しいものをつくらせていただきました。これは、新規の企業という形ですから、もちろんその時点で内容を吟味していかなければいけませんけれども、再チャレンジができる、やはりそういう体制はとる必要があると私は思っておりますので、これからいろいろ検討させていただきたい、こう思います。
山田(敏)委員 最後に、この結論を、去年、来年の三月に結論を出すということで法務委員会で法務大臣は答弁されたんですが、その三月よりもっと早くやらないと、これは、個人保証の問題で自殺される方が大変多いわけですからということを申し上げました。
 そうしたら、先日お伺いしたら、逆にこれは、夏になります、三月ではありませんということですので、これはできるだけ早く今の結論を出すようにということを強く働きかけていただきたいことをお願いいたします。
平沼国務大臣 法務省でございまして、そこで一生懸命やっていただいていますので、私もこの前の御答弁で申し上げましたけれども、さらに積極的に関係筋に働きかけたいと思っております。
山田(敏)委員 売り掛け債権担保融資保証制度ができたわけですけれども、現場の意見をちょっと聞いてみますと、なかなかうまくいかないと。
 私の地元に地方銀行があるんですけれども、その支店長さんのお話では、担保を入れる手続とか、中小企業庁が事務取扱要領というのを出しているんですね。この中に細かく決めてあります。御存じのように、こういうふうにやりますと、担保を設定するという手続そのものが非常に面倒くさい、費用もかかるということで、やめておこうかというようなケースもあって非常にまずいんじゃないかと。
 これは一言で言いますと、現場の銀行の支店長さんなりが、現場の企業の人たちとはもう十年、二十年つき合っていらっしゃって、信用をわかっていらっしゃる。それを任せないで、中小企業庁がこれをつくって、このとおりやりなさいというふうにやると、せっかくの機能が、せっかくの目的が達成されないということがございます。
 この一番いい例が、実は先週、私、説明会を、百三十社の中小企業の方に来ていただいて、この点について、中小企業の方は、年末に向けてもうほとんど担保はありませんから、新たに借り入れできるかというと非常に難しいわけですね。ほとんど不可能な状況になっていますから、御説明しました。
 中国経済産業局の方に来ていただいて、新たに今度の制度では、契約をした時点でそれを担保にしてできますということだったんですね。その方がこの紙を見せないで百三十社の方の前で、これはできますが二つ条件がありますと。一つは、あなたの会社が、債務超過していない、要するに赤字を出していないことです。もう一つは、経常利益が上がっていることです。この二つの条件があります、こう言われた。
 そうすると、御存じのように、普通、中小企業というのは七割が赤字を出しています。経常利益で黒字を出す、しかも今期をと、非常に難しい状況です。まして、そういう説明会に来られたその百三十社の中にこの二つの条件が当てはまる人は恐らく一人もいらっしゃらない。それで、せっかく説明会をやったんですけれども、もうこれ以上聞いても何も意味ないとみんな帰っちゃった。
 そこで、これを取り寄せてみたんですね。そうしたら、その前に「原則として」という言葉が書いてあるんですね。これを省略してしゃべっちゃったんですね。そうすると、せっかく忙しいときに来て、これは何の意味もないということになった。
 私が申し上げたいことは、今言いましたように、現場の金融機関というのは、その会社のことをよく知っているわけですから、この運用をどんどん書いていっちゃうと、だれも利用しない。せっかく大臣がどんどんいいことをやっているとアナウンスされても、実効が全然上がらないことになるんですが、その点についてはいかがお考えですか。
杉山政府参考人 ただいま先生がお触れなさいましたように、売り掛け債権担保融資保証制度、これにつきまして、一定の要件を満たす場合には、商品の納入とか工事完了あるいは役務の提供を待たずに、契約が締結された段階から融資を受けられるような制度に改めまして、十一月の十一日から実施を始めたところです。
 ここで、一定の要件とは何かということでございますが、一つには、契約書などによって、支払い者あるいは支払いの金額、支払いの条件といったようなものがきちっと契約の内容で確認できること、もう一つは、申し込みの中小企業者につきまして、過去に重大な瑕疵があった納品をしたとかあるいは工事がなかったかどうかということの確認、第三点は、中小企業の方が契約をした後すぐに、期日を置かずに倒産に至るようなことがないかどうか、この三つが、私どもは要件だというふうに考えているところでございます。
 その三番目の要件でございます、当該中小企業者が契約後に期日を置かずにすぐに倒産に至るような可能性がないかどうかというのをチェックするということとして、今、先生がお触れなさいましたけれども、債務超過が原則としてあるかどうかとか、あるいは経常利益があるかどうかといったような点をその事務取扱要領に定めたわけでございます。
 しかしながら、今おっしゃいましたように、原則として経常利益があることというような判断基準をしゃくし定規に運用いたしますと、もともとこれは、当該中小企業者が契約後にすぐに倒産に至るようなことがないかということをチェックするためのことでございますから、下手に運用いたしますと、今先生がおっしゃいましたように、原則と例外がひっくり返るようなことになりかねないと思います。
 したがいまして、私ども、経常赤字でありましても、契約をした後すぐに期日を置かずに倒産に至るような可能性が高くない人につきましては、当然これをできるようにするのが本筋でございますので、それを明確にする意味で判断基準を変えました。昨日付でそこの部分は削除をいたしまして、原則として債務超過がないかどうか、あるいは、契約をした後すぐに倒産するような可能性が高くないという場合におきましては、本制度の利用ができるというふうに実施要領を改めまして、昨日付で全経産局に対しましてそのようなことを通知いたしました。
 私ども、いろいろな適用上あるいは運用上の問題が出てくるかと思いますが、いろいろ関係者の方の御意見とか御指摘も受けまして、できるだけ円滑に実施できるようなことで取り組んでいきたいと思っております。
山田(敏)委員 担当官の方は大変忙しいと思うんですね。中国経済局、これは五県を全部回るわけですね。まだこういう制度が周知徹底されていないということでお願いした。担当者は一人なんですよね。ですから、この来たものを、ああこうだといって読んで終わりと。よく理解されて、よく現場のことを聞いてやるような時間的余裕もそういう能力もないと思うんですよね。ですから、現場の金融機関の方、あるいは中小企業の方の意見をよく聞くということをもう一回つくってやっていただかなければいけないと思います。
 もう一つ、特別融資制度がございましたね、平成十年に。このときに、アンケート調査があるんですが、中小企業に対する貸し出し姿勢は厳しいかという調査ですね。そのときに、三五%という回答があって、これは大変なことだということで特別融資制度というのができたんですね。その後、その効果が非常にありまして、ずっと下がったんですが、直近になってきて、竹中さんのこういう発言が金融機関にじわじわと影響を及ぼしてきまして、毎月のようにどんどん上がってきた。この調査をいただいたのは十月の調査ですが、二五%を超えた。恐らく、十一月に調査をするともっと上がっていると思うんですが、年末に向けてさらに厳しくなっていると思うんです。
 この特別融資制度、ほとんどの企業が五千万借りて、今四千万くらい返済されているという状況だと思うんですが、現場の中小企業の方の声を聞くと、この分を健全にちゃんと返済して枠が残っているんだから、これを利用させてもらったら非常にいいということを言われる方が多いんですが、この提案についてどういうふうにお考えになりますでしょうか。
杉山政府参考人 今、先生がお触れなさいました特別保証制度は、平成十年当時に、大変な金融システム不安というものの中で、金融機関が中小企業に対して一斉に貸し渋りをするというような状況の中で、臨時異例の措置として設置をいたしたものでございまして、昨年の三月に終了したものでございます。
 今、先生、特別保証のついた融資について、返済をなさった中小企業の方に対して、返済された分につきましてもう一度再融資する制度がどうかというお話でございました。
 本件、これは別の院の経済産業委員会ですが、西川副大臣がお答えになったと思うのでございますが、中小企業者が債務の返済を行って再度借り入れをするという場合につきましては、中小企業の方々の返済能力、これはさまざまでございますので、やはりその際に、個別に金融審査をするというようなことの上で融資の可否あるいは規模というものを判断するのが必要ではないかというふうに考えております。したがいまして、こういう審査手続なしに再融資を認めるというようなことを構築するのはなかなか難しいのではないかというふうに思っております。
 ただ、私ども、特別保証制度の終了に際しまして、円滑な制度移行ということから、いわゆるセーフティーネット保証・貸し付け、これを平成十二年末に抜本的に強化をいたしました。また、今臨時国会でも、中小企業信用保険法の改正をしていただきました。
 こういったことで、セーフティーネット保証のさらなる強化というものを随時図っておりますし、また、先ほどお触れになった売り掛け債権の担保保証融資制度、これも、いろいろ御批判はございますが、創設あるいは拡充を図ってきているところでございます。また、特別保証制度について、返済に困っていらっしゃる中小企業の方々につきましては、その返済条件の変更を柔軟に行うということもやってきているわけでございます。
 ですから、こういった制度を引き続き円滑に進めるといったようなことで、今先生が指摘なさいましたような点について対応していくというようなことは、全力でやっていきたいと思っておるところでございます。
山田(敏)委員 最初に言いましたように、平成十年の状況にだんだんと近づいておりますから、この認識をちょっと改めていただくことと、融資をするときに返済能力を見る、これは当然のことなんですが、これをやりますと、今、保証協会の融資に対する姿勢がだんだん厳しくなってきているんですね。当然、今までの基準で返済能力を見ると、だんだん中小企業は落ちていますので、それが非常に難しくなっているということをもう一度よく調べていただいて、検討していただきたいと思います。
 それでは、ちょっと長くなりましたけれども、原子力の話に移らせていただきます。
 我が党で修正を御提案しております。先ほどから議論ございました三条委員会です。新潟県知事がお見えになりまして、安全委員会というのは、保安院の提出資料を見るだけで機能していない、抜本的に見直す必要がある、こういう発言をされました。それに対して、先ほど答弁がございましたけれども、今のままでいいんだということです。
 ただ、ドイツの例をちょっと見ますと、非常に地方分権的な考えというのが行き渡っているわけですね。地方のことは地方の住民の人たちも入れて考えよう、これは非常に日本より進んでいるわけですね。ドイツでは、国だけに全部任せるんじゃなくて、地方自治体も一緒にこれに参加してやっていこう、こういう考え方が非常に強いんですね。これは非常にうまくいっている。そして、先ほどから議論があります、住民の方の理解も非常に得やすいというように私は思うんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
平沼国務大臣 まず、答弁させていただく前に、中小企業についての御質問がございました。その中で、売り掛け債権の担保融資制度に関して、せっかく百三十社お集めをいただいたのに、原則ということを捨象してしまって、先生のそういう御努力を無にしてしまった、このことは大変申しわけなかった、こういうことで、この辺はしっかり徹底しなければならないと思っています。
 それからもう一点、御指摘ございました特別保証制度で一生懸命まじめに返済してくださった方。特別保証制度は、異例特例の措置でしたから、三月三十一日をもって打ち切りました。しかし、そういう方々に対しては、たとえ審査するにしても迅速にやらなければいかぬ、こういうことは私は徹底していきたい、こういうふうに思っております。
 それから、ドイツの例をお引きになられて、地域のそういう立地の方々も参加をする、そういう体制をとってはどうか、こういうことでございます。
 私どもは、今ダブルチェック体制、こういう形で先ほど来も御答弁で言わせていただいております。しかし、国民の信頼、そして原子力の安全、こういうことを考えると、やはり引き続きいろいろな角度で検討していかなければいかぬ。そういう意味で私は、御答弁の中で、総合的に、原子力安全委員会のあり方、新潟県の知事からも御指摘があったようですが、ですから、今回お願いしている法律では機能強化をしっかりと担保させていただいています。
 それから、保安院のあり方等々、今の御指摘の点も踏まえて、私どもは、今後、やはりよりよい形を構築していかなければいけませんので、総合的に検討をさせていただきたい、そう思っております。
山田(敏)委員 より地方に根差した、地方の方々の意見をよく聞くという仕組みをつくった方が、僕はこれからはるかにいいと。
 先日も申し上げましたように、刈羽村のプルサーマルの住民投票のときに反対を一生懸命された方々が私のところへ来られて、なぜ反対をするんですか、こういうことを言いましたら、情報公開がないからだ、こういうことなんですが、情報公開を、では言ってくださいと言ったら、わからないわけですね。私が責任を持って情報を公開するように政府に言います、書いてください、これとこれとこれがあれば住民の方々は安心して暮らせます、そうすれば不安がなくなって、プルサーマルの住民投票には賛成する、こういうふうになるわけなんですけれどもね。
 ところが、その場で、じゃあと言って書こうと思ったら、シュラウドがどうでこうでと、どこをどういうふうに言っていいのかわからない。そこが根本的な問題だと私は思うんですね。だから、ドイツがやっているように、もっと大胆に地方に権限とか機能とか説明責任とかそういうものを移して、知事さんも一緒になって、地元の町長さんも一緒になってやるべきだと思います。
 そこで、もう一人、福島県の町長さんがお見えになって参考人に来られました。その町長さんは繰り返し繰り返し同じことをおっしゃったんですが、道徳はどうなったんだと。東京電力の方たちの中身を見ると、虚偽の報告をする、それを一緒になってごまかす工作をする、それをさらに隠ぺいする工作をする、もう果てしなく、人間の道徳というのはどうなっているんだというようなことを、これから原子力行政がうまくいくには道徳なんだと、こういうふうにおっしゃるんですね。
 では、その道徳をきちっとしてやるにはどうしたらいいのかというところなんだと思うんですけれども、町長さんは、それは具体的なアイデアを言われなかったんですけれども。
 一つは、人間というのは任されると一生懸命、あなたがちゃんとやってくれるんですねという信頼を持たれると人間というのはできるんですが、今度の改正のように規制を厳しくして、もっとたくさんの人がかかわって、もっと細かくやってというのをどんどんやっていくと、中で本当に技術者が責任を持って、そして自信を持ってやろうと思っても、何回も議論がありましたけれども、本当にこの傷はどうかというのはほとんどの人がわからないわけですね。そこに働いている人と、本当にそれにかかわった恐らく一人か二人しかわからないんですね。これを全部規制の対象にやると、この原子力そのものが行き詰まって前に進まなくなるんですね。
 これはアメリカが一九八〇年代に、NRCがどんどん厳しくしてやっていったら、もうだれも原子力に価値を見出す人なんかいなくなってしまったんですね。そういう例がございます。ですから、アメリカは今、リスク・インフォームド・レギュレーション、何かが起こったときにそれに対して厳しくする、最初から何から何まで全部網をかけてやるというやり方をやめてしまったんですね。私はこれは一理があると思うんですが、その点について、どうお考えでしょうか。
佐々木政府参考人 私どもも、規制の科学性、合理性というものを追求していきたいと思っておりますが、リスクインフォームドあるいはリスク評価のベースに基づく規制は、やはり経験とデータの蓄積と、これに対する解析評価のしっかりした基盤がまずベースでございます。その点について、日本の場合に、リスク評価ベースに伴う規制ということを取り入れていく努力がまだ不足していることは、確かにそのとおりでございます。
 将来的には、我々もそうした方向を目指していかなければいけないと思っているところでございますし、国際的にもリスクインフォームド、あるいはリスク評価の規制体系への移行ということはいろいろ進んできておりますが、最も進んでいるのは今アメリカでございます。
 諸外国の規制のトップの方々とも私お話をいろいろする機会がございます。ただ、それぞれの国によって、それぞれ炉の型式あるいは歴史も異なることから、今先進国間でも、私もそのメンバーに入って、いろいろ各国でそうした方向への今後の取り組みを話し合う場もございまして、私もそうした中でいろいろ今勉強もしているところでございます。
山田(敏)委員 ぜひこの点を前向きに検討していただきたいと思います。
 さて、それを支える制度、枠組みをしっかりやろうということなんですが、こういう問題が起こると、経済産業省の責任だ、もっとしっかりやれ、こういうことで今やっているんですが、実際、本当に効率的に、効果的に国が一生懸命監督すればこれは解決するかというと、過去のいろいろな事例を見てみますと、余り機能しない、うまくいかないということが続いていると思うんですね。
 ごく最近の例でも、先日申し上げましたように、何十億円という不正、ラピカの問題、四回にわたって、延べ九名の通産局の係員が、朝から晩まで検査をして、結果は三百カ所の補助金を申請した書面とでき上がったものが違うというのが出てきたわけですけれども、そのときに、検査をしてお金を払ったときに、一件も発見できない。全部これは正しいですという結論で、通産局の方は終わったんですね。
 それに対して、通産局の調査は、いや、これは書類がこんなにあるから全部はできません、現場に行くのは一時間しか時間がありません、こういう調査結果をいただいたんですが、その後、その方たちが、能力が非常にできて、人員が十倍ぐらいになって、本当に電源三法交付金の交付が正しく行われたと、現実的にはちょっと考えられないですね、国会ではそう答弁されますけれども。
 今回のこれを本当に機能的にやろうと思ったら、もう何回も議論されておりますけれども、内部告発の制度と、それから内部告発があったときにどういうふうに対応するかというのがきちっとしていれば、非常に効果的で国民が納得できるやり方ですね。先日も申し上げましたが、先ほどのラピカの件も、捜査権限があればこれは一発で解決したんですね。ゼネコンが図面を紛失しましたと言う前に、そのゼネコンに入って捜査をして図面を持ってくれば、この不正は一発でわかるわけですね。しかし日本には、それはありません、捜査権限、ありませんと。ですから何でも言えばいいんですね、そこの図面は紛失しました、このデータはありませんでした、これは違いますと言えばいいわけですね。それと同じようなことが今起こったわけですね。
 アメリカでは、内部告発があったその一週間以内か二週間以内、これは内部告発が起こった段階ですから、事業所にはまだ何もわからないわけですね、その段階でその情報を持ってFBIが一緒になって、そしてその書いてある、この引き出しにこの図面がありますよ、この担当官はここでこういうことをやりましたよというのが、全部証拠が書いてあるわけですから、それを持って捜査に入って、それを全部持ってくれば、この内部告発がすべて正しかったと一週間以内にわかるわけですね。
