衆議院

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第19号 平成18年5月26日(金曜日)

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平成十八年五月二十六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 石田 祝稔君

   理事 今井  宏君 理事 新藤 義孝君

   理事 平田 耕一君 理事 増原 義剛君

   理事 吉川 貴盛君 理事 近藤 洋介君

   理事 達増 拓也君 理事 桝屋 敬悟君

      江崎洋一郎君    小此木八郎君

      大塚  拓君    岡部 英明君

      片山さつき君    北川 知克君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    塩谷  立君

      平  将明君    長崎幸太郎君

      野田  毅君    橋本  岳君

      早川 忠孝君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    武藤 容治君

      望月 義夫君    森  英介君

      山本 明彦君    川端 達夫君

      吉良 州司君    北神 圭朗君

      佐々木隆博君    野田 佳彦君

      松原  仁君    三谷 光男君

      高木 陽介君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   経済産業副大臣      西野あきら君

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大辻 義弘君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            石毛 博行君

   政府参考人

   (特許庁長官)      中嶋  誠君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    野澤 隆寛君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十六日

 辞任         補欠選任

  松島みどり君     大塚  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     江崎洋一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     松島みどり君

    ―――――――――――――

五月二十四日

 新聞の特殊指定堅持に関する請願(木村勉君紹介)(第二二〇三号)

 同(田中良生君紹介)(第二二〇四号)

 同(平沢勝栄君紹介)(第二二〇五号)

 同(三ッ林隆志君紹介)(第二二〇六号)

 同(臼井日出男君紹介)(第二二二九号)

 同(菅直人君紹介)(第二二六一号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第二二六二号)

 同(西川公也君紹介)(第二二六三号)

 同(細川律夫君紹介)(第二三四二号)

 同(松島みどり君紹介)(第二三四三号)

 同(宮下一郎君紹介)(第二三四四号)

 同(山口泰明君紹介)(第二三四五号)

 太平洋パイプライン計画への日本の協力・融資に関する請願(近藤昭一君紹介)(第二二二八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 意匠法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、意匠法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省行政管理局長藤井昭夫君、経済産業省大臣官房審議官大辻義弘君、経済産業省製造産業局長石毛博行君、特許庁長官中嶋誠君及び特許庁総務部長野澤隆寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 おはようございます。自由民主党の牧原でございます。

 前回の質問、工業所有権情報・研修館法、この一部改正に引き続きまして、御質問の機会をいただきました。本当にありがとうございます。

 さて、二回連続にわたって私が質問の機会をいただきましたいわゆる知的所有権という分野、これは私は、この間も繰り返しましたが、大変重要な分野である、このことはだれも異論がないものと思っております。

 厳しくなる国際競争の中、技術の発展は本当に日進月歩という状況です。そして、アジア、ほかの国がどんどん追いついてきている。そうした中、日本としては、とにかく技術を発展させ、そして高付加価値のものをどんどん生み出していき、その技術を確保していく、そうしたことが必要になってくるわけでございます。そして、我が国は少子化の時代を迎えております。労働者はどんどん少なくなっていく中、ますますこうした高度な技術に基づく産業を軸にしていかなければならない、そうした認識でございます。

 こうした思い、実は、私が弁護士になった一九九七年のころはまだ夜明けの時代でした。多くの課題が残っており、そして、いろいろなものが整備、必要だと言われておりました。そうした中、その後十年かけて、大分政府の方もいろいろな制度を充実させていただいた。

 そうした中で、本件のこの意匠法等の改正があるわけでございますが、本件の一部改正は、そうした流れの中でどのように位置づけられるのでしょうか。本件改正に当たっての政府の決意、そうしたものをまずお伺いしたいというふうに思います。

二階国務大臣 答弁に先立ちまして、先般、この経済産業委員会の皆様におかれては、一昨日でございますか、特許庁を御視察いただいたということを伺っておりまして、大変ありがとうございました。そうした御理解をちょうだいしながら、私どもも、今日の知的財産権の問題等を円満に進めていくためにいかにすべきか、懸命の努力をさせていただきたいと考えております。

 ただいまのお尋ねでありますが、特に、今牧原委員がお述べになりました新しい技術開発等は私も極めて重要と考え、先般出張させていただきましたOECDの閣僚会議におきましても、このことを特に強く我が国として主張してまいりました。

 特に、我が国産業の国際競争力の強化のためには知的財産政策の推進が極めて重要であるということは、委員が既に御承知のとおりであります。このため、今回の法案では、国際的な制度の調和の観点を当然踏まえながら、知的財産権の保護強化や模倣品対策の強化を図ることとしております。

 現在取りまとめ中の新経済成長戦略におきましても、知的財産政策を重要な政策の一つとして位置づけ、特許審査の迅速化、これは牧原委員も御承知のとおり、今日までだんだんとその方向に向けて、経済産業省も特許庁を中心として努力をしているところでありますが、これはやはり、我が国の経済の大いなる発展のために、特許審査の迅速化ということは極めて重大な視点だと思っておりますので、あらゆる方策を講じて、真剣に取り組んでまいりたいと思っております。

 また、この四月には、特許権や意匠権等を戦略的に活用している企業を広く紹介するために、先般当委員会にもお配りさせていただきました「産業財産権の活用企業百選」を公表させていただきました。

 このようにして、今後とも、知的財産の適切な保護と活用の実現に向けて、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、いつも問題といいますか、話題になっております中国との関係でありますが、近く中国との間で、省エネ、そして環境フォーラム、これを開催することになっておりますから、当然、中国の首脳部とバイの会談も予定されておりますので、私は、この席におきまして、先般中国に伺いましたときにもこのことを強く主張してまいりましたが、今回、その後の取り組み等につきましてもさらにお尋ねをすると同時に、我が方が協力すべきところ、協力できるところは大いに協力をしながら、ともにこの問題に取り組んでいく、そういう決意を持っております。

牧原委員 ありがとうございました。

 引き続き、二階大臣の強いリーダーシップをお願いしたいというふうに思います。

 さて、今回の改正のメーンポイントである意匠ですけれども、これは英語でデザインと言われているものですが、若干、一般的には誤解を与えがちであると言われております。つまり、デザイン、意匠というと、何となくややファッションブランド的な印象を与えてしまいますが、この意匠というもの、知的財産権の中、そして我が国の産業戦略の中の位置づけでは、むしろ製造産業において大きな意味を持つというふうに考えております。

 本日お配りしました資料一でございますが、実際に意匠と言われているものの出願件数別に表にさせていただいております。圧倒的に多いのが、実は携帯電話やテレビ等の電気機器です。それから、洗濯機・冷蔵庫は第四位に入ってきておりますし、時計・カメラなども入ってきています。自動車・バイクなども入ってきているわけでございます。いわゆるファッションブランドと言われているようなものは、靴・かばんが八位ぐらいに入ってきておりますが、なかなかそういうものではないというふうにこの件数からは見えるわけでございます。

 こうした意匠の我が国における、産業における意味あるいは位置づけにつきまして、この表をお配りさせていただきましたが、政府の方からも具体例を引きながら御説明をいただけますでしょうか。

中嶋政府参考人 近年、特許庁に出願されます意匠登録の出願、今委員御指摘ございましたように、携帯電話などの通信機器の分野など家電製品を中心にいたしまして、年間約四万件でおおむね安定的に推移をしております。これらのうち、意匠の審査官による審査を経て、約四分の三程度が意匠権として登録されております。登録されたものは平均七年間維持されておりますけれども、最近は長いものも少なくございませんで、全体の約一六%が現在の最長の期間であります十五年間維持されております。

 特に、近年、デザインにすぐれた商品の開発を通じて競争力の強化を目指す企業の活力が一層注目されておりまして、他方では、アジアにおける模倣品被害の拡大が見られるといった中で、企業においては、意匠権によってデザインの保護を図ることが重視されていると思っております。

 したがいまして、こうしたデザインにつきまして、新経済成長戦略におきましても、五つの横断的施策のうちの「ワザ」の部分、つまり、技術のイノベーションの一環として、デザイン保護戦略の主要なツールとして意匠権を位置づけるというふうに考えております。

 したがって、特許庁としては、今後とも、ユーザーのニーズに的確にこたえた制度の整備、あるいは一層迅速な審査に全力を挙げることによりまして、我が国の産業のデザインにおける競争力の強化に資していきたいと思っております。

牧原委員 ありがとうございます。

 本件の意匠法の改正の中で重要なものの一つが、保護対象の拡大です。情報家電等の操作画面などに拡大されているわけでございます。

 実は、知的所有権の保護というのは、各国でやや差があるわけでございます。今回の改正前には、日本はこうしたものが保護されてなかったわけですけれども、他の国においては保護されていた国もあった。そうした違いというのは、実は、国際競争の戦略的な意味では重要な意味を持つわけでございます。私は国際的な訴訟もやっておりましたが、一般的なものとして不正競争防止法もありますけれども、知的所有権で保護されるか保護されないかで立証責任の重さが全然違うし、それから国際的な意味も全然違ってきてしまうということになります。

 このような場合におきまして、つまり、日本が守らなきゃいけない場合には保護範囲は一般的に広い方が得、そして攻められる場合には狭い方が得というふうに考えられるわけですけれども、この点、我が国として、本件改正に関しましてもどういう戦略で考えていらっしゃるのか、お答えください。

中嶋政府参考人 今御指摘ございましたように、特に日本が得意といたします情報家電の分野では操作を画面で行う製品が増加しておりまして、産業界におきましても、こうした画面デザインを工夫するということで自社の製品を差別化する傾向にございます。

 現行の意匠法においては、限定的に、つまり機器の初期画面あるいは機器の使用に必要不可欠な画像のデザインに保護対象が限定されておりまして、情報家電の画面デザインの模倣が適切に排除できていない、あるいは企業の画面デザインの創作への投資が十分守られていないといった指摘がございました。

 他方で、ヨーロッパにおきましては、欧州共同体の意匠規則ということで、画面に表示されたグラフィック・ユーザー・インターフェースあるいはアイコン、つまり操作のための指示の画面や記号化した図形そのものを意匠の一類型として幅広く保護しております。アメリカにおきましては、グラフィック・ユーザー・インターフェースとかアイコンを表示した画面を物品または物品の一部として保護しております。

 したがいまして、今回、国際的には必ずしも統一されていないわけですけれども、産業構造審議会の意匠制度小委員会で、産業界における保護の必要性あるいは諸外国の制度を踏まえて御議論いただいた結果、我が国の実態に即した画面デザインの保護の拡充を行うということにしたものでございます。

 具体的には、グラフィック・ユーザー・インターフェースやアイコンをその情報家電や携帯機器といった物品の一部として保護の対象にしようということでございまして、保護の拡充という点で国際的な流れに沿ったものである。同時に、我が国の国際競争力の強化にも資するというふうに考えております。

