衆議院

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第3号 平成16年8月31日(火曜日)

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平成十六年八月三十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 今井  宏君 理事 櫻田 義孝君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 康友君

   理事 田中 慶秋君 理事 吉田  治君

   理事 井上 義久君

      岩崎 忠夫君    遠藤 利明君

      梶山 弘志君    川崎 二郎君

      小杉  隆君    河野 太郎君

      佐藤 信二君    坂本 哲志君

      菅  義偉君    谷  公一君

      西銘恒三郎君    早川 忠孝君

      藤井 孝男君    松島みどり君

      宮路 和明君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    近藤 洋介君

      高山 智司君    樽井 良和君

      辻   惠君    中津川博郷君

      中山 義活君    永田 寿康君

      村井 宗明君    村越 祐民君

      江田 康幸君    河上 覃雄君

      斉藤 鉄夫君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   経済産業副大臣      坂本 剛二君

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小田 清一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 小平 信因君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     松永 和夫君

   参考人

   (関西電力株式会社取締役社長)          藤  洋作君

   参考人

   (関西電力株式会社取締役副社長)         岸田 哲二君

   参考人

   (関西電力株式会社取締役)            辻倉 米蔵君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三十一日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     岩崎 忠夫君

  小島 敏男君     早川 忠孝君

  平井 卓也君     梶山 弘志君

  渡辺  周君     永田 寿康君

  江田 康幸君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  岩崎 忠夫君     今村 雅弘君

  梶山 弘志君     平井 卓也君

  早川 忠孝君     小島 敏男君

  永田 寿康君     渡辺  周君

  斉藤 鉄夫君     江田 康幸君

    ―――――――――――――

八月六日

 一、経済産業の基本施策に関する件

 二、資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件

 三、特許に関する件

 四、中小企業に関する件

 五、私的独占の禁止及び公正取引に関する件

 六、鉱業と一般公益との調整等に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件(関西電力美浜発電所3号機蒸気噴出事故)


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ち、去る八月九日の関西電力美浜発電所三号機蒸気噴出事故によりお亡くなりになられた方々と御遺族の方々に衷心より哀悼の意を表し、お悔やみを申し上げます。

 また、負傷された方々には、一刻も早い御回復を心から願い、お見舞いを申し上げます。

 ここに、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと存じます。

 御起立をお願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

根本委員長 黙祷を終わります。御着席願います。

     ――――◇―――――

根本委員長 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件、特に関西電力美浜発電所三号機蒸気噴出事故について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局安全衛生部長小田清一君、資源エネルギー庁長官小平信因君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院長松永和夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、本日は、参考人として関西電力株式会社取締役社長藤洋作君、関西電力株式会社取締役副社長岸田哲二君及び関西電力株式会社取締役辻倉米蔵君に御出席をいただいております。

    ―――――――――――――

根本委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、順次これを許します。中川経済産業大臣。

中川国務大臣 まず、改めまして、関西電力美浜発電所三号機における今回の事故で亡くなられた五名の方々の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、御遺族に対しまして心からのお悔やみを申し上げます。今なお治療中のため入院しておられる被災者の方々の一日も早い御回復を心よりお祈り申し上げます。

 これまで、国の原子力行政に当たっては、地元の福井県及び美浜町から多大な御協力をいただいてまいりました。その福井県において、県民のとうとい命が失われ、原子力の安全性に対する信頼を裏切るような形となりましたことを、原子力行政の責任者として、まことに遺憾に存じております。

 今回の事故に関しましては、小泉総理から私に対しまして、徹底した原因究明と再発の防止に万全を期すとともに、特に地元の皆様にわかりやすく説明するよう強い指示を受けております。

 私は、事故の翌日に現場を訪れ、その状況を直接調査するとともに、西川知事を初めとする地元の皆様と意見交換をさせていただきました。同時に、直ちに専門家の皆様方から成る事故調査委員会を発足させ、美浜三号機への立入検査なども行って事実関係の解明を進めるとともに、抜本的な再発防止の検討に全力を挙げているところでございます。

 また、他の発電所における同様の事故の再発防止のため、全国のすべての原子力発電所と主要な火力発電所について、過去の点検状況を緊急にチェックするよう命じました。その結果につきましては、後ほど原子力安全・保安院長から説明いたさせます。

 私といたしましては、関西電力を含む各電力会社に対して厳正な姿勢で臨み、こうした事故の再発防止に全力を挙げてまいる所存でございます。

 西川福井県知事からは、事故を起こしたものと同じ二次系の設備について国が管理点検に関する指針を示すこと、事業者による減肉対策の実施状況を国が確認することなどの御要請をいただいております。本件につきましては、私自身、先日、美浜の現場を視察した際に直接承ったところでございます。

 今後、再発防止の検討に当たっては、こうした地元関係者の御要請も十分に踏まえながら、過去の経緯にとらわれず、幅広い観点に立って、効果的な対策を打ち出すよう強く指示を出しているところでございます。

 私は、かねてから、原子力の推進の大前提は、安全の確保と御地元の皆様方を初めとする国民の方々の御理解であると申し上げております。今回、まさにこの大前提にかかわる事態が発生いたしました。原因究明と再発防止策の検討を急ぎ、検討結果を地元に十分に御説明申し上げて、原子力の信頼を取り戻したいと決意しているところでございます。

根本委員長 次に、松永原子力安全・保安院長。

松永政府参考人 ただいまの中川大臣の発言につきまして、三点について補足説明をさせていただきます。

 第一点目は、立入検査についてであります。

 八月十三日に、電気事業法等に基づきまして、原子力安全・保安院の片山審議官の指揮のもとに、総勢二十名弱の人員で美浜三号機への立入検査を行いました。

 ここでは二つのポイントがございます。一番目は、破損メカニズム究明のための客観的な事実の把握でございまして、超音波厚さ計により、かなりの数の肉厚測定も行いました。二番目は、関西電力によって当該部位の検査が行われなかった状況、放置された原因等の把握でございます。この観点から、発電所長を含めた職員からヒアリングを行いました。この立入検査の結果及び関西電力から追加的な報告徴収を行った結果につきまして、現在分析を重ねているところでございます。

 二点目は、全国のプラントに関する緊急調査でございます。

 事故調査委員会の審議の中から、二点がまず明らかになりました。一つは、水流により配管が減肉する現象、専門的な言葉でございますけれども、エロージョン・コロージョンが事故に大きく作用していること、二つ目は、破損部位については関西電力の点検が的確に行われなかったことでございます。

 これを受けまして、同種事故の再発を防止するため、八月十一日に、電気事業法に基づき、すべての原子力発電所と主要な千キロワット以上の八百二の火力発電所の事業所を対象に、配管の減肉の可能性のある部位について肉厚管理を行っていないものがあるか否か、緊急の調査、報告を命じたところでございます。

 原子力発電所につきましては十八日にすべての報告が出そろい、原子力安全・保安院といたしましては、直ちにその検証作業を行いました。

 関西電力の調査結果につきましては、現地の原子力保安検査官が抜き取りによる資料確認や現場立ち会い等による検証を行いまして、美浜三号機の事故発生部位関係の二カ所以外に、全部で十五カ所の肉厚管理の漏れが存在していること、事故を起こした美浜三号機を除きまして、関西電力が運転を停止して点検を行うこととした各号機の中で、今申し上げました十五カ所とその類似箇所の合計百二十三カ所につきまして、関西電力の行った点検は適切な方法で実施されており、測定結果から見て配管の健全性は維持されていると認められること、さらに、当省が追加的に点検を指示した八部位のうち、六部位に問題はありませんでしたけれども、美浜二号機の二カ所は必要肉厚を満たさないものと認められ、関西電力は自主的に配管を取りかえることといたしたこと、以上三点を確認いたしました。

 したがいまして、関西電力が、現在停止をし、点検を行っている各号機につきましては、必要な点検を終了したものと考えております。

 また、関西電力以外の事業者につきましては、配管の肉厚管理がされていなかった部位はないと報告を受けました。原子力保安検査官の検証の結果、各社とも配管の減肉管理を適切に行っていることを確認いたしました。

 また、火力発電所につきましては、報告対象八百二発電所の千四百六十七ユニットのうち、七百四ユニットで配管肉厚に係る非破壊検査が実施されており、七百六十三ユニットでは実施されていないということでございました。

 今後、保安院といたしましては、減肉の可能性がある未点検部位につきまして、非破壊検査実施計画、安全が確認されるまでの従業員の安全確保対策等について報告を受ける予定でございます。

 三点目は、事故調査委員会の審議状況でございます。

 事故調査委員会は、機械工学、破壊工学、原子力工学等の専門家六名で構成されておりまして、これまでに三回開催されました。委員のうち二名の方につきましては、事故直後の現場を視察していただきました。

 これまでの審議の中では、関西電力から事故の状況についての報告を受けた後、事故が起きた部位の破損メカニズムの考察、米国のサリー原子力発電所での事故後の国内外の対応の検証、各社の点検管理指針及びその運用の適切性の検証、ただいま申し上げました緊急調査の結果の検討等が行われております。

 今後、九月には、福井市での開催を含めまして少なくとも二回ほど事故調査委員会を開催いたしまして、中間報告を取りまとめていただき、それに基づいて、原子力安全・保安院として原因究明と再発防止策の検討の中間的な結論を明らかにしたいと考えております。

 以上でございます。

    ―――――――――――――

根本委員長 次に、藤参考人から発言を求められておりますので、これを許します。藤参考人。

藤参考人 ありがとうございます。関西電力の藤洋作でございます。

 このたびは、弊社美浜発電所の三号機におきまして、五名もの方のとうといお命が失われ、また、六名の方が重傷を負われるという極めて重大な事故を起こし、被災された方々、御家族の皆様、並びに木内計測様には大変申しわけなく思っております。この場をおかりいたしまして、深くおわびを申し上げます。

 また、日ごろから発電所の維持運営に御協力いただいております協力会社の皆様や、地元美浜町を初め福井県の皆様、隣接の府県の住民の皆様方には、多大の御心配と御迷惑をおかけいたしました。国民の皆様に御不安を与え、さらには国、地元の自治体並びに消防、警察、病院の皆様方を初め関係御当局、そして各界各方面の皆様に大変な御迷惑をおかけいたしましたことにつきまして、改めて深くおわび申し上げます。まことに申しわけありませんでした。

 また、本日は、本委員会の場で、議員の皆様、国民の皆様に直接おわびを申し上げる機会を与えていただき、恐縮に存じております。

 それでは、まず、事故発生時の状況について、現時点でわかっております内容を御報告申し上げます。

 八月九日当日、美浜三号機は運転中でございましたが、十五時二十二分に火災報知機動作の警報が発信され、十五時二十八分に原子炉が自動停止いたしました。これは、タービン建屋内にある二次系の配管が破損し、蒸気が噴出したためであります。この高温蒸気により、八月十四日からの定期検査に向けて近くで準備作業をしておられた木内計測様の社員十一名の方が被災されたのでございます。

 弊社は、直ちに一一九番通報するとともに、被災者の救出に当たりました。被災者は救急車により病院へ運ばれましたが、四名の方がお亡くなりになられ、重傷を負われた七名の方が入院されました。そのうちの一名の方が、先週二十五日、お亡くなりになられました。このような極めて痛ましい結果となりましたことは、ただただ申しわけなく、悔やんでも悔やみ切れません。お亡くなりになられました方々の御冥福を衷心よりお祈り申し上げますとともに、重傷を負われた方の一刻も早い御回復を心から願っている次第でございます。

 弊社といたしましては、今後とも、御遺族の方々、重傷を負われた方々並びにその御家族の方々には、でき得る限りのことをさせていただきたいと思っております。多数の社員が被災され、大変な御迷惑をおかけいたしました木内計測様に対しても、でき得る限りのことをさせていただくつもりでございます。

 このたびの事故にかんがみ、作業をされる方の安全をまず確保することが極めて重要でございます。そこで、弊社といたしましては、直ちに運転中のプラントへの立ち入り制限を行いました。やむを得ず、日常点検等、作業が必要なため近づく場合には、立ち入り区域の限定や防火服の着用を行うようにいたしました。

 また、配管の健全性が確認され、日ごろから発電所の維持運営に御協力いただいております協力会社の皆様や地元の皆様の御理解が得られるまでの間、原則として定期点検前には準備作業を行わないこととするなど、万全の措置をとってまいります。定期検査前の準備作業でございます。

 さらには、このたびの事故に伴う風評などによる地元の皆様のお悩みや御心配への対応も、私どもにとりまして大変重要なことと考えております。風評被害等に関しまして、地元の皆様の御要望を真摯に受けとめ、若狭地域の観光PRなど、地元の皆様と十分協議しながら、誠実に対応してまいりたいと存じております。

 次に、破損箇所の状況でございますが、破損いたしました配管は、公称肉厚が十ミリメートルでございますが、事故後に弊社が測定いたしましたところ、約一・四ミリメーターとなっているところもございました。その後の経済産業省の原子力安全・保安院殿の測定におきましては、最も薄い箇所は〇・六ミリメートルでございました。

 当該部分は、弊社が平成二年に策定いたしました原子力設備二次系配管肉厚の管理指針に照らし、本来、肉厚測定すべき箇所でございます。しかしながら、平成二年の当初から測定対象箇所から漏れていたため、事故発生時点まで測定をした実績はございませんでした。この点につきましては、後でもう少し詳しく御説明をさせていただきます。

 事故後、八月十一日に、原子力安全・保安院御当局から、二次系配管の肉厚管理が未実施である部位の有無について確認し報告すること、未実施であることが確認されました場合は今後の対応策をあわせて報告することとの御指示をいただきました。弊社の三つの原子力発電所全基につきまして調査をいたしました結果、未実施箇所が、美浜三号機で事故発生箇所のほかにも一カ所、その他のプラントで八月十六日に四カ所を報告し、八月十八日にさらに十一カ所につきまして最終報告いたしました。

 一方、八月十三日には、福井県御当局から、速やかにすべての原子力発電所の運転を計画的に停止し、事故発生箇所と類似する箇所などについて直接健全性を確認するよう御要請をいただきました。

 こうしたことから、弊社は、停止中の発電所はもとより、運転中の発電所につきましてもグループ分けして計画的に順次停止し、肉厚管理の未実施箇所、類似箇所など、それぞれの箇所で健全性が確保されているか、実測による確認を進めております。

 これまで運転を停止して肉厚を実測した美浜二号機……(発言する者あり)恐れ入ります。高浜二号機、大飯四号機、高浜三号機では、いずれも健全性を確認しております。引き続き、他のプラントにつきましても順次運転を停止し、肉厚測定を実施することを予定しております。なお、美浜二号機の二カ所につきましては、念のため、配管の取りかえ、補修を行い、万全を期することといたしました。

 この期間中の供給力の確保につきましては、停止中の火力発電所を立ち上げるとともに、電力各社様の御協力を仰ぐなど、手だてを尽くし、お客様に御迷惑をおかけすることのないよう、鋭意取り組んでおります。

 このたびの配管破損箇所は、先ほども申しましたように、本来、肉厚測定すべきであったにもかかわらず対象箇所から漏れ、事故発生時点まで肉厚の測定がなされてまいりませんでした。そのため、その箇所の減肉が発見できず、破損に至ったわけでございます。