 この制度を日本でやらないと、法律、確かに強化されました、罰則はできましたということなんですが、立入検査をします、でも行く前に、あした行きますよ、あさって行きますよと言ってから行きます。これを出してください、では、どうぞ、見ましたと。
 しかし、それはどこから出てきたのか、だれがつくったのかというのは、捜査する権限がないと本当かどうかはわからないんですね。これがないと、その本質的な問題の解決にはならないと私は思うんですが、いかがお考えでしょうか。
佐々木政府参考人 今回の申告案件の処理に関しまして、私どもは、強制調査権がないということがこの処理を困難にしたということではなく、私どもの申告制度に対する不十分な認識に基づく処理が問題であったと考えております。
 大臣の諮問委員会でも、評価委員会でもいろいろ御指摘を受けたところでございますが、申告者本人へのまずアプローチであるとか、あるいはGEの申告者との関係の深い方へのいろいろ事情聴取であるとか、そうしたことを通じて、いろいろ状況を十分に把握して臨むということがまず基本である。これは、当事者に直接入るということは、むしろ証拠の隠滅につながる場合もあるというような御指摘もいただきました。
 今回御提案させていただいております法案の改正でも、私どもは、従前、立入検査の権限の行使はやや抑制的にやってきたことも事実でございます。また、報告徴収権の発動につきましても抑制的であったことは事実でございます。
 私は、今回のような申告に対しては、その制度の運営要領をきちんと定め、きちんと迅速に処理をする客観的な体制整備をすること、そしてまた、行政としては、現在の法制度の中の立入検査権や報告徴収権で、今回の改正による強化を踏まえれば、対応していくことが可能だというふうに考えているところでございます。
山田(敏)委員 それは院長、事実認識がちょっと間違っているんじゃないですか。
 内部告発があって二年間わからなかったんですよ、二年間。それに対して、アメリカは、内部告発の後一週間以内に、それが事実であって、どういう原因でどうか、それが解明されるんですね。なぜそこが違うかというのを今僕は言ったんですけれども、違うことを今おっしゃっているんじゃないですか。
 二年間何もわからなかったのは、それははっきり言って、その内部告発の内容を経済産業省が東京電力の担当の方に、これはどうなっていますかと聞いたら、答えなかったんですよ。調査に協力しなかったんです。事実のデータを出さなかったんです。だから二年間かかったんですよ。何回聞いてもはっきりしたことはわからなかったんですよ。二年間かかったんですよ。重大な事実、しかも、原子力発電というのは数十万人の人の命がかかわっているんですよ。
 二年間わからなかった原因はそうじゃないんですか。それは全然認識が違うでしょう。どういう原因で二年間かかったんですか、言ってみてください。
佐々木政府参考人 評価委員会でも幾つかの御指摘を受けました。いずれにしても、御指摘のように、二年間というのはとんでもない期間であるという御評価もいただき、厳しい御指摘をいただきましたが、一つは、規制当局が当時判断をした事実として、申告の内容が仮に事実だとしても、安全上問題はなく、法令違反の可能性も低いと判断をした、そのため、調査への取り組みが不十分であり、早い段階での法律に基づく処理が行われなかった、こういう評価を受けたわけでございます。
 いずれにしても、当時の記録の保存ができていなかったとか、いろいろなバックグラウンドがございますけれども、やり方として、私ども自身がもっと迅速に取り組む要素、改善の道はいっぱいあったという反省をしております。
山田(敏)委員 大臣、今の、認識が全然違うんですよね。
 法令に、大したことはない、安全にも問題ない、ああそうですかと。では、何に基づいてそれがわかったんですか。企業に聞いたら、ああ、そんな昔の資料はありませんと言われた、だから真相の解明ができなかったと。だれが言ったんですか、そんな昔のデータはありませんとだれが言ったんですか。それは東電が言ったんじゃないですか。どうやって確かめたのか、それがあるかないか、それを言っているんですよ。
 だから、次元が違う話ですから、原子力の安全というのは数十万の人の命がかかわっているんだから、これは法的にもう一段階違うことをやらないと問題の解決にはならないんですよ。そうでしょう。今おっしゃったでしょう、昔の資料だからありません、わからなかったと。それはだれが言ったんですか。だれの言葉を信じているんですか。そこで起こった東電の人の説明を信じてやっているんじゃないですか。
 本当かどうか、捜査してみないとわからないじゃないか。あったら、これは法令に違反しないとか、これは安全上問題ありませんというのは、捜査して本当にそこにあることを確かめないと、そんな結論、出るわけないじゃないか。どう思われますか、大臣。
平沼国務大臣 アメリカというのはFBI等があって、そういう機能を持っていることは事実だと私は思います。
 今回の事案に関しては、その申告を受けた方が、反省しておりますけれども、やはり真剣味が足らなかった、こういうふうに私は思っています。そして今、経済産業省といたしましても、さらにこの申告制度を強化する、そういう体制をつくりました。
 そういう中で、やはり迅速性というのが非常に大切ですから、そういう捜査権というのはまた法全体の大きな問題です。ですから、将来的にはその一つの解決策である、それは私は否定しません。しかし、現在の中では申告制度というものを強化して、その中でやはり迅速性を持って、もっと問題意識を持ってやる、これが基本になければならない、そういうふうに私は思います。
山田(敏)委員 捜査権というのは、日本は今、警察と税務署なんですね、国税なんですね。ところが今言いましたように、今回のこの問題は、警察の捜査権に匹敵するぐらい重要な問題だと思いますし、そういう取り組みでないと、逆に何も前に進まないんじゃないかなと。
 現実に、私のところにいろいろなデータが寄せられましたけれども、ことしの八月以降、シュラウドのひび割れが相次いでどんどん公表されたんですね。これは、去年の点検を公表して異常なしと言ったのも、これも本当じゃなかった。ごく最近のことでもこういうことが起こるんですね。
 ですから、本当に効果的に、そして本当に国民の生命を守るのであれば、これは立入検査をやるときに警察が一緒についていけばいいんですよ。アメリカがやっているように、FBIが一緒についていって捜査を分析して、これは間違いない、こういうふうにやればいいんですから、ぜひ前向きに、大臣、検討項目として挙げるということをはっきりおっしゃっていただきたい。
平沼国務大臣 これは、いろいろ関係する方面がございます。ですから、そういう御指摘というのはしっかりと踏まえながら、今後いろいろな面で検討させていただきたいと私は思います。
山田(敏)委員 質問を終わります。ありがとうございました。
村田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松原仁君。
松原委員 民主党の松原仁であります。
 日本という国は大変に資源がない国でありまして、エネルギー問題というのは従来から極めて重要であります。人はいるわけでありまして、この人材資源の活用というのは極めて大事であります。ただ、人材も昨今は昔と比べてどうだろうかという議論がさまざまとあるわけでありますが、その議論は後段するといたしまして、どちらにしても資源がない。しかし、その資源のない国でこれだけの高度経済成長をした国においては、特にエネルギーというのは大変にかかってくるわけでありまして、このエネルギー問題をどのように解決していくかというのは極めて重要であります。
 そういった意味において、私は、やはりこの原子力というものの日本における必要性というのは、どれほど強調しても強調し切れないぐらいに重みがある、こういうふうに思っているわけでありますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
平沼国務大臣 私は、全くそのとおりだと思っておりまして、そこはもう強調しても強調し過ぎではないと同じような認識を持っているところでございます。
松原委員 そういった貴重なエネルギー源であります原子力でありますが、その一方において、この原子力というのは、御案内のとおり、もろ刃のやいばと言ってもいいわけでありますが、大変にリスクを持っているわけであります。
 日本という国は、第二次世界大戦のときに原爆を被爆した国でありますが、逆に言えば、そういったものに対しては世界で最も、原子力の負の部分というのですかマイナスの部分に対しては、極めて意識が高いというのですか、大変に危機感を、恐らく世界の他のどこの国にも負けないぐらいの、まさにそれは、言葉はちょっと語弊がありますが、トラウマというのですか、そういったことを含めてあるのではないかというふうに思うわけであります。
 したがいまして、私は、原子力を使うにおいては、原爆の被爆国であるというこの一点をかんがみても、世界で最もこの原子力の安全性に関して気配りをするべき、これが日本の国における原子力政策の根幹にあろうと思っておりますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
平沼国務大臣 御指摘のとおり、日本は二発の原爆を落とされて、そして世界で唯一の原爆の被災国であります。そういう意味では、国民の皆様方は、この原子力に関しては大変な心配をされておりますし、トラウマというお言葉をお使いになられましたけれども、本当に皆様方はこの原子力の安全性について大変心配されておられるので、御指摘のように、この安全性、そして国民の皆様方の信頼醸成、こういうものについては、やはり世界でも率先をして努力をしていかなければならない、このように思います。
松原委員 そういった原爆を被爆したという国において、エネルギーのかなりを、過半を原子力が担うようになったというのは、これは大変なことだと私は認識をしているわけでありまして、これだけのやはりエネルギーの供給を原子力がしているということは大変に画期的だと思っております。
 私は、恐らくその理由というのは、国民の政府に対する信頼というよりは、率直に言うと、日本の技術の高さ、例えば、唐津一さんが、中小企業のクオリティーコントロールにおいては世界最高水準である、精緻なものをつくるという点においてはもう他の追随を許さないというふうに言われているわけであります。
 実は私、先週土曜、日曜日、所用がありましてインドに行ったわけでありますが、大変にソフトはすばらしいわけでありますが、ハードにおいて、私は、やはりそういったところを見ても、日本のたくみのわざのすばらしさというものは再認識をするに値する、こんなふうに思っているわけであります。
 先ほど佐々木院長ですか、自信を持っている、こういうふうにおっしゃったわけであります。私は、やはり日本の原子力発電の供給量がここまで来たというのは、そういった日本の技術水準の高さだというふうに思っております。本来であれば、原子爆弾被爆国のトラウマからいって、ここまで来なかったものがここまで来た、こういった評価を一面しているわけでありますが、どういうふうな御印象をお持ちか、お答えいただきたい。
佐々木政府参考人 私も、今先生の御指摘のように思います。原子力を日本に技術導入を始めて以来、我が国の現在の原子力技術力、確かにもう世界のトップレベルであるという認識をしております。
松原委員 したがって、我々の国民の意識としては、これだけの高い品質を維持し、クオリティーコントロールをし、たくみのわざを行い、一千年たっても極端な言い方をしたら一ミリも狂わないような、そういう一つの技術的、先進的なものがある日本のそれに対する信頼感があった。
 従前から議論があります。なぜアメリカでは一九七〇年代に維持基準がつくられ導入されたにもかかわらず、我が日本において三十年間のタイムラグがあったか、いろいろな議論があります。私は、それは極めて厳しく反省をしなければいけないというふうに思っておりますが。
 一方において、日本のそういった技術水準というものは、大変高い設置段階からの品質保証が、ほかでは少したったらだめになってしまうものが、日本の技術水準をもってすれば維持できる、そういう思いがあったのではないかというふうに思うんですね。それが私は、維持基準がなかなかできなかった、それを、アメリカがつくってから三十年もたってからつくる大きな、それはプラス、マイナスという客観的事実として、そういうふうな日本のわざ、たくみに対する信頼感がそういう現状をつくらせしめたのかなと思っているんですが、佐々木さんの御意見をお聞きしたいと思います。
佐々木政府参考人 確かに、日本の原子力発電、特に発電施設でございますけれども、傷等のまず検査の発見技術、それを例えば保守点検した後、補修工事をするというような技術においては、非常に我が国の技術はすぐれたものを持っております。
松原委員 そこに今回の落とし穴があったということになるわけであります。
 私は、いろいろな原子力にかかわるトラブルは、「もんじゅ」ナトリウム漏れ、ジェー・シー・オーの臨界事故、こういったものがあったわけであります。今回はデータの改ざんということでありまして、その問題性において、これは同質と認識をしているか、異質のものと認識しているかをお伺いいたします。
佐々木政府参考人 今回の一連の調査の中で、いろいろな背景にいろいろな要素がございますけれども、その背景の中には相通じるものがあった、私はそう思っております、今先生御指摘のように。
 一つは、技術への過信といったような問題、あるいは品質保証の管理体制、マネジメントの問題、そうしたことは確かにあったと思います。
松原委員 私は、しかし、今回やはり強烈に考えるべきは、データ改ざん、トラブル隠しという、それは従来もあったかもしれぬけれども、かなりこれが、組織立ってとは言わないけれども、行われたというふうな認識を多くの国民が持っている。これは犯罪であります。
 つまり、従来はぽかであった。若干犯罪かもしれないが。しかし、これは完全に意図して行った犯罪であります。その違いについての認識があるかどうかを聞いているのでありまして、お答えをいただきたい。
佐々木政府参考人 今回の一連の事案について我々なりに評価をいたしました。法令の違反に該当するかどうかについても検討いたしました。その疑いがあるというものも判明をいたしました。現時点で、これを確証して法令の措置をとるという結論には至りませんでした。
 今お話しのように、物を隠す、偽るということは、これは行為としてそもそも道義的には許されないというふうに考えております。
松原委員 これは、道義的に許される云々というのを超えて、もう犯罪であるというふうな認識を私は持つわけでありまして、大変に遺憾なわけであります。
 今回は、内部告発によってこのことが明らかになったというふうになっているわけでありますが、この内部告発があったということは、ありがたいことだったのか、ありがたくないことだったのか。佐々木さん、お答えいただきたい。
佐々木政府参考人 一連のこの事案を見てみますと、いつかはこのことが公になったであろうと思います。
 その意味では、タイミングがどうであるかということは別にしまして、これで、一つの今後の日本の原子力安全への再構築の道を早急、喫緊にやらなければいけないということも、いろいろな意味で、今回の反省に立てばこれが加速されるという意味では、私は、言い方はよくないかもしれませんが、災いを転じて福となしていかなければいけないと考えております。
松原委員 私は、冒頭、平沼大臣との若干の質疑を通して、日本のような原子力に関する負の部分のトラウマがある国において、しかし一方において、原子力というものがなければ、日本は、例えば京都議定書の問題もクリアできないであろうし、また、これからのエネルギー需要にも対応できないだろうと言われている中において、これは、逆に言えば、日本の生命線を担っているのは原子力だという危機認識を持たなければいけない。その中で、原子爆弾のトラウマがあるということを考えれば、物すごい危機意識を持ってやらなければいけない。
 そういうふうな危機意識が今の佐々木さんの答弁からは伝わってこない、ここに一番問題がある。その危機意識を持っていないということを多くの国民は認識をして、例えば、この間知事が来られたときも、一番信頼できないのはここですと、こういう話になる。そういうふうな、やはり危機意識が、どうも話を聞いていると他人ごとのような、ありがたい云々というのもちょっとぼけたような御答弁で、はっきりしない。その辺を、きちっとやはりもう一回言ってもらいたい。
佐々木政府参考人 危機意識を持ってこの再発防止のために全力を尽くしたいと思っております。
松原委員 そういったことで、今般の電気事業者における改ざんですね。データ改ざん、トラブル隠しなどの一連の事件を見ると、保安院は原子力施設の安全規制を適切に行っていないではないか、そういった不安を多くの国民は持つわけでありますが、このことについて御答弁をいただきたい。
佐々木政府参考人 今回の一連の問題は、国民の信頼を大きく損なうもので、大変遺憾であります。また、国民の皆様の間に不安感が広がっていることについては重く受けとめております。
 当省は、まず、徹底した事実解明を進めることが必要と考え、調査を進め、その結果を公表してまいりました。また、法令違反が確認されたものについては、原子炉の運転停止処分など厳正な対応を行うこととしております。
 一方、こうした事案を認識する端緒となった申告に関する調査過程については、二年もの期間を要したことや調査手法など、当省自身としても反省すべき点は多々あると認識しております。外部の専門家から成る委員会におきましても、調査過程に不適切なところがあったとの厳しい御指摘もいただき、それを受けまして関係者の処分も行われたところでございます。
 いずれにせよ、国民の信頼回復のためには、早急に再発防止策を講じることが必要不可欠と考えます。今回、このため、従来の法制度の問題点も踏まえ、緊急に必要な法的措置を行うべく、事業者による自主検査の法定化、設備にひび割れ等がある場合の設備の健全性評価の義務化などを内容とする法案を御審議いただいております。これを初めとして、早急に必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
 また、こうした取り組みを通じまして、立地地域の方々を初めとした国民の皆様の原子力安全に対する信頼を早急に確保するように努めていきたいと考えております。
松原委員 本当に、最後に今佐々木さんがおっしゃったように、信頼の回復というのは極めて、この日本という国においては、その国の特異性から考えて、国民が、原子力ノー、そういう声も、それは、仏の顔も三度までという言葉がありますが、「もんじゅ」に始まって、その前の「むつ」か何かもあって、放射線漏れか何か、幾つかある。そうすると、かなりこれに対しての、やはり昭和二十年のトラウマがもこもこと出てくるわけでありまして、しかし、そうなると、日本は経済活力を失ってしまう。
 何としてもそれは阻止しなければいけないということを考えるならば、私は、安全文化というんですね、原子力事業者における安全文化、そしてこれにかかわる安全文化というのは、極端な言い方をしたら、原子力を推進する政策と同じぐらいのエネルギーをかけてそれに対して取り組んでいかなきゃいかぬ、こう思うわけでありますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
平沼国務大臣 松原先生のおっしゃるとおりだと思います。
 今回の東京電力による事案に関しましても、例えば、大きな組織特有の閉鎖性、こういうものが非常にこういう事案を発生する根っこにあったと私は思っておりますし、また、トラウマということをおっしゃいましたけれども、原子爆弾を二発も受けて、国民の皆様方が非常にこの問題に対して心配を持っておられる、そういうことの理解徹底が非常に乏しかった。
