衆議院

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第12号 平成19年5月23日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月二十三日(水曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 中山 泰秀君

   理事 宮腰 光寛君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 赤羽 一嘉君

      小此木八郎君    岡部 英明君

      片山さつき君    川条 志嘉君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    平  将明君

      土井 真樹君    徳田  毅君

      冨岡  勉君    丹羽 秀樹君

      野田  毅君    橋本  岳君

      藤井 勇治君    牧原 秀樹君

      増原 義剛君    武藤 容治君

      森  英介君    山本 明彦君

      吉川 貴盛君    大畠 章宏君

      太田 和美君    川端 達夫君

      北神 圭朗君    小宮山洋子君

      長島 昭久君    三谷 光男君

      柚木 道義君    鷲尾英一郎君

      高木美智代君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        富田 茂之君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 山崎 達雄君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 森川 卓也君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           川原田信市君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           本部 和彦君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          石田  徹君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            近藤 賢二君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            石橋 幹夫君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房技術監) 佐々木達郎君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 鎌田 昭良君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  柚木 道義君     武正 公一君

同月十六日

 辞任         補欠選任

  武正 公一君     柚木 道義君

同月十八日

 辞任         補欠選任

  細野 豪志君     小宮山洋子君

同月二十三日

 辞任         補欠選任

  武田 良太君     徳田  毅君

  谷川 弥一君     冨岡  勉君

  三谷 光男君     長島 昭久君

同日

 辞任         補欠選任

  徳田  毅君     武田 良太君

  冨岡  勉君     谷川 弥一君

  長島 昭久君     三谷 光男君

    ―――――――――――――

五月二十二日

 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮からの貨物につき輸入承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件(内閣提出、承認第三号)

 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

上田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮からの貨物につき輸入承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官齊藤雄彦君、外務省大臣官房参事官伊原純一君、財務省大臣官房審議官山崎達雄君、財務省大臣官房参事官森川卓也君、経済産業省大臣官房審議官川原田信市君、経済産業省大臣官房審議官本部和彦君、経済産業省貿易経済協力局長石田徹君、中小企業庁事業環境部長近藤賢二君、海上保安庁警備救難部長石橋幹夫君、防衛省大臣官房技術監佐々木達郎君、防衛省大臣官房審議官鎌田昭良君及び防衛省防衛政策局長大古和雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水清一朗君。

清水(清)委員 自由民主党の清水清一朗であります。

 本日は、外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮からの貨物につき輸入承認義務を課する等の措置を延長するについて国会の承認を求めるの件に関し、幾つかの質問をさせていただきます。

 まず、現在の日朝間にある問題点は、第一に、日本にとって重大な関心事であります拉致の問題が進展を見ない状態で残っております。また、日本及び東アジアの安全保障に大いなる脅威となる核搭載ミサイルの問題があります。六者協議で決まった核放棄への初期段階の措置もいまだ履行されておりません。このような状況の中で、今般、この北朝鮮に対する全貨物の輸入禁止措置を継続するに際し、経産大臣の決意をお伺いいたしたいと存じます。よろしくお願いします。

甘利国務大臣 我が国の北朝鮮に対する対応は、いわゆる対話と圧力、硬軟合わせわざで対応しているわけであります。それは、北朝鮮が我が国及び国際社会に対してきちんと誠意ある対応を見せるかどうか、それにひとえにかかっているわけであります。我が国といたしましては、国際社会が要求している問題に加えて、拉致問題という大きな大課題があるわけであります。それらを合わせて、単に対話をするだけではなくて、時に圧力、時に対話と、合わせわざで取り組んでいるところでございます。

 北朝鮮の対応を促進させるための国際協調手段とあわせて我が国独自の手段をとっている、それが輸入禁止措置でありまして、国際社会と協調してとっている、いわゆる国連安保理決議を受けての奢侈品の供給防止と両々相まって、誠意ある対応を迫ろうとしているわけであります。

 もちろん、対話と圧力でありますから、対話も、六者会合においていつでも我が国は対話に応じる姿勢は用意しているということを外交ルートでメッセージを発信しているわけであります。

 今般の圧力カードの延長は、国際社会の要求に対して、特に我が国の要求に対して誠意ある対応が見せられていない、我が国はとにかく対話を通じて、まず拉致問題に誠意ある姿勢を見せてくれということを言っているわけでありますが、それについての誠意ある対応がないということで、改めて強いメッセージとしてこれを促すということを考えての措置であります。

清水(清)委員 ありがとうございます。決意のほどをお伺いいたしました。

 順次お伺いいたしますが、次に外務省にお伺いをいたします。

 先般の六者協議において、北朝鮮がミサイル技術の不拡散と核の放棄、具体的には核施設の凍結を受け入れた背景には、アメリカによるバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮資産、約二千五百万ドルの凍結が最大の効果を示したものと考えておりますが、アメリカのバンコ・デルタ・アジアの資産凍結の効果について、外務省としてはどのように考えておられるか、お伺いをいたします。

伊原政府参考人 ただいま委員御指摘のように、二月の六者会合において、北朝鮮は、初期段階の措置として、寧辺の核施設の封鎖、活動停止等に応じるということにしたわけですけれども、ああいうお国柄ですから、その決断の背景がいかなるものであったか、なかなか私どもとしても確定的なことを申し上げるということは難しゅうございますけれども、明らかに、日米を含む各国が安保理決議の一七一八号に基づく措置、あるいは日本のような独自の措置を通じて北朝鮮にとって圧力と感じるような措置を講じてきたことが、こういった北朝鮮の決断の背景の一つにあるというふうに考えております。

 特に、今委員御指摘の、アメリカ政府が法執行の一環として、一昨年の九月にマカオにありますバンコ・デルタ・アジアをマネーロンダリング上の主要な懸念のある金融機関だということで認定いたしまして、これを受けて、マカオ当局がそこにあります北朝鮮関係の二千五百万ドルの資金を凍結したということは、これは結果的に北朝鮮に対する大きな圧力となったというふうに考えております。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 既にバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮資産の凍結の解除がなされておりまして、ボールはアメリカから北朝鮮へ渡っていると考えておりますけれども、現在なお渋滞している原因は何であると御承知なさっておられるのか、また北朝鮮は具体的に何を要求しているのか、お伺いをしたいと思います。

伊原政府参考人 御指摘のとおり、四月十日にマカオ当局は、この二千五百万ドルについて、これは幾つかの口座に分かれておるわけですけれども、口座の保有者が希望すればいつでも資金を受け取ることができるということを明らかにしております。そういう意味では、マカオ当局による資金の凍結というのは既に解除されているということであると思います。

 しかしながら、北朝鮮はこれを現金で受け取るということではなくて、むしろトランスファー、どこかに移すということにこだわっておりまして、いまだに初期段階の措置を実施していない。

 現在の北朝鮮の立場は、例えば、今月の十五日に、北朝鮮の外務省のスポークスマンが次のようなことを言っております。資金の送金が実現すれば、直ちに二月十三日の合意に基づく核施設の稼働中止措置を講ずる用意があると。ただ一方で、同じスポークスマンは同じ声明の中で、従来のように資金を自由に送金することができるようにせよというのが我が方が最初から要求した制裁解除であるということも言っております。

 日本としては、このBDAの問題については、当事者ではございませんので、これ以上のコメントは差し控えさせていただきますけれども、いずれにせよ、初期段階の措置の期限はとうに過ぎております。したがいまして、北朝鮮が今になってもこれを履行していないということは大変遺憾なことであると考えておりまして、北朝鮮は一刻も早くみずからコミットしたこの初期段階の措置を実施すべきものというふうに考えております。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 同感でありますが、いずれにいたしましても、経済制裁が北朝鮮の国家体制にとって不都合なことでありまして、効果が大いに期待できる外交上の手段であると評価をしてもよいのではないかと私は考えるわけでございます。

 しかし、今後バンコ・デルタ・アジアの問題をめぐる決着がつけば、北朝鮮が寧辺の核施設の活動停止など二月の六者協議で合意した初期段階の措置を実施する可能性はあると考えられます。それがIAEAなどの国際機関により確認をされれば、北朝鮮に対するエネルギー供与が実施の段階に入ってまいります。

 しかるに、現在のところ、日本はこれに参加しないわけでありますが、一体どのような国がこの供与を行うと想定をされておるのか、お伺いいたします。

伊原政府参考人 本年二月の第五回の六者会合におきまして、今委員御指摘の合意というものができたわけでございますけれども、これは、当面の措置として二つの段階を想定しておりまして、まず初期段階の措置として、寧辺の核施設の活動停止、封印、それからIAEAの要員による監視、検証等が行われる。それの見合いで、初期段階の措置としては、重油五万トン相当の緊急エネルギー支援を行うということになっております。

 それから、その次の段階ということで、北朝鮮がすべての核計画の完全な申告の提出と、それからすべての既存の核施設の無能力化、これを実施することに対して、今度は重油九十五万トン相当の経済、エネルギー及び人道支援を行う、そういう合意が二月になされたわけでございます。

 今御指摘のとおり、日本は、その合意の過程の中で、拉致問題の進展が見られない今の日朝関係の現状においては、このエネルギーの供与には参加しないという立場を一貫してとりまして、このことは、六者会合のほかの北朝鮮を除く四カ国からも認められております。

 このエネルギーの支援、これは、初期の五万トン、それからその後の九十五万トンの支援をするに当たって、日本と北朝鮮を除く四カ国、アメリカ、韓国、ロシア、中国ですが、これがどういうふうにして、では、この支援をするかということを話し合いまして、一定の合意を見ております。その合意というのは、平等と公平の原則に基づいて、この四カ国で支援をするんだ、そういう一般的な合意が既にあるわけでございます。

 そういう中で、まず初期段階の措置として実施することになっております五万トンについて、これは三月に行われました第一回目の経済・エネルギー協力作業部会というのがございます。この場で、韓国から、この初期段階の措置としての重油五万トンは韓国が実施するということを表明しておりますので、少なくとも初期段階の五万トンについては韓国がやるということで決まっているというふうに考えていいかと思います。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、逆戻りのできない核施設の凍結といいますか、無能力化というものを条件に行われるわけでございますが、その上で、今お話がありましたように、日本の六者協議における立場は、あくまでも拉致問題の解決がない限りは支援を行わない、あるいはその後の経済支援も行わないという立場で、それが条件でございます。しかし、このまま不参加の状態で日本が孤立しないか、心配しないわけでもありません。

 そこで、お伺いします。

 六月にドイツで開催されますハイリゲンダム・サミットでの拉致問題等、北朝鮮の東アジアにおける安全保障上の問題の取り扱いについて、例えば議長総括において触れられるとか、あるいはまた北朝鮮の核放棄への初期段階の措置の早期履行を促す等が考えられるのか、お伺いをしたいと思います。

 あわせて、最近におけるロシア、韓国、特に中国の拉致問題に対する態度についてお知らせをいただきたいと思います。

伊原政府参考人 六月のハイリゲンダム・サミットに向けまして、現在、関係国の間で非常に緊密な協議が行われているところでございますけれども、委員御指摘の議長総括につきましては、これは議長国の責任のもとで、そのサミットにおける議論を踏まえた形で発出されるものでございますので、今の時点でその内容について予断することはできない性格のものだというふうに思います。

 ただ、政府としては、いい議長総括が出るように、米国を初め関係国と連携して、この北朝鮮の拉致の問題、それから核の問題について、サミットにおいてきちんとした議論をする、そういうことで、いい、力強いメッセージがサミットにおいて発出できるように、今外交努力を尽くしているところでございます。

