衆議院

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第8号 平成15年3月19日(水曜日)

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平成十五年三月十九日(水曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君
   理事 井上 義久君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      河野 太郎君    左藤  章君
      佐藤 剛男君    坂本 剛二君
      桜田 義孝君    谷田 武彦君
      中川 秀直君    西川 公也君
      林  義郎君    平井 卓也君
      福井  照君    増原 義剛君
      松島みどり君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    小沢 鋭仁君
      奥田  建君    鍵田 節哉君
      川端 達夫君    後藤  斎君
      鈴木 康友君    仙谷 由人君
      中津川博郷君    平岡 秀夫君
      松野 頼久君    山田 敏雅君
      河上 覃雄君    福島  豊君
      工藤堅太郎君    大幡 基夫君
      塩川 鉄也君    藤木 洋子君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君    大島 令子君
      金子善次郎君    山谷えり子君
      宇田川芳雄君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室長)    江崎 芳雄君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           中嶋  誠君
   政府参考人
   (経済産業省経済産業政策
   局長)          林  良造君
   政府参考人
   (中小企業庁長官)    杉山 秀二君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十九日
 辞任         補欠選任
  小池百合子君     坂本 剛二君
  松島みどり君     福井  照君
  山本 明彦君     左藤  章君
  渡辺 博道君     谷田 武彦君
  奥田  建君     平岡 秀夫君
  金田 誠一君     鍵田 節哉君
  鈴木 康友君     仙谷 由人君
  大幡 基夫君     吉井 英勝君
  大島 令子君     植田 至紀君
  金子善次郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     山本 明彦君
  坂本 剛二君     小池百合子君
  谷田 武彦君     渡辺 博道君
  福井  照君     松島みどり君
  鍵田 節哉君     金田 誠一君
  仙谷 由人君     鈴木 康友君
  平岡 秀夫君     奥田  建君
  吉井 英勝君     藤木 洋子君
  植田 至紀君     阿部 知子君
  山谷えり子君     金子善次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  藤木 洋子君     大幡 基夫君
  阿部 知子君     大島 令子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 株式会社産業再生機構法案(内閣提出第三号)
 株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四号)
 産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
 公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第七号)
 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
 発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、株式会社産業再生機構法案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省大臣官房審議官中嶋誠君、経済産業省経済産業政策局長林良造君、中小企業庁長官杉山秀二君及び内閣府産業再生機構(仮称)設立準備室長江崎芳雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。
仙谷委員 おはようございます。仙谷でございます。
 お伺いするところによりますと、何か最終局面のようでございまして、本来は、まず最初に問題提起をしたかったのでありますが、最後になりました。最後になりましたけれども、ある意味で大変重大な問題を含んでいる法案でございますので、四、五点について問題提起をさせていただきたいと存じます。
 まず、谷垣大臣と平沼大臣にお伺いをするわけでありますが、こういう本が出ました。「こんな株式市場に誰がした」、要するに、株式市場に政府が、この数年間といいましょうか五年ぐらい手を入れて、まあ最たるものはPKOと言われるやり方でありますが、政府が手を入れて、その時点その時点、つまり毎年度三月期の株価水準を維持して、企業とりわけ金融機関の資産の劣化をある程度防ぐという意味ではしのいだということになったようであるけれども、そのことによってもたらした副作用といいましょうか、株式市場がどんどん窒息状況になってくる、そういうことが数値を、データをもとにして書かれておる本でございます。ぜひ一度お二人にもお読みいただきたいと思います。
 その伝でいきますと、日本の市場といいますか、大きい意味での市場というか資本主義経済というか経済社会、こんな経済社会にだれがしたんだ、まさにそういう問題意識が今我々に必要なんじゃないかというふうに私は考えておるんですね。
 現実に我々の目の前にあるというか、我々が肌身で感じる経済の問題あるいは産業の問題というのは、昨年小泉さんが、危機、危機と言うけれども、どこに危機があるんだなんということをほえておりましたが、これはまあ今になって思うと、後講釈と言われるかどうかは別にして、ますます危機が深くなる、深化しつつ拡大していっておったんだなということは、常識のある人なら認めざるを得ない、こういう局面だと思うんですね。特に、平沼大臣と谷垣大臣は、金融と産業の方から物を見るということになりますと、甚だ背中に薄ら寒いものが走るというか、戦慄が走るようなお考えにとらわれておるのではないかというふうに、少々同情しながら私も感じておるわけでございますけれども。
 さて、そこで、この産業再生機構ですね。そういう事態の中で、これは一体何をしようとしているのか、私はほとんどわからないんですね。ほとんどわからない。私の頭と経験からすると、何をどういじくり回そうとしているのかがよくわからない。どういう動機でこういうことを発想されて、産業再生機構というものをつくられようとしておるわけでありますが、何をしようとしているのかよくわからない。
 それで、現在、例えば、ここに並んでおります月例経済報告を見ますと、景気は横ばいで、それから持ち直しに向かう期待があると。何かそういう、我々から見れば、非常にのうてんきとでもいいましょうか、景気は悪くないよという意味にもとられかねない経済報告が出ているんですね。
 では、何でそんなときに、国がわざわざ十兆円も用意して産業再生機構なるものをつくらなければならないのか。そのことの答えは、ほとんど説得的な説明というのはなされていないんじゃないかという気がいたします。
 その点について、まず二大臣に、それぞれ所見といいますか、なぜこの時点で、景気は横ばいで持ち直しつつあるのに産業再生機構が必要なのか、こういう点をお答えいただきたいと思います。
平沼国務大臣 私は、産業を預かっている閣僚の一人でございますけれども、特に中小企業を担当しております。
 中小企業は、仙谷先生も御承知のように、倒産件数もこの三年、限りなく二万件に近いところで推移をしておりますし、また倒産という形の中で、中小企業の経営者の自殺等も非常に多いわけでございまして、非常に深刻な状況にあることは事実であります。
 したがって、今横ばいだ、こういうことで、どこが横ばいかというような御指摘がありましたけれども、この間、例えば実質の経済成長率は〇・九で、さらに、直近のものを足しますと一応一・六ぐらいになる、そういう数字が出ることは事実でありますけれども、問題は名目の経済成長率でございまして、ここがマイナスになっているということは、私はやはり厳しい状況にあると思っています。
 そういう中で、今回私の方が改正産業再生法をお願いしているということは、やはり日本の企業の中には、あるいは産業の中には、バブル期のそういう厳しいマイナスの部分を背負ってしまって、そしてその中で呻吟している企業がたくさんある。しかし個々を見てみれば、例えば本業の部分でございますとか、そういったところにはまだまだポテンシャリティーがあるし、そういう重荷の部分を削ってあげれば、先行き、この国の経済の中で活力を生み出して、それが活性化につながっていく、こういうことがある。そのためには、やはりそれに対するいろいろな手当てをしていかなければならない。
 こういう基本的な考え方の中で改正産業再生法をお願いして、企業同士のいわゆる連帯でありますとか、あるいは企業自身の再生のために、税制の面でございますとか、そういったいろいろな面で法律的に支援をしていく、こういうことをさせていただいたところでございまして、言ってみれば、日本にあるそういう潜在的な産業の活力を生かして経済の活性化に結びつけていく、こういう基本的な考え方で法律をお願いしている、こういうことでございます。
谷垣国務大臣 今平沼大臣の御答弁にもありましたように、日本には、すぐれた経営資源を持っているけれども、過剰債務に足をとられて呻吟しているというところがたくさんあると思います。そこを過剰債務から切り離して、本来持っている経営資源をもう少し自由に羽ばたかせるような仕組みが必要なのではないかというのが、私どもが今考えているこの産業再生機構のねらいでございます。
 もちろん、これは何も政治、行政が乗り出さなくても、民間で自動的に動いていくのであるならばそれにこしたことはないと思いますが、民間でも事業再生ガイドラインみたいなものをつくって、いろいろなお取り組みをいただいているけれども、もう一つ弾みがついていかないということが現実にあるように思います。
 これは、大きく考えてみますと、今までのメーンバンクがどういうふうに自分のところの得意先の企業に金を貸し付けていたかとか、そういう金融のビジネスモデルが従来のままでいいのかどうか、いろいろな問題が背景にかかわっているわけでありますけれども、そういう大きな動きを進めていかなければならない。これは主として民間でやっていただかなければならないことでありますけれども、そういう大きな流れの中で、足をとられている過剰債務から切り離す、それを推し進めていく役割を果たすことが必要ではないかというのが我々の問題意識であります。
仙谷委員 九八年以降、金融再生というテーマで諸問題が噴出してきて、これについて我々もいろいろなことを考えてきたわけであります。
 その時点では、ある種、バブルの後始末という側面が非常に強うございまして、私も、いわゆる事業、産業の方で相当古くから言われておる、日本の中小企業と大企業といいましょうか上場企業、大企業イコール上場企業では必ずしもない部分もありますけれども、大ざっぱに言えばそういうことでありましょう、この二重構造について余り深刻な認識を持たないで、十把一からげで金融問題を論じてきた嫌いが少々あったかなと、それは反省をしておるわけであります。
 そこで、平沼大臣のおっしゃったことは、ある意味で基本認識としては間違っていないと私は思いますけれども、そうであるならば、中小企業再生機構的なものは、ある種、金を相当入れることも、特に金融面で公的な資金を使うことも辞さないという覚悟のもとに、もう少し大々的に思い切ったことを、あるいはしっかりした行政的な支援機構をつくるというようなことも含めて考えなきゃいかぬのかなというふうに私は思っております。そういう意味で、後で時間があったら、今度の産業活力再生法の中の地域産業再生協議会でありますか、こちらのことについても議論をさせていただきたいと思いますが、中小企業についてはそういうふうに思っております。
 さて問題は、この産業再生機構の問題というのは、私の理解では、そもそも出てきたときは、本年の一月二十四日の閣議決定「改革と展望」の中にも書かれておりますけれども、「不良債権処理の加速と産業再生」という、いわば主要銀行といいましょうか、メガバンクの不良債権を何としてでもオフバランス化するというか切り離して、金融機能を復活させなきゃいかぬという命題があって、そうですね、そのコインの裏側というか反対側にある産業のリストラクチャリング、正しい意味でのリストラクチャリングがどうしても避けられない、そういうことでお手伝いしましょう、あるいは公権力をもって介入をして、何とかそのことをスムーズにやらせよう、そういう発想のもとに出てきておるんではないかという気がするんですね。現に新聞報道等の経緯はそうでございましたし、どうも現在の体制もそういう体制になっておるのではないか。「産業・金融一体となった対応を強力に進める。」というふうに書かれておるわけでありますから、そういうことだったんじゃないかと思うんですね。
 私はしかし、にもかかわらず、この発想には少々ついていけない。つまりマーケットプレーヤー、上場企業プラスアルファの、そもそもマーケットから資金を調達できる、そういう会社が大変長い間というか、一年ではなくて数年も不良債務を抱えたまま身動きとれないでいる、これを何とかしなきゃいかぬという話でしょうから。しかしこれは、これこそマーケットの機能、マーケットの原理、つまり金利によって淘汰されていくことを促すというのが資本主義ではないかと、まず第一番に思います。
 さらに、もし間接金融的な債務が多い、つまり銀行が大変多額のものを貸し込んでおって、一方ではこれの回収、裏側ではその企業のリストラクチャリングというふうな問題は、これはそもそも銀行がおやりになることではないのか、その程度のことをできない銀行なんというのは銀行の意味がない、私はそういうふうに感じたんですね。
 だから産業再生機構、私の経験からいいますと、更生裁判所に金融機能をちょっとつけてやろうか、一方ではこういうものなのかなと。反対から考えますと、金融機関に、金融機関が主導的につくる企業の再建計画に対して何らかの拘束力を、ほかの金融機関とか一般債権者が従わざるを得ないような拘束力、覊絆力とまでは言いませんが、そういうものをつけてやろう、こういう趣旨でこんなものを考え出したのかなと。
 しかし、本来は、マーケットのプレーヤーとして活躍していただける方に、あるいはメガバンクにこんなおせっかいは必要あるのか。あるいは、それこそマーケットに対する介入ではないのか。ますます統制経済化が進む、社会主義化が進む。こんなことで、果たして日本はこれからの二十一世紀、産業構造の大転換をしなければならないときに、官が手を入れて再生計画を審査し、それについて拘束力を持たせるみたいな話になってきたら、これはどうなるんだという思いが私は強いんですね。だから、基本的には、おかしい、中途半端なことをお考えになるものだな、こう思っているわけです。
 いまだにそう思っておりまして、こんなことをやるぐらいならば、例えば政策投資銀行ですか、あるいは中小企業金融公庫、商工中金に事業再生のノウハウを持った人を送り込んで、そして、そこで半ば緊急避難的に、これはもうしようがないですからお金もつけて、人もつけて、知恵もつけてやってもらう方がずっとスマートなんじゃないか、こんなものを新たにつくってやるよりはと思っておるんですが、谷垣大臣も元弁護士さんで、整理の手続なんかもおやりになったことがあると思うので聞くんですけれども、いかがですか。
    〔委員長退席、阪上委員長代理着席〕
谷垣国務大臣 仙谷委員から元弁護士と言われると、実は、まだ弁護士登録も続けておるんです。
 ただ、仙谷委員の御指摘にうまく答えられるかどうかわからないんですが、私も、先ほど答弁しましたように、あくまで民間で進んでいくものであるならば、それが一番いいと思っております。ただ、現実には、先ほど申しましたように、事業再生ガイドラインみたいなものをつくっていただいているけれども、なかなか進んでいかない、こういうことがあります。
 それで、それが進んでいかない原因はやはり幾つかあると思うんですが、私がこの委員会でお答えしているのは三つでありまして、やはり、なかなか金融機関同士の話し合いが、疑心暗鬼等もあって進んでいかない場合がある。それで、仙谷委員の先ほどからの御議論によれば、そんなことができないような金融機関なら一体何だ、こういうことでございますけれども、やはりそれは金融機関の体力ということも確かにあるんだろうと思いますが、なかなかその話し合いが進んでいかないという現実が一つございます。
 それから、諸外国なんかでこういう問題が来ていたときにどう対応したかということを考えますと、やはり、再生マーケットみたいなもの、あるいは再生ファンドみたいなものがだんだんでき上がってくる。ところが、日本ではそれが未成熟であるということがあろうかと思います。これを補っていくのにどういう手法をとったらいいかということも、いろいろな議論が立法論としてはあるだろうと思いますし、仙谷委員がおっしゃったように、商工中金やいろいろなところにいろいろな機能を持たせたらどうかというアイデアももちろんあるだろうと思います。今、我々の考えは、これは例えで言うといけませんけれども、そういう一種の公的な再生ファンドみたいなものを、この表現もちょっと、ものをという比喩的な表現もよくないんですが、そういうものをつくって、やはり、こういう再生マーケットを育てていくということも視野に置かなければならないのではないかという意識もございます。
 それから、これは特に大きな企業の場合になっていくと思いますが、供給過剰構造などを考えて、なかなか進んでいかない要因としては、系列の違う銀行間同士での話がなかなか進んでいかない、こういうようなこともございます。
 こういうことがすべていろいろなネックとなって進んでいかないという現実がありますので、やはりここはそういう流れを加速していくために出ざるを得ないのかな、こういうような感じを持っているわけでございます。
仙谷委員 今お話しになったことをちょっと続けていきますが、私的整理ガイドラインというのがつくられましたよね。これに準拠して私的整理をされた企業はどのぐらいございますか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 私的整理に関するガイドラインは、私的整理を公正かつ迅速に行うための準則として、金融界、産業界の代表者、学識経験者等により、平成十三年九月に策定をされました。
 実績については、これまでのところ八件ある、こういうふうに承知しております。昨年の十月に、運用開始後一年間の実績を踏まえまして、三年以内の実質債務超過解消等の要件について合理的な理由があれば期間延長を認めるなど、その運用の弾力化について合意されているところでございまして、利用状況一覧表もございますのでお示しすることができると思いますけれども、八件ある、こういうことでございます。
仙谷委員 今度は別の法律ですが、産業活力再生特別措置法、これを利用した企業というのは、平成十一年から十五年二月まで、私がいただいた資料によりますと百八十件あるようであります。ただ、中身、これは詳しくはわかりませんが、主な内容ということでいいますと、ほとんどが分社化の際の税の優遇措置を受けた、こんなことでございます。
 さっきの私的整理ガイドラインに基づく整理、それから産業活力再生特別措置法を使った何というんですか、この支援措置を受けた企業をごらんになって、それから、先ほど平沼大臣がおっしゃる、年間約幾らですか……(平沼国務大臣「二万」と呼ぶ)二万件の倒産ということから考えて、いろいろなことをお考えになっているけれども、こういうものがうまく機能したという総括をできるんでしょうか。それとも、いや、これはなかなかだな、こういうことなんですか。どちらですか。
    〔阪上委員長代理退席、委員長着席〕
平沼国務大臣 数の面では、今のところ、この産業再生法におきましては百九十件、こういう実績でございまして、その内訳は、御指摘の部分もそのとおりだ、そういうふうに思っております。しかし、そういう中で、やはりそれがなかった場合にはまたいろいろな、それぞれの企業の中で大きな問題が惹起されたと思っておりますし、そういう意味で私は一定の効果が上がったと思っております。
 ですから、数の面ではまだまだ実績としては少ない、こういうことは私も認識しておりまして、そういう意味でも、これから改正をさせていただいて、そしてもっと幅広く利用ができるように、そういうことを私どもはしていきたい、こういうふうに思っているところであります。
 私的整理に対しては、先ほどの数字でございまして、これもまだ数としては少ないわけでございまして、それは御指摘のとおりだと思っています。
仙谷委員 これは、何でこんな少ないのかという問題がやはり最大の問題だろうと思いますね。
 私は、こういうふうに少ないのは、やはり銀行が、これを整理することによってみずからの財務内容が悪くなって、みずからが要するに危なくなる、業務純益の範囲内でしか債務、不良債権を償却することができないという、そちらの限界からすべて物事を立てているために、こういうふうになっているんじゃないかなという気がするんですね。それ以外には考えられない。一方では貸しはがしということで、地域社会の中小企業は大変苦しい目に遭っているということになるのではないだろうか、そういう実態があるのではないかなというふうに見ておるところでございます。
 ちょっと話題を変えますが、そもそもこの産業再生機構というのは、ことしつくられました産業再生・雇用対策戦略本部というのと何か関係がございますでしょうか。
谷垣国務大臣 産業再生・雇用戦略本部というのをつくりまして、その中でいろいろ議論をまとめまして、昨年の十二月十九日に産業再生機構等の基本指針もつくっていただきまして、その大きな基本指針の方向の中でこの法案のいわば設計もしたわけであります。
仙谷委員 首相官邸のホームページから見る限り、産業再生・雇用対策戦略本部、企業・産業再生に対する基本方針というのがあって、過剰供給構造を解消すべく産業再編等を推進、それから過剰債務問題、企業ではなく事業の再生を図る、民間の英知と活力を最大限利用、手段、産業再生機構(仮称)の設置、こういう並びになっているわけですね。
 ところが、私、これをずっと見ておりまして、前年、二〇〇一年の九月二十日だったと思いますが、産業構造改革・雇用対策本部というのができておるんですね、官邸に。ところが、一年間で何をやったのかようわからぬ、ここが。どういう予算を使ってどういう産業構造改革に資したのか、緊急雇用対策として地方自治体に緊急雇用対策交付金をばらまいたほかに何をやったのか、よくわからない。今度の産業再生機構を設置するについても、産業再生・雇用対策戦略本部というふうに書かれておる本部があるのに、ここで、では産業再生機構と、それと対をなすというか、裏表の雇用対策というのが、何をプログラムとして用意しておるのかが全くわからないわけであります。
 そこで、まずお伺いしたいのは、表側か裏側かはともかくとして、片一方の側の、過剰債務、過剰供給構造を解消するんだとか、転換するんだとか、こういうふうにおっしゃっていますよね。一体全体、日本の過剰供給構造、過剰債務構造というのは、データ的にこれはどうなっているのか。この間から、経産省も含めていろいろなところに私は聞いておるんですが、いや、まともなデータはありませんみたいな話が返ってくるんですよね、あるいは総合的なデータというんですか。これはどこか、日本の過剰供給の構造、過剰債務というのは数字でいえばどうなっておるのか、お答えになれる方がいらっしゃったら、どうぞお答えになってください。どうですか。
林政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問の過剰供給構造でございますけれども、これは、従来のようにあらかじめその数値を決めてという考え方ではなくて、基本的に申請者の申請に基づいて判断をしていくことになっております。
 ただ、大きな考え方といたしましては、供給が需要を長期間上回っている状態、これは、最近三年間の稼働率なりあるいは機械装置資産回転率等が従来の二十年の水準に比べまして相当下回っている、稼働率なり回転率が下回っているということが考え方でございます。それで、それが例えば製造業の場合ですと、稼働率が七%以上下回っている状態。あるいは、そのほかに外的要因、例えば外的要因によって利益率が大きく下回っている状態、これも過去二十年間と最近三年間ということを比較いたしまして、売上高、営業利益率等々で比較をして、これは例えば一五%以上下回っているというようなことを言っております。
 他方で、短期間にこれが改善する見込みがあるかないかということで、違うサイドからのチェックをしております。そういった意味では、当面、需要の回復が見られない、あるいは見られるということが確信できない、あるいは、本来ですと需要の変動に応じて供給サイドでそれに柔軟に対応するものでございますけれども、例えば固定資本のウエートが高いというようなことで、それがなかなかできないというような構造がある。
 そういった、長期的に見て供給が需要を上回っている状態が継続している、それが短期的に解消する見込みがない、この二つのものを、今申し上げましたような数値を念頭に置きまして、その考え方を整理しておるわけでございます。
 これにつきまして、あらかじめ、ではどの業種がということを政府の方で指定するというのではなくて、それは申請者の方で、おのおの申請される事業分野についてそのデータを出していただいた上でそれを検証する、そういう考え方でございます。
仙谷委員 余りそういうわけのわからぬ話を聞くために質問したんじゃないんですよ。マクロ的に、例えば、先般私が申し上げたら経産省の方から出てきた資料を見ると、稼働率についての一覧表というのを出してくれましたよ。よくわからないけれども、製造工業だけしかわからない。製造工業を見ると、六六%とかいろいろ書いてあるじゃないですか。それを、大体常識的には七〇%ぐらいの稼働率しかないんじゃないか、現在設備に対して、そういうふうに言われていますよね。そうすると、三割が製造工業では過剰だ、こういう議論になるわけですよ。そうですよね。これは季節的な変動要因を調整した後でもそうだ。
 もっと言いますと、バブルのときいろいろな投資が行われたんだけれども、これは心ある人は当時から言っておりましたんですが、土地と株式も相当バブルの投資が行われた。しかし、よく当時のことを振り返って計算してみると、不動産のバブル投資は四十兆円ぐらいだったんじゃないか、株式投資は実は十四、五兆円だったんじゃないか。ところが、設備投資のバブルだけは、過剰投資が、過剰とは言えないかもわかりませんが、設備投資がふえた分は、百七十兆円ぐらい当時、八四、五年から九〇年までぐらいでふえたんではないか。つまり、GDP比二〇%ぐらいまで当時設備投資が行われているんですね。この部分も当然のことながら過剰供給構造になっておって、よく言われるように過剰債務になって残っておる。お金としては過剰債務に残り、設備としては過剰供給構造になっておる。
 これは、だから製造業だけにとどまらない。小売も含めてそうですね、そこでのたうち回っている。その裏側には人がついているというのが深刻なところです。つまり、雇用がついているというのが深刻なところです。これをリストラクチャリングするとすれば、要するにそこに過剰雇用として残っておる人はどこかへお移りいただかないと、これはとんでもないことになる。ほっておいたら失業のままだ。
 とりわけ、これはこの間ずっと議論してきたわけでありますが、産業構造が転換するといいましょうか、製造業中心の社会、時代から、サービス業中心の、あるいは製造業ですらサービス化した職種に転換せざるを得ない、こういう時代あるいは経済構造に急速になっているわけですから、これは、離職者が次の職につけるか、失業者になるか、非労働力人口になるかという、この違いは大変重大な問題だと私は思っておるんですね。ところが、その対応がほとんどできていないというのは、日本の政治の、あるいは行政の最大の問題だと私は思っているんですね。
 だから、余り思い切りよく、いや、やはり移らなきゃいかぬということを、これは我々も含めて、思い切って外で公言できないという、つまり、その企業、その産業、あるいは企業内のある職種、それは変わらざるを得ないんですよ、別のところへお移りいただかざるを得ないんですよ、この範囲の人はという、この議論が思い切ってできなかったというのは、官も与党も野党も甚だ私は残念なところであります。
 できなかった上に何が問題かというと、要するに、職業能力を、別の能力を獲得するとかスキルアップするとか、そういうことに政策の中心が向いていかなかった、資源がそこに投入されなかったことが、いまだにもたもたしている。わかるでしょう、労働省が何で問題になっているのか。何を問題にしていますか。要するに、雇用・能力開発機構のスパウザ小田原とか中野サンプラザとか、あんなものを持ち過ぎて、これをたたき売ることが問題だと。こんなことが問題になっているんですよ。それは問題だけれども、末梢的な問題ですよ、けしからぬ問題だけれども。本当は、労働能力再開発とか開発とか言いながら何をやってきたのかという、この問題ですよと私は思っておるんです。
 今度の問題も、実は、この産業再生機構の話に移しますけれども、産業再生機構も全く不必要だとは言わないけれども、そういう観点が本当に必要なのは、あるいは政府、政治、行政がやるべきなのは、人材再生機構が必要なんじゃないか。人材再生こそ重要なんじゃないか。つまり、これはある意味で教育の問題でありますから、あるいは社会政策的政策の問題でありますから、産業政策であると同時に労働市場政策ということでありますが、ここは相当伝統的、歴史的に、要するに、現代国家においては、公的資金を使うとか政府が支援措置をするとか、あるいはマーケットに任せる部分とうまく調整をとりながら公的なところが出ていって、やっても、市場に対する介入で市場の規律そのものをそれほどおかしくするということにはならない世界だと思うんですね。
 本件の場合には産業再生・雇用対策本部になっておるというのは、着想としてはそういうことだと思うんだけれども、一体的にそういう政策が展開されていないというのが私の大いに不満とするところでありますし、危ないなと思っているところであります。
 そこで、この産業再生機構法の話でありますが、まず一番目の問題は、事業再生計画というのをつくる、これは、だれが主体になって、具体的にはどこでつくるんですか。それから、もっと言えば、事業者の主体性というのは何か生かされるんですか。あるいは、銀行さんが勝手にこんなものをつくれるんですか。どうですか。
谷垣国務大臣 この機構の仕組みとしては、機構に持ち込んでいただく場合に、今どう再生しようかという企業と、それから、大概の場合はメーンバンクだと思いますが、そこで連名で申し込んでいただくことになっております。ということは、その企業とメーンバンク、メーンバンクに限るかどうかわかりませんが、メーンないし準メーン、その話し合ったところで、こういう形で持っていこうというお話し合いがあらあらあるということを我々は想定しているわけであります。
 それを、機構の中で、機構の中のチームが審査をして、本当に再生可能なものであるのか、甘い計画になっていないか、こういうあたりを審査する。それで、それができましたときに、産業再生委員会でその妥当性、適正さを審査して支援を決定する、こういう仕組みであります。
仙谷委員 この産業再生という物の言い方だけれども、この事業再生計画というのはしょせんは私的整理じゃないかというふうに私は言っております。それはそうですねとお答えになっているわけですね。
 私的整理である限りにおいては、当然のことながらこれは人減らしとかで、あるいは、部門を切り離してどこかへ売っちゃうとか、人を減らすかというのは、事業再生計画の中には当然含まれるんでしょうね。いかがですか。
谷垣国務大臣 当然かどうかわかりませんが、そういうあたりをどうしていくかという話し合いといいますか、そういうことはこの再生する事業計画の中に含まれている場合が多いだろうと思います。
仙谷委員 例えば、高木新二郎さん、何か産業再生委員長になっておるようですが、この人の「企業再生の基礎知識」というのをぱらぱらと改めてめくってみました。そうしますと、私的整理のレベルでは、再建計画というのは債務の再構築というのをちゃんとやらないといけないんだと。これは、債権放棄からデット・エクイティー・スワップから期限の猶予から金利の減免だ、こう書いてあります。
 事業の再構築、工業・事業部門や、工場、店舗の閉鎖、こういうことをやらなきゃいかぬ。つまり、人員整理も当然のことながらここに入ってこないと、事業の再生に一般論としてはなりませんわね。我々の経験からいってもそうですよね。だから、当然のことながら、債務減らし、設備減らし、人減らしみたいなことがまずは基本になるんじゃないかと思います。
 だから、そういうときに、これは我々が本当に私的整理のときでも経験するのは、銀行さんの銀行なり合理的な理由と言い方によって、働いている人も、あるいは経営者の意思すらも無視されて、再建計画とか私的整理プランみたいなものが、いわば強制、半ば強制的につくられてしまうという事例は往々にして経験するんですよね。
 それで心配するのでありますが、事業再生計画をつくるときに、当該債務者たる企業、企業の中で働く従業員、労働者、あるいは労働組合があれば労働組合、その意向というのは再生計画がつくられる前の段階で生かされるというふうなことになっておるんでしょうか、なっていないんでしょうか。つまり、銀行の勝手だけでできるのか、銀行とそこは事業者の主体性、その事業者の主体性の中には働く人あるいは労働組合というものの意向も相当生かされるというふうな構造になるんでしょうか、ならないんでしょうか。いかがですか。
谷垣国務大臣 先ほども申しましたように、そこらあたりは、当然のことながら、事業者とそれから金融機関の間で何らかの話し合い、整理があるのが通常だろうと思います。整理というのは、問題の整理があるのが通常だろうと思います。
仙谷委員 ただ、ややこしいのは、本件の場合、メーンバンクと非メーンのあれやこれやの綱引き合いを整理するために産業再生機構が活躍するんだ、こういう話があるわけですね。
 つまり、金融的側面からする企業整理というか再生というか再建というか、そこに比重がかかった瞬間に、整理案ができる、つまりこの法律でいうと事業再生計画がつくられるまでは、その中身はできるだけ密行性が必要だというか、隠密性が必要だということになるのは事の当然ではないかという気もするわけですね。
 そうなりますと、事業者の主体性も、そこで働く人々の意向というふうなものも、当然のことながら踏みにじられる可能性の方が甚だ強いというのが、これは経験上なんですね。そこは大臣、どういうふうにして、そんなことにならないようにするよというふうに言うことができますか。
谷垣国務大臣 そこは、仙谷委員のおっしゃるように、再生計画を立て実行していく上で、多分、一番ある意味で難しいところだろうと思います。全部オープンにして議論をしていってしまったら収拾がつかないという場合もあろうかと思いますし、では、全部秘密のままでスムーズに後、再生計画が進んでいくかというあたりも非常に、それでうまくいくという保証もないわけでありまして、そこらあたりが再生計画を立てる場合の一番の難しい点であろうということは、私もそのように思います。
