衆議院

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第14号 平成18年4月21日(金曜日)

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平成十八年四月二十一日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 石田 祝稔君

   理事 今井  宏君 理事 新藤 義孝君

   理事 平田 耕一君 理事 増原 義剛君

   理事 吉川 貴盛君 理事 近藤 洋介君

   理事 達増 拓也君 理事 上田  勇君

      小此木八郎君    小野 次郎君

      岡部 英明君    片山さつき君

      木原  稔君    北川 知克君

      近藤三津枝君    清水清一朗君

      塩谷  立君    平  将明君

      野田  毅君    橋本  岳君

      早川 忠孝君    藤井 勇治君

      藤田 幹雄君    牧原 秀樹君

      松島みどり君    松本 洋平君

      武藤 容治君    望月 義夫君

      森  英介君    山本 明彦君

      大畠 章宏君    川端 達夫君

      吉良 州司君    北神 圭朗君

      佐々木隆博君    野田 佳彦君

      松原  仁君    三谷 光男君

      高木 陽介君    塩川 鉄也君

      武田 良太君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   経済産業副大臣      西野あきら君

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           荒木 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局企画部長)         宮本 敏久君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       迎  陽一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           長谷川榮一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           深野 弘行君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          北畑 隆生君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          石田  徹君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            石毛 博行君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 細野 哲弘君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    望月 晴文君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           加藤 利男君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     藤田 幹雄君

  長崎幸太郎君     小野 次郎君

  早川 忠孝君     木原  稔君

  松島みどり君     松本 洋平君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     長崎幸太郎君

  木原  稔君     早川 忠孝君

  藤田 幹雄君     佐藤ゆかり君

  松本 洋平君     松島みどり君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)

 中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案(内閣提出第三二号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医薬食品局食品安全部長松本義幸君、経済産業省大臣官房審議官長谷川榮一君、経済産業省大臣官房審議官深野弘行君、経済産業省経済産業政策局長北畑隆生君、経済産業省貿易経済協力局長石田徹君、経済産業省製造産業局長石毛博行君及び資源エネルギー庁次長細野哲弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉良州司君。

吉良委員 おはようございます。民主党の吉良州司でございます。

 きょうは、議題となりました経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案、このことについてもろもろ、確認も含めて質問をさせていただきたいとは思っておりますが、二階大臣が途中から参議院の方に向かわれるということをお聞きしておりますので、この法律案のもととなっておりますEPA、FTAに関する政府の方針について、まず質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、私の理解としまして、日本としてはもともとは、WTOまたラウンド交渉等、多国間の連携といいますかシステム形成ということを重視してきたわけでありますけれども、FTA、EPAという二国間または地域間、地域内の経済連携の強化という世界的な流れを受けて、日本としても二国間または地域との連携を深めてきている。その中で、シンガポールであり、メキシコであり、そして、このたびマレーシアとのEPAが結ばれた、このように了解をしております。

 シンガポールにつきましては、お互いが貿易立国また通商立国でありますので、大きな障害がなかったと思いますけれども、メキシコについて、そしてマレーシアにつきましては、国内産業を守るという観点でも難しい問題があったにもかかわらず、このような締結にこぎつけたということは高く評価しております。

 特に、マレーシアにつきましては、実は、私が商社に勤めていたときの、本当に一からイロハを教えてくれた大先輩が十年マレーシアに駐在をしておるわけですけれども、このたびの日本・マレーシアのEPAの交渉締結におきましては、特に通産省出身のアタッシェの方が中心になって、現地の進出日本企業の声も本当に丁寧に時間をかけて聞いて、ほとんどそれらの要望も組み入れた形の協定になっているということで、現地の方からも高い高い評価をしておりましたので、そのことについては本当に敬意を表する次第であります。

 ただ、一方で、言い方は悪いですけれども、先ほど言いましたメキシコ、マレーシアも、国内産業保護という観点で障壁があった、それを乗り越えて締結したということはあるんですけれども、それでもまだ交渉しやすい、締結が比較的容易にできるところから交渉が進み、または締結されているというように思っております。

 そういう中で、政府としても、最近、新エネルギー戦略というものを策定されて、資源を豊富に持つ国とのFTA、EPAをより強化していこう、こういう方針が出されているというふうに聞いております。

 そこで、まず最初に二階大臣にお尋ねいたしますけれども、新エネルギー戦略の中で、対外的な資源獲得、日本から見ればエネルギーの安全保障、資源獲得の安全保障、そういう観点で、どういうところに力を入れておられるのか、それをまずお聞きしたいと思います。

二階国務大臣 実は、きょう午後、国会のお許しをいただいて、私は、二十二、二十三と開かれます、これはカタールのドーハでございますが、七十カ国のエネルギー担当閣僚が集まる、議員も御承知のとおりの、産油国と消費国、産消対話とも言われておりますが、この会議が持たれるわけであります。

 私ども、今日、原油の高騰によって、すべての国民がこのことに頭を悩ませておる現状でございます。そしてまた、振り返って、第一次オイルショックから考えてみますと、オイルがむやみに上昇することが果たして産油国の継続的な発展につながるかどうかということを一つ考えなくてはなりませんが、同時にまた、我々の側も、原油は安ければ安いほどいいということであって、産油国が今後の開発に対して意欲と資金的な問題を解決できるかという課題を抱えておると思います。

 したがいまして、私ども、まさに産消対話によって努力をしていくこと、これが大変重要なことであるわけでありますが、同時に、それぞれの国は、日本に対していろいろな希望、期待を持っております。例えば、教育の問題でもっと協力してもらいたい、航空機の乗り入れをさせてもらいたい、そういう個々別々の意見、関心事があるわけでありまして、先ほど議員からも御指摘のありましたように、EPA、FTAという大ぐくりで交渉していくことが第一義的には大事なことでありますが、同時に、個々の交渉、バイの会談といいますか、そうしたことも綿密にやっていかなくてはならない。

 そういう意味で、私どもの出先を初め、外務省はもとより、関係省庁が力を合わせて、その国のために何ができるかということを真剣に、しかも親切に協議し、協力をしていかなくてはならないと思っております。

 大分で出発いたしました一村一品運動も、今やアジアにこの方式が転化され、アジアからさらに、私たちは、アフリカに向かってこの方式を導入していただくように呼びかけておるわけでありますが、最近、各地が非常に熱心になってまいりました。そして、一つの見本として、国民の皆さんにもこのことを理解していただく。

 我々は、自分だけ満足な生活が送れればいいのかというと、議員も御承知のとおり、世界に十一億以上の一日一ドル以下で生活している人たちのことを思えば、貿易、外交を通じて、やはり相手の国の生活の向上、民生の安定に寄与できるところはやはり積極的にやっていかなくてはならない。

 その中において、日本がのどから手が出るほど欲しいエネルギー源といいますか石油資源等につきまして、私たちは積極的なエネルギー外交を展開していく。それがこれから、私ども新エネルギー戦略と申しておりますが、こうしたことに対して、転ばぬ先のつえではありませんが、最初の第一次オイルショックのときの国を挙げての慌てぶりから考えますと、今こそ真剣な、しかも慎重な対応が必要ではないかと思っておる次第であります。

吉良委員 今、のどから手が出るほどというような表現でエネルギー確保の必要性について大臣から答弁いただいたわけでありますけれども、先ほど言いましたように、見方によっては比較的交渉が容易なところから進んでいるという中で、資源大国とのFTA、EPAの取り組み、正直言って、優先順位を明確にしてそういう資源大国とのEPA、FTAを促進していく、それも時間に猶予がないという覚悟を持って臨んでいただきたいというふうに思っています。

 詳細、この後、資料も見ていただきながら私の問題意識を提示したいと思っております。

 今回の原油高騰、もちろん、私が言うまでもなく、すべての人の共通認識でありますけれども、中国を中心とする資源エネルギーの爆食というのが背景にあって、特にBRICs諸国についてはエネルギーの効率もよくないというような状況で、そういう意味で、環境面それから省エネ技術の提供といった意味でも、日本が積極的に指導的立場に立たなければいけないと思っておるのです。

 先ほど言いましたように、優先順位を明確にして資源大国とのEPAを促進する必要がある。それは、中国が世界じゅうの資源供給源という供給源をある意味では買いあさっている、手を打ちまくっている、こういう状況なんです。

 私、商社におりまして、私の専門は電力プラントとか電力事業というのを海外で展開するものだったんです。同じ本部にエネルギー化学プラント部というのがありまして、またその隣に、やはりエネルギー、いわゆる石油だとかそういう天然資源の輸入部隊がいたわけです。戦略会議を開くときというのは、大きな世界地図を張りまして、そこによくピンで、我々政治家だったらここで集会をやったとかいって自分の選挙区でピンを押して立てているわけですけれども、そういうエネルギーの部隊それからエネルギー化学プラント部隊の世界地図には、世界のどこで原油がとれるんだ、埋蔵量を示す部分、それから実際にもう生産をしているピン、それから天然ガスがどこにある、それから回廊と言うんですけれども、油だとか天然ガスがどういう輸送路で消費国に送られているんだ、そういうようなピンがずっと立っているわけですね。

 お手元の資料をざあっと国だけでも見ていっていただければありがたいんですけれども、実は、ここに載っている国々というのは、今言った世界の中での油だ、天然ガスだ、そのほか鉄鉱石だ、そういう重要天然資源があるところは、ピンが集中しているわけですけれども、そういうところにほとんどすべて手を打っているわけなんです。

 そこには、申しわけありませんでしたが、CNPCとか横文字で出ておりますけれども、中国石油天然ガス集団公司というのがCNPC、Sinopecというのは中国石油化工集団公司、CNOOCというのは中国海洋石油総公司というような、中国政府が意思決定権を持っている、そういう会社であります。

 こういう、国そのものが資源を確保するための手を打ち尽くしている。権益取得のみならず、インフラに当たりますパイプラインですとかその辺につきましても、もう既に手を打っているというのが現状であります。

 それから、ちょっとお断りしておきますけれども、この資料、出典元を書いておりませんでしたが、JBICの資料をベースにして、ちょっとこの委員会用にまとめ直したものであります。

 例えば、きょうは担当の方がいらっしゃらないということもあり、また、先日私ども、野田委員が追及したことでありますけれども、イランのアザデガンにつきましても、もともと日本が種をまいて一生懸命肥料をやって育てているけれども、ここに来て、対米との関係配慮の問題があってなかなか前に進めない。ところが中国は、その隣でヤダバラン油田というものにもうしっかりと手を打っているし、同時に、もしアザデガンについて日本として断念せざるを得ないような状況になったならば、先ほど言いました、日本が種を植え肥料を上げ育てたにもかかわらず、中国は後ろで茶わんとおはしを持ってじっと待っているわけですね。こういうような状況が世界の至るところで展開されている。

 こういうようなところを見ると、日本としても一刻も猶予はならない、このように考えておるわけですけれども、政府として、EPAの重点、優先順位を資源国との締結に置く、その辺についての御方針、それから実際に今どういう交渉をやられているのか、その辺についてお聞きしたいと思います。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 吉良先生からただいま御指摘ございましたけれども、経済連携促進関係閣僚会議、一昨年十二月になりますけれども、今後の経済連携協定の推進につきましての基本方針というものを関係大臣、経済産業大臣も含めまして決めております。

 その中で、基準ということを特に明記いたしまして、この基準を十分踏まえるということでございます。交渉相手国・地域の決定に関する基準ということでございますけれども、重要な点が幾つか挙がっておりますが、その中で、我が国への資源の安定的輸入、資源の輸入先の多元化に資するか否か、こういう点を考えて、我が国全体の経済利益の確保というようなことに資するという点を交渉相手国及び地域の決定に関する基準として明記をして決定していただいているところでございます。

 具体的な交渉におきましても、我が国に対しまして銅鉱石の大変多くを供給しておりますチリ、これにつきましては既に交渉を開始しておりますし、それから、近々でございますけれども、GCC六カ国とのFTAの交渉というものに早く入れるようにということで、大臣及び官邸から御指示をいただいております。

 それから、まだ交渉中でございますので、国名はあえて明示いたしませんけれども、アジアの国々との間では、いわゆるFTAではなくて、経済協力、技術協力、こういった経済面での協力を広く視野に置きまして、経済連携協定、こういうような形で進めておりますので、その協力の項目の中に、エネルギー、こういったものも含めまして、経済関係全般の中にエネルギーの重点ということを視野に置いて進めているところでございます。

吉良委員 質問通告の中には今から申し上げるほどの細かいことを通知はしていないんですけれども、今、銅鉱山といいますか、銅の関係でチリということが言われましたけれども、先ほど言いましたように、やりやすいところからやっているというように思われてしようがないんです。チリは確かに、銅鉱山というか銅の輸出先、我々から見れば輸入先として大変重要な国ではありますけれども、ブラジルとの話が全然進んでいないという状況にあります。

 先ほどお配りした資料の中にも、ブラジルで、ごらんいただければわかりますとおり、中国は、ブラジルの石油公社でありますペトロブラスと相当な提携関係が進んでいる。一昨年十一月に、胡錦濤首席以下中国の首脳がブラジルに入り、油関係のみならず、御承知のとおり、リオドセという世界最大の鉄鉱石供給会社とも、投資とこれからの協力関係について合意がなされているわけであります。

 リオドセについては、リオドセが民営化される際に、三井物産が、一〇%だったと思いますけれども、株を取得しており、日本の意向がある意味で反映されるようにはなっていますけれども、中国は、先ほど言いました、国がかりで押さえてきておりますので、正直言っておくれをとってしまうんではないかと非常に危惧をしております。

 その危惧というのは二点ございます。

 一つは、これはちょっと言葉として言いづらいんですけれども、御承知のとおり、南米は、ルーラ大統領というのは、もともと中道左派というか左派政権であります。ベネズエラしかり、それからチリも、最近、中道左派の政権が誕生いたしました。それから、ボリビアもしかりであります。そういう意味で、もともとの政権の成り立ちそのものが中国とくっつきやすいという状況にあるわけですね。ということで、ますます中国が、今の政権の間に中南米という資源供給国としっかり手を結ぶ可能性があるというのが一つ。

 それから、先ほどブラジルのリオドセという話をさせてもらいましたけれども、日本の高い技術というようなことをよく言われていますけれども、経産関係の人には申し上げるまでもなく、非常に質の高い素材をつくっている。特に、鉄鋼の製品につきましては非常に質が高い。そこが全産業にわたる競争力を持たせている。こういう側面がある中で、昨年以来、日本の鉄鋼メーカーもリオドセとの交渉で非常に苦労しております。鉄鉱石の価格がぐっと上がっている。

 この先、私が恐れるのは、今言いました、買い手である日本、その売り先そのものが中国の傘下におさまってしまう、こういうリスクであります。

 先ほどインフラ整備という話をしましたけれども、日本の千代田化工さんだとか東洋エンジニアリングだとか、そういうプラントメーカーだとか商社だとか、その辺はガスパイプラインの受注とかをしております、今はできておりますけれども。これが、だんだん発注元そのものが中国になっていってしまう。そうすると、だんだんそういうビジネスチャンスまで中国に奪われていってしまう。このような危惧を抱くわけであります。

 そういう意味で、一刻も早く、ブラジルも含めた、そういう資源国との提携関係を急がなければいけない、このように思っておりますけれども、大臣の御見解を聞きたいと思います。

二階国務大臣 ブラジルが資源国として大変な底力を持っておるわけですから、重要な相手国であるということはもう申すまでもありません。

 また、環境面におきましても、ブラジルを初め、御承知のとおり、中国、アメリカ、インド、そうしたところが我々の念願とする京都議定書からすっぽり抜けておるような状況になっておるわけですから、ブラジルに対しても、先般来、私が就任してからもう既にブラジルのエネルギー担当大臣と三回お目にかかっております。この国会が終わったらぜひブラジルへ来てくれと言って、ブラジルへの招請も三回目ぐらいであります。

 議員も御承知のとおり、我々は、きょう先ほど申し上げました、エネルギー会議あるいは博鰲アジアフォーラムに出席を許されたわけでありますが、これは国会との関係が一番重要でありまして、エネルギー外交も極めて重要でありますが、国会開会中はなかなか外に出られないという縛られた関係にあるんです。これは議会として当然のことでありますが、私は、先ほどからのお話を伺いながら、エネルギー資源の担当官をしょっちゅう海外に派遣するなど、今も行っておりますが、もっと頻繁にやっていかなくてはならないと思っております。

