衆議院

メインへスキップ



第2号 平成19年10月24日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年十月二十四日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 鈴木 俊一君

   理事 谷本 龍哉君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 吉川 貴盛君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      阿部 俊子君    伊藤 忠彦君

      江藤  拓君    岡部 英明君

      片山さつき君    川条 志嘉君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      坂本 哲志君    柴山 昌彦君

      平  将明君    谷畑  孝君

      土井 真樹君    永岡 桂子君

      丹羽 秀樹君    橋本  岳君

      藤井 勇治君    武藤 容治君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      吉野 正芳君    若宮 健嗣君

      太田 和美君    北神 圭朗君

      後藤  斎君    近藤 洋介君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    牧  義夫君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      高木美智代君    吉井 英勝君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   経済産業副大臣      中野 正志君

   財務大臣政務官      宮下 一郎君

   経済産業大臣政務官    荻原 健司君

   経済産業大臣政務官    山本 香苗君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      松山 隆英君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    小田部陽一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       寺坂 信昭君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          石田  徹君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            細野 哲弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 望月 晴文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     薦田 康久君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    長尾 正彦君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    福水 健文君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石井喜三郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小川 富由君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     坂本 哲志君

  清水清一朗君     矢野 隆司君

  牧原 秀樹君     阿部 俊子君

  吉田六左エ門君    江藤  拓君

  牧  義夫君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     牧原 秀樹君

  江藤  拓君     吉田六左エ門君

  坂本 哲志君     江崎洋一郎君

  矢野 隆司君     永岡 桂子君

  吉田  泉君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     若宮 健嗣君

  鈴木 克昌君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     清水清一朗君

    ―――――――――――――

十月二十四日

 消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)

 電気用品安全法の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長松山隆英君、外務省経済局長小田部陽一君、経済産業省大臣官房商務流通審議官寺坂信昭君、経済産業省産業技術環境局長石田徹君、経済産業省製造産業局長細野哲弘君、資源エネルギー庁長官望月晴文君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長薦田康久君、特許庁総務部長長尾正彦君、中小企業庁長官福水健文君、国土交通省大臣官房審議官石井喜三郎君及び国土交通省大臣官房審議官小川富由君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷本龍哉君。

谷本委員 おはようございます。自民党トップバッターで質問をさせていただきます谷本龍哉でございます。

 一般質疑でありますので、基本的には大臣の、細かいことではなくて、基本姿勢をお尋ねしたいと思っておりますが、物によっては少し細かいこともあるかもしれません。

 まず、一点目ですけれども、日本全体の景況感について伺いたいと思います。

 大臣はあいさつの中で、我が国経済は、民需主導の成長を続け、戦後最長の景気拡大をしている、こういうお言葉がございました。これは、もう釈迦に説法ですけれども、最長ではあるけれども最大ではない。一般の方が最長、最長と聞くと、それだけ景気がよくなっているんだったら、何で我々こんなに厳しいんだ、こういう声を地元でもよく聞きます。

 確かに、イザナギ景気、あれは五十八カ月ですか、それに対して現在は既に六十八、九というところまで来ている。しかしながら、年平均の成長率で見れば、イザナギのときが名目で一八・四、実質で一一・五の成長率が年平均であった。しかし、今回は名目では〇・八、そして実質では二・〇、非常に低い成長率の推移になっている。このことが、最長という言葉を余り使うと、ここがまた誤解を生むところかなというふうに思うんですけれども。

 地方の今の景況感、回復状況にばらつきがあるというお話もありましたけれども、地元に週末帰っていろいろなところでお話を聞くと、非常に厳しい、景気回復と言いながらさらに厳しさが増しているという声がやはり地方の方では非常に大きな声となっていると肌身で感じております。

 こういう中で、大臣、これからやはり、中小企業の活性化策、あるいは地方をいかにして再生していくか、このあたりの政策を前面に、最重要政策として打ち出していくことが必要であるというふうに私は考えますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のように、今回の景気回復は、長さでは最長でありますが厚みがないということと、それから、地域間、企業間の格差がかなりあるということであります。

 地域間格差を有効求人倍率ではかってみますと、愛知県が一・九九に対して、沖縄は〇・四四、四、五倍の差があるということですね。それから、大企業と中小企業でも、業況判断DI、大企業・製造業はプラスの方の二三ですが、非製造業の中小企業はマイナスの一〇ということでありますから、かなりのばらつきがある。中小企業の活性化というのはそっくりそのまま地域の活性化につながっていきますから、中小企業が元気になるということが極めて大事なことでありますし、地域の自立力、雇用と税収を生み出す自立力をはぐくんでいくわけであります。

 そこで、この地域、中小企業の活性化というのを経済産業省の政策の最重要課題の一つというふうに位置づけまして、大臣特命のプロジェクトチームをつくりました。十一月中を目途にこの施策パッケージを取りまとめようというふうに思っております。具体的には、さきの国会で地域振興二法、企業立地法と地域資源活用促進法をつくりました。それから、地域のやはり大きな産業の一つであります一次産業、農業についても、農業と商工業の連携、あるいはITをどう使っていくかを考慮して活性化を図っていくことに努めたいというふうに思っております。

谷本委員 大臣から伺いましたが、同時に、それを支える副大臣、大臣政務官からも一言ずついただきたいと思います。

中野副大臣 おはようございます。

 ただいま甘利大臣から答弁がありましたが、私も、景況感あるいは中小企業の厳しい状況、また、地域によっても大変ばらつきがある、そういった意味での認識と今後の取り組みについては全く同感であります。

 今、甘利大臣からも紹介がありましたけれども、さきの通常国会で成立をいたしました中小企業地域資源活用促進法、これは、地域の強みである地域資源を生かした新商品、新サービスの開発や市場化を専門家の助言や試作品開発の資金補助等によって支援するものであります。今月十二日には全国で、数字でいいますと百五十三件の事業計画を認定いたしましたけれども、五年間で何とか一千件、これを目標に、新事業を創出すべく今全力で私たちもしっかり取り組みをいたしておりますし、都道府県を初め地方側、またいろいろな企業、団体側にお声がけをさせていただいておるところであります。

 ちなみに、議員のお地元の紀州ほそ川さんですか、梅干しから梅エキスを抽出して鳥に与え、肉質の改善をもたらす、そして紀州うめどり・うめたまごのブランド化が成功された。今後、養殖マダイの飼料原材料としての販路拡大を図るということで、いち早く手を挙げていただきましたけれども、問題は、貴重なものをつくっていただいても、結果、販路の拡大その他の問題があろうかと思います。当然、自主努力は精いっぱいなされるんでありましょうけれども、私たちもそういった意味でも、甘利大臣もどこにでも行くよというお話でございますので、私たちもしっかりお支えをさせていただければ、そんな気持ちであります。

 ちなみに、これに加えて、中小企業の金融円滑化あるいはIT化の支援等、企業の前向きな取り組みを後押しして、地域、中小企業の活性化を図るため、予算、金融、税制などあらゆる政策手段を用いて、私たち、一生懸命にお手伝いをさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

荻原大臣政務官 おはようございます。全国的な景況感につきましては、大臣、副大臣が申し上げたとおりだと思っております。

 実は、私は群馬県の草津温泉というところの出身の人間でございまして、大変に有名な温泉地だと自負をしているわけなんですが、年間三百万人ぐらいのお客様をお迎えしております。

 しかしながら、町の経済全体を見ますと、工務店さん、あるいは土建業を営んでいる方々が事業をやめてしまっているような状況でございます。私の実家が金物屋をやっているものですから、工務店さんであるとか土建業の皆さんを相手に商売をさせていただいているわけなんですが、先生がおっしゃったような、その痛みを私は非常に自分のことのように感じているところでございます。

 ただ一方で、群馬県全体を見渡してみますと、実は有効求人倍率が一・七〇といいまして、全国で第二位でございます。ちなみに、第一位が愛知県、第三位が栃木県、愛知県が一・九九、栃木県が一・五〇。これはなぜこういうことになっているかと見ますと、やはり、愛知県はトヨタの工場がある、群馬県には富士重工さんの工場がある、栃木には日産の工場がある。そういう意味では、日本全体を見ますと、製造業、特に自動車の組み立て工場を立地する地域というのは回復が顕著である。一方で、農林水産業あるいは建設業の従事者が多い地域においては、まだまだ回復がおくれているという傾向があります。

 こうした中で、地域経済活性化を進めるためには、域外からの企業立地によりまして産業構造を変えていくことが一つの方策だと考えておりまして、ことしの通常国会で企業立地促進法を制定いたしまして、現在までに、二十道府県、二十八の基本計画が策定をされて、国といたしまして同意をしております。

 今後とも、企業立地促進法の着実な実施を初め、地域に新たな産業や雇用を生み出す新たな担い手であるコミュニティービジネスの支援等、地域経済の再生のために、大臣とともに全力で取り組んでまいりたいと思っております。

谷本委員 どうもありがとうございました。

 それぞれ週末地元へ帰ると、厳しさはみんな身にしみてわかっていると思います。ぜひとも一致団結をして、中小企業の活性化、地方再生、これに全力で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 二問目に、今の中小企業対策の関連ですが、特に小規模企業の対策のことについてお伺いをしたいと思います。

 大臣があいさつの中で、成長の果実を地域や中小企業に広く行き渡らせることが必要である、このように述べられております。この中小企業政策ですが、政策の分け方について御質問をさせていただきます。

 中小企業と一言に言いましても、中規模と、そして小規模の企業というのはかなり違いがあると思います。特に、中企業といっても、なかなかそういう中規模の企業さえないような地域も地方に行けばたくさんあると思います。中規模であれば、例えば、それはいろいろ状況はあるとは思いますが、人材育成のための支援であったり、研究開発の支援であったり、そういうものが必要だというところが多いかもしれません。

 しかしながら、本当に小さな、小規模な企業になってくると、そこまでのレベルにまだ行けない。資金繰りをどうにかしてほしい、あるいは、会計をもう少し適正化、どんぶり勘定的にやっているものをしっかり把握できるものにしたいとかそういう、問題のレベルがまた変わってくるというふうに思うんです。

 この中小企業対策の中で、特に小規模企業、ここに光を当てる、特化した政策というのをパッケージで出していくことが重要だと考えるんですけれども、その点について大臣の見解をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 一口に中小企業と言いますと、四百三十万社と言われています。製造業でいえば、従業員規模三百人以下でありますが。しかし、この四百三十万のうち、実は大部分が小規模企業、製造業でいえば二十人以下ですね、これが三百八十万ですから、中小企業というのは大部分が小規模企業なんだということになります。

 おっしゃいますように、中小企業の中でも中堅クラスはそこそこ地力があります。ただ、小規模企業は、まず自分自身の課題がどこにあるのか、財務上の課題、それから、それ以外の課題も含めて、自己分析がなかなか正確にできないわけであります。財務上の問題についても、コンピューターのソフトを自分で装備してというところまでなかなかいかないところもあります。

 でありますから、今、商工会、商工会議所が中心になって、「ネットde記帳」という、ネットを使ってASPとの組み合わせでデータ処理をしてもらう、これを進めているところであります。もちろん、ASPの中の発展型のSaaSという仕組みもありますけれども、これらとうまくアクセスすることによって自己分析をしっかりする。また、そういう分析ができるところと政府系金融機関との融資の連携、決済処理の装備がしてあって、ちゃんと把握できているところには早くするような組み合わせをしていくことが必要だというふうに思っております。

