衆議院

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第7号 平成19年4月11日(水曜日)

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平成十九年四月十一日(水曜日)

    午前九時七分開議

 出席委員

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 中山 泰秀君

   理事 宮腰 光寛君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 赤羽 一嘉君

      あかま二郎君    新井 悦二君

      稲田 朋美君    小此木八郎君

      岡部 英明君    片山さつき君

      川条 志嘉君    近藤三津枝君

      清水清一朗君    杉田 元司君

      平  将明君    谷川 弥一君

      丹羽 秀樹君    野田  毅君

      橋本  岳君    福田 良彦君

      藤井 勇治君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    牧原 秀樹君

      増原 義剛君    御法川信英君

      武藤 容治君    森  英介君

      山本 明彦君    吉川 貴盛君

      小川 淳也君    大畠 章宏君

      太田 和美君    川端 達夫君

      北神 圭朗君    細野 豪志君

      三谷 光男君    柚木 道義君

      鷲尾英一郎君    高木美智代君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣官房都市再生本部事務局次長)        井上  究君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           村田 貴司君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           鳥生  隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     福水 健文君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       松井 英生君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大辻 義弘君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           川原田信市君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西川 泰藏君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          鈴木 隆史君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          小島 康壽君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     広瀬 研吉君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    石毛 博行君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松井 哲夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         竹内 直文君

   参考人

   (原子力委員会委員長代理)            田中 俊一君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            鈴木 篤之君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     御法川信英君

  佐藤ゆかり君     新井 悦二君

  武田 良太君     古川 禎久君

  土井 真樹君     稲田 朋美君

  橋本  岳君     馬渡 龍治君

  武藤 容治君     あかま二郎君

  鷲尾英一郎君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     武藤 容治君

  新井 悦二君     佐藤ゆかり君

  稲田 朋美君     杉田 元司君

  古川 禎久君     武田 良太君

  馬渡 龍治君     福田 良彦君

  御法川信英君     小此木八郎君

  小川 淳也君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     土井 真樹君

  福田 良彦君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

 中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案(内閣提出第一四号)

 企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律案(内閣提出第一五号)

 株式会社商工組合中央金庫法案(内閣提出第三九号)

 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件


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     ――――◇―――――

上田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案及び企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房都市再生本部事務局次長井上究君、金融庁総務企画局参事官山崎穰一君、厚生労働省職業安定局次長鳥生隆君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官福水健文君、経済産業省大臣官房商務流通審議官松井英生君、経済産業省大臣官房審議官大辻義弘君、経済産業省大臣官房審議官川原田信市君、経済産業省大臣官房審議官西川泰藏君、経済産業省経済産業政策局長鈴木隆史君、経済産業省産業技術環境局長小島康壽君、中小企業庁長官石毛博行君、中小企業庁経営支援部長松井哲夫君及び国土交通省大臣官房技術審議官竹内直文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三谷光男君。

三谷委員 おはようございます。民主党の三谷光男です。

 きょうは、トップバッターで質問をさせていただきます。先週に引き続きまして、経済成長戦略大綱関連三法について質問をいたします。

 先週、経済成長戦略大綱、この中に盛り込まれておりますそれぞれの施策、強力に実施をして、今後十年、実質経済成長二・二%を実現するということにつきまして、先週も御紹介をいたしましたコラム、怪しげなアベノミクスでも皮肉られてもおりますように、そんな簡単な話ではありません。答弁も、なかなか説得力のある答弁を聞かせていただくことができませんでした。

 この三法に盛り込まれたさまざまな施策あるいは支援措置、それを否定するものではありません。着実に、またしっかりとやってもらいたい。我が国の国際競争力を高めるための取り組みを、また、地域の中小企業の起業あるいは再生を、さらに成長をするためのその助けになるための施策を、金融面も含めて、地道にあるいは着実にその環境整備に取り組んでもらいたい、その意味で申し上げました。

 そこで、質問を続けます。

 まず、中小企業基盤整備機構による地域中小企業応援ファンド、五年間で二千億円の資金枠の確保ということになっておりますが、このことについてお尋ねをいたします。

 この三法の一つ、中小企業地域資源活用促進法案、その他関連施策の一つと位置づけられておりますけれども、この地域中小企業応援ファンド、大変有効な施策だというふうに思っています。発想もすばらしい。地域の中小企業の起業にあるいは蘇生に、成長する中小企業の後押しに大変有効な施策だというふうに評価をいたします。大きな成果を上げてもらいたいと思っています。大変期待をしています。

 また、これまでにも、大臣の先週の御答弁の中にもございました。中小機構の資金でオール・ジャパンというふうに言われています。オール・ジャパン、ベンチャー支援のファンドを組成、そして、百十のファンドに九百億円近い投資、出資が行われて、百十ファンドから千七百社に出資、そしてマザーズ上場企業を多数輩出するなど、大きな成果を上げられています。

 このオール・ジャパンのファンドは、運営というのでしょうか、どこに、何に投資をする、出資をする。オール・ジャパンの場合は、中央には人材もいてそう難しくはないというふうに思います。新たにできるこの地域中小企業応援ファンド、少し心配なことは、この地域中小企業応援ファンドには二つの型、二つのスキームがあります、スタートアップ型、チャレンジ応援型と。それぞれについて、そして、組成されたそのファンドの運営、地域の中で成長が見込めるような小企業を見つけて出資する、投資する、支援する。うまく運営ができるのかどうか、人材面の確保のことも含めて、うまく回っていくようにするお考えもあると思います。どういうふうに考えられているか、そのことをまず教えていただきたいと思います。経済産業省、お願いします。

石毛政府参考人 それでは、現在までのファンドの運用について、今おっしゃった、二つの応援型、スタートアップ応援型とチャレンジ企業応援型の運用の仕方について申し上げます。

 まず、スタートアップ応援型でございますけれども、事業の対象としては初期段階のものを考えています。その事業が実際に本当のビジネスになるかどうかまだわからない段階のもの、そういう調査研究のようなものについて対象にして支援していくことを考えています。

 したがいまして、そのベースになるお金につきましては、都道府県と機構が、典型的には県の外郭団体であるような中小企業支援センター、そういうところに無利子の資金を供給いたしまして、それをベースに運用した運用益でそういう支援を行うというのが一つのタイプです。

 それからもう一つは、チャレンジ企業応援型のものでございますけれども、これは、従来から行っています投資事業有限責任組合、そういう形のもので運用していこうと思っていまして、事業については、事業化の見通しがそれなりに立っているもの、組合の中で無限責任組合員でありますいわゆるゼネラルパートナーズ、そういう方が目きき能力を発揮して発掘してきたもの、そういう事業に対して出資していくという形をとることを考えております。

三谷委員 わかりました。

 特にスタートアップ応援型の方は、今もお話の中にありましたように、心配すると申しますのは、県の外郭団体にはいろいろなものがあります、多分経営支援センターのようなものがその母体になるんだろうと思います。だから、少し心配なところがあるんですけれども。ただ、心配というよりも、ぜひ期待をしています。また、強力に後押しをしていただきたい、あるいは、中小機構も含めてうまくいくように後押しをしていただきたい、お願いをしたいと思います。

 そしてまた、それぞれにおいてファンドをうまく組成することができるかどうか、これも大事なことだと思います。そしてまた、その取り組みは、あるいは、打診は既に始まっているんだろうというふうに思います。片方で、都道府県、乗ってくるのか乗ってこないのか、乗ってきてもらいたい。そして、地域金融機関あるいは地方のさまざまな打診をする事業会社、この反応はどうでしょうか。教えてください。

渡辺(博)副大臣 委員の質問でございますけれども、反応はということでございます。

 既に、このファンドの立ち上げにつきましては、昨年の十二月に甘利大臣から計画が発表されまして、この地域中小企業応援ファンドの円滑な組成に向けて、昨年来からすべての都道府県に対して依頼をしてございます。また、本年以降につきましても、地域金融機関に対する説明会を全国九つあります経済産業局のブロック単位で開催しております。制度を有効に御活用いただくために周知徹底に努めているところでありまして、この結果、都道府県の約半数が前向きにファンド組成を検討しております。地元金融機関やファンドの運営を行う事業者におきましても、具体的な検討を進めている状況であります。

 ちなみに、スタートアップ応援型につきましては、平成十九年度に向け組成を検討している自治体は十九府県でございます。ちなみに、広島県も入ってございます。チャレンジ応援型につきましては、平成十九年度以降、組成を検討している自治体等につきましては十五先でございまして、そのような形で、現在、鋭意検討しているということでございます。

 今後、このような取り組みに対して、地域経済がみずから成長企業を輩出するモデルケースを、こういった事例を多く創出していけるように、地域の自主的な取り組みに対しまして、地域の中小企業の知恵と工夫を生かしまして地域の元気を引き出していきたい、そのように思っております。

三谷委員 ぜひ、うまくやっていただきたいと思いますし、どんどん推し進めていただいて、成果を期待しています。

 また、これは、まさに甘利ファンドと名づけられております。この取り組みにつきまして、また意気込みにつきまして、大臣のお考えをお願いいたします。

甘利国務大臣 実は、このファンドの組成は、私が本職に就任する以前、党の政策担当をしているころから、画期的な中小企業施策はないだろうかということで、事務方といろいろプランを練っていたものであります。というのも、中小企業予算が、もうそれこそ千数百億で限定をされておりますので、これをなかなか、今の財政状況、財政再建に取り組んでいくという状況の中で、飛躍的にふやせない。できれば一番いいと思っているし、十分な予算とまではなかなかいかないなという思いがありました。

 そこで、かなり大胆なといいますか、骨太の、少なくとも中小企業者にとって勇気を与えるようなスケールの仕組みができないだろうかということを考えて、温めておったわけでありまして、それをこの職におかげさまでつかせていただきまして具体化をしてきたわけであります。

 中小企業にとっては、立ち上がりのときの資金、それから、次なるステップで市場に企業自身がデビューをしていく等々、いろいろな段階があります。その段階ごとに必要な資金ニーズとは何かということを考えてこういうプランをつくったわけであります。なるべくインパクトがあって、中小企業事業者に勇気を与えるようなスケールが欲しいということで組み立てさせていただきまして、ぜひこれが多くの事業者に、あるいはこれから事業を起こしていこうとする方々に励ましの仕組みとなることを期待いたしております。

三谷委員 先ほど申し上げましたように、なかなかオール・ジャパンのようなことにはならないとは思うんですが、だけれども、最初に申し上げたとおり、大変発想としてもすばらしいし、ぜひとも推し進めていただきたいと思いますので、ぜひとも強力に、また後押しもよろしくお願いをいたします。

 そして、もう一つお尋ねをいたします。

 民間金融機関による中小企業向けの無担保融資を促進するために、中小公庫による証券化支援業務の対象中小企業をふやすために、中小企業金融公庫における証券化支援事業、予算措置でいいますと一般会計から四十五億円、産投分で加えて四十五億円が事業としてございますが、どういうものであるか教えていただきたい。お願いいたします。

石毛政府参考人 お答えいたします。

 中小企業金融公庫では、中小企業者向けの貸付債権の証券化市場を育成するということで、民間金融機関による無担保、第三者保証人なしの貸し付けを推進するということをやってきております。これは平成十六年七月から業務を開始しております。

 二つのタイプがございまして、一つは、単独では証券化が困難な民間金融機関の貸付債権を中小企業金融公庫が譲り受けてそれを証券化する、譲り受けますからこれを買い取り型と言っております。それから、民間金融機関がみずから貸付債権の証券化に取り組む場合に中小企業金融公庫が当該貸付債権の部分保証を行う、これを保証型と言っておりますけれども、そういう証券化支援業務を実施してきているところでございます。

三谷委員 証券化の進みぐあいはどうなんでしょうか。あるいは、民間金融機関にも協力をしてもらわなければなりません、その取り組みぐあいはどうなんでしょうか。あるいは、証券化によって、この取り組みでどれぐらいの規模のものになったんでしょうか、教えてください。

石毛政府参考人 制度創設からちょうど二年半になっております。延べで六千四百十四社、二千二百四十三億円の実績を上げております。中小企業向けのこういう証券化にかかわるものの恐らく一五、六%のウエートを占めているというふうに承知をしております。

三谷委員 証券化を進めなければいけないんですけれども、なかなか進まないんですね。大変大事なことだと思っているんです。さっき予算のことを言ったのは、もっと進めていただきたい。大事なことだと思うんです。

 不動産担保やあるいは個人保証に依存をしない、あるいは第三者保証も含めて依存をしない、そういう融資を進めなければいけないと思っているんです。特に、中小企業の経営者の一番切実な悩みはやはり個人保証なんですね。だけれども、それを進めるために、証券化をどんどん進めてもらわなければいけないし、一番有効な話だと思います。だけれども、進んでいない。今長官のお話にありましたけれども、一五、六%というのはちょっと言い過ぎじゃないかと思うんですけれども、これは大変いい事業、あるいはいい取り組みだと思います。

 一方でまた、昨日も連合審査がありましたけれども、これは中小公庫による支援事業、取り組みでありますけれども、政府系の金融機関に引っ張っていってもらわなければいけない。なかなか民間で進まない。そして、統合されまして日本政策金融公庫になります。統合してもちゃんとやってもらえるのか。そして、強力に進めてもらわなければいけない今後の取り組みについて教えていただきたい。どういうふうに考えていますでしょうか。

石毛政府参考人 この証券化支援業務でございますけれども、先ほど一六%と私申し上げましたのは、中小企業向けの証券化の中のウエートでございます。日本経済全体で見れば、三谷先生御指摘のとおり、不動産の関係だとか、そういうものを広く見れば、そのウエートはもちろん小さいわけでございます。

 それで、新しい政策金融公庫に移った中で、どういう拡充を行っていくかということについて申し上げたいわけですが、一つは、現在の貸付債権の証券化については譲渡するということが前提となっております。今、民間金融機関の側では、そういう貸付債権を譲渡せずに、いわば信用リスクの部分だけを移転したいというニーズが金融機関の方にございます。そういうニーズに対応する必要があるだろうというのが一つございます。

 もう一点は、対象が現在のスキームの中では新規の貸し付けに限定をされております。そういうことのために、多数の新規案件を集めることが難しい中小の金融機関、そういうところの参加が難しい、そういう実態にございます。

 それからもう一点は、このスキームの中で、特定目的会社を導入するという仕組みがあるわけですけれども、ここへの出資機能を中小公庫が持っていないということから、なかなかこのスキームを効率的に運用しにくいという点がございます。

 今三点ほど問題点を申し上げましたけれども、そういった問題点を解決する形で制度を組み直して新たな証券化のスキームをつくっていくということを考えております。

三谷委員 大事なことで、ぜひとも推し進めていただきたい事業なんですけれども、なかなか簡単なことでないということはわかっています。だけれども、再度また予算のことを言いますけれども、もっとつけてもらいたい。大事なことだと思うんです。さっきもわざわざ環境整備と申し上げたのは、こういうことをぜひとも着実にやってもらいたいんです。(発言する者あり)賛成をしたいと思います。やってもらいたいというふうに思います。(発言する者あり)まだ早い。時間がなくなってまいりました。

 最後に、先週の質問の続きでありますけれども、中小企業地域資源活用促進法の中で確認をしたいことがあるんですが、マーケティングに精通した専門家を派遣する市場志向型のハンズオン支援事業というのがございます。一つは、どういう専門家をイメージしているのか、また、本当に確保ができるんでしょうか。これをまず教えてください。

甘利国務大臣 地域資源を活用した商品、サービスの事業化、企業化ということは、大事なことが何点かありまして、一つは、もちろんいい地域資源があること、それをブラッシュアップする。そこから先が極めて大事でありますが、市場とどうつなげていくかということであります。いい資源といい人材が結びつかないと、この事業はうまくいかない。

 そこで、人材の問題でありますけれども、全国十カ所に支援拠点を置く、これは中小企業基盤整備機構を想定しておりますけれども、そこにマーケティング人材等を配置しまして、それが支援をしていく。

 ただ、御指摘のとおり、それで足りるのという話になります。そこで、私は、百三十八人の地域資源サポーターというのを委嘱いたしました。これは、地域資源を使って企業化に成功した方々が中心であります。つまりノウハウを持っていらっしゃる方々が中心、そういう人たちに助けてもらおうと思っております。実体験をもとに、どこにネックがあるか、どこをどうクリアするとブレークスルーができるか、そういう経験をお持ちですから、そういう方々とそれからマーケティング専門人材等々、あわせて支援をしていきたいというふうに思っておりますし、これからも有能な人材についてはサポーターの依頼をしていきたいというふうに思っております。

三谷委員 わかりました。

 そして、このスキームで、これからのタイムスケジュール、今わかる範囲で、もちろん法案が通る通らないということもございますけれども、このことを言われるわけですが、わかる範囲内で具体的に、詳細に、公募をかけるのはいつか、認定企業が決まるのは、助成を受ける企業が決まるのはいつか、これも含めてタイムスケジュールを教えてください。

松井(哲)政府参考人 お答えいたします。

 この法案を施行いたしますのは公布から六カ月以内ということでございますが、基本方針の準備も、中小企業政策審議会を踏まえて極力早く施行したいと思っております。そういう意味で、夏ぐらいまでの間には施行させていただいて、直ちに基本方針を発表する。それに基づきまして各県の方で基本構想を極力早く策定していただくということで、秋に入る前の段階で、早い段階のところにおきましては基本構想を策定していただく。これに基づきまして、秋に入りまして具体的な認定に入ってくるということを考えております。

三谷委員 中小企業ものづくり高度化事業のことでも、また質疑の中でも私も申し上げました。私も怒られました。公募から締め切りまでたしか一カ月半ぐらい、二カ月ぐらいしかなかった。予算執行のことはあるけれども、柔軟に対応をしてもらいたい、ものづくりのときにも申し上げました。後でも申し上げました。

 余り役所的なことをやらないように、そこはもうちょっと融通を持って、この話はまさにいいアイデアを求めるものですから、ヒット商品を地方の中で生み出すような、まさにそれを促すための事業でありますので、その幅は、やはりしっかり広報をやってとってもらいたいというふうに思います。

 大臣にお尋ねをいたします。

 スピードを持って柔軟に対応をしていただきたい。また、この支援措置のスキームがありますけれども、今の話を聞きますと、なかなか心配なところがあります。

 こうやって基本構想を策定して、先週も言いましたけれども、本当は、すっ飛ばすところはすっ飛ばしてもいいと私は思っておるんですけれども、事業計画を策定して、認定をする、そして助成、採択をするところを決める。公募から締め切りまで、また、後ろが詰まってくるとまた前倒しになって有効なことが行われない。だから、そこはもうちょっと柔軟に考えていただきたい、このことを最後にお尋ねいたします。

甘利国務大臣 地域資源というのは、思いもよらないアイデアが地域の牽引力になるという例があります。でありますから、フレキシブルに、そしてスピーディーに対応していきたいというふうに思っております。

三谷委員 スピーディーに、フレキシブルにぜひとも対応をしていただきたいと思います。

 質問を終わります。

上田委員長 次に、片山さつき君。

片山委員 おはようございます。

 本日は、成長戦略関連三法で御質問の機会を与えていただいて、大変幸甚に存じます。

 三月一日の予算委員会の分科会の方でも、関連法案について、予算措置がなされておりますので、その質問を幾つかさせていただきましたが、このときは中小企業地域資源活用促進法が中心でございまして、最後の方に、この企業立地促進法または地域産業活性化法と呼ぶんでしょうか、これにおける一連の措置について質問をさせていただきましたところ、詳細に至る部分は法案審議でというお言葉を大臣からいただきましたので、それでたまたま今回私にお鉢が回ってきたのかなと思います。

 一連の企業減税、減価償却税制につきまして昨年、年末の税調で踏み切って、この四月から既に十九年度の企業活性化税制が始まっておるわけですが、これと相まって、この企業立地促進法が、企業の国内立地を進める、企業のものづくり、国内立地回帰の起爆剤としての効果が三法の中でも特に非常に期待されておりまして、私も、地元にかかわらず産業界の関係者から、どうなっているんだ、いつごろ成立するんだと、どのぐらい企業にとってアピタイトがわくものになるのかということを非常に関心を持って質問されるわけでございます。

 まず、質問に入ります前に、一点大臣にぜひお願いがあるんですが、もちろん経産省としてもそのおつもりと思いますが、大切なことは、この法案を仮に成立させていただければ、でき次第できるだけ早くこの法案のシーズがありそうな地域で説明会を比較的身近な形でやっていただく。

 というのは、私どもも、政府だけではなくて自民党としても頑張って、この「魅力ある地域へのガイドマップ」というものまでつくって、これは施策が百二十幾つあるんですけれども、配っておるんですよ。これはもちろん予算が通ればというものでありますが、これをいろいろ配って自治体の関係者とか商工会議所関係者に説明しても、やはりわからない、山のように質問したいということになっていまして、特に企業立地という非常に大きなデシジョンメーキングを行うか行わないかのお話でございますから、ぜひそういうことをお願いしたい。それが肝心なんじゃないかなと。

 この法律は、スタートイヤーで目に見える成果が出ると物すごくよくなると思うんですよ。それがそうじゃないと、だからやはり十年前のものと余り変わらないのかなとなりますので、ぜひそこを御判断でお願いしたいということをお願いして、質問に入らせていただくんです。

 まず、この具体内容でございまして、法律につきましては非常にいい説明をこちらの問題点の資料でいただいておりますから、きょうは、その外縁から、具体化の部分を伺わせていただくんですが、その企業立地事業高度化に取り組む企業関係者や事業者にとって、日進月歩のビジネス界の今についていっているようなものになっているのかということでございます。

 また、今回、この法案につきましては、地域の活性化に関する今回の政府の取り組みがすべてそうでありますように、法案はほかの省庁も含めて全部で九本出ているわけですが、魅力あふれる地域をつくる、それも自発的なアプローチでつくる、しかも、今までにないような省庁の横の連携で、縦軸だけではなくて横の連携でつくっていくということが中心になっておるわけでございます。さらに、それに加えて思想としては、重要なのは民の発想だと。

 そこで、この法案の具体化に当たって、現場の企業ニーズというのはどのように吸い上げられるのか、また、どのように彼らのニーズにこたえるような措置ができる限りにおいて盛り込まれているのかにつきまして、まず甘利大臣にお伺いいたしたいと思います。

甘利国務大臣 今まで地域への企業立地というと、どちらかというと、国が画一的に施策を用意して、これでどうぞと。それから、地域も、自分たちに何が求められているかということの調査よりも、成功している企業の本社もうでをして、何とかうちに新しい工場をつくってくれという陳情誘致型だったんですね。

 実は、企業がどこの地域とかどこの国を選択するかというのは、企業側にとって戦略的に展開していくニーズを満たしてくれているかどうかという極めて精緻な選択なんですね。だから、言ってみれば、地域が企業が欲している条件をどう整えられるかということがまさに命綱なんですが、どちらかというと、今までは的外れな陳情合戦あるいは税金のダンピング合戦で、こっちの水は甘いよ方式で引っ張ってきた。これはちょっとフォーカスがずれているんじゃないですかというのが私の思いだったんです。

 今回は、この法案の作業に入るのに並行して、私自身、個人的に何人かの知事さんと話をしました。何が重要と思うか、あなたは何をやっていますかというときに出たのは、税金のダンピング合戦は勘弁してくれ、体力の弱いところはますます弱くなってくる、強いところは強くなる、これじゃ、地域の活性化になりませんという話。それからもう一つは、行政側が企業が何を欲しているかを知るということが大事ですということをおっしゃる知事さんもおられました。

 そこで、私どもは、企業立地の阻害要因といいますか、どういう要素が企業立地を妨げているかということを、企業でいうと百八十企業、それから、妨げているかというのと支援ニーズ、こういうことを支援してもらうとよりいいんだがなというのと合わせてですけれども、自治体でいうと五百以上の自治体から事情を伺いました。この法案は、現場のニーズを踏まえた支援措置で構成されているというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、企業の立地をするのは地方自治体でありますから、その地方の自治体が全体のメニューを把握してスキームを組めるということでなければいけないわけであります。行政手続が迅速、透明性を持ってできるということは大事でありますし、権限が立地自治体にいくということも大事ですから、例えば工場立地法の規制権限を市町村に移譲するとか、あるいは、企業側にとってみれば、工場を増設する際に農地転用の見通しが全くつかないというようなことでは困りますから、この迅速化では農水省にも協力をしてもらうということでありますし、中央省庁も、そして県レベル、市レベルも、みんなワンストップでサービス体制がとれるということを重点といたしました。

 もちろん、設備投資の促進をする税制とか、あるいはハードの補助金もコンビネーションをうまくとって効果的に働くようにしましたし、また、企業側のニーズとしての人材をどう供給するか。適切なスキルを持った人材、この人材育成支援についても関係省庁の協力体制ができるようにしておるつもりでありますし、あるいは、国土交通省が道路をつくる、ただやみくもにつくるんじゃなくて、こういう策と連動したインフラ整備というのが大事ですから、ですから、国交省との連携も中央でも地方部局でもとれるようにした次第であります。

片山委員 ありがとうございました。

 まさに今回の地域活性化策は、初めて広範な範囲で本格的な各省間政策連携ができたというふうに思えておりまして、私も政府の中での仕事が長かったんですが、ここまでのものは見たことがないので、その部分に非常に期待をしているわけでございます。

 今大臣から全体像について御説明いただきましたので、その中でこれから幾つか伺いたいんですが、自治体のニーズですね。今知事さんのお話を聞かれたということでございますが、頑張る地方応援プログラムというのも今回つくったわけです、予算的にも制度的にも。予算的には二千七百億円とか三千億円とかいう枠ができたわけでございますが、その頑張る地方応援プログラムというものも各省間連携で、これも余りなかったことなんですが、今回、その中でも、やはり旧自治省の部分、菅大臣のところと甘利大臣のところの連携で、頑張って取り組む自治体に対して地方交付税措置とか、あるいは減免関係についての補てん措置が入っている。

