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第5号 平成15年3月12日(水曜日)

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平成十五年三月十二日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君
   理事 井上 義久君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      小池百合子君    河野 太郎君
      佐藤 剛男君    桜田 義孝君
      西川 公也君    林  義郎君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松島みどり君    山本 明彦君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      小沢 鋭仁君    奥田  建君
      金田 誠一君    川端 達夫君
      後藤  斎君    鈴木 康友君
      中津川博郷君    牧  義夫君
      松野 頼久君    山田 敏雅君
      河上 覃雄君    福島  豊君
      工藤堅太郎君    赤嶺 政賢君
      大幡 基夫君    塩川 鉄也君
      大島 令子君    金子善次郎君
      山谷えり子君    宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国務大臣
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   坂  篤郎君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室長)    江崎 芳雄君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室次長)   梅村 美明君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室次長)   小手川大助君
   政府参考人
   (財務省大臣官房参事官) 日野 康臣君
   政府参考人
   (財務省理財局長)    寺澤 辰麿君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    渡辺 博史君
   政府参考人
   (経済産業省経済産業政策
   局長)          林  良造君
   政府参考人
   (中小企業庁長官)    杉山 秀二君
   政府参考人
   (中小企業庁次長)    青木 宏道君
   参考人
   (日本銀行企画室審議役) 山口 廣秀君
   参考人
   (日本銀行企画室参事役) 和田 哲郎君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十二日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  後藤  斎君     牧  義夫君
  大幡 基夫君     赤嶺 政賢君
  金子善次郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  牧  義夫君     後藤  斎君
  赤嶺 政賢君     大幡 基夫君
  山谷えり子君     金子善次郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 株式会社産業再生機構法案(内閣提出第三号)
 株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四号)
 産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、株式会社産業再生機構法案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、参考人として日本銀行企画室審議役山口広秀君及び日本銀行企画室参事役和田哲郎君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として経済産業省経済産業政策局長林良造君、中小企業庁長官杉山秀二君、中小企業庁次長青木宏道君、内閣府産業再生機構(仮称)設立準備室長江崎芳雄君、内閣府産業再生機構(仮称)設立準備室次長梅村美明君、内閣府産業再生機構(仮称)設立準備室次長小手川大助君、内閣府政策統括官坂篤郎君、財務省大臣官房参事官日野康臣君、財務省理財局長寺澤辰麿君及び財務省国際局長渡辺博史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪上善秀君。
阪上委員 限られた時間ですので、もう厚化粧も薄化粧もなしで、単刀直入に質問をいたしてまいりたいと思います。
 まず、市場の原理の尊重と産業再生機構の役割についてお伺いをいたしてまいりたいと思います。
 私は、企業自身の再生への努力を前提としなければならぬと思っておりますし、機構はあくまで、企業の自主的な再生努力を債権買い取り等により側面的な支援をするものであって、機構が企業の生死を決めるというようなことは、日本は社会主義国家ではないわけですから、市場ルールに過剰に介入すべきではないと考えます。
 企業や産業再生において果たすべき役割について、政府の役割をお伺いいたしたいと思います。
谷垣国務大臣 企業あるいは産業の再生につきましては、金融機関の不良債権処理の加速化とあわせて、日本全体、政府全体で早急かつ強力に推進することが必要だという基本的な前提がまずございます。
 企業再生につきましては、今委員もおっしゃいましたように、基本的には民間主体で進んでいくことが望ましい、それはもう間違いないことだと思います。しかしながら、現実には、メーンバンクや非メーンバンクの金融機関がたくさんあって調整が難しい場合とか、あるいは事業再生に関する我が国のマーケットが必ずしも十分に育っていないとか、あるいは異なる金融機関、銀行グループにまたがるような再生は民間だけではなかなか難しい、こういった事情があるかと思います。こうした理由から、期間を限って政府が関与しまして、事業再生を促進する組織をつくって、事業あるいは産業の再生を強力に推し進めていこうというのが、今度のこの機構の趣旨でございます。
 いずれにせよ、委員のおっしゃったとおり、本来は民間主体で進むことが望ましい分野でございますから、機構の活動に当たりましては、企業再生マーケットの育成なども視野に置いて、民間の知恵あるいは活力、こういうものを十分に活用していくということで臨みたいと思っております。
阪上委員 次に、機構の企業に対する再生支援の決定のあり方についてお伺いをいたしたいと思います。
 機能発揮のために審査のハードルを高くし過ぎますと、必要に応じて弾力的な、実態に即した判断を行うことが必要ではないかと私は考えております。弾力的運用が過ぎますと、淘汰されるべき企業が延命になったり、あるいはまた、機構の再生支援の決定に当たっては、中立的で透明性のある運用が確保されるよう十分に配慮が必要ではないか。公正中立な判断と弾力的な運用をどのように両立させていかれるのか、政府の具体的な対応方針をお伺いいたしたいと思います。
 また、機構の支援決定、債権の買い取り決定や売却に当たっては、法律上、主務大臣及び所管大臣が意見を述べることができるとされておりますけれども、機構の中立性に対する不信を招くことのないよう十分な配慮が求められるべきであると思いますが、この点について、政府の考えをお聞かせ願いたいと思います。
谷垣国務大臣 弾力性と中立性、透明性といいますか公平性をどう確保していくかということでございます。
 弾力性に関しましては、この機構の仕組みが、いろいろな基準を使いながらも、最終的には、その企業がいわば新しい付加価値をつくっていくことができるか、そういう戦略性を採用できるかどうかというようなことを判断しなければなりませんので、ここはある意味での弾力性が必要であります。それができるように機構もつくっております。
 しかし一方、では、中立性、透明性がなきゃ、それは恣意にわたるではないかという御批判でございますが、当事者だけでは調整が困難、あるいは時間がかかる、こういう場合がございますし、多数の利害関係者の調整を担う役割が期待されておりますので、今おっしゃったような中立性、透明性の確保は大変大事だと思います。
 そのために、支援決定が恣意的に行われることのないように、その支援基準をあらかじめ主務大臣が定めるということにしておりますし、その内容も公表するということにしております。この基準に従って、専門家、有識者から成る産業再生委員会が判断を行うこととしておりますので、中立性というのは十分担保できるものではないかというふうに考えております。
 また、透明性を確保するためには、機構の支援決定、あるいは買い取り決定、それから処分の決定、こういうものを行った際には、その決定の概要については公表するということを予定しております。ただ、公表によりまして、個別企業の権利とか、あるいは競争上の地位とか、そういう正当な利益を害することがあっては、これはもううまくまいりませんので、その具体的な公表の仕方をどういうふうにしていくか、これについては、今後十分検討して詰めていきたいと思っております。
阪上委員 次に、今回の産業再生が、約十兆円の予算で、手を挙げる企業が二、三十社ではないかと言われておるんですが、十兆の金を二、三十社が使う。これは我々、地元の方から聞きますと、富士山の雪の積もった大企業ばかりを優先して、それを支える一合目のふもとに余りにも関心が向いていないのではないか、大企業に十兆円使うんでしたら、中小企業に五十兆ぐらい積んだらどうかということをよく地元で聞くんですが、偉い人ばかりを相手にした選挙はよく落ちるんですね。それと一緒で、やはり庶民、大衆を味方にする対策というものをやっていかないと、これは大変な結果を招くのではないかと私は思うんですよ。お互いに、きょうは人の身、あすは我が身ですからね。
 そこで、お伺いしたいんですが、公的資金の注入を受けた大金融機関が中小企業向けの貸し出しを大きく減少しておる、この実態について、中小企業担当大臣としてはどのように考えておられるのか。私は、本当にざるに水を入れてきたことではないかと思っておるんですが、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 確かに今、中小企業に対する貸し出しというのが減少をしていることは、そのとおりでございます。
 その背景は、こういう長引く景気低迷の中で、設備投資というものが非常に落ちているということも一つの要因だと思いますけれども、それ以上に大きな要因というものが、金融機関が抱えている不良債権、これが膨大なために、結局、金融機関としては、厳しい環境に直面しているために、特に中小企業に対して、貸し出しの抑制でございますとかあるいは債権回収の強化、こういうことをやっております。
 具体的には、例えば、平成十三年末それから十四年末を比べてみますと、中小企業に対しては十七・九兆円も貸し出し減、こういう形でございまして、これは私、中小企業を預かる担当大臣としては、非常にこの数字はおかしい、こういうふうに実は思っております。
 そういう中で、国といたしましては、やはり政府系金融機関がこういう中で対応させていただかなければいかぬ、こういう観点から、補正予算等を通じて財源を確保して、セーフティーネット保証の充実でございますとか、さらには、この二月の十日から実施をしておりますけれども、借りかえ制度、こういうものを行いまして、そして、少しでも中小企業の皆様方の負担が少なくなるように、私どもとしては、すそ野を受け持っていただいている、大切な役割を担っていただいている中小企業の方々のために最大限努力をしているところでございます。また、補正予算におきましても、四千五百億の財源で、そして十兆円のセーフティーネット保証、貸し付け、こういったことを手当てさせていただいて、今御指摘の点、そういうことは事実でございますので、一生懸命やらせていただいているところでございます。
阪上委員 次に、都道府県の信用保証協会への財政支援の必要性についてお伺いしたいと思うんです。
 平成十年十月から十三年三月までの期限つきで臨時特例措置として創設されました特別保証制度、約二十八兆九千億円と、保証枠の三十兆円ほぼ使い切って、中小企業は大変に大きく利用されたと聞いております。
 しかし、こういう制度にもかかわらず、大変な企業の倒産がございました。その結果、特別保証利用の後の倒産によって保証協会が代位弁済したのが一兆五千億円、そして一般の保証を含めた全体の代位弁済が五兆三千億円。中小企業総合事業団がその七、八割を保険として補てんいたしておりますけれども、各都道府県の保証協会は大変なリスクを負ったと聞いております。
 そのようなリスクを受けた保証協会は、今度は保証渋りをしておるんですね。ですから、国からは積極的な保証を督励され、また一方では、代位弁済を伴うリスクの責任をとらされるという板挟みになっておる都道府県の保証協会というのをもっとしっかりと応援しなければ、この保証渋りというものは解消されないと私は思うんですね。
 今の政府の態度は、大銀行を中心とした金融対策をやっております。大銀行というのは、元気な人に酸素マスクをして弱ったら外すというのが大銀行の今までとってきた手法ではないかと私は思うんですけれども、今こそ、そういう病気になった患者に酸素マスクをつけるべく温かい手当てが必要だと私は思うんですね。
 ですから、保証協会に潤沢なお金をプールして、そして、その保証協会の保証つきのお金を町の第二地銀とか信用金庫とか信用組合を通じて貸し与えていく、そうしましたら、末端まで、中小企業の毛細血管まで金が流れていくんではないかなと私は思っております。
 これも富士山と一緒で、雪の積もったところばかり行って一合目のふもとには流れておらないというのが実態ではないかと思うんですが、このことについて、中小企業の資金繰り、あるいはまた保証協会に対する積極的な支援について、政府はどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
平沼国務大臣 御指摘の中小企業に関する客観情勢というのは、非常に厳しいものがございます。
 御指摘のように、特別保証制度というのをやらせていただきまして、百七十二万社の中小企業の方々に利用していただいて、保証も二十八兆九千億、こういうことです。こういう厳しい中で、中小企業の皆様方は一生懸命返済をしてくだすっていることは事実でございまして、返済も十九兆円という形で、本当によくやっていただいているわけです。
 ただ一方、御指摘のように代位弁済率も、この大変厳しい経済情勢ですから、五%を超えるというようなことで、これが都道府県の信用保証協会、この財政を非常に厳しくしていることは事実でございます。
 例えば、私どもとしては、数字を申し上げますと、本年度は昨年度に続いて約六千億程度の赤字が見込まれるわけでございます。今の状況が続いていきますと、今後三年間でさらに九千億足りなくなる、これは赤字が出る、こういうことでございまして、私どもは、とりあえず応急の措置としまして、これは、平成十四年度補正予算におきまして二千億の財政措置を行いました。これによりまして、当面は何とか切り抜けることができるわけでございます。
 資金不足見込み額の大宗は国が負担をする、こういう形にしております。いろいろ御批判があるところなんですけれども、実は、中小企業の方々にもこういう厳しい状況の中で最低限の負担をお願いする必要もある、こういう認識のもとで、本年四月から保証料率を、今一%なんでございますが、〇・三%程度引き上げさせていただく。もちろん、国からは積極的に財政支援もしますけれども、この〇・三%程度引き上げるということは、今大体、中小企業の方は平均千四百万、こういう形で保証を受けておられますけれども、これは年に直しますと約二万円弱ですから、月二千円を切るぐらいの負担になるわけで、大変申しわけないですけれども、そういった形で、私どもは、両面でこの厳しい財政状況を何とか乗り切っていこうと思っておりますし、先ほどもちょっと触れましたけれども、平成十四年度の補正予算におきましても、セーフティーネット保証の充実のために私どもは四百五十億の予算を計上させていただきまして、さらに万全を期していきたい、こう思っております。
 私どもは、このことは御指摘のとおり非常に大切ですから、国としてもしっかりとやっていかなければいかぬ、このように思っています。
阪上委員 次に、機構の二次損失の最小化と不良債権処理の加速化の両立についてお伺いしたいと思うんです。
 この法案では、仮に機構の解散に当たって損失が発生した場合、政府はその全額または一部を補てんすることができることとし、国民負担による機構の損失補てんを想定いたしております。機構としては、そのような事態にならないよう最大限の努力をすることは当然ではございますが、二次損失を最小限に控えるために債権の買い取り価格を抑えるべきだという声がある一方、不良債権処理を加速させるためにはある程度の高値で買い取らなければ効果が上がらないという見方もあったり、機構がその点について活動のあり方をどのように考えておられるのか。また、二次損失を最小限に控え、そして機構が不良債権の塩漬け機関とならないようにするためには具体的にどのような対応策を講じるつもりなのか、政府の考えをお聞きしたいと思います。
根本副大臣 阪上委員から大変重要な問題点、具体的なテーマの御質問がありました。
 一つは、機構が高値で買い取るんではないか、こういう御懸念が一つあるわけでありますが、再生機構の債権買い取り価格、これはあくまでも「適正な時価」、こうしております。これは、具体的には、当該債権を機構が最終的に売却等の処分を行う際の価格、つまり、機構は一たん買い取るわけですが、三年後にこれを売却等の処分をする、そのときの出口を踏まえた上で設定する、こうしております。
 それから、では、具体的には二次ロスを含めてどういう形で考えていくのかということでありますが、具体的には、市場関係者の現在の評価手法と同じような評価手法でやりたい、こう考えております。再生計画においてどの程度の事業収益が見込めるか、この事業の収益の見込みを前提にいたしまして、事業価値あるいは債権の回収可能性などを考慮して算定することとしております。こういう前提に立っておりますので、基本的には二次損失の生じるリスクを最小限に抑えることが可能である、こう考えております。
 また、塩漬け機関になるのではないかという御指摘がありました。
 一つは、債権の買い取り価格、これは、今申し上げましたように、あくまでも出口で売れることを大前提にしておりまして、高値で買い取ることはありませんし、さらに、買い取った債権につきましては、事業の再生が計画どおりに進んだ場合あるいはそうでない場合であっても、原則三年以内に売却あるいは何らかの形で最終処分を行う、こうしておりますので、不良債権の塩漬けあるいは企業の安易な延命、こういった懸念はないものと考えておりまして、不良債権処理の加速と、きちんとした適正な価格で買って三年後には出口で売却する、この辺の両立を十分踏まえて対応していきたい、こう思っております。
阪上委員 この間、ミスター円と言われた榊原さんとある会合でお会いしたんですが、そのときおっしゃっておるのは、もう役人の小手先だけの政策ではだめだ、ですから、国の貨幣発行特権を利用して、江戸時代の徳政令のような形をして、大胆な政策をやっていくべきではないか、江戸時代はこれを何回も乱発したので混乱したけれども、一回限りという条件でいかがなものかということをおっしゃっておりました。
 具体的に言いますと、政府貨幣発行特権を利用して、政府が日銀に売却して、そして日銀から小切手なり電子で入金をさせて、例えば四百兆としたら四百兆で国債を減らして、そして総事業の抑制効果を図っていくという形でございます。これを一遍、財務省の方は、これは国債と違って元金を返さぬでもよいし、金利もつかぬし、チャラという制度ですから、今の役人の目先だけの形じゃなしに、また日銀を通過するだけでいいんですから、これは効果があって、借金は減らせるし、そして公共事業の発注もできるし。
 我々の阪神大震災でも、これは経営の失敗でなしに天災で、県も市も約三兆円ほどの赤字を抱えておるんですよ。こういうのを、うまく徳政令を利用しますと、地方自治体の借金もチャラにできる。大企業だけ救えて、何で公共の自治体が救われへんねんという声もよく聞くんですね。ですから、これもすっきりして、住宅ローンまで広げていったら国民もすっきりしますよ。これぐらいの大胆な政策はいかがかとあなたの先輩の榊原さんはおっしゃっておるんですが、後輩の意見はいかがですか。
寺澤政府参考人 お答えを申し上げます。
 現在の我が国の通貨制度のもとで、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律がございまして、通貨とは、貨幣と日本銀行が発行する銀行券、この二つをいうということになっています。この貨幣はいわゆる鋳造貨幣でございまして、政府が発行する、現在使っておりますコインをいっているわけでございます。
 先生が今御指摘の、政府の貨幣発行権とおっしゃることの意味は、この通貨の中の貨幣ではなくて、もっと広い意味で、政府紙幣も含めた意味での貨幣発行権ということをおっしゃっていると今理解しておりますけれども、これにつきましては、長い歴史の中で、諸外国におきましても、もともとは政府が紙幣等を出しておりましたけれども、中央銀行が紙幣を出すということによりまして通貨価値の安定を図るという制度を、諸外国、先進国では全部とっております。
 そういった流れの中で、我が国におきましても、明治十五年に日本銀行ができまして、十八年から日本銀行券が発行されているわけでございまして、それを今また時計の針を戻しまして政府が紙幣を発行するということを行うことについては、いろいろ問題があるのではないかなというふうに考えております。
阪上委員 このような発想ですから、日本の資産、十年余りで約四千兆円も目減らしさせたと思っております。
 あと三十秒ほど時間が残っておりますが、質問を終わります。
村田委員長 福島豊君。
福島委員 御苦労さまでございます。
 ただいまも阪上委員から徳政令という話がありましたけれども、そういう話が出るほど、やはり、どうするんだと、閉塞感が国全体を覆っているのではないかというふうに思います。
 九二年から二〇〇一年までの間に、不良債権については八十二兆円処理された。バブルのときの貸出債権が約百十兆円ですから、八割は済んでいるという指摘もあるわけでございます。しかしながら、いまだに、不良債権が日本の経済の再生というものを妨げる大きなおもしとなっているということが言われ続けているわけでございます。そしてまた、この数年間の推移でも、主要行の不良債権の残高、昨日資料をいただきましたが、十二年の九月十二・七兆円、十四年の九月でも十二・三兆円、全く変わっていない。
 今回の再生機構は、不良債権の処理というものを円滑に進めるということが目的で出されるわけでございますけれども、この十年間、不良債権は処理をしてきたけれども、日本の経済にとって不良債権の問題というものはいまだに解決していない、そして処理をしても処理をしてもふえ続けている、これは端的に言うとなぜなのか。そしてまた、そのことが日本経済にとってどういうマイナスの影響を与えているのか。きょうは金融庁の伊藤副大臣がお越しでございますので、端的にお教えいただきたいと思います。
伊藤副大臣 福島先生から大変本質的な御質問をいただいたわけでありますが、経済構造改革の中で不良債権問題というのは、ある意味では最大の関門であり、最も難しい問題だというふうに思っております。この不良債権問題を処理していくということは、ある意味では金融機関の収益力を改善する、そして貸出企業の経営資源の有効活用、有効利用を通して新たな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながるもので、他の分野における構造改革とともに実施することによって、我が国経済の再生に必要なものだというふうに認識をいたしております。
 こうした中で、昨年の秋に金融再生プログラムというものを取りまとめさせていただいたわけでありますが、このときに私どもが特に認識をしましたのは、金融と産業と一体的な再生というものを強力に進めていく必要がある、そのための戦略的な総合的な政策というものをしっかりやっていかなければいけないというふうに考えたわけであります。
 この再生プログラムの中では、三つの新しい枠組みというものを提示させていただきました。その一つの中に、産業再生についての新しい枠組みというものも提示をさせていただき、そして政府としては、経済産業省が産業再生法の抜本的改正ということで今御審議をお願いしているわけでありますし、また産業再生機構というものを設立させていただきたいということであわせて御審議をさせていただいているわけでございまして、こうした一体的な取り組みを通じて、この難しい問題を解決していきたいというふうに考えております。
福島委員 余り釈然としませんが、昨日も株価、七千九百円を割り込みました。本日の読売新聞では緊急提言というようなことが書いてありましたけれども、デフレ対策、本気でやるぞということを政府は示す必要があると私は思っております。そういう答弁を期待しておりましたが、次に行きます。
 先ほど谷垣大臣から御説明がございましたけれども、本来は、過剰債務企業の再生というのは民間が民間の手でやるべきことでございますし、アメリカでは、こうした企業再生ということについて、人材の層も厚いし、そしてまた、逆の意味でそこにビジネスチャンスを見出す、もうけるチャンスなんだという考え方も私は定着していると思うんですが、日本の場合には、こうした形で政府が関与して進めるんだということが今回法案として出てきているわけでございます。
 その政府が関与するということの是非というのは、先ほども御答弁がありましたけれども、いろいろとあるんだと思います。あえてそこで政府が関与するということのメリットをどこに見出しているのか、端的に御説明いただきたいと思います。
谷垣国務大臣 先ほど阪上委員にも御答弁したところなんですが、確かに、民間主導でやるべきだというのは、私もそうだと思います。しかし、民間主導で私的整理をどう進めていくかというようなことで、私的整理ガイドラインというようなものも民間主導でおつくりをいただいて、いろいろ試みていただいているわけですが、何か弾みがどんとついていくというふうにいかないわけですね。
 それで、それはどこに原因があるかということを考えますと、一つは、先ほど申し上げましたように、関係当事者が多数にわたって、そこに疑心暗鬼があったりして、なかなか話がまとまらないというような事例も相当あるように思います。
 それから、これも先ほど申し上げたことですが、特に過剰供給みたいになっておりますところは、メーンバンクが違っていたりなんかするようなものを合併させたりすることも必要かもしれない。しかし、それを決断していくということになかなか民間同士では話が進まないということもどうもあるようでございます。
 それからもう一つ、今御指摘の点ですが、アメリカでは、かなりこういう再生マーケットと申しますか、不良債権処理のマーケットもできている。そういうものを証券化させていくような手法も進んでいるし、人材もたくさんいる。そういうものがもう一つ日本で育っていないということがあるように思います。
 それで、そういうものに弾みをつけていくには、これはまさにここが判断の分かれるところだと思いますが、中立的な、ある意味では利害当事者でない者が出てきて、中立、中立という言葉がいいかどうかも問題があるんですけれども、中立的な立場から背中を押してやるということが物事が進んでいくきっかけになるんじゃないか、そういうことがこの産業再生機構をつくるメリットではないかと思います。
 しかしながら、これを運用していくに当たっては、今申しましたような再生マーケットとか、そういう人材の育成とか、そういうことを視野に置いて、本来民間がやるべきところを官が独占して、結局官業が民業を圧迫するというようなことのないように、そういうマーケットの育成にうまくつなげていくような工夫を行っていくということが必要ではないか、こう思っております。
福島委員 日本は、そういう意味では人材の層も薄い。オン・ザ・ジョブ・トレーニングという言葉もありますけれども、ここで一生懸命取り組んでいく中でしか、多分そういうマーケットもできてこないんだろうと思います。
 次に、これもよく言われることでございますが、既存のRCCとの役割分担というのは一体どうするんだ。それぞれ見ますと、やはり重なる書き方をしているわけでございまして、これからやっていくに当たって、そこのところは明確にしておく必要があると思いますので、御答弁をいただきたいと思います。
根本副大臣 委員から、今、RCCと今回の再生機構の役割分担をどうするのか、そういうお尋ねでありますが、RCCとの関係につきましては、まずRCCの基本的性格は何か、これは、最初、設立目的からして、債権の回収を目的として、要は不良債権処理の受け皿になろう、こういうことでRCCは設立されましたので、RCCは、原則として、まず破綻懸念先以下の債権を買い取ってその回収を行う、これが業務の中心であります。
 そうした中で、買い取って、当該債権に係る債務者が再生の可能性がある、こういうことが判明した場合には、実は再生機能も付与していますから、再生しよう、こういうことになるわけですが、RCCはいわば債権買い取り先行型の組織ということが言えるんだろうと思います。
 それから、これに対しまして産業再生機構、これは目的が事業の再生ということで、要は事業の再生を通じて産業再生を図るんだ、こういう目的にしておりますので、そもそも、再生可能であると判断された場合に限って、債権者である金融機関等の利害調整を行って、非メーンの金融機関などから債権を買い取って集約して、必要に応じて債務者に対して貸し付けも行う。RCCは貸付機能はありませんが、再生機構は貸付機能を持っておりますので、必要に応じて債務者に対する貸し付けを行うことを通じて事業の再生を促進する。これはいわば再生可能性先行型の組織。基本的には、RCCは債権買い取り先行型の組織、再生機構の方は再生可能性先行型の組織であって、RCCとはこの点が基本的に性格を異にしている、こう思っております。
 ただ、いずれにしても、産業再生機構がその業務を実施するに当たりましては、RCCとの協力体制の充実は十分図って効率的な運営をしてまいりたい、こう考えております。
福島委員 大変わかりやすく御説明いただきまして、ありがとうございます。
 次に、産業再生委員会の支援の決定の問題です。
 先ほど阪上委員からも、透明性、中立性の確保が大事だという話がありました。もちろん、企業のさまざまな情報を入手するわけでございますから、機密の保持ということも大切でございますけれども、適切な時点で情報の開示はなされるべきである。決定について速やかに公表するということになっているわけでございますが、その決定のプロセスそのものについても、私は、事後的に、あくまでこれは事後的にですけれども、検証できるような体制というものを考えておくべきじゃないか。そのことによって、そのときにこの委員会の委員の方が最善の判断をしたということが検証できるような、そういうことも想定しておくべきではないか。恣意性をどこまでも排除するという意味から、私はそういうことが必要ではないかと思っておりますが、御見解をお聞きしたいと思います。
谷垣国務大臣 適切性、公正性それから透明性、そういうものをどう組み合わせていくかということだと思いますが、この機構の仕組みとしては、三年ぐらいの再生計画終了時点できちっと自立していけるかどうか、まずこの判断を適切に行うことが大事だと思うんですね。それで、そのために用意しましたのは、有識者といいますか、この分野の経験者を集めて、もちろんその前のいろいろな下調べというか下ごしらえのプロセスも重要でございますが、最後は有識者を集めた産業再生委員会できちっと適切に判断していただくということがまず第一だろうと思います。そのための委員会でございます。
 それから、その判断を行うについて、支援決定を行うについては、主務大臣あるいは事業所管大臣の意見を聞いて、過剰な供給を温存するようなことがないかというようなことについて意見を述べていただく、あるいは買い取り決定や処分決定に当たってもその主務大臣の意見を聞く、おおむねこういう方式で公正さを担保することにしているわけですが、それが適切に行われているかどうかというのは、まさに透明性にかかってくると思います。
 それで、いろいろな決定をしましたときに、その概要については速やかに公表することにいたしておりますが、細部のどこまで公表できるかにつきましては、それぞれの事業のノウハウとかそういうものをどう担保していくかということがございますので、これからそこのところは詰めて、今委員のおっしゃった、後から手続の公正性を担保できるような仕組みとその企業の秘密との調和をどこに求めるか、これは詰めていかなきゃならないと思っております。
福島委員 よろしくお願いいたします。
 また、今大臣御説明ありましたように、決定に際して、所管大臣が事業分野における過剰供給構造の実態を考慮して意見を述べるというふうにされておりますけれども、これも「過剰供給構造」という非常に漠然とした言葉で書かれておりますが、それぞれの大臣は、自分の所管事業分野が過剰供給なのか過剰供給でないのか、どうなっているのかということについて、今まで見解を私はつまびらかに聞いたこともないわけでございますが、こういうことを明確にしておくべきじゃないか、そういう思いもございます。そしてまた、この点については、谷垣大臣そしてまた平沼大臣、両大臣の御見解をお聞かせいただければと思います。
平沼国務大臣 御指摘のように、所管大臣、私は主務大臣であり所管大臣であるわけです。所管大臣というのは、やはり過剰供給構造あるいはその他の当該事業分野の実態を考慮しまして、御承知のように機構に対して意見を述べることができる。そこについては、もう少ししっかりと、きちっとわかりやすい、だれが見てもわかりやすい、そういうことであるべきだ、こういう御意見、そのとおりだと思っております。
 今回、私どもの方の産業再生法の改正におきましては、過剰供給構造にある分野というのは、一つは、供給能力が需要に照らして著しく過剰でありまして、かつ、その状態が長期にわたって継続をする、そういう状態を定義づけているわけでございます。詳細な基準というのは、これはやはり必要でございますから、その詳細な基準としては、産業再生法に基づきます基本指針の中で明らかにしているところでございます。
