衆議院

メインへスキップ



第4号 平成19年3月28日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年三月二十八日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 中山 泰秀君

   理事 宮腰 光寛君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 赤羽 一嘉君

      猪口 邦子君    小此木八郎君

      大塚 高司君    岡部 英明君

      片山さつき君    川条 志嘉君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    杉田 元司君

      薗浦健太郎君    平  将明君

      武田 良太君    谷川 弥一君

      寺田  稔君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    丹羽 秀樹君

      野田  毅君    橋本  岳君

      原田 憲治君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    増原 義剛君

      武藤 容治君    森  英介君

      山本 明彦君    若宮 健嗣君

      小川 淳也君    大畠 章宏君

      太田 和美君    北神 圭朗君

      神風 英男君    細野 豪志君

      三谷 光男君    柚木 道義君

      鷲尾英一郎君    高木美智代君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 藤嶋 信夫君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 椎川  忍君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房長) 松永 和夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     福水 健文君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       松井 英生君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大辻 義弘君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           川原田信市君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石黒 憲彦君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          鈴木 隆史君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          小島 康壽君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          肥塚 雅博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     広瀬 研吉君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    石毛 博行君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    加藤 文彦君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            近藤 賢二君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松井 哲夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           大森 雅夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           辻原 俊博君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     杉田 元司君

  橋本  岳君     薗浦健太郎君

  吉川 貴盛君     とかしきなおみ君

  川端 達夫君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     原田 憲治君

  薗浦健太郎君     猪口 邦子君

  とかしきなおみ君   大塚 高司君

  小川 淳也君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     若宮 健嗣君

  大塚 高司君     寺田  稔君

  原田 憲治君     佐藤ゆかり君

  神風 英男君     川端 達夫君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     吉川 貴盛君

  若宮 健嗣君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

三月二十二日

 海底資源開発推進法案(第百六十三回国会衆法第一五号)の提出者「細野豪志君外四名」は「細野豪志君外三名」に訂正された。

 排他的経済水域等における天然資源の探査及び海洋の科学的調査に関する主権的権利その他の権利の行使に関する法律案(第百六十三回国会衆法第一六号)の提出者「細野豪志君外四名」は「細野豪志君外三名」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

 中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案(内閣提出第一四号)

 企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律案(内閣提出第一五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

上田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案及び企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官藤嶋信夫君、総務省大臣官房審議官椎川忍君、外務省大臣官房審議官草賀純男君、経済産業省大臣官房長松永和夫君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官福水健文君、経済産業省大臣官房商務流通審議官松井英生君、経済産業省大臣官房審議官大辻義弘君、経済産業省大臣官房審議官川原田信市君、経済産業省大臣官房審議官石黒憲彦君、経済産業省経済産業政策局長鈴木隆史君、経済産業省産業技術環境局長小島康壽君、経済産業省商務情報政策局長肥塚雅博君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長広瀬研吉君、中小企業庁長官石毛博行君、中小企業庁次長加藤文彦君、中小企業庁経営支援部長松井哲夫君、国土交通省大臣官房審議官大森雅夫君及び国土交通省大臣官房審議官辻原俊博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤三津枝君。

近藤(三)委員 自由民主党の近藤三津枝です。

 本日は、質問に立つ機会をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。

 経済全体の指標を見ますと堅調な景気の回復が続いていますが、この景気の拡大を生活者、地方経済にも実感できるようにしていくことが今何よりも重要であると考えております。

 本格的な景気拡大に向けましては、一方で、人口減少、少子高齢化、成長するアジアの中での共存共栄などといった、これまで我が国が経験したことのない構造的な課題を克服していく必要があります。これに柔軟に対応していくため、安倍内閣は、イノベーションそしてオープン、この二つをキーワードとして改革に邁進されています。

 安倍総理は、イノベーションの提唱者で経済学者のシュンペーターの考えの原点に立ち返り、単に技術革新にとどまらず、社会システムの改革も視野に置かれていると考えております。このイノベーションをばねとして、活力あるオープンな経済社会をつくり上げていこうという目標を掲げている、このように理解しております。

 このような中、イノベーションによる生産性向上の促進、中小企業の活力を高めることを目的とした経済成長戦略大綱関連の三法案が今国会に上程されました。これはまさに時宜を得た政府の対応と考えております。

 この三法案のうち、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案は、農林水産品、産地の技術、観光資源を活用するものです。そして、地域資源を活用し、創意工夫あふれる商品、サービスの開発や販売を行う中小企業の取り組みを支援していこうとするものです。特に、地域活性化、地域経済に密着した新たな施策であると注目しております。法律名が長くなりますので、以下、中小企業地域資源活用促進法案とさせていただきます。

 この法律がうまく機能しますと、それぞれの地域の特産物と知恵が新たに結合し、まさにイノベーションが起こり、これまでにないジャパン・ブランドが数多く生み出されていくものと思っております。そして、このジャパン・ブランドが、大都市圏、アジア、そして世界のマーケットに送り出され、販路が拡大していくことを大いに期待しております。

 本日は、この中小企業地域資源活用促進法案を中心に、法律の内容、そして法律の実際の運用などについてお伺いさせていただきます。

 甘利大臣は、先般の二月十六日、経済産業委員会での所信演説におきまして、提出された三法案の施策を講じていくために、いずれも、関係省庁との十分な連携、そしてあらゆる政策資源を総動員して対応していく、このように表明されました。この点について、中小企業地域資源活用法案の中でも、地域産業資源の活用に当たっては、経済産業大臣を初め、総務、財務、厚生労働、農林水産、国土交通、この六大臣が主務大臣と定められています。この点からも、関係省庁との連携を前提とした法律の組み立てとなっています。

 そこで、経済産業大臣にお伺いさせていただきます。

 この中小企業地域資源活用事業が、安倍内閣が総力を挙げて取り組んでおられる地域活性化政策の中心的な施策となり、そしてジャパン・ブランドを生み出すことができる新事業となることを期待しておりますが、この実現に向け、内閣を挙げてこの事業を支援していくために、経済産業省が中心となり、関係省庁などとの連携をどのように図っていかれようとしておられるのか、御所見をお聞かせください。

甘利国務大臣 回復基調にある日本経済の現状の問題点がいろいろと指摘をされています。大企業はかなりいいけれども中小企業はまだまだ大変だとか、あるいは、特に地域間の格差が拡大しているのではないかという御指摘をいろいろな場面で受けているわけであります。それは、御指摘のとおりの部分もあろうかと思います。

 そこで、地域が自律した経済発展をしていく、地域振興を図っていくための自律施策というものを幾つかこの国会に提案をさせていただいているところでございます。その一つが、地域資源を活用して新たな商品であるとかサービスを市場に提供していくというこの一つのスキームであります。

 その際に、我が省の所管でいえば、地域資源というのは、ものづくりの技術と、あるいはたくみのわざとか、そういうことがすぐ頭に浮かぶのでありますが、それ以外に、地域の特産品的な農水産品であるとか観光名所であるとか、あるいは我が地域には世界遺産があるなんというのは実は大変な地域の強みなんですね。それをてこにして観光開発をするということもできますし、あるいは新しい農水産品の商品をつくり出すとか新たなサービスを生み出す、いろいろなことができるわけであります。それは各省にまたがっている。

 そこで、六省庁の局長級を集めまして、それぞれ所管するところの地域資源を引き出して、それを製品化、新たなサービス化して市場にデビューをさせていこう、そのための総合的な支援策を講じましょうと。あるいは、地域にいらっしゃる地域リーダー、そういう地域リーダーにサポーターになっていただいて、そういう地域資源を掘り起こしてデビューさせるお手伝いをいただこうということで、百数十名の指名をさせていただきました。

 そういう各省の連携あるいは地域の人材の活用を通じて、新しい商品、サービスを開発して、地域振興のてこにしていきたいというふうに思っております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 大臣から御答弁いただきましたように、中央での省庁間の連携、がっちりとこれからもよろしくお願いしたいと存じます。

 この法律が取り扱います、従来からの地域の特産物に付加価値をつけ、新商品、新製品などを広いマーケットに送り出す行為は、地域に密着した取り組みだと思います。そこで、私が選出されております例えば近畿ブロックでは、近畿経済産業局、それから近畿農政局、近畿地方整備局などの地方支分部局が配置されております。現地では、これら地方支分部局間が連携する仕組みも組織していただきまして、政策の実を上げていただきたいと思っております。

 次に、この法律による具体的な制度の運用について、数点お伺いさせていただきます。

 まず一点目です。都道府県知事が基本構想の中で定める地域産業資源の指定についてお伺いさせていただきます。

 この法律に基づく制度の実施手順、次のように理解しております。まず、国が地域産業資源活用事業を進めるための基本方針を示し、これを踏まえ、都道府県知事が地域産業資源活用事業を進めるための基本構想を定める、そして地域の中小企業者は、知事が基本構想に定めた地域産業資源を活用し、地域産業資源活用事業計画を策定し、都道府県を通じて国の認可を受ける、そして国の認可を受けた中小事業者が行う新事業についてさまざまな支援を受けることができる、こういったことではないかと考えております。

 平成十八年六月に決定されました経済成長戦略大綱には、地域産業資源を活用した新たな事業を五年間で千創出することを目指すとあります。経済産業省としては、五年間で千の事業の創出を目指すために全国の地域産業資源の指定総数を示すことは、地方分権の流れ、そして地域のやる気の芽をそぐ可能性があるとお考えのことは十二分に承知しております。しかし、この数は、都道府県や新事業を立ち上げようとする中小事業者にとっては非常に関心が高い事柄かと考えております。

 地域産業資源が全国でどの程度指定されることを期待しているのか、その目安について経済産業省にお伺いをさせていただきます。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、五年間に千、もっと多ければ多いほどいいと思いますが、事業を立ち上げたいと思っております。

 国が基本方針をつくって、それを受けて県が基本構想をつくるということです。その際に、その県内の市町村や商工会、商工会議所とよく連携をとって、うちの県はどういう地域資源があるかというのをしっかり洗い出しをしてもらって、具体的に列記をしてもらうわけであります。中小企業者は、その中の、自分はこれを地域資源として活用してこういう事業化をしていきたいというプランを出していく、それが認められれば、いろいろな支援措置、応援措置が後押しをするということになります。

 アンケートをとりますと、中小企業にとって一番のネックはやはりマーケティングですね、販路の開拓ができない。もちろん、いいものをつくるということがもとなんですけれども、いいものをつくる自信はあるけれども、どう売っていいかわからない、そこをサポートしていく。ですから、マーケティングに対する人材の支援をしていく、あるいは展示会みたいなものに出展する応援をする、あるいは試作品をつくる応援をする等々、いいものをつくってそれをデビューさせる、一連の時系列的に応援していく体制をとっていくということでございます。

 五年間、千と申し上げました。できるだけ多くの新商品、新サービスがデビューをしてくれることを心から願っております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 そして、もう一度お伺いさせていただきたいと思うんですが、実際に地域産業資源の数、大体の数はどれぐらいだとお考えでしょうか。わかる範囲でお伺いできればありがたいと思います。

石毛政府参考人 目標は五年間で千ということなんですけれども、これを事前に幾つ幾つということを申し上げるのはなかなか難しいんですが、私ども、目安としては、年間に数百件ぐらい実現したいなというふうに思っております。

 例えば、幾つか参考例として申し上げますと、指定された伝統的工芸品というのがございますが、これは二百十件ほどございます。それから、地域団体商標で指定されているのが、六百八十三件出願をされていて、既に登録しているのが百七十七件あるようであります。それから、文化財の関係では、国指定文化財というのが、これは非常に多くて、二万三千二百四十四件というような数がございます。

 そういうことを考えますと、五年間で千件というのは、いろいろな形で実現できるのではないかというふうに思っております。しっかり頑張りたいと思います。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 地域産業資源の指定が総花的にならないように、適切な対応をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。また、指定をするプロセスのことなんですけれども、透明な過程を強く望むところでございます。適切な対応をお願いしたいと思います。ありがとうございます。

 次に、この法律によります制度を実行する際の市町村との連携についてお伺いいたします。

 この法律では、地域産業資源の指定などを含む基本構想は都道府県知事が策定します。さらに、中小事業者から国に提出された地域産業資源活用事業計画に対しても都道府県知事の意見がつけられるなど、都道府県知事の関与はかなり手厚くなっております。一方で、身近な行政を預かる市町村の関与について、この法律に規定がありません。

 市町村を初め地域ぐるみでの新商品の開発事例をここで一つ挙げさせていただきたいと思います。

 島根県雲南市の「おたまはん」という商品が大変人気なんですけれども、島根県雲南市の周辺では、とてもおいしい滋養のある卵、奥出雲産の平地飼いの有精卵が生産されております。その卵の味を最大限生かすためには卵かけ御飯がいいというふうに地域の方たちは考えられまして、これに合うしょうゆを地域で開発されたんです。その原点は、この地域で古くからある、伝統である自家製のみそ、つまり手前みその文化だったわけです。この地に伝わる木おけで熟成する酵母技術を生かしまして、地域の新鮮な卵に合うこだわりのしょうゆ「おたまはん」を生み出したわけなんです。

 これを生産しています株式会社吉田ふるさと村は、昭和六十年に、合併前の村の産業振興の活路は自分たちで開こう、このように決意しまして、村を初めJA、商工会、森林組合などの団体のほか多数の村民の共同出資によって、第三セクター方式で設立されました。「おたまはん」は、地域の特産品、食文化、伝統を生かし、現代の消費者ニーズに合った商品を企画し、流通への効果的なアプローチがうまくいった例だと思っております。

 このようなシーズとニーズをマッチさせるためには、市町村など身近な行政団体、JA、商工会議所などの総合力が物を言うんだなと、この現地調査でつくづくと感じた次第でございます。このように、これまで限られた地域で生産されていた農林水産物などの特産物を地域産業資源として活用し、加工し、ブランド化していくためには、市町村役場のきめ細やかな調整が地域産業資源活用事業の成功のかぎを握るのではないかと考えております。

 以上、この制度の運用に当たりまして、基本的な市町村の関与をどのように図っていくおつもりなのか、お教えいただけますでしょうか。

石毛政府参考人 お答えを申し上げます。

 市町村の関与についてでございますけれども、最初に地域資源を具体的に指定するときに、法律の上では都道府県知事が構想の中で指定するというふうに書いてございますが、そういうふうに私どもスキームをつくった背景を一言申し上げさせていただきますと、地域資源を具体的に見ていきますと、どうも複数の市町村にまたがっているようなケースもかなりあるなと。具体的には、産地というのが全国に四百八十六あると言われているんですが、その中で複数の市町村にまたがる産地が三百六十ございます。そういう実態を見ますと、都道府県がむしろそういう形で指定をしていった方がいいのかな、都道府県は県全体の産業について承知をしているわけでございますから、そういうふうに思っております。

 ただ、先生御指摘のとおり、中小企業がそういう事業活動を進めていくという中で、中小企業にとってより身近な存在というのは市町村であり、商工会、商工会議所あるいはJAといったようなところでございます。したがいまして、そういうところとの協力が非常に重要であると思っております。

 私ども、都道府県が地域資源を具体的に指定をしていく段階では、市町村、商工会、商工会議所あるいはJA、そういったようなところ、地域の関係機関から十分情報を入手して、具体的にヒアリングをして、その地域資源を活用して地域経済がどう活性化されるのか、そういうものをしっかりと把握して決めていってもらいたいというふうに思っております。

 その旨、私どもから都道府県にも十分説明をいたしまして、そういうことが細かいところまでよく伝わるようにしていきたいというふうに思っている次第でございます。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 ただいま御答弁いただきましたように、地域産業資源に関する市町村並びにJA、商工会議所など地域の意見を十分にお聞きいただきたいと思います。そして、実際の地域産業資源活用事業が実施される際には、それぞれの地域でしっかりとチームワークがなされ、事業が展開されますよう御配慮いただきますようお願いいたします。

 次に、中小事業者が地域産業資源活用事業を立ち上げる際の、大学、高等専門学校等との技術連携についてお伺いさせていただきます。

 昨年の通常国会で、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律が成立しました。この法律は、川上の中小企業が持つものづくりの技術と、川下の最終製品を提供する大企業との密接な技術面での連携を図ることにより、国際競争力のある事業を新たに生み出していこう、このようにするものであったと理解しております。その際、中小企業の持つ技術の高度化を図るために、中小企業者と大学、高等専門学校などとの連携が必要で、これにつきましては、ものづくり基盤技術法の第十条に規定があります。

 残念ながら、今回の中小企業地域資源活用促進法案には、ものづくり基盤技術高度化法の第十条のような規定はありません。地域産業資源を生かした製品や商品を送り出していくためには、技術革新が必要な場合も多くあると予想されます。このためには、それぞれの地域の大学、国立高等専門学校、公的な研究機関と連携していくことも重要だと考えておりますが、この点についてどのように取り組まれるお考えなのか、経済産業省の具体的なお取り組みについてお伺いいたします。

山本(幸)副大臣 先生御指摘のとおり、技術開発は大変重要でございまして、この点は私ども全く同感でございます。

 そのために、今回は、法案自身には文言はありませんけれども、法案に関連する予算を私ども創設いたしました。地域資源活用型研究開発事業という予算を新規に今回創設いたしまして、十九年度、大体二十億円の新規の予算を獲得して、それによりまして技術開発の支援を行いたいと思っております。

 具体的には、地域資源を活用して新商品開発等を行おうとする企業と、大学、高等専門学校、公設試験研究機関等とが連携して行う場合に、実用化研究開発を支援するということにいたしたいと思っております。大体、一件当たり、初年度三千万以内、二年度目が二千万以内、二年間でそういうことを念頭に置いて考えております。

 また、こうした支援を効果的に行うためには、御指摘のように、文部科学省との連携が非常に重要でありますので、六省庁の関係省連絡会議をつくっておるわけでありますが、文部科学省にも参画していただいて、しっかりと連携をして支援を行っていきたいと考えております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 中小事業者が技術を橋渡しとして地域の大学、高専と連携することは、そこで学ぶ学生たちが社会に出たときに、この制度を活用して地域での新事業を起こしてみたいという動機づけにもなると思います。ぜひ積極的な展開がなされますよう、文部科学省との連携もよろしくお願いいたします。

 次に、中小企業者と大企業との連携についてお伺いします。

 この法律では、地域産業資源活用事業を行うために、単一の中小企業または中小企業の共同体が地域産業資源活用事業計画を申請し国の認定を受ける、このような仕組みになっております。地域産業資源から新しい製品や商品を生み出すために必要となる技術を既に大企業が保有している場合には、大企業と地域の中小企業が連携することが有効だと考えられます。このような場合に、地域の中小企業と大企業が地域産業資源活用事業計画を策定する段階から連携することについて、この法律では想定されていないように思われます。

 地域の中小企業が適切なパートナーとなる大企業と連携を組むための条件はなかなか整わないのが現実だと思います。経済産業省としては、こうした課題に対しどのような支援を行おうと考えておられるのか、見解をお聞かせください。

松井(哲)政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、中小企業が地域産業資源を活用した新商品などの開発に取り組むに当たりまして、既に必要な技術などを保有しております大企業と連携するということが有効なケースがあるということは全く認識をいたしております。

 他方で、中小企業がこうした適当なパートナーとなり得るような大企業を探したり連携を組むということは、必ずしも容易ではございません。こうした課題に直面する中小企業に対しましては、支援拠点に設置する専門家によりまして、適切な大企業とのマッチングを含め、計画の策定段階からアドバイスを行うなどの支援をしっかりと行っていく予定といたしております。

 この法案は、支援対象は中小企業ということになっておりますけれども、大企業と連携して新商品開発を行う中小企業の取り組みにつきましても、中小企業がその取り組みの主体になっている事業につきましては、本法の対象といたしましてしっかり支援してまいります。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 地域の力で新事業を起こす、すなわち地域の自主性、自律性を期待して展開していこうとしている、この制度の趣旨は十分に理解させていただきました。地域産業資源活用事業が軌道に乗った際には、場合によっては、大企業との連携などによりさらなるイノベーションが起きることを期待しております。

 さて次に、本制度の広報についてお伺いさせていただきます。

 中小企業に対しましては、これまでも広い範囲で多岐にわたる支援策が講じられてきています。このため、今回の新事業は、地域を切り口とし、地域資源と技術の出会い、新製品と市場との出会い、この二つの出会いとイノベーションがキーになると思います。この点をどのように中小企業の方々にわかりやすく理解していただき、よし、それなら、うちもこの制度を利用して、今までにない製品やサービスを世に送り出していこうと、その気になってもらうことが何よりも重要だと考えております。

 地域資源も地域によりそれぞれ、現在地域を支えている地場産業もそれぞれです。経済産業省は、各省庁の地方支分部局との連携も図り、地域の特性を生かした本制度の活用方法について、どのような広報を通じ理解を求めようとしていらっしゃるのか、お聞かせください。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、中小企業施策は非常に広い範囲の対象者ということで、いろいろな手段で既に広報を行っているわけですけれども、この施策についても、広報冊子をつくったり、ホームページあるいはメールマガジン、そういうような話で、この法律の内容、施策の内容について広めていきたいというふうに思っております。

 もうちょっと具体的に申しますと、この法案の内容については、新聞、雑誌、パンフレットというような形で周知するわけですが、その内容についてわかりやすく、利用マニュアルといったような形で、利用者のニーズに合わせた形で情報を提供していきたいというふうに思っております。

 それから、独立行政法人中小企業基盤整備機構がございますけれども、そこと協力をいたしまして、特設のホームページを開設いたしまして、その中で、いろいろな説明会とかセミナーとか、関係する部分で行うわけですけれども、そういうものの情報提供、それから、もちろん施策についての、どういう助成措置があるのか、そういうものがよくわかるように提供していきたいというふうに思っております。

 ちなみに、セミナーだとか説明会だとか、そういうような場面におきましては、関係する出先のほかの省庁とも協力しながら、共同してそういうものを行っていこうと思っております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。中小企業の意欲がわく広報を期待しております。

 さて、本日は、今国会に提出されています経済成長戦略大綱関連三法案のうち、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案の法律内容と、この法律に基づく実際の制度の運用などについてお伺いしてまいりました。取り上げました論点は、関係省庁との連携のあり方、地域産業資源の指定のあり方、事業実施に当たっての市町村、大学等研究機関、大企業などとの連携方策、事業の円滑な推進のための人材育成、広報活動などです。

 冒頭に申し上げましたように、この法律が有効に機能しますと、これまで地域に静かに眠っていた特産物と地域の人々や経験豊富な外部の人材の知恵が新たに融合し、結合し、まさにイノベーションが起こります。そして、これまでにないジャパン・ブランドが生み出され、大都市圏に、そしてアジアに、そして世界のマーケットに新しい製品、商品、サービスが送り出されることになるのではないかと大いに期待しております。

 最後に、甘利大臣に、これまで質問させていただきましたことも踏まえていただき、この地域産業資源活用事業の実施に当たり、具体的にどのようにリーダーシップを発揮されようと考えておられるのか、その御決意をお聞かせください。

甘利国務大臣 地域の振興をしていくということは、地域間格差を是正していく、それから、地域に自律的な成長の仕組みをつくっていくという点で極めて重要であります。

 おっしゃるように、地域には、その地域の人が実は気がついていないすばらしいポテンシャルがある。それを、外部人材も登用して引き出して、磨き上げて、商品やサービスとして市場にデビューをする。そこにブランドの確立もあるかもしれません。全国展開あるいは世界展開という道も開けていく。そのための法律、予算、税制、あらゆるものを駆使していきたいと思いますし、省庁間連携というのも取り組んでいきたい。

 そして何より、地域の資源を活用して事業化していくためのサポーター、既にそういう経験を持って手がけた人たちがいますから、そういう人を今百三十八人指名させていただきました。その人たちにも手伝っていただくということで、いわば国民運動的に全国に展開をしていきたいというふうに思っております。

 もって、中小企業の振興、そして地域経済の底上げ、発展につなげていきたいというふうに考えております。

近藤(三)委員 ありがとうございます。

 甘利大臣の並々ならぬ御決意をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 この法律による新事業が地域活性化の大きな核になりますことを期待しております。ありがとうございました。

上田委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 三十分でございますが、質問させていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、本日の議題となっておりますこの三法案につきましては、昨年七月に取りまとめられました経済成長戦略大綱の実現のための法案、そう承知しておるところでございます。個別の法案についての質問に入る前に、まず大臣から、この経済成長戦略大綱の実現に向けた取り組み方針についてお伺いをしたいと思います。

甘利国務大臣 当時、私は党の政調会長代理を務めておりまして、この成長戦略大綱の策定に深くかかわった一人であります。

 安倍政権の基本的なスローガン、成長なくして日本の未来なし、経済成長をしていかないと、諸問題の解決がなかなか難しくなる。いろいろ制約要因がありますから、それを乗り越えて発展させていくために大変重要な政策だというふうに思っております。

 よく、成長の三要素、労働、資本、生産性と言われますけれども、それぞれをブラッシュアップして、制約要因を乗り越えて発展させていくということが大事だと思いますし、そのためのキーワードとして、オープンとイノベーションという二つの言葉が掲げられているわけであります。

 オープン、アジアの成長力を日本の成長力に取り込んでいく、対内投資を促進させていく、あるいは、有能な人材を日本とアジアの発展のために日本がうまいスキームで活用をしていく、つまりオープンな姿勢。それから、日本のお家芸でありますイノベーション、これは狭義のイノベーションだけじゃなくて広義のイノベーション、制度や仕組みの刷新まですそ野を広げて取り組んでいく、あるいは、製造業のイノベーションのノウハウを生産性が劣後しているサービス産業にどう取り入れていくか。

 大変に幅広い政策を通じて日本の成長を担保していくということでありまして、そのための大事な三法案となっていると思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございました。

 それでは、個別の質問に入らせていただきたいと思いますが、まず、産業活力再生特別措置法の今回の改正では、今御答弁にもありましたように、イノベーションを通じた生産性の向上、こういったものに加えて、地域の事業再生の円滑化策も講じられているわけでございます。

 事業再生という意味では、産業再生機構が終了するなど、中央における事業再生というのはある程度めどがついたものだというふうに私は了解しておりますが、地方の事情というのは、例えば不良債権の処理についても、地銀は不良債権比率四・四%、信金、信組六・九%。また、倒産件数も、詳細に入りますと、五年ぶりに増加しているというような数字があったり、中でも小規模倒産が増加するなど、まだまだ地方の中堅・中小企業の早期再生ニーズというのは依然高いというふうに考えられるわけであります。

 この点について、経済産業省として、この法改正の中でどのような地方における事業再生の円滑化を盛り込まれているのか、どういったねらいを持ってそういった法改正をしているのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもも先生と同じ認識を持っているところでございます。

 平成十四年に八・四%でございました都市銀行における不良債権比率、これが一・五%となるなど、我が国の産業再生ですけれども、一定の成果が見られたものというふうに認識しております。

 しかし、先生御指摘のとおり、地方に目を転じますと、やはり地方銀行それから信用金庫、信用組合、こういうところの不良債権は、先ほど先生御指摘ございましたように、それぞれ四・四%、六・九%と依然非常に高いことに加えまして、企業倒産も五年ぶりに、小規模倒産でございますけれども、増加に転じております。このようなことから、地域における早期事業再生への取り組みをやはり一層強化していかなきゃならないというふうに私ども認識しているところでございます。

 従来から、産業活力再生特別措置法におきましては、中小企業再生支援協議会というものを各都道府県に設置いたしまして、地域の事業再生を積極的に後押ししてきたところでございます。

 さらに、今回の改正におきましては、四つの支援措置の創設をお願いしているところでございます。

 第一番目は、私的整理中のつなぎ資金融資に対する債務保証制度というものを創設いたしまして、事業再生計画をつくろうとする企業の整理期間中の資金調達というものを円滑にしたいというふうに考えております。

 第二番目でございますが、裁判官一人での特定調停制度というものを可能にいたしまして、この私的整理というのはやはり非常に迅速にやる必要がございますので、そういうことで、債権者調整というものを円滑にしてまいりたいというふうに考えております。

 第三番目でございますが、万が一、私的整理に失敗をして法的整理に移行した場合であっても、私的整理中のつなぎ資金融資、こういうものの弁済を優遇しやすくする規定というものを設けることを考えております。

 それから第四でございますけれども、廃業いたしました事業者に対する信用保証制度というものを新たに創設いたしまして、事業者の再チャレンジというものを支援したいというふうに考えております。

 これらの施策を講ずることによりまして、先生御指摘の地域中小企業の早期事業再生の円滑化を促進していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

赤羽委員 今の私的整理期間中のつなぎ融資の円滑化等々、多分効果的なんだろうというふうに思いますが、ある意味で専門的なので、またこの途中経過なんかを教えていただければというふうに思っております。

 今御答弁にもありました、平成十五年の産業活力再生特別措置法の改正のときに中小企業再生支援協議会が位置づけられた。今のお話では、四年経過してそれなりの多分実績も上げられているというふうに認識もしておるわけでございます。先ほど冒頭申し上げましたが、地域の中小企業の再生というのはこれからが本番だという意味では、中小企業再生の中核として、中小企業再生協議会の機能強化というものをしていかなければいけないのではないか。

 ですから、四年間を振り返っての評価とこれからの課題ということについて、どのような認識をされているのか、中小企業庁からお聞かせをいただきたいと思います。

石毛政府参考人 最初に、再生支援協議会の評価の点でございますけれども、四十七都道府県に設置をいたしまして、相談する企業からは、非常にきめ細かく相談を受けて指導してくれているという評価を受けております。

 具体的に数字の点を申し上げますと、平成十五年二月の設立以降、一万社以上の企業から相談を受けております。それから、それを受けて、実際に再生計画をつくるというようなことについては千二百四十八社、これは昨年末の段階でございますけれども、再生計画を策定しています。八万二千人の雇用が確保されるということで、着実に成果が上がってきているのではないかというふうに思っております。

 そういう機構でございますけれども、先ほど来御指摘がありますように、不良債権比率につきましては、信金、信組はいまだ高い、あるいは倒産件数が五年ぶりに増加している、そういうような実態にございます。

 私たちは、この中小企業再生支援協議会ですけれども、地域の中核的な中小企業再生を担う機関として非常に重要であって、その役割を引き続き果たしていっていただきたいというふうに思っておりますけれども、とりわけ、複数の金融機関が関係しているようなケースがあるわけであります。そういったときに、この再生支援協議会は、ある種の中立的な機能を果たして、この金融機関はこういうふうに扱っていい、この金融機関はこうしたらいいというようなことを提案することができるわけであります。そういう意味で、非常に評価をされているというふうに思っております。

 そういうことですので、今回の産業活力再生特別措置法の見直し期限が平成二十年三月から二十八年三月まで延長されますので、それに合わせてこの協議会についても延長していきたい。それから、先ほど産業政策局長の方から答弁いたしましたけれども、その再生支援協議会にかかわります再生計画については、つなぎ融資といいますか、そういうものがしっかりできるように、債務保証制度を創設して支援の強化を図るということをやっていきたい。

 それから、加えまして、四十七の再生支援協議会がございますけれども、そういう協議会の連携といいますか、ある協議会で扱ったこういうような案件については非常にうまくいった、こういうようなケースについてはほかの協議会もよく承知をしていただきたいということで、そのうまくいったケースを具体のノウハウとして共有をするような仕組み、それから、ある協議会でこういう人が足りないんだ、こういう弁護士の方が足りないんだ、そういうような場合に、そういうところに弁護士の方を紹介するとか、各種の手続の標準化も含めまして、そういう支援をする全国的な機関を設置して、四十七の協議会を支援していきたいというふうに思っております。

赤羽委員 先日、我が公明党も、経済成長戦略本部、今は地域活性化本部という名前に変えておりますが、太田代表とともに実は東京商工会議所を訪問させていただきまして、高木政務官も御一緒だったんですけれども。そこで東京の中小企業再生協議会の実例のお話をさせていただきまして、大変感心もしたんです。

 これは今、一万件以上の相談があって、再生計画をつくったのが千六百八十七件、そうなると大変な作業なんだなと。実例を伺ったのも、一つ一つが手間暇は当然かかりますし、いろいろな権利関係とか、父親の先代をどうやってスムーズにリタイアメントさせるかとか、本当に手間暇がかかるような話なんですが、その東京商工会議所の中で会った担当者は非常にレベルも高いし、恐らく、東京の銀行自体も元気があってサポート体制も随分できているんじゃないか。これが私の地元の兵庫県ではどうかなと。兵庫県というのは、ある意味では、全国四十七都道府県のうち中核以上のところの位置づけだと思うんですが、そこでもそれだけのサポート体制ができるかどうか。

 中小企業再生協議会、多分、この四十七都道府県の中で、はっきり言うと、レベルというかサポート体制の濃淡というのはかなりあるのではないか。銀行は、地方に行けば行くほど金融機関はまだまだ元気じゃなくて、スキーム、再生計画はつくっても、なかなか融資的な金目のものが出てこないみたいな、想像するような中でも相当手間暇がかかる話なので、ぜひ四十七都道府県のレベルアップ、今の長官のお答えにもあったとは了解しているんですが、その点について、もう一度念を押して、なかなか都道府県の垣根というのは案外高いと思うので、ぜひその点について、経済産業省というか中小企業庁が主導的な役割を果たしていただきたいというふうに思うんですが、一言だけ、その点についてはどうでしょうか。

石毛政府参考人 赤羽先生おっしゃったとおり、私たちは、四十七都道府県の中小企業再生支援協議会がその地の難しいことにも適切に対応できるようにしっかり、全国組織を通じまして支援をしていきたいというふうに思っております。

赤羽委員 それでは次に、企業立地の促進に関する法律についてお伺いさせていただきたいと思うんです。

 日本経済の現在の状況を見ておりますと、やはり地方に行けばまだまだ元気がない。これは、よく分析をすると、やはり地方に行けば行くほど経済の実態が、公共事業への依存度が高い。この公共事業がシュリンクしている中で、やはりどうしても地方経済の再生がおくれている、こういった状況なのではないか。

 そういう意味では、企業誘致というか企業立地を進めるということは、雇用の場も生むわけですし、そういう意味で大変ストレートなというか、効果が出る政策だというふうに認識もしております。いい法案が出たな、こう思いますが、はたと考えると、企業立地というのは初めてじゃないよねと。

 今までも、頭脳立地法とかテクノポリス法とか特定産業集積活性化法とか、さまざまやってきた。特定産業集積活性化法は、恐らく、基本計画に掲げた目標を達成できた地域というのは、期待されたほど多くなかったのではないか。もちろん、日本経済全体がトレンドとして悪かったので、そういうふうなことは言えると思うんです。同時に、IT化の進展なんかで、企業同士の地理的な近接性による優位性というのが非常に低下しているのではないかとか、そういった意味で、特定の狭い地域を軸とした集積のメリットというのがどれだけあるのかというようなところも出ていると思うんです。

 ですから、私は、今回この法改正を提案される以上は、これまでの産業立地政策についての評価とか、またこれまでの政策との整合性ということを明らかにしなければ、なかなかすっきりとした結果が出ないのではないかということを危惧するわけでありますが、この点についての御所見を伺いたいと思います。

