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第4号 平成15年3月7日(金曜日)

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平成十五年三月七日(金曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君
   理事 井上 義久君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      小池百合子君    佐藤 剛男君
      桜田 義孝君    中山 成彬君
      西川 公也君    林  義郎君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松島みどり君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    小沢 鋭仁君
      奥田  建君    川端 達夫君
      後藤  斎君    鈴木 康友君
      中津川博郷君    松野 頼久君
      山田 敏雅君    河上 覃雄君
      福島  豊君    工藤堅太郎君
      塩川 鉄也君    春名 直章君
      植田 至紀君    大島 令子君
      金子善次郎君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   参考人
   (プライスウォーターハウ
   スクーパース フィナンシ
   ャル・アドバイザリー・サ
   ービス株式会社取締役パー
   トナー)         田作 朋雄君
   参考人
   (坂井・三村法律事務所弁
   護士)          坂井 秀行君
   参考人
   (日本労働組合総連合会総
   合政策局長)       成川 秀明君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月七日
 辞任         補欠選任
  中山 成彬君     中川 秀直君
  大幡 基夫君     春名 直章君
  大島 令子君     植田 至紀君
同日
 辞任         補欠選任
  春名 直章君     大幡 基夫君
  植田 至紀君     大島 令子君
    ―――――――――――――
三月七日
 脱原発に向けての政策転換に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第五〇八号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第五〇九号)
 同(大出彰君紹介)(第五一七号)
 同(金子哲夫君紹介)(第五三八号)
 中小企業・中小業者の経営振興に関する請願(大森猛君紹介)(第五一〇号)
 中小企業の経営振興に関する請願(中西績介君紹介)(第五五一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 株式会社産業再生機構法案(内閣提出第三号)
 株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四号)
 産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、株式会社産業再生機構法案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 各案審査のため、本日、参考人としてプライスウォーターハウスクーパース フィナンシャル・アドバイザリー・サービス株式会社取締役パートナー田作朋雄君、坂井・三村法律事務所弁護士坂井秀行君及び日本労働組合総連合会総合政策局長成川秀明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず田作参考人にお願いいたします。
田作参考人 田作朋雄と申します。私は、プライスウォーターハウスクーパース フィナンシャル・アドバイザリー・サービスという会社で、会社の立て直しのコンサルティングをやっておる者でございます。
 本日は、私がどのような仕事をやっておるかをまず御説明申し上げまして、その中で、どんな論点が今日本経済に関して生じているか、それから、それに対して産業再生機構というものがどういう機能を期待されるべきかということを私の考えとして申し述べさせていただきます。
 まず、私は、仕事といたしまして、だめになった会社さんに雇われて、そこの立て直しのコンサルティングのいわば企業診断を最初に行うことが非常に多うございます。
 その場合、その会社の人、物、金というものをいろいろ見ていきまして、とりわけ物のところ、一言で言えば事業基盤、競争力だと思いますが、当該会社が本当に競争力があるのか、同業他社に比して競争に勝ち残っていけるのか、そういうしっかりした商品を持っているのか、仕入れがどうなっている、販売先がどうなっている、新規参入があるんじゃないか、代替商品が出てくるんじゃないか、こういうことを非常に緻密に企業戦略論的な観点から、あるいは競争要因分析という観点から行います。
 そのほかに、もちろん人、物、金ですから、人も必要ですね。今度、人材面で、経営陣がどうか、従業員との関係はどうか、そういったことをいろいろ人的資源の観点から見ていきます。
 最後に、金の部分ですね。それでは、その会社が一体これからどれだけの収益を生んでどれだけの借金を背負っていけるのか、その背負っていける借金がある程度見えたとして、それでは今背負っている借金に比べてそれはどのぐらいの比率なのか、多過ぎるのであれば多過ぎる借金をどうしていったらいいのか。
 これは債務免除とか債権放棄というのは極論でありまして、通常は、払えないのであれば払えるだけを払って、それが払い終わったころにまた利払いが発生する別の貸出債権に組みかえておくとか、あるいは払えないのなら払えないで、とりあえず無配当でいいから株に振りかえておいて、会社の価値が将来上がったらその株の値も上がるように、出世払いといいますか、延べ払いを株式を使って行うとか、いろいろな手法がございます。そういったことを行います。
 できれば、そうやることで再生できるものであれば再生させていきたいというのが私の考えであります。そうすることによって、従業員も幸せになりますし、地域経済も活性化いたしますので、存続可能性のある会社については極力存続させたい。
 それから、極端な話、企業そのものが必ずしも丸ごと存続できなくても、いいものを救い出して事業として再生させていくべきだというのが私の考えであります。ですから私は、事業再生という言い方をしております。必ずしも企業再生、企業再建にこだわることはない、究極の場合には。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれと申しますが、いい事業であればそこだけを救わないと、いいも悪いも一緒になっていると丸ごと沈没してしまうおそれもあるわけですね。
 問題は、これをどう実行するかなんですが、これ、全員がそれでよしということで、そういう再建策、再建計画を実行できればいいんですが、往々にして、これを交渉していきますと、一人、二人の方が、それは応諾不可能とおっしゃることがございます。そういう場合には、究極の場合には、法律を使って、具体的には民事再生法とか会社更生法を使って、弁護士の先生にお願いして法的な手続をとって、淡々とその再建計画を遂行することすらございます。
 こうしないと、要するに、今世間でいわゆるメーン寄せという問題が起こっているわけですね。それなりに相当合理的な再建計画をつくって交渉をしても、いや、それはメーンバンクが責任をとればいいことで、そのほかの人間は知らないとばかりに、期限が来たら満額回収しようとする。
 メーン銀行も、ここまで支えてきた以上、やむなくその回収資金を追加で追い貸しして、それでメーン以外のところは満額回収する。どんどんメーンバンクだけが負担が大きくなっていって、メーンバンク自体が非常に苦しい状況になってきている。そうなってくると、メーンも背に腹はかえられないということで、当該企業を法的整理に追い込んでしまうという非常に深刻な問題になっているわけですから、これをなるべく合理的な手続で、早い段階で手を打つことが必要だろうと思われるわけです。
 今申しましたように、私自身も、そうはいいながら、民事再生法、会社更生法を使って手続を進めることすらございます。
 ただ、この場合には、いわゆる倒産とか破綻というふうに決めつけないでいただきたいなと思うんですが、既に準備はできているわけなんですよ。もう何カ月もかけて立派な再建計画をつくった、ところが、残念ながら、ごね得をねらって一人、二人が嫌だと言うわけですから、これは出るところへ出ましょうというだけの話なんですね。
 それで、裁判所へ行きますと、計画はありますかと聞かれます。もうとっくにできています、何カ月もかけて立派なものをつくりました。これで一体どこが悪いのかというぐらいのものをつくっております。それから、多数決はとっていますかと聞かれると思うんですが、さっき申しましたように、これは一人、二人が嫌だと言っているだけで、圧倒的多数は支持しております。これはすぐ終わります。
 だから、これは果たして倒産なのか、破綻なのかというと、形式的には確かに倒産かもしれません、民事再生手続、会社更生手続に入りましたから。しかし、実は、事前に非常に準備してある。そのことを、私的整理で全員一致でやるのか、出るところへ出て法廷で法定多数決で押し切るのか、これは実は内容は同じなんですよ。私自身はコンサルタントとして全く同じことをやっております。私にとっては、法的整理でも私的整理でも、極論すればどっちでもいいということになります。
 そうは申しながら、法的整理に入りますと、どうしても、事実上破綻したとか倒産したとかいうふうに報道されて、一般消費者の方は、ああ、じゃ、あそこはもう商売やっていないんだと思い込んでしまって、そのせいで売り上げが三割から四割落ちるのが普通です。ですから、できれば、どうせ同じことをやるなら、私的整理でやった方がいいに決まっているわけですね。
 そういうことですから、民事再生法とか会社更生法ということと同じ内容ぐらいのことを、なるべくなら合理的手続でやれる代替的手段というものが必要になってくるわけですね。その一つが、私的整理に関するガイドラインと呼ばれるものであります。これを使って、現在まで七件ぐらいの私的整理がまとまっておりますし、現在進行中のものも幾つかあると推定されるわけです。
 ただ、それに加えまして、一種、やはり私は、今般の産業再生機構というものも、そういう代替的な手段として合理的に会社の立て直しを行うことに資するような枠組みに活用してほしいというふうに願っておる次第です。
 具体的には、何も機構で高値買いするとか、そこで塩漬けするとか、そこで国民の二次負担をふやすとか、そういうことを考えている人というのはいないはずでありまして、なるべくなら、本来なら民間が私的整理で合理的な計画をつくれば済むんですが、今言ったように非常に権利関係が複雑あるいは非常に巨大な企業である、いろいろな事情があって、なかなか民間だけに任せておくとうまくまとまらない。
 かといって、もうあれかこれかで会社更生、民事再生しかないというのは非常に問題でありますので、私的整理に関するガイドラインもさることながら、例えば産業再生機構で一遍それを受けて、そこで国が手伝いをして再生の道筋をそれなりにつけてそれで市場へ出せば、民間だけだったら、こんな会社とても投資できないなと思っていた投資ファンドの人、同業他社の競争相手なんかも、ある程度国が関与して多少筋道が見えるのであればこれは買ってもいいですよということで、非常に流れがよくなる。
 そういう、情報の流れをよくし、本来民間だけに任せておくと最終的な清算とか破綻とかになってしまいかねないものをお手伝いして流れをよくする、これに尽きるのだろうと思います。
 これは、世界じゅうで同じことをやっているわけですね。不良債権問題が起こったら厳しく引き当てて、そこで金融機関から出た不良債権をいきなり民間で勝手にやらせるのじゃなくて、一遍国で受けて多少きれいにして陳列棚に並べて投資家の方に買ってもらう。そうすると、本来より高い値段で買われるし、雇用も維持されるし、地域経済も活性化するわけです。
 これは、スウェーデンでもアメリカでも韓国でも同じことを、こういう国営の、AMCと呼んでおりますが、アセット・マネジメント・カンパニーですね、そういう資産を管理する会社をつくって不良債権処理を進めたわけでありまして、私は、個人的には、この産業再生機構というものもそういう機能を我が国で果たしてほしいと心から願っておる次第であります。
 RCCも実は似たようなことをやっておりまして、私自身は実はRCCの企業再生検討委員会の委員も務めておりますが、そこでも似たような機能を既に果たしております。これも世間では、RCCへ行くとRCC送りだ、回収一本やりだというふうなイメージがあるのでございますが、実は既に百件近くの会社を立て直しております。これは同じことをやっております。一遍RCCでもろもろの権利関係が複雑な貸出債権を受けて、ある程度権利関係を制御して、整理して、それで合理的な計画を淡々と進めるということです。
 これは、ほっておけば法的整理にいくしかなかったとか、あるいは非常に権利関係が複雑で何事も起こらないままに事態だけが悪化していく、これを避けて、透明な手続で権利関係を整理しながら合理的な再建策をつくることで雇用を守り、地域経済を活性化させていくという同じことをやっております。
 ただ、RCCは、どちらかというと中堅、中小企業、しかも破綻懸念先以下ぐらいのかなり深刻なものを扱っておりますので、今般、産業再生機構は、さらに大型のものあるいは要管理先ぐらいのものを積極的に扱って、一定期間の間にその成果を上げるということが期待されておるのであろうというふうに私は考えております。
 以上、個人的な見解ではございますが、私の考えを述べさせていただきました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、坂井参考人にお願いいたします。
坂井参考人 坂井でございます。本日は、貴重な機会をちょうだいしまして、ありがとうございます。
 私は、弁護士としまして、裁判所から仰せつかって、会社更生法等の手続に服しております企業の管財人ですとか、あるいは民事再生手続の債務者の申し立て代理人ですとかいった形で企業の再建にかかわってきております。と同時に、そういった手続にかからずに、法的手続に入らない外の、法的手続外での企業の再建にも御相談にあずかっているというふうな業務を行っております。
 私の目から見ますと、現在の日本の経済の停滞というものはだれの目にも明らかだと思いますけれども、経済の活性化のためには、やはり個々の企業の活性化、個々の企業の再生というものが必要なんであろうというふうに思います。
 では、それを一体どのようにして行うんだろうか。現在経営不振に陥ってしまっている企業をどのようにして再建するのか。
 これは今、田作委員の方でおっしゃったのと全く同じ考えを持っておりまして、つまり、その企業が、本来の本業、コアのビジネス、これが現金をたたき出す力を持っているんだろうかどうなのか、そういう力を潜在的に持っているのであれば、それを引き出してあげればいいだろう。それがビジネスモデルの変革あるいは構築だと思います。それが一つ。
 そうしてあげて、現金を生み出す力を持っているにもかかわらず、しかしながら、従前、例えばバブルの時期にしてしまった投資のためにバランスシートが大きく傷んでしまっている、そのために活力が出てこないというのであれば、それはその部分を何とかしてあげればいいだろうというふうに思います。言いかえますと、バランスシートの右側の部分、負債を何とかしてあげればいいだろう。
 何とかするというのは、端的に申し上げれば、その企業が修復した後のビジネスで生み出す現金、キャッシュフロー、これで弁済していくことのできるところにまで負債を圧縮してあげる、あるいは資本に切りかえてあげるというふうな手続を経ることによって、その企業の負債、資本の構造がその企業の生み出すキャッシュフローで弁済していくことが可能な形になっていく、企業が健全な体に治っていくということなんだろうと思います。つまり、端的に言うと、そのことによって普通の会社になるわけですね。
 そのことによりまして、その企業は利益を生み出すことができる。したがって、その企業の企業価値というものが出てくる。企業価値が出てくるのであれば、その企業の株式というものを債権にかえて銀行に持っていただくということによって行われる、いわゆるデット・エクイティー・スワップですね、債権の株式化といったものにも経済合理性が出てくるんだろうというふうに思います。
 そのことによって、銀行も助かります。企業が健全化すれば、銀行の持っている債権も健全化します。そして、企業の株式を取得したのであれば、その株式が価値が上がってくる、当然借り手側の企業も助かるということになってまいります。
 したがいまして、てこ入れすべき企業の選別に当たりましては、まず本業の収益力が本当にその企業はあるんだろうかどうだろうかというところの判定、これが大前提になると思います。そのような会社を選び出して、その会社のバランスシートの傷み、そのためにむざむざ殺す必要はないだろう、むざむざ市場から撤退していくに任せる必要はないだろうと思います。日本の雇用をふやして日本の税金を納めて日本の国際競争力を高める、そういう企業は再建に助力してやるべきなんじゃないだろうか、こういうふうに思います。
 ところが、現実の世界では、銀行間の円滑な議論がなかなかできない、あるいは経済合理性に基づいた協議ができないという場合がままあります。その結果、企業の再建に対する着手がおくれるという場合がまま見られます。あるいは、最後まで着手できないで清算に至ってしまうという場合もございます。これを産業再生機構が介在することによって解決することができるのであれば、産業再生機構には非常に大きな存在の意味があるのではないだろうかというふうに思います。
 したがいまして、産業再生機構の成功のためには、まずメーン銀行と企業本体の決断が必要であるだろうと思います。日本の従前の構造を見ますと、そういった思い切った体質の改善に一歩踏み出すということがなかなかしにくい構造になっていると私は思っています。しかし、それを振り切って一歩踏み出したというメーンバンクと企業がいるのであれば、それを産業再生機構として支援していくべきなんじゃないだろうかというふうに思います。
 そのときには、産業再生機構もそれと同様の勇気を持って当たっていただく必要があるだろう。どんな勇気かといいますと、とことん交渉でまとめ上げようと思うと結局まとめようと思った方が押し切られるというのは、私は当然なんだろうと思います。何を申し上げたいかといいますと、産業再生機構がメーンを除く中下位行から債権の買い上げをなさるというふうな手続をおとりになるとする。適正時価でイエスというならば、もちろんよろしいでしょう。ただ、ノーということになるのであれば、これは先ほど田作委員が法的手続についておっしゃっておられたように、これも法的手続でいけばよろしいだろうと思います。
 私は新聞報道でなされております以上のことは知りませんけれども、先般の西武百貨店ですかにおきましても、メーン銀行は法的手続を一方ではほのめかしながら、全体をまとめ切っていかれたというふうに報道されております。そういうふうな、戦っていくという姿勢、裸のぶつかり合いを避けてはいけないんだろうというふうに私は思います。