 それから、引き続きお尋ねの、ロシアそれから中国等の拉致問題に対する態度でございますけれども、まず、ロシアについては、先般五月三日に麻生外務大臣がロシアを公式訪問いたしまして、ラブロフ・ロシアの外務大臣と会談いたしました。その際、ラブロフ外務大臣より、拉致問題についての我が国の立場に改めて理解が示されました。また、拉致問題等の解決に向けて引き続き日ロ間で連携、協力していくということで一致をしております。

 それから、中国につきましては、先般の温家宝国務院総理がいらっしゃった際に、安倍総理との間の会談において、総理から、拉致問題について中国の協力を得たいということを申されたのに対して、温家宝総理より、日本国民の拉致問題に関する人道主義的関心への理解と同情が示されるとともに、必要な協力を提供したいという御発言がありました。また、こういった拉致問題に対する中国の立場は、首脳会談の後に発表されました日中共同プレス発表でも明記されております。

 このように、周辺の関係国との間で、私どもは一貫して理解と協力を得るべく働きかけて、いい反応をいただいているということだと思います。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 議長報告などについては、外務省さん等の御努力が少し報道されているようでございます。

 私どももいろいろな報道を聞きますけれども、報道によりますと、米国と北朝鮮は国交正常化作業部会を設置し、しばしば会談を重ね、外交の実を上げつつあるように思えます。日本の拉致問題に関する北朝鮮との関係がフリーズされていることについて、アメリカ側から何らかのコミットメントはあるのか、お伺いをいたします。

伊原政府参考人 本年二月の会合において、委員御案内のとおり幾つかの作業部会が設置されました。その中には、非核化の作業部会と並んで、日朝国交正常化のための作業部会、それから米朝国交正常化のための作業部会が設置されておりますけれども、米朝国交正常化のための作業部会は三月に一度行われただけで、第二回目以降というのは今のところ行われておりません。そういう意味では、日本もハノイで第一回の会合を行っておりますので、この作業部会ということで見たときに、米朝がどんどん進んで、日本がやっていないということでは必ずしもございません。

 この米朝の三月の作業部会、これはもちろん日本は当事者ではございませんので、詳細にそのやりとりについて説明する立場にはございませんけれども、米国からの説明によりますと、このアメリカと北朝鮮の作業部会において、米国は拉致問題についても相当時間をかけて北朝鮮と議論したと。特に、米国は、北朝鮮の将来のためにも、北朝鮮が日本との関係を改善することが重要であるということを強調したというふうに承知しております。

 それから、先般の日米の首脳会談、それから外相会談におきましても、ブッシュ大統領及びライス長官から、拉致問題に関する日本の立場に対する変わらぬ支持の表明があったところでございます。

 残念ながら、北朝鮮は拉致問題は解決済みなどとして、何らこれまで誠意ある対応を見せておりませんけれども、我が国としては、拉致問題の解決に向けて、引き続きアメリカと緊密に連携して取り組んでいきたいというふうに考えております。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 ただいまの御答弁にもありましたように、国交正常化作業部会におきまして、今やめておられるようですけれども、ホワイトハウスの国家安全保障会議の日本・朝鮮部長であったビクター・チャ氏は、米朝国交正常化作業部会において、拉致問題の解決が米朝国交正常化の条件になると金桂冠氏に言明したと言われておりますが、また、その反面、同時に、日本側の拉致問題での具体的な要求が明確でないとも漏らしておられます。実際に、我が国の北朝鮮への要求はどのようになっているのか、もう一度お伺いをいたします。

 また、あわせて、アメリカの核の問題に対する許容範囲はどこにあると考えておられるか、お知らせください。

伊原政府参考人 ビクター・チャ氏の発言について報道では承知しておりますけれども、特に彼の発言について政府として具体的にコメントをするということは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、その報道の中にあります、我が国の要求が具体的でない、明らかでないという点については、日本としては非常に明快な要求をかねがねからしております。繰り返しですけれども、北朝鮮に対して、すべての拉致被害者の帰国、それから真相の究明、それから拉致実行犯の引き渡し、これを引き続き強く求めていくというのが日本の非常に明確な立場でございます。

 それから、もう一つお尋ねの、アメリカが核問題について許容範囲をどこに置いているか。恐らく委員の御質問は、不拡散ということでいいのか、核撤廃なのかということであろうかと思いますが、この点、アメリカの立場は非常に明快でありまして、北朝鮮による核保有は断じて容認できないという立場をアメリカは堅持しております。

 例えば、昨年の十月十九日に日米韓の三カ国の外相会談が行われましたけれども、その外相会談でも、三カ国の間で、北朝鮮による核保有、核実験は断じて容認できないということを確認しております。それから、六者会合においても、そもそも二〇〇五年九月の共同声明において、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄するということが六者会合の目指す目的であるということで明記されております。

 したがって、アメリカが、北朝鮮による核の不拡散のみで、不拡散を防止できればいいとしているのではないかという御懸念は当たらないというふうに考えております。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 私どもの感覚ではやはり核の不拡散、つまりは、六者協議でも、チェックすべきところが、核を抽出した、あるいは弾頭を載せたミサイルの上の核物質、ここまでチェックをしないように思っておったのでございますけれども、その点、ちょっと私どもの考えとは違ったように思います。しかし、アメリカが、米国本土の安全保障あるいは不拡散も防止したいということであるならば、私どもが心配するのは、今後とも、幾ばくかの核搭載ミサイルが日本を脅かし続ける可能性があるのではないか、こう思うわけでございます。

 その点につきまして、そう思うからでございますけれども、北朝鮮が今後持つであろう我が国へ届く性能を持つミサイルの数が何発程度であると想定しておられるのか。あるいは、SM3あるいはPAC3等のミサイル迎撃システムが我が国は何基ぐらい配備しているのか。例えば、我が国に対して北朝鮮から二十発のミサイルが発射された場合に、間に合うだけの数が確保されているのかどうか。これは防衛庁さんにお伺いをしたい、こう思っております。もし、間に合わない場合があるとすれば、将来、何か研究しているものがあるのかどうか、その点についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

鎌田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初の、北朝鮮の弾道ミサイルについてのお尋ねでございますけれども、北朝鮮が既に配備していると考えられる弾道ミサイルのうち、ノドンにつきましては、射程千三百キロに達すると見られておりまして、この射程を前提にすれば、我が国のほぼ全域が射程内に入るということになります。それでは、北朝鮮が実際にこのノドンミサイルを何発持っているかということがポイントでございますけれども、この点についてはさまざまな指摘があるわけでございますけれども、先生御存じのように、北朝鮮の閉鎖的な体制等を踏まえると、なかなか断定的なことは申し上げられないということがあります。

 その上で、御参考までにということでお聞き願いたいんですけれども、二〇〇六年の三月に、ベルという在韓米軍司令官が米国の上院軍事委員会で証言をしておりまして、その証言の中でベル在韓米軍司令官は、日本に到達可能な射程千三百キロである二百発ものノドンミサイルを保有している、こういうふうに述べているところでございます。最初のお尋ねの、日本に届くミサイルが何発あるかということは、そういうことだと思っています。

 次に、委員の方から、我が国のBMDシステムについてお尋ねがございました。

 我が国は、平成十六年度から弾道ミサイル防衛システム、これは今、私申し上げましたようにBMDシステムというふうに称しておりますけれども、その整備を行っておりまして、平成二十三年度までに順次配備を進めているということでございます。実は、このBMDシステムの中には、BMD用のレーダー、それから指揮統制システム、C3Iと呼ばれていますけれども、こういう通信システムも含まれております。

 ミサイル迎撃システムでございますけれども、ここについて申し上げますと、下層用、これは大気圏突入時に撃つというものでございますけれども、下層用の迎撃システムでありますパトリオットPAC3ミサイルと、大気圏外、上層で撃つ迎撃システムでありますSM3ミサイル搭載イージス艦の整備を考えておりまして、このうち、パトリオットPAC3につきましては、平成二十三年度までに十六個高射隊、一高射隊にPAC3の発射機二機を整備するということでございますので、合計で三十二機の発射機、ランチャーを整備します。それから、SM3搭載イージス艦につきましては、平成二十三年度までに四隻を整備する計画でありまして、今申し上げましたPAC3につきましては、既にことしの三月、最初のPAC3を埼玉県入間に配備したところでございます。

 なお、先生からもお尋ねのありました米軍につきましては、パトリオットのPAC3が沖縄の嘉手納飛行場へ配備されるとともに、SM3ミサイル搭載イージス艦シャイローが西太平洋地域に展開しているというふうに承知しているところでございます。

 そこで、なかなか、我々のBMDシステムと個別の具体的な能力についてお示しすることは、我が方の手のうちを明らかにする話になりますので、具体的なお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、そもそも、先ほど申し上げましたように、SM3というのは搭載イージス艦、及び、パトリオットのPAC3というのは多目標の対処を念頭に置いたシステムでありまして、これらによりまして、多層防衛、もちろんのことながら、弾道ミサイルの数でありますとか種類、飛翔状況などによって迎撃に差異はあるわけでございますけれども、複数の弾道ミサイルが我が国に向け連射された場合であっても、対処することが可能だということでございます。

 先ほど、ランチャーの数については申し上げましたけれども、ミサイルの保有数については、手のうちを明らかにする話になりますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 将来、これからという面もあるように理解をさせていただきますけれども、これからは、実際に今まで制裁があったその効果についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 はしょっていきますので、少し違うかもしれませんが、昨年十月に北朝鮮からの輸入の全面禁止措置を実施し、それらの措置は対北朝鮮の貿易実績にどのような影響を与えたのかをお伺いしたいと思います。

 また、輸入禁止措置後、しばしばアサリ等の話題が出てまいりました。北朝鮮産品が中国等の第三国を経由して輸入されることとなっては、我が国の措置の効果も薄くなるわけでございまして、経済産業省としてどのような迂回輸入対策を実施しておられるのか、お伺いをいたします。

 また、北朝鮮に対して、我が国単独で実施している輸入禁止措置に加え、国連決議に基づく奢侈品の輸出禁止措置が実施されておりますが、その効果はどれほどなのか、あわせてお伺いをさせていただきます。

石田政府参考人 お答え申し上げます。

 輸入全面禁止措置以前の二〇〇五年は、北朝鮮からの輸入実績百四十五億円ということでございました。これは、北朝鮮の輸出全体に占める割合ということで、約一割に相当するものでございます。こうした中、輸入全面禁止措置を講じたということで、昨年十二月以降、北朝鮮からの輸入実績はゼロとなっておりまして、本措置により北朝鮮の外貨獲得能力を一定程度減殺しているものというふうに考えております。

 それから、迂回の問題につきましても、近隣諸国を経由した迂回輸入、これを確実に防止することは極めて重要だというふうに考えてございます。こうした認識から、政府といたしましては、輸入禁止措置発動以降、関係省庁間でこの迂回輸入防止のための会議を開催するなど、関係省庁の連携を図ってきているところでございます。

 経済産業省といたしましても、迂回輸入を隠ぺいするための原産地の虚偽表示について、外為法の無承認輸入あるいは不正競争防止法の不正競争行為として厳しく取り締まるべく、関係省庁と連携しつつ、厳正に対応することとしておりますし、また、第三国からの輸入動向、輸入データの監視につきましても強化を図ってきております。

 それから、最後に御質問のございました奢侈品の問題でございますけれども、昨年の安保理決議に基づきまして、昨年十一月から奢侈品の輸出を禁止しておるわけでございますが、この品目については、主に北朝鮮幹部が使用する、あるいはその部下らに支給することが想定されるものとして、乗用車、たばこ、酒類など合計二十四品目を選定しておるわけでございます。