高木大臣政務官 お答えいたします。

 経済産業省では、これまで、御指摘のとおり、工業再配置促進法、テクノポリス法、また頭脳立地法等の法律によりまして、いずれももう既に廃案になっておりますが、国が支援すべき地域や集積のひな形を指定しまして各種産業の立地促進を支援するという施策を講じてまいりました。いわば、国が主導的な役割を果たしてきたと言えます。地方から見ますと、枠にはめられてきたというふうにもとらえられるとも思います。

 しかしながら、国際的な競争の進展や人口構成等の構造的な要因が変化をする中で、地方が活力を取り戻すためには、類型化された地域の目指すべき姿を国が提示するのではなくて、それぞれの地域がほかにはない個性や特徴を発揮するということが重要になってくると思います。例えば、既存の産業集積であるとか、伝統的な技術、また豊富な地下水、また優良な港湾があるといったような、そうした地域資源は、まさに個性と強みそのものでございます。

 このため、本法案は、みずからの強みを生かした企業立地の促進等に関する計画を地域が主体的に策定し、その前向きな取り組みを国が支援するということを大きな特色としております。いわば、地域の知恵とやる気を国が全力で応援させていただくという画期的な内容であると認識をしております。

赤羽委員 地域の主体性をということを今回の法改正の中心に据えている、考えているということだと思います。

 もちろん、地域の主体性とか地域のやる気というのが大前提でありますが、企業誘致とか企業立地を進めるに当たっては、その立地する場所自体がへんぴなところ、アクセスがだめなところというのでは全く、立地の条件を整えないと、なかなか公平な競争も生まれてこないだろう、こう思うわけでございまして、企業立地を進めるに当たって、道路ですとか港湾、空港などの周辺のインフラ整備をすることというのは必要不可欠なのではないか。

 ただ、一方で、公共事業の予算というのは年々削減をされているわけでありまして、なかなか、言うほど簡単に新しいアクセスを、インフラ整備をするということは難しい。また、道路特定財源も一般化されるという中で、効果的なインフラ整備というのをどのようにするかというのは、やはり今、本当にこれが一番政府として知恵の出しどころではないかというふうに考えるわけであります。

 例えば、道路特定財源でいうと、真に必要な道路はつくっていくという取り決めというか合意がなされたわけでありますが、恐らく、この一年、真に必要な道路とは何ぞやという話になると思うんですね。私は、国土交通委員会でも、真に必要な道路というのは、例えば国際物流道路というようなことを称して、国際空港とかスーパー中枢港湾と連結をする道路を国際物流道路というような呼称で認定して、そしてそこから優先的に社会資本整備を進めていく、こういった考えというのはやはり整理しないとだめだろう。真に必要な道路というのは、昔来た道みたいな話で、どの地域も、我が地域の道路こそ真に必要な道路だなんということをやってきたわけですから、そういったことを繰り返さないための方策が必要だ。

 この企業立地のとき、ぜひ、これは国土交通省と財務省みたいな話だけではなくて、政府として、経済産業省としても、今回、企業立地のアクセスに関する企業立地アクセス道路みたいなことを主張されて、真に必要な道路の中に、企業立地の関連の法案、周辺のアクセスについて組み込むべきだということを主張すべきだ、私はそう考えております。

 今後、社会資本整備を所管する国土交通省との連携を具体的にどのようにとっていく考えか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

福水政府参考人 お答えいたします。

 企業立地を進めていくためには、用地とかあるいは人材の確保、こういうものが不可欠であるわけですが、先生御指摘のような、道路でありますとか港湾、こういうインフラ設備、こういうふうなものの整備が企業誘致の環境整備には非常に重要だというふうなことになっています。

 既に私ども、大臣の指示で、国土交通省を含めまして関係六省庁の連絡会をつくっておりまして、ここで、政府一体となって、やる気のある地域を支援していこうというふうなことをやっているところであります。

 また、今回、国土交通省の方から、広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律案という法律が国会の方に出されております。具体的にこの法律は、都道府県が企業立地促進のために必要なインフラ、道路とか港湾でございますが、こういうふうなインフラ整備事業を進めたいという場合に交付金を出していこうというふうな制度になってございます。

 そういう意味で、私どもの法律とこの国交省の法律が組み合わさって、より連携を深めて緊密に進めていければというふうに考えておるところでございます。

赤羽委員 それでは最後に、地域活性のための地域産業資源活用の法案について何点か質問させてもらいたいと思います。

 この地域産業資源、産地の技術、地域の農林水産品、観光資源を活用した中小企業の新商品、新サービスの開発、市場化を総合的に支援し、経済産業省として五年間で一千の地域産業発展の核となる新事業の創出を目指す。私は、この前向きな考え方というか姿勢は高く評価したいと思います。

 ただ、五年間で千というのは、何を根拠にこの数字が出てきたのかな。要するに、達成レベルというのを、五年間の千という、その千に数える一つ一つの新事業というもの、その達成レベル、こうなったからここの事業は千のうちの一つに入れるという、そういったことというのはどういうことに置いているんでしょうか。この辺があいまいだと、何かいろいろなことをやっているけれども、あれはどうなったのかなという総括というのがあいまいになるのではないかと思う。

 ですから、ぜひ、まず千という目標にする事業の達成水準というんですか、こうなったらその事業は、産業は、今回のこの枠組みの中で、合格と言うと変ですけれども、目標を達成したものだという認定をされるのかどうかということをどのように考えて、この千という数字が出てきたのかということを教えていただきたいと思います。

石毛政府参考人 先ほど近藤先生の御質問にもあったわけですけれども、この千の目標ということの、具体的にどういうレベルのものかということですが、私ども、少なくとも消費者の手に製品なりサービスが届いていくということが最低必要だと思っております。

 ただ、私ども、いろいろな例を見てまいりますと、北海道の留萌市でのコラーゲンをサケの皮から抽出して商品化したというケースがございますけれども、これを見てまいりますと、研究開発から二億円の規模になるのに十年ぐらいかかっているんですね。そういう中ですから、五年間で千といいますと、マーケットに存在感のある形でやるのは結構難しいものだと思っています。

 ただ、どういうレベルにするかというのは、その相手ごとにちょっと事情が違うと思いますけれども、それなりの存在感がマーケットに出てくる、そういうものであるというふうに思っております。そういうものを千つくっていきたい。ただ、既存の製品を改良してマーケットを拡大するといったようなものも対象に入ってくる可能性もございますので、そういうものも含めて、広く考えていきたいというふうに思っております。

赤羽委員 私、せっかく高い目標をつくってやる気になっているところに水を差すわけじゃないんだけれども、そんな、五年間で千なんて言わないで、まず、五年間で百から目指したらどうなのかなと。要するに、大きな成功例を百個つくるというのは簡単じゃないと思うんですよ、五年間で。そういうふうに一つ一つの目標達成レベルを上げて手間暇かける。それは産学官の連携とかいろいろなパターンがあるかと思いますが、やはりサクセスをしたという意味で百個というふうな方が何か説得力があるんじゃないか。

 どうも千と言われると、千に三つだろうという話をよくレクの時間にも言うんだけれども、何となく、説明している方も、半分、どうも千に三つぐらいかなという心配顔をしながら説明されているケースが多いような気がするので、まだ一つもできていないんだから、これはいきなり千とも言わないでやっていったらどうなのかなということがちょっと、よく検討していただきたい。

 まずそこの、そういったことを育てるというのは、先ほど大臣の御答弁にもありましたけれども、やはり外部の優秀な能力のある人が、マーケティングに力があるというか、そういう人が介在しなければいけない。そこの人材というのがすごく大事だということで、多分それが地域中小企業サポーターですか、一月十五日にキックオフをされた、百三十八名委嘱されたと出ていますが、私、これも非常にニュース性が高くていいんですが、きのうもちょっと中小企業庁の人と話したんですが、この人たちだって職業を持っているわけですよね。旅館のおかみが、サポーターに任じられたからといって、どこかの地域に行って張りつきでやるなんてことはあり得ないわけですよね。そういうことを考えると、やはり言うほど簡単じゃない。

 観光カリスマというのを国交省でやっているんですけれども、何となく企画倒れみたいな雰囲気で、結局カリスマとかサポーターになった人の地域での講演の場がふえただけみたいな話で、それを聞いた人たちが刺激を受けていろいろ仕事に転じるというのは、プラスはないとは言わないんだけれども、私思うんだけれども、再生をさせるとか、いろいろな一つのものをマーケティングインさせるのは、そんな片手間じゃできないだろうなと。これはボランティアなんかじゃできないだろうと。

 福助のカリスマバイヤーの藤巻さんという人が今イトーヨーカ堂の役員をやっているけれども、これは、イトーヨーカ堂にボランティアでアドバイスしてくれといったらできなかったと思うんですよ。自分の商売だから真剣にやるし、頼む方も、一世一代の事業展開だから、遊びじゃなくて真剣に金も払ってやろうとすると思うんですね。

 だから、そういうことをしないと、地域資源を活用するという着想はいいと思うんですが、せっかくのこれも企画倒れに終わる心配があるんじゃないかということを少し議論もさせていただいたんですね。それについてはぜひ、余り、千とかいうことじゃなくて、この法案の中で、枠組みの中で、まず一つでも二つでも世の中に出せるものをつくるということを堅実にやっていただきたいということを強く要望したいと思うんです。

 同時に、これも大臣の御認識もありましたが、売れる場所、売れる商品をつくらないとだめだと。ちょっと話がずれるんですが、目黒区の環六と環七の間の目黒通り沿いに、ここ三、四年ぐらいで高級な家具店が二百軒以上できているんです。これは仕掛けもなくて、私なんかうろうろしていたら、毎年ふえているなと。何かいろいろなデザイナーの人たちが集まって集積されていったんですね、自然に。こういうところと、飛騨高山の家具メーカーなどをコネクティングするようなこととか、そういうことを一つ一つ丁寧にやっていく、何かそういうことの方が僕は実は大事なんじゃないかと。

 ですから、中小企業庁の皆さんとか地方の経済産業局の皆さんは、やはりノルマを持って、任地中に一つサクセスした企業をつくらないと本省に帰ってこれないとか、そのくらいのことをやらないと、そんな甘いものと違うんじゃないかなというのが僕の結論なので、その点について、否定的に言っているんじゃないんですが、肯定的な思いとして、私のそういう意見について、大臣、簡単に御所見があれば、甘利大臣に。

甘利国務大臣 華々しくぶち上げましたけれどもろくなものがないということであると、政策効果はいかがなものかとなります。おっしゃるとおり、まずこの政策を立ち上げて、一つ二ついい事例をつくって、こういうのができましたということをてこにするということが大事だと思います。

 それから、地域サポーター、おっしゃるとおり専門職ではありませんから、専従というわけにはいきません。ただ、実体験を持っているんですね。自分たちがやった、成功体験もあるいは失敗も、その過程にあると思います。そうすると、こういう点がこうでしたというのはかなり説得力がある話になりますから、力を出す一つの要素にはなると思うんです。

 もちろん、専門人材は、マーケティングに関するアドバイザー等々、行政の側としてしっかりそろえたいと思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございました。終わります。

上田委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 民主党の太田和美です。

 私は、本日、経済成長戦略大綱関連三法案の中でも、産業活力再生特別措置法の改正案に焦点を絞ってお尋ねをいたします。

 経済産業省においては、昨年の六月、新成長戦略を策定し、それをベースに他省庁の成長政策も盛り込んで、政府・与党として七月に経済成長戦略大綱という形でまとめられました。法案の審議に入る前に、まず、前提になっているこの大綱や新成長戦略についてお尋ねいたします。

 一言で言うのも難しいでしょうけれども、大臣は、この大綱や戦略の核心部分について、端的に言うとどのようにとらえているのでしょうか。そのためにこの三法案が必要なんだという形で、つながるような形でお答えいただければと思います。

甘利国務大臣 経済成長というのは、毎年毎年の経済規模の拡大のパーセンテージを言うわけですね。日本経済が、一口に五百兆と言われますけれども、その経済を構成していく要素というのは、労働投入量、資本投入量あるいは回転率、そして生産性、その三つで構成されているわけです。

 日本は、この三つを見ていますと、例えば労働投入量の点でいえば、人口減少社会で、ほっておけば労働力も減っていっちゃう。だから、その労働投入量をどうやって確保していくか、それから労働力の質をどうやって上げていくか、これは労働生産性にかかわることであります。それから、資本の投入量とその回転率といいますか、効率をどう上げていくか。そして、生産性をどう向上していくか。三つの要素それぞれ、ほっておけば制約要因を抱えているわけでありますが、それを乗り越えてブラッシュアップをしていくということが大事であります。

 人口が減っていって労働力人口も減っていく。リタイアする世代が、団塊の世代が一挙にリタイアしていく。だったら、その人たちの力を労働市場にどうやって再度活用していくか。あるいは、労働市場に参画をしていない女性が参画しやすいような環境をどうつくっていくか。それから、もちろんスキルアップをどうしていくかということが大事。そして、生産性を、製造業はいいけれども、それ以外の部分は、日本は生産性がOECDの中では劣後しているという指摘がある、それをどう引き上げていくか。それらに資する三法案だと思っております。

 産活法は、いわゆる事業再編で活用されてきましたけれども、イノベーションという切り口から新たな施策を追加していく。それから、産業再生も、中央の再生機構は一定の役割を果たし終えて解散をしましたけれども、地方の産業再生はまだ道半ばである。大型倒産は減りましたけれども、小規模倒産はふえているという状況。都市銀行は不良債権比率は減りましたけれども、地域金融機関はまだまだ。この地域金融機関と地域の中小企業とを連携させて再生していくという手法は、地域の産業再生協議会に託していかなければならない。

 もろもろの課題に向けて、産活法や地域資源法、そして企業立地法を通じて課題を克服して、日本全体の底上げと、なかんずく地域の格差是正に資するようにこの法案を提案したところでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 私も事務次官らがお書きになった関連の本を読ませていただきました。共鳴する部分も多々ありました。GDPで中国に抜かれても、今大臣にもお話ししたように、質的に強い経済をつくる、人口が減少しても生産性を上げる、GDPや雇用の七割を占めるサービス業の生産性を上げて、製造業と並ぶ双発エンジンにする、人財立国を掲げて、一人一人の能力を高め、イノベーションを軸に経済の成長を図る。米国再生の処方せんとなったパルミザーノ・レポートを意識しながら策定されたのだと思うんですけれども、こういった基本的な方向性は私も間違っていないと思っております。

 しかし、今後十年間で年率二・二%以上の実質経済成長を実現するのだという目標は、夢はありますが、果たして、絵にかいたもちにすぎないのではないでしょうか。現実に政府が行っている諸政策を観察すると、そのように感じられて仕方がありません。民間調査機関の中長期のGDP成長率の見通しが発表されておりますが、どの予測を見てもこれより低く見積もっています。目標なんだから実現しなくてもいいんだというのかもしれませんが、大臣はこの目標達成について自信がおありなのでしょうか。

甘利国務大臣 十年間を見通して、平均成長率、実質二・二%以上を達成する、もろもろの施策を講じていけば、これが視野に入るということであります。十分に私は達成可能だというふうに思っております。

 それはどうやってやっていくかというと、強みはもっと伸ばしていく、弱いところはどうやって克服していくかという検証が必要であります。強みというのは、製造業の生産性が日々向上していっている、これは世界に冠たる競争力を持っているわけであります。一方で、それ以外の分野の生産性が低い、これをどうやって引き上げていくか。低いということは、低い部分を抱えながら今日まで来たということは、強い部分を伸ばすよりも弱いところを強化する方が実は政策的には楽なんだと思います。そして、弱い部分のシェアが大きいですから、つまり、今までは七割以外のところで勝負をしていた、今度は七割の底上げをするわけですから、成長力に寄与する部分は非常に高いんだというふうに思っております。イノベーションとオープンという二つのキーワードを駆使して、具体的な政策を推進していきたいというふうに思っております。

 サービス産業の生産性向上につきましては、有識者の会議を立ち上げて、一概に、処方せんは一つじゃないですね。サービス産業といったって幅がたくさんありますし、じゃ、サービス産業にそのまま生産性の向上を当てはめる、エステ産業が一時間でやっていたサービスをうちは十五分でやってあげますよと言ったって客は来ませんからね。顧客満足度という視点ではからなきゃならない部分もある。だから、一概に生産性といっても、サービス産業の場合には処方せんはいろいろと違うわけでありまして、そういう事業分野別に処方せんをしっかり書いて、具体的な施策を駆使していきたいというふうに思っております。

 もちろん、一般的には、ITを導入して生産性を引き上げていく、あるいは数理的、工学的な手法をサービスの分野にどう織り込んでいくか、これらを考えながら生産性の底上げを図っていきたいと思います。そして、お家芸たるものづくりの分野については、産学官連携、これと、新しく、市場との対話をさせる、双方向、イノベーション・スーパーハイウェイ構想というのを出しているわけであります。イノベーションというのは既存の技術の延長線上にはありませんよというのは識者からの指摘でありますから、基礎研究、原理原則、科学にさかのぼって新しい道筋を導いていかなければならない。このための施策も提案をしているところでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 私は、大綱や戦略の中で一番足りないのは、欠けている発想は、格差の是正という点ではないかと思っております。この点は、もう本委員会でも、あるいはほかの委員会でも繰り返し議論になっている点でありまして、繰り返しになって恐縮でございますが、重要なことなので、あえて質問させていただきたいと思います。

 私が申し上げたいのは、格差是正のためには経済が成長することは絶対に必要である、しかし同時に、経済を持続的に、そして安定的に成長させるためには、現在の設備投資主導、輸出主導の成長ではなく、格差を是正し、何よりも国民の所得を増大させて消費をふやしていくことが欠かせないということであります。イノベーションを起こすことは必要ですが、幾らお金をかけても、画期的な技術革新は、できるときもあればできないときもあり得る。さらに、その技術革新が商品化され、成長に貢献するかどうかもわからないですし、商品化されるにしても時間がかかります。

 繰り返しますが、イノベーションは必要なことなんですけれども、イノベーション頼みの成長というリスクは大きいのではないですか。戦後日本の所得倍増のような高度経済成長、あるいは開発途上国の倍々ゲームの成長なら、成長の果実が国民に行き渡り、格差が自然に是正されるということも不可能ではないと思うんですけれども、現在のような一%、せいぜい二%といった成長では、幾ら上げ潮戦略と言ってみたところで、自然に格差が縮小することはあり得ない。やはり、そこは政治の役割、政府の効果的な介入が必要なんだろうと思います。

 新成長戦略や大綱の中で、格差是正と成長の質的な転換をはっきり目指しますというメッセージを国民や企業にはっきりと示すべきではないでしょうか。

山本(幸)副大臣 この新成長戦略のいわゆる試算のベースは、労働、資本、生産性という、いわゆる経済を供給の方から見て、そして議論をしているわけであります。したがって、供給の分野でできるだけの努力をして経済の全体の成長を高めるということを目標にして、そういう内容の試算を示しております。

 一方、御指摘のように、分配の方の議論も当然あるわけでありまして、これは、そっちの方の議論をしっかりしなければいけないと思いますし、分配の方で、おっしゃるように、企業だけじゃなくて、それが雇用の拡大や所得の増大に結びつくようには我々としても努力をしなければいけないと思っております。

 そういう意味で、大臣もみずから、正規雇用をふやしてもらったり、あるいは所得に経済の成長の成果が結びつくようにということもいろいろ団体等にお願いもしているところでもございますし、そういう形にバランスよくいくということが一番望ましいと我々も考えております。

 こういう意味で考えておりますが、その意味では、今回の三法案は、地域の資源を活用した企業を育てようとかあるいは地域に工場を立地させようとか、そういう意味で、その成果が地域あるいは中小企業と大企業の格差是正に結びつくというように考えております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 再チャレンジ、底上げ戦略を見ても、既に行っている施策の焼き直しが多いと思っております。出されてきた法案は、パート労働法にしても雇用保険にしても最低賃金にしても、非常に不十分と言わざるを得ません。

 きょうはその議論はしませんが、一点だけ、経済のサービス化の進展、そしてサービス産業の発展と密接に関連しているということですから、労働者派遣の請負の問題に触れさせていただきたいと思います。

 大臣は、これから新成長戦略や経済成長戦略大綱を実施していく中で、日本の産業、企業の中で、非正規社員、派遣や請負の労働者は今以上に拡大する、拡大させるべきだと考えるのか、むしろ、非正規社員は減少する、正社員、正規社員への転換を進めるべきだと考えているのか。本来なら、厚生労働省にただすべき問題かもしれませんが、経産省は、企業などの経済活動を支えるナビゲーター役を自負されていることもありますので、あえて甘利大臣にお尋ねをいたします。

甘利国務大臣 厚生労働大臣の答弁の中で、非正規雇用というのは、もちろん使う側、企業側のニーズもあるけれども、働く側の選択肢でもあるという答弁がよく行われています。

 どちらのニーズが高いかというと、いろいろ議論はあると思います。恐らく今まで出ていた議論は、使う側のニーズの方が高くて、実は、働く側は、ないとは言えないけれども、非正規雇用の多くは正規雇用になりたいという思いがありますよという御指摘がありました。

 私は、派遣とかあるいは請負といういわゆる非正規型の雇用、これは企業の側からいえば、生産量が一定でずっと変動がないということであれば、ずっと雇用を抱えていて企業がやっていけるけれども、季節変動が多かったりするものについては、正規雇用で雇っていると、生産数値が落ちてくるときには遊ばせていなきゃならない。その遊ばせているときの水準に合わせると、今度は足りなくなっちゃう。そういう変動要因をカバーするために、一時的な需要、一時的な企業側の必要性にこたえるという意味で、それ自身は一つの仕組みだと思っております。

 ただ、そのときに気をつけなきゃならないのは、安く使えるという視点で使うのではいけないんだと思うんですね。そういう安易な発想じゃなくて、ずっと抱えていられない、しかし、この時期に足りないから必要なんだと。それで、同質の労働をする場合には、それに準拠した待遇と労働環境の整備をする、そういう前提に立ってこの仕組みを活用するということが企業の競争力と雇用とを両立させることだと思います。

 働く側も、このときだけこういう仕事で働きたいというニーズがあることは確かでありますから、その両方をうまくマッチさせる必要がある。

 何よりも大事なことは、非正規雇用から正規に行く道をちゃんとつけるということが大事なんですね。双方、これから何年間かは正規じゃない働き方で働きたい、休むことはしたくないけれども、もっと自由にやりたいという正規から非正規へのパイプ、それから非正規から正規へのパイプ、これをしっかりとつくっておくということが何より大事だというふうに思っております。

太田(和)委員 昨年十一月の経済財政諮問会議の議事録を見ますと、大臣は、製品のライフサイクルの短縮化など競争環境が変化する中で、我が国製造業が生産のフレキシビリティーを確保するために派遣や請負を活用することは十分合理性がある、一方で、安直に低廉な労働力を求めることのみを動機とする派遣や請負の拡大は不適当だと考えると、大臣は述べておられます。

 また、三月一日に大臣は日本経団連を訪れ、大企業の下請いじめをやめるように、またパートや派遣の正社員化に力を入れるようにと要請したという報道がありました。これはこれで私は大変結構なことだと評価をしておりますけれども、さらに、毎日新聞三月二日付の記事では、非正規社員の正社員化について、家計消費と企業業績の好循環を前倒しでつくるべきだというふうにも語っておられます。

 この点がまさに重要で、私が先ほどから申し上げている点もこのことなんですけれども、消費の増加が持続的な経済成長につながるんですね。しかし、しょせんそれはお願いにすぎないんです。

 昨年、キヤノンの偽装請負の問題が発覚しました。キヤノンは、一度は請負労働者の正社員化を打ち出しましたが、再び取りやめました。そして、私ども野党が国会で会長の参考人招致を厳しく求め、メディアも大きく報道しました。先日、ようやく正式に請負労働者を正社員化することになったという記事が朝日新聞に出ておりましたが、これは裏を返せば、政治が生半可にお願いしても、企業がなかなか正社員化はしないということだろうと思うわけです。お願いでも、しないよりはした方がいいに決まっておりますけれども、大事なことは、政治ですから、法律なり政策的誘導などによって、要は、どう具体化していくのかということだと思っております。

 少し戻りますが、大臣の言う、先ほど述べた、安直に低廉な労働力を求めることのみを動機とする派遣や請負というのは、現実には、私は、派遣や請負の大半の実態だろうと思っております。

 しかし、その派遣や請負、これはビジネス支援サービス、つまり、サービス業の一つでもあるというわけですから、経産省の各種レポートの中では、この分野が今後大きく拡大していくだろうことが指摘されております。大綱では、サービス業の重点六分野の一つと位置づけもされております。

 平成十四年の産業構造審議会新成長政策部会では、サービス経済化・雇用政策小委員会の報告書では、サービス経済化によって業務プロセスの見直しや働き方の多様化が進展し、これまでの雇用システムが大きく変化するとともに、経済の活性化に資する新たな雇用システムが構築されていく可能性が高いというふうに指摘が載っております。

 そして、サービス経済化とIT化が相まって、定型的な業務や周辺業務等の外部化、外部経営資源の活用を促進すると考えられる、これによって、派遣労働者やインディペンデントコントラクター等を活用する機会が増大していくことが見込まれるとする一方、人材の有効活用を図っていく上では、従業員をいわゆる正規社員、非正規社員というように単純に分類してとらえる従来の考え方から脱却し、それぞれの企業が置かれている事業環境や労働者の就業ニーズに応じて、柔軟に就業形態や労働条件を設定していくことが重要になると考えられるというふうに述べておられます。

 現実の企業社会の流れはそのとおりなんだと思いますが、しかし、これは、日本経団連に正社員化をお願いした大臣のお気持ちとちょっと違うのではないでしょうか。どのように思われますか。

甘利国務大臣 従来の紋切り型の企業形態、企業経営から新しい形態が生まれる、その一つがアウトソーシングだと思うんですね。コアの部分を自社で抱えて、それ以外の業務分野については外に委託をして効率的な経営を行っていくというのは、経営戦略の一つであります。そういった意味で、従来型の仕事、業務の仕分けというのから新しい形態が生まれてくるということは事実だと思います。

 問題は、働く側のニーズ、働いてもらう側のニーズもありますが、そこに、安いから、低廉な賃金で使えるからという思想があるとしたら、それは私は間違いだと思います。

 同一労働均衡待遇ということが今叫ばれています。なぜ同一労働同一じゃないのかというのは、正規、非正規で求められる、例えば企業へのロイヤリティーとかあるいはいろいろ責務が若干違いますから、その分は勘案しなきゃいけない。それから、厚労大臣がいつも言っていますのは、職務給にしないと完璧にはなりませんよ、つまり、年功賃金というのを否定するということになってしまいませんか、そこが完全に同一労働同一賃金と言い切れない部分ですよという答弁をされているわけであります。

 私は、日本型雇用の中で終身雇用の意義も認めておりますし、あるいは、年功賃金もすべてが悪いとは思っておりません。生涯設計という点で、ある要素はあってもいいと思うんですね。その際に、年齢にかかわらず同じ仕事をしている人は同じ賃金という体制でいくと年功賃金というのを一〇〇%否定することになりますから、そこはなかなか難しい問題があろうかと思います。

 総じて先生のお話にお答えするとすれば、いろいろ、国際競争の激化の中で、働く方もあるいは人を使う方も柔軟なやり方ができるようにしていくということが競争に勝ち残る手だてである、ただし、そのときに、安く安易に調達できるという発想ではだめですよということであります。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

太田(和)委員 平成十七年の経産省のビジネス支援活性化研究会の報告書によれば、もっと進んで、新日本型経営モデルを提唱しています。これは、年功序列と終身雇用、結果としての自前主義というこれまでの日本的経営は維持が困難になってきた、そこで、経営資源はコア部分に集中して、ここでは長期安定雇用を実現する、そして、コアじゃない部分、非コア部分については派遣や請負などのビジネス支援サービスを積極的に活用するのが新日本型経営だとしています。

 この認識は、昨年六月の産構審サービス政策部会が取りまとめました「サービス産業の革新に向けて」にも反映されていまして、ビジネス支援サービスの雇用規模を、直近の六百三十万人から二〇一五年には六百八十一万人までふえると明記しております。私は、これは新成長戦略や大綱の底を流れる考えではないかと思っています。

 もちろん、ビジネス支援サービスといっても、広告、会計・法務・財務サービス、リース・レンタルとかデザイン等々多岐にわたるものですが、今、ビジネス支援サービスの雇用人口が六百三十万人の中で、派遣は二百三十万人です。ですから、約三分の一。ビジネス支援サービスの中心になっているということで、国際競争力の維持向上という大義名分もわかりますが、私は、経産省のレポートが示しているのは、つまり、コア業務に集中する正社員と、非コア部分の典型的な仕事を引き受ける派遣や請負という、いわば雇用の二極化を目指しているのではないかということを危惧しております。大臣、いかがでしょうか。

肥塚政府参考人 今お話がございましたビジネス支援サービスについての平成十七年七月のビジネス支援サービス活性化研究会の報告書でございますけれども、サプライ・チェーン・マネジメントとか業務プロセス改革に代表されるような機能単位の企業の再編をやっていく、あるいは、バリューチェーンのいろいろな段階における、企業あるいはグループを超えた機能を水平的に分離、統合していくというようなことがどんどん進んでいくだろう、したがってビジネス支援サービスが重要になってくるんだということを述べております。

 ビジネス支援サービスは、今先生からもお話がございましたけれども、企業活動と密接にかかわる企業活動の一部を代替するようなサービスでありますので、その範囲は極めて広くございまして、一つは、コンサルティング、広告サービスといった経営支援サービス、それから二番目に、研究開発受託、デザイン受託、もちろん製造請負などもございますけれども、直接業務を実施するサービス、それから、ITサービス、人事業務代行サービス、さらに経理・財務業務代行サービスといったような間接業務支援と三分類をしておりますけれども、およそ企業活動の幅広い分野を含んでいます。

 こういうビジネス支援サービスを活用することで、今、コアというお話がございましたけれども、ユーザー企業がそれぞれ競争を闘っている分野に、経営資源をコア業務に集中することで、一方で、ビジネス支援サービスの提供側の方はむしろその分野での専門性を高めるということで、単なる代替以上の生産性の高いサービスを提供することが可能になるんじゃないかという考え方を述べております。

 したがいまして、これらのビジネス支援サービス、さっき申し上げましたような業種に属する企業の中には、労働力の大宗を正規社員に依存しているというのも当然ございますし、したがいまして、アウトソーシングが進むことによって、あるいはビジネス支援サービスが使われることによって雇用の二極化に直接つながるものじゃないというふうに思っています。

 ただ、労働者派遣サービスでございますとか一部のサービス分野で労働力の大宗を非正規社員に依存しているという状況はあるんだろうと思います。自分の意思に反して低所得の非正規社員にとどまるといったような場合には、いろいろ問題がございますので、非正規社員のスキルアップのための訓練とか正規社員への登用といったことはどんどん進めていくべきだというふうに考えています。

 それからもう一つ、今のビジネス支援サービス共通の課題としまして、さっき申し上げましたように、そちらの側での専門性を高めて生産性を上げていくということが、その会社にとりましてはこれまたコア業務になるわけですから、そういう分野でのスキルアップ訓練、人材といったようなものは、今お話がございましたコンサルティングサービスとか研究開発を問わず、通じて、ビジネス支援サービス共通の非常に大きな課題だというふうに認識をしております。

太田(和)委員 少し角度を変えますが、労働者派遣サービスの労働生産性の現状についてお答えください。

肥塚政府参考人 今、先生のお話は、産業連関表で、一九九〇年から二〇〇〇年にかけての労働者派遣サービスの国内生産額が〇・八兆円から一・六兆円に増加している。一方で、雇用者数が十五万から五十万に増加している。この数字を割り算いたしますと、労働者一人当たりの国内生産額、労働生産性が出ます。二〇〇〇年は一九九〇年に比べて四割程度一人当たりの国内生産額が減少しているという結果が得られます。

 ただ、労働省に伺いまして、統計ですけれども、この間で派遣料金がどういうふうに推移しているかというのを、部分的ですけれども調べますと、業務によって派遣料金が、単価といいますか、ふえているものも減っているものもありますけれども、ふえている業務の方が多うございます。したがって、派遣料金の変化が一人当たりの国内生産額の変化の原因になっているということでは必ずしもないんだろうというふうに思っております。

 今の数字の変化といいますのは、一九九〇年から二〇〇〇年にかけまして、労働者派遣の総売り上げの中で、いろいろな制度の改正もございまして、一般派遣の割合が特定派遣の割合に比べて伸びております。

 率直に言いまして、派遣料金が比較的高い機械設計とかソフトウエア開発というような業務に比べて、派遣料金の比較的低い事務用機械操作といったような分野の実績がふえている。それは、一般派遣と特定派遣の内訳が変わっているということと関係があるのだろうというふうに思いますけれども、そういう派遣の業務内容の内訳の変化ということで計算をしますと、割り算をしたときの国内生産額の減少になっている。そういう意味では、非常に単純に言いますと、一般派遣労働者の比率が非常に高くなって、そこのニーズがふえているということによって、今のような数字の減少になっているということだと思います。

 ただ、先ほど申し上げましたように、いずれにしても、スキルアップのための訓練あるいは正規雇用への登用ということを通じて、全体としての専門性あるいは生産性の向上というのは必要だろうというふうに考えております。

太田(和)委員 市場規模が倍になっているのに雇用規模は三倍以上増加しました、だから労働生産性が四割低下したということでありますが、このことは、派遣の単価が下がっている、つまり労働者の給与が下がったということをあらわしています。まさに派遣の現状が言いあらわされているデータだと思います。

 短時間なら働けるという高齢者や、家計補助のため短時間なら働けるという女性など、就業ニーズが多様化しているのは事実です。非正規社員の待遇改善やスキルアップできる環境を整備するのは当然の課題として、私は、派遣について、これ以上拡大すべきではないと思います。むしろ、これまでのポジティブリスト方式に戻すなり、登録型を制限するなり、いろいろな形で限定していくべきです。これ以上、賃金切り下げのための派遣を拡大しないでいただきたい、雇用の二極化を推し進めないでいただきたいというふうに申し上げさせていただきます。

 これから順次、産活法改正案についてお尋ねをいたします。

 まず、法案の大きな柱が、サービス産業の生産性向上であります。

 九五年から三年までの労働生産性の上昇率の日米比較でいうと、アメリカが二・三%なのに対し、日本は〇・八%。生産性そのものの比較では、アメリカを一〇〇とした場合、医療は九七、娯楽、レジャーは九六と健闘しているんですが、労働投入量が多い、つまり雇用者が多い小売、飲食店が四一、卸売が四二、運送が五八と低いので、平均ではアメリカにかなり水をあけられております。七割程度でしょうか。