 なぜ漏れたのかは現在調査中でございますが、ここで一連の事実関係の経緯を申し上げます。

 この美浜三号機の製造、施工者は三菱重工さんでございます。発電所の構造を熟知され、検査、補修業務も行っていらっしゃいましたので、運転、運営に関して御相談したり、設備改造を発注したり、改善提案をいただいたりしておりました。そして、日ごろから定期検査を含む補修作業全般につきましても相互に協議を持ちかける関係にあり、都度の定期検査の際には、三菱重工さんから適切な点検計画を提案していただくことによって、円滑に定期検査を行うことができておりました。

 このような関係のもとで、二次系配管の肉厚管理につきましても昭和五十年代後半から協調して研究を開始し、弊社は、平成二年五月に先ほど申し上げました管理指針を策定いたしました。この管理指針に従って、測定の必要な箇所を計画的に三菱重工さんに検査することをお願いすることといたしました。同年九月の定期検査から指針の運用を開始いたしましたが、弊社といたしましては、管理指針に従って、三菱重工さんから測定の必要な箇所は必要な時期に漏れなく提案されるものと信頼していたわけでございます。

 ところが、このとき既に、このたびの配管破損箇所は三菱重工さんの測定必要箇所の対象から漏れておりました。その後、弊社は、検査の独立性の観点から、検査とその結果に基づく修繕工事を分離することとし、検査業務も三菱重工さんから火力発電所で実績を有していた弊社の子会社であります日本アームにゆだねることといたしました。

 そこで、弊社は、平成八年度に配管肉厚管理に関するデータを三菱重工さんから譲り受け、それを日本アームに提供しましたが、当該箇所が漏れているとは認識できておりませんでしたので、それ以後も、都度の定期検査に向けて日本アームから適切に測定必要箇所が提案されるものと考えておりました。

 昨年十一月に日本アームから次回定期検査に向けて四百二十カ所の肉厚測定計画が提案されましたが、その際、当該破損箇所が初めて対象となった旨の御指摘がございませんでしたので、弊社として、当該箇所がそれまでは漏れていたとの認識に至らず、事故回避の機会を逸してしまいました。

 このように、三菱重工あるいは弊社子会社の日本アームと弊社は、相互の信頼関係のもと、原子力発電所の点検業務を相互に連携して行ってまいりました。しかしながら、このたびの破損箇所は本来測定すべき箇所であるにもかかわらず漏れていたことを見抜けなかったのは、振り返ってみますと、漏れをチェックする仕組みがなかったということであり、この点、深く反省いたしますとともに、設備を運転し、管理する者としての責任を痛感している次第でございます。

 そうした反省に立ちまして、何と申しましても、基本は事業を行う者がしっかりと点検を行うことであり、これを実現する仕組みの確立が最も重要、かつ、早急に実施しなければならないと認識しております。この認識のもとに、弊社は、当面直ちに実施する対策として、事故の直接の原因となりました二次系配管肉厚の管理を徹底してまいります。既に管理指針に基づく肉厚点検を必要とする箇所が、必要箇所を明示する元帳、すなわち点検管理票に正しく反映されているかについて総点検を行い、点検管理票を修正しております。この点検管理票に従い、全測定必要箇所の肉厚測定を確実に実施してまいります。

 仕組みの面では、肉厚管理に必要なデータは必ず協力会社などと共有し、弊社が管理指針や過去の点検実績、事業予測に照らして点検計画の妥当性を判断するよう、見直しを行いました。

 さらに、設備変更時には、弊社の補修員みずから現場や図面を確認して点検管理票をチェックするとともに、定期的に、漏れが発生していないか点検していくことといたしました。また、補修員への教育もさらに充実を図ってまいります。

 また、私みずからが原子力事業本部長につき陣頭指揮をとるほか、福井県に技術系役員を常駐させ、技術的事項の的確な対応を行うことといたしました。

 さらに、社外の有識者の方にも御参加いただいて原子力保全機能強化検討委員会を設置し、抜本的な再発防止策を検討するとともに、一次系、二次系を含めた保全業務全般の機能強化を図り、設備安全面でのさらに高度な水準を目指すことといたしております。

 国会におかれましては、一昨年、我が国の長期的なエネルギー政策の基本方針を定めたエネルギー政策基本法を制定され、それに基づき昨年十月にエネルギー基本計画が閣議決定され、国会に御報告されました。その中では、「安全の確保を大前提に、核燃料サイクルを含め、原子力発電を基幹電源として推進する。」とされております。

 また、電力自由化が進展する中、昨年の電気事業法改正の際には、本委員会において、原子力発電にかかわる経済的措置等の具体的な制度、措置を検討の上講ずる旨の附帯決議を御発議いただいております。

 このように、先生方には、我が国の将来を見据えたエネルギー政策の確立につきまして奔走されている中、私どもがかような重大な事故を発生させ、国民の皆様の信頼を大きく損ねる結果になってしまいましたことは、まことに申しわけなく、改めて先生方におわび申し上げます。

 弊社は、こうした事故を二度と起こしてはならないとの強い決意のもと、関係御当局の御指示、御指導を仰ぎながら、今後、さらに徹底的な原因究明を進め、抜本的な再発防止策を確立、実施してまいりたいと考えております。私自身が先頭に立ち、全社一丸となって、損なわれました信頼の回復に努めてまいる所存でございますので、先生方におかれましては、この上とも御指導、御鞭撻を賜りたいと存じます。

 私からの冒頭の御説明は以上でございます。本当に申しわけございませんでした。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

根本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。

松島委員 自民党の松島みどりでございます。

 最初に、先ほど皆様とともに黙祷をささげさせていただきましたが、今回の事故で亡くなられました木内計測の五人の皆さんの御冥福をお祈り申し上げます。そしてまた、今なおけがと闘っておられる、その痛みに耐えておられる六人の方々の一刻も早い御回復をお祈り申し上げます。

 さらに、こうした事故、建設業であれ製造業であれ、大企業の現場におきまして事故が起きました際に、必ずと言っていいほど犠牲になられるのが協力会社という名前の下請中小企業の方々であることにも思いをはせて、心を痛める次第でございます。

 質問に入らせていただきます。

 今回の美浜原子力発電所三号機における事故は、加圧水型炉の原子力発電の二次系統で起きたものでございます。これは、一次系統の事故、つまり、放射能を閉じ込めている原子炉格納容器内での事故とは性格が異なると私は考えます。つまり、今回の事故の部位には、放射能で汚染された水は流れていません。そしてまた、どんな火力発電所でも、また一般の工場でも、同様のこのような配管を備えているわけでございます。したがって、事故そのものは、厳密な意味での原子力事故ではなく、原子力発電所で起きた産業事故だ、そのように私は認識しております。

 それも、たまたま配管の下あたりに定期検査の準備作業の方がいらっしゃったときに起きたという、本当に偶然の出来事が重なり合って多くの死傷者の方を出す不幸を招きました。もし、だれもいない夜に事故が起きたり、あるいは、事故は八月九日に起きたわけでございますが、あと五日間この部分が無事で、八月十四日に予定どおり定期点検が始まっていましたら、ここで点検されて、減耗をしているのがわかって、こういった事故にはならなかったわけでございます。

 しかしながら、偶然が重なって起きたとはいえ、今回の事故によりまして、検査すべき箇所を二十八年間もほうっておいた、そして十三年前に寿命オーバーになっていた、そういう根本的な問題を関西電力が抱えていたということが露呈いたしました。言いかえましたら、今回このような形で事故が起きなければ、この二十八年間ほったらかすという大変な事態が明るみに出なかった、恐らく検査の中で、ああ、むちゃなことがあったけれども何とか無事で済んでよかったと検査をした方が思っただけで過ぎたかもしれない、そんな不安を私は考えております。

 原子力発電所、この立地を嫌がる地域が多い中で、この立地を認めて、そして協力をしてくださっている福井県の地元の皆さん方の心情を考えますと、原子力発電所を運営する者の責任は非常に重いと思います。地域住民の方々の中には、たとえ詳しい科学知識をお持ちでない方でも、関西電力がやることなら安全だと信じよう、任せよう、そういう信頼感に基づいて原発の立地を認めていただいているわけだ、そのように感じております。

 そこで質問でございます。

 まず、一次系統は、危険な場所だし、原子力そのものだから、必死で神経質になって管理しなきゃいけない生命線だ。しかしながら、二次系統の管理とか点検というのは、まあそこそこでいいや、そういうような心理が関西電力の原子力の技術者の方々の中には、あるいは関西電力の会社の中枢のところにはなかったんだろうか、そういう疑問がまず一つございます。

 そしてもう一つ、二次系統の点検や管理が、最初のスタートのところで、設計施工を担った三菱重工業が構造を熟知しているから、そこへ全部ゆだねてしまおう、丸投げということになってしまったということは、言いかえましたら、ひょっとして、一次系統、この肝心なところ、これこそまさに専門家に任せた方がいいだろうということで、これもまた三菱重工業に丸投げになっているんじゃないか、ひょっとしたら、こっちも同じような問題を抱えていて、いいかげんなんじゃないかという疑念が生じます。それがまた地元住民の方々の不安を招くのではないかと思います。

 この二つの質問、今回の問題の二次系統をおざなりにしていたんじゃないかということと、同じように一次系統も設備施工会社に投げちゃっていたんじゃないかということ、この二つの疑問に答えていただきたいと思います。

藤参考人 お答え申し上げます。

 最初の質問でございますが、私ども、一次系と二次系につきまして、従業員の安全、協力会社の皆様方の安全、これを確保するということにつきまして、全く違う考えはございません。安全確保を第一に原子力発電所の運転、運営をしております。しかし、今回、このような事故が起こりまして、私、先ほど申しましたように、本当に大きな責任を感じております。

 第二の、丸投げをしていることによって一次系も問題があるのではないかというお話でございましたが、一次系につきましては、こちらの方は材質も違いますし、点検の規制も違います。そういう意味では、一次系につきましてはこのようなことはございませんので、その点につきましては、私、一次系については絶対こんなことが起こらないと確信しておる次第でございます。どうかよろしく御理解賜りたいと思います。

 以上でございます。

松島委員 二十八年間ということで、これを知った人が、多くの国民が、びっくりしてショックを受けているわけでございます。

 昭和五十一年、一九七六年にこの発電所ができてから、既に二十八年たっている。その間に肉厚が、最初一センチあったものが一・四ミリにまで減耗した。関西電力の管理指針に照らし合わせると、平成三年の一九九一年には摩耗によって寿命が来ている、そういうふうに判断されていると伺っております。寿命が来てから十三年間も検査なしに運転していたわけですから、この間、いつこんな事故が起こってもおかしくなかった。後から振り返ると、そういうことになります。

 二十八年間の間には、平成二年にアメリカのサリー原子力発電所の事故を受けて管理の指針を出したり、検査業務が三菱重工業から関西電力の関連会社である日本アームに移ったり、いろいろな経緯がございました。こういった事情、いろいろなことがありながら、どうしてこれだけの間、二十八年間、関西電力みずからが検査箇所の見直しやチェックをしてこなかったのか。繰り返しになるかもしれませんが、再度お伺いしたいと思います。

藤参考人 お答え申し上げます。

 確かに、先生おっしゃいますように、二十八年間も一度も測定、点検をしなかったということは、丸投げというふうに言われても仕方のないところがあるわけでございますが、先ほども私、御説明申し上げましたように、一番最初の元帳からこの点検すべき箇所が漏れておりました。それは、今お話ございましたように、平成二年のことでございます。その後、平成八年に日本アームに引き継ぎましたときも、そのときもそのポイントが漏れておりました。

 私、今御指摘ありましたように、この間において、なぜみずから根元に返って点検をしなかったかということはおっしゃるとおりでございまして、そのみずから点検する、一番もとに返って点検するという点が漏れておりましたことにつきまして、私、本当に責任を感じているところでございます。

 以上でございます。

松島委員 関西電力は、昨年度の実績で、発電量全体の六五%を原子力が占めております。日本の電力会社の中では原子力発電への依存度が一番高いわけでございます。しかも、この原子力発電十一基はすべて福井県内に立地しております。

 今、夏の最大需要期は終わりましたけれども、この先、電力の供給体制に不安は生じないのか、大丈夫なのか、お伺いしたいと思います。

藤参考人 お答え申し上げます。

 休止中の火力を百九十五万キロワット立ち上げました。停止中の火力を百九十五万キロ、四ユニット立ち上げました。そのほか、各電力会社の御協力を得まして、電力の需給につきましては、いろいろな手だてを尽くしまして万全を期しております。お客様に御迷惑をおかけしたり、国民の皆様に御迷惑をおかけすることはないよう頑張っております。大丈夫でございます。

 以上でございます。

松島委員 藤社長、藤参考人に最後の質問をさせていただきます。

 このことすべて、今までのこと全部すべてを含めまして、関西電力の責任、会社の社会的責任、そして事故への責任というのをどうお考えになるか、総括していただきたいと思います。

藤参考人 お答えいたします。

 関西電力が福井県で十一基の原子力発電所を運転、運営させていただいております。そこでこのような痛ましい大変な事故を起こしました。関西電力といたしまして、発電所を運転、運営するものとして大きな責任を痛感しております。

 なお、関西電力グループといたしましても重い責任を感じております。

 以上でございます。

松島委員 次に、中川経済産業大臣に質問させていただきます。

 さきに申しましたように、この事故は、厳密な意味での原子力事故ではなく、原子力発電所で起きた産業事故、労災事故だと私は考えております。この事故によりまして、我が国の、日本のエネルギー政策、原子力政策の基本が変更されるべきではないと私は考えておりますが、大臣はいかがお考えかということが一つ。

 そしてまた、そのためには、経済産業省として、そして大臣も、この事故によって、電源立地地帯の皆さん、福井県の方だけでなくて全国の電源立地地帯の皆さんが、あるいは今後原発の立地が予定されている地域の方々がかなり不安を抱いておられると思いますけれども、過大な不安にならないように、それを払拭していくためには国としてもどういう対応をとっていくべきだとお考えになっているか、伺いたいと思います。

中川国務大臣 今回の美浜三号に関しましては、いわゆる一次系、原子力そのものの系統と別のいわゆる二次系という意味で、厳密に言えば一次系と二次系とはこれは区別をされるべきものというふうに考えるべきだと思います。

 しかし、巨大なエネルギー施設の中の構造として一次系と二次系があるわけでございますので、一次系が原子力事故で二次系が産業事故だということで別々だということは、科学的、厳密に言えばそうなんですけれども、今回の事故は、トータルとして、やはり美浜原発三号機の重大な事故として認識をしていかなければならない。少なくとも私は、政治家として、また監督する立場の人間としては、そういう認識でこの問題に対応しているところでございます。