 私は、二〇〇〇年の十月から二〇〇一年の四月まで、実は千代田生命の更生特例手続において管財人を拝命しました。その中で、外資とぎりぎりのぶつかり合いをする中で私が学んだことでございます。相手はプロで武装して、徹底してこちらの弱点をついてきます。それが市場というものなんだろうと思います。それを逃げては勝てないんだろうと思います。こちらもプロで武装して、正面から立ち向かうしかない、もはや今はそういう時代になっているんだろうと思います。そこに産業再生機構の役割があるのではないんだろうかというふうに思っております。
 産業再生機構の強みというものはどこにあるか。これは端的に申し上げれば、過去のしがらみを振り切って、新しい、今何をするべきなのかという観点から、目の前の案件に着手できるというところに強みがあるんだろうと思います。言ってみれば、管財人と同じだろうと思います。管財人は、倒産した企業、破綻した企業に、裁判所から選任されて、突然空から降ってきます。従前の、その企業の中でのしがらみは一切関係ありません。取引先、金融機関とのしがらみも一切ありません。そういう新しい目で見て、その企業の再建のためには何をするべきなのかという点から着手いたします。そういう過去のしがらみを一切持たない立場で産業再生機構が入ってみえるということによって、経済合理的に見て、最善の手段がおとりになれるんではないだろうかというふうに期待しておる次第であります。
 以上でございます。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、成川参考人にお願いいたします。
成川参考人 労働組合の中央団体、連合で総合政策局長をやっております成川でございます。
 お手元に意見メモも配付させていただいてございます。
 私たち労働組合としましても、企業の再建、今本当に労働組合にとっても大変重要な課題になっているわけであります。組合の中にも、既に企業再建で会社側とともに努力しておるという組合が幾つもございます。そういう中で、我々、今回の株式会社産業再生機構法案を検討させていただきまして、まとまったものにつきまして、きょう、意見として述べさせていただきたいと思います。
 やはり企業の再生、これは大変重要であるというふうに我々は考えてございます。雇用の場をしっかり残し、そこで培ったそれぞれの技能、あるいは職業人としての生きがいを生かしていく場、これをしっかりつくり出していくということが重要である、こう考えてございます。
 そういう意味で、今回の株式会社再生機構が、企業再生、また不良債権の処理にしっかり役割を果たすということは必要である、こう考えてございます。しかし、その際、当然この株式会社再生機構は政府等からの保証を得るということでございまして、我々としても、これらの業務が公正性、公平性を、しっかりこれを確保しながら実施されることが大事である、こう考えておるところでございます。
 特に、我々としましては、現在大変な高失業社会になっておりまして、ぜひ、失業をこれ以上ふやさない、そして減らしていくという社会をしっかりつくっていくことが大事だ、こう考えております。そういう意味で、企業の再生、また事業の再生、これに対しまして、労働組合としてしっかり協力し、みずからも責任を持ってやっていくというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、企業の再生等については、雇用の安定、失業の防止という課題をしっかりその中に入れて実施していただきたいというのが我々の強い要望でございます。
 そういう観点から法案を見させていただきますと、産業再生機構法案の中には、雇用の安定についての文言が全く見ることができません。我々としては、ぜひこの目的の中で、「過剰供給構造その他の当該事業者の属する事業分野の実態を考慮しつつ、」こういう書き方だけでございますが、その中にぜひ、雇用の安定あるいは労働組合との協議ということをこの中に加えていただきたい、こう考えておるところでございます。
 次に、事業の再生計画が、どういうふうに産業再生機構がこれを評価するかというのが大変重要である、こう考えております。事業の再生計画につきましては産業再生法がございますが、産業再生法ではしっかり事業計画の記載項目が明記されてございまして、その中には「事業再構築に伴う労務に関する事項」というのがしっかり書かれてございまして、これらに基づきまして、当該の主務大臣による計画の認可等がされているところでございます。
 ぜひこの株式会社産業再生機構におきましても、事業再生計画の中の記載事項を明記していただきまして、その中に労務に関する事項、我々としましては、労務に関する事項として、労働組合等との協議を十分に行う、さらに、再生計画に対する労働組合の意見を付すというふうな記載事項を明記していただきたい、こう考えてございます。
 さらに、主務大臣は支援基準を定める、こうなってございますが、ぜひその支援基準に当たりましては、労働組合等と十分な労使協議を行う、また計画について労使の合意があるなどについての基準をぜひ定めていただきたい、こう考えてございます。
 さらに、これは今度の改正産業再生法と同じでございますが、これの中で、再生計画の中では、企業の合併、分割あるいは営業譲渡などが当然考えられるところでございますが、これらの企業組織の変更に伴いましては、ぜひ当該労働者の労働契約、労働条件は承継するという条件整備を図っていただきたい、こう考えているところでございます。
 あわせて、ぜひこの産業再生機構の仕事の中に、中小企業の再生ということをしっかりやっていただくということでの、中小企業支援の体制を整えていただきたい、こう考えているところでございます。
 そして、当然、この再生機構の中では一番重要なのは、債権の買い取り処分の適正な価格決定であるというふうに我々も認識しておるところでございます。当然、これは企業の再生を進めると同時に、かつ国民負担を生むことのないような適正価格で行う工夫が必要である、こう考えているところでございます。具体的には、事業再生計画を十分に審査し、再生可能でかつ債権者の同意を得られる計画とする、こういう中身に当然なってくるんじゃないか、我々、こう受けとめたところでございます。
 したがいまして、その計画の内容の審査については、公正な手続でかつ説明可能な判断で行っているということがわかるようなルールを事前にしっかりつくり、このルールに従って処理されているんだということを国民にぜひ説明をしていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。
 次に、改正産業再生法、改正産業活力再生特別措置法についての私どもの意見を申し述べたいと思います。
 この法案、現在の産業再生法をつくっていただきますときに、我々としましては、ぜひ産業再生につきましては労働組合との協議、協力が必要であるということを強くお願いいたしまして、その趣旨をかなり反映させていただきました。具体的には、再生計画策定及び実行におきまして、労働組合等の協議を十分行うなどについて、指針等で定めていただいたところでございます。
 御存じのように、今雇用失業情勢、さらに一段と厳しく、この改善の見通しが立たないという中にございます。したがいまして、この改正産業再生法につきましても、従来以上に雇用の安定あるいは労使協議等に配慮するということを強めていただきたいというふうに思っているところでございます。
 この改正産業再生法では、従来の事業に加えまして、新しく共同事業再編あるいは経営資源再生計画などが認可される形になるということでございます。法案を見させていただきますと、事業に伴う労務に関する事項等が明記され、また大臣の認定要件としまして、当該計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと等が定められております。
 しかし、これらにつきましては、ぜひこの記載事項に当該計画についての労働組合の意見事項を明記することをさらに明らかにしていただくこと、さらに認定要件については、計画について必ず労働組合等と協議を行い、合意を得ること、かつ、実施に際しても雇用の安定等に十分に配慮すること等を法律の中で明記をぜひお願いしたい、こう考えてございます。
 そして、先ほども指摘したところでございますが、これらの企業再生、産業再生に当たりましては、企業の合併、会社分割、営業譲渡等の組織の再編が行われることになる、こう受けとめているところでございます。企業分割における労働契約の承継につきましては、二〇〇〇年五月に法律をつくっていただきまして、分割に伴う労働契約について承継されるという形が整ったところでございます。
 しかし、営業譲渡の場合については、この承継が現在必ずしも明確になっておりません。その中で、営業譲渡に伴って、解雇の事例も発生しているというふうに我々受けとめているところでございます。ぜひ、営業譲渡の場合におきましても、労働契約が基本的には承継するという形での条件をしっかり整えていただきたい、こう考えておるところでございます。
 最後に、この改正産業再生法の中では、中小企業再生支援の認定支援機関及び同協議会の設置が定められてございます。ぜひ、これらの中小企業再生の協議会におきましては、中小企業の再生支援を担っていただける人材を厚く集めていただきたい、こう考えておるところでございます。同時に、これらの専門家は、再生計画策定に当たって、当然、事業会社の労働組合等と労使協議をしっかり実施し、企業再生を行える条件を整えるということの指導をやっていただきたい、こう考えておるところでございます。
 また、協議会は、地域の金融機関、経営者団体と同時に地域の労働組合等とも地域の雇用の維持、確保について十分協議を行っていただくようお願いしたい、こう思っておりますし、あわせまして、これらの再生協議会が、金融面での支援についても実質的にしっかりあっせんの機能を持つということをしっかり定めていただきたい、こう考えておるところでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
村田委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどりさん。
松島委員 自由民主党の松島みどりでございます。
 まず、田作参考人、坂井参考人に伺いたいと思っております。
 お二人の御意見を聞いていて、非常に具体的にわかりやすい、この問題はわかりやすい気がいたしてまいりました。と申しますのは、今までずっと、不良債権処理、不良債権処理という言葉で語られるときに、帳簿を右から左へみたいな、お金だけのことのイメージでございましたけれども、お二人がこれまで手がけられてきたこと、中でもおっしゃっていることというのは、残った事業、そこの会社がやっている事業というものがお金を生むものかどうか、仕入れや販売先、あるいは同業他社と、あるいはその製品について将来性はどうかということを見ていかれるという、その部分を聞いて非常に生きたものとして感覚を感じさせていただいた次第でございます。
 ただ、その中で質問がございます。
 今、バブルの後遺症ということが、これも言われてもう十年になります。確かに、その後遺症の部分、不動産やリゾートやらに、本業以外に手を染めたからまずかった、その部分を切ればいいというだけならば、そのところだけ圧縮して、身軽になって再スタートを切ることができると思いますが、今ほとんどの産業において、本業におきましても供給過剰、製造業の現場でも、製造業だけでなしに流通、卸、そういった段階でも供給過剰という問題がことごとく起こってきて、そうしますと、今までの、過去の十年前までのツケというのを、ひょっとしてもっと前に、七年、八年前に同じ発想でやれば本業が大丈夫というところも多かったと思うんです。
 今、その本業においても、各段階で供給過剰の中で、そうきれいな図式で救う企業がいっぱい出てくるのか、ペケにしなきゃいけない会社の方が圧倒的に多くなるのじゃないかという危惧を持っているんですが、両参考人、いかがでしょうか。
田作参考人 御指摘のとおり、不良債権は、バブル型不良債権と不況型不良債権を分けて考えないといけないと思います。
 バブル型不良債権であれば、確かにバブルのときの海外投資が失敗した等のことによってこれが発生しておりますので、そこを切り分ければよい。ところが、長引く不況の中で本業自体がだめになってきている。これに対処するためには、はっきり申しまして、ビジネスモデルの変換をしていかないと生き延びられないという事業が多いことは事実でございます。
 私のところへいろいろコンサルティングの相談が来ている業種でも、例えば旅館だとか病院、学校、こういうものもございます。こういうものが従来どおりのことをやっていても、今御指摘のとおり供給過剰だからなかなか仕事にならなくなってきたわけですから、これをいろいろな形で変えていくことが必要だと思いますね。
 実際、そんな中で繁栄している病院、学校、旅館というのはあるわけなんですが、これはやはりお客様が何を求めているかを早く察してそれに合った商品を、商品というのは物に限らない、サービスを含むわけですが、そういうものを提供しているからなんですよ。
 いろいろな国を見ましても、例えば、かつてアメリカなんかでも鉄道業界というのはもうだめだと言われた時期があったわけですね。では、鉄道を全部清算するのか、破綻させるのかといったときに、やはり鉄道というものはただの人を運ぶ運送業だと思い込んでいたから飛行機に比べてだめだということになっただけなので、そうじゃなくて、もっと広い目で、これを荷物だとか人に限らず物をいろいろ流通させる流通業の中の一環に組み込んだらどうだろうか、こういう観点から鉄道業を再建した例というのはあるわけですね。
 これは一つの例でございますが、旅館でも、やはり従来型の、大勢の人を集めて浴衣を着て宴会をやる、そういうビジネスモデルをちょっと変更して、余り多くない料理を、非常に限られたものを、いいものを出して、さらに別の部屋では和風の旅館ながら洋室の図書室があってそこでも別の雰囲気を味わえるとか、いろいろなビジネスモデルを導入しているところが今多うございます。そういうところは年じゅう予約もとれないぐらいにはやっているわけですから、この不景気の中で、そういうビジネスモデルの変換ということも目指していかないといけないと思います。
 ただ、供給過剰だからすべて清算してなくせば済むかというと、日本全体がそういう縮小均衡しますと、あぶれたものをどうするかということを考えなきゃいけないので、ビジネスモデルを変換して、ここであぶれたものをさらにすくい上げるような労働集約的な産業、教育でも介護でも医療でもいろいろあると思うんですが、そういうものをあわせてつくり出していくことが必要であろうと思われます。
坂井参考人 まさしく御指摘のとおりだろうと思います。
 私も先ほど申しましたように、経営不振に陥っている企業の立て直しのためには、まずバランスシートの右側を圧縮してあげればいいだろうということはないだろうと思います。幾ら圧縮してもだめな企業、すなわちキャッシュを生み出せない企業はどんなに圧縮してもらっても、その圧縮された後の債務は払えないんですね。
 ですので、一番肝心なことは、まず新しいビジネスモデルの構築だと思います。新しいビジネスモデル、すなわちキャッシュを生み出すことのできるビジネスをどう構築するんだ、これがまさしく御指摘のとおり一番肝心なところ、それがまさしく御指摘のとおり今各企業とも非常に弱くなってきているところだろう、こう思います。
 では、どうすればそれを強化できるのかと申しますと、私はそういったことの専門家、エコノミストではございませんし、経営コンサルタントでもないわけですけれども、私が思いますのは、やはり会社のガバナンスの問題というのは大きいのだろうと思います。
 会社のリストラクチャリングをする、これは必ずしも、バランスシートを修復するあるいは法的手続を申し立てる、これだけが会社のリーダーシップじゃないのだろうと思います。会社のビジネスモデル、これを変革していかにして利益を出せる体質の会社に切りかえていくか、これが会社のリーダーシップであり、ガバナンスの一番根幹なんだろうと思います。
 私は、今日本の企業、へばっている会社が多いですけれども、底力はあるだろうと思います。ですから、ガバナンス、リーダーシップさえしっかりしてあげれば、私は、日本の企業というのはまだまだ立ち直っていっていただけるんじゃないだろうかというふうに希望を持っております。
松島委員 ありがとうございます。
 そうした中で、産業再生機構というもの、これの人材確保といいますか、これまでは、管財人の方、らつ腕と言われる方々がそういう形で送り込まれたり、あるいは経営コンサルタントとしていろいろ腕を振るわれる方が少数、少数というか、ヘッドになる人が少数いて手伝う人はたくさんいたのかもしれませんけれども、だったわけですが、この産業再生機構ができると、ある程度のボリューム、いろいろな会社から持ちかけられる、その中で、そういったことを踏み込んで指導をしていく。
 法的整理の、債権、いろいろな金融機関の無責任な、メーンに押しつけようとしているサブ以下の金融機関の関係を調整するということは、今までの手法でできると思うんですけれども、そういうビジネスモデルの転換まで提言していくような人材を産業再生機構が確保できるのか。日本にそれだけいるのかという問題と、役所からの出向と、それから、あるいは銀行からこれは出向するんだか、あるいは、今のシステムでいうと、世の中は、物すごくいい人材がいるとしたら、二年か三年でその人材もだめになるかもしれないから、えらく高給で、三千万もらって外資系の何か幹部になるとか、そういうタイプの人が向いているのかどうかよくわからないんですけれども、そういう中で、産業再生機構がどういう人材を確保すればそういうことをやっていけるのか、また可能なのかという、どういうふうに考えられるか、両、坂井参考人と田作参考人に伺いたいと思います。
田作参考人 私の私見ではございますが、産業再生機構自体がそのような人材を大量に集めて、そこで全部内製化して処理するという必要は私はないのではないかと思います。
 アメリカの例を見ましても、九〇年代の前半に、アメリカのSアンドL問題が起こりましてRTCがつくられたときも、あそこにも何千人か人はおられたんですけれども、その十倍の何万人もの人を、外注によって、外部の専門家を使うことで一気に処理したわけですね。
 それと同様に、私は、今般の産業再生機構も、あそこで実際にやられる方は、むしろ、そういう外部の専門家を使いこなして、一種、コンサートのオーケストラの指揮者のような働きをしていただきたいと思うわけです。指揮者みずからがバイオリンがどのぐらい弾けるのか、ホルンをどの程度吹けるのかと言われても、これは困るわけでございまして、そういうことの概要は知っていても、それは個別のバイオリニストあるいはホルニストにやってもらえばいいと思うわけであります。
 具体的には、ある案件が持ち込まれたときに、出口を既に見据える必要があると思いますね。出口の方に、投資ファンドだとかあるいは同業他社でそういうビジネスを欲しいとかいう候補者は必ずいるわけです。ですから、そういう人に、もちろん守秘義務契約を結んで厳重な情報管理のもとで、そういう人たちが一体このビジネスを幾らなら買うかという気配を出してもらうことが必要だと思いますね。そうすると、むしろ専門家はそちらにいるわけです。そのファンドだとか同業他社の中に、このビジネスをよりよく知っている人がいるだろうし、そういう方々がまたさらに外部の専門家を雇う。それを受けながら、入り口の方へ戻って、債権を売りに出す銀行等と交渉する。
 そういう銀行交渉、ファンド、投資家、同業他社交渉、それと外部専門家を使いこなす調整能力、こういうものこそが産業再生機構に必要なわけで、そういう人材が、くどいようでございますが、みずからすべての作業をやる必要は私はないのではないかと考えております。
坂井参考人 私も全く同意見でございます。