 しかし、今度、機構の側から判断しますときには、そこがある程度整理ができて話がきちっとまとまっておりませんと、再生した場合に、大概の場合に、コアとなる企業が優秀な経営資源を持っているといっても、それを支える人がいなければ、そこで経験を積んできた、その事業のノウハウを持っている雇用者がある程度いなければ、再生計画がどれだけ成功していくかというのもきちっと判定できない場合が多いわけでありますから、そのあたりをどうやっていくかということこそが、いわばこの機構であり、あるいは再生していく人の腕の見せどころじゃないかというふうに私は思います。
仙谷委員 何でこんなことを言うかといいますと、もうおわかりだと思いますが、私的整理で、公的な関与が全くないところでやるのであれば、労働組合の意向を聞かないでも、労働者の意向を無視して、事業者の主体性を無視してやっても、そこで初めて紛争が起こるんですよ。それで、後でその紛争をどう解決するかという問題になるわけですね。それはもうしようがない。むちゃくちゃやる経営者がおったり、むちゃくちゃな銀行がおれば、これは労働組合が頑張るか、社会的な制裁をかけるように頑張るか、何かやってそういうのを是正しなければしようがない。
 しかし、公的な関与があるということになれば、そこを無視してやった事業再生計画を公的にオーソライズする、つまり、極端に言えば人切りを公的な日本の政府が権威づける、承認するということになってしまう可能性があるので、私はこういうことを申し上げているわけです。
 それから、国の政策としても、本当に大事なのは、人材を、労働者を、離職をされることはやむを得ないある一定の数の人が出てくるんだけれども、うまくどこかに移っていただくという政策が国にないと、あるいは自治体にないと、こういうことに国が関与するということになると、一方的に失業者をふやすことに加担をするということにしかならないんじゃないかという心配があるから、申し上げているんです。
 そこで、聞きますが、これは十兆円の保証をする、要するに買い取り資金は十兆円だということで出発しますよね。さっと私は議事録を読んでみましたら、十兆円というのは、何か十七兆円ぐらいの要管理債権があるから十兆円用意するんだという話になっておるんですか。これは主要行の十七兆円に対する十兆円なんですか。
谷垣国務大臣 ちょっと数字が正確でありませんが、十九・一兆でなかったかと思います。これは、平成十四年三月末現在の全預金取扱金融機関の額だったと思います。
 そこで、これは十兆全部使い切るということで考えているわけではありませんで、いろいろそういう額を前提にしたときに、相当これを利用していただいても十分な枠ということで十兆の枠を考えているわけであります。
仙谷委員 その場合、大臣、さっきの産業再生・雇用対策本部としては、そういう発想からいうと、どのぐらいの離職者が出るというもくろみで再生機構を出発させようとしているんですか。
谷垣国務大臣 これはつまり、例えば、過剰供給がある分野で、ここに機構が手を突っ込んで無理やりこういうふうに持っていこうというような絵は事前に持っているわけではありませんで、企業とそれから金融機関の方で判断して持ってきていただくということを前提としておりますので、あらかじめそういうデザインというものは持っていないというのが正直なところでございます。
仙谷委員 これはそういうデザインを持ってやっていただかないといかぬ。
 正しいのかどうか知らぬけれども、こういうものがあるじゃないですか。これは「不良債権の処理とその影響について二 雇用へのインパクトを中心に」、あなたが大臣をやっている内閣府政策統括官、二〇〇二年の四月でしょう。
 この中で、不良債権を処理したときにどのぐらいの離職者が出るか、離職者のうち、清算型だったらどのぐらいの人員のカット率になるのか、再建型の場合には、法的整理だと三八・一%ですか、私的整理だと二七%の人員がカットされる。カットされた人のうち、転職できるのはどのぐらいか、失業になってしまうのはどのぐらいか、非労働力化するのはどのぐらいかと、ちゃんと一応の詳細な研究を内閣府はしていますよ。このとおり世の中が動くかどうか別にして、マクロ的というか、マクロとミクロの間ぐらいの話なのかもわかりませんが、こういう一応の計算をしている。
 これによりますと、主要行の要管理債権十兆円を処理するとすれば、離職者として予想されるのは四十二万人、転職をすることができるのは二十一万人、失業が十四万人、非労働力者になるのは七万人、こういうことを九九年以降の実績をもとにして計算されている。
 さっき、十九兆円とおっしゃったら、十兆円の倍ですから、離職者が約四十二万人というのは、約八十万人ぐらい離職せざるを得なくなるんじゃないか、転職者が四十数万人出ざるを得ないんじゃないか、失業者が二十八万人、三十万人ぐらい出るんではないかということが推測されると私は思うんですよ。
 それで、その人たちをどうするのかということが産業再生機構法で、個別にはさっき申し上げた、事業再生計画をつくるに当たっての労働者及び労働組合と事業者、あるいはメーンバンク、準メーン、そこでどういう話し合いがなされて、どういう合理的な案がつくられて産業再生委員会に持ち込まれるかということになると思いますが、マクロ的にはこれをどうするのか、離職者は出るわけですから。ということを、ぜひ、労働省を叱咤激励しても何してもいいですから、検討をしていただきたいということをお願いいたしておきますし、できるだけこの法案の中にもそういう仕組みをビルトインしていただきたいと思います。
 時間がなくなりましたので、最後にもう一点だけ谷垣大臣に聞きます。
 もう一点は、私は実は、谷垣大臣が金融再生委員長のときに、いわゆる瑕疵担保条項に基づく追い払いみたいなものが発生するぞ、この瑕疵担保というのは、私の法律からすると、こんなものは民法上の瑕疵担保でも何でもない、いわばインチキだということで、随分議論をいたしました。後顧に憂いを残すということも申し上げたはずです。
 お伺いすると、新生銀行等々に支払った瑕疵担保条項の履行で約一兆円払っているんですね。これは追い払いとしては大変なものでございまして、私は、したがいまして、何を言いたいかというと、公的な資金を使うときには、やはり余りいかがわしいような、そして国民に見えないことをやらないということがぜひ必要だと思うんですね。
 本件の場合にも、きのう我が党の五十嵐議員からも質問しましたけれども、二次ロスが出る可能性とか、それは、とりもなおさず買い取る債権額の査定の問題、余り高く買い過ぎると、当然二次ロスが出るということにつながると思います。あるいは、そのことで、買い取った債権をまた産業再生機構の中で再び免除したり、不必要な債務の株式化というんですか、デット・エクイティー・スワップというのかな、それをやってみたりということが重なってはならないというふうに私は思うんですね。
 そこで、私に言わせれば、この瑕疵担保の、国民から見れば甚だ納得のいかない、例の長銀と日債銀、あのときにやったこんなことを反省するとするならば、今度の再生機構で業務を行うについては、少なくとも債権の買い取りの対価については速やかに公開するということをやっていただけませんでしょうか。
谷垣国務大臣 仙谷委員と瑕疵担保について議論したこと、私も鮮明に記憶に残っているわけですが、当時の、あの特別公的管理に置いた金融機関をどうやって売っていくかという中で、いわば苦心の産物であったのかな、それから、早く売るためにはああいう仕組みも当時としてはやむを得なかったのかなと思っておりますが、ただ、委員のおっしゃるように一兆円という額になっているかどうかは、ちょっと私、今手元に材料がないんですが、そこまでは行っていないのではないかというふうに思います。
 そこで、委員のおっしゃりたいことは、いいかげんな査定をするとおかしくなるぞ、それをするなという一つは御警告であろうと思いますし、それから、それを担保するのに透明化をせよということだろうと思います。
 透明化につきましては、この法律の中に、支援決定などをした場合は速やかにその概要を公表するというふうに規定してありますが、個々の債務ということになりますと、またそれを売らなければなりません。どこまで、そういった幾らで買って幾らで売るという手のうちを明らかにできるかというような問題も他方、売却の実効性ということからありますので、しかし全体の透明性を高めていかなければいけませんので、どこまで何ができるかというのはこれからきちっと検討したいと思っております。
仙谷委員 時間が参りましたので終わりますが、結局、産業再生というときに、産業全体の中での個別事業がある。事業には事業者、経営者がいらっしゃる、労働者がいる。労働者も債権者です。納入業者のような中小者が多い部分、これも債権者です。それから銀行という債権者もいる。この中で、結局銀行だけの都合、銀行だけの勝手、銀行だけの利害、ここに偏したことをやると、これはまた、何だ、何のために税金のむだ遣いをしているんだということになるということを私は申し上げておきたいと思うし、さっき申し上げたように、産業再生というのは、実は日本の場合には人材再生が裏表になってこないと絶対にできない、そのことだけ申し上げて、質問を終わりたいと存じます。ありがとうございました。
村田委員長 平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。産業再生機構法案を中心に質問させていただきたいと思います。
 この法案を見てみますと、率直な印象としては、責任の所在が非常にあいまいになっている、あいまいにしようとしている法律案だなというのが印象であります。
 具体的には、産業再生機構、以下、機構というふうに呼ばせてもらいますけれども、機構の運営というものが、経営責任のもとに行われる主体なのか、あるいは政治責任によって運営されていくのか、あるいは、ここで行われようとしている整理が公的整理なのか私的整理なのか、これもあいまいであります。さらに、いろいろな当事者がこの再生にはかかわってくるわけでありますけれども、各当事者がこの法律のもとで法律的な責任、義務を負うのか、あるいは社会的責任にとどまっているのか、こういった点もあいまいであります。さらに、政府についても、どのような負担、あるいはどのような責任というものを、どのような基準のもとでどのような形で行うのかということも非常にあいまいであります。
 本来、こういったような内容の制度というのは、多分、政府の皆さんの中でも、いろいろ説明書きを見ますと、先日いただいたQアンドAなんかにも、「こうした事業再生は本来民間ベースで行われることが望ましい」といったような表現であるとか、あるいは五年で事業を完了することを目標としているような、そうした表現もありますので、こうしたものが恒久的に存在すべきものだというふうには、政府の皆さんも考えていないんだろうというふうに思うわけであります。
 そこで、一つ、法案の中身に入っていく前に、政府の方でこの法案を提出した背景として、事業再生に関する我が国のマーケットはいまだ十分発達していない面があって、こうした法案が必要であるということを言っておられるわけでありますけれども、一体、この我が国のマーケットはいまだ十分発達していないということについては、何が足りないために十分に発達していないというふうにお考えになっているのか。これは、なかなか担当大臣というのはわかりませんけれども、平沼大臣、そして、金融担当大臣はきょうはおられないようですから、副大臣、この方々にお伺いさせていただければというふうに思います。
平沼国務大臣 平岡先生に私からまず御返事を申し上げます。
 これまで我が国におきましては、右肩上がりの経済が続いたために、抜本的な事業再構築がおくれております。不採算部門の合併、それから営業譲渡、それから分離独立が必ずしも活発に行われてこなかった経緯があると思っております。また、極端なケースとしての破綻処理型の法的整理のみが多うございまして、法的整理イコール淘汰という認識が生まれまして、法的整理や私的整理を戦略的に活用して事業の早期再生を図る、こういう慣行が定着しておりませんでした。このため、企業再生ファンドが育たず、事業再生に経験を積んだ人材も乏しい状況にある、このような認識でございます。
 そういうような中で、こういう長引く不況の結果、抜本的な事業再構築と過剰債務に陥った企業の経営資源の早期再生を図ることは、今や待ったなしの状況にある、こういう経済状況のもとで、事業を速やかに再生させるマーケットを整備することが不可欠だ、こういうふうに思っておりまして、私どもとしては、事業再生を主導する企業再生ファンドや専門家の人材を育てることが必要だ、こういうふうに思っております。
 今申し上げたように、そういった背景の中で、私どもは、早期再生を図るという慣行が定着していなかった、このように認識しております。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 事業再生にかかわるマーケットが未成熟だという理由でございますが、今平沼大臣からもお話がございましたが、私どもとしましては、投資家が事業再生のマーケットに参加する機会となるはずのローン市場、貸し出しの債権市場というものが未整備である、あるいは、民間においての再生をしていくということについての意識がやはり十分でなかった、また、企業再生ファンド等の事業再生を担う投資家が限定的であった、さらには、事業再生を具体的に実行していく、そういう人材というものを発掘していく、あるいは育成していく、そういう面が不十分であったのではないかというふうに考えております。
平岡委員 今、いろいろ我が国の事業再生に関するマーケットが発達していなかったことについての理由、背景、経緯といったようなものを説明していただきましたけれども、多分、今これだけ厳しい日本の経済状況の中で一気に再生ということを考えなければいけない、こういう事態に至ったということで、そうした本来あるべきマーケットというものを育てていくというのに時間が足りなかったということなんだろうと思いますけれども、常日ごろから、事業再生ということは不況期だけでなくていろいろな時期でもあり得るわけでありますから、そういうときに備えてといいますか、一般的な仕組みとして、我が国の事業再生に関するマーケットを整備するということについてはどのようにお考えになっているか、あるいはどのような具体的な計画というものを持っておられるか、これについてもあわせてお聞かせいただきたいというふうに思います。
伊藤副大臣 先ほど未成熟であったということについての理由を少しお話しさせていただきましたが、その中で、やはり貸出債権、いわゆるローン市場を創設していくということは極めて重要ではないかというふうに思っております。
 私どもとしては、こうした問題意識から、全銀協において、こうした貸出債権市場というものを創設していく、そのための努力をしていただきたいということを要請させていただき、全銀協においては貸出債権市場の協議会が現在開催をされているところであります。同協議会では、貸出債権市場の創設に向けた課題や取引の情報の集約、提供の方法などの議論を行っておりまして、三月末までには報告書が取りまとめられるというふうに聞いております。
平岡委員 平沼大臣、何かありましたら。
平沼国務大臣 今伊藤副大臣からお答えになったような方向の検討ですけれども、我々としては、やはりそういう再生の仕組みというものを早急に確立して、そしてこういった、今国が関与をして、先ほど御指摘のようにやはり期限を切ってやらざるを得ない、そういうことから、やはりファンドを育てたりして、そういう環境を整備することは非常に大事だと思っておりますので、経済産業省としても問題意識を持って、その辺は一生懸命取り組んでいかなければいかぬ、このように思っています。
平岡委員 それで、法案の中身の方に少し入っていきたいと思いますけれども、先ほど冒頭にこの法案のあいまいさということをちょっと指摘しましたけれども、機構の運営というのは経営責任なのかあるいは政治責任なのかということをちょっと申し上げました。
 これは、株式会社としてつくる以上は利潤を目的として設立されるというふうに私としては理解をしているわけでありますけれども、そうであるとするならば、この株式会社というのはどういうものを収入として当てにし、どういうものに経費がかかるということで利潤を上げていこうとしているのか。まず、その基本的な考え方ですね。そして、それについてはどの程度の収支見通しを持っておられるのかということについて、まずお伺いいたしたいと思います。
谷垣国務大臣 産業再生機構が買い取る債権、これは金利収入を見込むことができる要管理先債権が中心となっておりますので、基本的には、この金利収入から政府保証による資金調達コスト、それから機構の業務運営経費、こういったものを差し引いたものが機構の経常的な利益となるというふうに考えております。それで、買い取った債権を売却などによって処分するときには、買い取り価格と処分価格の差額、これが機構の損益に計上されることになるということだろうと思います。
 ただ、機構の業務量が事業者それから金融機関からの再生支援の申し込みに大きく左右されますので、それから、債権の買い取り決定を行った事業者の再生ということも経済情勢などに大きく影響を受けるわけでございますので、現時点でその明確な収支見通しは立てることは困難であるということを御理解いただきたいと存じます。
平岡委員 ある意味では、株式会社として設立するということの選択についていろいろ質問をしても、多分余り意味がない質問なのかもしれません。ほかに組織をつくる手段がないから、世の中で一般にある株式会社というのをつくってやろうじゃないか、決して、これで利潤をたくさん上げて国にたくさんの税金を納める、あるいは解散時に国に最終的にたくさんの残余財産が分配されるというようなことまで考えて、こういうものをつくっているんじゃないだろうと思うんですね。
 そういう意味で、本来ならば、これは株式会社としてつくっていること自体のおかしさというのは、多分抜け切らないんだろうと思います。そういう意味であいまいだということを言わせていただいているわけであります。
 ついでに、そういう意味でいきますと、この株式会社には社長というのもおられます。そして、事の性格上、産業再生委員会という組織がありまして、そこに委員長さんというのが座ることになっているわけでありますけれども、この委員長というのはどういうふうにして決まるんですか。
谷垣国務大臣 現時点ではあくまで委員長というのは候補でございまして、委員はまず取締役の中から取締役会の決議により決められることになっておりますが、その委員の中で互選をする、そして委員長を決める、こういうことになっております。
平岡委員 互選によって決まるということになっているのに、何か二月の二十八日には谷垣大臣は、産業再生委員会の委員長に弁護士で独協大学教授の高木新二郎氏を充てる人事を内定したと正式発表したというふうになっておりますけれども、これは一体どういうことなんでしょうかね。
 そもそも最初から、指摘しているようにあいまいさがある法案でありますから、あいまいさが全くないようにと言うつもりはないんですけれども、委員長は委員の互選によって決まるということになっているにもかかわらず、これが政府によってあらかじめ内定されるとか、政府によって発表されるというそのこと自体が、政府とこの再生委員会、あるいは再生機構の関係というのは一体どういう関係なのか、この株式会社あるいは委員会というのは政府に従属したものであるのか、私は非常に疑問だと思いますけれども、この点についてどうお考えでしょう。
谷垣国務大臣 これは申すまでもございませんが、実際に就任していただくまでには、法案ももちろん成立しておらなければなりませんし、それから、さまざまな今申し上げたような正式な手続がなければなりません。現時点ではあくまで候補者というにすぎないわけでありますけれども、機構、これは通していただいたら、今の経済情勢から見て、できるだけ速やかに役割を果たせるようにする、その早期立ち上げのための準備を円滑に進めるという観点からこのような発表をしたわけでございます。あくまで現時点では候補ということにすぎないわけでございます。
平岡委員 候補にすぎないというのであれば、委員会が開かれたときに、委員の互選によって別の人がなっても、それはそれで、別に政府として異を唱えるものではないということですね。
谷垣国務大臣 もちろん私どもは、高木新二郎教授はあらゆる意味から考えてこの職についていただくのが最もふさわしい方である、また高木先生が就任していただくことによってこの機構に対する信頼も高まると考えて、このようなお願いをしたわけでございますので、私どもとしては高木先生に就任をしていただきたい、こう思っていることは、これは間違いございません。
平岡委員 責任の所在があいまいになるという意味において、委員長を選んだ責任というのは多分委員の人たちに所属するんだろうと思いますね、法律的には。そういう意味で、政府がこういう人が望ましいということを言うこと自体もいいのか悪いのか。やはり、本来責任を負うべき人が選ばれるということでなければいけないというふうに思うんですけれども。
 その責任という点をちょっと考えてみますと、委員長の責任、委員としての責任ということはあるわけですけれども、先ほど谷垣大臣の方からも答弁ありましたように、この委員の人たちというのは取締役から選ばれる、そういう仕組みになっております。取締役というのは、会社の経営についてやはり経営責任を負っているという立場であります。この産業再生委員会の活動というのも、これは法律的に見てみますと、取締役会から委任を受けたものとみなされるという仕組みでさまざまな決定が行われるということになっていますけれども、片や十六条の第五項には「委員は、機構の定款その他の定めにかかわらず、それぞれ独立してその職務を執行する。」こう書いてあります。
 ということは、定款の定めにかかわらず、要するに定款にとらわれないで独立性の非常に強い主体としてその職務を執行することを認められている取締役でもある委員というのは、これは取締役としての商法に基づく責任というものを負えるんでしょうか、あるいは負えないんでしょうか。場合によっては、この会社が大幅な赤字を出して、損失を出してしまって、そして定款に反した行動をとった委員に対しては取締役責任を問いたいというような株主がいた場合に、株主代表訴訟の対象になるのか。
 さまざまな問題が起こってくると思うんですけれども、この委員に対しては、やはり取締役ということでもあります。そして、その決定も取締役会から委任を受けたものとみなされている決定であります。ということは、これはこの委員に対しても取締役に対する責任を負えるというふうに理解してよろしいんでしょうか。いかがでしょう。
谷垣国務大臣 十六条に「定款その他の定めにかかわらず、」と先ほど読み上げられました。その意味は、産業再生委員会の委員が再生支援の決定などの合議に参加する場合には、仮に定款等に委員である取締役の間での指揮命令系統みたいな関係に関する定めがあったとしても、産業再生委員会の中で意思決定をし行動するためにはおのおの独立して合議に参加する、こういう意味でありまして、委員として指揮命令を受けずに独立して権限を行使していただく、こういう意味であります。
 それ以外の点では、委員である取締役が定款の定めに違反した場合には、当然商法の規定によって株主代表訴訟の責任を負うというふうに考えるべきであると思います。
平岡委員 この制度の仕組みというのは、最終的な損失というものは、政府保証あるいは政府の補助という仕組みの中で政府はかなり負うことにはなっていますけれども、当然その前に出資者としての負担というものもあるわけであります。出資者というのは、預金保険機構であったり、あるいは、政府の方では民間の金融機関あるいは一般の人からもある程度の出資をお願いしたいというような説明を聞きましたけれども、そういう出資者が、この委員の人たちがさまざまな決定をするに当たって定款に反するような決定をし、そして会社に損失を与えたということがあるならば、株主代表訴訟の対象になるという理解でよろしいでしょうね。谷垣大臣、もう一度確認してください。
谷垣国務大臣 当然株主代表訴訟の相手になり得るわけでありますし、それはもちろん、法律上その株主代表訴訟として負ける要件が備わればでありますが、当然それは委員のおっしゃることで結構だと思います。
平岡委員 そういう委員の人たちが決めていかなければならない事項というのは、たくさんのことがあるわけでありますけれども、よくこの委員会でも議論された債権の買い取り価格ですね。これをどのような価格にするのかというところが非常に注目を浴びているところであります。二次ロスの問題もあります。そういう意味でいくと、債権の買い取り価格はどう決まっていくのかというのをちょっと法律的に見てみますと、よく私には理解できないところがたくさんございました。
 そこで、最初に、この買い取り価格については、だれが、いつ、どのような手順のもとで決定されていくのか、この点について御説明いただきたいと思います。
江崎政府参考人 機構が支援決定をいたしますと、対象となる金融機関、それから買い取りの申し込み等の申し込みをするようにということになります。
 この際、金融機関は当然買い取り希望価格を提示してくるわけでございますが、機構法には、二十六条に、事業再生計画を勘案した適正な時価を上回らない価格で機構は買うということになっておりますので、この時点で金融機関が提示をしてくる価格というものは、この二十六条に言いますところの事業再生計画を勘案した適正な時価を上回らない価格ということになるとは理屈の上では限らないということになります。
 ただ、実際の業務の運営に当たりましては、申し込み前に買い取り価格の水準につきまして関係金融機関と機構との間で議論が行われるというのが通常であろうと予想されますので、基本的には、第二十六条に言います事業再生計画を勘案した適正な時価を上回らない価格として金融機関から申し込みが行われるということが大いに期待をできるということであろうかと思います。
平岡委員 今、だれが決定するのかということをちょっとはっきり言っていただかなかったんですけれども、私が思うには、買い取り価格はどういう価格になるのかというのは、やはりこの産業再生機構が支援をしていくことができるのかできないのか、先ほど言いましたように、高い価格で買い取ったら、後で経営者としては責任を問われることもあるかもしらぬ、こういう状況の中ですから、当然、どのような価格で買い取るかということについては、支援をするかしないかを決める前に、あるいは決めるときにあわせて決まっていなければ、私は、そんな決定はできないんじゃないかというふうに思うわけですね。
 そういう意味で、今の説明では必ずしも支援決定との関係は何も説明されていなかったというふうに思います。
 さらに、政府が出しているQアンドAの十四ページのところを見ますと、この価格の決定については、「市場関係者の意見を極力参考にすることになります。」というようなことも書いてあるわけでありますけれども、もう一度、だれが、どういう手順の中で、いつ買い取り価格を決定していくのか、これをまず明確にお示ししていただきたいというふうに思います。
江崎政府参考人 申し込みがございますと、機構といたしましては、さまざまな、その価格につきまして、市場価格さらには出口を見据えた価格ということで査定をいたします。その上で、事業再生計画を勘案した適正な時価を上回らないものであるということになりますと、その価格で買い取りに入るということでございます。
平岡委員 今、申し込みがあれば市場関係者の意見も参考にして価格決定をしていく、そしてそれが適正な時価を上回らないものであれば買い取りをしていく、こういう話だったですけれども、この申し込みというのは、これは法律上は、買い取り価格、買い取り希望価格といいますか、表現としては買い取り申込価格ですか、これを示して行え、こう書いてあるわけですよね。
 そうすると、申込価格というのは、それぞれの金融機関みんな、自分たちの債権を見て、ああ、自分には担保がこれだけついているからこれぐらいだろうな、これは担保がついていない一般のものだからこうだろうな、これは保証人が余り資力がないからこうだろうなとか、それぞれの判断であるんだろうと思うんですけれども、まず申込価格というものを示させて申し込みをした上で、その後に適正な価格が決まっていくというのは、支援決定が行われた後に行われるというのは、私はどうも理解ができない。
 やはり、支援決定をするのは、先ほど言いましたように、株式会社の取締役あるいは再生委員会の委員の人たちというのは、会社の経営あるいは公的な負担がこれからどうなるかということを考えながら決めていかなければいけないわけでありますから、そんなタイミングで買い取り価格が決まっていくというのは、私はおかしいと思うんですね。これは、谷垣大臣、どう思われますか。
谷垣国務大臣 実際の支援決定あるいは価格決定の実態と、それをどう法律的に表現していくかというところの間に若干、ギャップとは申しませんけれども、表現の違いがあるということは事実だろうと思います。
 現実には、再生計画を評価していく中で、大体どういう価格を持つものなのか、出口を見据えながら判断をしていくという過程が一方であるんだろうと思います、現実のプロセスでは。それで、これで支援を決定するというときには、おおよそ機構の方には、大体適正な価格はこうだという腹づもりができていなければならない、それは委員がおっしゃっていることだろうと思うんです。
 ただ、他方、具体的な買い取り決定となりますと、先ほどもちょっと御議論がありましたけれども、どういう担保がついていてどういう評価をするかというようなことがございまして、これは、個別的にやらなければ多分きちっとできないんだろうと思います。
 そういうあたりを法律的に表現しますと、今お引きになりました二十三条でしたか、支援決定をした後にそれぞれが価格を提示して申し込む、こういう法律的な表現になっているというふうに私は考えております。
平岡委員 極めておかしいとは思うんですけれども、こればかりやっていても仕方がないので。
 最後にちょっと、この関係で一つだけ確認させてください。先ほど買い取り価格はだれが決めるのかということを私は質問したんですけれども、明確にちょっと返答がなかったように思うので。買い取り価格の決定は、一体だれが行う、だれが責任を持つのかということについて明確に答弁していただきたいと思います。
谷垣国務大臣 価格を示して申し込みしてくるわけですから、それに対して買うか買わないか、これは委員会が決定をする、こういうことになります。
平岡委員 あと、ちょっと法律的にどうなっているかというのを再度確認させてもらったらというふうに思います。
 それで、先ほど言いましたように、この制度の仕組みというのは、各当事者が法的義務を負っているのか、社会的責任にとどまっているのかという点についても非常にあいまいだということをちょっと言わせていただきましたけれども、買い取り申し込み等をしない人とか、あるいは一時停止に反して回収等をした金融機関とか、こういう人たちに対して、いろいろなことが法律上あるいは政府がつくった説明の中に書いてあるんですけれども、どうも私はあいまいさが残ったままで、これは実際に運用に入ったときには一体どうなっちゃうんだろうかという不安を持っているわけでありまして、ちょっと確認をさせていただきたいというふうに思います。
 このQアンドAの中に、十七ページにあるんですけれども、買い取り申し込み等をしない者がいる場合でも、その者を除外して再生計画を実施する上で大きな影響が出ないと判断するときには、再生計画を実行に移すことは可能であるというふうに説明してあるわけです。これは概略ですけれども。
 それで、じゃ、この買い取り申し込み等をしない金融機関等については、これはどういうことになっているんですか。再生計画が実施されていくと、この人たちは自分が持っている債権について全額返済を求めることができるのか。もうちょっと細かく言えば、これは金融担当副大臣でもいいかもしれませんけれども、こういう人たちの貸付債権の分類というのは、支援が決定され、あるいは債権買い取りが決定された後、どういうふうに分類されていくのか。こういう人たちについての、債権買い取り等に応じない人たちの取り扱いというのはどうなるのか。これをちょっと教えていただきたいというふうに思います。
谷垣国務大臣 あいまいだという御指摘を受けているわけですが、基本的に、これは私的整理の範疇に属するわけでございますので、一時停止というようなものに違反したあるいは買い取りに応じないからといって、特段、法的な意味でのペナルティーがあるわけではありません。
 したがいまして、機構の側からすれば、買い取りに応じていただけない方が出てくればそれはやむを得ないわけでありまして、この法典にもありますように、そういう方の数が多過ぎれば再生計画が進んでいかないということになるわけでございますから、場合によっては法的整理に移行したりするような場合もあるかと思いますが、そういうことであろうと思います。
平岡委員 私は、再生計画自体がどうなるのかということじゃなくて、再生計画自体は、一部にそういう買い取り等の申し込みをしない人がいても行われる事態があると書いてあるので、じゃ、そういうときには、それに応じない金融機関というのは一体どういう法律的立場に立つんでしょうか。特に、先ほど言いましたように、金融機関における貸付債権の分類というのは、どういうふうになるんでしょうか。そして、この人たちは、額面どおりの、簿価どおりの回収というものを図るということについて何ら制約なしに振る舞えるんでしょうか。こういうことをちょっと聞いておるわけであります。
 意図するところは、こういう、参加しない人がいることを前提につくられる、法的整理なのか私的整理なのかよくわからない仕組みというのは、どこかで漁夫の利を得るような人たちが出てくる、そういう意味において公平性に欠けるんじゃないか、こういうことを指摘したいという意味において質問をしているわけでありまして、そういう視点に立って御答弁いただきたいというふうに思います。
江崎政府参考人 再生機構は、分類からまいりますと私的整理ということでございます。したがいまして、買い取り申し込み等をしない金融機関につきましては、機構は債権の買い取りを行わない、また、そういう場合には再生計画に対する同意ということも得られないと思いますので、債権放棄も求めないということになります。これは、機構が強制力を持たない私的整理の機能を持っておるということでありまして、やむを得ないと考えております。
 ただ、付言をいたしますと、こうならないように、機構としてはその場その場でそれぞれ非常に強力なネゴをするということもありましょうし、たしか田作参考人、坂井参考人、御両所がおっしゃっておられたと思いますが、買い取り申し込み等を行わない金融機関、これが非常に大きな債権を持っておる、ここの買い取りを行わないことにはなかなか再建計画がうまくいかないという場合には、まさに彼が売らないことによりまして法的整理にいくといったような可能性もあるわけでございます。
 そういうものも示しながら、強力にまずネゴを行っていきまして、必要な債権については買い取りをするということに全力を挙げるということになろうかと思います。
平岡委員 あいまいさの残ったままではありますけれども、時間が余りないので、次へ行きたいと思います。
 私の目的は、この仕組みというのが非常にあいまいな仕組みであるということを指摘して、反省を促したいという程度のことでございますから、いろいろあいまいさがあるところは運営面でしっかりと公平性、透明性というものを確保しながらやっていただかなければいけないんじゃないかというふうにも思うわけであります。
 そこで、ちょっと言葉じりをつかまえるようで大変恐縮なんですけれども、二十四条に「回収等をしないことを要請」ということで、回収等をしないことを一時停止というふうに呼んでいるわけでありますけれども、QアンドAを見ますと、この要請にこたえない人を一時停止に違反した人とかという、何か犯罪でも犯したような表現をとって、一時停止をすることが悪かのようにこれは表現しているわけでありますけれども、私は、これはあくまで、先ほど谷垣大臣も言われた私的整理の中で行っている私的なグループの中でこういうことをお願いする、要請をするということであって、それに反したからといってまるで犯罪人かのように言うのは、私はちょっとやはり仕組みとしておかしいんじゃないかというふうに思うわけであります。決して、一時停止に応じない人を違反した人というようなことじゃなくて、法律にも、反した人と、違反じゃなくて反した人、こうしているだけですから、その点は十分注意していただきたいと思うんですけれども。