 それから、商工会、商工会議所では経営指導員というのがいますけれども、さらに進んで、先進的な取り組みを行おうとするところ、それを二百カ所以上選定しまして、もうちょっと厚みをふやす、企業OBを含む専門家を派遣できるようにする、そういう拠点整備、そういうことをしていく。あるいは、経営者の相続が企業の存続にかかわってしまう中小企業、小規模企業について、事業承継について抜本的な対応をする。もろもろを含めて、現在取り組んでいるところであります。

谷本委員 今、小規模企業対策というのを伺いましたけれども、お話の中で、例えば経営指導員を商工会、商工会議所に配置してある、あるいはそこに厚みを持たせる。経済産業省のいろいろな政策について、商工会や商工会議所を拠点にするような場合は多々あると思うんですが、現在、商工会の場合、加入率が全国の平均で六〇・九%、商工会議所になると、加入率は三四・二%というのが現状であります。

 これは別に加入率を責めているわけではなくて、これは任意の団体ですから、地域で皆さん大変頑張っていただいているんですけれども、この加入率を考えたときに、商工会あるいは商工会議所を使っていろいろなことをする。そのときに、そこに入っていない小規模な企業の方々、そこの意見というのがうまく本当に酌み取れているのかどうか、あるいは、経済産業省が出すいろいろな政策がその方々にきちんと伝わっているのかどうか。このあたり少し心配をするんですけれども、この点について大臣はどのようにお考えか。

甘利国務大臣 経済産業省、中小企業庁といたしましても、会議所や商工会に対してきめ細かな対応を要請しているわけでありますし、それ以外に、中小機構の中にもいろいろな相談窓口を設ける等、考え得るツールを最大限使って、施策がきちんと中小企業者、なかんずく小規模事業者に届くように努力をしてまいります。

谷本委員 次に、中小企業で問題になる下請の状況の問題点なんです。

 今、大企業が非常に業績を回復している。しかしながら、その裏には、実は下請企業に非常に厳しい締めつけを行ったり、あるいはコストダウンを迫っている状況があるのではないかという指摘も一部にはございます。そういうことがあるがために、上がもうかっても下まで十分に資金がおりずに、そのために、景気はいいといいながら、なかなか個人の消費が上がってこない、こういう状況にあるのではないか、こういう考え方もあると思うんですが、大臣は、この下請の問題というものをどのようにとらえて、今後どう取り組まれるおつもりなのか、お願いいたします。

甘利国務大臣 大手の企業は、バブル時の収益をさらに更新しているというような報道があるわけであります。一方で中小企業は、このところ営業利益が圧縮をされてきている。その原因は、原油・原材料高が転嫁できない、あるいは、仕事量はふえても発注単価が上がらないということで人をふやす、その人件費が利益を圧迫するという状況であります。

 もちろん、直接中小企業が市場に商品を流すということもあるでしょうが、多くの場合は元請との関係が多いわけであります。でありますから、まず一つには、元請、下請の関係、法律上問題はないか。これは、公取と経済産業省の連携でしっかりと法令違反は厳しい取り締まりをしていくということ。それから、進んでいい関係をつくるということが大事でありますから、適正下請取引の推進ということに心を砕いているところであります。

 三月には、経団連に数百社を集めた席で下請取引の適正化の要請をしましたし、日商は大企業と中小企業が共存しているところでありますから、むしろ日商からいい関係のベストプラクティスを発出してほしいという要請にも行ったわけであります。業種ごとにガイドラインをつくりまして、その中であらまほしき姿を実践しているベストプラクティスを発出することによって、それに他業界あるいは他企業が倣うということもしているわけでございます。

 いずれにいたしましても、中小企業に成長の果実が均てんをするということが、長い目で見て、大企業にとっても有力なパートナーがしっかり繁栄していくことにつながるわけでありますし、地域経済にとっても大事なことでありますから、しっかり目配りをしていきたいと思っております。

谷本委員 ありがとうございます。この下請取引の適正化に全力で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、今いろいろな中小企業団体にお話を伺いますと、事業承継税制の創設を望む声が非常に強く出されております。自民党の経済産業部会の事業承継問題検討小委員会においても、本年六月十九日に中小企業の事業承継円滑化に向けた提言という形でまとめたところでございます。

 税制の部分は財務省との話し合いというところもあるとは思いますが、中小企業政策を統括する大臣として、この問題にどのように取り組まれるのか、お伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 中小企業にとりましては、大企業と違って、経営者の相続が事業の存続と極めて深い関係にあるわけであります。でありますから、事業が継続をしていくということが相続によって遮断されないように、しっかりとした政策的配慮が必要であります。

 谷本先生御自身が中心的な人物のお一人として、自民党の経済産業部会で事業承継の税制の提案をなされました。それらも参考にしつつ、税制改正要望の中に我が省要求として政策要望を出していきたいというふうに思っております。

谷本委員 ありがとうございました。

 では、次に、悪質商法対策、特に割賦販売の問題について質問をしたいと思います。

 質問をつくっておりましたら、きのうの新聞に、まだこれは提訴ということですから事件なのかどうかははっきりと結果は出ておりませんけれども、着物の強引販売ということで記事が出ておりました。読んでみますと、年金を含めて月収十二万円の高齢者の方に一千五百万円のローン契約をしていたと。これはどう考えても非常に悪質なケースだと、これだけ見ると私は判断できるというふうに思います。

 大臣もあいさつの中で、製品安全対策や悪質商法対策など消費者保護の充実に取り組む、このように言明をされております。

 この問題につきましては、産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会、ここで今議論されていると伺っておりますが、昨年大きな騒動になりました消費者金融の市場が、今市場規模が三十三兆円です。これに対して、クレジットの市場というのは今四十三兆円あるわけですね。消費者金融よりも大きい。この中で、今あったような多額のクレジットを組ませるような過剰与信、あるいはリフォーム詐欺など、これは二〇〇五年、埼玉の方で有名な事件がありましたが、認知症の姉妹に対してリフォーム業者十四社が総額約五千万円の契約をした、こういう事例がありましたけれども、こういった悪質商法提携、こういうものがたくさん起こってきております。

 これらの悪質商法の対策の問題についてなんですけれども、昨年の二〇〇六年十二月に成立した貸金業法では、総借入残高の合計額が年収の三分の一を超える貸し付けは原則禁止、こういうことが改正で行われました。これと全く同じというわけではありませんけれども、それぞれの特性はあると思いますが、先ほどのように、年金を含めて月収が十二万しかない、これに千五百万のローンを通してしまう、これが本当に適正かどうかということをやはりしっかり考えなきゃいけないというふうに私は思います。

 その中で、クレジット、割賦販売においても、やはり支払い能力を超える契約を禁止する何らかの基準をつくるべきだと考えますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のように、改正貸金業法では、いわゆる消費者金融に関しまして、年間の収入総額、給与総額の三分の一を超える与信の禁止という内容が成立をしたわけであります。クレジットの場合、そっくりそのまま適用できるかというと、実際に物が残るわけでありますから、そっくりそのままというぐあいにはいかない、若干の柔軟性が必要だと思いますが、しかし、御指摘のとおり、クレジットを利用した悪質商法が高齢者に対して随分と被害を広げているわけであります。

 そこで、産構審におきましても、クレジット取引の適正化、それから消費者救済対策について検討しているところであります。消費者の支払い能力をちゃんと与信会社が調査をする、それできちんと判断するということを義務づける、支払い能力を超えるような与信を与えてはならないということについて、今検討しているところであります。

 先ほど申し上げましたように、貸金業と違って、物が残るということがありますから、一律に三分の一を超えてはいかぬというぐあいにすぱっと決めるということは難しい面がありますけれども、しかし、過剰与信に当たるか否かの判断基準を、目安を具体的に提示できるようになればいい、これを中心に今検討させているところであります。

谷本委員 ぜひともその基準を明確につくっていただきたいというふうに思います。

 それからもう一点、この悪質商法の場合は、販売者と購入者と、間にクレジット会社がある、この三者が存在する、その中で今クレジット会社には何も責任というものが課されていない。そうするとどういうことが起こるかというと、途中でクレジット会社が、この販売者はどうもおかしい、変なところだと気づいたとしても、ずっと、買った方からお金を振り込んでもらう、振り込んでもらった方が得だというふうな状態に今なっていると思います。一度払ってしまえばそれはもう返還する義務がないわけですから、どうしても、悪意でいえば、悪意を持った者であれば、黙ったままいた方がお金が入ってきて自分には都合がいいというふうにクレジット会社はなるのが当然だと考えるんです。

 この点、やはりクレジット会社が販売業者と提携をする場合に、その販売会社が確かなところであるかどうかを確認する義務、そして何か問題が起こったときの共同責任という部分をしっかり決めるべきだと考えますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

荻原大臣政務官 先生御指摘のとおりだと思っております。

 お金を払ってしまった分については、返還をする制度というのが今ありません。ですから、消費者が救済されないという事態が起こっております。

 先ほども大臣が申し述べたとおり、経済産業省といたしましては、やはりお金を戻せることができるような制度に整備をすべく、産業構造審議会において検討をしておるところでございますし、また先生御指摘の、共同で責任をとるべきであるということについても検討してまいりたいというふうに考えております。

谷本委員 その点、しっかりと議論をしていただきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、この悪質商法、一問飛ばしまして、最後の質問ですが、航空機産業について質問をさせていただきたいと思います。

 大臣もごあいさつの中で次世代環境航空機というものに触れられておりました。航空宇宙産業の世界の市場規模は今五十兆円と言われています。自動車産業が百三十五兆円で、家電産業が八兆円という中での五十兆ですから、かなり大きい規模であるというふうに思っております。

 この航空機の分野ですけれども、日本は、こういう加工組み立て産業、自動車であるとか家電であるとか、これは得意分野であると言って間違いはないと思いますけれども、なぜか航空機の分野だけはまだまだ伸ばせていないという現状にあるというふうに思います。

 例えば、自動車の場合は部品というのは大体一台に二万から三万点なんですけれども、航空機の場合は三百万点という非常にたくさんの部品があります。航空機産業が大きく伸びれば、関連のところが非常に幅広く利益を得る構造にあるというふうに思います。

 この分野について、経済財政改革の基本方針二〇〇七ではこれを推進していくと明記をされております。今後のこの航空機産業、私は、日本にとって、ここを頑張れば、自動車や家電に次ぐさらに大きな柱になり得る産業だというふうに考えておりますが、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。

甘利国務大臣 日本はものづくりの国でありますけれども、そういうものづくりの中でも製造業全体への波及効果の高いものを高信頼性産業と呼んでおります。次世代原子炉でありますとか、ただいま御指摘の次世代航空機であります。その理由は、おっしゃいますように、部品点数が多い、部品産業の革新にどんどん波及していく、すそ野が広い。それから、素材が革新的素材を使いますから、素材産業へのいろいろなすそ野の広がりが大きいというところであります。

 航空機産業というのは、現状では七兆円産業でありますけれども、今後二十年間で市場を見通してみますと、十五兆円規模に市場がなってくるというふうに見通されているわけであります。

 日本の飛行機の技術も極めて高いということは客観的に認識をされているところでありますし、いろいろ国際共同開発への参画の比率も年ごとにふえていっているところでございます。そうした中で、次世代環境航空機、MRJ、三菱リージョナルジェットと呼んでおりますけれども、この開発は、日本の製造業のすそ野をうんと広げていって、革新をしていくということに極めて貢献するというふうに考えております。しっかりと力を入れていきたいと思っております。

谷本委員 時間が来ましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

東委員長 以上で谷本龍哉君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽でございます。

 おはようございます。

 まず、甘利大臣におかれましては、再任おめでとうございます。経済産業政策に大変お詳しい大臣として、ますますの御活躍を期待したいと思います。

 きょうは、今国会最初の委員会でございまして、今の谷本委員と私も内容はかなりダブるところがございますが、まず、現在の経済の景況感について質問させていただきたいと思います。