 これは先ほどお話があったように、やみくもなダンピング合戦は地域の財政力を低めてしまって、ほかの政策ができなくなったら結局地域力は落ちるんですよ。それで財政健全化もできない。総合的な意味で全く地域の活性化になりませんから、ここは一つ肝なんですが、この法律の前身であった特定産業集積活性化法のころには、実は財政危機第一次宣言というのが出ていて、財政構造改革法もあって、こういう税金の減免を助長してしまうような補てん措置はやめようねみたいな話もあったんですね。そのように読める閣議決定もあったんですが、今回そこを踏み越えて、やる気があってそれをやったところにはちゃんと補てんもしよう、四分の三ではあるけれども補てんもしようというところがとれたことは、これは余り気がつかれていないんですが、すごい画期的なんですよ。

 その辺が自治体がまだ学んでいないんで、そこをもっとはっきりPRすべきなんでございますし、それから、増収分についての特別交付税のところもあるんですが、その辺についてさらに詳しく、本当に頑張ったところが恵まれるというか、頑張るところに対するインセンティブとしてこの辺が一番強いので、その辺をもう少し大臣にお聞かせいただきたいと思います。

甘利国務大臣 片山先生は主計局で予算を組んでおられる立場におられましたから、この政策の勘どころはよくおわかりだと思います。

 私は、内閣の一員になりましたときに、すぐ総務大臣と新しいスキームをつくりたいから一緒にやろうという話をしました。彼は、ぜひ協力してやりますという返答をすぐくれたわけであります。これは入閣してたちまちの話でありました。私としては、こういう構想を持っていましたから、六省庁体制ですぐやろうということにしたわけであります。

 その際に、さっきダンピング合戦ではたまらぬと。しかし、全体の政策を組んでいく中で、この部分、地方も企業に対する減税をかける、それは政策としては必要な部品になっているんですね。ただ、ダンピングで向こうが十億、ではこっちは二十億、そういう政策はよくないけれども、全体の組織の中で、企業減税を国税でも地方税でも組んでいくというのは戦略上あり得るんですね。そういうところに対して減収補てんを働かせる。

 それからもう一つは、交付税の交付団体の悩みは、努力をして赤字幅を縮めると褒美が減っちゃうという仕組み、努力が報われないという仕組みがあります。これを何とかしてあげないと、頑張ろうという意欲が減殺されるんですね、頑張ったってどうせ取り上げられちゃうんだからさと。これはまずいということで、そこを特別交付税でカバーするという二つのコンビネーションを全体のスキームの中に組み込むということにしたわけでありまして、これは頑張ろうという自治体の意欲を涵養するということになろうと期待をいたしております。

片山委員 大臣、ありがとうございました。

 実は、私の選挙区のエリアには、ごくわずかではございますが、不交付団体がございまして、このエリアも含めて出たいと言っている企業も多いんですね。周辺の自治体のほとんどは交付税をもらっておりまして、特交の措置ということになりますとこの辺がどうなるのかなというのは非常に気になるんですが、今の地方財政の仕切りだと難しいなと思いますが、その辺も将来的にはお考えいただければなと思っている次第でございます。

 次に、企業立地促進法の具体的な基本計画を作成した後の措置について、ちょっと二問ぐらい聞かせていただきたいんです。

 今回、産官学の研究開発について、ある程度補助措置が出る、しかも十九年度予算では三十七・七億円ついているということにも大変関心が集まっております。つまり、技術開発がやりやすいので国内の方を選好するという企業が多いわけですから、ここにあめを与えるのは非常に意味があるのでございます。

 そこで、いろいろつらつらとこの法案や要綱を読ませていただいていると、若干気になりますのが、やはり地域、都道府県と市町村、ある程度エリア性があるわけですよね。その中で産官学でいい企業の技術シーズの関係を組んでいく中で、必ずしも、技術開発を学の側に、投げる側に、この地域協議会の中に入ってくるような学は、それはその地域の大学なり研究機関だと思いますが、その委託先は、専門性から見ていろいろなところに行ってしまうと思うんですよ。例えばロケット等の最先端分野だったら、残念ながらうちの浜松には全部ないかもしれませんし、そうすると、名大だ、東工大だ、つくばの産総研になりますから、そういうところが入っていって、では、この三十七・七億円の産官学連携の支援策が使えるのか使えないのかというところが若干気になりますので、細かいお話ですが、教えていただければと存じます。

福水政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、産業集積になった場合に、産学官で技術開発を行って、まさにイノベーションを起こして、ますますその地域を活性化していくというのは非常に大事なことというふうに考えております。

 そういう意味では、私どもも技術開発関連の予算というのを持っておるわけでございますが、私どもが持っておる予算の中で、二つありまして、一つは地域新生コンソーシアム研究開発事業というのがあります。あるいはまた、中堅・中小企業に対しまして、地域新規産業創造技術開発費補助事業、こういう事業費がありますが、こういう事業費をぜひこの基本計画の中でも活用していただけるように、そういう運用をしていきたいというふうに思っています。

 すべての地域に、先生御指摘のとおり、大学とか高専があるわけではございませんので、そういう場合には、浜松の地域と東北大学の金属材料研究所がやるとかあるいは九州大学のどこかとやるとか、それは当然起こり得ることでございまして、我々、そこは十分配慮してやっていきたいというふうに考えております。

片山委員 ありがとうございました。

 最後に、私、ここが一番実はキーになるんじゃないかと思うんですけれども、さっき大臣もおっしゃっていましたように、人材育成とか人の確保的な部分が今や企業立地では非常に重要になるんですね。もちろん、まだ光が当たらない地域を底上げするという発想がこの地域活性化には非常に強いわけで、この法案にももちろんそれはあるんですが、他方、産業集積や技術のシーズがあるところの企業が海外に出ていかないようにするという大きな目的もあるわけで、国全体で底上げされれば結果的に仕事は回っていくし、今や人の流動化も結構進んでおりますから、そのあたりは、当省にもいろいろお伺いしたところ、必ずしも昔のように、全く人のいないところに無理やり工業団地をつくって割り振るような発想はもうワークしないので、そうじゃないということを伺っているわけでございます。

 産業集積を図っていくということをやっていくと、有効求人倍率が低いところだけを人材育成支援の対象にいくということは、もうほとんど空振りになるというか、無理なところがあると思いまして、人手不足地域だからといってそこが経済的に全部豊かだということはないんですね。東海地域を見ておりましても、各ハローワークエリアで有効求人倍率にはかなり差があります。その人たちは近辺のより仕事のあるところに今行っているだけでございまして、そこで、その地域には必要最低限の仕事もあるものですから、分子、分母の関係で割り算をして、有効求人倍率は余り低くないというか、高くなっちゃうんですね。

 だけれども、そこに、では、工場をつくって生産設備を持ってこないとその町の財政も活性化もできないというニーズは案外強いんですよ。結構そういうところが多いものでございますので、人の確保をやる上で、今からは、未熟練の人を工場の優秀な工員になってもらうということをしないと無理なわけでございます。私どもも一生懸命推奨して、予算でももう入っております。ニート、フリーター二十五万人正規雇用計画、これは今の時点でもう十九万人が正規雇用に移ったわけですよ。

 だから、やればできるわけで、訓練すればできるわけで、それを特別の、いい工場に合うような労働者になっていただくためにやっていただくのは非常に重要ですし、ここにはやはりどうしてもパートや派遣を使うとか日系のブラジル、ペルー人を使うとかいうことをしないと、今、日本じゅうで、ある程度労働集約的な工場はできないので、そこではやはり人材育成事業が非常に重要、しかも、十分の十で上限二千九百万円というのは大変魅力がありますので、ぜひその辺について、人材育成支援の概要をお聞かせいただくとともに、柔軟にお考えいただきたいなと思うんですが、ちょっと最後に、この質問でございます。

福水政府参考人 お答えいたします。

 昨日の福間参考人の話にも、若者を束ねた地域が勝つんだというような話がありました。そういう意味で、人材育成、人材の確保というのは我が国の産業が抱える一番大事な点ではないかというふうに考えておりまして、人材育成事業にこの法案の中でも力を入れていきたいというふうに思っています。

 具体的には二つございまして、新規立地につながる地域の人材育成につきまして、あらかじめ、こういう業種をここに立地させたいんだ、したがってこういう関係の人材が必要になるということで研修とか教育を進めていく事業と、もう一つは、立地の後、例えば自動車関係部品会社が立地して、その後、その部品に関するいろいろな人材が必要だということで研修する、そういう二本立ての予算措置になっているわけでございます。

 本予算措置は、有効求人倍率とか財政力指数とか、そういうのも見ながら、激しい地域に配慮するというふうな方針で予算措置を執行していきたいというふうに考えておりますけれども、先生御指摘ありましたように、有効求人倍率がたとえ高い地域でありましても人材の育成というのは非常に大事だというふうに思っています。

 そういう観点で、我々が今考えておりますのは、有効求人倍率が非常に高い地域であっても、例えば、複数県で非常に広域的におやりになって、全国のモデルになるような地域でありますとか、これは画期的で、ほかの地域にもこういう見本とかモデルを広めていきたい、そういうふうな取り組みにつきましては、支援対象に考えていきたいというふうに考えております。

片山委員 ありがとうございました。

 ぜひ、この非常に画期的な取り組みをいろいろと含んだ法律を、実行段階で皆様のお力と温かいお心で目を入れていただきたいということをお願いして、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

上田委員長 次に、藤井勇治君。

藤井委員 おはようございます。自民党の藤井勇治でございます。

 質問をいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 このたびのこの大綱関連三法案、いずれも地域活性化にとりまして大変重要な法案であり、大いに期待をいたしておりますが、きょう、私は、企業立地の法律について重点的に質問したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、今回の企業立地に関する新法ですが、ちょうど十年前、平成九年に制定された集積活性化法の後継法という位置づけになっております。この集積活性化法は、当時、産業空洞化が進み、日本の工場が海外に移転してしまうんじゃないかという不安や、鋳物や金型を初めとする製造業を支える産業が衰退してしまうのではないか、この結果、さらに日本の製造業全体が衰退してしまうのではないかという懸念の中で生まれた法律でありました。

 実は、私の地元であります滋賀県でございますが、大津市や草津市を初めとする県の南部地域において、集積活性化法に基づく計画策定を行いまして取り組みをしてきましたが、国の支援を受けながら造成を行った甲南フロンティアパークというのがありまして、これには十七社が立地しております。また、県の工業技術総合センター内に中小企業が研究開発を行う際に利用できるレンタルラボ、あるいは、県立大学に産学連携センターを設置しました。こうした成果が非常に上がりまして、滋賀県の有効求人倍率は現在一・二九でございまして、全国平均の一・〇五よりもかなり高い水準を維持しております。

 このような取り組みが全国二十五の地域で行われてきたということでございますが、私は、まず最初に、この集積活性化法に基づくものづくり産業集積の活性化の効果をどのように評価されているのか、まず第一点、ここからお聞きしたいので、よろしくお願いします。

福水政府参考人 お答え申し上げます。

 滋賀県は県民所得も非常に高うございますし、特に草津市は人口がふえているとか、非常に活気のある地域の一つだというふうに考えています。

 先生も今お話しされましたように、ちょうど十年前に、空洞化してしまうんじゃないか、職場がなくなってしまうんじゃないかというふうな懸念がありまして、金型産業でありますとか鋳鍛造業、あるいはプレス、切削、こういう日本のものづくりを支える基盤の産業を何とか活性化していかないと日本は大変なことになるということでこの法律を制定していただいた、そんな経緯があるわけでございます。

 先生、お話がありましたように、全国二十五カ所でこの計画がつくられて、滋賀県南部地域もその一つでございます。この十年間の実績を少し申し上げますと、この計画に基づきまして、四百七十八件の技術の高度化に関する事業者の計画を承認して、研究開発助成などを行ってきておりますし、あるいは、全国の公設試という、県の試験場でありますとか県のセンターでございますが、こういうところに高度な機器を補助しまして、周りの基盤の中小事業者がそういうものを活用して自分の事業を高度化させる、そういうふうな事業もやってきました。

 また、甲南フロンティアパークの話がありましたが、こういうフロンティアパークを全国に五カ所つくりましたし、あるいは貸し工場のようなものも全国につくっておりまして、貸し工場などを見ますと、非常に稼働率が高くて、活用されている状況にあるというふうに認識しております。

 それで、この二十五地域の状況でございますが、例えば、工業の出荷額でありますとか事業所の数でありますとか付加価値の額、こういうものでそのそれぞれの地域を全国の平均と比べてみますと、二十五地域の計画のうち二十地域におきまして、相対的に全国の平均よりもこういう地域はよくなっているというふうな結果が今時点で出ておりまして、そういう意味で、この基盤技術の産業集積地域の活性化という点について、一定の成果があったものじゃないかというふうに考えております。

藤井委員 お話を伺っていますと、全体としても一定の効果があったということですが、ものづくり基盤産業は重要でございますので、今度の企業立地促進法においても引き続き支援をしていただくようにお願いしておきます。

 この集積活性化法の成果もありまして、今申し上げました私どもの滋賀県南部地域については非常に順調でありますが、実は、私どもの県は南高北低と言われていまして、南部は北部地域に比べて景気の回復が比較的早い、しかしながら、北部地域は景気回復の足取りが非常におくれているというふうに見られております。このため、集積活性化法の後継法となる企業立地促進法を活用して地域活性化をしたいという地域住民の方は、実はこの法に非常に熱い期待を寄せております。

 具体的に、滋賀県北部の地域で長浜市というのがございまして、ここでは、長浜バイオ大学を中心とする湖北地域においてバイオ産業集積拠点を創出して、現在推進中であります。また、その隣の高月町という町では、液晶及びプラズマディスプレー用板ガラスを製造する有力な工場が立地しておりまして、急激なマーケットの拡大が進んでおります。こういうことから、毎年設備投資を実施しておりまして、こういう企業を核として、電子・電機関係の液晶等の集積づくりを目指した取り組みが地元で非常に真剣に行われております。

 恐らく、全国の市町村におきましても、こうした取り組みが今行われているのではないかというふうに思いますが、こうした地域の取り組みに対して企業立地促進法が具体的にどのように活用できるのか、お伺いしたいと思います。

渡辺(博)副大臣 お答えをいたします。

 企業立地促進法案は、地域の実情は一様ではない、こういったことを踏まえまして、それぞれの地域が個性豊かな産業集積の形成を目指す取り組みを支援していくということが大きな目的であります。

 具体的に申し上げます。

 第一に、企業立地に際しまして、コストの低減や人材確保のための支援措置を講じております。例えば、委員から、長浜市におけるバイオ産業集積や高月町における電子・電機関係の集積づくりの取り組みについての紹介がありました。本法案に基づいて地域で策定する基本計画の中にこうした取り組みを盛り込んでいただき、国の同意が得られれば、長浜市にバイオ産業が立地する場合、あるいは高月町に電子・電機産業が立地する場合に、まず、設備投資に対しまして一五%、建物に対しまして八%の特別償却を活用することが可能となります。これは、企業立地にとりまして大変大きな魅力であると考えております。

 また、地域の協議会が主体となって行います人材育成のための研修費用等に対しましても、新規予算で補助を行う制度を用意しております。

 また、第二に、スピーディーできめ細かな企業立地手続の実現に対する支援を講じております。これは、工場立地法の緑地規制権限の移譲、農地転用手続の迅速化等の措置であります。この特例措置を活用する場合には、地域で策定する基本計画の中に、重点的に産業集積形成を目指すいわゆる重点区域を設定することになります。この重点区域内については、市町村が条例で緑地規制水準を設定することが可能となります。

 このほか、関係省が連携して企業立地に関するワンストップサービスを提供し、手続の迅速化等に努めてまいります。

 また、第三点目でございます。関係省と連携して、企業立地等に頑張る自治体を応援してまいります。具体的に申し上げますと、総務省との連携においては地方交付税措置や、国土交通省との連携においてはインフラ整備支援措置を活用することができます。

 交付税措置については、自治体が企業立地促進のために固定資産税の減免措置を講じた場合、減収分について、四分の三を交付税で補てんするといった措置であります。

 また、企業立地後、せっかく固定資産税がふえたとしても、増収分の七五%について交付税の交付金額から減額されてしまうという不満が現実にあります。こういったことから、企業立地促進法に基づく企業立地につきましては、その一部を特別交付税で措置する仕組みとなっております。

 このほか、雇用対策、教育機関による人材育成等、関係省が行う施策とも連携しながら、関係六省、経済産業省、総務省、国土交通省、農林水産省、厚労省、文部科学省、こういった省が一体となって総合的な企業立地支援に取り組んでまいります。

藤井委員 ありがとうございます。

 この法律、本当に企業にとりましても自治体にとりましても大変魅力的な法律でございまして、今の減税措置のうちの規制緩和、それから自治体に対する交付税等大変手厚く用意されているというふうに私も思いますので、ぜひこれで進めていただきたいと思います。

 この企業立地促進法の今のスキームを見ますと、基本計画は市町村と都道府県が共同で行うと。そして、そのほかに地域の経済団体が参加した協議会における検討をするということをうたわれておりますけれども、各地域が計画づくりに大変な労力をとられてしまって、具体的な企業立地の取り組みがおろそかになるのではないか、そうなれば本末転倒であるということになります。

 地域活性化は急がないといけませんし、迅速に計画策定を行って、そして具体的な取り組みを展開すると思いますが、このような配慮を、迅速にやるという配慮をぜひやっていただきたいと思いますので、お願いいたします。

渡辺(博)副大臣 ただいま委員御指摘のとおり、この法案が成立しましたら、迅速に対応していかなければならない、そのように思っております。

 企業にとりまして、こういった魅力ある事業環境を整備するために、地域の関係者が一丸となって取り組んでいくことがまず必要であります。特に、市町村と都道府県が二人三脚で取り組んでいくことが必要不可欠だというふうに思います。地域の実情をよく把握している市町村が必ず実施主体として参画するとともに、インフラ整備や広域の連携を図る観点から、都道府県も共同で参画することが必要となっております。

 また、この法案の運用に当たっても、工場立地法の緑地面積、先ほどもお話ししましたけれども、緑地面積基準に関する特例については市町村が実施することになります。農地転用許可の迅速な処理については、都道府県において対応していただくことになりますので、それぞれの連携が大変重要でございます。

 また、地域で作成する基本計画は、いわば企業立地マニフェストであることから、企業ニーズを十分に踏まえて作成することが必要であります。このため、地域経済団体等を構成員とします協議会において議論を行っていくスキームとなっております。

 このように、迅速にまた計画を策定して、具体的に取り組んでいくことがまさに求められているわけでありまして、本年一月から三月の間に、経済産業省の担当者が四十七都道府県に伺いまして、法案の説明を行っております。各地域における事前の検討について意見交換を行い、さらに、協議会を活用して検討を進めることについても、現在、協議会における計画策定に対する支援措置も用意しているところであります。とりわけ人材の関係で、専門家の人件費の補助というものが予定されております。

 こういった取り組みを積極的に活用して、速やかに計画策定が行われるように支援してまいりたいと思っております。

藤井委員 ありがとうございました。

 ぜひ、法案が成立しましたら、各地域が迅速な取り組みができるように、国としてもきめ細かな目配りをしていただきますようお願いいたします。

 もう一つ、関連いたしまして、この工場立地法については、緑地規制の緩和以外にも制度の見直しを求める声があると聞いております。この点について、産業構造審議会で検討が進められているというふうにお聞きしておりますが、この産業構造審議会の検討状況についてお伺いをしたいと思います。

川原田政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のように、現在、産業構造審議会の地域経済産業分科会のもとに工場立地法検討小委員会というのを設けておりまして、ここで、具体的には、構造改革特区提案等におきます市町村等からの規制緩和要望に対する措置というのと、それから先生御指摘の、今後の工場立地法のあり方に関する検討を今進めております。

 市町村等からの要望に対する措置につきましては、昨年の十二月に、本法案の枠組みにおきまして活用いたしまして、市町村への権限移譲を可能とするということが適当であるという考え方をまとめておりますし、先生御指摘の、今後の工場立地法のあり方に関する検討につきましては、現在、事業者あるいは自治体、有識者などの関係者からのヒアリングを行っておるところでありまして、今後、こうした関係者の意見を踏まえつつ、具体的な論点の整理を進めて、今年度の夏ごろをめどに取りまとめを行いたいというふうに考えております。

藤井委員 わかりました。ありがとうございました。

 最後に、大臣お帰りでございますので、お伺いをいたします。

 この企業立地促進法、大綱関連三法案の一つでありまして、これは甘利大臣の非常に肝いりの政策であるとお伺いしております。先ほど来、この企業立地促進法に関する地域予算が四十四億円というふうな説明を聞いておったのでございますが、肝いりの割にはやや寂しいかなという感じがいたします。

 この点について大臣の考えと、それから、今後の予算措置の拡充についてどんなお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 確かに、肝いり政策の割に、我が省の枠についてはちょっと小さくはないかということであります、たくさんとれればそれにこしたことはないと思いますが。

 今回の施策は、各省連携でシナジー効果を上げようということで、ほかの省の予算も使いますし、ほかの省の政策との連携をとっておりますし、あるいは税制という手だてもあります。総合的に効果を発揮するように仕掛けだけはしたつもりでございますし、これからも効果が上がるような予算の確保には全力で努力をしてまいりたいと思っております。

藤井委員 ありがとうございました。

 大臣のイニシアチブで、各省との連携が非常に充実しているということでございますので、ぜひこれを一つ一つ丁寧に仕上げていただきまして、経済産業省としても、引き続き十分な予算確保に努めていただきたいとお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

上田委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 この三法案も、きょうを含めて十七時間を超す質疑を行っております。今もお話がありましたようにこの三法案は、私は以前からお話をしているように、今の経済社会状況、特に都市と地方の格差の問題であるとか、大企業と中小企業の格差の是正も含めて、方向性は正しいというふうには思っています。

 ただ、先ほど大臣からお答えをいただいた各省連携の話であるとか、本当に地方が、県や市町村も含めて、自治体がみずから本当にそれでどこまでできるかとかいろいろな、これからが本当に大切だというふうに思っています。

 特に、私は質疑にきょうで三回目立たせていただいておりますが、いろいろな面で、もしかしたら、これがこのまま進んでいくと、例えば企業立地の問題であっても、地域資源の活用の問題であっても、格差が開いてしまうのではないかなという気持ちを持っています。

 これは、この間もサービス産業の生産性の部分でお話をさせていただきましたが、やはりお客様がどこまで満足をするかという視点、それは、地方の部分であれば、地方の中小企業の方々や地域の住民の方が本当にそれをサポートする仕組みになるかどうか。まず、この三法について、それぞれ、受け手である中小企業の方々や自治体の方々に本当に周知できるようなものであるのかどうかというのが一点。

 そして、あわせて、認定基準、基本計画の構想や、自治体との部分の基本構想の策定も含めて、それが本当にどんな形になるのかというものが、まだこの法案では正直言って見えておりません。それがやはりできるだけ受け手である中小企業の方々や自治体の方々にわかりやすく、なおかつ、それが公平性、透明性を持つということが必要だと思うんですが、その点について、ぜひそういう観点からこれからの作業を進めていただきたいということを思っておりますが、その点についていかがでしょうか。

甘利国務大臣 この三法案は、この三法案を活用することによって、是正が叫ばれております地域間格差あるいは格差の固定、格差の拡大を改善する有力な処方せん、これが期待されているわけでありますが、実は、その処方せんを使ったらかえって格差が拡大したということであってはならぬという御指摘だと思っております。

 例えば、今までの企業立地は体力勝負みたいなところがありました。それだと確かに格差は拡大をしていく危険性があるわけであります。ですから、体力勝負ではなくて、アイデア勝負、知恵勝負、努力勝負に持っていこうと思っておりました。努力をしないところも均等に上がるようにというのは、これはなかなか難しいことでありますから、努力と知恵の出し合い勝負、これはお互いがいい競争関係にあろうかと思います。

 それから、地域資源でありますけれども、私は各地を回って実感をしたといいますか確信を持ったのは、どこの地域にも他に誇れる資源があるということの確信は持ちました。どこの地域にも、それを使って何とかしなきゃということを考えている人がいるということもわかりました。

 もちろん、地域資源を活用してうまくマーケットとつなげる能力のある人材の分布がきれいに均等にいっているかどうかまでは定かではありません。そこで、この支援をするような人材の配置を全国にいたしました。それから、地域サポーターもかなり、完璧にではないですけれども、全国に分布しておりまして、均等に支援策を行えるような人材分布になるように、極力、全地域的にサポーターを指定させていただきました。

 これらの地域の潜在資源と人材資源をうまく連携をして、地域の格差是正に資するような策が、格差拡大にならないように注意をして取り組んでいきたいというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣がおっしゃっていただいたこと、ぜひその方向でというふうに思うんです。

 前回もちょっと指摘をさせてもらいましたが、地域資源というものの定義、少なくとも法律上は、どこの地域でも当然あるものが列記をされております。相当程度認識されている農林水産物、鉱工業品であるとか、文化財、自然の風景地、温泉等の相当程度認識されている観光資源であるとかというのは、これだけ読めばどこの地域でもある。

