衆議院

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第2号 平成19年2月21日(水曜日)

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平成十九年二月二十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 中山 泰秀君

   理事 宮腰 光寛君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 赤羽 一嘉君

      あかま二郎君    小此木八郎君

      近江屋信広君    岡部 英明君

      片山さつき君    川条 志嘉君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    平  将明君

      武田 良太君    谷川 弥一君

      土井 真樹君    丹羽 秀樹君

      野田  毅君    橋本  岳君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      増原 義剛君    武藤 容治君

      森  英介君    山本 明彦君

      吉川 貴盛君    大畠 章宏君

      太田 和美君    川端 達夫君

      菊田真紀子君    北神 圭朗君

      細野 豪志君    三谷 光男君

      森本 哲生君    柚木 道義君

      鷲尾英一郎君    高木美智代君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      松山 隆英君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   鵜瀞 恵子君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            私市 光生君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           鳥生  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           吉田 岳志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       松井 英生君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          肥塚 雅博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    石毛 博行君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    加藤 文彦君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     あかま二郎君

  近藤三津枝君     近江屋信広君

  細野 豪志君     菊田真紀子君

  三谷 光男君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     片山さつき君

  近江屋信広君     近藤三津枝君

  菊田真紀子君     細野 豪志君

  森本 哲生君     三谷 光男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

上田委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長松山隆英君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長鵜瀞恵子君、金融庁総務企画局審議官畑中龍太郎君、金融庁総務企画局参事官山崎穰一君、金融庁総務企画局参事官私市光生君、厚生労働省職業安定局次長鳥生隆君、農林水産省大臣官房審議官吉田岳志君、経済産業省大臣官房商務流通審議官松井英生君、経済産業省商務情報政策局長肥塚雅博君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、中小企業庁長官石毛博行君及び中小企業庁次長加藤文彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平将明君。

平委員 おはようございます。自由民主党の平将明でございます。

 本日、私、四十歳の誕生日ということで、この機会に御質問をする機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、経済産業の基本施策に関する件ということで、大臣も所信表明の中で述べられているように、中小企業政策に関しては金融は極めて重要なファクターでありますので、金融に絞ってきょうは質問をさせていただきたいと思います。

 お手元に資料を配らせていただきましたので、ちょっと資料を見ていただきたいと思います。

 これは、日本の金融の、縦軸に金利、横軸にリスクをとった表でありますけれども、日本の間接金融の問題点は、まずは、銀行というものがいわゆる担保主義また保証をとるという形で低い金利のところに分布をしている、そして、ミドル市場というのが非常に弱い、ほとんど不在の状態の中で、いわゆるグレーゾーン、商工ローンや消費者金融がその上に乗っかってくる、こういう非常にいびつな環境にあるということであります。言ってみれば、金利の連続性がないというところに問題があるわけであります。

 まず銀行でありますけれども、護送船団方式と一時言われていたように、官庁がはしの上げおろしまで指図をする。銀行は全くの横並び体質である。さらに言えば、中小企業に対する意識に大銀行等の意識というのは非常に大きな問題があったのじゃないかなと。大きな企業を担当すると何か偉いような気分になって、中小企業を担当するとそうでもない、そのようなちょっとゆがんだ意識があったと思います。

 銀行は、利息制限法の範囲の中で、そのリスクに見合って金利の値づけをするというのが本来の銀行業であるにもかかわらず、担保をとって、保証をとって、デフォルトしても痛くもかゆくもないというところで、低い金利のサービスしかしてこなかった。そして、ミドルがほとんどこの金融には存在しませんでしたから、銀行でお金を借りられないということになると、一足飛びにグレーゾーンに行かなければいけない。銀行から商工ローンに飛び越えなければお金が借りられないという状態になっていたわけであります。その結果、グレーゾーンが肥大化をしていったということも言えるんだと思います。

 また、本来であれば信金、信組が、リレーションシップバンキング、密接な関係を持って目ききをしてお金を貸す、そういった機能を果たさなければいけないのですが、不良債権の問題、自己資本の問題で、私が見る限りでは、信金、信組も新たな融資を開発するというチャレンジ精神はほとんど皆無ではないかなと思います。現場の声を聞いていただければわかりますけれども、今、信金、信組で貸し出しの数値目標を持たされていない、投信ばかり売ってこいと言われているというのが現状ではないかなというふうに思っております。

 そのような前提条件の中で質問をさせていただきたいのですが、まずは、一つは貸金業規制法の改正がありました。グレーゾーンの金利がなくなるということでございます。これは、消費者を保護する、多重債務者を救済するといった面では、それはその意味があると思います。しかしながら、消費者と、小さいながらもリスクをとってビジネスをやっている人間というのは明らかに違うわけでありまして、それを一緒くたにして金利を丸ごとがさっと下げる、そういった意味では私はこれは反対でありました。金融社会主義、統制価格のような金融のマーケットをつくるのは私は反対でありましたけれども、これは成立をしてしまいました。

 そんな中でお伺いをしたいのですが、このグラフでいくと商工ローンより上の中で、事業者向け、消費者向けではなくて事業者向けの市場規模、対象貸出先等、またその影響等はどのように想定をされているのか、お伺いをしたいと思います。

私市政府参考人 お答えをいたします。

 事業者向けの貸金業者の業務報告書をもとに、貸金業者ごとの総貸付残高を平均約定金利に集計したものを金融庁として持っております。それによりますと、金利区分が一六%超としている貸金業者の貸付残高が約九千億円余り、十七年三月末における事業者向けの貸付残高の合計約十八兆六千億円のうち五%ございました。

 もとより、業務報告書では顧客ごとの金利までは求めておりませんので、いわゆるグレーゾーンの金利での貸付額を正確に把握することは困難でございますけれども、一般に事業者向け融資額は比較的高額であること、それから、利息制限法では百万円以上の貸し付けの上限金利を一五%としていることを勘案すれば、この九千億円余りという数字はおおむね御指摘のグレーゾーン金利での貸付額を示すものではないかというふうに考えております。

平委員 今、おおむね九千億程度ではないかという話がありました。グレーゾーンに係る金融は、貸出先は非常に小さい。まさにスモールビジネスであって、百万、二百万、三百万、そのぐらいのボリュームのところだと思います。九千億、約一兆円とすると、例えば二百万アベレージでとっても五十万社いるということになるんだと思います。

 そして、私がちょっと問題だなと思っているのは、先ほども言ったように、日本の金融環境はこのミドル市場が育っていないんですね。私の経験からいくと、ミドルでこのグレーゾーン金利を救えるのは三割という頭を持っています。無担保でミドルで貸すと、ある銀行が、今八千社、九千社ぐらい貸していますけれども、大体七割謝絶ですね、三割しか貸せない。そうした場合、五十万社の三割が、ミドルのマーケットがちゃんとあることを前提として、三割は救えます。では、この七割はどうするんですかということになると思うんですね。

 この辺は、何かそういう問題意識、また、これに対する対応策なり何なりを、今の時点でどういう認識を持たれているか、ちょっと教えていただきたいと思います。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、今回の貸金業法の改正によりまして、昨年の十二月の改正法公布後おおむね三年をめどに、出資法の上限金利が利息制限法の水準まで引き下げられる。同時に、グレーゾーン金利が廃止されることになるわけでございます。

 これによりまして、御指摘のございました事業者向けの貸し付けを含めまして、従来貸し付けが可能でありましたリスクの高い借り手の一部に対しまして貸し付けができなくなるのではないかという指摘がございます。これにつきましては、民間金融機関において、いわゆるミドルリスク・ミドルリターンの融資も活用して、地域において健全な零細企業に必要な資金を供給することが重要であると私ども認識をしております。

 このため、金融庁といたしましては、先ほど御指摘がございました中小地域金融機関に対しまして、融資審査における目ききの向上でありますとか、融資手法の多様化等を促すなど、地域密着型金融の一層の推進、さらには中小企業の実態に即した検査の推進、また、与信取引に対する顧客への説明体制の整備、こういったことの施策を推進しているところでございまして、今後とも、我が国経済の基盤を支える中小企業に対する金融の円滑化に向け、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 なお、この貸金業法改正で影響を受ける借り手への対応につきましては、セーフティーネットによる対応も含めて、どのような方策があり得るか、現在、内閣に設置された多重債務者対策本部において関係省庁と検討を行っているところでございます。

平委員 グレーゾーン金利が廃止されるのは三年後ということもあります。しかしながら、リアルなビジネスの世界は、法律が決まりそうだなといった時点でもう動き出すわけですね。事業者向けノンバンクも、今、実態を見ると、新聞報道等にもありますけれども、撤退をするもしくは貸し出しのアセットを売却する、そういった動きはもう既に出ています。さらに言えば、事業者向けノンバンクに対する銀行の融資姿勢は激変をしています。早く金返せということであります。ですから、その猶予期間といわゆる現場での現象の起こり方とはギャップがあるんですね。すぐに起こるということだと思います。今の金融庁の答弁は、考え得ることはすべて言いましたと。ただ、それを実現するのは極めて難しいですね。

 そんな中で、例えば新しい銀行をつくりましたと、それでミドルでおさまるデフォルト比率におさめられるかどうか、そのビジネスモデルが通用するかどうか、それを検証するには、最低でも三年、普通五年ぐらいかかるんですね。五年ぐらいかかった上で、そのビジネスモデルで実際いけるのかどうかというのがわかるわけですから、今の時点でそういう具体的な動きがなければ、これは三年後、五年後、同じまま、同じような状況が続くのではないかなと私は思いますので、その点よくお願いをしたいと思います。

 リアルに本当にビジネスをしている人たちですから、極めて小口で、スモールビジネスではありますけれども、ノンバンクから借りているからといって、すぐ、将来的に破綻をするということではないんですね。意外と、こういう人たちというのは何十年もビジネスをやっていますので、ぜひそういう現場のリアルな感覚を持って取り組んでいただきたいと思います。

 あわせて、今、金融庁からもお答えいただきましたが、このミドル市場を育成していくというのは極めて重要です。先ほども言いましたけれども、銀行が貸しはがし、貸し渋りをやると、ミドルがないのでグレーゾーンに行っちゃうんですね。逆のパターンもあります。特に飲食業とか小さな商売をやっている人は、ミドルがあれば、商工ローンからお金を借りていても、キャッシュフローがあれば、今度ミドルに行って、利益が出ていく、蓄積ができる、そうすると今度は普通の銀行でお金が借りられるようになるんですね。

 ですから、グレーゾーンをなくすのはいいんだけれども、グレーゾーンをなくすんだったら、グレーからミドル、ミドルから普通の銀行に行くその道筋というものをつくる必要があると思うんです。

 今言ったように、では、ミドル、新規参入しなさい、普通の銀行やりなさいと言ったって、なかなかこれは大変な話なので、すぐに取り組むべきことだと思いますけれども、その辺、中小企業庁の見解を教えてください。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 貸金業法の改正の過程で、私ども、商工会とか商工会議所とか商店街振興組合の団体とかそういうところから、それから、現場でそういう中小企業を支援してくださっている中小企業診断士の方、税理士の方、いろいろ意見を聞いてまいりました。

 そういう中で、やはり貸金業問題との関係で問題なのは、高金利による融資に依存するようなそういう状態になる前に、早目に事業再生を行うことが何よりもまず重要だという指摘をいただいております。

 そういうことを受けて、私どもは、事業再生に早目に取りかかる、あるいは再チャレンジに早目に取りかかる、そういうようなことの相談窓口をまずつくろうということで、再チャレンジのための相談窓口あるいは再生支援協議会の活用といったようなことで、まず相談の事業を行っております。加えまして、金融面での支援ということで、中小企業金融公庫あるいは信用保証協会で、再生あるいは再チャレンジ、そういうものを支援する政策融資あるいは保証制度、そういったようなものを行ってきております。

 ただ、こういったようなことを行ってきておりますけれども、今、平先生御指摘のとおり、ミドルリスクのマーケットについてはまだまだ取り組みはする余地があるのではないかという御指摘でございますので、私ども、そういうことについてさらに研究をしていきたいというふうには思っているところでございます。

平委員 先ほどの取り組みというのはまさにそうなんですが、結局、いいときもあれば悪いときもある、中小企業の中で。そういったときに、グレーゾーンですぽんとそこをとられちゃうと、いざトラブルが起きて資金繰りをするときに、すごい足かせになるんですね。今この図を見ていただければ、ミドルができれば行ったり来たりするんですよ、この中で。いいときもあれば悪いときもあるということですから。ミドルがないと、ここに大きな谷ができて、銀行から高金利に行ったらもう二度と戻ってこれないということになるんですね。

 ですから、そういった意味では、ミドルをしっかり育成し、選択可能な金融マーケットをつくるということは極めて重要だと思いますので、その辺、ぜひそういう発想を持っていただきたいと思います。

 また、今発言がありましたけれども、再チャレンジ、事業再生とありますけれども、廃業支援というパッケージの施策も大事だと思うんですよね。一回廃業させてあげる。廃業するのってすごい大変なんですよ。いろいろな法律的な問題とかあってなかなか踏み切れないんだけれども、廃業を支援することによってまた再チャレンジできるということもありますので、それをちょっと、話がそれますけれども、ぜひ検討いただきたいと思います。

 そんな中で、信用保証協会の保証について、責任共有制度が導入されるということも今回挙がっているわけでありますけれども、先ほど言いましたように、信金、信組、土地を担保にとります、もしくは信用保証協会の保証でお金を貸し出しますと。それ以外の新たな融資に対して、全然私は意欲を感じない、投信ばかり売って歩いている、そういうイメージがあります。

 そんな中で、今回、リスクが一〇〇、ゼロから一五対八五になると思います。一五%ぐらいのリスクは、信組、信金、とって当たり前だと私も思いますけれども、今の信金、信組のていたらくを見ていると、一五%のリスクをとれるとも思わない。そこでいわゆる信用収縮が起こるのではないかなという懸念を持っています。

 先ほどのグレーゾーン金利廃止に関連しても、スモールビジネスに対して影響が想定される中で、このような件についてどのような認識を持っているか教えてください。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる責任共有制度というものを検討してまいりまして、平成十七年六月に、中小企業政策審議会の基本政策部会の取りまとめで、こういうものを導入するという提言をいただいております。金融機関が融資額の、一五%じゃなくて二〇%でございますけれども、二〇%について責任を負うという制度でございますが、それをこの十月に導入しようということにしております。

 ただ、この導入に際しましては、今先生おっしゃいましたように、とりわけ中小の零細企業、そういうところに信用収縮が起こってしまうのでは非常に問題ですので、私たちは、この制度を導入するに当たりまして、当面は、災害とか取引先の倒産、そういったようなことで一時的に経営悪化した企業向けのセーフティーネット保証、そういうもの、それから、従業員が二十名以下あるいは残高が一千二百五十万円以下、そういう中小企業を対象としまして小口の零細企業向け保証というものを新たに設けまして、そういうものについては引き続き一〇〇%保証をするという形で、小企業の人たちが融資に困らないように努力をしているところでございます。

平委員 小企業に対する配慮は理解をしました。もうちょっと大き目のところもちょっと心配ですので、さらに検討をしていただきたいと思います。

 今るる申し上げましたとおり、これから公的金融機関は徐々にフェードアウトをして、民間と競争していこうということであります。また、当然、自己責任のもと、こういうものはやっていくべきであって、お金を、税金を使ってセーフティーネットばかりつくるというのもいかがなものかと私は思います。

 しかしながら、そのためには、選択可能な金融のマーケットが必要だと思うんですね。いろいろなリスクのとり方をする銀行がいる、いろいろな金利帯でそのサービスを行う銀行がいる。Aという銀行がその融資を引き揚げたときに、Bという銀行が違う切り口でリスクをとって入ってくる、そういった多様性のある銀行のサービスが必要であって、一昔前の、Aという銀行に行くと、BもCもDもEも同じ理由で断られるようなことではいけないと思っております。

 そのような中で、こういう金融の多様性を中小企業のためにしっかりと整備していくということが中小企業政策の中で不可欠であると思いますけれども、最後に甘利大臣、所見をお願いいたします。

甘利国務大臣 平先生御指摘のとおり、リスクに応じてローからハイまで直接、間接の金融市場があるということが大事であります。

 そもそも、不動産担保主義とか個人保証主義が横行して、その企業の技術力とか将来性とか人的な資源とか、従来の金融審査以外の部分の審査能力が育っていないということが問題だと思っております。リレーションシップバンキングの大切さということが言われますのは、地域に密着した金融機関が、その地域との長いつき合いの中でのよさ、信用力、将来性というものをちゃんと把握して、それに向けて融資ができるということを育てていかなきゃならないというふうに思っております。

 公的な制度としても、個人保証に依存しないとかあるいは不動産に依存しない、動産担保融資とか売り掛け債権担保融資とか、あるいは公的金融ではいわゆるマル経の活用とか、いろいろ合わせわざを使って補完をしていきますが、要は、民間金融も自分の審査能力と人間関係をしっかり磨き構築して、従来型でない金融にもちゃんとそれをしていくということが大事だというふうに思っております。

平委員 終わります。ありがとうございました。

上田委員長 次に、武藤容治君。

武藤委員 おはようございます。自民党の武藤容治でございます。

 私の先代と同じく、甘利大臣はずっと今まで商工系の畑を歩かれまして、このたび、日本の産業、エネルギー政策と知的財産政策のトップリーダーとして、名実ともにトップとなり、経済産業大臣として御就任されました。

 きょう、こういう形で御質問をいただく機会を賜りましたこと、本当にまことに光栄に存じます。ひとつまたよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。

 さて、安倍総理大臣の施政方針演説にも、冒頭に、活力に満ちた経済の不可欠さがはっきりとうたわれました。また、昨日の甘利大臣の所信表明の演説におかれましても、力強い、我が国の実態に照らし合わせた、経済をよくしようと、さまざまな経済政策遂行の並々ならぬ御決意を伺うことができました。

 私も中小企業を営んでおりましたものですから、まだそのまま庶民感覚でございますけれども、いろいろな調査によっても、やはり国民の関心の大きな公約数であるところは景気でございまして、景気をさらに底がたい、力強いものにすることが我々の役目でもあるのではないかというふうに思っております。

 ただ、大臣もおっしゃられるとおり、消費がまだ弱い状況でございまして、いかに企業を発展させ、その収益を家計に還元させることが肝要かというふうに思っておるわけでございます。私も庶民感覚で言うと、ある程度、本当にまだまだ景気がよくなれば、家計の懐が暖かくなれば、そう少子化の、教育の問題の不安もなくなり、あるいは老後の介護の問題もなくなり、少しずつ世の中の最大公約数のいいところがふえるんだろうというふうに思っております。

 私の選挙区は岐阜の三区というところでございます。大手の川崎重工、航空宇宙産業のメッカでございまして、今大変景気のいい、まさにイノベーションに救われている会社もあれば、また、刃物関係を含んだ伝統工芸を営んでおる、いわゆる中小企業の集約地もございますし、また、林業が八〇%以上という、今はもう過疎の代表のところみたいなものもございまして、大変バラエティーに富んでいるわけでございます。

 ことし、いろいろと伺っているさまざまなプログラム、地域再生に対するプログラムですけれども、大変心強くしておりまして、ことしこそ本当に地域が元気になれる、地方も元気になれる、地方にある中小企業もまた元気になれる、まさにそういう元年になるのではないかという思いが今非常にしておるわけでございまして、大変期待しておるわけでございます。

 されど、一月に発表された全国の倒産件数を見ましても、十八年は若干倒産件数がふえて、負債総額は減っておりますけれども、非常に細かい中小企業の倒産がまだふえている状況でございまして、まさに、我々としては、そういう底辺層の、手が差し伸べられないところへ差し伸べていくのが我々の役目ではないかというふうに思っておるわけでございます。

 そこで、今回、甘利大臣が先般御指摘になられました経済成長戦略大綱に基づくことしのさまざまな課題、政策があるわけでございますけれども、そんな観点についてちょっと御質問させていただきたいと思っております。

 私は、そういう意味で、中小企業の企業経営という中では、地域あるいは業態によってまだまだ格差があるということを認めざるを得ないというふうに思っております。これを是正していく上で、どのような中小企業政策を行っていくおつもりなのか、まずは大臣の御所信をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 私は、今日まで、先生のお父様、武藤嘉文先生の御薫陶を受けて歩んでまいりました。私に落ち度があるとするならば、それは先生の御指導に手抜かりがあったというふうに理解をしていただきたいと思っております。

 大都市、都市部はいいけれども地方はまだまだ疲弊したまま、大企業は高収益だけれども中小企業はいま一つ、これは事実だと思います。いわゆる格差が固定をしたり拡大をするということを避けなければ日本の元気は返ってこないと思いますし、とりわけ中小企業は、全産業の事業所ベースでいえば九九%以上、雇用ベースでいっても七割以上でありますから、ここを元気にしないといけない。しかも、大企業の力というのは中小企業の部材や部品の技術力に支えられているわけですから、ここを元気にしないといけないと思います。地域を元気にするということと中小企業を元気にするということをあわせてやっていこうと思っておりまして、これが今国会に提出をさせていただいております地域資源活用のプログラムであります。

 私も、まだ一部でありますけれども地域を回りますと、捨てたものじゃないなという思いを殊さら新たにするわけでありまして、その地域の技術とかあるいは地域のアイデアをどうやって引き出して商品化をしていくか、それを助けるかというのが仕事だと思います。

 もちろん、技術を形にするための支援策をすることも大事ですし、あるいは、もともとマーケットが何を求めているか、そのマーケットの求めているものと地場のアイデアや技術をどうつなげていくか、それをブランド化するかということが大事でありまして、それの一連の工程を一つに組んだ政策にしたいというふうに思っております。もちろんこれは我が省の所管だけではなくて、農産品もそうですし、観光やあるいは文化資源もそうだというふうに思っております。

 これらを活用した地域おこし、中小企業おこしの法案を提出したいと思っておりますし、また、企業の再生、再チャレンジを進めていくための中小企業再生支援協議会、これを本部組織とあわせて強化をしていきたいというふうに思っております。

 中小企業、そして地域の知恵とやる気を生かした事業再生、中小企業おこし、地域おこしを考えていきたいと思っております。

武藤委員 私のおやじによくお伝えしておきます。なかなか、そういうおやじを見て育っておりますので、うまくいくのかどうかわかりませんが、これからは甘利大臣を父と思い、兄と思い、教えていただくように頑張らせていただければと思っております。

 今おっしゃったとおりに、地域と中小企業、これを一体で進めていただく政策、大変ありがたいと思っておりますし、そういう意味で、私も先ほど申し上げましたとおり、この機会、ことしが地方の真の再生になれる年になろうということで頑張っていきたいというふうに思っております。

 産活法の件でちょっとお尋ね申し上げますけれども、産活法の中で、今回サービス業を対象に加えていくという形で改正をされるというふうに聞いております。サービス業、これもいろいろな意味のサービス業がありますけれども、やはり今元気のいい一部の製造業、それと周りにいるサービス業が地域においてもやはり元気になっていかなきゃいけないというふうに思っておりますけれども、たしかサービス協議会ですかも今政府の方で諮問会議で開かれているというふうに伺っておりますけれども、その検討状況も含めて、地方に対するいわゆるサービス業に対して、どういうお考えでいるのかをお尋ねしたいと思います。

甘利国務大臣 サービス産業といいますとGDPの七割を占めているとよく言われるわけでありますけれども、これがまた幅が広いというか、広過ぎるんですね。情報通信から金融から運輸、物流あるいは小売、そして、いわゆるBツーCの、いわゆるエステから何からのサービスまで大変幅が広いんですね。

 サービス産業全般の生産性を引き上げていく。日本は、製造業の生産性は高いんですが、サービス産業の生産性が低いとよく言われています。これを、ITを導入したり、あるいはサービス産業の革新を図ることによって引き上げることが、七割を底上げするわけですから、日本の底上げをする、地域の底上げをする。特にサービス産業というのは中小企業が圧倒的でありますから、まさに中小企業、地域と連動するわけでありますから、これを底上げすることは、中小企業の底上げ、地域の底上げにつながるということであります。

 今、サービス産業の生産性の向上を検討するための委員会といいますか協議会といいますか有識者会議を立ち上げておりまして、何回か会合を開いております。近々これをまとめたいというふうに思っております。

 今申し上げたように、大変幅が広いものですから、処方せんというのは事業分野別に相当数がないと、一つの処方せんで全部というぐあいにはいかないわけでありますから、いろいろな処方せんを組んでいきたいと思っております。

 ITを導入するということはよく言われますけれども、工学的、科学的手法を用いる。例えば、タクシーの生産性というのはどうやって上げるんだと。これは、運転手さんによって業績が物すごくいい人と、一生懸命働いているけれどもうまくいかないという人がいるわけですね。あるタクシー会社は、非常に業績がいい運転手さんの事業行動を、GPSをつけて、どういうルートでどういう客の拾い方をしているかというのを工学的にはじき出したんですね。そのソフトを使って、効率の悪い人に、こういう行動パターンというか事業パターンをとれば、運行パターンをとればということをして全体が上がったというような、サービス産業に工学的、科学的手法を用いるというのもあるんですね。いろいろな分野別の処方せんを書いて、それをいわゆるソフトとして全体の底上げを図っていければいいなというふうに思っております。

武藤委員 ぜひ、協議会のこの世の中に合った御見識をお願いしたいなと思います。

 メンバーの方も、一部拝見させていただきましたけれども、底辺の方の御理解をいただけるような視線を、ぜひ大臣の方からひとつ皆さんに御指導いただければというふうに思っております。

 産活法の中で、いわゆる生産性向上に寄与する海外子会社の資金提供支援とかいうものも入っておりました。いわゆる出資・信用状債務に対する債務保証を新設するとかいうものもございました。元気のいい会社が、さらに国際競争力をつける意味で事業拡大できるというのは、非常にいいチャンスができるんだというふうに思っております。

 私の地元でも、やはりトヨタさんの下請で海外へ出て、まあ出ていかざるを得ないというふうな状況もありますけれども、海外へ出て、大変厳しいノウハウの中で頑張っているわけですから、とても勇気づけられる、そういうふうなまた新しい政策が出るということは大変ありがたいと思っております。

 また岐阜県は、東海北陸道が今年度中に福井へと抜けることができます。したがいまして、日本海と太平洋がことし抜けることができます。こういう意味で、今、知事が一生懸命ビジットキャンペーンを繰り広げてやろうとしておりますし、そういう意味の中でも、産活法が地域振興の中で、観光という位置づけの中で、先ほどの中小企業の地域資源活用法も含めて、いろいろな意味で地域の発展のために寄与していくんだろうというふうに思っているわけでございまして、この法律の的確な実施ができるように、ひとつよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 また、さっき大臣の方からお話がございました中小企業再生支援協議会の件について、ちょっとお話を進めさせていただきます。

 私は、一万件以上も実施されているというふうに聞いておりますけれども、全国の四百万という事業体からすると、まだまだ数的には少ないかと思っておりまして、もっとさらに活用していかなきゃいけないというふうに思っておりますけれども、現状についてお伺いしたいと思います。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 再生支援協議会でございますけれども、今お触れになりましたとおり、一万社以上の企業から相談を受けておりまして、現在までに千七百社の企業の再生計画の策定を支援しております。そのうち、一千二百社については再生計画の策定が完了しておりまして、八万二千人の雇用が確保されるというようなことで着実に成果が上がってきております。

 ただ、私ども、これで十分だというふうに思っているわけではありませんで、再生支援協議会についてさらに強化をしていく必要があるというふうに思っております。

 そういうことから、今度の産業活力再生特別措置法の中で、この再生支援協議会の期限が設定されておりますので、その期限を延長するということに加えまして、その再生支援協議会の支援を受けて再生を行っている中小企業の再生を円滑化するために、金融面での支援ということで、中小企業信用保険法の特例を設けるというようなことも行うことにしております。

 それから、全国に再生支援協議会、四十七都道府県あるわけでございますけれども、それの全国の連絡組織、そういうものを設けまして、各協議会に対する助言といいますか、そういうもの、あるいは各種の手続が協議会ごとによって多少違いがあるというようなことでありますので、そういうものを標準化する、あるいは成功事例のノウハウを共有化する、そういったような試みもしようというふうに思っているところでございます。

武藤委員 ありがとうございます。

 ただ、今も石毛長官のお話、やはり不十分なところもあるということでございまして、大変底の深い、数も多いところでございまして、例えば、現在、建設業界もこれから競争入札どんどんしていく中で、ますます損切りして受注する会社もふえたり、まだまだ倒産はふえていくんだろうというのが現実ではないかと思いますし、なかなか地方の資産がデフレ状態で上がってこない状況の中では、やはり過剰債務が、資産に合ったものということでまだまだ多いというのも現実だというふうに思っております。

 ぜひ、地方銀行のいわゆる支援も含めて、ひとつ御検討をこれからいただけたらというふうに思っております。

 いわゆる政府系の銀行については、中小企業の皆さん、大変面倒を見ていただいているようでございますけれども、やはりメーンバンクの中での調整のところでなかなか難しいところもあるようでございますので、ひとつぜひ御検討のほどをお願い申し上げたいというふうに思っております。

 それから、事業承継にちょっと触れていきたいと思います、時間がもう余りないものですから。自民党の税調大綱にも触れておりますし、ことし既にもう議論が始まっておりますけれども、私は、中小企業の事業承継の中の問題というのは、さまざまな問題がございますけれども、やはり中小企業の個人保証の問題ですとか、あるいは事業の拡大等について、後継者がやはり夢を持てなくなっているのではないのかなというところもありますけれども、事業承継についての問題についての御見識を伺いたいと思います。

