衆議院

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第22号 平成17年8月2日(火曜日)

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平成十七年八月二日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 鈴木 康友君 理事 細野 豪志君

   理事 吉田  治君 理事 高木 陽介君

      遠藤 利明君    奥野 信亮君

      嘉数 知賢君    北川 知克君

      小杉  隆君    佐藤 信二君

      菅  義偉君    武田 良太君

      谷畑  孝君    西銘恒三郎君

      宮下 一郎君    望月 義夫君

      森  英介君    山口 俊一君

      山口 泰明君    山本 明彦君

      大畠 章宏君    奥田  建君

      海江田万里君    梶原 康弘君

      菊田まきこ君    佐藤 公治君

      鈴木 克昌君    田島 一成君

      高山 智司君    計屋 圭宏君

      村井 宗明君    笠  浩史君

      渡辺  周君    江田 康幸君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   参考人

   (電気事業連合会専務理事)            伊藤 範久君

   参考人

   (六ケ所村長)      古川 健治君

   参考人

   (社団法人日本電機工業会原子力政策委員会最高顧問)

   (株式会社東芝執行役専務)            庭野 征夫君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二日

 辞任         補欠選任

  坂本 剛二君     宮下 一郎君

  菊田まきこ君     鈴木 克昌君

  近藤 洋介君     田島 一成君

  中山 義活君     笠  浩史君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     奥野 信亮君

  鈴木 克昌君     菊田まきこ君

  田島 一成君     近藤 洋介君

  笠  浩史君     中山 義活君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     坂本 剛二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件(原子力政策)


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     ――――◇―――――

河上委員長 これより会議を開きます。

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件、特に原子力政策について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長近藤駿介君、電気事業連合会専務理事伊藤範久君、六ケ所村長古川健治君、社団法人日本電機工業会原子力政策委員会最高顧問・株式会社東芝執行役専務庭野征夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河上委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず近藤参考人にお願いいたします。

近藤参考人 おはようございます。原子力委員会委員長を仰せつかっています近藤でございます。

 本日は、現在原子力委員会が策定中の原子力政策大綱において示そうとしています、核燃料サイクルに対する取り組みの基本的考え方について陳述する機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。感謝を申し上げます。

 原子力委員会は、昨年六月、新計画策定会議を設置いたしまして、新計画策定作業を開始いたしました。現在は、一年余の審議を経まして、原子力政策大綱の案を取りまとめ、これを公衆の意見募集に付しているところでございます。

 まだ案の段階でございますが、今回の新計画を原子力政策大綱と呼ぶことにいたしましたのは、中央省庁再編の一環で原子力委員会の行政府における位置づけが変化したことを踏まえて、これにふさわしいものとすべきという判断からでございました。

 さて、原子力発電は、我が国において国内総発電電力量の約三分の一を供給し、エネルギー自給率の向上や、エネルギー消費の増大に伴う二酸化炭素排出量の増大の抑制に大きく寄与しております。原子炉の使用済み燃料、使用済み核燃料を再処理し、プルトニウム、ウランを回収して原子炉燃料に加工して利用していくいわゆる核燃料サイクル技術は、このうち、原子力発電のすぐれた供給安定性等をさらに向上していくとともに、長期にわたる原子力によるエネルギー供給を可能にする技術でございます。

 そこで、原子力委員会は、従来より、我が国のエネルギー供給システムの特性を一層改善していくためにこの技術を実用化し利用していくべきと考えて、国と民間に対してこの考え方に沿った活動をお願いしてきたところでございます。

 しかしながら、過去数年間、事故や不祥事が国や事業者に対する国民の信頼を毀損し、その結果、欧州における再処理により回収されましたプルトニウムを軽水炉で利用するいわゆるプルサーマルが計画どおりには進行しておりません。

 また、ウラン資源の利用率を飛躍的に高めることができ、高レベル放射性廃棄物中の長期に残留する放射能を少なくできる高速増殖炉、これにつきましては、原子力委員会はこれを将来のエネルギー技術の最も有力な選択肢に位置づけてその研究開発を着実に進めるべきとしてきたところでございますが、実験炉「常陽」は定格熱出力を百四十メガワットに上昇いたしまして順調に運転をされているわけでございますけれども、一方の原型炉「もんじゅ」は改造工事がおくれております。

 さらに、原子力の研究開発利用に伴う便益を享受している現世代は、これに伴って発生する放射性廃棄物の安全な処分に全力を尽くす責務を有しているとしまして、このための制度の整備を国会におかれましてもお願いして、整備していただいてきているところでございますが、再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物の処分につきましては、その事業体が整備され、サイトの概要調査地区の公募事業は二年前に開始されたにもかかわらず、いまだ応募がございません。

 新計画策定会議では、こうした状況を踏まえて、国民から発せられる我が国の核燃料リサイクルにかかわる基本方針の妥当性に対する疑念や心配の声に正面から向き合うべきと判断をいたしまして、青森県六ケ所村に建設中の商用再処理工場の運転開始が間近に迫っていることを前提にしつつ、今後の方針について、使用済み燃料は貯蔵後に再処理するという現行政策以外に、部分的に再処理するシナリオ、全量を直接処分するシナリオ、そして当面貯蔵する、いわゆるモラトリアムでございますが、そういう三つのシナリオを加えまして、これを安全の確保、エネルギーセキュリティー、環境適合性、経済性、核不拡散性、技術的成立性、社会的受容性、そして将来の不確実性に対する対応能力、さらには政策変更に伴う課題、あるいは海外の動向との整合性、こうした十の視点からの評価を時間をかけて行った次第でございます。

 その結果、我が国における原子力発電は、経済性の確保のみならず、循環型社会の追求、エネルギーセキュリティーの確保、それから将来における不確実性への対応能力の確保などを総合的に勘案しつつ推進されるべきと考えるところ、核燃料資源は合理的に達成できる限りにおいて有効利用されるべきという大前提のもとに、これらの視点からの評価を総合的に勘案しましたところ、安全性、核不拡散性、環境適合性を確保するとともに、経済性にも留意しつつ、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とすることが適切であるという御判断をいただいたところでございます。

 そこで、原子力政策大綱の案におきましては、この基本方針のもとで、当面、利用可能になる再処理能力の範囲内で使用済み燃料の再処理を行い、これを超えて発生する使用済み燃料は中間貯蔵するとし、また、回収されるプルトニウムにつきましては当面はプルサーマルで利用することが適切といたしました。そして、国には、この方針に沿って適切な制度整備と厳格な安全規制を行うことを求め、事業者には、プルサーマルを着実に進め、六ケ所再処理工場はもとより、中間貯蔵施設それからMOX燃料加工工場等の関連施設の建設、運転を、安全性、信頼性の確保と経済性の向上に努めつつ、事業リスクの管理に万全を期しながら着実に行うことを期待するといたしました。

 また、中間貯蔵されます使用済み燃料の処理の方策につきましては、六ケ所再処理工場の運転実績とか、高速増殖炉あるいは再処理にかかわる研究開発の進捗状況を踏まえまして二〇一〇年ごろから検討を開始すること、この検討は、今申し上げました基本方針を踏まえまして、柔軟性にも配慮して進めるのが適切か、その処理に必要な施設の建設、操業が六ケ所再処理工場の操業終了時に十分間に合う時期までに結論を得るということも決定いたしました。

 なお、高レベル放射性廃棄物の地層処分の実現につきましては、現在行っています公募活動を強化する必要があるということで意見が一致いたしまして、国も民間もそれぞれの立場で全力で取り組むべきといたしました。

 最後に、高速増殖炉についてですが、この大綱では、我が国の原子力発電につきましては、二〇三〇年以後も、少なくとも現在規模、すなわち総発電電力量の三〇%ないし四〇%、あるいはそれ以上の供給割合を担っていくことが適切であると考えて、これを実現できるように、当面は軽水炉の後も軽水炉で置きかえていくことを念頭に技術や体制を整備することが重要としたところでありますけれども、あわせて、二〇五〇年ぐらいからは高速増殖炉が使われることが望ましいと判断して、このことを念頭に置いて高速増殖炉とその核燃料サイクル技術の研究開発、実証を着実に進めるべきであり、当面は「常陽」、「もんじゅ」の安定運転を続けて、知見、経験を蓄積しつつ、実用化に向けての技術戦略を練り上げていくことが適切だとした次第でございます。

 以上、原子力政策大綱における核燃料サイクル政策の要点を申し上げました。御清聴ありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 次に、伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 おはようございます。今御紹介をいただきました電気事業連合会専務理事の伊藤でございます。

 先生方には、平素から電気事業に対しまして格別の御理解と御指導を賜りまして、厚く御礼申し上げたいと思います。また、本日このような機会をちょうだいいたしまして、感謝申し上げたいと思います。

 ことしは、原子力基本法が昭和三十年十二月に公布されてからちょうど五十年という節目の年でございます。エネルギー資源に乏しい我が国は、その当時から、官民一体となって準国産エネルギーとしての原子力の開発を進めるとともに、ウラン燃料のリサイクル利用、すなわち原子燃料サイクルを国内で確立することを目指してまいりました。

 本日は、国の重要なエネルギー政策として進められてきました原子燃料サイクルの確立に向けた私ども電気事業者の取り組み状況について、説明をさせていただきたいと思います。

 それでは、お手元の資料に沿って説明をさせていただきますので、まず二ページ目をごらんいただきたいと思います。

 最初に、バックエンド積立金法の概要について説明をさせていただきます。

 この法律は今国会において制定をしていただいたものでありますが、資料の上の枠にございますように、バックエンド事業は兆単位に及ぶ極めて巨額な費用を必要とし、極めて長い期間を要するという特徴を有しており、また、このような特徴を有する事業を適正に実施するためには、必要な資金を安全性、透明性が担保される形であらかじめ確保することが必要であることから、資料の下の方にありますスキームで実施をしていくものでございます。

 この法律の成立によりまして、私ども電気事業者は、バックエンド事業を円滑に遂行していくことができるようになりました。この場をおかりしまして、改めて御礼申し上げたいと思います。

 今後の予定でございますが、資料の中ほどにございますように、十月一日の施行に向けまして、再処理計画の届け出などを着実に進めてまいりたいと思っております。

 三ページ目をごらんいただきたいと思います。

 原子燃料サイクルについて説明をさせていただきます。

 原子燃料の利用に当たりましては、この図全体に示しますように、最初の燃料の製造段階から最後の廃棄物処分に至るまで、大きな流れがございます。その中で、原子燃料サイクルとは、原子力発電所で使用済みとなった燃料を処理する過程で、再利用できる物質、いわゆる発電中に新たに生まれましたプルトニウムや燃え残ったウランを回収し、加工を行い、MOX燃料として原子力発電所で再度利用するというサイクルをいいます。このサイクル技術は、ウラン資源確保の不確実性に対応するばかりでなく、今後、対応がますます重要となってきております我が国のエネルギーセキュリティーの確保や、地球温暖化問題への対応に果たす原子力の役割を、より確かなものにしていくものであります。