 具体的に申し上げますと、一つは需給ギャップを示す稼働率あるいは利益率や、もう一つ機械装置資産回転率の低下傾向、それからまた価格と利益率の低下傾向等、そういったところから客観的ないわゆる基準を定めていこう、こういうことで、非常に客観的でわかりやすい、こういう形をしっかり出さなければいかぬと思っています。
 加えて、今回の産業再生法改正案におきましては、過剰供給構造にある分野であって、当該事業分野の特性に応じた産業の活力の再生を図ることが適当である、こういうふうに認められる分野については、やはりもう一段わかりやすくするために、事業分野別指針を定める、こういうことができることに相なっておりますので、私どもとしましては、機構の決定に際して、事業所管大臣は、こうした産業再生法に基づく、今申し上げた基本指針でございますとか事業分野別指針にのっとって、過剰供給構造の実態をしっかりと認識して、必要に応じてその実態に基づいて意見を述べる、こういうことでやっていくべきだ、このように思っております。
谷垣国務大臣 今平沼大臣からお話がありましたようないろいろな指針がもう用意されておりますので、そういうものにのっとって、主務大臣ないしは事業所管大臣の意見を述べていただくときに、それが不明確な意見になる、あるいは不適切な意見になるということはないのではないかというふうに思っております。
 我々機構としてさらに大事なことは、そういう今産業再生法に用意されているいろいろな指針と同時に、やはり最後、再生のときにスポンサーなり自力でリファイナンスができるかどうか、ここを見きわめていくことが、結局、そこでそういうものがきちっとあらわれるということであるならばいろいろな問題が解消するわけですから、先ほどのような意見とあわせて、そこの判断をしっかりしていくということが大事だと思っておりまして、そこのところは、どういう方にきちっとそこを判断していただくか、ここが実は大変難しいところでありますけれども、やはり人を得てきちっとやっていくということが一番大事なのではないか、こう思っております。
福島委員 るる御説明いただきましたが、製造業とかですと稼働率とかよくわかるんですが、事業分野によって相当にこれは違いがあるんだろうという気もします。そしてまた、需給ギャップというお話もありましたが、これ自体も景気によってまた変わってくるわけですね。ですから、そういうことをどう判断するのかな、適切な判断をしていただきたいと思います。
 時間もありませんので、最後に一問お聞きしたいんですが、再生計画、これをつくっていただく。ただ、この再生計画がうまくいくのかということは常に問題になるわけです。とりわけ、昨日のように株価も七千九百円を割り込む、こういう状況が続けば、変わると私は思っておりますけれども、幾ら再生計画をつくっても絵にかいたもちになってしまう。
 ですから、再生を進めていこうと思えば、マクロの経済環境というのがよくなければ進まないわけですね。二次損失、これを最小限にするというのは、ある意味でマクロの経済環境をよくするという一方の政府の努力がなければうまく動いていかない。ですから、この期間一定の経済成長というものを確保する、そういう政府は意思を示す必要があると思います。
 予算も間もなく成立するわけでございますけれども、株式市場もそういうことの影響を余り受けずに、国際的な影響で下がっているわけですけれども、予算が成立間近だということを国民がどの程度前向きに評価しているかということは、我々自身も問うてみなきゃいかぬと思っておりますし、そしてまた、反応が悪いということであれば、次どうするのかということを直ちにまた考えなきゃいかぬということなんだろうというふうに私は思っております。
 この産業再生機構法がうまく進んでいくために、政府としてマクロの経済の問題をどう考えるのかということについて、最後にお聞きをしたいと思います。
坂政府参考人 今先生御指摘のように、世界経済の問題あるいは地政学的な問題といったようなことで株価低迷とかそういう厳しい情勢が続いておるわけでございますが、中期的に見ますと、そういった厳しい情勢のもとでは、当面は成長率というのもなかなか上がらないんじゃないか、こういうことでございます。
 政府、日本銀行といたしましては、一体となってデフレ克服を目指していかなくちゃいかぬ、早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組まなきゃいかぬ、そういったこと。それから、本来的な成長力をつけていく。そのためには、金融でございますとか、きょうの御議論もその一環かと思いますが、税制でございますとか歳出あるいは規制といったものについて構造改革をしていく、こういうことによって成長力が上がって、今先生が御指摘になりましたような成長がだんだん続いていく。
 特に、不良債権の問題でございますけれども、不良債権というのは、先生おっしゃいましたように、景気が悪いとふえるという面と、不良債権があって金融仲介機能がもう一つ万全にいっていないので成長が足を引っ張られるという両方の面があるんだと思います。不良債権処理を加速していただきますと、金融仲介機能が回復されていく、いわばお金の回りがよくなっていくということだと思いますが、そうしますと、いろいろな新しい分野、最近新しい分野のいろいろな企業というのが出てきておりますけれども、そういった分野にお金が回って資源が回る、それで持続的な成長が続いていく、そういった努力をこれからも一生懸命やっていかなくちゃいかぬ。
 同時に、今申し上げたのはやや中期的な、基礎的な話でございますが、短期的ないろいろな動向に対しても注意深く見守って、適時適切に対処をしていく、こういうことではなかろうかと思います。
福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。
村田委員長 金子善次郎君。
金子(善)委員 保守新党の金子善次郎でございます。
 株価が大変な状態になってきた、イラク情勢、いろいろな要因があることは当然承知しているところでございますけれども、ただいままでの質疑の中でも経済をどう見るかというお話もございましたが、西川副大臣、今の経済の見通し、大変心配な状態だというふうに思いますが、ひとつ経済産業省としての見通しにつきましてお話しいただきたいと思います。
西川副大臣 御指摘のとおり、デフレ経済下で大変厳しい状況にありますことは間違いございません。
 実は、私どもとしては、丹念にいろいろな統計類を分析いたしますと、製造業では若干持ち直しの動きが見られるということもこれは間違いない事実なんでございますけれども、米国向けの輸出が伸び悩んでいるとか、弱含んでいるとかという実情がございます。それから、先ほど来御答弁もございました、また御質疑にもございましたように、イラク情勢が、我が国のファンダメンタルズを必ずしも反映していない株価の動きに反映されている、こういう事態もございます。
 そこで、私どもとしては、デフレ脱却のためにいろいろな手を総合的に政府としては打っているわけでありますが、当省といたしましては、そういう中でどうしても厳しいしわ寄せを受ける中小企業者に対する金融のセーフティーネットなど一連の施策を講じて、緊急対策をしていきたい、こんなふうに思っておりまして、昨今の借りかえのシステムなどは、たちまちのうちに三千億円に達して、一万九千件という保証実績も、早くも四週間で出ているわけでございます。そういうようなことも一つの成果ではないかと思いますが、裏返せば、それだけ厳しいということの証左ではないかと思っております。
金子(善)委員 ただいまお話ありましたように、大変厳しい状況だということであろうかと思います。政府全体として日本経済の立て直しに取り組んでいかなければならない、これは当たり前のことだと思います。
 そこで、大臣にぜひお伺いしたいと思いますのは、経済政策というのは、単に政府だけではなくて、やはりもう一方の日銀という存在があるというふうに思います。私は、今までの日銀の政策、必ずしも適切にはいっていないというふうに見ている一人でございます。
 今、マクロ経済学の一般的なと申しますか、通説というように考えてよろしいかと思いますけれども、日本のいわゆる実質的な成長率、適正成長率と申しますか、これは経済学の分野で使っているわけでございますが、大体二%内外のものはあるんだと。ところが、実際の、過去バブル崩壊以降の実質成長率というものを見ますと、大体一%程度にとどまっている。ギャップがずっと続いてきている。現状では、おおむね八%程度の需給ギャップがあるのじゃないかというようなことをマクロ経済学の分野で言われているわけであります。このギャップを埋めないことには日本経済が本格的に立ち直るということはあり得ない、これは、経済学的にはっきりしている一つの理論があるわけであります。
 このギャップを埋めるという手段としては、いろいろな手法があるのは当然でございます。財政もあるのも当然でございますが、一方、やはりそれでできない場合は、もう一つの何かがあるかというのが、これがまさに日銀の権限としてできる分野であるわけであります。
 そういう観点で、これから新しい日銀総裁も生まれるというようなことで、我々は強く期待しているものでございますけれども、経済全体を面倒を見る立場にある大臣とされまして、日銀に対する期待。小泉総理の記者会見等、あるいは国会での発言等をお聞きしておりますと、日銀にあれこれ具体的に言うのは控える、ただ、政府と日銀が一体となってこのデフレを克服するために頑張っていかなければならない、当たり前のことを言われているわけでございますけれども、少なくとも政府としてのメッセージ、具体的なメッセージを与えていくということもこれまた極めて大切なことではないかと私は思いますけれども、大臣として具体的にどういうことを日銀に期待されているのか、それをお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 確かに今、国の潜在的な成長率というのは二%ぐらいある。しかし、諸般の事情で、それが例えば昨年度は〇・九、約一%だ、ここにギャップがあるのじゃないかということは、私はそのとおりだと思っています。やはりこのギャップを埋めるためには、御指摘のとおり、あらゆる政策手段を動員しなければいけない、これも私、おっしゃるとおりでございます。ですから、政府といたしましては、例えば財政出動も補正予算を含めてやりましたし、規制緩和等あるいは中小企業対策等々いろいろやっております。
 日銀に関しましては、例えば財政諮問会議の場におきましても、あるいは政府・与党連絡会議、これは私も出ているわけですけれども、日銀サイドとしては、マネタリーベースはじゃぶじゃぶするほど、出し過ぎるほど出しているということが、常に日銀サイドからのそういうコメントでございました。
 私は、あるときちょっとそれに対して異論を唱えまして、マネーサプライが非常に多いといっても、それは銀行までじゃないのでしょうかと。実際に数字が示すとおり、それが例えば中小企業の貸し出しに向くとか、そういうことになっていない。それはデータ的に、先ほどの答弁でも申し上げましたとおり、十三年度と十四年度を比べますと、中小企業に対する金融機関の貸し出しというのが大幅に減っているわけです。
 ですから、やはりデフレを克服するというのは、ベースマネーというのを経済の隅々まで行き渡らせることが非常に大切なことでございますから、私は、日銀はやはり、日銀のある意味では専権事項かもしれませんけれども、前例にとらわれることなく、やはりこういう厳しい経済状況の中では、積極的な対応というものは経済産業を担当する大臣としては期待をしているところでございまして、政府といたしましては、一生懸命、政府でやるべきことは全力を尽くしてやっていかなければいけない、こう思っています。
金子(善)委員 ただいま大臣がおっしゃられるとおりでございまして、今まで日銀がやっているのは、確かに資金は市場にじゃぶじゃぶありますよと。それは、金融政策といいますか、日銀の金融政策の一つの方法でやっているというだけであって、これはいわゆる利子率の世界。これは実証研究もあるわけでございますが、利子率が大体二%以下ですと余り効果がない。ましてや今ゼロ金利の時代でございますから、ほとんど効果がないというような実証的な研究もなされているわけなんです。
 金融の権限としての機能からいえば、いわゆる資産価格、これに手をつけていくという政策もございます。また為替、これについて直接入っていくということもあるわけなんです。こうしたことで、例えば株式投信の分野あるいは不動産の投資証券の分野、これは税制改革も伴わないとなかなかうまくいかないと言われているわけでございますけれども、税制はあくまでも政府はそれはやればいい。ただ、そのお金の問題については、やはり日銀というものが出てこなければならないのじゃないか。あるいは社債を買うということだって日銀はできるわけです。これは、よくインフレ懸念というような問題が言われるわけですが、あくまでも物は買っていますから、資産は日銀に入ってくるということになりますから、ただただお金を印刷して市場にばらまくというのと意味が全く違うわけであります。そうしたことで、まさに総合的な対策がなければ日本経済は浮揚しない。
 これまで政府もいろいろ努力をされてきたことは間違いないと思うのです。ところが、日銀が常に当座預金残高を上げますよと、実際の企業にほとんど金が行っていない、こんなばかなことをほっておいていいのかどうか。私は、小泉政権としてきちっと具体的なメッセージを、日銀総裁も今度かわられるという機会でもございますので、そこをはっきりしていただきたい。強く御要望を申し上げたいと思います。
 そこで、次に移らせていただきたいと思います。
 産業再生機構の問題でございますけれども、これは今、先ほど来からも論議がございました。基本的には自由経済市場でこれはやっていく話ではないかと。例外的にRCCがあり、また産業再生機構というものを新たに設けるということでございますが、そこで、二つの懸念がございます。
 一つは、RCCは名前のとおり整理機構と申しますか、反面、産業再生機構はできるだけ企業の自立を助けていくというところに視点があるんだということを言われたわけでございますけれども、先ほどの質疑でもそういう御答弁がございました。しかし、金融機関とともに、自立できるようなところはいろいろな計画を立ててやっているという現実がございます。そうしますと、RCCにも行かない、その間のところということだと思うのですが、そういうようなところというのはどういうところあたりが想定されるのか。逆に言いますと、なかなか自立可能なところというものが再生機構のところに来る可能性が少なくなるおそれがあるんではないか、その点ちょっと危惧されるわけでございますが、その点について御答弁をお願いしたいと思います。
谷垣国務大臣 RCCは、先ほど根本副大臣からも御答弁がありましたように、もともと回収が目的ですから、それで、相当悪くなった破綻懸念先以下をまず買って、今までその中で再生可能なものは再生させてきた。これは、RCCとしても大変御努力、御苦労のあったところだと思うんですね。いわば、こういう言葉が妥当かどうかわかりませんが、土のようになった中からきらっとしたものを拾い上げていくという作業だったろうと思います。
 それはそれで、一生懸命努力して成果を上げていただいているわけですが、産業再生機構は要管理先を主として扱うわけですので、もう少しいわば体力があるといいますか、だめになり方が少ないものを扱うわけですね。ここが目指すものは何かといいますと、多分、確かにそういう制度的な違いがあるんですが、ぎりぎりのところまで頑張り過ぎて、気づいたときにはにっちもさっちもいかなくなっているというところまで行く前に、つまり、言ってみればがんの早期治療みたいな形で再生を、本来メーンの仕事ではきらっとするものを持っていながら、不良債権に足をとられて、過剰債務に足をとられて動きがとれなくなっているというものを早くがんを切開してやる、そういう役割の違いがあるんじゃないかと思うんです。
 そこで、実は、やれるところは自分でやっているんじゃないかという御指摘、こういういろいろないわば道具が政府の中でもできてきまして、いろいろなことが進んできましたときに、それが刺激となって、民間でやれるものはどんどんやろうというのでやっていただけるのなら、それは結構なことだと私は思っているんです。それで、どんどん民間でできてしまったからここは結局閑古鳥だということになれば、それはそれでも本当はいいのかもしれません。
 ただ、先ほどから御説明しておりますように、メーンバンク間の調整とか、メーンバンクが違ったところの再編とか、そういったものになりますと、やはり中立的な第三者、ここが出ていく余地が相当あるんじゃないか。それから、そういうことをやりながら、企業再生のマーケットあるいは人材を、さっきどなたかオン・ザ・ジョブ・トレーニングとおっしゃいましたけれども、そういう形で日本のマーケットといいますか、そういうものをつくっていくという役割もあるんじゃないか、そういう意味で利用していただけるものというふうに私は思っております。
金子(善)委員 わかりました。
 ただいま谷垣大臣が言われましたとおり、そういう方向で強力に進めていただいて、少しでも日本の企業の再生に結びつけば、これはまことに結構なことだというふうに思います。
 そこでお伺いしたいと思いますけれども、我々はこの法案には賛成の立場で御質問申し上げるわけでございますけれども、これから法案が通って、会社設立の手続などに大体一カ月半ぐらい必要だというふうに聞いております。それで、さらに今度はいろいろな申し込みが来るというようなことで、実際に動き出すのは夏以降あたりではないだろうかというようなことが今言われているわけでございます。実際の現況、企業の状態、今、時間があれば中小企業の問題等も本当はお聞きしたいところなんですが、大変経済が厳しい中で、一刻も早く急ぐ必要があるんではないか、逆な意味で。
 そういうふうに考えますと、人の確保の問題、いろいろ難しいところがあるんではないか。今、マスコミ等では、会長とか社長とか、そういうところだけ焦点が当たって、どういう方が社長になった、会長になった、わあわあ言っておりますけれども、問題はそんなことではないと私は思います。実際にその業務に精通した人間、そういう人をどれだけリクルートして実際に動くようにしていくのか、その辺について、時間の関係もございますので、決意と方法、どんなふうに今考えているんだというようなことを御答弁いただきたいと思います。
江崎政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、経済情勢等を考えますれば、私どもとしても、一刻も早く産業再生機構が業務を開始するという状況にしていただければということが極めて重要だと考えてございます。
 ただ、産業再生機構は株式会社でございますので、法案が成立をいたしましても、その後、登記が必要でございます。さらには、場所の契約でございますとか、それから機構として人を確保する、採用するということでございますので、こういったもろもろの手続に所要の時間が必要であろうと考えてございます。
 さらに、機構が立ち上がりましても、事前相談に対応していくということが必要でございます。専門家の間ではデューデリジェンスと呼んでおりますが、いわば再生計画の精査、それからそれに基づいた再生業務の調整、こういったものには当然ある程度の時間が必要であろうと考えてございます。
 準備室といたしましては、これまで、少しでも機構のメカニズムをわかっていただこうということで、いろいろな説明会でございますとかQアンドAの発表でございますとか、いろいろな努力、法案成立前でもできます努力は十二分にしておるつもりでございます。今後とも、法案が早期に成立をさせていただくということをお願いすると同時に、私ども準備室として、できることは前倒しで極力していきたいというぐあいに考えてございます。
金子(善)委員 たくさん質問したいことがございましたが、時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
村田委員長 小沢鋭仁君。
小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。
 先ほど来の各委員の質問にも出ておりましたが、ダウが八千円を割れて、先ほど見ましたら、きょうは若干、八十円ほど戻していたようですが、依然として八千円割れの状態であります。
 もう長いこと、ずっと言い続けてきましたので申し上げませんが、私は、完全にこれは政策の失敗だとずっと言っているわけでありまして、正しい政策を行えば、三カ月でデフレをとめて一年で成長軌道に戻せる、私はこう確信をしているわけであります。そして、政府の中にはそういった発想を持った人もいることを私は十分承知をしているわけですけれども、その政策が実行に移せない、これが最大の問題だというふうに申し上げておきたいと思います。
 なぜそれが実行に移せないのか、こういうことに関して言うと、大変僣越でありますが、小泉総理自身がそのことを理解していないということと、それから日銀がみずからの能力を、あれもできない、これもできないということで、全く現在の状況に立ち向かう姿勢、気力を持っていない、この二つが最も大きなことなのではないか、こういうふうに思っています。
 八千円割れということになると、銀行も、あるいはまた例えば生保を含むいわゆる金融関係は大変であります。それに対して、総理や日銀は、金融危機は絶対に起こさない、必要ならば流動性をとにかく供給してしっかりと守る、こういう言い方をしておりますが、そんなことは当たり前のことでありまして、いわゆる金融危機は起こさないというのは、ある意味では、例えば金融機関が倒れていくということのミクロの視点であって、現在の八千円を割れているという状況がマクロで日本経済にどれだけの影響を与えているかというその視点がない、そこが最大の問題だというふうに私は思っています。
 日銀が自分の所管である金融機関を、行政的な観点でしか物を見ていない。日銀のいわゆる金融機関からの株式の買い取りも、まさにその発想であります。そうではなくて、マクロの発想で、今のダウがこういう状態のときに、日本経済全体にどれだけのダメージを与えているのかということに対しての責任感をしっかりと持ってもらわなければいけない。金融機関が倒れるというのは大変な事態でありますが、そのことだけではなくて、そういう今の現状そのものが大変厳しいんだ、そういう危機感が余りにも足りな過ぎるんだというふうに私は感じています。
 そして、小泉総理は、それを変え得る最大のチャンスであった日銀の同意人事で、今回まさに判断を誤った。あした、同意人事の採決が衆議院では行われる予定だというふうに聞いておりますけれども、残念でならないところでございます。これ以上は申し上げません。
 この二法案、まあ三法案でありますが一つは付随する法案でありますから二法案でありますけれども、その中で、本日は、再生特別措置法に関してはちょっと横に置かせていただいて、我が党の中でも機構法に関して大変意見が出ておりますので、その機構法に専念して質問をさせていただきたいというふうに思います。ですから、平沼大臣にはお聞きしませんので、もしあれでしたらお仕事に戻っていただいても結構でございます。
 まず、谷垣大臣にお尋ねしたいと思いますが、機構法の目的は何かということを改めてお聞かせいただきたいと思うのであります。
 当然、法案には機構法の目的という話があって、一般論が書いてございます。個別事業の再生支援による我が国産業の再生と不良債権処理の促進による信用秩序の維持、こういうことでありますが、こういう一般論ではなくて、いわゆるざっくばらんなと言うことがいいのでしょうか、本音で言ったときに、例えば、先ほどから出ておりますが、債権者の銀行、債権者の間の調整というものをするためにこれをつくったんだとか、あるいはその調整も本来であれば民間がやるべき話であるけれども、しかしなかなかそれがうまくいかないし、そしてなおかつスピードが大事なんで、その調整するスピードを短縮するために政府が出ていくんだというようなこともあり得るかもしれません。
 もっと言うと、例えば、それは再生ファンドというような話が本来はもっと育っていて、それがやらなければいけないんだけれども、我が国の場合はその再生ファンドがなかなか育っていない。それで、ここはいわゆる大型の、官製の再生ファンドをある意味ではつくってそれを補完するんだというようなことなのかもしれません。いわゆる本当の、本当のというか、ざっくばらんの言い方でのこの目的というのは一体どこにあるのかという話がよくわからないわけであります。
 逆に言うと、質問をわかりやすくする意味で逆に心配をしていることを申し上げると、我が党のいろいろな部門会議の中で議論が出てきておりますのは、結局は、調整とはいっても金融機関の救済なんではないかという話が目的に、目的といいますか、そういうことを考えているんじゃないかとか、あるいはまた、大きな企業をつぶすことが余りにも社会的コストもかかりますから、そういった意味では、つぶさないためのある意味では仕掛け、理屈をつくるためのものなんではないかとか、逆から見るとそういうふうなことも目的として言えるわけでありますね。
 ですから、それはある意味では制度の、機構の悪用ということになるのかもしれませんけれども、そういった意味でいうと、本当にこれは何の目的のためにつくるのかということに関して、大臣の御所見を率直にお聞かせいただきたいというふうに思います。
谷垣国務大臣 経済について大変御識見のある小沢委員からの御質問、どう答えたらいいのかなと思って聞いておりまして、まず、やはり、法に書いてありますように、産業の再生を図るとともに信用秩序の維持も図っていかなきゃならないというのは、大きな目的として、建前だけではなくやはりあると思います。それと同時に、産業の再生ということについては、過剰債務企業が抱える優良な経営資源の問題と過剰供給構造という、二つあると思うんですね。それらに対応する仕組みとしてつくられて、そして信用秩序の方も、そういうことを通じて、信用秩序、不良債権処理も一緒にやっていく。大きく言えば、やはりそういうことは建前だけではなく、あると思います。
 さらに、もう少し細かに申し上げますと、今小沢委員のおっしゃったこと、みんな私はそうだと思うんですが、私は三つあると思うんですね。
 一つは、やはり、今求められている産業再生、スピード感が必要で、そのスピード感という中には、民間でやらなきゃならないんだけれども、なかなか民間だけじゃ弾みがつかないじゃないか、背中をどんと押してやることが必要じゃないかという、一種のスピード感を追求していかなきゃならない。それが、二年以内に債権を買おうとか、大体五年の期間内で処理をしようということにつながっているわけでございます。
 それから二番目は、やはり、マーケットを無視したようなことではこれはしようがないのであって、本来ならこれはまさにマーケットの論理で、マーケットの、民間の人材でやっていただけばいいんだけれども、残念ながらまだ日本はそれが十分育っていない。
 よくアメリカの例が引かれますが、アメリカだって、じゃ二十年前、三十年前にそういう人材がいたかというと、アメリカも実はそうではなくて、先ほどオン・ザ・ジョブ・トレーニングということがありましたけれども、処理をしていく中で育っていった。民間がやりやすい雰囲気、やりにくい雰囲気というのは、確かに日本とアメリカで違いはあると思いますけれども、やはり、そういう民間を見据えて、不良債権処理のマーケットや、あるいはそういったものの証券化というものをどうしていくか、こういうものも進めていく、そして、それが将来必ず、日本社会の中でそういうものが育っていくというのが役立っていくんじゃないか。こういう、マーケットを重視するために背中を押したいという気持ちもございます。
 それから三番目は、先ほどの目的の中に入っているわけでありますが、要するに、過剰供給構造というものがあって、いわば、これは卑俗な表現でありますけれども、ゾンビを生き返らせてみんなで足を引っ張って苦しんでいるような構造があるじゃないか、今までの再生にはやはりそういう弊害もないとは言えなかったんじゃないかという御指摘がありますので、それはいろいろ、先ほど平沼大臣からの御答弁もございましたけれども、いろいろな指標等も使いまして、再生したけれどもみんなで足を引っ張り合っているという構造ではない、過剰供給も適切にこの仕組みを利用することによって解決していきたい。
 小沢委員の言う本音のというのになったかどうかわかりませんが、その三つぐらいをやはり私は目指していきたい、こう思っております。
小沢(鋭)委員 一つ、今谷垣大臣の御答弁に対してお尋ねする前にお願いをしておきたいんですけれども、先ほど法の悪用という話があって、そのときに、例えば民事再生法というのを私たちもつくりました。そして今、民事再生法が正直言って悪用されているケースというのが結構あるやに私のところに入ってきます。
 具体的にどういうことかというと、商売でいろいろな債務を持った会社の社長さんが、その権利がふくそうしてくると面倒くさくなって、結局は民事再生法で、駆け込み寺じゃないですけれども、そこに駆け込むことによって、裁判所がみんなある程度権利も調整してくれるし、そして、御承知のように役員はそのまま残ってやれますから、ですから、もう面倒くさくなると駆け込み寺みたいに駆け込んじゃう。やはり困るのが、いわゆる少額の債権を持っているような人たちで、そういった中小企業の人たちが大変、ある意味ではつらい思いをする、こんな話なんかも聞こえてくるわけですね。
 ですから、そういう話なんかも、本来予定した制度の目的とは、やはりそれがかなり逸脱して何かうまく悪用されちゃっているな、こういうようなこともあって、この機構法の場合には割とそういうことが起こり得るのかな、そういう懸念がすごくあるんですね。ですから、ぜひそういったところも頭に置いていただきたいというお願い。
 それから、大臣の御答弁の中で、過剰供給構造をやはり全体として変えていくんだ、こういうお話がありましたが、確かにそれはこの法案の中で言うと、各省の大臣が関与する部分で産業的なアプローチというのがあるのかもしれませんが、基本的には事業者、一つの企業と銀行が持ち込んでくるわけですよね。
 ですから、形の上では本当に、産業再生という言葉ではなくてまさに事業再生、企業再生なんではないか。大臣が、産業としての過剰供給構造を考えていくんだとおっしゃったけれども、そうではなくて、それはまさにミクロの企業の救済の話なんではないか。そういう意味では名前と実態が、法案の中身は違うんじゃないかという気もしているんですが、そこの点はいかがですか。
谷垣国務大臣 まず、今までもいろいろ制度をつくっても乱用事例があったじゃないかというのは、確かにそういうこともあるのかもしれません。
 それで、我々の今用意している機構も、いろいろな意味では、適正に妥当に運用されるような制度的な仕組みもつくっておりますが、一方、この企業が生きられるかどうかというのは、先ほどからの御議論にもありますように、かなり個別に、弾力的に見なければならない部分もございますので、その弾力という名前は美しいけれども、場合によるとうまく使われない危険もやはりあるんだろうと私は思います。
 そうなりますと、結局、運用する人に適切な人を得られるかどうかというところにかかってくるというようなことがいろいろございまして、これは万全なものはなかなかございませんから、我々は万全を目指して努力していくとしか今の段階ではお答えできないのではないかと思っております。
 それから、御答弁している間に、もう一つは何でしたっけ……(小沢(鋭)委員「過剰供給構造」と呼ぶ)これは、産業再生法のスキームや何かを使わせていただいて、少なくとも過剰供給構造を助長するようなことは我々はしてはならないと思っておりますし、確かにおっしゃるようにそういうことを、ミクロなことを積み重ねることによって結果としてそれを目指すというのが我々の機構、余りだんびらを振り回しても仕方がありませんので、結果としてそうなっていくのかなと思っております。
小沢(鋭)委員 意外とそこのところは大事なところではないかと思っていて、産業ということに名をかりて個別の企業の救済に、そしてまた金融機関の救済になってはならない、こういう問題の指摘をさせていただきたい、こういうことでございます。
 次に移らせていただきますが、この機構は責任の所在がちっともはっきりしない、こういう意見が大変強いんです。どういうことかといいますと、要は、谷垣大臣が担当大臣としていらっしゃる。そして、機構は株式会社ですから社長が出てくる。その中には、今度は委員会というものをつくって、そこには委員長ももちろん互選で選ばれて委員会というものもある。そして、今度は各省大臣が支援措置に関しては意見を述べる。こういう話があって、所管の一番上は総理大臣だ、こういう話なわけですね。
 これは、本当に現実的に、もしいろいろな問題が起こっていったときに、一言で言うと政治的責任は一体だれがとるんですかということですね。これは、平沼大臣にもいつもこの委員会で、本当にエネルギー政策、原子力政策の政治的責任の所在がはっきりしないじゃないですかといつも申し上げている話があるんですが、これは、そんなこと以上にいろいろな頭があるんですね。ですから、もし本当にこれで、ああ、あの話が失敗だったねという話のときには、本当に一体だれが責任をとるんだろう、こう思うんですが、いかがですか。
谷垣国務大臣 行政サイドから申しますと、主務大臣は三人おるということになっておりまして、内閣総理大臣と、それから財務大臣と、ここにおられる平沼経済産業大臣、お三方が三者である。
 それで、総理は主管として、機構の第一義的な窓口、それから関係省庁の総合調整を行う、そして信用秩序の維持を図る、こういう観点でございます。財務大臣は、信用秩序の維持を図る立場及び国庫大臣としての立場から主務大臣になっておられる。それから経済産業大臣は、業種に普遍的な産業政策を所管する観点。それで、それぞれに対して権限と責任を持つ。特命担当大臣は今私なわけでございますが、これは内閣府設置法に基づいて、総理を助けて、命を受けて施策の統一を図る、こういうことでございますから、行政的に申しますと、この主務大臣に責任があるということは明らかであろうと私は思います。
 しかし、実際に機構を運営していくとなると、産業再生委員会というものもあり、そしてそこの機構の社長というものもおって、そこも一体どっちが何だかはっきりしないという御意見も確かにあるわけでありますけれども、産業再生委員会というのは、いわば取締役会の中のインナーボードで重要事項の決定権限を付与されておりまして、委員長はその運営について権限と責任を持つわけでありますけれども、機構全体としてはやはり社長が代表取締役として会社を代表して、そして業務執行の責任を負う立場になると思いますから、具体的な業務が動き出したときの責任者はやはり社長だろうと思います。