牧原委員 今のいわゆる保護範囲と並んで本件の重要な改正が保護の期間ということでございます。保護年数も国際戦略上極めて重要な意味を持ちます。特許なんかは割と各国統一的な保護期間になっておりますけれども、実は、意匠は大きく変わっているものです。米国は十四年、そしてEUは二十五年という、先進国の間でも年数に随分差があるわけでございますが、ここの違いがある中、我が国が十五年を二十年というふうに今回改正をしたのはどういうことなんでしょうか。

中嶋政府参考人 今委員御指摘ございましたように、意匠権の存続期間については現在、国際的に必ずしも統一しておりませんで、その国の実情や、いろいろな歴史的沿革あるいは権利意識のあり方などにも応じて、各国ごとに設定されるのが実情でございます。

 ちなみに、アメリカにおきましては登録から十四年間、それから欧州主要国においては、最初は出願から五年間といたしまして、その後四回の更新により最長二十五年まで可能ですが、知的財産制度について規定する国際的な取り決めでございますいわゆるTRIPs協定においては少なくとも十年間といったことで、それから先は各国にゆだねられているといった状況でございます。

 我が国におきましては、これまで、登録から十五年間というふうになっておりますけれども、魅力あるデザインが商品価値の長期的な維持に重要であるというふうに認識されている中で、最近では、私どもの調査、これは二〇〇四年末でございますけれども、意匠権が、現在の満了の年、つまり十五年間存続している比率が約一六%と比較的高くなってきております。こうした実態あるいは産業界からの要望を踏まえまして、デザイン保護の強化の観点から、今回、意匠権の存続期間を延長することとしたところでございます。

 他方で、存続期間は単純に長ければ長いほどいいといったものでもないと思います。例えば、意匠法では、いわゆる意匠、美感を起こさせるものであれば機械器具などの物品の機能や技術に関連する形状、形も保護の対象となっておりますが、特許権の存続期間、これは出願日から二十年でございまして、これと余り大きく乖離することは必ずしも適切ではないのではないかというふうにも考えられます。

 また、審議会におきましての議論では、改正前の出願と改正後の出願とで存続期間が一挙に大幅に異なるということは問題ではないかとか、あるいは権利者以外の第三者に与える影響も考慮する必要があるのではないかといったようなさまざまな御議論がございまして、結果として、新たな存続期間としては二十年が適切であるという結論をいただきました。

 ちなみに、国内の主要企業を対象としたアンケート調査によりますと、これは五百八十社からの回答でございますけれども、存続期間の延長を必要とするという企業のうちの六八%が二十年が適切であるというふうに回答されておりまして、二十五年が適切だといったお答えは一三%にとどまっております。

 このようなことを総合的に勘案いたしまして、審議会で得られました結論に従って、存続期間の延長幅につきましては、現行の十五年から五年延ばし二十年という案にしてございます。

牧原委員 意匠のお話はまだ続けさせていただきたいと思います。

 意匠というのは、各ある知的所有権の中でも、実は訴訟に行ったときに最も侵害の有無を判断しにくいというものです。私も、似たようなデザインのものをいっぱい並べて、これは似ている、あれは似ているといってやったことがあるんですけれども、これは人によって判断が違うという場合があり得るわけです。

 本件の改正におきましては、需要者の視覚による美感という判断基準を入れたわけですけれども、これを入れたとしても、例えば、日本で大体コンセンサスがあるものであったとしても、中国あるいはほかの国に行ったときに、この需要者による美感という判断基準が用いられているわけでは必ずしもないわけですし、同じ判断基準になったとしても随分違いがあり得るわけでございます。そうした海外における模倣品の取り締まりにおいても、特に意匠というのは困難な問題があり得るだろうと思われますが、現実的などういう被害があって、そしてどういう問題に例えば現場が直面しているか、そういう事例があれば教えていただきたいと思います。

中嶋政府参考人 模倣品に絡むお答えにもなりますけれども、今、中国、韓国を初めとするアジア地域におけますこういった産業の技術が発達していることにも伴って、我が国にとっても意匠権の侵害事例も増加しております。しかも、経済のグローバル化に伴って、模倣品がアジア全域に流通するだけではなくて、中には我が国にも逆流してくるといったような形で模倣品被害が大きな広がりを見せております。

 具体的な事例といいますか現状は、実は、委員が配付されました二ページ目にも載っておりますけれども、そうした中で、アジア諸国におきます模倣品の実態を見ますと、商品の形態を丸ごと模倣したようないわゆるデッドコピー商品が依然として横行しておりますので、まずもってこれらの取り締まりを強化することが必要であることは当然でございます。ただ同時に、最近は、例えば自動車を例に挙げますと、フロントバンパーなど特徴的なデザインだけを模倣するような巧妙な模倣も見られるようになってきているというわけでございます。

 そうした中で、諸外国の意匠の類似の判断基準でございますけれども、制度上は、例えばヨーロッパでは、これも欧州共同体の意匠規則というのがあるんですけれども、その類似の判断主体は情報に通じた使用者、ユーザーと規定されておりますし、アメリカでは、これは判例法でございますけれども、判断の主体は通常の観察者というようなことになっております。中国でも、判例や中国特許庁の意匠審査基準におきましては、類似の判断主体は一般消費者というふうになっておりまして、そういう意味では、主要各国において意匠の類似などの判断の主体は、日本と同様、おおむね一般の消費者だというふうにとらえられております。

 ただ、そうはいっても、さらに具体的な判断の基準を少しでも近づけるようにということでございまして、最近ですと、アジア諸国を中心に日本から意匠の審査官等の専門家を派遣いたしまして実務レベル会合を開くとか、あるいはアジアの途上国の意匠の審査官を研修生としてこちらに受け入れまして、そういったスキームを通じて類否の判断基準に関する情報を共有していくということに努めております。

 今後もこうした努力を続けていくことによりまして、アジア地域も含めて全体として模倣品被害の防止に資するように努めてまいりたいと思っております。

牧原委員 ありがとうございました。

 今御指摘をいただきました資料二でございますけれども、これが模倣被害の状況ということで資料を配らせていただきました。そのうちの右下のDなんですけれども、これは模倣被害のいわゆる各知的財産権の割合ということになっております。

 私たちの一般的イメージからいうと、特許や著作権のコピーが中国では多いというのは何となく一般的な認識がありまして、典型的には音楽CDだとか、あるいは「となりのトトロ」が全然違うように売っているとか、そういうことがあるわけでございます。しかしながら、これを見ていただければおわかりになるとおり、商標やあるいは特許に並ぶ数として、意匠の被害が非常に大きい。むしろ著作物なんかよりも日本はずっと被害を受けているという状況にあるわけです。

 この模倣品対策につきましては、現在、ベルヌ条約やパリ条約やあるいは集積回路の条約など各条約をTRIPsが束ねて、そして約百四十六カ国ほどに適用になっているという状況になっていると思いますけれども、この取り締まりが甘いというところまではなかなか踏み込めないわけでございます。これは、私もWTO提訴を検討したことがありまして、なかなか難しいという結論を得たことがございます。

 こうした中で、昨年のG8のグレンイーグルズ・サミットにおいて、総理から新しい国際的な法的枠組みを提案したと思うんですけれども、その後の状況についてはいかがでしょうか。

石毛政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘のとおり、小泉総理は昨年のG8サミットでその条約構想というものを提唱したわけでございますけれども、昨年の十月以降、G8の知的財産権の専門家会合というような場所で議論をしてきております。

 特に、本年の三月末、モスクワでこの専門家会合が開催されたわけでございますけれども、我が国から提案したその条約の骨子案につきまして議論がされました。骨子案と申しますのは、製造の段階、あるいは輸出を含む流通の段階、それから消費の段階、そういう段階で模倣品を要するに撲滅しよう、廃止しよう、そういうようなことでつくられている骨子案でございますけれども、おおむね前向きな評価を得ることができたのではないかと思っております。

 ただ、条約加盟国の範囲をどういうふうにするかについて引き続き検討すべき、そういう事項が残っております。関係諸国と議論を継続していくこととなっております。

 加えまして、去る二十三日、パリで開催されましたOECD閣僚理事会、ここで二階経済産業大臣からこの条約構想を早期に実現する必要がある、そういう旨の発言をしております。関係諸国の閣僚に対しても直接そういうお話をしているというふうに聞いております。

 いずれにしましても、この構想の早期実現を目指して、関係諸国の理解を得るように努力をしてまいるつもりでございます。

牧原委員 ぜひとも前向きに進めていただきたい、そのように思います。

 さて、本件の改正、幾つかありますけれども、実務的に極めて重要なものが分割特許に関するものでございます。

 実は、先ほど大臣が言及になられた「産業財産権の活用企業百選」というもので、これは地元の企業が載っていたりすると大変うれしく、そして私も早速訪ねてみたところなんですけれども、その際に、これは極めて重要だというふうに一点だけ指摘をするとすればこの分割特許であるという指摘を実は受けました。

 実は、この補正のところが大変日本は制限されていたために、わざわざ一部拒絶をされるように出願をして、一部拒絶をされた後に分割特許をやるというような実務があった。そして、このことが、国際的なことからも極めておかしい状況にあったと指摘をされておりました。今回改正が行われましたが、その改正の結果どうなったかということについて御説明いただきたいと思います。

中嶋政府参考人 特許の分割出願制度についてでございますけれども、特許出願に複数の発明が含まれている場合に、その一部を抜き出して新たな特許出願とすることを認めるという制度でございます。これによりまして、出願人は、一つの特許出願を複数に分割して、別の実施形態とかあるいは関連技術について個別にその権利化を目指すといったようなこと、結果として、発明の多面的かつ網羅的な保護を図ることが可能となっております。

 ただ、現行の特許法では、審査終了後の特許出願の分割が許容されていないために、出願人が審査結果を踏まえて権利化を目指す発明を見直すことができないといった問題がございます。あるいは逆に、事前に念のため特許出願を分割しておくといった無駄な手続が発生しているわけでございます。

 このため、今回の改正案におきましては、審査終了後であっても三十日以内であれば、特許庁に係属している特許出願を分割することを可能としております。これによりまして、発明のより多面的かつ網羅的な保護を図ることが可能になると同時に、無駄な手続も排除し、国際的な運用にもハーモナイズしていくということかと思います。

牧原委員 ありがとうございました。

 今の改正は本当に実務的には重要な点なので、ぜひとも成立をさせていきたい、そのように思っております。

 さて、本件の改正の中でも、今国際的な協調というお話がいろいろありましたけれども、実は、国際的な中で見ても最も日本が先進的あるいは重くなったという改正が一つあります。それは、罰則についてでございます。

 この罰則、懲役刑は上限十年、罰金刑の上限が一千万ということで、これは他の一般的な刑法の犯罪の重さから見ても極めて重い。例えば、飲酒運転による危険致死罪なんかは十年だったと思いますけれども、そういうものに匹敵する極めて重い刑罰になるわけでございます。