 措置後、現在に至るまで輸出の実績はございませんし、また、本措置は国際社会が連携して講じている措置ということでございますので、北朝鮮幹部に対して対応を促す政治的なメッセージとなっているのではないかというふうに考えております。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 最後に、財務省と法務省にお伺いします。

 資金の流れが漏れていくということがあってはいけないので、この資金の流れに関しまして確実に防止していくことが必要であると考えておりますが、資金の面ではどのようになっておるのか、財務省さんにお伺いします。

 また、特別永住者等の在日の朝鮮籍の方々が親戚訪問や墓参り、観光等のために北朝鮮へ渡った場合、我が国への再入国についてどのような規制があるのか、入管特例法との関係も含めてお伺いをいたしたいと思います。

山崎政府参考人 北朝鮮に対する資金面での対応の現状でございますけれども、国連の安保理決議に基づきまして、北朝鮮の核、その他大量破壊兵器等に関連する十五団体、一個人に対する資金移転防止措置を昨年の九月から実施しております。これまでのところ、措置の対象のうち二団体の口座が本邦の金融機関にあることが判明いたしまして、同口座を凍結しております。

 また、これと別に、我が国独自の措置として昨年十月から実施している北朝鮮からの輸入の全面禁止措置に合わせまして、金融機関に対して、輸入代金の決済が行われることのないよう確認を徹底するよう要請しております。

 またさらに、こうした措置の確実な実施を図るために、外国送金を行っているすべての金融機関に対しまして、その実施体制を集中的に検査したところでございます。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 在日の北朝鮮当局の職員から北朝鮮を渡航先とした再入国許可申請があった場合には、原則としてこれを認めないということにしております。

 また、それ以外の在日の朝鮮人の方々のうち特別永住者の方々につきましては、いわゆる入管特例法十条二項に、特別永住者に対する入管法二十六条規定の、再入国の許可の規定の適用に関しまして、特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律の趣旨を尊重するものとするというふうな規定がございまして、その趣旨から、そのような方々につきましては再入国を一律に規制することは困難ではないかというふうに考えております。

 しかしながら、そのような方々も含め、北朝鮮を渡航先とした再入国許可申請をされた方や、出国手続において北朝鮮を渡航先として出国しようとするすべての方に対しまして、渡航自粛を要請する文書を交付するなどして、北朝鮮への渡航自粛を要請しているところでございます。

 以上でございます。

清水(清)委員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、拉致問題を解決するためには、粘り強く、意志強く、我が国の経済支援という最大のカードを大事に使って核を放棄させた上で、他の五者と協議をしながらこの問題を解決する努力が必要だろうと思います。

 そんな感想を述べまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

上田委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 先ほど、清水議員の方から拉致にかかわる北朝鮮制裁の関係についていろいろお話がありましたが、大臣、せっかくの機会なので、先週一週間、大臣はヨーロッパ、特にフランス中心だというふうにお聞きしていますが、WTO交渉、〇一年の十一月、ドーハの閣僚会議からスタートして五年半以上が経過しているところです。その中で、本当は〇五年の末に一度、交渉期限ということで設定して、それを延ばさざるを得なかった。〇六年の十二月もそうだった。あわせて、今回は、ことしの十二月に一応また三度目のタイムリミットを設定してやっている。

 私も、実は十数年前になりますけれども、ガットの最終局面で、特にWTOの九五年設立の合意も含めて対応させていただいたことがございます。今ではWTOですが、当時、ガット体制というのは、戦後のIMF体制と並んで、昔のような保護主義、ブロック経済というものを何としても防いで世界じゅうの貿易の秩序をつくるということで、非常に正しい方向性だったと思っています。

 実は、最近ちょっと気になっているのは、二国間の、いろいろなブロックの協議も、当然我が国も積極的に進めようとしているものもございますし、ただ、基本は、今百五十カ国が参加しているWTOがどんな形で、ベースの貿易、サービスも含めた秩序をつくっていくかというのがやはり基本でなければいけないというふうに私自身は考えております。

 その中で、〇一年の十一月から今日に至るまで、ある意味では、半年近くしかない三度目のデッドラインに向けて、大臣が一生懸命、国会の合間、いろいろな公務の合間を縫いながら、交渉も公務ですが、御出張なさっているということは十二分によくわかっていますが、やはり余り見えてこないんですね。行ったときには新聞に少し書かれますけれども、全体どんな流れでいるかというのが、私自身の勉強不足もあるかもしれませんが、やはり国民に向けてもきちっとしたメッセージを、いろいろな国がどのような状況にあるかというのは、大臣として説明していただきたいというふうに思いますので、現状と今後の見通しについて、大臣から御答弁をお願いしたいと思います。

甘利国務大臣 先生御自身も、農水省時代、いわゆる通商交渉、WTO交渉の現場で大変御苦労された御経験をお持ちということを私も承知しております。

 昔の私の記憶をたどりますと、WTO、世界全体の交渉があって、エリア交渉があって、個別交渉があって、日本は、とにかくWTO、世界ルールをつくるのが先であって、余りエリアとか二国間というのは、それをやっていくとこっちがなおざりになるというようなことを昔通商関係者から言われたことを思い起こすんですけれども、実はそうしていると、世界の潮流は、多国間もあればエリア間もあれば二国間もあれば、手をかえ品をかえ、関税そして関税外障壁を取り除いていくという競争になってきたわけでありますから、これはいろいろな組み合わせで確かにいいんだと思います。しかし、最終的にはWTO交渉が一番のメーンであります。

 この交渉の中で、先生御自身も今までの経験でお感じになっていらっしゃると思うんですけれども、必ずどこかリードしていく国がありますね、インナーメンバーがあって。要はインナーメンバーから外れちゃって、決まったことだけ通告されるというのが一番都合が悪いわけであります。特に農業問題について議論にほとんど参画できないままに何かが決まって、こういうふうに決まりましたから、嫌ならもう脱会するしかないですよみたいなことになっちゃうのが一番まずいわけであります。

 ですから、インナーメンバーにどうやって、招かれざる客であろうとも乗り込んでいくかということがかぎなのでありまして、御案内のとおり、今はいわゆるG4主流体制ですね。アメリカ、EU、ブラジルそれからインド。そのもうちょっと大きい枠にG6という、日本とオーストラリアが入っている枠組みがある。

 ですから、我々としては、G4を開くならG6を開けということをいつも言い続けていなきゃならないですし、呼ばれなくたって、はっきり申せば、出かけていって、チャンスあらばそこに突っ込んでいくということをやらなきゃならない。これは、いわゆる事務レベルでもそうですし、閣僚レベルでもそうなわけなんですね。

 G4メンバーの中で、G6でもいいじゃないかと言ってくれるところもあれば、国の数が多くなればなるほど話はまとまらないよ、ややこしくなるから、とにかくインナーメンバー、G4でまとめて、それを後で、こうしてくれ、協力してくれと言えばいいじゃないかという主張の国もある。ですから、日本としては、日本が入らなきゃまずいよということをどうやって言わせるかということなんであります。

 これに続いて理解をしてくれている国も当然次第に出てきているわけでありまして、余り交渉の中身を言うのは、まだ交渉の駆け引きの最中でありますからどうかと思いますが、インド等は、日本が参画することについて、日本を入れるべきだという主張を一生懸命してくれているわけです。ですから、ここへ来る前に、インドのナート大臣と公邸で一緒にあの辛いインド料理を食べて、それで十五分前にここに来たのでありますけれども、きょうはマンゴー・フェスティバルというのもありますから、ぜひ皆さんで御参加いただければインド側も意を強くすると思うのでありますけれども、そうやってとにかくインナーメンバーの中にどんどん入っていく。

 G6がずっと開かれないでG4ばかりだったんですが、しつこくやった結果、G6が二回開かれたわけですね。先月のニューデリーと、この間私が行きましたパリで、二回G6が開かれたわけです。そこでは表に高らかに発表できるような合意というところまではいきませんでしたけれども、最初のG6の会合で、年内妥結はみんなで確認したわけです。

 これは、みんなで期間を共有するということですね。それから、その年内妥結ということを考えると、夏休み前に一つの山を越えていなきゃならない。その具体的なものについてはなかなか表現しづらいのでありますけれども、とにかく年内妥結をみんなで確認する、そのために、もう時間がないぞという危機感を共有する、そしてそのためには、夏休み前にはある一つの山を越えていないとタイムスケジュールとして間に合わぬぞという意識は何とか共有をしていると思うんです。

 それと、あと、中身について私の口から許される範囲で申し上げれば、今農業交渉だけが先行しているわけですね。もちろん、ここがどこの国にとっても一番大きな問題でありますし、特に農業輸出途上国は死活問題でもありますから、このハードルを先進国に下げろという要求。あるいは、アメリカにしてみれば、国内支持について、いかに被害を少なく、よそから多くとるか。みんなそういう思惑でぶつかっているのでありますが、農業だけが先行しているけれども、実は、いわゆる生、工業製品を中心とした農産品以外の物の貿易もおくれをとっちゃいけません。

 それだけじゃないです。あとはそのルール。日本にとって大事なことは、アンチダンピングを不当にどんどん発動されている、これはちゃんとしたルールを決めようね、発動したらいつまでもそのままとかはおかしいよと。それから、サービスの貿易。

 これらを全部セットで、多少のタイムラグがあっても、セットで最後のしっぽはそろうようにということが我々の主張でありまして、その辺は、そうですねという大体の感じにはなりつつある。ただ、個別のことに関してはまだまだ隔たりがそれぞれありますから、何度か、国会の御理解をいただいて、国会開会中に急遽ということがあるかもしれないというのが現状でございます。

後藤(斎)委員 一つ気になることがありまして、夏休み前までにG6で年内に向けて一つの方向性をということでありますが、アメリカがいろいろな意味で主導権をとり続けるというのは、これは貿易の世界だけではありませんけれども、六月の末に議会から与えられた通商交渉権限がとりあえずエクスパイアする。それに向けて、まさにアメリカでも今議論をし、いろいろな声明を見させていただいたんですが、多分大丈夫だろうというような期待感も込めての記事であります。

 ただ、これを上手に議会が、ここまで非常に強硬だ、そして、交渉権限がなくなればアメリカは離脱するしかないよという、いろいろ手をかえ品をかえたり、多分大臣にもアメリカは言っているんだと思いますけれども、やはり我が国でも、私が少なくとも十数年前に経験した中では、いろいろな委員会でいろいろな決議やいろいろな質疑が常に行われ続け、それが一つの議会、国会のいろいろな意思ということで、それを交渉の中で使ったことが多分あったと記憶をしています。

 その中で、やはりアメリカがキーであることは、多分一番だというふうに思いますので、アメリカの交渉期限との関係で、アメリカも含めてきちっと、これはあわせてになりますが、先ほど冒頭申し上げたように、EPAやFTAの部分は、WTOの最恵国待遇、内国民待遇という二つの大きなルールからは若干違ったエリアの形成にもちろんなりますから、大臣おっしゃるように、バランスをとってということはよくわかるんですが、行き過ぎた二国間や地域間協定というのは、世界全体ということを、これは地球温暖化の話でも前回させていただきましたけれども、同じようなことが貿易、サービスのルールづくりというのは特に必要だと思うんです。