 確かに、努力をする地域や努力をする中小事業者に対してということが、もちろんプライオリティーが上がっていかなきゃいけないわけですが、特に、限られた予算という、トータルで、ほかの連携事業もありますが、少なくとも予算上計上されている中小企業の、例えば資源活用プログラムであれば百一億円。そのうちの、例えば市場志向ハンズオンというマーケティングの専門家の部分が二十億円。地域経産局をベースとした地域支援事務局というのは全国で十カ所あるわけですね。例えば、山梨では県や自治体や中小企業者が努力をしないからゼロになったり、栃木県で、割り振りをした部分がブロック別に全部、総取りみたいな形。逆に言えば、そこが一生懸命やるからという、例えば認定基準とかではやはりいけないのかなと。それだと、先ほど大臣がお答えいただいたように、格差はますます拡大をする。

 今、四十七都道府県があり、千八百の市町村があり、その数字が正しいかどうかというのは別として、現在そういう状況だという前提であれば、少なくとも、十地域支援事務局というものをつくるという中で、そこでは県とか市町村というバランスを見ながら認定をする、そしてマーケティングの専門家を出すという行為をしなければ、やはり大臣、格差は拡大するということになると思うんです。

 その点について、ぜひ実行段階で、その部分についてはきちっと、私は、ブロック別というか地域別の、バランスというか調整をしてもらう必要があると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

甘利国務大臣 身近に成功事例があるということが一番の勇気になると思うんですね。どこかの地域に全部偏在していて、例えば東北、北海道には一件もありませんといったら、一体全体、どういう事例に向かって我々も努力をすればいいのかという目標もなくなってしまいますから、機構の出先が存在する十地域に、人材を十地域を中心に配置するということが決まっておりますし、サポーターもかなり全国規模で認定をさせていただいております。

 事業についてもできるだけ、もちろんどうにもならないのを無理やり認定するというのは難しいのでありますけれども、できるだけ、ブロックごとに、いい成功事例となるようなことを極力見つけ出して、身近に成功事例が生まれていくような形を鼓舞していきたいというふうに思っております。

後藤(斎)委員 ぜひ地域別のバランスをきちっととっていただきたいというのが今の要請でありますし、大臣、手続的にそういうふうにしていただけるというお答えだと思うんです。

 それともう一つは、それぞれの事業の中で、やはり大臣がおっしゃるように、例えば山梨県であれば山梨県なりで一つ、この制度を使って上手にいった成功事例をつくる、それを、みんながまねをすると言うとおかしいんですが、ただ、そのときに、中小事業者、例えば、甘利産業が認定をされた。それで、後藤産業はその認定から落ちた。そのときの基準というものを、やはり先ほども申し上げた公平、透明性ある形のものをどうつくるか。

 私は、それを使う人が、地域から見ても、ああ、そうだなというふうに当然思われなければいけないと思いますし、その作業はこれから詰められるということでありますが、では、その落ちた人たちを、認定されなかった人たちをどうするかという観点も、一緒にやはり考えておかないと、これは先ほどもあれしました、事業の受け手とそれを受けられなかった人たちの格差が、やはりここでも拡大をしてはいけない。

 そのときに、これは企業立地とちょっと関連してお話を、時間もありませんからさせていただくと、企業立地でも同じことが言えると思うんです。

 前回、前のいろいろな委員会の質疑でも、例えば財政力が豊かな自治体では何十億というオーダーで、少なくともこの経産省が予算を確保した三倍、五倍の予算を実際も確保して企業を誘致する自治体もある。そうではない、きのうの参考人のような、例えば市町村の単位では、固定資産税の三年間免除という一番基本的なインセンティブを働かせてやるところもある。

 そこも、格差が拡大しないような事例というか手法をとらないと、何のために経産省がメーンになって、なおかつ、霞が関の六省庁、八省庁が連携をしてそれぞれの事業をやるのかという視点をやはりきちっと持たないと、これは、実際、実施したはいいけれども、それぞれが、いいところと悪いところの格差が開き、データでは認定から漏れた自治体や中小企業が、何か下を向いて歩かなきゃいけないような、そういうことではない認定基準や基本構想というものを、やはり大臣、つくっていくべきだというふうに思うんですが、その点についていかがですか。

甘利国務大臣 例えば、地域資源で採用されなかった、その場合には、どういう点が弱いか、どういう点に工夫が必要か、これも可能な限りアドバイスをしてあげる。逆に言えば、採用されたところは、こういう点に強みがあるからということで、こういう点もうちょっとプランをしっかり練った方がいいんじゃないですか、そういうアドバイスはできるんだと思っております。

 それから、企業立地に関しても、経済産業省のスキームというのは広くあまねく規定されていますけれども、重層構造になっていますから、厚労省のスキームは乗るとか、総務省のスキームは乗るとか、サンドイッチに何重にもなっています。総務省とか厚労省のスキームは、財政力とか有効求人倍率とかいうもので、基準でめり張りをつけているわけであります。

 先ほども申し上げましたけれども、誘致に関して、全体のスキームの中で減税の仕組みが入る、あるいは税収が上がった場合の交付税の減額される割合を少なくする、これらはめり張りをきかせた策になりますから、一律策ではありません。でありますから、全体として見ると、強弱をつけれて、アイデアはいいし意欲もある、だけれども、財政力が弱いところが、ただ強いだけのところと競争して負けちゃうということが極力ないようにめり張りをつけた施策のつもりであります。

後藤(斎)委員 大臣、それ以上に大切なことは、きのうの本会議でも指摘をさせていただいたように、やはりみずからがそういう、例えば、支援とかもなくてやりたいという今の経営者の方や、新しく業を起こすという方々を、やはり金融面でもっと自由度を高めるということが一番私は大切だと思うんです。

 先ほど、認定を受けた事業者、地域、その受けなかった地域、事業者というこの格差を是正するために、ぜひ大臣、これもその検討の一つとして俎上にのせてもらいたいと思うのは、この地域格差とか経済格差というのが我が国以上と言ってもいいのかもしれませんが、十七年前に統合した東西ドイツで、ドイツが新しい一つの国になったときには、東西格差というものがすさまじくあったそうであります。

 現在は、東西の格差は所得で大体半分くらいまでに縮まったという話を聞いておりますが、ここでは四つの指標、地域の失業率、地域の所得、地域のインフラ整備状況、地域人口の将来予測というものを四つ、その重みづけを合計値で出して数値化をし、そして支援をしようとする対象地域を決定し、地域のそれぞれの四つの指標の段階に応じて資金支援を行うという、ある意味では非常にわかりやすい手法をとっておるようであります。

 あわせて、このときの地域の選定は雇用を最重視するというのが一つあるそうであります。その中で、特に経済的に弱い地域、二番目に地域経済が発展しなおかつ雇用が創出されるという視点、三つ目に他の制度との相乗効果をしていることを考慮という、この視点で支援地域を選定するということで、なおかつ補助金についても、東西という部分で補助金の上限率を、東の方が経済的にまだおくれているようでありますが、補助金の上限率を東の方を上げながら、なおかつ、中小と大企業においては、大企業に対する補助率を下げ、中小企業に対する補助率を上げるという形で、ある意味でわかりやすいルールを決めながら、東西の経済力の格差のバランスをとるという手法をとっているようであります。

 同じように、大臣、先ほど百三十八人のマーケティングを含めた専門家の方を配置し、地域資源活性化であればその人たちがということをお話しされましたが、それは人的資源ということで、その人たちも必要かもしれませんし。もし、そこで、この税金を使ってと言うとおかしいですが、補助を受けられた、認定を受けた中小企業や地域の方々が、それによって、例えば雇用を増大したとか、所得がふえたとかいう部分で、税で返すということも当然なのかもしれませんが、例えば基金みたいなものを、人的なバンクも含めてやはりつくりながら、今回の三つの要素というのは連携しなければ当然いけないというふうに思うんです。

 大臣、そういう指標もわかりやすい形で見ながら、例えば、山梨県が一本しか認定を地域資源活性を受けられなかった、神奈川県は十地域認定を受けた。そのバランスというのは、やはり県の中でも、何で神奈川だけ多くて、これは大臣がいるからかなということではなくて、副大臣がいるところは二十本も認定を受けたというのは、どう見てもバランスが悪いですし、勘ぐる人もいるでしょうから。そうではない。やはりわかりやすい指標を国民の皆さんにも、先ほどもお話ししたように、認定を受けたいと思っている中小企業や自治体の方々に、先ほどのドイツの例が正しいかどうかは別として、少なくともそれで対応しているという事例も含めて私は考えていくべきだと思うんですが、その点についていかがでしょう。

甘利国務大臣 例えば、企業立地促進法案では、予算とか交付税措置において、具体的な指標、有効求人倍率であるとかあるいは財政力指数に配慮、これは役所のさじかげんじゃなくてきちんとした算定値ということを、計算式ということが行われるわけでありますけれども、そういうめり張りをつける際に、透明なルールでめり張りをつけさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、これは地域資源の法案のことを指していらっしゃると思うんですが、地域資源で成功した企業は、成功した利益の一部を基金として積んで、次なる資源の活用に他社が役に立てるようにという御提案であります。

 これはなかなか難しい面がありまして、当然、企業はリスク、自分もリスクをとってチャレンジをしていくわけでありますから、そのリスクをとって勇気を持ってやっていったということに対して利益が返ってくる。ですから、それを召し上げちゃうということになると、モチベーションが落ちるかなという点があります。ただ、その成功した方々に地域サポーターになっていただいて、自分たちの成功事例を活用して、仲間の人たちや周りの人たちも助けてあげるような、そういう、人材としての支援スキームは可能かなというふうに考えておりますので、そういう点、成功した人たちに他を成功させるためのサポーターの戦列に加わっていただくということはあろうかと思います。

後藤(斎)委員 大臣、すぐスキームを大きく変えるということではなくて、今までやはり中小企業自体に大きな支援というものを個別的にする事例というのは、最近は時々ありますが、今回、特にそれを集中的にやろうという中で、冒頭申し上げたように、繰り返しになりますが、認定を受けた事業者と認定を受けない事業者の、この部分をきちっと透明性のある基準でという話は、大臣、繰り返し言っていただいていますが、そこがないと、何でというクエスチョンマークが常につき続けるという、やはりおかしなことになってしまうので、そこについては、ぜひこの実行段階できちっと注意をしていただきたいということを、もしそれが、この大きな新経済成長戦略の目的でもある全体がよくなるという中でプラスになればいいんでしょうけれども、アンバランスがないようにということは重ねて要望しておきたいと思います。

 ぜひもう一つお願いをしたいのは、これは自治体が企業立地のときに、誘致のときにどんな役割を果たすかというところがやはり自治体自体が本当にどこまでわかっているかというのは、まだまだ、市町村まで含めれば千八百を超える自治体の方々がすべて、いや、ここまでやれば、例えば造成だけすればいいやというような意識も以前あったのかもしれませんから、例えば土地開発公社とかいうのが全国でも、これは大臣の直接の担当ではありませんが、総務省では非常に頭を悩ませて、公社をどうしようかというようなこともたくさんお聞きをします。

 そのときにもう一つ必要なことは、一番初めの委員会でも指摘をさせていただきましたが、大臣、やはり出たい方、例えば、甘利産業が一万人の会社であって、山梨県に行くか山形県に企業立地をするか、そのときの目安というものが何なのかということがわかっている方が、誘致というか努力が自治体やその地域の方々もしやすいと思うんですね。

 幾つかの統計資料とかいうものが当然あるんですが、用地の価格であるとか交通条件であるとか労働力であるとか、その後の例えば、実際、職員の方々が子供さんを育てる教育環境であるとか下水道があるとかいろいろな要素があるわけで、当然これは民が最終的に決める、その民間の甘利産業がもちろん決めるわけですが、そのときのコミュニケーションの仕方、これはきのうの参考人もお話をしたように、やはり県域を越えた部分が、自治体を越えた部分が今あるので、そこについては国がというお話もございました。

 もう一つ必要なことは、先ほどもお話がありましたけれども、海外に行っていた企業が国内に来る今の状況が少しずつ定着を、また回帰という状況が進みつつありますが、そうではなくて、海外の企業がもっと日本の方に来ていただく。これも経産省がジェトロの方に委託をしていろいろなセミナーを開いたりしてやっているようでありますが、まだまだ件数は非常に脆弱であります。なおかつ、東京が八割を超えるくらいの外国からの企業の誘致、それも事務所機能が多いというお話を聞いておりますので、地方の方に例えばアメリカやヨーロッパやアジアの国の企業が来ていただくような、そういう受け皿というものがどんなものであるかというものを、やはりそういうベーシックな実態調査を、海外の競合の関係も含めてしていただく必要があると思うんですが、大臣、その点についてはいかがでしょうか。

甘利国務大臣 全体の動向調査はして、経済産業省で把握をしていなければならないと思います。

 ただ、例えば、その甘利産業が国内にどこに立地をし投資を考えるか、これは多分に企業戦略の部分があります。こことここを攻める関係から、ここが拠点としていいということを発表した途端に、競合他社がぱっと先手を打っちゃったということになると、これはなかなか、以降、情報は全く開示してくれないということになりますから、その辺の企業戦略上のことがありますので、一律に全部公開というのはなかなか難しいかとも思いますが、それぞれ内々にすり合わせをするというようなことは、できる範囲でやっていきたいと思っております。

 それから、御指摘のとおり、外に行くばかりじゃなくて外から日本に投資を促進する、これはおっしゃるとおりでありまして、ジェトロを初め国を挙げて対内投資の促進を図っていく。

 あわせて、企業立地促進法というのは、都道府県が企業誘致マニフェストというようなものの作成をするわけでありますから、それは、国内だけではなくて海外に向かって対外投資を検討しているというようなところに対しても、こういうマニフェストで企業立地が進んでいくような、あるいはワンストップサービス体制を整えてこれを促進していくような体制が各県ごとにとってありますよ、各県ごとの魅力はこうですよということをPRする、言ってみればパンフレットにもなるのではないかということを期待しております。

後藤(斎)委員 四月八日の自治体選挙の前半戦が終わった翌日の新聞にも、各知事さん、新しい知事さん、再任された知事さん、ほとんどの知事さんが、企業をもっと誘致したい、そこで雇用も創出したいし税収もふやしたい、メディアからの情報でありますが、そういうコメントが載っておりました。

 大臣、こういう形でやるというのは、前回の委員会でも、五年前の平沼プラン、いわゆる平沼プランの十五項目の話もさせていただきましたが、これは、産活法の改正の部分であったり、地域資源活性化法の問題であったり、企業誘致の問題、やはり目標はそれぞれきちっと、企業誘致の方は数字は挙げられておりませんが、それぞれ評価をきちっとする、その評価を踏まえてまた次のステップに行くということがないと、大臣、先ほどもお話をしましたが、十七時間を超える、参考人も含めた質疑をして、まだまだ明らかになっていない点もあるんです。

 これは、最終的には、実行するときに大臣の方にお任せをするという形に当然なるんですが、やはり評価というものをどうこの法律の中に、制度の中に位置づけをし、それがまた、いい悪いというものが当然あるはずなんです。その問題点をきちっと、例えば、先ほど大臣がおっしゃったような、地域資源活性化法で認定されなかった事業者には、ここはもう少し工夫してくださいと。今までそういうことは余りなかったわけですね、はっきり言って。

 だから、そういうことも、企業誘致の場合もイコールなのかどうかは別としても、やはりその評価というものをきちっとこの制度の中に位置づけて、また五年、十年という一つずつのスキームの一つの目標、例えば、地域資源であれば五年間に千という目標がありますし、企業立地も十年以内にまた見直す規定が附則の中に規定をされております。そういう五年とか十年とか、十年というのは長過ぎるかもしれませんが、いつの時期の中で必ずそういう評価をしながら、またきちっとそれを次の部分に生かしていただきたいということをぜひお願いをしたいんですが、その点についてはいかがでしょうか。

甘利国務大臣 政策は、つくって実行した後、検証しなければなりません。プラン・ドゥー・チェック・アクションというこのサイクルが、企業だけじゃなくて行政にもしっかり定着をしつつありますし、政策評価という部署もできているわけであります。

 平沼プランのうまくいった点あるいは思うに任せなかった点、これも政策評価をきちっとして、その反省点を次なる政策に織り込んでいく、そういう姿勢はきちんと取り組んでいきたいというふうに思っております。

後藤(斎)委員 先ほども冒頭大臣に御要請をしたように、この施策、ぜひ実効性ある形で、ややもすれば格差が拡大をするような形にならないようにお願いをして、質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 前回の質問は半分のみでございましたので、後半の部分を中心に質問をさせていただきます。

 今回の経済成長戦略大綱関連三法案でございますが、基本的に、私の考えをもう一度整理して申し上げますと、言ってみますと、小泉改革、安倍改革といいますか、改革加速ということでありますが、どうも地域の実態をよく見ないままに、かなりの悲鳴が地域社会では起こり始めている。そういうことで、今回の三法案も、六本木ヒルズには全く必要がない法律でありますが、地域社会の方では非常に渇望している法律であることも事実であります。

 私は、さまざまな改革というのは必要だと思うんですけれども、見かけ上の改革だけで、いわゆる患者をよく診ないで手術したり処方するといろいろな副作用等々を起こしますので、本来、この安倍政権は、小泉改革のさまざまな弊害というものをいかに取り除き、新たな国をつくるか、そういう転換の政権でなければならないと思いますが、どうもそこら辺がイメージが定かではありませんし、改革加速だけで日本の国がさらによくなるという、そんな見通しもどうも生まれませんので、そういう意味では、改めて経済産業省は、もちろん霞が関あるいは六本木ヒルズも含めて、日本全体の経済政策のかじ取り役でありますから、甘利大臣には、ぜひとも地域社会の実態というものをよくよく直視されて、問題点があれば是正するように、さらに一層努力をしていただきたいということを冒頭に申し上げさせていただきます。

 そこで、地域経済にも非常に大きな影響を与える課題がございますので、この三法案の質問に入る前に、WTOとFTAとEPAというもの、この課題について大臣に、少し経済産業省として整理をしていただきたいという思いから質問をさせていただきます。

 四月三日の新聞等で、アメリカと韓国、両政府は二日、ソウルで行われた自由貿易協定の締結交渉が妥結したと発表した、こういう報道が一斉になされました。日経新聞には、「やればできる「日韓」も」、こういうふうな話ですとか、あるいは、日本とアメリカのFTAの話も出てきているような話もありますし、もちろん日本とオーストラリアとのFTAの、EPAの話もございます。私が見るところ、アメリカという国は、どうも世界全体として何かやろうということよりも、一対一で交渉事をまとめていく、こういう志向が非常に強いわけであります。

 甘利大臣として、経済産業大臣として、また日本国の大臣として、WTOとFTAとEPAというのはどういうふうに考えておられるのか、この基本的な御認識をお伺いすると同時に、NAFTAが一番スタートだったと思いますが、アメリカのFTA戦略についてはどういうふうに見ているのか、そして、さまざまな地域で始まりましたFTA、EPA、そしてその背景にWTOがあるんですが、そこら辺を含めて、どんな御認識でこの状況に対応されようとしているのか、その基本的な御認識をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

甘利国務大臣 世界の貿易や投資の障壁をなくしていくという最終目的に向かっては、やはり私はWTOだと思うんです。ただ、その二国間のFTA、EPA、EPAはFTAをさらに深掘りした、物やサービスの交易だけじゃないもっと幅広い分野についての障壁をなくしていくということになるわけでありますが、この二国間はWTOを加速させていくための促進剤になっているのかなと。

 というのは、二国間でやりますと、WTOの国際基準よりも深掘りできるというところがあります。例えば、投資でいえば、WTOではサービス分野だけでありますけれども、二国間ではあらゆる投資に向けた協調がとれるわけであります。ですから、二国間では質の高いものをつくることができる。それを次第に国際水準に広げていく、WTOに反映して、そういうWTOを補完する関係があって、WTOの姿をより理想に近づけるために二国間で、言ってみれば特区みたいな感じでいい形を進めていくという効果があるんだと思いますし、二国間でやっていくとセンシティブな問題についての処方せんも次第に見えてくる。多国間でいきなりやりますと、センシティブなものがあるからもう全部だめみたいになりかねませんけれども、二国間でセンシティブなことを解決していく処方せんを、ノウハウを少しずつ積み上げていくと、全体交渉でも次第にいい形になっていくという相互補完関係にあるのかなと。

 いずれにしても、最終的にはやはりWTOだというふうに思っております。

大畠委員 基本的な御認識はわかりました。

 最終的にはWTOが全体的なものにならなければなりませんし、当面それがなかなか進まないところについてはFTAとかそういうふうなツールも必要でしょう。

 ただ私は、アメリカの国家戦略として、軍事問題もそうなんですが、すべての判断はアメリカが行うんだ、例えばイラク問題もそうなんですが、国連じゃなくてアメリカなんだ、こういう、一言で言いますと余りひとりよがりになっても困りますし、そういうものについては日本の政府が、WTO問題、FTA問題についても、日本の基本的な考え方を明らかにしながら、アメリカにもただつき従うという国家的な姿勢じゃなくて、牽制球を投げるときはきちんと投げる。

 基本的には、WTO、FTA、EPAの問題についても、今甘利大臣がおっしゃったような形で、FTAもいいけれども、WTO全体について、もっとアメリカは全体的な整合性が行われるように努力すべきだということをぜひいろいろな機会に発言をしていただきたいということを要望しておきます。

 それから、この近々の課題として、実は三月二十二日に私の地元の方で農業団体、農協さん主催の「日本の食と農」を守る日豪EPA交渉対策集会というのが開催されました。私も出席させていただきました。

 いろいろ調べさせていただきますと、二〇〇五年の四月に、当時の小泉総理とオーストラリアのハワード首相との間で、自由貿易協定について共同研究をしようということで合意をし、昨年十二月に共同研究報告書というのがまとめられた。そして、四月二十三日、二十四日には初めての第一回の会合がオーストラリアのキャンベラで開催されるという話でございます。

 私も驚いたんですが、この農業問題を含めて、関税をゼロにするということがどうなのか、国土面積が日本の二十倍のオーストラリア、農地面積が八十九倍、農家の平均的経営面積は何と千八百八十一倍という、全く農業形態が違うところと今EPAを結ぼうという、研究をするという形でありますが、この会合の中でも平間会長さんという人から、無原則にオーストラリアとの農産物の貿易自由化を実施した場合、日本の農業は崩壊する、日本の農業の崩壊は日本国の崩壊を意味するというような趣旨のお話もありました。

 経済は非常に大事なんですが、食料問題あるいは日本国内でのものづくりというさまざまな問題をないがしろにしたまま、国際的なそういう一つの流れといいますかに乗ってしまうことは国益に反すると私も考えておりまして、ここら辺、今農水省の方でもいろいろ検討されていると思いますが、基本的な農水省のお考え方をお伺いしたいと思います。

福井大臣政務官 オーストラリアとのEPA交渉に当たっての農水省の基本的な考え方いかんというお問い合わせでございました。

 今先生御指摘のように、国土面積も二十倍、農用地面積も八十九倍、平均経営面積、一戸当たりの農地面積、オーストラリアは三千三百八十五ヘクタール、日本は一・八ヘクタール、千八百八十一倍というまた巨大なる農業が今日本を襲おうとしているというのがお地元初め、日本全体の農家の御心配だというふうに思っております。

 そういうことで、我が国の農業とは構造的に大きな違いがあるオーストラリアがやってくるということが認識の基本でございますけれども、我が国の農業も、食料を生産、供給しているというのはもちろん基本なんですけれども、そのほかにも、自然環境の保全、それから良好な景観の形成、そして今先生が御指摘になりました文化の伝承、歴史と伝統、文化の空間であるということ、多面的な機能を有しているということに着目をさせていただきたいというふうに思っている次第でございます。

 そこで、日豪のEPA交渉に当たりましては、国内農業への影響を十分踏まえて、これは松岡大臣が何回も何回も申しておりますけれども、守るべきものはしっかりと守るとの方針のもとで、そしてまた一方で、国内農業の構造改革、担い手対策もやっております構造改革の進捗状況にも十分留意しつつ、日本として最大限の利益を得られますように政府一体となって交渉していく考え、これが基本的な考えでございます。

大畠委員 基本的には、今のお話を私なりに解釈しますと、日本の国益を損なうような形での一方的なEPAの締結、農業問題も含めての締結ということにはならないように努力するということで受けとめてよろしいでしょうか。もう一度、ちょっとそこはお願いします。

福井大臣政務官 ちょっと余分なことですけれども、昨年の十二月に、この交渉が始まる前に、日本とオーストラリア政府間の共同研究最終報告書というのが出てございます。これが前提となっているわけですけれども、ここで、農業に対して、交渉はあらゆる品目と課題が取り上げられる、けれども、また、段階的削減のみならず、除外及び再協議を含むすべての柔軟性の選択肢が用いられるものとして開始されるということが両国でアグリーメントされておりますので、そういうことを基本としながら、もう一度申し上げますけれども、国内農業の構造改革の進捗状況にも留意しつつ、守るべきものはしっかりと守る、そして、日本国全体として利益を得られるように政府一体となって交渉していくということでございます。

大畠委員 この問題については、衆議院、参議院両院で、昨年の十二月、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目が除外または再協議対象となるよう、政府一体となって全力で交渉することとする内容の国会決議が行われました。この国会決議については農水省としてどのように受けとめているのか、もう一度ちょっと御見解をお伺いします。

福井大臣政務官 今先生御指摘のように、国会でも、そして自民党でも、多分民主党でも、それぞれのつかさつかさで決議がなされているということで、十分その重要性を踏まえて対処していく所存でございます。

大畠委員 世界的な流れが強いものですから、ついついその流れに乗っちゃった方が楽かなというような動きも全体的にあるんですが、私は、日本という国は、もっと、日本の国の国の成り立ち、歴史、あるいは地域で、正直言って、この間も申し上げたけれども、農家が百円玉一個稼ぐのは本当に大変なんです。キュウリでもナスでも、百円、百十円というふうな正札をつけると売れないと言うんです。九十五円とか九十円とか、ビニール袋に入れて札を張っておかないと売れないと言うんですよ。それで、日本の国を支える、あるいは日本の国民を、日本人を育てる上で農業がどれほど多くの貢献をしてきたかというのは御存じのとおりだと思うんですが、ぜひ、そういうトータル的な観点から努力をしていただきたいということを要望しておきたいと思うのです。ありがとうございました。