 実は、先日行われました全国信用組合大会において日銀の武藤副総裁がごあいさつをされている中で、現在の経済、物価情勢についての言及がございます。ここをちょっと読ませていただきます。

 我が国の景気は、緩やかに拡大を続けています。世界経済の拡大が続く中で、輸出は増加を続けています。また、企業収益が高水準で推移する中、設備投資も引き続き増加基調にあります。先日公表された九月の日銀短観を見ますと、企業の売上高経常利益率は既往最高水準で推移しており、企業の景況感も、部門によって慎重さは見られますが、総じて良好な水準を維持しています。企業の設備投資計画は、本年度で五年連続の増加になっております。こういうくだりがありました。

 恐らく、マクロの数字から見ると正しい、正しいというか分析だと思いますし、日銀政策決定会合での結論だというふうに思います。

 一方で、中小企業に関する二〇〇七年七月から九月期の中小企業景況調査というのが手元にあります。これは一万八千二百五十六社からの回答で、かなり詳しい調査だと思いますが、この七―九の中小企業業況の調査報告を見ますと、全企業の業況判断DIはマイナス二三・六となっていて、六期連続してマイナス幅が拡大している。売上額のDIはマイナス一九・六、これもマイナス幅が拡大している。経常利益DIもマイナス三五・〇とマイナス幅が拡大している。資金繰りDIはマイナス一九・九、マイナス幅がこれも拡大している。借入難易度DIは、長期につきましてはマイナス九・七と横ばいですけれども、短期資金の借入難易度についてはマイナス六・二、マイナス幅がこれもやや拡大をしている。

 これは、マクロとしてはずっと景気拡大が続いているという認識の中で、しかし、中小企業を取り巻く状況というのは極めて厳しい業況感が出ている。物すごいギャップがあるんですね。

 私は、このときにどのような危機意識を持つかということについてちょっと言及したいんですが、大臣のこの前のごあいさつの中でもそういったくだりはあって、中小企業が厳しいということは述べられているんだけれども、企業数で見ますといわゆる四百三十万社ある、これは全体の九九・七%を支える。雇用の人員でいきますと、全体の七割が中小企業で働いている。

 まさに、何となく今の日本の論調は、全体は調子がいいよ、だけれども中小企業はまだ元気がないよ、こういうことで済まされていると思うんですが、日本全体の九九・七%を支えていて、七割の人が働いている中小企業の業況感が、全く見通しが立たない、実感もない、こういうことが続いている、その幅がマイナスがさらに拡大しているということは、実は今、日本のマクロとして数字がいいこの経済も、砂上の楼閣というか、そういう危険が極めてあるのではないかということをとみに実感をしているところであります。

 恐らく、先ほど谷本さんが言われた、あれは和歌山県だから特に厳しいというわけじゃなくて、私の神戸も全く同じような状況でありますし、恐らく東京とか名古屋とか一部のところを除いては、名古屋でも中小企業の業況感はマイナスになっているというような報告も出ていましたが、何か、日本の経済産業界の極めていびつな構造で、いつかマクロの数字もがらっと悪くなる可能性が私はとてもあるのではないかと。

 その大きなきっかけとして、今アメリカの景気が厳しい状況になっているということとか、原油もドバイで一バレル九十ドルを超えるとか、信じられないような状況が続いていて、原材料の価格もアップしている。これは私は、余り、今後いい展望というか、よくなるという要素がないんじゃないか。

 本当に腹を据えて、中小企業政策というか、小手先ではなくて、少し考え方を改めた対策をとる必要があるのではないか。そうでないと、マクロの経済に対しても物すごく厳しい数字が出てくるのではないかという危機感を私自身は感じているんですが、その点について、大臣の御認識、先ほどの御答弁のちょっと繰り返しになるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。

甘利国務大臣 全体の景況感、政府の認識としては、引き続き景気は拡大基調にあるということになっております。

 ただ、私自身も先生が抱いておられるような危機感を実は持っておりまして、サブプライム問題を中心にアメリカの景気が減速をしている。あるいは、国内、足元を見ますと、建築基準の構造確認、ピアチェックが、安全上は必要なことですが、運用も含めて極めて厳しい中で、構造確認が必要な案件が極めて絞られてきてしまっている。これはいずれ、今在庫処理になっていますけれども、新規着工の後退につながっていく等々、心配な要素が幾つもあるわけであります。

 中小企業の各種DIが悪化に転じているということもよく承知をいたしております。一つは、景気全体、経済成長が大事だという認識を政府がしっかり持つということがまず第一だと思います。全体はいい、いいと浮かれていてはだめですよと。総理御自身が、経済成長戦略は極めて大事ということをここでまたいろいろな場面で発言されて、巻き直しをされているわけでありまして、これは正しい認識だと思っております。

 そういった中で、予算の額がなかなかふやせない中で質を改善していく、成長型予算にしていくということは、我が省として絶対に譲れない線であります。成長枠をしっかり確保して、成長に資する予算こそ満額回答していくというふうに、量がそう多くを望めないのであるならば質を改善していくということが一つ。

 それから、中小企業に少なくとも現状ある成長の果実を均てんしていくという作業が必要であります。先ほど来お話をさせていただいておりますけれども、下請取引の適正化についてしっかりと目配りをし、取り組んでいきたいというふうに思っております。

赤羽委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっと各論に入るんですが、まず、中小企業に対する資金供給の面の問題で、我が党としても大変懸念を持っておるんですが、実は、十月一日から始まっております信用保証の責任共有制度の実施について御確認をさせていただきたいわけでございます。

 まず、信用保証制度、これはもう言わずもがなですが、全中小企業の約四割が利用しておる。まさに中小企業金融にとって基幹的な制度でありまして、資金調達の命綱とも言えるというふうに考えております。

 もちろん、この制度が、持続可能な制度への見直しというのは重要な、必要なことであるということは承知をしておりますが、この制度変更の過程で、多くの中小零細企業に多大なマイナスの影響が出ることは避けなければいけないというふうに考えております。

 この十月からの責任共有制度の導入を前にして、九月に帝国データバンクによって実施されました全国二万社のアンケートがございまして、回収率は四八%ですので、一万社弱の回答ですが、責任共有制度の導入について懸念があると回答したのは七一%なんですね。そのブレークダウンを見ますと、具体的には、融資利率、金利の上昇、それと融資額の縮小、ここら辺に懸念があると回答した人が、それぞれいずれも七割を超えているということでございます。融資の打ち切りを懸念する声も二割に達しているということであるし、また一方で、地銀、特に第二地銀や信金、信組の不良債権の本格的な処理というのはこれから実施されるということがあり、当然、金融庁から第二地銀や信金、信組へのプレッシャーも強くなるというのはこれまで繰り返されてきた歴史としての事実であります。

 このような中小企業の不安の声を我が党もたくさん受けまして、九月二十八日に甘利経済産業大臣のもとに申し入れを行わせていただいて、一つとして、中小企業が従来にないような貸し渋りを受けた場合、相談窓口においてきめ細やかに対応する。二つ目には、全国の金融機関に対して、金融庁とも緊密に連携し、貸し渋りなどが起きることのないよう適切な指導を行う。三つ目は、中小企業の資金調達に阻害が見られた場合には、速やかに責任共有制度の見直しを行う、こういった要望を行いました。

 そこででございますけれども、相談窓口の設置がされているということですが、どういう状況で設置されているのか。また、その相談窓口に寄せられている実際の声があるならば紹介してほしいということと、また、こうなると金融機関側からもさまざまな、今までは、例えば五千万円貸し出していた、一千万返ってきたら、やはりリピート融資と称して、一千万円また追加で融資しているというのが実態なんだけれども、追加融資分についてはなかなか、やりにくくなるんじゃないかなといった声を聞かせていただきました。

 また、我々、相談窓口できめ細やかに対応してくれという要望をしましたが、具体的に相談に来られた場合、結局、今までこれまでの貸し渋りとか貸しはがしがあったときには、融資のときの担保の価値が下がったからとか、理由なんというのは幾らでもつけられて、結局、民間と民間との取引の中で我々は口を挟めない。結果として、貸し渋り、貸しはがしを全国でとめることができなかった、こういった状況があったと思いますが、こういったことを食いとめるためにどのようなことを考えていらっしゃるのか。

 始まったばかりで、まだ三週間ですけれども、現時点でのお答えをいただきたいと思います。

中野副大臣 いろいろ御懸念のお話もございました。赤羽さんが責任者であります公明党の経済産業部会さんからも、九月に、責任共有制度の導入に当たりまして、いろいろな御提言もいただいたところであります。それを踏まえて、今、全国五十二カ所の信用保証協会、そして全国九カ所の経済産業局などに相談窓口を設置いたしております。

 ちなみに、相談の件数及び内容につきましては、毎週中小企業庁に報告されるように手配をいたしておりますけれども、十月一日から十九日までの三週間、金融機関からの技術的な質問が一件ございました。

 引き続き、制度導入後の状況についてはフォローしてまいりますけれども、今御懸念をいただいたような件も含めて、具体的な相談を受けた場合にはしっかりとお話をお伺いした上で、個別具体的な状況について把握、検討に努めてまいりたいと思っております。

 そして、万一、悪質なケースが見られる場合には、必要に応じ当該金融機関に指導も行いますし、金融庁とも情報を共有するなど、状況に応じて適切に対応してまいりたいと思っておるところであります。

 ちなみに、今、御存じかと思いますけれども、改正建築基準法の施行に伴いまして、正直、地域産業の一五%、二〇%を占めます建設産業、建築確認申請の大幅な激減によりまして、大変ひどい状況をこうむるのではないかなと予測もいたしております。

 国土交通省に対しましても、あつものに懲りてなますを吹くような状況ではだめだ、立法の趣旨を踏まえた案件であればしっかりとできるだけ早く処理を済ますべきだ、こういう申し入れもいたしておりますし、私どもも、中小企業庁と一緒に、政府系三金融機関にしっかりとした対応をとるように、また、この責任共有制度の導入に当たりましても、十二月までに必ずそういった建設産業の問題は多かれ少なかれ個別の金融機関で出てくるなと予測をしておるものでありますから、地方の局に対しましてはしっかりと受けとめろということで指示もいたしておるところであります。御理解ください。

赤羽委員 ぜひ、靴の上から足をかくような話じゃなくて、やはり本当に一つ一つの相談に、経済産業省、中小企業庁として承っていくんだという強い姿勢を発揮していただきたい。多分、相談窓口五十二カ所と九カ所を設置していただいたということを十分まだ浸透されていない懸念があると思います。

 ですから、ぜひそのことを周知徹底するということと、ぜひ副大臣、政務官の方は、地方に出張に行って、みずから行っているということがニュースになり、周知徹底になる。政府の周知徹底というのは、すぐビラをつくってとか、読まないようなビラを幾らつくってもしようがないのに、こういうことを繰り返しているので、行動を起こしていくということをぜひお願いしたいというふうに思っております。

 そこで、下請のこと、下請適正化も非常に大事で、下請適正化法、来年の予算要求も入っておりますが、これもしかし、法をつくっても結局何も作動しないということをよく言われるんですね。あと、いろいろ相談に乗りますよと言われても、例えば、下請の業者がこれはおかしいんじゃないかと通知をすると、結局、その案件は決着がついても、その次から仕事を外される、こういった報復攻撃というか、そういったものがあってなかなか言い出せないというのが現実である。