 ですから、一つの例で、今回の調査によって明らかになったことは、事業者の中に企業行動憲章というのがあるわけです。これはあるのですけれども、では、それが末端まで周知徹底しているかといったら、全然できていなかったという事実があります。ですから、マンネリ化してしまって、例えば安全文化という件でいえば、そういう形骸化してしまったような形のものも見受けることができました。
 したがいまして、安全というものがいかに大切かということを、やはり憲章があるんだったら、少なくともその憲章の条文は全部の従業員がしっかりとある意味では文化として身につけて、そういう意識で仕事をする、こういったことは私は必要なことだと思います。
 それからまた、そういう中で、このデータの改ざんだとか隠ぺい、そういったことに代表されるように、そういった意味では非常に公開性に乏しい、いわゆる透明性といったところもなかったわけであります。
 ですから、今回、そういう調査を通じて安全文化にかかわることがはっきりしてまいりまして、また事業者もその辺は非常に重要視して、今、根底的に体制を立て直すようにいたしております。
 翻って、我が方にも、安全文化に対する認識が本当に十分だったかというと、例えば、申告があって二年もかかったということに代表されますように、ここもやはり我々は反省をしなければならないと思っています。
 そういう意味で、今回お願いしている法律の中で、いろいろ事業者のそういう意識を呼び起こす形での、それがすべてではありませんけれども、あるいは罰則を強化するだとか安全性をしっかり担保する、それから自主点検の部分も我々としてはきちっとチェックをする、そういう総合的なことによって、本当に、御指摘の安全性の文化というものの確立、このことは大切でございますから、私ども経済産業省自身もそのことをしっかりと踏まえてやっていかなければいけない、このように思っております。
松原委員 今回、データの改ざん等もあって、まさに安全性という問題は非常に問題があったわけであります。
 昔の中国の儒家の中に、孟子という人は性善説、惻隠の情ということを言いまして性善説、荀子は性悪説、こういうふうな話でありました。私は、人間というのは性善か性悪かというのは環境によって変わるんだろうと思っておりますが、少なくとも今回のこのトラブルのデータ改ざん等を眺めると、どうも性悪説になってしまっている、日本人はどうもそういう方向に安易に流れる傾向になっている、こんな気がしてならないわけであります。
 そういった意味において、性悪説に立って行うのか、性善説に立ってこういった信頼を取り戻そうとするのか、大臣のお考えをちょっとお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 私は両面あるんじゃないかと思います。しかし、今回の自主点検の部分のいわゆるデータの改ざん、隠ぺい、虚偽の報告、これを見ますと、根本的なモラルといいますか、そういったものが私は欠落していたと思います。そういう意味では、二つある中で性悪の方が機能して改ざんだとか捏造だとか虚偽の報告が出てきたと思うんです。しかし、根底的には、私は、環境が整って、そして人間が本当に自覚をしていけば性善説の面が発揮できると思います。
 ですから、それはやはり、先ほど御指摘になられました、いかに安全文化をしっかり確立して、意識をしていい面を呼び起こして、いい方向にそこを回転させていく、こういうことが必要だと思っております。
 私は、こういう国の何十万の命にかかわっていることに関しては、今の段階ではやはり性悪説に根づいた形で私どもはしっかりと歯どめをかけていく、このことは今の段階では私は必要だと思いますけれども、最終的には、理想論かもしれませんけれども、そういう条件を整備して、人間本来が持っているいいところを引き出す、そういう倫理観を引き出すようなそういう企業づくりあるいは役所づくり、そして、それがひいては日本全体、そういうことをしていくことが私は大きな目では必要じゃないかな、十分なお答えになったかどうかわかりませんけれども、そんな思いを持っております。
松原委員 私も、もとより政治の使命というのは、例えば、そこに一杯の御飯しかない、そこに十人の人間がいれば殴り合いをしてしまう、性悪になってしまう、十分な食事があれば性善でいられるという、つまり、私は、人間というのは、その状況によって性悪にも性善にもなる。もちろん、人によってその範囲とレベルが違う。あまねくそこに住む人間を性善にすることが政治の根本的な一つのテーマだろうと思っております。
 翻って今回の状況を見ると、閉鎖性という言葉を大臣はおっしゃいました。そういった中で、どうも何か性悪であることが全くモラルに違反しない、そういった状況が見えて大変遺憾だと思っております。そういった意味では、これを直すように全力で取り組んでいただきたいと思うわけであります。
 原子力の推進と規制がそういう中で、若干性悪に立って言うならば、逆に言えば、規制と推進が同一の組織が担当するということが果たして妥当かというふうな話になってくるわけでありまして、この点についての御所見をお伺いいたします。
平沼国務大臣 これは、これまでの審議の中でもたびたび御指摘をいただいた本当に重要なテーマだと思っております。
 繰り返しになって恐縮でございますけれども、実は、二通りの考え方がありまして、中央省庁再編のときにやはりどういう体制をとるか、一つの考え方は、今採用しておりますダブルチェックシステム。
 これは、言うまでもないことですけれども、例えばアメリカのように天然資源が豊富な国と、先ほど来御指摘のように天然エネルギー資源に乏しい我が国、ここはやはり、重要なエネルギーであります原子力というものをある面では積極的に推進していかなければいけない。そうなりますと、推進をするサイドとしては、やはり、原子力の安全性ですとか原子力のいろいろな問題点について総合的に理解をした者が国民の皆様方に説得をし、御協力をいただく。
 そうすると、私、経済産業大臣のもとにダブルチェックの一次チェックは置いておく、そして、独立した内閣府の中にダブルチェックシステムとして原子力安全委員会を置いて、この両方がしっかりと協力をし合って、原子力の安全、それを担保して国民の信頼を回復する、こういうことで進んできました。
 ですから、そういう中で今回こういう事案が起きたわけでございまして、私どもとしては、大いなる反省の上に立って、今やっておりますのは、このダブルチェックシステムというものを、今回の反省の上でどこが悪かったか、強化すべきことは強化する。例えば法案の中で原子力安全委員会のさらなる機能の強化、そういうことをうたわせていただいておりますけれども、そういう形。
 それからまた、今後の問題ですけれども、やはり、さらなる原子力安全委員会のあり方でございますとかあるいは保安院のあり方ですとか、あるいはダブルチェック体制のあり方、そういったものもやはり総合的に私どもは検討していかなければいけない。
 そういう意味では、性悪説に立てばやはり独立したところがばちっとやればいい、こういう御指摘もありますけれども、冒頭申し上げたように、日本のエネルギー政策上、やはりダブルチェックシステムが望ましい、こういう判断に立って私どもはこの法案も今お願いをしている、こういうことでございます。
松原委員 一番大事なことは、原子力施設を持っておられる地域の方々が、原子爆弾を被爆したという日本の、この国の歴史的な特異性、そういう中で、どこまで安全に対しての確信を持つかという点でありますので、私は、できることならば、そういったものが、性悪説に立つという表現は適切かどうかわかりませんが、異なることの方がやはり説得力はあるだろう。それは、ダブルチェックももちろんそういった意味では一つの説得材料にはなるかもしれないけれどもということを申し上げておるところであります。
 また同時に、先ほど山田委員からも発言があったように、アメリカはかなり強烈にそれをやっている。日本のような、国家における同一性が極めて高いところは性善説がある程度、そうじゃないところも性善説はあるわけですが、我々は特にその辺は、何も言うな、目で語れみたいな部分があって、こういう部分の以心伝心のものが本来はあったんですが、実際こういう改ざんが起こったということになれば、それを過信するわけにはいかないので、やはり性悪説に軸足を置いてきちっと、そういった部分は毅然と対応していただきたいし、アメリカ流がいいかどうかということは議論があるけれども、そこまでしなければ地域の人が安心ができないということであれば、それも視野に入れてやはり考えていく必要があろうと思っております。
 次に、今般のような事件の再発を防止するために、原子力安全規制を見直し、実効的な規制体制を確立することが不可欠と考えますが、これについて御所見をいただきたい。
佐々木政府参考人 御指摘のとおり、安全規制の実効性を高めるべく、全力を傾ける必要があると考えております。
 今回御審議いただいております法案では、事業者による自主検査の法定化や罰則の強化、あるいは原子力安全委員会のダブルチェック体制の強化といった手当てを行うことといたしております。法律の具体的詳細設計についてはこれからでございますけれども、まさに実効性のあるという意味では、私は規制のための規制になってもいけないというふうにも考えているところでございます。
 なお、今後の再発防止策の一環として、体制面の強化につきましても、必要な国の検査官の増員あるいは独立行政法人の活用について現在検討を行っているところでございます。今後、厳しい財政事情の中で予算面の制約あるいは行政組織の効率性の観点も踏まえつつ、関係機関との調整を行ってまいりたいと考えております。
 いずれにしましても、多面的かつ総合的な観点から、規制の実効性を高めることが極めて重要でございまして、必要な対策を早急に講じてまいりたいと考えております。
松原委員 一方において、電力というのは経済活動の米のようなものであります。コストというものが問題になってくる。これからの国際的な競争社会において、今日本は、人件費が例えば他の発展途上国に比べて高いということから空洞化が進んだりしているわけでありますが、空洞化の理由は人件費だけにこだわりません。こういった電力の価格が他のそういった我々と競合する地域に比べて高いのか安いのかということも、空洞化が進むかどうかということの大きな原因になり得るわけであります。
 こういうことによって、例えば今幾つかとまっているというふうなことも含め、それが結果として電力の費用の上昇ということに転嫁される可能性があるのかどうか。佐々木さん、お答えいただきたい。
佐々木政府参考人 現在停止している炉が今後どういうふうに立ち上がっていくかについては、私ども規制当局としては今何ら予見を持っておりません。
 しかし、結果的に、炉の停止期間が長期化すれば、それは当然コストにはね返るということでございます。
松原委員 そうすると、これもやはり、日本の経済から考えると非常にゆゆしきことだと思うんですね。
 維持基準の導入というのが言われているわけでありますが、それが確立されるまでの間の問題もこれあり、しかし日本の経済は今大変に厳しい状況にこれある、こういう状況に関して、大臣はどんなふうな憂いを抱いているか。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 松原先生御承知のように、今日本には原子力発電所が五十二基あるわけでございまして、今回の事案及び定期検査を含めまして、現在十五基が停止しておりまして、さらに定期検査に入るものを入れますと、この数はふえてまいります。そして、冬場の電力需要期を迎えますので、私どもは大変心配をしているところでございますけれども、そういう中で、事業者自体が休眠中の火力発電所を再稼働する、さらにパワーアップをする、また電力会社同士で電力の融通をする、こういうようなことで、二月ぐらいにピーク時を想定しておりますけれども、何とか乗り切れる、こういう目算がついているわけであります。
 それからもう一つは、採算の問題でございますけれども、これも、休眠中のそういう発電所等を稼働するということになれば、当然コストがアップしてまいります。それに関してもいろいろ検討させていただいておりますが、そういう意味では一番大きな停止を余儀なくされる東京電力も、例えば株主に対する配当は据え置くことができる、あるいは中部電力等もそういった体制がとれる、そういう状況でございます。
 私どもは、絶対油断をしてはならない、あらゆる状況を想定して考えておかなければならないと思っておりますけれども、やはり電力クライシスが起こらないように、私どもは常によく注視をして、国民の皆様方に不安感を抱かせないようなそういうPRもさせていただき、また体制もとっていかなければいかぬ、こういうふうに思っております。
松原委員 本当にそこの部分ですね、エネルギー不安、一方におけるこういった安全不安、進めばエネルギー不安と、こういうことでありますから、ここをやはり経済産業省は、これ自体がまさに日本の国の一大有事であると、さっきのトラウマを含めて、エネルギー問題における安全神話という、これをぜひ乗り越えるべく、これは何が何でも頑張っていただきたいと思うわけであります。
 そういう中で、いよいよ維持基準の導入が検討されている。設置基準との関係、そして維持基準を三年ごとに見直すとかという議論もありますが、ある程度フレキシブルにしながら、しかし実効性のあるものにする、こういうことが必要だと思うわけでありますが、この辺についての御所見をお伺いします。
佐々木政府参考人 いわゆる設置基準と、今これから検討したいと考えております維持規格との関係でございますけれども、基本的に、所定の安全の水準を下げないという中で、傷等があった場合に、具体的に傷の進展といったことを予測し、一定の検査の方法のもとでその傷を特定し、予測をするという手法でございます。
 したがいまして、これはやはりいろいろな科学的な知見に基づき、過去の膨大ないろいろなデータをもとにして、きちんと科学的、合理的な評価が必要でございます。私どもは今、アメリカの機械学会をベースにして、日本でも機械学会で相当この中身について議論もされてきておりまして、一定の整備が一定の範囲でできてきておりますから、まずこれをベースに、国としてもきちんとこれを評価して、早急にこれを取り入れたいということと、今おっしゃいます新しい知見を反映していくということにつきましても、国が細部のスペックまですべて決めるということではなくて、基本的な性能維持の考え方を国が示し、それを実際にどう担保するかにつきましては、民間の規格を使っていくというようなことによりまして、常に新しい知見が規制にも反映されるという体制をつくっていきたいと思っております。
松原委員 今回のこの集中質疑でやはり大事なことは、いかにして安全に関しての、いわゆる安全神話の復活を目指すか、神話までいかないまでも、これが大事なテーマになっております。
 そうなるときにやはり大事なことは、一つは情報公開と、そして説明責任を全うするということが一番大事だろうと思っております。原子力安全規制において、安全の確保はもちろんのこと、特に地域住民からの信頼を得ることが大事だと思いますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
平沼国務大臣 御指摘のとおりだと思っておりまして、地域住民、特に立地地域の皆様方に御理解をいただくということが非常に重要なことだ、このように認識しております。
 これまでも、我々はそういう意味ではいろいろ努力をしてまいりました。しかし、例えば、信頼感を大幅に損なったという中で、私は、当省としても反省しなければならないと思っておりますのは、申告があって二年もかかってしまった。これは、今まで努力をしてきたその信頼関係というのを非常に損なったと思っております。
 それから、この事案が起こった後、地域の首長さん、あるいは議会の皆様方、あるいは経済界の皆様方が私のところに来られまして、いろいろお話し合いをさせていただきましたけれども、特に、立地地域の皆様方が言ったのは、こんなに協力をしてきたのに、データの改ざんだとかあるいは虚偽の報告だとか隠ぺいというのは全く許されない、今まで自分たちは信頼してやってきた、その信頼関係が根底から崩れてしまった、こういうことを異口同音におっしゃいました。
 私は、もうそのとおりだと思っておりまして、やはり原点に立ち返って、私どもはこの地域の方々との信頼関係を再構築しなければならない。そのためには、今、信頼の醸成、そして説明責任、情報公開、こういうことは非常に重要なことでございまして、私どもとしては、信頼回復のために情報もでき得る限り公開をさせていただく。そしてまた、我々としては、そういう意味では説明責任というものをしっかりと果たしていかなければならない。
 そのためには、具体的には、今までも行っていましたけれども、やはり我が方から幹部クラスがどんどん地域に出ていって、そしていろいろ接触をさせていただいて、説明をさせていただく。また、そういう地域の方々の御意見も謙虚に承る。そしてまた、事業者ともしっかりとした連携のもとに、やはり両方で地域の立地の皆様方の信頼回復に努めるということが私は大切だと思っておりますので、そういう意味では、情報をしっかりと公開をしていき、そしてまた説明責任を果たしていく、このことに私どもは努力を傾注してまいりたい、このように思っています。
松原委員 そういう中で、先ほども質問者の中に同じような質問があったわけでありますが、やはり地域の人たちが納得をする、そして了解をする、これは大事なことであって、私は、言葉をかえて言うならば、彼らも同じ土俵で責任を負ってもらうということをするというぐらいまで踏み込むことが、結果として地域の人もこれは納得せざるを得ないというか、そこに理解も生まれてくるだろうというふうに思うわけであります。
 このいろいろな安全の部分の議論をするとき、またその委員会をつくるとき、そういう舞台に、やはりその県の首長、知事であるとか、市町村の首長、村長さん、町長さん、市長さん、そういった人が私は入っていくべきではないかと。それは別に国が説明責任を放棄するということではないんですが、やはり共同の責任を負うということも必要かなと思うんですが、いわゆる専門知識がある、ないというのは、わかりやすく説明するのもこれは行政の責任だと私は思うんです。そういう地域の首長さんがそういった舞台に入っていくことに関して、それは問題があるのかどうか、佐々木さん、お答えいただきたい。
佐々木政府参考人 私は、地方自治体の首長さんは、その地域の行政の責任者として地域の住民の安全等の確保を図る責任があるという意味で、従来からも、原子力発電所の所在の首長さんは、原子力の安全に関しても、安全協定に基づく立ち入りであるとか、あるいは事故、トラブル等についての事業者からの直接ヒアリングとか、いろいろやっておられます。また国に対しても、これが規制上どういう問題が生じるのかという御質問があるときにも、国の方からも積極的に説明させていただいております。
 それぞれ規制上の立場でいえば、私どもは、今、国が安全規制という責任者でありますが、首長さんは地域の住民の安全を守るという立場からの活動をやっておられることを認識しておりますので、お互いの連携とお互いの理解と意思疎通というものは極めて重要だと私は認識しており、その努力をしております。
松原委員 それは当然大事なんですが、規制委員会とかにそういった地方自治体の所管のところの人間がメンバーで一緒に主体として動く側に加わることは、やはり何か不都合があるかどうかということを聞いているわけであります。
佐々木政府参考人 今先生の御指摘の規制の委員会というのは、例えば、私どものいろいろな原子力安全・保安部会の委員会等がございますけれども、そういう意味で先生の今お話だとすれば、それはそういうケースも十分あると思います。規制の委員会の、今、私ちょっと解釈が間違っているかもしれませんけれども。
松原委員 要するに、やはり実務的な部分で責任を共有するぐらいにするということも一つの考え方としてあるということはぜひ検討していただきたいと思うわけであります。そうやって地域の人が加わる、それも密にコミュニケーションをとるんじゃない、そういうレベルじゃなくて、ぴしっとそこに入ってしまうというぐらいのことをするということは、私はやはり一つの考え方だろうと思っております。