 さて、それでは続いて、この三法案についての質疑に移らせていただきます。

 この問題は、さまざまな形で日本の経済が非常に疲弊していることから、地域経済がおかしくなってきているということを甘利大臣も御認識されたので、このような産業再生、農林ですとか観光ですとか企業立地関係の処方せんを法律として出されたものと受けとめているところでありますが、なぜ地域社会がこういうふうにおかしくなってきてしまったのかということについて質問をさせていただきます。

 一つは、ちょっとこの間も一部申し上げましたが、いわゆるゼロ金利政策によって、三百三十一兆円というお金が、本来、預金者に支払われるところが支払われなかったということを、日銀の福井総裁が明らかにされました。やはり国民の消費というのがGDPの七割を占めるというのも、甘利大臣も常日ごろおっしゃっているとおりでありまして、いかに地域における消費活動が活発化するかというのが地域社会の経済の下支えになっていることは事実です。

 したがって、この金融政策なんですが、私は、バブル崩壊以来、金融機関というものをいかにして再生させるか、これも大事なんですが、肝心の国民の懐あるいは国民の消費というものがないがしろにされて、いわゆる金融機関の再生というものに視点を置いた形でどうも来てしまったんじゃないか。したがって、今日では金融機関が最大の利益を上げているわけですよね。

 金融問題の起こりは、バブル時代に土地を買いあさった金融機関にあるのです。それを国の税金を使って救済したんだけれども、私は今、救済し過ぎているような感じがするんですね。もっと、やはり地域社会のところにお金が落ちるようにしなければならないんじゃないかと思うんです。

 当然、金利を上げるということは、いわゆる中小企業の金利も上がるわけですから、そこら辺も十分見なければなりませんが、経済産業大臣として、一連の金融政策といわゆる経済政策、地域の中小企業政策、ここら辺についてどのような御認識をお持ちなのか、経済産業大臣と金融庁双方にこの件については御意見を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 GDPの六割を占める消費を喚起するためには、消費者にきちんとした原資が渡るということが大事、それはおっしゃるとおりであります。預金の金利が上がらない、利子が預けていても全くつかない、あるいはお年寄りの世帯で言えば、毎月の収入が年金以外ない、預金の利息を消費に向けていたものが向けられない。確かに消費の減殺要因になるんだと思います。

 ただ、一方で、ローン金利にもはね返ってくる、中小企業の金利にもはね返ってくる。要は、どうプライオリティーをつけていくか。まず、金融機関というのは、産業、国民経済の血液たる資金を循環させるポンプの役割でありますから、ポンプが壊れちゃっていますと細胞が死んじゃうおそれがある。ですから、プライオリティーとしては、まずポンプを直すんだと思います。ポンプが直ってきたら、その次の施策として、きちんと国民経済の消費に資するような施策をとって、巡航速度に戻していく。これは、体力の回復の状況を見ながら、巡航速度に戻していくということを慎重に見きわめる必要があるんだと思います。

 もちろん、金融機関には、もうけていただいたら一刻も早く税金で返してねということは当然のことでありますから、そういう時系列に従って、工程表に従って、日本経済全体が完全に巡航速度に戻るようにしっかり注視し、政策を打っていくべきだというふうに思っております。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

山崎政府参考人 金融機関の業況につきましては、全体としては、不良債権処理の進捗により、改善してきているものというふうに考えてございます。こうした中で、金融機関においては、みずからの責任と判断で適切にリスクをとって金融仲介機能を発揮していくことが重要であるというふうに考えてございます。

 こうした観点から、金融庁といたしましても、中小地域金融機関に対し、融資審査における目ききの向上、融資手法の多様化等を促すなど、地域密着型金融の一層の推進、それから中小企業の実態に即した検査の推進、与信取引に関する顧客への説明体制の整備等の施策を推進しております。

 今後とも、民間金融機関による中小企業に対する金融の円滑化を図るべく、各般の施策に取り組んでまいりたいと考えてございます。

 以上です。

大畠委員 きのう、合同審査会の中で、北神議員から委員会内で配付された資料を見ますと、公庫関係の一般貸し付けが、平成十三年が三千百六十四億円だったのが、平成十七年は千七百六十八億円、約半分に減っているということです。

 ここら辺も、きのう、渡辺大臣が盛んに目標値を云々というような話をされて、経済産業大臣からは、目標値を余り設定すべきじゃない、地域の現状に従ってやらなきゃいかぬ、そういう話がありましたが、これを見ても、公庫関係からは市中に貸し付けられているのが半分になっちゃっているということ、これも地域経済が回らない原因だと思いますよ。

 民間の金融機関が元気になってきたから、そこが、民でできるものは民でと言うけれども、民間の金融機関は、一言で言えば、もうかっているところしか貸さないんですよ。だから地域社会がおかしくなる。

 二〇〇六年倒産件数、五年ぶり増加ということで、二〇〇七年も倒産件数の増加は続くのかという指摘に対して、リサーチの経済研究室長という方でしょうか、そう思うと。昨年は建設やサービスなど内需型の中小企業の倒産が多かった。これらの業界は過当競争体質が強く、淘汰が一巡したとは言えない。公共工事削減と人口減少という逆風がとまる可能性は小さく、二〇〇七年も建設やサービスなどの業界で倒産がふえることは避けられそうもない。現在、不良債権処理に積極的に取り組んでいるのは第二地銀や信用組合など地域金融機関でも規模の小さいところだ。融資先も中小零細企業が大半を占める。二〇〇六年に倒産件数が増加したにもかかわらず負債総額が減少したが、その背景にはこうした事情がある。二〇〇七年も小規模の倒産がふえ続けるだろうと。

 私は、やはり金融というのは、大臣もおっしゃるように、ポンプは直さなきゃならないんだけれども、いつの間にかポンプを直すことが目的化しちゃって、ポンプで水が出て、それで人々が生活しているわけです。その水が出てきて、それで生活する人を忘れちゃって、ただポンプを直すことにみんながしゃかりきになったら、ポンプを直している間に、ポンプを直しているということは故障しているのか、水が出てこないのかもしれないが、生活している人が困っちゃっているわけね。

 私は、ここら辺、金融庁も、ポンプそのものを所管しているところだから、いろいろ大変かもしれませんが、ポンプが大事じゃないんです。ポンプから出てきている水でみんなが生活することが大事なんです。だから、そこのところを金融庁も間違えて、ポンプを直すことが大事、ポンプが大事じゃなくて、ポンプから出てくる水でみんな生活ができるというところが大事なんですから、金融庁もその点は余り間違えられると困りますので、再度、ポンプと水の関係について、金融庁がどういう考えを持っているか、ちょっとお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもとしても、中小企業の再生と地域経済の活性化を図ることで不良債権問題も同時に解決していくということを目指して、平成十五年度以降、リレーションシップバンキングということでございますが、地域密着型金融の機能の強化に向けた取り組みを進めているところでございまして、今後とも努力していきたいというふうに考えてございます。

大畠委員 山崎参事官、一生懸命努力されているのは前から存じ上げておりますが、ぜひ、庶民が水をちゃんと飲んでいるか、そういう状況も、現場を踏まえて、地域の金融機関も踏まえて、あるいは地域の人の実態をよく把握しながら、ポンプの修理並びに保守等をしっかりとやってもらいたいということを心がけていただきたいと申し上げておきますから、よろしくお願いいたします。

 さて、そういうことで、今回も質問するに当たって、いろいろな方々から意見を聞いてまいりました。

 空き店舗対策をしっかりやってほしい、これは従来からあるんですね。それから、保証人なしの金融ができてはいるが、この問題についても、一度失敗した場合に、果たして再度貸してくれるのか。一回倒産した経営者にお金を貸してもらえるんだろうか、こういうふうなお話もあります。多分、日本においては、一回倒産した企業の経営者は、何かマークがついて、あの人にはあれだからだめだとかなんかという話になってしまうんじゃないかな、そういう懸念を持っている方がたくさんいる。決して再チャレンジできるような体制はできていないんじゃないかという御指摘もいただいております。

 それから、ロードサイドに商業施設ができているので、中心部の商店街の崩壊につながっている、また自動車を利用できない高齢者にとっては非常に生活上困った状況がさらに続いているというお話ですとか。そこで、商店街の問題です。

 かつて、まちづくり三法の見直しのときに、タウンマネジャーというものを導入することが決まっていたわけでありますが、地域の実態を把握しながら対策をするというセンサーの役をしている人ですが、このタウンマネジャーの導入というのは今どうなっておられるのか。地域に行くと、余り聞いたことがないと言って、余り浸透していないようなんですが、このことについて、現状を教えてください。

松井(哲)政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘がございましたように、旧中心市街地活性化法時代から中心市街地の活性化にそれなりに成功してきているという地域を幾つか見てみますと、商業者や地権者や自治体など、その町にさまざまな関係者がおられるわけですけれども、そうしたさまざまな関係者と一体となって熱心にまちづくりに取り組んでおられるタウンマネジャーという存在が非常に大きいということを私ども認識しておるわけでございます。

 こうしたことを踏まえまして、改正中心市街地活性化法におきましては、新たに中心市街地活性化の中心的な役割を担う組織としまして、さまざまな関係者が参画する中心市街地活性化協議会というものが法定化されているわけでございます。この協議会におきましては、タウンマネジャーが中心的な役割を果たしてまちづくりに取り組んでいただくということが期待されているわけでございます。

 現在、全国で三十九の中心市街地活性化協議会が設立されておりまして、既に八つの協議会におきましては専属的なタウンマネジャーというのが置かれております。また、今後も幾つかの協議会におきましてタウンマネジャーが設置されるということが見込まれているわけでございます。

 私ども経済産業省といたしましても、タウンマネジャーの人件費や活動経費に対します支援であるとか、あるいはまちづくりに関する人材育成事業などを通じまして、タウンマネジャーを初め、まちづくりの担い手の面での支援ということを進めてまいりたいと考えております。

大畠委員 この件については、地域の方では非常に期待している声がありますので、もうちょっとPRをよくして、実効ある活動ができるように、さらに努力していただきたいということを要望しておきます。

 今まちづくりという話がありましたので、ちょっと質問の順序が前後いたしますが、この要望の中に、これは高萩市というところですが、当市の中心街区は一定少数の地権者が所有しており、土地の利用については所有者の意向が強く反映されている。現状、中心街区の再構築はかなり難しい。地権者の理解と協力が不可欠であるが、所有者の利益の確保がある程度保証されるような形で、使用者も価値を得られるような施策が必要なのではないか。税制の段階的な優遇措置、公的機関の設置、行政の支援と地権者の大きな協力体制、そして市民の中心地に対する帰属意識を高める施策が必要ではないかという提言が来ております。

 ちょうど私の手元に、これは中心市街地活性化シンポジウムというのが三月十六日、東京国際フォーラムで行われました。このときの発表の中に、これは丸亀町商店街、香川県の高松市でありますが、「地権者の合意を前提に、土地の使用権と所有権を分離する新しい方法を採用し、まちの合理的な運営・管理事業に大きく役立っています。」という報告がございました。いわゆる土地の所有権と使用権を分けて行動したら非常によくなったということなんですが、このことについて、経済産業省あるいは国土交通省、それぞれどういう形で、いわゆる中心市街地の土地の所有者といかにして町の中心部を活性化するかということ、この二つ、大変大きな課題なんですね。経済産業省と国土交通省からお伺いしたいと思います。

松井(哲)政府参考人 お答えいたします。

 まちづくりにおきまして、地権者など幅広い関係者の協力が非常に大事であるということでございます。そういった点につきましては、先ほど申し上げました中心市街地活性化協議会の法定化によりまして、そういったことが円滑に進みやすい仕組みということを施行いたしておるわけでございます。

 先生御指摘のありました香川県の高松市丸亀町の商店街というのは、先ほどお話がありましたように、使用権と所有権の分離をすることによって、そうしたことが円滑に進む仕組みづくりということで先行的な事例だと私どもも認識をいたしております。

 また、権利の問題につきましてはまた別途ございますけれども、また、空き店舗の活用ということについても、私ども、いろいろな施策を通じまして、テナントミックスやチャレンジショップ事業などを通じまして、そうしたことが空き店舗対策を含め円滑に進むようにということで施策を講じているところでございます。

竹内政府参考人 お答え申し上げます。

 中心市街地を魅力ある市街地として再生する上で、空き店舗や、あるいは空き地の所有者も含め、地権者の方々も含めまして、関係市が主体的にまちづくりに取り組むということは大変重要であると考えております。

 そのような観点から、これまでの全国の事例を見てみますと、例えば、先生から御指摘ありました高松市の再開発の事例もございますし、そのほか、まちづくり会社や信用力のある第三者が地権者の方々に新たな借り主を提案したり、利用形態を提案するということをしたり、あるいは、空き地を地方公共団体が広場として活用するような事例が最近多く見られるようになってまいりました。

 国土交通省といたしましても、こうした事例のように、地権者の方々が安心してまちづくりに参画する、あるいは協力していただくということは大変重要と考えておりまして、例えば、まちづくりを行うNPOなどの非営利法人が中心市街地整備推進機構としてこうした地権者の方々と一緒に空き地や空き店舗を活用する、あるいは、税制上の措置として中心市街地への事業用資産の買いかえ特例など、措置を講じているところでございます。

 さらに、平成十八年度に創設いたしました、中心市街地への都市機能の集積を促進する暮らし・にぎわい再生事業、あるいは、創意工夫を生かしたまちづくりを支援するまちづくり交付金事業、それから、土地の高度利用を推進する市街地再開発事業等、多様な制度を活用することにより、地権者も含め、関係者が一丸となって、一体となって中心市街地の活性化の取り組みが進むよう、引き続き支援してまいりたいと考えております。

大畠委員 国土交通省もいろいろ努力していると思うんですが、これは全国各地の中心市街地の共通の悩みなんですね。地主の方は困らない。困っているのは地域の方なので、日本国憲法をつくるときに、土地の所有権をどうするか、国有化するかとかいう話もあったんだけれども、非常に日本人の土地に対する考え方が強いので、土地の私有を認めたというんですが、中心市街地については、今の現状を見ると、そろそろ私は分離すべきだと思うんですね。

 ですから、特区みたいなというか、丸亀町の事例なんかは、非常に友好的に信頼関係を持って所有権と使用権を分離したという話ですから、こういうことが全国的にも行われるような環境を国土交通省と経済産業省で連携しながら進めていくということはぜひお願いをしたいと考えるところであります。

 もう一つ、知的財産権の問題がありますが、中小企業でやっているんだけれども、いいの持っているんですよね。いいの持っているんだけれども、なかなかそれを有効活用できないという企業もありますので、商工会議所とか商工会の機能を利用して、地域の弁理士会なんかの応援も受けて相談窓口をつくったらどうかという、そんな声もありますが、この件について経済産業省の御見解をお伺いしたいと思います。

渡辺(博)副大臣 地域の中小企業の知財の活用につきましては大変重要であるというふうに認識をしております。

 このような認識のもと、昨年の七月に、中小企業にとって最も身近な相談窓口であります全国の商工会議所、商工会すべてを知財駆け込み寺と位置づけまして、中小企業に対して知的財産に関する情報提供、適切な公的機関や専門家への取り次ぎ等を行う体制を整備したところであります。さらに、本年度は、知財駆け込み寺に弁理士等の専門家を派遣して、中小企業に対する個別相談を開催する予定でございます。

 今後も、一層この関係を強化してまいりたいと思っております。

大畠委員 時間でありますので、これで終わりますが、内閣府からワンストップサービスの話ですとか、そういうのをお伺いしようとしたんですが、時間がなくなりましたので、また別の機会にさせていただきます。

 また、大臣におかれましては、年次改革要望書というのが毎年日本に出されているんですが、日本もアメリカに、あるいは中国に出すべきなんですよ。(甘利国務大臣「出しています」と呼ぶ)出していますか。中国に対してWTOに提訴したというニュースがきょう、DVDの問題で、海賊版の問題でアメリカが提訴したというのが出ていましたが、毎年出して、それをもうちょっと内外に明らかにしていただきたいと考えておりますので、どうぞ御努力をお願いします。ありがとうございました。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 産業活力再生法について質問しますが、産活法に基づく、特に薄型テレビメーカーに対する支援策について最初にお尋ねしたいと思います。

 これは、いろいろ減価償却、特別償却についての支援措置が行われるわけですけれども、そういう中で、フラットパネルディスプレー製造設備であって、産活法において世界初の事業革新設備の認定を受けた場合の減価償却がどうなるのかということで、配付資料の方で、経産省から出していただいた資料に若干私の方で書き加えたものをつくりました。

 ごらんいただいてわかりますように、右側に緩く伸びている一番右側のカーブが昨年度までの旧制度の減価償却のカーブであるわけですね。その旧制度であれば、法定耐用年数が十年で償却率が二〇・六%というものが、この予算の議会、予算を踏まえた租特法の改正などで現行の、ちょっと見づらいんですけれども、ひし形の、ちょっと真ん中あたりに太い線が出ていますけれども、これが現行制度で、法定耐用年数はこういったフラットパネルディスプレー製造設備の場合ですと五年になりました、償却率も五〇%ということで、これが、現行でいえば韓国とかアメリカの制度とほぼイコールフッティングということでの対応になっていると思います。

 これに加えて、一番左にあるカーブですけれども、これが産活法において特別償却率三〇%を加えて積み上げたもののカーブですね。ですから、現行のフラットパネルディスプレー製造設備の償却について言えば、一年目で五〇%が三〇%上乗せになりますから、一年目に八〇%償却ということで、大きな力になっていくということでの措置になっております。

 私の説明がこれでいいかどうか、確認したいんです。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 フラットパネルディスプレー製造装置の償却カーブについてのお尋ねでございますが、産活法の認定要件を満たすかどうか、これは、実際に申請があった際に個別の認定要件に照らして判断することになる、これは申し上げるまでもないことでございます。

 その上で、仮に申請があって認定要件を満たした場合に、これは、通常の償却額に加えて、初年度、設備投資額の二〇%または三〇%の特別償却をすることができるといったような規定になってございます。したがって、通常の償却額のグラフよりもその分下方にシフトすることになるわけでございます。

 お示しいただきました資料のカーブは三〇%の特別償却のケースだと存じますが、認定基準を満たす場合にはこのカーブのようになるというふうに考えております。

塩川委員 産活法に基づいて事業革新設備導入計画というのがあるわけですが、これまでの制度、これは、従来の実績、計画単独での実績というのは、シャープの二件というふうに承知をしています。

 今回、既存の事業革新設備を上回る世界初の事業革新設備の導入に対して三〇%の特別償却率を新設した、これが左のカーブになるわけですけれども、毎年度の償却、減価償却のテンポが速まって、それが、損金に算入される金額がふえることになりますから、いわば減税効果があらわれるということで、例えば、松下などがプラズマで第五工場をつくろう、全体で二千八百億円ですから、これは対象になるのはその内数ということですけれども、そういう点では、こういう制度を、もし該当するのであれば、また、申請し認定されるのであれば、大きな効果を及ぼすだろうということだと思います。

 同時に、この間、自治体による支援制度もありますし、兵庫などにおきましては設備投資の三%の額を補助する、三重県でも設備投資の五%の額を補助するということでありますし、これに対して地方交付税上の補てん措置というのも行われるわけですから、自治体の減税措置について後押しをしようというのが一連の施策として組み込まれているわけです。

 そこで、大臣にお尋ねしますが、ある意味では、他国とのイコールフッティングというのがありましたけれども、今回、産活法のこういった認定を受ければ一歩踏み出す、そういう点では世界的にも突出をした優遇制度であるなと思っているわけですけれども、松下、シャープなどの特定大企業の特別扱いになるだろうと思います。そういう点で、特別扱いをしているこういった特定の企業が、雇用の状況を、この間議論しましたように、非正規が大変大きい。こういうような非正規を大量に雇用しているような特定大企業にこのような優遇措置というのは、私は国民の理解を得られないんじゃないかと率直に思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。

甘利国務大臣 減価償却制度を四十年ぶりに大改正しました。これは、競争相手国とのイコールフッティング、ハンディをしょって戦っていたわけでありますから、国際競争という点では競争条件を同じくするということになるわけであります。そして、産活法でさらにこれを加速させる。

 税額控除ではありませんから、加速償却ですから、厳密に言えば減税とは言えないわけでありまして、では、何の効果があるかというと、最新設備を導入する、あるいは最新設備に更新をする、そういう効果があるわけなんです。これは、最新設備で企業が戦った方が国際競争に勝てるわけであります。

 最先端の部分というのは日本の生命線でありますから、ここで勝っていかなければ、そもそも、企業が負けて、雇用を大幅に減らさなければ立ち行かなくなるということであってはいけないわけでありますから、全体として総合的に見ていただきたいんですけれども、雇用を守るためには企業が国際競争に勝っていかなきゃいけない、国際競争に勝つためには常に最新の設備でいいものを、そして生産性を上げていかなきゃならないということでありますから、断片的に事象を見るのではなくて、総合的に見ていただいて、日本の産業政策は最終的に雇用に資するのであるという理解をしていただければというふうに思っております。

塩川委員 加速償却というお話で、それはそうですけれども、減税効果という点ではあるわけで、そういう点で、私は、一つは国民との関係でいっても、この間の住民税、所得税、定率減税の全廃を含めた国民にとってみての増税、負担増の一方で、特定大企業に対して減税効果をもたらすような措置というのが国民の理解を得られるのかという点で、私は問題があると思っていますし、あわせて、やはりそもそも国民生活に還元してこその施策ですから、その実際の雇用というのが、こういった非正規雇用が大量に生まれている、そういう点でも、非正規が中心の雇用の企業に対する三重、四重のような優遇措置というのは、私は率直に国民の理解を得られないということは繰り返し申し上げておきたいと思います。

 あわせて、次に、産活法に基づく企業結合審査の問題ですけれども、この迅速化ということで、産活法についても、公取との関係について、きちっと資料を出しますよということなんかも盛り込まれているわけですけれども、もちろん、この間の従来の産活法の中におきましても、公正取引委員会として対応ということでは、再生法案件の合併等の企業結合審査についての特別な運用指針を定めているということでした。審査期間の短縮とか待機期間の短縮、審査結果の公表などを行うということです。

 公正取引委員会に伺います。

 昨年の経済成長戦略大綱、また骨太方針を踏まえて、今回、公取として企業結合ガイドラインを改定したわけですけれども、その中身というのは、かいつまんで私の方で言えば、市場画定のあり方として、地理的範囲が国境を越えて画定される旨を明記したこととか、セーフハーバーの具体的水準を設定したこととか、輸入圧力の評価に関する基準の明確化などということで承知をしております。

 その点で、例えばシャープとか松下電器の場合でどうなるのかというのを、資料の順番で三枚目ですね、これは日本経済新聞で紹介していたものをとったものですけれども、新指針で考えると、左側が松下電器を事例に、プラズマテレビ市場の場合、上に、国内だけで判断をすると、松下電器産業が六五%になり、業界上位企業の合併は難しい。それが下の方、新基準に基づくと、世界市場で判断をするとなれば、松下電器産業は三五%、これでも結構大きいですけれども、上位企業同士の合併も可能になる。右側の方が液晶テレビ業界の場合で、国内だけで指数化をすると、シャープは四七%で、合併は難しいだろう。それが新基準に基づくと、世界市場で指数化となれば、シャープ二〇%ですから、シャープの合併も可能になるのではということで紹介をしているので、わかりやすいので御紹介をしたわけなんです。企業結合を一層促進する仕組みになるのかなと思っているんですけれども。

 そこでお尋ねするんですが、いわゆるセーフハーバーの範囲について、従来の基準より、この改定によって今までよりも緩めたものになっているのか、その点をお聞かせいただけますか。

竹島政府特別補佐人 お答えいたします。

 セーフハーバーの範囲を今回の見直しによって緩めたのかということですが、それは緩めたわけであります。

 ただし、誤解があってはいけないのは、個別具体的な企業結合案件について、それが独禁法に触れるか触れないかの違法性の判断基準を同時に緩めたということではありません。セーフハーバーというのは、こういうケースの合併があったら、競争に特に影響を及ぼすということはないだろうから簡単な審査で済ませますよというだけの話でございまして、違法性の判断基準もあわせて緩めたということではありません。

 このセーフハーバー、緩めたといいましても、従来のものが、我々の審査実績から見ますと、安全を見過ぎていたということだと思うんです。従来、詳細審査をしても、結局、これは結構ですよ、オーケーですよというのを出したものというものが実績としてあるわけですが、そういう実績と比較してセーフハーバーが狭過ぎた。ということは、官側にも民側にも余計な、そのためのいろいろな調査とか資料の作成とかいう手間暇をかけていたということでございますので、そういったことは省いた方がいいだろうということで、安全サイドに見ていたものを現実に合わせた、そういうものでございます。

塩川委員 重ねてお聞きしますけれども、資料の方で二枚目に、公正取引委員会の資料で「セーフハーバー等の範囲について」というのを、アメリカ、欧州との比較のもので出しました。

 これは、見てもわかりますように、ハーフィンダール・ハーシュマン指数と言うんですが、HHIのみを用いた基準とか、その増分の組み合わせによる基準とか、これは、それぞれの数値を見ても、アメリカ、欧州に比べても日本の方が緩い、欧州、米国と比較をして、日本の場合が緩いということでよろしいわけですね。

