衆議院

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第4号 平成18年3月14日(火曜日)

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平成十八年三月十四日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 石田 祝稔君

   理事 新藤 義孝君 理事 平田 耕一君

   理事 増原 義剛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 近藤 洋介君 理事 達増 拓也君

   理事 桝屋 敬悟君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      片山さつき君    北川 知克君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    塩谷  立君

      平  将明君    長崎幸太郎君

      野田  毅君    橋本  岳君

      早川 忠孝君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    松島みどり君

      武藤 容治君    森  英介君

      山本 明彦君    大畠 章宏君

      吉良 州司君    北橋 健治君

      後藤  斎君    佐々木隆博君

      野田 佳彦君    松原  仁君

      三谷 光男君    高木 陽介君

      塩川 鉄也君    武田 良太君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   参考人

   (株式会社橋本鋳造所代表取締役)         橋本 光藏君

   参考人

   (社団法人日本自動車部品工業会副会長)

   (株式会社ヨロズ代表取締役社長)         志藤 昭彦君

   参考人

   (福井経済同友会幹事)

   (清川メッキ工業株式会社代表取締役社長)     清川  忠君

   参考人

   (一橋大学大学院商学研究科教授)         伊丹 敬之君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案(内閣提出第六号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、参考人として、株式会社橋本鋳造所代表取締役橋本光藏君、社団法人日本自動車部品工業会副会長・株式会社ヨロズ代表取締役社長志藤昭彦君、福井経済同友会幹事・清川メッキ工業株式会社代表取締役社長清川忠君、一橋大学大学院商学研究科教授伊丹敬之君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず橋本参考人にお願いいたします。

橋本参考人 おはようございます。

 橋本鋳造所の社長の橋本光藏でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 お手元に配らせていただきましたレジュメに沿ってお話をさせていただきます。

 当社は私の祖父が創業いたしまして、明治、大正、昭和、平成と四つの時代一貫して鋳物一筋で現在に至っております。私は三代目でございます。昭和五十三年より、大田区の羽田空港の対岸に位置する京浜島工業団地という中で鋳物のものづくりに励んでおります。

 鋳物というものがどういうものであるかということは、皆様御承知かとも思いますが、溶かした金属を型に流し込んで、固まったら型を外して製品を取り出すというのが鋳物でございまして、鉄を流し込んでいるパネルがここにございますので、こういったようなことが鋳物の基本でございます。この下に型がございまして、それに鉄を流し込んで、約千四百度の溶けた鉄がこの型の中に、この型は多分約七トンぐらいの重量が入るものでございますけれども、そういったような仕事が鋳物でございます。

 この鋳物にも鉄系の鋳物と非鉄系の鋳物と二種類ございます。私どもが手がけておりますのは鉄系の鋳物でございまして、比較的、鉄系の方は重工業で、非鉄系の鋳物は軽工業に類するのではないかというふうに考えます。

 当社の特徴を一言で申し上げますと、小さいものから大きいものまでを一貫してやれるというのが特徴でございます。大きなものは一個で約十トンぐらいのもの、小さいものは本当に数キロのもの、そういったものをやるというところが比較的多彩なゆえではないかというふうに考えております。

 それから、鉄系の鋳物の材質というのは五十種類以上あるんですけれども、通常の工場は大体五種類から十種類ぐらいなんですが、私どもは二十四種類の材質をこなすというのも、これも特徴の一つでございます。その二十四種類こなすというのは、特殊な管理技術を築いているということが原因でございまして、これが高付加価値製品の受注獲得に大きなポイントになっているのではないかなというふうに自負しております。

 私どもでどんなものをつくっているかと申しますと、自動車の部品とか電気製品の部品のようないわゆる量産物は手がけておりません。そして、比較的単品物に近いような、液晶とか半導体の製造装置の精度の高い機械部品、例えば、現在非常に話題になっております某液晶メーカーの亀山工場等で設備されているような、七世代、八世代の製造装置、これなんかにもいろいろな部分で参加させていただいております。その他、大型ポンプの部品とか、自動車のガラスの金型、これは特殊金属なんですが、そういったものの鋳造品も生産しております。

 以上が当社の概況説明でございます。

 二番のものづくりの景況感でございます。

 私どものおります大田区は、ものづくりの中小零細工場が集積しておりまして、よく景気のよしあしでは話題にされるところでございますが、現在の状況はと申しますと、全国的にはといいますか、むしろ大企業は非常に回復してよくなっておりますが、その中、我々ものづくりの下請業は、大分晴れ間は出てまいりましたが、まだまだまばらな状態は否めません。現在、自動車、液晶、半導体関連は青空ですが、それ以外では余りよくないところもあり、そういうところの下請は決して明るくないと思われます。

 次に、経営上の課題でありますが、これは多々ございます。

 例えば、技術開発などの取り組みに必要な資金調達の問題、これも一つの問題点です。それからまた、人材確保と育成、技能の伝承、それから、これから起こってくるいわゆる高齢化等の問題。これらの問題も非常に大きな問題ではあるんですが、これらの問題解決には企業が何しろ健全で財政的余裕がないとなかなかできないことなので、企業はやはり利潤の追求が非常に肝心です。

 もう一つの問題点、これはやはり、下請である我々は、ユーザー、川下との関係も、問題が起こる場合が間々あります。ユーザーの要求を満たすべく一生懸命頑張って開発し、やっとでき上がった途端にコスト面の問題や何かで材料が変わってしまって、えらい負担が起こるというようなこともありまして、川上と川下との連携をもっと考慮する必要を感じます。

 最後に、もう一つ大きな問題ですけれども、中小企業にとっては金融問題というのが非常に大きな問題です。長期にわたる平成不況のために大きな傷を負っている企業はたくさんございます。それでもどうやら頑張って、現在生き残って傷をいやしている最中ですけれども、この平成不況における商工中金の役割は我々にとって非常に大きなものでございます。

 特に、私のところは、事業協同組合に参加して組合金融でおおむね賄っているのですが、約二十社の組合員で、撤退された方も何社かございますけれども、事故につながるような、いわゆる倒産に至るようなものは一社も出しておりません。これは、商工中金の存在価値がとても大きくきいてきていることは認めざるを得ません。

 昨今の商工中金の民営化のあり方の決着がいかなるものになるか、我々としてはまことに心中穏やかではないところでございます。中小企業のための金融機関としてぜひお残しいただくことが、我々中小企業にとってはまことに望ましいことであるというふうに私は強く感じます。

 それから、四番目の基盤技術の高度化の件でございますけれども、このたびの法案についてであります。

 指針がはっきり出てみないと取り組みについての具体的なことはなかなか決定できませんけれども、経営課題で先ほど申し上げた件はそれぞれ該当するのではないかと思いますし、概要としては、我々ものづくりにとってはまことに有効打になることは間違いないところというふうに考えます。大いなる期待を持たせていただきます。

 最後になりますけれども、当社の経営理念を一言申し述べさせていただき、終わりとさせていただきます。

 資源に乏しい我が国としては、手にするところの資源は高付加価値のものづくりにすることを一番の念頭に置いております。よって、量よりも質をものづくりのモットーとしておるのが私どもの会社の主眼でございます。基盤産業の一端として高付加価値のものづくりに徹することが、川下産業の国際的地位を高めることになり、加えて我が国の経済の発展につながることと確信している次第でございます。

 以上で当社のお話を終わりとさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 次に、志藤参考人にお願いいたします。

志藤参考人 皆様、おはようございます。

 私、社団法人日本自動車部品工業会副会長、また株式会社ヨロズの社長をしておる志藤でございます。よろしくお願い申し上げます。

 最初に、エクスキューズになるんですが、私、実は、ずっと国内、海外出張を続けておりまして、土曜日の夜帰ってきたものですから、きのう、きょうの資料をいただいたものですから、何にも用意しておりません。大変申しわけありません。最初から申しわけない話なんですが。

 私どもヨロズは、自動車の足回り部品、サスペンションのメーカーであります。一九四八年に創立いたしまして、ちょうど五十八年の歴史になります。国内には、山形、栃木、横浜、名古屋、また大分で拠点があり、海外は四カ国で生産をしております。

 私どもは、もともとは筆頭株主が日産自動車であったわけでございますが、一九九九年にカルロス・ゴーンさんが来て、系列解体ということになりまして、資本解消いたしました。おかげさまでというか、その後、トヨタ初めホンダやスズキ、国内十一社の自動車メーカーすべてと取引が実現しております。そういう面では大変ゴーンさんには感謝している、こういうことであります。

 本題に入ります。

 まず、我が国製造業の競争力を支える大きな部分が技術力の高い中小企業にあるということは、周知の事実であろうと思います。特に、自動車の部品、自動車の特色は、まさに極めて多数の部品の組み合わせ、これで生産されまして、自動車の部品というのは、部品メーカーが大体七割から八割、自動車メーカーはそれを購入しているということです。

 ちなみに、日本自動車部品工業会、現在四百七十社加盟、そのうちの約五〇%が中小企業であります。

 最終製品であります自動車の性能、品質、生産性、このためには、カーメーカーと部品メーカーが密接なすり合わせ、これを行う必要がありまして、部品供給を担う多数の中小企業が高い技術力を有していること、これが国際競争力を持った自動車を生み出していくというための前提になっております。

 近年、自動車業界では国内回帰、この動きが高まっておりますが、その要因として、やはり商品のライフサイクルの短期化、また国際的な競争が大変厳しくなる中で、短期間に新しい技術を編み出し、また新しい製品を市場に送り出すためには、すぐれた技術力、これを有する部品メーカー群と近接していることが大変有利であるという認識が高まっているせいではないかと思います。

 当社は、日産自動車などカーメーカーにサスペンションを中心とした部品を供給する役割を担っておりますが、当社の部品供給には、関連中小企業の協力、また密接なすり合わせが大変重要であります。

 具体的には、新たな技術の開発、新製品の開発には、実際に製作する機械の大きさですとか工作精度等、これを熟知した当該メーカーが部品を設計しないと、製造に著しい困難を伴ったり、また大幅なコストアップになる、こういうことがあるわけでありまして、高度な機能を持った製品の開発を行う場合ほど、早い段階から材料メーカー、また加工業者との綿密なすり合わせが重要となるわけであります。