石毛政府参考人 事業承継の問題でございますけれども、先生御指摘のとおり、いろいろなところで今検討が進められております。

 事業承継の場合、非常に規模が小さい、したがって、その事業の将来性に不安があるからなかなか承継というものが進まないという問題と、それから、非常に事業がうまくいっているということから株価の価値が上がることによって、相続税の負担ということで事業承継に難しさがある、そういうふうな二つの側面があろうかと思っております。

 私ども、そういったような事業承継の問題につきましては、税制から、それから金融の面とかあるいはいろいろな法的な問題、広い範囲の問題があるというふうに思っておるものですから、私ども、昨年の六月に事業承継のガイドラインというものを一つお示ししまして、それで参考にしていただこうということをまずやっております。

 加えまして、この平成十九年度から、事業承継の関係の実務家がいろいろなネットワークを組んで、こういう案件があるけれどもどういうふうに処理したらいいんだろうかというものを御相談いただくようなこと、あるいは、事業承継といった場合に、必ずしも親族に引き継ぐとは限りませんので、親族以外の方に引き継ぐような場合には、その資金についてどういうふうに供給をしていったらいいのかということで、新たな制度融資を創設するといったようなことに取り組んできております。

 そういうものに加えまして、先生も御案内のとおり、相続税の問題については、この十九年度の税制改正で、相続時の精算課税制度の関係での特例の創設だとか、あるいは種類株式の評価方法の明確化というようなことをやってきておりますけれども、さらに大きな問題として、非上場株式の税制措置、そういったものについてもあわせて取り組んでいきたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、事業承継の問題は非常に広い範囲のことを含んでいるものでございますので、私たち、そういう広範の問題に取り組んでいきたいというふうに思っております。

武藤委員 どうもありがとうございました。

 私の会社も早く事業承継したいと思っておりますので、ひとつ、ぜひよろしくお願いを申し上げます。本当にありがとうございました。

 大臣、今PDCAの観点から、このさまざまな政策、ぜひ実現、本当にうまく効果的に発揮できるように御指導を重ねてお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

上田委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 先日の甘利大臣の所信表明演説に対する質問を、きょうは三十分でございますが、させていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、大臣、今格差について随分いろいろ論じられておりまして、その格差に対する批判の中で、小泉構造改革が格差をもたらしたという、非常に構造改革自体に対してのネガティブな御批判をされている方も少なくないわけでありますが、私はこの点について、先日の予算委員会でも申し上げておるんですけれども、それは少しおかしいのではないかと。

 バブルがはじけてこの十年間というのは、十年前、日本各地どこに行っても大変景気の展望が見えなかった。それまでは、景気循環論といって必ず景気はよくなるという考え方も成り立たないのではないか。バブルがはじけて、日本の経済は本当に深刻な状況になるのではないかと。銀行が破綻をし、証券会社も破綻をし、各企業ではリストラがどんどん進み、私の慶応大学の同級生なんかも結構、能力もそんなに低くないんですがリストラに遭って、再チャレンジができない、大変厳しい生活を強いられた。株価も額面の五十円割れをするところなんかも出てきたりして、本当にどうなるのかな。こういった状況の中で、私は、銀行の不良債権の処理を初めとする構造改革というものが進行したというふうに思っておるんですね。

 きょうの日経新聞の記事もありますが、二〇〇五年秋の段階で、過去十年に株価が額面割れ、五十円割れした三十五社のうちの二十一社が当時の最安値の十倍を超える株価に回復した。こういったことがあって、構造改革そのものは、血を流したような大変厳しい改革の側面もあったかもしれませんけれども、その段階として、十年前より今日本の状況というのは相当よくなりつつある、私はそういう実感をしております。

 ただ、その中で、構造改革の効果が先にあらわれている地域、その地域差がある。東京が最初によくなった。しかし、やはり地方都市、神戸でもまだまだなかなか、阪神大震災という特殊な事情はありましたけれども、立ちおくれているという、これも事実だと。業種でも、恐らく鉄鋼とか船舶というようなところとか自動車関係は非常によくなって、大企業だけじゃなくて下請なんかもよくなっている業種もあれば、先ほどからのやりとりでもありましたが、なかなかその効果があらわれない業種もある。もちろん、大企業と中小企業の中では、総じて言うと大企業の方が構造改革の効果が先にあらわれている。

 私は、ここは構造改革のプロセスの現象であって、構造改革そのものが間違っていたと言うことは正しくないというふうに思っておりますし、そういうことを論じるのであれば、十年前からどのような改革をすべきだったのかということをやはり示さなければいけないと思いますし、逆に、十年前の方がよかったのかと、私はそういうふうに率直に思うわけでございます。

 もちろん格差の固定というのはいけないということで、これは言うほど簡単じゃありませんけれども、この構造改革の効果をよりすそ野を広くあらわせるために、恐らく経済産業省としても、中小企業の対策ですとか地方への格差是正への施策というのは今回随分盛り込まれていると思っておるんですが、この格差論というか構造改革について、甘利大臣の率直な御所見を最初に伺いたいと思います。

甘利国務大臣 確かに、かつては大企業も中小企業も、都市部も地方も、全部だめだったんですね。そこから立ち上げるために、先行して牽引力になり得るものはどんどん順番を、別に全部一緒じゃなくて、早く行けるものからどんどん立ち上がっていけということが必要であった。債務、雇用、設備、この三つの過剰に大胆にメスを入れて、もちろんその痛みは出ますけれども、立ち上がれるところから立ち上がってくる。その経過では当然、みんな悪いのから、いいところと悪いものが残っているところというのはありますから、格差は一時的に拡大をすると思います。

 要は、そのタイムラグをできるだけ縮めることと、それから全体を底上げさせるということが大事だというふうに思っております。

 現状では、まだ地域間のばらつきは随分ありますし、企業間のばらつきもある。業種間のばらつきもある。これを、もう巡航速度に入りつつある中で置き去りにしていかないということが大事だと思いますし、それから雇用でも、若年層の非正規雇用の増加、これはいろいろな意味でよくないです。少子化対策上もいいことではないと思います。生活の見通しがつかないとやはり結婚や子供を産むことに憶病になりますから、いろいろな社会政策上のこういういびつな形を本来型に戻していかなきゃならないというふうに思っております。

 そこで、地域の底上げをする、中小企業の活力を引き出す、いろいろな施策を提案させていただいております。個々に説明はせずともいいかと思いますけれども、こういう全体のパイを広げる、それから地域の底上げをする、あるいは底上げ戦略で中小企業の底上げもしていく。いろいろな合わせわざを使いながら、経済のパイも大きくする、それから格差の固定や拡大も防いでいくという総合的処方せんが必要だと思いまして、それらの関係法案を提出させていただいているところであります。

赤羽委員 ありがとうございます。

 今大臣の御答弁にもありましたように、多分、産業界でも、やはり大企業と比べると、比較的中小企業がまだまだ立ちおくれている。そこに対する、相当多方面に目配りした施策が今回用意されているというふうにも評価をしておるし、それについて、何もやっていない、冷たい構造改革だと言うのは、やはり間違いな指摘だというふうに私は申し上げておきたいと思います。

 中小企業につきまして、一般的に言いますと、中小企業というのは、技術力があるけれども、後継人材に乏しいですとか、またマーケティングですね、販路に乏しい。ですから、いろいろ実例がありますけれども、そういったことを補完するようなアドバイスがあるとたちどころによくなっていく、こういったお話も聞いております。

 先日、公明党の地域活性化推進本部というのを立ち上げておりまして、太田代表とともに、実は東京都の中小企業再生支援協議会に足を運んでまいりまして、実例、状況を聞かせていただきました。その中では、東京の協議会で完了案件が五十五件できたと。そのうちの約六割弱が実質正常先または経過観察中なるもまず不安なしというふうになったということは、極めて効率の高い仕事をしているということを実感したところでございます。

 本当に、こういったことをどんどん、銀行もだめになってから協議会に持ち込まれている例が多分多いんだと思うんですね。そうじゃなくて、もう少し、健康診断、人間も人間ドックに入るわけですから、中小企業がどうしようもない状況になる前の段階で、気軽に中小企業再生協議会なんかの相談を受けられるような形をつくるというのが、私は、経済産業省、中小企業庁として大事なのではないかと。

 その一つに、例えば、訪問したときの話題にもなったんですが、中小企業再生協議会というと、そこに持ち込まれる案件はほとんど実質破綻寸前みたいなイメージがあると。何となく、再生協議会に相談に行くと危ないんじゃないかみたいな話になると。再生協議会という、何でこんな名前にしたのかなと。中小企業診断協議会とか、何となく、再生というのはいい話なんですけれども、再生の前段階で、何かネーミングみたいな話というのは非常に重要なんじゃないかということが一つ。

 もう一つは、さはさりながら、中小企業なんかですと、信金、信組とか取引先の銀行があって、そことまず相談をする。そこで、どっちかというと、金融機関は、まず、うちはなかなか難しいから再生協議会にという、こういう流れをうまくつくるような仕組みにした方がいいのではないかなということも感じました。冒頭申し上げましたが、中小企業の常日ごろからの診断というかな、少し手を加えればすごくブレークスルーした実例もあるわけですから、常に、一年に一遍とは言いませんけれども、三年に一遍ぐらいはそういうことを受けるのが当たり前の風土をつくっていくような経済産業施策をするべきではないかと私は思うんですが、この点について答弁をお願いしたいと思います。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 赤羽先生からの日ごろの健康診断ということのお話でございますけれども、まず、私どもの仕組みの中で経営指導員という制度を導入しております。全国に今九千人の経営指導員の方がいらっしゃるわけですけれども、お医者さんでいえばかかりつけのお医者さんというような感じかと思います。そういう中で、再生支援協議会は、もうちょっと専門医も配置をしたような病院、中央病院とは言わない方が適切かと思いますが、そういうような感じの病院であるというふうに思っております。

 そういう中で、小さい企業への融資の窓口として、信用金庫とか信用組合とか、そういうところが非常に重要な役割を果たしているわけですけれども、御案内のとおり、信用組合、信用金庫の案件は、この再生協議会が設立された当初は余り多くありませんでした。データによりますと、平成十五年度は百一件のうち十二件だった、これは計画が策定完了した件数ですけれども、そういう状況だったわけですけれども、四年を経過しまして、かなり信金、信組の案件もふえてきている。徐々にそういう、再生協議会へ持っていくとそれなりに再生の出口が見えるんだなということが広まってきている、そういう成果だというふうに認識をしております。

 それから、名前の点につきましては、確かにもっと相談しやすい、行きやすいような名前をつけたらいいんじゃないかというようなお話でございますけれども、認知度もかなり上がってきていますし、考え方としては、通称あるいは愛称だとかニックネームだとか、困った方が相談してみようかなと思われるようなそういう名前ができるのかどうか、ちょっと総合的にいろいろなことを考えてみたいというふうに思っております。

赤羽委員 法務省ですら法テラスとか、それがいいのかどうかは別にして、やはり経済産業省は先端を行かなければいけないなと思いますので、ぜひ、利用者の立場に立った経済産業行政をしていただきたいというふうに思っております。

 次に、中小企業に対する資金調達について、中小企業を支えるという意味ではいろいろなことがあると思いますが、やはり、資金面での調達をいかに円滑化するかということが私はすごく大事だというふうに考えております。

 企業の資金調達を考える場合に、資本をふやすために新株を発行したり、社債を発行したりという直接金融市場からの資金調達というのは、実質なかなか信用力がない中小企業にとって困難だ。ですから、銀行借り入れが中心にならざるを得ない、これが実態だと思いますが、現状、中小企業向け融資総額二百五十五兆円。そのうち、個人保証とか不動産担保に大変過度に依存をしている。中小企業自体そんなに不動産を所有しているところは少ないわけであって、限界まで抵当権をつけてしまう。結局、先行き厳しくなってくると、変な話ですけれども、最悪の手段として自殺せざるを得ないみたいな大変悲惨な状況がある。

 そういったことで、私たち公明党も、かねてより、売掛金債権なんかを使って融資制度を促進すべきじゃないか、こういった話をしてまいりました。また、今回、中小企業庁ですか、在庫も入れて、在庫と売り掛け債権などの流動資産の担保保険制度をつくる、こういったことでございますが、まず、売り掛け債権、これもそれほど期待されるほど利用されていなかったんじゃないか、こういう評価があると思うんですが、その点についてどのような分析をされているのか、まずお答えいただけますでしょうか。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 売り掛け債権の担保の制度でございますけれども、平成十三年の制度創設をしてから一兆一千七百六十五億円の融資の実績を上げてきて、それなりに大きな役割を果たしてきたのかなというふうに認識はしております。

 ただ、この制度ですけれども、金融機関で事務負担がかなりあるとか、あるいは、事業者の側でそういうところまで担保にとって融資を受けているのかといったような風評被害といいますか、そういうものに対する懸念といった問題、そういうようなことがあるために、もう一つ広がっていない部分があるというふうに承知をしております。

 そういうことですから、今回、動産担保まで広げるということの中で、私たちは、担保の徴求の仕方として、現在、個別の債権ごとに担保設定をしているという形になっているのを、債権全体について集合的に担保設定をする、そういうようなことで金融機関での事務負担を軽くしていく、そういうようなことも検討しております。

 アメリカの中でも、こういったようなアセットをベースにした融資というのは企業全体の融資の二割ぐらいを占めてきているようですけれども、ただ、そこに至るまで三十年の月日がかかっていることでありまして、私ども、まだこれは初期段階でございますので、これからそういう努力をして広めていきたいというふうに思っております。

赤羽委員 先ほど申し上げました地域活性化推進本部で、中小企業再生協議会と同時に商工中金等に行きまして、その商工中金で、動産、在庫を担保としている実例なんかの話も聞かせていただいて、その後、銀座にある、その融資を利用しているワインのお店を訪問させていただきました。

 あのとき私もいろいろ考えて感じたことは、担保に関する概念というか、これまでの担保というのは、債権者のための担保というんですかね、要するに、不履行があった場合どうやって回収するか、貸し手からの、それを取り寄せるための担保という従来の考え方だったのが、在庫なんかを担保にするということはちょっと質が違うというか、この在庫というのを担保にするということ、企業が操業、商売を続けていけば次々と創出されるという性質のものであるし、私は、そういったものを担保にするということ、融資するということは、非常にやはり金融機関側の目ききというものが問われると。

 やはり金融機関は、貸す側、貸される側で冷たい関係じゃなくて、ともにそのビジネスをうまくフォローしていこうという、私は、本来あるべき金融機関と商売人の関係に近いものができてくるのではないかなと。かつて日本というのはそういう状況だったと思うんですが。

 バブルが膨らんできたときには、要するに不動産があればすべて何でもかんでも貸していた。それが破裂して、今度は回収することしか考えない。厳しく言うと、回収した後の企業がどうなろうが関係ない。そういったマインドになっていたのを、本来、もう少し、そうじゃなくて、事業者、中小企業者と金融機関をやはりともに成長させていこうみたいな話の中で出てきた知恵の一つが、この在庫を担保にするというような話なのではないかと。大変選定とか難しいのかもしれませんけれども、大変おもしろい試みなのではないかというふうに思っておりました。

 こういったことというのはもっとやはり、売り掛け債権のときは何かどうも風評被害っぽくて、いよいよ売り掛け債権を担保にするような企業は危ないみたいな話になったらばからしいので、これも大変いい試みであるし、中小企業金融というのがこれから少しいい意味で変質していく大きなきっかけになるのではないかと私は非常に実感したんですけれども、その点について、どのようなお考えがあり、今後どのような取り組み方針を持たれているのか、お聞かせいただきたい。

甘利国務大臣 おっしゃるように、従来の融資形態といいますか、不動産担保主義、そこには、借り手の事業の審査をする能力も必要なければ企業とのつき合いも必要ない、とるものだけとっておけば、しかも、不動産は当時は下がるということは想定していない、とってさえおけば何があろうと関係ない、企業がうまくいこうがいくまいがこっちはとりっぱぐれがない、そういう姿勢から金融機関の本来の姿が変質してきたということはあると思うんですね。

 本当は、担保なんかとらないで、貸出先の能力をちゃんと分析できる、将来性を分析できる、そういう能力を貸す側が持っていなきゃいけなかったのでありますけれども、そんな能力を持っていてもコスト高になるだけだという風評が一時あって、そういう能力が消失してしまった嫌いがある。金融機関は、本来の姿に戻るべきだと思います。

 そういう中で、いろいろなルートを持っている、もちろん担保もゼロというわけにはなかなかいかない。不動産も時には必要でありましょうし、余裕のあるところについてはそれを出すというのもあります。動産担保、在庫の担保、あるいは、評判が悪いとおっしゃいましたけれども、売り掛け債権も含めていろいろな手だてが何本もある、その中から組み合わせでいろいろチョイスすることができるというのが正しい形で、その原点には、やはり、貸す先の企業の現状と将来性を分析する、あるいは経営能力を分析する能力が前提だというふうに思っております。

赤羽委員 またこれに関連して、商工中金が今回民営化される、法案も提出される予定になっておるわけでありますが、この商工中金というのは、私も、地元の中小企業の経営者、ユース会の人たちなんかと話していますと、やはり特殊な関係性というか、中小企業者と商工中金の関係というのはある意味ではすごくいい関係性というか、まさに貸す側、借りる側だけじゃなくて、お互いに企業を育てていこうといういい側面があると思うんです。

 これが、しかし、五年から七年の移行措置があるとはいえ、民営化される、大変制約を受けながら厳しい競争にさらされる。こういう中で、本当に、せっかく商工中金、今言いました流動資産を担保にする保険制度なんかを先駆けてやろうとしているところで、この民営化問題が商工中金の機能を後退させるようなことがあっては大変大きな損失だというふうに私は実感をするんですが、この点について、取り組みの御決意になるかと思いますが、大臣の御決意を聞かせてください。

甘利国務大臣 経済財政諮問会議で民間委員と私とちょっとドンパチをやりましたけれども、商工中金の民営化に向けてのプロセスはもうコンクリートしているんですね。こういうふうな手だてでこういうふうにいきますというのも決まって、法案も出す、だから、もう議論をすることではないんです、粛々とそれを進めていくということなんですが、諮問会議の中で民間委員の方は、もう一度リセットしたいという思いを述べられたので、私の方から、これはもう全部決まった話で法案も出るじゃないですかということで、少しドンパチがあったわけであります。

 要は、商工中金は中小企業金融としてのノウハウを持っているわけであります。そのノウハウが完全民営化した後もしっかり生かされるようにしていかなきゃいけない。こっちの方がもうかりそうだからといって、中小企業から手を抜いて大企業にシフトしていくということがあっては困るのでありまして、そこで、株主保有制限もかけて、中小企業金融として生きてもらう。

 それには、今までの蓄積したノウハウをフル稼働してもらう。もちろん、財務体質も、今のまま政府出資を引き揚げたら、もう完全に四%を自己資本比率が切っちゃうわけでありまして、業務改善命令が出ちゃうような事態になりますから、そこは自己資本比率の充実も含めてちゃんと手当てをしてあげなければいけないと思っていますし、そういう前提のもとに、中小企業金融として、今まで培ったノウハウをフル稼働して、中小企業とともに歩む金融機関として、完全民営化への道筋をきちっとしていきたいというふうに思っております。

赤羽委員 よろしくお願いしたいと思います。

 中小企業というのは、やはり資金面のサポート、またコンサルティングみたいなこと、あと人材の支援みたいなことが大事だというふうに思っておりますので、また行く行く議論したいと思います。

 もう残りわずかなんですが、今回予算措置されていますアジア人財資金構想について、余り深く触れられないかと思うんですが、二、三確認をしておきたいと思います。

 このアジア人財資金構想という、この経産省が出した本も読ませていただきました。アジアの優秀な人材を留学生として日本に招き、日本での就職や現地の日系企業への就職を支援すると。現状は、高度な能力のある外国人が日本企業でどれだけ活躍しているかというのは大変低い数字だと。これはよくわかるんですが、私も三井物産で中国に駐在をしていて、大変優秀な人材がいるし、北京大学とか清華大学の学生が外国企業に就職をしたがる。しかし、その中で日本企業に就職する率というのは非常に低いんです。

 それはなぜかというと、やはり一つは日本企業の文化というか、北京支店長になれるわけじゃない、やはり結局は日本企業が使いやすいところだけ使う、生涯の働き場所というか、自分の能力を大いに発揮できる働き場所にならない、見合うペイメントも低い、こういったことがあって、外国人が日本企業に就職できないというのは実はそういったことが大きいんじゃないか。

 だから、このアジア人財資金構想を打ち上げるについて、まず、日本の経済界がどれだけ協力するのか。協力するというより、まずそもそも、こういった構想が経済界から出ている声なのかどうかということがないと、なかなかうまくいかないんじゃないかなというのが一つ。

 一方で、そこをクリアした上で、では、どれだけ優秀な人物を日本に引っ張ってこられるか。要するに日本版フルブライト奨学金を目指すというようなことが書いてありますけれども、やはりそれは、例えばアメリカには優秀な大学があり、そこに行けば非常にキャリアアップできるからということでみんな行くわけで、山本先生だってそうやってアメリカに行かれたわけでしょうから。世界じゅうの優秀な人間が日本の大学に来るかという、受け入れる教育機関というか、そこがないと、奨学金とかをつくってもそれは絵にかいたもちになるのではないか。

 この二つを、ちょっとどう整理するのかというのは大事な問題であると思いますし、初年度千人というような視点もありますが、私は、極めて優秀な人間を少数集めて、もう丸抱えで集めて、十人でもいいから、はっきりした功績を残せるような構想にした方がいいのではないかという気がするのですが、ちょっともう時間も参りましたので、この点について、後の委員会でも議論をしたいと思いますが、私のその最初の二つの視点について簡単にお答えをいただいて、終わりにしたいと思います。

山本(幸)副大臣 先生のおっしゃるとおりだと私も思います。

 そこで、ぜひ経済界の方々に少し頭を転換してもらって、やはり、優秀な外国人の人材をトップまで、特に現地なんかでは、そこまで育てるんだというような気持ちにぜひなってもらいたいと思っております。そういう意味で、働きかけていきたいと思います。

 それから、大学のレベルも、ぜひ、留学生に魅力のあるように上げてもらわなきゃいけませんし、これは文部科学省と今一緒に連携しておるわけでありまして、奨学金の額はそれ自体はかなり高い額でありまして遜色ないというふうに思っておりますが、それと、企業にちゃんと将来のキャリアが築けるというようにつなげていきたいと思っておりまして、ぜひ先生の意を体して働きかけていきたいと思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございました。

上田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介です。

 本日は、大臣所信に対する質疑の機会をいただき、まことにありがとうございます。

 さて、経済産業省という役所は、橋本内閣当時に行われた省庁再編で、通商産業省から名前が経済産業省に変わったわけであります。たかが名前というなかれ、されど名前だと思っておりまして、当時の省庁再編の話を振り返りますと、いわゆるマクロ経済政策の調整機能を果たしていた経済企画庁というのが、これが内閣府に吸収されてしまった、一方で、大蔵省は、当時さまざまなスキャンダルもありました、そういう中で金融行政が分離されて、財金分離された、こういうことだったと思うんですね。

 一方で、無傷の旧通産省は名前を経済産業省にした。これは当時の大臣官房が非常な熱意を持って、経済の名前が欲しい、こういうふうな運動を展開したと私は記憶しております。その心は、やはりマクロ政策も、ある意味で、経済産業省が担うんだという意気込みがたしか当時はあったと思いますし、そういうねらいがあったのだろう、もちろんミクロの個別の業のこともするけれども、マクロ政策について経済産業省が担うんだ、こういう思いがあったかと思います。

 そういう観点から、大臣、きょうは、その経済産業省がその名にふさわしいマクロ政策を展開しているかどうかということも含めて議論させていただきたいと思っております。

 さて、甘利大臣、大臣は大臣の御就任の前は自由民主党の政務調査会の会長代理であられました。当時の自由民主党の政務調査会長は中川秀直現自民党幹事長でありますが、コンビを組まれまして、いわゆる上げ潮政策、自民党のこの報告書、財政改革研究会の報告書を取りまとめられて、この中で上げ潮政策が出たわけですけれども、中心的な役割を甘利大臣も果たされたと伺っておりますけれども、そういう認識でよろしいんでしょうか。

甘利国務大臣 おっしゃるとおり、中川政調会長のもとで、いわゆる上げ潮政策の旗振り役の一人を務めたことは事実でございます。

近藤(洋)委員 そのように伺っております。

 もうお一方、伊藤達也金融担当当時大臣も、このお三方で上げ潮三人組というか三羽がらすのような形で中心的な役割を果たされた、これが今の、こういう本にもなっているわけでありますけれども、この上げ潮政策は当時の自由民主党の政策でございますけれども、ほぼ同時期に議論が進んでおったのがいわゆる新経済成長戦略、これは経済産業省の中で議論が進んでおりました。そこの中でいわゆる成長戦略大綱ができ上がったわけでありますが、この上げ潮戦略とその成長戦略とを見ますと、非常に方向感というのは似ているな、政府・与党、ある意味で、連携をとっているわけですから、上げ潮戦略のいわゆる経済政策部分は非常に共通点がある、こういうふうに思っております。

 そこで、大臣に確認をしたいのですけれども、いわゆる上げ潮政策を受ける形で同時並行に進み、さらに今、安倍内閣の中心的なスローガンといいますか、政策のやはり柱に今のこの経済成長戦略大綱がなっている、こういうふうに認識しているわけです。この大綱の政策目的というのは、上げ潮政策では名目GDP四%、これを続けるんだということでありましたけれども、そういう形で全体を引き伸ばしていくんだということでございましたが、数字の話でありますが、こちらの方では、実質の国内総生産を今後十年間で二・二%以上の成長を視野に、目指して政策を展開するんだと。

 要するに、そういう形で、二・二%実質を引き上げるんだ、少子化にそういうことで対応していくんだ、そのためには、人の数が少なくなるんだからイノベーションが大事ですというようなこと、イノベーションを出すための政策を展開するんだということで、非常にわかりやすく言えば、これが政策目的だ、成長が目的であって、そのためにイノベーションが不可欠、こういうことでよろしいんでしょうか。

甘利国務大臣 安倍内閣のスローガンというのは成長なくして日本の未来なし、なぜ成長がないと未来がないかといいますと、日本は制約要因をいっぱい抱えている。人口が減少していく、高齢者がふえて労働力人口は減っていく、そうすれば成長は減速していくに決まっているわけでありますし、そういう中で、ほっておけば社会保障の制度運営もままならない。あるいは、少子化対策といえどもいろいろ予算手だてが必要、成長していかないとこれはうまくいかない。

 また、財政再建という大きな課題を抱えていますから、これは成長ということを視野に入れていかないと、では、増税路線ですべて処理するんですかと。社会保障から財政再建までみんな増税一本やりでいくとしたら、これは大変なことになるぞということでありますし、あるいは、外国との競争が激化してきます。成長力というのは外国との競争に勝つということでありますから、成長するということと外国との国際競争に勝つということはほぼイコールになるわけであります。でありますから、成長がないと日本の将来はありませんよというのは大方御理解をいただけるところだと思います。

 そういう中で、キーワードはイノベーションとオープンというわけであります。

 日本のお家芸であります技術革新、これは制度刷新や組織再編も含めて、狭義、広義のイノベーションを進めていく。そもそも、人口が減っていく、労働力が減る中で成長を担保しなければならないということは、そのイノベーションの重みというのがもっと大きくなるわけでありまして、ここをしっかりとやっていく。

 オープンというのは、日本の人口が減るなら、では経済国境を広げていこう、日本の資本総量、貯蓄総量が取り崩しで減るなら、対内投資をふやしていこう、すべてオープンという姿勢のもとに、外の力も内なる成長に使っていこう、世界の成長センターたるアジアの成長力を日本の成長に取り込んでいこうということで組み立てられているわけであります。

 もろもろを含めて、成長ということが日本の将来を開いていくキーワードになっていくというふうに思っております。

近藤(洋)委員 安倍総理の御発言を聞いても、甘利大臣と同じに、当然、内閣ですから、やはりイノベーションとオープンという言葉がよく出てこられるわけで、そういう意味では、安倍政権の中核戦略がこういうことになっているんだなと改めて思うわけであります。

 そこで、ここから議論が始まるんですけれども、大臣、そもそも、実質GDPを二・二でも、名目でもいいんですけれども、このGDP成長を政策目的にしたこと自体が私は実は間違っているんではないか、こういうふうに思うんですね。

 要は、成長、GDPは膨れ上がっても、その中身というか、うまみ、果実が行き渡らない構造に今日本の国はなっている、これをまず基本的に認識して、それを正面から受けとめて政策を展開しなければいけないのですが、何か手段と目的がどうも、今の大臣のお話でも、では消費をどうするんだ、所得をどうするんだというお話、短いエッセンスの御答弁でありましたけれども、基本的にはこの上げ潮戦略にも出てこないんです。この経済成長戦略大綱にも、消費をどうするんだという言葉は基本的には出てきておりません。消費イコール所得でありますけれども、そこをどうするんだということについては基本的には出てきていないわけですね。そこが私は問題だと思うんです。