竹島政府特別補佐人 この資料のとおりでございまして、数字からも明白でございますが、日本の今回の見直しによって、日本のセーフハーバーの基準はアメリカやEUと比べると緩やかになっております。

 ただ、これについて、ではどうなんだ、緩やか過ぎるのではないかという観点から考えてみましても、アメリカやEUの当局からも、日本だけ何か甘いじゃないかというような話は全然来ておりませんし、彼らの基準というのは古いわけでございまして、彼らも、今見直すとすればこのぐらいになるのではないかというような感触を持っているということでございます。

 繰り返しますが、要するに、我々の審査実績から照らして、このぐらい広げても支障はない、余計なコストをお互いかけなくても済む、こういうことで決めさせていただきました。

塩川委員 合併審査の場合については、合併をすることによっての効率性を評価するということは当然一方であり、他方で、合併による市場に対する弊害、消費者、国民に対するマイナスという、その両てんびんをどう図るのかということが極めて重要なわけで、そういう点では一定のルール化というのは必要なわけですけれども、しかし、それはやはり、それに伴うような、両てんびんが図れるような審査体制の問題というのは当然出てくるわけです。

 その点で、今、欧米との比較で、例えば企業結合審査、合併審査の体制について、日本の公正取引委員会の体制が何人で、それから、例えばアメリカ、EUの体制というのは、そういう基準でいうとどうなっているのか、その点について教えてもらえますか。

竹島政府特別補佐人 アメリカ、EUの合併、企業結合にかかわる審査部門に何人いるかというのは、恐れ入ります、ちょっと手元にないんですが、日本の公正取引委員会は、経済取引局の中に企業結合課というのがございまして、携わっている職員数は、十九年度の予算で認められた増員を含めて三十六名でございます。

 必ずしもそれは多くないといえば多くないのでございますが、全体、厳しい定員事情の中で、この部門には公正取引委員会の中でも、この数年、十名以上の増員を図って、そういう体制をしいております。

 加えて、最近、経済分析をきちんとすべきである、機械的な法律の当てはめというのではなくて、経済分析をして、本当にその企業結合が経済に対して反競争的な効果をもたらすのかどうかということを分析した上で結論を出すべきであるというのが国際的な流れになっておるわけでございまして、そういう意味で、我々としましても、民間から、いわゆるエコノミストと言われる人たちを、今現在二名でございますが、採用いたしまして、その経済分析に当たらせている。

 これからも、これは、案件の処理が非常にたまって時間がかかってしまうというようなこと、今現在、むしろ早まるような努力をしておりますので、今の定員事情で、もうどうにも回らぬというようなことは私は思っておりませんが、これからも、量のみならず質的な強化ということも図っていきたいと思っております。

塩川委員 質の向上はぜひともと思いますけれども、量の規模におきましても、これは、例えばアメリカでどうかというのは、事務総長の記者会見で、事務総長が去年答えていましたけれども、司法省で二百六十人、連邦取引委員会で二百二十人の合わせて五百人弱という数字ですから、そういう点でも大きな開きがあるわけです。

 いや、日本の場合は談合に力を入れているんだ、そういう話もありますけれども、それはそれでしっかりやってもらって、やはり欧米に比べても緩い基準、本来、きちんとした審査の中身自身が重要だという点では、こういう体制は極めて不十分なわけで、体制が不十分な一方で審査の基準の方は緩めるというのは、これはやはりいろいろ問題が起こるんじゃないのか。合併によって効率性が上がったということについても、具体的に実証的な検証がないじゃないかという研究者の方の指摘も当然あるわけです。

 この間、国際カルテルで、シャープなどがかかわるような液晶ディスプレーの国際カルテルの疑いなどもある、そういう調査をしているという話も報道で承知をしています。

 市場全体の寡占度が高まるということの反映であるわけで、寡占化がカルテルを生じやすくさせるなどの合併がもたらすマイナス効果を見きわめる必要があるという点では、このような合併規制の緩和というのは大きな問題があるということを述べて、質問を終わります。

上田委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより各案に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、産業活力再生法改正案並びに企業立地促進法案の両案に対する反対討論を行います。

 今日、日本経済に問われているのは、多国籍化した大企業が軒並み未曾有の利益を上げ、役員報酬や株主配当が数倍に上る一方で、労働者給与はマイナスという社会の二極化が進み、貧困と格差が拡大していることであります。

 ところが、政府は、大企業が成長すれば富の滴が行き渡るという全く誤った成長神話と国際競争力の強化を口実に、一握りの多国籍大企業の利潤優先を一層後押しする経済成長戦略を推進しようとしております。

 まず、産活法改正案であります。

 反対理由の第一は、同法案は、国家によるお墨つきと減税などの支援措置によってリストラを推進し、非正規労働者、ワーキングプアを大量に生み出し、日本経済と社会の二極化、分裂を加速させた中心的な法律であり、その延長に反対です。

 今回、改正案は、これらの措置を継続するばかりか、新たに世界初事業革新設備に対する特別償却による減税効果によって、フラットパネル製造大企業など多国籍企業に対する二重、三重の優遇措置等を盛り込んで、巨大企業への富の集中を一層加速させていることは重大です。

 第二は、改正案は、新たにサービス産業の生産性向上を掲げ、人材サービス業の育成を挙げています。しかし、派遣・請負業をめぐる違法行為が蔓延しているもと、低賃金労働者を大量活用している財界トップで経済財政諮問会議の民間議員は、自社の派遣法違反を指摘されながら、逆に無法を合法化せよという理不尽な要求をしています。こうしたもとで、改正案は、不安定な低賃金労働者を利用する人材サービス業を拡大し、一層の雇用の流動化をもたらす危険性が極めて大きいものであります。

 第三は、改正案が想定するサービス産業は、地域性、中小企業性の強い事業分野ですが、その生産性が低い原因として、小零細企業の存在と政府規制を挙げています。こうした認識を前提に策定する事業分野別指針によって推進するサービス業のチェーン化と大規模化は、圧倒的多数の中小零細企業の淘汰につながりかねません。また、国民生活に密着した医療、保育といった公的サービス分野を効率とコスト優先にゆだねることは、国民の安心、安全を掘り崩すことになる危険性をぬぐい切れません。

 第四に、日本版バイ・ドール制度は、大企業に対する国民の知的財産のいわば無償払い下げであり、市場主義、競争原理を志向した産学官連携の促進について、十分な検証のないまま恒久化することは認められません。

 次に、企業立地の促進法案は、企業が国と地域を選ぶ時代という日本の多国籍化した大企業、財界の時代認識を無条件に前提としたものであります。

 反対理由の第一は、法案は、今全国の地方自治体が繰り広げている大企業に対する企業誘致補助金の積み上げ競争、呼び込み合戦をより一層促進するとともに、立地大企業に対する地方税減税の減収補てんなどを通じて頑張る地方を応援するもので、結果として、頑張りたくても頑張れない地方との地域間の格差を拡大するからであります。

 第二は、立地大企業に対する工場立地法の規制緩和が、当該企業の社会的責任とコスト負担を軽減するだけで、企業誘致の成功、失敗によって同法の適用を差別化し、工場周辺住民の生活環境の保持という法本来の趣旨を損ない、住民の生活環境に悪影響を及ぼしかねないものだからであります。

 以上、反対討論を終わります。

上田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金子善次郎君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。金子善次郎君。

金子(善)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、我が国経済の持続的な成長の達成を着実なものとするため、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。

 一 イノベーションの創出を着実に図るため、技術経営力等の強化に寄与する人材育成を促すとともに、第三期科学技術基本計画において平成二十二年度までの五年間に必要とされる政府研究開発投資の総額規模の達成を含め、科学技術関係予算の確保に最大限努めること。

 二 サービス産業の生産性向上を図るため、事業分野別指針を策定するに当たっては、業種間の多様性に十分配慮するとともに、サービス産業の実態を的確に把握するため、統計調査の抜本的な拡充を早急に実現すること。

 三 サービス産業における生産性向上への取組みが雇用不安を招来することのないよう、顧客満足度等の新たな指標を導入しつつ、事業者が雇用労働者の雇用機会の確保及び能力開発に努めるよう適切な指導を行うとともに、現在の供給過剰の状況のもと、新産業の育成・振興のための施策を強力に推進することにより、新たな雇用機会の創出に全力を挙げて取り組むこと。

 四 今後における地域金融機関の不良債権処理の進展に伴い、事業再生を要する中小企業の増加が予想されることから、全国組織の設置など中小企業再生支援協議会の機能強化を図りつつ、つなぎ融資をはじめとする中小企業金融の円滑化に万全を期するとともに、各種支援制度について周知徹底を図ること。

以上でございます。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

上田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 次に、内閣提出、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金子善次郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。金子善次郎君。

金子(善)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案に対する附帯決議(案)

  中小企業の景気回復には遅れが見られ、地域によって回復の足取りに差が生じている中で、地域の特色ある資源を活用した事業活動を支援することを通じて、真の地域経済活性化が実現されるよう、政府は本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。

 一 国による基本方針の策定から都道府県による基本構想認可までのプロセスを迅速にかつ透明性の確保に留意しつつ進めるとともに、地域資源の特定に当たっては地域の自主性が最大限尊重されるよう配慮すること。また、事業の実施段階では適時適切に評価を行い、必要な見直しを行うなど、柔軟に対応するよう努めること。

 二 事業計画の認定については、地域間のバランスに配慮しつつ、中小企業者に分かりやすくかつ公平を旨とした認定基準の策定を図るとともに、施策の実施に当たっては、市町村、商工会・商工会議所、JA等の組織を活用する等情報の周知徹底を図り、全国の中小企業者が広く支援を受ける機会が確保されるよう努めること。また、マーケティング等の専門家の派遣、事業の円滑な実施のための人材確保等各般の支援策の継続的な実施を図ること。

 三 地域の中小企業者にとって利用しやすい形で施策が講じられるよう、関係各省や関係機関においては密接な連携を図るとともに、最も身近な行政単位である市町村レベルにおいても相談窓口を設置する等、体制の構築に努めること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

上田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 次に、内閣提出、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金子善次郎君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。金子善次郎君。

金子(善)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、企業立地の促進や地域企業の事業高度化が地域経済の活性化のために重要であることにかんがみ、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。

 一 地方自治体が、多額の補助金や優遇税制のみに依存した企業誘致ではなく、地域の強みを活かした個性あふれる基本計画の策定により、産業集積の形成及び活性化を図ることができるよう、専門家の派遣等の支援体制の充実強化に努めること。

 二 関係各省は、企業立地等の促進において、各種インフラの整備、雇用構造の改善、教育・研究機関との連携等のほか、地域の労働者の生活環境の整備等が重要な役割を果たすことに十分配慮し、その施策が効果的に実施されるよう、一層の連携強化に努めること。

   また、企業立地の円滑化に資するため、関係各省は、農地転用等の各種手続きの迅速化及び簡素化に一層努めるとともに、企業に対するワンストップサービスの実現に向け万全の体制整備を図ること。

 三 企業立地等の促進に当たっては、地域間、大都市・地方間の体力格差が拡大することのないよう、地域企業の技術力の向上、地域金融の充実等を図るとともに、地元雇用の創出及び産業集積内の企業連携を促進する等により、地域経済の真の活性化を図るため、万全を期すること。

   また、各種施策の実施状況については、適時に評価を行い、施策への適切な反映に努めること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

上田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、各附帯決議について、甘利経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。甘利経済産業大臣。

甘利国務大臣 ただいま御決議のありました三件の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、これらの法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

上田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

上田委員長 次に、内閣提出、株式会社商工組合中央金庫法案及び中小企業信用保険法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。甘利経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 株式会社商工組合中央金庫法案

 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

甘利国務大臣 まず、株式会社商工組合中央金庫法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 日本の産業競争力の源泉は、大企業に部品や素材を供給する中小企業にあり、また、地域の経済を支えているのも、各地域で特色ある事業活動を行う中小企業であります。商工組合中央金庫は、こうした中小企業のよい点を見つけ、はぐくむノウハウを持っており、融資と経営指導を一体として実施し、中小企業を支えてきました。

 こうした背景のもと、政策金融改革を着実に進めるとともに、商工組合中央金庫が有している中小企業に対する金融機能の根幹を維持するための措置を講ずることが、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律において定められております。本法案は、その内容を具体化したものであります。

 次に、本法案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、平成二十年十月における商工組合中央金庫の株式会社化を円滑に行うため、株式会社への組織転換のための措置を講ずることとしております。

 第二に、中小企業に対する金融機能の根幹を維持するため、中小企業団体とその構成員等に融資対象、株主資格を限定するとともに、中小企業に対する円滑な金融機能の提供に不可欠な強固な財務基盤を確立すべく、特別準備金の設置について規定しております。

 第三に、政府保有株式の全部を処分したときは、直ちに本法案を廃止するための措置を講ずるとともに、中小企業に対する金融機能の根幹が維持されることとなるように、株主資格を制限するための措置その他必要な措置を講ずることとしております。

 続きまして、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 我が国経済は、全体としては回復基調にありますが、中小企業の回復はおくれており、大企業に比べて相対的に信用度の劣る中小企業の金融環境は依然として厳しい状況にあります。今後とも、日本経済を支える中小企業、とりわけ新事業や事業再生への挑戦を図るやる気と能力のある中小企業に円滑な資金供給を図ることは極めて重要であります。

 こうした認識のもと、不動産や個人保証に過度に依存しない融資をより一層促進するとともに、事業再生に取り組んでいる中小企業への資金供給を円滑にするために、中小企業信用補完制度を充実させる必要があることから、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、中小企業が保有する資産を有効活用した融資を促進するため、中小企業が売掛金債権を担保として金融機関から借り入れを行う場合に信用保証協会が保証を行うための売掛金債権担保保険を拡充し、その担保対象に棚卸資産を追加した流動資産担保保険といたします。

 第二に、資金繰りが特に困難となる民事再生法や会社更生法を利用して事業再生に取り組む中小企業に対し円滑に資金供給がなされるよう、こうした中小企業が金融機関から借り入れを行う場合に信用保証協会が保証を行うための事業再生保険を創設いたします。

 以上が、両法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

上田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

上田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、来る十八日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長代理田中俊一君及び原子力安全委員会委員長鈴木篤之君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官村田貴司君、厚生労働省職業安定局次長鳥生隆君、経済産業省産業技術環境局長小島康壽君、資源エネルギー庁長官望月晴文君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院長広瀬研吉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 自由民主党の牧原でございます。

 きょうは、与党としては少し多目の三十分という時間をいただきまして、大変光栄に存じます。

 このエネルギーという問題ですが、当然ながら、国家にとって非常に重要な問題です。きょうは、最近事故隠しが相次いだりという問題もございますけれども、私としては、日本としてこの原子力政策を強力に推し進めるべきであるという観点から質問をさせていただきたいと思います。

 三つの視点から質問をさせていただきたいと思います。一つがエネルギーの安全保障という観点、一つは環境、そして一つは産業としての原子力政策という点です。私は、個人的にはこの三つから原子力を進めるべきであるというふうに思っております。

 まず、大臣にお聞きしたいと思いますけれども、大臣は、党にいらっしゃったときも、この分野においても専門家としていろいろ取りまとめ等にも当たられておりました。今、政府の中にいらっしゃるわけでございますけれども、国家のエネルギー戦略、全体の戦略の中で、この原子力というものについてどのように位置づけてお考えになっているか、改めてお考えを伺いたいと思います。

甘利国務大臣 エネルギー政策を語りますときに、エネルギーセキュリティー、これは安定確保というイメージも大きいのでありますが、その安定確保、安定供給にどう対処するかということが極めて大切であります。そのためには自主エネルギーを持つということが一番安全なのでありますが、日本は自主エネルギーと言えるエネルギーのパーセンテージは極めて低いわけであります。

 そこで、資源外交をしっかり戦略的に展開する等々もありますけれども、準自主エネルギーというべきものをしっかりと定着させていくということが大事でありまして、原子力の場合ですと、一度装てんをしますと何年間もそのまま動いていくわけであります。しかも、燃料の再処理であるとか、最終的には、高速増殖炉にしますれば、それこそ百倍単位でそのエネルギーを使えるわけであります。

 でありますから、原子力政策というのは極めて大切でありまして、ベースロードとしての安定性はピカ一であります。しかも、近年は、そうした安定供給という役割に加えまして、地球温暖化対策のエースとして役割が期待をされている。つくるときに材料等々にかかわるCO2というのは当然どの電源でもあるわけでありますが、でき上がった後CO2の排出はゼロでありますから、地球温暖化対策としては極めて強力な電源だというふうに思っておりまして、この二つの視点から、日本としても強力に今後とも進めてまいりますし、世界もそういう潮流になってきたわけであります。

 二〇〇五年の十月に策定をされました原子力政策大綱におきましても、原子力を基幹電源と位置づけて、二〇三〇年以降も発電電力量の三、四〇%程度以上の供給割合を原子力が担うということになっておりまして、これからも安全を第一に考えた、しっかりとした原子力政策を進めていきたいと思っております。

牧原委員 今、二〇三〇年以降に三、四〇%以上という具体的な目標をいただきました。

 きょうお配りしております資料一でございますけれども、これが大体今の日本の発電電力量の構成の推移ということで、二〇〇五年には三一%ということになっています。これを仮に四〇%程度以上にするということは、あと一〇%程度総発電量の中に占める割合を上げるということになると思いますけれども、その目標を達成するに当たっては、どの程度その原料となるウランの輸入、あるいは発電のもととなる原子力の発電所が必要になるとお考えでしょうか。

望月政府参考人 お答えいたします。

 現在、五十五基の原子力発電所が稼働をいたしておりますけれども、これに加え、当面、泊発電所の三号機あるいは島根原子力発電所の三号機の二基が建設中でございます。さらに、これ以外にも、電力供給計画において六地点十一基の着工が予定されております。これら十三基の原子力発電所がすべて稼働した場合には四〇%超のものになるという想定の電力供給計画になっているわけでございます。これで、合計出力で千七百万キロワットが増加することになるわけでございます。

 現在、我が国は年間七千三百トンの天然ウランを輸入いたしている、大体そのレベルで推移しているわけでございますけれども、この千七百万キロワット増加分の運転に必要な天然ウランというものを計算いたしますと、実は、その燃料の燃焼度とかあるいはプルサーマルをどれぐらい実施できるかとかいうことによって減少する可能性はございますけれども、現在の運転状況を前提にして試算をいたしますと、約二千八百トンの天然ウランを輸入することが必要という計算もできるわけでございます。これによって、将来においても、原子力発電の比率を三、四〇%以上にするということを目指していくことは可能であろうかと思っております。

牧原委員 今の計画、具体的にお答えいただきました。その原料であるウランが、今七千三百トン輸入であるにもかかわらず、さらに二千八百トンの輸入が、諸条件、核燃料サイクルの話等々ありますけれども、必要になるということです。ざっと七分の三、四〇%弱輸入量が増加しなきゃいけないということです。

 さて、そのウランですけれども、資料二にお配りをさせていただいておりますけれども、二〇〇〇年の十一月から十二月には七・一米ドルだったものが、二〇〇六年、昨年末の段階では七十二と十倍以上に上がっているという状況になります。これは、今後、中国とか米国とかも原子力を見直すという政策転換をしている状況では、ますます獲得競争が激しくなるというふうにも言えると思います。

 資料三をごらんください。これは埋蔵量についてですけれども、オーストラリアが一位、カザフスタンが二位、カナダが三位という状況になっております。こうした資源獲得競争が激化するだろう、そして埋蔵量がこうした国々にあるという状況をにらみつつ、日本としては、このウランの獲得戦略についてどのように計画を立てているのか、御説明ください。

望月政府参考人 お答えいたします。

 天然ウランにつきましては、解体核の高濃縮ウランや民間在庫などのウランの二次供給の減少、あるいは中国等の需要増加の見通しなどから、先生御指摘のように、ウランの価格が大変急騰しているわけでございます。中長期的に供給不足が生ずる懸念というのももちろんあるわけでございまして、この獲得競争が国際的に激化している中でのウラン資源の安定供給確保というのは極めて重要な課題だというふうに認識をいたしております。

 我が国のウラン資源の安定供給を確保しながら、世界の天然ウラン供給量拡大に貢献するという観点から、我が国企業によるウラン鉱山開発への参画を促進、支援するための政策的対応が必要だというふうに考えております。

 具体的には、御指摘の資源外交の強化、天然ガス・鉱物資源機構、JOGMECによる民間企業の探鉱、権益取得に対するリスクマネーの供給、あるいは、日本貿易保険、国際協力銀行など政策金融による一層効果的な支援に取り組むということが大切だろうと思っております。

 特に、今先生御指摘の資料の中の、世界第二位のウランの資源埋蔵量を有しますカザフスタンにつきましては、私どもこれまで一%ぐらいの輸入ウエートしか持っておりませんけれども、昨年八月の首脳間での原子力協力拡大の合意を受けまして、ウラン鉱山開発を含む幅広い原子力分野における多数の具体的協力案件が日本との間で進展をいたしております。

 今月末には、甘利大臣のリードのもと、官民合同ミッションとして同国を訪問し、これら具体的協力案件の合意、確認などを行うとともに、両国間の原子力平和利用分野における戦略的パートナーシップを内外にアピールしたいというふうに考えているところでございます。

牧原委員 今御指摘がございましたカザフですけれども、この資源獲得のみを目的にしたわけではありませんが、中国は既に上海機構等をつくって、こうしたカザフ、そして後ろの方にありますウズベク等の中央アジアの国、こうした国を取り込もうという戦略を早々と立てております。また、ロシアも昨年の七月には、カザフと原子力分野での協力を、バイで協定を結んでいるという状況にあります。

 ぜひともカザフは、大臣の今御指摘いただいた会合においてリーダーシップを発揮していただきたいと思いますし、その他、やや日本にとって今までなじみのないアフリカの国々等もございます。そうした国々に対する戦略もしっかりと立てて、このウラン獲得競争で後塵を拝さないようにしていただきたいと思います。

 そして、この資源獲得にも絡んで、先ほど御指摘のありました核燃料サイクルというものが重要になってくるわけです。この核燃料サイクルは、資料四に一応お配りさせていただいております。これは御指摘をするまでもないですが、軽水炉とFBRと二つの燃料サイクルがあるわけです。この図に示されているその二つのサイクルが大体いつぐらいまでに完成するというふうに戦略を立てているでしょうか。

 特に、我々としては、一刻も早くこれは研究開発を進め、完成させるべきだと思っていますけれども、もし期間がある程度かかるということであれば、そのかかるという理由も含めてお答えいただければと思います。

望月政府参考人 御指摘のように、ウラン資源の有効利用によるエネルギー安全保障の観点から、核燃料サイクル、さらには高速増殖炉サイクルを実現することは大変重要なことだと思っております。

 軽水炉の核燃料サイクルにつきましては、ことし十一月の六ケ所再処理工場の竣工、二〇一二年の六ケ所MOX燃料加工工場の竣工、それから、プルサーマルの推進などに向けて取り組んでまいります。高速増殖炉サイクルにつきましては、二〇二五年ごろの実証施設の実現、それから、二〇五〇年よりも前の段階で商業炉の開発を目指していきたいというふうに考えているところでございます。

 高速増殖炉サイクルを実現するためには、核不拡散性の高い再処理技術や商業炉に求められる経済性を実現する技術など、革新技術の開発が必要であります。今年度から文部科学省と共同で、高速増殖炉サイクル実用化研究開発というものを開始することといたしております。

 今後とも、国民の皆様の御理解、特に立地地域の方々との信頼関係を確保しながら、核燃料サイクル、さらには高速増殖炉サイクルの実現に向けまして、関係省庁、研究開発機関、産業界と一体になって、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

牧原委員 できれば、ここにいる我々が生きている間にこのサイクルの完成を見るということをぜひ目指していただきたいと思います。ここで夢を語っているのではなく、実際に自分の目で見るということを目標にぜひ頑張ろうじゃありませんか。

 そして、また、この図でいいますと、一番下の右下のところですね、高レベルの放射性廃棄物、これは高知県の東洋町でもめているわけですけれども、実は、今おっしゃったように、ことし十二月から再処理工場はスタートを予定している。しかし、この廃棄物が決まらないということでは、これは計画が倒れてしまいかねませんので、ぜひともその部分も強力に推進していただきたいと思います。

 さらに、このサイクルとは別に、より大きなエネルギーを出すと言われています核融合、イータープロジェクトも進行中であります。昨年の十一月に、この新機構の設立協定に署名がなされましたけれども、この分野、いわゆる実験炉はフランスにとられてしまったわけですけれども、その他、研究機関等々は日本にあるわけです。この分野を推し進めるに当たって、日本として特にどのような役割を果たしていきたいか、その意気込みについてお伺いしたいと思います。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生からの御指摘のイータープロジェクトに関してでございますが、我が国は、欧州とともに、一九八〇年代の後半以来、設計活動に積極的に参加いたしまして、それまでの国内の研究成果をもとに、イーターの主要な機器の試作とか設計とか、そういうようなことに関して主導的な役割を果たしてきております。そのようなことを前提にいたしまして、イーター計画の完遂に我が国はなくてはならない役割を果たしてきていると思っております。

 イーターの炉、それ自体の建設地は残念ながらフランスということになってしまったわけでございますが、今後、我が国は、例えばイーターで用いる高性能な超電導コイルの製造能力を有していることでありますとか、核融合プラズマを加熱するために必要な高周波の加熱装置につきまして、既にイーターで用いることができるような性能を有する装置を開発してございます。そのような技術力を持っておりますので、そういうことを十分に活用いたしまして、イーター計画の完遂に重要な役割を果たしていきたいと思っております。