 そこでお尋ねしたいのは、製造業ではトップを切っているのに、なぜ日本のサービス業は生産性が低いのでしょうか。お願いいたします。

肥塚政府参考人 生産性の定義あるいは数字の比較というのは、なかなか定義もはっきりしないのでございますけれども、今先生のお話のように、ある大学の調査ですと、サービス業は非常に多種多様で、生産性も業種によって違うわけです。アメリカと比較すると、例えば、対個人サービスで約九割、コンピューター関連、卸、小売、ホテル、外食で約六割、運輸で五割以下というような計算例がございます。

 まずミクロで見ますと、いろいろなシンクタンクでいろいろなレポートも出ておりますけれども、業種によってもちろん事情が違うんですけれども、非常に大ざっぱに言いますと、対個人サービスについて言えば、アメリカと比べて、我々、生活実感であるわけですけれども、総じて展開規模が小さい、あるいはチェーン化が進んでいないというようなことを挙げている例がございます。

 それからもう一つ、私ども、サービス産業に共通する課題として、例えば、ITの活用がおくれている。それから、やはりサービス産業でも研究開発が必要なんだろうと思うんですけれども、研究開発が十分じゃない。あるいは、製造業のノウハウといいますか、プロセスの効率化とか品質管理への取り組みがおくれている可能性があるんじゃないか。それからもう一つは、品質の評価が非常に困難なので競争が活発化しにくいといったようなことを挙げている指摘がございます。

 いずれにしろ、こういうことを含めまして、サービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会で、こういう共通の特性を踏まえてどう対応すべきかというのを引き続き勉強しております。

太田(和)委員 我が国の製造業の雇用が減る一方、サービス産業の雇用はその受け皿になっていたという側面もあります。労働生産性は付加価値割る労働投入量ですから、生産性を上げようとしたら、分母を減らすか分子をふやすかのどちらかになります。

 分母を減らしていく場合、単純には雇用を減らすということになります。生産性の向上が雇用の削減という形につながらないような配慮が必要だと思います。また、新しい就業機会の創出も重要な点になってきます。この点についてのお考えをお聞かせください。

山本(幸)副大臣 私どもが一番重要だと思っているのは、生産性と言っておりますが、これは全要素生産性というものでありまして、御指摘のように労働生産性だけじゃありません。資本の生産性も入っているし、あるいはそれでとらえられないものの生産性といいますか、これをイノベーションと言っているわけでありますが、そういうのを全部含めて、全体として、全要素の生産性が上がっていくということが日本経済の成長にぜひとも必要だということであります。

 そういう意味で、またその中で個別に言葉の定義だけ見ますと、おっしゃったように、付加価値と労働の比率ということで労働生産性が定義されますので、御指摘のような、分母を減らせばいいじゃないかという議論も出てきかねないんですけれども、我々は、それはやはりおかしいので、本来の分子である付加価値をいかに上げていくかということに注力すべきだと考えております。

 そういうことを含めて産活法で生産性向上の基準をつくっているわけでありますけれども、それには、資本、お金ですね、その効率性に相当する株主の資本利益率、そして二番目は、設備、物の効率性に相当する有形固定資産回転率、そして人材、人の効率性に相当する従業員一人当たりの付加価値額、こういうような幾つかの指標を総合的に用いて判断するということにしておりまして、これらは単純に人員を削減すれば向上するというものではありません。

 したがって、一番の目標は付加価値を向上させるということであります。特に、サービス業については、御指摘のように生産性の伸びが低いということがありますので、ここの付加価値をいかにして高めるかということが大事でありまして、今回、こういうサービス産業を含めて、そして観光、小売、物流、医療、福祉などいろいろな業種がございますので、その業種に応じた細かい対応策を考えていって、全体として付加価値を上げていくべきだというように考えております。

太田(和)委員 私も同感であります。

 サービス産業は、業態も多岐にわたり、生産性の工程もさまざまです。そこで、法案では、全産業共通の基本指針に加え、新たな事業分野別指針を作成し、それに基づいて支援策の認定をしていくというスキームだと思いますが、事業分野別指針はいつできるのでしょうか。また、どの分野でつくるのでしょうか。お答えをお願いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 産業活力再生特別措置法に定めております事業分野別指針でございますけれども、これは、それぞれの事業を所管する主務大臣が策定することとなります。産業活力再生特別措置法によります主務大臣というのは、八省庁八大臣が主務大臣でございます。

 御指摘のサービス産業につきましても、必ずしもすべての業種について指針を策定するのではなく、分野ごとに、それぞれの事業を所管する主務大臣がその必要性を判断するということになります。

 経済産業省におきましては、GDPに占めるウエートの高い産業への波及効果といった経済全体に対する影響等を踏まえまして、今後、事業分野別指針を策定する分野を決めていきたいというふうに考えております。

 当面は、御指摘のように、先ほどからお話が出てまいりました経済成長戦略大綱、ここで、重点サービス六分野でございます健康・福祉、育児支援、観光・集客、コンテンツ、ビジネス支援、流通・物流、こういう六分野を念頭に指針を検討していくことになります。

 例えば、流通・物流分野におきましては、競争激化の進展に伴い非常に生産性向上をやらなければならないという課題となっております小売業とか、また、ゲーム産業など今後成長が期待されますコンテンツ産業分野についても、検討を進めていきたいというふうに考えております。

 いずれにしましても、将来的には、サービス産業の重点六分野に限らず、特に生産性向上が必要なさまざまな分野で、事業分野別指針が策定されまして、当該業種の生産性向上に向けた方向性が示されるとともに、本法が有効に活用されて、サービス産業全体の生産性が上げられることを期待しておるわけでございます。

 最後に、事業分野別指針の制定時期につきましては、法律が、通していただければ、施行の日が公布の日から起算しまして六カ月以内ということにされておりますことから、できるだけそれを目途に、制定に向けて努力したいというふうに考えております。

 以上でございます。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

太田(和)委員 数年前に経産省でつくった新産業創造戦略で重点分野に挙げられていた環境・エネルギー・機器・サービスが挙げられていません。大綱の重点六分野にも入ってきません。かわりに育児支援と流通分野が入ったわけですが、環境、エネルギーがなぜ消え、育児支援と流通・物流がなぜ六分野に入ったのか、お答えください。

肥塚政府参考人 平成十六年五月の経済産業省がつくりました新産業創造戦略では、先端的な新産業あるいは社会的なニーズの広がりがある新産業分野ということで、燃料電池ですとか、それから、環境、エネルギーのところも、環境・エネルギー・機器・サービスということで、そういう産業分野の七分野を示しております。

 今お話がありました経済戦略大綱における重点サービスの六分野といいますのは、サービス分野の中で、少子化の進展ですとか、いろいろなサービス分野の所得弾力性を踏まえて、今後発展が期待されるものとして六分野をくくっております。

 環境分野につきましては、国際競争力の強化に資するものということで、環境と経済の両立を実現する産業育成あるいは事業展開の加速化ということで、別のところに位置づけられている。今申し上げましたサービスのところは、前回のものは、サービス、機器と一緒に七分野を書いておりますけれども、サービスの中の六分野ということで選んだということでございます。

太田(和)委員 それでは、どのような計画が支援対象になるのか、具体的に例示しながらお答えいただきたいと思います。また、企業にはどのように周知するのか。

 そして、支援措置についてですが、会社法の特例、課税の特例、海外子会社への資金提供支援とありますが、具体的に数字を挙げて内容をお示しください。

大辻政府参考人 お答え申し上げます。

 産業活力再生特別措置法の支援制度は、事業者が策定した生産性向上のための計画を主務大臣が認定し、その認定事業者に対して、会社法や課税の特例などの支援を行うものでございます。これらは、生産性の向上など一定の基準を満たせば、企業の規模や業種にかかわらず計画を認定し、支援対象とすることとしております。したがいまして、委員御指摘のサービス産業も支援の対象となるところでございます。

 周知徹底に関してでございますが、本法案の施行に当たりましても、地域を含む全国の幅広い業種の方々に広く御利用いただけますよう、制度の普及、運用に取り組んでまいりたいと考えております。そのため、各地での説明会の開催、わかりやすいパンフレットの作成と配布、商工会議所等の経済団体と連携した施策の紹介などに取り組み、全国への普及と制度の円滑な運用に努めてまいりたいと存じております。

 それから、支援内容の具体的な数値を含めた御説明でございますが、委員御指摘のとおり、本法の計画認定を受けた場合の支援措置の主たるものは、課税の特例や会社法の特例でございます。

 まず、課税の特例につきましては、増資や会社設立等の際の登録免許税につきまして、通常〇・七%であるものが〇・二五%に軽減されます。また、事業譲渡の際の不動産取得税につきましては、通常三%であるものが二・五%に軽減されます。さらに、新しい計画でございます技術活用事業革新計画などの認定を取得した上で事業革新設備を導入される場合に関しましては、三〇%の特別償却が認められるなどの税制上の特例がございます。

 次に、会社法の特例に関しましては、組織再編の特例といたしまして、子会社の議決権の三分の二以上を有する場合に、通常は株主総会の特別決議が必要なものを取締役会決議で可能となる。さらには、検査役調査の特例として、現物出資時に必要とされます検査役による財産価格調査を免除することなどの支援措置が用意されておるところでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 支援策としては、ちょっと中身に貧しい感じがするのは私だけでしょうか。登録免許税〇・七%が〇・二五%に、不動産取得税が六分の一軽減します、特別償却は金利分だけ得しますと。これはこれで結構なんですが、サービス業を製造業と並ぶ双発エンジンにする、今後十年で二・二%成長を目指す、そのかぎを握るのはサービス産業だというのが大綱ではないのでしょうか。その大綱関連の法案であると大ぶろしきを広げた割には、ちょっとけちけちしているのではないでしょうかと思ってしまいました。

 次なんですが、それではお尋ねいたします。

 今回、事業分野別指針を新たにつくるとしていますが、実は、現行産活法のもとで一つだけ事業分野別指針を持っている業界があります。国土交通省さん、副大臣、政務官、おいでいただきましたので、お答えください。

 建設業の再生に向けた基本指針は、いつ、どのような目的で作成されたのでしょうか。

渡辺(具)副大臣 建設業につきましては、建設業は現在、深刻な過剰供給構造にあることから、再生可能と考えられる企業に絞りまして、過剰供給構造の是正に資することを基本といたしまして、平成十五年四月に、委員御指摘の事業分野別指針を策定したところであります。

太田(和)委員 平成十五年の改正からきょうまで、何件の申請がありということでちょっとお尋ねしたかったんですが、これは、私が調べたところ、申請件数がゼロという認定結果に終わったというふうに聞いております。

 また、今後、分野別指針を見直したり検討したりするお考えはありますか。

渡辺(具)副大臣 委員御指摘のとおり、これまでの間、具体的な認定申請がなかったわけであります。結果といたしまして、現時点において、本法の効果そのものについて認められるものはないわけでございます。

 今後の推移を見守りながら、今後は、業界の意見を聞いたり、あるいは有識者の意見を聞きながら、今定めております指針を変更することが必要かどうか、慎重に考えてまいりたいというふうに思っております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 安易な企業救済とならないように再生可能な企業に絞って支援をする、そのため認定のハードルを高くした、当時の国会での議論を踏まえてそうなったということですから、ある意味しようがないのかという気もしますが、やはり、法律をつくってみたが利用する人がいなかったでは済まない気がします。副大臣、ありがとうございました。

 私が経産省にお尋ねをしたいのは、過剰供給構造を解消するための建設業界への支援と生産性向上を目指すサービス業への支援では事情が違うとは思いますが、登録免許税だとか不動産取得税だとか、具体的な支援策は同じであって、このようなちまちましたお話では、効果が上がるんですかという点です。建設業と同じような結果にはなりませんかというお尋ねです。

 報道によると、経済財政諮問会議では、労働生産性の伸び率を五年間で一・五倍にするという目標が了承されました。サービス産業だと、伸び率は〇・八%ですから、一・二にするという目標は立派なんですが、どうも具体策がついていっていないような気がします。

 甘利大臣、お願いいたします。

甘利国務大臣 日本経済を安定的な成長軌道に乗せていくためには生産性の向上が大事で、経済の七割を占めるサービス産業の生産性を引き上げていくことがかなめであるという割には、シャビーな政策じゃないかという御指摘であります。

 私は、就任して、産学官の関係者、有識者に、サービス産業生産性協議会、この前段のものを編成していただいて、そして今春にこの今の協議会を発足させるつもりであります。

 サービス産業というと、一つの物差しだけではかることはできないし、一つの手法だけでは、生産性を上げるといったってなかなか難しいんですね。生産性イコール生産効率じゃなくて、付加価値を高める。さっきのエステでいえば顧客満足度を高めるということでありますから、ほかと、分野別にいろいろ違うのでありまして、そういう分野別の指針をつくっていく。

 もちろん、生産性を引き上げる核として、先ほど述べられた具体的な施策に加えて、IT導入というのは、どの分野でもそうですけれども、特にサービス産業分野では大事なことになりますし、人材の育成であるとか、あるいは、もちろん産学連携、そして、製造業で培ってきたノウハウをサービス産業にどう生かしていくかということも大事であります。工学的手法を使うということですね。

 ある旅館では、製造業のノウハウを使って、たくさんのお客さんに配膳をする革新的な仕方を導入した。冷めないで、できたものがすぐに大量のお客さんのもとに届く、そのあいている時間をさらに質の向上につなげていくというやり方。

 あるいは、テレビでもよく報道されましたけれども、吉野家の牛丼は、注文を受けてからいかに早くお客さんに出すか、製造業の部品や工具の配置の仕方、それに倣って材料の配置の仕方から何から工夫をして、何十秒以内というサービスを実現した。これは、製造業のノウハウをサービス産業に導入したわけであります。

 あるいは、大リーグでは、試合のマッチングも物すごい数なんですね。地域を転戦するロードがありますから、選手の負担も高い。これを最小限の負担で最良の集客を上げる試合の組み方、あるいはテレビ中継の時間帯との試合の組み方等々、試合の設定を数学的手法でやっているんですね。

 サービス産業にそういう工学的手法、数学的手法あるいは製造業のノウハウ、そういうものを投入することによって生産性を引き上げていく。

 ですから、先ほどシャビーではないかという御指摘のあった施策に加えて、こういういろいろな他方面のノウハウを投入していくということを通じて、幅広くサービス業の生産性向上を図っていきたいと思っております。

太田(和)委員 最後の質問に移らせていただきます。

 米国は九〇年代に生産性を急速に伸ばしましたが、九〇年代前半は〇・九九%平均だった伸び率が後半は二・三二%に、つまり伸び率を一・三三%までふやしています。この一・三三%の中身をマッキンゼーが分析したところによりますと、卸、小売業の伸びが約半分を占めた、ウォルマートによる効果が大きいとのことですが、さらに、これに証券や電気通信業といった分野を入れると、サービス業の四分野での伸びの八割を占めているのだそうです。米国とは事情が違うでしょうが、いかにサービス業の生産性向上が重要か、また、その中で卸、小売業の改革が重要かを示す一つのデータだというふうに思います。

 私は、小売業の生産性を上げなくてはならないということに大賛成ですが、一方、商店街を生産性だけの話で片づけていいのかとも思っております。商店街は地域の顔でありますし、まちづくりという観点からも、努力する商店街は何とか活性化ができるよう支援することが重要だと思っております。

 地元の千葉県では、千葉経済センターというところが先ごろ県内の大型店と地域の商店街の売上高に関して調査をまとめましたが、九七年に大型店が商店街を抜いて売り上げを伸ばし、四年度には商店街の売り上げはとうとう大型店の五五%までに落ち込んだということであります。この千葉経済センターというところは、毎回、調査のたびに窮状打開の提案をしておりましたが、今回はそれもとうとう見送ったということです。要は、活性化は相当難しいということであります。

 生産性の話一辺倒になると、日本政府は、補助金漬けで、つぶれかけている商店街の延命に手をかしている、生産性を上げるためには生産性の低い家族経営の商店には退場してもらうしかないなどと乱暴な発言をする人も一部にはおりますが、そうではなくて、生産性の向上というテーマと商店街の活性化をどう両立させるのかが私たちのテーマでなければならないと思っております。

 この点について、最後、大臣の所感と決意をいただきまして、終わりにさせていただきたいと思います。

甘利国務大臣 おっしゃるように、ウォルマートは大変な生産性の向上を遂げましたが、これはやはりITの導入でありますね、象徴的なもの。ICタグを使って、流通の圧倒的効率化を図ったわけであります。日本の企業も、ICタグを初めとするITのハード、ソフトを駆使して流通コストを下げていくということは、もちろん不断の努力で取り組んでいく。

 それと、大型店対中小店でいえば、中小店がネットワークを結ぶことによって大型店に対抗するということだって可能なわけでありますから、情報機器を駆使して、ボランタリーチェーンはその最たるものでありますけれども、そういうインターネットを通じた見えない大規模化ということも大事であります。

 そして、まちづくり三法の見直しは私がやりましたけれども、これは、単に流通効率だけでいうと、中小はどうしても生き残れない。しかし、それ以外の要素、魅力で、地元小売店が並んでいる中心市街地に訪れる人をふやす方法もあるわけであります。それは、市がまちづくり全体のグランドデザインをどう描くかということ、それから大型店と中小との連携もしっかり図っていくこと、そして、必然的に中心市街地に人が来るような仕組みをつくる。それは、都心居住であり、公共公営施設の中心市街地立地であり、あるいは、それらとの連携をどう図ったまちづくりをしていくか、イベントをどう打つか、もろもろの対策だと思っております。

 総合力を駆使して、地元小売店がしっかりと生き残れるように対応していきたいと思っております。

太田(和)委員 ありがとうございました。

上田委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 早速でございますが、質問に入らせていただきたいと思います。

 経済成長戦略大綱について、まず大臣に質問させていただきたいと思いますが、中で言われていることは、経済大国の規模は順位としては下がったとしても、魅力ある経済、明るい未来というのを示すために、持続的かつ安定した経済成長が重要であるということがうたわれているわけでございまして、その政策がるるうたわれているところでございますが、豊かで強く魅力ある経済、そして明るい未来というのはどういうものなんでしょうか。

甘利国務大臣 我が省で言う明るい未来というのは、国民生活の安定と向上であります。つまり、日本国民が、去年よりもことし、ことしよりも来年、主に質的でありますけれども、質量ともに充実した社会生活を送ることができるということが明るい未来だというふうに思っております。

 そのために、今、日本は制約要因がありますけれども、これを克服して成長路線に結びつけていかなければならないと思っています。制約要因は何かといえば、一つは人口減少社会、少子高齢社会であります。生産の三要素の一つの労働力人口が減っていくことに対してどう対処するかということがあります。あるいは、高齢化社会に入っていきますと、生産人口がほっておけば減りますから、貯蓄の取り崩しがあるわけであります。投入資本量をどう確保するかという制約要因もあります。あるいは、巨額の財政赤字を抱えていますから、つまり、借金返済に回すお金が政策予算を制約するという要素もあります。あるいは、高齢化社会に突入をしていって社会保障費がふえていく、その分だけ一般政策経費が削られるという制約要因があるわけです。

 それらを克服して成長を確保するということが大事でありまして、労働、資本、生産性、三要素をどうブラッシュアップしていくかが大事であります。イノベーションというキーワードとオープン。オープンは、日本と同じ状態で商売、仕事ができるエリアを広く広げていく。そのためにEPA交渉が大事なわけでありますし、特に東アジアの成長力は二けたに迫ろうとしております。この成長力を日本の成長力に取り込んでいくという作業を、オープンという思想を通じて達成していきたいというふうに思っております。

 もって、制約要因の中でも成長を確保し、去年よりことし、ことしよりも来年、国民生活が充実していくことをもって明るい未来を築き上げたいと思っております。

鷲尾委員 大臣、ありがとうございました。

 今のお話をお伺いして思いましたことは、当然、経済産業を所管する大臣でございますから、経済のことが主になっておるのであろうというふうに思いますが、大臣、「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画はごらんになったことがありますでしょうか。(甘利国務大臣「見ました」と呼ぶ)

 そこで登場する人物というのは、やはり明るい未来を持っている人たちだろうというふうに思いました。そしてまた、生活の向上を当然目指してはおったんでしょうけれども、その時代背景としては、やはり物がない時代でありましたし、そういう意味では、私自身思いますのが、成長、成長と、数字の上での経済成長、GDPが対前年比何%アップということが、本当にそれが明るい未来につながるのかというと、最近必ずしもそうでもないんじゃないかなというふうに思っておるところでございます。

 それは、この後も質問しますけれども、いろいろ格差の話もありますし、イザナギ景気超えと言われている中で、イザナギ景気のときと今の会社の経営の仕方が随分変わったと言われておるところでございますが、それはどのように変わったかというと、株主に対する配当性向、これが変わった。

 一時期、失われた十年と呼ばれた時期から言われ出したのが、株主至上主義ということが、世間に言葉が躍りました。そういう中で、株主配当性向をどんどん高めて株主資本利益率を高めるというような経営指標が尊重されたわけであります。その結果、今、株主配当というのはイザナギ景気時代に比べるとやはり二倍から三倍ぐらいの水準を利益の中から配当するようになっておるという話です。

 では、その株主配当がどこに行っているのかという話もあると思うんです。巷間言われておるところが、例えば、海外の退職者年金基金の方が株を持ってそこに配当が流れているとか、あくまでも日本の中でも高所得者、もうごくわずかの人が株に投資して、その配当の恩恵を受けているとかいう話がございます。経済成長して、その結果がやはり一部分に恩恵が行くような格好の成長であれば、これは到底明るい未来とは言いがたいのではないかというふうに思う次第でございまして、そういう観点から、この先ちょっとまた質問を改めて進めさせていただきたいと思います。

 ちょっと質問の矛先を変えまして、二〇〇七年問題というのが当然言われておるところでございます。

 二〇〇七年でございますが、特に技術の継承というところで、民間企業のアンケート等を見ましても非常に不安を抱えておるというところですが、これに対して大臣はどのような対策をお考えでしょうか。

甘利国務大臣 いわゆる二〇〇七年問題、これは団塊の世代が大量退職をする時期がやってくる、団塊の世代、いわゆるベビーブーマーでありますが、私も昭和二十四年ですから、その一番最後になるわけでありますが、ベビーブーマー世代が戦後の復興を支えてきて、技術の集積を担って、日本のものづくりを中心とする伝統的な強みを支えてきた。それが大量退職してしまうと、あるいは退職した後、後発国に雇い上げられて、日本の技術がそっくり向こうに行ってしまう。その人材がずっとそこで、その国のために活躍するならまだしも、二年間ぐらいで吸い上げられちゃったらまたほうり出されちゃう、これはまさに使い捨て、外国企業による使い捨てになってしまうのではないかという指摘があります。

 私自身は、何とか、もちろん法律的に大事な技術が流出しないように整備をするということは大事でありますけれども、その人たちを定年で、はい、さようならじゃなくて、もともと労働力が足りないわけでありますから、再雇用、リセット雇用になるのか延長雇用になるのか、いろいろあるでしょうけれども、そこで、その企業の発展を支える人材として引き続き活用してもらうということと、それから、伝承していくということが大事ですね。

 かつて、労働力、熟練労働力というのは外部労働市場から調達してくればいいという発想が一時流行して、社内の能力開発がなおざりにされました。アメリカだって外から調達してくるんだからねというようなことを私もだれかに言われたことがありまして、そうじゃないんじゃないかなと思いながら、ああ、そういう時代なのかなと思いました。しかし、よく調べてみたら、そのアメリカだって、社内の人材投資を相当やって人材を養成していく。ああいうふうに雇用形態が簡便に切りかえが、もういいですよというようなことが言える企業文化の社会にあっても、中核人材は長期雇用している、しかも、しっかり訓練しているということがわかった。

 そこで、人材投資減税というのを我々は提唱して、社内人材の能力開発を今まで以上に取り組んでいこうよということにかじを切り直したわけでございます。そういうことを駆使して、今いる人たちが引き続き定年後も人材として支えてもらいたい、それから、後継者に対して社内の能力開発としてしっかりとノウハウ、技術を伝承していってもらいたい。そういう政策をしっかり進めていきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 その技術継承問題にも絡んでくるのでございますが、技術を教える側と、そして今度、教わる側の問題もあると思います。

 教わる側の問題というのはどういうことかというと、やはり最近、非正規社員がかなり雇用として常態化しているという局面があります。この非正規雇用の拡大というのは、いわゆる日本の技術の伝承という面でも当然問題があると思いますし、それこそイノベーションという面でも大変問題があるというふうに思いますが、非正規雇用の拡大について、何とかしなきゃいけないというふうに思っておられると思うんですけれども、その点についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 先生御指摘のとおり、技術の伝承という点でも、その分野で非正規雇用が取ってかわるというのは、私は余りいいことじゃないと思います。幾ら先輩が一生懸命技術の伝承をしようとしても、それを受ける側が、来年ここにいるかどうか、おれ、わかんないからねと思っていたら、一生懸命自分のものにしようなんという気はないですからね。だから、そこのコアの技術継承部分はきちんとやはり企業ごとに正規雇用でやっていかなきゃ、その会社の将来がないと私は思います。

 もちろん、生産のフレキシビリティーに対応するという形で、非正規雇用というのは企業側にとっても大事な戦力と手法でありますし、また、働く側にとっても、そういうニーズはなくはない。ある一定期間こういう仕事で自分は働きたいというニーズはあるわけでありますから、そのニーズがちゃんと本来目的に従って駆使されるように、環境整備に取り組む必要があろうかと思っております。

鷲尾委員 今大臣のお話がありましたとおり、非正規雇用も利用されるべき一面もあるのかなというふうに思いますが、私が思いますのは、あくまでもそれは苦渋の選択の一つであって、積極的に利用されるべきものではないんじゃないかというふうに個人的には思うわけでございます。

 今、事業環境の話も出ましたが、大臣、国際競争力の強化ということについてのお考えをちょっとお聞きしたいのですけれども、当然、各国において歴史も違いますし、おのずと制度も違ってくるでしょう。当然、今言われている日本の問題点ですか、税制なり社会保障の面とか、いろいろ問題が取りざたされているわけですけれども、ほかの各国と比べて日本の企業が今国際競争力をそがれているとしたら、何が問題だというふうに大臣は思っておられますか。端的にお願いいたします。

甘利国務大臣 まず第一には、革新的な技術を創造し続ける、そのための環境整備をする。私は、かつて、党にいましたときに、研究開発税制の抜本是正案を私の私案として提案いたしました。それを党が採用し、政府が採用して、今の、いわゆる試験研究費が過去のある時期の平均値よりも超えた分だけに対して減税が働くというやり方から、根っこから金額によって減税額がきいてくるというふうに抜本的に改正をさせましたけれども、こういう税制上の整備の問題、それから、特に産学官連携を強化していくということは大事な政策だと思います。

 それともう一つ、私は前から言っていて、最近ようやく注目されるようになったのは、日本の強みとは何かということをしっかり研究することなんですね。これはチームプレーの強みなんですね。例えば、ライン方式からセル方式に生産現場が変わっています。セル方式というのは、あるチームで一つのことを担当していく。その際に、こうした方がうまくいくぞと思ったら、日本の働き手は、労働者は提案をします。こうやった方がうまくいくんじゃないのと言って、提案を共有するというマインドがあるんですね。

 これは、世界共通の考え方かと思ったら、違うんですね。いい発見は自分のものだから、人になんか教えてたまるかという国民性のところだってたくさんあるのです。むしろ、こういうのを発見したから、みんなでこれをやってみないかと言う方が少ないというのがわかりました。

 それから、元請と中小企業でよく行われるのが改善提案です。下請企業が元請に対して、こういうことの改善が必要だと思うから、こういうことを一緒に取り組んでくれないかという提案をします。これに取り組んでいる企業は競争力を持っている。これをないがしろにしている企業は、一時的には得をしますけれども、つまり、ないがしろにするというのは、その改善提案を預かっておいて、自分で子細に研究して、実はこれはうちも前から考えていたのよ、あなたに言われるまでもなくと言って、それを自分のものだけにしちゃう。そうすると、次の改善提案は、したってとられちゃうから意味がない。ところが、改善提案をしたら、よくぞ言ってくれた、両方で共同研究をして、うまくいったらそのプロフィットをシェアしようと言うと、改善提案連鎖になっていくんですね。

 そういう日本の伝統的な、企業の現場のいい気風というのですか、これをしっかりブラッシュアップしていくというのが、今までないがしろにされていたけれども、競争力に極めて大事な部分ではないかというふうに思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 大臣が今おっしゃっているチームプレー、日本が国際競争の中で勝つためには非常に重要であると。私も、大臣の今の御発言の中でおっしゃっていただいたことで、さらに、ああ、そうなんだなというふうに理解を深めたところでございますが、このチームプレー、いわゆる国際競争力の強化のために、今労働分配率がどんどんどんどん低下してきているという実態があると思いますが、これはプラスに働くと思いますか、マイナスでしょうかね。大臣、どうですか。

甘利国務大臣 よく精査をしていかなければいけませんが、一般論として言えば、分配率が下がるというのは、働く側のモチベーションが落ちるわけでありますから、プラスには働かないと思います。

鷲尾委員 国際競争力の中ではやはり利益を出さなきゃいけない。利益を出すためには、ある程度人件費を抑える、外注費を抑える、いろいろなことでコストダウン、それで利益を確保しなきゃいけない。利益を確保することが国際競争力につながるんだというような意見がありますけれども、大臣、この意見についてはどう思いますか。

甘利国務大臣 利益を上げなきゃいけない、これは、企業ですから、企業が利益を上げなかったら存在意義がないのでありまして、その利益を上げることに参画した人たちに、どう貢献度に従って分配をするか、そこが大事だと思います。

鷲尾委員 利益というのは、当然税引き後利益ということなんでしょうけれども、なかなか人件費等々、人件費、外注費というのは経費ですから、税引き前の部分で、当然売り上げからマイナスする部分でありますから、利益だけ追っていって、先ほど申し上げたように、それが株主配当なり役員報酬なりに帰着してしまうということになると、それこそ国際競争力という面ではなかなかうまくいかない。でも、やはり利益を確保しないと、それこそ外国人株主も多いですから、なかなか市場として、企業として評価されないというところが今非常にジレンマとなっているんじゃないかなというふうに思うのでございます。

 ちょっと質問をかえまして、産活法の中で、サービス産業における生産性の向上というのを目標とされておると思いますが、このサービス産業の生産性の向上というのは、先ほど大臣も、太田先生からの質問で、いろいろITの活用めいた話を御答弁なさっていたと思うんですけれども、そういうことによって、結局、失業率というか、雇用が逆に守られなくなるという側面もあると思うんですけれども、大臣はこういう部分についてはどういうお考えをお持ちですか。

甘利国務大臣 例えば、ITを導入して、仮にその分だけ人が要らなくなった、そうすると、それは雇用という視点からいうとマイナスに働くではないか。それは、その局面だけ見ればそうかもしれません。今、日本は、中小企業の数が四百三十万です。ついこの間までは、私の記憶だと四百七十万と言っていたんですね。今、廃業率の方が開業率を上回っていて、日々、会社の数が減っているわけなんです。

 大事なことは、どうやって起業促進をしていくか。基本的には、労働力人口は減っていく、将来は減っていってタイトになっていくんだという将来像が出されているわけでありますから、いかに労働力を確保していくかというのが中長期的には大変なことになってくるわけでありますが、短期的にそういうITを導入して人が要らなくなった、仮にそういう事態が生じたときに、それをしっかり吸収していく企業政策がなければいけない。そこで、ベンチャー育成を初めとする各般の政策で廃業率を開業率が上回るようにしていく政策が大事だと思っております。

 今までも、一円起業、最低資本金の制約を取っ払って、だれでも業を起こせるというようにさせた。それが大きく育ってきた企業もありますし、その結果、雇用を大分支えてきているということもあります。あるいは、事業プランを担保にお金を貸してあげる、そういう新しい融資制度等々、今までもやってきましたけれども、これからも再企業化をするための金融政策等々、あるいは従来の個人保証とか不動産担保に過度に依存しない新しい担保融資政策を推進することによって、受け皿をたくさんつくっていくということを通じて、生産性を上げる……(発言する者あり)

 ちょっと、私、言い間違えましたか。廃業率を開業率が上回る、正確に言ったはずですけれども。企業の数を多くするということですね、そうお聞きになっていたと思うんですが。要するに開業率を大きくする、企業の数をふやしていくということですね、受け皿をふやしていくということであります。

 それらを通じて、競争力の向上と雇用の安定が両立するように取り組んでいきたいと思っております。

鷲尾委員 大臣のおっしゃっていたとおり、これは、サービス産業の生産性の向上を目標とする、一たん目標にしたときに、これは諸外国のデータとも重ね合わせてみればわかると思うんですけれども、失業率が当然上がってくる。当然と言ったら語弊があるかもしれません、それは上がってくる推測も合理的にはできるだろうという話だと思います。

 では、この失業率をどう吸収するか。開業率を廃業率よりも上回らせるような政策が必要だという話が今ございましたが、今回提出されている産活法ほか、三法は当然、このサービス産業における生産性の向上というのを目標に挙げているわけですから、一つの法案の中じゃなくてもいいですけれども、では、そうじゃない手当てとして、やはり開業率を廃業率より上げるんだよ、失業率はどれぐらいになってしまうのかとか含めて、ある程度の予測とかというのは政策的に議論されてはおるのでしょうか。

山本(幸)副大臣 失業率は、ミクロでいろいろ、ある分野の就業とかそういうことで議論できますが、基本的には、失業率全体というのはマクロ経済政策で決まるというように考えております。

 したがって、各分野で生産性の向上というのをミクロ政策でいろいろやったとしても、マクロ経済政策運営がうまくいけば失業率は下がってくる。これは、アメリカのこれまでの十五年間の例を見れば、サービス産業を含めて徹底して生産性の向上をやっているわけでありますけれども、ITを活用してどんどんやっているわけでありますが、全体としてのマクロ経済運営がうまくいけば失業率はどんどん下がってきたということでありまして、この点は、やはりちょっと分けて議論すべき問題だというふうに考えております。

鷲尾委員 失業率についてはマクロ経済政策にかかっているという話をおっしゃっていたんですけれども、やはり、生産性の向上という目標を立てている以上、そういう失業率が上がるかもしれないという懸念は十分にあるわけですから、大臣がおっしゃったように、開業率を高めるという政策もより積極的にやっていかなきゃいけないというふうに思うわけでございまして、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、マクロ経済政策にその責めを負わすということは、やはり経済産業を所管するつかさとしてはちょっと検討不足なのかなというふうに思わざるを得ないわけでございます。

 ちょっとまた話をかえますが、サービス産業の生産性ということで、過去、俗に言う規制に守られていない輸出産業、国際競争を行ってきた産業については生産性の向上が著しく認められている、諸外国の生産性の向上に対して、日本のそういう輸出産業についての生産性はかなりの程度上がっているだろう。ところが、やはりそれに比して日本のサービス産業は生産性が低いという言い方がされるところでありますが、では、サービス産業が今生産性が低いという現状、これは何によるというふうにお考えなんでしょうか。原因ですね。

