衆議院

メインへスキップ



第5号 平成16年11月10日(水曜日)

会議録本文へ
平成十六年十一月十日(水曜日)

    午前十時十三分開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      江藤  拓君    遠藤 利明君

      北川 知克君    小杉  隆君

      佐藤  勉君    坂本 剛二君

      坂本 哲志君    菅  義偉君

      鈴木 恒夫君    田中 和徳君

      田中 英夫君    竹本 直一君

      谷畑  孝君    津島 恭一君

      寺田  稔君    中西 一善君

      野田  毅君    平田 耕一君

      三ッ矢憲生君    三原 朝彦君

      望月 義夫君    森  英介君

      山際大志郎君    山口 泰明君

      山本 明彦君    内山  晃君

      大畠 章宏君    奥田  建君

      海江田万里君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    近藤 洋介君

      鈴木 克昌君    高山 智司君

      中村 哲治君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    松崎 公昭君

      村井 宗明君    渡辺  周君

      江田 康幸君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   経済産業副大臣      保坂 三蔵君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   政府参考人

   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            北村 俊昭君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       小川 恒弘君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          中嶋  誠君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          齋藤  浩君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 細野 哲弘君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     江藤  拓君

  北川 知克君     津島 恭一君

  小杉  隆君     山際大志郎君

  佐藤 信二君     三原 朝彦君

  菅  義偉君     佐藤  勉君

  中西 一善君     鈴木 恒夫君

  西銘恒三郎君     坂本 哲志君

  大畠 章宏君     中村 哲治君

  海江田万里君     鈴木 克昌君

  菊田まきこ君     内山  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     寺田  稔君

  佐藤  勉君     菅  義偉君

  坂本 哲志君     三ッ矢憲生君

  鈴木 恒夫君     中西 一善君

  津島 恭一君     北川 知克君

  三原 朝彦君     佐藤 信二君

  山際大志郎君     田中 和徳君

  内山  晃君     菊田まきこ君

  鈴木 克昌君     海江田万里君

  中村 哲治君     大畠 章宏君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 和徳君     小杉  隆君

  寺田  稔君     田中 英夫君

  三ッ矢憲生君     西銘恒三郎君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英夫君     嘉数 知賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案(内閣提出第一六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省経済局長佐々江賢一郎君、経済産業省通商政策局長北村俊昭君、経済産業省通商政策局通商機構部長小川恒弘君、経済産業省貿易経済協力局長中嶋誠君、経済産業省産業技術環境局長齋藤浩君及び資源エネルギー庁次長細野哲弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西一善君。

中西委員 本日は、一九一六年アメリカのアンチダンピング法に対する損害回復法案の審議ということでございますが、まず初めに、この法案の概要を第一点、お聞きしたいと思います。

 そして、この法律はWTOに御案内のとおり提訴をされ、二〇〇一年末までに改善をする勧告をアメリカは受けております。明確なるWTO協定違反なわけでありますが、いまだ廃止されておりません。これは、百年前、第一次世界大戦中につくられた法律であるということで、私がつくった言葉でありますが、化石法案、化石のような法律である。日本にもこういう法律がたくさんありますが、そのように私は考えております。その当初、第一次世界大戦中にどうしてこういう法律ができたのか。その法律のできた経緯、そういうものを御説明いただきたいと思います。

小此木副大臣 おはようございます。中西先生にお答えをいたします。

 この法律は、WTO協定違反がおっしゃるように確定したにもかかわらず、いまだに廃止されていない米国の一九一六年アンチダンピング法に基づき提訴された我が国企業が、その訴訟によってこうむった損害を回復することを可能とすべく立法するものであります。

 具体的には、一九一六年アンチダンピング法に基づく訴訟の被告として賠償義務を負った我が国企業等は、原告の米国企業等に対し、当該訴訟によりこうむった損害等の回復を請求することができることとするとともに、同法に基づく我が国企業等に対する訴えについて外国裁判所が下した確定判決は、我が国においてその効力を発しないということとしております。

 もう一つの問いでありますが、確かに百年近く前にできた、おっしゃるところの化石のような法律、この経緯でありますが、この法律が制定されました一九一六年、おっしゃるように第一次世界大戦が勃発をいたしました。その勃発によってヨーロッパ諸国の産業が停滞をした一方で、アメリカ産業というのは飛躍的に発展をした。しかしながら、そのアメリカ産業界には、戦争が終結するとヨーロッパ諸国の産業が経済的地盤を回復して、再度市場を支配してまいりました。成長過程にあるアメリカの産業を破壊するのではないかというアメリカ側の懸念がまた高まってきたところに、外国産業による不当廉売からアメリカの国内産業を保護することを目的として立法されたのが、この一九一六年アンチダンピング法だということを認識しております。

中西委員 経緯の説明、ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、この化石法案が最近目を覚ましまして、我が国を支えている企業、東京機械という一社が今やり玉に上がり、そしてそれがアメリカの地方裁判所で、もしかしたら敗訴されるかもしれない、四十億円近くの賠償を我が日本の日の丸会社が受けるかもしれないということであります。

 私の私案であり、私見でありますが、アメリカは乱訴社会でありますから、弁護士も大変数多くおります。この法律は、ある意味ではアメリカの弁護士をもうけさせるためにあるような部分もありまして、そういう意味でもとんでもない法律であり、いち早く廃止をしていただきたい法律であります。

 当然、世界の経済は今グローバル経済でありまして、日本のみならず、極としてはEUというのもあるんですが、諸外国ではこのアメリカの化石法に対してどのような対抗手段をとっているのか、その事例があればお答えいただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 アメリカの一九一六年アンチダンピング法につきましては、我が国のみならず、EUも一九九八年に米国をWTOに提訴しております。また、EUは、昨年十二月に、今回の我が国法案とほぼ同じ内容の損害回復法を制定しているところでございます。EUが損害回復法を制定した後は、米国一九一六年法に基づきEU企業が新たに訴えられたという事案は、発生をしておりません。したがいまして、EUの損害回復法の抑止効果というのは有効に機能しているものというふうに理解しているところでございます。

 以上でございます。

中西委員 そういうことであれば、EUがそういう法律をつくったということは、ある意味でそういう意思を示す、立法することにより意思を示す。つまり、抑止力、抑止効果というものが大変期待できるわけでありまして、我が国がEUにおくれながらもこういう立法をしよう、この臨時国会で成立をさせようという方向性は、まことに正しき動きであると私も賛成をしておるところであります。

 そうした中において、このアメリカの法律で、東京機械という一社でありますが、ある意味ではこういう一社がやり玉に上がるということは、日本は何も言わない、何もやらない、何もアクションを起こさない、国益も主張しないということで、この一社の損害が日本のありとあらゆる経済活動をむしばむアリの一穴にもなりかねない。この一社の命運が、要するに日本の経済というものの大きな命運を握っていると私は認識をいたしております。

 ノーと言うべきはノーとしっかり言う。今、イラク問題で、日本はアメリカと国際平和をしっかり回復しようということを、テロ対策ということでしっかりと歩調を合わせておりまして、大変アメリカとは関係がいいわけでありまして、私もそれには賛同いたしておりますが、ノーと言える部分はぜひともノーと言っていただきたいし、やはり見せるものはしっかりと見せて、その法律をつくるということは重要であると思っております。

 実際、この法律ができて、アメリカから賠償額、仮に四十億円取られたとして、それが実際に取り戻すことが可能であるのかどうか、お答えいただけますか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカの一九一六年アンチダンピング法によりまして損害を受けた本邦法人等は、本法律によりまして、一九一六年法に基づく訴訟を提起した米国企業に対しまして損害回復を求める訴えを提起することができます。本邦法人等に対する損害回復を認める国内の判決が出た場合、その判決に基づきまして、アメリカ企業が日本国内において有する財産、例えばアメリカ企業が日本子会社など取引先に対して有する売買代金債権、さらには米国企業が日本国内で有する特許権などの知的財産権などに対して執行することが考えられるところでございます。

 より重要な点につきましては、一九一六年法によりまして損害を受けた本邦法人は、アメリカ企業の一〇〇%子会社などに対しても損害回復の訴えを提起することでございます。この場合には、日本子会社が国内に有する財産のおよそすべてに対して判決の執行が可能でございます。このため、本損害回復法につきましては、その実効性は十分担保されているというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

中西委員 本日は、我が党は時間も限られておりますので、法律の細則に余り突っ込みませんが、例えば一〇〇%子会社、では五一%子会社だったらどうであるのか、またEUの回復法との差はどうなのか、きょうは割愛をさせていただきますが、その辺の課題も大変山積しているのではないかと思っております。

 次に、これらの法律を日本が制定することになれば、当然アメリカには政府というものがございまして、アメリカ政府の中でも、USTR、通商代表部ゼーリック代表が、この日本の立法活動に対して、この法案に対して、今どのように思われておるのか。逆に、これでアメリカと関係が悪くなってしまうというのは非常に問題でありますので、その辺の情報はどうなっているのか。

 また、私の聞くところによりますと、アメリカでも下院ではこの化石法の廃止法というものが既に通っているというお話でありまして、仄聞するところによりますと、十一月の十六日から、たしか審議日程が四日か五日か、非常に短い間で、いよいよ上院にも送付をされているということでありますが、実際、アメリカ議会でこの法律が通る見込みがあるのかどうなのか。仮に通るにしても通らないにしても、日本は現在、東京機械という会社がゴス社から提訴されているわけですから、当然この法案というものは可決させるべきだとは思いますが、その辺のアメリカの審議状況、またUSTRの反応、通商問題も含めまして、御答弁いただければと思います。

中川国務大臣 おはようございます。

 今御指摘のように、先ほどの御指摘にも関連いたしますけれども、日本とアメリカとは非常に通商関係、総じてうまくいっていると思いますし、私を含め日本政府、それからゼーリック代表を初めアメリカ政府とは率直にずっと意見交換をし、言うべきことはお互いに言い合っております。

 一年前、鉄鋼のアンチダンピングの問題がございましたけれども、これについても、我が国はルールに基づいて粛々と作業をし、これにアメリカも対応して、その発動を取りやめたという経緯もございます。

 これ以外にも今懸案のことがございまして、率直にゼーリック代表あるいは国務省等と話し合いをしておりまして、この法律については、率直に言って、通商当局、アメリカ政府としてはこれは廃止すべきであるという考えで議会にも提言をしていたところでございまして、委員御承知のように、下院においては一括法の中で廃止ということが決定されまして、上院でこれからのセッションで審議されるというふうに聞いております。粛々と作業をされるものと思っております。

 他方、この法律は法律として御審議をいただき、議決いただければありがたいというふうに思っております。

中西委員 非常に前向きな答弁、本当にありがとうございました。

 時間も限られておりますが、いずれにいたしましても、今後、日米の通商政策全般というものは、今は良好にいっておりますが、状況を見回してみますと、今、日米関係で問題なのは、強いて言えば、私が考えるところではBSE問題ぐらいかなと。ここ数年来の日米関係で見ますと、ブッシュ政権が再選されたということもありまして、非常に良好な関係であると私は思っております。

 そして現在、例えば日本の景気も少しずつ、特に大手を中心に回復を見せているところでありますが、例えばトヨタ自動車が今非常に業績を伸ばして、新ビッグスリーというものを形成しようとしている。アメリカのビッグスリー、GM、フォード、ダイムラー・クライスラーですか、このダイムラー・クライスラーを追撃して、来年の生産計画では、それに並び、抜き返すというところまで生産計画を立てていると同時に、日本国内でも設備投資の計画を、たしかどこかの工場でトヨタが発表したということであります。この生産増の大多数はほぼ海外での現地生産ということで、アメリカにおいても大変な雇用とアメリカの富、GDPをふやすことに貢献をしておるわけでありまして、国際社会の中でもトヨタ自動車を初めとして評価をされるべきだし、それはやはり我が国の経済界というものが評価されるものであると私は思っております。

 中川経済産業大臣にお伺いしたいわけでありますが、ブッシュ政権が信任をされたということが、この通商関係に限ってでございますが、今後日本の状況に、残り任期四年、ブッシュ政権任期四年の中において、日本のこの通商関係が再選によってどういうふうになっていくと大臣自身はお考えになられているのか、まずぜひとも聞いておきたいと思います。それが一点。

 また、私は常々日本は国益をしっかりと主張すべきだと思っておりまして、ノーと言えるべきはノーとしっかりと言う、良好で協力すべきところはしっかりと協力をする。国民に対し、我が政府としても説明責任を果たしながら、今回のイラクに対してはこれこれこういう理由で、例えば、日本の原油依存度が九九%、原油に依存している状況で、圧倒的大多数が中東地域に依存しているからイラクで復興活動を支援している、こういう説明がございますが、こういうことも含めて国益の主張というものを、ノーと言うべきところは言うべきだと私は思っているんです。

 先般も委員会でありましたが、東シナ海の中国のガス田開発、中川大臣のストロー理論、まさに私もそのとおりだと思います。とんでもない話であり、そういうことに対しては毅然とした態度で日本も発言をして、歴史問題その他はありますが、歴史問題と通商関係の国益とはまた全く別な問題なわけであって、ともすると中国はそれをごちゃまぜにして主張してくる場合もありますが、中川大臣のはっきりした姿勢というものを、まずは国家の柱である経済部門からぜひともしっかりと主張していっていただきたいと私は思います。

 ほかに、例えば国連の常任理事国入りの問題、国連分担金から見て、敵国条項がいまだに残ってあるだとか、日本が敵国、とんでもない話でありまして、世界第二位の国連分担金を負担しているにもかかわらず、とんでもない話です。それぞれのいろいろな問題がありますが、ぜひとも中川大臣には検討していっていただきたいと思います。

 ノーと言えるべき日本について、中川大臣、どのように考えておるのか、お聞きしたいと思います。

 そして、これは大臣としての答弁じゃなくて個人としての答弁で結構ですが、先ほどから私、化石法案、化石法案と言っておりますが、恐らく日本にも化石のような法律が、条文も含めてたくさんあると思うんですね。これは一国会議員として、中川大臣はその化石のような法律を、今後、ビルド・アンド・ビルドではなくて、やはりスクラップ・アンド・ビルドをしていかなければいけない、私はそのように考えておりますが、個人的にこの辺をどのように考えておられるのか。最後に大臣の決意とそして大臣のお考えをお伺いいたしまして、私の質問は終わりたいと思います。よろしくお願いします。

中川国務大臣 大きく三点御質問があったと思います。

 まず、中西委員の一点目、ブッシュ第二期政権を通商経済関係からどう考えるかということでございます。

 まず、大変な大接戦と言われ、開票のときも大接戦であったわけでありまして、そういう中で、私はどちらがなっても、四年前のフロリダみたいな状況が全米で起きて、これが何カ月もかかるということは、アメリカのみならず日本にとっても、日米関係にとっても非常によくないことになるということを大変危惧しておりまして、そういう意味では、負けた側のケリー陣営がいち早くその結果を受け入れた、それによって選挙の混乱というものがほとんど生じなかったというのは、私は大変日本にとってもいい結果だったと思います。どちらが勝つにしても、事実としてそういうことがあったということは、特にケリー陣営の、ケリー候補のあのいち早い敗北宣言というんでしょうか、決断をされたということは、私個人としては大変立派な御判断だったと。すぐに次に向かってアメリカが動き出しているということですから、私はこれは評価したいと実は思っているところでございます。

 新政権は来年の一月二十日ですかにスタートをするわけでありますが、今は議会もこれから開かれ、そして今の体制でやっていくわけであります。二期政権、多分いろいろな閣僚、政府、あるいはまたスタッフがかわっていくんだろうというふうに予測しておりますが、どなたがなるにしても、もちろん個人的な個性といいましょうか、それぞれあるわけでございますから、そういう個性というものが変わってくることは予想されますけれども、基本的なスタンス、特に貿易面においても通商面においても、さっきのように、日米が言いたいことを言い、本音で話し合っていい結論に向かっていこうという基本姿勢は変わらない、大統領と小泉総理との全体的な関係を前提として、通商経済関係も私は変わらないというふうに思っております。

 それから、国益に関する問題についてはきっちりとやれ、イラク問題あるいは東シナ海の問題等々いろいろ出ました。国連の敵国条項のお話も出ました。

 私は経済産業大臣ですから、所管の分野だけ申し上げなければいけないわけでありますが、たしか国連の五十三条と百七条に敵国条項という条文があったと思いますけれども、あれを読むと本当に愕然とするということでございますから、とにかくあの条文があるというのは私はおかしいというふうに前から思っているところでございます。

 いずれにしても、国益を守るというのは政治家としての当然の義務だと思いますが、何でもかんでも国益一本やりということではなくて、ルールを前提にしての国益ということだろうと思います。そのルールというのは、国際法であったり、二国間の条約であったり、国内の法律であったりということでありますから、東シナ海につきましても、私が言っているのは、何も国益のために無理を言っているというふうには私自身全く考えていないので、国連海洋法条約あるいは日中平和友好条約の精神、趣旨に基づいて日本の立場を主張させていただいているということでございます。

 他方、中国が果たしてそういうような総合的な約束事を前提にして言っているのかどうかということには、私は疑問を感じているというのが率直な気持ちでございます。

 化石法案をいつまでも残していていいのかという御質問でありますが、この一九一六年法のように、何かここ二十年ぐらいの間に急に復活してきたというような法律というのは、ある意味ではいかがなものかと思いますが、一般論としては、日本も、必要ないんだから積極的にどんどん必要ないものは廃止していったらいいんじゃないかということが、ある意味では筋かもしれませんが、現に、これが生きていることによって、けしからぬ法律ではあっても、法手続としてはやむを得ないというのが現実である。しかも、WTOで違法ということが確定したから、東京機械の損害を補てん、回復するためにわざわざこういう法律をつくらなければならなかったということでございまして、一般論としては、化石法はさっさと整理した方がいいということは私も気持ちとしてはわかりますが、我々はあくまでもルールにのっとって国益というものを守る、あるいはまた日本企業が不当な損害をこうむっていることを回復するということで、粛々といくために今御審議をいただいているというふうに理解をしているところでございます。

中西委員 終わります。

河上委員長 次に、吉田治君。

吉田(治)委員 民主党・無所属クラブの吉田治でございます。

 まず、この法案の大前提は、日本企業がアメリカでこのアメリカ法において損害賠償を訴えられ、しかも賠償金を命ぜられたということでありますけれども、まあ、明らかになっておりますので固有名詞を出していいと思います。東京機械製作所というものがダンピングを行ったから四十億の損害賠償を命ぜられた、そういうふうにアメリカは裁判所で認定しておりますが、日本政府として、この会社のアメリカでの行動において不正なダンピングがあったのかどうか、その辺、いかがですか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 この一九一六年法のアメリカの裁判においては、三件のアンチダンピングのケースが取り上げられております。

 やや具体的な話になりますけれども、このうち一件については、今先生がお名前を出された日本の東京機械製作所は、日本から輸出をしたというケースでございます。それから、残りの二件については、東京機械製作所は輸出をしておりません。

 一件は輸出をした、残り二件は輸出をしていない、この合わせて三件について、アメリカの第一審であるアイオワ州の裁判所は、いずれもダンピングの意図があって、アメリカの産業に損害を与える意図があって、合計で十数億円の損害を与えたと。これに対して三倍の賠償が取れますので、掛ける三倍、それに訴訟費用、弁護士費用を入れて、先生おっしゃった約四十億円といった損害を認定したわけでございます。

 これについて日本政府はどうかということですけれども、その前に、ダンピングに関する話でございますので、実際に日本から東京機械が輸出をした一件につきましては、ダンピングルールに基づいて、アメリカの商務省においてダンピングの審査が行われました。これにつきましては、ダンピングの事実はないというのがアメリカの商務省の判定でございます。いわゆるシロの判定が下ったわけでございます。

 そういったことを全体として評価をいたしますと、私どもとしましては、これはWTOルール上、ダンピングといったことは一切この企業は行っていないというふうに考えております。

 以上でございます。

吉田(治)委員 三権分立のアメリカですから、行政が決めたことであっても、司法によって違う結論が出る場合もある。

 今、局長の答弁の中で、三件のうち一件は実際輸出をしたと。それはどういう状況で輸出をしたのか。何か向こうの訴えた企業と競争するようなことがあったのかということが一点と、そして二点目は、では、ほかの二件は実際輸出をしていないということは、これは世の中的な言い方で言うならば、アメリカ企業からまさに言いがかりをつけられたというふうに理解していいのか。その辺はいかがなんでしょうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 まず、実際に輸出が行われた一件につきましては、この案件は、先ほどの名前が出ました東京機械製作所が、以前アメリカの、これは新聞輪転機ですから、新聞社に一件既に納めた、納入実績がある案件でありまして、それを拡張するというのでしょうか、新しくさらに拡大をしたいという商談があって、それに基づいて東京機械がいわば実績ある企業として応札をし、獲得をしたというケースだと承知をしております。

 他方、二件につきましては輸出をしていないというふうに申し上げましたけれども、その二件につきましては、いわば競争入札で、これは別のアメリカの新聞社だと思いますけれども、そこが競争入札をした。そのときに、もちろんアメリカの新聞輪転機メーカーでこの裁判を起こした企業が応札をし、日本の東京機械製作所も応札をした。その結果、アメリカの企業が落札をして、日本の東京機械は落札に至らなかったというケースでございます。

 したがって、これは言いがかりではないかということでございますけれども、評価を差し控えますけれども、先方のアメリカの企業が裁判で主張したのは、日本の企業、日本の東京機械製作所が応札をしたであろう価格が低かったために、自分たちも本来もう少し高く応札をしていいビジネスがとれたはずが、東京機械製作所が安い価格で応札をしたに違いないので、自分たちも引きずられて、負けないために低い価格の応札をせざるを得なかった、したがってそれによる損害を受けたんだ、そういう主張をしたというふうに聞いております。

 以上でございます。

吉田(治)委員 ということは、その残りの二件については落札をした業者が訴えたということでございますか。

北村政府参考人 そのように承知しております。

吉田(治)委員 そういう中で、賠償内容四十億、今局長の答弁の中で約十億円、一千万ドルの部分については損害があるといった、掛ける三倍か何かが懲罰的な損害であると。この法案、そしてWTOにかかわる部分でいうと、その三倍の部分というのがどうもWTO違反だ、そういうふうに考えたらいいのでしょうか。