 もっと申しますと、この二次系というのは、重大な一次系以前の、極端に言えば、どこにでもあるような管の中を高熱の、高圧の水流が通っている部分についてのチェックでございますから、だから千四百数十カ所の火力発電所を含めたところをチェックしているわけでございまして、いわゆるオリフィスと言われているその狭まった部分だとか曲がった部分だとか、そういうところを高圧、高熱の水が流れている、これ自体が危険を伴うというか、安全管理が必要なわけでございます。一次系以前の問題として、もっとそれ以前の問題としての事故が今回発生をしたわけでございますので、そしてまた、十一人の死傷者の方が現に発生をしてしまったということの結果的な被害の大きさも考えますと、我々としては、この事故は極めて重大な問題として認識をしているところでございます。

 したがいまして、先ほど申し上げましたように、私もすぐに現場に参りまして、その破裂した管のところを現に見てまいりました。手でも触れてまいりました。これは、破裂したら一瞬にして、十気圧で閉じ込められた中での百四十度Cのものが一挙に一気圧の世界に飛び出したときの破壊力というものを目の当たりにしてきたところでございます。

 そういうものは原子力発電所以外にも全国にいっぱいあるわけでございますから、これを二十八年間放置してきた、また手続上のミスもあったということの責任は、やはり原子力発電所を管理する者としての責任は大きいというふうに思いますし、それを監督する経済産業省を初めとする国の立場としての、監督の立場としての認識も極めて重く受けとめていかなければならないというふうに考えております。

 緊急の課題としては、とにかく一日も早く、六人の方々が、一人御退院されたと聞いておりますけれども、いずれにしても六人の方々が一日も早く御全快されること、それからこの原因を徹底的に究明すること、そして二度と再発をしないこと等々を、全力を尽くし、早急に、我々も調査委員会等を通じて鋭意やっているところでございますし、そして、そういうものを含めて、今後、御地元、福井県美浜町を初め立地地域の御理解、御納得をいただくことを最優先に、まず御説明をして、御理解、御納得をいただくことを最優先の課題にしなければならないと思っております。

 他方、先ほど関電の方からもございましたが、風評被害ということも我々は防いでいかなければならないというふうにも考えておりますので、万全の対応と今後への措置というもの、そしてまた、これを、地元の皆さんを初め国民の皆様に対する御理解、今回の事故に対する御説明の御理解、今後に向けての御理解というものを前提にして、我々の原子力行政というものを安全面を前提にしながら推進してまいりたいと考えております。

松島委員 今、大臣が言われましたように、一次系統以前の問題の、基礎的な、ベーシックなところの、これはそういう観点からいうと非常に大変な事故だと思います。

 原子力安全・保安院の方に伺いたいんですけれども、今、大臣も言われました、全国どこにでもある、千四百カ所以上というお話でしたけれども、他の火力発電所、全国に火力発電所というのは幾つあるのか。電力会社、そして余剰電力を売電している事業者、自家用発電の製造工場あるいは自治体のごみ発電など、その内訳としてどれぐらいあって、それがちゃんとこういう検査をしているかどうかというのは、こちらで把握しているのかどうか、それで、どのような対応をとっているのか、伺いたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 火力発電所につきましても、八月十一日に、主要な配管のうち減肉が生じる可能性がある部位に関しまして、点検を行っているのかどうか、あるいはそれについての対応策を報告するよう命じたところでございます。

 先週末までにとりあえずの報告がございまして、今回報告徴収を行いました蒸気タービンを用いる出力千キロワット以上の発電用火力設備は、全国で八百二発電所、ユニットで申し上げますと千四百六十七でございます。

 その内訳を申し上げますと、電力会社十社及び電源開発株式会社の所有しておりますものは九十発電所、二百五十四ユニット、また、共同火力あるいは自家用電気工作物設置者の合計、これが七百十二発電所、千二百十三ユニットでございます。

 さらに、その内訳を申し上げますと、共同火力の合計が十四発電所、三十九ユニット、自家用電気工作物のうち、工場等に設置されているものが四百四十八発電所、九百八ユニット、一般廃棄物やRDF等により地方公共団体等がごみ発電などを行っているものが二百五十発電所、二百六十六ユニットとなっております。

 これら合計千四百六十七ユニットのうち、配管肉厚に係る検査が実施されておりましたのが七百四ユニット、検査が実施されていなかったのが七百六十三ユニットでございます。

 また、電力会社十社及び電源開発株式会社等につきましては、合計二百五十四ユニットのうち、検査が実施されておりましたのが百九十四ユニット、検査が実施されておりませんでしたのが六十ユニットでございます。

 また、共同火力等につきましては、合計千二百十三ユニットのうち、検査が実施されておりましたのが五百十ユニット、検査が実施されておりませんでしたのが七百三ユニットでございます。

 以上でございます。

松島委員 ぜひ、それらのところでも、同じような事故が起こる可能性があるわけですから、しっかりと点検を進めてもらうように御指示をお願いいたします。

 これで質問を終わらせていただきます。

根本委員長 斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 まず、質問に入る前に、亡くなられた五名の方の御冥福、また負傷されております六名の方の一日も早い御回復をお祈りしますと同時に、死傷された方々への、また御遺族、御家族への万全の対策を関西電力また政府もとるよう強く要望して、質問に入らせていただきます。

 まず初めに、原子力安全・保安院に原子力災害対策特別措置法との関連についてお伺いしたいと思います。

 今回の事故について、一九九九年に成立いたしました原子力災害対策特別措置法が使われなかったのではないか、登場しなかったのではないか、こういう批判がございます。

 この原子力災害対策特別措置法ですが、一九九九年九月三十日に東海村でジェー・シー・オー事故が起こりました。この事故は、原子炉の外でウランの核分裂の臨界反応が起こるという信じられないような事故でございました。

 その直後、私ごとになりますけれども、科学技術総括政務次官を拝命いたしまして、すぐ現地対策本部長を拝命し、東海村に行きました。まず村上村長さんにあいさつをしなければということで村長さんの部屋に入ったときに、最初に村長さんが言われた言葉は、今ごろ何しに来た、こういうふうに、最初の言葉がその言葉でございました。そして、一時間、立ったまま、村上村長さんからお話を伺いました。

 これまで東海村は、原子力に対して、国策に対して協力をしてきた、しかし今回この事故が起きて、国は一切何も助けてくれなかった、孤独の決断で住民の避難命令を出した、もうそういう国には頼らない、そういう非常に厳しいお言葉がございまして、私も、そのときの一時間、立ったまま聞いた一時間を自分の原点として、この直後の秋の臨時国会で原子力災害対策特別措置法成立に尽力をした、そういう思いがございます。

 この原子力災害対策特別措置法、その法律の名前に原子力災害という言葉が入っておりますように、それまでは地元への説明というふうなこともありまして、原子力に事故はない、絶対安全だ、こういういわゆる安全神話があったわけでございますが、それを否定して、原子力にも災害は起こり得る、しかし、起こったときにどう合理的にその被害を最小限に食いとめるかという考え方のもとにできた、ある意味では画期的な法律だったのではないかと思います。

 この法律が今回生きてこなかったという批判がございます。つまり、この法律の中には、大きな原子力災害に対して、政府は、政府の対策本部をつくる、また、現地には現地対策本部としてオフサイトセンター、今回のこの美浜にもその後オフサイトセンターが設置されております、そういうあの法律の枠組みが今回生きてこなかった。

 私も、法律の立案に関与して、放射性物質の拡散とそれによる地域環境の汚染の防止ということにのみあのとき頭がいっていたという反省もございます。しかし、原子力災害のポイントはまさにそこにあるわけで、それでいいんだという説もございます。

 ここら辺、私、立案者として、私自身頭の整理がついていないんですが、この点を原子力安全・保安院はどのように考えているのか、今回の教訓として、もし不備があるとしたら法律の修正を考えているのか、この点についてまずお伺いします。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力災害対策特別措置法の関係等についてのお尋ねでございますけれども、今回の事故は、美浜三号機の運転中に復水系の配管が破損し、噴出した蒸気等により五人が死亡、六人が負傷するという大変痛ましいものでございました。そのような深刻な事故ではございますけれども、原子炉は安全に停止をしており、外部への放射性物質の放出による環境への影響はなかったものでございます。

 今御指摘のとおり、原子力災害対策特別措置法は、原子力事業者の原子炉の運転等により、放射性物質または放射線が異常な水準で原子力事業所外へ放出された事態等を想定しております。このような場合には、人間の五感に感じずに被害を受ける可能性があり、また、適切な対応を行うためには専門的な知識と特別な装備が必要でございます。こうしたことから、特別な法律が制定をされた次第でございます。

 今回の事故におきまして、そのような事態までは生じておらず、原子力災害対策特別措置法の対象とする理由はないと考えられますので、これを契機とした同法の修正等は考えておりません。

 しかしながら、先ほども大臣から御答弁申し上げましたとおり、今回の事故は、原子力発電所で発生をした大変重大な事故であるというふうに認識をしております。したがいまして、発生直後、原子力安全・保安院といたしましては、担当の審議官を直ちに現場に派遣をいたしまして、その日に直ちに現地対策本部を、まさにそのオフサイトセンターに設置をいたしました。また、大臣が翌日現地を訪問するというような形で、いわば原子力災害対策特別措置法で予定をしております行動に即した対応をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、徹底的に事故原因を究明いたしまして、幅広い視野からの再発防止策を講じてまいる所存でございます。

斉藤(鉄)委員 法律の対象外ではあるが即した対応をしたという御答弁だったと思いますけれども、この点について、今回の事故の教訓として、もう少しこの法律について議論をする、成立後五年たちました、そのようなことをちょっと提案を申し上げます。

 次に、関西電力にお伺いいたします。

 今回の事故のポイント、本質は、先ほど松島委員から御指摘ありました、まさに、なぜ検査対象から二十八年間も漏れていたか、何回もその間に検査対象として挙がってくる可能性があったのにそれを逃したかというところに事故の本質、ポイントがあるかと思いますが、松島さんがもう質問されましたので、この質問については省略をいたします。

 次の質問ですが、この事故の直接的な原因である炭素鋼配管の減肉現象ということについてお伺いします。

 放射性物質の存在する一次系はステンレス配管で、減肉現象は考えなくてもいいということのようですが、なぜ炭素鋼の配管の場合、減肉現象が発生するのか。そのメカニズムを簡単に、わかりやすく、簡潔に教えていただきたいと思います。

藤参考人 お答え申し上げます。

 炭素鋼の今の御質問につきましては、大変御専門的な御質問でございまして、もし許していただけましたら私どもの辻倉取締役に説明させたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。――恐れ入ります。ありがとうございます。

辻倉参考人 お答えいたします。

 今回の事故の直接的な原因は、まさに先生が今おっしゃいましたとおり、炭素鋼配管の減肉現象が原因であったと考えております。当該の美浜の三号機は、御案内のとおり加圧水炉でございまして、一次系と二次系が分かれております。蒸気発生器で分離されております。

 この二次系の方の水質管理につきましては、ヒドラジンとアンモニアを用いましたいわゆる脱気アルカリ水と呼ばれます水質環境で運転をしてございます。この環境下では、炭素鋼配管には耐食性にすぐれましたマグネタイトを表面に生成させまして、これが耐食性を維持してございます。

 一方、配管内には、二次系の水の流れによりまして偏流が起こる部位がございます。例えば、配管が曲がる部位でございますとか、こういうところでは水の乱れが出てまいります。その乱れによりまして、結果として配管の厚さが減少するというように考えております。

 この現象は一般にはエロージョン・コロージョンと呼ばれておりまして、機械的な作用によります侵食と化学的作用によります腐食、これの相互作用によりまして腐食が促進されるという現象でございます。二次系の炭素鋼に見られます減肉現象につきましては弊社は過去にも経験してございまして、配管の減肉部にはエロージョン・コロージョンの特徴でございます鱗片状の模様を観察したこともございます。

 このようなことから、エロージョン・コロージョンが主要因であろうと推察をしているところでございますが、美浜三号機につきましては、エロージョン・コロージョンが主な原因と考えておりますけれども、今後の事故の原因調査を待ちまして、さらに詳細にメカニズムにつきましては調査してまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 これは、ちょっと教えていただきたいんですが、なぜ一次系のステンレスではこのエロージョン・コロージョンが起きないのか。ちょっと、初歩的な質問かもしれませんが、教えてください。

辻倉参考人 お答えいたします。

 ステンレス鋼は炭素鋼と違いましてクロムの含有量が高うございまして、このクロムの含有量が耐食性に対しまして非常に効果を発揮している、このように考えてございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 関西電力は、この炭素鋼配管の減肉という現象を承知しておりましたか。

辻倉参考人 お答えいたします。

 当社は、炭素鋼配管の減肉現象ということにつきましては過去に経験しておりまして、承知してございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 それでは、どのようなシステムで二次系配管の減肉を管理してこられましたか。また、一九九〇年に関電として二次系配管肉厚の管理指針をつくられておりますけれども、これは独自につくられたものですか、それとも国から何らかの関与はありましたか。

辻倉参考人 お答え申し上げます。

 平成二年の五月に弊社プラントの実機のデータをベースにいたしまして、また当時判明しております知見を反映いたしまして、二次系配管の肉厚の管理指針を制定いたしました。

 この指針では、私どもは、二次系配管の湿り度でございますとか温度でございますとか流速によりまして、肉厚管理をすべき主要な部位を決定いたします。また、その部位に対しまして肉厚の測定をいたしまして、その結果等を用いまして減肉進展の評価を行います。また、判定基準といたしましては、技術基準に基づきます計算上の必要肉厚を下回らないように、点検時期や取りかえ時期を明らかにして、肉厚管理をしているというものでございます。計測に当たりましては、ちょっと専門的になりますが、超音波厚さ測定手法ということで、JISに規定されております方法を使ってございます。

 それから、国との関与のことについて御質問がございました。

 私どもは、この管理指針はあくまでも私どもが策定したものでございますけれども、適用するに当たりまして、当時の通産省さんの運転管理顧問会機器部会というところに付議をお願い申し上げまして、御承認をいただいた後に、私どもがこれを指針として運営するということでお断りを申し上げまして、その後、実施してきていることでございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 それでは、一九九〇年にこの管理指針を制定して以来、減肉現象について新たな研究成果、知見が世界各地から得られていると思いますが、どのようにそれを実際の管理に生かしてきましたか。フィードバックしてきましたか。

辻倉参考人 お答え申し上げます。

 私どもは、国内外のトラブルの情報等を収集いたしまして、必要に応じ管理に反映するように運営をしてまいっております。また、昨年の十月からは、ニューシア、原子力発電の情報公開ライブラリーでございますが、全国の事業者が保全、品質管理に関します情報を共有するというようなシステムを運営してきてございます。

 このような中で種々の情報を得ているわけでございますけれども、現在私どもが用いております管理指針、これに基づきまして運営しております範囲内に今までのところはとどまってきておりました。

 一方、この七月に私どもの大飯の発電所で主給水管で減肉現象が見られました。この部位は当時主要点検部位という形で私どもが管理をしておらなかった範囲のところで出てまいりました。このように出てまいりました新しい知見は、直ちにこの指針の中に、改定をいたしまして、反映してございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 今の関電の答弁に対して、保安院にお聞きします。同じ質問を保安院に聞きたいと思います。