 同時に、やはり大変に専門知識を必要とし、難しい難しいという話があります。私は、難しい難しいという話で、はい、わかりましたというふうにはいかない。この安全の問題というのは大変に我々にとって深刻な問題であり、特に被爆国ということを考えたら、ここでさらにネガティブな意識があったら、推進する側も推進できなくなる。いかにして広報するかというのは一番ポイントになるわけでありますから、さまざまな言葉もわかりやすい日本語に翻訳し、わかりやすい冊子をつくり、たくさんそれを地域の人にまいて、小学生といえども、まあ低学年は別ですが、高学年ぐらいからでしょう、理解できるぐらいの、ああ、これだったら安全だ、そういったものを周知徹底する必要が私はあると思うんですよ。
 アカウンタビリティーという中には、これを、この安全、これだけ罰則をつくったから信頼しなさいということではなくて、そういうのだとわからないわけですよ。わからないけれども、じゃ、とりあえず信頼するか。これは、三回あるんだから、三回やったんだから、これはなかなかいかぬわけですよ。やっぱり、なるほどそうかと得心するためには、共同参加するか、そういったものを、あくまで難しいと言われることを完全に理解するか。
 こういったアカウンタビリティーや参加というものは、まあ、これでどういう意識になるか、それぞれわかりませんが、原子力を推進しようとする人たちが言いづらくなった環境をつくったのは事実なんだから、こういったものを広く推し進めるのは、これは日本のエネルギー政策上極めて枢要なことだと私は思うんですが、時間もありませんので、大臣の御所見と御決意をお伺いいたします。
平沼国務大臣 地域の首長を初めとするそういう方々がこの原子力に対して参画をするというのは、将来に向かっての検討事項の一つだ、私はこのように認識します。
 それから、アカウンタビリティーの中で、先ほどの答弁でも言わせていただきましたけれども、私どもも努力をしておりまして、例えば副読本として百万部、これは文部科学省と協力をして、そして、希望がある学校には無償で出させていただく。しかし、それがまだ努力が足りない、もっともっとそういう形で説明責任を果たしていく、こういうことは必要でございますから、今後ともさらなる努力をしていきたい、このように思っています。
松原委員 もう終わりにしますが、例えば、そういった原子力発電所のある地域では、学校の、小学校の教科書でも、学習の中で一時間使って、こういうものは安全なんだとか、そこまで私はやってもいいぐらいの認識を持っておりますので、そんなことも含めて御検討いただきたいと思います。
 以上で終わります。
村田委員長 土田龍司君。
土田委員 質問の順番を少し変えまして、先に独立行政法人の方から入ります。
 まず、平沼大臣と西川副大臣にそれぞれ、政治家としてのお立場から御答弁を願いたいと思うんですが、それは、小泉内閣の基本姿勢であったいわゆる官から民へ、民間でできることは民間にやらせようということが一連の大きな流れでございまして、今回の独立行政法人化することについては、一時的にそれに逆行するんじゃないか。多分、平沼大臣も、小泉内閣の主要閣僚であって、特にこの官から民へということについては主張されておりますし、あるいは西川副大臣も、副大臣になられる前から、この行政改革の必要性あるいはスリム化、効率性等々についていろいろお話をされているというふうに思っておりました。
 そこで、この具体的な事案について、なぜこのNUPECの件が逆になるかという質問はその後にいたしますので、まず、政治家として時代の流れに逆らうんじゃないかという、この件について御答弁をお願いします。大臣と副大臣と両方お願いします。
西川副大臣 財団法人原子力発電技術機構は、昭和五十一年に通商産業省が認可をいたしまして、二十五年間にわたって原子力安全と原子力技術に関する幅広い委託業務を実施してまいりました。
 本法人の安全関連委託業務の独立行政法人への移管は、原子力安全規制の被規制者からの独立性、中立性の確保を図りつつ、原子力安全規制のさらなる効率的かつ的確な実施を図る観点から、平成十四年三月に閣議決定されております。このように、行政改革の一環としての独立行政法人への移管というものは、いわゆる一般的に言うところの民業を圧迫するといいますか、官が民に入っていく、規制改革に逆行するんじゃないか、こいうことにはならないと私は思っております。
 この機構の今後につきましては、業務の移管によって事業規模は縮小されますし、今後どのような規模でどういう業務を行っていくか等については理事会の場での検討を行って、そして、この機構を監督する当省といたしましても、適切な助言や指導を行って、先生が御心配されている規制緩和、官から民へという流れに逆行する、そういうことのないように鋭意監督をしてまいりたいと思います。
平沼国務大臣 副大臣の答弁と同じでございますけれども、やはり安全にかかわるそういう問題に関しまして、この閣議決定にもありますように、これは独立行政法人でやる、こういう趣旨があります。我々は、小泉内閣のもとでは、民にできることは極力民に任せる、こういう大前提がございますけれども、私どもといたしましては、この件に関しましては、独立行政法人化をして、そしてその安全、原子力、そういったものに関してしっかりと担保していく、こういうことはその趣旨に沿ったものだ、私はこういう考え方を持っております。
土田委員 私は、沿っていないと思いますよ。やはりこの官から民へという大前提のもとでやるならば、ほかに方法論は幾つもあるんじゃないでしょうか。安全ということは極めて大事だ、日本はこの原子力エネルギーによってこれからさらに飛躍をしていかなきゃならない、その前提として安全の問題がある、それをそのようにわざわざ、官から民へとやろうとしているときに、またこの民間の仕事を取り上げて官がやる、やらなきゃならない理由はどこにもないと思うんです。
 だから、西川副大臣の答弁と同じだと大臣はおっしゃいましたけれども、私は、同じであれば西川副大臣の答弁は極めて残念でありまして、ちっとも、小泉内閣の一員として、時代の流れに沿った改革政権とは言いがたい。大臣は、閣僚の一員で、閣議決定をされた一員でございますので、決して逆行していないとおっしゃいますけれども、これは明かな逆行でありまして、本当に改革を進めるならば、ほかに方法論はあるし、わざわざこういうやり方をとらなくてもいいんじゃないかと思うんですが、もう一回答弁をお願いします。
平沼国務大臣 繰り返しに相なると思いますけれども、公益法人の改革は、おっしゃるように民間にゆだねられるものは民間で行うことが原則でございます。
 しかし、原子力安全規制に関する業務のように、国民の生命保護等の観点から、これによってやるのは難しく、国の強い関与が不可欠で、ある意味では、民間では効率的かつ確実な実施が見込まれないものについては、既存体制の合理的再編を行う。そういうことになりますと、やはり国または独立行政法人においてこれを実施する、こういう考え方で検討が行われまして、御承知のように本年三月に閣議決定された、こういうことでございますので、私どもとしては、今回、この公益法人の事務を独立法人に移管する、そういうことになったと思っております。
 御指摘の点はよくわかりますけれども、やはり原子力であり、そしてその安全というものを国民に対してしっかりと確保していく、そういうことを考えれば、独立行政法人として国が関与しつつその安全を担保していく、このことは私どもは必要だ、そういう意味では、閣議決定に沿ったそういう方向だ、こういうふうに思っております。
西川副大臣 ただいま委員から、私の答弁は残念である、こういう御意見でありますけれども、それは、委員がそのようにお考えになる根拠は、要するに、従前の特殊法人を独立行政法人にするということがけしからぬ、こういうことで、むしろ廃止をしてという御意見かどうか、要するに民業を圧迫する、こういうふうにおっしゃるんだろうと想像いたしますけれども。
 しかし、私もさっき申し上げましたとおり、規制をされる側と規制をする側が同じ民民になったときの不都合ということがあるので、それを区別する意味で独立行政法人として残しておこうという閣議の決定は、私は、決して小泉内閣の官から民へという規制緩和の流れに反するものではない、そういうふうにお答えしたつもりでありまして、残念と言われる、また私の従来の主張と食い違っているとは決して思っておりません。そのように申し上げたいと思います。
土田委員 必ず例外はつきものでございまして、大きな流れの中にもそれは諸般の事情があってそうすることがあるのはやむを得ませんけれども、余り例外をつくるとよくないなという観点から申し上げたわけでございます。
 今般のこの不正記録等の問題において原子力安全・保安院が、対応がまずかったということが指摘されているわけですね。その再発防止の一環としてこの独立行政法人をつくるということであるならば、さらにこの陣容を拡大して、あるいは組織を拡大してやっていくならば、逆に焼け太りじゃないか、さらにそういった組織の拡大にならないのかという感じがするわけでございますが、今回の機構の人員は大体何人ぐらいを予定しておられるのか、お尋ねしたいと思います。
西川副大臣 今回設置を提案しております独立行政法人原子力安全基盤機構は、公益法人改革の考え方に沿って昨年から検討が行われ、本年三月の公益法人改革についての閣議決定で設立が決定されたものであります。これにより、国の実施部門を切り出して独立行政法人を設置し、これまで三つの公益法人に国から委託していた原子力安全規制に関する業務をこの独法に移管することになります。
 業務の移管に当たっては、類似業務の整理統合、共通業務の合理化、管理事務の抑制等を図りまして、既存の公益法人の体制よりスリムな組織として一層効率的かつ効果的な事業の遂行を図ることにいたしております。
 その後、今回の原子力発電所における不正記録等の問題が発生したことから、定期自主検査の制度化など再発防止策を提案させていただいておりますが、その一環として検査体制の強化も重要でございまして、国の行政の肥大化を防ぎつつ、必要な対策を講じるために、この法人を活用することといたしました。このため、検査員の増員を現在検討しております。
 今後関係機関との調整がございますので、この場で人数について具体的な数字を申し上げる段階ではございませんが、最終的には、この調整がつきました後に、平成十五年度予算の編成に際しましてお願いをしてまいりたいと思っております。
土田委員 認可法人であります財団法人原子力発電技術機構、NUPECですね、この会社は、その九割が委託業務でやっている会社でございますが、今後それがなくなれば、このNUPECは非常に大打撃を受けると思われます。
 今回、この仕事を取り上げるわけでございますが、NUPECは今後どうなっていくのでございましょうか。
平沼国務大臣 財団法人原子力発電技術機構、NUPECは、もう先生御承知のように、昭和五十一年に当時の通商産業省が認可をいたしまして、約二十五年間にわたり原子力安全と原子力技術に関する幅広い委託事業を実施してきたところでございます。
 本法人の安全関連委託業務の独立行政法人への移管は、先ほどもちょっと触れさせていただきましたけれども、原子力安全規制の被規制者からの独立性、中立性の確保を図りつつ、原子力安全規制のさらなる効率的かつ的確な実施を図る観点から、平成十四年三月に閣議決定をされました。このように、行政改革の一環として独立行政法人になるわけでございます。
 NUPECの今後につきましては、業務の移管により事業規模の縮小は避けられないと思います。今後どのような規模でどのような業務を行っていくか等については、理事会等の場で検討しているところでございまして、NUPECを監督する経済産業省といたしましても、適切な助言指導を行っていく、こういうことにいたしておりまして、おっしゃるように、縮小するという方向になることは事実だと思いますけれども、やはりしっかりと我々は見守って、そして適切な指導助言をしていかなければならない、このように思います。
土田委員 業務の縮小は避けられないけれども、経済産業省としては助言と指導をしながら見守っていく。要するに、どうなるかあとは知らないということだと私は感じるんですけれども、まあ、余りに民業圧迫の一環じゃないかというふうな感じがしております。
 さて、その次に、独立行政法人をつくるわけですが、後でまた質問もしますけれども、やはりこの職員たちは、安全に対する専門的な技術あるいは能力が重要でございます。あるいはまた、国民の生命を守っているんだ、そういった強い使命感、あるいはこの業務に対する熱意、そういったことが非常に重要になってくると思うんですが、この独立行政法人における職員の方々のこういった必要性について、どういったような具体的な取り組みをされるんでしょうか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 原子力の安全規制を担当する規制当局及び機構の職員というのは、おっしゃるとおり、当然、原子力に対する高度な専門的な技術あるいは能力や知見、それとともに、強い使命感や責任感を持って業務を行うことが御指摘のとおり必要不可欠だと思っております。
 この機構の組織や人員をどのようにするかについては、この法案成立後、具体的な検討を進めていくことになるわけでございますけれども、職員が、原子力の安全を確保するという自覚と誇りを持ってその使命を全うしたいと考える組織にすることが重要だと思っております。
 このため、この機構の業務にふさわしい専門知識と意欲を持った人材をまず採用していく、そして、採用後も職員研修等を活用して使命感、責任感を高めていくことが重要でございまして、この機構をモラルの高い組織にするように全力で取り組んでいきたい、このように思います。
土田委員 それでは、電気事業法の方の質問に参ります。
 前回、私の質問に対して平沼大臣は、原子力の推進を担う上で安全に対する知見を有しないのは無責任である、経済産業省のもとに資源エネルギー庁と原子力安全・保安院を置いて、現在の体制をやっていくことが非常にいいことなんだというような御答弁がございました。
 今回の法改正におきましても、同じような趣旨になってしまっているんですね。現在も、原子力安全委員会においてそういったチェックがされる、まず経済産業省のチェックを受けて原子力安全委員会でやられる、こういったシステムになっているわけですね。原子力安全委員会において是正すべきような事項があれば、直ちに勧告できるということになっている。
 というならば、今回、法改正をして新たにダブルチェック体制をつくると言っているんですけれども、今までと同じではないか、ただそれを追認しているだけではないかという気がするんですが、このダブルチェック体制を大幅に強化するという理由は何でしょうか。
平沼国務大臣 今おっしゃられましたダブルチェック体制を強化する、私どもは、こういう方向で今回この法案をお願いしております。
 規制調査につきましては、原子力安全委員会の所掌事務等を定めた設置法を法的根拠としておりまして、原子力安全委員会は、関係行政機関に対して報告等を求めることができるとされているものの、関係行政機関の義務としては定められておりません。
 この結果、規制調査の対象として実際に報告等が行われるべき範囲があいまいでございまして、また、報告等の結果の取り扱いについても不明確と相なっておりました。そのため、今回の法案におきましては、電気事業法及び原子炉等規制法に基づく認可、検査及び審査を対象とする定期的な原子力安全委員会への報告を行政機関の義務として明確に位置づけることにいたしたわけであります。
 また、その報告の結果につきましても、行政機関が、原子力安全委員会の意見を聞いて必要な措置を講ずるものとすることも定めることにいたしました。
 こういったいわゆる強化によりまして、このような法的措置によりまして、ダブルチェックの実効性をより高めることができる、このように私どもは思ってお願いをしているところでございます。
土田委員 この規制調査の結果を原子力安全委員会で審査をする、そして、その原子力安全委員会から示された意見に基づいて、具体的には、経済産業省はどういった措置を講じておられるのか、これまでの具体的な例があったらば御答弁をください。
佐々木政府参考人 原子力安全委員会が行いました規制調査の結果は、随時、保安院に送付されてきております。原子力安全委員会の所感がそこに述べられております。
 具体的には、例えば、平成十三年四月の中部電力浜岡原子力発電所の保安検査に係ります規制調査においては、原子力安全文化の重要性が、また、同年十一月の関西電力高浜原子力発電所の保安規定の変更認可に係る規制調査においては、事業者の品質保証活動の重要性がそれぞれ指摘されております。
 保安院といたしましては、これらの指摘を踏まえ、例えば、前者につきましては、平成十三年六月の総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会報告におきまして、事業者による安全文化の涵養努力などソフト面に重点を置いた安全規制のあり方を検討していくべく方向性を打ち出しているほか、後者につきましては、本年六月の検査のあり方に関する検討会の中間取りまとめにおきまして、品質保証を原子力の安全確保システムの中に位置づけることなどを打ち出しております。
土田委員 原子力安全委員会の政策評価会議において、この規制調査については屋上屋を架すことになるのではないかという意見が出されたと聞いております。この指摘に対して、原子力安全委員会の見解と今後の実施方針についてお尋ねしたいと思います。
小中政府参考人 お答え申し上げます。
 原子力安全委員会におきましては、ジェー・シー・オー事故を踏まえまして、設置許可時のダブルチェックに加えまして、先ほど言いましたように、規制行政庁による設置許可段階後の建設及び運転段階の安全規制活動を確認することを目的とする規制調査を平成十二年度から実施してきているところでございます。
 この規制調査につきましては、安全委員自身が現地調査を含め実施しており、先ほどありましたように、調査により把握あるいは確認した事項を踏まえて、規制行政庁に対し必要な意見を指摘してきたところでございまして、より透明性の高い安全規制体制を構築する上で一定の効果を上げてきたものと考えてございます。
 先ほど先生がおっしゃいました政策評価会議における指摘につきましては、こうした効果を否定するものではなく、単なる追認にならないよう、実効性のあるやり方にすべきという趣旨の発言であったと承知してございます。
 一方、本法律案に盛り込まれました設置許可後の安全規制に関する安全委員会への報告等の件につきましては、構造規制、今規制庁でやっていることでございますが、に関する安全委員会の活動を法律上明確にするものであり、今後の規制調査の充実強化の観点からも重要な意義を持つものと認識してございます。
 さらに、当委員会としましては、今般のいろいろな不正の事故を踏まえまして、先月ですけれども、十月の十七日に原子力発電施設における自主点検記録の不正等に対する対応ということで安全委員会決定を行っておりまして、規制のあり方の見直しを行っているところでございます。
 今後の規制調査におきましては、いわゆる追認に陥ることなく、事業者からの直接の聞き取り等多角的な調査アプローチの導入を図りつつ、事業者による保安活動の充実、あるいは国の規制の実効性の向上等に資するような活動を行ってまいりたい、そういうふうに考えてございます。
土田委員 このダブルチェック体制の実施によって、規制行政庁と原子力安全委員会とそれぞれ異なる視点からチェックをしなきゃならない、しなければ意味がないわけでございますけれども、あるいは、補完し合う関係でなければ重複行政になってしまう。
 そこで、原子力安全・保安院と原子力安全委員会のそれぞれの審査に当たっての具体的な視点についてお尋ねしたいと思います。