 アメリカの交渉期限が六月末で切れるということも含めて、もう一度、端的で結構ですから、お答えいただけますか。

甘利国務大臣 大統領による一括承認権限といいますか、いわゆるTPAでありますけれども、これが六月末に切れます。

 正直申せば、なかなかしたたかでありますから、それを逆に交渉の材料に持ってくるわけですね。余りアメリカに無理難題を言ってくれるな、TPAの延長がスムーズにできないじゃないかと。しかし、それも我々から見れば彼らの交渉のツールなわけであります。それはあなた方の責任でやりなさいよとか、TPAの延長を我々がどう責任を負うんだという話になるわけでありますが、しかし、そこはなかなか交渉上手でありますから、もっと譲歩してくれなければTPAを、特に議会の関係の数が逆転しているものだから説明しづらいというようなことを確かに言ってくるわけです。

 しかし、では、全部通るような条件をこっちでそろえてやるなんという義務はないわけでありますから、それはそっちで説得してもらう話ですから。しかし、報道にもありますとおり、どういう表現で報道されていますか、TPAの見通し云々というのは大体秋ぐらいと言われていますかね、向こうも少しずつ、何とか自信を持ちつつありますよという表現は、アメリカ側も外に向けてしているわけであります。

 要は、日本も別に弱みというか、攻められるところばかりじゃないんですね。農業が攻められて弱くて、では、生で、それ以外の部分、ルールで相手を攻め込んでいるだけかといえば、御専門ですからよくおわかりのとおり、日本だって農業の部分で攻めれる部分だってあるわけですから、いわゆる農水大臣の言葉をかりれば、攻めるところは攻め、守るところは守り、そして譲るところは譲る、この三つを合わせながら、一個だけとらえてあとは交渉ねというんじゃなくて、全体、パッケージで交渉しなきゃいけないというふうに思っております。

 その際に、WTOと二国間、二国間のFTA、EPAが出過ぎるとこっちがなおざりになるじゃないか、それは、おっしゃる御指摘はよくわかります。国によっては、EPA交渉をもう何十カ国と結んだという国もあるわけですね。趣味EPAみたいな国もあって、そうすると、あとWTOはあなたのところは何が必要なんだというような話まで冗談で出かねない。

 ですから、WTOというのが大前提なんでありますけれども、それを、動かないのを少しずつ揺り動かしていくために二国間とか地域間交渉を使うということになっていくんだろう、あるいは二国間や地域間が重なっていくとWTOに全部つながっていくという関係で押していくのがいいのかなというふうに考えています。

後藤(斎)委員 大臣、アメリカの議会だけでなくて日本の議会の中でも、やはり国益というものが、もちろんそれぞれの産業分野でも違います。ただ、我が国の国民が日本国の中で生活をし、働き、その部分のベースを守るというものは当然のことだと思うので、私もやはりパッケージでやるべきだというふうなことを常々思っていますので、ぜひ、粘り強く、時間もそんなにありませんから、最終盤まで御努力いただければというふうに思います。

 かなり時間を食ってしまいました。

 先ほど清水議員の御質問に経産省の方からお答えいただいて、この半年間の北朝鮮への輸出禁止、輸入禁止の措置、数字的にはもちろん少なくなって、ゼロになっていると。これは、ある意味では、縛っているから当然のことだと思うんですが。

 一つ気になるのは、北朝鮮、日本から輸出や輸入が禁止をされている部分、中国や韓国、四月にはミャンマーと正式に国交正常化をして、貿易が再開をしたというふうな報道もございました。以前大臣が、奢侈品、ぜいたく品の二十四品目を指定するときに、やはり、日本だけでやってはだめなんだ、各国と協調して、できるだけその品目も同じようなものを指定しなきゃいけないんだということを、去年の十月か十一月に報道で記者団にお答えになっています。

 半年たった中で、むしろこれからの半年というのは、輸入も禁止するわけですからゼロが続く。二十四品目のいわゆるぜいたく品も輸出を禁止するということは当然継続するわけですから、北朝鮮から見れば、経済的、特に貿易のウエートは減っていくということ。

 それが本当にその経済制裁の効果を生むかどうかということを、関係国、その周辺国も含めて、特に周辺国の中国や韓国等含めて、そういう枠組みを、WTOを私があえてお聞きしたのはそれにちょっと連動させたかったんですけれども、そういう形をつくっていかなければ、結局、日本がやっている経済制裁というものは、去年スタートしたときには有効だったものが、これから半年間は、多分、以前の半年以上に経済的な効果は少なくとも減少を、要するに、もう代替が進んでいるという指摘もあるというふうに思うんです。

 まず、なぜ半年なのかということと、あわせて、輸入禁止措置をとったにもかかわらず、この半年間、どんな違反事例があったのかということを、端的で結構ですから御答弁いただけますか。

石田政府参考人 今回、この輸入禁止措置を半年間について延長いたしたわけでございますけれども、この半年という意味は、北朝鮮籍の船の日本への寄港の禁止という措置と連動しているわけでございますが、その船舶の方で、これは、我が国の安全、平和に与える影響というのを評価する期間として約半年ぐらいが必要だろうということで、法律上、ある程度の期間を決めなければいけないということで、最初のときにも六カ月間ということを決めたわけでございます。外為法に基づくこの輸入の全面禁止措置も、それに準じる形で半年間ということにさせていただいております。

 それから、後の方で御質問のございました、この輸入の禁止措置に対する違反行為の点でございますけれども、確かに、この措置を講じて以降現在までに、北朝鮮からのアサリでありますとか、あるいは北朝鮮において加工いたしましたステンレス継ぎ手、これを外為法の輸入承認を受けずに輸入したと疑われる事案が現在捜査を受けてございます。

 もとより、我が国独自の措置として導入をした輸入全面禁止措置でございますので、特にその実効性を高める観点から、近隣諸国を経由した迂回輸入の防止というのは非常に重要な課題であるということで認識をいたしております。そういう意味で、関係省庁の連携協力を強化してきているわけでございますが、こういう事案の捜査というものも、そうした厳格運用あるいは取り締まりの結果出てきているということも申し上げられようかと思います。

 今後とも、引き続き関係省庁と連携をしながら、厳格な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 大臣、関係国とのいろいろな連携が必要だというのは、このぜいたく品、いわゆる奢侈品の、我が国は二十四品目で一番早く指定をし、一番早く二十四品目の輸出禁止をしています。

 昨年の安保理の決議以降、各国がいろいろな形でぜいたく品をリスト化して輸出禁止をしているというふうなことでありますけれども、先ほども触れさせていただいた、できるだけ関係国が同じような品目や同じような禁輸措置をしていくことが望ましいというお話を大臣がしていました。

 実は、例えばカナダなんかは十六品目でありますし、アメリカも、我が国がやって、少しおくれてことしの一月、EUはことしの三月末ということで、お隣の韓国にしてもインドにしても、まだいわゆるぜいたく品リストの作成中ということを制裁委員会に通知しているということで、こんなにばらばらだと、本当にその経済制裁の意味、外務省からの御説明をお聞きしましたが、特に、このぜいたく品の部分は、国連決議に基づいて、各国が協力しながら、協調しながらやるということで、いわゆる輸入禁止であるとかの部分は我が国独自の措置だというふうなことだと思うんですね。

 大臣、この部分をもう少しいろいろな働きかけをしながら連携をしなければ、先ほど申し上げましたように、本来の経済制裁という目的がやはり達成できないというふうに思うんですが、その点についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。

甘利国務大臣 おっしゃいますように、国連決議に基づく制裁は、基本的には、合意したことは国連加盟国の義務でありますから、みんな勢ぞろいしてやるというのは当然であるし、効果も高い。今のところ、これに参加している国は七十カ国ですから、全加盟国でいえば三分の一弱。特に、アフリカがなかなか、こうしましたということの報告がないようですが、やはり途上国はそんなことどころじゃなくて、自分の国をしっかり運営していくので手いっぱいというところもあるのかもしれません。

 それで、七十カ国にせよ、どうもいろいろ外務省のインナー情報を聞いていると、結構これはきいていると。日本は、国連決議に沿っては奢侈品の輸出、それから、独自には輸入の全面禁止。これによって、少なくとも、日本に対しては外貨を稼ぐという手だて、あるいは、奢侈品を通じて軍幹部等の士気を高揚させるということについては相当減殺するプレッシャーがかかっているというふうに承知をいたしております。

 BDAの二千五百万ドル、たかだか三十億、国ベースの金額としては小さな金額であれだけ大騒ぎをしなきゃならないというのは、やはり相当切迫している事情に追い込まれていて、確実に効果が上がっているのではないかというふうに思っております。

後藤(斎)委員 残りあと五分になってしまいました。話がちょっと飛びますけれども、いわゆるレアメタルや金、ウランも含めて、いろいろな資源というものは、これから国が関与をしながら開拓もしていくというお話を、資源外交という部分で大臣に以前させていただきました。今回、北朝鮮の話をいろいろ調べていったら、旧満州の部分に、中国との国境沿いのようですけれども、無煙炭であるとか金であるとか、いわゆるレアメタルがかなりあるというふうな記事をたくさん見ました。

 もしかして、もちろん拉致の問題の解決、平和という問題が前提としてあることは当然ですが、やはりこれから多国間の部分でいろいろな貿易やサービスのルールができていく、いずれ国際社会に北朝鮮も復帰できるような状況に、私はできるだけ近い将来なってほしいというふうに当然思っていますけれども、そういう中で、やはり資源全体というものは世界じゅうを見ながら当然バランスよく、石油の中東依存度をもっと低めていこうという話ももちろんありますし、同じように、中国だけがレアメタルを生産、資源賦存量は世界で有数、トップだというふうに言われていますが、やはりそういう資源的なものもきちっと、少なくとも、今国交がない、しかし、いろいろな衛星情報網やデータをきちっと検証していくということは、いずれの時代、必要になると思うんです。

 その点について、北朝鮮の旧満州の部分でのレアメタル等の資源がどのような状況になっているか、簡単で結構ですから教えていただけますか。

本部政府参考人 北朝鮮におきましては、金と、無煙炭を含みます石炭、タングステンなどのレアメタルの生産が行われているものと認識をしております。しかし、何せ情報統制が厳しい国柄でございまして、詳細な実情の把握は困難でございます。

 そのうち、埋蔵量につきましては、石炭は二〇〇四年の世界エネルギー会議報告書によりますと六億トン、タングステンは米国の地質調査所によりますと二〇〇六年に三万五千トン存在するものとされております。

 生産量につきましては、石炭につきましては、IEAによれば二〇〇五年時点で二千四百万トン、金属は、同じく米国の地質調査所によりますと、二〇〇四年時点で金が六トン、タングステン六百トン、亜鉛六万二千トンというふうに聞いております。

後藤(斎)委員 大臣、もう時間も少ないので。

 今お話をいただいたような形で、少なくともそういう資源の状況は北朝鮮もあると。

 私、いつも思っているのは、一方でやはり中国は今非常に、資源外交を含めて、もちろん共産主義の国ですから、国が主導的にいろいろな資源外交をしている。輸出制限も含めて許可制でいろいろなものを、特に資源の部分はしている。それはWTOの中でもいろいろな御議論が多分あると思うんですね、こういう輸出制限や輸入制限に対して。やはり私は、全体を見据えた中でWTOの交渉、特にそういう輸出制限、特にその国の平和や安全保障に直接かかわるかどうかという議論とそうではないという部分を分けてやれば、レアメタルみたいなもののきちっとした資源の交渉のあり方というものも、特に中国ということに対して見ても、きちっとしたことがWTOの場でも言っていけるのではないかなというふうに実はちょっと思っています。

 そういう意味で、資源外交というのは、当然、中東からの石油依存度を減らす、ウランのオーストラリアやカザフスタン、ウズベキスタンに大臣が行かれてきちっとした交渉をしてきた、やはりもっと多角的にやっていってほしいということも含めて、ぜひこれからの大臣の資源、特にエネルギー資源の安定確保に向けての決意を最後にお尋ねしたいと思います。