 それで、なぜこういうふうにわかりにくい、まあ、わかりにくいと私が言ってはいかぬのですが、こういう仕組みになっておるかといいますと、それは、本来民で行うものでありますけれども、例えば国が十兆円の債務保証をしているというように国が関与しますので、やはり行政がそこに権限と責任を持たざるを得ないだろう。こういう仕組みになっておりますから、行政上の責任と、それから実際に処理をしていくところの責任というものはそれぞれはっきりしていると私は考えております。
小沢(鋭)委員 やはり、今そこをはっきりさせるには、私は、政策としてこれをつくるというのはいいんだと思うんです。ただ、今大臣がおっしゃったように、債務保証という形で国はある意味では関与しているという話ですが、政策論だったらば、そこをリードして、一切の政府保証とかそういう話は、資金的な話はなしにするというのが物すごくわかりやすい区分けですよね。政府保証がなかったらこれはできないんでしょうかね。
 そういうふうにはっきりと区分けをして、まさに株式会社でやるんであればイニシアチブを政府がとって機構をつくるというのはいいですよね、そこはいい。だから、もう政府保証もしないというくらいに明確に区切ったらば、はっきりそこから今度は民の話ですねというふうに、求めに応じて融資するという話はあってもいいかもしれませんが、そういうことは考えられないんでしょうか。
谷垣国務大臣 今小沢委員のおっしゃったところは、非常にデリケートな難しいところであると私も思います。
 ただ、これは先ほどからの御答弁の繰り返しになるかもしれませんが、やはり、民だけではなかなか進んでいかなかったという今までの現実がございます。そして、先ほどたしか小沢委員が官製再生ファンドというような言葉を使われたと思いますが、民の中でこういう十分な資金力を持った再生ファンドが現実に活発に動いていれば、必ずしもこういうものはなくてもよかったのかもしれません。
 確かに、四、五年前に比べますと、そういう再生ファンドも生まれつつあると私も思いますが、では民だけに任せておいて十分な資金供給が行われるかというと、それはやはり、先ほど申し上げたスピード感とかそういう面から申しますと、いや、座してそれを待っているのは忍びないなという気持ちがございまして、こういう仕組みになっているというふうに私は考えております。
小沢(鋭)委員 谷垣担当大臣も大変御苦労だろうと思いますが、今の、こういう仕組みになっているんだろうと思います、こういう言葉で私なんかが感じるのは、谷垣大臣がこれを一番最初に考えて、そして担当大臣になっている、こういう話であれば答弁ももうちょっとすっきりするのかもしれませんが、やはりそこはそうじゃないんですね、当然のことながら、経緯として。
 だれが考えたのかわかりませんけれども、俗に言われている話は、金融機関のいわゆるバランスシート問題がずっと先行する中で、やはりそれは産業サイドもやらなきゃいかぬじゃないか、こういう議論が昨年の秋にあって、だけれども、ある意味でいうと、大変なスピードでこれはできたんですね、法案そのものは。私なんかも、見て、あれよあれよと思う間に、何か、話が浮上したら一気にこんなでかい法案が用意された、こういう意味では驚くくらいなわけですけれども、やはりそこは政府の中でも、ここまでやるのはどうかね、こういう感覚がかなりあるんだろうと思うんですね。本当にここまで官が介入してやるのがいいんだろうかと。
 確かに、金融機関のバランスシートの問題から、いわゆる産業そのものを扱うという話が必要だ、私はここは本会議の質問でも申し上げましたように、大事な視点だと思っておるんです。それはいいんですけれども、その若干の方針転換というか、新たな方針が加わるのは私は賛成なんですけれども、やはり、ここまで本当に官にやらせていいものですかね、こういう話があるんですね。
 大臣は、小泉さんから任命されて、さあ、やれと言われて、本当にすっきりと、おお、そのとおりだ、ここまでやらなきゃいかぬ、そういうまさに歴史的責務を感じてやっておられるのかどうか。やはりここは、かなりじくじたる思いもあるんじゃないか。これはあれなんですが、質問としては、本当に官がここまでやっていいんだろうかという思いが私はどうしてもぬぐえないのであります。いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 私は、去年の十一月にこの仕事をやるようにと拝命しましてから、いわば大車輪で勉強して、きょうここに立たせていただいているわけですが、しかし、私も過去の経緯をつまびらかに存じているわけではありませんけれども、やはり不良債権処理をどうして進めていくかという議論の中で、常に、金融面だけではなかなか進まないなという嘆き、議論、こういうものはかなり昔からあったんだと思いますね。ですから、そういうものをどう形にしていったらいいかという機運がやはりでき上がってきて、こういう発想になった。
 それで、私も、できましてから、一体どのぐらい官が関与すべきものなのかというあたりがやはりポイントだなと思いまして、大分関係の皆さんからいろいろお話も聞きました。これは民間で実際に再生をやっておられる方々の意見を中心に聞きましたけれども、やはりどんと背中を、一気呵成に進めていくために、どこかで弾みをつける仕組みが欲しいと。それはやはり、ある程度官がかまないとなかなか進んでいかないんじゃないか、こういう御意見が専門家の間に相当強くあったというふうに私は思います。
 そこで、いろいろ議論をさせていただいて、小沢先生のような御心配もあるんですけれども、現時点で、今この問題が、マーケットや何かから要請されているものとしては、まあまあ御批判にたえ得るものができたんじゃないか、私はこういうふうに思っております。
小沢(鋭)委員 大臣の御答弁としてはそうだろうと思いますし、これ以上そこをやっていてもしようがありませんので、らちが明きませんからあれしますが、私は、一言だけ意見を申し上げておきますと、本会議場で谷垣大臣にお尋ねしたのは、諸外国でこういう例がありますか、こういうお尋ねを申し上げました。金融関係の再生に関してはあるんだけれども、いわゆる事業再生という観点ではなかなかないというのが私が調べた結論だったものですから、お尋ねをして、それを申し上げた意味は、やはりこれはどう考えても、世界のいろいろな例を見ても、こんなものはめったにない、めったにないというか初めてだ、それくらい特異なものなんですね、こういうことなんですね。
 ですから、私は、政府がやるべき話というのは、冒頭申し上げたようなマクロ政策、私流に言わせていただければ、とにかくデフレさえとめてくれれば金融機関だってこんな苦労しなくて済むのであります。デットデフレーションの話を持ち出すまでもなく、デフレのもとにおいて債務が依然として残っている、ここが最大のポイントで、政府がやるべき話は、まさにデフレをとめるようなマクロ政策であって、いわゆるこういう個別の政策ではないんではないか、やっていることが全く逆転なのではないか、こういうふうに私は一言意見として申し上げておきたいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 我が党の中での議論では、これが安易な労働者、勤労者の首切りになってはいけない、こういう心配、懸念が多いわけであります。そこで、ぜひ労働組合とか勤労者側の意見を聞く機会というものを何とか法案の中に法定化できないのか、こういうふうに思っているわけでありますけれども、実際問題、運用の中でも、どういう形で勤労者の声を聞くということをお考えになっているのか、あるいはそしてそれは法定化できないか、この点をお尋ねしたいと思います。
江崎政府参考人 企業なり事業の再生ということでございますが、こういったものを行いますためには、再生計画をつくってそれを現実に実施をしていくということが必要でございます。
 その過程でございますが、まさに企業が一丸となりまして必死の努力をする、大いに汗をかくという努力が必要でございます。こういったことを考えますと、現実にも、多くの場合、再生計画をつくる、事業再生をするという場合には、労使間で十分な話し合いといったものが行われるというのが通常であろうと考えてございます。
 こうした点を、機構が再生支援判断を行うに当たりましてどうするかという点につきましては、今後十分に検討してまいりたい、このように考えてございます。
小沢(鋭)委員 今の御答弁は、一般論としてそういうことの必要性は十分理解する、ただ、今後どうすべきかは機構がこれから検討してまいりたい、こういう主な二点だったと思うんですが、そういうことでよろしいわけですね。
 そうしますと、私は、ちょっとそれでは心配だということなんですね。
 では、もうちょっと具体的に聞きますと、例えば、意見を聞く機会がどの段階なのか。幾つかあるんですよ。要は、企業がいわゆる再生計画をつくる時点で、いわゆる勤労者の意見を聞くのか。あるいはまた、それが持ち込まれた時点で、機構側がその企業の勤労者の意見を聞くのか。あるいはまた、今度は、政府が、所管の大臣が意見を言う時点で、政策を、支援措置を決める時点で、勤労者の意見を踏まえて支援措置を決めるのか。
 労働者の意見を聞く機会というのは何段階かきっと想定できるんだろうと思うんですね。その辺に関してはどんなお考えをお持ちか、お聞かせいただけませんでしょうか。
江崎政府参考人 再生計画につきましては、メーンバンクと当該の事業者、これが機構に持ち込んでまいります。その時点から、機構としては関与をするということでございます。
 持ち込まれた後でございますが、さまざまな作業をして、その再生計画の中身、それからその再生計画の実行可能性、こういったものをチェックした上で、再生ができるということになりますと支援決定をする、こういうことになっております。
 当然、そのチェックをする、再生計画が出てまいりましても、それをうのみにするということではございませんで、専門家がいろいろな視点からチェックをするということでございますし、再生委員会でもさまざまな視点からチェックをする。そういう中で、再生計画の中身でございますとか実行可能性、こういったものについては、当該企業の労使の間で、どういうことになっておるのか、当然、しかるべき合意というものは得られておるかと思います。そういったものをいろいろな観点からチェックをするということでございます。
 その後、支援に入りまして、買い取りに入りまして、再生計画のモニターをしていくということになります。実際に再生のプロセスに入りますと、メーン銀行とともに機構としては再生計画のモニターをしていく。必要に応じていろいろ御注文を申し上げるというような局面もあろうかと思いますが、そういう場面でも、必要に応じてそれぞれ会社の中で使用人側と十分な意思疎通が図られておるのかというのは、やはり非常に重要なポイントとして当然注意を払っていくということだろうと考えております。
小沢(鋭)委員 今の御答弁は、機構がその責任を持ちたい、こういう御答弁に聞こえました。
 計画が持ち込まれる前に、事業者は労働組合とちゃんと話をしなさいよ、これは慣例として当然やるんでしょうし、私どもは、それも明文化してもらったらありがたい、こういう話を申し上げたいと思うんですが、同時に、今度は持ち込まれた後、機構が、機構そのものが、まさに労働組合、勤労者の意見を聞くことに責任を持ちたい、こういうことでよろしいですね。
梅村政府参考人 お答え申し上げます。
 機構が判断する場合に何が一番重要かと申しますと、それは、再生計画の実行可能性ということを十分に判断する必要があろうかと思っております。幾ら立派な計画を提出していただきましても、それが要するに絵にかいたもちであってはこれはまた何の意味もないわけでございますので。
 具体的にそれをどうするか、その計画をどういうふうにチェックするかということは、それはまた機構の委員会、それから事務局等で判断するだろうと思いますけれども、いずれにしましても、再生計画そのものが絵にかいたもちでないということに関しましては、十分なチェックをさせていただきたい、かように考えております。
小沢(鋭)委員 余りそこは警戒しないで、次長。要は、僕も、だから、組合の意見をすべて採用しろ、こう言っているわけではなくて、聞く機会をきちっと義務化してもらえないか、こういうことでありますし、まさにそういう意味では、機構がその再生計画が実現可能かどうかを判断していく、その際の一つの大きなエレメントとして、要素として労働組合の意見を聞くということがある、こういうことでよろしいですね。はい、わかりました。
 あと、もうちょっと具体的にその話の一つとしてお聞かせいただきたいんですが、いわゆる委員会がありますが、その委員会の委員に労働界からの採用というものはあり得ないのか、この可能性をお聞かせいただきたいと思います。
江崎政府参考人 委員御指摘のように、産業再生機構の中には産業再生委員会というものが設けられるわけでございますが、この委員会の性格そのものは、取締役会の内部組織でございます。いわゆるインナーボードと申しましょうか、でございます。
 したがいまして、株式会社でございます産業再生機構のいわゆる経営陣である取締役、これで構成をされるということでございます。あくまでも、委員会があって機構があるということではございませんで、機構があってその中に取締役から成る委員会があるということでございます。
 このような産業再生委員会の委員の位置づけということを考えますと、労働界のみの利害、こういったものを代表する方にお入りいただくということはなかなか、取締役会から構成されるという基本的な性格から見て無理があるのではないかというぐあいに考えてございます。
 しかしながら、機構の運営に当たりまして、どのような形で労働界の意見、こういったものを配慮していくことができるのかということにつきましては、今後十分に検討してまいりたい、かように考えてございます。
小沢(鋭)委員 この件に関しては、同僚議員もいろいろな意見があるようでありますので、引き続き我が党としては協議をさせていただくことを申し上げて、時間も迫ってきましたので、次の質問に移りたいと思います。
 質問で通告しました順序をちょっと変えさせていただいて、二次ロスの話と買い取り価格の話、先に買い取り価格の話を聞かせていただいた方が順番としていいかと思いますので、そちらをお聞かせいただきます。
 まず、買い取り価格はどうやって決めるか、こういうことでありますが、当然相対で決めるわけであります。価格の決定というのは、これはもう当たり前でありますが、需要と供給の関係で、その綱引きで決まるわけであります。
 しかし、この場合は、ある意味でいうと、機構側は既に、これはもしかしたら違うとおっしゃられるかもしれませんが、買うことを前提にして入っているわけですね。買うことを前提にして、そういうふうな気がします。そうすると、需要と供給、買い手と売り手という関係でいうと、買い手は常に買う姿勢で交渉に臨んでいる、買わないとこの機構の仕事は始まらない、こういうふうに思うものですから。そうすると、そういう構造だと、やはり必ず売り手が高い価格で売れる。
 ということは、もしこれが高い価格で買い取って、そして後から言う二次ロス等が発生するということになると、これは最終的には国民の税金で補てんする、こういうことになるわけですから、この価格の決定そのものが基本的に少し甘い買い取り価格になるんではないか、こういう懸念を持っているんですが、いかがでしょうか。
江崎政府参考人 まず、買い取り価格でございますが、対象事業者の事業再生計画を勘案した適正な時価を上回らないということでございます。法案にも明記をしておるわけでございます。
 具体的にどうするのかということでございますが、市場関係者の評価手法と同様に、再生計画におきます事業の収益見込み、こういったものを前提にいたしまして、事業価値さらには債権の回収可能性、こういったことを考えて算定をするということでございます。その際、マーケットにおける評価との乖離がないように、市場関係者の意見を極力参考にしたいというぐあいに考えてございます。
 そういたしますと、特に非メーンから債権を買うわけでございますが、足元を見られるんではないだろうかという御指摘だろうと思いますが、まず、機構がやりますのは、一発で時価が決まるわけではございませんで、再生計画に基づいて算定をするということでございますので、それに基づいて、極力売り手側とのネゴをするということでございます。
 ただ、さはさりながら、売らないというのは、これはまさにマーケットで決まることでございますので、そういうものが出てくるという可能性もございます。その場合、機構といたしましては、買い取りに入ります際に必要債権額というものを決定いたします。つまるところ、小さな債権額だけを買い取っただけでは債権者が集約をできませんので、再生計画の実行が非常にできないということで、必要な債権額だけ買い取るということでございます。
 したがいまして、仮に、売らないということで必要な債権額が集まりませんと、その場合には機構としては支援決定の撤回をする、この場合また再生委員会にかけるわけでございますが、撤回をするということでございます。機構としてはタッチをしないので、民間、民民同士でお話し合いくださいということでございます。
 さらには、先般の参考人質疑の際に、たしか坂井参考人、田作参考人から御指摘がございましたが、そういう場合、機構としては、法的整理に持ち込むという、プレパッケージ型と言っておられましたが、そういうものも見据えながら強力にネゴをすべきであるという御指摘がございました。この御指摘は、私ども機構のこれからの具体的なメカニズムを考える上で大変印象に残るという印象を持ってございます。
小沢(鋭)委員 今の御答弁は、普通の民間の再生ファンドであればそのとおりやってもらえばいいんですよね。ここは、まさに機構というのは、先ほど谷垣大臣がおっしゃったように、背中をどんと押してやる、こういう話があるものですから、ですから、私がある意味でさっき、買い取りの話が初めにありきではないか、こういう話を申し上げたのは、政策論としてはそれをやってあげないと進まない、こういう環境のもとでやる話なんですよね、もともとは。民間ファンドだったらまさに今の御答弁で、本当にそのままでいいんですけれども、やはりここが、買い取り機構が出ていくという話は、まさに構造としてそこを、糸をほぐして進んでいく、こういう話なので、だから、どうしたってそこは前に進むことが前提になるし、それをしなければ仕事にならないし、そうすると当然そこで甘くなる、そうすると二次ロスなんかの発生も生じるんじゃないか、こんな懸念があるわけです。
 御指摘を申し上げて、時間が終わりましたので、もし簡単な答弁でありましたらいただきたい、こういうふうに思います。
谷垣国務大臣 確かにどんと背中を押すんだということからいいますと、小沢委員は結局前のめりになって進んでいくぞとおっしゃっているんだと思いますが、私どもが前のめりにならなきゃならないところは、その買い取り価格ということではなくて、やはり合理的なところはどこなんだということについて、やはりこの機構が、中立的なというような言葉を使っておりますけれども、あるときには強力に、あっせんという言葉が適当かどうかわかりませんが、その仲介の労をとって、これでおさめろということは強力に言っていく必要がやはりあるのではないかな、こう思っております。
小沢(鋭)委員 終わります。ありがとうございました。
村田委員長 奥田建君。
奥田委員 民主党の奥田でございます。高所から物事を見る小沢議員の後は、ちょっと私の方ははいつくばるような視線で物事を語らせていただきたいと思います。今ずっとほかの委員のお話を聞いていても、質問の部分がかなり重複するかと思いますけれども、その点は私もほとんど聞いておりますので、簡単な答弁でもよろしいかと思います。
 余り昔話をしても始まらないんですけれども、私もこの政治の世界に入る前は、小さいながらも企業の経営者もやらせていただきまして、そういったときに、不良債権といいますか、やはり自分の会社の過剰債権といいますか、負担感のある、そういった債権の処理というものに一時期走っていたことがございます。ちょうどちまたで貸し渋りという言葉が一般的になって、そして私自身も、不動産の物件でしたけれども、小さな会社が借入金でそういう不動産なんかを持っていると、活用されない限りとんでもない金利負担の感があるということで、それを処理していたことを少し懐かしく思い出しております。
 そんなことはだれでもわかることなんですけれども、一番大変なのは、やはり処理しようとするときにその相手を見つける、私にとっては買い手でありますけれども、そういったことが素人ながらもできたのは、やはり意外にも、自分が素人で、経営者が急に亡くなりましたので、突然その会社に行って知らない会社を面倒見ろというような立場で、もちろん御縁もありますけれども、ゼロからですけれども、新鮮にその会社の内容というもの、問題点というものを見れたのかなということ、そして、弁護士さんまで言いませんけれども、司法書士さんであるとか、そういった道の専門家の方に親身になって相談に乗ってくれるアドバイザーがいたことかなというふうに思っております。
 今、産業再生機構の話が出ておりますけれども、私自身の個人的な意見で言えば、こういう調整機関というのは確かに必要なんだろうなと。小さな企業の簡単な債権でも大変であるのに、ましてや多くの銀行や債権者が絡み合ったときには確かに出口が見つけにくいものだろうとは思います。ただ、今いただいている資料の中で見ておると、その調整機関がこの再生機構という形なのかなということには少しの疑問を感じる部分も多々あるというのが現在での所感でございます。
 要らない話ですけれども、そういうときに相談にも乗ってもらい、あるいは、いじめられた自分のいた会社の千倍ほどもあるような会社が、もう今は、五、六年の間になくなってしまいました。固有名詞まで言いませんけれども、やはり不動産関連、あるいは銀行といったところもあったところが消えたのが、不思議な思いでございます。
 まず最初に、先ほど小沢委員からもお話ありましたけれども、これの目的、機構の大きなシステムからすると、最初の、資料にもある目的でも、個々の企業を救済するというようなことが目的になっている。それはそれで目的の一つではあろうとは思いますけれども、もう少し大きい、こういう機構を利用していくことによって、経済産業省などが考える産業構造の転換の行き着く先といいますか、そういったもののビジョンというものがどうなっているんだろうか。
 あるいは、もう一つ質問になりますけれども、先ほどから出ている中で、政府の役割、そして民間の役割というものを、もう一度、大臣の認識としてお話しいただければと思います。産業構造のことも入りますしあれですけれども、谷垣大臣の方からお願いします。
谷垣国務大臣 先ほど小沢委員からの御質問にもありましたように、この機構の目的は、法案にも書いてございますように、金融システムといいますか、そういう金融システムの信頼回復という面と、それから産業再編ということが大きなマクロの目的としてはあるわけですけれども、この機構自体が担う手法としては、このマクロな目的をミクロの、いわば個々の企業の再編を通ずるということによってやっていく、こういうことだろうと思います。
 したがいまして、この機構の運用自体は、あらかじめ、例えばこの業界ではこれとこれが多過ぎるからこれをつぶしてというような絵を描いて、そこに強引に引っ張っていくというような手法を考えているわけではございませんで、むしろ、ここにこれをこうしたいといって持ち込んでこられるということを前提に考えているわけでございます。
 無論、しかし、そういうことを考えてまいりますとき、判断をしていきますときに何らかの、もちろんその個々の、そこに持ち込んでこられた企業が果たして再生する力があるのかどうか、新しい付加価値を生み出していくような一種の戦略性を見出し得るかどうかというのは、もちろん最終的には個別の判断でございますけれども、やはり、その産業分野のある程度の見取り図というものが頭になければ、これはなかなか進まないんだろうというふうにも思います。
 しかし、これに関しましては、先ほど平沼大臣の御答弁の中にもございましたように、それぞれの基準というようなものを用意していただいておりますし、現に国土交通省も独自の基準をつくっていただいている。そういうものを利用しながら判断をしていこう、こういうふうに考えております。
奥田委員 後でもう一度そういうスキームについての話も聞くことになるかと思いますけれども、続きましての御質問としては、この機構に出されている多くの、評論なんかでも出ておりますけれども、この機構の姿というものが、使い方次第ではやはり特定企業を救済する、あるいは先ほどから出ております銀行救済のシステムとして使われてしまうんじゃないか、いい意味で使われるならいいですけれども、やはり任意の、裁量のといった形の制度になってしまうのではないかと。
 私自身も、ここで、この機構でどうしても納得いかない部分が、やはりいろいろな経済政策が、最後に行き届くというか、行き届いてこない中小企業の出の人間とすれば、いつも政府系の機関や銀行やあるいは大企業までは政府の政策というのも来ているけれども、ああ、ここまで来た、ここまで少し立ち直ってきた、もうすぐ私たちのところにも、おこぼれと言っては変ですけれども、そういう効果が来るなと思ったようなときにはもう全然出てこない。ちょうど、コーヒーのフィルターに一生懸命お湯を注いでいて下で出てくるのを待っているんだけれども全然下には届いてこないというような思いを、やはり感覚として持っております。
 ですから、こういう個別企業を選択する制度に熱を入れるよりも、私はやはり、正攻法としての、普遍的なそして公正な制度としての政策というものに力を入れていただきたいというような思いがあります。
 質問に戻りますけれども、特定企業救済あるいは一部の銀行救済という批判についての見解というものをお答えいただければと思います。
谷垣国務大臣 特定企業救済ということは、結局、再生させたときの姿が、本来再生させるべきでないものを無理やり再生させたとか、そういうことになると、これは個別の特定企業の救済だという非難を免れないだろうと思うんですが、他方、例えば、本業ではすぐれた経営資源を持ちながら、現在いろいろな過剰債務などで足をとられているというところを、その過剰債務から切り離して、本来の経営資源を生かすようにしていくというのは、これは当然やらなければならないことでございます。
 結局、ここは出口を見据えて、例えば三年の事業再生計画が終わったときに自立していけるような形になるかどうか。自立していけるという意味は、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、具体的なスポンサーがあらわれる、そういうようなことで自立的に自分の資金運用ができていく、この姿をやはりきちっと見据えないと、今委員のおっしゃったような批判が出てくるんだろうと思いますね。
 それはどうしていくかといいますと、民間の目ききの力も借りなければならない、そういうアウトソーシング等も考えなければならないと思いますが、機構の仕組みとしては、専門家を集めた産業再生委員会でその計画の妥当性を判断していただく。ここがきっちりできませんと、今委員のおっしゃったような御疑問がそれは出てくるだろうと思います。
 他方、もう一つ、銀行の救済ではないかということをおっしゃいましたけれども、銀行の救済になるかどうかは、結局、買い取り価格、先ほどからも御議論がありますが、要するに適正な時価で買うということに、これは再生計画、出口を見据えての判断ということにこれもなるわけですが、ここが甘いということになりますと、特定の銀行を救済したという非難を受けるかもしれません。結局、ここのところも、そこをきちっとした目ききができるかどうかということにかかってくるんだろうと私は思います。
 もちろん、事業再生計画が、三年たったときにどのような姿になるかということをあらかじめ完璧に見積もるということは、なかなかこれは難しいことでありまして、率直に申し上げてリスクもある仕事だろうと私は思っておりますが、要するにそこをきちっとやる、そのために産業再生委員会をつくったり、あるいは先ほどから申し上げているような、主務大臣や事業所管大臣の御意見をいただくという形で適正さを担保していきたい、こう思っております。
奥田委員 今、もう一つ、ほかの委員も指摘している懸念、私も持っている懸念の一つとしては、政府保証枠というのがございます。
 今、これとは全然違いますけれども、例えば大きな債権放棄をやってもらった企業の再建計画というものが、諸般の、周辺の環境の変化というのもあるでしょうけれども、なかなかそのとおりにいかない、あるいは、政府がかかわったものでも、公的資金注入、あるいは一つの特例になりますけれども、瑕疵担保条項、こういったものも、先日の新聞でも十兆円の国民負担あるいは瑕疵担保条項だけでも一兆円近い買い戻しというものがあったということも報道されています。
 やはり、何かビジネスの世界で、本当のプロでない者が大きな公金を安易に出動させるということが正しいのかどうかというような思いが、どうしても今までの結果としての中でついて回るということで、大臣に、そういった政府保証をつけるということに関して、今までの公的資金注入あるいは金融機関が企業に対して行う債権放棄、こういったものも、それを受けられない、先ほど雲の上という話もありましたけれども、それが全く縁遠いというか、自分たちの世界にはないような人から見れば一つのモラルハザードにも見えるというこの公的資金と債権放棄についての見解というものを教えていただきたいと思います。
谷垣国務大臣 なぜ十兆円の政府保証枠というものを使いながらやらなきゃならないのかという点は、先ほど小沢委員とも御議論を交わしたところでございますけれども、先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、要するに、いつまでもこの問題で時間をとってだらだらやっているわけにはいかない、やはり一気呵成に進めたい、それがなかなか民間の力だけでできないから背中をどんと押したい。
 そこで、なぜ政府保証かということになりますと、こういう形でつけることによって低利の資金調達が可能になる、それから、そういうことによって思い切って背中を押していくということができる、こういうことだろうと思います。これを取り除いてしまいますと、こういう流れを加速していく仕組みとしてなかなかうまくいかないのではないか、こういうことがあろうかと思います。
 それで、もう一つは、では、そういうことで政府資金を使いながらいろいろなことをやっていくんだけれども、何か結局メガバンクが用意する大きな企業だけなのではないか、中小企業や何かにはおよそ縁のない制度ではないか、こういう御批判がやはりあるわけですね。
 それで、私は、実は地銀や第二地銀のお集まりでも申し上げたんですけれども、どうもそういうイメージが先行しているけれども、決してメガバンクが扱っている大企業だけを対象としたものではありません、再生できないようなものはだめですけれども、本来再生させることが可能であって、利害関係者がごちゃごちゃしていてなかなか進まない案件があれば、それはこの機構の有力なお客様ですということを申し上げております。
 しかし、これは申し上げるだけではなかなか、本当かという御疑問があるのは、私もそれはそうだろうと思います。これは、これから実際に機構を運営していくときの話になりますから、政治家である私が余り早くこういうことを申し上げてはいかぬかもしれませんが、やはり早い時期に、そういう大きなものももちろん扱わなければなりませんが、中小企業等でも、なかなか適切な事例を適切にさばいたなというようなことが早期に出せれば、なるほど、あそこは使えるなということになっていくんじゃないか、そういうようなことも考えながら機構を運営させていただく必要があるなと思っております。
奥田委員 一応、この機構について、まだできていないので仮定的な話になるかもしれませんけれども、準備室の方ではそういったスキームも考えていらっしゃるとは思います。
 この機構の資本、今投下資金十兆円を準備したということ、あるいは資本でも預金保険機構が五〇%以上持つんだということぐらいは聞いておりますけれども、そういった資本あるいは人員、どのくらいの受け入れ件数をまず初期スタートのときにはこなせるようなチームとなるのかというようなことが、今お答えできましたら教えていただきたいと思います。
根本副大臣 今委員から立ち上げのときの人員の規模、あるいは資金はどうなるかという御質問でありますが、産業再生機構は案件ごとに担当チームを編成して業務を行うこととしたい、こう思っております。機構の人員の規模につきましては、持ち込まれる案件がどの程度の規模になるか、こういう規模に応じて弾力的に対応していくことになりますので、今の時点で確たることは、率直に申し上げまして申し上げがたい点もありますが、見込みとして、設立時には数十人から百人程度の規模になるんではないか、こう考えております。
 また、資金の規模についてでありますが、まず、資本金につきましては、現在金融界などで検討が行われているところかと承知しておりますが、具体的な金額を申し上げられる段階には現在はありません。また、債権買い取りのための資金、これはもう先ほど来出ておりますが、先生も御案内のように、平成十五年度予算案におきまして、産業再生機構に十兆円の政府保証枠、これが設定されておりますので、これを活用して、必要な量の資金を市場から調達するということになると考えております。
奥田委員 十兆円にもまたこだわらせていただきたいんですけれども、例えば、RCCの方で今までの累積投入金額というのが、手元にいただいた資料では、二兆二千億ぐらいの簿価といいますか元本債権を、大体一千八百億ぐらいで買い取っている。単純に割ると簿価の十二分の一ぐらいで買い取っているんですけれども、今までのRCCの活動でも一千八百億ぐらいの資金投下なわけです、精算はしてみないとわかりませんけれども。
 ここで出てくる十兆円という規模はどういうところから出てきた数字なのか、RCCのやっていることに比べても大変大きな保証枠になります。どこから積算された根拠があるのか、教えていただきたいと思います。
根本副大臣 この十兆円の保証枠の件でありますが、RCCは基本的に破綻懸念先以下を対象にしておりますが、産業再生機構は、要管理先債権等に分類されている企業のうちで企業が再生可能と判断する企業の債権、これを適正な時価で原則として非メーンから買う、こういう基本的な枠組みであります。
 債権買い取りのための政府保証枠、例えば預金取扱金融機関の要管理債権額、これは平成十四年三月末時点で十九・一兆円、要管理先債権があるわけですが、これをベースにいたしまして、企業の再生可能性、あるいは非メーンの保有割合、適正な時価で買い取るということでありますから買い取り価格、これを勘案して想定されるいわば最大限の買い取り規模まで対応できるようにという意味で十兆円という、これは多分私は上限だと思いますが、要は十分に対応できるように最大限の買い取り規模としては十兆円を用意したということであります。