北村政府参考人 そもそも、この法律自体いろいろな点でWTO違反でございます。

 今、吉田先生がおっしゃった三倍、実際の損害の三倍という賠償金を請求できるということもその大きな一つでありますけれども、まずはアンチダンピングの一般的なルール、これはWTOで決まっているわけですけれども、これは基本的には、政府がまずそのダンピングについて政府としてきちっとした手続に基づいて損害がある、ダンピングがあって損害がある、それをその損害の金額と経済的に同等の報復をするための関税を認める、そういったものがWTOルールでございます。

 これに対しまして、一九一六年法は、先生がおっしゃったダンピングの損害額の三倍を取るということのほかに、企業が裁判所で訴えて裁判所でダンピングの有無の認定を受ける、そういった点においてもWTOのルールとは全く異なっておりますし、その点について、私どもEUとともにWTOに、これはWTO違反である、協定違反であるということで訴えて、既に協定違反であることが確定した次第でございます。

吉田(治)委員 では、この賠償金はだれが受け取るんですか。国庫へ入るんですか。それとも、提訴をした企業のいわば丸もうけになるわけですか。

北村政府参考人 一九一六年法で訴えたアメリカの企業が最終的に判決で勝ちますと、その企業が先ほど申し上げた四十億円を受け取ることになります。

吉田(治)委員 聞けば聞くほど本当にとんでもない話ですよね。言いがかりをつけて、自分がもうけ損なったからといって、ダンピングだといって、相手の価格もわからないのに売ってきたと。

 もう一点聞きたいのですけれども、この裁判は民事裁判ですよね。現地の裁判所で、日本で言うならば民事裁判は弁護士さんがいられて、それぞれ原告、被告があって、裁判官が判定をしますけれども、この場合はどういう裁判の仕方になったのですか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 アイオワ州の裁判所では、当事者、すなわちこの場合は原告が希望したようですけれども、陪審制をとっております。したがいまして、事実認定あるいは損害額の認定を含めまして、陪審員が決定をするという仕組みになっております。

吉田(治)委員 日本でも参審制という形で裁判員制度が入ってくる、これは刑事だけですけれども。アメリカでは民事も入ってくるということになってきますと、こんな言い方はよくないかもしれませんけれども、善良な市民のお方、よく陪審制についてはいろいろな問題点が言われております。他国の司法制度ですから私たちが言う立場ではありませんけれども、今の局長の答弁を聞いておりますと、まずは行政の専門である米国商務省、そして、多分その前提として国際貿易委員会、ITC等での評決もあったんだと思います。

 専門家の目はくぐり抜けても、専門家の判断を尊重云々じゃなくて、民間の方の、一善良な市民の判断でこの賠償が決められたと言っても言い過ぎではないと思うんですけれども、その辺はいかがですか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカの裁判制度の問題でございますのでなかなか論評はしがたいわけでございますけれども、まさに先ほど申し上げたように、WTOに我々が訴え、またWTOの判決においてダンピングの認定の手続が、きちんとした政府あるいは先ほど先生がおっしゃったITC、そういった中立的なところを含めたきちっとした国際的に認められたものではないということがWTO協定違反であると認定された大きな論点でございますので、先生の御指摘、十分御理解できるところでございます。

吉田(治)委員 では、具体的に法案の中身のことについてお聞きをしたいんですけれども、こういう形で今、固有名詞は置いておきます、裁判に訴えられた、損害賠償を請求されたといったときに、この現在審議をしている法案が成立することによって、例えば日本企業がこのアメリカのアンチダンピング法によって訴えられて賠償請求をされたと。具体的にどういうふうな方法、どういう形で今度は日本側から損害回復するようになるのか、ちょっとその辺、お答えください。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律を御審議いただき、成立をさせていただいた場合には、仮にこの企業がアメリカで最終的に先ほど出た四十億円という損害を先方に払うということになった場合、この法律に基づいて、具体的には、まずこの日本企業は、今御審議いただいている法律に基づいて、四十億円なら四十億の損害回復を認めてほしいという判決を日本の裁判所に訴えます。その日本の裁判所は、この法律に基づきまして、損害回復を認めるという判決が恐らく出ると思いますけれども、その判決に基づいて、では具体的にどう回復するんだということですけれども、二つのやり方がございます。

 このアメリカの企業が日本国内で持っております財産、具体的には、このアメリカ企業も、具体名は別としまして、世界的な企業でございまして、やはり新聞輪転機が中心ですけれども、日本で新聞輪転機を販売しております。また、日本の子会社を持っております。したがいまして、そういう意味では、そのアメリカの企業が日本の子会社あるいは取引先、そういったところに対して持っている債権、金銭債権、あるいは、この企業は世界的な企業でございますので、日本国内でも特許等の知的財産権を持っております。こういったものに執行していくということを考えております。

 また、この企業は一〇〇%子会社として日本法人を持っております。工場も保有しておりますし、実際に活発な営業活動をしておりますので、この企業が持つ一〇〇%日本子会社に対して、同じように金銭債権、不動産あるいは知的財産権等に対して執行するということが可能になろうというふうに考えております。

 以上でございます。

吉田(治)委員 二点あるということは、要するに、このアメリカの会社が持っている国内財産が一つと、子会社が持っているさまざまな財産、この二点だというふうに理解していいんですか。答えて。

北村政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

吉田(治)委員 例えば、この法案ができるについてさまざまお話を聞きますと、アメリカの弁護士さんは営業が非常に熱心だということで、こんなことでこんな損害賠償がとれたよと全米に広告を打っているという話も聞いております。

 そういたしますと、今局長答えられたように、日本に財産があるとか日本に子会社があるという会社が訴えた場合にはそういうふうな対応措置ができると思いますけれども、乱訴社会だと先ほど同僚議員も質問いたしました。乱訴の中で訴えられ訴えられ、さまざまなことが起こったときに、日本の中で損害回復ができない可能性があるのではないかと考えられますが、その辺についてはどういうふうに対応方をする予定になっていますか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の中で損害回復をできないケースについて、理論的には、日本以外、日本国外の当該企業、すなわちアメリカの企業が持っている財産について損害回復として請求をしていくということは、可能でございます。

 ただ、現実問題として、アメリカ国内に持っているその企業の財産について損害回復を求めるのは、日本の判決でございますので、外国判決の執行を求める訴えをアメリカの裁判所に起こさなきゃならないわけですけれども、その場合は、アメリカの裁判所は、アメリカの有効な法律に基づいてアメリカの企業が獲得をした損害賠償なのであるから、それを回復する判決を認めるわけにはいかないということで、アメリカ国内での執行は現実的にはあり得ないと思います。

 他方、ヨーロッパ、アジア等のアメリカの外であればどうかということでありますけれども、少なくともヨーロッパにつきましては、先ほど御質問ありましたけれども、既に同種の法律ができております。したがいまして、ヨーロッパの裁判所に、そのアメリカ企業が持っているヨーロッパ内の財産について損害回復をしたいというふうに日本の企業が訴えた場合は、ヨーロッパは同種の法律を持っているということから、ヨーロッパの裁判所においては日本の判決を執行することを認めてもらえる可能性が極めて高いというふうに思っております。

 以上でございます。

吉田(治)委員 その場合に、ヨーロッパ法、EU法との違いというもの、それはどう違うのか。先ほど、ちょっとした違いです、ほぼ同じですと部長が御説明なさいましたけれども、どこが違うんですか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的には同じ考え方でできた法律でございますけれども、細かく見てまいりますと二つほど違いがございます。

 一つは、だれを相手に損害回復請求権が請求できるかということでございます。日本の今御審議いただいています法案におきましては、アメリカの企業そのもの、それからその企業が持つ一〇〇%子会社、それからその企業を持っている一〇〇%の親会社、ホールディングカンパニーみたいなものです、こういったものに限定をいたしております。これに対しまして、EUの法律におきましては、アメリカの企業と法的に事実上のパートナーであると認められる者、あるいは役員、さらには取締役、そういったところにまで対象範囲を拡大しているということが第一点でございます。

 それから、第二点の違いが、日本の企業が訴えを起こせる、提起できる時期でありまして、今御審議いただいています我が法案におきましては、米国での判決で日本の企業が敗訴をして賠償金を実際に支払い、損害額が確定した後に初めてこの法案に基づいて損害回復の訴えを提起できますけれども、EUの場合におきましては、アメリカ国内でこの一九一六年法で訴えが提起された後は、判決が確定をする以前においても損害回復請求訴訟を提起できる、そういうタイミングの違いがございます。

吉田(治)委員 これ、物すごく大きいことだと思うんですよ。先ほど部長はほぼ同じだという言い方をしましたよね。でも、この東京機械さんがここへ至るまでに、何社か日本企業は和解をしているんですよね。お金を払っているわけですよ。訴えられたら邪魔くさいからと、もう後々までやるのはだめだと。

 今の局長の説明だったら、日本は徹底的に闘え、闘って闘って、負けるまでやってこい、負けたら初めてこの法律で救ってやると。EU法の場合は、提訴がされた段階で、おまえ何言うとるんや、わしらもこれで応訴するぞというふうなことができるということじゃないですか。

 そして、二点目の、日本は企業だけ、相手は企業にかかわる役員まで入るということは、抑止力という部分でいうと全然違うわけですよね。企業というほわっとした中で、役員であろうが何であろうが、ちょっと会社の成績が悪いからあそこをアンチダンピングでやったろうやないかと思う人たちに対して、会社が責任とるんだ、おれは次の期ではひょっとしたらもうこれでやめるかもしれない。本人に責任があるんだったら、これはいついつまでもやられてくる。この抑止力というものを考えたときに、こんな第二、第三の東京機械のような会社を起こさせないためにも、私は、この法案でははっきり言って生ぬるい、手ぬるい、この二点だけとっても。その辺はどうするんですか、これから。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 対象範囲、それから訴えのできる時期の問題につきまして、これは、私ども政府部内で、もちろん法制局は当然でありますけれども、これは財産権をめぐる問題でございますので、憲法、それから民法、民事訴訟法、そういった極めて基本的な法律との関係で議論を尽くさなければいけない問題でありました。

 また、こういった外国での法律に基づいて行われる損害賠償についての損害回復ということを日本の国内法でつくるというのは、我が国で史上初めてでございます。そういう意味で、問題の性格自体が大変法律的に難しいことと、初めての経験であるということで、私どもは、まずは今先生が御指摘になられたEUの、そういった非常に大きく対象を広げ、早目に訴えができるといったことを十分念頭に置いて、関係当局と議論をいたしました。

 その点で、先ほど申し上げた憲法、民法、民事訴訟法といった日本の基本的な法律の限界がございます。

 具体的に申し上げますと、例えば対象範囲につきまして、基本的に、アメリカの企業とその企業が持つ日本法人、一〇〇%子会社、これは法的には別人格、別法人であります。それから、先生がおっしゃった例で申し上げると、役員と企業は、基本的には別の法人格あるいは別の個人でございます。そういう意味で、財産権を請求し、それを回収するという財産権の基本に係る問題でございますので、これについてどこまで日本の国内法で認めていいのかということで十分議論をいたしまして、ぎりぎり実質的にアメリカの企業と実体的に同一であるという認識ができる一〇〇%子会社ということまでは、何とか日本の国内法でもいけるのではないか。それを超えて、役員あるいは過半数の資本を持っている子会社といったようなところまでいくことは、憲法二十九条の財産権の保障の問題と絡みまして、基本的には難しいのではないかということで、そこは、先ほど来御説明申し上げましたように、この案件の実態も含めて考えますと、ぎりぎりの実効性は確保できるのかなという判断をしたところでございます。

吉田(治)委員 局長は公務員ですよね。税金から給料もろうてはりますよね、こんな言い方はよくないかもしれない。ここにいてるのは、ほとんど、歳費だ何だ、そういう形でもらっている人間が集まっていますよね。私たちのやるべきことは、国民の生命と財産を守るというのが一番大きいことでしょう。憲法が云々だとか民法だとか民事訴訟法は関係ないんですよ、ここへ来たら。アメリカに対してどうするかという話じゃないですか。

 そういう中で、EUはできて日本ができない、そして理由はこうこうこうだ、私はそういう次元の問題じゃないと思う。史上初の法案だ、私はそのとおりだと思います。戦後初めて日本がこの法案を通じて、こんな言い方はよくないかもしれませんけれども、アメリカに盾を突く法案なんですから。今までおとなしく聞いていたけれども、これは辛抱たまらぬと。

 この法律を通す、通さないは、これから我が党の判断、それぞれしていかなければなりませんけれども、国民の生命と財産を守るという観点からすると、EU法に比べてこういう状況、もちろん大臣の立場として法律だとか憲法の問題があるかもしれませんけれども、私は、できる限り、せめてEU法に近づくような法案になるように、早急に、この法案が通ったとしても改正をする必要があると思いますけれども、大臣、いかがお考えになられますか。

中川国務大臣 私は、こういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、吉田委員のお気持ちは私自身よくわかります。わかるから、今も局長が答弁いたしましたけれども、かつてないようなこういう法律をEUと一緒につくって、大まかな趣旨はEUと一緒であります。さっき申し上げたように、損害回復できる、アメリカでの裁判の結果を承認、効力は認めない、これは大枠であります。ただ、違う部分について、吉田委員は生ぬるいということでございました。

 もちろん、国民の生命財産を守るのが我々の仕事であり、しかも、WTOでこれは違反だということが確定し、是正期間も経過し、ずっと何もやらないまま、東京機械がある意味では頑張っているわけでございます。

 我々としても、確かに私もこの法案のときに、EU並みにできないのかということを疑問を申し上げましたけれども、今申し上げたように、別法人であるとか、あるいは企業という法人とそこに属する関係者とは別法人である、いわゆる有限責任論ですね。ということで、ぎりぎり法制度として、憲法その他に基づく安定性として、ここはぎりぎりの線ですということでありました。

 今後、この東京機械がどういう形になっても、今もちょっと確認したんですけれども、仮にアメリカで裁判で勝っても、例えば訴訟費用は東京機械が持ちなさいなどという損害が出たときには、これでもってカバーできるわけでありますから、そういう意味では非常に、ゴス社の一〇〇%法人が日本にある限りは、しかも、どうも四十億以上の資産があるというふうに聞いておりますので、ある意味ではラッキーな部分があって、日本に法人がない場合にはこれはどうしちゃうんだ、EUにもない場合はどうしちゃうんだという問題があるわけですから。

 ですから、アメリカとしても廃止したい、政府は廃止したい、下院もそういうことを認めた。アメリカとしても、さっき言ったように、そもそもこれは、第一次世界大戦でもうかっているときに、何かヨーロッパが復活してきたら今度アメリカに攻め込んでくるのを予防するための法律などという、かなり、当時の話とはいえ、めちゃくちゃという言葉は言っちゃいけないですね、過剰防衛的な法律、当時はWTOも国際連盟もできていなかった時代でありますから。そうはいいながらも、さすがのアメリカでもこれはひどいというのは、私にも直接、USTR、国務省から聞いている話でございます。

 そういう意味で、我々としては総合的に判断をして、仮にこの法律が正式になくなったとするならば、東京機械のこの問題のみをもってこの法律の役目も多分終わるんだろうというふうに思いますので、そういう意味で、これはある意味では東京機械というものをかなり意識した特別の法律だということを、総合的に言えば、EUと共同してこういう法律が、御賛成いただいてできるとするならば、アメリカにとってもかなり大きなインパクトを与えるものだというふうに私は思っておりますし、東京機械が、裁判の結果いかんにかかわらず、こうむった損害はきちっと確保できる、回復できるという意味でも画期的な法律だというふうにぜひ御理解いただきたいと思います。

吉田(治)委員 そこまで大臣に言っていただいたら、大臣、もう一歩進めて、アメリカはさまざまな法律があり、訴えるという意味のスー族とよく言われています。例えば一九三〇年関税法だとか、よくこんな法律があるなというのがいっぱいあります。こういうふうに第二、第三の、このアンチダンピングの問題だけじゃなくて、さまざまな個別企業の通商問題というのは、これからも私は続けて出てくるんだと思います。

 第二、第三のこういう東京機械のような会社をつくらない、また、今後の日本として、アメリカ政府に対する毅然たる態度という部分から進めていくと、事によれば、こういう法律というのは、これからも政府として対抗措置の法律をつくっていく、そう考えてよろしいんでしょうか、大臣。

中川国務大臣 この法律自体が、先ほど御説明しましたから繰り返ししませんけれども、WTOの要件に、大きく三原則に反しているということが前提で、WTO上違法が確定をしているということでありますから、今までにないこういう法律をつくったわけであります。

 これはあくまでも仮定の話でありますけれども、アメリカに限らず、少なくともWTOに加盟しているような国々が明らかにWTOに違反しているということが確実になって、日本の企業が要するに大変な損害をこうむるということがまさに重大な問題となったときには、今後もそういうことを考えないということは私は申し上げるべきではないというふうに思います。

吉田(治)委員 本当にアメリカの企業というか弁護士さんはよく調べていて、よくこんなところにこんな企業があるなというのを、私どもも、大阪において、へえ、こんなところの、言っちゃ悪いですけれども、こんな大阪の片田舎にまで訴えが来るのかということが間々あります。

 私は、この問題を含めて、通商問題というふうなもの、これについて、やはり一つは、今お話ありました、EUと法律的にも連携していく。今までのようにバイ、二国間の関係じゃなくてマルチという部分でいって、いかにEUと日本というのが、ある意味でアメリカに対して連携していくかということが必要だと思うんですけれども、その辺のお考えと、もう一点は、やはり今こういう通商問題というんですか、一社の問題かもしれないけれども、起こったことが法律として出てこないと国会としてわからないんじゃなくて、通商問題というものはさまざまな部分で国会に報告をしていく必要があると思うんですけれども、この二点について、どういうふうにお考えになられているでしょうか。

中川国務大臣 別にこれはアメリカだけではなくて、もちろんアメリカとは、さっき申し上げたように、トータルとしていい関係に私はあると思っておりますが、EUとももちろん、この問題に限らずいろいろと連携をとっております。先ほど申し上げた一年前の鉄鋼アンチダンピングなんかもEUと一緒にやりましたし、これもEUと一緒にやっております。

 ただし、ではEUが全部きちっとしているかというと、これはこれでいろいろあるわけでありますし、そのほかの国々もいろいろあるわけでありますから、我々としては、アメリカに言わせれば日本だってあるじゃないかという話が時々出てまいりますけれども、しかし、WTOというルール、共通ルール、しかもその中での紛争解決手続、仲裁手続というものがルール上もきちっとある。そしてまた、今このドーハ開発ラウンドの交渉の中でそれをまたさらに見直そうよという議論が他方あるという、その土台があるわけですから、その土台に反するようなことが厳然たる事実として存在するということになれば、アメリカであろうがどの国であろうが、日本としては毅然として対応すべきだというふうに考えております。

 もう一点、国会報告につきましては、主な問題につきましては、例えばWTO、EPA、そしてこの御審議いただいている法律等々重立ったものにつきましては、私の所信の中でも既に申し上げさせていただいているところでございますし、折に触れて、こういう通商問題というものに関しましてできるだけ国会、当委員会の方に、こんな問題についてこういうふうにというようなことについて極力御報告をしたいというふうに思っております。

吉田(治)委員 そういう前提として、WTOもありますし、このごろはEPAというものも出てきております。

 とりわけ、ちょっと気になるのは、この法案には関係ないんですけれども、やはりアメリカということを考えると、アメリカ、日本というのは、やはりそこに中国という非常に大きな要素が入ってくるというのは、古くから外交問題ですとか安全保障問題、経済問題を言われる方々がよく言われるんですけれども、EPAへの中国の取り組みというのはどうなのか。それから台湾という、地域、国、どうとらえるかは別にいたしまして、例えば台湾が日本にEPAを求めてきた場合に、どういう取り扱い方になるのか。

 ちょっとこの点、きょうは外務省もおいででございますので、中国の現状と、それから台湾というふうなものがもしもそういうふうなことになった場合の取り扱い方、ちょっと御説明をいただきたいと思います。

佐々江政府参考人 中国と台湾についてのEPAの考え方についてのお尋ねでございますが、まず、中国についてでございます。中国との経済関係の基本認識ということでございますが、御承知のように、小泉総理がおっしゃられておりますとおり、中国の現在の経済発展というものは、基本的に挑戦であると同時に好機である、こういう考え方に立って、実際のところ、日中間では経済面におけるさまざまな関係、特に相互補完面での関係が前進しているというふうに思っております。

 しかしながら、他方で、中国が全体として自由市場、経済開放の体制への移行あるいはこの整備という観点でどういうことになるか。これは、将来、つまり中国との経済連携のあり方を考える上で、現状がどの程度の市場移行過程にあるかということを認識していることが重要だと思うわけでございます。そういう意味で、中国は、御案内のとおり、三年前にWTOに加盟して、今のところその加盟に約束した市場経済への移行あるいは自由化について実施中である、こういう状況であるわけです。その中には、我々としてまだ不十分であるというふうに考えているものもあるわけでございます。

 こういう状況にある中国につきまして、将来どうなのかということでございますけれども、将来的に、これは小泉総理もおっしゃられていることでございますが、東アジア・コミュニティーを建設する、あるいはその中心的な……(吉田(治)委員「委員長、ちょっと質問の趣旨が彼はわかっていないと思うので。途中で申しわけないですけれども」と呼ぶ)

河上委員長 答弁、簡潔にお願いをいたします。

佐々江政府参考人 はい、わかりました。

 中国と台湾のEPAというお考えでございますけれども……(吉田(治)委員「いや、全然違うよ。だから、質問全然聞いていないよ、この人」と呼ぶ)いや、聞いておりましたけれども……(吉田(治)委員「中国と台湾との間のEPAの話なんかしていないよ、私。改めて質問しますから」と呼ぶ)はい。

河上委員長 では、吉田君。

吉田(治)委員 私が聞いているのは、中国がEPAというものをもって他国にいろいろなことをしているのはどう認識しているのかということが一点。中国と台湾の話は別々でしょう。台湾の話は、では、台湾がEPAというものを日本に求めてきたらどう対応できるのですかということ。この二点よ。