 内部に優秀な人材を大量に幾ら抱え込みましたところで、これから産業再生機構が取り扱っていこうとしておられる案件の数、あるいはその規模に照らしたときに、とてもとても間に合うはずはないんだろうと私は思っております。しかも、そこに、まさしく御指摘のとおり、単に頭数をそろえるだけではなくて、そういった案件を自分でひもといて組み立てていく、そういった力のある方々に集まっていただくということは恐らく不可能なんだろうと思います。
 では、どうするか。これはやはり外注するしかない。外注に出されるその外注先は、まさしく市場、マーケットだと思います。そこには、経済的な動機に裏づけられた方々がうようよ、うようよという言葉は悪いですけれども、たくさん渦巻いておられます。そういった方々の経済的な動機が一つの結論というものを導いていくわけで、そういった方々のつくり上げている市場というものに外注に出していかれる。その市場原理というものに目を覆ってしまっては私はいけないのではないだろうかと思っております。
松島委員 ちょっと今の坂井参考人に追加で質問なんですけれども、市場にそういうことをできそうな人が、うようよか、ある程度の感じでいるということなんですね。
 その前に田作参考人が言われたオーケストラの指揮者というのも、これもわかりやすいんですけれども、産業再生機構のスタッフが、例えば、建設に関するこれだとだれに頼もうとか、あるいはスーパーの問題だとだれに頼もうとかいうことを考えてヘッドハンティングしてくるのか。そして、その市場というのは、イメージとして、会社員がそんなどこかの会社にやっていくわけもないし、弁護士さんとか公認会計士さんを言うのか、あるいは、銀行をやめた、それで仕事を始められたような人を言うのか、どういうイメージなのかなというのと、経済的動機に裏づけられてというのは、これを成功させたらコミッション、手数料を何%渡すという、そういう発想でおっしゃっているのか、ちょっとその辺の確認をさせてください。
坂井参考人 職種から申し上げればいろいろな職種の方がいらっしゃるだろうと思いますし、その方々の御経歴もいろいろな経歴はあるだろうと思います。ただ、必ずしも個人個人で考える必要はないんだろうと思います。そういったことを、ファイナンシャルアドバイザーと言われる方々もいらっしゃいますし、コンサルタントと言われる方々もいらっしゃいますし、あるいは個人として、私どものような弁護士もおれば公認会計士もおられる、そういう世界だろうと思います。
 そして、そういった方々を、一つは産業再生機構側の、外部のアドバイザーとしてお使いになる、そして、そういった人たちのふだん見ている、対峙している、そういう人たちが、産業再生機構が三年後あるいは五年後、一度買い取った債権の債務者、対象になる企業をリストラクチャリングした後もう一度送り出す市場にいるのは、まさしくそういう人たちなんだろうと思います。
 そういう方々の目で見て、最初に、そういった企業に対する債権を買い取る、そして、そういった人の目で見て、その企業のリストラクチャリングを図る、そして、そういった人たちと日ごろ対峙している方々が生息しているマーケットに、その会社をもう一度送り出すということだろうと思います。
松島委員 よくわかりました。持ち込まれたときに出口をある程度想定してと言われた田作参考人の意見と相通ずるものがあるなという印象を受けさせていただきました。
 それで、次に伺いたいのが、モラルハザードと申しますか、もちろん、産業再生機構という、国がかかわるものがあることによってうまくいくとしたら、それは、政府保証を得て十兆円の資金を用意することだとか、もちろん公権力だということもあるけれども、何となく、それだからすがりやすいということもありますけれども、結局、資金的なことがあってくると思います。
 そうした場合に、一般に、私は、中小企業といいますか小規模事業が圧倒的な数を占める町から国会へ送ってもらっているので、ふだん耳にする言葉というのが、何で西武百貨店は二千四百億円免除されるんだ、自分たちは一千何百万かの借金のために家族が崩壊するかもしれない、それも、別に悪いことをしたわけじゃなしに、担保価値が下がったから、そして、銀行が、金融機関がどうしようもなくなる、要するに、やってくれなくなった。
 金融機関が自分たちに貸し出してくれなかったり貸しはがしをするのは、自分たちが悪いからじゃなしに、大企業に対してそういう思いやりあることをやるために、我々が捨てられるんだ。そういう恨みが、あほらしくなるというか、税金払うのも嫌だという思いが世の中に充満しております。
 これについてどう思われるかということと、もう一つは、同じモラルハザードという点におきまして、特に、公共事業に関与している、つまり、これでいろいろな意味で軽くなった会社が、建設会社が同じように入札に参加した場合、安値受注ができて、一生懸命ぎりぎりのところで頑張っているところが、それができないために負けてしまうという本当に非条理なことが起こり得るというか、実際に起こって恨みがあるんですが、そのあたり、両参考人、済みませんね、連合の方に聞こうと思ったことがあったんだけれども、聞き損ねちゃって、これを両参考人にお願いします。
田作参考人 御指摘の、大企業に対する債権放棄の問題というのは、私も個人的には、実は、先ほどちょっと申しましたように、債権放棄というのは実は異常な事態だと思っております。世界的には、借金が払えないからこれを免除するというのは極めて異例な措置でございまして、普通は、早い段階で多少苦しくなる、こんな会社が必ずあるんですよ。景気がいいときでも悪いときでも、多少、だれだって失敗もあれば思い違いもあります。そういうときに、なるべく早く、みんなで集まって、情報を公開し合って、第三者も入れて、どこへ出ても恥ずかしくない計画を早くつくって早く直すというのは、これは普通の考え方なわけですね。
 ところが我が国は、残念ながら、長引くメーンバンク制のもとで、そういう場合に人を派遣し、追い貸しをし、支援と称してずっとこれを先送りしてきた経緯があるわけです。これは、過去には確かにそうすることによって、その間に右肩上がりの中で問題が吸収されて解決できたという事態もありましたので、当時としては必ずしも非合理な行動ではなかったわけですが、九〇年代に入ってこれが機能しないことは、だれの目にも明らかなわけですね。
 では、今からどうするかといっても、もう多分に手おくれで、相当程度債務超過のものがありますので、やむなく法的整理になれば、結局ひどい場合は九〇%ぐらいカット、要は債権放棄になってしまいますので、その内容を先取りすると、結局私的整理でもそういった内容にならざるを得なかったものが散見されることは、これはやむを得ない今過渡期の現象だろうと思います。
 ただ、私は、今後は早期、なるべく早い段階に手をつけるということが必要だと思います。公共事業はそれの一番典型的な現象形態だと思われますので、これも、そういう場合の受注資格等を見直していくとかいうことは今検討されているやに聞いておりますので、これからでもやれることはやっていくことが必要だろうというふうに私は考えております。
坂井参考人 中小企業の点につきましては、私まさしく御指摘のとおりだと思います。中小企業といいますのが日本の経済の強みを底支えしているということは長く言われてきたとおりでございまして、その中小企業の再生、再建というものが日本企業の再生に直結しているんだろうというふうに思います。
 問題は、どういった枠組み、どういった組織でその再建を図っていくんだということなんだろうと思います。私は、この産業再生機構の立法自体が中小企業をターゲットから外しているというふうには理解しておりません。産業再生機構自体、そういった中小企業の再建に手をつけるということもあり得るんだろうと理解しておりますけれども、必ずしも産業再生機構のみが企業の再生に注力する機関ではないだろうと思います。
 田作委員と同時に私も関与しております例えば整理回収機構の再生検討委員会、こちらでもそういった再生の機能は持っております、等々のもろもろの社会的な再建の枠組みという中で、中小企業の再建、再生というものは決して見落としてはならないというふうに私は思っております。
 それから、安値受注の点につきましては、特定の業種のことがどうしても私どもの頭にすぐ浮かんでくるわけですけれども、そこに目をつけますと、どうも議論がゆがんでしまうのかもしれません。一番大事なことは、どういった企業を再建していくのか。それは結局、本業の収益力のある企業である。なぜか。そういった企業を再建することによってその企業が救われるのはもちろんですけれども、そのことによって下請が救われる、従業員が救われる、そのことによって産業全体が再活性化する。だから再生に手をかすわけですね。
 したがいまして、もしその結果安値受注ですとかダンピングですとかそういったことが行われるのであれば、それはそれで別途の、例えば独禁法ですとかそういった枠組みがあると思います。そこで賄っていくべき事柄なのであって、大きな政策目標としましては、私はやはり、せっかく本業で収益力がある企業があるのであれば、その再建に国として手をかすということは一時的にでも必要なんではないだろうかというふうに考えております。
松島委員 どうもありがとうございました。
村田委員長 中山義活君。
中山(義)委員 おはようございます。
 参考人の皆さん、ありがとうございます、お忙しいところを。
 基本的に、今の現状を考えてみますと、いわゆるデフレと言われておりまして、その原因はやはり不況だと思うんですね。この不況をつくった今の政府は、結局こうやってどちらかといえば緊縮的に行っている。そういう面では、当然清算ということになってくるわけですね。
 この不況によって多くの企業が苦しんでいることは事実でございますが、先生方の方で、どうも財政出動をしたり金融政策で緩和政策をとると、かえって企業は甘えて本来の清算をしなくなってしまうというようなことが、若干対談の中で私かいま見えたんですが、基本的に、今の政府のやっている不良債権の回収の加速とか、こういう問題が社会に非常に大きな影響を与えているということをまず考えなきゃいけないと思うんですね。
 清算という前に一回景気をよくするというようなことについて、お三人のそれぞれ意見をまず聞きたいと思いますので、よろしくお願いします。田作さんから。
田作参考人 同感でございます。私は、あらゆるところで、不良債権処理をやったからといって景気がよくなるはずがないということを公言しております。これはどこの国を見ましても、必ず、不良債権処理をやるときは並行して景気対策をやっております。
 アメリカでいえば、九〇年代前半のRTC設立によるSアンドL問題の解決のときは、当時のブッシュ大統領、今の方のお父さんが金融緩和をなさって、九二年から地価が上がりました。それだから、九五年に終わったわけです。それから、お隣の韓国は、運よくITバブルが九八年から起こりましたので、ここが雇用の吸収に資するという面が多分にありました。そうであるからこそ、あれだけ財閥の解体にまで踏み込むほどの、IMFのプレッシャーのもとでの強硬策も何とか先に進むことができました。それから、スウェーデンの場合もやはり九〇年代前半、金融緩和をやりましたので、通貨安になりまして、これが貿易を通して景気回復に資したという面がございます。
 ですから、不良債権処理はもちろん必要ではありますが、必ずどこの国でもあわせて景気対策をやっているという現実がございます。
 ただ、我が国の場合、九〇年代の、九二、三年ならまだしも、ここまで来るとちょっと打つ手がなくなってきているのは事実でございまして、そうはいいながら、デフレをとめるというコミットを短期的にしながら中長期的には労働集約的な別の産業構造をつくり出していくことで将来の不安を解消し、かつ、労働集約的であるがゆえに雇用の吸収にも資するという産業構造の変換、それに伴う規制改革ということを並行してやっていく必要があるということは、私も同感でございます。
坂井参考人 私も全く同意見でございます。不良債権の処理、これはもちろん必要なことでありますけれども、同時に、そのことによって発生してくる可能性のある失業、こういったものがなくなるように、少しでも雇用を吸収できるように、景気対策といったものが同時に必要になってくるだろう、これは確かにそのとおりだと思います。
 ただ、それが財政としてどのような政策手段があるのか、金融上どのような手段があるのか、これは私申しわけありませんけれどもエコノミストじゃないのでよくわかりませんが、総論的にはまさしく御指摘のとおりだと思います。
 以上です。
成川参考人 私も、中山先生がおっしゃるように、まずこのデフレ不況をどう克服するかという対策がしっかり打たれるということが大事だ、こういうふうに思っております。
 不良債権処理だけで今の不況克服はできない、これは明らかでありまして、また、不良債権自身がデフレの中で不良債権を生んでいく、こういうことでございますので、これをしっかり対策を打たなきゃいけない。やはりそれは、マクロの政策で景気の回復に持っていく、これが大事だと思います。確かに財政面でいろいろ問題はありますが、一番今国民が感じている不安を解消していく、こういうマクロの政策を財政政策でしっかりやっていただく。
 私どもは、社会保障に対して国民の安心できるような基盤を構築する、あるいは雇用について政府が責任を持って失業を下げていくという対策をやるなど、こういうマクロの政策をやる、あわせて金融の緩和策をやるということが大事である、こういうふうに思っております。
中山(義)委員 政府は、今まで、不良債権の回収の加速がいかにも景気対策につながるような表現を、特に総理がやっていたわけです。これをスローガンに掲げていましたから。しかし、私は、そうではないということを今先生方から聞いて、同じ考えだと思って安心はしました。
 しかし、再生という名のもとに、むしろ清算といいますか均衡縮小に向かうような再生機構というのは非常に問題があると思うんですが、再生機構というものをつくったのは、むしろ、金融再生プラン、これを何かばんばんやっていくとまずいから、何かアリバイづくりに、いや産業の再生も同時にやっているんだというような、政府のそんな意図も見え隠れするわけですが、基本的に一番大事なのは今の現状だと思うんですね。ここまで来ちゃったらどうするかということも、同時に大切なわけです。
 実は、大企業はまだ銀行との関係が拮抗していますが、中小企業になりますと、同じような状況になったときに何が起こるかというと、貸しはがしなんです。だから、まだ再生機構なんかに行く前に、貸しはがしが行われる。この貸しはがしという現象は、今この再生機構にとってどういうふうに考えられますか。貸しはがしをばんばんやられたら話も何もなくて、銀行といわゆる会社と、既にそこで話が終わってしまうんですね。
 私たち考えてみれば、産業再生機構というのがあって、そこに駆け込めば自分の産業が再生されて、病院に入って病気が治って出てくる。こういうわけにいかないわけですね。その前に、病院に入る前にぶっ倒されちゃうという、ここは一番心配なんですが、この貸しはがし現象という問題に関して、企業と銀行の関係について、それぞれ先生方、もう一度お願いします。
田作参考人 貸しはがしについては非常にいろいろなことが報道されておりまして、私も実は、先般、大阪と仙台へ行って事情聴取してまいりました。そこでわかったことは、確かにおっしゃるように一部の銀行は、例えば自己資本比率を維持したいがゆえにリスクアセットを減らさなきゃいけない、だから回収できるところから回収している、こういう面は確かにございます。
 ただし、それとあわせてもう一つは、やはり、長引く不況の中で金融機関はこれ以上一円たりとも不良債権をふやしてはいけないと言われますと、昔であれば、思い切ってリスクをとって地域の産業を育成するためにお金を出そうと思っていたのが、萎縮してしまって、一円たりともふやしてはいけないならやめておこうというような感じになりますし、期限が来たら、延長するよりは回収しようという行動に出ます。これはやはり、合理的な行動をとれと言われればそうなると思うんですね。ですから、この後者の要因が結構目立ちました。
 私は、そこで考えましたのは、そうであるがゆえに、確かにやはり、不良債権処理というものをある程度進めて、銀行が不良債権から身軽になって、また思い切ってそういう地域の活性化のためにお金を出せるような仕組みをつくらなければいけないと感じた次第であります。そのことは、決して金融機関から不良債権を高値で買って金融機関を身軽にしてやるという意味では全然ございません。むしろ厳しく引き当てを要求していく。そんな中で、引き当てをさせられても、自分の帳簿に残しておくくらいならこれを切り離して、産業再生機構なりRCCなりへ持っていって、関係当事者も全部巻き込んで合理的な再生計画に持っていく方がいいんじゃないかというふうに行動する、そういう仕組みをつくったつもりだろうと思うわけですね。
 それから、あわせまして、RCCがむしろ、今度はとりわけ中小企業についてはそういう機能をさらに発揮すべきだというのが私の持論でございます。先ほど申しましたように、RCCというとすぐ回収だとか、RCC送りだからもうあそこへ行ったら破綻だ、倒産だというふうに思われるんですが、実は私、坂井参考人と一緒にRCCの企業再生検討委員会の委員をやっておりまして、そこでいろいろな中小企業の立て直しを幾つもやっております。これは、本来ならば、一部の金融機関がそれこそ貸しはがしに走ろうとした、ところが、別の金融機関はそれはやり過ぎだろうと思ってけんかになってしまった、こんなような案件が多いんです。
 そういうものをRCCへ持ってこられたら、RCCは国営の債権回収会社として再生機能も持ちながら、そういうところに一種仲介者として入って権利調整をやるわけですね。それなりに立て直せるものなら立て直せということで説得交渉にも入りますし、場合によったら、出るところへ出て、法的整理を通してでもそういうことを実現しますよということをかなり高飛車に交渉すれば、金融機関同士だったらけんかに終わっていたのが比較的まとまるわけですね。それで、中小企業として再生の道を歩んでいるケースは幾つもございます。
 ですから、私はやはり、今後はRCCの方も、破綻懸念先以下どころか要管理先でも、とりわけ中小企業について全国レベルでそういう機能を果たしていっていただきたい。それから、御承知のとおり、今商工会議所を中心として、全国の主な都市でそういう体制も整えつつありますので、私は、こういう中小企業問題に対応する論点も含みながら、この産業再生機構というものを広い文脈の中でとらえていくことが必要だろうと考えております。
坂井参考人 中小企業に対する与信の問題につきましては、非常に大切な問題であろうと私も思います。ただ、一私企業であるところの金融機関、銀行に対して余りにも過度の期待をいたしますと、かえって銀行のモラルハザードを招きはしないかということも、逆に懸念するわけでございます。
 したがいまして、ではどうすれば中小企業の再生を後押しすることができるのか、どういった面から与信面から後押しができるのかといいますと、そういった通常の私企業対私企業の金の貸し借りだけではなくて、別途のファイナンスの手段といったものも考えてあげる必要があるんだろうというふうに思います。
 例えば、法的手続に入っている会社、これは以前は与信を受けるということはほとんど不可能だったわけでございますけれども、現在では、御承知のように、いわゆるDIPファイナンスと呼ばれるような制度もございまして、法的手続に仮に入ってしまったとしましても、そこに対する与信というものが行われるという世の中になってきております。まして、法的手続に入る前の中小企業の方が早目に着手してさえおられれば、そこに対する与信というものは、通常の従前からの金融機関からの与信とはまた別途の枠組みで可能になってきている。そういう枠組みが徐々にできつつあるんではないんだろうかというふうに理解しております。
成川参考人 貸しはがし問題は、労働組合にもいろいろ相談が入ってございます。労働組合自身で調査したところによりますと、中堅、中小企業を中心にしまして、一割以上のところが、金融機関からの貸し出し条件の切り下げ、それに伴って労働条件等の切り下げを求められているというふうなアンケートも我々はしたところでございます。