奥田委員 ということは、要請があれば、銀行団の持つ要管理債権というのをみんな引き受けるという予算規模だということですか。
根本副大臣 いずれにしても、我が方の産業再生機構で考えておりますのは、典型的な例では、先ほど来出ていますが、複数の金融機関があって、債務者企業と基本的にはメーンが申し出てくるものを、非メーンの債権を集約して買い取るということでありますから、しかも適正な時価、しかもその買い取りに当たっては産業再生委員会という目きき機能を持つ委員会で判断するということが前提ですから、そういう支援基準に該当するものを買い取ろうということでありますので、額としては最大限の想定として十兆円の枠を用意したということでありますから、その中で要件に該当するものを買うということであります。
奥田委員 適正な時価というものにもまた次に触れますけれども、今、RCCの機能と似た部分と似てない部分と確かにあります。ただ、仕事の種類としては、やはりそんな過剰な債権を受け取るということであれば、似た部分もあります。
 そして、経済財政諮問会議の中でも、昨年のうちから、RCCの業務拡大分野として企業再生という部分を強くしていく、拡大していくというようなことも二度にわたって発表されている。なぜRCCの一つの業務としてできないんだろうか。その方が、もし買い取る必要があるとすれば買い取り債権を見据える、価格を見据えるというような業務、あるいはおかしな権利主張といいますか、そういったものを正していくということに関しては、RCCの方が今日本ではそういった実績がある機関だと思います。
 それが、破綻先、破綻懸念先か、要管理、要注意先なのかというだけの違いで、値踏みをすると言ったら言葉は悪いかもしれませんけれども、そういうことに関しては一日の長があるRCCの業務とは完全に別業務とする、そういった理由を教えていただければと思います。
根本副大臣 RCCの業務と再生機構の業務、これは共通する点もありますが、基本的に、RCCの目的、機能、これは、RCCは不良債権処理の受け皿としてつくり上げた機関で、基本的には債権の回収を目的としております。しかも、原則として破綻懸念先以下の債権を買い取って、その回収を行うことを業務の中心としております。
 先生今触れられましたように、再生機能というものも設けたわけでありますが、要は基本的に回収を行うことを業務の中心として買い取って、ただ、その中で債務者が再生の可能性があるということが判断された場合、判明した場合、これは速やかな再生に努めることもあるということで、先ほども申し上げましたが、RCCはいわば債権買い取り先行型の組織ということであります。
 これに対して、産業再生機構でありますが、これは事業の再生を目的としておりまして、そもそも再生可能と判断される場合に限って、債権者である金融機関等の利害調整を行って、非メーンの金融機関から債権を買い取って集約したり、あるいは必要に応じて貸し付けも行う、要は融資機能も持ち合わせておりまして、事業の再生を促進するという、RCCが債権買い取り先行型の組織であることに対して、いわば再生機構は再生可能性先行型の組織ということで、基本的に性格が異なっております。
 整理回収機構には実は再生機能もありますので、整理回収機構でやったらいいではないか、これは私も、そういう機能をRCCに追加するということも政策論、立法論としては考えられると思いますが、我々としては、新たな再生を目的とした産業再生機構という組織を設立して、整理回収機構と明確に機能を分けることによって、それの方が効率的、効果的であるだろうということで、この再生機構の創設を提案している次第であります。
奥田委員 数字の部分は副大臣でもいいと言いましたけれども、こういった方針的なことやこういったことは大臣に答弁をお願いしておりますので、かわりに答弁していただいてもいいですけれども、そのときは少し遠慮していただきたい。
 私は、閣議決定で出てきた方針と違うんじゃないかというようなことを言っているんです。それにも反論はあるでしょうけれども、今の説明では、私は、最初の、去年の間に政府が望んでいた、目標としていた方針とは違うというふうに思います。
 あと、こういう買い取り価格ですけれども、簡単にお答えいただければと思います。
 事業再生計画を勘案して定められる適正な時価というふうに表現されていますけれども、これは結局、現在時価より高い、安いということでいえば、先ほどの室長さんのお話だと、現在時価よりは安いという表現でよろしいんですか。
江崎政府参考人 産業再生機構が買い取るものは、再生計画、これを前提といたしまして、ディスカウント・キャッシュフローというのがよく使われるわけでございますが、将来ネットのキャッシュフローがどれぐらいあるのか。また、部門によりましては整理するものもございます。そういったものの時価が幾らなのかということを勘案して現在の時価を決めるということでございます。
奥田委員 ということは、将来の付加価値も考えて勘案するということは、現在時価よりは高いということですか。高いか安いか、それだけで答えられませんか。
江崎政府参考人 仮に、再生する可能性がない、したがいまして整理してそのときに売るというのと比較をいたしますと、産業再生機構が対象にする、買い取りに入るというものは再生ができる蓋然性が高いというものでございますので、将来キャッシュフローが稼げるという意味では、現在ばらして売るよりは一般的には高くなるということで整理されるかと思います。
奥田委員 ここで買い取る債権というのが私もよく理解できていないんですけれども、機構が買い取る債権というのはどういう種類のものになるのか。例えば、株じゃない、社債でもない、土地も、一応原則としては買い取り債権とは見ないというふうに説明資料に書いてあったんですけれども、約定書でも買い取るんですか。
江崎政府参考人 基本的には、銀行が当該企業に貸し付けておる、いわば貸付債権でございます。
奥田委員 そうしたら、一千万円貸しているとすれば、その一千万円の約定書を八百万円で買ってくるとか、そういったことですか。
江崎政府参考人 その額面がございまして、八百万かどうかというのは、再生計画を勘案した時価に相当する価格で買うということでございます。
奥田委員 みんな、私も、それが清算という形や何かになると、金銭貸借のものがどういう評価になるのかよくわかりませんけれども、そこにはみんな担保や権利が後ろにくっついていて、その担保を判断して買い取るというのが普通だと思うんですけれども、そういう考え方でよろしいですか。
谷垣国務大臣 先ほど室長も御説明申し上げましたけれども、出口でどれだけの価値があるかということを判断します場合に、例えば、再生計画をやってもらう場合に債権放棄をしてもらわなきゃならない場合もあると思います、何割カットと。そうしますと、出口の価格を考えますときには、当然カットされた分も、つまり、カットするということはそれだけ減価するわけですから、そういったようなことも考慮に入れながら考えなきゃいけないということだろうと思います。
 もちろん、そのときに、担保がついているとかついていないとか、いろいろなことがそれはあるんだろうと思いますが、要するに、再生計画を立てるときには、ある部分はカットしたり、ある部分はリストラしたりしなきゃならない、そうしたときに幾ら値段がつくかという判断だろうと思います。
奥田委員 今債権のお話を聞きましたけれども、今度は、そういう再生計画にかかわれないような方たちの――今度は、企業が持つ債権、労働債権であるとか売り掛け債権であるとか取引先の細々とした債権、こういったものについては、再生計画に持ち込まれて整理される中ではどういうことになるのか。当然しっかりとした見解がなければいけない部分だと思いますので、お答え願います。
谷垣国務大臣 法的整理の場合は、今委員がおっしゃったような、金融機関が持っている貸付債権だけではなくて、労働債権や何かも全部いわばカットしたり、整理したりしながら法的整理するんだろうと思います。しかし、私どもの典型的に考えている、要するに、買い取り先は金融機関の持っている貸付債権ということは、本来その企業が得意先とのいろいろな取引や何かを余りいじってしまいますと再生が難しくなる、だから、金融機関の債権をどうするかということは考えるが、それ以外のところは原則として生かしたままで再生計画をつくるということを基本に考えております。したがいまして、ここが法的整理と違う、いわば私的整理を使うこのシステムのメリットだろうというふうに私は思っております。
奥田委員 確かに、売り掛けの一律カットまでされない再生が目指せるということであれば、それは一つのメリットかと、私的整理と法的整理の中間的な形なのかなというふうにも思います。しかし、今、銀行関係だけの債権で考えるとおっしゃいましたけれども、こういったときにもし債権放棄がついてきたりすれば、株主の権利というのはどうなるんでしょうか。減資とかそういうことは当然行われると考えてよろしいですか。
谷垣国務大臣 それは、個別のことを考えますと全部は言えませんけれども、再生計画の中で当然御判断をいただかなきゃならぬことだろうと思います。
奥田委員 この条文だけ読んでみますと、株主も再生計画にはかかわれないわけですよね。ですから、そういうところの、例えば、権利放棄がついた場合はぐらいでもいいですよ、そういったところは個別の判断ではなくて共通のスキームとして用意しなければ大変な混乱が起きると思いますけれども、大臣、どうでしょうか。
谷垣国務大臣 それはやはり、結局、再生計画の合理性、妥当性というところになってくるのではないかと私は思うんですね。ですから、そこで御判断をいただけばよいことではないかと思います。
奥田委員 ちょっと私も、そうでないとかそうであると言い切れない部分ではありますけれども、こういったことが、株主は、相談がなくて再生計画で出て株主の権利がなくなる、あるいはそのまま維持されるということが、判断の違いがあってよろしいんでしょうかね。
谷垣国務大臣 今の委員のお尋ねは、要するに、企業がもう再生をさせなければならないようにふらふらして、それを再生させよう、そのときの責任は一体だれにあるのかという話だろうと思うんですね。
 それで、金融機関に対しては、確かに今まで、貸し付けの債権をカットすることを求める場合が再生計画では当然あり得るだろう。そうすると、では株主はどうかということになりますと、多分減資なんかをする場合が、やはり再生計画として減資をしなければ再生計画がうまくいかないような場合が私は一般的だろうと思うんですね。そうしますと、ではそのときに、株主に対して減資をしなければならないようないわば経営をした経営者の責任というのは、これは問われることが私は一般的ではないかなと思います。
 ただ、一般的で、経営者が交代していくというのが多分多くの場合であろうと思いますけれども、しかし他方、中小企業なんかでは、この経営者を欠いてはなかなか再生できぬという場合もあるのかもしれません。ここらはまた、スポンサーにつく方々の意向というものがどうあるかというようなこともあるんだろうと思いますので、結局、そこは再生計画の中でそういった問題を御判断いただくということになるのかなというのが私の考え方でございます。
奥田委員 例えば、株主に通達があって委任状でももらうとか、そういった、総会あるいは総会に準ずるような告知の手続があってのことであればそれは認められることなんでしょうけれども、それを再生委員会が判断して再生計画でやっちゃったといったらそれは大変なことだと思いますので、その辺、しっかりと確かめて事に当たっていただきたいと思います。
 あと、ちょっと時間が残り少なくなってきましたので、活力再生措置法の方の質問に入りたいと思います。
 三年間の実績の中で、今二百件弱ぐらいあるんですか、きょうも新聞に出ていたと思いますけれども、この措置法の三年間、改正するに当たっての評価というものを平沼大臣の方から言っていただければと思います。
高市副大臣 現行法の制定から三年余りで、百八十九件認定実績がございます。うち、経済産業省分は百二十一件でございます。
 大半がまだ計画を進めている段階ではございますけれども、経営資源の有効活用といった目的に沿った運用がなされているという点と、それから大半の計画において生産性指標が改善しているといったようなことから考えますと、おおむね成果が上がっている、相当程度の成果が上がっていると考えております。
奥田委員 私も田舎の方におりますと、役所の方で、地元では活力再生措置法の問い合わせや御相談があったかというと、一件もないと。全国で三年間で、先ほど百八十九件と言いましたけれども、地元では一件もありません。
 みんな何が使いやすいかというと、これは中小企業対象になるのかもしれませんけれども、経営革新法、同じ時期にできた経営革新法の方がずっと垣根が低い。そして、その中身は減税措置であったり融資であったり、一部補助金もありますけれども、そういった使いやすい制度になっている。
 ただ、この制度の中身が、じゃ、活力再生の法案と中小企業革新の法案とどう違うんだ。対象が違うだけですとか、資本金で入り口分けてありますとか、ちょっとそういうのじゃ困るんですけれども、私もその違いが余りわかりませんので、三年前の復習になりますけれども、ぜひお答えいただければと思います。
西川副大臣 経営革新支援法は、一番決定的に違うのは、付加価値を年率三%、この付加価値というのは経常利益と人件費とそれから減価償却、これの総和が年率三%を超えた新しい事業をやろうとする経営者に対して無利子融資を行ったりいろいろする、ただいま先生がおっしゃったような。だから、確かにその方が使いやすいと、平成十一年から三年間でもう約九千件ぐらい使われておりまして、そういう意味では御指摘のとおりであろうと思います。
 しかし、今度この再生法で私どもが考えておりますのは、一般の中小企業が新規事業をやろうとする場合に、この三%という一つの枠というかハードルといいますか、これを取っちゃうんですね。したがって、横に広がる、範囲が広がる。だから、資本金でどうとかそういうことではなくて、今までと同じ、革新支援法の対象になる中小企業がさらに有利になる、こういうふうに御理解いただければいいんじゃないかと思います。
奥田委員 やはりこうやって皆さんに使いやすいものをすれば、その反応というのは明らかに出てきますし、二年、三年という時間を経たときには、どういったところがいいのかということもまた確認できると思います。
 そして、私も最初にも、普遍的な制度、すべての人に平等に使える制度、こういったものの拡充を図っていただきたいということを申しましたけれども、与党の委員からも質問があった信用保証、こちらの方も、枠の拡大だとか借りかえだとか、使いやすい措置が行われていますけれども、この厳しいときに保証料を上げる。それは、平均借り入れ、平均の保証額からすれば年にどれだけだということは大臣からもお話ありましたけれども、そういったところで、厳しい中でまじめにやっている人にほかの倒れてしまった人のとばっちりが来るというような視点だけではなくて、例えば、こういうところでも金融機関に、出捐金はしていますけれども、一〇〇%を保証するということが本当にいいことなのか。
 一〇〇%を保証してでさえまだ銀行が融資を決めてくれない、信用保証協会がいいと言った後銀行がうんと言えばいいよと言っているけれども出てこないといった例も多々ありますので、企業側の負担をふやすというより、それと並行してでもいいですよ、金融機関の、やはりだれが見たってちょっとおかしいんじゃないかというような保証の制度というのをもう少し自分のリスクもあるものに変えていくとか、やはりそういったバランスをとりながら施策を進めていただきたいなということをお願いし、また、選択と集中は、企業よりも政府と行政の方が一番やらなければいけないことだと思いますので、ぜひ皆さんの足元もしっかりと見据えていただきたいというふうに申し上げさせていただいて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
村田委員長 中津川博郷君。
中津川委員 民主党の中津川博郷です。
 本日は、産業再生関連三法案についての審議なんですが、まず、その前提であります景気状況、これを大局的な見地から何点かお聞きしたいと思っております。
 株価の下落に歯どめがかかりません。一昨日、二十年ぶりに日経平均株価が一時八千円を割り込みました。と思ったら、きのうはさらに下がって、とうとう終わり値で七千八百六十二円四十三銭と、バブル崩壊後最安値であった。本日は、先ほど終わったところで七千九百円台だというふうに、八千円を超えなかったということでありますが、まさに市場はどしゃ降り状態である。
 平沼大臣、政府の経済担当大臣でおられまして、この原因は一体何だと思われますか。
平沼国務大臣 今回の世界同時的な株価の下落というのは、やはり一番大きな要因は、イラク情勢というものが非常に大きく影を落としていると思っています。
 そういう意味では、例えば米国も含めて世界の株が同時に安くなっているわけでございまして、私どもとしてはそこが主原因だと思っておりますけれども、しかし、総体的には、やはり日本の経済がデフレ基調であって先行き不透明だ、こういうこともあわさってこういう株の下落につながっている、こういうふうに判断をしております。
中津川委員 いや、平沼大臣からそういう答弁を聞くと、ちょっとがっかりしたんですが。
 きのう、インターネットのヤフーが、ネットで、この株価下落状況の原因は何だったと思うかとアンケートをとったんですが、よく聞いてくださいよ、経済失政だという答えが六四%、それからイラク、北朝鮮情勢だという答えが一三%、不良債権問題だとする答えが九%だったんですよ。六四%が経済失政、小泉内閣の経済失敗。これはもう断トツですね。国民はそう思っているんですよ。
 もちろん、これはインターネット上のアンケートですから、すべて信頼性があるという点では考慮しなければなりませんけれども、これは世論の反映の一端であることは間違いありませんし、私は、街角で聞いても同じような結果が出てくると思いますよ。この不景気は、小泉内閣によって引き起こされた人災なんだ。株式市場というのは世論を示すバロメーターですから、この株価というのは小泉政権の経済無策に対する不信感のあらわれなんですよ。
 思い出しますと、小泉内閣が、今から二年前ですか、九・一一の前にどんどん株価が下がりましたね。たまたまというか運悪くか運よくかというんですが、あの九・一一があった翌日株価が下がったわけなんですが、これがその九・一一の結果だというようなことになったんですが、実は私調べてみたら、その九・一一の前に株の総価額、これは、その以降よりも以前でもう下がっているんですよね。責任がそっちに行ってしまった。私は、今回同じケースだ、何か繰り返しているなと。
 多分答えは、イラク、北朝鮮、これが全くないとは言えないとは思いますけれども、国民の多くは、それが主原因じゃなくて、何度も繰り返しますが、これはやはり小泉内閣、経済の大失敗だと。平沼大臣の親分というか派閥の長であります亀井さんだって言っているじゃないですか。そうでしょう。(発言する者あり)兄弟分ですかね、もう今平沼さんの方が偉いですから。だから、僕は、もうちょっと国民が理解できる答弁をしてほしかったと思うんですけれども。
 先日の財務金融委員会で私も竹中大臣に辞職を迫ったんですが、これは竹中大臣の評価でもあるんですね。もう人心一新ですよ。だから、竹中大臣の更迭を求めていくんですが、竹中さん何と言っているかというと、実体経済は悪くないと言うんですよ。もうがっかりしましたですよ。イラク情勢のためだと言っている。もう嫌になっちゃいますよね。
 官房長官ものんきなことを言っていましたよ。官房長官ものんきなことを言っているんだ。「経済の実態はそれほど悪くない。株価はそれを反映していない」、福田官房長官、七日の記者会見で言っているんですよね。塩川大臣なんかエキサイティングしちゃって、証券業界を怒っているんですよね、国民に信頼されていないと。証券業界のせいにしている。
 もうこれだけ今の内閣というものが国民の思いとかけ離れているということを、まず皆さんたちによく認識してほしいと思うんですね。
 今、これだけ世間とはかけ離れてしまったわけでありますが、もうとにかく一刻の猶予もない。竹中さんが三月危機はないと言ったときに、あの人の言うことといつも、去年振り回されましたが、反対のことが起きているので、僕はあるんだというふうに思っていたんですが、もう金融危機に入っているというふうに解釈している人もたくさんいるわけでありまして、今こそ、大臣、政策転換が必要なんじゃないかと思うんですよ。とりあえず、これが七千円、六千円になったら大変ですよ。今、法案審議で、きょう後から私も質問しますが、再生機構とかいろいろ、これはこれでまた今審議している意味はありますが、こんなことをやっている時間はないですよ。総動員してやらなきゃいけないでしょう。
 それで、きょう、参考人初めいろいろ来ておりますので、インフレターゲットとか買い切りオペ、為替の円安への誘導など、あるいは補正予算も必要となるんじゃないか、もうわいわい出ておりますが、政策総動員、これが今必要だというような報道がどんどんなされていると思うんですが、その点について、日銀、財務省、そして平沼大臣に、率直にひとつ国民にわかりやすくお考えを伺いたいと思います。
平沼国務大臣 小泉内閣の失政ではないかというような御指摘がありました。ただ、今の株価というのは確かに厳しい数字であることは事実で、私は、ですから御答弁の中で、主要因というものは、世界同時株安というようなことに象徴されているように、イラクの不透明なこういう緊迫した情勢がいわゆる市場から敬遠をされて、そして安くなっているということは、主要因としては事実だと思います。それから、やはりそのときに、副次的な意味として、日本の長期のデフレ傾向、こういうものが根っこにあるということは申し上げました。
 しかし、私は、例えばGDPで見ますと、こういう厳しい中でも例えばプラス〇・九、こういうような数字が出ていることも事実でございます。ただ、ここで問題なのは、いわゆる実質と名目という形で、実質がプラス〇・九なんですけれども名目がマイナス〇・六というのはそれは確かに問題だと思いますが、しかし実質ではプラスの面が出ておりますし、また、これはいろいろ御議論があるところだと思いますけれども、上場企業のいわゆる決算の予測というのは、大体七割ぐらいは経常利益が非常に大幅にアップするというようなことも出ています。ですから、そういうところをとらえて、官房長官もあるいは竹中大臣も、ファンダメンタルズはそう悪くはないんだ、こういう発言につながっていると私は思います。
 ですから、そういう中で、私どもとしては、これは先生の御満足がいただけないかもしれませんけれども、今厳しいですけれども構造改革というものをしっかりと進めて、そして日本の背負っている負のものをやはりここは一致協力をして清算をして、日本の経済力というのはポテンシャリティーがあるんですから、そのポテンシャリティーを生かすためにも、今背負っている、がん細胞にも匹敵するような不良債権ですとか、あるいはいろいろな今引きずっている問題というものを克服していくということは、私は大切だと思っているわけでございます。
 そういう意味では、今御議論をいただいている、衆議院では通していただきました平成十五年度の予算の一日も早い執行ですとか、あるいは補正予算で手当てをさせていただいた、そういったもろもろのことを着実かつ確実にやっていく、こういうことが必要だ、私はこういうふうに思っております。また、今小泉さんも、こういうものに対処をしては、柔軟かつ大胆に対処をする、こういうことを言っていますから、いわゆる金融政策も含めて、これは柔軟かつ大胆にやっていくべきことがあったらやっていくべきだ、このように私は思っております。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 為替の水準についての御質問でございましたけれども、為替相場につきましては、御承知のとおり、いわゆる広い意味でのファンダメンタルズを反映して安定的に推移するということが、まさに為替市場においてさまざまな資金調達をされている方に不測の被害を与えないためには必要だと思っておりますので、我々としては、為替相場の動向をよく注視いたしまして、必要に応じて適切に対応していきたいと思っております。
 いずれにせよ、為替相場というのは、御承知のとおりお互いの相互関係で決まるものでございますので、先ほど申し上げましたように、広い意味でのファンダメンタルズというのは、成長率あるいはこれからのポテンシャリティーについての見込み、あるいは現在の金利水準、貿易収支、あるいは直接投資を含めた資金、資本の移動、この全体によって決まるものであると思っております。
 そういう意味で、そういう意味でのファンダメンタルズからかけ離れたところに人為的に誘導するということについては、やはり相互の信頼関係からいって適当ではないと思っておりますが、ただ、それが現在の状況において、さまざまな地政学的な情報等においてナーバスな動きになっておりますけれども、そういうものについては適切な対応をするべく、常によく見てまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
山口参考人 お答え申し上げます。
 二点御質問があったかと思いますが、まずインフレターゲティングについてでありますけれども、まず、このところの株価の不安定な動きにつきましては、基本的には国際政治情勢の緊迫化、こういったことを背景とするものというように理解しております。ただ、期末を控えておりますので、そういう中で金融システムとかあるいは企業金融に及ぼす影響を中心に細心の注意を払って見ていく必要がある、私どもそのように思っております。
 実は、昨日、株価の不安定な動きというのが今後金融市場にも波及することを未然に防ぐ、このような観点から、私ども追加的な資金供給を一兆円行いまして、当座預金残高を二十二兆円程度まで引き上げたということであります。今後とも金融市場の安定に万全を期す方針であるということでございます。
 それから、お尋ねのインフレターゲットの問題でありますが、私ども、海外の事例も含めまして、かなり勉強してきております。ただ、その上で、消費者物価が安定的にゼロ%以上となるまで今の思い切った金融緩和の枠組みを続ける、このように宣言をし、デフレ克服に向けての私どもの決意を明らかにしておるわけでありますが、私どもの考え方としては、現在の状況であれば、こうした宣言によって何とかデフレ克服につなげていく、こういうやり方の方が適当かつ有効なのではないか、このように思っているところであります。
 それから、もう一点でありますけれども、長期国債の買いオペの増額ということでありますが、この件につきましては、御承知かと思いますけれども、一応、日銀当座預金につきまして、それを円滑に供給する上で必要と判断される場合、その場合におきまして、銀行券の発行残高という歯どめを設けまして、買いオペを増加する、こういうことになっております。現在、月一兆二千億、買いオペをやるということになっておるところであります。私どもの理解といたしましては、現在のところ、潤沢な資金供給を行う上で追加的な国債の買いオペが必要だ、このようには認識しておらないということであります。
 いずれにしましても、今行っております思い切った金融緩和によりまして、この年度末に向けて、市場の安定確保に万全を期していきたい、このように考えております。
 以上でございます。
中津川委員 平沼大臣、イラクの問題というのが主要因だとまた繰り返されましたが、国民は、株が下がるのは、株をやっていない人も、普通の庶民も、奥さんたちも、これは小泉さんの経済が間違っているんだとちまたの人はみんなそう思っていますよ。
 だって、まだ、イラク戦争、始まってないんですよ。これは、始まったらもっと下がりますよ。まだ、やるかどうか、そこもはっきりしてない状況ですよね。それを、今この段階でこれだけ下がっている。みんな、まさかですよね。市場関係者、我々議員はもちろんですけれども、経営者、いやあ七千円台になった、まさか、庶民も、だって、そういう、大臣とはやはり違った思いですよ。これはだから大変なことになると思うんですね。それはそれでいいです、お立場上、個人的にはどう思っているか知りませんけれども。
 そこで、今、渡辺局長ですか、必要に応じて、為替、適正に対応していくということなんですが、去年は、黒田財務官初め、額賀さんもそうですし、それから塩川さんも、一ドル百四十円、五十円がいいと言ったんですけれども、今年に入ってぴったりやまって、その話題がなくなって、インフレターゲット論がもうオンパレードになっちゃった。だから、僕は、何で、この間もG7へ行って、為替の話、しっかり日米合意、アメリカとは仲よくやっていくということで、これはもう基本なんですから、それをしなかったかというふうに僕個人は思って、この間も二十五日のとき、塩川さんに質問したんですよ、午後一番で。そうしたら、自然に任すなんて言ったんですよ。そうしたら、ばあっとドルが下がっちゃったじゃないですか。
 今、溝口さんですか、財務官、そして渡辺局長、このラインでいて、もうちょっと具体的に、この適正に対応していくというのを、これは市場もきょう見ていますから、ひとつ言ってもらいたいと思うんです。百十七円を超えると、市場介入、もう二回していますよね、数千億ずつ。覆面介入ですよね。ですから、もっとはっきりと、具体的な数字、メッセージを出した方がいいんじゃないんですか、この適正ということ、数字を挙げて、ひとつ言ってください。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど議員から御指摘がありました二月二十五日の塩川大臣の発言の関係でございますが、市場の原理に任せた為替の相場にということを大臣が申し上げましたけれども、これは、基本的には変動為替相場を採用している現在の仕組みの中においては、基本的な数字はまさにマーケットにおいて決まるということであります。
 ただ、そのマーケットにおいてさまざまな要因が入ってくることによって、広い意味でのファンダメンタルズからずれてくることがあるわけでありますから、そういうものについての対応は考えていく必要があるということは、御指摘のとおりでございます。
 それで、先日のG7において為替の議論は行いまして、その中で、基本的にはやはり、今も申し上げましたように、ファンダメンタルズに即した為替相場が形成されることが必要だという前提の上で、引き続きマーケットをよく注視して、必要があれば適切に対応するということを申し上げております。
 それから、今、一月、二月において、いわゆる俗称覆面介入ということをやったことは事実でございますが、先生がおっしゃったように、十七円が目安であったかどうかについては、私どもとしては現在お答えを控えさせていただきたいと思っております。(中津川委員「いや、そのときにやったじゃない」と呼ぶ)どの時点でやったかということについてはまだ明らかにしておりませんので、我々としては、それを申し上げる立場にはありません。
 それについて、まさに、昨年、塩川大臣の方が、例えば購買力平価の数字を申し上げて、こういう数字もある、そういうものを申し上げたことは事実でありますけれども、先ほどから申し上げておりますように、為替というのはあくまでも相対水準で決まるわけでありまして、現状でいえば、G7で集まったときには、ユーロ、ドルあるいは円、それに対して、あと、イギリス、カナダの通貨も含めての相対関係で決まるわけでございますから、そういう中でしか決められないということはあります。
 ですから、それが全体としてファンダメンタルズからどれだけ離れていたかということは、その時点その時点で、先行きの見通し等も含めて考慮していくことでございますので、具体的に、幾らの水準をもって現在正しいとか、それが適正であるとかということは、現状の仕組みの中では、申し上げることは控えさせていただきたいと思っています。
 ただ、大きく乱高下したときには、先ほど申し上げましたように、さまざまな不測の被害が生ずるわけでありますから、そういうものについては適宜適切に対応することが必要であるというふうに考えております。
中津川委員 日銀にも。
山口参考人 お尋ねは為替の問題でありますが、私ども、為替政策につきましては、これは財務省の所管ということでありますので、基本的に、これについてコメント申し上げるというのは差し控えさせていただいているということでございますけれども、私どもも、基本的な立場としては、ファンダメンタルズを反映する形で安定的に推移することが望ましい、このように理解しておる次第であります。
中津川委員 今の、山口さん、これじゃまた、あれですよ、市場、反応しませんよ、これは。まあいいでしょう、そういう認識なんだということですね。
 そこで、もうちょっとこの株価、株というのは、これは日本の経済の通信簿なんですよ、通信簿なんです。ですから、これはやはり政治家はまず敏感にならなきゃいけないと思うんですね。そこで、もうちょっと株についてお聞きしたいと思うんです。
 今、銀行の含み損がどんどん増大していますよね。大手銀行が三月末に予定している二兆円余りの増資、この効果はもうすっ飛んじゃう。八%自己資本比率、これを維持するのは大変だと思うんです。そこで、心配するのは、私は中小企業の立場で今までずっとやってまいりましたが、中小企業に対しては、貸しはがし、貸し渋りが容赦なく行われていくんじゃないかとか、こんなふうに考えているんですが、御所見を賜りたいと思います。
平沼国務大臣 株価が下がりますと、御指摘のように、銀行の資産がそれだけ目減りをする、そういうことになると、BIS規制という形で連動しておりますと、厳しい状況が想定されています。
 私どもといたしましては、一つは、今進んでおります銀行の株式保有制限の実施という問題があります。こういった問題も、私どもは、やはり金融当局において、こういう時期は、適切な判断をしていくべきではないかな、こんなふうには思っているところでございます。
中津川委員 大分前段の質問が長過ぎましたが、ここから、産業再生機構法案について伺っていきたいと思います。
 これについては、昨年来、構想が出て、いろいろなことを言われて、いろいろ報道を私たちも追ってきたんですが、どうもイメージがわからない、これが正直なところなんですね。私たち、かかわっている者でもそうですから、これは一般の人には余計わからないと思うんですね。
 基本的、根本的なところを伺っていこうと思いますので、それで、今までの各委員からの質問とダブるところもあると思うのですが、どうぞ、皆さん方の答えが、後でこのビデオを見て、国民がなるほどとわかるように、そういう答弁をひとつお願いしたいと思うんですが。
 まず、機構の基本的な役割は何なのかということです。何のために機構はつくられるのか。
 RCCというのがありますが、もともとRCCは不良債権の回収ということを目的にしたわけでありますが、業容を拡大し、今、企業の再生も行っているということですが、これと機構とはどこがどう違うのか。債権の区分が違うのか、企業の規模が違うのか、わかりやすく説明してほしいと思います。