 結局、ビジネスというのは強い側と弱い側があって、強い側の論理が通る。もちろん規制緩和が進んでいますから、昔のように、中野先生もよく御存じのように、物流関係の運賃にしたって、昔は運賃というタリフがあった。しかし、今はタリフはないわけですね。荷主と物流業者の相対で決めなければいけない。これが規制緩和だと言うんだけれども、当然、そこの運賃にはコストの積み上げというのがあるはずなのに、公共事業の入札の価格もそういう嫌いがあるんですけれども、コストの積み上げとは全然別の要素で決まってしまう。そこで安値で決まって、結局安かろう悪かろうというサービスが提供されて、安全というものが脅かされているという非常に悪い展開になる嫌いがある。

 ですから、そういった意味で、この下請適正化法についても、ルールができたらもうそれでいいんだということではいかないわけでありまして、この下請適正化法、または建築業では建築業法の改正ということでしっかりとした構えをしていただいているのはよく理解できるんですが、ルールをつくって魂を入れることをぜひ徹底していただきたい。

 これも中野副大臣からの御答弁かと思いますが、この点と、もう一回、先ほどの融資に関する貸し渋りについて、積極的にみずから行動をもって対処していくということの御決意も含めて御答弁いただきたいと思います。

中野副大臣 責任共有制度の問題につきましては、全国、都道府県、私たち出張するたびに、あるいは、都内で行われますいろいろな業種団体の会合その他につきましても、考え方がちゃんと共有できますように最大限の努力を傾けてまいりたいと思っております。

 また、現場にお詳しい赤羽議員の御指摘のとおりだと思いますけれども、下請取引の適正化を進める、このことは景気回復の果実を中小企業にまで波及させるということでも大変重要であると思っております。

 私たち経済産業省は、公正取引委員会とも協力しながら、下請代金法を運用して、違反行為をしっかりと取り締まっておるつもりであります。

 一方に、今、年間約十万社の下請事業者に対して、親事業者との間の取引に関する書面調査を実施するなどいたしておりまして、下請取引の実態について、その詳細について私たちは把握に努めてきております。お話しのとおり、下請事業者から、うちの親事業者はこうだということをなかなか言いにくい、そんな立場も十分に承知をいたしておりますので、書面の調査ということでありますと、比較的円滑に、自由に御発言もいただいておるようでもあります。

 平成十八年度には、こうした情報などを活用して、約四千社の親事業者に対して警告文書を発しました。そして、約一千社の親事業者に立入検査をいたしました。そして、この立入検査の結果、下請代金の支払い遅延などの違反行為が見られたという約九百社の親事業者に対して強く改善指導を行ったところであります。

 他方、下請対策については、今言った下請代金法の取り締まりだけでなくて、やはり元請、下請の望ましい取引関係の構築を促進していくということが重要でもあります。本年六月に、甘利大臣の肝いりで、ベストプラクティス事例などを盛り込んだ業種別のガイドラインを策定して、普及啓発に努めております。

 今お話をいただきましたように、前段の質問もこの質問も、魂を入れて取り組めということでありますから、私ども、事務方にもしっかり督励をさせていただきたいと思います。

赤羽委員 ちょっとはやらなくなりましたが、タウンミーティングという、あれを私は財務副大臣で二回やらせてもらいましたが、非常にいい制度で、余り豪華なスタイルじゃなくて、実質的な声を聞くという意味で、そういったこともぜひやっていただきたいと思います。

 中小企業政策について、資金面を補充するとか、事業承継への是正、改正をするとか、そういったことは大事だと思うんですが、私は、これは個人的な考え方なんですが、今まで日本の多くの中小企業は、親企業の下請で仕事をしてきた。ですから、ファイナンスですとかマーケティングですとか、そういったことは別に心配をする必要はなかった。販路は全部親会社もやってくれる。ファイナンスも親会社が大抵面倒を見てくれる。いいものをつくる、いい部品をつくる。ですから、技術力は陶冶されている。

 しかし、これが、あるときから、親会社が下請部分を海外の工場に移転してしまって親子関係が切れてきた。もうおまえら勝手に生きていけと言われて、路頭に迷っているという状況の中小企業は多いんだと思うんです。本当は企業として、ちょっときつい言い方かもしれませんが、独立してはいけないというか、条件が整っていない企業であるけれども、今までの流れの中で中小企業としてビジネスをしていかなければいけない。

 ですから、大変、まず中小企業自体のレベルアップというか、生産性の向上という言い方になるかと思いますが、そういったことを考えていかないと、やはり幾ら中小企業の予算を、我が党も三倍にしようとか二倍にしようとかと言っていますけれども、やはり歩どまりのいいものでなきゃいけないし、コストパフォーマンスのいい予算投入でなければいけないと私は思っておるんです。そのために、受け皿の方の生産性を上げていくといったことで、いろいろな意味で人的な配置等々を考えていかなければいけない。

 日本の企業というのは非常におもしろくて、おもしろいというかおかしくて、経理課長とか経理部長というと、私が駐在していた中国ですら、税理士の資格を持っていないとつけないシステムなんですね。これはよく考えたら当たり前なんですけれども、日本の中小企業の多くの経理部長は、社長の奥さんが大抵やっているんです。こんなことなんですね、言ってみると。

 だから、資格を取っても、逆に言うと自分のキャリアアップにならない。資格を取ったら経理部長として遇されるという、もうちょっと働き方というか人の集め方というか、これは日本の企業文化では非常にやりにくいんだけれども、そういったことを少し充実させていく。

 ベストプラクティスというのは、大臣、僕はいい言葉だなと思うんですが、これを使っていくとか、そういったものを顕彰していく。そこが頑張っていいモデルとなっていく。中途採用でも資格を持ったらどんどん登用していけるような、そういった企業を幾つつくっていくかということが私はすごく大事なことなんじゃないかと思います。

 そういった思いで多分、ものづくり三百社の顕彰とか、経済産業省、中小企業庁としてやられているようだけれども、賞状だけ渡していても、何もやらないよりはいいんだけれども、そこをモデル企業として少し国が突っ込んで介入していくぐらいのことをしないと、私は、冒頭申し上げました、今の日本の経済産業に対する危機感、中小企業がこけたら全部親ガメもこけてしまうのではないかということに大変な危機感を持っておりまして、団塊の世代で大企業をリタイアする方たちもたくさん出てきますので、そういった人たちのスムーズな中小企業への移行とか、いろいろなことが考えられると思うんです。

 そういったことで、中小企業の生産性を上げるということを大命題にぜひ省を挙げて取り組んでいただきたいと思いますが、この点について、長官が来て満を持していると思いますが、内容は大体わかっていますので、もしよければ、どちらでも結構ですが、では、まず長官に。

福水政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業の生産性の向上をどうやっていくか、非常に重要な政策課題だというふうに私どもは認識しておりまして、ことしの六月に、成長戦略の一環ということで、中小企業生産性向上プロジェクトというのを策定いたしております。

 先ほど大臣が申し上げましたが、下請取引の適正化、あるいは中小企業のIT化、これは特に小規模企業については今SaaSとかASPとかいろいろなサービスが出てきておりますので、こういうものを活用して、中小企業の課題を認識できるようにするとともに、資金供給の円滑化でありますとかあるいは迅速化、こういうようなことをリンクさせていければというふうに考えております。

 それから、先生がおっしゃいました人材、人の点でございますが、企業OB、これから団塊の世代が非常にたくさん出てまいります。私どもは、都市から地方へ、あるいは大企業から中小企業へというふうな考え方で、こういう団塊の世代の方々にもう一度頑張っていただきたい。団塊の世代の方々も、頑張りたいという方が非常にたくさんおられますので、大企業から中小企業へ、あるいは都市から地方へというふうなことでマッチングを行いまして、経営方法の改善でありますとかマーケティング、販路拡大、先ほど先生がおっしゃいました経理の話、そういうふうなところにぜひこういう方々を活用できればというふうな仕組みも始めたいというふうに思っています。

 あわせて、ものづくり三百社の話がございましたが、高専、工業高校、こういうところと、若い時分からものづくりの教育をしていこうというようなこともやりたい、やっているところでございます。

 これに加えまして、地方の中小企業と事業再生、こういうような問題、あるいは事業承継の話、総合的に対応していきたいというふうに考えております。

赤羽委員 最後に、それでは大臣に総括的に、今のことと加えて、先ほどの責任共有制度も、実は、中小企業の生産性を向上していくプレーヤーはだれかというと、やはり地元の金融機関、これはもっとコミットしてもらわなきゃ困る。ですから、自分がリスクを二〇%持ったら、そのリスクを避けるというのではなくて、リスクを持って当該融資先の企業を経営支援というかコミットしていく、こういった文化をつくっていくということは大事だと思います。

 ですから、ぜひ金融庁との連携もとっていただきたいし、今長官からもお話がありましたが、中小企業全体の生産性を向上させるということを中小企業庁、経済産業省の大きな政策の柱として取り組んでいただきたいということについての御決意、御所感を伺いまして、私の質問を終了します。

甘利国務大臣 おっしゃいますように、責任共有制度というのは何の責任を共有するかというと、もちろん返済の責任を共有するということもありますけれども、金融機関に本来業務に目覚めてほしい、つまり、本来業務というのは、貸し手責任ですから、お金を貸した企業がきちんと健全に業を続けて育っていく、そのための努力を投入せよということであります。一〇〇%保証ですと、貸した先がもうかろうがつぶれようが、自分のところの融資に問題はない、必ず返ってくる、それでは困るのでありまして、きちんと金融機関としての使命を自覚してほしいという覚せいさせる作業が私は主だというふうに思っております。

 中小企業の生産性向上につきましては、各種ITを活用して生産性を引き上げていく、中小企業は、取引先との関係を健全化するということと、自分自身の生産性を上げていくこと、それから付加価値のあるものに展開をしていくという地域資源活用、この三つを組み合わせて中小企業の元気をしっかり取り戻したいと思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございました。

 団塊の世代は民間だけじゃなくて、本省の人もリタイアしたら中小企業の現場に入っていけるような、そんな流れをぜひつくっていただきたいということをお願いし、また、時間が来ましたので、予定されていた質問、御答弁いただけなかった方におわびを申し上げて、質問を終了させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

東委員長 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介です。

 新しい委員長、人格者であられる東委員長のもと、大臣所信に対する一般質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 まずは、甘利大臣、大臣の御再任おめでとうございます。本日の質疑でも指摘をいたしますけれども、私も、先ほど質問された赤羽委員と同様に、日本経済の現状は楽観どころか胸突き八丁の状況にあるんじゃないか、こういうふうに思っております。民主党といたしましては、生活第一の政策が日本再生の道であるという信念のもと、緊張感を持って本委員会に臨みたい、こう思っておりますし、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、本題に入る前に、このほど産業技術総合研究所で発覚をいたしました危険物病原体の不適切管理問題についてお伺いしたい、こう思います。委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますが、一枚目の表をごらんいただきながら聞いていただければと思うんです。

 御案内のとおり、生物に関連した発明について特許を出願する際には、特許庁が指定した機関にその生物、病原体なり細菌なりを預けることが必要になっている。産総研では、現在はレベル2までの、この表であるところのレベル2までの細菌、病原体を預かることが可能になっている。

 ところが、平成二年までに、レベル3、この表でいくとSARSウイルスなども含めている大変危険な細菌でありますけれども、このレベル3の細菌名の表示がされた病原体が保管されていた。また、当時の内規では預かれなかったレベル2の病原体も十五件預かっていた。これについて内部で指摘をされていたにもかかわらず、長期間放置されていた。新聞報道によると、話すなと誓約を迫ったということも報じられておりますけれども、まさに隠ぺいまがいの行為も行われていた、こういうふうに報道されています。

 大臣、これは非常に大きなゆゆしき問題だと思うのですが、甘利大臣は、産総研を所管する経産省の大臣であります、監督責任者として、このような問題が発生したことをどのようにお受けとめになっているのか、改めてお伺いします。

