衆議院

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第7号 平成16年11月17日(水曜日)

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平成十六年十一月十七日(水曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      遠藤 利明君    嘉数 知賢君

      北川 知克君    小杉  隆君

      佐藤 信二君    坂本 剛二君

      菅  義偉君    高木  毅君

      竹本 直一君    谷畑  孝君

      中西 一善君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    平田 耕一君

      福井  照君    望月 義夫君

      森  英介君    山本 明彦君

      大畠 章宏君    奥田  建君

      海江田万里君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    近藤 洋介君

      高山 智司君    中山 義活君

      計屋 圭宏君    古本伸一郎君

      本多 平直君    村井 宗明君

      江田 康幸君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   議員           奥田  建君

   議員           近藤 洋介君

   議員           高山 智司君

   議員           村井 宗明君

   議員           吉田  治君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   衆議院法制局第三部長   夜久  仁君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      伊東 章二君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        楢崎 憲安君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       迎  陽一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           舟木  隆君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           中島 正弘君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十七日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     福井  照君

  山口 泰明君     高木  毅君

  渡辺  周君     本多 平直君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     山口 泰明君

  福井  照君     嘉数 知賢君

  本多 平直君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  古本伸一郎君     渡辺  周君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(仙谷由人君外十六名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案並びに仙谷由人君外十六名提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長伊東章二君、公正取引委員会事務総局審査局長楢崎憲安君、警察庁刑事局長岡田薫君、法務省大臣官房長小津博司君、経済産業省大臣官房商務流通審議官迎陽一君、経済産業省大臣官房審議官舟木隆君及び国土交通省大臣官房審議官中島正弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。

平井委員 おはようございます。自由民主党の平井卓也です。

 今回の独禁法の改正というのはまさに時代の要請であり、小泉首相が政権発足時から述べられているように、二十一世紀にふさわしい競争政策の確立というものはだれもが望んでいるところだと思います。

 しかし、せっかくの機会なので、法改正には賛成の立場でありますが、その前に少しだけ、公正取引委員会の活動に少し物足りなさも感じつつ、日ごろ感じていることについてまずちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 法改正も重要だとは思いますが、これからさらに重要になるのは、専門性の蓄積とか、いわば独禁法運用の実質化だと私は考えています。そこで、私も自由民主党の方でいろいろ役をいただきまして、電子政府プロジェクトの健全な推進をテーマにして、レガシーシステムの見直しとか、公正な調達実施のための競争入札の実施の徹底とか、政府の方に申し入れ続けております。

 しかしながら、システムの入札の安値落札、後年度高負担というようなことは、多少よくなったにしても、まだ完全になくなったわけではありません。今回は具体的に名前は挙げませんが、最近の官庁のシステムの更新の際に、競争入札という前提はできましたが、実質、応札が一社しかないとか、寡占状態というものが引き続き続いているというようなことが散見できます。

 こういうようなことは取り締まっていくというのは当然公正取引委員会のミッションであるわけでありますが、この辺の問題に関して言うと、もう少し公取さんの感度を高めていただかないと実効性が上がっていかないのではないかなと私自身思っています。

 今回は、政府の行政システムの問題だけではなくて、私自身は独立行政法人のシステムというのを自由民主党の中でも徹底的に調査をしようというふうに思っています。当然、これは公取さんの仕事の範囲でありますし、我々党としても頑張っていますが、公取さんの方としても、ぜひそのあたりには、人材も確保しつつ、さらに厳格に取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 委員御指摘のとおり、業種も大変多岐にわたっておりますし、特に規制緩和が行われているような公益事業分野でありますとか、それからITに代表されますようなハイテクな分野、こういったものもどんどん伸びておりまして、公正取引委員会の守備範囲は非常に広くなっている。そういう中で、専門性を十分持っておるのかという御指摘がございましたけれども、おっしゃるとおりでございます。

 私どもは、競争法の適用という意味で、当然専門機関と自負しておりますけれども、世の中いろいろ新しい商品なり取引形態が変わってくるということをきちんとウオッチしていかなきゃいけない。そこで、競争法上問題があるものについてはきちんと対処をしていくというのが基本である。

 そういう意味で、及ばずながらではございますが、従来、ややもすれば公共工事にかかわる入札談合という事件が大変多かったわけでございますが、このところ、公益事業分野でありますとかITの分野にも目を光らせて、具体的な事件として取り扱っているということでございます。

 それから、コンピューターのソフト関係の、電子政府絡みの調達、確かに一般競争入札でありながら一社しか手を挙げない。もしも、その背後にカルテル、談合があるのであれば、当然それは独禁法上の問題になりますが、必ずしもそうとは言えない場合には、やはりこれは発注者側において要するに工夫をしていただかなきゃいけないというふうに思います。

 そういう意味で、今回の独禁法改正に関連しても、公共調達のあり方、何もそれは公共工事だけじゃなくて、物品・サービスの調達も含めてそれを見直すべきであるという議論が起きておりまして、それにも公正取引委員会は公正取引委員会として積極的に貢献をさせていただきたいというふうに思っております。

平井委員 確かに今のお話のとおり、一社しか応札がないからといって、それに不法なカルテルとかそういうのがあるとは言い切れませんが、ただし、そういうものをチェックする体制、その中に一歩踏み込んで公取がやはり精査しなきゃいけないこともあろうかと思います。また、公取さんもシステムを発注させる立場ですから、くれぐれも御注意をしていただくようにお願いをしたいと思います。

 ちょっとついでにお聞きいたしますが、この分野は最近、海外の会社というのが対象になっていますよね、例えばマイクロソフト社とかインテルとか。この分野に関しては、検査している案件の情報技術が陳腐化するのが早いんですよ。つまりこれは、海外の司法当局との情報交換とか専門的な知識の迅速な集約みたいなものがないと、なかなか素早い動きができないということがあります。そのための人材確保とか、海外の独禁法当局についてのやりとりというようなものについて、何かやられていることがありましたらお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 海外の競争当局との連携でございますが、特に経済関係の密接なアメリカ及びEUとは、日本との間でそれぞれ協力協定というものを結んでバイラテラルな協力をしております。そういう中で、例えば国際カルテルというような事案に接した場合に共同でもって調査するとか、そういったこともやっております。

 ただ、すべてがそうだということではございませんで、今先生言及になられたマイクロソフト、これはそれぞれのところで、アメリカでもヨーロッパでも問題になっておるわけですが、日本が問題にしているのはまた別な切り口でございますので、そのことについてはまたそれとして、日本で独立して調査をするということでございます。

 確かに、八十何カ国も競争当局ができておりまして、特に日米欧の間ではこれからますます、個別事案についても、何でもかんでも情報を提供したりもらえたりするものではございませんが、制約がございますが、やはり国際協力をさらに充実していく必要があるというふうに思っております。

平井委員 わかりました。

 高度経済社会の番人を標榜するのであれば、それに見合う人材の確保というものはこれから必要だと思います。どうぞ、ほえない番犬とやゆされないようにお気をつけいただきたいと思います。

 私自身の提案ですけれども、行政コストを削減するという今の現時点では、人材確保とか増員というのも結構限界があるとは思います。しかし、事業官庁から大量に人を受け入れることも検討したらいいんじゃないかと思います。それも、二、三人じゃなくて、百人単位でそういうものをやられると、相当にいろいろな刺激もあるし、パワーアップもなるのではないか。答弁は結構です。私の提案ということでお聞きください。

 質問の時間がなくなってしまいますので、それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 平成十四年に独禁法を改正して、カルテル、入札談合行為に対する法人の罰金の上限が引き上げられました。これは、市場の活性化を意図した構造改革の一環と認識をしておりますが、一方では経済界から、罰則金が引き上げられて、その効果がいまだ明らかじゃないのにもかかわらず、罰金と同様な制裁的な効果を意図した課徴金の引き上げに対して疑問視する声もあります。この点につきまして、公正取引委員会としての所見をお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 御指摘のとおり、平成十四年の法律改正で、法人に対する罰金を一億円以下から五億円以下というふうに上げさせていただいたわけでございます。これは、いわば横並び、ほかの経済犯の罰金の水準に合わせた、こういうことでございますが、問題は、独禁法というのは、いずれまた御質疑があろうかと思いますけれども、刑罰と課徴金という二本立てになっておるわけでございまして、それぞれ役割が違うわけでございます。

 この五億円に引き上げた刑事罰というのは、当然、刑事告発されてそれが有罪になって科される場合の上限であるということでございまして、大多数の案件は、刑事告発に至らずに、公正取引委員会による行政処分でもって決着を見ておるというわけでございます。それで、その行政処分として我々が持っておる非常に強力であるべき手段が課徴金でございまして、その課徴金は、今の水準では抑止力として十分ではないということで、今回引き上げさせていただく。

 要するに、それぞれの趣旨、十四年の改正の趣旨、今回の改正の趣旨、それは別物であるということでございます。

平井委員 刑事罰というのは、悪質かつ重大な事件について、その道義的、社会的非難を問うものとして位置づけられていて、課徴金とは性格が違うということは私もわかっております。

 そこで、ちょっと今度は民主党さんにお聞きをさせていただきたいんですが、民主党さん提出の改正案では、行政制裁金と罰金が併科された場合に、罰則金の全額分を行政制裁金から控除することになっていますが、まずその理由は何でしょうか。

 また、仮に罰則額の全額分が控除されることになると、先ほどお話ししたように、悪質、重大なものとして刑事告発された事案であっても、刑事告発するに至らなかった事案であっても、企業にとって課される経済的な不利益の程度が変わらない。このことは、刑事告発を行う意義が非常に失われる可能性があるのではないか、そのように思いますが、いかがでしょうか。

近藤(洋)議員 平井委員にお答えいたします。

 御指摘のとおり、民主党案では、従来の課徴金を行政制裁金という制度に改めることで、違反行為の事件の重大性、悪質性に応じて制裁金を加算し、一方で、違反事業者の法令遵守や捜査協力に応じて減免するという新しい制度を導入しております。

 行政制裁金という考え方を導入したのであれば、法人に対する罰金とある意味極めて類似した性格になるのは当然でありまして、両者を併科するということは、逆に二重処罰の観点から問題になると判断しております。

 そこで、罰金、制裁金のどちらかを選択するという道もあるかと思うわけですが、私ども民主党では、罰金額全額を制裁金から控除する方式を選択いたしました。逆に、政府案では二分の一を控除するということになっておりますけれども、むしろその方が、目的が極めてあいまいであり、論理的な根拠が不明ではないかと考えております。

 二点目の御質問でございますけれども、刑事告発の意義がなくなるのではないかという御指摘でございました。

 この点につきましては、刑事罰というのは、専ら違反行為の反社会性等に着目をして、悪質な行為に対して道義的な批判を加えるもの、とりわけ、人物といいますか、個人に対して罰を科す性質のものであるわけでありますから、企業に対する経済的不利益のみから論じるものではないのではないかと考えております。

 いずれにしろ、政府案と民主党案では制裁措置の体系が根本から変わっているわけでありますから、私どもは、将来的には、違反事業者に対する制裁は行政制裁金に一本化し、刑事罰は行為個人を処罰するという方向に、法体系、措置体系を見直しするべきではないかと考えております。

平井委員 つまり、企業に対しては罰金しかないわけですよね、刑事罰の場合は。説明を聞いていても、いささかちょっと、刑事罰に対する考え方が中途半端ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

近藤(洋)議員 刑事罰は専ら個人に対応するものであると先ほど申し上げましたが、すなわち刑事罰を、個人に対して懲役刑または罰金刑が科せられるわけですね。それについて、違反行為の抑止力が、行政制裁金よりもある意味では格段にあるわけでございます。したがって、抑止力という観点から、経済面での不利益の程度のみから論じるのはいかがかと考えていると申し上げております。

平井委員 同様の趣旨で、今度は公正取引委員会にお聞きします。

 世界の競争法を見ますと、米国のように犯罪として刑事罰を科すか、EUのように行政機関が事案の悪質性、重大性なども評価して金銭的な不利益を課すか、どちらか一方しかないとも聞きますが、実際のところどうなっているんでしょうか。

 また、世界的に見れば、他の経済法令ではどちらも適用されることはあると聞いていますし、刑事罰と課徴金はぞれぞれ機能が違うわけですから、どちらか一方では問題が生じる可能性もあろうかと思います。

 そこで、ちょっと公正取引委員会の所見をお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 法制度は、それぞれの国の伝統なり物の考え方なり、英米法、大陸系法と言われるようにございまして、先生御存じのとおり、何か一つの論理的なものが全世界に全部通用しているというものではもちろんないわけでございます。

 ただ、結果としてでき上がっている制度を見れば、大まかに申し上げて、アメリカは事独禁法違反に関しては刑事罰だけでございますし、EUは、これは共同体でございますので、刑罰というわけにはいかないので、行政制裁金という、刑罰の機能もあわせ持ったような強力な行政制裁金だけを持っておるということは事実でございます。