 確かに、おっしゃるとおり、この上げ潮戦略では、名目四%が続けば十八年間でGDPが一千兆円になります、パイが膨らめばすべてが解決します、こういうロジックなんですけれども、見せかけのGDPを膨らませても、個人が豊かにならない限り、本当の意味で正しい姿にならない。

 そこで、大臣、今からでも遅くないですから、これを書きかえて、要するに、個人の所得をふやすことが、個人の消費をふやすことが政策目的なんだ、こういうふうにこれは書きかえられたらいいと思うんですよね。いかがでしょうか。

甘利国務大臣 ぜひ行間を読んでいただきたいんですが、経済成長を健全に続けていくということは、GDPの構成比でいうそれぞれの要素が健全に大きくなっていかなければならないと思うんです。いびつな形で経済をある部分だけで牽引するということはやがて限界がやってくるわけであります。

 日本より、よりいびつな成長の形が私は中国だと思うんですけれども、中国は輸出と設備投資が牽引をしています。ここは日本と似ています。ただ、設備投資比率のGDP比率がたしか五割くらいになっているんじゃないでしょうか。日本はバブルのときでもたしか三割ぐらいでありまして、やはりGDPに占める比率の大宗は、五割以上というのは消費なんです、おっしゃるとおり消費が健全に伸びていかないとその経済は本物とは言えないんだろうと思います。

 日本でも、課題は、輸出と設備投資で牽引をしている、では消費はというと、全体的に言えば横ばいという感じです。十―十二の数値が出ていますけれども、これは消費が伸びた。しかし、よく見ると七―九では落ち込んでいる。落ち込んだのが戻っただけだから、要するに、ならして見れば横ばいだ。このGDPの六割を占める消費がどうやってきちんと景気拡大に転嫁をしていくかということがおっしゃるように大事であります。

 私は、早く企業業績と消費拡大との好循環をつくらなくちゃいけないと。それは、外需依存と設備投資依存というのは必ず限界が来るから、企業収益が家計収益に還元されて、その家計収益の拡大が消費を刺激して、消費が企業業績をさらによくしという好循環をつくっていく必要があるというのは、正直な話、経済産業大臣就任以来、主張しているところであります。

 諮問会議でもそういう話をしたのでありますが、産業界の代表の方々は、これはあくまでもタイムラグの問題であって、企業業績が伸びていく、設備投資が拡大していけば、当然、労働力需給がタイトになってくると。そうすれば、いわゆる売り手市場になるから引き上げざるを得ない。これは、今その経過にあるということを回答としておっしゃるんですね。私はそれをもうちょっと先取りしてもいいんじゃないですかと。前倒しして、企業から家計への所得移転を早目に起こして、それから消費を拡大し、さらに企業業績が上がっていくといういい方の循環に歯車を早く回した方がいいんじゃないですかということは申し上げているところでございます。

近藤(洋)委員 さすが大臣、そのとおりだと思うんですよ。だから、ここの中に消費、所得が一行もなくて、所得拡大を目的にすることを政策目標に据えるように書き直すべきじゃないですか、大臣の御答弁どおりだとすると。それは、政策目標をGDPに置いている限り、目詰まりが起きているんですよ、今。目詰まりが起きている構図を直すことが現下の日本経済の最大の課題なんですね。大臣、御認識をそこまでお持ちならば、やはりこれは書き直さなきゃいけない。

 恐らく、同僚議員が次々とこれから民主党の私を除いて精鋭の議員が質問しますから、格差の問題、労働分配率の問題、出てきますから、ぜひお答えいただきたいんですけれども、まさに構造的にこの格差が根づいてしまっている、この四年間、五年間の間で。所得が行き渡らない、所得がふえない、消費がふえない、こういう構造をつくってしまっているのがこの四年間、五年間なんだ、その反省に立たなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに思うわけですね。

 あえて言うと、では、大臣、続いて伺いますけれども、そこまで御認識をしっかりお持ちの大臣でありますから、そういう観点から、では、どうやって消費を循環させるか。企業の賃上げ、先取りをしたらよろしいんじゃないかというお話、全くそのとおりだと思うんですよ。そのとおりだと思うんです。企業はやはり賃上げをすべきだと思う。

 同時に、では政府として何ができるかというと、私は一つは金融政策だと思うんですね、金利政策です。きょう、日本銀行の政策決定会合が現在行われております。ですから、この金利水準について、資料の一をごらんいただければと思います。済みません、財務省の資料と書いてありますが、これは日銀の資料でございます、訂正をいたします。こちらの方には日米欧のそれぞれの金利水準が出ております。政策金利決定は日銀の専管事項でありますから、このきょうの会合についてとやかく大臣のコメントを求めるつもりは全くございません。

 ただ、消費を拡大する、所得を拡大するという観点から、また、日本の成長を安定的に遂げるという観点からも、今の〇・二五という、極端に、世界的に見てこんな金利は日本だけですね、米国、欧州と比べて。そしてまた、長期の金利は一・七%で、米国、欧州はこのとおりでありますから。こういった異常なまさに低金利という状況が、家計に対して非常に悪影響を与えているとも私は思いますし、逆にこの異常状態を中期的に緩和することが、中期というのは、私は半年なり何年というレンジはいろいろあるかと思いますけれども、直すことが、異常な状態を正すことが私は必要だと考えております。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、この今の超低金利水準を仮に変えたとしたならば、日本経済にそんな甚大な悪影響が逆の意味であるとお考えなんでしょうか。緩和でない、引き上げたらですね、済みません、失礼しました。

甘利国務大臣 今の日本の状態はお金に使用料がついていない。お金に使用料がつかないと、お金は、本来必要なところに重点的に行かないで、効率のいいも悪いもべたで張りつくという議論があります。これはそのとおりだと思います。

 金利水準、金利政策に関しては、日銀の専管事項でありますから、私からこうしちゃいけないとかいいとか言うつもりは毛頭ございません。それは、日銀が諸般を概観して判断されればいいことなのであります。要は、資金調達を間接金融に頼っている中小企業がどうかというところをやはり見ていかなければならない。大企業は直接調達するすべを持っていますけれども、中小企業はそれがありませんから金融機関から借りなければならない。ダイレクトに経営にかかわってくるところであります。

 今、中小企業の資金繰りは、従来よりはかなり緩やかになってきました。年度末を迎えて若干タイトな状況になるので、そういうことがないようにという通達は出しているわけでありますけれども。中小企業が、現状の中で、収益がなかなか伸びていかない、資材や燃料価格の転嫁ができないという中で、この金利の上昇がどういう影響を及ぼすかということは、細心の注意を払っていかなければならないというふうに思っておりますので、日銀が金融政策をオペレートされる場合には、実際に企業業績に対する影響等も十分勘案してもらいたいというふうに思っております。

 私は、まだ中小企業自身は不安を抱えているのではないかなという思いがいたしますが、ただそれは、日銀の政策に干渉するつもりはありません。

近藤(洋)委員 今、大臣の御答弁からも明らかなとおり、まさにおっしゃるとおり、中小企業に対する懸念、これは私も持っておりますから、これはまた中小企業政策でお答えいただきたいんですが、問題は、中小企業がどうだからこの異常金利を正常化できないという理由にはならないんです。

 大きな政策でいえば、設備投資の御言及がなかった。やはりそうだと思うんですよ。この低金利水準で、多少上がったから設備投資ができませんなどという経営者はおよそ経営者ではありません。およそ経営者というのは事業があるから設備投資をするわけですから、この〇・〇に張りついた金利で設備投資に影響があるという主張をされる政府の中の経済官庁の方もいらっしゃいますけれども、およそナンセンス、あり得ないわけですね。この金利がちょっと上がったから設備投資できませんなどというのではなくて、需要があるから設備投資をするのが経営者でありますし、そういう意味では設備投資論はあり得ない。

 そうすると、気になるのは中小企業の話だけでありまして、むしろ家計所得は、試算によると、バブル崩壊後は年間大体十兆円の得べかりし利益を企業部門に放出しているわけですよ、企業部門に。消費をふやす、家計の所得をふやすという観点から見れば、この異常な低金利の結果、一生懸命家計は企業部門に貢いできているわけですから、企業部門は、大企業は高収益を上げているわけですから、そういう観点から見ても、やはり私は今の金利水準はどうかなという気がしております。

 実は、困るところが別にあると思うんですよ、金利が上がると。困るところというのは、私は財務省というか国家だと思うんですね。財務省、お忙しいところ来ていただきましたけれども、現行の水準より長期金利が一%上昇した場合、国債の利払い費はどれだけ膨らむでしょうか、お答えいただけますでしょうか。

江崎大臣政務官 お答えを申し上げます。

 財務省が作成をいたしました「平成十九年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」がございます。ここにおきまして、国債金利が今おっしゃる一%上昇した場合、増加額につきましては、感応度テストによりまして、平成二十年度におきましては、国債金利が二・三%の場合に比べプラス一・四兆円増加するという試算結果になっております。

近藤(洋)委員 江崎政務官、もう少し細かく。では、これは一・三兆円ということですけれども、中期的に見れば、恐らく五兆円、六兆円のオーダーで利払い費がふえてくるんじゃないでしょうか、確認させてください。

江崎大臣政務官 この金利の上昇度合いということでもございますが、おっしゃるとおり、その部分はあろうかと思います。

近藤(洋)委員 すなわち、金利が上がると一気に、今年度、安倍政権は税収が上がったと、六兆円だ七兆円だと言っておりますけれども、まともな水準にといいますか、長期金利が、欧米並みにとは言いませんけれども、今の二%が三%、四%になれば、あっという間に国家の資金繰りが回らなくなる、こういう状況なんですね。ですから、資料の二の方にこの長期債務残高を出していますけれども、要するに、これだけ債務があれば困る、だから、きょうこれは別の議論に移るのであれですけれども、日銀政策委員会の議事録等を見ても、財務省の出席者は非常に慎重な姿勢の発言をされている。

 その理由というのは、むしろ財政の利払い費の、こちらが本当の問題なんじゃないかなという気がするわけで、だから、そのことになると、大臣、いわゆる上げ潮戦略が破綻しちゃうんですよ。金利が上がると、上げ潮戦略で言っている、税収が上がるから、GDPが上がるからどうだということも含めて、金利上昇をするとこの戦略は破綻する、こういうふうに私は受けとめます。

 ですから、その意味では、私は、無理に低金利を続けることは、中小企業政策は別です、別ですが、私は時限爆弾を抱えることになると思うので、やはりここは経済産業省も、マクロ政策をやるならばもうちょっと真面目な、金利を正常化するという議論をされてもいいのかなという感想だけ申し上げておきます。

 そこで、大臣がおっしゃった心配、唯一心配なのは、中小零細企業の資金繰りなんですね。今の中小零細企業の資金繰りというのは、先ほど自民党の議員の先生も御指摘されましたけれども、残念ながらまだまだ改善の余地がある。勝ち組のところにお金が流れるような、一部の勝ち組だけには流れるけれども、本当に苦労しているところにどこまで流れるかというのは、改善の余地があると思っております。そうした金融機関の姿勢の象徴のような事案について質問いたします。

 りそな銀行による自由民主党に対する融資の急増問題であります。

 自由民主党の政治資金収支報告書によると、これは既に報道されておりますけれども、りそな銀行は二〇〇二年から二〇〇五年末までの間に自民党への融資残高を十倍にふやし、貸付残高を現在、二〇〇五年末時点ですが、約五十四億円貸し付けていると言われております。これは、九三年の総選挙の際に大手銀行が百億円を貸し付けて、その後、返済が続いて残高が減ってきたわけでありますけれども、四大銀行のうち、りそな銀行が他行の融資を肩がわりする形で貸し付けをふやしてきたと報道されております。この結果、大手銀行の貸付残高は現在八十億円であります。

 そこで、金融担当副大臣、お忙しいところ来ていただきましたけれども、このりそな銀行による自由民主党本部への融資の条件、すなわち貸出金利、担保の有無、融資期間、また現在の融資残高についてお答えいただきたい。

大村副大臣 御質問いただきました。

 御指摘のとおりといいますか、御指摘の質問でございますが、個別金融機関の個別の融資の点でございますので、この問題につきましては各行の経営判断で行われるということでございますので、個別の点につきましては、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

近藤(洋)委員 なぜお答えできないんですかね。個別行、確かに個別行でありますが、りそな銀行が融資をふやしていた当時、金融庁の資料によると、御案内のとおり、公的資金が注入されているんですね。しかも、同行の自己資本の四〇%以上が公的資金であります。すなわち、実質的な国営銀行なんです。政府が筆頭株主なんですよ。いいですか、純粋な民間銀行ではないんです。

 しかも当時、中小企業への貸し渋り、貸しはがし、さらには、当委員会でも問題にしました優越的地位の濫用が問題となる中で、公的資金が注入されているりそな銀行は自由民主党に融資を十倍にふやしていた。この融資に担保があるのかないのかどうなのか、適正な融資なのかということをお答えいただきたいと思うんですね。どうでしょうか。

大村副大臣 先ほど申し上げました、委員も十分御案内のことかと思いますが、こうした個別金融機関の個別の融資等々につきまして、そうした個別の点につきましては、当局としては、これはこの件だけじゃなくて、そうしたすべての件につきまして、個別問題につきましてはコメントを差し控えさせていただいているということで御理解をいただきたいと思います。

近藤(洋)委員 副大臣、副大臣は改革派の議員さんであると私は十分存じておるので、お答えいただきたいんです。

 この九三年の百億円の融資の当時に、当時の全銀協の幹部の方から、全銀協が取りまとめて自民党から融資の要請を受けた。だけれども、自民党本部の土地は、あれは国有地だ。国有地ですね。うなずいていただいたけれども、そうなんです、国有地なんですよ。建物は自民党さんのものだけれども、国有地。したがって、これはとても担保価値がないんだ、百億円の担保価値がないので本当に困った、こういう証言を私自身聞いております、当時。

 しかも、一説には、その百億の融資については、当時の経団連会長が、経団連が返済に協力するという念書をもって全銀協が貸し出したということも一部に伝えられています。

 これが事実だとすると、個別行の問題じゃないんですよ。これが民間銀行の取引なら私はあえて言いません。全部資本もない、完全純粋に民間取引なら私はこの場では取り上げませんが、公的資金が半分近く入っているこのりそな銀行が担保もない融資を続けている、しかもふやしているというのは、これは問題ではありませんか、金融行政として。

 そして、これが答えられないということは、要するに、中小企業の金融をこれからどうするんだ、どうやって正しい金融をするんだという金融行政の信頼にかかわる話なんですよ。だから聞いているんですよ。金融行政の信頼の問題ですよ。お答えいただけませんか。どうでしょうか、お答えください。

大村副大臣 御指摘の報道は、昨年の十二月ですか、朝日新聞にそんな報道があったということは承知をしております。

 ただ、それはあくまでも報道でございまして、今委員が御指摘の点につきまして、先ほど申し上げましたように、個別金融行の個別の融資案件等々につきまして、当局としては、コメントは差し控えさせていただきたいということで御理解をいただきたいと思います。

近藤(洋)委員 では、副大臣、山本金融担当大臣は、金融担当大臣になられる前、自民党の役職につかれていたと思いますけれども、どの役職につかれていたかお答えいただけますか。御記憶がありますか。

大村副大臣 残念ながら、私自身、記憶にございません。

近藤(洋)委員 経理局長だったと記憶しておるんですね。うなずいている。経理局長ですね。自由民主党経理局長というのは、党の資金繰りを担当する役職だと私は思いますが、大臣、まさに融資を取りまとめて金融のことも知っている、資金繰り、契約も知っている金融担当大臣ですから、お答えできるはずなんですね、御存じだし。そういう方が金融担当大臣になっている。何だ、結局、中小企業の立場から見れば、大手銀行はそういうお答えできないような融資をしているのかと中小企業の経営者は思いますよ。

 この場でしっかりお答えいただいた方が、私は中小企業の金融を健全化するために必要だと思っておりますし、もうこれ以上やっても大村副大臣に気の毒なので、山本大臣に機会を改めて聞こうと私は思いますが、ただし、あえてこの経済産業委員会で取り上げたのは、まさにこの国会で商工中金の民営化法案を政府が提出するわけですよ。政府系の金融機関がまさにどういう形になるのか、これを審議するわけです、この委員会で。中小企業金融のあり方、金融のあり方を。

 だとすると、このりそな銀行の問題についてしっかりお答えいただかないと、きょうは一般質疑ですからこの辺にしておきますが、とても商工中金の法案を私は審議できません。委員長、金融庁からぜひ資料提出をこの委員会に求めたいと思いますので、今私の問うた融資条件について、ぜひ資料を提出していただきたい。当委員会にお諮りいただきたいと思いますので、お諮りいただけますでしょうか、委員長。

上田委員長 理事会で協議いたします。

近藤(洋)委員 私も理事の一人ですから、ぜひ真剣に協議をさせていただきたいと思います。

 金融担当副大臣はもう結構です。利上げについても伺おうと思ったんですけれども、財金委員会もおありになると聞いておりますので、どうぞ副大臣……。

 金融の問題に関連して、もう一つ大事な点について伺いたいと思います。現在の為替、そして円の国際化についてであります。

 異常な低金利の副作用として、ある意味で円の価値が急激にこのところ下がってきた、これが金利政策の副作用として生まれていることだと私は思っているんですね。対ドルだけではなくて、対ユーロについても独歩安、アジアのほかの通貨と比べても、さまざまな通貨と比べる実質実効為替レートと言うのですか、これでもプラザ合意以来の低水準だ、こういうふうに聞いております。異常な円安であります。

 この過度の円安は、例えば外国企業による日本企業の買収を非常に容易にするわけですね。最近もさまざま出ておりますけれども、自国の通貨が弱くなって繁栄した国は基本的には私はないと思っております。それはさまざまな副作用が出る。必要以上に強くする必要は全くありません。実態に合わせる必要があると思っているわけでありますけれども、さまざまな副作用が出ている。

 輸出企業にとってプラスだから円安にした方がいいんだということを言う方もいらっしゃいますけれども、資料の五を見ていただきますと、ちょっと見にくくて恐縮ですけれども、いわゆる十―十二月期で見ると、トヨタ自動車は九百二十五億円の営業利益がふえているんです、前年同期比で。しかし、円安による底上げ効果が三百億円ある。ソニーは、営業利益がぐっと三百億円減っていますけれども、円安の効果で四百億円利益が出ている、こういうことなんです。ですから、円安で実質輸出企業が非常に底上げされてしまっている、必要以上に底上げされている、こういう状況も起きている。

 これは、私は、長い目で見て、我が国の輸出産業にとってもよくないことだと思っているんですね。実態に合わせた水準になることが極めて大事であって、そういう努力をしなければいけない。

 経産大臣、日本の産業構造を過度に輸出依存に促してしまっている経過、結果としてなっているのではないか、日本の産業構造をゆがめているのではないか、こう思いますが、現在の為替水準等について、御所見はいかがでしょうか。

甘利国務大臣 為替レートは人為的に設定するものではなくて、市場が決めるものでありますから、市場がもろもろの材料でそう判断したんだというふうに思っております。

 日本の製造業、ものづくりの強さというのは技術革新にある、その技術革新は競争にさらされているからこそ磨かれる、それはそのとおりであります。輸出ドライブ型の為替構造だと競争に勝ち抜くための努力や投資が減少していくのではないか、つまり、そんなに努力をしなくても円安の影響で輸出が伸びて物が売れるということになりはしないかという御懸念だというふうに思っております。

 日本は、かつて七十八円という時代も経験をしました。そういう中でも乗り越えていくために、いかに技術革新をして競争力のある製品をつくっていくかというのは、企業マインドとして身についているというふうに思います。ですから、円安によってそういう本来姿勢を失って、安易な方法で量を伸ばせば、円安の影響でどんどん輸出ドライブがかけられるというふうなところには陥っていないと思います。

 私は、自民党にいました当時に、研究開発税制の抜本税制改正というのに取り組みました。これは、アメリカにも負けないくらい技術開発にシフトしていくようにという税制をつくったつもりでございまして、それに従って日本が技術開発に、イノベーションに力を注いできた、それが今日の競争力を培っていると思いますし、それは企業文化になっているというふうに思いますので、円安の影響によってそういう安易な方法に走るということはないであろうというふうに思っております。

 ファンダメンタルズを反映しているのが為替とも言われますが、最近は金利で随分影響されるという話がありますから、先生の御指摘は恐らく不当に安い金利が円安を助長しているんだという御主張だと思いますが、とにかく、市場が決めていることに対して、企業は本来の技術開発マインドを失わないで取り組んでもらいたいというふうに思っております。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

近藤(洋)委員 私は、日本の輸出産業というのは牽引車であると思っていますから、ここにはぜひRアンドD投資を、研究開発も含めて切磋琢磨していただきたいし、応援したい、こう思っております。そういう認識を持っておりますけれども、だからといって、実勢以上に円安にしてげたを履かせてあげる必要はない、それは過保護過ぎてかえって育てなくする、こういうふうに思うわけであります。

 しかも、要は市場が決めるというお話を大臣おっしゃいましたけれども、市場が決めれば何でもいいのか。すなわち、市場には投機マネーがある、投機がどんどんどんどん実勢の実需のものを乗り越えて水準が決まってしまっている、これについて何らかの策を打つ必要があるのではないか、こう思うんですね。

 そういう意味で、投機マネーを排除するために、財務省、来ていただいていますけれども、例えば取引税をかけるだとか、さまざまな手だて、アイデアというのはあると思うんです。為替の決定の仕組みについて、そういうことを検討すべきかということが第一点。

 第二点、円が安くなるということは、だれも円を持たなくなっている、こういうことですね。だれも円を持たなくなっている。輸出企業のみならず、要するに、ドルが基軸になって、だれも円を持たなくなるということは、すなわち日本国民にとってマイナスなんです。要するに、為替の変動のリスクをもろに受ける、こういうことなわけです。

 ドルは、ドル安になろうがドル高になろうが、ドルが基軸通貨である限り損も得もしないわけであります、ドルの通貨でありますから、世界通貨になっているから。ところが、だれも円を使わなくなると、それは、それだけで日本は大変大きな不利益をこうむる。一生懸命働いて、そして貯蓄したお金をドルに、外債に投資して、貢ぐ君をずっと続けている、貢ぐ君構造を日本国は続けることにもなりかねないわけであります。

 そういう意味からも、自国の通貨を強くしていくということは、産業構造のみならず、広い意味でも重要、国家として重要なことだ、こう思うわけですから、まずは為替の水準を決めるルールを、実勢に近づける努力を財務省はしているのか、二点目、自国の通貨を強くするということをどのように考えているのか、財務省の御見解を伺いたい。

江崎大臣政務官 為替の水準につきましては、その決定構造についてやはり市場が決めるということでございますので、財務省として改めて政策を、為替相場に対してどのような操作を行うというようなことでの政策を考えているということはございません。

 この為替政策につきましては、これまでもG7におきまして、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済成長にとって望ましくないという認識が共有されているわけでございます。この考え方に基づきまして、我が国も適切に対応していくということが現在の考え方でございます。

近藤(洋)委員 江崎政務官は全部おわかりのはずだと思うんですけれども、要するに、円を国際化するということは、それでは、必要ないということなんでしょうか。そんなことないですよね。口先介入とか、例えば外為特会を使って無意味な、無意味とは言いませんが、大海に石を投げるような、こういった介入をしろ、こう言っているわけではありません。すなわち、マーケットがちゃんと働くようなマーケット、ショバをつくる、場所をつくることが大事なんだ。その努力を今、日本政府としてしていないんじゃないですか、こういうことを申し上げているわけです。

 そういう場をつくることは、まさにこれは、介入ではなくて政策そのものですからね。そういう政策をするべきだと思うんですけれども、経産大臣、経産省、どうでしょうかね、そういう観点から。これは、僕、大事な話だと思うんですよ。まさに、大蔵省が財務省という名前にかわってしまって何か考える知恵がなくなったのなら、経済産業省が考えたらいいですよ。いかがでしょうか。

山本(幸)副大臣 大変興味深い議論でございますけれども、人為的に資金の移動を阻害したというようなことがあってはならないということは明らかでありまして、それは決してやってはいけない。そういう意味で、為替市場も非常に自由で、市場メカニズムがしっかり働くようなものでなければいけないということでありまして、それは、ちゃんと私は日本の為替市場はしていると思います。

 これについては、いろいろな論文もありまして、要するに、市場がちゃんと資金の流れを反映して決まっているかどうかということについては、いろいろな研究論文が出ておりますけれども、日本の市場はほぼ完全市場に近いという結論が出ておりますので、この点は私は心配ないと思います。

 そのときに、では、為替レートが安過ぎるということで、何かしなきゃいかぬかということでありますけれども、経済政策の目標というのは限られているわけでありまして、しかも手段が限られているわけですね。政府が持っている手段というのは、財政政策と金融政策しかないわけですから、そうすると、通常言われているのは経済の適正な成長と物価の安定、この二つを一番大事な目標として決めるとすると、それに二つの手段を合わせると、為替市場は自由にせざるを得ないんです、それが変動相場制の意味でありますので。そこで変な障害がないようにだけは気をつけなきゃいけないけれども、あとは為替市場の市場ルールで決まっていくというところで任せるしかない。これは、ある意味でちょっと、必ずしも納得できないなという気があるときはするんですけれども、しかし、それはやむを得ないということで、自認せざるを得ないと思います。

 あとは、円の国際化は、おっしゃるとおり、私どもも非常に大事だと思っておりまして、これは、だれもが円を使ってくれれば為替リスクがなくなりますし、そして投資も資本移動も安定化するわけですけれども、あるいはまた、非常に結びつきの強いアジア経済の安定化に寄与するので、それは非常に重要なことだと思って、できるだけ円が使いやすくなるようには財務省当局も努力してきていると思います。

 ただ、為替レートがどう決まるかというのは、これもいろいろな議論がありますけれども、円が国際化を完全にしちゃったら、では、すぐ高くなるかというと、そうでもないですね。アメリカのドルは、これこそ完全に国際化しているわけですけれども、ドルが随分弱いときもあったわけですね。そこでは、やはり為替レートというのは、市場に参加している人がどういう期待感を持ってレートについて望んでいるかということですので、やはり本筋は、日本経済が本物に、しっかりとした回復を確実なものにして、そして順調な軌道に乗って、我々が目指す成長路線に乗ってくるということが世界じゅうの人から確信されてくれば、次第に円についての信認も上がってくるというように思いますので、ぜひそういうことをやるのが本筋かと思って頑張りたいと思います。

近藤(洋)委員 ですから、市場で決まって結構なんですよ。ただ、副大臣も御存じのとおり、実物取引の何十倍、何百倍ものお金がこの為替市場に入ってしまっていて、余りにかけ離れている状況、実物取引とかけ離れ過ぎている形で決まってしまっている。

 もちろん実需と全部一体になれとは言いませんが、今の状況はまさに、金融の技術が発達し過ぎて大変な状況になっているんではないか。そこに対して目くばせをして、実勢に近づける、実需に近づけるということが私は重要ではないか。そのことが日本経済にとっても極めて、特に、我が国はこれだけ資源のない国ですから、製造業中心に輸出をして、外国との取引が不可欠な、自己完結できない国なわけですから、そういうマーケットをつくることは、これは国益にかなうんではないかという指摘ですが、またこれは議論させていただきます。

 そこで、副大臣の御答弁に、税と予算なんだということでありましたけれども、私は、これは言葉じりをつかまえるわけではないんですけれども、やはり公正な市場、マーケットをつくるというのは、僕はこれからの政府の大変重要な役割だ、こういうふうに思っています。

 そこで、労働市場についてお伺いしたいと思っておるんですが、前半申し上げました資金の目詰まり構造、格差を生み出している資金の目詰まり構造で、これは資料だけにいたしますけれども、資料三に添付をさせていただきました。

 これは、伊東光晴先生、京都大学の、日本の経済界の数少なく残った良識だと私は思っておりますが、伊東光晴先生のつくられた資料でありますけれども、この資料三の中で、要するに、大企業は二〇〇一年から二〇〇四年にかけて配当を七〇%ふやした。そして、従業員給与は五%マイナス。小企業も七%マイナスになった。だけれども、役員給与、賞与は、大企業は五九%ふやしている、増加率が。小企業は、従業員の給料も下げたから役員の給料も削った。すなわち、大きな企業は、配当と役員報酬、賞与はふやしたけれども、従業員の給料は減らし続けている、こういう構図で、一九八〇年代から明らかに日本の企業構図が変わってしまった、こういうことを指摘しております。

 こういう構図の中で、やはり従業員の給与を引き上げることが私は大事なんだろうと。株主と役員だけが分け前を分けるんではなくて、やはり従業員にも配分することが重要だ。今いびつな構造になっているということがこの資料によって明らかになっております。

 そういう中で、政府もようやく最低賃金制度を約四十年ぶりに見直すようでありますけれども、現行の最低賃金の水準は非常に低い。

 表の四をごらんいただければと思いますが、この表の四のグラフ、四角い線がいわゆる最低賃金。一日八時間労働して、週五日働いた場合の最低賃金は、我が地元の山形県では十一万円を切っております。生活保護は三角印です。三角の折れ線グラフですが、生活保護水準の方が高い。最低賃金は、一日八時間労働して十一万円しかもらえない。これが山形県の現実であります。全国の数字はいろいろ出ております。