 ブラジルの話の出たところでありますから、ブラジルはエタノールの日本への市場開発という意味で極めて熱心でございまして、先ほどお話に出ましたルーラ大統領と小泉総理との会談等におきましても熱心なお話がございました。

 また、私がWTOで、例えば香港なら香港へ出張中でも、三日滞在しておると見れば、ブラジルの閣僚が香港へやってくる。そして、何でこんな旅先まで来るかと聞くと、うちの大統領は日本との交渉を早くやれと、国会であるとかいろいろなパーティーで出くわすと、君はまだ日本へ行っていないのか、こう言われて、私はブラジルにおることができなくて、あなたを追っかけてやってきたというようなことから、ブラジルとの協議に取り組んでまいりましたが、エタノールの問題も順調に進んでおると申し上げて差しさわりありません。

 同時に、先般、資源問題とは異なるかもしれませんが、デジタルテレビの問題につきましての熱心な御要望がありました。これに対して日本方式でやるということを約束してもらいたいというのが日本側の主張であります。それは当然のことであります。三人の閣僚、外相、エネルギー相それから通信担当の三人の閣僚がお見えになっていましたが、これは大統領の権限であるから、我々がこの旅先で日本方式に決定しますと言うわけにはいかないということでありますし、その決定がなければ日本も融資その他において条件をのむわけにいかない、こう出るわけです。

 私は、先ほど来議員がお述べになりましたような資源エネルギーの問題もありますから、この問題は、単なる商談を片づけるようなそういうものではなくて、もっと戦略的にこの決着をつけなくてはならないということで、朝七時ごろから、彼らが帰国する日なんです、少し首うなだれて帰国する、そういう状況でありましたが、私は、これは手ぶらで帰国をさせてはならない、この話はやはりつけるべきだということで、関係閣僚と連携をとって、そして、最後の出発の前に、日本の外務大臣とアモリン外務大臣との間で調印にこぎつけたということもあります。そういう具体的な面で今着々と手を打っておるところであります。

 議員が言われるように、経済産業省が何もしていなくてぼんやりしていると。商社ほどしっかりはしていませんよ。商社ほど目が鋭いわけではない。しかし、我々は、エネルギーをお預かりする責任ある立場でこれからもこの問題にしっかりと対応していきたいと思っておりますから、与野党挙げてこれには御協力を、私の方から改めてお願いを申し上げておきたいと思います。

吉良委員 与野党挙げてということで、経済安全保障といいますかエネルギー安全保障という意味では、これはまさに国益そのものでありますから、与野党はないと思っています。そういう意味で、国益をきっちり守るために、私もいろいろ提案をしていきたいというふうに思っています。

 ブラジルについて言いますと、私自身も住んでいたこともあり、先ほど言いました、中国がブラジルに出かけていっているということも確かでありますが、同時に、御承知のとおり、二〇〇四年には四百人もの経済界のトップを連れて中国に訪問をしている、政府、経済トップが中国を訪問しているという例もございます。それと、ブラジルには、パラナ州というのがサンパウロ州のちょっと下にございまして、そこは自動車産業の集積地であります。GMだとか、それからフォルクスワーゲンだとか、世界各国から工場が進出しているわけですけれども、そこから今、中国向けに対して、中国で小型車のノックダウンをしているということもあって、どんどん部品が輸出されております。

 そういう意味で、資源のみならず、ちょうど日本がマレーシアとの連携をすることによって日本・マレーシア間の自動車部品等がスムーズに貿易が行われると同じように、ブラジルも、資源プラスそういう部品の供給をスムーズにするという意味でますます経済連携の必要性を認識して、強めてくると思っています。だから、私は非常に恐れています。中国が先に結んでしまうと日本としては非常に困った状況になるというふうに思っておりますので、ぜひ、私は経産省がぼんやりしているとは思っておりませんが、大臣の強い政治指導のもとでより一層強化を進めていただきたい、このように思っております。

 あと、エネルギーに関連して一つ、原子力のことについてちょっと提案をしたいわけであります。

 先日、やはりこの質問に立ったときに、最後、本当にさわりだけで言わせてもらったことは、中国が今現在でも三十二基の新たな原子力発電所を建設しようとしている。日本にとって、中国の原子力発電所に協力をする、または日本の技術でもってつくっていくということは、日本の国家戦略上極めて重要だというふうに思っております。

 第一の理由は、中国が原子力発電所をふやすことによって、今現在、油だとか石炭だとか天然ガスでたいている、その化石燃料の消費を抑えることができる。それから、中国で何か原発事故が起こったときに被害をこうむるのは、チェルノブイリじゃないけれども、日本であるということ。それから、日本の今後の原子力のリプレースメントといいますかリニューアルにかかわる技術、そしてその技術者の、特にまた現場技術者の技術の伝承といいますか、これをやるためにも中国の原子力発電所建設に日本企業も積極的にかかわるべきだし、日本政府としてもそれを積極的に支援すべきだというふうに思っております。

 そういう意味では、中川経産大臣の時期ですか、中国に対して大臣書簡を提出されていますね。それから、JBICが支援の用意がありというインタレストレターを供給している、既に提出している、このように聞いておりますけれども、中国の原子力発電所の建設にかかわって、政府は今後どういう方針で臨もうとしているか、その辺についてお聞きしたいと思います。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員の方から御指摘ございましたように、中国におけるエネルギー需要、なかんずく電力需要は大変な勢いで伸びております。もともと石油依存度が高いだけではございませんで、電力につきましても、日本でいいますと関西電力に相当するような需要が毎年増加する、国でいいますとメキシコとかスペインに当たるような、それぐらいのボリュームの電力需要が次々と生まれてくる、こんな状況でございます。

 先ほど御案内ございましたように、そんな状況を踏まえまして、中国におきましても原子力発電をやるべしということで、現在九基原発がございますけれども、今後二〇年ぐらいの間に二十基から三十基ぜひつくりたいということでございます。先ほど委員の方から御指摘のあったとおりでございます。

 我が国の方の対応でございますけれども、もちろん隣国でございますし、それから環境その他の問題もございます。したがいまして、中国がみずからの電力需要、あるいは、しこうして世界の電力需要にもかかわりますけれども、そういったものについての供給を安定的にするという意味では、中国自身が原子力発電の健全なる発展をしていただくということが非常に重要でございます。

 したがいまして、そういう観点から、先ほど御指摘がございましたように、日本の優秀なといいますか安全性の高い技術を活用して、ぜひ中国の建設事業が円滑にいくようにということで、いろいろ協力をさせていただきたいと思っております。

 そのための具体的なツールといたしましては、もちろんいろいろな、JBICあるいは貿易保険等の金融的な側面も重要でございますけれども、なかんずく運転管理あるいは安全面での支援というところが非常に重要かと思います。

 したがいまして、現在、これまでもそうでございますが、これからも中国の原子力発電所の建設及び運転について的確な規制がなされるように、あるいは運転がきっちりできるようにということで、人材面での協力をすべく、研修生の受け入れ等々でソフトの面でもいろいろ協力をしてまいりたいと思っております。

二階国務大臣 ただいま経産省の取り組みについて申し上げたところでありますが、私は先般、中国の温家宝総理と二月二十二日でございましたか、北京でお目にかかりました際に、温家宝総理の方から、中国の大きなテーマである東北開発、西部大開発、さらに北京オリンピック、いわゆる上海万博、これについて、このプロジェクトを成功させるために日本側企業の参加を願いたい、こういうメッセージが示されたわけでありますが、こうした中にも、この原子力問題は当然含んでおるものと考えております。

 あわせて、この五月の末でありますが、中国と日本と、これは毎年毎年継続して開いていこうと思っているんですが、省エネルギーそして環境問題を大きなテーマとする日中間のフォーラムを開催しようということで、担当大臣もお見えになるということがほぼ固まってまいりました。

 私は、その場におきましても、省エネルギーということは、行き着くところ、やはりエネルギーの節約と同時に、原子力の問題に対して当面はこれを避けて通るわけにはいかない。そうすると、日中共同の問題として、このエネルギー問題イコール原子力問題について取り組んでいかなくてはならない。日本の今日まで持っております経験と知見を、中国の原子力政策に協力できるところは積極的に協力していく、こういう方向で臨んでいきたいと思っております。

吉良委員 ありがとうございます。

 私自身、中国の原子力発電への日本の協力ということについて、具体的な二つの提案をさせていただきたいというふうに思っています。

 一つは、現時点でもそうですけれども、日本単独でいわゆるターンキーといいますか元請をするというのは、政治上のこともありましょうし、リスクの面からいっても非常に困難が伴うということで、実際、今、日本企業が応札しているのも米国企業と組んでやっているわけでありますけれども、やはり政府としても、対中国の原子力発電所への協力という意味で、米国政府と、それと、カナダは伝統的に中国のもろもろ発電関係の協力というのをずっと歴史的にやってきております。そういう意味で、米国政府とカナダ政府との連携を深めていく。具体的には、米国の輸出入銀行であるとか米国の投資庁、それからカナダのEDCという、やはり日本でいう輸出入銀行ですね、こことJBICとの連携を踏まえて、中国向けに出るときには、日本が表に出ずに、ある意味で米国なりカナダを押し出しながら、実のところを日本がとっていく、技術の伝承もしていく、そういうような連携が必要なのではないかということが一点。

 それから二点目は、御案内のとおり、今現在、世界銀行それからアジ銀、アジア開発銀行等も、原子力発電所建設には原則融資をしないことになっております。先日、世銀にも再確認をしてきました。ただ、それは、かつては原子力というとどうしても軍事転用の問題があって、政治、軍事の面からそういう金融機関が非常に手を出しづらかったということもあり、今のようにエネルギーの価格が逼迫している状況ではなかった、こういう背景がありますが、比較的、原子力の平和利用に限って言えば、エネルギーの消費を抑えていくという意味で、世界的に必要だという認識が高まっております。こういう時期に、世銀そのものもそういう原子力発電に対する借款供与を検討していく、そういう働きかけを日本政府自身がやっていく。世銀に対しても、日本はナンバーツーの拠出国でありますので、そういう発言権もあろうかと思っております。

 もう一つは、これも今、原子力は借款対象にはなりません、なっておりませんけれども、例えばOECDのもろもろの借款基準、それからJBICの、JBICといいますか、政府系の制度金融が縛られておりますOECDガイドライン、この辺も原子力発電所に対する支援については見直していこうではないかというような動きを日本が積極的にやるべきだというふうに私自身は思っております。

 今言った米国、カナダとの協力、それから国際機関への働きかけについて、政府としてどういう対応をしていくか、私のそういう提案に対するコメントを賜りたいと思います。

二階国務大臣 吉良議員が今日までの第一線で御活躍いただいたエネルギー問題に関しての経験から今御指摘いただいた点は、大変参考になる意見だと思っております。

 世銀の総裁ともいろいろな会議で出会うこともありますから、今後、こうした問題について、あらかじめ我々の国の考え方を申し述べておきたいと思っております。また、JBICも、国際的にも大いに活躍をしようという意気込みを持っておられるし、それだけの実力を、経験を蓄えてきたわけですから、JBICの活用につきましても、ぜひ、私どももよく相談をしながら対応してまいりたいと思っております。

 私も、あす、曽慶紅副主席とバイの会談をさせていただくことに相なっておりますが、私は、そうした場において、どれほどの時間があるかわかりませんが、可能な限りエネルギー問題等について、また環境問題について突っ込んだ意見の交換をしておきたいというふうに思っております。それを五月の両国のフォーラムにつなげていきたいというふうに思っておる次第であります。

 原子力の問題に対応することは、やはり我々の念願とする京都議定書の問題ともつながるわけでありますし、日本の産業をこれから大きく発展させていくためには、我々の今日まで築き上げてきたこの日本の経験、知見を国際社会に貢献すると同時に、きれいな言葉で言うと貢献でありますが、やはり日本の産業を後押ししていくという意味からも、この原子力問題に対して新たな方針を打ち出し、積極的に対応していくということが大事であり、中国の環境の悪化がもしこれからも進むとすれば、やがてそれは、黄砂が日本の空に翌日飛んでくるような、こういう間柄でありますから、我々は相手の国のことだとか近所の国のことだとかいってのんきなことを言っておれない、自分の国のことと思って対応すべきときに来ておる、こう考えておる次第であります。

吉良委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。全く問題意識を共有させてもらっております。

 今大臣からも御指摘ございましたように、日本は京都議定書のリーダーということで、環境面と省エネ、それから世界全体のエネルギー消費を抑えていく、そういう面でのリーダーとして、先ほど私、世銀とかOECDに対する働きかけと申し上げましたけれども、一つは、そういう世界の仕組みづくりについて日本が積極的に発言をしていくということと同時に、今大臣がおっしゃられた、やはり日本が持つ最先端の技術をそれこそ世界のデファクトスタンダードにしていく、そういう心意気で、官民一体となってこの分野については進めていくべきだということを申し上げて、いよいよこの法案の方に入らせていただきますので、大臣、では、どうぞ。

 続きまして、原産地証明発給手続にかかわる、この法案の具体的なことについて質問させていただきたいと思っています。今まで輸出者が原産地証明を申請し、指定機関が輸出者にということだったわけですけれども、今回、生産者が指定機関に対して提出できるというふうに変わりました。

 そこで、まずお聞きしたいのは、生産者自体が資料を提出できるようにした、そのように改定した背景ですね、具体的にどういう問題が生じていたからそのようにしたのか。または、よりよくするために、どういうメリットを期待して変更したのか。また、変更することによってのデメリットは生じないのか。この辺についてお伺いしたいと思います。

石田政府参考人 ただいま先生御質問の点でございますけれども、現行法のもとにおきましても、輸出者が生産者でない場合に、コストの問題であるとか製造工程の問題であるとか、その原産性を確認するために生産者の協力が必要である場合は当然あったわけでございます。その場合には、まさに生産者に協力をしていただいて、発給申請の段階でそういったデータを提出していただくという形で対応してまいりました。

 今回の法律におきまして、具体的にそこを手当てさせていただきましたのは、例えば、製造工程なんかについて、やはりノウハウの問題とか企業秘密の問題等があって、輸出者にも知られたくないというような場合が当然あるわけでございまして、そういう場合に、生産者が直接発給機関に対してそういったデータを提出するということができるように、これを法律的に明示したというのが今回の改正の一つのポイントでございます。

 こうしたことによって、私ども、特に不都合が生ずるとは考えておりませんけれども、よりよい発給、さらに効率的な発給ができるのではないかというふうに考えております。

吉良委員 この点については、もうちょっと突っ込みたい部分もありますけれども、今の答弁で了とさせていただきます。

 今回、全国の商工会議所が指定機関となるわけですけれども、これまでもこの実務は商工会議所がやってきておるとのことですが、商工会議所が引き続いて指定機関となることのメリットと、それからデメリットというのはないのか、この辺についてお伺いしたいと思います。

石田政府参考人 現在、この日・メキシコあるいは日・マレーシアの協定におきまして、これは同じでございますけれども、この特恵原産地証明の発給主体というのは、権限のある政府当局あるいは権限のある政府当局が指定する団体ということに条約上規定をされております。

 メキシコなんかのときもそうだったわけでございますけれども、当初、先方は、やはり政府が直接これは発給主体になるべきだということを主張されまして、それに対して、私どもとして、民でできることはできるだけ民でという趣旨で交渉いたしました結果、この原産地証明の発給機関として信頼のおける団体を指定するという形で最終的な合意に至ったという経緯がございます。

 商工会議所は、戦前から既に各種の原産地証明書の発給業務を行ってきておりまして、昭和二十八年に制定されました商工会議所法におきましても、この原産地証明事業というのが一つの事業として法律上明記をされております。現実にも、例えば十六年度一年間とっても、日本の原産地証明書の約九六%、五十六万件を発給いたしております。そういった実績等あるいは体制等を勘案いたしまして、今回、マレーシア政府との間でも商工会議所を指定団体とするということで了解を得たものでございます。

 今の先生の御質問の中で、この商工会議所を指定し続けることで何かデメリットが起こり得るんじゃないかというような御指摘もございました。法律上は、他の団体を指定することについて別に排除をいたしているわけではございません。現状ではまだ、そういった体制を整え、あるいは発給事務をやりたいという団体がほかにあらわれていないということでございますけれども、将来、そういう団体が仮にあらわれれば、これは相手国の了解をとる必要がございますけれども、そういった団体を指定の対象とするということもまた検討してまいりたいと考えています。