佐々江政府参考人 質問の趣旨が非常によくわかりました。ありがとうございます。(吉田(治)委員「嫌みはやめてくれよ、嫌みは」と呼ぶ)はい。

 中国が他の国とどういうEPA、FTAを結んでいるかというのが最初のあれでございますけれども、御承知のように、中国はASEANを中心に今EPAの締結交渉を進めております。そして、このASEAN全体との関係で、貿易面を中心にEPAの交渉、これはもうしばらくすると交渉がほぼ終了するというふうに言われているわけでございますが、他方で、中国全体として、投資とかサービスの面、これは日本がアジア諸国と今行っている交渉の中心的な課題でありますけれども、そういうものについては含まれていないということでございます。

 他方、中国は、このほかにも世界のほかの国との間でいろいろなEPAの交渉あるいはFTAの交渉について計画、検討していることも事実であるということだと思います。

 台湾につきましてのお尋ねでございますが、台湾が日本とFTAないしEPAを結びたいといった場合にどうするかというお話でございますが、御承知のとおり、台湾は非常に重要な経済関係を有する地域であるということで、基本的には実務的な関係を強化していくべきだというふうに考えております。しかしながら、台湾も中国と同様でございますが、WTOに加盟したばかりであるということで、その加盟の約束を今履行中であるということでございます。こういう中で、台湾との関係につきまして幅広い経済関係を実務的に進めていく、そういう中で台湾との経済連携のあり方を考えていく、将来的な、中長期的な検討課題であるというふうに考えております。

吉田(治)委員 事前に質問通告をしているのに、こういうことしかできないんですか、外務省は。はっきり申し上げるけれども、大変失礼だけれども、議事録に残って。

 だから、私は、こういうことがあるから、例えば交渉窓口というものを一本化するべきだと。アメリカは、先ほど大臣の答弁の中で、USTRという言葉があった。そういうふうなものというのをしっかりと、経産省の外局か何かわかりませんけれども、そういうものをちゃんとつくっていく必要があると思うんです。これはちょっと大臣、後で、どうお考えなのか、答弁的には難しいと思いますけれども。

 そしてもう一点は、今、中国のお話になりましたけれども、このごろBRICsと言うんですか、中国だ、ブラジルだということで、日本を今度はアンチダンピングで提訴してくると。今まででしたらアメリカとの関係があったと思うんですけれども、発展途上国と言ったら語弊があります、中進国という言い方はよくないかもしれない、しかし、これから伸びてくるところが、自国の産業の技術の保護だとか、また、他国での競争というふうな部分の中で日本企業をこれから訴えてくると思うんですけれども、その辺の二点、途上国からのアンチダンピングの訴えに対する取り組み、そして交渉の窓口の一元化について、それぞれお答えをいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

北村政府参考人 まず、冒頭の御質問の、現在のBRICsの動きとアンチダンピングの話について御説明申し上げます。

 一九九九年に今のWTOが発足したわけでございます。その当時を見ますと、先進国が訴えたアンチダンピングが六十件、途上国が訴えたアンチダンピングが、同じように六十件でございました。最近の実績、昨年の実績では、先進国が訴えた件数は約三十件と、半分に減少しております。他方、途上国がアンチダンピングを訴えた件数は、百九十件と三倍以上にふえている。そういう意味では、全体的に途上国が訴え始めているということでございます。

 とりわけ、先生も御指摘のようにBRICs、ブラジルは、例えばここ十年とりますと五十九件、インドが大変多うございます、インドがここ十年で二百七十九件、中国が、これはWTOに入ってからですからまだここ数年ですけれども、もう既に四十四件ということでございます。ロシアは現在まだWTO未加盟国でありますので、統計はございません。

 それから、今申し上げたブラジルの五十九件の中で、日本に対してもどうだということでありますけれども、そのうち一件は日本に対するアンチダンピングでございますし、インド二百七十九件のうちの対日アンチダンピングの件数は、十五件ございます。中国は、四十四件のうち九件が日本に対するものでございます。

 以上でございます。

中川国務大臣 対外通商についてですね。よく御議論ありますし、いろいろなところからも御提言いただいて、対外通商、マルチであろうがバイであろうが、政府として窓口を一本化した方がいいんじゃないのかと。

 特に、外国と交渉するときに、日本は大臣がずらっと三人も並んでやるのは、確かにほかの国は大体一人、まあEUなんかは二人出てまいりますけれども、複数の国もないわけじゃございませんが、三人というのは多分日本だけだろう。これは、確かに我々出ていて、余り格好のいいものじゃないことは事実でございます。

 ただ、問題は格好の問題じゃなくて、実質として一本に、USTRなりあるいは貿易大臣なりが一人で全部やった方がいいということが、よりメリットが今よりもある、あるいはまた、今の交渉が三人がその中でやることでデメリットがあるかというと、私は、シンガポールについては党の責任者として、それからメキシコは実際に交渉をやった当事者として見ると、各省の連携という意味では、極めてよくいっていたというふうに思っております。

 特にメキシコの場合には、農産物と工業品というものが大きな二つの分野でありましたけれども、農水大臣も我々の実情をよく御理解いただき、私も一次産業の部分についてはよく理解した上で交渉していたわけでございますし、また、外務省もその中での外交の責任者という立場でやってまいりました。

 ですから、今よりもどういう形にしていったらよりよい通商交渉の強いポジションになるかというきちっとしたメリットがあるのであれば、検討を今後さらに進めていく必要があると思いますけれども、いずれにしても、各党のいろいろな御指導をいただきながら、最終的には総理の御判断だろうと思っております。

吉田(治)委員 局長、ちょっと最後、答弁漏れ。

 途上国のアンチダンピングの訴えに対する取り組み。状況じゃなくて、どう取り組むのか。これは、WTOに訴えられているはずですから、二国間協議になるのか、多国間、WTOのパネルにかけるのか。その辺、どういうふうに対応するのか、それだけお答えください。

北村政府参考人 お答えいたします。

 先ほどのように、アンチダンピング、日本が訴えられているケースもふえてきておりますので、WTOのルール、現在のルールに則してしっかりと考え、ルールがいわば乱用されているという場合にはもちろん二国間で協議をし、それがまとまらない場合にはパネルに持っていく、そういった個別の案件についてきっちりとした対応をしたいと思います。

 それからもう一点は、先生御指摘のように、これからふえる傾向がございます。したがいまして、ルールそのもの、現在のWTOでのダンピングのルールについて、やはりそういった乱用をもたらす甘さがさまざまな面で見られます。したがって、そういう甘さをなくするためのルールを厳しくしていくといったことについては、現在のラウンド交渉の中で日本として最重要課題の一つとして取り組んでいきたいというふうに考えております。

吉田(治)委員 もう終わりますけれども、本当は、このアメリカの法案はシャーマン・アンチトラスト法にかかわっている独占禁止の問題であるということ、何も商売のやり方だけじゃなくて独占禁止に、だから日本語でも不当廉売と、日本の独禁法にも書かれている言葉が使われているということ、これは大変大きいということだけ指摘をさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

河上委員長 次に、中山義活君。

中山(義)委員 ただいまの吉田治議員の質問で、ほぼ裁判の内容でありますとか、今後どういう展開を迎えるか、いろいろ想像ができるところですが、私ども申し上げたいのは、やはり経済産業大臣が、ある意味じゃ通商というのは外交の一番最たるものだと思うんですね。やはり国益というものを考えたときに、日本の国が安くていいものを外国に売る、その場合に、安くていいもの、安いという部分が、外国によって世界的なルールを守られなかった場合に、私ども、それは大変大きな問題だということがまず一点だというふうに思うんです。

 今回の問題につきましては、ある意味では遅きに失したといいますか、WTOに抵触するような外国の、特にアメリカの、これが世界のルールだといって必ず日本に持ってくるわけですよ、アメリカは。そういう面では、アメリカにまだこういうようなものがあるのかどうか、一回検証する必要があると思うんですね。

 今までも、日米構造問題協議、構造協議問題イニシアチブですか、それとか、または日米包括協議とか、いろいろありましたね。こういうことで、だんだんだんだん日本が、これが世界のルールだ、これが国際社会のルールだといっていろいろ押しつけられてきたわけですよ。特に、それは日本の大企業というのは結構体力もあるし、力もある、だから対抗できました。しかし、いつもそれでつらい思いをしてきたのは、やはり中小企業や弱い農業者だと思うんですね。

 そういう面で、我々は、通商という問題については、常に日本の中にも中小企業というものを抱えているということを考えていただかなきゃならないと思うんです。

 私は、今回のこの問題についても、結果的には、これから安くていいものをつくる、いい商品を考えて一生懸命やっている中小企業にそういう被害が行かないように特に考えていただきたい、こう思うわけです。

 ちょっと質問はそれますが、前回の一般質問のときに、たまたまBIS規制の問題、自己資本率の問題で、いわゆるリレーションバンク、地元の信用金庫や信用組合の問題についていろいろな言及がされました。もともと自己資本比率も、これはある意味ではアメリカから押しつけられたような、BIS規制という形で、確かに外国でプレーをする大きな銀行はいいですよ。しかし、日本の中小の信用金庫、信用組合まで何でこのルールを適用しなきゃいけないのか。日本の中小企業をつぶすようなものじゃないか。もともと信用金庫、信用組合というのは組合組織ですから、協同組織ですよね。お互いに無尽みたいなもので、あるところからお金を預かっていて、少しないところに貸してやろう、こういう話だったんです。

 そういうところで非常に地域の金融というものを保ってきたんですが、いろいろ外国の標準に合わせたと言っていますが、本当に外国がそうやっているのかどうかはわかりません。八%のBIS規制なんというのを守っている外国の銀行というのはどれだけあるのか私はよくわかりませんが、私の知っているところでは、これはちょっとおかしいぞというところも随分、外国でも変わってきているやに聞いています。特に日本の信用金庫、信用組合が四%を守るというのは、中小企業に金を貸すな、国債を買えというようなもので、何で信用金庫にそんなことを要求するのか、私どもにとってはわかりません。

 たまたまそういうことがあって、検査マニュアルなんかもかなり自己資本率、いわゆる金融検査マニュアル、金融庁のつくったやり方で、地元の金融というものを押さえつけているんじゃないか、こういう質問が大畠議員からあったんです。そのときに山本先生が、いやいや、とんでもありませんよと。DDSというのがあって、べったり貸しの、四十年とかうっかりすれば戦後すぐから借りたようなお金があるわけですね。こういうことに関してはこれはもう劣後ローンでいい、ある意味では返さなくていい、それは金利だけ払っていればいいんだ、こういうふうにおっしゃったわけですね。

 私もこれはいい話だと思いまして、地元金融機関にもいろいろ尋ねてみました。そうはいいますが、やはり金融庁がうるさいんです、金融庁の指導では貸したものは返せと言っている。これは金融庁が言っているんですよ。だから、金融庁、金融大臣と中川大臣が取っ組み合いをしても、中小企業を守るためにはそれは違うんだ、こう言ってくれないと困るわけですね。

 だから私は、中川大臣には、中小企業を守るために、山本先生の言ったDDS、べったり貸し、長く貸して、もう二十、三十、四十年になったものに関してはこれは資本なんですよ、もともと中小企業には資本がないんですから。だからやはりお金を借りたものが資本としてずっと回ってきた。だから、金利を払えば優良債権ですよね、そういう考えになりますね。金利を払っていれば優良債権、そうですね。この辺の答弁をもう一度してくれますか。

山本(明)大臣政務官 先日のあの答弁、ちょっと私が話し過ぎというとおかしいんですが、あれは金融庁の管轄でありまして、経産省の管轄ではありませんので。ただ、こういった制度があるから中小企業もこれから借りやすくなるし、中小金融機関も貸しやすくなる、不良債権も減ってくる、大変いい制度だということで申し上げた次第でありまして、それ以上のことは、どうあるべきだということは、ちょっと私から申し上げる立場にない、こんなふうに思いますけれども、個人的にはこうした制度を、金融庁が文句を言わないように経産省からも少しでもやはり意見を具申したい、こんなふうに思いますし、ぜひ有効に活用していただきたい、こんなふうに思っております。

 中山委員は、私もいつも思っておりますけれども、今も、アメリカの通商の話が何で中小企業の関係かなと思っておったんですが、中小企業の味方として活躍しておみえになりますので、私も意を同じくするところでありますので、これからもよろしくお願いいたします。

中山(義)委員 私が本当に申し上げたいのは、WTOにしても、これは世界のルールだ、国際社会のルールだということでアメリカは必ずいろいろ言ってくるわけですよ。だけれども、国際社会のルールというものが日本の中小企業を痛めつけているということも事実なんですね。大店法しかりですね。

 大店法なんかでも、本当に、シャッター通りになったとかよく言いますが、郊外で一万平米だ、一万五千平米だとどんどん大きなものをつくっていってしまう。中小企業では商店街では勝てない部分が随分ありますよ。先ほどの不当廉売の話じゃないけれども、値段はどんどん安くする、電器の不当廉売なんかもそうですよ、大きなスーパーまがいのところで電器屋さんがばんばん安くする。これは普通の小売屋さんの仕入れ価格よりも安い値段で売っているんですよ。こういうのがダンピングと言うんですよ。だから、アンチダンピングというのは国内でもあるということを我々は気がつかなきゃいけないんですね。

 そういう面で、今、私たちは中小企業を守るために何をやらなきゃいけないか。私はいつも金融庁は敵だと言っているんですよ、経済産業省は味方だ。そうですよ。だから、大臣と金融庁の伊藤さんと取っ組み合いをやったって、私は、中小企業のために金融の問題は変えてもらいたい、本当にリレーションバンクをしっかりやってもらいたい、こう思っているんですよ。

 大臣、今そういう話をしておりまして、とにかく力ずくでも中小企業を守ってもらいたいという話を今しておったのでございまして、山本さん、だけれども、これは言い過ぎたなんて言わないでくださいよ。自分の言ったことに自信を持っていただいて、中小企業を助けるためにはやはり信用金庫、信用組合がお金を出せるようなシステムにしなきゃいけないと思いますよ。

 ちょっともう一度、決意を述べていただいて、大臣とよく話し合ってくださいよ。まずここで、大臣に質問するくらいの気持ちで、はっきり大臣と話し合いをしてください。マイクを通してやってください。

山本(明)大臣政務官 大変激励をいただきまして、ありがたく思っております。強い味方ができたと思っていますので、真剣に私もこれからは取り組んでいきたいと思います。

 やはり中小の金融機関というのは中小企業とともに歩む金融機関でありますので、やはりこの中小金融機関を、リレバンの制度がどれぐらい功を奏してくるかはわかりませんが、少なくとも、大変今体質が強くなっていることは間違いありません。中小企業診断士等も大分養成しておりまして、そういった意味で、お金を中小企業に貸しやすくなってきておりますし、それだけの勉強もしっかりしておるということだと思いますので、しっかりと大臣にもお願いを申し上げまして、また大臣から何らかの答弁をいただければ答弁をいただきたいと思いますけれども、中小企業のために、金融機関をしっかりと活用していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

中山(義)委員 つまり、地域の金融機関は、自己資本率四%を守る、それがいい信用金庫じゃないんですよ。いかに地域の産業を育てたり商店街を育てた金融機関がいい信用金庫なんでしょう、または第二地銀だと思うんですよ。やはり地域に根差してやっていくということは、地域の企業を育てる、地域の商業者を育てる、こういう視点に立たなきゃいけないわけですよね。

 ですから私は、あるときに、金融庁ががんがん検査マニュアルで締めつけていく、お金を貸さないようにしていく。ところが、経済産業省は三十兆円、安定化資金として予算を組んだ。これは閣内不一致ですよね、考えてみれば。片方は金を貸すなと言っているんですよ、片方は金を貸せと言っているんですよ。しかも、銀行は何をしたかといえば、保証協会で保証されたお金をつけかえていく、とんでもないことを銀行はやったわけですよ。だから、善意の経済産業委員会がうまく利用されちゃったということですよね。

 そこで、私は大臣にお願いしたいんですが、やはり、金融庁、このやろうというふうに、こらと言えなきゃいけないと思うんですね。今のやり方でまだまだ金融庁は、ああいうふうにうまいことは言っていますよ、こうやって貸すときにはできるだけお金を出させるようにしていますなんて言っていますが、実際はやはりぎりぎり検査マニュアルというのはきいているんです。そういう面では、もう一度大臣が金融庁と話して、もっとしっかり中小企業に金を回せということを大きな声で、しかも腕力も使って言っていただきたい、こう思うので、ひとつ決意をお願いします。

中川国務大臣 まず、山本政務官の御発言は、私にとりましては山本政務官は中小企業のプロでございますので、私としては日ごろからいろいろ教えていただいておりますので、政務官の発言を私も深く受けとめさせていただきたいと思います。

 それから、特に、地方というか、地域の中小の金融機関の、特に中小零細企業に果たす役割というものが極めて大きいということはもう大前提だと思います。

 したがいまして、いろいろな手法で、八%、四%のBISルールというのは、ある意味では、海外プレーヤーが八で国内は四ぐらいにしなさいということを一時期随分振り回されましたけれども、とにかく中小企業が頑張っていることに対して、中小企業向けの金融機関、政府系も含めまして、文字どおりリレーションバンキングで、実態に合った形でやっていく。その上で、検査マニュアルあるいは金融庁の検査が必要以上に目的に影響なりマイナスを及ぼしてはいけないというのは、中山委員の御指摘と私は全く同じでございます。

 幸いにして、多分当委員会の果たした役割、非常に大きかったんだろうと思いますけれども、例の検査マニュアルの別表は、随分中小企業金融機関向けに改善されまして、私が聞いている範囲では、大分よくなったと金融機関が言うのはある意味では変かもしれませんけれども、実態をよく判断してくれているというような声も実際に中小企業向けの金融機関のトップから聞いたこともございます。

 しかし、それで不十分かどうかということは、引き続き中山委員初め当委員会での御議論を踏まえ、実態に合った形での金融庁と中小金融機関、あるいはその先の、我々の所管であります中小企業の発展のためにいい方法ができるように、さらに我々としても当委員会での御審議を注意深く拝聴したいと思っております。

中山(義)委員 国際ルールが大切だということで、アメリカからいろいろなルールを押しつけられるということが大変大きな問題になっているということを御認識いただきたいと思うんです。つまり、中小企業、弱いものが必ずいろいろなつらい目に遭っているという現実があるわけですね。だから、農業者も、日本の場合は大きな組織でやっているわけじゃありませんから、農業のFTAなんかについても農業者が大変苦労するということがあり得ると思うんですね。そういう面でもその辺の配慮をぜひお願いしたい。

 と同時に、この際ですから金融のことを申し上げますと、私たちは法律を出しました。お金を貸すときには貸し手の責任があるよ、説明をしっかりしなさいと。例えば、ここに書いてある連帯保証人というのはこういうことですよと。ところが、今までは、ここにちょっと名前を書いて判を押せばすぐ金を出しますよと。連帯保証人と書いてあるのに、よくそれを見ないで名前を書いて判こを押しちゃった。後どういうことになるか。連帯保証と単なる保証人とまた違いますからね。連帯保証というのはお金を借りた本人と全く一緒ですからね、第二債務者ですから。彼が逃げちゃった場合には、彼を追っかけろとかと言う資格はない。自分が払わなきゃならない。非常に大きな責務を負うんですね。だけれども、今までは、ここに名前を書いて判こを押せばお金を出しますよ、こういうことをやったんです。

 それから、書面についても、裏側を見ると、約定書なんて書いてありまして、当行は法律によらず勝手に金利を上げますよ、勝手に保証人をふやしますよ、勝手に担保をふやしますなんて書いてある。だから、そういう書面も説明しながら渡していない。

 それから、保証人の保証の範囲ですね。包括根保証とかいろいろありますね。こういうことについても説明がされていないんですね。

 だから、私たちは金融の問題についても、大企業がやる金融と、中小企業が、要するにリレーションバンク、地域社会を守っていくために、地域の商店街や地域の商業、工業を守っていくためにやっているものとは違うんだという認識をしっかり持っていただいて、BIS規制についても、やはり八%、四%とありますが、本当に四%が正しいんだろうか、この辺も、むしろ経済産業委員会から私は提言を出したいと思っているんですよ。

 これは経済産業委員会じゃなくて財金の方でやっていますが、案外わからないんじゃないですか。中小企業をしょっちゅう見ている人しかわからない金融というのがあるんですよ。おじさん、おばさんがこうやってラーメンをつくっていて、それでお金を借りるわけです、その合間に。だから、説明がなきゃ、わからないで判こも名前も書いちゃうんですよ。だから、そういう、ラーメンをやりながらもお金を借りるということがどういうことなのか把握した人しか本当のリレーションバンクのことはわからない。そういう面では経済産業省から提言をしてもらいたいと思うんですね。

 だから、中小企業に対する金融、我々ももっとこれからもこの委員会で提言をしていきたい、このように思うわけで、大臣、もう一度、中小企業を思いやる気持ちをぜひここで決意を述べていただきたいと思います。

中川国務大臣 日本は、文字どおり、事業者数でも雇用者数でも中小企業が日本の経済を支えているということであります。

 最近は、発展途上の国々の大臣なり経済界の代表の方が来ると、単に援助とか何とかということじゃなくて、中小企業をその国で発展させていきたいから、いろいろな技術的、人的な支援をしてもらいたいという要望が私に物すごく多いんですね。したがって、ある意味では、その発展途上国のかぎを握るのはその国の中小企業という、まさに岩盤的な存在、しっかりした存在として発展していくかどうかがその国の発展につながっていくんだなということを私自身強く感じているわけであります。

 そうしますと、中小企業、そしてそれに関係する中小企業金融というものは、何も日本だけの問題ではなくて、発展途上国を初め、もちろんヨーロッパやアメリカにも中小企業はあるんでしょうし、そういう観点から、真に中小企業の発展のための中小企業金融というものはどういうふうにあるべきなのかということを、さっきの八%、四%の議論は別として、一般論として、私は、国際的にも、ある意味では日本がリーダーシップをとって考えていく、あるいはまた、発展途上国のためにもお役に立つような役割を果たしていければいいなと最近考えているところでございます。

中山(義)委員 本当に中小企業を思いやる気持ち、大臣からもその意気込みを聞きました。

 私自身は、今度は新潟の小千谷も行きましたけれども、商店街も今がたがたなわけですよ。日本の商業というものは、やはり育てるというよりも、今熟成の時期にあるわけですね。しかし、その熟成の時期が、ヨーロッパと同じように、高齢化社会を迎えてだんだんだんだん疲弊している、このときに地震があったわけですね。ですから、その痛手というのは非常に大きいわけです。