 本質的には、自主検査項目ですので、各事業者の責任で技術情報を入手し、管理指針に反映させるべき問題と思いますが、原子力安全・保安院としても新しい情報を入手して、それを水平展開して、各事業者がそれを活用するように指導するのも任務と考えますが、どのようにしておりますか。簡潔にお願いします。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、原子力の安全にかかわる情報というのは有効に活用するということが非常に大事でございまして、事業者がまず自主的に水平展開する仕組みを持つことが重要でございます。今お話にございましたいわゆるニューシアの運用もそういう観点で大事でございまして、また、当院といたしましても、今回の事故調査委員会での審議の結果得られた成果につきましては、他の事業者においても徹底されるようきちっと情報が流通をするように監督してまいる考えでございます。

 また、海外の情報につきましても、特に、例えばアメリカのNRCでどういう検討が行われているのか、こういった情報につきましても積極的に収集いたしまして、事業者へ提供してまいる、そういう考え方でおります。

斉藤(鉄)委員 今の答弁を聞きまして、かなり重要な検査項目であるという認識をいたしました。それであるにもかかわらず、なぜ漏れたかというところが本当にポイントだと思いますので、しっかり原因究明をしていただきたい、このように思います。

 八月十二日に私どもも六名の国会議員で現地を視察いたしました。そのときに、地元美浜町長さんからも、美浜の山口治太郎町長さんからも要望をいただきました。七点にわたる要望でございまして、この七点を、きょう、ぜひこの委員会で取り上げたいと思ったんですが、時間がなくなりましたので、最後、最も重要なことだけちょっとお話しさせていただきます。

  国道二十七号から原子力発電所に通じる県道は、水晶浜等への観光や産業、半島部町民の唯一の生活道路として、また万が一の緊急避難道路として、重要な役割を果たしている。

  しかし、現時点においても総雨量が百四十ミリを超えた場合、通行が規制されるなど、避難道路であるにもかかわらず本道路の安全対策が十分取られているとは言えない状況である。

  このたびの事故を教訓として、今後における住民の安全確保のため、国土交通省との協議を一段と進めていただき、早急に改善が図られるよう、特段の配慮をいただくこと。

こういう要望をいただきました。地元の方としては当然だと思います。私どもが行った日も、海水浴客で道路はいっぱいで、本当に交通もままならないという状況でした。それが避難道路になっているんです。

 これに対して、ぜひ地元として配慮してほしい、こういう要望ですが、これは原子力安全・保安院なのか国土交通省なのかわかりませんけれども、ぜひ対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 災害時の緊急避難道路等につきましては、災害対策基本法に基づきまして地方公共団体が作成いたします計画等においてその整備、活用の方針が位置づけられて、関係者が協力してその整備を推進すべきもの、こういうふうに位置づけられているわけでございます。

 原子力安全・保安院といたしましても、今御指摘の緊急避難道路等の整備の重要性は強く認識しているところでございます。その実現に向けまして、立地地域への交付金の活用とか、あるいは道路整備の関係機関による配慮をお願いするとか、今後とも柔軟かつ積極的な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 最後に、関西電力の藤社長にお伺いいたします。

 関西電力は、原子力の安全管理ということでは、これまで良好な実績を示してきまして、高い評価を得てきました。しかし、今回こういう事故が起きたわけでございます。

 原子力の着実な推進という意味で、このような事故がなぜ事前に防止できなかったのか、安全管理システムの基本的なあり方まで立ち入った議論を行っていただいて、再び国民の信頼を取り戻すために頑張っていただきたいと思いますけれども、その決意をお伺いいたします。

藤参考人 お答え申し上げます。

 最初に先生がおっしゃいましたように、今、被災者の方に対する万全の措置、それから地元の皆様方の風評被害等に対する私どもの誠意ある対応、それから作業者安全、これがまず緊急の課題でやっております。

 これから先、今御指摘がございましたこの配管肉厚管理を完全なものにして、二度とこのような同種の事故を起こさないようにする、そしてまた、保全業務全般に関して機能強化をして、二度とこのような事故が起こらないような、そのようなシステムをつくるために、私、全力を賭して頑張る所存でございますので、どうかよろしく御指導賜りますようにお願い申し上げます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 終わります。

根本委員長 吉田治君。

吉田(治)委員 民主党の吉田治でございます。

 まずは、この事故でお亡くなりになられた御遺族の方へ哀悼をささげます。そして、入院加療中の皆様方の一日も早い治癒をお祈り申し上げます。

 私は、民主党のこの事故の対策本部の事務局長として、事故の翌々日に現場に入らさせていただきました。蒸気が漏れた後のようにさまざまなものがまだ散乱しているその現場に立ち、この場所で四人が亡くなられたという現場で黙祷をささげさせていただきました。そして、その後お一人の方が亡くなられた。その方は、まだお子さんが生まれたばかりだ。

 無念という言葉があります。不可抗力で亡くなられたのであるならば、私は、それは遺族の中でも何とか気持ちの整理がつくのではないか。しかし、こんな事故で亡くなられた五人の方々のお気持ちを考えたときに、委員会の場にふさわしいかどうかわからないが、せめてネクタイだけは黒いネクタイで、その方々のかわりで、四十九日にもなっておりません、しかしながら、御遺族の中で、息子を、これで最後にしてくれ、二度とこんなことを起こさないでくれと言われたお父さんがおいでであります。私は、その気持ちを胸に抱き、この質問をさせていただきたいと思います。

 私のおやじは別に関電の社員でも何でもありません。だからこそ、きょうは参考人でお越しをいただいておりますが、厳しい質問になる場合があれば、大変参考人の皆さんには失礼になるかもしれませんが、お許しをまずはいただきたい。そして、私は、質問するに当たり、私自身十一年間、途中で一度落選がありましたが、エネルギー問題、電気事業法の改正から始まり、原子力災害特別措置法、そして、あの動燃の事故、ジェー・シー・オーの事故、さまざまな場で、この国会で立ち会った人間として、原子力というもの、日本のエネルギー政策というものをある意味で推進をしてきた一人として、厳しくこの問題について処していきたい。そして、何よりも大事な、この原子力政策を進めていく中で大事な安全というものと、そして国民、地域の皆さんを初めとする信頼というもの、それをどうしていくのか、そういう観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、短期と中期にこの問題は分かれてくる。短期の課題、問題点という中で、私は、まず、関電の皆さんに御質問させていただきたいのは、今後の遺族のケアというものをどうなさるのかということであります。

藤参考人 お答え申し上げます。

 吉田先生、本当に今回の痛ましい事故を起こしました、私、本当に責任を感じております。

 遺族の方々に対しましては、実は、先週の土曜日に、もう一人、二十五日に亡くなられたお方の御葬儀が済みましたところでございます。

 私、事故の起こりました明くる日の十日の日に病院の皆様のところへ参りまして、遺族の方におわび申し上げました。そして、先週の二十五日には、その日の夜、遺族の方に、申しわけないということをお伝えに行ってまいりました。そして、今、私どもといたしましては、遺族の皆様方のお気持ちに沿うように、今、先ほど先生が言われましたように、四十九日も済んでおりません。その中で、遺族の皆様方のお気持ちに沿うように、誠心誠意、できる限りのことをさせていただく所存でございます。どうかよろしく御指導賜りますようにお願い申し上げます。

 以上でございます。

吉田(治)委員 あの福井の地域というのは、私の家内の里でもありまして、非常に浄土真宗の熱心なところ、まさに四十九日というものが大変大きなウエートを占めてまいります。

 私は、そのことに向かって、会社も遺族のケアをすると同時に、私たち国会自身もこのことについて、事故の原因、再発防止を含めた取り組みを積極的にしていかなければならないと考えております。

 現在の遺族のケアについては、具体的なことは、やはり、いろいろな方にお聞きしますと、四十九日が終わらないとと。私は、それでいいと思います。心のケアというものをまずされていただいて、その後、あの生まれたばかりの赤ん坊の子が立派に育つように、私はそれを会社側に強くまずは望みたいと思います。

 事故原因、一番、なぜこういうことが起こったのか。

 私は、今回の事故は、まずはあってはならない。国民の信頼感というもの、信用というもの、それは何かというと、起こった場所が問題である。中身は産業事故だ、やれ何だということは言えるかもしれない。しかし、安全に対する信頼というものが最も必要とされる原子力発電所の敷地内で、しかも建屋の中で事故が起こったということ。そして、被害者が一人ではなく、四人が五人になり、六人の方がまだ苦しんでいらっしゃるということ。そして、現状、報告されている限りでは、アクシデント、不可抗力というものではなく、ある意味で人災であり、今同僚議員の質問にもあったように、また答弁にもあったように、長期にわたる安全チェックの放置という意味で、法律的に言えば、これは重過失という問題になるのかもしれない。

 それと同時に、私は、今、地元住民の皆さん方のお話も出ました。そのとおりだと思います。福井県の皆さん方も大変だと思うと同時に、私は、そこへ至るまでに、この原子力発電所を立地するまでの、そのために頑張られた社員の皆さん、用地係の皆さん、それと同時に、地域の中で地域の人たちに説明をして歩いた地元リーダーの皆さん方の苦労というものを一瞬にして水泡に化したということ。もちろん、風評被害もある、だからこそ徹底的な事故原因の追求と再発防止を図っていくことがまず短期の問題として重要だと考えております。

 経済産業省の方では事故調査委員会を設置されたと聞いております。委員の方々の、専門家としての方々の御参加も聞いております。今どういう現状になり、今後どういう形をしていくんでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 事故調査委員会はこれまで三回開催いたしました。その中で、配管が減肉した原因と指摘されたエロージョン・コロージョンの現象につきましては、現場で採集されたデータを分析し、そのメカニズムを明らかにしようとしております。また、減肉の可能性のある部位が関西電力や協力会社による点検から漏れてしまった経緯につきましても、関係者からのヒアリング内容や関係の文書等を吟味することにより、明らかにしようとしております。

 再発防止策に関しましては、まず緊急に、すべての原子力発電所や主要な火力発電所に関しまして、事故を起こしたと同様の肉厚管理の漏れがないかどうか調査いたしまして、その結果を原子力安全・保安院として検証いたしまして、八月二十七日の三回目の事故調査委員会に報告いたしました。

 また、抜本的な再発防止策につきましては、事故調査委員会や本日の御審議を初めといたします各方面からの御意見を参考にいたしまして、鋭意進めていく考えでございます。九月中にあと二回ほどこの事故調査委員会を開催いたしまして中間的な結論を出したい、こう考えております。基本的な考え方は、あるいはまた再発防止の要諦は、あくまでも事業者がしっかり点検を行うことで、これをいかに実現するかということ、また他方、国の関与の仕方が今のままでよいかについて検証する必要があると考えております。

吉田(治)委員 保安院長の今おっしゃられたように、やはり最後は現場の会社ということになってくるんだと思います。私は、自己点検、自己保安というものを国が徹底的にやると、またそれだけの人員もいないと思いますし、予算もできないという中では、当然のことだと思います。余りにも関与の度数が強くなり過ぎるということは、私はぜひともやめていただきたい。

 ただ、今回の事故の中で、これは九月で中間的報告を出すということになれば中期の課題になるかと思うんですが、単にこの事故は、現場の、今言われているように減肉だとか、今、片仮名で何とかエマージョンだとか言われました。あれ、やめてください。日本語に直してください。そんな片仮名にするから、原子力に対して国民の皆さんが、わからないものだ、事故が起こったら怖いものだと思ってしまうんじゃありませんか。まずみずからのその姿勢を変えていくということが、私は大事ではないかと思います。

 そういう中で、中期的な問題、課題の中では、この事故調査委員会の中に、これからも委員を追加するという一文がありました。まさに今回の事故の検証をして、例えば救急車の到着が三十分もかかってしまっただとか、現場へ行ったらさまざまなことがありました。リスクマネジメント、リスク管理とこのごろよく言われます。そして企業自身の中に、コンプライアンスという言葉がこのごろございます、法律遵守であるとか、また説明をする責任とか。そして会社自身、またシステム自身、会社だけではなく国側にも何らかの問題があったのではないか。システム工学というんですか、そういうふうな、事故だけではなく、事故が起こり得るような環境が二度とできてはならない、そういうふうな取り組みをしていく必要があると思うんですけれども、その辺はいかがお考えになられるでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの事故調査委員会の審議では、事故が起きた部位の破損メカニズムの考察、米国のサリー原子力発電所での事故後の国内外の対応の検証、各社の点検、管理指針及びその運用の適切性の検証、国内のすべての原子力発電所と主要な火力発電所に係る緊急調査の結果の検討等が主な検討事項でございました。このような検討事項に関する限り、現在の事故調査委員会のメンバーは、原子力工学、機械工学あるいは腐食の専門家ということで、日本でも最高水準の学識を有する専門家にお集まりいただいているというふうに考えております。

 一方、今先生から中期の課題ということも御指摘ございましたけれども、今後議論を進める過程で、例えば品質保証など、企業の体制を議論する必要が生じる可能性も当然にございます。そのような場合には、御指摘のような専門性を持つ方も含め、主要なメンバーを追加することについても柔軟に対処してまいる考え方でございます。

 いずれにしましても、事故調査委員会における議論が必要に応じて幅広い視野からのものとなるように、適切に運用してまいりたいというふうに考えております。

吉田(治)委員 その場合、あと会社側も、これはもちろん、これから事故原因、そして再発防止ということを短期的になさっていくと思いますが、きょう、例えば事前にいただきました、参考人冒頭発言の要約の二ページの一番上、「破損箇所の状況」といった場合に、この文章、わからないんですね、私たち素人が読むと。破損箇所は、事故後弊社測定では約一・四ミリ、経済産業省事故調査委員会の測定では最も薄いところは〇・六ミリ、当該箇所は、本来と。どういうことなのかと。破損したところは一・四ミリだけれども、もっと薄いところがあったのか。それとも、破損した箇所をもう一遍調べ直したら〇・六だった、会社として、一・四の数字だけは出すけれども〇・六はやはりちょっとまず過ぎるぜ、出さぬでおこうか、そうとらえられても仕方がないと私は思うんです。

 また、事故直後に保安院の方から受けました事故現場のイラスト、非常にわかりづらい。私は書き直していただきました。こんなものを出してきて、事故について理解をしてくれ、それはできないんじゃないかと。保安院から出てきた資料を見ましたら、一番最初に関西電力作成と書いてありました。私は、事故原因の追求、そして再発防止という、多分、社長のお答えは決意だと思いますが、まずは、では、破損状況のこの文章はどういう意味なのか。なぜ会社として、事故後弊社測定の破損箇所の数字だけを出して、一番薄かったところは出さなかったのか。いかがなんですか、その辺は。

藤参考人 恐れ入ります。先生、お答えいたします。

 実は、事故の直後に、五十センチばかりの配管がめくれたのをごらんいただいたと思います。あそこのところを当社の社員がスケッチいたしまして、それでそのときに厚さをずっとはかってまいりました。はかりましたときには、その一・四ミリメーターのところが一番、そういう意味で薄かったという測定をしたわけでございます。それでその後、原子力安全・保安院殿が、私どもがしましたよりもかなり詳細になさったと私理解しておりますが、私どもの測定では一・四のところしか出ませんでしたが、その後でずっと詳細に測定されましたら、〇・四ミリメートルのところもあったと。(吉田(治)委員「〇・六でしょう」と呼ぶ)失礼しました。〇・六ミリメーターのところもあったということが、この三行分でございます。

