衆議院

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第9号 平成17年4月1日(金曜日)

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平成十七年四月一日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      遠藤 利明君    嘉数 知賢君

      北川 知克君    小杉  隆君

      佐藤 信二君    坂本 剛二君

      菅  義偉君    竹本 直一君

      武田 良太君    谷畑  孝君

      西銘恒三郎君    野田  毅君

      平田 耕一君    望月 義夫君

      森  英介君    山口 泰明君

      山本 明彦君    大畠 章宏君

      岡島 一正君    奥田  建君

      海江田万里君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    近藤 洋介君

      鈴木 克昌君    高山 智司君

      計屋 圭宏君    村井 宗明君

      渡辺  周君    江田 康幸君

      谷口 隆義君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       中川 昭一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            振角 秀行君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    竹田 正樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           寺坂 信昭君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           宮本 武史君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          北畑 隆生君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          齋藤  浩君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    望月 晴文君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  佐藤 公治君     岡島 一正君

  中山 義活君     鈴木 克昌君

  江田 康幸君     谷口 隆義君

同日

 辞任         補欠選任

  岡島 一正君     佐藤 公治君

  鈴木 克昌君     中山 義活君

  谷口 隆義君     江田 康幸君

    ―――――――――――――

四月一日

 日本アルコール産業株式会社法案(内閣提出第七六号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 有限責任事業組合契約に関する法律案(内閣提出第一七号)

 日本アルコール産業株式会社法案(内閣提出第七六号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、有限責任事業組合契約に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官振角秀行君、財務省大臣官房審議官佐々木豊成君、国税庁課税部長竹田正樹君、経済産業省大臣官房審議官寺坂信昭君、経済産業省大臣官房審議官宮本武史君、経済産業省経済産業政策局長北畑隆生君、経済産業省産業技術環境局長齋藤浩君及び中小企業庁長官望月晴文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。計屋圭宏君。

計屋委員 民主党の計屋圭宏でございます。

 きょうは、質問の時間を繰り上げていただいて、トップで質問させていただくことをありがたく思います。よろしくお願いします。

 さて、日本の経済のグローバル化の急速な進展の中で、企業の日本的な価値観が大きく変化しております。

 日本式経営は、終身雇用あるいはまた人を大事にしてきました。それと反面、欧米においては、株主を中心とする買収という形で会社を大きくしてきているわけです。そういうところが日本の経営の仕方とアメリカの、欧米型の経営の仕方というのが大きく違うわけでございます。例えば、日本で今行われているニッポン放送の株の取得と経営権の支配の問題、こういったことでライブドアとフジテレビが今争っているわけでございますけれども、こういったような中で、企業のMアンドAや敵対的買収等の、日本企業の理念が大きく変わろうとしているわけでございます。

 こういう中で、中川大臣、今、企業の価値観、あるいはまた企業とは何ぞや、企業哲学というのはどういったふうにして大臣は考えているのか、お聞きしたいと思います。

中川国務大臣 おはようございます。

 今、計屋委員からの、まさにここのところのいろいろな出来事を通じて、企業とは何ぞやとか企業とは一体だれのものかとかいろいろな議論が、今計屋委員が引用されたことをきっかけに、あるいはまた来年からの会社法の現代化という議論も通じまして、今議論されているところでございます。

 まず、会社とは、私も大学時代以来、久しぶりで商法を今見たところでございますけれども、商法によれば、会社は株主が設立し、そして会社の憲法ともいうべき定款についても株主が定める、そしていろいろなことを使用人に仕事をさせるということでございますから、法律的に言えば会社とは株主のものであるということになるわけでありますけれども、しかし、では株主だけで会社が運営できるかというと、法人として設立された人格のある、ある意味では人に例えた、生き物という法人というものでございますから、そこには経営陣があり、従業員がいてお客さんがいて、また債権者、債務者がいるという、いろいろな、いわゆるステークホルダーというのですか、利害関係人がいっぱいいるわけでございます。

 そういう中で企業が活動していくわけでございますので、私はあえて、もちろん法律的に言えば株主ということになりますけれども、いろいろな人々によって企業は成り立っていっている。例えば、日本の八〇年代、強いときにはやはり企業は人であるという時代がありましたし、また一時期の、つい最近までのアメリカでは、企業は株主のものである、とにかく株価を上げること、配当を上げることということが中心になっていたわけでありますけれども、余りにも一つに偏るということはやはり健全な企業形態としては弊害が出てきているということを、我々はここ二、三十年、体験を日本、アメリカ等でもしているわけでございます。

 また、企業は、ある意味では公的な、社会的責任、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティーなんという言葉が最近よく出てまいりますから、そういう社会的な責任、あるいはメセナなんという言葉もあるわけであります。社会的貢献というものもございますので、そういう意味で社会的に非常に重要な存在であり、そして、多くの利害関係人によって企業が健全な競争、発展をしていくことによって多くの人々にいい結果を及ぼし、ひいては社会的にも国家的にもそれぞれ発展していくことになろうということを私としては思い、期待をしながら、今の委員の御質問にお答えさせていただきたいと思った次第でございます。

計屋委員 今大臣から、企業とは何ぞや、あるいは企業の哲学、こういったことについてるる説明がありました。基本的には私も変わらないわけでございますけれども、ただしかし、企業とは、社会に貢献すると同時に利益の追求、そして従業員が人間性を高め品性を高めていくという人格形成の場所でもある、こういったふうに私は理解しているわけでございます。

 そういう中で、この企業とはというところで、だれのものだ。今大臣もおっしゃったように、株式会社というのは、これは株主ということで存在するわけでございますけれども、やはりそこに経営者あるいは従業員という、こういったふうな大きな絡みの中で企業というのが存在し、そしてそこで社会に貢献し人格を形成していくという大きな役割を担っていくものだと私は理解しているわけです。

 ですから、そういったような中で、今、株式会社あるいは有限会社というのが、所有と経営が分離してきているというようなことで、株主と経営者の利害関係の対立というのがあるわけでございます。そしてまた、企業にとって大変大切な要素として金、物、人という必須要素というのがございます。そういう中で大きく企業背景というのも変わってまいっているわけでございまして、高度な情報通信網の構築によって、今まで大切としてきたお金、物というのが、これは比較的に全世界からお金が、有利なリターンがあったら集まる、そういったような仕組みになってきている。あるいはまた、大量かつ高速の輸送手段によって物というのも集まるようになってきている。ですから、そういう中で、やはり現代の矛盾しているところが、人というものが大切にされないといったような一面も出てきているわけです。

 ですから、欧米型の合理主義的な経営の仕方というところと、それから日本的な人を大切にしていく、そういったような矛盾が出てきて、日本の今まで大きな保護のもとでやっていた日本式経営というものが、やはり崩壊しつつある。反面、かといって、合理主義だけ、あるいは株主だけを追求していけばいいのかといったような問題があるわけでございますけれども、そういったような中で、大臣としてどういったふうに考えているのか、本当に株主だけの企業でいいのかといったことについて、もう一言お願いしたいと思います。

中川国務大臣 私も、先ほどもちょっと申し上げましたが、計屋委員の御指摘のとおりだろうと思います。

 つまり、利益を追求する企業でありますけれども、その利益を全部配当の方に回してしまうということは決して企業にとってもよくないことでありますし、その利益を生み出す源泉は株主がつくった法人活動でありますから、その法人活動の総合力の結果でありますので、そういう意味で、もちろん配当ということも還元することも大事であるとは思いますけれども、やはり、企業がずっとこれから活動していくということになりますと、例えば内部留保であるとか研究開発であるとか、そして従業員への還元である、あるいはまたインセンティブへの貢献だとかいうことになると思います。

 アメリカの場合には、八〇年代に非常に日本あるいはNICSと言われる国々に対して競争力を失ったときに、ヤング・レポートという産業競争力レポートを出したわけでありますが、その競争力を回復するためのかぎは、やはり人づくりであるということを結論的には、ヤングさんの結論として出されたわけであります。

 また、我々も、デフレからいよいよ脱却して世界の中で産業力を強化していかなければいけないということで、去年、新産業創造戦略をつくらせていただきましたけれども、行き着くところは人づくりである、あるいは去年の年末はアメリカがイノベーション・レポートというものを出しましたけれども、これも人づくりである、人材育成であるということで、やはり企業は人なりということに私は最も重要なポイントの一つがあるんだろうと思っております。

 そういう意味で、人材投資促進税制でありますとか、いろいろなそういう人づくりのための予算、税制、制度等々を今やっているところでございまして、そういう意味で、企業の活力の源泉は最終的には企業人材、そしてまた人材のインセンティブのさらなるアウフヘーベン、止揚が必要なポイントであろうというふうに考えております。

計屋委員 この話を続けていけば、前回の新連携法の一部を改正する法律案の質問の延長線になってまいりますので、この件についてはこのぐらいにさせていただきますけれども、夕べの日経を見てみますと、米投資ファンド三社が、企業買収資金三・二兆円ということで、日本向けに一千億円の買収をしていこうと予定しているそうでございます。やはりこういったふうなことで、ライブドアとあるいはフジテレビのこの争奪戦、ニッポン放送の株の争奪戦ということで今やっているんですけれども、こういったような中で、やはり日本の企業のあり方というのが本当に今問われている、そしてなおかつ、今後、今日本が大きく企業としても日本の社会をリードしていくという観点から、新しい経営の仕方というのが求められているわけです。

 ですから、そういう中で、今回の日本版LLP、LLCということで、新しく制度を設けようとしているわけでございますけれども、ここでやはり中小企業が二極化している、こういう中で、今回のLLP、LLCは役立っていくんだろうか。リミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ、それと、リミテッド・ライアビリティー・カンパニー、いわゆるLLC、こういったようなことで制度化しようとしているわけですけれども、これが中小企業にとってどういったふうにして役立っていくのか、その辺をお聞かせいただきたいと思うんです。

中川国務大臣 今御審議いただいているのは、似たようなものでございますけれども、LLCではなくてLLPの御審議でございますから、LLPに関して申し上げますと、計屋委員はこの法案の内容はもう御承知ということだと思いますので、要するに、民法上の組合、無限責任を持ち、そして法人格のない組合に対して、有限責任で、しかもその内部的な出資と権限を自由に話し合いで決めることができる、それによって事業活動ができるという組合を今回設立することのメリットというのは、出資者そして業務をする者あるいはそこで働いていく人々が、比較的自由にスピード感を持って、いろいろな業態、例えば大企業と中小企業、中小企業同士あるいはまた個人、大学研究機関、いろいろなところがそういう法人格のない組合として出資をして、そして活動していくということでございますから、中小企業、ベンチャーにも非常に役立つわけでありますし、また、先ほどお話があったように、新事業連携なんというものの連携の形態の一つとしても大いに活用されるものというふうに期待をしているところでございます。今までの株式会社、有限会社、合資会社、合名会社云々と、今回はそれと同じような形の法人格等はございませんけれども、事業活動ができるという意味では、多様な業務活動の一つとしての経済行為ができる一つの組織、法人格はございませんけれどもそういう組織として柔軟かつ多様に、大いに活用していただきたいということでつくったわけで、もちろん、アメリカ、イギリスではもう既にかなりのウエートを占めているということも我々にとっては一つの刺激になったことも事実でございます。

計屋委員 では、質問を続けさせていただきますけれども、このLLPとLLCの違いというのは、アメリカの場合ですとLLC、そしてイギリスの場合はLLPという形で、両国とも大変この制度が活用されている。つまり、名前こそ違うけれども同じ性格を持ってやっているということでございまして、なぜ日本の場合、二種類の制度を並行して立ち上げていくのか、その辺を副大臣、どうですか。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 今国会に提出されております会社法案におきまして、委員御指摘のとおり、LLC、合同会社の導入が予定されているわけでございますけれども、こちらのLLCも、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、全員有限責任それから内部自治が徹底している、そういうことで、使い勝手のよい制度である、そういう点では今回御審議いただいておりますLLPと同様というところでございますけれども、LLC、合同会社の方には法人格があるわけですけれども、LLP、パートナーシップの方には法人格がない、そういった違いがございます。

 したがいまして、そういった違いのところから、恐らくLLPの方は、個人や企業の信用あるいは能力、そういったものを前面に出していくような事業とか、それから、いついつまでにこういったことを達成したいとか、そういう期限を区切ったプロジェクトとか、さらには、ハイリスク・ハイリターン、そういったような事業に向いているのではないかというふうに考えているところでございます。一方で、LLCの方は、将来的には、うまくいけば株式公開を予定しているような事業、あるいは永続的に行われる事業、さらには、利益の面でいきますと安定的な収益を生み出すような事業、そういったものに用いられるのではないかというふうに考えてございます。

 このように、それぞれLLP、LLCによさというものがあるわけでございまして、検討される案件によりましてそれぞれのよさを生かす方が選択されるのではないか、そういうようなことでございまして、今回、LLPにつきましても審議をお願いしている、そういうことでございます。

計屋委員 それぞれの使い勝手だ、こういうことでございますけれども、これはアメリカのLLCにおいても選択制、つまり構成員の課税ということでありますけれども、これは法人に、LLCに課税してもいいしあるいは構成員に課税してもいい、そういう選択制をとっているわけです。イギリスのLLPにおいてもやはり同じように選択制をとっておりますから、内容はLLPもLLCもこれは一緒なんですね。

 ですから、日本の場合ですと、あえてこういったふうにしてLLPとLLCということで両建てにいくということは、これは、今おっしゃったようなことは、中小企業の経営者あるいはまたこれから事業を起こす起業家にとっては大変わかりづらいということが言えるわけでございまして、そういったような専門的な立場から一々説明するということがなかなか、周知徹底するというのは不可能だと思うんですよね。

 ですから、そういうことを考えてまいりますと、LLPならば法人格を持たせればそれで済むはずなんですけれども、なぜそういうことをしないのかということをお答えいただきたいと思います。

北畑政府参考人 お答え申し上げます。

 LLPに法人格があれば不便がないという御指摘でございますけれども、実は、日本では、このLLPとLLCを分担のようにいたしましたのは、先生御案内かと思いますが、税制上の取り扱いでございます。

 日本では法人格があれば原則法人課税というのが大原則でございます。法務省で検討中、御審議いただきますLLCの方については税制上の扱いが決まっておりません。施行が来年でございますので決まっておりませんが、法人格がある以上はなかなか構成員課税というのは難しいんじゃないかなと考えております。

 私どもは、ベンチャー、中小企業が構成員課税という税制上のメリットが使える新しい事業形態をつくるということをまず最優先いたしましたものですから、LLPにつきましては、法人格がない、しかしながら構成員課税ができる。

 中小企業にとってわかりづらいではないかという先生の御指摘でございますが、ここは両方選択ができる、従来のように株式会社を使うこともできますし、私どものLLPも使えます、こういうことを十分に中小企業者にPRいたしまして、中小企業者にとっても使いやすい制度になるよう努めてまいりたいと考えております。

計屋委員 税制の問題ということで、選択制を設ければそれは非常にわかりやすい形で活用できるわけなんですけれども、そういう日本の古来の慣習、風習ということで、法人格があるからこれは分けなきゃいけないという、わざわざ簡単に一つにできるものを二つに分ける、そういったふうなばかげたことをやるということが私は納得できない。

 もう少しこれは、そういう制度に縛られるんじゃなくて、中小企業だとかあるいはこれから企業を起こそうとする人の立場に立ってこういうものを考えていくべきだ、こういうふうに考えるわけでございますけれども、そういったところを今後またさらに検討してもらいたいというふうに考える次第でございます。

 それから、それに加えて、これを、中小企業、零細企業あるいはこれから企業を起こそうとする学生だとか、あるいはそのほか、日本の国でも二十万人とも三十万人とも企業を起こそうという方はいらっしゃるということを聞いているんですけれども、そういう人たちに周知徹底していくにはどうするのかということをお聞きしたいと思います。

北畑政府参考人 仮に法律が成立したらということでございますが、私どもの地方の組織であります経済産業局、あるいは民間の団体であります商工会議所、各種の中小企業の支援機関と協力をいたしまして、説明会やわかりやすいパンフレット、関係資料の配布などを行うと同時に、そういう、今先生がおっしゃいました、学生も含めた、ベンチャーを起こそうという方のお問い合わせに対して十分なお答えができるような指導体制を確立してまいりたいと考えております。

計屋委員 その辺は、ぜひ、これから企業を起こそうとする皆さんに周知徹底できるように、特に配慮して、皆さんがこの制度というものを活用できるようにしていただきたい、こういうふうに要望しておきたいと思います。

 それで、この制度を活用していくということにおいて、これはもちろん企業だったり個人だったり、あるいは研究者だったり技術者がこういったものを活用してこのLLPを起こしていこうとするわけでございますけれども、ただしかし、ここで、金融面についての後押しというのはどういったふうに考えているのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

小此木副大臣 金融面、つまり金融支援というのはとても重要なことであるというふうに思いまして、先生御指摘のように、LLPへの金融支援もこれは考えなきゃならない、もちろん大事な問題だと思っております。