鈴木政府参考人 先生御指摘のように、サービス産業は、普通の製造業に比べて生産性が日本は低い。例えばアメリカに比べても、六割とか七割とかいうふうに低いと言われております。

 その原因と考える一つは、やはり新規産業が非常に多いということで、サービス業、例えば育児支援産業とか、それからさっきもお話に出ましたけれども、業務支援サービスとか、最初はやはり中小企業の段階で入ってくる場合が多いので、そんなに大きな大企業ではないということで、まだまだサービス産業のためのベストプラクティスというものが普及していないということもございますし、それから、諸外国、特にアメリカと比べまして、ITの利用度も非常に低い。それから、サービスに関するいろいろな研究開発投資というのも、アメリカはかなり進んでいるんですけれども、日本はそういう面でも非常におくれている。それから、一番大きいといいますか、規制緩和もおくれている。したがって、競争が十分されていない分野もあるというようなもろもろの原因があって、日本のサービス産業の生産性は低いというふうに言われていると理解をしております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 それでは、またちょっと質問をかえまして、最近、地域間格差というのがよく言われておるところでございます。

 この地域間格差というのは、要はの話ですけれども、住まう地域によって産業が当然あるなし、多い少ない、いろいろありますでしょうから、家計の所得も違いがあるということだというふうに思うわけですけれども、この地域間格差を是正するといいましょうか、先ほども申し上げましたとおり、基本認識といたしまして、ある一部の高所得者に産業政策の恩恵が行かないように、ある程度全体での水準をアップする、そのことが日本全体のイノベーションにもつながる、そういう基本的な視点に立って考えますと、ある意味、こういう地域間の家計所得の格差是正ということも考えていかなきゃいけないと思うんですが、そのためには何が必要だというふうに思われますか。

甘利国務大臣 地域にある格差の原因というのは、そこの地域がどういう産業に依存しているかと大きくかかわりがあります。一次産業、農業や、あるいは建設業、公共事業依存の地域は、現状、かなり疲弊をしております。一方、好調な産業、例えば自動車産業集積があるとか、電子・電気でも好調な分野の、高付加価値製品をつくり出す産業集積がある、そういうところは県民所得も高いですし、有効求人倍率も高いということになります。

 地域の格差を是正するのに、一つは、埋め戻す方式、税の再配分というのがあります。交付税なんというのはその最たるものだと思いますが、もちろんそれも大事だと思いますが、私が日ごろ申し上げているのは、その地域自身で雇用と税収を生み出す、雇用と所得を生み出す仕組みをそこに根づかせていかなきゃいけないということが大事だというふうに思っております。

 それには、そこにある地域資源を見出して、サービス、商品としてデビューさせるような仕組み、企業化をする仕組みをつくる。あるいは、既存の企業の誘致をどう図るか。新しい企業誘致、産業集積システムをつくっていく。これらがその地域の雇用と税収と所得を生み出すというわけでありますから、そういう仕組みを地域ごとに根づかせていくというのが、抜本的に地域間格差を是正していく方途だというふうに思っております。

鷲尾委員 大臣、地域に根づかせるということも非常に重要だと思いますし、法案を見ていても、その意思が非常に強くあらわれているなというふうに実感するわけでございますけれども、私思いますのは、それだけではなくて、都市間で、当然、東京に本社がある企業があって、その下請として地方の企業があって、さらにその孫請としてその地域の別の地域の企業があってというような、そういう元請と下請の構造が一つあって、その中で、中小企業、いろいろな技術があって、世界的にもいろいろな評価される技術があるわけですけれども、それがある意味正当に評価されていない、そういう局面もあるのではないかな。

 そのことによって、その地域の、変な、簡単な言い方をして申しわけないですけれども、下請たたきみたいなことが行われているから、大都市には富が集まって、逆に地域に、そういう部分では、企業はあるけれどもいつも赤字経営で、技術はあるけれども赤字経営でというような側面もあるのではないかというふうに思うわけです。ですから、日本のイノベーションですとか技術開発能力とか、そういうことを考えると、やはり一極集中ではこれもまたいけないのかなというふうに思います。

 ですから、何を申し上げたいかといいますと、そういう元請、下請のような構造の中で、技術が正当に評価されていない、中小企業の技術が評価されていないんだという現状認識を、大臣、今どういうように把握されているのかということと、私の言っていることにある程度御理解いただけるのであれば、こういうことを是正するために、そのことがイノベーションにつながっていくというふうに私なんかは思っているわけですけれども、そのことについての大臣の御意見を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 税金をたくさん払ってくれる本社が東京にあって、その本社がもうかるために苦労している下請企業が地方にあって、そこは元請ほどもうからないから、もともと、税が集まる、その大もとの配置が地域間格差を生んでいる、それは一側面だというふうに思います。なおかつ、実は、下請の中小企業の技術があらばこそ元請の製品の優秀性がある、それも事実であります。

 しかも、下請中小企業の技術の優秀性が後発国からねらわれているのが今でありまして、元請の一次下請が仮に株式を公開していたとすると、それを買い占めるお金は大してかからないということがありますし、あるいは、上場していないにせよ、下請の企業の優秀な技術者がリタイアしたら、早速ハンティングで後発国が持っていっちゃった、洗いざらい技術を吐き出させられた、こういう技術流出の危機感は極めて強く持っております。

 警鐘を鳴らしていることも事実でありますし、経済界、経団連でも、元請企業自身がそういった技術やノウハウの流出の防衛策をどうとるかということを今必死に思い悩んでいるところでありますから、そういう中小企業の技術が流出しない、中小企業の技術があらばこそ元請企業の製品の優秀性があるという認識は、ここでかなり強くなってきているんだと思います。

 法律の整備も大事であります。もちろんそれはやっているわけであります。重要な技術がMアンドA等に遭って外に持っていかれないかどうかをもう一回しっかり検証しなきゃなりません。アメリカは、エクソン・フロリオという条項で、およそもう全部に、安全保障という観点から投網をかけちゃうんですね。それで、必要なものに全部、いろいろな対応ができるようになっている。ただ、これはちょっとやり過ぎだという批判があります。

 日本も、安全保障とかライフラインのような地域経済にとってのインフラのようなものについてはちゃんと制約をかけることができますけれども、新しい安全保障の視点で、新素材とか部材、それに網がかかっていないのについては大丈夫かという問題提起がありますから、そこは今、見直し作業をやっているところであります。これは法律や行政の対応の枠内の話でありますから。

 もう一つは、やはり企業マインドといいますか、重要な中小企業の技術を大企業がしっかり評価しないと自分にはね返ってきますよという一種の企業意識の啓蒙、文化をつくっていくということが大事だと思っております。

 元請と下請とのあらまほしき姿ということで、今回、底上げ戦略の一環として、適正な下請企業に対する対応というのをガイドラインを今つくらせているわけであります。そういうもろもろを通じて、大企業の競争力の源泉は関連企業の優秀性にあるという認識をしっかりと啓蒙していきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 ぜひ大臣、その啓蒙活動を含めて、これは私、それこそ市場原理に任せていきますと、逆にうまくいかないんではないかな。ミクロでは利益が出て、いいよという話になるけれども、ではマクロで、国際競争力だ、イノベーションだという話をしたときに、かなりミクロとマクロでそごが生じるんじゃないかなというふうに思う側面でございますので、そういう面こそ、若干の政治の関与が必要になると思いますから、その点についてはぜひとも積極的に取り組んでいただけたらというふうに思う次第です。

 続きまして、産活法の話じゃないんですけれども、地域産業資源の法律の話で、今回、ファンド形式で、スタートアップ応援型とかチャレンジ企業応援型ということで、いろいろそのスキームをつくっていらっしゃいますけれども、このファンド的なスキームを取り入れた理由というのは何なんでしょうか。

甘利国務大臣 予算の金額が制約をされているものでありますから、使えるものは全部使おうと思いまして、中小機構の高度化資金が返ってきて、従来のニーズがかなり落ちているわけです。これをどうやって財務省にとられないで、こういうの、議事録に残るとまずいのかな……(鷲尾委員「正直にどうぞ、大臣」と呼ぶ)中小企業のために活用できるかということを頭をひねって、ファンドという、二つのファンド、シーズを事業化していくスタートアップと、ある程度物になりそうなものをさらに大きく育てていくという二つのファンド形式をつくりまして、これに都道府県、市町村も直接間接の関与、あるいは地域の金融機関も参画をしてもらって、いいものに育てたいというふうに考えていたわけでございます。

鷲尾委員 大臣、誠実な御答弁をありがとうございます。道理で私、このスキームは、リスクをとりたくない地域の地銀さん、まだ、それこそ不良債権、全国的に見たら水準高いわけで、そういう地銀さんの信用力というのをある意味補完するような格好で、結局信用補完じゃないかというような認識を持っていたものですから、この制度の舞台裏がわかって非常に理解が深まったところでございます。

 地域資源の活用法なんですけれども、これは、国が基本方針を定めて都道府県に構想をつくらせるというような制度設計になっておりますが、国が基本方針を定めて地方がそれにのっとるというような方式ですけれども、そうじゃない、もっと、それこそ地方が、地方と言ったらあれですけれども、都道府県が逆に主導的なことを構想するというような制度設計は考えられなかったんでしょうか。

高木大臣政務官 今回の、都道府県と市町村などが共同で策定する基本計画でございますが、ここは、地域におきまして戦略的に集積を図るべき業種を明確にしました上で、地域の強みや魅力を具体的に記載していただくようになっております。いわば、地域でつくっていただく地域の企業立地マニフェストというふうにお考えいただければと思います。

 例えば、既存の産業集積や伝統的な技術、豊富な地下水や優良な港湾といったような地域の資源は、まさに地域の個性と強みそのものでございます。地域におきまして、活気あふれる豊かな産業集積形成を実現するために、地域の資源を有効に活用した特色ある戦略をアピールしていただくことが効果的であるというふうに考えております。

 あくまでも、本法案は、地域の知恵とやる気を国が後押しさせていただく、そういう内容でございます。

鷲尾委員 今の話は立地法の話の方ですか、御答弁いただいているのは。(高木大臣政務官「はい」と呼ぶ)

 地域資源の活用の方で、要するに、今は国が基本方針を策定しますよという話があるんですけれども、基本方針というのがどこまでの範囲かというところは、正直ちょっとわからないところもあるんですけれども、地域が逆に発案するという形の方がいいのではないかなという疑問があったものですから、御質問させていただきました。

甘利国務大臣 県が主体的に、我が県内の資源はこういうものですということを精査するわけですね。その過程において、市町村とか、あるいは商工会、商工会議所からしっかり意見聴取をします。漏れなく我が県の強みというものを洗い出すという作業をやります。そのときには、今申し上げたように、県が独善的に指定するものじゃなくて、地域の経済団体ともよく連携をとります。

 なお、例えば、企業の側から、指定されている中のこの枠組みを使いたいという申し出をするわけですね。その際に、実は、この中に入っていないけれども、リストアップされなかったけれども、もっとすごいのあるよ、それは追加も可能だと思います。ですから、企業の側で地域の、これぞ地域資源と思っているものは、それから後どんどん提案をしていただければいいんじゃないかと思っております。

鷲尾委員 柔軟に対応するというような理解でよろしかったでしょうか。

 この地域資源の特定という話が、全体としてこの法案は、新事業創出の目標は五年間で一千件ということの創出を目標とされているわけですけれども、地域資源の特定についてはどれぐらいを見込んでおるのでございますか。

石毛政府参考人 本件の御質問は、本日、三回目ぐらいいただいておりまして、まさにそういうところが疑問になる点だろうと思っております。

 ただ、事前に、これを何件、こういう時期にできるんだということを答えるのはなかなか難しいかなというふうに思っております。

 ただ、今大臣が申し上げましたように、地域の各県が指定をしていくわけですから、その中で、市町村、商工会議所、それから企業者、そういう方々の意見をよく聞いて、拾い上げる精神といいますか、はじき飛ばすのではなくて、そういうような考え方で、できるだけこういう地域資源の活用というのを国民的な盛り上がりにしていきたいというふうに思っております。

 今現在は、そういう地域資源の法律上の定義に当てはまらないような段階ではあるけれどもというようなものについても、相談を受けながら、その中で、地域資源として法律上の支援措置も受けられるような、そういう磨き上げを一緒に手伝っていけるような形にしていきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 済みません。ちょっと重複したようで申しわけないです。

 それでは、地域資源の話ですけれども、新事業創出というのがあります。地域資源を活用するというスキームもあります。一方で、産活法の方でサービス産業の生産性の向上という目標がある。これは関連してくるものなんでしょうか。リンクが図られているんでしょうか。

 要するに、三法密接、一体不可分でイノベーションを起こすという話だと思うんですけれども、ここの地域資源活用プログラムを見ていると、やはりものづくりの技術を想定した格好になっているのではないかなというふうに思うわけでして、サービス産業の生産性の向上という意味において、どういうふうに寄与するのかというところをお聞かせ願えたらと思います。

甘利国務大臣 経済成長戦略大綱関連三法でありますので、どう経済成長を確保し、十年間実質成長二・二を視野に入れていくかということに資する法律であります。産活法は、従来の事業再編から、さらにイノベーションという視点を加えて成長させていこうというための法律改正を行ったわけであります。特に生産性の低い分野の生産性を上げていくということで、経済成長を実施する。

 それから、もちろんそれも地域とかかわりがあるんですが、特に地域に焦点を当てているのは、地域資源とそれから企業立地産業集積新法でありまして、そこでは、地域の底上げ、地域が自律的に成長できるような基盤を整備していくということでありまして、地域の振興なくして日本の成長なしというのもまた事実でありましょうし、生産性の低い部分の向上なくして成長なしというのも事実だと思っております。

 また、サービス産業というのは中小企業が多くて、地域に割と偏在しているという形になりますから、サービス産業の生産性を上げるということはそのまま地域経済にも資するという意味で、いろいろ絡んでくるんだと思っております。

鷲尾委員 地域資源活用法との関係でいうと、ちょっとわかりにくい側面もあるなと思うんですが。では、お願いします。

石毛政府参考人 大臣が大体お答えいただいたとおりですが、一点、テクニカルな点ですが、補足させていただきたいんです。

 地域資源活用の促進法の中では、先生、先ほどから、多分イメージとして描いていらっしゃるのは、ものづくりの点に置いているんだろうと思うんですけれども、見ていただきますと、産地の技術、それから農林水産物の活用、それからもう一つ重要なのは、地域の観光資源、そういったようなものを活用して取り組んで広めていくというのも重要なポイントでございます。

 例えば、赤福で有名なおかげ横丁というのがございますけれども、あそこは、観光資源と物の販売というようなことを一緒にリンクさせながら進めている。そういうようなケースはほかにもたくさんございますし、温泉をベースにして、健康プログラムと組み合わせて新しく売り出してお客さんをふやしている、そういう形でございます。

 この考え方は、パイを大きくすることによって生産性を向上していくということにもつながっていくものだというふうに考えております。

鷲尾委員 ありがとうございました。

 続きまして、例えば、私の地元は、この間安倍総理がお見えになられた新潟県の燕市というところなんです。

 この燕市というところは、実は大分二極化が進んでいる地域でございまして、突出した企業というのはやはりあります、ある程度存在するんですが、その突出した企業が、これは燕に限らないと思いますけれども、地元の牽引役というんですか、先ほど大臣がおっしゃっていた、地域経済を活性化する、底上げするために地域資源は重要だという話をされていました、先ほどの長官のお話で赤福の話が出ました、そういう局面もあろうかと思うんですが、一方で、当然、突出した企業というのがあって、その突出した企業というのは、地元との取引関係よりも、むしろ全国各地、全国各地どころじゃなくて全世界的に、それこそ販売網から原材料調達網を含めて、いろいろな網を張っているわけでして、地域資源を活用するということを眼目としていながら、地域資源で事業が立ち上がったら、これは地域に余り貢献しない産業であるという可能性もあるのではないかというふうに思います。

 こういうような見方について、大臣、どう思われますか。

甘利国務大臣 地域の資源を活用して地域に、ちょっと御質問の意味がよくのみ込めていないんですが、少なくとも、地域資源というのはそこの地域に独特に存在するものですから、それを商品化、製品化、サービス化、あるいは看板にして業が立ち上がるということは、直接間接、その地域に恩恵がもたらされるというふうに承知をいたしております。

鷲尾委員 時間が来ましたので、最後の質問にさせていただきたいと思うんですが……(発言する者あり)民主党の時間内なので。最後に一問だけ、済みません。

 地域に産業を集積するという話がありました。地域に産業を集積するということで、いろいろ産業集積を図る立法をされているんですけれども、集積された産業が、例えばキヤノンの宇都宮の工場の話ですとか大分の工場の話ですとか、偽装請負、シャープの亀山工場の話もあります。工場はできて雇用は確保されているんですが、その雇用の状態が本当に単純労働であったり生活の水準の向上が望めないような話だと、これまた困ると思うんです。

 この点について、大臣、ちょっと最後にコメントをお願いします。

甘利国務大臣 法律に違反するようなことがあれば、これは是正をするというのは当然のことであります。

 同時に、先ほど来申し上げていますが、生産のフレキシビリティーを確保していくという意味で非正規は大事でありますけれども、あくまでもそこの視点は、安い、都合のいい労働力だという視点ではなくて、きちんとこういう派遣や請負ができている法体系の趣旨をしっかり理解してもらって、働く者にとっても使う側にとってもいい制度になるような理解を増進させたいと思っております。

鷲尾委員 ぜひ各省庁とも連携をとりながら、地方の生活水準向上に邁進していただきたいというふうに思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

上田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

上田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として中小企業庁事業環境部長近藤賢二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 質疑を続行いたします。三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男でございます。

 久しぶりに経済産業委員会で質問をさせていただきます。

 きょうは経済成長戦略大綱関連三法案につきまして質問をさせていただきますが、その前に、先般も、この関連三法案の代表質問の際にも近藤洋介議員からお尋ねがありました政府研究開発投資についてお尋ねしたいと思います。

 安倍総理大臣は、経済の話になりますと、イノベーションによる経済成長ということをしきりに強調されています。

 先般の施政方針演説の中でも、今こそ、日本経済を中長期的に新たな成長の舞台に引き上げていくことが重要、私のリーダーシップのもと、革新的な技術、製品、サービスなどを生み出すイノベーションとオープンな姿勢により、成長の実感を国民が肌で実感できるように、新経済成長戦略を力強く推し進めますと述べられています。

 まさに施策を力強く推し進めていただいて、成長の実感を国民が実感できるようになるのであるならば結構な話だというふうに思います。

 そこで、まず、政府による研究開発投資額でありますけれども、科学技術関係予算、平成十八年度の科学技術関係予算の総額は三兆五千七百四十三億円ですけれども、平成十九年度の予算は、平沢副大臣にきょう来ていただいておりますけれども、平沢副大臣、幾らでございましょうか。

平沢副大臣 平成十九年度の当初予算における科学技術関係予算は約三兆五千億円でございまして、そのうち、科学技術振興費は約一兆三千億円でございまして、科学技術振興費は対前年度比約一・一%増となっております。

三谷委員 きょうは、本当は高市大臣を要求させていただきました。委員会で出席できないということで大変残念なのですけれども、平沢副大臣に来ていただきました。

 第三期科学技術基本計画で、科学技術関係予算を毎年GDPの一%を目標に、五年間で二十五兆円の研究開発投資を打ち出しています。閣議決定をされたものです。平成十八年度の科学技術関係予算の総額は三兆五千七百四十三億円、そして、今お答えになられました平成十九年度の予算は三兆五千百十三億円というふうに聞いています。減っています。減っています。

 今、平沢副大臣、高市大臣のあの際の答弁、科学技術振興費は増額されているんですよというお話がありました。しかし、科学技術関係予算は減っているんですね。減っているんです。十八年度も十九年度も全然目標に達していない。年平均にしますと、だれでもわかる話ですけれども、五兆円であります。加えて、十八年度は七割しかない。七割しかなくて、さらに十九年度は減っているんです。達成するつもりがあるんでしょうか、お聞かせください。

平沢副大臣 まず、御声援いただきまして、本当にありがとうございます。

 確かに、平成十八年度から五年間で二十五兆円ということで閣議決定しているわけですから、このままいきますと大変に厳しいことは間違いないわけです。

 しかしながら、科学技術の振興といいますかイノベーションの創出というのは、資源の乏しい我が国にとっては極めて重要であるわけでございまして、この科学技術振興費、確かに予算額として極めて厳しい状況にあるわけでございますけれども、まだ残された、五年間の残りがあるわけでございますので、私たちは、その間に何としても二十五兆円、これを確保しなければならない。

 ですから、今後、予算の無駄を省いて、あと予算の重点化を図りつつ、必要な研究開発には所要の予算を確保しまして、第三期の基本計画に沿った着実な施策の推進に全力で取り組んでいきたいと考えております。

三谷委員 この話を私も去年の十月二十五日、質問に立たせていただいたときにさせていただきました。甘利大臣からもお答えをいただきました。

 あえてここでもう一度問わせていただくのは、先般の高市大臣の答弁でありますけれども、私もあきれました。もう言っていることが言いわけ以外の何物でもありません。(発言する者あり)まさに開き直りであります。今の平沢副大臣のお答えはまだ誠実であります。

 簡単に御紹介をいたしますけれども、名目成長率三・一%という前提のもとに算出されたものだという言いわけであります。言いわけになりません。非常に厳しい財政事情において、科学技術の振興が資源の乏しい我が国にとって極めて重大であるという認識のもと、先ほど副大臣お答えになられました、話をすりかえて、科学技術振興費は毎年増額されていますというふうに、聞かれてもいないことに話をすりかえておっしゃっておられます。全く話にならないというふうに言わざるを得ません。

 もう一度聞かせていただきますけれども、今も、何としても確保したいと平沢副大臣はおっしゃいました。本当でしょうか。もう既に二年間で、本来なら十兆円のところが七兆円しかないんですよ、七兆円しか。よほどここで腰を入れない限りは、先ほど重点化というふうに言われましたけれども、こういう話も随分と聞き飽きています。意気込みを示すために、もう一度その意気込みを聞かせてください。

平沢副大臣 五年間で二十五兆円という閣議決定をしたわけでございまして、私は、閣議決定というのは極めて重いものだと思っております。

 確かに、二年間、まだ、本来なら十兆円に平均してなるべきところ七兆円ですから、極めて目標達成にはほど遠いなという感じがしないでもありませんけれども、科学技術の振興というのは極めて重要なことでございますので、私たちは、この閣議決定の重みを考えて、しっかりと全力で取り組んでまいりたいと考えております。

三谷委員 平沢副大臣のおっしゃるとおりで、閣議決定というのは重いんです。重くなければ政権の意味なんてありません。おっしゃるとおりで、私もそのとおりだと思いますけれども、科学技術振興、それも、後でも述べさせていただきたいと思いますけれども、牽引すべき政府研究開発投資がきちんと引っ張っていかなければ、イノベーションなどという言葉を総理があるいは内閣が使うということそのものがおこがましいというふうにすら思っております。おっしゃるとおりです。ぜひとも、先般の高市大臣のような意気込みも何も感じられない、そんな話ではなくて、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 あえて申し上げますけれども、安倍総理は、イノベーションで経済成長ということを何度も強調されています。そして、新経済成長戦略、経済産業省がまとめられました。この中でも、世界のイノベーションセンターに我が国をしていきましょうということが強くうたわれております。

 きょうも、関連三法案でありますけれども、経済成長戦略大綱においても、まず最初に書かれていることは、「第一、国際競争力の強化」、そして、その最初に「科学技術によるイノベーションを生み出す仕組みの強化」がしたためられているんです。実は、工程表でも最初に今申し上げた科学技術基本計画のことが書かれているんですよ。

 そのイノベーションを生み出す仕組みということでは、先ほども申し上げましたように、まず、政府の研究開発投資が牽引車になって引っ張っていかなければならないというふうに思います。もちろん、民間産業界が七割というふうに大きな部分を占めています。大学や公的機関のこともあります。だけれども、この政府研究開発投資額、今はいかにも貧弱でありますし、牽引していくのはまさにこの政府による研究開発投資だというふうに思います。

 そして、申し上げたいのは、この科学技術基本計画ですけれども、第一期五年間で十七兆円、第二期で二十四兆円、第三期、十八年度からのこの五年間、二十五兆円、特段大きいものですか。前期、五年間二十四兆円です。ここで大きく踏み出して、途方もないような投資をしようという話ではありません。それすら、先ほど申し上げたように、七割しか達成ができていない。

 前の質問のときにも、アメリカ・ブッシュ大統領が、去年の一般教書演説の中で、アメリカン・コンペティティブ・イニシアチブ、十年間で総額千三百六十億ドルの研究開発投資、これを打ち出して着実に実行されています。この話を持ち出したのは、アメリカが大きく踏み出しましたよということを強調したいからです。もちろん、踏み出しの大きさというのは、大統領制のアメリカと議院内閣制の我が国は違うということを考慮に入れても、あるいは、高市大臣も言いわけのようにおっしゃっておられましたけれども、厳しい財政事情と財政再建のこともある、こともあると思います。

 それらを百歩譲ったとしても、例えば、一番申し上げたいのは、総理の肝いりなんです、イノベーションで経済成長というのは。何かを削って、イノベーションを生み出すために、技術革新を生み出すために、政府研究開発投資の増額に何か一歩でも踏み出そうというような形が少しでも見えますか。見えないと思うんです。見えないと思うから、ここであえて言わせていただいているんです。

 再チャレンジ支援であるとか、頑張る地方応援プログラムであるとか、何か言葉として受けのいいような、かけ声だけのそういう話というのはつくるんですけれども、まさに、この研究開発投資のように、未来に向けて大きな効果が期待できそうな本当の中身、真水の中身、施策、予算措置というもの、その踏み出しというものが全く見えてこない、大変残念なことだと思います。

 経済産業大臣に、あえてお伺いをいたします。文部科学大臣と並んで経済産業大臣、特に経済産業省の担うこの政府研究開発投資、科学技術関係予算、大変大事な部分だというふうに思います。去年の予算額が経済産業分幾らだったか、ことしが幾らなのか、お答えをいただいて、大きく減っているというふうに聞いております。どのようにお考えなのか、どのように今後取り組んでいくのか。十九年度予算は成立したばかりでありますけれども、どういうおつもりなのかということを、大臣、聞かせてください。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、我が省に限って申し上げても、十八年度予算額が五千五百八十一億、そして十九年度予算額が五千三十三億であります。御指摘のとおり、減っているわけであります。日本の成長の生命線というのは技術開発でありますから、この予算を充実させていくというのは、御指摘のとおり、極めて重要なことだというふうに私も思っております。

 閣議決定で、政府は五年間二十五兆円、年平均にならせば五兆、もちろん予算規模が大きくなるに従って全体が大きくなるということを想定しているにしても、この直近の数字でいくと、目標はどうだろうかと心配になるのは当然であろうと思います。

 財政再建に本格的に踏み出した中で、めり張りをどうつけるかということについては、相当知恵を出さなきゃいけないというふうに思っておりますし、同時に、予算の質をいろいろ考えていかなきゃならないと思います。量もさることながら、質をどうよくするか。その質の中には、民間資金をどう呼び込むかということも一つのテーマだというふうに思っております。

 日本の研究開発、科学技術の関係費も、あるいはODAもそうであるべきだと思いますが、国がなせる予算のキャパシティーというのは限界があります。民間経済のキャパはこれよりはるかに大きいわけでありますから、民間をどう呼び込むかということもあわせて考えていくべき。日本のODAと欧米のODAを比較しますと、何が一番違うかというと、民間投資を呼び込むという点が違うわけであります。この日本モデルに倣って、科学技術関係費も民間資金をどう呼び込むかということを考えていくべきだと思います。

 予算が制約されている、その中でめり張りをつける。その張りの部分がこの科学技術関係費でありますから、それは精いっぱい努力をする。と同時に、民間資金を呼び込む仕組みをどうつくるか。

 産学官連携というのは、おくればせながら、アメリカを追うように日本もやってきました。新しい施策では、これと市場との横ぐしを通すということであります。基礎研究に立ち返るということと、そして民間を呼び込むというこの二つが、市場との横ぐしでつながっていくように努力をしていくということであろうというふうに思っております。

三谷委員 大変残念でありますけれども、今の大臣のお話は、私が問うたことのお答えになっていないというふうに思います。

 財政再建のことは、先ほどもわざわざ申し上げました。踏み出しているんですかということをあえて聞かせていただいたんです。そして、予算の質をどう高めるかという話でありますとか、あるいは、今大臣もしきりに強調されました、民間資金をどのように呼び込んでいくのか。私は大事なことだと思います。

 ただ、さっきも踏み出しという言葉を使わせていただいたのは、そういうことをここまで十年以上、十数年にわたって、ずっといろいろなぜい肉もそいできたんじゃないですか。そういうことをずっと、財政事情が逼迫する中で考えてきたんじゃないですか。それで、あえて総理が強調されていることを引き合いに出しながら、イノベーションで経済成長ということをしきりに言われているでしょう、踏み出しているんですかということを問わせていただいた。

 今のようなお答えだったら、私は、安倍総理にしても、あるいは安倍内閣にしても、甘利経済産業大臣にしても、施政方針演説の中でリーダーシップをとってとあえて言われました。イノベーションで経済成長だとか新経済成長戦略を力強く推し進めていくとかいうような言葉を使わないでいただきたいと思います。使って強調するということは、今までやってきたことよりも一歩踏み出して、だから、さっきも申し上げました、安倍内閣にかわって三・六兆だったものが三・五兆に政府研究開発投資が横ばい、下がる、こんな話なわけでしょう。

 どうするんですか。踏み出すんですか、踏み出さないんですか、その意気込みを聞かせていただいているんです。聞き飽きた話は私は結構だというふうに思います。よくわかっています、そのことは。

 あえてもう一度お尋ねいたします。これからどのようにお考えでしょうか。

甘利国務大臣 量をふやすということについても大事ですけれども、再度申し上げますが、質を高める、あるいは経費の中に無駄がないか、これは不断の努力であります。あるいは、税制の整備もそうであります。私自身が研究開発税制を提言した当事者でありますし、それが今施行されているわけであります。研究開発投資がいかに大事かということは、だれよりも知っているつもりであります。

 そういう中で、予算の制約がある。つまり、財政再建は、これとこれは例外ですという以前に、聖域なき財政再建というのを打ち出したわけであります。それぞれ、財政、めり張りの張りの部分の理屈は全部にあるわけでありますから、まず一律に、すべての主張は聖域とはみなさないということでやられている中で、そうやって、どう確保していくかの努力が大事だと思っております。財政再建が大きく踏み出したというその投網をかけた縛りがある中で、どう確保していくかということであります。

 それで、経済産業省分の十九年度の科学技術関係経費が減少した理由の中には、特別会計法制定に伴う経費の見直し等が働いているということでありますから、これは財政の、予算の質を上げるということに資する。今までの効果を引き落とさないでしっかりやっていくということであろうと思います。

 それから、先ほども質という意味で政策を提案しました、イノベーション・スーパーハイウェイ構想というのは、従来の産学官連携の中に市場との対話というのを打ち出したわけであります。しかも、イノベーションというのが既存の技術の改善上にはないということでありますから、基礎研究、科学の原理原則、そこまでさかのぼるということで、従来あり得なかったイノベーション、つまり、改良技術はイノベーションとは言わない、科学にさかのぼる。しかも、市場が何を求めているかを原点に立ち返って新しい道を探るということで、スーパーハイウェイ構想を出したわけであります。その際に、双方向の産学連携を促進するイノベーション実用化補助金というのを新たに創設したわけであります。

 私どもとしては、財政再建という大前提のもとに、どう質の改善を果たしていくかということに知恵を絞っていきたいというふうに思っております。

三谷委員 なかなか、問わせていただいている意気込みといいますか踏み出しの話が出てこないわけでありますけれども、今も大臣のお話の中にございました、特別会計分、電源特会や石特からの部分というのが大幅に減っている。それが、経済産業省分、五百億円分大きく引き下げるそのきっかけになっているということも実はよくわかって、わかった上でお尋ねをしているんです。今も財政事情の話をされましたけれども、苦しい一般会計からでも、大事なことでしょうということを言わせていただいているんです。

 ぜひとも、この特会のことがあったとしても、もちろん、何度も申し上げますけれども、大臣が言われることは私も否定をしているんじゃないんですよ。予算の質を向上しなければいけない、民間資金を呼び込めるようにしなければいけない、それは大賛成ですよ。その上での踏み出しを考えなければ、後でも述べますけれども、実質成長二・二%とか言っていますけれども、牽引役のものがなくて本当に、未来に向けてイノベーションが生み出されなければ、続いていくんですかということを問わせていただいているんです。

 そして、このイノベーションのことでは一点だけ。逆に、これはもう教えていただきたいこともございます。今の大臣のお話の中にもありましたイノベーション・スーパーハイウェイ構想であります。

 ちょっと言いわけのような話で、要は、いろいろな横ぐしを通していく、民間を含めて、全体で十七兆円の研究開発投資、全体をこのスーパーハイウェイをつくって市場化、市場につなげていく、そのための横ぐしを通すというものでありますけれども、そのための、これも、どういうことをやってこのハイウェイができているのかということがなかなか見えないんですが、例えば、前回の私の質問のときにも小島局長が大臣の補足でこのようにお答えになられています。「産学官協働の新産業を創出するような革新的な技術開発や、あるいは産学官の英知を集める異分野の技術の融合とか、あるいは学際的あるいは業際的な研究の促進ということを進めることによって、国全体として質、量ともに研究開発を活性化させるような施策展開をこのイノベーション・スーパーハイウェイ構想のもとに行ってまいる所存」ですとお答えになられています。

 この具体的な施策展開は何でしょうか。

小島政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣から御答弁しましたように、研究と市場との間の好循環を生み出すスーパーハイウェイ構想の具体的施策として、国が行っております先導的研究開発プロジェクトについて、その学際的、業際的、あるいは産学官連携の要素を取り込む、あるいは出口をにらんだ国際標準化、制度改革もビルトインしていくということです。

 例えば、来年度の予算では、がん対策等先進医療技術ということで二十六億円の予算を計上しておりますが、これは文科省、厚労省と連携して医と理と工と薬、こういう異分野の融合をする、あるいは産と学、産官学の融合をするというもの。あるいは、異分野異業種融合ナノテクチャレンジということで十八億円の予算を計上しておりますけれども、これは、材料を研究している大学、公的研究機関それからメーカー、それに加えて、そうした材料を使うユーザーメーカー、そういった異分野、異業種あるいは垂直連携をして行う、かつ、これも経済産業省の関係だけでなく、厚生労働省、文科省あるいはそれに関連する公的研究機関との異業種、異分野、学際的な研究で先導的なプロジェクトを実施するということで、今、計画しているところでございます。

三谷委員 小島局長、もう一回お答えをいただきたいんですが、今お話にありましたナノテクチャレンジ十八億とかというのは私も存じ上げております。要するに、このハイウェイをつくる、例えば、新経済成長戦略の中にも書かれています、画一的な公的研究機関の予算制約とか、あるいは、これもよく使われます政策資源の集中とか、そのことに不可欠な制度や仕組み、それを改めてこのスーパーハイウェイをつくるということがうたわれているわけです。