 一つは、我々の中に地方の銀行自身の労働組合もあるわけでございますが、今の金融の検査のシステムが非常に大手行と同じような金融の検査をやられており、地域の中小企業と銀行との融資関係をなかなか維持できない、こういう点も指摘されておりまして、やはり、もう少ししっかり地域の金融に合った形での検査、あるいは中小企業とともに生きていかなければ地域の銀行自身が維持また成長できないわけでございまして、それらを見据えた検査のあり方なども工夫をしていかなければならない、こう思っておるところであります。
 また、企業の再生に、落ち込んでしまっているところについては、今御指摘ありましたように、DIPファイナンス等、担保なしでもちゃんとできるというふうな手だてをより強く強めるということも大事である、こう思っております。
中山(義)委員 わかりました。
 今度は、対象の企業の選び方なんですが、本当にすばらしい会社というのは、大体債務はどんどん銀行に返しちゃって、むしろ最近は、社債を発行して自分たちで勝手にやっていける、銀行を会社の中に持っているような、もう一流会社はそうですよ。銀行とやっていくというのは、だんだん中小企業の比率が今後ふえていくという可能性もあるわけですね。
 そういう面では、先ほど田作先生のお話だと、中小企業はRCCに行ってちょうだい、大きなところは産業再生機構でやりましょうというような話にちょっと聞こえちゃったんです、これは私の耳の錯覚のせいかどうかわからないんですが。どちらかというと、中小企業というのは銀行にすごく弱い立場にあるわけですね。これは、もともと不良債権の回収を強く推し進めた、その結果としてデフレが起きて、そのデフレが原因で今中小企業が苦しめられているわけですが、どうも銀行の方が優越的な地位にあるわけですね。
 この関係のままやっていると、確かに中小企業はRCCに送り込まれちゃう。しかし、まだまだ銀行と拮抗的な力を持っているところはそこと二人で、企業と銀行と一緒に相談をしてやっと再生機構に来る、こういうことなんですが、そのすみ分けみたいなものを考えちゃっているんでしょうかね。田作先生、お願いします。
田作参考人 私は決して大企業が産業再生機構、中小企業がRCCという趣旨で申し上げたわけではございませんで、むしろ産業再生機構というのは、御承知のとおり、今回約五年をめどに一気に現在の問題を解決しようというためにできたものでございますね。それに対してRCCは、こちらももちろん時限立法ではございますが、かなり新しい再生機能を持ちながら、今後ともある程度息を長くやっていくことが想定されているわけです。そういうことであれば、むしろ、各地域で末永く地元の金融機関とつき合いを続けていかれる中小企業にもふさわしいのではないかという趣旨で申し上げたのが一つ。
 それから、RCC送りというのは、決してRCCへ中小企業を送り込んでそこで回収するという意味ではなくて、くどいようでございますが、坂井参考人や私が行っている企業再生検討委員会で中小企業の立て直しを支援するという趣旨でRCCの調整機能を活用したらどうかという趣旨で申し上げた次第でございます。
 それから、中小企業に対して同じ検査をやって厳しい査定をやっているという御指摘もございましたが、実は私、金融庁の顧問も非常勤でやっておりまして、先ほど大阪、仙台へ行ってきたというのも金融審議会の意見聴取のために行ってきたんですが、やはり、どちらへ行きましてもかなり共通の意見が出ました。地元の金融機関というのは、お金を貸しているというよりは、非常に息の長いパートナーとして、ほとんど出資に近い形でやっているんだ、こういう御指摘でございました。
 そうであれば、むしろ、先ほど御指摘にあったような、銀行が非常に優越的な地位にあって、中小企業はその力のもとに服しているという関係をなるべく変えていって、本当に対等なパートナーとして、出資者に近い形で扱っていく。
 それから、さらに言えば、出資なら出資にするべきだというのが私の意見です。つまり、金を貸しているんじゃなくて、出資して株主になっているから、それなりにパートナーとして一蓮託生になるわけですから、そうであれば、一種、地域再生ファンドのようなものをつくって、銀行もそのファンドを管理するファンドマネジャーに徹して、預金者の方も、銀行へ預金を預けて少ししか金利がつかないというよりは、地元の企業のためにそういうものを回して、そのかわり、少しはそこから上がった収益をそのファンドを通して高目に配当してもらうとか、そういう仕組みもつくっていくことが必要だろうと思います。
 それから、中小企業の検査につきましても、ちょっと金融庁の弁護をすれば、中小企業検査マニュアルというものを別途つくりまして、個人と企業が一体になっている面を実態で見ていったり、あるいは将来の技術力だとか、今までの過去の財務諸表だけじゃなくて今後の予測に反映させられそうな要因も勘案して、検査をするような体制をつくっております。
 以上でございます。
中山(義)委員 時間がないので、今の御意見についてもなかなか、賛同する部分もありまして、本当に、信用金庫さんとか信用組合とか地域でやっているものはやはり運命共同体だと思うんですね。だから、本当に、地域の産業がつぶれたら、信用金庫さんもつぶれてもおかしくない、私はそう思うんです。そのくらいのパートナーシップを持っていかなければ地域はもたないと思うんです。
 どちらにしても、やはり、小さいところはRCCで大きいところは産業再生機構でというような感じがどうもありまして、その企業の選択に裁量の余地があるところに、我々非常に心配なんですが、いろいろ、裁量というところでは、さっきお話があったように、出るところに出ますよと。裁判所に行けばいわゆる法的整理が待っているわけですが、この方が裁量がないわけですね。法的な整理ですから。ルールが決まっているわけですから。ところが、産業再生機構ではかなり裁量というものが重要視される。この裁量の最終的な責任者は、だれがとるのか。
 これはもう、一言でいいですから、だれがとるべきか、一言ずつちょっとお願いしたいと思います。
田作参考人 最終的には産業再生機構の株主だと思います。
坂井参考人 経済的にいえば、今のお話のように株主になりますね。それから、ディシジョンメーキングの責任という意味におきましては、やはり産業再生機構そのもの、あるいはそのディシジョンメーカーだろうと思います。
成川参考人 基本的には、産業再生機構が間に立ってこの事業再生計画をつくる、こういうことなので、これはやはり産業再生機構の責任になる、こう思います。
 したがいまして、私としては、ぜひ、そのときの審査等のルールを事前に明確にして国民に示す必要がある、こう思っていることでございます。
中山(義)委員 最後にちょっと、成川さんのお話のように、ルールを明確化するということがすごく大事だと思うんですね。今言っている責任の所在というのをはっきりさせていただいて、やはりルールに基づいてやっている。それがどうも、裁量で、政治家まで介入して何かうまいことやったというような印象が絶対ないようなシステムが大切だ、私はこのように申し上げまして、参考人の皆さんの質疑を終わりたいと思います。
 きょうはどうもありがとうございました。
村田委員長 井上義久君。
井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。
 本日、参考人の皆様には、大変お忙しい中お越しをいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
 まず、田作参考人、坂井参考人にお伺いいたしますけれども、大変明快なお話で、さすがに実務経験豊富な皆さんだな、皆さんのような方がもっといらっしゃれば日本の企業再生ももっと早く進んだんじゃないか、こういう感想を実感として持ったわけでございますけれども、日本の場合は、アメリカ等に比べて、いわゆる企業再生のノウハウの蓄積が非常に少ないということと、人材が決定的に不足している、こういうようなことが指摘されているわけでございますけれども、これまでなかなか企業再生というものが進まなかった理由についてどのようにお考えか、また、今後企業再生というものを進めていく上でポイントになる点について、お考えをお聞きしたいと思います。
田作参考人 我が国でなぜ企業再生がこれまで進まなかったかについて、私見を述べさせていただきます。
 一言で言えば、我が国では、問題の先送りをした方が得なシステムになっていたからだというのが私の見解であります。これは、世界じゅうの人間、だれしも自分に得なように、必ず合理的な行動をとるはずであります。我が国が問題先送りが好きな国民性を持っていて、ほかの国が持っていないとか、決してそういうことはございません。我が国では、たまたま、これを先送りした方が得なシステムになっていたわけです。具体的には、逆に言えば、早く動いても得じゃないということであります。
 八〇年代には、確かに、多少苦しい取引先が出ても、これを、早くみんなで集まって、みんなで情報を開示し合って、第三者も入れて再建策をつくろうという動きはほとんどございませんでした。これは、そんなことをやっても得ではない。
 メーンバンクはいい情報を独占し、預金を持ち、疑似天下りのごとく人を派遣し、いざとなれば抜け駆けで回収できる、こういう体制にあったわけですから、この手のうちを明かして、何でみんなで早く集まって相談しなきゃいけないのか。ましてや、金を払って外部の中立的第三者を専門家として入れて、なぜそんなことをしなきゃいけないのか。そんなことはメーンバンクが一番よくわかっているという体制であったわけですね。早く動いても得じゃなかった、むしろ先送りしていく中で人を派遣し、追い貸しをしていった方が、長い目で見れば、何だかんだで問題は解決してしまって得だったわけですね。
 それから、それを強制するような情報開示システムも強制してこなかった。そこで、多少の問題があっても、余り罰則も厳しくなかった、早く動く税制メリットもなかった、こういう点から問題が先送りされてきたわけです。
 これは、アメリカの事情を見ますと全部逆でございまして、非常に情報開示が厳しい。どうせ手のうちを明かさせられるのなら早く動いた方が得ですね、あそこは早く問題に対処したと言ってもらえますから。それから、罰則も厳しいので、早く中立的第三者を入れて、どこに出しても恥ずかしくない計画を早い段階でつくっておいた方が得であります。それから、早く動けば、金融機関の立場に立てば無税償却も比較的早くできますし、債務者の立場に立っても、多少の債権放棄等を受けるのであればこれは債務免除益に課税されませんので、これも早く動いた方が得だということですね。
 ということで、私は、結論として、我が国ではメーンバンク制のもとで先送りをした方が得であった、早く事業再生に着手する方が損であったから、ここまで進まなかったんだろうというふうにとらえております。
坂井参考人 私は、我が国において早期の事業再編、再生着手がなされなかった理由というのは、要するに、とことん粘らざるを得ない風土というものがあって、とことん粘れる環境というものがあって、とことん粘ってしまう体質というものがあった、そのせいじゃないだろうかと思っております。
 何がそういうとことん粘らざるを得ない風土かといいますと、例えば、企業の場合、約束手形を非常に多用しているというのが日本の経済社会の特色だと言われております。約束手形の場合には非常に多数の方々に御迷惑をかけてしまうという結果になります。したがって、なかなか自分で、えいと思い切って着手しにくいというところがございます。
 あるいは、個人保証です。つまり、会社について債務をカットしてもらうというときに、即自分自身の個人保証に問題がはね返ってまいります。あるいは、法的手続といったものに入るということに対する、まだ一般にはびこっている恐怖心といいますか抵抗というものがあります。あるいは、経営責任を追及されるんじゃないかということについての恐怖感というものがある。
 あるいは、それでは、何がとことん粘れる環境かといいますと、例えば、取締役会の圧力が非常に弱い。経営のトップに対して、取締役会からのコントロールというものが及びにくい環境になっている。あるいは、株主からの圧力はなお弱い。あるいは、銀行からのそういった企業が不振に陥った場合の圧力も欠如している。
 あるいは、とことん粘ろうと思えば、これは手形を受け取ってもらうことができさえすればファイナンスを得ることはできる。銀行からの融資の継続というものも、従前は非常に甘い面があった。あるいは、財務情報の開示が不十分であった。あるいは、不十分であることに対する罰が軽い。
 あるいは、それでは、とことん粘ってしまう体質は何かといいますと、経営陣が自分の会社の現状を認識する点について、情報の不十分さもあって、甘さがあった。あるいは、やり過ごせば必ず一相場来るという信仰があった。あるいは、経営陣の決断力が、日本のガバナンスはいわゆるおみこし型のガバナンスである、トップダウンのガバナンスではないということもあって、鈍かった。あるいは前経営陣に対する遠慮、あるいは前経営陣からの呪縛というものがあった。
 もろもろ、非常に大きな、日本の経営を取り巻く、文化的な面も含めたしがらみというものがあって、早期の着手というものがなされてこなかったんではないだろうかというふうに考えております。
井上(義)委員 田作参考人に改めてお聞きしますけれども、坂井参考人とも共通な御認識が、先送りした方が得であったということで、特に情報開示と罰則が非常に弱かったという面は共通していると思いますし、それから、坂井参考人は、いわゆるコーポレートガバナンスという日本の企業文化という御指摘もあったと思うんですけれども、田作参考人、それじゃ、今現状はその点について改善されているのかどうか、その辺の御認識をまずお伺いしたいと思います。
田作参考人 私は、改善途上にあるという認識を持っております。
 私自身が、今から四年近く前にこういう事業再生の仕事をコンサルタントとして始めたときに、多くの方から、それは日本では仕事にならないだろうと言われたわけですね。それはなぜならば、メーンバンク制のもとで、問題解決はメーンバンクが自分でやる、それから、法的整理になってしまえば、それはそれで弁護士の先生方がなされるということで、おまえのやることはないだろうと多くの方が予想された。にもかかわらず、私は現在忙しくてしようがない。
 これは、明らかにやはりメーンバンク制というものは大きく変容してきている。従来であれば、さっき申しましたように、メーンバンクとして預金を押さえ、人を送り込み、情報を独占し、抜け駆けで回収した方が得だったんですが、この御時世、先ほど申しましたように、メーン寄せという方向に、それが悪い方に転化してしまったわけですね。それだったら、メーンバンクが全部責任を持つべきだということで、準メーン以下が全部それを押しつけてくる、それをのまざるを得なくなってきている。
 こんな状況のもとで、最近は銀行さんの方も、うちの銀行は残高メーンなだけであって、残高がたまたま一番多いということで、決してメーンバンクとしてすべての責任を負うということを言った覚えはございませんというふうにおっしゃる方も相当ふえております。そんな中で、早い段階で中立的第三者としての専門家を入れて、どこへ出ても恥ずかしくない計画をつくることが必要だという認識が急速に高まっております。
 そういうことで、私どもも大変忙しいわけですし、さらに言えば、RCCだとか産業再生機構だとかの権利調整機能を使ってそういうことを、民間だけではなかなか手に負えない部分まで多少は支援してもらえるような枠組みがあれば、早く問題が解決できるだろうという方向へ行っておりますので、私はこれは相当変わってきたという認識がございます。
 やはり、情報開示をどんどん強制するような立法措置、それから罰則を強化するような立法措置というものもいろいろな形で整ってきておりますので、私は、この流れは帰らざる河であろうという認識を持っております。
井上(義)委員 今のお話に関連して、私も大変興味を持ったんですけれども、こういうお仕事をお始めになるときは、仕事として成り立たないだろう、こういうふうに周りから言われて、今は非常に忙しいと。要するに、日本の場合は、そういう例えば企業再生が仕事として成り立つような風土がなかなかない、したがって、そこになかなか人材が集まってこない、企業再生を担う人材が圧倒的に不足している、こういうことがあると思うんです。
 田作参考人、御自身は仕事として成り立っていらっしゃるということなんですけれども、これは、これからの日本のいわゆる新しいビジネスとしての展望ということについて、どうお考えでございますか。
田作参考人 私は、今後、事業再生の必要性、さらにはそれのビジネスというものは、非常に大きな流れになってくるだろうと思っております。それは二つの意味においてであります。
 一つは、私どものようなコンサルタントとかアドバイザーの分野であります。
 これは、やはりある意味では、企業さんも、私どもが入っていろいろ作業をさせていただくと、正直言ってだれに相談していいかわからなかったとおっしゃる方が多うございます。銀行さんに御相談しても、基本的に銀行は債権者ですから、建前としては企業のためといっても、究極のところで自分の債権の保全ということを考えざるを得ないし、また考えて当然なわけであります。そうしないと、その銀行の株主に対する背信行為になりますので、これはそれでいいわけですけれども、厳密に言えば、明らかにそこに利益相反が本当はあるわけなんですね。
 ですから、やはり企業の立場に立って、この企業をどうやったら立て直していけるか、その立場に立ちながら、場合によっては銀行さんともけんかをするぐらいの助っ人というものが、本当は企業サイドで必要なわけですね。
 ところが、企業さんは、特に地域の中小企業さんになると、どなたにそれを相談していいかわからなかったという面が多分にございます。これを今急遽、各地域でそういう協議会等をつくって、商工会議所とか地元の中小企業診断士さんが中心になってそういう窓口をつくっておりますが、これは逆に言えば、残念ながら、今までそこまでの体制がなかったということのあらわれであります。
 ただ、やはりこういうことに従事する人間というのは、これからどんどんふえるべきだし、私の印象では、最近の銀行員の若手の方は、非常にこういう分野を希望される方が多いというふうに聞いております。
 それから二つ目は、そういう苦しい会社に対してお金を投資して、その会社の価値を高めてみずからも配当にあずかるという、投資家としての事業再生ビジネスであります。
 これも非常に必要なことでございまして、一時期は、不良債権を安く買って、買った以上で回収して終わりとか、そういうのが非常にクローズアップされた時期もあったんですが、私の見るところではそういうものは大体一巡しております、これはバブル型の不良債権の話ですから。
 不況型の不良債権というのは非常に難しいです。この会社に本当に投資しようかすまいか、思い切ってお金を入れて、それで、その会社を三年か五年ぐらいかけて非常に長い目で立て直して、その差が初めて、自分も汗をかいたんだから、その労働の対価として配当をもらって当然だということで、投資家の方も相当最初の段階にリスクをとられています。これは失敗するものもあると思うんですね。だから、かなり難しい作業、専門的な作業になってきます。
 こういう投資家のお金が流れるような仕組みというものも、税制、法制等の面でかなり整備されてきますし、今後、こういうものも大きな流れになっていくだろうというふうに考えております。
井上(義)委員 次に、もう一度田作参考人、坂井参考人、お二方にお伺いしたいんです。
