衆議院

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第9号 平成14年11月27日(水曜日)

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平成十四年十一月二十七日(水曜日)
    午前九時二十分開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 鈴木 康友君 理事 田中 慶秋君
   理事 河上 覃雄君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      小泉 龍司君    左藤  章君
      佐藤 剛男君    桜田 義孝君
      中山 成彬君    西川 公也君
      林  義郎君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      森  英介君    山本 明彦君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      井上 和雄君    生方 幸夫君
      江崎洋一郎君    小沢 鋭仁君
      金子善次郎君    川端 達夫君
      北橋 健治君    後藤 茂之君
      中山 義活君    松野 頼久君
      松原  仁君    三井 辨雄君
      山田 敏雅君    山村  健君
      漆原 良夫君    斉藤 鉄夫君
      工藤堅太郎君    大森  猛君
      塩川 鉄也君    吉井 英勝君
      大島 令子君    井上 喜一君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            白川 哲久君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁長官) 岡本  巖君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁電力・
   ガス事業部長)      迎  陽一君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院長)     佐々木宜彦君
   参考人
   (原子力安全委員会委員長
   )            松浦祥次郎君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十六日
 辞任         補欠選任
  塩川 鉄也君     吉井 英勝君
同月二十七日
 辞任         補欠選任
  松島みどり君     左藤  章君
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  生方 幸夫君     松野 頼久君
  小沢 鋭仁君     三井 辨雄君
  川端 達夫君     江崎洋一郎君
  北橋 健治君     井上 和雄君
  後藤 茂之君     金子善次郎君
  福島  豊君     斉藤 鉄夫君
  大森  猛君     塩川 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     松島みどり君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  井上 和雄君     北橋 健治君
  江崎洋一郎君     川端 達夫君
  金子善次郎君     後藤 茂之君
  松野 頼久君     生方 幸夫君
  三井 辨雄君     小沢 鋭仁君
  斉藤 鉄夫君     福島  豊君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)
 独立行政法人原子力安全基盤機構法案(内閣提出第七一号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長松浦祥次郎君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として資源エネルギー庁長官岡本巖君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長迎陽一君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長佐々木宜彦君及び文部科学省研究開発局長白川哲久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北橋健治君。
北橋委員 おはようございます。
 本案件の質問に入ります前に、昨今、エネルギーに関して非常に重要な政策を打ち出そうとされておられます。いわゆる石炭課税、また、それに伴いましてエネルギー特別会計の見直しについて政府内の議論が始まっておりますが、この点につきましてまず大臣の御所見を承れればと思っております。
 といいますのは、石炭課税のお話というのは、地球温暖化対策の中でこれからの課題というふうには私ども聞いておったわけでございますが、今回、突然といいますか唐突な感じでこの石炭課税の話が報道されまして、私どもの観点から見ると、地球温暖化対策という視点ならばもう少しきめ細かな配慮がなければ、例えば、ヨーロッパにおきましてもエネルギー課税については非常に慎重でございますし、あるいは産業界が非常に今厳しいときでございますから、グッド減税といったことも含めて、地球温暖化対策という視点ならばきめ細かな配慮がなさ過ぎますし、これは一体どういうふうにして唐突に出てきたのかということであります。
 そこでお伺いいたしますが、この石炭課税の一連のお話というのは大臣のリーダーシップによるものでしょうか。もしそうだとするならば、どういう意図を持ってこの政策を提起されているのか、お伺いいたします。
    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕
平沼国務大臣 おはようございます。それではお答えさせていただきます。
 今般のエネルギー政策の見直しは、経済財政諮問会議における総理の指示に基づきまして、地球環境対策、そして安定供給の確保、効率性の向上という観点から検討をさせていただいているところでございます。また、こうした政策の見直しにふさわしい歳出歳入構造の見直しを、石炭への新規の課税を含め検討いたしております。
 具体的に申し上げますと、石油特別会計においては、エネルギー政策と地球環境対策の一体的な推進を図るとともに、天然ガスシフトの加速化と省エネルギー・新エネルギー対策の拡充等を検討しているところであります。また、電源開発促進対策特別会計におきましては、原子力を初めとする長期固定電源への支援や、原子力の安全対策の強化を図る等の見直しを進めているところでございます。
 地球温暖化対策推進大綱では、第一ステップ、これは二〇〇二年から二〇〇四年まででございますけれども、そこで講ずる取り組みとして、省エネルギー対策、新エネルギー対策などによるエネルギー起源の二酸化炭素排出抑制対策を着実に推進することとしておりまして、こうした対策の強化により、地球温暖化対策推進大綱の着実な実施に努めていかなければならないわけであります。
 なお、今回のエネルギー税制の見直しは、こうしたエネルギー政策の充実強化に伴いまして、財源について、負担の公平の観点から歳入構造の組みかえを行うものでございまして、二酸化炭素排出抑制を主たる目的としたいわゆる環境税とは位置づけておりません。したがいまして、税によって環境の改善あるいは環境悪化につながる企業行動等をコントロールしようというものではございませんで、御指摘のいわゆるグッズ減税あるいはバッズ課税とは趣旨を異にするものでございます。
 また、協定制度というのがいろいろな形でございます。さまざまなタイプがあるわけでございますけれども、規制的手法を内容とするものについては国民経済上の評価が必要でございまして、私どもは十分な検討が必要だ、こういうふうに思っておりまして、今申し上げたような背景、観点から今検討を進めさせていただいている、こういうことでございます。
北橋委員 最初に、総理の方からの指示もあってということでございますが、私は非常に唐突な形で提起されたと思っております。
 といいますのは、エネルギーの間に公平な負担ということをおっしゃいましたが、ということは、今まで不公平なことを平然とやってこられたということになるわけです。そうではないと思うんですね。それは、ドイツを初めとしてヨーロッパでも、エネルギーに対する課税については、それぞれの固有の事情に応じまして非常に慎重な配慮をしております。それは、エネルギーへの課税が産業界、国民各界の負担へと転嫁されていくわけでございまして、そういった意味では、税収が欲しいから、石炭はかかっていないから取ろうか、こういうふうにもとれるわけであります。
 地球温暖化対策という観点から、環境省初め政府内部でよく議論をした上での提起であれば、これはわかるわけです。一つの方向性かもしれませんが、そういった意味では、少し安易に過ぎないだろうか。この間の政府の動きを見てまいりますと、医療費の負担増その他、いろいろなところで負担増があったわけでございますが、今回の税制大綱におきましても、多年度税収中立ということで、また将来は増税をしようかということで、私は、安易に税を取りに行こうという姿勢が見え隠れしてなりません。
 そういった意味では、石炭課税というのは、地球温暖化対策の流れに沿うている一面も何か説明の中であるようなんですけれども、基本的には違うんだということも御説明されているんですが、やはり少し安易にこの厳しい経済状況の中で増税をするというマイナスの面というのを非常に懸念するわけでございますが、その点についてのお考えはございますか。
    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕
平沼国務大臣 石炭に課税する、こういうことでございますけれども、石油税というのは、石油等の安定的な消費を可能ならしめるために必要な財源につきましては、広く石油等の便益を享受している者に負担を求めることが合理的である、こういう考えのもとに、納税者の皆様方の理解を得て、石油、天然ガス及びLPGに課税をしているものです。
 これは先生よく御承知のとおり、石炭につきましては、平成十三年度までに構造調整のため国内炭対策を実施してきたところでございまして、これまで課税の対象としてきませんでした。石炭は、二酸化炭素の排出割合は高いものの、資源の賦存量というのは非常に多いものがありまして、また安価な燃料として引き続き重要なエネルギー資源でございます。このため、石油特別会計予算の中において、環境負荷のより少ない石炭の利用技術、クリーンコールテクノロジーの開発や海外炭開発等の施策を講じているところでございます。このため、負担の公平の観点から、石炭を消費する者にも応分の負担をしていただこう、このことが適当と考えられるため、石炭を石油税の課税対象に追加することを検討しているところでございまして、確かにそういう意味では、私どもとしてはこれは慎重にやらなければいけないと思っています。
 したがって、石炭を利用していただいている業界の方々にも過度の負担にならないように、例えば原料炭には課税をしない、そういうようなことも含めて、やはりそこのところは慎重に配慮してやっていかなければならない、こう思っております。
北橋委員 この問題だけで時間をとるわけにいきませんが、いずれにしても、自家発を初めとして、産業界にとっては明らかにコスト負担増になっていくわけでございまして、本来ならば地球温暖化対策の一環として、やはりグッド減税あるいは政策誘導も含めた観点からの議論をよくしていただくように私どもからも要請をしたいと思っております。
 さて、本案件につきまして質問に入る第一でございますけれども、大臣に本会議でも質問させていただきましたが、やはり国民の皆さん方の中で、原子力発電所の安全規制に対する信頼というのが失墜したことはもう紛れもない事実でございまして、私は、大臣の辞任も含めて、これは重大な事態ではないかと指摘したところでございます。この一連の委員会での質疑、いよいよきょうは最終盤を迎えようとしておりますけれども、改めて大臣として、この行政責任という問題についてどのような総括的なお考えをお持ちか、明らかにしていただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 今回の東京電力における自主点検記録の不正に係る問題が発生いたしましたことは、エネルギー供給の基幹をなす原子力そのものに対する国民の皆様方の信頼を大きく損なうものでございまして、大変私は遺憾に思っているところでございます。
 当省といたしましては、同社に対しては、このような不正を惹起したことについて厳重注意を行うとともに、特別な保安検査の実施、定期検査の特に厳格な実施をする等異例の行政措置を講じました。また、同社は、格納容器の定期検査に際して不正な操作を行ったことが明らかになったことから、所定の手続を経た上で、一年間の原子炉運転停止処分を行うことにいたしたところでございます。
 一方、今回の不正問題の発端となった申告事案の調査については二年を要するなど、今回の原子力安全・保安院による対応についての御批判が非常に多く寄せられていることから、私直属の組織として、外部の有識者から構成される評価委員会を設置させていただいて、その調査過程の妥当性などについて御審議をいただきました。
 その評価委員会の中間報告での厳しい御指摘も踏まえまして、規制当局でございます当省の側にも調査の上で不適切な点があったことを率直に認めまして、その上で、原子力安全・保安院長初め関係職員の処分を行うとともに、必要な改善措置をとることといたしました。私も、そういう意味では、減俸、こういうような形でみずから襟を正さなければいかぬという形で処置をさせていただいたことでございます。
 私といたしましては、国民の皆様方の原子力の安全に対する信頼性を大変損なった、その責任は非常に大きいものを感じております。今後、今回のような不正問題の再発を防止するために、その対策を早急に講じることにより、原子力の安全確保に万全を期していくことが規制当局の責務である、このように思っているところでございます。
北橋委員 今回信頼を損なった責任のとり方は、再発防止あるいは原子力発電所に対する信頼を回復することに万全を期すというお話でございます。
 そこで、今回、原子力立地自治体の関係者の声、あるいはそこに住んでいらっしゃる住民の方々が一番切実な不安に悩まされているわけです。そこから今提起されている御意見というのはさまざまありますが、共通しているのは、今回政府が提案をされたいわゆる再発防止対策の関係は極めて不十分だという意見を表明されている、このように理解しております。
 例えば、現在は安全・保安院というのは原子力行政を推進する立場の官庁の一角に位置しているわけでございまして、住民の不安解消の一助になるように、この際制度改正を思い切って実現すべきではないか。つまり、原子力行政を推進する立場と安全規制の面でチェックをする立場と分離すべきではないか。それは決して十分な措置ではありませんけれども、政府の今回の出された法案では不十分であって、少なくともそれぐらいの荒療治というのは官庁の方もしないと前に進めないのではないか。非常に多くの方々がこの御意見を訴えておられます。
 民主党は、その考えも真摯に受けとめまして、昨日、野党共同提案の形で、原子力安全規制委員会設置法案を衆議院に提出させていただきました。ぜひとも、与党の皆様方にも真摯に御論議に参加をしていただいて、御賛同いただきたいと思っております。
 いずれにしても、三条委員会的なものをつくりましても、この制度改正によって原子力の信頼が十分に回復されるとは思っておりません。しかし、少なくとも、原子力立地自治体の長も含めて、せめてこれぐらいのことはやらないと住民の納得が得られないというこの切実な声に対して、大臣はどのようにお考えでしょうか。私どもはやはり、この際分離するという方向に向かってかじを切ることが、少なくとも今回の大きな不祥事を受けて再出発をするときに必要不可欠な措置だと考えているんですが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 この東京電力による一連の不正というものが白日のもとにさらされる、こういうことに相なりましてから、私のところにも、その立地の地域の首長さんあるいは議会関係者そして地域住民の方々がたくさんお越しになられました。そして、その中で、今委員御指摘のような御提案も私受けたことも事実であります。
 私どもも、この問題に関しては、やはりある意味では将来的にも検討をしていく事項だと思っておりますけれども、中央省庁再編の折にもこの問題に関していろいろ議論が出たところでございます。そのときに、日本は天然エネルギー資源の乏しい国であって、したがって、やはり中長期的に見たら原子力のいわゆる推進をしていかなければいけない。その推進をしていくに当たっては、推進する側が、原子力の安全性に関する知識あるいは原子力全般に対する知識をしっかりと把握して、立地地域あるいは国民の皆様方に説得力ある立場で説得をさせていただき推進を進めていく、こういう観点から、一次規制というのはやはり経済産業省のもとに置いて、そして、それだけでは不十分でありますから、内閣府に原子力安全委員会を設置して、そこでもしっかりとチェックをしていく、こういうダブルチェック体制をとったところであります。
 しかし、今回の一連の事案の中で、このダブルチェック体制、こういうものが十全に機能していなかった、こういうことでございますので、私どもは、今回お願いしているこの法案の中でも、さらに原子力安全・保安院のチェック機能を国民の皆様方に安心をしていただけるような形に強化する、さらにまた、原子力安全委員会もさらなる強化策を図って、そしてしっかり今回の反省の上に立ってその安全性を担保していく、こういうことでやらせていただきました。
 今後は、地元の方々を初め国民の原子力行政に対する信頼回復のために、原子力安全行政に万全を期すことが必要だと思っておりまして、原子力安全規制の強化でございますとか、原子力安全委員会との我々の連携の強化、さらには今御指摘の保安院のあり方等についても、私どもはさまざまな御意見を承りながら総合的に検討をしてまいりたい、このように思っております。
北橋委員 ダブルチェック体制を継続して、それぞれできるところから体制を強化していきたいという御趣旨でございますが、住民の方々が、自治体の長の方も含めて言っていらっしゃるのは、原子力を推進する行政機関の中にチェックする機能を置いておいていいのかということであります。
 そして、ダブルチェックとおっしゃいますけれども、内閣府のもとに置かれている安全委員会というこのシステムが、一体どれだけのスタッフを持ち、どれだけの審査能力を持っているかを考えると、第一義的に、やはり引き続き安全・保安院というのは非常に大きなチェック機能を果たしていくわけですね。
 そういった意味では、やはりこの保安院というものを切り離さないと原子力に対して安全規制の面で心配だという声は、もっと政府は真摯に受けとめていただきたいと思っているんです。
 これは、議論を続けましてもなかなか溝が縮まらないのかもしれませんが、ただ、先ほどの大臣の答弁の中で、将来的には検討すると言われました。つまり、原子力の推進に当たっている経済産業省から切り離すということを我々は求めているわけですけれども、これは大臣としては、検討をやっていただけるんですね。
平沼国務大臣 先ほどの御答弁の中で、そういったいわゆる保安院のあり方についても、我々は、これから総合的に、そして将来的に検討をしていきたい、こういうことで申し上げました。
北橋委員 後ほど同僚委員の方から質問もあろうと思っておりますけれども、この三条委員会の設置が今すぐにできないということに残念ながら至る場合には、せめて現在の安全委員会のチェックシステムを強化する修正が不可欠である、こう考えておりまして、それは後ほど御指摘をさせていただきたいと思っておりますが、我々としましては、原子力行政というのはあくまでも立地市町村の関係者の、住民の方々の信頼を回復できるかどうかにかかっているという意味において、今回、三条委員会の設置に政府が御同意いただけないことを大変遺憾に思っております。
 そこで、こういう状況が続きますと、非常に心配な状況がまた新たに出てくるのではないか。それは、今後の原子力政策がこういう形で再出発をしたときに、私は十分な信頼回復には至らないだろうということを非常に懸念しております。
 そこで、今のところ、政府は二〇一〇年を目標に十基ないし十三基の新規の原子力発電所を増設するという計画をお持ちでございます。そして、その間をとって十一・五基ということで、地球温暖化対策で原発はこれだけの貢献をしてはどうか、そういった温暖化対策の面でも原発を非常に重要なものとして位置づけております。果たして、今日のような状況の中で、十基、十三基の新増設の計画というのは維持されるんでしょうか。
平沼国務大臣 これも委員よく御承知だと思いますが、昨年の七月に総合資源エネルギー調査会におきまして新たな長期エネルギー需給見通しが取りまとめられました。この中で、目標ケースで、本年一月に運転を開始した東北電力女川三号原子力発電所を除くと、二〇一〇年度までにあと九基から十二基、原子力発電所の新増設が必要とされています。
 今回の東京電力による自主点検記録に関する不正等の問題によりまして、原子力発電の安全性に対する国民の信頼が揺らいでいる中、原子力発電を取り巻く状況は、委員御指摘のように以前にも増して厳しくなってきている、このように認識しております。
 このような中で、まずは事実関係の究明、今一生懸命やらせていただいております。あるいは、再発防止策を徹底的に進めることを再出発点といたしまして、信頼の回復に全力を傾注していかなければならない、このように思っております。その上で、本需給見通しにおける目標の達成に向けまして、地元を初め国民の皆様の御理解が得られるよう最大限の努力を続けていくことが肝要であると私ども思っております。
 そして、やはり京都議定書の履行、こういうことを考えますと、百三十万キロワットの原子力発電所一基で二酸化炭素の排出量が〇・七%削減できる。安全性を担保することが、これはイの一にやらなければいかぬことでありますけれども、しかし、地球環境にある意味では非常に優しい、そういう側面も原子力は持っておりますので、私どもとしては、御指摘のように今非常に厳しい環境ですけれども、信頼回復をし、国民、立地地域の皆様方に御理解をいただくように全力を挙げて努めて、そしてこの資源エネルギー調査会において取りまとめられたその目標を実行していかなければならない、このように思っております。
北橋委員 大臣が御予定で退室されるということでしたので、ちょっと先に質問させていただいておりますが、もう一点、それと関連してプルサーマルの計画についても、もう本当ににっちもさっちもいかないような重大な事態に来ております。
 とにかく、福島、新潟など自治体の長を初めとして住民の方々に、プルサーマルについても信頼が途絶えた状況が続いているんですが、これは国際的なウランの管理という面でも重大な外交問題になりかねないわけです。しかし、いろいろと現場の声を聞いてみると、今の原子力推進体制ではとても信頼、安心というものは住民の皆さん方に納得してもらえないんだ、こういうことなんですけれども、このままいきますと、プルサーマル計画というのはもうとんざをしたまま行ってしまうのではないかということにもなりかねません。
 そこで、今回、再出発を期すに当たりまして、プルサーマル計画というのを見直すお考えはあるんでしょうか。
平沼国務大臣 資源に、特に天然エネルギー資源に恵まれない我が国にとりまして、エネルギーの安定供給でございますとか地球温暖化防止の観点から、原子力発電の重要性は、これは変わりありません。この原子力発電を末永く続けるためには、やはり核燃料サイクル、プルサーマルを実施するとの基本姿勢を私どもは変えずに、そして、厳しい御指摘の状況ですけれども、何とか一生懸命信頼回復に努めて、私どもはこの基本姿勢というものを貫いていきたい、このように思っております。
北橋委員 率直に、原子力立地市町村の住民の方の声を聞く限り、プルサーマル計画もそうですが、十基、十三基の新増設という状況ではかなり異なってきているのではないかという気がしてなりません。そのためにも、せめて三条委員会の設置という形で、国みずから今までのあり方を根本的に血を流す形で改革するということが必要だということを私どもは強く感じております。したがいまして、今後、これは地球温暖化対策にも非常に影響の出る問題でもございますので、改めてじっくりとこの問題は民主党としても議論をさせていただきたいと思っております。ここでは、大臣としては、いろいろと厳しい情勢があるけれども、何としてでもこの計画を維持したいということを御主張された、このように承っておきます。
 そこで、今回、東京電力におきましても十五基の原子力発電所が停止するという大変な事態に至っておりますが、本当にこれで首都圏の冬は越せるのかどうか。また、コストアップもかなりのものが、報道によりますと、相当に燃料調達等でかかるということでございまして、首都圏の電力需給、コストという面は非常に厳しい冬を迎えるというふうに懸念をいたしております。
 そこで、この電力需給というのはこのような異常な事態になっても大丈夫と基本的にお考えなのか。もし仮に電力需給に問題がないというのであれば、これまでは経済産業省もエネルギー需給安定のためには原子力が必要なんだという御主張をされてきたことからいたしますと、この際、しっかりとした答弁をいただいておきたい。そしてまた、場合によっては、こういう状況になりますと、何か新しい省エネ対策といいますか、そういった対策も必要になるかもしれません。そういった一連の状況についてどのような認識を持っているか、政府に明らかにしていただきたいと思います。
岡本政府参考人 今、東京電力全十七基のうち九基が運転を停止しておりまして、この冬場には四基が定期検査に入る予定というふうになっております。それに加えまして、気密試験を行うために、年度内にさらに二基が停止を検討中というふうに東京電力から聞いているところでございます。そうしますと、今先生がおっしゃいました計十五基の停止ということが三月末時点では見込まれるところでございます。
 その場合の冬場の電力の需給でございますが、停止しております火力の運転立ち上げ、それから他社からの融通、そういったことによりまして、何とか冬場の需給というのは確保される見込みではございます。ただし、これは、厳冬に至りました場合には需要は当然ながら伸びますので、私ども、そういう意味において非常に事態を注視いたしているところでございます。
 原子力の停止によりまして、需給への懸念というのがその意味では生じますことに加えまして、今先生御指摘のコストの面ももちろんございますし、それ以上に私どもとして心配なのは、こういった事態が続きますとCO2の排出量というものもふえてまいります。したがいまして、私ども、燃料供給や価格の安定性にすぐれ、それからCO2を排出しないという原子力は、安定供給という面、加えまして温暖化対策という面、二つの面から今後とも極めて重要だと認識をいたしております。
 なお、冬場の省エネ対策につきましては、各省連絡会議等を通じまして産業界や国民に対する省エネの取り組みを呼びかけますなど、一層の省エネ広報等に努めることによって、エネルギー需要がふえます冬季における国民各界各層の省エネ御努力をいま一度促すということで取り組みを準備しているところでございます。
北橋委員 基本的なお考え方は今の御答弁でわかるんですけれども、原子力発電所、とまったままいく可能性もあるわけですよね。どうなるかこれはわからない。もう一度そこで再運転ができるかどうかというのは、その時点のチェックなんですね。私が今聞きたいのは、とまったままの状態で、この首都圏の電力需給というのは、コストもこれはどうなるのかということです。何かそのうちまた動かせるだろうという安易な認識があるとすれば、これは重大問題でありまして、今とまっているんですね、とまっていくわけです。どうなるんですか、電力需給は。もつんですか、首都圏は。そこをはっきりとシミュレーションをお持ちですか。
岡本政府参考人 休止火力の立ち上げということで目いっぱいのものを行い、そのためにC重油あるいはLNGを他社から緊急に融通してもらうということを含めましてやり、それから西からの電力融通というのは周波数変換の関係で九十万キロワットがマキシマムでございますが、それも目いっぱい見込むということをやるということを含めまして、あらゆる対策を東京電力は今考えているところでございます。私どももその相談に乗っております。
 ただ、私ども、原子力の運転立ち上げという点は、地元を含めた安全規制関係部局の御了解を得ないとこれは見込めないものでございますので、需給という面で、一方で、冬場の需給が厳寒によって大きく伸びるとか、あるいは夏のピークが伸びるというような場合には大変厳しい事態が到来するということも視野に入れながら、その場合において省エネの取り組みを強化するということもございましょうし、それから、電力会社として需給調整契約というものを大口の需要家との間では結んでいるわけですけれども、そういったものの活用をも視野に入れながら、何とか需給の確保ということに向けて万全の努力をしてまいりたいというふうに事業者自身考えておりますし、私ども、事業者のそういった取り組みというものに日ごろから情報を聞きながら相談に乗っているところでございます。
北橋委員 事業者の努力を見守りながら相談に乗るということでございますが、首都圏のエネルギー需給という問題は重大な問題でございまして、そういった意味におきましては、今の御説明を聞いてよくわからないんですけれども、そのうち再開できるだろうという認識が前提になっているのではないかな。政府としては、この異常な事態が続いた場合には責任持てるんですか。持てないような重大な事態になるわけですよね。その辺の、原発が十五基とまっていくということがどういう状況なのかということをもっとしっかりと危機認識を持つべきでありまして、いろいろな対策を講ずるのは当たり前のことであります。
 それは事業者に任せることではない。国としても、首都圏の電力需給についてはコストも含めてどういう危機感を持っているのか。そういったところについて、私はかなり我々との間に隔たりを感じるんですが、大臣、いかがでしょうか。この首都圏の電力需給という問題は大変憂慮すべき事態になっているわけでございますが、政府としては万全の措置は講ぜられるんでしょうか。原子力がとまったままだったらどうなるのかということもやはり考えるべきではないんですか。
平沼国務大臣 御指摘のように、やはり電力、これは今全体の三分の一を賄っております。そして、全国には五十二基の原子力発電所があるわけですけれども、その十五基といいますと、三分の一に近いものがとまっている。こういうことになりますと、私どもとしては万全の対策をとっていかなければいけない。そして、今御指摘のように、最悪の事態をベースにやはり対策をしっかりと講じていかなければいかぬと思っています。
 そういう意味では、今長官から御答弁をさせていただきましたけれども、休止中の火力発電所を稼働する、そしてその能力を高める、あるいは電力会社間の融通をする、そういったところで、今ぎりぎり二月の需要最盛期にはきつきつの状況になる可能性がある。そのためには、我々としてはやはり最悪の事態を想定しながら、それでもなお乗り越えられる、こういう体制を構築しなければいかぬと思っておりますので、そこのところを我々踏まえてしっかりとやっていきたい、こういうふうに思っておりまして、おっしゃるように、最悪の事態を想定してそこからプランを立てるというその姿勢は当然でございますから、そういったことで我々もしっかり対処していかなければいかぬと思っております。
北橋委員 しっかりとその点は政府としても今後努力をしていただきたいと思いますが、私は、やはり原子力発電所の存在の大きさを考えたときに、国民の方に納得していただけるようなきちんとした安全審査を貫徹して再運転をお願いするしかないだろう、そうしなければエネルギーの需給という問題は崩れてしまうという大変危機感を持っております。
 そこで、もう一点お伺いしておきますが、今回の政府提案の中の大きな核心は、いわゆる維持基準の導入という問題でございます。これについてはるる各委員から御指摘のあったことでございますが、一点、私の方から確認の意味でお伺いしておきますけれども、既にアメリカやヨーロッパやアジア各国におきましては維持基準は導入されております。これは、言うならば一つのグローバルスタンダードになっているわけですが、今まで日本にはなかったというわけです。これが作成されてこなかったという背景にはどういった事情があるんでしょうか。
佐々木政府参考人 先生御指摘のように、構造物の材料にひび割れ等のふぐあいが発生した場合にその進展を予測評価する手法につきましては、米国では一九七〇年代から米国機械学会の規格として策定され、九〇年代から米国政府の原子力規制委員会の規制の基準として採用されております。
 一方、我が国では米国と異なり、学会等におきます規格に係る活発な議論が行われるようになりましたのは最近でございまして、民間規格として策定されたのは二〇〇〇年になってからでございます。これを受けまして、行政におきましても昨年の十二月から総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会において、供用期間中の基準として検討が開始されたところでございます。
 こうした中で今般の問題が発生したわけでございますけれども、その要因の一つとして、ひび割れ等のふぐあいが発見された場合の取り扱いが不明確であることが指摘されているため、この反省に立って、健全性評価を事業者に義務づけることにしたものでございます。