佐々木政府参考人 原子力施設の設置許可に当たりましては、私ども保安院におきまして、専門家の意見も聴取しつつ、事業者からの申請書について、施設の基本設計ないし基本的設計方針が、法に基づきます災害の防止上支障がないものであること等について審査を行っております。
 一方、原子力安全委員会では、事業者に対する審査を重複して行うのではなくて、私ども原子力安全・保安院が行った審査の内容が妥当なものであるかについて、科学技術に基づいた客観的な立場から審査されるものでございます。
 また、ジェー・シー・オー事故を契機に開始されました規制調査につきましても、安全規制体制の多重補完性確保の観点から、原子力安全委員会が、原子力安全・保安院が行った認可あるいは検査の妥当性を調査しておられます。
 このように、ダブルチェックの体制は、一次規制行政庁と原子力安全委員会が補完し合って、安全規制の信頼性の一層の向上を図るという趣旨でございます。
土田委員 原子力安全・保安院と安全委員会の技術系の職員の数、あるいは経験年数、あるいは専門職種、これについてお答えください。
佐々木政府参考人 まず、専門職種に関する御質問でございますけれども、原子力安全・保安院において、原子力安全規制を所掌する課に配属されております技術系職員につきましては、そのほとんどが原子力工学、機械工学、電気工学、土木工学、物理学など原子力安全に深く関係する学部の出身であります。新卒で採用する職員につきましては、それぞれの試験区分に応じた国家公務員試験を経て採用されております。
 また、平成十二年度にジェー・シー・オー事故を受けて保安検査官制度が導入されまして、サイトに常駐する検査官が今約百人に倍増されて以降は、原子力産業界で活躍した技術者などが広く中途採用されておりまして、保安院におきまして、原子力安全規制を専門に担う職種として五十五名が採用されております。
 次に、経験年数についての御質問でございますけれども、新卒採用された職員で安全規制実務のまさに中核、中心を担う職員は、おおむね十年以上の原子力安全規制部局での経験を積んでおりまして、また、これら職員が他の部局に配属になる際には、電力保安行政、基準認証行政など、規制行政に関する視野を広げてもらうような知見あるいは技能を深められる配置を考えております。
 また、中途採用者につきましては、原子力産業界で二十年以上の実務経験を持つ技術系職員が安全規制に従事をいたしておるところでございます。
 このように、私どもの原子力安全・保安院では、原子力安全規制に係る行政経験を積んだ職員と産業界で実務経験を積んだ職員とを保安院に適切に配置をいたしまして規制行政を遂行しているところでございます。
小中政府参考人 職員の経験年数と専門職種についてでございますが、安全委員会における技術職員につきましては、安全規制に関連する専門知識を有し、原子力規制に多くの経験を有する者がその職についているというところでございます。
 具体的には、技術系職員が四十五名いるんですが、そのうち、原子力工学を専門とする者が十三名、原子力工学に密接に関連する機械工学、化学あるいは建築学、物理学などの専門知識を有する者が三十二名在職してございます。
 これらの技術系の職員につき、経験年数でございますけれども、原子力安全規制に関連する業務に十年以上従事した者が五名、五年から十年従事した者が八名でございます。五年以下従事した者が三十二名、こういうふうになってございます。
 なお、ジェー・シー・オー事故以降、いわゆる専門的な技術能力を高めるという意味で、研究機関等から、原子力に関する研究開発等に長年の実績を有する者、約四十名程度でございますけれども、非常勤の技術参与として、事務局の所掌に関する調査あるいは分析に関する事務に参画してございます。
 このように、原子力安全委員会の事務局につきましては、原子力の安全の確保に係る基準あるいは指針の策定など、原子力安全委員会の活動を支援あるいはサポートする上で適切な技術的、専門的な知識を十分有している、そういうふうに考えてございます。
土田委員 原子力安全委員会から規制行政庁に対して設置許可に関する答申を行う際に、重要事項の指摘を行った例があるんでしょうか。あれば、総件数とともに、過去五年でも十年でもいいんですが、その件数についてお答えください。
小中政府参考人 設置許可に際して重要事項の指摘を行った例ということでございますけれども、平成九年から十三年度までの過去五年間でございますけれども、答申した件数は約五十九件でございます。そのうち、重要事項の指摘を行った件数は六件でございます。約一割ぐらいでございます。このうち、いわゆる軽微なもの以外の少し重要なものであって、原子炉安全専門審査会や燃料安全専門審査会の審議を行ったものは十九件ございます。そのうち、重要事項の指摘を行った件数は四件ございます。
 ちょっと具体的なことを言いますと、最近といいますか、平成十二年の九月二十四日に答申を行ったのですが、そのとき指摘した事項におきまして、日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更、これにおきまして、ちょっと技術的で細かいんですが、最高断面平均線出力密度に対する制限値の遵守状況についての確認、これは、順次つくっていきまして、かつ、運転していくときにどういう状況になっていくかということを順次確認していく。実は今年度の三月と五月にいろいろ、使用前検査とかそういう段階で一応確認はさせていただいた、今後も、定常運転になるまで確認していく、そういうものでございます。
土田委員 次に、罰則の強化のことについてお尋ねをしたいと思います。
 今回は、組織的な不正が行われたということから、重大な違反事件に関しては法人重課を科していくということで、最高罰則が三億円ということになるわけでございますが、例えば、出力百万キロワットの原子力発電所を一日とめまして火力発電所にしますと一日一億円の費用がかかるということなどが言われておって、原子炉をとめることはコスト負担が非常に大変なんだということがあるわけですね。
 そこで、法人重課を導入することによって、組織的な犯罪というか不正事件を防げるんでしょうか。
西川副大臣 今回の法改正のねらいは、事業者の安全確保活動における責任でございますとか義務を明確にすることがねらいでございまして、これによりまして、今回さまざまな問題を生じておりますいわゆる自主点検について法律上位置づけを明確にして、電気事業者が行うべき自主検査の範囲、項目、こういうものを明確にし、検査記録の保存を義務づける、これによって、不正があった場合、事業者の内部の調査だけでは不十分と考えられる点から、保守点検を行う事業者に対しましても報告を求めることができるといたしているところが眼目でございます。
 今先生お尋ねの法人重課は、私が申し上げましたこうした前段の措置と相まって、不正防止に大きく効果を発揮するものだというふうに思っております。
 こうしたことによって、電気事業者が、原子力発電所の安全確保よりも定期検査をスケジュールどおりに行うことを優先させるというような形式的な事態は今後発生しにくくなる、こういうふうに考えております。
土田委員 次に、保安検査についてお尋ねしたいと思います。
 品質保証体制の向上を図るために非常に有効に活用すべきであるというふうに考えるわけでございますけれども、この制度が導入された後、事業者においては具体的にどういった変化があったのか、また、保安制度が所期の目的どおりに機能しているのかどうか、これについてお尋ねしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 保安検査制度は、平成十一年に発生いたしましたジェー・シー・オーの事故が、原子力事業者による保安上の規定の重大な違反が原因であったことを踏まえまして、原子炉等規制法の改正により、平成十二年度に導入をされたものでございます。
 制度導入後、これまで約二年間の保安検査におきましては、実用原子力発電所に関しましては、保安規定に違反する事例はありませんでしたけれども、的確な保安活動を実施するために改善すべき、または改善することが望ましいとの趣旨で指摘を行った案件が約五十件程度ございました。
 事業者は、指摘事項を踏まえまして、保安活動について所要の改善を行っているほか、全般として保安規定を遵守することの重要性について意識の浸透が図られてきておりまして、保安検査を導入したことによる一定の効果が私どもあったと思っております。
 一方、今般の事案の発生というのは、法的な位置づけがない自主点検において生じたものであったことに加えまして、事業者において現場限りの判断が習慣化していたこと、原子力部門以外からの監査が行き届かなかったこと、安全確保活動の過程や記録、保存等事業者の品質保証活動に対する認識が不十分であったことなどが要因だと思っておるわけでございます。
土田委員 指摘があったのは五十件ぐらいだと、ほとんど軽微なものばかりで、軽い指摘ばかりで、それほど大きな内容は指摘がなかったと思うんです。今大臣がお答えになりましたけれども、やはり自分たちでまず問題点の洗い出し、その実効性を高めることが非常に必要でございますので、ぜひその件についてもよく御指導をお願いしたいと思います。
 次に、常時原子力発電所の運転管理の確認、指導を行っている原子力保安検査官としては、今回の東京電力の不正事件に対してどのような問題意識を持っているのかというお尋ねをしたいと思います。また、今般の事件を踏まえまして、自分の活動の問題点をどういうふうに総括しているのか。あるいはまた、この原子力保安検査官制度の実効性の向上に向けた今後の取り組みについて、全体的なことをお尋ねしたいと思います。
佐々木政府参考人 現地に駐在しております原子力保安検査官でございますけれども、原子力発電所の運転等の規則を定めた保安規定に関する事業者の遵守状況を確認する保安検査を年四回実施するほか、日常におきましても、原子力発電所の巡視や事業者からの聞き取りなどによりまして、事業者の運転管理状況の確認を行ってきたところでございます。
 今回の一連の事案の発生は、事業者におきまして現場限りの判断が習慣化していたこと、あるいは原子力部門以外からの監査が行き届かなかったこと、安全確保活動の過程や記録、保存等事業者の品質保証活動に対する意識が不十分であったことなどがその要因であったと考えております。
 国といたしましても、事業者が品質保証について取り組むべきことが保安規定にも規定されておらず、原子力保安検査官が法令に基づく検査を行う対象になっていなかったというようなことから、検査官として、このような点につきまして十分注意が払える状況ではなかったと考えております。したがいまして、このような不正を防止する有効な検査を行い得なかったということが言えると考えます。
 今回の法案の実施にあわせまして、保安規定の見直しを行い、事業者の品質保証活動につきまして国の要求事項を明確にし、そして検査の対応に加えることにしていきたいと考えております。
平沼国務大臣 今院長からも答弁をさせていただきましたけれども、現地の原子力保安検査官が保安検査や日常の巡視等において事業者の品質保証体制を厳正に確認することによりまして、原子力保安検査官制度がより実効性のあるものとして運用されるように努力をしてまいりたい、このように思っております。
土田委員 この法案の審議に当たって既に何時間も時間を費やしておりますし、まだ続くわけでございますが、多分、以前事故があったときも同じような質疑がなされたんじゃないかと思うんです。また新たにこの法案をつくって規制を強化して安全性がアピールされていくというような繰り返しをしているような感じがするんですね。
 原子力安全委員会の松浦委員長が、個人の責任を追及するのは簡単かもしらぬけれども、個人と組織の解明をしないことにはこういった犯罪はなくならないんだというようなことを言われているようです。あるいは前回の参考人招致のときの町長さんも、人間性の問題だということもおっしゃった。
 採算性の問題もある、個人的な問題もある、組織的な問題もあるわけでございますが、いわゆるこの組織と個人の関係の解明をどうしてもやらないことには、ここでしっかりやっておかないことには、また同じような事件が発生して同じような質疑をしなければならないんじゃないかという感じがするわけですが、この松浦委員長の意見に対する大臣の見解を、お考えをお尋ねしたいと思います。
 この法案を成立させることによって、こういった同じような事件や事故はなくなるのか、同じようなですよ、違う事故はあるかもしれませんけれども、なくなるのかということをお尋ねしたいと思います。
平沼国務大臣 松浦委員長のそういう御指摘というのは、私は妥当な御指摘だと思っております。
 そういう意味で、私どもとしては、今回の事案に対して、東京電力の二十九案件について徹底的に解明をし、今回の問題が発生した要因としまして、東京電力の本店あるいは原子力発電所の組織体制に問題があったこと等について、ある意味では明らかにすることができたと思います。
 また、今回の事案の中で、やはり個人の問題も当然あったと思いますし、それが組織ぐるみ、こういう形になったことも事実でございますから、そういったところをやはりしっかりと踏まえて私どもは今回の法改正をさせていただきました。
 そして、実際に動いているものですから、土田先生御指摘のように、これからもその他の分野では、いろいろな問題は絶対に起こらない、こういうことは断言できませんが、今回のような事案の再発防止に対しては非常に大きな歯どめになる、私はこのように確信をしております。
土田委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
村田委員長 大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 最初に、平沼大臣に単刀直入にお聞きしますが、先ほどもありましたけれども、今度の法改正で、東京電力を初めとした電力各社で起こっている点検記録の隠ぺいや不実記載、虚偽報告あるいは定期検査の妨害などなどの不正事件は完全に防止できるのかどうか、単刀直入にお聞きをします。
平沼国務大臣 直前の答弁でもちょっと触れさせていただきました。人間のやることというのは、一〇〇%完全というものはあり得ないと私は思っています。それをいかに少なく、そして、でき得る限り努力をしてその率を本当にゼロに近づけていくということが私どもは非常に大切なことだと思っています。
 今回の一連の事業者による虚偽の報告あるいは隠ぺい、データ改ざん、そういったもろもろのことに関して、今回お願いしている法律では、それぞれ評価委員会あるいは検討委員会、そして我々の内部調査、また事業者の取り組み等々、そういったものが盛り込まれてできている法案でございますので、私どもとしては、一〇〇%ということは人間社会ですから言えませんけれども、相当程度これは防止することができる、このように思っております。
    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕
大森委員 では、以下、今の大臣の御答弁のとおりのものであるかどうか、個別に具体的にお聞きをしてまいります。
 今回の法改正案の核心部分である電気事業法第五十五条の改正に関連して、まず何点かお聞きします。
 今回、再発防止のいわば目玉として、自主検査を法的に位置づけることが打ち出されました。ところが、火力発電所などでは、現行法でも従来から自主検査が義務づけられておりました。これに対し、一度事故を起こせば、火力発電所とは比較にならない大変な被害が及ぶおそれのある原子力発電所については、この自主検査が義務づけられてこなかったわけであります。この点の理由についてまずお聞きをします。
佐々木政府参考人 従前、原子力発電施設の安全上重要な施設については、国が直接、定期検査の項目として検査を実施してきました。安全上比較的そのレベルが低いものについて、これを電力事業者におきます自主の点検としてきたものでございます。
大森委員 そうしますと、原子力発電所は、火力発電所における自主検査に該当するものとして、今御回答のあった自主点検の形で行ってきたということになるわけですね。
佐々木政府参考人 それぞれ対象の設備は違いますけれども、基本的にはそのとおりでございます。
大森委員 五十五条第一項で、今回、原子力発電所にも定期自主検査が法的に位置づけられ、第二項で、技術基準適合義務がかけられることになりました。これによって電気事業者は、従来から実施してきた自主点検よりも厳しい点検を実施しなければならないのか、それとも、国がこれまで実施してきた定期検査の内容について、国のかかわる部分がこれによって減少することになるのか、この点はいかがでしょうか。
佐々木政府参考人 基本的には、国の定期検査の項目は、当分、現状を維持することと考えております。
 二つ目は、法定化、自主検査化されることによりまして、その対象設備については国がいつでもフリーにランダムにアクセスできるようにしていこうということでございますので、対象の設備が、従前よりも国が関与する範囲が相当に広がるという意味では規制の強化と考えられます。
    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕
大森委員 当分の間は現状を維持ということは、いずれは現状よりは小さくなる、国の検査の部分が減少するということになるわけですね。
佐々木政府参考人 これにつきましては、慎重な技術的な検討も必要でございますが、技術的な実績あるいはいろいろな技術の進歩等をいろいろ考慮して考えるべきことかと思います。
大森委員 いろいろあると思うんですが、いずれにしろ、定期自主検査の法制化に変わって、国の定期検査はそのように変化をするということになると、直接にかかわる部分については減少するということになると思うんです。
 加えて、第五十五条の第三項の規定、この内容について確認をしておきたいと思います。
 四点あります。第一点は、省令で定める「特定電気工作物」とは具体的にどのような設備になるのか。二番目は、「一定の期間が経過した後」とは、具体的に時間的にどれくらいの長さを想定しておられるか。それから三つ目、「技術基準に適合しなくなると見込まれる時期その他」、これを定める省令、これは今問題になっているいわゆる維持基準のことだと思いますけれども、この内容がどういうものになるのか。そして四点目は、引き続いてその次の「省令で定めるところにより、」という形で、方法を省令で定めるとなっておりますけれども、これがどのような内容になるのか。
 この四点、簡潔に明らかにしていただきたいと思います。
佐々木政府参考人 まず第一点でございますけれども、対象設備の範囲を決める必要がございます。二つ目は、評価の方法、項目を決める必要がございます。それから、時期についてでございますけれども、評価をする時期につきましては、定期検査の時期と同一にすることと考えております。それから、三点目が維持基準であったと思いますが、これにつきましては、現在、省令に定める項目として、今後いろいろ技術的な検討が必要でございますけれども、基本的な性能的な考え方を省令に定めまして、具体的なスペックについては、民間の規格を国自身が評価をしてこれを採用できるような組み方にしたいと考えております。
大森委員 私は、今、五十五条の三項をそのとおり順番で聞いたわけなんですが、「特定電気工作物」について具体的に何を指すか、この点については御回答がなかったように思いますが。
佐々木政府参考人 現在考えておりますのは、安全上重要な機器といたしまして、機器そのものは、今、国が定期検査でやっております対象機器はすべて入れようと考えております。
大森委員 そうしますと、第三番目の維持基準、省令で定める中身については、具体的に、主要には今後の検討にゆだねられるということになるわけですが、この法案の一番核心部分である五十五条の第三項、この内容によっては法案の性格全体が影響を受けるわけですね。そういう点で、これをもっと明確に国会の審議でもされる必要があるのではないかと思います。