 現在、我が国には、極めて高い技術力を有する中小企業を中心とする部品メーカー群が存在し、これと一次メーカーあるいはカーメーカーとのすり合わせがうまくできていることが国際競争力を支えているというふうに思っております。しかし、この良好な構造が今後も続いていく保証はなく、現実に多くの問題を抱えております。

 第一に、高度な技術力を持った中小企業といえども、その技術力を維持発展させることには大きな困難があります。具体的には、中小企業であるがゆえに、資金、人材などの経営資源が不十分であり、技術革新のスピードが速い中で、先取りして技術力のさらなる向上を図るのは負担が重いというふうに考えます。具体例としては、若い人材がなかなか入ってこない、IT化される中で、データの交換ですとか、そういったような大企業との情報交換がうまくいかないということもあります。

 人材では、働く環境を整えて魅力ある中小企業、こういうふうにイメージを変えていく必要があると思います。それには、技能をとうとぶ風土を醸成するために、技能表彰等を活発化する必要があるのではないかというふうに思っております。

 第二に、従来の比較的単純な系列関係、これが崩れてきておりまして、取引関係が錯綜化する中で、より高度な技術を有する中小企業を発見する必要性が高まっておる、また、そういう取引相手とする相手を見つけるのが非常に難しい、こういう状況であります。

 大企業側でも、我が国のものづくりを支える中小企業のさらなる高度化のため必要な支援は行ってまいりますが、錯綜化する取引関係の中で、すべての中小企業にきめ細かな支援、指導をしていくのにはやはり限界があります。やる気のある中小企業がその高い技術力を維持向上させる努力を傾ける際に、国が適切な支援策を講じることは極めて重要であると考えております。特に、重要な技術について、中小企業同士もしくは大企業を交えて連携し、研究開発を行うことに対して、国が資金面で支援をすることは極めて有意義と思います。異なった特色を持つ企業が連携することで、欠点が補われ、大企業との連携もしやすくなるのではないかというふうに思っております。

 また、供給を受ける川下側としても、従来、取引関係がなくとも、高い技術力を有する中小企業と新たな関係を築きたいと思いますが、どこにそのような企業が存在するのか、探すことには大変な労力、または膨大なコストがかかります。したがって、そのような中小企業との出会いを演出していただければ大変有効というふうに考えております。

 以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 次に、清川参考人にお願いいたします。

清川参考人 皆さん、こんにちは。

 福井県から参りました、清川メッキ工業株式会社社長清川と申します。それから、全国鍍金工業組合連合会の副会長を務めさせていただいております。

 私は福井県から参りましたので、言葉が福井県の標準語がたまたま出ると思いますので、またそのときは御指摘していただければ翻訳いたしますので、よろしくお願いいたします。

 メッキといいますと大体三種類ぐらいに分かれますかね。第一点は防錆効果、俗に言うさびどめ。建築資材関係それから土建関係の防錆、さびどめ関係のメッキ。それから、装飾メッキ。特に、装飾ですと、自動車なんかでバンパーとかミラーとか、それから御婦人方ですと時計のバンドとか時計、光るもの、飾るもの、それからイヤリング、そういったものが装飾メッキ。それからもう一つが機能メッキ。これは私どもがやっております、メッキを施すことによってそのものの機能が発揮するというメッキでございます。そういう中で、私ども、電子部品と言われております半導体、それからプリント基板、それから俗に言う電子部品、細かい、最近注目されておりますナノメッキ、ナノオーダーのメッキの仕事をさせていただいておるということでございます。

 メッキ、今回、私こういう場所でこういう発言をさせていただくということで、本当に緊張もしておりますし、楽しんできょう参ったんですけれども、どこまで御理解していただけるかわかりませんけれども、精いっぱい努めさせていただきたいと思います。

 そういうことで、私どもの仕事の概要ですけれども、何が一番清川メッキとしては社会に貢献しているんだという話でございますけれども、私ども、皆さん方携帯電話をお持ちだと思いますけれども、今はもう百グラムを切っておりますね。昔は三キロぐらいから携帯電話が始まりまして、今はもう百グラムを切っておるというふうな、小型、軽量、それから多機能の携帯電話関係のプリント基板、半導体、部品関係。部品も、昔ですと抵抗体、コンデンサー、コイルといいますと小指ぐらいの太さがありまして、それに、両方にプラスとマイナスの電極がとれるコンマ何ミリかの線が出ておりました。最近、小さいものですと〇・四ミリ掛ける〇・二ミリのものが主流になって部品として出ておるということでございまして、我々が一番貢献しているのは、今まで三キロも資源を使って携帯電話をつくっておったのを、百グラムまで抑えるぐらいの品物に貢献している。

 昔ですと、プリント基板一つにいたしましても、全部ベークライトの板にハンダで配線をいたしました。あれは全部メッキでやっています。しかも、新聞紙一枚ぐらいの容量を記憶するとしますと、半導体ですと何層も、四層も五層も積層しながら記憶させる。それも、メッキで全部積層している。半導体のプリント基板も、皆さんはあれは一枚だと思いますけれども、あれは何層にも、四層にも五層にも十層にも十二層にも重ねて配線してあることによって多機能の機能を持つことができるというふうな仕事が、私どものやっている仕事でございます。

 それから、いつも言うんですけれども、メッキがなければ飛行機も飛びませんよ、それから自動車も走りませんよ、もちろん人工衛星も飛びませんよと。花火でも何でも上がることはできるんですけれども、飛ぶとなるとやはり方向性、目的に向かって飛ばなきゃいけませんので、その中にはいろいろな電子部品関連。それからロケットですと、何かアメリカの方ですか、ロケットのタイルが外れて何メーターなくなったと。あれは外の問題ですけれども、やはりロケットですと、中に人が乗っておりますので、高熱を出す場合に冷却しなければならない。太いパイプで冷却管をつくりますとどうしても重過ぎますので、燃料もたくさん持たなきゃいかぬと思うのでありますね。あれも、メッキで細い細管をつくりながら、小さく細いものを人工衛星に積みながら我々の部品を使っていただいておるということで、私ども、メッキがなければ世の中動きませんよと自負しながら、また誇りを持ちながら現在も仕事をしております。

 今後ですけれども、燃料電池にいたしましても、メッキ関連、それからデジタル家電もすべてメッキでということ。要は、メッキは安全で安心な品物を供給するということでございます。

 普通、物が何か、冗談かどうかわかりませんけれども、アメリカから百個の注文があったと。その中で五個ぐらいは不良品があってもいいですよというふうな話で来たらしいんですね。そうしますと、日本の製造メーカーは、百個のうちの五個不良品をつくる方法を教えてくださいと。そんなことはできないですね。一〇〇%だめにするか、全部良品なんです。ということは、日本の技術はそれくらい進んでおる。不良品をつくるなんということは、メッキそのものは不良品ができないシステムで組んでいるということで、世の中、安心してメッキを信頼しながら使っていただいておるというのが現状でございます。

 そういう意味で、携帯の話をいたしましたけれども、とにかく省資源、省資源立国日本でございますので、小さいもので大きな効果を上げて石油資源なり鉱物資源なり、いろいろなものを大事に使うのが我々メッキ業の大きな仕事だと思っております。

 それから、仕事のことは離れまして、我々メッキ業、二千社ございます。昔は三千七百社ぐらいあったそうですけれども、今はもう二千社に減りました。その中で八七%が三十人未満の零細企業だということでございます。その中で、私ども、メッキ業を営んでおるわけでございます。

 今回、立派な法律をつくっていただけるということで、我々、業界一同挙げて感謝しているわけでございますけれども、やはり適用していただきたいのは、どうしても経営、何といいましょうか、後継ぎ問題ですね。それから、技術にいたしましても、どうしても我々は、科学的見地、いろいろなことで開発には金がかかるということで、その辺、お金を下さいというわけではないんですけれども、人材の育て方、また特許の申請の仕方とか、いろいろなことはやはり保護していただけるということになっておりますので、こういう方においても、我々は本当に、非常に喜んでおるわけでございます。

 それからもう一つ、あっち飛んでこっち飛んでえらい申しわけないんですけれども、北陸地方の中小企業の景気感はどうですかという御質問が書いてございます。

 福井県、もともとが繊維関係それから眼鏡関係の産地でございまして、眼鏡も、もう皆さん御存じのように、安い製品はもう中国で製造が主流だ、高級部門は鯖江でやっておりますということ。それから、繊維関係、衣類関係もほとんどもう中国に行っておりますので、特に、今言われております自動車関係のシートそれからベルトですか、そういう関連のところは忙しく仕事をやっておる。全体的に、世の中よくなったと言われておりますので、景気感は多少はよくなってきていると思いますけれども、やはり地場産業そのものは余り思わしくないというのが今の現状でございます。

 それから、メッキに関してこういう法律を施行していただいてということで、我々業者といいましょうか、メッキ関連、本当に感謝しております。また、私ども、持ってまいりました中にいろいろ挟んでございますので、近ごろのメッキはこのような方法でやっています、こういう方向にも貢献していますということでいろいろ挟んでございますので、また時間がありましたらお読みいただいて、御理解をしていただきたいと思います。

 もう時間もないようでございますので、最後に、我々メッキ、公害企業と言われておりますけれども、我々メッキ業界はもう公害企業は脱しておりまして、もし何か間違いがございましたら我々営業できませんので、ISO14000が、ほとんどといいましょうか、もう大部分がそういう挑戦をしながら、大きな、社会に貢献できるような健全な会社を目指してみんな頑張っておりますので、御指導のほどよろしくお願いいたします。

 時間になりましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 次に、伊丹参考人にお願いいたします。

伊丹参考人 一橋大学の伊丹でございます。

 本日、こういう席にお招きいただきまして、参考人として経済産業政策について意見を述べる機会を与えていただきまして、大変光栄に思います。

 私自身は、一橋大学で経営学とか企業論の研究と教育をもう三十年以上、ちょっと古くなり過ぎておりますが、やってきた人間でございますが、その分野の一環として、中小企業政策には以前から大きな関心を持っておりました。といいますか、極めて個人的な関心としては、私は実は倒産した中小企業の息子でございます。もう三十数年前に倒産をいたしましたが、私のような子供が余りたくさん生まれないようにということを一つの個人の目標として、中小企業政策審議会にも十数年前から加わらせていただき、今回の法案をまとめることに当たって基礎となりました報告書をまとめました経営支援部会の部会長もことしから務めております。