 また、評価に当たっては、その手法の細目については、学会等において策定された民間規格を国の規制基準として活用することが適当であり、専門家等によります十分な議論を行いまして、国民各層の十分な理解を得るための透明かつ適切なプロセスを経て、拙速とならないように慎重に検討してまいりたいと考えております。
北橋委員 今回の不祥事の背景に、そういったことがきちんとされていなかったことが一つの遠因になっているのではないかということのようですけれども、しかし、これを国民の皆様方に御納得いただくにしては最悪のタイミングだと思うんですね。そういった意味では、私は、海外のこともよく研究をされて、日本においてこの安全審査の問題をどうすればいいのかということをもっと早くから提起しておくべきだった、このように痛切に感じております。
 そこで、時間がもうございませんので、維持基準の導入に当たりまして、基準をつくるときには徹底したディスクロージャーというものが必要だと思います。そしてまた、それが住民の方々の御理解をいただけるような人選も必要ですし、議事録の公開も必要ですし、その点についてはぜひとも実行していただくように要請をしておきたいと思います。
 結びに、大臣にもう一度原子力の位置づけについて所見をお伺いしたいと思います。
 といいますのは、本来こういう案件がないということで、突然こういう問題が起こりましたけれども、本来ならば政府内部では、規制緩和という中でもっと競争原理を導入していくということをされていたわけです。それで、今回、私どもは、規制緩和の議論を見ておりまして、それは必要であると思いますけれども、しかし、原子力の問題につきましては、安全性の確保、住民の方の御理解という面におきまして、一律に規制緩和という流れでは論じられない重要な問題をはらんでいると思います。
 そこで、今後、政府は規制緩和の議論を進めていかれるわけでございますが、そういう中で、原子力発電所という問題をどのように位置づけていかれるお考えか。単なる市場原理にゆだねるのか、あるいは、国としても事業者任せにせずやるべきこと、あるいは指導するべきことというのはあると思うんですね、安全面でも。そういった位置づけをはっきりされておきませんと、いたずらに規制緩和の議論の中で埋没すべきではないと思いますが、大臣の原子力発電の位置づけを最後にお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 効率化、安定供給、そして環境保全という電気事業に対する社会の要請にこたえていくためには、効率化に資するための自由化による競争原理の導入と原子力の推進は、いずれも追求をしていかなければならない重要な命題だと思っております。
 電気事業につきましては、平成七年に卸電力入札制度を導入して、発電分野の開放を行いました。十二年には、全体の約三割を占める大口需要家向けについて小売の部分自由化を行ったところでございます。さらに、現在、電気の安定供給を効率的に達成し得る電気事業制度のあり方について、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会において御審議をいただいております。
 この小売自由化の進展に伴い、特に初期投資が大きく、投資回収期間の長い原子力発電等については、事業者が投資に慎重になることが懸念されますが、これに対しては、需要が著しく落ち込んだとき、原子力発電等に優先的に給電させる等、電源への適正な投資を確保し得るよう特段の投資環境の整備が必要と考えております。
 さらに、現在、当省では、エネルギー政策に係る歳入歳出構造、先ほど出ましたけれども、再構築に向けた検討を行っているところでございまして、この中においても、原子力発電の強みを発揮し得るように、原子力発電を長期にわたり安定的に運転するための環境整備に資するよう、諸般の施策を検討してまいりたいと思っています。
 いずれにいたしましても、当省といたしましては、このような検討を通じて、自由化と原子力発電の推進の両立に取り組んでいかなければならない、このように思っているところでございます。
北橋委員 時間が来たので、終わります。
村田委員長 斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。質問させていただきます。
 今回の電力会社による一連のトラブル隠し、私は二つの異なる問題点があると思っております。一つは、安全上問題ないと判断した欠陥等を報告しなかったこと、そしてそのつじつま合わせの不正報告。そしてもう一つは格納容器漏えい率検査の偽装。この二つは全く異なる種類の問題だと思っております。
 今回の法改正では、この二つの問題点に対してそれぞれどのように対応しているか、まずこの点をお伺いします。
西川大臣政務官 今、二つの点を御質問いただきました。
 第一点の方でありますけれども、欠陥等の報告にかかわる一連の不正行為でありますけれども、事業者の自主点検が法令に位置づけされていなかった、これが一つあります。それから、ひび割れ等のふぐあいを評価する手法が不明確であったこと、さらには、発見されたひび割れの兆候が放置されたり、適切な記録の保存がなされていなかった、こういうことかと思います。
 このため、今般の法案では、事業者に対して定期的な自主検査を義務づけるとともに、仮にひび割れ等を見つけた場合には、設備の健全性に問題がないかを評価させる、こういうことにしたい。
 それから二番目に、これらの検査や評価の結果が事後でも確認できるように、記録の保存を義務づけよう。今までも一年間持っておったわけでありますけれども、これを長く持ってもらう、こういうことにする。
 三番目は、事業者が行う定期的な自主検査が適切に実施されるよう、独立行政法人及び国がその実施体制を審査、評定すること。つまり、実施体制をつくって、それが大丈夫かどうかということを独法に審査させて、さらにそれを国が評定する、こういう仕組みにしていきたいという改善であります。
 さらには、事業者の組織的な不正を防止し、法令遵守意識を高める。そのために、今回、法人重課の導入を図りました。さらには、罰則の強化の措置をした、こういうことでありまして、片方は百倍の罰金にしたし、さらには罰則の強化の中で懲役刑も導入した、こういうことにしております。
 他方、先生が御指摘の第二点の問題でありますけれども、東京電力の格納容器漏えい率検査の不正事案のことでありますけれども、意図的な偽装を行って、原子炉等規制法の保安規定に違反し、国の定期検査を妨害した極めて悪質な事案だ、こう考えております。このため、原子炉等規制法に基づいて同発電所一号機を一年間の運転停止処分とすることにしたわけでありまして、現在、文部科学省と処分について協議中であります。
 御承知のように、十一月の二十二日に公開で聴聞会があったわけでありますけれども、この席上、東京電力の勝俣社長は、弁解の余地はない、こういうことを申されておるようでありまして、このような処分にしていきたい、こう考えています。
 この不正事案の再発防止に関しましては、今般の法改正により定期検査妨害などの罰則を強化するほか、定期検査における抜き打ち的な手法の導入や、検査体制の充実強化などを図って対応してまいりたい、こう考えております。
 これらの一連の対策は、学識経験者の方々から成る検討委員会で、原因分析や背景要因を検討の上、再発防止策として取りまとめていただいたものを法制度化する、こういうことでございまして、これらの一連の措置によってこの二つの問題を防いでいきたい、こう考えております。
 以上です。
斉藤(鉄)委員 品質は検査によってつくられるのではない、工程全体によってつくり込まれるものだというのは、いわゆる品質管理のデミング博士の言葉ですけれども、とにかく工程は全く見ずに、でき上がったものをとにかく徹底した検査をして、それでよければそれでよしということではなくて、設計から施工、運転、メンテナンスまで全体工程を見て、その工程全体で品質が、この場合は安全という品質ですけれども、つくり込まれるんだという考え方が私は大事だと思うんです。
 したがいまして、国のチェックも、一々全部見られるわけじゃありませんから、事業者の設計からメンテナンスまでの全工程によって安全という品質がつくり込まれているのかどうか、そういう体制になっているかどうかをチェックするのが国の基本的な役目だと私は思いますけれども、このような考え方が今回の法改正に取り入れられておりますでしょうか。
西川副大臣 科学技術に御造詣の深い先生の大変示唆に富んだ御質問であるというふうに敬意を表したいと思います。
 今、先生お尋ねの問題でございますけれども、お説のとおり、今回の法律では、安全確保をしっかり担保するためには、事業者が必要にしてかつ十分な安全確保活動というものを行える部門をきちっと持っているかどうか、それから、それが適切に機能しているかどうかを内部監査がきちっとできるかどうか、これを自己評価を行って、その結果を踏まえた改善を継続的に、ただいまのお話のとおり、工程をきちっと整備していく、この品質保証活動を全社的に行わせるということをこの法案の眼目といたしております。
 このために、速やかに原子炉等規制法の省令を改正いたしまして、事業者のとるべき品質保証活動を明確にいたしまして、事業者の保安規定の定めを求めるようにしていきたいといたしております。
 また、今般の法案では、定期自主検査として法的に位置づけることに加えまして、事業者による検査の組織、検査の方法などを国及び独立行政法人が審査、評定できる仕組みを設けることといたしております。
 したがいまして、事業者に、安全確保活動を適切にして十分な組織体制で実施し、質を高める責務を求めるということになっておりまして、国は、そのような事業者の取り組みを確認するシステムを設けて、ただいま先生がおっしゃるきちっとした安全確保というものをこの法によって万全を期してまいる、こういう仕組みになっております。
斉藤(鉄)委員 済みません、きょうは同じ問題意識を別の角度から、ですから同じようなことを何度も聞きますけれども、お許しをいただきたいと思いますが、同じことをまた別の角度から聞いてみたいと思います。
 定期自主検査の法令上の位置づけなど、今回の法改正によって国の規制、関与が増すわけですけれども、本来であれば、先ほど申し上げましたように、全工程にかかわる一つ一つの品質のつくり込み、安全という品質のつくり込み、これが行われているか、フィードバックが行われているかということを国が見るだけで、基本的には、自己責任原則のもと、事業者の自主保安に任すべきものなのではないか、このように考えます。規制当局の能力にも限りがありますので、ある意味では、国のチェックは事業者の自主的努力の最大化を図る、そうすることによって最大の効果が得られるのではないか、このように考えますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
西川副大臣 御指摘の定期自主検査は、従来位置づけが不明確でございました事業者による自主的な点検を法律に基づいて義務づけるものでございます。これは、安全確保の第一義的な責務は事業者にあるという考え方に基づくものでございます。そして、事業者がその責任を適切に履行する体制がとられているかどうかについて、国及び独立行政法人が審査、評定することといたしておりまして、これにより、斉藤先生御指摘のように、事業者の努力を引き出すということに目的を置いたものであります。
 一方、従来から行ってまいりました国の定期検査につきましては、公共の安全上特に重要な設備につきまして、国みずからが検査を行うものでございまして、引き続き実施をしなければなりませんが、先ほど大臣政務官が今回の事案に基づいてのお尋ねについて御答弁を申し上げましたように、抜き打ち的手法の導入などを行いまして、事業者の緊張感を維持することでその実効性を高めていくことといたしております。
 こうした一連の改正によりまして、国と事業者の責任関係を明確にいたしまして、国、事業者双方が、この位置づけのもとでの安全確保に取り組むことができるようにいたしたものでございます。
斉藤(鉄)委員 今までの国の検査、これは定期検査があったわけですけれども、その形骸化が言われておりました。工程全体を見るということではなくて、結果だけ見るということであったように聞いております。そして、その結果だけ見るのも、検査そのものが非常に定型化しておりまして、予行演習も行われていたというふうな話も聞いております。
 そういうことではなくて、先ほど西川副大臣お答えのように、工程全体を見ていくという方向に今回変わったということでございますので、その点を非常に期待いたしますけれども、しかし、設計からメンテナンスまで工程全体を見るということは大変な作業量でございます。そういう意味では、先ほどありましたように、結果のサンプリングではなくて、結果の抜き打ち検査ではなくて、工程全体、例えば設計かもしれない、メンテナンスかもしれない、作業のやり方かもしれない、それを抜き打ち的にチェックするということも今後非常に重要になってくるのではないかと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
佐々木政府参考人 国の現在の定期検査では、主に健全性に関する試験の結果が所定の水準を満たしているかどうかを確認することを中心に検査をやってまいりました。その意味では、いわばあらかじめ決められたことをあらかじめ決められたとおりに確認する検査を実施してきたわけでございます。
 今後、検査におきまして施設の健全性をより効果的に確認するためには、試験の結果だけではなくて、試験の手順あるいは当該設備に対する保守管理等、事業者の施設に対する保安活動全体が適切に行われていることを確認することが望ましいと考えております。したがいまして、今後、国の定期検査におきまして実施する試験の手順等のプロセスにまで検査対象を拡大し、あらかじめ確認する内容や箇所を明示しない手法、すなわち抜き打ち的な手法を用いて確認することによりまして、事業者が緊張感を持って保安活動全般を実施することが期待されるわけでございます。
 検査制度のあり方に関しまして、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会において検討をしてまいりました。本年六月に報告が取りまとめられましたが、その中でも、検査制度の基本的な考え方については、従来のあらかじめ決められた施設の健全性をあらかじめ決められたとおりに確認する検査から、施設の健全性だけでなく、施設の設置のプロセスや事業者の保安活動全体を抜き打ち的手法も活用して確認する検査に重点を置くべきとの提言もいただいております。
 私ども原子力安全・保安院といたしましては、こうした考え方を実現していくべく、今後、制度設計を真剣に考えてまいりたいと思っております。
斉藤(鉄)委員 維持基準の導入ですけれども、これは遅きに失した感があるくらいで、今回の法改正を評価するものでございます。
 しかしながら、欠陥があった、その健全性評価をした結果、これは安全上問題がないということになったといたしましても、そういう欠陥が存在をしたということは、品質管理上何らかの技術的な示唆を与えるものでございます。したがって、その結果は当然工程にフィードバックされて、その情報が新たな品質管理活動に生かされてこなくてはいけない、このように思うわけでございます。
 ですから、今回の健全性評価も、全体の品質管理にフィードバックできるような形で位置づけられなければならないと思いますし、また、国の役目は、そういうことになっているのかどうかということをチェックするところに国の役目があるのではないかと思いますが、この点についてお伺いをいたします。
西川副大臣 斉藤先生の御指摘は、私は大変重要だと思っております。今回のひび割れが起こったという経験を今後の私どもの法律の精神にどう生かしていくかということ、これは非常に大事なことだというふうに理解いたしております。
 そこで、維持基準の導入ということにつきましては、これは言うまでもありませんが、供用開始後の設備のひび割れが起こった今回のような場合、引き続き設備の健全性が維持されているかどうかというものを評価することを事業者に義務づける、これが一番のポイントであります。健全性の評価の結果、一定の期間は安全水準を満たし問題がないとされたひび割れでございましても、それが進展する可能性もあるということでもございますから、事業者はひび割れの発生原因を分析いたしますと同時に、ひび割れの状況を的確に把握して管理する必要がございます。
 御指摘のように、原子力安全確保に運転管理経験者の経験を生かし、設備の健全性の上で問題とならない情報を含め、その適切な蓄積、活用を図っていくことが重要でございまして、このような取り組みについて、事業者において適切な品質保証体制や工程管理体制が構築をされ、健全性評価の結果が的確に反映されるように私どもとしては求めてまいりたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 私ども、今回のトラブルが起きましてすぐ現地、福島そして柏崎に行かせていただきました。そして地元の方々から、我々は原子力と共存していくしかないんだ、そういう意味では、本当に安心できる、信頼できる原子力体制であってほしい、そのためには、我々が納得できる安全の審査体制、そういう基準をつくっていただきたい、こういう強い要望がありました。
 今回の法改正がその要望を一〇〇%満たすものとは思いませんけれども、その要望に向けての一歩前進というふうに評価をしておりますので、先ほど申し上げました、結果でチェックするのではなくて工程全体でチェックするという方向に今回一歩踏み出すことを望みまして、私の質問を終わります。
田中(慶)委員 委員長、議事進行。
 これから自民党さんが質疑をするのに、これだけ空席が目立っているということ自体、真剣味が足りないわけでありますから、ちゃんと定足数を満たすまで休憩をしてください。
村田委員長 田中理事の提案に対しまして、それでは、田中理事の御主張に対して、谷畑理事、委員を確保するよう大至急集めてください。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
村田委員長 速記を起こしてください。
 吉野正芳君。
吉野委員 おはようございます。自由民主党の吉野正芳でございます。
 先日の参考人質疑で、私は傍聴しておりました。我が町の双葉町長、岩本町長さんの言葉を聞いて、背筋がぞくぞくしました。私たちの地域は、原発が十基あります。そのうち、今六基とまっているんです。定期点検ではなくて特別検査ですから、地元の企業が今冷え切っています。三月までには、東電、十七基ある原発のうち十五基とめる、こういう状況であります。ですから、町長さんは、何としても安全を確保して運転再開をしてほしい、こう言われました。運転を再開してほしいというその言葉の裏には、安全確保は国の責任だ、国がきちんと安全確保をしてほしい、そういう思いが込められていた、私はそう参考人質問のときに感じた次第であります。
 今度の事件、どうしてだろう、なぜだろうというふうに問いますと、どうして東電はうそを言ってしまったのか、格納容器の気密性保持も犯罪的行為を犯してしまったのか、なぜなんだろう、どんどんなぜを繰り返していくと、私は、安全確保と経済利益追求、ここの部分にどうしても行かざるを得ないんです。でも、ここの部分が今回、自由民主党の中においても本気になって議論をされていない、私はそう思います。
 それで、フェールセーフ、巨大システムの中ではフェールセーフという安全思想がございます。これは、機械的なミスを乗り越えて安全を確保しよう、またヒューマンエラー、人間のミスも乗り越えて安全を確保しよう。ヒューマンエラーの中には、動物としての人間の能力の限界を超えた部分、だから人間である限りだれでも犯す、いわゆるヒューマンエラーであります。と同時に心のミス、心の誘惑といいますか、そういうところもこのフェールセーフの思想の中に取り入れていかなければならないと思います。
 それで、私、地元を歩いていました。すると、こういう声が聞こえました、定期点検を短くするとお金がもらえる。それで、私は東京電力に確認をいたしました。十一月十三日、東京電力から重役が参りまして、この資料をいただきました。「原子力定期検査短縮に関するインセンティブ制度について」という書類です。これは平成九年四月につくられ、それから実施されています。
 どうして導入したのか。定検短縮を促進するため、短縮日数と各請負会社の短縮貢献度に応じた対価を払う。決められた約束を、短縮を、定検を短くすればお金を払うということなんです。そして、平成十三年度まで東電で二十八回の定検が行われました。三十七億一千万払っています。これは元請に払うんです。そして元請は、下請、孫請、ひ孫請まで払います。そして、最終的に作業員までお金が払われているという、そこまで、一人一人の現場の作業員まで、定検を短くすればお金がもらえる、そういう制度になっています。
 当局として、この制度を当然理解していると私は思います。そして、この制度に対してそれなりの指導もしているかと思います。御意見を賜りたいと思います。
佐々木政府参考人 実は、先生の御指摘を受けまして、私ども原子力安全・保安院として昨日確認を行ったところ、東京電力の定期検査短縮に関するインセンティブ制度があるということを知ったわけでございます。
 この制度の導入の時期、導入の目的については既に先生が今お話しいただいたわけでございますけれども、この制度は、国の規制制度と直接関係するものではなく、東京電力と請負企業との契約の一環として行われているものであると承知いたしておりますが、原子力安全・保安院といたしまして、昨日までこの制度の具体的内容について聴取したことはございませんで、特段の指導を行ってきた事実はなかったということでございます。
吉野委員 コストを下げる、これは定期検査を短くすることなんです。
 三十年前、福島に原子力ができました。定期検査は九十日です。三十年たちました。今、短いので三十二日です。平均四十五日です。車検だって、古くなれば車検は一年ごとです。こういう形でコストを、いわゆる収益を一番大切に経営の方針に掲げていくと、まさにこのインセンティブ制度はプラスの効果がいっぱいあります。知恵を出して、工具から、クレーンを二台つけたり、いろいろな知恵を出して短くするんです。
 でも、お金という部分でマイナスのインセンティブ、人間は心が弱いんです。お金で当たり前な人間も悪魔に変身させる、これは過去人類の、いろいろな小説を見てもわかるように、お金と誘惑という切っても切れない部分であります。
 大臣、この制度をどう思いますか。
平沼国務大臣 今先生が御指摘のように、やはり一面では、いろいろ技術を開発して検査というものを短縮する、これは全体で見たら、安全性さえ担保できていれば私は悪いことではないと思います。しかし今回、東京電力でこういう事案が出たということは、やはり利益追求に走って、そして今、小説等でお金とその誘惑、こういうお話をされましたけれども、私は、そのインセンティブがいい面で働けばよかったんでしょうけれども、ある意味ではそういうデータの隠ぺいですとかあるいは虚偽の報告、改ざん、そういったところにつながる素地になった可能性は十分にある、こういうふうに思っております。
吉野委員 東電も会社ですから、利益追求をせねばなりません。しかしそこまで、お金を使ってまで、プラスのインセンティブは確かにございます、改革しますから、改善しますから。でも、お金というのは、人間を惑わす、誘惑する、そういう部分であります。そこまでコストダウンの政策に電力を追い込んでしまったという言葉を使っていいと思いますけれども、東京電力をそこまで追い込んだ国のコストダウン政策について、もっと議論をすべきだと思うんですけれども、副大臣、お願い申し上げます。
高市副大臣 先生の御指摘のコストダウン政策ということで、もしも国の政策として該当するものがあるとすれば、それは規制緩和であったかと思います。
 これは、平成七年に卸電力入札制度の導入、それから平成十二年には小売の部分自由化の導入ということで、二度の規制緩和を行っておりますから、これによって電気事業の効率化、それから高コスト構造の是正というものが行われております。
 しかし、今回の一連の東京電力の不祥事、事件というものは、この規制緩和前、つまり、電気事業法に基づく地域独占と総括原価方式に基づきます料金規制によって確実なコスト回収が図られていた昭和六十一年ごろから既に行われていたものでございます。したがって、国が経済性を追求する余り、東京電力をこのような不祥事に追い込んだという御指摘は必ずしも当たらないと思います。
 ただし、今大臣が答弁申し上げましたように、これだけ東京電力の不祥事が出てきて、国民もみんながセンシティブになっているときに、この東京電力一社でインセンティブ制度、これは国の制度ではございませんが、こういう形でコスト追求してこられた。確かに、原子炉を定期検査でとめますと、それに伴うコストというのはすごいわけで、多少のお金を出してでも短縮した方が会社としては得でございますが、こういう形で東京電力が行っていたということに関しては、私自身も適当なことだとはどうしても思えないんです。
 しかしながら、今ちょうど、今回の不祥事を受けて、特別な保安検査というものを実施中でございますし、東京電力に関しては厳格な定期検査ということが行われますので、その中で、このインセンティブ制度によって安全が損なわれていないかどうか、ここはきちっと調査し、不適切な点があったら指導をしてまいりたいと思います。強くそう思っております。
吉野委員 今、維持基準が議論されております。私も、機械でありますから、維持基準の導入は本当に必要だと思います。でも、地元の新聞でありますけれども、社説にこんなことが書いてありました。小まめに点検、小まめに修理、交換、小まめに情報公開、そして小まめに理解を得る。これは設置基準、いわゆる新品基準です。
 新品基準がいいのか、維持基準がいいのかというここの議論をもっと国民的議論にしてほしいんです。この問題、国会の中と地元だけです。国民的な議論になっておりません。そういう意味で、もっと国民的な議論を起こす。そういう意味でも、新品基準が、お金はかかるけれども、そっちの方を日本は選択するのか、いや、新品基準よりも維持基準の方がもっと経済効率性もあって安全性も確保できるからという、そこのところの議論をもっと国会の中だけではなくてすべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
西川副大臣 今般の一連の不正行為は、自主点検で発見されたひび割れの兆候が放置をされたり、適切な記録の保存がなされていなかったものが原因であります。ひび割れ等のふぐあいを評価する手法が不明確であったことも、適切な対応がなされなかった要因の一つでございます。今般の事態を踏まえ、事業者に対して、仮にひび割れを見つけた場合には、設備の健全性に問題がないかを評価させる仕組みを盛り込んだ法案でございますことは、先生御案内のとおりであります。
 この評価の内容につきましては、ひび割れについて、将来このひび割れがさらに進展する可能性があるかどうか、こうしたことを考慮に入れた上、引き続き安全水準を満たしているかどうかを判断するものでございまして、従来から求められていました安全性の水準そのものを引き下げるということでは決してございません。
 お尋ねの、国民の信頼の回復を図るために広く国民的な議論を起こせ、こういうことでございます。今般の不正事案の再発防止というものの対策を正しくかつ早急に国民の皆様にお示しし、事業者をしてこれを実施いたさせることといたすことのためにも、私たちは維持基準というものを含めこの法案の提出というものを考えたわけでございますので、御指示ごもっともだというふうに思っております。
吉野委員 最後に、チェック体制についてお尋ねをします。
 どんな組織でも、外部監査、内部監査、チェックというものはこの内部監査と外部監査でできています。そして、外部監査が、第三者に対してきちんと説明責任といいますか、第三者に対しては、外部監査のものが第三者に対する正式な信頼の置ける監査であると私は思います。
 そういう意味で、今それを見ると、保安院は、経産省の傘のもとでのチェック体制ですから、ある意味で内部監査です。原子力安全委員会、これが外部監査に当たろうかと思います。余りにも今一次審査の保安院の方が大きい。人数体制も大きい。安全委員会の方は、保安院と比べると小さい。国民に対してきちんと第三者証明を出すはずの安全委員会のいわゆる外部監査というものが、本当に保安院よりは小さいものですから、ある意味で頭でっかち、逆転現象。
 内部監査であるはずの保安院が一次的な責任を負っているのではなくて、国民に対しては安全委員会が原発の安全審査に対してはきちんと責任を負わねばならない。そういう意味で、安全委員会の充実、そしてある意味では、保安院を縮小して、うその見つけられない保安院は要らないとまで私は思っています。
 そういう意味で、内部監査制度は必要でありますから、保安院の形は残しても私はいいと思います。内部監査機能として残してもいいと思いますけれども、外部監査をもっと充実強化すべきだと思います。いかがでしょうか。
高市副大臣 吉野先生がおっしゃっていますとおり、とにかくダブルチェック体制の実効性を強化していくということは非常に大切だと思います。
 今回の法律案の中で、規制機関が原子力安全委員会に対して定期的な報告を行うとともに、規制機関はその意見を聞いて必要な措置を講ずるべきことを制度化するとしております。あと、原子力安全委員会においては、必要に応じ、当省からの、こちら、保安院側からの情報だけではなくて、直接事業者からの事情聴取、それから現地調査を行うなど、独自の調査を行う方針であると聞いております。
 今回の一連の問題への対応につきましても、原子力安全委員会は、事業者から説明を受けるなど、独自の調査を実施してくださって、最終的に先般の勧告が出され、当省としてはそれを非常に重く受けとめて措置をとっていこうということでございますので、とにかく運用面での改善も含めまして、これからもやはり地元の方々を初め多くの方と話し合いもし、国民の信頼を確保するためにダブルチェック体制の強化ということには精いっぱい心を使っていきたいと思っております。
吉野委員 一刻も早い信頼回復に努力することをお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
村田委員長 井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 きょうが最後の質問の日でありますけれども、私もずうっと質問を聞いておりまして、大体ダブった質問が多いので、今さら質問もいかがかと思うのでありますけれども、国民に対してわかりやすく答弁をしていただくというような、そういうことで質問いたしたいと思います。
 今般の原子力発電所におきます不正記録等のこういった一連の事案というのは、安全上直ちに問題になるものはなかったかもしれませんけれども、国民の原子力安全規制に対する信頼感を失墜させたということは、これは大変残念でございます。私は、企業も政府もこういった事態を真摯に受けとめて、再発防止のための万全の対策を講じていく必要がある、こんなふうに思います。
 我が党は、御承知のとおり、エネルギー需給の観点でありますとか、あるいは京都議定書を批准した、こういった観点から、原子力の推進とか核燃料サイクルの確立というのは重要である、必要である、こんなふうに考えているわけでありまして、こういうような意味から、今回の事件の及ぼす影響の大きさを大変強く懸念しているところであります。
 そういうことで、私はやはり、国民の信頼感を回復すること、あるいは安全性を確保するというようなことをきちっとやっていただく、そしてその上で、発電所の一日も早い操業再開というのを念頭に置きながら質問いたしたいと思います。時間も限られておりますので、簡潔に、しかもわかりやすく御答弁をお願いいたしたいんです。
 今般の法律改正といいますのは、一連の事案の反省の上に立ちまして不正を防止するものであるということでありますけれども、そもそも、トラブル隠しのような不正がなぜ行われるのか、これを説明していただきたいんです。
西川大臣政務官 この事件が起きまして、臨時に、至急につくれということで、総合資源エネルギー調査会原子力安全規制法制検討小委員会を設置して検討しました。そして、これはオープンで、国民の前で意見交換をやった、こういうことでございまして、五回やりました。そのうち、四回目のときに大体取りまとめができましたので、これをパブリックコメントということで発表して御意見をもらって、十月の三十一日に正式な報告にした、こういうことであります。
 先生いろいろ御指摘ございましたが、やはり原子力部分は会社の中で独立したような機関になっておって、経営者の皆さんも余りそこにタッチしない、本当にクローズド部分になっておった、これが私は一番の原因ではないかと思っております。でありますので、これからは原子力部分も、経営者もよくこの中に入って、こういうことが二度と起きないようにやっていく、こういうことで今回の法案も考えさせていただいたわけであります。
 傷の問題等も、よく意見を聞いてみますと、傷があった、この傷を報告するかしないかということも現場の判断基準に任せておる、こういうことでありましたし、こういう状況、基準がないから、そんなことで今まで放置をされながら来てしまったわけでありますが、そういう部分も、専門家によって明確な基準をつくって報告を義務づける、こういうことで乗り切っていきたい、こう考えております。
 さらに、申告があったのになぜ放置しておったんだ、こういう話もあるのでありますが、これは深く反省をして、国民の皆さんにこれから御理解をいただくように最大限の努力を図ってまいりたい、こう考えております。
井上(喜)委員 原子力安全・保安院の中間報告というのがありますけれども、それを読みますと、電力会社において企業倫理規定の機能の浸透が十分でなかったというようなことが書いてありまして、いろいろな問題がある、こう思うわけであります。大臣の方も、十月一日付で電力会社に対しまして、企業倫理の再建とか企業風土の改善を文書で求めているのでありますけれども、こういったことを今後ともしっかりとひとつ進めていただきたい、こんなふうに思います。これは御答弁は結構であります。