 しかしながら、EUにおきましても、加盟国においては刑事罰を持っておるということでございまして、EU競争法が適用され、かつ、例えばドイツの競争法が適用される、フランスの競争法が適用される、そういうところには刑事罰があるわけでございまして、それぞれ、まさにばらつきといいますか多様性を持っております。

 以上でよろしいでしょうか。

平井委員 余り時間がなくなってきましたので、ちょっと次に行かせていただきたいと思います。

 今回の改正で、課徴金の対象範囲を変えました。確かに、最近のカルテル等の違反行為は大変巧妙化しており、その態様も多様化しているところであります。

 そこで、今回の課徴金の対象範囲を拡大したということについての趣旨をお聞きしたいと思います、公正取引委員会。

竹島政府特別補佐人 従来、課徴金は、価格にかかわるカルテル行為、価格に影響を与えるということが非常に強くうたわれておりまして、その結果、実質的に同じような効果をもたらすような違反行為であっても、その違反行為が直ちにクロであるということにはならずに、いろいろな議論になるというケースがあったわけでございます。

 今回は、私どもは、具体的には価格カルテル、市場分割カルテルだけではなくて、取引先を制限するとかシェアを分割するとか、単なる供給量とか価格だけをコントロールするんじゃなくて、実質的に同じことになるようなものについては全部対象にしましょうと。それから加えて、私的独占の中で、私的独占には支配型と新規参入排除型、二つあると言われているわけでございますが、支配型につきましては同じように価格コントロールができるわけでございますので、これについても対象にしましょうということで、一言で申し上げますと、欧米で言うハードコアカルテル行為については全部課徴金の対象にする、こういう思想で明確化ないしは拡大をさせていただいているということでございます。

平井委員 もう一つ、今回導入されました課徴金減免制度の導入に関してのお考え方を短くお答えください。

竹島政府特別補佐人 課徴金減免制度、欧米ではリーニエンシープログラムと言われるものですが、これを導入していないのは主な国で日本だけでございます。お隣の韓国も含め、もうすべての国と言っていいぐらいこれを導入しております。

 この趣旨は、独占禁止法違反行為というのは密室で行われ、かつ証拠を残さない。疑わしきは罰せずというハードルを越えるためには、当局としては大変であるということは各国共通しているわけでございます。そこで、例外的措置として、本来かけるべき課徴金でございますけれども、重要で立証に十分ふさわしい情報をもたらしてくれる者については、数を限定して課徴金の減免をするということによって摘発率を上げる。それから、こういうスキームが入りますと、業者間でカルテル、談合というものをしにくくなるという牽制力にもなる。こういうことを目的にいたしまして導入させていただこうということでございます。

平井委員 今回の政府案と民主党案の減免制度に関する大きな違いは、対象とする事業者であると考えます。

 まず、これは両方にお聞きしたいんですが、政府案は三社に限定していますが、その理由はいかがか。これは後でお答えください。

 また、民主党の方には、企業がコンプライアンス体制を構築して違反行為をやめていれば三〇%までの減額を行うとしていますが、コンプライアンス体制さえ整備していれば、違反行為をしたにもかかわらず、対象事業者数に限定なく減額が行われることになりますから、本来の課徴金制度の趣旨に反するのではないか。また、民主党案では対象になる事業者数を限定していませんが、これは無制限と理解していいんだろうか。そしてまた、このこと自体が課徴金の抑止力を弱めることになるのではないか。それと、コンプライアンス体制を構築している企業にはこういうような事件は起きないのではないかとも思うんですが、そのあたりの整合性といいますか、どのように理解したらいいかもお聞きしたいと思います。

 では、公正取引委員会から、三社限定の意味をまずお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 課徴金は、違反行為があれば一律に課されるべきものとして設計されております。それに対して、先ほど申し上げましたように、当局がわからずじまいで社会的な損害がはびこっているというのは何としても防がなきゃいかぬ、そういう意味で、その手段としてリーニエンシーを入れる、こういうことでございますので、これは何かやっていれば御褒美を上げますということではございませんで、本来取るべき課徴金を、それを犠牲にしても減免する価値があるというものに限定すべきであるというのが、抽象的ではございますが、基本的考え方でございます。

 したがって、私どもは、これは限定しなきゃいかぬ。いろいろ議論しましたのですが、一人だけではその情報の正確性を検証するのが難しいかもしれない。今までの私どもの調査、検査の経験等にも照らしまして、まあ三人いれば、三社あればかなり確度の高い情報がもたらされるのではないかということで三社にさせていただいたわけでございます。

近藤(洋)議員 お答えいたします。

 コンプライアンス、法令遵守を量刑の加算、減算で評価するということにつきましては、既にアメリカで量刑ガイドラインという形で導入をされているところでございます。

 また、具体的に私どもの案では調査開始日より以前に期日を定めまして、例えば一カ月間とか二カ月間とか、そういった一定期間前の期間においては法令に違反していないことということが要件になっております。その上で、政令で定める具体的な基準としては、従業員に法令遵守の取り組みに参加させるための積極的な仕組みをつくっていることであるとか、捜査協力をしていることであるとか、そういった要件を政令で定めてまいります。

 基本的に、コンプライアンス体制による減免制度というのは、事業者が違反行為をやめた後に悔い改めて、二度とそのようなことはしないという今後の取り組み、再発防止の取り組みを積極的に評価をしていこう、それを減免の制度の中に盛り込もうという思想でございまして、単に違反事実の申告を行った者に対する減免制度とは全く趣旨が異なっております。

 したがいまして、再発防止という観点からこの制度を考えますと、事業者を限定するということ自体、逆におかしくなってしまいます。また、このことによって制裁の抑止力を下げる、弱めるという批判は当たらないと考えております。

平井委員 ということは何社でもということですが、企業のコンプライアンス体制というのは、大企業の場合はもうおよそ大体どこでもできていると私は思うんですよ、現時点である程度のレベルまでは。しかし、中小企業というのはなかなか、そういうことに関してまだ理解もなければ準備もできていない、そのようにも考えるわけですが、コンプライアンス体制の構築ということに関して、そのあたり、中小企業に対する配慮とかそのようなことはお考えですか。

近藤(洋)議員 基本的に、幾ら法律を整備しても、守る側が守る意思がなければ法の実効性が担保できないので、コンプライアンスというのは重要な考え方だと思っておるわけであります。

 中小企業に対しての配慮というのは今後の課題として考えなければいけないと思っておりますが、時間がないところで恐縮ですけれども、一点強調して私ども考えているのは、いずれにしろ、行政の裁量が大企業優位に働かないように、公取の中に減免調査官という独立した部署を設けることにしております。したがいまして、減免においては公正な判断ができるような仕組みを入れておるというところでございます。

平井委員 もう時間がなくなってきましたので、もう一つ、ちょっと公正取引委員会の方にお聞きしたいんですが、審判において審査官と審判官が同一組織内にあることについては、これはよく批判されるところだと思うんですが、人事的なファイアウオールといいますか、公平性、公正性というものをどのように担保していくのか。そのあたりは非常に重要なことだと思います。この件につきまして、公正取引委員会に所見をお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 公正取引委員会というのは、私を含めあと四人の委員、計五名でできている独立行政委員会でございます。その委員会としては、審査も審判もすべて責任を持って統括して行政をさせていただいているということでございます。それが行政委員会たる公正取引委員会の存在そのものでございます。

 それで、それを支える事務総局というのがございまして、その中に審査部門と審判をやる者もおることは事実でございます。したがって、それは我々委員会をサポートする人たちでございます。しかしながら、扱っている仕事、特に審判というものは独立性を持っていなければならぬというのは御指摘のとおりでございますので、具体的には、人事異動がありまして審査をやった者が審判に行った場合に、自分が扱った審査事件については審判にかかわらないというファイアウオール、そういうことをやっております。

 それから、当然、今は判事にも審判官に来ていただいておる。これからもそういう外部から法曹資格者をふやしていこうという運用をしたいと思っておりますが、職員の中で、人事異動でそういった審判に回る場合もございますけれども、そういう者については、今申し上げたようなファイアウオールで、独立してきちんと仕事をするということにしております。

平井委員 政府案の策定に当たりましては、今まで自由民主党、公明党、両党それぞれ十数回にわたる検討の場を設けて、数多くの議論を闘わせてまいりました。そういう意味で、長い時間をかけて議論をしたということではありますが、最近のように経済の流れが速まっている中では、市場基本ルールについても不断の見直しを図っていかなきゃいけないというふうに思います。刑事罰の廃止とか行政審判制度の見直しなどを求める意見も上がっていますし、こうした流れを踏まえて、独禁法の措置体系について、これはどのような形で検討を進めていくのか、最後に委員長にお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 行政制裁金に一本化するとか審判のあり方を公取からは独立させるとかいう、いわば制度の根本にかかわる問題、これについて向こう二年間かけて、この法律を成立させていただければそれからでございますけれども、二年間かけて検討するということを附則十三条がうたっているわけでございまして、これはまさに我が国の独占禁止法のみならず、ほかの行政審判制度でありますとか刑事法制にもかかわる非常に根本的な問題を含んでいる論点でございますので、十分に幅広く御意見を伺いながら、内閣府にそういう検討の場を設けていただいて慎重に検討していくということになろうと思います。

平井委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

河上委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。本日は、独禁法改正について質問をさせていただきます。

 まず、独禁法は、皆さんもよく御存じのように、経済の憲法とも言われております。この独禁法が十分に機能して、そして市場における公正な競争が促されれば、これは経済の活力を生み出す力になるわけであります。

 しかし、違反企業に対する課徴金制度が一九七七年に導入されたものの、談合やカルテルというのは、なかなかこれが減少しない傾向がございます。ここ二年間では、違反件数が年間五百件にも達している。違反に対する抑止力はこれでは不十分なのではないかという認識が広がっているわけでございます。一方、談合やカルテルが横行することで価格競争の機能が低下して、消費者の利益が損なわれている側面も無視できません。また、コスト削減を初めとする企業の経営効率化を妨げて、経済の構造改革を進める上でも大きな障害となっている、そういう問題がございます。

 このような現状を踏まえて、違反企業への抑止力を強化して独禁法の実効性を高めることで、公正な経済競争を促すことが重要であると認識しております。

 我が公明党では、昨年十二月にプロジェクトチームを発足いたしまして、合計二十回、関係者から御意見をお聞きしてまいりました。ここでは、繰り返し起こる談合、カルテルの防止策につきまして、独禁法を強化するとともに、入札制度の改革や官製談合を取り締まる一層の取り組みが必要との声が聞かれました。また一方では、業界団体から、現在の厳しい経済状況を踏まえて、制度や運用面で中小企業に配慮を求める要望も多く出されたわけでございます。

 これらの意見を党としてよく検討した上で、課徴金の引き上げによる抑止力の強化とともに、中小企業の経営に支障が出ないよう考慮すべきとして、課徴金の算定率における中小企業への配慮を公明党は強く主張させていただいたところでございます。その主張も今回の改正案に十分反映されていると思っており、評価しているところでございます。

 では、きょうは審議のスタートでもございますので、基本的な点も含めて質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、課徴金の引き上げについてお伺いをいたします。

 カルテルへの課徴金制度は、昭和五十二年に二%という水準で導入されて、日米構造協議を経て、平成三年に今の六%になった経緯がございます。不当利得の没収という趣旨で、当時の大企業の売上高営業利益がおおむね六%であったことから、不当利得の水準を六%とみなして決まったものと承知しております。

 今回の改正案では、この課徴金の水準を一〇%に引き上げるという提案でございますが、これにつきましては、国際的な相場観から見て十分かどうか、あるいは国内のカルテルの不当利得の水準から見てどう判断できるのか。さらには、不当利得を没収することで、やり得を防止して抑止力をきかせるという意味で十分なのかどうか。その算定根拠について、なぜ大企業一〇%とされたのか。累犯はなぜ五割加算で、早期離脱はなぜ二割軽減とされたのか。公取委からその考えをお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 基本は、基準率、大企業、製造業等、現行六%を何%にすべきかというのが基準でございまして、それをベースにほかの率についてそれぞれ考えていくというのが頭の中でございます。

 そこで、その基準率の六%を幾らにすべきかということについてでございますが、確かに、経緯から申し上げますと、今委員御指摘のとおり、かつては、この六%という数字はどこから出てきたかというと、売上高営業利益率の平均値をとった、大企業がそのとき六%程度であった、こういうことが経緯でございます。それをもって不当利得とみなしたわけでございます。

 今回はそういう考え方はやめまして、実際に私どもも談合やカルテルの事件は取り扱っておりますので、個別に不当利得というのはどのぐらいであったかという推計を数十の件数についてやりましたところ、ばらつきはございますが、平均で一六・五%の不当利得が推計されたわけでございます。そのばらつきを見るために、では八%以上でどのぐらいかというと、九割以上を占める。そういう実態が、推計ではございますけれども、一つ国内の実績として出てまいりました。

 それから、何よりも、今委員御指摘のとおり、六%、三%ではなかなかやめる人がいない、新しい人も談合、カルテルをやりますし、繰り返しやる人もいるということで、経験上これは抑止力として明らかに不十分だという認識がまずございます。