 だから、どういう取り組みをしているんですか、何が変わったのですか。何が変わって、スーパーハイウェイで横ぐしが刺されて市場化につながるんですかということを問わせていただいているんです。お答えください。

小島政府参考人 お答え申し上げます。

 スーパーハイウェイ構想は幾つかの要素がございまして、先ほど大臣も申し上げましたように、基礎にさかのぼった研究とか異分野の融合研究を行う、それを市場に結びつける、その先駆けとして、先導的なプロジェクトというのを先ほど御説明したわけですけれども、それに加えて、それぞれのプロジェクトの中で、一つは、御指摘がございました研究開発過程におけるいろいろな制度改革、研究開発独法がいろいろな制約を受けているので長期にわたる研究開発がやりにくい、あるいは予算の使い勝手が悪いということがございますので、これは財務省あるいは総合科学技術会議と相談して、一歩一歩進めているところでございます。

 それから、出口にかかわる制度の問題、例えば、先ほどがん対策プロジェクトを申し上げましたけれども、薬事審査の問題があって、これも薬事審査の関係の官民対話あるいは三大臣会合で、今、薬事審査機能の拡充強化ということで、そういう意味での制度改革が進められつつありますし、ナノ分野でございますと、これは安全性の確認とかそういうことも必要でございますので、ナノテクに伴うリスク評価、それを開示する制度ということあるいはそのガイドラインをつくる、そういうことも進めつつあるところでございます。

三谷委員 よくわかりました。使い勝手の悪い予算を使いやすいようにするということはいいことでもありますし、今御説明をいただいたこと、それは結構なことですから、どんどんやっていただきたいと思います。

 先ほどのお話、大臣のお話と同様でありますけれども、限られた資源を選択して重点的に集中させていく、効果を上げる、質を高めていく。さまざまな仕組みを、まさにこのスーパーハイウェイ同様に改めていくことは大変大事なことだと思います。

 だけれども、これを例にとって申し上げますけれども、どんなに立派なスーパーハイウェイができたとしても、そこにたくさん車が走らなければ意味がないんです。先ほどの話に戻りますけれども、たくさん車を走らせるために、科学技術関係予算、政府研究開発投資、まさに牽引車だというふうに思いますので、どうか踏み出していただくように再度お願いを申し上げます。

 話をかえさせていただきます。

 次に、経済成長戦略大綱のことをお尋ねさせていただきます。

 この大綱の中に、ずっと気になっておったんですが、「今後十年間で、年率二・二%以上の実質経済成長を視野に、本大綱の政策を実行する。」というふうにあります。新経済成長戦略の最終章「日本経済の展望」、試算というところの中にも同じように、実質GDP成長率、年率で二・二%程度、ここにはいろいろな条件は、もちろんインフレ率のこともありますので、条件はつけてありますけれども、名目GDP、年率三・六%ということがしたためられています。

 これは経済学者の予想ではありません。この新経済成長戦略もあるいは経済成長戦略大綱も、学者の予想の話ではありません。推移をして、もちろん予想される部分というのもきっとあるでしょう、それと、まさに本大綱の政策を実行して直接的な潜在成長率引き上げ効果がある、そして施策の実行によるその成長率引き上げ効果、きっと両方を足し合わせてのこの年率二・二%以上の実質経済成長ということをうたっているのだと思います。

 ただ言い切るのではなくて、どのようにしてこの二・二%成長が実現するというようなことを、もちろん説明は非常にたくさんあって難しいと思います、わかりやすく具体的に、象徴的な話でも結構です、説明をいただけませんでしょうか。

甘利国務大臣 イノベーションを加速して生産性の向上を図る、地域中小企業の活性化などの施策を通ずる、あるいはオープン、FTA、EPAを通じてアジアの成長力を取り込む、そこで、今後十年間で実質二・二%以上の成長を目指すということであります。

 経済成長戦略大綱における二・二%の実質経済成長については、生産の三要素別のGDP成長への寄与、それぞれ記述をされております。全要素生産性で一・三%、労働投入では、人口減少のもとで、女性、高齢者を最大限活用してもマイナス〇・三パー、それから資本の寄与、これはTFP、全要素生産性との連動効果を織り込んで一・一%のプラス。

 それから、政策分野別のGDP成長への寄与では、IT革新を通じた経営力強化で〇・四%、サービス産業の革新を通じた生産性向上で〇・四%、技術革新を通じた生産性向上で〇・二%、人材の質の向上で〇・一%程度。

 これらもろもろ、施策の直接の効果に間接的な効果を加えて、施策による成長の押し上げ効果は一・四%。これに、施策を講じない場合のベースの成長率の〇・八%を加えて、二・二%の成長率というふうにはじいているところでございます。

 これらの裏づけをしていくために、具体的には経済成長戦略推進要望、別枠で優先的に予算をつけるという枠に三千九十二億円がついたわけでありますし、この我が省の中身としては、次世代知能ロボットや、先ほどのがん研究、それから次世代航空機あるいはポストグーグル等々のプランがあるわけであります。そして、アジアの成長を日本の成長に取り込むという意味で、FTA、EPA、あるいはアジアのOECD構想の推進があるわけであります。

 税制でも、減価償却制度は四十年ぶりに抜本見直しをいたしました。これによって設備投資が促される。それから、企業結合ガイドライン、今までは、日本という狭いエリアの中で経済区域を確定して行っていた。これをもっと、グローバル競争の時代に基本となる、算定する枠組みを見直すこと等々を通じて予見性のあるものにしていくことをやっているわけであります。

 そして、現在この国会に提案をさせていただいております経済成長戦略大綱関連三法案、これらもろもろを駆使しまして、二・二%の確保を図っていきたいと思っております。

三谷委員 今の大臣の御説明でありますけれども、私も余り頭がよくありませんので、なかなか、ではどうして年率二・二%以上の経済成長がその話で実現できるのかということがいま一つよくわかりません。

 ここにちょっと一つ紹介をさせていただきますけれども、こういうお尋ねをするのはおもしろいなと思ったコラムの内容であります。「限りなく怪しいアベノミクス」という題名の、一月十三日号の週刊東洋経済のコラムであります。肝心なところだけ言います。

 与党の税制改正の話が前段であるんですけれども、レーガノミックスでやっているような話に近いという前段があるんですけれども、「父ブッシュは、」今のブッシュ大統領のお父さんブッシュは、「供給サイド経済学を「ブードゥー経済学」と言って忌み嫌った」。「信じる者は救われるか」という見出しがありまして、「安倍政権の「上げ潮」路線はこの供給サイド政策をなぞっている。イノベーションを起こせば、実質GDP三%、名目四〜五%が達成され、少子高齢化という成長への逆風も跳ね返せる。財政赤字も「高成長が達成されれば」ほとんど消える、といいことずくめ。肝心なのは、どうすれば高成長を達成できるかだが、それについては、「政府が旗を振るからイノベーションは成功する」と言うのみだ。信じる者は救われる――。まさしく「ブードゥー」」、呪いの宗教でありますけれども、「まさしく「ブードゥー」であり、天国のシュンペーターも首をかしげているに違いない。」というふうに酷評をしています。

 申し上げたいことは、こういう話にならないように。もちろん説明は難しいと思います。そして、全部説明をするわけにはいかないと思います。だけれども、今の大臣のお話の中にもありました、まさに経済成長大綱の中にも書かれていることです。「IT革新を通じた経営力強化、コンテンツ市場拡大等により〇・四%程度以上」とか「サービス産業の革新を通じた生産性向上、重点サービス市場拡大等により〇・四%程度以上」であると。ただ、これは、二・二%成長しますという話と同じ話で、ただ因数分解をしただけの話です。では、今の大綱三法案もその一つですよと。一つだと思います。だけれども、言わせていただきたいのは、小粒な一つです。

 例えば産活法、サービス産業の生産性の向上ということがありますけれども、ここにもあります。サービス産業の革新を通じた生産性向上、重点サービス市場拡大等により〇・四%程度の潜在成長率を引き上げると因数分解をされていますけれども、もちろん産活法のことだけでなくても結構です。〇・四%程度以上、どのようにして上げるんですか。あるいはほかのことでも結構です。具体的に、何か象徴的なような話が感じられるような、先ほどの話でいえば、こうやって踏み出してこの成長を実現するんだというような話があれば御説明をお願いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 生産性を上げる方法は多々あるかと思いますけれども、先ほど大臣が申し上げましたように、減価償却制度、これによって設備投資が増大することによって、その分需要が出てまいりますので、そういう形で生産性が向上するという方法もございます。

 今御審議いただいております産業活力特別措置法におきましては、まさに先生御指摘のような、技術革新を通じてサービス産業の生産性を上げるということも大きな目的になっております。

 今回の産業活力特別措置法の目的は、従来、十一年、それから十五年に改正させていただいたときには、事業再編、会社をむしろ分割するとか、そういう形での生産性向上でございましたけれども、今回は、特にイノベーションを通じた企業の生産性向上ということをねらいにしております。

 そういう意味で、例えば特許制度を、今、特許実施権というのは、特許は百十二万件ほどあるわけですけれども、日本の場合、自社で抱え込んでおる場合が非常に多いので、ほかの人にその特許の実施権を譲る件数というのは非常に少のうございます。試算しますと大体十万件ぐらいで、一割しかいっておらない。それを例えばどんどんと、特許の実施、使用権を拡散したりすることによりまして、イノベーションの非常に大きな役に立ちます特許実施権を普及させる、そういう方法も、現在、この産活法の改正の中に取り込んで、イノベーションの基礎となる知的財産権の普及啓発、こういうことも考えております。

 本当に、一つこの方法で全部達成するというのはございません。まさに先生御指摘のように、国が要するに予算をきちっと確保して技術革新のリーディング役として引っ張るということも重要でございますし、民間企業はいろいろな工夫をして、いろいろな意味で生産性を上げる、そういうことを我々としては幅広く制度をつくることによって支援していきたいと思っております。

 それにもう一つ加えますと、我々がここで書いておりますのはほとんど供給サイドの問題でございますが、先生御指摘のように、当然、成長率という形になってまいりますと、需要政策というのも非常に重要になってまいります。その需要政策の一番大きなところは恐らく金融政策でございますので、政府としても、政府といいますか、日本銀行としましても、そういう適切な金融政策も含めて、そういう意味で成長率をきちっと確保していくということが重要であると思っております。

 以上でございます。

三谷委員 今のお話を聞いても、なるほど納得して、実質二・二%成長を十年間続けられるんだなというようなお話にはなかなかなりません。

 時間がありませんので、最後に、この法案のことで聞かせていただきます。中小企業地域資源活用促進法案のことでお尋ねをいたします。

 まず、一番最初にお尋ねしたい、あるいは申し上げたいのは、この中小企業地域資源活用プログラム、この法案の支援のポイントでありますけれども、このようにコンパクトなものを経済産業省につくっていただきまして、支援のポイントをわかりやすく五項目にわたって説明をしていただいています。

 まず一つ、大変気になっているところがございます。この支援のポイント、主眼といいますか力点を置くところでありますけれども、ここにもあります。地域の強みとなる地域資源を、地域主導で掘り起こす取り組みを支援する。地域主導での掘り起こし、そこに力点が置かれているのか、それとも、特色ある地域資源を生かした中小企業を掘り起こす、地域資源を生かした中小企業あるいはその事業を掘り起こす、そこに力点があるのか、どっちでしょうか。

石毛政府参考人 それはもちろん、事業を最終的には掘り起こして事業化をして、それで中小企業者の事業活動が拡大をしていく、そういうことがねらいでございます。

三谷委員 私も全くそのとおりだと思います。地域資源を生かした中小企業を、そして、ヒットさせる、売れる商品をつくる、売れる商品をつくる新事業を生み出すことによって、もって地域が元気になれば、まさにこの法案の、あるいはこのプログラムの支援措置のねらいだというふうに思います。

 そこで、このスキームで、大変気に入らないのですけれども、国が基本方針を策定、県が基本構想を策定して地域資源を指定、国が認定するわけですね。それで中小企業が事業計画を策定する。いつもこういうパターンなんです。中小企業ものづくり高度化ならいいでしょう、いいです。申し上げたいのは、余計なことをするなということが言いたいんです。都道府県知事が基本構想を策定して地域資源を指定することを言っています。指定など県にしてもらう必要など私は全くないというふうに思います。

 もうちょっと細かく記されています。基本方針、地域産業資源の内容、ここで指定をするわけですね、資源を。それで、地域経済の活性化推進の方策、一種の事業計画のようなことを県でこの法案に沿ってつくらせる、こういう話でしょう。先ほども支援のポイントを聞かせていただいたのは、何が目的なんですかということを聞いているんです。地域資源を生かして、地域の中で元気な企業が一つでも出てくればいいんです。売れる商品をつくる小企業が出てくればいいんです。それがこの法案、プログラムのねらいです。

 具体的に申し上げましょう、私、自分の地元のことでもありますので。例えば、広島県の熊野町、私の地元、正確には中川自民党幹事長の選挙区でありますけれども、私の地元のようなものです。すぐお隣で、私もそこで育ちました。大変ありがたいことに、施政方針演説の中でも安倍総理がわざわざ広島県熊野町の例を出していただいて、紹介をしていただきまして、大変ありがたいことだというふうに思います。

 私、何が申し上げたいかといいますと、熊野町は確かに、広島県の中でも、広島県だけに限らず、筆ということでは全国でも大変大きなシェアを占める、大変有名な産地であります。だけれども、これも同じ、熊野町は私の地元の上隣ですけれども、東隣に川尻町というところがあります。筆の産地です。だけれども、多分、県が地域資源を指定するということになりますと、県はそんなこと知りません。きっと知らないだろうと思います。知らないだろうというふうに思います。知っているかもしれない。だけれども、これは、白鳳堂あるいは竹田ブラシの例を取り上げていただいて大変ありがたいなと思いますけれども、支援プログラムがあってこういうことになったのではありません。とても有名な、一番の産地である熊野町で生まれた企業なんです。大変いいヒット商品だというふうに思います。

 申し上げたいのは、では、川尻の筆のメーカー、細々とやっておりますけれども、地域資源を生かして、もし同じようなことを、同じだったらこの場合は採択をされませんけれども、平場の中で川尻の筆業者がこれを最初にやったとするならば、それをこの支援プログラムできちんと拾っていただきたい。また、拾うのがまさにこの目的にかなうことだというふうに思います。

 だから、ぜひともここ、間口をしっかり広げていただきたいと思いますし、できればこのような、県が枠組みを決めるとかというようなことをやめていただいて、採択をする、あるいは認定をしていただく、多分、機関をつくっていただくようなことになるんだと思いますけれども、そこがきちんと中身を評価して決めていただければいいんです。そのように改めていただけないでしょうか。

渡辺(博)副大臣 本当に、今の委員の質問の内容としては、私もごもっともだというふうに思います。

 そうした中で、今回の地域資源の活用促進法というものは、地域の資源をいかに掘り起こすかということに一番のテーマがあるわけですね。その際に、やはり当然のことながら、地域のことは地域に聞かなければわからない、こんなの当たり前でありまして、この計画を立てるに当たりましては、ぜひとも市町村、そしてまた商工会議所、こういったところの意見をしっかりと酌み上げて作成をする、こういうスキームでございますので、これは、今先生のおっしゃったような問題もきっと吸い上げられてくる、そのように思います。

三谷委員 時間がありませんので、最後に聞きたいことだけ聞いて終わりにしたいと思います。

 まさに、いつも問わせていただくことでありますけれども、この中小企業の事業計画の認定、あるいは、また同じように、多分、認定と予算措置の伴う採択、きっと違うんだろうと思います。あわせてお尋ねをいたします。

 ものづくり高度化の場合と違って、なかなかこれ、応援の仕方、支援の仕方、補助金の出し方、単純に技術というターゲットではなくて、商品化、売れるのか売れないのか。新規性だけの話だったら、これは逆にこっちの方が単純なんですけれども、売れる売れない、その評価の仕方も非常に難しいというふうに思います。認定あるいは採択、いろいろ複雑なメニューの組み合わせのようなこともあると思いますが、これは、具体的な指針がないと、ノミネートする企業の方も、事業計画だってなかなかつくれないというふうに思うんです。

 既にもう指針、基準はできているんでしょうか。どういう内容になるか、お答えをお願いいたします。

石毛政府参考人 お尋ねの点は、基本方針の指針のことだと思います。

 これは、法律ができ次第、中小企業政策審議会の中でいろいろ意見をいただいて決めることになっておりますけれども、今お尋ねのポイントでいけば、何が中小企業者の助成の対象になるポイントなのかということだと思いますので、当然のことながら、地域資源を活用していること、それから、新製品、新サービスと言っておりますように、新規性の要素があること、それから、そうしたものが本当にうまく実現できるんだろうか、事業の実現可能性、そういったような点をポイントにして、その基本指針の中に、よりわかりやすい形で示していきたい。その過程では、政策審議会で十分専門家の意見を聞いた上で策定をさせていただきたいというふうに思っております。

三谷委員 まだまだ聞きたいことはあるんですけれども、時間が参りましたので、次回ということにさせていただきます。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 厚生労働省、来ていただいていますでしょうか。済みません、ありがとうございます。

 早速ですが、二十七日にキヤノンが、偽装請負の問題に端を発して、千人を正社員にするということを発表しました。

 まず、この問題に対する厚生労働省の見解をお伺いします。

松野大臣政務官 若年層を中心といたしました非正規雇用の増加、その固定化については、将来の格差の拡大につながりましたり、また少子化等の問題につながることもありますことから十分な注意が必要であり、政府といたしましても、フリーター二十五万人常用雇用化プラン等、各般の政策を打っているところでありますけれども、こういう中にありまして、各企業において取り組みがなされて、正社員を望む人に正社員化の機会が拡大されることは望ましいことであると考えております。

細野委員 この後、法案に入りますので、経済産業大臣にも、このことに対する御見解をお伺いします。

甘利国務大臣 それまで派遣や請負で働いておられた方々三千五百人を正社員及び期間社員として採用する計画というふうに聞いております。

 個別企業の点に関してというよりも一般論としてお答えさせていただきますが、正規雇用を希望する方が正規雇用に進む道が開けるということは歓迎すべきことだというふうに思っております。それは、先ほど来質問が出ておりますが、技術の継承という点でも大事でありますし、働く人のモチベーションを上げていくという点でも大事なことだと思っております。

細野委員 以前、経済財政諮問会議で、大臣は、派遣・請負制度は現状に合っていないのではないかという趣旨の発言を一度されているやに私も見ましたけれども、そういう考え方ではなくて、むしろ正社員化が望ましい、そういうお考えということでよろしいでしょうか。

甘利国務大臣 私の意図が正確に伝わっていないのかもしれませんが、あのときのやりとりは、派遣はともかく、請負は指揮監督権が受けている側にない、そうすると、労働安全上問題があると思っても手が出せないという話で、だから、労働者の安全のために現行のままでいいんだろうかという問題提起があったわけです。

 そのときに、私は、それは確かにそうです、労働安全ということを考えれば、こうした方がいいと思っていながら手が出せないというのは、労働者の労働安全衛生にとってよくないことだ、だけれども、仮にそうおっしゃるんだったら、いいとこ取りじゃなくて責任も全部来ますからね、全部一括して引き受けるという前提が必要ですよということを申し上げたのであります。

細野委員 わかりました。

 この問題は、去年からずっと問題になっておりまして、うちの地元も非常にメーカーが多くて、派遣、請負が多いんですね。いろいろ話を聞いてみました。

 私がちょうど団塊ジュニアの世代になるものですから、私の世代がちょうど派遣、請負は多いんですね。そうなりますと、例えば結婚の問題であるとか出産の問題にもかかわってくるという問題もありまして、いろいろ、会社の側も派遣をされている側も請負で働いている側も、幾つか聞いてみたんですが、私が思っていた以上にかなりこの動きは広がってきていて、深刻だなというふうに私は感じています。

 といいますのも、最近、請負といいましても、地場の請負産業があって、そこが地元で人を集めて出しているのではなくて、例えば東京とか大阪の派遣会社が、それこそ東北の方で仕事がないところから大量に若者を採用して、寮をつくって、請け負って人を出していたりするわけですね。そして、そこの若者は、地縁もないですし知り合いもいないので、非常に孤独感にさいなまれながら安い給料で働いている、場合によっては、年金の保険料を払えなかったり医療の保険料を払えなかったりということも珍しくないという、こんな現状があります。

 もう一つ、私が問題だなと感じるのは、外からやってくる大手の請負会社の、まさにキヤノンの例なんかはそうなんですが、その子会社かなんかが持ってくる請負の仕事によって、相当程度もともと入っていた中小企業が排除されているんですね。

 そういうことも含めて、産業政策の面からも、請負の問題はもう少しきちっと取り組まれた方がいいと思います。

 一つ、ちょっと指摘をしたいのは、今回、このキヤノンの問題は、厚生労働省の中から出てきて、行政指導でこうなったのではないんですね。これはあくまで行政指導でやっていて、私も、労働者派遣法、余り詳しくなかったものですから調べたんですが、恐らくは、キヤノンに対しては是正指導が出ていたんだろうと。ただ、これは公表対象になっていませんから、キヤノンがそのたびに、直しましたよということで、それでとどまっていた。何度か行政指導を受けていた、是正勧告を受けていたという報道があります。

 今回、これが明らかになったのは、メディアの側にそれが出てきて、それを予算委員会で枝野委員を中心に取り上げて、しかもそれが経団連の会長だということで、それで大変大きな騒ぎになって、年が明けて、経団連の会長として、ある意味、方針を変えたということだと私は理解をしています。

 中小企業の問題と、あとは、私はパート労働法の改正も必要であると思いますが、労働者派遣法も改正が必要だと思います。少なくとも、是正指導のところで公表は難しいかもしれないけれども、勧告をしたときには公表する、それぐらいなことはやらないとこの問題は根を絶てないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 私の所管でありませんので、閣僚としての発言は控えさせていただきますが、とにかく、法令があってそれを守らないということは、それは許されることじゃありません。より守れるようにどうあるべきかということは日々検討していかなければならないと思っておりますし、当然、この間の問題提起は、厚生労働委員会でも、ここ以上になされていると思います。

 よりよき労働行政に関して、大臣を中心に労働省で取り組んでいてくれると思いますし、我々の方でも、経団連に対して、このことだけではなくて、特に中小企業との関係の問題も含めて、法令遵守、そして積極的にベストプラクティスをつくってくれということの要請はいたしているところであります。

細野委員 経団連に対して、中小企業の問題も含めて要請をするというのは、これは大変結構であります。

 繰り返しになりますが、キヤノンはあちこちの工場で何度かやっているんですね。それは公表されていませんから、何件なのか、残念ながら厚生労働省から資料をいただくことはできません。なぜ今回是正をされて正社員にしたのかということを考えると、これは、図らずも内部からいろいろな声が出て世間に明らかになったから直したんですね。これは法の不備だと思いませんか。公表をもう少し進めるべきであると、法改正の必要性を、元労働大臣というお立場もありますが、それも含めて、今回の事態を見てお感じになりませんかということをお伺いしています。

甘利国務大臣 現行の法制下でも、もちろん違反があれば厚生労働省がきちんと勧告をし、それに従わない場合には次なる処分が打たれるということになっていると思います。

 より迅速に法の効果をあらしめるためにどういう改善点があるかということは、私どもの方でももちろん考えますが、主体的に厚生労働省でしっかり考えてもらいたいというふうに思っております。

細野委員 かかわるのは経済産業と厚生労働だけではないと思うんですね。ただ、主にはその二つの省庁だと思いますので、我が党も労働法制について新しい法案を出す予定をしておりますが、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 政務官、結構ですので。ありがとうございます。

 質問にはしませんが、私はこのキヤノンの例を見ていて、これが公開をされたことで経団連の会長の会社がこれだけ大きな転換をしたという意味はすごく大きいと思っていまして、同じようなことがもしかしたら独禁法の優越的濫用についても言えるかもしれないなと思っているんですね。我が党から、これに罰則を設けるべきだという意見が何回も出ていますが、罰則ももちろん大事なんですけれども、優越的な地位の濫用についても、公表が年に一件とか二件ですから、悪質なものについては警告の時点できちっと公表することをもうそろそろお考えになってもいいと思います。単に罰金で締め上げるということじゃなくて、それを社会的な責任として、企業の実態を社会が見ることによって変わるという典型的な事例だと思うんですよ。そういう発想をぜひ経済産業省は持っていただきたい。これは私からのお願いです。

 法案の質疑に入ります。

 三本法律が出ておりまして、それぞれ私なりに勉強をさせていただきました。産業活力の再生特別措置法の改正案については、いろいろな今までの経済の、事業再編の過程においてかなり大きな役割を果たしてきたんだろうというふうに思うんですね。これはそれなりに私は評価をします。

 ただ、残りの二つの法案、産業集積に関するものと地域産業資源に関する法律案は、正直言いまして、つくっていただいた方に若干失礼かもしれないけれども、果たしてこれが国のやるべきことなんだろうかということを率直に疑問に感じました。

 例えば、産業集積を日本全体で進めていって、それこそ工業用団地をつくっていかなきゃならない時代にはこういう法律でよかったと思うんですね。ただ、今、例えばここで、都道府県や市町村が基本計画を立てて、それをそれこそ経済産業省に上げて、同意を求めるとこういうあめが来ますよと書いてある。地域資源開発の方はもっと極端だと思うんですが、それぞれの地域資源、いろいろなものがあり得るわけですが、それについて、これも最終的には大臣の認定を受けるんです。

 我々は、こういう部分を分権化して地方にやってもらった方がいいのではないかという考え方を持っているんですが、少し大局的な見地に立って、大臣はこの二つの法律について、国の役割とは何なのか、どういうふうにお感じになっているか、お答えしていただきたいと思います。

甘利国務大臣 この二つの法案について、こういうことをやろうと提案したのは私でございますから、趣旨についてはぜひ御理解をいただきたいと思うのは、私自身も地方の主体性を大事にしたいと思っています。

 今まで、企業誘致がどういう形で行われたかというと、かつては再配置法で、集まっているところから散らして、外へ出ていけというのをやりました。これはもう時代に合っていないということでやめにしたわけであります。そうすると何が始まるかというと、地方が主体的にやるにはやるんですけれども、要するにダンピング合戦というか、うちは幾らまけるからの競争になるんですね。それともう一つは、優良企業の本社もうで、トヨタもうで、シャープもうでが始まる。

 そうすると、体力のない自治体というのはますます弱って負けていっちゃうんですね。税金五億まけます、補助金五億円出します、そうしたら、大自治体が、いや、うちはその二倍つけるよと言われたらかなわないわけなんです。だから、地方が主体的にやるんだけれども、体力勝負にならないようにどうしたらいいんだろうかということを考えたわけであります。

 その際に、一生懸命やっている自治体の長から話を聞きました、知事さん方から。そうしたら、やはり自治体の長がもっとトップセールスしなきゃだめだというのは、単に本社もうでじゃなくて、どういうニーズが必要ですかと、今ある企業に、じゃ、第二工場を出すとしたらあなたはどういうことを自治体に望みますかとか、あるいは、優良企業に行ったときに、まけますから来てくださいじゃなくて、企業立地をする際に何を重点に置きますかということを把握する必要がある、それをきちんとそろえられるかと。

 一番企業から要望が多いのは、ワンストップサービスですよ。この許認可はどこへ出す、これを持っていったら、うちじゃありません、たらい回し、結論がちっとも出ない。そうじゃなくて、お金はそんなに必要ないです、行政の姿勢で、うちはきちんと企業ニーズ、できる、できないは別として、ワンストップでやりますという姿勢、トップの姿勢が全部下まで通じている、それが大事なんですね、そういうことをやってください、そういう競争ですよと。ただし、体力勝負になっちゃうところもあるから、それはハンディをつけてあげます、厚労省の予算とかあるいは総務省の関係予算で、体力勝負にならないようなげたを履かせますと。

 ただ、うちの方は、均一的に、どういうプランをつくるかということが大事ですよという啓蒙活動だと思ってやっております。その際に、中央省庁もワンストップで、企業が来るということは、我が省だけのことじゃなくて、インフラ整備も必要であれば人材供給も必要です。うちだけでできませんから、私は就任してすぐ、企業立地に必要とする政策にかかわっている役所を全部集めろということで、局長、審議官を我が省に集めました。そこで私が訓示を言ったのは、今までは恐らく、うちの役所にほかの役所の局長を集めることになると、また経済産業省は何を始めるんだとなるでしょう、すぐ自分の所管のところへはみ出してくるのかと警戒感をお持ちでしょう、しかし、みんなが協力しなきゃうまくいかぬのです、だから、一つの役所のつもりでやってくれと。

 海外に出ている企業が再投資をすることに若干ちゅうちょして、日本回帰が始まっています。その最大の原因は、行政の不透明性です。だから、それをいかに透明にワンストップでやるかは外国との競争でもありますよということで、啓蒙させたいと思ってこういう仕組みをつくったわけであります。

 地域資源についても、見方を変えれば宝物になるよと。斜陽産業、さっき熊野の筆が出ましたけれども、筆という見方をしている限りは斜陽産業なんです。毎年生産が落ちていくんです。だけれども、別の視点で見ればリーディングインダストリーになる、そういう視点を持ってください。だから、足元のよさに気がついていないんじゃないですかということを啓蒙したいということでこういう仕組みをつくりましたけれども、あくまでも主体性は地域にあるという仕組みのつもりであります。

細野委員 啓蒙という言葉に一つ象徴されているのかなと思うんですね、大臣の考え方は。私もワンストップサービスの必要性は認めます。集積の効果もやはり一定あるんだと思うし、こういう地域資源みたいなものが活性化されることも、これも認めます。自治体に格差があるのも大前提。

 その一方で、じゃ、ワンストップが経済産業省に来るべきものかどうか。むしろ、ワンストップであえて言うならば、やはりそこの自治体にしっかり窓口をつくって、そこでやっていく。財源調整は、それは基本的なところでもっと国がやるべきところで、それを、認可を上げてきて、こういうあめをくれますよという時代は、さすがに、私は、これは相当、今過渡期でということであればそれは理解をしますが、これをいつまでも続けるという時代ではないのではないかなというふうに個人的には思っています。

 例えば、地域産業資源といったときに、これは温泉なんかも書いているので、どうやって認定するのかなというふうに気になったんですが、静岡にも結構いろいろ温泉がありまして、例えば熱海温泉があります。草津温泉、別府温泉ありますと、いろいろ上がってきますね。恐らく上がってくると思います。

 それで、これはいいですよ、悪いですよなんという判断は、経済産業省なり環境省なりどこがするのか。それができるわけはないわけですよね。そこは、判断は地域に任せる。その役割分担を相当しっかりしておかないと、この法律はおかしくなるし、やがてはこういう法律はなくなった方がいいという考え方を私は持ちますが、簡単で結構ですので、御見解を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 ワンストップというのは、私が言っているのは、県なり市なり、ワンストップの窓口をつくってくださいということなんです。中央省庁も、もちろん言うからには、出先の省庁の機関のワンストップ化をやれということを言っています。

 それから、地域資源をどれを使うか。これは、県が市町村や商工会、商工会議所と協議をして決めるわけです。それを使ってプランを出していく。うちの方は専門家が、いいかげんなプランにお金をつけるわけにはいきませんから、プランの優秀性を専門的見地からちゃんとチェックをして、見込みがどうしようもないというのは別として、いろいろ知恵を出しているというのは極力認定をして努力を促したいというふうに思っております。

 あくまでも、主体は地方であり、主体はその資源を使う企業であります。

細野委員 行革というのはどうやってやるのかといういろいろな議論があって、今天下りの問題なんかで渡辺大臣が頑張っていらっしゃるんですけれども、我々は、最大の行政改革は地方分権じゃないかと盛んに言っているんですね。

 これは、私も数字として一つ説得力があるなと思うのは、いわゆる非現業の官僚と言われる皆さん、国家公務員が約三十万人。初め、これは霞が関にいたら大変だなと思ったら、いわゆる地方支分局にそのうちの二十一・五万人はいる。もうこういうことをやろうとすると、経済産業局が各地にありますから、そういうところから情報を上げるということをやるわけですよね。同じように、農水省も環境省もどこも持っているわけですよ。そこのリストラは、こういう政策を続ける限り、これは決して進まないと思います。

 そこを、どこかで役割を離して、地方支分局は、これは地方の役割としてやってもらって、場合によったら地方公務員になっていただくというようなことも含めて、それぐらいの改革をやらないと、国が決めて、そして地方にばらまくという構図は私は変わらないと思っていまして、その一つの、過渡的にはもしかしたら必要なのかもしれないけれども、象徴的な部分かなということで申し上げました。

 もう一つ、私がこの法律を見ていて気になったのは、独立行政法人の問題なんですね。ちょっと私、性格が悪いのかもしれないんですが、こういう法律が出てきて、その中に、新たな役割を担う独立行政法人というのが結構幾つか出てきているわけです。典型的なのは中小企業の基盤整備機構、ほかにも、ジェトロも出てきますし、あとは、これは国交省の管轄なんでしょうか、国際観光振興機構なんかも出てきています。

 最近、この独立行政法人の組織に関する予備的調査というのが出てきていまして、これは三分冊ありまして、今これをみんなで分担して、問題はないかということで調べているんですが、独法が全部で一〇九あるんですか。こういう法律ができることによって、独法にまた新しい役割が加わるということにもなります。

 このそれぞれの独法の中身に入る前に、一つ私がはっきり確認をしておきたいのは、この独法の調査の中で、経済産業省の所管をしているジェトロ、そして産業技術総合研究所、そしてNEDO、この三つは予備的調査の中に出てきていないんですね。先ほど聞いたら、もう出しつつありますというような話がありましたが、これはいつ出てくるのか、ほかの省庁は全部出していますから、先にちょっと確認をさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の三つの独立行政法人でございますけれども、人員や予算の規模が大変大きな法人でございまして、調査に時間を要して提出がおくれましたことは大変遺憾でございますが、それぞれ申し上げますと、ジェトロにつきましては二月二十二日、産業技術総合研究所につきましては三月二日、それからNEDOにつきましては三月十五日、衆議院調査局の方に提出をさせていただいております。

細野委員 なぜ調査室のこれに載っていないのか、ちょっと理解できないんですが、これは三月にできていますから。それは調査室にも私確認をしますが、できるだけ早く委員に配っていただきたい、提出をしていただきたいというふうに思います。

 その上で、まず、独法への天下りの問題、これを聞きたいんですが、今回、一番大きな役割を担うであろう中小企業基盤整備機構ですが、ここには、この予備的調査によりますと、十三人役員の方がいらして、そのうち八人がそれぞれの省庁から、主には経済産業省からいわゆる天下りという形になっています。

 天下りの規制というのは、民間企業に関しては二年という枠がはめられていますが、こういう独法であるとか公益法人などに対してははめられていないのは、これはもう周知の事実でございまして、この天下りについてまずどう考えるかなんです。