吉良委員 大きなデメリットはないんだろう、戦前からずっとやってきておることなので、そのように思っておるんですが。

 生産者の中には大手企業もあれば中小もあるということで、手数料を低減していく、ずっとその指定機関であり続けるということで、コスト削減、それが例えば手数料の低減につながっていくような、そういう努力が果たして行われるのか、このような疑問がちょっとあります。それよりも、もちろん経験が豊富なところがやった方が、結果的にはコストが低いんだろうと思っておりますけれども、今言ったように、本来、自分で出したいんだけれども、例えば輸出者が商社とかであれば、いろいろ、その辺どういうものを出すというようなことを輸出者に頼ったりするような、そういう中小もございますので、できるだけ中小企業の手間暇それからコストが抑えられるような仕組みが必要だなということを問題意識として提示させていただきます。

 実は、私は、これとは直接関係なくて、きょう厚生労働省の方がいらっしゃっていると思うんですけれども、この原産地証明書の発給手続とちょっと類似したことで、国というか政府に対してお願いしたいことがあって、残りの五分を使わせていただきたいと思っております。

 実は、私の地元に、農産物、特に生鮮野菜を輸入している会社があるんですけれども、その会社が、実は法令違反だということで企業名公表をされた経緯がございました。

 どういうことかといいますと、日本と韓国で、具体的にはパプリカという野菜ですけれども、その輸入に関して、ある一定の農薬の規制値というものを設定して、当然その規制値以下の残留農薬でなければいけない、そういう取り決めがあって、日本政府と韓国政府で、実は、生鮮品でありますから手続に三日も四日もかかっていてはどうしようもないということで、それを簡素化するために、韓国政府が農家を指定して、その農家というのは、きちんとその残留農薬の基準値を守ります、実際そういう実績がある、そういう農家を具体的に指定しまして、その指定された農家だけが輸出の生産者になり得るということで、私の地元の輸入業者は、その指定業者が輸出したものであるということで、そのまま輸入通関をしたところ、実は残留農薬が規制値よりも多かった、こういうことで社名公表をされて、その後、実被害をこうむっている、また風評被害をこうむっている。

 こういうことで、大きなクレームで、日本政府がその日本の輸入者を代表して韓国政府と協定を結び、きちっとその残留農薬の基準値を守るという前提で指定されたその生産者から輸入して、その取り決めを信じて輸入したにもかかわらず、そのときに基準値を超えている、それは輸入者の責任だ、こういうことでそれを罰する、こういうような対応があってもいいのか。こういう大きな憤りを私もぶつけられて、それはさもありなん、このように思ったわけですけれども、この辺についての経緯と、政府の現時点での見解をお聞きしたいと思います。

松本政府参考人 先生今御指摘の韓国産のパプリカにつきましては、平成十五年四月、食品衛生法に基づく残留基準を超える有機燐系殺虫剤であるエトプロホスの検出事例が継続して確認されましたために、輸入時の検査を強化いたしまして、輸入の都度エトプロホスの検査を行うよう輸入者に命じることとしたわけであります。この輸入時検査を強化した場合には、この検査の結果が出るまで流通できないということになります。

 ちなみに、一般的なことを申し上げますと、今、日本は世界じゅうから食料を輸入しておりまして、件数としては平成十六年度で百七十八万件、量で三千四百二十八万トンほど輸入しております。その食品安全の観点から、検疫所におきましてサンプリング調査をして、そこで日本の基準に合わないものについては廃棄とか回収とか、食品衛生法に基づいてやっておりますけれども、それが継続するようなことになりますと、検査を強化して、命令検査ということになります。この韓国産のパプリカの場合もそのような措置をとらせていただいたわけです。

 その後、平成十五年十月に、韓国政府から、対策を講じた企業から出荷されるパプリカについて輸入の都度の検査を省略するよう要請があったということであります。これは、韓国政府がそういう業者を指導して、ちゃんと守らせる、日本の基準に合うようにさせるということで、その都度、輸入のたびに命令検査させることを、従来のとおり、サンプリング検査に戻してくれ、そういうことでございましたので、その韓国政府が認定した企業から輸出されるパプリカについて、輸入の都度の検査を免除するということに緩和、普通の状態に戻したということになります。

 同時に、厚生労働省といたしましては、韓国側の安全対策を検証するという観点から、従来からやっております検疫所におけるモニタリングの検査を行ってきたところであります。平成十五年十月からそういう形に戻しましたけれども、十六年はそういう違反はございませんでした。

 その結果、昨年十二月以降、エトプロホスと同様の有機燐系農薬であるクロルピリホス、そういう農薬の残留がありまして、それの違反が十二月に一件、ことしになりまして二件ということで、継続して確認されたものであります。

 輸入食品の安全確保につきましては食品安全法に定めておりますが、輸入者等の食品関連事業者が食品の安全性の確保について第一義的責任を有するとされているところでありまして、残留農薬基準に違反する食品の輸入事例におきまして、第一義的には安全性の確認を行う立場にある輸入者がみずからの責任において必要な措置を講ずるべきものというぐあいに考えております。

吉良委員 ちょっと時間がなくなってきたので、これ、本当はもうちょっと突っ込みたいんですけれども。

 私が一つ申し上げたいのは、最終的に輸入者に責任があるんだということで、どこまで、さっき言いました、政府間の協定が結ばれて、韓国政府が責任を持って認定業者を指定する、その認定業者は日本の輸入基準をちゃんと満たしている、このことを信じているその輸入業者に最終的に責任を転嫁するのであれば、どっちみち最後は、責任を転嫁というか責任を求めるのであれば、そんなものなければ、私だったらですよ、自分が一から十まで、輸入するのであれば、全部責任を持ってやりますよ。現地に乗り込んでいって、そこで、輸出前に、本当に基準を満たしているのかやりますけれども、政府がそういう形で、韓国政府の名において認定したところは日本の基準を守っていますと言うから、信じて輸入しているわけです。

 だから、それを、いや、食品安全法上は輸入者の責任だと書いてあるから輸入者なんだ、こういう問題がまず第一点。これを政府が主張するということの問題点が一つ。

 それから二つ目は、経緯を聞きますと、韓国政府自体も韓国政府の非を認めているということなんです。自分たちが指導監督して認定をした農家であるにもかかわらず、そこが基準値をオーバーしていたと。韓国政府が非を認めているにもかかわらず、なぜいきなり日本の輸入業者をそういう実名公表等でいきなりペナルティーを科さなければいけないのか。この点はどうなんですか。

松本政府参考人 食品の輸入にかかわる一般的なことを申し上げますと、二国間で、輸出国と輸入国がありますけれども、基本的には輸出国政府が、輸入国、日本の基準を守らせるということに責任があるということで、それが原則であります。ですから、そういう食品を輸入するときも、日本国がきちっと守らせるように業者を指導するというのが役割であります。

 ですから、今回の場合に、そのパプリカについては、韓国政府がきちっと業者を指導していなかったということについては韓国政府が、それを認めたのかどうかはちょっと存じておりませんけれども……(吉良委員「認めたんです」と呼ぶ)そうであれば、韓国政府がそういうふうに認めたんだと思います。

 いずれにしましても、食品衛生法、韓国から輸入されるパプリカの輸入の検査等の取り扱い、あるいはそれ以外にもいろいろございますけれども、その内容等につきましては、その都度検疫所長あてに通知いたしまして、輸入者等に周知を図るとともに、厚生労働省のホームページにおいて公表しているところであります。

 ですから、輸入業者につきましても、食品衛生法にきちっとのっとってやっていただくというのが原則であります。

吉良委員 一つは、繰り返しになるけれども、韓国政府自体が自分の責任であると認めているんです。これは、同じ部局の人がきちんとそれを認めているんです、前回私がヒアリングしたときに。相手に責任があるというのを認めていながらなぜ、食品安全法上は輸入者に責任があるとは書いていても、その今言った輸入者の手続的なもろもろの負担を軽減してくれる、政府から見れば、おれに任せておけ、おれが韓国政府と渡り合って、きちっと安全なもの、基準を満たしているものを輸入するように韓国政府と渡り合うから信じてくれ、こう言って、それで信じている、それで、輸入したら間違っていた、おまえの責任だと。こんなばかな話があるかということが一つですね。

 それから、その輸入者は、今言った、韓国政府と日本政府がそういう取り決めをしたということで、そのまま輸入して大丈夫なんだというふうにもう思ってしまったわけです。仮に、食品安全法上、第一義責任は輸入者にあるとどうしても言い張るのであれば、その辺の周知徹底というのがどこまでなされていたんだ。そういう、政府を信じた自分がばかだったということが現実に起こっているわけですよ。

 では、これ、お答え願います。

松本政府参考人 まず、議員、協定協定とおっしゃいますが、協定を結んでいるわけではありません。それと、厚生労働省は食品衛生法に基づく取り締まりというものを所管しておりまして、輸入食品の監視指導等を実施して、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということを通じまして、飲食に起因する衛生上の危害の発生防止をもって国民の健康の保護を図るべきものと考えております。

 本件につきましては、厚生労働省といたしましては、韓国政府の責任により対策を講じた企業のパプリカについて、輸入の都度の検査にかえて、輸入時のモニタリング検査により韓国側の対策の検証を行い、その結果に基づく検査強化など、食品の安全性を確保するための必要な措置を講じたものでございまして、その責務を果たしているものと考えております。

吉良委員 協定は存在しませんと言いますけれども、一方で、先ほど、韓国政府が認定した農家があるということを認めたわけでしょう。協定の中身はどうでもいい、まあ、どうでもいいという言い方はないけれども、実態的に、日本政府と韓国政府が話し合いをして、韓国政府が日本の輸入基準を満たすという農家を認定して、そこからのものを輸入する際には手続を簡素化する、これが実態的に交渉の中で認められているわけですよ、確認されているわけです。協定の、どういう効力を持つ協定かわかりません、しかし、それが実際に韓国政府によって認定され指導されているわけですから、そこを、協定がないなんというようなことを言うのはおかしいじゃないですか。

 もう次の時間がありますので、この件は引き続いて次回取り上げさせていただきたいということを申し上げて、きょうはこの質問を終わります。

石田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 ただいまの吉良議員の御指摘は大変重要でありまして、今回の経済連携協定、EPAの原産地証明の発給に関する法律案の審議でありますけれども、この法案、これはメキシコを対象国にしてきたものについて一般化する、この趣旨については私も賛同するわけでございますが、要は、国と国との約束事をそれぞれの国がしっかり守るインフラをつくってもらう、これはもう非常に大事なことであります。

 先ほどの吉良議員の指摘した事案のようなことが今後も起きてしまうと、一体何を信じていいのかという問題かと思いますので、厚生労働省といいますか食品安全委員会の問題なのかもしれません、厚生労働省分野の事案でございましたが、これはぜひとも経済産業省としても、政府の一員でありますから、関係各省連携をとって、こういったことが起きないように体制を進めていただきたいということをまず冒頭申し上げたいと思います。

 さて、そういった認識の上で、私は、本日、我が国のアジアにおける経済連携全般について質問をしてまいりたいと思います。

 私は、一九九七年という年は大事な年だと思っておりまして、この年は、日本の経済にとっても、そしてアジアの経済にとっても一つの転機だったんだろうと思っております。国内ではこの年、前からたまっていた不良債権問題が一気にマグマのように表面化してまいりました。十一月には三洋証券が会社更生法を申請し、そして、そのデフォルトを受けて、同じ月には北海道拓殖銀行の経営破綻、さらにはまた、同じ月に山一証券の自主廃業、どんどんどんと起きたわけであります。

 これは、片山政務官は当時どの部局にいたかわかりませんが、旧大蔵省のいわゆる護送船団方式、今ではもうこの護送船団という言葉は死語になっておりますけれども、それまではツービッグ・ツーフェールとか言って大き過ぎてつぶせないということで、大手金融機関は守るという暗黙のおきてのようなものがあったわけですけれども、それが瓦解した。その後、長銀が、日債銀が倒れていった。私は、当時は金融恐慌の一歩手前というか、恐らく当局の方も金融恐慌ということをかいま見たんだろうと思うわけであります。いずれにしろ、日本は大変な不況のトンネルに入った。

 一方で、アジアでは九七年にアジア通貨危機が起きたわけでありまして、タイのバーツ危機、そしてお隣の韓国。欧米から流れていたお金が一気に引いたという年であります。急成長を続けてきたアジア経済が冷や水を浴びせられたというこの九七年でありますけれども、あれから十年近くたちまして、日本はもたもたしておりましたがアジアは一足早く回復をして、そして日本も、金融については落ちつきを取り戻して、大企業についてはよくなった、中小企業、地方についてはまだまだの部分はありますけれども、やっと日本も外に目を向けてスタートラインに立つことになったということだろうと思っております。

 そういう中で、世界の通商交渉なわけですけれども、WTOの交渉というのが低迷をして二国間のEPA、FTAということだろうと思っておりますが、先ほどの吉良議員の前段の質疑でもEPA交渉について、ややもすると、場当たり的とまでは言いませんけれども、そういう言い方はしていませんが、日本の場合、アジア各国の中での、これから質疑で話しますが、若干おくれをとった部分もあるのだろうと思っているわけであります。

 そこで、冒頭お伺いしたいんですが、各国との経済連携について短期、中期、長期の戦略を立てて行動する必要があろうかと思いますが、この点について、経済産業省、どのように受けとめていらっしゃるのでしょうか。

西野副大臣 お示しの東アジア地域における我が国の国際的な生産と流通という問題、特に経済統合の問題につきましては、今日まで、それぞれの国々間において我が国がむしろイニシアチブをとりながら進めてきておるところでございます。この問題は大変重要な問題であることは認識をしておるところでございます。

 実は、このほどグローバル経済戦略なるものを取りまとめたところでございまして、この戦略の中で、東アジアEPA構想さらには東アジア版のOECD構想を柱にいたしまして、今後の基本的な対外経済政策、その方向性を示しておるところでございまして、それに基づいて今後展開を進めていくべきでございまして、当然、そこには短期、中期という問題も含めて取り組んでいく必要があるというふうに思っておるところでございます。

 いずれにいたしましても、我が国の経済の競争力の強化、さらには東アジア全体の中での経済成長というものを、むしろこれによって牽引をしていく、そういう役割を果たしていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 私も、経済産業省が打ち出されたグローバル経済戦略ですか、大変興味深く読まさせていただきました。副大臣おっしゃったとおり、この中に、東アジアEPA構想さらには東アジアOECD構想等と、大変興味深い構想が入っていますので、これからこの質疑で幾つかお伺いしていきたいと思うわけでありますが、いずれにしろ、急ぐ必要があると思っておるんです。

 その理由は、八〇年代とか九〇年代と違って、産業の移転の形というのが随分変わってきたなという気が私はしております。要するに、一気呵成に産業集積が進んでしまう。八〇年代、九〇年代ですと、一つの工場が出るにしても下請さんが必要だ何が必要だということで時間がかかっていたとは思うわけですけれども、今工場が非常にもう、フルターンキーとは言いませんけれども、一つどんと移転すればあっという間に大工業集積地帯ができてしまう。野原とは言いませんが、野っ原のところが一気に巨大産業集積になる。

 中国のシンセンなりなんなり各地でそういうことができているとなると、逆に言うと、国の初期動作を誤るとそこでおくれをとると思うんですね。その意味では、政策の重要性というのが、通商政策というか、対外的に非常に大事になっている。初期の道を間違うと、大変、後で取り返しがつかないという形になると認識しておるものですから、非常に政策の判断が重要になる。

 その意味で、ここに書いています東アジアEPA構想、このスケジュールをお伺いしたいと思うんですけれども、どういった姿で、ここには方針としては大変いいことは書いてありますが、具体的に、いつ、どうされるんですか。お教えいただきたいんです。

片山大臣政務官 ただいま委員御指摘ありましたように、東アジアにおきまして、特に産業の集積というのは極めて瞬時に進んでいる部分もございまして、私ども提唱しておりますこの東アジアEPA構想というのは、このように東アジアにおきまして、我が国のグローバル化した企業がキープレーヤーなんですけれども、実態先行で進んでおります経済的な地域統合を、このEPAによってより制度化して、域内全体においてより成熟した市場経済圏をつくっていこうというねらいでございます。

 今近藤委員が提出していただいているお手元の資料、私どももこういった実態を認識しておりますが、日本も中国も韓国も、ASEANとの関係、それからその周辺諸国との関係で経済連携の交渉を始めたり、始めようとしたり、一部についてはもう合意しようとしておりますが、二〇〇七年ぐらいでこれら日中韓のASEANとの協定は実質合意になるとか、実質合意を目指している予定があるものですから、二〇〇八年ぐらいから東アジア全域において交渉を始めたいなというふうに私ども経済産業省の方は思っておりまして、そういったお話を二階大臣の方から、諮問会議等の場でも提言させていただきましたり、あるいはそういったことを政府内でお話ししているところでございます。