甘利国務大臣 先生御指摘のように、レアメタルの制限貿易的な取り扱いはWTO上提訴対象になるのかという疑問、できるのかという思いを持ちまして、ちょっと調べさせたんですが、一般資源はどうかわかりませんけれども、レアメタルについて安全保障上の枠組みということで主張されると、なかなかこれはWTOのパネル云々というのは難しそうです。そこで、中国は需給のコントロールをかけながら高値維持をしているわけですね。

 北朝鮮にも、それはべらぼうに多いわけじゃないでしょうけれども、レアメタルが存在するそうです。おっしゃるとおり、あるベルト地帯があるんですね、中国に向けて。韓国には、何かそこは途切れて、ないらしいんですが。ですから、もちろん、懸案の課題がみんな解決されれば資源貿易、資源外交をやっていくべきことは当然でありますが、まだ時間がかかるでしょうから、そういう問題解決までにはまだ少し道のりはあるでしょう。

 その間、では、一極依存ではなくて、例えばカザフは希少金属類も全部ある、ウラン以外だってたくさんあるよという話ですし、オーストラリアもカナダもそうでありましょうし、調達の多元化を図っていって一極集中を排する、それで高値維持政策に対抗していくということは大事な政策だというふうに思っております。

後藤(斎)委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

上田委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 本日は、理事のお取り計りをいただきまして、初めて経産委員会で質疑をさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

 北朝鮮に対する制裁、昨年の十月十四日から実施をして六カ月の期間が過ぎるということで、先日の四月十日に、制裁措置のさらなる六カ月延長、こういうことが閣議決定されました。それを受けての国会承認のための審議ということで、きょうは、我が国独自の制裁並びに国際社会全体で取り組んでいる制裁、北朝鮮に対する今やっている制裁がどの程度所期の目的を上げてきているのかきていないのか、この点についてなるべく多角的に質問をさせていただきたい、このように思いますので、よろしくお願いいたします。

 御案内のとおり、昨年の七月五日に北朝鮮がミサイルを七発連射いたしました。その直後に、まず最初の独自制裁を我が国は発表いたしまして、万景峰92号の入港停止を初めとした六項目の制裁を発表して、直ちに実施に移した。これも六カ月の期限でありました。そして、九月十九日に、このミサイル発射を受けての国連決議一六九五に基づく北朝鮮の大量破壊兵器開発に関連する十五団体、一個人を対象にした金融制裁を我が国は発動いたしました。

 にもかかわらず、十月九日、北朝鮮は核実験をやったというふうに発表いたしました。各国、様子を見ていたのでありますが、失敗に終わったようでありますが、やはり意図して核実験を行ったのであろうということで、それを認めた。そして、それに対する我が国の措置ということで、十月十一日に、全面的な禁輸措置を含む三項目の追加制裁、そして、これが最初にやった制裁の六カ月の期間を吸収する形でさらに六カ月、こういうことになりました。その後、国連決議が十月十五日に出まして、十一月十四日に一七一八に基づく奢侈品、ぜいたく品と、さらに大量破壊兵器関連物資の輸出禁止措置。今まで四回にわたって、北朝鮮の挑発的な行為に対して我が国は制裁を行ってきたわけであります。

 今回、国会承認がかかっている制裁は、一つは北朝鮮船舶の全面入港禁止、それから北朝鮮からの全面輸入禁止、そして北朝鮮籍の人間の入国の原則禁止、この三つであります。

 きょうは、この三つを中心に、大臣に質疑をしたいというふうに思っております。

 まず、総論として、この制裁措置の実施のまさに一翼を担っておられる経済産業大臣として、今回の一連の我が国のとった制裁、あるいは一七一八、一六九五に基づいて国際社会が今行っている制裁、この目的とそれに伴う効果、これを今、経産大臣としてどのように見ておられるのか、御見解をまず冒頭に承りたいと思います。

甘利国務大臣 北朝鮮は、国際社会からの非難にもかかわらず、あるいは制止にもかかわらず、ミサイル実験、核実験を強行し、そして、我が国でいえば、拉致問題について、一部対応はしましたけれども、それ以降何ら誠実な対応をしてこないということで、国連決議に基づく制裁と、それから我が国独自の制裁を行っているわけであります。

 安全保障上の問題でミサイルや核関連は出さないというのはもちろんのことでありますが、奢侈品の輸出禁止に関しては、北朝鮮の軍部体制の幹部の士気高揚を図る手段を断つということにかなり貢献をしていると思われますし、輸入の全面禁止措置、禁止時点でいえば、年間ベースで百四、五十億だったと思いますが、この外貨の獲得措置を断ったわけであります。

 これがどのくらいきいているかという判断は、実は情況証拠ではかるしかないんだと思いますが、しかし、BDAの三十億の凍結措置、国家予算レベルでいえばたかだか三十億にあれだけ大騒ぎをしなきゃならないということは、相当せっぱ詰まっているということが客観的に言えるのではないかというふうに思っております。

 もちろん、一つは、三十億という金額にすら困っているということと、それからもう一つは、貿易の決済システムから外れちゃっているということですから、そのこと自身で貿易を円滑にする手段が失われているという、この二重の痛手もあって騒いでいるんだとは思いますけれども、いずれにいたしましても、外務省等からのいろいろな話を聞きますと、本当に金銭的には困ってきている状態、それは、この一連の制裁措置が直接、間接きいていることは間違いないというふうな情報を得ております。

長島(昭)委員 私もそれを願っているんですが、制裁の効果については、一つ大きな指標があるとすれば、それは、北朝鮮が拉致問題も含めて誠実に対応しているのかどうか、ここがやはり一つこの制裁の目的だったと思うんですね。

 もちろん、今大臣がおっしゃったように、二千五百万ドル、あの松坂の契約金に比べたら随分少ないと言う人もいますけれども、しかし、あの金額で北朝鮮の指導部がいろいろな側近たちをある種籠絡してきた、こういう事実がありますので、非常に彼らにとっては必要なお金だったということは間違いないんです。

 今大臣おっしゃったように、国際的な決済システムからある種締め出されてしまったというのがやはり一つ大きいんだろうというふうに思うんです。にもかかわらず、このBDAの問題を盾にとって、北朝鮮はまだ六カ国合意に基づく履行義務を果たしていない。その履行義務、六十日間を超えてからもう既に一カ月以上が優にたっている、こういう状況でありますから、誠意ある対応を促すてこにはなり切っていないという点は、私は、もう一度大臣にも認識をしていただきたい、このように思うわけであります。

 そこでなんですが、これは、きょうは官房副長官にお見えいただいたので、官房副長官にあえて伺いたいと思うんです。

 そういうことで、各種制裁を試みているんですが、この二・一三の六カ国合意の履行を拒み続けている北朝鮮の現状があるわけですね。今回、制裁措置を六カ月延長したんですが、これを単なる延長ではなくて、追加的な制裁も必要ではないかという議論が政府部内であったのかなかったのか。あったとすれば、どのような選択肢が検討されたのか。最終的にはそれを採用するに至らなかった理由は一体何なのか。差し支えない範囲で結構ですが、もし明らかにしていただければありがたいと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 長島委員御指摘のように、拉致問題、そして核実験が行われたであろうこと、そしてミサイル、六カ国協議の後を受けた北朝鮮の対応、これが進展していないということの中で、安倍総理が、経済的なことを含めた追加措置も行うこともあり得るということは、いろいろなところで発言をされておられます。

 しかし、内容については、現時点では申し上げるような段階ではございませんので、お答えすることはできませんが、状況の中で判断していくということでお許し願いたいと思います。

長島(昭)委員 余り相手にカードを見せ過ぎるのもよくない、これは外交の戦略上の問題だと思いますので、私はここはあえて踏み込んで伺いませんけれども、輸出もまだ全面的に禁止されておりませんし、パチンコマネーを初めとして、送金で相当、これはさっきの二千五百万ドルどころじゃないですよね、年間百億円と言われていますから。そういう意味では、かなりまだまだやれることが我が国にはあるんだろうと思いますが、その辺は総合的に判断をしていただければいいと思います。

 さて、それで、今回の制裁措置が具体的にどういう形で行われてきたかということを、きょうは、それぞれ所管の副大臣にあるいは担当者にお見えいただいていますので、一つ一つ伺っていきたいと思います。

 まず、国交省に伺いたいんですが、入港禁止措置は、ミサイル発射の直後は万景峰号というあの特定の船舶だけに的を絞った制裁でありましたけれども、十月十一日の第三次の制裁では、これが北朝鮮籍全体に広がりました。これによってどのくらい制裁のインパクトが強まったのか、これは、国交、副大臣お見えですか、それとも担当者でも結構ですが、制裁レベルを引き上げたことによってどのくらいインパクトが強まったのか、何か具体的な指標があれば、お伺いしたいと思います。

石橋政府参考人 平成十八年十月十四日以降、北朝鮮船舶の本邦港湾への入港は一切確認されておらず、入港禁止措置に係る違反事案というのは確認しておりません。

長島(昭)委員 もう一回聞いてください。

 万景峰号だけにかけた制裁から、そのレベルを上げた、上げたことによってどのくらいの効果が出たのか、比較していただきたいんですが。

石橋政府参考人 北朝鮮船舶の特定港への入港実績を見ますと、平成十七年に七百六十九隻で、平成十八年は制裁までの間に六百十六隻が入港しておりまして、その後、制裁発動後は入港実績はございません。

長島(昭)委員 私、手元にデータがありまして、万景峰号は年に大体十五、六回という数字があるんですね。十五、六回程度行ったり来たりしている。

 今御紹介がありましたように、これは、北朝鮮籍全体に広げることによって、過去五年のデータを見ると、一番多い年で千三百四十四回、一番少ないのが去年になるわけですけれども六百十六回。こういうことで、十五、六回だったものがそれだけ大きなインパクトを持ってきているということなんだろうというふうに思います。それが今ゼロになったということは、相当、これによって交易を行っている、いろいろなものを運んでいる、人、物、金を運んでいるだろうと思いますが、北朝鮮にとってはかなりダメージが来ているんじゃないだろうかというふうに予測をします。

 しかし、もう一言申し上げると、北朝鮮からの物資や、人や物や金を運んでくる手段というのは、北朝鮮籍の船だけではないですよね。それ以外の船も当然あるわけですけれども、そのような船舶は今のところ野放しになっているのかどうか。制裁の実効性が問われると思うんですが、その点いかがでしょうか。

石橋政府参考人 海上保安庁では、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律に基づく船舶保安情報をもとに立入検査を行い、直近の過去十港以内に北朝鮮に寄港した船舶を確認しており、北朝鮮籍船舶の我が国への入港が禁止された平成十八年十月十四日から本年五月十六日までの間、我が国に入港した北朝鮮籍船舶以外の船舶のうち、八十四隻が北朝鮮に寄港をしていたことを確認しております。

 また、立入検査によりまして、北朝鮮寄港について虚偽の通報をした船舶二隻を確認しております。

長島(昭)委員 今その二隻の話を伺おうと思ったんですが、最近の報道で、三月三十一日の産経新聞に出ておりますが、今おっしゃった迂回輸入の可能性、これを行った可能性のあるアサリを積んだ船が入港をした、それについて捜査当局が立入検査をしたという報道があるんですが、この事例についてもう少し詳しく御説明いただけますか。