 それで、トラブル隠しの原因、要因を断つということが再発防止の上で当然のことでありますが、こういった要因につきまして、具体的に一体何をどうして不正を防止するとしているのか、こういった点につきましての御答弁を具体的にお願いしたいんです。簡潔で結構でありますから、お願いしたいと思います。
西川大臣政務官 先ほどの小委員会で中間報告を取りまとめてもらって、八項目がまとまりました。この八項目をどう改善していくか、こういうことを今回の法案で織り込んだ、こういうことでございまして、これらがしっかりやれれば大丈夫だ、こういうことで法案を組んだ、以上でございます。
井上(喜)委員 今般の法改正では、国の原子力安全への関与を強化するというぐあいに受けとめられるのでありますけれども、これは換言すれば規制強化と受けとめていいのじゃないかと思うんですが、いかがですか。
 また、今の原子力安全・保安院の体制でこのような国の関与の強化に十分対応できると考えているのか、あるいは、今後の原子力安全・保安院がどのように体制を強化するのか、説明をしていただきたい。
佐々木政府参考人 現在御審議いただいております法案によりまして諸種の対策が実施されることになりますれば、国の関与は強化されることになります。しかし、いたずらに国の規制を強化するのではなく、事業者の責任や義務を明確にすることにより、事業者自身の安全確保への取り組みの強化を促すことをねらいともしております。
 また、原子力の安全規制の体制面につきましては、再発防止策の一環として、実効的かつ効率的な体制強化を図るため、検査に当たっては抜き打ち的手法を導入したり、あるいは、独立行政法人原子力安全基盤機構を活用しつつ、所要の体制強化が必要であると考えております。現在、必要な検査官などの増員を検討しておりまして、厳しい財政事情の中ではございます、予算面の制約等もございます、行政組織の効率化の観点も踏まえて、早急に関係機関との調整も行ってまいりたいと考えております。
井上(喜)委員 国民の信頼回復というのは大変大事なことでありますが、法律を改正してその法律のとおりにやっておればいい、こういうものでもないと思うんですね。十分な理解のための努力というのが必要だと思うのでありますけれども、これにつきましてはどんなことをしようとされておるのか、御答弁を願います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 原子力に対する国民あるいは地域住民の信頼を回復していくためには、説明責任を果たすということが重要なことだと思っております。規制当局である保安院は、国民の視点に立ちまして、透明性を向上させていくことが求められていると認識しております。
 保安院では、これまでも、事故やトラブルだけではなくて、許認可や検査など日常の活動をホームページ等を通じてできるだけ公開するなどの取り組みを行ってきております。今後は、今回の反省に立ちまして、重要な事項についての対外公表をするなどの際には、幹部職員が地元に出向いて説明するなど、みずから積極的に情報発信を行いまして、外部からの評価を進んで受けさせていただき、その評価を規制活動の質的向上につなげる取り組みを行ってまいります。
 また、今般の法案によりまして、安全規制活動全般について、原子力安全委員会に報告して意見を求めることを制度化いたしまして、あわせてこれを公開することにいたしております。
 さらに、国への報告対象以外のトラブルに関する情報の公表の必要性については、原子力安全委員会からも勧告されたところでございまして、当省といたしましても、事業者において積極的に公表するように奨励をすることにいたしました。
 こうした積極的な情報公開と説明努力を積み重ねることによりまして、国民や地域の皆様方の信頼回復に向けて努力をしてまいりたい、このように思っております。
井上(喜)委員 次に、維持基準なるものにつきましてお伺いをいたします。
 この維持基準につきましてはいろいろな議論がありまして、これまで新品と同様であることを求めてきた安全についての要求基準を引き下げようとしているのじゃないかとか、あるいはトラブル隠しを正当化するものではないかなどの批判があります。また一方で、これまで維持基準を整備してこなかったのは行政の怠慢ではないかという批判もありますが、今般の法律改正で導入されようとしております維持基準は、これらの議論との関係でどのように考えればよろしいのでしょうか。
佐々木政府参考人 いわゆる維持基準の導入は、従来から求められております安全水準を引き下げるものではありません。供用開始後に設備のひび割れなどが発生した場合に、引き続き安全水準を満たしているかどうかを評価することを事業者に義務づけるものであります。
 今回の改正は、ひび割れを発見した際の取り扱いが不明確であったことが今般の事案の一因になったとの反省に立って、所要の手当てをするものであります。健全性の評価を的確に行うことを事業者に義務づけることにより、むしろ今般の事案の再発防止を図るものであり、今般の不正事案を正当化するものではありません。
 この基準を策定するに当たりましては、当省といたしまして、原子力の専門家、学識経験者の方々に検討していただき、その結果をパブリックコメントに付しまして、原子力安全委員会においても議論をしていただく予定でございまして、拙速とならぬように慎重に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、立地地域などの地元の関係の方々にも直接出向いて説明を行うなど、国民各層の御理解が得られるよう、透明かつ適切なプロセスを経た上で策定していくこととしております。
井上(喜)委員 原子力安全基盤機構という独立行政法人が今回設立されるようになりますけれども、この際、どうしてこれが設立されて、それが今回の不正問題の再発防止にどのように役立つのか、これをわかりやすく説明していただきたいんです。
西川副大臣 独立行政法人原子力安全基盤機構、これにつきましてわかりやすく説明せよと。
 これは、本年三月の閣議決定で、政調会長も御案内のとおり、公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画というものにおきまして、原子力安全規制のさらなる効率的かつ的確な実施を図りますために、現在三つの公益法人にばらばらに委託しております業務を統合化いたしまして、類似業務の整理統合、共通業務、管理業務の合理化等を図りまして、現場に精通した専門家集団を活用することによりまして、的確な効率のよい規制を、安全確保といいますか、これを行う。国の実施部門を切り出して設置することといたしたものでございます。あわせて、これまで国が公益法人に委託していた安全性実証試験、こういうものの事務も移管をいたします。
 したがって、言葉を選ばずに言えば、一、二年で異動してしまいますお役人よりも専門的な知見を蓄積することによって安全性を確保する、こういうねらいだというふうに御理解いただきたいと思っております。
井上(喜)委員 最後に、安全規制を行います人材の確保について御質問をいたします。
 原子力安全規制を的確に実施していくためには、原子力についての専門的知識と高い倫理観が求められることは言うまでもないと思います。先般の参考人の供述からも、これは指摘されていたところでございます。
 特に、独立行政法人につきましては、今回の再発防止対策のことも考えますと、即戦力となる検査員を相当数確保しなければならないと思うんですが、中立性とか倫理観あるいは専門知識を兼ね備えた人材をどのように確保する、あるいは育成していくのか、お伺いをいたします。
西川副大臣 先生御指摘のことは大変重要だと思っております。
 この機構の人員をどのようにして確保するかにつきましては、法案成立後、具体的に検討を進めていくことになっておりますが、この機構の業務にふさわしい、ただいまお述べになりましたような専門知識と意欲を持った人材を、現在公益法人において検査でございますとか安全性の実証、解析などの実務を担当している方々でございますとか、原子力関係の事業において経験を積んでこられた方々の中から採用することなども視野に入れております。
 また、安全規制の一翼を担う本機構の中立性を確保するために、安全審査、検査等、国の規制業務に直接関係する業務に従事する者につきましては、メーカーや被規制者である電力会社等の出向者は充てないこととする、こういうことにいたす方針でございます。
 また、一番大事な、採用後、この機構にふさわしい人材に育てるという点につきましては、十分意を用いて、力を注いでいきたいと思います。今般の事案を私も副大臣に就任する前からずっと見ておりますが、我が国は資源に乏しい、しかもエネルギーは非常に大事である、京都議定書も守っていかなければいけない、こういう環境にある中において、国も事業者も、先生御指摘のように、また、この審議を通じて多くの先生方から御指摘がありましたように、やはりこうした国家観といいますか、高い志を持って、大局観を持ってこの重要な原子力業務に当たるという人材を育てていかなければいけないし、私たちもそのことに意を用いていかなければいけないと強く感じた次第でございますので、御指摘どおり、努力をしていきたいと思っております。
井上(喜)委員 終わります。
村田委員長 小沢鋭仁君。
小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。質問させていただきます。
 我が国はエネルギー資源に乏しい国でありまして、私はかねてから、我が国がこのエネルギー問題である意味で独自のものを持てるようになったときには、日本の根本的な脆弱性というのがなくなるわけでありまして、そうしたときの日本の国力といいますか力というのは本当に安定して強くなるだろう、こう思ってずっと来ているわけであります。
 中東の石油依存度が八割というような話を含めて、そういう中で、我が国にとってエネルギー問題というのは、その意味では、逆な意味で、大変重要な問題であります。
 そうした中で、今回、こうした原子力発電にかかわるさまざまな不正だとか隠ぺいだとか、そういった事件が起きたことは、そういった観点からも本当に残念で、深刻な事態だというふうに思っております。
 民主党も、さまざまな場面で、部門会議だとかあるいはNCだとか、そういった場面で議論を重ねてまいりましたけれども、この原子力関係二法案に対する意見というのも、本当に厳しい意見が相次いでまいりました。
 我が党は、経過的なエネルギー源として原子力をとらえておりますが、基本的にはそのあり方を肯定してきた党であります。しかし、そうした立場においても、今回のこの件は、本当に大きな、大変残念な思いで各議員がとらえておりますことをまず冒頭申し上げておきたいというふうに思います。
 そこで、冒頭、このエネルギーということに関して、原子力発電の持つ意味を大臣からお聞かせいただきたいと思います。
 今、世界に目を向けると、例えばドイツが脱原発という話を言っております。スウェーデンもそうだというふうに聞いております。そういった各国の動きを見ますと、基本的に、やはり原子力発電というのは危険な部分というのも当然のことながらあるんだということが根本にあって、そうした動きになっているというふうに承知をしておるわけでありますけれども、そうした世界の各国の動きの中で、我が国としてはどういった構成でこれからの我が国のいわゆるエネルギーを考えていくのか。
 石油だとか天然ガスだとか、それから先ほど同僚の北橋議員から話がありました石炭という話もこれまたありますが、あるいは新エネ、そういう中で、今後の十年くらいのスパンで考えたときに、まず基本的に原子力発電をどういうふうにとらえているのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
平沼国務大臣 小沢先生にお答えさせていただきます。
 先生が冒頭お話しになられた認識と、私はそう変わっていないと思います。我が国は、天然エネルギー資源に御承知のように非常に乏しい国でございまして、そのほとんどを依存している体質を持っています。したがって、中長期的に見ますとやはり我が国は原子力エネルギーに頼らざるを得ない、こういう基本的な考え方を持っています。そして、原子力の場合には、やはり基本的には安全性をいかに担保して国民の皆様方に信頼していただくか、このことが大前提だと思っておりまして、そういう努力もこれから、今回の事例をまさに基礎に置いて、やっていかなければならないと思っています。
 今のエネルギー構成を含めた我々の中長期の考え方、これは二〇一〇年度というのを一つの節目にしておりまして、エネルギー需給全体の姿をあらわすために、私が諮りまして、総合資源エネルギー調査会において審議が行われたところでございまして、昨年の七月に長期エネルギー需給見通しが示されたところでございます。
 本見通しにおきましては、供給源別の供給割合について見ますと、石油については、二〇〇〇年度は全体の五二%でございますけれども、これを二〇一〇年度においては四五%まで依存度を低減すること、こういうふうに見込んでおります。
 二〇一〇年度における石油代替エネルギーの割合につきましては、御指摘があった石炭は一九%、それから天然ガスは一四%、二〇〇〇年度では一二%だった原子力を一五%程度にしよう、それから水力と地熱合わせて三%程度となることを見込んでおります。また、新エネルギーにつきましては、現状が全体のまだまだ小さいことで一%でございますけれども、これを、これから努力し、予算もつけて、二〇一〇年度には三倍の三%にして、さらに伸ばしていこう、こういうことに相なっています。
 原子力に対しては、まさに釈迦に説法ですけれども、私どもとしては、地球の温暖化を防いでいく、こういう面では、原子力は安全性さえ担保できれば非常に有用なエネルギー源だと思っています。それは、その発電過程において一切二酸化炭素を排出しない、こういうことでございますから、先ほどの御答弁でも申し上げましたが、大体百三十万キロワットの発電所を一基建てることによって二酸化炭素の排出量を〇・七%削減できる。これで計算しますと、十基できると七%削減できる、こういうことでございますので、そういったこともございますし、また、安定的にエネルギーを供給ができる、こういう利点もあるわけです。
 そして、御指摘のようにドイツ等ヨーロッパの諸国では、例えばドイツでは、一九九八年に社民党が政権をとって、脱原発、こういう形になりまして、たしかドイツでも三〇%賄っていたのを三十二年の期限で全部なくしていこう、こういうことであります。
 ただ、ドイツと日本というのは事情がちょっと違っておりまして、ドイツはヨーロッパの真ん中にございますから、例えばお隣のフランスのような原子力の比率が非常に高くて電力が余っているようなところから、大陸ですから、融通し合える、こういう利点があります。
 ですから、一概に日本と単純比較はできませんけれども、そういった状況の中で、確かに脱原発に進んでいる国もあります。アメリカもそういう傾向があったわけですけれども、最近ブッシュ政権になって、また原子力を見直そう、こういうような動きも出ていることは事実でございまして、私どもとしては、安全性を担保しつつ、そして天然エネルギー資源のない日本のためにはやはり、中長期的に見て一定量の原子力発電を維持していく、このことは必要である、このように思っております。
    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
小沢(鋭)委員 今、大臣からも、原子力発電に関してはその安全性さえ担保できれば、こういう前提条件がついて、これから質問するこの法案も、ある意味ではそれに大いに関係する話だろうと思います。
 改めて法案の中身に入らせていただきたい、こういうふうに思います。若干今までの質問と重なる部分もあるかもしれません。最後の場面ということもあって、我が党としての確認をしておきたいことを再度御確認させていただきますことは御理解をいただきたいと思います。
 まず、この法案において情報公開にかかわる規定が盛り込まれなかったのはなぜか、こういうふうにお尋ねをしたい、こういうふうに思います。情報公開の必要性は何度もこの委員会の場面でも出されておりますし、さまざまな意見が届いているはずであります。改めて、なぜそれを盛り込まなかったのか、お尋ねしたいと思います。
高市副大臣 確かに、国民に対する情報公開という観点は非常に大事な価値観だと思います。
 今回の法案に、法令に基づいて情報公開を一律に義務づけることが難しかった理由なんですが、原子力発電所の自主検査などの情報には、核物質の防護の観点ですとかそれから核不拡散の観点から開示すべきでない情報、それから、工業所有権などの知的所有権が含まれる情報が存在するということで、どうしても一律な義務づけが難しいんじゃないかと考えたわけでございます。
 しかしながら、原子力に対する国民それから地域住民の信頼を回復するためには、規制当局であります原子力安全・保安院それから原子力事業者は、国民の視点に立ってできるだけ情報公開を行うというのは当然のことでございます。
 保安院では、これまでも、事故やトラブルだけではなくて、許認可や検査などの規制結果の実施状況も、ホームページや記者会見、それから出版物によって積極的に公開をしてまいりました。それから、重要な発表事項に関しましては、幹部職員が地元に出向いて説明も行っております。
 今回の一連の事案を教訓にいたしまして、説明責任を果たして皆様の信頼を回復するということについてはもう精いっぱいの努力をしてまいりたいと思いますし、それから、今回の法案の中で、原子力安全に関する許認可それから検査については、公開の場で開催されております原子力安全委員会への報告というものが盛り込まれておりますので、原子力安全委員会への報告内容についてはすべて公開されることとなります。
小沢(鋭)委員 かなり前向きにやりたいという旨の御答弁だと思いますが、残念ながら現在は、ある意味でいうと、事業者も国も国民の信頼を失っている時期、こう言えると思うんですね。そういう時期において、やはり今のように、前向きにできるだけのものを常に出していきたいしという御答弁だけでは、どうもそれは国民の皆さんの安心感につながらない、こう思うんですね。
 そこで、ちょっと角度を変えてお尋ねしますが、情報公開法がございますね。一般的な情報公開法でありますが、その情報公開法で逆に国民側がお尋ねする話は、今、高市副大臣のお話があったような話も当然含まれるものと思いますが、国民側からそういう働きかけをしたときに、ほとんどのものが、今ありました核の拡散だとかそういったものに関するもの以外はすべて答えることができるんだということを改めて明言していただけないでしょうか。
佐々木政府参考人 確かに、情報公開法の規定によりまして、非開示理由が成立しないものはすべて公開をするということになっております。
小沢(鋭)委員 今の御答弁で、国民としてはそれができるんだということを改めて確認させていただいたというふうに理解をしたいと思います。
 ただ、そういうことであるならば、そういった程度の記載は国民の安心を得るためにも書いておいてもよかったのではないかなと改めて思っておりますし、我々の同僚が今いろいろな修正協議等もしておりますが、そこの一番の出発点はその情報公開の点であるということを申し添えておきたいと思います。
 維持基準について御質問を申し上げます。
 これも何度か出ている話でありますが、若干視点を変えてといいますか、我が党の中で出た意見、あるいはまた国民の皆さんから寄せられている意見を申し上げて、それに対しての見解を伺いたいと思います。
 と申しますのは、要は、維持基準は言ってみれば許容基準であって、それはある意味では事業者がアクセルを踏んでいくためのものではないか、こういうふうな疑念が今国民の中にあるんですね。こういった意見が我が党にも寄せられてくるんです。現に外国の例だと、維持基準を導入してから原発の稼働率がかなり上がるといったこともあるやに聞いております。
 そういった、今私が申し上げましたような、いわゆる維持基準というのは、安全を確保するというのももちろんでありますが、それよりも何よりも、どちらかというと経済的利益、ある意味で、アクセルを踏むために必要なものを逆に国がそういった事業者からの意見に押されて導入するんだ、お墨つきなんだという意見に対してどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。
西川副大臣 結論から申せば、決してそうではないということでございます。
 簡単にその理由を申し上げますと、今回の改正は、事業者がひび割れを発見した際の取り扱いが今まで不明確であった、こういうふぐあいが出た場合にはどうするかということで、今回の事案の以前から、先生御案内のとおりずっと議論してきたわけでございます。
 したがいまして、そういうことが一因ではございましたけれども、それを反省の大きな材料として、健全性の評価を行うことを事業者に義務づけることによりまして、再発防止、こういう点で取り入れるものでございまして、安全の水準を下げるとか、原子力のさらなる推進をしゃにむに図る、こういうことでは決してございません。
小沢(鋭)委員 御回答は確かにそういうことなんだろうと思いますが、今私がお伝えしましたような意見というのは、例えば日経新聞の九月八日付の記事の中にも、「電力各社は電力自由化をにらんで原発の運転費用抑制に躍起になっており、「検査の簡素化を求める業界の声に行政が動いた」との見方がもっぱらだ。」こういう書き方にもなっているわけですね。
 ですから、要は、こういう見方の中に、ある意味ではああした事実の隠ぺいの問題が起こり、そして今回の維持基準導入になる、こういうことでありますから、これは先ほどどなたか委員がおっしゃっていましたが、本当にタイミングが悪い、そういう時期だろうと思います。それは悔いても、ある意味ではこのタイミングは仕方ないのかもしれません。
 中身に入らせていただきます。
 いわゆるシュラウドの傷という問題がありました。腐食割れ、こういうふうに言われているようでありますが、例えば今の維持基準の話、この腐食割れの進行というのはその基準に入ってくるものと予想できるんでしょうか。なおかつ、それを入れるという意味は、シュラウドの腐食の進行というのは大体科学的な知見というのがあって、そして、少なくとも今回話題になっています何例かの事例というのは、科学的に見ても、あるいは経験的に見ても、安全だったとはっきりと断言できるのかどうか、それをお答えいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 今般の事案に係りますシュラウドのひび割れにつきましては、私ども保安院として、米国において安全規制に用いられております米国機械学会の維持規格などを参考にして亀裂の進展予測を行いまして、破壊力学的な評価を行い、直ちに原子炉の安全性に影響を与えるものではないということを確認したところでございます。
 今後、いわゆる維持規格につきまして、具体的にどの設備についてどのような基準を策定するかにつきましては、省令を策定する中で検討してまいります。具体的には、日本機械学会などが策定した民間規格につきまして科学的合理性や公正性について評価をした上で、所定のプロセスを経て国民各層の御意見を承りながら、国の基準として活用することの妥当性を判断してまいりたいと考えております。
 今お尋ねのシュラウドの健全性評価でございますけれども、日本機械学会規格の二〇〇二年版のまだ案でございますけれども、シュラウドの健全性につきましても、我が国の研究実績を踏まえた独自の評価手法が、個別検査の手法の規格の中で規定されております。今後、この技術的な妥当性をきちんと評価、検討した上で活用することは可能だと考えておりますが、今後の検討課題でございます。
小沢(鋭)委員 次に、ある意味では今回の最大のポイントといいますか、ダブルチェック体制につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
 このダブルチェック体制がきかなかったというのが少なくとも私の受けとめでございます。だからそれを強化するんだ、こういうことなんでしょうが、本当に果たしてこの程度の改正で国民が安心できるようなことになるんだろうか、こういう思いを持っております。
 具体的な名前は控えさせていただきますが、私がかねてから大変親しくさせていただいている原発立地県の知事さんと昨日もお話をさせていただきました。その知事さんは、ある意味では旧通産省に対しても大変理解のある知事さんでありましたけれども、昨日の少なくとも私との電話での話の中では、この法案の是非の前に、とにかく今のいわゆる保安院あるいはまた原子力安全委員会も含めて原子力発電の検査体制、安全確保体制に対しては大変深い疑念と怒りを持っているということをおっしゃっておりました。それは、この間の参考人の皆さんたちの意見もそうであります。
 先ほど大臣もおっしゃいましたが、今後、原子力発電を、新設を約十基予定しているということでありますが、その知事さんの言葉を私なりに解釈すると、立地県としてはもうとんでもない、新設どころの話ではない、この法案の前に、まず基本的に、その安全確保に対するいわゆる関係者の基本的な考え方、体質が問題なんだという御意見でありました。そこを直さない限り、小手先の手直しではだめなんだ、原発は安全だと常に安全神話を言い募って、本当に住民の声に、あるいはまた立地県のそうした声に少しもこたえようとしない、常に大丈夫だ大丈夫だという話の言い方ばかりで、そして常に事故が起こってくる、その繰り返しだ、こういうことでありまして、これは大臣、今本当にゆゆしき状態だろう、こういうふうに私は思います。
 そこで、何点かお尋ねを申し上げますが、今回のこのデータの改ざんを初めとする一連の件に関しまして、結果として、いわゆる保安院も原子力安全委員会も無力でありました。役に立たなかったと言われてもしようがない、こういうふうに思います。なぜ今回のこうした話が見つけられなかったのか、役に立たなかったのか、保安院と原子力安全委員会、それぞれの御見解をお尋ねしたいと思います。
佐々木政府参考人 まず、東京電力の自主点検記録に係ります不正の事案でございますけれども、事業者による自主点検について法令上の位置づけがなく、国によるチェックの仕組みが不備だったことがこのような事態を発見できなかった背景にあると考えております。今回、定期自主検査制度などの導入によりまして、こうした事態を防止するという対策を提案させていただいているところでございます。
 また、福島第一の一号機の格納容器漏えい率検査に係ります偽装の事案につきましては、国の検査官が一名立ち会って検査を行いましたが、当時の定期検査の記録によれば、あらかじめ定めた定期検査要領に従って適切な検査手順で行われており、当時の検査官の記憶によりましても、検査中何らの異常も認められなかったとしております。
 本件につきましては、事業者が意図的な不正操作を行い、検査結果の偽装を図ったものでありますが、このような検査について、初めから偽装の疑いを持って国が検査を実施することは困難であると考えております。罰則の強化や、あるいは点検を行った企業からの報告徴収などの不正の調査手段の充実を図らせていただきたいと考えているわけでございます。
 原子力安全・保安院といたしましては、今回の法案で盛り込まれた再発防止策だけでなく、事業者による安全確保活動の品質保証体制の確立など不正発生を防ぐ仕組みの強化あるいは検査の新たな手法の導入など、国の検査による不正抑止に努めてまいりたいと考えております。
松浦参考人 原子力安全委員会松浦でございます。お答えをさせていただきます。
 今佐々木院長からも御答弁ありましたように、今回のシュラウドのひび割れ等に関する不正に関しましては、これは国の規制の直接の対象になっていない事業者の自主保安の活動で発生したものでありまして、原子力安全委員会も報告を受けておりませんで、把握することはできませんでした。
 一方、東京電力の福島第一原子力発電所一号機におきます格納容器の漏えい率検査の偽装に関しましては、これはまさに国の定期検査を欺くことを意図してなされたもので、許しがたい行為で、あってはならないことと存じます。
 今回の事案は、事業者の安全確保への自主性とそれから責任感が十分に確立していなかったことが根本の一つだと思います。それからもう一つは、国と事業者の間の責任分担が明確でなかったというところも要因にあると思います。こういうことで、今後は事業者による自己責任の明確化をしっかり図るとともに、国が事業者の保安活動を的確に監査するという実効的な規制体制をつくるということが重要だと思います。
 こういう認識を徹底しますために、原子力安全委員会は、去る十月二十九日に、史上初めてでございますが、内閣総理大臣を通じて経済産業大臣にこの趣旨の勧告をさせていただきました。
 さらに、この不正が起こったさらにその根本のところを考えますと、やはりこれは経営者層を含めまして、現場も含み、組織全体において安全を第一とする安全文化が十分に確立していなかった、そういうことがあるのではないかと思います。今後は、現場も経営者も含めまして、とことんその安全のために、いつもこれでいいのかという常に問い直す批判精神を十分身につけていただかなければならないというふうに考えます。
 原子力安全委員会といたしましても、安全文化をより醸成するための活動、それから情報公開による透明性の向上あるいは規制調査の見直し等を十分に検討して、原子力の安全確保それから信頼性の確保のために真摯に活動していきたいと存じます。
小沢(鋭)委員 両者から幾つかの論点がございました。一つ一つ本当は入っていきたいと思いますが、その中でもちょっと気になったことを申し上げたいと思います。
 まず原子力安全委員会の方から、国と事業者の責任分担がはっきりしていなかったことも原因の一つ、こういう話がある中で、勧告が行われた、こう言われます。勧告、私も今手元に持っております。先ほど来政府の方からもそういうお話が出ておりますが、重いんだ、こういう話はおっしゃっておりますけれども、二枚紙であります。これは恐らく国民が、勧告というのがなされて、ああ大変なんだ、こう思っているかもしれませんが、これがそうですよと、こうやって見たときに、ああこんなものかというような受けとめになるんじゃないかな、そう思って私自身見ました。
 それは私の印象ですからともかくとしまして、その中に、いわゆる事業者に第一義的責任がある、こういう書き方になっておりまして、先ほどの御答弁の中にもそういう話があるんですが、第一義的責任ということがあるんだとすれば、最終責任という話があっていいんだろうと思うんですね。
 この原発、今回は事故が起こっておりません。起こっていなくてよかったわけでありますけれども、万一こうしたことでいわゆる国が検査で見逃した、そしてもし万が一事故が起こった、そうしたときの最終責任は一体だれにあるんですか。例えば、立地県の地域の住民の皆さんたちは、一言で言えば、だれに文句を言えばいいんですか。だれが責任を持つんですか。
平沼国務大臣 原子炉の運転等により原子力災害が発生した場合には、原子力損害の賠償に関する法律に基づきまして、原子力事業者が過失の有無にかかわらずその損害を賠償する責めに任ずることとされるなど、その責任は第一義的には原子力事業者が負うこととされているところであります。
 しかし、原子力施設は潜在的に大きなリスクを持つものでございまして、国は、公共の安全を守る立場から、原子力施設の許認可、検査などを通じて災害の防止を図る責任を負うほか、災害発生時の防災の責任も負っています。したがって、これらの責任については、政府部内においては許認可等の主務大臣が負う、そういうことに相なると思います。したがいまして、例えば商業用原発なら当然私、経済産業大臣が負うことに相なる、このように思っております。
小沢(鋭)委員 そこで、では大臣にお尋ねします。
 大臣としても当然大変な責任を感じてお取り組みいただいているものと思いますが、今回の処分、保安院の処分もあるいは大臣の処分も納得できません。例えば、大臣は御自身で自主的減給をされたというんですが、幾らですか。
平沼国務大臣 通例ですとそういう額は申し上げなくてもいいことになっておりますけれども、せっかくのお尋ねでございますから私申し上げさせていただきたいと思うんですが、私自身、これらの一連の事態を招いたことについては、経済産業省という組織の最高責任者として極めて大きく受けとめております。
 特に、今回の申告は私が大臣に着任した直前のことでございまして、私の大臣としての在任期間が本調査の時期にほぼ合致していた点でも、その感の意を強くしているところでございます。
 このような考えのもとで、私は組織の最高責任者として、政治家としてのけじめを明らかにする観点から、俸給月額の十分の二を二カ月分、これは正確に申しますと六十七万二千八百円を国庫に返納させていただきました。
 今後、職員と一丸となって国民の皆様方の信頼を回復すべく、私が先頭に立ってその努力をしていく、このことが国民の皆様に対する責任を果たすことにつながる、このように思っております。
小沢(鋭)委員 今大臣からもお話がありましたけれども、今回の話は、約二年間期間があった。そして同時に、先ほどから保安院の院長も、いわゆる法令上の不備があってそれに対応できなかったんだ、こういう答弁があるんですが、その法令上の不備そのものを、これは不作為だ、なぜ今までやれなかったんだ、あって当たり前じゃないの、こういう話が国民の意見なんですね。あって当たり前のことをやらなくて、そしてそれが不備でありましたから発見できませんでしたという話は、どう考えてもこれはおかしいんですよ。
 大臣のあえておっしゃっていただいたその自主的返納も、額の話に入るのはともかくとして、これだけの国民の信頼を失った対価がそんなものか、これから日本のエネルギー政策、本当にどうしていくんですかということで、その対価がといったって、それが一律にそうだとは言いませんけれども、やはりそこは国民としても納得できない、こういう思いなんだろうと思うんですね。改めて私は、この法案が仕上がったときのそれぞれの皆さんの責任をはっきりされることをこの場で申し上げておきたいというふうに思います。