 この最低賃金の決め方について、賃金法を改正して、労働省は法律を改正するということでありますけれども、私は、この最低賃金、生活保護水準よりも低いというのはいかがなものかと思うわけであります。都道府県によってばらつきがありますけれども、押しなべて低いわけでありまして、せめて、私は、生活保護水準と同等ないしはそれ以上に引き上げるべきだ、こう思います。そして、ある程度強制力を持って引き上げるべきだと思いますけれども、経済産業省の御所見はいかがでしょうか。大臣、いかがですか。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

甘利国務大臣 最低賃金の算定のもとになっている最低賃金法につきましては、厚労省の労働政策審議会において、先日、改正法案の要綱が取りまとめられたところでございます。

 この改正案では、最低賃金の決定の際に考慮する労働者の生計費について、新たに生活保護との整合性に配慮するものというふうに記されていると承知をいたしております。

 でありますから、これを受けて、生活保護との逆転がないように是正が図られるというふうに承知をいたしておりますが、その際に、中小企業への影響はどうかということをよく指摘を我が省としてはされています。当然、ないとは言えません、やはり中小企業により大きな影響が出ると思いますので、そこで中小企業の底上げを図っていくための戦略を現在策定しているというところでございます。

近藤(洋)委員 最低賃金を引き上げると、中小企業の経営者の方々は、いや、それじゃ会社が成り立たなくなります、こういう声も私も一部に聞きます。しかし、これはある意味でおかしな話で、健康で文化的な最低限の生活をきちんと働いて得る、その水準が守られないというのはこれまたおかしな話で。

 だとすると、中小企業の経営者の方々がそういう従業員の方に払えないような環境を是正することが、これは政府の役割だと思うんですね。もちろん、技術支援だ何だということで、頑張れ頑張れ中小企業、これはこれで大事ですけれども、一方で、買いたたき、この買いたたきに対して、要するに、取引慣行での結果、大手の会社から、もっと下げろ、もっと値引きしろ、安くしろ、こういう不当な圧力を是正すべきだと思うんですね、実際の取引現場では。

 そうだとすると、最低賃金をちゃんと守っている企業にも、企業努力もしているにもかかわらず、さらに買いたたきをしているというような状況は、これは独占禁止法で言うところの不公正な取引でありまして、場合によっては優越的地位の濫用でもありまして、これは、この最低賃金を適正水準にした上で、さらにした後におかしくなったならば、公正取引委員会は徹底的にこの問題を摘発すべきであろうかと思いますが、公正取引委員会委員長、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 まず、申し上げるまでもないんですが、市場経済、自由主義経済のもとで価格がどう決まるかは、まさに当事者同士で話し合って決めてもらう。それはコストも反映されるでありましょうし、需給関係を踏まえて決まってくるということなので、公正取引委員会としては、その原則に不当に介入することは控えるべきだというふうにまず基本的には考えています。

 ただし、御指摘のように、優越的地位にある者が、同様の取引において提示しているものに比べて著しく低い価格で、まさに優越的地位の濫用として不当に買いたたくという場合は、これは優越的地位の濫用ということになる。それがもし下請取引関係にあるものであれば、下請法がそういう行為を禁止しております。

 したがって、これらは言ってみると例外的なケースだと思いますが、我々としては、今申し上げたようなケースが出てきた場合には、従来からもそうでございますが、これからもきちっと法律を適用していくということでございます。

 ただし、最低賃金かどうかとか、油が上がったからそれが転嫁されているかとか、そういう個別のことについて直接結びつけて、それが違法であるかどうかということではなくて、全部まとめて、それが不当な買いたたきであるか、または不当な値引きであるか、そういう判断になるかと思います。

近藤(洋)委員 私は、これだけ格差が定着する中で、やはりこの最低賃金をいかに、最低賃金に限らず、要するに適正な労働に対する適正な価値を得るという状況をつくることが私は非常に大事だと思うんですね。

 ですから、それだけを取り上げて公取で摘発しろとは言いませんが、まさに不公正な取引の大変大事な一つのものなんだという認識を持っていただきたい、こう思うのと、あと、残念ながら、最低賃金法では罰則が五十万円以下と、改正法でもなっています。残念ながら懲役でないんですね。ほかの労働基準法の違反というのは懲役の部分もあるんですけれども、この分野については、残念ながら、刑罰がない、罰金刑のみであるとなっております。

 そこで、私は、委員長にたびたびこの場でも指摘をさせていただいておりますけれども、不公正な取引、優越的地位の濫用について、やはり罰則を入れるべきだ、刑罰を入れるべきだ。そういう中で、しっかりこの問題を、やはり公正な市場をつくるんだということをしなければいけない時期じゃないか、こう思うわけです。

 竹島委員長は御就任以来、闘う公正取引委員会、大変すばらしい、我々が評価しても何の得にもならないと思いますけれども、大変果敢に公正な市場をつくられていると評価をさせていただいております。ぜひ、この問題、最後に残った問題だと思います。不公正な取引についての、まず体制も非常に寂しい状況ですから、これは予算をつけなきゃいけませんが、法制度をまず直していただいて、罰則を入れるということも含めて御検討いただいたらいかがかと思いますが、どうでしょうか。

竹島政府特別補佐人 不当廉売なり優越的地位の濫用について、ただやめなさいと言っているだけじゃだめだ、ペナルティーをきちっとすべきであるという御議論は、十七年の独禁法の改正のときにも大変御議論いただきまして、この委員会の附帯決議にもそれが入っております。

 それを踏まえて、その後、もう一年半になりますが、内閣府に独禁法基本問題懇談会というのを設けておりまして、ことしの夏、二年かけて検討して提言をまとめるということになっていまして、ことしの六月か七月にはそれがまとまるということになっております。その基本問題の中の一つが、今御指摘の、課徴金の対象にすべきかどうかという議論でございます。

 法律論として難しい問題があるということは前々から御説明申し上げたとおりで、それをどうやってクリアできるのかできないのか、まさに基本問題懇談会における議論もいよいよ実質的に詰める段階に入ってまいりましたので、我々は、その議論もよく踏まえて、附帯決議があるということも十分承知しておりますので、検討していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。我々も検討しております。格差是正を正すための資金の目詰まりを正すためにも、やはり適正な取引が行われることなんだ。これは非常に大事な部分と思っておりますし、公正取引委員会の役割は極めて大きくなる、この点だけ申し上げたいと思います。

 時間も迫ってまいりましたので、官製談合防止法についても質問する予定でございましたが、この場で発言だけにさせていただきたいと思っております。

 報道によると、国土交通省に対して、公正取引委員会が改善措置要求を出されるやに伝えられております。国土交通省本省が公正取引委員会からこのような措置を受けるというのは前代未聞のことであります。しかも、半年前までは、自分たちは白だということを国土交通省はおっしゃっていた。にもかかわらず、公正取引委員会からそういった勧告を受けるというのは、これは前代未聞のことでありまして、官製談合防止法は当委員会においても議論をさせていただいておりますけれども、こういった状況を見ると、まだまだ見直さなければいけない点があるなということだけを申し上げたいと思います。

 大臣、ちょっと話をがらっとかえまして、エネルギーについて一、二点だけ伺いたいんですが、大臣は、ゴア元副大統領がつくられた「不都合な真実」という映画をごらんになりましたか。(甘利国務大臣「まだ見ていません」と呼ぶ)まだ見ていませんか。総理はごらんになったということで、私も先般見に参りました。今度民主党としては、エネルギー政策調査会というのを民主党の中につくっておりますけれども、そちらでも全員で見に行こうと思っております。

 大臣は大変御多忙でいらっしゃいますから、なかなか映画を見るような時間はないと思うんですけれども、あの映画で伝えられているのは、まさに、これからCO2を削減しなければ世界的に大変な状況になるというゴア元副大統領のメッセージでありました。

 そういう中で、現在、再生可能エネルギーをいかに多く使うか。使う、普及させる取り組みをするかということは非常に重要になってくるわけでございますけれども、再生可能エネルギーの普及を目指す、電気事業者に購入を義務づけているRPS法について伺いたいと思います。

 経済産業省の中で、目標値として新たな目標値を設定されたというふうに聞いておりますが、この新たな目標値、現在の目標値を実現するだけでも電力会社のコスト負担額というのは約一千億円である、こういうふうに聞いている。一千億円のコストを払っている、こういう話でありました。さらに目標値を高くする。私はこれ自体はいいことだと思っておりますが、電力会社だけが負担するというのではなくて、ある意味で、広く国民が負担を分かち合う仕組みというのをつくる必要があろうかと思っております。(発言する者あり)

 その中で、与党の先生からもそのとおりだということでございますけれども、私は、グリーン電力証書の仕組みを、すなわちユーザーが再生可能エネルギーの費用を負担した場合は寄附とする、証明するという仕組みでございますけれども、これを、寄附ではなくて損金算入できるような仕組みに切りかえることで、さまざまな企業がこの仕組みに乗ることができる、多く皆で再生可能エネルギーを支え合うことができると思うのですが、財務省、損金算入するように税を変えたらいかがでしょうか。

江崎大臣政務官 今近藤先生御指摘のグリーン電力証書でございますが、これらにつきまして、まだ関係省庁から税制改正要望というのが具体的に出てきておりません。

 そういった意味で、関係省庁の中で十分、公平、中立、簡素という租税原則に従って、適当かどうかを御議論いただいて検討に入っていくという段取りになっていこうと思います。

近藤(洋)委員 私が要望してもそういうことでしょうから、これはやはり政府が要望しなきゃいけない、こう思うんですね、まず政府内で。

 どうでしょうか、経済産業省、そういった損金扱いにすることで、さまざまな企業なりが再生可能エネルギーを購入した場合に、証書を発行して、私はきれいな、CO2を削減するエネルギーを使っているんですというところに、協力したところは損金算入する形で普及を広げるということは、私は、一つ現実問題として非常に大きなエンジン、切り札になるんではないか。実際、百六十億キロワットアワーの目標を達成するのは大変なことです、現在はまだまだ進んでいないわけでありますから。そういう意味でも必要ではないかということが一点。

 あわせて、電気部門だけではなくて、いわゆる石油、ガス、バイオエタノールであるとか、そういった石油、ガスについても再生可能エネルギーを普及させるような義務目標、どこまで義務か、既に電力については義務化されているわけですけれども、ガス、石油についてもそういったことを検討する時期に来ているのではないか。輸送部門のCO2排出は極めて高いわけでもありますし、そういった検討も経済産業省において、電力部門だけに再生可能エネルギーを義務づけているというのはどうもバランスを欠くのではないかと思うのですが、経済産業省のお考え、損金算入の件と含めて、いかがお考えか、どうでしょうか。

甘利国務大臣 企業の環境への配慮をいかにしているかということの一環として、グリーン電力の購入をしている、これが寄附金扱いなのを経費扱い、損金算入をしたらいかがかと。これは、検討する余地はあると思います。私も、個人的には二口入っているんですが、個人のはどうなんですかね。それも含めて、議論する余地は大いにあろうかと思います。

 それから、RPS法で、電力に一定割合新エネ目標を設定しました。あのときの座長は私がやったのでありますけれども、けんけんがくがく、どのぐらいの数値がいいか、いや、こんなの無理だと、いろいろありました。あるいは、原子力を入れる入れないという議論もありました。目標値を決めて、あれは八年ごとに設定をして、四年たったら次の八年ということなものですから、今二〇〇八年を決めたわけであります。かなり高い水準になっていると思いますが、これはこれで電力業界もやっていくという覚悟を決めてもらったわけであります。

 それ以外にも、その種の再生可能エネルギーあるいはそれに類する処方せんを書けというお話でありますが、自動車用燃料については、目標値を決めて、それに向かっての道筋をある程度描いているわけであります。

 各方面で目標値を決めて、あるいは努力目標値を決めてそれに向かって進んでいくということは、地球環境保全、CO2抑制の点から極めて大事だというふうに思っております。

近藤(洋)委員 二点とも、経済産業省においてぜひ御検討いただきたいと思いますし、その節にはぜひ税務当局も真剣にお考えいただきたい。

 やはり、我々政治家にとって、いい形で地球を残すということはやはり責務だろうと思っているわけです。しかもかつ、それを、ただ理想論だけを言うのではなくて、実現可能な形で、コストの負担をどうするんだということもしっかり議論をして誘導するということは、非常に重要であろうかと思っておりますので、御議論いただきたいと思います。

 時間がほぼ参りましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。

上田委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 ただいまの近藤議員の質問に続いて、幾つか甘利大臣の所信表明演説に対する質問をさせていただきます。

 近藤委員からも、冒頭に格差の問題というのが出されました。その論議の中で非常に広範な論議もありましたが、同僚議員も続いてこの格差の問題を取り上げるだろうという指摘もございましたので、質問に入る前に、大臣所信に関する格差問題について質問をさせていただきます。

 私は、基本的に、甘利大臣の認識、先ほどお伺いしましたが、外需頼りとか、あるいは設備投資で景気を云々というのには限界がある、したがって内需へ転換しなければならない、GDPの六割は消費でもっているんだからという御答弁がございました。そして、この所信表明演説の冒頭に、「現在、我が国経済は、総じて見れば、堅調な景気回復を続けている一方で、消費に弱さが見られます。」ここに、私は、端的に現在の日本の経済状態というのがあらわされていると思うんですね。

 なぜ消費が弱いのか。いわゆる堅調な景気回復を続けているけれども、消費に弱さが見られる。

 先ほど近藤委員からいろいろと御指摘がありましたが、一つは、私のつたない経験に基づく分析ですが、貿易、輸出が好調ですね。それから円安。それから、近藤委員からも指摘がございましたが、私も調べてみてびっくりしたんですが、労働分配率というのが下がってきているんですね。いわゆる、労賃を引き下げて企業の業績を回復している。もちろん、この中にはリストラというのも大きな要因として入っていると思うんですが。

 したがって、働く人の話を聞くと、とにかくパイを大きくしないと私たちも分配をもらえない、だからパイを大きくしようあるいはパイを維持しようというので、リストラも、それから賃金の上昇を抑えるとか低下についてもみんな一生懸命我慢してきたんですね。

 我慢してきて、この私の国民経済計算という内閣府の資料から見ますと、二〇〇一年のときが七七%の労働分配率でしたが、二〇〇二年には七五%、二〇〇三年には七三・八%、二〇〇四年には七三・三%、ずっと減り続けているんです。働いている人に対する利益の分配をずっと抑えて、輸出好調で、そして円安、こういうことから、現在の、大臣の御指摘の堅調な景気回復を続けているということになったと思うんですね。

 ところが、消費に弱さが見られる。いわゆる地域の、生活している人に対する賃金分配というのを抑えていますから、だから消費が弱いんですね。そして同時に、大都市部では非常に好調なんだけれども、甘利大臣のふるさともそうだし、皆さんもそうだと思うんですが、地域に行くと、どこが景気回復なんだという話がまだまだあるんです。なぜかというと、地域にお金がおりていないんですね。なぜかというと、生活者のところにお金がおりていないんです。だから、なかなかうまくいかない。

 この質問は、いわゆる会社というのはだれのものだという話にもなってくるんですね。会社というのは株主のものなのか、あるいは従業員のものなのか。

 今申したように、貿易の輸出が好調、そして円安で、会社には、輸出関連にはお金が入ります。しかし、そのお金がどこに行くかというと、株主のところを重視してやっている、そういうことで、なかなか従業員のところの懐に入ってこない。そうすると、生活の、ふるさとの方での経済に回らない、あるいは、輸出関連企業と関係しないところの、いわゆる地域における生活者の経済といいますか、ふるさとの方は大体そうですから、そういうところまでは影響が及んでいないということなんですね。

 私はそこのところを考えないといけないと思いますし、結局、小泉改革の五年半は何だったんだというと、先ほどから、それはいい改革だったという話もありますが、たまたまこういう要因が重なって今見かけ上の景気回復の状況になるだけであって、これが円高になってみたり輸出がとまってみたりすると、日本経済というのは大変な、ふるさとも国の中央も非常にまた谷底に落とされる可能性があるわけですね。

 そこで、大臣がおっしゃるように、先ほどの御答弁を、お話をお伺いしますと、これからは内需へ転換しなきゃならない、こういうふうなお話でございますが、何を言おうとしているかというと、そろそろ会社の方もいろいろな要因で金庫にお金がたまったろうから、それを、株主だけじゃなくて、総理ですら、そろそろ働く人にやはり適切な賃金を払うようにしようじゃないかと言っているわけです。ここのところが私は内需につながると思うんですが、今申し上げました一連のことに対する甘利大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 御専門の分野でありますから、大変多岐にわたって問題の御指摘をいただきました。

 まず、労働分配率でありますが、これは、国民所得を母数として、国民所得分の雇用者所得の比率、国民所得は雇用者所得プラス企業所得プラス財産所得でありますが、その比率がだんだん下がってきている。企業業績はよくなってきているということは間違いないのに雇用者所得が伸びていかない、そこで比率は下がるということであります。

 雇用者の所得というのはいわば固定費でありますから余り乱高下が日本はできませんが、企業業績は乱高下しますから、景気の悪いときほど逆に労働分配率が高くなって、企業業績がよくなって、企業業績が伸びるとリアルタイムで雇用者所得が上がっていかない、固定費が上がっていかない。つまり、固定費というのは上げたり下げたり常時できないということでありますから比率が悪くなるということになるんだと思います。

 ただ、いずれにいたしましても、企業業績が上がってきた後、ある程度企業経営者に自信がつけば、下げることがそう簡単にできない雇用者所得の水準を上げていくということは、企業経営者としての責務だというふうに思っております。私は、そろそろそういう好循環のサイクルをつくってもいいんじゃないですか、そういう時期が来ているんじゃないですかということをたびたび経営者側に総理ともども申し上げているところであります。

 企業はだれのものかという御指摘もありました。

 どうも、企業業績が上がっていっても、役員報酬や株主配当にばかり割いて、雇用者報酬に還元されていないじゃないか、先ほどの近藤先生からの御指摘の中にもあったところであります。

 企業はだれのものか。三角合併論議がありましたときに、私はその議論に参加をいたしまして気がついたことは、日本には企業防衛の仕組みが外国に比べて完備されていない、丸裸の状況のまま外から攻めてくるという状況に気がつきまして、そこで、自民党の中に企業統治委員会をつくりまして、みずから委員長になりました。そこで、MアンドAに関する適正ルールというのをつくりました。

 前にもちょっと申し上げたことがあったかもしれませんが、守るも攻めるもフェアバランス、一方に過度に偏らないという適正バランス、それから、MアンドAのときに大事な哲学というのは、企業価値を高める提案をどっちがするか、それを株主が選択するということを明らかにしなきゃいけない。そのための提案が見えるように、それから選択する時間を株主が持てるようにするというところであります。

 その際の企業価値といったときに、株主価値だけか。いや、そうではなくて、企業はだれのものかといえば、第一義的には、お金を出している株主によってつくられるのでありますから、株主のものであるというのは、それは変わらないと思いますけれども、それだけじゃない。従業員のモチベーションが下がっているような企業は企業価値が下がるのでありますし、地域との連携がうまくいっていない、地域に疎まれるような存在の企業はやはり企業価値が下がるのであります。企業の社会貢献ということも昨今は言われているわけでありますから、そうしたもろもろの利害関係人といいますか、ステークホルダー、企業はステークホルダー全般のものであるという考え方をそこで私は打ち出させていただいた次第であります。

 でありますから、企業経営者はもちろん、株主に対してどう企業が貢献をしていくかと考えると同時に、企業価値として、従業員がどうモチベーションを高く持てるか、あるいは地域と共生がしっかりできる企業たれ、そういう点が企業価値を構成する要素のもろもろであろうというふうに考えております。

大畠委員 今の大臣の答弁を集約しますと、いろいろな要因で、企業も回復基調にあるんだから、従業員がやる気を起こすように適切な労働分配率というものを念頭に置きながらやるべきじゃないかという御指摘だと受けとめております。

 同時に、一たん労働分配率が上がってしまうとなかなか下げることができないというんですが、この間、随分賃金を下げることに協力してきたんですね、従業員の人も。だから、一たん上がってしまうと大変だということじゃなくて、やはり景気がよくなったら素直に上げるべきだと思うんです。おっしゃったように、モチベーション、やる気なんですよ。やる気のない社員が一万人いたってだめなんです。やる気のある社員が十人でも百人でもいれば企業はすごく大きくなりますよ。私はそんな感じがするんです。

 だから、その原点はやはり、女性は子供を産む機械とかベルトコンベヤーとか、そんな話がいろいろ出てくるような話では困るんですね。だから、やはり人間性というのをもっと大事にしてもらわなければならない。決して人間は機械じゃないんですから、かみさんもいれば子供もいたり、その中で一生懸命暮らしているんですから、それを、あたかも何か利益を生み出す機械のようにみんな考えられたのでは、全く私は困ってしまうと思いますね。

 ぜひ甘利大臣のリーダーシップを発揮して、総理がやる気がないんだったら甘利さん自身が、私がでは総理をやりましょうぐらいの気迫で、この問題はぜひ乗り越えていただきたい。そうじゃないと日本の全体が元気が出ないですよ。ぜひそれは強く要望しておきたいと思います。

 さてそこで、幾つかの具体的な質問に入りますが、まず、ものづくりについてお伺いしたいと思います。

 先ほど大臣からもお話ございましたけれども、今、日本の経済が好調だというのは、輸出関連産業、そして円安、それから労働分配率といいますか賃金の低下、そういうことで見かけ上の景気がよくなっているという話であって、これをどうするのか。輸出関連企業と関係ないところは落ち込んだままでありますから、そういう意味では、地域の方へなかなか回らない。地域の経済、ふるさとの経済を支えているのは、ものづくりも含めてまさに中小企業なんですね。これは毎回言っているんですが、日本は、大企業主義ではなく、中小企業を中核としたものが日本の経済を支えている。そういう意味では、イタリアと同じように、中小企業大国を目指すという、そんな宣言をしてほしいという声もございます。

 それからもう一つ、いわゆる大臣の中小企業に対するてこ入れというものについての御所見を伺うのと同時に、平成十五年に法改正があって、平成十六年の三月一日から製造工場への派遣社員というものを解禁したんですね。これが非常に今大企業も含めて浸透しておりまして、ある工場現場で、さあ朝礼をやろう、みんな集まれというと、集まってきた三十人ぐらいの二十人ぐらいは派遣労働、派遣社員だ。さあきょうも一日しっかりとした物をつくろうというときに、どうもいま一つ気迫が足らない。なぜかというと、あと二週間後でこの人たちが帰る、三週間後にはこの人が帰るというので、全体的な足並みがそろわないんですね。

 そこで、ものづくり現場の中核リーダーは、では、私はだれにこの工場でつくっているものづくりの技術や技能を伝承したらいいのか、非常に戸惑うことが最近多くなった、このままでは、今乗り切ったとしても、低コストで製品をつくることができたとしても、物をつくる技能、技術というものを次の世代に伝承できないかもしれないという強い危機感があるという話を伺いました。

 この問題を考えますと、最低でも現場では四分の一ぐらい、せいぜい派遣社員は四分の一、多くても三分の一ぐらいに制限しないと、安くやるんだったらどんどん外から入れた方が安いという話なんですが、それでは日本のものづくりの力というのが非常に弱体化してしまうという懸念を私は持っているんですが、ここら辺、再検討すべきだという声も出ております。

 この二つについて、まず最初にお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 正規雇用と非正規雇用と言われていますが、企業が非正規雇用を使うというのは、生産の季節変動値が激しい部分について、すべて正規雇用で賄おうとすると、忙しいときに合わせると忙しくないときには従業員に仕事がない、忙しくないときに合わせると忙しいときには手が足りなくてどうもならないということで、変動値の一番少ないところに合わせた部分を正規でカバーして、その乱高下する部分について非正規で対応する、つまり、採用したり、もう仕事いいですよといったりするフレキシビリティーがないと対応できないという部分は認めざるを得ないと思います。

 ただ、安定的に推移をしている部分についてはどんどん正規雇用でカバーしていってもらいたい、またそうすべきだというふうに思っています。

 先生御指摘のとおり、その企業の現場の責任者がそこの技術の伝承、ノウハウの伝承をしていくときに、来週はいなくなっちゃう人に幾ら教えてもその企業にとっての蓄積にはならない、継承にはならないですし、教わった方も、来週は違う業種に行くんだから、これを教わってどうするのという話に、両方ですれ違いになるわけでありますから、そこはやはり、将来にわたってその企業を担っていく人材に技術やノウハウの伝承をしていかなきゃならない。そうでないとその会社がもたないと思うものでありますから、そういう伝承していく対象をある一定数はちゃんと確保していかないと、先輩がやめたらもう何もなくなっちゃったということになりかねません。

 また、企業全体のモチベーションの低下にもつながっていくわけでありますから、そこはしっかりと見ていかなければならないというふうに思っております。ただ、法定でどれくらいにするということについては、いろいろ議論の余地はあろうかと思います。

大畠委員 大臣がおっしゃるように、仕事量が減ったりふえたりというときに、いつも最大、マックスで抱えていくわけにいきませんから、ベース労働でという考えはわかるんです。

 ところが、今は、仕事量じゃなくてコスト論で、いわゆる派遣社員を入れた方が安い賃金で使えるというので、トータルコスト論なんですね。仕事量とは関係ない分野に私は入っていると思うんです。したがって、正社員を使うよりも派遣社員を使った方が人件費が安く済む、そうするとトータルの製品コストを下げることができる、そういう意味での製造現場に対する派遣労働が恒常化し始めている。

 私はそこのところを、その企業企業の責任者が考えればいい話かもしれませんが、責任者といったってこれはサラリーマンですから、自分で起こした会社ならば何とかしなきゃと思うかもしれないけれども、自分が在籍している間何とかいい業績を残せればいい、もしもそういう考えの人がトップに立ち始めると、まあそこそこやっていればいいかということになって、技能、技術の伝承というのはだれの責任でやるんだというその発想が少しなくなってくるんですね。どうもそこら辺の発想が、最近の市場原理主義で、コストがすべてという話だから、あちこちで不祥事が最近起きているんじゃないかという感じがするんです。

 不二家だって、わからなければいいや、捨てちゃうよりも再利用しちゃえという話とか、ガス器具の修理の問題でも、そうやってやった方がいいんじゃないかと安易に、どうも私は責任感というのが、日本人のトータルの責任感が下がってきていると思うんですが、ここら辺、法改正が一番おくれたのはおくれたんです。というのは、やはり製造技術というのは、ものづくりというのは日本の原点だ、だから、この分野だけは派遣社員は認めないことにしようというので最後まで残っていたんです。ところが、ここで認めたんですね、平成十五年に。それで、ほかのところもやっているからうちもやって、トータルコストを下げようという競争に入っちゃったんです。

 結果的にこうなっているので、ぜひ大臣も、先ほど近藤議員のやりとりのときに、私も現場に入っていますというお話を聞いたわけですが、ぜひそういう現場の声も聞きながら、間違いのないリーダーシップを発揮していただきたいなということは申し上げさせていただきます。

 さて、その次、きょうの質問をするに当たって、幾つか現地からの話も伺ってまいりました。私の地元の高萩市の方からも、これはいわゆるドーナツ現象ですね、中心部が非常に寂れてきちゃっているということの中からですが、店舗、公共的機関、医療機関、高齢者施設の中心市街地への誘致や移住人口を高める施策を求めているですとか、あるいは北茨城の方からも、大型量販店が町に進出して、小売店は非常に苦戦をしていると。例えば、同じ商品を同じ価格で仕入れることができるような仕組みにして、同じ土俵で勝負したいとか、いろいろ悩みが寄せられております。

 そこでちょっと、まちづくりについてお伺いしたいわけですが、昨年、まちづくり三法の改正を行いました。もう遅過ぎたという声も多く聞こえます。いわゆるドーナツ現象を何とか防止して、あんパン型町、へそがあって真ん中にあんこがある、ドーナツからあんパンへ、わかりやすく言うとそういうことかなと思っているんですが、今へそもあんこもなくなってドーナツだけになっちゃって、真ん中がないんですよ。やはり、これでは私は町とは言えないんじゃないかと。

 私も、大臣もそうでしょうけれども、ハンガリーに行っても、フランスに行っても、イギリスに行っても、しっかりとした町が、町並みが残っていますよね、うらやましいなと思うんです。イタリアもそうなんです。なぜこんなに見るも無残に真ん中がシャッター通りになって、郊外になってしまったんだろう。ここら辺は、まちづくりの基本的な考えがなかった。何でもアメリカ流で、自由競争だということで、郊外に大型店が出てしまったということも一つの原因かもしれません。大きな原因でしょう。

 だから、これをどうするかということなんですが、その中で、法改正の中で、商工会とか商工会議所の中の役割に期待するとか、新たにタウンマネジャーというのを、ひとり町の中を歩いては、何が問題かというのを見定めて、そこに適切な対処をするという導入計画とか、あるいはコンパクトシティー、これも、言ってみますと、日本語に訳すとあんパン計画というんでしょうか、ぎゅっと真ん中に集めて、そこで一つの町をつくっていこうということですから。

 この二つの方針を打ち出したわけですが、ここら辺に対して、今現状どういう形で進んでいるか、経済産業省にお伺いしたいと思います。

松井政府参考人 お答えいたします。

 さきの通常国会におきまして、まちづくり三法の見直しを行いました。市街地の整備改善や商業の活性化のみならず、都市機能の市街地集積の促進、町中居住の推進や郊外開発の抑制などを総合的に進めることによりまして、コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを進めることといたしました。今大畠先生御指摘の、あんパン型のまちづくりをする、こういう方針でやっているわけでございます。