 一つ、この回収等に関して、一時停止に関して、二十五条の三項のところに「関係金融機関等が一時停止の要請に反して回収等をしたときは、機構は、」いろいろありますけれども、「買取決定を行ってはならない。」こうなっているんですね。この「回収等をしたとき」という概念がちょっと私にははっきりしないんですけれども、これは、実際何か回収行動を起こして、ある程度の返済額といいますか、支払い額を得たというような人を指しているのですか。それとも、回収のためのアクションを起こした人、実際には具体的な回収額はなくても、アクションを起こした人まで含まれるのか。ちょっとこの辺が全体の法文を見てあいまいだったので、ここはある程度明確にしておかないと、これから運営に困るかもしれないという意味において、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
谷垣国務大臣 もちろん、実際に回収してお金を手に入れた方が入るのは当然のことでございますが、そのほかに強制執行の申し立てなどが含まれるんだろうと思います。
 それで、私的整理ガイドラインの中では、一時停止の内容を書き込んでおりまして、与信残高、これは手形貸し付け、証書貸し付け、当座貸し越しなどの残高でありますが、それを減らすこと、あるいは弁済の請求受領、相殺権を行使するなどの債務消滅に関する行為をなすこと、あるいは追加の物的、人的担保の供与を求めて、担保権を実行し、強制執行や仮差し押さえ、仮処分あるいは法的倒産処理手続の申し立てをすることというふうになっておりますが、大体こういうようなことが当たるのではないかと思います。
平岡委員 買い取り申し込み等をしない人についても、一時停止に反する人についても、どうも私、この仕組みは、そういう人たちと再建計画に応じて買い取り申し込み等をした金融機関との間に、かなり大きな待遇といいますか、損益関係の違いが出てくるんじゃないかな、そういう心配をちょっとしておりまして、ここでも法案のあいまいさというのが残っているのではないかなというふうにも思います。
 それから、次の議論に移りますと、これもこの委員会でかなり議論されてきているわけでありますけれども、機構が支援決定いたしますと、さまざまな公的な支援が行われるというのがこの仕組みの中にあるわけでありますけれども、そういうふうになってしまった、公的支援が必要になってしまったというようなところについていえば、その関係する金融機関等の貸し手責任あるいは対象事業者の事業者責任を問うべきではないかというふうに思っているわけであります。
 ただ問えばいいということじゃなくて、やはり支援をするときには、こういうものについてはこれだけの責任を問わなければいけないといったような基準がなければいけない、はっきりとした透明性のある、公平性のある基準がなければいけないという意味において、二十一条に支援基準をつくるというふうにいろいろ書いてあります。
 これは主務大臣がつくるということにはなっているようでありますけれども、この支援基準だけにかかわらず、産業再生機構の中におけるいろいろな支援基準といったようなものの中に、こういった貸し手責任あるいは事業者責任という経営責任の追及のあり方も含めるべきではないかというふうに思うんですけれども、この点について、金融担当副大臣、谷垣大臣、いかがお考えでしょうか。
谷垣国務大臣 金融ではなくて産業再生機構の担当でございます。(平岡委員「いやいや、副大臣」と呼ぶ)済みません。
 では、まず私の方から申し上げますが、先ほどからの御議論の中で、機構は中立的な調整者として事業再生計画の合意を促進する立場にありますから、そういう立場から、通常、事業再生計画の合意形成に当たって求められる関係者の応分な負担、つまり、金融機関については債権放棄、それから既存の株主については増減資手続を通じた持ち分割合の引き下げというようなことになると思います。あるいは、責任ある経営者の退任というようなことも含まれるのが私は通常だろうと思います。しかし、機構としてそれを超えて、例えば債権放棄というようなことを超えて金融機関の責任等について追及するということは、機構としては考えていないわけです。
 それで、こういう関係者の応分の負担の具体的な内容については、個々のケースによってこれはまちまちだろうと思います。一律の基準として定めることは、なかなかこれは難しいと思いますが、基本的な考え方については、できるだけ明らかにしていくということが必要かなというふうに考えております。
伊藤副大臣 お答えさせていただきたいと思います。
 今、谷垣大臣からお話がございましたように、私どもも全く同じ考え方でございまして、機構は中立的な調整者としての立場でございますから、そういう立場からすれば、この再生計画の合意形成に当たって応分の負担が求められる。その中身については、金融機関についてはやはり債権放棄であり、そして既存の株主についてはその手続を通じてその持ち分割合というものが引き下げられる、そして事業者についてはやはり退任ということも含めた経営責任ということが求められるというふうに承知をいたしております。
 こうした関係者の応分の負担の具体的な内容については、やはりケース・バイ・ケースでありますので、そうしたものを一律の基準として設けることはやはり困難ではないかというふうに思います。
平岡委員 ケース・バイ・ケースというのは、それは当然なんですけれども、ただし、基準のないところでのケース・バイ・ケースだったら、これは全く恣意的な、もう本当にある意味では勝手気ままな対応になってしまうということでありますから、私が言っているのは、何も、硬直的な基準をつくって、それを特定のケースに当てはめるときに一切裁量の余地がないままにやれということではなくて、やはりある程度の基準を持ってやることが透明性、公平性になるわけでありますから、そこをぜひ考えていただきたい。特に、経営責任あるいは貸し手責任ということを問うケースがあり得るのであれば、なおさら一層きちっとやらなければいけないというふうに思うんです。
 そこで、この産業再生機構はどういう立場に立つのかということを明確にしておきたいと思うんです。
 やはりQアンドAの中に「金融機関等の債権放棄や減資等の事態を惹起した責任ある経営者は退任することが求められるのが一般的ですが、新しいスポンサーが事業再生の観点から経営者の留任を支持する場合などは個別に判断されるものと考えられます。」この説明は、当然いろいろな責任が問われるということを前提に書いていると思うんですけれども、そのとき、この「新しいスポンサー」という言葉があって、新しいスポンサーというのは一体何なのかなと。
 当然この産業再生機構も、債権を取得して貸し手になっているというような状況の中では、そういう新しいスポンサーとして経営責任を問う、あるいは必要があれば経営者の留任を支持するという判断をする主体ではないかというふうに思うんですけれども、この「新しいスポンサー」という説明の中には産業再生機構は入っていますか。どういう位置づけになっていますでしょうか。
谷垣国務大臣 このQアンドA自体、先ほど委員がおっしゃったように、何らの基準がないようじゃおかしいじゃないかという問題意識にある程度こたえようということでQアンドAを書いたわけですが、その中で、機構が新しいスポンサーに入るのか、これは入らないというふうに申し上げることができると思います。
 これは、あくまで再生計画が終わる出口、そのときに当該企業が独立してやっていけるかどうか、そういう観点から見た規定でございまして、要するに、機構を離れて独立にリファイナンスできるか、独立にスポンサーが出てくるかという趣旨から書いた規定でございますから、機構は含まれない、こういうことであります。
平岡委員 それはちょっとおかしいと思うんですよ。これは事業再生計画をつくるわけでしょう。産業再生機構というのは、その事業再生計画をつくるときに存在し、そして、ある程度、何年間か、二、三年間ぐらいはおつき合いするという仕組みになっているようでありますけれども、そのときに、経営者がだれであるべきか、以前の事業再生に至るに至った経営者の責任をこの産業再生機構は問わないという仕組みをつくること自体が、私はこれはおかしいんじゃないかと思うんですね。(発言する者あり)出口のときになって初めて経営者の責任について考えるというのは、私はこの仕組みとしてはおかしいと思いますね。
 今、同僚議員の方から、高木さんの答弁と違うぞという応援がありましたけれども、この点について、谷垣大臣、もう一度ちゃんと明確に、ちゃんと責任を問えるような答弁をしていただきたいというふうに思います。
谷垣国務大臣 これはいろいろな場合があると思うんですけれども、あらあらスポンサーが、再生計画を立てて実際に支援を決める場合に、ある程度、大体この人がやってくれるんだなと決まっているような場合があるんだろうと思います。そういうスポンサーが、この地域のこういう経営状態を考えるとあれにやってもらうしかないんだよというような場合がやはりあり得るのかな、そういう観点からああいうQアンドAが書かれたというふうに考えております。
平岡委員 全く承服できないということで、次の質問に行きたいと思います。
 もう一つ、私が冒頭に質問した件で、政府がどのような負担、責任というものをどのような基準のもとで、どのような形で負うのかということがはっきりしていないということをちょっと申し上げました。
 この点についてちょっと触れてみたいと思うんですけれども、この機構が借入金をしたりあるいは社債を発行したりする場合には、三十九条に基づいて主務大臣の認可というものが必要になっているようでありますけれども、この認可の基準というのは、一体どういう基準なんでしょうか。どういう場合には認め、どういう場合には認めないというものがなければ認可の意味がないわけでありまして、どういう基準なのかということをお示しいただきたいというふうに思います。
江崎政府参考人 政府は、機構に対しまして財政的援助を行うということから、その健全性を確保するという必要がございます。
 このため、主務大臣は、機構による資金の借り入れ、また社債というケースもあろうかと思いますが、その発行に当たりましては、その資金の借り入れ等が機構が業務を行う上で必要なものなのか、それから、その借入金残高がかなりなものでないのか、政令で決める金額を超えていないか、この政令は法案が成立いたしましたらつくるわけでございますが、こういった点を審査した上で認可をするということになってございます。
平岡委員 そんなばかげた認可というのはないですよ。資金が必要かどうかというのは、当然買い取り決定なんかしたら、資金繰りというのは財務諸表を見ればわかるわけで、それで足りないか足りるかというようなことで主務大臣が判断する。
 そして、さらに言えば、先ほど借入金残高が政令の範囲内にあるかどうか、こんなのはもう一担当者だって政令の範囲内にあるかどうかはわかりますよ。そんなことを基準にして認可するというのは、まさにこれが通常の株式会社だったら政府の物すごい大きな越権行為ですよ。そうじゃないでしょう。もっと認可の基準というのはあるでしょう。何のためにこれは認可が行われるんですか。
江崎政府参考人 機構は非メーンバンク等から債権を購入いたします。その原資として、ここにありますところの借入金等で市中から資金を調達するわけでございます。
 そういたしますと、その調達のタイミング、それから調達の額、余分に調達をいたしましても金利負担が生ずるのみでございます。そういったことを総合的に勘案して政府が認可をするということでございます。
平岡委員 全く承服のできない話でありますけれども、ちょっと視点を変えて。
 実は、この機構は債務者に対する債務の保証というのができるようになっていますね。債務の保証ということは、債務者がどこかでぶっ倒れたら、その債務について保証人として履行しなければいけない立場に来る。つまりは、自分自身も将来何らかの直接的な債務を負う可能性のあるもの、これについては何ら認可の対象にもなっていないし、そして、今政令で残高が決められているというふうに言われているその政令でも、保証額の上限額というものは決められていない。全くこれはフリーなんですよね。
 債務の保証という形式をとるならば全く何の制約もないでできる、こういう仕組みになっているんですけれども、それはそれで何の問題もないんですか。なぜそんなことが許されるんですか。
谷垣国務大臣 再生支援対象の企業が融資をどうしていくかというのは、やはり主としてメーンバンクに責任を持ってもらわなければいけないことだろうと思いますが、この機構の位置づけの特徴は、事業者に対するいわゆるつなぎ融資が行われるように、この機構が行うことができるという仕組みになっているわけですね。
 ですから、今おっしゃった債務保証というのは、事業者に対するつなぎ融資として行うものですが、原則としては、事業再生計画において、あらかじめ機構を含む各金融機関の間で、各行どういうシェアを持ちながら例えば融資をしていくのかとか保証していくかというようなことを調整して、合意しておくということになると思います。
 ですから、この事業再生計画については、機構が再生支援を行うかどうかを決定するに当たってあらかじめ主務大臣に意見を聞くこととしておりますので、この事業再生計画をきちっと立てる、それで、そのときに主務大臣に意見を聞くということが過剰な債務を負うことにならないという一つの担保だろうと思います。
 もちろん、事業再生計画にない融資や債務保証を全く行わないという趣旨ではありませんけれども、今申し上げたような趣旨からすれば、それは極めて例外的なものになると思います。
平岡委員 どうも、主務大臣がなぜこの借入金、社債に関する認可を行うのかというのは、私は、ある意味では将来この機構が解散をする際の整理をするときに、やはり国として大きな負担を負うことがあってはならないというような意味においてのチェックというものが、当然に含まれているんだろうというふうに思うわけですね。そうであるならば、先ほど言いましたように、機構による債務者に対する債務の保証についても、いずれ機構が直接的に債務を負わなければいけない事態もあり得るわけでありますから、そういう点についてもきちっとコントロールできるような仕組みというのがなければおかしいんじゃないかということを指摘申し上げたいと思います。
 ちょっと時間がなくなってしまったので、政府保証の話をちょっとさせてもらいたいと思いますけれども、機構の存続期間というのは五年程度というふうに説明をされています。そして、政府は機構に対しても借り入れについての保証をすることができるということで、十兆円の保証枠があるというふうに聞いておりますけれども、機構が解散するときには、この政府の保証債務はどのように処理されることになるんでしょうか。
谷口副大臣 今のお尋ねでございますが、機構が政府保証つきで借り入れを行い、解散時に債務超過となって債務を完済できない場合、仮に国が保証債務を履行するということになれば、まず第一点として、債務者が多数の場合、国にとって債務の管理が非常に煩瑣となる。また国は、予算措置に必要な手続が完了するまで、債権者から債務の履行を求められてもこれに応じられないということになりまして、状況によっては、国の財産を差し押さえられるというような事態が招来する可能性もあるわけでございます。こんな問題がございますので、この事態を回避することが望ましいように考えておるわけでございます。
 そこで、産業再生機構法案では、機構が解散時においてその財産をもって債務を完済できないときは、政府が事前に所要の予算措置を講じ、その予算の範囲内において機構に対して当該債務の完済に要する費用の補助を行い得る旨の規定を設けたところでございます。
平岡委員 今の話は、例えば社債の発行とか借入金というのがちょうど機構の存続期間が終わるときとタイミングが合えば、今言ったような整理が簡単にできるわけですけれども、普通は、社債の期限なりあるいは借入金の期限というのは、機構が存続をしている期間を超えて、つまり、機構が主な業務を終えたのでもうここで解散しようというときになった以降も、まだ返済期が来ていないという事態もあり得るわけでありまして、そういうときに、政府保証がついているということについては、どういうふうになるのか。これは技術的な話ですから、どなたか事務方でも結構でございますから、ちょっと疑問についてお答えいただきたいというふうに思います。
江崎政府参考人 委員のお尋ねは、プレマチュアな借入金に政府の債務保証がついており、かつ、仮にでございますが、機構が解散時に赤字であった、ロスを出したという場合にどうするのかということであろうかと推測をいたします。
 ただ、いずれにいたしましても、国が保証債務を履行するということではございませんで、今申し上げましたような理由で、財務副大臣から御答弁がございましたが、そういう場合には国が補助をすることができるということになってございます。
平岡委員 私が質問していることに必ずしも明確に答えていただいていないので。こういう政府保証の規定があって、政府の補助という規定があって、組織が解散したときにその後どうなるのかということについて明確な説明がない。
 つまり、終わったときにはなあなあで済まされてしまっているというのが、大体こういう組織のこれまでのあり方だったんですね。やはり政府保証をするのであれば、そこはきちっとしておかなきゃいけない。なぜきちっとしなければいけないかというと、私は、政府保証がついたものを政府が負担しなければいけないということになったときには、これはやはりそれなりの責任をだれかがとらなきゃいけないんじゃないかというふうに思っているから、こういうことを言っているわけであります。
 政府保証を実行しなければいけない、実行というか、政府保証に基づいて政府が保証債務を履行しなければいけない、あるいは、政府が四十六条の規定に基づいて機構に対して補助をしなければならないというような事態に至ったときの責任というのは、だれがどのようにとることになるでしょうか。
江崎政府参考人 まず、機構サイドにおきましては、経営の最高責任者は社長でございます。そういうことになりましたときには、機構サイドといたしましては社長に責が帰せられるということであろうかと思います。
 片や、政府は、さまざまなところで認可それから意見を述べるという形で、それぞれ所管大臣が関与してございます。それぞれの所管大臣の課せられた責務の中でそれぞれの所管大臣が責任をとる、政府サイドではそういうことになるというぐあいに理解をしております。
平岡委員 今の答弁を聞いていると、責任をあらゆるところにばらまいて薄くして、だれも責任をとらない、そして、本当にこれで産業再生ができるならともかくも、何か赤字まみれのままで、これによって全く産業再生、産業再生というか個別の企業ですけれども、企業の再生ができないという事態が生じてしまうのではないかということを危惧しているわけであります。
 最後にちょっと一つだけ、細かい話で恐縮なんですけれども、今、法務委員会の方に債権譲渡円滑化法というのがかかっておりまして、期限延長があるんですけれども、この債権譲渡円滑化法については、この産業再生機構は適用対象になるんでしょうか、どうでしょうか。ちょっと技術的な話ですけれども、確認だけしておきたいと思います。
江崎政府参考人 先ほど先生御指摘の法律でございますが、譲渡する際には元本を確定させる必要がございまして、その際、根抵当者は根抵当設定者と共同で元本確定の登記をしなければならない、そこの条件を緩和するというものでございますが、産業再生機構が買い取る債権の中には、根抵当権によって担保されているというものも数多くあろうかと予想しております。
 ただ、産業再生機構に持ち込んでまいります事業者自身が再生計画をつくるという当事者の一つでございまして、対象事業者が根抵当権の譲渡手続に協力しないというような事態は想定されないであろうと考えてございます。
 このような理由から、産業再生機構が、御指摘の金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律の適用を受けるということは考えてございません。
平岡委員 以上で終わります。
谷畑委員長代理 田中慶秋君。
田中(慶)委員 民主党の田中でございます。
 まず冒頭に、今回の再生法の機構の担当責任者というものは、総理ですよね。
谷垣国務大臣 これは、法的には主務大臣という形で規定されておりまして、それは、内閣総理大臣それから財務大臣、経済産業大臣、このお三方が主務大臣ということになっております。
田中(慶)委員 そこで、今日本の経済が大変窮地に陥っているわけでありますけれども、今回の法案の審議に当たって、少なくても責任者の一人であります総理がここでその質疑に加わらないということ自体が、私は、今の経済に対する認識、あるいは厳しい再生法の必要性等々について、そんなに感じていないんじゃないかな、こう思うんです。
 本来ならば、政府と議会という民主主義のあり方について、やはりこの再生法の必要性なりあるいは機構の必要性等々について言うならば、総理みずからが出てきて、そして自分のこの問題についての取り組み、考え方等を議会に要請するべきだろうと思うし、また議会は、少なくても今の総理のこのようなやり方は、ある面では議会軽視じゃないかな、こんなふうに思っているわけです。
 そのことについて、まあ谷垣さんに言ってもしようがないんですけれども、あなたは、総理の任命を受けて来ているわけでありますから、内閣府として、どう思いますか。
谷垣国務大臣 小泉総理は、決して、この機構を、あるいは審議を通じてこの委員会を軽視するというお気持ちは、全くないものと思います。むしろ、今の経済状況の中で、少しでも早く立ち上げて、この機構の期待される役割を果たすべきだというふうにお考えだろうと思います。
 私は、総理から特命大臣として、総理のいわば調整権みたいなものを、総理をお助けして走り回れという仕事をいただいておりますので、役不足かもしれませんが、一生懸命務めさせていただきたい、また委員会におきましても懸命に議論をさせていただきたい、こう思っております。
田中(慶)委員 谷垣さんのその考え方は評価をしますけれども、ただ、総理のスタンスとして、実はきのうも本会議が開かれましたね。そして、イラクの問題で十一時からブッシュ大統領があのような声明を出されて、マスコミについてはNHKの取材に、一生懸命テレビに映っているんですよ、考え方が。それならば、近々で開かれているこの本会議場で同じことを話をしても私はいいんだと思うんです。議会制民主主義ということを重要視するならば、本当に緊急かつ、そして今みずからが国民に対して、ラジオ、テレビを通じてアピールをしている、そのことが逆に議会側には何も伝わってこない、この感覚が、私は議会軽視じゃないかと。
 今回の法律も同じように、日本の経済が大変危機に陥っている、そのための再生機構としてこれを提案する、この考え方はいいんですけれども、現実に総理の政治感覚というものがどうしても、谷垣さんは総理大臣じゃないんですから、あなたにそう言ってもしようがないけれども、しかし、あなたは将来ある人ですから、谷垣さんにしても、そこにいる平沼さんにしても、私はやはり、政治家としてそのことをしっかり問いたいわけです。
 やはり議会制民主主義というものを感じた場合、もっとそういうことをしっかりと議論をしながら、日本の国家目標なりあるいはビジョンというものを明確に打ち出すべきだろう、こんなふうに思っています。こんなことはイデオロギーでも何でもない、与野党でもないんです、はっきり申し上げて。日本の経済をどうするか、政治家であるならばみんなで憂えながら、しっかりとしなければいけない。そのことに、はっきり申し上げて、総理の声が全然伝わってこないんです。
 あなたが命を受けてやっているということであるから、最初にそのことを申し上げておきたい。総理にしっかりと言っておいてくださいよ。
谷垣国務大臣 余り長々とお答えすると越権にもなりますので、委員のその問題意識はしっかり受けとめさせていただきたいと思っております。
田中(慶)委員 機構法に入る前に、まず経済再生の問題について若干伺って、それから機構法に入っていきたいと思います。
 特に今回は、二つの法案の審議をさせていただいているわけでありますけれども、しかし、一方においては、中小企業を含めて今回の再生支援といいますか、よくこういう法律、もう次から次へとつくるんですね。一生懸命やろうということはわかりますけれども、中小企業の人たちはそれを喜んでいるんでしょうか。私はそうじゃないと思うんです。
 この機構法は何のためにできたのか。民事再生法では三年も五年もかかる、だからスピードを持ってやろうとする。しかし、今度の中小企業の再生支援の問題等についても、いろいろな制度がいっぱいある、私ははっきり申し上げて、現行法でもできるんじゃないかなと思っている。しかし今回、この協議会なりをつくったり計画をつくったりいろいろなことをするわけでありますけれども、そういう中で、中途半端な部分がたくさんある。
 本来ならば、こういう再生支援の法律がなくても、現実問題として、この協議会あるいは協議会に類するような問題等については積極的にやっておかなければいけないことですね。例えば、相談や助言の問題や取引の政策金融等のあっせんなどというのは、デーリーワークでやっておかなければいけないことでしょう。しかし、あえてこういう枠組みをつくって、協議会だとかいうことでやろうとしている。こういう問題を含めて、私は、屋上屋を重ねることになるんじゃないかな、こんな心配をしておりますけれども、どうでしょうか。
平沼国務大臣 一九九九年にいわゆる産業再生法が成立をしました。そして、内容的にも十分いろいろ対応できるものがあるにもかかわらず、何でまた改正をするのか、また再生支援協議会というのをつくってそれを法律的に位置づける、そういうことをしなくてもいいんではないか、そういう御指摘だと私は思っています。
 一九九九年にできたときには、選択と集中をしてそして企業の再生を図ろう、こういうことでやってまいりました。しかし残念ながら、二〇〇一年ごろから一時持ち直した状況もさらに厳しい状況になってきて、そこで、やはり新たな対応をやらなければならない、こういう形で、今度の改正法案については、四つの点でお願いをしているところでございます。
 その中で、産業再生協議会というものを設置するという形で法律に位置づけましたのは、やはり中小企業の再生支援のための組織として法律上きっちりと位置づけて、そして協議会の委員を、中小企業の再生支援業務に係る実務経験または学識経験を有する者のうちから任命する、そういう形できちっと法律上位置づけることが必要だ、こういう一つの観点がございました。もう一つは、協議会の関係者については、いろいろ再生の御相談を受けるときにやはり秘密保持、そういう側面もございます。そして、再生に取り組んでいる中小企業が、風評などによって変な影響が出ないことが望ましいわけでございまして、そういう意味でも、法律上きちっと位置づける。
 ちょっとしゃくし定規だ、こういう御指摘があろうと思いますけれども、そういったような観点から、私どもは今回、改正法をお願いし、そして再生協議会は法律上きちっと位置づける、こういうことにさせていただいております。
田中(慶)委員 私は、ある面では時代の逆を行っていると思うんですよ。ということは、これとは全然違いますけれども、例えば地方分権の問題を一つ考えてください。今、全部中央でしょう。そして二重行政みたいなことをやっているわけですよ、はっきり申し上げて。財政の問題もそうですね。権限、財源も地方に移譲しなければいけないということは、私は、もっとスリムでスピードのある行政の運営だと思う。ところが、今はそうじゃない。ここが問題なんですね。
 今度の中小企業の問題等についても、私は、法律なんてない方がいいと思う。もっとフレキシブルにして、それぞれ動きやすい制度をしっかり持ってやった方が運用がしやすいわけであります。法律があるために逆に運用ができなかったり、そういうことがあると思う。
 確かに今言われているように、いろいろな形の中で、助言をするあるいはまた政策を実行に移すについても、専門家の問題やらいろいろなことも検討されておりますけれども、本来は、今こういうものがなくてもやらなきゃいけないことなんですね。ところが、なかなかそのことについて、法律がなければ動かない、こういうことだと思います。
 ですけれども、今スピードが求められているときに、逆にその法律によって非常にスピードダウンする、法律があるために障害になる、こういうことが多くあるわけですから、そのことを十分配慮していかないと、仏つくって魂入れずという日本のことわざ、こんな形になってしまうおそれがあるということ、その辺はどう思いますか。
平沼国務大臣 確かに、法律でがちがち縛って、そして一々条文どおりに運営をしていくと、今田中先生御指摘のようなそういう弊害があると思います。
 そういったことは十分我々は配慮しながら、やはり中小企業というのは非常に数が多うございまして、そしてそれぞれ地域性がありますし、またいろいろな多様な面もございます。ですから、そういう中で、地域にそういう形で窓口を置いて、そして御指摘のようなフレキシビリティー、これが大事ですから、そこは私どももよく指導しながら、硬直化しないように、しかしある意味では、日本は法治国家ですから、やはり法律の裏づけがあるということも利用される方々の安心にもつながるという面がありますから、その辺をうまく私どもは運営していかなければいけない。
 御指摘の点はしっかりと踏まえさせていただきたい、このように思います。
    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
田中(慶)委員 ぜひ、そのことを十分検討しながらやっていただきたいと思いますよ。
 例えば、今回もいろいろな形で資金の問題等について、セーフティーネットの問題やいろいろなことを配慮しておりますけれども、借りかえの問題も含めていろいろな努力をされて、非常に評価をされておりますけれども、しかし、それも一定のところなんですね。
 設備費のところがどうなっているのかというと、はっきり申し上げて、がたがたの機械を法定償却のできない法、これは、極端なことを言えば法律が災いしているんですよ。減価償却じゃないですけれども、法定償却ができないために新しいものを買えない、こういうことであり、あるいはまた、今回、設備資金等に投入するためには、ではどこの部分を使ったらいいかというと、現実にそういうことが今問題になっている。確かに、今までの問題として、一番買いかえということが非常に問題になっている。
 重ねて、前々から言っているように、いろいろな形で中小企業の苦しみ、それはどこだというと、第三者保証ということが、あなたにも何回も言っていると思います。こういうものは世界のどこへ行ってもないわけでありますから、ほかの法律をつくるよりは、むしろそういうものを撤廃した方がよほどいいということで、財務省は、何かこの前、間違った答弁かどうか知りませんけれども、第三者保証を解くみたいでありますから、それは、本当に解くのなら解くとして、はっきりとそういうことをしてやることが、私は、ほかのこんな法律をつくるより、もっと具体的に中小企業の活性化のためになるだろうと。
 ですから、本当に役所の皆さん方がいろいろな形で現場をしっかりと認識して、今、どういう立場でどんなことを、どういう形ですればそういうところに価値があるのか、活力が出るのか、そうしていただきたい。再度そのことを答弁をお願い申し上げたいと思います。
平沼国務大臣 確かに、田中先生から、第三者保証に関しては何回にもわたって御指摘をいただいております。
 今回の改正法の中では、やはり一つは、新規の、最新鋭のそういう設備投資をする場合には、税法上恩典を与えて、そういう意味ではパワーアップをしていただく、こういうことも入れさせていただきました。ですから、そういう形でいろいろ新鋭機械を入れる、そして力をつけていただく、こういう措置も今回盛り込ませていただいたこともちょっと付言をさせていただいて、第三者保証について、実は、調査をするというお約束もしておりまして、非常に膨大でございまして、一部結果が出てきておりますけれども、まだ全国まとまっておりません。そういう意味では、後刻御報告をさせていただきたいと思います。
 政府系金融機関である例えば商工中金、中小企業金融公庫では、貸出先企業の代表者でございますとか、実質的な経営に関与する役員に限って保証を求めておりまして、原則、第三者保証は求めないということはもう先生御承知のとおりでございます。
 それから、国金におきましても、一月末に、担保や第三者保証人がなくても一千万円までは、ただ、これはまたおしかりがあると思うんですけれども、〇・七%金利を上乗せしていただければ徴求しない、こういう制度をつくっておりますし、また信用保証制度の中にも、八千万円を限度額とする無担保保証制度の中では、運用上、五千万円までは第三者保証は要りません、こういう形で大分整備をしてきました。
 そういう意味で、我々としては、今こういう中小企業の皆様方が大変厳しい中で頑張っておられますので、この第三者保証制度というものに対しても、私どもとしてはさらに検討を進めていかなければならない、このように思っております。
田中(慶)委員 ぜひ、そのことを含めて積極的に、また今の制度そのものが、はっきりと広報活動をしながら、それぞれ中小企業の皆さん方がせっかくのその制度を生かせるようにしていただきたいと申し上げておきたいと思います。
 さて、いよいよ機構法に入らせていただきます。
 今度の機構法の中で、私は、一番問題なのは、雇用の安定の配慮ということが大切だと思っています。もう既に御承知のとおり、失業者が三百五十万人、こういう形、求人倍率〇・六倍でありますから、こういうことを含めながら、今回の問題について、少なくてもこの再生法が施行されて以来、企業の再構築のために大変な人員整理、解雇ということにはなりませんけれども、希望退職という一部例がありますけれども、この数値の中でも、大手企業がこの再生法を受けながら、この報告書のデータの中では三万人のある面での離職者が出ている、リストラですよね。しかし、これは数字上三万人ですけれども、これを調べていったら五万人ぐらいいるんですね、はっきり申し上げて。こういうことが現実なんですから、こういう一連のことを含めながら、私は、今度の機構の中でも雇用の安定ということを大前提としていかなければいけないんだと思います。
 昔から、企業は人なりということを言われているわけであります。日本は、その文化を大切にして、その技術を大切にしてきたわけでありますけれども、昨今、その人というものが、価値観がだんだん薄れてきている。こういうときに、今回の機構法の中では、少なくても雇用の安定ということをどのように法律の中で位置づけ、しっかりとされているのか、まずお伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 この機構の直接的な目的ということになりますと、それは、短期集中的に事業再生をして、そういうことを通じて経済の活性化を図っていくということだろうと思いますから、委員のおっしゃる雇用の確保というのは、第一次的には、政府全体の雇用対策として取り組まなければならないものだというふうに思います。
 しかしながら、この機構自体も、第一義的な目的はさっきのようなことであるとしても、例えば、事業再生に早期に着手して、早期に立て直すということによって雇用の安定を図るとか、あるいはきちっと立て直していくことによって経済を活性化させるとか、そのほか、いろいろな意味で雇用というものを配慮していくのは私は当然のことだろうと思いますから、この機構の運営上も雇用ということを十分意識しながら進めていく、委員の御指摘、私はそのとおりだと思います。