甘利国務大臣 極めて遺憾に思っております。

 この報道に接しまして、すぐ、直ちに、午前中か昼過ぎだったか、ちょっと時間帯は忘れましたが、関係者を緊急招集いたしまして、私から何点かの指示をいたしました。

 その一つは、もちろんコンプライアンスについてであります。それから、受け入れるときの中身と、現物の確認体制がどうなっているのかということと、それから、それがはっきりするまでの間の管理体制に不備はないかということ等々、何点か指示をいたしました。加えて、今回の問題、どういう点に不備があったか。これは、第三者の方々に委員会をつくっていただきまして、しっかり検証するということを指示したところでございます。

 就任して、昨年の十月に電力施設のいわばコンプライアンスについて大掃除をするという指示を出したところであります。出した当事者が、自分の所管する部署でこのようなことがあったということであるならば、それはしゃれになりませんから、そこはきちっと対処していきたいと思っています。

近藤(洋)委員 大臣御答弁のとおり、極めて遺憾である、このような状況はまさにしゃれにならないというお話でございましたが、全くそのとおりだと思うんですね。非常に危険な細菌、これは、預けられた細菌は調査の結果無害であった、こういうことでありますけれども、結果としてそうであっただけであって、この状況が放置されていたということは非常に問題であろうかと思うんですね。

 さらに言えば、昨年末ですか、このレベル3の病原体を保管する機関は届け出をするようにという法改正が行われて、五月か六月に施行された。こういう状況を考えると、この法律の施行に合わせて産総研は慌ててこの事態を処分したとも受け取れるんですね。前からわかっていて、法律が出て慌ててこういうことをしたということともとれますし、さらに言うと、産総研の責任者の理事の方は、記者会見か新聞記者の取材で、きちんと扱わなかった、瑕疵があった、関係者の処分も検討したい、こういうふうに語っておりますが、この理事の方が、この報道によると、話すなと誓約を迫った理事なんですね。処分をした方がこういうことをされたということ自体、これまた一体いかがなものか、こう思わざるを得ないんですね。

 大臣、まず手続云々の問題もさることながら、体質の問題じゃないかと思わざるを得ないんですね。手続論で済まされない部分もあるのではないかと思うわけでありますが、具体的に第三者委員会をおつくりになるとおっしゃいましたが、関係者の処分も含めて、この処分をしたいとおっしゃった方がこういった誓約を迫ったということであれば、これはお話にならないわけでありまして、ここはやはり大臣のお考えで、関係者の処分も含めてやるお考えがあるのか、またいつまでにどのような結論を出されるのか、お考えをお聞かせください。

甘利国務大臣 処分をすると言った人間が処分の対象になるようでは余り話にならないことでありますし、説得力もなくなるわけであります。

 コンプライアンスを含めた今回の問題がどこにあるのか、客観的な目で、もちろん専門家を交えてしっかり検証したいと思っております。数人で構成する第三者委員会を設置しまして、その委員会に子細に、バイアスのかからない意見を、調査結果を出していただきたいと思います。それに基づいてしかるべく対処をしたいというふうに思っております。

 いつまでにというのは、私も、この種のことが、専門家がどのくらいかかるかわからないものでありますから、正確に、迅速にということだけお願いして、この時期までに必ず報告してくれということはお願いをしていないのでありますけれども、趣旨を踏まえて速やかに、そして正確な調査結果を出してくださるというふうに思っております。

近藤(洋)委員 産総研は独立行政法人であります。しかしながら、やはり公の機関であってきちんとした対応をとっていただきたい、こう思います。

 本日は、委員会も違いますからあえて質問いたしませんが、防衛省の前事務次官の話も含めて、公務員の方々の信頼というのが非常に今落ちている。それぞれの公務員のお方々は一生懸命仕事をされていると信じたいわけでありますけれども、そういったやはり公の信頼がさまざまな形で失われるということは、結局、国益を損ねるわけでありますし、大変残念でありますので、きちんとした対応をとっていただきたいと思うわけであります。

 私は、この問題は、いわゆる行政法人の不手際という問題にとどまらないと思っているんです。というのは、やはりこの件は知的財産の重要なインフラにかかわる話だろうと思うんですね。ライフサイエンス分野、細菌や病原体も含めてライフサイエンスの分野であるわけですけれども、表の方に、この資料一に添付させていただいておりますけれども、我が国のライフサイエンス分野の特許の登録件数というのは日米欧で非常に出おくれている。欧州の約半分、米国の三分の一水準。だからこそ、ライフサイエンスに力を入れなきゃいけないということで、政府は力を注いできたはずなんですね。その特許の中身を保管する土台のところでわけのわからない管理が行われていたということであります。そういう意味では、ライフサイエンス分野の力をつけていこうという中で、こういう実態を担うところが、特許のインフラのところがしっかりしていない。

 また、あえて言うと、今回産総研ではレベル3は扱わない、こういうことだそうですけれども、しかし一方で、ライフサイエンス分野を研究すると、やはりレベル2のものも使うし、場合によってはレベル3のものも、当然それは開発の中で特許出願も起き得るわけです。それは、使い方を間違ってはいけないだけであって、きちんとしたものでこの分野も研究をしなければいけない。そういう意味では、逆に、では、だれが保管するんだ、だれがきちんと保管をするんだ。産総研も保管しない、もう一つの機関も保管しないとすると、どういったものが、人が保管をしてくれるんだということも重要だと思うんですね。

 今回のことを機に、やはりこういうライフサイエンス分野の特許の保管、あるいは技術の保管とか業務というのは、ある程度公の部分でどうかかわっていくのか考えることも必要なんではないか。知的財産のインフラ整備という意味においても極めて大事なことではないか、こう思うのですが、大臣、いかがお考えですか。

甘利国務大臣 微生物の保管、管理に関しては、一つは、例えばワクチンをつくる等々、病気への対策についてという分野が一つあると思います。もう一つは、今御指摘のバイオ特許、知財にかかわる申請に関してその保管をどうするかということ。

 これは私、おっしゃるように日本はレベル2までしか預かるところがありません。世界にはレベル3以上のものを預かるところもあるんですが、レベル3以上と特許の関係について、どれくらい実際に国内外を含めて特許がレベル3以上で実現しているのか、私、調査しろということを今言っております。その分野が極めて知財分野として大きなフロンティアであるということを見通せれば、そこについてもどうしていくか考えなきゃならぬなというふうに個人的には思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ、実態、そういう状況を調査していただいて、必要とあればやはりそういった機関、体制をつくる。レベル3を扱うならばそれなりの体制をつくらなければいけない、こういうことだと思いますし、そういった分野ではやはりぜひ推し進めていただきたい、実態として必要だとなれば、そう思うわけであります。

 経済政策、産業政策の本論の方に移ってまいりたいと思います。

 先ほど来、景況判断について質問が出ておりました。大臣、七月以来といいますか、この委員会が開かれたのも久方ぶりでありますけれども、七月二十九日に参議院選挙が行われて、あの判断からもう三カ月がたっているわけであります。成長を実感どころかかけらもないというのが有権者の判断だったと思うんですね。

 だとするなら、その判断を受けて、あれから三カ月間たって、政府はあの判断を受けてどう動いたんだ。成長は実感もかけらもないぞという有権者の判断を受けて政府はどう動いたかというと、まことに残念なことでありますけれども、当時のやると言い続けた総理は突然おやめになってしまいましたし、その結果も受けて、恐らくきちんとした経済政策というのは、僕は、この夏も、九月も打ち出されてこなかったと思うんですね。正直申し上げて空白の三カ月間だった、こう言わざるを得ません。

 では、現在の日本経済の実態は七月の時点から現在のこの三カ月間でどうなったかといえば、私は、悪い方に向かっている、こう思います。先般発表された月例経済報告では、家計について判断を後退させておりますね。全体については緩やかに拡大と言いながらも、家計については判断を後退させている。これは大変大きなことだろうと思うんです。

 資料の二枚目をごらんいただければと思うのです。

 この右側の「家計部門の動向2」のボーナスでありますけれども、この夏のボーナスは三年ぶりのマイナス、こうなっているわけであります。さらに深刻なのは、マイナスだけれども、従業員五百人以上のところはプラスだけれども、それ以外のところはマイナスだ、こういうことであります。景況判断については、先ほど別の委員から御指摘があったので繰り返しはいたしませんが、ボーナスが下がっておる、しかも中小企業で下がっておる、こういうことであります。

 大臣、大企業と中小企業の格差、大都市と地方の格差はこの三カ月間で私は明らかに広がった、こう思いますが、大臣はこの三カ月間で広がったとお考えになりますか、いかがですか。

甘利国務大臣 この経済産業委員会の関係者を中心に、我々が抱いているいら立ちというのは、上がってくる数字と体感温度の差が漠然とした不安になっているんだというふうに思います。

 御指摘のボーナスが三年ぶりにマイナスになった、そして支払い給与総額がなかなか上がってこないということと、消費がいま一つ力強さがない。GDPの六割を占める消費が力強く回復してこないと本物にならない、そことの関連等々、いろいろなデータから予測をされる問題点というのは少しずつ明らかになってきていると思います。

 その一方で、例えば、我が省的に言いますと、鉱工業生産指数が三・五%上昇、これを見ると堅調に推移という言葉にならざるを得ない。あるいは、完全失業率も四%を切って、かなり好景気の状況を反映している。出てくる数字と体感温度との差が漠とした不安となって広がっているのではないかと思います。

 数字ではかってみると、各地域の経済産業局の報告を聴取しております。それでは判断の基調がそんなに変わっていないのであります。変わっていないのでありますけれども、しかし、体感温度としてそうかなという部分、これが具体的に、部分的な数字の変更はありますけれども、具体的な数字としてなかなか上がってこないというところに、正直言って何となくジレンマを感じているわけであります。

 これからは、相当警戒感を持って施策をしっかりと推進していかなければならないと思っておりますし、今般、福田総理も経済成長が大事と。つまり、パイを大きくしてその分け方に問題があるということが一つありますけれども、いずれにしても、パイを大きくしないと分け前がふえないわけでありますから、これを大きくしていくということをきっちり政策の柱の一つに据えていかなきゃいけないと私は思っているのでありますし、あらゆる閣議でその主張をしておるわけであります。福田総理御自身も経済成長戦略というのはしっかりと重点を置かなければならないという発言を近々もされておりますので、問題意識は共有できているというふうに思っております。

近藤(洋)委員 大臣の御答弁のとおり、問題意識はある程度共有できているのかなという気はいたしますが、確かに、この大臣の所信、前国会と今国会をよくよく読み比べれば、その辺のところがにじみ出ているのかなという気がいたします。また大臣、個人的には、そういう危機感を強く持たれた麻生前自民党幹事長を応援された、多分、そういう危機感からなのかな、こういう気もしないでもないわけでありますけれども。ただし、やはりその危機感の感じ方として、僕はもっと強くなきゃいけないのではないか、こう思います。

 特に、大企業と中小企業の差、中小、零細小規模企業との差、そして地域間の格差は、この三カ月間で、大臣、言及ありませんでしたけれども、僕は、確実に広がった、これから、この冬場から春にかけてますます広がる、これがもう明らかだ、予想できる、こう思うんですね。具体的に申し上げますと、やはり一番気になるのは、最大のマイナス要因は原油高だと思います。

 資料の三枚目のところに、原油価格の動向のグラフを掲げさせていただいておりますけれども、もう既にWTI価格、一時はバレル九十ドルを突破していますね、一時的には。もう過去最高の水準に上昇している。第三次石油ショックじゃないかというぐらい急上昇をしておるわけであります。また、ドバイも上昇して、我が国のガソリン価格も上昇をしております。