 本来、こういう企業再生というのは市場原理のもとにやるべきじゃないかということで、これまで法的整理の枠組み、それから私的整理の枠組み、いろいろやってきて、ここに来て、あるいは再生法という形で、国がある意味でインセンティブを与えて支援するという枠組みでやってきたわけですけれども、この機構というのは、明らかに株式会社ですけれども、政府が企業再生に乗り出すということになるわけで、そういう意味じゃ大きな方針転換になるんだろう、こう思うわけです。
 政府が企業再生に乗り出す、このことについてどのようにお考えか、お伺いしたい。
田作参考人 私は、政府が乗り出すといっても、政府自身が大量に人を雇って、そこでみずから企業再生を行い、市場原理に反するような動きをとるということではないはずだというふうに理解しております。
 これはむしろ、基本的には市場原理を活用する。先ほどの私の比喩で言えば、出口の方を見据えて、出口にいる市場の投資家、あるいは同業他社としてこの仕事を拡張したがって、どこかとくっつけないかと思っている人たち、そういうもののニーズをくみ上げて、入り口の方の金融機関とも交渉し、この流れを、本来なら発生する交渉のコストとか情報の非対称性とかを解消させて、非常に合理的な、むしろ市場原理を促進するためのお手伝いだと思うんですね。国の仕事というのは、そこに尽きるんだと思うんです。
 私は、国の仕事というのは、市場原理に介入してそれに反することをするんではなくて、むしろ、市場原理に任せておいてはかえって悪くなるような事態というものがありますので、それをそうならないようにサポートする。これが国の仕事で、今般の産業再生機構というものも、まさにそういう支援する、サポートするということであって、決して保護をするとか原理に反することをやるというものではないというふうに理解しております。
坂井参考人 私も同意見でございます。市場原理をむしろ促進するものが産業再生機構の役割であろうというふうに思っております。市場をにらんだ買い取り価格、市場をにらんだリストラ策、事業の再構築策、こういったものが常に背景になければならないんだろうというふうに考えております。
 市場というのは、つまり民間なんですね。産業再生機構は、確かに政府の預金保険機構ですかの下に参りますけれども、私は、お役所マインドじゃ絶対にだめだと思います。市場に飛び込んでいって、市場の生き物たちと血みどろになってやって、戦っていただく、あるいは交渉していただくというマインドがなければいけないと思います。
 そのために、市場の方々を、私は先ほど外注と申し上げましたけれども、外注して、市場原理の中で行動していっていただくということが、産業再生機構のこれから一番大事な行動指針なんではないだろうかというふうに考えています。
井上(義)委員 ありがとうございました。
 成川参考人にお伺いいたしますけれども、雇用情勢が極めて厳しい現状の中で、日本の経済を再生するためには、この企業の再生というのは避けて通れないということだろう、こう思うわけでございます。
 先ほど、田作参考人からも、体験に基づいて、人、物、金、特に物、いわゆる競争力というものが一番重要で、その上で、金の問題、キャッシュフローをどうするかというお話があったわけなんですけれども、労働組合が企業再生というところにかかわっていくということになった場合、どの段階でどういうかかわり方をするのが一番、特に、企業再生はスピードが非常に要求されるわけで、そうなった場合に、例えば地域の中で考えると、雇用情勢なんか非常に大きな影響を与える決断をせざるを得ない、こういう状況も生まれてくると思うんですけれども、そういうときの労働組合の役割というものについてどうお考えか、お伺いしたいと思います。
成川参考人 労働組合は、日ごろ経営側と、経営の情報あるいは先行きの経営計画などについても通常は話し合っております。この話し合いがしっかり行われていれば行われているほど、通常、その事業の展開等新しいビジネスモデルなどのチャレンジもされている、こう思っております。残念ながら、そういう中で企業の縮小なりあるいは再編をせざるを得ないというときも、通常、労働組合、しっかりしたところはしっかり話し合いをしまして、従業員を取りまとめているのが労働組合でございまして、その中で企業の再生計画も練られている、こう理解しております。
 そしてまた、そういう従業員の協力の中で成立した再生計画でないと、これはなかなか実行できない。むしろ、この再生計画を実行するに当たって、主に、残念ながら、出向なり希望退職等も中小企業はあるわけですが、そういう中で、一たんやめた労働組合委員長などが、再度企業側が、ぜひまた登場して手伝ってくれと、こういう事例もあるぐらいでございまして、日ごろからやはり労使でしっかり協議をし、お互い力を出し合っているということが大事である、こう思っております。
井上(義)委員 最後に田作参考人にお伺いしますけれども、今の日本の企業を弱めている、不況型といわゆるバブル崩壊の影響をもろに受けている、これが一緒になっているものですから非常に厳しいのが現状だと思うんですね。そういう中でやはり、先ほど人、物、金という話がありましたけれども、なかなか予測しない事態、特にこのデフレの長期化というのは大きな影響を与えると思うんですね。したがって、このデフレの脱却と総需要策というのが私は企業再生には不可欠だと思っているわけです。その辺についてのお考えを確認したい。
 それから、先ほどその話の中で、いわゆる雇用集約型の産業というものを新たに起こしていかなければいけない、規制緩和等を含めてですね。それについて、具体的な何かイメージをお持ちだったらちょっとお伺いしたいと思います。
田作参考人 デフレの脱却を図らない限り、個別の企業再生、事業再生では限界があるということは、私は実務的に非常に痛感している次第であります。それぞれの企業をある程度財務リストラ、事業リストラによって縮小均衡に持ち込んでも、日本全体がそういう縮小均衡ばかりでは、これはどうしようもありませんし、長引く不況の中でそうやってでも、やはりまた来年非常に苦しい状況に立ち向かわなければならないという会社もございますので、これはやはりマクロベースでのデフレ脱却、これはデフレをとめるんだというコミットを明快に出して、人々の期待、予想というものを反転させることは、これは不可欠であります。
 そう申し上げた上で、これは短期的な話で、それをやって期待が変わり、多少地価が上がったところで、構造的にやはり、中国から非常に安い製品が入ってくるとか、伝統的なオールドエコノミーだけでは我が国は今後やっていけないということ、これまた事実でございますので、中長期的には、私の先ほどの言葉で言えば、労働集約型の産業というものをつくり出していく必要があると思います。
 具体的には、私は、ヨーロッパの特に小さい国、スウェーデンだとかオーストリーだとかスイスだとかベルギーだとか、そんなような国をちょっとイメージしているんですが、どうも我が国は何となく、英米だとか独仏だとか、そういう国を参考にしがちなんですが、案外小さい国というのは、少子高齢化の中でどうやってこれを生きていこうかということを非常に苦労して経験してきている国々が多いわけですね。そういう国というのは、大体いわゆる労働集約型の産業に特化しているわけです。観光立国、金融立国、あるいは、物づくりもさることながら、見えざる物づくりですね。
 これは実は同じことなわけですね。物をつくり出すということは、その物から出る効用が欲しいわけですから、なぜ冷蔵庫が欲しいかというと、その中に食品を長いこと置いておくことができるという効用が欲しいわけですね。なぜ車が欲しいかというと、思ったところへいつでも行けるような、その効用が欲しいわけですから、そういう効用がサービスとして提供されれば、何も自分で粗大ごみになりかねない冷蔵庫を置いたり自動車を持ったりする必要はないかもしれないわけですね。これは、年とれば年とるほどそうですね。物を持たない方が楽かもしれないわけですよ。
 ですから、もちろん物づくりは大事ですよ。我が国の今後とも根本を支える重要なところではありますが、ただ、それだけではやはり、この少子高齢化の中で、成熟国家としてはやっていけないだろうというのはヨーロッパの国、特に小さい国々を見れば明らかなわけです。
 そんな中で、やはり介護だとか教育だとか環境問題だとか医療だとか、こういう面は、これは人手をかけないとできない分野ですよね、機械ではなかなかできない。だから、人が本当に小まめにそういう、冷蔵庫じゃなくて、人が欲しいものをいつでも持ってきてくれるとか、車を自分で運転するんじゃなくて、行きたいところがあれば人がそういうサービスを提供してくれるとか、そういったことで雇用の吸収にもなれば、かつ人々の将来の不安の解消にもなるわけですね。
 今、何で使わないでため込むかというと、貯蓄というのは将来の消費ですから、現在の消費ではなくて将来の消費に回る理由は、将来が不安だからですね。その不安を解消するために、いや、医療の面でも介護の面でも教育の面でも環境の問題でも、将来そんなには不安になることないんだ、今そういうサービスを受けたければ受けられるし、将来だって受けたければ受けられるんだということを明快に産業として示して、そういうものが伸びていくような体制をつくれば、これは一挙両得なわけですね。消費は伸びるし、雇用の吸収にもなるわけです。
 私がイメージしている労働集約型産業というのは、そういうところであります。
井上(義)委員 大変ありがとうございました。
村田委員長 土田龍司君。
土田委員 自由党の土田龍司でございます。参考人の皆様には、お忙しい中を、また急にお時間をいただきまして、ありがとうございます。
 まず、産業再生機構についてでございますが、御承知のように、機構の仕組みが、非メーンバンクから企業の債権を買い取ることによってメーンバンクと機構に債権を集中して、これによって再生計画の円滑な策定あるいは実施を図ろうとするわけでございますけれども、一部の議論の中に、建設や流通など最大の利用客と見込まれる業種の中でも、自主的な再編計画の実施によって機構への再生支援申請がなかなか来ないんじゃないかという声もあります。つまり、機構ができても開店休業状態になる可能性もあるということでございますが、これについて、田作参考人あるいは坂井参考人、お二方とも専門家でございますので、この点についてどういうふうに考えられますか。
 またもう一つ、この機構が仲介することによって企業の再生がうまく機能するのかどうか、この辺もあわせてお二方にお尋ねしたいと思います。
田作参考人 まず第一の論点でございますが、産業再生機構が、実際そこへの申請が余り出ないのではないかというおそれがあるということでございますが、私は、合理的に行動する金融機関であればやはり使わざるを得ない、使った方が得だろうと考えるのではないかと推測しております。
 その理由は、まず、金融機関のサイドで相当程度今後とも厳しい引き当てを要求される。引き当てたところで、それは帳簿に残っていますので不良債権として開示されますね。された後、ただしこれだけ引き当てていますと言っても、やはりそれは残っているわけです。それであれば、基本的には産業再生機構へ出して、損金を税引き前で落として、不良債権額も減らした方が普通は得だと考えると思うんです。
 ただ、そう申した上で、もし産業再生機構へ来たくないなら来てもらわないでも結構というふうに、機構の方も開き直っていいんじゃないかと私は思っているんですよ。つまり、これは産業再生機構へ絶対持ってこいとか、そこで全部受けて国が全面的に指導するとか、そういうことを想定しているはずではないわけなんですね。建前からいったら、金融機関が自分で、全部市場原理にのっとって、どこか投資家を見つけてきてやってもいいんだし、会社更生手続を、債権者申し立てをやって、経営陣を全部更迭して、管財人に立ってもらって、スポンサーを探して、片をつけてもいいわけですよ。それしかないというんじゃなくて、産業再生機構を使ってもいいですよということだと思うんですね。
 産業再生機構を使えば、そんな会社更生手続のときみたいに、破綻した、倒産したと騒がれて本当に売り上げが三割、四割落ちるような事態は避けられるでしょうし、投資家の方も、その方が企業価値が高まったままで売却に出るので買いやすい。国民経済的にはその方が得だろうということですから、本来ならば、建前からいったら、情報がすべて共有されていて、そこに取引の交渉コストも余りないという状態であれば、本当は要らないんですよ、こんなものは。
 ところが、現実はそうじゃないわけです。情報は非対称だし、取引に伴う交渉コストというものはかなり複雑にかかるわけですから、そこを合理的にやろうと思えば、この機構を使った方が得でしょうということを言っているだけで、だから持ってこいとか言う必要はないし、私は、極端な話、開店休業だったらむしろ成功じゃないかと本当は思っているんですよ。つまり、こういうものがあるというだけで、それでかえって民間がそれに反応して合理的に動いてくれるなら、それで既に成功だと私は思っています。
坂井参考人 私は、産業再生機構ができる前、現在は、いわゆる私的整理のガイドラインというものがつくられまして、これの成功例が十例近くあるだろうと思います。ただ、実際に携わった方々の話を伺ってみますと、その私的整理のガイドラインの原則としているところの各行のプロラタの負担というのはなかなか難しい、どうしてもその過程でメーン寄せが起こってしまうという話も伺います。
 それで、同じことが産業再生機構が登場しました後でも起こり得るんだろうとは思うんですね。しかし、そこに産業再生機構という半分公的な色合いを持った組織が登場することによって、中下位行の債権を、従前とはまた違った取り扱いができてくるんじゃないだろうか。つまり、中下位行の側のビヘービアに従前とは違ったものが期待できるんじゃないだろうかということが一つあります。もしそうなのであれば、メーンバンクも、借り手企業と協議をした上で、この産業再生機構の新しい枠組みを利用するという行動に出てくることが期待されるんじゃないだろうかと思います。
 そして、一つ、二つ成功例が出るということが大事なんでしょうね。最初にばっとうまくいったという例を見て次から次へと進むというのが、これは残念ながら日本の国民性ですので、そういった点があるんじゃないだろうかと思います。
 それから、今、各メガバンクを初めとして、恐らく産業再生機構の側では期待をしている案件をたくさんお持ちなんだろうと思います。そういった非常に適した案件を実際に持ち込まれるかどうか、これはもう銀行側の御自分の判断の問題です。企業の判断の問題です。これは、企業としての大きなガバナンスの問題なんだろうと思います。
 それで、いろいろな要素をもとにしてそういった意思決定をされるわけですけれども、一つ、従前大きな障害になっていたと思われますところの自己資本の問題は、各銀行が今、三月末に向けて努力を重ねておられるようですので、そういった面からしても、開店休業ということにはならないのではないんだろうかなというふうに私は思っております。
 それから、実際に持ち込まれたときに機能するのかということにつきましては、従前の産業再生機構抜きでの枠組みは、私的整理のガイドラインというものが一番組織立った形にはなっておりました。あるいは、そういうガイドラインを使わない形での任意整理というものももちろんあったわけですけれども、いずれにしましても、産業再生機構というものが入ることによって、メーンバンクと産業再生機構の二者が借り手企業側と話をまとめれば、そこで再建策がほぼまとまるという意味において、私は、機能できるのではないんだろうかなというふうに期待しております。
土田委員 田作さんと坂井さんにもう一度お尋ねするんですが、この機構が非メーンバンクから債権を買い取るシステムであるわけですけれども、地銀などは引当金が明らかに不足しているというふうに思います。相当高い値段じゃないと債権売却のメリットはないのではないかと思うわけですね。
 そこで、非メーンバンクが機構に債権を売却しなければ、機構はそもそも機能しなくなるおそれが出てくるわけです。それで機構による債権買い取りは実際に機能するんでしょうか。どういうふうにお考えになりますか。
田作参考人 私の印象では、言われているほどに引き当て不足ではないのではないかと思うんですが、通常、やはり要管理先以下等の会社に対しては再建計画というのは、何らかのものは普通はあります。これは、メーンの指導のもとに債務者がみずからつくっている、実際は債務者がアドバイザーも雇ってつくっているものであります。
 これはもちろん、非常にいいかげんな、現在の、直近の決算をそのままべたっと十年ぐらい横に数字を延ばして、これが十年計画ですというのでは困るんですが、非常に緻密な積み上げ等をやっている計画もあるわけですね。売り上げは横ばいで、三年目には一%伸びる、それはなぜかというと、ここで新商品開発の効果が出てくるからだとか、あるいは、単価は下げるんだけれども、その分、量がふえて、単価掛ける数量で売り上げにはこれだけ効くとか、非常に緻密な積み上げ方式でやって、予測を立てながらつくっている計画も多分にあるわけです。
 そういうものを踏まえれば、今の貸し金一〇〇だけれども、まあ四〇ぐらいの値かなということで、六〇は引き当てざるを得ない、検査のときにもそういうことを堂々と説明すれば、これはやはり六〇の引き当てだというようなことになりますので。しかも、今後の検査では、それに横ぐしを通して、一つのところで六〇の引き当てが必要であれば、全員六〇引き当てるということが原則だという形になりますので、私は、通常の合理的な行動をとるのであれば、それだけ引き当てたのなら、そのぐらいの値段で売れるのであれば売った方がいいと思うはずだと思うんです。
 そう申し上げた上で、それでも、中には個別ケースで、ちょっと引き当てが足りないというか、売ろうと思うと今の引き当ての範囲内よりは二次ロスが出るようなことだって、これはあると思うんですね。ただ、その場合は、売らない自由も私はあっていいと思いますし、機構の方も、すべてを買い集めて、準メーン以下全部買って、メーンと共同で何かを進めるしか手がないと言い切っているつもりはないはずだと私は理解しています。つまり、一つ、二つ売らないところがあれば、それはやむを得ないので、ほっておいて、やれることをやっていくということになると思います。
 逆に、その一つ、二つが売らないことによって、にっちもさっちもいかなくて、最終的に会社更生や民事再生等に行けば、恐らく、法廷での更生計画、再生計画の結果の債権者への配分は、一〇〇のものが、四〇どころか二〇ぐらいかもしれませんし、どちらが得かということですね。現在、安全パイで四〇を切った方がいいんじゃないのかというふうに普通は判断するだろうと私は思います。
 この四〇というのも、機構がでたらめでつくっているんじゃなくて、出口を見据えて、機構を通してそれなりに価値が保存されてくるのなら、そのぐらいなら買いだという投資家の値段を気配値でとりながらやっていますので、私は機能すると思います。
坂井参考人 私も全く同意見でございます。
 中下位行が債権を譲渡する、しない、これは当然、一私企業としての御自分の判断です。その結果、もし全体としての債権の枠組みがうまくいかないのであれば、それはメーンと産業再生機構と協議の上で、事前にしっかりした計画案をつくって、その上で法的手続を申し立てるということも、これは企業の再生、そのことによって企図しているところの大きなメリットというものを考えた場合に、やむを得ないんだろうというふうに思います。
 どうせ粘ったってそうなってしまわれるんだ、そういったふうに持っていってしまわれると思えば、中下位行もいわゆるごり押し的な横車は押せないんじゃないんだろうか、合理的に考えれば、そう思います。それがもし、わかっているんだけれどもどうしてもというのであれば、それは、その結果起こってくることは甘受せざるを得ないんじゃないんだろうか。もし法的手続になりましても、今、田作委員の御意見では、法的手続外でやった場合に比べると、配当率が落ちる、弁済が落ちるということが前提になっておりましたけれども、法的手続にしばしば携わる者としては、なかなかそれは残念なことではございますけれども、えてしてそういう結果になるということは多うございます。