 それから、最後になりますが、こういったことを起こさないための一つの意識改革にもなるし、そして構造改革にもなる話が、民主党の、あるいはまた野党、共産党、社民党の皆さんにも同意を得て共同提案をさせていただいたいわゆる三条委員会の設置法であります。
 ここは本当に、推進と規制、やはりそこをしっかりと分離してやっていこうというのは物すごく当たり前の考え方のような気がします。もちろん、推進の側は推進の側でノウハウを持ちながらやっていただくのは大いに結構です。しかし、そのチェックを、先ほど来からもお話が出ておりますような第三者的なとか、そういえば与党の議員の皆さんもそうおっしゃっていたですね。ダブルチェックという理解ではなくて、第三者的なというか、まさに規制は規制として、チェックはチェック機関として考えていくという話があってしかるべきだと思いますし、先進国みんなそうなっていると思うわけであります。
 そして、勧告ではないんですが、原子力安全委員会決定というのが十月十七日に出ているんですね。これの一文の中に、いろいろありまして、「同時にこれを、安全確保体制の全体を根本的に再検討する機会として捉え、」こうあるわけですよ。
 これはやはりもう踏み込むべきだと改めて申し上げて、大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
平沼国務大臣 民主党さんからも、三条委員会を設置しろ、こういう御提案をいただいていることは私も承知しております。
 先ほど来、いろいろな方々に対する答弁の中でも言わせていただきました。やはり日本の場合には、先ほど来の議論の中でも出ておりましたように、一方においては原子力を推進する、その意味では、推進官庁たる経済産業省の中に、安全をしっかり理解し、そしてさらに知見を有する、そういう部署がなければならない。そうなりますと、いろいろ議論があったところですけれども、ダブルチェック体制ということで、一次規制は経済産業省の中で行い、さらにそれをしっかりと担保するために内閣府の中に原子力安全委員会をつくって、そしてそのダブルチェック体制、こういうことでやってきております。
 今回、このいろいろな事例の中で、大変そこの不備が露呈をされました。したがって、そこのところを今回お願いしている法案の中にも盛り込ませていただきましたけれども、徹底的に、やはり今までの反省の上に立って、原子力安全・保安院の強化も含め、また原子力安全委員会との連携も含め、また原子力安全委員会の機能も含め、私どもは、このダブルチェック体制、ここをしっかりとやっていくことによって国民の皆様方の信頼を回復すべきだ。御提案のことは、先ほどの答弁でも言わせていただきましたけれども、私どもとしては、保安院のあり方についても総合的に、また将来的にわたって検討はさせていただきたい、このように思っています。
小沢(鋭)委員 大臣におかれましては、経産省の責任者、こういうお立場もわかりますが、それを超えて、この国の本当に必要なことを政治家として考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
村田委員長 田中慶秋君。
田中(慶)委員 私は、民主党の立場から、今般の議題になっております法案等について質問をさせていただきます。
 特に、今回の事故の関連を含めながら、その原因はどこにあったんだろうか、こういう形でよくアメリカやヨーロッパと比較をされてまいります。そうしますと、我が国の原子力安全規制体制という前提は、すなわち、アメリカの原子力規制委員会、NRCと比較なりそれに匹敵するようなことを十分考えるべきではないかと思うんですけれども、まず最初に、それらについての見解をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 田中先生にお答えさせていただきます。
 今御指摘のございました米国原子力規制委員会、NRC、現在約二千八百名の職員を擁しております。我が国においては外部の安全規制の支援機関等が実施している安全研究や実証試験の要員も組織内に含むなど、その組織構成には我が国の行政組織とは異なる面があることも事実でございます。
 我が国においても、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会の職員数、これは三百六十五名でございます。そのほか、公益法人などにおいて安全規制に関係している人員が六百人程度おりまして、その一部は今回設置される独立行政法人に移行する予定でございます。
 いずれにいたしましても、今回の東京電力による自主点検に係る不正問題や国の定期検査における偽装問題の発生によりまして、原子力の安全確保に対する国民の信頼を大きく損なったことについては、重く受けとめなければならないと思っております。
 そのため、体制面での強化につきましても、やはり検査官の増員、そして独立行政法人の活用について現在検討を行っておりまして、今後、財政状況が厳しいわけでございますけれども、私どもは関係機関との調整を行って、ここのしっかりした体制をとる、こういうことを努力させていただきたい、このように思っております。
田中(慶)委員 私は、安全というものは、今回のエネルギー、これからの推進に当たっても一番重要なことだと思っているんです。そういう中で、今回のような事故がなぜ起きたのかという前提であらゆる面をチェックしていかなければいけないんだろうと思います。
 しかし、私は、専門的な知識やあるいは検査能力を持った技術者、研究者等が余りにも日本の場合少ない、こう思っているし、また、その業に当たる人たちのトレーニングがどうされているのか、今の状態が、ある面ではどういうトレーニングでどういう形で結果的に技術者の養成をしてきたのか、そういうところにも今回のような問題が出てきているんだろうと思いますが、それはどうなんでしょう。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 この原子力安全規制担当職員の研修につきましては、現在年間五千二百万円の予算で職員を対象とした研修を行っているところであります。
 具体的には、この予算によりまして、原子力施設の現場に配置される原子力保安検査官、原子力防災専門官に対する研修、あるいは定期検査などを担当する原子力施設検査官や電気工作物検査官に対する研修など、職務内容に即した研修のほかに、品質保証など安全規制に関係する分野についての個別的な研修も行っているところであります。また、日本原子力研究所におきましては、原子力施設などの実習を行う研修についても職員を派遣しまして受講をさせているところでございます。
 この他、約一千二百万円の予算でございますけれども、海外の規制機関に職員を派遣しておりまして、米国のNRCにはこれまで、まだ少ないんですけれども、十三名の職員を派遣しております。ことしからは、英仏の規制機関にも職員を派遣して研修をさせる、こういった段取りを今しております。
田中(慶)委員 今大臣から、研修等々に五千二百万円の予算を使って、こういうことでございました。今電気事業者は、原子力発電の操作、それなりのトレーニングをするのに平均して大体一人五千万円の予算をかけて訓練しているんですよ。保安院の中でトータルとしての予算が、事業者の一人分の予算にしか匹敵しない。こういう点で、安全意識や安全の危機管理という問題からすると、やはり本来のエネルギー、まして原子力エネルギーに対する取り組み方とすれば、私は、現実問題として今回のような事故が出てきた原因もこういうところにあるような気がしてならないわけでありますけれども、大臣、どう思いますか。
平沼国務大臣 電力会社が一人当たり五千万、こういうお話がありました。それに関して、国の方が約五千二百万と千二百万、これは非常に乖離があるところだと思います。
 しかし、国としては、研修に対してはそういう費用ですけれども、そのほかにも私どもとしてはいろいろな形での業務の中でいろいろ、ある意味では通常の予算の中でやっているということも含まれていると思っております。
 しかし、御指摘のように、相対的に言えばこれは民間事業者に対しては少ないということは認めざるを得ない、こういうふうに思います。
田中(慶)委員 大臣、保安院というものが創設されたのはいつですか。
平沼国務大臣 中央省庁の再編に伴いまして、それまでは資源エネルギー庁の中の機関としてやっておりましたけれども、したがいましてこれは、ちょうど中央省庁再編というのは一月六日でございましたけれども、あれが二〇〇一年、平成十三年でございますね。
田中(慶)委員 資源エネルギー庁の問題もありました。保安院もありました。省庁再編で、例えばこの保安院の人的要員を確保するのに、いろいろな人事異動ありますでしょう。しかし、こんなことを言っては大変失礼、今はそうじゃないと思いますけれども、人的なものを確保する同じ検査員でも、日本の安全、こういう大切な仕事をする。個人的にその人がいいとか悪いとか言っているんじゃないんですよ。でも、農水省の米の検査員が、今回の保安院の、少なくとも原子力の現場に検査員としていらっしゃったことも事実なんです。それは優秀だったんでしょう、そこへ行くからには。でも、だれが見てもこういうことが信頼関係を失うことの原因の一つになっていくと思うんです。どう思いますか。
平沼国務大臣 現在、保安院におきましては、農水省の者が検査に当たっているという、例えば米の検査をした人が検査に当たっているという事実はありませんけれども、過去、農林水産省の職員を地方の通商産業局において採用しまして、当時の資源エネルギー庁運転管理専門官事務所に配置していたという事実は調べたところあると聞いております。これは、農林水産省の行政組織の見直し等に起因する部門間の配転によりまして、昭和五十年代後半から農林水産省職員を地方の通商産業局に受け入れたものでございまして、中には農産物検査官であった者がいた、こういうふうに調べたところ出てきました。
 これらの者が運転管理専門官事務所に勤務するに当たっては、本省の研修を頻繁に受けることなどによりまして知見を取得し、当初プロパーの職員の指導を受けて現地事務所で職務に当たっていた、こういうふうに承知しております。
 なお、地方通産局で採用されたこれらの職員は既にすべて退官をしている、このように承知しています。
 なお、過去どれだけあったかということなんですが、女川事務所で一名、福島事務所で二名、東海事務所で一名、浜岡事務所で一名、それから、敦賀、美浜で二名、それから、大飯、高浜で二名、こういったことでございまして、そういう事実はございました。
田中(慶)委員 ですから、私は、そういう人たちも含めながら研修というものが大切だし、そういうところへ予算を十分とってやることが意識改革になっていくだろう、そういう意味で申し上げたわけであります。
 特に、先ほど来アメリカやあるいはまたそれぞれの外国との比較の中で大臣も言われているように、日本の検査に当たる保安院の皆さんがトータルとして三百六十五名、こういうことを言われております。そして、先ほどアメリカは二千八百名と。前から申し上げているように、アメリカは原子力発電所が日本の約倍、そうですね。日本は二分の一としても、少なくともこの三百六十五名対二千八百名というこの比較対照をしても、危機管理あるいは安全に対する意識が全然少な過ぎると私は思うんです。ましてそれは、アウトソーシングじゃないですけれども、独法にあるとかいろいろなことを言われておりますけれども、そうではない。やはり安全ということについて最大の力を入れるならば、ここに重点的に人的要員を導入すべきだと思うんですよ。
 何か今回、四十名が動員されて行革からどうのこうの、とんでもないことですよ。これだけの事故があって、これからのエネルギーをどうするか、環境問題をどうするか。むしろ、これは国家戦略的立場でエネルギー戦略を考えて、四十名とかなんとかじゃなくして、少なくとも千名あるいは千五百名に達するぐらいの予算を講じて、大臣はそのぐらいの決意でそれぞれの省庁と連携をとりながらやるべきじゃないですか。それこそ、スクラップ・アンド・ビルドだったら、集めてきて、またそこで十分にトレーニングして、そのぐらいのことを私はこれからすべきだと思うんです。どう思いますか。
平沼国務大臣 今、国の厳しい財政事情の中で四十名、確かにこれはアメリカと比較しては少ない数かもしれませんけれども、これは今の日本の現状からはぎりぎり、相当確保できた、このように認識しています。
 しかし、一方においてそういう御指摘がある、こういうことを私も重く受けとめて、いろいろ努力をしていかなければいかぬと思っておりますけれども、この四十名というのも、そういう私どもの認識に基づいて、今の厳しい財政当局との間の中で獲得できたぎりぎりのところだ、こういうことも御理解をいただき、さらに私は努力をさせていただく、こういうことで申し上げたいと思います。
田中(慶)委員 原子力発電の、あるいはこれらの事故によって国民の信頼を失ってきているわけですね。そして、なおかつ、今停止されているものをこれから稼働させるために、そういうことを含めて考えてきますと、国の財政が厳しいからといってこの問題を、やはり国のエネルギー政策なんですから、四十名が最大の努力であってなんというようなことじゃなく、もっと力を入れて、ふやすべきものはふやしていいと私は思うんです。
 だれも反対しないと思いますよ、はっきり申し上げて。それは、あなたたちが省の中にいるからそういうふうになってきているのであって、国民はむしろ、安全というためにこれだけ必要なんだということであれば、私は賛成すると思いますよ。その辺をもっとしっかりしないとだめだと思いますよ。
 それは、あなたが今省内や、あるいはまた行革のいろいろな形の中で、それぞれいろいろな風当たりが強いものですからその程度になっていると思いますけれども、四十人なんというのは私は全然少ないと思いますよ。もっと努力してくださいよ。どうですか。
平沼国務大臣 私どもとしては保安院それから原子力安全委員会三百六十名、その他に約六百名、こういうことでございます。
 したがって、倍という形でいえば、二千八百、そういう基準でいえば、もう少しふやす、こういうことに相なると思います。ですから、そこに四十人が加わった、こういうことでございまして、私どもとしては、おっしゃる意味はよくわかりますし、このことは私もこれから最大限の努力をさせていただいて、国民の皆様方にやはり安心をしていただくような体制をとること、これは御指摘のように私の務めであると思いますので、引き続き、厳しい中ですけれども、一生懸命努力をしてみたい、このように思います。
田中(慶)委員 厳しい中ですけれどもということでありますが、やはりスクラップ・アンド・ビルドで、大変申しわけないけれども、今の省庁を見ていて、はっきり言って本当に暇な省庁もあるようですから。ぬるま湯にだっぷりつかっているんですから。朝電話してくださいよ。はっきり申し上げて、九時に来ている人なんてほとんどいないですよ。
 こんなことを含めながら、やはり厳しい状態の中で、厳しく査定をしながら、必要なところに必要な異動をしながらやるべきではないんでしょうか。そういうことを含めて私は申し上げているので、安全というのはこれからの最大の大きな政策だと私は思いますから、ぜひそうしてください。
 それで、原子力安全委員会委員長、来ていますね。実は、今回三十四年ぶりで初めて勧告をされた、こういうことでありますけれども、私は、それ自体が原子力安全委員会の機能を発揮していなかったんだと思います。
 なぜかというと、その以前に、動燃、ジェー・シー・オーの問題、いろいろあったでしょう。あのときなぜ発揮しなかったのですか。あのときの問題は事故じゃない。あれは事件ですよ。バケツで放射能に汚染されているものをくむようなことを平気でやったわけですから、完全なる事件ですよ。そういうときに勧告も何もせずに、今回のシュラウドの傷でどういうふぐあいがあって、どういう人的被害があって、どうしたんですか。
 そういう点では、機能が全然されていない。いろいろな社会的な問題になったから、初めて今回勧告したんじゃないですか。どうですか。
松浦参考人 原子力安全委員会の松浦でございます。お答えいたします。
 かつても、原子力安全委員会で勧告を出すかどうかについてかなり真剣な討議がされたことがあったというのは伺っております。私が委員会に参りましたのは平成十三年からでございますが、確かにそれ以前にも何度かそういう議論がありましたが、そのたびごとにいろいろ議論を進めていったところで、行政機関の方、規制行政庁の方で十分な対応がなされる、そういうふうな認識を原子力安全委員会が持たれまして、それで勧告がされなかったというふうに伺っております。
 今回のものにつきましては、国民の原子力安全に関する信頼の毀損といいますか崩壊が相当にひどい、やはりここは必死になってありとあらゆる努力をすべきだというふうに考えまして、勧告をするようにいたしました。
田中(慶)委員 相当にひどいからとか、だから勧告したとかいうことじゃないと思うんです。あの動燃のとき、なぜしなかったんでしょう。
 私は現地にも行きましたよ。少なくとも、ああいう一連のことをやはり勧告すべきだった。原子力安全委員会が設置をされてから、今回初めてですよ。これだけいろいろな形で今日まで何回か、大体この四、五年の間にいろいろな事故があってきたんですけれども、こういう一連のことで勧告をせずに、今回シュラウドの問題から端を発したわけでありますけれども、シュラウドの問題よりは前段の動燃の方がむしろ厳しかったんだ、専門家としてそうあるべきじゃなかったかな、私はこう思うんですけれども、再度答弁してください。
松浦参考人 過去の問題に関しましては、私はもう弁解のしようがございません。しかし、今後は、時を移さず、必要になったと思ったときには勧告するようにいたしたいと思います。
田中(慶)委員 原子力安全委員会というのは内閣府に設置をされて、そしてなおかつ、行政としてあなたのところがダブルチェックの本当の役割を果たさなければいけないわけでありますから、ぜひそうしてほしい。
 今回の法案をつくる段階から、あるいは事故の段階から原因があったのは、設置基準は明確になっていたんですけれども、維持基準や点検基準が何もなかったところに問題がある。外国では全部そういう形で維持基準というのがあったわけでありますから、そういう前提を含めて考えてくると、この基準そのものについても、つくるべきでなかったかという勧告を出してもよかったんじゃないですか。どうですか。
松浦参考人 維持基準に関しましては、過去にもいろいろと議論があったと承知しております。
 しかし、最近、この数年に至りまして、日本の学会の中でも相当に検討が進んで、いよいよ日本の中でも維持基準を導入すべきだという議論が現在活発になっておりまして、原子力安全・保安院もこの二年ほど前からそういう活動をしておられるということは安全委員会としても承知しておりまして、その方向で進めていただくように我々も期待していたところでございます。
田中(慶)委員 私の質問に答えてくださいよ。答えていないじゃないですか。
 少なくとも、設置基準が明確になって、外国では維持基準というものになっている。なかったことについて、今回、いろいろな形で事故が起きたわけですから、こういうところを事前に維持基準を設置すべきであるということを、少なくとも外局としてそういうことを現場に指示するのがあなたのところじゃないんですか。それをしなかったでしょう。そのことを答えてください。
松浦参考人 御指摘のように、過去はそういう指摘をしておりません。しかし、今回の事案に関しましては、そこは絶対に必要だと思いましたので、先般の勧告の中でその点を改めて入れさせていただきました。
田中(慶)委員 私が言っているのは、過去にしていなかった責任というものがあるということを申し上げているわけで、まして原子力という一つの大きなエネルギーの政策の中で、設置基準は本当に厳しく、ところがあとはいい、これが日本の現状なんです。
 ですから、今回も私たちは、政府が出された法案について幾つかの修正案を申し上げたわけであります。例えば、原子力安全委員会への報告についても、ダブルチェックの面からして、年に一度というものを四半期にさせる、できるだけそういう報告の機会をしてその辺についてのチェックをする、こういう形でお願いを申し上げたわけでありますし、あるいはまた、今回のように申告制度についても、保安院に申告されても、内局の中にあれば、そこで事業者は仕事をしていて、幾ら申告があっても、また変なことを行政指導としてされるといけないわけですから、そういう点では外局の安全委員会に、ダブルチェックの趣旨というものはそういう点でもお願いしたわけであります。
 そのことによって、今度の申告といいますか内部告発といいますか、そういうものがオープンになってくるだろう。今までは、したくても、するとまた行政指導で何かがあるんじゃないか、こういうことがあったかどうかは別問題として、そういうことが予想されるわけですから、その辺が今回の大きな、私は少なくとも修正点に盛り込むよう主張してきたわけですけれども、我々は少なくとも皆さんと話し合えてこういうことが了解をいただけるようになってきておりますけれども、大臣、その辺の感想はどうでしょう。
平沼国務大臣 今回、御党から建設的なそういう修正の案をいただいているようでございまして、私どもとしても、これは今よく検討させていただき、そして、そういう建設的で将来にとって有用な御提案はやはり基本的には積極的に取り入れていかなければならない、このように思っております。
田中(慶)委員 そこで、通告はしておりませんけれども、世の中、品質管理、いろいろな基準をつくるときに、ISOというのを大臣御存じでしょう。経済産業省はISOを奨励していますよね。
 ISOを今回のようなこれからの事務処理の中に入れたらどうなんでしょう。事務の合理化なりいろいろなことを含めて、ISOというのは国際基準ですからね、はっきり申し上げて。そうすると、今のような問題を含めて、内外的な比較もできるわけですし、私は、これからの品質管理や、あるいは制度をよりグレードアップするためには、ISO的なことをしていくことでよりこういう安全の確保というものができるんだろう、このように思いますけれども、どうでしょう。
平沼国務大臣 私どもは、それを取り入れていく余地はある、このように思っております。
田中(慶)委員 いろいろな形で余剰人員やいろいろなことも全部チェックできるんです、ISOを導入することによって、的確に仕事や内容やいろいろなことを含めて。
 ですから、民間企業がまず一番大切にしているのは、企業の中の安全をいかに確保するかということなんです、人的な資源ということを考えて。そしてまた、いかに顧客に対して信頼をいただくか、こういうことなんです。これも全部安全、いろいろなことを含めて。そして、結果としてISOを、訓練をしながら、半年、一年かけて、お金をかけながらやっているわけですよ。
 ですから、私は、今回のトレーニングの一環、いろいろなことを含めて皆さん方がいろいろなトレーニングをさせるということでありますから、その発想というものを十分に参考にしてやるべきだろう、結果としてそれで今回のような問題について欠陥が補完されるんじゃないかな、こんなふうに思いますけれども、どうでしょう。
平沼国務大臣 十分検討の余地がある、こう申し上げたのは、そういう意味において申し上げました。
田中(慶)委員 それから、今回の問題の中で、私は、申告者の問題というものがある面では一番保障されていない部分があったと思うんです。どちらかというと、今までの日本の風習で、内部告発とか申告というものが、ある面では嫌われていた部分がある、はっきり申し上げて。
 ですけれども、これから、いろいろなふぐあいを含めながら、安全なりいろいろなことを信頼いただくためには、そういうことを本気で真剣に受けとめていかないといけないんだろう。幾ら保安院がいても、現場で操作をするわけじゃないわけですから、やはり現場というものは一番大切にしていかなければいけないんじゃないかな、私はこんなふうに思っているんですよ。
 そのときに、しっかりと現場でそういうものを保障してやり、そしてオープンにしてやり、そしてそれが勧告もできる制度を今回私たちは多くの皆さん方の理解をいただくようになっているわけですけれども、今までその勧告も含めてなかったところに、今回のような原因があったような気がしてならないわけであります。ですから、これからの申告制度というものを、まだまだ成熟していないと思いますけれども、できるだけこの制度というものを成熟させて、そして安全に寄与させるように努力していただきたいと思いますけれども、いかがですか。
平沼国務大臣 今回の東京電力の事案も、その発端は申告がありました。非常に問題だったのは、もう重々御指摘されておりますけれども、結果的には二年かかってしまった、こういうことであります。
 やはり申告制度というものはしっかりと強化をして、そして体制をとらなければいけない、こういうことで、私どもは、申告調査委員会、こういったものもつくらせていただいて、そしてきめ細かく対応し、そしてそのものについてはできる限りオープンにしていく、こういう体制をとらせていただきました。
 したがいまして、田中先生御指摘のように、申告制度、従来は日本の社会では内部告発というのはどっちかというと負に見られておりましたけれども、そうじゃなくて、やはりそういう申告によって安全の担保でありますとかあるいはいろいろな面がしっかりと機能する、こういうことが必要でございますから、私は、この申告制度というものをオープンのもとでしっかりと整備していく、このことが重要なことだ、こういうふうに思います。
田中(慶)委員 ぜひそのような努力をしていただきたいと思うし、もう一つは、先ほど大臣も、これから検討すると、自民党の吉野さんも第三者機関ということを盛んに言っておりましたね。私は、これも本当にこれからいろいろな形でできるだけ早く検討しなきゃいかぬと思っているんですよ。
 例えば、皆さん、今行政の中の経理の問題も含めて、決算の問題で少なくとも外部監査というものが入ってきております。昔は入っていなかったんですよ。これはいろいろな問題が、ふぐあいができるから出てきているわけです。こういうことを含めながら、やはり外部監査というものはより精度を上げたり、あるいはまた、お互いに嫌なようでありますけれども、これは一方においてはしがらみなり、マンネリ化する、はっきり申し上げて。いや、そうではありませんと言っても、こうなってしまうのが我々人間社会だと私は思いますよ。ですから、それを外部からしっかりとチェックしたり勧告をできるようなシステムというのはぜひ必要だと私は思っております。それが結果として、例えば申告者からダブルで出て、片方がそれを処理しなかったら片方がそれを勧告できる、こういう仕組みだと思うんですよ。
 もう一つは、今回二年もかかりましたよね、はっきり申し上げて。いろいろなことが、私は必ず真実は一つだと思っておりますから、何かいろいろなところが、電気事業者が矢面にされたり、いろいろなことをしておりますけれども、私は違っていると思っているんですよ。ということは、内部の問題が、それを出されると困る、はっきり申し上げて。いろいろな形で結果としてそれが、記録を保存していないとか。そんなことありませんよ、はっきり申し上げて。ですけれども、まあ保存していないんでしょう。でも、そういうことを含めて、外部にそういうことを設置すること、それからそのふぐあいなりいろいろな内部の告発が出てからの時間的な処理が詰まると私は思う。そして、適切にその指導なり安全というものの確保ができるんだと思っているんですよ。
 ですから、そのことを含めて、大臣、ぜひそのことについて、先ほど来の何かいま少しふわんとした形じゃなくして、もう少しぴしっと答弁してくれませんか。
平沼国務大臣 ずっと午前中そういう答弁をさせていただきました。原子力を推進していくに当たっては、やはり知見を有し、その安全性を担保し、そしてそこを熟知している人が推進側にいるということは必要だと。ですから、そういう意味では、ダブルチェック体制というのをよりいい形で、そして機能を強化してしっかりやっていくことが大切だ。そういう形で、今回の法案の中も、いわゆるダブルチェック体制が基調になっています。
 しかし、いろいろ御指摘もありますし、御意見もあります。ですから、そういう中で、保安院も含めて今後のあり方については私どもは総合的に考えていかなければいかぬ、こういうふうに思っております。
田中(慶)委員 今大臣は、それ以上いろいろな関係で述べられないのだろうと思います。
 そこで、せっかく原子力安全の委員長さんが来ておりますから、今私が申し上げたような形で、少なくともあなたは外局にいられるわけですから、これらの問題をはっきりと、保安院あるいはまた検査の問題等々を含めて、三条委員会といいますか外部といいますか、外局がそういうことをした方がいいと私は思いますけれども、あなたの見解はどうでしょう。
松浦参考人 日本の原子力規制の形は、御案内のように、規制行政庁が一次的に規制し、それを中立的あるいは客観的な立場で原子力安全委員会がダブルチェックをするという格好で進んでおります。そして、私自身は、この現在のやり方は、有効に働かせることで十分その機能を発揮できるんだと考えております。
 どういう規制の形をつくるかということにつきましては、これはそれぞれの国がそれぞれの行政の歴史とか事情とかによって議会でお決めになることでございますので、安全委員会の委員の立場でそれをどうこうということを申し上げることは控えておくべきだと思っておりまして、私としては、与えられた形の中で最大の努力をするというふうにいたしたいと思います。
田中(慶)委員 そういう答弁でしょう。
 でも、少なくとも原子力安全委員会の中に、二十四条に勧告という問題がしっかりとキープされてきたわけですけれども、それが今日まで十二分に発揮できなかった、出動できなかった。今回初めてしたわけでありますから、そういうことを含めてそういう法律の、そんなことを言ったら、この勧告制度というのは全部に適用するわけですから、全部あってよかったわけですけれども、やはり十二分にそういう機能ができるようなことを含めてやっていかないと、これからの日本の原子力行政というものが今や本当に大切なんですよ。
 私は前々から、エネルギーの問題、環境問題、あらゆることを含めて原子力の役割というのは大切であろう、このように考えて、だからこそ、大切だからこそ、その中で一番大切なのは安全だ。そこで働いている人たちの命もかかっているわけです、はっきり申し上げて。
 それから、今のような問題でいざ有事という形になってくると、地域の人たちにも大変な御迷惑をかけるわけですから、そういう点で、念には念を押せ、セクショナリズムじゃなく、しっかりとお互いに連携をとりながら同じ目標に進んでいかないと効果は出てこないと思いますから、やはり安全委員会であろうと保安院であろうと、あるいは経済産業省であろうと、一つの大きな国家政策のエネルギー政策についてはしっかりと同じ方向を向いて協力をしていかなければいけないのだろうと思いますので、そのことを要望して私の質問を終わりますが、大臣、何か答弁があったら答弁してください。
平沼国務大臣 最後に、安全性が一番だと。こういうことは私も同感でございまして、そのことを肝に銘じてこれから一生懸命努力をさせていただきます。
田中(慶)委員 終わります。
村田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎でございます。
 これまで、今回提出をされております両法案について数多くの方々から御質疑がございまして、恐らく重複する点が多々あろうかと思いますけれども、本日、採決といったようなお話も聞いておりますが、今回のこの両法案については最後の質問になろうかと思いますので、答弁の方、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。
 初めに、電気事業法の改正についてでありますが、今回の原子力関連法案が審議されておりますのは、申し上げるまでもなく、八月末に東京電力の自主点検時の記録の不正などが公表されまして、その後、中部電力、東北電力まで及んだことに端を発している、このように思っております。今般の事案は、安全性に関して直接の影響は結果としてなかったかもしれませんけれども、地域住民を初めとする国民の立場からすれば、およそ許しがたい行為でございまして、その原因究明と再発防止が急務であることは言うまでもない、このように思います。
 既に、東京電力の不正問題について原子力安全・保安院や関係審議会の小委員会で報告がなされて、結局は原子力事業者のおごりや原子力の安全性への意識過剰によるものと考えられるわけでありますが、改めて、一連の事件の原因はいかなるものであったのか、この点をお伺いいたしたいと存じます。
佐々木政府参考人 今回の一連の事案が生じた原因につきまして、総合資源エネルギー調査会原子力安全規制法制検討小委員会で検討を行い、十月三十一日に報告が取りまとめられました。
 この報告によりますと、電力会社側の要因としては、経営トップを含む原子力部門以外の部門からの十分な監査が及ばなかったこと、安全確保についての品質保証活動が経営上重要なものとの認識が組織全体に浸透していなかったこと、この結果、自主点検においてひび割れなどが発見されても、現場限りで安全上問題がないと判断できれば、それ以上の対応を行う必要がないとの意識を生み出したことなどが指摘されております。委員から原子力事業者のおごりや安全文化の意識過剰について御指摘をいただきましたが、このような限られた者での独善的な判断が習慣化されていたとの御指摘と考えます。
 また、国側の要因といたしまして、自主点検の規制上の位置づけが明確でなく、事業者による自主点検の適正な実施を担保する仕組みが欠けていたこと、技術基準等の運用やトラブルに係る報告対象の範囲についても不明確であり、事業者の不適切な対応を防げなかったこと、組織的な不正に対する不利益措置や罰則等が相当程度軽かったことなどが指摘されております。
 これらに加え、官民とも、地域住民など国民の皆様との間の情報共有を図り、信頼を得ていくことの重要性についての認識が不十分であったことが、今般の一連の事案による国民の不安、不信につながったものと認識しております。