 私ども電気事業者としましては、国のエネルギー政策の基本方針に沿って、安全の確保を大前提に、青森県六ケ所村での再処理工場、MOX燃料加工工場、青森県むつ市での中間貯蔵施設を着実に建設し、原子燃料サイクル事業を推進してまいる所存でございます。

 四ページ目をごらんいただきたいと思います。

 六ケ所再処理工場の現況について説明をさせていただきます。

 六ケ所再処理工場は、一九八四年七月に立地を申し入れさせていただき、以降、建設、通水試験、化学試験など、約二十年を経まして、昨年十二月にウラン試験を開始いたしました。長きにわたり多くの課題を乗り越えてここまで来ることができましたのは、六ケ所村を初め青森県の皆様の御理解と御協力があったからだと思っております。この御理解と御協力があればこそ、全国の原子力発電所から使用済み燃料を受け入れていただくことができ、サイクルが推進され、国の原子力政策を推進することができるわけでございまして、感謝を申し上げますとともに、ここのところをぜひ御理解を賜れば幸いでございます。

 なお、ウラン試験の状況でございますが、最終のアクティブ試験に備えまして、設備の性能確認、ふぐあい箇所の徹底した洗い出しを行っております。そのような中で、ガラス固化体貯蔵施設の冷却能力不足、バーナブル・ポイズン取り扱いピットでの水漏れなどのトラブルが発生し、皆様には御心配をおかけし、まことに申しわけなく思っておりますが、これらには適切に対処してまいります。そのほかはおおむね順調に進んでおりまして、六月末時点でのウラン試験の総合的な進捗率は約四四%という状況になっております。

 今後とも、二〇〇七年五月に予定しております操業に向けまして全力を投入してまいりますが、いずれにいたしましても、安全の確保は最重要課題でございまして、安全なくして操業はできないと考えております。たゆまぬ品質保証活動を続け、安全そして地元の皆様に安心していただける工場を目指してまいりたいと思います。

 五ページ目をごらんいただきたいと思います。

 MOX燃料加工工場の建設計画について説明をいたします。

 我が国初の商業用MOX燃料加工工場につきましては、ことしの四月に青森県と六ケ所村、そして事業者である日本原燃との間で立地基本協定が締結されました。この工場は、六ケ所再処理工場で回収されたプルトニウムとウランを混合させたMOX燃料に加工し、再度燃料として原子力発電所で安全、確実に燃焼させるために必要な工場でございます。六ケ所再処理工場に隣接して建設し、年間最大百三十トンのMOX燃料を製造する予定でございます。今後とも、地元の皆様の御理解と御協力を得ながら、二〇一二年の操業を目指して努力してまいる所存でございます。

 六ページ目をごらんいただきたいと思います。

 プルトニウムの利用について説明をさせていただきます。

 再処理し、回収されたプルトニウム、ウラン等を有効利用するという国の基本方針に基づき、六ケ所再処理工場で回収されたプルトニウムは、原子力発電で再利用し、燃焼させていきます。その方法が、先ほど御説明をいたしましたMOX燃料として商業用軽水炉で燃焼させる方法であり、通称プルサーマルと言っております。

 私ども電気事業者は、このプルサーマルを実施していくために、原子力発電所の地元を初めとする皆様の御理解を得ながら、現在、二〇一〇年度までに全国で十六基から十八基での導入を目指し、業界の総力を挙げて不退転の決意で取り組んでおります。最近の状況は、この資料の中ほどに記載したとおりでございますが、各社、今後とも全力を挙げて取り組んでまいります。

 なお、プルトニウムの利用には透明性の確保が重要でございます。私ども事業者は、原子力委員会の方針を踏まえ、六ケ所再処理工場でのアクティブ試験開始前にプルトニウム利用計画を公表することとしております。

 七ページ目をごらんいただきたいと思います。

 中間貯蔵施設の建設計画について説明をいたします。

 先ほど御説明をいたしました六ケ所再処理工場における使用済み燃料の年間の処理能力は、約八百トンでございます。一方、全国の原子力発電所から発生いたします年間の使用済み燃料は約千トンでございます。この差分について、再処理を行うまでの間、六ケ所再処理工場の処理能力を超えて発生する使用済み燃料は中間貯蔵するという国の基本方針に基づき行うのが中間貯蔵でございます。

 中間貯蔵施設は、各電力会社が、その必要性に応じ、地元の皆様の御理解を得ながら建設していくことになりますが、現時点では、資料に記載いたしましたように、東京電力と日本原子力発電が共同で青森県むつ市にリサイクル燃料備蓄センターの建設を申し入れておりまして、現在地元において検討がなされておる、こういうふうに聞いております。

 以上、原子燃料サイクルの状況について概略を御説明させていただきました。

 原子燃料サイクルを含む原子力発電は、科学の粋を集めた技術によって生み出されるエネルギーであり、エネルギー資源に乏しい我が国にとって、なくてはならない、基幹となるエネルギーであります。

 私ども電気事業者は、日本原燃ともども、今後とも、安全の確保を最優先に、情報の公開にも努め、地元六ケ所村、青森県の皆様の御理解を得、期待を裏切ることのないよう原子燃料サイクルの確立に向けて不退転の決意で努力してまいる所存でございますので、どうぞ御支援方、よろしくお願い申し上げます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 次に、古川参考人にお願いいたします。

古川参考人 おはようございます。

 ただいま御紹介を賜りました六ケ所村長の古川でございます。

 本日は、衆議院経済産業委員会に際し意見を申し述べる機会を賜り、まことに光栄に存じ、心から深く感謝を申し上げる次第でございます。

 私は、三十八年間教職につき、その後、教育長を四年、平成十四年から村長に就任し、今日に至っております。年はとっているものの、まだ未熟者でございますので、御指導のほどよろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、六ケ所村の概要について申し上げます。

 六ケ所村は、下北半島のつけ根に位置し、南北三十三キロメートル、東西に十四キロメートルと細長い地形で、人口は約一万二千人であります。平成十七年度一般会計予算は約百二十二億円で、歳入予算のうち、村税は約六十九億円となっており、青森県内四十七市町村唯一、普通地方交付税の不交付団体であります。

 村の基幹産業は第一次産業でありますが、昭和四十四年五月、新全国総合開発計画の閣議決定を受けスタートしたむつ小川原開発により、大きな変貌を遂げてまいりました。当初計画された一大石油コンビナート構想は、国内外の経済事情により期待された企業立地が進まず、これまで、むつ小川原国家石油備蓄基地、原子燃料サイクル施設、環境科学技術研究所が立地しております。

 また、ITER計画については、国を初め関係機関の御支援をいただき、誘致に取り組んでまいりましたが、実験炉本体の誘致はかなわず、まことに残念な結果となりました。今後は、ITER計画の成功を祈るとともに、日本が準ホスト国としてITER計画に貢献していく中で、本村としても、幅広いアプローチの実施場所として、ITER関連施設の立地により国際研究開発のお役に立ちたいと考えているところであります。

 さて、当村は、昭和六十年四月に、施設の安全確保を第一義に地域振興に寄与することを前提として、電気事業連合会の立ち会いのもと、原子燃料サイクル施設の立地基本協定を締結し、我が国のエネルギー供給量の約三分の一を占める原子力発電を支える日本唯一の原子燃料サイクル施設の立地する村として、今日に至っております。

 その原子燃料サイクル施設の現状についてでありますが、ウラン濃縮工場及び低レベル放射性廃棄物埋設センターは、平成四年から操業を開始し、さらには、平成十四年度から、次期埋設を行うための本格調査が進められております。海外から返還される高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターは、平成七年に初回の受け入れ後、これまで十回搬入がされております。加えて、原子燃料サイクル施設の最大の施設である再処理工場は、平成五年四月に工事が着工され、平成十九年五月の操業開始に向けて、現在ウラン試験が進めれているところであります。また、本年四月には、MOX燃料を製造するMOX燃料加工施設についても立地基本協定を締結したところであります。

 それでは、本日の案件であります原子力政策について、原子燃料サイクル施設立地村の立場から意見を述べさせていただきます。

 昭和六十年に、安全確保を第一義に地域振興に寄与することを前提としてサイクル事業を受け入れて以来、これまで、地域住民の御理解と御協力を賜りながら国の原子力政策に協力してまいりましたが、これまでの原子力事業者等による事故、不祥事等は、サイクル事業の推進に対しても影響を与え、まことに遺憾な出来事でありました。

 このような中、原子力利用長期計画の見直しに向けて開催された策定委員会においては、使用済み燃料の直接処分も含めた検討を行うなど、国策上の位置づけのもとで全量再処理を前提として立地に協力してきた当村としては、強い不信感を持ったところであります。さらに、六ケ所再処理工場のウラン試験に伴う安全協定の締結判断に当たり地域住民に直接説明する機会を設けた際に、村民からは、万が一の事故を想定した施設周辺の避難道路整備の必要性、緊急医療体制の確立など、施設の安全性を懸念する意見が多数出されました。

 その安全協定の締結を総合的に判断するに当たり、策定会議での中間取りまとめにおいて、使用済み燃料を再処理し回収されるプルトニウム及びウランの有効利用を基本方針とする結果を待たなければならず、さらには、青森県知事が要請して開催されたサイクル協議会において、改めて核燃料政策、プルサーマル計画等について国の見解を確認せざるを得なかったことは、事実であります。

 現在、政府の原子力委員会が次期計画となる原子力政策大綱をまとめているようでありますが、国策である国のエネルギー政策に長年にわたり協力してきた当村の信頼を損ねることのないよう、コスト論に左右されることなく原子力を基幹電源とした原子力政策を堅持するとともに、核燃料サイクルを国の基本政策とした確固たる方針を確立し、国民への理解活動にも重点を置いた対応が重要であると考えます。

 さらに、平成十四年二月に確認された日本原燃株式会社プール水漏えいに関する一連の問題は、国において、安全規制の実施に加え、再処理施設の健全性を確認するために、六ケ所再処理施設総点検に関する検討会を設置し、幅広い観点から御検討、御審議いただきながら、すべて補修が施され、プール水の漏水は発生しないものと認識していたところでありますが、去る六月九日に再び漏水が確認され、事業者が行った詳細調査の結果、建設当時の不適切な施工であると判明し、極めて残念な結果でありました。

 私としても、施設への安全性に影響を与える事象ではないとの認識はあるものの、今回の事象は地域住民に対し不安を募らせる結果となり、今後のサイクル事業への影響が懸念されることから、先般、三村知事とともに、中川大臣に対しまして、サイクル事業を一元的に規制している国が、国民の理解を得るためにも、施設の安全性に影響を及ぼすような事象でなくても強く関与し、事業者に厳しく対応していただくよう要請させていただきました。