石橋政府参考人 本年三月八日、中国籍の貨物船「ハイシン三」が下関に入港するに際し、徹底した立入検査を実施した結果、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律に基づき海上保安庁に通報した船舶保安情報に虚偽の内容を認めたことから、同法違反で摘発しました。さらに、本件に関連し、山口県内の水産物輸入会社役員等が本年二月に同船を使用して、北朝鮮を船積み地とするアサリを経済産業大臣の承認を受けずに輸入した疑いにより、同船の船長及び乗組員十一名並びに水産物輸入会社役員等九名を外国為替及び外国貿易法違反で摘発しております。

 また、本年四月十一日、下関に入港した中国籍貨物船「リャオチャンレン六」の立入検査を実施したところ、同船が本年三月八日に下関港に入港するに際し、先ほどの法律に基づきまして海上保安庁に通報した船舶保安情報に虚偽の内容を認めたことから、同船の船長以下乗組員九名を同法違反、虚偽通報で摘発しております。現在、本年三月に同船を使用して、北朝鮮を船積み地とするアサリを経済産業大臣の承認を受けずに輸入した疑いにより、所要の捜査を実施中であります。

長島(昭)委員 今の御説明のとおりなんですが、少し厄介な問題がありまして、これは報道ベースなので事実関係を確認させていただきたいんです。

 これは、北朝鮮の海州という場所で積み込んだアサリに中国の海産物産地証明書を添付している、こういう報道がありまして、産地偽装して日本に輸入を試みた、こういう事例だということなんです。中国側には発行の事実はなかったんですが、用紙は本物と確認された。したがって、これは推測ですけれども、中国政府当局の中に協力者がいるのではないか、こういう報道なんですが、その点についてはいかがでしょう。

石橋政府参考人 先ほど指摘がありました原産地証明と言われるものにつきまして、現在、税関当局の方で確認作業を行っております。

長島(昭)委員 きょうは財務省にもお越しいただいていると思いますが、いかがですか、事実関係。

森川政府参考人 お答えいたします。

 外為法に基づきます実質的な輸入禁止措置につきましては、税関がそれをもとに取り締まっておりまして、それに際しては、中国等に求めました原産地証明書の確認等によって厳格に行っているところでございます。

 御指摘のような疑義が生じた場合には、一般論でございますけれども、原産地証明書につきまして、中国政府に外交ルートを通じて確認しております。

 その回答はまだ得られておりません。

長島(昭)委員 これはぜひ徹底してやっていただきたい。これは制裁をかけている意味がない。大臣、ぜひこの点はお願いしておきたいんです。

 というのは、きょう、皆さんのお手元に資料を配らせていただきました。簡単なグラフでありまして、北朝鮮産のアサリはこのように激減をしております。しかし、それに伴って、中国産のアサリの輸入量がこんなに上がっているわけです。もちろん、我々の需要量がほとんど変わっていないわけですから、どこかからまた調達してこなきゃならないということで、このグラフは特に不思議なグラフではないんですが、こういうものに紛れて、場合によっては、中国側の協力者の協力のもとに北朝鮮産のアサリが日本に入ってくるようなことがあれば、これは制裁の空洞化そのものでありますので、大臣、この点について何か御見解があれば一言お願いいたします。

甘利国務大臣 先生御指摘のとおり、日本の需要総量が一定割合ありますから、調達先を変える、そういう事由は当然あろうかと思いますし、中国からの輸入も正当なものが大部分だと信じておりますが、そういう事例が出たという事実に基づきまして、どういう経緯でそうなったかはきちんと外交ベースで確認を引き続きしていきたいと思っております。

長島(昭)委員 よろしくお願いいたします。

 次に、経済産業省のマターですが、全面輸入禁止について伺いたいと思います。

 これは二つの項目から成っていますね。一つは、北朝鮮からのすべての貨物について経済産業大臣の輸入承認義務を課す。すなわち、承認しないということで、輸入を禁止する。それからもう一つは、北朝鮮から第三国へ輸出する貨物の売買に関する仲介貿易、三国間貿易取引についても経済産業大臣の許可を受ける義務を課すことにより当該取引も禁止、こういうことになるわけです。

 時間があれば、第一項目の方の輸入承認義務の違反についての事件が幾つかありますので、そのことについても、これは外貨稼ぎをまだやっておりますので、この点についても伺いたいところだったんですが、二点目に絞って伺いたいと思います。これは仲介貿易取引の禁止であります。

 この取引の禁止は、経済産業省の資料によると、輸入禁止措置に万全を期すためにこれをあえてやった、こういう御説明なんですが、例えば、海外にある日系企業が仲介した場合にもこの仲介貿易取引の禁止は適用されるんでしょうか。

 例えば、タイ。タイは、皆さん御案内のとおり、北朝鮮との貿易が非常に盛んでありまして、日本よりも多い、大体年間三・三億ドルぐらい北朝鮮と取引があるわけでありますが、そのタイにある日系企業が仲介して、例えば北朝鮮と中国や韓国との交易、貿易の取引、仲介をする、こういうケースに今回の改正外為法の規定が適用を受けるのかどうか、この点について伺いたいと思います。

甘利国務大臣 基本的に外為法は、内国法人に対しての対応措置といいますか法的権限ですから、そうでないものについては法律の効力が及ばないというふうに承知をしておりますが、詳細は局長から答えさせます。

石田政府参考人 ただいまの御質問の点でございますけれども、まさに先生御案内のように、仲介貿易取引についても規制をしておりますのは、輸入の禁止の実効を上げるために補完的に許可対象にして、許可をしないという形にしておるわけでございます。

 この仲介貿易取引というのは法律に規定がございまして、本邦居住者、典型的には本邦内に主たる事務所を有する法人、今大臣申し上げたように本邦法人ということでございますが、これが、非居住者との間で貨物の売買に関する取引を行うこと、かつ、その取引に伴って外国相互間で貨物の移動が行われること、二つの要件を満たすものを仲介貿易取引と言っているわけでございますが、在外の日系企業は、日系企業とはいえ第三国の企業ということでございますので、本邦居住者には該当しないということでございます。

 こうしたことから、北朝鮮から第三国に輸出される貨物の売買に関する仲介貿易取引に関しまして、仮にその在外の日系企業が仲介するような場合があったとしても、これは本制裁措置の対象ということにはならないというふうに考えます。

 ただ、現在までのところ、実際そういった例があるということについての情報には接しておりません。

長島(昭)委員 これは大臣、ぜひ今後御検討いただきたいんですが、今はいいですよ、しかし、これから制裁のレベルを上げていくときに、このことが抜け穴にならないようにぜひふたをしていただきたいと思うんです。

 というのは、恐らく今の御説明ですと、タイの日系法人はタイの国内法で規制を受けるということになるんだろうと思うんですが、タイがきちっと、今、別に悪意があってタイの名前を挙げているわけではなくて、例えば国連安保理決議一七一八の履行をやって国内法を整備している、そういう国であれば、私もそれはそれでいいと思うんですが、そうでもないんですね。

 これは、皆さんのお手元の二枚目、お配りをした紙を見ていただきたいんですが、北朝鮮の制裁の決議一七一八の制裁実施状況について、一番下の項目を見ていただきたいんですが、非常にあいまいな報告しかタイ政府は国連安保理に行っておりません。そういうことを含めて考えると、ほかにも、先ほど甘利大臣はアフリカ諸国が余り、履行状況が悪いんだよなというお話をされておられましたが、これは厳密に申し上げますと、アジア、例えばASEAN諸国十カ国のうち、報告をしているのはまだ四カ国しかないんですね。その他の六カ国、このタイも含めて、きちんとした報告がなされていないんです。

 そういうことを含めて考えると、本当に北朝鮮の制裁の実を上げるという観点からいけば、この問題も余りあいまいにしておけないと私は思いますので、今後の努力目標という意味で、一つ御提案をさせていただきたいというふうに思います。

石田政府参考人 補足的に、恐縮でございますが、今の先生の御指摘でございますけれども、今回、この仲介貿易の件は、あくまで日本が独自に講じております輸入の全面禁止措置、これに伴う補完的な措置ということでございますので、例えばタイなどの第三国に対して北朝鮮が輸出するというのは、現状においては何ら基本的に制約がないという状況のもとでございますので、その点、限界があることは、ちょっと御承知おきいただきたいと思います。

長島(昭)委員 私は別に今やれと言ったわけじゃないんです。限界はよく認識をした上で、今後、国際社会に働きかけていく、あるいは我が国が独自で制裁をやっていく、そういう中で、こういうポイントもあるんじゃないですかという指摘ですので、ぜひ念頭に入れていただきたいというふうに思います。

 そして、外為法に基づく資産凍結について伺おうと思ったんですが、ちょっと時間がないので。

 せっかくきょうは岩屋外務副大臣に来ていただいているので。

 今議論してきたように、我が国独自の制裁も、我が国は拉致問題という特殊な問題を両国間に抱えていることもあって、これまでかなり厳格にやってきたと思いますけれども、しかし、単独では限界があることも事実でありまして、やはり国際社会を動かす努力をしていかなければならないと思うんです。これまでのリーダーシップはリーダーシップとして私は認めますけれども、肝心のアメリカの腰がふらついているんですね。これは、BDAの問題でも迷走しております。

 もう一つ加えて言うと、今月の八日に、アメリカ、ニューヨーク・タイムズが記事を掲載いたしました。エチオピアへの武器輸出の事例が報じられていて、これは一月の出来事だそうですけれども、北朝鮮から武器関連の装備をエチオピアに輸出していた。そのことを、決議一七一八に明確に違反するものですから、エチオピア政府はアメリカ政府に、実はそういう契約があるんだということを伝えたそうなんですね、事前に。しかしアメリカは、まあまあ、いいやと。これは、アメリカの事情もあったやに聞いております。つまりは、今エチオピアは隣の国のソマリアの内戦にある種介入していて、ソマリアの中で、首都モガディシュを支配していたイスラム原理主義を掃討している、その作戦に今エチオピアがある種貢献しているので、アメリカ特有のダブルスタンダードでそこは不問に付した、こういうケースがあるという報道。

 しかし、これも見過ごせないのは、エチオピアは、例えば二〇〇一年のデータですけれども、北朝鮮から二千万ドル相当の武器を購入しているんですね。これはもうある意味外貨稼ぎの一番の問題になってくると思うんですが、そういうアメリカに対して我が国政府は、忠告といいますか、こういうことを許していたら国際社会に示しがつかないんじゃないかというようなことは、報道が出た後でもいいですし前でも結構なんですが、やった事実はあるんでしょうか。

岩屋副大臣 今先生御指摘のエチオピアの件について、ちょっとこれは通告がございませんでしたので、我が方がその後どういう対応をとったかということは、今ちょっと私は承知をしておりません。

 いずれにしても、一七一八に基づく措置を一国でも多くの国が実施をしていただくことが必要だと考えておりまして、今七十カ国一機関、一機関というのはEUでございますが、私どもは、ありとあらゆる外交の舞台においてこの問題を取り上げて、働きかけを行っております。アメリカに対してもしっかりと緊密な連携をとらせていただきたい、こう思っております。

長島(昭)委員 これは、また外務委員会で引き続き伺いたいと思います。

 今、副大臣からおっしゃっていただいたように、本当に国連加盟国に対する働きかけというのが最も重要だと思いますし、これは、国連というのは非常にある意味厄介な組織で、いろいろな国の国益が錯綜するような場ですから、なかなか日本の思うように、一筋縄にいくようなものではないと思いますが、過去にリビアとか南アフリカとか、現に制裁がきちんときいて、彼らがある種、大量破壊兵器の開発をやめたとか、あるいは人種差別、アパルトヘイトをやめたとか、そういう事例もありますので、引き続き、特にアジア諸国、残る六カ国含めて、対応をこれからきちんとやっていただきたいというふうに思います。