 私たちも、経済を立て直すというのも経済産業省の仕事だと思うんですね。災害があったということはもう現実で、その災害は終わっているんです。この今の状況から、本当に経済というものを一から立て直すというのは大変なことだと思うんですね。私は、そういう面でも経済産業省が中心になって、経済を一から立て直すということはどういうことなのか真剣に考えてみると、これからの日本の将来もわかると思うんです。ですから、災害地に目を向けて、今あそこまで、どん底までいった経済というものをどうやったら回復できるのか、ある意味では、これは大変すばらしい資料が後々できると思うんですね。

 そういう面でも、今回の商店街のああいうような災害についても、ぜひ大臣もこの委員会で実際視察をして、そして、どこをやったら、どういうふうにしたら経済がもとのものに戻るか、こんなことも検討していただきたいと要望いたしたいと思います。

 それでは、今度、二番目の質問に移りますが、いつもアメリカとの交渉の問題については日本が押し切られる、そういうような印象を日本人はみんな持っていると思うんですね。BSEの問題でも、やっと日本の牛肉は安全だという、みんな安心して焼き肉屋に行っていると思うんですよ。タンであろうと何であろうと安心して頼んだ。しかしながら、また何となく、アメリカの牛肉を拙速に輸入をすると、ちょっと心配だなと。

 今まで、全頭検査は当たり前、危険部位は全部除去する、こういうふうにやってきたわけですよ。長年ずうっと我々が肉の安全を守ってきたのに、この一、二年の間ですかね、何かアメリカに押し切られたというよりも、小泉さんが、私はブッシュさんを応援していると応援を言いましたね。それと同時に、要するに、牛肉を輸入することを宣言することが選挙にプラスだと。こんなことで、今までの厳しい検査や何かを見直ししてまでアメリカから輸入するという根拠が、非常に選挙に関連しているということで、私は不純だというふうな気がするんですね。こんなことがあったら、日本の農業者も、せっかく食の安全を求めてやってきた焼き肉屋のおやじさんたちも、みんな文句を言っているんですよ。その辺、大臣、どうですか。

中川国務大臣 ほかのことは私は報道でしか知りませんけれども、きょう農水が来ていないので、ちょっと所管外かもしれませんが、先日の十一月初めの日米のBSEの実務者協議に関して、総理はアメリカの言うとおりにしろという指示は出していないというふうに私は聞いております。あくまでも科学的な話し合いとしてきっちりやりなさいという指示を日本の側の交渉者に言ったという話を私は聞いております。

 焼き肉屋さんが困っている。困っているというのは、信頼性の問題で困るということと、焼き肉用の肉が入ってこないという意味で困っているのと二つあって、これを何とか二つともクリアしたいというのが私どもの政府の考え方であるわけであります。

 そういう中で、先ほど、日本が交渉でよくアメリカに攻められているという話がありましたが、そういう面もあったことも事実だと思いますが、私、率直に考えるのは、日本側から積極的に動かなかったということが結果的にそういうことになったということもあります。去年の十二月の末にアメリカのBSEが発覚して以来、それ以来、結局、大統領選挙の二、三日前まで一つの区切りにならなかったというのは、アメリカ側にも日本側にもいろいろ話の違いがあったにしても、やはりこういう交渉というのは、いずれにしても、大統領選挙は日本にとっては関係ございませんけれども、日本側にとっても、消費者あるいは焼き肉屋さんを初めとする多くの関係の皆さんにも多大な関心事項のあるところですから、やはりスピード感を持って対応していくということが大事ではないか。所管外なので、ちょっと言い過ぎの発言かもしれませんけれども、率直に私はそう思います。

中山(義)委員 ブッシュ大統領が再選されて、ブッシュさんと小泉さんの関係でいけば、非常に友好的に、BSEの問題を解決しながらうまくいった、こう思っているんでしょうけれども、国民としてはちょっと、非常に心配だ、こう思っていると思うんです。ですから、通商の問題が、ブッシュ、小泉の関係で変にアメリカの要求が多く押しつけられるんじゃないかという、そんな気持ちが一つはあるんです。

 反面、いや、もともと民主党が年次改革要望書なんというのをクリントン時代につくっていましたから、むしろ通商関係ではこれはクリントンの方が、あのときの方が厳しかったんじゃないかというような部分もあるわけですね。ですから、ケリーさんが当選すると今度は通商関係は厳しくなるのかなという、そんなことも報道には書いてありました。

 ここで一応、ブッシュ、小泉のこういう関係が、これからの通商の問題で、何でもかんでも妥協しちゃう、アメリカの言いなりになる、こういうようなことが懸念されているような感じもしないでもないんですね。そういう面でも、友好というものが、経済産業の通商という、国益という観点だけでやれればいいですよ。ところが、外務省や安全保障という観点から、アメリカとけんかするな、うまくやってくれというような話し合いが、さっき言ったように窓口がいろいろあると、いろいろな話し合いになってくると思うんですね。

 今回の一九一六年の問題なんかについても、絶対にそういうことはないんでしょうね。例えば外務省が、これは余りがたがたやるなよなとか、適当なところでやってくれとか、または、余り大きな問題で、外国との紛争、日米の経済摩擦の紛争みたいにというようなことがもしこのブッシュ、小泉さんの間にいろいろそういう問題としてあると、私たちは非常に不愉快な思いをするわけで、そういうことは絶対ないと思いますが、ブッシュさんが再選されたことによって通商問題がどうなるか、先行きをちょっと御説明いただきたいと思います。

中川国務大臣 まず、この法律は、アメリカ政府も廃止の意向を出しているということが一つ。それから、内閣として国会にお出しをしているということは、総理大臣、外務大臣、私ども全閣僚が署名をしているわけでございますから、今、中山委員御指摘のようなことはない、あったらおかしい話だと私は思っております。

 今後のブッシュ政権との間、今予測できることは、WTOの問題、あるいは間接的にFTAと、アメリカは関係ないんですけれども、間接的にアメリカがFTAに関してどういう動きをしてくるのか。アメリカも今猛烈な勢いで各国とやっておりますので、そんなようなこと。それからBSEが、確かに、アメリカの十一月の初めの交渉の成果という認識と日本側の認識との間にずれがあって、これは日本政府としてはアメリカ側の認識が正しくないというふうに報告を受けております、どちらが本当かは別にいたしまして。

 今後はどういうことになるか。あえてこの場で、通商交渉というか通商問題が出てこないとは言いませんし、出てきたときに本音できちっと話ができるというのがまさに友好関係であって、何もないことが友好関係だとは私は思いません。何かあったときに本音で、私もゼーリックさんと随分机をたたいて議論、交渉をしたわけでございますけれども、本音で言って、いい結果にお互いなっていくことが真の意味の有意義な関係だと思っております。今後何が出てくるかわかりませんけれども、出てきたときには私もできるだけ本音で先方と交渉していきたいと思っております。

中山(義)委員 今、何が出てくるかわからないという話がありましたけれども、私たちがちょっと心配しているのは、この間も新聞にちょろちょろっと出ていたんですが、スーパー三〇一条、これは本当に今度の問題なんか比じゃないですよ。そういう面で、まさかスーパー三〇一条なんというのが復活するような話が若干出ていたので心配なんですが、これは、さっき言った、何が出るかわからないというその言葉の中に、こんなことだけはもうどんなけんかをしても絶対拒否をしていただきたい、こう思うわけですが、その辺はいかがでしょうか。

平田大臣政務官 不公正な貿易慣行、障壁を有すると疑われる国に対して制裁措置をとることが可能となるのがスーパー三〇一条で、ブッシュ政権下ではこれはもう失効をしておるわけでございます。今次の大統領選挙におきまして、ケリー民主党候補の方がその復活について言及をされておられました。

 しかしながら、自由貿易の推進を公約として掲げるブッシュ大統領が再選をされましたので、それが復活する可能性は小さいというふうに我々は承知しております。

中山(義)委員 そういうふうにいかせるように、もう絶対的に力を結集してやってもらいたい、こう思います。

 ただ、やはりこれからの日米の通商の問題というのはどうなるか、よくわからないんですよね。私たちも、いつも見ていますと、商法の改正がこれから二〇〇六年にあったり、いろいろなことがだんだん見えてくると、大変なことが起こるんじゃないかと。よくハゲタカファンドと言っていますが、外国資本が日本を非常にねらっている。

 この間、亀井先生がある場所で大演説をやっているわけですよ、今に日本もイギリスと同じになっちゃうぞと。イギリスの電力も、それから交通もみんな外国資本だ、これをウィンブルドン化現象と言って、今、日本も同じようにハゲタカファンドがねらっている、商法改正はとんでもないというようなことを、小泉倒閣運動みたいな演説をやっているんですよ。私も思わず拍手しちゃったんですけれどもね。商法改正であるとか、これからのアメリカからいろいろやってくる年次計画ですね、よく、日本の将来というのは、アメリカの年次改革要望書、これを見るとわかるというんですよ。要するに、アメリカがイニシアチブをとって、だんだんそのとおりになっていくというふうに言われているんですね。

 そういう面でも、私たちは、商法改正を初めとして、これからいろいろなことが起きてくるときに、日本の独自性とか、アメリカに対してしっかり、やらないものはやらないとか言えるような体制をしっかり整えてもらいたいんですが、先ほど言ったように、そういう話があると大臣が三人も四人も並んで、だれが責任者かわからない。これはまずいんですね。そこはやはり一番はっきり物の言える経済産業大臣が、通商のことに関しては一切、おまえ、余計なこと言うな、おれが全部日本のために、国益のためにしっかりやる、こう言う人がいないと困るわけですよ。

 総理大臣は何かブッシュさんと余りにも仲がよ過ぎて、何か言えば全部聞いちゃう。そのときも言っていましたけれども、イラク戦争は大義なき戦争だ、しかし、ブッシュと小泉さんが話をして、あそこへ自衛隊を送った、こういうふうに亀井さんが言っていたんです。でも、そういうふうに全部ブッシュさんと小泉さんがやっているというような風潮でやられたら、やはり大臣はおもしろくないでしょう。通商の問題はおれがやっているんだというふうにやはりもっと自信を持って、これから、何人も大臣がいて、わけのわからない交渉だけはやってもらいたくないと思うんですね。

 私ら、いつも新聞を見ていてもだれが責任者だかわからないんですね。実際委員会へ来ると別々の委員会で聞くわけでしょう。一緒の委員会で私が責任者でと、こういうことはないわけですよ。だから、日本の国というのはだれが責任者かわからない。そういう面で、通商関係に関しては、常にやはり経済産業省が責任を持つようなファイトを持ってもらいたいと思うんですが、大臣、どうですかね。

中川国務大臣 私の所管のところはもちろん私が責任を持ってやりますし、農業に関しては農林水産省、それから人の問題は今度東南アジアとの間でいろいろ出てまいっておりますけれども、それぞれ所管があるわけでございまして、これは今はそういう交渉にするというのが日本の法律で決められているわけでございます。もちろん、通商一般、経済産業省として通商というものも一般論として所管をしているわけであります。

 先ほども申し上げましたが、シンガポールを外で見ていましても、またメキシコを実際やっても、私は、外務大臣、農水大臣と本当に連携をとって、何回も総理のもとに三人で行ったりして、支障はなかったと思っております。そして、メキシコでフォックス大統領と小泉総理大臣が署名をされたということは、私もメキシコの大臣と電話で何回かその後会談をいたしましたけれども、本当に感動的な場面であったというふうに考えております。

 今後、どうなっていくのかということにつきましては、そういうような支障がないような交渉をいずれにしてもしていかなければならないということでございますが、通商は、全体としてUSTRのように一人が議会の承認を得た上でやっていくということがいいのかどうかということは、最終的には総理の御判断だろうというふうに思っております。

中山(義)委員 今のお話よくわかりました。

 ただ私は、さっきから言っているのは、ブッシュ、小泉が蜜月状況で非常に仲がいい、だから通商が、交渉もつい妥協しがちだと。私は、そういうことがないようにお願いをしたいということを言っているんですね。

 例えば京都議定書でも批准しない、それから国際刑事裁判所でも、アメリカはそういうことをやらないわけですね、一緒になって。だから、外国の、世界のルールというものに必ずしもアメリカがすべて協力しているわけじゃないわけですよ。

 だから、今回の一九一六年のADのように、本来はもうWTOでも協定違反だと、こういうものはアメリカの法律の中にも随分あるんじゃないですか、通商上。こういうものは徹底的に洗って、やはりアメリカとやり合ってもらいたいんですよ。今回だって、これは遅きに失したと言われてもしようがないですよ。

 本来だったら、そういうのがあったら、おかしいじゃないかと日本がはっきり物が言える国になってなきゃいけないんですが、先ほど小此木先生に何にも質問しなかったので、ちょっとこの点について答弁をいただきたいんですけれども。

小此木副大臣 お答えいたしますが、この点、今議論されています一九一六アンチダンピング法、こういったたぐいの法律というのは、バード修正条項などがございまして、こういった法律について、やはり日本としては、しっかりと順序を経て、やるべきこと、つまりWTOでそういう違反だということが確定をしたことが事実として判明した場合に、やはり順序を経て、公式の場あるいは非公式の場、先生はもっと二国間でも強い日本としての意思を表明すべきだということを主張されているというふうに思いますが、私も全く同感でありまして、それが日本の国益になるものということであるのであれば、改めてそこには力を入れていかなきゃならないというふうに考えております。

中山(義)委員 本当に、アメリカが要求してくるものが必ずしも国際社会のルールではないということをやはり考えなきゃいけないと思うんですね。私たちは、アメリカのスタンダードが要するにグローバルスタンダードだと押しつけられてきたわけですよ、結構。それが地元の中小企業なんかが大変疲弊する原因にもなっているということも一つあるんです。

 そういうことで、アメリカの要求がすべて世界のルールではないということをまず御認識をいただきたいのと、逆に言えば、そろそろ、きょうは委員長にもお願いしたいんですが、WTO協定違反のものがもしアメリカにあるのであれば、そういう資料を即刻出させていただいて、そういうものについては、私たちもはっきり、経済産業大臣から、これは協定違反じゃないかと。こういうものはしっかり交渉のところにのっけるべきだと思うんですよ。そういう面でも、委員長、後で理事会にでもかけて、WTO協定違反のルールが、もしまだアメリカでそういう法律があるとすれば、やはり事前に我々に報告していただいてやるべきだと思うんです。今回だって本当は遅いんですよ。ヨーロッパがやる前になぜ日本が先にできないのか。ヨーロッパができることは日本ができるじゃありませんか。

 それと同時に、もう一つは、必ずヨーロッパ側からもアメリカの言っていることを見てくださいよ。いつも日本だけが考えないで、ヨーロッパと一緒になってなぜできないのかと思うんです。一対一じゃなくて、こっちが五対一だったら強いでしょう。綱引きと同じですよ、多い方が強いんです、大体。体重が多い方が。

 だから、そういう面で考えてみると、常に日本だけで勝負するんじゃなくてヨーロッパも引き入れる、少し知恵を使っていただきたい、このように思うわけでございまして、今後、アメリカに対して、日本がいつも妥協するのではなくて、友好的なことは大事ですが、言うべきことは必ず言うと。それから、小泉さんとブッシュさんの関係も、大変仲のいい、いい関係だとはいいますが、それが障害になって我々が簡単にアメリカの言うことをねじ込まれた、こういうことのないようにお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

河上委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

河上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。計屋圭宏君。

計屋委員 民主党の計屋圭宏でございます。

 それでは、午前中に引き続いて質問をさせていただきたいと思います。

 米国の一九一六年のAD法については、私どもの同僚議員からるる質問もございました。東京機械製作所が米国のゴス社に訴えられたといういきさつについてはるる説明があったわけでございまして、こういったふうな、この法律は本当に、九十年間もほとんど使われなかった背景が今日まで存在しているということ、これが大変私ども疑問を持つわけでございます。

 二〇〇〇年、WTOの上級委において一六年AD法の協定違反が確定したわけでございまして、WTOの勧告期限である二〇〇一年十二月までに廃止しなければならないということになっていたわけでございますけれども、これが、二〇〇一年十二月までに米国の一九一六年AD法の廃止義務があったが、履行期限を約三年も経過しているのになぜ存続しているのか、この辺からお聞かせいただきたいと思います。

北村政府参考人 お答えいたします。

 今先生が御指摘のとおり、WTOの結論としてWTO協定違反であるということが確定をし、そのため、国内法、一九一六年法を廃止すべきだというのを、一定の履行期限を当然付しますので、その履行期限までにアメリカとして廃止法案を成立させろということで進めてきたわけですけれども、現にアメリカの行政府としましては、WTOの決定についてはこれを尊重するという立場から、アメリカの議会に対しまして廃止法を出してほしいという働きかけをしております。

 ただ、議会の中におけるさまざまな法案の、特に通商関係の法案の議会のさまざまな立場からのプライオリティー、優先度合いといいましょうか、そういったこととの関係で、なかなか実際、法案が提出はされるけれども審議に至らない、あるいは審議の途中で会期が終わってしまう、そういった状態が続いてきているというふうに承知をいたしております。

計屋委員 二〇〇三年三月に下院議会で廃止案が可決されたわけです。しかし、過去にさかのぼって効力、遡及効果がなく、EU、日本政府はこれに反対を唱えた、そういう経緯があるわけです。そして、二〇〇三年五月十九日、米国政府は過去にさかのぼって効力がある法案を提出した。ところが、遡及効のない二〇〇三年三月の法案が五月二十三日に上院に提案されているわけです。

 ですから、この辺が、アメリカの行政府も何だか迷っているというようなことがこの経緯からわかるわけです。これはどういうことなのか、もう一回説明いただきたいと思うんです。

北村政府参考人 お答えいたします。

 先生御案内のとおり、アメリカの議会におきまして、それぞれ上院、下院で議員が法案を提出するわけでございますけれども、その法案の中身が、上院、下院、あるいは提出議員によって中身が異なっているというケースは、間々見られることというか、通常見られることであります。

 特に、遡及効を認めるかどうかということになりますと、釈迦に説法ですけれども、これはもう日本でも過去にさかのぼって効力を及ぼすということは、やはり法的な安定性、しかもこれは財産に絡むものでございますので、そういった法的な安定性を重く見る立場からは、原則としてはやはり遡及効というのはなかなか認めにくいというのが、恐らく日米問わず原則的な考え方だと思います。

 ただ、WTOの決定を重く見る立場からは、現実に裁判にかかっているようなものがある、それも含めて無効にすべきだという強い立場のお考えの議員もいらして、そういった議員は遡及効のある提案をした。しかし、そこまでやるべきではない、将来に向かってだけ廃止すればいいんだという原則的な考え方で出された法案もあった。ただ、いずれにしろ、実際上は審議はされておりませんので、そういう状態で終わっていたということでございます。

計屋委員 それでは、日本の政府が遡及効がないということに反対したということでございますけれども、これは、今後ともこの精神を貫いていくのかどうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 遡及効の問題につきましては、この東京機械製作所のケースにつきましては、今御審議いただいているこの法案を成立させていただくことによりまして、実際には、仮に東京機械がアメリカでの最終確定判決によって数十億円の損害を受けたといった場合には、この法案によってその回復をすることが可能になるというふうに考えておりますので、そういった意味では、個別の具体的な案件としては、この法案の成立を、早期に成立させていただくことによって手当てができるというふうに考えております。

 一般論として、こういった、例えばアメリカがWTOに違反をした措置について、その履行がおくれている。その履行がおくれているときに、履行がおくれた分、逆に案件が、いわば懸案事項がたまってしまって、そういった過去の案件にさかのぼって効力を及ぼすべきかどうかということにつきましては、私ども、やはりケースの実態に即して働きかけをしてまいりたい。

 一概にすべて遡及効でいけというふうに、やはり法的安定性という立場を含めて考えますと、よくケースに即して考えていきたいということを、今は申し上げられるだけだと思います。

計屋委員 WTO協約違反という、その三年間さかのぼるのかという、あるいはまた、今東京機械が訴訟されているわけですけれども、この東京機械だけの問題におさまってもらえばいいわけですけれども、これはどういったことをやるかわからないという状況の中で、午前中、中川大臣も、この東京機械だけの問題なので、これはもう一過性で終わるよという話をされたわけです。ただ、そういったことで終わればいいんですけれども、さかのぼってということがなかなか難しいということであれば、遡及効がないということであれば、そういうことも懸念するわけでございます。

 いずれにしましても、この廃止法案が上院を通過すれば、可決されれば、この問題はなくなっていくという筋合いのものですけれども、若干、先ほどお話があったように、これは問題が残るわけですね、遡及効という意味で残っていくわけでしょうけれども。ただしかし、そういったふうな後ろ向きだけの議論じゃなくて、やはり日本政府がこの問題に真剣に取り組んで、そしてこの東京機械の問題を早く解決させるということが大切であるわけでございますので、日本政府からアメリカ政府に対してしっかりと、この法案が上院で可決するよう、やはり強く要望する必要があると思うんです。

 そしてまた、大統領選挙もこのたび終わりまして、上院議員も三分の一が改選されたという新しい体制のもとでございますから、日本の方から訴えていくということについては、チャンスであることはチャンスであるわけでございますので、その辺もきめ細かに、ひとつ力強く交渉していただきたいというふうに思います。

 それと、もう一点ですが、やはりEUの損害回復法と照らして考えた場合に、日本の損害回復法案というのは、対象範囲ということと、それから損害回復請求を、日本の場合ですと訴訟して判決が出てから訴える、そういったふうな、どちらかというと、EUのこの法案に比べたら、どっちにしてもやはり受け身なんですよね。やはり能動的に、積極的な、そういったふうな対応の仕方ということじゃないと思うんです。

 こういったふうな中途半端な状況の中で、どちらかというと、やはりEUと同じように、訴訟をアメリカの裁判所に起こした時点において、日本の方もこれを即訴える、そういったようなことがやはり大切だと思うんですよね。この辺についても、ちょっと説明をもう一回お願いしたいと思うんです。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、EUの場合は、訴えを起こせるタイミングが、アメリカでEUの企業がこの一九一六年法に基づいて訴訟を起こされた時点から、損害回復請求権の行使が可能であるという法律の構成になっております。