 このような経緯を踏まえながら、今後、サイクル事業を円滑に進めていくためには、次の六点について積極的に取り組む必要があるものと考えております。

 一点目として、国が、法令に基づく規制のみならず、さらに地域住民の安心感の醸成に視点を置いた強い関与と積極的な理解活動の展開の強化を図ること。

 二点目として、将来のエネルギーの安定供給や地球環境問題等を総合的に評価し、核燃料サイクル事業を基本としたエネルギー政策の確立を図ること。

 三点目として、高経年化プラントに対する定期検査あるいは事業者が行う自主検査のあり方等の見直しを行い、施設の安定操業を目指した規制の強化を図ること。

 四点目として、放射線の幅広い技術を生かした医療分野、研究分野等の施設と原子力施設との共生を図り、地域の活性化と長期的な振興策の強化を図ること。

 五点目として、国民が国のエネルギー政策及び原子力政策に共通の認識を持てるような学校教育の振興を図るため、内容の位置づけを具体的に検討すること。

 六点目として、地域住民の安心感醸成のため、万が一の事故に備えた原子力施設周辺のインフラ整備の強化を図ること。

 以上、要望を含めて意見を述べさせていただきました。

 最後に、村としては、原子燃料サイクル施設は、立地基本協定に基づき計画どおりに進め、安全で安定した操業が何よりも地域振興であるとの基本姿勢で対応してまいりたいと考えておりますので、どうか、委員の皆様におかれましても、地元の意見を重く受けとめていただき、地域住民の視点に立って慎重に御審議くださるようお願いを申し上げまして、私の意見とさせていただきます。

 本日はまことにありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 次に、庭野参考人にお願いいたします。

庭野参考人 おはようございます。

 東芝の執行役専務の庭野でございます。現在、日本電機工業会原子力政策委員会の最高顧問をしております。

 本日は、プラントメーカーの立場から、原子力への取り組みと原子力政策への期待について述べさせていただきます。日ごろの御指導、御支援に加え、今回このような機会を与えられましたことに関して深く感謝を申し上げます。

 まず、原子力における事業環境に対する認識でございますけれども、先般まとめられました原子力政策大綱に、原子力発電は将来にわたって基幹電源としての役割を担っていくことが明記されました。具体的には、二〇三〇年以降も総発電電力量の三〇%から四〇%以上を原子力発電が担うことを目指すということでございます。

 我が国の低いエネルギー自給率、そして、現在懸念されております地球環境問題等を考慮いたしますと、原子力発電は、我が国のエネルギーの安定供給並びにCO2削減効果の観点から、今後とも国策として堅持、推進されるものと確信しております。

 現在の日本の原子力技術及びプラントの建設能力でございますけれども、過去三十年間にわたる安定的かつ継続した新規プラントの建設及び官民一体となった高度化技術の開発等により、現在、世界のトップレベルにあるというふうに思っております。

 また、高経年化プラントを含めた既設プラントに対しましては、各種の予防保全技術並びに高性能機器を開発、適用することにより、安全性、信頼性はもとより、プラントの価値向上に向けた取り組みを行ってまいりました。

 このようにして官民一体となって築かれてきました日本の原子力技術は、国家的な戦略技術であるという認識でございます。

 国内では、この先当面の間、新規プラント建設が減少する見込みであります。厳しい事業環境が予想されますが、プラントメーカーを含めた産業界といたしまして、原子力技術の維持向上と技術継承のために、人材の確保と育成に努めているところでございます。

 一方、世界におきましては、原子力を再評価する機運が高まってきております。米国では、ブッシュ政権のニュークリアパワー二〇一〇という計画のもと、新規プラントの建設に向けた動きが活発化してございます。また、中国では、二〇二〇年までに三千六百万キロワットの原子力発電所を建設するという計画が進んでおります。さらに、欧州においても、フィンランド、フランス等でヨーロッパ型の新規プラント建設計画が具体化してございます。東南アジアにおけるベトナム、インドネシア等では、原子力発電導入の検討が盛んに進められているという認識を持ってございます。

 日本のプラントメーカーにとっても、これまでの機器レベルでの輸出に加えまして、原子力発電プラント一式を輸出する機会が高まってきているというふうに思ってございます。世界トップレベルの技術と総合エンジニアリング力をもって、米国や中国、アジアなどの海外市場にも進出すべく、メーカー各社はそれぞれ国際展開に向けた活動に取り組んでいるところでございます。

 原子力発電所の建設や導入はいずれの国においても国策であるということから、原子力の国際展開においては、供給国による政府レベルでのトップ外交が行われております。日本メーカーが今後国際競争に勝ち残るために、国のより一層の御支援を期待するところでございます。

 次に、将来炉の開発でございますが、アメリカ、フランスなども、国家プロジェクトとして国を挙げて開発に取り組んでおります。日本メーカーといたしましても、国家プロジェクトとしての日本型次世代軽水炉の開発に期待し、それを通じて、安全性、信頼性、経済性等においてよりすぐれた国際競争力のあるプラントを確立していきたいというふうに思っております。

 こうした将来に向かっての取り組みによりまして若い技術者が原子力の将来に夢を持つことができ、それがひいて人材の確保と原子力技術の維持向上に大いに効果があるものと考えております。

 次に、核燃料サイクルについてお話しさせていただきます。

 核燃料サイクルの確立に関しましては、ウラン資源の有効利用、環境への負荷低減などの観点から、軽水炉を中心とする軽水炉サイクルと、高速増殖炉を中心とする高速増殖炉サイクル、この技術開発に取り組んでまいりました。

 国産エネルギーとしての原子力を確固たるものにする上において、再処理技術の確立は必須であると考えております。米国においても再処理技術に向けた検討が新たに開始されるなど、世界的にも再処理の重要性が再認識されてきております。日本では、六ケ所村の再処理工場が建設中であり、発電所でのプルサーマル計画が進められています。メーカーは技術及び製造面からこれに協力し、軽水炉サイクルの確立に最大限の努力をしているところであります。

 一方、高速増殖炉サイクルにつきましては、その実用化によりウラン資源の利用率が格段に高まり、数百年から千年オーダーという長期にわたって原子力エネルギーを利用し続けることが可能となります。また、放射性廃棄物の放射能減衰期間を、数万年オーダーから百年オーダーに短縮できる可能性もあります。環境へのより一層の負荷低減が期待できるものであります。

 世界的にも、二〇三〇年ごろの実用化を目指して、日米仏を中心とした国際プロジェクトとして、ナトリウム冷却炉を含む第四世代炉の開発計画が進められています。また、中国、インド、ロシアでも、国策として開発が進められています。原型炉であります「もんじゅ」を有する我が国は、高速増殖炉開発において世界をリードすることができるというふうに考えております。

 高速増殖炉サイクル技術は、これまで一貫して国主導の開発体制のもと、産業界はプラントの設計、機器、設備の供給、建設、運転の分野でもって人材と技術の両面から参画してまいりました。従来以上に官民一体となった取り組みを期待しております。

 次に、原子力の先端技術の開発について簡単に述べさせていただきます。

 原子力の先端技術は、人類の将来に多大な貢献をするポテンシャルを有しているというふうに思っております。未来のエネルギー源である核融合開発については、長期的な視野に立って今後進められていくものと認識しております。クリーンエネルギーとしての水素を原子力エネルギーにより製造する技術の商用化や、イオン、中性子等の量子ビーム利用による医療、製薬等のライフサイエンス、半導体、燃料電池等ナノテクノロジー分野への応用を目指した研究開発も進めております。

 最後になりますが、プラントメーカーは、原子力技術は国家的戦略技術であるという認識のもと、今後とも、その維持向上と発展に取り組んでまいる所存でございます。官民一体となりました核燃料サイクルの推進と原子力先端技術開発へのさらなる御支援をお願いしまして、私のお話を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

河上委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

河上委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西銘恒三郎君。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎と申します。

 本日は、参考人の先生方、お忙しいところ本当にありがとうございます。

 私の選挙区、地元は、全国最南端、沖縄というところで、原子力というものに関してはなかなか縁のないところであります。どちらかといいますと、日米安保条約の根幹の米軍基地が、専用施設七五%ありまして、地元の地方議会でも、米軍基地の関連の問題ばっかり県議会で取り上げているというような状況すらあるところであります。

 ですけれども、私は今般、参考資料等を読みながら、青森県の政治家の方々の思い等々を察するに、同じ安全保障という視点では、参考書類を読みながら、似たような状況にあるのかなという意識で読ませていただきました。きょうは、我が国の原子力利用、エネルギーの安全保障という視点からも避けては通れない大事な国策だという認識で質疑をしたいと思います。

 まず、先日、七月の二十二日、たまたまではあったのでありますが、同僚議員と、東海村、原子力研究所と核燃料サイクル開発機構を視察してまいりました。エネルギー問題に関心を持っていたので、同僚議員から誘われて見てきたわけでございますけれども、私にとりましては初めての体験でありましたし、プルトニウムというものを現実に目の当たりに見させていただきましたし、また、わずかな量で一家庭の一年分の電気をつくる等々の説明を聞きながら、百聞は一見にしかずと申しますか、施設を訪ねて説明を聞く中で、やはり少しずつ理解が深まってきたのかなと。

 これまでは、党の中でもエネルギーの関係で原子力の議論を聞いておりましても、いま一歩理解が足りないなというのが私の認識であったのでありますが、先日の視察を経て、少しずつ何となくわかるような気がしてまいったところであります。これからも、エネルギー政策、大事な問題でありますので、関心を持ってまいりたいと思います。

 原子力につきましては、どうしても安全の確保が大前提、本当に大前提であると私も考えております。さらにその上で、国民の信頼をどう築き上げていくのか。原子力発電の現場の方々は、本当に毎日毎日が真剣勝負の日々だと考えております。ですけれども、人間はミスを犯しますし、また自然災害等も起こりますし、昨今の国際安全保障の環境の中では、テロなども範疇に入れなければならないようになっていると思います。

 そういう意味で、近藤参考人にお伺いをしたいのでありますが、あらゆる要素すべてインプットした状態で安全性を確保していくためには、どう取り組んでいかれるのか、御説明をいただきたいと思います。

近藤参考人 大変難しいというか、非常に原理的な御質問をいただいたと思いますが、私ども安全委員会じゃないので、安全の問題に余り触れちゃいかぬのかなと思いつつ、しかし大事な御質問ですのでお答えさせていただきます。

 安全を確保するという、この安全とは何ぞや。私は、裏返して言いますと、不安全なことが起こる可能性が社会が容認する水準にまで低いということをもって安全と定義をする、いわばリスクが十分小さいということをもって安全というふうに定義いたしますと、これをいかに複雑なシステムにおいて実現するかとなりますと、そのリスクがどういうプロセスでそのシステムから発生するか、つまりどういうシナリオで被害が起こり、そのシナリオの発生確率はいかほどかということを詳細に分析する、これをリスク分析と言いますけれども、これをきちんと行うこと。そして、その結果として、設備にあってはどうあるべきか、それからそれを運転管理する人にあってはどうあるべきかという、さまざまなリスクを低くするための手段がその分析から浮かび上がってまいります。それに優先順位をつけまして、重要なところはきちんと、それから、知恵と工夫で、当事者が工夫してやれるところはやれるように、そういうスペースを設けつつ、全体としていつもリスクが小さくなっているかどうかを監視しながらきちんと運転管理を進めていく、これが基本だというふうに思っています。

 それの役割は、第一義的には当然事業者がそれを行うべきですが、国としては、そういうアクティビティーを見て、リスク分析の結果を踏まえつつ、正しいことをちゃんとやっているかということを常に監査し、不適切なことがあればこれを正すというのが国の役割と。非常に短時間でございますけれども、エッセンスはそういうことかと思っています。