 昨年から法律も施行になりまして、ことしの二月八日には、富山市と青森市の中心市街地活性化基本計画の第一号認定が内閣総理大臣によって行われ、新たなまちづくりに向けた取り組みが開始されたところでございます。現在、このほかにも三十を超える市町村におきまして、基本計画の作成が進められていると承知しております。

 法改正によりまして、やはり大きな変化は、地域の関係者のまちづくりに対する姿勢が随分意欲的に変わってきたのではないかなというふうに見られます。我々の職員が、全国の地域に一生懸命派遣いたしまして、どのような計画をつくるか、側面から御支援をしておるわけでございますけれども、随分関係者の方の機運が変わったというふうに感じております。すなわち、商業者のみならず、自治体、商工会議所、商工会、住民、ディベロッパー、NPOなど、地域の関係者が協力して、みずからの町をどうやったら活性化するのかということについて真剣に取り組む機運が広がってきております。そういうような関係で、新しい基本計画の策定が若干おくれている面も否めないと思います。

 また、地域の取り組みの中心的な存在としての役割が期待されます中心市街地活性化協議会も、現在、全国の市町村におきまして次々と設立されていると承知しておりまして、この中で、先生が今御指摘のタウンマネジャーを新たに設置して、中心市街地活性化に取り組もうとしているところも見られるところでございます。

 経済産業省といたしましては、まちづくりに意欲的に取り組む地域に対する職員や専門家の派遣、それから協議会及びタウンマネジャーの活動に対します戦略的中心市街地商業等活性化事業費補助金等の支援を通じまして、積極的に中心市街地の活性化に努めてまいりたいと考えております。

大畠委員 やはり冒頭、大臣の所信の中にもありますように、景気は回復基調にあるものの、国民の消費のところにまだ影響していないと。だから、結局、町の方は非常に疲弊しているんですよね。だから、輸出産業関連は厚くなっているんだけれども、市民生活をベースとした経済が回っていないんです。そこのところは政治がやるべきなんだと私は思うんですよね。何でも官から民、行政が、政府が考えることを放棄しちゃって、さあ、自由に全部開放しますから、アメリカからだろうが、どこかからも来て、大いに日本国内で商売してください、これも一つかもしれない。しかし、その影響がもうふるさとなどで、セイタカアワダチソウみたいな形で、ふるさとにあった草花が淘汰されちゃうと、結局何だかわからなくなっちゃうんですよ、日本が。そういう意味で、これは大事なことですから、ぜひ法の改正の趣旨にのっとって力を入れてやっていただきたい。

 それからもう一つ。さっきの要望の中にあった、量販店がかなり町の中に入ってきて小売店が困っているという話でありますが、これについても昨年の国会でも取り上げさせていただきましたけれども、公正取引委員長、先ほども近藤議員も高く評価しているという話でありましたが、よく一生懸命仕事を勇気を持ってやっていただいていると思うんです。

 このことについては敬意を表しながら、このガイドラインというものを出していただいたんだけれども、守られていないという声もあるし、テレビ、最大四〇ポイント進呈とか、巧妙な販売合戦も続いております。差別対価調査をしてほしい、公取委員長の目の届かないところでこそこそこそこそやっている人が随分いる、こそこそというよりも大胆にやっている人が多いんですが、ここのところを、もうちょっと、公取委員長、そこまで踏み込んでいただきましたので、さらに一層あこぎな商売をやっている人に対してはきちっとした、まさに市場の番人としての力量を発揮していただきたいという声もあるわけでありますが、この現状をよく調査してもらいたい、ガイドラインをきちっと守らせてもらいたいという声が寄せられております。

 それからもう一つは、これも過日大きく新聞にも取り上げられましたけれども、量販店に対する派遣労働問題ですね。量販店に対する派遣労働問題で、ヤマダ電機に職安法違反の疑いで労働局が調査に入ったということであります。この問題も公正取引委員会からすれば不公正取引、優越的地位の濫用に当たるんじゃないかと思いますし、労働省の方では職安法違反の疑いが強いということでありますが、これも、要するに量販店の会社が各メーカーに無理やり販売員を呼び集めて、このお店で仕事しなさいというわけですね。販売員は製品の説明員だというんだけれども、例えば東芝さんの販売員が来て、日立とか松下の製品の説明まで強要されているわけですね。残業までさせられているんです、そのお店から。

 そういう意味では、これは明らかなる優越的地位の濫用に当たるし、職安法違反の疑いが強いということでありますが、公正取引委員会と労働省から、それぞれ、今、公正取引委員会には二つほど質問させていただきましたが、労働省の見解も含めて御答弁をいただきたいと思います。

竹島政府特別補佐人 まず第一点の、家電のガイドラインに関する御質問ですが、このガイドラインは大畠先生の強い御希望というか御主張もございまして、昨年の六月でございますが、ガイドラインを策定いたしまして、公表いたしました。

 反応はどうかということですが、昨年からことしの一月、正確に言えば昨年の四月からことしの一月までですが、七百八十八件、既に公正取引委員会に対して不当廉売に係る申告が参っております。それに対しまして、迅速処理をモットーにやっておりますが、既にそのうち七十二件について注意をしております。注意だけで済むかどうかという問題はありますが、もし済まなければまた不満がもたらされると思いますので、いずれにしても、こういったケースはガイドラインを踏まえてきちんと対応していきたいと思っております。

 それから、二点目のヤマダ電機のことでございますが、これは、厚生労働省とはもとより切り口が違うわけですが、おととしの十一月に、大規模小売業者の、平たく申し上げますと、納入業者いじめはいけませんよ、こういうことをやれば、それは独禁法違反になりますよということで告示を出しました。そこで明らかにしておりますが、従業員を派遣してくれという場合に、例外として次の場合は違法ではないとしております。

 そのうちの一つは、あらかじめ納入業者の同意を得て、その従業員等を当該納入業者の納入する商品の販売業務のみに従事させる場合であって、その従業員等が有する販売に関する技術または能力が有効に活用されることにより、当該納入業者の直接の利益となる場合、これはいいですよと。それからもう一つ、派遣を受ける従業員等の派遣の条件について、あらかじめ納入業者と合意し、かつ、その従業員等の派遣のために通常必要な費用を大規模小売業者が負担する場合、これはいいですということになっております。

 ヤマダ電機に関して、これはたしか派遣会社を使って納入業者がその費用を負担して、それに対して指示をしたことがどうかという論点でございますが、その場合に、その費用についてきちんと合意をしているのかどうかということになろうと思いますけれども、いずれにしても、こういうガイドラインに抵触するような場合には、きちんと対応していくつもりでございます。

鳥生政府参考人 今、個別の事案についてのお話でございますので、個別の事業者に対する監督指導の状況というのは公表していないということでコメントを差し控えたいと思います。

 一般論として申し上げますと、さまざまな情報を吟味した上で、事実関係、雇用の実態あるいは指揮命令の実態ということを調査を行いまして、派遣契約を結ばないで労働者派遣を行っている場合、あるいは指揮命令関係にある、支配従属関係にある労働者を派遣した先の雇用関係あるいは指揮命令に処するといった、労働供給に該当するといったケース、そういったケースそれぞれございますので、その実態というのを調査を行いまして、労働者派遣法、職業安定法に係る法令違反を把握した場合には、各労働局において適切な是正指導を行いまして、違法状態の解消を図っているというところでございます。

大畠委員 厚生労働省の話は何言っているんだかちょっとわからなかったですね、一言で言うと。もうちょっとわかる言葉で話してみてください。一般論は一般論なんだけれども、だから、何をどうやるのかというのは私はよく理解できませんでした。

 また個別にいろいろとお話はお伺いしたいと思いますが、要するに、大臣、日本という国は自由な市場なんです、開放しています、それはいいんです。しかし、ルールを決めたらそれをばしっと守らせる。そうじゃなければ、日本という国は何をやったっていいんだ、ルールがあるけれども守らなくたっていいみたいだ、やりたい放題の国になっちゃいますよ。

 ふるさとは何か疲弊し、六本木ヒルズにはビルが建って、どんどん人が集まってきたかもしれないけれども、ふるさとの自然の中から私たちはどれほど学んだか。私も田舎で、ウサギ追いしかの山、小ブナ釣りしかの川、そういうものであったから私は今あるんだと思うんです。もちろん都会で育った方も、いろいろ思い出を持ちながらやっているんでしょうが、やはり自然界が、ふるさとが日本人を育てているんですよ。そのふるさとが、ルールがあったって、公取委員長の、あの厳しいきちっとしたルールがあるけれども守らない、言葉は悪いけれども、やからが徘回し始めているんですよ。数の力で、力が強いから何をやってもいいという、そんな社会になったのでは私はいけないんじゃないかと。

 したがって、甘利大臣のリーダーシップをもって、ぜひこの国の社会を本当にいい社会に、美しいことも大事だけれども、穏やかな、安心して暮らせる社会というのは大事だと思うんですね。ぜひお願いしたいと思います。

 最後に、原子力の立地問題の最終処分場の話を質問したいと思いましたが、時間がなくなりました。

 ただ、一言言いますと、調査費を出すから手を挙げないかというだけでは、私は理解が進まないんじゃないかと思う。私は前にもフランスのことを申し上げましたが、やはり国民全体に理解されるように、国がもうちょっと長期的な視点で施策を進めないと、なかなか、五億出すから手を挙げないか、二十億出すから手を挙げないかというだけでは、私は物事は進まないんじゃないかと思う。

 このことについては再度よく御検討いただいて、原子力のエネルギー政策がきちっと国民に理解されて進むように努力をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

上田委員長 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十分開議

上田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。川端達夫君。

川端委員 民主党の川端です。大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 振り返りますと、お互いもうちょっと若かったときに、商工委員会の甘利大臣は筆頭理事で、私も民社党で理事、オブザーバーか何かやっておりまして、随分長い間、いわゆる商工行政といいますか、それよりも何よりも日本の国民生活、経済を支えるエンジンはまさに経済の中でも技術立国日本ということでの製造業、そこはきっちりやっていかなければいけないということで、お互い汗を流した仲でありますので、きょうこうして大臣に質問できることは大変光栄に思っておりますし、よろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、そういう日本のまさに経済の中心、技術立国日本のかじ取りの最高責任者としての大臣のお立場でありますし、大臣の政治の御経歴から見ても、まさにライフワークとして取り組んでこられた大臣であります。意欲も満々だと思いますので、政治家同士の議論として、余り細かいことを言うつもりはありませんが、基本的な物事をどうお考えになっているのかを、いろいろなことを検証しながらお尋ねさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 初めに、きょうの午前中の議論でも、景気はよくなっているけれどもどうもぴんとこぬとか、どこの国の話だというふうなずれがあるということがあって、支えている人にとっては格差が拡大しているのではないか、いやいや、もうすぐ格差は縮まっていくんだ、ちょっとタイムラグがあるんだ、こんな議論があったというふうに思います。

 大臣が御就任直後の第百六十五回国会の経済産業大臣のあいさつというのを改めて見せていただきました。そうしましたら、いろいろな課題がある中で、財政再建や安定した社会保障などの原資となる富を生み出すためには持続的な経済成長を実現することが不可欠であります。ここからですね。「経済成長は、大企業と中小企業、都市と地方、正規と非正規の雇用などの格差の是正にもつながるものであります。」ということで、この文面からいえば、この時点において、やはり大企業と中小企業、あるいは都市と地方、正規と非正規の雇用などに格差がある、したがって、これをなくすために経済成長が必要なんだということを述べておられるということで、改めて、書いてあるからそのとおりなんだと思いますが、やはり現実にはそういう格差は存在するという御認識でよろしいんでしょうか。

甘利国務大臣 大企業と中小企業の間、あるいは製造業と非製造業、都市と地方、この間に格差は明確に存在をいたします。大事なことは、その格差が固定化してしまったりとか、あるいは際限なく拡大をしていくということがないように、どういう施策をとるかということだというふうに思っております。

 結果平等は政策としてはいい政策とは言えないと思いますが、チャンスをちりばめて取り返すすべが幾らでもあるということにしていくことが大事でありますし、もちろん全体のパイを大きくして、すべてを全体的に底上げ、ベースアップを図っていくということも大事でありますし、格差を取り戻す、縮める、そういうチャンスをちりばめるということと両々相まって、活力ある自由主義、市場経済社会が生まれてくるというふうに思っております。

川端委員 安倍内閣、安倍総理は格差という漢字がお嫌いなようで、格差ということがあるとすればぐらいが精いっぱいでありますが、大臣ははっきり現実を認識してお答えいただいたことは評価をしたいというふうに思います。やはり現実を見ることからしか世の中は動かせないというふうに思っております。

 そういう中で、今国会における所信では格差という言葉は残念ながらなくなって、これは、内閣の指示ができたてのときはなくて今は徹底されているのかなというふうに思ったんですが、「現在、我が国経済は、総じて見れば、堅調な景気回復を続けている一方で、消費に弱さが見られます。」こういう表現になっています。「企業部門の好調さが家計部門に波及することにより、バランスのよい景気回復が実現されることが必要であります。」ということでいいますと、今もお話がありましたけれども、格差があって、弱いところがある、それは結果的には消費の弱さに多分つながっているんだろうということで、経済をもっとよくしていくことによってそれを底上げしていこうという基本の御認識なのかなと。

 ただ、内閣としての基本姿勢、今もお話がありましたけれども、結果平等は我々も求めるものではありません。ただ、機会平等ということを強調されると、機会を与えたのにうまくいかなかった者が厳しいところにいるんであって、チャンスを与えるからもっと頑張れよというふうに言っておられるだけにしか聞こえない。しからば、今の格差はどういう背景のもとに、経済が大きくなるのに支えている人たちは余りぱっとしないのか。これから同じような路線を続けていったらちゃんと引き上げられていくのかということでいうと、なぜ今の格差がこういうことで、タイムラグとだけ認識しておられるのか。原因はどういうことだとお考えですか。

甘利国務大臣 景気が立ち上がっていく段階で、伸びれるところから伸びていく、ばねのように、先頭部分が先に行っても後ろがまだついてこない、そういうタイムラグの要素は当然あろうかと思います。

 一方で、抜本的な問題も当然そこにはあるわけでありまして、都市対地方の格差でいえば、労働力人口がどんどん都市部に吸い寄せられていってしまう、あるいは企業立地がうまく進まない。その地域を引き上げるための仕組みがうまく作動していかないといいますか、むしろ労働力案件その他、あるいは企業誘致先でも、従来でいえば、財政力の豊かなところの税金の引き下げ、ダンピング合戦にどうしても財政力の弱いところはついていけない構造的な問題がある。あるいは、雇用でいいますと、正規雇用の比率が下がって非正規がふえていく。どうしても正規、非正規の間の給与の格差がある。

 そういう構造的問題とそれから景気が立ち上がるときのタイムラグ要因と、両方が複合的な要素として重なってこういう結果になっているんではないかと思っております。

川端委員 お手元に資料を配付しました。これは週刊ポストという、週刊誌で恐縮でございますが、非常にわかりやすく書いてあった記事なので、引用させていただきました。

 中段の左側に「GDPの伸びはこんなに違う!」と。要するに、イザナギを上回る、イザナギを上回るとよく喧伝されますので、イザナギ景気のときのGDPの伸び率、こういう山を持ちながら全体的に成長していったのに比べて、今回というのは一〇〇すれすれを、要するに辛うじてマイナスにはなっていないということになっている。「給料の変化」ということで、イザナギ景気のときはこの期間で給料が約八割アップした。今回は約一%ダウンしている。「こづかいの変化」、週刊誌らしいんですが、イザナギ景気のときに八七%アップが、今回は一〇%ダウン。「貯蓄の変化」で、イザナギ景気の期間、スタートと終わりでは約九二%貯蓄がふえた、今回は横ばい。ここには書いていませんが、貯蓄ゼロ世帯は急増しております。国民負担率は、イザナギ景気のときは合計二三・四%が、現在はいろいろな制度改正で三七・二%。生活保護世帯も、イザナギ景気のときのふえ方よりははるかに多い、生活保護世帯がふえているというふうなことが載っております。

 こういう現状が、やはり国民生活から見たら、よくなっているのではなくて悪くなっている、景気がいい、いいと、一番真ん中の左で言われるけれども、何の実感もないという。普通のイメージは、景気がよくなるというのは、懐がふえるというふうに思うのが、どうもぴんとこないということだというふうに思います。

 そこで、次のページなんですが、これは連合が職場討議用にまとめた資料なんです。

 これは、先ほどのはイザナギと今回の景気の違いだったんですが、小泉改革で改革は進んだという裏に、数字としてどういう結果が出たのかというと、上は、株主配当金は、スタートの二〇〇一年を一〇〇とした場合に、二〇〇五年ということでいうと、好景気を反映して急増しておりまして、二・七倍ぐらい株主配当金はふえた。当然ながら、その利益の配当とリンクする形で、役員給与と賞与というのも、約一・八倍ですか、九倍ですか、ふえた。しかし、その富を生み出した従業員の方へは、九三・三%と減っている。この間でもやはり物すごい変化が起こっている。

 そして、その結果、雇用格差ということで、いわゆるジニ係数は二〇〇二年以降で急上昇し、二百万円以下労働者の割合も急増している。そして、一番下の三十代の週労働時間六十時間以上の人が、これも激増している。この背景には、いわゆる未払い残業をしている人は表に出ないわけですが、それは当然ながら、もっとこの裏にはふえているという現状なんですね。

 ということでいうと、企業の業績が上がり利益は上がるけれども、分配率は下がっているから、消費も当然上がらないし、消費傾向は悪くなるし、国民の実感も得られない。今のような路線で同じように景気拡大成長路線をとると、これは、拡大はすることはあっても、何らかの手を打たないと縮小することにはならないのではないか。

 そういう意味で、現実に給料で比較しますと、数で比較しますと、正社員は二〇〇一年から二〇〇五年で、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども三百三万人減少、一九九五年からの十年間だと四百五万人減少なんです。そして非正規、いわゆる派遣、パート、請負、契約社員はこの五年間で三百万人の増加。十年間でいいますと六百三十二万人増加なんです。これは、正社員が四百万人減った分よりも、非正規の人が六百三十二万人ふえているということは、交代するというよりも新規補充の人が非常に少なくなったという、全部初めからそちらへ行ってしまうということをあらわしていて、六百万人もふえている。

 そして、正社員の平均年収が、平均でいいますと四百八十七万円、大企業で五百八十万円、零細企業で二百五十三万円、パートタイマーの年収が百十二万円、派遣社員の年収が二百万円。ですから、世の中の正規社員と言われる人が平均四百八十万円のときに、派遣社員は二百万円である。だから、当然ながら、コストダウンで競争力が強化され収益が上がるけれども、ここに負担がかかっている。

 ですから、もっと高収益構造を、国際競争でという旗印だけでは、こういう労働者をどんどん生み出すことによって得られるということでいえば、果たしてこの経済成長路線が消費の拡大につながるのか。私はつながらないと思うんです。

 そういう意味で、今言われたタイムラグ以外にもいろいろな問題があるときに、正規と非正規というのにもお触れになりました。それはそうだと思うんです。そのときに、そういう現実をどういうふうに、いや、もうこれはもっとこういう構造を加速していくということなのか、賃上げをしていこうということなのか、こういう人は減らしていこうというのか。どういう方向を大臣としてはお考えですか。

甘利国務大臣 同じような働き方をしているのに正規と非正規で給与格差が大きい、これは今、非正規部分の待遇の改善に向けた種々法律が、我が省だけでなくて提出をされている。給料が安く、人件費が安く使えるから、全く同じような仕事だけれども非正規雇用者を使うという選択肢は弱くしていかなければならないと思います。

 ただ、午前中も申し上げましたように、生産変動要因の部分について、正規で抱えていた場合に、仕事量の変動がある、そのフレキシビリティーについては非正規を使うけれども、これはあくまでも、そういう柔軟性に対処するためであって、安く使うためではないという、内と外から、企業文化としてもそうでありますし、雇用法制や待遇としても、全く同じ働き方をしているのは同じような賃金体系にしていくという内と外の努力が必要だと思います。

 ただ、同じ働きをしていても、正規に転勤の要請があるとかあるいは残業の要請があるとか、それについて責任を負わなくていいとかいう部分の差というのは認めてあげなきゃいけないと思いますが、それ以外の部分については均衡待遇をしていかなければいけないというふうに思っております。

川端委員 本来、派遣とか、そういうふうな非正規雇用労働という部分は、大臣が言われたように、変動要因に対応する、あるいは期間的に、特別な、例えばソフトの開発とかに集中的にマンパワーが要るけれども持続的には要らないとか、あるいは季節変動があるとかいう部分に限定されるべきものだったと思うんです。それが実はそういうことでないようにどんどん動いているというのが、今の労働ビッグバンと言われる法整備の流れだと思う。大臣が言われたのは、同じ責任を持ち同じ仕事をしている人は同じように待遇しなければならないということだというのがパート労働法で今回提起されるということで、それは趣旨として読めばいいことだなと。

 ところが、これはどれぐらいの人がいるのだ、パートの中で。そちらでお触れになりましたが、先に私言いますと、パート労働者の中で、いわゆる職務、仕事も一緒、そして責任も持っている、そして職場の配置転換や転勤もありですよという人には同じようにしなさいというふうに厳密に法律を変えましょうと。これは疑似パートというんですね。これは厚生労働大臣の答弁で、パートの四、五%ぐらいかなと。四、五%の人は特別として、あとの人はパートのままで、賃金が安くても、処遇が悪くてもしようがないですよという固定化をすることであると私は思うんですよ、逆に。これを、厚生労働相が、四、五%と答弁を大臣がされた根拠がほとんどないんですよ。全然違うアンケート調査の中で、これぐらいいるかなと。

 現に、パート労働者を非常にたくさん抱えているイオン、これは新聞記事ですけれども、イオンの人事企画部の公文部長、高島屋の中川人事政策担当課長ともに、該当する従業員はいない、こんな人はいませんと言っているんです。だから、多分、同じように働いている人はちゃんとするんだということはほとんど適用される人がいない法律をこれからやろうとしているんだと思います。これは感想ですから。これはまたこの法案の審議のときに議論されるんでしょうが。

 ただ、大臣が今言われた部分でいうと、この手だては余り有効ではありませんよという指摘だけなんですが、今御答弁された部分でいうと、そういう季節変動要因とか特別な事情でいう部分には非正規の人は必要で、バッファーと言ったら失礼ですね、弾力的な運用というものは必要だけれども、本来は、いろいろな役割分担がある中で、意欲と能力を持つ人に正規の道が広がっていくという施策をとるべきだということの認識はそれでよろしいんですか。

甘利国務大臣 日本型経営というのは総合力なんですね。日本の経営者は当然気がついているはずなのでありますけれども、そういうみんなで一緒になって改善提案をして、みんなでチームとして頑張るというところに競争力がついてくるわけでありますから、私は部外者だと思っている人ばかりで構成されている会社が中長期的に伸びていくはずはないと私は思うのであります。

 それで、今のパート労働法の話も、正規社員と全く同じに転勤とか残業とかその責務を負っているというのは同じ待遇。私が申し上げたのは、そういう法律ができれば、では、負っていないけれども仕事自身は同じようにしていますよというのも、その部分だけ差っ引いて、準ずる待遇ということに当然なっていくはずでありますから、そういう意味で、この法案が提出されるということは意義があるというふうに思っております。

川端委員 方向性の認識はそうだと思いますから一定の評価はあるんですが、まだまだ不十分だなというのが我々の認識です。

 そこで、そういうコストダウンという意味でいうと、こういう非正規雇用者がふえたということは相当な効果を上げているんだと思うんです。大臣が言われた、大臣の基本的認識、今こういうことをちゃんとやらない企業は余りいい企業にならないということは、私もそのとおりだと思うんです。

 今、現実に企業の中で起こっていることというのは、先ほど六百万人ふえたと言いましたけれども、製造業を中心として、特に請負、派遣の急増、それによって、これが何も臨時的、生産量の変動要因ではなくて、どんどん固定化され拡大していっているということに私は非常な危機感を覚えているんです。

 大臣もおっしゃったように、これはコストだけではない、その企業の体質にかかわる問題。まさに大臣言われたように、日本は、ものづくりのときにチームでやるということを一番の強みにしてきた。ここに実はこの雇用構造の変化が物すごく大きなマイナスを起こしつつあるのではないかと思います。

 ソニーのリチウム電池が、デルのパソコンをスタートにして、発火事件を山盛り起こしました。報道で見て、ああ、そうだったんだと思ったんですが、大臣もソニーに二年間勤務されたと報道で書いてありまして、私もある民間会社にいましたから、やはり自分がいた会社というのは非常に思い入れがあります。そのときにコメントとして、技術のソニーがどうしたことかとの思いだと。よくわかります。どうしたことだったとお思いですか、ソニーがなぜこんなことを起こしたんだろうと。

甘利国務大臣 川端先生のお話の展開からすると、雇用形態、つまり、非正規雇用に依存する割合が高くなって、そして総合力が落ちて、やはり見落としている部分が出てきたのではないかという展開になるんでしょうか。(川端委員「違います」と呼ぶ)違いますか。(川端委員「残念ながら」と呼ぶ)

川端委員 ミスは起こり得るんですよ、実際。その面もあるんですよ、その面もあるんです。

 ただ、経過を申し上げますと、ソニーは、ノート型パソコン向けに大型の電池を開発した、それを製造するのに、福島県の郡山市にそれ専門の要するに別会社をつくった、そこまではよくある話ですよね。

 そこで、これはウエッジという雑誌からの引用ですけれども、「セルなどバッテリーの中身は福島県の生産子会社でつくり、それを中国の江蘇州などの委託生産先に送り、充電・放電を制御する回路などとともに最終組み立てをしている。金属粉など異物混入が起きた工程こそ把握できたが、それ以外の原因で起きた異常過熱などはどこの工程に問題があるか、生産工程が分断され、管理も分断されているためわからない点が多い、という。 請負、派遣などモノづくりの外部依存はノウハウの流出、移転だけでなく、日本の強みだった品質管理にも影響し始め、」ているのではないかと。

 ですから、労働力の劣化というのが一つあるんですよ。これはなぜかというと、派遣法では、初め一年、それが今三年以上だと、申し出があれば雇用しなさいということになっているから、三年以内でローテーションするんですね。ということは、短くしか勤めない。ですから、当然、技術の習得、熟練というものは全然存在しないという劣化。

 それから、まさに大臣言われたように、チームで工夫をし、改善提案をし、より工程を省略して時間短縮、製造の時間を短縮して生産効率を上げようとか、この物を使うよりこっちの方をやった方が安くできますよとかいうのは総合力で、それはまさに生産現場から積み上がってきた経験と、いいものをつくりたいというみんなの意欲等含めて、日本の製品は、先進的な技術と同時に品質が安定をして信用が高いというものを誇ってきた。それが、コストが安いからということで委託をする、派遣社員を入れると、短く短くかわる。この一部の記事にも、このウエッジの記事にそういう取材をしたのが載っているんです。

 とにかく、一生懸命一年ぐらい教えたらいなくなる、出前を頼んだらそばの出前を持ってきたというふうに、要するに、ほとんどがいわゆるフリーター族で占められている。ここに技術の劣化というものが、大臣言われるようなことではなくて、製造の現場を派遣か請負にかえるということでコストを切るということがもう当たり前のようになってきている弊害があらわれたのが、ソニーもそういう側面を持っているのではないか。

 自動車も、いわゆるリコールがここ数年急増しているんですね。数字にはいろいろありますけれども、平成十四年までですと、大体年間で五十万台から、一番多いので二百九十万台、五十件から百件ぐらい一年にあった。それが平成十五年以降ですと、最低でも四百万台、多い年だと七百万台、百二十三件から三百三十件、これはやはり異常なことが起こってきているのではないか。

 製造現場が実はどんどんと派遣がふえてきた。請負は、会社の装置を使い、ノウハウも渡して、やってくださいと言う。しかし、そこに、現場の管理監督は、請負だったら全部渡すわけですから、本社の人はかかわってはいけない。余り質がよくない。だから、コントロールしようとすると、偽装請負。

 派遣だったらいいじゃないかと。ところが、派遣も、実は、八五年に法改正されて八六年にできたときは、まさに大臣言われるように、いわゆる季節変動がある、あるいはスポット的な仕事が来る、それをみんな雇うわけにいかない、そして働き方も多様化してきている、そういう季節だけ一生懸命働いて、腕があるのを使って、そして一年の半分はスキーに行くんだとかいう人もふえているんだみたいな話であった。

 ところが、八五年の法制定で十三業務のポジティブリストが、八六年で十六業務に拡大をされた。そして、九六年に二十六業務に拡大をされた。そして、これまではポジティブリストで、この仕事だけはやってよろしいということだったんです。これが九九年の改正で、原則的に何でもよろしい、しかし警備とか港湾とかいう特定の業種だけはしてはいけないという、いわゆるネガティブリスト化された。このときの労働大臣が甘利大臣です。だから、よく御存じだと思うんです。

 ただ、このときは、やはり製造現場がおかしくなってはいけないということで、ネガティブリスト化すると、これとこれとこれとは境目もわからなくなってきた、許可しているものが。だから、警備業務とか港湾法とかそういうので決められているもの以外は基本的に全部いいよということになったけれども、さすがに大臣のときは見識があって、危険を察知しておられたんです。我々も議論しましたけれども、歯どめをかけたんですね。一つは、製造業は除くとしたんですよ。そして、派遣社員で一年いたら、申し出があったら雇うということに努めなければならないという努力義務を課したんです。私はこれは見識だったと思うんです。多分、危な過ぎると言って我々は反対したと思いますけれども。けれども、ここではまだ激変は起こらなかったんです。