 また、イーターの建設や運転を担う国際機関が設立されるわけでございますが、イーター機構と申しますが、それに対しまして、機構長を初めといたしまして、我が国の優秀な研究者や技術者等を派遣いたしましてイーター計画を支えていくこととしております。

 さらに、我が国が欧州と共同いたしまして実施する核融合の将来に向けた幅広いアプローチの活動を通じまして、イーター計画のみならず、イーターの次の発電実証を行うような核融合の原型炉の開発に向けた研究開発をしっかりやっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

牧原委員 このイータープロジェクトですけれども、日本が珍しくと言ったら怒られてしまうかもしれませんが、かなりのリーダーシップをとってきた国際的なプロジェクトです。しかも、核融合によりますとはるかに大きなエネルギーを取り出すことができるということです。ぜひとも、日本としては機構も含めた主導的な役割を果たしていただきたいと思います。

 ところで、やや個別的な話になってしまいますけれども、昨年度、柏崎刈羽の方に私も視察に行かせていただきました。そのときに、原子炉が一個完全にとまっているという状況で、定期点検をしているんだという話です。

 日本は、原子力白書によれば、大体十一・七カ月の運転平均稼働期間、そして、その後、定期点検ということでとめて、定期点検をするということです。実は、現場の技術者の方が、日本の技術をもってすればこんなにとめる必要はない、現にアメリカは二十四カ月ぐらいの運転平均稼働期間を持っているということを言っていました。

 新しい原発の計画を少しでも挽回する、カバーするのは、やはり稼働率を高めていくということであると思います。このような稼働率を高めていくという方向で、少し日本も規制を改めるべき、今はちょっと事故隠し等があって、ややセンシティブな時期ですけれども、こうした一つ一つの事故に余りに着目して、例えば原子力の政策をとめてしまうのではなく、むしろ稼働率を高めて、しかも安全を確保していくという方向に日本としてはきっちりとやっていくべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。

望月政府参考人 お答えいたします。

 原子力の設備利用率の向上ということは、既設の原子力発電所の有効活用という観点から、ぜひともその実現をしていくということが大切なことだろうと思っております。

 このため、電気事業者によっては、既に多くの原子炉において、いわゆる定格熱出力一定運転というものを数年前から導入いたしております。これに加えまして、電気事業者は、原子炉の運転中に待機状態で停止しているポンプなどの予備機などの点検・補修を行うことなど、科学的、合理的な運転管理に向けた取り組みということも行っていると承知をいたしております。

 ただし、こういったことをするためには、安全を確保し、地元の皆様方の信頼を回復することが当然大前提でありますし、経済産業省といたしましては、今後とも、安全の確保を大前提に、地元を初めとする国民の皆様の信頼を回復して、原子力発電の推進に全力で取り組んでまいるというプロセスの中で、設備利用率の向上というものを図っていきたいというふうに考えております。

牧原委員 実際に視察に行ったときに感じましたのは、現場の技術者の方々の感覚と、それから規制側の感覚とにややずれがあるのかなというふうに私は受けました。ぜひとも、規制当局としても、いわゆる責任者という方だけでなく、本当に現場の技術者の方とも積極的に意見交換をして、この稼働率を高める有効な活用をやっていくという方向性で努力していただきたいと思います。

 次に、環境についてのことです。

 先日、国連と世界気象機関の共同作業であるIPCCの第二分科会というところにおいて、地球温暖化の効果についてレポートが出ました。一度上昇すると二〇%の生き物が死滅するとか、そうしたレポートが出て、アル・ゴアの「不都合な真実」に引き続いて衝撃的な結果が出たわけですけれども、この第二分科会とは違う第三分科会で現在はこの地球温暖化防止についての研究がなされているというふうに理解をして、レポートも近々発出されるというふうに伺っています。また、京都議定書は中国やアメリカ等が入っていない、インドも入っていないという中で、ポスト京都議定書についての意見交換というのも徐々に始まっているというふうに理解をしています。

 日本は、環境大国を目指すというスタンスであります。この環境大国を目指す日本として、原子力と環境について、どのような主張をしているのか、お伺いしたいと思います。

 なお、資料五で、石炭火力、石油火力、LNG等と比べて原子力がはるかにCO2の排出量が少ないというデータは一応お示ししていますが、その上で、日本の国際的な場におけるスタンスについてお伺いをしたいと思います。

小島政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、気候変動問題の解決というのが世界全体の重要課題になっておりまして、現在、世界全体で地球温暖化問題について取り組んでいるところでございますが、京都議定書は、御指摘のとおり、米国とか中国といった大きな排出国が入っておりません。したがいまして、次期枠組みにおいては、米国とか中国あるいはインドといった世界の主要排出国がすべて参加できるような仕組みづくりをしないかということで、我が国も国際的な場でそういう主張をしているところでございます。

 御指摘の原子力発電につきましては、先ほど大臣から申し上げましたとおり、地球温暖化対策の極めて強力な対策でございまして、そういう観点から、国際的な場におきましても、原子力発電の重要性ということを我が国として主張しております。

 まさに、CO2を排出しないエネルギー源ということで主張しておるところでございまして、これは、一昨年のIEAの閣僚理事会、あるいは同じ年のグレンイーグルズ・サミットで原子力発電がクリーンな電力として推し進められるべきものだ、あるいは、昨年のサンクトペテルブルクのサミットにおきましても、原子力発電を推進することが気候変動問題、温室効果ガスの大幅な削減に寄与することだということで、共通の認識が得られているところでございまして、そういった観点から、次期枠組みの交渉その他、APP、エネルギー関係の議論の場におきましても、原子力発電も含めた地球温暖化対策、あるいは、すべての排出国を含んだ地球全体での排出削減に取り組むということを主張してまいりたいと思います。

牧原委員 ぜひとも、原発、いわゆる核爆弾を持たずに原子力をやっている国という特殊な立場もありますから、そういう立場からも、日本はその分野でリードをしていただきたいというふうに思います。

 最後に、産業としての原子力政策についてお伺いします。

 先日、三菱重工がアメリカにおける原発の建設の二基の発注を受けたという記事が出ておりました。また、東芝が、史上最高額だと思いますけれども、巨額のウェスチングハウスの買収をしたということも、明るいニュースとして出ております。

 この原子力事業というものを日本の産業戦略としても推し進めていくわけだと思いますけれども、一つ懸念をするのが知財の関係です。

 青森の六ケ所については、フランスのアレバから、これは日本も日本原燃、民間同士でライセンス契約を結びながらやっているというふうに理解します。私もライセンス契約交渉を何回もやったことがありますが、重要になれば重要になるほど更新のときに吹っかけられてしまうという危険性があります。これは民間同士のライセンス契約だと突き放せないところに、これは日本の国家プロジェクトとしてやっている核燃料サイクルの問題ですから、あるわけです。

 この原子力事業に関する知財戦略について、日本政府としてどのようにお考えか、お伺いします。

望月政府参考人 今後、我が国は、将来の原子力を担う最先端の技術として次世代軽水炉開発あるいは高速増殖炉開発などを実施していくこととしておりますけれども、この高速増殖炉サイクル技術などの技術開発につきましても、世界をリードできる枢要戦略技術を中心といたしまして、その技術が海外における原子炉の開発、設計に採用されることなどを通じまして、国際的な標準となることを目指して取り組んでいるということが、私どもの原子力分野における最大知財戦略の対象になる部分だろうと思っております。

 ただ、その際に、枢要戦略技術の知的財産をきちっと確保していくということが我が国の原子力産業の競争力を高めていく上で重要であるというふうに認識をしているところでございます。

 こういった原子力の先端的な技術開発におきましては、知的財産権の重要性を踏まえながら、世界から孤立せず、かつ、一歩リードするという国際戦略を持って、選択と集中で戦略的に取り組んでいくということが非常に大事ではないかというふうに思っているところでございます。

牧原委員 戦略的に重要なのは間違いないんですが、実は、この原子力事業に関する知財については、通常と違う点が二点あります。一点目は、ややプロジェクトが長期過ぎて、通常、知財戦略というと、特許とか、ああいう権利、排他的な権利を得ていくという戦略になるわけですけれども、プロジェクトが長過ぎて、取っても切れてしまう可能性があるということが一点。そして二点目は、特許をすれば当然公開されてしまうわけですけれども、余りに機密度が高いために、恐らく公開せずに、先ほどのライセンス契約というような形でやっていかざるを得ないという点です。

 日本というのはとかく機密保持が緩い点で、先日ちょっと恥ずかしい事件も防衛の方でありましたけれども、そうしたことについて、この分野は本当に日本が多額の研究費を投じている分野でございます。例えば、ある研究者が、民間の研究者も結構国家の研究機関に入ってやっているのが現状で、この間、東海村にも行って見てきましたけれども、そうした人が例えば中国に行って研究開発に参加をするということについて、日本は罰則が実は余り重くないという現状があります。こうしたことも、今後、巨額なプロジェクトであるという点にかんがみて、強化をしていただきたいと思います。

 最後の質問として、先ほど申し上げたように、受注をしているという状況がありますけれども、最後の資料六です。実は、日本の原子力発電所数、つまり建築数ですけれども、激減をしています。一九八三、九〇のころと比べると激減をしていて、実際にかかわっていたという経験者がその時代に比べると少なくなりつつあります。現実に、原子炉の製造等にかかわる技術者の数は、ピーク時というか、二〇〇〇年と比べても、二〇〇三年で千人近く減りつつあるという状況にあります。先日、日立製作所の方にも行きましたが、団塊の世代の方が非常に多くて、自分たちの引退後が心配だというような話もされておりました。

 一方で、国際的には受注がふえそうだ、戦略としてもとれる、他方で、団塊の世代の方が定年を迎えてしまう、あるいは経験者が少なくなっているという状況において、日本はどのように人材獲得戦略を考えているのか、最後の質問とさせていただきます。

山本(幸)副大臣 御指摘のように、我が国では、当分の間、原子力発電所の新規建設は多くは見込まれないということで、こうした状況の中で、原子力産業を支える人材をいかに確保していくかが大変大きな課題でございます。

 その人材育成にとっては、原子力発電所の建設機会を確保していくことが何よりも重要でありますので、このために、国内の原子力発電の新設・増設計画を実現するための投資環境整備、あるいは海外における新規建設機会を我が国の原子力産業が獲得していくための支援を行っております。

 また、人材の育成、確保策としては、昨年来、原子力発電所の保守・補修現場の中核を担う技能者の育成や、技術の継承に取り組んでおります。

 具体的には、福井地域、福島・新潟地域、青森地域の三地域において、ポンプ、バルブ等の機器組み立ての実技研修等の実施や、現場で守るべき関連法規及びその重要性に係る座学研修に対して支援を行っております。平成十八年から二十年度の三年間で、延べ約二万人超の技能者育成を支援する予定であります。

 また、原子力分野において、次世代を担う優秀な人材を確保するために、大学、大学院等での原子力人材育成の充実が不可欠であります。

 そのために、本年度から、文部科学省と共同で原子力人材育成プログラムを新たに創設いたしまして、産業界のインフラ活用によるインターンシップ実施や、材料、溶接等の原子力の基盤的技術に係る大学での研究活動等に対する支援を行っていくこととしております。

 今後とも、関係省庁、産業界とも連携しながら、しっかりと人材の育成、確保に向けて取り組んでまいりたいと思います。

牧原委員 ありがとうございました。ぜひとも、この分野で日本は世界をリードするんだという強い意思で一緒に進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日の一般質疑では、原子力の安全にかかわる点を中心にお伺いしていきたいと思っております。

 私も、原子力発電は我が国の重要なエネルギーであるという認識に立つものであります。しっかり、きっちりと安定的に進めなければいけないという思いは持っておる人間ではありますが、だからこそ、一連の、ここ最近明らかになりました過去のトラブル、またそれをめぐる問題について、きっちりと教訓を学び取って、必要があれば体制を見直す必要があろうかと思っております。

 とりわけ、我が国は唯一の被爆国であるわけで、その中で、安全でかつ平和な利用を求められている。国際水準のトップ水準を維持する、まさに安全、平和利用で世界の最高峰の水準を維持する、進めるということが、これが国際的な責務でもあろうかと思うわけでありますから、本件をやはりしっかりと見詰め直す必要があるんだろう、トラブルについて直視する必要があるんだろう、こう思っております。

 そこで、大臣、まず冒頭お伺いしたいのですが、けさのNHKのニュース、私は、この質問を準備しようと思って朝六時前に目覚めておって、ちょっとニュースを見たら、このニュースでぎょっとしたんですが、ごらんになったでしょうか。委員長のお許しを得て資料配付をさせていただいていますが、四枚目の資料であります。

 これはNHKのホームページから出典の記事でございますが、聞くところによると、けさの五時、六時、そして七時のニュースで報道された。これは、いわゆるNHKの、新聞でいえば朝刊一面頭、トップニュース、こういうことであろうかと思っております。

 このニュースによりますと、「北陸電力の志賀原発一号機では、」中略しますが、「急激な核反応によって一瞬のうちに大きなエネルギーがでる「即発臨界」になっていた可能性のあることがわかりました。「即発臨界」は最悪の場合制御棒の脇にある核燃料が壊れて水蒸気爆発につながるおそれがあり、起こしてはならない危険な反応です。」と書いているんですね。見出しは「志賀原発の事故は即発臨界か」ということで、そして最後には、これについて「原子力安全・保安院は、原子炉の安全にかかわる重大な問題だとして、国としても詳しく解析し、対応を検討することにしています」、こういうふうに結んでおります。

 私、最初これは、水蒸気爆発と聞き取れないで、何か水素爆発じゃないかと思ってぞっとしたんですけれども、よくよく調べると、水蒸気爆発である、こういうことであります。

 ただ、このポイントは、水蒸気爆発がこの北陸電力の志賀原発で起きる可能性があった、こう伝えているのがこの記事のポイントなんですね。

 そこで、大臣、お伺いしたいんですが、そもそもこの北陸電力の原発一号機で水蒸気爆発が起きる可能性というのがあったんですか、なかったんですか。

甘利国務大臣 その可能性は想定しがたいということであります。

近藤(洋)委員 そうですね。私も関係者に伺ったならば、想定しがたい、こういうことでありました。

 要するに、学術的な可能性として即発臨界があったかどうかは、これはわからない、これすらわからない。さらに突き詰めていけば、あのプラントで、いずれにしろ、あろうがなかろうが、水蒸気爆発は起きなかった、こういうことなんですね。大臣もうなずいていただきましたけれども、そうだと思うんです。だとすると、この記事は非常に誤解を招く文体になっている、こう思わざるを得ません。

 要は、これを見ると、直接的には書いておりませんが、即発臨界が起きれば最悪の場合水蒸気爆発につながるおそれがあり、こう結んでいて、北陸電力ではこのことはなかったということをきちっと書いてないんですね。一番大事なポイントを書いてない原稿なんですね。

 私は、実は新聞記者をかつてやっておりました。短い期間で、十一年間ではありましたが、ニュースの現場におりました。そういう意味では、私は、報道の自由というのはできる限り認めたい立場でもありますし、自由に取材をされ、原稿を書かれるのは自由であろうと。しかしながら、この原稿に限って言えば、やはり相当事実誤認を与える可能性がある。例えて言えば、これは、包丁を持ってタマネギを切っている人が間違って心臓を刺す可能性がありますよみたいなこと。即発臨界ですらそうなんですよね、即発臨界ですらそうなんです。即発臨界イコール爆発ではないということなわけですから、しっかりした人が包丁を持って料理をしていれば心臓を刺すことはない、こういうことでありますし、この点については大臣、そうでないという御発言であれば、きっちりと役所としてこの原稿に対して対応すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 実は私も七時のニュースを見ておりました。七時に車が迎えに来るというので、その前からNHKをつけておりましたら、突然そういう報道がありまして、水蒸気爆発という言葉が飛び込んできました。原子炉が何やら爆発する可能性と言われて私はびっくりしまして、それで、登庁しましてすぐ保安院長に、あの報道は何だということですぐ確認をしたわけであります。

 正確に申し上げますと、北陸電力からは、三月三十日及び四月六日に志賀一号機の臨界事故に関する報告書が出されているわけであります。臨界事故の際の原子炉内の中性子等のデータが十分でなかったために、北陸電力は、臨界の発生時に原子炉内にあった燃料の健全性についての評価をするために、普通の臨界の場合と即発臨界の場合の仮定をいずれも置いて解析を行ったわけであります。

 結論からいいますと、たとえ即発臨界が発生した場合であっても燃料の健全性は保たれていたという結論になっているわけなんですね。即発であるかないかもわからない、仮にそうであったとしても燃料棒に心配はないという結論を出していたわけであります。ところが、仮にこうだとすればこういう可能性があり、そうだとすればこういう可能性があるという三段論法で、水蒸気爆発が起きるとえらいことになるぞという報道になっていたわけであります。これは極めていたずらに国民の不安をあおる報道になってしまっております。

 事実は事実として報道して結構でございますが、正確にこの種のことは報道していただかないと、極めて国民の心情をパニック状態に陥らしめるような場合があるわけでありますから、この点については、正確な情報を保安院からNHKにきちんと申し入れまして、報道は正確に、結果としていたずらに不安をあおるような、そういう報道にならないように慎重にしてほしいという申し入れはするつもりであります。

近藤(洋)委員 ぜひそうしていただきたいと思うわけであります。

 報道の自由は私は非常に重要だと思いますが、やはり、特に残念ながらトップニュース、五時、六時、七時で何度も流している、これは要するに、少なくとも社会面のトップ記事であり、NHKもそれなりに取材をしたという結果で出されているんでしょう。

 しかしやはり、そういう誤った認識だということであれば正すべきですし、特に、あえて申し上げると、紙媒体と違って、放送は特に印象だけが非常に強烈に残る部分もございます。こうやって文で見ると、なるほど、ちょっと逃げている部分もあるのかな。ただ、印象はやはり、ここは事実誤認の部分もありますからなんですが、特に放送メディアの場合はそういうことが起こり得るので、誤解を招きやすいので、NHKはきっちりした、私も信頼する報道機関でありますが、しかし、非常にこの件については残念だと言わざるを得ません。

 大臣、そこで、いずれにしろ今回、大臣の指示でまとめられた調査結果が三月末で取りまとめられた。三月末で取りまとめられましたが、また四月を越えてもぽつらぽつらと事案が出ているようでありますから、きょう時点では三百九事案ということでございますでしょうか、私は、ちょっとこれは、件数で見る限りは予想を上回る件数が出てきたな、こういうことであります。古いケースも多々ございます。また、これはさまざまなケースがございますから、一概にということは言えませんが、しかしやはり、数は少ないですが、悪質な隠ぺい、改ざんと思わざるを得ない部分も含まれている。

 総点検を指示された大臣として、改めてお伺いします。この結果というのを予想されていたかどうか。あわせて、その報道の内容はここでは一々言いませんが、結果としてこれだけ報道されてしまっているという状況について、大臣、どのように受けとめていらっしゃいますか。

甘利国務大臣 私が総点検を指示したというのは、ある面、業を煮やして、徹底的にやれという指示をしたわけであります。なぜ業を煮やしたかといいますと、就任以来、ぽろぽろぽろぽろ、まあ少しずつではありますけれども、いつまでたったらこの状況は終わるんだというようなことが続いたわけですね。

 そのたびに、一生懸命積み上げていく積み木がまた地震が来て崩れて、また一からやり直してというその繰り返しをやっていくのかという思いに至りまして、都合の悪いデータを発表するともっと都合悪くなっちゃうと思っているのかどうか、そういう状況が続くと、永遠に改ざんし続ける企業文化が生まれてしまうということを一番懸念しました。

 データが想定した枠を超えた場合でも、きちんと評価をして、全く問題がないとか、これはこの点に注意すべきだとか、そういう客観評価をきちっとできないと、小さなトラブルは表へ出すとマイナスだ、そういう文化が定着してしまうと、どんどん隠すようになる。小さいのを隠すと大きいのをやがて隠さなきゃならなくなる、大きいのを隠したらこれはやがて事故につながるということを心配したわけであります。

 だから、積極的に開示できる文化を特に原子力ではしなきゃいけない。しかも、私はマスコミにも言ったのでありますけれども、周りもちゃんと評価をして報道をしてほしい。ほんの小さなデータの違いを一面トップで、大事故が起こるのと同じように並べて書かれたら、それはもう隠した方がいいんじゃないかというふうになりかねない。だから、そういうすべてを含めて、客観的に評価をしてもらうという体制をつくりたかったわけでありまして、それで総洗い出しを命じたわけであります。

 件数は、正直言って私の想像を超えた件数でありました。ただ、各企業、企業ごとに若干温度差はあるのでありますけれども、よく洗い出したなと。延べ人数でいうと七万人に面接調査をした。もう記憶のかなたにあるようなところまで追っかけていって洗い出した。その洗い出し姿勢は評価できると思います。そういう安全に関することはしっかりやらなくちゃという文化をちゃんと定着させたいというふうに思っております。

 原子力でいいますと、十五年十月以降、法改正以降の改ざんは出ておりません。ということは、法改正がちゃんときいているということなんだと思います。ただし、過去のものでも、今の法律の中で、法改正じゃないにしても、例えば省令の改正にしても、追加していった方がいいという案件はあるわけでありますから、それを過去の案件から洗い出して追加をしていって、万全を期したいというふうに思っております。

 重要なデータを隠すことなくちゃんと開示すること、そういう文化を定着させる、それから過去の、大小にかかわらず、トラブルを安全への糧とする、全電力事業者が共有をする、もっと言えば、私は全世界が共有をしてほしいと思いましたから、IAEAに保安院から課長補佐が行きましたけれども、そのときに、こういうことをやっているからIAEAとしてもこういう体制をとってほしいという要請をあわせてしたわけであります。

 今、全部洗い出しが終わって、再発防止策も出てきました。これらを全部評価しながら、経済産業省としての再発防止策をきちんと定めていって、日本の原子力は世界に冠たる安全の原子力だという宣言ができるようにしたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 まさにそのとおりだと思うわけですが、おっしゃっていることはよくわかります。ただ、結果としてこれだけ出てきてしまったというのは、やはり残念なことであろうかと思います。

 その上で、ちょっと経産省の御対応について、もう一度さらに、先ほどの件、大事な点をちょっと確認し忘れましたのでお伺いしたいんですが、この記事、NHKの報道による、本件、水蒸気爆発ということは起こり得なかった、ちょっと誤解を招きかねない報道であったという大臣の御所見もございました。

 その上でなんですが、原稿では、本件について、原子炉の安全にかかわる重大な問題だとして、国としても詳しく解析、対応を検討することにしていますということが出ているんですね。これがまたこの原稿の信憑性を高めているんですが、こういうコメントを実際されたのか、指示をされたという事実はありますか。これは院長でも結構ですよ。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 志賀一号機の臨界事故がどのようなものであったのかについては、私どもよく調査をいたしまして、先ほど大臣から御答弁申し上げた中にあります、私どもの検討結果の中にきちんと入れたいと思っております。

 この報道にありますようなことは、私どもはNHKには言ってございません。

近藤(洋)委員 そうすると、やはりきっちり抗議をしなきゃいけない、こういうことだと思いますね。大臣おっしゃったように、いろいろな状況が、私も新聞記事を調べると、まさにトップ記事がどんどんどんどん出ている、社会面のトップ記事も出ている。それはいろいろな意味で誤解もあるというお話がございましたが、やはりそういう一つ一つのものに対して、これはあえて申し上げます、私は自分で取材をしていた経験からいって、間違った部分についてはきちんと指摘をするということの積み重ねがやはり重要なんだろうと思うんですね。

 新聞社は、少なくともジャーナリストであれば、うそは書きません。捏造はしない。しかしながら、その事実が本当に、その局面に照らして位置づけがどうなのかということについては、やはり間違うことがあるわけであります。

 私も過去を顧みて、捏造記事を書いたことはありませんが、しかしながら、位置づけとして間違ったという経験はあるわけで、そういうことをしっかり堂々と当局も指摘をするということで、やはりプレスも学習していくんだろう、こういうふうに思いますので、きっちりした抗議を求めたい、こう思います。

 そういう中で、この資料の三を見ていただきたいんですが、さまざまな事案の中で、これはIAEAが、いわゆる事故の尺度、重大事故の尺度について七分類をしておる、点検をしている尺度であります。

 この基準に照らすと、恐らく今回の事案というのは、よくわかりませんが、少なくとも、事故というレベル4以上ではないはずですね、常識的に。これは、被曝なり損傷というのが、大きく、致死量被曝というのは行われていないわけですから、レベル4以上では、明らかにない。したがって、あったとしても異常な事象だろう、こう思うわけです。

 これも恐らく、保安院に事前に確かめましたら、自動停止等のような、大半を占める、大半というか幾つかあったものについては、これは尺度以下のゼロプラスが通常でございます、こういう話でありましたから、仮に、今回の臨界に達したものについても、わかりませんが、これはこれから保安院が調べるところなんでしょうけれども、異常事象のレベル2、報告義務が課せるレベル2になるのかレベル1なのか、その辺の、場合によっては尺度以下と判断する場合もあるでしょう。

 いずれにしろ、当局に、国際原子力機関に報告する定めのないぎりぎりのラインのところが、今回、例えば東京電力、北陸電力の事案のこの二つなんだろうな、こう思われるわけですが、こういう認識でよろしいですか。これも院長、認識の問題なので、よろしいですか。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の国際原子力事象評価尺度、INESにつきましては、志賀一号機の臨界事故の状況等を現在調査検討しているところでございまして、まだ具体的なランクづけはいたしておりません。