工藤委員 今回の法律案、大臣の提案理由にありますように、再発防止のために提出をされているわけでありますが、そこで、今回の法改正で提案されております記録の保存義務や罰則の強化だけで本当に再発防止ができるのか。今いろいろ御答弁をいただきましたが、なぜこのような対策で今後不正記録等の問題が防げると言えるのか、その点をお尋ねいたします。
佐々木政府参考人 今般の一連の不正行為でございますが、事業者の自主点検が法令に位置づけられていなかったため、自主点検で発見されたひび割れの兆候が放置されたり、適切な記録の保存がなされていなかったものです。加えて、ひび割れ等のふぐあいを評価する手法が不明確であったことも、適切な対応がなされなかった要因の一つと考えております。
 このようなことから、今般の法案におきまして、事業者に対して定期的な自主検査を義務づけるとともに、仮にひび割れを見つけた場合には、設備の健全性に問題がないかを評価させることとしております。また、これらの検査や評価の結果は、事後でも確認ができるよう記録の保存を義務づけるものであります。さらに、事業者が行う定期的な自主検査については、それが適切に実施されるよう、独立行政法人及び国がその実施体制を審査、評定することとしたものであります。そして、事業者の組織的な不正を防止し、法令遵守意識を高めるために、法人重課の導入や罰則の強化をいたします。
 これらの一連の対策は、学識経験者の方々等から成る検討委員会で、原因分析や背景要因の検討をした上で再発防止策として取りまとめていただいたものを法制度化したものであります。このような一連の措置によりまして、今般のような不正事案の再発を適切に防止できるものと考えております。
工藤委員 今回の再発防止対策は、先般参考人でお越しをいただきました近藤先生が中心になって、原子力安全規制法制検討小委員会において論議された結果が反映されていると思うのでありますが、専門家の意見としての小委員会の再発防止策の提言が今回の法律案にどのような形で具体的に取り込まれているのか、その点をお伺いいたします。
桜田大臣政務官 先生御指摘のとおり、今般の一連の事案に関しまして、総合資源エネルギー調査会の原子力安全規制法制検討小委員会において、再発防止策の検討をしたところでございます。それで、十月の三十一日に中間報告として八項目の提言を取りまとめたところでございます。
 その提言のうち、法律上の措置が必要なもの、すなわち、一点目は事業者による自主点検の法的位置づけの明確化、二点目に自主検査結果の記録、保存の義務化、三点目に設備の健全性評価の義務化、四点目に罰則強化等につきまして本法案に反映させているところでございます。
 また、その他の項目については、政省令の改正など、制度運用面の改善によりまして対応していきたいと思っております。
工藤委員 今回の一連の問題は、二〇〇〇年七月に東電の検査を請け負った米国のゼネラル・エレクトリックの子会社からの申告に端を発して、それから二年以上もたってようやく不正が明らかになったのは、申告制度自体に欠陥があったと考えるわけでありますが、現行の原子炉等規制法に基づく申告制度では、主務大臣への申告の規定及び事業者側が申告者に対して不利益な取り扱いをしてはならないことのみが定められておりまして、申告があった場合の調査権能については何ら触れられていないわけであります。
 今回の問題も、申告から事実が明らかになるまで二年以上の歳月を要したということは、やはり国に強制捜査権能を法的に付与することが必要ではないかと思うわけでありますけれども、この点、お答えをいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 東京電力のデータ改ざん問題について、最初の申告を受けてから公表までに二年以上を要したことに関し、評価委員会では、規制当局が、申告の内容が事実だとしても安全上問題なく、法令違反の可能性も低いと判断したため、調査への取り組みが不十分となり、早い段階での法律に基づく処理が行われなかったとの評価がなされております。
 すなわち、本件につきましては、強制調査権等がないことが処理を困難にしたのではなく、申告制度に対する私ども規制当局の不十分な認識に基づく不適切な処理が問題であったものと反省しております。今後は、法律に基づく報告徴収やあるいは立入検査を機動的に行うなどによりまして、的確な処理を行うことが可能であると考えております。
 また、今回の法律改正によりまして、報告徴収対象を保守点検事業者に拡大したり、罰則を強化するなどの措置を講じることとしておりまして、こうした対策も的確な申告処理に資するものと考えております。
工藤委員 これまでの議論を通じて言えることは、結局のところ、検査制度や申告制度に関して、国がある程度事業者への関与の度合いを強めていく必要があるだろうということでありまして、一方で、国としても、限られた人員や資源を効率的に活用して、今般のような不正問題を看破できるような検査制度とする必要があることは言うまでもないわけであります。
 このような双方の要請にこたえるための新たな検査制度をどのように構築されていかれようとしておられるのか、改めてお伺いをいたします。
西川副大臣 工藤先生の御指摘は大変大事な点だというふうに思います。
 検査制度については、今回の法律改正で、事業者による自主検査の法定義務化でございますとか、設備にひび割れ等がある場合の健全性評価の義務化、こういうものを行うと同時に、国や独立行政法人による実施体制の審査、評定を導入するなど、事業者の安全確保の責任を明確にするとともに、国の関与の度合いを強めることといたしました。
 申告制度につきましても、外部有識者から成る申告調査委員会の監督のもとで申告案件の処理を行う体制を整えたところでございます。また、申告案件の調査の実施に当たっては、報告徴収制度や立入検査を活用することが必要でございますが、これに関連いたしましては、ただいま保安院長から御答弁を申し上げましたとおり、今回の法律改正によりまして、報告徴収の対象を保守点検を行った事業者に拡大するなど、充実強化を図っていくことといたしております。
 当省といたしましては、検査や申告等の規制活動に係る体制の整備を行うべく、関係機関と調整を行うとともに、研修等を通じ職員の専門知識の蓄積でございますとか技能の向上に努めるとともに、原子力安全・保安院において、安全確保の観点から、より実効性の高い規制活動が実施できるように努力をしてまいりたいと考えております。
工藤委員 このたびの法改正の中で、本委員会でも各党から再三質問が出されております維持基準の導入に係る問題についてお尋ねをいたします。
 法律上は健全性評価のための基準ということでありますが、この維持基準の導入について、国民の間にはさまざまな憶測や危惧する声があり、原子力に対する賛成、反対の双方から相当数意見が述べられております。
 そこで、いわゆる維持基準についてでありますが、これまでなかったこと自体が問題であるということは言うまでもありませんが、なぜこれまで策定されずに来たのか。既に一九九〇年代前半から専門家の間ではその必要性について論議されていたとお聞きをいたしておりますが、改めて、これまでの経緯と放置してきた国の責任についてお伺いをしておきたいと存じます。
西川副大臣 お答えを申し上げます。
 時間の経過や使用に伴い、構造物の材料にひび割れ等のふぐあいが発生した場合に、その進みぐあいを予測評価する手法が、アメリカにおいて一九七〇年代から、ASMEと省略をしておりますが、米国機械学会の規格として策定をされ、一九九〇年代から、米国政府、原子力規制委員会が中心でございますが、ここの規制の基準として取り入れられてまいりました。
 一方、我が国におきましては、米国と異なり、学問の世界において規格に係る活発な議論が行われるようになりましたのは最近のことでございまして、民間規格として策定されましたのは二〇〇〇年になってからでございます。これを受けて、行政におきましては、昨年十二月から、原子力安全・保安部会において供用期間中の技術基準としての検討が開始されてきたところでございます。
 国の責任についてはどうか、こういうお尋ねでございますが、こういうバックグラウンドがございましたことも御理解をいただきたいと思っております。
 そこで、今般の不正事案の要因の一つが、ひび割れ等のふぐあいに対する取り扱いが不明確であったことから、この反省に立って、学会等において策定された民間規格を国の規制基準として活用することについて、専門家の方々の間で十分な御議論を行っていただき、国民の皆様の十分な御理解を得るための透明にしてかつ適切なプロセスを経つつ、これらの維持基準というものを策定してまいりたい、こういう経緯がございますことを御理解いただきたいと思っております。
工藤委員 今、国の責任についてということで伺ったわけでありますが、国の責任といえば、二年以上も放置をしてきた、しかも、このような重大な問題を大臣や政府首脳に知らせなかった、こういうような、先ほど来の保安院長の、自分のところだけで思い込んだといったような、そういうような御答弁があったわけでありますが、これがもし重大問題に、大事故に発展する、日本のような地震国、どんなのが来るかわかりません。こういうときに、それを知らせなかったということがにわかには信じられないことなのでありますけれども、もし知らせなかったということになれば、その方が私はむしろ重大問題だというように考えるわけであります。
 どうもそういう体質といいますか、政官業といいますか、何という表現をしたらいいか、なれ合いというような穏やかな表現で申し上げますが、なれ合いの体質が蔓延していて、もたれ合いといいますか、そういうものが蔓延していて、こういうような事件に発展をする。これがまだまだ出てこないで、このままいって大事故につながったといったようなことになったら、それこそどういう責任をとるのか。何をやっておったんだということになりはしないか、そういう思いでいっぱいなわけでありまして、その点について本当に国の責任というものは重いと考えるわけですが、この点は大臣にお答えをいただければと思います。
平沼国務大臣 今回の申告に関しましては、御指摘のように二年かかりました。
 それで、時系列的に調べてみますと、これは、ゼネラル・エレクトリックの子会社の日系のエンジニア、この人が、その子会社を首になった時点で、実は二年前の七月でございましたけれども、申告をしてまいりました。そのときには、再就職先を探しているということもございまして、実は自分の名前は伏せてほしいという形の内容であったわけです。ですから、そこは慎重を期して、一応問い合わせを事業者の方にした。しかし、やはり、今先生のお言葉の中でもありましたけれども、企業側としてはそういう事実がないというようなことでやりとりがありました。
 そして、再就職先が決まってから、自分の名前も公表していいというような形の中で、それが、我々から再度働きかけをする、そしてまた幾つかやりとりがある、そういう中で、私がちょうど二年前の七月のたしか四日に通産大臣に就任しましたが、その直前に出たものが、二年後の八月の二十八日に私のところにようやく報告が上がってきました。やりとりは、実はそういういろいろなやりとりがあって、決してそれは何にもしていなかったわけではありません。
 しかし、そういう中で、ある意味では、隠ぺい体質、そういったものがある。それから、最初の時期は匿名である。それから、企業側は、ない。このやりとりをしているうちに、いたずらに時間がたってしまった、こういう経緯があります。ですから、私は二十八日にそれを知ったときに、これはもう即刻公表すべきだということで、二十九日に公表させていただいて現在に至っているわけであります。
 ですから、確かに、今先生御指摘のような点はいろいろな形で内在をしていたと私は思います。したがって、こういったことを二度と繰り返してはいけないということで、再発防止のための評価委員会やその後の検討委員会でいろいろ御議論をいただいて、やはり申告制度というものをしっかりと確立する、こういうことで、有識者に入っていただいて、申告があったときにはこれに迅速に対応して、そしてその出た結果に対してもすぐオープンにする、こういう形で取り組んでいるところでございます。
 今御指摘のような点がいろいろ内在をして、それがこういう形に相なった。私どもは大きな反省の上に立って、この問題、二度とこういうことが起こってはならない、こういうことで我々努力をさせていただきたい、このように思っています。
工藤委員 それでは、もう少し維持基準についてお尋ねをしたいと思いますが、この維持基準の規定は、運転中の原子炉施設にひび割れなどが発見された場合に、どの程度それが安全性に影響を与えるか評価するものとして設けられているわけであります。
 そこで、このようなひび割れ等の亀裂の進展に関して、果たして我が国では十分な知見があるのかどうか。民間規格を活用して、国が評価していくと説明されておりますけれども、その適切性をどのように担保されるのか。その点、お伺いをいたします。
佐々木政府参考人 亀裂の進展予測手法そのものは、近年の破壊力学の発達の中で知見が集積されまして、一つの手法として確立しつつあります。具体的には、米国の機械学会が規格を定め、これを米国の規制当局が規制基準として採用しております。また、米国機械学会のこの規格の考え方は、フランスあるいはドイツなどでも民間規格や国の基準として活用されております。
 我が国において健全性評価手法を策定する際には、国際的な実績のある米国機械学会の規格を参考にして策定されました日本機械学会の規格などの民間規格について、科学的合理性や公正性について評価した上で、国の基準として活用することの妥当性を判断してまいりたいと考えております。
 具体的には、当省の総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の委員であります学識経験者や原子力の専門家の方々に技術的妥当性を評価していただくとともに、原子力安全委員会においても御議論をいただくこととしております。これらの検討結果を踏まえまして、当省としての技術的妥当性の評価について、パブリックコメントに付し、国民の各層の皆様の意見を承りながら、評価、判断してまいりたいと考えております。このような専門家の方々を初めとした多様な意見を踏まえることによりまして、その妥当性を慎重に判断することとしております。
工藤委員 米国等諸外国では、この維持基準については我が国よりも先行しているわけでありまして、こうした諸外国の例を参考にするのは当然でありますが、今後、国際的な協調、整合性を図っていくことが極めて必要であろう、このように思うわけでありますが、御見解を賜りたいと存じます。
佐々木政府参考人 御指摘のとおり、こうした基準の定め方につきましては、科学的合理性を有したものである、そういう意味で、今回私どもは、米国機械学会をベースとして、日本の機械学会の民間規格をこうした規制の中に取り入れていこうと考えておりますけれども、こうした規制のやり方そのものについて、いろいろな基準についても、おっしゃるように、国際的な整合性、ハーモナイゼーションというのは必要なことであると考えております。
工藤委員 次に、東電の原子力発電所の相当数に当たる十五基が来年中にも停止する予定である、このように報道されておりますが、これは事実なのかどうか、お伺いをいたします。
 事実とすれば、冬場の電力需給に問題は生じないのかどうか。
 節電をしてもらうように要請するだとか、そういうことも大事でしょう。それから、よその電力会社から電力を譲ってもらうといったこともやっていくだろうと思うのであります。
 ただ、それで済むということでありますと、これだけの原子力発電所が停止をしても、何ら電力需給にそう大きな問題がない。いろいろ今後そういう点で起こり得るのは、原子力不要論に拍車がかかってくるのではないだろうか。私は、そうなれば、根底から我が国の電力といったようなものを考えていかなければならない、そういう大きな問題に発展していくだろう、そのように思っておりまして、その点、大変重要な問題だと思っておりますので、お答えをいただければと思います。
高市副大臣 東京電力の原子力が、全部で十七基ですけれども、確かに現在九基が定期検査とかそれから計画外の停止で運転を停止いたしております。さらに、この冬場におきまして、四基の原子力が定期検査に入る予定でございます。これらに加えまして、さらに二基について、気密試験を行うために年度内に停止させることを検討中というふうに東京電力から聞いておりますので、仮にこれらすべてがそのとおりになりましたら、来年の三月末時点で、十七基中の十五基、先生がおっしゃいました十五基が停止するという数字になってしまいます。
 この冬場の電力供給でございますけれども、確かに寒さが非常に厳しくなってしまった場合などは不安定要因はあるんですが、それでも、停止している火力発電施設の運転を再開させることと、それから東京電力から申し入れのある件プラス定期検査に入る予定のものの時期を少しずつずらして調整することで、何とか安定的に供給は確保される見込みでございます。
 ただ、ずっとこれがとまり続けたときに、それでも大丈夫かと言われましたら、これは、地球温暖化への対応ですとか、エネルギーの安定供給ですとか、それからコストの面での安定性ということからこれまで原子力発電政策を推進したわけでございますので、そういう意味では、ではずっと火力発電でかわりができるかといいますと、その十五基がずっととまっちゃった、継続的にさっき私が申し上げたような形でとまっていった場合に、CO2の発生量が三割もふえると言われておりますので、やはり、総合的に考えますと、私は原子力発電は依然大変重要なものであると考えております。
工藤委員 今お答えをいただきましたが、今でも電気料金は随分高いというようなことを言われておりまして、これがもっともっと、今こういうような要因で、それをとめなきゃならないというようなことで高くなるということになれば、これはもう経済にとても大きな、また国民の生活に大きな影響を与えるだろう、このように思うわけでありまして、絶対にそれは阻止をしていかなければならない、むしろ下げていくような方向でなければ、日本の経済の再生も非常に難しいというような思いもあるわけですので、ぜひともその点は十分お考えをいただきたい、このように思います。
 次に、独立行政法人原子力安全基盤機構法案に関して、幾つかの点についてお伺いをいたします。
 私ども自由党では、現在政府が提案をして参議院に送られた独立行政法人設置法案に限らず、政府の特殊法人を独立行政法人化して効率化とかスリム化を図るという趣旨に、大きな疑問を持っておるわけであります。四、五日前のある新聞でも、これまでの独法化によって役員数の増加、特に常勤役員の中で天下り役員の占める割合がふえたことを報じておったわけでありますが、これらにはどのような理由をつけようとも、結果として単なる看板のすげかえに終わってしまうんじゃないか、このように思うわけであります。
 そこで、本法案についてお尋ねをいたしますが、この機構は、これまでの国の検査の一部を移管して、さらにこれまで公益法人に委託していたものをみずから実施するとして設立されようとしているわけであります。これまでのような特殊法人の業務移管ではなく、新法人の設立に該当するものだと考えられなくもないわけでありまして、これはまさに行革の流れに逆行するもの、このようにも言えるわけだと思うのでありますが、この点、いかがなものでしょうか。
佐々木政府参考人 公益法人改革は、民間にゆだねられるものは民間で行うことが原則でありますが、原子力の安全規制に関する業務のように、国民の生命保護等の観点からこれによりがたく、国の強い関与が不可欠で、民間では効率的かつ確実な実施が見込まれないものについては、既存体制の合理的な再編成を行った上で、国または独立行政法人においてこれを実施するとの考え方で検討が行われまして、本年三月に閣議決定が行われたものであります。
 この公益法人改革の考え方に沿いまして、本年三月の閣議決定で、原子力安全規制の効率的かつ的確な実施を図るため、国の実施部門を切り出して独立行政法人を設置するとともに、これに関連する公益法人の事務をこの独立行政法人に移管することとされました。
 このように、公益法人改革は行政改革の一環として行われるものでありまして、行政改革に逆行するものではないと考えております。
 また、国から公益法人への委託業務を独立行政法人に移行する場合、類似業務の整理統合、共通業務、管理事務の合理化を図りまして、既存の公益法人における実施体制と比して効果的かつ効率的な事業の遂行を図ることとしております。
 さらに、業務の実施状況や成果につきましては、独立行政法人評価委員会による評価を行うことを通じまして、効果的かつ効率的な実施を図ってまいりたいと考えております。
工藤委員 次に、原子力安全基盤機構の役員構成についてお伺いをいたします。
 まず、役員にはどのような方を想定しておられるのか。電力会社役員の兼職は、欠格条項でありますからできないわけでありますが、電力会社を退職すれば就任できるのかどうか。巷間言われているようないわゆる天下り人事では、適正な検査など行うことができないと思うわけでありますが、どのように対処されるおつもりなのか、お伺いいたします。
西川副大臣 お答え申し上げます。
 専門知識が豊富であり、また人格、識見すぐれている、そういう方々を総合的に検討して人選に当たるべきだというふうに思っております。
 その数でございますが、理事は三名以内、監事を二名以内、理事長含めて役員六名。そして、欠格条項はございます。それは、被規制者であります電力会社等の経営の責任を負う役員をそのまま機構の役員に兼務させるというようなことはもちろんさせません。
 しかしながら、冒頭申し上げましたとおり、専門的知識を有し、かつ人格的に高潔な方で、公正が期せるという方であれば、この方が電力会社におられたからという理由だけでその門戸を閉ざすということはしないようにしていきたいと考えております。
 しかしながら、ここは、先生の御指摘のように、時あたかもこうした問題が起こって、先ほど来各委員からも厳しい御叱正もあり、また御教示、御示唆もあったわけでありますから、私どもとしては、この独法の理事長がこうした国民の皆様の御意向を受けて責任を持って人選を行うものと信じております。
工藤委員 西川副大臣から、人格、識見にすぐれ等々お話がございました。確かに、そういう方を選ぼうというのは至極当たり前だろう、そのように思うのでありますが、例えば電力会社の役員を務めておった方、人格、識見とか今言われたようなそういう方々が大勢おられるだろうと思うのでありますけれども、実際、人格、識見と、いわゆるこれまで自分の古巣といったようなものの長いつき合いだとか愛着だとか愛情だとか、そういう人的な交流等々で、どうもその人格、識見にも曇りが生ずるような、そういうことになりかねない。それが先ほど来申し上げている蔓延するなれ合いの体質にもつながっていくのではないかといったような、そういうことを危惧するものですから私はお聞きをしておるんですが、そういうことはないんだというようにお考えなのか、その点、お答えをいただければと思います。
平沼国務大臣 一つは、工藤先生もう御承知のように、今回、独立行政法人というのは、例えばその業績というものは監査法人がチェックをして、そして今までより、よりオープンな形で、いい悪いというものがはっきり出てくるわけであります。
 それから、そういう形で、理事長を初め役員、それに対しても、責任という問題で、これは未来永劫その職に座るという形ではなくて、そういうチェック機能で、やはりその任にふさわしくない方は退場いただく、こういうこともシステム上担保されているわけであります。
 そういうことで、やはり御指摘のそういう点はありますけれども、従来の特殊法人と違ったところは、そういった考え方が盛り込まれて、よりオープンで、よりチェックしやすい、こういう体制になっておりますので、そういう御指摘の点ももちろん我々はちゃんと考えに入れておかなければいけませんけれども、そういうところを使って、そしていささかも国民の皆様方に不信を招くような人事であってはならない、このように思います。
工藤委員 不信を招くようなことのないように、きちっとやっていただきたいと思います。
 現行法の保安検査で保安規定の遵守状況について確認するということになっているにもかかわらず、今般設立する独立行政法人によって定期自主検査の実施体制を審査することとしておるわけでありまして、本来なら不必要であることを、あえて一定の職務を担わせるために付与した業務ではないかとも考えるわけでありますが、どのような意味合いでこうしたことをされるのか、伺っておきたいと思います。
佐々木政府参考人 今般の不正事案は、事業者による原子力発電所の設備の自主的な点検について、検査結果の国への報告の要否等についてのルールが法令上明確に定められておらず、したがって、事業者の自主点検が適正に行われることを国が確保する仕組みが十分に整備されていなかったことが原因の一つであると考えております。
 このような反省に立ちまして、今回の改正では、原子力発電所の設備の点検を定期的に行うことを事業者に義務づけるなど法定化するとともに、その実施体制を独立行政法人及び国が審査、評定することによって、自主検査の確実な実施を確保するものでございます。
 保安検査につきましては、発電所におきます原子力発電の運転の状態をきちんと監視するということが主たる目的でございまして、いわゆる設備の検査を保安検査において行っているものではないのでございます。したがいまして、定期自主検査の実施体制の審査につきまして独立行政法人を活用することは、国の行政の肥大化を防ぎつつ、今般の事案の再発の防止のために必要な対策であると考えております。
工藤委員 現在の保安院の体制について、以前、保安院長がみずから、体制の強化が必要だと発言をしておられたわけでありますが、今後体制強化を志向する原子力安全・保安院ですらそのような状況であるのに、どうやって独立行政法人における人材確保、育成を適切に行うことができるのか、そのお考えをお伺いしておきたいと思います。
西川副大臣 お答え申し上げます。
 今回の再発防止策を実施していく上で、原子力安全規制行政体制を充実いたしますことは重要な課題でございます。このため、現在、関係省庁と体制強化について相談をいたしているところでございますが、いやしくも国の行政の肥大化につながるということのないように、効率的、効果的な実施体制を構築してまいりたいと思いまして、三月の閣議決定を受けて設立をいたします独立行政法人原子力安全基盤機構、先ほど来御議論をいただいている独法でございますが、これを活用することといたしております。
 この独法の組織体制や人員構成につきましては、今後検討を行うことになりますが、職員の採用、処遇など、国の機構に比べてより柔軟にできる独法の特徴を生かしまして、原子力に関する専門知識に精通した者の中途採用等を行います。そして人材の確保がなされていくわけでありますが、また、公益法人に現在委託し実施している業務を移管して行う業務等に関しましては、現在当該業務を実施している者の採用もあわせて検討をいたしているところでございます。
 なお、採用した職員に対しましては、専門技術、知識を深めるとともに、法令知識や倫理観、職務に対する使命感など、職員としての資質向上を図るため、所要の研修を通じて人材の育成が図られるものと考えております。
工藤委員 次に、今後の原子力政策を推進するに当たって、幾つかの点についてお考えをお尋ねしておきたいと思います。
 原子力安全行政に対する不信の原因、これまでの審議を通して明らかになりましたように、原子力安全・保安院が申告案件の処理に二年も要し、さらに内々に案件処理しようとしたからでありまして、当該申告制度が国民監視のもとに行われることによりまして、初めて本来の機能を発揮できるのではないかと考えるわけであります。また、結果責任を果たす意味からも、申告制度のさらなる改善が必要と思われますが、いかがでしょうか。
佐々木政府参考人 原子力施設の安全情報に関する申告制度につきまして、私ども原子力安全・保安院では、先月上旬に、外部有識者から成る申告調査委員会の監督のもとで申告案件の処理を行う体制を整えました。また、先月末には、申告案件の処理の方法などを詳細に定めた運用要領を作成したところであります。
 この運用要領におきましては、申告に関する情報の開示などに当たりまして、申告者の個人情報の保護の方法について詳細に定めたほか、具体的な調査方法について申告調査委員会の了承を得るべきこと、申告制度の運用状況の公表について申告調査委員会での決定に従って行うべきことなどを盛り込んでおります。
 これらによりまして、今後、申告調査委員会の指導助言のもとで、申告者保護に万全の注意を払いつつ、申告案件の的確な処理に努めてまいりたいと考えております。
工藤委員 一九九〇年代に入って、動燃の「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故、同じく動燃のアスファルト固化処理施設爆発事故、ジェー・シー・オー臨界事故、今回の東電不正問題と、我が国の原子力の根幹を揺るがす事故が相次いでおりまして、そういう中で現在のプルサーマルを初めとする核燃料サイクル政策を継続していくのか、今後の対処方針をお聞かせいただきたいと存じます。
平沼国務大臣 特に、資源、そして天然エネルギー資源に恵まれない我が国にとりましては、エネルギーのセキュリティー面でのしっかりとした確保というのが重要課題だと思っております。将来にわたってのエネルギーの確保、こういう観点から、今御指摘のプルサーマルを初めとする核燃料サイクルあるいは原子力発電所の建設、こういったことは、私どもは基本的に、今までいろいろな形で答申等をいただいて、そしてその基本的な考え方はいささかも変わっておりません。
工藤委員 質問の最後になろうと思いますが、これまでの原子力政策の基本は変えないとの方針と伺っておりますが、現在の原子力安全行政に対する不満、不信が蔓延しておりますのは、単に、信頼回復に努めるだとか、安全確保に万全を期しますといったような空虚とも言える言葉の羅列に終始をして、具体的な行動が見えないからではないか、このように思うわけでありまして、改めて安全に対する信頼確保に向けての決意のほどを大臣にお尋ねいたします。
平沼国務大臣 工藤先生にお答えさせていただきます。
 先般の内閣改造の折にも、留任をする私に、特に総理大臣から、原子力の安全確保について国民の信頼を回復するよう万全を期してもらいたい、こういう指示をいただいたところであります。原子力はエネルギー供給の基幹をなすものでございまして、原子力政策について国民の皆様方の信頼を得ていくことは、政府としても最も大切な課題の一つだと思っております。
 国民の信頼を回復するには、今工藤先生御指摘のとおり、具体的な行動が必要だと思っております。
 私はまず、徹底した事実解明を進めるとの考えのもと、調査を進め、その結果を公表してまいりました。また、法令違反が確認されたものについては、原子炉の運転停止など厳正な対応を行うことをしてまいりました。
 一方、いわゆる申告に関する調査過程につきましては、御指摘のように反省すべき点が多々あったと認識しておりまして、そのために、申告に関する調査手順方法の明確化を図るとともに、外部有識者から成る申告調査委員会を立ち上げるなど、申告事案の処理体制の整備を進めております。
 また、早急に再発防止策を講じるために、今般、事業者によります自主検査の法定化、あるいは設備の健全性評価の義務化などを内容とするこの法案を提出させていただきました。
 私は、このような具体的な行動に取り組みまして、立地地域を初めとして、そして国民の皆様にしっかりと説明責任を果たしまして、原子力の安全に関する信頼の回復に努力をしていきたい、このように思っております。
工藤委員 通告をした私の質問は以上で終わりということでありますが、まだちょっと時間が数分残っておりますので、一点だけ平沼大臣に質問させていただきたいと思います。
 それは、たしか一昨日だったと思いますが、夜、テレビのニュースを見ておりまして、参議院の予算委員会で、小泉総理の御答弁なんでありますが、三十兆円枠を突破しても、季節によって葉っぱの色は変わるが幹は変わらないんだ、構造改革を進めていくんだから何ら政策の転換ではないんだ、こういうようなことをおっしゃっておりました。私は、実は耳を疑ったといいますか、一国の総理が言われるようなことではないな、言葉は悪いのでありますけれども、正直なところを申し上げますと、一瞬狂ったんじゃないかとまで実は思ったのであります。
 構造改革を進めるということであれば、例えば仮に三十兆が四十兆になろうが、これは別に政策の転換ではないんだといったようなことなのか。考えてみれば、靖国の問題であれペイオフであれ、例えばペイオフなんかは構造改革を進めて肉づけをしただけだとか、そんなような言い方をしておられるわけでありまして、もし全国会議員に、これは政策の転換ですか、一政治家としてどのように考えますかとアンケートをとったら、ほとんどの方がこれは政策の転換だと言われるのではないか、私はそのように思うんです。
 小泉総理に質問の機会があれば同様のことを申し上げたい、このように思っているのでありますけれども、仄聞すれば、平沼大臣は近い将来はと言われている方だ、このようにお聞きをいたしておりますので、この際、これは政策の転換と考えるのかどうか、その点ひとつお答えをいただければと思います。
平沼国務大臣 私も、参議院の予算委員会の集中審議、四時間ずっと総理と御一緒させていただいていました。工藤先生は、テレビの報道でそこの一部のところをごらんになられたと思います。
 小泉総理はまなじりを決して、構造改革なくしてこの国の景気の回復はない、こういう信念でやっておられます。したがいまして、今回、補正予算、約一・五兆、一・五兆、三兆の規模でこれを行うことになりました。ここに対して、政策の転換ではないか、こういう御指摘の中での答弁だったと思います。