西銘委員 次に、原子力研究所の方とざっくばらんな話をしておりましたら、非常に気になる点がございました。予算が年々減少してきてはいるけれども、研究者はその中で、限られた中で創意工夫を発揮しながら対応しているという話でございました。原子力利用の研究といいますか、現場を見て話を聞いても感じるんですけれども、三十年、五十年という非常に長期的なスパンであります。

 そこで、私が心配しましたのは、長期的に次世代の原子力の利用を考えると、こういう予算が年々減少する中で、創意工夫はしているんですけれども、人材の確保はなされるのかなという点が懸念をされます。その点は、近藤参考人、どうお考えでしょうか。

近藤参考人 人材の確保は非常に重要な課題と思っています。今回の原子力政策大綱の議論におきましても、多面的な議論が行われました。

 結論を急いで申し上げますと、確かに原子力産業の成長期には非常に人材需要が大きくありましたので、大学等も一生懸命人をつくったわけですが、現在はいわば成熟期でございますから、人材需要はおのずから定年退職を補充するという世界になっていますから、需要が減っていることは間違いない。したがって、大学等もその供給力を減らしていること、これもまた間違いないわけです。

 こういう定常状態においていかにして人材を確保していくかとなりますと、基本はその職場がいかに魅力的な職場であるかということであろうというふうに今回の政策大綱では判断をいたしまして、関係者に、いかに原子力の職場を魅力的なものにするかについて知恵を出してくださいと。私どもの提案としては、やはり創意工夫が生かされることが非常に重要であろうと。いろいろな自分のアイデアを試してみることができるような職場にしないことには人は引きつけられないのではないかと。

 これには、当然のことながらそのために予算が必要かもしれません。それについては適宜適切に国として出すべきものは出すといたしましても、しかし、何より経営者がまず第一にはそういう創意工夫を生かせるような職場環境をおつくりいただいて、その結果としてさまざまな成果を世に問う、そういうシステムができることが非常に重要であるというふうに認識して、そのための御尽力を皆様にお願いしているところでございます。

西銘委員 原子力の施設は、国家のエネルギー安全保障あるいは地球温暖化防止という点からも、我が国の国策として私も必要不可欠であると考えております。

 原子力の施設とその施設を受け入れている六ケ所村のような地域社会、あるいは私どもの、施設を有しない、原子力というのは怖いものだなという意識しかないような地域の国民の理解も含めて、施設と国民、共生をしていかなければならないと思います。マスメディアへの対応も含めてではありますけれども、共生のための施策全般についてのお考えをお伺いしたいと思います。

近藤参考人 これまた非常に重要な問題ですが、一つその前に、沖縄でも実は、ウリミバエの根絶とかいうことで、原子力の放射線で不妊化処理したものを使って事業をさせていただいていまして、これも原子力の成果と我々は思っておりますので、全然無縁ということではないかと、これは御存じのとおりと思いますが、念のため申し上げて、これも一つの共生の手段と思います。つまり、地域社会に役立つ原子力技術の応用ということで、地域社会が原子力の科学技術を有効活用していく、これが非常に重要。先ほど村長さんが放射線治療と原子力施設の関係ということをおっしゃられましたが、これも一つの考え方。

 そういう原子力の特質を生かしたものでもって共生をしていくというのは一つのアプローチでありますが、もう一つは、現在日本で、地域振興の考え方としては、やはりそれぞれの地域がみずから考えた、創意工夫でいろいろアイデアを出して、それを競争的に実現していくことが今の社会にふさわしいのではないのかという御議論が盛んでございますので、そういう場合に、その当地にいらっしゃる原子力関係者が持っているノウハウ、知識、そういうものを大いに地域の取り組みに対して活用していただく、いわばパートナーとして参加していく、こういうことが重要ではないかと考えておりまして、これは、私が以前にいました大学におきましても、大学として地域社会に貢献する、知恵と工夫を提供していく、そういうこともあって大事ということを申し上げている。東京都は真ん中ですが、そういうことを言った記憶がございますけれども、これは全国的にそういう考え方で進めていくのが適切だというふうに考えております。

西銘委員 次に、伊藤参考人にお伺いしたいと思います。

 ことしの経済産業委員会の視察で関西電力美浜発電所三号機の事故現場を視察する機会がありました。また、事故調査の最終報告書の折にも質問する機会がありましたけれども、事故調査の最終報告書の中で、「「安全文化」の綻び」という表現を調査委員長が使っておりました。私は、この言葉に大変ショックを受けました。

 社会全体が、コンプライアンス、法律が守られないような状況になっている。全体的な現象かなとは思うんですけれども、電気事業者としてこの安全文化のほころびという表現をどのように受けとめ、また、全体の電力会社としてその後どのような取り組みをしたのか、御説明をいただきたいと思います。

伊藤参考人 お答え申し上げます。

 まず、昨年の八月に関西電力美浜発電所の三号機の事故で十一名の死傷者を出すという重大な結果を引き起こしまして、これは単に関西電力だけではなくて、全電気事業者が非常に大変な問題だということで、痛恨のきわみ、こういうことで感じております。

 今お話のございました原子力安全・保安院さんがまとめられた中で、安全文化のほころびがあったということで、それに対してどういうような対応をしているんだ、こういう御質問かと思います。

 まず、関西電力におきましては、これは社長みずからの宣言として、「安全を守る。それは私の使命、我が社の使命」、こういう宣言を打ち出され、初心に返って安全文化の構築をし直して、全社を挙げて事故の再発防止を確実に実施していく、こういうふうにされております。

 この再発防止の対策の内容としましては、二十九項目にわたる行動計画が取りまとめられております。この六月にはその詳細な実施計画をまとめて公表された、こういうふうに聞いております。その中の実施項目の一つであります関西電力の原子力事業本部の福井県の移転ということについても、これも七月の下旬に実施に移される、こういうことで、着実にその対策というのは進められている、こういうふう聞いております。

 また、業界全体としてどうかということでございますが、美浜の事故の発生後速やかに、各社の社長で構成いたします信頼回復委員会、これを開催いたしまして、安全確保の一層の向上につながる対策を出したところでございます。

 その内容といたしましては、国内外のトラブルの水平展開に関して業界全体がより緊密に連携をとるように取り組みを強化していくこと、また、NSネットが行っている相互評価とか安全キャラバンという活動を一層連携強化を図るとか、さらには、協力会社を含めた保守管理に関する良好事例を水平展開していこう、こういうことを申し合わせて各社で展開をしたところでございます。

 これらの活動は、ことしの四月に産業界の新しい団体として発足いたしました日本原子力技術協会というものに発展的に引き継がれておりまして、この協会におきましては約百社が参加しておりますけれども、産業界各社の取り組みに対する厳正な評価をしていただきながら、各社が安全文化のさらなる向上を図っていこう、こういうことで業界全体としては取り組んでおります。

 以上でございます。

西銘委員 次に、我が国の核燃料サイクル政策についてでありますけれども、昨今、IAEAのエルバラダイ事務局長が打ち出しました国際核管理構想なるものがございますが、この事務局長の構想が我が国の核燃料サイクル政策に影響を与えることはないかどうか、御説明をいただきたいと思います。

伊藤参考人 最近話題になっておりますIAEAのエルバラダイ事務局長が打ち出した国際管理構想、これについて影響がないかという御質問でございます。

 私ども、原子力を平和利用の目的に限って推進していくべき、こういう考え方は大変重要なものだ、こういうふうに認識しております。我が国は、国際的な核不拡散制度に積極的に参加するとともに、これを厳格かつ誠実に遵守して最大限の透明性を図って、真に平和利用のみに限定して行っている、こういうふうに思っております。

 この構想に対してでございますが、日本と同じように、世界の各国が保障措置を強化するためのIAEAの追加議定書の締結、こういうものを行っていってもらえたらいい、こういうふうに思っておりますが、いずれにしましても、我が国の原子燃料サイクル政策、これに不必要なと言うとちょっと言葉は語弊があるかもしれませんが、影響を及ぼすことがないようにぜひとも対応していっていただきたい、こういうふうに思っております。

西銘委員 先日の、核燃料サイクル開発機構の現場を研究者に説明して回っていながら感じたのでありますが、例えば、何かボックス、これはIAEAのもので我々でもさわれないとか、あるいはIAEAの監視のシステムがこの制御本部の中にもあるとか、冗談のように、この施設はIAEAのためにあるんだ等々の説明もありました。

 我が国が原子力の平和利用、不拡散については非常に真剣に取り組んでいるなというのを肌で感じたのでありますが、六ケ所の再処理工場ではこの東海村の核燃料サイクル開発機構の中で見られたようなIAEAのチェック体制はどうなっているのか、核不拡散と平和利用という視点で御説明をいただきたいと思います。

伊藤参考人 六ケ所村で核不拡散のためにどういうふうな形でやられているのか、こういうことでございますが、我が国は、核不拡散に関する条約、NPT条約でございますが、これを締結し、IAEAによるフルスコープの保障措置、つまり査察等をほぼ抜き打ち的に受けるとか、核物質や施設の厳格な管理、これを実施しておりまして、六ケ所再処理工場におきましても、東海と同様に、厳格な保障措置のもとに平和利用以外への転用がないことをきちんと確認していただく、こういうことになっております。

 特に六ケ所の再処理工場におきましては、IAEAによる初の大型商業用再処理工場に対する保障措置としまして最新鋭の保障措置技術が適用されておりまして、ほぼばっちりとチェックされているという状況でございまして、不正を行う余地がほとんどない、できない、こういう体制ができておりまして、今後とも適切に対応していけるもの、こういうふうに思っております。

西銘委員 古川参考人にお伺いしたいと思います。

 美浜の町長さんの言葉だったと思いますが、地域現場で有線放送を使って施設の現状等を日ごろから地域の方々に内容も含めてVTRで説明をするといいますか、そういう体制をとっているという点が非常に私は印象に残りました。

 古川参考人、地域住民への日ごろからの原子力に対する情報といいますか、具体的にどのように取り組んでおられますか。お願いします。

古川参考人 お答えを申し上げます。

 日ごろから住民に対してどういう情報を提供しているか、こういうことでありますが、村民が何よりも不安に感じているのが、情報がうまく伝達されていない、この部分はサイクル施設で最も大きいところか、こう思っています。

 特に放射線、放射能というと、目に見えない、そして、目に見えない場所で起こっているという不安があるので、まず村民に安心感を与えるためには情報の提供、わかりやすい情報の提供が必要、こういうことで、常日ごろからその情報、さまざまな部分を使って対応しています。

 まず、万が一の状況があるときには防災無線等で全町村に伝えるようにして、それから常日ごろからバリアフリー体制で情報を提供する、さまざまな広報等、機会あるごとに提供して、村民の理解を得ているところでございます。