 もうちょっと質問を続けます。
 そして、両者が協調していくということはあり得るのか。協働、この間の参考人の質問の資料を読ませてもらいましたが、協働という言葉ですね、ともに働く、動く、こういう意味がありますが、こういうケースは想定しているのかということであります。
 企業規模については先ほど来からもいろいろ質問がありましたが、機構は大企業しか相手にされないということでありますが、中小企業も対象となるんでしょうか。
 以上、よろしくお願いします。
谷垣国務大臣 わかりやすくということでございますから、うまく御説明できるかどうかでありますが、日本の中には、本来、優秀な経営資源と申しますか、優秀な技術開発力があったり、あるいは伝統的な、立派な、だれでも買いたいというような商品を持っていたり、そういう優秀な経営資源がありながら、あるときの、いろいろな借金をした投資の失敗なんかに足をとられてしまって、そのぬかるみの中で苦しんでいる、こういう企業が幾つもございます。それをほったらかしにしておけば、今のような経済情勢ではこれはもう倒産していく可能性が極めて高い。
 そうしますと、せっかくの優秀な経営資源あるいは雇用している労働者、こういうものが散逸して、日本経済に対するダメージというのは非常に大きくなりますから、これはやはり関係者が寄り集まって、その企業をどうやったら再生できるかという話をしていく必要があるわけですね。ところが、金貸している先がたくさんある、金融機関がたくさんあったり何かしますと、なかなかその話が、お互い疑心暗鬼になって、あいつがうまいこと考えているんじゃないかというようなことで疑心暗鬼があったりして、なかなか進んでいかない実例がたくさんございます。
 本来、民間の話し合いの中でそれがどんどん進んでいけばそれでいいんですが、そうやって進んでいかない例が幾つもありますので、やはりそこに、いわば中立な調停者と申しますか仲介者が入って話をまとめて、そしていろいろな利害関係人の持っている債権などもメーンバンクとその機構に統一して、集中して、そして強力に支援をしていこう、これが目標でございます。
 そこで、それは一体、RCCもそういうことをやっているんじゃないか、どこが違うんだというお話があるかと思います。
 これは、先ほどからの御議論の中にもありましたが、RCCは、要するにもう何か破綻するんじゃないか、つぶれるんじゃないかという、うんと心配のある、かなりぎりぎりまで来ているところの債権を、債権回収、なかなかもう難しくなっているから、債権回収の専門家、RCCがやろうといって買い集めて、しかし、本来は債権回収をしなきゃならないんだけれども、その中で相当傷んでいるものが多いんだけれども、中で、ふるいをかけていくときらっとしたものが残っている、そのきらっとしたものを何とか助けていこうというのがRCCですね。ですから、本来相当傷んでいるところのものを買い集めてその中から探すんですから、この御苦労はなかなか実は大変なんですね。
 今度我々のつくりますのは、もうちょっと程度のいいところです。程度のいいところと言うと言葉は悪いですが、ちょっと金利を払うのを待ってくれとか、こういうようなところがありますね。もうちょっとよくなればやれるんだけれども、今はちょっと金利を減免してくれ、こういうようなところで、関係者がたくさんいるのでなかなか話が進んでいかないというところを我々が、我々がというか産業再生機構が乗り出していって、そして解決しよう、こういうことでございますので、もともと債権回収が本来の目的のRCCと立て直すことが主眼である産業再生機構、やはり目的において違いがあると思います。
 では、この二つは協調するのかしないのかということでございますが、これはどちらも政府が関与しているところでございますから、大きな意味では、私は協調していく。当然同じ目的に向かって協調していきますし、それから率直に申し上げますと、お互いにある意味では似通ったこともやっておりますから、競争しながら、どちらがうまくできるかということもないわけではないと思いますが、具体的な、典型的な事例で、では両方が一緒に関与してやるような場合は、私は余り想定しやすくないな、そういうのは余りないんじゃないかというふうに思っております。
 そこでもう一つ、扱う対象の企業の大きさですね。これはイメージとして、何か産業再生機構は大きな銀行が扱う大企業を扱うだけなんじゃないかというイメージが先行しておりますけれども、それは誤解でございまして、やはりそういうイメージはぬぐい去っていただいて、中小企業や何かも私は利用していただきたいと思っております。
 それで、それは……(発言する者あり)いや、やらぬなんということは、担当閣僚である私は一切申し上げておりませんで、要するに、もうそれは、そこはもう、活力が本当になくなっちゃっているところは、これはなかなか大変です。だけれども、きらっとしたものが、いい経営資源があるようなところを、手を加えて、関係者がたくさんでできないというようなものがあったら、それは中小企業であろうと大企業であろうと、我々は乗り出していって、何とか再生をして生かしたい、こういうためのものとしてこの機構をつくるわけでございます。
中津川委員 三月七日の日経新聞に、「ハザマ再建」ということで、これはRCCが乗り出したんですね。これを見てますます私もわからなくなってしまったわけです。
 今の大臣の御答弁の中で、大変、もう破綻懸念先、ハザマも大変なんだな、こういうことでありますが、しかし、産業機構の方は、きらりと光るというか、金利の条件変更、それくらいのところで再生が可能だというようなところを対象にすると言うんですが、そんなことであれば、一々そんなところに送り込まないで、銀行が個別に対応して、企業支援、アドバイスできるんですよ。一番その会社の内容を知っているのは、RCCでもなければ今度つくるこういうものでもなく、銀行なんですよ。銀行が一番よく知っているんです。それを何でこんなことをやるのか、そこのところ、今の御答弁でちょっと、ますます混乱していくんですが。
谷垣国務大臣 中津川委員のおっしゃいますように、日本はいわゆるメーンバンク制というのがありまして、中心となってそこと取引をしている銀行が、いわばいろいろな経営の相談にもなって、苦しいときには追い貸しや何かもしてあげて、そして、場合によっては、ぎりぎりになってくると経営者まで乗り出していって再生させたという例がかつてはたくさんありました。ところが、こういうメーンバンク制がなかなかうまく機能しなくなっている現実が私はあるのではないかと思います。
 ちょっと、メーンバンク制が機能しなくなっていると言って、私もちょっと御答弁しながら大ぶろしきを広げ過ぎてきたなと思うんですが、さらにもう少し、それはちょっとおきまして、具体的に申し上げますと、メーンバンクが全部知っているとおっしゃいますが、例えば、過剰供給なんかがたくさんありますときに、メーンバンクを超えて再生をしなきゃならないような場合、統合して再生をしなきゃならないような場合もあると思います。こういうものはなかなかメーンバンクだけに任せておいてはうまくいかないという例もあるだろうと思います。
 それから、これは先ほどから御答弁の中でやや言っておるんですが、メーンバンク制でずっと最後まで貸して面倒を見るという仕組みの中では、不良債権処理のマーケットとか再生ファンドみたいなのはなかなかできてこなかった。そこらが今過渡期に来ているんじゃないかなというふうに私は思っておりまして、そういうものの育成も目指してやっていく必要がある。そういうメーンバンク制の一種の曲がり角ということが私はあるのじゃないかと思います。
中津川委員 日本銀行の山口さん、申しわけありません、どうぞ退席してください。
 大臣に引き続き。産業再生機構というこの名前ですね、産業再生とうたっているわけで個別企業の再生ではない、こういうイメージがあるわけですが、政府は、産業全体、業界全体を再編していくというスキームで考えているのではないかなと思うんですが、例えば、建設、流通、不動産、大変不況業種、厳しい業種で、過剰供給業種ですよね。政府がかかわってくるということは、こういう業界を整理整とんしていくという目的があるんですか。
谷垣国務大臣 これは、政府全体としては、まさに平沼大臣のところでやっておられます、今度改正をお願いしておる産業再生法ですね、こういうものの大きな目的はまさにそういうところにあるかと思います。
 それで、我々の機構の方は、むしろ個別の、きちっとした経営資源を持っているところの再生を通じて、ミクロな手法で、結果として産業再編に資していくということを目的としておりまして、ですから、私のところは、個々の企業が再生可能なよい経営資源を持っているかということと同時に、供給過剰分野のところをそのまま過当競争を温存するようなことはしないということを通じて、結果的に大きな目的に資していく、こういう目的で我々のところは動いているわけです。
中津川委員 整理整とんしておくという意味で解釈してよろしいんですね。
谷垣国務大臣 ですから、まず、例えばさっきお挙げになりましたような、業界をこうしていこうという構想は、むしろ私たちの機構自体が持っているわけではありません。当該企業とメーンバンクがここを何とかしたいといって持ってきたときに、そういう今のようなことを視点に置いて、経営資源がきちっとしたものがあるかどうかを見きわめながら、だけれども、過剰競争に、過当競争に手をかすわけではないぞということを通じて大きな意味での再編に結びつけていく、こういうことでございます。どちらかといえば、ミクロな手法を通じてやっていこうというのが我々の機構でございます。
中津川委員 先ほども同僚議員から質問がありましたが、今回内定したトップ人事というのが社長と産業再生委員長、これが分離される、その上に所管の大臣がいらっしゃるということで、これはますますわからなくなるということで、業務全般の責任者である社長、それから再生案件の決定をする委員長、これはもう別人なわけなんですが、これは動き出しますと、理念的には先ほどの御答弁でまあそうかなとなるんですけれども、機動的な判断ができなかったり、それからやはり責任の所在が不明確になるという問題が生じるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
谷垣国務大臣 産業再生機構の社長とそれから産業再生委員長の役割分担につきましては、閻魔大王という言葉がちょっと先行し過ぎたところがございまして、それで、どちらが一体閻魔大王で企業の生殺与奪の権を握るんだというような観点から、どうもそれは産業再生委員長が決めるんじゃないか、そうすると、産業再生委員長がトップである、こういうような誤解があるように私は思うんです。
 一般企業におきましても、経営の最高責任者というのはいわゆるCEOですね、これが実際にその企業運営の責任を負っていくわけですが、その意思決定機関である取締役会の議長というのは別におられるわけですね。この産業再生委員会は、もちろん取締役会の中におけるいわばインナーボードで、ここは再生計画や買い取り決定の妥当性を判断するところで、全体の責任は社長に負っていただくという形でございます。
中津川委員 今の御答弁に関連するんですが、業務を開始して、債権の買い取りが公正かつ経済的に適正に行われるかどうかということでありますが、この債権買い取り価格、これは非常に重要なものだと思うんですが、このルールがどうなっているのか。それから、金融機関などの債権者の単なる肩がわりになるような高値で買い取りをするというような懸念はないのか。いかがでしょう。
谷垣国務大臣 結局、価格は再生を見据えた適正な時価という表現をしておりますが、これは結局、三年の再生を終えたときにどれだけの値段で価値がつくだろうかということを前提に判断するわけでございますから、この判断が甘ければ二次ロスみたいなものを生む危険も多いわけでございますし、また、それを持ち込んできた金融機関に対するいわば裏からの公的資金の注入だと言われるようなそしりも出てくるかもしれません。
 そこで、買い取り価格は対象事業者の事業再生計画を勘案した適切な時価を上回らないことというふうに法で明記をしておりますし、それを担保する手法として、先ほどから申しております産業再生委員会という中に専門家を集めていただいてその妥当性を判断していただく。
 それからもう一つは、それを決めますときにいわゆるデューデリジェンスみたいなものをいろいろ行うわけでありますが、そのときに、やはり市場関係者の声ができるだけ、例えばアウトソーシングをしていくような場合もあるでしょうし、そういう手法を使いながら適正さを担保してまいりたい、こう思っております。
中津川委員 今お話が出ました二次ロスなんですが、これは実際のところ、買い取った債権の売り値が買い値を下回れば当然二次ロスが出るわけでありますが、そうなった場合、これは国民の負担になるわけですね。それで、それは政府は私的整理ということで済ませちゃうのか。この責任という意味ですね、再生支援の判断、この責任というものを、これは負うんですか、負わないんですか。
谷垣国務大臣 二次ロスにつきましては、個々の案件では利益が出ることもあるしロスが出ることもあるだろうと思います。そこで結局、機構としては、機構の業務終了時のトータルで収支を考えるべきものであるというふうに思いまして、最終的に損失が出る場合に備えて、つまり機構の解散時点ですね、仮に債務超過となった場合には政府が補てんできると法案に規定をしているところでございます。
 ただ、去年の十二月十九日に基本指針を決めていただきましたけれども、この解散時点における最終的な国民負担については最小限となるように努めるべきものだというふうに決めていただいておりまして、制度設計に当たってはその点に留意してやってきたつもりであります。つまり、それが適正な時価を上回ってはならないということでございます。
 それで、それからまた、先ほどからこれはたびたび繰り返しておりますが、再生計画の出口において自力で資金調達などができるような形というようなことを念頭に置いて判断するということは、二次ロスの出る個々の案件でも最低限になる一つの保証だろうと思いますが、そういう形で運営をしてまいる、こういうことでございます。
中津川委員 たくさん通告はしておったんですが、同僚議員も重なっているところもありますので、最後に、雇用という問題に対して確認したいんですが。
 今回のスキーム、雇用というものに対しては余り見えてこないというところですね、働いている人たち。特に、今回は政府が中心になってかかわってくるわけでありますから、この雇用というもの、単にどんどんリストラをしていっていいという民間主導とは違うと思いますんで、雇用の問題は、私は政府が非常に責任を持って負うべきだと。大臣の御答弁を伺いたいと思います。
谷垣国務大臣 雇用への配慮という点につきましては、昨年の十二月十九日に決めていただいた指針の中にも書いてございますが、これは、そういう政府の雇用対策全体として取り組むべきものだというふうに考えております。
 それから、個々の事業再生に当たっては、先ほどからの御議論にもありましたけれども、当然、その中で雇用をどうしていくかということを議論していただかないと、実効的な再生計画がなかなか組み立てられないんだろうと思います。そこで、そうした点、機構が再生支援の判断を行うに当たってどのように勘案していったらいいかということは、これはちょっと十分に検討して詰めてまいりたいと思っております。
中津川委員 終わります。
村田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五分開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松野頼久君。
松野(頼)委員 民主党の松野でございます。
 きょう午前中から、この産業再生機構法の審議をしていますけれども、非常に、大臣もわかりづらいというふうにおっしゃっていましたが、私も、見て非常にわかりづらいんですね。このわかりづらいのと同時に、非常に今まで、この不況というのは、全業種にわたって不況なんです。だれもが不況なんです。その中で、つぶれていく企業とこうして再生される企業と、やはりこの不公平感というものが非常にあるんです。
 そういうものを考えまして、この機構はとにかく中立でなければいけない、公平でなければいけない、透明性が確保されてなきゃいけない、これがまずこの機構の性格の大前提だと私は思うんです。
 それで、まず、機構の概要からお伺いしますが、午前中の質疑の中で株主の配分がまだわからないというふうにおっしゃっていましたけれども、この機構に出資する方のメンバー、預金保険機構が半分以上持つということだけは決まっているんですが、それ以外の株主、今の状況でおっしゃれる範囲で結構ですから、おっしゃっていただければと思います。
谷垣国務大臣 株主構成を決めるに当たりましては、こういう再生は本来民間の力で行われることが望ましい、これは午前中からの再三の御議論でございますので、可能な限り民間部門の御支援を得てやっていきたいということで、現在、金融界あるいは民間の各方面に出資をお願いしているところでございますが、御指摘の資本金額とか株主構成について、お答えできるところまでまだ来ていないわけでございます。
 それで、預金保険機構が、先ほどおっしゃいましたように、常に二分の一以上株式を持たなければいけないということは決まっておりますし、そういうことで、現在、そのぐらいまでしかお答えできることが、具体的にはなっておりません。
松野(頼)委員 これはことしの、二〇〇三年一月二十八日の読売新聞ですけれども、もちろんこれは否定されるでしょうが、四大銀行グループは大体九十億ずつ出資をする、地方銀行も出資をして、その中間ぐらいの規模の銀行も出資をして、金融界で約五百億の出資をするということが報道されているんですね。
 なぜこのことを一番、本来、今回のこの審議に入る前に、例えば資本金の額だけでも、また引き受けに声をかけている相手だけでも、ある程度、審議の前に詰めていく必要があるのではないかというふうに私は思うのです。
 といいますのは、この機構の性格というものが、出資者によって、株主によって決まるわけですよ。ですから、今、この報道によって、四大銀行グループ等が五百億、多分、預金保険機構を窓口に、フィルターにして投入されると思うのですね。また、この報道の中でも、経団連にも出資をお願いしているという報道があるのです。
 もちろん、銀行が出資をするということは、要は、債権を買い取る相手は銀行なわけですよ。経団連が出資をするということは、再生される事業者がその中に入っている可能性があるわけですね。そして、この出資者の中から役員構成をして、役員の中から会社ができて、その中に再生委員会が設置をされるわけですね。そういたしますと、一体この機構がどこに軸足を置いたものなのかというのが、この株主の構成と役員の構成と、その比率によって決まってくるわけですが、その辺いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 今、報道をお引きになりまして、先ほど申しましたように、金融機関に出していただくように、出資していただくようにお願いをしておりまして、多分それはこたえていただけるだろうとは思っておりますが、今のような形になるかどうかは、まだ率直に申し上げて、決まっておりません。
 これは、出資を行うためには、最終的には取締役会で、それぞれの企業で決議していただかなきゃならないというようなこともございまして、まだ時間がかかっているということがございます。
 それで、どなたに出していただくかによってやはり色がついてくるじゃないかという御趣旨だろうと思いますが、これは、今もおっしゃいましたけれども、直接出資をしていただくという形ではなくて、預金保険機構を通じて出資するという方向で検討が行われておりまして、一種のフィルターをかけておりまして、そういう意味で業務運営の公正さが損なわれることはないのではないか、こういうふうに思っております。
 それから、金融界以外の経済界についても、まだ固まっているわけではございませんが、仮に出資していただける場合に、個々の企業としてではなくて、業界としてまとまって株主としての権利を行使するなど、公正さを欠かないような、余り個別の利害が出ないような仕組みで出資していただくように検討していきたいと思っております。
松野(頼)委員 そうおっしゃいますけれども、やはり、銀行が出資をして、経済界も出資をして、その出資先の、確かに預金保険機構のフィルターは通っていますけれども、株主の債権を買い取るわけですよ。先ほどからいろいろ議論を聞いていても、この機構が一体どこに軸足を置いたものなのかというのがはっきりしない。だから、この位置づけというものが皆さんそれぞれの受け取り方によって違うと思うんです。
 例えば、株主に配慮したものなのか、金融機関に配慮したものなのか、一般の全国民の景気をよくするために配慮をしたものなのか、そこが全く明快じゃないので、機構の性格がわからなくなっているというふうに私は思うんですが、せめて、この条文の中に、利害関係のある金融機関は入れませんよとか、例えば逆に、RCCなんかは一〇〇%預金保険機構なわけです。例えばこれを、ある程度、一千億とか一千五百億ぐらいの規模だと言われているわけですから、この資本金に関しては、ある意味では、全く色のついていない政府直結の金を使ってもよかったんじゃないかと僕は思うんですけれども、その辺いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 これは、いろいろ考えようのあるところだろうと思います。今委員がおっしゃったように、全く国の資金でやるというのも一つの考え方だろうと思います。
 しかし、他方、やはり先ほど申し上げましたように、本来、こういう仕組み、民間でやっていただけば一番いいわけですけれども、そういう観点から考えますと、仮にこれは最後、先ほど二次ロスの話も出ておりましたけれども、損失てん補をどう行うかというようなこともございます。
 率直に申しまして、出資していただきますものは、欠損が生じた場合は、まずそこから埋めていくということになるわけですね。ですから、じゃ、全部国が損失負担をてん補するような形がいいのか、あるいは、金融機関と産業界も含めて、ある意味でそういうことを分け合っていただくのがいいのか、ここらの問題も考えまして、今のような仕組みをとっているわけであります。
松野(頼)委員 こうした政府保証の公的なお金を使う場合、今までいろいろな機構ができてきて、もうだんだん皆さんも僕らも麻痺をしてきているんじゃないかと思いますけれども、原点を考えますと、預金保険機構ができたときには、預金者保護のための資金だから政府保証をつけるんですよという話だったじゃないですか。RCCができたときにも、まだ処理だから、不良債権の処理のため、金融システムの安定化のためということでお金を入れたわけじゃないですか。
 今度は、じゃ、先ほどから目的、目的と皆さんおっしゃっていますけれども、そういう大義がどこにあるのかということだと思うんですよ。預金者保護なのか。預金者保護の預金保険機構、不良債権処理のためのRCC。
 例えば、大銀行に不良債権の処理のために資本注入したときにも、金融システムの安定化、これはもうだれもが関係ある、銀行を使わない人はいないわけですから。そういう大きな大義があったんですが、今回の、もちろん条文を僕はしっかり読みましたので、表向きの大義はもう結構です。本音の部分の大義はどこにあって、なぜ公的な資金を使えるだけの大義があるのかということを教えていただきたいと思います。
谷垣国務大臣 条文に書いてあるところ以外に本音の大義というものがあるわけではございませんで、先ほどからの繰り返しになりますが、一つは、やはり、有用な経営資源というものが雲散霧消というか、してしまうのは、日本経済にとっても国民生活にとっても余りにも弊害が多い。だから、それを再生できるような仕組みで、それはあわせて金融システムの信頼、つまり不良債権処理と過剰債務というのは裏表な関係になるわけですから、その両方をやっていきたい。これは、まさに建前で申しているわけではありません。
 さらに、本音と言うといけませんが、じゃ、どういうところをねらいとするかといいますと、なぜ、それだったら民間でやればいいじゃないかというところをさらに突っ込みますと、先ほど申し上げましたように、一種のスピード感が必要だなと。それには、やはり何かどんと背中を押すようなことがないと、なかなか進んでいかないなというのが一つですね。
 それから、さはさりながら、全部国でやってはマーケットというものを余りにも無視することになるから、やはりマーケットを重視しながら、どこがその調和点かなということを考えながら仕組みをつくりました。
 そして、さらに第三には、結局、過当競争、過剰供給みたいなものを温存したのでは、幾ら債権放棄をしても、結局お互いにみんなで足を引っ張り合うことになって、競争力の復活がないじゃないかということから、過剰供給の排除というような産業政策的視点も必要だなと。
 この三つが、条文には書いてございませんけれども、やはり私はあると思っております。
松野(頼)委員 ここのところ、ずっと近年、この不況の中でそういう手法がとられているんですけれども、その昔、田中角栄さんの時代に、名前は出しませんが証券会社が倒産をしそうで、初めて、これが国の公的なお金が一企業に入った最初の例なわけですよ。そのときは、やはり公的な資金を一企業に入れるのはまずいということで、苦労されて日銀の特融を使っているわけですよ。昔の知恵としては、あくまで、税金だとかこういう政府保証のついた金を民間に入れるのはまずいというのが基本的にあるんですね。
 ですから、なるべく金融を使って、日銀を使って、政府じゃないところの責任でもって景気をよくしよう、産業をよくしようということが以前はあったんですが、政府の金を政府が保証してこの産業再生をするというと、なぜそれを昔は政府がやらなかったかというと、責任が政府に来ちゃうわけですよ、できなかった場合に、失敗した場合に。その責任を回避するために、なるべく政府の金を使わずに、日銀の金、金融の金でそっちに回そうというのが以前からの常識だったと思うんですけれども、ここのところ、その最も基本的な部分の概念が崩れていまして、何でもかんでも政府の金を入れればいいじゃないかと。
 今回の場合、特に個別案件にまで入れると前文にうたっているわけですから、産業再生という名前でありますけれども、これは個別企業の救済であるわけですよ。やはり、そこのところの、聖域だということをしっかりと認識してもらいたいということは申し上げておきたいと思います。でなければ、つぶれていく企業と再生される企業の間の不公平感、これは絶対にぬぐえるものじゃありませんから、今回、政府のお金を投入して、政府の保証をつけて、政府がこういう内閣のもとで産業再生をするということですから、失敗したときの責任は政府に来るんです。
 これだけ確認したいと思いますが、それでよろしいんですか。
谷垣国務大臣 先ほども申し上げましたが、この機構の構成というのは、やや通常の株式会社に比べますと複雑な構成になっていることは事実でございます。行政的にはやはり主務大臣に責任がある、それはおっしゃるとおりでございますし、また、機構の個別の運営は、やはり社長、さらには出資しているところの責任、こういうことになるだろうと思います。
松野(頼)委員 ちょっと個別的にいろいろな性格の部分を伺いますが、法律で余り細かく書いていないもので、この委員会の大臣答弁がまず基本になってフレームができてくるんだと思いますが、まず、機構の強制力。
 第十九条と二十四条に、調査権、処分権、支援決定権、決定をした場合にほかの債権の回収をとめるということを要請すると条文に、二十四条は書いてあるんですけれども、これの強制権はどこまであるんでしょうか。
谷垣国務大臣 これは、強制力というのはございません。あくまで要請をするということであります。
松野(頼)委員 そうすると、例えば一つのメーンバンクでも非メーンバンクでも、金融機関等が、うちは嫌だよというふうになった場合には、このフレーム自体が全部吹っ飛ぶわけですよね。申し込みを受けてから支援決定の間にこのことは審査されると思うんですけれども、その場合には、では、先ほどからおっしゃっている、政府が介入して、速やかにその債権をまとめて再生できる企業を再生させるんだというところと、この強制力の部分と相反する部分じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 これは、確かに強制力がないんです。ただ、そういう一時停止をかける場合には、事前に御相談をして、下相談をして再生計画というものができているわけですね、その再生計画にのっとって、こういうふうに買うがどうだといって、その間は待っていてくれと一時停止をかけるわけですから。したがいまして、これを拒否するところが出てまいりますと、当然再生計画はうまくいかないということになってまいります。
 そのときどういうことを考えなきゃならないかといいますと、これは、先ほどからの御議論にありますように、私的整理を後押ししていこうというものでありますけれども、そういう協力が得られない、あるいは、あえてこういう言葉を使えばよくないかもしれませんが、自分のエゴイズムを押し通すようなところが仮に出てきたとしますと、そのときはやはり法的整理ということも考えなきゃならないんだろうと思います。それで、この再生計画が非常にきちっとできていれば、裁判所のつくる再生計画というのとそう遠いところには多分落ちつかないんだろうと思います、きちっとできればですね。
 それともう一つは、法的整理でやりますと、いろいろなところでやはり時間なりコストがかかりますので、コストがかかる場合が多いですので、負担が出てくる。そのあたりの利益といいますか損得をどう判断するかということで、担保と言うと言葉は悪うございますが、事実上の、言うなれば強制力ではございませんけれども、そういうものにかえるのかな、こう思っております。
松野(頼)委員 そうしますと、強制権はないけれども、要請をしてやっていただくんだということだと思うんですよ。もちろん、経営者も債権者も金融機関も、だれもがこの会社はつぶれてほしくないと思った場合には、民間の力でもできるわけですよ。強制力がない機構が入っても、先ほど、午前中の話だと、機構が入れば速やかにできるとおっしゃっているんですけれども、その強制力がない機構が入っても速やかにできるんだ、機構が入れば速やかにできるんだという話と強制力はないんだという話の整合性はどこにあるんでしょうか。
谷垣国務大臣 これは、たくさん手法が要るということじゃないかと思うんです。ぎりぎり、強制力をうんと使わなければならないとなると、これは裁判所に会社更生なり民事再生法を申し立てるという仕組みになると思います。これは、裁判所の命令を聞かなかった場合にはペナルティーが法的にも整備されているという仕組みですね。一方、全く私的整理でいきますと、私的整理ガイドラインというものも用意していただいておりますが、これは全く強制力も、事実上のメリットというものも余りない、合理的に考えたらこうなるんじゃないかという仕組みでございますね。
 このいわば中間に我々の仕組みというのがありまして、ある意味での買い受けることによる事実上の調整の易しさとか、あるいは融資機能を持っているということで、利用した場合のいろいろなメリットであるとか、あるいはこれは平沼大臣のおやりになっている方でございますが、産業再生法のスキームを使うことによって税制やそのほかの特典が得られるとか、そういうようなことを全体として考えていただいて、全くの私的整理とそれから法的整理との間でこういうメニューがあって、使うメリットはあるよということが、強制力は必ずしも十分ではないけれども、機能させるポイントではないかと思います。
松野(頼)委員 その中間的な部分でうまくいくかどうか、これはスタートしてからぜひ見守りたいと思います。
 先ほどからも、一番これは議論の中心になるんですが、債権の買い取りの価格、この適正な時価という、再生支援決定に係る事業再生計画を勘案した適正な時価を上回ってはならないというのが条文でありますね。
 この適正な時価というのが非常に厄介なものでありまして、僕はちょうど前の一般質疑の中で、ここで、ちょっと事例は違いますけれども、土地の固定資産税の価格についてやりました。その固定資産税の価格も、地方税法第三百四十一条の五というところに、やはり価格は適正な時価とするということがうたわれているんですよ。ただ、その適正な時価が、平成四年に通達一枚でいきなり評価額が三割から七割に上がっているという事例があるんですね。ですから、この適正な時価というのが一番厄介なものなんです。この場合は特に土地ではありませんから、債権ですから、一体どこが適正な時価なのか。
 それは、企業としてはなるべく高く買ってもらいたい、機構としてはなるべく安く買いたいというのが当たり前の姿だと思うんですけれども、それに関して、適正な時価がいかに公平であるかということと、その時価を評価したときのその評価基準の公表をいつの段階でなさるのかというのを伺いたいと思います。
谷垣国務大臣 確かに、適正な時価というものがそんなに簡単に決まるのかというのは、まさしくポイントだろうと思います。
 それで、そういう不良債権マーケットみたいなものが十分にできていれば、またそこもある意味でマーケットというものがあるじゃないかということになるわけですが、確かに、必ずしも手法が十分に確立していないのは事実だろうと思います。
 しかし、他方、こちらは金融政策の方でございますが、やはりどれだけ的確に債権を評価して、そして積んでいくかというようなこともいろいろ議論が進んで、ある意味での手法が、確立しているかどうかはわかりませんが前に進んできているということがあろうかと思いますし、それから、それと全く同じ基準というわけではないですけれども、そういうものも一方で進んできておりますし、他方、現実に、四、五年前と比べますといろいろな企業の再生の実例も積み重なってきているわけであります。
 それで、その中で行われていることは、結局、その債権価格と申しますか企業の価値をどう見積もるかという、適正にできたところがうまく処理できていくし、できなかったところはうまく処理できないという例がございますので、やはりそういうところに参画された方々の手法や知恵をかりるということでなければ、おっしゃるようになかなか難しい。ここがまさに成功するかどうかのポイントで、こういう法をつくって、仕組みだけで必ず成功するという保証は実はないわけでございまして、運用のよろしきを得るということがなければできない。そういう意味で、私は、リスクのある仕事だということは率直に認めなければならないだろうと思います。
松野(頼)委員 ですから、そこを、公平性を担保するためには公開だと思うんですよ。これは条文にいつの段階で公開すると書いていないんですけれども、大臣、どうか、この大臣答弁が基準になると思うので、例えば再生して、再生機構の手が離れた後三カ月後には全部公表するとか、そういうきちっとした基準をどうか明言していただきたいと思います。