 決議一七一八について一点だけ。これも、もしかすると通告の外だったかもしれませんが、決議が出てから三十日以内に報告をするということになっていますね。その報告義務については、これまでも私、議論を何度かさせていただいたんですけれども、昨日、久しぶりにこの安保理決議をよく読んでみると、この十二の(g)というところに、これは制裁委員会の活動なんです。今、制裁委員会の活動が非常に緩慢になっているという報道もあるんですけれども、こう書いてあるんですね。少なくとも九十日ごとに作業状況について、特に八で課す措置、八で課す措置というのは、調達や輸出の禁止、資産の凍結という、こういうまさに一七一八の一番の中核的な制裁措置ですけれども、その措置の有効性を高める方法に関する所見や勧告を添えて安保理に報告することになっているんですね。

 十月十四日にこの決議が出ましたので、一月中旬が最初の九十日、それからまた四月の中旬がもう一回目の九十日と、二回この九十日の期限を超えているんですが、制裁委員会が、この国連決議一七一八に基づいてどういうふうに制裁が行われているのか、そして、今後、この制裁を有効にきかせるためにどういう方法があるのかという勧告を行ってきたことについて、我が国政府としてどういうふうに把握しておられるのか、この点についても御所見を伺いたいと思います。

伊原政府参考人 我が国として、制裁委員会の活動については、今、日本は安保理の理事国ではございませんので直接関与はしておりませんけれども、制裁委員会のメンバー国と緊密に連絡をとりながらその活動をフォローしております。しかし、先生の御指摘の点については、今資料を持ち合わせておりませんので、また後刻調べて報告をさせていただきたいと思います。

長島(昭)委員 これはぜひきちんと把握をして、国際社会に対する働きかけの大きな要素だと私は思いますので、ぜひやっていただきたい、このように思います。

 それでは、最後の項目に行きたいと思うんですが、今回の制裁は、もちろん大量破壊兵器、ミサイルに伴う制裁でありますけれども、もう一つは、我が国固有の問題として拉致の問題があると思います。これは下村官房副長官、これまでもリーダーシップを発揮してこられた分野であろうかと思いますが、しかも、官邸の中で、拉致に対する補佐官が設置をされ、そしてそれを束ねるお立場であろうかと思います。

 これは、私、これまで何度か別の機会にやってきたのでありますが、皆さんのお手元にお配りした三枚目の紙を少し見ていただきたいと思うんです。これは国務省が毎年四月に出すテロ支援国家に関する年次報告書であります。二〇〇六年版が上段、二〇〇五年版、去年のバージョンが下。見ていただいて明らかなように、字数がかなり削られています。百六十一文字から百八文字。字数が削られただけではなくて、アンダーラインを引かせていただきました、二〇〇五年のところのアンダーラインのところを見ていただきたいんですが、ほかの国の拉致の事例、アザー・ナショナルズと書いてありますね、それから、ザ・ROK、韓国ですね、リパブリック・オブ・コリア、韓国の拉致のケース、この部分がそっくり削り取られているのであります。

 これは我が国にとって非常にゆゆしい問題でありまして、我が国は拉致の問題を、ただ日本の国民の生命と財産という問題のみならず、国際社会に対して、普遍的な人権、人道という価値の観点から、そういうキャンペーンを最近ずっとこの数年間張ってきた。しかも、この拉致の問題を、二〇〇三年だったと思いますけれども、アーミテージ国務副長官の御助力もあって、この国務省の年次報告書にようやく載せることができたという、これは救う会の皆さんあるいは家族会の皆さんが何度も何度もアメリカに足を運んで、入れることができたわけですけれども、このテロ支援国家指定が解除されてしまうのではないかということが今巷間、非常に心配をされているわけです。

 それを、ある種責任を持っておられる官房副長官の立場で、この前、気になるニュースがあったんですが、今の問題も一つお伺いをしたいところでありますが、もう一つは、日米首脳会談の中でライス国務長官がこうおっしゃった。テロ支援国家は、米国の国内法に照らせば、米国に対するテロを念頭に置いたものなので、日本の拉致問題の解決は指定解除の要件にはなっていませんよ、こう言った。大統領は、これは自分がコミットしている、拉致の問題はなおざりにはしない、こういうふうに再三述べておられますけれども、国務省の責任者あるいは国務省の文書の中からこの拉致の問題が何となく削られていく、こういう方向にあることについて、その首脳会談にも同席をされてライス国務長官の言葉をじかに聞かれたお立場だと思いますので、その辺の経緯も含めて、この問題について御所見を承りたいと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 まず、後の御質問でございますけれども、昨日、安倍総理が参議院の外交防衛委員会の中で同様の質問に対してこのようにお答えいたしました。

 安倍総理は、大統領は日本の拉致問題に対する姿勢を完全に支持するとはっきり明言している、もちろん、例えば拡大の会合では多少首脳以外の方が発言される場合もありますが、首脳会談は基本的に首脳がしゃべった内容がすべてであります、ブッシュ大統領は私に約束をしています、このテロ支援国家の解除についても拉致問題を当然考慮するということをはっきりおっしゃっております、こういうふうにきのう総理が参議院の外交防衛委員会で答弁をしておりますので、こういうラインだということでお許しを願えればというふうに思います。

 それというのも、同席をしていたのは事実でございますが、首脳会談における事細かな内容について、特にこの国会の場という大変公式な場で、米側との関係もございまして、これ以上明らかにすることについては差し控えさせていただきたいと思いまして、御理解をいただければというふうに思います。

 それから、最初の御質問の中で、アメリカにおけるテロ年次報告書が昨年のものと比べて記述が簡素化されているということについてどういう認識を持っているかという御質問であったというふうに思います。

 これは、六者会合プロセスの一環として、米国は北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する作業を開始することについて合意をしております。一方で米国は、この件につきまして、その終了に関してはいかなるタイムラインも設定をしておりません。この作業が実施される速度及び程度は北朝鮮の行動にもかかっている、こういうふうに説明しているというふうに承知をしております。

 また、先般公表されました国務省のテロ年次報告書においては、十二名の日本人拉致被害者の安否が不明であることなど、拉致問題について逆に前年よりも明示的に言及されている記述もあるわけでございます。

 いずれにしても、このテロ支援国家指定の解除に関しては、先般の日米首脳会談、それからその後の日米外相会談において、テロ支援国家指定解除の問題に当たっては拉致問題を考慮に入れるとの立場の表明が明確にあったわけでございます。また、首脳会談後の共同記者会見においても、ブッシュ大統領から、この問題に関する議論が拉致問題に関するブッシュ大統領の強い思いを弱めるようなことがあってはならないと、あえて共同記者会見でも強調して、ブッシュ大統領もその立場を表明されておられました。

 政府としては、引き続き、拉致問題の解決に向けて米国政府と協力していきたいと考えております。

長島(昭)委員 口頭によるコミットメントよりもやはり文書によるコミットメントの方が重いというふうに私は考えておりますので、この問題は今回で終わるわけではない。

 今おっしゃったように、手短にやめますけれども、確かに私もこの二〇〇六年版が出る前に外務委員会で外務大臣にもう少し踏み込んだ表現にしてもらえないだろうかということをお願いしまして、恐らく外務省の方から国務省に言っていただいた経緯があるんだろうと思います。

 今、副長官おっしゃったように、やはり一歩踏み込んだ表現にそこはなっているんですね。なっているんですが、韓国とかほかのところが抜かれていくというのは非常に私としても気になりますので、今後ともその点についてはきちっとやっていただきたいし、もしかしたら、これはアメリカ頼みではなくて日本自身が、テロ支援国家、北朝鮮は現在進行形のテロをやっている国家であるという新たな指定を我が国自身が行っていくような、そういう段階にもなっているのかなと思いますので、この点、今後ともきちんとやっていただきたいということをお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

上田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 北朝鮮制裁措置に関する国会承認案件について質問をいたします。

 最初に、北朝鮮の核実験を受けた昨年十月の国連安保理の対北朝鮮制裁決議に関して何点か外務省に伺います。

 この国連決議では、核、ミサイル、大量破壊兵器関連物資の輸出の禁止、核、ミサイル、大量破壊兵器計画に関与する個人、団体の資産凍結、ぜいたく品の輸出禁止などを加盟国に求めるものであります。先ほどの委員の質疑の中でも、安保理の制裁委員会への制裁実施の報告提出状況につきまして、七十カ国、EUとしての一機関ということが紹介をされました。

 そこで伺いますが、近隣諸国の国連の制裁決議に基づく制裁実施状況についてお伺いをいたします。

 六者会合の当事国でもありますアメリカと中国と韓国とロシア、この四カ国の国連決議に基づく制裁の実施状況について御紹介をください。

伊原政府参考人 六カ国協議に参加しております、日本、北朝鮮を除く四カ国の実施状況でございますけれども、まず中国につきましては、安保理決議の一七一八号に基づく義務を履行するということを対外的には明らかにしておりますけれども、それから報告書も提出はしているんですけれども、具体的な措置の中身については対外的に明らかにしていないということでございますので、この場で内容について御紹介することはできないということでございます。

 韓国につきましては、この一七一八に基づく幾つかの項目の中で、軍関連及び核、ミサイル、大量破壊兵器計画関連の特定品目の輸出禁止については実施をしているということを言っておりますが、奢侈品についてはまだ現時点では輸出禁止措置を実施していないという報告を国連の方に出しております。

 ロシアにつきましては、これも国連に報告はしておるんでございますけれども、具体的な措置については明らかにしていないということでございますので、今ここで御紹介することはできないということでございます。

 アメリカにつきましては、ほぼ日本と同様、ほぼ現時点でできるすべてのことについては実施をしているということでございます。

 以上でございます。

塩川委員 あわせて、ASEANの制裁の実施状況を伺いたいんですが、十カ国のうちでどこの国が措置を行い、その国々がそれぞれどういう措置を行っているのか、その点について御紹介をください。

伊原政府参考人 ASEAN諸国の中でこれまでのところ安保理の制裁委員会に報告書を出しておりますのは、シンガポール、フィリピン、ベトナムの三カ国のみでございます。

 これら三カ国につきましては、軍関連及び核、ミサイル、大量破壊兵器計画関連の特定品目の輸出禁止措置は実施済みであるという報告をしております。それから、奢侈品につきましては、この三カ国の中ではシンガポールのみが輸出禁止措置を実施済みであるという報告をしております。

塩川委員 外務省からいただいたこの一七一八に関する報告書提出状況の中にインドネシアの名前もあるんですけれども、このインドネシアについての措置の状況というのはどういうものなんでしょうか。

伊原政府参考人 インドネシアについては、ちょっと、もう一度チェックいたしまして報告をさせていただきたいと思います。確かに七十カ国の中にはインドネシアも入っておりますけれども、まだ具体的な報告の内容について私どもは見ておりませんので、チェックしたいと思います。

塩川委員 七十カ国とされていますけれども、国連のホームページ上で名前が公表されているのは六十五カ国、その差の五つの中に中国もあるということなんでしょうか。この中に、ASEANとかの国というのも、公表されていない国として挙げられているものなんでしょうか。

伊原政府参考人 日本は今国連の制裁委員会の委員ではございませんけれども、この問題は大変関心を持って、常にフォローしております。

 したがいまして、国連のウエブサイトに出るよりもより新しい情報を常に入手するように努めておりまして、今の七十カ国というのは、やがて国連のウエブサイト上でもそういうふうに掲載されると思いますけれども、私どもが把握している最新の報告国の数ということでございます。