 大臣、このWTIの価格ですけれども、これは実体経済を反映している、実需を反映しているというふうに、この国際先物価格は実需を反映しているというふうにお考えになりますか。

甘利国務大臣 WTI、ウエスト・テキサス・インターミディエートが九十ドルを超えた、これは私は、必ずしも実体経済を反映していない、ということは、何を反映しているかというと、投機的要因が随分入っているというふうに思います。しかも、投機的要因が、オイルマネーがオイルを高くするという側面があると思います。

 適切な投資市場が未整備であるという指摘はありますけれども、オイル高によって膨張してきたオイルマネー、あるいは中国の外貨準備もそうでしょうが、これらの運用先として石油市場に投入をされる、これがいわば投機的な引き金を引いて、実需は十分に足りているのに、十分というか、天井はもうかなり少ないのでありますけれども、しかし、ショートしているわけではない。にもかかわらず、あっという間に七十ドルを超えて九十ドルにいったというのは、そういう要素があろうと思っております。

近藤(洋)委員 おっしゃるとおり、私も投機的な動きだと思う、マネーが入っていると思う、実需を反映していないと思うんですね。ただ、問題は、実需を反映していない価格が、それに連れ高で実態のガソリン価格も上がってしまう、ここが問題なわけですね。

 しかも、このWTIの予測についてはさまざまな方々がいろいろな見方をしておりますが、年内に百ドル超えもという人もいる、さらに、八十五ドルを中心に調整、九十五ドル近辺とか、月内に九十ドル半ばを超すとか、いずれにしろ、これが七十ドルになると予測している人はほとんどいないわけです。マックス百ドルまで上がるんじゃないかという人すらいる。中東に何かがあったら変わる、こういうWTIの価格について予測をしているんですね。だとすると、実態もそれに引きずられてしまう。これは大変な影響だと思うんです。要は、生活に直撃をするわけです。

 資料の四枚目に、県別の自動車保有台数というのを掲げさせていただいております。これは、一位が福井県、私の地元の山形県は第四位であります。先生方も地方の先生方はおわかりいただけると思いますが、大体、一家に四台というのが、三台、四台当たり前。人によっては、ちょっと田舎に、郡部に行きますと、四台プラス軽トラを持って五台、こういう御家庭もあるわけですね。四台、五台持っていて、大体、一カ月間に百リッター使いますよ、一台百リッター。そうすると、四台あれば、一リッター百円だったら月四万円ですね。ところが、百五十円になったら月六万円になるんですね。月二万円ふえるわけです、四台持っている家庭だと。これは大変な負担であります。

 さらに言えば、次のページで灯油の使用の、月額どれぐらい、どういうところが使っているか。そうすると、やはり北国を中心に、一万円なり一万三千円使っておるわけです。灯油も上がる、これから冬を迎えます。御案内のとおり、大臣も、それは神奈川であれども、恐らく全国を回られていらっしゃいますから御存じでしょうけれども、地方においては、車は通勤通学の足なんですね。これがなきゃ生きていけないわけです。そして、灯油もたかなきゃ寒くて凍えてしまうわけです。これはもう生活の必需品なんですね。

 これがぐっとこれから上がっていく、数年前と比べて、家計当たり二万円とか二万五千円毎月上がっていく、こういうことであれば、地方都市の消費が上がるはずがないわけです。給与も下がって家計もきつい、こういうことでありますから、この原油高というのはこれから大変な影響を与える。今までじりじり上がってきたけれども、もう限界点を超えたんだろうと思うんですね。

 その意味では、私は、急激なショックの、前の石油ショックよりも深刻ではないか。ゆでガエルのように、どんどんどんどん温度が上がってきて、気がついたら、もうどうしようもない状況に地方の家庭は追い込まれている、そういう御家庭もあるんだろう、こう思うんです。

 でありますから、大臣、これは実需を反映していない。問題は二つある。実需を反映していないものに、実態の価格が連れ高になっている、この構造はおかしい。おかしいのであれば、何らかの対策を国として打たなければいけないのではないか。

 一つは、介入をするのか。では、放出をしてこれを下げるのかということも一つありますね、国際的に。道としてはですよ。国際的に協調をして、為替のように介入することが果たしてできるのかどうか、どうなのかということも考えなければいけない。

 さらには、では、短期的にガソリン価格を、国内の価格を下げるにはどうしたらいいんだ、こういうことだと思います。別に私は元売がぼろもうけしているとは言いませんが、元売は少なくとも利益を上げています、数千億円、全体でですね。では、元売から取るのかどうするのか。

 しかし、いずれにしろ、この国内のガソリン価格及び石油製品価格といいますか、とりわけガソリン、灯油だと思いますが、どうするんだということは、これは経済産業省として解決しなきゃいけない課題だと思いますが、大臣、何か方策はありますか。

甘利国務大臣 石油元売、確かに利益は上げていますけれども、利益率でいえば三%ちょっとだと思います。日本の製造業の平均が七パー強でありますから、それと比べても低い。しかも、その流通に関しては利益は上がっていない。上流開発ですね。日本は上流開発が弱いものですから、そう利益がない。

 メジャーなんというのは上流専門ですから、四半期で一兆円の利益を出したりしている。四半期一兆円というのは、年間、利益で四兆円、売り上げじゃなくて利益ですね。これはメジャー国でも、一体これでいいのかという議論にはなっているようであります。ただ、日本の場合は、上流開発におくれをとっておりますから、利益が極めて低い。それをみんな吐き出せというぐあいになかなかいかないというふうに思います。

 そこで、どうしていくのか。今、トップランナーで省エネ家電なり省エネ方式、燃料を食わない技術開発は懸命にやっているわけでありますが、ここは、私は産油国に、これ以上は危険だというメッセージをやはり世界じゅうから発する必要があると思います。

 私自身は産消対話等で、原油価格というのは、あなた方にとって、上がれば上がるほどいいと思っているでしょうけれども、それは世界経済が順調に回るということが前提ですよ、世界同時不況の引き金になるようなことになったら、あなた方のところにはね返りますからねと。しかも、オイルマネーが投機資金として、石油の先物にどんどん入っているわけであります。そこが暴落したら、二重、出荷の現物の暴落と運用の暴落と両方来ますよということをきちっと関係国からメッセージを発する必要が私はあると思うんです。低過ぎてもいけないでしょうけれども、高過ぎたって、世界経済の協調という点でいえば両方まずいんですよ、あなた方が共存していくためには、適正価格帯で乱高下しないということが大事だというメッセージを発出する。

 産油国が増産に入るということでも出れば、市場というのは鎮静化してくるんですね。実際、需給はショートしているわけではないですから、先の方向として、ちょっと上がり過ぎて問題だということが産油国側から出る、それが増産をするという姿勢が少しでも出れば鎮静化に向かうと思いますので、そういう警鐘を協調して発する必要があると私は思います。

近藤(洋)委員 おっしゃるとおり、石油の流通の部分は全くもうかっていないわけですね。それは私もそう思います。ですから、元売なり大手石油会社だけに負担を押しつけるというつもりは全くないわけでありますが、いずれにしろ、何かをしなきゃいけないでしょう、こういう話なんですね。その意味で、産油国とのメッセージ、それはそのとおりでありましょう。

 それからもう一方、省エネの話でおっしゃったので、こちらは指摘だけにしておきますが、では、省エネカー普及のために一般に経済産業省が何をやったかというと、これまで優遇措置を、これは経済産業省が切りたくて切ったんじゃなくて、大蔵省に言われて切ったのかもしれませんけれども、縮小しているわけですね。やっていることとあれがあべこべなわけですということをやはり指摘しておきたいと思います。

 省エネというのは長期戦略でありますが、私が指摘したのは短期の、本当にこの冬場どうするんだ、どうすんべという人が多いということなんです。この対策を三カ月間、あえて言いますが、空白の七月から十月を逃して何も手だてを打たずに、この年末までも手だてを打たなければこれは怠慢になりますよ、こういう話であります。

 大臣、もし何かございましたら。

甘利国務大臣 前回はたしか七十ドルを超えたときに影響調査をさせました。ここで私はこの異常高に直面して、どういう影響が、家計もそうでありますが、中小企業を中心にあるかというのを緊急調査をさせております。それへの処方せんが、我が方でとれる手段というのは限られていますけれども、どういう手法がとれるか、その緊急調査結果を待って対応を考えるよう今指示しているところであります。

近藤(洋)委員 ぜひ対応を急いでいただきたい、こう思います。

 また、この石油、原油の問題については、マーケットというか国際市場のあり方も含めて大きな課題でありますし、これは我々民主党としてもきっちり検討していきたい、こう思っております。

 もう一点、この大きなマイナス要因について伺ってまいります。

 これは、原油高の問題と、先ほど大臣もちょっと御答弁でおっしゃいましたけれども、住宅着工だと思うんですね。地方と都市、大企業と中小企業のこの大きなマイナス要因、格差拡大の要因となったのは、私は住宅着工の激減だと思っております。

 ページをめくって六ページ目で、住宅着工の現状、動向ということでありますが、この出典は月例経済報告に関する関係閣僚会議に配付された資料でありますけれども、ここでもそこに書いてあるわけですね。八月になっても激減、七、八と激減をしております。この理由はまさに改正建築基準法であったということを政府も認めておるところだと思うわけであります。

 そこで、国土交通省にお伺いします。

 ここまで激減すると、私はこれは人災だと思うんですけれども、こういう激減を、国交省は、この建築基準法改正と施行に当たり、ここまで減ると想定をしておりましたか、していませんでしたか。どうでしょう、お答えください、簡潔に。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 耐震偽装問題の再発を防止する、国民の安全、安心を確保するということで、建築基準法を改正いたしたわけでございます。

 しかしながら、審査が厳格になる、また審査期間が延びるというようなことでございますので、私どもも施行に当たって建築確認手続に時間がかかることを事前の想定はいたしておりましたが、施行後、設計側、建築確認側双方とも改正内容に習熟していない、あるいは審査において過剰に慎重な対応をしてきたといった運用の問題がございまして、建築確認手続が遅延をし、このため今住宅着工が大幅に減少しているということで、私ども一定の認識をしておりましたが、残念ながら、非常に大きな減少があるということでございます。

近藤(洋)委員 要するに、審議官、想定外の激減だった、こういうことですね。そういうことですね。ここまで減ったというのは予想していたんですか、これぐらいは。そう減るものだと思って施行したんですか。いかがですか。

小川政府参考人 ここまでの減少につきましては想定しておりませんでした。

近藤(洋)委員 想定外だったんですよね。想定してこういうのを施行したら、これは罪ですよ。これは大問題。想定外だったと思います。

 実際に、私も地元、地域で工務店の方に伺うと、もう悲鳴が上がっています。新築だけじゃないです、増築もできない。増築をちょっとするというところでも確認に時間がかかるし、さらにコスト高になる。もうこれはどうしてくれるんだ、こういう悲鳴が上がっているというのが実態でありますね。

 もちろん、私は、建築物の安全、安心、これは当然だとは思いますが、しかし、問題は、高層マンションと、さらに言うと、例えば住宅密集地でないところの建物と同じ基準というのはいかがか、こういう部分もあるわけでありますし、また、その体制についても、基準のあり方、さらには運用のあり方についても相当これは見直すべき点が多々あるのではないか、こう思うのですが、現在もう、この事態を受けて、例えば来週とか再来週にもこの運用の見直しであるとか、さらには、この法体制について若干不備があるとするなら、見直して、考え直すというお考えは国土交通省はございますか。