 それから三つ目に、国際的なことをおっしゃいましたけれども、国際水準は、端的にはアメリカの量刑ガイドラインというものがございますが、これは、基準は二〇%、売上高にかけるとすれば二〇%というものが基準値になっておりまして、それを上下に開いて、上は八〇%、下は一五%、その一五%―八〇%の幅の中で罰金を決めるというのがアメリカの考え方。この基準になっている二〇%というのは、大体欧米における基準についての相場観というふうに言われております。私ども、そのことはもちろん承知しておりました。

 それやこれや、三つぐらい今申し上げましたけれども、それらを総合判断して、欧米並みではございませんけれども、六%を一〇%、気持ちとして二倍程度ということをかねがね申し上げてまいりましたけれども、いろいろ調整の結果、一〇%というのがこの際引き上げられる限度だろうという結論でございます。

 では、五割増し、二割引きの話はどうか。

 これは、過去十年以内に二回以上やっている人、これはやはり不当利得がそれだけあるんだろうというふうにみなされますし、我々の過去のデータで見ましても、やはりこれは数が知れていますから、統計のデータの制約もございますけれども、五割ぐらい加算することによって不当利得相当以上という趣旨を累犯についてはしましょうと。

 それから、早期にやめた方については二割引きにするというのは、これは、課徴金のそもそもの目的が、独禁法違反行為をやめてください、やらないでくださいということがまず第一義のことでございますので、やらないのがもちろん一番いいんですが、仮にやっても、早くそれに気づいて、コンプライアンス体制もきちんとやって、気づいてやめたというものが、現状ではそれもどれも同じ扱いになっているということについて、それでは早くやめるインセンティブがないということにもなりますので、そのインセンティブをきちんとするために二割を引く、こういうことにさせていただいているわけでございます。

江田委員 今、算定根拠、るるお話がありました。今おっしゃられたように、今回の改正法案の課徴金の引き上げというのは、カルテル、入札談合に対する抑止力は強化されているものと評価いたします。

 一方で、先ほども申しました、中小企業が入札談合に引きずり込まれる場合もあると聞いておりますが、我が党としましては、現下のこの経済状況を考えますと、そのような算定根拠であるというのはわかるのでございますが、経済的な弱者である中小企業に対する課徴金につきましては一定の配慮をすべきと考えて、強力にそのように政府に申し上げてきたところでございます。そうした点は今回の改正ではどのように反映しているか、お聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 平成三年の改正で課徴金率が二%から六%に上がったときに、大企業と中小企業という分類を初めてしたわけでございます。そのときは、半分というふうにいたしました。したがって、現行は、六%に対して三%になっておる。その考え方からいたしますと、今回、一〇%に対して五%というのが出てくるわけでございますけれども、今委員御指摘のとおり、公明党さんからも、その他経済界からも、そういう御要望が強くございました。我々としては、そこはまさに政策的判断として、五%ではなくて四%の引き上げにとどめさせていただいたということでございます。

江田委員 次に、減免制度について質問をさせていただきます。

 まず最初に、措置減免制度、リーニエンシーは、欧米やアジア諸国も導入しており、効果があると聞いております。一方で、日本ではこれは初めての制度でございまして、これは内部告発促進的な制度にもとらえられがちなものでございますから、反発も大きいのが実情かと思っております。

 そこで、公取委は、欧米やアジアにおいて、このリーニエンシー制度の導入によって、カルテルの摘発向上効果、それから企業に対する抑止効果はどの程度と認識されておりますか。よろしくお願いします。

竹島政府特別補佐人 リーニエンシー制度はまずアメリカで初めて導入されたわけでございますが、それはもう二十年ぐらい前の話だったと記憶しておりますが、いろいろ試行錯誤、初めはなかなか使ってもらえなかったという経緯があるようでございまして、そのうちに、透明性、要するに予測可能性を高めないと企業はこれを使わない、訴えられるかどうかわからないというのには手を挙げない、こういうことがございまして、一九九三年、十一年前に、アメリカはリーニエンシープログラムの改定をいたしました。

 そこで、一言で申し上げますと、企業にとって、予測可能性がわかる、こういうことで、満たせば一〇〇%免除してもらえるというふうなことがはっきりしたものですから、その後、申請件数が年に二十倍ぐらいにふえているということでございまして、それによる罰金も十億ドルといいますから、一千億を超える額になってきているということで、極めて顕著な成果を上げている。

 それから、EUにおいてもこれは数年前から導入されて、特にこの三年ぐらい、彼らも、試行錯誤の結果、改定をして、これも大変威力を発揮しておりまして、私も、モンティ委員、もう間もなく、もうおやめになったかもしれませんが、から直接聞きましたけれども、これは大変劇的な成果を上げております。EUの制裁金の金額を見ると、それがもうはっきりしております。

江田委員 効果が海外でも上がっているということでございますが、今回の改正案で導入される課徴金の減免制度というものは、ともすれば、司法取引のように、公取委が被疑事業者と取引して裁量でもって課徴金をまける制度ではないかと誤解される面もあったかと聞いております。

 したがって、まず、課徴金減免制度の運用に当たりましては透明性に留意することが必要と考えますけれども、公取委としてはどのように対応を考えておられるか、また、本制度の施行に当たりましては、中小企業が申請しやすいように、わかりやすく、時間をかけて周知徹底をするようにお願いしてきたと思っておりますが、公正取引委員会のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 私どもも、欧米における経験を十分に参考にさせていただきまして、透明性をきちんとしなきゃいけないということで、今、これからでございますが、作業に入りたいと思っています。

 法律にも既に、一番目に来た者、二番目に来た者、三番目に来た者ということで、どういう場合にどうするかということは条文上明確にさせていただいているつもりでございますが、さらに具体的には、例えば、一番目というのはどこなんだ、電話で受けとめるのか、ファクスなのかというようなことまで含めまして、その順番の決め方、それから、一体どういう情報を持ってくればリーニエンシーとして認めてもらえるのかという報告の様式、中身、こういったことについては、公正取引委員会の規則において定めさせていただこうと思っております。

 その規則を定めるに当たっては、当然、関係者の御意見も十分に聞いて、世の中の意見も聞いた上で、実務がちゃんと回るように、そういう慎重な手続を経た上で規則を定めたいと思っておりますし、それが決まりました後には、それは当然、一生懸命広報といいますか周知徹底を図りたいというふうに考えております。

江田委員 特に、中小企業の方々がこの申請についてわかりやすいように、どうぞ周知徹底に努めていただきたいと思います。

 次に、不公正取引についてお伺いをさせていただきます。

 先ほどから中小企業ということで主張しておりますけれども、我が党としましても、大企業もさることながら、まずは、企業数の九九%を占める中小企業の景気が回復することで日本の経済は再生するという理念で、さまざまな中小企業の施策を提案してまいりました。これまでの間でも、中小企業の金融支援として、売掛金債権担保保証制度、また、借りかえ保証制度、さらには、無担保無保証の創設、拡充でございます。さらには、今国会で審議に入っておりますけれども、包括根保証の見直しや、動産担保制度の創設を可能とする動産登記制度の創設というところを提案して、政府にその取り組みを強くお願いしてきたところで、一つ一つ実現してきているのはうれしいことと思っております。

 そうした中で、公正取引委員会では、最近、中小企業に不当な不利益を与える優越的地位の乱用行為の摘発に力を入れておられると承知しております。大手スーパーによる納入業者いじめなどの優越的な地位の乱用につきましては、公取委は、最近立て続けに排除命令を打つなど、竹島委員長の号令のもとで積極的に取り組んでおられます。これは高く評価をしたい。最近でも、私の地元であります九州で、最大手の量販店であるミスターマックスが、中小の納入業者から不当な協賛金を集めたり、従業者の派遣などを強要した優越的地位の乱用行為に対しまして、公取委は排除勧告を出されました。

 こうした取り組み、ぜひ今後とも積極的にお願いしたいと考えておりますけれども、ただし、こういう排除措置を行っても、繰り返されては問題があるわけであります。

 こうした中小企業いじめが繰り返されないように、今回の法案ではどのように手当てをして、また、公正取引委員会として、排除措置に対する違反行為を見つけた場合にはどのように対処されるのか、公取委の決意をお聞かせいただきたい。

竹島政府特別補佐人 今御指摘の問題は、今回の改正の議論の中で大変大きく議論されたテーマのうちの一つでございます。

 今言及されましたように、私どもとしても、大規模小売業者の優越的地位の乱用行為、こういうものは厳しく取り締まっていこうと思ってやっているわけでございますが、今回の改正におきまして、議論の過程で、こういう優越的地位の乱用とか不当廉売について課徴金の対象にできないか、ないしは罰金の対象にできないのかという御議論がございました。

 私どももそれは十分に検討させていただきましたが、残念ながら、構成要件の明確化という法制上の壁がございまして、それをクリアできない。それをいたずらにちっちゃくしてしまいますと何のための改正かということにもなりますし、それ以外はいいのかというようなことにもとられかねないという問題もございまして、それが一番大きな壁でございましたが、直接課徴金の対象にするということは、今回の改正では見送らせていただいております。これは、これからこの法律が成立させていただいた後、二年間かけて検討される中の一つの検討課題だろうとは思っておりますが、現行ではそれは入っておりません。

 ただし、一回やめなさいという排除勧告を出してあるにもかかわらず同じことを繰り返した、同じ店でなくとも、同じ店のどこか、会社のどこかで同じようなことを繰り返したという場合には、これは今でも、確定した命令に対する違反というのは法人について三百万円以下の罰金というのがあるんですが、三百万円以下の罰金じゃどうしようもないということで、今回の改正では三億円以下に引き上げさせていただいております。

 ですから、これからの問題として、再発をした場合にはこの規定を根拠に刑事告発をしていくということをきちんと考えていきたいと思っております。

江田委員 再発行為に関しては罰則を三百万から三億と引き上げられて強化されているところでございますが、今、竹島委員長もおっしゃいましたように、今回は課徴金も刑罰も導入されなかったというところにおいては、ややこの実効力が懸念されるかなと私は思っておりますが、今後の検討課題ということで、十分に議論をしていかなければならないものと思っております。

 時間がなくなってまいりましたので、次に、審判制度、また審判手続について質問をさせていただきます。

 今回の改正で公取委の権限は大きく拡大強化されることになりますけれども、その公取委が行う立入検査や審判のあり方といった法執行の手続面におきましては、経済界からも懸念があるのは事実でございます。企業が安心して事業活動を行うためにも、経済警察である公取委が独禁法の適正な執行を通じて市場経済をしっかりと監視することが重要と思っておりますが、その重要な役目を果たす公取委が企業からの信頼を得ることがまた重要であると思っております。

 公取委の審判はみずから審査したものについての審判でありますから、ともすれば、手続の公平性、適正性の観点で企業から不満が持たれやすい。そこで、我が党としましては、そうした観点から、審査手続や審判手続の運用を定める規則の制定に当たりましては、被審人の意見をよく聞くなど、十分に留意すべきであると政府にも要望してきたところであります。

 今回の改正案ではそうした点はどのように反映されておりますでしょうか。また、公取委として今後どのような点に留意していかれるつもりか、お聞かせいただきたいと思います。

 あわせて、せっかく民主党案も民主党の方から提案されておりますので、質問が遅くなりましたけれども、質問を一つさせていただきます。

 一方で、この民主党の対案では、行財政改革、今その途上でございますが、その行財政改革の折に、審判官を二十名までふやす、法曹資格者をその半数以上とするという提案がなされておりますけれども、費用対効果及び実効性の面でいかがかと考えますけれども、どのようにお考えでしょうか。あわせてお聞かせください。

竹島政府特別補佐人 審査・審判手続の適正化にさらに努めるべきであるという御議論は、大変多くいただきました。確かに、それはそのとおりでございますが、私どもも、そういう御意見を踏まえまして、具体的には、これは公明党さんからも確かにいただいた御意見でございますが、公正取引委員会が規則でいろいろな審査・審判手続を定めることに法律上なっておりますが、その規則を定めるに当たっては、法七十六条の第二項において、「被審人が自己の主張を陳述し、及び立証するための機会が十分に確保されること等当該手続の適正の確保が図られるよう留意しなければならない。」という精神をきちんと明確にさせていただいているということと、具体的に、審査審判規則の改定に当たっては、特に関心を非常に強く持っておる経済界と十分に意見交換をするということをこれからやっていく、パブリックコメント等も必要に応じてきちんとやっていくということで努めさせていただきたいと思います。

高山議員 お答えいたします。

 江田先生には、御配慮いただいた質問、ありがとうございます。

 まず、民主党の方で、二十名以上にふやすということと、また半数以上を法曹資格者にする、これは理由は大きく二つあります。

 まず、本法案では、従来の課徴金というのを行政制裁金というふうに改め、行政上の制裁としての性格に改めるということを明確にしました。そういうことでありますので、刑事手続に倣って、適正手続をまず確保することが重要だと考えます。もう一つは、審判案件が非常に増大しており、これを迅速に処理することが今求められている。