塩川委員 中国が入っていないのは何か理由があるのかと思ったんですけれども。

伊原政府参考人 詳細については私ども承知しておりませんが、中国については、現時点では報告について対外的に公表していないということでございますので、国連のウエブサイト上に中国が入っていないのはそういった事情もあるのかと思いますが、そこのところは、正確なところは今わかりません。

塩川委員 インドネシア等については後で御報告をお願いします。

 そこで、国連の制裁措置に先行して、日本独自の措置をとったわけですけれども、その点について、日本独自の、今回の国会承認案件にもなっている措置につきまして経済産業省に伺います。

 輸入禁止措置等による輸出入実績への影響がどうなっているのか、この点が一点と、あわせて、これは、実施をされる際に、制裁措置の影響を受ける事業者に、政府としてきめ細かな対応をとるとしております。その点で、北朝鮮制裁措置に係る中小企業者からの相談件数がどうで、主な相談内容はどういうものか、融資、保証の申し込み、承諾の実績の状況について御紹介をお願いします。

石田政府参考人 まず、貿易分野に対する影響でございますけれども、北朝鮮制裁として、我が国独自の措置である輸入全面禁止措置を昨年十月から、また、安保理決議を受けた奢侈品の輸出禁止措置を昨年十一月から、それぞれ実施いたしたわけでございます。

 輸入につきましては、その後、二〇〇五年には百四十五億円ありました輸入実績が、昨年十二月以降ゼロということになっておりまして、北朝鮮の外貨獲得能力を一定程度減殺しているものと考えます。

 また、輸出につきましては、奢侈品の輸出禁止措置に加えまして、北朝鮮籍の船舶の入港禁止措置も相まって、輸出総額は、昨年の十月からことしの三月までで見ますと、前年比で八五%減ということで、大幅に減少いたしております。奢侈品については、当然、措置後、現在まで輸出実績はないということになっております。

 事業者対策につきましては、中小企業庁の方から。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 北朝鮮からの輸入禁止措置によりまして影響を受ける中小企業対策といたしまして、政府系中小企業金融機関、商工会議所等九百四十カ所に特別相談窓口を設置いたしました。同時に、セーフティーネット貸し付けをスタートさせまして、あわせてリーフレットを二万枚作成いたしまして、特別相談窓口を通じて配布するといった策を講じてきたところでございます。

 全国の九百四十カ所に設置をした特別相談窓口での中小企業者からの相談でございますけれども、先週末までの段階で、水産品輸入・加工業者、それから中古車、バイク、家電といったものの輸出業者等から百七件の相談が寄せられたところでございます。

 その中身といたしましては、支援の内容、それから制度の問い合わせ、あるいは事業転換とか仕入れ先を変更するための相談といったところでございます。

 特別相談窓口に寄せられた百七件の相談のうち、政府系金融機関への相談は八十四件ございまして、融資の承諾で十五件、保証の承諾は四件という実績でございます。

 それから件数の方の、ちょっと最近の動きでございますけれども、昨年中に九十四件、年が明けましてから十三件ということでございまして、直近では、この一カ月ほど相談は寄せられておりません。

 北朝鮮に対する経済制裁措置が延長されたことを受けまして、関係機関と密接に連絡をとりつつ、中小企業対策を引き続き実施していきたいと考えているところでございます。

塩川委員 わかりました。よろしくお願いします。

 次に、外務省に伺いますけれども、六者会合が二月に行われました。この二月十三日の共同文書が合意されたわけですけれども、その内容と、朝鮮半島の非核化に向けた取り組みの現状、現局面について示していただけますか。

伊原政府参考人 二月十三日の六者会合の合意に基づきますと、まず、六十日以内の初期段階の措置として、北朝鮮は、寧辺にあります核施設の活動の停止、封印、それからIAEAの要員による検証、監視の受け入れといったことを行うことになっております。これに見合った形で、他の、六者の参加国から重油五万トン相当の緊急エネルギー支援を行う。それから、さらに二月十三日の合意では、その次の段階において、北朝鮮がすべての核計画の完全な申告を提出して、すべての既存の核施設の無能力化を行う。これに対応した形で、重油九十五万トン相当を上限とする支援を行う。こういったのが二月十三日の合意として成ったわけでございます。

 しかし、それに続く三月の会合、これは初期段階の措置の履行状況を確認するための会合でございますけれども、その三月の会合において、北朝鮮は、バンコ・デルタ・アジア、BDAにあります北朝鮮の資金の送金にこだわった結果として、実際に非核化に向けた具体的な議論に入ることができないまま、今、六者会合は休会となっている。これが六者会合の現時点での状況でございます。

 四月十日に、マカオの当局は、BDAにあります北朝鮮関係の資金につきましては、幾つかある口座の保有者が希望すれば、もう資金を受け取ることはできるんだということを明らかにいたしまして、すなわち、資金の凍結は解除されたわけでございますけれども、引き続き、北朝鮮はこの資金の送金にこだわっておりまして、初期段階の措置をまだ実施していないという状況でございます。

 いずれにしても、この初期段階の措置の実施期限はもうとうに過ぎておりますので、北朝鮮がこれを履行していないことは大変遺憾だというふうに思っております。北朝鮮が一日も早く、みずから約束したこの初期段階の措置を実施することが重要であるというふうに考えております。

塩川委員 あわせて、この六者会合共同文書にもあります五つの作業部会の作業状況についてお伺いをします。

 最初に、米朝関係正常化に関する作業部会の作業状況はどんなものになっているのか、お示しください。

伊原政府参考人 ただいま委員御指摘の五つの作業部会、これは二月の六者会合において合意されたわけでございます。朝鮮半島の非核化、それから米朝、日朝の国交正常化、経済及びエネルギー協力、北東アジアの平和、安全メカニズム、こういう五つの作業部会が合意されております。

 今御質問の、その中の米朝の国交正常化作業部会でございますけれども、これは三月上旬に行われまして、二国間の作業部会でございますので、日本は当然のことながら参加をしておりません。したがって、その中身について詳細は私ども承知しておりませんけれども、米国からの連絡によりますと、米朝の作業部会において、米国の方からは、日本との国交正常化の重要性について北朝鮮にも説明をしたというふうに聞いております。

塩川委員 日朝関係正常化に関する作業部会は御案内のとおりですけれども、それ以外の三つですね、日本も参加をするということでは。経済、エネルギー協力作業部会、北東アジアの安全保障に関する作業部会、朝鮮半島非核化に関する作業部会、それぞれどんな状況でしょうか。

伊原政府参考人 先ほど申し上げましたように、各国が参加いたします三つの作業部会につきましては、三月の中旬にまとめて北京で行われまして、その中の、この六者会合のまさに一番中核的な作業であります朝鮮半島の非核化のための作業部会、これにつきましては、先ほど委員の御質問でお答えしましたように、北朝鮮は、バンコ・デルタ・アジアの資金の送金問題にこだわった結果として、ほとんど実質的な議論ができないままに終わっております。

 それに先立って行われました経済、エネルギー協力のための作業部会におきましては、主に、初期段階において実施する五万トン相当の重油の供給の問題について議論が行われました。この作業部会では、北朝鮮がきちんと非核化についての措置をとるということがもちろん条件でございますけれども、その場合には、韓国が五万トン相当の重油を供給するというふうな意図の表明がございました。

 それから、あわせて、北東アジアの平和、安全メカニズムのための作業部会も行われまして、これは、とりたててはっきりした、具体的な議題があったというよりは、むしろこの北東アジアの平和と安全に非常に大きな関心を持つこの六カ国の間で、一般的な議論がまず行われたということでございます。

塩川委員 我が党は、この問題で、日本政府が日朝平壌宣言に基づいて拉致問題や過去の清算を含む二国間の懸案の解決を図っていく、その中で、国交正常化のために真剣に努力をする、これと同時に、この努力を、六カ国協議における朝鮮半島非核化のために課せられた役割の誠実な取り組みと結びつけることを希望するものであります。

 この点について外務省に伺いますが、二国間の努力と六者会合の努力とを結びつけて取り組む、その点についての政府としての対応をお聞かせください。

伊原政府参考人 委員御指摘のとおり、この六者会合のプロセスは、北朝鮮による核放棄に加えまして、日朝それから米朝の国交正常化の実現も六者共通の目標ということで明記されております。したがって、日本といたしましては、こういった六者会合の目標が明記されております二〇〇五年九月の共同声明を完全に実施するということが重要であるというふうに考えております。

 したがいまして、現時点では、北朝鮮は特に拉致問題について全く誠意ある対応を示しておりませんので、日朝の二国間の交渉というのは進捗しておりませんけれども、我が国としては、拉致問題を含む日朝関係に進展が見られれば、六者会合の他の分野においても、日本としてもより積極的な対応をとることができるようになるわけでありますし、そういったことで六者会合と日朝関係の間に好循環が生まれることを期待しておりますし、そういうふうに努力をしていきたいと思っております。

塩川委員 最後に、甘利大臣にその点について重ねてお伺いします。

 国務大臣として、二国間の努力の方向と六者会合での努力の方向とを結びつけて取り組んでいく、その点が極めて重要だと思っております。塩崎官房長官も、拉致特別委員会の質疑の中でも、この二つ、両者は有機的に結びつけるというお話もされておりました。国務大臣としての大臣のお考えをお聞かせください。

甘利国務大臣 先ほどから事務方からも答弁がありますとおり、我が国は、別に棒をのんだようにただ圧力をかけているわけではなくて、対話と圧力、硬軟合わせわざで対応している。六者協議の中でも、誠意ある対応をするのであるならば、いつでも話し合う場を持ちましょうということを投げかけはしているわけでありますが、なかなか乗ってこない。そうこうしているうちに、BDAの問題で今に至っているわけであります。

 私どもは、ありとあらゆる手を尽くして、日朝間の問題解決に向かって努力をしていきたいと思っております。

塩川委員 各国がそれぞれ知恵を出し合いながら取り組みを進めていく中で、日本としても、さらなる知恵、工夫などということが求められている、その点を指摘して、質問を終わります。

上田委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

上田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮からの貨物につき輸入承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。(拍手)

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

上田委員長 次に、内閣提出、参議院送付、自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。甘利経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

甘利国務大臣 自転車競技法及び小型自動車競走法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 刑法の特例として法律に基づき実施されている競輪及び小型自動車競走は、これらの売り上げを通じて機械事業の振興や公益の増進に寄与するとともに、地方財政の健全化を図るためのものであり、高い社会的意義を有しているところであります。しかしながら、近年その売上額は大きく減少しており、その活性化が課題となっております。

 このため、両事業の公正かつ円滑な実施を図るための業務等を行っている特殊法人日本自転車振興会及び日本小型自動車振興会について、その組織のあり方を含め、効率化等を図るための見直しを行うとともに、施行者である地方自治体が安定的に事業を実施できる環境の整備を行う必要があります。

 以上が、本法律案を提案した理由であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、特殊法人である日本自転車振興会及び日本小型自動車振興会の業務について、指定を受けた営利を目的としない法人に行わせるとともに、特別認可法人である自転車競技会及び小型自動車競走会の業務についても、指定を受けた営利を目的としない法人に行わせることであります。

 第二に、競輪及び小型自動車競走の事業の活性化に必要な事業を行った施行者に対して、交付金の一部を還付することであります。

 第三に、事業の再建に取り組む赤字施行者に対し交付金の交付の期限を延長する措置について、延長する期間の上限を三年から五年に変更することであります。

 第四に、競輪及び小型自動車競走の開催する際の入場料の徴収義務を撤廃すること、重勝式投票法を新設することその他競輪及び小型自動車競走の事業の活性化のために必要な措置を講ずることであります。

 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

上田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る三十日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十四分散会


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