 東京電力の前社長の南氏は、一連の不正事件について、これはきょうの答弁にもありましたけれども、どこまで届け出る必要があり、どこまでは届け出なくてよいのかが不明だったから今度の事件が起きたんだ、こういう説明、こういう発言が大体貫かれております。それが今回の維持基準の提案の大きな根拠にもなっておりますし、東電の調査報告書もほぼ同様の趣旨が述べられております。
 ですから、結局、今回の法改正というのは、こういう南前社長の主張等にこたえようということとなるのではないでしょうか。
平沼国務大臣 委員から、東電の前社長の発言によって今回の維持基準をやる、こういうことですけれども、これはもう委員御承知のように、実はずうっと検討が進んできておりまして、南社長の発言以前から、そういう必要性があるという形でいろいろなところで検討が進んできたところです。また、午前中の質疑にもありましたように、欧米等においてもそういった維持基準というものが採用をされているわけでありまして、そういう観点で我々としてもやはり維持基準というものを導入すべきだと。
 しかし、その際、現在のいわゆる安全の基準の水準を下げるものではない、やはり現在の安全の水準というものを維持しながらこれから形づくっていくわけですけれども、その際は、原子力の専門家の皆様方の御意見をしっかり聞き、また、学識経験者の検討もしていただいて、そして、そこで検討結果が出てきましたら、それをパブリックコメントに付して慎重に検討してつくる、こういうことでございまして、繰り返しになりますが、東電の前社長が言ったからこれを法案化する、こういうことではないことはぜひ御理解をいただきたい、このように思っています。
大森委員 この維持基準の問題についての研究等がかなり以前から行われていることは当然承知しておりますけれども、結果として、東電の前社長等がおっしゃっている内容に今まさにうまいぐあいに合致しているということは間違いないと思うんですね。
 東京電力の最初の不正事件の二十九件はもとより、その後の総点検で数々の報告漏れ等が明らかになったわけでありますけれども、今回の法改正でこういうのはすべてきちっと報告されることになるかどうか、この点はいかがですか。
佐々木政府参考人 どのようなふぐあいを国に報告すべきであるという基準が必ずしも今まで、不明確な点があったことを認めざるを得ないと思っております。
 私どもは、国への報告は、規制上の目的を明らかにして、いわゆる行政指導的な報告といったような体制を改めるべく検討しなければいけないと思っております。その点につきましては、少し詳細にいろいろ、技術的な立場、規制の目的、あるいはそのデータをどのように活用していくかといったことを総合的に考えまして、国に対する法律上の報告義務の範囲をもっと定量的に明らかにしていきたいと思っております。
大森委員 今回の法改正提出の大きな理由の一つに、一連の報告漏れなどの再発防止のためということが言われているわけですが、今の院長の御答弁では、どういう報告を必ずしてもらい、どういう報告はしなくてもいいということを明確にしたいということの意味でしょうけれども、しかし、それでは、この法案でそれがどうなるのかということがはっきりしなくなると思うんですね。
 そこでお聞きしますが、第五十五条第一項及び第三項では、いずれも「その結果を記録し、これを保存しなければならない。」と規定しているだけで、経済産業大臣あるいは保安院への報告は義務づけられておりません。その理由は何でしょうか。
佐々木政府参考人 確かに、今までは義務化されておりませんでした。私どもは、今まで、定期検査の実施の際に確認するものもございました、また、あるいは保安検査というような形で確認するものもございましたが、明確な定めはございませんでした。
大森委員 今、改正案についてお聞きをしたんですが、五十五条の一項及び第三項、ここで記録と保存は義務化されておりますが、報告は義務化されていないのはなぜかとお伺いしました。
佐々木政府参考人 今後、国の定期検査及びいわゆる法定の自主検査でその記録をきちんと報告させることにいたします。
大森委員 もしそうであるならば、この条項で、なぜあえて記録と保存のみにとどめたのか。もし定期検査で報告ということであれば、それをきちんと法律の中に盛り込むべきじゃないでしょうか。
佐々木政府参考人 定めなければいけませんのは、実際にどういう実施の体制でやっているか、検査の方法であるとか、あるいはどういう人がその保守とか検査に携わってやった人であるとか、全体的な組織のマネジメントとか、そうしたことを今回きちんと記録の保存をさせることによってこれを確認する、実際にきちんとその行為が行われたかについては記録からきちんと確認をする制度に変えていくということでございます。
大森委員 そうすると、報告は義務づけない。
 ですから、維持基準がたとえ厳しいものであっても、それから、事故につながるような評価の間違いがあっても、何かきっかけがない限り、この保存し記録されたものを見る機会がないじゃないですか。保安院が報告を求めない限り明らかにならないと思うんですね。これでは今までと変わらぬじゃないかと周辺自治体の方も当然お感じになると思うんですが、いかがですか。
佐々木政府参考人 今回提案させていただいております法案では、いわゆる定期自主検査の実施の体制等につきましては、独立行政法人の検査官にやらせることとさせていただきたいと考えております。
 したがいまして、今先生御指摘の、報告の事項が今までとどう変わるかということとは別にしまして、実際には、検査官がいわゆる任意に自主保安の体制がきちんとできているかということをきちんと記録を見るわけでございますから、従前よりもさらに深く踏み込んだ、実際にどういうことが行われているかを随時確認することになります。
 したがいまして、国に対するいろいろ法令上の報告事項について今までとどう変わるかということでございますけれども、先ほどちょっと誤解があったかと思いますが、私どもは、今回は報告について全体の見直しをしまして、法令あるいは通達で今までやってきたものについて、全体を見まして、きちんと法令上位置づけるべきものをはっきりさせなければいけないという趣旨でさっき申し上げました。
大森委員 検査官が今まで見なかったからいろいろ問題が起こっているわけでしょう。今度は全部見るから記録と保存でいいんだというのは、これは大変問題だと思うんですね。
 これは先ほど大臣から、かねてから維持基準については検討していたという答弁もありましたけれども、しかし多くの皆さんが、そのことを承知しながら、なぜ今維持基準の導入かという強い意見を出されているわけですね。
 二十日に行われた本委員会での参考人の意見陳述でも、出席された平山征夫新潟県知事は、なぜこの時期に維持基準か、今回の不正事件の全容解明と原因究明がまず第一ではないかということを強く述べられております。そして、同様の趣旨の要望書を、原子力発電関係団体協議会が政府に要望書を二十日に出されたところであります。
 これは、かねてからそういう維持基準について検討していた、しかし、こうした事件があったそのさなかにこういうものを提案することへの不安やそういう思いが込められていると思うんですが、そうした意味で、原発所在自治体の首長や住民の声にもっと真剣に耳を傾けるべきではないかと思いますが、この点、大臣いかがでしょうか。
平沼国務大臣 先ほど答弁をさせていただきましたけれども、やはりそういう不安が皆様方にある、それから疑念があるということは私は理解できます。
 したがいまして、これをやるに当たりましては、原子力の専門家の皆様方と、あるいは学識経験者の皆様方、そういった方々で徹底的に検討をしていただいて、そしてしっかりしたものが出てきて、それをまたパブリックコメントに付して、そして地方自治体、立地の皆様方にもそのことをよく御説明する、こういう手続をとらせていただいて、そういう疑念あるいは御不安に対してはきちっとした取り組みをさせていただきたい、このように思っています。
大森委員 平山新潟県知事が言われた原因究明がまず第一という点で、この県知事も原因究明はまだであるということを明確にこの日の意見陳述の中でも述べておられます。この点では、東京電力はもとよりでありますけれども、経済産業省、とりわけ原子力安全・保安院の取り組みはやはりおざなりであったと指摘せざるを得ないと思います。
 東京電力についても、これは大臣のけさ方の答弁でもそうでありますが、原子力部門が一種独特のテリトリーをつくっていて、外部からの監督が及ばないとか、限られた者での独善的な判断を習慣化させたというような形で、言葉だけが上滑り、いわば文学的な表現だけで、一体、いつどこで、どういう状態でどんな判断をしたのか、具体的に誤りが起こった原因と責任を明確にしなくてはならないのに、それがされていないと思うんですね。社長がやめたところで、それは再発防止の実効ある対策にはならないと思うんです。
 この間の一貫した行政の側の姿勢として、自主保安が原則ということで、事実上、保安の確保を事業者任せにして、必要な監視を怠ってきた実態にメスを入れていない。今回の不正事件の原因についても、ただただ法律上の不備、制度上の不備に解消しているのではないかと思います。
 しかも、それも、先般我が党の塩川議員が指摘をしましたように、今回、独立行政法人等が一定の検査等もやるわけでありますけれども、肝心の技術陣などは、電機事業者や関係メーカーからの出向がそのまま横滑りする。ですから、独立行政法人という看板の塗りかえだけじゃないかということだと思うんですね。
 この平山新潟県知事が指摘したように、私が指摘したように、原因究明はまだされていない、責任の所在が明確化されていない、そういう中で、この看板の塗りかえだけでは無責任なやり方じゃないかと言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 十月一日に公表した東京電力の問題になっております二十九案件についての報告は、事実の解明に加えて、今回の問題が発生した要因として、東京電力及びその原子力発電所の組織体制に問題があった、こういったことについて私どもは明らかにすることができた、こういうふうに思っています。
 安全規制行政として明らかにすべきは、記録の改ざんやあるいは隠ぺいにつながった要因でございまして、今回の調査においては、事業者の社内における意思決定の仕組みやその運用の実態などを明らかにすることができた、このように思っています。
 その結果、東京電力においては、原子力部門に対する全社的な監視体制が十分機能しておらず、問題が場当たり的で処理されるなど、品質保証活動の面で問題があったことが不正の要因として挙げられております。また、安全文化の面でも、同社では法令遵守の徹底取り組みがなされていたにもかかわらず、それが十分浸透していなかったことも明らかになっています。ですから、このように、一連の調査を通じて事態は解明された、私どもはこのような認識を持っています。
 私は、このような点を念頭に置きまして、今回の法案で、事業者の責任や守るべきルールの明確化を図ることといったことはもちろんではございますけれども、品質保証活動と安全文化の向上について官民が協力して取り組むことにより再発防止の効果を上げていかなければいかぬ、このように考えているわけでございます。
 私どもとしては、事案が起こった後は、どうして起こったかという評価委員会を私の直属のもとで開かせていただいて、本当に精力的に検討をしていただいて問題点を抽出して、そして今度は再発防止のための検討委員会も、これまた一生懸命検討していただいて、そして中間報告、そういった形で取りまとめることができまして、私どもとしては、これをやはり基礎にして、これからさらに安全の徹底、そして国民の信頼回復に努めていかなければいけない、このように思っているところでございます。
大森委員 今回の事件の教訓を酌み取り、その中で、本当に安全確保という点で厳しくそれを見直し、厳しく今の一連の法令その他を見直し、それを改めていくという点で、例えば、一つさっき指摘しましたように、定期自主検査の結果と評価結果の報告義務が欠落しているという問題を指摘したわけなんですが、そういう安全確保を厳しく貫かれていないもう一つの事例として、同じ五十五条の第四項、定期自主検査に係る体制の審査結果の取り扱いについてもこれは出ていると思うんですね。
 この第四項では、定期自主検査について、経済産業大臣が行う審査を受けなければならない、電気事業者に対してこういう規定がされているわけでありますけれども、この定期自主検査の結果からもたらされる原子力発電所の運転に係る情報は、一つの原子力発電所にとどめておくものではないと思うんです。当然ですね。安全確保の観点から、すべての原発で、地域住民やあるいは国民全体に、広く国民的にそれは情報が共有される、そういうことで活用されていく必要があると思うんですね。これは、維持基準にかかわる評価でも同様のことが言えると思うんです。
 したがって、この第四項で言う、「行う審査を受けなければならない。」その審査結果についてもきちんと情報公開を行うべきではないかと。先ほど大臣の答弁にもあった中間報告でも、この自主検査の組織、体制について審査し、審査結果の情報を公開すべきである、こうなっているわけですね。ですから、この第四項の審査結果の報告義務と公表、これは明確に規定すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
佐々木政府参考人 今の御指摘の、報告ということと情報の公開ということをちょっと整理してお話ししたいと思うんです。
 私どもが、国として事業者から、一定の行政行為をしたものは、すべて安全委員会等に報告をし、どういう判断をしましたと、これもすべて公開をされます。国が実際に行った定期検査の結果につきましても、安全委員会等へ報告をし、これも公開をします。独立行政法人が行った審査、そしてまた、その結果を国が評定したもの、こういうものもすべて基本的には安全委員会にも御報告をして、公開されるものでございます。したがいまして、今、報告がある、ないということ等、私どもは基本的に、情報はすべて公開をしていくという原則に立っております。
 また、今後、いわゆるトラブル、あるいは非常に軽微なものでありましても安全評価を実際に必要としているようなものについては、基本的に公開をしていくというのが基本姿勢でございます。
大森委員 では、今私が申し上げた第四項、経済産業大臣が行う審査を受けなければならない、この審査結果も当然公開をするということですね。では、それは確認しておきたいと思います。
 では、別の角度からお聞きをしたいと思います。
 今回の検査結果の報告について、先ほども言いましたように、制度的な不備が強調されているわけですが、これらとの関係で、これまでにもこの報告に関しては何度か大臣通達等を出されてまいりました。
 一九七七年三月三日に出されたのが、通産大臣、当時は田中龍夫氏ですが、大臣通達で、「原子力発電所における安全確保対策の強化について」こういうものが出されております。同時に、一九八八年には、十一月八日に、原子力発電運転管理室という名称で「大臣通達による軽微な故障等の報告について」と、事実上、この大臣通達が原子力発電運転管理室名で修正をされております。
 まずお聞きしますが、七七年の通達、これはどういう理由で出されたのでしょうか。それで、八八年の管理室の文書は、なぜ出されたのでしょうか。それぞれ簡潔にお答えください。
佐々木政府参考人 昭和四十八年、関西電力の美浜発電所で発生をいたしました燃料体の損傷事故がございました。当時、電気事業法百六条の報告を怠っていることが判明をいたしまして、その後、こうしたことが二度とないようにということで検討がなされまして、五十二年の大臣通達になったものと理解しております。
大森委員 八八年は何ですか。
佐々木政府参考人 八八年の運転管理室の通達は、大臣通達における「軽微な故障」の解釈をより明確にするべきだという議論がございまして、安全に関係するトラブルについて確実に報告を受けるために発出されたものと理解をしております。
大森委員 七七年通達は、軽微な故障についても報告を求めているわけですね。この趣旨が厳格に運用されておれば、今回の不正事件が制度的不備で起きたという言いわけはもうできなくなってくるわけですね。
 そこで、それぞれの通達でどういう変化が報告件数等にあらわれたか、その傾向についてお答えいただきたいんですが、一つは、原子力発電が我が国で始まって以降七七年通達が出るまで、それから二番目は、七七年通達から八八年の管理室文書が出るまで、そして三番目は、八八年の管理室文書が提出された以降、法律に基づく報告及び通達に基づく報告について、どういう傾向になったのか、傾向についてお答えいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 まず、法律対象でございますけれども、一九六六年、昭和四十一年に我が国最初の原子力発電所が運転を開始しましてから、七七年、昭和五十二年までの間におきましては、一基当たりトラブルの報告件数の平均は、法律対象三・〇件でございました。
 七七年から八八年までの間におきましては、一基当たりのトラブルの報告件数の平均は、法律対象で〇・九件、通達対象で〇・八件ということでございました。
 八八年から二〇〇一年までの間におきます一基当たりのトラブルの報告件数の平均は、法律対象で〇・四件、通達対象で〇・二件と、中長期的に見て減少傾向にあります。
大森委員 八八年通達以降、これによって明白に減少をしているわけですね。これは原子炉一基当たりの数字でも同様だと思うのです。
 ということは、管理室文書を出したことが直接影響していることは明らかであり、これは報告についての緩和ということであったわけですね。そういうことですね。
佐々木政府参考人 通達の意図は、軽微なものについて、定義をより明らかにする、報告の対象を、安全上の必要性を判断してとるということで、結果的には、従前、通達によってとっておりましたもののうち、明確にした分、減った分は確かにあると思います。逆に、ふえた分もあったと思います。
大森委員 七七年の通達では、軽微な故障も含めてとなっている。八八年の通達では、「軽度な場合を除く。」というのが、この通達の中に何度も出てくるわけですね。
 そこで、では、軽微な故障と軽度な場合とはどう違うのか、お答えいただきたい。
佐々木政府参考人 基本的には、軽微な故障というのは、運転上の、これを継続できるかどうか、また、安全上の問題が、おそれがどの程度のものかということで、軽微であるか、軽微でないかという判断をしております。
大森委員 恐らくこれはだれもわからなかったと思うのですね。今の答弁を聞いて、本当に区別はよくわからぬと。
 はっきりしていることは、大臣通達で、「軽微な故障についてもこれを当省に速やかに報告し、適切な措置を講ずるよう、ここに改めて強く要請する」と、非常に強調しております。さらに、軽度であるかどうかを判断するのじゃなくて、まず報告しなさいと言っているわけですね。ところが、管理室文書は「軽度な場合を除く。」と。報告すべきかどうか、ここは重要な点だと思うのですが、要するに、電力会社に全部任せてしまったというところに最大の問題があると思うのですね。
 不正事件を起こした電力会社の責任は言うまでもありませんけれども、問題は、こういう運用をしてきた経済産業省そして保安院の安全問題に関する姿勢に問題があったと私は指摘をせざるを得ませんけれども、大臣、いかがですか。
平沼国務大臣 原子力保安院長から、七七年そして八八年の件数の御報告をさせていただきました。
 確かに、件数では八八年以降減っていることは事実です。しかし、その中では、前回なかったものも入っているし、また、ふえたもの、減ったもの、それは、内容で、あると思います。したがって、私は、その八八年通達が軽度になったからということは一概に言い切れない、こういうふうに思っておりまして、八八年通達の十項目においてきちっと細分化をして、そしてその中での報告、こういう形に相なっております。