 ただ、一つ言えるのは、産業再生機構が入った枠組みの中では、その後の法的手続も非常に速いんじゃないだろうかというふうに思いますね。迅速に手続が進むんじゃないだろうか。これは、事前に十分練り上げられたプランがあって、そのプランを抱いて手続に入るわけですので。裁判所の方も、新しい更生手続の中では、会社更生法が今度改正になりました。その結果、四月一日から新しい更生法が施行されますけれども、その中では、手続の迅速な進行という点についてもいろいろな手当てがなされております。それを受けて、また裁判所の方も、その精神を生かす取り扱いをしていこうというふうに動いておられるように思われます。
 したがって、産業再生機構が関与することによって、仮に中下位行の中に反対をするところがある、その結果、せっかくの法的手続外の枠組みがうまくいかないという場合、やむを得ず法的手続に入るにしましても、その後の手続は、今までごらんになっておられる風景とは随分違う風景なんじゃないんだろうかなというふうに思います。
土田委員 田作さんと坂井さんにもう一点お尋ねしたいと思います。
 これは国会で何回も議論になりましたし、これからの審議の中でも多分同じような議論がされると思うんですが、この再生機構の支援対象ですね。これは企業規模による制約は設けられておりませんけれども、大方の見方では、支援対象となるのは専ら一部の大口債権者じゃないかと。中小企業の再生支援については、なかなか実態として難しいんじゃないかというふうに思うわけですが、これについてはどういうふうに考えられますか。
田作参考人 私は、大企業、中小企業を問わず、それなりに出口のところで新しい金が入りそうな会社であれば、それを見据えた計画をつくることは可能ですし、それを踏まえて、機構が関与して金融機関からその債権を買い取るということは、どんな企業でも可能だと思っております。
 私自身、コンサルタントとしていろいろなところで説明をしますと、それは大企業の話で中小企業は違うだろうとよく言われるんですが、そんなことはなくて、私は中小企業もたくさん扱っていますし、中小企業の場合、確かに単品商売で、部門整理もなっていなきゃ分社化もされていないんで、そんないいところと悪いところを分けたりできるかというふうに思われがちなんですが、それでも、細かく見ていきますと、それじゃ帳簿を出してくださいということで見ていきますと、やはり明らかに、やればやるほど損をしている商品があったり、ここに特化すればもっともうかるとか、これは明らかにあるんですよ。あるいは、お客さんがこっちへ行ってもこっちへ行ってもろくな品がないと文句を言っているお店については、思い切ってこちらの商品をこっちへ一本化したら、品ぞろえがよくなったというので売り上げがばっと伸びたケースもありますし、これは全部中小企業ですよ。
 ですから、やはり、それなりに合理的な、どうすればこの会社が本当に商売が軌道に乗るのか、そのために新規資本が必要なら、だれかそれを出してくれて、そのリスクをとったリターンもその人に期待できるような計画ができるか、これ次第だと思いますので、私は、もう自分の実務経験からいって、大企業、中小企業を問わず、これは機能すると考えております。
坂井参考人 法律上、大企業のみを対象とするとは恐らく書いていないんだろうと思います。実際の運用上どうかといいますと、結局、産業再生機構に持ち込まれての関与する案件といいますのは、市場の評価を結果として受けるわけですね。買い取り価格から始まってリストラクチャリングプラン、すべて最終的な出口である市場をにらみながら進められていく。ということは、その対象になる企業は、産業再生機構に受け入れてもらうことが本当にそんないいことなのかどうなのかということは、御自分で考えられる必要があるだろうと思うんです。そんなにいいところとも限らないかもしれないんですよね、市場に評価されてしまうんですから。
 そういう意味で、市場の評価にたえる中小企業であれば、これは、産業再生機構の方として門前払いされるということはないだろうと私は思っております。
土田委員 最後に、田作さんにお尋ねしたいと思います。
 いわゆる再生ビジネスのような、民間活力を利用することが今後非常に重要になってくるというふうに私は思うわけでございますが、今後、民間の再生ビジネスをさらに育成していくためには、どういった支援措置があったらいいかという質問でございます。
田作参考人 基本的に、こういう分野をコンサルタントとして知恵を売る形であれ、あるいは、自分でお金を出して投資をしてそういう企業を育成して再生させていくことでその汗かき賃ももらうという投資活動であれ、ノウハウは実は同じなわけでありまして、こういうノウハウをなるべく共通言語として多くの人に共有してほしいと私は思っております。
 具体的には、例えば学校等ででも、こういう科目、事業再生論とでもいうような、非常に学際的な分野になります。これは、法律学、経済学、会計学、経営学、いろいろなものを相互に連関させながら教えて、しかも、実際の事例を織り込んで、ディスカッションもやりながら、疑似体験としてそういう経験を持ってもらう。こういう思考訓練の場を与えていかないと、現場へ出て、教科書の知識だけでは絶対通用しません。これは、幾ら場数を踏んでいるかに限るわけですね。
 そうはいっても、では現場でやればいいんで、そんなことを学校で教えてもわかるわけはないと言っては身もふたもないわけで、やはりそれでもやらないよりやった方がましなんですよ。やはり、そういう疑似体験として思考訓練の場を与えられた者とそうじゃない者というのは、現場へ出て全然違います。
 ですから、私は、やはり共通言語の普及、それから、そういうディスカッション形式での教育機会というものを広く導入していくべきだし、極端な話、義務教育においてだって、事業再生論とまでは言わないまでも、やはりそういう自分で物を考えていくという訓練をしていくことで、こういうことに携わる人のすそ野が広がればいいと思っています。
 それから、ビジネスというと何か銭もうけで悪いことのように聞こえるんですが、ただ銭もうけをやろうと思ったって絶対もうかりません。人様からお金をいただいて、さすがにあいつに頼んでよかったと言ってもらえるということは、やはりそれだけの商売をしているということなので、これは、そうじゃない人は淘汰されますから、やらずぶったくりをやったら二回目は絶対仕事をとれませんので、必ずいい仕事をする。その労働の対価をきちっといただくことは恥ずかしいことでも何でもない、むしろ誇りを持ってやってほしいと思っております。
土田委員 以上で終わります。
村田委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。きょうは、本当にお忙しい中をお越しいただき、それぞれのお立場から貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。
 産業再生の関連法案にかかわって御質問させていただきます。
 最初に、田作参考人にお聞きします。
 私の拝見しました雑誌の田作参考人のインタビューの中で、産業再生機構を使うメリットということで、準メーン以下が保有する債権の受け皿として活用できるんだ、産業再生機構はメーン寄せ防止機能と権利関係調整機能を持っていると述べておられましたけれども、このメーン寄せ防止機能、また権利関係調整機能というのは具体的にどのようなものなのかということでお話しいただきたいと思います。
田作参考人 例えば、今ここに業況が苦しい会社があったとします。そのメーン銀行は、そのメーン銀行の指導のもとにその会社に何らかの再建計画をつくらせるはずであります。会社の方も、アドバイザーを雇ったりしてそういう計画をつくっている。
 その結果、例えば一〇〇の貸出債権が、その計画にのっとっていろいろやっていくと、実際は四〇ぐらいの価値だろうというふうにメーンが考えたとしますね。これで、準メーン以下にもでは支援をお願いしますと言うと、準メーン以下は、本来、合理的に考えたらまあこんなものかなとたとえ思っていても、必ずと言っていいほどまずメーン寄せを図るわけですね。そう思われるなら、メーン銀行さんが自分で、その計画にのっとって、一〇〇のものを四〇ぐらい実現できるようなことを遂行されればいいでしょう、私は一〇〇のものは一〇〇回収させていただきますというふうに普通は言うんです。期限が来たら一〇〇返してください、会社に金がないんならメーンが追い貸しをすればいいでしょう、その金で私は一〇〇回収します、こういうふうに必ず言ってきますよ。
 メーン銀行も負けじと、ああ、それだったら、我がメーン銀行もそれ以上金は出せないので、法的整理ですねということをたとえ言っても、まあそれはおどしだろうということで、準メーン以下はぎりぎりまで瀬戸際政策をとります、ほとんど。それで、多くの場合、メーン銀行はやはり折れます。どんどんメーン銀行ばかりが貸出債権が膨らんで、ほかはどんどん逃げていく、これがメーン寄せという現象ですね。
 ただ、これは、私の見るところでは、もう限界に来ています。これは非常に深刻な事態になっていますよ。メーン自体がもうそれを応諾し切れないということで、さすがに、窮鼠猫をかむではありませんが、メーンも、おどしじゃなくて本当にこれを法的整理に追い込んでしまう。
 そうすると、先ほど申しましたように、本来、合理的なら、会社更生、民事再生に行ってもやることは同じなんですが、世間は、倒産した、破綻したと言いますから、それで、それを受けて消費者は、ああ、もうあのお店はやっていないと思って行かないので、本当に売り上げが落ちます。三割、四割は落ちます。それで、本当に破綻します。ですから、どうせ同じことをやるなら、できれば私的整理でやった方がいいわけですね。
 そこで、そういうときこそ、民間に任せておくと余計悪い方向へ行ってしまうということを防ぐべく、産業再生機構が手伝いをして一遍権利を調整するわけですね。準メーン以下にも説得して、いや、そうはいってもこれは四〇でしょうということをきちっと説明して回る。それで、それでも法的整理と言うなら、このメーン銀行、だんだん体力も落ちてきているし、本当に法的整理に行きかねないですよ、そうしたら四〇どころか二〇ですよ、あなたはそれでも本当に機構にこれを持ってこないんですかということをやっていくべきだと思うんですね。
 別途、金融庁の方の検査は大変厳しくて、やはり相当の引き当てを要求されている。こんな中で、やはり一遍機構へ売った方がいいかなと普通は思うと私は思うんですね。四〇の安全パイを切るのか、一〇〇対二〇のかけに出るのかということですね。恐らく多くの金融機関は、合理的に考えたら、普通四〇の線をとるんじゃないかと思うわけです。
 機構は、その四〇のものを準メーン以下から集めたら、今度は返す刀でメーンに、さあ、メーン銀行さん、やっと四〇をこちらで集めてメーン寄せを一遍防止してあげたんですから、今度こそ本気でこの一〇〇のものを四〇にするという計画を五年以内に実現してください、さもないと、五年ぐらいで機構はなくなります、なくなったあげく何もしていなかったら、恥をかくのはメーン銀行さんですよということですね、メーン寄せがまた起こりますから。
 だから、一遍急速なメーン寄せを防止して、国として権利を今度ここで調整するわけですね。本当に出口にだれがいるのか、買い手がいるのか、そこの情報をまたメーンに流してあげる。これは、ほっておくと、なかなかそこで情報が流れないで、やはり決裂してしまって、結局は法的整理にいったりしかねないので、そこを調整する。これが私の言うメーン寄せ防止機能と、それから機構で受けた後の権利調整機能という例であります。
塩川(鉄)委員 それぞれ、メーン、非メーンは、立場が変わればまた非メーンでありメーンであるというその関係だと思うんですけれども、お互いに欲得で目先のことを考えればまとまらないという話が機構が出てくることによってまとまっていく、そういうお話だと思うんですけれども、まとまる際の土俵づくりの際に、今回の場合には特に、公的な資金が入って、損失保証などについても最終的に国が見る。そういう点では、本来銀行相互がとるべきリスクというのが国民にツケ回しされるんじゃないか、そういう批判というのは出てくると思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
田作参考人 似たような事例が実はアメリカにも韓国にもスウェーデンにもございまして、不良債権処理というのは実はそう珍しい手法というのはないだろうと私は思っております。奇策に良策なしとよく言うわけで、良策であれば奇策のはずがないので、正当策だと思うんです。
 要は、厳しく引き当てを要求して、出さざるを得なくなった不良債権を国営のアセット・マネジメント・カンパニー、AMCで受けて、これをそこできれいにして市場に出す、こういう流れしか私はないと思うんですね。そんな中で、もちろん国民の二次負担というのは極力抑えるべきですし、買う値段も出口を見据えてから買いますので、そこにそんなに大きい損はないはずではありますが、そうはいっても、先のことはあすのこともわからない御時世で、それは多少の読み違いがあることはあります。
 実例で言えば、アメリカは大変な公的資金を使ったわけですし、これは当時のブッシュ、お父さんの英断でやられたわけですし、韓国もGDPの三割ぐらいは使ったはずですね。それで、その四分の一ぐらいは最後の出口で回収しましたけれども、四分の三はやむなく公的資金に頼った。それから、スウェーデンはかなりうまくいきましたね。当初使った、買い取りのときに使った公的資金をほとんど出口で回収しました。
 だから、これはやってみないとわからないという面もありまして、ただ、極力、出口を見据えながら、二次ロスは減らすようにしていくということです。ただ、そう申し上げた上で、どこの国を見ても、やはりある程度そこは使わざるを得ない。これは決して、国民にツケを回しているというよりは、これによって金融システムを保持して、国民の重要な資産である預金等を守るという色彩の方が強いと思います。
塩川(鉄)委員 本来、金融システム安定化という議論の中でいろいろな公的資金の問題がありましたけれども、今度は個別の特定企業の企業再生にかかわって出るという点について、いろいろな疑問がある。この点は法案の審議の中で議論になってくると思います。
 今との関連で、坂井参考人にも同じような趣旨の質問ですけれども、先ほど冒頭の意見陳述の際に、産業再生機構について、銀行間では経済合理性に基づいた議論はできない、そこに機構の存在意義があるというふうにおっしゃられました。経済合理性が発揮されるのであれば、ある意味では第三者の、何らかの民間の立場の人がかかわるような形で、わざわざ国が出なくてもまとめられる、そういう条件整備というのも考えられる。わざわざ国が出ていかなくても対応が可能なようなことというのは難しい話なんでしょうか。
坂井参考人 銀行間で必ずしも経済合理的な議論がなかなかできない場合があると申し上げたのは、例えば、本当に驚いてしまうようなことも時にはありますね。
 ある銀行、A銀行対B銀行の間で今Cという借り手さんの話をしている、そのときに、Dのとき、Eのとき、Fのとき、あいつはこうだったこうだったというふうなことがしがらみとなって、トラウマとなって、今目の前にある案件についての議論を非常にゆがめてしまうということがある。あるいは、同じ借り手さんに関する話ではあっても、以前こんないきさつがあった、メーンはこうであったといったことがもとになって、準メーン以下がなかなか合理的な話に乗ってこないという場合があるだろうと思います。
 これを、産業再生機構が入ることによって、そういった過去のしがらみを一切捨象して、しようがないでしょう、今こういう債務者がここにいてこういうことになっている、しかしながら、債務をこうやって整理してあげれば、本業はこういった収益力があるんだから、こうこうこうなるでしょう、どうしてこの案に乗れないんですか、この案でいけば借り手さんに対する債権はこのバリューなんですから、このバリューで買い取らせてくださいという経済合理的な話がしやすいんだろうと思うんです。それがなぜ民間ベースでできないかといいますと、一つはやはりその話に時間がかかるんじゃないだろうか、それからその場があるんだろうかという気がいたしますね。
 ですので、今、非常に日本経済全体の再生というものが、一日を争って再生しなければならない、しかも非常に大きな量の不良債権を何とかしなければならない、そういった現状が目の前にあるときに、やはり国として一つのそういう装置をつくるということについては、意味があるんではないだろうかというふうに考えております。
塩川(鉄)委員 金融行政についてのアドバイザーのお立場をなされていらっしゃる田作参考人にもう一つお伺いしようと思います。
 きょうの日本経済新聞に、ハザマの再建に回収機構を活用するという記事がありまして、非主力行の債権を回収機構に集めて当事者を減らし、再建計画をスムーズに進めると。今春にも発足する産業再生機構の仕組みを先取りするという話になりますと、今我々が法案審議しているのが何なのか、回収機構でできるんだったら、わざわざ機構なんかつくる必要はないじゃないかという疑問が当然出てくるわけですね。
 そういう点では、率直に言って、機構で議論しているような仕組みを回収機構がやれるのであれば、機構をつくる必要はないんじゃないかというのを率直に思うんですが、御感想で結構ですけれども、お願いします。
田作参考人 これは、私の見るところでは実は逆でございまして、本来なら機構が早くできていれば機構を使うんだったんですが、なかなかできないと、この間にますますメーン寄せが行われるんですね。今しかないとばかりにメーン寄せを行う動きが非常に強烈に起こっております。これが機構があれば、機構があるというだけで、私さっき申しましたように、たとえ開店休業でも、あるというだけで、それがおもしになって本当は民間の合理的な動きというのは促進されるはずなんですよ。ところが、残念ながらないものですから、背に腹はかえられないということで、とりあえず緊急避難的にRCCに行ったものだと私は解釈しています。
 ですから、これが限度で、もう一つ二つやれと言われたらRCCはパンクすると思いますね。あそこも二千人の従業員がおりますけれども、大半の方は例えば旧住専で住宅ローンをやっておられたとかそういう形ですから、そんな中で本当に事業価値を見て企業の再生可能性を判定しということをやれる人というのは百人強なわけで、これ一件やると大変な人数がかかります。
 私どももかつて、非常に大型の会社更生案件に従事させていただいたことがありますが、三十人ぐらい投入して半年ぐらいかかりました。一件やってそんなものですから、これを二件も三件もやるというのは、やはり、相当程度今回の産業再生機構のようなものを使って、大きくこれを外注していくようなシステムをつくらないと限界があると思います。
塩川(鉄)委員 そういう点でも、本来回収機構の中でできる話であれば、それを拡充するような話というのは、この目的との関係では、機構の存在意義というのが改めて問われているのかなということを感じました。
 その上で、こういった機構の存在ですとか産業再生法の関係で、雇用にもたらす問題について成川参考人にお伺いします。
 意見陳述の中でも、不良債権処理の促進や企業、事業の再生に当たっては、雇用の安定、失業の防止を必ず政策課題として組み込む必要があると述べておられます。産業再生機構ができることによって、その産業再生機構が雇用にもたらす影響についてはどのような懸念をお持ちなのか、お聞かせいただければと思います。
成川参考人 今の経済状況、大変なデフレ不況が、例のない、日本の経験の中でもまれな時代になった、こう思っておりまして、その中で残念ながら雇用が日々に失われている、こういう現状であります。