 具体的には、ASEANプラス1のEPA、FTAをベースにいたしまして域内の共通基盤となるEPAをまとめていくという取り組みになりますので、その具体的な順番につきましては、今現在でもおおむね政府内である程度のものはあるということですが、また四月中ぐらいにも諮問会議やそれから各省の検討の場でできるだけスケジュールをつくっていこうという動きもございます。

 その辺は、私どもも、通商においては非常に重要な役割を担っていると認識しておりますが、政府内にいろいろとお立場もありますので、積極的な提言を行いながら今後決めていくということでございまして、私どもとしては二〇〇八年に東アジアEPAの交渉を始められたらいいなというふうに考えております。

近藤(洋)委員 政務官おっしゃっていただいたように、この一枚目の資料に東アジアの今の相関図を添付させていただいております。

 要するに、ASEANプラス3と言うんですか、ASEANと日中韓、そして豪州、ニュージーランドを含めて、さらにはインドあたりも視野に置いてということでしょうか、いずれにしろ、ASEANプラス3及び豪州、オーストラリア、この辺の交渉を二〇〇八年にはスタートさせたいということでありますが、そこで、ぜひこういったものを進めていただきたいと私も思うわけであります。

 その上で、東アジアEPAを進める上で特に重要となるのが、プラス3の、日中韓の動きだと思うわけでございます。

 資料の二に韓国の動向、資料の三には同じく中国のEPAの経済連携の他国の交渉状況の資料を添付させていただいておりますが、これをごらんいただければわかるように、まず、韓国、中国ともに、経産省は日本もイニシアチブをとってと言いますけれども、日本よりも先行して交渉を進めているというのが実態であろうと思うんですね。いわば、アジアにおけるリーダーシップ争いといいますか、中国か韓国か、はたまたややおくれた面もある日本かということだろうと思っています。

 何もこれは競争でもございませんけれども、東アジアEPAというのができればみんな包含するわけですから、それはそれでいいわけですけれども、いずれにせよ、日中韓がリーダーシップ競争を展開しているということだろうと思うんです。

 その上でお伺いしたいんですが、いずれにせよ、この東アジアEPAを本当に実現するのであれば、やはり韓国の動きが重要だろうと私は思っておるんです。

 中国というのは、大臣の場合は、大変な親中家であり、お詳しい、御人脈をお持ちなわけですが、大事な、大切な国でありますが、やはり何といっても、体制が日本と中国では違う部分もあるわけでございますし、国の規模も大変大きいわけでございますから、私は、日本の場合は、韓国と、韓国を取り込めと言うとあれですけれども、連携をとりながら、そして、中国ともしっかりした交渉を進めながら経済連携を深めていくというのも一つの道だろうと思うわけでございます。

 韓国、中国と日本との関係は、今政治的には非常に難しい局面も、特に韓国は迎えているわけでございますけれども、経済連携についても、二〇〇四年から韓国と日本の交渉が中断していると聞いております。中断している韓国とのこのEPA交渉について、交渉再開、さらには締結に向けた見通しはいかがなものなのか、お答えいただきたい。

片山大臣政務官 日韓EPA交渉について、まずファクトから申し上げますと、二〇〇四年十二月の日韓首脳会談で二〇〇五年中の実質合意を目指すということを確認したんですが、二〇〇四年十一月の第六回会合以降、交渉は開かれておりませんで、それは、農産品とか水産品の市場アクセス、物品の関税交渉につきまして、両国の主張に非常に隔たりが大きくて、完全なオファーの交換に至る前に中断しております。

 日本の方は、その後、いつでも再開したいというふうに言っておりまして、そういうお話はあるのでございまして、そちらの方の考えや姿勢には変わりはないんですが、なかなかテーブルに着いていただいていない。それを一生懸命働きかけていくということです。

 御指摘がありましたように、日本と韓国におきましては、ある程度、経済的なレベルにおきましても、長年の経済関係につきましても、非常に緊密なものがありまして、双方の経済界も定期的な連絡をとっておるわけですね。そういう意味で、できるだけ努力してまいりたいと考えております。

 最後に、つけ加えさせていただきますと、私、三年前まで財務省におりましたときに、FTAの方の交渉担当官もしておりまして、日韓の初期のときに出ておりまして、こちらの二枚目をめくっていただきますが、左側の一番上に韓国がチリと交渉したということで発効しておりますが、チリと韓国の交渉過程を、今はかわられましたが、当時の交渉担当大使である趙顯大使、それから財務部の国際局長に当たる金氏、両方から聞いておりますが、チリから韓国が輸入している農産品はシェアとして非常に小さいんですね。ですから、易しいと思って韓国は交渉を始めたんですが、ブドウですとかナシですとか本当にごく一部のものについて農業団体の方が大変なデモをいたしまして、それを青瓦台の方で政治的に調整できなくて、それでかなり調印が延びているんですよ。

 私どもの方の事情を申しましても、やはり農業分野はセンシティブということでいろいろやっておりますが、そのときに聞いた印象では、韓国にとっても相当の問題があって、今の盧武鉉政権は非常に組合が強いものですから、それをなかなか調整できていないというあちら側の事情を相当私どもそのときに聞いたという事実もございます。

 もちろんこちら側も、農産品、水産品、両方とも我が国にもセンシティブセクターはありますから、両方がよく話し合ってテーブルを再開するということにしていかなければならないということでございますが、直接私がやっておりましたので、そういった事情は双方にあるということも申し添えたいと思います。

近藤(洋)委員 政務官、今までやってこられたということであれば、期待するところ大でございますが、今までの交渉の、失敗とは言いませんけれども、やはり反省点もあるのではないか。この辺は、これからの質疑で民主党の同僚議員がいろいろな観点からも質問されると思いますので、譲りたいと思います。

 もう一点、オーストラリア、韓国と同様に、やはり豪州とのEPA交渉、これも極めて重要だろうと思うんです。

 先ほど吉良議員も、やりやすいところからやっているという指摘、やはり、こういった韓国なりオーストラリアとの交渉がなかなかまだ見えていない、オーストラリアについてはこれからお伺いしますが、実現していないというところもあるからこそそういう指摘もあると思うわけですが、オーストラリアについては、特に大資源国であるわけであります。天然ガス、鉄鉱石、ウラン。日本とは相互補完にもある。その意味では、経済体制も似通っているわけでございますし、エネルギー政策上も、そして全体の経済政策上も通商政策上も極めて重要な国であろうと思うわけでございます。

 そこで、お伺いしますが、政府は全体の東アジアEPAの中でオーストラリアをどのように位置づけていらっしゃるのか、そして、その交渉の見通し、現状についてお伺いしたいと思います。

西野副大臣 オーストラリア、豪州でございますが、御案内のとおり、我が国に対して、例えば石炭では五七%の輸入は豪州に頼っておりますし、さらに鉄鉱石では五六%という大宗を実は占めておる国でございまして、そういう意味でも我が国にとっては大変重要な輸入国であるわけであります。実は、豪州とは、一九八五年にさかのぼるわけでございまして、自来、我が国の経産省の資源エネルギー庁、それと豪州の資源担当省との間で日豪エネルギー高級事務レベル協議というのを毎年開催いたしておるところでございまして、そういう中から緊密な関係を保っておるところでございます。

 ただ、お示しの、豪州を含めての東アジア地域統合という問題でございますが、これは当然ながら、今申し上げたとおり、重要なパートナーだというふうに認識をいたしておるわけでございます。したがいまして、この豪州との間のEPAにつきましては、昨年の四月に両国の首脳会談におきまして合意ができたわけでございまして、その趣旨にのっとって、両国政府間におきまして、EPAを結んだ場合のメリットは、あるいはデメリットは、互いにそこらあたりの検討を行う共同研究を実は進めておるところでございます。したがいまして、遅くとも来年の四月ごろまでには両国首脳にその研究の結果を報告いたす、そういう準備をいたしておるところでございます。

 いずれにいたしましても、オーストラリアは大変重要な国でもございます。それを改めて認識いたしながら、引き続いて、申し上げましたこの共同研究を積極的に進めてまいりたいというふうに思います。

 ちょうど昨日も、豪州の下院の議長一行が私の方に表敬訪問をされまして、その場におきましても、両国間のこのEPAの、FTAを含めての問題について、私の方からも見解をただし、先方の方も、それについては政府にもしっかりと申し入れしていく、こういうことのお言葉をいただいたところでございまして、今申し上げた来年の四月に両首脳に報告ができるように、積極的に進めていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 いずれにしろ、WTOは、ぜひこちらも進めていただきたいと思うわけですけれども、多国間での、マルチの場のWTOとまたEPAは違って、さらに交渉なりスケジュールなり戦略なりというのが難しいと私は思うんですね。方程式が非常に難しいと思うわけでございます。

 だからこそ、緻密な戦略なりが必要だろうと思いますし、あえてこの点についてつけ加えさせていただくとすると、小泉政権の五年間で、この東アジアの経済連携というのは、政経は別だとはいうものの、やはり総理の行動がさまざまな面でも日本の出おくれにつながっているのではないかということは指摘をさせていただきたいと思うわけであります。

 このグローバル経済戦略、大変いいことを書いておりまして、その中で、もう一点お伺いしたいんですが、東アジア版のOECD構想でありますか、東アジア版OECDをつくろうということを盛り込んでいるわけでございます。

 アジアの中には、ASEAN、東南アジア諸国連合という機関もあるわけでありますが、この東アジア版OECDというものが具体的にどういうものになるのか、どういう姿になるのか、日本政府のかかわり合いというのがどういうものなのかというのをお答えいただきたいと思います。

二階国務大臣 現在、東アジアの経済統合が進展しようとしておるわけでありますが、これを一層推進する、具体的に促進していくために、域内の経済統合の推進にかかわる幅広い課題、テーマを研究、分析しながら政策提言を行う機能の整備、これがいわゆるOECDの東アジア版ということになろうかと思います。

 このため、戦後、先進国の政策調整に大きな役割を果たしてこられたOECDの例も参考にしながら、ASEAN事務局を核として、今御質問にもありましたとおりASEANの事務局ということ、これは大切にしてまいりたいと思っております。東アジア経済統合を本格的に進める体制を強化する方策について、今後、政府部内での議論、関係各国等との検討を深めてまいりたいと考えております。

 特に、ASEANの会議等におきまして関係閣僚が集まりますと、やはり、我々は日本に期待しておる、日本を兄貴分と思っておる、したがって、日本がリーダーシップを発揮してもらいたい、そういう声が盛んでありまして、それは、裏返せば、そうした機運、日本がリーダーシップを発揮する、そういう環境ができてきた、こういう感じがするわけです。

 近藤議員がおっしゃったように、日本がずっとおくれておったのではないかというのは、一面そういうとらえ方も当然でありますが、私は、そういう消極的な面ではなくて、日本は満を持して、関係各国から、日本よ、ひとつリーダーシップを発揮してもらいたいということが言われるような状況になった。また、東アジアEPA云々ということが新聞紙上に報道されますと、アメリカとかいろいろな国々からも関心を示されました。大いに結構なことだと思っております。

 この地球上でお互いに貿易を盛んに行っていくためには、常に我々はアメリカという国を無視するわけにはまいりません。

 したがいまして、アメリカのポートマン通商代表が今度御承知の予算局長にかわられますので、けさ七時から電話会談を約三十分間やりました。その中で、WTOが主たることでありますが、特に東アジアEPAの問題、東アジアの、OECD東アジア版、これにつきまして私は重ねて、前にも申し上げたことがありますが、ポートマン通商代表に申し上げて、我々はこの計画を推進していく上においてもアメリカとの連携強化ということは常に念頭に置いて、御相談をしながら進めていきたいから、御意見があればどうぞ遠慮なく申し出ていただきたいと。

 日本の一部の新聞に報道されておったようなことは全く日米間にはありません。大使が何かおっしゃったということが新聞に言われておりましたが、大使はそういうことについて、新聞か何かをごらんになって意見を求められたようでありますが、それは正確に伝わっていない、アメリカ大使館はその報道関係に抗議をして、報道関係も誤りであったということをはっきりお認めになったようでありますから、そういう後ろ向きな話ではなくて、我々は堂々と正面からアメリカともこの問題について意見の交換をしながら、世界のいろいろな国々の協力、共感を得ながら、OECDの東アジア版を成功に導く。

 これは、国内の問題一つ考えても、このことを関係者に了解を得るといったって、これは大変な労力でありますが、思い切って進めていく。進めていきながら、正すべきものは正していく、修正すべきものは修正を加えていく。それでなければ、これから計画を立ててこんな方向で行きますと言ったって、日本だけが考えた方向にみんながついてきてくれるとは限らない。御一緒に相談しながらやっていきたい。

 そして、やはり事務局なども将来は置いていかなきゃいけない、場合によっては常設の会議場まで要るかもしれない。そのことは、日本がそういう面でのリードはさせていただくにしても、私は、日本の国内にその事務局を置くというふうな、そういう内向きのことではなくて、思い切って、アジア各国と御相談をした上で、みんなの意見がまとまるようなところがあれば、そこにアジア版のOECDの事務局を設置するぐらいの積極的な意気込み、それから、オープンにそういうことに対しても対応していきたいと考えておる次第であります。

近藤(洋)委員 ぜひこれは、大臣がおっしゃったとおり、本格的に、OECDというのは大変な組織であります、これをアジア版でつくるということは大仕事でありまして、相当の覚悟が必要だろうと思いますし、そういう構想を練っていただきたいと思うわけでございます。

 特に、いずれにしろ目的は、アジア全体の経済が発展して、そして日本にいる企業も、そして日本にいて働いている人も利益を得なきゃいかぬと思うわけですね。その意味では、私、大事なのは、ルールが、同じ土俵になることだろうと思うんですね、各国が。各国がやはり同じルールで勝負をするということが大事だろうと思うわけであります。

 時間があれなので質問をはしょりますけれども、例えば、ルールの中で、ルールをメイド・イン・ジャパンにするということが重要だろう。その中で、この中には入っておりませんが、例えば競争政策、独占禁止法政策なども、やはり不公正な競争にならないようなものも広めていくだとか、あとは、これは経産省の所管じゃないかもしれませんけれども、ほかの団体がやるのかもしれません、例えば人権なり労働環境であるとか、やはりこういった部分も、安い賃金で夜中まで働かせて三年やったらもう体もだめになってポイ何かというような、そういう国と日本はやはり戦えないわけでありますから、そこもしっかり整えるということがお互いウイン・ウインの関係になるんだろうということだけを指摘させていただきたいと思います。

 最後に一点、ぜひお伺いしたいことがあって、環境分野の話も聞こうと思ったんですが、御準備いただいた人は恐縮でございますが、人の、人材交流について最後にお伺いいたしたいと思います。

 この中にも、アジア人財資金構想というのですか、アジアからの優秀な人材を確保、活用するということが盛り込まれておって、要は、アジアから各国の留学生、研究生を日本に招いてインターンシップや日本企業での就職の橋渡しをする、日本からもアジア各国に留学させるという、アジア人財資金構想というのが入っています。

 これは、要するに日本版のフルブライト計画だろうと思うわけであります。米国のフルブライト留学というのは、これはフルブライト上院議員によってできた、ガリオア資金を受けてできた制度でありますけれども、きのうこの財団に電話をして、フルブライターは日本はどういう人がいますかと聞きましたら、東大総長で文部大臣だった有馬先生、ノーベル賞の小柴先生、富士銀行の会長だった橋本さん、さらには、現役の政治家ですと、自民党の津島雄二先生、大野前防衛庁長官であるとか、大体七十代ぐらいの方々が多いですね、七十代前後。大体、世代的にも昭和三十年代ごろに留学されています。

 このフルブライト留学というのは大変な親米家を日本につくったと思うんです。私の身内にも実はフルブライターがおって、聞いてみると、戦前は海軍兵学校で、鬼畜米英とまでは言いませんが、そういう軍国少年だったんでしょうけれども、アメリカに留学して、アメリカ大好きになって帰ってきているわけですね。あんないい国はないと。これはお金で買えない、大変な親米派を日本につくったのがフルブライター、フルブライト計画だろうと思うわけであります。