田中(慶)委員 そういうことであるならば、私は今回の法案の中でいろいろと検討を読ませていただいておりますけれども、昨今の企業のあり方として、労働組合の経営の参加、あるいは労働組合が社会的責任という名のもとに、ですから、ことしあたりはベースアップも何も要求もしないわけですよ、はっきり申し上げて。そういう一つの、損益分岐とかいろいろなことを含めた問題は、経営者よりもむしろ組合の方が長期的な形の中で検討されている。
 しかし、今回の法案の中には、例えば産業再生委員会のメンバーの中に、私は先ほど言っているように、雇用という前提も含めながら、あるいはいろいろなことを考えたときに、事業経営に今度当たるときには、全体を代表する人たちのメンバーをその中に入れたっていい。
 今、大手企業の安定されている経営の中にはほとんど、重要なポイントのところには、組合出身者がそこには入っている。しかし、役所の皆さん方とか、大臣のように弁護士さんをやっていると、なかなかそういうことには気がつかないんだと思います。ですけれども、民間企業では、むしろそういう人たちの方がいろいろな形で全体を把握しておりますから、そういうメンバーには必ず配慮をされております。
 ところが、今回の再生委員会のメンバーの中にはそのような、どういう位置づけをされてその代表する人を検討されているのか、お伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 産業再生委員会は、会社の業務執行の意思決定をする取締役会の中のインナーボードというような位置づけだろうと思うんですね。したがって、ここのメンバーも、いわゆる経営陣である取締役三名から七名ということで構成するように法で規定しております。
 そこで、この委員会は、企業再生、産業再生双方の観点から、再生計画や買い取り価格の適正性を総合的に、あるいは中立的と言っていいのかもしれませんが、そういう立場で判断していく。その中で、では、この人は組合を代表する、この人は経営側を代表するというような位置づけになりますと、なかなかここはちょっと難しいのかなと。したがって、法律的な意味で、そういう利害代表というか、立場を前提として位置づけるというのは、私は法律的には難しいのじゃないかと思います。
 しかし、他方、各企業が事業再生を行うに当たっては、その企業がやはり労働者の理解と協力を得なければ事業再生計画がきちっとしたものにならないというのは当然であろうと思いますし、実施していくにも、そういう理解がなければ実際は進まないんだろうと思います。したがいまして、機構としても、再生計画について事業者が労働者とどう協議をしているのか、そういう状況については十分注意を払って、意を用いていく必要があるというふうに思います。
田中(慶)委員 例えば、民事再生法一つとっても、そこの場合においても、そこの従業員を代表する人たちの、あるいは労働組合の人たちの意向というものを非常に重要視されている。私は、そういう点では、今度の機構というものが本当にいざ実行段階に行ったときに、やはりそういうことを含めて、トータルとしてその企業等について十分に熟知しているのは、むしろ経営者よりもそこに働いている人たちの代表の方が私は熟知していると思うんです。経営者というのは時々かわるわけですし、あるいはある面ではよそから来るときもあるわけであります。
 私は、かつてこんなことを言ったわけであります。企業の経営はおれたちが守り、経営者とは心中することは絶対にない、企業はおれたちが絶対守る、経営者とは心中しない、こんなことをかつて若さの至りで言ったことがありますけれども、私は、そういうことが今度の再生のときにもいろいろなことを含めて必要だろうと思って今申し上げているわけでありまして、一番そのことが、ある面では、そういう意向を全部網羅する、別に労働組合の代表ということではなくても、そういう形でちゃんと配慮しておくことが、この機構のより有機的なつながりといいますか、あれができていくんだろうと思いますけれども、そのことを十分配慮していただきたい、このように思います。
谷垣国務大臣 この機構が円滑に目的を達成していくためには、委員の問題意識、十分受けとめて、工夫をしていく必要があろうかと思います。
田中(慶)委員 それから、これは本来ならば、この機構そのものが中小企業に対してどのような影響が出てくるのか。むしろ中小企業には余り関係ないのかなという、こんな議論もあるわけですね。むしろ、特定の大きい企業だけがこの機構のある面での影響といいますか、それこそ再生をするための手段になってくるんだろう、中小企業はそれに当たらないのじゃないかということをよく言われておりますけれども、その辺はどうでしょうか。
谷垣国務大臣 機構にとりまして、唯一の関心事と言っていいかどうかわかりませんが、関心事は、企業の規模が大きいか小さいかということではなくて、その企業が有用な経営資源を持っていて再生が可能であるかどうかというのが機構にとって最大の関心事でございまして、それさえ我々の目から見て大丈夫だということになれば、企業の規模は問うものではなくて、再生のために真剣に取り組まなければならないことは当然だろうというふうに考えております。
田中(慶)委員 日本の企業の中で、約六百万と言われる企業のほとんどが中小企業でありますから、特に今まで、技術を中心としてきた日本、物づくりを中心として技術を中心としてきたわけでありますから、そういう点では、大企業よりもむしろ中小企業に集積された技能、技術というのがあるわけです。ところが最近では、みんな中国へ行ってしまったり、いろいろなことを含めて中小企業の国家戦略がないために、中小企業がおかしくなってきている。
 ところがアメリカでは、日本の中小企業の技術や技能というものがどこにどういう形で分散されているか、全部リサーチしているんです、はっきり申し上げて。ですから、その技術を必要なときには少なくても蒲田のどこに行けばこういうものがある、こういう形のものがあるわけですけれども、日本はむしろ、今それがだんだん薄れてきている。
 そういう点では、今回の再生法なりこの機構の中で中小企業に配慮しながら、十分それが生かされていくと、これからの日本の経済やあるいは産業の活性化につながるだろう、私はそんなふうに思って、そのことを大切にして、ですから中小企業に対する配慮を十分してほしいという意味で申し上げておりますので、しっかりとその辺をやっていただきたいと思います。
平沼国務大臣 私も立場上、幅広く産業を所管している立場から、主務大臣に相なっております。そういう意味で、この機構の範囲の中に中小企業が入ることは私は当然だと思っておりまして、そしてそういう中小企業が対象の中に入ってきたときには、合理的に判断をして、そしてそこに対して例えば国の資金を投入して救っていくということも私は必要なことだと思っておりまして、主務大臣としては基本的にそういう考え方を持っております。
 また、中小企業が大変幅広いそういう先端的な技術を担っているということもそのとおりだと思っておりまして、アメリカなんかがそういう意味では非常にそういうことをよく調べているということも承知しています。
 少し余談になりますけれども、例えばアメリカは、自国だけじゃなくて、世界にどういう技術があるかというところまで調査をして、そして日本に大変な先端技術があるということを利用しているという例も私は知っておりまして、私どもとしては、国としてもそういう視野を御指摘のとおり持っていかなければならない、このように思っております。
田中(慶)委員 ぜひそういうところに今度の機構法が活用できるようにしていただきたい、このように思います。
 大体いつも、中小企業の皆さんがこういう法律ができても意外と日の目を見ない、これが実態でありますから、しかし、一番貢献度の高いのは、大企業よりも中小企業がみんなアセンブリーをしながら、最終的に形になるのは大企業として物ができていきますけれども、そういうところに技術があるわけですから、やはりそれをこれから日本の産業の再生という意味を含めてやる、ぜひそういうところにこの機構というものが生かせるようにしていっていただきたい。
 そこで、次にお願いしたいことは、これは一般的、国民的な素朴な考え方としてお聞きしたいのは、例えば、業務の公正さを確保するという観点から、これは今までも議論されてまいりました。重ねての質問になろうかと思いますけれども、大体、大手のところは、民事再生法であるとかいろいろな形で公的資金も導入されますよね、はっきり言って。ところが中小企業になると、なかなか今までそういう恩恵にもこうむっていない。しかし、今度の機構法ができてまいりますと、例えば、過去に公的資金が導入されたり、あるいはまた過去に民事再生法とかそういうことで、現在何とか立ち上がるようにしておりますけれども、再度、全体的な、この前の再生百九十のところを見ても、過去にそういうところがあったようなところもここの中にあるような気がするわけですね。
 そうすると、一般的に、中小企業の人たちが考えたときに、やはり自分たちはある面ではもう根こそぎすべてなくなってしまう、しかし、ここは責任の度合いがはっきりしていない、ある面では、企業責任、社会的責任ということをしっかりさせないで、また今度の機構法の中で、そのことで救うことに、手助けすることになるんじゃないか、こんなことが懸念をされておりますけれども、どうですか。
谷垣国務大臣 この機構は大企業のためのものであるという、私から言わせれば誤解が広くあると思います。それで、その誤解を払拭するためには、先ほどの委員のお話でもありますが、早い段階で中小企業を適切に早期再生させたなというような事案が出せたらなと思っておりまして、これはもちろんお申し込みにもよるわけですが、そういうことを少し督励したいなという気持ちがございます。
 それはそれとしまして、今までにいろいろ支援を受けたり債務放棄なんかを受けていながら、またぞろずうずうしくというお気持ちもあろうかと思うんですね。それで、過剰債務に陥って、過去に債務免除や債務の株式化というようなことを、そういった金融支援を受けた企業であったとしても、我々の観点からいいますと、コアの事業はやはりしっかりした経営資源を持っている、そして十分な競争力がある場合であれば、このコア事業を早期に再生することで雇用や取引先への影響を含めて我が国経済の活性化を図っていくことは、私はこの機構としてあらかじめ拒否するということであってはならないんだろうと思います。
 しかし、この支援基準について、再生委員会が厳格に判断することになるわけですけれども、やはり、過去にいろいろ債権放棄を受けながら、また何とかしてくれというようなところについては、それはまた、では、今度どういう再生計画にするのかということについては、おのずからやはり何か厳格な視点といいますか、きちっと見ていくということがなければずるずるの関係が続いてしまう。そんなことではこの機構が信用を得られないのではないか、こう思っております。
田中(慶)委員 谷垣大臣はそういう考え方でおられていても、一般的な見方として、はっきり申し上げて、今あなたが言っているようなこととは違った意味で心配されていることは事実であります。
 特に、今までもそうです。例えば銀行一つとっても、銀行がどういう形で、今度の機構と金融機関との関係、最終的には金融機関がこれは口出しをするわけですから、そういう点で、従来も同じようなあり方として、金融機関が少なくても国からの公的資金を導入しながら、本来であるならば中小企業にその分の回らなければいけない資金が現実に回っていないで、そして国債を買ったり、あるいは外債を買ったりしながら、貸し渋り、貸しはがし。しかし、国は、現実問題として中小企業やそういうところに資金繰りのために公的資金やあるいは融資の条件の緩和やいろいろなことをしているわけですけれども、現実には、金融機関はそうでない。こういうことが行われているわけでありますから、そのことを含めて、大臣が考えていることと現場というものが、そういう違う方向が間違いなくあるんだろう。そのときの縛りは何かあるんですか。
谷垣国務大臣 まず第一に、その縛りとしては、産業再生委員会にやはり見識のある方に入っていただいて再生計画の適確性を判断していただくということだと思いますし、それからさらには、具体的にその計画を立てていく場合については、いわゆるデューデリジェンスみたいなことにアウトソーシングしていくような場合もあると思いますが、民間の知恵を生かしていくということであろうかと思いますし、さらには、支援を決定する場合に、主務大臣等のあるいは事業所管大臣の意見も徴して、過剰供給みたいなものを温存してお互いゾンビを生かして足を引っ張り合っていくというようなことがやはりないようにしていく、そういうことが歯どめではないかと思います。
田中(慶)委員 そういう歯どめで本当にできるんだろうか、私は若干懸念をしていますね。
 ですから、例えば、今までも我々の仲間が主張していると思いますけれども、過去十年なら十年以内に金融機関からの債務免除を受けたようなところ、あるいは債務の株式化を行ったことのある事業は再生支援を申し込むことができないとか。しかし、今まではそうじゃなく、そういうところも救うんだ、こういう前提で話されておりますけれども、やはり何らかのことをしておかないといけないんじゃないかな、こんな心配をしているんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
谷垣国務大臣 やや繰り返しになりますが、やはりそこでも、それだったら、そういうところは有用な経営資源や有用な人材や有用な技術開発力を持っていても全部それはだめですよというのは、ややつらいなという気がするんです。せっかくの有用なそういう、まとまりがあってこそ雇用も維持でき、技術も維持できるわけですから、それは生かしたいという気持ちが我々の気持ちの中にございます。
 ただ、これは先ほども申しましたけれども、では、前の計画は何だったのかと。やはり、前の計画では、あなたたちは新しい付加価値を生むような戦略性というのか、そういうものが見つけられなかったんだね、一体今度の計画では新たな戦略性をあなたはどうやって出していくんですか、新たな付加価値をどうやってつけていくんですか、ここの議論をしっかりやるというしか今委員にちょっとお答えするすべがないんですが、そこをしっかりやるということになるのではないかと思います。
田中(慶)委員 私は、そのことがよりベターではないと思うんですよ。
 極端なことを言えば、さっきから申し上げているように、社会的責任と企業責任をどうとる、それが担保されていないでしょう。やはり、今からは、ある面では規制というものが、撤廃をしながらも、そこには個人責任なり社会的責任、企業責任というものを付加して、そしてやっていかないといけないんだろうと思っているから申し上げているんですよ、はっきり申し上げて。
 例えば、かつて大手ゼネコンさんが倒産したときに、小泉総理、何と言ったんですか。改革が進んだから、こんなことを言いましたよね、はっきり申し上げて。それはそうかもわかりませんけれども、しかし、今大臣の言っていることと総理の言っていることとは若干違いますよね。
谷垣国務大臣 総理からこの仕事を命を受けております私としては、違うという答えはあらかじめないのでございますが、今おっしゃったことは、やはり一つは甘いものであってはならないということだろうと思います。
 それで、やはりこれは結局、一つは、先ほど申しましたように、せっかく有用な経営資源、あるいは雇用、あるいは技術力、これを雲散霧消してしまうのは日本経済にとって余りにもむだだという気持ちが私たちに確かにございます。
 しかし、では、そういう有用なものがあるからといって、何の痛みもなくということにはやはりならないのであって、病院に例えれば、あなたのところにはがんがあるじゃないか、有能な体を持っておられるけれども、がんもあるじゃないか、そのときにはやはりそれなりの苦しみも味わっていただく必要があるわけであります。
 責任をとらないというふうにおっしゃいましたけれども、現実には、これもたびたび御答弁をしておりますが、思い切った再生計画を立てるということは、同時に、従来の経営者に退陣をしていただくような場合が、これは通常はそういうことになると思いますし、それから、それに責任を持ってきた金融機関というのも、債権放棄や何かをしていただく必要がある。それから、株主についても、大概の場合はやはりこれは減資をして責任を持っていただくというようなことがあるのが普通だろうと思います。
 ただ、先ほども規模は問わないというふうに申しましたけれども、大中小いろいろな事情がございますから、どうやって付加価値を立てる戦略性を見つけ出していくかというと、ややそれは個別になるかとも思いますが、しかし、モラルハザードを起こさないように注意していくというのは、当然のことだろうと思います。
田中(慶)委員 大臣がそのような形で述べられているのは、理解はするんですけれども、先ほど中小企業の問題で、法律はやはりある程度なきゃいけないということでしょう。そうすると、まして、責任なんというものについては、みんなとりたがらないわけですから、はっきり申し上げて。そうでしょう。だから、何かで担保しておかないと、私は、責任論というのは、ただ言葉だけに終わってしまう、こういうことじゃないでしょうか。本当にしっかりと責任をとっていく、こういうことで、モラルハザードを起こした場合はちゃんと責任をとらなきゃいけないようなことがないと、できないんだろうと思いますよ、はっきり申し上げて。
谷垣国務大臣 田中委員の問題意識にお答えしながら、私も、ある意味でジレンマを感じますのは、やはり一方で、秋霜烈日のごとくあらねばならないという気持ちもあるわけでございます。しかし、では、全部それを法で縛って、法的整理、倒産した場合と同じようないろいろな措置を盛り込んでしまうと、なかなか個々の企業を、生き物のどこを生かしていくのかという判断が縛られてしまって難しいなという、両面の気持ちにジレンマを感じながらお答えをしているのも率直なところでございます。
 それで、究極の答えということになりますと、やはり、初期に扱う案件で、なるほど、あそこの産業再生機構に行くと、きちっとした手術はしてくれるけれども、しかし、食事療法とかいろいろなことで相当厳しい再生のための苦労もさせられるぞ、そうしてちゃんと病気を治していたという事例を出さないと、なるほどそうだということには実際はならないんだろうと思います。
 私どもとしては、第一号案件だけではありませんけれども、初期にそういう、なるほど、あそこはああいう手術をしてきちっと再生されるんだという案といいますか実例を出すことに全力を傾けたい、こう思っております。
田中(慶)委員 ぜひ、そのような甘えがならないように、しっかりと対応していただきたい、このように思っております。
 特に、先般、高木参考人が述べられた中で、際立って関心を持っていたのが、中小企業は対象外じゃないかという考え方が述べられていましたよね。ですから、これから委員長になる人がそんなことを述べられたような気がしてならないわけで、やはり、そういうこともしっかりと対応していかないと、これから現実にその業務に当たる人が中小企業に対する感覚がずれていたのでは何もならぬと思いますから、前後して申しわけないけれども、そのことについて、担当大臣としてしっかりと、この前のお話のような形で、中小企業についてより差別のないようなことをしていただきたい、そのことをお願いしておきたいと思います。
谷垣国務大臣 もちろん、中小企業だからといって基準を緩めるというようなことになりますと、中小企業塩漬け機関とかいうようなことになって、これはまた本末転倒なことになってしまいますので、きちっとした基準を持ちながら、しかし、その視野は決して大企業を温存させるためじゃないんだと。
 先ほどおっしゃいましたように、ちょっと話が脱線して申しわけありませんが、私も科学技術庁長官をやらせていただきましたときに、やはり日本の科学技術の水準を支えているのは、蒲田や東大阪の中小企業、どんなに小さなところでも、きらっとしたものを磨きつつやっているねというのを私自身も痛感いたしました。
 そういうようなところを安易にばさばさやっていくようなことでは日本はもちませんから、私は、こういう機構をつくる以上は、そういうところのきらっとしたものをきちっとすくい上げていく、この視点だけはきちっと持ってやらなければいかぬと思っております。
田中(慶)委員 ぜひそうしていただきたいと思います。
 あなたは科学技術庁長官をやったから申し上げるわけですけれども、「もんじゅ」のことを思い出してくださいね。あのとき処理が間違っていたでしょう。「もんじゅ」を事故としての扱い方をしたものですから、いまだにそれが尾を引いている。あれは事故じゃないですよ、事件ですよ。少なくても、バケツで処理をするようなことをやったわけですから、あれが事件として処理されていたならば、「もんじゅ」の問題の解決方法がはっきり言って別途に進んでいたと思う。それが事故としての扱い。
 ですから、最初が肝心ですから、そういう意味で、過去の例を申し上げて申しわけないですけれども、やはり、そういう処理の仕方がこの機構法が十分生かされるかどうかということにつながっていくわけですから、そんなことのないように、重ねてこれはお願いをしておきたいと思います。
 特に、今回の機構法は、ある面では銀行救済法じゃないかとか、ある面ではリストラ法じゃないか、こんなことを言われているんですよ。そういう点で、銀行救済法にならないように、まして、銀行には都市銀行も地銀も信金もあります。それぞれの態様が違うわけでありますから、そのことを十分念頭に置きながらこの問題を処理していきませんといけない、私はそう思っておりますけれども、大臣の考え方を聞かせていただきたい。
谷垣国務大臣 今の点は、まさにおっしゃるとおりだと思います。
 この機構は、確かに、本来民間でやれればそれが一番いいものに乗り出していくわけですから、ある意味でいろいろな御批判もあるシステムだろうというふうに思います。運用を誤れば、大銀行救済機関であったり、債権を塩漬けにして国民負担をうんとふやすようなことにもなりかねない面が確かにあると思います。他方、余り、石橋をたたいて渡らないというぐらい慎重になりますと、これは何のためにこんなものをつくったのかわからないというそしりも受けるかもしれません。
 要するに、運用のよろしきを得ることがいかに難しいかということであろうかと思いますし、同時に、その運用のよろしきを得るためには、これは一種のリスクをとるという覚悟がなければ運用のよろしきも達成できない、まことに、ある意味では難しい仕組みであるということも私は十分承知もしております。また、こういう委員会だからといって恐れずにそういうことも申し上げなきゃならぬのかなとも思っているわけでありますが、よき人を得て真っすぐな道を歩めるように、私も担当閣僚として十分注意もし、督励もし、努力もしたい、こう思っております。
田中(慶)委員 時間も余りないわけでありますけれども、ぜひ今のことを念頭に置きながらしていただきたいと思います。
 そこで、例えば、今回の機構法等について、具体的にこれから実行するわけでありますけれども、その段階で委員会に、こういう形で、成功例はこうでしたとか、あるいは、失敗例を今から言うことはないでしょうけれども、そういうことを含めて、何か報告の機会を考えていますか。
谷垣国務大臣 これは、支援を決定したような場合には速やかにその概要を発表するということに法律もしてございますので、それは当然やらなければならないことだろうと思います。それからもう一つは、やはり先ほど来の御懸念もいろいろある、それもよくわかるところでございますので、この御懸念を払拭するためには透明度ということが必要だろうと私は思います。
 ただ、他方、一度入院してきた患者さんは、同時に今度は元気になって経済社会の中で働いていただかなきゃならないとなりますと、そこでの営業の秘密、ノウハウというものも当然あるわけでございますから、そこらあたりをどうバランスをとるかというのは、これからきちっと詰めなきゃいけないな、こういうふうに思っております。
田中(慶)委員 企業秘密もあるでしょうし、そこにはいろいろなことがあろうと思います。しかし、やはりこの機構が生かされ、そしてこれからも、限られた期間ではありますけれども、この国の産業を再生するためには、一つの生きた例としてそれが大きく評価を得る、そして皆さん方に、この機構法の不安を払拭して、これが申請をされるような形をとっていかないと、ある面では、この法律ができてもせいぜい十本の指にしか入らないじゃないかなんというようなことまで言われているわけですから、そのためにこんな時間あるいはこんな苦労もしているわけですから、そんなふうにならないようにする意味でも、私は、企業秘密は別にしても、成功を祈りながら、また成功した例というものはやはりある程度オープンにする必要があるだろう、このようにして、より元気の出るような形にしていただきたい、このことをお願い申し上げながら、最後に決意を聞かせていただいて、質問を終わります。
谷垣国務大臣 どのように透明性を保って信頼を得られるか、そして期待される役割を果たし得るか、懸命に工夫して、御期待にこたえたいと思っております。
田中(慶)委員 以上、終わります。
村田委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時四十八分開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎でございます。初めに、平沼大臣に御質問させていただきたいと思います。
 ただいま審議をしておりますこの産業再生機構法案、特殊会社とはいっても、事実上の官製組織をつくって企業の再建を図っていかなければならない、そういう事態になっているということでありますから、これまでの歴代内閣、特に小泉内閣になってからの経済失政が大きな要因であろう、私はこのように思っております。今や日に日に株価も下がって、小泉総理が誕生したときから見れば半分になっている、それから、あらゆる数値が落ち込んでいるといったような、こういう状況になっておりまして、金融機関とか企業はさらなる不良債権を抱え込むという危機にさらされていると言ってもいいと思うわけであります。
 このような情勢下で、金融庁がこれまで幾つかの対策を打ち出してまいりました。しかし、我々はこれまでも、そういう対策だけでは、我が国の中小企業、零細企業等々を浮上させる、助けることにはつながるようなものではないということを、焼け石に水だ、もっと有効な手を打たなければならないということを、再三こういう席で申し上げてまいったわけであります。
 そこで、平沼大臣にお聞きいたしますけれども、大臣が我が国の経済産業政策を担当する大臣として就任されてから、既に二年八カ月が過ぎたということであります。小泉内閣のスタート以来、特に、ほとんど一貫して、先ほど申し上げたように思わしくないような状況になってきている、足取りがどんどんどんどん鈍くなってきているというような、そういう状態であります。
 当初、小泉総理は、構造改革なくして景気回復なしといったような、一見わかったようなスローガンを掲げたわけでありますが、今やこのスローガンもすっかり色あせてしまいました。二、三年国民が我慢してくれれば、構造改革が進んで景気が回復するとあのときに言ったわけでありますけれども、二年近くになった今、この二、三年の話なんかは全然しなくなったということであります。もちろん言えるような状況になっていないわけでありますから、当然でありますけれども。
 マスコミによれば、つい先ごろ、五年やらねば成果は出ないなどと言ったと報じられているわけでありますが、この報道が本当だとしても、まああの小泉さん、公約を破っても平気なようなあの小泉さんだから、また今のイラク情勢の対応を見ても、小泉さんだからということで全然驚きもしない、そういうような状況にあるだろう、私はそう思っておりまして、言葉が悪いんですが、ただあきれているというだけのことであります。
 ちなみに、私どもの自由党の小沢党首、小泉総理が一昨年御就任された直後から、構造改革一辺倒では我が国の経済はもっともっとだめになる、再生不可能なほどの大変な状況になってしまう、こういうことを言っておったわけですが、現在を見ればまさに、残念ながら、私はそのときに、もう既に景気が随分落ち込んでいるときでありましたから、これ以上悪くなったらどうなるんだろうというような、国民が、我々の地域の中小零細企業がどんな苦しみを味わっていくんだろう、シャッターを閉めて店を閉めて、もう夜逃げをするといったような状態になるんじゃないかと心配したとおりの状況になってきたな、今そのように思っているわけであります。
 こういう中で、平沼大臣、政治経済のこの流れの中で、大臣として御就任されて以来、我が国の経済活性化を図るべく、いかなる業績を残してこられたと御自分で自負をされておられるのか、現在の経済状況を踏まえてお聞かせをいただければと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 平成十二年の七月に森改造内閣で通産大臣に就任させていただいて、御指摘のように二年八カ月に相なります。その間、景気は若干持ち直しの様相を呈したときもありますけれども、総体的に言って非常に厳しい状況でございました。
 私は、就任してから、やはり新しく経済に活性化、活力を与えなければいけない、それによって雇用を創出しなければならないということで、新市場そして雇用創出に向けた重点プランというのを発表させていただきました。これは、たしか平成十三年の五月だったと思います。その中で、イノベーションを起こして、そして、日本は産業のポテンシャリティーはあるんだからしっかりそこで新しいものを創造する、そういうことをやるべきだ。
 その中で、一つは、大学発ベンチャー企業を三年間で一千社誕生させよう、こういうプランをつくりまして、これは具体化をいたしまして、一千社のうち、今四百二十四社が誕生するようになってまいりまして、あと一息かな、こういうことを思っております。
 それから、地域経済、今地方の中小企業のことを先生お触れになられましたけれども、大変厳しい。しかし、地域にやはり活力を与えなければならないという形で、地域産業クラスター計画というものの推進をこの期間させていただきました。産学官連携によって、とにかく、地域に持っているそういうすばらしい種がありますから、それを拠点の大学と、それから地場の産業と、そして我々もお手助けをしながら伸ばしていこうということで、現在、これは十九の拠点で、そして大学の数も全国では累計二百大学がここに参画をして、企業の数も四千を超える、それでその中から新しいベンチャー企業も、そしてまた新しい特許等も生まれてくるように相なっています。
 そういうことで、第一段階はそういうことをやらせていただきましたけれども、なかなかまだ厳しいということで、一昨年の十一月に省内に、いわゆる産業競争力をつけなければいかぬということで、有識者の方々に集まっていただいて、産業競争力戦略会議というのを立ち上げまして、約半年間、これはかんかんがくがく議論をしていただきまして、そして日本の物づくりの力を出そう、こういう形で四つの分野に絞らせていただきました。
 そして、これが小泉内閣の中の、これもよく御承知だと思いますけれども、第二骨太方針の中に、二十一世紀をリードする新たな産業フロンティアを創出するための部門として、一つは、IT、情報の分野、それから、これは二十一世紀には大変大きな規模になると言われておりますバイオテクノロジーの分野、さらには、これからは環境・エネルギーというのが非常に大きな分野を占めます。日本は環境の技術というものは非常に大きな分野がありますし、これで世界に貢献をしていく。ですから、環境とエネルギーを一つくくりにして三本目の柱にさせていただき、四つ目は、これから日本の特性が生かせるナノテクノロジー、そして材料、こういったことが第二骨太の中に入って、今国家的な一つ大きな、これから取りかかる産業競争力の強化、こういうことにつながってやらせていただいています。
 そして、構造改革というのは、これは避けて通れない、やはりやらなければならないことであります。しかし、構造改革だけやるということがなかなか車の両輪には相なりません。小沢党首のお話もさっきなされました。
 私は、一昨年の時点から、小泉さんの唱えている構造改革は大きな方向として正しい、これをやらない限り日本はデフレからも脱却できないし、そして経済も安定軌道に乗せることはできない。しかし、同時に、必要最小限やるべきことはやるべきではないかということで、私は一昨年から補正予算の必要性というものも、閣内におりましたのですけれども提唱をさせていただきました。
 結果的には、一昨年、昨年と、小泉総理も、小泉流の言い方で、柔軟かつ大胆に対応する、こういう中で補正予算の編成もできましたし、また、三十兆の枠にもこだわらない、こういう形が出てまいりました。
 そういう形で、私は二年八カ月を振り返って、本当にいろいろやらせていただき、皆様方の御協力をいただいたのですけれども、しかし、マクロ的に、日本の経済がやはり過剰の債務の問題、そして過剰のいわゆる供給構造、こういうものの中で呻吟をしておりまして、ですから、ここから一日も早く脱却する、こういうことが必要だと思っておりまして、今回お願いしておりますいわゆる改正産業再生法も、こういったところを盛り込んでお願いをさせていただいているわけでございます。
 本当に二年八カ月、私なりには全力を尽くしてまいりましたけれども、まだまだ至らない、このように思っておりまして、さらに私ども、経済産業を預かる経済産業省として、全省を挙げて全力で頑張っていかなければいけない、このように思っております。
工藤委員 今、平沼大臣から、この二年八カ月の、いろいろな施策を講じてこられた、真剣に頑張ってこられた、そういうお話をちょうだいいたしました。そのとおりだ、僕もそのように思います。
 ただ、結果として、あらゆる数値が落ち込んでいる。出口がもう惨たんたるものだ。入り口ではこういうのをやった方がいいということで手を打ったとしても、それは、前にも申し上げたかもしれませんけれども、不況の火が燃えている、消すためにはそれなりの水をかけなきゃならない、それをスプーンか何かでちょんちょんとかけたぐらいで、そして、あれをやった、これをやったと。失礼な言い方でありますけれども、そういうようなことでは、だんだんにまた燃え広がって、さらに大きくなるといったようなことになるわけですね。
 平沼大臣、これまでも、僕は何も大臣とかかわりがありませんから、一切何も、ろくに話もしたことがない状況ですから何もないんですが、外野から見ていて高い評価をしているんですよ。
 ですから、前にも、閣内が沸騰するようなことでもやむを得ないから、大臣の首をかけて、そして担当大臣として、中小零細企業は今大変な苦しみにある、それを救ってほしい、そういう施策を講じてほしい、そういうつもりで前にも質問させていただいたことがありますけれども、ただ、ちょっと何かその辺にちらちら見えてくればおとなしくなったりする傾向が人間にはどうしてもあることもありますので、そうならないようにひとつ。
 今が一番大事だ、それが、今これをきちっとやることがその辺に見えるものをつかむことにもつながっていくだろう、私はこう思うものですから、御答弁とかそういうのもきちっと答弁をされて、大変御立派だと敬服をしておる一人なんですが、有効な手だてを打たなければどうしようもないということは確かなわけでありますから、もっともっと今の、大臣が相談しておられる役人とか、だれとかかれとかといったようなことじゃない視点で物を考えないと、現実に本当に中小零細企業がどうしたらいいかということにつながるような、そういうことじゃないと有効な手を打てないだろう、そういうような気持ちもありますので、ひとつ、首をかけてなんというのは物騒な話ですけれども、いずれそういうおつもりで御努力をいただきたいものだと御要望申し上げておきたいと存じます。
 それでは、今審議をしております産業再生機構法案について、谷垣担当大臣にお伺いをしていくわけであります。
 これまでも大勢の方々が質問してこられましたので、重複する点が多々あろうかと思いますけれども、私もこの質問をしろということになりまして、幾つか用意をしてまいりましたので、御答弁の方、よろしくどうぞお願いを申し上げたいと存じます。