 それに対しては、小泉総理というのは、自分は今まで、郵政にしても道路公団にしても特殊法人改革についても、この改革ということを全く変えずにやってきた、したがって、確かにこの改革をある意味では強化する、今の経済状況において強化しなければならないところがある、だからそれを見て、いわゆる公約違反だとか方針転換だ、こういうことを言われるのは心外であって、言ってみれば、例えとして、自分は全く不変だし、木というものは、一年を見れば、青葉をつけるときもあるし、それが紅葉になって落ちる、しかし根はしっかりと張って、幹もしっかりと生き生きとしている、だから自分の構造改革は不変なんだ、このことを皆さん方に理解していただきたいというその信念で、非常に大きな声でそこのことを言われ、そこをテレビがばっと取り上げましたから、そういう受け取り方もあったと思いますけれども、四時間私は一緒におりまして、今申し上げたような受け取り方を私はさせていただいたところでございます。
    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
工藤委員 今大変上手にお答えをいただいたなという感じを持っておるんですが、幹がしっかりしている、根もしっかりしている、しかし日本の経済は本当にしっかりしていない。我々は、もう総理の最初の所信表明演説の後から、構造改革だけ先行してどんどんそれだけをやれば必ずこういうような時代が来るぞ、こういう状況になるぞということを常に御指摘申し上げてまいったわけで、まさに現在そういうふうな状態になっている。それをしっかりしているといったような表現ではどうかな、そういう思いを持っているものですから、平沼大臣にひとつ頑張っていただいて、これは閣内の不一致なんて気にしないで、どんどんと行動していただきたい、私はそのように思うわけでございます。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
谷畑委員長代理 吉井英勝君。
吉井委員 定足数は足りていますか。正規に成立していないと、質問するとおかしくなるからね。私、前、アドリブで定足数が足りていないというふうに話したら、会議録からその部分を削除してくれと頼みにこられたから。ちょっと数えてみてください、成立していたら質問しますから。
谷畑委員長代理 ちょっとしばらく速記をとめて。
    〔速記中止〕
谷畑委員長代理 それでは、速記を起こして。
 吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。大臣もお忙しいことと思いますが、やはり委員会、成立していないとこれは正規なものになりませんから。
 最初に、私、まず保安院長に聞きたいんですけれども、内部告発があって今回の東電不正事件というのは明らかになってきたわけですが、内部告発があったという、その告発者を含めて企業に内通した方の責任ですね、内部告発された方のことを企業に内通した責任についてはどのように果たされましたか。
佐々木政府参考人 平成十二年の七月に最初の申告を受けましてから公表までの二年もの期間を要したことや調査方法に関しまして、大臣直属の委員会を設けて、その調査過程について評価を行いました。
 今御指摘の、申告人と推定される資料を電力会社側に渡したという私どもの行為について、この評価委員会におきましても、申告者本人が再就職ができた後、自分の名前を関係者に示してもいいということではありましたが、申告者の保護という観点から申し上げまして、私どもの行った行動が極めて不適切であったというふうに御指摘もいただいているところでございまして、その点では、我々の今回の申告案件の処理におきまして、反省をしているところでございます。
吉井委員 不適切という指示があり、反省したのは今わかりました。
 だけれども、ジェー・シー・オー事故の後、原子炉規制法改正をやったときは、内部告発者を保護することによって重大な事故が起こらないようにしようということでやったんですね。その告発があったときに、内通したらその責任をどう果たすかということはやはりきちっとしておかないと、法律というのは意味をなさないと思うんです。どういうふうに責任を果たされたんですか。
佐々木政府参考人 今申し上げましたようなことでございますけれども、当初、関係者、私も含めまして厳しく処分ということになったわけでございます。
 今後、私どもといたしましては、この申告制度の円滑な、申告者の保護に配慮した運用をきちんと行ってまいりたいと考えております。
吉井委員 次に伺いますが、八七年にアメリカのPWRで、これは八七年七月ですが、バージニア州のノースアンナ原発一号で、蒸気発生器細管のギロチン破断がありました。NRCは半年後に、すべてのPWRタイプの原発について四十五日以内に調査し、報告書を出しなさい、こういう指示をしました。だけれども、このとき日本は無視したんですね。その結果、九一年二月には関電美浜原発二号で蒸気発生器細管のギロチン破断事故をやりました。
 大体九三年ごろに、アメリカの方でBWRの方のコアシュラウドのストレス・コロージョン・クラックがかなり発生して、NRCはやはり注意文書を発出したんですね。このとき、日本でもGE社などがコアシュラウドにSCCを見つけて東電などに報告していたということがあるんですが、日本の原子力安全委員会なりあるいは資源エネルギー庁の方で、あるいは保安院で、国内のすべてのBWRについてコアシュラウドにSCCが存在しないかどうか調査して報告せよ、こういう文書を発出した機関があれば聞かせてください。
佐々木政府参考人 炉心シュラウドの応力腐食割れに関しましては、米国の原子力発電所での発生が伝えられておりまして、一九九四年当時の資源エネルギー庁では、米国のNRCが一九九四年七月二十五日付でBWR事業者に対してジェネリックレターを発出いたしまして、炉心シュラウドの点検、評価等の実施を指示したことは承知いたしております。
 また、当時の資源エネルギー庁では、このような米国の状況を踏まえつつ、我が国の原子力発電所の炉心シュラウドの点検計画に関しまして、点検の範囲や点検方法等の検討を行っております。
 しかしながら、この専門家によりますいろいろな検討の結果につきまして、文書によりまして電気事業者に対しての点検計画の指示はしておりませんでしたが、いろいろ専門家の中でこうした状況であることを踏まえて、口頭で点検を伝えたというふうに聞いております。
吉井委員 昨日も、口頭で注意をしたような記憶があるという、記憶という話は聞きました。しかし、文書できちんとやっていないんですね。
 PWRのノースアンナのときにもちゃんとNRCは文書で出している。日本はそのころ、大体日本では起こらないというようなことをエネ庁の人が話したことが、その談話が新聞に載ったりしたぐらいでして、対応していないんですね。今回も、九四年にアメリカでそういう問題が次々とあって、NRCは文書を発出しているのに、記憶が正確かどうかはともかくとして、記憶があるかどうかというぐらいのところできちんと対応していないんですね。
 私は、やはりエネルギー庁の側に、炉心シュラウドの亀裂に関してこのNRCの文書が出ても、私は九一年に美浜原発事故の後にも注意したんですよね、アメリカはやっているじゃないか、アメリカの文書が出て、なぜ日本は無視したんだと。だけれども、今回も対応していないんです。九四年のことですから、九一年の事故の後です。内部告発についても内通する。私は、今回やはり二重の誤りがあると思うんですよ。そういう点について、これは大臣としてこういうところはやはりきちんとさせるということをやらなきゃいかぬと思うんですね。
 まず、その辺の決意なりお考えを伺っておきたいと思います。
平沼国務大臣 吉井先生はまさに原子力の専門家でいらっしゃるわけでありまして、精査をされてその結果おっしゃっておられることだと思っています。アメリカの方から文書でもって指摘があった。それもしっかりこちらも対応を今のお話ではしていなかったような、私も今お話を伺って、そういうことを感じさせていただきました。
 ですから、私どもとしては、やはり国民の信頼というのが一番で、安全をいかに担保するかということですから、いかにシュラウドが自主点検の部分であっても、そういう事例があったらこれはしっかりとそれを把握して周知徹底する、これが私は原則だと思っておりますので、そういう御指摘をいただいたこと、さらに内部をよく調べてみますけれども、そういう事実であれば、私どもはしっかりとした管理体制、安全体制、しっかりと構築をしていきたい、こういうふうに思っています。
吉井委員 資料の配付をお願いします。
 それで、大臣、今大事なことは、東電の不正事件、これは内部でいろいろ問題になっておって、隠したりとか、けしからぬです。しかし、同時に、九四年の時点でエネ庁がちゃんと文書を発出しておれば、GEII社のそういう内部での指摘に対してきちんと対応したはずなんですね。私は、そういう点で、これは非常に重く受けとめてもらう必要があるというふうに思います。
 次に、原子力等の問題で国と電力はどういうふうな問題を持っていたかということについても、やはりきちんとこの機会に見ておく必要があるというふうに思うわけです。
 資料一をごらんいただきたいんですが、これはナミビアがまだ、大体一九九四年の国連決議での南ア制裁解除まではナミビアからの天然資源持ち出しは禁止の時代ですから、その時代に、この契約日をごらんいただいたらおわかりのように、七〇年代前半ですね、七〇年代後半になったものもありますが。
 このNUFCOR社というのは南ア共和国の会社なんです。南アともともと取引できないときに契約しているんです。それから、RTZ社、これはイギリスの会社ですが、ナミビアにロッシング・ウラン鉱山を持っていて、そこから日本へ出していたわけです。RTZミサというのはミネラルサービスの略ですが、このミネラルサービスというのは全くのペーパーカンパニーで、スイスの人口二百人ぐらいの小さな村に一応登記しているんですけれども、もちろん社員ゼロで、そういうペーパーカンパニーばかり集まって、たった一人従業員を置いて電話番させているというようなところですが、そこが堂々と契約先なんです。
 それで、形態のU3O8というのは、大体これはウラン鉱石ないしはイエローケーキと思ってもらったらいいんですが、もう一つ、UF6、六弗化ウランに転換したもので取引という形になっています。
 それで、契約量、引き取り期間は大体いつからいつまでという契約でやっているんですが、実際はおくれて一九九〇年ごろまで引き取りが続くわけです。九〇年実績も載っていますから、これは契約量とあわせて見れば、ほぼ一九九〇年には七〇年代に契約したものが入っているということになります。
 実は、これは全部電力会社の元資料から私の方で整理したものなんですが、これはこれまで二回内閣委員会で、原子力担当の細田大臣もおりますし、内閣挙げてこれはきちんとやってもらう必要があるということで福田官房長官にもお話をしまして、担当の平沼大臣の方できちんとこれは調べてもらうようにするという答弁をもらっております。
 ですから、まず、電力は、これは認めたらえらいことになるからなかなか認めたがらないんですが、閣内で当然細田さんや福田官房長官から、調べるようにしてもらいたいというお話があったと思うんですが、調査されたかどうか、これをまず大臣に伺っておきます。
    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
村田委員長 高市副大臣。
吉井委員 いやいや、大臣に聞いているんだよ。
村田委員長 いや、高市副大臣を指名しましたから。
 高市副大臣。
吉井委員 あなたに指名権はあるけれども、私は大臣に聞いている。
村田委員長 私に指名権があるんだから。
 平沼大臣。
平沼国務大臣 それじゃ、私からお答えさせていただきます。
 ナミビアからのウランの輸入に関するお尋ねでございましたが、昭和四十九年の国連ナミビア理事会布告については、ナミビアにおける天然資源の権益保護の観点からの国内法的な性質を有するものでございまして、他国に対して輸入規制等の措置を講じることを義務づけるものではないと承知しております。
 他方、RTZ社の所在する英国政府は、当時、同布告を無効なものとみなしていたとのことであります。しかし、我が国政府は、同布告及び同布告に関する国連総会決議の政治的意義を理解し、通商弘報等により事業者に対し布告の存在と内容を周知したものでございます。
 今回、吉井先生の要請を受けて、改めて経済産業省として電力会社から事実関係を聴取しました。これは内閣委員会からのお話がございました。
 昭和六十三年十一月九日、衆議院商工委員会において田村通商産業大臣が答弁をしておりまして、そのとおり、同日から平成二年三月のナミビア独立までの間、RTZ社及びNUFCOR社と我が国の電力会社との間の新規のウラン調達契約はなく、適切に措置されていました。
 また、昭和六十三年十一月当時のRTZ社及びNUFCOR社との既存契約に関しても、ナミビア理事会決議及びこれに関する国連決議を受けた我が国政府の措置の趣旨に反するような取引は確認されませんでした。
 その後、昭和六十三年十二月に南アフリカ等関係国は安保理決議に合意をいたしまして、制憲議会選挙等を経て、ナミビアは平成二年三月に独立しておりまして、国連ナミビア理事会布告は既に失効した、このように理解をしているところでございます。
吉井委員 資料の二の方に、この間のナミビアに関する国連決議等はおおむね大体簡潔なものを載せておきました。
 それで、七四年十二月の三木総理答弁、宮澤外務大臣答弁で、実は国連決議の持っている意味、大臣が前段おっしゃったこととあわせまして、しかし三木総理は、我が国としては国連決議を尊重して対処するということをきちっと答えているんです。イギリスが認めようが認めまいが、国連は、国際社会としてはナミビアからの天然ウランを持ち出してはならない、このことをきちっと決議しておって、三木総理答弁では、それを尊重して臨むということをちゃんとやってきたわけです。
 それがありましたから、実は、ナミビアからの不法輸入を、間にペーパーカンパニーをかませたりすることでごまかすという問題がその次に起こってきました。
 資料三の方に載せておきましたが、これは、電力会社とまずどういう契約関係があるか。
 最初、NUFCORやらRTZやRTZミネラルサービスなどからまず購入契約を結ぶわけですが、これは、輸入割り当てを得てウランの購入契約は成立するという形になります。そして、U3O8で輸入されるんですが、しかし、引き続いてコジェマなどとの間で転換契約を結んで、日本にまずこのまま入らないで、実際の形としては、コミュレックスとかCAMECOとかBNFLとか、そういうところを一遍通って、転換して、六弗化ウランの形で輸入されてくる。それもさらに、コジェマ、USECその他と契約した場合は外国で、日本原燃六ケ所でやる場合は日本へ先に入るんですが、これは濃縮ウランの契約で、濃縮して入ってくる、こういうふうな形になるわけです。このときに、IQ、輸入割り当てというものはちゃんとあるわけですから、輸入割り当てなど、それを得ないで契約するということはできないわけです。
 最近の話をよくエネ庁の方はレクチャーで聞かせてくれるんだけれども、七〇年代、最初の契約のころですね、もちろん九〇年代とか入ってから、どうも原産地表示の方は省略といいますか、あるようですが、実際には、国の輸入割り当て、輸入証明、支払い証明なしには、南ア共和国のNUFCOR社あるいはイギリスのRTZ社などのナミビアにあるロッシング・ウラン鉱山からの輸入はできなかったというのが実態なんです。
 ですから、七〇年代に、通産省告示百七十号に基づいて、輸入割り当てを受けるべき貨物の品目、ウランなんか全部載っているわけですけれども、その原産地というものを公表しないことには、本当は日本に入ってくることができないわけです。購入契約は成り立たないんです。その購入契約については、九州電力の購入契約については既に内閣委員会ではきちんとそれもお示しして、この契約書の中に書いてあるわけですから、国の承認を得てしかナミビアからウランを買うことはできなかったわけです。
 また、田村大臣のときには、それまではナミビアからちゃんと買っておったということが皆明らかになっているわけですが、この輸入承認を受けるべき原産地の公表なしにウラン購入契約を行った例というものが七〇年代にあったのかどうか。あったのならあったということで示していただきたいし、なければない、わからなければわからないと。書類が焼却処分のためにわからないということになるわけですが、どうですか。
迎政府参考人 当時の輸入割り当ての書類等は、当然、もう既に確認の手段がないわけですけれども、当時の輸入の状況についてお話しいたしますと、六弗化ウランの形で輸入をされるというのが主流であった。それで、原産国という場合には、これは、鉱石からイエローケーキ、その転換工程という加工工程がございまして六弗化ウランになるわけでございますけれども、その加工が行われた国名を原産国というふうにいたしまして、輸入割り当てを受けて輸入をするというのが主流であったと理解をしております。
 また、この取引において、その鉱石の原産国を把握するというふうなことは通常行われていなかった。これは役所の方でもやっていなかったし、あるいは民間の契約でも、そこを特定するようなことは行われていなかった、こういうふうに理解しております。
吉井委員 六弗化ウランの形が主流であったと理解をしているということで、要するに、書類を全部焼却したからわからないということで今逃げようとしているわけなんです。
 しかし、電力会社の人はみんな知っているんですよ。当時、燃料を扱ってきた人たちは、ナミビアからのウランの購入をやっていたわけなんです。これは、この間も、そうたびたびではありませんけれども、そして、私のように電力会社の資料に基づいてこういう形で提示するというところには至っていませんが、しかし、ナミビアからのウランの購入というものが随分問題になっていたわけです。
 要するに、ナミビアからのウランというのは、電力会社がどうやったか、民間のことでわからないというようなそんな話じゃないんです。契約書にちゃんとあるように、日本政府の承認を得て、原産国、NUFCOR社であればNUFCOR社との契約書であれば、どこかで転換してもらうにしても、ナミビアからの原鉱石を日本が輸入する形をとって、大体、NUFCOR社というのは、エネ庁の御説明によっても、もともと転換施設はないわけですから、そこから買えるのは、鉱石の形ないしはイエローケーキでしか買えないわけです。
 ですから、やはりこういう国連決議違反とか国際法に反することを、言ってみれば法律違反ですから密輸に相当するようなことになってくるわけですが、国の承認のもとで電力はやってきたわけで、だから、原発問題のこの不正というのは、今問題になっている東電の不正事件という言ってみれば出口に近いところだけのことじゃなくて、入り口から出口まで電力と国が一体となってやってきている。
 しかも、七一年になりますが、原子力委員会の決定で、ナミビア・ウランの購入など、こういうウラン購入について民間も努力せいという一定の決議があって、それで電力は走ったわけですから、今さら電力だけの責任にして逃れるということはできない話で、国際的にもこの間のウラン購入をめぐる問題についてきちんと、これは大臣、電力会社に調査されたら、電力会社も全部そういう資料があるわけですから、はっきりさせることもできるし、この購入をめぐる国連決議違反など、やはりそういう国際的に通らない話については明らかにしてきちんと不正を正す。
 私は、不正を暴くのが目的じゃないんです。やはりそれをきちんと明らかにして、国際的にも信用を回復する、そういう取り組みを進める姿勢というものが今物すごく大事な時代だと思うんですよ。そのことをやらないと、電力の方だって、何だ、国のお墨つきのもとにおれたちもやってきたんだ、今度のことだって国だって黙っていたじゃないか、NRCがどう言おうとということになってしまいますから、私は、国の姿勢として、やはり大臣の方がそこをきちんとしていかれるということが物すごく今大事だと思うんです。
 この点は平沼大臣に伺っておきたいと思います。
平沼国務大臣 お尋ねの国連ナミビア理事会布告につきましては、ナミビアにおける天然資源の権益保護の観点から、先ほども御答弁申し上げましたけれども、国内法的な性質を有するものでございまして、他国に対して輸入規制等の措置を講ずることを義務づけるものではないと承知しております。
 しかし、我が国政府は、同布告及び同布告に関する国連総会決議の政治的な意義を理解して、通商弘報等により、事業者に対して布告の存在と内容を周知したものでございまして、今回、改めて調査をいたしました結果、当時の我が国政府のかかる措置の趣旨に反する取引というのは確認をされなかったところでございます。
 そういう意味で、私どもとしては、御指摘を踏まえて調査をした結果、それに反する取引は確認されなかった、こういうことでございますので、さらに私どもとしては調査はしてみますけれども、今そういう結論でございます。
吉井委員 国連決議の扱いについては、宮澤外務大臣答弁で当時もきちっとしているんです。前段のお話とともに、後段にもきちんとありますから。三木総理答弁もありまして、国連決議の立場で臨むんだということを我が国としては明確にしておりますから。しかし、その間、先に契約しているナミビアのウランについては、だから六弗化ウランへの転換にして、それで日本へ持ってくる形にする、転換前の契約については公表しないということで隠しているわけですから、そこらについては、それは今のお話で明らかになったというものじゃありません。
 これは、国と電力との関係でなあなあで来ている部分というのは、何も今回の問題だけじゃなくて、やはりそういうところからきちんとしない限り、結局大事なところで癒着を断ち切ることができないということになりますから、私は、引き続いてその調査をやっていただきたいというふうに思います。
 次に、参考人質疑の中で企業倫理の話がありました。原子力村、原発一家の中で、不正につながる問題があいまいにされてきたということがありますが、JAURD、日豪ウラン資源開発とか海外ウラン資源開発、国際資源開発株式会社などの役員の皆さん、この中には、日豪ウラン資源開発のように、八〇年に設立されて、当時はナミビアからの輸入などのウラン輸入にかかわってきて、最近でいいますと、実はナミビア問題、今はもう問題ないわけですが、関西電力など電力会社がウランを購入するときの見かけ上の電力の在庫を減らすという、在庫保有の役割を果たすというペーパーカンパニーとしての役割を果たしている、そういう意味合いを持っているところもあります。
 海外ウランの例で見てみますと、九電力が出資して役員派遣し、核燃メーカー、原発メーカーも入っているわけですが、二十七名の役員の方に一億二千五百万円、一人平均四百七十万円ですが、監査役を除く取締役について見れば、一人平均七百三十万円の支給なんです。しかし、ほとんど働かないで、給料だけ取るという形になっているんですね。
 では、その費用はどこがどう負担することになるか。これは、全部電力会社の燃料費に入り、それは総括原価方式によって国民が支払う家庭用電灯料金に加算されるという仕組みになっています。実際に海外ウラン資源開発で働いている方というのは、実際に仕事をしている人は平職員四名しかいない、役員の方がはるかに多いというところです。
 日豪ウランについて見ますと、ここも電力三社、関電、九電、四電、それに伊藤忠が入っていますが、ここでは役員が十二名で、平均大体年間七百三十万円役員の方は得ているわけです。しかし、一年に一日、二時間ほど出席して、大体年間七、八百万をもらっていくという結構な話なんですが、仕事をする従業員の人は役員より少ない八名で、国際資源開発に至っては、役員七名で従業員一名、幾ら何でもひどいというので、これは解散に向かうようでありますが、そういうところで核燃料を扱って、その費用が全部総括原価方式によって電力料金にオンされていくということになりますから、これは、給与支払い明細も私は一部見ましたが、実際に働いていないでそれだけもらっているのも皆わかるんです、見れば。
 私は、細かいところまで大臣にやってくれというようなことを言っているわけじゃありませんが、やはりそういうあり方というものについて、これは大臣としてきちんと調査を指示されて、そして、こういうふうな原子力村、原発一家と言われる中で何から何まであいまいにされていくような、そして、それが結局ツケは国民に回ってくるような、そのあり方を正すということだけは大臣の方でやっていただきたいというふうに思うんです。これだけ大臣に伺っておきます。
平沼国務大臣 私どもといたしましては、個別の民間企業の役員の給与水準については、企業が独自に判断すべきものだと思っておりまして、当省としてはコメントする立場にはございません。
 また、御指摘の電気料金につきましては、電気事業法上の「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものである」という認可要件に従いまして、国が、申請のあった料金について査定の上、認可を行ってきたところでございます。かかる認可に当たりましては、燃料の購入先である会社の役員報酬まで審査の対象とすることは、ある意味では行政の過剰介入ともなりまして、適切であるとは考えておりません。
 なお、当省といたしましては、今後とも引き続き電気料金に関し適正に対応していくつもりでございます。仮に、ある電力会社のウラン購入価格が他と比較して不当に高いというような場合には、それは事情を調べまして、必要があれば審査をしていかなければいかぬ、こういうふうに私は思っております。
吉井委員 私は、個々の電力の方の給与そのものについての議論を今やっているんじゃないです。ペーパーカンパニーをいろいろつくって、そういうものが全部オンされていきますと、全部これは国民の負担になってきますから、そういうあり方についてはきちっとするべきだということをまず言っているんです。
 この原子力村、原発一家の中で、なぜ内部告発や批判する者が抑圧されてくるのかという点で調べてみますと、やはりそういう体質がこれまでにはありました。これは、東電、関電、中部電力などで人権侵害裁判が長期にわたって行われて、結局、最高裁判決で、電力の側の憲法違反の人権侵害、抑圧が断罪されて、最終的には和解による解決というふうになっています。いずれも、二十数年もの間、多くの人々が差別、抑圧されて苦しんだり、家族の苦しみも大変でした。
 ですから、東電の不正事件以降、私も、東電や関電の役員の方とお話をしたときに聞きましたら、こういう人権侵害はもうしないときっちり言うてはりました。それは当然のことなんですが、経済産業省としても、内部告発の原子炉規制法上の仕組みをつくっても、実際に人権侵害が行われたりするようなことではうまく機能しないわけですから、この人権侵害というものは起こさせないということについては、大臣としてもきちんとしておいてもらいたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 もとより、事業者において御指摘の人権侵害といった行為が行われてはならないということは、御指摘のとおり、言うまでもないことだと思っております。
 既に、本件につきましては、今御説明があったとおり、事業者と従業員の方々の間で、事業者が従業員を公平に処遇すること等を内容とした和解が成立をしていると聞いております。私としては、まずこうした当事者間の和解の内容が確実に実行されることが重要であると考えております。
 私どもとしましては、本件というものは、人権問題、そして労働問題であり、基本的には両当事者、次いでは国としては法務省、これは人権擁護局、あるいは厚生労働省、これは労働問題の担当となりますので、まずはこれらの関係当局と御相談の上適切な対応を行っていくことが、私は筋からいって妥当だと思っております。
 ただ、経済産業省も、そういう意味では、エネルギー政策をやっておりますから、法務省あるいは厚生労働省、そういったところからいろいろお話があれば、それには適切に対応していく、こういうことに相なると思います。
吉井委員 先日、西日本新聞が掲載しましたが、公益事業の電力会社が特定政党への政治献金を行ったり政治介入を行っていることを、脱法行為の仕方というのを含めて掲載しておりました。
 この中では、九州電力の労務部が指示している文書、現在人事労務部というふうに言うようですが、この応援している政治家の一覧の中には、自民党の方や自民党系無所属の方が、在籍十九人、OB十三人の三十二名とかあるわけですが、管理職になると割り当て入党が行われる、断ると人事評価にかかわってくる、そういう問題などを社員の方からも伺ったりもしました。
 西日本新聞が紹介した、九州電力の労務部が部長会議資料として出した文書によると、特別管理職は政治活動委員会、政治団体に加入して支援するとされて、立候補予定者への支援は会社の裁量で行う、会社が政治に介入するということになってきていて、幹部社員の九割、約千八百人が加入を強要されているということがあります。
 この文書の中で、支援内容は、政経懇話会で店長、所長からの要望を参考にして決定する、政経懇話会の構成は、会社の総務部次長、労務部次長、総務課長、労務課長、労務部特別調査担当課長とか、そういう分野の方たちが入って進めていくわけですが、結局、こういうところから人権侵害という問題も出てきて、内部告発をやりなさいと経済産業省は法律をつくってやっているわけですよ。
 しかし、なかなかできにくいという問題も出てきますから、公益事業という本来の役割を果たすということで、こういうふうな新聞に書かれるようなことは電力会社としてはしないようにきちんと正させるということは、これは大臣の方からやはりやってもらう必要があると思うんです。これはどうですか。
平沼国務大臣 私も、今吉井先生が言われた新聞等をまだ拝見しておりません。しかし、企業というものは、ある意味ではそういう政治活動というものは、最高裁の判例の中からも否定されているものではありません。しかし、いろいろ総合的な観点から判断をしていかなければいかぬと思っておりますけれども、企業がいわゆる政治活動をやるという過程の中で、余り押しつけになるような形ということは、私は個人的にはいかがなものかと思っておりますけれども、私としては、そういう管理職の方々が、ある意味では納得をし、そしてある意味では政治に参画する、こういう意思をお持ちであれば、私は、今の体制の中で特に問題にはならないのではないか、しかし、行き過ぎだとか、そういうものはやはり厳に慎んでいくべきじゃないか、こういうふうに感想を持っております。
吉井委員 個人の自由な意思、それを人事評価その他を扱うところがやるわけですから、これは個人の自由な意思に基づいての、だれだって、企業の管理職の方だって、どの党に入ろうとみんな自由なんですから、私はそんなことを言っているんじゃないんです。
 ただ、人事労務というところが、会社の機構が人事考課も含めてやってくると、それは明らかに思想、信条の自由を侵すという問題だけじゃなしに、東電、関電で引き起こしたような昇給、昇格差別の問題とあわせて進んできますと、とんでもないことになりますし、結局その体質が、原発事故で住民が危ないと内部告発しようとしても、それができなくなってしまうということになるわけですから、一般的な話じゃなくて、公益事業、しかも原子力を扱うところでそういう人の良心の自由などが脅かされるようなことがあっちゃ絶対ならないわけですから、ここはきちっと大臣としてなさる必要があるというふうに思います。
 原子力村、原発一家ということがよく言われますが、やはりこれは、そういう原子力村、原発一家から個人個人すべてが独立しないことには、電力内部のチェックは働かない。それから、電力と経済産業省の間で癒着が断ち切られないことにはうまく機能しない。原子力委員会や原子力安全委員会が原子力村から独立して、きちんと役割を果たすということにならないとだめだということがやはりあるわけです。
 そういう点では、国の場合は公務員法で縛られて仕事をするということがありますが、独立行政法人になると制約なしに、逆に今度は原子力村の一員として、検査に当たる方が一層のなれ合いを深めたりすることになってくるという問題もありますから、私は、今言ったようなことがきちんとできないと、本当にこの世界というのは、私もひょっとしたら原子力村の村外れあたりにおるかもしれませんからはっきり言うわけですが、やはりそういうことはきちんと言わなければならないというふうに申し上げておきたいと思います。
 次に、配付資料の四のところで、まず最初に保安院長に伺っておきますが、公称肉厚と基準肉厚ですね。これはちょっと下の方を省略しておりますが、大体センターラインから上の方の断面です。配管断面と思ってもらったらいいんですが、基準肉厚に対して腐れ代ないしは安全係数というのを掛けたのが普通、公称肉厚ですね。そういうことになるんですが、維持基準とよく言っているのは、どこに線を引っ張るという話になりますか。
佐々木政府参考人 先生の御専門でございますけれども、材料の強度は基本的に応力で評価をする、材料の許容応力を下回ることを確認するという考え方でございまして、諸外国におきましても、ひび割れ等に対しましての許容基準は、基本的には応力で評価することになっております。私ども、今おっしゃいました維持基準、健全性評価に関する基準につきましては、こうした考え方をベースに今後検討してまいりたいと思っておりますが、現行の基準で申しますと、ここのいわゆる必要最小肉厚といったものは、配管の場合でございますけれども、いわゆる簡易な計算式に、一次応力だけで計算する方式と、詳細に応力解析をして応力を求めるという方法と二通りが今の基準でも認められているところでございます。
吉井委員 いや、その計算で出したものというのはわかった話なんですが、計算で出して、もちろんそのとおり物をつくるんじゃなくて、腐れ代なりなんなり考えた公称肉厚に当たるものを大体材料を選んでつくっていくわけですよ。そのときに、今度維持基準とおっしゃるからには、では、どこに線を引っ張って、それで、ぴかぴかはともかくとして、もともと腐れ代分というのは、そういう腐食その他も考えて、それでも強度がもつようにということで考えるわけですから、どこに維持基準というものを考えていくのかということがあって物を言ってはると思うんですね。その維持基準等を議論しながら、実はそれが非常にあいまいなものであって、はっきりしていないということが今のお話でわかりました。