 しかし、きょうの発言は、経営支援部会の部会長としての発言ではございませんで、学識経験者として、日本の中小企業に対する政策に関して、特に今回の法案に関連させるような意味で、私の思うところを述べさせていただきたいというふうに思います。

 結論は、お手元にお配りしました資料のまとめのところにございます二点でございます。特に強調したいことでございます。

 一つは、我が国の製造業の国際競争力を強化するために中小企業の強化が必須である、中小企業の強化なくして我が国の国際競争力なしということをぜひとも強調したい。これは既に三人の、私の以前にお話しになられました参考人の方々が、どういう形で日本の最終製品、例えば自動車とか、例えば携帯電話の競争力に、それぞれの中小企業の方々が貢献されておられるかということは、既に具体的な例がおわかりかと思います。

 もう一つの私のきょう申し上げたいことは、この中小企業の担うべきものづくり基盤技術の強化ということを経済産業省の最重点政策の一つにすべきだ、ひょっとすると一番大切な政策かもしれないというふうに思います。なぜそう思うかをこれから御説明したいと思います。

 まず、もとに戻っていただきまして、製造業の我が国経済における位置づけにつきましては、この経済産業委員会で私がくどくどと申し上げる必要はないと思います。ただ、一点、我が国の輸出全体を考えますと、製造業の占める比率は、欧米の先進国よりははるかに製造業の比率の高い、その意味ではものづくりに特化した国であるということだけは強調しておきたいと思います。

 そうした我が国の製造業の国際的な競争力が強い一つの大きな要因は、中小企業群の存在でございます。それが二のところに書いてあることでございまして、さまざまな高度部材産業集積というのが日本列島の上にある。これが日本の競争力を支えている。その産業集積を支えている人たちは基盤技術を持っておられる中小企業の方々だ。その方々が、しかもネットワークを構築しておられて、さまざまな連携を行って、全体として大きな効果を出しておられる。これが非常に大切なポイントだということでございます。

 しかも、そうしたネットワークを通じまして、非常に高度な、そしてスピーディーな、さまざまな技術の間のすり合わせというようなことが可能になっております。以下のような、ここに書きました、競争を通じた技術力の向上だとか、あるいは連携の問題が2のところに書いてございます、あるいは、新産業、新技術を創出するという効果もあるというようなことが3のところに書いてございますが、こういった具体的な効果が日本の産業全体で出ている。しかも、それは、先ほど志藤さんがおっしゃったとおり、そういったすり合わせが現場で行われるということでございます。

 古い話でございますが、大田区の蒲田の駅の駅ビルの屋上から設計図を紙飛行機にしてぶんと飛ばすと、三日後に新製品のプロトタイプがそのメーカーに届くという冗談があったことがございます。そうした産業の集積があるからこそ、実は日本の大企業の国際的な競争力の高い製品ができているのだということを象徴するようなジョークでございます。

 しかし、そうした構造的な特徴が継続的に機能するためには、現在、大きな課題を抱えていると私は思っております。

 一つは、マーケットに近い企業、発注企業でございますね、例えばトヨタ自動車であったり日産自動車であったり、そういった企業が持っている市場ニーズに関する情報が高度な技術力を持っておられる中小企業にきちっと持ち込まれるということだ。これは案外難しい。もう一つは、それぞれの中小企業が、持ち込まれたニーズに対応してきちっと力を発揮できるだけの実力をそれまでに蓄積していることだ。この二つだというふうに思います。

 しかし、先ほど申し上げましたように、市場に近い発注企業、これのことをこの文章では川下企業と呼んでおりますが、それと中小企業の間の情報交換には、さまざまな理由で困難が増していく危険もございます。

 一つは、固定的な系列関係が流動化して、したがって、従来は系列関係の枠の中で情報交換がうまくいっていたものが、必ずしもそうはいかなくなる。もっとも、志藤さんのお話をお伺いすると、かえってそれがいいこともある、そういうことだったかもしれません。

 もう一つは、ITが進みますと、電子情報だけで企業間の取引が行われるようになることによって、技術開発に必要な非常に細やかな情報交換ということがややおろそかにされてしまう傾向が出てくる、そういうことでございます。

 さらにもう一つの問題は、さまざまな技術の分野で高度化してまいりますと、蓄積が本当に必要になってくる。その蓄積が、こんな不確実性の高いときに中小企業の経営体力でどの程度できるだろうか。こういったさまざまな問題がございます。

 そこで、四のところにまいりますと、今回の政策が多分ねらっておられる、あるいは私も審議会の議論に参加しておりますのでよく承知しているつもりですが、その特徴は私は二つあると思います。

 一つは、支援の対象を個別の産業とかではなく技術というものに定めたということでございます。したがって、技術というものを持っておられるのであれば、業界団体としてはどこに属しておられても全く構わない。そういうふうに、技術そのものを支援対象にした。これは初めてのことではないかと思います。

 もう一つは、個々の技術ごとに、例えば鋳造、例えばメッキの技術ごとに技術別指針を示すことで、今度はその中小企業の方々がどんな技術蓄積をすればいいのかという目標とビジョンを与えたい、そういうものでございます。

 さらに、2のところに含んでおります三番目の特徴は、その支援の企業としてのターゲットを、我々の仲間内の言葉で言いますと、富士山の七合目に設定した。トップを行っている、ほっといてもどんどん伸びていける中小企業ではない、しかし、五合目以下の、いろいろな問題で苦しんでおられて別個の支援が必要な、その中小企業でもない、しかし、トップを目指そうとする努力をしている方たちを政策支援のターゲットにしたい、そういうことでございます。もちろん、ターゲットを決めるということは、一方で、限定をしてしまって機会均等に反するというような御意見もあるかもわかりませんが、これは、限定を厳しくし過ぎる必要はございませんが、ターゲットを決める必要があろうかと思います。

 以上のようなことを考えまして、まとめのところに、先ほど御紹介した意見を書いたわけでございます。

 最後に、技術別指針を各分野につくるプロセス自体が大きな意味を持つということを書きました。

 こうした指針ができ上がるプロセスは、行政府の人間が自分たちだけでやっても絶対にうまくいかない。したがって、業界団体との極めて緊密なコミュニケーションがどうしても必要になる。そのプロセスで、恐らく経済産業省の若い方たちが学習をされるのではないか。それも私は非常に大きな効果ではないかというふうに思います。あるいは、そこででき上がりました技術の指針が、厚生労働省関係のさまざまな教育機関等でも、あるいは工業高校でも使われる、そういったさまざまなインパクトがこの技術別指針から生まれることを私としては期待しております。

 以上でございます。(拍手)

石田委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡部英明君。

岡部委員 おはようございます。

 私、自由民主党の岡部英明でございます。

 本日は、お忙しいところ、朝からありがとうございます。

 私は、半年前、九月の衆議院選挙で当選させていただきました。私の地元は茨城県の日立市でございます。日立市といえば企業城下町、そして、多くの大企業、そしてそれを取り巻く中小企業で成り立っている地域でございます。先ほどお話が出ておりました、大企業の方は大分回復基調が出てきて明るい見通しであると。しかしながら、一方では、中小企業はまだまだ大変厳しく、自動車関連、一部の関連の中小企業においては仕事量は大分戻ってきている。しかしながら、その内容ですか、コストについてはまだまだ大企業からの要求が厳しいものがあって、量はあるんだけれども、内容が伴っていないというのが実情。また、大企業の方の回復が進んでいない業種におきましてはまだまだ、特に重電関係ではまだまだ厳しいという状況にあるわけでございます。

 そういう中で、先ほど参考人の皆様からいろいろお話がございました。その中で、やはり中小企業の技術力がこの日本の産業そして経済力を支えているんだというお話がございました。

 先日も、ホンダが国内新工場を三十年ぶりに日本につくるという記事がございました。今まで、この三十年、ホンダは海外に工場をつくっていたということでございますが、今回日本国内につくったということは、やはり低燃費エンジンへの切りかえやハイブリッドシステムの量産など、最先端の環境技術を世界規模で展開する必要に迫られている。最先端技術の実用化には、部品メーカーのほか機械加工、素材など関連産業の集積が欠かせないことから、日本での大型投資を決断したという記事でございました。

 まさしく、先ほど皆様からお話が出た、日本経済を支える中小企業の重要性を示しているのではないかなというふうに思っています。そして、今回の政策につきましても、皆様の方から大変期待しているというお声をいただいたところでございます。

 そういう中にあって、先ほど、特に中小企業の中では研究に対しての資金が大変足りない、そこについて期待する声がございましたが、今回、支援としまして六十四億円の予算が今計上されているところでございますが、大体一社一億円ぐらいということでございます。ちょっと私も、中小企業の研究開発費、いろいろな業種や研究開発の内容によって違うんではございましょうが、その研究費に対しましてどういう御感想を持っているかお伺いしたいと思うんです。

 橋本参考人と清川参考人にぜひその辺のお話をちょっと伺えればと思うんですが、よろしくお願いいたします。

橋本参考人 せんだって、今度の法案がこんなような形で今立案されているところだということで説明会を、私ども京浜島工業団地、これはもう基盤産業がすべてと言っていいような工業団地なんでございますが、この工業団地の連合会でぜひそのお話を聞いてみようじゃないかということで、中小企業庁の方から説明を聞かせていただいたわけでございます。

 その研究費という問題、これはもちろん研究開発につながって、研究費というのは非常に我々にとっては必要な資金であるんですけれども、今し方も一億円というようなことが出てまいりました。私どもの企業規模、特に京浜島、約二百六十社ぐらいございますけれども、その辺のところの企業ではとても金額が大き過ぎる。一千万円の研究費を費やすというのは我々の企業にとったら大変な、それこそひのき舞台から飛びおりるようなもので、やはり規模、数字がちょっと違うような気がいたしました。三千万から一億とかいうような案もおありのようですけれども、少なくとも一千万ぐらいかけられる企業というのは、要するにかなり力のあるところじゃないかと思います。そんなようなことが、研究費というものに対する私の率直な考え方でございます。