 こうした制度が今まで日本に本当になかったこと自体が、バブルのお金は一体どこに行ったんだろうと思うわけでありますが、これをつくられるというわけであります。これまた本気でつくるなら相当な覚悟が必要でありますが、実際、これは実現されるんでしょうか。最後にお伺いします。

二階国務大臣 この東アジアの、我々日本が果たすべき役割ということを考えますと、今まさに御指摘にありましたように、私たちとしては、フルブライトのアジア版といいますか、日本版を考えておるところであります。

 それも、年間二千人ぐらい受け入れをする。そして、今までは日本に留学された人も、日本での生活費等もかなりかさむものですから、勉強しながらアルバイトもして、一生懸命働いて、卒業して、日本の企業になかなか受け入れてもらえないということで、そのままの気持ちを持って、すっきりした気持ちじゃなくて、今、近藤議員のおっしゃったように、アメリカはすばらしいぞと言って帰ってくる人に比べては少し差があるような、こういう状況であります。

 我々は、その反省の上に立って、年間に二千人ぐらいの人、月三十万円ぐらいの勉強の支援のための支給を行い、アルバイトをしなくてもどうにか学校を出ることは保証できる、そういうふうなことで対応していくと同時に、卒業後、経済界の皆さんにも御協力をいただいて、この学生たちを日本の企業が受け入れる、そういうところまで考えていきたいと思っております。

 先般、私はこの構想を小泉総理に御報告申し上げたところ、それは大変結構なことであるが、アメリカ版のフルブライト留学基金を手本にしてやるということであれば、そろそろ日本も、もうアメリカにもそういうことのお返しをしてもいい時期ではないかということで、検討してみてはどうかという総理からの御指示もありましたので、我々は、今、アメリカ版として年間二百名ぐらいのアメリカからの学生を受け入れる、学生のみならず研究者も受け入れる、そういうことで考えてみたいと思っております。

 これは、当然、外務省、文部科学省等と共同で対応したいと思っておりますが、皆様の御同意と積極的な協力が得られれば、私はそういう方面で対応していきたいと思っておりますが、時によっては他の方法を講じてでも、これは必ず実行するという方向で取り組んでいきたいと思っております。

 けさほど、先ほど来申し上げてまいりましたような、ポートマン通商代表に対しましても、我々はこのような考えを持っておる、ですから、ポートマンは、通商代表の立場を離れても、我々のこうした計画に対してアドバイザーのようなことで協力を願いたいということを申し上げたら、これはすばらしい御提案であって、アメリカとしてもでき得る範囲において積極的に協力を約束する、ここまでおっしゃっていただきましたので、私どもは、アジアの学生の皆さんを日本に受け入れる、あるいはアメリカの学生たちを日本に受け入れる、こういうことを積極的にやって、それこそ私たちが、それぞれの地方においてもグローバル化ということが目の当たりにできるように、そういう社会を築いていく。

 そのために、経済産業省としては、今、近藤議員からの御指摘の、大変なことをやろうとしているんだからと、おっしゃっるとおりでありまして、渾身の努力を傾けてまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 終わります。

石田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 日本・メキシコ経済連携協定に基づく原産地証明書発給に関する法律の一部改正案ということでありまして、今回、この現行法の一般法化を図るという中身になっております。

 若干、質問の順序を入れかえまして、最初に二階大臣にお伺いしたいと思うんですが、日本・メキシコに限っていたこのEPAの原産地証明の発給の業務についての手続法、今後、一般法化をしますと、国会承認を経たEPAについては政令によってどんどん追加できるということになってまいります。個別の法改正は必要なくなるわけであります。

 しかしながら、それぞれ結ばれますEPAというのが、日本においても、相手国におきましても、経済、貿易に多大な影響を及ぼすことにつながります。もちろん、協定そのものは外務委員会で審議も行われる、国会で審議も行われるわけですが、同時に、深く経済、貿易にかかわります経済産業省として、やはり当委員会に何らかの報告が必要ではないか。

 つまり、今後は法改正が行われないわけですけれども、EPAが国会において批准の手続が行われる際に、それに関連する報告をこの当委員会に行っていただきたいと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

二階国務大臣 この本協定発効後の我が国からのメキシコへの輸出入額を見ますと、我が国からの自動車の輸出の増加を初め、輸出、輸入ともに昨年同期で比べて増加をしているわけであります。

 そうした面から、今後、今御質問にありましたような点で、後のいわゆるケアをしっかりやれ、こういうことであろうと思いますが、当然、私どもは当委員会に御報告を申し上げ、そして、いろいろ意見をちょうだいしながら取り組んでまいりたいと思っております。

塩川委員 例えば、日本・シンガポールのEPAについては、過去、四年前ですか、スタートしておりますけれども、五年後の見直しが来年ということもお聞きをしております。当然、そのシンガポールとの関係におきましては、こういう原産地証明書の発給の手続の業務が行われていないわけですけれども、しかし、来年に向けた改定の交渉の中で、場合によってはこういう手続規定も必要になってくるかもしれない。それなのに、いわば日本・メキシコの原産地証明書発給の手続法の前にスタートしています日本・シンガポールのEPAに係る原産地証明の発給手続について、今後は政令だけで追加をしますよというのでは、順番もそもそも逆立ちをしているわけですから、そういう点でも、例えば、日本・シンガポールの場合において、何らか、そういう政令につけ加えるようなことが生まれるようなときなどを含めて、そういう時点に、きちんと国会に報告を、経済産業省として当委員会に報告をぜひお願いしたいと思うんですが、その点いかがでしょうか。

二階国務大臣 まさに御意見のとおりでありまして、今後、この本法の改正の後、原産地証明法を改正することは、原則としてなくなるわけでありますが、個別の経済連携協定の締結等につきまして、その都度、国会での審議、承認を得ることとなっております。

 そこで、ただいま御質問にありましたようなことに関しまして、私どもは、機会あるごとに経済産業委員会に御報告をして、御意見をちょうだいし、その交渉経過等につきましても御説明をしてまいることは当然のことだと思っております。

塩川委員 委員長への要望ですけれども、今大臣の御答弁にありましたように、経済連携協定が今後結ばれた場合におきまして、当然この事務手続規定そのものは政令での対応になりますが、そういった際に当委員会に経済産業省から報告を求める、あわせてそれについての質疑を当委員会としてきちっと行うことが必要ではないか。この点について、ぜひ具体化を図れるように要望いたします。

石田委員長 理事会等で検討いたします。

塩川委員 それで、このEPAについてですけれども、日本・マレーシアで動き出すわけですが、この二国間の協定とともに、マルチの協定の締結作業も動き出しております。日本・ASEANのEPA交渉も動き出しているわけであります。

 そこで、お伺いしますが、日本とASEANのEPAを目指す理由、目的はどこにあるのか、その点についてお答えいただけるでしょうか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国とASEAN、大変経済連携の歴史が長うございます。そして、企業からの投資あるいはそれに先立ちます経済協力等々ございます。先ほども御審議でございましたように、九七年、九八年には大変な金融危機がございました。その当時におきましても、実は多くの日本企業の現地の事業所では、やはり撤退、欧米の企業とは異なりまして、そういうことはございませんでした。

 その中で、ASEAN経済も着実に回復をしてまいりまして、我が国の製造業を中心にいたしまして、特に自動車や電子・電気、こういったようなものを中心にいたしました直接投資、これを受けました各国間の分業、もちろん日本も入りますが、こうしたネットワークが着実に形成をされてきております。

 特に、薄型テレビ、自動車部品あるいは自動車、こういったものにつきましては委員も御案内のところだと思います。特に自動車等々につきましては、こういったものが今やASEANから外へ、全世界に輸出をして、現地の雇用、そして日本の企業、そしてそれが日本の経済の発展にもつながってきているところでございます。

 この中では、例えば薄型テレビ等々の例が典型でございますが、日本から薄型テレビの核心をなしますディスプレーパネルが例えばインドネシアの製造拠点に輸出され、そしてそこで完成品に組み立てられて、それをタイへ輸出するという、二国間を超えた、地域としての分業体制というものがございます。

 こういったような分業体制をさらに効率的に進めるということで、日本とASEANとの間ではASEANと日本の地域間の経済連携協定というものをただいま交渉中でございまして、これは、既に国会に御審議を別途お願いしております日・マレーシア連携協定のような二国間の協定と異なった、並行した分業というようなことを念頭に置いてただいま推進しているところでございます。

塩川委員 プラズマもそうですし、自動車などもそうでしょうけれども、いわば一つの企業の中で、一つの工場でやっているような、あるいは下請企業と一体となってやっていたものが、今ASEANの国々と一体の中で、一連の流れで行われているというのが今の現状なんだろうと思います。

 各国間の分業ということもございました。そういう点では、例えば自動車ですとか電気などのような分野では、ASEANも含めた最適供給体制というのをそれぞれの企業が追求をしている。そういう中で、このEPAの実現というのが大きなメリットを得るものとなるということも言えると思います。

 そこで、日本とASEANの経済関係の深さにつきまして、日系自動車メーカーのASEAN4と言われる国々におけるシェアについて数字をお聞きしたいんですけれども、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンにつきまして、日系自動車メーカーのそれぞれの国における生産台数のシェア、また販売台数のシェアがどのくらいになるのか、お示しいただきたいと思います。

石毛政府参考人 二〇〇四年のASEAN4における日系自動車メーカーのシェアでございますけれども、タイにおきましては、生産のシェアは八九・〇%、販売のシェアは九〇・六%。インドネシアでは、生産は九七・五%、販売は九三・五%。フィリピンでは、生産は七〇・五%、販売は八二・八%。マレーシアでございますけれども、日系自動車メーカーだけをとりますと、生産のシェアは二二・八%、販売のシェアは二二・六%になります。ただ、日系自動車メーカーと提携関係にあります国民車メーカーでありますプロトンあるいはプロドア、そういうものを含めますと、生産のシェアは八七・六%、販売のシェアは八三・三%、そういう数字になっております。

塩川委員 ASEAN4において、日本の自動車メーカーが圧倒的なシェアを誇る独壇場ということが言えると思います。生産で百七十五万台、九〇%、販売で百五十万台、八九%という規模になります。

 進出した自動車メーカー、トヨタですとかあるいはホンダなどでは、この域内において、先ほども紹介しました相互補完供給体制と、一連のものを築き上げているわけであります。

 配付資料にあります、一枚目の方ですけれども、「自動車産業の「アセアン最適」供給体制」、これは、上は経済産業省の資料ですが、トヨタが事例として紹介されているわけですけれども、例えば、フィリピンではトランスミッションをつくり、マレーシアではコンデンサーなどを含めた電子部品などをつくる、インドネシアはガソリンエンジン、タイなどではディーゼルエンジン、同時にまたタイでの組み立てを行っていくということで、日本からは高級部品を輸出し、組み立ての作業が行われる。こういう中で、幾つもの国にまたがって一つの有機的な工場としてまとまりがあるというのがこの姿だろうと思います。これはホンダなどでも同様のスキームになっていることと思います。これはまた家電製品などについても同様のことだと思っています。

 そういうときに、相手国の経済、産業にとってどうかという問題というのは当然出てまいります。ASEANの自動車産業というのが、もちろん日本などの多国籍企業の投資を受け入れることによって発展してきたわけですが、そうなりますと、そのために多国籍企業が東アジアの各拠点をどのように位置づけるかによってその国のポジションが決まってくると言われてくるわけであります。

 そこで伺いますが、ASEANのような途上国市場では、多国籍企業の個々の経営戦略が、その企業の経営戦略がこれらの国の産業に直接大きな影響を及ぼすことになるんじゃないのか。そういった場合に、本当の意味でウイン・ウインの関係というのが築けるんだろうか、そういうふうに思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 ASEANの国の、必ずしもすべてかどうかわかりませんが、ほとんどの国は基本的には市場経済ということで、そこで活動いたします企業も含めた民間の方々の意思を基本的には尊重するという、まず前提があると思います。ただし、国内のいろいろな経済への悪影響等々も配慮しながら、製造業、サービス業も含めました外国の事業規制につきましての規制法があることも、これまた事実でございます。

 そういうことがございますので、特に、日本、私ども交渉に当たる職員といたしましては、およそ外国を、日本を含めて、従来の協力関係等々の濃淡なく扱う規制法につきましても、場合によりましては自由化を求めるということがこの経済連携協定という中での課題になるわけでございますが、今塩川先生御指摘をされました、仮にそういった副作用的なことがあってはいけないということで、これは国家としてのいろいろな声を、上は総理から、現場は私どものレベルに至るまで、大変頻繁な、密接な意見交換、会議等をしております。例えば、経済産業大臣はASEANの十カ国のカウンターパートと、毎年一回でございますけれども、いろいろ日程をやりくりしていただきまして、日・ASEAN経済大臣会合、こういったものも既に長きにわたりまして定例化をしています。

 そういうことで、今御懸念のようなことがないように私どもは対応をしているというふうに考えております。

塩川委員 二年前の日・メキシコの際にも、マレーシアとの関係はどうかということを私の方でも問題提起しましたけれども、国民車構想の問題のように、当時のアブドラ首相なども、非常にセンシティブな問題ということで、それについてはわかってほしいということをお話しされていたということは報道などでも紹介をしたわけですけれども、今回、それが大きく転換をされたと言われております。

 そういう点では、マレーシア側の判断としてそういう転換は当然行われるわけですけれども、このEPAというのが相手国の経済や産業に大きな影響を与えるものだということについて、我々がそういう立場でしっかりとした検証を行っていくことが必要なんじゃないのかということを一つ申し上げたいということであります。

 もう一つは、日本の経済、産業にとってどうかということも、当然のことながらEPAにおいては考えなければなりません。

 二〇〇五年の通商白書でも、EPAが東アジア進出日系企業の活動にとって有する意義というところで、日系企業の東アジアにおける生産・流通ネットワークの広がりを考えれば、単に我が国と東アジア各国の二国間の関係のみならず、東アジア全体での経済統合といった視点が重要になる、これは、日本政府として自動車メーカーなどの経営戦略の展開を念頭に、東アジアの経済活力を効果的に取り込んでいくためには、EPA、東アジアの経済統合の一層の推進が必要だというふうに述べています。

 ここにあるのは、電気ですとか自動車のような日本の多国籍企業の進出、一つの工場を幾つもの国にまたがって動かしているような、こういう経済関係、生産工程の中で、電気とか自動車といった企業の利益というのが常に国益とイコールになるんだろうかということが同時に問われているんじゃないかと思うんです。

 つまり、ASEANでの生産の拡大が、国内においての例えば工場閉鎖につながるような問題が出てくる。ASEANへの進出、アジアへの進出というのが、その反映として日本の賃金水準を切り下げる圧力になる、あるいは下請単価を引き下げる圧力となっている、こういった形で日本経済と地域社会に多大なマイナスの影響も与えているんじゃないか。こういう検証も必要だと思うんですが、この点はどうでしょうか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本のいろいろな企業の海外進出、いろいろ節目節目はございますけれども、プラザ合意であるとかあるいは世界的な東西の壁の喪失とかそういう中で、まさにグローバルに、世界的な市場の中でいかに伸びていくかということを念頭に置いて、分業展開をしているところだと承知しております。

 最近も、今先生御指摘がございましたその通商白書、ことしもそれをただいま作成作業中でございますけれども、その作成作業のために日本の企業家の方に調査をいたしましたものがございまして、そういうものを拝見いたしますと、経営者は、何でもかんでも外国に作業を出すということでは必ずしもないようでございまして、作業の工程を、設計あるいは構想段階、さらには高度の試作品、部材づくり、あるいは組み立て、販売と幾つかの段階に分けまして、その製品なりサービスなりの一番競争力に直接根幹にかかわるところは海外にむしろ出さないんだ、こういうような答えが多く来ているわけでございます。

 したがいまして、世界的なシェアの中で生産の分配をどのようにするのが一番日本の人材を生かし、日本の技術力を生かし、そして効率的に外の市場にいかにアクセスしやすくするかという大きい視点からこれを考えているものだというふうに私どもは理解しつつあるところでございます。

 そういう意味で、私ども、特に御指摘があったようないわゆる副作用というようなものが生じませんように、これは通商政策だけではございませんで、中小企業政策、産業政策、さらには地域政策というようなこと、さらにはほかの省とも連携をいたしまして、政府一体となって、閣僚の御指導をいただいて取り組んでいきたいというふうに思っております。

塩川委員 最後に、大臣にお伺いしたいんですけれども、多国籍企業の利益と、その国の利益あるいはその国の国民の利益というのは、必ずしも一致しなくなっているんじゃないかという問題があると思うんですね。