 本来、この法案、民間が自助努力で再建すべき案件を、特殊会社とはいえ、このような官製の会社を設立して対処することが、果たして目的達成に十分な効果を発揮できることにつながるんだろうか、私自身も極めて疑問に思っている一人なのであります。
 そこで、民事再生法や会社更生法に基づく再建と今のこの産業再生機構を活用したケースでは、どのような違いがあるのか、またどのようなメリットがあるのか、それを教えていただきたいと思います。
谷垣国務大臣 会社更生法や民事再生法、これはやはり企業を再生させようということでありますから、大きな目的においては今度の機構と共通なものがあるわけであります。
 ただ、あちらは裁判所が関与する法的な仕組みでありますので、これは個々の企業をどうするかによっては随分違いがありますが、一般的に申しますと、やはり裁判所に持ち込むよりは、当事者間の話し合いで解決できる、いわば早い段階でそういう当事者間の話し合いで解決する方が、企業価値のいわば毀損も少なくなって、負担が軽いというのが一般的な見方だろうと思うんですね。
 それで、機構の仕組みはそういう私的整理の一つなわけですが、会社更生法や民事再生法と比べるとどこにメリットがあるかということになりますと、裁判所の関与する手続になりますと、仕入れ先とかあるいは取引先の債権もどうするかという議論が必ず、通常は起こってまいります。ところが、機構の方は金融機関だけを対象としてどう再生するかを考えます。そうしますと、今までのお得意先とか仕入れ先との関係をいわばがしゃがしゃにしなくて、そこのところはいわば今までの取引関係を維持したままやれるという、これは相当大きなメリットだろうと思います。
 それから、機構は金融機関を相手として整理を考えるわけですので、たくさんその当事者が出てくる、取引先やら仕入れ先が出てくるよりは早い、こういうメリットがありまして、したがって、企業価値が減価していく割合が少ないだろうということが言えるだろうと思います。
 では、そういう私的整理ならば、何で特殊会社みたいなことでやらなきゃならないのかという根本論に返ってくるわけでありますが、そこは、今まで委員会で答弁させていただいている、三つ申し上げておりますのは、やはり、金融機関同士がたくさんあるとなかなか話がまとまらない。これは先ほども御答弁したように、金融機関の体力、ゆとりというものもあると思いますが、なかなか進まない例がある。それから、再生をしようというときに企業再生のマーケットみたいなものが育っていませんと、不良債権をどうやって処理していくのか、あるいは再建を請け負う会社というかスポンサー、再建ファンドみたいなものをどこに求めていくかというのは、なかなか日本では未成熟だということがございます。それから、これは過剰供給構造がございますから、できれば合併させて競争力をつけたい場合なんかがあるわけですけれども、メーン銀行が違うところというのは、銀行同士が話し合ってもなかなか進まないという例が過去ございました。
 そういうことを考えますと、ここで進めていく上では、民間で全部進めば望ましいんですけれども、なかなか進まない。私は、そこでどんと背中を押すような仕組みが必要なのではないか、こういう表現を使わせていただいているんですが、そういう意味合いを持ったものでございます。
工藤委員 次に、再生支援の判断基準についてでありますけれども、本来、企業の活動といいますと、その存廃も含めて、あくまで民間の市場原理に基づくべきものであろう、このように思います。確かに、長引くデフレ経済のもとで、今もって過剰供給構造だとか過剰債務構造から脱し切れないでいる、こういう現状でありますから、当然何か手を打たなければならないという政府の苦境も理解できないことはないわけであります。
 しかし、再生機構の役割は、できるだけ産業の再生を図ることが目的でしょうから、本来、市場原理に基づけば、倒産のケース、これは倒産して当然だといったようなものを、一種の駆け込み寺のような役割を果たして、行政の介入によって不必要なまでに延命がなされる、そういう可能性も否定できないわけであります。その結果、経済の活性化を図るどころか、足かせになる可能性さえ出てくるのではないか、このようなことも考えられるわけであります。
 そこで、産業再生委員会の権限である再生支援の判断基準が問題となってくるわけでありますが、再建可能な企業か否かの判断が、その企業はもちろんのこと、経済全体に及ぼす影響を考慮すれば極めて重要なことになってくるというわけでありまして、この再生支援の判断基準について御説明をいただきたいと思います。
谷垣国務大臣 工藤委員がおっしゃるように、もうこれから力のないものを延命させるというわけにはいかない。私たちの発想は、有用な経営資源があるけれども過剰債務でせっかくの有用な資源を使わないところを何とか救いたい。だけれども、生きていけないものを救うようなことでは、これはかえってゾンビが足を引っ張る、ゾンビになって足を引っ張り合うということでありますから、そこはきちっと判断しなければいけない。その判断基準は、昨年十二月に産業再生・雇用対策戦略本部で決定した企業・産業再生に関する基本指針に従って支援基準を定めるということになっております。
 それで、その主な内容を申しますと、まず第一に、再生計画が終了した時点で生産性が向上して財務内容が改善していること、これが一番目であります。それから二番目として、対象企業の清算価値よりも回収価値が多くなっていること。つぶしてしまうよりも再生計画を立てたときの方が企業価値が増していなければ、これは意味がありません。それから、そうなると、買い取り価格はずぶずぶでいいわけではありませんで、再生計画を勘案して、出口を見据えた適正な時価でなければならない、こういうことでございますね。それから四番目として、再生計画の終了時点において、やはりその企業が自立して歩まなければいけないわけですから、新たな再生スポンサーが出てくるといったようなことで、自分でやはり資金調達ができていく、こういうことが可能でなければなりませんし、そうでなければ機構が買い込んだ債権を処理していくこともできなくなるわけですから、この四つぐらいの基準を我々は判断の材料としていくわけです。
 このうち、生産性の向上と財務構造の改善という最初に申し上げた点につきましては、これは改正産業活力再生特別措置法の中で生産性向上基準あるいは財務健全化基準ということで決めていただいておりまして、自己資本利益率が二%以上向上する、あるいは有利子負債のキャッシュフローに対する比率が十倍以内になるといったような数値基準をやっていただいておりますので、それを援用してやっていくということであろうかと思います。
 こういった基準をもとにして、先ほどおっしゃった機構内の産業再生委員会で合議の上、最終決定をするということでありまして、こういう仕組みで再生可能性のない企業の延命につながるということを排除していこう、こういうことであります。
工藤委員 いろいろ今御説明をいただいたのでありますが、再生支援の基準の運用について、企業活動と一口に言っても、さまざまな業態があるわけですから、ただいまいろいろお話を伺った再建可能かどうか、これを見きわめつつ、相当程度弾力的に運用せざるを得ない面も出てくるだろう、このようにも考えるわけであります。
 そこで、再生機構の組織体制が問題になると思います。企業の生死を決定する仕事でありますから、役員はもとより職員も、この人選に当たっては、企業再建の実務に精通していること、しかも中立公正でなければならない、これに立脚した判断ができる、そういうことに留意して人選を行うべきであるというのは当然なわけでありますが、これらの人材の確保についてどのように対処をされようとしているのか、お伺いをしたいと思います。
根本副大臣 工藤委員の今おっしゃるとおりだと思います。大事なのは、この産業再生機構が本来の目的をきちんと果たしていく、あるいは真に役立つものにしていく、このためには腕きき、目ききを集める必要がありますので、やはり人材が勝負だと思うんですね。
 具体的には、先生も今おっしゃいましたが、企業再生実務、ここ三、四年、随分企業再生の仕事がふえておりますので人材も出てきておりますから、企業再生実務に経験のある方を中心に、金融面、法律面、会計面、多方面から能力のある人材に来ていただきたい、こう考えております。
 ただ、産業再生機構、これは買い取り期間が二年程度で、存続期間は五年程度という時限法人でありますので、機構の内部にたくさんの方を抱えるというのも余り適当ではない、こう考えておりまして、案件に応じて、例えばデューデリジェンスのようなものは民間にアウトソーシングする。要は、民間にアウトソーシングを行うということも含めて、この組織は柔軟な組織形態で弾力的に人材を集めていきたいと思っております。
 いずれにしても、民間の知恵と英知を結集するというのがこの機構の要は生死を決めることにもなりますので、そういう人材を、きちんとしたいい人材を集め、しかもそれは弾力的に運用していきたい、こう考えております。
工藤委員 今、民間のお話がありました。民間というのは、具体的にどういうところなんでしょうか。
根本副大臣 まず、機構に集まっていただく方、これは、今民間でいろいろな企業再生実務に携わっている方で専門的な力もある方、そういうことを想定しておりますし、それから実際の機構の運営に当たっては、機構だけでやるんではなくて、民間にアウトソーシングできるような仕事は民間の協力も得ながらやっていきたいということであります。
工藤委員 それでは次に、中小企業対策についてお伺いをしますが、政府は来年度予算の中で債権買い取り資金調達として十兆円政府保証枠を確保したということでありますが、現下の経済情勢では十分な資金とは言えないだろうというように思うのであります。
 そのため、支援対象は、これはずっとこの問題で質疑をして、どなたも質問しておられたわけでありますが、大企業に集中をして、再生機構の役割の中には中小零細企業に対する視点がなおざりになっているんではないか、これは多くの方が指摘をされました。
 先ほどのどなたかの質問の中でも谷垣大臣は、そうなっては大変だから、そうならないようにというようなことで丁寧にお答えになっておられたのでありますけれども、もう一度、中小企業に対する手だてはどのように講じていかれるのか、後ほど産業再生法の中小企業再生支援協議会の役割については改めてお聞きをしますので、再生機構における中小企業対策についてどのように考えておられるのか、改めて御答弁をお願いします。
谷垣国務大臣 これは先ほど、私からすれば誤解というような答弁も申し上げたんですが、一般に、第一号案件は何だなんて言いまして、大きな金融機関の扱っている大きな企業が第一号案件だなどと言われるものですから、どうも中小企業や地方銀行の方々からすると、おれたちとは無縁な世界の話じゃないかという見方があることは事実でございます。
 ですが、我々にとっての関心事というのは、企業の規模が大きいか小さいかということにあるわけではありません。もちろん、大きな企業がいい資源を抱えながら倒産してしまえば日本経済に与える影響も大きいですから、そういうところにも実効ある対策ができなければなりませんけれども、全国で日本の経済を支えている中小企業を差別する理由は何にもないわけでありまして、そこが再生可能な経営資源を持っているというのであれば、我々はこれはお役に立たなければいかぬと思っているわけであります。
 そこで、先ほどの御答弁では申し上げなかったですが、我々も悩みがございます。中小企業となりますと、全国いわばどこにもあるわけですから、相当な手足、アンテナを持っておりませんとなかなかそこまで目が行き届かないことがあるではないかというようなことも、それは現実としてあると思います。
 そういうときには、今ちょっとお触れになりました、平沼大臣が御苦労しておられます協議会というようなものもそれぞれの地域でできるわけでありますから、そういうところの連携というような、協力関係ということも考えていかなければならないのではないかなと考えているわけです。
 いずれにせよ、口で、いやいや、これは中小企業を排除しないんだと申し上げても、一度そういう疑念ができてしまうとなかなか払拭できない。これを払拭する方法は、結局、早いうちに、なるほど、中小企業でうまいさばき方をしたなという例が出ますと、あそこはうまくやって利用できるところだとなりますので、ぜひとも早いうちにそういう案件を出せるように努力する必要があるんじゃないかと思っております。
工藤委員 今の御答弁でもありましたが、中小零細企業は非常にすそ野が広いものですから、視点が届かない。そういうのが、とてもこの機構は中小零細企業を対象にしたものではないといったようなことにつながって、みんな考えるわけでありますので、ですから、今谷垣大臣言われたように、そうじゃないんだというのを早く皆さんに理解していただくためにも、おっしゃったようなことに留意してきちっと対応していただきたい、このように思います。
 次に、この機構の中で、債権の買い取り価格をどのように設定するのか。これも先ほど来いろいろお話がございましたけれども、設立の目的達成の成否にかかわる重要な問題だ、私もこのように思っております。
 この法律案では、買い取り価格は「事業再生計画を勘案した適正な時価」としか規定されておらないわけであります。この適正な時価の設定なんでありますけれども、債権買い取り請求のインセンティブを働かせようとすれば、適正な時価よりも高値である実質簿価で買い取らないと、金融機関が不良債権の処理に乗り出すことが難しいとも考えられるわけですし、また逆に、高値で買い取った場合は、機構が単なる不良債権の買い取り機関になってしまうといったようなことも考えられるわけでありますし、将来の国民負担増につながるおそれが出てくるという極めて重要なことだ、このように思うわけであります。
 言うまでもなく、この買い取り価格は機構と金融機関の交渉によって決まるわけでありますが、適正な時価で買い取るということの定義といいますか基本的なことについて、御説明をいただきたいと思います。
谷垣国務大臣 法律上、適正な時価を上回らない、こういう表現になっているわけですが、基本的な考えは、その債権、債権というのは結局企業に対する債権ですから、どれだけ企業がそれをきちっと返していく力があるかということに結びついてくるわけでございまして、結局、再建計画を達成して自立していっていただくときに、どれだけその企業が出口で価値を持っているかということを見据えて、市場という出口を踏まえた上で設定するというのがまず大きな考え方でございます。
 その上で、具体的には、市場関係者がこういう問題を評価していくときの手法を取り入れまして、再生計画において、事業の収益見込みがどれだけあるかということを前提としまして事業価値や債権の回収可能性というものを考慮する、いわゆるDCF的な手法によってこの債権の価値を算定するということになると思います。その際には、マーケットでこういうことに関与しておられる方の評価と乖離がないように、そういう方の意見を極力参考にするということにしております。
 実は、このことは、機構に対して債権を売っていく側の銀行、金融機関、この側についても、例えば去年の十月に金融再生プログラムをつくられて今竹中大臣のもとでいろいろ努力をされているわけですが、要するに、要管理先の大口債務者について、今申し上げたようなDCF方式を基礎として個別引き当てをきちっと積んでいくというようなことを進めておられますし、同一債務者の金融機関相互、銀行によってその評価が違うことのないように債務者区分を統一していく、こういうようなことを進められて、その審査を厳格化されておられるという動きがございまして、こういうものをあわせて考えますと、金融機関が売却価格を判断する上で共通の基礎ができつつあるというふうに考えております。
 もっとも、十分な時間をかけて、こういう方法で適正な時価を算定すれば合理的な価格が設定できる、理論的にはそうなるわけですが、現実に、具体的には、委員がおっしゃいましたように、やはりバッターが手を出したくなるようなボールをコーナーのどの辺に投げ込むかというようなことがいろいろあるのかなというふうに思ったりいたします。
工藤委員 わかったようなわからないようなんですけれども。
 それでは次に、この機構の活動期間についてでありますが、法律案では、先ほどもお話があったように、設立から二年間で債権の買い取りを行って、三年間で企業再生を図っていく、そして前後五年間で当初の目的が達成されるといったようなことなんでありますが、今さら申し上げるまでもありませんけれども、我が国の経済状況、先ほど来のお話のように依然として低迷したままでありまして、株価の下落が新たな不良債権を発生させているわけであります。正直なところ、現在不良債権は総額幾らあるのか、幾らに上がるのか、それさえ定かではない、そう言う識者もいるくらいでありまして、このような条件下で本当に五年間で不良債権を処理して実効ある企業再生体制が確立できるのか。また、機構解散時に新たな損失が発生した場合にどのように対処をされようとしているのか。その点、お伺いをいたしたいと思います。
谷垣国務大臣 我々は要管理先を中心として買い取るわけですが、これは昨年の四月で十九・一兆というふうな積算がございますので、私どもは、十兆円の政府保証という買い取り資金の枠をつくっていただきましたので、もちろんこれを全部使い切るということでは必ずしもありませんけれども、そういうものに対応する十分な枠は持っているのではないかなとまず思っております。
 それで、政府の目標として、不良債権処理を平成十七年の三月末までに行うということ、その二年間で行うという政府の方針がございますので、平成十七年三月三十一日までに再建できると思う債権を我々は買い取りたいと。そして、その買い取り決定から三年以内に売却等の処分を行うよう努めなければならないというふうになっておりますが、このうち、三年以内に売却等を行うように努めることとしておりますのは、やはり、余り長い先のことは神様でないと見通せないわけでございますので、機構としては、合理的に見通し得る期間内で対象事業者の再生のめどがついて、自立してファイナンスなどが可能な場合に限って債権の買い取りを行うというようなことによりまして、機構が買い取りを行う案件を再生可能な案件に限定して二次損失を最小限にする、それとともに、そういう問題を集中的に進めて、企業を市場に戻していく、こういうことを考えているわけでございまして、五年以内に機構としては十分な成果を上げて、民間主導の企業再生に引き継ぎたいと考えているわけであります。
 それで、産業再生機構の業務は今申し上げましたように再生可能ということでありますから、買い取りの時点をにらんで、できる限り損失が生じないような仕組みとしているわけですが、それにもかかわらずトータルとして、個々については黒が出た、赤が出た、いろいろあると思うんですが、トータルとして損失が生じた場合には、まず出資金の中からてん補をして、そしてそれでも埋め切れない場合は国が予算措置を投じて補てんすることができる、こういう仕組みになっているわけでございます。
工藤委員 今大臣、昨年四月に十九・一兆というふうに言われたんですが、今も数字は変わっておりませんか。その後に発生したものに対してはどのような考えを持っておられるのか。
谷垣国務大臣 ちょっと今、私は、昨年三月末ですね、平成十四年三月末の数字以外に具体的な数字は持っておりません。
 確かに、要管理先、上の方からさらに程度が悪くなって落ちてくるものもあるだろうと思いますし、また要管理先の中からさらに下の方に落ちていくもの、上がっていくものもあるのかもしれませんが、落ちていくものもあろうかと思います。
 ただ、まだここは破綻懸念先というようなことには至っていない、比較的程度のよいところでございますので、できる限り早く再生を進めていくということによって、これがどんどん劣化していくことが余りないようにというのが我々の目標でございます。
工藤委員 だんだん時間がなくなってきますので、次に移ります。
 再生機構と政府系金融機関の関係についてお尋ねをいたします。
 本法案の六十条は、政府系金融機関について、対象事業者の債務の一部免除その他必要な協力に努める旨規定しているわけでありますが、この規定は、機構が非メーンバンクから債権買い取りを行う際に政府系金融機関がこれに含まれる事態が生じた場合、これまでの債権放棄の原則以外に、新たに応じなければならない債権放棄の規定と理解をするわけであります。安易な適用は政府関係金融機関の財務の健全性に悪影響を与えるんではないかというようにも思うんですが、運用次第では、将来、相当な財投資金が焦げついていく方に結びつくんじゃないか、そういうようにも考えるわけであります。
 政府系金融機関については、特殊法人改革の一環として、そのあり方をめぐって俎上にのせられている問題でもありますだけに、こうした事態を招けば小泉内閣の行財政改革にも支障を来すのではないかと危惧をされるところでありますが、この点、御見解を賜りたいと思います。
根本副大臣 委員御指摘のように、政府系金融機関には債権放棄等の協力もこの法律で求めるように規定しております。もとより、政府系金融機関の債権放棄が無制限に行われる、これは私も適当ではない、こう思います。
 ただ、産業再生機構が関与する案件について言えば、再建可能性をしっかりと把握して、しっかりとそこは検証して、ロスが出ないような再建計画でまず我々は考えておりますので、産業再生機構が関与する案件については、妥当な額の債権放棄によって企業の再生が進めば、結果的にはより多くの債権が回収できる、こういうことも想定されますので、この法律において、債権放棄に伴う負担が合理的かつ妥当なものであるときはこれに応ずるよう努め、事業再生計画に同意した場合には、その計画に従って債務の免除その他の必要な協力をしなければならないという協力義務を規定させていただきました。
 政府系金融機関におきましては、産業再生機構の今申し上げましたような趣旨を踏まえて、企業の再生可能性、債権放棄の合理性、妥当性、これらを適切に審査して対応していただけるものと考えております。
工藤委員 それでは次に、RCCと本機構の関係についてお尋ねをさせていただきます。
 RCCは、不良債権の処理を進めると同時に、企業の再生を前提とした債権買い取りも行っているわけでありますが、この機構は、これも先ほど来の話にもう随分出ておりますけれども、要管理先を中心に債権を買い取って、RCCは破綻懸念先以下の債権を買い取る。また、企業の再建のためにか不良債権処理のためにか、債権を買い取ることに違いはあるものの、結果として企業の再建に結びつくこともやるわけであります。
 こうした点を見ると、産業再生機構とRCCの役割がオーバーラップしている部分が相当あるんではないか、こう思うのでありますが、新たな人材の確保もなかなか大変ということになりますと、むしろ、RCCの組織とか機能を強化した方が得策ではないかというようにも考えられるわけでありますが、この点、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 RCCは、もともと債権回収を主目的としてつくられた機構でありますし、現在、日本で最もその経験を持った組織になっているということは間違いございません。それで、破綻懸念先以下の、いわば相当劣化が進んだ債権を買い集めて、金融機関が売りたいというものを買ってきて、そしてその中から再生した事案が出てきていることも事実でございます。
 これは、RCCの関係者に言わせれば、いわば浜の真砂の中から真珠をふるいでふるい分けるような大変な作業だった。私は大変な御努力をされたと思いますが、もともとそういうところでございますので、再生させられるかどうかあらかじめわかっているというようなものはほとんどない、そういう組織でございます。それに対して産業再生機構の方は、当事者間で話がついて、我々も、これは再生できる、初めから再生させることを目的として債権を買い取るので、組織の基本的なできぐあいといいますか、立ち上がりの姿というものは異なっております。
 もちろん立法論的には、今度の再生先行型のような要素をRCCにつけ加えてという議論も十分、それは立法論としてはあり得るわけですが、今回の仕組みでは明確に機能を分けてつくったということでございます。もちろん、大きな意味では一緒に協調しなければならないところがございますので、協力して役割分担をしながらやっていく、法の上でもお互いに協力をするようにと規定されているところでございます。
工藤委員 時間も大分少なくなってきましたので、通告しておりますのを若干はねてやらせてもらいますが、次に、企業再生ファンドについてお尋ねをします。
 我が国の民間における再生ビジネスは、他の先進諸国と比べて、その実態はまだまだだと思っております。今回の改正では、企業再生ファンドビジネスが育つような環境整備に配慮した措置がとられたとのことでありますけれども、どのようなものか、改めて御説明を賜りたいと思います。
 また、企業再生ファンド主導の計画を支援していくとのことでありますけれども、外資のいわゆるハゲタカファンドにもうけをさらわれて、国内のファンドがないがしろにされる危険がないのかどうか、その対策も含めてお答えをいただきたいと思います。
    〔委員長退席、阪上委員長代理着席〕
高市副大臣 このたびの改正案における再生ファンドでございますけれども、中小企業総合事業団の出資制度の対象に、これまでのベンチャーファンドに加えまして中小企業再生ファンドを追加したり、それからまた大企業もベンチャーファンドの投資対象にしたり、また投資事業の追加もいたしました。使いやすくなってきたということでございます。
 いわゆる人材や技術などの経営資源を散逸させることなく事業の早期再生を図るという意味では、この企業再生ファンドの果たす役割というのは非常に重要だと考えております。
 ハゲタカファンドの御心配でございますが、ハゲタカファンドについて明確な定義というのはないんですけれども、一般的には、企業の含み資産などに着目して、企業に再投資して企業価値を高めるような努力を行うことなく、転売による短期的な売却益を得るもの、それを指していると考えられます。
 この法案の経営資源再活用計画におきましては、経営資源を有効に活用する取り組みは支援するんですけれども、短期的な売却益を目的として、事業を伸ばす観点を有しない取り組みにおいては、支援の対象といたしておりません。つまり、三年後の計画終了時点において、経営資源を有効に活用して長期的に企業の価値を回復させる取り組みであるということが認定の要件でございますので、資本の内外を問わず、国内のものであれ外国のものであれ、それを問わず、ハゲタカファンドを支援してその活動を助長するようなものにはなっていないと考えております。
工藤委員 高市副大臣、御答弁ありがとうございました。
 時間もありませんので、今回の改正における中小企業対策についてお尋ねをいたします。
 これまでの認定制度の利用実績を見ると、中小企業は約四分の一にとどまっているのが実情でありまして、今回の改正では、認定されても大企業と中小企業とではメリットに差があって、法制度そのものが大企業向けのものであるとの指摘を受けて、新たな中小企業への支援体制整備の一環として中小企業再生支援協議会を設置する旨規定されているところでありますけれども、どのような目的でどのような活動をされるのか、お伺いをしておきたいと思います。
桜田大臣政務官 お答えさせていただきます。
 中小企業再生支援協議会は、多数かつ多様で地域性も強いといった中小企業の特性を踏まえ、関係者の幅広い協力を得つつ中小企業の再生支援を行うことを目的としておりますので、それぞれの地域における体制を整備するものであります。
 具体的には、協議会には再生についての知識や経験を有する専門家を配置し、再生に取り組む中小企業に対する指導助言や再生計画の作成支援等の事業を行いますが、その事業の実施に当たっては、地域ごとの特性や個々の中小企業の状況に応じまして、きめ細かく指導していくつもりでございます。
 これまで、既に二十五の都道府県で協議会が設置されているところでございます。三月十七日までに百三十五件の相談が寄せられております。例えば、この前もお話ししたんですが、北海道では二月十九日から三月十七日にかけて三十六件の相談、宮城県では三月三日から三月十七日までに三十二件の相談が既に寄せられているところでございます。
 いずれにいたしましても、地域において再生に取り組む個々の中小企業が十分な支援を受けられるよう、最大限努力してまいるつもりでございます。
 以上でございます。
工藤委員 まだまだ通告した質問案件が残っておりますけれども、もうほとんど時間がありませんので、この際、通告した質問じゃなくて、両大臣に一言お尋ねをしてみたいと思うのであります。
 小泉総理就任当時、先ほど申し上げましたように、二、三年国民に我慢してもらえばと言ったわけですけれども、一体、この閣内にお二人とも、両大臣おられて、あとどのくらいで、ああ、いい世の中になったな、国民なり中小零細企業の方々がそう思えるような、そういう状態になるというふうにお考えか。これには、両大臣、いろいろな手を打って、そしてこういうようなことをやっていけば本当に有効な手だてだというようなことを、もう御自分たちがそれを考えてやっていかれるわけですから、そういう中で、あとどのくらいでそういうような社会になるというふうにお考えか。この際、時間も短いものですから、一言ずつ御答弁をいただいて、終わらせていただきたいと思います。
平沼国務大臣 先ほど来答弁をさせていただきまして、今の経済状況は非常に厳しいわけであります。今、小泉内閣がとにかく全力を傾注してやっておりますのは、何とか不良債権の処理をしていかなければいけない、こういう形で、これは、この二年以内にまず国の抱えている膨大なそういう不良債権、債務の問題を片づけよう、こういうことであります。今ある膨大な金融サイドにある、あるいは企業サイドにあるものを約半分にしていこう、こういうことであります。ですから、それに向かってこの両法案も今お願いをしている、こういうことでございます。
 さらに、もう少し先の見通しとしては、やはり国のプライマリーバランスというものを、これも若干軌道修正をいたしましたけれども、限りなく二〇一〇年の初頭までにプライマリーバランスをきちっとしよう、こういう形で、すべて今、政策をそれに収れんしてやっているわけでございまして、何年ということはここでは明確には申し上げることはできませんけれども、私どもは、こういったことを着実にやっていけば、少なくとも二〇一〇年ぐらいまでには、国民の皆様方にも、これで随分変わってきたな、こういう状況が出てくると思っています。
 そして、まずその第一段階で、この二年以内にこの国の抱えている大きな、膨大な不良債権の問題をしっかりと処理をしていけば、私はめどが見えてくると。それに並行して、私ども経済産業省としては、中小企業対策も含めて万全の手だてをしていく、そういう形で経済を活性化していく、こういうことであれば大分状況がよくなってくる、そんなふうに思っております。
谷垣国務大臣 大変大きなお問いかけでございますので、もう平沼大臣につけ加えることはないんですが、私自身の職責からいいますと、二年以内に不良債権処理をする、それの裏表の関係にあります過剰債務を何とか処理して、気息えんえんとあえいでいる企業を救っていきたい、成果を出したいということがございます。
 そして、平沼大臣がおっしゃったように、二〇一〇年初頭にはプライマリーバランスを回復していくというのが大きな目標でございますが、それとあわせまして、我々の社会は人口減少に入っていく、あるいは冷戦終結後、大きな、かつてない競争の中に巻き込まれて、その中でデフレの傾向もある、そういう中に耐えていく体質をつくっていくという大きな課題がやはりあると思います。
 これは、一年二年でそういうようなことが完璧にできるとは思いませんが、不良債権処理を進めていくことによって、そういうものに向かっていく体力をつくっていくということではないかと思います。
工藤委員 ありがとうございました。
 以上で終わります。
阪上委員長代理 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
阪上委員長代理 速記、どうぞ起こしてください。
 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 法案に入る前に、一、二問、対イラク戦争計画について両大臣に御質問をしたいと思います。
 もう御承知のとおり、ブッシュ大統領が十七日の午後八時の全米向けの演説で、イラクのフセイン大統領が四十八時間以内に亡命することを求めて、これに従わない限り軍事攻撃を開始するという最後通告を行いました。これに対して、その戦争計画を支持すると小泉首相が述べたわけであります。
 私は、ブッシュ大統領の戦争計画というのは、国連安保理の支持もなく、国連憲章等、国際法に根拠を持たない無法な先制攻撃そのものだと率直に思います。小泉首相がこの武力行使を支持するということは、やはりアメリカ追随の姿勢を鮮明にした、そういう点で厳しく批判をしたいと思っております。
 そういう点で、平沼大臣、谷垣大臣、このアメリカの対イラク戦争計画、武力行使を同じように支持するのか、そうであるならばなぜなのか、その点をお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 私は、今ぎりぎりの段階でございますけれども、ぎりぎりまで平和を求めての行動は必要だ、こういうふうに思っております。小泉内閣の一員として、イラク側が協力をしない場合には、私も武力行使はやむを得ないと思っています。
 それは、過去十二年にわたって、イラク側は国連決議に背いて何ら協力もしてこなかった、しかも大量破壊兵器等も秘匿をしている。そういうことを考えれば、ぎりぎりのところまで私は努力はしなきゃいかぬと思っておりますけれども、そういう協力が得られないのであれば、非常に残念ですけれども、武力行使もやむを得ない、私はそのように思っているところでございます。
谷垣国務大臣 平沼大臣と全く同旨でございまして、平沼大臣の上にさらに加えることもないと思います。閣内の一員として、総理と同じ考えを持っております。
塩川(鉄)委員 国連のアナン事務総長は、このアメリカの武力行使、米英の武力行使について、国連憲章違反だという指摘をしております。私、そういう点でも、国連で支持を得られなかった主張を直ちに支持するような今の小泉政権の姿勢そのものが問われている、そのことを率直に問わざるを得ません。
 同じ支持、実際戦争計画に参加するイギリスにおきましては、与党の院内総務が辞任をするですとか、国務大臣や政務次官が辞任をする、そういう形で政治家としての姿勢を明らかにする、そういうことがあるわけですけれども、高市副大臣は辞任なさる御決意はございませんか。
高市副大臣 なぜ私が辞任しなきゃいけないのかよくわかりませんが、私自身は、小泉総理が御意見を表明される前から、私はイラク攻撃には賛成の立場でございます。
塩川(鉄)委員 道理のない無法な戦争計画そのものを直ちに中止をすべきだ、そのために全力を挙げていきたい、これ自身、私の決意であります。
 その上で、きょうの法案に入っていきます。
 前回、産業再生法に関して、雇用への配慮の問題についてお聞きしました。最後の私の質問で、営業譲渡の場合などに労働関係の権利が継承されることが保障されなければ、一方的な企業組織再編には待ったをかけるというのが筋ではないかとお聞きしましたら、平沼大臣は、産業再生法の中にある労働問題には十分配慮するという精神を生かして、労働者に対する配慮というものはちゃんとしていかなければならないというふうに答弁をされておられます。これを踏まえてお聞きしたいと思うわけです。
 前回の少しおさらいになりますけれども、九九年の産業再生法が成立をした際に衆議院の商工委員会でつけられました附帯決議の中で、雇用への配慮ということで盛り込まれました。それを踏まえて、会社分割法、それとセットの雇用契約承継法、その中において分割についての法的な対応を行った。合併については現行法で対応する、ただ営業譲渡については引き続き検討するということで、営業譲渡について厚生労働省内に研究会をつくり、この一年数カ月で議論をしてきたわけです。