 この点についての政府の決意というか御認識を伺いたいと思います。

中嶋政府参考人 御指摘のように、我が国が今後とも産業の国際競争力を向上させていくためには、知的財産の保護の強化が必要だということでございます。

 ただ、特許、意匠、商標というのは、実は、その権利の情報が広く公開されることから、第三者が故意あるいは悪意で侵害しようと思ったら、ある意味ではそれは容易に侵害されるおそれがあるものでございますし、また、営業秘密につきましても、技術上のノウハウやあるいはその情報等が秘密裏に盗用されやすいという脆弱性を持っております。さらに、近年の実際の事例を見ますと、侵害による損害額が高額化しているといった状況を踏まえますと、より知的財産の侵害からの保護の強化が必要ではないかということでございます。

 したがいまして、今回、犯罪行為に対する抑止効果の観点はもちろんのことでございますけれども、行為の悪質性とか被害額の大小、それから他の財産犯に係る法定刑との均衡など総合的に勘案した結果、特許、意匠、商標、営業秘密の侵害に係る懲役刑の上限を十年、罰金刑の上限を一千万に引き上げることとしたものでございます。これによりまして、改正後は、我が国の罰則は世界的に見ても最も高いレベルになるものと認識しておりまして、知的財産に係る侵害行為に対しまして十分な抑止効果を発揮すると期待しております。

牧原委員 実は、私は、先ほど国際調和という話がありましたが、知的所有権に関しましては調和を、つまり、ほかの国がもう既に達成されていることを達成するのは、これは必要なことである。他方、先ほど申し上げたとおり、例えば、保護範囲のこととか、長さとか、他国と違い得る部分があるわけですから、こういう部分についてどう戦略的に考えていくかということが極めて重要で、この刑法が重いということは、これは恐らく他国の研究者とかが見るときに、日本はこんなに重くしたということはニュースになると思いますので、我が国の知的所有権の重要性を他国に示すという意味では極めて重要ではないかというふうに思っております。

 もう一つ、最後に、知的所有権の侵害行為というのは、まさに何を禁止するかというコアな部分になるわけですけれども、本件改正では、新しく輸出というものが追加されました。長い間侵害行為とはされていなかったこの輸出という行為をわざわざ追加したにはそれなりの背景や理由があると思いますけれども、この点について教えてください。

中嶋政府参考人 まず、現実の問題といたしまして、いわゆる模倣品というのは、海外でつくられて日本に入ってくるという場合だけではございませんで、実は、日本国内でつくられて海外に出ていくという事例があることがございます。

 それから第二に、先ほども質疑がございましたけれども、現在、我が国として、各国が模倣品や海賊版の輸出を規制することも含めた内容の模倣品・海賊版拡散防止条約の実現を提唱しているところでございます。

 ところが、現行の我が国の、例えば特許法等の産業財産権法におきましては輸出自体は侵害行為とされておりませんので、国境を越えた模倣品の取引が行われる際に、その前段階として国内で行われる模倣品の製造や譲渡といった行為が捕捉できない場合には、水際における輸出段階で模倣品が発見されても、差しとめを行うことが困難な場合があるという指摘がございます。

 そこで、今回の改正案では、模倣品の輸出を侵害行為という形で明示的に規定することによりまして、国内の製造や譲渡といった行為を捕捉できない場合であっても、権利者が輸出段階で差しとめの請求を行うことを可能としたものでございます。これによりまして、模倣品対策の一層の強化が図られるものというふうに考えております。

牧原委員 どうもありがとうございました。

 今後とも、この知的所有権という分野、我が国が生き残っていくための戦略として大変重要な分野ですので、一緒に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

石田委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 おはようございます。民主党の野田佳彦でございます。

 大変歯切れのいい牧原さんの御質問の後、私も元気に質問したいんですが、歯が痛くて、知覚過敏らしくてコップの水を飲むと多分悶絶しちゃいますので、多少言語不明瞭になるかもしれませんけれども、五十分間頑張っていきたいと思います。

 まずは、法案の中身に入る前にですけれども、知的財産権の位置づけについてお尋ねをしたいというふうに思っております。

 私ども民主党は、二階大臣におかれましてはもう十分御理解をいただいていると思いますが、知財に関する政策提案をこれまでも随分やってまいりました。憲法に知的財産権を規定せよというぐらい大胆な提言もしてきているわけでありますけれども、憲法は別の委員会で専らやっていただくとして、では、国家戦略としてどのようにこの知的財産権を位置づけていくのかという視点で、まず第一点、質問したいんです。

 経産省におかれまして、さまざまな戦略を公表、発表されてまいりました。その中で特に注目をしていますのは、三月に中間取りまとめのありました新経済成長戦略。新経済成長戦略は、二十一世紀、どうやって我が国の国富を増していくかという大事な戦略だと思います。この中に知的財産権というのはどのように位置づけられているのか、まずこの点を、これは大きなテーマですので、大臣にお尋ねをしたいと思います。

二階国務大臣 ただいま野田議員からの御指摘は今日の我が国経済の大変重要なポイントをつかれた御質問でありますが、同時に、知的財産権の国家戦略等について、いち早く民主党がこの問題の重要性を御認識いただき、党内におきましてもさまざまな御議論をいただいておるということを承知しております。改めて敬意を表したいと思います。

 私は、経済産業省におきまして、今日、人口減少・高齢化社会、これはだれでもまくら言葉のように言われるわけでありますが、それはそれで現実のものとして我々は受けとめて、その中から、我が国の経済をどう発展させていくかということを考えなくてはならない。

 そこで、そういう状況の中ではありますが、新経済成長戦略の取りまとめを行っております。だんだんと議論が固まってまいりまして、今では、実質GDP、年間二・二%を確保することができるのではないか、二・二%以上という声も起こっておるわけであります。このことを十年続けていきますと国民所得を三割方引き上げることができる、久々にこういう明るい見通しを得るに至っているわけでありますが、その中におきまして、今議員御指摘の知的財産権の問題というものは極めて重要な位置づけをしなければならないと思っております。

 この私どもの新経済成長戦略におきまして、我が国を世界最高のイノベーションセンターとして、また、アジア等近隣諸国とともに成長していくということを目標に掲げておるわけであります。

 そのために、技術革新が次々と生み出される仕組みを構築していく、そしてその成果を、日本国内はもとより、アジアの諸国にも均てんしていく。そういうことを考えていく上において知的財産権の重要性はますます増してくるわけでありまして、この点において、周辺諸国は当然のことでありますが、広くアジアの諸国ともこの問題を十分考えてまいらなくてはならない。

 また、御承知のとおり、今、一村一品運動の国際版というものを展開し、発展途上国の皆様に希望、期待を抱いていただくための誘導政策をとっております。しかし、その中でも、既に発展途上国におきましても知的財産権の問題は欠くことのできない重要な視点である、それぞれの大使の皆様から、ようやくこのことに真剣に取り組まなくてはならないという声が聞こえてくるようになってまいりました。

 経済産業省としまして、改革の先に明るい日本の未来を展望していくためには、この知的財産権の問題はなくてはならない重要な課題であり視点である、そういう観点からしっかりと対応してまいりたいと思っておりますので、民主党初め各党の皆さんからもいろいろな御意見を謙虚に承りながら、知的財産権の先進国となるように私どもは懸命の取り組みをしてまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 大変確かな基本認識をお示しいただきまして、本当にありがとうございました。私どもも、これからも積極的に御提案をして、知財立国をともに目指していきたいというふうに思います。

 それで、本改正案についてなんですが、個別具体に入る前ですけれども、この種の知的財産にかかわる法案の改正というのは毎年のように行われてきております。例えば特許法に関しては、四年で三回の制度改正が行われているということでございます。制度改正が繰り返されることで一番大事なことは、やはり制度を定着させるべく、国民の皆様に御理解をいただくために万全の措置を講ずるということだと思うんです。

 今回もこの中身については、はっきり言いまして、余り異論はないわけです。その上で、また来年も恐らく何らかの改正が行われるだろうと思いますので、ポイントになることはやはり制度の定着あるいは理解の徹底に万全を期すということだと思いますが、こうした取り組みについての御説明をいただきたいと思います。

西野副大臣 知的財産権の問題につきましては、平成十四年に小泉総理が施政方針演説の中で触れたわけでございますが、特にそれ以来、知的財産立国を目指しまして、適切な知的財産の保護だとかあるいは制度改正というものに、今先生から御指摘がありましたとおり、集中的に取り組んでいるわけでございます。

 例えば、平成十四年には先行技術の文献関係、翌年の十五年には手数料にかかわる問題、十六年、翌年にはインターネットの公報にかかわる問題、さらには昨年は地域ブランドの導入等々、年々、そういった角度から集中的に取り組んで、改正をしておるところでございます。

 しかし、これらの制度が関係者を初め広く国民に周知徹底をされなきゃならぬことはお示しのとおりでございまして、経産省といたしましても、具体的には、例えばホームページやパンフレットを活用いたしまして積極的にPRを行っておりますが、今申し上げました平成十四年以降、全国各地で実は毎年百回以上の説明会も開催をいたしておるところでございます。

 今後とも、これらの法改正の趣旨が理解をされ、運用がスムーズにまいりますように一層の努力をしてまいる所存でございます。

野田(佳)委員 やはり個別改正事項の検証を着実にしながら前へ進めていただきたいというふうに思います。

 具体的に法案の中身に入りたいと思いますけれども、まず意匠についてです。

 意匠法の第二条に定義が書かれていまして、「この法律で「意匠」とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」というふうに定義が出ているんです。この定義と実際の意匠実務の間の乖離があるかないかというテーマなんです。

 おととい、私も特許庁に視察に参りました。あんなに近くにあるのに、私も初めて行って、大変勉強になったわけであります。そこで感じたことなんですけれども、意匠登録というのは、実物より大幅に縮小された画面で、ほとんど黒っぽい画面で実務が行われているわけで、定義の中に「色彩」と書いてありますけれども、微妙な色彩を考慮しているとは到底思えなかったんですが、この定義と実務と乖離がないのか、ぜひお尋ねをしたいと思います。

中嶋政府参考人 意匠法の第二条に、今御指摘ございましたように、定義といたしまして「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」であることとしておりまして、色彩も意匠の類似あるいは美感の有無を判断する上で重要な要素の一つというふうに考えております。

 実際、具体的な審査実務における色彩の取り扱いでございますけれども、全体が一つの色で塗られているような場合と、色彩の塗り分けがなされて模様が構成されているような場合とで異なってまいります。

 全体が一つの色で塗られているような場合でございますと、多くの場合は、色彩の違いは形状とか模様の違いに比べて類似判断に与える影響は小さいというふうに考えられますし、原則として、顕著な差異をもたらすような場合に色彩を考慮するんだというような扱いになってまいります。

 他方で、色彩の塗り分けが多様になされた結果、模様の差異のような形になってあらわれる場合には、その色彩の構成によってあらわれた模様を他の同種のものとの類似を判断する際に重要な特徴点として扱って、これを重視するということになっております。