 以上でございます。よろしゅうございますか。

清川参考人 研究開発ですけれども、研究開発でどれくらいお金がかかるとかどれくらい必要という前に、とにかく、研究開発、特に政府資金で研究開発資金が、私ども申請して、いただけるということだけで、社員そのものが、我々が今やろうとしている、目指していることを認めていただいたというのが大きな成果です。金額は多いにこしたことはないですけれども、金額そのものよりも、それを認めていただく、我々は認めていただくということで一生懸命やりますので、与えられた仕事はとにかく一生懸命やるということで、認めていただくということが先でございます。

 我々もいろいろな研究開発費、県、市、国からいろいろいただいてやっておりますけれども、その都度社員には、政府から、また県から、市から、こういう目的で、こういう補助金で研究開発費をいただきましたということで話をしますと、一生懸命やってくれます。そういう意味で、金額の大小にかかわらず、口数多く出していただくということが一番我々の励みになるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

岡部委員 どうもありがとうございます。

 この政策の政策的ターゲットのイメージが、トップの次の段階、階層に位置する中小企業ということで、私としましては、そのイメージと、実際の研究費でははかれないものがあるんですが、どういうターゲットとイメージが合ってきているのかな、そういう意味でちょっと質問させていただきたいなと思ったわけでございます。金額の大小ではないと私も思いますし、この政策の中で資金面で、ほかにもいろいろ資金面の政策が載っています、ぜひ活用していただきたいというふうに思っておるわけでございます。

 また、この政策の中で一つ大事なのがやはり、先ほどからお話がございました、川上と川下の両者のコミュニケーションを促進してこの政策を進めていくんだ、そしてその連携をもってものづくり基盤の技術の高度化を進めていくんだというお話でございました。先ほどから聞いていますと、川下と川上の企業が皆様の会社では今非常にうまく何か連携されているように聞こえるんですが、現実的には大変難しいということで、こういう政策があるんだろうというふうに思っています。

 ぜひその苦労したところを、先ほどのうまくいっているお話ではなくて、例えば某企業の亀山工場に入ったときのその経験談を踏まえて、ぜひ苦労している話をお聞かせ願えればと思います。

 それでは、四参考人に短くお願いできればと思うんです。

橋本参考人 今度は研究費の問題ですけれども、これも要するに、一社でやるということになると非常に金額が、何千万なんというのは大きな金額ですけれども、いわゆる連携体制をとってやることにおいては、これはある程度の金額が与えられてもいいんではないかというふうに思います。この場合に、研究費をかけて研究した成果がしっかり踏まえられるというのは、やはり川下企業と我々川上企業が連携をして、それでいわゆる強い信頼関係のもとにお金をかけていかないと、ひっくり返ってしまったらえらいことになりますので。そういったことが一つの手ではあるかと思います。

 ただ、やはり力関係というのがあるので、またそこで一つ難しい問題が起こるやにも思えます。やはり川上と川下では力関係が著しく違う場合がございますから、例えばそういった研究開発費の予算がついたとしても、金額の大小はともかくとして、平等な形でもってそれが振り分けられるかどうかということ、その辺のところも十分検討した上でもってやっていかなければならない問題ではないかなというふうに思います。

 それから、先ほどの亀山工場云々というのは、これは、私どもの部品が製品になって、その製品が亀山工場に入っているということで、いわゆる一部において参加しているということでございまして、その機械が、装置が亀山工場に入ったいきさつ等については、これはまた私どもが余り知る由もございません。そんなことでございます。

志藤参考人 自動車産業というのは、御存じのように、特に日本の場合ですが、ピラミッド組織になっておりまして、自動車メーカーがありまして、それで一次部品メーカーがあって、その下に二次、三次の部品メーカーがあるわけであります。そういうことで、従来は確かにやや系列的な要素が強くて、大体そういったような形でいったんですが、先ほど私申し上げましたように、従来私どもも日産系と言われていたんですが、今現在は独立系ということになっておりまして、他社とのいろいろな錯綜した取引関係、そういうことでいえば、いろいろな部品メーカーさんとやっているわけです。

 これは、従来ある範囲の中でやっていればよかったんですが、だんだんだんだん広がってくる。そういうことになりますと、やはりいろいろな技術というものが必要になります。従来我々が持っていた技術以上にやはりいろいろなところで要求される品質というのがあるわけでございますので、そういう中で、新たなそういう技術を持っているメーカーさんを探さないといけない。現実にはなかなかそれは、従来の情報の中でやっていたんですけれども、非常に難しい。本当に日本じゅう探し回らないといけない。これには大きな労力、膨大なコストがかかるんですね。

 ですから、何かそういうことで、出会いの場というような、部品工業会でもそういうのを少しずつやってはいるんですけれども、やはり狭い範囲でやっていますので、ぜひそういったものを国の方で提供して、逆に言うと、部品メーカーの、例えばモーターショーとかあれはあるわけで、それは我々も出しています。しかし、本当の中小企業のそういったようなものというのはほとんどない。そういうものがあれば、逆に言うと、我々が出かけていってそういったところを見ていろいろなコンタクトができる、そうすると、ああ、こんなことができるのか、こういうことになるわけでございますので、ぜひそういう場を提供していただきたい。あれば大変ありがたい。我々も、そういうことで活用できる。

 今、中小企業、我々ももちろん一つのユニットとして部品をつくってお客さんに納入するわけですが、金型ですとか、現実にそれを構成するような構成部品とかというものは、大半がやはり二次、三次メーカーさんから私どもに入ってきています。非常に固有技術としてはすばらしい。例えば熱処理ではこういうひずみが出るだとか、溶接ではこういうひずみが出る、いろいろそういう細かいノウハウというのはたくさんあるんですね。我々ではわからない部分がたくさんあります。そういうものをぜひ。また逆に言うと、それが中小企業でデータ化されて、それこそ三次元CADでどうだこうだ、そういうようなデータ化されればもっと簡単に技能の伝承も含めていけるんでしょうが、なかなか、資金面も含め、CADみたいな、そういったものも扱えないというようなところもあるわけですから、ぜひそういうようなところを支援というような形ができてくれば、そういう面で日本の部品メーカーは非常に強くなる。

 逆に言うと、いつも私、持論なんですが、部品メーカーが万が一疲弊してくると、自動車というのは当然付加価値が高いわけですから、付加価値が高いというのは、つまりは雇用創出力が大きいということなんですね。それだけ部品メーカーに依存しているところはたくさんある。それでは、もしそこが疲弊すれば、自動車メーカーが大きな影響を受けるんですね。自動車メーカーがもしそういうようなことで大きな影響を受ければ、日本の基幹産業である自動車産業がだめになったら、それこそ日本の経済そのものがだめになるんだと。

 ですから、私は、ぜひそこに、やはり基盤である中小企業に光を当てて、何か支援できる、こういうものをぜひお願いしたいというふうに思っております。

 以上でございます。

清川参考人 私どもは売る製品というのはないんですね。技術を売るんです。それで一番困っているのが、メッキといいますと、メッキそのもの、携帯電話を売っているわけでもございませんし、それからデジタル家電を売っているわけでもない。技術を売るということでやっておるんですけれども、形がないということと、もう一つは、盗まれると言うと語弊があるんですけれども、何せまねされておるんですね。それで次から次へと開発をしていかないかぬということと、形でないということで、特許がとりにくいという問題もあるんですね。特許を出すとそのまままねされる。それだったら出さぬ方がええだろうということになるのですね。

 私もこれは言わぬでおけばいいんですけれども、この携帯電話、これはすぐ開くんですね。ここを押すと開くんですけれども、これは私どもで特許を出して、こういう開閉する工法を売っているんです。これは、ベアリングも使っていない、メタルも使っていないんですけれども、簡単に開く。こういう技術がこれからロボット産業やいろいろな、ロボットでも、ベアリングを使えば重い、メタルを使えば油を差さないかぬ、油を差さなくてもベアリングを使わなくても動くものがロボットなんかに使えるのではないか。こういうものは開発はするんですけれどもまねされるという、下請と言うと悪いんですけれども、弱い部分があります。

 そういう部分を、特許云々ということで、またそういうかばっていただくところもあるみたいですので、期待しています。よろしくお願いします。

伊丹参考人 御質問の趣旨は、川上と川下の間の情報の交換の場をつくるといっても容易ではないということだったと思います。

 私も容易ではないと思います。それは、人が出会う場をつくればいいということには簡単にはならないように思います。人が人と出会って本当に信用するに至るにはどういうプロセスが必要かというのは、男女の恋愛関係を考えてみればよくわかります。

 したがって、私は、仕事の場を実際につくってさしあげるというのが一番大切だと思います。仕事の場を通じて本当の、真実の情報が流れるだろう。仕事の場をつくるにはやはりお金が要る。したがって、国が何らかの資金補助をするということが非常に重要になってくる、そういうふうに思います。

岡部委員 どうもありがとうございます。

 ぜひこの政策の中で中小企業の基盤技術が高度化することを願うわけでございます。

 もう一つ、最後にお聞きしたいのが、今度、川下企業と川上企業が一緒に連携して研究開発をした場合に、その成果を川下産業、大企業の方にとられてしまうんではないかとか、そういう懸念もあるわけですね。その辺について、懸念をぜひ、時間も来ていますので、伊丹参考人、よろしいでしょうか。

伊丹参考人 懸念はあると思います。その懸念を払拭する最大の手段は、中小企業が本当の実力を持つことであります。下手にこけにすると後が怖いという状態をつくるのが一番かと思います。

岡部委員 どうもありがとうございました。

石田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 きょうは、参考人の皆様方に大変貴重なお話をいただきまして、まずもって感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 早速ですので質問に入りたいと思うのですが、最初に伊丹先生にお伺いしたいと思います。

 伊丹先生は、まさに三十年来、日本の産業を研究してこられたというお話がございましたけれども、私も、かつて先生の御著書を何冊か読ませていただきました。新聞記者時代に経済記者をやっておったものですから、そのころ何冊か読ませていただきました。大変すばらしい著作がございますけれども、とりわけ、個別の産業について分析を伊丹先生がされておりまして、伊丹先生及び伊丹研究室で出された本の中に、さまざまな産業を分析されています。