 しかし、その結論、昨年の八月に出た結論では、法的な措置は必要がないという結論だったわけですが、ただ、その際にも、円滑に企業組織再編が行われるためには労働関係への配慮が必要だから、企業がとるべき指針、ガイドラインを策定する、せめてガイドラインはつくるということを研究会では報告のまとめとして上げていたわけですね。
 ところが、前回も厚生労働省に聞いたら、その昨年八月に言った報告の指針をつくれということも守っていないし、昨年十一月の法務委員会の議論でも、その指針をつくるための研究会を立ち上げるということもサボっていたということがはっきりしたわけです。企業組織再編の重要度が大いに高まっているときですから、労働者の権利保護にかかわる、営業譲渡にかかわるような指針、ガイドラインぐらいせめてつくるべきじゃないかということについて、やはり平沼大臣の方からも直ちに物を言っていただきたいと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。
    〔阪上委員長代理退席、谷畑委員長代理着席〕
平沼国務大臣 私も、前回の塩川先生の質疑を聞いておりました。私からも、会社分割の場合に関しては、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律により承継の円滑化のための所要の措置を講じている、こういうことも申し上げましたし、法律の中に労働者のことをよく配慮しろということも含まれている、こういうことを申し上げました。
 厚生労働省からもあのとき答弁があって、検討しているということでございますけれども、今御指摘の点、よく厚生労働省にも私からもこの問題を提起していかなければならない、このように思っています。
塩川(鉄)委員 産業再生法でも営業譲渡に係る商法の特例が設けられておりますし、営業譲渡をやりやすくする規定というのはもともとの仕組みからしてもあるわけですけれども、なぜ私が営業譲渡を強調するか。今これが労働問題での大きな焦点になっているからだ、そのことはやはり大いに問いただしていくことが必要だというふうに思うからです。
 実際に現場ではどんなことがあるか。一つ御紹介したいのですが、千葉県我孫子市にありますしにせの工作機械メーカーである日立精機、ここが昨年の八月十九日に民事再生手続の申し立てをしました。この日立精機は、昨年九月に、事実上のすべての営業を奈良県にあります工作機械メーカーの森精機に営業譲渡をしております。事実上、会社ごと森精機に売り渡したという形になっているわけです。
 会社ごと森精機に売り渡したんだから、当然労働者の雇用もすべて継承したのかと思いましたら、そうではなくて、森精機の方は、営業譲渡に当たって雇用は不継続、継続しないとしたために、実際には、営業譲渡に際して九百人以上の従業員全員が一度解雇となりました。本来でしたら、やはり営業を譲り受けた森精機が雇用に対しても全員を受けとめる、そういう責任を果たすべきですけれども、そうはならなかった。
 その際、九百人に対して、再就職の希望者が六百十人いらっしゃった。この人たち全員と面接をしたんですが、実際には四百二十人しか再雇用しておりません。ですから、解雇された九百人の半分しか実際には雇用しなかったわけです。また、再雇用を希望した人の三分の二しか雇用されなかった。
 雇用されなかった人がどういう人かというと、五十歳以上でリーダークラスでない人ですとか、五十五歳以上のほとんどの人とか、転勤できない人とか、たとえ若い人であっても事務職の人は除くとかいう形で、森精機の側からいえば、極めて都合のいいつまみ食いをしたという実態があるわけです。
 営業譲渡というのが、本来、営業の中に人があってこその営業のはずなのに、それを除いた形で営業譲渡が行われている。このことが、今、大問題となっているわけです。
 産業再生法の審議とのかかわりでも重要であって、この森精機の社長さんは産構審の新成長政策部会の委員のお一人であって、この改正産業再生法の土台となる議論にも参加をされておられる方です。そういう点で、一月二十九日のこの会議の場でも、森社長の方から、他力再生である経営資源再活用計画のスキームは日立精機を買収した当社にはよく当てはまっている、しかし、労働者の組合対策など運用面は余りうまくいっていないのが実情だと御本人からも述べられているわけです。
 そういう点でも、もし企業組織再編を本当に円滑に進めたいと思うのであれば、労働者が不安なく譲り受け会社に移れるような法的整備にこそ政治が責任を果たすべきじゃないか。産業再生法を使い勝手がいいという形での企業組織再編をやるのであれば、こういった面での雇用面での法的整備をきちっと行うべきじゃないかという点を改めてお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 企業の再編を通じました人材、技術等の経営資源の有効活用というのは、失業の予防と円滑な労働移動等を通じた雇用の安定に資するものだ、このように思っています。
 こうした観点を踏まえまして、産業再生法におきましては、雇用の安定への配慮を法目的に、御承知のように明記をさせていただいております。事業再構築計画の認定に当たりましては、従業員の地位を不当に害するものではないことを要件にしまして、労使間で十分な話し合いがなされているかを確認しているところでございます。
 また、国におきましても、事業再構築等に伴う雇用面への影響を最小限にするべく、失業の予防、就職のあっせん、職業訓練の実施といった所要の措置を講ずることとしております。
 産業再生法では、こうした措置によりまして、労働者の雇用の安定を図ることにいたしておりまして、先日の答弁でもちょっと触れさせていただきましたけれども、先日の参考人質疑において連合の成川参考人が答弁されておりましたように、これまで特段問題なく運用されてきたのが実態だ、こういうことです。
 今、日立精機と森精機の具体例をお示しいただきました。非常に残念なケースだと思っておりまして、そういったことがないように、さらに私どもは努めなければならない。
 産業再生法の認定事業者が計画に基づいて会社の分割ですとか合併、営業譲渡を行う場合の労働契約の取り扱いについては、関連する労働法規でございますとか判例法理に従って適切に措置されることは当然だと思っております。
 私どもはこういったことで万全を期していきたいと思っていますけれども、そういう具体例というものはやはり事実としてあった、こういうことですから、こういったことがこれからなるべく起きないように、私どもとしては督励をして努力をしなければいけない、こういうふうに思います。
    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
塩川(鉄)委員 連合の成川参考人の話をされましたけれども、同時に成川参考人は、今営業譲渡をめぐって解雇の実例がふえているということを意見陳述されておられます。ですから、連合としても、営業譲渡にかかわる法的な整備、このことを強く求めておられる。そこをぜひ受けとめていただきたいと思っています。
 この前も御紹介しました企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会報告、営業譲渡についての法的な措置は必要ないと言った研究会報告ですけれども、ここでは、前提となる営業譲渡はどんなものがあるのかということについて、どのように書いてあるかとちょっと紹介をしますと、国内における営業譲渡の現状についてということで、大体三つのパターンの話を説明しているんですね。
 実際に営業譲渡が行われるのはこういう場合だということで、一つが、譲り渡し、譲渡会社が中核事業に特化するため、当該企業において非中核事業として位置づけられる営業部門を他企業に譲渡するケース。前は、この産業再生法のスキームで考えると、自力再生型の、事業再構築計画型のものであるわけですね。
 二つ目に、グループ内で独立採算制をとることにより、合理化、コスト低減を図るため、あるいは事業環境への迅速な対応を図るため、企業グループ内での組織再編の一環として行うケース。大きな企業の中の、企業内での組織再編、これは持ち株会社化なんかも含めての対応ですけれども、そういう場合の営業譲渡。
 三つ目は、倒産法制を活用する場合も含め、実際に経営難に陥り、自主再建を断念して営業譲渡するケース。これは清算といいますか、という形になってくるわけです。
 そういう点では、事業再生というのと密接にかかわる手段としての営業譲渡は、ここでは二つの場合を想定しているわけですけれども、ここには今回の産業再生法の改正で取り上げられている他力再生型の営業譲渡というのは入っていないんですよ。そういう点で、私は、今回の他力再生型のものを考えましても、もらったポンチ絵などを見ましても、事業部門は好調だけれども、再生ファンドが支援をして、切り出して、これを持ち上げていこうという形の支援策という点については、残念ながら、この研究会報告の営業譲渡検討の形態としてそもそも想定していないものになっているんですよね。
 ですから、そういう点では、産業再生法ができてから、成立してから事を進めるんだという厚生労働省みたいな態度だと、現実にいろいろな問題が進行しての後追いの話でしかないわけですから、私は、やはり縦割りの話ではなくて、一方で企業組織再編についての議論をするのであれば、それとセットに雇用面の法的な整備もきちっと行っていくことが必要になってくるんだと思うんです。
 そういう点で、この研究会報告が他力再生型の営業譲渡についてどのような検討も行っていないわけで、いわば企業にとって都合のいい方ばかりの、これを優先した結果になっているのが現状じゃないのか、こういうことで本当にいいんだろうか。雇用面や、労働側の側面についてきちんと対応することを考えていただきたいと思うんですが。
林政府参考人 厚生労働省の方でお進めになっております研究会の項目は、非常に網羅的でございまして、我々の例えば再活用計画におきましても、例えば本体の企業が倒産をして、その残った部分が営業譲渡をされて新しいところで独自でいく場合、あるいは、先ほどのケースのように、新たに他の事業者の中の一部として進む場合、おのおの、最終的な形、例えば清算する場合には法的整理になりますし、あるいは、もとの企業が生き残っております場合には営業譲渡になりますし、そういった意味では、網羅的なもので、一応含まれているものと承知しております。
塩川(鉄)委員 基本は、もうだめなものはだめという中での支援策の話としてですから、この営業譲渡について研究会報告にまともな論及がされていない、議論もされていないということ自身が問題で、その点でも、私は、企業サイドの都合ばかり優先した結果ではないかなと思うんです。
 そこで、私、こういう点ではやはりEUの取り組みにも大いに学ぶべきだと思います。EUにおいては、事業譲渡に伴う労働者保護指令があります。あらゆる企業再編に労働者の権利義務関係を保護し、企業再編を理由にして解雇してはいけないという規定をEU統合指令で置いているわけです。
 日本においても、こういった解雇規制にこそ大いに学ぶべきではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 今の御指摘のとおり、EUでは、大量解雇や営業譲渡の際の労働者の保護、賃金の確保、労働者への情報提供のあり方等、労使間のルールを定めた各種指令が存在をする、このことは承知をいたしております。
 一方、我が国では、労働者の保護のための基本的なルールを定めている労働基準法、それから労働者の団体交渉や紛争処理のルールを規定している労働組合法等がございまして、そしてまた、解雇につきましては、整理解雇に関する判例法理等が存在するなど、我が国の実情に即した仕組みが構築されてきたもの、このように認識をしております。
 また、実態的にも、労使においては、労働条件等に関する事項についてさまざまな機会を通じて必要な協議等十分な話し合いを行うことによりまして、情報の共有でございますとか意思の疎通あるいは合意形成が図られている、このように認識をしております。したがって、我が国では、労使間の課題については、まずは労使の自主的な取り組みを重視することが必要である、このように考えます。
 いずれにいたしましても、御指摘がございましたけれども、良好な労使関係の構築が極めて私は重要な課題だと思っておりまして、政府としましても、急速な環境変化の中、今後の労使の動向について十分注視をしなければならない、そういうふうに思っているところでございます。
塩川(鉄)委員 ですから、この間、連合にしても全労連にしても、企業組織再編に伴う労働者の保護法制をつくってもらいたいということを言っているわけですから、そういったことを踏まえた対策こそ問われているんだと思うんです。
 お聞きした、ドイツの事例を一つ紹介しようと思うんですが、営業譲渡というのを、何か、人は別にして譲渡ができるような話というのが日本ではまかり通っているわけだけれども、そうじゃないんだという話としてお聞きしたわけです。
 ある小学校の用務員さんが、ある会社に雇われて、一人で学校の清掃の仕事をしていた。その学校が、その清掃業務を別な会社に発注したそうです。別の会社ですから、当然その人は解雇となるわけですが、もともと、清掃という仕事は残ってあるわけですね。ですから、その解雇された方は、自分の仕事はそのまま引き継がれるはずだと裁判を起こした。これは九〇年代の初めですけれども。ドイツの裁判所は、ヨーロッパ全体の問題としてこれを欧州裁判所にかけて、欧州裁判所は、仕事は残っているわけだから労働者の雇用は継続されるとして、次の会社はその一労働者を雇用しなさいという判決を出したわけです。
 ですから、雇用というのは営業の不可分の一部であるということをここでは物語っているわけですね。それについて、大いに議論もあった中で、基本的に、企業再編に伴うあらゆる問題について、雇用と労働条件を引き継ぐ、そういった思想が残り、それが法制度としても生かされている現状にやはり大いに学ぶべきだと思います。
 特に今、今国会に、解雇の原則自由などということがうたわれている労働基準法改悪が上げられている。こういうものが許されないのは当然ということも踏まえて、次の質問に移ります。
 次に、産業再生法のこの三年数カ月の総括にかかわってもう一つお聞きするわけですが、二〇〇一年の四月の省令改正で、産業再生法の認定対象を債権放棄を受けた企業にまで拡大しました。これは、当時、緊急経済対策が出て、その項目の一つとして産業再生法の活用をうたってこのような省令改正になったわけですけれども、こういったように認定対象を債権放棄を受けた企業にまで拡大した理由は何なのか、お聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 現行の産業再生法は、生産性向上等の要件を満たせば事業再構築の取り組みを支援するものでございまして、法律上は債権放棄を受けた場合であっても当然支援することになりますが、昨年三月までは、債権放棄を伴う計画は実際には提出されておりませんでした。
 一昨年の四月の緊急経済対策において、不良債権処理の加速化が決定をされ、その後、債権放棄を伴う計画が提出される蓋然性が高くなったために、債権放棄を伴う計画であっても支援することを明確にした上で、計画が円滑かつ確実に実施されることという法律上の認定要件を具体化いたしまして、計画終了後の目標値といたしまして、有利子負債とキャッシュフローの比率が十倍以内であることを要件とする旨を明らかにして、透明性を確保したところでございます。その後、これは塩川先生御承知だと思いますが、ダイエーなど六件の債権放棄を伴う計画を支援しております。
 しかしながら、その後、過剰債務問題が一層深刻化するとともに、昨年秋の金融再生プログラムにおいて、不良債権処理のさらなる加速化の方針が決定されたところでございまして、今後、不良債権処理の過程において、金融支援を受けた計画の提出が増大するとともに、過剰債務に陥った企業が不幸にして法的整理をせざるを得ない場合も増加することが見込まれておりまして、このため、改正産業再生法ではそういったところも盛り込んだところでございます。
塩川(鉄)委員 生産性向上の要件を満たせばいい、債権放棄を受けた企業も排除をしていないというのは、確かに解釈上はそうだというのは、そのときのこじつけだったというのは、二〇〇一年の三月ぐらいのいろいろな報道などを見ても、随分議論がされている話が紹介をされているわけです。経団連の話としても、債権放棄で生産性を向上させるような企業というのは過当競争を招くんじゃないかという批判の声なんかとしても紹介をされていたわけです。
 一つ紹介しますが、日本経済新聞が二〇〇一年の三月十七日付で、「与党などに金融機関の不良債権処理を促すため産業再生法を活用する案が浮上している。同法により監督官庁が再建計画を認定した企業に対しては債権放棄を認め、透明性の高い処理を進めるという発想だ。」しかし、「経済産業省では「産業再生法はなじまない」と及び腰だ。」経済産業省は、「不良債権扱いで債権放棄が必要な企業は該当しない」「監督官庁には企業の生死の審査能力はない」と報道されていたわけです。
 もともとの産業再生法というのは、やはり、不良債権扱いで債権放棄が必要な企業というのはそもそも想定してない、そういうものだったんじゃないんでしょうか。
平沼国務大臣 今までの産業再生法というのは選択と集中をして企業の活力を高めるために措置をした法律でございまして、そういったことを今想定しているか、想定ということのお話がございましたけれども、私どもはそれを最初からそういった形で想定していたわけではない、そういうことでございまして、あくまでも、既存の産業再生法というのは選択と集中によって企業の活力を高める、こういうことでやらせていただいた法律でございます。
塩川(鉄)委員 といいますのは、その前の三月十六日に平沼大臣が記者会見の場で、記者から、柳澤大臣から産業再生法を活用した不良債権処理に経済産業省に協力要請があるがどう考えるかと問われまして、平沼大臣は、産業再生法を活用した不良債権処理について、「もともとそういう形でつくったものではない」そもそも産業再生法は、民間の不良債権処理に対し政府が主体的に何かやるという形というのはない、「今のスキームではちょっと無理がある」このようにおっしゃっておられます。ですから、当初はそもそも想定していなかった。
 何で、こういう法のそもそものスキームを大幅に変えるようなことを、法改正もやらずに省令改正などというこそくなやり方で対応したのか、お聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 もともと、政府のそういう強権力でやるということは私どもは想定をしていない。ですから、そういう意味では私どもは、そういうことではなじまない、こういうことを申し上げたわけであります。したがいまして、政府が、国が恣意的にそういったことをやるということは、やはり自由主義経済体制ですから、私どもはそういったことはとれない、こういう基本的な考え方で私は当時申し上げた、こういうことであります。
塩川(鉄)委員 恣意的云々というよりも、そもそも、産業再生法のありようが債権放棄組を扱うような仕組みになっていなかったんだというのが九九年のときの議論だったんじゃないんでしょうか。
 といいますのは、九九年七月二十八日、衆議院の商工委員会での我が党の吉井議員の質問に対し、当時の江崎産業政策局長が、事業の再構築というものは、一部の設備廃棄とかはあるが、全体として見れば前向きの取り組みだ、前向きの概念だ。したがいまして、この法案による事業の再構築が進んだ場合に、「それに伴って大量の解雇あるいは大量の失業が生まれるということは想定していない」ですから、失業もふえるじゃないかというのに対して、いや、そんなことはないんです、前向きの企業を応援するんですから、解雇になるのも一部だし、伸びることによってそういう雇用も吸収するんだという意味で言っているわけですよね。前向きの企業を支援する、事業再構築というのは前向きの概念だ、そういう趣旨の答弁を繰り返しているわけです。
 私は、こういう法案審議のやりとりに立ち返っても、債権放棄を受けた企業というのはそもそも産業再生法の対象になり得るものではなかったと思うんですけれども、改めて、いかがですか。
高市副大臣 産業再生法は、企業の体質、特にお荷物の部分も排除しながら、とにかく企業に活力を与えていく、生産性の向上を目指すというものであったことは御了解いただいていると思うんです。その法律の文章を読んでいただく中で、法律的には、それがたとえ債権放棄を受けていようがそうでなかろうが、生産性向上という要件を満たせば、その事業再構築の取り組みを支援する、法的にはそういうものでございますので。
 ただ、去年の三月までは全然、債権放棄を伴う計画というのは実際には提出されておりませんでした。一昨年の四月に緊急経済対策でこの不良債権処理の加速化というのが決定されて、それで改めて明確に、債権放棄を伴う計画というものであっても支援すると。それまでも法理論的にはできたわけですけれども、一昨年そういう形で改めてもう一度明確にしたということでございます。
塩川(鉄)委員 条文上で読めるかどうかというのではなくて、やはり国会での答弁はどうかということを考えるべき、そこにこそ重みがあるんじゃないでしょうか。
 といいますのは、同じ九九年の七月二十七日の、やはり衆議院の商工委員会の吉井議員の質問で、吉井議員が、産業再生法は競争力を強化することがねらいであって、いわば破綻寸前の企業の経営危機を打開する手段として考えているものじゃないと理解していいですねと聞いたわけですね。それに対して江崎産業政策局長は、あくまでも企業の生産性を向上させるということであり、「経営危機、破綻に瀕した企業を救う、そういう趣旨とは違っている」
 今回の省令改正で一番最初に適用された、認定されたところはどこか、ダイエーですよ。ダイエー、経営破綻に瀕したような企業、債権放棄を受けたような企業。明確に国会の答弁に反していることを行っているんじゃないんですか。いかがですか。
平沼国務大臣 先ほど高市副大臣から答弁をさせていただいていますけれども、産業再生法というのは、企業みずからが選択と集中の理念のもと、事業の再構築を進めて、生産性の高い分野に経営資源を重点投入することを国として促進、支援する、そういう趣旨の法律でございまして、私どもとしては、何も危殆に瀕している企業を支援するためにそういう法律をつくったわけではない、これを御理解いただきたいというふうに思います。
塩川(鉄)委員 いや、局長の答弁で実際に、経営危機や破綻に瀕した企業を救うという趣旨とは違っているということを言っているわけですよね。でも、ダイエーというのはそういうものなんじゃないんですか。違うんですか。
平沼国務大臣 ダイエーのことを言われましたけれども、ダイエーは、救済をする目的で私どもは認定をしたわけではない、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
塩川(鉄)委員 私は、やはりそれは実態を見ない話じゃないかなと率直に思います。国会でのそういった議論をわきに置いて、省令改正で対応されたという点でも、国会軽視も甚だしい、そういう事態にあるということを率直に言わざるを得ません。
 それを踏まえて、今回の法改正に向けて、この債権放棄に対応する財務健全化基準を盛り込むことについて、経済産業省としてはどこでそういう議論をされたのか。普通は、法改正の準備をする際には産構審の部会などを使ってやるわけですけれども、そういうのは見てとれないんですけれども、その点、いかがでしょうか。
林政府参考人 お答え申し上げます。
 産業構造審議会のような場ではございませんけれども、関係者の実態のヒアリングも踏まえ、そしていろいろと、先ほど来お話がございました産業再生・雇用対策本部なりとの議論も踏まえて、そこでの議論でオーソライズしていただきながら進めているところでございます。
塩川(鉄)委員 そういう議論の跡が全然見えないわけですよ。これは二〇〇一年四月の省令改正のときもそうだし、今回の法改正についても、この債権放棄を伴う企業の支援策につながる議論というのは全然表に向けて議論がされてこない。
 私、そういうもののきっかけとして、二〇〇一年の四月の緊急経済対策というのはその前のブッシュ・森会談を機にどんと来た話、さらに今回の産業再生法の改正にこういった規定が盛り込まれるというのも、やはり十月のブッシュ・小泉会談と加速策との関係というのは明確にリンクしていると思うんです。
 そういう点でも、不良債権処理策と一体に産業再生法を活用するという点で今日につながっているという意味では、〇一年の四月の省令改正というのはそういう意味での意味があったということが言えるのかなと思うんですけれども、それはやはり、私、この不良債権処理加速策を進める一つのツールとして産業再生法が使われることなんだなと率直に思うわけです。
 そういう点でも、私は、やはり前向きの企業だけじゃなくて後ろ向きの企業も支援をするということになり、いわば、よりリストラを目的とするような計画を支援する方向が鮮明になっているんじゃないか。そういう点でも、ダイエーが債権放棄を受けた企業で初めて認定を受けたわけですけれども、リストラ計画は一万九千人という点では一番多い人員削減の計画に、政府もお墨つきを与えたという点でも大きな問題があるというふうに思います。
 そういう点で、当然、今度の法改正で財務健全化基準の向上を法律上明記するというのは、いわば前向きでなくて後ろ向きの支援というのを一層大きくやっていく、そういうものになるんじゃないかなと思うんですけれども、その点はそれでよろしいでしょうか。
林政府参考人 まず第一に、先ほどお話ございました基準についての考え方でございますけれども、本部での議論を踏まえて、パブリックコメントで、基本的考え方として昨年末に決めさせていただいているとおりでございます。
 その中にも書いてございますけれども、基本的には、有効な資源をできるだけ生かしていくということが基本でございます。高い生産性部門に資源を移していく、それがあくまで基本でございまして、それが確実に実行されるようにということを、現在、過剰債務問題あるいは過剰供給構造問題が大きくなってきておるものでございますから、そういうことも踏まえて、一部手を加えて、それをより確実にできるようにということにしたものでございます。
塩川(鉄)委員 要するに、もう不良債権処理加速策と一体となっているというのが今度の産業再生法ですから、そういう点でも、債権放棄を受けた企業の支援というのは、借金棒引きと一緒にリストラ計画を後押しするという点では、結果として労働者、国民へのツケ回しだ、そう言わざるを得ない、そのことを指摘したいと思います。
 次に、今後の法改正の話として、過剰供給構造の問題をお聞きしたいと思います。
 昨日の連合審査会の場で、自由党の達増議員の質問で、現在どのような分野が過剰供給構造にあると見ているのかという問いかけに対して、平沼大臣は、半導体や建設業や流通業なども過剰供給構造にあると答えておられます。
 半導体分野が過剰供給構造に陥っているというのはどういう状況なのかというのを、まず、簡単で結構ですから御説明いただけますか。
林政府参考人 御説明申し上げます。
 過剰供給構造と申しますのは、あらかじめ業種を決めてというものではございませんで、事業者からの申請を受けて、それを判断していくというものでございます。その際に、基本的には、需給ギャップが長期間において生じているという意味でそれを判断する。具体的には、稼働率の低下にあらわれる場合、あるいは利益率の低下にあらわれる場合、このような二つの場合があろうかと思っております。
 製造業の場合では、それに対応するものとして、機械装置資産回転率というものの低下が一定期間にわたって平均を下回る、あるいは価格や粗利の低下が一定期間にわたって全業種平均を下回るといった現象が見られる、そういうことでございます。また、さらに製造業の場合には、固定費が非常に高いとか、あるいは研究開発費が非常に負担が大きいということで、なかなか短期間にそれを解消できないというような場合がございます。それを客観的データに基づいて判定していくわけでございます。
 半導体でございますけれども、我々が集計しました機械装置資産回転率の統計データということをもとに試算してみますと、半導体製造業を含む電子部品・デバイス製造業というものは、この判定基準に該当いたしております。半導体について、半導体の中でもいろいろございますけれども、例えばDRAMを中心に、世界的なシェアを失って稼働率を低下させている、他方、供給側の産業は変わっていない、あるいはその施設、施設は減少していないというようなことでございます。
 そういった意味で、半導体産業を含む電子部品・デバイス産業全体として、三けた分類で当てはめをしてみますと、それは過剰供給構造に当てはまるということでございますが、現実の適用に当たりましては、もっとより厳密な、より細かい事業分野ごとということで、事業者の方から出していただいて、それに基づいて判断をしていく、そういうことでございます。
平沼国務大臣 きのう達増委員の質疑の中で、私は流通ということも今御指摘のように触れさせていただきました。
 流通についてでございますけれども、消費が低迷をして売り上げが減少して、店舗数や就業者数は減っておりますけれども、逆に、店舗面積はむしろ増加傾向にあるわけでございます。また、地域的に、大型店の新規出店によりまして競争が激しくなった場合もあるわけでございます。こうした事情から、一般的な意味では、流通業というのは店舗が過剰である、あるいは過剰供給構造にあるとも言えると私は承知しておりまして、昨日はそうした趣旨で答弁をいたしました。
 ただし、流通業を統計上の標準産業分類でとらえ、さきの基準に基づいて試算をいたしますと、固定費比率が高くはない、したがって、過剰供給構造を短期的に解消できないとの事由がないために、過剰供給構造には当たらないということにはなると思います。
 実際、法律上の支援により共同で過剰設備の廃棄を行う等の方策をとり得る製造業とは若干趣を異にしておりまして、個々の商圏ごとの店舗立地のよしあしや品ぞろえ、あるいは売り方の巧拙によって成否が決まる面がございまして、単純に、店舗の面積が多いか否か、こういうことで決められないものである、こういうふうに思っております。
 また、さっき局長からも答弁あったと思いますけれども、当省としては、個別業種について逐一、過剰供給構造にある事業分野を指定するなどの措置をとることは現段階では考えておりません。
 以上でございます。
塩川(鉄)委員 そうしますと、過剰供給ではあるが過剰供給構造には当たらないということで答弁を訂正されるということでよろしいですね。
平沼国務大臣 それは、この法律上のということであります。
塩川(鉄)委員 実質過剰供給がある、いわば、大臣もおっしゃられたように、消費が低迷、売り上げが減少という需要サイドの問題がありますし、一方で、店舗面積が増加をしているというのは、八〇年代、九〇年代通じて大変大きな伸びがあるわけです。そういう中に大型店の出店ラッシュというのが大きく影響を与えているという話だと思うんです。そういう点では、需給ギャップが存在するということは大臣としても当然御認識の上での政策をなされるところだと思うんですが。
 私、その点、過剰供給構造という定義の話はおいておいても、過剰供給問題を議論するというのを産業再生法で行うのであれば、では流通分野で政府としてどういう方向を持っているのかというのが見えてこないというのは率直に思うんですね。というのは、店舗面積が増加をしているという供給面の問題でいえば、私は、そこにはやはり九〇年代以降の政府の規制緩和策の影響があると率直に思いますよ。
 例えば、一九九〇年に大店法の運用に係る基本方針という通達が出されて、出店調整期間を一気に短縮するというのは一つの弾みになりましたし、九二年に大店法の一部改正で一種、二種の境界面積、つまりその境を三千平米に引き上げるということも行われましたし、九四年にもやはり規制緩和の通達が出されて、一千平米未満については原則自由化をする。そういう中で、二〇〇〇年六月に大店法廃止で大店立地法の制定、いわば需給調整は行わないということに踏み出していくわけです。
 いわば、制限なく出店もできるし退店もできるということが、今、結果として供給過剰につながっているんじゃないかなということを考えますと、流通業の過剰供給の問題というのは、大店法廃止など一連の規制緩和策によるものであって、政府の打ち出したこういう過剰供給問題に対しての対応策と従来の規制緩和策とそもそも矛盾した施策を行うことになりはしないかということを率直に思うんですが、その点はいかがでしょうか。
平沼国務大臣 累次にいろいろ改変を行ってきたということは、その時々のニーズ、それから地域の要望、いろいろなことがあったと思います。そういう中で、今国の経済が全体的にデフレ基調であって経済が低迷している、そういう中で流通業の問題も起こってきている、こういうふうに思っておりまして、私どもとしては、御指摘の点のようなことは確かに一連の流れの中で現実にある、こういうことは言えると思います。
 しかし、そういう中で、その時々において、いろいろな御要望だとかいろいろなニーズの中でやってきたことでございまして、私どもとしては、今の状況をしっかりとやはり改善をしていく、このことが私は大切なことだというふうに思います。
塩川(鉄)委員 私は、過剰供給の議論をする際に、流通分野において規制緩和策というのはやはり避けて通れない議論じゃないかなと率直に思うんですね。昨年、当委員会に参考人でいらっしゃった福島の商工会議所の会頭さんが、大店法の廃止は失政だったということを率直におっしゃっておられました。
 今、中心市街地の空洞化の問題は、どの都市に行っても大変深刻な問題です。政府が穴埋めするような法律をつくってもそれに間に合わないぐらい撤退のラッシュで、郊外型の大型店がどんどん出てくる。そういう点での、政府としての流通ビジョンというのはそもそも見てとれないような非常にゆがんだ状況に率直に言ってあるんじゃないか。商店街の疲弊の問題についても、現状それを食いとめることができない。
 私、そういうのを考えた際に、やはり七〇年代、八〇年代に同様に中心市街地の空洞化を招いたようなヨーロッパの事例に大いに学ぶべきときだ、そのように思います。そういう点でも、フランスなどにおいては大型店の進出についての規制強化策をとってまいりましたし、また、イタリアでも大型店の出店に対して地方自治体が許可制をとっている、こういった形での取り組みがあります。その上に、イギリスにおいても需給調整的な、出店規制ということではありませんけれども、中心市街地、都市の空洞化の防止のために大型店はなるべく、大型店については中心市街地に誘致をするといったような制度もつくり努力をしているということがあるわけですね。
 そういったような政府としての積極的な大型店の出店についてきちんとしたルールを設けていく、そういう対策こそ、過剰供給の議論をするんであれば必要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 消費者の嗜好だとかいろいろ変わってきたということも背景にあったと思います。
 それから、今やっておりますのが、今フランス等の例を出されましたけれども、我が国としても、そういった方向で志向をしているところでございまして、また中心市街地の活性化のためにいろいろな施策もやっていることは事実でございまして、私どもとしては、時代に即した、今非常に大きな問題になっている、そういう点に関しても、やはりフランス型の手法等も取り入れながら今やっている最中でございます。
塩川(鉄)委員 大型店の出店の規制、誘導策という点で大いに学んでいただきたいと率直に思います。
 もう一つ、需給ギャップの問題で言うと、需要面の弱さということが当然問われてくるわけです。やはり、国民の購買力が冷え込んでおりますし、そういう中では需給ギャップが拡大するのも当然なんじゃないか。ですから、需給構造云々の議論の際に、流通分野、これはもう直接国民生活と直結している産業ですから、そういう点でも、国民の購買力を冷やしているような今の現状というのは、需給ギャップが拡大するのも当然じゃないかなと思うんですけれども、大臣の率直の受けとめはいかがでしょうか。