 公的金融機関による融資や信用保証といった既存の中小企業支援策については、LLPを組成した中小企業も活用することができることとしております。また、今国会、先般もこの委員会で御議論をいただいた中小の新法でございますけれども、そういったものにおける補助金、融資、税制面における支援措置についても、このLLPを組成した中小企業が受けることができるようにするということとしております。

計屋委員 それでは最後に、この制度を活用しようとする中小企業を初めとするユーザーに導入させていくには、人材の育成が必要だと思うんですね。この人材育成はどういったふうにしていくのか、最後にお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。

望月政府参考人 お答えいたします。

 特に、中小企業に関する各種の制度や支援策が有効に活用されるためには、中小企業を支援する人材や中小企業経営者への普及、啓発、研修などを実施することが非常に重要でございますし、そういった一環で、このLLPにつきましても有効活用できるような人材支援策が必要だということは、先生おっしゃるとおりだと思います。

 私どもといたしましては、全国九カ所の中小企業大学校だとか、あるいは中小企業・ベンチャー総合支援センターというのが全国にございますけれども、ここにおきまして、中小企業の支援人材や経営者に対する研修セミナー事業などを行っております。さらに、全国の商工会、商工会議所における研修事業あるいは中小企業者に対する施策情報の提供なども行っているところでございますし、十六年度から、特に全国各地におります経営指導員のためのウエブ研修などを通じまして、そういう中小企業を支援する人材の育成、あるいは経営者自身につきます研修などを全面的に活用しながらやっていきたいというふうに思っているところでございます。

計屋委員 LLPを成功させていくというのは、大変使い勝手のいい、中小企業、あるいはこれから企業を起こす、あるいはまたさらに新しく事業を起こすという人にとっては大変大切な形態だと思いますので、そういう点では、今副大臣もお答えになりましたように、金融の問題それから人材の育成の問題というものは特に力を入れてやっていただきたいと要望して、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

河上委員長 次に、谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 私は当委員会の委員ではありませんけれども、本日、質問をさせていただく機会をいただきました。ありがとうございます。

 LLPについて、私の質問の観点は、この法案は非常にすばらしいと思っております。先ほども出ておりましたけれども、企業社会がLLC、LLPで大きく変わってくる可能性があるというように思っておるわけでございまして、そういう観点で、しかし、余り元気よ過ぎて社会を混乱させるといったことにならないようなことで、詳細のところについて確認をさせていただきたいなというように思っておるわけでございます。

 この有限責任事業組合、LLPでございますけれども、ベンチャー企業だとか共同事業の起爆剤になる、このように言われておるわけでございます。このLLPの特徴は、先ほどから出ておりますように、有限責任制度というのがある。また、内部自治、これは、利益だとか権限の配分など、組合内部のルールで自由に決められるというのがあります。従来であれば、利益の分配は出資持ち分に応じてやられておったわけでありますけれども、このような自由に内部で決められるということと、あと税の問題でございます。構成員課税、パススルー課税ともいうわけでありますけれども、私も十七年度の税制改正におきまして、このLLPについてパススルー課税が望ましいのではないかということで、与党税調のメンバーでございましたが、推し進めた立場でございますけれども、一刻も早く、このような柔軟な機動性のある事業体をこの市中において稼働できるような形にしていただければというように思っておるわけでございます。

 それで、今、三点申し上げましたけれども、この中で重要なのは、やはり税の問題があるんだろうと思います。

 構成員課税ということでございますから、本来であれば、会社であれば会社に法人税が課せられるということでございますけれども、このLLPの場合は、組合員のところに課税をされる。法人といいますか、LLPには課税をされないで、出資をした組合員に課税をされるということになるわけでございます。

 そこで、きょうは財務省主税局から来ていただいておると思いますが、一点確認をさせていただきたいわけでございます。

 このLLPが大学発ベンチャー企業なんかの立ち上げに非常にいい事業形態である、このように言われております。例で申し上げますと、大学教授が大変なノウハウを持っておって、大企業が多額の資金を持っておるというような場合に、仮に、この大学教授の出資割合は一割であった、利益の分配は四割である、損が出れば損が一割であるというような内部自治の中で、LLPの中でこのルールを決定したというような場合を想定して申し上げます。

 従来であれば、先ほども申し上げましたように、持ち株に応じて利益の分配が行われておりましたから、それによって公正な課税関係にあったわけでありますけれども、今回の場合は、金は出すけれども技術は持っていないから、大学教授の技術を、一緒になってLLPをつくってやっていこうというような場合に、いろいろ想定される範囲内であればいいわけでありますけれども、極端にこの課税関係が行われた場合、税制上でいいますと寄附金認定というんですけれども、技術の評価と出資の評価との間で大きく乖離をするような場合、このような場合に経済的利益の供与というのは問題があるわけでありますけれども、これを無視したような形の内部自治が行われた場合、一体どのような課税関係になるのか、財務省主税局の方から御答弁をお願いしたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えを申し上げます。

 民法組合の特例と位置づけられております有限責任事業組合におきましては、民法組合と同様に、先ほど御指摘ございましたように、出資比率と異なる損益分配を行うことが可能となっております。こうした柔軟な損益分配につきまして、私法上、制度化されているからといって寄附金の問題が生じないということは御指摘のとおりございませんで、税務上経済合理性がないと認められる損益分配が行われました場合には課税上の問題を生ずるということは、お話しのとおりでございます。

谷口委員 今おっしゃったような課税の状況があるということでございますが、私は、申し上げたような技術の評価というのは非常にやりにくいんですね。出資はもう既に、既にといいますか、明確なわけでありますけれども、技術の評価というのはやりにくいわけでありますので、この課税関係、これを否認するというようなことを多々行われるということになりますとLLPそのものがうまく進まないということもございますので、そこは税当局もおおように対応していただければというように思っております。

 あとは、LLPの悪用事例がやはり出るのではないかと言われております。

 ちょっと例示をさせていただきますと、巨額の損失事業を行って、出資者が損失の取り込みだけをねらってLLPを組成する、要するに、先ほど申し上げました、構成員課税というところを利用したような形で税逃れを行うといったようなこと、また、個人の財産を債権者から隔離をするという意味でLLPを組成するというようなこと、また、投機的な事業を行うためにLLPを活用するということが懸念されるような場合、このようなことは本来のLLPの趣旨から若干離れるのではないかと思うわけでございます。

 このような形でLLPが組成された場合に、どのように対応されるのか、考えておられるのか、経済産業省に答弁をお願いします。

北畑政府参考人 LLPにつきましては、中小企業、ベンチャーに使いやすい柔軟な措置を講じたということと、御指摘のとおり、構成員課税というのが最大のメリットでございまして、そこを前向きに、有効に活用していきたいというのが基本でございます。

 ただ、逆に、税制上の措置あるいは柔軟な組織が悪用されるのではないかという先生の御指摘につきましては、法文上、そのような乱用を規制する措置を講じておりまして、悪用されないような運用をしてまいりたいと思います。

 具体的に申し上げますと、三条三項に乱用禁止規定というのを入れておりまして、御指摘のような財産隠しなど不当に債務を免れるような行為については、法律上禁止という規定が入ってございます。

 それから、お金は出すけれども業務には参加をしない、単に税法上の損の割り当てを受けたいというまさに租税回避的な運用につきましては、この法律上、業務執行には全組合員が参加する、全員参加するというような原則が書いてございます。したがいまして、お金を出して、税だけメリットを受けたいという方には、基本的にこの制度は活用できないような仕組みになってございます。

 それから、過度な投機的な事業を行うということはこの制度の趣旨に反しますので、それは法律上できないということで、七条一項の規定に基づき政令指定をしたいと考えております。

 こんなことによりまして、本来の趣旨は十分に生かしたいわけでありますが、乱用についても歯どめの措置を講じたということにしてございます。仮にこの措置に違反するようなことがあった場合には、税務上否認をされ得るということになろうかと考えております。

谷口委員 乱用されているかどうかというのは非常に判断の難しいところでございますので、この法律が施行されて、市中でLLPが生まれてくるといったときに、健全なLLPが組成されて稼働するように、ぜひ当初の立ち上がりの状況を見ていただきたいと思うわけでございます。

 このような悪用事例といいますか、もう一つ申し上げたいわけでありますけれども、御存じのとおり、アメリカで、エンロン、ワールドコムというような大きな粉飾がございました。特にエンロンの場合、どのような粉飾の形態であったかといいますと、エンロンという大きな本社があって、その下にSPC、特別目的会社というのを三千社ぐらいつくったわけです。そこに損失をずっと振っていったわけですね。それで、エンロンそのものの財務状況は非常にいいように見えたんだけれども、実態は、この三千社に割り振られた、損がそこのところにあったというような事例がございます。

 私、これは何を言いたいかといいますと、上場しておる企業なんかは特にそういう顕著な例でありますけれども、上場しておる企業が出資をしてLLPをつくる。このLLPがいわば連結グループの範囲内であればいいんだけれども、先ほどのエンロンの例で申し上げますと、SPCは連結グループに入らなかったわけでございまして、ですから、連結グループ全体の損益が明確にわからなかった。アメリカでは、その後、このSPCについても連結の範囲に入れるということになったわけでありますけれども。

 このLLPがスタートして行われた場合に、連結グループの決算の中の範囲に入る、いわば連結子会社という形の対応が行われるのかどうかということをお聞きしたいわけでございまして、本日、金融庁から来ていただいていると思いますが、このような対応について御答弁をお願いいたしたいと思います。

振角政府参考人 それでは、私からお答えさせていただきたいと思います。

 証取法に基づく連結財務諸表におきましては、親会社は、他の会社等を支配している場合、これらを子会社として連結しなければならないとされておりまして、ここで言う会社等には、会社、組合、その他これに準ずる事業体が含まれるということにされております。したがって、LLPやLLCについても、親会社が支配していると認められる場合には連結されるということになっておりまして、いずれにしても、LLPやLLCを含め、経済取引等の進展を注視しながら、企業会計基準委員会と連携しながら、適切な会計処理が行われるよう努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

谷口委員 大もと、方向は今金融庁からおっしゃっていただいたとおりだと思うんですが、今回、LLPで難しいのは、出資で、LLPの全体の過半の出資であれば、これを支配会社、支配権の及ぶ会社と見るのか。

 今回の場合は、内部自治、要するにLLPの内部で決定できるわけでございますから、先ほど事例で申し上げましたように、大学発ベンチャーのLLPを組成した場合に、大学の先生の持っていらっしゃるノウハウを評価して、これを四割、また出資の方を一割と、この御本人が一割でも利益の配分が四割あるというような形に行い得るわけでございまして、その判断をどういう基準で行われようといたしておられるのか。今のわかる段階で、今判断できる段階で結構でございますけれども、御答弁をお願いいたしたいと思います。

振角政府参考人 引き続きお答えさせていただきたいと思います。

 先ほども申し上げましたように、どのような形態になるときに連結にするかということについての細部については、今後、企業会計基準委員会で詰められることになると思いますけれども、例えば出資者がゼネラルパートナーとしての地位を兼任するなど、出資の割合としては少なくても、意思決定機関を支配しているというのが認められる場合には、当該LLPは連結されるというようなことが想定されるんじゃないかというふうに考えているところでございます。

谷口委員 今おっしゃったのは、出資者が実質的な支配関係があれば、出資の状況いかんにかかわらず支配従属会社と見られるということで、連結グループ内かどうかの判断の基準にそれがなるという御答弁だったと思います。

 これはいろいろ形態が出てくると思います。先ほど出ておりますLLCというのがあります。リミテッド・ライアビリティー・カンパニーというのがあるわけでありますけれども、これも、今国会で会社法の法案のときにLLCが出てまいりますけれども、基本的には同様の機動性のある、弾力性のある事業体で、これをどのように使うのか、使い方いかんによっては大きく変わってくるわけでございまして、秩序ある、許容される範囲内での活動、組成をしていくために、所管省庁の経済産業省、十分このウオッチをしていただきたいと思うわけでございます。

 ただいままでの議論をお聞きになられて、きょうは大臣いらっしゃいませんけれども、副大臣、どのような感想を持たれたでしょうか。

小此木副大臣 これは、先ほども答弁申し上げましたけれども、アメリカですとかそういうところでは、LLPという制度がもう普通のように常態化しているといいますか、新しい企業形態といいますか、そういった中での、経済状況を潤していくという意味で、これは活発に利用されているというふうな感じを受けております。

 日本の場合は、先ほどの議論にもありましたように、あるいはこの委員会の中でも、こういう法律をつくっていく中で、いろいろなところに周知徹底をしていくということも含めて力を入れていかなければならないということで私は感じておりますので、そういったいいものをすばらしく世間に広めるためにも、そういったものをより活用できるように広めてまいりたい、このことにも努力をしたい、こういうふうに思っております。

谷口委員 ですから、適正に運用されるようにぜひ見ていただきたいと思うんです。最初が、スタートが大変だと思うんですね。そこで悪用されるような事例が頻発いたしますと、その後、LLP、LLCの動向にも大きく影響が出てくるだろうと思うわけでございます。

 それで、LLPでございますが、先ほども出ておりましたが、英国でLLPが創設をされたきっかけというのが、弁護士事務所だとか公認会計士の事務所だとか税理士の事務所といったようなところの共同事業を行う場合に、これは非常にフィットした事業体だというようなことで英国ではつくられたというように聞いております。

 それで、今回のLLPの法案、お聞きいたしますと、政令事項になっておるようでございますけれども、いわゆる士業が除外をされるということのようにお聞きをいたしております。

 弁護士、公認会計士、税理士等々の士業の中で、例えば公認会計士で申し上げますと、今、監査法人という合名会社的な組織体があるわけでございまして、そこに多数の公認会計士がおられて、また多数のクライアントがおられるわけでありまして、このクライアントにかかわっておられる公認会計士が、監査の上での失敗があって、それで賠償請求をされるということは十分理解でき得るところでございますけれども、現行法上は、監査法人に所属しておる公認会計士はすべて無限責任になっておりまして、すべてこの責任を負わなければならない、こういうことになっております。これも少々理解ができないところでもあるわけでございます。

 今回、先ほど申し上げましたように、政令でいわゆる士業については除外されておられるようでありますけれども、経済産業省としてどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

北畑政府参考人 いわゆる士業の適用についての御質問でございますけれども、法律上は、七条一項一号の規定に基づきまして、有限責任の規定をすることがふさわしくない業務についてはこの制度の対象外にする、こういうふうに考えております。

 今御指摘のとおり、士業のうち、それぞれの法律で無限責任が規定されているものが多数でございます。弁護士、公認会計士はそういうふうに規定されております。このようなものにつきましては対象外にするという方向で考えております。ただ、士業でも、例えば電気工事士、それから中小企業診断士、これはそれぞれの法律について無限責任という規定は入っておりませんので、むしろこのLLPが使えるというふうに考えております。

 英国では公認会計士、弁護士も対象になっているじゃないかという御質問でございました。国際的にはそういうことでございます。私どもとしては、今後の課題として、こういう部分についてそれぞれの士業を所管している関係省庁とよく相談をいたしまして、仮に将来、有限責任を入れてもいいよという結論が出れば、政令指定でございますので、その時点でLLP法が使えるようにしたい、今後の検討課題というふうに認識いたしております。

谷口委員 今御答弁をいただきましたように、弁護士、公認会計士、税理士等々の士業の所管の省庁が、今無限責任の規定になっておる状況の士業が、もう変えてもいいではないかというような状況になれば、LLPにおいてもそのような対応をしていきたいということでございますね。確認をさせていただきました。

 きょう、公認会計士を所管されておられる金融庁、また税理士を所管されておられる財務省が来られていますが、今すぐどういう方向なのかという答弁はなかなか難しいと思いますが、ぜひ省内、庁内で御検討をお願いいたしたいと思います。

 それで、LLPは三つの特徴があって、有限責任、内部自治、また構成員課税、こういう三つの特徴があるわけでありますけれども、この有限責任というのは、出資の範囲内でもう責任を持たない、こういうようなことでございますが、例えばLLPが、出資ではこの運用資金を賄い切れない、事業の資金を賄い切れないということで、金融機関から融資を受けるということが十分考えられます。この融資を受ける場合に、担保を出せということになるんだろうと思うんです。自分の担保がないといった場合には、今現行の市中で行われております状況から考えますと、では代表者の個人保証をしろというような可能性があるわけでございます。

 このような形で、金融機関からの融資を受けるときに代表者の個人保証を行うということになりますと、有限責任だからこれは非常に使い勝手がいいんだと言っておっても、実態的に有限責任であるとは言えないというような状況も出てくるんだろうと思います。このようなことについてどのようにお考えなのか、経済産業省にお伺いいたしたいと思います。

北畑政府参考人 ベンチャーでありますとか中小企業でありますとか、比較的小規模あるいは少人数でやる事業のための組織形態でございます。したがいまして、当初の出資額の範囲内でやるというのが基本であろうかと思いますけれども、それに加えて、融資を受けて事業をやるという形態も大いにあり得ると思います。