 ただ、これは、訴訟を起こされた段階では、まさにそれから裁判になるわけでございます。したがって、訴えられた企業、日本の企業、EUの企業、どちらでもいいんですけれども、企業の立場からいくと、その訴えられた裁判に勝つのか負けるのか、仮に負けるとしても、どういう理由でどれぐらいの金額が損害として負けるのか、そういったことは、実は裁判の過程の中では、判決が確定するまでは常に争いの状態になっているわけでございます。

 そういった状態の中で、一番早い、訴えが出た時点から、日本の国内でもその訴えられた金額に対して同じような損害回復ができるということを、仮に法的な手当てをしたとしますと、いわば固まっていない訴えに対して、こちらの方でそういう仮定のものについて権利を行使する、負けてもいないのに負けている前提で、金額も固まっていないのに訴えの金額に対して損害回復する権利をとるということは、法的な安定性あるいは実際の訴訟のプロセス、そういったことから考えますと、私どもはやや無理がある制度ではあるのかなというふうに思っております。

 もちろん、先生御指摘のように、抑止力という効果がございますので、私ども政府部内で、EUのこういった制度を十分参考にし、EUに対して、なぜこういう法体系ができるのかといったことも十分意見交換をした上で、やはり、今の日本の国内の法制度、その前提としての法的な安定性あるいは実際のそういう訴訟プロセスとの関係ということを含めて、今のような法案にまとめさせていただいたということでございます。

計屋委員 米国の企業がアメリカの裁判所に訴える、そして訴えたら、額その他わかるわけです、予測がつくわけですから、そういったところでもう判断して、即、日本の裁判所に日本側の企業というのが訴えていかないと、裁判を見てそれから訴えるということになりますと、その間の企業の営業活動というのができなくなるわけです、相手国において。

 ですから、そういうことを考え合わせてまいりますと、やはりこれは、その間の企業のマイナスイメージがずっとつきまとっていくわけで、これは企業にとってはマイナスだ、日本にとっても大変マイナスだと私は思うんですよね。ですから、やはりこれは、外国の企業が訴えたら即こちらの日本側の訴えられた企業も訴えるぞという、そういったようなものを抑止力として持っていれば、あるいは企業活動にマイナスになるということは、これは大変少なくなる。そして、相手国も一九一六年のAD法において訴えるということはしなくなる、そういったような抑止力というのが大切だ、私はこういうふうに考えます。

北村政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるように、抑止力という意味では、訴えられたら直ちにこちらで訴えられるということは、一つの大きな味方だとは私も思います。

 ただ、先生おっしゃるような意味合いで、企業活動にも響くのではないかというお話がありましたけれども、これは見方を変えますと、いわばアメリカで訴えられた、直ちにこちらでそれを、その訴えられた金額に見合ってこちらの方で損害が発生するだろうからあらかじめ損害を回復できるようにしておく、それが抑止力になるんだというお話ですけれども、逆に、アメリカの中では、日本はそこまで覚悟しているんだと、この企業は。したがって、言葉は変ですけれども、やはり悪いことをして、ダンピングをしているのをわかっているから取られるのは決まっているので、日本の政府のこの法律を用いてこの企業は裁判で損害を取り返そうとしているんだ。そういう意味では、アメリカの中での裁判に対しては、逆に悪い心証を与える可能性もあると思います。

 そういう意味では、一概に、直ちに訴えたら直ちにこちらの方でやるんだというのは、先生おっしゃるように、抑止力という意味では一番効果があると思いますけれども、アメリカの裁判の現実の進行のぐあい等々を考えますと、これはやはり慎重に考えるべきかなというふうに思います。

 ただ、現実問題としては、この法案を早期に成立をさせていただくことによって、先生先ほどお話がございましたように、いわば日本で国会がこの法律に取り組んでいる、国を挙げて取り組んでいるということを一つの背景として、遡及効はありませんけれども、廃止法案が下院まで通っている、したがって、あと上院で、先生これもお話ありましたように構成が今度かわりますけれども、今度の、今月の半ば以降にある上院で廃止法が通れば、先に向かっての問題というのは基本的にはなくなるということでございますので、いずれにしましても、この法案の早期成立が大きな力になるというふうに思っております。

計屋委員 EUの方で、アメリカの方でその一九一六年のAD法において訴えられたらすぐに訴え返すということ、それから、何遍も言って申しわけないんですけれども、対象範囲を拡大しているということについても、日本がこういったふうにして、今の答弁を聞いていますと、本当に何か交渉事が弱腰だという、何かもっと精力的、積極的に意思表示することによって相手もそれに対してこたえていくわけですから、受け身で、消極的で、そういったふうなアメリカの判決が出てからそれに対応しますよなんという、こういったふうな交渉というのは私はないと思うんですよね。ですから、もっと、なぜそういったふうにして、EUができているのに日本ができないのかというのが疑問なんですけれども、そこのところをもう一回答えていただきたいと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 もう先生十分御承知のことだと思いますけれども、この法案自体は、日本の企業のこうむった損害を事後的に回復をする、それを確実に回復させるために新たな法律をつくる、そういうことでございます。

 そういう意味では、具体的なケース、この東京機械製作所のケースにつきましては、仮にアメリカで最終的に数十億円という損害賠償を取られるといった場合に、この法律によってそれに見合う経済的な損害回復が可能になるというふうに考えておりますので、私どもとしましては、こういった損害回復を可能ならしめる初めての国内での立法であるということも含めて考えますと、必ずしも先生御指摘のように受け身である、弱腰であるというふうには考えておりません。

 この問題が去年の四月にアイオワ州での判決が出てから、私ども、この判決が出た事実を踏まえて、この企業のこうむるかもしれない損害をどう回復できるのか、さまざまな手段を尽くして、アメリカの国内でも働きかけをしてまいりましたし、もちろん、アメリカの行政府にはさまざまな要請をしました。

 しかし、実際に判決が確定した場合の損害について回復する手段としては、こういった法律しかないというのが私どもの結論でございますので、それを確実ならしめるためにこの法案をぜひ早期に成立をさせていただきたいということで、余りお答えになっていないかもしれませんけれども、私どもの説明でございます。

計屋委員 どうもその辺が意見がかみ合わないんですけれども、どっちにしても、この法案は一刻も早く解決しなきゃいけない問題だと思うんですね。

 私の主張が、提案の仕方が悪いのかどうかわかりませんけれども、ただ、日本の裁判所に損害回復請求の訴えを提起する時期についての余地を認めることが、日本企業のニーズに対応した損害回復の実効性の確保を図る上で重要であると考えているわけですよね。

 ですから、中川大臣、これについて、やはりその時期というのは大切なことで、東京機械製作所のこの問題だけで私は終わればいいと思っているんですけれども、いろんな形で、こういう日本とEUの損害回復法において日本の案とやはりこれだけ差があるわけですから、そういう点で、私はもっと積極的に日本で訴える時期というものを、一緒に、同時にやろうと思ったらその時期でもいいと思うんですよ。何でそういったふうに、アメリカの裁判所の判決ができて確定してから訴えるというのは、どうも日本の国益というか、あるいは日本の企業の利益を損なっていく結果につながっていくと思うんですが、その辺、どうですか。

中川国務大臣 計屋委員のおっしゃっていることも一つの考え方だろうと思います。

 この法律は、率直に言って、多分日本の中では、さっきもちょっと局長がちらっと言っておりましたが、過去に経験のないような法律だということで、法案作成においても極めて慎重に、いろいろと準備をしながらやってきたところでございます。他方、EUの方は、過去にもこういうような制裁対抗法みたいなものが幾つかあったということも私聞いておりますので、多少の経験の違いがある。

 そういう中で、結果的には抑止の話とかいろいろありましたけれども、極端に言えば、この一九一六アンチダンピング法によって、これはさっきから答弁させていただいておりますように、商務省がシロと言っているもの、しかもWTOがクロと言っているものについて、三倍制裁ができるとんでもない法律なわけです、率直に申し上げると。それで、その結果損害をこうむったということであれば、とにかく国内法でその会社から一定の要件のもとで損害を取り返すことができる。さっきもちょっと確認したんですけれども、万が一裁判に勝って、裁判に東京機械が勝ったとしても、訴訟費用とかいろんなものの負担があったときには、この法律によって東京機械が損害を回復できるということもあるという解釈になるわけであります。

 そういう意味では、かなりこれは、法律そのものが廃止されればこの東京機械だけで済むことになるという意味でさっき申し上げたんですけれども、仮にこれがずるずる続いている間に、この弁護士さんが盛んに何かアメリカで宣伝を一生懸命しているようでありますから、駆け込み的にまたぱぱっと出る可能性もあります。そのときには、この法律があることによって、勝っても負けても、相手が損害をこうむったらおれたちが日本で取られる可能性があるぞ、場合によってはEUでも取られる可能性があるぞという意味では、趣旨においては非常に大きいし、その趣旨においてはEUでも同じことだろうと思っております。

 そういう意味で、裁判が起こった瞬間に日本でも裁判できればいいじゃないかという委員の御指摘はわかるわけでございますが、結果としてはきちっとした形で最終的に損失を回復できる、そしてアメリカでの判決の効力が及ばないということの意義は大きいということをぜひ御理解いただきたいと思います。

計屋委員 この法律ができることによって、東京機械あるいはまた今後日本の企業が米国の企業に訴えられなくて済むというふうにこれは期待しているわけでございますけれども、これをぜひひとつ早急に通していかなきゃいけない、こういうふうに思います。

 それでは、質問を次に移させていただきます。

 次は、武器輸出三原則についてお伺いしたいと思うんです。

 武器輸出三原則ということで、日本の場合は、共産圏諸国向けの場合、あるいは国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合、国際紛争の当事国またはそのおそれのある国向けの場合に、武器の輸出を禁止して慎んできているわけですね。そして、武器輸出に関する政府の統一見解というのは、一九七六年の二月二十七日に出ているわけでございますけれども、ここにおいても、やはり武器の輸出というものを、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、武器の輸出を慎むんだ、こういったふうにして、日本の平和国家という立場から武器の輸出というものは禁止しているわけです、原則的に。

 ところが、最近この動きがにぎやかになってきている、こういうことが言えるのではないか。ことしの一月に、石破防衛庁長官が武器輸出緩和という発言をしている。なおかつ、この七月に経団連の発言においても、武器の輸出などを禁じている武器輸出三原則及び宇宙の平和利用原則の見直しを求め、今後の防衛力整備のあり方を提言している。武器輸出禁止制度を見直し、一律の禁止でなく、国益に沿った形で輸出管理、技術交流、投資のあり方を再検討することを政府に要請し、対米を中心に広く緩和するよう求めているわけです。

 そこで、この武器輸出三原則の見直し議論についてどのように考えているのか、大臣の考え方をお聞きしたいと思うんです。

中川国務大臣 今、武器輸出三原則の見直しの議論が国会でもいろいろと議論されておりますが、これは昭和四十二年の三原則、それから五十一年の三木内閣における政府統一見解から成り立っているものでありますが、最近の日米のいろいろな課題解決をきっかけとしてこの議論が出てきているところであります。政府の懇談会からも提言が出されていることは、委員も御承知のことだと思います。

 今後どういうふうにするかということは政府としてはまだ方針を決めておりませんが、いずれにしても、我が国としての平和国家という観点からの大前提というものを維持しながら今後議論をしていくということで、今の段階ではいろんな意見があるということで、政府としては慎重に対処、対応していくというのが現時点での対応でございます。

計屋委員 そこで、現状の武器輸出三原則の規定はどうなっているのか、この辺を御答弁いただきたいと思います。

中嶋政府参考人 武器輸出三原則の具体的な実施でございますけれども、国内法的にはいわゆる外為法の規定に基づくものでございます。武器輸出三原則において、まず武器の定義ということでございますけれども、これは昭和五十一年の政府統一見解の中で、「軍隊が使用するものであつて、直接戦闘の用に供されるもの」ということでございまして、具体的には、輸出貿易管理令の別表第一の一の項、その中の(一)から(十四)までに掲げるもののうち、それに相当するものということでございます。

 具体的な地域などにつきましては、先ほど委員がおっしゃられたとおりでございます。

計屋委員 部品については、一つ一つ禁止ということで規定しているようでございますけれども、ただしかし、使用目的によって判断する必要性がある場合が多々あるわけでございまして、そういったふうな規定が設けられているかどうか、御答弁いただきたいと思います。

中嶋政府参考人 先ほど申し上げましたように、具体的な品目が、そこに、輸出貿易管理令の別表第一に載っておりますけれども、具体的にそれが、軍隊が使用するものであって、直接の戦闘の用に供されるかどうかとか、あるいは、その仕様として、特別の軍用の仕様になっているかとかというようなことを審査いたしまして決めるわけでございます。

 それから、なお、念のためでございますけれども、この外為法の武器等の十四品目ございますけれども、その審査とともに、実は、輸出貿易の管理につきましては、国際的にさまざまな取り決めがございます。

 例えば、武器についてのワッセナー・アレンジメントとか、あるいは核関連の取り決めとか、生物化学兵器の取り決めとか、あるいはミサイルの取り決めとか、さまざまなことがございますので、そういう点も含めて審査をするものでございます。

計屋委員 個別的に審査するということだろうと思うんですけれども、ただ、こういったふうに、個別的じゃなくて、やはり日本の国の統一見解、そういったような大きな枠組みの中で、ハードの部分、ソフトの部分とあるわけですから、やはりソフトの部分についても、こういったような目的で使用したらこれはだめですよ、そういったような事例集だとか、あるいはまた規定というものをしっかりとしていかないと、これは芋づる式で平和国家という日本国の精神というものが損なわれていくという一面があるわけでございます。

 ですから、そういうことを考えてまいりますと、当然、規定を設けて、規定に違反した場合は、これにやはり罰則、そういう規定も設けていかなきゃいけないと思うんですけれども、その辺はどうですか。

中嶋政府参考人 先ほどの外為法の十四の品目につきましては、これに該当すれば、それが「直接戦闘の用に供されるもの」ということで認定をされれば、これは輸出三原則の対象地域については禁止でございますので、それに違反しているような場合が発覚すれば、それは刑事罰の対象になったり、あるいは、行政上の輸出停止等の制裁の対象になります。

計屋委員 今大変、例えば、軍用の武器として使う部分と、それから商業ベースに乗せる部分というものが、これがもう煩雑になってきているわけですね。ですから、こういったようなことまでやはりきちっと規定をしておかないと、これはまずいと思うんですよ。いずれにしても、武器輸出三原則というこの禁止事項、あるいは慎んでいこうという、平和国家としてのこの精神というもの、やはりこれはきちっと貫いていかなきゃいけない。

 ですから、そんな中で、こういったような武器の種類だとか目的ということをきめ細かにやはりもっと規定を設けていく必要がある、こういうふうに思いますので、もう時間もなくなってまいりましたので、この件についてはまた次回に質問させていただきますので、その辺をしっかりとひとつ検討を賜りたい、こういうことで終わります。

河上委員長 次に、村井宗明君。

村井(宗)委員 民主党の村井宗明です。

 本日は、議題になっております米国のアンチダンピング法なんですが、これまで民主党の国会議員の先生三人が質問に立たれました。内容的にも、特に私たち民主党も反対するものではありません。

 ただ、初めて聞いたときに、この一九一六年という年に、正直申し上げて驚きました。ただ、これは本当に、一九一六年といえば大正五年、もう大正五年生まれの国会議員は残念ながらいらっしゃいません。そのぐらい長い間の話だったんですが、日本とアメリカが日米修好通商条約を結んだのが一八五八年、今から百四十六年前になります。日本とアメリカの通商貿易の歴史の中で、このアンチダンピング法は八十八年間も続いてきてしまったということになります。

 一問目、通告をしていた内容もあったのですが、前の三人の方とほとんど内容がかぶってしまうので、同じことを何回も答えていただくのもどうかと思いますので、通告してあった一問目は省略させていただきたいと思います。

 今の計屋先生の話、これも通告なしなんですが、そのかわり、話をつなげて一個聞きたいなと思うのが、今、武器輸出の問題の話を計屋先生が取り上げました。その中で、今、武器貿易条約、いわゆるATTが議題となって上がってきています。そんな中で、確かに、アメリカにしてみれば、今の小型武器の輸出を制限していくということは、非常にライフル協会などから反発の声が上がっていて、批准が難しいという声が上がっているようですが、私はここは、日本は言うべきことは言うということをやっていきたいなと思うのです。

 言うときは、こういう言い方をしたらいいんじゃないかなと思ってさっきの話を聞いていたんですが、今、アメリカはテロとの闘いというのを一生懸命進めて回っています。テロを撲滅するために小型武器の輸出を制限していくんだ、だから一緒にATTへ批准して参加するようにしたらいいと呼びかけたらいいと思うんですが、どうお考えでしょうか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 小火器の輸出禁止につきましては、日本が国際的なリーダーシップをとって進めてきた話でございます。特に、世界の紛争地域の中で、民族、宗教、さまざまな問題の中で実際に使われて、しかも、入手がしやすいのが小火器である、そういったことを踏まえますと、ここをまずきちっと抑制していくことが世界の紛争の抑止につながるんだということで、日本が各国に訴えてきた。そういう意味では、我が国の外交活動の中でも、国際的にも評価をされている分野でありまして、さらにそれを一歩進めて、その輪を広げていく、そういう意味では、今名前が出ました大国を含めまして、さらに努力をしていくときのさまざまな理屈の立て方、シンパシーをどうやって求めていくかといったことについて、いろいろな議論があると思いますけれども、今の御指摘を踏まえて、さらに頑張ってまいりたいと思っております。

村井(宗)委員 今申し上げましたように、単に武器輸出反対では、やはりライフル協会などから反対されるかもしれませんが、テロ等の撲滅のために、日本もアメリカに小型武器の輸出を制限していこうと呼びかける、そんなふうに進めていっていただきたいと思います。

 計屋先生の関連質問は終わりまして、自分の通告の二問目に戻りたいと思います。

 確かに、日本とアメリカの通商の歴史を振り返れば、実に多くの紆余曲折がありました。繊維、牛肉・オレンジ、電気通信、半導体、携帯電話など、いろいろな分野が対象となり、その都度、難しい、そして、厳しい交渉が繰り返されてきました。私が生まれたのが一九七三年、ちょうどガット東京ラウンド交渉が始まった年です。この間、経済産業省、もとの通産省は、日本国内の産業を発展し、守るために、最大限の目配りをしつつ頑張ってこられたんじゃないかと思います。そして、その点については高く評価されて当然だと思っています。

 そこでお聞きしますが、米国が日本を相手にして、逆に向こうから日本がWTO違反だと訴えている案件はありますでしょうか。また、それについて日本側はどのような対応をしておられますでしょうか。お答えください。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、アメリカが我が国に対してWTO違反を訴えていますのは、米国産リンゴの火傷病に関します植物検疫措置に関する提訴案件のみでございます。

 この案件につきましては、二〇〇二年の三月に協議要請が行われまして、二〇〇三年の十二月に、この措置はWTO協定に整合的でないというWTO上級委員会での判断が下されました。

 その後、農林水産省は、本年の六月にこのリンゴの火傷病に関します植物検疫措置に関する措置の改正を行いました。しかしながら、現在、アメリカは、その改正措置もさきのWTO判断に従って履行したものではないということで、いわゆるWTO上、履行の有無についての履行確認パネルというものがあるわけでございますけれども、私ども、これの設置の要求を行いまして、七月にそのパネルが設置されたところでございます。

 我が国といたしましては、これに対しまして、改正後の火傷病の植物検疫措置は、リンゴ果実による火傷病伝播に関する科学的証拠に基づいて行われているということから、WTO判断に整合的であるという主張を行っているところでございます。

 この履行確認パネルの報告書は来年には公表される予定でございますけれども、我が国といたしましては、農林水産省を中心に、これまでの主張が認められるよう鋭意努力を進めているところでございます。

 以上でございます。

村井(宗)委員 このアンチダンピング法の中身、それから通商関係については、既に質問に立たれた先生方の質疑である程度整理はできてきているのではないかと思います。この問題は、ある意味、日本とアメリカのかかわり方といった大きな問題の中の一つだろうと思います。長い歴史の中で変化している日本とアメリカのかかわり方の問題の、一つの象徴的な断面と見ることができるのではないでしょうか。今まで日米間では、宗教問題や民族問題ではなく、主に経済関係が根底にあっていろいろな問題があったのではないかと思っています。

 そこで、次の話へ変えさせていただきたいと思います。日米関係の中で、私は、アメリカに対して呼びかけなければならない課題が、大きな問題が一つあるのではないかと思うんです。それは、地球温暖化防止の問題です。

 日本の地名がついた条約というものは余りありません。そんな中で、京都議定書、もう全世界が注目する、そして人類の未来をかけて議論してきた重要な課題で、日本がその議長国として京都議定書という、京都という日本の地名のついた議定書をつくったこと、ここを非常に私は誇りに思います。そして、日本が世界にリーダーシップをとれるかどうか、そして日本が本当に誇りを持てる国になれるかどうかというのは、この京都議定書の成否、そしてその効果に非常に影響を受けるものではないかと考えております。

 ところが、日本とアメリカはこれだけ仲がいい、ブッシュさんと小泉さんがこれだけ仲がいいにもかかわらず、アメリカの言うことは我々は一生懸命聞いてきた、しかし、アメリカは日本の名前がついたこの議定書、そして日本が一生懸命議長国として世界に呼びかけたこの議定書に対して、今残念ながら否定的な見解をとっておられます。そこで、この日米間、特にアメリカがどうやって一緒に京都議定書の枠に入っていただけるかという話を主にしていきたいと思っています。

 そこで、まず、中川大臣にお聞きします。

 ロシアのプーチン大統領が京都議定書の批准に署名をいたしました。ロシアが批准したことによりまして、京都議定書の発効が間もなく行われます。もちろん、ロシアが批准した背景には、国内の経済情勢、エネルギー事情、そして京都メカニズムにある排出権取引などの市場に対する将来的な思惑がいろいろあると言われています。日本と関係してくるサハリンの天然ガス開発などもあります。そこで、中川大臣はこのロシアの京都議定書の批准をどう評価しておられますでしょうか、お伺いいたします。

中川国務大臣 ロシアが今御指摘のようにプーチン大統領の御決断によりまして京都議定書に署名をしたということは、これでもって発効の要件が整ったわけでございまして、来年の二月にも発効というふうにも聞いております。