 以上であります。

西銘委員 時間が参りましたので、終了したいと思います。どうもありがとうございました。

河上委員長 次に、計屋圭宏君。

計屋委員 民主党の計屋圭宏でございます。

 きょうは、参考人の皆様方におかれましては、それぞれの専門的な立場から御意見をちょうだいしまして、ありがとうございました。

 私も素人であるわけでございますけれども、国民の立場から何点かお聞きさせていただきたいと思います。参考人の皆様方におかれましては、議員はもとより、国民にわかりやすく、簡潔に御答弁いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず、我が国のエネルギー安定供給確保について原子力の果たす役割ということでお聞きしたいと思いますけれども、天然資源に乏しい我が国において、エネルギーの安定供給確保は最重要課題の一つであります。

 しかしながら、燃料の八八%を中東に依存し、石油依存度も五〇%を超えている、そしてまた、最近の中国の、なりふり構わず資源確保外交というものを展開している、そしてさらに、不安定な中東情勢等々を考えてみますと、国産のエネルギーとして位置づけられる原子力発電の重要性がさらに増していると考えているわけです。

 そこで、我が国のエネルギー安定供給確保について原子力の果たす役割については、近藤参考人の見解をまずお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

近藤参考人 先生がおっしゃられたとおりと思っております。つまり、エネルギー政策における重要課題は、何よりおっしゃる安定供給、そしてそれが環境適合性を満たし、かつ経済的である、この三点。しかし、なかんずく安定供給、セキュリティーの確保ということが重要というふうに考えるところでございます。

 現在、我々の社会、国で利用可能なさまざまなエネルギー技術あるいは資源等の状況を考えてみますと、原子力は既にして、エネルギーのいわゆる自給率は原子力を外しますと四%、原子力を入れて二〇%近くということでございまして、自給率の向上に貢献していること。それから、環境適合性に関しましても、地球温暖化の防止の観点、対策の観点からも、すぐれた特性を有していること。それから、経済性につきましても、技術エネルギーでございますので、技術の創意工夫によりまして競争力のあるエネルギー供給が可能に現在なっているところであります。

 そういう意味で、日本として考えますと、エネルギーの安定供給ということに対して、ほかに要求されるさまざまな要件等もあわせ考えると、これを大事にしていくということが極めて重要というふうに考えております。

計屋委員 次は、原子力政策に関して国の果たすべき役割ということでお聞きしたいと思うんですけれども、原子力政策は重要な国策でありながら、その推進の担い手はすべて民間の電気事業者にゆだねられているのが実情だと思います。

 我が党は、安全確保対策も含め、原子力政策における官民の役割分担を見直し、政府が実質的に責任を負う体制に移行すべきでないかと考えております。

 原子力政策に関して国の果たすべき役割について、近藤参考人の見解をお伺いしたいと思います。

近藤参考人 過去には、エネルギー産業というのはいわゆる公益事業という言葉でくくられて、いわば公益、おっしゃるように、エネルギーは、単に安いのみではなく、我が国のセキュリティーの観点から重要なものである。したがって、そういうものを国として適切に確保できるということをおもんぱかって、公益事業という整理でもって、電気、ガス等の事業が政府の規制のもとに進められてきたところだと理解をしておりますけれども、それが経済規制の撤廃という流れの中で状況が変わってきている。この変化の中で国の果たす役割が大きく変わるということは必然というふうに今考えております。

 それで、国の果たす役割は、一般的には、いわゆる研究開発等を通じて新しいエネルギー技術の情報をつくり出し、あるいはそれを提供するというのが第一の役割。第二が、これが安全に運営、運用されるということを担保するために、国として規制という活動でもってこれを担保していく。第三番目が、今先生がお考えのように、国として、市場原理になじまない安定供給、環境等の観点から、いわば市場の不完全性を補う観点から行うべきさまざまな措置をとって、適切なエネルギー供給システムが実現できるようにこれを誘導していく。規制と誘導、そして情報提供、この三点が国の果たすべき役割である。

 これが今ほど申し上げました経済規制の撤廃の中で非常に重要性を増している、そういう認識でございまして、今次取りまとめ中の原子力政策大綱におきましても、こういう問題意識を持って国の役割を規定してきたところでございます。

計屋委員 それでは、事業者の立場から伊藤参考人に同じ質問をさせていただきますので、よろしくお願いします。

伊藤参考人 ただいまの御質問は、要するに国にどういうことを事業者として期待するんだ、こういう御質問だと承知いたしましてお答え申し上げます。

 エネルギー政策における原子力の重要性というのは、これまで原子力長期計画だとかエネルギー基本計画において確認をされてきたところでございます。私ども電気事業者といたしましては、現在、電力の自由化、これが拡大が図られておりますけれども、そういう拡大した状況におきましても引き続き原子力を着実に推進してまいる、こういう所存でございます。

 原子力は、御承知のように、初期投資が大変大きくて、開発に当たりまして長いリードタイムを要する電源でございますが、民間が実際に原子力事業を遂行する、そういう一方で、国の方としましては、基本政策を担うほか、民間では実施することができない事項を遂行する、こういった基本的な役割分担を踏まえて、原子燃料サイクル事業を含めまして、原子力を支える環境の整備等の面で引き続き御支援をいただきたい、このように思っております。

 以上でございます。

計屋委員 原子力政策大綱に関する所見についてお伺いしたいと思うんですが、この策定にメンバーとして取り組んでこられました庭野参考人のこの大綱に対する見解というものをお聞きしたいと思うんです。よろしくお願いします。

庭野参考人 今回の原子力大綱につきましては、特に今後の原子力のあり方について、具体的には現在の水準以上に発電電力量を維持するということが明確に述べられた、定義されたということを非常に感謝しております。

 また、これとあわせて、将来のリプレースに対して新しい炉型、日本型炉型の開発も推進すべきであるということ、またさらに、高速増殖炉サイクルに向けても、二〇五〇年ごろの商用化を目指した開発に取り組むべきであるということで、原子力の将来に対する方針が明確に打ち出されたということでございますので、原子力に技術的な面、製造面でもって携わっております産業界といたしましては、現在の建設が縮小している中で、将来に対する今後の企業としての取り組み、特に人材の確保、技術の発展という観点から一つの大きな指標を与えられたというふうに感謝してございます。

 また、製造業者に対する今後の対応ということで、国際競争力をもっともっと高めて、国際的な貢献ができるようなしっかりとした体制をとるようにということでございます。これに対しても、しっかりと今後、産業界挙げて取り組んでいきたいというふうに思っております。

計屋委員 では、次は古川参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、原子力施設と立地自治体との共存共栄を図っておられて、そしてまた住民の不安に対しても、情報提供されてきめ細かな取り組みを行っているということに対して、心から敬意を表する次第でございます。そして、我が国の原子力政策の遂行において六ケ所村が果たしている役割について大いに敬意を表します。

 また、原子力施設に係る不祥事や事故によって原子力に対する国民の信頼が揺らぐような事態が発生する中で、再処理施設の稼働等に関して古川村長はさまざまな御苦労を重ねてこられたと思います。

 古川村長が唱える原子力施設と立地自治体との共存共栄の考え方及びそのために国の果たすべき役割について、具体的にお聞かせいただきたいと思います。

古川参考人 それでは、お答えをさせていただきます。

 まず、私は、原子燃料サイクル施設の共存共栄、今、村では、その基本となる姿勢の部分で何よりも大事な部分は、安全で安定した操業が何よりも地域振興ですよ、これが共存共栄の基本でありますよ、こう思って対応していますし、また村民にも理解させております。そういう考え方で施設の部分については対応しています。

 さて、国の役割の部分についてでありますが、国は事業者に対して一元的に規制等で安全規制をして対応しているわけですが、そういう法律的な部分以外にももっと強く関与して指導していただきたい、こう思っておるところであります。

 以上でございます。

計屋委員 では、次はITERのフランスへの誘致決定についてお伺いしたいと思います。

 ITERの実験炉本体の建設地がフランス南部のカダラッシュに決定し、六ケ所村への誘致が実現しなかったことは非常に残念だと思います。誘致活動の過程で、我が国政府や経済界が最後まで一枚岩になれなかったと聞いておるわけでございますけれども、こういったようなことは総理の指導力にあるのかな、こういうふうに考えるわけでございます。

 今回のITERのフランスへの誘致決定の受け入れに対し、古川参考人はどのように考え、今後、国は地域の要望に対してどのように取り組むべきだと考えているのか、率直に見解をお聞かせいただければと思います。

古川参考人 それでは、ITERの関係についてお答えをいたします。

 先生御指摘のとおり、自分もフランスのカダラッシュに実験炉本体のサイトが決定したということはまことに残念である、村民にもそう伝えております。

 さて、ロシアでの大臣の答弁の中に、結果として残念でありましたが、これまで国が一体となって取り組んでこれたのは、地元青森県そして六ケ所の皆さんの熱い熱意がこうさせてくださいましたということに感謝をするという大臣のコメントがありましたので、政府が一体となって最後の最後まで取り組んでいただけたもの、自分はそう信じております。

 残念ながら本体そのものはフランスに決まったわけでありますが、関連施設、広いアプローチ等があります。その部分の研究関連施設、これについてはぜひとも地元と、幾つかのメニューがある部分から選択の段階から相談して対応させていただきたい、こういうことが政府の方からありましたので、関連施設の誘致を進めて、本体よりは経済的には十分の一以下と規模は小さくなるんですが、規模は小さくても研究そのものの本質は自分は変わらないのではないか、こう思って、関連施設の誘致に国の御指導をいただきたいものだ、こう思っています。先生からもよろしく御指導のほどいただきたい、こう思っています。

 以上であります。

計屋委員 どうもありがとうございました。

 では次に、核燃料サイクルへの取り組みと原子力施設の安全確保という観点から質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど伊藤参考人から説明いただいた核燃料サイクルの必要性は理解しているわけでございますけれども、我が国の核燃料サイクルは、高速増殖炉の実用化はおろか、相次ぐ不祥事等によって、MOX燃料を使用したプルサーマル実施にもなかなかこぎつけない状況であるわけです。

 そこで、核燃料サイクルの本格的な実施に向けた見通しについてお伺いしたいと思います。

 なお、原子力政策の推進において安全性の確保が他のすべてに優先することはもう言うまでもございませんが、しかし、近年においては、電力自由化の推進等により電気事業者にも厳しいコスト削減が求められているわけです。昨年八月発生した関西電力美浜原子力発電所における痛ましい事故の背景には、安全点検期間の短縮による稼働率の向上という経済的な要因があったことも否定できないのではないかと思います。さらに近年、テロ対策についてもますます関心が高まっているわけでございます。

 そこで、原子力施設の安全性確保に関する事業者の取り組みと、今後絶対に事故を起こさないという決意をお聞かせいただきたいと思います。

伊藤参考人 先生おっしゃるとおりでございまして、私ども、この原子力発電を含みます、それから原子燃料サイクルを進めるに当たりまして、安全第一に行っていくということ、これは当然でございまして、自由化になったということで、今お話ありましたように、そんなところが何らか影響しているのではないのか、こういうお話もありますが、私どもの経験から、安全性を軽視すればどういうことになるのか、何回も経験してきておりますので、自由化の時代にあっても安全性第一で取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