谷垣国務大臣 これは実はなかなか難しゅうございまして、午前中からの議論でも申し上げておりますが、支援決定をした際とかそういうのは概要を発表するということに、これはそういう方向でやるわけでございますが、あと細部のどこまで発表できるかということになりますと、仮に再生に成功した場合もそれぞれの企業の企業秘密と申しますか、ノウハウみたいなものもいろいろございますので、しかし一方で、我々の仕事も公正、透明さというのを確保しなければなりませんので、そこらあたりをどうしていくかというのは、今後詰めていかなければならない大事なポイントだと思っております。
松野(頼)委員 例えば再生機構の中の再生委員会の議論、また債権を買い取ったときの適正な価格の基準値、これはやはりある程度の時期に、確かに相手のプライバシーもあるかもしれませんけれども、公的なお金を入れてもらって再生してもらうという、先ほどから言っていますつぶれていく企業の人たちから見れば、なぜ、あそこだけ助かるんだという不公平感をなくすためにも、これはやはり、相手のプライバシーだとかいうことを考えずに、ある程度の時期に全部公開するぐらいの話をしていただかないと、なかなか不公平感はぬぐえないと私は思いますが、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 三十条で、「決定の公表」ということで、先ほどもちょっと申しましたが、支援決定またはその撤回、それから買い取り決定、対象事業者に係る債権または持ち分の譲渡その他の処分の決定、これを行ったときは、速やかに、その旨あるいは主務省令で定める事項を公表しなければならないと定めておりますので、これはもちろんそのとおりにやらせていただくわけですが、今全部とおっしゃいましたけれども、そこは全部といくかどうか、そこらあたり、我々も研究課題としてこれから詰めてまいりたいと思っております。
松野(頼)委員 では、取締役の責任についてはどうされますか。再生をされた企業の取締役の責任の追及というのは、どのようにされますか。
谷垣国務大臣 それは、商法等でも決められておりますように、取締役の会社に対する責任というものは当然ございますから、それにのっとるということではないでしょうか。
松野(頼)委員 退陣を迫るのか、退陣を迫らないのかということです。
谷垣国務大臣 今おっしゃったのはあれですか、支援する対象の企業ですか。(松野(頼)委員「そうです」と呼ぶ)これは当然、経営が余りうまくいかないで、再生機構で関係取引先等にもいろいろ配慮をいただいて再生をさせる、再生計画をつくるという場合には、一般的にはそういう経営者は責任をとるというのが普通だろうと思います。
 ただ、それを、では全部それでいけるかというと、必ずしもそうでないのかなと思いますのは、いろいろの事例を聞いておりますと、例えばそれぞれの、我々の地方にもございますが、しにせでなかなかうまくいっていないところがあって、しかし、ではその経営を引き受けるといっても、その地域の名のあるあの人が中心に座っておいてくれないとできないというようなことが、これはやはりあるのではないかと思います。
 それは、結局、個別の判断になりますし、特にスポンサーなんかがつきますときに、あの男が、女性の場合もあるかもしれませんが、やはりあれがいないとこの企業は成り立たぬという判断をスポンサーがする場合もあるかと思います。だから、そこらは若干の含みがあると私は思いますが、一般論としては、やはりこういう再生をするときには責任をとられるというのが普通ではないでしょうか。
松野(頼)委員 それと同時に、金融機関の債権放棄というのが入っていますけれども、この債務免除益に関して、有税償却をさせるのか、無税償却をさせるのかというのは条文にはうたっていないんですが、それはいかがでしょうか。
谷垣国務大臣 これは、債権放棄をしたその債権者の税務上の取り扱いは、私的整理ガイドラインで定める手続に基づく再建計画による場合を含めて、合理的な再建計画に基づく債権放棄による損失であれば税務上損金算入されるという扱いになっておりますので、これと同じような扱いをしていただくように、念頭に置いて、今税務当局と協議をしているところでございます。
松野(頼)委員 その辺もぜひ条文に書かれたらいかがかと思うんですが、この債務免除益の問題というのは、個人ならば贈与税が発生をする、通常の企業であれば債務免除益、これは課税の対象なんですよ。
 多分、今回改正の産業再生法の中でも、繰り延べ欠損金の損金算入を五年から七年に延長していますけれども、これは結局、そこの部分じゃないかと思うんです。なるべく損金を多く算入させてやろうということですが、今回の債務免除益に関しても、今こうやって審議に法案を出されている中で、無税償却させるのか有税償却させるのかということはやはり明記をされるべきだと思いますが、今後、今の大臣として、無税でいくんだ、いやいやそうじゃない、有税でいくんだということをちょっと御答弁いただけないでしょうか。
谷垣国務大臣 この私的整理ガイドラインと同じように考えますと、その再建計画の合理性、恣意性といったようなもの、こういったものを税務当局がどう判断するかということもやはりあるんだろうと思います。
 したがいまして、ここは、もちろん我々はこれを進めるために十分合理的な計画を立てなきゃなりませんし、立てた場合には、当然損金扱いなり無税償却をするということをやっていただかなきゃなりませんけれども、現在、そこが税務当局と詰めております最中でございますので、これ以上はまだちょっと申し上げにくいところです。
松野(頼)委員 ぜひこれも、課税法律主義というのがありますので、税を減免するというのもできれば通達でやってもらいたくない。本来であれば国税法を変更して、の特例を一項目加えて、国会で決議を経てやるのが課税の原点ではないかと僕は思うんですけれども、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 ここのところは、私も塩川大臣ではございませんので答えにくいところなんですが、今税務当局の一般的な扱いは、この問題に関して通達に書いてあるんだと思います。
 したがいまして、あとはその通達のいわば当てはめの問題になっているわけですね。税務当局を預かっている大臣でない私としては、それ以上はちょっとなかなかお答えしにくい、こういうことです。
松野(頼)委員 それで、次に、株主の権利について伺いますが、例えば先ほど来から、RCCは破綻懸念先以下が行くんだ、この再生機構は要管理先ぐらいが行くんだ、まあまあ大丈夫なところが行くんだということですね。そうすると、まだ株主はそんなに動揺していないわけですよ。いきなり、メーン行なり金融機関と経営者が話をして機構に持ち込まれてしまった瞬間、株が暴落したといった場合に、株主代表訴訟の被告に立つのはだれになると思われますか。
谷垣国務大臣 これは、今のような典型的な事例を考えますと、被告は、それはやはり当該企業の取締役ということになる、経営陣ということになると思いますが、その前に、今おっしゃったように、何か病気が重くなって病院に担ぎ込まれたぞ、産業再生機構に担ぎ込まれたぞというような風評で株が暴落するというようなことがあっては困るわけでございます。
 したがいまして、我々は、御相談がかかった段階で、まだ海のものとも山のものともわからないという段階では、厳格にやはり、守秘と申しますか、そういうものを守っていかなければこういう仕事はできないんだろうと思っております。それで、ある程度、きちっと再生計画ができて、そしてこれなら買い取れるという決定ができる段階にやはり明らかにしていくということが必要だろうというふうに思います。
松野(頼)委員 それは申し込みに来た段階ですよね。申し込みに来た段階ではなくて、再生するということを決定した場合。
 この間から、きのうからずっといろいろ役所から聞いていると、では、例えばその会社が債務保証をしたり連帯保証をしていた場合に、予期せぬ負債ができた場合には、決定しても取り消すことができるわけですよね。支援を決定して、支援に取りかかっていても、思わぬ負債が飛び出してきた場合。よく、連帯保証だとか債務を保証していた場合、こういう思わぬ負債ができてきた場合だとか、例えば最初に持ち込んだ事業計画どおりに経営者が動かなかった場合、さまざまな理由で再生計画が達成されずに再生支援を取り消した場合。そうすると、もうこの会社はRCCに行くのかとか、こう言うとRCCは怒るんですけれども、もうだめだといって市場から見放された場合の責任は、これは機構にもあるわけですか。
谷垣国務大臣 これはなかなか、仮定の話で、どこまで責任を負うかというのはお答えするのは難しいわけですね。それはやはり、まず当該企業と、例えばメーンバンクはこうこういうことでやろうということで持ち込んできた、ところが、そこでいろいろな、自分の会社の債権債務といいますか、営業状態について不誠実な報告しかしていなかったということになりますと、それが全部機構の責任だと言われても、やはり機構も負いかねるところは、正直言ってあると思います。
 したがいまして、やはり具体例に則して考えないと、なかなか今のお問いかけの答えは出ないのかなと思います。
松野(頼)委員 ですから、要は、最初の受け付けの段階で、例えば株主の総会である程度の決議を経るとか、あとは、従業員の過半数の者の同意を得るとかいうことをある程度担保しておかないと、株主は不利益をこうむった、機構に申し込んだり、機構の支援決定手続を解除された場合とか、そういうことによって非常に株主が不利益をこうむった場合の想定というのもぜひ考えていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
谷垣国務大臣 これは機構を利用する場合に限らず、私的整理の場合にも常にある問題だろうと思うんですね。そういう計画をつくったけれども、会社の株主総会でそれをオーケーしたりしなかったりするということは、理論的に十分あり得るんだろうと思います。ですから、それは、この機構の場合にも、では機構が関与したけれども株主総会がどう見るかという問題はやはり常にあるわけでございまして、やはり我々は、株主の方々にもやはり株主総会ではきちっとした情報を公開して、こういう手法でなければ再生できないんだということは、それはその会社がやはりやっていただくべきことではないかなと思います。
松野(頼)委員 ぜひその辺もしっかりと、できれば申し込みの段階できちっと指導するとか、そういうことはきちっと担保していただきたいなというふうに思います。
 基本的に、この機構なんですが、性善説に立った場合の話と性悪説に立った場合の話と随分違うと思うんですね。ですから、僕らはどうしても野党で、この法案のためにいろいろな角度から追及していくんで性悪説に立つんですが、やはり、恣意的なものが入るんじゃないか、金融機関の不良債権のつけかえになるんじゃないかという懸念が非常にあります。
 それがさっきの株の債権の買い取り価格の公表とか、なるべく安く買って、機構がうまくいくようにとかいうことがあるんですが、どうかそこはしっかりと、公平性と中立性を担保していただいて、なるべく、今回、僕はこの法案を見まして、余りにもフレームなんですよね、来ているのが。フレームだけ、中身が入らずに枠組みだけで法案を出してきているんで、どうかそこのところは今後しっかりと詰めていただいて、もう一回お話をしたいというふうに思っております。
 あと五分ですか。もう一点、先ほどから中小零細企業も扱いだというふうになっていますが、これはどの辺までを想定されているんですか。
谷垣国務大臣 これは先ほどから、要するに再生可能であれば大中小を問わない、こういうふうに申し上げているわけですが、これはこの制度の、機構の立て方が非メーンを主に買い取るということになっておりまして、やはり幾つか債権者といいますか金融機関なりそういうものがあるということが一応の、メーンのターゲットとする対象は一応そういうことを想定しているわけですね。
 ただ、今の段階で、まだ具体的にどういうお客様が見えるかわかりませんので、余り予断はしないようにと思っておりますが、できるだけ幅広く目配りをしていきたいと思っております。
松野(頼)委員 では、例えば零細企業が大量になだれ込んで、うちもやってくれ、うちもやってくれということはあり得るんですか。
谷垣国務大臣 これは今申し上げましたように、零細といってもどこまであれですかわかりませんが、関与する金融機関がごく、ほとんど一つしかないとかいうようなものはこの仕組みを使う必要があるのかどうかということはあると思います。
松野(頼)委員 それは、今小さい会社でも、二軒、三軒とつき合っていますから、大企業と零細企業を分ける部分というのが僕は非常に難しいんじゃないかと思うんですよ。
 機構の話、先ほどから八十人とか百人とかいう社員数、スタッフで運営するということですので、多分大企業を中心に想定されていて、幾つか零細企業が入ってくることもあり得るということじゃないかと思うんです。やはり、零細企業がもし手を挙げて入ってこようとした場合、しっかりと説明をできるような基準というのを定める必要があると思うんです。
 今の、再生ができる基準ですか、二%以上上がるとか固定資産が五%以上回転するとかいう基準ですね、こういうことではなくて、では、これが達成できればどんな零細企業でもいいのかという話になった場合、その辺はどうお答えになりますでしょうか。
谷垣国務大臣 もちろん産業再生法で用意していただいているような基準は、我々としてもそれを念頭に置いてやっていくわけですけれども、他方、では数字だけでできるかということになりますと、なかなかそれはそうはいかないわけでございまして、また業種によっても随分違うんだろうと思います。
 そこで結局はその企業が、しち面倒くさく言えば、新たな付加価値を創出し得るような戦略性を持ち得るかというようなしち面倒くさい言い方になりますけれども、つまり、最後はその判断をしなければならないんだと思います。そこがあらかじめ何か定式化して言えるかというと、実は、ちょっと難しいなというのが正直な気持ちでございまして、それはまた別な言い方をすれば、我々のあれの中にも申し上げておりますけれども、買い取るときよりは出口の方が価値が多くなるようなやり方とか、いろいろなことを言っているんですが、なかなか、実は単純に定式化するのが難しいなというのが率直なところでございます。
松野(頼)委員 最初にお願いをした点なんですが、出資者が、銀行、金融機関が出資をして、そして、金融機関のお金を政府保証をつけて集めて、それで再生の企業に突っ込むという、債権を買い取るという話ですから、金融機関側だけに立った話じゃなくて、本当に日本の経済がよくなる方向になって、そして、再生を受けなかった企業としても、きちっと公平性を担保できて、透明性を担保できて、そういう部分を幾つかお願いしましたので、どうか、まだ来週も審議が続くようですから、その途中でもできる限りそのことを公開していただいて、明記していただいて、答弁の中で明らかにしていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
村田委員長 土田龍司君。
土田委員 自由党の土田龍司でございます。
 我が国は、長期の深刻な経済不況に陥っておりまして、そんな中で、不良債権の処理、あるいは供給過剰の構造の抜本的な是正をすることが非常に重要であるということから、今回の産業再生機構法案が出てきたわけでございますが、産業と金融と一体再生に向けて、その実効性を発揮できるかどうかというのは、ひとえに今後の運営にかかっているのかなというふうに思います。
 きょうは、機構法案だけ質問させていただきますので、平沼大臣は出番がございません。どうぞ休憩されて結構でございます。激務でございますので、休憩も仕事のうちと思って、西川副大臣だけ残っていただければいいかなというふうに思いますので、どうぞ遠慮なく休憩されてください。
 ただ、きょうは第一回目の本格的な質疑でございますが、朝からの質疑を聞いておりますと、きのう私が質問通告をした内容とほぼ同じような内容が並んでおります。基本的なことを自由党の代表としてしっかりと聞いておきたいということでございますので、ぜひお許しをいただきまして、谷垣大臣には御答弁を願いたいと思います。
 まず、最初の質問でございますが、企業の生死というのは、あくまで市場原理が決めるんだということでございます。これに対して政府が過剰介入することが市場原理をゆがめることになる、当然のことだと思うんですが、今回、いわば官の関与によって、政府の関与によって、閻魔大王に塩川大臣は例えられたわけでございますが、民間企業の生き死にをこういったことでやるということについて、やはり疑問が残るということだと思います。
 そこで、機構が本来淘汰されるべき企業を安易な支援によって助けるということになれば、我が国経済の活力がむしろ阻害されるんじゃなかろうか、健全な企業までがその影響を受けるんじゃなかろうかという懸念はどうしても残るわけです。この点について、この機構が市場原理の中で果たすべき役割とその支援のあり方について、御説明をお願いしたいと思います。
谷垣国務大臣 今、土田委員がおっしゃいました、本来市場でやるべきことをなぜ政府がやり、何を果たそうとしているのかというのが根本問題だろうと思います。朝からも、たびたびそのお問いかけがございました。
 まず、私は、この産業再生機構が閻魔大王であるという表現がどうもひとり歩きしまして、正確なイメージを少し損なっておるんじゃないかなという気がいたしております。広辞苑を引きますと、閻魔大王というのは地蔵菩薩の化身でもあるというふうに書いてございますので、閻魔大王と地蔵菩薩の両方の役割は確かに持つのかもしれませんが、この機構で仮に乗り出しても、本当に、以後生きていけないようなものを無理に救っても、結局また最後は市場で淘汰されるわけですから、私は、閻魔大王というのはやはり市場であるというふうに考えるべきだと思うんですね。
 それで、それを前提として、この機構で何をやろうとしているかといいますと、先ほど来の御答弁と全く同じことを繰り返しても意味がありませんので、若干違うことを申し上げますと、やはり今まで、日本の場合には、企業倒産というものは、民事再生やあるいは会社更生法にしましても、ぎりぎりのところまでいって失敗をして、極めてネガティブなイメージでとらえられてきた面があったと思います。そのことが、メーンバンク制とも相まって、もうかなり苦しくなっているんだけれども、追い貸しをして頑張って、それで、気づいたときにはにっちもさっちもいかなくなっているという例が私はかなり多いのではないかと思います。
 したがいまして、やはりある意味での、事業の幾つかは、自分のところでやっている事業が、本来きらっとしたところがありながらうまくいかなくなっている場合には、やはり、いいところは残して悪いところは整理していくというのがもう少し早くできませんと、活力も出てこない。しかし、それをやるには、今まで日本は仕組みの上でも整っていないことが多かったのではないかと思います。
 例えば、今、民事再生法や何か、あるいは千代田生命なんかがやりました更生特例法なんかが出てまいりましたのも、やはり、そういうところで足りない面があったということだろうと思いますし、それから、こういうものをやりますときに、不良債権処理のマーケットというようなものがなければなかなかうまくいかないんですが、そういうものも育ってきていない。
 だから、そういうものが育つ一種の弾みと申しますか、そういう役割をこの機構は果たし得るのじゃなかろうか。それが全部市場でできれば、もうそれで言うことはありませんけれども、なかなか今までそのことは、声高に言われながらもできなかったものを後ろからどんと押す、ちょっと抽象的な表現でございますが、先ほどから御答弁をしましたことに加えまして、そういうことがあるのかなと私は思っております。
土田委員 従来、企業に対する再建支援というのは、メーンバンクが中心になって、債権放棄などを中心に行ってきたわけですね。こうした支援策では思い切った再建計画が実行できない、単に問題を先送りにしてきただけじゃないかという感じがあるわけですね。
 今回の機構の仕組みなんですが、やはり企業とメーンバンクが中心になって再生に取り組む、機構がそれを側面的に支援するという形式をとるわけでございますけれども、従来のようなメーンバンク任せであっては、これまでと基本的には変わらないんじゃないかなという感じがするのでございます。前回の参考人質疑の中でも指摘がございましたけれども、従来のしがらみを断ち切ることが企業再生の第一の関門であるというようなことが言われておりました。
 今回の再生支援に当たって、旧経営陣の責任について何も書いていないわけでございますが、従来のメーンバンクのもとで、かつ、従来の経営陣体制で思い切った事業再生が図れるのかどうか。そこで、本当に事業再生を実現するためには、機構がメーンバンクからの情報をうのみにしないで、主体的に再生計画の評価を行うことが必要であると思うんですね。機構でどのようにして、こういった適切な評価体制を整備されるんでしょうか。
谷垣国務大臣 おっしゃるように、かつては、その企業の情報を一番持っているのは、まごうことなくメーンバンクであった。そしてメーンバンクが、その企業がおかしくなった場合もいろいろ支えてきた。先ほども申しましたが、場合によると、経営者も派遣して、追い貸しもしていろいろやってやった、こういうことではないかと思いますが、現在、そういう枠組みだけではなかなか動きにくくなってくる。
 そこで、昨今行われました幾つかの再生事例を見ますと、メーンバンクの情報やノウハウや、あるいはそこがやるつなぎ融資みたいなものも、もちろんこれは利用しないとなかなかできないと思いますけれども、それを超えて、やはり企業の再生可能性というものをきちっと判断していく必要があるんだろうと思います。
 それで、それは結局、この機構でやるとどういう判断になるかということになるわけですが、一つは、再三お話し申し上げておりますが、産業再生委員会という中に、今度は、これはあくまで候補者でございますが、高木先生を候補者ということでお願いしておりますが、そういう再生の専門家の知恵を十分にそこに入れていくということがやはり基本にあるのではないかと思います。
 それに加えまして、先ほどから申し上げておるようないろいろな産業再生法等の基準、あるいは主務大臣や事業所管大臣の意見も参酌をさせていただく。しかし、それだけでは足りませんで、結局、その会社の再生計画を審査していくチームをそれぞれつくるわけでございますが、そういうチームにやはりどれだけ企業再生のいわば情熱と目を持った人を集め得るかということがあろうかと思います。
 しかし、それを全部この機構の中に集めようとしますと、それは数十人から百人なんという規模ではできなくなりますので、ある程度のアウトソーシングとかそういうようなことも考えながら、今土田委員がおっしゃったような課題にこたえていきたい、こう思っております。
土田委員 先日の参考人質疑でも、そういった再生ビジネスを大いに活用しなければできないだろうというようなことを言っておりました。
 さて次に、先日の新聞報道で、産業再生機構の社長と産業再生委員長がそれぞれ内定をされたと。この両者の関係についてなんですが、この法案によると、機構の事業の運営に当たっては、産業再生委員会が重要事項の決定を行うとされておりますけれども、産業再生委員は全員が取締役を兼ねるんだと。機構の取締役会と産業再生委員会はほとんど同じ顔ぶれになるということが予想されるわけでございますが、谷垣大臣は、機構のトップはあくまで社長であるとおっしゃっているようでございますけれども、同じメンバーでありながら、機構運営の最重要決定を決める責任者と機構運営のトップが別々であるということになると、権力の二重構造になって、余計混乱をするんじゃないかというような感じがいたします。
 そこで、この機構が円滑に意思決定ができるように、支障が生じないようにするためにはどういったことを考えておられるのか、機構内部における産業再生委員会の位置づけ及び機構の代表取締役と委員長の関係、役割分担、この点についてはどうでしょうか。
谷垣国務大臣 商法を改正していただきまして、この四月一日から、株式会社に重要財産委員会というのを設けていただいて、重要な財産の処分等について決定権を持つような仕組みを導入していただいたわけでありますが、その仕組みをこの機構にも取り入れたらどうかということで、こういうことを考えたわけであります。
 そこで、産業再生機構の社長は、個別の再生計画について関係者の調整をしていく、あるいは財務、人事を含めた機構の経営に関する最高責任者であるわけです。それから、先ほどの御議論の中で、やはり出口でだれにスポンサーを探して売っていくというようなこと、これもなかなかしんどい仕事ですけれども、そういうようなこともこの社長が中心になってやっていただくということになるかと思うんです。
 他方、産業再生委員会の委員長は、個別案件に関する支援決定について、再生が本当に可能かどうかといった点から審査、決定を行う合議体の議長の役割を担っていただくわけでございまして、要するに、社長のやることの客観性、妥当性というものを担保するために、こういう委員会をつくって、そこで判断をしていただくという仕組みになっておりますので、そこは二重構造というようなことにはならないんだろうと思います。
 先ほども申しましたけれども、一般の企業でも、業務執行の責任者であるいわゆるCEOと申しますか社長と、それから企業の意思決定機構である取締役会の議長である会長というのは分かれている場合が一般でございますから、それと対比すれば、これはそれほど特異な仕組みではないと御理解をいただけるのではないかと思っております。
土田委員 次に、意思決定の透明性について伺いたいと思うんです。
 この再生委員会が公正中立な決定を行うには、委員会のメンバーに銀行や産業界の利害関係を持たない人を加えるということが必要であろうと思うんですね。
 産業再生委員長の人選は内定しているわけですが、今後、委員会の委員についてどのような構成を考えておられるのか、あるいはまた、機構が企業の再生支援を決定したときにその旨を公表されるわけですが、機構に対する信頼性を確保し実効的な機能を発揮させるために、必要な限りの情報公開をしなきゃならないんじゃないか、あるいは機構の意思決定の透明性を確保することが極めて重要であるというふうに考えるわけです。また、その意思決定に対して、内部監査部門を置くとか、そういった判定の過程をチェックしていくということも必要であるのかなというふうに思うんですが、こういった透明性を確保するための努力について、政府の考え方を聞きたいと思います。
谷垣国務大臣 まず、委員の構成をどのようにしていくかという点については、実はまだ、もちろんこれは会社が衆参両院で認めていただいてから後のことでございますが、ああいう一応候補者として、お二方は内々御同意をいただいたということでございますが、それ以外の委員をどうしていくかということについては、まだこれからの段階でございます。
 ただ、法の中に、取締役三人以上七人以内で構成する、その中に代表取締役及び社外取締役をそれぞれ一名以上含まなければならない、こういうふうになっておりますが、その具体的な人選については、やはり再生に必要ないろいろな分野の知識経験を持っている方を入れたいという以上に今突っ込んで申し上げられることは、まだ決まっておりません。
 それから、信頼性を確保するために、まず機構の中で、厳格な倫理規程などを設けたり、あるいはコンプライアンス体制というようなものを整備しなければならないと思っております。
 また、機構の支援決定の際には、先ほどからの御議論にございますが、個別企業の権利とか競争上の地位とか、そういったものの正当な利益に当然配慮しなければなりませんけれども、概要はやはり法三十条で公表する、こういうことで対応させていただきたいと思っておりますが、さらにどのような情報公開等を行えるかについては、これからもっと精力的に詰めてまいりたいと思っております。
土田委員 ということは、前向きに透明性を高める努力をされるということでございますね。
 次に、これも随分問題になっておりましたけれども、企業の再生支援の決定あるいは債権の処分に当たって、主務大臣及び事業所管大臣は、必要があると認めるときは意見を述べることができると書いてあるわけですね。この点に非常に、いわゆる政治的な介入があるんじゃないかというような懸念を持つわけです。いわゆる中立性がゆがめられるおそれがあると感じるわけでございます。
 国民の機構に対する信頼がなくなれば、非常に機能しなくなるというおそれがあるわけでございますので、この機構の中立性あるいは透明性を損なわないために、主務大臣やあるいは所管大臣が意見をおっしゃる場合は、その内容を一定の手続のもとに公開したらどうか。国民の機構に対する不信を招かないように、そういったことも必要じゃないかと思うんですが、どういうふうに考えておられますか。
 もう一つ、例えば有力な政治家が特定の企業の救済をごり押ししてくるということも想定はされるわけでございますが、そうした場合に、そうしたやりとりを公開できるようにしたらどうかということになれば、さらに透明性は高まるわけでございます。
 これらについて、どう考えられますか。
谷垣国務大臣 いろいろな政治的圧力等によって機構の決定がゆがめられるのではないかというような御批判もあるわけですが、これは、変なごり押しと言うと言葉は悪いですが、いたしますと、結局、では再生計画が終わったときに果たしてこれは買ってもらえるか、市場価値が生ずるかということになりますと、変なごり押しであれば、それは生じなくなってしまうんではないかと思うんですね。
 ですから、私は、そこのところは、そのような変なごり押しをした場合のリアクションというものはございますので、そういうことはないものと思っておりますし、もう一つの担保は、やはりこれは、産業再生委員会というものが専門家の観点から判断していただくということがもう一つの担保だろうと思います。
 しかしながら、同時に、今のような御心配があるわけでございますから、どういうふうに透明性を高められるかというようなことは、これは我々も十分これから詰めていかなければならないと思っております。
 したがいまして、主務大臣等から御意見があるときは、これは経済合理性にのっとった御意見があるものと思っておりますが、そのあたり、大臣から意見の提出があった場合には、個別企業の利益を害するようなことがあっては公表できませんが、どう公表していけるかというようなことは十分考えていく必要があると思っております。
土田委員 その点についてはたくさん議論がありましたけれども、現実問題として、やはり所管大臣というのは政治家が大抵なるわけでございますから、政治家である大臣も、いろいろな義理があったりつき合いがあったり、しがらみを持っているわけですから、この点については、やはり具体的な透明性を、これから考えるんではなくて、もうやはり決めておいたらいいんじゃないのかなと。その一つの提案として、先ほど申しましたように、主務大臣がどういった発言をしたかというのを公開するということは、一つの方法であろうかと思うんですね。
 こういった考えは、これから考えるとおっしゃいましたけれども、既に考えておられませんでしょうか。
谷垣国務大臣 貴重な御意見でございますので、検討してまいりたいと思っております。
土田委員 次に、債権買い取りの実効性についてお尋ねしたいと思うんです。
 機構の債権買い取りに金融機関が応じないで必要債権額に達しない場合は、一たんなされた機構の再生支援は撤回しなければなりません。機構の機能発揮が望めなくなるわけでございますけれども、先日の参考人の方に、金融機関が債権買い取りに応じると見込まれるかどうか、御意見を聞いたんです。そうしたらば、通常の場合であれば金融機関は債権の買い取りに応じる可能性はかなりあるのではないかというような見方をされておりました。しかし、一部の金融機関が債権の買い取りを拒否したり、あるいは企業の再建後に全額を回収する方が得と考えたり、いわゆるごね得をねらった場合、このような金融機関相互の意見が調わないという場合にこそ、機構の中立的立場での効果が発揮できると思うんですね。
 このような場合に、再生可能性のある企業に対する支援をできる限り可能とするために、機構はどういった対応をおとりになるのか。また、政府としまして、債権売却促進のために、これは何回も出ておりましたけれども、何らかの方策を考えておられるのか。具体的な説明をお願いしたいと思います。
 さらに、金融機関の間でどうしても利害の調整がつかない場合、参考人からは、法的処理へ移行するしかないというような意見がありましたけれども、機構としてはこの法的整理にどのようにかかわっていくのか、この点はどうでしょうか。
谷垣国務大臣 これも論点の一つだろうと思うんですね。
 それで、全くの私的整理であればなかなか関係者の同意を得にくい場合も、機構というある意味での中立的な、それから、これはこれからの運用で、あそこが乗り出してきておかしなことを言うはずがないという一種の権威も持たなければいかぬと思うんですが、そういうことによって、全くの純然たる私的整理よりも運びやすくなるという面は、私は、これは確実にあるんだろうと思っております。
 それに加えまして、平沼大臣のところでやっていただいている産業再生法上のスキームも実際使う場合が多いと思いますので、そういう税制の支援であるとか、あるいは融資の機能も、いわゆるDIPファイナンスみたいなものもできるようになっておりますので、合理的に判断していただけば、ここでつくった再生計画に乗った方がいいと判断していただける場合が多いのではないかと私は思っております。
 ただ、それを超えて、一種のごね得と言うと言葉は悪いですが、そういうものがあらわれてきた場合には、私は、やはり法的整理を使う、これはもう法的整理も申し立てようという場合があり得るんだろうと思います。その場合も、これも先ほどの繰り返しになりますが、法的整理になりますとコストとかいろいろな問題も絡んでまいりますし、それから、我々のところでやります私的整理が十分に練った案であれば、法的整理に持っていっても、ほとんどそれをカセットのようにぱっと入れていただいて、新しい法的整理のもとでこれと同じようなことが動いていくという場合もあるのではないかと思っておりますので、そういう場合には、法的整理を利用するということは念頭に置いておかなければいけないんではないかと思っております。
土田委員 ということは、機構としましては、法的整理に移行されるかどうかについては具体的な関与はしていかないということでございますか。
谷垣国務大臣 これは、機構がまだ全く債権の買い取りなんかをしていなければ、機構が申し立てる権限もないことになりますが、機構が債権の買い取りをしていれば、債権者として申し立てるという場合があり得るということだろうと思います。その場合は、買い取った債権の処分として、産業再生委員会で、そういう行動に出ることの妥当性を判断していただくということになると思います。