 それからその次の、「当該箇所は、本来測定すべき箇所ですが、」と書いてございますのは、破損いたしましたその肉厚を本来測定するべきでありました、そういう意味でございます。

 恐れ入ります、今の先生の直接の御質問には、そのようなことでございます。

 大変、最初にイラストが余りいいものでもございませんで、測定が不十分でございましたことにつきましては、おわび申し上げます。しかし、決して、〇・六ミリメーターのところがあったのに隠したとか、そういうことでは、私、ございませんです。

 以上でございます。

吉田(治)委員 本当に、その現場の状況を私、見ているだけに、そのときの状況からすると、こういうことも起こり得るのかなという感じはするのですけれども、しかしながら、現実的にこういうふうに数字が出てきているということは、やはりその部分で、まさに検査だとかそういう測定だとかいう部分で、信用だとか信頼感、私、何度も申し上げますように、安全というものと信用、信頼感がなければだめだという部分で非常にこれはマイナスのものになってくる。

 また、反対を言うたら、こういう文章を国会の場に出してくるということ。どなたが書かれたのか、どなたが目を通されたのかわかりませんが、私は、もっと、国民の皆さんに見ていただくんですから、細心の注意というものを払っていただかなければならないのかなという感じがしております。

 そういう中で、同じ二ページ目のところに、事実関係の中で「平成二年肉厚管理指針を策定し、」と書いておりますが、一九九一年、先ほどから、二十八年たってということですけれども、指針ができた、このときの社長さんはどなたでしょうか。

藤参考人 平成二年の当時の私どもの会社の社長は、森井でございます。

吉田(治)委員 森井さん。わかりました。

 いや、しかし、新聞報道等では秋山さんとなっていますが、秋山さんは違うのですか、このときは。

藤参考人 平成二年当時は森井でございました。

吉田(治)委員 それでは、そういう中で、今申し上げた事故原因、再発防止について、今後、社内的にどういうふうに取り組んでいかれるのでしょうか。社長があれでしたら、現場の責任者でいらっしゃいます岸田副社長からお答えいただいても結構でございます。

岸田参考人 お答え申し上げます。

 こういう事故を起こしまして、本当に申しわけなく、おわび申し上げます。

 これからのことでございますが、事故原因の究明と、それと、本当に、先ほど来申し上げていますように再発の防止ということで、当面とりましたことは、とにかくまず、今まで安全だと思っておったところがこういうことになりましたので、立入禁止ということで、必要最小限以外のところをすべて立入禁止いたしまして、それを何度も、立入禁止を、さらに制限から禁止というようなことで、繰り返し徹底するようにいたしました。それは、まず安全を守るためでございます。

 それで、一方、安全確認をこれからするということで、具体的には、今回こういうことで点検漏れがあったことをどういうふうに防止するかということでございますが、点検計画の元帳である点検票とか、あるいはスケルトン図、スケルトン図というのは現場の図でございますが、それらを次回定検までにきっちりと、まず、日本アームが、点検票とスケルトン図と余寿命評価を添えて私どもに提案する、私どもは、それをみずからきっちりチェックするということをやることで点検漏れを防止する。

 とりあえず、ちょっと順序を間違えましたが、今回の調査で、そのシステム、元帳である点検票に漏れがなくなったということでございますので、これをきっちりと実施していくということが一番大事なことでございますので、そういう意味で、先ほど来申しましたように、点検票及びスケルトン図等をつけて出していただき、そして私どもはそれを逐一チェックしてということをきっちりやっていくということが一つ。

 それから、今回こういうふうに日本アームの方から、もし新たに今後点検箇所が追加があったというようなことがありますと、そういう新たな登録ということをはっきりと書いて、そして私どもにお出しいただく、そういうことをきっちりと工事仕様書に明記して、漏れのないようにするということ。

 それから、私どもとしましては、今後、みずから余寿命の評価を行って、点検管理票の中から点検の優先順位を決めて、そして中期点検五カ年計画を策定するという、みずからの計画をきっちりと評価するということを決め、かつ、それを発電所の方に既に指示いたしました。(吉田(治)委員「余り長くなくて結構でございます」と呼ぶ)はい。

 そういうことで、実質的に、二度と起こらないような形を進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

吉田(治)委員 先ほど、この原子力発電所をつくるに当たっての、地元の方、立地のお話を申し上げました。

 でも、今回は、これはもう皆さん方も御意見をお持ちのとおり、建屋内で起こった。いわゆる構内業者、協力業者というもの、私の父も小さな町工場をやっておりまして、まさに下請の悲哀というのは、私は、もう生まれたときから、まさに物心ついたときから見ております。そして、その構内業者、協力業者だけでなくて、関西電力に働く方々自身も建屋の中で働かれる。やはり労働災害という、これは厚労省の方が御説明に来られているのですけれども、これはもう結構でございます、時間の都合上。

 ただ、今、厚労省としても調査をしていると聞いております。しかし、労働災害というのは、何もそういう厚労省の関係の労働災害でなく、そこで働く人たちの不安感、そして、そこで働く方々が地域に住まわれて、帰ったときに、地域の皆さん方に、いや、あんなところ、だれが何を言おうが大丈夫だと言えるということ、そういうものを持っていく。私は、それが一つの再発防止策になっていくことでもあり、そうしないと、こういう事故が二度と起こらないということはあり得ない。

 事故というのは、よく言われますように、原子力の問題というのは、一〇〇%事故がないという前提では今もう考えてはならない時代になってきているのは、私は確かだと思います。私は、そこで、働く方々の不安感というものを取り除いていくということが必要だと思いますが、その辺は、藤社長、どういうふうにお考えでしょうか。

藤参考人 お答えいたします。

 おっしゃいましたように、私、冒頭の御説明申し上げたときにも申し述べましたけれども、協力業者の皆様方の安全を確保するというのが第一でございます。

 それで、先ほど岸田も申しましたが、今、とにかく現地におきましては、立ち入りを制限いたしまして、このような災害が起こらないような措置を当時講じておりますが、今回、木内計測の皆様方、被災された皆様方は、八月十四日から始まる定期点検の事前の準備作業をされておりました。

 それで、私どもは、今後、配管の健全性が確保されて、そして協力会社の皆様方がもう大丈夫だと思っていただいて、そして地元の皆様方に、そうだ、もう大丈夫だと思っていただくまでは、その定検の事前準備作業というのはしないことにしております。そして、先生言われました、中長期的にきちっとした対策を立てた上で、安全なところを協力業者の皆様方に提供して、もう一度協力して御一緒に補修作業をしていただきたいというふうに思っておる次第でございます。

吉田(治)委員 社長のごあいさつの中で最後、先生方におわびをということを言われましたが、私たちにおわびをしてもらうんじゃなくて、私は、やはり国民の皆さんに、この原子力というもののエネルギー、とりわけ原子力発電に対する信頼感の喪失というものをしたことに対するおわびを、ぜひともしていただきたい。

 そして、平成二年の肉厚のときには森井さんが社長だと言われました。その後の社長は、何年から何年がどなたが社長を務められて、現在その方々はどうされているんでしょうか。

藤参考人 お答えいたします。

 森井社長の次に社長になりましたのは秋山でございます。その次に社長になりましたのが石川でございます。その次、私が石川から引き継ぎました。

 今、年次とおっしゃいましたので、ちょっと、ひょっとして正確性を欠くかもわかりません。私は平成十三年の六月末からでございます。石川は平成十一年の六月からでございます。その前は、森井から秋山が引き継ぎましたのが、ちょっとこれ、済みません、正確には私、今数字はちょっと思い出せませんが……(吉田(治)委員「おつきの方、わかっているんだったら教えてあげてください」と呼ぶ)後で出します。そして、現在、森井は当社の顧問でございますし、石川は相談役でございます。秋山は当社の会長でございます。

 森井から秋山に引き継ぎましたのは四年ないし五年でございますが、ちょっと正確なあれは、すぐ調べて申し上げます。

吉田(治)委員 この検査の問題というのは、過去にさかのぼったお話でしたよね、今までの中で。そうしますと、それぞれ歴代のどなたがどういうことをやられてきたかというのは実は私たちは自由に知りたいんですよね。ですから、参考人としておいでいただく中においては、そのことというのは、今もしもわかるのであればこの時間中にお答えをいただければと思っています。

 そういう中で、今大臣がお戻りになられました。私は、このエネルギー、とりわけ原子力発電に対する信頼感の喪失、そしてその回復に向けてということが大変短期的に信頼感を喪失した。しかし、中期的な課題、問題点で信頼感を回復していかなければならないと思いますが、大臣として、エネルギー政策、原子力という問題、それをこれから推進していくという立場をまず確認していただき、そして、しかしながら、それに向かって信頼回復ということをどうしていくのかという御決意のほどを一言いただければと思っております。

中川国務大臣 途中、中座をして失礼しました。

 今、吉田委員からの御質問でございますが、資源のない日本におきましては、この原子力エネルギーの重要性というものは、発電だけでももう三分の一ということでございます。そしてまた、原子力エネルギーのメリットというものもあるわけでございますし、我が国のエネルギー政策、発電政策の中で重要な位置づけを占めておりますので、今後ともこの政策を推進してまいりたいというふうに考えておりますが、これは巨大エネルギー施設であり、そしてまたその中でもとりわけ原子力という、特に我が国におきましては極めて国民挙げて関心が深いといいましょうか、注意深く見守っている分野でございますので、もとより一般論として、すべての発電所あるいは大規模施設というものは安全でなければならないわけでございますけれども、とりわけこの原子力発電所につきましては安全性というものが大前提でございます。

 しかし、先ほど吉田委員御指摘のとおり、安全神話とか、絶対に安全だ、こういうことをやっていれば絶対に安全だということに安易に、惰性と言ったら言い過ぎでしょうか、緊張感を欠くようなことがあってはならない、このことが今回の悲惨な大事故につながったんだろうと思っております。

 そういう意味で、今回、我々も監督責任の立場といたしまして、我が省においても今後どういうふうにすべきかということをゼロベースで検討していかなければならないということは、ちょっと後の話になるかもしれません、緊急にやることがございますので。しかし、そういうことも十分今私自身考えておりまして、安全性、そして何よりも御地元の御理解と御支援というものを前提にした上でこの原子力政策を進めてまいりたいというふうに考えております。

吉田(治)委員 今度、大変失礼なんですけれども、大臣、九月の末には内閣改造といううわさも乱れ飛んでおりまして、後、事務方がそれを引き継いでということですけれども、エネ庁長官がきょうおいででございます。エネ庁長官として、今の大臣の意を受けて、それはそのまま遂行していくという形で理解してよろしいんでしょうか。

小平政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣からお話がございましたように、原子力は我が国のエネルギー政策の中で大変重要な位置づけでございますけれども、その大前提といたしまして、安全の確保、それから、何よりも御地元の皆様それから国民の皆様の御理解が前提になりますので、そういうことで、今大臣のお話にございましたとおり、今後ともエネルギー政策にしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。

吉田(治)委員 短期の課題、問題点、今、遺族の問題から事故原因、再発防止、そして中期の課題、問題点として、信頼回復ということで大臣からも答弁をいただき、現場の責任者のエネ庁長官からも答弁をいただきました。また、事故原因の調査については、まず今、緊急的に中間報告をする、そして、これから品質保証、さまざまな部分を含めて、委員の部分も広げていくということを言われました。

 こういうことは、いつも申し上げているんですけれども、すべて、何か事故が起こったら事業者である会社が、悪いという言い方がいいのかどうかわかりません、事業者に全部責任をおっかぶせていくのではなくして、やはり国も、今大臣の答弁にありましたように、原子力政策というエネルギーの安全保障にかかわる一番大きな政策を進めていくという立場の中では、やはりそれなりの責任もあると思います。

 この事故調査委員会の中においては、一つお聞きしたいのは、会社のことだけ、現場の事故の原因だけではなくして、行政側、例えば私申し上げましたように、行政のシステムの問題であるとか行政自身の取り組みの問題、だから自主保安はだめだとか言うつもりは全然ございません。

 ただ、今、例えば原子力保安院自身、また独立行政法人原子力安全基盤機構の人材育成というふうなものもやはり一つ課題にあると思うんです。原子力保安院の皆さん方は、多くの皆さん方、例えば原子力を大学で学ばれてこの役所へ入って来られましても、残念なことに現場を余りにお知りにならない方が多いのではないか。また、この独立行政法人も、人を採用する、中途採用でたくさん集めているとはいいながら、現場を知っている方も余り多くないと言われております。

 私は、将来に向かっての事故調査の調査委員会の中で、行政のあり方というのはどういうふうに調査委員会として考えているのか、また、それを受けて、今現実に、先ほど保安院長が言われたように、行政としてもすべきところがあるんだったら、するべき人たちの人材というものをどういうふうにとらえ、考えているのか、その辺はいかがなんでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 まず一点目、事故調査委員会における行政のあり方の検証でございますが、再発防止策、特にこの内容を検討するに当たりましては、現在、二次系の配管の点検が管理指針に基づいて自主点検に任されている、こういう状況について、このままでいいのかどうか、国の関与を仮に強めるとすればどういう形が適切なのかということについて特に検討をするということになろうかと思います。

 それから二点目、人材の育成でございます。

 御指摘のとおり、やはり原子力発電所の安全を確保するという観点からいいますと、現場が大変重要でございます。これは、事業者はもちろんのことでございますけれども、私ども保安院の組織にとりましても重要な課題でございます。現在、百十名強の保安検査官が全国のサイトで働いておりますが、彼らの資質をいかにアップしていくのかということが非常に大事でございます。とりわけ、一昨年の東電問題以降、検査のあり方を変えてございます。いわゆるマニュアル型といいますか、結果だけ見る検査ではなくて、プロセスを見る、あるいは抜き打ち型、抜き取り型で見る、こういう形に変えておりますので、一層のこと、検査官の資質の向上に取り組んでいるところでございます。

 今、御指摘のとおり、民間で経験を積んだ方を中途採用の形で積極的に登用するというようなこともしておりますし、あるいはまた若手の職員、これは、いわば現場で働くというのは非常に重要な登竜門でございますけれども、こういった若手の職員の研修等を通じた人材育成、こういったところに力を入れておりますけれども、ますます一層充実させていきたい、かように考えております。

吉田(治)委員 院長、大臣にも聞いていただきたいんですけれども、原子力に対する、これだけ国民の信頼感がなくなってきた安全性というものに対して、それであるならば、例えばさきの国会で、特許法の中で、特許の申請が多いからということで臨時で百人ほど雇って、そこで処理をして、そしてその方々には弁理士資格をお与えするという法律がこの委員会で通過をし、国会で通っていきました。