 しかし、〇三年の改正で、この製造業を除くを解禁したんです。これはいわゆる、一番初め、言い出しっぺは日経連、一緒になった経団連、日本経団連がとにかくやらせろと。そして、派遣期間の上限を一年から三年にしたんです。しかし、三年にしたかわりに、余りにちょっとえぐいなということかもしれませんが、雇い入れは義務づけをしたんです。雇わなければならないと。だから、三年でやめてもらうというローテーションにしたから、余計、長く勤める人がいなくなったんです。

 これが今、製造現場を、本当に一生懸命、日本の特徴であるものづくりを原点にして意欲を持ってやっていっても先も何もないから、ちょっとだけ来てやめていくという人が実は根幹を支えるからレベルは下がり、そして、何かが起こったら、何がどこでどう起こったかがだれもわからないということになってきたということは、私は深刻な事態を招いているのではないかと思うんですが、このことに関しての御見解を伺いたい。

甘利国務大臣 私が労働大臣のときにこれがポジリストからネガリストに変わった、非常に鮮明に覚えております。しっかり残しておくところをどこにするかという議論で大議論がありました。連合ともいろいろと話し合いを事務的にも行ったということを思い起こしますけれども、そこで、ものづくりの現場についてはしっかり守っていこうということにしたわけであります。

 そのときの議論は、働く側にいろいろ選択肢を与えて、いろいろなニーズにこたえる必要があるんだということが大義名分であったわけであります。正規雇用が基本で、だけれども、いろいろな事情で拘束されないで働きたい、この部分だけ働きたい、それ以降はちゃんと正規雇用でいきたい、そのときには当然正規雇用になるための道筋がちゃんと引かれているということも前提として議論をしたというふうに記憶をいたしております。その後、なかなか中途の採用の道がしっかり開けない、非正規は非正規のままでずっといくというようなことが固定化してしまっている。

 私は、もう何年か前から、中途採用の秋の陣というのをつくってほしいということを経団連に随分、個人的にも要請をしてきました。新卒採用が春の陣だったら、中途採用は秋の陣というようなシーズンをつくってくれということをずっと要請してきたわけであります。

 安倍内閣におきまして、総理自身がやはり中途採用にしっかりとした道を開くという意味で、まず隗より始めよということで公務員の中途採用から始めようということにしたわけでありますし、今、私の方からも、大臣として、五月雨式にインターネットでアクセスすればどこかがやっているよでは、これは済まないと思うので、スキルアップをしようとする人たちはここを目標に置いてそのスキルアップをしていこうという、一年のうちの中途採用就職シーズンというのがないとなかなか意欲を持てないと思っておりますので、そういうことも大臣として今要請をしているところであります。

川端委員 今の御答弁が云々、中身が云々ではなくて、いわゆる派遣社員が製造現場の大数を占める、あるメーカーによっては現場の半分以上は派遣社員で構成されているということは異常なことであって、私は直すべきだと思うんです。そこの中で、今、この〇三年の製造現場に解禁をしたということが大変大きな過ちだったのではないか、このことを戻すべきではないかと私は思います。そして、これは厚生労働省所管の働き方の問題ではなくて、これからも日本が、ものづくりを中心として世界に冠たる、いいものをちゃんとつくるということを一番の売りとする国として生きていこうと思えば、ここにメスを入れなければ大変なことになるということを申し上げたかったんです。

 ところが、今、政府の大きな経済財政の方針に関与しておられる経済財政諮問会議に民間議員としておられる御手洗日本経団連会長は、ここの会社はいわゆる偽装請負で行政指導を受けたということは、委員会ではなかなかオープンにされませんが、公知の事実ですよね。そのときに、昨年の十月の会議で、請負法制に無理があり過ぎる、どんどん派遣社員が正社員にかわっているが、今の派遣法のように三年で正社員にしろとすると日本のコストは硬直的になる、派遣法を見直してほしいと。自分のところは違反していながら、請負をさせると三年で雇わなければいかぬ、そんなことはやっていられない、だから、もっと緩くしろと。

 もう一つは、これも新聞記事で読みまして、読みますと、違法な偽装請負の是正策の一環として、請負、派遣労働者の一部を正社員に採用すると昨年夏に表明していたキヤノンが、半年の検討を経て、当面は高校新卒者らの正社員採用を優先する方向に転換した。政府は、新卒一括採用システムの見直しや非正規労働者の正社員化の推進を重点課題にしているが、キヤノンの方針転換はこの流れに逆行しそうであると。

 きょうの報道では、これはきのうの予算委員会のようですけれども、キヤノンの工場で働く派遣労働者を正社員の採用から排除するような文言のある求人広告をキヤノンが出していたのがきのうの予算委員会で明らかになったと。要するに、キヤノン正社員採用セミナー開催との広告の中に、派遣社員などで現在キヤノンに勤務の方は御参加を御遠慮くださいと書いてある。

 一会社のことをとやかく言うつもりはありませんが、間違いなく、そこの社長ですかが経済財政諮問会議の民間議員として日本の経済界を代表して、そして、日本の製造業が、やはり本当に、経済的に不安定なだけではなくて、技術を支える根幹として現場を支える人たちが派遣や請負でおかしくなってきているから、大臣おっしゃったように、やはりそれに道筋を立てて、可能な人は意欲を持ってやれる正社員への道を開こうと。だから、パート労働も一歩ではあるけれども、そういう改正をし出した。そして、大臣もおっしゃったように、そういうことをきちっとやっていかない企業はだめになると言っているときに、逆ばかりやっている人がおられるということを、御感想はどうですか。

甘利国務大臣 まず、非正規労働者を企業が使う、それは、先生も私も共通の認識だと思いますが、変動要因に対応するためということで、安く使えるからという目的で使うんではないと。だとすると、安く使えるというメリットを少なくしていくという待遇の改善は当然、ならば、正規雇用にしていこうというインセンティブになっていくと思います。

 キヤノンの御手洗さんは会長だと思いますけれども、御手洗さんと話をしていますと、彼は終身雇用の論者であります。ただ、年功賃金論者ではないんですね。

 日本の労働法制の中で、企業はまじめに働く人は抱えていきますと。だけれども、中にはどうにも仕方がない人もいる。その人を解雇することができない法制ですというお話は聞いたことがあります。それと、同一労働同一賃金は、職務給、つまり年齢に限らずこういう仕事はこの賃金という、アメリカ型の職務給が確立していないとなかなかとれないということもおっしゃっているわけでありまして、そこと年功賃金を支持していないということと、彼の主張は整合性がとれるんだと思っております。

 それから、派遣労働あるいは請負について、諮問会議で発言されたことがありますが、それは、労働安全の視点から請負の指揮監督権がないのはかえって危ないんではないかという御指摘だと思いまして、それは私も、労働者の安全衛生上はなるほどと思うところがあるというふうにお答えしたことがございます。

川端委員 時間が来たのであれですが、物の考え方が違うんですね。だから、お金さえ安けりゃいいということではないというふうにおっしゃったけれども、お金さえ安けりゃいいということをやっているんですよ、現実には。だから、それはそれでひどいことだと思うと同時に、日本の製造業の力をどんどん落としているんですよ。

 ソニーはコストダウンで一生懸命そういうことをやったおかげで数百億の損失を出して、ソニーブランドは地に落ちたんですよ。お金をけちったらこういうことになるという、それは、ソニーだけの例じゃなくて、日本じゅうそういうことが起こる。

 そして、一時期、日本はどんどん中国へ行った。中国へなぜ行ったか。安いから行ったんですよ。そして、今言われたけれども、すぐ首を切れるんですよ。試用期間を終えて、これは要らないなと思ったら首を切ってもいいということだった。

 その中国で今何が起こっているか。労働法制の強化ですよ。ちょっともう時間がありませんからあれですけれども、雇用は、一年使ったら終身雇わなければいけないということになったんですよ。そして、最低賃金はどんどん、三〇%、四〇%、五〇%上がっていますよ。これは労働需要が逼迫してきたということがあると同時に、それは、世界の趨勢として、やはり働く人の権利と意欲をちゃんとするためには当たり前の話なんですよ。だから、水準として、日本はそういうのをアジアの中で先進的にやってきた。中国はこんなのだったと。

 経営者は、安いからといってこっちを使い出した。しかし、中国はこっちを向いているときに、日本の労働ビッグバンというのは、こっちを向いて走っているじゃないですか。情けない話なんですよ。

 そして、それは、私は滋賀県の出身で、滋賀県は近江商人とよく言われます。近江商人は江戸時代から、家訓というのに、三方よしと言ったんですよ。売ってよし、当然もうけるためには売ってよしですよ。買ってよし、消費者はいいものをいい値段で買えて買ってよし。そして、世間よしと言ったんですよ。今の経営者は、売ってよし、買ってよしは、悪いものを売ったらもうからない、ひどい目に遭うということで、だから、売ってよし、買ってよしで終わりなんですよ。社会を、世間を全く考えないで自分の会社だけやっている人は、結果的にえらい目に遭う。企業がえらい目に遭うのは自業自得だと思いますが、日本の製造業界がこういうことにむしばまれていったら、私は、大臣が前の法改正で歯どめをかけたのは全く正しいと思うし、その部分に私は、これは小泉内閣の、小泉行政改革ということでやった最大の失敗の一つだと思いますから、これは、労働問題ではなくて、商工政策、経済産業政策としてもとに戻すべきだと御主張いただきたいし、そして、今そういう非常に深刻なことであるという危機意識を持って、少なくともアジアの範たる企業を育てるために頑張っていただきたいということを申し上げて、終わりにします。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 私からは、エネルギー問題、そして、コインの裏表の関係にある環境問題について主に質問したいと思いますが、その前に、甘利大臣に政治資金の問題について一つだけ。

 昨日、民主党の小沢代表が事務所費の中身を詳細に公開いたしました。政治家みずからが領収書を公開して国民の不信にこたえるという考え方に基づいてやったわけでありますが、それについて、甘利大臣御自身は公開するおつもりがあるかどうか、お伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 私の政治資金については、すべて法律にのっとってきちんと報告をしているつもりでありますし、この公開のあり方については、党で取りまとめ中というふうに聞いております。取りまとまった方法に従って粛々と対応させていただきます。

細野委員 この質問は各委員会でやっておりまして、全閣僚に対して我々としては求めていくということでございますので、国民の不信にこたえる意味でも、ぜひ前向きに検討いただきたいというふうに思います。

 本題に入ります。

 今公開されている映画に「不都合な真実」という映画があります。この映画に目がとまったのは、週末に安倍総理が御自身でこの映画をごらんになったそうでございまして、それでちょっと目にとまったんですが、甘利大臣は、この映画をごらんになったでしょうか。

甘利国務大臣 私も興味を持っておりまして、実は、ある人からその本をいただきました。ぱらぱら見させていただきましたし、テレビでこのダイジェスト版みたいな感じで報道されているのも見ております。

 ただ、私の選挙区でシネマコンプレックスが二つあるんですが、全部サイトを調べてみましたが、上映しておりませんので、まだ見ておりません。

細野委員 実は私も、静岡で見ようかと思ったら静岡県内もやっていなくて、東京で見たんですが、別に、これを忠誠心の問題と考える気は全然ないんですけれども、総理が見たから大臣が見なきゃならないとは申しませんが、産業を所管される担当大臣として、ぜひごらんをいただきたいなというふうに思います。

 正直言いまして、ちょっと共和党も民主党も政治色がある部分があって、そこは若干鼻につく部分が正直あります。ただ、この映画の中で私が非常に印象に残っているのが一つあるので御紹介をしたいんですが、アル・ゴア氏がこういう主張をしているんですね。地球温暖化というのは、テロと並んで、国家としての安全保障の問題なんだということを非常に強く強調されている。ここが私、一番鮮明に記憶に残りました。

 考えてみれば、温暖化の問題に関して言うと、通常は、例えばヒューマニズムであるとか、また、コスモポリタニズムみたいな、人道的な観点からやるんだということがよく言われるんですが、我が国においても、二〇〇四年、二〇〇五年と、大量の台風が来て死者がたくさん出たり、二〇〇五年は、熱射病の患者が史上最大を迎えた。そして、ことしは、恐らく異常気象としてさらに大きな事態が起こるのではないかということが容易に予想されますね。

 そういった中で、ちょっと調べてみたんですが、百年後に一メートル海面が上昇すると、日本の国内で海面下に住む国民というのは四百十万人になるそうです、四百十万人。常にその四百十万人が命の危機にさらされるというのが、地球温暖化で、一世紀後に一メートル海面の上昇ということになるわけですね。

 ですから、大臣にぜひ御認識いただきたいのは、京都議定書の計画の達成の問題が目の前に迫っているわけですが、これは決して、要するに、国際的な約束だからとか、もしくは、日本の国際的な行儀のよさをあらわす数字とかいうことじゃなくて、我が国の安全保障の問題そのものなんだという認識を持っていただいて、取り組んでいただきたいというふうに思っておりまして、簡単で結構ですので、その件についての御決意を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 一メーター水位が上がると四百……(細野委員「四百十万人」と呼ぶ)日本国民がですか。(細野委員「はい」と呼ぶ)

 私は、京都会議のときに、NGOの会議に実は参加をしまして発言もしました。そのときに何を発言したかというと、原子力の重要性の認識をしてほしいということと、みんな参加する枠組みにしてくれということを主張したというのは思い起こします。

 つまり、一部の国がどんなに頑張っても、やりたい放題やっている国があったら、その努力は水泡に帰してしまうので、緩くてもいいから全員が体力に見合った努力をする仕組みにしてほしいということを強く主張したんですが、とうとう入れられませんでした。

 私自身、エネルギーをずっと担当してきまして、地球温暖化の問題が避けて通れない。それで、エネルギー政策基本法というのを議員立法で私、つくりましたときに、地球環境とエネルギー安全保障・安定供給、これが一番大事な二つの柱です、その上に経済合理性というのがある。つまり、できるだけ安くというのは、その二つを満たしていないといけませんよという基本法の基本理念をつくりました。そのときの、地球環境に資するというのは、CO2をできるだけ少なくという意味でありまして、そういう意識はずっと持ってやっているつもりであります。

細野委員 これから京都議定書の後の枠組みを国際的に議論しますから、そのときには当然、アメリカはもちろんですが、中国も含めた、それこそ今回枠組みに入っていない国も入る枠組みにすべきだというのは、私も大臣と同じ意見です。

 ただ、その前に、百年後を考えたときに、今何ができるかということもこれは検討すべきだと思うんですね。その意味で、枠組みの問題を逃げるのではなくて、今まさに大臣やっていただいているとは思いますが、今、日本としてやるべきことをしっかりやるということを再度私の方から要望しておきたいと思います。

 続いて、ちょっと自主開発の問題について話を移したいと思うんですが、この委員会での所信表明の中でも、大臣は、石油の自主開発を推進するんだということをおっしゃいました。これもこの委員会で何度も出てきてはおりますけれども、このところ、日本の原油の自主開発をめぐりましては、アザデガンの問題、そしてサハリン2の問題と、いずれも逆風が吹いております。

 特に、アザデガンが極めてマイナスの影響が大きいと思うんですが、出資比率が、インペックス七五%であったのが一〇%になった。七五が一〇%ですから、自主開発という意味ではダメージが非常に大きいと思います。サハリン2についても、環境アセスメントの不備が指摘をされて、これはロシアらしからぬ理由だなと思っておったんですが、環境アセスメントを日本の企業が指摘をされて、そして、結局五〇%以上をガスプロムというロシアの会社が権限を持つことになったということですね。

 こういう自主開発をめぐる逆風について、大臣としては今どういう御所見を持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 アザデガンの出資比率が七五から一〇になった。これは、どうなるんですか、どうするんですかと随分記者から質問攻めに当時遭いました。

 非常に難しかったのは、いわゆる核開発の疑惑がなければどんどん後押しをして進めていけるんですが、この問題がある。それでは、完全に撤退をしたら、恐らく向こうとしては損害賠償とかいろいろあるでしょうね。糸をつなぎながら日本が国際社会の責めを負わないという、細い針の穴を通すようなことができないだろうかということを思い悩んでおりました。もちろん、これは民間がやることでありますから、私が民間に対してこうしろという指示はできないんですけれども、結果として一〇%というのは、そういうまさに針の穴を通すような作業が結果としてできたのではないかというふうに思っております。

 サハリン2につきまして、これはまさにロシアがかなりごり押しで言ってきている話でありまして、このサハリン2プロジェクトには唯一ロシア資本が入っていないというところが一番の原因だったんだろうと思います。

細野委員 先日も近藤委員の方が、この部分、かなり明確に、国家としてむしろ意思をきちっと持ってかかわるべきだという主張をされていました。私も全く同じ意見です。多分、甘利大臣も同じ御意見だと思います。特にアザデガンについて、核問題を考えると難しい問題があるのは私もよくわかりますが、自主開発四〇%の目標というのを考えたときに、やはり戦略の練り直しがどうしても必要だと思うんですね。

 その前提としてひとつ、きょうはエネ庁の長官にも御出席をいただいているので伺いたいんですが、このアザデガンが七五%から一〇%へ出資比率が下がりました。このことによる自主開発比率の達成目標における影響ですね。そもそも自主開発とは何なのかということにもなるわけですが、それについてはどういう考え方をエネ庁としては持っているのか、お伺いしたいと思います。

望月政府参考人 自主開発は、一応私どもがきちっと定義しておりますのは、我が国企業の権益下にある原油引き取り量が我が国の原油輸入量に占める割合ということであります。

 その四〇%という数字は、今、新・国家エネルギー戦略の中で二〇三〇年というあるところを切って、そこをターゲットにして頑張ろう、こういう数字でございます。

 現時点では、今一五、六%ぐらいになっているわけでございまして、例えばアザデガン、これも二〇三〇年というと、二十数年間アザデガンをとるかというとこれは別問題でございますけれども、足元で、大きなプロジェクトでございますから、影響力を見ますと、アザデガンのピーク時が二十五万バレルぐらいのお話でございます。そのうちの七五%がある種想定していたものでございますけれども、それが一割、一〇%に下がったというぐらいの大きさのものでございます。

細野委員 要するに、整理をして言うと、七五%から一〇%に下がったけれども、そこから持ってくる油に関しては、これは全部自主開発に入れるという考え方なわけですね。要するに、出資比率は下がったけれども、そこは権益下にあるという判断をしているということでよろしいんですか。

望月政府参考人 済みません、説明が不正確で。

 二十数万バレルというアザデガンのうちの、ですから、自主開発の比率にカウントするのは、掛ける七五%か、掛ける一〇%かということでございますから、六五%分は自主開発の比率が下がるということになるという計算をしております。

細野委員 長官、それは大丈夫ですか。ちょっと事前に聞いた説明と違いますが。七五%が一〇%に下がるということは、大体、全体の日本の輸入量の六%ぐらいというふうにアザデガンの場合言われていますから、寄与度が六%上がるはずが二%弱ぐらいに下がった、そういうことでよろしいわけですか。

望月政府参考人 計算の方式はそういう方式でございますので、間違いございません。

細野委員 わかりました。

 もう一つ確認をしたいのが、一回一〇%に落としたけれども、大臣がおっしゃったとおり、これは最低限つなぐためにやらなきゃならなかった措置で、事態が改善をすれば、またこれは出資を改善するという余地もあるんだろうというふうに思うんですが、九〇%、それこそアザデガン、イラン側が持っている状況の中で、例えば中国であるとかロシアであるとか、フランスも含めて諸外国が出資をしてくる可能性というのはどういうふうにごらんになっているんでしょうか。

望月政府参考人 これは、国際政治情勢の変化の中で各国のそれぞれの企業がどう判断するかという問題でございますので、予測の問題でしかございません。

 ただし、この問題、一〇%に下がった以降、かなりうわさされておりましたのは、おっしゃるように、中国であるとか、あるいは欧米のほかの国の企業で能力のあるところが入ってくるのではないかという予測をされていた向きもございますけれども、現時点では、かなり時間がたっておりますけれども、そういう動きは今のところ見られておりません。

 他方、これだけの大きな油田をイラン自身がシェアを自分で取り返して、イラン自身が開発できるかというと、ここのところもかなり困難だろうという予測も一方でございまして、今、現時点でも、そういう意味では大きな目立った進捗は余り行われていないというのが現状でございまして、なかなか、これの近々の将来の発展の絵を予測するのは、いろいろなことが言われますけれども、もちろん難しいし、逆に申し上げますと、かなりな能力のある企業が参入してこないと、再びこれが進むのは難しいのではないかというふうに見ている向きもございます。

細野委員 アザデガンが大体六%ぐらい見ていて、サハリン2が、原油の部分だけで、うまくとれれば大体四%ぐらいというようなことが言われていたやに聞いております。そうすると、今一五%で、それがうまく入ってくれば安定的に二五%になって、あと一五%が目標ということになっていたわけですが、その六%と四%の部分が極めて怪しくなってきた。

 大臣、二〇三〇年に四〇%ということなんですが、これは本当に達成できるのかどうか。どういうふうにお考えになっているか、そして、それに向けてどういう取り組みをしようというふうにお考えになっているのか、御答弁をいただきたいと思います。

甘利国務大臣 アザデガンはちょっと核開発疑惑という特殊な要因がありますが、それ以外のものに関して、政府としてどうコミットしていくんだ、どう交渉に割り込んでいくんだというような質問を大分受けました。しかし、今までの枠組みですと、純粋に民間企業がなさることで、そこに出資をしている株主としての発言ですという、靴の上から足をかくような答弁だったと思いますし、また、間接対応でしかありません。

 このたび、国が資源開発にもっとコミットしていくべきだということを私は考えておりましたが、そこで、例えば、新しい資源開発の貿易保険を設定します、三千億の枠で。保険料率を五〇パーから七五パー引き下げる。使いやすくして、そして、その保険を付保するということによって、政府は当事者として相手国との交渉にも今まで以上に直接にかむことができるわけでありますから、政府としての意思表示と、資源開発に向けての具体的な行動をよりとれるようになっていくと思います。JOGMECの付保比率を格段にふやしていくこととあわせて、資源開発に国がもっと前に出ていくということを通じて、しっかりとした権益の確保に取り組んでいきたいと思っております。

細野委員 ここの部分は将来の話ですし、余り具体的な話にはなりにくいので、これで終わりたいと思うんです。

 新・国家エネルギー戦略というのを全部改めて読ませていただいたんですけれども、中国やインドを含めて、エネルギーの資源獲得競争が国際的に非常に激化をしている。そういう中で、我が国はいわゆるメジャーと言われるような競争力のある企業を持ち合わせていない。

 加えて、もう一つ指摘をしなければならないのは、はっきりこのエネルギー戦略の中で指摘をしているんですが、標準的なケースで見ても、二〇三〇年にはピークオイルを迎える、要するにピークアウトするわけですよね。それから埋蔵量が減っていくだろう、生産額が減っていくだろう、産出額が減っていくだろうということが言われている中で、相当この四〇%という目標は難しいし、むしろ日本は厳しい立場に追い込まれる可能性があるというふうに私は思っています。

 もちろん、この面での最大限の努力は必要でありますけれども、要するに、安定供給は目指しつつ、原油に頼らずにどうやって我が国のエネルギーを回していくのか、その方策を探っていく道を明らかにこれから見つけていかなければならない時代に入っているという私の認識をこの件に関しては申し上げた上で、ちょっとRPS法の話に入っていきたいと思います。

 先ほども温暖化のところで、原子力について大臣はお話をされました。私も、原子力が、できれば国産で、そしてできるだけ安定的に供給されるエネルギーとしてこれをやっていかなければならないということについては異存はありません。

 ただ、その一方で、今回ちょうど目標をさらに更新するという、RPS法の実質的な中身の、改正ではないんですが、新しい先の動きが出てきている中で、この部分についての政府の方針というのは正直余り見えないなというふうに思っておるんですね。

 新・国家エネルギー戦略の中には、自然エネルギーについて、新エネについてもかなり書き方がそれぞれあるんですが、まず甘利大臣に、この新エネルギーについて、どういうスタンスで経済産業省として対応していかれるおつもりなのか、政治家としての御所見をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 新エネはいろいろな種類がありますが、それぞれを推進していく、そして量産効果をもってできるだけコストを下げていく、あるいは技術開発を通じて効率を上げていく、このためのしっかりとした支援措置をとるということであります。

 ただし、新エネがベースロードになり得るかというと、これはそこまでの過大な期待はしない方がいい。ベースロードは電力でいえば原子力であると思いますし、一次エネルギーであれば石油とそれから天然ガスであることは、そう大きな変化はない。しかし、それを補佐するエネルギーとして新エネをできるだけ伸ばしていく、そのための先ほど申し上げたような政策投下をしていくということであろうと思っております。

細野委員 そこの部分は、ちょっと大臣と私は認識が違うんですね。原子力が基幹的エネルギーとこれで位置づけられている。今は、水準としては、原子力と比較をすると新エネというのははるかに低いんだけれども、これをもっと育てていって基幹エネルギー並みにやっていくという決意は、この中には書いてありません。私は、その方向を模索すべきだと思っています。

 そこで、ちょっと質問したいんですが、今回の新エネに関する総合資源エネルギー調査会の新エネルギー部会というところで、新エネも、いわゆる発電量の義務量、これが見直しをされました。資料をお配りしているので、それをごらんいただきたいんです。甘利大臣、これです。

 これは私がつくったグラフです。二〇〇三年からRPS法上の義務が導入をされて、今二〇〇七年ですから、実績は二〇〇五年までしか出ていません、棒グラフです。二〇〇六年以降、ずっとエネルギーがこれは上がっていく形になっているんですが、今回更新をされたのは二〇一一年以降、四年間更新をされました。最終的に出ている二〇一四年の目標というのが百六十億キロワットアワーで、全体の発電量に推計をすると約一・六三%になるだろうというふうに言われています。

 この一・六三%というのが果たして適正な水準なのかどうか、私はこのことに疑問を持っていまして、参考までにちょっとおつけをしたものですから、もう一枚の資料をごらんいただきたいんです。

 これは新・国家エネルギー戦略の中に出ている新エネのグラフです。注目をしていただきたいのは、この需要の部分、縦の方なんですが、離陸期二〇一〇年に向かって、加速的普及期を迎えて、二〇二〇年、そこから自律的普及に入るというグラフになっているんですね。概念図です。

 ただ、今回出てきた目標を見ると、もう一度見ていただきたいんですが、もう一つの方のグラフです。二〇一〇年から、加速的普及期どころか、今回延びた四年間というのは伸び率が鈍化しているんですね。新・国家エネルギー戦略ではこの二〇一〇年からを新エネルギーの加速的普及期というふうに言っている中で、なぜここでは鈍化しているんですか。お答えいただきたいと思います。

甘利国務大臣 RPS法というのは、電力に占める新エネ比率なんですね。これは、つまり、そういう意味では二次エネルギーというのでしょうか。これの表、図は、一次エネルギーの比率を言っているんじゃないでしょうか。そうしますと、自動車燃料をだんだん水素化していくとか、あるいはハイブリッドあるいはバイオ由来燃料にしていくとか等々ありますから、そこの、電力に占める新エネの比率と、一次エネルギーに占める在来型エネルギー以外の比率の取り組みの違いではないかと思うんです。

細野委員 確かに、二次エネルギーも含めた記述にはなっています。

 では、大臣の御判断では、一次エネルギーはRPS法に言うこれぐらいの角度でしかふえないけれども、二次エネルギーが飛躍的に伸びる結果、こうやって加速をしていく、そういう理解でよろしいんですか。

甘利国務大臣 電力はもともと原子力が三三、四%を占めています。私自身、CO2を全く出さないということで言うならば、地球環境を考えれば、原子力は優等生だと思うんです。それに加えて、RPS法では原子力を入れる入れないの議論はありましたけれども、結局外れました。それ以外のエネルギーですから、電力に占めるRPS法の割合というのは、まあ、そこそこ頑張っているんじゃないかと思っています。

 というのは、RPS法の電力というのは、安定化をさせていくためにこれからいろいろな作業があります。そのままダイレクトに今はほうり込んでいる状態ですから、大きい川に支流から周波数変動がある、つまり、水量変動がある支流が流れ込んでいると一緒ですから、本体の水量変動を起こさない範囲……(細野委員「ちょっと質問と違います。答え違いますので」と呼ぶ)はい。ということが大事だと私は思っていますので、これは、電気に占める新エネの比率と、一次エネルギーで電力以外の部分で取り組んでいく比率とは当然その違いがあると思います。

細野委員 強調しておきますが、こっちの新・国家エネルギー戦略の方は原子力が入っていません。二次エネルギーは確かに入っているんでしょうけれども、それについての記述よりは一次エネルギーについての記述の方がはるかに多いんですね。

 大臣にお伺いをしたいのは、この大ビジョンである新・国家エネルギー戦略において、加速的普及期と定義をしている二〇一〇年代において、今回改定をされたRPS法上のこの電力の目標の伸びが鈍化するということに対して、おかしくないですかということを聞いているんです。これは大臣にお答えいただきたいと思います。