 ただ、いろいろな今までの事故等の状況から見て、それほど高いランクにはならないものと考えております。

近藤(洋)委員 そういった前提の上で、そうなると、今回問題とすべきなのは、やはり改ざんが行われてしまった、この改ざんが行われたことが、本来、二〇〇二年の東電不正問題のときに明らかにすべきだった。要は、事故のレベルとしてはこの国際的な基準に照らしても深刻な事案ではないんだけれども、あえて言えばですよ、もちろんこの一個一個の問題はですね、ただし、あえて言えば、古い話だとはいえ、あの東京電力の不正問題の、平成十四年の、あのときに総ざらいをしたんだから、大臣がみずから過去を清算すべきだという趣旨の御発言をされましたけれども、なぜあのときに清算できなかったのか、このことがやはり残念であり、問題にすべきだったんだろう、こう思うんですね。

 その原因は一体どこにあるのか。なぜ十四年のときに、あの総点検のときに、もちろん事業者側はいろいろな理由をおっしゃっておりますけれども、やはりあの時点で、少なくとも原子力発電所に関するトラブル、とりわけ幾つかの事案については、やはりあの時点で明らかにすべきだった。ここが非常に残念ですし、あえて言えばそこが罪深いんだろう、こう思うんですが、その原因はどこにあったと大臣お考えですか。

甘利国務大臣 私が就任をして、ぽろぽろぽろぽろ、いつまでたってもこういう問題が出たものですから、保安院長を呼びまして、大臣名で指示を出せ、徹底的にやれということを相当強く言ったのであります。恐らくその東電問題のときも指示は出たと思いますが、恐らく、一般的に行政から行政指導としてこうやりなさいという指示ぐらいにしか電力会社は受けとめていなかったのかもしれません。私自身は、もうすべて洗い出せということで相当きつく言いましたし、大臣名の指示だということが伝わるようにしろと相当きつくやったものですから、電力会社も恐らく顔色が変わって、これは大変だ、徹底的にやらなきゃということでやったんだというふうに思います。

 その点、私はちょっときつ過ぎるぐらいの指示を出したものでありますから、それで事実、物すごい量が出てきたときに、かえって信頼が失われるんじゃないかというようなことをマスコミから聞かれました。私がそういうことを命じたためにかえって信頼が失われたとすると、何のためにしたんだろうかという思いは瞬間的にはありましたけれども、それじゃ、やらないでそのまま隠ぺいしていてよかったのかということを自問自答しますと、これはだれかがやらなきゃならないんだろうと思いましたので、それを私がやったということであります。

近藤(洋)委員 ですから、そこはよくわかりますし、大臣の御英断だと思いますし、電力会社側もそれによくこたえたんだろうと思います。聞くところによると、何か水力部門では明治時代の資料までさかのぼって調べたという話も聞いておりますし、その意味ではよくやったと思います。

 私が問題視しているのは、十四年の時点で、要するに東京電力はあのときにトップが引責辞任をしたわけですね。かつ、そのときの発電所がすべてストップをしているという大変な事態に陥ったにもかかわらず、あのときに判断できなかったというのは、やはりこれは体質の問題だった、それはやはりまだ隠す文化が残念ながらその後も続いていたという判断でよろしいんでしょうかね。

甘利国務大臣 恐らくトップの危機感が現場までしっかりと伝わり切れなかったんだと思っております。

近藤(洋)委員 そういう部分もあろうかと思います。

 では、ただ同時に、私は、これはやはり認識なんですけれども、認識といいますか、これは保安院に資料をいただいて、原子力安全・保安院の、いわゆる安全規制にかかわる各人員国際表というのを、各国の陣容及び定員の推移という資料を添付させていただきました。

 これを見ますと、大体我が国の原子力安全規制にかかわる方々というのは、保安院さらにはいわゆる独立行政法人等も含めて、合計で千二百人強、この数字が多いかどうかというのは、一概には言えませんが、発電所の基数等々比べますと、少なくとも国際的に見て極端に少ない数字ではありません。極端に少ない数字ではないというのがわかります。アメリカの三千五百人というのは、これは開発部隊等も入っているので、一概に、この三千五百人というのがすべてではありませんので、極端な、日本の人員が少ないという数字でもない。かつ検査官の数もある程度ふやされてはいる、こういうことだと思うんですね。

 そうだとすると、今回の問題というのは、規制当局が幾ら規制をかけても、幾ら調べても、恐らくわからない案件だったんだろう、こう思うんですね。これはもう時間の関係で、私はそう思いますし、恐らく保安院側もそうお答えになると思うんです。これは、隠す気になれば幾らでも隠せた問題、要するに、規制当局が幾ら規制をかけても発覚できない事案の性質なんだろう、こう思うんですね。

 そうだとすると、そのトップの意識の問題も、下まで通っていなかったという問題もあるんでしょうけれども、原子力安全委員会の鈴木委員長にお越しいただいていますけれども、その意識が下まで伝わっていないのも当然あるでしょう。ありますけれども、それとはまた別に、あれだけ二〇〇二年に痛い目に遭いながらも、残念ながらまだ発覚できなかった。今回、ようやく出てきたということは、何か意識改革だけでない部分というのもあるのではないか、こう思うんですね。

 お伺いしたいのは、まず、そもそもの前提で、これは誤解を恐れず言うと、原子力発電所が寸分の狂いもなく動くものだと思っている我々自体が間違っているんじゃないか。ある意味で、それは機械ですから当然ずれる。要するに、安全であるということ、言葉の使い方に気をつけないといけませんが、完璧であるというふうな思い込みも、これはちょっと改めるべきではないかというのが一つ。ちょっとこれはエモーショナルな話でありますけれども、それが一つ。

 あともう一つ、あわせてお伺いしたいんですが、やはり余りがんじがらめに検査、トリプルチェック、いわゆる三段階の定期検診なり随時検診、検査するものなり、三段階の検査がありますね、発電所に対しても。この手法が果たして本当に即しているのかどうか。手続の煩雑さも含めて、果たしてどうなんだろうか。手段が目的化しているんじゃないかと若干感じざるを得ない部分もあるんですが、安全委員会の委員長としての御見解をお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。

鈴木参考人 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 第一点目の、安全で完璧過ぎるんじゃないかということの御質問についてですが、私も、先生おっしゃるように、原子力安全につきましては、もともと安全に設計し、つくっておくということが大原則になっております。したがいまして、現場においても、そのようにもともと安全なんだからという、いわば油断、甘えというものがあってはならないということを常に感じております。そういう意味で、私ども、これからいろいろ考えていかなきゃいけないと思っておりますが、一方、やはりもともと安全に設計し、つくっておくということは大事なことだ、こう思っています。

 したがって、何が大事かといいますと、問題は、そのような多重防護という実態的な安全性の確保とともに、そのことを世の中に説明する手続的な安全性なんだと思っています。手続的な安全性につきましては、一つは安全規制という法的枠組みに基づいた、いわば義務ですね、これとともに、社会的安全の非常に高い原子力安全分野においては、事業者みずからが社会に直接安全について説明する責任を担ってほしい、こう思っております。この手続安全性を通じまして、そのような油断、甘えというものが生じないようにしてほしい、こういうふうに安全委員会としては考えております。

 次のお尋ねの、規制の強化ということが、規制そのものが目的化していて、いわば、何といいますか、現場に過度の負担を与えているようなことがないのかという趣旨の御指摘でございます。

 この点につきましても、私は先生と同じような感じを率直に持っておりまして、安全委員会としても今後考えていかなければいけないと思っております。しかしながら、このように社会的関心の高い原子力安全については、どうしても実際問題として規制の強化というものを必要とすることも、これはやむを得ないところではないかと思っております。

 私は、その規制の結果が、現場の人たちに過度の負担を与えないように工夫していくことが大事だ。例えば、これは私見でありますが、IT技術などをさらに積極的に導入して、いわば書類の管理等がもっと合理的に行えるようにする。そういうことを通じて、データの改ざんをしないではなくて、できないような仕組みをつくっていく。そういうことは、しかし規制で要求するのではなくて、事業者がみずからそのことに取り組んでほしい、このように安全委員会としては考えております。

 ありがとうございました。

近藤(洋)委員 私も、せっかく委員長が、まさに原子力安全委員会委員長の御発言というのは、これはある意味で、政府のこの安全にかかわる最高責任者の御発言ですから、ぜひそういう考え方でやはり臨んでいただきたいなという気が私個人的にもいたします。

 あわせて、もう一つお伺いしたいんですが、要は、大臣の意思で総点検をされた、こういう形で出てきた。これを受けて、もう一回規制範囲というものを、規制のあり方も含めて、ここはもう一度区分する、仕切り直すということも含めて、総チェックをかける必要もあるのではないかという気がいたすんですが、いかがでしょうか。

 要するに、政府として、やはりもう一回、確かに甘利大臣のおっしゃった、トップの意思が下に伝わらなかったという電力会社の体制の問題も、これも重要であります。これはまた参考人質疑で伺ってまいりますが、別の機会に。ただ、やはり政府の規制の仕組みのあり方というのも、仕分けというのも、もう一度総点検する必要があるんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木参考人 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 今回の事案で明らかになっておりますのは、プラントに共通的にやはりよく考えてもらわなきゃいけない問題と、やはりプラントの個性といいますか、例えば、運転開始後の年数が相当違うものが出てきております。そういう意味では、プラントそれぞれの特性に応じた弾力的、合理的な規制というものが今後は志向されていくべきだというふうに安全委員会は考えております。

 そのことについては、実は保安院は、既にそのような方向性についてその方針を打ち出しているというふうに私どもは理解しておりまして、今回のこのような出来事をぜひ教訓として生かす観点から、保安院においては、既に打ち出している基本的な考え方をいわば加速する方向で考えていってほしい。そういうことを通じて、今先生御指摘の、新たな規制の検査のあり方というものに進んでほしい、このように考えております。

近藤(洋)委員 平成十四年の十月二十八日に、原子力安全委員会は、これまでの歴史の中でたった一度の勧告というのを出されていますね。内閣総理大臣小泉純一郎名で、原子力安全委員会が総理大臣名で当時の平沼大臣に対して出されている。

 これは、東電不正事件を受けての話でありますが、これがたった一回なんですね。たった一回しか出していないのかと、これも若干びっくりしたんですが、原子力委員会に至っては、これまた一度も出していない。私は、これはまたこれで問題だと思うんです。一度も勧告を出していないというのは、まさに伝家の宝刀だから抜かないという理屈もありますが、しかしどうかな、こういう気がするんですが。いずれにしろ、この一回の伝家の宝刀を抜いた、このときにも、やはり今と同じように全く共通することを幾つか書かれているんですね。

 ただ、残念ながら、やはり大臣もみずから残念だとお認めになったように、古い事案だったけれども、二〇〇二年のときに見つけられなかった、やはりみずから言わなかった。よく言ったと思いますよ、電力会社も。だけれども、それとてやはりメーカーからの指摘等々もあって発覚したという部分もあるわけですから。残念ながら、やはりまだ体制が、保安院が前向きに進んでいるとおっしゃったけれども、さらにもう一度、ここは甘利大臣にお伺いしたいんですけれども、点検をする必要があるんじゃないか。

 そこで、一つぜひお伺いしたいのは、ペナルティーのあり方なんです、ペナルティーのあり方。今回の事案を受けて、経産省としては何らかの行政処置をされるんだろう。するかしないかも含めて御検討されるということでしょうけれども、その際に、各社独自に、それぞれ各社の責任を民間企業としてとられる、そう思いますが、しかし、このペナルティーが、運転の停止というのが本当にペナルティーなのか。要は、操業を停止させることがペナルティーなのか。

 確かに会社としては、事業計画にとっては痛い話でありますけれども、いたずらに運転停止させられてしまうと、運転停止だ運転停止だというのはこの程度の、この程度というとちょっとあれですけれども、こういうことで、すぐ運転停止というふうになってしまうことが果たして本当のペナルティーかというと、私は議論の余地があるんだろう、こう思っているんですね。

 このペナルティーのありようについても含めて、これは行政処分ですから、なかなかルール化できるようなものでは、どうルール化ができるかという部分もあるんですが、運転停止の運用も含めたペナルティーのあり方も含めて、規制のあり方について、大臣、これを機にお考え直すことはございますか。

甘利国務大臣 今の近藤先生の御指摘とほぼ近い思いを私も抱いております。きょうこの時点で結論づけるわけにはいきませんけれども、各社からの報告、再発防止を受けて、今、省としての再発防止策をきちっと組んで、行政の対応も近々にどうしていくかを結論づけていかなきゃならないわけであります。

 おっしゃいますように、行政処分による運転停止というのは、安全が確保されるということを確認するために非常事態宣言でやるわけであります。それで、安全が確保されていることが確認されているものを、いたずらに運転停止という行政処分を振り回すのがどうかという問題提起は確かにあろうかと思います。

 要は各社が、特に原子力は、安全ということの信頼が失われたら、立地する、設置していく推進力が落ちていくんだということをぎりぎりしっかり受けとめて、推進したければ安全を確保しよう、推進したければ安全文化を徹底的に確立しよう、そういう意識になってほしいと思うんです。

 今回の事案もたくさんありましたけれども、要は何かというと、隠さず出せばいいんです。要するに、隠しちゃうということが、小さいことを隠すと、だんだん大きいことまで隠さなきゃならないし、そうすると、下手するとそれが事故につながりかねませんよ、どんどん大きくなっていくのを隠していくと。だから、開示をする文化をつくる。そうすれば、問題が出たにせよ、ごく小さいところで全部対処をして摘み取ることができる。そうすれば日本の原発は、今でもそうだと思っていますが、これからは世界一完璧に、完璧という言葉がどうかは別として、世界一安心、安全だろうと胸を張れると思うのでありまして、そこの行政の対処の仕方については、先生がおっしゃる指摘はよくわかりますので、慎重に検討していきたいと思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。

 悪魔は細部に宿るということわざのとおり、やはり細部の細かなのが積み重なってレベル7の事故につながる、こういうことでありましょうし、最後に、原子力委員会の田中委員長代理にお越しいただいているので、お忙しいところ恐縮でございます。時間ですので、最後に一問だけ伺います。

 要は、今までの議論も踏まえて、原子力委員会としても、現行の体制の見直し等を含めて何らか意見をすべきではないかと思います。とりわけ、これは経済産業省の体制で、推進部隊のエネ庁と保安院、これは別々の組織でありますけれども、そうはいっても、アクセルとブレーキが本当に一体でいいのか等々含めて、これはやはり、国の原子力政策の体系のあり方についても含めて、この保安のことも含めて、原子力委員会が一度も勧告をしていないというのは、私はちょっとショックだったんですけれども。それこそ、これを機に考え直すこともあっていいのではないか。原子力委員会としての御所見を最後にお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。

田中参考人 ありがとうございます。

 先生も御承知のように、我が国の安全規制は、平成十三年に原子力安全・保安院が設置されまして、その後、十四年度に、従来からの安全行政の責任を果たしてまいりました原子力安全委員会について、ダブルチェック体制の機能の強化を図ってまいりました。御承知のように、平成十五年度には法の改正も行いまして、検査体制を強化するなど、独立性が明確で、しかも効果的な安全規制を行う条件の整備を国として図ってきているところであります。

 原子力委員会としては、平成十六年から十七年にかけて原子力政策大綱の策定を行ったわけでございますが、その過程で、原子力安全・保安院を分離させるべきという、今の先生の御指摘のような議論も行いました。しかし、これまで、今御説明申し上げましたような安全規制についてのさまざまな取り組みを行ってきているところでありますので、現在の段階においては、原子力安全・保安院が一番大事な役目としては、透明性の高い規制行政を行って、その内容について国民に十分な説明責任を果たすべきであるということが大切だという議論になっているところであります。

 原子力委員会としましては、平成十七年の政策大綱の後、重要な政策分野につきましては、間を置かず政策評価を行ってまいりました。その第一番目に我が国の安全確保についての政策評価を行いまして、昨年、その評価を取りまとめております。こういった評価を行いながら、今先生がおっしゃいましたような勧告という形ではなくて、そういう評価をいただきながら、国民の皆様の意見もしんしゃくしつつ、制度の妥当性について、随時、行政関係機関あるいは事業者に意見を表明させていただきたい、そういうふうに考えております。

近藤(洋)委員 時間ですので、終わります。

上田委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 近藤委員に引き続きまして、今回の事案を中心に質問させていただきたいと思います。

 甘利大臣の指示に基づいて出てきた今回の総点検でありますが、私は、この経産省の報告書も各電力会社が出した報告書も大体読ませていただいたんですが、今回のことに関しては、私は、甘利大臣の総洗い出しを指示した決断というのは、率直にそこは非常にすばらしい御決断だったというふうに思います。平成十四年ですか、東電のあのときも含めて、今までやはりうみを出し切れなかったのをここで一たんうみを出して、原子力事業者もそうでありますし、役所も信頼を取り戻そうというこの決断に関しては、私は、非常にこれは御英断だったのではないかなというふうに思っています。

 その前提で、幾つか気になることがあるので、まず、政府委員で結構ですので、確認をしたいんです。

 一つは、特に今回の発電施設に関する総点検の中で、どうしてもこれは話題になり、そして、我々が危惧をするのはやはり原発に関するものなのですね。原発に関するものの中でも、やはり一番大きく報道でもされておりますし、私もこれはと思ったのは制御棒の引き抜け。これは改めて言うまでもありませんが、臨界事故という形で、普通は、発電をするときには当然臨界をさせて、それを制御棒を使って制御する。その制御するはずの制御棒が点検中とはいえ引き抜けてしまったという、そこが一番深刻に報道されているのは当然だと思います。

 もう一つ、私がこのニュースを聞いた直後に思ったのは、これは深刻だとすれば、同じ沸騰水型の原発で、しかも制御棒が抜けているのが十カ所あったわけですね、昭和五十三年から。これはかなり構造的な問題ではないかという危惧を私は持ちました。

 そういう観点からこの報告書を見ておりますと、実は、この十件に関しては、基本的には、電源操作のミスであるとか不手際であるとか、そういう書き方がされておって、すべて電力会社の責任ですということで書かれておるんですね。

 きょう部会でも、民主党でヒアリングをいたしましたときも、電力事業者の方もそういう言い方をしているんですが、これはこういう理解で本当によろしいんですか。これは政府委員で結構ですので、お答えいただきたいと思います。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 制御棒引き抜け事象につきましては、これまで十件が電力会社から報告をされておるところでございます。それらは電力会社が試験や試運転を行っている際に起こったものでございまして、その原因につきましては、志賀原子力発電所一号機の事案を含む八件につきましては制御棒駆動水系の操作ミスによるものであり、残りの二件は電動弁の電源の操作ミスであるという報告を受けておるところでございます。

細野委員 事前に伺ったところでは、各メーカーの側にも調査を指示して、報告書が出ていると聞いています。

 では、確認ですが、今の時点では、保安院としては、基本的には、これはひとえに電力側の問題であって、メーカーは責任はない、そういうふうに解釈している、そういう理解でよろしいでしょうか。

広瀬政府参考人 メーカーからも報告を聴取しておりまして、四月六日に受けております。

 先ほど申し上げました十件の制御棒引き抜け事象の原因、また、メーカーからの報告をすべて勘案して、この制御棒引き抜け事象の原因等について現在精査を進めておるところでございます。

 基本的には、制御棒駆動機構そのものに問題があったとは現在考えておりませんが、このような操作の手順がメーカーによってどのように提案され、また、電力会社がそれをどのように受けてこれを実現していったのかということにつきまして、なおこれからよく精査をしていきたいと考えております。

細野委員 評価と対応というのを間もなく出されるということでありますから、そこまでにぜひ御検討いただきたいと私は思うんです。

 なぜこのことに私がこだわるかというと、先ほどもいろいろな方から御発言がありましたけれども、日本の原子力メーカーというのは非常に期待をされていて、例えば、ロシアなんかにも今度東芝は進出するという話がありますし、中国などでもそういうビジネスチャンスをねらっている。そのときに、原子力メーカーとしての信頼性がどうなのかというところは、これは相当これから問われてくるんだろうというふうに思っているんですね。

 私がもう一つこの問題でやはりこだわるのは、原子力発電所というのは、つくったら終わりで、納入をした後は電力でやってくださいという話ではなくて、私も何度も原発に足を運んでいますし、いろいろな方の話を聞いていますが、原子力発電所の中に、例えば日立さんですとか東芝さんとか三菱さんのヘルメットまで置いてあって、日常的に出入りをして運営までしているわけですね。マニュアルも恐らくメーカーの側がつくっているわけですね。

 そのマニュアルをつくって一緒にやっている中で、そういうあらゆるヒューマンエラーが起こる可能性があるというのも、これもメーカーの方がもうわかっているはずなんですよね。それがわかっていて十件制御棒の落ちが、しかも沸騰水という同じ型で起こっているというのは、これは私は率直に言って、電力会社とメーカー側は、電力会社は最大の責任ですよ、最大の責任ですが、ある程度これは何らかの問題があったのではないかと私は思います。

 再度申し上げますが、ソフトも含めて海外にこれから売るわけですよね。メーカーの側の責任はどこにあるのかということもきちっと明らかにして、そこは、日本の場合は、日本の電力会社はかなりきちっとやっていると私は思っていまして、他国のいろいろな原発を運営する会社の、いいかげんにやるとは申しませんが、いろいろなケースも含めて、ソフトもきちっと売るだけのノウハウを持っていますよというところが問われていると思っていまして、そこをきちっと評価した上で、この評価と対応というのを出していただきたい、メーカーの部分も含めて。

 そう考えますが、経済産業大臣、御所見いかがでしょうか。

甘利国務大臣 私、この制御棒の引き抜けの事案を全部並べて、原因の項目、どうして起きたのかというのを全部チェックしました。そうしたときに、構造上の問題ではないということは確認されています。操作上のソフトの部分、マニュアル上の問題がないかと。見ましたら、なぜそういう状態が起きるかというと、閉めちゃいけないバルブを閉めているんです。全部に共通しているんです。ということは、抜け落ちないように水圧がかかるのが、片方の水圧をとめて片方の水圧が強くかかっているものですから、だから抜け落ちるんです。

 何で閉めちゃいけないのが閉まっているのと。今はそういうことはマニュアル上もないんでしょうけれども、当時、そこをちゃんと強調して、これはこのときには閉めちゃいけないとかさわるなとか、そういうマニュアルがあると思うんですが、そこの注意の仕方がきちんとできてなかったんじゃないのか。

 そこで、私は、このマニュアルについても確認しろというふうに指示をしたのでありまして、ハードはしっかりしているのに、ソフト部分に手落ちというか、誤解をされるようなマニュアルの書き方だったら同じようなトラブルが起きるのでありますから、そこを含めた日本の炉メーカーとそれからオペレーションの信頼性を確保していかなきゃいけないということで、今事情を調べているところであります。

 おっしゃるように、ハードの信頼性だけじゃだめですからね。ヒューマンエラーはどうして起きるのかというところもしっかりと解析をしていかなきゃいけないというふうに思っております。

細野委員 大臣がそういう問題認識を持っていらっしゃるということでありますから、それをきちっと反映した評価が出てくるのを期待しています。率直に言って、電力会社の側は今それを言えない立場ですから、最大の責任が当然電力会社にあるわけですから、経済産業省なり保安院なりがきちっとそこを見ないと、本当の意味でトータルの意味での問題解決にならないと思いましたので、今指摘をさせていただきました。

 もう一点気になるのが、なぜマニュアルが徹底をされなかったかという部分なんです。

 いろいろな問題が恐らくあったんだろうと思うんですが、恐らく潜在的にあったのではないかというふうに私が予想するのが、定検のときに、もちろん電力会社は当然定検の主体なんですが、いろいろな子会社がかかわっていて、いろいろな会社の方がそれに関与するということ。

 もう一つ、常に原子力の場合問題になるのは、地元に対する貢献を求められますから、地元の方々をできるだけ雇い入れて、経済的にもそれを還元しよう、そういう観点から定検をやるという問題ですね。

 保安院にちょっと確認をしたいんですが、定検のやり方の中に、電力会社に責任は課すんだけれども、子会社であるとか、そういう関連の人間がさまざま入ってくることも想定をして、そういう部分の何らかの、どこかの偽装請負みたいな話とも若干似てくるんですが、きちっと事業者側の責任を確認するようなところは再度点検をされた方がいいのではないかと思うんですが、今そういう部分についてどういう配慮がなされているのか、それを教えていただけますでしょうか。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣から答弁のありました平成十五年の十月に大幅な制度改善をさせていただきました。その中で、私ども、原子力事業者の安全という品質をどのように保証するか、すなわち、品質保証の体制を私どもが見る、検査をするという仕組みを導入させていただきました。

 これは、それぞれの事業者のトップがどのような形で品質保証、安全という品質を確保していくのか、どのように臨んでいるのかということも含めまして、品質保証を見るということにいたしております。

 この品質保証は、電力会社がまたどのようにそれぞれのメーカー等と連携をして保守作業をやっていくのかということも含まれるわけでございまして、私ども、この品質保証という観点から、原子力事業者の定期検査中の保守管理も含めた作業をよく見ていきたいというふうに考えております。

細野委員 ここはどの程度定検の中に書けるかという問題もあるので、私もちょっとまたゆっくり見てみたいと思うんですが、子会社や地元企業を果たしてどんどん入れるのがいいのかということも含めて、私は、基本的にはもう少し事業者の側が責任を持つべきだという考えなんですが、少し検討していただきたいというお願いです。

 この問題に関して最後にもう一度大臣に伺いたいんですが、今回のこの事件が非常に大きな転換点になるとすれば、過去をすべてリセットしていてこれからのことをしっかり考えられるという、過去を引きずらなくていいという意味では、ここできちっと解決をすればですよ、これは大きな意味があるんだろうというふうに思うんですね。