 こういった観点から、適正手続を確立するとともに、審判手続の迅速な処理を推進するために、審判官を現在の五名から必要に応じて二十名まで大幅に増員できる、そしてまた、その過半数を弁護士資格を有する者とすることにしまして、審判手続の適正手続の確保と迅速な処理、この二つを確保しようということでございます。

 そして、お尋ねありました、審判官を二十名までふやすことについて、行革に反するじゃないかということでございましたけれども、二十名までふやして、そして半数を法曹資格者とすることによりまして、透明な手続そして審判制度を確立する、そして、先ほど先生からもお話ありましたように、企業からも公取が信頼されるという、信頼性を高めるということに関しましては、十分大きな効果と実効性を得ることができるというふうに思っております。

 またさらに、あわせまして、私どもの法案では、事件の調査等を行う部門からさらに独立した立場で行政制裁金の減免措置の調査に係る事務を行う者といたしまして、行政制裁金減免調査官を設置いたしまして、また、その過半数も、審判官と同様、法曹資格者ということとしておりますので、あわせて、公正で適正な手続が確保されているというふうに考えております。

江田委員 公正な、適正な処理、迅速な処理ということで民主党の案も十分参考になろうかと思っておりますが、法律の専門家というよりも、実際には、経済や企業の行動原理を理解した、そういう専門家が必要なのではなかろうかと私は考えまして、法曹資格者が半数以上になればその資質が上がるのか、適正になるのかというところにおいては、ちょっと疑問を持っております。

 最後の質問をさせていただきます。官製談合についてでございます。

 組織ぐるみの経済犯罪の抑止という観点からは、官製談合に対する取り組みが非常に重要、民間サイドに制裁を強化するならば談合を示唆した役所側にもしかるべき制裁があって当然との声が経済界にも強いわけでございます。現在の法律は、平成十四年に私も参加して成立させたものでございますけれども、そこで、お聞きしたいんです。

 公取委の官製談合防止法の適用件数は、さきの新潟市の官製談合事件を合わせて二件しかございません。実態はもっと多いんじゃないでしょうか。多いのであれば、なぜ適用件数がふえないのか、適用件数がふえない理由は何なのか、お伺いをしたいと思います。

 また、入札談合につきましては、現行の入札、価格入札制度自体が大もとの原因となっている場合もあると指摘されております。政府として、こうした入札契約制度の問題について、どのような取り組みを行ってこのような事件を防止していくのか、公取委のお考えを最後にお聞かせください。

竹島政府特別補佐人 官製談合防止法は、今御指摘もございましたように、これは議員立法でつくられまして、昨年の一月から施行されているということでございます。

 二件しかないではないかということでございまして、もっとあるのではないかと。

 私どもは、当然、せっかくつくっていただいた法律でございますから、こういう官製談合、要するに、発注者側の職員が談合に関与するという行為があるかどうかというのは、特に入札談合の事件を扱うときには注意をして見ているところでございます。二件しかないという、それは、率直に申し上げまして、やはり壁があるということでございます。

 やはりそういうこともありまして、リーニエンシーというものを入れますと、こういったことが仮にあった場合には、このケースは官製談合であった、かくかくしかじかだということで、情報も含めて公正取引委員会に報告がなされるわけでございまして、そうなれば、より的確に官製談合防止法を発動することもできるだろう。

 加えて、現在、この独禁法の改正と並行して、官製談合防止法の見直しということが、これは政府においても問題意識を持っておりますが、何と申しましてもこれは議員立法でございますので、具体的には、与党、それから民主党さんにおいてもそういう御主張があって対案の中には附則でうたわれているわけでございますけれども、この官製談合防止法をどう見直すのかということについても、公正取引委員会としては大いに御協力を申し上げているつもりでございますし、これからもしていくつもりでございます。

 それから、入札制度のあり方、公共調達全般のあり方についても、去年も研究会で提言をしておりますし、ことしになってからも、地方自治体で実態はどういうふうになっているのか、やはりちっちゃいところでは、最低制限価格も低入札価格調査制度もやっていません、一般競争入札も大してやっていませんというふうなことがわかったわけです。

 そういうことを踏まえて、やはり談合防止のために公共調達の仕組みをどうするかというのは大事な問題でございますので、今、議員立法の法律も提案されておりますけれども、国土交通省においてもきちんとそこら辺は見直しておるということでございまして、具体的な改善事項がもう出てきているというふうに私は思っておりますので、遠からずそういうものが具体的な行政実務の指針として反映されてくるのだろうというふうに思っております。

江田委員 時間が参りました。

 官製談合、そして入札制度、契約制度の見直しも含めて、談合、カルテルの不公正取引の抑制にこの独禁法の改正が実効力あるものになるように、これから審議が進むと思いますので、民主党案そして政府案、しっかりと議論をしていきたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

河上委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

河上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。独占禁止法改正案について質問していきたいと思います。

 今回の独禁法改正が議論される、これだけの大型改正が議論されるというのは、昭和五十二年以来およそ四半世紀ぶりのことであります。独禁法は経済の取引にかかわる基本法であり、経済憲法とすら呼ばれておるものであります。この重要性にかんがみまして、私たち民主党としても、議論を重ねて独自の対案を提出したところであります。国民の代表の場であるこの国会で、当委員会の審議において、議論を重ねて新しい時代にふさわしい市場のルールを構築しなければいけない。この公正なルールの必要性については、私ども民主党も政府以上に認識しているところであります。

 同時に、この市場主義の、自由主義の国家にとって、民間の創意と工夫が成長の原点である、エンジンであるということは間違いないわけでありますが、同時に、市場原理は時として過ちを犯すということも歴史が証明しております。競争が激しくなればなるほど公正なルールが必要であり、そのルールの策定作業は、可能な限り透明で、情報が公開されなければいけない。同時に、ルール違反か否かの判断を下す手続のこの組織が市場の番人としてふさわしいかどうか、適格であるか、このことが大変大事になると思っております。

 本日は官房長官にも御出席いただいておりますが、官房長官は、御経歴を拝見しますと、旧通産省、現在の経済産業省の産業政策局の課長さんも御経験されたというわけで、産業政策にも非常にお詳しい方であると聞いておりますので、官房長官御出席のもとで、きちんと政府の姿勢をただしていきたいと思っているところでございます。

 そこで、まず最初に伺います。今回の独禁法の改正でございますが、政府はいつから、どういった機関で議論を、検討作業を進めてきたのか、事務的にお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 平成十四年の秋に、公取の、これは法律的には私的な諮問機関ということになりますが、独占禁止法研究会というものを立ち上げまして、法学者、経済学者、経済界、マスコミ、消費者団体、こういうところから有識者にお集まりいただきまして、一年かけて研究会で議論をしていただきました。報告書を昨年の秋にいただいたということでございます。

 それを受けて我々は、世の中にパブリックコメントを求め、公正取引委員会の案を去年の十二月に第一次的なものを取りまとめたということでございます。

近藤(洋)委員 独禁法研究会、この報告書をもとに今回の政府案ができたということでありますね。

 この独禁法研究会の報告書というのは、平成十五年の十月のものと、同じく独禁法研究会、同じ組織だと思うのですが、人はかわっているかもしれませんが、平成十三年の報告書と二つ読ませていただきましたけれども、同じ独禁法の大型改正というので連続している、一つの大きな連続しているものの中の二つの報告書だと認識しております。

 この研究会なんですけれども、委員長おっしゃったとおり、これは法律等に明記された審議会ではありませんね。委員長に直属する研究会でもないということでありますが、少なくとも直近の平成十五年の報告書の議事録については公開をされていないわけですが、なぜ公開されないんですか。

竹島政府特別補佐人 これは、特に他意はございません。審議会におきましては原則公開となっていることは承知しておりますが、その構成員の自由濶達な議論ということを確保するために非公開にするということも、その構成員の総意によって認められているわけでございまして、そういう意味で、議事要旨は公開しておりますが、議事録は公開しないということを当時の研究会のメンバーの方々がお決めになった、こういうことでございます。

 ただ、申し上げておきますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたが、その結果についてはきちんと公表し、パブリックコメントも求めて、まさに天下の意見を伺っているということでございますので、そこは御理解をいただきたいと思います。

近藤(洋)委員 これほど大きな改正をする議論の場所にもかかわらず、議論の過程及び議事録を公開することは、やはり必要だと考えます。

 また、平成十五年の秋に報告書を出され、その後パブリックコメントを求められたという委員長の御発言でございましたが、この平成十五年の秋というのはまさに選挙を終えたばかりの年でありまして、国会としてはなかなかチェックといいますか議論ができなかった期間でもあるわけですね。だから、その分きっちりとこの改正案につきまして、この国会で議論をなおのことしなければいけないと思うわけですけれども、可能な限り情報は公開すべきであると思うんです。この要旨、私もきのうほぼ徹夜で、徹夜で読むほどもない、二時間ぐらいですぐ読めたんですけれども、簡単な要旨しか公表されていないわけでありまして、簡単な要旨しか公開しない、またおかしいと思うんですが、ここは官房長官、情報は公表する義務があると思うのですが、いかがでしょうか。

細田国務大臣 政府の審議会等につきましては、会議または議事録を公開することを原則とする一方で、特段の理由によりまして会議及び議事録を非公開とする場合は、議事要旨を公開する方針としております。また、懇談会等の行政運営上の会合については、その性格に留意した上で、審議会等に準じて対応することとしております。

 公正取引委員会においても、この考え方に基づいて、可能な限り、審議会、懇談会等の会合について、その公開に取り組んでいくことが望ましいと考えております。

近藤(洋)委員 特段の理由というのがどういう理由なのか、恐らく、これからその理由を私、この質問で明らかにしていきたいと思うわけですが、結論から申し上げると、公正取引委員会の体質にこれは起因するものだと指摘しておきたいと思います。

 お手元に資料を配付させていただいております。この資料をもとに、ごらんいただきながら、質疑を進めていきたいと思うんですが、この公正取引委員会の体質といいますか、物事をきちっと公にしないというか、けじめがある意味でついていないと判断せざるを得ない事例の代表例として、技研システムという会社をめぐる事件について、これから公正取引委員会及び政府の見解をただしていきたいと思っております。

 技研システムという会社は、これは測量会社でありますが、こちらは、平成十一年に、測量会社九十一社の談合事件ということで、公正取引委員会が調査に入りました。九十一社に対して公正取引委員会は排除勧告をしたわけですが、そのうち九十社は応諾をしている、そして技研システムは応諾をしなかった。その結果、審判手続に入ったわけですけれども、審判手続に入っている最中に、指名停止により売り上げ減少で倒産となったわけであります。倒産はしましたが、何と審判ではシロ判決ということになったという事案でございます。シロ判決になったこれ自体も、適正な審査かどうかというところが論点のあるところでありますが、問題にしたいのは、むしろその次の話であります。

 技研システムは、シロ判決を受けたことによって国家賠償訴訟を提起いたしました。その裁判の中で、このようなことが行われております。次のページを開いていただければと思います。

 この訴訟の中で、当時の公正取引委員会管理企画課長と第三審査上席審査専門官が裁判の中で証言を行っているわけですが、この証言の中で二人とも、公正取引委員会が排除勧告を出したことが業者を指名停止にするということを知らなかった、わからなかったと証言しているんですね。

 このページ、資料二をめくっていただいて、横田さんという、当時の審査局管理企画課長でありますが、下線を引いています、裁判官が、勧告によって事実上公共企業体等が勧告を受けた業者を指名停止するということは、現実的に行われているという認識はありますか、ありません、裁判官、ないですか、はい、こう答えているんですね。同じようなことをもう一人の方も答えています。

 この証言に対して、平成十四年十二月二十六日の判決では、最後の方の下線の部分でございます。なお、この点に関して、公正取引委員会の審査専門官である証人、お名前を省略します、本件の担当者であった証人は、措置勧告の対象事業者に対して自治体等から指名停止が行われることすら認識していないかのように証言しているが、公正取引委員会において長年審査部門に従事してきた同人らが措置勧告を参考にして自治体等がどのような対応をとるかについて全く認識していないなどということは到底考えられないことであり、これらの供述を採用することはできない、このような判決が起きています。

 これはすなわち偽証、事実上の偽証を認定されたということでありますが、準司法機関である公正取引委員会の職員がこのような司法の判断を受けたことについて、委員長、どのように受けとめていらっしゃいますか。また、なお、具体的に処分はされたんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 このような判決が下され、その中で今御指摘になりましたようなことが指摘されているということについては、公正取引委員会として大変重く受けとめておりますし、大変遺憾なことだというふうに思っております。

 処分についてのお話がございましたけれども、処分はいたしておりません。これは、この裁判、近藤委員御存じかと思いますが、結論といたしましては、公正取引委員会がその当時の証拠に照らして違反を認定し勧告を行ったことがその職務上の義務に照らして不相当なものであったとまでは言うことができないということで、この国賠法上の違法性については否定をされておるということでございまして、そういった事実にかんがみまして処分はしておりませんが、ただ、処分以前に、当該職員もそうでございますが、公正取引委員会としては重大かつ真摯に受けとめる、今後こういうことのないようにきちんと教育をするということが必要かと思っております。