甘利国務大臣 実現可能性の一番の上限をぎりぎり求めたものとして、私自身は評価をいたしております。

細野委員 大臣、では、もう一回グラフを見ていただきたいんですが、実現可能性という意味においては、二〇〇五年に実際に発電をした電気量というのは、余剰の電力が発生をしていまして、いわゆるバンキングという形で三十数億キロワット時余っています。ですから、これをそのまま二〇〇六年にやれば、それで目標はほぼ達成してしまうぐらい余っているんですね。

 私は、何もこれに全部頼れとは言いません。ただ、RPS法の議論を見ていると、実際には発電の余力もあるし、可能性があるのに、あえて目標をこれは低くしているんじゃないか、実際に発電できているんですから。二〇〇三年から二〇〇四年、二〇〇五年の、加速度的に見えてわずか三年ですが、この角度と我々が今目標として掲げているこの角度の差は、余りにこの問題について政府が消極的であるということを象徴的にあらわしているんじゃないかというふうに思います。これはどうですか。

甘利国務大臣 できるだけ前倒しでやってきたということもあるんではないかというふうに思っております。

 何度も申し上げますけれども、電気のエネルギーというのは質が必ず問われるわけであります。その新エネの場合だと周波数変動が極めて大きいわけでありますし、では、何でヨーロッパと日本と比べて違うんだと。ヨーロッパだと系統全体がつながっていますから、だから、母数が大きいから、要するに、変動要因をぶち込んでも全体の質が落ちないということがあるんです。これを飛躍的に、では強引に伸ばしていった場合、その周波数安定のための措置を相当大胆にやっていくということ等々、コストにはね返る点等も含めて、総合的に考えなきゃいけないということが出てくるんであろうと思います。

細野委員 周波数安定の問題は確かにあります。特に風力においてそういう問題が出てきているのは私も現場から聞いています。(甘利国務大臣「太陽光も」と呼ぶ)太陽光もおありであると思います。ただ、その問題も、燃料電池の開発であるとか、蓄電の能力で今克服しようとしているわけですよね。

 要するに、何度も申し上げて恐縮なんですが、私が申し上げたいのは、特にこの新エネという、今普及の初期段階にあって、需要をきちっと拡大してコストを下げるべき大事な時期なんですね。この時期に、実際の発電がこれだけ行われている中で、目標値のこの角度を下げる、伸び率を下げるという判断は、私は明らかに間違っていると思います。これは、もう水かけ論になるでしょうから、再認識をしていただいて、RPS法の中身、ぜひ省内でも検討していただきたいんです。

 一つ、せめて大臣にこれは提案したいんですが、今度エネルギー基本計画をつくりますね、今もうかなりパブリックコメントなんか求めていらっしゃるように聞いていますが。日本の場合、伸び率も非常に中途半端になっているだけではなくて、この期間の面でも、わずか二〇一四年までという八年後までしか目標が立てられていないんですね。原子力は二〇三〇年まで野心的な目標が立てられている、それをやられる。これは結構です。ただ、その一方で、この部分についてももう少し長目の目標を立てて、せめて事業者の側は長目の投資をできるような環境を整えるべきではないか、数字でそれを示すべきではないか。

 これは現実を踏まえた上で、RPS法は、これは義務量が課されますから罰則がつきます。その意味で難しい面があるのもわかります。事業者の側も限界もあると思います。ただ、国家としての目標は、この罰則を科す、義務量だけではなくて、もう少し長目にきちっと立てるべきではないかというふうに思いますが、大臣の在任中に、新エネについて長目の目標をきちっと何らかの形で立てることについて、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。

甘利国務大臣 この新エネの分野は技術開発が飛躍的に進んでいるところでありますし、水素エネルギーの開発も、燃料電池等、現実味をどんどん帯びてきているわけであります。長いスパンでそういうものがどう図れるか、私は、八年先の見通し、四年ごとの見直しということだけ承知しておりますから、それから先を見通しする場合にどういう問題があるのかないのか等々、いろいろ勉強させていただきたいと思っております。

細野委員 お答えいただけないんですが、きちっと目標の数値を立てるということに関して、検討されるおつもりはありませんかと聞いていますので、それについてお答えをいただきたいと思います。

甘利国務大臣 さっきのRPS法ですが、長期エネルギー需給見通しでの二〇三〇年においての再生可能エネルギーの目標値は一〇%というふうに設定をされております。

細野委員 今大臣がおっしゃった再生可能エネルギーというのは水力も入れてですよね。水力を入れる数字もあってもいいと思います。ただ、それ全体でいえば、諸外国は二〇%、三〇%という数字を二〇二〇年や三〇年に向けて立てています。この新エネの部分についてももう少しきちっとした目標を立てて検討されるおつもりはありませんかということを再度聞きたいと思います。

甘利国務大臣 水力はこれから先飛躍的に伸びていくということはまず日本ではありません。でありますから、伸びていく部分の大部分は水力以外の新エネということに引き算でなっていきます。

細野委員 何か水かけ論になっていますが、新エネについて、きちっと二十年、三十年先の目標を立てるおつもりはありませんか。再度お答えをいただきたいと思います。

甘利国務大臣 二〇三〇年においてのシェアを書いているわけでありまして、おのずと、何度も申し上げますが、水力について、ダムをこれから先たくさんつくっていくというわけには当然いかないと思います。そうしますと、一〇%、今水力が占めている比率が四・六でありますから、将来にわたってこれが七とか八とかなっていくことはあり得ないと私は思っておりますから、当然その一〇%という目標は、新エネが伸びていく目標に結果としてなっていくと思います。

細野委員 ようやく若干前向きな御答弁をいただきましたので、この問題はこれぐらいで終わりたいと思います。

 質問しようと思ったんですが、時間がなくなりましたので、バイオマスについて一言だけ。

 私も不勉強で、これは余り知らなかったんですが、農水省で「バイオマス・ニッポン」というすごい冊子ができているんですね。バイオマス・ニッポンというからには、農水省としては国策としてやっているのかなと思ったら、RPS法のバイオマス発電のところについて、農水省は何ら今まで意見を言ったことはありませんみたいな話なんですよ。

 バイオマスの発電も、バイオマスのエネルギーの中には、それこそ車のエタノールのものなんかも多いので、全部発電というわけではないんですが、この面において経産省と農水省の連携は非常に悪いなというふうに私は思っています。これはぜひ取り組んでいただきたい。これはお願いです。

 農水省の方、答弁をお願いしようと思いましたが、ちょっときょうは質問をしませんので、ごめんなさい、御容赦いただきたいと思います。

 せっかく外務副大臣に来ていただいているので、残りの時間が五分になりましたので、ちょっと核問題について最後に幾つか質問して、終わりたいと思います。

 先日の新聞報道で、これは共同の発信ですが、北朝鮮問題に関する六カ国協議の合意の中で、ウランの核開発、ウラン濃縮の問題について、一たんこの合意の中に入ることが議論をされたけれども、これが取り下げられたという報道がありました。

 仮に事実だとすれば、拉致問題が取り残されているということは大問題なんですが、唯一ここでとったと言われる核問題に関しても、プルトニウムともう片方にあるウラン濃縮という大切な問題を棚上げにして合意をしているということになるわけですが、これが事実だとすれば大問題。外務省として、こういう事実があるかどうか、どういうふうに認識をされているか、お答えいただきたいと思います。

岩屋副大臣 その報道については私どもも承知をしておりますが、成果文書をめぐる交渉の過程についてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、成果はどうだったかということでございますけれども、細野先生御承知のように、初期段階の措置の一環として、共同声明に言うすべての核計画の一覧表について六者の間で協議することに合意、次の段階、ネクストステップでは、すべての核計画についての完全な申告の提出等の措置を実施することに同意と。北朝鮮は同意をしておりますが、すべての核計画の完全な申告の中には、当然、北朝鮮内のすべての核に関する計画が含まれている。したがって、ウラン核開発について棚上げしているということではない、合意の対象から外したという事実はないということでございます。

細野委員 すべての核計画の放棄の中にはウラン濃縮を入れる、これは当然のことでありますから、これをとにかく外務省としては一貫した方針としてやっていただきたい。ここは懸念なしとは私は言いません、もう過去何度もこういう問題はあったわけでありますから。そのことを申し上げておきたいと思います。

 もう時間もなくなってきましたので、甘利大臣に、核の国際的な管理の問題についてどう考えるのか。これは、エネルギー政策上も極めて重要です。

 最近、IAEAのエルバラダイ事務局長の方からも、核管理に関する国際的な枠組みをつくろうじゃないかという議論が出てきている。そして、アメリカからは、さらに、バックエンドの部分も含めて核のそういう管理をしていこうじゃないかという話が出てきている。気になるニュースとしては、きょうの朝刊によると、日本はロシアにウランの濃縮を依頼するという話も出ています。

 この議論をするときに大事なのは、大臣、最後に一言だけお伺いしたいんですが、核の国際管理をする中で、日本は、ウラン濃縮の問題であるとか、あとは核燃サイクルの問題も含めて、要するに、そういうものを他国にお願いをする側に立つのか、それとも、日本は技術を開発して、ウラン濃縮にしてもバックエンドの問題にしても、アメリカが言うパートナーとして受け入れる側に立つのか、どちらを目指すのかという問題なんですね。

 ちょっと時間がないので舌足らずですが、甘利大臣としては、核の国際管理の問題、そして日本が果たすべき役割についてどう考えられているか、最後にお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 日本は、原子力発電の最先進国だと思います、フランスと並んで。その技術を後続国等に供与するということが一番大事だと思います。

 核燃料サイクルの中で、よその分も引き受けるのか、自分の分だけやるのかというお話だと思いますが、結論からいえば、自分の分で手いっぱいで、外まで受け入れる余力はないと思います。

 ただ、技術的なことを供与するということは大いにやるべきだと思っております。

細野委員 アメリカの提案は、パートナーシップの国として、日本も対象にしているわけですね。対象とした上で、パートナー国は、使用済み核燃料については受け入れて、再処理をして、送り返して供与するということも書いてあるわけです。

 大臣、この間、アメリカの大臣とも話をしてこられたようですが、恐らく、そんなに遠くない将来、日本だけがやりますというのは通用しないと思うんですね。やるなら、きちっと国際的な管理の仕組みの中で、日本が技術面だけではなくて具体的な国際的な役割を果たす。逆に、それができないのであれば、この核燃サイクルの問題については日本としては考え直す。私は、その二者択一、そんなに遠くない将来、これは選ばざるを得ない時期が来ると思うんですよ。

 ここを握れば、ロシアにそれこそウランの濃縮をお願いするというのは、ウランの問題でロシアに首根っこを押さえられる話ですから重要な問題なんですが、うまくやれば、日本が安全保障上極めて重要な地位を占めることもできる。これは重要な選択肢としてあり得ると思います。そのことを最後に指摘をして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 大臣、大分時間も遅くなりましたが、またひとつよろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、経済成長戦略、二つ目にはエネルギー外交、三つ目には公正取引委員会関係の優越的地位とか不当廉売について御質問したいというふうに思います。何せ八番バッターなので、もう大分論点も出てまいりましたので、重複するところもあるかと思いますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 今度、経済成長戦略に基づいて、経済成長戦略大綱関連三法案というのが閣議決定をされたということであります。これは、安倍政権が成長力の強化に努めていく、経済成長というものを一つの大きな政権の柱にしていくということでありますが、私自身ももう前々から、小泉政権のときから、この方向性については大賛成であるわけであります。

 というのも、小泉政権の四年、五年間の間、どちらかというと、財政再建の方に力点を置いてきた。その手段としては歳出削減とか増税、これは余り言われていなかったけれども、実際は増税をしてきた、さらには民営化とか、そういった政策が前面に出てきたということであるわけであります。

 しかしながら、私も昔、財務省におったわけでありますが、財政再建というのは、やはり歳出を削るとか増税だけでは到底果たすことができない。これは、内閣府の調査でも、アメリカの八〇年代の財政再建の要因分析というものがおととしぐらいに出たと思いますが、それを見ても、ある程度歳出削減もあるし増税もあるんですが、やはり経済成長による自然増収の要因というのが非常に大きい。こういったところを無視して、ただただ歳出を減らしたり増税をしたりでは、財政再建もままならないし、そもそも何のために政治をやっているのかというのがよくわからないということであるので、私は、安倍政権になってから、経済成長戦略というものには非常に期待をしていたわけであります。

 そういうこともあって、今回の関連の三法案について、正直、非常に期待をしていたわけでありまして、簡単に言えば、アメリカでいえば、レーガン時代のヤング・レポートとか三年前のパルミザーノ・レポートとか、そういったアメリカの成長戦略に基づく政策、それに匹敵するものをすごく期待していたわけであります。

 ところが、この前、経済産業省の事務方から説明を受けたんですが、財政的な規模も中身もかなり見劣りせざるを得ないというふうに私は思ったわけであります。規模については、経済成長戦略要望に予算の重点配分をされたというふうに言われておりますが、現在審議中の平成十九年度の予算案を見ると、三千億円超にとどまっている。また、大企業と比べてまだまだ足腰の弱い中小零細企業、これは日本経済の根幹であるわけでありますが、この中小企業対策についても、費用が予算の中で千六百二十五億円と、昨年からわずか九億円ふえたにすぎない。ここ十年、二十年ぐらいを見ていると、大して伸びていないわけですね。

 中身についても、これも私、なかなか判断が難しいですし、皆さんもあからさまには言えないと思いますが、どうも昔見たような対策が衣がえをされたり、あるいは多少条件をつけられたりして、つけかえみたいな形でまた改めて束ねられているという印象を持たざるを得ないということであります。簡単に申し上げると、まだ政策の中身に入る以前の問題として、安倍政権の成長戦略あるいは甘利経済産業大臣の経済成長に対する意気込みというものがなかなか予算に明確にあらわれてこないというふうに言わざるを得ない。

 私も、単に予算をばんばんつければいいというふうに思うわけではないんですが、もし日本の今皆さんが考えておられる経済成長戦略というものが、アメリカとか先進国の潮流の中で出てきているようなものと大体似たようなものであるならば、基本的にその成長戦略というのは、補助金とかそういったものよりは、研究開発あるいは人材育成、教育、こういったところに力点を置くことだと思うんですね。それらは簡単に言えば将来に対する投資みたいなものであって、もちろん、その中身とかいろいろ制度整備、どういう条件をつけていくのか、こういうことも大事だと思いますが、投資ですから、やはり金額というものが極めて重要な部分を占めるというふうに私は思います。

 質問としては、ですから、基本的にイノベーションというふうに言うのであれば、今回の中身を見ると、従来型の補助金的なものとか見受けられて、もちろんそれだけではなくて、いろいろ知的財産権の項目とか入っておりますが、やはりもう少し明確に、研究開発、人材育成というものに重点化して、大幅に増額をする必要があるというふうに思うんですが、この辺の、私が今るる申し上げた考え方あるいは見方、これについて経済産業大臣の基本的なお考えを伺いたいと思います。

甘利国務大臣 成長なくして日本の未来なしというのが安倍内閣のスローガン。この成長を確保していくために、税と予算と法律を駆使する。

 税につきましては、減価償却税制、これは四十年ぶりに抜本的に見直しました、一〇〇%償却。それから、競争の激しい部分については、法定耐用年数そのものを短縮して競争力をつけていく。設備が最新のものに入れかわる、サイクルを早くしたわけですね。

 予算でいいますと、確かに三千億の枠です。しかも、これは三千億を外枠で出したというんじゃなくて、質を変えたのを優先的に織り込んでいくというやり方です。ですから、ボリュームとしてはもうちょっとあっていいなというのが率直な私の思いでありますし、またその旨も主張しました。ただ、財政再建という縛りがかかっている中で、どうやってイノベーションを加速していくか。だから、予算をふやすというんじゃなくて、予算の質を変えるという作業をやったわけですね。三千億、その質が変わった要求については最初からつけていって、上げますよというやり方でやったわけであります。それとあわせて、法律、我が省でいえば、中小企業地域振興三法案を出したわけであります。

 私は、経済財政諮問会議でもたびたび主張していることでありますが、この三千億は、プラン・ドゥー・チェック・アクションというか、見直しを常時かけていく。政策効果の見直し、それから新しい玉出しとか、常時見直しのサイクルを組み込んでいくべきだ。これは新年度予算でありますけれども、その次の予算もこういう枠をできれば拡大して設けるべきではないかという主張も、諮問会議を含めてあちこちでしているところであります。

北神委員 ありがとうございました。

 本当に率直な御意見を伺えてよかったと思います。

 というのは、実際、大臣も多少やはりまだまだ足りない部分があるという御意見だというふうに思います。足りないといっても、比較の対象というものがないとなかなかわからないんですが、私も経済産業省が出している資料で見ますと、アメリカは、さっき申し上げたパルミザーノ・レポートに基づいて、去年の一月三十一日にブッシュ大統領が一般教書演説において米国競争力イニシアチブというものを発表された。その中身を見ますと、ナノテクなどの重要な研究に対する連邦政府の財政措置を倍増する、あるいは研究開発減税の恒久化、これは大臣も以前取り組まれたという話ですが、今度アメリカの方では恒久化をするということであります。三本柱で、あともう一つは学校教育、生涯教育ですね。生涯教育というのは、アメリカの文脈の中で職業教育というものにすごい力点を置いているみたいですが、そういった教育改革というものも入れている。

 そして、財政規模を見ますと、二〇〇七年以降、今後十年間で千三百六十億ドル、これは、日本円に直すと何と約十五兆円あるわけであります。アメリカの経済規模と日本の経済規模の違いとか、それはもちろんいろいろあると思いますが、しかも、アメリカは十年間にわたってずっと継続的にやっていく。日本の方は単年度ぽっきりで、単純に三千億で比較をすれば、約五十分の一になってしまうという計算になると思います。だから、気合いの入れ方が違うんじゃないかというふうに思っております。

 ただ、今大臣が言われた、経済財政諮問会議において、プラン・ドゥー・チェック・アクション、そういった提言をされている。これは、私もぜひそれをきっかけに、今後、これは単年度の話だけではなくて、十年、二十年ぐらいのスパンで徐々に改善をしていきながら、できれば、やはり研究開発とか教育の投資というのは財政規模が最後は物を言うというふうに思いますので、そこら辺をぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 これは、ほかの政策についても私も安倍政権になってから本当に気づいて、よく目にしてきているんですが、皆さん、やはり財政再建の制約の中でやらないといけないと。今も大臣もそういうふうに言われましたし、去年の教育基本法の改正のときも、教育改革は最重要課題だと。

 御存じのように、日本の教育費というのは、OECDの先進国の中でも、GDP比では非常に少ない。お金が全部じゃないけれども、やはりそういうところに力を入れるという意味では、ぜひそこは予算で力を入れてほしいというふうに伊吹大臣に申し上げたら、彼も、やはり財政の制約がある、なかなかできないと。特に、教育については、去年、いわゆる骨太二〇〇六の中で、もう既に小泉政権の中で枠をはめられちゃっているんですよね。これまで以上の削減をするということがもう閣議決定をされてしまっている。

 そういった意味で、安倍総理が去年、所信表明演説の中で、成長なくして財政再建なし。大臣は何かきょうは成長なくして日本の未来なしというふうにおっしゃっていますが、もともとは成長なくして財政再建なし。これは物すごい明確なメッセージで、私が冒頭申し上げた考え方にも共通するものがあるんですが、極端に言えば、赤字覚悟ででもやはり経済成長に投資をするんだ、最初は赤字かもしれないけれども、いずれその投資のリターンというものがより多く入ってくるというのがそのフレーズの意義だというふうに思うんですね。

 ですから、そこは多分、大臣は当然理解されているというふうに思いますし、安倍総理も理解されていると思いますが、やはり財務省の呪縛から、あるいは小泉政治の呪縛から脱却しないと、なかなか経済成長というのは図れないというふうに思うんですよ。私も財務省にいたら怒られますけれども、はっきり言って、財務省にいながら私なんかもそう思っていたわけであります。ですから、そういった姿勢でぜひとも政権の中で頑張っていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、今回の経済成長関連三法案について申し上げたいのは、予算の規模、具体的な政策の中身だけではなくて、戦略の方向性であるわけであります。

 つまり、午前中、近藤さんとの話で、イノベーションとオープンというものが二つの柱だと。イノベーションというのもそうですし、オープンもそうですけれども、基本的には、簡単に言えば、企業の生産性向上と、国内だけじゃなくて海外にも需要を求めるという意味合いだというふうに思います。

 これについては、アメリカの置かれている経済環境と日本の置かれている経済環境というのはおのずと違う。アメリカの方はそんなに、景気が悪くてもみんな消費をするような国ですから、消費はある程度ずっと堅調なわけですね。日本の場合は、さっきからもうずっと議論があるように、やはり消費が非常に弱い。大臣御自身も、この前、十六日の所信表明で、消費に弱さが見られる、企業部門の好調さが家計部門に波及することによって、バランスのよい景気回復が実現されることが必要だというふうに述べておられるわけであります。

 私もそのとおりで、持続的な経済成長というのはやはり設備投資、輸出だけではとてもとても確保することができないというふうに思っておりまして、政策的に申し上げれば、企業の生産性向上だけではなくて、それだけやるんだったらやはり成長戦略としては不十分だというふうに言わざるを得ない。

 私たち民主党は、今国会で格差問題とかいろいろ議論をしておりますが、個々の家計とか個人の生活の安定とか安心とか、そういったものも大事ですし、あるいは国民、国家として、余り格差が広がって、不公平感が広がるというのも非常に問題だというふうに思いますが、それだけではなくて、まさに、ここで議論している経済成長の観点からいっても、経済格差というのは非常に足かせになるんじゃないかというふうに思います。

 そういった中で、御手洗経団連会長とかあるいは一部の識者の中では、今グローバル化で、インドとか中国とか、三十億人もの低賃金労働者と競争しないといけない、そういった意味では、当然、企業が国際競争力を確保するためには、人件費を極力抑えないといけない、そういう論調があるというふうに思いますし、私もそれは決して軽視すべきではないと。確かに、グローバル経済の中でそういった傾向がある。当然、そういうリーディング産業の足を引っ張るようなことはできるだけしてはならないというふうに思いますが、これも、先ほどからもお話が出ているように、ただ、その理屈が本当に今に当てはまるかといいますと、今回の景気回復の局面を見ると、決してその理屈は当たらないというふうに思うんですね。

 というのは、もう五年間、企業収益というものはずっと回復をしてきている。これは、私が提出した資料の一枚目にありますが、既に皆さんいろいろな形で、もっとわかりやすい形で資料として出されておりますが、財務省の発表している法人企業統計ですね。もう大体景気が回復されたと言われる平成十三年ぐらいから数字を出してあるんですが、企業収益が回復をしていると。

 内部留保の方を見ますと、マイナスから、平成十七年に至っては約九兆円ぐらい蓄積をしている。そういった中で、役員賞与の方は、平成十三年五千六百五十億円から、平成十七年には一兆五千二百二十五億円と、約三倍になっております。株主の配当も、平成十三年四兆四千九百五十六億円から、平成十七年には十二兆五千二百八十六億円、これも約三倍ぐらいになっておる。それぞれ、配当もあるいは役員賞与も三倍ぐらいふえている。ところが、人件費は、平成十三年の百九十二兆八千六百七億円から、平成十七年百九十六兆八千四百七十五億円と、ほとんどふえていない。

 だから、これは決して競争力に困って、なかなか商売もうまくいっていないから、収益がふえていないから、賃金に回せないとか、そういった話ではないというふうに思うんです。

 実際、この五年間で、幾らタイムラグがあるといっても、さっきも、川端先生の資料にもありましたが、八〇年代あるいはイザナギ景気のときに比べたら、明らかに労働分配率というものが上がってきていない。これだけでは、こういった状況では、なかなか大臣がおっしゃるように、消費が弱い状況というのは改善をしないんじゃないかというふうに思います。

 そこで、お聞きしたいのは、経済産業省も、名前のごとく、経済と産業、両方に目配りをする、設置法上もそういった役割になっておりますので、本当は今回の経済成長戦略の中で、企業の生産性向上だけではなくて、消費重視の政策というものを盛り込む必要があったというふうに思うんですが、それについて、見解と今後の取り組みについて伺いたいというふうに思います。

甘利国務大臣 先生が御提出をされた資料で、平成十三年から十七年までの間のそれぞれの数字の伸び率を拝見させていただきますと、確かに人件費の比率が他に比べて極めて鈍化した伸びしか示していない。

 配当金の方は、役員賞与とは違った要素もあるのかもしれません。それは、MアンドAがかなり頻繁になってきた中で、実力に見合った株価になっていない、防衛策の一つとして株価を上げていくということ等もあって配当をふやしていく企業行動が反映したという点もあるのではないかと思っております。

 御指摘のとおり、消費がGDPの大宗を占めるわけでありますから、ここに力強い拡大感がないと本格的に景気が拡大局面に入ったというふうなことは言えないと思うし、企業の経営判断もそこのところを見ていると思うんです。

 そこで、もちろん、経営者側の言い分というのは、これから労働力がどんどん不足していって、タイトになってくれば、当然、買い手市場から売り手市場になっていく、いい条件を出さないと人が集まらなくなるしということになっていくんだという話が一方であります。それも事実だと思います。

 ただ、私は、余裕がない会社に賃金を上げろとは言えないですけれども、余裕があるところはできるだけ上げていって、企業から家計に所得が移転をしていくということを通じて、消費が拡大をされるし、世の中の消費マインドといいますか雰囲気がよくなるはずだ。そういうことを通じて、早く好循環、企業収益と消費の拡大のいい循環をつくり上げた方がいいんじゃないですかということを申し上げているわけでありまして、これは経団連の役員総会のときに総理御自身からも発せられた言葉でもあります。

北神委員 今回の成長戦略にはなかなかそれが見えてこないということを指摘したいのと、今後の取り組みについては、最低賃金の話とか、あともう一つ申し上げたいのは、やはり労働法制の中で、大臣と川端先生の話でありましたが、もともとの趣旨が大分違ってきて、はっきり言えば経営者の方に乱用されちゃっている。だから、やはりそういったところをちょっと見直していく必要もあるんじゃないか。しかも、労働監督局も、非常に人員が少ない中で、多分そういったところにも目がなかなか行き届いていない。そういった部分もやっていかないといけないというふうに思います。

 とにかく、時々、私も直接経団連の会長とお話ししたこともないですし、あれですけれども、やはり、どうやら八〇年代からのアメリカの何か資本主義というか市場原理の考え方というものが、相当、またかなり極端になってしまっていて、労働と商品というものを同一視しちゃっている部分がある。これは確かに、経営者の立場からただただ利益を上げるというものが目的であるならば、そういった視点に自然となってしまうおそれもあるというふうに思うんです。

 これはちょっと通告していなかった質問なんですが、これに関連をして、こういった風潮が一部見られる、そういった中で、この前、十五日の参議院の厚生労働委員会ですか、柳澤大臣が、労働者は時間が売り物だという発言をされているんですね。そして、これは、日本版ホワイトカラーエグゼンプションの制度の意義を説明する際に、柳澤大臣から、工場労働というか、ベルトコンベヤーの仕事、もう労働時間だけが売り物ですというような、そういうところでなく働いている方々の現実に着目した労働法制をつくることが課題だというような発言をされたんですが、これも別に私も足を引っ張るつもりはないんですが、やはりこういう考え方が非常にはびこってきている嫌いがある、そういうことについて、いわゆる労働者というか労働力に対する認識とか評価に、その言葉どおり受けると、極めて問題があるというふうに思うんですが、その点について、大臣のお考えを聞きたいと思います。

甘利国務大臣 柳澤大臣は基本的に極めて頭のいい人で、政策にも明るいので、ただ、時々、自分の言いたいことをわかりやすく強調する余り違った理解をされてしまうという点があるんだと思います。

 恐らく彼が言いたかったのは、内容を見ていませんからわかりませんが、工場のラインに入っている労働者で自分の創意工夫で付加価値を生み出して自分の評価につなげることができない、つまり、その作業に加わっている労働者の評価というのは得てして時間ではかられてしまうというみたいなことを言いたかったんじゃないでしょうか。

 つまり、自分の創意工夫を生かしていろいろなことができる仕事の部分と、定格化された作業を強いられる部分との働き方の差をわかりやすく言おうとして、わかりにくくなったんじゃないんでしょうか。

北神委員 ホワイトカラーエグゼンプションの話ですから、知識・知能労働者と、肉体労働者というんですか、それとを分けるときにそういう表現を使ったというふうに思うんですが、実際、さっきから申し上げている成長戦略の中でも教育というものが非常に大事だというのは、まさに、高度化、いわゆる知識経済になってきている、競争力もどんどん激しくなっている。本当はそういったことを言うんじゃなくて、むしろそういった人たちをどうやって引き上げて、この競争経済の中で十分力を発揮できるようにしていくような、そういった姿勢が大事だというふうに思うんです。

 もう一点だけ、申しわけないんですけれども、柳澤大臣も産む機械だとか装置だとか、そういった発言もされて、こういうのがどんどん続いてきている。毎回謝っておられるんですが、こんなに何回も続いていると、どうもちょっと、さっき言われたように表現力が下手なのかどうかわかりませんが、何か非常に、根本的にちょっと適当じゃないというところがあるんじゃないかというふうに思うんですが、その辺、大臣のお考えはどうでしょうか。