平沼国務大臣 基本的に、御指摘のように需給ギャップがあるということは、残念ながらそのとおりだと思います。それを埋めることがやはり今喫緊の課題でございまして、私どもといたしましては、今、例えば、中心市街地の活性化ですとか、あるいは私どもの地元の岡山なんかもそうですけれども、特にシャッター通りというようなものができてしまっています。
 ですから、そういったことをなくすために、いわゆる相続税に対する承継税制の問題でありますとかあるいは政策減税の中でいわゆる土地の譲渡に関するそういう政策減税もやらせていただいたところでございまして、そういう税制の面ですとかあるいはきめの細かい中心市街地活性化、そういったことも私どもはやっていかなければならないと思っておりますし、また、非常に国民の嗜好というのが多様化しておりますから、そういったことに合わせた施策もやっていかなければならない、そういうふうに思います。
塩川(鉄)委員 需要対策という点でいえば、逆に今の政府がやろうとしているのは社会保障の負担増であり、庶民にとっての増税の仕組み。私たちは、四兆円の負担増の押しつけはやめよう、それこそ一番の需要対策だと思います。これは、企業にとっても、企業の収益の回復の一方で、労働者、従業員の手取り、収入の減退というギャップというのも、同じように需要対策という点で大問題だと思うんですね。
 これは、財務省の法人企業統計で見ても、全産業の売上高、産業再生法ができた九九年とデータのある〇一年との比較をしましても、この間に売り上げは三ポイント減です。その間、企業の経常利益は五ポイント改善をしています。ですから、減収増益という状況になっているわけですね。その間に、いわゆる生み出される企業収益以外の付加価値、この部分についても四ポイント減で、うち人件費は五ポイントの減です。つまり、人件費を中心としたコスト削減分というのが企業の収益に転化をしているような状況というのがここにあらわれているんじゃないか。同じ期間の家計調査を見ても、実収入は四ポイント減っていますし、可処分所得も四ポイント減。消費支出も三ポイント減。
 企業がリストラ増益でも家計はマイナスとなっているわけで、こういった「V字増益 民富まず」と新聞の見出しにあった、こういう指摘というのを率直にどう受けとめていらっしゃるのか、お聞きします。
平沼国務大臣 「民富まず」というV字増益の記事は、二月一日の日経に出ていた記事だと思っております。御指摘の記事については、私も拝見をしたところでございます。
 確かに、企業におきましては、バランスシート調整でありますとか国内の期待成長率の低下から、残念なことですけれども、設備投資は手控えられ、個人においては将来不安がいろいろございますから消費を手控え、いわゆる合成の誤謬が生じている、これは否定し切れない事実だ、このように思っています。
 こうした情勢で企業のリストラを促進していくことは経済情勢をむしろ悪化させるというのが今委員の御主張だ、このように思っているわけであります。不良債権問題や産業活力の低下が株安を通じてマクロ情勢を悪化させていることも事実でありまして、不良債権処理の加速化と、これと一体となった産業再生という構造問題を解決しようとする取り組みは、短期的にはデフレ効果を持つ場合がありますけれども、日本経済再生のためには私どもは避けて通れない課題だ、このように思っています。
 したがって、今回の補正予算のように、需要対策や実効性ある金融政策でマクロ経済運営に遺漏なきを期しつつ、構造的な課題に大胆に取り組んでいかなければなりません。
 御指摘の記事の中にも、結論として、合成の誤謬から抜け出すための処方せんとして、企業のGDPを高めるための新しい技術や事業の創造が欠かせない、こういうふうに述べられているところであります。
 そういう意味では、産業再生法というのは、単なる人切りを促進するのではなくて、有用な人材や技術といった経営資源を円滑に移動をして、強みのある分野で有効活用することを通じて産業活力の再生を目指すものだと思っております。同法では、事業者が新商品の開発ですとか生産等の事業革新に取り組むことを支援しておりまして、まさに記事の指摘する合成の誤謬から抜け出す試みを支援する、そのためのものだ、このように思っております。
塩川(鉄)委員 終わります。
村田委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後二時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時開議
村田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きのうも連合審査で十分ばかりいただいたんですが、きょうも三十分もらっていますが、実は、私も財金の方におりまして、この経産委員会の今回のこの案件の法案について、子細に質疑等々を全部チェックしているわけじゃないので、質問の中身について、私の不勉強で重複する箇所があるやもしれませんが、その点は御寛恕賜りたいというふうに思います。
 それで、まず産業再生法にかかわって、きのうお伺いした点の続きといいますか、何点か伺いたいわけですけれども、いわゆる認定企業が百九十件あったうち、労働組合が組織されていたケースはどうだとか、そうしたことについてきのう伺ったわけです。そのうち、私が伺った中で、とりわけ、対象となる一つの認定企業に労働組合が複数存在する例というのがありますかと。いわば第一組合、第二組合ですね。それが二件あったということでしたので、その二件、要するに、それぞれの組合に対して差別なく、公平、適正に交渉が行われたかどうかという点は、やはりこれは心配なわけです。
 というのは、御承知のように労働組合の、第一組合の方針に反して第二組合をこしらえるというのはよくありがちな話でございますので、そうしたところで不適切なことがなかったかどうか、片一方が泣きを見るということはなかったかどうかということについて、掌握されている範囲で結構ですから、お教え願えますでしょうか。
林政府参考人 お答え申し上げます。
 昨日、経済産業省が認定を行った事業計画のうち、複数の労働組合と話し合いを行った事例が二件と申し上げました。これらの事例につきまして、まず、御承知のように、認定の段階でいずれのケースも複数の労働組合と必要な協議等十分な話し合いが行われたということが確認されたため、認定したわけでございます。
 次に、計画の実施段階、こちらに関しましてでございますけれども、昨日のうちに確認をさせていただきました。いずれのケースにおきましても、複数の労働組合と必要な協議等による話し合いが実際に十分行われており、また従業員の理解と協力を得ながら、実際、計画の実施が慎重に行われている、所属する労働組合によって差別的な取り扱いをやったことはないというような、一般的な労働法理に反するような行為は行われていないということが、具体的な報告としていただいております。
植田委員 それはそれでわかるんですけれども、例えば、その二つの企業、固有名詞まであえてここで聞きませんけれども、その二つは、実際、その事業再構築によっていわば従業員の数は減っているんでしょうか。減っているケースでしょうか、その二件は。
林政府参考人 減る計画のケースでございます。
植田委員 とすると、その減りぐあいも、それぞれの組合の構成員の内訳を見たときに、例えば百人の会社があって、九十人の組合と十人の組合がありました。どっちも五人ずつ間引いていますというのであれば、これはバランスを欠くわけですけれども、そういうことは数値の上から見出せるか、把握しているか把握していないか、そこはどうでしょう。
林政府参考人 個別の話について立ち入ることは、労使の自治の問題もございますけれども、御心配のようなことはないということは確認しております。
植田委員 そこで、この事業再構築によって、これは先日も連合の参考人の方も、重大なトラブル等々が発生している、そういう形跡はないという認識を示しておられました。それで、もちろん経産省さんとしてもそういう御理解で共通しているんだろうと思いますけれども、その事業再構築が今度は下請、孫請にどういう影響を与えているのか。とりあえず当該企業自体は事業再構築によって円滑に動いておるというわけですけれども、その過程の中でそうした下請、孫請が著しく不利な条件に立たされているかどうか、その辺のところは、そもそも追っかけていますか、追っかけていませんか。
高市副大臣 産業再生法の事業再構築計画につきましては、その多くは、増資を行うなどの形で、下請に対して大きな影響があるケースではないために、すべてについて個々に調査をすることは行っておりません。しかしながら、平成十三年の三月十九日に認定いたしました日産のリバイバルプランにつきましては、影響を受けると考えられる下請企業を対象に、アンケート調査を実施いたしております。
 この調査は、日産自動車の直接の取引先と考えられます国内の一次下請企業四百四十三社及び二次下請企業千百八社、合計千五百五十一社を対象に行われたんですが、そのうち七百三十八社から回答をいただいております。そのうち、受注量は変わらないという回答をしたところは六・五%、受注量が増加するという回答は五・一%、受注量が減少するという回答が三九・二%、無回答四九・二%という結果でございました。
 経済産業省といたしましては、とにかく取引先の経営状況によって影響を受けるであろう、特に下請零細企業の支援について幾つかメニューを持っておりまして、非常に力を入れているところでございますので、これからも個々の案件で下請に大きな影響が出るような場合には、この支援メニューを御利用いただくよう努めていきたいと思っております。
植田委員 恐らく政府の考え方からすれば、こういう事業再構築というものをやれば、むしろ下請、孫請にもプラスの作用が働くだろうというふうに理解されているだろうとは思うんですが、理屈だけで言えば。ただ、今の日産の場合のアンケートを見ても、実際、増加をするというのは五・一ポイント、その一方で減少というのは三九・二ポイントということですから、やはり、これは影響を受けるということが現場の声としてはあるだろうということは改めて今のデータではっきりしておりますので、その点については、今副大臣が御答弁された趣旨で、引き続きやはり徹底、充実を図っていくということは進めていただきたいと思います。
 また、法律上、別にそこまで調べぬでもいいというつくりにはなっていますけれども、やはり必要に応じて適切なこうした実態の調査、できればそういうのは悉皆調査の方がいいと思うんですけれども、そうしたことは今後の施策の充実に当たって必要であろうというときは、やはり適切に対処していただきたいなということを改めて要望しておきたいというふうに思います。
 次に、同じくこの再生法で、中小企業に対する支援等々にかかわってお伺いをしたいわけでございますけれども、この産業活力再生特別措置法第二条の二では、「基本指針を定めなければならない。」というふうにあるわけでございますが、今度、ページをめくっていきますと、二十九条、ここが「中小企業再生支援体制の整備」という項でございますけれども、この二十九条において、「中小企業再生支援指針を定めなければならない。」とあるわけでございます。
 一つの法案に二つの基本指針を定めるということになっているんですが、基本指針、いわゆる基本指針の中身によって中小企業再生支援指針のいわば基本的な枠組みというものが規定づけられるのかどうなのか。それとも、それはそれぞれ別個のものというふうに理解していいのか。その点についてはいかがでしょうか。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のございました二十九条の中小企業再生支援指針ですが、これは、中小企業の再生を支援する業務を行う主体でございます、例えば地方公共団体、国あるいは中小企業再生支援協議会、こういったものが支援に当たって共通の考え方あるいは理念を持つという意味から、その相互の連携を図りながらやっていくための基本的な考え方を示すというものでございます。
 具体的に言えば、例えばこういった主体はこういった支援措置を基本的に講ずるべきであるとか、あるいは支援体制について国の支援体制はこういうことだとか、あるいは連携をどのようにとるかとか、あるいは適切なフォローアップをする必要があるかとか、こういった点をこの支援指針に書くというつもりでございます。
 一方、第二条の二の基本指針でございますが、これは主にそれぞれの企業が取り組むべき具体的な事業再構築の中身あるいは各計画の認定基準に関すること、こういったことを定めております。
 したがいまして、はっきり申し上げれば、先生おっしゃいました第二番目の方、つまり両方は別個のもの、ただしそれぞれが相まって日本の産業の活力の再生を図るというところで考えるということだと思っております。
植田委員 わかりました。
 では、この支援指針について何点かお伺いをしたいと思うんですが、この二十九条では、「経済産業大臣は、事業再構築、共同事業再編、経営資源再活用又は経営資源活用新事業その他の事業活動を行うことによりその生産性を向上させようとする中小企業を総合的かつ効果的に支援し」云々ということで、支援指針を定めなければならないとあるわけですが、ここで言う事業再構築から続いてくるところのその他の事業活動と呼ばれるものについては、具体的にどういう中身なんでございますか。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 これは、中小企業の場合にはいろいろな業態、業種ございますので、いろいろな幅広い再生のための中小企業の取り組みを御支援したいというふうに考えております。そのために、この三つ、あるいは経営資源再活用のほかに、その他の事業というものをつけ加えてございます。
 具体的に何かと申し上げれば、例えば例を申し上げますと、新しい商品を開発するとか、あるいは販売手法を見直したり、あるいは販路の拡大によって販売量をふやすとか、あるいは生産管理の見直しをするとか、あるいは在庫管理の見直しをするとか、あるいはITを活用することによるコスト削減とか納期短縮を図るとか、こういったようなことが例えばの例示としては挙げられるというふうに思っております。
植田委員 さて、今、その他の事業活動というのは大体イメージわきました。
 もう一回この二十九条、私のいただいたやつでは三行目の部分なんですけれども、「その生産性を向上させようとする中小企業」という文言があります。この文言は、その前からいきますと、繰り返しになりますが、「経済産業大臣は、事業再構築、共同事業再編、経営資源再活用又は経営資源活用新事業」、そして先ほど伺った「その他の事業活動を行うことによりその生産性を向上させようとする中小企業」と来るので、この「生産性を向上させようとする中小企業」というところに今言ったさまざまな事業再編とか事業再構築とかが係ってくるわけですね。
 とすると、ここの御見解を伺いたいんですけれども、「その生産性を向上させようとする中小企業」とおっしゃるわけですが、これは中小企業の今置かれている厳しい実態、現状のいわば根本問題が、逆に言うと、「生産性を向上」とここに書いてあるわけですから、要するに生産性が低いんだ、生産性が低いことがいわば中小企業の厳しい現状における根本問題なんだという理解をここで反映したというふうに私は読み取っていいんでしょうか。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 生産性の向上というのは、私ども、いろいろな中小企業のさまざまな工夫によりまして付加価値を高めていくということじゃないかと考えております。したがいまして、どうやってその付加価値を高めるか、それはさまざまな取り組みがあると思っております。
 先ほど私申しましたとおり、新商品の開発でありますとか、あるいは技術の変更でありますとか、あるいは販路の拡大でありますとか、あるいは、場合によれば、複数の企業が共同して生産性を上げるという場合もあるでしょうし、そういった幅広いものとして考えております。したがって、生産性が向上する手段として、今言ったようなさまざまな取り組みというものがいろいろあり得るんじゃないかというふうに思っております。
植田委員 ちょっと、今のは私の質問に対してやや論点をずらしていますよね。
 私は、生産性を向上するさまざまな工夫を凝らしたこういうことをやることの可否を今問おうとしているんじゃないんですよ。要するに、ここで書かれている条文、その生産性を向上させるというからには、生産性の低さというものは中小企業の抱えている根本問題としてあるという認識、事実認識があるやなしやということを聞いたんですよ。要するに、こういうことをやるんです、やるんですと、それは個々拾い上げていけば、ええものもあるし悪いものもあるかもしれませんけれども、その可否を今問おうとしているんじゃないんです。
 もう一回お願いします。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 私が先ほど説明いたしました、そういった生産性の向上を図る、そういうことによって企業再生を、再生を図っていくという中小企業がたくさんあるということだと思っております。
植田委員 そういう企業がたくさんある、要するに、生産性を向上せないかぬような中小企業がたくさんあるということは、すなわち生産性が低い中小企業がぎょうさんあるんでしょという認識に立って、それが根本問題だというふうにお考えだと、そう素直におっしゃっていただければいいんですよ。
 それで、とするなら、中小企業の生産性の低さの原因を考えたときに、それは、例えば採算ベースに乗っているような部門と不採算の部門と両方抱えているような一定の規模の企業なら別ですけれども、本当に町家の工場みたいなところなんというのは、例えば製造業でもそうですけれども、要は、幾らコスト削減しようとしても、例えばタオルや靴下、こんなものというのはなかなか差別化するというのは大変な製造部門ですよね。
 奈良だったら、うちの地元、広陵町というところに靴下ぎょうさんこしらえているところありますし、大阪に行けばタオルもありますけれども、では、外国産品、安い産品が入ってきたときに、そうした製品そのものが差別化が困難やと、そういうところは結局、人的コストの比重が高いわけです。人的コストの比重が高いということであれば、圧倒的多数のそうした差別化が困難な中小企業というものの生産性の向上というのは、いわば人減らしをするということに行き着いてしまう場面がたくさんあるんじゃないでしょうか。
 そうすると、言ってみれば、人を間引いた分、生産コストが下がりました、そしてまたそれを下げるための設備投資をする、それに支援するということになってしまいかねませんけれども、では、そういう私のささやかな疑問にはどうお答えしますか。
西川大臣政務官 今何度も申しておりましたけれども、生産性向上、確かに、製品の問題とか生産技術の問題とか、能率をいかに上げるかとか、たくさんありますけれども、そういうことで、人減らしだけじゃない、こういうことに努力をしていきたいと思いますが、問題は、中小企業の再生というテーマはそう簡単なものではないと私どもも受けとめています。やはりマクロ経済がよくなる、こういうことにならないと解決しない問題もありますけれども、ただ、それでは民間だけに任せておいていいのか、こういうことになりますと、国もできるだけ、税制面でもあるいは補助金等においてもできる限りのことをやる、こういうことで進めざるを得ない、当面はそういう考え方であります。
植田委員 今御答弁いただいたその考え方そのものを私自身否定はしません。私が問うているのは、仮に新しい支援指針をつくるのであれば、つくったとしても、この二十九条のここの文言だけでいけば、生産性の向上に収れんされてしまっているじゃないか、収れんされている限りにおいて、トータルな中小企業の支援指針になり得ないんじゃないのかということなんです。その点についてはだれが御答弁いただけますか。
高市副大臣 例えば、さっき植田委員が奈良県のタオルですとか靴下ですとか、そういったことをおっしゃいましたよね。生産性というのは一般に、資本と労働等の単位投入量に対してどの程度の付加価値をつけるかということになりますから、その製品でもう付加価値をつけようがないといったら人減らしになるんじゃないかというのが一番の御懸念の点だと思います。でも、例えば、場合によっては、製品の内容の変更ということもあり得ると思いますね、単位投入量当たりの付加価値をどう高めるかということになりますと。
 では、ストッキングやタオルは全然工夫の余地がないかといいますと、今、はいているだけで暖かいぽかぽかストッキングですとか、それから本当に強い、破れにくいストッキングですとか、タオルにしても、物すごい吸水性の高いタオルですとか、環境対応型の、今のエコ商品的なものも、靴下でもタオルでも出てきておりますので。
 私自身は、もう全くコスト競争力のなくなってきた製品にずっとすがって、何の変更もせずにだらだらとその業を続けていくということによって最終的に人減らしの危機に陥るよりは、早目に、場合によっては製品の変更だったり、そこに付加価値をつけたり、そういうプラスアルファをつけていく、こういうことに対する支援の方が大切だと思っております。最終的に人減らしになるたけ結びつかない工夫、積極的な施策というのが必要だと思っております。
植田委員 というのは、私が心配しておりますのは、今の話はわかるんですよ、事業再構築に加えて、今回、この共同事業再編計画、例えば経営資源再活用計画等々が創設されるわけですが、私は、その個々の政策メニューは別に悪いとは思いません。それぞれ取り出せば、それはそれで工夫を凝らしたものだと思うんです。ただし、こうした枠組みでは、それこそ今言った生産性の低い、その生産性の低さの原因が例えば人的コストにやはりあるというような、いわばそうした中小企業がますますこの枠組みからどんどん乖離してしまうんじゃないのかという心配をするわけです。
 要するに、この制度を活用できるのは、仮に中小企業の範疇に入ったとしても、やはり比較的規模の大きいそうした企業にあらかじめ限定されてしまうのではないか。そうなると、せっかくここでこうした支援体制の整備という枠組みをこしらえている、その意味合いというものにやはり行き着いてくるわけなんですけれども、そういう心配についてはどうお答えいただけますか。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもが今度中小企業の再生支援協議会を創設するという基本的な考え方のバックグラウンドといいますのは、中小企業は、まさに先生おっしゃいましたように、非常に小さな中小企業を初めいろいろな業種、業態がある、あるいはそれが非常に地域性が濃いということでございますので、ただ単に東京にそういう組織が一つあればいいというものではない。こういう意味で、少なくとも各都道府県に一つつくりながら、きめ細やかな、あるいは地域の非常に零細な小さな中小企業を含めてこういった協議会がその御支援をするような体制をつくりたい、そういう趣旨でこの協議会制度というものを考えているわけでございます。
 したがいまして、私どもとしましては、別に中小企業のうちで小さいものを振り落とすというような考え方は持っておりませんで、できるだけきめ細やかに、幅広く中小企業のそういった再生を御支援したいという趣旨からこの協議会制度というものを考えているわけでございます。
植田委員 それは当然そうなんでしょうけれども、協議会の話まで及びましたけれども、要は、結局、それは中小企業向けの施策なのに、わざわざ今答弁で中小企業を排除なんかしていないと、それは当たり前の話でして、要するに、しんどい中小企業の側にとってどれだけ使い勝手のある制度かということが逆に問われるんだよということを私は申し上げているわけなんです。
 それで、ちょっと指針の話に戻りますけれども、二点伺います。
 この中小企業再生支援指針というのはいつ取りまとめる予定でいらっしゃるのか。恐らく法案はこれは成立するんでしょうけれども、その暁に、いつ取りまとめるのかということと、この二十九条の中には、その策定に当たっては、所管大臣と協議する、中小企業政策審議会の意見も聞かなあかんとありますけれども、一番ほんまに必要なのは、現場の中小企業の経営者の方々の意見を聞くことが必要なんじゃないんでしょうか。
 その点、例えばパブリックコメントをするとか、また、本当に地方に出向いていって、だって置かれている状況がそれぞれの地域によって違いますから、地方で公聴会みたいなものでもやるとか、そういう幅広く、当事者を含めた国民の意見を策定に当たっては聴取すべきではないかと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
桜田大臣政務官 お答えさせていただきます。
 中小企業再生支援指針は、本法案が成立次第、速やかに取りまとめの作業に入りたいと考えております。
 中小企業再生支援指針の作成に当たっては、地方公聴会を実施する予定はございませんが、中小企業政策審議会で御議論いただくほか、パブリックコメントを実施し、広く全国の皆様から御意見を伺っていくつもりでございます。
 さらにこうした意見を踏まえつつ、中小企業の再生支援に向けて、実効性ある指針を策定していきたいと思っております。
植田委員 本当だったら、地方でも出向いていって話を聞くぐらいのことをして、この中身を充実させていくという姿勢があってしかるべきだろうと思うんですが、きょうび、パブコメというのは、大体とりあえずやるわけですわ。あのパブコメかて、大体、聞きましたというだけであって、それだけの話でしょう、実際は。聞きましたということであって、言う機会をいただいたというだけの話なんですから、やはり生の話というものも聞く機会、今は予定ないかもしれへんけれども、これから予定してほしいと思うんです。
 ちなみに、仮にそうしたものが予定されなくても、実際にこれはこの法案に書き込まれている中小企業の支援指針なんですが、当面、各都道府県に一個ずつこしらえるというこの中小企業の再生支援協議会、そこがそれぞれの地域の特性に応じた指針を当事者参加のもとでつくっていく、そして、それに基づいて地域経済をどう活性化するんだということを議論していただく。
 先日、予算の分科会で聞いたときも、いわゆる認定支援機関と協議会との関係については大体伺ったわけですけれども、そのときのイメージでするならば、支援協議会というものは、そうした基本的な方向というものをやはり見定めていく、そういう役割を果たすだろうと思うので、実際、それはそれぞれの地域に応じたそうした指針というものを策定させるべきなんじゃないでしょうか。やはり当事者の、現場の声をくみ上げられる場というものもそこで設定されるんじゃないでしょうか。それについてはいかがですか。
桜田大臣政務官 委員のおっしゃるとおりでございます。
 中小企業再生支援協議会は、再生についての知識や経験を有する専門家を配置し、再生に取り組む中小企業に対する指導助言や再生計画の作成支援等の事業を行うこととしております。
 各支援協議会は、このような役割を果たすため、協議会に参加する地域の関係者と十分に協議を行い、地域の実情と特性を踏まえた再生支援に関する方針を定めていくことになります。
 政府としても、協議会の設置趣旨を十分に踏まえ、各地域において、きめ細かな業務が実施できるよう適切な方針の策定を指導していきたいと考えております。
植田委員 時間も迫ってまいりますので、あと一点だけ伺いたいんですけれども、先ほども参考人の方が答弁いただきましたので、少なくとも、この支援協議会は、あくまでも地域経済全体の活性化、そして、あらゆる中小企業、とりわけ支援が必要になる中小企業にとって開かれたものでなければならないことは当然問題意識として共有できるだろうと思いますから、先ほど、一番最初の方の質問に戻れば、いわゆる生産性の向上を分水嶺にして中小企業の選別が行われてはならないということは言うまでもないことだろうと思うんです。
 それで、この認定支援機関が直接的にはいろいろな相談に乗るんだろうと思うわけですけれども、あらあらな方向性は支援協議会が今答弁いただいた形でおまとめになると思うんですけれども、今中小企業の経営を一番圧迫しているのは何なのか。それはやはり貸し渋り、貸しはがしじゃないですか。それをどうするねん、地域社会全体でその問題をどう解決していくんやという、これがやはり一番最初に出てくべき問題意識だろうと私は思うんです。むしろその協議会、いろいろな地域の金融機関や商工会の偉いさんを集めて、ごっついつくりの協議会をこしらえるわけですから、やはりその点を解消するためにこそ存在すべきだろうと。
 だから、金融機関もメンバーに入れている協議会が立ち上がっていることは見たことがあります。そこで、金融機関の融資に対する姿勢を、担保主義から、やはりそれぞれの経営内容やその経営の将来性、そこに着目した、とりわけ地域の金融機関がそうした融資姿勢に転換を図っていく、それを地域社会全体で取り組んでいく、そこにこそ協議会の存在理由が私はあると思うんですけれども、その点は、大臣、最後、締めてください。
平沼国務大臣 植田先生おっしゃるとおりだと思っております。
 中小企業再生支援協議会は、地域の金融機関、そして政府系金融機関も参画をしておりまして、金融面からの支援についても、地域の実態でございますとか特性に応じた再生支援に関する方針の取りまとめを行うことができる、このように考えております。
 具体的には、協議会の事業実施に当たりましては、まず、政府系金融機関は、みずからこれに参画をして、そして金融面から計画策定を支援して、そして関係者の合意が得られた合理的な再生計画については、金融支援で積極的に取り組んでいきたい、このように思っておりますし、また、地域の民間金融機関、これもこういう政府系金融機関の取り組みと同様の視点で積極的に金融面での再生支援を行っていただきたいと思っておりまして、これは私どもから強く要望をしたいと思っております。
 それぞれの協議会においては、このような積極的な金融支援のあり方について関係者で十分協議をし、基本的な方針を出す、我々もその方向で一生懸命サポートをしよう、このように思っております。
植田委員 ちょっと時間が来ましたのでこれで終わりますけれども。
 その他、谷垣大臣にも伺いたいことがあったんですが、質問通告しておきながら、ちょっと時間が足りませんで、中小企業で盛り上がっちゃいまして、済みませんでした。
 以上で終わります。
村田委員長 阿部知子さん。
阿部委員 では、引き続きまして、社会民主党・市民連合の私、阿部知子が残りの三十分のお時間で質問をさせていただきます。
 まず、本委員会が経済産業委員会ということでもあり、また現下の日本の産業構造のある意味で活力ある再生ということを目指した今回のこの法案の大枠が見えますように、平沼経済産業担当大臣にお伺いをいたしたいと思います。
 いただきました厚い、経済産業省がお出しになっております産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案というものに、ざっとというか前だけ、一部だけ目を通しまして、非常に目立つキーワードがございまして、随所にいわゆる過剰供給構造ということの御指摘がございます。そして特に、産業活力再生法というのは、平成十一年の八月にもう既に人的過剰、債務の過剰、設備の過剰と三つの過剰についての取り組みをするんだということで制定されて立法化を見て、そして今回新たに改正が行われますわけですが、この過剰供給構造というような認識を担当大臣としていつから特に強くお持ちになったのか。先ほどの三つの過剰のお話はある程度受けとめた上で、ここに言われるような供給過剰構造という認識がいつから強くなったかということを一点目にお願いします。
平沼国務大臣 阿部先生にお答えさせていただきます。
 さかのぼりますと、産業再生法を制定する前にも、オイルショックに端を発しました重厚長大産業の過剰設備問題、これは一九七〇年代の後半でございましたけれども、こういったことがまず最初にございました。
 そして、今御指摘の、一九九九年、三つの過剰対策の一つとして、過剰設備問題が同法の制定の背景として論じられており、当時から過剰供給構造解消の必要性は認識されていたところでございます。
 しかしながら、一九九九年から数年たちまして、現在デフレ状態が長期化をいたしておりまして、過剰供給構造というのはより広範な業種においてより深刻化して、かつこれが利益率の低下を通じてさらに不良債権問題の遠因ともなっている、こういう認識を持つに至りました。
 こうした状況に対しては、過剰供給構造にある事業分野において、改正法律の中に入れておりますけれども、共同で事業をして設備廃棄や集約化を進めていくことが重要であり、現行の事業再構築計画が、一つは当該事業が当該企業にとって中核的事業であるということでございますとか、企業全体での生産性向上などを要件とするため、当該企業にとって中核的事業でない事業分野の過剰供給構造解消の取り組みというのが対象になりません。また、支援措置についても、登録免許税の軽減というものが中心でございまして、インセンティブの措置としては魅力に乏しい、こういう問題が出てまいりました。
 こういう背景から、今回、改正産業再生法において、御指摘のいろいろの点を盛り込んでやらせていただいた、そういう認識があったということを御理解いただきたいと思います。
阿部委員 私がこの文面から読み取りますところによれば、過剰供給構造というのは、今平沼大臣が御答弁の、例えば一つの企業内の企業部門とかあるいは企業とか、そういう個別のものをターゲットにした意識というよりは、むしろある産業構造、産業分野、ある意味での事業分野、もう少し幅広い認識というかグローバルな認識に立たれて今回のいろいろな御提案があるのではないかなと推察をいたします。
 例えば、この間、我が国でも過剰供給の目立った分野、これまでの審議の中でも委員から御指摘ありましたが、ゼネコン、流通、不動産ですか、そういうものは従来言われておりましたし、きょうも出ておりました。加えてダイエーとかそれから間組の問題も出たかもしれません。そういう、ある業種においてかなり過剰供給構造がこの間はっきりしてきておるのではないか。そういうことを含めて、やはり日本の経済がグローバル化していく中で、国際競争力も高める中で再生していかなきゃいけない。
 私は、今回のいろいろな機構の設立も含めての法案の改正のもくろみが、いわば個別の企業の受け皿にどれだけなれるかという受け身的なものを超えて、もう少し産業構造そのものを時代にマッチした、あるいは先ほどおっしゃっていたような付加価値の高いものに向けて変えていこう。その場合に、ある程度、変えていこうとする側が認識を先行して持つ分野というのがあるように思うのです。
 いただきました資料の中では、国土交通省がお出しになっているゼネコン分野のある意味で再編、再建計画についてはある程度指針的なものが出てございますが、平沼大臣が御担当の分野でいえば、それはどのような御認識にあるのか、あるいは今後どのように提示していき、実行に移していかれようとするのか、そのあたりをお願いいたします。
高市副大臣 この改正法案で想定いたしております、じゃ、過剰供給構造分野というのが何かということでしたら、それは残念ながら現段階で具体的に個別に名称を挙げてこの分野だとお答えできません。と申しますのは、今回の改正法におきましては、事業者による自律的な産業再編の取り組みを促すという観点から、過剰供給構造にある分野の判定において、過去のようにあらかじめ何か業種指定を行うということではなくて、事業者の自律的な申請を受けて判断する手法をとることにいたしました。
 ですから、共同事業再編計画の申請を事業者がするときに、過剰供給構造にあるかどうかについても、申請者が客観的な数値データをもとに証明して、行政の方も客観的に判定するために定量基準に基づく透明性の高い判断基準を定めるということにしております。
 ですから、主務大臣は、計画の認定に際しまして、その都度当該事業分野が過剰供給かどうかというのを判定するということになります。