 その場合に、LLPの場合、法人格がございませんので、出資者である方の個人保証ということを金融機関から求められるということは大いにあるということだと思います。その保証をした場合に、その範囲では法律上の有限責任ではなくて、その債務を負うという意味では無限責任になるというのは先生御指摘のとおりでございます。

 ただ、できる限りそういうふうにならない、もっと有利な使い方ができないかということで、いろいろ知恵は出してまいりたいと考えておりまして、例えば、少額の融資であれば、ベンチャー、中小企業につきましては無担保の融資制度とか信用保証という制度が整備をされております。民間企業でもこういう動きが出てまいりました。事業そのものに注目しての融資という動きが出てまいりましたので、LLPはそういうものの受け皿になり得る組織形態だと思います。

 事業の中身いかんでございますけれども、そういった柔軟な融資の対応ということが可能になるようにこの制度を育ててまいりたいと考えております。

谷口委員 今局長がおっしゃった柔軟な融資対応ということでありますけれども、今、担保をとらないプロジェクトファイナンスというのがあるわけですね。

 これは金融庁の方にも申し上げたわけでありますけれども、我が国の金融機関は審査能力が諸外国に比べて弱いと言われておるわけでございます。そのような観点で申し上げますと、このプロジェクトファイナンス、担保をとらなくても融資ができるというような、大変な審査能力が必要なわけでありますけれども、このような融資のやり方が広く流布するように、経済産業省の方からもLLPのことも含めて申し上げていただきたいし、金融庁も、このような融資のやりぶりが広まっていくように、ぜひ金融機関におっしゃっていただきたいというように要望をいたしたいところでございます。

 それで、大臣帰っていらっしゃいましたので、もうあと最後の質問になるわけでありますけれども、先ほどの質問にもお答えをされていらっしゃいましたが、このLLPというのは企業社会全体を大きく変える可能性がございます、LLCも含めましてですね。それで、今回のLLPは、能力重視経営、これをより一層進めるだろうと言われておりますし、柔軟で機動性のある経営が行い得るということも言われておるわけでございます。

 このような状況の中で、このLLPが施行されて市中で広がってまいりますと、企業社会も大きく変わってくる可能性があるんだろうと私は思います。このときに、大臣の立場で、企業社会が一体どのようになれば望ましい。現行、この会社の形態を見ますと、今回、会社法で有限会社が株式会社と一体となるわけでございます。ですから、有限会社という法人形態がなくなるわけでございますが、あと合弁会社、合資会社といったような企業形態があります。そこにこの機動的なLLPだとかLLCが入ってくるわけでございまして、今回の法律の対象でございますLLPが企業社会の中でどのように育ってもらいたいのか、大臣としての期待を述べていただきたいと思います。

中川国務大臣 途中失礼をいたしました。

 今の御質問には、まさに、ある意味では、大きく、活力のある、スピード感を持った事業活動がより必要な時代に、大いに貢献する制度にしていきたいというのが結論でございます。

 日本の場合には、デフレとか不況とかあって、起業、業を起こす方と廃業のバランスが、ずうっとここのところ廃業の方が多かったわけでございますし、また、業を起こす方も、ほとんどが株式会社、有限会社であったわけでありますが、アメリカの場合には、業を起こす中の半分ぐらいがLLCというような現状も見ますと、そういうスピード感を持ってやっていくアメリカ社会においても大変大きな存在になっているわけであります。

 そして、その場合に、企業を新しく設立するとか合併するとか、そういうことは大変手続もかかりますし、企業というのは、冒頭、先ほど申し上げましたように、法人として長く存在し続けるものでございますから、一たんつくるとなかなかこれを、ある意味では畳むということもそう簡単にはしにくいという状況もありますから、そういう意味で、新事業連携でありますとか、あるいはまたベンチャー創業でありますとか、あるいは大学も含めた異業種間の連携でありますとか、いろいろな意味でスピード感を持ってやっていくということが、これからの特に中小、ベンチャーの事業活動に大いに貢献ができるという意味で、一つの選択肢として、しかし大きな役割を果たしていくべきものだというふうに期待をし、できるだけ早くこの制度を世の中で周知徹底をしていただきたい、そして利用していただきたいと思います。

 もちろん、これを悪用するということがあってはならないということで、その辺にも十分配慮をしながら、しかし先ほど申し上げたような目的に大きく貢献できるものと確信をしておりますので、そういう趣旨から、国民的、経済的に大いに貢献していただきたいというふうに考えております。

谷口委員 ぜひ、そういう大臣がおっしゃった観点で、一刻も早くこの法律を成立させて、現場でLLPが非常にうまく稼働できるようにやっていただきたいというように申し上げまして、終わらせていただきます。

河上委員長 次に、村井宗明君。

村井(宗)委員 民主党の村井宗明です。本日議題になっております有限責任事業組合契約に関する法律案について質問をさせていただきます。

 私の地元は富山市です。本日、四月一日、周辺の七つの市町村との合併によりまして、人口四十二万人の新しい富山市が誕生しました。(発言する者あり)ありがとうございます。面積は千二百四十平方キロメートル、全国で四番目に広い市が誕生しました。

 地元では、合併を祝う式典や、さまざまな記念のイベントが開催されておりますが、何かもう一つ盛り上がっておりません。それは、地元の経済を支えている中小企業や中小の商工業者、個人商店などが元気がないからではないかと私は思っています。商店街がシャッター通りとなり、人通りも少なく、目につくのは、店じまい、閉店大売り出し、テナント募集の張り紙ばかりです。経営不振や後継者難によって廃業する事業者がふえている一方で、新しく開業する企業の数は伸びてきておりません。これは決して富山市に限ったことではなく、全国の地方都市では共通の問題であり、かつ構造的で深刻な問題でもあります。

 実はたまたま、昨夜、地元でお通夜に参列してまいりました。飛行機でばっと帰って夜行電車で戻ってきたんですが、精密機械の地元企業の社長さんがまだ五十代の若さで亡くなられました。富山の中小企業の機械工業の事業者のリーダー的な社長さんで、御自分の会社はもとより、同業者の経営にも走り回って汗をかいておられました。残念でなりません。幸い、この社長さんには跡を継がれる御子息もしっかりおられますので、必ずや立派に事業を発展させていかれるものと思っています。

 このお通夜の席でも聞こえてくるのは、中小企業の置かれた環境の厳しさばかりです。大型店の出店によって売り上げの大幅減に追い込まれた商店、低価格のチェーン店の進出によって常連客を奪われた床屋さん、市町村合併によって工事の受注減を心配する水道工事店などなど、例を挙げれば切りがありません。

 三月十六日の委員会の質疑でも申し上げましたが、バブル経済崩壊以降、繰り返し実施されてきた景気対策や中小企業対策、政府、経済産業省が知恵を絞ってこられたさまざまな支援策が膨大な予算とともに実施されているわけですが、残念ながら、なかなかいい結果につながっているとは言い切れません。

 このような現状認識、基本的な問題認識を申し上げ、質問に入らせていただきます。

 まず、この有限責任事業組合、以下LLPと表現させていただきます、このLLPの法整備が現在までおくれてしまったのはなぜなのか、この法整備のタイミングの問題について質問いたします。

 アメリカでは、LLCが、一九七七年から、まずワイオミング州で導入され、現在五十州のすべてで認められています。このアメリカのLLC制度は、構成員の有限責任、構成員課税、柔軟な内部自治に加えて、法人格も有するとされています。この十年間で実に八十万のLLCが誕生しており、同時期に株式会社の設立が百万社ですから、LLCが新規創業、ベンチャー立ち上げに重要な役割を果たしていると言えると思います。

 他方、イギリスでは、二〇〇〇年にLLP制度が導入されました。会計事務所や法律事務所、さらにはデザインやコンテンツ産業にまで普及し、二〇〇四年には約一万社になるとされています。

 そこで、お伺いいたします。アメリカにおけるLLC制度は一九七七年から、イギリスにおけるLLP制度は二〇〇〇年から始まっているのに対し、我が国では制度の法整備が現在に至ってしまった経過と要因を御説明願いたいと思います。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

北畑政府参考人 米国及び英国におきまして、LLC、LLP制度が、御指摘のような経緯でスタートをし、新規開業の大きな制度的な支えになっておるということは委員御指摘のとおりでございます。

 私ども、この新しい制度の研究に着手いたしましたのは、二〇〇二年から三年にかけて、省内にLLC研究会を設けまして検討いたしました。この成果は、法務省の方で、今回の会社法の現代化の中で取り入れられるというふうな成果に結びついておると思います。LLPにつきましては、二〇〇四年に研究会をスタートいたしまして、二〇〇五年に結論が出、今回法案を提案させていただいたという経緯でございます。

 イギリス、アメリカに比べると遅いではないかという御指摘であろうかと思いますけれども、制度として大きく普及したのは、米国でも九〇年代の後半でございますし、英国で二〇〇〇年以降でございますので、そう大きくおくれをとったということではないかなと思っております。

 いずれにいたしましても、できるだけ早期に、この法案が仕上がれば、その制度の普及に努力をしてまいりたいと考えております。

村井(宗)委員 次に、LLPの組合の業務に関する制限についてお伺いいたします。

 イギリスのLLPは、もともと弁護士や会計士が共同事業を行う際の組織体として創立されたのが始まりだと聞いています。複数の弁護士や会計士が共同して取り組む場合、有限責任や構成員課税の制度が有効に活用されたんだと考えられます。

 今回の日本版LLP制度においては、組合の業務の制限として、弁護士、弁理士等のいわゆる士業を対象から除外すると聞いておりますが、その根拠をお聞きいたします。

北畑政府参考人 LLP制度はどのような事業でも広く利用できる制度という形で考えておりますけれども、御指摘のように、弁護士、公認会計士、税理士、いわゆる士業のうちで、それぞれの根拠となる法律で、それぞれの事情から無限責任というのが法律上定められておる、こういう士業についてはこの制度は利用できない。したがって、法律上、対象業種から除外をするというふうに考えております。ただ、士業のうちでも、例えば電気工事士、栄養士、中小企業診断士、こういった士業につきましては、このような無限責任という規定がございませんので、これはLLP制度が活用できる、このように考えております。

 英国ではそういうふうになっているではないかという御指摘でございますが、国際的に見れば、こういう士業につきましてもLLPのような有限責任の事業体を活用するというのが流れではないかと思います。また、産業界の方からもそういう要望があるということは承知しております。

 それぞれの所管省庁と相談すべきことでありますけれども、今回は見送るということにさせていただきますが、将来、仮にそれぞれの業を所管している官庁の方で法律改正がなされる、あるいは解釈が変わるということになれば、LLPはそれを受けて対象にするということで、政令改正という形で臨みたいと考えております。

村井(宗)委員 ベンチャーや新規創業を始める人たちにとっては、何といっても立ち上げの資金の調達に大変苦労するのが現実だと思います。アイデアやノウハウそのものに対して融資してくれる銀行はなかなか見つからないのが現状だと思います。やはり土地を担保に、あるいは個人の連帯保証をつけてという話になってきます。

 そこで、お伺いします。今回のLLP法案では、出資のみの組合の参加を認めないとしていますが、その理由を御説明ください。また、組合の意思決定の中で重要なものを総組合員の同意によることとしている理由は何でしょうか。お聞きいたします。

寺坂政府参考人 お答えいたします。

 LLP制度は全組合員の有限責任を確保しておるということでございますので、債権者の保護が重要な課題となるわけでございます。そこで、各組合員が出資のみでいわば名義貸し的に参加することを認めない、そういうふうにすることによりまして、各組合員の有します個性と能力を、共同事業性を高めて、いかんなく発揮させて組合事業の成功に導いていく、これを通じまして債権者保護を図るということにしているわけでございます。

 それからまた、LLP制度では、組合事業の運営に関します重要な意思決定といたしまして、多額の借金や重要な資産を売却する際には総組合員の同意を要することとしておりまして、これも、組合員の業務執行への義務づけと同じく、LLPの債権者を保護するための措置であります。多額の借金や重要な資産の売却は、債権者が当てにしております組合財産に重大な影響を及ぼすと考えられます。したがいまして、その決定に当たりましては、全組合員が慎重に意思決定をするというふうにしているものでございます。

 なお、LLP制度に関しましては、出資者に直接課税をいたしますいわゆる構成員課税、これが適用されているということでございますので、いわば損失の取り込み、これだけをねらった節税目的に活用される懸念もあるわけでございまして、組合員の業務執行への義務づけ、それから、重要な意思決定への総組合員の同意を要するとしている、そういったことは、こうした節税目的のいわば悪用といいますか、そういったものを防ぐ効果もあると考えているところでございます。

村井(宗)委員 このLLP制度の創設が新しい経済活動の幅を広げ、ベンチャーのチャンスを拡大する役割を果たしていくには、LLP制度が正しく理解され、世の中で正当な評価を獲得していく必要があると思います。

 そこで、お伺いいたします。初めから計画的に債務を逃れる目的でLLPに財産を出資したり、財産隠しを図るような制度の乱用を防止するためにどのような対策を考えておられるのか、お聞きいたします。

寺坂政府参考人 LLP制度は、前向きな共同の連携事業、そういったものに使いやすい制度と考えているわけでございますけれども、他方で、制度が乱用されないよう、さまざまな規定を設けているところでございます。

 例えば、個人の財産への差し押さえを逃れるためにLLPに出資を行って財産隠しを図るとか、あるいは、先ほどもちょっとありましたけれども、過度な節税のみを目的とするような、そういった事業のためにLLPを利用する、そういった行為が想定されるわけでございまして、したがいまして、今回御審議いただいておりますこの法案におきましては、法律上そうした悪用を防止するための措置を講じているわけでございます。

 一つは、財産隠しなどの不当に債務を免れるような利用の禁止規定を設けてございます。

 それから二つ目には、組合事業の健全性を高め、それから出資者全員が業務執行に参加することを義務づけているわけでございまして、これで、先ほども申し上げましたが、租税回避的な使われ方を防止することが可能になるというふうに考えてございます。

 それから、三点目といたしまして、債権者を害するような過度に投機的な事業につきましてはLLPの業務としては行えない、そういう規定を設けることとしているわけでございます。

 こうした規定に違反いたしました場合には、有限責任制が否定されまして、税務上のメリットも受けられないということになるわけでございます。こうしたことによりまして悪用が防止されまして、前向きの事業に使われていくというふうになるものと考えておるところでございます。

村井(宗)委員 次に、LLPの損益の配分の問題についてお聞きいたします。

 損益の配分が、必ずしも出資金額に拘束されず、組合の構成員の話し合いによって柔軟に決めていけることは大いに評価できると思います。さまざまな異なったノウハウやアイデアを持ち寄って、損失と利益の分配についても異なった配分比率を話し合いで設定していける場合、個人同士や小規模の企業だけで構成されている組合であれば、かなり公平かつ平等な話し合いによる決定が期待できるんではないかと思います。

 ところが、大企業と中小企業が同じLLPを構成する場合はどうでしょうか。仮に、親企業と下請企業といった関係がなかったといっても、大企業が本来持っている優越的地位が中小企業や個人構成員を弱い立場に追い込んでしまう心配はないんでしょうか。LLPの構成員間で話し合いが行われても、結局、結果として中小の持つアイデアや技術が大企業に吸い上げられて終わってしまうんではないかという危惧があります。

 そこでお聞きいたしますが、損益の配分を出資比率に関係なく柔軟に決められることは非常に評価できると思いますが、現実問題として、大企業と中小零細企業が組む場合は、大企業の優越的地位によって中小企業が不利益を受けるのではないかという懸念をどのようにお考えでしょうか。ベンチャー支援、創業支援としての立場から、そのお取り組みをお伺いいたします。

北畑政府参考人 LLP制度の特徴というのは、御指摘のとおり、柔軟な権限配分、損益配分ができるということがポイントでございます。

 したがいまして、使われるケースとして想定しておりますのは、技術やノウハウはあるが資金力がないという中小企業が資金力のある大企業と組むことによって出資額以上の権限配分、損益配分を受けるというのが本来の趣旨でございます。

 ただ、御指摘のとおり、大企業の優越的地位の乱用というようなものがあって、中小企業が出資額より低い損益配分が定められたらどうするのかという御指摘につきましては、これは制度の趣旨に反するものだと考えております。

 私どもとしては、このLLP制度の正しい趣旨、本来の趣旨ということにつきまして、PR、その啓蒙、普及、それから相談、そういったことをやっていきたいと思いますし、御指摘のようなケースについては、例えばガイドラインのようなもので示すというような形で指導をしてまいりたいと思います。極端なケース、優越的地位の乱用に当たるようなケースであれば、独禁法所管当局とも相談の上、そういうものについてはそういうことが起こらないような対処をしてまいりたい、このように考えております。

村井(宗)委員 だとすれば、私が今言ったような懸念が行われる場合、つまり本来の趣旨と違うような場合には独禁法の問題がかかって、それが改正されていくというふうに考えてよろしいんでしょうか。