 その中で、例えば化学産業、副題はおくれてきた男たちとか、そんなイメージだったと思いますが、日本の化学産業がなぜ立ちおくれたのか、さらには繊維産業、これもなぜここまで悪くなったのかといった敗因の分析を伊丹先生はされています。もちろん自動車産業、それぞれの分析をされていますけれども。その中で伊丹先生は敗因の分析をされているわけですけれども、私はきのうちょっと急に、質疑に立つので読み直して、斜め読みしてみましたけれども、共通しているのは、産業政策の失敗のことが書かれているんですね。

 例えば化学産業ですと、産構法と言われる法律で設備廃棄をしてきた、さらには独禁法の適用除外で共販制度をつくってきたとか、こういった通産省の当時の産業政策の失敗、繊維産業でも同様に、政府依存をつくってしまった産業政策の失敗を指摘されています。

 その意味で、改めて伺いたいんですが、今回の中小企業政策でございますけれども、打ち出されたわけですが、その中小企業政策の話を聞く前に、なぜこれだけの大失敗を経済産業省は繰り返してきたのか、なぜこういうことに陥ったのか、改めて伊丹先生の御所見をお伺いしたいんですが、簡単で結構でございます。

伊丹参考人 私の本には産業政策の成功の例も他の産業では書いてございますので、失敗ばかりをあげつらってきた人間ではございません。

 失敗は、産業政策と社会政策を取り違えたところにあると思います。社会の中の弱者を保護する、当然必要な政府としての政策ですが、それを産業政策の名をかりてやると、実は産業を発展させる政策の方がおろそかになる。そして、そういうことをさせてきたのは、経済産業省の人たちが悪いのではなくて、実は、国会議員の先生方が選挙区の事情でもってさまざまな力を行使されたことも大きな原因ではないかと思います。

近藤(洋)委員 率直な御意見、ありがとうございます。

 ただ、不思議なことに、当然政治も悪い部分は反省しなきゃいけないと思うわけですけれども、あえて指摘をすると、そういった失敗をした産業政策でらつ腕を振るったキャリア官僚の方々が、その後の人生を見ると、意外に出世しているんですね。現場の課長をやられて、例えば、まあ個別名は言いませんが、基礎化学品課長なんというのは歴代、経済産業省のエースがなられて、大体事務次官になっている。意外にそういうこともあるので、これは不思議だなと思ったりするわけでございますが、これはちょっと本論ではありませんので。

 いずれにしろ、そういう意味では、今回の中小企業政策、政府依存の体質ではないという法律なんだろうなと期待をしたいわけでございます。

 現場で経営されている参考人の皆様方にぜひお伺いしたいんですけれども、今の日本のものづくり、実は私ども、外で見ているとちょっと心配をしておりまして、従業員の方々が、派遣の方々が随分多くなっているという話を聞きます。派遣を使われているという方もいる。ここに、大手の企業さんから中小企業の方、お三方いらっしゃいますので、派遣を使われている割合というのは大体どんなものなのか。御社で使われていなければ、いや、うちは使っていないよ、ただ業界ではこうだよという、そういった派遣労働と正規雇用の割合だけちょっと簡単に教えていただけますでしょうか。お三方、簡単に。

橋本参考人 派遣社員とパート的ないわゆる非正規社員と二種類あるというふうに考えてよろしいんでしょうか、それは。(近藤(洋)委員「はい、そうです」と呼ぶ)

 とするならば、当社の場合は、派遣社員は全然入れておりません。業界全体としてちょっと数字的に把握はしていませんけれども、鋳物業の場合は、鋳造業の場合はやはり熟練を要するものですから、いわゆる職人技術を要するものですから、比較的派遣社員というわけにはいかないようなたぐいです。パート的なものは、いわゆる職人技術を要さないでできるような雑役と申しますか、そういったようなたぐいでは、パートみたいなものが利用される場合が多いですね。そんなところでございます。

志藤参考人 派遣につきましては、外国人もおるわけでございますが、これは場所によって違うんですね。要は、人が採れるか採れないかという、有効求人倍率の問題がありまして、場所によって違います。例えば、私どもの主力であります栃木の工場なんかは、有効求人倍率が一・五幾つとか、一・六に近いですね。そうなりますと、人材を採るのが非常に難しいです。結局、勢い派遣に頼らざるを得ない。もちろん、ややコスト面のところもあるんですが。

 ということで、端的にお答えさせていただきますと、場所によって違うんですが、例えば栃木あたりでいうと、五割近いです、四割ぐらいはもう派遣です。うちの九州大分県でいえば二〇%ぐらい。山形の工場あたりで一〇%ぐらいですね。名古屋も同じような感じで、そんな感じでやっております。

 以上です。

清川参考人 さっきも申しましたように、私どもは技術を売るということで、きょう来てあす間に合う人はほとんどおりませんので、我々の業界は少ないと思います。私ども、二百二、三十名おりますけれども、バイト的なものはありますけれども、派遣社員はおらぬと思います。

 これは、聞いたところによりますと、やはり中小企業よりも大企業の方がどうも多いんではないかというような気がいたします。

 以上です。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 しっかりしたものづくりをするところというのはやはり正社員をしっかり教育されていくのが、特に中小企業さんの場合はそうなのかななんていう印象を持つわけでございますが、そこで、あわせて人づくりでお伺いしたいんです、これまた現場の経営者の皆様方に。

 どうでしょうか、最近、新卒の方々の物をつくる基本的な技術というんですか、例えばハンダをつけることは機械じゃないでしょうから余りされないでしょうけれども、基本的な資質というのは、過去、例えば二十年ぐらい前と比べて、どうでしょうか。ちょっと漠とした質問で恐縮ですけれども、新卒採用の質はどのようにお感じになられていますでしょうか、お伺いしたいんですが。

橋本参考人 当社の場合を申し上げますと、先ほども申し上げましたように、私ども、いわゆる職人技術というものをどうしても要するわけです。やっている仕事が全部手で型をつくるんです。ですから、一人前の職人に仕込むのに大体十年はかかるという仕事でございます。

 私ども、昭和の終わり、昭和六十年代の初めごろには、現業の平均年齢が五十歳ぐらいを超えていくような状況になりまして、これはもう十年か十五年で労務倒産しちまうなと。そのころは、全国で求人活動をしてもなかなか集まってこなかったんです。ところが、平成不況に入りまして、平成の初めごろから、地元で工業高校等の新規採用がつかまえられるようになったんです。これはもうびっくりいたしまして、よし、それじゃ近隣から集めた方が、地方から呼び寄せて昔の集団就職みたいな形でやるのは非常に、親がわりもやらなきゃならないし、いろいろな面で負担が大きいんですけれども、いわゆる近在から集める部分には皆さん家庭から通えますし、それで、平成に入ってからどんどん採用ができるようになったんです。

 それで、私ども、年齢層の高い、割と高度な技術を持っている職人さんが何人かおりましたので、その連中に、何しろ六十五歳の定年まで頑張って、次から次に入ってくる連中をしっかり仕込んでくれということで、平成に入ってから集まった人員が、現在、ほとんどその連中で工場が運営されておりますので、現業の平均年齢は三十代でございます。

 これは、非常に平成不況のおかげ、おかげといいますか、ただし、その部分、人材育成というのは金がかかるんですね。我々非常に小規模な企業にとっては大変な負担になりましたのですけれども、それ以上に、やはり今後、私の代はもちろんのこと、次の代においても十分いけるぞというものを得られたと。

 以上でございます。

志藤参考人 質がどうかという御質問でございますが、基本的に質はそんなに変わっていないと思います。ただ、昔と違って応募者が少ない、こういう問題があります。応募される方の質というのはそんなに変わっておりません。

 現実に、私どもは、まずは作業の標準化といいますか、すべてそういう標準化を教えて、それと、技能の伝承ということで、技能を徹底して教える技能伝承ラインというものをきちんとつくって教え込んでいるんですが、結構若い人も、やる気のある人はたくさんいますので、我々は、そういう面でいうと、これからまだまだ発展できるというふうに私は思っております。

 以上です。

清川参考人 十年前、二十年前との社員の資質ですけれども、私はよくなったんじゃないか。と申しますのも、さっきおっしゃっていましたけれども、バブル崩壊、非常にこれはいいですね。本当に、大企業がいい人材を採用しなくなったということは我々中小企業にもいい人材が回ってくるということですので、非常にいいんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味で、私ども、以前は三Kの企業と言われていましたけれども、最近はもう、マスクもせず長靴もなかったら事務服と同じ、どこへ出しても恥ずかしくない、事務職と同じような服装、環境で仕事をやっていますし、そういうものも改善された、またそういう方向に向かってきたということもあるんでしょうけれども、今度のバブル十何年間は非常にいい時期でなかったかと思います。

 以上です。

近藤(洋)委員 伺っていると、そうすると産業政策は要らないのかなと思ってしまうような気がするわけですが、ただ、全般論とすると、人材の教育というのが中小企業の皆様方にとって、人と物、金、技術、この四要素の中で、やはり人とお金をどうするんだということだと思うわけで、最大の課題だと認識しているわけでございます。

 それで、伊丹参考人にお伺いしたいんですが、参考人は、資本主義とあわせて人本主義ということもおっしゃっていたような気がしております。企業というのは人材がすべてだと。まさに物、人というものに着目をした大変大事なお考え方かなと思っているわけでございますけれども、そういう、企業はだれのものかに対して、その答えを従業員に求めるつもりはございませんが、いずれにしろ人材は大事だと。

 そう考えると、これからの産業政策の中で、これは一通産省の問題ではないと思っています。このものづくり法案の支援体系を、ちょっとこれからは審議に入るわけですけれども、この金額だけ、予算措置だけを見ると非常に額が小さくて、これで日本の中小企業の人材が育成できるとはとても思えないわけでございまして、トータルで、例えば職業訓練校が、果たして本当に企業の方々が求める人材なのか、技能工を生み出しているのかというと、私は、甚だ問題がある運営を職業訓練校は残念ながらしているのではないか。家具屋さんはつくるけれども、例えば鋳物だとかメッキ工をつくる技術にはなっていないのではないか、そういう意味でございます。

 例えばそういった職業訓練制度のあり方とか評価制度のあり方とか、この法案にかかわらない、もっと大きな面でのお考え等があればこの場でお教えいただきたいんですが。最後に伺います。