 しかしながら、製造業に関して、当省において試算をしてみました。これは、昨年末にパブリックコメントに付しました改正産業活力再生特別措置法の基本的な考え方、いわゆる基本指針の原案となりますものの中の過剰供給構造の判定基準案に沿って、機械装置資産回転率などの統計データをもとに試算してみましたら、例えば、半導体などの電子部品・デバイス製造業、それから鉄鋼業、有機化学工業などが該当したところです。
阿部委員 私は、どちらかというとというか、はっきり申しまして、今回の法改正が極めて中途半端に終わっていると思いますし、ある意味では、銀行救済、ゼネコン救済的なものにも走りやすいし、ある意味では、企業の自主性に任せるということにおいて十分機能し得ないで終わるかもしれない。そして、もうちょっと言えば、それが是か非かは論議した方がいいと思いますが、踏み込んでやはり構造改革をしていくようなことが必要な分野について、よりリーダーシップをとってやっていくというやり方も一つのチョイスですが、どれも見えない、どれもあいまいに終始しているように思います。
 いただきました法案の中で、例えば事業分野別指針もお立てになるというようなことが法律案の要綱の第三のところで述べられておりますし、やっていくうちにどうにかなるかしらんというふうなお考えなのかもしれませんが、むしろ現状認識としては、やはり活力を高めるべき分野は高め、それに伴ういろいろな雇用の問題、セーフティーネットの問題をしっかり保証しながら乗り切っていかないと、この時代の我が国の産業というのは非常にきついところに位置しておるのではないかなと私は認識します。
 きょう全部の審議を聞けるわけではないので、断片的にお伺いしながら、やはり極めて不透明な認識ではないか、今高市副大臣に御答弁いただきましたが、それも私にしてみればあいまいだなというふうに受けとめるわけです。
 そこで、実際の産業再生機構の問題に入らせていただきますが、ここにおいても私はそういう不透明感を払拭できませんし、むしろ、この機構が本当に働いていくために、この場がきちんとした確認をできる場であればと思いますので、そういう観点でお伺いいたします。
 まず、これもいただきました資料に余り明確には書かれておりませんが、チャートフローをつくりますと、やはり入り口は事前相談、企業とメーンバンクが産業機構に相談を持っていく、事前に来た相談をチェックするというか、それが産業再生委員会にかけられるものか否かのチェックのところが、やはり一番入り口がポイント、初期作動がポイントだと思いますが、この事前相談と言われる分野に、平岡委員も御質疑かと思いますが、具体的にどのようなマンパワー、どのようなスキルを持った人たちを添えて、この事前相談部分を担おうとしておられるのか、これは谷垣大臣にお願いいたします。
谷垣国務大臣 事前相談がどういう意味を持ってくるかは、その場合場合で違ってくると思いますが、事後の手続がスムーズに流れていくためには、しっかり事前相談をしておくということが私はやはり必要なんだろうと思うんですね。
 そうしますと、そのマンパワーをどうするのかということに当然なってくるわけですが、これは、十分に審査を行うためには、事業再生やこの関連の分野に専門的な知識を持つ方をリクルートしてこなければなりません。現在も自薦他薦で事務局の方に来ていただいている、手を挙げていただいている方はあるんですが、しかし、これは具体的には、法案を通していただいて株式会社を立ち上げるまでの間に、その設立準備の段階に人材をリクルートしてこなければならないだろうと思います。
 そして、人材をリクルートしてまいりますと、案件ごとに担当チームをつくるということになります。七、八人というような感じで具体的なプロジェクトを担当していただくわけですが、その人員の規模は、今七、八人と申しましたけれども、案件ごとにやはり規模は弾力的に決めていかなければなりませんので、現時点で確たることは申し上げにくいんですが、七、八人でおおよそ十組ぐらいというようなことを現時点では想定しておりますので、そのほか管理機能も加えると、立ち上がりのときには数十人から百人程度の規模になるのではないかということでございます。
 それで、今のお尋ねの趣旨に入っていたのかと思いますが、要するに、経験があり、能力のある方に来ていただかなければ事前相談はうまくいかないということになりますと、果たして経験のある方が日本で得られるのかという問題になってくるわけでございます。一番の悩みは、それが必ずしも日本国内では十分に育っていないということがあるわけですが、しかし、全体の指揮者のような経験を積んでおられた方もかなり出てきております。
 では、具体的には、あとはどういう人材かということになりますと、税務であるとか会計経理であるとか、あるいは法律であるとか、いろいろなその知識、経験が必要となってくるわけでありますから、そういう個別のことで経験を持った方は、具体的にその事業再生をやったかどうかは別としまして、そういう経験を持った方はたくさんおられますから、私は、機構がそういう方に、いわばオン・ザ・ジョブ・トレーニングといいますか、そういうものをしながら養成していくということになるのかな、こういうふうに思います。
 これは、こういう分野では先進国であると言われておりますアメリカでも例を聞きますと、やはりRTCができましたころには必ずしも十分な人材がいなかったけれども、RTCが作業をしていく中でそういう方々が育ってきたというふうにも聞いておりますので、日本でもそういうことを視野に入れなければならないと思っているわけでございます。
阿部委員 今、谷垣大臣のお話の中にも出ましたけれども、企業再生等ではアメリカは日本よりもある意味で歴史と実績があり、そこでRTC等々でも、企業再生にかかわるためのそれなりの人材はオン・ザ・ジョブ・トレーニングをやりながらしか育ってこなかったということでもあろうかと思います。
 だがしかしでございます。一方で、ここで、例えば銀行と企業がここの事前相談に持ち込むときに、一番情報量が多いのは融資にかかわっているメーンバンクであったりするわけですから、このことを本当に公平で、公正で、将来的な再生の展望も含めてフェアに見切るだけの目をオン・ザ・ジョブ・トレーニングでやり切れるかどうか、これも本当に実は悩ましいところだと私も思います。
 私がきょうこの場の質問を差しかえさせていただいた一つの大きな理由が、私は財務金融委員会で、去年の通常国会で、RCCの機能の、いわゆる産業再生機能をここに付加いたしましょうという法案の改正をいたしましたときにも実は同じ質問をさせていただきましたけれども、従来であれば、銀行の中にまだ少なくとも、全日本を見ても少ないけれども、まだ企業再生的な能力をお持ちの方が少しはいたかもしれない。RCCが再生機能を立ち上げるときに、じゃ、どこから人材を引きますかといったときも、そのときも、当時は柳澤金融担当大臣でしたが、同じようなお答え、これから鋭意努めていきますということではありました。
 何度も申しますが、ここがしっかりしないと、実務がしっかりしないと、先ほど、産業再生委員会で委員長が互選で決まるのになぜ決まっているかという質疑もありましたが、そこに上げられる情報自身がやはり確かでないと、どんな名委員長が来ても、その先が非常に困ることになると思うんです。
 ここまで私の見解を述べました上で、きょうは財務金融の方から副大臣が来ていただいていますので、RCCの経験と実績等を踏まえたお話を質疑させていただいた後、もう一度谷垣大臣にもお願いいたしますので、伊藤副大臣にお願いしたいと思います。
 先ほど御紹介いたしましたように、RCCが従来の回収機能だけでなくて産業再生機能を付加しようということで、去年、通常国会で審議されましたが、その実績というのは現段階でどのようになっておりますでしょうか。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 先生御指摘のように、RCCにおける企業再生につきましては、十三年六月のいわゆる骨太の方針におきまして、企業再生本部というものを設置させていただいて、企業の再生に積極的に取り組んできているところであります。
 この本部を設置して、今日まで、本年一月末まででございますが、その結果として、百二件企業再生手続を実施いたしておりますし、また、現在約百三十件の候補案件についてその再生可能性を検討しているというところでございます。
阿部委員 それを担われます人材がどのくらいおいでかということと、その方々のおのおののキャリアについて、もし御答弁いただければお願いします。
伊藤副大臣 この再生本部で再生に携わっている人間が大体二百四十名ございます。民間金融機関から出向されている方もおられますし、また、RCCの中で実務を経験して、そして再生業務に携わっておられる方もおられるわけであります。
阿部委員 恐縮です。ちょっと聞き漏らしましたが、出向されているということは、原籍はどこか民間企業におありで出向していられるんでしょうか。今そのように聞こえたので、ちょっと確認です。お願いします。
伊藤副大臣 民間金融機関から派遣されている方もおられます。ですから、そういう意味では原籍が金融機関にあるという方もおられます。
阿部委員 そのあたりが私も透明性とか公平性とか案じますところで、もちろんそういうノウハウをお持ちの方が今までは銀行等々しかおられないということもありますけれども、余りに実際の実務サイドがそういう部分に偏ってくれば、当然ながら、やはり本当にこの案件はフェアに処理されたかなということが、産業再生機構でも、あるいはRCCでも同じように問題になると思うんです。
 私、今質問予告していなかったので、これは後ほどで結構でありますが、現在、RCCの二百四十名のうち、銀行に原籍がおありの方がどれくらいおられるか。それから、他の企業とおっしゃいましたが、企業名までは結構ですから、他の企業におありの方がどれくらいかということもお答えいただけますか。
伊藤副大臣 今お話をいただきましたので、手元でちょっと数字を持ち合わせていないものですから、できる範囲内で調べまして、そして先生の方に後ほどでもお許しいただければ御報告をさせていただければと思います。
阿部委員 これは、何度も申しますが、産業再生機構をおつくりになるときにも同じ問題が私はあると思いますので、透明性、それからその方たちの本当に偏りのない業務がどうやって保証されるかということで、御検討をいただきたいと思います。
谷垣国務大臣 阿部委員が心配されますとおり、今まで何らかの意味で企業再生なりそういうものに実績を持ってきた方に産業再生機構に来ていただいて働いていただこうと思うと、何らかのところに、今まで一緒に仕事をしたとか業務上のつながりがあったとかいう方を除いてしまいますと、恐らくだれもいなくなってしまうということになるんだろうと思います。ですから、委員のおっしゃるように、果たしてそこで例えば機密がきちっと守られるのだろうかとか、あるいはそこに情実が働かないだろうかとかいう御心配は当然あると思います。
 それで、一つの解決は、今もちょっとお口にされましたが、透明性ということになるわけなんですが、この透明性の方は実は難しい問題もございまして、例えば、先ほどおっしゃった事前相談のうちに、その事前相談をされたことを、それで、どうもこれはうちで引き受けるにはまずいなというような結論を出したことが仮に外に漏れますと、あそこは産業再生機構でも引き受けなかったという風評になって、そのこと自体がその企業の生命を奪うことにもなりかねない。したがって、透明性といっても、特に事前相談の段階は、私は恐らく、厳秘といいますか、秘密保持が非常に要される段階ではないかと思います。
 したがいまして、公開性もどこまでできるかというのはいろいろな局面において十分検討する必要はございますけれども、他方、内部におけるコンプライアンス体制と申しますか、それぞれどういう守秘義務を契約上課すかとか、そういうようなことも十分に検討して、今のような御心配が払拭されるような手だてを講じなければならないと思っております。
阿部委員 日本の社会はまだまだ人脈社会でございますし、その意味で、国民が今一番この産業再生機構ができたとしても案じているのは、銀行サイドの一方的な情報の操作、あるいは銀行救済のためになりはすまいかという本当に平易な疑問ですが、私は当たっていると思うんですね。それからもう一つは、ゼネコン救済あるいは問題企業の救済になりはしまいか。その辺を、きちんとわかりやすい形で公平性、公正性が保たれるように、ですから、それは今後ぜひとも御尽力をいただきたいと思います。
 最後に、もう一点お願いいたします。
 もう一つ国民並びに事業者、あるいは企業を自分がやっていた場合に案じられるのは、例えば自分の企業がうまく立ち行かないときに、産業再生機構の方で受けてもらえれば私はマル。これが、ここで受け入れられないでRCCの方に行き、RCCの方でも再生機能を持ちながら、でも、RCCに来るのは二番手、三番手、どちらかというとだめ企業というふうに、簡単に言って恐縮ですが、そういうすみ分けが行われた場合に、逆に、今一日で要管理先債権が破綻懸念先になったりする、株価もこんな時代ですから、必ずしも要管理先が再生機構、破綻懸念先がRCCと言っていたって、ぱかっと割れるわけではない。そうすると、産業再生機構での振り分けが、ある種、企業にとって再生に絶望感を抱くようなことになりはすまいか。
 そこで、どうやって連携、すみ分けていかれるのか、おのおのの大臣から、御見識がおありでしたらお願いいたします。
谷垣国務大臣 御見識というほどのものはございませんが、RCCと産業再生機構というのは、今御指摘のように、債権回収を本来のねらいとするのか、あるいは再生をねらいとするのかという目的の立て方の違いがございます。
 しかしながら、これは伊藤副大臣に言っていただいた方がいいのかもしれませんが、RCCの方も、先ほど私は浜の真砂の中から真珠を探すというような表現で申し上げましたけれども、再生事例を幾つか積み重ねてこられまして、今のような、委員のような懸念をおっしゃると、多分鬼追さんは憤然として我々の努力を否定するのかとおっしゃるぐらい苦労をされたんだと思います。
 それで、私は、産業再生機構というのは、主としていろいろな債権者の調整が難しくてなかなかできないようなものを取り上げるということを中心としておりますので、RCCには、再建可能でありながら、必ずしもそういうものを要さないものが行く、RCCに売却されるということも十分あり得るわけでございまして、そういう場合にRCCで事業再生に取り組むということは私は大変大事なことだと思います。
 いずれにせよ、先ほどおっしゃったような形での選別が生じると考えているわけでもありませんし、また生じてもいかぬのだと思います。よい意味で切磋琢磨しながら、産業再生あるいは不良債権処理という役割を果たしていく必要があるのではないかと考えております。
伊藤副大臣 出世させていただきまして、大臣ではなくて大変お許しをいただきたいと思うんですが、今谷垣大臣からもお話がございましたように、再生機構の場合にはその再生可能性というものを先行して考えていくそういう組織であり、RCCの場合にはやはり債権の買い取りというものを先行させていく組織でありますので、そういう意味では、それぞれの性格が違うんだと思うんです。
 特にRCCの場合には、原則として破綻懸念先以下の債権を買い取っていくわけでありますし、またそれに当たっては、再生の可能性の可否を問わずに債権の買い取りをさせていただく。しかしその中で再生の可能性があれば、それについて積極的に取り組んでいく。また、再生の計画がなくても、その中に再生可能性があれば、RCCとしてはその可能性を追求していくために一生懸命取り組んでいくということで、現在、人員も金融再生プログラムを踏まえて増員をし体制を整備し、また再生機能そのものを強化していく。そういう中で取り組みをさせていただいておりますので、それぞれの持ち味というものを十分に生かしながら、連携をして、そして総体的に再生という流れが強く打ち出されていくようにしていきたいというふうに考えているところでございます。
阿部委員 再生という流れが強く打ち出されるのがいいことはもちろんなわけですし、それから、現実にRCCも、先ほどおっしゃられたように、百二件既に処理し、百三十件ウエーティングだということで、鋭意努力中なわけです。
 私は、先ほどの谷垣大臣の御答弁を伺いながら、何だか、それだけのことなら産業再生機構は、実はメーンバンクがもっとしっかりして、昔はメーンバンクが振り分けて、メーンバンク以外の仕切りをしておった、銀行に体力があった、そのことが実は今と変わることであったのではないかという印象を強く持ちましたし、屋上屋を重ねるというふうにも今回の改正が見受けられます。
 我が党の態度決定は後ほど申しますが、幾つかの不透明部分を残し、なおかつ、銀行が本来持つべき機能ということをどう考えるかということにおいても、まだまだ問題があると私は思っておりまして、そうした意見を表明させていただいて、質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
村田委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
村田委員長 この際、ただいま議題となっております各案中、内閣提出、株式会社産業再生機構法案に対し、谷畑孝君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の四派共同提案に係る修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。鈴木康友君。
    ―――――――――――――
 株式会社産業再生機構法案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
鈴木(康)委員 ただいま議題となりました株式会社産業再生機構法案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 第一に、株式会社産業再生機構は、雇用の安定等に配慮しつつ、我が国の産業の再生を図るとともに、金融機関等の不良債権の処理の促進による信用秩序の維持を図ることとしております。
 第二に、機構は、再生支援をするかどうかを決定するに当たっては、再生支援の申し込みをした事業者における事業再生計画についての労働者との協議の状況等に配慮しなければならないこととしております。
 第三に、機構は、再生支援の申し込みをした事業者が中小規模の事業者である場合において再生支援をするかどうかを決定するに当たっては、当該事業者の企業規模を理由として不利益な取り扱いをしてはならないこととしております。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
村田委員長 次に、内閣提出、産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案に対し、谷畑孝君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の四派共同提案に係る修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。阪上善秀君。
    ―――――――――――――
 産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
阪上委員 ただいま議題となりました産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 第一は、この法律の施行期日を「公布の日」に改めるものとすることであります。
 第二は、この法律の施行の日から起算して三月を経過する日までの間にこの法律による改正後の産業活力再生特別措置法の規定により提出する事業再構築計画、共同事業再編計画、経営資源再活用計画及び経営資源活用新事業計画には、平成十五年四月一日からこの法律の施行の日の前日までに実施された事業活動に関する事項を記載することができるものとすることであります。
 第三は、この法律の施行期日の修正に伴い、租税特別措置法について、所要の整備を行うものとすることであります。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
村田委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより内閣提出、株式会社産業再生機構法案及びこれに対する修正案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案の各案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。藤木洋子さん。
藤木委員 私は、日本共産党を代表して、産業再生機構法案及び関係整備法案並びに産業再生法改正案に対する反対討論を行います。
 産業再生機構法案と関係整備法案に反対する理由の第一は、産業再生機構が、過剰債務企業に対する銀行の債権を政府保証の資金で買い取ることにより、本来銀行が負うべき企業再生のリスクを肩がわりし、最終的に損失が出れば公的資金で穴埋めする仕組みになっているからです。
 第二に、不良債権処理加速策の一環として打ち出された産業再生機構は、銀行に対して過剰債務企業の選別、切り捨てを迫るものだからです。産業再生どころか産業破壊になりかねないものです。
 第三に、産業再生機構が再生支援する企業においても強力なリストラが推進され、ここでも労働者、中小企業に犠牲が押しつけられることになるからです。
 なお、自民、民主、公明、保守新党四会派提出の修正案は、以上に指摘した問題点を解決するものではなく、賛成できません。
 さらに、産業再生法改正案に反対する理由の第一は、企業のリストラ計画を政府が認定、支援する事業再構築計画の制度を延長するものだからです。産業再生法施行以来三年半近くの間に、七万人以上の人減らし、リストラ計画が認定され、その支援のために五百億円以上も減税されてきました。このような制度の延長など、認めることはできません。
 第二に、共同事業再編計画を新設し、リストラをさらに大規模化し、労働者、下請中小企業の生活と営業の破壊、地域経済の疲弊を加速するものだからです。
 第三に、認定企業に対する優遇税制の対象を、政令で拡大できるようにしたことです。しかも、実際に拡大される対象には、退職金の割り増し部分まで含まれています。企業の税負担を軽減し、人減らしそのものを国が支援することなど、到底許すことはできません。
 なお、自民、民主、公明、保守新党四会派の修正案は、施行日を変更するだけでなく、改正法施行前の段階から認定計画の先取り的実施を容認するものであり、認められません。
 不良債権処理により過剰債務企業を切り捨て、銀行の収益性が改善したとしても、産業再生法を活用したリストラ、人減らしで個々の企業が業績を回復したとしても、失業、倒産が増大したのでは日本経済全体を冷え込ませてしまいます。
 不良債権処理加速策を撤回し、日本経済の主役である中小企業の経営を支え、国内総生産の六割を占める個人消費を温める政策に転換してこそ、経済再生の道も開かれることを改めて強調して、討論を終わります。(拍手)
村田委員長 次に、大島令子さん。
大島(令)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表しまして、株式会社産業再生機構法案、同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案に対し、反対の立場で討論をさせていただきます。
 景気の低迷は、雇用不安と相まって悪循環を呼び、国民生活に重くのしかかっています。今回提出された三法案は、果たしてこうした現状の傘になるのでしょうか。
 株式会社産業再生機構関連法案は、「経済情勢の変化に我が国の産業及び金融システムが十分対応できたものとなっていない」として、過剰供給構造に的を絞り、我が国の産業の再生を果たすとしています。しかし、市場の健全性をどう担保するのか、また中小企業の再建をこの機構でどう支援していくのか、いまだ不明朗さは解消されません。
 産業活力再生特別措置法の一部改正案についても、これまでの関連する法律の成果を見るまでもなく、施策は一面的で、今必要とされるトータルな経済政策として期待できません。
 例えば、同法は中小企業支援策を目玉としていますが、中小企業支援協議会を設置し、中小企業の再生を支援するというものの、実質的には協議会に具体的な権限はありません。相談を受け付け、再生へのノウハウを提供するとしていますが、今中小企業が必要なのは直接きく融資であり、再生に直接関与できる、あるいは技術を提供できる人材といった具体的な施策であるにもかかわらず、この法案は、とりあえず支援する協議会をつくってといった悠長とも言える、今の経済状況への危機感を感じさせないものと言っても過言ではありません。
 さらに、景気回復にとっては雇用の不安解消は不可欠でありながら、雇用問題については、「当該事業再構築計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と改正前の条文と全く変わらず、引き続き失業を是とするような内容のままです。
 以上、つまびらかには反対理由は述べませんが、明らかにトータルな景気対策になっていないことから、本委員会に提案されました三法案に対し反対の意見を表しまして、討論を終わります。(拍手)
村田委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
村田委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、株式会社産業再生機構法案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、谷畑孝君外五名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
村田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、谷畑孝君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、保守新党及び宇田川芳雄君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。中山義活君。
中山(義)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    株式会社産業再生機構法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、産業及び金融の一体的な再生に向けて産業再生機構の機能が実効的に発揮されるよう、また、最近の厳しい雇用情勢を勘案し、雇用の安定に配慮しつつ、特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。
 一 事業の再生については、市場における企業の自主的な取組みを尊重することを原則とし、産業再生機構(以下「機構」という。)が事業の再生支援の決定を行うに当たっては、過度の介入により安易な企業の延命を図ることのないよう、公正かつ中立的な観点から判断を行うものとすること。
 二 機構は、事業者が、労働者の理解と協力を得て、事業再生計画を策定及び実施しているか等、関係労働組合との協議の状況につき、十分な確認を行うものとすること。
 三 機構は、支援基準を運用し、事業の再生支援を行うに当たり、中小企業者の事業の実態等を勘案し、支援基準の運用に当たっても、機構による再生支援を中小企業者が十分活用しうるよう努めるものとすること。
 四 事業所管大臣は、事業分野別支援基準を作成する際、及び個別事業の支援決定において機構に意見を述べる際には、機構の中立的立場を阻害することのないよう配慮しつつ、対象事業者の属する関係事業者の意見等を踏まえて実施するものとすること。
 五 産業再生委員会の運営に当たっては、経営者を代表する者及び労働者を代表する者の知見がそれぞれ反映されるようにするものとすること。
 六 機構は、事業の再生支援を行うに当たり、過去に金融機関等から債務の免除等の支援を受けたことがある事業者については、基準に基づき厳正に判断する等、事業者のモラルハザードを招かないように努め、あわせて機構の損失拡大の防止に十分配慮するものとすること。
 七 政府は、業務の運営の透明性を確保するため、支援基準について可能な限り具体的に定めるよう努力するとともに、機構は、企業秘密に配慮しつつ、債権の買取及び処分について、積極的に情報の公開に努めるものとすること。
以上であります。
 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 以上です。(拍手)
村田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、谷垣国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。谷垣国務大臣。
谷垣国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
村田委員長 次に、内閣提出、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、谷畑孝君外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
村田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
村田委員長 次に、内閣提出、公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。
 これより趣旨の説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
    ―――――――――――――
 公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
福田国務大臣 ただいま議題となりました公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 公正取引委員会の位置づけについては、平成十三年六月に閣議決定した「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」等において、「よりふさわしい体制に移行することを検討する。」としていたところでありますが、このたび、中央省庁等再編後の状況の変化等を踏まえ、公正取引委員会を総務省の外局から内閣府の外局に移行させることとし、ここにこの法律案を提出した次第であります。
 この法律案は、内閣府設置法に基づいて公正取引委員会を置くこととし、また、公正取引委員会は内閣総理大臣の所轄に属するものとするとともに、これに伴って関係法律について所要の規定の整備を行うものでございます。
 なお、これらの改正は、平成十五年四月一日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
村田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
村田委員長 次に、内閣提出、エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案及び発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
    ―――――――――――――
 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案
 発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
平沼国務大臣 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 昨今のエネルギーをめぐる経済的、社会的環境の変化を踏まえて、歳出歳入構造の見直しを含めたエネルギー政策の抜本的な見直しを進める中、特に、地球温暖化対策につきましては、エネルギー消費大国の責務としての取り組みが強く求められている状況にあります。加えて、国内では、廃棄物・リサイクル問題が喫緊に対応すべき政策課題として顕在化しており、我が国としては、環境と経済の両立に資するような循環型経済社会を構築することが急務となっております。
 このような状況を踏まえ、温室効果ガスの大宗を占めるエネルギー起源二酸化炭素の排出を抑制するとともに、再生資源の利用の促進に加え使用済み物品等の発生の抑制及び再生部品の利用の促進のための支援策を講ずる必要があるため、本法律案を提出した次第であります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法の一部改正であります。同法に基づく事業者への支援の対象に、海外においてエネルギー起源二酸化炭素の排出を抑制する事業と、使用済み物品等の発生の抑制及び再生部品の利用の促進に関する事業を追加し、あわせて同法の題名をエネルギー等の使用の合理化及び資源の有効な利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法に変更するとともに、その廃止期限を平成二十五年三月三十一日まで延長するものであります。
 第二に、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部改正であります。従来の石油及びエネルギー需給構造高度化対策に、国内外で省エネルギー等によるエネルギー起源二酸化炭素の排出抑制のためにとられる施策であって経済産業大臣または環境大臣が行うものに関する財政上の措置の追加等を行うこととするものであります。
 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようにお願いを申し上げます。
 引き続きまして、発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 昨今のエネルギーをめぐる経済的、社会的環境の変化を踏まえて、歳出歳入構造の見直しを含めたエネルギー政策の抜本的な見直しを進める中、近時の電力供給につきましては、長期的な観点からの安定供給と地球温暖化問題への対応の双方が強く求められている状況にあります。そのような状況下において、原子力、水力、地熱等の電源につきましては、長期的な電力の安定供給の確保に資するとともに、地球温暖化防止対策を進める上でも重要なものであるため、これらの利用を重点的に促進することが、電力政策上、必要不可欠であります。こうした観点から本法律案を提出した次第であります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、発電用施設周辺地域整備法の一部改正であります。同法に基づく支援対象である発電用施設を、長期間にわたり安定的な電力供給源であり、かつ、二酸化炭素の排出量の低減にも資する原子力、水力、地熱等に重点化することとし、また、周辺地域への支援を、これらの電源の設置段階のみならず運転段階へと拡大するものであります。さらに、従来の公共用施設の整備に加えて、周辺地域における住民の生活の利便性の向上や産業振興を図る事業への支援を講ずることとしております。
 第二に、電源開発促進対策特別会計法の一部改正であります。発電用施設周辺地域整備法と同様に、同法に基づく支出の対象を原子力、水力、地熱等の発電用施設に重点化するとともに、従来の電源多様化対策については、発電用施設の安全の確保も含めた電源利用対策として政策体系を再構築するものであります。また、将来の発電用施設の立地の進展に伴う財政需要に弾力的に対応し得るよう、周辺地域整備資金を設置する等の措置を講ずることとしております。
 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようにお願いを申し上げます。
村田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十七分散会


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