 したがって、ケース・バイ・ケースではございますけれども、色彩も意匠の類似等の判断における重要な要素の一つであるということは実務上も取り扱っているわけでございます。

野田(佳)委員 いや、実務上取り扱っているかなと思ったから聞いたんですけれども。

 関連しますけれども、定義の中で、「視覚を通じて美感を起こさせるもの」なんですね。だから、当然色彩というのは大きな要素だと思ったんですけれども、その「美感を起こさせるもの」自体が、これは人の主観によって随分と違うと思いますので、解釈の余地が相当あると思うんです。この要件はやはり実際不明確ではないかと思いますけれども、この点についてはいかがでしょう。

中嶋政府参考人 御指摘のように、やはり二条で、これはあくまでも一般的な定義の規定でございますけれども、意匠というものは「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」というふうになっておりまして、その意味におきましては、審査に当たって美感の有無も判断するということにはなってまいります。

 ただ、実際上は、実務上一番大事な意匠の審査における判断というのは、新規性と、それからもう一つは創作容易性でございます。これは後ほどまた御質疑があるかもしれませんけれども、新規性とか創作容易性というところが一番の判断のコアでございます。

 ちなみに、そうはいいましても、今の定義のところに美感ということが出てまいりますので、実際、実務的に例を見ますと、機能とか作用の効果を主目的としたものでほとんど美的な処理がなされていないものとか、あるいは煩雑な感じを与えるだけで美的な処理がなされていないものについては、美感を起こさせるものではないということで、拒絶の対象となり得るというような審査の基準にはなっております。

 実際、美感がある程度主観的なものであるということでございますので、一義的に詳細にわたって明確に規定することは容易でないところがございますけれども、こうした審査基準のさまざまな形の明確化と実際のケース、審査実務の積み重ねによって、可能な限り審査官の間におきます判断の差異が生ずることを防ぎながら審査をしているというわけでございます。

 実際、では結論的に、美感の有無を理由に登録を認めない例があるかということでございますけれども、件数は余り多くはございませんけれども、若干の例はございます。

 ただ、繰り返しますけれども、あくまでも実態上は、一番大事な審査の判断の分かれ目というのは、新規性とかあるいは創作容易性といった点に重きが置かれているということでございます。

    〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕

野田(佳)委員 要件に入っている美感、それで拒絶された例は多少あるということだったんですけれども、だから、美感というのは、美というその表現を使うことがいいのかどうかというのは私は疑問なんです。

 その上で、今度、二十四条、意匠の類似判断のところで、需要者の視覚による美感に基づいて行うと、あえて「需要者」という言葉が今回の法改正の中では明記をされました。

 需要者というのは、多分これは物品を買う消費者だとかそれを取り扱う業者が需要者なんだと思うんですけれども、あえてこの二十四条に、実際それを審査するのは審査官の方だと思いますけれども、需要者による視覚という文言を入れた理由を明らかにしてほしいと思います。

中嶋政府参考人 意匠法におきまして、二つの意匠が類似しているか否かの判断は、意匠の登録の可否を判断する審査の際あるいは侵害かどうかといった争いにおきまして、意匠権の効力の範囲を定める際に必要となる重要な要素でございます。

 具体的には、意匠の登録要件でございます新規性の判断においては、意匠登録出願に係る意匠が国の内外で知られた公知の意匠と同一または類似する意匠であるかどうかといったようなことが判断されます。また、侵害かどうかといったような意匠権の効力範囲についても、これは、業としてなされます登録意匠及びこれに類似する意匠の実施について、その判断をすることが必要になってくるということでございます。

 あえて今回こういう明示的な規定を入れたゆえんでございますけれども、実はこの意匠の類似に関連いたしまして、最高裁の判例におきまして、一般需要者の視点から見た美感の類否で判断するんだというふうに解釈がなされております。ただ、依然として実務の一部におきましては、この意匠の類似につきましては、デザイナーなどのいわば当業者といいますか、プロといいますか専門家といいますか、その視点から評価を行うべきであるとの主張もございまして、意匠の類似判断が不明瞭なものになっているんではないかという懸念も指摘されておりました。

 それで、今回、審議会でもいろいろ御議論いただきましたけれども、先ほど申しましたように、新規性の判断あるいは類似の判断といったようなところは、牧原委員の御質問でもございましたけれども、ヨーロッパとかアメリカとかほかの国を見ても、やはり一般需要者、消費者、そういう視点から行うんだということでございます。

 他方で、もちろん、創作容易性があるかどうか、つまり、普通に、容易にそういったデザインがつくれるかどうかといったようなところは、ある意味でデザイナーなどの当業者の視点ということが必要になってくるというわけでございます。

 そういう意味で、今回の改正におきまして、意匠の類似判断につきましては需要者の美感に基づいて行われるということを明確化いたしまして、関係者において認識の統一性をもって類似判断が可能になるようにしたわけでございます。

野田(佳)委員 余り意匠の定義と実務とかという細かい話をやっていますとだんだん歯が痛くなってきますので、これ以上やりませんけれども。

 意匠について、最後、存続期間の話が先ほどの御質問にも出ておりました。それについても長官からるる御説明がありましたけれども、今回、存続期間を現行の登録から十五年を二十年に延長する、こういう法改正です。

 さっきの御説明にもありましたけれども、アメリカが十四年で、EUは最長で二十五年間意匠権が保護をされるということです。その二十年間になった意味はさっき御説明がありました。いろいろアンケートをやったとか、いろいろなお話がありました。

 私がお聞きしたいのは、意匠なり特許なり、こういう知的財産権にかかわるものというのは、やはり最終的には制度の国際調和というのを目指していくべきだろうと思っていますけれども、この存続期間については少なくとも日米欧で制度の不一致ができるわけで、ちょうど日本が真ん中に割り込むことになったわけです。この不一致というのはグローバル化の中で支障とはならないのかどうか、この点の御説明をいただきたいと思います。

中嶋政府参考人 今の御質問でございますけれども、特許とか意匠とか、いわゆる知的財産制度でございますが、できるだけ世界的にハーモナイズすることが望ましいことは言うまでもないと思っております。

 ただ、現状は、各国が最低限度の国際的な義務は当然満たす必要がございますけれども、その上で、各国の実情に応じて、保護の要件とか権利の存続期間を含めて、若干の差異が及ぶという場合がございます。ただ、それはあくまでもそれぞれの国の中での権利の付与に際してでございまして、そういう意味で属地主義というわけであります。

 つまり、日本の国内であれば、日本の企業だろうと外国の企業だろうと、あくまでも日本の制度に従った権利が付与される。逆に、日本の企業がアメリカに行けば、アメリカの制度に従ってアメリカの企業と同様に保護されるということでございまして、保護を受ける国ごとに制度のさまざまな相違がございますけれども、企業にしてみると、それを踏まえて意匠権の取得とか管理を行っておりますので、意匠権の存続期間が異なることのみをもって直ちに具体的な事業活動に支障が生ずるということはないとは思います。

 ただ、これは意匠権のみならず特許等についても同様でございますけれども、できるだけ世界的にハーモナイズしていくことが望ましいわけですし、日本の企業のデザインについても世界的に同じレベルの保護が受けられるようにということで、この意匠権の存続期間も含めまして、制度の国際調和を図ることが重要であると思っております。

 そういう意味で、そういった日米欧間のいろいろな意見交換とか意思疎通とか検討の作業を引き続き行っていくということの重要性につきましては、御指摘のとおりだと思います。

野田(佳)委員 ずっと意匠ばかりやりましたけれども、この辺で、少し特許についてお尋ねをしたいと思っております。

 この間特許庁に行ったときにも御説明をいただいたんですけれども、国内で出願をされている特許出願数というのは約四十万件、これはもう世界有数の出願大国なんだろうというふうに思います。実際にこの国内出願が外国でも権利化されているケースは三万件程度で、ということは三十数万件は権利化されていないということで、これは特許の性格上公開をされますから、公開をされることによって世界各国に知れ渡る。

 これは後で模倣品の問題にもかかわることでありますけれども、この公開された情報というのが中国や韓国や台湾やアジア各国の教科書になっているんではないか、言ってみれば意図せざる技術流出を行っている、こういう指摘があるわけで、これは我が国の特許制度の根幹にある意味ではかかわることだと思いますけれども、この点についての特許庁の御認識をお伺いしたい。これは政務官ですか、お願いします。

片山大臣政務官 委員御指摘のとおり、出願件数が四十万件というのは必見すべき非常に多い件数でございまして、そのうち約一割の三、四万件が特許として保護されると。残りにつきましても、出願いたしますと一年半で国内外に公開というのが今のルールでございますから、確かに、そこにアクセスすれば技術流出につながっている可能性はないとは言えません。

 ただ、出願公開制度は、その出願の内容を公開することによって重複研究による無駄な投資や重複出願を抑制するというような効果もあるわけでございまして、これは、委員も御承知のとおり、もろ刃の剣的なことがございまして、主要先進国ではある程度こういった出願公開制度をやっているということで、それを上手に運用していくことが必要なのかなとも思うわけでございます。

 こういった状況を踏まえますと、やはり海外に対しても、我が国企業が出願するときに海外に同時に出願する率が低いものですから、そちらでもやってくれればいざというときにある程度のバリアになるわけですから、それをできるだけやっていただくようにということをすることと、あとは、先行技術の調査を十分に十分に行うことによって特許を取れない出願の割合が結果的に減るようにというような、戦略的な知財政策、戦略的な知財管理を行っていただくようにということをやってまいりたいと思います。

 私ども、特許の審査について非常に重視しておりまして、大臣を本部長とする推進本部もつくっておりますので、こういった取り組みを企業においても促進していただくように、出願が非常に多い大企業ですとか業界団体につきましても、いろいろとお話をして取り組みを求めているわけでございます。

 全体的にそういった流出の問題等についても対応することによって、知財戦略全体の国際競争力が高まるように対応してまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 関連しますけれども、四十万件もの大量の特許の出願、出願大国であるということは必ずしも手放しで喜べる状況ではないんだろうと思うのは、その中にはかなり防衛出願的なものも含まれているだろうというふうに思うんです。

 そこで、大事なことは、これは微妙なあやのある発明があると思うんですけれども、発明はしたけれども特許権はまだ必要なくて、しかも当面の間は実施する予定もないような発明だと思うんですね。この発明が多分防衛出願の温床になっていて、これは統計的にそんなのがどれだけあるかわかりませんが、潜在的にはこの種のものがかなり多いのではないかと思うんです。

 発明は完成しているけれども排他的独占権はまだ必要なくて、しかも当面の間は実施する予定もないような、こういう発明をどうやって保護していくのかという点については、どういうお考えをお持ちでしょうか。