北畑政府参考人 そういうケースがないような指導をしたいというのがまず本来の対処でございますけれども、個別のケースを見て極端なケースがあれば、独禁法の不公正な取引、大企業による優越的地位の乱用というケースが、多くはないと思いますけれども、仮にそういうケースがあれば個別に対処してまいりたいと考えております。(発言する者あり)現行法で対処できると考えております。

村井(宗)委員 今の、ただの弁解ではなくて、やはりきちんとそういったようにしていただかないと、普通に考えると、大企業と中小企業の間で話し合って決めてくれなんてなると非常にうまくいかなくなるケース、私は多いんじゃないかという心配をしております。きちんとそういう指導をしていただけるようにお願いを申し上げます。

 さて、三月十六日の中小企業経営革新支援法の質疑の際にも取り上げさせていただきましたが、ベンチャーや新規創業の立ち上げに当たって最大の壁は、やはり資金の調達の問題ではないかと思います。

 そこで、金融面でのLLPの支援についてお尋ねしたいと思います。

 債権者保護の観点から必要な規制を整備している点はまさに評価できると思いますが、ベンチャー支援や創業支援の促進を図るためには、中小企業が打ち出している新連携などの中小企業支援策と綿密な連携を図って、LLPの金融支援対策も必要になると考えますが、取り組みはいかがでしょうか。お聞きいたします。

    〔高木(陽)委員長代理退席、委員長着席〕

北畑政府参考人 LLP制度が想定しておりますのは、まさに中小企業の新連携のようなケースでございまして、多くの中小企業が技術なり資金を持ち寄って柔軟な組織で対応するというのがこの制度でございますので、新連携法との連携には中小企業庁と十分な相談を既にしております。十分に活用されるような対応をしてまいりたいと思います。

 それから、資金面の支援ということでも中小企業庁と話をいたしておりまして、連携事業を行う場合について中小企業新法の支援対象として、補助金、融資、税制などの支援策が受けられるような形で対処をしてまいりたいと考えております。

村井(宗)委員 次に、このLLPの名称、ネーミングの問題をお聞きしたいと思います。

 前回質問に立ったときも申し上げましたが、経済産業省及び中小企業庁は、大臣を先頭に、日本の景気回復に向けてまさに不眠不休の努力をされておられます。実にたくさんの施策を出しておられます。膨大な種類、数量のパンフレット、ガイドブックなども出しておられます。ところが、どうしても複雑でわかりにくいという声があります。確かに、連日経営と資金繰りに頭を痛めている中小企業の皆さんにとってみれば、経済産業省のホームページをゆっくりと見ている暇はありませんし、中小企業庁の出すあのガイドブックを熟読しているゆとりもないと思います。

 そこで、ここは実業の分野にもお詳しい副大臣にお聞きしたいと思います。

 今回のLLPの名称に関して、「有限責任事業組合という文字を用いなければならない。」とされておりますが、もう少し簡潔でわかりやすく、なおかつベンチャーや創業にふさわしいそれなりの名称に工夫できないものでしょうか。有限責任事業組合という名前だけでは、一体何なのか一般の方には非常にわかりづらい。例えばベンチャー組合だとか新創業組合とか、ほかの名称を何とか工夫できないかという提言をしたいと思います。

 また、名称に関して、株式会社は(株)、有限会社は(有)が一般的に使われているわけですが、この有限責任事業組合の場合はどのようになるんでしょうか。お聞きいたします。

小此木副大臣 おはようございます。

 私も、そちら側の委員のときに、当時は通産省に対して、本当にこの中小企業施策というものは経営者にとって、あるいは従業員にとっても国民にとってもわかりやすいものでなければいけない、ですから、そういうわかりやすい説明というものを本当に熱心にしてもらうようにということを自分も心がけ、選挙区でも訴え、国にもそういう要請をしてまいりました。

 そこで、今御指摘の点でありますけれども、この有限責任事業組合という名称を用いなければならないということについては、内部でも外部でも、公式な文書、取引先との契約、組合の中での定め、こういったものについてはこの名称を使うということを債権者の保護という観点から、この要請で規定しているということであります。

 一方で、今委員がおっしゃった(株)ですとか(有)とか、株式会社、有限会社というものを表現する場合がありますけれども、これは一般の業務、活動の中での、封筒ですとか、はがきも入れるんでしょうか、あるいは名刺、こういったものには略称が使えるようになってございます。

 いずれにしても、今論じられていることが世に出ていく中で、LLPという略称がそのまま使えるようになったり、そういった略称も、私が冒頭に申し上げた以外のものでは使われるようなことを期待したいというふうに思います。

村井(宗)委員 今副大臣が言われたことももちろんわかるんですが、仮に略称であるLLPというものが使われたとしても、まだ一般の人には一体何なのかわかりづらいと思うんです。ネーミングをもっとわかりやすいものに変える、例えばベンチャーとか創業とか、そういう言葉を入れることも含めて、どうでしょうか。副大臣もしくは経済産業省の方、お答えください。

北畑政府参考人 おかげさまで、LLPという言葉あるいはLLCという言葉、我が国でもかなり普及をしてまいりました。したがいまして、LLPという言葉を使うというのが基本ではないかなと思いますけれども、さらに知恵を出してまいりたいと考えております。

村井(宗)委員 今経済産業省の方は、LLPという言葉が普及しているというふうに言っておられますが、多分私は、一回世論調査をする必要があると思うんです。国民のうち何割がLLPという言葉を本当に知っているのか、そして、本当にぱっとそれで出てきたときにどれだけの人が理解してイメージがわくのか。私はまだまだ問題があるのかなという気がして、不安に思っています。また後日その問題を考えていただければというふうに思います。

 では最後に、中川大臣にお尋ねしたいと思います。

 新連携の質疑の際にも申し上げたんですが、やはり、新しい施策や制度をただつくっただけではなくて、必要な人にとってできるだけわかりやすく、できるだけ簡潔に理解していただき、そしてその制度や仕組みをより早く普及させていくことも経済産業大臣としてぜひお考えいただかねばならない点だと思っています。

 前回の質問では、日本版SBIR制度における六省庁縦割りの問題を取り上げさせていただきましたが、今回のLLP制度の普及推進に関しても、文字どおり省庁の枠を超えてPRしていく話ではないかと思います。また、それだけの効果も期待できるものだと思います。

 大臣にお聞きいたします。このLLP制度の普及推進に向けた今後の取り組みと、例えば、期待されている農業分野での活用に向けた農水省との連携など、省庁の枠を超えた取り組みの拡大についての御所見をお伺いいたします。

中川国務大臣 もちろん、日本の中小企業、ベンチャーを初めとして、事業活動の活発化のために大いにLLPを活用していただきたいということでございますから、何も経済産業省だけで、あるいはまた経済産業省所管の経済活動体だけでやるとは毛頭考えておりません。そういう意味で、農水省の方も、こういう形の新しい事業形態ができてくるということは歓迎だというようなことも公式の場で言っておられるようでございますから、例えば、農業者と農業関係の食品とか流通とか、あるいは農業機械とか、いろいろなところとが組んでやっていく、あるいは農業組合とやっていくということも含めて大いに活用していただきたい。それによって、農業あるいは食品産業その他、例えば福祉関係とかいろいろな分野で、こういうスピード感を持って小回りのきく事業体がどんどん活用されていけばいいと思っております。

 ちなみに、LLPがもっと普及するように国民の皆さんに、関係者の皆さんに利用していただくように、我々はPRが大事だということは村井委員からもいつも御指摘いただいているところでございますので、これについてもPR、あるいはまた、今事務当局の方から、LLPは大分普及してきた、私も今手元に幾つか新聞記事の切り抜きがございますけれども、例えばNPO法人なんというのも、最初は何だったんだろうと思いましたけれども、今すっかり国民に定着しておりますので、一日も早く国民にこのLLPという言葉が定着し、活用していただけるように、我々としてもさらに努力していきたいと思っております。

村井(宗)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

河上委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 渡辺でございます。

 それでは、この法案の審議、質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、きょうはせっかく経済産業大臣がいらっしゃいまして、なかなか面と向かって質問をする機会がございませんので、ひとつまず冒頭お尋ねをしたいと思うんです。

 この数日、きのう、おとといあたりちょっと話題になっていた愛知万博、愛・地球博についてなんですけれども、小泉総理大臣のツルの一声と言われていますが、本当にそういう一声があったのかどうかわかりませんが、感想を述べられたことが、弁当の持ち込みぐらい認めてやってもいいじゃないかと。

 正直言って、我々も先般この経済産業委員会で行かせていただきまして、まだすべてでき上がっていない中で関係各位の御案内で、急ぎ足でありましたけれども、ざっと概要を見せていただきました。これは、私個人の感想はさておきまして、かなり大勢の方が来られる、国としては半年間で千五百万人の入場者を見込んでいる中で、もう八百万枚ほどの前売り券が出ているんだというような説明を聞きまして、ただ、始まってきたらこれはいろいろな問題が出てくるだろうなと。

 一つ驚いたのは、藤が丘という駅で、名古屋の駅から地下鉄に乗りまして藤が丘であの例の新交通システムに乗りかえると、実は、キャパシティーが合わなくて、乗りかえが大変なアキレス腱なんですというふうにいきなりおっしゃっていました。そうしたところが、実際始まってみると、実はそこで一時間待ち、リニアに乗る方々が大変な数に膨れ上がってしまった。例えばこういう問題ももう既に指摘されていますし、また今回のような、まさにもったいないということがキーワードでありながら、入場する人たちには弁当をあけてこれを外で捨てなきゃいけないということまでも発生したわけでございまして、私は、これはもちろんテロ対策だとか何だとかということを含めて、警備をされる方はよくわかりますけれども、やはり、まさに来る方が不満を持ったり、非常に不愉快な思いをしてまでやるのであれば、もうちょっと事前に何とかならなかったのかなと。

 一日五万人から二十万人の方の入場を見込んでいる鳴り物入りで始まったこの愛・地球博が、実は食事をする場所が限られていた、あるいは単価は、当然テナントもビジネスですから、ある程度の額にしなければやっていけないんだという中でやっていくとすると、これはよく言われているように、ハンバーガーセットが千円だとか、何が千五百円だとかでびっくりしたと。

 これは、今のようなネット社会ですと、こういういろいろな意見というのは、感想がどうだったかともう既に一部マスメディアにも随分手厳しく辛口で書かれている部分もあるのは御存じだと思いますけれども、この愛・地球博が始まってみて、所管大臣とされまして、こういう今の問題が幾つか出てきた中で率直にどうお考えか、どう見ていらっしゃるか。始まってみて想定したことよりもいろいろなことが起きたなというふうに思っていらっしゃるのかどうなのか、その点につきまして、冒頭まず法案の質問に入る前にお尋ねしたいと思います。

中川国務大臣 結論的に言うと、渡辺委員が自分の感想は別にしてというふうにおっしゃいましたけれども、ぜひ感想も聞かせていただきたいんですけれども、私も建設中を含めて何回か行きまして、とりあえず、三月二十五日から無事スタートできてよかったねというところで一つほっとしているわけであります。しかし、これからが正念場。世界じゅうから、そして日本じゅうから、特にお子さん方に来ていただきたいということは私、強く希望しているわけでありますけれども、そうなってきたときに、想定していたことよりも全然違うことが発生をする、例えばもう既に人気パビリオンでは二時間待ちとか、きょうはもう見られないとかということになると、せっかく来た特にお子さんあるいは外国から来た方には、申しわけないと担当として申し上げるしかないわけでございます。

 総理からも、とにかく来ていただいた方の立場で、できるだけ楽しく見ていただくように配慮をしろということは前々から何回も私も指示を受けているところでございまして、その一つがお弁当の件であったわけであります。もちろん、各国のお国料理みたいなものも本当にいっぱいあるわけですから、それも大いに楽しんでいただきたいという気持ちもありますし、他方、朝早くお母さんがお弁当をつくって家族がみんなで来るというその気持ちを、いきなり、行ったらだめですからごみ箱と、これはちょっとひど過ぎると私も率直に思ったところで、指示をしたところであります。

 そのほか、私としては、これは海外にいる人から聞いた話として、世界の主要都市に愛・地球博のポスターが町の中に張ってありますけれども、これが非常にわかりにくい。何かマンモスの写真の上に愛知エキスポなんて書いてあって、一体どこの国の何のイベントなんだ、よくわからないという御指摘も受けましたので、海外のポスターも日本の愛・地球博のポスターだということがわかるようにしないとだめだということで、今ポスターを修正させているところでございます。

 事ほどさように、実際やってみると、大阪万博は今から三十五年前のことでございますので、いろいろな試行錯誤をしながら、問題点が出れば早急に対策をとり、きちっとして、これからも気がついたところは当委員会の先生方、あるいはまたインターネット等を通じてどんどん御指摘をいただき、少しでも来ていただいた方に目的達成、つまり、来てよかった、楽しかった、勉強になった、そして、家族としていい時間が過ごせた、友達といい時間が過ごせたというようなことになることが最終目的でございます。弁当やポスターの例はごく一例でございまして、これからもどうぞいろいろと御指摘をしていただき、主役であるお客さん方に満足していただけるように、これからも一生懸命努力していかなければならないと思っております。

渡辺(周)委員 私、今、中川大臣の率直な御感想を聞かせていただいて大変心強く、うれしく思ったわけでございます。

 私も、小学校の四年生のときだったでしょうか、大阪エキスポ七〇があって行って、いまだに、何か非常にわくわくとしながら、エキスポ七〇の未来という一つのテーマで、あるいは世界というテーマの中で非常に喜んで駆け回ったような思い出がございます。

 今の子供たちは、いろいろなテーマパークがございますし、ネット社会、いろいろな情報というのは当時に比べれば物すごく、うらやましいぐらいにいろいろなことが吸収できるわけですけれども、あるいは体験してきたわけです。それでもやはり、未来に対する期待とか、科学技術に対する期待だとか、あるいは環境というものがいかなるものであるかということについて、我々が幼かったときのような何か一つの契機になってもらえたらと思うんです。

 ただ、本当に、今おっしゃったみたいな、運営、警備上の都合や、あるいはエキスポのとにかく事なかれ主義で何でも過剰なまでのことをして、それが結果的に、非常に、何だ、あんなのだったらお金払って並んでまで行くことなかったというようなことになったら、一体それは何の意味があったんだろうなと思いますし、まさに主催者側の理屈ではなくて、ぜひ来る方々の立場に立って、テロの脅威をいえば、これは東京駅だってそれこそテーマパークだって一緒なんですね。それは、どこだって人が不特定多数集まるところは当然危険なわけでございます。

 ですから、例えば、今ペットボトルを持ち込んじゃいけない。だけれども、例えば、では、これから夏の暑いときになって子供たちがその中で熱中症や日射病になったらどうするんだと。水分はたくさんとりましょうと言う割には、行ってみたら高い物ばかり買わされて、では、水筒をぶら下げて、いつも水筒の中に何か入れているわけじゃない。では中に入って水分をとることができないのか。こんなことだって、これはやはり親御さんたちからいろいろ出ているわけですね。今春休みですけれども、ゴールデンウイークだとか夏休みになったら行こうねと言っている、ところが、こんなのだったら行かない方がいいんじゃないかと。だとすれば、当初もくろんだ千五百万人という人数は、これは果たして本当に確保できるのか、達成できるのかなと、まさに不安になるわけでございます。

 そういう意味で、これは総理大臣の一言のみならず我々も、いろいろな方でこれからこの半年間の期間運営していく中で、いろいろな声が出てきたことにはやはり謙虚に耳を傾けて、とにかく改善をする。これは恥ずかしいこと、格好悪いことなのかもしれませんけれども、やはり見直す、あるいは柔軟に検討し直すということは可能な限りやっていただきたいと思うんですね。また、そういう声が世論として起きた場合には柔軟に対応できますように、警備当局も含めまして、主催団体、財団も含めてぜひそういうことに対してはリーダーシップを発揮していただきたいなと思います。

 もう一回決意を聞いて、次の質問に移ります。

中川国務大臣 全くそのとおりで、もちろん安全第一、それから事故とか病気とかが起こらないということが大前提ではございますけれども、とにかく楽しんでもらって、何らかの感動なり、今渡辺さんが大阪万博のときの記憶、私も高校生のときに行って、真夏に行って、暑い、しかし、月の石とかテーマ館のすばらしい正倉院の建物を擬したパビリオンとかは、今でも記憶に残っております。とにかく、子供たち、世界じゅうの人たちに、我々が三十五年前のこともこうやってやりとりできるぐらいの、あんなような形になるだけの内容を持っている万博でございますから、それ以外のつまらないことで、つまり弁当がどうしたとかペットボトルがどうしたとかそんなことで、本当に、せっかく来たのに見られない、あるいはまた不愉快であるということになったらこれはもう大変なことでございますので、もう御指摘のとおりでございますし、どんどんそういう声を上げていただきたい。