 先ほども申し上げましたように、社長をトップにして品質の向上の活動を行っています。それを上層部だけではなくて現場の第一線、また協力会社まで含めて進めていきたい、こういうふうに思っておりますし、これも先ほど申し上げましたが、電力会社だけではなくて、日本原子力技術協会、こういうような形でいろいろな方からの目でも見ていただいて、安全性を高めて進めてまいりたい、こういうふうに思っております。

 決して安全をないがしろにして進めるということはない、こういうふうに思っておりますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

 以上でございます。

計屋委員 それでは、時間が参りましたので、これにて質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

河上委員長 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 参考人の皆様方には、きょうはお忙しい中、また、朝からこのようにお集まりいただきまして、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。

 早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、私自身の基本的な考え方としては、この原子力政策、特に今後のエネルギーの問題、さらには地球環境の問題をとらえた場合に、まさに国として重要な課題であり、またこれを推進していかなければいけない、このような立場に立っておりますけれども、やはりそこに一つしっかりと視点を置かなければいけないのが安全ということだと思うんですね。

 その上で、まず近藤参考人にお伺いをしたいと思うんですが、まず基本的なことをお尋ね申し上げたいと思います。

 というのも、国民の一般的感情からすれば、原子力産業の有用性、また、先ほど私が述べましたような高度な技術は理解していながら、また他方、原子力関連の事故の原因というと、定期的なチェックの見落としですとか、現場の作業者への教育の不徹底ですとか、さらには虚偽報告、またさらに不正な工事、およそ原子力という重要な、かつ危険を伴う事業、その部門に携わっているという認識の有無さえ疑わしいという、こんな事故が発生していると思うんですね。

 この落差というか乖離に原子力産業に対する国民の不信感がやはり増幅している、このように考えておりますけれども、高度な技術の保有者たる事業者に求めるのはいささか違和感もありますけれども、原子力産業という極めて重要な部門を担当している人々の倫理観ですとか使命感の確認と、また、日本のエネルギーを供給している企業者としての誇りを持ってもらわなければ困るというふうに思うんですけれども、この点、近藤参考人、率直にどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

近藤参考人 御指摘の点、まことにそのとおりと私は思っておりますが、問題は、今日に至るまでと申しましょうか、二〇〇〇年以降、さまざまな事故、不祥事が御指摘のような原因で発生をしているところ、これが改善できないのかということが問題と思っています。原子力政策大綱の議論におきましても、ここは非常に重要という認識でたくさんの議論をいたしましたが、ひっきょう、事業を営む者が現在の社会で生き抜いていく、生き延びていくために最も重要なことは、どこの事業もそうですけれども、いわゆる顧客満足というものの追求であり、そのためには、決して自己満足に陥らず、保守的な態度をとらず、思い切った見直しにチャレンジをしていく、そういう態度が必要だというふうに言われているところでありますけれども、これは原子力事業を進めるに当たっても当てはまるのではないか。

 つまり、大事なことは、原子力産業の最大のお客様はだれかということについての認識の問題。私が常日ごろ申し上げていますのは、第一には、施設が立地している地域社会の皆様に御満足いただけなかったらこれは事業が成り立たないわけですので、顧客満足という言葉はともすれば電力の供給、電力をエンジョイする人という認識があるかと思いますけれども、しかし、それはそうではなくて、第一には施設の立地している地域社会の人々の満足を得るべく努力をする、こういう視点、重要性のプライオリティーづけをきちんとしていただきたいと。

 そのためには、先ほどの御質問にありましたように、リスク管理という言葉がございますけれども、自分たちのシステムについてはこういうリスクを持っている、潜在している、これについてこういう対策をとって、こういうことで十分低くなるように努力をしているということをきちんと説明して、それが御理解をいただくということがいわば必要条件。十分とは思いませんけれども、そういうことが必要条件であるということを認識していただいて、厳格なリスク管理、その内容をきちんと説明していくリスクコミュニケーション、これが必要条件というふうに考えているところでございますので、そのように皆様方にもぜひお願いしたいと、政策大綱もそうですが、いろいろな機会にそう申し上げているところでございます。

高木(陽)委員 続いて、伊藤参考人の方にお伺いをしたいと思うんです。

 環境の問題の方で、京都議定書、日本が主導的な立場で発効したんですけれども、CO2の削減の目標、決して容易なものではないというのは、これはだれもが認識をしていると思うんです。

 その上で、電気は我々の経済活動や日々の暮らしを送る上で欠かせないエネルギーなんですけれども、その多くはまだまだ化石燃料に頼った火力発電、これに依存しております。このため、業界では国内最大のCO2の排出者であって、またその割合というのは、これは二〇〇二年度に二七%に及んでおりますけれども、電力会社がいかなる努力をするのか。国際公約の成否がかかっていると言っても過言ではないと思うんですけれども、業界の努力目標、また、その実現に向けての対策、この点についてお伺いをしたいと思います。

伊藤参考人 お答え申し上げます。

 電気事業者といたしましては、お客様に販売する電力量、販売電力量と言っておりますが、この一キロワットアワー当たりのCO2排出原単位について、これを一九九〇年実績に対して二〇一〇年断面で二〇%削減する、これは非常に厳しい目標なんですが、こういう目標を設定いたしまして、業界を挙げて全力で今取り組んでいるところでございます。

 具体的にどういう対策でやっているのかということでございますが、やはり一番は、原子力発電の発電電力量における比率をふやしていく、これが一番でございますが、そのほかとして、火力発電の発電効率をさらに向上させていくとか、京都メカニズムを活用するとか、自然エネルギーの活用、こういうことをやっていこう、こういうことで取り組んでおります。

 今申し上げましたように、とりわけ、発電の段階でCO2をほとんど出さない原子力の推進というのが最も重要な対策だと考えておりまして、現在計画をしております発電所の着実な開発、それと既存の原子力発電所の稼働率の向上、こういうものにしっかりと取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

 以上でございます。

高木(陽)委員 続いて、さらに伊藤参考人にお伺いしたいんです。

 原子力の利用ということで、CO2削減、これの目標を達成していくという考え方は理解できるんですけれども、これは経産省にちょっと資料をいただきまして、この十年間の日本の原発の年度別の設備利用率、これは一九九八年が八四・二%、これをピークに低迷をしておりまして、二〇〇二年に七三%、二〇〇三年に五九%。ちなみに、米国の場合には八八から九〇%の稼働率、お隣の韓国でも九三から九四と高い稼働率を示している。この理由についてちょっとお伺いをしたいと思います。

伊藤参考人 今お話のございましたように、二〇〇二年、それから二〇〇三年の原子力の設備利用率、これが低迷しておりますのは、これはまことに申しわけないんですが、東京電力の自主点検記録の不適切な取り扱い、こういうことで原子力発電所が長期にわたって停止をした、こういう影響がございまして、約六〇%から七〇%、こういう実績に相なっております。

 一方、今お話のございましたように、アメリカだとか韓国は非常に高い設備稼働率にあるわけでございます。九〇%以上の設備稼働率、利用率を達成している状況にあるのは、これは、長期サイクル運転とか定期検査の柔軟化等の諸施策が海外では実施されているということで、そういうところが稼働率の向上につながっている、こういうふうに認識しております。

 以上でございます。

高木(陽)委員 今、法定点検のお話が出ました。十三カ月に一度ということですね。この中で、実は私も議員になる前、毎日新聞で記者をやっておりまして、そのときに浜岡の原発の定検を取材したこともございました。そういう観点からいうと、やはりこの定検がすごく必要であるな、必要というよりは絶対的なものであるなという気もするんですが、業界の方としてみれば、そこを海外並みに柔軟性を持って、そういう要望もあるんですけれども、ただ、現実問題、一般的な原子力への不信というんですか、それが根強く、安全と効率とをいかにバランスをとるか、こういう問題は極めて難題であると思うんですね。

 そこで、業界が効率のアップを主張し、それが社会的要請、例えばCO2の削減ですとか、こういうことであるならば、自主保安の確立という面でさらなる努力が必要であると思うんですね。みずからもっと努力をしていく、これはまたある意味で目に見える形にしていかなければいけない、そこがまた信頼をかち得ると思うんですけれども、そういった意味での自主保安の確立について、お考えがあればちょっと伺いたいと思うんですが、伊藤参考人、お願いします。

伊藤参考人 最初に少しお話しさせていただきたいと思いますが、効率と安全というところについては、これはやはり安全が最優先ということで、それをてんびんにかけるものではない、こういうふうに思っております。

 それで、今御質問ございました件でございますが、自主保安をしっかりやっていくということは、私ども電気事業者に課せられた使命だと思っております。このために、安全を最優先とする、こういう意識を経営のトップから第一線の作業者まで浸透させることが大切である、こういうふうに思っておりまして、各社とも、社長みずからをトップとする品質保証体制を確立させて取り組んでいるところでございます。

 また、原子力事業者の自主保安活動の向上、それから安全・安定運転の確保、社会からの信頼確保といった課題に対応するために、先ほども少し申し述べましたが、日本原子力技術協会、こういう新たな産業団体ができております。この協会は、原子力産業界の百社以上が参加する形でことしの四月に設立したところでございまして、原子力事業者の品質保証活動に対して、客観性を持った第三者的立場から評価や勧告を出すという活動を進めていくこととしております。

 各社の取り組みとこの協会の活動が相まって原子力の安全性の向上や社会からの信頼の回復につながっていく、こういうことになればということで大いに期待しているところでございます。

 以上でございます。

高木(陽)委員 今、伊藤参考人の方からも御説明がございました。国民の側からとってみれば、やはり説明がしっかりとされる、先ほど古川参考人も、情報がしっかりと伝わってくるかこないかというのが重要である、こういうお話がございました。その点もまた、業界の側としてみれば、しっかりと取り組んでいただきたいとも思います。

 そこで、古川参考人の方にお伺いをしたいんですけれども、この六月に使用済み核燃料再処理工場のプールの放射能水漏れというのがありまして、業務の不正溶接で亀裂が入ったものと報告されている。平成十四年十二月三日の議事録を拝見させていただきましたけれども、さきにあったプール漏れについてこのように言われておられます。「今回のプールの件があり、村でも、他のプールはどうなのか、大丈夫かという心配が生じている。 この機会に精密な徹底した検査をして頂きたい。後でまた水が漏って、調査したらそこもまた不正工事だった、というようなことだけはないようにして頂きたい。そうしないと、村民の不安解消にはつながらず、ますます不安を増幅させるだけである。」このように村長が発言されまして、ただ、その後、その御懸念のとおりの事故の発生で、憮然たる思いであると思うんですね。

 業者は不正溶接がばれないよう表面をグラインダーで磨き上げたという。核燃料再処理工場という極めて重要な施設を建設している使命感ですとか、責任感を、原燃、下請業者等々、ともども改めて問われるべきことだなというふうに私も痛感をするんですが、問題の本質を掘り下げず、まさしく表面のみをグラインダーで磨き上げるようなことで済ませようとする姿勢、そういうのがあるとするならば、これはゆゆしき問題だと思うんですけれども、村長、どのようにお考えか。ちょっと感想をお聞かせ願いたいと思うんです。