 したがって、私は、そういう中で、件数が減ったことは事実でありますけれども、それが安全性を軽視した、こういう精神で行われたものではない、このように思っているところでございます。
大森委員 やはり事実を率直に見て、そして、なぜそうなったか、そこは真剣な検討が必要だと思うんですね。それは、先ほども言いましたように、「軽度な場合を除く。」と、その判断を全部業者に任せてしまったというところに最大の問題があるし、そういう安全行政、運用をやってきた行政の責任は、やはり大きいと私は思うわけですね。
 この問題は、単に緩めたかどうか、今回の事件への影響はどうかという問題のほかに、政府が本当にあらゆる面で安全規制を重視するといういわば哲学、安全への確固たる哲学に欠けているんじゃないかということを示していると私は思うんですね。どんな小さな情報でも、安全に関するものは関係者が共有して安全確保のための財産にしていく観点がやはり欠けているんじゃないか。
 先ほども引用しましたけれども、法制検討小委員会の中間報告、ここでも、「軽微な事象に係る情報の公開と共有化」という項目をわざわざ設けて、「こうした軽微な事象自体は、安全規制を行う上でも問題のないことであるが、当該事象に係る情報を事業者、原子炉等のメーカー、大学・研究機関、規制当局など産官学で共有し、活用していくことは、より大きなトラブルの予兆を察知し、これを未然に防止する上で重要なことである。」と、非常に重要な指摘をしていると思うんですが、こういうことは、今回の法案改正では全く排除してしまっていると思うんですね。これはどうですか。
佐々木政府参考人 情報の公開についての今後のやり方といたしまして、私どもが、国の規制に基づく報告、こうしたものは、もうすべて当然公開でございますけれども、それに達しない、いわゆる軽微なトラブルあるいは傷等のふぐあいがあったものにつきましても、基本的にはこれを公開していくという考え方で取り組んでいきます。
 そのためには、事業者にただそれをやれと言うだけでは十分でないと考えておりますので、国が認可をしております保安規定を活用して、そうした方向へ持っていきたいと考えております。
大森委員 維持基準そのものも、やはりそういう報告についての一定の線をあらかじめ設けてしまうと、今言ったような法制検討小委員会が示した「軽微な事象に係る情報の公開と共有化」という見地と、私はこれはやはり真っ向から反するものになるのではないかというふうに思います。
 そこで、オーストラリアのインシデント報告制度、これは今オーストラリアの民間航空機が採用している制度でありますけれども、CAIR、この制度、これについて保安院は何か承知をされているでしょうか。
佐々木政府参考人 オーストラリアのインシデント報告制度でございますけれども、航空安全の改善に寄与することを目的として、航空業務従事者からのものも含めまして、広く航空安全に関する情報を収集してこれを共有する制度であるというふうに聞いております。
大森委員 今答弁がありましたように、オーストラリア政府が国内の航空会社に求めている制度で、航空機の安全に関する情報はすべて報告させ、関係者に広く利用させる、こういう仕組みですね。この制度を運用してオーストラリアの航空会社は世界一安全と言われているわけですね。
 これは、まさにそこに一つの安全に対する哲学が示されていると思うんですが、こういうものも大いに参考にして原子力の安全に役立てるべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
高市副大臣 先ほど先生が御指摘になりました、例の原子力安全規制法制検討小委員会の中間報告に書かれてございました「軽微な事象に係る情報の公開と共有化」を進めるためにということで、提言が出ておりました。
 これは、先ほど院長が説明されましたように、保安規定の中に軽微な事象を含めトラブル情報を収集、整理する体制を位置づけるなど、安全規制体系の中に組み込んでいく重要性が中間報告で指摘されております。
 また、この委員会は、国が、軽微な事象に係る情報が広く利用可能となるデータの集積基盤の整備、これが産官学の連携のもとで進められるように積極的な役割を果たすべき、こういう指摘もしてございます。
 オーストラリアの制度を御紹介いただきましたけれども、非常に共通点といいますと、公開、共有化という概念に当たると思うんですけれども、経済産業省といたしましては、この中間報告の指摘事項を踏まえまして、軽微な事項の情報の共有化、公開ということで、適切な措置を講じる予定でございます。
大森委員 ぜひこのインシデント制度あるいはハインリッヒの法則などを大いに日本の原子力行政にも積極的に生かしていくということを要求して、時間が参りましたけれども、最後の一問だけさせていただきたいと思います。
 政府は、今回の不正事件で、東電とともに長期にわたってこの問題を国民に隠し続けてきたわけなんですが、同時に重大なことは、日本の国民に隠しただけじゃなくて、国際的にもそうした態度をとって、国際会議でも不正隠しを行って、国際機関、各国政府に真実を語ってこなかったということであります。
 四月に行われた原子力の安全に関する条約第二回検討会合で日本政府代表が、東電の原発などの運転管理は適正であるなどと報告しております。これは、国みずからが国際会議で不正隠しを行っていたことになるんじゃないかということが一つ。
 それから、政府団の代表団長を務めたのは保安院の藤冨審議官ですね。保安院の東電不正問題の調査委員の一人であります。ことしの四月といえば、既に記録改ざんの当事者からの証言も得て、不正の事実をつかんでいたはずでありますね。ですからこれは、ある意味では国際的な背信行為にもつながる行為と言わなくてはならないと思います。
 しかも、今回、日本政府の報告についての国際原子力機関からの、内部告発の問題での、制度や目的、機能、これまでの経験など個別の質問もやられて、それに対する回答では、内部告発の有無や調査中の事実さえ明らかにしていないわけですね。これは、国際的な信頼の確保という点でも極めてゆゆしい問題だと思うんです。
 これは、何らかの訂正あるいは謝罪等を当然行う必要があると思いますけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。
佐々木政府参考人 今、先生が御指摘の国際会議でありますが、本年四月に開催されましたIAEAの原子力安全条約の第二回会合のことをおっしゃっているかと思います。
 その会合では、各国が安全規制の状況についてお互いにレビューをし合うというために集まって、いろいろな意見交換をする会議の場でございます。その会議には、六カ月前に、それぞれの国の現況について報告書を作成しまして、そして、国々の間で意見の交換をしてその会議に臨むことになっております。
 したがいまして、今先生がおっしゃった、四月の時点でこのことが既にわかっていたはずではないかとか、あるいは当時申告の案件があるということを書いていなかったではないかという御指摘を今受けましたけれども、この二年間のうち、この二件の申告の期間と、現実に私どもがこれだけではなくてほかにもあるという話を聞いてスタートしたのがことしの五月、いわゆる二十九件のうち二十七件はことしの五月でございました。
 報告書の中には確かに触れておりませんけれども、実際にその時点で日本国として規制上うそをついたとか、決してそういうことはございません。真摯にきちんと日本の状況を報告書として作成して議論をしております。
大森委員 四月段階では相当判明していたはずでありますよ。しかも、調査委員の一人が団長を務めているということで、適切に運営しているなどと言うことは、少なくともこれはおかしいと感じなくてはやはりおかしいのではないかということを指摘して、私の質問を終わります。
村田委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 本改正案は、電気事業法と原子炉等規制法という二つの法律の改正を行うための三条から成る法律です。第一条は電気事業法の改正、第二条は原子炉等規制法の改正、第三条でもう一度電気事業法を改正するものです。
 問題の維持基準関係は、第三条で電気事業法五十五条の改正として盛り込まれております。ただし、具体的な内容は経済産業省令によるとされており、維持基準、健全性評価基準の実体は、法案の審議が進んでいる現在も不明です。
 原子力発電の検査における根本的な変更とも言える維持基準導入が、このままでは国会への具体的な提示もなく、省庁側への白紙委任という形で行われることに私は疑念を抱かざるを得ないことを申し上げて、質問に入ります。
 残念なことに、来週二十七日には質疑終局、採決ということで、八時間余り審議をしてきましたけれども、なかなか質問に対して答弁がかみ合わない。ぜひきょうはかみ合うような御答弁をお願い申し上げます。
 私は、冒頭、大臣に質問をいたします。
 今週の月曜日、十一月の十八日ですが、議員連盟、原子力安全規制行政を考える議員の会の調査団の一員として、東京電力福島第一原発を視察しました。その後、福島県庁を訪問して、佐藤知事と意見交換の場を持ちました。
 このたびの原子力発電で発覚した一連の不正に対し、佐藤知事の怒りは、東電だけではなく、国の原子力安全・保安院にも向けられておりました。その理由は、昨年二月、福島県は、MOX燃料のデータ捏造事件を受けて、事前了解したプルサーマルの受け入れを凍結したそうです。その際に保安院は、原発は安全の旨のチラシを原発立地町住民に全戸配付したと、強い怒りを持って述べました。
 問題の不正の内部告発を受けて、調査中のことであり、そういう状況を知りながら平然とそのようなチラシを配付できる保安院は、とても安全文化の向上と言える役所ではないと知事は断じたんですね。保安院への不信感の大きさを、当日調査に行った私たち七名の衆参の国会議員は目の前で聞いたわけなんです。
 維持基準導入についても触れました。原発に欠陥があるから、さあ維持基準だと言われても、問題が起きたから導入ということは火に油を注ぐものであると。地元住民はそれが、それがというのは維持基準導入が判断できるような状況にはないと。突然の導入が時期尚早であることを指摘され、さらに、国会での審議も経ず政省令で維持基準の中身が決められることは国会軽視とも指摘をされました。
 原子力政策のあり方にも言及されまして、これまでのように、原発に反対すると電気がとまるというような広報ではなく、原発は危険であるという大前提に立って、だからこれだけのことをしていますと情報公開をして広報するような進め方に大転換すべきではないかと語りました。
 また知事は、エネルギー政策の決定プログラムが閣議決定で決められている現状を批判しまして、国会で議論、関与できる仕組みが検討される必要があり、そのためには、国民に検討材料を提供して、一緒に考える情報公開体制が必要という見解を私たちの前で示しました。
 まだあります、三十分会いましたのでね。
 知事は、私自身は原子力そのものに反対ではないがという前置きのもと、安全性を真摯に求める知事の発言の中に、私は、原発立地自治体としての首長の苦しさ、そして、参考人質疑でも新潟県の知事に来ていただきましたけれども、原発とともに歩まざるを得ない立地県ならではの、原発と共存共栄してきた歴史の重みから来る突然の維持基準導入に対する不信感の高まりというものを、私たち七人は全員で感じ取ってきたわけなんです。
 私は、知事の怒りというのは、国の立地県に対する原子力政策の強引な押しつけとも思うわけなんですね。参考人質疑の中で新潟県の平山知事は、今度の法案に対して、国から事前の説明とか意見を聞く場がありましたかと私が質問しましたら、ほかの原子炉の圧力容器の気密性のことがあったときに少しあっただけで、正式なそういう場はなかったというように答弁されております。
 大臣、立地県に対する国の責務とは、このような法案をつくるときの国の責務とは何なのか、大臣に私はお尋ねしたいと思います。
平沼国務大臣 今、立地で大変御協力をいただいている福島県の佐藤栄佐久知事の、お会いになられたときのお話を承ることができました。立地県に対しては、先ほど来の答弁の中でも言わせていただいておりますけれども、やはり信頼をいかに醸成して、そして説明責任を果たしていくか、このことが大切だと思っているわけであります。
 今、この法案について、新潟県の平山知事は別の案件のときにその梗概を聞かれた、こういう話でございますけれども、私どもとしては、もしそれが事実でございましたら、それは申しわけないことであったと思っておりまして、やはり説明責任というものはきちっと果たすようにしていかなければならない。本当に、電話でもすぐ連絡ができるし、現地にも当省の担当もおるわけでありますから、そこのところは私ちょっと調べてみますが、やはりそういう法案等に関しては、立地の責任者たる知事あるいは市長、そういった方々には、その内容を国会と同時進行で御報告するのは当然のことだ、それが説明責任の一つである、私はこのように思っているところでございます。
大島(令)委員 その説明責任が私は果たされていないと思うんですね。
 ここに、昨日、「原子力発電等に関する要望書」ということで、立地県の十四の道県の知事の連名で要望書が、経済産業省、文部科学省、原子力委員会、原子力安全委員会に出されておりまして、当然大臣もお目通しだと思います。その中で、やはり法案に対して慎重審議を求めているわけなんですね。
 ということは、説明責任といいましても、大臣が一方的に説明をしたということと、説明責任を果たすということは、相手がどのくらい納得し、理解してくれたか。だから、説明だけではいけなくて、説明責任というのは、相手の理解と納得までが私必要だと思うんです。ですから私は、この段階で、立地県の知事さんたちにはその説明責任はまだ果たしていないと思っているわけなんです。このことに関して、大臣、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 原子力のその事案が起こったときも、当委員会でこの案件については御審議をいただきました。そしてまた、この臨時国会が始まって、皆様方に大変熱心に質疑をしていただきまして、そしてこの法案を審議させていただいています。
 そういう中で、私どもは、対外的にはこの国会の審議の場を通じて一つの説明が行われている、こういうふうに思っておりますけれども、しかし、そういう立地の方々についてはやはりきちっと説明をする必要がある、そういうふうには思っているところでございまして、私は現時点で、そういう形で立地の皆様方には、私どもとしては、これからも連絡を密にして説明をさせていただきたい、こういうふうに思います。
佐々木政府参考人 ちょっと事実関係だけ申し上げさせていただきます。
 特に青森、福島、新潟県の行政部局を通じまして知事にも上げていただきたいというようなことについては、それぞれ節々で今までやってまいりました。中間報告がまとまった段階もそうでございます。再発防止の委員会の報告書がまとまったときもそうでございます。また、法案ができた段階でもそうでございますが、たまたま、法案ができた段階でのそれぞれの地域への説明は、格納容器の説明と同じタイミングでございましたことも事実でございます。それぞれの県、それから市町村には、きちんと私どもから、指定職の人間が何人かのグループをつくってそれぞれ説明に行って意見交換をしているところは事実でございます。
大島(令)委員 しかし、一昨日、「原子力発電等に関する要望書」というものが知事名で出ているわけなんです。
 今回の東電のデータ不正事件に端を発して、経産省は、原発を抱えている全部の電力会社に報告を求めて、それが十一月の十五日に集約されたと思いますけれども、私は、この法案というのは、今回の不正が特に目立ったところの立地県だけではなく、原発を抱えているところすべての共通の問題であるから法律の改正になったと思うわけです。そういう意味では、保安院長が、三つの県だけ特別に厚く説明したような言い方をされましたけれども、それはやはり違うと思います。
 そして私は、衆議院は二十七日採決の予定でございますけれども、今からでも遅くはありませんので、やはり大臣は、この十四の知事に対して説明責任をきちっと果たすべきだと思うんです。
 というのは、特別要望ということでとてもきついことが書いてあるんです。読み上げますと、「今回の一連の不正問題については、」「国の安全規制に対する信頼を根本的に揺るがす極めて重大な問題であり、事業者の責任は当然のごとく厳しく問われるべきであるが、国の責任も極めて重大である。」「また、国が不正に係る情報を入手しながら、二年もの間これを明らかにせず、一方ではその間、この情報を伏せたまま国民に対して原子力発電所の安全性等を言い続けてきており、これは国等の言葉を信頼せざるを得ない立地地域住民の気持ちを踏みにじるものである。」ここにも「国」が出てきております。そして、「原子力発電は、地域との揺るぎない信頼関係があって初めて共存できるということを、国、事業者は肝に銘じるべきである。」ということで、国と事業者に対する強い不信感、これが特別要望となってここにあるわけなんです。
 私は、佐藤知事に会ったときに、法案に対しては、知事さんということで、立法府ではないということで遠慮されたかなとは思いましたけれども、私たち立法府では法案の審議をしますから、知事という立場で、地方自治体の長として、やはり言いにくいというような雰囲気をすごく感じたんですね。
 しかし、法律はここでつくっても、原発は立地県の方々の理解がなければできないわけですから、やはり私は、法案を提出する前にきちっとこういうことを説明することが説明責任だということを大臣に申し上げたいと思います。
平沼国務大臣 先ほど、新潟県の平山知事さんの、ここに参考人として来られたその中で、格納容器を説明したときにちょこっと聞いた、そういう御指摘がありました。
 したがいまして、私の答弁は、何にも説明責任を果たしていないという形で誤解をされてしまっては困るわけですけれども、やはりこれまでも、節目節目には私どもとしては、立地の県あるいは市町村、そういったところにはそれぞれ手分けをして説明をさせていただいているわけです。
 それから今、要望書のことについてお触れになられましたけれども、その要望書の中のことに関して、それは今回、こういった大変信頼を裏切るような、一つのデータの改ざんですとか、あるいは隠ぺい、虚偽の報告、こういった形で不信感を持たれた、その結果、そういう要望書が出てきたわけでございます。
 そういう意味では、今回の法案というのは、その反省の上に立って、そして我々は、評価委員会で、いろいろな各界各層の方々に参画をしていただいて真剣にその原因究明をしていただき、そして、我々役所自身もまた事業者も真摯に個々に取り組んだところでございます。また、再発防止ということで、この再発防止に関しても検討委員会で、非常に皆様方お忙しい方々でしたけれども、本当に集中的にやっていただいて一つの成案を得たわけであります。
 そういうものに立って今回、少しでも事態をよくする、そして今後こういう事態を起こさない、そのことを担保するためにこの法律案をお願いしているわけでございまして、私どもとしては、そういう御要望書に極力おこたえをする、こういう基本姿勢の中でこの法案の審議をお願いしている。
 したがいまして、私は、各地方自治体の立地の方々にも、こういう法案をやらせていただいている、そして皆様方に一生懸命御質疑をいただいている、このことはおわかりいただけるのではないか、このように思っているところでございます。
佐々木政府参考人 私どもの自治体との関係での説明責任について、なお事実関係だけ報告させていただきたいと思います。
 節々に指定職を派遣して説明をさせていただいていると申し上げましたが、先ほど三県を申し上げましたけれども、例えば福井・敦賀、あるいは静岡・浜岡といったようなところも行っております。そしてまた、全国の所在県の事務局の会合がございます。これには我々も、きちんと担当者、また場合によっては指定職も派遣をして、節々に説明をしております。法案の原案も説明しているところでございます。