 私は、帰りに目安箱でも置いて、出口のところで感想はどうですかというものでもやろうかなと実は内々思っていたわけでありますけれども、いきなりこの公式の場で言ってしまいましたけれども、とにかく、来ていただいた方に少しでも喜んでもらう、そして、我々の自然の叡智、あるいはまた日本、御地元が頑張っている万博を何としても成功させたいということで、どうぞ渡辺委員にもこれからも引き続き何なりと御指摘いただきたいと思います。

渡辺(周)委員 ありがとうございました。

 それでは、きょうの案件でございます法律案につきましての質問に切りかえさせていただきたいと思います。

 もう大分我が党の委員からいろいろ問題点が指摘されていますので、できるだけ重複を避けて質問をしたいと思っております。

 このLLPの設立に向けて、これから国としてどういう準備をしていくのか。あるいは、LLPが設立をされるということで、企業でありますとか大学でありますとか、こういうところでもう既に準備を始めているというやにも聞いているわけでございます。

 そこでお尋ねしたいんですけれども、あれは平成十四年、十五年、十六年度、昨年度までだったでしょうか、たしか何か大学発のベンチャーを千ぐらいやろうというもくろみが一つあったやに聞いておりますけれども、例えば大学発ベンチャーということが現実どれぐらいまでこの三カ年で進んできたのかということ。それから、このLLP設立に向けて、企業や大学の現状、どれぐらい準備している、あるいは問い合わせが来ている、あるいはこんな話で今進もうとしているということ、どのような関心が高まっているのかということにつきまして、まず冒頭お尋ねしたいと思います。

齋藤政府参考人 御質問の大学発ベンチャーでございますが、平成十四、十五、十六の三カ年で千社まで持っていきたいということでやっております。

 正式に年度末の数字が出ておりますのは、昨年末で七百九十九社。それで、昨日十六年度が終わったわけでございますが、途中段階でどんどん集計が入ってきているものでももう千社を超えているということでございますので、所要の成果は十分上がったのではないかということで考えております。

北畑政府参考人 LLPの準備状況についての御質問でございますけれども、中小企業の物づくりの産地、そこの組合から、中小企業の連携としてこの制度をぜひ使いたいということで具体的な相談を受けております。また、先ほど大臣の方から答弁させていただきましたけれども、農業関係から、農業分野のこういう連携事業についてこれが使えるのではないかということで御関心とお問い合わせをいただいております。

 それから、先ほど齋藤局長から答弁いたしましたけれども、大学発ベンチャーの受け皿としてはこのLLPは大変適切な受け皿だと思っておりまして、こういったところで活用されるのではないかと期待をいたしております。

渡辺(周)委員 まさにきょうもこんな形で、このような新たな経営形態のメリットが今あるわけでございます。もしかしたら、知恵があれば、意欲があれば、あるいは何らかの研究成果があればこれを実現できる。今までだったらなかなかできなかったことが、今回のいわゆる株式会社と有限会社、そして民法組合の利点、それぞれの利点を合わせた形でのこういう形態がつくれることで、まさにそうした地方から、具体的には農業の分野でありますとかあるいは地域の産地で何かそういうことができないかということで、確かに、今回の法律の目的であります新たな経済活力を生み出す原動力になるのかな、新たな起業が行われるのかなということでは、これから周知されていけば、私どもとしても非常に期待をできるところなんですけれども。

 一つお尋ねしたいのは、現実問題として、有限責任、構成員課税、そしてまたもう一つは内部自治の原則。非常に立ち上げやすい組織である反面、そのメリットの反面で、私はデメリットも実はこれはあると思っているんです。

 一つお伺いをしたいのは、まず信用性をどう高めるかということだと思うんですね。これは、例えば出資比率にこだわらないということで、きのうもちょっと役所の方に聞きましたら、出資金というのは、理屈的には、一番少なければ二円からですか、一円ずつ出して二円から出資できるということを実はちょっと伺ったわけでございますけれども、そういう理解でいいのかどうなのかということがまず一点でございます。

 つまり、社会的信用というのは、これは実際運用が始まってみないとわからないことでございまして、先ほども、今申し上げましたみたいに、出資金の額に応じて、応じなくても、というよりも、例えばもし数円とか数十円単位でもこれが設立できるということになれば、それはイコール財務力が実はない。

 そしてまた、簡単に運用できる経営システム。これは後ほどちょっとお尋ねしますけれども、意思決定機関を設置しないということが、柔軟な意思決定、スピーディーな意思決定ができるという反面で、では、例えばこの意思決定ができない場合はどうするのかということも出てくると思います。これは後ほど質問するとしまして、こうした信用力ということはまだまだこれからつくり上げていかなければならない非常に大事な問題だと思います。

 やはり日本では株式会社を信用するという風潮が強いわけでありますから、そうしますと、このLLPの社会的信用というものをこれからどうつくり上げていくかということにつきまして、これは国としてこれからスタートしていく上でどうお考えになっているのか、その点につきましてお尋ねをしたいと思います。

北畑政府参考人 まず最初に、出資の点についてのお問い合わせでございます。

 法律の十一条で、「組合員は、金銭その他の財産のみをもって出資の目的とする」と書いてございます。したがって、複数の組合員がいるという前提でございますから、御指摘のとおり、一円ずつ二人が出していただくという極端なケース、これでも可能であります。ただ、そのことが信用につながるかどうかということは、これは別問題であろうかと思います。

 それから、業務の意思決定につきましては、全員参加、全員の同意というのが原則でございます。これは法文の十二条で規定をしてございまして、とりわけ、重要な財産の処分や譲り受け、多額の借金は、これは絶対的に総組合員の同意事項ということになっております。

 片方、その対極の軽微な業務につきましては、十四条で常務という規定がございまして、日々の日常的な物品の購入契約のようなものは単独でもできるということでございます。

 大半はその真ん中の部分の業務執行だと思いますけれども、これはあらかじめの取り決めによって多数決で決めるとか、あるいは組合員間で分担をするということの取り決めができます。ただ、この内部の取り決めにつきましては善意の第三者には対抗できないという形にしてございまして、そのことで取引関係の安定を図ろうといたしております。

 それから、信用を高めるという意味で、株式会社に比べて信用力がないということが事業の支障になるのではないかなというのは、御指摘のとおりでございます。この制度が生きるかどうかというのは、例えば融資をしてくれる債権者の関係で信用があるのかとか、取引をする相手側が売り掛けで商品を引き受けるかどうかという意味で、取引の相手方に信用があるかどうかということだと思います。この点につきましては、組合の事業内容あるいは財務状況を開示するということを法文上義務づけをしておりまして、債権者であるとか取引の相手方がいつでもそれを閲覧できるという体系をとっております。

 それから、組合契約につきましては、登記を義務づけておりまして、組合員が有限責任であるということを登記簿上公示をする。それから、組合の事業や名称、組合員の氏名、LLPに関する基本的な事項を開示するということを義務づけをいたしております。

 それから、財務諸表につきましては、組合契約書と財務データ、これを事務所に備え置き、請求があれば閲覧に供するということが法文上に書いておりまして、こんなことで客観性を高め、信用を高めていくという努力が必要かと思います。

 何よりも信用は、いい事業がこのLLPを活用させて実績を上げていくということだと思いますので、その点の努力をしてまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 まさに先ほどからの質疑でもございますように、このLLPという存在自体がまだまだ社会的にも周知されないし、周知されるにはまたそれなりにやはりかなり努力をしないと信用されないだろうというふうに思うんです。

 それだけに、今回の、今私が問題点として指摘をしましたこの信用力ということをどう客観的に担保するかということは、これはやはり大事なことであります。結局、これは立ち上げることが目的なんじゃなくて、立ち上げてから新たな経済活力を生む、その起爆剤になるということが目的であります。とにかく、立ち上げるまでのことは今議論していますけれども、立ち上げてからはどうするのかということにつきまして、これから当委員会の中でも質問もいろいろ出て、現状を踏まえながら質疑をしながら、よりいいものをつくっていくべきだろうと思います。

 これも私がちょっと知っている企業の経営者と話をしたら、では、例えば今こういう制度が考えられているということで、今やはり信用という意味合いでいくと、取引という面になったとき、では、LLPとの取引というのが果たして信用されるんだろうか。

 もう一つは、例えばいろいろな情報開示をして当然透明度を高め、事業内容なんかを見せなきゃいけなくなる。中には、研究開発部門なんかになりますと、これはなかなか開示をしていくということというのは、では、どこまで書いたら、開示したら、いいのだろうか。つまり、非公開で事業を行う、中には研究開発部門なんてこれはできれば非公開にしたいという部分も当然出てくるわけですね。

 ですから、そこのところを、ではどこまで、信用を高めるためには公開をしなさい、あるいはしなければいけないと思う、だけれども、内容によっては、これは余り開示をしてしまうと自分たちの手のうちというか、やっていることがわかってしまう。特に、研究開発部門なんかになりますと、これはできるだけ他社にわからないように、言ってしまえば要するにパクられないように、例えばコンテンツの分野なんかについては当然出てくるわけでございます。そこのところはではどうするんだというのは、実はこれはやはり利用者側、利用しようとしている人たちの中には非常に不安があるわけです。

 その点はこれからどうしていかれるのかというところにつきまして、信用を高めるということと、もう一つは、企業の秘匿しておきたい部分、なかなか開示したくない部分について、どうそれを守ってあげられるかということにつきまして、どうお考えなのか、その点についてもさらに質問しておきたいと思います。

寺坂政府参考人 研究開発に関しましてお答えいたしたいと思います。

 LLPで研究開発の一つの事業を進めて、それで何らかの形で成功いたしまして、例えば知的財産権が生じたというような場合に、それは組合員共有の組合財産となるわけでございます。その上で、そうした知的財産権から得られる利益をどう配分して、あるいはLLPが解散をする場合にだれにどう帰属させるかといったようなことは、組合員同士が、まさに内部自治ということで柔軟に貢献に応じて取り決めることになるわけでございますけれども、例えば知的財産権の帰属をめぐってトラブルが起きるとか、そういうことが場合によっては予想されるわけでございまして、そういうことを、事前に帰属に関する取り決めを行っておけば、かなり無用なトラブルというものは回避することができるのではないかというふうに考えたわけでございます。

 私ども、これから、LLPの契約に関しますモデル契約といいますか、そういったものをつくるべく検討を続けていきたいと考えているわけでございますけれども、例えば産学連携とか、そういった知的財産なんかが絡むようなものに関しましても、そういう知的財産の帰属に関する取り決めというものをあらかじめしておくことが大切ですよというようなことを慫慂するなど、そういったモデル契約書の作成作業などの中で検討を重ねてまいりたいと思っています。

渡辺(周)委員 もう一つ、ちょっと私が聞きたかったのは、情報開示をするということは、どこまでするという、これは何かガイドラインはあるんですか。つまり、どこまでだったらいいと。余り細かく書きたくないような情報開示については、これは何かモデルケースがあるということで判断していいんですか。その点、ちょっと。

北畑政府参考人 会社の知的財産をどういうふうに会社の信用力を高める財産として工夫をしていくかというのは、このLLPだけではなくて大企業も含めた課題でございます。

 私ども、知的財産権が担保として使えるかどうか、あるいは、知的財産権の有無を財務諸表に公示することによって会社の評価を上げるかどうかということについては、これは企業全般の問題でございますから研究会を設けまして、一部の、大企業が中心でございますけれども、知的財産報告書というようなものに取り組み始めた企業もございます。

 そういう作業をした過程で、先生御指摘のとおりでして、知的財産のうち権利になっていない部分のノウハウというのは、開示をしないと担保にもならないし、信用にもならない。しかし、開示をし過ぎると会社の情報が外に漏れるということでございまして、そこの工夫を有識者を集めまして議論をいたしました。そこでの成果がLLPの場合の知的財産の活用の場合にも使えるんじゃないかと思いまして、御指摘のとおりのことだと思いますので、なお検討させていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 ぜひこれも、始まってからいろいろな問題点、当然設立した側からも出ると思いますので、これは私も答弁する側にいたら非常に難しいことを、自分で言っておきながら、自分も答えにくいことを聞いているなと思うんですけれども、ぜひ、その点については、これから、信用を高めながらも、高めるためには情報開示が必要だ、しかし、情報開示をし過ぎると今度は企業として存続価値がなくなってしまう、保護されなくなるということも含めて、これは両面で検討していただきたいなと思います。

 それと、また一つ、この今回のLLPのメリットについてちょっとお尋ねをしたいんですが、メリット、反面でデメリットと先ほど申し上げましたけれども、メリットの中には、貢献度に応じて柔軟な損益配分が可能であるというふうにうたわれております。まさに出資比率に従わずに、出資比率が例えば九対一であっても、これは損益、益の方でございますけれども、例えば六、四でと。例示が幾つもありますね。例えばメーカーは九割出資をする、研究者はいわゆる一割を出す。しかし、もしそれが何か成果を得た場合には、利益配分は例えば企業は六で研究者が四であるということで、出資配分に比例せずにいろいろと内部で取り決めができるんですよということが一つメリットでありますけれども。

 これは例えばなんですけれども、では、出資比率にこだわらないということで、売り上げの出来高や研究成果によって利益分配を決めるということになっても、実際、この中に出てくるのは、経済産業省がうたう中には、損失があった場合でも、これは課税として通算できれば節税効果にもあらわれるとありますけれども、じゃ、利益が上がった場合、利益が上がる場合、つまり、いろいろやってみた、そうしたら、実は莫大な利益を生むということがわかってきたと。そうなったときに、考えてみたら、これだけのことをしながら六、四というのはもう惜しいと。逆に言うと、出資比率に見合う形で、例えば契約あるいは定款を変えるというようなことが起こり得るんじゃないかと思うんですね。

 特に、大手と中小の、例えば一つのLLPを考えた場合には、先ほどもどなたか委員の中に指摘がありましたけれども、大企業、中小企業、例えば系列間の問題ですね、あるいは取引関係から不利なというか優越的な地位に立っているというところで、例えば定款を変更する。当初の出資比率の損益配分というのは途中で見直して、いや、これは莫大な利益になるから、もう少し企業側に有利になるように何とか配分比率を変えられないかということだって起きてくる事例も当然想定できると思うんですけれども、そうなった場合はどうなるんでしょうか。ここら辺についてのことを教えていただけますか。

北畑政府参考人 損益の分配についての比率には、組合員の間であらかじめ全員の同意で定めておくというのが基本でございます。

 当初想定していなかったような事情が起こった場合に、これが変えられるかどうかということなんですけれども、原則は変えられない。変えることについて正当な理由があるかどうかというところの判断であろうかと思います。

渡辺(周)委員 まさに、最初に契約をするという中で、例えばイギリスの内部関係、これは契約についてでありますけれども、その契約がなかなか合意に至らない場合、つまり、最初からもう固定して、この配分を変えられないと言うけれども、変えることを、例えば何か柔軟な形で幅を持たせておく。例えば、五五対四五とか、七〇対三〇じゃなくて、こちら側は、出資額が多い方が例えば最低四割から最高六割とか、逆に言うと、出資額の少ない方が最低四割から最高六割とか、幅を持たせて契約した場合、こういうことというのは考えられるんですか、その点はどうだったのかというのがまず一つ。

 それと、実は契約で合意に至らなかった場合には、利益分配の決め方等についてもし話し合いをしてもなかなかまとまらなかったという場合は、これはイギリスの場合だと、いろいろと、すべての構成員の出資持ち分と利益持ち分を平等にするとか、あるいは意思決定は構成員の多数決で行うとか、このように例示がされているんですけれども、我が国の場合は、例えばこういう契約に至ってはどうされるのか。

 つまり、契約ということについて専門性を持っていない人たち、経験を持っていない人たちがそこに集まる。例えばベンチャーの企業であったり、研究者であったりする、そういう分野について非常にたけているんだけれども、契約とかそういう法規的なことになってくると、ちょっと門外漢の人たちもいらっしゃるわけですね。そういうときに、例えば何らかの形で経済産業省なりが地方の窓口で、例えばこういうアドバイスができますとか、あるいはこういうところでなかなかちょっと行き詰まったときには何らかの形で示唆をすることができるということは、当然お考えになっているんでしょうかね。その点についてはどうですか。

北畑政府参考人 法案の三十三条に組合員の損益分配の割合についての定めがございまして、総組合員の同意により、分配の割合を決める、これをあらかじめ決めるというのが基本でございます。

 そういうことについて合意ができなかった場合、その場合には、出資価額比率、普通の株式会社と同じでございまして、出資額に応じての損益の分配ということになりますので、総組合員の同意があって、あらかじめ決めた場合に限り、出資額とは異なる定めができるということでございます。

 したがって、法文の解釈として、将来、総組合員の新たな同意があって、これを変える、変更するということは、正当な事由があれば可能だと思います。ただ、税務当局とはこの部分についてさらに調整をさせていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 まさにこれは税務当局とも、実際、この構成員課税する段階において、当初算定していたような額と違う、しかも、もし、これは出資比率といわゆる利益配分が変わってくると、当然課税する額も変わってくるわけですから、その辺については、本当にまだそこら辺の明確なルールが定められていないわけでございます。そこを本当にどうするかということを、これから有識者の方々も含めてぜひやっていただきたいと思うんですね。