 これは、一九九二年版の通商白書におきまして、当時、バブル崩壊で豊かさとは何なのかということが問われたときに、アメリカの実情を踏まえて、アメリカにおいて多国籍企業とその国の国民の利益というのが一致しなくなっているということを指摘した中身がございます。当時の通産大臣はどなたかと思いましたら、渡部恒三通産大臣でありまして、なかなか私も勉強させていただきました。

 ここにおきましては、アメリカの実態で、企業活動の国際展開とその国の競争力ということで、ある国の資本による企業の利益がその国民の利益と一致する度合いが減少しつつあるという指摘をし、第二に、国家の産業競争力がその国企業の産業競争力と厳密に一致しなくなっているという問題があると言われています。

 そういう点でも、私は、やはりその国、その国民の立場から、多国籍企業の国際展開につきまして一定のルールをきちっと設ける必要があるんじゃないのか、このことが問われていると思うんですけれども、大臣のお考えを聞かせていただいて、質問を終わりにしたいと思います。

二階国務大臣 多国籍企業の活動をそれぞれの政府の方でこれに対して縛るといいますか、行動を抑制するということは、これは今の時代にはとても不可能なことでありますが、おのずからそれぞれの国の発展してきた経過があるわけですから、このごろは国家よりも大きな企業が存在しているわけですから、それがむやみに、ある日突然国を選んで乗り込んできて、その国の産業、経済の秩序を混乱に陥れるというふうなことを、つまり、目に余るようなことになった場合に対しての対応ということ、これはまた国際社会で考えていかなくてはならないのではないか。

 ですから、国際的ないろいろな会議等におきまして、ただいまのような御意見は、今後問題提起をしていくチャンスをうかがいながら、各国の意見等も聞いてみたいと思っております。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

石田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

     ――――◇―――――

石田委員長 次に、内閣提出、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官荒木慶司君、農林水産省農村振興局企画部長宮本敏久君、経済産業省大臣官房商務流通審議官迎陽一君、中小企業庁長官望月晴文君及び国土交通省大臣官房審議官加藤利男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 本法案の採決の前の最後の時間をいただいて、民主党を代表して質問させていただきたいと思います。

 本日は、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案の話でありますが、三法を合わせてまちづくり三法ということでございますので、きょうは、そういった総体としても質問をさせていただきたいというふうに思いますし、これまでも審議を重ねていく中で、ある程度制度的な問題点とか技術的な問題点、そういった話も出ましたので、やや大所高所からお話をできればというふうに思っております。

 今回の法案は、これまでの中心市街地活性化対策がなかなか成果を上げられなかった、その失敗に対する反省に立った、そういった流れにあるというふうに思っておりますが、いろいろな失敗した原因はあるかというふうに思いますが、特に、中心市街地から郊外に向けて無秩序に、無計画に人口とか都市機能というものが流出してしまった。そしてその中で、中心市街地において人口の減少あるいは高齢化が高まってきたということが非常に大きな課題だというふうに思います。

 しかしながら、私は、大変基本的な話ではございますが、郊外に人口や都市機能が流出するというのは、ある意味ではそれぞれ各自が、住民とかあるいは商業の方とか経営者とか、そういった方が合理的な選択の結果として、郊外の方に行く方が合理的だ、そういう選択の結果だというふうに思います。

 もちろん、無計画あるいは無秩序に郊外に行くということは都市計画的な観点から余り望ましくないということは私も思いますが、考えてみたら、一国の都でも時代によっていろいろ変遷する。奈良にあったり京都にあったり東京に来たり、そういった中心というものが移動する部分もありますし、東京でも、繁華街でも、一時期は新宿が盛り上がっていたり次は渋谷だったり六本木だったり、いろいろと変遷をする。

 そして、実際にアメリカでも、郊外においてゲートシティーというものが多数できてきている。これ自体がいいか悪いかというのはいろいろ議論はあると思うんですが、そういったところで完結した共同体というものも実際にできて機能しているというふうに思いますし、日本においても、従来から多摩ニュータウンとか千里ニュータウンとか、そういったこともあるわけですよね。

 そういったことからいえば、我々は、経済産業委員会に携わる者として商店街というものを中心、対象として考えているわけでございますが、一般の人からしてみれば、なぜ中心市街地にそんな力を入れなければならないのか、税金やあるいは法律の規制をかけなければならないのかといった疑問が生じるのは自然だというふうに思いますので、ぜひそこの部分で、ある意味では郊外においてしっかりとしたまちづくりということも可能であるわけでございますから、そういったことを踏まえて、なぜ中心市街地なのかという御見解を伺いたいというふうに思います。

    〔委員長退席、上田委員長代理着席〕

加藤政府参考人 お答えいたします。

 これからのまちづくりに当たっては、今後の人口減少あるいは超高齢社会に対応するために、都市機能の無秩序な拡散を防止して、都市の既存ストックを有効活用したコンパクトなまちづくりを推進することが必要であるというふうに考えております。そのための拠点といたしまして、これまで公共交通ネットワークの拠点として整備され、また既存の都市ストックが確保されていて、地域の核としての歴史、文化を有している中心市街地が活性化されることが望ましいというふうに考えております。

 ただ一方で、地域によっては、先生御指摘のように、郊外に新たな拠点が既に形成されていたり、あるいは形成されつつあるというところもございます。そこを新たなまちづくりの拠点とするケースがあるということを否定するものではございません。

 いずれにいたしましても、これからのまちづくりは、地域が適切に判断をして都市機能の適正立地を確保する必要があるというふうに考えております。このため、今回の都市計画法の改正により、広域的に都市構造やインフラに大きな影響を与える大規模集客施設について、これまでの土地利用の原則を逆転させまして、一たん立地を制限した上で、立地する場合には都市計画の手続を経るということにいたしております。その過程を通じて、地域がどういう町がいいのか、どういう町をつくっていくことがふさわしいのかということをそれぞれお決めいただく、こういう制度に改めることとしたものでございます。

北神委員 中心市街地はいろいろな、もう既にインフラがそろっているとか文化的な蓄積があるとか、そういったお話だというふうに思います。ただ一方で、郊外というものも、既にあるところというのはそれは尊重していくという話だというふうに思います。

 どっちを選ぶかとかそういった単純な話ではないのかもしれませんが、国としてどういった地域でまちづくりを行っていくかという際に一つ重要な視点というのは、こういう財政の一番厳しい時代でありますから、そういった中で経済効率性というものもやはり考えていかなければならない。その際に、やはり新たにまちづくりをするためには、もちろん既に蓄積されている部分もあるかもしれませんが、上下水道をそろえたり道路整備をしたり整地をしたり、いろいろな一種公共事業的なこともしないといけない。そういった一種社会インフラの生活資本のコストというものが一方である。

 他方で、こういう考え方が適切なのかわかりませんが、投資をする市町村の側からしてみれば、そこから資本整備をして、投資をして、人が住んで、まちづくりが行われて、ある意味では見返りというものが、例えば固定資産税の税収とか、そういった部分があるというふうに思うんですね。これは余り極端に突き詰める必要はないと思うんですが、やはり財政が厳しい中でどういった地域が本当にまちづくりにふさわしいかという経済効率性的な観点からいえば、そういったことを考えなければならない。

 ただ、今、地区別に、地区といってもどんな範囲かというのはいろいろあると思いますが、まちづくりにふさわしい地区別に、固定資産税の税収の数字というのは多分大体わかると思うんです。社会資本、上下水道とか生活資本の整備の部分、こういったところのコストという部分を考えて、その二つを合わせて一種収支みたいなふうに考えて、そういったことを一つの指標として参考にする必要はあるんじゃないかというふうに思うんですが、その点について政府としてどうお考えか。そして、そういった指標が大事なんだったら公表することも考えられるのかということをあわせてお聞きしたいというふうに思います。

荒木政府参考人 お答えいたします。

 市町村がまちづくりを行いますための投資の際には、ただいまお話ございますように、費用対効果という観点からの検討は十分行う必要がある、大切であると考えております。

 地方自治法の規定には、御案内のとおり、その第二条におきまして、地方団体がその事務の処理に当たっては最少の経費で最大の効果を上げるようにという規定があるわけでございまして、これは地方自治運営の基本原則を示しておるわけで、今お話ございますような上下水道あるいは社会基盤整備全般につきまして、インフラ投資を行う際には、当然こういった基本原則にのっとってやることが必要かと思います。

 今お話ございました、それによります固定資産税の税収がどれだけということは、地域を区切って計算をするというのはなかなか難しい面があるかと思いますが、私ども財政運営等を指導する立場としましては、やはりこれらの投資を行う際に、議会の審議を通じまして、建設費あるいは特に将来の維持管理費等について十分情報提供をしまして、収支見通し等もよくお示しして十分な御審議をいただく。当然、それは市民、県民の方々にも情報が提供されるということになりますので、そういったことを通じまして、慎重に投資について御審議いただくというのが大事かと思います。

 また、当然、始まった事業について収支の状況等について、決算も毎年度行いますが、中長期の収支見通しについても情報公開等に努めていくことが大事であろうと考えております。

北神委員 ぜひそういった取り組みを進めていただきたいというふうに思いますし、できればそういう指標を、ある程度、もちろんいろいろな仮定を置かなければならないと思うんですけれども、地区別にそういう指標というものもあれば、市町村にとっても物すごい参考になると思うんですよね、ここだったら非常に固定資産税。というのは、結局、郊外に行くと固定資産税の税収というのは恐らく取れないというふうに私は直観的に思うんですね、数字がなかなかわからないからそういったことは検証できないんですが。今回の法案も、ある意味では、市町村にとって非常に財政的に厳しい、余り郊外に無秩序に流出してしまうと、そういうところにも上下水道とか敷かないといけない、そういうところにも道路整備をしないといけない、大変なことになるというふうに思うんですよね。

 そういった視点も多分背後にあるんじゃないかというふうに推測するわけでございますが、そういったことをはっきりさせるためにも、ぜひそういったことを検討していただきたいというふうに思います。

 もちろん私も郊外をおろそかにすることはよくないというふうに思います。郊外も郊外で尊重しないといけないと思いますが、先ほどお話がございましたように、文化的な側面、共同体的な側面、あるいは、さっき申し上げたようなコスト的な面でいっても、中心市街地というのがやはり一つの重要なまちづくりの拠点になるというふうに思うわけでございます。

 これは、もともとは商店街を活性化するという話で来たというふうに思うんですね。ただ、結局は商店街の補助だけではなかなか成果が上がらないということで、よりいいまちづくりをやらなければならない。そして、それは、究極はやはり共同体の復活を図らなければならないということだというふうに思うんです。これは、矮小化しようと思えば矮小化できる話で、商店街を活性化するためにちょこっと施設を呼び寄せて、多少人がふえたらいいな、あるいは通行人がふえたらいいな、そういったことももちろん一つの方向性だというふうに思うんですが、私はそれは非常にもったいないなと。

 というのは、この話は、そもそも大店法の規制緩和、アメリカの、はっきり言えば外交的な、通商政策的な圧力のもとで行われてきた話だというふうに思いますし、そういった中で、いわば自由化の一つの流れとして大店法の規制緩和というものが行われて、その結果、中心市街地の小規模の店舗というものがだんだん廃れてきた、商店街も廃れてきた。何よりも大事なのは、商店街をいわば中核とするような中心市街地の共同体というものが崩れつつある、あるいは崩壊しつつある、それが私は非常に大事だというふうに思っております。

 そういった意味で、この自由化の中で、自由化というのはしょせん裸の資本の論理であるわけでございますから、そこには価値観とか人情とか、あるいは思想とか道徳とかコミュニティーとか、そういったものはないわけですよね。この資本の論理によってそういったものが破壊されていっているのが、ある意味ではこの中心市街地の象徴的な問題だというふうに私はとらえているわけです。これは大げさと言われれば大げさかもしれませんが、私は、これは戦略的に考えることは非常に大事なことだというふうに思っております。

 やや歴史的な話になるかもしれませんが、そもそも一九三〇年代、大分前、昭和初期ですね、このときにも世界的な自由化路線というものがありました。その結果というか、その状況の中で大恐慌という事態が生じたわけでございますが、実は、そのときに各国がそれぞれ、自分たちの経済秩序のみならず、自分たちの文化とか生活様式、考え方、価値観、こういったものを守る、守らなければならない、そういった事態に直面したというふうに私は見ているんですね。

 その際に、ある国は国家共産主義をとってみたり、これは裸の資本に対する防衛なんですよ、ある国は国家社会主義、ナチズムとかそういった形態をとった。そして、アングロサクソンの国家はケインズ政策という、ある意味ではこれも国家管理主義的な経済政策というものをとって、それぞれが裸の自由主義路線に対して防衛対策をとったというふうにとらえるわけでございます。

 我が国においては、やや国家社会主義に近いところで、統制経済的な方法をとったというふうに思うんですね。これはまさに、経済産業省の親の親である商工省の岸信介大先生、この人が象徴するような革新官僚たちがこういった統制経済のシステムというものを戦時経済という要請の中でつくろうとした。

 そういった中で、皮肉なことに、戦時経済の要請でつくろうとしたわけでございますが、実際に完成を見たのが戦後であるわけですね。田中角栄のシステムだというふうによく言われるんですけれども、それは私は間違いだと思って、岸信介が最後に業界団体とかそういうものを全部整備して、今のいわば自民党の、小泉さんの前ぐらいの政治を支えてきた仕組みというのをつくったのが、私は、岸信介さんとかそういった経済産業省的な発想だというふうに思うんです。

 今の小泉さんがやろうとしている構造改革、あるいはアメリカの相当な影響力のもとで行われているこの自由化路線の中で、まさに野口悠紀雄先生なんかが言うのは、いわゆる四〇年体制ですか、この統制経済の仕組みというものがだんだんと突き崩されてきていると。そういった中で、共同体の崩壊とかそういったものが生じているわけでございます。

 私は、もちろん自由化路線、部分的にはこれは必要だというふうに思いますし、ある程度合わせていかなければならない。効率性のことも先ほど申し上げたように考えていかなければならないけれども、国の政治というものはそんなものが最終目的ではなくて、やはり国民の生命財産のみならず、私たちの生活のあり方とか文化とか感性とか、そういったところまで守るというのが私は政治の役割だというふうに思っているわけでございます。

 そういった中で、やや壮大な話になるんですが、まちづくりの話というのは、私はそういう観点でとらえなければならないというふうに思っているわけですね。むしろとらえた方がいいんじゃないかと。

 この裸の資本の論理の中で、地域的な弱者とか経済的な弱者とか、そういった人たちをどうやって救うのか。あるいは、共同体の中で、それこそ教育の、しつけの問題とか、そういったものがだんだんとひずみが入ってきている、そういったことをどうやって救っていくのか、救済していくのか、守っていくのか。私たちの文化をどうやって防衛していくのかということがこのまちづくりの一つの観点だというふうに思うわけでございます。

 したがって、今審議している法案は、これはこれでいいというふうに私も思うんですが、今後求められていることは、この方向性というものをより明確に力強く推進していくことではないかというふうに思っているわけでございます。

 そういった点について、経済産業大臣としてではなくて、むしろ一政治家として、県議も経験されて地域や地方を知り尽くされている二階さんの、私が今申し上げたようなことに対する見解というものをお伺いしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

二階国務大臣 ただいまるるお示しをいただきました文化的価値観、これをこれからのまちづくりの上においてしっかりと加味していかなくてはならないのではないか、そういう御意見であったかと思います。私もただいまの委員の御発言に対して大変共鳴を覚えながら伺っておりました。

 また、海外でよく、日本にお越しになった海外の首脳の皆さんの感想などを聞いてみますと、みんな京都がいい、こう言うんですね。なぜ京都がいいと言うのかということですが、やはり私は、今議員の御意見を聞いておりながら、歴史あるいは文化、そうした、他の地域の追随を許さないといいますか、まねすることができないような深みのようなものがそれぞれの地域にあるわけですね。京都のみならず、いろいろな地域にそういう町がある。

 このまちづくりというのは、法律も役に立った場合もあるかもしれませんが、私は、その地域に住む人々の文化的水準によって醸し出されてきた歴史の歩みであろうと思うわけです。このごろそれが改めて見直しが始まっておりまして、観光地づくりというと、すぐ何かきらきらしたものを設置して、そこに観光客を呼ぶというふうな、一時そのような風潮もなくはなかったんですが、近ごろはやはり、かつての歴史的なそれぞれの地域のものを掘り起こすといいますか、改めて再評価して、みんながそれに対して誇りを持って取り組んでいこうということが言われております。