 まさに今、人という部分でいうならば、御承知のとおり、多くの企業において、リストラという名前で結構多くの方がおやめになられている。多分、原子力の現場の方もおいでになるのではないかなと思っております。また、定年退職をされる方もたくさんおいでだと思います。私は、例えば年限を区切って集中的にお雇いになられて、徹底的に国の責任のもとで点検をするとか検査をするということも一つ考えてもいいのじゃないかと。やはりそれが国民に対して、信頼感であるとかまた安心感を国の責任のもとでできることではないかなというふうな、これはこれから先、中期的な課題としてこの委員会また国会等で取り上げていく課題ではないかな。党内的にも議論を進めていきたいと考えております。

 そこで、先ほどから社長のお話を聞いておりますと、事前準備、事前準備と言われておりました。私、この辺ちょっと疎いんですけれども、もともと昔は、定期点検のときに、出入り業者というのですか構内業者の方が入って、定期点検の日から準備を始めていったということで理解していいのか。では、それがなぜこういう形で事前準備という形になったのか、ちょっと教えていただけませんでしょうか。

藤参考人 本件につきましては、詳細を後ほど岸田の方から御説明してよろしゅうございましょうか。(吉田(治)委員「簡単にお願いします」と呼ぶ)

 先ほど御質問のございました、森井から秋山に社長がかわりましたのが平成三年十一月でございます。本件の責任は私、今起こったところでございますので、私にあると考えております。

 それでは、お許しを得まして、岸田に今の準備作業の点を簡潔に……

吉田(治)委員 社長、難しいことは要らないんです。なぜ、今まで定期点検をしていたのを、事前準備という形で点検の日に作業の準備を始めていたのを、前の日、二、三日前から準備をするようになったかということなんです。

藤参考人 それは、もともと、いわゆる準備作業というのは当然定期検査を始める前にあったと思います。その準備作業がどのように以前と今とで変わったかということを、詳細を御説明させようとしているところでございますが、よろしゅうございますでしょうか。

岸田参考人 お答え申し上げます。

 準備作業と申しますのは、発電所の定期検査の前に、その作業の安全性あるいは効率をよくするために足場の養生とかあるいはビニールシートを敷くとか、具体的にはそういうような作業で、定検作業そのものではございません。

 ところで、この準備作業と申しますのは、私どもの原子力発電所が始まって最初からずっと、こういう定検のための作業の安全確保とかそういうことでございますので、最初から準備作業というようなことをやっておりました。今回変わったとか、そういうものではございません。

吉田(治)委員 社長に、今これは大事な問題なので、今大臣の方から、原子力の信頼回復に向けてどうするのかというお話をいただきましたけれども、事業者として、またこれは電気事業連合会の会長というお立場もあると私思うんです。きょうは電気事業連合会の会長というお立場で来ていただいておりませんから結構ですけれども、信頼回復に向けてどうするのかということ、一言おっしゃっていただけませんでしょうか。

藤参考人 先ほど申しましたこととちょっと重複するかもわかりませんが、まずは地元の作業者の皆様に信頼していただかなくてはなりません。そういう意味で、作業上の安全を確保するというのが第一でございます。その前提のもとに、現在行っております配管の検査、これを完全なものにいたしまして、地元の皆様方に御説明し、もちろん、県御当局、国の方の御当局のお許しも得まして、そして地元の皆様方の御理解を得た上で次のステップに移っていきたいというふうに思います。

 そして、その後、時間は随分かかるかもわかりませんけれども、福井県、地元市町村、隣接市町村の皆様方に、ぜひもう一度、私どもの会社、今本当に信頼を失う状態になっておりますけれども、もう一度信じていただけますように、地道な活動をさせていただきたいというふうに思います。

吉田(治)委員 あとは、もう時間ですので、私、最後、この委員会、参考人の皆さん方のお話を聞きながら、また政府の答弁を聞きながら、こうではないかなと思う部分をちょっと披瀝させていただいて質問を終わらせていただきたいんです。

 やはり、電力の自由化という形で、先ほど私、電気事業法の改正のときからこの委員会で質疑等をしてきたという立場からすると、自由化をすることによってコストを下げなければいけない、そういう中で、例えば修繕費であるとかまた建設、人件費等々の部分で、安全という側面というのが、これぐらいだったら大丈夫ではないか、目先の成果だけがどうも求められてきてはいないか、その面というのが今回ひょっとしたら出てきてはいないかという非常な疑念を感じているということが一点。

 そして今、御承知のとおり、中近東の政情不安の中で油の値段がどんどん上がっている。投機というものもあるかもしれません。しかし一方では、アメリカ、中国等、石油の輸入国が超大国としてなってきている。サウジの油の状況も非常に限界が見えてきているという中で、日本という国の独立のためには、エネルギーの安全保障というものをしっかりと確保していかなければならない。しかし、そういう中においてはやはり原子力の推進をしていく、今大臣も言われました。

 しかし、その原子力の安全管理といった中で、先ほどからの議論の中で、一次系だ、二次系だというのは私は関係がないと思っております。一番日本の中で安心な、また信頼が置ける場所であるべきであった原子力発電所の敷地内の建屋というものであれば、一次系も二次系も関係がないということ。

 そして、今、日本の国の独立にとって大変大事なエネルギーへの信頼、安心、安全、喪失をしたからみんな回復をしようと、今大臣も社長もお答えになられた。その原子力への不安を国民に与えた、また与えているということは、日本のエネルギーへの脅威、そういう部分で私は経営責任があると断じざるを得ません。ここは国民の視点で、国民の目線で、信頼感、そこに経営者が残念なことにマイナスを与えた。固有名詞の話ではありません。お国の話を私は申し上げたい。

 そしてもう一点。同僚議員の質問にもありましたように、今回の事故、技術の発展、原子力学会という、また、参考人の答弁にもありましたサリーの発電所の事故、そしてこの減肉という問題、私たち一般の人間はこの事故が起こるまで知らなかった。不可抗力ということで、例えば以前は金属疲労などという言葉は予想もできなかった。技術の発展と失敗の積み重ねというもの。例えば、この場合であるならば、サリー原発、そしてそこにある予測可能性、減肉の確認だとか、論文だとか、ステンレスだとか、いろいろな言葉が出てまいりました。そういうものがありながら、それら以前の問題として、言い方はよくないかもしれないが、検査に手抜きがあったということになりはしないのか。

 そして、私は、日本人の文化として、こういう一連の信頼を回復するのには、まずはみずからの潔さというもの。残念なことに、日本じゅうどこを見渡しても、さきの参議院選挙の結果と言っては、大臣、答弁結構ですけれども、まさに潔さというものがこのごろ見えない、だからどんどん信頼感がなくなっていっているのではないかということ、私はこのことを強く感じたということ。

 そして、企業の、これから事故原因を明らかにしていく、二度と起きないためにしていくのは当然のことでありますが、今私が質問をさせていただいた中で明らかになってきたことは、また同僚議員の質問の中で明らかになったことは、この問題は平成二年以降にはもう明らかになっていた。現場は知っていた。そしてそれは、安全というものは、たとえ関係会社、出入り会社、下請であろうが何であろうが、最後は、責任はその会社のトップが負わなければならないということ。これは、さきの東電の疑惑、東電の問題のとき、私はそのとき国会にいなかったので強くは言えないんですけれども、それがあったということを私は強く申し上げると同時に、先ほど四十九日というお話を私はさせていただきました。

 四十九日に亡くなった方の魂は成仏をすると言われております。私は、委員長にぜひともお願いをしたい。それまでにもう一度この委員会を開いていただいて、参考人においでをいただいて、そしてこの事故の原因、再発防止、そのときそのときの進捗状況というものを、ぜひとも国民の前に国会を通じて、委員会を通じて明らかにしていただくと同時に、今歴代社長のお話を聞いていた中で、社長自身は私が最高責任者と言われているが、関西電力株式会社は民間企業ですよね。国営でも公有でもない。では、株主総会の議長はどなたがされているのか。代表取締役会長がされているじゃありませんか。

 同業他社、もちろんされている会社もあります。しかしながら、業界紙である電気新聞の年頭所感、各電力会社の新年の経営者の抱負、全部調べました。電気新聞は関西電力だけであります、会長が年頭所感を書かれているのは。ほかは皆さん、社長さん。そして社内報。先ほども申し上げました、株主に最高責任を持つ議長というもの、それを会長がやられている企業、会長がやられている電力会社、これらもすべて会長、社長が年頭所感を述べられています。しかしながら、関西電力という会社だけは会長だけが年頭所感、一年間こんな経営をするんだと。まさにこれはアメリカ型の経営、会長がCEO、最高経営責任者、社長がCOO、業務執行責任者と考えても私は考え過ぎではないと思います。

 だからこそ、次回の委員会、四十九日の前までに開いていただくと同時に、次回の参考人としては、社長だけではなく会長にもぜひともこの場においでいただいて、CEOという形でのこの場での参考人としての御意見、そして私どもの国民が考えているその質問に対してお答えをいただきたい。その配慮を委員長、また、多分全委員、理事の皆さん、反対される方はいられないと思いますけれども、お願いを申し上げまして、この委員会の質問を終了させていただきます。

根本委員長 その点については、追って理事会で協議させていただきます。

 田中慶秋君。

田中(慶)委員 民主党の田中慶秋です。

 このたびの三号機の蒸気漏れ事故に対する、この事故に対しての被災された五人の死傷者の皆さん方には心から御冥福を申し上げ、六人、いまだ病院生活を送られている皆さんにおかれましては、一日も早い回復を申し上げたいと存じます。

 さて、今それぞれ同僚委員からこの原子力発電に関連する事故についての質疑が行われました。私は、基本的に、危機管理という問題が今問われているわけでありますけれども、あの一九八六年十二月に起きたアメリカのサリー原発、あるいは日本における動燃を初めとするジェー・シー・オーの事故等々を考えたときに、その事故に対する徹底的な究明やあるいはまたその責任ということが明確になっていない、そこに大きな問題があったんだろう、このように思っております。

 そこでまず質問させていただきたいのは、この当面する一番の責任者は、事業者の関西電力であります。事業責任として、企業責任として、社会的責任として、これをどう考えられているのか、それが一つ。

 二つ目は、やはり事業者だけではありません、行政責任としてこの問題をどう考えておるのか。かねて、私たちは、ジェー・シー・オーのときも、あるいは少なくても多くの問題を抱えた動燃のときも申し上げてまいりました。行政責任も当然これはついて回るわけであります。しかし現実には、その行政責任も明確にされていないところに、このような事故がまた再び、三たびという形で起きている。

 このことをまず冒頭に事業者側、行政側の皆さん方にそれぞれ質問させていただきます。

藤参考人 田中先生、今回、五人の方が亡くなられる、六名の方が重傷を負われるという大変な事故を起こしまして、私、本当に申しわけなく、おわび申し上げます。

 その上で、今御質問の本事故に関する関西電力としての責任でございますが、関西電力は、十一基の原子力発電所を福井県で運営、運転管理しております。その設置者、運営管理者としての重大な責任が私どもにあると考えております。さらに、日本アームは、これは当社の子会社であります。ですから、関電グループとしての責任も当然考えているわけでございまして、その意味で、グループとしても、そして関西電力としては発電所の運転、設置管理者としての責任、重大な責任を感じております。

 以上がお答えでございます。

中川国務大臣 今回の事故に関しましては、今、緊急の課題として、まず加療中の皆さんの一日も早い御回復、そしてまた原因の調査、そして二度とこういうことが起こってはならない。既に説明しておりますように、幾つかの人為的なミスというものも既に明らかになっているわけでございますし、その辺のことも含めた原因究明、これは捜査当局は捜査当局として、しかし、原子力行政、とりわけ原子力安全行政に関しまして、国、特に我が経済産業省はほかの経済活動分野より以上に責任が大きいと私自身感じております。

 したがいまして、監督責任者として、この問題に対してもちろん重大な関心を持ち、調査委員会を通じて現在鋭意努力をしておるところでございますが、最終的に経済産業省どうするかということについては、今、申しわけございませんが現在進行形でございますのでお答えできませんけれども、我が経済産業省が原子力安全行政についての国の責任者としての立場であることは、十分認識をしているところでございます。

田中(慶)委員 まず、今一番問題になっているのはこれらの責任問題であろうと思いますし、もう一つは、安全というものに対する認知というものが非常に軽薄ではないかな、このように思っておるわけであります。

 なぜならば、これだけの事故をずっと重ねてきておりますし、同種の事故が一九八六年に起こっているわけであります。そしてなおかつ、それらに対する検査項目のチェック、しかし現実にはそれが行われていなかった。ダブルチェック、トリプルチェックというものが、安全というものの中においては行わなければいけないことを現実に行っていなかった。

 まして、この配管は、百四十度以上、二百度、そして流速三メーター、そして溶接部分のあの渦を考え、酸化の原因に一番なりやすい条件であり、かつまた流体力学からしてもここは非常に事故が起きやすいところを、残念ながら調査項目から外れていた。このことは、私は、事業者だけではなくして、保安院が現場に配置をしている、なおかつダブルチェック、トリプルチェックというものについての安全のやり方が現実に行われていなかった、こういうことだと思います。

 特に、これは自主点検だから、こんなことをよく聞くんですけれども、自主点検であろうがなかろうが、エネルギー政策の大きな問題であり、かつまたこのことが今回の事故になっている。しかし、今の安全対策は、いろいろなところを調べても、ダブル、トリプルチェックがされていないところに大きな問題がある。

 特に最近の、社会全体がそうでありますけれども、事業者も行政も、単なるマニュアル化という形の中で、チェックシートを、ただそれをチェックしているところに大きな問題がある。この機能がどういう形で、どういう構造で、どうなっているかということを知らないものですから、その役割を十分認知しないままチェックシートを、そしてまたそのチェックはマニュアル化されて、形骸化されている、これが今の、全体的な今回の事故の要素ではないかと思います。保安院でこのことについてどう思いますか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事故に関しましては、事業者は管理指針に従い点検をしておりましたが、美浜三号機におきましては、運転開始以降、当該部位につきまして一度も点検をしていなかったということが明らかになっております。こうした事態を私どもは重く受けとめております。

 事業者が策定したものは当然に守られるという位置づけであり、その管理指針に基づく肉厚管理が適切になされていれば、今回の事故は発生することはなかったというふうに考えております。事実、この事故調査委員会、先週の金曜日に開かれました三回目の委員会におきましては、管理指針の内容につきましてはおおむね妥当である、こういう評価が出たところでございます。

 今後、こうした配管減肉に関します管理につきまして万全を期すために、事故調査委員会の審議を踏まえつつ、事業者に的確な管理をしてもらうにはどうすればよいか、今先生の方からダブルチェックという御指摘がございましたけれども、あるいはまた国の関与のあり方は今のままでいいのかどうかということにつきまして、十分に検討してまいりたいというふうに考えております。

田中(慶)委員 管理指針もさることながら、国のエネルギー政策として、国民の生活や日本経済に大きな影響を与えるわけであります。

 こういう中で、私は、たまたま今回の三号機の二次配管の問題で御指摘を申し上げました。この二次配管は火力発電所すべてが同じような、同種の構造と機能を持っている、これをチェックしなくていいのか。いや、電気事業法に基づきながら、工作物規程に基づきながら自主点検だから、こんな話もありました。しかし、私は、同じような事故が現実に起きているわけでありますから、現在千四百六十六、そしてその二分の一がチェックをされていない、ということは、いつ同じような事故が起きてもおかしくないわけであります。これは単なる関西電力の今回の三号機の事故だけではなくして、全国の火力発電所を含めて、同じような形態を持っているわけでありますから、このことも含めて、もし同じような事故が次々と続発をすることを考えた場合、大変な問題であります。