小川政府参考人 お答えをいたします。

 住宅着工の大幅な減少がございますけれども、一方、着工の先行指標でございます、いわゆる実際に確認をおろしている件数を見ますと、木造二階建ての住宅など小規模な建築物を中心に改善は見られるということでございますが、大型物件を中心にして、依然十分とは言えないというような状況でございます。

 国土交通省といたしましては、これまで質疑応答集や審査マニュアルの作成あるいは電話相談窓口の設置等、実際の実務者の方々に対する各般の情報提供等に努めてまいりましたが、さらに今後、都道府県単位での説明会の開催や相談窓口の設置、それから研修会等へのアドバイザーの派遣、こういったきめ細かな情報提供等に取り組むこととしておりまして、各都道府県等におきましてもその徹底を図っていただくよう、先般、各都道府県知事あてに総務省と連名で通知を発出したところでございます。

 また一方、大工、工務店、建築資材関連業者、設計事務所など関連中小企業の資金繰りなどの経済的影響が懸念されているということでございますので、中小企業庁に関連中小企業者対策の要請をお願いいたしまして、十月九日より政府系中小企業金融機関にセーフティーネット貸し付け及び既往債務の返済条件の緩和等の措置を講じていただいたところでございます。また、十月十六日には、民間金融機関による中小企業向けの資金の円滑な供給への配慮等について金融庁に要請をいたしまして、全国銀行協会等の金融関係団体に対し、関係中小企業向けの資金の円滑な供給への配慮について周知徹底をいただいたところでございます。

 今後とも、実務の現場に即したきめ細やかな情報提供、こういったことを始めまして、建築確認の手続の円滑化に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 要するに、見直す考えはない、こういうことなんですね。

 だとすると、全力で取り組めば取り組むほどだめですよ、住宅着工は減ってきますよ、申しわけないですけれども。想定外の事態が起きたんですから、見直さなきゃいけないんですよ。想定外の事態になったんですから、反省をして、国交省としてはですよ。

 私は何でこの問題を言うかというと、我が国経済にも大変大きな影響を与えているからなんです。住宅着工というのは大きいんですよ。GDPの五%ぐらい、場合によっては、広くとればあるわけですし、マクロにとっても大変大きな影響を与えます。

 先ほど来指摘をしている、まあ、大都市も、この問題はみんな一緒ですけれども、全国で大変なことになっていますから。とりわけ公共工事がこれだけ減っている中で、これはいいでしょう、公共工事がある程度減るのは仕方がないでしょう、そういう中で地方経済を支えてきた部分を。だけれども、じゃ、民間住宅だとなって、そこがなくなったときに地方経済はどういう姿になるかということを、審議官、まじめに考えた方がいい。国交省から言われて金融庁が動くんだったら、こんなに中小企業はつぶれていないですよ、こんなものは。実態のことをもうちょっとよく考えてこの問題をとらえた方がいいと思うんです。

 国交省は法律をつくった立場ですから、関東軍のように突っ走るしかないのかもしれませんけれども、そうだとするならば、経済産業大臣、甘利大臣、この問題を本当に真剣に受けとめた方がいいと思います。

 確かに審議官がおっしゃったように、資金繰り支援、これも大事でしょう。それは経産省として万全を期していただきたい、こう思いますが、ただ、閣僚としても、果たしてこの運用はどうなんだというのを内閣で指摘をされてもいいんじゃないか、こう思うのですが、大臣、いかがですか。

甘利国務大臣 これは、結構深刻だと私は思います。というのは、住宅建設から、特にピアチェックの大規模なものがみんなとまっています。これは、工場建設なんというのはやはりこれにかかわるわけでありまして、そうしますと、これは設備投資です、つまり、住宅建設という視野から、設備投資にまでその影響が及んできている。工場を建て直すのを機会に中の設備を一新するというのもとまるわけであります。もちろん、住宅をつくることを機会に車を買いかえる、家電を買いかえる、家具を買いかえるのもとまるわけであります。

 現状は、特にピアチェックが必要なところなんというのは、神奈川県は一件も許可がおりていません。結局、あつものに懲りてなますを吹く状態。つまり、構造計算チェックで全部スクリーニングして悪いやつをとめようとすると、穴をふさぐしかないんですよ。悪いことをするやつは、何とか網の目をくぐろうとして悪いことをするやつですから、それを完璧に、通過するのをとめたら、通る穴は限りなく小さく、最後は通る穴がないという、遮断しない限りはスクリーニングができないんですね。そこに拘泥する余り、健全なものがみんなとまってしまっている。

 しかも、ソフト一つで全部解決しようと思ったって、それは設計ですから、一つ一つ全部違います。もう、安全上を考えてここの窓は全部ふさげみたいな指導でしたら、箱しかできません。デザイン性はありません。そういうもろもろの問題がありますね。

 ですから、悪いことを意図的にしようとした者は厳罰に処すという方向でやってもらわないと、チェックで全部完璧に防ごうといったって、これはもう不可能じゃないかと。今、設計事務所は、お客さんから建築確認はいつごろですかと言われて、答えているのは、一年ぐらい見てくださいですか。これは、お客さんは依頼をやめちゃいます。

 そこのところを私はいろいろな会議で実は国交大臣にお願いをしています。国交大臣からも、中小企業のセーフティーネット融資とか保証とか、それに配慮してくれという要請がありましたので、それはすぐ対処しましたけれども、実は、抜本的な部分を対処しないと設備投資の減退まで来るんじゃないかと思って、私自身は極めて危機感を持っております。

 ですから、国交省は現場の意見をよく聞いてもらいたいと思います。建築士事務所協会なりなんなりかかわっている団体があると思いますから、そこに、現状がどうなっているのか、じゃ、運用を改善するとしたらどこをどうすればいいのかとか。悪いやつをどんどんどんどん通しちゃうということになってはもちろんいけないのでありますけれども、いいものが全然通らなくなっちゃったということは、景気の視点からもぜひ深刻に考えてもらいたいと思います。

近藤(洋)委員 全く大臣のおっしゃるとおりです、全くおっしゃるとおりで、これは国交省、ぜひ真剣に受けとめてくださいね。真剣に受けとめてください。必要だったら国交委員会でまたやりますから。この問題は、現場の状況をぜひ見ていただきたい。先ほどの御答弁では全く現場と乖離した話になっている、こう思わざるを得ませんので、よろしくお願いしたいと思います。(発言する者あり)

 時間ですので、次の話題に入りますが、与党の先生からも御支援をいただきまして、もっと突っ込みたいところでありますけれども、独禁法改正についてお話を伺いたいと思います。

 独禁法は、経済取引の基本法、経済憲法であります。二年前の改正、これは私ども民主党も改正案を出しました。私も法案提案者の一人でありましたが、見直し規定があり、このほど内閣府の研究会が報告書をまとめております。

 竹島委員長、お忙しいところ来ていただいておりますけれども、政府として、独禁法改正の準備を進めていると思いますけれども、まず、いつ改正案を提出するのか、具体的に次期通常国会を想定されているのかどうか、簡潔にお答えください。

竹島政府特別補佐人 十月の十六日に公正取引委員会として、独禁法の再改正についての基本的考え方をお示しさせていただきました。

 与党それから野党を含めて御説明の機会をいただくべく今やらせていただいておりまして、その他関係方面との調整を済ませて、私どもとしては、来年の通常国会に改正法案を出させていただきたい、そういうことを目指して作業に入っております。

近藤(洋)委員 来年の通常国会、これは予算関連ではないでしょうから三月、四月ということでしょうけれども、大変政局も混迷する中で果敢に大改正に取り組む委員長の意気込みは多としたいと思いますし、これは見直さなければいけない点もたくさんあるわけでありますし、必要な改正だろう、こう思うわけでありますが、具体的な内容についてお伺いしたい、こう思います。

 前回の改正論議でも、いわゆる不公正な取引について、厳しく対応をし、課徴金を課すべきではないかという点が論点になっておりました。法律改正の中には残念ながら私ども民主党も盛り込むことはできませんでしたが、民主党としては、この点は必要だということをかねてから主張をしてきたところであります。

 不公正な取引について課徴金の対象とすべきだということについては、我々は党としてマニフェストにも明記をしております。その意味で、今回の報告書にようやくその考えが一部取り入れられて、不公正な取引のうち、欺瞞的な取引及び優越的地位の濫用が課徴金の対象となるということは評価をしたい、こう思います。

 公取の考え方もそのように承っておりますが、具体的に、どのような行為が課徴金の対象となるのか。特に、優越的地位の濫用について。いわゆる下請関係、製造業の下請関係でなくても、流通取引でも対象に当然なろうかと思いますし、また金融取引はどうなのか。具体的に言うと、三井住友銀行で行われた金融商品の押しつけ販売、これは独禁法違反として摘発されましたけれども、例えばこのケースなどは当然課徴金の対象になろうかと思いますけれども、現段階での竹島委員長のお考えをお教えいただきたい。

竹島政府特別補佐人 十六ある不公正な取引方法の中で、内閣府に置かれた基本問題懇談会の報告書では、御指摘のように、いわゆる不当表示、それから優越的地位の濫用、これらについては明らかに不当なる利益が事業者の手元に残っておるということで、排除措置命令だけでは抑止効果として十分ではない、こういうことでございました。

 私どもは、それを受けて今検討に入っているわけでございますが、すべてということはやはり問題があろう。同じ不当表示であっても、軽微なものから非常に影響の大きいものまであるでしょうし、優越的地位の濫用の場合もそうだと思います。したがって、私どもは、それぞれの一定のものについて課徴金を導入しようということをお示ししてありまして、さて、その一定とは一体具体的に何だということについては、もう少しお時間をいただきたい。

 いずれにしても、抽象的でございますが、競争秩序への影響が大きいものということを具体的にどういう基準に落としていくかという作業でございますので、もう少しお時間をいただきたいと思います。

 ただし、その場合には、今まで排除措置命令を出してきた、御指摘の、今具体的な事例もお触れになりましたけれども、そういったものは当然視野に入れて、そういうものがきちっと課徴金の対象になるかどうかということも検証をしなければならないと思っております。

近藤(洋)委員 少なくとも、これまで排除措置命令を出したようなものについては、当然そういう対象になり得るのかなと。そうじゃなければ、では何が対象になるんだ。伝家の宝刀で抜かずの刀では意味がない、こう思っておりますし、現実に下請いじめ、中小企業いじめのほとんどが優越的地位の濫用なわけですね。

 さらに、欺瞞的取引については、これは企業の規模関係なく、不当表示などというのは大変マイナスの影響を与えておるわけでありますから、ぜひ、抑止力のある効果、実態、市場をゆがめているわけでありますから、実効性のある制度設計をつくっていただきたい、こう思うわけであります。

 そういった幅を広げる、公取の全体の規制の幅を広げるということ自体は、私は、特にこういった不公正な取引については民主党としても賛成をするわけでありますけれども、問題は審判の手続だと思うんですね。権限が強くなれば、当然、公正な審判、手続というのは当たり前のごとく必要になるわけでありまして、非常に重要であります。前回の法改正では、従来の事前審判制ではなくて、事後審判、不服審判制度に変わったわけですね、政府案として。

 我々民主党は、事後審判というのはいかがなものか。この審判制度、いろいろ問題はあるけれども、行政処分であるならば事前審判ではないかということで、現状維持の考え方を民主党案としては提案をいたしました。

 結果、二年後の見直しの中で、事前審判が方向としては望ましいというのが懇談会報告でしたね。そうすると、二年間たって我々民主党の主張が正しかったということが証明された、こう思うわけでありますけれども、なぜか公取は、考え方の中で、その報告書とは違う判断、事前じゃなくて事後審判を維持するという見解を現時点でまとめています。これはおかしいと思うんですね。やはり、公正取引委員会にもし審判部を残すのであれば、これは事前審判とするのが適正ではないかと思いますし、誤った改正であれば早くもとの姿に戻すということが必要かと思いますが、委員長、いかがですか。