 近ごろ、観光地でも成功している例は、やはりそうしたその地域特有のもの、言いかえれば文化であり、歴史であろうと思います。お示しのとおりでございます。そういうことに対して積極的に対応してきた、努力をしてきた地域が、今、観光として新たに花開こうとしているわけであると思います。

 ですから、これからの時代は、やはり文化ということに関しての改めて地域挙げての取り組み。今まで文化といいますと、すぐ、文化ホールをつくるとか、我々のところには演劇を楽しむような、そういう音響装置の整った劇場がないとかというようなことがよくどこの町でも言われたものでありますが、一通りそういうことが大体設置された今日、みんなが改めてこれからの時代に対して、町をどうしていくか、地域をどうしていくか、観光客を呼ぶためにどうするかということに対して立ちどまって考えるとすれば、私は、ただいま議員がおっしゃったようなことについて、お互いに、それぞれの地域の皆さんが、自分の足元をもう一度積極的に見直してみるということから生まれてくるのではないかと思っております。

    〔上田委員長代理退席、委員長着席〕

北神委員 ありがとうございます。

 おっしゃることも非常に私も思いを共有しておりまして、まさに地域の人々がそういった認識を持って自分たちでつくっていかなければならないし、国としても、行政としても、やはりそういった後押しをしていく必要もあるし、整備をしていく必要があるというふうに思いまして、今回の法案というのはそういった側面が非常に強いし、私はそこの部分を今後強めていかなければならないというふうに思っているわけです。

 具体的には、先ほどもお話がありましたように、実際にコンパクトシティーという理想が掲げられているわけですよね。ですから、商店街活性化の部分よりも、むしろ私は、都市計画的な側面というものをこれから強化していかなければならない、それがひいてはそういう商店街の活性化とか経済の活性化につながるというふうに思いますし、まさにそういう思いで皆さんもこの法案をつくられたというふうに思うわけでございます。

 そういった意味で、今回の法案は、その都市計画的な部分についていろいろ工夫もされている、例えば郊外に大店舗が流出しないように原則禁止にするとか、そういったこともしているし、逆に、流出してしまった公共公益施設とか住宅というものを呼び戻すためにいろいろな税制の優遇措置とかインセンティブづくりを用意している、そういった部分はよくわかるんです。それは非常に大事なことです。

 ただ、この都市計画をやる上で、都市計画の皆さんが一番よくわかっていることだというふうに思いますが、一番問題となるのは、そして日本においてなかなか都市計画というものが進んでこなかった最大の理由というのは、地権者との利害調整という部分だというふうに思います。やはり、住民の皆さんを説得する、彼らを巻き込んでいかなければ難しいと。

 私も司馬遼太郎の本を読み返したんですよ、「土地と日本人」というのかな、ちょっと忘れましたけれども。彼はふだん冷静な口調で語るんですけれども、この土地の問題になると非常に激高して、公有地にすべきだとか、そういった主張をされているんですよ。司馬遼太郎の趣旨というのは、やはり土地というのは単なる財産じゃない、公共の部分が非常に強いものだと。

 しかしながら、これは日本の昔からの歴史的な経緯なのかわかりませんが、あるいは田中角栄の列島改造からのいわゆる土地というものを投機の対象として見てしまう、そういった部分からきているのかわかりませんが、やはり地権者がなかなか協力をしないわけですよね。ごねればごねるほど後でもっとたくさんの補助をもらえる、そういった知恵みたいなものが身についてしまって、これが都市計画の古典的な問題であるわけでございます。

 そして、このまちづくりの法案の話も、そこの部分が、私が勉強した限りでは余り手当てされていない。そこを手当てしなければ、幾ら郊外への流出をとめても、幾ら税制の優遇措置で誘致をしようとしても、そこで本当にさっき申し上げたような共同体を復活するために、コンパクトシティーなるものをきちっとまじめにやるのであれば、本当はそこの部分を手当てしなければ絵にかいたもちになってしまうんじゃないかというふうに私は思うんですが、いかがでございましょうか。

加藤政府参考人 都市計画は、合理的な土地利用の実現を図るために、土地の権利に対して制限を行うというものであります。

 このため、都市計画の決定等に当たりましては、必要に応じた公聴会の開催ですとか都市計画の案の公告縦覧、それと住民の意見書の提出、第三者機関であります都市計画審議会の議決といった手続を経なければならないということにされております。

 御指摘のとおり、先生今おっしゃられたとおり、都市計画の決定に当たる現場では、こういう手続を踏んで個々の都市計画を決めていくわけでございますが、大変な労力を現場の第一線では使っているということが実態であります。ただ、実態でありますが、土地の権利に一定の制限を、都市計画の内容といたしまして地権者の方に制限を課すものである以上、地権者を含みます地域の住民の意見を反映させるために必要なものであると考えております。

 また、私どもとしては、こうした都市計画は、先ほども先生おっしゃられた、そのとおりでありますが、地域の労力を傾けて都市計画を決める、その都市計画を決めたものは、一つの言ってみれば地域の財産という意味合いも持つものでありますから、それはみんなで守っていただいて、いいまちづくりに貢献していただく、これが都市計画のねらいであるというふうに考えております。

北神委員 まさに、地域の財産であるわけですよね。ですから、都市計画というものは公共性の非常に高いことだと思うんですよ。

 しかし、今おっしゃられた手続の意義とか意味合いはよくわかるんですよ。ただ、それは教科書どおりの話でありまして、現実には、本当にこういうちゃんとした経済的な合理性のある土地の制約とかあるいは収用、収用まで入れれば収用というものがあって、そういう提案をしても、最後の最後までごねたり、あるいはなかなか協力をしない、そういった地権者がいるわけですよね。ですから、今おっしゃったようなことが本当に現実に行われるのであれば、実際、日本というのは、都市計画が先進諸国同様もう少し進められているはずなのに、なかなか進められないというのがそこの部分だというふうに思うんですよ。

 役所としてはなかなか答えにくいと。憲法の制約ももちろんあります、財産権の問題もあります、内閣法制局もにらみをきかせていると思います。しかし、この問題は、やはり本当にコンパクトシティーというものをやって、これが私が今申し上げていたように、一種、国家の一つの重要な戦略として位置づけるのであれば、私は高速道路をつくると同じぐらいの公共性の高いものだというふうに思うんですよ。

 そういった意味で、地権者を、もちろんできるだけそれは巻き込んで、今回の法案にあるように協議会の中に入れて、NPOの団体やいろいろな関係者といろいろ話し合って、一丸となってまちづくりを進めるということになればいいですけれども、そのぐらいの制度づくりだったら、やはり最後は、本人の意思によって変わる変わらないがあるんですよね。そうすると、やはりこういうものは、ある意味では、行政の権限の集中というんですか、私権をある程度制限するための権力というものが前提になるというふうにはっきり申し上げたいというふうに思うんですよ。

 そういった中で、これはあくまで提案ですが、例えば、地権者が理不尽に協力をなかなかしない、そしてほかの人たちは基本的には合意がなされていて、まちづくり、都市計画というものをこれでいこう、そして都市計画決定の手続を踏んでいこうというふうに決まっても、なかなか協力しないという地権者がいる場合に、そういった方に対して、課徴金とかペナルティーとかそういったものを科す。これは大変過激な話かもしれませんが、そういったことも多分私は先進国では行われているというふうに思うんですね。それじゃないと、ニューヨークなんかに行ってホテルの上から整然とした町並みを見て、私の友達が、これは相当な地上げをやったんだなというふうにコメントを漏らした友達もいましたが、やはりそのぐらいやっていると思うんですよ、公共の福祉の名前のもとで。そういったことは考えられないのかということをちょっとお聞きしたいというふうに思います。

加藤政府参考人 先ほども答弁させていただきましたが、都市計画は、土地の権利に対して必要な制限を行うというものでございますので、先ほども答弁させていただきましたが、都市計画の必要な手続を踏んで都市計画の内容を決めていただくということになっております。

 それで、今申し上げましたようなこうした手続を経て、地域の判断で都市計画の内容が決められるものでございますので、一方で、都市計画の実現のための手段としては、都市計画法でも、例えば、道路とか公園とかの施設決定ですとか、区画整理とか再開発といった市街地開発事業があるわけでございますが、その都市計画の内容を実現するために、今申し上げたような事業については、例えば道路ですとか都市公園などの都市計画事業については、事業認可を受けることにより収用権が付与されるということになっておりまして、その収用権に基づいて強制力を持った事業執行ができるということになっておりますし、また、公的主体が実施いたします土地区画整理事業や市街地再開発事業につきましても、事業の実施に当たって地権者の同意は法律上の要件とはされておりません。

 また、地権者が構成する組合による区画整理事業ですとか再開発事業につきましても、事業計画の決定等に際しまして地権者の三分の二以上の同意が必要とされておりますけれども、憲法が保障する私有財産権との関係から、当該要件の緩和につきましては非常に厳しい面があるというふうに考えております。

北神委員 手続があるのはよくよくわかっております。要するに、それをさらに踏み込めないかという話なんですね。

 これは、通告はなかったんですが、二階大臣、もういろいろ経験されていると思います。この土地の問題というのは最も大変な問題で、まちづくりをする上で一番ネックになるというふうに思うんですね。そして今、日本の場合は、成田でも紛争をまだしているがごとく、本当に土地に対しては非常に公共性というものがなかなか及ばない、及ぼすことができない、そういったジレンマがあって、しかしながら、今後、人口減少がある、財政も厳しい、そしてこの共同体というものを、先ほど申し上げたように、戦略的にもし復活しなければならないということであるならば、やはりここの部分に踏み込まなければなかなか厳しいというふうに思うんですね。ですから、そこは政治家としてどのようにお考えかということをお聞かせ願えればというふうに思います。

二階国務大臣 今、成田のお話が出ましたが、私も運輸政務次官などを経験したことがございます。もう随分以前のことで、たしか海部内閣であったかと思います。大野明運輸大臣のもとで、私は政務次官として現場にも再々赴いたこともございます。まさに命がけの交渉であったわけであります。そして、政務次官でただ一人、自分の自宅の方にも警備がつく、こういうふうな状況での生活でありました。これは私だけではなくて、その方の担当者の方々、これは、成田は少し他の例とは異なるわけではありますが、土地に対する問題、そしてお互いの、地域の皆さんの執念のようなものを感じながら、これは法律だけでは解決しないな、そういう問題もありました。

 そしてまた、今、公共事業問題が非常に関心が高まっておるところでありますが、道路などは、もう一息頑張れば開通できて他の地域も活用できるというような場面でも、最後のところがネックになって、そしてなかなか解決できない。そして、何とかかんとか言っておっても、最後のところは頑張った人が粘り勝ちみたいな例があるわけですね。多くの皆さんに迷惑をかけながら、その人が粘り勝ち。

 私は若いころ、議員からもお話出ましたから申し上げるんですが、地方で県会議員をやっておりましたときに、この県の中で用地買収ができなくて公共事業が滞っているようなところが何カ所あるかということを聞いたら、やはり九十カ所ぐらいあると言った。それから随分歳月がたっておりますが、今尋ねても、九十とは言わぬでしょうけれども、その半分ぐらい滞っている場所がある。私は、そういう地域は、これは和歌山県のみならずでありますが、工事を手控えるといいますか、地域の合意ができなければ、やはりそういうところはもうやらないというふうなことをきちっとやっていくこと、そして、法改正も含めて、国民的合意のもとにここのところを考えなければ、日本の都市づくり、まちづくりというものは進まないという問題点は、私は議員のおっしゃるとおりであろうと思います。

北神委員 率直な御答弁、ありがとうございます。まさにそういうことで、もう時間がございませんので、いろいろ提案もしたかったんですが、ぜひ土地の私有権の制限、私ももちろん、今大臣がいみじくもおっしゃったように、執念という言葉ですね、こういうものも確かにあるんですよ。そして、それは、先祖代々の土地だとか、あるいは農地解放の後に、土地というものは何とか守らなければならない、そういった意識もある一方で、単なる財産として長く持って、景気が回復すれば、それを売ればたくさんお金が入るとか、そういった部分とか、いろいろこの問題は根深い、そして総合的に検討しなければならないというふうに思います。

 最後に大臣に御質問したいのは、今おっしゃっていたように、この法案というのは単なる商店街の補助の話ではなくて、やはり、私たちの文化とかコミュニティーを守るための一つの重要なきっかけになり得る話だというふうに思いますので、ぜひとも、経済産業省、国土交通省だけじゃなくて、文化人とか経済人とか都市計画の専門家とか、あるいは思想家とか宗教関係の人とか歴史家とか、そういったものを含めて、今示されている、今兆候としてある流れというものをさらに力強く進めていきたいというふうに思いますし、具体的には、審議会なのか知りませんが、そういった場というものをつくっていく、これは大臣がやられるのかどうかわかりませんが、そういう提案を例えば内閣でしていくとか、そういったことをぜひお願いしたいというふうに思うんですが、その辺、お考えはいかがでしょうか。

二階国務大臣 私も先ほどから御質問をお伺いしながら考えておったわけでありますが、おっしゃるように、文化人であるとか芸術家とか歴史家、それぞれ地域にも立派な方々が多くいらっしゃるわけであります。そうした方々の経験や知見をやはりまちづくりに生かしていくということは大変重要なことでありますから、ただいま法律で提起しております協議会等につきましては、これはこれで、もうしっかり取り組んでおる地域もおられるようでありますから、今考えておられるとおりお進めいただくことにして、国全体としてこうした問題に対して経済産業省が意見を尋ねられれば、そういうことに明確にお答えすることができる、方針を示すことができるような、そういう審議会という形をとるか、もう少し柔らかい形でも、しっかりと現実に対応できるようなことを考えていくべきではないかと思っておりますので、総合的にそうした専門家のアドバイザーを集めるなどというようなことを考えてみたいと思います。

北神委員 ありがとうございます。

 これで終わりにしたいというふうに思いますが、せっかく今回の法案でも地域活性化の協議会がありまして、そこに今度はNPOとか地権者とかいろいろ巻き込んで、恐らく現場の意見としていろいろ出てくると思うんですね。そういった具体的な意見と、さっき申し上げた大所高所の意見とをあわせて検討すれば、そしてそういう方向性を打ち出していただければ大変ありがたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

石田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 中心市街地活性化法の改正案について質問をいたします。

 これまでに活性化法に基づきまして基本計画を策定した自治体は六百十自治体、地区にしますと六百八十七地区に上ります。これまでさまざまな取り組みを実施してまいりました。しかしながら、今回の改正案では、この現行法に基づく中心市街地活性化計画は効力を失うことになります。改正法の支援対象は国の認定を受けた中心市街地活性化計画に限られることになります。

 そこで、最初に大臣に伺いますが、なぜ国が基本計画を認定するというスキームをつくるのか。これまでのように計画をつくったところにしっかりと支援をするというやり方を変えて、なぜ国が認定をするのか。この点についての基本的な方向についてお示しください。

二階国務大臣 今回の見直しは、国の限られた政策資源を有効活用して、中心市街地の活性化に最大限の成果を上げていこうという、かなり意欲的な取り組みであります。実効性が高い地域の熱心な取り組みに対して集中的に国が支援をしてまいりたいと考えておるものであります。したがって、改正法案では、市町村が策定する基本計画について、その実効性を国が十分判断を下し、その上、内閣総理大臣が認定することとしておるわけであります。

 これによりまして、地域の方々が協力し合って町全体を活性化するという意欲的な取り組み、そして、私ども各省が一丸となって集中的に支援することができるという考えに基づいたわけでありますが、今度は、たびたび私も今度こそという言葉を使わせていただきましたが、成功に導くことができるように真剣な取り組みを行ってまいりたい。

 先般も、経済産業省の出先の局長会議等におきましても、今度、それぞれの地域で認定を受けた地元の協議会、成果が上がるように積極的なバックアップをしようということを申し上げておるところであります。

塩川委員 でも、従来の計画は一度御破算になるわけであります。もちろん、商業活性化と市街地整備、有機的な機能を図る、町中居住の推進なども行っていく、そういう一体的なものとして進めるというのはわかるわけですけれども、少なくとも今までの努力については、これは御破算ですよということを行って、新たに国が認定をしますという点については、私、これまでの努力を否定することになるんじゃないのかなと率直に思うわけです。