 ですけれども、この安全という問題に対する啓蒙なり思想なり教育というものが現実に行われていないから半数がチェックをされていなかった、こういうことではないのでしょうか。それをどのように今指導し、今後どういうふうに対策をしていくのか、お聞きします。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のとおり、今回の事故と同じようないわゆる配管構造を持っておりますのは、火力発電所につきましても同様でございます。

 したがいまして、火力発電所につきましても報告徴収命令を八月の十一日に発しておりまして、減肉の可能性のある部位のうち配管肉厚に係る検査を実施していない部位、あるいはそういうものにつきましての肉厚測定の実施計画といったようなものを、事業所が大変多いということもございまして、最終的には十月中旬までに報告をするように、こういう命令を発しているところでございます。当院といたしましては、この報告に基づきまして内容を分析いたしまして、その結果、必要に応じて適切な措置を講じていくこととしております。

 今御指摘のとおり、とりあえず肉厚測定の有無につきましては、半分強のユニットにつきまして点検が行われていないということが明らかになっております。こうした状況を踏まえまして、八月十七日に、肉厚検査等により安全が確認されるまでの間、作業員の安全確保対策を確実に実施するよう電気事業者等に指示をしているところでございます。

 いずれにしましても、現在行っております火力発電所につきましての報告徴収命令の結果を十分に踏まえまして、事業者による検査のあり方の見直しということにつきましても十分に検討していきたいというふうに考えております。

田中(慶)委員 そこで、関西電力の皆さん方にお聞きしますけれども、今回の事故の問題等について、例えばこの二次配管の溶接部分等について、あの事故が、少なくても、水質や、あるいはまた温度や、さらには曲がった部分に対する渦のことによって侵食や腐食ということを皆さんは想定していなかったかどうか。想定していたならば、一九八六年の事故以来、少なくても、例えばその部分は五年ごとにチェンジをするとか、あるいはまた材質を変えるとか、いろいろなことを検討されて、他の社においてはもう既に行っている、関西電力がそのことを行っていなかったことにやはり大きな問題があるだろうと思います。

 このことについて、どのように考えられて、どう対処しているのか、お伺いしたいと思います。

藤参考人 申し上げます。

 冒頭、私御説明申し上げましたときにも申し上げましたけれども、このような減肉、渦によって生ずる減肉、侵食といった問題が、当該部位はオリフィスというものの下流側でございますので、そういうところで起こるということは最初から認識しておりました。

 しかしながら、その一番もとの図面でございます、一番もとのスケルトン図という図面のところから、この部分は渦が生じて侵食されるのだというところは全部、ここだ、ここだ、ここだという印がついているわけですけれども、この部分だけは、平成二年に管理指針をつくったときからこの部分が漏れておりまして、それで、当然、先生御指摘のように、時々その一番もとに返って原票をチェックするという仕組みをやるべきであったと思いますけれども、その仕組みが抜けておりまして、それで現在まで、事故が起こるまで、そのポイントを、肉厚を検査する、肉厚を測定するということをしていなかったということでございます。

 その間の事情につきましては、先ほど冒頭の御説明で、二年に、最初にできたときに漏れておりまして、その後、平成八年になりまして、その仕事を三菱重工さんから私どもの子会社でございます日本アームに引き継いだときも漏れておりまして、それが結局、漏れたことが原因で、最終的まで、破損まで気づかなかったということでございます。チェックをしていなかったというのは、重々これは責任を感じております。

田中(慶)委員 本来ならば、製造の段階からこのようなことが指摘をされておるんだろうと思います。

 まず、事業者側の関西電力にお聞きしますが、この原子力の二次配管の製造過程で、どなたが現場を見て、どなたがこのマニュアルを担当されたのか、チェック項目を担当されたのか。

 私は、最近、余りにも分業化するために、関西電力は運転だけをすればいい、三菱重工はつくるだけでいい、そしてチェックを、安全は安全としてまた別のところがチェックをされる、こういうところに今回のようなミスが生じているんではないかなと。一貫性がない。

 昔であるならば、ある面ではベテランの人がいて、運転されているその音を聞きながら、これはちょっとおかしいな、さわった段階で減肉をされていることもわかるそうであります。ところが、もうそういうベテランの人たちがほとんどいない。社内教育もされていない。昔は、金の卵と言われるような形で専門家を育てて、学園をつくってそこの中で育てて、本当の専門家を養成してきたわけですけれども、現実には、電力各社も今のような社会のニーズの中で、なかなかその専門家を養成することができない。結果的にこのような事故が起きているんだろうと私は思っているんです。

 ですから、もっと安全というものについて、安全がすべて最優先で行っていかなければいけないにもかかわらず、そのことが今回のような問題で、要するに監督を初めとする十分な教育等々が行われていなかったところに私は事業者の責任というものがあると思います。

 それはトップの、社長は最終責任かもわかりませんけれども、しかし、関西電力の経営責任は、もう一人の代取がいて、秋山さんという人が、少なくても、先ほど同僚が言われているように、企業の経営だけではなく、あらゆるところに、経営者としてのいろいろなことについて手腕を発揮されているようであります。しかし、今回は秋山さんはどこにも出てこないどころか、社内でも今回の事故に対する責任として、社長以下それぞれが減俸計画をされているようでありますが、会長はその減俸の対象にもなっていないということもお聞きしているわけであります。

 こんなことを含めながら、やはり事故に対する監督あるいはまた教育、社内的なモラル、こういうことが結果的に欠けていたんではないかな。それがチェック項目が現実に抜けていても発見できない要素、ダブルチェック、トリプルチェックというものがされていない。自主点検であればあるほど企業が責任を持ってやらなければいけない、私はそう思うんです。法令点検というものとは別に自主点検、そのことに本気で取り組んでいかないと、同じような事故がまた繰り返し起こる。私はそのことを、日本の歴史の中で証明していると思いますから、社長の見解をお伺いしたいと思います。

藤参考人 お答え申し上げます。

 今、田中先生から御指摘のありました、教育が十分でなかった、ベテランがやはり現場からだんだんと減っている、そしてそれに対する十分な監督ができていなかったのではないかという点につきましては、まことに、私ども平素から、実は安全が大前提ですべての業務をやっていくのだということは社員に十分申していたつもりでございますけれども、結果的にこのような事故を起こしてしまったということは、今おっしゃいました教育が十分でなかったという点については、私、本当に経営者として反省をしております。

 その上で、今お話がございました監督の問題、そしてモラルの欠如の問題ということもございました。モラルの欠如という問題につきましては、二年前から社内でコンプライアンス委員会というものをつくりまして、私先頭に立って、コンプライアンスをしっかりやっていくということを陣頭に立ってやってきたつもりでございましたが、結果としてこういう事故が起こりましたことは、私の活動が十分でなかったというふうに反省をしております。

 先ほどもう一つ、当社の会長の秋山の点について御指摘がございましたが、私は会社の業務の執行の統括責任者でございます。今回の事故は、結果的にこのような重大な災害を起こしました業務執行の責任でございまして、私が全責任を持って現在対処をさせていただいているということでございます。

 以上でございます。

田中(慶)委員 それでは、社長にお伺いいたします。

 社長、今回、三号機の事故でありますけれども、二号機についてお伺いいたします。二号機も少なくてもこのような心配があるやに承っておりますけれども、二号機についての配管の肉厚管理では二重の基準がつくられていた、要するに社内のチェック項目の中に社内基準が二つあったというようなことを漏れ承っているんですけれども、その辺は、あなたは責任者として、その真実と、そしてもしそのようなことが事実であるならば、なぜそのような結果になったのか、明確にしていただきたいと思います。

藤参考人 お答えいたします。

 美浜の二号機の配管の問題につきまして、この配管の寿命でございますが、配管の強度を判定する場合の基準でございますが、これは、美浜発電所において技術基準のただし書きというものを使って評価をいたしておりました。

 そういう意味で、今二重の基準ではないかと言われるのはごもっともなところがございますが、私の理解では、技術基準は管の性能が基準になっております。その管の性能を判定するのに幾つかの方法がございまして、その方法の一つ、実際に美浜発電所で適用されていたこのただし書きは、正しい使い方ではございませんでした。もう一度現時点で別の方法を適用いたしますと、強度はあるという答えも出ました。

 ただ、本件につきましては、最初に保安院長から御指摘がございましたように、指針の運用上問題があるという御指摘をいただきまして、それで配管の取りかえをすることにしたということでございます。

 以上でございます。

 もし、その二重の基準というところにつきましてさらに御疑念がございましたら、技術的な説明をさらにさせるつもりでございますが、よろしゅうございますでしょうか。

田中(慶)委員 性能や安全に私は二重の基準があってはいけないと思います。安全基準に二重の基準があったならば、そこにトラブルの原因ができる、こういうことであろうと思います。性能に二重の基準があったならば、その性能はまさしく十分な機能を発揮できないだろう、このように思います。

 ですから、その社内基準というものが、やはり基本的に、関西電力はエネルギー産業として、あるいはまた日本のエネルギーを扱っているんだ、そして、その安全ということについて、少なくてももう少し、社内含めて、このような二重基準が出ないように徹底した啓蒙というのが必要だろう、私はそう思います。

 そこで、大臣にお伺いしますけれども、実は、大臣、東京電力の事故もありました、関西電力の事故もありました、そして、電力九社というものは同じような日本のエネルギーを扱っているわけであります。そういう中で、今二種類ありますけれども、この二次配管的な事故、点検、あるいはまた火力発電所、先ほど申し上げた全国の千四百六十六カ所等々の問題を含めて、私は、電力九社を含めて、電気事業というものが、何かこう一貫性のない、それぞれ各事業者ごとにセクショナリズムになり過ぎている、こんな嫌いがあるんではないかな、このように感じてならないわけであります。

 そこで、担当大臣として、この問題を電気事業者すべての、電力九社を初め、あるいはまた民間の人たちにも、徹底した安全対策を求め、そして一元化を当然行うべきであろうと思いますが、大臣の考え方をお伺いします。

中川国務大臣 田中委員の御質問をあえて幾つかにちょっと整理をしてお答えを申し上げたいと思いますが、経済産業省が所管をしておりますいわゆるエネルギー政策の重要性、そして、とりわけ原子力発電所というものは、先ほど申し上げたように、その中でもさらに厳しいチェックといいましょうか、発電所側に対しては厳しい緊張感というものが求められるんだろうと思います。もちろん、ほかが緊張感がなくていいということではございませんけれども、とりわけ原子力発電所というものが厳しい自己規律というものが求められますし、我々経済産業省、政府といたしましても、監督者としてのより厳しい監督責任というものがあると思います。

 それから、九電力の火力発電所その他、先ほど千キロワット以上の八百二カ所について点検をしたと申し上げましたけれども、巨大なエネルギー施設でございますから、これらにつきましても、やはり厳しい基準とチェックが必要であり、経済産業省においてもそれに対しての監督責任があるということは、もう言うまでもないところでございます。

 今回の問題につきまして、五十一の原子力発電所のほかに八百二の主な火力発電施設を、この系統について全部チェックをして、火力系についてはもう少し時間がかかりますけれども、報告を求めるということは、これはもう、よく一次系、二次系と分けることがけしからぬという御意見もあるかもしれませんけれども、とにかくこの二次系については、何も原子力発電所特有の問題ではない。そこに重大な事故、いわゆる爆発が起きて、十一人の方が死傷されるという事故が起きたということは、これは原子力発電所だけではない、ほかの大規模火力発電施設においても起こり得ることであったわけでございまして、そういう意味で、点検を千キロワット以上の施設について行っているところでございまして、これについても、関係者もきちっとしていかなければならないことは当然のことだろうと思います。調査の結果は約二カ月をめどとしておりまして、もう少し時間がかかります。

 それからもう一点は、今回の事故は、関西電力、あるいはこの工事を施工した三菱重工、あるいはチェックをするべき日本アーム、そして大変な被害をこうむられた木内計測さんを含めた当事者がいらっしゃるわけでございます。今社長の方からもいろいろと説明がありましたが、仮にその基準どおりにやっていなかった、私はその可能性が非常に高いと思っておりますけれども、とするならば、それ以前の問題であって、それについての原因の究明をきちっとしなければならないと同時に、さて、関係者だけではなくて、我々経済産業省としてもあるいは保安院としても、今の国の安全指針なり我々のやるべきことが果たして今までこれでよかったんだろうかということも、今後十分チェックをしていかなければならないというふうに私自身考え、先ほど吉田委員の方から、私だけじゃ信用できないからエネ庁長官どうだという御指摘があって、そのとおりだというお答えをさせていただいたところでございますけれども、そういう全体について、より緊張感を持って、本当に悲惨な、取り返しのつかない損害をというか、御迷惑、御被害を出してしまった、あるいは御地元に対して大変御迷惑をおかけしたことを、何としてもこれを二度と繰り返さないように、関西電力、あるいはまたほかの関係民間会社だけではなく、我々監督責任者として重大な決意で今やるべき作業を鋭意やっておりますし、今後に向けてのゼロからのある意味では国としての責任体制というものを考えていかなければならないというふうに思っているところでございます。

田中(慶)委員 ぜひ、大臣におかれましても、事故後二日目、現場を視察され、その誠意とまた考え方は評価をいたしますし、今述べられたことも含めて、これから十分な対応をしていただきたいと思います。

 そこで、関西電力の藤社長にお聞きしますけれども、私は、昨今のこの安全点検のあり方、法令点検も含めてでありますけれども、若干おかしいんじゃないかなと見ているわけであります。ということは、自由化とかコストとかいろいろなことを優先して、ピークに合わせて、例えば原子力全体を、本来ならばこれだけの稼働をして、極端なことを言えば、一年の中でどういう形で法令点検を行うかということも含めてしっかりと対応しなければいけないわけでありますけれども、しかし、ピークに合わせてそういうものが、現実に点検が行われているということが私の調査で明らかになっているんですけれども、その辺はどうなんですか。

 やはり、経済性とかいろいろなことはありますけれども、しかし、ピークに合わせてそういうことをやる、そうじゃなくして、安全というものは、より安全性を高める意味では、三百六十五日、一年を現実にはしっかりとそれぞれの原子炉なりに十分配置をしながらその点検を行うことが重要であろうと思っておりますけれども、何か、一番需要度の少ないときに点検が集中されるやに承っておりますけれども、その辺はどうですか。

藤参考人 先生、点検のやり方につきまして安全を犠牲にすることはございません。安全を大前提に点検はやっております。

 その上で、点検の時期の問題でございますが、先生御承知のように、夏場は当然電力ピークが多うございます。しかし、そのときにでも原子力発電所の定期検査をやっている場合がございます。一年間を通じまして、今先生がおっしゃいましたように、電力のピークが少ないときに、ピークの大きいときにはできるだけ少ない台数を、そういう調整はいたしますけれども、それが安全に影響するということはやっておりません。現実に、高浜の四号機というものは、現在定期点検に既に入っておりますが、夏、この八月の後半に入っておりまして、ピーク時にも原子力発電所を定期検査している場合もございます。しかし、一年間のうちでできるだけピーク時には集中しないように、そういうことは考えて、電力需給の安定のためにそのようにしていることは事実でございます。