中嶋政府参考人 企業がいろいろな技術開発をなさった成果をどういう形で保護するかというときに、そもそも、その特許出願をした方がいいのか、つまり、それは十八カ月後に公開されてしまうけれどもあえて強い権利の特許でいくか、あるいはいわゆる営業秘密、ノウハウとしてしっかり社内で管理していくかという、まずそこで分かれ目になると思います。

 その際に、実は、我が国を含めまして多くの国の特許法には、ほかの人が出願する前に自分が発明を既にしておって、その発明の実施である事業を行う、あるいはその準備をしている者である場合には通常実施権を与えるという制度、つまり先使用権制度というのがございます。つまり、あえてみずからまず真っ先に特許権を出願ということはしないで、自分がいわばノウハウとして管理しながら事業を粛々と行っていく、あるいはむしろその準備をしているような形をとるといったような形にしておくと、別の人が出願した場合であっても、もともと既に先行している方の人が引き続き、先使用権ということで、続けられるといった制度でございます。

 これについてはいろいろな議論がございまして、例えば、発明が完成していればもうそれだけで、その後にほかの人が出願して特許権を取得したとしても、先に発明をした人の方に特許の実施権を認める制度を設けてはどうかといったような要望も一部の企業にあったこともございます。

 そういうこともございますので、この際、審議会でも、産業構造審議会の特許制度小委員会ですけれども、幅広くもう一度全般的に議論をいただきました。

 その結果でございますけれども、事業の実施とか準備もしていなくても、ただ発明が完成したことのみをもって実施権まで与えてしまうというふうにしますと、これは、先願主義のもとで特許権と先ほどの先使用権とのバランスということが大きく崩れるとして、結果的には、広く産業界からもそこまでやることは強い反対の意見がございます。それから、そういう新たな制度を設けますと、これは極めて特異な制度の採用になりまして、まさに国際的な制度の調和にも反するということで、我が国としては導入すべきではないといったような結論になっております。

 したがいまして、企業といたしましては、国際的な競争が激しくなる中で、開発した技術を、特許権の取得の対象にするか、あるいはノウハウとして対外的には秘匿した形でしっかり管理するか、そこをまず十分考えていただく。仮に、特許権を取得する場合には同時に海外でも権利化するとか、あるいは逆にノウハウとして秘匿する場合であっても営業秘密として一般的に徹底した管理を行うのか、あるいは場合によっては先使用権ということを確保していくのか。

 この辺につきましては、実は先使用権についてのガイドライン、事例集なども今つくっておる最中でございまして、そういうことも参考にしていただいて、やはり全体としてどういった知的財産のポートフォリオを組むのがいいのかということ自体が、まさに二十一世紀の先進国の企業の知的財産戦略の一番大事なところだというふうに思っております。

    〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕

野田(佳)委員 いろいろな議論があるということはよくわかりました。私もその議論のこれからの行方を注目していきたいと思っています。

 そこででありますけれども、先ほどの牧原さんは、特許出願の分割の拡充を大変評価されていました。中身的には多分そうだろうと思うんです。私はちょっと実務的な話からまたお聞きをしたいと思うんです。

 その結果、分割出願が増加をして、先ほど申し上げたように、今、年間四十万件の出願があるのに加えてその数がふえていって、今も審査の待ち時間がそれなりにあるようですけれども、大方針としては平成二十五年には十一カ月の待ち期間にしたいという方針にそごが出るような気がしてなりません。審査件数の増加に対する懸念を私は持ちますけれども、実務上心配はないのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

中嶋政府参考人 確かに、今回の改正案で審査終了後三十日以内であれば出願の分割を可能とすることによって、ある意味では分割の制度がより使いやすくなるということでございます。

 そういう意味では、審査終了後の分割可能な機会がふえる、結果として分割出願が増加するのではないかという予想もある程度ございます。ただ、他方では、事後の分割の機会が新たに確保されることによりまして、出願人が念のために事前に出願を分割しておくといった予防的な分割出願、現在そういうようなことも見られるわけですけれども、それは現在よりは減少するのではないかというふうに考えております。

 それから、もう一つ大事な点は、分割出願制度の濫用を抑止するために、今回、同じ発明を繰り返し分割する出願に対しては補正の制限を課すということの手当てもしてございますので、こうしたことの結果、分割出願の濫用も抑制されるのではないかというふうに考えております。

 したがいまして、今回の改正によりまして、全体としては審査の件数が大幅に増加することはないというふうに考えております。

野田(佳)委員 先ほどの質問に対する御答弁の中で、片山政務官から、海外の出願をもっとふやしていく方向性について御示唆がありました。それについてお尋ねしたいと思うんですけれども、日本企業の海外出願がなぜ現状においては少ないのか、それに対する対策をどのように講じようとしているのか、具体的にお答えをいただければと思います。

中嶋政府参考人 御指摘のように、自分の国で特許出願をしたものの中で海外にもあわせて出願している割合を示します海外特許出願の率を見ますと、我が国の企業は現在約二〇%でございまして、これはアメリカにおいては約四四%、欧州各国でおおむね六〇%。この場合、欧州域内の他国への出願、つまりドイツの企業がイギリスに出願するとかいった場合も含まれてはおりますけれども、それにしても、六〇%といったような高い比率で海外への出願がなされていることと比較しますと、やはり日本企業の海外出願比率が低いということは明らかでございます。

 こうした中で、確かにアメリカとか中国向けなどで日本企業によります海外への出願は増加傾向にはあるんですけれども、やはり、国内におきます同業他社のライバル企業からの防衛のための出願とかあるいはその牽制のためという形で、国内のみの出願が非常に多いということが実情ではないかと思っております。

 したがいまして、これだけ企業の活動がグローバル化しているわけでございますから、日本の企業によって生み出された技術を海外でも競争するといったような分野、場合におきましては、やはりそういった技術について積極的に海外への出願を行う。もちろん、事前に十分その中身を精査した上で果敢に特許出願を海外にも打って出るということで、海外出願比率を欧米並みに高めていくということが必要かと思います。

 したがいまして、先ほどもございましたように、現在、省内の本部でつくりました行動計画に従って、上位の出願企業とかあるいは各主要業界団体を中心に直接経営者トップにもお会いして、グローバルな観点から、国内外への出願戦略を見直して、よりそのグローバルな特許出願の比率を高めることを検討していただくという要請をしております。

 同時に、そういった出願人にとって少しでも迅速に海外における権利取得が可能になるように、例えば他国の特許庁との協力を積極的に進めていく。具体的には、アメリカの特許庁との間で特許審査ハイウエー構想、これは、先般、アメリカの商務長官が二階経済産業大臣と会談いたしました際に、ことしの七月から試行をしていく方向ということで大筋合意したことを受けまして、実務的にも、七月からまず日米間で、一方の特許庁の審査結果を他方に伝えて、それを利用して第二の特許庁でより迅速に審査を優先的にしてもらう、結果的にその出願人にとっても非常にメリットがあるというようなこともしております。

 そういう形でいろいろな環境整備もしながら、企業におきまして意識改革をしていただいて、できるだけグローバルな権利取得にチャレンジをしていただくということが肝要だと思っております。

野田(佳)委員 もう時間が後半になってきましたので、模倣品の問題に入っていきたいと思っているんです。

 模倣すること、まねることというのは、それだけでは本当は問題ではなくて、例えば、学ぶというのはまねることから始まるという言葉もあるように、まねること自体は悪くはないんですが、ルールに基づいてまねるというのが基本だというふうに思っていまして、日本企業もかつては欧米の技術をまねて、そして発展をしてきましたけれども、ちゃんと膨大な特許料を払いながら学んできたわけであって、これは単なるただ乗りではなくて、乗車券も特急券もグリーン券もちゃんと払ってきたわけです。

 ただ、最近のにせものをつくっている国々というのはこのルールを守っていなくて、まさにこれこそただ乗りだというふうに思っていまして、この対策強化は避けて通れないというふうに思っているんです。

 まだ国内の企業でも割とわきの甘いところもあるようですけれども、この模倣品の問題を放置していると、にせもの業者がどんどん技術を高めていって、そしてもうかって、いい人も集めるしいい設備もつくって、本物をつくる会社よりも強い会社になってしまうということにもなりかねないわけですから、これは放置してはいけないというふうに思います。その意味では、毅然たる対応を、これは官民挙げてやっていかなければならないと思うんです。

 そこで、特に今、模倣品がふえている、特に日本企業が被害を受けているというのはアジア、特に言えば中国であって、世界の工場であると同時に、世界一のにせもの大国になってきているという現状があります。こういう海外での模倣品被害の増加の原因、これをどのように分析をされていますか。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 今、野田委員御指摘のとおり、日本企業の海外での模倣品の被害、近年非常に増加の傾向にあります。特に中国で非常に深刻でございまして、被害額が、特許庁が試算したものですと約九兆円、それから中国の国務院のデータでも三兆円というふうに言っています。アメリカ、EUでも、中国からのそういう模倣品の被害が多いんだ、差しとめ実績それから没収の実績が近年増加している、そういう実情を私どもも把握しております。

 こういう被害がふえている理由でございますけれども、やはり模倣品だとか海賊版事業者の技術水準が、御指摘のとおり、どうやら最近上がってきているということは現象面からはあるようであります。商標とか意匠といった、そういう外観から判断できるような模倣品・海賊版というのは当然あるわけですけれども、そういうものに加えまして、最近は、外観からは判断がなかなかできない特許とか実用新案だとか、そういうものの被害が多くなっている。それは、今申し上げましたように、技術水準が少し上がってきているという実情はあろうかと思います。

野田(佳)委員 にせものの技術、模倣品の技術が向上して、結果的には本物の市場が奪われていくと本当に笑えない状況になってくると思いますので、しっかりとした情報の収集と分析とその対策が必要だと思います。

 平成十六年八月ですか、政府模倣品・海賊版対策総合窓口、これが経産省に設置をされました。いろいろ多くの相談が寄せられて、平成十六年八月から平成十七年末までに二百四十件相談があったそうです。このうち具体的にどれだけ解決されましたか。

石毛政府参考人 お答えを申し上げます。

 今、野田委員がお尋ねになった点でございますけれども、模倣品の窓口は、一昨年の八月につくったときに、こういうものは非常に迅速にやらなきゃいけないということで、親切、迅速、適切ということを基本原理にして御相談に応じているわけであります。

 そういう相談案件につきましては、私どもの模倣品の相談窓口で受け付けて、省内の関係の部署に当然照会をして、そこでこういうふうに対応したらいいというものを受けながら、あるいは、私どものところで対応できないもの、省内で対応できないものにつきましては関係各省にも照会を行って、相談を受けてから原則十日以内にまずお答えをするという形にしております。

 十七年末までに受理した相談案件は御指摘のとおり二百四十件なんですが、そのうち重ねて複数回以上持ってきた案件というのは五十五件ございます。このように、私ども、問題が解決して、相談される方がある程度、そういうことか、そこから先は制度なりなんなり、相手国の問題もあるんだなというような御納得をいただくまでいつまでも相談を受け付けるような体制を整えております。