 まず、これは官房長の方に確認をしたいんですが、それぞれ天下っている方を見ていると、経済産業省から直接この中小企業基盤整備機構に、この独法に天下っている方がほとんどの中で、この理事長さんは、まずは中小企業金融公庫の理事をやられて、その後、日本自動車工業会の副会長兼専務理事をされて、我々はよく、わたりと呼んでいるものですが、そしてここに来られているという経緯なんですね。

 先週の内閣委員会、参議院の方でも松井委員が確認をしていますが、この三つ目のあたり、ちょっと事前に申し上げると、同じようなことというのはあちこちに行われていますから、この理事長さんを特にあげつらって悪いと言っているわけではなくて、仕組みとしてお伺いしたいんですが、こういう三つ目の天下りについて、今回のこの独法への天下りについても、これも経済産業省として、何らかの情報提供、あっせんをしたということについては事実関係はいかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業基盤機構の理事長でございますけれども、その前職は確かに日本自動車工業会副会長兼専務理事でございますが、御承知のとおり、独立行政法人の理事長につきましては、主務大臣がみずから任命をするということになっておりまして、これにつきまして、いわゆる省庁によるあっせんというものには当たらないというふうに考えております。

細野委員 済みません。そこはちょっと私も勘違いをしていましたので。

 そうしましたら、この二つ目の社団法人日本自動車工業会の副会長兼専務理事についてはどうですか。

松永政府参考人 この当該理事長が前職の自動車工業会副会長に就任するに当たりまして、いわゆる御指摘のあっせんのようなことがあったかどうかということについては、ただいまちょっと確認はできません。

細野委員 わかりました。具体的にここを通告していなかったので。

 では、官房長、もう一回確認をしますが、いわゆる天下りについて、OBの天下りもあっせんをしているということに関しては、再度事実関係を確認したいんですが、これは、一般論としていかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 OBでなられた方につきまして、企業、団体等から照会があった場合に、私どもから、いわゆる情報提供としてそういう紹介等の行為をするということはございます。

細野委員 これはもう御答弁は結構で、これを人事管理の一環としてやっていらっしゃるということなんですよね。人事管理の一環ということでよろしいですね。では、一応御答弁ください。

松永政府参考人 厳密な意味での人事管理という言葉で定義できるかどうかということはやや不確かでございますけれども、いわゆる企業、団体等からそれぞれの仕事について必要な人事ということで情報提供の要請があった場合に、これについてお答えをするということは特に問題がないんではないかというふうに考えております。

細野委員 再度伺いますが、人事管理かどうかは不明確だというお話ですので、では、職務としてやっていらっしゃいますか、職務外でやっていらっしゃいますか。お答えください。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、職務として実施をするということで考えてよろしいんではないかというふうに考えております。

細野委員 大臣、そこをお伺いしたいんですけれども、これは各省庁やっていることですし、この方も五十二歳ぐらいで退官をされているので、その後人生を考えると、もう少し先まで勤めていただいてという制度上のさまざまな問題があるのは承知の上で、この方がどうこうということでなくて、一般論としてお伺いしますね。

 今度、人材バンクが議論されていまして、我が党も我が党なりに考え方を示しますが、再就職というのを考えたときに、初めの就職先について、今までのいろいろなキャリアを考えて、ある程度それを、全体でやるか各省庁でやるかどうかは別にして、あっせんをするというのは、これは人事管理としてあり得ると思うんですよね。二つ目も含めて、そこも職務で、次の天下り先まで官房長を中心に役所として見つけてきますということが国民から理解されるというふうにお考えですか。退職が幾らとか、そういう細かいことは聞きません。ただ、間違いなく一般の民間企業よりはこの面でいえば恵まれていて、次の職場先も見つけてもらってという中で、二つ目まで職務で天下り先を見つけるということが国民から理解されるというふうに大臣はお考えになるかどうか、お伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 今、新しい人材バンクをつくろうと。これは今までもあるんですが、それがほとんど機能していないということで、機能する人材バンクにすると。その機能する人材バンクの発想の中には、公務員が早期にやめる、あるいは年金開始年齢前にやめるという際に、新しい職場を紹介するということを想定しておると思います。それから先については、新人材バンクの一義的な仕事としては想定をしていないんではないかと思います。

細野委員 私もおっしゃるとおりだと思います。新人材バンクの考え方というのは、退職のときの何らかの職業紹介については人材バンクがやるけれども、その後はまさにそれぞれの実力で、新しい仕事につくなり、民間企業に行くなり、悠々自適に過ごされるなり、それぞれ選択をしてくださいという制度なんですね。

 恐らく人材バンクが導入をされるまでに三年から五年、いろいろ党内で議論があるやに聞いています。経済産業省として、人材バンクへ移行するわけですから、できるだけ早い時期に二つ目以降のあっせんはおやめになる、そういうお考えはないでしょうか。

甘利国務大臣 できるだけ早く新人材バンクが、これはスタートするというよりも機能するようにしなきゃいけないと思います。

 私の基本的な考え方は、民間準拠で、民間がやっているような方向を、官でもそういうスキームでできればということをいつも思っているわけであります。

 組織は、新入社員がそのまま残って筒形の組織にはなりません。どうしても上に行くほど人数が減っていく、これは組織運営上そうならざるを得ないのであります。幾らスタッフ制度ができても、全員が残って円柱形の組織にはなかなかなりませんし、こっちを定年延長するために新人をうんと絞り込むなんといったら、やはり組織の活性化上よくない。どうしても、勧奨退職というか、どこかへ出てもらえますかというのは民間企業のヘッドクオーターでも必ずやっていることでありますから、その際にどういう仕組みがそこにあるのか、どこまで面倒を見るのか、それに準じて官も組織をつくる、そういう対応組織をつくるのがいいんだというふうに思っております。できるだけ早くそっちに移行できればと思っております。

細野委員 先ほどはちょっと細かく言いませんでしたけれども、さっきの日本自動車工業会の副会長兼専務理事は、この理事長さんがおやめになった後、何年か後に入省されたであろう局長さんがそこに入っているんですね。要するに、わたりのいろいろなコースというようなものを既に設定されていて、二つ目も三つ目も天下れるように道ができている、わたりの道ができているわけですよね。

 大臣、さっき、民間準拠とおっしゃいましたね。経済産業省なんかの場合は、局長さんになると大体七十歳ぐらいまで天下り先があるわけですよね、六十代後半から七十まで。私、民間企業をすべて知っているわけではないですが、大企業で勤めた方の話を聞いても、定年が少し役所よりは遅いんですが、二つ目以降も含めて、実力にかかわらず天下り先がきっちり用意されているなんというところは民間にはないですよ。

 経済産業省というのはまさに民間とやりとりをする直接的な省庁なわけですから、前向きにという趣旨の話はおっしゃいましたが、人材バンク導入に向けて早急にそういう体制を整える、定年を延長してきちっとその中で働いていただく、その上で、一つ目についてはいろいろ過渡期はあるかもしれないけれども、二つ目以降についてはあっせんをやめて、わたりの制度自体をもう廃止するとはっきりおっしゃったらどうですか。いかがでしょうか。

甘利国務大臣 もう人材バンクをつくるということが総理指示で決まりましたし、それを、恐らく近々、いつまでに本格スタートさせる、何年以内というのが出ると思います。それに向けてソフトランディングさせていかなきゃいけないわけでありまして、極力、新制度にスムーズにつながっていくように努めていきたいというふうに思っております。

細野委員 私、しつこい性格なものですから、では、人材バンクが導入されるまでも、過渡的な状況についてもそちらに向かって努力をする、そういう趣旨の答弁ということでよろしいでしょうか。

甘利国務大臣 スムーズに移行するために努力をしてまいります。

細野委員 独法への天下りの問題を、今、私なりに、考え方も含めて申し上げました。

 続いて、独法自体の天下りの問題と、そこにおける随契の問題について少し聞きたいんです。

 それぞれ独法を今調べていまして、すべてを調べ切ったわけではありませんが、それぞれの独立行政法人の随意契約の割合は極めて高いです。高いところで九〇%台後半、中小企業基盤整備機構で、これは件数ベースですが、大体八六%ぐらいというふうに、私は、事務所で計算したのではそれぐらいという計算になります。

 きょう、資料を用意しましたので、ちょっと配っていただきたいんですが、中小企業基盤整備機構に関しては、それぞれの地域開発についてそれぞれの役割を果たしますので、そういうところに出しているのが随意契約であるというのは理解をできます。この予備的調査の中にはそれぞれの発注先のいろいろな資料があるんですが、その中に関連法人というのがありまして、出資をしている会社がずっと書かれているんですね。

 その中の一つに中小企業・地域シェアドサービス株式会社というのがありまして、これが実は独法から天下っている方が何人か行っていらっしゃる企業なんですが、いわゆるファミリー企業と言える一番典型的な会社かなというふうに思いまして、きょう、こうして資料を提出させていただきました。

 売り上げが十七年度で七億円程度ですから、それほど大きな会社ではありません。ですから、ここがどれぐらいぜいたくなことをしているのかというのは、若干私もどうなのかなと思っています。

 ただ、何をやっているかというのを見てみると、実に会社としてはいろいろなことをやっている。営業資格のところ、これはホームページのコピーですが、宅建もやっているし、労働者の派遣もやっているし、有料職業紹介もやっているし、測量も防除も、損保までやっている、そういう会社なんですね。

 具体的に、こういう業務の中で、今回私が問題にしている独法からどういう仕事が来ているのかというのを見たのが二枚目ですが、ほとんど随意契約で、事業の補助であるとか自動車の運行であるとか、あと資料の提供なんかが、これはいっぱい書いていますが、来ている。資料作成補助なんかは二十六件中二十六件ですから、ほとんどここに来ている、こういう実態なんですね。ちなみに、全体で、この法人は十七年度に六億八千四百万の売り上げがある中で、八〇%がこの独法からの仕事になっています。

 この独立行政法人からの天下りの問題についても、やはり、これは何とか取り組んだ方がいいと私は思っているんですが、まず、何でこんなにこの会社にはこの独法からの仕事が多いのか。これは、まず政府委員の方に、この会社の特殊性をどういうふうに理解されているのか、お伺いしたいと思います。

福水政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の企業は、この機構から委託を受けまして、機構が所有する工業団地の販売管理でありますとか工業用水の管理、あるいはインキュベーション施設、こういうふうなものの入居募集、そういう業務をやっているところでございます。

 ちなみに、私ども経済産業省からは再就職はありませんが、先生御指摘ありましたように、現在、同社には整備機構の出身者が三名勤務しているというふうに承知いたしております。

 企業誘致、工業団地等々の仕事というのはなかなか特殊な業務でございますので、そういう経験や能力が評価された結果ではないかというふうに私個人としては推察いたしておりますが、いずれにいたしましても、整備機構の判断によってこういうことになっているというふうに考えてございます。

 以上でございます。

細野委員 余り一つの法人だけあげつらうのはちょっとどうかなという気もするんですが、今の御答弁からすると、例えば、自動車の運行管理業務であるとか、あとは資料の作成補助であるとか人材派遣とか、関係ないですよね。こういうことはどうなんですか。

福水政府参考人 先ほど申しましたように、インキュべーションの管理でありますとか工業用水の管理、あるいは団地のいろいろな手続等々、こういうことをやった人というのは非常に少ないものですから、私ども、現在、企業誘致の促進法をつくって、各地域の協議会にも専門家を配置していこうというようなことをやっているわけですが、全国で見てみますと、なかなかこういう企業誘致の専門家というのが少ないのも事実でございますので、長年、三十年、四十年おやりになった方の御経験を活用しているというようなこともあるのかなというふうに思っております。

細野委員 今、お答えになっていないと思うんですが。

 専門家を派遣するというのは、人材派遣はもしかしたらそういう面があるのかもしれません。ただ、ちょっと正直、この会社、いろいろやり過ぎてはいないか。職業紹介から測量から損保から宅建から派遣から。専門家をという意味では、そこについては認めますが、ここは余りもうけていないので余り言いたくないんですけれども。

 もう一つ指摘をしますと、こういう本を出しているんですね、産業立地マニュアルという本。さっきちょっと国会図書館から借りてきまして見たんですが、これは恐らく、当時は地域振興整備公団、今の中小企業基盤整備機構、ここのさまざまなノウハウを蓄積して本を出している。監修は公団になっています。

 さらに一歩踏み込むと、例えば、公団が出していた土木工事の積算要領であるとか競争参加資格審査申請書とか、こういうものもここで出しているんですね。しかも、一万円とか有料で。こういうのは独法自身でやったらいいのではないか。わざわざ天下り先をつくってそこに発注をさせて、こんな申請書みたいなものもやらせる方法は、これは私はいかがなものかというふうに思います。

 政府としては、そういう問題について、独法とファミリー企業の関係についてどういうふうにお考えになっているか。うなずいていらっしゃいますので、ちょっとお答えいただけますでしょうか。

福水政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、独法自身のこういう問題については、私どもとしては直接的には判断していないというような状況にあるのが現状でございます。

細野委員 要するに、独法が半分出資している会社なんですよ。千五百万円。まあ、わずかとはちょっと言い切れませんが、半分出資している会社なんですね。八割方そこから仕事をもらっている会社なんですね。やはりそういう言い方はさすがにまずいんじゃないかというふうに私は思います。

 甘利大臣、ここだけ余り言ってもあれなので、これから少しいろいろなところを調べて、こういうのがどれぐらいあるのか調べていこうと思っているんですが、独法からの天下りの問題と、それに付随するファミリー企業の問題ですね。大臣、経済産業省は独法だけで十一持っていますから、これはきっちり見ていけば相当あるんだと思うんですね。

 繰り返しになりますが、これは最終的に税金で全部やっていますから、そこについても少ししっかり目配りをして、全体を見て改善をしていただきたいと私は思いますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 私は、党にいるときに独法の改革というのをやりまして、そのときに、予算の無駄がないか、効率的な運営がされているか、あるいは、年度末締めてみて、当初立てた目標にどれくらい達成度が上がっているか等々、いろいろ独法改革の仕組みに関与したことがございます。

 かなり改革が進んできたとは思いますが、御指摘の点を含めて、さらにしっかり検証していきたいと思っております。

細野委員 私はこれを見ていて思ったんですけれども、これはそれぞれいろいろな独法がかかわりますよね。いろいろな資料を出したり許認可にかかわったりするんですが、こういう制度が一つ一つ導入されるたびに新しいマニュアルが必要になり、新しい法律に対応する業務が必要であり、そのたびにこういう天下りのところに、これは仕様書までつくっていますから、新しくそういうファミリー企業の仕事ができるということでは、この法律の意味とは一体何なんだと、その趣旨もやはり損なわれると思うんですね。

 そこも含めて、やはりきちっと独法の問題についても取り組むという姿勢を、これは経済産業省だけではありませんけれども、改めて持っていただきたい、そう思います。これは私からの要望ですし、決算委員会なんかでもやりたいと思っていますので、きょうは独法についてはこれぐらいにして、法律にかかわるところということで質問をさせていただきました。

 残り十分ほどありますので、ちょっとまた法律と離れてしまって恐縮なんですが、きょうは外務省に来ていただいていまして、宇宙開発の問題について、経済産業省も宇宙産業を所管されていますので、一、二問、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、外務省に聞きます。

 この宇宙開発に関しては、非研究衛星については国際調達を義務づけるという、アクション・プログラム実行推進委員会に基づく非研究開発衛星の調達手続というのがあって、それがある結果といたしまして、日本の場合、いわゆる実用衛星というのは、情報収集衛星を除けば、ほとんどアメリカに依存してきたという経緯があります。

 この調達手続の法的位置づけ、これはどういう効果がある文書なのか、極めて不明確だと私は思っていまして、どういうものなのか、外務省にお伺いしたいと思います。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 委員言及のございましたアクション・プログラム実行推進委員会におきまして、これは閣議決定によりまして内閣に設置された委員会でございますが、その決定によりまして、各省庁が合意をして形成された政策を示すものと。したがいまして、その非研究開発衛星の調達手続に係る政策を示すものというふうに承知しております。

細野委員 この調達手続というのは、拘束力はあるんですか。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 法的拘束力というのは、内閣官房長官のもとに設けられましたアクション・プログラム実行推進委員会におきまして、全省庁の合意によりまして決定したことでございますので、その意味でそういう拘束力はあるんだろう、こういうふうに思っております。

細野委員 この通告をした後、これは内閣が答えるか外務省が答えるかで、随分きのうの夜からすったもんだ、押しつけ合いがあって、位置づけが非常に不明確だというのはそういうところからもあらわれているんですが、では、外務省にもう一つ聞きます。

 WTOの政府調達協定というのがあって、そこで、ある程度、政府調達についてはきちっと国際的に開放するようにという規定が書いてありますが、このWTOの国際協定とこれの関係はどうなるんでしょうか。要するに、日本の場合は、この手続があるから開放を義務づけられているのか、もともとWTOの協定があるので、それはもう、もともと開放が義務づけられているのを、念のためこういうのがあるということなのか、そこをお答えいただきたいと思います。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 WTOの政府調達協定におきましては、各国が約束をいたしまして、国家等の機関が一定の基準額以上の物品・サービスを調達する際には、安全保障上の重大な利益に係る場合とかいった場合を除きまして、透明、公開、無差別の原則に基づきまして競争的手続に従って行うということにされてございます。これは衛星についても当てはまるというふうに考えておるわけであります。

 この問題の手続につきましては、平成二年に、我が国として、政府全体として、このような協定を受けまして、非研究の開発衛星を調達するための透明、公開、無差別を原則とした競争的手続を定めたもの、こういうふうに理解しております。

細野委員 ちょっと答えていただいていないので、もう一回よろしいですか。

 要するに、WTO協定があるから調達を義務づけられているのか、それとも、これがあるからやっているのか。逆に、ではこれがなければ日本は同じことをやっているのかどうか、これの効果が国内的にどういうものなのかということについて、しっかり答えていただきたいと思います。

草賀政府参考人 この手続につきましては、先ほど申し上げましたように、WTO協定も踏まえまして、政府全体として、具体的に非研究開発衛星を調達するための競争的手続を定めるべく合意したものということでございますので、具体的には、これ以降、これの手続に従いまして調達手続がなされている、こういう、いわばWTOの政府調達協定のさらなる具体化のために合意した政策である、こういうふうに理解しております。

細野委員 この問題について、今、明確に初めて答弁があったというふうに思っています。

 大臣、もう釈迦に説法なのでわかっていらっしゃると思いますが、一九九〇年、あの前後に日米摩擦が高まって、衛星の調達を迫られてつくったのがこの手続なんですね。WTO協定に基づいているというのを外務省から、私、何度もお伺いをしたんですが、これはなかなか調べるのは大変なんです。各国の状況を見ていると、こんな文書をつくって、ここをあけますよなんて明確に書いている国は日本だけです。各国は、安全保障にかかわることとして、衛星についてはいかに国内調達を優先するかということを必死に知恵を絞って、守る側の法律をつくっているんです。日本だけ、開放する側の手続があるんですね。

 強調しておきたいのは、大体、年間に打ち上げられる衛星というのは年によって違うんですが、少ない年で二、三本。二、三本じゃない、衛星はロケットに載っかっていきますから、二、三個ですね。多い年で十個近く打ち上げられる年もありますが、特に九〇年代半ばというのは、実用衛星は全部海外から調達しまして、結果として日本は衛星の個数が非常に少ないわけです。

 それで、ちょっと二つ指摘したいんですが、一つは、安全保障にかかわる情報収集衛星は国内で調達できることになっているんだけれども、安全保障にかかわるものとそうでないものの区別が極めて今あいまいになっているということ。通信衛星も当然安全保障上のいろいろな措置につながってきますし、例えば、それこそGPSみたいなものというのは、あれは安全保障そのものでもあり、民生利用でもあるわけですね。ボーダーレス化しているので、この区別がもう全く意味がないということが一つ。もう一つは、結局、回数が少ないものですから、日本はこの分野で技術力が落ちているんですね。その両面からいって、この協定は、明らかにもう私は過去のものにすべきだと思っています。

 もう一つ加えると、これは最近私、ちょっといろいろな人と議論をして気がついたんですが、九〇年代前半から二〇〇〇年のちょっと過ぎぐらいまで、やたら実用衛星が多いんですよね。当時は、研究開発衛星ではなくて実用衛星で上げていたので、それもあるんですが、もう一つは、アメリカがやはりどうしても衛星を打ち上げたいという要望があって強くプッシュしてきた。ところが、アメリカにとっては、衛星技術を海外に出すというのは技術の流出につながるので、最近、結構慎重になってきているんじゃないか。まあ、九・一一以降ですよね。最近、中国の衛星破壊なんかも含めて、相当実はアメリカはこの宇宙政策を国益として考えるようになって、同盟国たる日本といえど、そんな安易には輸出できないという雰囲気になっているんではないか、そういう論文も出ています。具体的に数字でも出ています。足元が少ないんですね。

 そろそろ、やはり日本としては国内調達を優先するという方針にする意味では、非常に不明確な位置づけのこの手続を変える時期に来ているのではないかと。加えて言うと、アメリカに対しても、日本はアメリカから衛星を買って守ってもらう国というだけではなくて、今は衛星破壊まで行われる時期ですから、日本が独自の衛星技術なりとか衛星網を持つことはアメリカのシステムを補完する上でもプラスですよと説得すべきじゃないかと思うんですよ。

 これは経済産業大臣の所管を超えますが、そろそろそういう研究を経済産業省としていろいろな角度からされるべきではないかと思いますが、大臣、御所見いかがでしょうか。

甘利国務大臣 先生は、もうすべて御承知の上でずっと質問をされてきたんだと思います。

 WTOの政府調達協定では研究開発と安全保障、しかし、恐らくこの安全保障というすそ野をどんどん広げていっているのがEUで、日本はかなり狭く解釈している。では、それは何でといえば、おっしゃるとおり、九〇年の日米の衛星合意、これは政府間の約束ですから、これをほごにできないということで生まじめにやっているというところなんだと思います。では、これの見直しで、アメリカ側にも事情が出てきているんじゃないのという御指摘であります。その辺はよく調査させてみたいと思います。

 いずれにしても、約束事で結んでいますから、一方的にこっちから破棄するということは日米関係の重要性からいって難しいんですが、向こう側の事情が、そういうふうなのが出てきているとするならば、いろいろ協議をする余地は出てくるんだと思います。その辺はよく調査をしてみたいと思います。

細野委員 そろそろ日本の宇宙開発については何らかアクションを起こさなきゃならない時期に来ていると思っていまして、いろいろ与党の中でも法案が出てきているということがあるんですが、やはりベースをある程度変えていかないと動かないと私は思っているんですよ。そういう意味では、国会決議とこの三〇一条の問題ですよね。この二つについて、何らかやはりそろそろ検討すべき時期に来ていると思いますから、せっかく甘利大臣、こういうことに理解がある、しかも経済産業という観点からやっていただけるので、ぜひ御努力いただきたいなというふうに思います。

 最後、一問だけ、エネ庁の長官に来ていただいているので。

 いよいよあすから日中のガス田の協議が始まるというふうに承知をしています。これは一年ぶりで、非常に期待をされるわけでありますが、日本としては何を求めて、中国側に何を期待して挑むのか。

 来週、実は国会の中で海洋に関する法律ができそうだというふうになっていまして、そこでも再度結果は聞きますが、今の時点での、長官としての、会談に向かう日本としての立場をお伺いしたいと思います。

望月政府参考人 お答えいたします。

 昨年十月の安倍総理訪中以来、日中首脳間では、東シナ海を平和、協力、友好の海とすべく、この局長級協議を注視して、共同開発の方向で早期解決を目指すという認識が共有されていると思っております。

 今回のこの局長級協議は、このような日中首脳間の共通認識を受けて開催される最初の協議となると思っております。

 政府として、日中首脳間の共通認識に基づいて、迅速な解決を目指して、共同開発について突っ込んだ議論を行いたいというふうに考えております。

細野委員 時間が来ましたので終わりますが、長官に一言だけ。

 日中のこの協議の歴史は、日本側がある程度アクションを起こしたときに動いてきたんですね。中川大臣がそれこそ尖閣諸島を視察し、試掘について言及をしたときに、中国側も交渉に乗っかってきた。試掘権を設定したときに、中国側も共同開発についてある程度理解を示してきた。そこからこの一年は全く動いていないのは、日本がアクションを起こしていないからなんですよ。

 私は試掘をそろそろ視野に入れてきっちり準備をすべきだという考え方ですし、そういう趣旨の法律が来週通りますが、交渉するときも、日本は国会にもそういう動きがあるんだ、試掘をしっかり選択肢に入れてもう許認可も出しているんだということもしっかりとテーブルにのっけて交渉していただきたい。これが私は歴史に学ぶということだと思いますので、そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 私も、経済戦略関連三法案について御質問したいと思います。最後の方になりましたので、重複する論点もあると思いますし、逆に、特に三谷委員とのやりとりで、ちょっと私も新たに浮かんできた疑問とかそういうのもありますので、御質問したいと思います。

 まず最初に、私も一般質疑のときに御質問させていただきまして、今回の、経済成長戦略と言いながら、大臣のお言葉で言えば、ちょっとシャビーな内容になってしまっている。これは別に、要は、切りがないんですよ。予算要求をすれば、それは、皆さんの立場からすれば大きい方がいいということになるけれども、いろいろ予算の制約がある。

 ただ、私が申し上げたいのは、これは考え方の問題で、例えば小泉政権のもとでこういう答えがあったら、私はそれで納得していたと思うんですよ。

 というのは、彼は、構造改革なくして成長なしと。その構造改革というのもいろいろ定義はあるけれども、恐らく財政再建というのは非常に大きな部分を占めていた。だから、そういった中で、経済に配慮しないといけないと言いながら、やはり予算の制約があるからそう簡単にはいかないという話はわかるんですが、安倍政権は、わざわざそれを転換して、成長なくして財政再建なしということも言っておられると思います。

 これは単に、今まで余り触れていなかった経済成長の方にちょっと重点を置くという意味合いなのか。私が最初思ったのは、これは、ある程度、短期的な財政再建というものをある意味ではやらなくても、まず経済成長を優先して、それで財政再建というものを図るということなのか、その認識をちょっとお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

甘利国務大臣 まずその前に、私がシャビーな内容と申し上げたわけじゃなくて、シャビーな内容と御指摘がありますが、実は予算だけじゃなくてこういうことをやっていますからと申し上げたのでございまして、つくった者みずからがシャビーと言うと、ちょっとこれは問題になってしまいます。

 小泉内閣のときと安倍内閣のときで財政再建のプライオリティーはどうなったんだというお話ですが、財政再建は、ポジションは変わりません。歳出歳入一体改革、財政再建を、二〇一〇年代初頭までにプライマリーバランスを黒にするという目標をしいて、その工程表をつくっているわけでありますから、財政再建が後退したということではないのです。ただし、歳出歳入一体改革であると同時に、経済財政一体改革なんです。

 これは何を言うかといいますと、かつて政府はキャップをかけて財政再建をやろうとしました。そのときに、特別委員会をつくりまして、私は理事をやりました。そうしましたら、半年もたたないうちに前言訂正で、今度は、それをやめにするという特別委員会をつくって、その筆頭理事をさせられたわけであります。我ながら、半年前にやっていたことと今やっていることで全然違うことをやっているので、どうなっているんだという思いにさいなまれました。

 そこで、何が間違っていたかというと、ただキャップをかけていって、頭を押さえて出入りを調整して財政再建をやっていくというのは、実は失敗する。健全な成長経済というバックボーンを抜きにして帳じり合わせだけでいったら、経済が失速したらもっと帳じりを強く合わせなきゃならない。そうすると、もっと失速する、もっと合わせるというマイナススパイラルになっちゃう。その反省が強くあるんです。

 でありますから、歳出歳入一体改革なんだけれども、バックボーンたる健全な成長経済というのを忘れたらこっちが失敗しますよという二本立てになっています。ただ、その際に、歳出歳入一体改革がありますから、予算のキャパを広げるということはできないので、質の改善をやっていこうという趣旨です。

 そのために三千億の成長枠をとったというのは、経済成長に資するような政策予算については優先的に予算をつけていく。本当は、私は別枠にしてくれと言ったんです、その枠は。内数じゃなくて外数に、それが本当じゃないのと言ったんですが、これは攻防戦で、財政再建のたがが緩むということで内数になりました。ただし、優先的にそれは確保していきますということになりました。

 私自身は、諮問会議等で、次なる予算、二十年度のときには、もっとこの枠を広げて設定してくれと。つまり、成長を牽引するような政策は優先的に金をつけるという哲学をずっと引き継いでほしいということを主張しているわけであります。

 キャパは広げないけれども、質を、成長型に予算の質を変えることによって、キャパを広げたと同じような効果を期待する。それとあわせて、お金のかからない成長戦略といいますか、規制の改革とか制度刷新とか、そういう仕組みの方にメスを入れることによって成長を牽引していく。そして、そういうことを通じて、経済を失速させないで歳出歳入一体改革を行うということであります。

北神委員 大分はっきりわかってまいりました。

 ただ、大臣のおっしゃっていることはやや矛盾するところがあると思うんですよ。

 それは、財政再建の中で質を変えることによって経済成長を図ると言われながら、内数じゃなくて外の枠として。いや、私はそこは、むしろ大臣の後段のお考えの方が正しいと。これは個人の考えですが。

 というのも、おっしゃるように、歳出歳入改革をやっていると、これは要するに予算を減らすことと増税をすることですよね、これをやっていると、当然需要は減っていくわけですよ。一方で、経済成長と言いながら、しかもそれも今の既存の予算の枠内でやっていると、成長なくして財政再建なしというスローガンに象徴されるような、めり張りのきいた大胆な政策ということからはほど遠いというふうに思いますので。

 私はやはり、前も一般質疑のときに財務省の呪縛ということを言いましたが、これは本当にネックになっているというふうに思います、本格的にやるんだったら。そのためには、研究開発とか税制を提案されたということですが、直接投資をするとか、やはりそういった部分とか教育とか。教育も、伊吹大臣にも質問したけれども、あの予算も本当に〇・二五%ふえたぐらいかな、当初予算ベースで。全然、力を入れると言いながら、結局小泉さんの時代の財務省の呪縛からなかなか離れられない。

 ただ、もちろんこれはこういう考えに立った上での話でありまして、いや、成長なんか、政府が幾ら力を入れても、そんなものは結局民間がどこまで頑張るかによって変わるんだとか、あるいはいろいろな外的な要因で変わるんだ、だからそんなことをすべきじゃないという発想ももちろん、財務省なんかはそういう発想を持っていると思いますが、あると思うんですが、本当に経済成長なくして財政再建なしという因果関係を考えるのであれば、やはりそのぐらいの大胆な政策が欲しいなと。

 だから、大臣が言われたように、ぜひ外枠で、要するに、経済成長というのは、教育であろうと社会保障であろうと科学技術であろうと、これがまさに税収を生む一つの大きなエンジンなんだという位置づけをしてもらうべきだというふうに思いますし、前の二階大臣にも私も何度も申し上げてまいりましたが、ぜひそのところを今後の政策についてよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 本題の方に入りますが、今度、経済成長戦略ということで、二・二%を目標にする、二〇一五年までですか、十年間にわたって、実質成長率二・二%を目標とする。これもいろいろ、さっき三谷委員と根拠の話がありました。根拠の話も、私も昔、経済成長とか役所でやっていたので、こんなもの、ちょっといじったら幾らでも変えられる話なので、余り私はこんなことで時間をとるつもりはないんです。

 一方で、考え方としては、まずお聞きしたいのは、この三法案を通して、これで二・二%の成長を図るという理解でいいのか。要するに、さっきの話で、政策なかりせば〇・八%、それで、この法案を通してこれを実行したら一・四%分ふえるから二・二%になるという考え方でいいのかどうか、確認したいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 施策を講じない場合のベースの成長率が〇・八%というふうに考えておりまして、それで、施策を講じた場合が一・四%ということで、足して二・二%ということでございます。

 ただし、その施策というのは、この法律三法だけではなくて、経済成長戦略大綱に書いてあるいろいろな施策です。この三法以外にも、先ほど大臣から申し上げましたように、減価償却制度の抜本的改正であるとか、ほかの成長戦略、先ほどの三千億で認められたいろいろな政策、こういう政策を、今後十年間といいますか、成長戦略大綱において一応私ども書かせていただいた政策を実施した場合に見込める数字ということでございまして、この法律だけでというわけではございません。

北神委員 この三法だけじゃなくて全体ですね。成長戦略大綱全体を実施して一・四%だということですね。

 それで、実は先週、安倍総理が、大臣と総務大臣、あと金融担当大臣を官邸に呼んで、官邸に呼んだのかちょっとわからないんですけれども、地域経済活性化策をまとめるように指示を出されたと。これは事実かどうか、確認したいと思います。

甘利国務大臣 私と金融担当大臣と総務大臣が官邸に呼ばれました。事実でございます。

北神委員 それで、私もその後の経緯が全然わからないんですが、金融担当大臣は、たしか記者会見で、それを受けて、リレーションバンキングについてちょっと考えようかなということを言われましたが、大臣は何かお考えになられるんですか。

甘利国務大臣 今回の三大臣が呼ばれたというのは、地域金融の側面から地域の中小企業の活性化を図っていくということだと思います。

 先ほど来、話が出ておりますが、都市銀行の不良債権比率は極めて劇的、効果的に下がりましたが、地方銀行、信金、信組の不良債権比率はまだ高いわけでありますし、それと、債務を抱えています地域中小企業の再生を一体的に取り組んでいかなきゃいけないという問題提起からだというふうに思っております。

北神委員 それでは、今のところ経済産業省として具体的な、何かこういうことをしようとか、そういうことは余りお考えになっていないということですか。

甘利国務大臣 今、具体的には検討中なんでありますが、おっしゃいますように、リレーションバンキング、つまり、大銀行が決済処理機能としての金融機関、トランザクションとしての機能は、どちらかというと機械的な精査になりますね、企業診断。ところが、地域金融機関というのは、その経営者の能力とか会社全体の、従業員のモチベーションとか、あるいは潜在発展能力とか、そういう、いわゆる大銀行の査定に用いる機械的数値じゃない、地域金融としての、その企業の見えない信頼性というか将来性をしっかり検証して、そして金融措置を講ずる、そういう機能を大切にしなきゃいけない。中小企業なんというのは、紋切り型の数字でそこの能力がはかれないという分野が多いですから。そういう、金融と地域中小企業との関係を構築するという視点から、いろいろ考えたいというふうに思っております。

北神委員 私が申し上げたいのは、安倍総理が地域経済活性化策というものをやれと、中身は地域金融ということかもしれませんが、恐らく総理の頭では、総合的に考えろという御指示だというふうに思います。

 それだったら、今せっかく、経済成長の目標を二・二%だ、それで経済成長戦略大綱で一・四%を達成するんだ、それで二・二%だということを言っているのに、そしてまだ、衆議院において、この委員会において審議をし始めているのに、安倍総理がそういうことを言うというのは、要するに、では二・二%をさらに上げるつもりなのか、成長目標を。あるいは、審議をし始める前に、これでは中身が足りないから、もう少し地域活性化のために力を入れろと言っているのか、その辺がちょっと不明確だと。