 今御指摘のように、京都という日本を代表する地名の、しかも地球の環境のために大きく貢献する条約が、いよいよロシアという大きな存在、環境面、排出の存在でも大きいロシアが参加をしたということは、これはもうこの議定書発効、そして目標達成に向かって大変大きなプラスになったというふうに、高く評価をしております。

村井(宗)委員 ロシアが批准したことによりまして、京都議定書の発効の条件、五十五カ国以上が批准すること、そして、CO2の排出量の合計が一九九〇年時点の先進国全体の排出量の五五%に達すること、この両方の条件が成立しますので、いよいよ発効いたします。日本を含め百二十五の国が批准したわけですから、いよいよこの排出割合も六〇%を超え、発効する。

 そんな中で、日本もしっかりと排出量削減に取り組んでいかなければなりません。京都議定書で決められた日本の削減目標は六%でした。しかし、現状、今どうなっているでしょうか。実は七・六%もふえているんです。七・六%ふえているのに、一九九〇年からの六%削減となれば、合計一三・六%も今減らしていかなければならないという計算になります。

 中川大臣、最近の御発言でも達成は非常に難しいというコメントをされているとのことなんですが、国が定めた地球温暖化防止対策推進大綱の来年の見直しに向けて、今後いろいろなエネルギー効率の基準を引き上げて、省エネ法の運用強化策などを推進していくお考えであるというふうに伝えられております。

 そこで、お伺いいたします。この地球温暖化防止対策について、大臣としてこれまでどのように取り組んできておられたでしょうか。

齋藤政府参考人 施策の内容を御説明させていただきます。

 経済産業省といたしましては、エネルギー需給、それから新エネルギーあるいは省エネルギーに関する技術開発、それから京都メカニズムの基盤整備というような施策をやってまいりました。

 省エネでいいますと、わかりやすい例でいいますと、今御指摘がございました、省エネ性能のいい家電製品をつくってもらう、あるいは省エネになります自動車の普及を図る。あるいは、新エネでいえば太陽光発電の普及を図るなどの対策をやってまいりました。

 これらの施策につきましては、所期の成果が上がっているもの、それから、残念ながら思うとおりに成果が上がっていないという分野もございます。その結果、御指摘のとおり、現状では七・六%増、分野別で見ますと、産業用がマイナス一・七%に対しまして、民生は三割以上、運輸は二割以上の増加ということになっております。

 今後、京都議定書が発効するということになりますと、これらの施策をしっかり評価して見直しをした上で、着実に実効の上がる対策を、新規のもの、あるいは抜本的強化も含めまして、講じていかなくてはならない、かように考えております。

村井(宗)委員 例えば電力の自由化の話なども今挙がっていますが、こういったのは、実際、地球温暖化防止対策という面で見ると、プラスに影響するんでしょうか、マイナスに影響するんでしょうか。本当に自由化すると、石炭の火力発電なんかが出てきて、かえってマイナスの要素もあるんじゃないかなと思うんですが、どう評価されておられますでしょうか。

中川国務大臣 先ほどは失礼しました、大臣というふうに聞かれておりましたけれども、過去のことだと思いましたので、報告というふうに理解をいたしました。

 電力の自由化ということは、単に価格競争だけではないメリットというものが一つのポイントにもなってくるのではないかという意味で、省エネとか環境に優しいとかいうようなサービスも含めて私は競争原理が働いていくんだろうと思います。

 そういう中で、今後どうするか、経済産業省としてはどうするかという御質問があればお答えしようと思っておりましたけれども、いわゆるCO2を排出する経済主体が、民間、個人も含めて、それから産業用も随分努力してきたと言っておりますけれども、なお一層御努力をいただかなければいけません。あるいはまた、運輸が非常に大きくふえておりますので、そういうところにも御努力をしていただくというようなことを今最終的な取りまとめをしておりますけれども、環境と経済との両立という大きな我々の命題の中で、その命題に沿った形で電力の自由化が健全に進んでいくことを我々としては期待していきたいと思っております。

村井(宗)委員 今せっかく大臣がお答えいただいたので、さらに関連で質問させていただくんですが、今のままだとどのぐらいCO2の排出量を削減できるか、そして、今後対策を打つことによってどのぐらいの削減を目標にされるのかという話をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

齋藤政府参考人 現在も実は、地球温暖化対策大綱ということで各省協力いたしまして、対策を実施いたしております。残念ながら、現在まで講じてきております対策によっては、今の七・六%増というものが六%には遠く及ばないという状況でございます。現在、各省協力をいたしまして、さらに追加的な対策を強化していきたいということでございます。

 これについては、ただいま大臣から御説明申し上げましたように、各省、現在取りまとめ中でございますが、あくまでもその目標につきましては、最終的にはマイナス六%を達成するために何を追加的にやったらいいかということで研究をいたしているところでございます。

村井(宗)委員 この前提に立ちまして、今のアメリカにどうやって京都議定書に協力していただくかという本論に戻したいと思います。

 アメリカは、当面、第二次ブッシュ政権もできたことだし、この議定書に参加する考えはないのではないかという意見もありますが、しかし一方では、二〇一二年までにアメリカも参加するだろうと言っているロシアの元環境・天然資源大臣などもおられます。

 いろんな形でアメリカは今、一国行動主義、単独主義のように見えますが、ただ、パートナーである日本が、兄貴分であるアメリカに対していろんな呼びかけをすることもできるのではないか。そして、特にアメリカにとってのメリットになるような技術交流、国際協調、排出権取引などの進展を指摘していく、そういったことによって新しい道があるんじゃないかと思うんですが、この京都議定書への対応について、米国の姿勢を経済産業省はどのように見ておられますでしょうか。

齋藤政府参考人 米国は、九八年には一たん京都議定書の署名を行いましたが、その後、二〇〇一年になりまして、批准しないと、ブッシュ政権になりまして離脱を表明いたしました。

 その理由といたしましては、自分の国の経済に悪影響が出るんだというのが一つ、それから、中国を初めとする途上国が削減義務を負っていないというにもかかわらず米国が参加するということについては問題があるということで、その二つを理由といたしまして離脱を表明し、現在に至っているということでございます。

 今後の見通しでございますが、今回の大統領選挙のプロセスでブッシュ政権が言ってきた話、それから、離脱に当たりましては、実は米国の上院の決議というものが大変大きな役目を果たしたわけでございますが、そういう米国議会の動向等を見てみますと、少なくとも今の絶対量を排出目標にして削減しろという京都議定書について、米国サイドからみずからその離脱の方針を変更してくるということは難しいのではないかというのが、大方の見方ということになっております。(発言する者あり)

村井(宗)委員 今、海江田先生もおっしゃられたように、経済産業省はどのように見ておられますでしょうか。

中川国務大臣 アメリカはそういう考え方を持っているわけであります。他方、私は、アメリカ、あるいは今回署名、参加をいたしますロシア、それからオーストラリア、これも削減義務がかかっておりますが入っておりません、のみならず、中国とかインドとかあるいはほかの発展途上国も、義務はないけれども削減のためにぜひひとつ努力してもらいたい、そして、必要であれば日本の技術なりなんなりを提供したいというふうに、極端に言えばどの国にも私は申し上げているところであります。

 アメリカは、さっき局長が言ったように、経済に影響を及ぼすとか、中国とかインドとか多くの途上国は義務がないじゃないかということですが、逆に、アメリカが入っていないから途上国はより努力が難しいのかもしれませんけれども、アメリカが入っていないとその努力の意欲がさらに低下するかもしれない、多分低下しているんだと思います。そういう意味で、私は、最大の排出国であり、文字どおり世界のナンバーワンの経済大国であり、いろいろな意味でリーダーというふうに見られるアメリカがぜひ参加することが、これは地球の温暖化防止のためにも大きく貢献すると思っておりますので、私としても、折に触れて京都議定書に改めて参加するようにということは、アメリカの関係者に申し上げているところであります。

村井(宗)委員 今、アメリカに対しても呼びかけていくというふうにおっしゃられたんですが、外務省なども含めて日本政府は、具体的にどのように今まで働きかけをしておられますでしょうか、お伺いいたします。

齋藤政府参考人 今、大臣から御説明申し上げましたように、世界の四分の一を占める最大の排出国でございます。これが入らないということになりますと、京都議定書自身の実効性のみならず、今後、中国やインド、途上国を巻き込む意味でも大変難しいというふうに考えております。

 したがいまして、あらゆるレベル、具体的に申し上げますと、首脳レベルでもやりました。それから、ハイレベル協議ということで、大臣レベルでも数度にわたってやっております。それから、そういう公式協議以外でも、環境大臣あるいは経済産業大臣が行った折には、ぜひ参加すべきであるということの具体的な働きかけをやってきているということでございます。

村井(宗)委員 今、首脳レベルで呼びかけたというふうに話をされているんですが、具体的に、いつ、どんなふうに呼びかけて、首脳レベルの間ではどういう返事をいただいたんでしょうか。

齋藤政府参考人 直接明示的になりましたのは、キャンプ・デービッドで日米首脳が会ったときでございます。小泉首相の方から、米国と協力しながら温暖化に対処したい、その際には京都議定書の精神が大変大事なので、日米で綿密に協力して取り組むということが、今申し上げましたような背景がありまして、実効的なものができ、世界が裨益するだろうという指摘を申し上げました。それに対しまして、ブッシュ大統領の方からは、京都議定書の目標という大変高い志については敬意を表しておりますが、目的達成の手段のいかんが重要である、こういう返事でございます。

 これは、若干補足いたしますと、実は米国は、ブッシュ政権としましては、絶対量の削減ではなくて、GDPに対する原単位を減らすというやり方で地球温暖化対策に貢献していきたいというものを、言ってみれば独自のイニシアチブとして発表いたしております。

 そういう意味で、総量を削減するという京都議定書のやり方と、それから、米国がGDP原単位でやる、より経済的に悪影響が出ないということだろうと思いますが、そういうやり方の違いがありまして、かような手段のいかんが重要であるというお答えになったのではないかというふうに考えております。

村井(宗)委員 そこで、今、アメリカがGDPに対する原単位で評価、我々日本、京都議定書などは、総排出量についての評価でいくというふうに、意見のずれが出ております。ただ、一番大事なのは、どうやってこの地球の温暖化を防止するかということです。

 そんな中で、今後アメリカなどに対してどうやって、どういう方向で調整をしていくのか、そして、国連の場、それからいろいろな会合の場で、どんな方向で調整してアメリカにも地球温暖化防止に協力をしてもらおうと考えておられるのでしょうか。

齋藤政府参考人 特に、バイのシチュエーションのほかに、実は、地球温暖化につきましてはCOPというものが毎年開かれることになっております。十二月にCOP10というものが開かれることになっておりますが、これにつきまして大変重要な意義が出てまいりました。

 先ほど御質問ございましたように、ロシアが批准をしました。発効ということになりますと、いよいよ、現行の条約をきっちり仕上げると。例えば、ペナルティーの部分をどうするかというような問題。それから、さらに、重要な点としましては、二〇一二年以降どうしていくのだという議論が始まるというのが、発効に伴いまして議定書のマンデートとなっております。したがいまして、そういう場には米国も当然参加してまいるということでございます。

 したがいまして、実際に発効することになったのだから現行の京都議定書に参加せよという働きかけももちろんできますし、さらに、路線の違い等ございまして、米国側の枠組み、全体に対する考え方というものを聞きながら何とか我々の仲間に引き入れていくという場がマルチでも設定されているということですので、これらの機会を十分に利用していきたいというふうに考えております。

村井(宗)委員 確かに、排出量の方でやっていく場合は、我々日本だとかロシアなども参加しました。エネルギー原単位でやっていくと今後はどうなるかと考えたら、非常にエネルギー原単位で効率の悪い例えば中国などは、アメリカがうんと言ってもなかなかうんと言ってくれない可能性も出てくると思うんですが、そうなると、またアメリカはほかの国もうんと言っていないというふうに言ってくると思うんですが、その辺、どうお考えでしょうか。

齋藤政府参考人 米国はどういう働きかけをしているかと申し上げますと、自国については原単位を改善するというのを数値目標にしておりますけれども、一方で、それを達成する手段をむしろ訴えかけたいということでございます。例えば水素とかメタンとか、そういうものについて途上国における技術開発を促進するための世界的な枠組みをつくろうとか、それから、炭素分離を大変アメリカは力を入れておりますので、そういう形で途上国に対しましては大きな技術開発をしてあげて、それを途上国においても裨益できるような世界的なイニシアチブをやるんだ、こういう働きかけを実はしておりまして、それは、我々の京都議定書をさらに延長する、拡大していくという路線と重なっている部分もございますが、若干違う部分もあるということでございます。

村井(宗)委員 次の質問に移ります。

 この世界の四分の一を占めるアメリカの温室効果ガスの問題ですが、京都議定書だけの問題としてとらえるだけでは不十分です。要は、日本とアメリカのかかわり合いの中で温室効果ガスの削減に向けたいろいろな取り組みが考えられるのではないかと思うからです。仮に、アメリカが京都議定書から離脱したままであっても、地球温暖化対策に貢献できる方向での日米の連携協力は可能だと思います。この点で、できるところから始めておいて、やがてアメリカにも排出権市場の参入のタイミングをつかんでもらう、入り方を日本が用意することも決して不可能ではないのではないかと考えます。

 そこで、資源エネルギー庁にお聞きいたします。

 温室効果ガス削減に向けたクリーンなエネルギーの開発は、地球温暖化対策の上でも、そして、広くは新しい産業育成とビジネスチャンス創出の上でも重要だと考えます。このクリーンエネルギーについて、日米間での技術協力をさらに進める必要があると考えますが、いかがでしょうか。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の、CO2の排出が少ないクリーンエネルギー、これは大変重要なものでございます。そのための技術開発につきましては、今、国際的には、バイあるいはマルチ、いろいろな形でいろいろな取り組みがなされておるところでございます。

 各国の中で申し上げますと、やはり、技術的にもほかの面でもポテンシャルを有する日本とアメリカが相協力をしまして、重要な分野について技術開発に共同で当たるということは、非常に重要なことであると認識をしております。

 その中の一つでございます水素あるいは燃料電池の分野でございますが、ここは、現在非常に注目をされております今後の技術戦略分野でございます。したがいまして、民間企業の競争ということには配慮する必要がございますが、そういったものに配慮しながらも、基礎的な部分あるいは基盤的な研究分野というものについては国際協力を推進する、あるいは規格とか基準の国際調和を図る、これが非常に重要なことだと認識をしております。

 そういう観点で、水素経済のための国際パートナーシップ、これはアメリカが主導して進めておるものでございますが、こういったものに日本も積極的に参画をして、ともに技術開発に取り組んでいるところでございます。

 それから、もう一つ、重要な柱として、原子力というのがございます。

 原子力につきましては、御案内のとおり、ことしの五月に日米の産官学が共同の研究プログラムとして、I―NERIとこれは称しますけれども、こういったプログラムを立ち上げまして、これに参加をいたしております。さらに、新しいタイプの原子炉ということで、今第四世代の原子力のシステムに関する国際研究というものを研究するためのフォーラムも立ち上がっておりまして、こういったものにつきましても、日米が協力して技術研究あるいは研究開発に取り組んでいるところでございます。

 今、一つ二つ例を申し上げましたけれども、さまざまな枠組みがございますものですから、いろいろな枠組みを通じまして、今先生御指摘のとおり、クリーンエネルギーの発展のために引き続き日米でも協力をしてまいりたいと思っております。

村井(宗)委員 今お答えいただきました、アメリカが呼びかけた水素経済のパートナーシップの話なんですが、これは、今から一生懸命日本、アメリカが協力し、技術交流なども進めながら行ったとして、大体いつごろまでに経済的なコストも含めて実用化できそうなのか、おおよその見通しを教えていただければと思います。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 このスキームでは、日本は運営委員会の共同副議長ということで、大変重要なファンクションを担っているわけでございます。現在、その進め方につきましては、技術開発、それから基準と標準化というところについていろいろ研究を進め、また、協議をしていくということになっております。

 はっきりとした到達時期についてはまだ明らかではございませんが、各国の知恵を集めて、できるだけ早く実のあるものにしていきたいと思っております。

村井(宗)委員 新しい技術開発についての日米の協力の話、もう一つお聞きしたいと思います。

 温室効果ガスの抜本的な削減に寄与し得る二酸化炭素の固定化技術も非常に注目をされていますが、これについても日米間で技術協力を進めていくべきではないでしょうか。

齋藤政府参考人 御指摘のとおりでございまして、排ガス中のCO2を分離して、それを液体または固体にしてしまって地中、海中に固定化するという技術は、まさに大気中の温暖化効果ガスを抜本的に削減する可能性をも秘めた、極めて革新的な技術でございます。

 我が国は、従来から研究開発に取り組んでおりました。さらに、日米等の協力につきましては、米国のリーダーシップのもとに、炭素隔離リーダーシップフォーラムというものが設けられております。これは、炭素隔離技術を世界的に一緒になって確立していこうということでございます。これにつきまして、我が国は、まさに技術を持っているわけでございますので、積極的に参加をいたしております。

 具体的には、そのイニシアチブのもとに、平成十五年、それからことしの平成十六年と二回にわたりまして、閣僚レベルでの会合が世界各国の参加を受けまして行われております。当省からも副大臣あるいは政務官が出席して、日本のしかるべき貢献と日米間の技術協力について意思の確認をしてきたということでございます。

村井(宗)委員 日本とアメリカのかかわり方の問題意識の中で、地球温暖化対策を取り上げてまいりましたが、この問題は、そもそも日本がアメリカにお願いをするといった話ではないのではないかと思います。地球全体、世界全体で取り組まなければならないことはアメリカも重々承知しているはずです。ですから、本来、ただ単に京都議定書に戻ってくださいとアメリカに頼む話ではないと思います。

 京都議定書は非常に大事ですが、それが永久にすべてを解決するという問題ではありません。アメリカの多国籍企業が他の先進国で課せられる削減義務、現地法人が取り組む温室効果ガスの削減が今後の突破口になる可能性があると思います。また、将来巨大になるであろう排出権取引の市場と、そのビジネスチャンスがアメリカの誘い水になるかもしれません。あるいは、日本がやっている途上国との共同開発、京都議定書で定められたクリーン開発メカニズムの事業の形が、将来アメリカの参加するモデルになるかもしれません。

 そこで、ちょっとお聞きしたいのは、今、クリーン開発メカニズムの事業はどんなふうに進んでおりますでしょうか。

齋藤政府参考人 クリーン開発メカニズム、CDMでございますが、具体的には二つの面でやっております。

 一つは、将来、実際にそれを使って京都議定書の義務を履行するための制度整備ということでございます。それからもう一つは、今からやらないと間に合わないということでございますので、実際のプロジェクトに対しまして、経済産業省と環境省と協力いたしまして、発掘してきたものに対する資金的な支援をしておく。今のうちから支援をしていくことによりまして、一種のCDMの排出量を確保していくということでございまして、具体的には、もう既に十二件が動いておりまして、見込みどおりであれば、かなりの程度のCDMが確保されるという見通しになっているところでございます。

村井(宗)委員 それでは、大臣に今までのまとめも含めてお聞きしたいと思います。

 日本とアメリカのかかわり方を考える問題として、地球温暖化防止対策というのは、ある意味大きな試金石になるのではないかと思います。そこで、アメリカはいろいろな形で自国の利益を主張しています。そして、もちろんそれは国益を尊重するという意味で当然のことなんですが、同時に、日本もアメリカに対しては言うべきことを言うという日本政府の毅然とした対応が求められると思います。この地球温暖化防止対策なども含めて、中川大臣の考え方をお聞かせください。

中川国務大臣 まず、環境問題、地球温暖化問題に関しては、実は最後の部分で村井委員からも御質問がありましたが、アメリカというのは、ある意味では、京都議定書については離脱しておりますけれども、アメリカのエネルギー政策を見ていますと、日本よりもおくれているといいましょうか、関心がない部分と逆にある部分と、日本が進んでいるというふうにも一概にも言えない部分があります。まあ、ごく一部だと思います。

 例えば、クリーンエネルギー、エタノールのガソリンなんというのも、カリフォルニアを初めとして物すごくバイオエネルギーというものに対して積極的な、国というよりも州単位と言った方がいいのかもしれませんけれども、そういう地域もあるわけであります。これは、例えばブラジルとかカナダとかオーストラリアとかいった資源大国においても、バイオエネルギーというものに非常に熱心であります。日本は、エネルギーそのものが少ないにもかかわらず、取り組みが残念ながらおくれているということで、我々としては、各省と連携を密にしながら、日本こそが技術的にも実用化の面でももっと頑張らなければいけないと私自身思っております。

 そのようなことを含め、ほかにも多国間、二国間の日米の通商関係がいろいろある。いろいろあるというのは、何といっても、経済的にもその他総合的にも世界の最も関係の深い日米二国間でございますから、当然いろいろな問題が出てくる。問題が出てこないということがいいことではなくて、問題が出てきたときにいかに迅速かつ効率的かつ内容の濃い交渉でもってその問題を解決していくかというメカニズムが大事だと思いますけれども、そういう意味では、今は私は、日米間、私の実際の担当を見ても、非常にうまくいっていると思います。

 その一つは、やはり何か問題が発生したときにはすぐに本音で話し合いをして、大きな問題にならないうちに未然に解決をしていく、小さいうちに解決をしていくという共通の認識がある、これが両国にとってプラスなんだということだと思います。

 村井委員が御指摘のように、本音でもちろん日本としては言うべきことはきちっと言い、また先方の言っていることもよく聞いた上で、問題解決というのは必ず百対ゼロとかゼロ対百というものではありませんので、五十、五十という形でやっていくことが日米両国にとってさらにプラスになる、そういう心構えで今後もやっていきたいと思っております。

村井(宗)委員 それでは、通告させていただきました日米間での地球温暖化の問題というのはこれで一応全部終わったわけですが、あと三分ほどお時間をいただいていますので、通告していない内容でも少し関連したことをお聞きしたいと思います。

 私、実は環境委員会と経済産業委員会をかけ持ちをしておりますが、環境大臣の小池さんの方が、環境税を導入することによって地球温暖化の問題も解決できる方向へ持っていきたいという話を言っておられました。ところが、先日新聞を見ていると、経済産業省の方が環境税に対して否定的な見解をしているというふうに書いてありました。実際どうなのかということと、これは閣内で本当に一致しているのかどうなのか、その辺についてお聞きしたいと思います。