伊丹参考人 たくさん本を読んでいただきまして、大変感謝をいたします。御迷惑をおかけしました。

 私は、二十年以上前から、企業はだれのものかと言われれば、それは従業員のものだという主張をしてまいりました。従業員の知恵とエネルギーこそが企業を発展する源泉だ、株主は第二順位にすぎないとずっと言ってまいりました。

 そういう観点から見ますと、その従業員たちが知恵とエネルギーを得る場所はどこかというと、決してこれは、恐らく外部の教育機関ではない、仕事の現場で覚えるのだと。先ほど、十年かけて仕事の現場で仕込むんだというお話がございました。したがって、日本の中小企業を中心とした人材蓄積の厚みをこれからどんどんどんどん大きくしていく最大の道は、その中小企業が仕事の場を大きくすることである。職業訓練校に巨額の予算を積み込むこと、これも一方で私は基礎知識としては必要だと思いますが、そういう方向で物を考えない方がかえっていいのではないかと思います。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。終わります。

石田委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 四方の参考人の皆さん、本当にきょうはありがとうございます。貴重な御提言、御意見をいただきました。

 いよいよこの国会、衆議院の経済産業委員会におきましても、今議題になっております中小ものづくり高度化法案、そういう名前がついておりますが、審議を開始するに当たりまして、まずは本日、参考人の御意見を伺った上で内容の深い審議を進めていきたい、こういうふうに思っております。そういう意味でも、改めて感謝申し上げたいと思います。それぞれの参考人に、限られた時間でありますが、お尋ねをしたいと思います。

 最初に、今回の法律の背景といいましょうか、我が国製造業の実態、それから今後をどう展望するかという観点で、大きい話を最初に伊丹参考人にお伺いしたいと思います。

 私も、実は経済産業政策はずぶの素人で、初めてこの委員会に参加した一人でありまして、ある意味ではお教えを請いたいという思いで伺うんでありますが、我が国の製造業は空洞化と言われることが随分長く続いてきたわけであります。先生は、いや、実はそれは空洞化ではない、日本の企業の経営活動、営業活動がまさにグローバル化したというふうに見るべきではないか、こうおっしゃっておられますし、今後を展望するについては、まさに今がチャンスであるということが一つと、それから、今後はそのチャンスを生かしさえすれば、例えば、開発あるいは初期の生産というのは日本の国内でしっかりやって、そしてグローバルな観点で通常生産はどんどん海外でもやっていく、こういう時代が展望されるというふうに先生はお考えの上で、今回のこの政策、ぜひ必要だということで、先ほどおっしゃった、ものづくり中小企業の強化なくして日本の産業競争力の強化なし、こういう結論をお持ちになっているんだろう、こういうふうに理解しておりますが、そのあたり、もう一度大きい話をお話しいただきたいと思います。

伊丹参考人 いろいろ本を読んでくださっているようで、ありがとうございます。

 結論は既に御質問の中で言っていただきました。日本の産業が空洞化しているかに見えたというのは、実はピザパイが拡大していった現象であって、ドーナツが生まれていたということではないんだと。それが実は日本の企業の経営のいいところであるし、しかし、外国から見ると日本の拡大主義というふうに受け取られかねないことだから、これは外交政策上は非常に心してやらねばならぬというようなことを言ってまいりました。

 しかし、きょうのお話は日本の製造業の将来という大きな展望の話ですので、ごく簡単に結論を申しますと、私は、前途洋々とまでは申しませんが、従来のこの十五年ぐらいの発展のペースは十分にやれるというふうに思います。

 東アジアの諸国が競争力として確かに追いついてきております。しかし、ここから先、例えば韓国は胸突き八丁になるというふうに思います。韓国に参りましていろいろな企業の方のお話をお伺いしても、この一年、明らかに雰囲気が変わってまいりました。日本も別に楽観していいわけではないと思いますが、この日本列島の上につくられた、背後におられる中小企業の方々を中心にしてつくられた大きな産業集積、技術集積の巨大さというのと、それから、日本列島に一億二千万人の極めて平均所得の高いマーケットが存在する、この二つを考え合わせますと、日本の製造業に対して悲観的な見通しをすることは間違いだというふうに思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 そうした今の参考人の御努力もあり今回こうした法案ができたわけで、しっかり審議をしていきたいというふうに思っております。

 そこで、具体的な話を参考人から伺いたいと思いますが、ものづくりに係る人材の育成あるいは確保という観点を最初に伺いたいと思うんです。

 橋本参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど、平成不況の大いなる成果として中小企業にも人材が来るようになった、こうおっしゃった。ある意味では、お話を聞きながら、では産業政策は必要ないじゃないかと前の委員はおっしゃったけれども、いや、だからこそ今がチャンスだ、私はこう思っているわけであります。

 そういう意味では、橋本参考人、御地元の京浜島ですか、あのあたりの製造業、皆さんそのように人材の確保ができているのか。随分苦労されたお話は伺っているんですが、本当に製造業の皆さん方、そこまで人材の確保について明るい展望を持っておられるのかどうか。いや、本当にそうなのかなと思ったわけですから、率直な御意見を。

橋本参考人 大勢的には、かなり状況は好転していると思います。

 ただ、私どもの業界に関しましては、平成に入ってから、労働力確保法というのが平成四年に発令になりまして、あれの認定をいち早く私どもの城南鋳物団地協同組合、私がただいま理事長をやっておりますけれども、こちらですぐ取得しまして、それで、この労確法の認定を受けますと、組合としていわゆる集団求人ができるんです。今までは団体でもって求人をまとめてやるというのはいけなかったんですが、この労確法の認定を受けたところはそれができるということで、それで、近隣の学校に、工業高校を中心に生活指導の先生方に一回集まっていただいて、いわゆる公害もそんな心配ないですよ、こういうような産業だからぜひこういうものづくりに参加させてくださいよというようなPRをしまして人集めをしましたらば、それが功を奏しまして、平成四、五年ごろの状況で、私どもの組合の新規採用が七、八十名でした、近隣から。ところが、歩どまりがありますので、その七、八十名がすべて残っているかというと、なかなかそうはいきませんけれども、ただ、四、五十名は残っております。

 この京浜島を例に挙げて、約二百六十社のうちの大勢については、皆さんそれぞれ、求人もできないような状況のときは、事業の継続を危ぶんでおったんですよ。ですから、いわゆる次の代の継承をすべき人たちがなかなか名乗りを上げなかったのが、最近、みんな企業がもう二代目がそろい出してきている。これはやはり、人材が我々のところに大分回ってきたんじゃないかなというふうに思います。

 私どもも、この四月にはまた新規採用が、私どもこんなささやかな工場ですけれども、二名、とても優秀な人材が工業高校を出て入ってきてくれるので、そういった面では、非常に心強く考えております。

 以上でございます。

桝屋委員 ありがとうございました。

 中小労確法も大きな効果を上げているというふうに、たまたま時代がそういう時代だったということもあるんでしょうが。

 もう一点、人材の養成確保、技術の人材をどうつくるかという観点で伺いたいんです。

 志藤参考人にお伺いするんですが、ヨロズの工場は生産のラインを、マニュアルのラインをあえて導入されたと。私はこの前インドへ行きまして、インドのマルチ・スズキの工場を見まして、あそこは、マニュアルどころか、実際自動化できないからマニュアルがあるんでありますが、しかし、それが技術者を養成する意味ではすごく大きな成果を上げているという話を聞いて、なるほどなと思ったんです。あえて今マニュアルの溶接ラインを導入された、それはどうしてか、その効果はどうなのか、簡単に御報告いただきたい。

志藤参考人 私ども、まさに毎日毎日が競争なんです。やはり省力化、自動化、これがコストを下げる大きな力を発揮するわけでございますが、あえてマニュアル化にしたということは、例えば溶接をやるのにも、通常でいえば、みんなロボットがやるんですね。部品メーカーでいうと私どもが日本では一番早かったんですが、そういうことで、もう物すごいロボットが入っています。みんなロボットでやる。ロボットでやりますから、ロボットは余り文句を言いません、賃上げを言わないものですから、そういう面では非常にいいんですけれども、二十四時間働いてくれますし。

 しかし、私ちょっと愕然としたことがあるんですが、ロボットで溶接したものを作業者が見つけて、悪いなと。悪いからといってそれを手直しして、それで納めたものが不良品だったと。これは愕然としたわけですね。なぜかというと、不良が見つかって直したのに、要はスキルがないんだ、溶接するスキルがない。これは困った。これは三年ぐらい前の話なんです。

 これはだめだということで、あえてマニュアルラインを入れる。これは徹底して、一切自動化しちゃいかぬ、すべてマニュアルで、ロボットも一切使っちゃいかぬ、全部手でやりなさいと。手でやることによって本当の意味の技術がわかるんですね。技術が、まず技能が習得できる。それから、自分でやるから品質がわかるのであって、機械がやってもなかなか品質がわからないんですね。自分がやって初めてわかる。

 ですから、特に〇七年問題もあるんですが、やはりそういう技能伝承をどういうふうにこれからやるべきか。ですから、私は、海外の拠点、八拠点ぐらいあるんですが、国内も全部で六拠点ありますが、すべてのところにそういうマニュアルラインを入れて、必ず、技能をどういうふうに伝承させるか、それを順繰り順繰り回すことによって全員ができるようになる、品質も自分できちんと確認できるようになる、そういうことのためにあえてやったと。

 ですから、コスト的にどうかというと、マニュアルでやりますからどうしてもコストは高くなりますが、やはり、本当の意味の技能の伝承をねらって、それから品質をねらって、私はあえて技能のマニュアルラインを入れたということであります。

 以上でございます。

桝屋委員 ありがとうございました。大変示唆に富むお話をいただきました。

 今の技能あるいは技能の伝承という観点でもう一つ伺いたいんですが、今回の法律のスキームの中で、まさに技能を伝承するためにデータベース化して、ITをしっかり利用してやろう、こういうアイデアもあるのでありますが、我が党内でも、議論するときに、職人わざというのはIT化できるのかと。何とも言えない曲線は人で、さっきの、まさに十年ぐらいの集積ででき上がる技術でありまして、これはIT化で本当にできるのか、IT化になじむのか、データベース化というのは本当にできるのかな、こう思っているのであります。