 大臣は、やはりそこで、いや、もうちゃんとここで経済成長戦略大綱というのをやって、さっきもいろいろ議論が出てきた、地域の活性化というのもやっているんだ、それで金融の話だって、中小企業基盤機構、ここでファンドをつくってやろうとしているんだというふうに主張すべきだと思うんですが、その辺、どうでしょうか。

甘利国務大臣 安倍総理は皆承知の上で号令をかけていらっしゃると思うんですが、安倍総理は割と人使いがうまい人でありまして、恐らく、金融担当大臣は再チャレンジ担当でもありますし、金融の側面から今までの政策をさらに補完して、揺るぎのないものにせよという、金融担当大臣を中心のスキームで活躍の場を与えているということではないかなと思います。

北神委員 その辺、人事の使い方の話で、私らにはよくわからないんですが。

 やはり選挙前でこういうことを打ち出しているという部分もあるんじゃないかなと私は何か勘ぐるわけでございますが、やはりそれはちゃんと、これできちっとやっているんだということを主張して、これを審議する前の段階から地域活性策をやれというのは、やや順序がおかしいなというふうに思いますので、それだけちょっと御指摘をさせていただきます。

 もう一つ、今度はスキームの中の話に移りたいと思いますが、今回政府が提出した産業活力再生特別措置法、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律、三法案について共通項がある。これはスキームの部分でありまして、要は、国の方が基本方針を出して、都道府県あるいは事業者、こういったところ、地方公共団体あるいは事業者が計画をつくる、それに基づいて必要な援助措置というものをやるというスキームだと思います。

 これも、細野議員あるいはその前の三谷議員もいろいろ指摘があって、いろいろちょっと腑に落ちない、この方法によって。今までも、規制改革特区ですかとか地域再生法とか、去年もこの委員会でやったまちづくり法案とか中小企業ものづくり基盤技術法案とか、大体このスキームを使っているんですよ。これは、それこそ財務省に対して、これはばらまきじゃなくて、ちゃんと、きちっとやる気のあるところだけに対して支援するんだというアリバイづくりの部分もあるというふうに思います。

 今回、中小企業の対策としてやはり問題になるのは、さっきも三谷委員が、目的は何なんだ、地域活性化なのか、それとも中小企業対策なのかというところは実は大きいと思うんですよ。たしか、さっき事務方の方から、これは中小企業の事業の対策なんだ、それが一番の目的だというふうに言われましたが、資料を見ていると、できるだけ両方入れているんですよね。地方の対策でもある。

 そこで、ややこしいのは、例えば地域再生法とか構造改革特区だったら、これは、それぞれの都道府県がいろいろ知恵を競って、やる気のあるところを出していろいろな案を出してくる。その努力に報いて、一応地方の責任者と思われる地方公共団体が自分の努力によって援助をもらえるとか法律を変えてもらおうとか、そういったスキームだ。今回、中小企業というのは、別に地域には限らないわけですよ、全国の中小企業を対象にしている。そこが混同しているのが一つ今回ひっかかるところじゃないかなというふうに私は思っております。

 具体的に、つまり、国の方が都道府県にお任せ状態になっちゃうんじゃないか、要するに、皆さん、計画をつくりなさい、そして、広報、周知徹底も皆さんでやりなさい、我々は上がってきたものを認定するということになる。そうしたら、都道府県によってばらつきが出てくるおそれがある。

 規制改革特区とか地域再生法の場合だったら、いや、それは努力したところがちゃんと報われるようになっているんだということが言えるけれども、これは経済成長戦略であり、その中の中小企業対策という部分がありますので、例えば同じ企業でも、たまたまやる気のない知事の地域に存在していた場合は、もしかしたら情報も全然来ないかもしれないわけですよ。やる気のあるところは、例えば説明会を頻繁にきめ細かくやって、あるいは地域再生法のときはキャラバンまでやった。そこまでやるかどうかは別にして、都道府県によってばらつきが出てくるおそれがあります。

 この点について、どうやって、きちっと各都道府県がまじめに掘り起こしをやっているかどうかをフォローするのかというのをお聞きしたいと思います。

渡辺(博)副大臣 確かに、委員おっしゃるとおり、やる気のあるところ、やる気のないところ、そのばらつきが出る可能性というのは否定できないというふうに思います。

 そこで、今回の法案について、私どもは、まずはしっかりと広報をしていかなければならないというふうに思っております。その中で、各地で説明会をまず開催いたします。そしてまた、わかりやすいパンフレットの作成や配布をいたします。それから、金融機関や商工会議所などの経済団体と連携して、施策の紹介、シンポジウムの開催などに取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 法案の具体的な内容としまして、産業活力再生特別措置法につきましては、これは平成十一年にできた法律でありますけれども、その後、十五年に改正が行われました。この改正によりまして、協議会が、これまで全国で一万件の企業からの事業再生の相談を受けております。そしてまた、着実に実績を上げてきているということであります。その際に広報宣伝として使った本がこういったハンドブックでございます。したがいまして、こういったハンドブックに基づきまして、それぞれの地域で宣伝をさせていただきました。

 また、中小企業の地域資源活用促進法案につきましては、地域中小企業サポーターというものを委嘱いたしまして、地域資源活用による事業促進に向け、国民運動として盛り上げていきたいというふうに思っております。

 また、地域産業活性化法につきましては、現在、関係六省、経済産業省を初めとしまして、国土交通省、厚生労働省、文部科学省、農林水産省、そして総務省という関係六省から成る連絡会を設置しまして、今後、地域ブロックごとにこれを展開してまいります。地域がこの法律に基づきまして基本計画を策定する際のアドバイス、そしてまた相談に積極的に応じて、必要な支援を講じてまいりたいというふうに思っております。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

北神委員 広報をしっかりやるという話ですが、今、渡辺先生が言われたのは、国の方が各地方に出向いて広報宣伝をするという話ですか。それも、国から都道府県の役所に対してやるのか、それとも商工会議所とかそういった中小企業団体とかに対してやるのか、お聞きしたいと思います。

渡辺(博)副大臣 広報宣伝につきましては、当然のことながら、国もしっかりやりますし、都道府県もしっかりやります。そして、当然のことながら、地域の市町村並びに商工会議所、商工会、こういったところにもしっかりと周知徹底をさせていただきたいと思います。

北神委員 ぜひその辺を、大前提ですので、お願いしたいというふうに思います。

 去年もいろいろな、さっき申し上げた経済産業省の法案で同じようなスキームを使っていて、そういうのを検証されたことはあるんですか。要するに、これは、かなりやる気のある知事のもとだったらすごくいろいろ反応がいいな、でも、やはり従来型の行政をやっているところだったら全然そういうのが出てこないなとか、そういった検証をやったことがあるのかどうか。そして、もしあるんだったら、どうやってその教訓を生かしていくのかというのをお聞きしたいと思います。

石毛政府参考人 ものづくり法だとか新連携だとかいろいろな仕組みはあるんですけれども、それぞれこれは、先生御質問されましたように、助成対象を確定するというねらいがあるわけです。その際に、法の立て方にもよるんですけれども、ものづくりは別に都道府県が直ちにそのスキームの中に出てくるわけではないんですね。新連携も同様なんです。そういうことなものですから、それら二つについて今検証して云々というのはちょっと答えにくいわけでございます。

 ただ、今回の法律につきましては、私ども、こういうスキームを立てておりますけれども、基本方針に沿って各都道府県が、どうやったら自分のところの地域経済を活性化できるのか、その際の、活性化するためのいわば効率的といいますか効果的な手法として、私たちは、地域資源を活用するやり方があるのではないかということを提示しているわけです。したがいまして、都道府県の知事さんの思い方によって、当然、活用の程度は変わってくることはあり得るのかなとは思います。

 ただ、私たち、それで放置をするということではなくて、地域資源を各都道府県が構想の中で指定していくわけですけれども、それを国の方で認定するというのを一つ入れております。したがいまして、そこで、今先生がおっしゃいますような、地域間で物すごく大きなばらつきが出て、ちょっといかにもこの県はいかがなものかということがありましたら、私どもは積極的に、もっとこうしたらいいのではないかということも言っていく必要があるだろうというふうに思っております。

北神委員 ぜひ、そういった認定の段階とかそういったところで、これは中小企業の活性化がやはり最終目的だと私は思うので、余り力を入れていない自治体のところはやはり皆さんが適切なアドバイスをしていかないといけないというふうに思いますので、そこをよろしくお願いしたいと思います。

 また、それについて関連ですが、計画が上がってきて、それを認定する。例えば中小企業の地域資源の法案でしたら、その地域地域の地域産業資源というのは何なのかということを都道府県が定める、それを国が認定するわけですよね。

 その段階で、国の中央官庁の役人に、どこどこの地方の地域資源というのはこれで適切かどうかという判断がなかなか難しいというふうに思います。逆に言えば、だからこそ都道府県がそういうところを掘り起こしをするという意味だと思うんですが、さっきの三谷さんの話じゃないですけれども、国がそんなことを、判断というのはなかなか難しい、だから多分うのみにせざるを得ない部分があるというふうに思います。あるいは、逆に変な指摘をすると、とんちんかんなことになるおそれがあるというふうに思います。認定の段階もそうですし、おっしゃったように、都道府県がきちっと掘り起こしをやっているかどうかというのを見るに際しても、役所、中央の皆さんだけでは判断が非常に難しい。

 そういった意味で、やはり霞が関だけではなくて、幅広い現場の経験を持っている人とか専門家とか、そういった方の意見を、計画の認定の際とか、あるいはフォロー、事後評価をするときにやはり活用しないといけないというふうに思いますけれども、何かそういう工夫はされるんでしょうか。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 今認定とおっしゃいましたけれども、二つのフェーズがあると思います。一つは、地域資源を指定する段階でのお話、それから、そういう地域資源が示された後に、中小企業者が事業計画をつくって具体的にそれを計画として認定する段階、二つあるわけでございます。

 最初の方の、地域資源を認定するという段階のものでございますけれども、都道府県は、もちろん県自体で相当の情報は持っていると思いますけれども、より地域資源の地元に近いところから必ずよく意見を聞いていただいて、市町村、あるいは商工会議所、商工会、あるいは中小企業そのもの、そういう方々からよく意見を聞いて地域資源を定めていただく。それを国として、先ほど申し上げましたように、一応バランスを私どものところで少し見させていただくという形が一つございます。

 それから、中小企業者が具体的に計画をつくって、各経済産業局などに提出をして認定を受けるわけですけれども、その段階では、私ども、実際に運用するときには、その局に、ある種の評価委員会的な、第三者的な委員会、いろいろな専門家の方々が入って、ここはこうした方がもっとよくなるよ、そういったような御意見をいただいて認定していく、そういうふうな形にするのがいいのかなというふうに思っております。

 いずれにしましても、現場での中小企業者の事業化の効果が上がるように、英知を集めて認定の作業をしていきたいというふうに思っております。

北神委員 今二つの認定の部分についておっしゃったと思うんですが、事後評価というのはされるつもりはあるんですか。この法案は大体五年ぐらいだというふうに思うんですが、ちゃんとうまくいっているかどうかというフォローをすることは考えておられるのかどうか。

石毛政府参考人 この法律を運用した後の事後評価は当然するつもりでおります。

 現に、二年ほど前に新連携という制度を発足させて、これは、異業種の分野で、すぐれたといいますか、やる気のある中小企業、そういう企業の連携事業を認定して助成をしておるわけですけれども、これについては、現時点でたしか三百十五件の認定が起こってきております。実は先日も、この事業を進めるに当たって、プロジェクトマネジャーあるいはサブプロジェクトマネジャーという方々をブロック単位に張りつけておりまして、その方々は非常にハンズオン支援という形でやっていただいております。その方々に御参集いただいて、今、どういうふうにそれぞれの事業が動いているのか、どういう工夫をしたらいいのかということを、私ども一堂に会して意見交換を行いました。

 そういうことも含めまして、この地域資源の活用についてもフォローアップをしっかりやっていきたい、効果的な運用をしていきたいというふうに思っております。

北神委員 ぜひそれはよろしくお願いしたいと思います。

 次に質問したいのは、今度は産業活力再生特別措置法改正案についてですが、これの大きな目的として、サービス産業の生産性向上という話がある。これは先ほども議論になりました。

 私も、今、大企業主導で経済はよくなっておりますが、中小企業の、特にサービス産業はGDPの七割ぐらいを占めている、こういうところを底上げしないといけないというふうに思うんです。ただ、先ほどの議論を聞いていても、生産性を、特にサービス産業の生産性を向上させるというのはなかなかわかりにくい。ITぐらいはぴんとくるんですが、大臣もいろいろ、ものづくりの分野から、旅館の話とか、そういった技術を使ってサービス産業にも当てはめるという話もありましたが、それで大幅に生産性が上がるというふうにもなかなか思えない。

 まず、なぜ我が国のサービス産業というものが生産性が各国に比べて低いのか、その原因はどこにあるというふうに認識しておられるのかということをちょっとお聞きしたいと思います。

高木大臣政務官 お答えいたします。

 我が国のサービス産業は多種多様であるため、生産性が低い原因は個別業種ごとに異なります。例えば、IT技術の活用がおくれていること、また、研究開発が不十分なこと、また、サービスの品質の評価が困難であるため競争が活発化しにくいことなどが原因として挙げられております。

北神委員 それは一つの原因だと思うんですが、何でほかの国は、例えばアメリカのサービス産業は生産性が高くて、日本の場合は低いのか。これについて分析はされているんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今手元には持っておりませんけれども、アメリカは、ITを非常に活用しているというのと、それから、IT化するに当たっても、制度を改変することについて非常にちゅうちょしない。要するに、日本の場合は、例えばIT化する場合におきましても、今までのルールをそのまま生かしてIT化しようとするので、IT化する際のソフトが非常に複雑化して、決定的な合理化に役立たない。ただ、アメリカの方は、IT化するに当たりましては、制度自身を非常に合理化する、ITが活用しやすいようにやるというふうなことが言われております。

 一例を挙げさせていただきますと、聞いた話でございますけれども、例えば、銀行の金利を通帳に記載する場合には、何か、日本は慣行としまして、大体二月と八月にやるということでございますけれども、諸外国全般に、毎月通帳に金利は入るということで、世界じゅうのパッケージソフトは毎月金利をつけるような形でできておるので、それを活用すればソフトも簡単にできますけれども、日本の場合は慣行として二月と八月にすることになっているということで、そのソフトをあえて別につくらなきゃいけないとか、そういう問題もありまして、なかなかITの活用ができないということがあります。それは、やはりIT化する前のいろいろな社会制度、それから金融制度、会計制度、そういうところを抜本的に国際的に標準化する形で導入すれば、もっと生産性が上がるということになるんじゃないかと思います。

 そういう面での地道な工夫が今後重要になってくると思っていますので、先ほど来御議論がございましたが、サービス産業生産性協議会というのをこの四月に発足させまして、いろいろなサービス分野におきまして、何が生産性を上げる際の障害になっているのかというのを事細かくサービス産業ごとに分析をして、そういう改善に努めていきたいというふうに考えております。

北神委員 ITと、それに伴う制度改変という話がありましたが、地道といえば地道で、それで〇・四%GDPを上げるという話ですが、そのぐらいの対策では〇・四%という根拠もなかなか見えにくいなというふうに思います。

 高木政務官にもう一度質問したいのは、おっしゃった生産性が低いと思われる要因に対して今後どうやって対処しようとされるのか、お聞きしたいと思います。

高木大臣政務官 サービス産業の生産性向上につきましては、やはり自由な民間の活力が存分に発揮されることにより実現することが基本であると考えております。

 そのような民間の取り組みを経済産業省としてもしっかり支援するために、例えば、製造業ノウハウの活用によりますサービス提供プロセスの改善、これは、例えば製造業で使っておりますかんばん方式を病院に取り入れることによりまして待ち時間を短縮する。また、サービス産業におけるIT導入の支援、これも、例えば病院ではレセプトのオンライン化とかさまざまございます。また、サービス分野で科学的、工学的アプローチの拡大。また、サービス分野での産学連携の強化、推進。またさらに、戦略的人材育成、これは、例えば観光分野ではやはりそうした人材を文科また産業界と連携をしながらつくっていかなければいけないと思っております。また、信頼性向上のための情報提供の仕組みづくり、これは、例えばエステとか結婚相手相談紹介業とか、少子化対策では大変大事なところでございますが、ここにつきましても、信頼性をどのように向上するかということが課題でございます。

 そうしたことを今後も広く検討を続けまして、これまで主に製造業を念頭に行ってきた産業政策をサービス産業に展開してまいりたいと思っております。

 ただいまお話ございましたサービス産業生産性協議会、これが今春をめどに発足される予定でございます。ここでは、例えばベストプラクティスを創出し、またその普及啓発のための表彰制度の創設や、また産学連携の促進などを支援してまいりたいと思います。

 あわせまして、産業活力再生特別措置法を改正いたしまして、新たに今度は事業分野別の指針を策定するなど、生産性向上に向けた事業者の取り組みも支援をしてまいりたいと思います。

北神委員 非常に地道な話ばかりで、悪いとは言わないんですけれども、今度、サービス業の生産性向上の会議をやるという話があって、具体的な内容はそこでどんどん決まっていくということだと思うんですが、その具体的な内容が決まる前に、これによって〇・四%GDPが上がるというのも非常に不思議な話だというふうに言わざるを得ないと思います。余り細かいことは聞きませんが。

 この衆議院の調査室がつくっている法案の中にアンケート調査がありまして、第百六回中小企業景況調査、ことしの一月に行われた調査で、中小企業基盤整備機構がやっている。ここは、中小企業、サービス産業に対して、何が経営の一番の問題だというふうに思われるかというアンケート調査がありまして、第一位、第二位、第三位として、これも小売とか製造業とか建設業とか、それぞれの分野に分けて書いてあるんですが、小売業以外はすべて、需要の停滞というものが一位になっているんですね。

 つまり、今まで我々は供給の話ばかりしておりまして、先ほど産政局長がたしか三谷委員の質問に答えて、成長というのは供給と需要とあると。まさにサービス産業についてはやはり需要が全然出てこないというのが最大の悩みであり、生産性を向上させるというのは、もちろん否定するつもりは全くないんですが、やはり一番根本の問題は需要の部分だというふうに思います。

 下手にIT化とか、要するに生産性の向上あるいは効率性というものを高めると、逆に、余り人が要らないよ、人が要らなくて、同じ生産力を持つ。つまり、一つの生産性向上の定義として、少ない労働力で同じアウトプットというものを確保することができるということが言えると思うんですよ。そうなると、太田委員の話じゃないですけれども、また失業がふえたり、あるいはパートや派遣というものがふえて、給料はそれほどもらえない。そうしたら、所得、環境も悪くなって、需要も余り出てこないということだったら、非常に問題だというふうに思います。

 これは私も前、パロマの話のときに鹿鳴館経済学というふうに申し上げましたが、これも結局、規制緩和とか供給の話をずっと我々日本ではしていますが、例えばタクシー業界なんかでも、皆さん御存じのように、バブルが崩壊してタクシーに乗る需要というものは物すごい激減しているのに、あんなに規制緩和してばんばん車をふやして、供給側をふやして、何をしているのかなと非常に不思議に思うんですよ。

 アメリカとかイギリスが規制緩和とか生産性の向上の話をしていたときは全然環境が違って、スタグフレーションで悩んでいて、需要に供給が追いつかない、だから供給の方を拡大しないといけないという問題意識を持っていたのはいいと思うんですよ。でも、日本は、バブル崩壊して資産価格が下落して需要が物すごい足りなかった。そういった中で、ずっとサプライサイドとかいって供給をふやすことばかり考えて、いまだに、私、それは否定しないんですよ、技術革新というのももちろん経済成長の一番基本であるから、そう思うんですが、やはり需要の方も考えていかなければならないというふうに思いますので、今回のサービス産業の生産性の話も、生産性上昇と同時に雇用の確保というものも両立していかなければならない。

 そういった意味で、個人消費活性化という部分、これは一般質疑のときに近藤委員も私も議論させていただきましたが、消費の活性化という部分も、これは簡単ではないと思います。ないと思うんですが、先ほど産政局長が三谷委員に金融の問題だろうというふうに言われましたが、そういった点を踏まえて、どういうふうにお考えなのか、あるいはそういう対策を考えているのか。

 前に、一般質疑のときに大臣にも質問したら、大臣も多分同じ考えをお持ちで、やはり消費というものが上がってこないといけない、ただ、具体的な政策については今後の話だというようなニュアンスでしたが、それについて何かお考えありますでしょうか。

甘利国務大臣 消費を拡大させるのに、御専門でしょうけれども、サプライサイドとディマンドサイドと両方があるんだと思います。つまり、可処分所得をふやして購買力を上げていくというのは消費拡大に当然つながります。ですから、企業側の上げている収益を家計に移転していくということが大事で、今その作業は、タイムラグがもちろんありますけれども、少しずつ進んできているわけであります。雇用の七割を抱える中小企業への適正な利益の配分ということについても、ガイドラインもつくって要請をしているわけであります。

 一方で、イノベーションが消費を拡大するというのは、それまで市場になかった商品やサービスが提供されることによって消費が拡大されるという効果があります。携帯電話がなかった時代にそういう需要はそもそも存在しないのであります。しかし、携帯電話が開発されることによって、突然そこにある消費が生まれるわけでありますから、供給サイドと消費サイドと両方をどう刺激していくかという両々相まった政策が必要だというふうに思っております。

北神委員 そのとおりだというふうに私も思います。ただ、いわゆる需要の面において、これを質問しているのは、さっき金融の部分だというふうにおっしゃったんだと思うんですよ。多分、ゼロ金利政策あるいは低金利政策の中で、需要といってももちろん設備投資とかそういう分もあると思いますので、そういったところだと思います。

 この前議論させてもらったように、これは非常に私は重要な部分だと思って、別に今ぐっと金利を引き上げるとか、タイミングの問題とかいろいろあると思います。日銀総裁が今回引き上げる前のときに上げようとしたら、非常に政治的な圧力があった。これも非常に残念なことだというふうに思っていまして、日銀の独立性の問題だけじゃなくて、経済成長戦略をどう考えるかというところで、いわゆる低金利の犠牲の部分として、やはり個人消費に非常に影響しているところがあると思うんですよ。これは貯金の利子所得の部分である。

 利子所得といえば余り大したことではないというふうに思われるかもしれませんが、九三年、十年以上前と比較すると、利子所得は一年間で二十兆円ぐらい減っているわけですね。二十兆円というのは、消費税でいえば四%とかそのぐらいの規模の金額がそのまま家計から、ある意味では移転、強制的な所得分配みたいな部分で銀行の方に行っている。

 これは、金融不安のときにやったということは私は評価しています。そのときには金融を安定するということが先決だった、だからそういった低金利政策で安定というものを図ってきた。でも、もう今は銀行は空前の利益を上げている、そういった中で、一方で家計の利子所得というものが犠牲になっている。

 この低金利政策で、設備投資といっても、こんな異常な低金利で仮に設備投資が誘発されているのであれば、それはかなり質の悪い部分も結構出てきていると思うんですよ。なぜなら、資金調達コストが物すごく低いから、別に大した見通しのない投資でもばんばんやったらいいじゃないか、そういった部分もあって、そんな設備投資というのは長期的な経済成長には到底つながらない。

 もちろん、国債の利払いの問題とか中小企業の中で借金を抱えている方の利子負担とか、そういったところはあると思いますが、金融政策の基本というのは、きちっとしたお金の流れが図られて、健全な設備投資が行われるような環境というものがやはり金融政策の一番基本であって、ほかの、今申し上げた国債の利払いとか、こんなことは付随の話である。

 そういったことを余りにも強調し過ぎて、一方で、家計の利子所得というものが減らされて、非常に大きな需要の減退につながっている、あるいは活力が出てこない大きな理由になっているんじゃないかというふうに私は思いますが、さっき産政局長がそういったことを言われたので、ちょっとお考えをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 私の方からは、やはり経済成長をするに当たっては、我々が考えておりますサプライサイドの生産性上昇の努力も必要ですし、一方ではやはり需要サイドがないと、当然、先生おっしゃるように供給が顕在化しませんので、そういう意味で、需要サイドの一つの方法としては金融政策がございますので、ぜひ適切な金融政策をお願いしたいということでございます。

北神委員 済みません、余りにもさらっと言われたので、ちょっと議論しにくくなってしまったんですが。

 要するに、申し上げたいのは、需要といっても、設備投資とか輸出もみんな需要ですから、個人消費というのが大事だということをやはり念頭に置いていただきたい、そして、低金利で非常にそこが犠牲になっているということを申し上げたいというふうに思います。

 それで、次は、もう一つ、サービス産業の生産性向上について、具体的にどういう分野について施策を講じていくつもりなのか。先ほど大臣も言われたし、事務方からも言われましたが、サービス産業といっても非常に多岐にわたる、そういったところで、昨年の経済成長戦略大綱で見ますと、健康・福祉、育児支援、コンテンツ、観光・集客、ビジネス支援、流通・物流の六分野を考えておられるというふうに見受けられるんですが、実際はもっと幅広く考えられるのか。何か具体的に念頭にあれば、お答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 産業活力再生特別法において定めます分野別指針というものは、それぞれ事業を所管する主務大臣が策定することになっております。

 産業活力再生特別法の主務大臣は、八省庁八大臣でございます。例えば、観光に関することであれば国交大臣であるとか、それから、先生御指摘ございました介護、育児サービス等であれば厚労大臣というふうに、それぞれ自分の所管の業種について主務大臣というのは定まっているわけでございます。

 御指摘のサービス分野につきましても、必ずしもすべての業種について指針を策定するのではなくて、それぞれの事業を所管する主務大臣がその必要性を判断することになると思います。

 私ども経済産業省におきましては、例えばGDPに占めるウエートとか、それから他の産業への波及効果といった、そういう経済全体に与える影響とかを踏まえまして、今後、事業分野別指針を策定する分野を決めていきたいというふうに考えております。

 当面は、先生御指摘のように、経済成長戦略大綱の重点サービス六分野でございます健康・福祉、育児支援、観光・集客、コンテンツ、ビジネス支援、流通・物流などを念頭に置いて指針を検討していくことになります。

 例えば、流通・物流分野におきましても、最近非常に、生産性をやはり向上しなきゃならないということで業界でもいろいろ議論されています、例えば小売業ですとか、今後成長を期待されますゲーム産業を含めるコンテンツ産業とか、そういうものを検討していきたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、将来的には、サービス産業の重点六分野に限らず、特に生産性向上が重要ないろいろな分野におきまして、事業分野別の指針が策定されまして、当該業種の生産性向上に向けた方向性が示されるとともに、そういう指針をもとに、いろいろな事業者がみずから工夫をされるということによりまして、本法が有効に活用されることを期待しておるところでございます。

北神委員 それでは、まず、健康・福祉分野、これは経済成長戦略大綱にもあって、今局長が言われたように対象になるという話ですが、これについては当然、高齢化の中で、この分野は非常に成長産業でもあるし、需要もまさにこの分野においては期待できるという意味で、私も、そこに力を入れるというのは非常にいいというふうに思います。

 ただ、一方で、今の我々の日本の医療、介護保険制度の中で、ある意味では、こういった分野に力を入れれば、当然、多くの税金が保険という形で投入されることになってしまう。つまり、医療とか介護ビジネスというものが繁栄すればするほど、あるいは生産性を向上する中で高度技術とかそういったものが普及すれば、それに伴って医療保険の対象になってきたり、そうすれば当然、医療の支出というものがふえてくる部分がある。

 それは別に、皆さんにしてみれば知ったこっちゃないという話かもしれませんが、冒頭申し上げたように、財務省の呪縛がありますから、彼らは、骨太の方針の中で社会保障費の抑制を積極的に進めてきているわけですよ。今後も小泉内閣のときと同じペースで抑制していく方針だということをはっきりと定めているわけであります。

 そういった中で、もちろんいろいろな、例えばジムみたいな、トレーニング用のそういったところも医療ビジネスだといえばそうかもしれないし、それは保険の対象にならないというのはよくわかりますが、やはり高度な医療技術とかそういったものを考えて、技術が普及したりすると、医療の出というものが、税金投入額がふえてしまうということがあると思いますので、これは厚生労働省の話かもしれませんが、経済産業省として、社会保障費の抑制との関係というものをどうお考えなのか、伺いたいと思います。

高木大臣政務官 委員御指摘のとおり、高齢化の進展や新しい医療技術の実用化に伴いまして、医療・福祉サービス市場の拡大が予想されます。それに伴いまして、社会保障費も増大することが懸念されております。

 今、財務省のというお話がございましたが、厳しい財政制約の中で、医療・福祉サービスに対する国民の期待はますます高まっておりますし、医療・福祉サービスの質の維持向上と効率化の両立を図っていくことが重要であると考えます。

 このため、経済産業省といたしましては、一つは、医療分野におけるIT活用の推進、また、医療経営人材の育成等を通じた医療機関の生産性の向上、二つ目に、早期発見、早期治療を可能とする医療技術の開発を進めております。

 一方、健康に対する国民の関心が高まる中で、さまざまな健康関連サービス市場が民主導で拡大、成長し、国民の皆様の疾病予防や健康増進、ひいては社会保障費の適正化に貢献することが期待されております。厚生労働省も予防ということを強調されていると伺っております。

 このため、経済産業省としては、科学的根拠に基づき確実に成果を出す健康関連サービス産業が発展するための基盤整備が必要と思っております。個人がみずからの健康状態を的確かつ容易に把握し、健康への投資を積極的に行えるような環境整備を積極的に行ってまいりたいと考えております。

北神委員 もう時間でございますので終わりにしたいと思いますが、別に、私は財務省に個人的な恨みとかそういうのはございません。非常にかわいがっていただいたこともありますけれども。ただ、経済成長戦略というからには、やはり大胆にやらないと意味がないということを強く主張して、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 大臣、長時間御苦労さまでございます。もう七時間目に入りましたが、あと一時間ですから、少し御辛抱をいただきたいと思います。

 冒頭、日曜日に起こりました能登半島沖地震の件について、幾つか簡単にお尋ねをしたいと思います。

 翌日の新聞報道も含めて、大臣、今回はかなり早く政府の対策本部も設置をされ、また、災害担当大臣も現地に視察をされということで、いろいろな意味で今までの教訓が生かされているなとは思っています。

 ただ、震源地から十七キロほどだというふうに聞いていますが、志賀原子力発電所が、一号機、二号機ともども、いわゆる隣接地域にございます。そこで、その部分についてお尋ねをします。

 これは小さくしか新聞報道には載っていないんですが、耐震問題は後ほど触れますが、要すれば、使用済み核燃料貯蔵プールから水が四十五リットル、どうやってはかったのかわかりませんが、表にあふれ出た。

 これは多分揺れたから出たというふうに思うんですが、そして、それは放射能レベルもそれほどでなかったという報告はあるようであります。普通、考えれば、大臣、箱型のプールが揺れて、私ども数度その核燃料貯蔵プールを見させていただいたことがあるんですが、面から下の方に何メートルか下がって水面が当然あるわけですね。それがあふれ出るというのは、かなり揺れたのかなという認識でないとおかしいと思うんです。

 耐震性は問題ないということで、原子力安全・保安院も、二十七日に即座に異常はないというので確認をされておりますが、大臣、なぜその貯蔵プールの水があふれ出たというか、飛散というか、水飛散というふうに新聞報道でなっていますが、されたというふうにお考えでしょうか。そして、それはこれからの問題として、対応で、課題として残るものなのでしょうか。その点について、まず冒頭お伺いをしたいと思います。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 志賀原子力発電所一号機におきまして、能登沖地震により、使用済み燃料を貯蔵するプールの水面が揺られまして、放射性物質を含むプール水約四十五リットルがプール周辺に飛散をいたしました。このときのプール水は、表面から四十センチメートルのところまで十分満たされておった状態でございました。

 飛散した水の多くはプール周辺に張られた防護シート上に落ちまして、その周辺部に拡大するおそれはなく、また、防護シート外に飛散した水は少量でありましたことから、安全上の問題はなかったと考えております。

 私ども原子力安全・保安院は、この水漏れがすべてふき取られた後に、現地の原子力保安検査官が、水漏れのあったところに放射性物質の汚染がないということを確認いたしております。

後藤(斎)委員 確かにそういうふうなお答えだと思うんですが、もう一点、この志賀原発一号機は、設置許可を一九八八年に得る前に、当然耐震の問題も含めて周辺を調査したというお話を聞いていまして、当時は、活断層四本を見つけたという話と、地震の規模はマグニチュード六・一から六・六の想定だという話をお聞きしております。しかしながら、今回の地震はマグニチュード六・九であります。

 現在の原子力発電所は、ガルという震動の数字だそうですが、二百二十ガルが今回の観測された数字であって、百九十ガルを超えると自動的にとまるというお話を聞いています。今回、幸か不幸かわかりませんが、二号機はタービンの故障で昨年七月から運転停止、一号機については安全・保安院から運転停止命令を受け十六日から停止をしていたということで、この自動装置が発動せずに事なきを得たということであります。仮にどちらかが運転をしていたら、二百二十ガルということでありますから、自動停止装置は働いたというふうに考えておいてよろしいんでしょうか。

広瀬政府参考人 お答えを申し上げます。

 志賀発電所の一号機で二百二十ガルの観測値を得ております。先生御指摘のとおり、志賀原子力発電所一号機では、地震による自動停止の設定値が百九十ガルとなっております。このため、もし志賀一号機が動いておりましたならば、計画的に自動停止をしたというふうに考えております。

後藤(斎)委員 大臣、これで原発の話は終わりますが、やはり地震というのは当然想定をできるものではありませんし、活断層というのは、この輪島周辺の四本だけではなく、全体で百を超える活断層が日本の国内にはあるというふうに言われております。

 今、いろいろな事件、事故が起こっている中でありますし、またいずれかの時期で最終処分場の問題もこの委員会で議論することになりますが、やはり国民の皆さん、特にその周辺地域の皆さんが御心配されているのは、このような突発的な地震が起きたときに安全性はどうなのかということだと思うんです。

 今院長からお答えをいただいたように、今回は少なくとも大丈夫だということで、冒頭も触れましたように、いち早く政府全体でもその対応に当たったということでありますので、その点については評価をしますが、ぜひ大臣、安全性をこれからも、なお今まで以上に、やはりきちっとした基準をつくり、その監視もしていくということをメッセージとして国民の皆さんに、もちろん記者会見でお話をされていますが、きちっと発すべきだと思いますが、大臣の御答弁をお願いいたします。

甘利国務大臣 耐震ということに関して申し上げますと、新しい知見を入れて昨年の九月に新指針を策定して、これに従って全部検証しているわけであります。

 この新指針は、今までですと直下型でマグニチュード六・五、先ほど来お話が出ているガルという数値でいいますと三百七十ガル、これを新指針でどう変えるかといいますと、直下でマグニチュード六・八、ガルでいえば四百五十ガルというのを新指針の基準にするわけであります。