古川参考人 それでは、プール水の漏えいについて、先生から御指摘ありました部分について自分の考えを一言述べさせていただきます。

 平成十四年二月に確認された部分は、二百九十一カ所という物すごい量で、そして徹底した調査をして、二度とこういうことはないようにと、この部分は本当に心の中からそう思いました。六月九日にあったプール水、これは不正工事でなければいいと常に祈っていましたが、結果として、また不正工事だった、こういう部分があって本当に憤りを感じている次第であります。

 今調査をしていますし、まだ数カ所というか相当の数を確認しなければならない、そういう状況でありますので、その後はもうないようにと今また祈っているところで、一番困るのは、また漏るのかと村民が思うことが、不信、不安、それを連続して増幅させるだけでありますので、今度は検査してもそういうことがないようにと今祈っている状態であります。

 以上でございます。

高木(陽)委員 今、村長は率直に、祈っているところであります、こういうお話がございました。まさに、私たち、技術の面では素人なわけですよね。村長さんもそうなんですけれども、そうなると、やはりその当事者である原燃初め施工業者等々が、ここの部分は本当に、ある意味でいうと、誇りですとか使命感ですとか、そこを徹底して持っていただくしか方法はないのかなと思うんです。そういった部分では、本当に、私たちも含めて、素人ではあるけれども、しっかりとチェックをしながら、情報公開というのを絶えずしていただくように努力をしてまいりたいと思います。

 庭野参考人にちょっとお伺いをしたいのは、原子力産業というのは、多岐にわたる技術が複合、結集した巨大なシステムであると思うんですね。単に個々の専門技術の寄せ集めではない、そういうふうに言われているんですけれども、それだけに波及効果も多く、例えばコンピューター産業ですとか、医療、輸送、建築、環境等広く及んでおり、また、他方、立地条件の困難さもあり原発の新規プラント建設が減少する中で、優秀な人材、高度な技術基盤の維持が大きな課題になっている、このように伺っておりますけれども、この観点でどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

庭野参考人 ただいま御指摘いただいた状況がまさしく現在我々が直面している状況でございます。

 御参考までに申し上げたいと思いますけれども、ここ十年間でもって原子力関係の従事者、これはプラントメーカー、それに関連する工事会社等でございますが、約五万人から四万人に、八割まで減ってございます。特に、我々が今一番心配していますのは、将来の新しいものを開発するとか、さらにより安全性を高めるという意味での研究者の価値でございますけれども、ほぼ半減。具体的には、これは原子力産業会議の調査でございますけれども、二千四百人から千三百人まで減少してございます。そのうち、四万人でございますけれども、原子力プラントメーカーそのものが持っています人材が約一万人でございます。そのうちの研究者の減少というのはほとんど原子力プラントメーカーだということであります。

 御指摘いただきましたとおり、原子力は安全性の確保、経済性の追求ということで、あらゆる最先端の技術を取り入れるということを前提に進めておる総合エンジニアリングでございます。材料から科学、機械、電気、あらゆるものを総合して、トータルな大きなシステムをつくるということでございます。

 現在、膨大な資料、データについては、IT技術をフルに活用して、三次元のデータであるとか、そういうことでIT化で全部データとしては確保してございます。しかしながら、その膨大なデータをいかに生きたものとしてプラントに適用するかということになりますと、これはやはり、残念ながらといいますか、プラントを実際につくる、またメンテナンスをするという実作業を通じて育成される面が非常に大きいという分野でございます。したがって、今後こういう力をプラントが減少する中でいかにして維持していくかということに関しては、今回の原子力政策大綱にも載っていましたように、新しい将来に向けたプラントの開発を官民挙げて進めるということによって、若い人を引きつけることによって将来に備えるということが、唯一我々として望むところでございます。

 直面の問題としては、熟練者があと数年でかなりリタイアしてしまうという状況でございます。特に「もんじゅ」等の高速増殖炉については、長い間停止したということもありまして、老齢化が進んでございます。これに対する今後の取り組みについても精いっぱい頑張るつもりでございますけれども、大きな将来に対する方向性というものが打ち出された原子力体系に沿って、企業として最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

高木(陽)委員 時間も参りましたので、最後の質問ということで近藤参考人にお伺いしたいと思うんですが、近藤先生は検査体制に関連してこのようにおっしゃられている。本当に真に迫るような仕組みをつくるということが大事で、そういう意味で考えますと、現在の保安院の体制で、何人かの方が行って、親しく話し合ってという環境ができるだけの資源があるかということについては、いささか私は不安でございます、こういうふうに述べられて、お立場上、婉曲的に表現されておりますけれども、率直に、その検査体制が不十分なのかな、こういうことを指摘されているのかなと私は感じたんです。一方で、原子力を推進する者と安全を守る者が、同じ組織の同じ側に立っていてよいか、こういう議論もあると思うんですけれども、この問題について、最後に先生の御意見を伺いたいと思います。

近藤参考人 御指摘の点は、たしか平成十四年に参考人質疑のときにお話ししたことだと思いますけれども、その当時は、当該法令の制定によりまして、実は、御承知の原子力安全基盤機構ができまして、JNESと呼んでいますけれども、これが、まさしく私がそこで申し上げた、親しく現場で保安活動の担当者の活動を見、そして説明を聞き、その適切性を判断するという、その役割を担う者を随分と抱えていただきました。JNESなども四、五百人の規模の組織になったものですから、そこで私が注文をつけたことが実はそのJNESという格好で実現したのかなというふうに思っておりまして、それは、しかしもちろん理想的にまだ動いているとは思えませんが、発足したばかりですからいろいろ試行錯誤をやっているようでありますけれども、必ずその方向で実現していくものと考えています。

 それから、規制する者が推進している組織と同一の組織にあること云々でございますけれども、これにつきましては、原子力政策大綱の議論でも議論が行われましたけれども、現在の私の理解は、経済産業省におきます原子力安全・保安院の位置づけは大臣の下から分離されておりますから、安全にかかわる判断にそれ以外の要素が影響することなかるべしというのが国際的な基準、原則ですから、そのことは達成されているというふうに理解をしております。

 他国の例を見ましても、例えばフランスでしたら、経済産業省と似たような産業省が中にあるんですけれども、フランスの場合には、大臣が環境大臣にもレポートするという格好で、その省の中にあるけれどもほかの省の大臣にも報告する、そういう形式を整えて一種の独立性を担保している。

 あるいは、アメリカの場合には、全く独立の機関をつくっておりますけれども、実は、DOE、エネルギー省の施設はエネルギー省がみずから規制している。それから、発電事業者の規制は確かに独立した原子力規制委員会がやっているんですけれども、実はこれの作業にかかわるコストは発電事業者が払っている。規制料金を払って、発電事業者が払うお金でもって規制がされている。こういうことで、チェックが働くよう、発電事業者から見て過剰な規制が図られないチェックシステムができている。

 したがって、簡単に申し上げますと、それぞれの国がそれぞれの文化とか社会の通念を踏まえつつ最適なシステムをつくっている、そういうことかなと思いまして、現在日本の置かれている社会環境の中で長くかかってつくり上げてきました今日のシステムは、それなりの合理性があり、国際社会の通念も満足している、そういうふうに私は理解をしております。

高木(陽)委員 以上で終わります。

 ありがとうございました。

河上委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、皆様から貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 最初に、古川参考人にお伺いいたします。

 先ほどの質疑と重なって恐縮ですけれども、また燃料貯蔵プールでの水漏れがあった、この件につきましてでありますが、冒頭の意見陳述でも、極めて残念、不安を募らせるものだというお話がございました。

 三年前の原子力委員会の場で、東電不祥事を機に、この使用済み燃料プール水漏れの事件についての意見を求められた際に、古川参考人が「この機会に精密な徹底した検査をして頂きたい。後でまた水が漏って、調査したらそこもまた不正工事だった、というようなことだけはないようにして頂きたい。そうしないと、村民の不安解消にはつながらず、ますます不安を増幅させるだけ」と指摘をされた、その懸念がまさに今回的中をしたという形になっております。

 新聞などでも、河北新報でしたか、不正溶接がもっとある可能性は否定できないのではないか、プール自体の信頼性が損なわれてしまったということも指摘がございました。

 この件について、村民の皆さんやあるいは村議会でどのような意見が寄せられているのか。不正溶接がもっとあるのではないか、このような思いについて、村民や村議会議員の皆さんからどういう声や意見が寄せられているのかを御紹介いただければと思っております。

    〔委員長退席、高木(陽)委員長代理着席〕

古川参考人 では、ただいまの御質問にお答えをさせていただきます。

 議会と村民は、非常に強い憤りを持って、その真相解明、それから会社がどういう対応をしているのか聞いてみたい、こういう部分で、今残りの調査の部分がありますし、六月九日に漏れた補修もしているので、一応その部分が完成した後にいま一度会社の方から説明を受ける機会をつくりたい、こう思っています。

 たび重なる漏えい問題があるので、村民も不安に思っていますし、議会も、どうなっているのというみたいな強い憤り、そういう声が多いのが実態であります。

 以上でございます。

塩川委員 この漏水箇所の補修についての今後の原燃の対応についても、経緯を見ますと、非常にこの間、何かマスコミの批判を受けて対応が変わったかのような印象を受ける。原燃の方は、スタンスそのものは変わっていないんだということは言っておりましたけれども、これにつきまして、古川村長が、今後の対応ということでは一定の前進というふうに評価しながらも、「最初の説明では、安全と費用をはかりにかけているように受け取られる状況だった。」ということを述べておられるということを新聞報道で拝見いたしました。

 これは、安全の問題とコストの問題というのはどこでも共通して出されている御意見だと思っております。関電の美浜事故の際にも、地元の大飯町長さんも、私どもが委員会としてお伺いした際にも、原子力にコスト意識は危険なものだ、原発は老朽化をしているのにその定検期間がどんどん短縮というのはおかしいと、こういったコストと安全の矛盾ということを指摘されておられます。

 こういう原発関連の施設を立地している自治体の長として、コストと安全の矛盾、こういう問題が大きくなっているということについてはどのようにお考えか、お聞かせください。

古川参考人 それでは、ただいまの御質問にお答えを申し上げます。

 村内のいわば声の中にも、安全とコストの部分について、安全が損なわれている部分にはコストの問題もあるのではないかという声は、村民からも議会からもあります。自分はそういうことはないだろうとは思っていますが、村民の中にはそういう声もありますし、議会からもそういう声があります。

 これはあってはならないことだ、こう思っていますので、いま一度、安全の部分、私ども、これを受け、立地基本協定の場合はもう安全第一と。先ほども申し上げましたが、この施設については安全で安定した操業がもう何よりも地域振興ですよ、信頼を得る第一の方法ですよ、その姿勢でこれは対応してまいりたい、こう思っています。

塩川委員 ありがとうございます。

 もう一点お伺いしたいと思うんですが、原子力施設の立地自治体からの要望として、原子力の推進行政と原子力の安全規制行政の分離を徹底すべきではないか、こういう御意見がございます。ですから、独立した安全規制機関を設けてもらいたい、また、今回の美浜の事故などでは、独立した事故調査委員会、こういうものをぜひ設けてもらいたい、こういう御意見については、古川村長としてはどのようにお考えでしょうか。