土田委員 次に、機構が金融機関から買い取る債権の対象範囲についてなんですが、要管理債権を原則としながらも、弾力的に、要注意先債権あるいは破綻懸念債権も対象とすることになるということですね。また、債権を買い取る金融機関も、原則として非メーンバンクとしながらも、必要があればメーンバンクからも買い取る、排除されるものではないということでございますが、基準の弾力的な運用は、機構がその実効性を発揮するために必要であるというふうに思います。また、一定の歯どめが必要であると考えるわけです。
 例えば、極端な場合、メーンバンクの債権を丸ごと買い取るような事態も想定されるわけですけれども、あるいはまた、メーンバンクと非メーンバンクの線引きは原則的に区別するのかなど、債権の買い取り対象について、原則的な基準と、それを踏まえた上でどこまで裁量が拡大可能であるのか、一定の歯どめはどこに置くのか、この点についてはどうでしょうか。
谷垣国務大臣 機構が再生の支援をするかどうかを決定するに当たって従うべき基準は、主務大臣が事業所管大臣の意見を聞いて定めるということにしておりまして、その内容は、去年十二月に産業再生・雇用対策戦略本部で決めていただいた基本指針を踏まえたものとなるわけです。この支援基準に従って、個別の事情に応じて金融機関から必要な債権を買い取ることになるわけですが、一律の歯どめを設けることは、実効的な事業の再生を図るという点から、やや運営を阻害するのかなという感じがいたします。
 しかし、今土田委員がおっしゃった、メーンバンクの債権を丸ごと買い取る場合があるのかといいますと、全くないと断言するあれはちょっとまだないんですけれども、現実的にはなかなか、少し考えにくいのかなと今は思っております。
土田委員 ちょっと後の質問が抜けているんですが、メーンバンクと非メーンの線引きの原則はどうするんでしょうか。
江崎政府参考人 法律の中でも、メーンバンクと非メーンという書き分けはいたしておりません。
 これはどうしてかと申しますと、例えばメーンバンクが何なのかという定義がなかなか難しゅうございます。現実はいろいろなパターンがございます。債権額を一番多く持っておるところがメーンだというケースもございますし、必ずしもそうではないけれども、当該企業に昔からかかわっておる、例えば経営者を送ったとか、その前の非常に重要な設備投資のときにお金を貸した、そういうものがメーンだということもございます。例えば、今の私的整理ガイドライン等々見ておりましても、必ずしも、債権団の中でもどれがメーンかというのが一律に判断をできないというような状況でございます。
 したがいまして、機構といたしましては、当該債務者企業と一緒になって再生計画を持ち込んでこられる立場にある銀行、かつ、形状的に見ましてもそれなりの大きな貸し手であるという銀行、情報も持っておるという銀行、そういうものをメーンバンクとみなして、それ以外の非メーン、それ以外の銀行から債権を買い取ることによりまして、債権者を集約して再生計画をやりやすくするという機能を果たすということでございます。
土田委員 次に、買い取り価格の決め方でございますけれども、機構が買い取る債権の価格ですね。機構が機能を発揮できるかどうか、これを非常に左右する重要な問題であるというふうに思います。もちろん、安ければ金融機関が売却をしない可能性があり、あるいは高い価格で買い取れば二次損失が出てくるということでございますけれども、債権の査定が厳し過ぎれば金融機関側には機構の仕組みが使いづらいという不満が出てくると思うんですね。
 そこで、法律上では、買い取り価格については再生計画を踏まえた適正な時価、これも何回も出ておりますけれども、そうとしか書かれていません。具体的にどのような方法で値段を算定するのか、機構の実効性にかかわる重要な問題でありますので、これについてはなるべく具体的に御説明願いたいと思います。
谷垣国務大臣 これは、法上は適正な時価を上回らないこととするとしか書かれておりませんが、具体的には、市場関係者の評価手法と同じように、再生計画における事業の収益見込み、出口の収益見込みというものを前提にして、どれだけの事業価値があるか、あるいは債権の回収可能性はどれだけあるかということを考えながら判断するということになると思います。
 しかし、それを、では具体的にどうするかということになりますと、そういう専門家にいわゆるデューデリジェンスをアウトソーシングするとか、いろいろな手法を用いてマーケットの評価と乖離しないものにしていくということが必要だろうと思います。そういうことを利用しながら、一番適切なところに持っていくように運ばなければいけないと思っております。
土田委員 ということは、やってみなきゃわからないという部分もたくさんあるかと思うんですが、そういうふうに考えていますか。
谷垣国務大臣 やってみなきゃわからぬと言われると、そうですとはちょっと申し上げにくいんですが、現実には、いわゆるDCFといいますか、ディスカウント・キャッシュフロー法というようなものは企業価値評価あるいは不動産鑑定法の一つとして定着していると思います。それと同じような発想に伴うものでございますし、それから、先ほどからの御答弁の繰り返しになりますが、現実に今までの再建をした事例では、そういう手法によって企業価値を判断しながらスポンサーを探し、あるいは再生計画を実行していくということをやっているわけでありますから、これはやはり、やる側のある意味で能力ということがもちろんございますけれども、やってみなきゃわからぬというような茫漠としたものではないわけでございます。
土田委員 次は、今度は平沼大臣かもしれませんが、再生ビジネスの育成についてです。
 我が国において民間の再生ビジネスを育成していくことは非常に重要であるというふうに多くの方々から指摘がされております。特に、前回行った参考人の中にその専門家の方がおられまして、何回も重要性を説かれておりましたし、我々委員もそれを聞いていて、やはり今の日本にとってそういったビジネスが非常に重要なのかなというような感じを持ったところでございますが、機構が企業の再生支援に当たってこうした民間ビジネスを活用し、育成する方向で考えておられるのか。決して、民間の再生ビジネスと競合し、あるいはビジネスチャンスを奪うようなことがあってはならないというふうに考えるわけでございますが、この民間ビジネスの育成について、どのような配慮をし、あるいは連携をし、あるいは育てていくというふうなことを考えておられるのかどうか、お願いしたいと思います。
谷垣国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、国が再生ということに乗り出しまして、国が関与したためにおかしなことになったというふうにはならないためには、やはり民間の手法、知恵、経験、こういうものを十分にくみ取らなければ私はできないと思います。
 ただ、日本の悩みは、それが十分に育っていないところが悩みでございますが、この四、五年の間に、かつてに比べますと、そういう人材やらノウハウやら、そういうものが蓄積されてきたことも事実でございますので、そういう方たちの知恵を、先ほどから申しておりますが、アウトソーシングをしたり、あるいは、そういう方々の中から機構の内部に入っていただいて仕事をしていただく方も、当然私はお迎えするということもなければならないと思っておりますが、そういう手法を通じて、オン・ザ・ジョブみたいな人材の育成やら、あるいは不良債権マーケット、あるいはそういうものに関する証券化の手法、こういうようなものも見据えながら、それを官がとってしまうということではなくて、育てていくという方向でこの機構を動かしていかなければならない、こう思っております。
平沼国務大臣 お休みをいただいていましたので、最後に私からもちょっと関連の御答弁を申し上げます。
 経営資源というものを散逸することなく、そして企業あるいは産業の再生を図っていくということは非常に重要なことでございまして、そして、民間の再生ビジネスというのは育ってきておりますけれども、ここを活用するということが非常に大切だと私は思っております。
 今お願いしております産業再生法の改正法案におきましても、企業再生ファンドの有限責任性を確保することで、投資家を呼び込みやすい、そういう制度を新たに設けることにいたしております。そして同時に、日本政策投資銀行やあるいは中小企業総合事業団によるファンドへの出資を行うなど、民間の再生ビジネスの事業環境整備に取り組んでいるところでございます。
 また、先般、二月の二十六日でございましたけれども、早期事業再生ガイドラインを策定いたしました。このガイドラインで、再生ビジネスの担い手となります事業再生人材の育成を重要な柱と位置づけておりまして、民間主導による事業再生人材育成センターの発足も検討しているところでございまして、当省としても、予算措置によるソフトの面での支援もすることにいたしております。
 こういったことが育ってきておりますので、谷垣大臣のところと協力をしながら、民間の活力を生かす、こういうことにも力を入れていきたい、このように思っております。
土田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
村田委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。きょうは、産業再生機構法案及び産業再生法改正案について質問をさせていただきます。
 まず最初に、機構法案についてお聞きいたします。
 産業再生機構法案で示されている機構の目的は何なのか。その大きな目的について、まず最初に条文上で確認をさせていただきます。
江崎政府参考人 産業再生機構の目的でございますが、二つ大きな目的がございます。
 一つは、我が国の産業の再生を図る、これとともに、二番目といたしまして、金融機関等の不良債権の処理の促進による信用秩序の維持を図る、この二つを大きな目的としてございます。
塩川(鉄)委員 銀行の債権の買い取りなどを通じて個別の企業の再生を図っていく、そのことを通じて、今お話のあったように、産業の再生を図るとともに、不良債権処理の促進による信用秩序の維持を図る、こういう大きな目的が果たされるということであるわけですけれども、そういう大きな役割が果たせるのかどうかということでお聞きしていきたいと思っています。
 そこで、産業再生・雇用対策戦略本部が決定しました企業・産業再生に関する基本指針、ここに、産業再生機構の位置づけと簡単に三行ぐらいで書いてあるんですけれども、その点を確認させていただきます。
江崎政府参考人 先生御指摘の、戦略本部の企業・産業再生に関する基本指針でございますが、ここにおきまして、我が国の産業再生を図るために、「過剰債務企業が抱える優良な経営資源の再生」それから「過剰供給構造を解消するための産業再編の促進」、この二つが重要な課題とされてございます。
 その解決のために、産業再生法の活用と並びまして、もう一つの大きな柱といたしまして、一定の政府の関与を伴う株式会社である産業再生機構を設立する。設立をすることによりまして、債権者間の利害調整が困難である等の事由で民間だけでは解決が困難な再生可能性のある案件に関し、債権の集約化を促し、中立的な調整者として企業の再生を加速するための機関として、民間の英知と活力を最大限活用する業務を行うということとされております。
塩川(鉄)委員 機構というのは、債権者間の困難な利害調整、これを取りまとめていくという役割を果たす。これは、QアンドAでも拝見しますと、メーンバンクと非メーンの金融機関間で調整が困難なために企業の再生計画が進まないような場合、機構がメーンと非メーンとの間を中立的な立場から調整して債権を買い取り、集約化するとあります。
 そこで、産業再生機構は、銀行など債権者間の利害調整を図るところだということですけれども、この債権者間の利害調整というのは何なのか、なぜ債権者間の利害調整が困難なのか、その点をお聞きしたいと思います。
谷垣国務大臣 困難な場合と申しますのは、やはり、その企業に対する債権者と申しますか金融機関がたくさんあって、お互い利害相反すると申しますか、そういうような状況にある場合になかなか話が進んでいかない、こういうことが現実にあると思っております。
 それは、一般的には、金融機関の間において債権放棄等を調整する場合は、メーン寄せと言われるような現象がよく生じてまいりまして、それでお互い調整がつかない。つまり、債務者企業とメーンバンクである程度合理的な再生計画というものができたと仮定しまして、メーンバンクは従来からその債務者企業の経営に深く関与してきたから、あなた責任があるじゃないかと、サブ以下の銀行が、もっとあなた責任を負うべきだというような議論がよく出てまいりまして、そこの綱引きでなかなか話が進んでいかないというようなことが今までも数多くあったわけでございます。
 こういう場合において、過去のしがらみのない中立的な第三者として機構が入っていくことによって、この辺が落ちつくべきところじゃないかという調整をなし得るということだろうと思います。
塩川(鉄)委員 メーンと非メーンの間に負担のとり方について意見の違いがある、いわば損切りの負担の押しつけ合いということが行われている、そういうことでよろしいですね。
谷垣国務大臣 そういうことだろうと思います。
塩川(鉄)委員 そうしますと、メーンと非メーンの間での負担の押しつけ合いがあるということになると、結局、銀行同士がリスクを、負担と言いかえてもいいですけれども、その負担を押しつけ合って話がまとまらないから、そこに機構が割って入って話をまとめやすくするという話だとすると、銀行のリスクと負担を機構が肩がわりをすることで話がまとめやすくなる、そういうことになるんじゃないでしょうかね。もともとまとまらない話をまとめられるわけですから。
谷垣国務大臣 いや、もともとまとまらないという話、そのもともとまとまらないという意味をどう考えるかですが、やはり、まとまらないままに、じんぜん、要するにどこかでまとまるのかもしれません、ほっておいても。だけれども、そうやってまとまる日を百年河清を待つように待っておりますと、やはりこういうような経済情勢では、企業価値はどんどん悪くなって、結局再生不能となってしまうということがあり得るわけでありまして、そこに一種のスピード感というものが必要なんだろうと思います。
 したがいまして、機構が果たすべき役割は、そういう調整をしながら、しがらみのない第三者として調整をしながら、やはりスピード感をどう持たせるか、こういうところに意味があるのではないかと思います。
塩川(鉄)委員 要するに、話が早くまとまるというのは、メーンの方は自分はこのくらいの損切りしますよ、ついては、非メーンについてはこれだけお願いしたいという計画があるわけですね。しかし、非メーンの方はそれは嫌だとなっているわけですよ。だとすると、この計画をまとめるとしたら、メーンの、債務企業としての出してくる計画、この線で機構がまとめようとなれば、いわばメーンの肩がわりをして非メーンの損切りについて話をまとめていく、ある意味では、メーンの負担の線で、非メーンが嫌だと言っている分をいわばかさ上げして、その分の負担とリスクを機構が肩がわりをすることでまとめるという話になるんじゃないですか。
谷垣国務大臣 この前、参考人として出ておられた坂井弁護士が言っておられましたけれども、当事者間で話を、当事者間といいますか、民間同士で話をすると驚くような話が出てくるというふうにおっしゃっていましたね。過去のいろいろなしがらみ、あのとき貸しがあった、借りがあったというようなことがあって、そういうようなことにとらわれて、いつまでも進まないようなことがあるんだというお話でした。
 私は、それは過去の経緯から言い出したら、そういうことは確かに起こるんだろうと思います。ですから、一方的に、では機構がリスクを負うという意味合いではなくて、やはり現時点で合理的に考えたらこのあたりに落ちつくぞというのは、そういう過去にしがらみのない者でないとなかなか言えぬということはやはり私はあるのではないかと思います。
塩川(鉄)委員 私は、そういう意味では、メーンの肩がわりをして話をまとめやすくする組織じゃないかなと思ったものですからお聞きしているんですけれども。
 例えば、早期事業再生ガイドライン、このほどまとまりましたけれども、そこの中を読んでみますと、「メインバンク主導では債権放棄などの負担を巡る合意が容易に形成されず、かつての事業再生メカニズムが機能しなくなっている」、つまり、メーンがもうかぶれないから、なかなか非メーンの要求に応じられないということでまとまらなくなっている。そういう点では、メーンバンクの線で、要望で話をまとめやすくするという役割を機構が持っているんじゃないか。ここで中立的な調整者の役割を果たすということがありますけれども、メーンの肩がわりをして話をまとめやすくする、そういう組織になりかねないんじゃないんですか。
谷垣国務大臣 いや、それは必ずしもそうでなくて、結局それは、再生計画をどのようなものとして認めていくかということにかかってくるんだろうと思いますね。再生計画が、やはりメーンバンクに一方的に都合のいいような再生計画であるとすれば、それは機構としても実際上なかなか乗れないんだろうと思います。
 機構としては、最終的に経済合理性から考えてこの再生計画がいいということにならなければ、なかなか乗れないわけでして、今委員がおっしゃったようなメーンバンクの肩がわりでやっていくということを一方的に強調されるのは、私はやはり、事態を正確に見たものではないんじゃないかなというふうに思っております。
塩川(鉄)委員 負担の押しつけをまとめるわけですから、当然のことながら、どっちかの肩を持つという話にもなってくるんじゃないか。
 その点では、例えばESPという雑誌がありまして、これは内閣府が編集協力している雑誌で、読んでいましたら、ちょうど「産業再生へ向けた取組み」という特集だったものですから、そこで内閣府の経済社会総合研究所の主任研究官の水上慎士さんという方が書かれておりまして、「メインバンクが権利調整機能を発揮できないでいる理由は、収益性の低下による「資産制約」に陥っているため」、メーンバンクが落ち込んでいるために負担がとれなくなっている、「機構の本質的な役割は資金提供による「資産制約」の緩和にある。」と述べているわけですね。
 そういう点でも、資産制約に陥っている銀行のかわりに資金提供をするという形で、実質メーンバンクの肩がわりをするということなんじゃないかと率直に思うんですけれども、改めていかがでしょうか。
谷垣国務大臣 先ほどから申し上げているように、要は、再生計画の妥当性、客観性というところにかかってくるわけですね。メーンバンクの肩がわりをしてやるということになりますと、メーンバンクに都合のいいような価格で買ってやるとかそういうようなことがあると、委員のおっしゃっているような議論になっていくのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、価格は適正な、この適正がまさに先ほどから議論になっておりますが、適正な時価できちっとやっていき、再生計画をきちっと認めていけば、決してメーンバンクの肩がわりということではないというふうに私は考えております。
 委員がそういう意見をおっしゃるのは、今までメーンバンクの機能というものが、やはり、メーンバンクはできるだけ自分の貸出企業をつぶさないようにやってくるということで、追い貸し追い貸しをして、最後はぎりぎり、気がついてみたら、もうとても病が重くなっているというような事態が今まであったということだろうと思います。したがって、そういうことは今後の企業再生という点ではとれないということがございます。しかし、今までの慣行に乗りますと、もっとメーンが負担せよという面がやはり出てくるんだろうと思います。
 それから、やはりサブ行以下も、そういう意味で責任を逃れるという意味合いから、ごね得みたいなことが随分あったことも、私は実例としてあるんだろうと思いますから、ごね得みたいなものがある場合には、やはり機構としては断固とした態度で応じないと適正な再生計画ができないということになるのではないかと思います。
塩川(鉄)委員 メーンの銀行も立場が変われば非メーンですから、同じようにすべての銀行に当てはまる話で、だから、結果として負担の肩がわりという、調整するという機能を通じて結局は銀行のリスクと負担の肩がわりになるんじゃないかということを私は思うわけです。
 その上で、負担の問題ですけれども、五年後に機構が解散する時点で、最終的に損失が出た場合にはだれが負担をするのか、この点を確認したいと思います。
谷垣国務大臣 負担という前に、これも再三申し上げておるわけですが、債権を買い取りする際に、再生計画の終了時点で新たなスポンサーが出てくるということが見込まれるといったような、出口を見据えての判断をまずきちっとする必要が大前提としてございます。そこがうまくいきませんと、負担が後で重くなってくるということがありますから、ここがまず一番大事でございます。その点が、対象企業の「再生計画を勘案した適正な時価」という表現になっているわけですね。
 それで、今度は個々の、この企業をやった、この企業をやった、赤字も黒字もあると思うんですが、個々の問題はともかくとして、結局問題は、最後にこの機構を閉じるときにトータルとして損失が出るか出ないかということになるわけですね。
 トータルとして損失が生じた場合は、機構の解散時点でまず出資者の出資を毀損して、それでまず埋め合わせていくというのが第一番でございます。それは、金融機関の拠出金を原資とする預保等からの出資金がその負担にまず使われるということになります。その上で、さらに債務超過となっている場合には政府が補てんできるという法案になっているわけでありまして、いずれにせよ、先ほど述べたような再生計画の妥当性などを通じて、最後の負担は最小限となるように努めていかなければならない、こう思います。
塩川(鉄)委員 もちろん、損失が出ないような努力をいろいろされるんだと思うんですけれども、結果として出た場合には、政府が引き受けますよと、一部か全部かはありますけれども。そういうところは、はっきり条文上も書かれているわけですね。
 その際に、私は思うんですけれども、銀行間のいわば権利関係を調整して話し合いをまとめる、その結果として、もしかすると損失が出るかもしれないというふうになってきた際に、そもそも機構というのは、割って入る際には中立な立場でして、中立的な調整者として入るわけですよ。であるのであれば、損失が出たら機構がかぶる、つまり、機構というより政府がかぶる必要がないんじゃないか、いわば銀行が共同でそのツケを負担すればいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 こういう仕組みになっておりますのは、まず、現時点であたかも損失が必ず生ずることを前提として議論するのは、私は正しくないと思います。個々の事案で、十分プラスが出る場合もあるし、マイナスの出る場合もあるだろうと思います。それで、トータルとしてどうなるかということでありますが、私は、率直に申し上げて、この仕事はリスクのある仕事だと思います。石橋をたたいていけるというような仕事ではありませんので、現時点で一切損失が出ないというふうに申し上げることもなかなか難しいことだろうというふうに思っております。その点は、やはりこの法案の審議に当たって申し上げなければならぬことかなというふうに思うわけです。
 その上で、現在、国が負担することができるというふうに書いておりまして、必ず負担するというふうには書いてございません。こういうふうにしましたのは、あらかじめ負担ができないというスキームにしてしまいますと、こういうかなりリスクを負う作業で、実際にはシュリンクをしてしまって使えないようなことにも、この機構が機能しないというようなこともあり得る。しかし、全部国が負担をするということになりますと、どういう原因で負担が生ずるか、いろいろな場合がありますから、あらかじめ国が全部負担をするというようなことはモラルハザードにつながるおそれがある、したがいまして、こういう表現にしているわけでございます。
塩川(鉄)委員 リスクがあって使えないんじゃ困るからということで、穴があいた場合についての担保としてこういう条文が入っているということですけれども、私、そう言うのであれば、もともとリスクがあるんですから、メーン寄せにならないように銀行間のごたごたを、押しつけ合いを整理するという立場で言うのであれば、あくまでも中立的な立場で、銀行間なりでそういった損失も担保するということをきちっと盛り込むということでいいんじゃないでしょうか。政府がわざわざできるということを書かなくても、それで対応できるんじゃないでしょうか。
谷垣国務大臣 これは、今おっしゃったようなスキームでなしに、今我々の考えているようなスキームで行うということは、やはりスピード感が必要だというふうに考えているからです。要するに、事業再生を行い、不良債権処理をしていくことを一気呵成にやっていこうということからこういう仕組みをつくったわけでありまして、三年後まで銀行にリスクを残しておくというのは、かえって今の状況を打開することにつながらないというのが我々の判断でございます。
塩川(鉄)委員 結局、機構というのが、中立的な調整者、中立的な立場とありますけれども、それはあくまでも銀行間でそういう立場であって、国民にとっての立場で見れば、銀行の肩を持って、銀行のとるべきリスクと負担を機構が肩がわりをする、いわば国民に押しつけるということにつながるんじゃないかと率直に思うわけです。
 その上でもう一つお聞きしますが、政府系金融機関での債権放棄の問題がありますけれども、大企業を主要な対象とする政府系金融機関の政策投資銀行において、過去に法的整理以外に債権放棄をしたことがあるかどうかをお聞きしたいと思うのです。債権放棄が相次いだのはこの二、三年ですね。二〇〇一年以降ぐらいで、企業再生に当たって法的整理以外に債権放棄したことというのはあるのでしょうか。
日野政府参考人 お答え申し上げます。
 日本政策投資銀行におきまして、同行が設立されました平成十一年十月一日以来、法的整理に基づく債権放棄以外に債権放棄が行われたことはございません。
塩川(鉄)委員 債権放棄をした前例はないと。極めて特別、異例のことを行うという話になってくるわけですけれども、法案では、政府系金融機関は債務の免除その他必要な協力をしなければならないとあります。個別企業に政府系が債権放棄という形でいわば公的資金を投入する、こういうやり方はおかしいのじゃないか、こういう声が国民から出るのではないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
谷垣国務大臣 政府系金融機関の放棄のお話ですか。――これは、こういう政府系金融機関の負担が合理的かつ妥当なものであるときは債権放棄を含んでいるもので、私は、委員の御判断の前提に、やはりそのことによってなかなか企業再生等がうまくいかなくなって、そして有効な経営資源や雇用や何かを失うような機会が余りふえては日本経済や国民のためによくない、そのために、いろいろな企業再生を円滑に行うためにはどうしたらいいかということでこういうスキームが考えられたわけでございますので、委員のおっしゃるような御批判は必ずしも当たらないのではないかと思います。
塩川(鉄)委員 過去のいろいろな問題で、債権放棄をめぐって国民の批判があったわけです。例えばそごうのときも実質的な債権放棄の話がありまして、担当大臣の方も大分苦労されたわけですけれども、そういう点でも、不良債権処理という名目で国民にツケを回していいのかという批判、そういう点で、大臣もおっしゃったようなモラルハザードという側面で、私、国民から厳しい批判が上がってくるんじゃないかということを率直に思うわけです。
 その点で、今述べましたように、国の損失補てんもありますし、政府系金融機関の債権放棄などとあわせて、銀行が本来果たすべき責任というのを棚上げして、国民に負担を転嫁する、そういうものになっていく、そういう機構について国民の皆さんは納得しないのじゃないか。改めて大臣にお聞きしたいと思います。
谷垣国務大臣 ある意味で、塩川委員は、論点を煮詰めた、いわば誇張した形でおっしゃっているのじゃないかという気がするんですね。ですから、そういう論点を立てられるならば、では、これから、なかなか企業再生がうまくいかない、有効な経営資源を持ちながら、そして立派にその地域地域で雇用の確保の役割を果たしながら、今過剰債務に足をとられているところが、そのまま経営資源を散逸させ、雇用を毀損させていってしまって本当に国民のためになるのかどうかと、やや極端な御議論に対しては、私もやや反対の方からの極端な答えでお答えをしたいと思っております。
塩川(鉄)委員 この企業再生、産業再生というのは不良債権処理策と一体で行われているわけですよ。特に加速策ですね。今どういう事態になっているのか。この間でもさんざん議論したように、中小企業つぶしと言われているほどさんざん議論になっているわけでしょう。貸しはがし、一方での金利の引き上げ。貸しはがしがひどくなるということは金融庁自身も認めていて、わざわざ貸し渋り・貸し剥がしホットラインなんというものまでつくっているじゃないですか。私は、やはりこれと一体となっている機構のやり方では、本当の意味での産業再生につながらないのじゃないかということを率直に思うわけです。
 そこで、少し進めまして、機構が買い取る債権の件ですけれども、債権買い取りの期間が二年となっているわけですね。それはなぜなのかというのを確認したいと思います。
江崎政府参考人 不良債権を削減する、集中期間として削減するというのが平成十六年度末に政府の方針としてなっております。それに合わせて、機構の債権の買い取りというものも大体二年、平成十六年度末ということに決めさせていただいた次第でございます。
塩川(鉄)委員 不良債権処理を集中的にやっていく期間というのは今後二年間ということでしたから、大臣も、記者会見でしたか、債権の、可能性のあるものを二年で買い取るということなんだということをおっしゃっておられるとおりだと思います。
 これは、言いかえますと、機構の役割から考えると、銀行に対して、要管理先を中心に、期限を定めて、生かすところはどこなんだということを迫るという話になってくるのじゃないかなと思うんですね。どこを生かしていこうかということを選択していく。これは、逆な面からいうと、期限を切って生かすところを選ばせるということが、期限を切って、もうここは要らないと切っていく、つぶしていくということを決めるということに実質つながってくるんじゃないでしょうか。
谷垣国務大臣 二年以内にやるということは、これは、ミカン箱の中に腐ったミカンがありますと隣までうつってしまうというのと同じように、やはり早く、生かせるものは生かす、そういうことをしないと、全体が調子が悪くなってくるわけですね。そこが私がスピード感が必要だと言うゆえんであって、何も二年過ぎてだめなものは全部だめよなんて言っているわけじゃないのです。やはり、がんだって早くに切開しませんとうまくいかないのと同じでございまして、二年間という目標を定めて、その間に病巣を取り除き、早く健康にさせよう、こういうことでございますから、委員のように理解をされると、私は、ちょっとゆがんだ解釈になるのじゃないかな、失礼ながらそう思います。
塩川(鉄)委員 腐ったミカンの話がありますけれども、まだ腐っていないんですよ、要管理先というのは。そういうところを持ち上げるというところに最大限の努力をするわけで、腐ったミカンの話というのは、さらに切り捨てろという話を大臣が率先して言っているという話になりますから、その点、決めつけないでいただきたいとぜひ思います。
 その上で、私がこういうふうに申し上げるのも、この前、日本経済新聞を拝見していましたら、一月二十九日付に、「四大銀行 取引先四千七百社を健全化 「要注意先」軸に幅広く」という記事がありました。そういう意味では、要注意先の中に要管理先も含めて書かれているわけですけれども、銀行として、四大メガバンクとしてそういった企業再生を図るという記事として書かれているわけなんですけれども、その記事の中でこういうふうに言っているんですね。資産査定の強化で貸倒引当金の積み増しを銀行が迫られており、取引を続けられるかどうか、企業の選別に動いていると、資産査定の強化で。どうしても自己資本比率の関係でどれを選ぶのかという話に迫られている。そういう中で、当面、四千七百社ということで健全化を図っていくという動きになっているんだという記事で、メガバンクは既に選別に入っていると。腐ったミカンがどれかという話をしているのじゃないでしょうかね。
 ここで紹介されているのも、リスケや経営再建の対象となっているのは全取引企業の一・二%ぐらいと。全部で取引先が四十万社ぐらいメガバンクであると言われていますから、四千七百社というのは一・二%ですね。他方、昨年の三月期の主要銀行の要注意先がどれだけあるかというと、要注意先の債権というのが一四・七%ですよね。要注意先全体は一四・七%なのに、このように健全化、企業再生を図るのは一・二%ですから、その残りの十数%というのは企業再生の対象にならない、切り捨てるという話になってくるんじゃないでしょうか。
 ですから、私、今回十兆円の政府保証枠も要管理の非メーンの部分ということで手当てをしているということで、一気に要管理先について手当てをするということが、さらに整理を進めていく、選別を進めていく、中小企業つぶしと言われている事態をさらに加速するという方向にもつながってくるんじゃないか、機構が裏の面ではそういう中小企業つぶしを加速させるという役割を果たすことになるんじゃないか、そういうことを率直に疑念として思うわけです。その点について、ぜひお聞きしたいと思います。
谷垣国務大臣 先ほど、性悪説、性善説という御議論がございましたけれども、機構について性悪説をおとりになれば、そういう解釈も可能だろうと思います。しかし、私は、今の経済状況、その中で企業経営が置かれている環境から見ますと、やはり早いうちに問題点を整理して克服していく努力というものが、これは当該企業の努力ももちろん必要でありますけれども、政策的にもそういうことを加速する努力が必要なんだろうと思います。
 それで、ほっておきますと、先ほど申し上げた腐ったミカンという例えがよかったかどうかは、ちょっと私も、その後若干反省をしているんですが、やはりもっと調子は悪くなっていくということになるのではないかというふうに思いますので、やや委員とは見解を異にしているというふうに残念ながら申し上げます。
塩川(鉄)委員 同じではないのははっきりしているので、その上での議論ですから。
 私が、今回産業再生委員会の委員長として内定されていらっしゃる高木新二郎先生の文章を雑誌で読んだ際にも、銀行の特別検査が進み、メーン以外の銀行がどんどん引き揚げ、メーンにしわ寄せがいく、さらにメーンがこれ以上つぎ込めないという状況になってきている、そうおっしゃった中で、この機構の役割があるんだ、メーン寄せを防止するという話として出てくるわけですね。何でそういうふうになってくるかという前提として、この特別検査の話があるわけです。