近藤(洋)委員 国賠法上の問題はなくても、準司法機関たる行政機関の職員が、裁判で、信じられない、うその証言だと断定されたという、これは大変重たいことなわけですね。

 重く受けとめていると委員長はおっしゃいましたが、であるならば、処分をもししていないのならば、まさに今この方、現職も、現在幹部職員でありますが、むしろ、処分しないどころか、そのままその後このお二方はとんとん拍子に出世をされているんじゃないですか。戒告とか訓告とかいろいろな処分、行政処分はあると思うんですけれども、内部のものはあると思うんですが、この方は現職、現時点でもお一方は近畿中国四国事務所長という要職につかれています。このような偽証を、事実上の偽証をされたという方がなぜ現在も要職につかれているのか、もう一度理由を御説明ください。

竹島政府特別補佐人 細かいことを申し上げるつもりはありませんが、今先生、この配付された資料にもございますように、少なくとも上段の横田に関しましては、これは裁判官から、中央公共工事契約制度運用、要するに中契協のモデルというものがありまして、これにおいては勧告の段階で指名停止をするということでは本来ないんですね。あくまでも勧告が審決、相手が同意して勧告審決なり、審決ということで正式になったことを見て各地方自治体は指名停止するならするというのがこのモデルでうたわれていることでございまして、クロかシロかはっきりしていない段階でそういう指名停止という不利益処分をするということにはなっておらぬ。しかしながら、現実は各地方自治体の独自の御判断でそういうことが行われているということがありまして、したがって、この横田もその次、後段で、アンダーライン引いていませんけれども、この一番最後のところですね、それは違反行為をしたときというふうに書いてあるかと思いますという。恐らくこういうことが頭にひっかかって、勧告即指名停止というつながりにはならないはずであるということが恐らくひっかかったのではないかというのがこのやりとりで見えます。

 そういうこともございますので、ただ、そういうことを申し上げても仕方がないことだと思っていますので、私は冒頭、先ほど御答弁申し上げましたように、まさに重大かつ真摯に受けとめておるということでございます。

近藤(洋)委員 排除勧告を受ければ指名停止を受けるというのは、これは普通の、まあ、建設業界でもどの業界でもいいですが、一般常識ですよ。通常行われていることであります。

 ルールではそうだけれどもというのが頭にひっかかってこういう証言をしたというのは、ちょっと信じられないですね。排除勧告を受ければ、今ほとんどが指名停止を受けてしまうのが現実であります。しかも、素人ではなくてまさに専門の方ですから、非常にこれは、そういう証言をされたというのは大問題だと私は思うんですね。

 しかも、重く受けとめてはいるものの、現在も何の処分もされずにいる。しかも現職でもあるという。現職の大幹部で、事務所長というのは、これは近畿、中国、四国の総括責任者ということだと思うんですが、そういった要職におるということについて、大変問題だと思いますが、官房長官、こういった公正取引委員会の体質についてどのようにお考えですか。

細田国務大臣 そういう人事に関する処分権は委員長にありますので、今委員長がお答えしたとおりであります。

 しかし、私は、この事件は以前にも仄聞いたしまして、その結果、この会社は倒産をするというような事態に至ったわけでございますね。したがって、公正取引委員会がいろいろな事案の審査をする際には、そういうことのないよう、過ちといいますか、後でそれが否決されるようなことのないよう、よく十分に精査をしてほしいと思うわけでございますし、かつ、そのことは当然であると思っております。

近藤(洋)委員 審判でシロ審決を受けるのはいいと思うんです、あり得ることです。これは十分あり得ることなんです。問題は、審判だけれども、審査をされる、まさに調査を担当する方が事実上の偽証をされた、その方が今も責任者でいるというこの体質が問題だということを指摘しているわけであります。

 こういった体制の中で、大変今、それは企業の大小を問わず、公正取引委員会に対しての信用がない、いろいろな声を聞くわけですが、こういうことをやっているから信用がないわけで、そして、議事録も公開しないで身内だけで議論をして、そして法案を通そうとする。これではとても、こういう体質を持った組織の法律は疑ってかからざるを得ないということを申し上げているわけであります。

 まず、この現職の方でもいいですが、これは参考人としてやはりきっちり話を聞きたいと思います。現在も幹部職員であるわけですから、この幹部職員、公正取引委員会の幹部職員で、現職としても幹部としているわけですから、なぜこのような発言をしたのか、大問題だと思いますし、委員長が重く受けとめているのであれば、なおのこと参考人として話を聞きたいと思いますが、委員長、どうでしょうか。

河上委員長 後刻理事会で協議いたします。

近藤(洋)委員 ぜひ御協議いただきたいと思います。

 その上で、今回の法改正の内容に入っていきたいと思うのですが、まさにその審査、そもそも審査についてもなかなか問題があるという現状の現行法の中で、今回、政府案では、審判手続について大きな見直しが行われました。排除措置命令と課徴金納付命令を同時に下すことができるようになっている、これは大変乱暴な措置だと私は考えます。わかりやすく言えば、名誉毀損に対して判決の前に謝罪広告と慰謝料を両方出せ、名誉毀損だというふうに訴えて、謝罪広告と慰謝料を両方出せというふうに言っているようなものに等しい。

 海外の例をひもときますと、アメリカでは排除措置命令案という制度を使い、EUでは、審判のところは裁判所が行うため、そこで手続があり、いろいろな措置が出ても、リセットというか、これは仕切り直すことができる仕組みになっています。

 今回、政府案では、同時に出すという大変乱暴な措置を講じましたが、これはある意味で企業に対する権利侵害だと考えます。私たち民主党案では、この現行の制度、必ずしも百点満点とは言いませんが、政府の私どもの考える改悪に対してはストップをかけている、白紙に戻すべきだと考えております。この点について、委員長、どのようにお考えですか。

竹島政府特別補佐人 現行制度では、本案に対する事案と課徴金納付命令というのは別々になっておりまして、まず本案を片づけてから課徴金納付命令、こういうふうになっているわけです。その結果、どういうことが起きているかと申しますと、同じことを二回議論するということになります。それに、時間の制約もございません。その間、課徴金が支払われずにいても、債務は発生していませんから、当然のことでございますが、延滞利息もかからないということになっておりまして、一方で、言葉はいかがかとは存じますが、粘れば粘るほど、ごねればごねるほど課徴金のかかる時期がおくれてくる。しかも、同じことを二回審理するということにもなりかねない。

 私どもは、この時代に、やはり、適正手続には十分配慮しつつも、物事を迅速にきちんと処理していくことが必要であるというふうに考えまして、現行制度は、まず勧告、それに不服があれば審判、審判が終わって審決で初めて行政処分というふうになっているわけですが、これを変えたい、初めから行政処分を出したいと。

 しかしながら、いきなり出すのではなくて、今の勧告はいきなり出すわけでございますが、行政処分とするからには、事前にきちんとその企業に対して、どういう行為があって、これは違反のおそれがある、何条違反でありますよということを説明し、相手にもそれに対する反論の機会を与えた上で、今度は、排除勧告ではなくて、排除命令を出させていただきたいということで、きちんとした適正手続にも配慮しておりますし、一方で、ごね得、粘り得というようなこともできるだけ排除したいという考え方でもってこの改正案を出しているわけでございまして、決して企業側に対して反論の機会とか防御の機会をなくするというようなことは含んでおりません。

近藤(洋)委員 今、竹島委員長がおっしゃるいわゆるごね得の問題といいますか、審判手続が大変煩雑になっているというこの現実については、私も把握しておりますし、認めます。ただ、それは体制を整えればいいわけであって、体制をきちっと整えればそれはスピーディーな手続ができるわけでありますから、「財産権は、これを侵してはならない。」というのは、私のような勉強していなかった人間でもわかる、憲法に書かれている話であります。財産権というのは大変重たいものでありますから、それに対しての措置をとるというのでは、これは手続を飛ばしてよいというものではないと思うんです。本末転倒だと考えます。

 そこで、私ども民主党としては、公取の体制そのものを見直して、いわゆる審判部門を中期的には分離するということも含めて考えているわけでありますけれども、官房長官に伺いたいんですが、前段でも申し上げたとおり、今の審査手続についても、ややというか、相当の疑念を私は持っております。その中で、審判においても、これは迅速化という名のもとに大変大きな改正を政府案としてはされようとしているわけですが、私たちとすると、分離をすべきではないかと考えますが、この体制の見直し論について、官房長官、いかがお考えですか。

細田国務大臣 これは、審判手続について、例えば裁判所等でやるべきじゃないかということも含むわけですね。(近藤(洋)委員「そういうことです」と呼ぶ)わかりました。

 審判手続は、行政庁が処分を行うに際しまして、より慎重な手続として設けられている制度であり、行政処分に至る手続の一つであります。

 独禁法の違反行為は、事件によっては市場構造などを踏まえまして違法性を判断する必要があるとの特性がありまして、市場構造、経済構造に専門的な知識経験を有する公正取引委員会が、独禁法の専門行政機関として事件を処理し、統一的な判断を行うことが適切であると考えております。

 私どもも、先ほど委員も御指摘のように、非常に長年にわたって公正取引委員会の審判手続等を拝見してまいりましたが、やはり、極めて専門的な方々が厳しい対応をやって、独禁法に少しでも違反する行為はないかということで、長年非常なる知見が蓄積されておるという実感がございます。

 したがいまして、この公正取引委員会が審査機能と審判機能の両者を持つことが適当ではないかというふうに考えられ、この点については東京高裁の判決でも支持されているところでございます。

近藤(洋)委員 この審判手続は、大変大事な問題だと思っておりますし、私どもが出している民主党案と政府案のある意味で一番大きな違いはこの部分だとも受けとめておりますので、恐らく今後この続く委員会の中で、同僚議員、また私も含めて、引き続き議論させていただきたいと思っております。

 今回の私たちの民主党案としては、透明なルール、そして効果的な措置をつくることで、一つの大きな目的としていわゆる官製談合の撤廃というのを掲げておるところであります。

 現在、この官製談合、残念ながら、世の中に大変広がっていると言わざるを得ません。その一方で、公正取引委員会のこの官製談合に対する措置というのは極めて力不足だと思っておりますし、同時に、これは捜査当局も含めてまだまだ手つかずの部分が多いのではないかと考えております。

 お手元の資料に資料の三というのがございますが、この独占禁止法の違反事件、これは官製談合にかかわらずですけれども、検察、公取当局の連携ということについては、平成二年の六月に公正取引委員会によります告発方針というのが出されています。省略をいたしますが、一番目、二番目、要するに、悪質かつ重大な事案については積極的に刑事処分を含めて告発を行う方針であると、平成二年に書かれておる。

 ところが、その後、公取当局が刑事告発をしたのは、十四年間でわずか七件ということであります。他の国税及び証券等監視委員会の告発件数は、国税に至っては、平成二年から考えますと、告発件数で二千百九十八件、証券等監視委員会についても件数ベースで六十三件となっておりますが、大変、他の機関と比べても著しく少ないと考えますが、この少ない現実について、この方針と全く違う現実について、当局はどのようにお考えですか。

竹島政府特別補佐人 御指摘のとおり、七件しかないというのは事実でございます。

 どうしてそうなっているかということでございますけれども、率直に申し上げまして、告発するためのハードルが非常に高い、それにきちんとたえられるだけの証拠、証言を得るのは、現実問題大変厳しいんだということを申し上げざるを得ません。

 私どもは、反復したり社会的な影響が非常に大きいというものについては、まさに重大かつ悪質でございますから、積極的に告発をするという姿勢で臨んでおりますし、現に告発しているものもあるわけでございますけれども、数が少ないということについては、今申し上げたような事情があるということを率直に申し上げざるを得ません。

 したがって、そういうことも反省いたしまして、今回は、国税や証券等監視委員会が持っているような犯則調査権限をぜひいただきたいという改正をしておる。それから、問題を摘発するためにリーニエンシープログラム、課徴金減免制度をぜひ入れたいということでございます。

近藤(洋)委員 権限がないからできなかったんだということだとすると、それは、一面そういう部分もあるでしょう。一面あると思いますが、しかし、七件というのは余りに少な過ぎないかということなんですね。これについて、本当にまじめに刑事告発をこれまでやる気があったんだろうか。

 埼玉土曜会事件というのがございました。皆様方、委員の方も御存じの事件だと思うんですが、埼玉土曜会事件というのは、時の公正取引委員会梅沢委員長に対して、元建設大臣の中村喜四郎元議員が圧力をかけた。ゼネコンから一千万円ですか、受け取って、圧力をかけた。結果として、圧力をかけたことをもって逮捕、有罪となった事件でありますが、当時の公正取引委員会は、これについては刑事告発することができなかったということで、圧力とか関係なしに告発できなかったということにはなっておりますが、少なくとも、そのときの新聞記事また裁判の記録等を読みますと、大変さまざまなところから、具体的に言えば与党から公正取引委員会に対して圧力がかかったということが出ております。