 我々組合自身も、組合の人数が減っている、こういうことでありまして、我々としては、ぜひ、これ以上失業をふやさない、解雇者を出さない措置をしっかりしていく必要がある。そういう意味で、マクロ政策が一番大事だと思っていますが、あわせて、やはり現場で失業を出さない仕組みをしっかりつくっていかなきゃいけない、こう思っております。
 そういうときに、やはり、企業の再生を手助けする制度として、法的な整理というだけではなかなかうまくいかないということで、それにプラスするような形でのこういう再生の機構という形で、これが公正でかつ納得いき、また従業員の意見を聞きながら行われるということであれば、私どもとしては、それをやっていただくことが雇用の安定にも資する、こう判断しております。
塩川(鉄)委員 あわせて、産業再生法について成川参考人にお伺いします。
 九九年、産業再生法ができて、実施されて三年間たつわけです。この法律をつくる経過では、連合としても厳しい指摘、雇用の問題についての諸問題ということでさまざまな指摘をされておられたと思うんです。結果として、今回、改正という方向で、より前向きに政府の立場とすれば進めるというわけですけれども、この三年間、産業再生法というのが労働者と日本の景気に結果として何をもたらしたのか、それはどのように受けとめておられるんでしょうか。
成川参考人 残念ながら、この間の雇用自身で見ますと、製造業初め急激に減ってきている、こういう事態でございます。
 産業再生法をつくる時点では、過剰設備の廃棄あるいは過剰負債、また過剰の人がある、こういうふうな考えで、我々としては、それは過剰の人というのは納得できない、こういう立場で、ぜひ雇用の安定をしていただきました。百七十件以上の事業が適用されておりまして、我々としても、関係の組合に、この過程でどれだけしっかり労使の協議がされているかということもヒアリング等しておりますが、一応、我々が聞いた限りにおいては、しっかり協議がされた中で適用されているということでございます。
 そういうことで、現場レベルでは、一応労使の話し合いはされながら進められている、こう受けとめておりますが、そのことが、産業再生なりのしっかりした産業の活力に結びついたかどうかという点については、残念ながら、私の方としては、そこまで今しっかり把握できておりません。
 やはり、基本としては、マクロあるいはセミマクロのしっかりした雇用対策を含めた景気対策がないと、なかなか雇用を、これ以上失業をふやさないというのは難しいというふうに思っているところでございます。
塩川(鉄)委員 この間、独占禁止法の改正なども含めて、企業組織の再編、企業組織の変更については大いに自由度が増してきた数年間だったのではないかなと思うんです。同時に、労働者のいろいろな権利保護との関係では、そういった企業組織の変更に対応するような形で十分な対策がとられていないんじゃないかということを率直に思います。企業の合併や企業分割、それから営業譲渡などに対応した雇用の安定、失業の防止の対策が必要だと考えますが、その点はいかがでしょうか。
成川参考人 産業再生なり企業の再生にしましても、あるいは新しい産業を開くにしましても、やはり人が大事でございまして、人の育成をしっかり計画的にやっていくということがないと、私どもの経験からして、日本の力強い発展はない、こう思っております。そういう意味で、雇用について労使で日ごろから話し合いをしておりますが、社会的なルールとしましても、雇用の安定を確保できるルールをしっかり整えていくというのは大変重要である、こう思っています。
 会社分割につきましては、雇用契約の承継ということを確認させていただいていますが、残念ながら、先ほど指摘しましたように、営業譲渡等については、この判例自身が大きく揺れているという現状がございまして、これについてしっかりした社会的ルールをぜひつくっていただきたい、こう考えているところでございます。
塩川(鉄)委員 今お話にもありましたように、企業分割の際の労働契約承継法ができたわけですけれども、営業譲渡の場合には適用されない、そこで解雇の事例がふえているというお話でした。
 現場で営業譲渡の際の解雇の事例がふえている。どんなことが起きているのか、もし具体的な事例なりでわかりやすく例示していただければありがたいんですけれども、御紹介いただければと思います。
成川参考人 営業譲渡の場合は、買い手が、ある事業部門を買い取る、こういう形になるわけでございまして、その際、従来であれば、当然その営業自身に対して人がくっついているという形で解決されていた、やりとりがされていたわけでございますが、最近では、人をつけると買い手があらわれないということで、この営業譲渡には人が必ずしもつかない形でまず買い手を探しまして、買い手の意向の中で、ではそのうち半分だけ人を引き取りましょうというふうな形で営業譲渡がされているわけでございます。
 我々としましては、当然、そこで働きたい、働き続けたいという人については、営業譲渡でございますから、人があっての営業でございますので、雇用の継承ということをぜひ考えていただきたい、こう思っております。
塩川(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。
村田委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。きょうは、各参考人の方々、お忙しいところ、非常に貴重なお話をお伺いする機会をいただきまして、感謝申し上げたいと思います。
 さて、幾つか、時間の許す限りお伺いをしたいわけですが、まず、田作参考人と坂井参考人にお伺いをしたいわけです。きょうの質疑でもお話ありましたけれども、人材の確保にかかわってでございます。
 再生機構の運営でやはりポイントになるのは、一つは判断基準だろうと思いますが、対象となる企業が再生可能か否かを審査するその必要な素材等というのは、やはりこれは主力銀行等の企業が握っているわけですね。その一方で、それを審査する再生機構の側がノウハウや人材が不足の状態であったら、これは非常に困ったことになるわけですが、私もこの点について非常に心配はしているわけです。実際、審査判断の資料等必要な情報を持ってないことには、主力銀行が提出するような再生計画が本当に実行可能なものかという判断ができないわけです。
 田作参考人の場合、これは言ってみれば、産業再生機構には指揮者がおればいいんだというふうにおっしゃったわけですけれども、私の場合、指揮者としての人材の確保自体が現状でどうなのかといった場合、例えば、いろいろなところからお願いはされるんだろうと思うわけですが、実際、例えばRCCの場合でも、千三百人ほど職員はいますけれども、実際、企業再生業務に対応できる人材が約百名であるとか、メガバンクの企業再生部門でもせいぜい百人程度。また大手行は、たしか対象企業ごとに担当部署を設けていますけれども、これも大体各企業五名ぐらいとかいう、実際やはり層が薄いんじゃないか。
 その意味で、指揮者の確保という点について、果たして、例えば坂井参考人はうようよとおっしゃったわけですけれども、そういう実態にあるのかどうかという点についてやや心配をしておりますので、その点について、まずお二方から御意見お伺いできますでしょうか。
田作参考人 現時点で、こういう事業再生ビジネスに従事している人間が少ないことは事実です。ただ、そう申しながら、潜在的能力を持っている人、実はたくさん、まさにうようよいるのが実態であります。
 というのは、私自身、では仕事として何をやっているのかというと、そんなに目新しいことをやっているつもりないですよ。会計学と経済学と法律学と、その辺をごちゃまぜにして、これを企業再生という場に適用しているだけなんですね。
 個別のことを見たら、会計のこと、ああ、それは知っているという人多いですよ。経済学、ああ、それやっていますよ、法律学、よく知っていますよ、たくさんおられます。法律、会計、税務、経営、マーケティング、いろいろなものをごちゃまぜにして事業再生という一つの商品にパッケージにしたところがみそなだけですから、これはやろうと思えば、実は、既にそういう経験を、この部分はやったけれどもこれはまだやってないとか、その逆とか、そういう人いっぱいいるわけですね。私の部下たちもみんなそうですよ。そういう者が現場でいろいろなことをやりながら、さらにそのすそ野を広げていっているというのが実態ですから、私は、これはやれる人というのは実は相当程度潜在的に、本人が意識していないだけで、あると思っていますので、これを掘り起こすことが必要だと思います。
 それから、そうはいいながら、オーケストラの指揮者になる人は、ほぼその全容を知っていなきゃいけない、銀行交渉もできなきゃいけない、業者も使いこなせなきゃいけない、投資家との交渉もできなきゃいけないということで、これは非常に、実は本当にそこまで経験を持ってこの道十年、二十年やっている人というのは、かなり限られてくると思います。いないことはありませんが、かなりの重責だし、相当の能力が要求されると思います。
坂井参考人 結局のところ、人間というのは経済的なインセンティブで動くものだろうと思います。日本国内には有能な方がたくさんいらっしゃいますし、金融機関を出て、自分でもっと別の世界で生きてみたいという方もたくさんいらっしゃいますね。そういう方々は、そこに行けば仕事がある、そこに行けばダイナミックな仕事がある、そこに行けば経済的なリウォードもあるということになれば、必ず優秀な人は集まってくるだろうと思います。
 大事なことは、過去のしがらみのないそういった方々が企業の再建に従事するということが大事なんじゃないだろうかなというふうに思っております。
植田委員 ありがとうございました。
 今お二人の参考人のお話をお伺いしておりますと、確かに私も、今のお話でいけば、例えば外部の協力者は、潜在的にそうした協力をしていただくことができるような人材は恐らくいらっしゃるんだと思うんです。ただ、例えばRTCの場合でも、それでも実際のスタッフが八千人いて、外部協力者が八万人いたというわけでございますから、今回の再生機構の場合、事業再生を目指すわけですから、RTCとの比較でいけば、やはり業務の難易度というのは上回るんじゃないか。
 そういう中で、まさに先ほどのオーケストラでいえば、バイオリニストや、チェロやそういうようなものを弾く、コントラバスや弾く人はいるかもしれないけれども、指揮者としてのノウハウをきっちりと持っている方が、では果たして適切なだけいるかどうかという点は、やはり私は不安が残るわけです。
 そこで、やはり実際にアメリカの企業再生でも、プロ集団としては、少人数のプロ集団がスピーディーに再生をやっていくということに一つのポイントがあるんだろうと思いますけれども、やはりそこは、アメリカなんかと比較した場合の専門家集団というものの層というのが、では日本がそれに劣らず厚いかというと、そうでもなかろうと。
 ですから、この再生機構の運営を進めていくんであれば、同時に、ノウハウの蓄積とかかる人材の育成というものが常に随伴すると思っておるわけですけれども、その辺の、具体的にお考えになっているようなプランなり、思い描いておられることがあれば、田作、坂井両参考人から御意見を伺えればと思います。
    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
田作参考人 御指摘のとおり、アメリカのRTCには約八千人の人間がいて、その十倍の八万人がRTCでSアンドLの処理に関与したことは事実でございます。ただ、アメリカの場合は、SアンドLが持っていたのが全部と言っていいほど不動産担保の不良債権だったんで、これは不動産をたたき売るというのは比較的大人数かけて短期間でやりやすい仕事なので、それで人数が多かったという面がございます。ですから、不動産を担保権を実行したり、それを証券化したり、これはもう何十人かかってチームをつくって一気にやるということで、これだけ多かったわけです。
 これも御指摘のとおり、反面、我が国の今度の産業再生機構の方は、そういう単純な仕事ではなくて、地道に立て直していかなきゃいけないので、人数は少なくてもいいけれども、非常に質の高い、総合的な判断のできる、経験を持っている人じゃないといけないので、先ほども申しましたとおり、これは非常に層が薄いし、やれる人はかなり限られてくるというのが私の実感です。
 ですから、これも御指摘のとおり、こういう人を育成していかなきゃいけないわけで、先ほど申しましたように、実は潜在的にはそういう能力を持っている人、全面的にではありませんが、半分ほどは経験してもう半分未経験とか、こういう人が相当おられますので、やはりこういうものを育成していく事業再生の人材育成センターとでもいいましょうか、そういうものをつくって、いろいろ、金融機関の人もさることながら、事業法人の人もそういうことを勉強すべきだと思うんですね。銀行の言いなりにならないで、銀行からいろいろなことを言われても同じ言葉で切り返せるようなことをきちっと勉強する。
 それから、場合によっては、学生とかのうちからそういうことも勉強して、ひとつ事業を起こしてやろうとか、苦しそうな会社に乗り込んで立て直してみようとか、こういうマインドが盛り上がっていくような教育体制、こういうものもつくっていくことは早急に求められていると思います。
    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
坂井参考人 人材の問題につきましては、最近、私ども、田作委員ですとか私とかが関与しておりますこういう企業の再建を取り巻く専門家の間では、いろいろな動きが起こってきています。
 例えば、事業再生研究機構ですとか、あるいは人材育成センターですとか、あるいは、私ども弁護士の中では、そういった事業再生専門の全国の弁護士のネットワークですとか、そういった動きも起こっております。あるいは、事業再生の実務家協会といったものもでき上がってきておりまして、そういった中で、人材の育成といったものについての重要性についての認識は日に日に高まってきているという状況であります。
 そういった人材の必要性というものは、まさしく御指摘のとおりなんですが、ただ、アメリカでよく言われている、例えばターン・アラウンド・スペシャリスト、ターン・アラウンド・マネジャーといった方々、例えばアメリカで最近よく言われている有名なエンロンですとかワールドコム、必ずああいった企業の再建にはそういった方々が関与していますね。ああいった方々は昔からアメリカにはいたのかというと、決してそういうわけじゃないようでございまして、喧伝され始めましたのはこの十年ぐらいなんじゃないだろうかと思います。起こりはもう少し長いんだろうと思いますけれども、そういったところだと私は思います。
 そういった中で、なぜそういった産業、一つのインダストリーが急速に起こってきたのかというと、やはり必要性があるということと同時に、それに対する経済的な見返りがあったんだろう、そこに優秀な人材が集まってきたんだろうと思います。
 何が今大事かといいますと、そういった方々はそこに、日本でも養成することができる、すぐ育ってくる、あるいは優秀な人が集まってくる、そういった方々が実際に活躍する場を与えてあげることが大事なんだろうと思うんです。それが産業再生機構であり、あるいは債務者企業自身ですね。債務者企業自身がそういった人たちの助けをかりて、自分の社内にそういった方々を引き入れて再建のために一歩前に足を踏み出す、その決断をするということが大事なんじゃないだろうかというふうに思っています。
植田委員 ありがとうございます。
 今の点については、いずれまた、政府に対して法案審議で聞く機会もあろうと思いますけれども、改めてそこは、やはり人材の育成、そしてまたそれのスキルをどういうふうに整えていくかということは常に並行して考えなければならないなということだけ、二人からイメージは聞かせていただきましたので、次に進みます。
 やはり、今回の再生機構がどう機能するのかという杞憂はあるわけです。杞憂に終わればいいわけですけれども、実際に、今言った人材やノウハウというものが必ずしも十分でないということは、これはやはり実態としてあるでしょうし、そうなってしまえば判断基準がメーン行任せになってしまうんじゃないか。そしてまた、債権の売却に関する強制力がない等々、そうなってしまうと、結局、再生機構が不良債権の塩漬け機関になりかねぬのじゃないかという指摘はあろうかと思います。そうなってしまうと、これは再生を口実にして非効率産業が延命されてしまう、そういう危険も常につきまとっていることだろうと思います。
 そこで、やはり安易な企業救済にならないようには、やはり数値であらわせない部分、例えば個別企業ごとに、それぞれ千差万別だろうと思いますけれども、例えば再生が可能か否かというのをどういう形で線引きしていくのか、これは非常に難しいだろうと思いますし、また、企業の技術力やノウハウであるとか、地域社会、地域経済や取引先への影響、そうした数値でははかれない部分も含めて、再生企業の体力というものを総合的に判断するような一定の客観的な指針というものをやはり持っておかなければならないんじゃないだろうかというふうに思うわけなんですけれども、その点については、引き続き、田作、坂井両参考人はどんなお考えでございますでしょうか。
田作参考人 私は、いろいろな会社の立て直しの現場での経験からして、一つの客観的な基準をつくるのはなかなか難しいなということをいつも実感しております。確かに、あるルールがあって、これが開示されていて、これに当てはまればマル、これにだめならバツというのはわかりやすいんですけれども、これはやってみるとなかなかわからない面が多分にあります。つまり、やってみなきゃわからないという面が非常にあるんですよ。
 例えば、ある会社、私が入り込んだケースでは、こんな会社はとてもだめだとそのときに思いました。これはどう頑張ったってそんなにいい再生の絵はかけないし、清算して全部なげうって、その金で返せるだけ返して終わりかなと思いましたよ。しかし、やってみようということでやって、いろいろ市場に当たると、こういう会社なら買いたいという人が出てくるわけですね。よくこんな会社買うなと思うんですが、この人の目から見たら、自分らは既に、こういう設備を持ち、こういう人材を持ち、こういう生産能力を持っている中で、これがここにすぽっと入ったら一足す一が三ぐらいになる自信があるわけですね。これはこの人にしかわからないんですよ。皆があきらめムードだったのが、そこに入って、従業員もそこへ引き継いでもらってハッピーだったし、この会社も非常に立派にやっているわけです。
 これを、では事前の段階で何かの数値基準とかで当てはめたら、多分バツだったと思うんですね。ところがやってみたらうまくいった。それと同様に、逆のケースもあります。一見よさそうだけれども、そういうところと組んでやろうという人もいないままに、やはり最終的には余りうまくいかなかったケースもありますね。
 ですから、これは、要は、閻魔大王というのは機構ではなくて市場なんだということが言えると思うんですね、そういう意味で。機構でマル・バツをつけるんではなくて、機構は、そういう話が来たら、本当の閻魔大王である市場の方の声を聞いて、この人たちがこれはいいと思うのならマルだし、この人たちがなかなか難しいというのであれば、むしろ引き受けた後、出口がなくて塩漬けになってしまいかねないので、そういうものははなからやはり難しいということを入り口の段階できちっと言うべきだというふうに私は思っております。
坂井参考人 産業再生機構が実際に動き始めたときには、恐らく産業再生委員会というものが同時に設けられまして、そこにおいて今御指摘のような支援の基準というものは設定されるんだろうと思いますね。産業再生法に基づく基準と恐らくはパラレルな基準になってくるんだろうと思いますけれども、私も、せいぜいそんなところなのかなという気がいたします。余りにも細かい基準をつくってしまって、それによって、さあ、これを満たさない限りは支援はしないぞということになりますと、せっかくの制度がうまく機能しなくなってしまうんじゃないんだろうかという気がいたします。