 私は、やはり不良債権処理の加速策の中で、銀行が本来果たすべき責任まで投げ捨てさせるような、そういうやり方自身に問題がある、銀行がきちっと個々の企業の再生を支援する、そういう役割を本来果たさせるようなことこそ政府が行わせるべきだ、このことを改めて訴えたいと思っています。
 そこで、もう一つ機構でお聞きしたいのが、先週の参考人質疑の際に、連合の成川参考人からもお話がありましたように、機構も、これは産業再生法もそうですけれども、雇用への配慮をぜひきちっとしてもらいたいということがあるわけですね。そういう点で、メーンと債務企業が持ってくる再建計画の中には、例えば従業員数をこれだけ減らしますという計画も入れて持ってくるものなんでしょうか。(谷垣国務大臣「従業員数」と呼ぶ)従業員数。つまり、三年間でどれだけ減らすのかという人員削減の計画も入れたものを持ってこさせるという話になるんでしょうか。それが条件なんでしょうか。
谷垣国務大臣 それが条件ということは必ずしもないんだろうと思います。ただ、その問題となっている企業が、どうすれば今後きちっと自前で活動していけるかという議論をしていただく、それは債権債務の関係もあると思いますし、あるいは雇用の問題も入るかもしれません。多くの場合には、むしろ雇用の問題についてどうするのかというようなことを、例えば労働組合と話をしながら計画を立てるというような場合が多いのではないかと思いますけれども、必ずしもそういうことが条件になるというわけじゃなくて、問題は、それで後やっていけるのかどうか、こういうことだろうと思います。
塩川(鉄)委員 そういいますのも、基本指針の中に、「機構とメインバンクで企業の債権の相当部分を保有し、強力に企業のリストラ・経営再建を推進する。」というふうな文言が入っているものですから、当然のことながら、今のリストラというのは、設備廃棄も当然入るでしょうけれども、人員削減というのはどこでも言われている話で、そういうことまで含めた計画をいわば認定する、機構としてそれを受け入れるということになると、いわば機構がこういったリストラにお墨つきを与えるような話になってくるんじゃないか。私は、そういう点についての懸念というのは、当然のことながら、今大失業時代の中、国民の皆さんから出されても当然ではないかなというふうに思っているわけです。国がリストラに直接手を下す、それに近いような話が生み出されてくるんじゃないかなということを感じざるを得ません。
 それとの関係で、そういったことを思うのも、産業再生法の認定計画の中に、従業員の数について、始まったときと終わりのときの数を書けというのがあるものですから、その差を引けば従業員を削減した数というのもあるものですから、産業再生法と並びでの機構法の議論の中において、その点がどうなのかというのが、今後もまた議論をしていきたいと思います。
 そこで、時間もあれですけれども、産業再生法の改正案について何点かお聞きしたいと思います。
 もともと、九九年の十月にスタートした産業再生法ですから、これを改正してさらに継続する、さらにバージョンアップを図るということであれば、この過去三年数カ月、どういうことが行われたのかという総括をきちっとすることが必要じゃないかと思っているわけです。
 この産業再生法の改正案の議論の前提となっています産業構造審議会の新成長政策部会の中間取りまとめ、ここにも、産業再生法については一定の成果を上げていると書いているんですけれども、この一定の成果というのはどんなものなのか、この点をお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 現行の産業再生法というのは、企業の選択と集中を促進することによりまして生産性の向上を図って、我が国産業の活力を再生することを基本理念とした法律でございます。
 御指摘のように、その制定から現時点まで三年間たったわけでございます。実績としては、百八十九件の事業再構築計画の認定実績がありました。例えば、具体的には日産でございますとかトヨタ、ソニー等の企業が、事業を再編成してその競争力を強化する際にこの法律を活用した、こういう事例でございます。
 これまでに計画期間が終了した案件のうち当省が認定したものは、その中で十四件でございますけれども、その八割程度、十一件のケースで、認定基準となっております生産性に関する改善目標を達成しておりまして、これまでのところ、今相当程度、こういう評価を読み上げていただきましたけれども、相当程度の成果を上げてきたもの、このように思っているところでございます。
塩川(鉄)委員 事業再編成のお話がありました。いろいろなメニューを見ても、この産構審の中間取りまとめでも、営業の譲り受け、譲り渡し、あるいは企業合併、それから共同事業会社設立とか持ち株会社設立とか子会社の設立とか、いわば企業の組織再編、そういう面で産業再生法が大きな役割、そういう意味での成果を果たした、企業の選択と集中を促すという大きな方向の中で、企業の組織再編という点でこの産業再生法が大いに役立ったという評価をされているということでよろしいでしょうか。
平沼国務大臣 これは、選択と集中の中で、先ほどの答弁にも触れさせていただきましたけれども、生産性も非常に向上している、こういうことも当然成果として上がっているところでございます。
塩川(鉄)委員 企業の組織再編というのも当然成果として評価されていらっしゃるということを確認したいんです。
平沼国務大臣 組織再編、ここを塩川先生強調されますけれども、これが目標ではございませんで、あくまでも選択と集中の中で、そしてこの厳しい環境の中で、企業の再生そして活力向上をねらっている、ここが主眼でございます。
塩川(鉄)委員 あと、引き続きまたお願いします。
 終わります。
村田委員長 大島令子さん。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 私は、まず、産業活力再生特別措置法の方から質問をいたします。
 この法案の中で、経済産業省の雇用問題についての認識について、平沼大臣に伺いたいと思います。
 長期不況の中で、しかも失業者の受け皿が不足する中で、産業だけ生き残るような政策だけで果たして景気の回復は成るのか、疑問に思っております。雇用に対する不安は消費意欲を減退させ、結局、物をつくっても買わない、売れない過剰供給、またリストラという悪循環に陥ることは、この産業活力再生特別措置法の成立時にも指摘されたことであります。この法律が一九九九年に施行されて、失業率はついに五%台に突入し、この数字は現在も維持されております。今回の改正案を見ますと、労働者に関する内容については、第三条に規定されているものが全く改正されずにおります。
 改めて、雇用の問題を景気問題として経済産業省はどのようにとらえているのか、お尋ねしたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘のように、この長引く不況の中で、いわゆる失業率というのが戦後最高のマイナス五・五、また完全失業者が約三百五十万人以上、こういう厳しい現実があることは事実でございます。
 今般の産業再生法の改正その他の関連措置によりまして、やはり、我が国に存する経営資源の効率的な活用が進むことで我が国産業が活力を再生することを通じまして、中長期的には経済の成長と雇用機会の確保、拡大が期待できるもの、このように考えているところでございます。
 現時点で申し上げますと、産業再生法の計画を終了した事業者数は、限定的ではありましたけれども、私どもは、徐々に効果があらわれてきた、数年のうちにはさらに、ここだけで終わるわけじゃございませんので、相応の効果が期待できるもの、こういうふうに考えております。
 しかしながら、御指摘のように、今の状況は非常に厳しいわけでございまして、経済情勢は刻一刻変化をしております。また、認定事業者数も短期的にはマクロ経済に直接影響を与えるほどの規模には達していない、こういうことも考えられます。
 このために、産業再生法等による対策に加えまして、平成十四年度の補正予算あるいは十五年度の当初予算に、デフレ対策の着実な実施、新規事業の創出の拡充等によりまして新規の雇用の増大を総合的に図っていくとともに、あるいは離転職を余儀なくされた労働者に対する円滑な労働移動や早期再就職の支援等、雇用のセーフティーネット対策をやる、こういうことにいたしております。
 具体的には、そういう短期的にやる手と、中長期にわたって雇用を創出することをやらなければいかぬ、こういうことで、私どもとしては、一昨年の十一月に産業競争力戦略会議というのを立ち上げまして、半年間かんかんがくがく議論をさせていただいて、その中で、やはり日本の一つの産業の活力を向上させるためにはどうしたらいいかという形で、四本柱をつくらせていただき、これも産業競争力戦略会議の議を経まして、今、国の中心的な政策課題にさせていただいています。
 さらには、これはもう皆様方に御協力をいただいて、新たに雇用を創出する、そういうものをつくらなければいかぬということで、例えば、今までは個人保証も第三者保証も土地担保も要る、それじゃないと新規事業が開業できない、こういうことでございましたけれども、事業計画だけで新しく事業を立ち上げられる、こういう新しい仕組みをつくりまして、これによりまして従前の十倍のスピードで新規雇用が立ち上がっているということは、やはりそれだけ新規雇用の創出に結びついていることだ、こういうふうにも思っております。
 さらに、ベンチャー企業というものもどんどんつくらなければいかぬということで、大学発ベンチャーというものの一千社計画というのを二〇〇五年までにやろう、こういうことで進めまして、既に五百社に近い新しい企業も誕生してきております。
 さらには、もうこれは大島先生もよく御承知の、地域の経済を活性化させなければいけない、地域で雇用を創出させなければいけないという形で、地域産業クラスター計画、こういうのを今どんどん拡大してきておりますけれども、全国の十九の拠点で、大学の数も二百に近い大学が入り、企業も五千社になんなんとする企業、そこから新しいベンチャーを含めて新しい雇用も生まれてくる。
 こういうことになっておりますので、やはり足元の対策、そして中長期的な対策、こういった形で、雇用というのは非常に大切ですから、私どもはしっかりやっていかなければいけない、このように思っております。
大島(令)委員 この法案の適用によりまして、希望退職者は実際どのくらいの人数が出たのか、把握しておりますか。
林政府参考人 お答え申し上げます。
 これまで計画の認定を行いました案件の中に、もちろん、希望退職募集等を行ったものも含まれているのは事実でございます。この場合、当然のことながら、労働組合と必要な協議を行うなど十分に話し合ってということで進めているという確認をしているところでございます。
 そういった意味で、労働者の雇用の安定を図るという喫緊の課題でございますので、先ほど大臣から御説明を申し上げましたようなことも含めて対策をとっておるというところでございます。
 したがいまして、この計画の中に希望退職募集を行ったものは含まれておりますけれども、それが正確にどれだけかということはわかっておりません。
大島(令)委員 私が質問に先立ちまして経済産業省から二月に、この計画期間が終了し、その後実施報告が行われた十四件を対象とした平均値というところでは、ほとんど解雇はゼロになっております。しかし、この法案の改正に当たりまして、余りにも、雇用に対するデータがこれだけしか、この紙切れ一枚しか示されないというのは、私は、今改正案にしましても、事業再構築計画の認定に関して、計画認定の要件として、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」ということが一行定められている。今回も、これだけ失業率が高いにもかかわらず、ここのところは、従業員の地位ですとか雇用の問題に関しては改正がなされていない。ですから、今大臣は、雇用に対していろいろな角度から配慮していると言われていましても、実際的にその失業率の高さが推移している中で、果たして効果があったのかないのか、そういう観点からも疑問に思っております。
 もう少し、政府参考人の方ははっきりと述べてください。私は、希望退職者はどのように把握しているのかいないのかということを質問しておりますので。どうなんでしょうか。
林政府参考人 十四件の、今まで終了いたしました、事業再構築計画の認定を受けました案件がございます。それらの平均でございますけれども、計画申請時に二千三百三十名だったものが終了時に二千百三十名と、二百名ほど減となっております。この間、解雇はございません。したがいまして、この間、希望退職でありますとか定年退職でありますとか、いろいろな形で減ったものもございますが、他方、新規採用で八十人の方が採用されております。そのほかに、グループの中あるいは外等ございますけれども、平均二百八十名の方が何らかの形でそのグループ内外で職を得られているということでございます。
大島(令)委員 今の答弁は余りにも大ざっぱであると私は思います。
 実は、二十六社、違うところから調べたのがありまして、例えば、事業が終わった住友金属工業というのがありますけれども、ここは開始時期従業員数は、平成十一年九月ですが一万四千九百六十六人、そして終了した平成十三年三月は一万一千六百五十二人で、三千三百十四人従業員数が減っております。二十六社調べたものがあるわけなんですが、調べようと思えば調べられるわけなんですね。この調べる根拠となったものは、各社の有価証券報告書総覧または各社のホームページです。
 そして、事業再構築に伴う労務に関する事項というところでも従業員が減っております。これは、住友金属からダイエーまで二十六社、申し上げませんが、開始時期の従業員数がトータルが三十八万二千百三十二人が、終了時期従業員数は三十七万人で、約一万二千人の人が減っているわけなんです。
 これを調べたのは、経済産業省のホームページを参照して調べました。調べようと思えば、細かな数字の中で、この事業再構築の中で多くの労働者がいろいろな形で会社を去っていっている現実があるわけなんです。こういう現状認識のないまま、一九九九年に制定された特別措置法が今回一部改正として出てきている。経済産業省はこの労働者の追跡調査、実際一万二千人ぐらい減っているわけですから、選んだわずか二十六社でございますけれども、計画が終了しましたが、もっと真摯に受けとめるべきだと私は思うわけなんです。
 ですから、この法律は、片方の産業だけを見た法律であって、産業再生のために労働者がどうなっていくかという視点が少し欠けている、薄い法律だと私は思うわけなんです。この点に対してもう一度、大臣なり政府参考人から答弁をお願いしたいと思います。
平沼国務大臣 もちろん、産業再生に当たりましては、御指摘のように雇用の安定に十分配慮する、そして対応するということは重要であることは言をまたないところでございます。
 こういった観点から、産業再生法においては、雇用の安定への配慮を法目的に明記をするとともに、事業再構築計画等の認定に当たっては、先ほどその文言もお読みいただきましたけれども、従業員の地位を不当に害するものではないこと、これを要件にしているところでございます。
 また、事業再構築計画等の実施に当たりましては、認定事業者は、その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、労働者の失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるように努めなければならない、こういうことにしているわけであります。
 さらに、国におきましても、事業再構築等に伴う雇用面への影響を最小限にすべく、失業の予防でございますとか就職のあっせん、あるいは職業訓練の実施といった所要の措置は講じているところでございまして、御指摘のように、私どもとしては、この再生法については、十四件の中の十一件、そしてその中での雇用は、先ほど局長から答弁をしたとおり、実際、そういう意味では、従業員を不当に首切ったというような事例はない、こういうことでございます。
 ですから、そういう中で、御指摘のとおり非常に厳しい重要な問題ですので、今申し上げたとおり我々はしっかりやっていきたい、こういうふうに思います。
大島(令)委員 今の大臣の答弁は、この法律の計画に呼応した雇用の維持につながるものではないんです。一般的な支援策なんですね。例えば、公共職業安定所による支援ですとか雇用調整助成金の支給ですとか、私はこの法律に関して質問をしているわけです。
 改めて申し上げます。では、労働組合との協議の義務づけを一九九五年の特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法、いわゆる円滑化法から盛り込まなくなったのには何か背景があるんでしょうか。
林政府参考人 どのような事項をどのような性格の協議なり合意の対象とするかというのは、基本的には労使自治によって定められているということでございます。したがって、一律に協議を義務づけるということは適切ではないと考えております。
 それから、前の法律との関係で申し上げますと、前の一部の法律は設備廃棄を目的としたものでございました。それに対しまして、再生法その他は、一方で有用な経営資源を有用に生かしていく、そういう意味で積極的なサイド、そこもやっていくというトータルのものでございます。そういった意味で、少し性格が変わっておるということもあわせて付言させていただきます。
大島(令)委員 答弁になっていないです。
 産業再生政策の動向を調べましたところ、一九六三年の特定産業振興臨時措置法というのは三度国会に上程されましたけれども、支持を得られず廃案になりまして、一九七八年、このときは特定不況産業安定臨時措置法ということで、五年間の時限立法で、一九七八年、一九八三年には特定産業構造改善臨時措置法、そして一九八七年には産業構造転換円滑化臨時措置法、一九九五年には特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法、そして九九年にこの一部改正しようとする産業活力再生特別措置法ということで、一連の法律名と中身は違いますけれども、一連の流れの中でこの法案が提案されてきたわけです。
 そして、一九八七年に制定されましたいわゆる円滑化法の中には、施策として事業提携計画、これらの計画の承認に際しては、企業に労働組合との協議、失業予防策の立案を義務づけるということできちっと明確に法律の中に明記されているわけなんですね。
 今回はそういうことが触れられていない。特に、一九九五年の円滑化法から法文として明記されていない。そこのことを私は質問しているわけですので、改めて明確に御答弁ください。
林政府参考人 今御指摘ございましたように、過去の立法事例におきまして、設備廃棄を直接の目的とするような場合におきましてそういう条項が設けられておるわけでございます。
 ただし、先ほど申し上げましたように、この法案あるいはこれの前身となっております九九年の段階でも同様の議論がございましたけれども、この法律が事業再構築あるいは事業開拓支援、事業革新、あるいは技術の活性化といったような要素によりまして我が国産業の生産性を高めて、将来における経済発展の基盤を構築するということで、むしろ新たな産業や雇用につなげていく、そういう目的でございますので、本質的に、設備廃棄を直接の目的とする場合に設けておりました労働組合との協議は、その段階から設けないということになって、立法例としてはそういうふうになってございます。
 その結果でございますけれども、先日の参考人の方の御議論にもございましたけれども、結果として労働組合と企業の間のお話し合いが円滑に進んでいるといった意味で、トラブルは聞いておられないということが連合の方のお話でございましたので、そういうふうに進んでいるのかなというふうに了知しているところでございます。
大島(令)委員 歯切れの悪い答弁で、私は理解できません。
 一九九九年の民事再生法そして産業活力再生法、二〇〇〇年の会社分割制度の導入に伴いまして労働契約の承継法が制定されましたが、これはいわゆるリストラ型解雇促進法として専ら機能しており、一方の労働者側の権利を保障する法整備が行われてきておりません。このこと自体も問題ですが、今新たに整理解雇法理が改正されようということになっているわけなんです。そういう中で、経産省として産業再生法に何ら労働者対策を盛り込まないということに対して、私はいけないんじゃないかということを質問しているわけなんです。
 例えば、諮問機関の中でワークシェアリングなど研究しているわけですね、いろいろな手法があると思うんです。先ほど来、大臣が言われた、いろいろな助成金ですとか支援措置というのは、直接的な、解雇なり希望退職を募って職を離れてから後の措置であるわけなんです。私が質問しているのは、明らかに計画の段階で、解雇はないけれども、希望退職者を募っているわけなんです。
 これは、国会図書館で数字を拾って調べてみましたが、本当に経産省は、この産業再生、事業を再生していくに当たりまして、これだけしか雇用に対する資料をこの法案の審議に対して出さなかったわけなんです。しかし、国会図書館は、各社のいろいろなホームページですとか経済産業省のホームページを見ながら、また電話一本で済まされるところから、いろいろな事業が終わっているところですから、こういう形で従業員が減っている、そういう数字を出してきているわけなんです。
 こういう背景を経産省が認識しているならば、私は、今度の改正の中に、事業計画を認定するときに、全く現行法と何ら変わりがない、触れていない、ましてや、先般から失業率が高い、五・五%をずっと維持している、こういう中で産業再生だけに偏ったものである。そして、産業再生というのは、やはり経済の立て直しも必要なわけですから、働く人が職を失えば需要も減ります、そして過剰供給という中で収入がなければ経済も回らないわけですから、やはり私としては、一面的な改正案ではないかということを疑問に思っているわけなんです。
 このことに対する大臣の見解を聞かせてください。
平沼国務大臣 私どもとしましては、局長の方から、省から出した数字というのは、産業再生法に基づいて、そしてその法律を利用してやったその実績として、実質的な解雇がなくて新たな就職がどうだという数字を示しました。
 しかし、その間、日本の経済というのは全体的に非常に不況に入りまして、そしてその中で大きく失業率は上がった、こういうことでございますから、それは先生が持っておられる数字のとおりの数字が全体的には出ているわけであります。
 それから、今度の改正産業再生法にそういうきめ細かなことを盛り込まないというのはおかしいじゃないか、こういう御指摘ですけれども、しかし、先ほどの答弁でも申し上げたように、私どもとしては、雇用に対してちゃんと配慮をすること、こういうことがすべて代表的な文言として入っているわけでありまして、そしてそれを中心として、やはり雇用というものを確保するために、今、一般的な、一般論だとおっしゃいましたけれども、これは実際に動いている一つの手だてでございますから、そういうことをこの産業再生法の中にも総合的な形でそれを盛り込んで雇用対策をしていく、こういう精神であるということをひとつぜひ御理解をいただきたい、こういうふうに思います。
大島(令)委員 それでは、大臣に聞きます。
 大臣は、労働者をどのように考えていらっしゃるのか。例えば、労働者というのは、弱く保護されるべき労働者なのか、強く主体的な労働者なのか、どちらだとお考えなんでしょうか。
平沼国務大臣 大変難しい御設問だと私は思いますけれども、それは状況によると思いますね。
 やはり、労働者が主体的に、技術力を持ち、知見を持ち、知識を持って、強い労働者として存在するということは非常に大切なことです。しかし、そういう知見だとか知識だとか経験があるにもかかわらず、非常に景気が不況の中で、いわゆる自発的じゃなくて非自発的に失業になる、こういうようなことになると、労働者というのはある意味では非常に弱い立場に相なると思います。
 ですから、そういう弱い立場になった労働者の方々に対しては、私どもは、やはり失業という問題は非常に大きな問題でございますから、ここはしっかり国としていろいろな面で支援をしていかなければならない、私はそういうふうに考えております。
大島(令)委員 両方だというふうに受けとめておりますけれども、もし強く主体的な労働者であるということであれば、私は、雇用をめぐる法改正は間違った概念に従って行われてきていると思っているわけなんです。それが今の高い失業率となって、数字であらわれているわけなんです。
 また大臣は、弱く保護されるべき労働者でもあるということを申されましたけれども、であるならば、一九九五年の円滑化法からずっと、労働者の権利、計画を立てるときに外してきたわけなんですね。
 企業者、経営者は責任をとりません。会社が倒産しても家があります。しかし、労働者、いわゆる従業者は逃げ道がないわけなんですね。このことについて、どう思いますか。
平沼国務大臣 今、経営者もこういう厳しい中で大変苦労されておられまして、例えば、中小企業の経営者の方々というのは、約二万件ぐらいの倒産があります。そして、中小企業がそれだけ大きく倒産をしている。また自殺者も、三万人になんなんとする自殺者がおりまして、法務省の統計によりますと、そのうち四千百人が中小企業の経営者、こういうような実態もあります。
 そして、国としては、ただ単に、こういう厳しい状況の中で失業された方々をすべて放り出して無責任に放置をしている、こういうことではございませんので、そこは、失業保険でありますとか再就職のあっせんでございますとか、あるいは新しく、新規の雇用を創出するための施策、そういった形で、私どもとしてはでき得る限り対策を講じているわけでありまして、一方的に、経営者だけがぬくぬくとしている、こういうことではございません。
 私どもとしては、総合的に、そういう非自発的に失業をせざるを得なくなった方々に対しては、ほかの国々に比べても相当高い水準で、失業手当等そういう支援を講じているということも私から言わせていただきたい、このように思っています。
西川副大臣 経済産業省が雇用政策に不熱心のような御注意があったように、先ほど来伺っているんでございますけれども、私ども、実は企業行動課という課を中心に、本来厚生労働省のお仕事かと存じますけれども、潜在的に我が国にどれぐらいの求人があるか、それらを調べますと、大変多くの求人がございまして、これがもしミスマッチが除かれてフィッティングするならば、完全雇用に近いようなものもあるというようなデータもひっ提げながら、懸命に今、雇用の安定化、失業率の低下に努力をしているということも、ぜひ大島先生に御理解いただきたいと思って、余分なことでございますが、申し上げたところです。
大島(令)委員 そうしたら、西川副大臣、そういう資料を出してください。
西川副大臣 お届けいたします。
大島(令)委員 私は、ここに内閣府が出しております月例経済報告の推移というのがありまして、この産業再生政策の法律が通った時点の背景が書いてあるわけなんですね。
 まとめて見ましたけれども、やはり一九九五年の法改正のときから、雇用情勢を見ると製造業を中心に厳しさが見られる、内閣府がこういうことを言っているわけです。一九九九年の産業活力再生特措法のときには、雇用情勢は依然として厳しい、雇用者数は下げどまりの兆しがあるものの、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。そして、今年二月、雇用情勢は、求人が増加傾向にあるものの、失業率がこれまでの最高水準となるなど依然として厳しいということで、月例経済報告でも言っているわけです。
 そうしますと、先ほどからの当局の答弁、私はなかなか納得できないわけなんです。では、今、この内閣府が出した月例経済報告の中から、大臣、雇用に対しては本当に万全なんですか、今の日本の社会は。
平沼国務大臣 先ほど来、私申し上げておりますけれども、決して今の日本の雇用は状況はいいとは私は答弁をしておりません。そして、完全失業率もマイナス五・五という形で、戦後最悪のレベルであります。ですから、私どもとしては、非常に今の雇用の問題というのは深刻に受けとめておりまして、厚生労働省とも協力をしながら、今一生懸命やっているところであります。
 私どもは、全国に九カ所、いわゆる経済産業局というのを拠点として置いておりますけれども、地域の雇用というのも大切ですから、厚生労働省と地域においてもタイアップをして、お互いに情報交換をしながら雇用対策をきめ細かくやっている、こういうこともひとつ御記憶にとどめておいていただきたい、こう思います。
大島(令)委員 であるならば、一九九五年のときから、法律の中から外してきた背景をおっしゃってください。その回答がなかなかないんです。
平沼国務大臣 これも先ほど来答弁させていただいていますけれども、決して全部なくして白紙にしたわけではございませんで、そういういわゆる産業再生法を進めるに当たっては、雇用の面も、労働者の立場にも十分配慮すること、こういうことを明記してあるわけです。したがいまして、そのほかの、そこは細かく、労働組合と協議してですとかそういう細かい条文にはなっておりませんけれども、基本的にそこですぱっと打ち出しておりまして、後は厚生労働省、我が省、すべて総合的に協力をし合って、やはり雇用をいかに拡大するか。そして、産業再生法というのは、産業を再生して、今の厳しい状態で活力をつくって、そして、厳しいけれども、その先にやはり大きな道が開ける、こういう法のいわゆる立法趣旨がございまして、それに沿って我々は努力をしていかなければいけない、このことも御理解をいただきたい、こういうふうに思います。
大島(令)委員 それでは、一九七八年以降の産業再生政策について伺います。
 この年には、特定不況産業安定臨時措置法の制定がされまして、時限で産業再生政策を繰り返してきました。例えば、特定不況産業安定臨時措置法は、対象を素材型製造業にするなど、そのときごとに対象が違っています。
 質問でございますけれども、対象とされた産業界の再建は成ったのか、経産省としての評価を聞かせてください。
平沼国務大臣 御指摘のように、一九七八年以降に制定をされた、例えば産業構造転換円滑化臨時措置法でございますとか、それから事業革新法として特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法、これは空洞化対応のための事業革新を支援する、こういったこともやらせていただきましたし、あるいは特定不況産業安定臨時措置法、あるいは特定産業構造改善臨時措置法、こういう一連のことをやらせていただいて、そして産業再生法、こういう形で流れてきております。
 共通する特徴といたしましては、一つは、オイルショックでございますとか、あるいは円高の問題でございますとか、あるいは引き続いて起こったバブル崩壊後の不況でございますとか、そして、それに続いて起こった産業空洞化、それから今非常に大きな問題になっております不良債権の処理など、その時代時代における日本の経済の構造調整上重要な課題にそれぞれ臨機応変に対応をするものであった、こういうことが言えると思います。必要となる構造調整を実現するために、個々の事業者が行う望ましい取り組みを、課税でございますとか商法等の特例措置を講ずることによって促進をしてきました。それぞれ、これは相当の成果を私どもは上げた、こういうふうに認識しております。
 その一方で、いわゆる特安法ですとか産構法、あるいは円滑化法、あるいは事業革新法と今回の産業再生法の改正の大きな違い、これも一言申し上げさせていただきたいのですが、円滑化法や事業革新法においては、施策の対象となる業種を行政が指定して、そして政策の展開を図るというスキームになっている点であります。
 かつて、我が国におきましては、成長産業と衰退産業が現時点よりも非常に明確な形で存在していました。成長産業を伸ばして衰退産業を円滑に縮小していく、いわば産業構造調整、これを行うことに政策的な意義があった。こういうことで、一連のことを措置としてやってきました。
 しかし、今の時代というのは、御承知のように、産業が高度に成長をし発展をし、市場もまた成熟をしているわけでございます。現在においては、自動車、家電に代表される既存産業が、じゃ前と比べて自動車だとか家電というのは衰退産業かといったら、そうじゃないわけですね。あるいは、低公害車やIT家電などが主力となる市場と業態を多様に変化させながら、今後もさらに発展をしていく、こういう可能性があるわけでございます。
 私どもとしては、今までの手法と違って、成長産業を伸ばして衰退産業を縮小するということじゃなくて、それぞれの産業の中で劣位にある、そういう企業において、不採算部門を解消しながら、いいところを伸ばしていこう、こういうことが必要だと思っておりまして、この産業再生法というのをお願いしているわけであります。
 したがいまして、総括をしろ、こういうお話ですけれども、今までの状況は、これまでお話ししたように、成長産業と衰退産業というのがもう明らかに分極化をしておりまして、そこに構造調整をするという形で一生懸命やってきて、その結果、一連やってきたことが、世界の中でも日本のいわゆる産業力というものが非常に大きく評価をされた、そういう成果が十分に上がった、私はこういうふうに思っております。
 今度は、大きく構造が変わった中で、さらにこのポテンシャリティーを生かして、そして日本の得意な物づくりの分野ですとか、そういった分野をさらにしっかり伸ばしていく、あるいは流通業もそれなりに体制を強化して競争力をつけていく、そういうことによって日本の経済の活力をよりさらに高めていく、こういうことで私どもはお願いをしている、こういうことでございます。
大島(令)委員 時間が参りましたので、申し上げますけれども、一九七八年のこの一連の法律が制定されたときから、日経平均株価が五千五百三十七円、それから九千八百九十三円。そして、一番いいときで一万九千八百六十八円、それは一九九五年です。そして、この法案が制定されたとき、一九九九年の平均株価は一万八千九百三十四円。そして二〇〇二年、八千五百七十八円ということで、株価から検証しますと、大臣が言ったように、評価をされているというふうには、一面的な見方かもしれませんが、私は思っておりませんので、きょうはこの辺で終わります。ありがとうございました。
    ―――――――――――――
村田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 各案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十一分散会


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