田中(慶)委員 時間がありませんので終わりますけれども、今あなたが言っているように、ピークの場合も、こういうことでありまして、例えば保安院とのトータルで、一年間に仕事が平均していればむらがなく安全のチェックができるわけであります。ところが、時期的に偏っていると今回のようなチェック項目もどうしても見落としが出る、こういうことだと思います。

 ですから、一年トータルとして、ピークのこともそれは大切かもわかりませんけれども、より安全性を高める、こういうことからすると、平均したチェックというものが私は望まれると思いますし、今回のような事故の再発防止にもなるんだろうと思います。参考のためにそのことを申し上げ、時間が参りましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今回の関電美浜三号機の配管破損事故について、私も翌日の八月の十日に現地に足を運んで現場も見てまいりましたし、関係者の方からもお話を伺ってまいりました。亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、おけがをされた方々の一刻も早い回復を心から願うものであります。

 同時に、この事故についても、二十八年間一度も点検も補修もされていなかった、この問題についての真相究明、原因の解明ということが今一番問われている問題だと思うんです。私は、やはりこの根本問題に、運転開始から二十年、三十年たっている原発の老朽化問題があるんじゃないか。そういう点でも、そういう中で運転をしている電気事業者の関西電力、それからプラントメーカーであり、いわば製造者責任のある三菱重工業、そして国、この三者の責任というのが今大きく問われているときだと思います。

 きょうは、出席しておられる関西電力と国についての問題についてお聞きしたいと思っております。

 最初に保安院にお聞きしますが、第三回事故調査委員会に保安院から出された報告の中に「保守管理の適切性に対する評価」というのがあります。関西電力の「外部委託業務の管理が不十分」と指摘をしております。

 各電力事業者から聴取をして保安院の方でまとめた「肉厚管理方法の比較」の一覧表があります。そこに、「点検体制」ということで、関連会社との責任関係、業務分担について各プラントごとでどうなっているかという一覧表があるわけです。これを見ておりますと、関電の場合は、肉厚管理についても検査会社に業務委託をしている。点検計画の策定まで検査会社に委託をしている。こういうふうに書いてあるのは、ほかのを見ても関電だけであるわけですね。いわば、検査の実施に加えてその管理業務も三菱重工業に委託をしていたのが関電だった、このように言えると思うんですが、この点、事実関係を確認したいんですが、いかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、先週の第三回事故調査委員会資料におきまして、十一日の報告徴収で確認をされました電力各社の肉厚管理の点検体制等につきまして一覧表にしてございます。そこで各社から報告がございました内容をそのままに記入したわけでございまして、関西電力につきましては、検査会社に、御指摘のとおり、点検計画等を含めて委託をしている、こういう形になっております。

 私どもといたしましては、現在、今回調査委員会に提出をいたしました資料も含めて、各社の点検計画がここに記載されているとおりきちっと行われているかどうかということにつきまして、さらに検証をしてまいりたいと思っております。

 具体的には、九月から行われます次回の保安検査において、電気事業者の外部委託の管理状況等について重点的に検査を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。

塩川委員 関西電力の場合には、配管の点検の実施の業務を委託するのみならず、その点検の管理の業務まで委託をしていた。私、そこが今問われているのではないか、このように思います。

 その上で、関西電力にお聞きしますが、関電の場合は、この検査の実施及び管理業務をさらに三菱重工業から日本アームに委託をいたしました。第二回の事故調査委員会の議事要旨に関電のスタッフの方が述べているのを見ても、検査の実施及び管理業務を三菱重工業から日本アームに移管をしたとはっきりと述べておられます。

 日本アームが三菱重工業から業務を引き継いだ九六年当時、原発の配管検査の実施や管理業務の実績は日本アーム自身は持っていたのか持っていなかったのか、この点をお聞きします。

藤参考人 お答えいたします。

 平成八年に三菱重工から日本アームにこの業務を移しました。その時点で、日本アームは、既に火力発電所におきます配管の減肉の測定等におきまして、維持も管理も含めまして、そういう経験を持っておりました。

 以上でございます。

塩川委員 原発での実績はないですね。その点だけ確認します。

藤参考人 原子力発電所ではございません。

塩川委員 日本アームのアームというのは、どういう意味の言葉でしょうか。

藤参考人 腕金だと、これは推定でございますが、思います。もともとそういうことがスタートで起こった会社でございます。

塩川委員 これは電柱の電線などを支えている腕金を意味している、いわば金属製の電柱、鋼管がもともとの日本アームの業務のスタートだと聞いています。

 そういう点でも、原発の業務自身の蓄積がなかった関電の子会社だったわけで、同じように、保安院の方でまとめた各原発ごとの一覧表の中に、原電の敦賀二号機、それから北海道電力の泊一号機については、それぞれ二〇〇一年、一九九六年に三菱重工業が同様の配管の点検漏れを発見して、是正をしております。それが、関電の日本アームだけがその後も見逃したままだったというのが実態であります。そういう点でも、原発の管理業務の実績がないという点での問題点がここにあらわれているんじゃないか、このように率直に思うわけです。

 ですから、関電が原発の管理責任者として当然やるべき検査の管理責任まで委託業者に丸投げしていたんじゃないか。それに加えて、三菱重工業から実績のない日本アームにまたそれを置きかえてしまった。私は、二重の意味で関電の管理責任が問われているんじゃないか、このように思いますが、藤参考人、いかがでしょうか。

藤参考人 先生、もしお許しいただけましたら、実際にどのような管理を日本アームに委託し、どのように関西電力がその管理にかかわっていたという詳細のところを、専門家の辻倉に説明させてよろしゅうございますでしょうか。(塩川委員「簡単にお願いします」と呼ぶ)よろしゅうございますか。ありがとうございます。

辻倉参考人 お答え申し上げます。

 配管の減肉に関します管理業務でございますけれども、当社の役割と日本アームの役割に二つ大きく分かれようかと思いますけれども、当社は、点検部位の選定、点検方法等の配管肉厚管理、この全体を実施してございます。この中で、肉厚測定の工事、どこどこを点検するかという工事の決定を私どもがいたしまして、施工会社である日本アームに発注をいたします。それから、肉厚測定結果につきましては、日本アームから評価の報告書を受けるわけでございますけれども、これを肉厚管理の方に反映してまいります。また、昨年の十月以降は、定期事業者検査制度というのも発足をいたしました。

 こういうプロセスの中で、私どもは、その測定結果に対する現場の立ち会い等につきましても実施するようにしてきてございます。もちろん、部分的ではございますけれども、そういう活動もしてまいっております。

 また一方、肉厚測定工事を実施いたします協力会社日本アームの役割は、点検計画の提案を私どもの会社に行います。それから、肉厚測定工事そのものを実施いたします。それから、測定結果を評価いたしまして、次回の測定部位の提案を行う、こういう役割でございます。この役割をきっちりと果たしていけば、今回のようなことにならなかったのかもしれません。

 私どもが反省しております点は、日本アームが提案をいたします点検計画あるいはその測定結果、これにつきまして、当社が管理指針に照らして適切であるかどうかということの確認をいたします仕組みがなかった。また、このような活動を担当箇所の判断にゆだねていた。また担当箇所は、日本アームさんを信頼していたということもございまして、日本アームさんの方での一元的な管理ができているものというように思い込んでいたといったような、当事者としての役割の意識、この部分に問題があったのではないかと思っております。

 したがいまして、今後はこのようなことが起こりませんように、当社によります配管肉厚管理の仕組みを構築いたしますとともに、登録漏れ等の抜け落ちがないことを当社が定期的にレビューをしてまいります。このように考えてございます。

 以上でございます。

塩川委員 いや、あなた方が保安院に出した説明書きと違うんですよね。

 今、日本アームは点検計画の提案を行うんだと言われますけれども、ここには、電力会社の方が検査会社、つまり日本アームに業務を委託する、では、その業務の委託の中身は何かというと、まず最初に点検計画の策定とあるんですよ、その上で提案ですから。そういう意味では、管理業務も含めて日本アームに丸投げしていたんでしょうと。それ以前の三菱重工も含めて、そういうことが行われていた。それで、いわばそういう原発の実績のない日本アームにそういう業務を行わせていた。二重の意味で管理責任が問われるんじゃないですか、このことを聞いているんですが、藤社長、いかがでしょうか。

藤参考人 先生が今おっしゃいました、三菱重工のときもそうではなかったか、そして日本アームのときにもそうではなかったか。丸投げと今言われましたか、そういうふうに思われかねないような業務のやり方をしていたということはそのとおりだというふうに思います。

 今、辻倉が説明いたしましたのは、それは具体的な仕事のフローのことを御説明したというふうに私、思っております。

 以上でございます。

塩川委員 管理責任が大変問われる、率直に言って無責任のそしりを免れない事態じゃないか、このように思います。

 その上で、国がこういう事実を把握していたのか。管理業務まで検査会社に任せていた、こういうことを保安院は承知していましたか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 塩川委員お手元にございます資料は、今回の立入調査の結果把握されました情報を整理したものでございます。

 今後、先ほどお答え申し上げましたとおり、これらの資料に基づきまして、事故調査委員会の中できちっとした検証、あるいは再発防止策につなげる検討を行っていきたいと思っておりますが、私ども、ポイントだと考えておりますのは、いろいろな形での検査会社の活用の仕方、各社いろいろあろうかと思いますが、重要なポイントは、外部に委託する場合に、これをいかにきちっと電気事業者が管理をするか、そういうことが大きなポイントではないかというふうに考えております。

塩川委員 今回聴取して初めて知ったわけですから、これまでは知らなかったわけですよ。管理業務を委託することまで行われていた。極めて重大な、今回の事故の核心に当たるような問題について把握をしていなかったという点では、私、保安院、国自身もいわば電力会社に丸投げだったんじゃないか、こういうことが問われてくると思うんです。

 その点で、こういう管理業務まで委託をするようなことで責任ある管理が本当にできるのか、中川大臣に率直にこの点をお聞きしたいと思うんです。

中川国務大臣 今回のことは、先ほどもちょっと申し上げましたが、ルールの問題と、そのルールがきちっと守られていたかどうかという問題と、二つに分けて議論をしなければならないと思います。

 そういう意味で、今回、先ほど藤社長が、関電、重工、日本アームの間でうまく正しい情報が伝わっていなかったということがあったというような説明がございましたけれども、そういういわゆる人為的なミスがあったということが事実であったと思います。仮に、そうであったとしても、またこの事故が起きなかったかというと、決して私はそれは否定はいたしません。

 そういう中で、今、塩川委員の御指摘に関して、保安院といたしましても、点検について、関西電力の実態について、きちっと把握をしていなかったということが今回はっきりとしたということは、今後について我々が対応をしていく上で大きなポイントの一つだろうというふうに認識をしております。

塩川委員 その上で、関電にお聞きします。

 配管の点検の実施及び管理業務を三菱重工業から日本アームに切りかえた、その理由は何か、この点をお尋ねします。

藤参考人 先ほど冒頭の説明でも申し上げましたが、平成八年に、配管点検、測定点検、肉厚測定点検をするということと、その結果の修繕工事ということ、それを独立し、配管点検という仕事を分ける方がより公正にできるだろうというふうに考えたということが、そのときに三菱重工から日本アームに移した理由でございます。

 三菱重工の場合には、三菱重工さんが点検測定をして、それでもし配管の取りかえがあれば、それを修繕工事をする、そういうことになっていましたので、それを分けるということの方がよろしいのではないかということで分けたということでございます。

塩川委員 分けることがよろしいのではないかという、その理由を聞きたいんですけれども、何で分ける方がいいと判断をしたのか。

藤参考人 肉厚点検をするということを第三者的に行える、そういう意味でございます。

塩川委員 では、それを三菱重工業から引き継いだ日本アームは第三者なんですか。

藤参考人 今、第三者的と申しましたけれども、以前、三菱重工さんにお願いしていたときには、みずから製造されたプラントの配管を自分で測定点検して、それでその部分をかえる、修繕工事をやられるというパターンになります。そこで、この点検部分を公正に、その方が、独立させる方がいいのではないかと考えたということでございます。

塩川委員 いや、日本アームは第三者的なんですか。私は、メーカーと点検業者を分ける、これ自身も意味があると思いますよ。でも、点検事業者と運転事業者が一体で、これで何で公正なことができるんですか。

藤参考人 先生、恐れ入ります、お答えいたします。

 日本アームは私どもの子会社でございます。ですから、そういう意味で、製造業者と点検とを分けたということでございます。

塩川委員 要するに、点検業務と運転事業者が一体となった場合に、点検について手心を加えるようになるんじゃないですか、運転効率を上げるために修繕だとかそういうことを手抜きするようになるんじゃないですかということが問われていると思うんですよ。

 私、関電の原子力部門の修繕費の推移を見てみましたけれども、九五年をピークに大きく下がっています。一千百七十億円だったものが〇三年度では七百六億円と、四割近く激減をしているわけですね。これは、他の電力会社に比較をしても、数字のそろっている九五年度と〇二年度の比較をすれば、例えば、中部電力は七〇・六%、東電は六四・二%、九電力の平均が六九%に対して、関西電力は五四・六%に減っているんですよ。半分ぐらいに激減しているんですよね。

 そういうところに、結局、この安全軽視の原因にこういったコスト優先の問題があるんじゃないのか。第三者的などといいながら、点検事業者を運転事業者の子会社にすることによって、結果としてコスト優先がまさったんじゃないのか、これが事故の原因じゃないか。いかがですか。

藤参考人 以前に比べて私どもの会社で特に修繕費が減少いたしました理由は、以前、この修繕費が多かったときには、SGといいます、スチームジェネレーターでございますが、これの取りかえに伴う修繕工事が集中しておりました。そういうことで、よその電力さんに比べると、今おっしゃいましたような比率が、私どもの方がピークに比べて減っているということでございまして、この以前の多い時点では、各プラントのSGRを、取りかえるという仕事をちょうどしていたときのためでございます。

 でございますので、今おっしゃいましたように、修繕費を少なくして、そして安全を損ねるというふうなことではございませんで、私、いつも、原子力発電は安全、安定運転が第一で、それをするのが一番効率的なことでございますので、それが第一だということを常々申してまいりました次第でございます。

塩川委員 今、関電全体でもリストラ、人員削減が進んでいる中で、貴重な技術スタッフがいなくなっている、それが全体として安全対策の軽視にもなっているんじゃないか、こういう現場の声もあります。こういうやり方そのものを今見直していくときだ、このことを申し上げたいと思いますし、老朽化が進む原発で、定期検査期間の安易な短縮ですとか、運転中から準備作業に入るようなことは見直すべきだと思いますし、原発への国民の信頼が揺らいでいるときに、プルサーマルの実施や中間貯蔵施設の建設や「もんじゅ」の再稼働などはやるべきじゃない。このことを申し述べて、質問を終わります。

根本委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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