 何でこんなことを行うのか、これまでの努力を御破算にするようなことでいいのかということが問われていると思うんですが、その点はいかがなんでしょうか。

迎政府参考人 まさに今まで、旧法下で基本計画をいろいろつくって取り組まれたというふうなことがあるわけでございますけれども、ただ、これまでの法律の施行の実態を見て、必ずしも全部うまくいっているわけではないと。したがって、認定の基準というふうなものを設けて、やはり今までつくっていた計画をさらにレベルアップをしていただいてきちっと目標を決めるとか、あるいは、先ほど来御議論あるように、地権者と事業者が全く別方向を向いているようなところは支援をしてもなかなか成果が上がらない、全体の地域が関係者ぐるみで取り組むようなところとか、そういったところに集中的に支援をしていくということにする必要があるのではないかということで、今回、認定という制度を設けたものでございます。

 したがいまして、今まで基本計画をつくっていろいろ考えておられた方は、さらにそれをベースに、認定を受けられるしっかりした計画をつくって、支援を受けてやっていっていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。

塩川委員 これまでの計画は全部うまくいっているわけではないんだと。当然、幾つかの要因も述べられましたけれども、私、そこで、なぜうまくいかなかったかという要因、根拠というのをしっかり踏まえることが必要だと思うんですよ。

 私は、うまくいかなかったとすれば、その一番の、最大の要因というのは、郊外の大型店立地を野放しにしてきたこと、郊外の大型店立地について野放しにしてきた国の責任が一番の問題なんじゃないでしょうか。ですから、国が大型店の郊外出店を放置してきたことが問われているのに、自治体の計画が悪いかのように言われるのは、これは逆立ちしているんじゃないですか。いかがですか。

迎政府参考人 郊外の大規模集客施設の立地についてどういうふうな制度をとるかという点については、今回、三法の見直しの中で一つ都市計画法の改正というのが行われたわけでございますけれども、要因はそれだけではないというふうに思っておりまして、それも一つの要因ではあろうかと思いますけれども、やはり、住宅も含め、あるいは都市機能の中心市街地への集積というふうな視点が必ずしも今までの中活法では十分に盛り込まれていなかったし、基本計画の中でも十分に考えられていなかったのではないか。

 それから、商業の活性化の取り組みだけではなくて、地権者ですとかNPOですとか、あるいはいろいろな、ディベロッパーですとか、関係者全体で取り組むというふうな体制づくりみたいなものが必ずしも十分に行われていなかったとか、そういうふうなことで、郊外の大規模集客施設の立地についての制度のあり方というのは、これは関係ないとは言いません、まさに、であるからこそ三法の見直しの中で今度改正が行われているわけですけれども、ただ、やはり市町村の取り組み自体についても十分なものではなかったし、それを促す仕組みにはなっていなかったというふうなことだろうと思います。

塩川委員 ですから、今回のまちづくり法の見直しの一番のポイントというのは、都市計画法において百八十度転換するということを国交省はずっと強調してまいりました。そういう点では、大型店などについての出店を原則可能から原則規制にするんだというのが大きな売りであるわけで、そこに国としての反省も込められているわけです。

 そういうときに、国の反省を前提に行われた法改正のときに、いや、地方の取り組みがいま一つだから国がじゃ判断しましょうというのは、逆立ちしているんじゃないですかと率直に思います。

 その上で、今回、認定というのは、当然のことながら選択と集中をするために認定をする、絞り込むために認定を行うわけですよ。今までのやり方について、国は、やり方がまずかったということで都市計画法を変えたわけですから。だけれども、今後は、大いに本当に地方の自主性を尊重して、自主的な計画を大いに国の方が応援をする従来のやり方でもいいじゃないですか。何で絞り込む必要があるんですか。何でふるいにかけて、外すところなんかつくる必要があるんですか。お答えください。

迎政府参考人 そこは、るる申し上げておりますように、地方の計画といえども、きちっとした明確な目標が掲げられていないとか、あるいは町の中の関係者のきちっとしたコンセンサスができていないとか、あるいは、計画の中身を見ても、先ほど申し上げましたように、都市機能の集中というふうな、集積みたいな視点とそれからにぎわいの回復みたいなのが、必ずしも、一体的に取り組むとか整合的に取り組むというふうなものになっていないとか、これでは効果が上がらないというふうなものもあるわけでございますので、そこは今回、とにかくそうしたトータルな計画として立派なものについて認定を行って、なおかつ、これは政府の側におきましても、各省がばらばらに支援をするということではなくて、認定を受けたものについては全省庁そろって支援をするという仕組みをつくることによって、やはり、中心市街地の活性化、全般的に言えばうまくいっていないところが多いわけですけれども、逆に、そうした成功事例みたいなものがきちっと目に見える形でできてくることが、その他の地域にとっても、これは一つの経験、成功事例というものが示されていくわけでございますので、そうしたものを見習ってよそも取り組んでいただくというふうなことで進めていくことがうまくいくゆえんだろう、こういうふうに考えております。

塩川委員 計画にいろいろふぐあいがあるのであれば、それはチェックすればいいんですよ。それを、認定して、ふるいにかける。チェックをして、その部分を直してくださいねと返して、もう一回出してもらえばいいじゃないですか。それを、外すところをつくるわけでしょう。そういう考えで、選択と集中になっているわけですよ。

 もともと、それぞれの町にはそれぞれの顔があって、それぞれの町の人にとってみれば、その商店街、中心市街地が唯一のものと言えるわけで、それを国の方が上から認定する、ふるいにかけるやり方自身が、まちづくりにそぐわないと率直に思います。

 先日の参考人質疑でも、服部参考人が、認定された地域だけではなく、認定に向けて取り組み、努力している地域に対して支援をと述べておりました。圧倒的多数の中心市街地や商店街が支援の枠組みから外れるようなこういうやり方では、本当の意味で、我が国全体の経済の発展、商業の振興につながらないと率直に思うわけです。

 その上で、先ほども取り上げました都市計画法の改正に当たりまして、少し具体的な事例に沿ってお聞きをしたいと思っています。

 郊外への大型店出店、原則可能から原則規制へと百八十度転換したわけですけれども、しかしながら、現場では、ここ数年の規制緩和路線によって、どちらかというと、今回の法改正の趣旨と逆方向に大分一生懸命走っているような状況というのが生まれているわけであります。

 例えば、埼玉県の富士見市というところでシティーゾーン計画というのがありまして、農業振興地域で市街化調整区域であります。三井不動産が、敷地面積十七万平米、店舗面積八万二千平米の大規模集客施設を計画しております。埼玉県では、都市計画法の三十四条八号の四の規定を使って、大規模商業施設の建設も可能とする制度を定めておりました。このシティーゾーン計画について、富士見市は、この都市計画法三十四条八号の四の区域指定を行い、商業施設を誘致し、富士見市の商業の活性化を図ると説明をしております。

 そこで、国土交通省にお聞きしますが、簡潔で結構ですが、この八号の四規定の概要を御説明いただいて、この八号の四規定というのは、大規模商業施設というのをそもそも対象としているのか、その点をお伺いしたいと思います。

加藤政府参考人 お尋ねの都市計画法の第三十四条八号の四でございますが、これは、「開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる」という第三十四条十号ロの基準に該当する開発行為のうち、許可の実績が積み重なっていること等から、個別に開発審査会の議を経ずに定型的に許可して差し支えないものとして、あらかじめ開発許可権者が区域、目的または予定される建築物等の用途を条例で定めたものについては、開発許可をすることができるとする規定でございます。いわば、手続の合理化を図っているということでございます。

 そのときにどういう用途があるかということでございますが、例といたしまして、用途としては、農家の分家住宅等、許可件数が毎年相当数に上るものを条例で定めるということを想定いたしております。また、区域指定といたしましては、実際に区域指定を行っている条例の多くが、市街化調整区域に既に存する大規模な既存集落を指定し、当該区域内における自己用の住宅等の建築は認める等の内容となっております。

 開発許可に係る事務は自治事務ということとされているところでございますが、大規模商業施設については、広域的に多くの集客をする施設であることから、冒頭申し述べましたが、「開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当」なものとして、定型的に認められるものとは想定していないところでございます。

塩川委員 八号の四規定では、大規模商業施設は想定されていないということであります。

 その点で、埼玉県では、国の都市計画法の改正をいわば先取りする形で、今回、この八号の四規定に係る規則、条例に基づく規則を改正いたしました。この埼玉県の規則の改正点はどのような内容なのかを御紹介ください。

加藤政府参考人 埼玉県では、平成十五年に都市計画法三十四条八号の四の規定による開発行為を定める条例を制定いたしております。

 その中で、「地方自治法第二条第四項に規定する基本構想に基づいて市町村が策定した土地利用に関する計画に即して知事が市町村長の申出により予定建築物の用途を限り指定した土地の区域において、当該指定に適合した建築物を建築する目的で行う開発行為」が規定されておりまして、予定建築物の用途としては産業系が想定されていたというふうに聞いております。

 御指摘のように、本年二月でございますが、まちづくり三法改正案が閣議決定されたこと等を踏まえまして、埼玉県において条例の施行規則を改正いたしております。その際に、市町村の申し出による区域指定に係る開発行為について、まず第一点目が、区域指定面積を原則として二十ヘクタール未満とすること、二つ目が、予定建築物の用途を、流通業務施設、工業施設または商業施設というふうに明確にした上で、商業施設には店舗面積三千平米以上のものを含まないこととしたということでございます。

 そういうことの内容でもって改正したというふうに聞いております。

塩川委員 このシティーゾーン計画の場合は八万二千平米ですから、三千平米のものは含まないとなると、これはもう対象とならないわけですけれども。

 これは実際に、八の四規定に関しては、埼玉県の開発許可権限にかかわる部分が変更されたわけですけれども、県の事務処理特例条例に基づいて権限移譲しているような自治体、この該当の埼玉県富士見市などもそうです、この場合ですとか、法律で権限を有するような政令市や特例市などに対しては、この八の四規定の趣旨、今回の法改正の趣旨にものっとって、国としてはどのように対応されるのかをお聞きしたいと思います。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 今回の都市計画法等の改正内容及びそれを踏まえました開発許可制度等の運用面で留意すべき事項については、今後、地方公共団体に対しまして、運用指針等で徹底してまいる所存であります。

 その際、地方自治法の規定に基づきまして、都道府県の権限に属する開発許可関係の事務を処理することとされております市町村に対しても、都道府県を通じまして、運用指針の内容が徹底されるようにしてまいりたいと考えております。

塩川委員 あわせて、ここは農業振興地域に当たるわけですけれども、農水省に伺います。

 この委員会の答弁の中で、今回の都市計画法の見直しに合わせて、農業振興地域制度及び農地転用許可制度の適正かつ厳格な運用を進めるとありましたが、具体的にどのような取り組みを行うのかをお答えください。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省といたしましては、国民に対する食料の安定供給を確保する上で、優良農地を良好な状態で確保することが極めて重要であるというふうに考えているところでございます。このため、集団的農地や基盤整備の対象農地など優良農地につきましては、農用地区域として定めまして、農地転用を原則として認めないこととし、計画的な土地利用の推進に努めてきたところでございます。

 また、昨年九月には、農業振興地域の整備に関する法律が改正されまして、農用地区域を定める農業振興地域整備計画の変更に際しまして地域住民の意見を聞くという仕組みが創設されたところでございまして、手続の公正性、透明性の一層の向上を図ったところでございます。

 また、今回、都市計画法の見直しが行われるということになるわけでございますが、これに合わせまして、農業振興地域制度及び農地転用許可制度の適正かつ厳格な運用を図ることといたしております。

 具体的には、まず、農用地区域からの除外あるいは転用許可に当たりまして、他に代替すべき土地がないか、こういうことにつきまして一層の精査をしていただく。それから、都市計画法等他法令との密接な連携を徹底していただく。あるいは、公共施設の整備のための農地転用を行うに当たっての農業上の土地利用との調整を徹底していただく。

 これらにつきまして、ガイドライン等により都道府県等に周知してまいることを考えているところでございまして、改正されます都市計画制度との連携を図りながら、優良農地の確保に努めてまいる所存であります。

塩川委員 地方の現場が混乱、苦労しているというのも国の政策の反映でもありますから、この点についてのふさわしい趣旨の徹底をお願いしたいと思います。

 終わります。

石田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案について、反対討論を行います。

 本法案はまちづくり三法を見直すとして提案されたものですが、そうであるならば、三法がなぜ機能せず、全国の中心市街地が寂れていったのかが明らかにされなければなりません。今や、三法失敗の根本原因が大型店の出店を野放しにしてきた規制緩和路線にあることは、だれの目にも明らかです。まずは政府自身が失政の責任を認めるべきであります。

 反対理由の第一は、本法案が、内閣総理大臣が地方自治体の作成した基本計画を認定する選別の仕組みを導入し、支援対象を認定計画に特化しようとしていることです。

 自分たちの町は自分たちでつくる、これがまちづくりの基本です。これまで中心市街地活性化法のもとで、全国六百を超える自治体で、創意工夫を凝らしたさまざまな取り組みが行われてきました。住民や商業者などのまちづくりの思いを生かそうとするならば、その取り組みを広く支援すべきです。支援する対象を国が選別し、それ以外は切り捨てる仕組みを盛り込むこと自体、本末転倒であります。圧倒的多数の中心市街地、商店街を支援の枠組みから外すようなやり方では、我が国経済全体の発展に資するものとはなりません。

 反対理由の第二は、中心市街地に大型店を誘導するために導入される大店立地特例区域が、大型店の出店に際しての住民、自治体の意見表明権を奪うものだからです。

 この仕組みは、これまで構造改革特区で限定的に行われていたものを、さらに規制緩和した上で、全国展開しようとするものです。しかし、質疑でも明らかになったように、特区による弊害はいまだ検証されていません。経済産業省自身、この事例だけで将来にわたり弊害が発生しないと決断できるかというと苦しいと認めています。それにもかかわらず、大型店に対し、周辺の生活環境の保持という当たり前の責任すら不問にし、実質的に大店立地法を骨抜きにすることは、断じて容認できません。

 日本共産党は、住民本位のまちづくりを進めるために、地方自治体が大型店に対する独自の規制を行うことを禁止した大店立地法十三条の撤廃など、抜本改正に今後とも全力で取り組むことを表明して、反対討論といたします。

石田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、増原義剛君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議(案)

  平成十年の「まちづくり三法」の制定以降の状況変化を踏まえ、全国の中心市街地が、地域における社会的、経済的及び文化的活動の拠点として、住民にとって住みやすく、かつ、にぎわいあふれる「まち」として真に活性化することが求められていることに鑑み、政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。

 一 施策の実施に当たっては、商業の振興やインフラ整備のみにとどまらず、交通体系や生活環境整備等を含めた総合的な取組みが実現できるよう、中心市街地活性化本部に十分な体制を構築し、関係府省が一体となって活性化策を実施すること。

 二 基本計画の認定基準の作成に当たっては第三者の意見を聞くことなどに努め、できる限り早期に具体化し公表すること。また、計画の認定に当たっては、プロセスの客観性、透明性を確保するとともに、計画実施に当たり適切なフォローアップにも配慮すること。

 三 従来の施策を厳格に点検・評価し、真に効果のある中心市街地活性化策の実施に注力していくとともに、今後の事業予算の効率的な執行に努めること。その際、それぞれ固有の課題を抱え、それに応じた対応策を必要とする全国の中心市街地に対し、各地の取組みの実例等、幅広い情報の提供に努めるとともに、可能な限り多くの支援の機会が与えられるよう留意すること。

 四 画一的にならず、地域の特性を最大限尊重したまちづくりを実現するため、「中心市街地活性化協議会」に住民の代表をまじえるなど、まちづくりに幅広い関係者の参画を確保するよう促すこととし、企画力や指導力に優れたリーダーのみならず、地域のまちづくり能力向上に資する多様な人材の発掘・育成を促進するための適切な支援措置を講じること。

 五 コンパクトなまちの形成を目指した新しいまちづくりの理念を実現するため、中心市街地活性化策と都市計画等におけるゾーニングとの運用面での整合性を図るとともに、地域の協力体制を確保するため、広く関係者の理解が得られるよう、十分な説明責任を果たすこと。

 六 改正後の法律第六条の「事業者の責務」を具体化する観点から、地権者が空き店舗対策などまちづくりに積極的に協力するよう求めること。また、地域の事業者が、退店・撤退時の対応などについて、自らの社会的責任の一環として自主的に取り組むよう求めること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

石田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、二階経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。二階経済産業大臣。

二階国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

     ――――◇―――――

石田委員長 次に、内閣提出、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案につきましては、先ほど質疑を終局いたしております。

 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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