 これは、公正取引委員会は、そもそもそういう圧力を受けやすいといいますか、そういうことがあったんですか、その後も。もう一度確認で、その後も、これだけ問題になって、また七件しかないというのは、どうもやる気がないのかとしか思えないんですが、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 やる気がないということではございませんし、私が参りましてからもう二年強たっておりますが、そういう圧力を受けたことは一度もございません。

近藤(洋)委員 梅沢委員長も竹島委員長の先輩であられますが、立派な方ですし、そういう圧力に屈する方ではなかったからこういう形になったと思いますが。

 いずれにしろ、こういった、このやる気がなかったか、あるのかないのかの一つの傍証として、告発問題協議会というものが検察、公取当局の連絡調整機関として置かれているわけでありますが、じゃ、実際、この告発問題協議会は過去において何度か開かれたことがあるんですか。じゃ、例えばこの三年でも結構ですが、少なくとも直近で開かれたことがあるのかどうか。法務省、公取、どちらでも結構です。実際あるんですか、この告発問題協議会が開かれたことは。

楢崎政府参考人 七件告発をしているわけですけれども、その告発をするに至った案件については、協議会を開催しているところでございます。

近藤(洋)委員 ですから、ほかに、何回か事前に協議されたことはないんですか。

楢崎政府参考人 正式な協議会かどうかは別にして、さまざまな形で非公式の情報交換、意見交換等は当然やっているところでございます。

近藤(洋)委員 やはり数字がすべてだと思うんですね。

 犯則調査権限の導入につきましては、私ども民主党としても盛り込んでおります。ですから、そういう権限が必要だという必要性は認めておりますが、要は、機関のやる気があるかないかということだと思うんですね。独占禁止法のこの報告書の中でも、公正取引委員会が持つ専属告発権限の見直し議論というのも論点に掲げられているところでございます。

 この報告書によりますと、「行政機関の告発前に検察庁等が捜査を行うことは、判例上認められており、また、違反事件について行政処分にとどめるか告発を行うかの判断は、」「公正取引委員会が行うことが適当であるという専属告発制度の趣旨を踏まえると、同制度を維持することが適当」だという結論をされておりますが、しかし、この専属告発の、果たして公正取引委員会のみにとどめていていいのかという議論というのは、やはり論点としてあると思うんですね。

 これにつきまして、これまでの政府内の見直しの中で、法務省にとっても重要な問題だと思いますが、法務省はどのような意見を出されていたんでしょうか。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 法務当局は、独占禁止法上の制度について意見を述べる立場にないことを御理解いただきたいと思います。

 なお、独占禁止法において専属告発の制度が設けられた趣旨は、独禁法違反の行為の違法性の判断が市場構造等との関係によるなどの特性を踏まえて、市場構造、経済構造に専門的知見を有する公正取引委員会が独占禁止法の専門行政機関としての事件を処理し、統一的な判断を行うことが適切であって、その判断に基づいて違反行為の刑事責任を追及するというものであると承知いたしております。

近藤(洋)委員 済みません。独禁法の改正について法務省として意見を述べる立場にないと、ここまでは理解はできるのですが、しかし、事は、要するに刑事告発をどうするかという議論でありますから、独占禁止法だけの話ではないんですね。

 では、逆に伺います。公正取引委員会から専属告発権を外すということについては、法務省としてどのようにお考えなのか。通告していないので大変恐縮ですが、要は、どんな意見を、専属告発権を公正取引委員会が持っていることについて、そして現在、刑事告発が行われていない、これだけ談合が蔓延しているにもかかわらず、独禁法上の問題として取り上げられていない、事実上相当ほかの機関と比して少ないのではないか。つまり、証拠をとる力がないからそうなんですというような公取の判断でありますけれども、それならば、その専属告発というのを公取だけではなくてほかの機関にも広げるということにすると、法務省としてはそれは結構なことなんですか、それとも、やはり現状の組織の方が法務省としてもやりやすい、どちらをお考えなんですかということなんでございますが。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 法務当局といたしましては、専属告発の制度につきまして、先ほど申し上げましたように理解をいたしておりまして、現行法のもとでの適正な法の運用に努力をしているというところでございます。

 刑事事件ということになりますと検察当局ということになるわけでございますけれども、検察当局といたしましては、もちろん刑事事件として取り上げるべきものがあれば適正に捜査処理を行っているものと承知しているところでございます。

近藤(洋)委員 談合罪という罪が刑法上もございますね。この談合罪の直近の検挙件数、処理件数といいますか、検挙件数というのを資料を出していただいておりますけれども、談合罪のみで検挙した、これは警察庁の資料でございますが、昨年はわずか二件、平成十五年ですね、二件。ことしはまだゼロ、平成十四年もゼロ、平成十三年は四件。これだけ談合社会と呼ばれているのに、検挙件数が非常に少ないんですね。いわゆる談合罪から収賄罪とかほかのものに広がっていくというケースは、それはあるんでしょうけれども、実際この件数が極めて少ないわけです。

 この数字について、警察でも結構ですし、検察でもどちらでも結構ですけれども、これは警察なんでしょうか。非常にこの件数が少ないわけですが、なぜこんな、やる気があるんですか、談合罪というものを現在立件するおつもりがあるのかということを伺いたい。

小津政府参考人 それでは、私の方から、数字のことがございますのでお答え申し上げます。

 いわゆる官製談合等につきまして、いろいろな形態がございますけれども、その例に適用されます条文といたしましては、刑法九十六条の三というのがございまして、九十六条の三には、御案内のとおり一項と二項がございます。これは全く一般的にということでございますけれども、官の側が入札予定価格を漏らすなどの行為を行いますと、それが一項の違反に問われることが多いわけでございます。民間の業者の方が話し合いをするといいますか談合をする行為、それ自体は二項に当たると通常言われております。

 そこで、二項だけに限定して申しますと、検察庁が起訴をしたということで検察統計にあらわれている数字は、平成十三年から三年間で全部で四十一件でございます。ただ、一項の罪につきまして、これは残念ながら競売を妨害する罪と一緒に統計をとっておりますので、この中のどれだけが先生御指摘のものになるかわかりませんけれども、それらの数は毎年三けたの数を起訴しているという実態はあるわけでございます。もちろん、これは競売入札妨害罪が含まれております。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 ほかのものと合わせては多いですよということなわけですが、じゃ、この談合罪というものの規定はもう要らないのかということになるわけでありまして、やはり問題だと思うんです。談合罪、やはり談合は罪なんですね。だから、今、刑法でもあるわけでございまして、この談合罪という罪があるわけですから。これが非常に少ないというのは、検察、警察もどこまでやる気があるのかなと判断せざるを得ない部分もあると思うんですね。

 いずれにしろ、この談合の、官製談合も含めてでありますが、とりわけ官製談合の摘発には警察、捜査当局の協力も欠かせないと考えますけれども、お互いに協力をしなければいけないと思うんですね。公正取引委員会が警察当局に、警察側も公正取引委員会に、お互いに協力しなければいけないと思うわけですけれども、そういった今後の捜査協力についてどのように考えるのか、行動するつもりなのか、当局、お答えください。

岡田政府参考人 今ほど法務省の方からもお答えがありましたけれども、談合に関連いたしましては、競争入札妨害等と非常に密接に絡む犯罪でございます。そういう意味で、警察といたしましては、これまでも官製談合の防止というようなことも含めまして、公の競売ですとかあるいは入札の公正を図るために、談合罪、競争入札妨害罪等の検挙を図ってきたところであります。

 今般の独禁法改正の審議も踏まえまして、警察といたしましては、今後もこれらの犯罪のさらなる摘発のため、公正取引委員会等関係機関との連携も強めてまいりたい、こういうふうに思っております。

近藤(洋)委員 これは後の質問にも絡むので、また改めて伺うことになると思います。

 あわせて、入札制度の改革というのもどうしても必要だと思うんですね。捜査だけでは、談合、官製談合は防止できないわけでありますから、その入札制度の見直しも極めて重要であります。これは会計法の世界になってしまいますから、予定価格というものがいいのかどうかという議論もあると思うんですが、それもはしょっても、公共工事をめぐって入札制度をもう一度見直すべきではないか。

 いろいろな意味で、価格のみの入札制度でいいのかという議論があると思うわけですが、公共工事を所管している国土交通省が一番多く発注、量としても多いと思いますので、国土交通省は現在、今後どのような取り組みをするつもりがあるのか、お伺いしたいと思います。

中島政府参考人 公共工事の入札契約制度につきましては、平成六年に一般競争を導入して以来いろいろなことをやってまいりましたけれども、今般の独禁法の議論の中でも、公共工事のマーケットの競争性を高めるためには、独占禁止政策とともに入札契約制度の見直しが重要であるという御指摘をたくさんいただきました。特に、近年のこれまでの改正の方向は、競争性、透明性を高めるということを中心にやってまいりましたが、今起こっている問題は、あわせて、ダンピングが多発して、それに伴う品質の問題も懸念されるのではないかというふうな御指摘もありまして、こういったことにも対応していく必要があると思っております。

 いわゆる骨太でも入札契約制度の見直しが指摘されまして、方向性としては、価格だけの競争から、価格と技術や品質を含めた適正な評価のもとで競争性を高めるということだと思いますが、そういう認識を持って、この八月に、私どもの中央建設業審議会というのがございますが、そこに検討委員会を設置して、そこで議論を始めたところであります。

 今後とも各方面の御意見を拝聴しながら、入札契約制度の改革に取り組んでまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 入札制度を、価格だけではない、総合的に判断する制度にする、これはこれで大事なことだと私どもも考えております。そういった総合的な制度改正をして初めて官製談合を減らすことができる。

 と同時に、やはり、くどいようですが、現在、官製談合防止法という法律があるわけでありまして、これを改正することが必要かと思っておるところでございます。私ども民主党案には、附則において、一年以内に官製談合防止法を見直すべきだということを盛り込んでおりますが、政府におきましては明記されていない。

 先ほど、警察、捜査当局の方々の話を聞いていても、どこまで本当にこの官製談合という問題に切り込んでもらえるのか、残念ながら、今のこの場での議論では確信を持てないわけであります。また、今回の政府の犯則調査権限を入れたから、じゃ、すぐ官製談合について公正取引委員会が切り込むのかといえば、むしろ、やりやすい民民ベースの話だけに切り込んでしまって、本来の最も問題が大きいであろう官製談合のところにどこまで切り込むのかという確証といいますか、確信がなかなか持てません。

 したがって、ここはちょっと官房長官にぜひお伺いしたいんですが、政府として本気でこの官製談合というものに切り込む気持ちがおありになるのか、お伺いしたいと思います。

細田国務大臣 このたび民主党案では、官製談合防止法について罰則を設けることを含めて検討されているわけでございます。政府の、二年以内の検討ということで今出ておりますけれども、こうしたことが含まれておりませんが、これは当然、今委員おっしゃいましたように、社会的な必要性等は強く叫ばれております。

 この官製談合防止法そのものは議員立法で定められた法律でございますし、これについての御議論は、さらにまたこの立法者側でもよく御検討をいただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 議員立法だから立法者側で検討というのは、それは、我々は、官製談合防止法については与野党ともに成立した法案でありますから、民主党としてもそれは真剣に考えていくわけですが、伺っているのは、政府としてやる気があるのかないのかということであります。

 加えて、官房長官であれば、例えば会計法の問題であるとか、さまざまな今の制度上のひずみに取り組む気持ちがあるのか。会計法をいじるというのは、これは恐らく大変な困難もあると思うんですよ。旧大蔵省、財務省の法案でありますからこれは大変な困難を伴うことであると思うんですが、まさに政府が本気でやらなければ、とてもではありませんが今のはびこる官製談合を根絶することはできないわけであります。その決意が、人の法律だからといって、政府・与党一体でありますが、それは政府の一員としてどういう覚悟なのかと聞いているわけでございます。お答えください。

細田国務大臣 おっしゃる必要性は、私も大切であるということは申し上げたわけでございますが、政府として、骨太の方針二〇〇四におきましても、発注機関側に談合への関与があった場合の制裁の厳格化を検討するといたしておりますし、同法の積極的な運用に努めつつも、できるだけ早く所要の検討を行ってまいる所存であります。

 また、入札制度改革につきまして、会計法の見直しを含めて、これは本年の六月に、政府の行政効率化関係省庁連絡会議におきましても行政効率化推進計画を取りまとめて、価格だけでなく性能等の諸条件を評価する総合評価落札方式の採用の推進など、各府省が公共調達に関して取り組むべき事項を取りまとめたところでありまして、これも積極的に検討すべきであるという方針を定めております。

 いずれにしても、こういう談合問題は貴重な税金のむだ遣いにつながるわけでございますから、必ず厳格に対応する必要があると考えております。

近藤(洋)委員 ぜひ取り組んでいただきたいと思っておりますし、我々も独自にこの問題について提案をしていきたいと考えておるところでございます。

 もう官製談合の世界というのはずっと前から言われているわけでありまして、最近の政治をめぐる判決でも、鈴木宗男被告につきましても、あの判決文の中で官製談合がはびこっていたということを、これまた判決の中でも書かれているわけであります。至るところで官製談合がはびこっているわけでありまして、政府にやる気があるのかないのか、残念ながら、少なくとも今表に出ている法案では、全くやる気がないのではないかと判断せざるを得ません。