 この配付資料の五のところにも、少しポンチ絵的に書きましたが、福島第一原発三号機の制御棒駆動水圧系配管で、基準肉厚は三ミリ、下の方のラインですが、これは設計時には公称肉厚六・四ミリでやっているんですが、実際には、ここで調べてみれば傷がぐっと入ってきて、一・九ミリしか健全な肉厚部分がなかった、そういう傷が生じていたというものがありました。
 右の方に、福島第一原発四号機の再循環系配管でも吐出側で、基準肉厚を割り込むかどうかという傷が生じていたというのが、このポンチ絵に示すように、皆さんからいただいた資料を絵にかいてみれば出てきました。
 維持基準という線を引いたら、定期検査のときに、この維持基準を満たすところまでであれば検査は合格する、基準肉厚を割り込むような傷の発生は次の定期検査までは起こらないということになるのかどうか、この点はどういうふうに考えてはるんですか。
佐々木政府参考人 今先生がおっしゃっております基準肉厚について、今の基準の考え方にも、いわゆる簡易式によって最小肉厚を算定する方法もあるし、応力の詳細解析を行ってこれが必要な最小肉厚とする場合もあるわけです。
 今後、我々が今検討しようとしております維持基準というのは、応力の解析による方法によろう。では、いわゆる傷の進展というのを破壊力学上どのように予測するかが問題になるわけでございますので、私どもが今後考えていきたいと思っておりますのは、詳細な応力解析による必要な肉厚に対して、進展がどの程度の期間で進むかということを、破壊力学に基づく予測を詳細に行った上で、それに一定のマージンを考慮して、どの時点で取りかえるべきであるかとか、そういう議論をすることになると思います。
 いずれにしても、今後のこうした考え方については、いろいろな専門家の御意見を踏まえながら検討していくことになります。
吉井委員 福島第一原発三号機の制御棒駆動水圧系配管の場合で、基準肉厚を割り込んだ傷が生じたわけですが、前回の検査では基準肉厚を割り込むものはなかったとしているわけですね。今度調べたら、三ミリ必要なのに一・九ミリしかないものもあった。それどころか、いろいろ調べておったら、私が八月二十九日に調査に行ったときには損傷率が六〇%だったんですが、あれは九月の終わりごろでしたか、発表があったときには、損傷率が八六%にふえておるんですね。そのときに、一・九ミリまで健全部分が減ってしまった、ちびてしまったというどころの話じゃなくて、貫通してしまったというのが三本見つかったんですね。一昨日でしたか昨日でしたか、新しい発表では、貫通したものが七本もある。
 ですから、前は大丈夫だった、前の定期検査のときは大丈夫だった、維持基準以内だったというふうに考えておったとしても、運転中に、維持基準どころか技術基準を割り込むものが出てくる、その可能性というものは否定できないというのが現実に起こっている問題だと思うんです。この現実はどうですか。
佐々木政府参考人 今御指摘の福島第一・三号機の制御棒駆動水圧系のクラックでございますけれども、かなり長期間においていわゆる非破壊検査等の対象になっていなかった。この配管部分の損傷の原因が海塩、海の塩によるものだということがわかってまいりましたが、その後、東京電力におきましてこれらの配管に塗装をやったということで、なかなか表面からの監視ができなかったという現実が一方でございます。
 私ども、今先生の御指摘は、傷の進展が本当にきちんと把握できるのかという御指摘だと思います。我々もその点につきましては、もちろん、データがあるいろいろな既存の材料、また、新しい材料については必ずしもそうしたデータの蓄積がないものももちろんございます。したがいまして、一番大切な傷の進展の予測については、あくまでもいろいろなデータに基づいて考えるべきでありまして、そうしたデータが不十分であるものについては、既存のデータと同等もしくは保守的に考えて傷の進展を考えていくというような謙虚な姿勢で臨むのがやはり科学的、合理的な態度だと思っておりまして、そうしたものは、個別個別のこれからの検討の中で十分議論をさせていただきたいと思っております。
吉井委員 炉心シュラウドの応力腐食割れ問題については、浜岡原発四号では、昨年見つからずに、ことし急に六十七カ所傷が見つかった。これは、急に傷がふえるというのもおかしな話でして、つまり、傷を見つけるのは相当な熟練を要するというのが、実は浜岡原発へ調査に行ったときに技術系の幹部の方が言うてはりました。実際に、水中でカメラで見るわけですから、簡単な話じゃありません。
 それから東電の方の福島第二原発の四号機の再循環系配管の方では、新たにまた三カ所傷が見つかってくるなど、要するに、検査をきっちりやっていけば見つからなかったものが見つかってきたりとか、同じ時期に時間をかけてやっておればさらに見つかってきたりとかいうふうなものが随分出てきているわけです。ですから、検査技術が十分確立しているとか、検査機器の開発が完璧なものだとはそもそも言えないのが実態だというのがこの間出てきた問題だと思うんです。
 松浦原子力安全委員長の方に伺っておきたいと思うんです。
 そもそも、制御棒駆動水圧系配管の検査など、検査機器の開発とともに、やはりあの場合は格子状に組み込まれているものですから、配管をくぐって真ん中の方のものを調べるのは非常に大変と、実態としてあるわけです。それから、再循環系の配管にしても制御棒駆動水圧系の配管にしてもシュラウドにしても、コアシュラウドにしても、外へ出してしまったら見るのは簡単にしても、実際、燃料交換時以外、水中にあるものを検査して傷を見つけるのは、まして傷の深さを正確に測定するというのはなかなか困難の多いところです。
 この点では、せんだって内閣委員会でお答えいただいたときに、シュラウドに関しては、炉心の中で目で見てもなかなか見つからない、非常に難しい、今後技術開発を進めて、より詳細に把握できるような技術になることを期待しておりますということ。それから、制御棒駆動水圧系配管については、あの装置は非常に検査がしにくい構造だ、今後ますますその技術開発を進めて、より詳細にきちっと実態把握できるようにしないといけない、安全委員会としても開発を期待すると。それから、再循環系については、私の今お示ししました絵にあるような状態だったものですから、測定に誤差もあるし、これは当然対応しなければいけないものだという御答弁をいただいているわけですが、私は、大事なことは、検査機器の開発、検査技術や手法の開発というのは今日も非常に大事な問題だ、そのことにやはり相当力を入れていかないことには、実際には、定期検査のときにきちっとすべてがわかるわけじゃなくて、目こぼしもあれば後から次々出てくるものもありますから、今改めて、この検査機器の開発とか検査技術や手法の開発に相当力を入れなければいけないというふうに思うんですが、前回は内閣委員会でその趣旨の御答弁をいただいておりますので、改めてこの委員会で確認しておきたいと思うんです。
松浦参考人 安全委員会の松浦でございます。
 今先生御指摘のように、先日の内閣委員会で、先生の今引用されましたとおりに私は申し上げました。現在も、そのようなSCCに関する検査技術の開発については、今後相当に力を入れていくべきだというふうに考えております。
吉井委員 安全委員会としてのお考えを今伺ったんですが、保安院長はさっき、これからデータに基づいて考えていくべきだというお話なんですが、そもそも、そのデータを正確にきちんとつかむということがなかなか難しいというのが現状なんです。だから、検査機器の開発とか検査手法の開発そのものに今力を入れないと、簡単に維持基準だ何だというようなことを論ぜられるような水準じゃない、このことをきちっと押さえておかなければいかぬというふうに私は思います。
 そこで大臣、以前本会議でもうちの塩川議員が質問しておりますが、東電の南前社長が、維持基準があれば伸び伸び仕事ができて、隠し立てしないで済むという発言があったことを取り上げました。
 これは、維持基準があってもなくても、まず一つは、隠し立ては絶対してはならぬ。それからもう一つは、軽微な事故であってもすべて報告させ、公表させ、それをどう評価するかは、それは国も評価するでしょうし、在野の専門家の方も評価するでしょうし、国民の皆さんも評価するでしょうし、軽微なものであっても、隠すんじゃなくて全部オープンにして、それをどう評価するかは主に専門家の方が中心になって評価をするということでいいわけですから、やはりそういうことを求めていくということが大事だと思うんですが、せんだっての南社長の発言なども踏まえて、大臣のお考えをここでちょっと伺っておきたいと思います。
平沼国務大臣 午前中以来の質疑の中で、維持基準の問題がたびたび出ております。欧米の例を見るまでもなく、やはり、安全水準を落とさないという前提の中で維持基準を導入する、このことは私は必要なことだと思います。
 しかし、今吉井先生からいろいろな形で御指摘をいただきました。したがって、導入に当たりましては、私どもとしては、これから原子力の専門家やあるいは有識者の方々に幅広く御意見をいただきながら、そしてまたオープンな形で、パブリックコメントにも付して、よりよい維持基準を導入する。そこは御指摘のとおりしっかりと、原子力にとっては安全性が一番大切ですから、維持基準導入に当たりましては、繰り返しになりますけれども、これまでの安全水準というものを落とさない、こういう前提の中で、そして慎重の上にも慎重を期して、しっかりと私どもは検討して導入をしていかなければならない、こう思っているわけでございます。
 東電の社長のお話というのは、ある意味では、欧米のそういう例を見ていながら、やはり自主点検の部分でそういうものが出たので、そこのところの体制はしっかりしてほしいというようないわゆる願望がおありになったのではないかなと思っています。ですから、それはそれで受けとめますけれども、繰り返しですけれども、しっかりと安全性を担保して、私どもは、原子力の専門家、そして学識経験者、そういった方々の御意見をしっかりとそんたくをしてやっていかなければいかぬ、このように思っています。
吉井委員 そもそも、どんな傷に発展するかということを考えるにしても、データがなかなかきっちりとれない。データに基づいて考えるべきだというお話だったんですが、そのデータをやるにしても、現在は、検査機器や検査技術の開発からしてきちっとやらないと、測定そのものが非常に困難というところがいっぱいあるんだということをまず申し上げておきたいと思います。
 最後のテーマに移りますが、文部科学省の研究開発局長に来ていただいておりますが、週刊プレイボーイに紹介された核燃料サイクル開発機構の会議費の不正使用問題ですね。
 文部科学省が〇二年度分を公表した資料で、飲み食い宴会、二次会、三次会などのものが全部国民の税金で使われておって、自覚が全くないということを示しておりますが、九八年度と九九年度、一体幾ら会議費が使われて、普通でいいますと、それは〇〇年度と同じようにその額は全部二次会、三次会の酒代にまで化けておったということになると思うんですが、そうでないと証明する証憑書類が整っているのかどうかということもあわせて伺っておきたいと思うんです。
 そして、そもそも政治屋などとの二次会などの酒代負担が、一体、高速増殖炉の開発研究とどんな関係になるのかを説明していただきたいと思います。
白川政府参考人 お答えいたします。
 サイクル機構の会議費の問題でございますが、まず、データについて御質問がございましたので、その点からお答えをしたいというふうに思いますが、サイクル機構からの報告では、平成十年度、サイクル機構全体といたしまして約千百件、金額にいたしまして五千四百万、平成十一年度は同じく約千百件、金額にいたしまして約五千三百万、その後の二年間もちなみに申し上げますと、平成十二年度で約九百件で四千四百万、平成十三年度は約二百四十件で約一千百万という数字の報告を受けております。
 今先生の方から御指摘ございました件につきましては、私ども、まず、十一年度以前に不適切な会議がなかったかどうかということを御質問ございましたけれども、これにつきましては、サイクル機構の方からは、関係書類が保存期限を超えておりましたので、そもそも書類が存在をしないということで、平成十一年度以前につきましては、今回のような不適切な事例がなかったかどうかということがきちんと確認できないというのは、そのとおりでございます。
 ただし、先ほど申し上げましたように、平成十三年度以降、会議費につきましては私どもも厳しく指導いたしまして、前年度に比べて大幅な減になっているということで、改善が図られた結果、具体的な効果があらわれているというふうに考えております。
 それから最後に、地元との関係、御質問ございましたけれども、私どもは、原子力の研究開発を進める上で、やはり地元との共生ということは極めて重要なポイントであるというふうに認識をしておりまして、その観点から、事業者が地元の理解を得るための活動に努力をするということは、これは必要なことであるというふうに考えております。
 しかしながら、今回のこの会議費の問題は、地元の理解を得るための活動の一環とはいえ、サイクル機構みずからが定めました内部の会議費の運用基準等を逸脱して支出をするなど、不適切な事例があったことは事実でございまして、これは改めるべきものというふうに考えておりますので、そういう観点から、今後とも、サイクル機構に対しまして、適切に対応するよう厳正に指導してまいりたいというふうに思っております。
吉井委員 時間がもう終わりになってまいりましたので、最後に、高速増殖炉にしても、東電の不正にしても、それからナミビア問題にしても、あるいは人権抑圧の問題などにしてもそうですが、原子力の問題をめぐって、不正がはびこったり、信頼を失うようなことが本当にいろいろな分野で出ているんです。
 これは一つ一つをやはりきちんとしていかないと、こういう問題をあいまいにして、何かそのときそのときに法律をつくれば物事が解決するということじゃないということをはっきりさせていただきますとともに、原子力研究所などとこういう不正を働いているようなサイクル機構と、とにかく数減らしで統合すればいいというものじゃなくて、どうしたら本当に原子力の分野で必要な基礎研究がやれるのかとか、信頼を失ったら、大体、原子力工学とか原子核工学はもう学生が来ないんです、その名前では。それでは、将来の高レベル放射性廃棄物の処分をどうするかとか、高レベルのものの消滅処理をどうするかとか、必要な研究をする人材さえ集まらないんですよ。好きであれ嫌いであれどうであれ、やはりこの問題について長期にわたってきちんと対応しなければいけない技術者層が必要なんです。そのときに、その技術者も生まれてこないような、そういう信頼を欠くような原子力行政になっては本当にもうどうしようもないわけですからね。
 私は、そういう点で、今回のサイクル機構に見られる問題は、あれは文部科学省の問題だということじゃなくて、内閣を挙げて、大体、私は九八年からのことをお聞きしましたけれども、もっと前、九〇年代どうだったのか、何でこういうことになったのかということについて、その全容については徹底解明を行う、これだけ大臣の方に伺って、時間が参りましたから終わりたいと思います。
村田委員長 質疑時間が終了しておりますので。
 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 この法案の最後の質問者になるわけでございます。ぜひ大臣及び保安院長には明確な御答弁をお願い申し上げます。
 まず、保安院長に質問いたします。
 十一月十五日に、全国の電気事業者と原子力関連事業者から、原発の自主点検記録の総点検の中間報告が提出されたことと思います。この中では、すべての事業者で問題がなかったということになっておりますけれども、この報告が正しいものであるならば、自主検査で問題があったのは三社、東京電力と中部電力、東北電力だけということになります。他の電力会社等がきちんと自主検査ができているのであれば、今回の法律のように全面的に原発の検査基準を変更する必要はないのではないかと私は思っております。
 現行制度にのっとって三つの電力会社がきちんとやるように指示をすれば、この法案の改正は必要がない、このことに関しまして、保安院長、今回、十一月十五日に出されました総点検中間報告を見まして、院長の御見解を求めます。
佐々木政府参考人 十一月十五日に原子力事業者から提出されました総点検の中間報告は、過去三年間にさかのぼって、いわゆる法的な不正等の問題がないかを事業者に自主的に点検させ、報告を求めたものでございます。私どもは、現在、この事業者からの報告書を評価するための作業をしているところでございます。事業者によれば、今までのところ法に触れるような不正な事案はなかったということでございますけれども、我々としてはもう一度これを今評価しているところでございます。
 今の先生のお話の中で、自主点検の結果、各社問題がないなら、この法案の意義はないのではないかというお話でございましたが、私は、やはり今後の原子力の安全確保のために、また社会の信頼のために、基本的に、今回法改正をお願いしているような事項については、これはもうベースとして基本的に必要な事項だという考え方をいたしております。事業者における品質保証体制を確立し、不正がきちんと抑止され、そしてまた規制も科学的、合理的な考え方のもとで行っていくというその基本的な考え方は、これは必要だと思っております。まして、今回の東京電力の問題を契機といたしまして法案を提出させていただいておりますけれども、何とぞ、この法律が少なくとも今緊喫の課題として必要だという御理解をいただきたいと思います。
大島(令)委員 保安院長、総点検の最終報告はいつになっておりますか。
佐々木政府参考人 東京電力だけは過去十四年間にさかのぼる、他の会社は原則過去十年にさかのぼって点検をしてください、そしてその報告書は今年度末までには提出をしてくださいという指示を出しているところでございます。
大島(令)委員 今の御答弁でしたら、私は、本年度末、三月末になって、すべての電力事業者、原子力関連事業者から自主検査の点検記録が出て、それを分析してからでも、この維持基準の導入は改めて判断し直してもいいと思いますけれども、見解を聞かせてください。
佐々木政府参考人 今年度末までに出てまいります事業者の自主点検は、基本的には、事業者における過去の品質保証活動というものをきちんと再確認するというのが目的でございます。
 今おっしゃいました維持規格、維持基準の必要性というものは、るる答弁申し上げてまいりましたけれども、規制そのものの不明確性を排除し、合理性と科学性をきちんと持った規制をベースにするという考え方で、むしろ遅きに失したというのが私自身の責任でもあり、また、とにかくこれは早く努力をしなければいかぬというふうに思っているものでございます。
大島(令)委員 それでは、添付資料が公開されておりませんけれども、この総点検の添付資料は今後公開すべきと考えますが、どのように判断されますでしょうか。
佐々木政府参考人 既に、中間報告の総点検の報告書は、添付も含めて、事業者が公開をいたしております。
大島(令)委員 それでは次に、炉心シュラウドが脱落した場合に関しまして、地震との関連で質問をいたします。これも保安院長でございます。
 炉心シュラウドは、原子炉の中にはありますが、特別な圧力がかかる機器ではなく、これまで安全上は重要視されてきませんでした。大きなひび割れが入るようなことは想定されていなかったものです。
 ところが、そのシュラウドに全周にわたるひび割れが幾つも発生するようになったわけです。仮に地震等でシュラウドの亀裂が広がり、完全脱落するという事態になれば、制御棒を入れることができなくなり、地震動でボイド、泡がつぶれて出力上昇を起こし、原子炉の制御が困難となると想定されます。場合によってはチェルノブイリ原発事故のような核暴走事故に至る可能性があり、シュラウドの損傷を軽々しく扱うべきではないと思います。
 そこで、地震と健全性評価基準について質問しますけれども、一年間でシュラウドに無数のひび割れを起こした浜岡原発四号機は、東海地震の震源地の真上にあります。地震発生時には、直下、真下を断層が走っても不思議ではありません。そのような地域にあって、傷だらけのシュラウドをそのままにして運転をした場合に、地震発生時にこのシュラウドが脱落しないということをこの健全性評価によって示せるかどうか、お答えください。
佐々木政府参考人 今先生がおっしゃいました健全性評価は、例えばシュラウドでございますと、傷があった場合に、どれくらいの期間でその傷が進展してどの程度の大きさになるかという予測でございます。
 今、地震との関係のお話がございましたが、基本的には、地震との関係では安全の評価そのものになるわけでございまして、その場合、例えば、今回、八月の二十九日に、私どもが東京電力のシュラウドの傷の存在の問題とあわせましてこれが安全であるかという評価をする際に、どういうことを考慮したかと申しますと、シュラウドは、炉の中に入る水の流れの方向を定めると同時に、炉心の形状を維持するということでございますので、傷が例えば全周にわたって、しかもそれが貫通をしたような時期に想定の起こり得ないような地震が起こったときに、そのシュラウドが浮揚をしたりして燃料の折損を起こさないというような、そういう観点で、外荷重として地震荷重も算定をいたしました。
 八月二十九日の安全評価は御案内のとおりでございますけれども、現在の、東京電力でいろいろ発見されました傷の程度で、外荷重として最大の地震を想定しても、安全の問題は基本的にないということを確認もいたしております。
 浜岡についても、それは基本的には同様のことが言えます。
大島(令)委員 保安院長に質問しますが、東京電力の二十九件の不正事件が明らかになった後で、原子力安全・保安院は、シュラウドの損傷はあっても安全上問題はないという発表をしています。
 原子力安全・保安院が独自に安全評価を行って、長さは十一ミリ以上進展しないからという結論を確認したということでございますが、この安全評価には地震発生時の地震動を要素として組み込んでいるんでしょうか。
 それとまた、どんな地震動でもひび割れの進展はないのか。それとも、どのような地震動を想定したのか、お伺いしたいと思います。
佐々木政府参考人 まず第一点でありますが、十一ミリの傷の進展というのは、実は、アメリカの機械学会でのデータに基づき、NRCの破壊進展の予測値として十年間十一ミリという予測値、これを私どもも今回の場合に、東京電力のシュラウドでいろいろ傷があった場合に、十年間十一ミリという予測のもとで計算をいたしました。まず、十一ミリの話はそういうことでございます。
 したがって、傷がいろいろありますれば、それを保守的に、安全サイドで考えるためには、傷がつながっていなくても、それは全部つながるものとして考え、なおかつ、その傷が貫通したものとして評価し、そしてなお、その上で地震の荷重が、その傷が、亀裂が進展した状態で、想定のいわば一番大きな規模の地震がそのときにかかった場合に形状が維持できるかどうかということを計算したわけです。
 極限荷重法という計算法によったわけでございますが、いずれにしても、その段階で、十分に形状の維持は可能であって、炉心の安全性に影響を直ちに与えるものではないという安全上の問題は、きちんと私ども判断をしたわけでございます。
大島(令)委員 保安院長に、前回、私はSUS316Lの応力腐食割れの原因究明はできたのかどうか質問しましたけれども、院長は、今まさに原因究明の途上であると答えられました。
 SUS316Lのひび割れがなぜ急激に発生するのかも解明されていない状態で、今の御答弁ですと、地震があってもシュラウドの形状は変わらないということでございますが、これで安全評価が行えるということ自体が私はなかなか理解できないわけなんです。
 シュラウドというのは原子炉を取り巻いているわけでございまして、強い地震が起きますと、ボイド、泡がつぶれますと、中性子の効率がよくなりまして核分裂が進むわけですよね。出力が上がるから、制御棒が入ってくる。このシュラウドが傾いたりしますと、制御棒が入らなくなる、上がらなくなるということで、私は、先ほど前段で、核暴走事故につながるのではないかということで、地震とシュラウドの安全性、このひび割れの問題に関して、一連、お尋ねしているわけなんです。
 現在、東海地震というのはいつ起きるかわからないということで、中央防災会議、これは総理が議長で、平沼大臣も委員になっていると思いますが、この前から東海地震のことが言われておりますけれども、では本当に今、震度六、七とか強度の地震が起きたときに、原発は自動的にはとまるようになっているのか、それとも手動でとまるのか、一体だれが判断してとめるようになっているのか、御説明していただけないでしょうか。
佐々木政府参考人 今の原子力発電所におきましては、地震に対しまして、一定の震度で原子力発電所は自動的に停止をする設計になっております。いずれの発電所もそのようになっております。
大島(令)委員 震度幾つでとまるようになっているんですか。
佐々木政府参考人 およそ震度五であります。
 正確には、S1地震動の〇・八という、ガルで実際には設定されておりますが、おおよその震度で申し上げますと、約震度五ということであります。
大島(令)委員 では、東海地震を想定した場合に、浜岡原発はどうなるんでしょうか。
佐々木政府参考人 浜岡原子力発電所三号機から五号機でありますけれども、マグニチュード八・〇の想定の東海地震、あるいはこれを上回るマグニチュード八・四の安政の東海地震、さらにマグニチュード八・五の限界的な地震を考慮した基準地震動に対しての耐震設計が行われております。
 また、浜岡一、二号機につきましても、この浜岡三から五号機の基準地震動に対しまして、耐震安全上、問題はないことを確認しております。
 それから、先ほどちょっと失礼をいたしました。自動的にとまるそのガル設定は、S1掛ける〇・九でございます。失礼しました。
大島(令)委員 では、シュラウドのひび割れが頻繁に起こっていることについて、同じく院長に質問します。
 東京電力の不正の発覚以来、沸騰水型原発でのシュラウドひび割れの報告が相次いでいるわけでございます。東京電力だけではなく、中部電力、東北電力でも発生しております。
 シュラウドは、もともとSUS304というステンレス材質でつくられていましたが、過去にひび割れが発生し、東京電力では、予防保全として、福島第一原発の一から三号機及び五号機などで、シュラウドをSUS316Lというステンレス材質のものに交換しました。同様の交換を、中部電力、日本原電なども行っています。現在では、浜岡一号機を除き、材質はすべてSUS304以外のものになっています。これは、この前までに私も取り上げました。
 ところが、その新しい材質のシュラウドで次々にひび割れが発生しています。具体的に言いますと、もう既に御存じだと思いますが、東京電力福島第一原発四号機、これはSUS304L、福島第二原発二、三、四号機、これはSUS316L、柏崎刈羽原発一、二、三号機も、これはSUS316L、そして浜岡原発四号機はSUS316L、女川原発一号機SUS304Lです。合計九基に上っているわけでございます。
 それで、この間、シュラウドの材質の問題できちっとした答弁がいただけないので、私は改めてきょう最後の質問をいたしますけれども、シュラウドにひび割れが発生したこの九基のうち、福島第一の四号機、福島第二の三号機、柏崎刈羽一号機、二号機、そして浜岡四号機では、前回の点検では異常なしと報告されております。この前回のというのは、二〇〇〇年及び二〇〇一年の点検でございます。
 報告が真実であるなら、応力腐食割れを起こしにくいとされるこのSUS304LとSUS316Lにひび割れが多発しているというだけでなく、これは短期間に発生しているということがわかります。この短期間に発生するということについて、疑問もしくは危機感を保安院としては抱いていないのか、また対策を考えているのかいないのか、この法案以外のところでのことを聞かせてください。
佐々木政府参考人 現在、原因を究明するために、ボートサンプルなどをとりましてさらに調査を進めたいと考えておりますが、我々としましては、316L材でのシュラウドでの経験は、昨年、福島第二の三号機におけますシュラウドのいろいろ傷の解析を行っております。
 この場合におきましては、製造時の機械加工によります外表面の硬化層の形成及び溶接による引張残留応力の状況によりましては、比較的早く応力腐食割れが発生する可能性があるということが、前回の福島第二・三号機の問題で我々として知見を得たわけでございます。このように、新しい材料ではございますけれども、それぞれの製造加工時における条件あるいは残留応力の条件等によって少し違うとは思いますけれども、このときのもう一つの知見といたしましては、傷の深さへの進展というのは、引張応力と圧縮応力が表面と内側で逆転をするということから、傷の深さは一定のところでとまるというような知見も得たわけでございます。
 しかしながら、今先生御指摘のように、それぞれの炉別に今点検をいたしておりまして、それらの全体の状況をきちんと一度把握いたしまして、そしていろいろな個別の事情が、今までの知見で、我々の知っている範囲で、これで大丈夫、安全上の評価も可能か、あるいは、今後の傷の進展についてもこういう考え方でいけるのかというのは、今全体の調査をして、全体の状況のマッピング、クラックの状態のマッピング等もしてみますと、もう少し確たることが申し上げられると思いますが、今まだこれらの調査をきちんとやっていきたいと思っております。
大島(令)委員 柏崎刈羽二号機では、二〇〇〇年の点検では何もなく、二〇〇二年の点検で全周にわたるひび割れ、二年足らずで全周ひび割れが発生したことになります。浜岡四号機におきましても、二〇〇一年の点検では異常なしで、二〇〇二年の点検で六十七カ所のひび割れを発見しております。
 今、幾つかのサイトの名称を申し上げましたけれども、質問ですが、応力腐食割れを起こしにくいとされる材質の金属に、今回、このように過去に例を見ないことが起こっていることに対しまして、電力会社側の前回の点検に不備があったのか、ひび割れを見落としたのか、それとも意図的にひび割れの報告を行わなかったのではないか、そういう考えに立って事業者を検査する、そういう視点はお持ちでしょうか。
佐々木政府参考人 シュラウドの傷の検査は、確かに技術的にも、目視検査等におきましても検出限界、あるいはそれを見る、検査をする技術者の能力等、ある意味で非常に微妙なところがございます。今回も、GEの指摘をしたインディケーションと、実際に接写型で目視でやってみました今回の結果におきましても、ばらつきといいますか、GEでは指摘したけれども、こちらでもう一度きちんと検査をしてみれば傷はなかったとか、そもそもシュラウドの検査につきましては、検査をする条件を同じにしませんと、いろいろな光の反射等で傷のようにも見えるとか、そういったこともございます。
 したがいまして、この点については今確たることは申し上げにくいわけでございますけれども、目視検査なら目視検査で、ある一定の兆候があるものは、必ずこれは表面をブラッシングして、もう一回接写できちんと見て、その上でどうだというような、一定の技術的な判断がやはり必要だろうと思っております。
 そういう意味で、前回見つからなかったのに今回急に数十カ所も出るのはおかしいではないかという御指摘につきましては、私どもも私どもなりにいろいろ電力会社からも状況調査は行っておりますけれども、一つは、そこにはやはり検査の精度の問題といったこともあるのではないかと推測をしております。
大島(令)委員 今回は、東電のデータ不正事件ですとか虚偽の報告がありまして、事業者側のモラルのことも指摘されているわけなんですが、今の院長の答弁を伺いますと、検査のやり方という技術的なことが原因であるかのような御答弁なんですね。
 例えば、浜岡の四号機では、運転開始が一九九三年の九月三日、そして二〇〇一年の第六回の定期点検では、二〇〇一年、昨年ですね、異常なし。ところが、二〇〇二年九月二十四日、ひび割れが発見されている。八年間異常なしであったものが、一年で六十七カ所のひび割れとなった。このことに対して、通常、この間の電力会社の姿勢を見れば、私は、異常なしという報告に関しては、虚偽、不正を物語るものだと思うわけなんです。
 原子力安全・保安院は、短期間にひび割れが発生していることに関して、技術的なものと考えているのか、それとも電力事業者に何らかの、これは自主点検ですから、不正とか虚偽の報告があったとか、そういう事業者側の原因というのは考えていないんですか。
佐々木政府参考人 私どもも、今回、前回の定検時における電気事業者が保有している記録と、実際に点検を実施した者との記録の整合を行っておりますので、その限りにおきまして、不正があったというふうには我々は思っていないというのが今の現状でございます。
 しかしながら、今後一体、こうした材料の条件とか、実際に残留応力がどの程度かかったのかとか、表面の硬化度がどういうものであったとかということと、傷の進展といったものがどの程度の期間でどの程度というところまで考えておかなければいかぬかというのは、実はこれは本当に非常に技術的で、また難しい話でもございます。そうしたことが、実際にこういうケースもあるということがわかってくれば、もう少しはっきり申し上げられると思います。
 しかしながら、傷の進展が一年でその程度までいくというのが、技術的な判断からもこれはなかなか難しいということであれば、これはまたこれでいろいろ調査も必要かもしれません。
大島(令)委員 これも調査が必要かもしれませんというのは、虚偽の報告であったかどうかという調査というふうに判断してよろしいんでしょうか。保安院長は一体、この一年間でこんなにひび割れが多発しているという報告をそのまま信頼しているんですか。そのSUS316L、材質の問題にしているんですか、それとも事業者側の点検報告に関してそのままうのみにして信頼しているんですか。どちらなんでしょうか。
佐々木政府参考人 答弁の繰り返しになって恐縮でありますけれども、基本的にはデータの記録の整合も行っておりますので、一年間で何カ所か傷が出たというのは、前回の検査のやり方、見方において十分な精度がなかったのではなかろうかというふうに私は今思っております。