 また、県の議会議長の会もございますが、これは私が直接行って説明しておりますし、所在市町村の首長さんの会にも私が直接行って説明をしておりますし、また、市町村の議会議長の会もございますが、これは私が直接行って御説明をしております。今求めがあればとにかく、他の場合であっても、もうとにかくきちんと説明に行く。
 基本的には、こうした全国の所在の県あるいは市町村の協議会の場を通じて資料は各自治体にすべて行っております。これは事実でございます。
大島(令)委員 今保安院長が述べられましたように、そこまでしてでもなおかつ一昨日特別要望ができているというほど、立地県と国とは信頼関係が崩れていることのあかしがこの特別要望書だと私は思うわけなんです。そのことを保安院長、肝に銘じていただきたいと私は思っております。
 次の質問に入りますけれども、本改正案の電気事業法百六条、これは報告の徴収、百七条は立入検査ですが、事業者に対して、経済産業大臣は、定期検査と自主検査の「報告又は資料の提出をさせることができる。」そして「検査させることができる。」となっておりますけれども、いずれも義務規定というふうには読み取れません。さらに、原子力安全・保安院に資料の提出があっても、それを情報公開するための規定はどこにも見当たりません。
 これまでも、情報は事業者と原子力安全・保安院の間を行き来するだけで、保安院は、私たちが情報をくれと言うと、企業秘密とかノウハウを理由に情報をずっと隠し続けてまいりました。これが今回の不正の温床であり、保安院自身も、法改正の目的の中で国の説明責任と情報公開の充実を挙げていたはずです。私は、この法案を見まして、情報公開のシステムはどのようにつくられているのかお伺いしたい。
 また、このままでは、第三者的立場の技術者等が、事業者が行った健全性評価の内容を客観的に外部評価することは不可能であると思います。このことに対して答弁を求めます。
平沼国務大臣 前段は私から答弁させていただき、後段は保安院長から答弁いたさせるようにいたします。
 原子力発電所の自主検査等の情報には、これは大島先生も御承知のように、核物質の防護の観点でございますとか核不拡散の観点から、開示すべきでない情報、また、ちょっと御指摘になられましたけれども、工業所有権等の知的所有権が含まれる情報が存在することから、法令に基づきまして、情報公開を一律に義務づけるということは困難であるということがございます。
 しかし、原子力に対する国民や地域住民の信頼を回復していくためには、規制当局である原子力安全・保安院及び原子力事業者は、国民の視点に立ちまして、できるだけ情報公開を行うことによりまして透明性を向上させていくことが求められている、このように認識をしております。
 保安院では、これまでも、事故やトラブルだけではなく、許認可や検査など、規制結果の実施状況をホームページあるいは記者発表などにより積極的に公開をしてまいったほか、重要な発表事項については、幹部職員が地元に直接出向いて説明をするなどの努力をしてまいりました。
 今般の一連の事案を私どもは教訓といたしまして、説明責任を果たして、国民や地域住民の信頼の回復を得るべく一層努力をしていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
佐々木政府参考人 先ほど、報告徴収について、国が報告徴収を求めることができるという規定の「できる」についてでございますけれども、法令上の用語になりますけれども、国の権利、そして被規制者の義務、これは、報告徴収については罰則の規定が伴っておりますので、この「できる」という書き方で相手に対して義務と罰則を定義している、こういうことでございます。
 それからもう一つ、健全性の評価はだれがどういう手続を経てやるのかということであります。
 まず、健全性の評価について、評価をする者がどういう手法で評価をするかという基準を明確にしなければなりません。それは、国がその判断基準を明確にするものであります。その判定の方法によりまして事業者が安全評価をしたものについては、一つは、国の定期検査におきましては、国の検査官がこれを評価いたします。そしてまた、事業者が法定でやらなければいけない定期自主検査におけるそうした評価につきましては、独立行政法人の検査官がこれを評価することにして、その結果は国の方に参りますので、我々は総合的にこれを最終評定いたします。それらの結果は、いずれも私どもとしてきちんと総合評価をし、そして安全委員会にも報告し、世の中にもきちんと公表をする、こういうことでございます。
大島(令)委員 先般、事件が報道されて、九月三日に私ども社民党は、脱原発プロジェクトチームで福島の第二原発に行きました。そのときに、今おっしゃったように、傷の箇所と傷の状態を示してほしい、補修データを見せてほしいと東電の副所長に申し上げたところ、知的財産権の関係で本社の了解を得ないと渡せないということで、今回のまさに核心である事件となったそのものが、いまだかつて私たちは目に触れることができないんですね。国民の安全を守るべく国会での審議という場の参考資料すら私たちには入手できないようになっているわけです。何かというと企業秘密、何かというと企業の知的財産権であるということ、本社の意向を聞かないといけない、やはり企業というのはそういう組織なんです。
 今保安院長が、評価したものは公開をするとおっしゃっていましたけれども、経済産業大臣が入手した原発関係の情報は行政情報となりますね。これは、いわゆる一般的な情報公開法、非開示項目に一部入っていると思います。しかし、この情報公開がなぜ求められるかというのは、原子力発電に関しては企業のノウハウよりも安全性の担保の方が非常に重要だから、私はこの情報公開が必要だということを先ほどから申し上げているわけなんです。
 一般の国民がアクセスできるようなことがこの法案の中では担保されていないのではないかということを質問させていただいているわけですので、システムとか制度ではなくて、できるのかできないのか、そのことを御答弁いただきたいと思います。
佐々木政府参考人 経済産業省が入手した原子力発電所の安全に関する情報のうち、今先生がおっしゃったように、行政文書に当たるものの開示は、情報公開法に基づき、同法において不開示情報とされる情報を除き開示しなければならないことになっております。
 原子力発電所の安全に関する情報のうち、情報公開法上不開示情報とされる情報としては、特定の個人の識別を可能とする情報、いわゆる企業秘密のような企業の権利利益に関する情報のほか、核物質防護の観点や核不拡散の観点から開示すべきでない情報などがあり、こうした情報を含めて一律に情報開示を行うことは困難であると考えております。
 このような制約はありますけれども、原子力安全・保安院といたしましては、原子力に対する国民の皆さんあるいは地域住民の信頼を回復していくために、安全規制行政に関する透明性の向上を図る必要があると考えております。
 これまでも、事故やトラブルに関する情報のみならず、安全規制に関する許認可や検査の結果など、安全規制の実施状況については、例えば保安院のホームページへの掲載や記者発表などを通じた情報提供を行ってまいりました。今回の反省に立って、重要な発表を行う際には幹部職員が地元に出向いて説明するなどの取り組みを行ってきたところでございます。
 今後も、安全規制を担当する立場から、国民や地域の皆様に対する説明責任を果たすということから、鋭意情報の提供には一層努めてまいりたいと考えております。
大島(令)委員 ということは、安全規制行政に係る情報は今後公開されると。それは、私たちはどういう物差しでそれを信頼したらいいんですか。今、国や東電に対して信頼がない中で、今細かな、安全規制行政という漠然とした形で言われましても、何と何が公開されるのかわからないわけなんですよ。何を基準に考えたらいいんですか、だれが決めるんですか、安全規制行政にかかわるものというのを。
佐々木政府参考人 先ほど、非開示というのはごく限定されたものであると申し上げました。
 私ども規制当局が一定の行政判断をするために事業者等から提出をさせた資料、判断に至った根拠の資料、こうしたものはすべて私どもの判断で、あるものは基本的に原子力安全委員会にも報告し、その時点でも公開されますし、私どもが取りまとめた報告書も、きちんとプレスへの対応も従来もしてきたところでございまして、規制の情報にかかわるものについては、情報公開の態様から考えれば、基本的にはもうほとんど情報公開されるというのが我々の基本姿勢でございます。
大島(令)委員 では、維持基準について質問します。
 この内容を、私たちは、原子力安全・保安院に政令委任ということで白紙委任することは納得できません。
 経済産業省は、民間規格である日本機械学会の維持規格を考えているようですが、この内容は明らかにされていません。何度も私たちは市民の方々と、この日本機械学会が作成した「維持規格二〇〇二」という資料を要求しましたが、著作権が設定されていることを理由にいまだ出していただいておりません。閲覧は少しできたというふうに聞いております。ところが、この維持基準を検討した審議会では、委員の学者の皆さんにこの「維持規格二〇〇二」が配付されたと聞いております。
 法案を審議するのに必要だという私どもに提出すべきではないかと思うわけなんですが、保安院長、この委員会の委員に出してくださいますか。
佐々木政府参考人 今先生おっしゃいましたように、日本機械学会の最新版の二〇〇二年版につきましては、これはまだいわゆる最終版になっていないと聞いております。
 ただ、この機械学会のこうした維持規格は、著作権法の保護の対象になっているものでございます。このため、規格を著作者の了解なしに複製することは法令上禁止されておるということでございまして、提出することができませんでした。
 国会での御審議において必要であるということでありますれば、日本機械学会に対して複製をとることの了解を得てお届けをしたいと思います。
大島(令)委員 それでは、私は必要としておりますので、ぜひ……(発言する者あり)全員ですね、全員に、これは今まで本当に秘密のベールで、出していただけなかったんですが、出してください。
 アメリカのASMEセクション3という基準は、設置基準、建設時の基準で、今回問題になっているのは、運転中のASMEセクション11というもの、これが「維持規格二〇〇二」のもとになっていると私どもは今まで説明を受けてきたわけなんです。それに対して、著作権云々ということでなかなか、法案の審議の前に私たちは何度も学習会をやっても出してくださらなかったわけなんです。やはり遅いと思っています。
 私は、この民間規格の活用が、部分的に活用するというふうに経済産業省は説明をされてきましたが、では、どのように活用されるのか、お伺いしたいと思うんです。
 維持基準として活用されるこの民間規格は、傷やひび割れを評価して使用を中止させるというメカニズムになっているのか、それともう一つは、逆に、評価期間が設定された場合、その期間は無検査にして原子力発電所は稼働してもいいのかどうか、それも含めて御答弁をいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 まず、先ほど御指摘になりました機械学会の維持規格でありますけれども、これは、二〇〇〇年版は当然機械学会が市販をしております。また、アメリカの機械学会も、検討中のものはまだ出ませんけれども、年次版のものは世界に市販をしている、こういう性格のものであるというのをまず事実として申し上げたいと思います。
 それから、維持基準の関係でございますけれども、今後どうしていくのかということでございますが、私どもは、民間の規格である機械学会が検討してきたものについては、できるだけこれは尊重をしたいと思っておりますが、基本的には、最終的には国の責任においての規格になりますので、科学的、合理的な立場から、専門家の御意見もお伺いしながら、国自身としての判定、判断をさせていただく手続がまず必要でございます。
 そのためには、私どもも、いろいろな専門家から成る技術的な検討の場をきちんと設けて、それぞれの一条一条を、機械学会で今定めております検査の方法であるとか、それが許容される欠陥であるのかないのか、もし許容されないということであれば、それに基づいてどういう方法で傷の進展の評価をするのか、その結果、安全水準を満たしていなければ、当然それは取りかえとか補修をしなければいけない、その判断の根拠をきちんと示すための規格でございまして、今後、各専門家あるいはステークホルダーの皆さんの御議論も十分いろいろお聞きしながら、一条一条をきちんと議論をしていきたいと考えております。
大島(令)委員 この民間規格は、私どもは今手に入っていないから想定して言うんですが、いわゆる傷やひび割れがあっても、評価期間が設定されまして、その期間は稼働している、だから安全基準の切り下げになるのではということを心配しているわけなんです。この件に関してはどうなんでしょうか。
佐々木政府参考人 評価の期間は、一律に決まるものではございません。これは、実際に構造物自身が持っている安全裕度がどの程度あるかによっても変わります。また、進展のスピードによって変わります。したがいまして、ある一定の安全水準に達するまでにあと三年とか、あるいは場合によっては五年とかということは、それは判定の方法によって出てくるわけでございまして、基本的に十年の評価をするとか五年の評価をするとかそういうことではなくて、それぞれの構造物の起こった現象に応じて、判定の方法に応じて評価の期間を決めるということであります。
大島(令)委員 ですから、やはり東電の元社長の南社長が私どもに九月六日に会ったときに、現在の維持基準は、建設時と同じ全く新品だから大変なんだということなんですね。今院長は、何年間かというふうにおっしゃった。だから、建設時の基準、それと運転中の基準を、今度は自主検査を新しく法律で定めるんだからと言いますけれども、私たち、安全かどうかを考える立場の国民にとっては、そういうことは余り関係ないんですよね。おかしい状態のまま稼働されていたら、それはやはり信頼を欠くことなんです。そういうことがきちっと担保される制度にならないのではないかということを私は申し上げたいわけなんです。
佐々木政府参考人 傷があった場合に、その傷が安全を損なうようなものであるかということをきちんと評価するという仕組みでありますから、傷があって、このこと自身が安全上問題ないということをきちんと説明するというのを、一つの判断基準に基づいてきちんと行ってまいります、こういう考え方であります。
大島(令)委員 では、次は炉心シュラウドのことについて質問します。保安院長です。
 この材料であるステンレスの材質SUS316Lは、応力腐食割れに強いと言われているにもかかわらず、柏崎刈羽の二、三号機に見られるように、設置八年から九年で既にひび割れが出ております。それよりももっと材質が悪いと言われていたSUS304は、十数年かかってひび割れが出ているそうなんです。この一番いいとされているステンレスのSUS316Lに対する応力腐食割れの原因の究明は完全になされたんでしょうか。
佐々木政府参考人 結論から申し上げますれば、今まさに途上でございます。
 今先生御指摘のとおり、低炭素化いたしましたSUS304Lステンレス鋼、あるいは耐食性のすぐれたSUS316Lのステンレス鋼というものが採用されてきました。これらで応力腐食割れの発生がある程度抑制されてきたと考えておりましたが、昨年、福島第二原子力発電所の三号機のSUS316Lの炉心シュラウドにおいても応力腐食割れが発生したわけでございます。
 現在、各炉のシュラウドの状況を各溶接線についてすべて調べているところでございます。必要なものはボートサンプルをとるなりして原因究明も今やっているところでございます。今そんな状況でございまして、まだしばらくその原因の究明と対策には、より慎重にきちんと検討したいと考えております。
大島(令)委員 福島第二の三号機、これもH6aという水平線のところで、ほぼ全周にわたりひび割れが点在している。これは交換して四年目でなっております。これも一番いいと言われるSUS316Lです。
 そして浜岡原発、今とまっておりますが、この四号機もSUS316Lで、これも目視点検のほか超音波探傷試験においても、H6aの外側全周にわたりひび割れが点在、深さ十四ミリなんですね。皆さん、十四ミリといいますけれども、このステンレスの肉厚は四十ミリなんです。炉心隔壁ですから筒になっていますけれども、H6a、そこの溶接のところ、三分の一のところまでひび割れが全周にある。その中には原子炉そのものがあるわけなんです。
 私どもは、去年、浜岡原発で事故があったときに、同僚の北川議員と行きまして、放射線管理区域、二回防護服を着まして、赤ちゃんのおしりのような圧力容器の真下、制御棒のところまで見てきたわけなんです。それをカバーしている炉心シュラウドなんですよ。これの肉厚が四十ミリの十三ミリのところまで、全周にわたってH6aというところにひび割れがある。これが、今一番いいとされている、全国の多くの原子炉に使われているわけですね。
 しかし、もっと悪いことに、保安院長、浜岡原発の一号機は、もっと古いSUS304が取りかえられずに、今とまっておりますけれども、304がまだ設置されているんです。こういう情報に対して、やはり私たちは、技術に対する確固たる信頼を持てないわけなんです。
 私は、東電の経営陣と九月六日に会ったときに、一番早いのは、交換したんだからこのシュラウドを見て調査すればいいんじゃないですかと。南前社長はお見せしますと言ったんです。そうしたところ、原子力管理部長は見せることができないと。やりとりの末、サイトごとにプールに切り刻んで置いてある、現実にあるわけです。だから、すごい放射能があると思うわけなんですが、本当に原因究明をやろうと思ったらできるわけなんですね。やはり、このくらいのことを国民の前に私は示していただきたいわけなんです。
 今の浜岡原発の一号機の、古い形のSUS304、これを使用中止と保安院としては言えるのかどうか。
 それともう一つ、この原因究明に関しまして、実際に交換したシュラウドを東電は持っているわけですから、それに対して保安院は、専門的な見地から、原因究明できる材料が目の前にあるわけなんですから、それをする気があるのかないのか。時間が参りましたので、その二点、お答えいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 浜岡一号機につきましては、基本的に、今回いろいろな点検をしてきましたが、少しでもシュラウドに傷があるということ自身、炉の安全性に影響を与えるものではありません。今先生の御指摘で、浜岡の一号機については、今停止中でございますけれども、きちんと確認をさせていただきたいと思います。
 二つ目は、現に廃棄物の倉庫に昔の、取りかえ前のシュラウドを切り刻んだものがあるじゃないかというお話ですが、基本的には、今私どもは、傷のあるシュラウドの部分の一部を、ちょうどさじでとるように、ボートサンプルと申しますが、これによる金属の材料の組織の変化、こうしたものを顕微鏡写真等に撮って、通常は、こうした応力腐食割れについて、その進展速度であるとか、あるいは使われている圧力、温度等の条件と残留応力との関係がどうかとかいうようなことを調べるためには、そういう金属組織を採取して、これを比較していろいろ原因究明をするというのが常道でございます。そういう対応も今いたしておりますので、原因究明に一層取り組んでいきたいと考えております。
大島(令)委員 次回、続きを質問させていただきます。
 終わります。
村田委員長 次回は、来る二十七日水曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時八分散会


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