 そういう形で、今後とも、相談にいらっしゃった方が、相談に来てもしようがないなということにならないように、しっかり解決の具体策を提示できるようにしていきたいというふうに思っております。

 ちなみに、五月二十四日現在までにこの件数はまたふえておりまして、受理の件数は三百六十件ということで、その後また増加をしている、そういう状況にございます。

野田(佳)委員 ぜひ問題解決能力を持った窓口になっていただきたいというふうに思います。

 やはり最大の問題解決は特に日中間の問題ですけれども、これは民間企業だけに任せておくのではなくて、政府間交渉をやって、日本政府としてしっかり中国政府に働きかけを行っていくということだろうと思います。日中間についてはいろいろな懸案があって、例えば経産省マターでも東シナ海のガス田の問題やら省エネの問題やらいろいろあると思いますけれども、この模倣品とか海賊版の対策強化ということも大変重要な交渉テーマだと思います。

 その中で、薄熙来商務部長とは二階大臣はかねてよりじっこんとお聞きしておりますし、何回か長時間にわたる対話、議論もされてきたように思いますけれども、どういう議論をされてきたのか、端的にお答えいただければと思います。

二階国務大臣 ただいま委員が御指摘になりましたように、日中間のあらゆるチャネルを通じて、知的財産権保護の強化について、我々はしっかりした主張を続けていかなくてはならないと思っております。

 幸い私は、二月二十二日、薄熙来商務部長からの招請で訪中をし、日中における経済産業省と商務部との間の会談を行いました。しかし、その際、驚くべきことは、この日中間の、経済産業省、かつては通産省と呼んでおった時代から九年間、公式の話し合いがなされていなかったということでありますから、きょうは九年分の対話をやろうということで、二時間半やりました。そして、一時間昼食をともにしましたから計三時間半やったわけでありますが、その中で、私も、相当の部分を割いてこの問題、つまり知的財産権の問題について我が国の懸念等を強く申し入れた次第であります。

 これにつきまして薄熙来商務部長からは、中国は知的財産権保護の分野に今までも力を入れてきたが、これからも積極的にこれに取り組んでいく、それは、単に外国企業の権利を保護するというためにだけではなくて、中国の産業、中国の企業の発明、活動等を奨励するためにも重要であるというふうな前向きの発言がありました。また、ことしじゅうに主要都市、五十ぐらいのところに知的財産権の関係の摘発センターをつくりたい、そして国が挙げてこの問題に厳しく対処をするということを進めていく方針であるという言及がありました。

 私は、今度お目にかかったときに改めてその後の取り組み等に対して話し合ってみたいと思っておりますが、同時に、私はその後、アメリカ、フランス、その他の閣僚とお目にかかる機会がありましたから、私が中国でこの薄熙来商務部長と会談したことは承知しておりましたので、知的財産権の問題はどうでしたかという、本当に大変な関心を持っておるということを私も感じ取った次第であります。

 今後におきまして、中国も、知的財産権の保護は中国自身の課題であると。例えば、あの広い中国でありますから、ある一定の箇所で発明したことを、次にこれをまねる人が出てくる。そして、中国の中で改めて知的財産権の問題で混乱が生ずるようなことになれば、中国の発展も望むべくもない。そういう意味で、我々は、極めて大事なことだというふうに承知をしておるという認識のところまではお互いに話し合ってまいった次第であります。

 これからも、日中の積極的な協力によってこのような懸念をぬぐい去るために、また、我が国が知的財産権の問題で協力できる点があればこれはこれで積極的に協力して、むしろ、これは中国のことではなくて、我が国の産業を守るという視点からも対応してまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 中国で例えば日本の企業が被害に遭った場合に、民間だけで中国政府に物を言うと、何かいろいろな意味ですごいしっぺ返しを受けるということもあるようですから、そういうときこそやはり政府の出番だし、それは事務レベルではなくて、やはりトップである大臣が直接働きかけをするということが大事だと思います。アメリカも年二回、大臣間の会議を持っている、それで強く主張しているということですから、ぜひ大いに二階大臣には、折につけ薄熙来商務部長に強く主張をしていただきたいと思います。

 その中で、ではあと一問だけさせていただきますけれども、中国の法制度は、WTOに加盟して以来、知的財産権に関してはそれなりに進展があったように思いますけれども、運用にかなりまだまだ問題があるんではないかと思います。特に中央政府だとかあるいは上海みたいな大都市は、二階大臣がおっしゃったように、大変問題意識も持ってきていると思うし積極的な取り組みがありますけれども、問題は地方であって、地方の中では、にせもの業者が大変力があって地元の経済や雇用を支えていたりして、余り機敏に動かなかったりとか、あるいは司法制度にも、罰金やあるいはペナルティーを含めて、いろいろな問題がまだあると聞いています。

 中国における法制度や運用にどういう問題を感じているか、お尋ねをしたいと思います。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、執行の面でかなり大きな問題があるというのは御指摘のとおりでございますが、私ども見ていると、執行面だけではなくて、法規制の面でもまだ不十分な点がございます。例えば形態模倣についての刑事罰が不十分だとか、あるいは被害額が小さい場合、そういうものは刑事罰の対象にしないとか、そういうような制度もございますので、私ども、二国間協議だとか、六月に中国へ官民の合同ミッションを派遣いたしますけれども、その中でもそういう制度改正についての要請を改めて行おうというふうに思っております。

 それから、何といっても、執行の場合、どうしてもこういう制度の運用になれていない面が中国政府当局もございますので、そういう支援をしっかりやっていこうというふうに我々考えているところでございます。

 地方の政府との関係におきましても、ジェトロの上海事務所だとか広州事務所だとか、そういうところ、あるいは総領事館を使いましてそういう働きかけもしているところでございます。

野田(佳)委員 時間が参りましたので、元気な北神さんにかわります。

石田委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 質問に入る前に、先日、特許庁の視察に行かせていただきまして、大臣、副大臣、政務官、そして特許庁長官を初め関係者の皆さんに御礼を申し上げたいと思います。

 非常に勉強になりまして、審査官たちが特殊なコンピューターで審査をしている状況とか、ちょうど欧州と米国と日本側で国際会議を、多分その三つだと思うんですが、三極の会談をしている場面も見させていただきました。

 昼飯のときに大変おいしいお弁当が出て、普通は四角い箱なのが丸い箱で、俗に丸弁というふうに言われると思うんですが、これも意匠法上独創性があるのか、豆腐も四角いのを丸く切っただけではなかなか認められないという説明を受けた直後だったので、そういうマニアックな特許の世界にいざなわれたような気分でございました。

 そうした経験を踏まえて、本日質問をさせていただきたいと思います。

 意匠法の改正案でございますが、法案の個々の中身というよりは、先ほど野田委員からも冒頭お話がございましたが、経済戦略上どうなのかということをお聞きしたいと思います。

 言うまでもなく、特許制度、知的財産権というのは、普通は、自由主義経済の中では独占をできるだけ排するという中で、いわば例外的に、個人や企業の発明に対して排他的な独占権を付与する。なぜそういう例外的なことをするのかといいますと、御存じのように、特許法の第一条にありますように、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」と。

 つまり、さっきもマニアックな世界だと申し上げましたが、この勉強をしていると、だんだん細かい世界に入っていってしまって、そもそも特許というのは、国家の産業戦略の手段としてあるということを忘れがちでございます。

 一方で、この十数年間、政府も政治家も官僚もメディアも経済評論家も、私に言わせれば、極端な小さな政府病というものにかかってしまっている。国の産業政策とかいったものは過去の遺物だ、そして国が産業政策に介入すべきではないとかそういった、私に言わせれば、誤った考え、認識というものがはびこってしまっている。

 現実に、アメリカの今の経済の足腰の強さとかいったものも、レーガン、ブッシュ政権時代の行革路線、そういったこともあるんですが、レーガン時代に考案され、クリントン政権のときに採用されたヤング・プランという、まさに総合的な産業戦略に大きくよっているものだというふうに思っております。それに引き続き、アメリカでは、第二のヤング・レポートということで、イノベート・アメリカという産業戦略に関する政策が打ち出されている。

 こうしたことから、今の政府のように歳出歳入改革とか公務員削減、こういうのも大事な部分もあると思うんですが、こういった消極的なことばかりではなくて、将来への大胆な投資、環境整備というものをしなければならないというふうに思っております。

 そういった大戦略の中で知的財産権の戦略を考える必要性、これについては、大臣を初め経済産業省の皆さんや特許庁の皆さんも基本的には同じ認識だと思いますが、先ほどの野田委員の質問と多少重複しますが、経済戦略の中で知的財産権というものをどう位置づけるのか。先ほど大臣は、技術というものが大事だからそういうものを保護していかないといけないという話だったんですが、できればもう少し具体的に、どういう位置づけにあるのかということをお答えいただければと思います。

二階国務大臣 まず、北神議員から、特許庁においでをいただきまして特許庁職員を激励いただいたということは、大変ありがたいことだと思っております。

 私は、かつて運輸省の政務次官を務めたときに、大臣の代理で気象庁へ参りました。気象庁へ政務次官クラスから上の者が来たことはないんだ、よく来てくれたということでありましたので、そんなに言ってくれるなら改めて一日気象庁ということで、朝から晩まで気象庁で過ごさせていただくから、自分もある程度勉強して出直してくるということで参りまして、気象庁の皆さんからいろいろなことを伺ったことがあります。

 特許庁も、大変重要な国の施策を担っておるわけでありますが、その割に、目立ってとか華やかだとか、その瞬間瞬間の仕事には余り恵まれないわけでありまして、しかし、国の産業の重要な部分を担っておるという自負心を持ってみんなが頑張っておるわけであります。そこに委員各位がお出ましをいただいたこと、特許庁長官も大変喜んで報告をしておりましたが、今後とも、相変わらずこういうところにもしっかり光を当てていただきたい。

 そして同時に、その産物として、産業財産権の活用企業について、この前百選というのを皆さんにもお示しをさせていただいたわけでありますが、この中で、私も幾つか存じ上げております企業もあります。

 これを見ておりますと、やはり、すばらしい発展を続けておる企業というのは特許の数も多いし、それから取得する特許の率が高いんですね。特許は、出すのは、幾らでもだれでもある一定の要件を整えれば出せるわけでありますが、なかなか特許に至るまで、時間ももちろんかかりますが、必要性を認められるというところに到達できないのも数々あるわけであります。その点において、優秀な企業は率が高い、しかも国際的にもそれが堂々と認められておるということでありますから、私どもは、これから新経済成長戦略を基本に据えて、これからの日本経済の再生に向けて積極的なチャレンジを行おうとしているわけでありますが、その際、議員も御指摘になられたとおり、特許という問題をかなり大きな位置づけをして対応してまいりたいと思っておる次第であります。