 今回のLLPの法案については、いろいろ専門家の方、会計士の方なんかは経済誌や専門誌等にいろいろ意見を寄せています。読みますと、やはりこの課税の取り扱いについて明確なルールが定めていないということ、あるいは先ほどの意思決定をするということが、これはなかなか、まだまだいろいろな問題が出てくるのではないかなということも指摘をされております。

 ですから、その点についての、いろいろなことが出てきた場合に経済産業省としてどうするのかということについて、ぜひもう一度お尋ねをしておきたいと思います。

 それについては、大臣、今後、専門的なことはあれですので、今の議論を聞きながら、実際、これをどう本当に、信用を高めながら、要は好スタートを切れるかどうかということにつきまして、今いろいろ私も質問で指摘をさせていただきましたけれども、聞いていて、大臣、どのようにお考えになったか、あるいはどうしていかれるのか、その辺についてちょっとお答えいただけますでしょうか。大臣にまだこの点について聞いていませんので。

中川国務大臣 今の渡辺委員とのやりとりを拝見して、そもそも、冒頭御指摘のように、株式会社等に比べると、知名度あるいはまた信用度において劣る、あるいは劣っている、これを一刻も早く、一日も早く信用度においてもその目的の範囲内で高めていくためには、やはりできるだけ多くのLLPが設立され、数だけではなくて実績を上げていただくということが大事だと思います。他方、迅速に、柔軟に、ある程度簡便にできるということのメリットを考えると、がちがちのものであるということは、ある意味では、対外的な信用力という面からは重要かもしれませんけれども、しかし、そこは、何といいましょうか、フットワークがいい分、信用力においてはなかなか見えにくい部分というか、わからない部分もある。だから、例えば知的財産なんという隠したい部分についてはどうだというような御質問もあったんだろうと思いますけれども。

 とにかく、先ほどの別の委員の御質問にもあったように、不正が行われないということ、それからまた迅速にやられるということによって、もちろん大企業でもいいんですけれども、ベンチャーあるいは中小企業がスピード感を持って新しい事業、新しい研究開発に対応できるということが我々にとっての最も期待しているところでございますので、そういう意味で、これをスタートし、できるだけ周知徹底をし、多くの人たちに利用していただいて、そして目的を達成していただくことによって、事業活動の形態の多様化の大きな、先ほど申し上げましたようにアメリカの企業の半分はLLCで行われているわけでありますから、日本でも一つの主要な位置づけを占めることによって、日本の経済の活性化あるいは意欲のある人の事業化に貢献していきたい。

 いろいろ細かいところは、これからガイドラインをつくったり、あるいはまたいろいろな方々と御相談をしたりしながら修正をしていくことということも、まだまだやるべきことはあるとは思います。この法案の御審議を通じて、いろいろとまた参考になるような御意見、今の渡辺委員のような御意見もございますので、そういうものも踏まえながら、施行の時点までにできるだけ精度を上げていって、そして目的達成のために活用できるように、そしてまたスタートした後も、いろいろな問題が出てきたときには、できるだけ混乱のないようにしていきたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 ぜひ健全な発展のために先頭に立っていただきたいと思います。

 まだ一分か二分ありますので、ちょっと聞きそびれたところを質問しておきたいと思います。

 その健全な発展のためにどうするか。信用を含めて、非常に信用力が乏しい中で、金融機関も含めた、政府系も含めまして、何らかの金融機関としての支援をどうしていくのかということを最後に聞いておきたいと思います。

 それともう一つは、乱用されないということを前提に考えた場合、赤字隠しのためのペーパーカンパニーに利用されるんじゃないか。出資者は必ず事業を執行することとし、経営に関与しないLLP利用は認めないというふうになっていますけれども、では、それをどう担保できるか、これをどう守らせるかということにつきまして、現状、どのように考えているか、この二点につきまして御質問をしまして、私の質問を終わりたいと思います。

北畑政府参考人 中小企業がLLPを使う場合につきましては、中小企業庁の各種の税制、金融措置が活用できるように中小企業庁と調整をいたしております。

渡辺(周)委員 もう一つ、いわゆる経営に関与しないLLP利用は認めないというけれども、それはどう担保できますか。

北畑政府参考人 法律上は、第三条の規定で乱用禁止規定というのが一応入れてございます。

 それから、節税、脱税の手段として使われないかというのは、税務当局とこの制度創設に当たるとき非常に議論した点でございます。最大の担保は、全員が参加をする、お金だけを出してあとは損失の配賦を受けるという形での節税商品に使われる道は防ぐということで合意をいたしておりまして、それは法律上担保されております。

 仮にそれを脱法的にやった場合どうなるかということでございますけれども、これは構成員の所得税、法人税の課税の際に否認をされ得るということになりますので、そういった形で担保をいたしております。

渡辺(周)委員 終わります。

河上委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 きょうは民主党の中で私が最後ですので、ちょっと網羅的にいろいろな質問をしていきたいと思います。あとまた大臣にもたくさん質問をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 このLLPですけれども、今までずっと経産省が主導となって進めてこられましたベンチャー支援といいますか、起業家が足りないということでどんどんどんどん業を起こさせようということに関しましては、もう出資金も、先ほど聞きましたら二円でもいい、それでしかも内部の自治も自由に決められるということで、これは結構究極の形じゃないか、これは一分でも早く成立させなきゃいけないなと私も思いましたけれども、こういうおいしい話には必ず、穴があるといけないので、一つ一つちょっと聞いていきたいと思います。

 先ほど、まずLLPの意思決定のことに関しまして、条文上も、総員で決めるもの、また三分の二以上の多数というのがありました。通常のいろいろな契約ですとかいろいろな物品を買ったりするときにも、一応、全員で一致でいいのかそれとも一部でいいのかという争いはあると思いますけれども、反対をする組合員というのも当然出てくると思うんですけれども、反対した人の扱いというのを伺いたいと思います。

 まず、反対するときに、組合員の人、これは脱会することはできますか。これは、では局長にお伺いします。

北畑政府参考人 法律上、任意脱退の制度が定められておりまして、一定の要件に該当するときは、反対の組合員が脱退をするということは可能と考えております。

高山委員 法律上の脱退の要件というのをぱっと見ましたら、破産だとか死亡した場合ですとか、結構究極的な場合が多いんですよ。普通の、例えば取締役だったりあるいは単なる従業員だったりあるいは単なる株主だったりした場合には、株主だったら、方針に反対だったらその株を売ればいいわけですよね。あるいは取締役だったら、もう私はやめさせていただきますということですぐやめられると思うんですけれども、これはかなり結構やめにくくなっていると思うんですが、反対した場合にこれだけやめにくいというのは、大臣、これはどのようにお考えですか。

中川国務大臣 今の高山委員の死亡とか破産手続云々というのは、法定脱退ですよね。その前に任意脱退というのが二十五条にあって、各組合員は、やむを得ない場合を除いて、組合を脱退することができない、ただし、契約書において別段の定めをすることを妨げないということでございますから、やはりこれも決め事としてやっていくんだろうと思います。

 ただ、さっき何か物品の購入とかいうことをおっしゃいましたけれども、多分これはさっきのいわゆる常務活動の範囲ですから、これについては多分全員合意ではない分野に入ると思いますので、ケース、ケースによって多分違ってくるんだろうと思います。

高山委員 おっしゃるとおり任意脱退なんですけれども、そもそも民法の組合の例外というような位置づけだと思うんですけれども、民法の組合というのはなかなかこれまた人的結合が強いので、脱退だったり何だったりを認めないような法制度になっているわけです。それは、別の法人格でもないし、こういう人的結合の非常に強い中でやっているものだから、この人が抜けちゃったらもともとの何とか事業組合とかいう性格そのものが崩れてしまう可能性もあるかもしれない、だから、民法上は非常に脱退事由をぐっと厳格に解釈して、なるべく脱退できないというか脱退しにくいような制度にしているのではないかなと思うんですけれども、今回のLLPもそれと同じ思想なんでしょうか。

北畑政府参考人 たしか民法も原則は脱退について制限を加えているかと思いますけれども、定款によって脱退事由を定めて会員が出ていくということは、かなり大幅に実際の定款の定めでできておると思います。その点は、このLLPも、先ほど大臣の方から御答弁させていただきました二十五条で、基本的な考え方は同じだと思っております。

 ただ、先生御指摘のとおり、これは非常に人的結合の高い組織法制でございますので、組合員は、できるだけ当初のメンバーが継続的にメンバーで参加していくというのが基本だと思います。したがいまして、問題が起こった場合に、脱退ということではなくて、この法律では全員一致が原則ですが、あらかじめ多数決原則を一定の業務については導入するということが可能でございますので、そういう規定を活用することによってできるだけ多くの人が継続的にこの事業をやっていく、こういう運用になるのではないかと考えております。

高山委員 それではまた、細かい話ですけれども、仮に脱退した場合、出資した財産というのはどうなるんですか。これは局長で結構です。

北畑政府参考人 あらかじめ定めた規定に基づいて計算をして、脱退者に対して資産の分配をするというのが原則だろうと思います。

高山委員 あらかじめ当然そういう取り決めが、これはすべて契約ですから、全部あらかじめ契約があればということは当然なんですけれども、もしなかった場合どうなるんですか、これは。出資を幾らしました、それで私、もうこれはみんなについていけないから脱会いたします、これは当然あると思うんですけれども、その場合を教えてください。

北畑政府参考人 出資持ち分に比例をして払い戻しをするというのが基本だと思いますが、それと異なる定めをあらかじめするということは、制度上可能でございます。

高山委員 わかりました。

 それでは、先ほど同僚議員の質問の中で、新しくLLPの中で特許が生まれた場合、どういうふうに帰属しますかというのがありましたけれども、これは確認なんですけれども、新しく出てきた特許というのはだれのものになるんでしょうか。

寺坂政府参考人 組合員共有の組合財産となると考えております。

高山委員 共有ということは、民法の教科書的に言えば分割が可能だと思うんですけれども、そうしますと、仮に新しく特許ができたはいいんだけれども、その使い方をめぐっていろいろ教授と出資した会社ともめちゃったりなんかして、もう私はやめるなんと言って脱会した場合、その場合は特許の帰属はどうなるんですか。

寺坂政府参考人 先ほど共有と申し上げましたけれども、共有の一部として合有というふうに思ってございまして、分割はできないというふうに思っております。したがって、解散のときにそれをどう帰属させるかというのは、貢献に応じて取り決めるということになると考えます。

高山委員 ちょっと、僕も民法の一時間目ではないですから、余り合有とか共有とかでやりたくはないんですけれども、合有と共有だと結構違ってきますよね。共有だと分割が可能だというふうに僕は習いました。それで、合有というのはなかなか分割ができないんだ、総有というのは、全体に帰属しちゃっていてさらに分割ができない状態なんだというふうに習いました。

 もう一回確認しますけれども、では、特許はどういうふうに帰属になるんですか。改めて生まれた果実ですけれども、どういうふうにLLPに帰属するのか。これはちょっと大事なことなので、もう一回確認しておきます。

寺坂政府参考人 知的財産権ですね、合有というふうに考えております。

高山委員 大臣に伺いたいんですけれども、そうしますと、出資した場合はその出資割合に応じて戻るというのはわかりますけれども、これはベンチャーで今度新しいことをどんどんやっていこうというような目的に一番使ってほしいということでしたね。それで、例えば大学教授といろいろな企業が集まっていろいろやりました、新しい特許ができました、それでそれが合有してしまう、今度。そうなってくると、今度この使い方をめぐってもめたときに、脱会した人が、職務発明のときじゃないですけれども、後にもめるということは当然考えられると思うんですけれども、大臣、この点に関しまして、本当にこれは合有という考え方でいいのかどうかというのを伺いたいんです。

中川国務大臣 もう高山委員は全部御存じの上でさっきから脱会とかそういう話、御質問が多いんですが、確かにこれは、せっかくこの制度を発展させていきたいということになると、そういうトラブルが発生するかもしれないということで、大事な御質問だと思います。

 これも一時間目のことで申しわけないんですけれども、LLPというのは法人格がないというのが大前提でございますから、では契約する相手方あるいはまた融資するときの対象としては、実は法人格がないだろうということになるとそれだけでだめになっちゃうという可能性があるわけで、だから、その出資者が業務も遂行し、やっていくという人的結合の高い組織であるから脱退も比較的しにくい、持っている財産も合有という形で、Aさん、Bさん、Cさんという出資者イコール業務者がみんなで合有をするということでございます。

 万が一、何らかの事情で自分は抜けるというときには、その特許なりなんなり財産は、その間で、お互いの話し合いで清算をするなり、その部分を金銭でもって譲渡するなり、あるいは、最終的には司法判断ということになるんだろうと思います。

高山委員 いや、大臣、当然温和にいっているときは皆さんの話し合いでなると思うんですけれども、僕が非常に老婆心ながらといいますか、心配していますのは、もめたときにどうなるのかなと。そのときに、司法判断になったときに、今の特許権は合有なのか共有なのかとか、結構そういうことはすごい大事だと思うんですね。あらかじめこうだということがばちっと決まっているということが大事だと思うので、今聞いたわけです。

 それで、今、司法判断ということと、あと温和で抜ける人なんて、ほとんどみんな仲よしだからいないんじゃないかというふうに思うかもしれませんけれども、これは抜けたくなっちゃうようなことがあるかもしれないので、そのことについて、質問をまたちょっと変えていきますけれども、まず、LLPが債権者というか第三者に対しましてどういう形で責任をとるのかというので、これは契約責任、約束を守るということですね。何々を買ったら幾ら払いますといったら、これはだれが払うのかとかいう契約責任は一体全体だれに帰属するんですか、この法的な責任は。

北畑政府参考人 契約についての債務は、構成員であります組合員全体の共同の債務ということになろうかと思います。

高山委員 共同の債務ということになりますと、組合員の中の一人の人がやったことが全員の共同債務になるということですか。例えば、債務不履行責任なんかも、それは全員に帰属するというような考えでよろしいんでしょうか。

北畑政府参考人 融資を受ける場合の契約の相手は、組合員全員の共有債務という形になろうかと思います。

 ただし、この組合では組合独自の資産を持つということが可能になりますので、構成員である組合員の資産とは分別した形で管理された資産を引き当てに融資を受けるということが可能になろうかと思います。

 そして、この法律では、組合の事業で行った部分については有限責任でございますので、組合員が、別途保証している場合を除きまして、出資額以上に債務の請求を受けるということにはならないというのがこの制度のポイントかと思います。

高山委員 今度は大臣に、感覚的な問題でちょっと伺いたいんですけれども、組合が負った債務は組合員全員の共同の債務になるのだ、だけれども引き当て財産は、組合財産というのが別に責任財産としてあるので、そこにかかっていけばいいじゃないですかというようなことですけれども、先ほどから、起業しやすいように二円でもできるということになっていますと、これはなかなか、責任財産は極端に少ないと思います。あとまた、今までの民法の組合から考えていきますと、組合員の人全員が、あの人たちが組合員なのね、あの人たちが払ってくれるんだろうという安心感のもとに当然取引が始まると思うんですけれども、私が一番聞きたいのは、大臣に伺いたいのは、債務不履行責任が全部組合員にかかってくると言っておきながら、責任財産がそんなに少なくていいんですか。

中川国務大臣 それは、ですから二円しか資産がない場合には、おのずから二円が限度額になって不履行に対する責任が生じてくるわけでありますから、だからそこを、では出資者の方がお金持ちだからそこまでどんといくかというと、そこは分断されておりますと。LLPの持っている資産と出資者の財産とは分離されておりますというのが、このLLPのルールというか決め方になっておるわけです。

高山委員 私は、本当にこの契約責任というか、通常の場合においてはそういうリスクをばつっとそこで遮断してしまうということから、大きな高いリスクを勇気を持ってとれるのだということで、非常にいい制度だというふうには思いました。

 次にちょっと聞きたいのは、不法行為責任なんですけれども、LLPで第三者に何か損害が生じた場合、こういう不法行為責任はだれが負うんですか。

北畑政府参考人 有限責任になりますのは、組合事業に関連してでございます。御質問の不法行為につきましては、この規定ではなくて、むしろ民法の七〇九条の適用がございますので、不法行為を行った組合員の無限責任でございます。七〇九条上の責任を負うということでございます。組合員以外の、組合として不法行為が行われた場合、これも組合として七〇九条の無限責任を負う。不法行為に関しては原則無限責任だというふうに解釈しております。

高山委員 大臣、組合で行ったことに関しては無限責任になると。そうすると、ほら言ったじゃないか、だからおれは脱退したかったんだよという人が出てくると思うんですけれども、脱退した人にまでこれはやはり責任を及ぼすべきでしょうか。それとも、そこはもう遮断しちゃって、後から問題が顕在化してくることがありますから、脱退した後のことは私は知らないよというふうにできるのかどうか。これは、法的な問題でしたら局長でも結構ですが。