 私は、やはりこの報告書をいろいろ見ていて、北陸電力さんなんかも分厚い報告書を出しているので、全部見たわけじゃありませんが、ざっと気になったところを見た中で、やはり非常にショッキングなのは、これだけデータ改ざんが行われていたのか、虚偽報告が行われていたのかと。事の大小はもちろんあるんですが、これだけ隠ぺい体質みたいなのがある会社に本当に原子力というのを任せられるのかと、率直に、やはりこれを丁寧に読むと疑問に思うんですよね。

 かといって、やはりこれはやっていかきゃならないという現実もあり、ここで一たん過去を清算してきれいにしたのであれば、これから電力事業者としてこれをやったら、もうそれこそ、先ほど勧告の話もありましたが、原子力発電をやる資格ないですよと。それが、それこそ臨界とか制御棒抜けみたいな事象に着目をするのか、もしくはそれを報告しなかったという事後的な対応に着目するのかはわかりませんが、そこを何らかやはり線を引いて、これからはここが一線ですよというのは、先ほど近藤委員もありましたが、引いた方がいいんだろうというふうに思うんですね。

 あえて、ちょっと例としては余り適切ではないかもしれないけれども申し上げると、放送法に基づいて、菅大臣が非常に放送事業者に対して厳しいことを言っていますね。あれは、私は危険性もあるなと思っていまして、正直どうかなとも思っているんですが、これから慎重にいろいろな事実関係を確認して放送事業者は放送するだろうという意味においては、恐らくそれなりに効果があるだろうと思うんですね。

 いや、あえて処分をして原発をとめようということでなくて、そういうことが起こらないという意味で、もう一回、リセットをしたんだから、ここから一線を引き直す時期に来ているんじゃないかというふうに思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

甘利国務大臣 今回、電力各社が総点検をしたというその点検作業を見てみますと、相当な決意、ここできちんとできなかったら、電力事業の信頼性、なかんずく原子力発電の信頼性は永遠に回復できないという危機感を持ってやったと思うんです。これは、そこまでするんですかとマスコミから聞かれたほど徹底的にやりました。

 また、その後少し出てきていますのは、恐らく、あっ、こういう視点でのチェックをしなかったということに気がついた電力会社が、これからもあるかもしれません、あっ、こういう視点でのチェックがうちにないな、では、これをやらなきゃと。それはそれでどんどんやってもらえればいいわけであります。

 要は、恐らく現場の技術者は、こんな小さなことは、数字の違いはほとんど、ほとんどというか全く原子力安全に影響がない、だけれども、発表すると大ごとになるな、だったらということになっている部分が多いし、事実、改ざんデータのほとんどは、原子力の安全性にほとんど影響はない数字なんですね。もちろん、深刻なのもありますよ、だけれども、大多数は。だけれども、それをちゃんと開示できる体制にしないと、やがてこれが大きいことにつながっていきますよという警鐘を私は鳴らしているのであります。

 それをこの大がかりな作業で、電力業界を震撼させるような作業の中でみんなが学んでいっているわけですから、これを契機に、もう隠さない文化、想定されたデータの範囲を超えちゃったデータでもちゃんと評価をする、これはどういう影響があるのかという客観評価をちゃんとする、なぜこうなったか、こういうデータ、数字が出ているのかということを検証する、影響も評価をする、そういう体制ができ上がるし、それをつくらなきゃならないと思っていますから、そこの転換点にしたいと思っていますし、なっていくであろうと確信をしております。

細野委員 大臣、ちょっと確認ですが、まだすぐに御答弁いただけるとは思っていませんが、仮に、過去ではなくてこれからそういう隠ぺいなりデータの改ざんが深刻なものとしてあったという場合については、これは当然処分を考えられる、そういうお考えでよろしいですか。

甘利国務大臣 今やっておりますのは、これから見つかったものでも、見つかった時点ですぐ開示をしなさいということをやっているわけであります。そういう体制をとりながら、重大案件について隠ぺいをしようとする行為があるとしたら、これは見逃せない行為だと思っております。

細野委員 見逃せないというのは行政処分も考える、そういう趣旨でよろしいですね。はい、わかりました。

 今、今回の事案について主に聞いてまいりましたが、この問題が出てきたことで、本当は違う問題なんだけれども、同じく深刻な影響を受けるのではないかというふうに懸念をされるのが、最終処分の問題ですね。

 東洋町の問題は、今ちょうど大変混乱した状況にありますが、大臣、町長がおやめになって、今度二十二日に選挙だというふうに聞いていますが、いろいろ記者会見などでも盛んに発言をされているのでそれはよく承知をしておるんですが、事ここに至って、経済産業大臣としてこの問題をどういうふうに扱おうとされているか、簡潔に御答弁をまずいただきたいんです。いかがでしょうか。

甘利国務大臣 間もなく投票が行われます。その前に私がこの点に関する評価の発言をしますと、それが恐らくひとり歩きをする事態になると思います。ですから、投票が終わった時点で、どう考えているか等々いろいろ御質問が来ると思いますが、それにお答えをしていきたいと思います。

 今の時点では、私の意図を離れてその言葉がひとり歩きして、それ自身が選挙に対するいろいろな意味での影響を与えてしまうということになりかねないということを懸念しておりますので、終わってからにしたいと思います。

細野委員 住民投票という話もあったようです、条例をつくるという話もあったようですが、今回、選挙という形になっていますから、ある種、そこが住民投票的な位置づけを持つんだろうと思うんですね。そこまで御発言をされないというスタンスは、逆に言うと、それまで新たなアクションを起こさないという御趣旨でしょうから、あと十日ほどですけれども、それは大変妥当な御判断だと思います。

 その上で、今の時点では、逆に、大臣はこの問題について必ずしも前向きに御答弁いただけないというのはわかった上なんですが、私は、最終処分についてはいろいろなオプションを考えた方がいいだろうというふうに思っていまして、そのことについてちょっとエネ庁の長官に幾つか質問をしたいと思います。

 まず最終処分なんですが、最終処分というのは地層の下に埋める話ですから、日本の場合には、今ガラス固化体が全部で千二百本から三百本ぐらいあるんですか、潜在的には、原発のプールの中であるとかフランス、イギリスへ行っているものも含めると、換算をすると一万九千三百本分ある、二〇二〇年には四万本に達するというので大変だということになっているんですが、まず前提として、これは、いつ最終処分場を少なくともつくらないといっぱいになってしまって回らなくなるのか、そこの事実関係としてはいかがなんでしょうか。

望月政府参考人 回らなくなっていっぱいになることをターゲットに実は我々しているわけではございませんけれども、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律というものの中で、この最終処分に関する計画の中で定めているものがございます。

 これは、具体的には、しりの方からいきますと、平成四十年代後半を目途に最終処分を開始するということをターゲットにして順番にやっていくということでございますので、そういう意味で、先生御存じの調査のプロセスを考えていきますと、そろそろできるだけ早期に調査地点を決定してスタートしていくということが前提であろうかと思っております。

細野委員 長官、確認ですが、二〇四〇年でいっぱいになるのでどうしてもそこにやらなければならないという話ではなくて、要するに、それが閣議決定の今の日本としての目標だ、そういう理解でよろしいですか。

望月政府参考人 もともと、ガラス固化体にしてから三十年ないし五十年はまず冷ましてから最終処分地に持っていくということでございまして、一つ念頭にございますのは、一番最初にもう既に海外で再処理されて日本に届いているものが平成七年に始まっているわけでございまして、これが三十年、五十年たつころというのが大体その時期に入りますものですから、そこから入れるものがなくて放置される状態が生ずるということは避けたい、こういうことであります。

細野委員 要するに、最終処分できるガラス固化体が二〇四〇年あたりには新たに発生をする、初めて発生をする、そのときに中間貯蔵とか中途半端な形にするんじゃなくて最終処分したい、そういう理解ですね。

 もう一つ確認をしたいのが、先ほど牧原委員の方からも核燃サイクルの話があったんですが、日本は最終処分も含めて核燃サイクルをどこまで完璧なものにするつもりがあるのか、ここも一つの論点なんですね。

 ちなみに、私もちょっといろいろ最近調べて、エネ庁の方も出していただいて、例えば、一つのボトルネックは、この間ロシアへのウラン濃縮のことを大臣に質問しましたけれども、ウラン濃縮は、日本の場合、これは生のウランを持ってきた場合も再処理の場合もウランというのは出るんですが、それも含めて日本国内で濃縮できるのはわずか七%ですね。九三%は外で濃縮している。再処理もプルサーマルももちろんやりますし、高速増殖炉も、イーターもいろいろ考えているんでしょうけれども、再処理のネットワークが完成をするのは、これは相当先になりますね。

 そういうことも含めて、日本は完璧な核燃サイクルを他国に全く依存せずにつくるというのは非常に難しい、私はそう思っているんですが、その辺はエネ庁としてはどういうスタンスでいらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。

望月政府参考人 先ほど来の御議論にもございましたように、エネルギーの安定供給という観点から、我が国としてできるだけ自立した核燃料サイクルの実現をするということが政策目標であろうかと思っております。

 したがって、核燃サイクルの中でも、濃縮、再処理それから原子力発電プラントという部分を戦略的産業分野と位置づけてやるということでございます。特に、再処理については、核燃サイクルの自主性を確実なものにするという観点から、国内で行うことを原則としているということでございます。したがって、例の原子力基本法の自主、民主、公開というところの自主ということを追求しようとすれば、できるだけ大事なポイントについては、我が国国内で自主的にできるような体制を確立するというのが大きな基本理念かと思っております。

細野委員 もちろんそうなんですけれども、例えば、ウラン濃縮なんか物すごく大事だと思うんですよ。今ウランでイランも問題になっています、北朝鮮も問題になっていて、ウラン濃縮というのは原発にも原子力兵器にも転用できるという意味で極めて重要ですね。そこがわずか七%ですね。

 これも含めて、本当に一〇〇%に近づく、そういう施策をエネ庁として持っているんでしょうか。

望月政府参考人 ウラン濃縮につきましても、できる限り自国内における濃縮というのを目指しまして、現在、今私どもの計画の中では、国内需要の約三割程度相当についてまでは新型の遠心分離機を開発中でございまして、そこは早晩私どもの目標になっていくだろうというところでございます。

細野委員 もう時間もなくなってきたので、最後に大臣にお伺いしたいんですが、ウラン濃縮をロシアに依存していますね、再処理をフランスとイギリスに依存しています。今これ、最終処分場を日本につくろうというので頑張っているんですが、再処理とかウラン濃縮と比較をしても、最終処分というのは相当ハードルが高いと思うんですよ。未来永劫そこにあるというイメージを普通の人間は持ちますから、非常にそこはハードルが高い。

 私が強調しておきたいのは、核燃サイクルというのを考えたときに、国内でできるだけやるという努力は必要だと思います。ただその一方で、完璧にやるのはもう無理だ、これは非常に難しいということをわかった上で、私は最終処分の問題もいろいろなオプションを検討すべきだと思うんですね。

 昨年オーストラリアがハワード首相のもとタスクフォースでエネルギーに関する報告書が出たのを大臣、御存じでしょうか。オーストラリアの報告書、諮問機関から報告書が出ていまして、オーストラリアも原子力をやろうとしているということが非常に大きくニュースになって、国内は環境派も含めてオーストラリアは大騒ぎになっているんですね。

 ただ、私がこの報告書を読んで、実は違う部分に注目をしまして、これはおもしろいなと思ったのは、オーストラリアは、原発に取り組むと同時に、いろいろな核燃サイクルについても記述がありまして、その中で、オーストラリアにおける長期高レベル放射性廃棄物管理の方法として、国または国際的な地層処分を検討する余地がある、つまり最終処分場としていろいろな形で受け入れも可能性ありますよということを、可能性ですよ、書いてあるんですね。もう一つは、オーストラリアは、アメリカにその最終処分場を頼むことも考えられますよということも違うところに書いてあるんです。

 大臣、今、東洋町でそういうことになっているので、いや、国内でやらずに海外でやりますみたいなことは言えないにしても、私が申し上げたいのは、二〇四〇年の時点からいよいよ最終処分できるガラス固化体が初めてできるんですね。二〇四〇年、もう今から三十三年後ですか、そういう国際的ないろいろな動きがそれまでも出てきます。加えて、本当に地層で処分するのがいいのかどうか、宇宙処分みたいなものもこれは夢物語ではなくて、まじめに検討された経緯がありますよね。

 そういうことも含めて、国際的な枠組みの中で最終処分は考えていくべき時期が私はもう数年後にある程度来るんじゃないかというふうに思っているんですが、今の時点ではお答えしにくいと思いますが、最後に大臣の御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。

甘利国務大臣 よくおわかりで御質問をされているわけであります。

 今、東洋町初め、それ以外の地域からもぜひ立候補地点が出てきてほしいと思っているさなかでありますから、原則的には国内で候補地が一刻も早くできるように最大の努力をしたいと思っております。

細野委員 今の時点の御答弁ではしようがないと思いますが、ちょっとオーストラリアの報告書は御関心があると思うので、ぜひ参考までにごらんをいただきたいと思います。

 以上で終わります。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 産活法の質疑、採決は午前中で区切りとなりましたけれども、若干その内容に関連してやり残したことがありますので、質問させていただきます。

 産活法の中で、サービス産業の生産性向上、重点六分野の一つとして人材支援サービスがあるわけですけれども、いろいろ経産省の出しています、例えばサービス産業についての中間とりまとめなどでも、派遣、請負の生産性向上のポイントが人材育成だということを強調しているんですね。そのためには、ユーザーとベンダーの提携を深めること、あるいはパートナーの絞り込みとか資本協力などということを言っているんですけれども、これは要するに、結局、派遣・請負会社というのが、独立して専門業務を担える外部人材として十分育っていないという状況の反映だろうなと思って受けとめておりました。

 そこで、具体例として御紹介もし、大臣に御感想なりをお聞かせいただきたいのが、キヤノンのセル生産方式についてなんです。

 配付資料に、これはキヤノンの冊子をコピーしたものですけれども、題字で、「キヤノンは、国際競争力をより高めるために、″セル生産″の進化と、自動生産システムの確立をすすめています。」ということで、左上の「生産活動」のところに、「キヤノンの生産革新は、セル生産の開始とともに大きな飛躍を遂げました。」四行目に、「セル生産は、地域ごとの特性をプラスしながら、世界の全生産拠点へと拡がりました。必要な時に必要な数だけ作るジャストインタイム生産など、柔軟な生産体制が可能になり、刻々と変化する販売状況に合わせて生産数量を調整するサプライチェーンマネジメントを高い精度で行なっています。」

 右下にセル生産について若干紹介がありますけれども、下の方の行にありますように、各人の技能レベルに応じて工程数を調整したり、生産数の加減も容易に行える、これがだから生産性向上に非常に力を発揮するんだということです。右上に写真がありますけれども、これが大分キヤノンの大分事業所。大臣が視察されたのはこちらの方なんでしょうか。

 紹介しましたように、大分キヤノン全体は八五%が派遣、請負の労働者ということで、いわば、セル生産の現場、各区画、セルごとに請負会社が請け負っているという形がありました。私が拝見したのは安岐事業所なものですから、ちょっと大分事業所の現場そのものは拝見していないんですけれども、同じように、多分セルの区画があって、それを請負会社が請け負って、看板かなんかも出て、きちっと区画して、区分けしてやっていますよということが紹介されていたと思います。

 しかしながら、そうはいっても、生産工程とか生産調整や工程の調整、当然それは人員の調整も必要ですから、私は、新商品の投入などを含めて、発注者側、キヤノン側のやはり具体的な指揮命令がないと、請負会社の生産もセル生産方式じゃままならないんじゃないかと率直に思いました。

 大臣としても、拝見された中で、キヤノンの指示なしに請負会社の生産というのは成り立たないというのがセル生産方式の実態なんじゃないのかなというのが私の率直な受けとめなんですが、大臣はその点いかがでしょうか。

甘利国務大臣 キヤノンも一部上場の日本を代表する企業の一つでありますから、きちんと法令に従って対応しているというふうに信じておりますし、もし法令に違反するようなことがあれば、それは法令違反として監督行政庁から改善命令がその会社に向かうということになります。

塩川委員 やはりセル生産方式という形態自身が請負形態とマッチングするのかなというのが率直な思いでありまして、研究者の方でも、このセル生産方式は微細な部品を組みつける工数は多いし、タクトタイムが短い、したがって、キヤノンの社員が作業手順などを指揮命令しなければ作業がスムーズに進まないし、異常への対応も困難になる、こういう指摘もありまして、請負会社が請け負う形のセル生産方式というのは、これは偽装請負ではないかという懸念が生じる内容だと思います。

 私、大分キヤノンに行きまして、相手の方にお聞きして、セル生産方式というのは請負会社の方が請け負っているんだけれども、これは指揮命令という形で偽装請負になるんじゃないのか、特に新商品なんかを投入する場合にはそういった問題が出てくるんじゃないのかということを聞きましたら、キヤノンの方のお答えというのが、去年十月に出た技術指導の範囲で対応可能だ、厚労省の技術指導に関する指針に沿って対応している、こういうお答えでした。

 そこで、厚生労働省にお聞きします。今言った、キヤノン側が紹介をした昨年十月の指針というのが、昨年十月三十一日付でホームページ上でアップされております、請負事業において発注者が行う技術指導についてのQアンドA、これは資料の二枚目の方につけてあります。これは確認なんですが、派遣、請負の区分の基準を示した、昭和六十一年労働省告示三十七号がございますね、一般的に告示三十七号と言っていますけれども。一つ、技術指導QアンドAというのはどういう中身か、簡単に紹介していただきたいのと、あわせて、この技術指導QアンドAは告示三十七号に基づく解釈を変えたものなのか、その点を確認したいと思います。

鳥生政府参考人 御指摘のとおり、昨年十月三十一日に、QアンドAということで、請負事業において発注者が行う技術指導についてということで、解釈といいますか、わかりやすく、技術指導等を行うことが違反になるかならないかといったことについて例を挙げて示したものがございます。

 これは、一般的に労働者派遣に該当するか否かということを判断する場合に、請負事業主が自己の雇用する労働者の労働力をみずから直接利用することと、請負事業主が業務を自己の業務として契約の相手から独立して処理することといったことが定められているわけでございますが、発注者が請負事業で働く労働者に対して行う技術指導とされるもののうちで、例えば、請負事業主が発注者から新たな設備を借り受けた後に初めて使用する場合、借り受けている設備に発注者による改修が加えられた後初めて使用する場合等において、請負事業主による業務処理の開始に先立って、当該設備の貸し主としての立場にある発注者が、請負事業主に対しまして、当該設備の操作方法等について説明を行う際に、請負事業主の監督のもとで労働者に当該説明を受けさせるといった例を挙げまして、その要件に違反をするものではないといったことを解釈としてお示ししているというところでございます。

 このQアンドAにつきましては、製造業における請負事業へのこれらの基準や解釈の具体的な当てはめにつきまして、例を示しながらより詳細な説明を加えたものでございまして、従前の基準や解釈に変更を加えているというものではございません。

塩川委員 告示三十七号を変更するものではないということです。

 ちょっと確認なんですが、今、読み上げる形を含めて紹介してもらった内容なんですけれども、要するに、請負会社が発注者側からある業務を請け負う。当然のことながら、設備、ラインなどを請け負う際に、最初に使用する際に説明を受ける、あるいは、新商品が投入されるような場合、新商品についての説明、製造の着手時においての説明、その説明について、本来は請負会社の労働者に直接そういう指示はできないわけだけれども、こういったいわば着手時、開始時期において、当然のことながら、請負会社の管理監督者の立ち会いを前提に請負会社の労働者に説明することはいいんだという話だと思うんです。

 要するに、ここで言う技術指導というのは、あくまでも開始時期の場合であって、発注者側が請負労働者に対し、管理監督者が付き添っているという場合を含めても、日常的に説明を行うような技術指導というのは想定していないと思うんですけれども、その点、いかがですか。

鳥生政府参考人 新しい設備を初めて使うというとき以外でも、例えば、先ほど読み上げた中でもございましたが、借り受けている設備に発注者による改修が加えられた後に使用するといったケースはあろうと思いますので、最初の、当初だけということではない、それ以外の場合もあるとは思います。ただ、基本的には、業務処理が進行している最中に発注者が労働者に直接指導するということは、指揮命令に該当するということで、適当ではないというふうに考えております。

塩川委員 業務処理が進行している最中においては、それはだめよということだと思います。

 そこで、先ほどの、キヤノン側のセル生産方式の説明のペーパーにもありますように、このセル生産方式というのは、日常的に生産調整ですとか工程の調整、労働者の人員の調整が行われているわけですね。それがセル生産方式のいいところですから。

 ですから、そこで重ねて聞きますけれども、告示三十七号においては、労働者の配置の決定及び配置の変更は請負事業主が行うということになっていますね。確認です。

鳥生政府参考人 そのとおりでございます。

塩川委員 ですから、労働者の配置決定、配置変更はあくまで請負事業者側がみずから管理するものであるわけです。

 ですから、日常的に生産調整、工程調整、労働者の人員の調整が行われているようなセル生産方式においても、発注者側が日常的に労働者の配置変更を指示するということは当然できませんね。

鳥生政府参考人 具体的なセル生産方式の実態ということにつきましては承知しておりませんが、先ほど申しましたように、請負事業主がみずから自己の支配下のもとに配置決定するということでございまして、その発注した側が指揮命令を業務を処理する中で行うということは、適当ではないと考えております。

塩川委員 この間、偽装請負の問題で大きな焦点となっているのが、御手洗経団連会長のいわゆる請負法制の見直し発言というのがあります。

 これは資料の三枚目につけましたけれども、昨年十月十三日の経済財政諮問会議の発言です。前後を見ても非常に唐突に発言されている部分なんですけれども、いろいろ仕事を教えてはいけないとか、突発的な事故に遭った場合についても指示ができない。こういうのがおかしい、だから請負法制を見直してくれという発言をしているわけですね。

 この点について、昨日の参議院の厚生労働委員会におきまして参考人質疑がありまして、御手洗会長に参考人招致という要求があった中で、御手洗さんは来られなくて、日本経団連の専務理事の紀陸孝氏が参考人として参議院の厚生労働委員会に出席をされました。

 その際に、我が党の小池晃参議院議員がただしたんですが、日本経団連の御手洗会長は経済財政諮問会議で、法令遵守当然だがということはまくらに置いておられますが、請負法制に無理があり過ぎる、これをぜひもう一度見直してほしいというふうに発言された。経団連としては現在も請負法制には問題があるという認識をお持ちなのかという問いに、紀陸日本経団連専務理事は、構内請負には最低限の指示、命令というのが発注者の方から必要な場面が出てまいります。昨年の十月に、領域を絞った範囲で発注者側の指示、命令ができるというふうな運用が変わりました。この点は、大いに評価をしたいと発言しています。

 ですから、日本経団連として、昨年十月、つまりこれですね、技術指導のQアンドA、これをもって運用が変わったと。大いに評価したいというふうに述べているわけです。

 運用が変わったと日本経団連の専務理事は言っておりますけれども、これはそういうことなんですか。

鳥生政府参考人 先ほども申し上げましたように今回のQアンドAを発出したということでございまして、これは、従前の基準や解釈に変更を加えるということではございません。

 ただ、その中で、解釈をより明確にするという趣旨から、先ほどは申し上げませんでしたが、例えば先ほどの、新たな設備を借り受けた後使用する場合といったときに加えまして、発注者が安全衛生上緊急に対処する必要がある事項について、労働者に指示を行うといった場合も違反するものではないといった例示をして、そうした違反にならないといったケースについて明確にしたということでございまして、基準を変更するといったことではございません。

塩川委員 十月十三日に御手洗会長が請負法制見直し要求の発言をし、その直後の十月三十一日に技術指導のQアンドAが出ている。今、それは告示三十七号の解釈を変更するものではないとおっしゃったわけですから、この技術指導QアンドAについて、運用が変わったと大いに評価しているのが経団連、経営者側であります。これは容認できないわけです。

 ですから、告示三十七号を逸脱するかのような、抜け穴づくりを容認するかのような解釈を生みかねないこの技術指導QアンドAは、撤回をすべきじゃないですか、撤回をしてもらいたい。その点、いかがですか。

鳥生政府参考人 いわゆる偽装請負の防止につきましては、厳格に運用する必要があるということで、各労働局において監督指導の徹底を図ってきたところでございます。

 その過程におきまして、発注者や請負事業主から、先ほどの、安全衛生上の指導を行うことといったこともすべて労働者派遣法に抵触するのかといった疑問が多数寄せられたわけでございます。そういう中で、こうしたQアンドAを公表し、労働者派遣法に抵触しないものについては典型的な例を示して、わかりやすく説明することとしたものでございます。

塩川委員 日本経団連専務理事が勘違いしているんですから、それは勘違いですよと一言おっしゃりに行きませんか。

鳥生政府参考人 直接私どもはお話を伺ったことはございませんが、今回のQアンドAの趣旨については、これまでも御説明をして、御理解をいただいているものと存じておりますが、私ども、こうした制度の趣旨については、今後ともよく周知をしてまいりたいと思います。

塩川委員 日常的に生産調整、工程調整、人員調整を必要とするセル生産方式は、本来、みずからの指揮命令で作業をさせるものであるべきで、請負ではなく、メーカーが直接雇用で行うべきだ、率直にそう思います。

 大臣、セル生産方式でやる以上は直接雇用でやれということをキヤノン側に言う、メーカーに言う、その点についてぜひ一言、いかがですか。

甘利国務大臣 企業がどういう生産方式で生産をしていくかというのは、企業の生き残り戦略と極めて重要な関係があります。法の範囲内でどういう労働力を調達していくかというのは企業の自主的な判断であります。その中に法令違反があれば、それは、厚生労働省は厳正に指導をしていくものと理解をしております。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

上田委員長 次回は、来る十八日水曜日午前九時理事会、午前九時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十分散会


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