中川国務大臣 環境税の案というものは私も承知をしておりますし、きょうのどこかの新聞に、環境税に積極的な小池大臣から一番積極的じゃない中川昭一の写真がずらっと並んでおりましたけれども、私どもは、まず環境に取り組むというのは、さっきの京都議定書じゃありませんけれども、経済的な先進国である日本やEU、アメリカ等が率先してやるということが大事だということで、やはり経済的なプラスのハンディキャップを持っているところはより頑張りましょうよ、先頭を切りましょうよというのが京都議定書の趣旨だと思っております。そういう意味で、やはり経済の活力というものと表裏一体の大事なものとして環境をとらえるべきである。

 逆に言うと、環境のために経済の力が損なわれるということは、日本が資源がない、そして、世界と平和なおつき合いをしながら発展をしていかなければいけないという国としては、やはりそういうところも大事だろうと思っております。

 環境税に環境省が積極的なのはわかりますけれども、私どもとしては、いろいろな手法が環境対策としてあるというふうに思っておりますから、環境税が唯一絶対のものだということに関しては、我々は、そうではないと言わざるを得ないというふうに思っているところであります。

 例えば、先ほど申し上げた産業面、運輸面、そして民生面の中でも、やはり運輸面と、それから家、事業所等のふえ方が大きいわけでございまして、私は、一部にどんと税をかけて税収が上がるというよりも、それでもって環境に貢献できるかどうかという議論よりも、やはり国民一人一人のちょっとした心がけ、家あるいはまたこの国会でも、また経済産業省の役所でも、節電をちょっとするとか、省エネというのをちょっとした心がけをしていくところからきちっとやっていけば、例えば環境税についても、国民の支持というものもより得られやすくなるのかもしれませんし、一人一人あるいはまた一経済主体が、一つずつが環境を守る、そして省エネをすることが一石二鳥にも三鳥にもなっていくんだという意識を持って取り組んでいくことが、大変厳しいとは思いますけれども、九〇年比マイナス六%の実現に向けての大きな原動力になっていくと思っております。

 よろしくお願いします。

村井(宗)委員 どうもありがとうございました。

河上委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時三十分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時二分開議

河上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。梶原康弘君。

梶原委員 民主党の梶原康弘でございます。

 まず、質問に入る前に、ただいま情報が入ってまいりまして、中国の原子力潜水艦が日本の領海を侵犯したということで情報がありました。それに対して海上自衛隊が緊急出動した。以上のことしかこのところで私自身はわかっておりませんので、これ以上のことはわからないわけでありますけれども、いずれにしても、中国の原子力潜水艦が領海を侵犯した、これは大変な問題であろうと思います。

 まず、そうしたことに対して、危機管理、情報が既に大臣のお耳にも入っているんじゃなかろうかと思いますけれども、その情報についてお伺いをしたいと思います。

中川国務大臣 正確な情報ではございませんが、お昼の時点で、国籍不明の潜水艦が潜航しながら高速で、日本の領海の中を猛スピードで走っていったらしいという情報は聞いております。これがどういうことになるかということは、国籍不明ですから私はどこの国がやったかということはわかりませんけれども、どういう国際法上の問題が起きるかということは、当然潜水艦なりその所属する国はわかった上でやっているものだろうというふうに思います。

 日本としては、自衛隊が、あるいはまた、これは軍ですから一義的に自衛隊なんでしょう、日本の主権と安全のために適切な行動をとる、政府としても適切な対応をすべきだというふうに、その情報を聞いたときに思ったところでございます。

梶原委員 中国の原潜、こういうことでありますけれども、いずれにしても、春暁の油田の問題とかいろいろな問題がある中で、主権が脅かされているということが言えようかと思います。大臣としてまずどういう抗議を申し入れるのかということをお聞かせいただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 その中国だということは、それは確実な情報ですか。(梶原委員「はい、中国と聞いています」と呼ぶ)それは、日本政府なり自衛隊がそういうふうに正式に発表されましたか。(梶原委員「まだそこまでは」と呼ぶ)ああ、そうですか。

 では、どこの国かということは今の段階ではうかつに私からは言うことは控えたいと思いますが、いずれにしても、日本の哨戒能力というものでどこの国の、潜水艦というのは、よくわかりませんが、音とかスクリュー音とかいろいろなものでリストみたいのがあって、これはどういう潜水艦かというのがある程度わかるというふうに聞いてもおりますので、その所属する国がわかれば、国際法にのっとった、あるいはまた、その国とのいろいろな条約もあると思いますので、そしてまた、日本の法律にのっとって適切かつ厳正な対応をすべきだと思っております。

梶原委員 確かに、今の段階では十分な情報がありませんから、しっかりとしたというか、まずは情報収集してからということになろうかと思いますけれども、いずれにしても、国防上大変な問題である。これはやはり経済の問題初め、すべてのことにかかわってくる問題だろうと思います。政府としてしっかりとした、毅然とした対応をお願いしたいというふうに思っております。

 続いて、法案の質問に入りたいと思います。

 少し時間を使いましたし、また、これまでに各委員から質問もありましたので、重複はできるだけ避けていきたいと思いますけれども、まず、簡単で結構ですので、この法案について、そもそもダンピングに当たるのかどうか、その辺の認識だけお聞かせいただきたいと思います。

北村政府参考人 お答えいたします。

 この案件につきましては、三件が対象になりまして、一件については現実に輸出をされたケースでございます。二件については輸出をされておりません。

 したがいまして、問題となるのは輸出をされた一件でございますけれども、その一件につきましては、アメリカの国内で、WTO協定にのっとって、アメリカの商務省がダンピング調査をいたしました。これの結果は、日本の東京機械の輸出はダンピングがないという判定をされています。したがいまして、私どもとしましては、一切ダンピングはなかったというふうに考えております。

梶原委員 商務省がそういう判断をしているということなんですが、現実に敗訴というか、出ているわけです。

 このダンピングというのは、認定ということがすごく大切なことじゃないかな。これから公正な取引を保障していく、その基準になってくるわけでありますから、ほかにも、WTOではアンチダンピング税というのは認めているということでありますし、日本でもセーフガードというのを発動した。先日も、あれはメキシコとのEPAの中で関税の措置もあるわけでありますから、要するに、自国の産業を守るためにそうした措置がとられるわけでありますけれども、どういう基準で出されるかというのがすごく大切な、重要な問題ではないかな。

 アメリカでゼロイングという手法がある。ダンピングを認定するその手法によって審議されたんじゃないかと思うんですけれども、そのやり方というのも、全くやりたい放題というか、自分の都合ばかり押しつけるような、そんなものであるというふうに思います。

 そのゼロイング手法について、WTOも協定違反ということを言っているわけでありますけれども、その手法についてこれからアンチダンピング税で使われることがないのかどうか、あるいは、それに対して日本政府としてどう言っているかというところを教えていただきたいと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 アンチダンピングの手法の中で、私どもこれまでも問題としている大きな論点の一つが、御指摘のゼロイングでございます。

 ゼロイングといいますのは、比喩的に申し上げると、ダンピングをかける側が、なるべくダンピングが認定しやすいように、ダンピングをしていないものについては無視をして計算する、いわばいいところ取りというか悪いところ取りというか、そういった手法でございます。

 これにつきましては、既に二国間で、日米の間でも、例えば日米規制改革イニシアチブという協議の場がありますけれども、その場でも、私どもからは、この制度はおかしい、廃止をすべきであるということを既に要請しております。

 さらに、国際的には、先ほど先生からお話がありましたように、EUあるいはアルゼンチン、こういったところが、米国の今やっておりますゼロイング制度についてWTOに提訴をしております。その提訴の中で、日本はいわば関係国として、第三国参加という形でこの提訴にかかわっております。

 以上が現在動いておる取り組みでありますけれども、さらに、これはルールの問題でありますので、現在進められておりますWTOの新ラウンド交渉におきまして、アンチダンピングの規律強化という中で、このゼロイング禁止について、日本として強力に取り組んでいきたいというふうに考えております。

梶原委員 アンチダンピング措置についても、十数年で三倍ぐらいになっている。しかも、アメリカとかEUとか、経済力のある強いところがそういう措置を数多くとっている、保護主義的な政策をとっているということでありまして、また、先ほど聞くと、ゴス社の裁判についても民事裁判というか陪審員制でやっているということになると、余計にそういった色合いというのが強くなってくるのではないかなというふうに心配しますけれども、その辺について、保護主義的な傾向についてどう思っておられるか、伺いたいと思います。

北村政府参考人 お答えいたします。

 アンチダンピング措置の発動状況を見てみますと、累積、ストックベースで見ますと、一九九〇年には、その時点までの累積で四百五十五件という件数でありましたけれども、昨年の段階での累積ではこれが約三倍の千五百十一件というふうに、大変大幅に増加をしております。これを各年の、毎年のいわばフローベース、発動件数ということで見ますと、十年前、九五年から九九年まででは年平均百三十五件という件数でございますけれども、ここ三年間、二〇〇〇年以降の三年間では年平均二百九件ということで、件数も、やはりフローベースでも増加をしている。また、アンチダンピング措置を発動している国の数も現在では三十八カ国ということで、かなり広範な拡大傾向が見られるところでございます。

 これを、先生御指摘のように、一つの保護主義のあらわれと見る見方も十分可能であると思いますけれども、一点、私ども注意をしておりますのは、世界全体の貿易がふえていることであります。先ほどの同じ時系列で申し上げますと、一九九〇年から現在、二〇〇三年まで、世界の貿易は二倍以上にふえております。そういう意味では、大きく、分厚くなってきた貿易の中で、こういった摩擦といいましょうか、そういった件数もふえる傾向があるといったことにもやはり注意をしなきゃいけないと思っております。

 ただ、私ども、やはり、現在のアンチダンピングのルール自体に甘さがいろいろあります。それから、先ほど先生御指摘のあったように、ゼロイングという非常に恣意的な運用が現に行われているという事実もございます。したがいまして、こういったアンチダンピングの厳正な運用が確保されるように、ルールとして、WTOの今回のラウンドの中でしっかりとした規律をしていくといったことに取り組んでいきたいというふうに思っております。

梶原委員 続いて、この法律の有効性、先ほども似たような話があったんですけれども、この法律で、日本国内で利益の返還義務を負うべき者として、一〇〇%親会社あるいは個人株主、一〇〇%子会社、こう規定をしているんですよね。これが、EUの損害回復法と比べると随分限定をされている。先ほどの話で、一〇〇%子会社、ゴス社にあるということがわかったので、それは安心したんですけれども、仮にこれから駆け込みでこういった提訴がなされた場合に、仮に一〇〇%出資の子会社がないとかいうことになった場合にどうなるのかなと。またこれはやり直しになるんじゃないかという心配もあるわけですが、その辺はどうなんでしょうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 たまたま、今、具体的なケースでは一〇〇%子会社がございます。仮になかった場合はどうかと。まあ、そういった事態が起きないことを期待いたしますけれども、仮の議論として、そういった場合においても、この法律のもとで、米国の企業が持っている財産、具体的に言いますと、米国の企業が日本の会社に対して持っている売り掛け債権を差し押さえる、あるいは、その企業が日本で持っている特許権、こういった知的財産権を差し押さえる、さらには、ヨーロッパにおいてアメリカの企業が持っている売り掛け債権等を差し押さえるといったことで、かなりの程度実効は上げられると思っております。

 したがいまして、逆に申し上げますと、アメリカ国内でだけ活動しているという企業になった場合にどうかと。そういった場合について、実際問題として、なかなか手が及ぶ範囲が狭まるということはありますけれども、これは実はEUの場合も恐らく、EUのああいった、対象が広がった形になっておりますけれども、あの法律をもってしても、アメリカ国内だけで活動している場合にはそこの実効性はないということでありますので、そういった事態がないようにこの法律を成立させていただき、アメリカが粛々と法案を廃止するということを強く期待いたしたいと思っております。

梶原委員 確かに、理屈はそうだと思うんですよね。EUの損害回復法というのがむちゃなのかどうかわかりませんけれども、法的にはそうだろうと思うんですが、法の意思というか、これは、不正は断固正すんだ、だめなんだということを明確にやはり言う、法の意思というのがあるんじゃないか。それが今回、とりあえずゴス社のことについては有効であろう、こういうふうに思いますけれども、不正というか不公正に対しては日本はきちっとした態度をとるんだよということを明確に示す、そういうものじゃないかなというふうに思うんですよね。多分、EUもそうなんだろうと思うんですよ。そこがどうも優等生的というか、そういう気がしてならないわけです。そんな思いをいたします。

 法案から外れて、少し国際経済の話に移っていきたいと思うんですが、私が生まれたのが一九五六年で、高校か大学ぐらいのころから日米貿易摩擦というのがもうずっと言われてきたわけです。初めは繊維から始まったんだと思いますが、テレビとか自動車とか、コンピューターとかずっとそういう時代を、数値目標とか輸入制限とか、あるいは構造協議とか、そんなことがずっと数十年行われてきた。今は、残念ながらというか、そういう時代でなくなってしまって、当時ジャパン・バッシングという時代がもう今はジャパン・パッシングと言われる。もう通り過ぎていっているんじゃないかな、そういう時代になってしまったなというふうに思います。

 国際経済も物すごい勢いで動いていて、EUの通貨統合であるとか、EPAも物すごい勢いで進んでいる。あるいは、中国の沿岸部も、世界の工業地帯と言われるぐらいに物すごい勢いで伸びている。それだけ物すごい勢いで動いている、そういう中で日本がしっかりと対応していけるんだろうか、こういう懸念を持っています。FTA、EPAについてもおくれているんじゃないかという指摘もありますし、この法案自体も、やはりもう少し早目に対応、的確に対応できないかなというふうな思いもありますし、先ほどの東シナ海の油田の問題とか、あるいはBSEの問題とか、あとは知的財産の問題にしても、日本企業が中国で三兆円ぐらい損失を受けている、こういうことが言われているわけでありますけれども、そういったことに的確に対応できるのかなというような思いを持っているわけです。

 ここで申し上げたいのは、本当にその国際経済のスピードに対して的確に対応していくためには、やはり日本としてしっかりとした体制をつくっていく。今、EPAにしても経産省、外務省、農水省を中心に今のところやっているわけですけれども、やはりしっかりとした体制をつくって取り組んでいかなくちゃいけないんだろうということを思っておりまして、そういう中でリーダーシップを振るって対応するということが必要なのではないか、そのことについて御意見を伺いたいと思います。

中川国務大臣 おっしゃるように、戦後はいわゆる第二次世界大戦の反省ということで、ブロック経済からいわゆる世界の一つの機関、いわゆるガット、ブレトンウッズ体制というものでやっていこうということで、ケネディ・ラウンド、東京ラウンド、ウルグアイ・ラウンド、そして、今のドーハ・ラウンドとやっているわけであります。

 そういう中で、九〇年前後にちょっとウルグアイ・ラウンドがうまくいくかどうかわからないという時期がございまして、そのときに、例えばEUのような地域の経済連携、二国間の経済連携というものにわっと行った国々があったわけであります。アメリカがそうでありました。アメリカもそれまではWTO中心であったんですけれども、どうも先行き不透明だからNAFTAというものをばっとつくり始め、九四年からスタートしたわけでありますし、そういう中で日本は、WTOを通じて世界と平和な貿易環境を築いていこうということでありました。

 現在二百幾つFTAがあると言われておりますが、そのうちの百ぐらいはEUの二十五カ国拡大で実質的には失効しておりますので、今百幾つ、百十前後というふうに私は聞いておりますけれども、それにしても、日本は二つがやっとできて、国会で御承認を今いただいているところということであります。

 日本は、そういう意味では非常に立ちおくれている。そしてまた、今猛烈なスピードで世界じゅうでEPAが進んでおりまして、アメリカなんかは八カ月ぐらいの間に六つぐらいばっとFTAを締結した、物すごいスピードでやっている。中国も非常に積極的でありますし、豪州とかインドとか、中南米の国々もそうであります。やると、やはりハンディキャップがやっていない国との間に出てまいりますので、それは日本にとってみれば貿易の面で不利になる、あるいはまた、経済連携がより広い意味で不利になるということでございますので、そのスピードに負けないように、ついていくだけではなくて、できれば積極的に貿易立国として引っ張っていくというぐらいの決意が必要だと思います。

 そのときには、当然政府一丸となって、また国会あるいはまた関係経済界の、経済主体の皆さん方とよく相談をしながら、日本のプラスになるような対応をしていかなければならないと思っております。

梶原委員 通商問題というか、表向きの部分はそれでいいというか、一生懸命やっていただいているというふうに思うわけですけれども、問題は国内問題だと思うんですよね。

 確かに、すべて変わっていくということではない、守るべきもので変えなければいけないもの、変えなければいけない古い日本のシステムみたいなものもまだあるのではないか、そういったものを大胆に変えていかないことにはそういうものに適合していかない。

 例えば、農業問題とか外国人の受け入れの問題であるとか、そういった問題について余りにも対応が遅いんじゃないか。これは、やはりこれまでの縦割りの省益優先の機構、官僚機構がそういった動きを阻んでいるのではないかというふうに思うわけです。ですから、もちろん連動しているわけですけれども、実際通商問題に当たる縦割りを横割りにするというか、外に向いた部門と、それと本当に内政的にどう変わらなくちゃいけないかということをしっかりとリーダーシップを振るえる部分をつくっていかないと、各省庁ごとにやっていてはとてもじゃないけれども対応できないのではないかというふうに私は思っています。

 ですから、政治にリーダーシップがあればそれはそれでもっと道は進むんだと思いますけれども、ぜひそういった、従来の縦割りじゃなくて、国内問題を一元的にどういうふうに考えていくんだと。これからは外国人も入ってくる、私はそう思っていますが、入ってくるとか、あるいは農業問題、自給率の問題、あるいは安全性の問題を含めてどう考えるんだということをもっと真剣に取り組んでいかないと、とてもじゃないけれども国内問題が立ちおくれる。このゆがみというのは物すごく大きな国民の負担となるんだろうというふうに思っています。

 ですから、そういったところをぜひリーダーシップを持って取り組んでいただきたいというふうに思っています。それについて、またお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 梶原委員御指摘のとおりだと思います。

 縦割り、あるいはまた各経済主体の間で話がにっちもさっちもいかないということになれば、これはどうしようもないことになるわけでありますけれども、幸いシンガポール、メキシコについてはそうではなかったというふうに私は思っておりますし、今後もそういうことがないように、リーダーシップというのは最終的には内閣総理大臣のもとで交渉をやるということでございますが、メキシコのときも小泉総理から具体的かつ積極的な指示を我々三大臣いただいて交渉していたわけでございますし、今後もそういう形で、ゆめゆめ縦割りの弊害がないように、御迷惑をかけないようにこれからも十分注意しながらやっていきたいと思っております。

梶原委員 そうした日本の問題というのはもちろんあるわけでありますけれども、これから国際経済というのがさらに大きく動いていく、そういう中で、日本として責任を負うというか、日本の役割というのがあるんじゃないかというふうに思っています。ぜひ積極的に発言をしていただきたいと思うんです。

 まず一つは、経済のグローバル化によって、弱小国と言っていいのか、南北問題なのかどうかはあれですが、強いところと弱いところというのがはっきり出てくるんじゃないか。もちろん、国内的にも、社会的弱者とか、あるいは環境の問題とか、雇用とか、いろんなところに出てくる、それをどう解決するかということが一つあると思います。

 もう一つは、日本はこれまでずっと高度成長を続けてきたわけですが、日本が果たしてきたというか、その何十倍もの勢いで、中国を初め、BRICsというんですか、大国が、人口の多いところが物すごい勢いで成長することによって、これはもう地球的に大きな影響が出てくる。環境の問題とか、もちろん食料の問題とか、いろんな問題が出てくるわけで、それに対して日本は、かつて高度成長の中で、公害の問題であるとかあるいは今の少子高齢化、極端な少子高齢化とか教育の問題とか、この経済が短時間に急激に伸びたことがいろんなひずみを生んでいると私は思っていますけれども、そうした経験から、国際社会に対していかに何を言っていくかということが僕はすごく大切なことじゃないかなと思うんですよね。

 ですから、もちろん自国のことはありますけれども、本当に国際経済が健全に伸びていかないといけない。それこそ、さっきも、ハゲタカファンドが出てきて、小国の通貨を暴落させて小国の経済を破壊してしまうなんということも、これは十分あるのではないかというふうに思いますので、ぜひそうしたことに対して日本として役割を果たしていただきたい、このように思います。

 以上申し上げて、最後にお話を伺って、質問を終えたいと思います。

中川国務大臣 もう梶原委員御指摘のとおりだと思います。

 例えば、WTO、今交渉をやっておりますけれども、これは、別名といいましょうか、DDA、ドーハ開発アジェンダということで、途上国というものをいかにこの世界の貿易ルールの中に参加させるか、それによってメリットがあるんだということを途上国の方々に、WTOの途上国というのは、百四十八カ国のうち百カ国以上は自分は途上国とわっと手を挙げているので、大半が途上国でありますけれども、そこに対して、こんなアジェンダ、ラウンドは意味がないんだということではなくて、我々先進国が積極的にいわゆるキャパシティービルディングに協力をしたり、途上国にはいい意味のハンディキャップをつけたりというようなことを配慮しながらやっていくことが交渉成功のかぎだと思っておりますし、それは、二国間のEPAにおいても当然そういう前提で交渉を進めていかなければならないというふうに思っております。

梶原委員 質問を終わります。

河上委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 先週、今週と、FTA、EPA、WTOなどの通商問題で議論してまいりました。きょうの午前中、中山委員の質疑の中でも、通商問題の土台としても、日本経済の柱でもある中小企業対策が必要じゃないかというお話がございました。これに対して大臣の方からも、交渉の際、相手国から中小企業政策を聞いてくることもあるんだというお話、なるほどと思いました。

 例えば、マレーシアのように、ベンダー計画と言われる下請中小企業の振興計画を持っているような国もございます。やはり、その国の産業政策を支えていく中小企業の役割に大いに注目をしているあかし、そういう点での日本の役割というのも、そういう角度から見ていくこともできるのかなと思っております。