古川参考人 では、ただいまの御質問にお答えさせていただきます。

 村内にも議会にもそういう声がありますので、その推移を見守りながら、できれば独立した機関等で調査、検討するような機関があれば、なお一層安全の部分が村民に伝わるのではないかとは思っています。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 続きまして、伊藤参考人にお伺いいたします。

 関電の美浜事故のことですけれども、保安院の報告書で、関電においては、「配管減肉調査を行って技術基準を下回ることが判明した場合でも、材料手配に時間がかかり、発電所の運転再開が遅延するおそれがあることから、技術基準を独自に解釈して、補修を先送りするなど、技術基準不適合が常態化していた」「こうした状態が長年にわたり是正されずにいたことは、安全文化の劣化を具体的に示すものとして重大な問題」だと指摘を行いました。

 ここで、なぜこの決められた定期検査工程を守る意識が過剰になったのか、あるいは、なぜ発電所の運転再開が遅延することを恐れたのか、そこに対してのもっと踏み込んだ解明が必要ではないのかということを、私、保安院に対してこの点をただしたわけですけれども、それに関連してお尋ねしたいんです。

 私、やはり一九九五年、今回の関電の事故でも一連の問題が起こったときだと思っております。一九九五年に、一つ、不適切な配管減肉管理が常態化をして、先送りするということが始まる。また、九五年に関電は、三菱重工業から日本アームへと、二次系配管の点検管理業務の移管を決定いたします。同様に、三菱重工業サイドでも一九九五年に定検短縮プロジェクトチームというのを結成しております。これは、三菱の会社として行っている技報の中でも、定検短縮プロジェクトチームを結成したのは原子力プラントの発電コスト低減のためと書いてあります。つまり、私は、やはり九五年の電気事業法の改正、ここで電力の自由化、自己責任を明確化した保安規制体系の確立というのが、安全とコストの問題との関係で一つのターニングポイントになっているのではないかということを思わざるを得ません。

 そこでお聞きしたいのが、国の電力自由化や安全規制政策の緩和を機に電力事業者のコスト削減優先策が推進されたのではないか、事故の背景に安全対策よりコスト削減優先があったのではないか、こういう指摘についてどのように受けとめていらしているか、お尋ねしたいと思います。

伊藤参考人 現在、電力の自由化、販売電力ベースで三分の二が自由化されている、そういう状況の中で、自由化ということが影響してコスト削減、そういうところが行き過ぎて安全に影響を与えているのではないのか、こういうお話かと思うんですが、私ども、自由化の前から原子力発電をずっとやってきておりまして、そこで安全を第一義にやらないとどういうことになるのかというのは、本当に身をもって体験してきております。

 そういう流れの中で電力の自由化というのが始まったわけでございますけれども、当然、自由化で競争していくに当たって、むだを省いて少しでも安く電気を供給していくという努力はしていかなきゃいけない、当然やっていくべきだというふうに思っておりますが、それと、では原子力の安全とをてんびんにかけて、そのところを、言葉は悪いですが、ないがしろにするような形でやるかといえば、それは絶対あってはならない。これは、各社ともそういうふうに思ってやっているものだと私は認識しております。

 以上でございます。

塩川委員 プラントメーカーの立場から、庭野参考人にも同様な角度でお尋ねしたいと思っております。

 国の電力自由化、安全規制政策の緩和を機に、電力事業者としてのコストダウンを図るということが大きな方向として行われてきているわけであります。プラントメーカーとして、これは保安院の報告書でも指摘がありましたけれども、当然のことながら最も熟知をしている当事者でありますから、電力事業者のコストダウン要求に対してきっぱりと物を言うべきだったというふうに思うんです。会社は違いますけれども、同じプラントメーカーとして、また業界を代表するお立場としてどのように受けとめておられるのか、お尋ねしたいと思っております。

    〔高木(陽)委員長代理退席、委員長着席〕

庭野参考人 御指摘の事故等につきましては、プラントメーカーとして技術がまだまだ今後改良すべき点があるという点では、真摯に反省しております。

 プラントメーカーとしては、電力事業者の昨今の自由化等を踏まえたコストダウンといいますか、経済性を追求する動きに関しては、可能な限りそれにおこたえするという立場は基本的には変わりませんけれども、我々は、プラントを納めてその安全性を確実にするということが第一使命だということは、プラントメーカーとしての製造者の責任の問題として深くとらえております。したがって、そこでの電気事業者の方の経済性の追求と安全性をトレードオフするということは、全くないというふうに確信しております。

 今後とも、我々の提供するデータもしくは測定するデータ等の信頼性をさらに高めて、電気事業者がそれによって的確な判断ができるように、技術開発等も含めて努力していきたいというふうに思っております。

塩川委員 それでは、伊藤参考人と近藤参考人に、プルトニウム利用計画について何点かお尋ねしたいと思っております。

 最初に伊藤参考人に、電気事業者によるプルトニウム利用計画についてお聞きしたいんですが、二〇一〇年までに十六基から十八基の実用発電原子炉においてプルサーマルを実施する計画を持っておられる。合計で年間五トンから八トンのプルトニウムの利用を見込んでおられます。しかしながら、この間の一連の電力事業者自身が起こしました事故や不祥事におきまして、計画がどんどん先送りになっているわけであります。

 当初、東電のプルサーマルなども一九九九年や二〇〇〇年にスタートをする、あるいは、関電につきましても同じように九九年、二〇〇〇年にスタートするというのが、実際にはそれぞれどんどん後回しになっております。フルMOXの大間についても、これもやはりずれ込んで二〇一二年と。現行では伊方と玄海という状況で、これでは二〇一〇年に十六基から十八基のプルサーマルが本当に可能なのか。プルトニウムでいえば、二〇一〇年で五トンにも届かないんじゃないかと率直に思うんですけれども、これは電気事業者としてはどのようにお考えでしょうか。

伊藤参考人 ただいまの御質問でございますが、いろいろ不祥事もあって、プルサーマルの計画もとまっているところもありということで、二〇一〇年で本当に全国で十六基から十八基のプルサーマルができるのか、こういうお話でございます。

 おっしゃるように、確かに、東京電力、関西電力、当初は先頭を走っていたわけでございますが、不正問題それから事故の問題でとまっているのは、そのとおりでございます。一方で、大間もおくれておりますが進み出しておりますし、それから、九州、四国電力、これも現在手続を行ってみえるところということで聞いております。これは新聞報道でございますが、中国電力の島根の発電所も早いうちにプルサーマルの申し入れをされるような話も聞いておりますし、そのほかの各社でも、それぞれ地元の状況を考えながら、地元といろいろ打ち合わせをしながら進めているものというふうに思っております。

 いずれにしましても、私ども、今思っております二〇一〇年までに十六基から十八基のプルサーマルをぜひ全力を挙げて頑張ろうというところについては、これからもそういう形で努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

 以上でございます。

塩川委員 率直に言って非現実的ではないかなと思わざるを得ないわけですが、重ねて伊藤参考人にお伺いします。海外処理分が三十二トンあるわけですね。三十二トン余っているのに、新たなプルトニウムをつくり出す再処理施設を急いで稼働させる必要があるのかという点をお伺いしたいと思います。

 重ねて、近藤参考人にも、同じ点ですけれども、海外分プルトニウムが三十二トンあるのに新たなプルトニウムをつくり出す再処理施設を稼働させる必要性について、原子力政策の大綱案ではどのように位置づけておられるのか。二〇一〇年という言葉も直接は書いておられないようですけれども、どのように対応する御予定なのか、あわせてお願いいたします。

伊藤参考人 今お話のありましたように、核分裂性のプルトニウムベースで申し上げますと、六ケ所の再処理工場から回収されるプルトニウム、本格操業の段階で毎年約五トン弱、こういうことでございます。一方、海外の再処理工場で回収されるプルトニウムは累計で約三十トン、こういうことでございます。今お話のございましたように、プルサーマルが十六基から十八基導入された、こういう段階では、その利用は年間五トンから八トン、このぐらいは使っていける、こういうふうに想定されております。

 したがいまして、本格的にプルサーマルが行われた段階では、需要が供給を上回ることになりますので、国民や地元の皆様の御理解を得て、可能な限り早く再処理工場を稼働させて、長期的には一定の期間でプルトニウムを利用していくこと、これが適切ではないかと考えております。

 いずれにしましても、この利用に当たりまして、いろいろなことがございます。長い時間がかかります。そういうことを着実にやっていくことも必要でございますので、資源に乏しい我が国におきましては、この再処理工場の運転、その保守の経験、こういうものを積んで着実に進めていくことが大事だ、こういうふうに思っております。

 以上でございます。

近藤参考人 プルトニウム利用に関して、六ケ所工場の建設、運転についてどういう方針を原子力政策大綱で述べているかということでございますが、御指摘のように、原子力政策大綱では、二〇一〇年についてその前後でどうこうということは申し上げておりません。

 大事なことは、日本国内におきますプルトニウムの利用については、利用目的を明らかにして処理をしてくださいという原子力委員会決定がございますが、それに従ってやっていただくことを期待しますということが第一でございます。

 それから、六ケ所工場につきましては、御承知のように、その製品たるプルトニウムはMOX工場ができないことには使えないわけですから、ただ一方で、MOX工場が稼働いたしますと、直ちにプルトニウムが必要になるわけですから、だから、当然、ある種の在庫は必要でしょう。そういうことをトータルのシステムとして見ながら、適切なプルトニウムの量を再処理していかれるのかな。これが原子力政策大綱の基本的な考え方であり、かつ、原子力委員会が定めましたプルトニウムの利用目的にかかわる透明性の向上策のフィロソフィーでございます。

塩川委員 最後に、重ねて近藤参考人にお伺いいたします。

 現行の二〇〇〇年の原子力長期計画の資料で「二〇一〇年過ぎまでのプルトニウムの回収と利用」というのがありまして、そこで「プルサーマルの実施規模の拡大に合わせて、当初は海外再処理により回収されるプルトニウムが利用されるが、その後は国内再処理工場で回収されるプルトニウムが利用される予定。」と。まずは海外分から使うと位置づけられている、これは資料ですけれども。

 今回の大綱案では、これはどういうふうに位置づけられておられるのか、その点だけお聞かせください。

近藤参考人 二〇〇〇年の長計とスタンスは変わりません。

 そこの読み方でございますが、これは海外分が全部なくなってから国内を使う、そういう趣旨でそこは書いているつもりではございませんというふうに理解します。

 つまり、多くのものは、今は六ケ所村にMOX工場がないわけですから明らかなことなんですけれども、当然のことながら海外のものが使われていくはずでございます。ただ、海外のMOX工場の利用可能性等のスケジューリングの中で、海外のものがMOXに加工されないうちに、国内のMOX工場が稼働した段階において、そこで六ケ所再処理工場から発生いたしましたプルトニウムが使われることは当然あり得るべき。これは並行的に運用されることは当然にある。しかし、大宗、大きく見ると、次第に海外から国内へ移っていくだろうというのが、そこの書きぶりの心というふうに理解をしています。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。

 どうもありがとうございました。

河上委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明三日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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