甘利国務大臣 私が知る限り柳澤大臣というのは極めて人格者で、女性に対しても、もちろん男性に対しても、労働者に対しても極めて敬意を払う人だと私は思うんですが、このところ何か、ちょっとどうしちゃったのかなという、何か歯車のかみ合わせがちょっとうまくいっていなくて、御本人も歯がゆい思いをされて、自分の真意が、どうも出る言葉は違う言葉が出ちゃって、悩んでいらっしゃるんじゃないかというふうに思うんですが。

 従来から申し上げますように、日本の企業の強みというのは、みんなの力を結集する、いい改善提案を共有する、恐らく、よそにそんなにないと思うんですね。こうやったらうまくいったと発見した自分のノウハウだから、そんなものを人にただでやってたまるかという気持ちが働くはずですけれども、日本の労働者は、こうやったらうまくいくよ、あなたもこうやったらということを言う、これが力だと思うんですね。

 だから、ライン方式からセル方式の方が生産性が上がったというのは、みんなでいいことを共有しようよという総合力を最も発揮できる労働形態だから、生産性がより上がったということになるんだと思いますし、そこはやはり、日本の経営者はそういう働き手との、そういう、機械でも装置でもない、人間だというところの強みを理解しているから、日本の企業は強かったんだと思います。(発言する者あり)

北神委員 ありがとうございます。労働大臣兼務という話もありますが、ぜひそういった考えを経済産業行政の方に反映していただきたいというふうに思います。

 消費の部分についてこの五年間の回復を見ていると、消費が一応伸びていることは伸びている、でも、五%台で伸びている。それで、輸出とか設備投資は二けた台で伸びている。そういった意味では、非常に差があるし、でも消費は実際に伸びているじゃないかという方もおられますが、それは実際は、貯蓄を取り崩して消費に回しているという分が多いんですね。貯蓄がゼロの方というのは二十年前ぐらいはほとんどおられなかったんですが、今はもう二四%ぐらいにふえている。それは、ほとんどその貯蓄を、多分高齢者が多いと思うんですが、そういった方が取り崩して消費に回している。

 消費は、例えばウナギばかりを食べていて、だんだん所得が減ってきたが、ほっか弁の弁当になかなか切りかえることができない、自分の今までの生活水準を維持したいという意味で、どちらかというと、貯蓄を崩してでもその消費水準というものを維持したいという部分が働くと思いますので、消費がプラスだからといって安心することは非常に危険だ。今後、どんどん貯蓄を崩していって、この低金利の中で、利子所得も得られない、そういった中で、やはり先行きというのはこのままでは非常に不安定なことになってしまうということを申し上げたいというふうに思います。

 ちょっと、私もしゃべり過ぎて時間が、ほとんど質問できなかったんですが、あと二点ぐらい質問したいのですが、ちょっと公正取引委員会の方に質問したいというふうに思います。

 それは、先ほども中小企業対策の話も申し上げてまいりましたが、今回も生産性の向上という話が法案の中に入っております。しかし、これも質問できなかったんですが、サービス産業の生産性向上というのはなかなか、IT化ぐらいは思いつくんですが、サービス産業でどうやって生産性を向上するのかというのは非常に難しい問題だというふうに思いますし、ほかの部分を見ると割と旧来型の補助金みたいな部分があると思いますので、この委員会でもいろいろな議論もありましたが、私は前から思うのは、今一番求められている中小企業対策というのは、補助金とか減税とかそういったものではなくて、やはり大企業との関係で公正な競争というものをいかに確保するかということだと思います。これは地元へ戻っても、中小企業の社長さんから、やはりどうしてもそのところで自分たちは非常に苦しい目に遭っていると。

 そこで、先ほども話が出ましたが、公正取引委員長、竹島委員長の方から、不当廉売、優越的地位の濫用等についてお尋ねしたいというふうに思います。

 これは、私の出した資料にも載っておりますが、三枚目だと思いますが、日経新聞に記事が出まして、公正取引委員会が、不当廉売、優越的地位の濫用について課徴金を科すべきだ、そういった方向で主張をされていると。それに対しまして経団連が、そんなことはだめだという記事が載っております。よく新聞にはガセネタみたいのも出ますので、これが本当かどうかわかりませんので、これが本当に根拠がある記事かどうかというのを竹島委員長に伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 今御指摘のこの記事の部分ですが、正確には、公正取引委員会が不当廉売や優越的地位の濫用について課徴金の対象にしたいと、積極的にといいますか、そういう主張をしているというのではございません。

 これはまさに、この十七年の独禁法の改正のときに、衆議院、参議院両方において、優越的地位の濫用と不当廉売について、ただやめろという排除措置命令だけじゃ不十分だ、課徴金の対象にすべきであるという御議論が国会の方でございまして、それが附帯決議にも盛られている、そういうことを受けて、私どもとしては、それは宿題であるというふうに認識をさせていただいております。

 当時も申し上げましたが、これは法律的に非常に難しい。端的に申し上げますと、カルテルや談合のようなものは課徴金の対象にすべきである、当然違法で情状酌量の余地もなしということになっているわけですが、この不当廉売とか優越的地位の濫用というのは不公正な取引方法というものでございまして、競争を制限するというのじゃなくて、公正な競争を阻害するおそれがある、よってやめなさいというグループなものですから、おそれぐらいで課徴金だ、罰金だということになるのか、平たく申し上げますと、そういう問題がございます。

 したがって、同じ独禁法の違反行為でも、カルテル、談合の場合とは内容、性格が異なる一つのグループである、それにどういうペナルティーを科すのが妥当なのか、こういう問題なものですから、そう単純な話ではない。

 そこで、内閣府の基本問題懇談会で、学者先生も入っていただいて、今どういう形があるべき姿かということを議論しておられる。六月か七月には御提案が出てくると思いますので、そういうことも踏まえて我々としては勉強していきたい、こういうことでございます。

北神委員 ぜひ、私の立場からしたら、やはり前向きにそれは検討していただきたいというふうに思います。

 特に、おっしゃるように、法律上、刑事の犯罪構成要件ですか、これはなかなか難しい。ただ、日本の法律の場合は何々のおそれがあるというところが多分問題になると思うので、諸外国の法律を見るとおそれというものはない。だから、場合によってはそこを改正して課徴金を科すことにするということも考えられると思います。ただ、いずれにせよ、実際にちゃんと取り締まれる方法が一番いいというふうに思います。

 最後にお聞きしたいのは、この法律を改正するにせよしないにせよ、この問題について竹島委員長も、十六日のこの委員会で、厳正に、迅速に処分をしているというお話もされましたが、私の地元で、いわゆる酒屋さん、小さな酒屋さんで非常に困っていると。なぜなら、割と大手の酒屋さんが来て、車で一時間ぐらいかかるところに、ビール半額だ、あるいはウイスキー半額だ、そういったビラをまいて、みんなそっちに行っちゃう、自分たちはそういったことに対応できない、これは不当廉売じゃないかと。いろいろビラとか集めたり、情報を集めたり、数字を集めたりして公正取引委員会の方に出しても、私もそれにちょっとかかわりましたが、なかなか対応してくれないと。

 別に、その結果は、それはまあいろいろあると思うんですよ。皆さんが最終的に判断されることだと思います。しかし、聞いてみると、調査をされている方、その不当廉売の調査、私の場合京都なんですけれども、京都だけじゃなくて近畿地方全体でこの不当廉売の調査をしている人員が四名しかいない。これはとても、どう頑張っても、不当廉売が行われているかどうかとか、そういったことは恐らく不可能だと思うんですよ。

 ですから、そういった意味で、法改正をするしないの問題ももちろんありますが、やはりこの体制の問題というものを、より拡充していかないと、とてもとても法律の趣旨を実行することはできないんじゃないかというふうに思いますので、その点について最後に伺いたいと思います。

竹島政府特別補佐人 酒屋さんにかかわる不当廉売というのは非常に多いわけです。ガソリンの場合も多いんですが。

 我々としては、相当の数、不当廉売ですよ、やめなさいということの注意や警告をもうしておりまして、特に影響の大きいものはもう排除措置命令も出しているということで、近畿でもガソリン販売業者に法的措置を講じたことがあります。

 ちょっと統計を申し上げますと、酒類の不当廉売の注意件数というのは五百件ぐらいございまして、平成十五年が五百七件、十六年度が四百八十五件、十七年度が三百九十七件、十八年度、まだ終わってませんが、四月から十二月までで四百四十四件やっております。したがいまして、数は、マンパワーの問題は確かに御指摘のようにあるんですが、結構な数やっておるということでございます。

 これからも、こういう厳しい定員事情でございますので限度がございますけれども、着実に体制整備に取り組んでいきたいと思っております。

北神委員 ありがとうございました。以上でございます。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは最初に、この間、マスコミでも大きく取り上げられ、経済産業省としても対応されておられますガス機器の一酸化炭素中毒問題についてお聞きしたいと思います。

 昨年はパロマで大きな議論になり法改正にまで至ったわけですけれども、リンナイ製の開放式の小型ガス湯沸かし器を使用していた横浜市の男性が二月七日に死亡される。これは、不完全燃焼防止装置という、本来は一酸化炭素中毒にならないような、そういう機能を備えた器具なのに一酸化炭素中毒になってしまった。こういう同機種による事故例が二〇〇〇年以降五件発生をしているということで、経済産業省は、ガス事業法に基づくガス事業者からの報告によってこれらの事故を承知しておったわけであります。

 過去のこういった事故例について、ガス機器の性能に関する問題ではなくて、換気不良による、いわば使用者の誤使用が原因としてきたわけです。しかしながら、この不完全燃焼防止装置が作動して燃焼が停止をした後、利用者が何度も、押したりとかかちかちしたりとか、再点火を試みるうちに、大量のすすが発生をして、不完全燃焼防止装置、不完全燃焼を感知するセンサーが作動しなくなる場合があるということがこの間明らかになってきています。

 最初の事例として、九六年の北海道でのハーマンプロ製の製品についての一酸化炭素中毒の事故でこういうことがあるということをガス会社またメーカーも承知をしたわけであります。

 そこで、お尋ねしますが、大臣、経済産業省は、このように、不完全燃焼防止装置は再点火を繰り返すことで不完全燃焼防止装置が作動しなくなって一酸化炭素中毒が発生する、こういう事実をいつの時点で把握されたんでしょうか。

甘利国務大臣 一九九九年の当時に、通商産業省においては、不完全燃焼防止装置が作動した後に、再点火を繰り返すことによって、今おっしゃったように不完全燃焼防止装置の機能が、すすが堆積をして失われる、その可能性のあることについて認識をしていたと思っております。(塩川委員「九五年ですか」と呼ぶ)九九年。一九九九年当時には承知していたと思います。

塩川委員 さかのぼってということでも、それ以前でも、承知していないのかどうかというのは、では、その点、確認いただけますか。

松井政府参考人 お答えいたします。

 九六年に北海道で発生いたしましたハーマン製の開放式湯沸かし器による一酸化中毒事故を受けまして、日本ガス機器検査協会が製品事故の分析などを実施いたしまして、この報告書が九六年九月に出されておりますので、この資料から推察をいたしますと、その時点で認識していたと考えます。

塩川委員 九六年当時から当時の通産省としては認識をしていた。御承知のとおり、開放式のガス湯沸かし器ですから、室内から空気を取り入れて室内にその空気が出る、そういう中では、不完全燃焼となれば当然のことながら一酸化炭素中毒が起こり得る。だから、そういう過去の事故を踏まえて、不完全燃焼防止装置というのをつけるようになってきたわけですけれども、それが機能しないということになりますと、これはその不完全燃焼防止装置がないと同じことなわけですね。ですから、不完全燃焼防止装置がないという装置だということを前提に、本来対策をとるべきだったんじゃないですか。

 ですから、不完全燃焼の防止装置の不作動というのは、この不完全燃焼防止装置としての基準をそもそも満たしていないという事態を放置していたということになるんじゃないですか。通産省がいわば放置を容認してきたということになるんじゃないですか。

松井政府参考人 お答えいたします。

 ただいま申し上げました事故報告書を詳細に検討いたしますと、不完全燃焼防止装置が作動した状況で、不完全燃焼防止装置が麻痺するほどまでに再点火を繰り返すような使用方法は、かなり特殊な事例であると認識していたものと考えます。千三百万台ほど出荷されておりまして初めてあった、こういうケースでございますので、極めて特殊な事例である、こういうふうに認識していたものと考えます。

 また、開放式のガス湯沸かし器につきましては、機器の性質上、十分な換気を前提として使用する機器でございますが、当該事案は換気不良が直接的な原因であると判断し、使用方法の問題として、換気をすることを呼びかけるという形で対応してきたところでございます。

 また、ガス事業者及びガス機器メーカーにおきましては、こうした誤使用にも対応できる、より安全なガス機器を供給するため、一九九九年ごろから自主的に再点火防止機能のついた開放式のガス湯沸かし器を製造、販売していたものと承知しております。

塩川委員 いや、今の話は矛盾するんじゃないですか。特殊な事例だとおっしゃったのに、実際に、メーカーやガス事業者、メーカーからのOEM供給でのガス会社の自主ブランドの製品販売も行ってきたわけですよ。ですから、特殊な事例だと言いながら、実際に、都市ガス会社もメーカーも、この再点火防止装置をつけた製品を大量に売っているじゃないですか。特殊な事例じゃないからこういったことが行われているんじゃないですか。

 実際に、九九年当時に、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスなどの大手のガス事業者が再点火の禁止基準というのを設けた。それは、自社のブランドで売る際に、この再点火防止装置をつける必要がある、このことをメーカーに求めるという基準であります。ですから、そういうのを今何十万台も売られているわけで、そういう意味では、特殊な事例ではなくて、今後も起こり得る、命にかかわる重大問題だ、だから、メーカーとして、ガス事業者としてのこういう基準を定めたということになるんじゃないですか。そういう点でも、これを放置してきた経産省の責任というのは一番問われるんじゃないでしょうか。

 メーカーに対して事故報告、亡くなった人の数が百九十九人とかというのが報告されて、これは経産省に届いているこの死亡事故例四百十四人の半分以下だ、メーカーが実態把握していない、そういう点で何かメーカーが悪いという話もあります。メーカーの責任も当然ありますよ。しかし、それ以上に、ガス事業者から事情を把握している経済産業省の方が、いわばメーカー以上に事故の実態をよく知っていたはずでしょう。その経産省がしかるべき対策をとらなかったというその責任の方が、メーカー以上に重大じゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

松井政府参考人 九九年時点では一件でございましたけれども、その後何件か事件が発生したということで、二〇〇四年の事件の後につきましては、再点火防止装置の義務づけということにつきまして検討を開始して、委託調査も行って、今検討中でございます。さらに加えまして、何度も再点火をしないようにというPRにつきましては、ガス会社挙げて行っているところでございます。

甘利国務大臣 再点火防止装置が働いて消える、しかし、また使用者が再点火させようとする、その繰り返しが数百回に及ぶと、防止装置自身が機能しなくなる。恐らくそういう使用例は極めて特殊だと判断したんだと思います。

 ただし、そういう特殊な事態に至らないように、この再点火防止装置というのは正しく理解をするように業界に対して指導したというところまでしか周囲の思いが及ばなかった、今となってみればですね、ということではないかと思います。

塩川委員 特殊な事例だと言いますけれども、リンナイ製の小型湯沸かし器の事故例、一酸化炭素中毒について、二〇〇〇年以降五件あるわけですよ。その五件の原因としても、換気不良となっていますけれども、実際に五件中三件というのが、内部に大量のすすが付着をしているということがわかっているわけです。そういう点では、いわば不完全燃焼防止装置が機能しなかったんじゃないのかと疑われる事例が山ほどあるということなんですよ。特殊な事例なんということはとんでもないですよ。そういう点でも私は経済産業省の責任が問われると思います。

 こういったガス機器の検査の体制の問題を考えても、例えば日本ガス機器検査協会、この検査協会の体制を見ても、理事長というのはずっと経済産業省からの天下りです。専務理事は大手の都市ガス会社の方であります。そういう点では、こういった検査協会での体制のあり方も含めて、いわば事業者と経産省のもたれ合いのような関係が天下りの中でつくられているんじゃないか、こういうところもきちっと是正をすることが求められていると思います。

 その上で、この問題について、最後に大臣に伺います。

 どんな対策をとるのかということであります。特に、先ほど言ったように、不完全燃焼防止装置なしの機器については省令で点検が義務づけられておりますけれども、不完全燃焼防止装置がついているということで、そういった機器については点検の義務づけがないわけですね。ですから、こういう不完全燃焼防止装置つきの機器についても、今言ったように、機能しなくなるような実態も事故例で生まれているわけですから、しっかりと点検を義務づける必要があるんじゃないのか。これは省令だそうですから、役所でやる気になれば、大臣がやる気になればすぐできることで、こういう改正をぜひ直ちに行うべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 経済産業省といたしましては、ガス機器事故の再発を防止できるように、幅広い事故情報の提供とともに、消費者への注意喚起を徹底していくことが極めて重要だと認識をいたしております。

 このため、経済産業省では、ガス機器の業界団体に対しまして、過去のすべての重大事故案件についての公表をするように指示をしまして、一昨日、業界団体から公表されたところであります。また、関係業界団体には消費者への注意喚起の強化を指示しまして、これを受けまして、ガス機器メーカーやガス事業者がテレビコマーシャル等を行っているところであります。

 経済産業省といたしましては、ガス機器の安全確保のための対策を早急に検討するよう事務方に指示したところでありまして、今週中に取りまとめまして、公表してまいりたいと考えております。

塩川委員 そういう検討の中で、具体化の一つとして、今言ったように、不完全燃焼防止つきのガス機器についても点検を義務づけるようにすべきじゃないのか、この点をしっかり入れるべきだ、この点について、ぜひ一言お答えください。

松井政府参考人 経済産業省といたしましては、今般の事故の原因究明を行いまして、その結果等を踏まえて、必要に応じて適切な対応策を検討してまいりたいと思っております。

塩川委員 そういう意味では、まともな対策についてこの場で答弁できないということ自身に経済産業省の姿勢があらわれているんだ、このことを強く申し上げ、ふさわしい対策を直ちにとるべきだということを改めて強調しておくものであります。

 それから次に、下請問題についてお聞きしたいと思っています。

 これは、官邸主導ということで、成長力底上げ戦略というものをとるということで、拝見しておりまして、中小企業の底上げというのがありまして、これは大変重要であります。そういう中でも、特に下請取引の適正化ということを強調している。いわば官邸主導のこういった取り組みの中で、下請取引の適正化なんというのが上がってくるというのは久方見たことがない。そういう意味では極めて、私としても重要だと思いますし、これを本当に実効あらしめるようなことが今求められていると思うわけです。

 そこで、まず基本認識としてお聞きしたいんですが、底上げ戦略の中小企業の底上げ、下請取引の適正化、このペーパーのところにも、成長の成果を大企業から中小企業にと言っています。つまり、成長の成果が大企業にあるんだけれども、中小企業に及んでいない、こういうことだと思いますけれども、生産性向上の成果を中小事業者にも波及させ、全体の底上げを図るためには、下請取引の一層の適正化が重要だと言っています。

 大企業が大きな収益を上げているというのはだれもが承知をしている話で、だからこそ、経団連にも安倍総理が、ぜひ家計にも移転、こういう話が出てくるわけで、中小企業にその点どうなのかということです。

 そこで、大臣に伺いますが、成長の成果が大企業から中小企業に移転していないというのは、大企業が適正な単価を設定していないところにあるんじゃないのか、中小企業の仕事の内容にふさわしい単価を設定していないところに、大企業から中小企業に成長の成果が移転しない大きな原因があるんじゃないかと私は考えますが、大臣はいかがでしょうか。

甘利国務大臣 元請と下請との価格設定は当事者間が話し合いをして決めるということが基本でありまして、政府からこれでやりなさいということを指示するわけではありません。

 ただ、下請法にきちんと、親会社が優越的地位を濫用して不当な価格設定をしてはいけないということで、その法律の趣旨、ガイドラインに沿ってきちんと対応してもらえるように、省として要請をしていくということであります。

 あわせて、取引慣行で、慣行といっても悪い慣行があるんだと思います。例えば鋳造品、鋳物ですか、これは重量取引、実は、高度化をしていって技術が集積をしていくと、そのもの自身は軽くなっていくと思うのですけれども、そうすると価格が下がる、熟練の技術が価格に反映されないというような取引慣行がある。これは是正すべきであると思いますし、金型でいいますと、一つつくったものを、元請から、十年間保存をしておいてくれ、保存をしておくことの費用はそっち持ちねみたいな、これは取引慣行として決していいものではないと思いますから、こういう是正もあわせて図っていきたいというふうに思っております。

塩川委員 鋳物や金型の話、鋳物については参考人で以前おいでいただきましたね。大田の方にお話を聞いて、こういった重量取引というのは、はかり売りじゃないんだから技術を見込んだものにしろ、これは当然のことであります。

 それだけではなくて、現行のが、やはり優越的地位の濫用に当たるような大企業、元請あるいは発注者、そういった立場での問題が起こり得るんじゃないのかということを言っているわけで、これはさきの臨時国会でも、トヨタのコストダウン要請の話も御紹介もしました。

 その際にも使ったんですけれども、お手元にお届けしています資料の一枚目に、下請受注単価。これは、中小企業庁の下請中小企業短期動向調査のものでありますけれども、前年同期比の数字ですね。ですから、例えば、左から二つ目の枠の平成三年の一―三月期をとれば、これはバブルのころですけれども、一〇〇・六%、前年から少し上がっているわけですけれども、四年の一―三を見れば九八・九。つまり、三年から四年でこれだけ落ちている。さらに、五年には九五・八、六年には九三・五、ずうっと平成十六年まで落ち続けているわけです。そういう意味では、本当に、単価の切り下げの下押しというのが連続的に行われているというのがこのバブル以降の実態だということがあるわけです。

 問題なのは、経済産業省、これ自身は実態を把握している客観的な資料として重要なのに、この十六年七―九月以降のデータがないんですよ。今やめちゃったんですよ。こんなので本当に下請の実態が把握できるのかということが、僕は、経済産業省、中小企業庁の責任として問われていると思います。

 甘利大臣が先日の記者会見で、底上げ戦略の話、下請中小企業のことについて述べた中でも、中小企業の利益が減っている原因はというやりとりの中で、受注量はふえているけれども単価が落ちているという言い方をされて、発注元・下請、元請・下請の環境整備が課題だということを述べられました。私は、その中に、やはり発注者、元請の立場の大企業による下請単価水準の切り下げというのが大きな要因となっている、それが中小企業の利益が減っている原因になっているんだということが含まれていると思いますけれども、改めて御認識はいかがですか。

甘利国務大臣 単価がそのままずっと、一〇〇のものが一〇一になり一〇二になり、あるいは一〇〇のままということも、これは一概に、だからいいということでもない。つまり、生産性の向上というのは当然ありますから、大企業自身が十年前も今も同じものをつくるのに同じ単価だったら競争に勝てない、生産性を上げて、もっと安くても利益が出るようにする。

 つまり、生産性向上分については引き下げはあってしかるべきだし、そうでないと生き残れないと思います。それを割り込んで不当な低い単価を強いるということは排除していかなきゃならないという意味でありまして、単に数字を並べて、これが一〇〇から下がっているから、ここにその分だけ不当な単価要請があったとは一概には言えない。生産性向上分を差し引いた残りについての部分にそういう要素はあろうかと思いますが、生産性向上の部分については加味する必要があるかと思います。

塩川委員 この間、技術のすり合わせの問題なんかもこの委員会でも議論してまいりましたけれども、当然、元請、下請が協同して生産性向上に努力をした、それについては適正に下請にも利益の配分が行われていいのに、現状というのは、すり合わせをした成果が十分にもたらされずに、中小企業が結局生き残れなくて、すり合わせどころかすりつぶされちゃうような、こういう実態というのは生まれているんだ、そのことが問われていると思うんです。そこでも、きちんとした利益の適正な配分というのが求められていると思います。

 と同時に、現状は違法がまかり通っているわけです。その例としても、資料の二枚目に、これは読売新聞ですけれども、石川島播磨重工業の兵庫県の相生工場での下請いじめの事例が紹介をされています。公正取引委員会が警告をしたという事例であります。手続規定違反と同時に、実態とすれば、不当減額あるいは買いたたきに当たるような問題があったんだということが当事者から訴えがあるわけです。

 これについて、私も、ここの実際の当事者の方、これは、実際に二十年の取引にあった方が、下請単価の切り下げの連続によって、結果として倒産をしてしまう。三十人規模を抱える従業員の会社が倒産をしてしまうというところまで至っているという重大な案件であります。そういう点でも、石川島播磨というのが、契約金額を書いた注文書で発注するのではなくて、口頭やメモで部品の製造を指示し、納品させた後に下請に見積書を作成させる。見積書からさらに値引きを強要し、支払い額を決めて注文書を発行する。そういう点で、こういった事例を絶対繰り返させないということが必要だ。

 公取として警告を出したということですけれども、それを踏まえて、改善報告書が当然事業者から出されるでしょう。しかし、その改善報告書がきちんと実行されているのかという再点検こそ必要だ。というのも、この訴えをされた中谷さんという方も、ある石播の幹部社員の話として、下請法違反など摘発をされても、済みません、直しますと言っておけば、公正取引委員会は帰る、あとは適当な改善計画書を出しておけば、次は最低十年後だから何のことはない、こんなことを言っている。

 そういう点でも、私、こういった事業者に対して、改善報告書が実際にそのとおりやられているのか、このことをきちんと再チェックする必要があるんじゃないですか、こういう取り組みをぜひ公正取引委員会として行うべきだ、このことを求めたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 公取では、下請法違反で措置を命じたり警告を発した場合には、そのフォローアップといたしまして定期調査を使っているわけです。年に二回定期調査をやっておりますが、そういう事例は、次にめぐってくる定期調査で対象にいたしまして、親からも子からもそれが是正されているかどうかをチェックする、そういう仕事の仕方をしております。

 本件、石川島播磨に関することは、平成十五年のときの話でございまして、どうして十八年の夏に読売新聞が記事にしているのか、ちょっとその時間差が余りにもあってどうしてかなとは思いますが、いずれにしても、そういう網にかかるようにしておりまして、私どもの知るところ、是正されていないという情報は入ってきておりません。

塩川委員 いや、だからこそしっかりと調査をするということについて取り組むべきだ、このことを改めて要請しておきます。

 それで、今、下請事業者の実態という点でも、下請法が改正をされて、製造業から役務、サービス業まで拡大をしました。今までの製造業三十万社が、さらに三十万社サービス業で加わって六十万社になった。それなのに、それに見合う体制がとられていないというのが公正取引委員会であり中小企業庁だろうと思います。

 その上で、実際の作業としてどうなっているのか。中小企業庁を例に紹介をしたいと思いますけれども、例えば、私の資料の三枚目に、下の段で、中小企業庁における下請代金支払遅延等防止法の書面調査数の実績というのがあります。平成十六年度から役務にまで対象が拡大をしたわけであります。これを見ますと、十七年度、十八年度、中小企業庁として書面調査をしているんですけれども、十七年度は、製造業はやっているけれどもサービス業は一つもやっていないじゃないですか。十八年度を見ると、サービス業はやっているけれども製造業は一件も書面調査をやっていないじゃないですか。何でこんなことになっているんですか。公正取引委員会は、少なくとも毎年やっていますよね、委員長うなずいておられましたから、そのとおりでありますけれども。何で中小企業庁は二年に一回なんですか、これでどうしてまともに違反行為を是正することができるのか、このことをお答えください。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 十六年から御指摘のとおりサービス業を対象にしてきているわけですけれども、十六年につきましては、そのサービス業を入れるという作業、やはり組織台帳をきっちりつくってやる作業が相当あったものですから、十六年の段階では製造業の方の調査が行われなかったということであります。ただ、その十六年の行うべき調査の部分については、十七年の中で実施をしている、ちょっと時間がずれたということであります。

 それと、あわせてもう一点、委員にお答えしなくてはいけないのは、この調査については、公正取引委員会と協力をしてやっているものですから、全体の調査対象について、両方の組織で原則として二年に一回はカバーをするというような形で調査をしているというのが実態でございます。

塩川委員 いや、事業者の名簿は、公取と中企庁が二つに分けてやっているわけでしょう。それは数年ごとに交換してもやっているわけですよ。それなのに、公正取引委員会は、三の上の欄にありますように、十六年度、十七年度を見ても、製造委託、役務委託、それぞれ書面調査をやっているじゃないですか。つまり、公取は毎年やっているんですよ。それなのに、中小企業庁は二年間に一回なんですよ。

 つまり、公取に当たるときには毎年来るけれども、中企庁に当たるときは二年に一回しか来ないんですよ。何で、同じ事業者にとって見れば、公取と中企庁でやっている中身に差別がつく、差がつく、違いが出る、こんなことはおかしいんじゃないですか。

 最後に大臣に、こういったことを是正するのを含めて、この背景には要員の不足の問題もあります。本当に下請取引の適正化をするのであれば、まず人の配置を大いにふやす、兼任とかじゃなくて専任の検査官をきちんと配置する、こういうことについてきちんと要求をすべきだ。こういった二年に一回というのを、毎年やるということを是正することとあわせて、要員のさらなる拡充を、抜本的な拡充を行うべきだ、その点についての大臣の決意を伺って、質問を終わります。

甘利国務大臣 限られた予算の中で、最善を尽くしていきたいと思っております。

塩川委員 限られた予算をさらにふやすという努力の中で、下請取引の適正化のために全力を挙げるべきだ、このことを申し上げて、質問を終わります。

上田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十八分散会


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