大島(令)委員 常識的には、今までの八月末に発覚した一連の事件から考えると、大臣、私は虚偽報告ではないかというふうに疑いを持っているんですが、大臣、どう思われますか。
平沼国務大臣 いわゆる専門的な見地から、原子力安全・保安院長が、二度にわたって重複をしたという形で答弁をさせていただきました。私も、ある意味では専門的な見地からそういう判断をしたことは妥当だ、このように思っております。
大島(令)委員 私は、原因究明がなされていないSUS316Lという材質のシュラウドを使用している原発はすべてとめて点検するという対応も必要ではないかと思っておりますが、この点について保安院長はどうお考えでしょうか。
佐々木政府参考人 少なくとも東京電力の各炉につきましては、これは順次きちんと点検をするということでございます。
 その他の東京電力以外の電気事業者の炉につきましても、至近の定期検査における確認等を十分にやっていく必要はあると思っておりますが、直ちに全炉をとめて停止をするというような必要は、安全といった科学合理性の世界からは合理性がないというふうに私は判断しております。
大島(令)委員 では次に、情報提供者に対する保護について大臣に伺います。
 現在、情報提供に関しましては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の第六十六条の二「主務大臣に対する申告」で規定されています。これは製錬事業者、ジェー・シー・オーとか、加工事業者、これはジェー・シー・オー、日本原燃などがありますが、あと原子炉設置者、使用済み燃料貯蔵事業者、再処理事業者、廃棄事業者というように限定されて法律に書かれております。
 今回の申告者はこれに該当しません。今回というのは、東電の不正の発覚のもとになった申告者のことですが、なぜ法律でこのように限定しているのか、御説明をしていただきたいと思います。
平沼国務大臣 先生御指摘の規定において引用されている事業者というのは、従業者を使用することが予想される原子炉等規制法上の規制対象をすべて列記しておりまして、これで十分に法目的を達成できると考えているところでございます。
 また、保護対象をそれらの事業者の従業者としているのは、類似の他法例に倣ったところでございます。
大島(令)委員 原発の保守点検にかかわる事業者等の使用者や従業者も加えなければ、私は、違反事実に対する申告を促してその申告者を保護することにはならないと思いますけれども、いかがでしょうか。
佐々木政府参考人 従業者の解釈でございますけれども、代理人、使用人等含みまして、事業主との特定の関係に基づいて事実上その業務に従事している者を指すものというのが裁判の判例等で解釈されておりまして、原子炉等規制法上の従事者につきましても同様の解釈がなされるものと考えております。
 したがいまして、事業者等が下請の事業者を用いる場合に、下請事業者またはその労働者がこのような定義に該当する場合には、原子炉等規制法の申告制度の対象になるものと考えております。
大島(令)委員 では、その解釈ですが、GEIIとか日立、東芝、ここに下請に出した場合は該当するというふうに理解してよろしいんでしょうか。
佐々木政府参考人 正確には、日本の法律が海外の人に対して適用できるかというのは、法的には議論のあるところであるそうでございます。可能性はあるということですが、我々は、今回の扱いにつきましては、これはもう原子炉等規制法のこの申告制度に乗ったものとして扱ってきたわけであります。
大島(令)委員 よく理解できないんですが、東電がGEに委託した。GEは子会社のGEIIにまた出した。GEIIは英語でGEに出した。GEが今度日本語にして東電に報告をした。検査したのはGEIIの職員なんですね。
 いろいろなサイトを見ますと、建設時、GE社が結構プラントを建てているわけなんです。ですから、やはり今後もその系列のGEIIの職員も保守点検業務をされることが予想されるわけですが、この方たちが保護される対象になるような形に何らかの形でならないといけないと思うんですが、改めてもう一度その明確な答弁をいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 私どもの今の法に基づく申告制度の運用につきまして、今おっしゃった海外の点検の業者の場合も同様に今の申告制度の中で扱っていくという方針であります。
大島(令)委員 では、そのようによろしくお願いいたします。
 次の質問は大臣でございますが、東電の不正事件で、原発に前向きであった自治体の知事や市町村長も、事業者はもとより国に対しても不信感を募らせているのは、今までの質疑の中で大臣も了解されていると思います。
 私は、このことは実は非常に重大だと思うんです。私ども社民党のように最初から脱原発を掲げている知事さんではないんですね。原発立地を受け入れてきていた人たちが、今回の事件発覚で、プルサーマル受け入れの凍結や今度の二法案について慎重審議を、また維持基準導入は時期尚早と声を上げているわけなんです。原子力発電は立地地域との信頼関係があって初めて共存できるのだということを肝に銘じるならば、そのことが今回の法改正に反映されていないといけないと思うわけなんです。地元自治体、住民の皆さんとの信頼関係を取り戻すため、具体的に運用の中でこれからどういうことを盛り込もうとしているのか、大臣の考えを聞かせてください。
平沼国務大臣 大島先生にお答えさせていただきます。
 御指摘のように、立地の地域の首長さんを初め、議会の方々、また立地地域の住民の方々とやはりその理解を深める、そして信頼関係を取り戻すということは非常に重要なことだと思っております。
 まず、立地地域の方々からは、国みずからが前面に立って安全を確保すべきとの強い御期待をいただいているにもかかわりませず、今回不正が行われた事業者の自主点検については、国による規制においてこれまで明確な位置づけがございませんでした。そのため、今回お願いしておりますこの法案におきましては、事業者による自主検査を法律上の義務とすることにいたしました。
 また、国の検査においても不正が行われていたことから、特に立地地域の方々においては、現在の国による検査など安全規制の実効性について信頼性を揺るがす結果と相なりましたので、そのため今回のこの法案におきましては、規制の実効性を高める観点から、国による検査に対する不正などについて法人重課を導入して、罰則を強化することといたしました。
 さらに、そのような一連の不正問題を受けまして、立地地域の方々を初めとして、国による安全規制体制についても充実が求められているところでございます。このため、今回の法案におきましては、現行のダブルチェック体制について、その実効性を強化するために、規制機関が原子力安全委員会に対して定期的な報告を行うとともに、規制機関はその意見を聞いて必要な措置を講ずべきことを制度化することにいたしました。
 いずれにいたしましても、当然ながら、このような法的な措置にとどまらず、立地地域の方々の御意見に謙虚に耳を傾けつつ、検査手法の見直しや情報公開の徹底など規制の運用面での見直しでございますとか、国の検査官の立ち会いによる関係施設の安全性の確認などさまざまな措置を講ずることによりまして、私どもとしては失われた信頼を回復するために全力を傾けていかなければならない、このように思っております。
大島(令)委員 何か事故がありましたときに、立地地域の自治体の県とか市町村の関係者は、その原因ですとか安全に対するものを、発表を待つということではなく、どのようにアクセスできるようになっているんでしょうか。
佐々木政府参考人 現在、私ども原子力安全・保安院のいろいろの行政上の行為あるいは判断の根拠あるいは委員会等の報告等につきましては、基本的にはホームページを通じても地域の皆さんに見ていただいておりますし、それから、いろいろ原子力安全委員会にその都度御報告をさせていただいておりますのはそれでも公開をいたしておりますし、また、今回のように一連の流れの中で、この報告書がまとまりました、この報告書がまとまりましたというようなそれぞれ節々の段階では、私どもの方から直接自治体の方に出かけまして御説明をさせていただくというような対応も重ねてまいったところでございます。
 もちろん、私どもとそれから地方自治体との間では、担当者レベルによりまして、電話にていろいろな話をしたり、これはどうなっているのかというようなやりとりもやっているところでございまして、自治体に対しての情報の流れに対しましても、私どもは非常に今十分な神経を使ってやっているつもりでございます。特に保安検査官事務所等につきましては、ファクス等もございますので、こういうところから自治体にもこの問題についてはきちっと話しておいてくれというようなこともやっておりまして、相当いろいろ神経を使ってやっているつもりでございます。
大島(令)委員 今大臣も御答弁されましたように、事業者に対しては罰則の強化等が図られましたけれども、立地地域の十四名の道県知事の要望書にもありますように、国の責任も重大だと指摘しております。今回の法改正では、所管する経済産業省、保安院にも責任があったわけですね。そこの責任に対する規定が明確になっていないように私は思っているわけなんです。
 先般、保安院長初め大臣はどのような処分を受けたかということを質問しました折に、大臣はペーパーを読まれました。電気事業法は事業者に対する法律なので、行政側の処罰規定を盛り込むことは不可能ですね。あと、そうしますと、国家公務員ですから人事院規則に従っての処分がこの前報告されたと思うわけなんですが、これだけで果たして十分なのかどうか。これに対して大臣の見解を求めたいと思います。
平沼国務大臣 前回も同様な御質問に対して、電気事業者が法令違反を行っている場合には当然のことながら電気事業法等に基づいて罰則が科せられる。それから、他方、公務員が法令違反を行った場合には国家公務員法等に基づいて処分を受ける。公務員による法令違反はこのような形で対処をすることになっているわけでございます。
 そして、二番目の国家公務員は、今回のような事例において有効に国家公務員法は機能していないのではないか、国家公務員法の見直しとかそういうものは行うつもりはないのか、こういうような御趣旨だったと思うんですけれども、今回の事案に関して国家公務員側の処分が甘いのではないかという御指摘があります。それについては、自主点検記録に関して不正を行いましたことをみずから認めている企業において当該責任者をどのように処罰したかということと、不正の指摘を受けて調査を行った行政側において、当該調査の過程で不適切さが認められた職員をどのように処分するかということは、私は比較になじむ事柄ではないと思っております。
 その上で申し上げますと、現行国家公務員法においては、国家公務員の守秘義務違反に対する罰則、これは第百九条でございます、これは、一年以下の懲役または三万円以下の罰金が規定されております。仮にこの罰則を見直すべきとの御趣旨であれば、これは地方公務員法の規定や刑法等他の罰則などとの均衡といった視点も踏まえて現在の量定となっていることをどう考えるかという問題があるかと思います。
 また、国家公務員法に定められた懲戒処分について、またいろいろな観点から改善の余地があるのではないか、そういう趣旨もあるわけでございますけれども、それは国家公務員に対する身分保障をどのように考えるかといった点もあわせて考えていかなければならない問題ではないかと思っております。
 いずれにいたしましても、私といたしましては、昨年十二月に閣議決定されました公務員制度改革大綱に基づきまして、政府部内において新時代の公務員の制度のあり方が検討されているところでございまして、現行の国家公務員法についても、時代の要請を踏まえて見直しをする必要がある部分もあろうかとは考えておりますが、事守秘義務違反に対する罰則の量定やあるいは懲戒処分の内容といった点については、私は必ずしも、見直しをしなければいけないような問題が今の時点で顕在化している、このようには思っていないわけでございます。
大島(令)委員 懲戒処分という中には、大きく、免職、停職、減給、戒告というのがありまして、済みません、保安院長は戒告ということでございましたよね。そして、給与の自主返納。しかし、あと、訓告と厳重注意という方が合計四名今回の事件でいらっしゃいます。これらは、厳密に言うと、法的な意味を持つ懲戒処分ではないんですね。このことに関しまして、本人がどう認識するのかということで、明確なものは、調べたところ、ないわけなんです。
 そこで、保安院長、伺いますけれども、前原子力安全・保安院次長さんは訓告なんです。訓告というのは、上司、上級の職員が直接制裁的なことを与えることであって、法的効果が及ばない。だから、本人がどう認識するかということで、今回の処分は、保安院長だけが人事院規則に基づいた懲戒処分を受けただけなんですね、調べてみたところ。このことに対して、どうなんですか、同じ職場でそういう方がいらっしゃって、訓告とか厳重注意、法的効果のないこういう処分というのは、実際ここの委員会の部屋にいらっしゃらないので、どういうふうに本人が受けとめているのかぜひ教えていただきたいと思います。
佐々木政府参考人 今お尋ねの方に対しての処分でありますけれども、本人も大変厳しく受けとめております。
 訓告あるいは厳重注意というのは、職務遂行において不適切さが認められた職員の職務履行の改善向上を図るために、指揮監督の権限を有する上級の職員が監督上の具体的措置として行うものでございます。これらは、職務の改善向上を一義的な目的とするものであります。直接、制裁的な法的効果を伴うものではありませんが、実際には、上司が当該職員を呼んだ上で、職員の不適切な行為などを文書等で指摘し、その反省を促すものでございまして、日々職務に励みながらも結果としてこれらの処分を受ける職員にとっては、精神的には極めて厳しいものであると考えております。
 なお、訓告や厳重注意を受けた職員については、勤勉手当等の成績率等を決定する際にマイナス要因として考慮されることもあるわけでございます。
大島(令)委員 しかし、随伴効果が示されているのは、免職、停職、減給、戒告までなんですね。ですから、私は、今回の処分というのは、世間に与えた原子力発電所に対する信頼の失墜という大きさから比べれば、先ほど大臣は六十七万二千八百円国庫に返納したと答弁されておりましたけれども、本当に一番の処分としては、保安院長の戒告、それと大臣の六十七万何がしかの金額ということですよね。
 今まで国家公務員が起こした不祥事に関しまして、大体、一番重たい懲戒免職になっているのは、詐欺罪によって有罪が確定した外務省関係の要人支援室長の、例えば首相外国訪問の際、宿泊費差額を水増しして請求、五億円の内閣官房機密費を詐取したとか、公金を横領したとか、そういう事案でしかなかなか処罰されない。お金にまつわることですよね。
 ですから、先ほど大臣が御答弁されましたように、今回の場合は秘密ですとかやはりいろいろ、では例えば秘密の漏えいのことに関しても、まだまだきちっとした答弁はいただいていませんし、国家公務員の側からしましたら、職務としてやったことで、有罪判決が出たようなことは悪いことにしましても、特定できないような今回のような事件の場合、では一体だれが責任をとるのか、そういうところが私は非常にまだまだ甘いと思っているわけなんです。ぜひ、秘密の漏えいということに関しても、今後厳しく検討していただきたいと思っております。
 最後の質問になりますけれども、原子力安全基盤機構に関して質問をいたします。
 この機構は三百六十人ほどの職員を擁するとのことでございますけれども、民間の電力会社やメーカーの退職者は役員になれる。しかし、欠格事項では、先ほど来いろいろな委員が質問していましたが、現職の電力会社の役員は排除されるということになっております。
 しかし、どう考えても、退職した人であっても、データを改ざんし、不正を行い、原発を推進してきた人たちで構成されれば、私は、せっかくつくったこの機構も、客観的な判断ができずに、不正の再発防止のための審査が本当にできるかどうか疑問に思っているわけなんです。果たしてこのような欠格事項だけでいいのかどうか、見解を伺いたいと思います。
佐々木政府参考人 機構の理事長につきましては主務大臣が指名をするということでございまして、役員については理事長の任にある者がきちんと人選をする、そういう仕組みになっております。
 今おっしゃったように、当省といたしましても、機構のそうした理事長が選任する役員については十分な指導が必要であると思いますが、いわば世の中のいろいろなこうした状況を十分に判断した上で、適切に社会的ないわば常識の中できちんと行われるということであると思っております。
 それから、先ほど先生にちょっと誤解を与えたかもしれません。大変失礼をいたしました。炉心シュラウドの傷の問題ですけれども、評価期間が十年間で、傷が両方に広がる長さを年間十一ミリで、アメリカのNRCのそうした方法によって私どもも安全の評価を実施しましたので、よろしくお願いいたします。
大島(令)委員 この機構は不正に対する対策として打ち出されてきているのでありますので、財政的にも経産省から切り離し、人材的にも電力会社から切り離して、完全な独立性を高めることが要請されると私は思っているわけなんです。
 しかし、その運営費は経産省の所管である電源開発対策特別会計からも運営されるということで、独立性が余り期待できないと思っております。院長、この件に関してはどうでしょうか。ちゃんとやれるんでしょうか。
佐々木政府参考人 独立行政法人の本来の運営については、独立法人みずからが自主的にいろいろな判断をしてやるように、法的な考え方もそのような規定になっております。
 金は出すが口は出さないという、世の中のそういうこともありますけれども、いずれにしましても、原子力の安全規制でございますから、こうした機構と当省との関係におきましても、適切な関係でやっていくということだと思っております。
大島(令)委員 数日間の法案の審議を通しまして、私はやはりどうしても、九月六日、東電の前南社長に本当に大臣と同じぐらい前の距離でお会いしたときに、新品同様で維持の基準というのは現場から見るとやっていけない、修理条件を整えないと、維持基準、これを緩和しないと伸び伸びと現場は仕事ができないとおっしゃった言葉が今でも払拭し切れておりません。
 この後採決に入りますが、残念ながら、社民党としては法案に反対ということを述べて、質問を終わります。
村田委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
村田委員長 この際、ただいま議題となっております両案中、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対し、竹本直一君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守党の五派共同提案に係る修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。竹本直一君。
    ―――――――――――――
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
竹本委員 ただいま議題となりました電気事業法及び核原料物質、核燃料物資及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 第一は、電気事業法の一部改正についてであります。
 その一は、経済産業大臣が原子力発電工作物に係る認可等の実施状況について原子力安全委員会に行う報告は、四半期ごとに行うものとするとともに、経済産業大臣は、当該報告のほか、この法律の施行の状況であって原子力発電工作物に係る保安の確保に関するものについても、原子力安全委員会に報告するものとすることであります。
 その二は、原子力発電工作物を設置する者等は、原子力安全委員会が経済産業大臣の報告に係る調査を行う場合においては、当該調査に協力しなければならないものとすることであります。
 その三は、「自主検査」を「事業者検査」に改めるものとすることであります。
 その四は、定期事業者検査を行う特定電気工作物を設置する者は、当該事業者検査の際、原子力を原動力とする発電用の特定電気工作物であって一定のものに関し、一定の期間が経過した後に技術基準に適合しなくなるおそれがある部分があると認めるときは、一定の事項については、これを経済産業大臣に報告しなければならないものとすることであります。
 第二は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正についてであります。
 その一は、製錬事業者等がこの法律またはこの法律に基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、その従業者は、その事実を主務大臣に対するほか、原子力安全委員会に対しても申告することができるものとすることであります。
 その二は、文部科学大臣、経済産業大臣または国土交通大臣が保安規定等の認可等の実施状況について原子力安全委員会に行う報告は、四半期ごとに行うものとするとともに、文部科学大臣、経済産業大臣または国土交通大臣は、当該報告のほか、この法律の施行の状況であって核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染されたものまたは原子炉による災害の防止に係るものについても、原子力安全委員会に報告するものとすることであります。
 その三は、製錬事業者等は、原子力安全委員会が文部科学大臣、経済産業大臣または国土交通大臣の報告に係る調査を行う場合においては、当該調査に協力しなければならないものとすることであります。
 第三は、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法の一部改正についてであります。
 原子力安全委員会は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の規定により受けた申告について調査し、関係行政機関の長に対して必要な措置を講ずることを勧告することができるものとすることであります。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
村田委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより内閣提出、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案並びに独立行政法人原子力安全基盤機構法案の各案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 私は、日本共産党を代表して、電気事業法及び原子炉等規制法一部改正案並びに独立行政法人原子力安全基盤機構法案に対する反対討論を行います。
 東京電力などによる原発の自主点検記録の改ざん、原子炉格納容器の気密試験での国の定期検査の妨害などが発覚し、原子力に対する国民の不信が高まっています。この二法案は、国民の信頼を回復するためとして提出されたものです。しかし、一連の事件の全容解明も行わないで実効性ある再発防止策がとれるはずがありません。
 電気事業法等改正案は、自主点検の法的位置づけや技術基準の適用が不明確だったことが不正事件の要因だとして、定期自主検査やいわゆる維持基準を導入するものです。これでは東京電力などによる不正事件を免罪することにもなりかねません。新潟県の平山知事が当委員会で発言された、なぜ、よりによってこの時期なのか、不正事件の全容が解明され、その原因が究明されることがまず第一であるという声を重く受けとめるべきであります。
 原子力安全基盤機構法案は、国が行うべき検査の実務請負機関を創設するものであり、原発の安全確保に対する国の責任を後退させるものです。また、電力会社や原発メーカーからの在籍出向も受け入れるなど、検査等の業務とともに事業者とのなれ合いまでも引き継ぎかねないものです。
 今求められているのは、事業者依存から脱却した検査行政であり、原発推進行政から独立した規制機関の確立です。そのため、日本共産党は、民主党、社民党とともに、三党共同で原子力安全規制委員会設置法案を提出しました。
 最後に、電気事業法等改正案に対する修正案は、以上に指摘した原案の問題点を改めるものではないため、賛成できないことを表明して、討論とします。(拍手)
村田委員長 次に、大島令子さん。
大島(令)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表しまして、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案に対しまして、反対の立場で意見を申し述べます。
 東京電力のデータ改ざん事件は、事業者としてのモラルの欠落を示したばかりか、経済産業省、原子力安全・保安院の機動力のなさ、責任感のなさを見せつけています。
 本法案は、こうした事件の再発防止に向けて提出されたとはいうものの、維持基準、健全性評価基準の導入も、そして独立行政法人原子力安全基盤機構の設立も、東電の不正事件発覚よりも前に検討されており、両者とも二〇〇四年に立ち上げるため準備が進められていたものです。前倒しをもって不正防止に向けてと提案されるのは余りにも安易であり、不信感を植えつけられた原発立地地域の住民の方々に対しても不実です。
 評価の手法一つをとってみても、評価機関となる独立行政法人原子力安全基盤機構が相変わらず経済産業省の所管に置かれ、その運営資金も電源開発促進対策特別会計からとなれば、評価自体、客観性を期待できず、不正防止につながるとは考えられません。
 また、健全性評価基準導入についても、例えば炉心シュラウドのひび割れを例にとれば、応力腐食割れしにくいと言われていたステンレスの材質SUS316Lが、なぜ他のものより早くひび割れを起こしたのか、調査解明を待たずに導入するというのであれば、これは単に、事業者が隠さざるを得なかったデータをこれからは隠さなくてもよくなっただけではないでしょうか。
 今回の不正事件を受けて、政府の答弁では、情報公開と説明責任を果たすという言葉は聞かれましたが、法律の改正においてきちんと成文化されなかったのはなぜでしょうか。
 平沼経済産業大臣は、東電の不正事件に関し、行政側もしかるべき処分を行ったことを明らかにされました。確かに国家公務員としては厳しい処分でも、国民には厳しいとは受けとめられないことを肝に銘じていただきたいと思います。
 今私が申し上げた点をお考え直しいただき、改めてみずからを厳しく律する姿勢を国民にお示しいただきたいと思います。
 なお、修正案につきましても、本法案の抱える問題点を改善するものではなく、本法案同様、賛成できません。
 以上、細かくは申しませんでしたが、この二法案が何ら不正防止には効果がないばかりか、新たな不正につながる危険性を指摘せざるを得ないことから、私はこれらの法案に反対をいたします。
村田委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、竹本直一君外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、下地幹郎君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、保守党及び宇田川芳雄君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、今般の原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係る不正等の問題が、我が国の原子力安全規制行政の在り方や原子力事業に対する国民の信頼を大きく損ない、原子力施設立地地域の住民に不安をもたらす結果となったことを重く受け止め、再発防止と原子力に対する国民の信頼の回復を図るため、本法施行に当たり、特に次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係る不正や国の定期検査において偽装が行われていたことを踏まえ、原子力事業者に対して原子炉の安全性について行っている調査の結果を速やかに報告させるとともに、総点検結果を厳正に審査し、結果を公表すること。
 二 今般の問題が、今後の我が国のエネルギーの安定供給及び京都議定書の目標達成に支障を及ぼさないよう、原子力エネルギーの位置付けを含め、エネルギー政策全般について検討を行うこと。また、自然エネルギーの開発・導入をさらに推進し、自然エネルギー利用の促進を図ること。
 三 当委員会における議論及び参考人の意見等を踏まえ、原子力安全規制の信頼性を回復するため、原子力安全・保安院がより独立した役割を果たすよう、その在り方について検討すること。さらに、原子力安全・保安院と原子力安全委員会とのダブルチェック体制の強化の方策についてさらに検討すること。
 四 事業者検査に係る審査結果に対する評定に当たっては、原子力事業者の事業者検査に係る社内体制や不正防止体制の確立状況について厳格に評定すること。
 五 原子力安全・保安院は、規制機関としての信頼性をより一層高めるため、検査官の人員の充実、技術評価能力の向上に努めること。
 六 維持基準の意義については、国民や原子力施設立地地域の住民の理解が得られるよう十分に説明を行うこと。また、維持基準の作成に当たっては、作成過程の客観性、透明性を図り、最新の技術的知見を反映した国際的規格が合理的、迅速に活用されるような措置を講ずること。
 七 事業者点検結果における故障、トラブルに関する報告の判断基準については、できるだけ明確・具体的に原子力事業者に示すこと。また、報告の対象とならない軽微なトラブルについても、原子力事業者において情報を公開し、国がそれをより大きなトラブル防止に活用するよう努めること。
 八 申告制度は、社会的な監視により国の原子力安全規制行政を補完する重要な制度であることにかんがみ、原子力事業者及び従業員に対し本制度の趣旨、申告手続について周知徹底を図ること。また、申告制度の運用については、原子力事業者のみならず、請負事業者及びその従業員からの申告についても、申告者のプライバシー保護を図り、円滑に情報提供が行われるように環境整備に努めること。
 九 原子力発電所の安全確保においては、原子力施設立地地域の住民や地方公共団体との信頼関係が重要であることにかんがみ、国及び原子力事業者は、国民、原子力施設立地地域の住民及び地方公共団体に対し積極的に情報を公開して説明責任を果たし、原子力安全確保に対する透明性を確保すること。
以上であります。
 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
村田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 次に、内閣提出、独立行政法人原子力安全基盤機構法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、下地幹郎君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、保守党及び宇田川芳雄君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。
鈴木(康)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    独立行政法人原子力安全基盤機構法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、特に次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 独立行政法人原子力安全基盤機構(以下「機構」という。)の業務については、経営の一層の合理化、効率化と経費の削減に努めること。
 二 機構の役員及び職員については、原子力安全分野に造詣の深い適切な人材を起用するよう十分配慮するとともに、原子力施設の検査等の事務に従事する職員については、原子力安全規制の被規制者からの独立性・中立性の確保を図る観点から、原子力事業者等からの出向者を充てないようにすること。
 三 機構の役員の報酬及び退職手当については、独立行政法人通則法の趣旨を踏まえ、機構及び役員の業務の実績を的確かつ厳格に反映させること。また、経済産業大臣は、機構の役員の報酬及び退職手当の水準を、国家公務員及び他の独立行政法人の役員と比較できる形でわかりやすく公表し、国民の理解を得るよう努めること。
 四 機構が所期の成果を挙げるためには、的確で厳正な業績評価が重要である。このため、明確かつ具体的な中期目標や評価基準を設定することとし、また、公正で客観性のある厳格な評価を確保するよう、評価者の人事及び評価の方法には細心の配慮を払うこと。
以上であります。
 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
 委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
村田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、両附帯決議について平沼経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、これらの法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
 まことにありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
村田委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
村田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十分散会


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