 機構自体の塩漬け機関化、あるいは安易な買い取りによる延命機関化という危惧につきましては、私もまさしく御指摘のとおりだと思います。理論的にはそういったことは起こり得るんだろうと思います。したがって、そういったことにならないようにするためには、機構とすると常に市場というものを見据えて、つまり出口で本当に責任を持って、買い取ったこの金額でしかるべきリストラクチャリングを施せば出口で本当にロスが出ない形で送り出すことができるのかどうかといった目で、厳しく吟味していただく必要があるんだろう、こう思います。
植田委員 今のお二人のお話というのは大体想定できる話でございまして、実際、厳密な評価の基準を設けてしまうということが逆に縛ってしまうこともあろうかと思いますので、それは、恐らくは個々の事例に応じて専門家が判断をしていくということだろうというふうに思うわけですが、その場合、実際日本に田作さんみたいな方が一万人も二万人もおれば別だけれども、やはりそこは、人材やノウハウというところがどれだけ厚みを帯びているかというところにかかってきているんだということで、また冒頭の質問に戻ってしまうわけですけれども、そこはお話としてお伺いをしておきます。
 時間が迫っておりますので、次に、これは田作参考人にのみお伺いしたいわけですけれども、私は、個人的には、この産業再生機構の各法案を評価するに当たって、要するに、この機構が中小企業に対して何ができるかできないかということを本質的な問題として、それでもって今回のこの機構について評価しようというふうには考えておりません。むしろ、産業再生機構が主として対象としている案件についてどれだけ実効性を持ち得るかというふうなところから、やはりこれは評価していくべきだろうと思います。
 ただ、谷垣大臣が中小企業も除外しないというふうに述べられたことは事実です。ただし、現実問題は、実際には、田作参考人がエコノミストの中でも答えておられるように、「地場の非上場中小企業の再建はどこが担うべきなのでしょうか。」という問いに対して、「基本的には、融資をしている地元金融機関がすべきです。」「権利調整が必要であればRCCを使うべきでしょう。」ということで、「産業再生機構は主要行の大口先で手いっぱいで、中小までやる余裕はないでしょう。」そういうことをおっしゃっておられます。恐らくは、田作参考人がおっしゃられるようなところが実態なんだろうというふうに思うわけです。
 そこで、では、中小企業向けの支援というものをどういう枠組みでやっていくべきかという点についてお伺いしたいんですが、先日も、予算の分科会で経産省に質問させていただいたんですが、経産省の方で、中小企業再生支援協議会というものを各都道府県につくらせるということで、今動いているわけです。
 ただ、そこには地域の経済団体や金融機関まで含めて入っておるわけですけれども、実際中身を見てみると、いわゆる経営相談であるとか、公的融資、いわゆる融資のあっせんとか、そういうことにとどめ置かれてしまうのじゃないのかという疑問というか、必ずしもそれ以上の成果が上がるのだろうかという疑問があるわけですけれども、少なくともこうした中小企業を支援していくということは、まずはいわゆる貸し渋り、貸しはがしを解消し、地域社会全体で地域経済をどう活性化していくかというところでの企業、自治体、そしてまた地域における金融機関のそれぞれの役割というものがしっかり明示的に示されなければならないと思うんです。
 そこで、当然、RCCの中堅、中小機能を強化してそれを使うという手法もあるだろうと思うんですけれども、やはり中小企業を対象とした、そこに特化した企業再生の実効性のある制度設計、それをもうちょっと具体的に展開していく必要があるんじゃないかというふうに思うわけですが、その点、田作参考人にお伺いして、終わりたいと思います。
田作参考人 御指摘のとおり、私は、中小企業の再生のためには、もちろん、この協議会はさらなるいろいろな制度設計が必要だと思っております。私個人は、地域再生ファンドというものを設立すべきだということを提唱しております。
 つまり、地域の金融機関も、いろいろ地元の企業の支援のためにお金を貸している。ところが、長引く不況の中で、どう頑張っても、だんだんこれが不良債権化しつつあるのも事実ですね。だからといって、それを一気に処理しろと言われても困る。長い目で、さっき言いましたように、地域のパートナーとして共存共栄を図っていきたいというのが、貸し手の方も借り手の方もあるいは住民の人も、みんなそういう意識があるわけです。だったら、その実態をきちっと反映した枠組みをつくった方がいいんじゃないかというのが私の考えなわけです。
 つまり、預金者の金をもって、本当は、それで出資して株主になるというのはおかしいわけですね。預金者は、預金して、その貸出金融機関のリスクをとって金を預けているつもりだし、それを踏まえて、今度は個別の企業の出資までやるというのは本当はおかしいので、そこの矛盾を解消すべく、預金者の人も、地元の地域を再生させるために、多少リスクがあってでも金利も高いのならそういうのを一口やりたいということであれば、これを、一遍に一つやっちゃってだめになると大変ですから、分散して、全体の中で、トータルで一定のリターンが上がるような、こういう一種信託ファンドのようなものをつくって、そういうものを銀行が中心になって組んでいく。
 それは、銀行だけじゃなくて、自治体にも一口入れていただきたいし、地元の優良企業の人たちにも一口入れてもらいたい。地域のことは地域で本当にそういう活性化をして、地元自体がみんなパートナーとして共存共栄を図れるような仕組みをきちっとつくっていったらどうかというのが私の考えです。
 つまり、今いろいろファンドとかありますけれども、どうしても大企業の高いリターンを求めたファンドが多いわけですね。そういうところに、では、地域の中小企業を集めたこういうところの再生のためのファンドをつくってくれと言っても、なかなかやらない。だから、地元の金融機関が中心になってそういうことをやればどうかということを申し上げております。
植田委員 では、終わります。
村田委員長 金子善次郎君。
金子(善)委員 保守新党の金子善次郎でございます。参考人の先生には、どうも御苦労さまでございます。
 まず最初に、ただいまの御意見を拝聴している中で、基本的には産業再生機構は大企業中心、そして中小企業については、地域でそれぞれファンドをつくって新たな仕組みをつくっていくべきではないかというような田作参考人の御意見等もございました。
 ただ、私は、今日本の経済の状態というものを考えた場合に、果たして産業再生機構の役割というものはどの程度まで考えていかなければならないのか、これはやはり中小企業も含めた上で考えていかなければならないのではないか、そういう立場で御質問させていただきたいと思います。
 田作参考人と坂井参考人の御両人の方は、RCCの企業再生検討委員会の委員もなさっていらっしゃるというお話でございましたが、先ほどアメリカでの産業再生でのRCCと申しますか、八千人の職員と、約八万、一説には十数万人の膨大なスタッフがいたというようなことも言われているわけでございます。
 まず最初にちょっとお聞きしたいと思いますのは、実は、政府の方で、今不良債権の処理期間というのは二〇〇三年度と二〇〇四年度の両年にかけて終結宣言をしていきたいというような方向で、今政策を組み立てているというようなことになってはいるわけでございますけれども、これまでRCCあるいはその他の実際の事業活動を通じられまして、この不良債権の状況、どんなふうな見通しを持っておられるか。その点につきまして、田作参考人と坂井参考人の方から、まず御意見を拝聴したいと思います。
田作参考人 私の見るところでは、バブル型不良債権というのは相当程度片がついてきたと思います。恐らく、バブルの時期、八〇年代後半に銀行勘定で貸し増しがなされたのは、額面で百十兆円ぐらいだと思いますね。その百十兆円のうちの八割方の九十兆円は既に処理が終わっております。これは、必ずしもオフバランスにしたとまでは言いませんが、少なくとも引き当て等はやっている。
 ということで、今あるのはほとんどが不況型です。九〇年代に入ってからの不況型なので、これは、バブル型を処理しても処理しても、長引く不況の中でそれが積もってきている。古い雪が解けた分だけ新雪が積もってきているというのが現状で、相変わらずこの残高が一定。だから、国際的にも、何もやっていないじゃないかと批判をされている。ところが、相当実はやっておるわけですね、既に九十兆円も処理しているわけですから。
 だから、やはりこの流れをとめるためには、繰り返しになりますが、不良債権処理と並行してマクロベースでの景気対策を打つという前提であれば、二年で半減することは不可能ではないと思います。
坂井参考人 私も同意見でございまして、不況型の不良債権というものは、日に日にまた新しく再生産されていっているという状況であろうかと思います。それに対する政策的な提言というものを申し上げる能力は私にはございませんけれども、どうも、財政政策あるいは金融、いずれもなかなか難しい手詰まり状況にあるというふうな状況なんではないんだろうかというふうに思っております。
 そういう中で、やはり、目先の解決にはなりませんけれども、まさしく今議論されておりますような企業の再建、再生、こういった足元からの企業の再建というものが日本経済のこれからのリカバリーのためには重要なんではないんだろうかというふうに考えております。
金子(善)委員 私は、この不良債権の処理ということ以上に、日本経済の活性化のためには金融政策を変えなきゃならないという立場に立つ人間でございますけれども、今の日銀の金融政策、どんなふうに感じておられますか。日ごろ、中小企業なり大企業、いろいろな形で接しておられるわけでございますが、そして専門家の立場から、田作参考人の方にちょっとお聞きしたいと思います。
田作参考人 論点は恐らくインフレターゲット論等のことだろうと思うんですが、私自身は、全く個人的な見解ではございますが、インフレターゲット論というのはちょっと語弊があるかなという個人的見解を持っております。
 つまり、よく言われる批判は、インフレというターゲットを設定したって、それのために日銀ができることは限られている、あるいは、それをやっちゃうとハイパーインフレになるんじゃないか、あるいは、引き締めはできても、ひもと同じで引っ張れるけれども突き上げられないとか、いろいろな反論がありまして、これはそれぞれ筋が通った反論だろうと思います。
 そう申し上げた上で、私は、だから、このインフレターゲット論というよりは、デフレをとめるというコミットですよね、これをやはり強烈に出していかなきゃいけない。それは必ずしも日銀だけではできないかもしれませんけれども、やはり、人々の予想というか期待ですよね、これを変えなかったら変わりませんよ。やはり、まだ株は下がる、まだどうせ土地は下がると思ったらこれはだれもやらないのは当たり前だし、ひょっとすると今買っておいた方が得かなと思えば買いますので、それは、人生において一番大きい買い物は、普通の人は不動産なわけですから。そこのエクスペクテーションというんですかね、これは期待と言ってもいいし、予想と言ってもいいんですが、これを変えるためにきちっとコミットを示さないとだめですよね。
 小出しにしていても、ああ、どうせそのうちやめるだろうとか、効かないだろう、そういう期待の方が大きいですから、その期待を上回るような、これがひっくり返るぞという期待に変わるほどのコミットをずうっと強烈に、一つのパッケージにして出して、これをある程度続けなかったら、これは政策として効かないと私は思いますね。
金子(善)委員 ありがとうございました。
 そこで、お伺いしたいんですが、実際に企業の再生、RCCとのかかわりだけではなくて、いろいろなコンサルタント活動等も通じられて、いろいろ経験豊富な方々でいらっしゃるわけでございますけれども、私が地元と申しますか選挙区内でいろいろな方と接触する中で、日本の金融の貸付期間、今度政府の方でも、制度金融で、借換債というような形で、期間の延長等、実質的なそうした政策を打ち出しまして、非常に好評でございます。今恐らく金融庁の指導という形で、一般的には七年ないし十年というような形で、相当の設備投資資金であってもそういうような形になっているということで、例えばですけれども、耐用年数どんぴしゃというわけにはいかぬでしょうけれども、もう少しこれを長期化する、初めから。返済期間を長期化すれば、かなりの企業が資金繰りの面で助かっていくんではないかと。新たな制度融資とか何かということも、量をふやすことも大事ではございますけれども、その返済期間というものをもっと長くセットすべきではないかというような意見も聞かれるわけでございますが、そうしたようなことについては、それぞれ、コンサルタントをなさっている企業の方でいろいろ意見等も聞かれていらっしゃるかと思いますが、その点、どうでございましょうか。田作参考人と坂井参考人さんにお聞きしたいと思います。
田作参考人 今御指摘のとおり、個別の企業の需要を勘案しますと、七年から十年どころか、非常に長いお金が必要なケースというのは多々ございます。この場合は、これは、私先ほど申しました地域再生ファンド構想にも通ずるんですが、そういうことであれば、やはり、そういう非常に長いお金というのは、貸し出しというよりはほとんど自己資本なわけですよね、その会社にとって。ですから、やはりきちっと、そういう会社が自己資本としてそういうものを調達できるような構造をつくっていかなきゃいけない。
 どうも、貸し出しか株か、あれかこれかしかないというんじゃなくて、二十年物社債でもいいと思うんですよね。その社債は、何も公募債で上場する必要は全然なくて、紙切れ一枚で社債ということで、知った人を集めて買ってもらったっていいわけですね。私、そういうのをやったことありますよ。中小企業が、銀行が貸してくれないので、じゃ、この中小企業、こんなにいい会社ですよということで説明して回ったら、地元の人たち、ああ、これなら一口入れましょうということでお金が集まるわけですね。それはもちろん証券会社の人が介在してやるわけなんですが、そのときに出しているのは、形式的には社債なんですよね、これは。社債を出して、お金を出してもらっている。
 これは、ほとんど貸し出しと経済機能は同じだけれども、むしろ、本当にこの会社を支援しようという人たちが集まってそういうものをやっていく。こういうことをもっと広く薄めた形でみんなでやっていけば、預金よりは高い金利もとれるし、そうすると銀行は要らないということになってしまうんですが、銀行が貸さないということは、銀行は要らないということでしょうから、私は、そういうことでも全然構わないんじゃないかと思うわけです。
 ですから、貸し出し一本という体制自体が既に変わる状況に来ている。多少概念的に言えば、市場型間接金融とでも言うべき時代が来ているんだろうと私は思っています。
坂井参考人 確かに、どんな企業でも、金を貸してもらえばそこで一息つくわけですね。資金繰りが非常に助かるという面はあるわけですけれども、やはり大事なのは、事業計画、ビジネスプランなんだろうと思います。現在収益の上がっている企業なのかどうなのか、そうでないのであれば、もし現在収益力が落ちている、そのために今資金繰りが苦しくなっているというのであれば、問題なのは、どのような事業計画をこれからかくのかというところなんじゃないかと思います。それを全く捨象した上で、単にお金を貸す、公的な金融をつけてあげるということになりますと、それはもうモラルハザードと背中合わせの問題になってくるんじゃないんだろうかという気がいたします。
 御指摘のような中小企業の場合に、じゃ、自分でどんなふうな絵がかけるのかといいますと、確かに難しい面もあるかと思います。したがいまして、大事なことは、資金づけをするならする、それと背中合わせになったビジネスプランの再構築といったものを、どうやって親身になって相談に乗ってあげるような制度をつくるかということかなというふうな気がいたします。
金子(善)委員 ありがとうございます。
 両参考人さんとも、RCCの委員をなさっているということでございますけれども、先ほどのお話をお聞きする中でも、RCCの場合も、企業再生に向けた努力もかなりなさって、その成功例もあるというようなお話もございました。ただ、やはりRCCの場合は、一般的な評価といたしましては、整理、淘汰と申しますか、そうしたものがどんどん推進される機関になっているんではないかというような一般的な評価があるんではないかと私は思っております。
 そこで、今度の再生機構法案が提出されているわけでございますけれども、基本的に、企業を再生するという視点において、RCCの場合もそうした仕事でやってもらいたいというのが切なる願いでございます。先ほどのお話でございますと、産業再生機構は基本的には比較的規模の大きい企業を対象にすることになるであろうというような見通しを示されたわけでございますけれども、RCCと産業再生機構の本当の境目というか役割分担というか、この辺のぎりぎりのところはどういうふうに理解をすればいいのか、その点について、田作参考人と坂井参考人に御意見を拝聴したいと思います。
田作参考人 私は、産業再生機構というのは、本当にこれから五年ぐらいの間に、我が国に黒雲としてかぶっている不良債権問題に道筋をつけるための機構だと思っております。ですから、別にここへ行ったからといって救済ということはなくて、ここへ行っても、私の先ほどの言葉で言えば、出口が見つからないようなものであれば受けないでしょうし、行った後も、場合によったら法的整理を使ってでも片をつけなければいけないようなケースだって出てくることが想定されます。
 RCCは、必ずしも今後五年ということではなくて、これからもある程度長い目で、とりわけ中堅、中小にそういう支援の枠組みを提供していく、こういうことだろうと思うんですね。RCCが何となく回収のイメージが強いのは、やはり破綻懸念先以下を扱っていることと、引き受けた後も新規融資の機能がないから、ついそういうふうに思われちゃうので、これを政府系金融機関を使ったりファンドと提携したりして、そういう支援して運転資金も供与していけるような枠組みをつくり、さらに要管理先以下をも扱えるようにしていけば、相当程度これは中小企業の立て直しに資するものがあるのではないかというふうに思っております。
坂井参考人 産業再生機構につきましては、確かに時限性のある組織でありますので、かつ、今非常に注目を浴びている、大きな期待、輿望を担ってぼんと登場するわけですね。したがって、そこで、まとまった、重要性の高いといいますか注目度の高い案件を成功させていただいて、やはり弾みをつけていただきたいと思うんです。そこで世の中のムードを変えてもらいたいと思うんですね。そこで、そうか、ああいうふうなルールでやるのかというルールを、日本の企業の再建、事業の再建の中に根づかせていただけたらいいなというふうに思っています。
 RCCはといいますと、RCCは、既存の中小企業に対する債権が山ほどございます。この中から、本当は再建に適している案件というのは山ほどあるんだろうと思いますので、そういったものについて、こつこつやっていっていただくということに意味があるんじゃないだろうかと思います。
 本来的には、当然ながら、回収のためにできました組織ですけれども、現在のこの経済情勢の中において、RCCが産業再生機構と並んで企業の再生のためにも尽力をするということは大いに奨励されるべきであろうと思いますけれども、そんなふうな色分けをすればできるのかなというふうに思っております。
金子(善)委員 時間が参りましたので、本当にありがとうございました。
村田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十五分散会


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