 例えば、志賀原発は現状でも四百九十ガルで設定をされていますから、新指針の四百五十をさらに上回っている耐震構造になっております。もちろん、活断層その他の地質調査もした上で、直下型に遭わないような場所の選定をしているわけでありますけれども、仮に直下で新指針のものが起きたとしても、現状の原発はそれに耐え得る構造になっている。あわせて、さらに、一つずつ検証して、余裕を持った補強をすべきところはしていくということであります。

後藤(斎)委員 私も原子力発電はやはり我が国経済社会になくてはならないものだと思っていますので、安全性という観点は最重要課題として、これからもぜひ大臣としても十分ウオッチをしていただきたいというふうに思います。

 それでは、三法の中身に入ります。

 直接中身を議論するのは、多分来週、時間をもう少しとったときにしたいと思いますが、大臣、私、きょうの六時間のこの議論を聞いても、幾つかやはり不思議だなという点と、まだまだ不十分だなという点がこの三法にはあるというふうに率直に言って思います。ただ、方向性としたら、やはり今地域格差が拡大をし、そして、それぞれの首長の皆さん、自治体の皆さんも、できるだけ優良な企業が立地をして、そこで雇用や税収がふえてほしいという願いももちろんございます。あわせて、中小企業の皆さんから見れば、少しでも公的な助成も受けながらという方もいながらも、自分のものがもっと会社として売れたらいいなという気持ち、それをほぼ網羅的には対応していると私は思うんです。

 高木政務官、全然質問通告していませんが、一年間に新商品としてチョコレートが何商品売られているか。二百だと思いますか二千だと思いますか。ちょっと頭の体操を。間違っても結構ですから。二千ですか二百ですか、どちらだと思いますか。二択ですから大丈夫です。

高木大臣政務官 二百だと思います。

後藤(斎)委員 なぜお聞きをしたかというと、今回の地域産業資源を活用したこの活用法、一年間で二百の新事業を創出するということでありますが、実はチョコレート、政務官もお好きだと思いますが、実際、二〇〇五年には、これはいろいろな定義があるらしいんですが、千九百二十八、新商品として売り出されているようであります。

 ですから、私、何が言いたいかというと、それとあわせて、ライフサイクルが非常に今短くなっているということであります。これは、もう幾つあるか、経産省にも国会図書館にも一年間の新商品の数をお聞きをしたんですが、実際わからないと。

 幾つか後で事例を挙げますが、例えば、今新製品とか新商品と言われているもののライフサイクルは、一九七〇年代以前は、大体、五年以上もつものが新商品の半分、それがだんだん八〇年、九〇年で少なくなって、二〇〇〇年代になると、五年以上ヒット商品でい続ける商品は六%を切り、五・六%というのを中小企業庁さんがまとめています。一方で、一年未満でヒット商品からいなくなってしまうのが二〇%近い一八・九%。七〇年代には、これはよく数字がわかりませんが、一〇%を切っている数字であります。

 何を言いたいかというと、そういう非常に回転が早い、新商品と言われているもの、一年間に公的なコストをトータルとしたら百億円以上使って、地域資源というものに着目をしながら、自治体と協力もして世に出していく。大臣、チョコレートだけでも二千ある。しょうちゅうなんか、今健康ブーム、私も乙類は好きなんですが、これも六百を超える、七百を超えるというふうに今言われています。何でそんなにふえるのかよくわからないんですが。というものだと、例えばこの百億円、一件当たり二千五百万という上限がありますが、そこに例えばコストをかけて対応しても、世に出たときには、半年たったら新商品としてもう売れ筋でもなくなってしまうということが実際あると思うんです。

 ですから、その部分をまずどういうふうに、本当に地に足がついた、長続きするヒット商品になっていかなければ、この問題意識、目的意識は私、正しいと思うんですが、そうではないということが、今の商売の、実際、これで一番困っているのは、小売業よりも、むしろ卸の皆さんは、もう何十万件という、例えば一つの卸が七十万、八十万アイテムを一カ月に物流する。一カ月で去っていくもの、もっと短いのは三週間でその使命を終え、早いものでは一回棚に置いただけでもう次には例えばコンビニの棚からなくなっていく。すさまじい早さで商品が動いている。そうでなければ、またメーカー側も消費者の方に買ってもらえないということだと思うんです。

 大臣、ここの問題をまずきちっと整理しておかなければ、幾らこれを例えば地方自治体と組んでやろうとしても、やはり十二分なものではなくて終わってしまう。評価については後でお聞きをしますが、大臣、今の現実として、新商品というものが何十万アイテム例えばある。その中で、例えば二百というものを一年間に絞り込んで対応するということ、この数字の比較も含めて、実際の商売の中で本当にこれが生かされるかどうかというのを、今数字を挙げたことも含めて、どのようにお考えになりますか。

甘利国務大臣 以前、私もコンビニの、ある生ジュースが大好きで、行くたびに全量買い占めてきたんですけれども、健闘むなしく、二月ぐらいで商品ケースからなくなってしまって、どこを探してもなかったということがありました。物によって、商品のライフサイクルが非常に短くなってきている、小ロットで多商品化になっている、御指摘のとおりだと思います。

 ただ、地域資源でありますから、そこの地域を代表する、息の長い、食べ物でいっても名産品でありますし、産地の技術というのは伝統に裏打ちをされた、例えば伝統工芸であったりするわけであります。そういうものを、別な視点から見て新しい商品としてデビューさせられないか、新しいサービスとしてデビューさせられないかということが主眼でありますから、地域に根づいている強みに着目をしたいというふうに思っておりますし、県を中心に、もちろん市や商工会、商工会議所といろいろと協議をしながら、これぞ我が県の地域資源という選定をされるのでありましょうから、ある程度息の長い活躍が期待されるものを中心に、選定をされていくんじゃないかと期待をしております。

後藤(斎)委員 地域資源についてはもう一点だけにしますけれども、大臣、そうはいっても、実際に世に売れなければ、要するに、二千五百万円かけた価値は、はっきり言って、ないわけですね。

 もっと言えば、人的な部分に結構な金額を今回のプログラムはかけているわけですね。その専門家が、先ほど百三十何人かというお話をされていましたが、例えば大手メーカーやスーパーや、そういうところのマーケティングを長くやられてきた、ちょうど団塊世代でおやめになった方かもしれませんが、という方の今までの専門的な知識をお使いになるということ、それは正しいと思うんです。ただ、その専門家の方々には多分責任はないと思うんです。例えば、一年契約なのか二年契約になるのかわかりませんが、それを世に出した、では失敗しましたというときの評価やその検証というものは、大臣、だれがされるんでしょうか。

甘利国務大臣 専門家が手伝うのはマーケットへのアクセスであります。マーケティング、市場がどういうニーズを欲しているかとか、あるいは販路の開拓の分野でアドバイスをしていく。

 物をつくっていくというのは、やはり、その発想の原点は、地域資源を企業化しようとする人間あるいは中小企業であろうと思います。それが、不幸にして、市場が受け入れられなくなって失敗してしまうということは、その企業自身が店じまいをしなきゃならぬということでありますから、企業の経営責任になってくるわけであります。これは、市場の淘汰にさらされるということでありますから、生き残れる、生き残れないというのは、最終的にそれを企業化した経営者の責任に帰することになりますし、市場の評価に耐えられなければ市場から消えてしまうということになるわけであります。

 我々としてはできるだけ、国のお金を投じてやるわけでありますから、ずっとヒット商品として生き残ることができるということを願って、そういうアドバイスができるようにはしていきますけれども、最終的には企業の発想と努力にかかっているというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣、全国に四百万を超す中小企業の皆さんがいらっしゃる。もっとそれ以上に、本当は、零細、個人でやっている方も含めていらっしゃるのかもしれませんが、五年間で千だ、それから除かれた人もたくさんいらっしゃるわけですね。

 大臣、私、突き詰めていろいろ考えていくと、今、中小企業も元気がない、地方も元気がない。多分それは、いわゆる御商売をやめる方とやめない方、開業する方、廃業する方、この比率が、開業する方の数が多いときにはやはり元気があるんですね。七〇年代、八〇年代、さっきの、ヒット商品が長続きしていた時代というのは、開業率というか件数が三十万件弱でずっと推移をしていました。廃業される方も十八万、十九万で推移をしていました。それが、元気がなくなった。

 例えば、十年前の一九九六年からとすると、開業率が十八万台、九九年から〇一年は十五万件まで落ちて、〇一年からは少しふえましたが、十六万八千件というのが平均。廃業率が九六年から五年間は二十八万八千件、二十二万五千件、〇一年から〇九年は二十九万件。たくさんの人が、同じ職種かもしれませんが、参加をし、大臣がおっしゃられたように、経営感覚がなかったりだめであれば、リタイアをする、撤退をする。やはりこの繰り返しがないとだめであって、そして二百社とか千社という絞り込んだものと絞り込まないものを、どう絞り込まない人たちも後押しをするかというのは、これは中小企業庁、経済産業省の永遠の大きなテーマであると思うんです。

 そのときに、やはり金融というものがきちっとしっかりしていなければいけないということでありますが、これについては、ちょっときょうは国土交通省も呼んでいますので、来週の水曜日に細かい点は注文しますが、大臣、一点これは確認しておきたいのです。

 前々大臣の平沼大臣は、二〇〇一年に、新しい創業を、当時十八万社あった数を五年間で倍増する、いわゆる平沼プランというのを出しました。しかしながら、今現在はそうはなっておりません。むしろ減少している。これについては何が一番問題だというふうにお考えでしょうか。一つだけ主なものを挙げていただけますか。

甘利国務大臣 やはり、景気が本格的に回復をしない、あるいは、金融がかつては個人保証や不動産担保に頼っていたという点ではないかと思います。

後藤(斎)委員 きょう、国交省の審議官にも来ていただいていますので、一点だけ、大臣、ちょっと聞いておいてもらいたいのです、これは大臣には来週、質問しますけれども。

 例えば企業立地をする際に、今回は、自治体の受け手の整備とかワンストップで、事務処理も含めて五十にも上るという許可とか申請のものをまとめてやろうとするいろいろな工夫はあるんですが、例えば東京の企業が山梨に出ていきたいとか長野に出ていきたい、そういうインセンティブもやはりなければいけないのは当然ですよね。

 そのときには、いろいろな資料を見させていただくと、例えば今つくっている半導体が、ここでは手詰まり、要するに、需要がもっとふえるだろうからということで、企業が新しく、例えば県の中でもそうですし、県を越えても企業を、工場を移したい、新設したいというのがある。そのときに、自治体の首長さんやその企業の方々も、やはり交通アクセスがもっと、例えば、高速道路もきちっとしていなければそういうときに移らないんだというアンケートもあります。

 国交省さんが中心になって、国土審議会で今、国土形成計画、去年の十一月か十二月に中間取りまとめが出ています。その中でも、特に今回この三法で議題になっています、地域資源を生かした産業の活性化という一つの大きなねらいを入れながら、あわせて、先ほどの地震ではありませんが、災害にも強いしなやかな国土形成という視点も入れながら、今、計画のねらいと戦略的取り組みということで、最終取りまとめに向けて御努力をされているとあります。

 私、特に地域で偏在性があるものは、やはりインフラ、特に高速道路も含めた道路の問題が大きいんじゃないかなというふうに思うんですが、これからの国土形成計画の最終取りまとめに向けて、まだ偏在性があると言われている高速道路については、今のような視点を含めると、もっと金額は抑えながらも、早目に、やはりきちっとした、全国に張りめぐらせるということが必要だと思うんですが、その点について国交省の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

辻原政府参考人 新しい国土形成計画の中間取りまとめのお話でございますけれども、昨年十一月に取りまとめられました中間取りまとめにおきましては、地域の魅力や特色を生かして産業立地の促進を図ることが重要であり、そのための物流インフラを整備していくことが必要であるということなどの考え方が示されているところでございます。

 高速道路についてのお尋ねもございましたけれども、南北に三千キロ、非常に厳しい地形条件の中で多くの人口を抱えている我が国の国土の現状というものを考えますと、やはり全国的な人や物を迅速かつ効率的に動かし、これを結びつけていく、それを地域の活性化あるいは地域の競争力の強化ということに結びつけていくということは非常に重要な課題である。そのために、高速道路の整備は重要な役割を担っているというふうに考えておるところでございます。

 なお、当省におきましても、新しい産業立地の促進にも関連をいたします基盤整備法を実は今国会に提出させていただいておるところでございまして、経済産業省さんの施策と十分な連携をとってこれを進めていきたいと考えておるところでございます。

後藤(斎)委員 大臣、まだあと二分ほど時間がありますので。

 今のに関係して、企業を新設したいといういろいろな動向調査が、経産省は、工場立地のときには、毎年少しずつやっていましたが、新たにという視点がなかったと思うんです。

 これは、財団法人日本立地センターというところがおまとめになったものと、あと帝国データバンクさんがいろいろな視点からやっているんですが、実際、この十年ほどの動きを見ると、やはり平成の初め、元年、二年のころは、まだ日本経済は非常に強い時期でありますが、このときに新規立地の意向というものが四〇%近くございました。それがどんどん減って、今は九%台で横ばいになっている。

 先ほどちょっと申し上げかけたのは、やはり受け手の自治体とか地方だけではなくて、出ていく方のきちっとした実態調査も含めて、それを参考にしながら、例えば自治体が企業立地促進法に基づいたようないろいろな施策を準備するけれども、出ていく方も含めてそういう実態調査をもう少し幅広に、この調査は非常にたくさんやっているようなんですが、約二万製造企業を対象にし、回収率が二一%で、その中で企業立地があるのが四百十件ということであります。二万件というのは全体の企業数からいえばまだまだ少ない数でもあるようなので、ぜひ全国の出たいという方の実態調査をきめ細かくやっていただきたいというふうなことを私は考えておりますが、大臣、最後にその点だけ確認をしておきたいと思います。

甘利国務大臣 産業政策を担当する役所でありますから、企業行動についてしっかりと把握をしておく必要性はそのとおりだと思います。

 ただ、恐らく先生おっしゃりたいのは、出る方と受け入れる方のマッチングをうまくということだと思うんですが、企業戦略にかかわる部分についてなかなか外に開示ができない部分がありますので、その辺が少し、どう工夫をするか、一つあろうかというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、産業の動向はしっかりと把握していきたいと思っております。

後藤(斎)委員 たくさんまだ質問が残っていますので、来週に対応します。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、企業立地促進法案を中心に質問をさせていただきます。

 お手元に資料を配付させていただいておりますけれども、今、都道府県、自治体のところで、企業誘致補助金のいわば引き上げ競争と言われるような状況が生まれているということも報道されております。

 資料で、左側が各都道府県の企業誘致の補助金のランキングで、右側が工場立地動向を踏まえた工場の立地件数と立地面積であります。工場の立地件数のところで見ていただいて、十八年の上期でランキングがされていますけれども、一番の兵庫県、これは左側の企業誘致の補助金制度でいえばやはり一番というふうになっておりますけれども、ただ、二番の静岡県については、企業補助金のランキングでいいますと、ちょっと番号が落ちていますが、三十六番ですね。それから、群馬県はそもそも補助金の制度がございません。それから、四番の愛知県は二十五番、福島県が三十七番、私の出身の埼玉、立地件数では五位ですけれども、二十五位という形。

 内閣府のリポートで「地域の経済二〇〇五」というのがありますけれども、そこでも、「補助金額が大きいからと言って、工場立地件数が多くなるという明確な関係は確認できない。」というふうに指摘をしております。それなのに、現状というのが、補助金の創設や引き上げがこの間行われておりまして、補助金のランキングの上位十府県を見ましても、五十億円以上。三重の亀山で有名になりましたシャープへの補助金をつくった三重県は九十億円。あおられるように、和歌山県が百億円。それから、ついこの前でしょうか、大阪も百五十億円。兵庫県は上限なし。これは、松下のプラズマのディスプレーの工場が尼崎にありますけれども、プラント三、四、五と建つと。予定では、合計で百六十六億五千万円の補助ということが想定をされているそうであります。

 そこで、大臣、伺いますけれども、ごらんいただきましたように、上位十の府県を見ても、ここ数年間でみんな創設、引き上げが行われているわけですね。過熱ぎみの補助金引き上げ競争の現状というのは、大臣としては好ましいものだとお考えなんでしょうか。お聞かせください。

甘利国務大臣 私は、いわゆる企業立地、産業集積の新法、今出しております法律をつくるに当たって、実は役所に内緒で財政力の低い県の知事さんとお話をしました。わざわざ議員会館に来ていただきまして話を聞きました。そのときにこの話が出まして、補助金の引き上げ合戦、税のダンピング合戦、これは財政力の弱いところはとてもついていけません、富裕県と誘致勝負の合戦になったらとてももちませんという話がありました。

 私は、財政力の強いところが限りなく強くなっていくような仕組みでないものを何か考えたいという話をしまして、これは総務大臣とも事前に打ち合わせして、こういうプランをつくりたいから協力してほしいということで話をしましたし、厚労大臣とも話をしました。経済産業省の政策としては分け隔てなくということですが、それに乗っかっていく関係省庁の支援策として、財政力の弱いところを後押ししていくような仕組みに設計されているわけであります。

 その種の話が出ましたら、今度は財政力の強いところの知事さんから私に抗議が来ました。我々が一生懸命自主的に組んでいる政策にブレーキをかけるようなことをするんでしょうかという抗議をいただきました。しかし、今やろうとしているのは、税金をまけて引っ張るとか、補助金を多く出して引っ張るというんじゃなくて、もっと地域ごとに、我々は、うちの県なりうちの市はこういう利点がありますということをマニフェストとしてつくる合戦ならいいじゃないか、しかし、補助金合戦でやるとか、税金まけ合戦でやるというのはちょっと方向が違うんじゃないですかということを申し上げたわけであります。

 いわば、企業が国を選び、企業が地域を選ぶ時代でありますが、その地域が自分の利点をしっかりアピールする、そういうマニフェストでの競争ならばこれはいいんではないか、しかし、そうではない、補助金積み上げ合戦とか、税金引き下げ合戦とか、これは正しい地域間競争の仕方ではないんじゃないでしょうかということで、こういう策をさせていただいたわけであります。

塩川委員 補助金、減税競争ではなくて、マニフェスト競争を望んでいるんだというお話でした。

 マニフェスト競争になるようにという趣旨でしょうか。例の、たらい回しランキングということがありましたけれども、趣旨とすれば、大臣がお考えなのは、ワンストップサービスの話とか、首長、トップの決断、トップセールス、そういう趣旨で言っておられるんでしょうけれども、同時に、ランキングをするのは企業側であるわけですね。企業の評価を通じて、企業がどういうことを望むのかということがランキングとしてあらわれるわけですから、そうなると、企業の物差しで見たランキングをつくれば、企業誘致の熱意のあかしとして補助金引き上げということをやはりあおるようなものになるんじゃないのか。大臣の目指す方向がかえって補助金競争をあおるようなことになりはしないか、率直に思うんですが、改めて、いかがですか。

甘利国務大臣 私が、表現が適切だったかどうかちょっとわかりませんが、わかりやすく、たらい回しランキング、ワーストランキングということをあえてカメラの前で言いましたのは、市長なり知事さんの積極的な姿勢ですよ、お金がある富裕県だから市だから引っ張れるという話とは違いますよということを言いたかったわけであります。

 実は、企業誘致に成功している他の知事さんとも私は二人だけでお会いしました、ほかの方とも。そのときに、その知事さんは、やはり知事の姿勢です、行政の不透明性とか遅滞性とか、そういうことを実際に自分がインタビューして聞いてみればいろいろ出てきます、それは自分たちの努力で幾らでもできることです、しかも県民福祉を犠牲にしないでそんなことはできるんです、要はちゃんとやる気があるかどうかですという話がありました。まず、トヨタもうでとかシャープもうでをする前に、自分の県にある企業が再投資をするときに、よそに行っちゃうということ自身をとめなきゃならないんです、よそに行こうとしたら、なぜ行くんですか、なぜうちじゃだめなんですかということをちゃんと長が把握していなきゃいけない、そういう首長の姿勢でうんと違うんですという話がありました。

 そこで、やる気、意欲ですよと。企業に対する環境整備の意欲は、住民に対する福祉向上の意欲にもみんな通じるんだと思います。要は、そういう姿勢で地域ニーズにこたえるという体制ができるかできないかということが大事だと思いましたから、かなり刺激的な言葉でありましたけれども、ああいうふうにしたわけであります。

 もちろん、ランキングが出たからそれをどう発表するのか、発表の仕方によってはマイナスの面も、かえってあおる面も出るじゃないかと。そこはいろいろ考えながら、するかしないかも含めて、取り扱いは慎重にしていきたいと思っております。

塩川委員 知事の姿勢というお話がありましたけれども、例えば、埼玉の上田知事なども、補助金というのは後で決めるんだ、競い合っているからには。後出しじゃんけんなんだと。誘致の際の一つの手段として補助金というのを考えるということもありますし、岩手の場合でも、これは括弧して、特定地域上限なしと出ていますけれども、要は、やはり個別の企業が頭にあって、競争地域があって、向こうがつり上げたらこっちもつり上げましょうという構えでいるわけですよ。

 やはり知事の姿勢の中に補助金引き上げというのはインプットされているというのが実態で、私は、やはりランキングという形で競わせるようなことが、かえって補助金競争をあおり立てるようになるんじゃないのかということを率直に懸念するものであります。

 それとの関係でも、総務省の方で、頑張る地方応援プログラムというのを組んでおられるそうであります。大臣も、財政力の弱いところは投資をするスキームということでお話がありましたけれども、ここでは頑張りの成果を普通交付税の算定に反映をする、結果を反映するわけですね。

 そこで、総務省に聞きますけれども、企業立地の成果として、製造品出荷額や事業所数などの成果指標が上がれば交付税がふえるものになるわけですが、この頑張りの成果を普通交付税の算定に反映するというけれども、これは、頑張りの度合いにかかわらず、企業立地の成果、結果さえ出ていれば交付税がふえることになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

椎川政府参考人 お答えいたします。

 ただいま、頑張る地方応援プログラムによる交付税の支援措置について御質問があったわけでございますけれども、現段階におきましては、製造品出荷額あるいは小売の販売額、農業産出額等々、九つの成果指標を交付税の算定に反映する予定で考えております。

 しかし、この成果指標については、現在、四十七都道府県に、大臣を先頭に私ども出向いてまいりまして、頑張る地方応援懇談会を開催いたしておりまして、さまざまな御意見、御要望をいただいているところでございます。

 地方公共団体の方々、特に条件不利地域の方からは、こういう指標もとってほしいとか、あるいは、指標のとり方について、特に条件不利地域については、頑張っても指標が上がるということはなくて、どんどん下がっていくんだけれども、頑張れば下がる度合いが縮まっていくんだとか、あるいは、基準年度をどういうふうにとるかとか、絶対値をとるのか変化率をとるのかとか、いろいろな御意見をいただいております。

 それらを集約いたしまして、七月の普通交付税の算定までに、できるだけ条件不利地域についても、一般的には成果を上げることが難しいわけでございますけれども、前向きに頑張っている地域について配慮をするということも大臣の方からも申し上げておりますので、そういったことが具体的に算定に反映できるように、これから検討を重ねてまいりたいというふうに思っておりますし、プログラムの取り組み経費につきましては、成果とは関係なく特別交付税によって措置をしていこうというふうに考えているところでございます。

塩川委員 地方交付税の中から二千二百億円を取り分けて、それを成果、結果によって分けるという話ですから、その基準の中に製造品出荷額とか事業所数というのが入れば、当然、ふえるところはふえるということになるわけですよね、結果で評価するわけですから。実際、立地件数の上位のところを見ても、ごらんいただいてわかるように、自動車ですとか電子・電気の産業集積のある輸出産業中心の地域というのが立地件数でも上の方を占めている実情にあるわけです。

 ですから、既存の産業集積もあり、いわば財政力もあるような自治体に企業進出を応援するような形になって、頑張りたくても頑張れないような地方はやはり取り残され、格差が拡大することになるんじゃないのか。このスキームというのは、頑張っても結果の出ない地方との格差が拡大することになるというのを率直に私は申し上げたいと思います。

 その上で、やはり地方固有の財源の地方交付税をいわば国の政策誘導的に使うというのは、地方の自主性を損なうものということで、これは認められないということは申し上げたいと思います。

 次に、企業立地との関係で、雇用問題をお尋ねします。

 大臣に伺いますが、法案の趣旨説明の中でも、地域の自主的な発展の基盤を強化する、そのことの重要性を強調され、そのためには地域に所得と雇用を生み出すことが極めて重要だと。そのとおりだと思います。

 その場合、雇用の問題なんですけれども、基本方針、基本計画におきまして、安定した雇用、いわば正規雇用の確保というのを目標として掲げないんでしょうか。その点、確認をさせてください。

福水政府参考人 お答えいたします。

 企業立地は、まさに大臣が申し上げましたように、雇用と所得を生み出す、そういう効果があるわけですが、その際にいかなる雇用形態を採用するかというふうなことにつきましては、産業の特性でありますとか個別企業の経営方針によって、それぞれ異なってくるんじゃないかというふうに思っております。

 したがいまして、本法の基本方針や基本計画におきましては、一律にどういう雇用形態がいいというふうなことを設けるのは適当じゃないというふうに考えておるところでございます。

塩川委員 雇用形態について設けるのは適当ではないというお話ですけれども、現実には、地域においては、安定した雇用があってこそその地域に住み続けられるわけですね。そういう点でも、本当に企業立地によって地域経済の活性化、地域の活性化を図るのであれば、安定した雇用、正規雇用を掲げるということが重要だと思います。そういう点でも、法案は、安定した雇用の確保を目標に掲げるものにはなっていないわけです。

 私は、この間、大分キヤノンの工場、本社に伺いましたし、県からも話を伺いました。あそこは、デジタルカメラが特に二〇〇〇年ぐらいからずっと急速に伸びた、デジタルカメラの国内の一大拠点でありますけれども、安岐という、空港のすぐそばに事業所が八二年からあって、〇五年に大分市の方の臨海部に大分事業所というのが立ち上がりました。現在、構内の就業者数が六千九百人ですけれども、うち正社員が千百人ということで、八五%が非正規なんですね。安岐事業所についても、二千九百人、そのうち正社員は九百五十人ですから、二千人が非正規、派遣、請負などの雇用形態です。

 安岐事業所のある旧安岐町、今は国東市の一部になっておりますけれども、お話を聞きましたら、特に二〇〇〇年以降急速に売り上げが伸びた、生産が伸びた中で、大量の人が入ってはきているんです、千人ぐらい町内にいるんじゃないか、アパートとか建っているし、住んでいるようだ、だけれども住民票の移動がないというわけです。ですから、請負や派遣の方の契約期間が大体三カ月とか六カ月とか、ひどいのは二カ月なんというのもありますから、住民票を移さずに体一つで来ているという格好ですよね。ですから、居住場所も特定できない。いわば、キヤノンの生産は急拡大しているのに、人口も、旧安岐町をとると、二〇〇〇年の一万七十九人から、二〇〇六年は九千七百七十四人に減少しているということで、国東の市長さんは、住民税を取れなくて困っているというのが率直な声だというお話でした。

 私は、大分キヤノンそのものが急速に生産を伸ばしているというのが、現実に、地域社会に、特に雇用という形で安定した雇用をもたらさないということがここにあらわれていると思うんです。不安定な雇用ばかり拡大するような大企業立地促進ということでは、地域経済の活性化、住民の暮らし向上につながらないんじゃないでしょうか。

 大臣は、いかがお考えですか。

甘利国務大臣 私も大分キヤノンの工場を視察しました。

 私が行きましたときには、ちょうど、生産がピークを過ぎてかなり低い状態でありましたから、セル方式というもののセルがずっと、スペースがあいておりました。フル生産に入ってくるとこれが全部埋まりますという説明でした。

 あのデジタルカメラというのは、季節変動で相当大きく変わるものだそうでありまして、例えば、クリスマスが近づいてくると一挙に生産がピークになる、それが過ぎて二月ぐらいになると、またどんと落ちる。それを正規で賄っていくととても採算がとれませんということで、現に、これだけのスペースがピークには全部いっぱいになりますよ、今はがらがらですがというような話だったです。

 そういう生産変動のフレキシビリティーに対応するという意味で企業が非正規雇用を採用するというのは、経営戦略として、あっていいことだと思います。ただ、何度も申し上げますけれども、安いから使うんじゃなくて、季節変動に対応するための雇用形態として使わざるを得ないんだというところだと思います。

 キヤノン自身、あれは本体でしょうか、三千五百人、派遣や請負の雇用者から、正規それから季節採用に切りかえるという発表がありました。生産変動に対応する部分はその限りにしていただいて、ベース労働の部分を支えていくものは極力正規雇用であってほしいというふうに思っております。

塩川委員 生産変動のフレキシビリティーの点で派遣、請負の活用はあり得るという話ですけれども、大分キヤノンの場合は八五%が非正規の部分ですね。キヤノン全体の製造部門というのも七五%が非正規だという話なわけです。三千五百人の直接雇用といっても、うち二千五百人は期間工ですよ、正社員は千人ですから、数ポイント変わるだけなんですよね。圧倒的多数がいわばフレキシブルな部分というのは、これはあり方として問題なんじゃないか。

 ですから、そういう企業が進出をしても、地域の安定した雇用につながらないのが実態だというのが、私、現場を踏まえての率直な思いですし、こういうところを応援しても地域経済の活性化にはつながらないと思っております。

 あわせて、進出した場合でもその企業が撤退をする場合もあるわけで、その点でお伺いしたいんですが、本法案では、設備投資減税ですとか、地方税減免措置を行った場合の後押しですとか、工場立地法の規制緩和を含めた立地支援策があるわけです。

 そこで伺いますが、この支援を受けた企業の撤退の場合の歯どめというのはこのスキームにあるんでしょうか。

福水政府参考人 お答えいたします。

 企業が立地する場合には、総合的な判断のもとで、まず長期的に操業ができる、そういう場所を選んで工場を建てて、従業員を雇い、物をつくっていくという活動をしておるというふうに我々は理解しておりまして、あらかじめ撤退を念頭にどこかに一度立地して、すぐさま撤退する企業というのは、およそ存在しないんじゃないかというふうに考えております。

 そういう観点で、本法案では、支援を受けた企業が撤退する場合に、撤退をとめる措置は特段設けておらないというふうな現状でございます。

 私ども経済産業省といたしましては、法案を通じまして、それぞれの地域の強みを生かして、企業のニーズに即した人材育成でありますとかインフラ整備等々をやりまして、企業が中長期的に、より魅力的な立地環境になるような、そういう整備をすることを促していきたいというふうに考えております。

塩川委員 撤退をとめる措置は設けていないという話ですけれども、現実はどうかといいますと、企業の中での事業再編が行われますね。多国籍企業であれば、海外に投資をして生産拡大するのに合わせて国内を縮小する、国内においても生産拠点や開発拠点を集約化する。ですから、地域によれば、来るところもあるし、出ていくところもあるということになるわけです。ですから、企業にとってみれば、企業立地と撤退というのはいわばセットで、同時並行で行われているというのが実態だと思うんです。

 そこで、紹介したいのが、自動車部品メーカー大手のカルソニックカンセイの場合であります。埼玉県のさいたま市内に新たに本社と研究開発センターを移転したわけですけれども、その際に、埼玉県が十億円の補助、さいたま市が十億円の補助、助成措置を行いました。

 そこで、経産省に聞きますが、このカルソニックカンセイは、カルソニックとカンセイが合併したわけですね、そのカルソニックとカンセイの合併時に産業活力再生法の事業再構築の認定を受けているわけです。その計画文書にあります、事業再構築を行う場所の合併後の住所は何と書いてあるのか、その部分を読み上げていただけますか。

石黒政府参考人 委員御指摘の該当部分を読み上げさせていただきます。

 現カルソニック株式会社の本社を合併後の本社とし、現株式会社カンセイの本社は大宮工場の一部とする。また、工場については、既存工場を引き続き操業させるという記述になっております。

塩川委員 カルソニックとカンセイが合併をして、その際に、本社はカルソニックのある中野に移したわけです。カンセイの本社だった場所は、大宮工場がありましたから、その大宮工場が利用するという形になっているわけです。この計画書では、工場については、既存工場を引き続き操業させると。今読み上げられたとおりです。

 埼玉県とさいたま市が補助金を出した本社移転場所というのは、もともとカンセイの本社があった場所なんですね。かつて本社があった場所に本社を戻しただけで、埼玉県は十億円、さいたま市は十億円を出しているわけなんです。おかしな話であります。

 上田知事は、雇用効果、経済効果につながると言っているそうですけれども、しかしながら、カルソニックカンセイは、既存工場を引き続き操業させると認定計画の文書で言っておきながら、〇三年九月に大宮工場を閉鎖しました。さらに、昨年の十一月に、新たな計画、リストラ計画ということで、国内生産を縮小して、インドなど海外にシフトする方針を打ち出して、国内工場の再編を行い、人員も千人削減するという話です。埼玉県内では、吉見工場の量産を停止するということを検討しているわけです。

 つまり、本社を大宮に、さいたま市に持ってくるというのは、もともと本社があった自分の自社用地に本社を移すだけ、戻しただけ。しかも、同じ県内の吉見工場については量産を停止するかもしれないというのに十億円を出すというのは、いかにも気前がいいなと。ですから、海外移転して国内生産を縮小するような企業に、何で税金投入までして優遇しなければいけないのかと思うのは、当然のことであります。

 そこで、大臣に伺います。

 ここで言いましたように、それは、進出する場合には中長期を考えるでしょう、一度は建てるんですから。しかし、企業の再編というのは、その一つだけではなくて、幾つもの事業所を一体として再編をするわけです。一方で進出し、一方で撤退をするということがセットで企業組織の再編が行われているわけですから、当然のことながら、企業立地の支援策を講じる際には、そういう企業が撤退をすることもあるんだ、ほかの事業所の撤退もあるんだという場合について、撤退に関するルールづくりも企業立地支援策とセットで決めておくということがやはり当然必要なんじゃないでしょうか。いかがですか。

甘利国務大臣 大きな工場が撤退する場合には、確かにそこの雇用に大きな影響を与えるわけであります。そういう場合は、事業者は、雇用対策法に基づいて、相当数の離職者が発生する場合には再就職援助計画を作成して、公共職業安定所の認定を受けることが義務づけられているわけであります。この一定の雇用対策を行う事業者に対して雇用保険上の助成金が手当てをされるということになっておりますので、一般的な雇用政策として撤退の場合の義務づけがあるということであります。

塩川委員 いや、立地の方だけ応援をして、撤退の際についてルールも定めないということでは、これはやはり企業の実態にもかみ合わないような対策じゃないでしょうか。私は、そういう点では極めてこれは実態にそぐわない問題だ、特に、地域住民の安定した雇用の確保や、あるいは地域の取引先との取引の拡大といった面とも逆行するような中身だと率直に思います。

 そのことを指摘して、きょうは終わりにします。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

上田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、来る四月十日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る四月四日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.