 公正取引委員会の出したレポートの中では、予定価格を見直すべきだ云々等々の提言をしておるところでございます。これも公取の私的研究会の報告だなどといってごまかさずに、やはり政府として取り組むべき、政府の中でも自覚しているわけですから、わかっていてやらないのは極めて罪が重いということでございます。

 続きまして、産業政策上の話をちょっと、せっかくですのでぜひお伺いしたいと思っております。

 そうした官製談合の防止も含めた公正な市場のルールというのをつくっていくこと、これは極めて重要なわけですが、残念ながら、公正取引委員会には今現在六百七十名おる、六百七十名おる中で、このたび予算要求で五十名ですか、正確な人数は把握しておりませんが、約五十名の増員をされるということでありますけれども、その内幕、中身を見れば、法曹資格者はわずか十一名。ヨーロッパやアメリカでは、それこそ三けたを超える法曹資格者がいるわけでございます。専門的な知識が必要だ、それは確かに専門的な知識が必要でありますが、法曹資格者の増員も含めて、人数だけふやして水膨れすればいいというものでは全くないわけであります。そういうことも含めますと、今の公正取引委員会に果たして複雑化する経済取引に対応する能力があるのかと考えるわけですが、政府の組織をもう一度再編する必要があると私ども考えております。

 証券取引等監視委員会を初め、マーケットを監視する部局というのは、政府部内に幾つかございます。経済産業省は本委員会の主な分野である経済産業分野におきましても商品先物取引等を管轄している、経済産業省の中で管轄しているわけであります。さきの通常国会において、私は、この経済産業委員会の中で、商品先物取引法の改正において、経済産業省には残念ながら商品先物の業者を、企業家を監視する能力がないということを申し上げました。東京ゼネラル事件を例に出しまして、残念ながら、あれだけ不正なことを繰り返してきた企業に対して何の対抗措置も経済産業省は打てなかった、その能力なしということを申し上げました。農林水産省においても、穀物取引所において不正な業者をそのまま放置していたということを指摘してまいりました。こういった複雑化する経済取引をそれぞれ縦割りで、ばらばらで監督するのはもはや無理だと考えます。

 副大臣、経済産業省としてもう一つ、二つお伺いします。

 一つは、この市場監視というのが経済産業政策にとって私は極めて重要だと思うんです。どのように市場監視というのを産業政策上位置づけているのかというのが一点。二点目は、ばらばらになっている監視部局、通常国会でも指摘をいたしましたが、そういった部局を公正取引委員会も含めて統廃合するというお考えはないか、お伺いしたいと思います。

小此木副大臣 本改正案は、これまでも議論になりましたように、カルテル、談合、私的独占、こういったような違反者に対してその抑止力を高めていかなきゃいけない、健全な競争政策というものをしっかりと促進してそういった社会を築いていこうという中でありますが、経済産業省におきましても、これまでも市場における事業者間の健全な競争を促進するように、規制緩和による参入促進等、さまざまな施策に取り組んできたところでもありまして、例えば電気事業あるいはガス事業といった公益事業分野においても、小売市場の部分的自由化、送電網、導管網の開放の義務づけによる新規事業者の参入促進、こういった施策に取り組んできているところであります。

 また、ことしの七月でありますが、当省に寄せられる事業者間の競争紛争に関する相談、通報等を総合的に受け付けてまいります等、市場における競争環境の整備に特化した専門部署、競争環境整備室といいますけれども、こういったものも新たに設置したところでもありまして、今後とも市場競争の促進を軸とした産業政策を積極的に展開してまいりたい、こういうふうに思います。

近藤(洋)委員 その方向感は正しいと思うんですね。ただ、今回の法改正で、どうも公取と経産省の縄張り争い的な部分も実はかいま見えるのであります。

 公正取引委員会の委員長が年頭所感に、いわゆる不可欠施設というもの、専門的な話になりますが、不可欠施設というものを規制の対象に加えたいというのを書かれています。

 これはホームページにも公開されておりますが、竹島委員長はその年頭所感の中で、抜本改正をするんだ、競争なくして成長なしということを、さすが元小泉総理の側近と、元といっても現在もそうかもしれませんが、言われただけあってフレーズも総理と似ているわけでありますが、そういったことも入れながら、そのもう一つの柱として、不可欠施設、すなわち電力であると送電線であるとか、NTTの通信網、電線であるとか、そういった不可欠施設を持っている者に対して、公正取引委員会が独占禁止法の法体系の中で規制をするんだ、これを入れ込むことを考えていきたいということを年頭所感で堂々とうたわれている。報告書にも書いている。ところが、できたものについてはそこがなかった。ばさっと抜け落ちてしまっているんですね。

 聞くところによると、経済産業省の中で、まさに今副大臣がおっしゃいましたが、経済産業省は経済産業省で、エネルギー、電気事業法の中で電力業界を見ているわけで、総務省は総務省でNTTを管轄しているわけで、業法という規制があるわけですね。業法の中で不可欠施設に公取委がどんと横ぐしを入れたから、これは大騒ぎに、恐らく政府部内、なったんだと思うんです。

 竹島委員長が堂々と年頭所感にも書いてなった中で、消えてしまったという、恐らく内部で大変な縄張り争いがあったと思うんですが、まず一点、なぜこれが急に消えてしまったのか、委員長にお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 確かに、不可欠施設について、迅速、効率的に違法状態を解消するために、特別の規定をいただきたいということを御提案申し上げました。これは、関係省庁のみならず、経済界からも、そういうものは要らないという話はありました。その大きな理由として、二重行政になるじゃないかというお話がありました。

 私どもが考えていましたのは、二重行政ではなくて、不可欠施設というのはそれぞれ総務省なり経済産業省がお決めになっているわけです。公取が指定するものではない。そういうふうに、それぞれの事業官庁がお決めになっているものについて、新規参入を妨害したり、拘束条件つきの取引をした場合には、即これがいけませんよといって排除命令が下せるような、そういった規定があった方が、特にITの世界はドッグイヤーと言われるわけですから、二年も三年もかけて議論しているうちに、もう議論する意味がなくなってくるということもございますので、そういう規定がいいのではないかというふうに思ったんですが、いやいやということもございまして、結局議論がきちんとかみ合わないまま、今回の改正には至らなかったということでございます。

 私どもは、だからといって、こういうことについてあきらめているわけじゃなくて、若干ハードルは高いままですけれども、現行法で、私的独占の場合もありますし、十九条の不公正な取引方法にかかわる場合もあります。こういったものは、現行法をとにかく一生懸命適用して、違法状態があればその摘発には努めていきたい。現にそういうことで取り上げているわけですけれども、制度としては、今申し上げたような経緯で、今回の改正からは見送りをさせていただいたということでございます。

近藤(洋)委員 二年後の見直しの議論の中で出てくると思うんですが、経済産業省、事務局の方でも結構です、ぜひ御答弁いただきたいんですが、いいんですか、不可欠施設、今のままで、そういう形で入っても。二年後の見直しの中で、経済産業省としては、ではどのように考えておるんでしょうか、業法との中でどのようにお考えですか。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 不可欠施設についての御質問でございます。

 当省が所管をしておりますエネルギー分野に関して申し上げますと、既に電気事業法、ガス事業法に基づきまして、規制対象となります送電線等々の施設につきまして公平な利用ルールを定めておりまして、健全な競争が促されるように対処しておるところでございます。

 事業法で規制することが適切な分野は事業法で規制し、独占禁止法で規制することが適切な分野は独占禁止法で規制をする、これが制度の実効性を高める上で有効であると考えておりまして、不可欠施設の規制のあり方につきましても、二重規制になってはいけないわけでございますから、こういった二重規制等の問題が生じることのないように、公正取引委員会と真摯に議論を行ってまいりましたし、これからも引き続き行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

近藤(洋)委員 今の委員長と審議官のお話でもわかるとおり、最初やりたいと思ったけれども、経産省が反対した、なくなった。今後の二年後につきましても、不可欠施設という言葉を使うかどうかは別にして、私的独占の中で対応するかどうかは別にして、でも不可欠施設という考え方は捨てていない、旗は全く落としていないのが公正取引委員会。経済産業省としては、いや、真摯に議論したいというお話でございましたが、基本的には業法があるんだ、業法の規制も大事にしなければいけませんよということで、随分やはり温度差があると思うんですね。

 ですから、冒頭申し上げたとおり、こういう大事な問題は、公取の中の私的研究会で議論するのではなくて、ちゃんと議論すべきだ。そして、その議論の中身は公開しなきゃいけないんです。公開をして初めて論点が明らかになり、そして、国会においてもまたさらに深める議論ができるわけであります。この国会の場で両者の思いを明らかにするなんという手間暇は必要ないわけでありまして、これはこれで大事なんですけれども、公開をしなければ議論が進まないわけであります。

 これから二年間の議論の中で、私ども、これから同僚議員が次々と立ちまして、論点を明らかにしてまいりますけれども、大変大きな、たくさんの論点がこの独占禁止法改正案の中にございます。この議論、今国会で徹底的に議論させていただくと同時に、積み残しの課題もたくさんありますから、この議論の場所は、先ほど委員長は内閣府においてという話がございましたけれども、あえて申し上げます。議論の中身を公開すべきじゃないですか。これは、まずは委員長にお伺いします。

竹島政府特別補佐人 今御提案申し上げております改正法案が成立した場合には、内閣府に検討の場を設ける。その検討をどのようにするか、公開をどのようにするか、それはその時点でそのメンバーがお決めになることでございますが、きょうせっかくの御議論もあって、そういうものは議事録を公開すべきであるという御議論もいただきましたので、そういうことも十分踏まえて、適正にその時点で措置をしたいと思っております。

近藤(洋)委員 踏まえてじゃなくて、ぜひ公開すべきだというわけです。

 二年後、この法律が、民主党案、政府案、議論されてどうなるかは、これからまだまだ議論の過程を経るわけですが、ただ、では、二年後の見直しがいずれにしろある。仮に、近い将来、何カ月か後に例えば成立をしたとしても、二年後だとすると、これは変な話ですが、また、選挙は衆議院はいつあるかわかりません。私も新人議員でありますから、毎日毎日、日々これ常在戦場でやっておりますけれども、いつあるかわかりませんが、二年後などというと、大変、今の現状でいくと、場合によっては選挙があるかもしれないわけです。参議院は決まっているけれども、衆議院はいつあるかわからないわけですが、そうすると、国会のチェックを経ずに、また非公開で議論がどんどん進められるというのは大問題だと思うんですね。

 この場で公開をするということはもう大原則、政府としては公開原則、審議会は公開だというのが原則立っているわけですし、これは法案をつくる上でまさに絶対条件だと思うわけでありますが、官房長官、この議論の政府におけるあり方、そして、まずは最低でも議事録等の公開が、公正取引委員会、経済憲法でありますから、この議論をするに当たっての、もはや政府案は出てしまいましたから、これについてとやかく言っても仕方ありませんが、公開しなかったではないかと問題点は指摘しますが、二年後の見直しにおいては、するのであれば必ず公開するんだ、必要だと考えますが、官房長官、いかがでしょうか。

細田国務大臣 現在でも、官邸内等で行われております会議については、会議録等を積極的に公開をしておりまして、公開を原則としております。したがいまして、今後の議論におきましても、公開を原則として検討してまいりたいと思います。よほどの支障がない限り、公開を原則とすべきだと思っております。

近藤(洋)委員 ぜひその方向で、これは公正取引委員会の、独占禁止法の法案に限ったことではありません、あらゆる法案についての話ではないかと思っておりますが、そういう方向ですべきだと考えております。

 冒頭申し上げました、利権システムにおける審査体制の問題、まさにまな板のコイが自分で法律をつくっても、これは政府の閣法ですから、そういう部分は仕方がないわけですけれども、しかしながら、公正取引委員会の内部の体制にはまだまだ多くの問題が残っているんだと、この場で指摘をさせていただきました。

 引き続き、この法案につきましても、同僚議員がさまざまな論点を出すと思いますけれども、慎重な審議が必要だと思いますし、きょうは官房長官、お忙しい中、御出席いただきました。ただ、これは経済憲法でありますので、この審議においてはやはり御出席されるべきである、最重要法案の一つでありますから、所管大臣が出るのは、これはある意味で当然のことではないかということを指摘させていただきまして、私の質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

河上委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。独占禁止法の改正案の質疑、始まりでもありますので、今回の改正の大きなポイントの一つでもあります課徴金算定率の引き上げの問題について、きょうの時間の中で少し議論をさせていただきたいと思っております。

 そこで、最初に、御出席いただいております官房長官にお伺いいたします。この課徴金算定率を引き上げするという理由、必要性についてはどのようにお考えなのか、この点を確認させてください。

細田国務大臣 平成三年の改正によります課徴金算定率引き上げ以降におきましても、カルテル、入札談合等の違反行為は減少しておらず、違反行為を繰り返す事業者が後を絶たないことなど、不当利得相当額を徴収するという現行制度では、違反行為防止の観点からは不十分であると考えられるわけでございます。