 日本経済を語る場合には、議員も御承知のとおり、人口減少だ、そして高齢化社会だということは決まり文句のように言われるわけでありますが、そうしたことはわかり切ったことでありまして、さて、それでうずくまってしまっておるわけにはいかない、そこから我々はやはり立ち上がっていかなくてはならない。そういう意味で、知的財産の問題等は重要な役割を果たす分野である。したがって、人の問題につきましても、何でも減らせばいいというのではなくて、重要なところ、お国のために役に立つ分野についてはむしろもっと人をふやすぐらい、充実していくぐらいのことがなくてはならない。

 それと同時に、やはり特許のスピードアップですね。これも、特許というのは申請して長く待たされるものだということが世間の相場になっておりますが、こういうことは一日も早くぬぐい去って、新しく、みんなが意欲に燃えて特許申請をしてくださるようにしていきたいと思っております。

 また、対外的な問題で一つ例を挙げれば、ロシアのエネルギー担当大臣とエネルギーの問題について話し合った際に、日本でもロシアに進出する、投資をする企業の中に、ロシアに対しての苦情がやはり多いんだ、しかし、一企業でロシア政府に苦情を言っていっても、それが日本と同じようなルールで取り扱われるかどうかということは常に明らかではない。

 したがって、ロシアの側にも日本の側にも苦情相談所を設けようじゃないか、相互にその苦情相談所で話し合っていくというふうにしてはどうかという話をしましたら、大賛成だ、こう言われるから、大賛成と言うたままでまた半年も無為に過ごすというのではいかぬので、きょうはお互いの責任者を決めようではないかということを申し上げましたら、向こうは直ちに責任者の名前を提示して、ここに同席しております、自分の、大臣の最も信頼する人物を充てる、こう言われましたから、私もあらかじめ考えてはおったんですが、直ちに我が国の方では長谷川審議官をこれに充てるということで、しっかり対応する。

 そうしますと、先般、その苦情が一件見事に解決ができました。その解決できたということを、日本側や日本の関係者が喜ぶだけではなくて、ロシア側が喜んでいるんです。これでお互いに信頼関係に基づいて事業を展開していくことができる、日本のためだけではなくて、ロシアにとってもありがたいということでありました。

 先ほど来、中国の問題も出ておりましたが、各国との間で知的財産権をめぐって問題をスムーズに解決するためにどうすればいいか、こういうことも考えていきたいと思っておりますが、いずれにしましても、これからの日本経済を日はまた上るというところへ持っていくためには、知的財産権は重要な役割を果たしてくれるであろうということを期待している次第であります。

北神委員 大変力強い決意のほどをお聞かせいただきました。また、産業戦略の中で、知的財産権について、人員を集中的にふやさなければならないとか、審査の迅速性の話とか、あるいは対外的な交渉の話も具体的にお述べになられました。

 そこで、これは大臣というよりは事務方でも結構なんですが、もう一つ踏み込んで、産業戦略といっても、新経済成長戦略というものもぱらっと読ませていただきましたが、横断的な部分で知的財産の部分をとらえている。基本的に、出願されたものについては迅速にどんどん審査していくとか、あるいは横断的に教育、人を育てていかないといけないとか、そういった話はございますが、私は、それと同時に、やはり縦の部分、つまり、日本の今後十年、二十年を担っていくリーディング産業というのは何なのか。たしか、新成長分野、潜在的成長分野とかなんかそういうものも指定されていると思いますが、そういったものも大変大事だ。アメリカのヤング・レポートも、やはりIT産業とか投資銀行を中心とした金融とか、そういったものをアメリカの二十一世紀を担う産業だという位置づけの中で戦略を組み立てている。

 戦後の日本も、造船、鉄鋼、その次は電機、自動車、そういった国際的競争力の大変強い企業が経済を牽引している。そういった事実がありますので、ただ規制緩和をして、何か民間からきっといいものは出るとか、そういった待ちの構えではなくて、積極的に焦点を定めてやっていくべきだと思いますが、そういった分野について、知的財産権をどのように考えていくべきか、どのように対応していくべきかということについて、見解がございましたら教えていただきたいと思います。

大辻政府参考人 お答え申し上げます。

 新経済成長戦略におきましては、我が国産業の国際競争力の強化を大きな柱に挙げております。

 具体的には、将来の国際的な市場展開をねらえる分野といたしまして、燃料電池や情報家電などのいわゆる戦略七分野に加えまして、次世代知能ロボットや、がん克服のための先進的な医療機器、次世代環境航空機などを挙げておりまして、こうした産業の競争力を強化したいというふうに考えております。

 このため、企業における研究開発のみではありませんで、基礎的な研究や複数分野の融合した研究開発が重要だと考えております。例えば、燃料電池では分子レベルでの材料工学が必要であり、また、がん克服のためには医療と物理、化学などの融合が不可欠ということで、こうした研究開発に重点的に取り組むこととしております。

 その際、加えて、こうした研究開発の成果を知的財産といたしまして保護したり、また、国際標準の獲得により成果を広めるなど、市場化のための施策も重要と認識しております。

 新経済成長戦略におきましては、特に知財政策として、特許審査の迅速化、それから特許情報の有効活用、国際的な市場展開に必要な世界的な特許制度の調和、また技術ノウハウの管理強化などの分野を盛り込んでいる次第でございます。

 このような知財政策のみならず、人材育成、資金供給の円滑化などのさまざまな施策を組み合わせることによりまして、我が国を世界のイノベーションセンターとするとともに、アジア等近隣諸国の発展に貢献し、ともに成長していくということを目指してまいりたいと考えております。

二階国務大臣 ただいま北神委員の御質問を拝聴しながら、私も大変同感だという思いをしておりますのは、ただ単に知的財産の問題がどうだとか、あるいは、できるだけ自由に闊達にみんなやっていただければ、その中から新しい発明が生み出されてくるんだというふうな、単に楽観的といいますか、自由放任的に、待ちの姿勢、言葉は何か新しいことを言っているように聞こえますが、実際は待ちの姿勢。私は、それではこの科学技術の進歩に役所がついていけない、後追いで走っていくようなことになってはならない。

 そういう意味で、今説明申し上げたような、次世代のいわゆる燃料電池の問題等にしましても、あれは慶応大学が中心になって、いろいろな企業の協力、参加をいただいて、今時速三百七十キロで走れる自動車に到達し、これは実験段階ですから当然のことでありますが、一台二億円ぐらいかかるわけであります。これではまだ一般にというわけにもまいりませんので、今考えていただいているのは、百台ぐらいつくって三千万円ぐらいでどうかというんですが、これもちょっと高過ぎる。そうすれば、これは我々素人の考えでありますが、三百台つくって千万円ぐらいにならないかというためには、やはり経済産業省が先頭に立ってこのプランを後押ししなきゃいけない。それは、フレーフレーということを言っているだけではなくて、基本的に、経済的あるいは予算的な支援をしていかなくてはならない。

 大蔵省御出身の北神議員が一番詳しいところでありますが、予算は既に決まってしまっておるわけでありますから、今直ちにというわけにはいかないというのは、これは常識ですが、我々は、その常識を破ってでも現在経済産業省に与えられておる予算の中から幾らかでも捻出して、この問題に対して対応する、その激励が関係者の一層の奮起を促すであろう。

 小泉総理もこのことに対して大変御熱心にサポートしていただいておりますので、私は、一例でありますが、そうしたこともこれから役所が先頭を切ってやっていくということでなければ、後の、説明を聞いて解説して回るだけの役所であってはならない、私はそう考えておる次第であります。

北神委員 本当にありがとうございます。

 そのことについてきょう触れる予定はなかったんですが、まさに技術立国ということで、二十五兆円ぐらい大学の研究機関とか国立研究所とかそこに投資をする、そこから民間に技術移転がなされるということをも予定しているわけですが、それも本当に、大臣が今おっしゃったとおり、ただそこでほったらかしていてもなかなか民間に移転できないわけですよね。今、慶応大学の車の話もありましたが、なかなかコストが高過ぎると。

 ですから、そういった意味で、私は、今言われたように、政府が率先してその車のコストをより安くするためにバックアップするとか、あるいは、例えば特別な繊維の開発がなされて非常に防火にいいものができた、それだったら消防庁の消防士の服のために政府が調達するとか、そこまでやはり力を入れていかなければなかなか民間の技術移転というものは図れないというふうに思いますので、僣越ながら、そういった姿勢で臨んでいただければ本当にいいというふうに思います。

 それで、もう一つ私がきょう申し上げたいのは、ではそういったいろいろな分野を決めておられる、成長七分野、さらには次世代のロボットとか環境技術とか医療技術とか、こういったことに関連して、特許庁の中の予算とか人員の配分というものも本当は考えていかなければならない、あるいはもうお考えになっているのかもしれませんが。特許庁の組織という資料を見ますと、特許審査第一部、第二部、第三部、第四部と、それでこれが、物理、光学に関する発明の審査、機械に関する発明の審査、化学に関する発明の審査、情報通信に関する発明の審査と。

 そもそもこの縦割りでいいのかとか、今後の産業に合わせて、つまり私が申し上げたいのは、例えばロボットに力を入れるんだったら、それに関係する専門家の審査官というものを集中的に育てるとか、そこに予算と人員を充てるとか、そういった内部の機構の改正というものもしていかなければならないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

中嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁内の人材配置、具体的には審査官の配置でございますけれども、やはり、技術進歩の動向に応じまして、具体的には出願・審査請求動向に対応して、全体としてバランスをとって適切に配置するように、これは当然でございます。

 この点は、政府全体の知的財産推進計画二〇〇五におきましても、審査官を技術分野の社会的重要性や出願・審査請求動向の見通し等を踏まえて重点的に配置するというふうに決められてございます。例えば、最近ですと、バイオの関連の分野で審査官を増員しておりますし、また、御指摘のロボットなどにつきましても、一つのグループをつくって審査に当たっております。

 それから、審査官の質の向上につきましても、法律的な研修は当然でございますけれども、常に最先端の技術動向にキャッチアップするということから、民間企業との交流、例えば、民間に一時的に派遣をして、民間の専門家から最先端の技術動向を教えていただくとかいうような研修も行っておりますし、また他省庁への出向とか、あるいは、場合によっては在外大使館でも勤務するとか、さまざまな機会を設けることによりまして、ある意味で広い産業政策的な観点も含めて、かつ最先端の技術動向にもキャッチアップした的確な審査を行うように取り組んでおります。

二階国務大臣 ちょうどいい機会ですから申し上げておきたいと思いますが、がん対策の問題につきまして、今、国会でもいろいろ御論議をいただいておるところでありますが、特に現在の内閣におきましては、がん対策の問題では、川崎厚労相、そして小坂文科相、それにこの私、三人ががん対策の担当閣僚ということに相なっておるわけでありまして、先般も三閣僚が集いましてこれからの対策等についてお互いに議論をし合ったわけであります。私どもの方は、御案内のように、医療機器の方の部分を担当するわけでありますが、これも、日本の中小企業の皆さんがしっかり頑張ってがん医療の対策につきまして大きな貢献をしておるという事実を承知いたしております。