 これは、橋本参考人とメッキの清川参考人、お二人に、IT化で技能の伝承というのはできるのか、データベース化というのはできるのかという点で、ちょっと御意見を伺いたい。

橋本参考人 いわゆる手づくりの鋳物の場合は、IT化を取り入れられる面もあるとは思いますが、究極的にはやはり手で、体で覚えるということが一番でございますので、まずやはり手、体で何にしろのみ込ませるということを十年がかりで一生懸命教えて、それでちゃんと一人前の職人がもう何人も出ております。

 ただ、IT化できる部分もありますので、いわゆる型をつくる場合の方案というのがありまして、どういう型を、こっちを上にしてこっちを下にした方がいいとか、そういったいわゆる鋳造方案というのがいろいろあるんですけれども、そういった鋳造方案については、基本的なものはデータベースで残して、ぱっと見ればすぐわかるというようなことはいろいろ試みようというふうに考えております。

 以上でございます。

清川参考人 IT化の機械をつくるお手伝いはできるんですけれども、技術をIT化するということはかなり難しいのでないかなと。部分的にはIT化できることはできると思いますけれども、すべて、機械を動かすような、自動化的に技術をIT化することはちょっと無理でないかなという気がいたします。

 以上でございます。

桝屋委員 わかりました。これも参考にさせていただきたいと思います。

 時間もありませんので最後のまとめに入りたいと思うんですが、今回の法律のスキームによりまして、技術ごとに高度化指針を策定するんだと。そしてその指針に沿って作業を進めることになるんですが、この指針の策定というのは非常に大事だろうと思います。

 先ほど伊丹参考人からは、プロセスが大事だということを言われました。まさにそうだと思います。そして、このプロセスの中で経産省の役人もしっかり勉強してもらいたいし、新しい考え方をどんどん入れてもらいたい、こういうことだろうと思うんですが、とりわけその指針の策定に当たって、さらに伊丹参考人が考えておられることで、我々が留意した方がいいと思う点がありましたらお述べいただきたいと思います。

伊丹参考人 具体的なプロセスに入りますといろいろと留意すべきことがあるかと思いますが、一番難しいことだろうと私が思っておりますのは、技術別指針の中身にどの程度の具体性を持たせるべきかということについては微妙な判断が要るように思います。具体的でないとイメージできない、したがって、それに対して技術開発する気にならぬ、そういう御意見もございます。しかし一方で、極めて具体的ないわゆるスペックのようなものを決めてしまうことによって、もしそれとは違うスペックが実はその技術の主流になったときにどうするんだ、みんなで総倒れになるぞという危険もございます。

 したがいまして、技術別指針をつくるプロセスの非常に大切なのは、最終的な取りまとめに当たられる責任者の方が、それぞれの技術の分野ごとに微妙な仕分け、具体化のレベルというのをきちっとお決めになる、その能力とキャパシティーがある方をそういう任につけられることではないかというふうに思います。

桝屋委員 わかりました。ありがとうございます。

 この指針の策定も、だれがつくるかという任の問題が非常に重要だなということを感じさせていただきました。

 あと一問だけできそうでありますから、清川参考人にもう一問だけ。

 今回、川上と川下のネットワークを構築する、すり合わせということでありますが、清川参考人のところは福井県を基盤とされる営業活動、経済活動をされているわけでありますが、とりわけ、例えば県との関係とか、あるいは、福井に基盤を持っておられるということで、すり合わせということで、特にこの法律のスキームの中で期待をしたい、あるいは注意してもらいたいというような御意見がありましたらお述べいただきたいと思います。

清川参考人 福井県ですけれども、私どもの仕事そのものは福井県では余りないんですね。大体、北海道から熊本ぐらいの間のそういう電子部品業界のお仕事をいただいているということで、福井県とは余り関係ないんですけれども、先生のお答えになるかどうか、的が外れているかもわかりませんけれども、この法律をつくっていただいて、メッキを取り上げていただいた、また入れていただいた、光を当てていただいたということで我々は満足しているわけでございます。後は、一歩踏み出せば道となるで、ともかく一歩踏み出すための、経産省それからきょうの先生方の配慮によって取り上げていただいて、これから一歩踏み出すんだ、これから頑張ろうというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

桝屋委員 ありがとうございました。

 では、メッキのその一歩を踏み出すことになりますように、しっかりこれからこの委員会で審議をしていきたいと決意を申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

石田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 最初に、橋本参考人に何点かお伺いいたします。

 今回のものづくり基盤技術の高度化法に当たっていろいろ参考資料などを拝見した際にも、鋳物業界においての不適切な取引慣行の例として重量取引というものがあるんだということをお聞きしました。

 私も明るくないものですから、鋳物関係での重量取引というのはどういうもので、どうされるのが一番いいとお考えなのか、その点で率直な御意見をいただければと思います。

橋本参考人 これは、非常に私どもも難しい問題で、絶えず悩んでおるんですが、なかなかうまい方法が見つからないんですけれども。

 ただ、十年前、十五年前と比べますと、いわゆる重量単価で商売をするというよりも、この物は一個幾らなんだよというようなことでユーザーとの取り決めをするケースが、四割から五割ぐらい、割合がふえたというふうに考えます。

 ですから、現在、受注品の半数ぐらいは、一つ幾らだよという取引なんですけれども、しかし、重量が、そのコスト、値段をつける場合に、材料費というのがどうしてももとになるんですね。そうすると、どうしても、百キロのものと一トンのものと十トンのものと、やはりそのもとになるところの材料費というのが、値段を決める場合の占める割合がかなり強く出てくるんですね。

 努めて我々は今、いわゆるキロ、重量買いというのをなくそうじゃないかという動きは、重々ございまして、私どもは、多分五〇%以上は個買いにして、一個幾らで売るような商売にしつつあります。これは全体的にも、今、我々の鋳造協会でも、盛んにこの問題を、これから大きなポイントに持っていって、みんなでそれを徹底しようじゃないかというようなことも模索している最中でございます。

 本当に、いい点をお気づきいただいて、ありがとうございます。余計、我々としては、いわゆる目方で売るんじゃないという形に早く築き上げたいと思っております。

塩川委員 はかり売りじゃないんですから、技術をしっかりと見てもらえるというところがふさわしくその価格に反映されるというスキームというのは、大いにやはり国の方でも考えなくちゃいけないことですし、私たちとしても大いに汗を流していきたいと思っております。

 それと、お話の中で某企業の亀山工場のお話がありましたけれども、シャープの三重の亀山工場、私、先日視察に行ってまいりました。第一工場と、同時に第二工場が今大きく建ち上がりつつありまして、第八世代のお話がありましたから、液晶の第八世代というと第二工場の方ですので、多分あそこに入っている製造装置の一部が橋本さんのところなんだなと今改めて思い起こしているところであります。

 シャープさんのお話を聞いても、もうブラックボックスで、外に見せないんだという話で、厳しく管理がされておられる。そういう点では、つくり込みにおいても、非常に注文も多いんじゃないかなと思うんです。

 ですから、直接の発注者は製造装置のメーカーの方なんだと思うんですけれども、橋本さんとその製造装置のメーカーさんとのやりとりで、こういう点で、橋本さんの方で技術的に苦労されたことですとかメーカー側からは特にこういう点での注文が今は非常に強いとか、今日的な傾向といいますか、そういう点で、お感じになっているところを率直にお聞かせいただければなと思っております。

橋本参考人 今御指摘の点については、比較的余り問題なくいっております。

 というのは、やはり一年、二年のつき合いじゃなくて、私どもがユーザーとしているところは、半導体の製造装置で非常に世界的な評価を持っているところでございますので、そちらの方でのおつき合いももう二十年近く前からやっておりますので、大分もう現状ではその辺のいろいろなすり合わせもできておりますから、スムーズにいっております。

塩川委員 ありがとうございます。

 続いて、志藤参考人にお伺いいたします。

 お話の中で、もともと日産の系列というところから、ゴーン・ショックで、社会的にも大きなショックを与えましたけれども、それが結果として、独立系といいますか、さらに取引先も広げるという点での前向きの取り組みをされてきたことだと思うんですが、同時に、系列にある中で取引関係ではそれなりにスムーズに流れていたものが、新しい取引先を開拓される中では、なかなか、そういう点でもすり合わせというんでしょうか、クリアすべき課題というのは幾つも出てきたんではないかなと思うんです。

 いろいろ、物差しが違うんだとかという話なんかも耳にはするわけですけれども、こういう新たに要求される技術もあるという話もちょっとお話ありましたが、志藤さんのこの間感じておられる、そういった新しい取引先との提携関係を進める上でクリアすべき困難といいますか、こういうものがやはり大変だった、そういうのを、お感じになったところで何点か御紹介いただければと思っております。

志藤参考人 今おっしゃるように、私ども、系列メーカーだったわけでございますが、それがゴーンさんのあれで、系列解体、こういうことになったわけでございますが。

 やはりその時点で、これは本当の意味でもう大変な危機感を持ったわけですね。ということで、私ども、一九四八年に会社を起こしまして、現在五十八年になるんですが、九九年ですから、そのちょうど、丸々、約五十年、半世紀のところで。今まではもう基本的にはほとんど日産。ですから、日産の方だけ見ていればすべてが事足りた。何もあえて、自分たちがいろいろな計画をつくったって、どっちみち日産がいろいろな支援を示してくれる、こういうことでやっておりました。ただ口では、自分のところだけではだめだとか言っていましたけれども、現実にはそれほどのこともないということでやっていたんですが、現実に百八十度変わったんですよね。三百六十度なら戻るんですが、百八十度ですから、これは全くどうしようもないということで、これはもう本当に全社員大変な危機感を持ちました。従来は日産しか知らないということで、これでどうやるか、ただ何社かはお取引はありましたけれども。それから懸命にやりました。

 やはり、そこで大事なのは技術力です。この技術力が、一つは、私ども、世界じゅうで走っている日産車のサスペンションというのは、何らかの形で私どもの部品が一〇〇%ついています、一〇〇%、世界各国のものも含めて。ということでいえば、サスペンションというのは、基本的に、車でいうと重要保安部品です。どこでもつくれません。やはり指定があるんですね。そういうものを評価してもらうのには、普通ならば、いろいろな実験や何かをやって初めて評価して受け入れてもらえるんですが、私どもの場合は実績が現実にあります、もう日産車であれだけやっているわけですから。そういうことでいうと割方入りやすかったというのもあると思うんですね。