北畑政府参考人 不法行為は、あくまでその不法行為を行った個人ということになりますので、脱退した組合員であっても、組合員であったときに不法行為に関与していれば、その範囲で責任を負うということだろうと思います。

高山委員 それではもう一つ伺いたいんですけれども、ちょっと話が今の不法行為と離れるんですけれども、財産をどういう形で組合が所有できるのかというので、不動産あるいは預貯金、これはどういう形でLLPは登記したりなんなりができますか、名義が。

北畑政府参考人 信用を高めるためには、組合が資産をある程度独自に持つということが重要であると考えております。

 したがいまして、先ほども答弁いたしましたが、組合員の個人の資産とは別の形で組合の資産として管理をする、分別管理をするという規定を設けております。不動産につきましても、登記ができるということで手当てがしてございます。

高山委員 そうしますと、銀行預金や不動産の登記というのはどういう登記になるんですか。○○事業組合ということでしょうか、それとも肩書つきなんでしょうか。

北畑政府参考人 不動産については、不動産登記が可能でございます。預金も可能でございます。そのときの名義がどうなるかということでございますが、この制度の性格からいって、組合員の共有ということになっていますので、この全員あるいは一部の人の名義で預金をし、登記をする、その際に、LLPの所有であるということを付記することが可能、こういう工夫をいたしております。

高山委員 そうしますと、たしか不法行為の中に工作物責任といったようなものもあったと思うんですけれども、今、六本木ヒルズの回転ドアじゃありませんけれども、ああいう施設で非常に大きな責任が生じてしまうことというのがあるんですけれども、工作物責任は、これはだれが負うんですか。

北畑政府参考人 例えば、組合が持っている不動産あるいは資産にそういう製造物責任が発生した場合、これは基本的に組合の責任でございますので、組合の責任ということは、組合員全員の共同の責任ということになろうかと存じます。

高山委員 そうしますと、例えば、被害に遭われた方なりが損害賠償請求するときには、組合財産だけでは足りなかった場合、組合員の、構成員の方の財産にまでかかっていける、無限責任なんだということですね。

北畑政府参考人 組合が行った不法行為については、組合の責任というのが基本でございます。

 それで、組合がそれを弁済する資産を超えて損害賠償をしなきゃいけないということになった場合に、不法行為、製造物責任であれば、それぞれの組合員の個人の責任に追及されるということになろうかと存じます。

高山委員 大臣、今の意味、わかりましたか。今の局長の説明、僕はちょっとよくわからなかったんですけれども。

 不法行為一般のことは伺いました。その後で工作物責任という、また、ちょっと条文名は忘れましたけれども、何か後の方にあるんですよ、たしか。工作物を持っている人というのは、危険が生じた場合には無過失責任を負わなきゃいけないというふうにたしかなっていたと思うんですよね。そのときに、組合財産だけだと足りないことというのは多々あると思いますよ、工作物責任が生じた場合に。そして、その工作物責任が生じた場合に、組合財産だけで損害賠償を払い切らなかった場合に、それは構成員の、組合員の一般財産にまでかかっていくものなんですか、どうなんですかという質問です。

 それは何でかというと、今聞きましたよね、不動産が共有になっているんだ、みんなに持ち分権があって共有になっている。法人格が別にあるわけじゃないわけですからね。組合員の人たちが、みんなが持ち分権を持っている共有形態なんだということであれば、当然これは組合員の人に責任が生ずるんじゃないんですか。

中川国務大臣 そもそもLLPという制度は、また繰り返しになるかもしれませんけれども、その組合自体には法人格はありません。でも、民法上の組合と違って、それは有限責任です。有限責任という意味は、自分が出資した以上の損失は負いません、利益は出資者に還元されますという話と、今の工作物責任であるとかいろいろな不法行為責任については、その組合、つまりそこに参加している出資者、業務遂行者が無限責任を不法行為の結果として負わなければいけないということで、そこは今説明が明確にされているというふうに私は聞いておりました。

高山委員 今大臣の説明にもありましたように、説明といいますか、大臣に整理をしていただきまして私もよくわかりましたけれども、そうしますと、工作物に関しましては、工作物責任は組合員全員の財産にまでかかってくる、無限責任がもうかかっているんだ、こういう理解でよろしいですね。一応、もう一回確認ですけれども。

北畑政府参考人 大臣の答弁のとおりでございまして、不法行為、七百九条が適用される場合は、その個人の無限責任でございます。これは株式会社の取締役でもそうだと思います。(高山委員「いや、工作物責任ですよ、工作物責任は無過失責任だから」と呼ぶ)工作物責任の場合には、この法律の十七条で組合の業務に関する損害賠償責任という一般的な規定がございますので、これの解釈になろうかと思います。

 その趣旨を御説明いたしますと、まず第一には、組合の業務に関連してということでありますけれども、第三者に損害が生じたときは、組合員は、まず組合財産、別途管理されている組合財産があるケースですけれども、この組合財産をもって損害賠償の責任を負う、こういうことでございます。したがいまして、有限責任の範囲内かと思います。

 ただし、十八条で例外規定がございまして、その組合員に自己の職務を行うについて悪意または重大な過失があった場合、悪意、重大な過失があった場合には、この組合員個人も責任を負うという規定が入っております。第一は組合の資産で賠償責任をいたしますけれども、悪意があった場合にはその組合員が別途損害賠償の責めに任ずる、こういうことでございます。

高山委員 いや、だから聞いたんですよ。悪意とかなくても、工作物だったら負うんじゃないんですか、本来、責任を。無過失責任なんだから。

 だから、私は、中川大臣おっしゃるように、ああ、これは何か物を持って、回転扉みたいなそういうものを持っている場合に責任を負ってもらわないと、ここが、はい、有限責任なので終わりですとなっちゃったら困るなと思っていたんですけれども、悪意または重大な過失なんかなくても、そういう危険な、危険かどうかわかりませんけれども、普通のものでもそうですけれども、工作物があった場合には責任を負わなきゃいけないんじゃなかったかなと思ったものですから、もう一回伺ったんですけれども。

 その十七条だったか十八条の解釈ですけれども、そうすると、では、有限責任のままということになりますよね、今の解釈だと。悪意または重大な過失がないんだから。どちらなんですか。

中川国務大臣 十七条は、組合の業務に関して、つまり組合の本来やるべき業務に関して第三者に損害が生じたときには、これは有限責任ですと。十八条は、これは自己の職務を行うについて悪意または重大な過失があって、第三者に損害があった場合には、これは第三者に生じた責任を賠償する責任を負うということで、ここで工作物責任というふうに例示的におっしゃいましたけれども、あくまでも組合の業務に関して悪意がないあるいは過失がない場合と、過失があった場合で区別をしているというのがこの法の趣旨だというふうに考えます。

高山委員 そうすると、では無過失責任の場合にはどうなるんですかということで、僕は工作物責任を聞いたわけです。

 だから、本来業務かどうかわかりませんけれども、例えば、では幼稚園みたいなものをLLPでつくりましょうとなったときに、よく民法の教科書なんかにまた例が出てくるんですけれども、ブランコだとかああいうものだとか、登り棒みたいなものをつくっていて、それでけがをした場合というのは、これは無過失責任なんですよ。それは、傷つけるつもりでブランコなんかつくっているんじゃないんですよ。だけれども、無過失責任を負わなきゃいけないね、そういうものを持っている人は、所有者は。

 それで、本当は、例えばそれの管理者が負わなきゃいけなかったり何だったりいろいろあるんだけれども、究極的には所有者が負わなきゃいけないじゃないですかというのが工作物責任の立法趣旨だったと思いますけれども、そうすると、LLPでそういう不動産を持つ場合に関しては有限責任で済んでしまうということなんですか。

中川国務大臣 先ほど高山委員があるビルの回転ドアの例を出しましたが、あれも工作物責任であって、何も事故が起きると思っていたとは思えませんし、あるいはまた重大な過失があったかどうかということについて、まさに裁判所がこれは認定をするということになりますから、無過失責任なのか、あるいはまた過失、重過失、故意によるかというところは、あのエレベーターの例を見ると、結局は、やはり最初のうちは、我々に責任はありませんとあのビルのオーナー、管理者あるいはエレベーター会社は言っていたわけでありますけれども、これはやはり裁判によって最終的に判断される。そして、それが無過失である場合には、十七条によって有限責任である。そして、それが無過失だと思ったものが実は過失だというふうに認定されれば、あるいは故意だと認定されれば、それは無限責任になっていくという整理で私は理解をしております。

高山委員 今回の法案の十七条、十八条ということは非常によく整理されていると思いますけれども、では、そこは、民法の工作物責任の規定は今回のこの十七条、十八条でもう修正された、そういうことでよろしいですね。

北畑政府参考人 これは組合の業務に関しての責任でございますので、先ほどから御答弁しているとおりですが、民法七百九条の不法行為一般とか工作物責任を修正するものではございません。仮に工作物が組合員全員の合有資産で、その工作物から発生した損害ということであれば、それは工作物責任一般のルールが適用されるのではないかと思いますけれども、法務省と確認をいたしたいと存じます。

高山委員 いや、だから、これは今法務省と確認ということだったので、もうこれ以上の答弁は求めませんけれども、民法が優先すると思いますよ、だって、規定していないんだから。

 そうしたら、中川大臣が初めにおっしゃったように、無過失の場合であっても組合員は無限責任を負うんだ、そこで有限責任は遮断されないということでよかったんじゃないんですか。今何か答弁の中でぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃなってきたので、私は今確認で伺ったんですけれども。ですから、そのことは、今何か説明がいまいちな答弁だったなと私はちょっと思いました。

 もう一個、ちょっと似たようなものを聞きますけれども、では、今度LLPがつくった製品の製造物責任というのはどうなんですか。

北畑政府参考人 製造物責任につきましても、製造物責任法の一般原則が適用されるものと考えております。

高山委員 わかりました。

 それと、あともう一つ聞いておきたかったのは、ちょっと今時間がなくなってきたので足早に行きますけれども、これは全然話が変わります。

 例えば、いろいろな大会社が教授やら何やらを巻き込んで新しい事業を立ち上げたい。それで、今度は、ではうちの新しい事業部でこういう教授を迎え入れてやろうじゃないかみたいな感じでやろうと思っていたら、いや、今度LLPという便利なものがありますのでやりましょうということになるということは当然あり得ると思うんです。その場合、今みたいに何かいろいろな損害が生じたり第三者から請求が来る場合に、当然、要するにABC有限協同組合というものだけの財産は少な目ですから、リスクをとるために少なくしていると思いますから、AとかBとかという大きい会社に、親会社の方にかかっていきたいなと思うのが債権者の常だと思うんです。その場合に、責任が遮断されちゃうというのがこのLLPのいいところであり、悪いところだと思うんですけれども、例えば、その大会社が出資とか何とかとはまた別に、先生、うちの研究所使ってくださいよ、どうぞ同じ施設ありますからどんどんどんどんお使いください、あるいは工場のラインも、新しくできたのを、わざわざ投資するのはもったいないですから使ってくださいというふうに使わせているような場合というのが当然また出てくると思うんですよ。そういう場合であっても、親会社といいますか、その出資者の方にかかっていくことはできないんでしょうか。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

北畑政府参考人 賃貸を受けている施設について不法行為あるいは製造物責任が発生した場合には、その所有者の方に責任が行くものだと考えております。

高山委員 賃貸とかではなくて、本当にどうぞどうぞ使ってくださいと、それが出資者だった場合には、その出資者の方にかかっていくというようなことでよろしいんですか。

北畑政府参考人 賃貸ではなくて不動産による出資ということであれば、組合の資産ということになりますので、この法律の一般原則が適用される。基本的には、通常の取引に伴う債務等であれば有限責任、ただ、不法行為であればそれぞれの不法行為を実行した人についての民法に基づく無限責任、こういう仕分けになるのではないかと考えております。

高山委員 それでは、ちょっとまた観点の違う質問ですけれども、利益配分を今度どういうふうに公正にやっていくかということなんですけれども、これは利益配分がタコ足配当というか、何と言うんですか、本当は第三者に払う債務もあるのに、それを超えてどんどんどんどん利益配分してしまう。これは当然避けなきゃいけないんと思うですけれども、取締役従業員みたいなのがいますよね。そういう場合の取締役従業員の、取締役とは言わないかもしれませんけれども、そういう組合員でありながら従業員みたいな人、そういう人に、いや給与として出しているんですよ、こういうふうには逃げられるんでしょうか。給与の取り扱いを教えてください。

北畑政府参考人 出資者である組合員が同時に業務を執行するということでございますので、組合員については給与という形での配分は受けられない、あくまで配当で受けるということだろうと思います。実際にやっている人間が使用人に該当する場合、あるいは、業務を外部に委託するということができますので、外部に委託した人がやっている場合には、これは、給与の支払いというのは可能でございます。

高山委員 そうしますと、手数料はどうなりますか、これも細かいことなので局長にお願いしたいんですけれども。

北畑政府参考人 例えば、この組合が外部に委託をして、それに手数料を支払うということは可能でございまして、組合の損金ということになろうかと思います。(高山委員「外部じゃなくて組合員に手数料を払う」と呼ぶ)手数料という想定はしておりません。

高山委員 そうしますと、先ほどの工場の例じゃないんですけれども、これは大臣に伺いたいんですけれども、出資としてうちの工場を使ってくださいよというので出すのもいいんだけれども、そんなにでかい工場をいきなりLLPの小さいのまで全部出資しちゃうと、リスクが大きいというものもあると思うんですよね、当然責任財産がふえちゃうから。だから、賃貸したいなというふうに思うかもしれないと思うんです。では、そのときの賃料というのは、当然これは手数料だと思うんですけれども、だれに払えばいいんですか。――いや、大臣にちょっと伺いたいんですけれども。

北畑政府参考人 組合が契約をした賃貸であれば、賃貸料は組合の損として落ちるという扱いかと思います。

高山委員 では、そういう場合に賃料を払うのは、それは払う相手方が組合員であってもいいんですね。要は、大会社、教授でやっているときに、そのLLPから大会社に対して賃料を払うという形での利益配分があってもいいんですね。

中川国務大臣 賃料というのは利益じゃないですから、必要経費ですから、だから、当然そういう契約があって賃料が発生すれば、その所有者に対して、経費としてその組合からその所有者に払うということだろうと思います。

高山委員 大臣、それは違うと思いますよ。賃料というのは経費なんですよ、でも、給与だってこれは経費なんですよ。給与という名目であろうが賃料という名目であろうが、では、組合員にそうやって利益配分の方法として、利益配分じゃないんでしょうけれども、利益配分とはまた別の形でそうやってお金がバックするということを認めちゃっていいんですか。――いや、大臣にちょっと伺いたいんですけれども。

中川国務大臣 ですから、出資者が出資をして、何らかの形で財産を出資して業務遂行するわけですよね、原則として、全員合意をして。それと、その出資者じゃないけれどもいわゆる従業員的な、出資しないけれどもいろいろな仕事をするという人に払う給料とは意味が違うということですね。

高山委員 いや、私が初めに聞いたのは、だから、外部に払うんだったら何の問題もないですよ。要するに、利益配分をこうですねと決めておいて、タコ足配当しちゃいけませんねというふうに決めてあるのに、給与の形で払ったり賃料の形で払ったりしちゃったら同じじゃないですか、それだったら。だから、給料はどうなんですかと聞いたら、先ほどは、要するに組合員の形に対しては給与という形で払うことはいけませんというふうに局長は言っていたわけですよね。賃料ならどうですかと聞いたら、今大臣は、賃料は必要経費なら全然構わないというので、いや、それは給与と賃料という名前は違うけれども一緒じゃないですか、出資者にお金を戻すという意味では全く一緒じゃないんですかということを大臣にもう一回伺いたいんですけれども。

中川国務大臣 出資者が出資をして業務を遂行していくわけですから、出資者が得るメリットというのは利益から上がる配当なんです。給料じゃないんです。

 それから、損についても、出資者は自分のところの損と損益通算ができるということになっているわけで、それと賃料とか出資者ではない常務者がやる仕事というのは、出資者じゃありませんから、いわゆる雇用契約の中でやっているわけですから、それは賃料と同じように経費として扱われるということで、だから出資者には給料は払わない。それをやるとまさしくタコ足配当みたいなことになります。出資者があくまでもプロフィットとしているのは、投資をして、それによって得られた利益から得られる配当が彼らのメリットということであります。

高山委員 大臣に、後々またこれは訂正やら何やらになると面倒くさいので、一回単純化した形で伺いますけれども、出資者が地主というかその建物の所有者だった場合に、建物を出資しないで賃料を取ることはできますかという質問を大臣にしたんですよ。