 そういう点でも、現下の喫緊の課題でもある中小企業の対策ということでいえば、新潟県中越地震災害や一連の台風災害のような、こういう被災中小企業への支援策ということが今本当に緊急の課題として求められておりますので、その点、私は何問か最初にお伺いしたいと思っております。

 新潟県が十一月の初め、四日の日に実態調査を行ったそうであります。機械や金属、繊維などの地場産業の操業状態は、二百社の調査のうち約半数が地震前の操業状況を回復していないですとか、商店街の調査も行いましたら、営業できないという店舗が、川口町では一〇〇%、小千谷市では六〇%、十日町市では五〇%、こういうような実態ということで、大変深刻な状況がうかがわれるわけです。

 そういう中でも、現場では、まずは資金繰りの要望というのが出てきているものですから、政府系金融機関を活用しての取り組みも始まっていると思うんです。同時に、民間の金融機関でしっかりと対応ができなければいけませんから、そういう意味でも、セーフティーネット保証の役割が大変重要だと思っております。

 災害時の対応としてセーフティーネットの四号の適用ということが求められているわけですが、新潟県の中越地震災害に対してこのセーフティーネット保証四号の発動がいつぐらいになるのか、ぜひとも緊急にお願いしたいと思っていますが、その点、いかがでしょうか。

小此木副大臣 御指摘のセーフティーネット保証四号でありますけれども、この四号は、被災地域におきまして著しい障害を受けた中小企業が相当数いること等々、被害状況の詳細な影響調査を確認した上で発動するというのは、もう御存じのとおりだというふうに思います。

 一方で、御指摘の新潟の中越地震というのは、やはり相当深刻な震災でありまして、また、大規模でもありました。このため、通常と同様の調査を行うことが困難な状況ではあります。しかしながら、当省といたしましては、あるいは私といたしましても委員と同じ気持ちでありますので、そういった調査結果を踏まえまして、今週中にも発動し得るような作業を進めていく。いずれにいたしましても、私ども、精いっぱい努力をしてまいるということといたしたいと思います。

塩川委員 今週中の発動というお話を伺いました、と考えてよろしいんでしょうか。

小此木副大臣 はっきりと、今週中というのは調査を踏まえた結果でありますので、発動し得るように精いっぱい頑張るということでございます。

塩川委員 ぜひ奮闘いただきたいと思っております。

 やはり、メニューが多ければ多いほど将来に向けての希望を与えてくれる。そういう点でも、大いに活用できる制度はもう直ちに使えるようにするという点での努力をお願いしたい。あわせて、台風二十三号災害のような一連の台風災害についてのセーフティーネットの適用についても、ぜひ早急にお願いしたいと思っております。

 あわせて、融資や保証のスキームと同時に、その場合の金利についての減免の要望というのもやはり強いわけです。例えば、これは私も新聞で拝見したんですが、長岡市の商工会議所の中小企業相談所長さんが、金利減免など、特例措置も必要ではないかというお話をされておりました。

 十年前の阪神・淡路大震災の際には、県や神戸市などとも協調しまして、いろいろ制度をうまく使って、大変工夫をして、実質無利子の融資制度というのをつくったことがあるんですよね。そういう意味では、こういう事態に対応して、阪神・淡路大震災で行ったような無利子の融資制度をぜひとも今回も考えてもらいたい。新潟県の方から特別立法の要望もあるそうですから、そういうのをぜひ県の要望も踏まえて踏み出していただきたいと思いますが、その点、いかがでしょうか。

小此木副大臣 御指摘のとおり、阪神・淡路大震災については、中小企業支援措置に係る激甚災害指定を行い、それに伴い政府系中小企業金融機関の金利引き下げを行ったところであります。

 今般の新潟県中越地震にかかわる激甚災害指定については、十月三十日に防災担当大臣から被害額の早期把握を行うよう指示があったところであり、経済産業省においては、現在、中小企業支援措置にかかわる激甚災害指定に関し、今月中の指定に向けて、早急に被害状況の作業を進めておるところでございます。この激甚災害指定を行うときには、通例、政府系中小企業金融機関の金利引き下げを行っているところであります。

 なお、阪神・淡路大震災の際の自治体による政府系金融機関の融資に対する利子補給は、自治体の独自措置として行われたものでありまして、同様の措置の実施については、自治体の負担を含めて協議しつつ、検討をすることが必要だと考えております。

塩川委員 自治体の利子補給という形で無利子化が実現をした、この点では、阪神・淡路大震災の場合でも、阪神・淡路大震災復興基金というのをつくって、これで対応したわけですよね。これについては、交付金措置なども行って自治体の負担を軽減するという取り組み、これ自身が特別立法で対応するというスキームだったと思いますから、ぜひその方向で要望を踏まえて対応していただきたい。その点、ぜひお約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

小此木副大臣 気持ちは本当に同じでございますので、精いっぱい努力をさせていただきます。

塩川委員 NHKのニュースで商店街の実態のアンケート調査がありました。そういう中でも、商店主の方が出ていらっしゃって、小千谷などはもう店舗が崩れている。そういう中で、仮設の共同店舗みたいなものはできないだろうかという声が、その声としても紹介をされておりました。

 阪神・淡路大震災のときにも、仮設の共同店舗、共同工場ですとか、貸し店舗、貸し共同工場などについては、これは自治体が行うスキームをうまく使いながら実際行ってきておりますので、そういうのも現場の声を踏まえてということには当然なると思うんですが、お考えいただきたいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

小此木副大臣 阪神・淡路大震災のときにもそのようなことであったというふうに認識をしております。これにつきましても、新潟県と私たち経済産業省がしっかりと協議をして、本当にそこにどのようなニーズがあるのか、どういうところが本当に必要なんだろうかということを踏まえて、きちんと対処してまいりたいと思います。

塩川委員 十年前の阪神・淡路大震災のときには、中小企業事業団の高度化資金などを活用して、自治体がこういう貸し店舗などをつくるスキームというのがあったのですが、今それが何かうまく使えないんだというふうに聞いているものですから、そういうのはぜひ直していただいて、自治体がやりたいというときには対応できるようなことはぜひともお考えいただきたいと思っております。

 その上で、最後に、融資とかにとどまらない、もう一歩踏み込んだ対策が必要じゃないかということをお聞きしたいと思っているんですが、水害のありました新潟県の中之島町の助役さんが、我が党の志位委員長、市田書記局長が訪問した際におっしゃっておられたのが、現状は融資ではもう間に合わないんだ、だから、現状の中小企業支援策というのは何もないと言えるような状況だと。率直なお気持ちだと思うんですけれども、そういうお話もあったそうであります。そういう意味でも、災害時の中小企業の復興支援策についてもう一歩踏み込むことが必要だと考えております。

 この点では、自治体の取り組みですけれども、福井県がさきの七月の水害を踏まえて行った取り組みが重要だと思っています。伝統的工芸品産地の再生支援として、和紙ですとか漆器、こういうのに対して実施をした伝統的工芸品産地活性化緊急支援事業というのがあるそうです。これは、被災をした設備に対しての更新ですとかには直接助成をするスキームだと聞いているんですが、どんなスキームなのか教えていただきたいと思いますし、ぜひ、こういうのを国としても大きく応援していくような、生産設備の更新とか修繕にも直接助成するような取り組みが必要じゃないか、このように思いますが、いかがでしょうか。

小此木副大臣 豪雨や大規模震災により被害を受けた伝統的工芸品産業の活性化に当たって、被災した地域や産地の要望をよく聞かせていただき、適切に対応することが重要であると考えています。

 御指摘の福井県の伝統的工芸品産業への対応についても、我が経済産業省と福井県を初めとする関係者が十分に意見交換を行って、その結果を踏まえて、福井県が、今委員がおっしゃいました活性化措置、こういったものを創設したところであります。

 今回の地震により被害を受けた伝統的工芸品産業についても、我が省といたしまして、新潟県などとももっとよく連携しつつ被災地の要望を聞かせていただき、その活性化に向けて、これまた最大限支援に取り組んでいる所存であります。

塩川委員 大臣からも一言御答弁をいただきたいんですが、これはたしか八月の委員会での審議の際にもお願いしたお話でしたけれども、融資のスキームだけじゃやはり足りないという思いというのが被災中小企業の方にある。そういった際に、福井県が行っているような、生産設備に対しての更新などの直接の支援制度、そういうのを自治体と協調してという形でも当然考えるときに来ているんじゃないかなと。融資にとどまらない、設備への支援策、直接助成というのにぜひ今踏み出すときではないかなと思うんですが、その点、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

中川国務大臣 ことしの大きな災害で福井県がダメージを受けたわけですけれども、やはり地元の知恵と力で復興したいということに国が最大限支援をするということは、当然必要なことだろうというふうに思っております。

 したがいまして、新潟県あるいは各自治体が産業を中心に復興していくということに関しては、最大限国としてもお手伝いをさせていただきたいし、地元経済あるいは中小企業対策からいっても、そういう地元の知恵というものをぜひ出していただくということが、まず我々にとっては大変頼もしいことであり、それにこたえていくのは当然のことだというふうに思っております。

塩川委員 生産設備の更新とか修繕、そこへの直接助成、そこに今一歩踏み出していくときではないかなと。住宅でいえば住宅本体への助成ということと対応するんだと思うんですけれども、生産設備に対しての直接的な支援策という点ではいかがでしょうか。

中川国務大臣 ですから、具体的なことは、地元の要望ということで、多分そういう要望も上がってくる可能性は高いのかなとは思います。また、今のままでいうと制度上いろいろなことがあるんだろうと思いますが、何といっても、中越に住んでいる皆様方は、今も余震におののいて、大変御心配の状況で、本当に復興支援以前の段階に残念ながらあるのかなと。

 やがて積雪寒冷ということもありますので、先ほどの塩川委員の仮店舗なんというお話は、それは復旧としては非常にいいんでしょうけれども、あれだけ何メートルも雪が積もるところに仮設店舗で果たして逆に大丈夫なのかなという、地域の特殊事情もあるのかなと思いながら、しかし、早くしなければいけないなと思っているところでございまして、私は、現在も災害が継続中、まだ復旧の段階にすら行っていないという大変厳しい事情に御当地はあるんじゃないかと思っております。

 そういう中で、何が早急にできるのかということを含めて、全力を挙げてやっていきたいと思っておりますけれども、今の、地元がこれから立ち上がろう、再び頑張ろうと思っているときに、生産設備に対しての直接支援ということも最初からだめと言うつもりは毛頭ございません。趣旨として、地元の知恵と活力が前進していくんだということには最大限協力をしていきたいというのが私の気持ちでございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 雪国対応の仮設住宅というのも、もちろん割り増しですがあるそうですから、大いに活用も可能なのかなと思っております。

 それでは、一九一六AD法に対する損害回復法案についてお聞きします。

 この法案を日本政府としてつくることを決断したというのはいつの時期なのか、その点を最初に御確認したいと思っております。

中川国務大臣 これは時系列的に、WTOに提訴をしてWTO上問題ありということが確定をして、そして、ヨーロッパとも連携をとりながらやってきて、ヨーロッパがたしか去年の十二月にこの法律をやったわけでございます。ヨーロッパは、先ほど申し上げましたように、こういうのに似たような過去の例が、EU、イギリス等にあるようでございますから、若干経験があるということで、我々の方は、初めての経験、対抗法に対する対抗法ということで、日本国内にある財産を直接もう主権でもって差し押さえをしてしまおうという、ある意味ではかなり厳しい法律でございますので、その辺のことも、内部的な調査も含めてやるのに多少時間がかかったということでございます。

 我々が具体的に意識をし始めたのは、やはりEUでこういう法律ができ上がった、連携をとってやっているEUでこういう法律が成立したということは、その時点で、とにかく勉強しようというふうにスタートをしたということでございます。

塩川委員 実務的な作業は、昨年十二月に地裁において四十億円の賠償が決まる、控訴したけれどもそれも届かなかった。それが五月ですから、その四月、五月ごろというふうに聞いているんですが、実務的にはどうでしょうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 具体的なクロニクル、事実経過でございますけれども、二〇〇三年の十二月にアイオワ州の連邦地裁陪審でゴス社の訴えを認める評決が出まして、翌年の五月に連邦地裁でゴス社の訴えを認める判決が出ております。その後、この連邦地裁の判決に対しまして、被告であります東京機械が六月に連邦控訴審に控訴をしているという状況でございます。

塩川委員 失礼、先ほど控訴と言いましたのは、異議申し立ての却下の話ですけれども、今お話しのように、ことしの五月に異議申し立てが却下をされる。それでいえば、実質的に、もしかすると賠償請求されるかもしれないというのが、本気で準備をする作業のきっかけだと思うんですけれども、でも、私、やはりEUの準備作業を考えてみると、EUを見ながら日本もしっかり準備する時間的な余裕は十分あったんじゃないかなというふうに思うんですよね。

 例えば、EUが、欧州委員会が、欧州理事会に対してですか、この損害回復法案を提案したというのは、昨年十二月の前のいつの時点でしょうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 EUのいわゆるダイレクティブ、法律でございますけれども、これが成立をいたしましたのは十二月でございますが、欧州議会に提出をしておりますのは、通常二カ月程度の期間を要すると聞いておりますので、十月、十一月ごろではなかったかと記憶しております。

塩川委員 私が承知しているのは、二〇〇三年の九月の十五日、三カ月前ですけれども。そういう、EUが、〇三年九月十五日に、欧州委員会から欧州理事会に損害回復法案の提案がありました。それを踏まえて十二月にこれを制定したわけです、当然、日本政府の方はそういう経過をよく御承知のことだと思うんですけれども。

 その際、EU、欧州委員会が提案をする際に付した趣旨の中にも、EUにおいてもEU企業を相手取った係属中の訴訟が数件あった、この一九一六AD法について。ですから、日本の場合でいえば東京機械製作所で争っていると同じように、EUにおいても数件争っている例があったと思うんですけれども、それについて、どういう案件で、どういう中身かを簡単に紹介していただけますか。

北村政府参考人 今先生御指摘の、九月に欧州議会に法案が出された際に係属しておりました案件は二件ございまして、アメリカの企業がフランスの鉄鋼企業を一九一六年法で訴えていた案件と、これは、同じようにアメリカの会社が介護用リフトのイギリスの会社を一九一六年法で訴えた、二件ございました。

 ただこれは、この二件ともに、欧州議会でこの法案が成立する前に訴訟としては終結をいたします。と申しますのは、判決を得ることなく、したがいまして、ヨーロッパ企業は敗訴しておりません。そういう意味では、欧州で法律ができた時点では具体的な対象案件はなかったというのが実態でございます。

塩川委員 つまり、一歩先んじて用意しているEUでは、敗訴している案件がなくても作業をやったわけですよね。それで、EUでは、敗訴する案件がない状態でも損害回復を提案して、提案の後におろしたわけでございましょう、なくなったわけでしょうけれども制定はしたわけですよ、案件がなくても。日本では、地裁で負けるような事態なのに損害回復法案をつくらなかったわけで、その違いというのは何なんでしょうかね。

中川国務大臣 時系列的に見てまいりますと、この一九一六AD法でやられたものは、日本は十件ぐらい過去にあるわけです。いずれも、この東京機械を除いては全部和解もしくは勝訴になっているんですね、日本は。

 ですから、ヨーロッパで十二月に法律ができて、我々も興味深くその法律の成立を見ていたわけでありますけれども、と同時に、今、塩川委員御指摘のように、去年の十二月にアイオワの連邦地裁の陪審でゴスの訴えを認めるという評決が出ているんです。その時点で、アメリカは陪審員制度ですから、有罪ということになるわけです。有罪というか、原告が勝訴ということになるわけですね。

 もちろん、さっき委員御指摘のように異議申し立てという制度がありますけれども、とりあえず去年の十二月に陪審員はゴスの訴えを認めたということでありますから、これはひょっとすると、東京機械が三倍プラスアルファで四十億円お金を積んでいるわけですけれども、とんでもないことになるかもしれないということになったということが、これはこの法律を真剣に検討しなければいけないと。

 ただし、さっき申し上げたように、こんな法律は日本の中では極めて異例の法律でありますから、専門家の方々に相当勉強していただいたということも、多少時間がかかったということの原因だと思っております。

塩川委員 いや、もっと早く対応できたんじゃないかなという率直な思いなんですよ、裁判そのものは〇〇年三月からずっとやっているわけですから。そういう意味では、WTOの交渉上でいえば、パネルとのやりとりでも、EUが最初はちょっと早かったですけれども、日本がそれを追いかけるようにして、ほぼ同時並行でずっと来ているわけですよね。

 対抗措置をとる関係についていえば、EUは踏み出したけれども、日本はちょっと様子を見てという関係で、EUは、このWTO上の対抗措置といわばセットでこの損害回復法案の準備をし、制定をした。しかし、日本の方は、その先もずっと先延ばしをして、新聞報道の範囲では、私が見たのはことしの九月ぐらいでしたから、臨時国会に出すという話ですからね。内部的にはもうちょっと前からやっているのかもしれないんだけれども、ちょっといかにも遅いんじゃないかなと率直に思わざるを得ないわけです。

 ですから、私、裁判で負けることも想定できるわけですから、EUに学んで準備するのは当然だと思うので、そういう時間的な余裕は十分にあったんじゃないか、もっと早い時期からしっかりやっておく必要があったんじゃないかと思うんですが、それはないんでしょうか。

中川国務大臣 そこは、午前中ですか、議論のありましたように、EUのこの法律というのは、いつでも訴訟を提訴できるわけですね、御承知のとおり。日本は確定判決があってということでありますから、それがいいか悪いかというのは先ほど御議論ありましたけれども、あえて言えば、控訴審がひょっとしたら年内にも出るかもしれません、仮に連邦最高裁に行ったときには、それがいつ出るかわからないということでありますので、確定前にこの法律をつくっておかなければいけない。逆に言うと、我々の法律は確定前につくっておけば間に合うということでございます。

 それと、だからのんびりしていたということでは決してございませんで、さっきも申し上げたように、私自身が問題意識を持ったのは、EUの法律ができたことと、先ほど申し上げたように、今まで九件ですか、十件ですか、すべて和解、もしくは、日本が、訴えられた方が勝っているにもかかわらず、今回初めて地裁で、陪審で原告側支持の評決が出たということでありますので、多少専門的な分野で、ここは私わからないんですけれども、専門的な分野でかなり検討をしたということも事実だということを御理解いただきたいと思います。

塩川委員 いや、私がこれにこだわっているのは、EUに比べると遅いじゃないかという話が、経産省の担当の説明で思うんですよ。つまり、EUで早くつくりました、日本で対応がおくれています、日本に訴訟のラッシュが来るかもしれません、だから急がなくちゃいけませんと言うものだから、だったら早く一緒にやっておけばいいじゃないですかという話だと思うんですよね。

 過去に、こういった損害回復法というのは、今回の一九一六AD法に対して以外にも、実際にEUはつくっているわけですよね。そういう事例はいかがですか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 この法律の政府部内での取り組みがおくれているのではないか、あるいは、EUと同じタイミングでなぜできなかったのかという御質問でありますけれども、まず第一に、今の先生の御質問に直接お答えする形でEUの前例を申し上げますと、外国、具体的にはアメリカの法律に基づいて、イギリスとEUで一本ずつ、類似の損害回復立法がございます。

 一九八〇年にイギリスが制定した、外国の法律によって、実際の損害賠償の数倍、三倍とか四倍とか、そういう数倍の損害賠償命令を受けた場合には、実際の損害を超える分についてはその部分の回復ができるという法律をイギリスは一九八〇年につくっております。

 それから、EU全体としましては、一九九六年に、これはアメリカの法律でございますが、ヘルムズ・バートン法という法律がございます。これはキューバ制裁法でございまして、この法律に基づきまして、アメリカの裁判によってヨーロッパの企業が損害賠償命令を受けた場合にはその損害について回復をすることができるという意味で、今回の法律と同じような趣旨のものが二つ前例がある。

 したがいまして、EUが各国の中で、それぞれの憲法あるいは民法手続、いろいろございますけれども、イギリスあるいはEUワイドで、そういった基本的な法体系の中で、こういう外国の判決、法律に基づいて行われた損害を回復できるという前例が確立をしていたということでございます。

 これに対しまして、私どもは、そういった例が一切ございません。したがいまして、憲法、民法、民事訴訟法等々の基本的な法体系の中でどういった法律がいいのかという議論を政府部内で関係部局で議論するのは、これは当然のことであると思います。その中で最大限のスピードを追求したということでございます。

塩川委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、同じような損害回復法が八年前にもできて、今回の裁判も四年前から起こっているわけですから、ことしになってから準備をしようというんじゃなくて、もっと早くできたわけですよ。

 私、率直に言って、アメリカへの配慮があるんじゃないか、特にアメリカの大統領選挙への過分な配慮が背景にありはしないか、率直にそのように思います。そういう意味でも、私、日本の企業の立場にも立った本来の通商関係をきちっと確立する上で、言うべきことは言う、必要な措置をとるべきだということを申し上げて、質問を終わります。

河上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河上委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、平井卓也君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。細野豪志君。

細野委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。

 一 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき損失を受けた我が国企業等の保護に万全を期すため、本法の速やかな施行に努めること。また、本法によって保護を受けるべき企業等に対しては、本法の規定内容の周知徹底を図るとともに、必要に応じ措置の効果的実施に向けた見直しを行うこと。

 二 今後の通商摩擦への対応に当たっては、個別の案件であっても、当事者の利害に配慮しつつ、極力、透明性の確保に努めることとし、適時にその進捗状況等について国会への報告を行うものとすること。

 三 アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法及びバード修正条項等のWTO協定違反が確定した米国の措置をはじめとする不公正な通商規制については、EUなどとも密接に連携しつつ、WTO協定の原則に則りその廃止など是正に向けた一層の努力を求めること。

 四 世界貿易の発展及び自由貿易の維持強化を図るため、新ラウンド交渉の一層の進展及び中国等途上国の状況を踏まえつつ、WTOにおけるアンチ・ダンピング規律の明確化及び改善に向けての更なる取組みの強化に努めること。

 五 今後のWTO新ラウンド交渉、二国間経済連携協定の締結等の交渉に当たっては、我が国の国益を十分に反映させるため、政府が一体として対応を図ることとし、適切な体制の確立に努めること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

河上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河上委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、中川経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中川経済産業大臣。

中川国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

河上委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.