 そこで、今回の見直しにおきましては、不当利得相当額以上の金銭を徴収する仕組みとすることとし、違反行為防止という行政目的に照らして適切な水準まで課徴金の算定率を引き上げる、このことが今回改正の趣旨であります。

塩川委員 再犯が繰り返されている、これを防止する上でも、従来の不当利得相当額、これを上回る金銭を徴収する仕組みにするんだという話でありました。

 そこで、この課徴金算定率の根拠について、去年の十月に研究会報告も出され、ことしの四月に「独占禁止法改正(案)の概要」が出されております。四月の時点におきましては、この課徴金算定率について「二倍程度に引き上げる。」とされておりました。この「二倍程度に引き上げる。」という根拠は何なのか、その点をお答えください。

竹島政府特別補佐人 根拠は、現行では甘過ぎる、だから引き上げなきゃならぬということと、もう一つは、数十の実例を推計してみますと、不当利得の平均値は一六・五%程度であった、ばらつきがございますからそれを調べてみましたら、八%以上の不当利得を得ているものが全体の九割を占めている、こういうことが我が国の、現に起きた違法行為に係る推計値としてあった。三つ目に、国際的な相場というものも見てみる必要がある、それは、基本的には売上高の二〇%である。これらを総合勘案いたしまして、一〇%というものをまず基本に考えさせていただいたわけです。

 一〇%になる前に、私どもは確かに二倍程度、すなわち一二%程度まで引き上げる必要があるということを一生懸命御説明していたということは事実でありますが、もろもろの調整の結果、一〇%になったということでございます。

塩川委員 少しこの一年ばかりの経過も踏まえて議論させていただきたいと思っているんですが、昨年十月の研究会報告を拝見いたしまして、そこでも課徴金算定率の引き上げの具体的な資料として、「最近五年間の主要なカルテルによる損害(公正取引委員会による審査開始後の下落率を基に推計)」という資料がつけられております。ここでは、価格の下落率は単純平均で二〇・九七%とされているわけですね。この数字と先ほど委員長もおっしゃった一六・五%の数字、少し開きがあるんですけれども、これはどういう違いがあるのか教えていただけますか。

伊東政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、今回の改正法案の策定に当たりまして、過去の違反事例における不当利得につきまして、立入検査前後の価格の変化や違反行為実行の前後における価格の変化をもとに不当利得を推計したところでございます。

 独禁研の報告書は先生御指摘のとおりの資料を掲示しておりますけれども、その後、私ども、カルテルを含めまして幅広く推計をいたしまして、具体的には、カルテルにつきましては平成四年から平成十五年まで、入札談合事件につきましては平成八年から平成十五年三月までの事件につきましてデータのとり得るものを推計した結果、平均で一六・五%ということになったわけでございます。

塩川委員 昨年の研究会報告書では談合中心ということで、今回、カルテルも加えて幅広く推計をした。この一六・五%というのがいわば不当利得の推計値として初めて出した数字なのかなと思っておりますし、この数字はかなり苦労して出してきた、大変重みのある数字だと思うわけですが、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 それは、おっしゃるとおり、確かに初めてやってみたということでございます。そういう意味でそれなりの重みを持っていると思いますけれども、課徴金の基本算定率というのは一律に掛けますので、平均値をそのまま持ってくればいいというものでもない。やはりある程度かた目にしておかなければ、一律である以上はまずい。裁量をきかせるような課徴金であればまた別かもしれませんけれども、私どもは一律でお願いしておりますので、そういう意味で、重要な資料として、データとして使わせていただきましたけれども、今申し上げましたような扱いにさせていただいているということでございます。

塩川委員 不当利得相当額以上の金銭を徴収するという点でいいますと、平均一六・五%ですから、一律に掛ける必要があるということを考えても、当初の一二%、今でいう一〇%というのは余りにも低いんじゃないかなと率直に思うんですよね。八%を超えるのが九割というのでしたら、では、八%にするという理屈も出てきますよね。日本の場合、課徴金は一律に決めるわけですから、そうであればやはり一六・五%を下回らない水準というのが必要ではないか。不当利得相当額以上の金銭を徴収するというお立場に話を進めたわけですから、余りにもこれは低過ぎるんじゃないかなと改めて思うんですが、その点、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 当然、課徴金は高ければ高いほど抑止力があることはおっしゃるとおりでございますが、不当利得相当額以上、こう言っておりまして、そうすると、八%を超えるものは九割である、一〇%ということになりますと九割をカバーはしないわけでございますが、逆に、一六・五%ということになると、約半分のものは不当利得を大幅に上回るということになる場合もあり得る。そういったことを考えると、このデータだけに基づいてあるべき算定率を決めているわけじゃございませんけれども、このデータの扱いについては、今申し上げたようなことに配慮して扱うべきだろう。

 いずれにしても、大事なことは、抑止力としてどの水準であれば我が国において皆様方が独禁法違反ということをやめていただけるかということにかかっているわけでございまして、これは、皆様方、関係事業者の受けとめ方、コンプライアンスをどこまで徹底するのか等々のことがすべてかかわってくるわけでございます。

 アメリカで二〇%だから日本でも二〇%でなければならぬという理屈もないと思いますけれども、要は、そこは、最後は総合判断ということになると思いますが、今回は、今申し上げたような、大きく言って、三つの材料をもとに総合判断の結果、基本は一〇%、もともと一二%程度と申し上げていたものを一〇%ということにさせていただいたということです。

塩川委員 三つの理由でということをおっしゃいました。その一点目の不当利得の水準、私はそれに照らしても低いなと思いますし、あと、違反行為を繰り返す事業者が後を絶たないから、やり得だという点での論拠ですけれども、公正取引委員会が調べた資料の中でも、繰り返しの違反の累犯事件における損害、これが平均どのくらいの数字が出ているかというのも載っていたと思うんですが、何%ぐらいかお答えいただけますか。

伊東政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたような作業の過程で、累犯につきましてもその不当利得の推計をしてみたことがございます。サンプル数は少のうございますが、それによりますと二三・八%、まあ二四%ということでございます。

塩川委員 平均の一六・五%に対して、累犯の場合は二四%なんですよ。五割増しという規定を適用したとしても一五%とか、一二に照らしていえば一八%ですから、それに比べても低いわけで、そういう点でもやはり余りにも公正取引委員会の提案は低いんじゃないかなと率直に思います。

 その上で、国際的な水準ということもお話をされました。

 そこでお聞きするんですが、ことし七月のOECDの対日フォローアップの報告書では、課徴金算定率の引き上げについて、公正取引委員会は課徴金算定率を二倍程度に引き上げるとの提案を行っており、それは国際的なコンセンサスにより近づくものであるが、効果的に違反行為を抑止するためにはいまだ低過ぎると述べております。このOECDの指摘については、公正取引委員会としてはどのようにお考えですか。

竹島政府特別補佐人 それは、欧米では二〇%ということになっているということを踏まえた指摘だろうと思っております。

塩川委員 それにしても、これは一二%程度のときのフォローアップの報告書ですけれども、それでも低いですねというお話ですよね。そういう点でも、三つ目の理由で言われた欧米の水準に照らしてといっても低いということだと思うんですよ。

 その上で、資料をお配りいたしますけれども、アメリカあるいはEUと比較してなんですけれども、アメリカの罰金額及びEUの制裁金額、この上位三者の名前と金額を紹介していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

伊東政府参考人 この資料によりますと、EUでは一番がロシュのEU制裁金額五百二億五千六百三十六万円、BASFが三百二十二億一千六百二十八万円、三位がデグッサ、百三十九億五千二百九十三万円。

 アメリカは罰金額でございますが、一番がロシュの五百六十九億五千五百万円、BASFが二百五十六億二千九百七十五万円、SGLが百五十三億七千七百八十五万円。

 日本の場合、課徴金でございますが、一位が日本セメントの十五億九千六百二万円、次が小野田セメント、十五億二千六十九万円、日鉄建材工業が十四億七百四十四万円ということになっております。

塩川委員 日本のもお答えいただきました。

 配付資料二枚目の方ですけれども、これは私の資料ではなくて、公正取引委員会からお聞きして出させていただいたものであります。

 あわせて、この数字をごらんいただいてもわかりますように、欧米では、上からとってみれば五百億という大変大きな金額で、それに対して日本で確定しているものについては十五億円ぐらいですよね。もちろん、争っているものにつきましては、例えばダクタイル鋳鉄管のクボタなどが七十億とかという金額があるんですが、これはまだ係争中ということもあります。それにしましても、けた違いの数字ではないかなと思っているわけであります。

 同じように、公正取引委員会が出された資料の中で、EUの制裁金額と日本の課徴金額を比較した数字が出されております。大企業一事業者当たりの金額で比較をすると、EUの制裁金額、日本の課徴金額、それぞれ幾らになるか、お示ししていただけますか。

伊東政府参考人 お答えいたします。

 それぞれ、違反行為の対象となる商品の市場規模などが異なるということでございますが、それを前提といたしまして、平成十二年度から平成十四年度までの三年間における一事業者当たりの平均課徴金額、日本の場合は三千六百七十六万円となっております。

 一方、同じ期間のEUの制裁金の一事業者当たりの平均金額、これはEUが公表しているものをベースに調べたものでございますが、二十八億五千五百九十八万円となっております。

 以上でございます。

塩川委員 これで見ますと、二けたの違いがあるということになります。

 配付資料の一枚目でごらんいただきましたように、上のグラフでは日本、EU、アメリカの課徴金、制裁金、罰金額の上位の比較。日本十六億に対して、EU五百三億、アメリカが五百七十億。その下のグラフは、これは公正取引委員会が出された資料をそのまま写したものですけれども、今お話しいただきましたように、二けたの差があるというのが現状であります。OECDの指摘がまさにこういう事態を示しているんだろうなと。今回、六%が一〇%になったとしても、そういう意味での比較をしてみれば、大きな違いが残っているわけです。

 竹島委員長にお聞きしますが、一〇%でも欧米の水準に比べると低過ぎると思うんですけれども、先ほど理由をおっしゃられたのであれば、こういう低過ぎるという現状についてどのようにお考えですか。

竹島政府特別補佐人 確かに、欧米と比べるとなお低いということは、おっしゃるとおりでございます。

 ただ、現行の六%から一〇%、かつ、過去十年以内に二回以上やった場合には一五%、五割増しということになっておりますので、今に比べると相当抑止力は強化されるというふうに思っております。

塩川委員 それが、当初一二%だったのがなぜこの法案の段階では一〇%になったんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 私どもは一二%程度、正確には二倍程度というふうに申し上げていたわけですが、二倍程度と申し上げていて、基本がどうして一〇%になったか、これはもう先ほども御答弁申し上げましたが、各方面との調整の結果でございます。

塩川委員 各方面との談合の結果にこういう数字になったというのでは、これは国民的に納得を得られないんじゃないかなと思っております。

 対案を出されております民主党に、提出者にお聞きします。

 この間ずっとお聞きしましたように、課徴金が一〇%というのは、私、欧米の水準に比べても大変低い水準だと思っておるんですが、対案を提出されております民主党としてはどのようにお考えでしょうか。

奥田議員 いろいろと課徴金についての議論をさせていただいておりますけれども、民主党の方は、課徴金、これを制度とともに名称も行政制裁金という形に改めて、名を見ればその性質が理解できるという形に変えております。

 軽減措置も幾つかあります。そして、今の課徴金一〇%ということにつきましては、過去十年に違反があった場合、この業者には五〇%の割り増し、二回以上というときには一〇〇%、二倍の制裁金を適用するという形にしております。

 もちろん、課徴金あるいは制裁金といった形での金額率というものも大切な構成要素ではありますけれども、それだけではなくて、いかにして不公正な取引といったものの発生を防止するか、あるいはその再発を防止するかといった点に重点を置いてそういった制度を考えたつもりでございます。

塩川委員 課徴金を行政制裁金に改めるという点は、EUの制裁金に学んでというふうに私の方は承知しておるんですけれども、そういうEUと比較をしても余りにも低いんじゃないでしょうかという点については、多少、累犯、過去十年で二回繰り返して二〇%にするという水準でありましても、決して高過ぎるということではない、それでもまだ低いんじゃないかなと思うんですが、その点はどうなんでしょうか。

奥田議員 公正取引委員会の決断の肩を持つわけではありませんけれども、最後に、やはり不当利得自身がどれだけのものかという算定自身は、推測はできても、なかなか間違いないと言えるものは難しいものであるかと思います。

 そういった中で、従来の二倍程度の制裁金あるいは課徴金にしたらどうだという意見と、そして、塩川先生のおっしゃるには、談合じゃないかという話もありましたけれども、やはり、社会経済活動をしている方とのそういった意見を交換して出てくるべき数字かなというふうに思っております。

塩川委員 実効性を高めるためにも、課徴金の大幅引き上げは必要だと思います。

 引き続きまた議論させていただきます。どうもありがとうございました。

河上委員長 次回は、来る十九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十二分散会


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