 ただ、やはり系列の壁とか、いろいろなあれがありました。ただ、ややおもしが取れたということも事実であります。ああ、おまえのところなくなったなというような話がいろいろなところからありましたから。おもしが取れて、それで、ほかの自動車メーカーさんは、やはり国内では何とかさっきの系列みたいな形で間に合っているんですが、海外に行ってしまうと、では、自分たちのメーカーが全部来ているかというと、来ていない。そうすると、やはりどうしてもそういうできるところに頼らざるを得ない。

 そうなると、私どももいろいろな海外展開していますので、ですから私どもは、本当のことを言いますと、トヨタだ、スズキだ、ホンダだ、みんな全部海外からバックしてきた、海外で取引が始まって、日本にバックしてきている、こういうことなんです。ですから、海外展開していたから何とかなったんですが。ただ、そうはいっても、現実に、技術という面でいうと、やはり今まで我々がやっていたのとは大きな違いがかなりあります。

 そういうことで、我々の技術はこういうものがあって、いろいろな形で提案させてもらっています、こういう提案でいかがですかと。そういうことで、いろいろなすり合わせをやって、そこで、ではこうやったらどうか、いろいろなすり合わせをやりながら、もちろん、コストという問題で、我々はコストですけれども、お客さんから見ればプライスでしょうが、そういうことで、他社よりも競争力のあるプライスを構築していく。

 このすり合わせというのは、これまた私どもだけではできないんです。これはやはり、我々を取り巻く二次、三次部品メーカーさん、私どもがお願いしている中小企業さんにいろいろな面で助けてもらっている。現実に、我々がすべてできるわけじゃありません。そういうものをいろいろお願いして、こういう技術はどうだ、こういう技術はどうだと、そういう形で彼らと一緒になって考えて、それでこういう部品をつくり上げていけば何とかなるだろう、こういうようなことでやって、そういう面でいうと、非常に苦労のしがいもあったわけでございます。

 やはり、技術を確立していく。ですから、やはり技術というのは絶対にこれからも不変であるし、私は、中小企業は技術があれば必ずやまだまだ発展の余地があるんじゃないかというふうに思っています。

 以上でございます。

塩川委員 もう一点お伺いしたいと思います。

 先ほど桝屋さんの方からもありましたけれども、工場の中にマニュアルの溶接のラインを設けるという話がありました。技術の高度化、技術革新がありながらも、やはり手づくりのものの技能の部分といわば現場で一緒になってこそ、本当の意味で力が、応用力も発揮をできるのかなということを聞いて、なるほどと思ったわけです。

 同時に、先ほどのお話の中で、工場の中での派遣の方の割合のお話がございました。栃木の工場で四割から五割、今、製造業の派遣の解禁はまだ一年ですから、請負の方も含めてということなんでしょうかね。(志藤参考人「請負」と呼ぶ)ですから、その四割、五割というのが請負の方も含めての数字なのかなというその確認と、そういうのは職場の中でどんな仕事をされておられるのかですね。ですから、そういうことをお聞きしたいのと、ものづくりというのはやはり手間暇かけてつくるものですから、ものづくりというのに派遣ですとか非正規というのはふさわしくないんじゃないかなと率直に思うんですけれども、その点についてのお考えをお聞かせください。

志藤参考人 先ほど桝屋先生の、マルチに行かれた、インドに行かれたというお話があって、あのときマニュアルでみんなやっていた、自動化できないからやっていたというお話があったんですけれども、あの中で、唯一最先端のラインがあります。これはロボットを使ってやる最先端のライン。普通ですと、恐らく従来のインドのやり方でいくと二十人ぐらいかかるでしょうけれども、それを今現在は二人でやっています。それは、私どもが全部つくって、全部納めてきた、それで私どもが技術指導してやった、それくらい違うものなんですが。本当は一人でもできるんですけれども、彼らはどうしても二人でやりたいと言うから、まあどうぞと、こういうことでやらせているんですけれども、それくらいの差があるということなんですね。

 そういうことで、派遣というのは確かに請負というのもあるし。非正規というのはやはりふさわしくないとおっしゃいますが、有効求人倍率が現実の問題として一・五、一・六になってきている、そういう中で、現実に採れないんですよね。それが実態でございます。そういう中で、やはり我々は、ではどうすればそういう人たちにも普通に一人前にできるか。やはりこれは、標準化以外ないんです。すべて仕事のやり方を標準化する、これが最大のあれです。ですから、私は徹底して、これは海外も全部同じやり方をさせています。徹底して標準化することによって、だれでもができる。もちろん言葉の違いはありますが、現実には、すべて標準化をすることによって、すべて同じやり方です、これは。ですから、そういうことをすれば、私はそれは克服できるというふうに思っております。

 それともう一つ、うちは中国にも工場があるものですから、最終的には中国の工場になるたけ行ってもらいたいという思いもありまして、中国から定期的に、そういう機関を通じてやっています。年間十五名、マックス三年間。もちろん日本語を勉強させるとかいろいろなのがあるんですが、そういう形で。ですから、例えば大分の工場とか栃木の工場とか山形の工場とか、行く行くはすべてが四十五人ぐらいの中国人の受け入れをする、こういうような形で有効求人倍率に対しては対応していこう、こういうふうに思っています。

 いずれにしても、御質問の中で、やはり採れないのである程度はそれをやらざるを得ない、こういう状況。これは私どももそうですが、私どもの協力メーカーさんもみんな、やはり中小企業さんはかなりそういうところは多いです。

 以上でございます。

塩川委員 栃木、群馬の有効求人倍率が高い内訳を私見ましたら、請負会社と派遣会社の求人が非常に多いというのが実際だというのを、ぜひお見知りおきいただければなと思っています。

 清川参考人に一点お伺いしたいんですけれども、先ほどのお話の中で、業界加盟のでしょうか、事業者の方が三千七百が二千になったという話がございました。三千七百がいつぐらい、十年ぐらい前ということでしたでしょうか。要するに、そういう点では、業界としての将来についての危機感といいますか、その辺、どのようにメッキ工業界の将来像について今お感じになっておられるのか、その点について率直な御所見を伺いたいと思います。

清川参考人 一時的には、いろいろな考え方はあるんでしょうけれども、後継者がいないという問題も一つあると思いますし、バブルの時代に公害防止の資金を借り入れ、それから機械化をしながら製造していくよりも、土地が値上がりしましたので、売り払うかマンションを建てた方がもうかるということで、四人、五人のメッキ屋さん、特に東京都心部、それから大阪、名古屋、都市のメッキ屋さんはそのようなことで廃業されたと。倒産というふうには聞いておりません、廃業されたというふうに聞いております。

 今現在どうだといいますと、決して仕事量が少なくなって業者が少なくなったというのではございませんので、それなりに、恐らく三千何百社のメッキ屋さんの仕事そのものは、二千社で全部それ以上を賄っている。年々新しい産業も伸びていますので、仕事そのものはふえています。衰退してきたという意味でなしに、各一社一社の工場そのものの規模も大きくなってきたということだと思います。

 メッキの将来がどうといいますと、私はこれほどおもしろい仕事はないと。メッキは永遠のテーマもございますし、メッキなくしていろいろな、さっき言いましたように自動車部品、電子部品、家電、いろいろなものにしても、メッキなしでは考えられませんので、将来そのものは、やればやるほどおもしろいし、やればやるほど楽しみが深いものではないかと思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 最後に、伊丹参考人に二点ほどお伺いしたいんです。

 一点は、今回の法案のスキームの中にもあります技術別指針の点なんですが、いただいたメモの中でも、一番最後のところに「技術別指針を各分野に作るプロセス自体が、大きな意味をもつ。」というお話がございました。つくる上では、マーケットに近い発注企業からの情報、市場ニーズというのはポイントであるわけで、ニーズにこたえてシーズもある、技術開発もあるということだと思うんです。

 この技術別指針をどのようにつくるのが一番効果的なのか、いろいろ議論をされてきている中でイメージされているようなこととかがあれば、その点、具体的にこんなふうにやることがふさわしいとかということをちょっとお聞きしたいのと、もう一点、支援の対象がトップ層のすぐ下、トップ下とかと聞きました。七合目という話もありましたが、五合目以下はその他の課題もあるからということで対象の外ということなんですが、やはりすそ野が広くあってこそ富士山もきれいに見えるわけで、頂上からは雲の下の五合目以下が見えない場合もあるのかもしれません。その辺が、昔は何か景気がよければ雨後のタケノコのように新しい中小零細企業が生まれたのかもしれないけれども、今はなかなかそういう状況になっていないんじゃないのか。そうなったときに、そういった五合目以下のところに対してのふさわしい対策というのが必要なのではないかなと率直に思うんですが、その点についてのお考えを二点目としてお聞かせください。

伊丹参考人 いずれも大変大切な御質問かと思います。

 まず最初の、技術別指針の作成のプロセスの肝については、先ほど既に一つお答えをいたしました。

 もう一つつけ加えるとすれば、これはあくまで行政が最終的に一種の責任を持つ指針でございますので、経済産業省がしかるべき責任を持ってきちっとつくる。しかも、そのプロセスにそれぞれの技術の御専門の方、御担当の中小企業の方たちの意見を最大限に入れる、そういう体制が必要ではないかというふうに思います。

 もう一つの御質問は、政策のターゲットについての御質問でございました。

 五合目以下まで範囲を広げることが、もし財政上可能であれば、私もそれはそれで構わないというふうに思います。しかし、六十四億円のお金しかない。そのときに、みんな対象にした途端に、薄いばらまきが始まって、だれのためにもならない。したがって、一種苦渋の決断として、どこかにターゲットを定めなければいかぬ。そのときに、トップに定めたのでは、これは多分無駄遣いになる。目指している人、厚みをつくれる人、そういう人たちにターゲットを定め、そこが上に行くことによってその下にいる人たちが励みになる、そういう政策に徹していただくのが一番よろしいのではないか、そういうふうに思います。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

石田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る十七日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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