 そこで、今議員御指摘のように、それではがん対策についてどれだけの知見を持った人が特許庁に存在するかということになりますと、これはそんなにがんの大家を大勢特許庁に常に雇っておくというわけにもまいりません。そこで、どんな形にすれば医療機器の進歩とそして現場の医療の状態、何を必要とするか、現場の声もやはりお聞きしなければならない。そういう意味でこれから、がん対策一つとらえてみましても、大変膨大な情報と知見が必要なわけでありまして、そうしたことと特許行政との間をどう円滑につないでいくかという問題について、私どもは問題意識を持って対応していきたいと思っておりますので、これはぜひ超党派で御理解、御協力をお願いしておきたいと思う次第であります。

北神委員 ありがとうございます。

 我々も、私の一存では何も決められませんが、我が党も多分、そういった問題意識を持って協力をしていきたいというふうに思います。

 今、機構の中の予算とか人員の配置の話をしましたが、もう一つ申し上げたいのは、個別の、今後のリーディング産業、これから力を入れなければならない産業に応じて特許の審査をどう考えるかということにつきまして、優先順位をつけるという観点もあると思うんですね。

 これはなかなか難しくて、基本原則は、出願されて、そして審査請求のあったものについて公平にすべて対応していくということが原則だとは思うんですが、これも、経済戦略というものを非常に大事にして、知財というものを極めて密接にそれに連関するという位置づけを考えるのであれば、例えば、先ほどのバイオとかロボットについてはある程度優先的に審査をしてどんどんと進めていく。というのは、これもやはり時間の競争でございまして、アメリカとかヨーロッパとか、同じ分野について研究者たちが心血注いで研究をしているわけでございまして、日本としては、大臣が先ほどおっしゃったように、人口減少、高齢化の中で、知恵で勝負するしかないということでございましたら、やはりそういったところに力を入れていくべきではないか。

 私が調べましたところ、アメリカなんかでは、たしか公益の事業とか環境、エネルギー開発に関連するものについては審査を優先するということになっておりまして、私もまだ詳しくは勉強していないんですが、産業戦略的な観点がどこまであるのかちょっとわかりません。

 ただ、一方で、韓国では、輸出促進に関連する案件とか、あるいは認定されたベンチャー企業とか、これはちょっと産業戦略から外れますが、防衛関連の特許とかについては優先的に審査を進めるという事例があるわけでございますから、そういったことも我が国において考えられるんではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

中嶋政府参考人 今の御指摘の点でございますけれども、もちろん常に最先端の技術動向、重点分野とか意識するわけでございますけれども、具体的に利用可能な制度といたしまして、早期審査制度というのがございます。

 これは、原則としてはもちろん出願の順番に応じてすべて平等に扱っていくということが大原則でございますけれども、特に、例えば中小企業の場合、あるいは企業の大小を問わず国際出願に関係しているものである場合、多分こういう技術最先端の分野というのは、先ほどからお話が出ておりますように国際出願も同時にされている場合が多いと思うんですけれども、そういったような場合、あるいは大学とかTLOとかそういった関係者からの出願の場合には、早期出願を申請していただいて、優先的に早く審査するという制度もございます。

 そういうことの御利用を普及させていきながら、常にどういう制度がいいのか引き続き考えていきたいというふうに思っております。

北神委員 ぜひそういった観点で、ほかの国の事例を調べて、もし本当にそういうことを産業戦略的にやっている部分もあるんであれば、別に外国に倣う必要もないですし、日本として力を入れるという意味でそういったことも十分考えられるんではないかというふうに思いますので、提言したいと思います。

 時間がなくなってきましたので。今、人員配置とか、そういった重点配分のお話をさせていただきましたが、今後、請求期間を七年から三年に縮小したり、先ほど牧原委員とか野田委員からもお話がございました分割審査制度というものも導入される中、審査件数が大変急増していく。これは当然、人員確保というものが極めて大事な話。いろいろ大ぶろしきを広げて私も質問させていただきましたが、ここの部分が確保されなければ、口で戦略的とか言っても、なかなかままならないわけでございますから、大変大事な部分だというふうに思っております。

 ところが、冒頭申し上げたとおり、今、日本の風潮は、行政改革の御旗のもとでただただ公務員を削減すればいい、これは私たちも、もちろん民主党もそういうことを強く主張しておりますし、無駄なところを削るというのは、民間が血を流しながらリストラをしている中、これはやむを得ない部分だというふうに思うんですが、ただ、やはりめり張りをつけていかなければならない。

 今申し上げたように、この産業戦略なるものが日本の二十一世紀の活力の非常に大きな柱だというふうに私は思うわけでございますが、もしそうであるならば、この富を増大していく基本的な官庁である、経済産業省もそうですが、知的財産の面でいけば特許庁については力を入れていかなければならないというふうに私は思っております。ただ単純に、一律に各役所にキャップをつけて人員削減をするというのは、私は、余りにも短絡的、そして戦略性が全くない行政改革だというふうに思っております。

 これは総務省の局長だと思いますが、ぜひ特許庁については、特別扱いというのもあれですけれども、やはり戦略的に見ていかなければならない。特許庁について、今の人員の、一種、定員の枠みたいなものがどうなっているのか。私は、それを基本的に外して、短期的に急増させていくべきだと思うんですが、いかがお考えでしょうか。

藤井政府参考人 私ども行政管理局では、ここ四十年来、厳しい定員管理というのをやらせていただいているわけですが、その中でも、政府全体の合理化、効率化を進めながらも、行政需要の増大しているところには的確に対応するという方針で対応してきたところでございます。特に、現在、総人件費抑制の観点から、純減を五%以上図る、そういう重い課題の中で定員管理をやっているところなんですが、そういう中でもやはりめり張りのきいた再配置をするということが極めて重要な課題と思っております。したがいまして、今後とも、引き続き厳しい純減を図りつつも、やはりめり張りをつけて対応するというようなことでやりたいと思っております。

 特許庁の件につきましては、これは従来、特許庁でも、増大する行政需要の中で、いろいろ情報システム化を図るとか、あるいは組織内の定員配置を見直すとか、あるいは業務委託を進められるとか、みずからいろいろ努力していただいているというふうに理解しております。その中でも、やはり本当に必要な増員については、私どもとしても、よく相談した上で的確に対応させていただいたというふうに考えております。とりわけ、近年、これは特許庁の方からも御説明があるかもしれませんが、任期つきの審査官の制度なんかもつくっていろいろ工夫をしていただいております。

 今後のことについては、まず来年度の要求をお聞きしてからということになりますが、そういったことも踏まえながら的確に対応していくという考えでおります。

北神委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。これは特許庁だけの話ではなくて、要は、今後の日本の経済社会の変化に応じてどういった行政サービスがこれから強く求められるのか、そういった視点を持っていないと本当に問題だと私は思います。

 今議論になっている金融の世界では、証券取引等監視委員会とかあります。つまり、どんどん経済の事前規制というものを外して自由化するということは、より準司法的な機能というものが役所に求められていく。つまり、今までは事前規制で、ある程度そこで行政が民間にコントロールを及ぼすことができたんですが、それを自由化しちゃうと、基本的に自由だ、ただ法律やルールを守りなさいと。これが難しいんですね。つまり、そこで本当にみんなが法律やルールを遵守しているかということをずっと監視しないといけない。これは大変な労力でありますし、それをさらにまた取り締まって罰則をしないといけないということは、アメリカのSECと日本の証券取引等監視委員会の人員の数の違いからいっても明白だというふうに思っております。

 そういった意味で、例えば公正取引委員会とか、そういった分野も本当は強化していかなければならないだろうし、きょう話題になっている特許庁についても、今後、産業戦略というものをしっかり考えていかなければならない、それにふさわしい人員配置をしていかなければならないというふうに思います。

 最後に、これもできれば大臣にお答えいただきたいんですが、今申し上げていることは非常に横断的な話でございます。いろいろな産業分野にもかかわっていることでございますし、今言った、行政改革の人員を特許庁についてはふやしていかなければならない、選択と集中というものも図っていかなければならないということを考えると、経済産業省も頑張っていただかなければならないんですが、私は、本当は、これは政府を挙げてやっていかなければならない大事な問題が、まさにこの産業戦略だというふうに思っているわけでございます。

 ところが、知的財産権については、総理大臣が本部長で、政府を挙げて横断的にやっておられるわけでございますが、産業戦略について、これがないのではないかと。

 昔、何か小渕さんか橋本さんのときにあったような気がしますけれども、私は、知的財産よりもまず産業戦略というものが、総理大臣を本部長ぐらいにして、役所横断的にして、まさにその中でいろいろな分野について、どこに徹底的に力を入れていくのか、そのための行政のバックアップ体制とかいったものをどう戦略的に考えるのか、そういったことをしなければならないと思うんですが、肝心の大もとがないので、そこをぜひ今後つくっていくように大臣の方からも働きかけをお願いしたいなというふうに思います。いかがでしょう。

二階国務大臣 先ほど来、我が特許庁につきまして大変御理解の深い御支援の弁をちょうだいし、力強く思っておるところであります。また、改めて私もその責任を痛感しているところであります。

 先ほど総務省からも大変御理解の深い御答弁がありましたが、定員純減につきましては、これは小泉内閣のもとで決定されたことでありますから、それはそれで遵守していくことは当然のことでありますが、たびたび議員からも御指摘のとおり、つまり、めり張りのきいた人事配置ということを行っていく必要があるわけであります。

 そこで、今度は経済産業省の中で配置転換等を含めて対応していくということになりますと、特許庁だけが膨らんでいきますと他の方へしわ寄せが来るようなことになって、極めて役人的な発想でありますが、他の部分に迷惑を及ぼさないような範囲でということになりますと、ただいま議員が御指摘のように、特許庁というものに対しての認識、産業政策に対してどう考えるかということ、これも私は、またいろいろな会議等でその主張を述べていきたいと思っております。

 経済産業省の中で人事配置といってみたところで、仮にある一定の人員を特許庁へ配置してみても、どれほど役に立つかということを考えれば、私はやはり、OBの活用とか、あるいはまた民間にお願いできるところは民間にもお願いする、そうしたことを十分駆使して対応していきたい、現在の状況に合うような形で取り組んでいきたい。

 しかし、行く行くの理想は、特許庁というものの存在を、もう少し政治として、あるいは国全体として大きくとらえていく必要がある。これが我が国経済産業の発展に大きく役に立つ時代が来る、また現に来ておる、このように判断をいたしますので、委員各位の御協力をいただきながら、経済産業省としても真剣な取り組みを行ってまいりたいと思っております。

北神委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終了いたします。ありがとうございました。

石田委員長 次回は、来る三十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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