中川国務大臣 建物なり土地なりで出資をする……(高山委員「出資じゃないんです。出資しなくたって、この建物を貸す対価として今度幾ら幾ら賃料を払ってくださいといっている……」と呼ぶ)出資じゃないんですか。(高山委員「ええ」と呼ぶ)それはその組合とその土地の所有者との間の賃貸借契約であって、当然賃料が発生するんじゃないですか。

高山委員 いいですか、大臣、今のはやはりおかしいですよ。

 いいですか、だって、例えばでかい会社が、出資するときは、では五百万出資しよう、だけれどもうちの建物は相変わらず大会社であるうちの所有なんだ、だけれどもここを利用してくださいよというときに、当然賃料を取るじゃないですか、その出資とはまた別にですよ。うちの会社、出資者である人の持っている土地を利用してくださいねというときに、賃料を取りますよね。その賃料を取っていいんですかということを言ったら、今大臣は取っていいんだと、当然、そんなの当たり前じゃないかと言いましたけれども、ではその賃料が、よくわからないところなのに、いきなり月額一億円とかだったらどうするんですか。それは利益配分に、法案でタコ足配当を禁じた意味がなくなっちゃうじゃないですか。

中川国務大臣 この後事務当局から答えさせますけれども、ですから、その組合、LLPが持っている財産であるべきものを出資した場合の出資というのは、土地であるかもしれないし、お金であるかもしれないし、いろいろなものがある。それとは別に、今、高山委員がおっしゃっているのは、出資者が土地は貸してやるよという場合のその土地を貸してやることについては、極端に言えばただでもいいんでしょう、あるいは家賃を取ってもいいんでしょう。そこは約束事であって、賃料を払う場合にはそれは経費になりますねということです。

北畑政府参考人 組合が正式の賃貸契約を結んで賃料を払うということは、会社の経費であり、相手側の所得になると思います。その場合に、組合員を相手とした取引がどうかという御質問であるとすれば、それは利益相反行為どうのこうのという議論はあろうと思いますけれども、きちんとした契約という形で賃料を払うということは可能でございます。

 ただし、これは出資の脱法行為、名目的に賃貸借契約であるけれども利益配分を逸脱した仮の行為であるということになれば、これは税法上否認をされるということになろうかと存じます。

高山委員 私が聞きたかったのは、今の局長ので十分なのかどうかちょっと私もわかりませんし、とにかく出資に仮託して利益配分が不当になされてしまうと、これはタコ足配当を禁止している意味が全然なくなりますから。

 私は、これは非常に機動性が高く、すごくいい法案だし、LLP、僕も何かつくらなきゃ損しちゃうかなと思うぐらい非常にいいものだと思いました。でも、ちょっと大臣ですらわかりにくいという部分があったのではないのかなというふうに、正直ちょっと残念な気もいたしますけれども、時間が来たので終わります。

高木(陽)委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 有限責任事業組合契約、LLP法案について質問させていただきます。

 今回、今まで日本になかった新しいものをつくろうということで、そういう点では光の面と影の面が当然あるわけであります。その点でお聞きしたいと思うんですが、そもそも今までに日本にない新しいものをつくるという理由といいますか、このLLP法案の提案理由ということについて、大臣としてのお考えをまず最初にお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 LLPというのは、もともと民法上認められている人格なき社団というものが前提になっているわけでありますが、そのメリットを生かしたい。と同時に、それは無限責任でございますから、出資者が無限責任を負うというところは遮断をしたい。他方、LLCの方はこれから御審議をいただくことになるかと思いますけれども、LLCの方は法人格があります。しかし、その場合には、当然そこで上がる収益というものは法人税の対象になるかならないかというところがまだはっきりしておりません。税当局と法務省とのこれからの折衝だというふうに聞いております。

 そういう意味で、お互いに機動性のある新しい形の事業形態をつくっていくこと、これは遅いかどうかは別にいたしまして、イギリスでもアメリカでも設立され、大変活用されているわけでございますから、塩川委員はメリット、デメリットというふうにおっしゃいましたけれども、きちっとしたコンプライアンスの中で、特に中小企業あるいはベンチャーあるいは異業種交流等々の観点からは、非常にこういう形の、法人格がなく、利益は出資者に還元される、損益は通算される、そして有限責任であるという形の事業形態というものは、これからの経済活動の中で大いに必要な制度であるというのがポイントだと思っております。

塩川委員 今お話にありましたように、まだないものですから、どうなのかわかりません。そういう点で、ベンチャーですとか中小企業とか異業種交流のような、そういうことを通じて経済の活性化に寄与するものになるだろうという点はわからないでもないなと思うんですけれども、同時に、このLLPを使うといろいろこんなふうなものができますよという活用想定事例というのをいただいたわけですね。

 そういうのを見ていく中で、一つこれはどうかなと思ったのが、設備廃棄の話が出てくるわけです。産業再編支援として石油業界の設備廃棄の事例が紹介をされています。石油生産部門における設備の効率的な利用として、石油精製施設の設備廃棄の事例が紹介されているんですが、これは現行でも当然やっているわけで、企業の組織再編の中で産業再編の一環としてもそういうのをやっているわけなんです。

 そういう意味でいいますと、先ほど大臣もおっしゃったような趣旨に照らしていうと、こういうリストラ再編支援のスキームというのは立法の趣旨とちょっと違うんじゃないかなという思いがあるんですよ。現行でもできるようなこういうリストラ支援策については、対象には入れないようなことなんかも考えてしかるべきなんじゃないかなというのが率直な思いなんですが、その点、いかがでしょうか。

北畑政府参考人 大企業の再編のときにこれが使えるかどうかということでございますけれども、大企業の事業再編につきましては、会社法全般の制度を活用した会社の再構築というのが行われていますし、そういうのが不便な部分につきましては、さまざまな事業再生法に基づく特例措置に基づいてこういうリストラをやっているということだと思います。

 ただ、例外的なケースとして、このLLPがそういう場合にも使い得ると言っておりますのは、例えば、A社、B社、二社で五〇、五〇でコンビナートの工場を再編して一つの会社にするという場合に、今であればそこを新しく会社を設立して株式会社としてやるという形態が一般的かと思います。ただ、出資者が二社しかいないというときに、株主総会を開く、取締役会を開く、監査役を置くというのは必ずしも必要な措置かどうかという問題があります。そういう場合にはこのLLP制度が活用できるということでございまして、アメリカの場合でもそういった大企業同士の連携、再編のときにLLP制度が使われております。

 あくまで、手続面の簡略化、手続化ということで使う場合があり得るということだと思います。

塩川委員 リストラ再編についてはいろいろな法的なスキームもこの間つくられてまいりまして、産業再生法なんかもそうですし、会社分割などについてのいろいろなスキームなんかもこの間生まれてきているわけですね。

 これはもともと小渕内閣のときに経団連からの要望もあって、そういう点でのさまざまなスキームづくりというのは始まったわけです。そのときの経団連の要望書、九九年の五月に「わが国産業の競争力強化に向けた第一次提言」というのが出されて、その中でこのLLPの要求も出されているわけです。有限責任事業組合の導入をそこでも要望しているわけで、そこでは「複数の企業が共同して、リスクの高い新規事業に進出するため、あるいは事業の再構築を進めるための手段として、アメリカ」の「LLC、LLPと類似の、全ての出資者の有限責任と、税制上の導管としての仕組み(事業体の段階では所得課税を行なわず、その損益を出資者の損益と通算)」損益通算の話、「を備えた事業形態を、速やかに創設すべき」だと出ているわけです。

 新規事業を起こすという点ではLLPのスキームの活用というのもわからないでもないんですが、こういう事業再構築、リストラ再編のためにこういう制度が欲しいと経団連からも要望が出ているのにこたえるような形というのはいかがなものかなというのが率直な思いで、そういう点では、具体的なニーズが経団連、大企業から出ているというのがLLPの背景の一つかなと思っておりますし、率直に、中小企業の中でどう使うかといっても、まだ現状ではなかなか私なんかも見えてこないところなので、そういう点を私は率直に指摘しておきたいと思います。

 そこで、光と影の話ですけれども、これは、使い勝手がいいということは、裏返せば悪用されやすいということを示しているわけです。その一つとして租税回避の問題が懸念をされるというのは、きょうの審議の中でも取り上げられております。

 今回、このLLPをつくる上で、内部的な検討の際に、有限責任事業組合制度に関する研究会が行われております。そこでも、租税回避的な目的で使われることを抑止する必要があるとしているわけですね。この報告書では、民法組合制度を利用した租税回避行為の典型的な事例として、航空機リース事業を挙げております。

 そこで、国税庁に伺います。配付資料でお手元にも届けたんですが、二枚目と三枚目が国税庁の出している税制調査会の資料なんですけれども、「航空機リースを行う組合の構成員に対し課税処分を行った事例」について、簡単で結構ですので御紹介いただけないでしょうか。

    〔高木(陽)委員長代理退席、委員長着席〕

竹田政府参考人 個別の件ではなく、モデルケースというふうな形でかいつまんで概略を申し上げますと、まず、何人かの個人の投資家が集まって、民法上の組合を設立するという形をとるわけでございます。この組合というのは、組合員からの出資に加えて借り入れを行って、その資金で航空機を購入して航空会社にリースする、そういう事業を行う。このリースの期間中、組合の収支がどうなるかと申しますと、これは、航空機が非常に高額でございますので、減価償却あるいは借入金の利子、そういったものが航空会社からのリース料を上回るということになりまして、事業として赤字になるわけでございます。この結果、各組合員にはこの赤字が分配される、つまり、不動産所得の損失が分配されるということになりまして、組合員は、給与所得などほかの所得の黒字から赤字を控除するということで税負担を軽減することができる。そしてさらに、このリース期間終了後に航空機を売却、譲渡するわけでございますが、これも、総合課税長期譲渡所得としての二分の一課税という形で税負担を軽減することができる、そういう形のスキームでございます。

 先ほど、組合設立が形式的と申しましたけれども、こうした事例というのは、アレンジャーと言われる者がまさに税負担の軽減をセールスポイントにいたしまして金融商品として富裕層を中心に販売しているということで、私ども、組合と申しましても、組合員が組合事業への実質的な関与をする、そういう意思がほとんどなかったものと認識しているわけでございます。

 私どもといたしましては、まさに民法組合を利用した租税回避行為ではないかということで、組合員の組合事業への実質的な関与が乏しいケースにつきましては、そもそも共同事業性を欠くという、民法上の組合としての成立要件を欠くものとして、組合事業から生じる不動産所得の損失を否認いたしますとともに、生じた所得を雑所得として課税処分を行ってきたところでございます。

塩川委員 御説明があったとおりに、いわば税負担軽減の効果が一番大きいという形になるというのはおかしいじゃないかというのがここで問われたわけで、野村バブコックアンドブラウン、NBBの航空機リース事業については裁判で争われて、昨年の名古屋地裁は残念ながら負けたわけですよね。それは明文の規定がないからだということですから、租税法定主義でいえば当たり前の話なんですけれども、だからこそ、今度の税制改正の中でこれを担保する措置がとられたわけであります。その中身について御説明いただきたいんですけれども。

佐々木政府参考人 御指摘の航空機リースに関する組合事業を含め、最近、組合事業から生ずる損失を利用して節税を図る動きが顕在化しているということがございまして、昨年十一月に政府税制調査会の答申がございまして、「このような租税回避行為を防止するため、適切な対応措置を講じる必要がある。」というふうにされました。

 十七年度税制改正におきましては、こうした指摘等を踏まえまして、組合事業への実質的な関与度合いが低い組合員について、組合損失の計上を制限する措置を講ずることといたしております。

 具体的には、所得税につきましては、不動産所得を生ずべき組合事業に係る個人組合員の組合損失をないものとみなすということにしております。また、法人税については、まず、組合債務の責任の限度が実質的に組合財産の価額とされている場合等には、組合損失のうち、法人組合員の出資額を超える部分の金額は損金算入しないということにしております。また、収益保証契約が締結されていることなどによりまして組合事業が実質的に欠損にならないということが明らかな場合には、組合損失の金額の全額を損金算入しないというふうにいたしております。

塩川委員 そういう点では、損金算入の制限や、損金算入そのものを認めないという税制上の措置をとったわけです。

 その点、先ほどの国税庁の答弁の中でも、共同事業性を欠くというので否認をするんだという話がありました。だから、共同事業性があるということを求めているわけですけれども、その点で、業務執行に関与をするというのは、例えばどういうものが具体的に業務執行に関与していると言えるのかという問題なんですけれども、この点、財務省の方では、例えば年一回の会合に出れば、それでも業務執行していますよというふうに言えるのか。その辺はどうなんですか、具体的には。

佐々木政府参考人 実質的な関与度合いが低いかどうかということの判定でございますけれども、実質的な関与度合いが低い組合員ではないという組合員というのは、組合事業に係る重要な財産の処分もしくは譲り受けまたは組合事業に係る多額の借財に関する業務の執行の決定に一貫して関与し続け、かつ、当該業務のうち、契約を締結するための交渉その他重要な部分をみずから執行する組合員ということでございますので、そういうことで判定をしてまいるということでございます。

塩川委員 重要な交渉をみずから執行するとかいう点で、例えば具体的に会議で確認をする際ですとかに、例えばどの程度の頻度とかというのもあるじゃないですか。ですから、年一回の会合に出ればいいのか、あるいは五年に二回でもいいのか、航空機リース事業のときなんかもその点が問題になっているわけですけれども、その辺はいかがですか。

佐々木政府参考人 先ほど申し上げましたように、重要な業務の執行の決定に一貫して関与し続けるということと、重要な契約の交渉をみずから執行するということでございますので、総会に欠席するとか出席するという、例えばそれが欠席するということであればこういうものに当たりませんし、一回出席すればこれに当たるかどうかというのは、どういう行為が全体としてあって、その中でこれがどう位置づけられるかというケース・バイ・ケースの判断になろうかと思います。

塩川委員 その点で、LLPの場合はどうなるのか。共同事業性の確保を図るということが租税回避の問題からも重要なわけですが、言われている業務執行の範囲について、LLPの場合にはどのように考えておられるのか、具体的に明確にしていただきたいと思います。

寺坂政府参考人 LLP法で考えてございます業務執行、全組合員が業務執行に携わることを求めているわけでございますけれども、この業務執行と申しますのは、いわゆる経営に当たる概念でございまして、LLPの組合員は全員が何らかの形で経営に参画するということになります。具体的には、例えば、事業計画の立案あるいは立案しました事業を実行するのに不可欠な資金の調達、従業員の確保あるいは取引先との契約、そういったものなどが考えられると思います。

塩川委員 LLPは有限責任で民法組合は無限責任ですから、本来であればLLPの方がしっかり担保されなければいけないんですけれども、同じような並びでというところになると、それはいかがなものかなというのが率直な疑問でもあるわけです。

 今回、法務省の方でもLLCを検討しているわけですけれども、先ほど、冒頭大臣の方でも、LLCについて法人税の対象となるかならないかがはっきりしていないというお話がありました。これは今どういう仕切りになっているんでしょうか、LLPについては構成員課税ということで今回出しているわけですけれども、LLCの扱いについてはどうするかというのは。

北畑政府参考人 LLPにつきましては、構成員課税ということで税務当局と合意ができております。LLCにつきましては、施行が来年になるものですから、現時点では税法上の扱いは決まっておりません。

 ただし、LLCにつきましては法人格を持つという前提になっておりますので、法人格を持つものには法人課税というのが税務当局の基本原則だろうというふうに理解をいたしております。

塩川委員 時間が参りましたので終わりますが、もともとLLPやLLCも、スタートからいえば同じような動機で出ているわけです、施行がずれているわけですけれども。そういう点では、税制の扱いについても、本来同じ並びで検討もし、具体化をすることが必要なんじゃないのか、そのことを率直に思います。

 そういう点では、こちらだけ一歩先に出るような対応というのは、スキームを考える上でももう一歩待って並びで対応することが必要なんじゃないかということを申し上げまして、質問を終わります。

河上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

     ――――◇―――――

河上委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、参議院送付、日本アルコール産業株式会社法案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。中川経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 日本アルコール産業株式会社法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川国務大臣 日本アルコール産業株式会社法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 平成十一年四月に閣議決定された「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」を着実に実施し、行政改革を一層推進していくことは重要であります。このため、本閣議決定に基づき、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のアルコール製造部門を暫定的な特殊会社とすること等により、アルコール専売民営化の総仕上げを行うべく、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構からアルコール製造部門のすべてを引き継ぐ暫定的な特殊会社として日本アルコール産業株式会社を設立することとし、その設立に必要な手続を定めます。

 第二に、設立後の会社の経営の健全性及び安定性を確保するため、事業計画や重要な財産の譲渡等について経済産業大臣の認可を必要とすることとします。

 第三に、アルコール専売の廃止に伴う激変を緩和するため五年間を目途に設けていた暫定措置を終了するなど、所要の措置を講じます。

 なお、新たに設立する特殊会社については、政府は二年以内に保有する株式の売却を開始し、できる限り早期に完全売却を図ることとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

河上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る八日金曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十五分散会


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