竹島政府特別補佐人 近藤先生、この点に大変お詳しいんですが、今お聞きしていますと、若干誤解なすっていると思うんです。

 内閣府の基本問題懇談会の報告書の結論は、平成十七年改正により導入された不服審査型審判方式は、処分の早期化、審判件数の減少等、一定の成果を上げていると考えられることから、当面はこれを維持することが適当であるというのが、言ってみると主文でございます。ただ、いろいろ検討して、条件を満たせば、その条件というのは私は非常に難しいと思いますが、何かといいますと、ごね得、争い得、または指名停止を逃れるためにとりあえず不服を申し立てておくというような弊害を克服する道があれば、事前審判に戻すのが言ってみると筋であるということを言っておられるわけです。

 したがって、内閣府の基本問題懇談会の言っていることを、公正取引委員会が何か曲げてそれと違うことを我々の大綱でもって言っているということではありません。私どもは、この点は、審判手続のあり方というのは二年間かけて見直せという、前回の法律の附則で書かれたまさに大きなテーマの一つであるということは認識しておりまして、そのために二年間、三十五回も内閣府の基本問題懇談会で専門家が集まって議論していただいた結論でございますので、そこはぜひ十分に正確に御理解をいただきたいと思います。

近藤(洋)委員 公取委員長、当面これを維持することが適当、ただし、一定の条件が整った段階で、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当と書いていますね。だけれども、最終ゴールは事前だということなわけです、これを素直に読めば。最終ゴールは事前審判が望ましい姿ではないですかというのが報告書の流れなわけですよね。そういう意味では、これは報告書ですから、それを受けて当局とすると正しい姿に持っていくのが筋じゃないかということを指摘したわけです。

 では、なぜ事後審判がおかしいかというと、資料の最後のページでありますけれども、ヨーロッパなり海外の例、ケースを見たらば、事後審判制度を一つの機関でやっている国というのはほとんどないわけです。不服審判は裁判所に移る、これが世界先進国の大きな流れなんですね。それを事後審判、半裁判所的なこともそういった規制官庁が取り込んでいるというのは日本だけと言うと、それはいろいろあるかもしれませんけれども、少数派である、こういうことなわけです。

 ですから、もし事後審判、不服審判制度を維持するならば、やはり公正取引委員会から分離すべきではないか、離すべきではないか、こう思うんです。

 やはり、こうした手続というか不服審判というのは、公取の内部、同じ組織の中でやるというのはいかがなものか。審判官の方々の経歴をそれぞれ見れば、公取内部から昇格している方々の経歴を調べると、やはりそれなりに、審査部門も経験している人がやっているわけです。審判官を経験して、またさらに部長になったり、昇格しているわけですね。そういう意味では、エースの方がなっているケースもある。だとすると、後輩たちが出したものをバツとつけられるのか、そういった疑念を抱かせることもあるんじゃないかというのは前回の改正でも再三指摘をされているわけです。

 幾ら、裁判官を入れますとか云々と議論したところで、そこまでやるならきちんと分離をするということが一つ正しい道ではないか。犯則調査権も入れた、そしてこれから課徴金の範囲も広がる、公正取引委員会は大変な力を持つわけです。だとするなら、そこに集中をしていただいて、判断は別のところでやっていただくという方が公正な手続という意味でも正しいのではないか、こう思うわけですが、委員長の御見解、いかがですか。

竹島政府特別補佐人 これはまさに制度の基本、独立行政委員会たる公正取引委員会のあり方にもかかわる非常に大事な問題だと思っております。

 経済界にもいろいろな御議論があり、今先生のおっしゃるような御議論もあり、与野党の中にもいろいろな御議論があるのは、私わかっております。ただ、一つ、内閣府の基本問題懇談会が三つの選択肢があるということを挙げて、一々その是非を論じて、それで先ほど申し上げたような結論になっている。

 その一つとして、旧法の事前手続に戻せという話は、理想型としてはそれがいいんだということは確かに内閣府の懇談会の考え方でございます。ただし、当面は、今の改正後の事後でよかろう、ころころ変えるのも問題がある。何よりも、この改正後というのは、現にそういうごね得、争い得というものがなくなっている。それまでは、公正取引委員会の行政命令に対して、約二割の割合でもって不服審査があった。ところが、改正をいたしましたら、それが何と二%以下になった。十分の一に下がっているわけです。簡単に言っちゃうと、その差、二割近いものが、言ってみると、ごね得、争い得のために、とりあえず不服をしておこう、こういうことだったと言っても私は間違っていないと思う。したがって、その効果はちゃんとあると。あるので、適正手続にちゃんと気をつけた上で、今の改正法でやってごらんなさいというのが内閣府の基本問題懇談会です。

 もう一つ、違うものとして、いや、そういうことは、検事と裁判官を一人二役やるのはおかしいではないか。したがって、そのどっちかにしなさい、簡単に言うと検事役に徹しなさい、裁判役はあなたのところはやめて、いきなり地方裁判所に行けるようにすべきであるという議論があります。

 これもちゃんと検討した上で、いや、何のために独立行政委員会たる公正取引委員会を置いたんだと。独立行政委員会としては、その行政処分に対する不服は自分でちゃんと受けて、専門性とか統一性とか継続性とか、そういうことも踏まえてやるという準司法機関としての機能として審判機能を持っていることは非常に大事なことなんだ、だからこれを廃止するということは間違っているという考え方を基本問題懇談会は言っておられるわけです。

 したがって、外国の例もおっしゃるとおりでございまして、私ども十分わかっておりますが、実態は、今の制度で、私どもも、スタッフをどうするか、従来は五人のうち一人しか法曹資格者がいなかったのに、今のような御議論がありましたから、前回の改正では七名にふやして、今そのうち四名は法曹資格者ということで、まさに人的にもパワーアップしているわけでございまして、そういうことはこれからもどんどんやります。

 そのほかに、具体的に、今の制度でどういうふうに争う権利が侵害されたり不利益を受けているんですか、弁護士費用が余計かかっているんですか、そういうことがあれば我々も改善しますけれども、そういうことは今一つも我々のところに具体的な意見としてはないんです。

 ただ、考え方として、検事と裁判官が一緒にやっているのはおかしいじゃないか。ところが、日本の行政審判というのはたくさんあるわけでございまして、公正取引委員会だけではございません。特許もありますし、国税もありますし、海難審判も、いろいろあるわけです。こういったものの不服審査をどういうふうに裁くのがいいのかというのは、まさに制度の基本でございますので、ただ単に、独禁法に関しては、アメリカはこうじゃないか、ヨーロッパはこうじゃないか、だから日本もというような考え方でこの問題の答えを見つけるのは、私は問題があるというふうに思っております。

近藤(洋)委員 時間が来たので、最後に一点だけ経済産業大臣に伺います。

 この議論、一般質疑ですから、どうぞ、来年徹底的に議論させていただきたい、こう思うわけでありますが、一点だけ。

 この審判は非常に重要な論点ですね。ある意味で、今回の法改正の最大の論点でもあろうかと思います。私は、アメリカがどうだから云々なんて単純な議論をするつもりはないんです。独禁法は経済憲法ですから、逆に言えば、ほかの横並びの行政機関がこうですから、行政機関の並びでこうですという議論じゃないと思うんですよ。経済憲法だからこそきっちり考えなきゃいけない。

 その意味で、経済産業大臣、やはり、まないたのコイが法律をつくるわけですから、自分の組織の分離論を自分の行政機関がみずから法律として出すというのは、これはまた筋からいってどだい難しいことでありまして、これはやはり内閣として、この公正取引委員会のありようについて、やはり経済産業大臣としてもお考えを持っていいんじゃないか。審判制度のあり方について、やはりきっちり御発言をされ、内閣として御議論もすべきではないか。公取に任せるだけではいけないのではないかと思いますが、その点だけ、一点最後に伺って、質問を終わります。

東委員長 時間が参っていますので、簡潔に。

甘利国務大臣 御指摘のように、経済界のみならず法曹界からも、まさに先ほどの言葉でありますが、検事が裁判官を兼ねるようなもの、経済憲法を所管するところであるならば、より公正性が保たれるような対応にすべきではないかという声が多いと思います。

 我が省としても、そういう考え方でありますし、この審判制度について抜本的な見直しが図られることを期待しております。

近藤(洋)委員 終わります。

東委員長 これにて近藤洋介君の質疑は終了いたします。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 私も議員になりまして十一年になりますが、いつも財務金融委員会とか、特にここ数年は厚生労働委員会とか、かなり肉体的にそういう激しい委員会におりましたので、上品なこの経済産業委員会で質問するのは初めてでございますので、ちょっとなれないところもございますが、また、委員長初め大臣の皆様方、そして委員の皆様方の御協力をいただいて、きょうは質問をさせていただきたいと思います。

 特にきょうは、私がかつておりました厚生労働委員会の方が、午前中は我が党の長妻さんと舛添大臣、午後は、今の時間、菅代表代行と舛添大臣、何かテレビでいいますと紅白歌合戦をやっている裏番組のような感じがしますが、紅白をぶっ飛ばすぐらいのつもりで頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 きょうは大臣所信に対する質疑ということでございますので、ちょっと少し、私がここ七年ほど毎年参加しておりますダボス会議について、大臣のお考えを初めとして、政府のお考えを伺いたいというふうに思っております。

 来年は、我が国がG8の主催国であるわけであります。よく来年のサミットは環境が最大のテーマだというふうに言われておりますけれども、経済産業省として来年のG8の最も重視するアジェンダ、それをどのように考えておられるか、まず大臣の方から御所見をお伺いさせていただけますでしょうか。

甘利国務大臣 来年の洞爺湖サミットでありますけれども、日本側としては恐らく、温暖化の問題、これはいよいよポスト京都に向けて議論が本格化してくるわけでありますから、この問題とか、それから、TICAD4を控えていますから、アフリカ開発、あるいは核不拡散、そういうものが日本側として考える主要議題ではないかというふうに思っております。

 特に温暖化に関しましては、我が省でいえばエネルギー政策との裏腹の関係がありますから、しかも、ハイリゲンダム・サミットで安倍総理がクールアース50を提案しまして、EUとアメリカの仲立ちをした、その流れがいろいろな国際会議で確認をされてきておりますので、これは極めて重要なテーマだというふうに思っております。

古川(元)委員 サミットを来年の夏にやるのを踏まえて、最初に申し上げました、一月に開かれます世界経済フォーラムの年次総会、これは大臣は出席されたことはありましたか。

甘利国務大臣 ございます。

古川(元)委員 大臣は出席されてどんなふうな印象を持たれましたですか。

甘利国務大臣 WTOの主要国会議が開かれました。そこでWTOドーハ・ラウンド交渉が頓挫したのを立ち上げるいわばきっかけになった会合だったと思いますし、あわせて、別のセッションでパネラーの一人として御招待をいただきました。その種の会議があちこちで開かれていたようでありますし、今やいろいろな意味で世界をリードする重要な会議の一つになってきたというふうに思っております。

古川(元)委員 私が一番最初にダボスに行ったのはちょうど森総理がダボスに行かれたのと同じ年からなんですけれども、今大臣が言われたように、確かに同時並行的にいろいろな重要な会議とかそういうパネルディスカッションとか開かれているんですが、全体の流れで見ていきますと、私は、このダボス会議というのはその年のサミットに向けてアジェンダを設定していく、あそこの会議のところで取り上げられるテーマとか、そこから発信されるそういうメッセージが、その後、夏のサミットに向けて方向性をつけていく、そんな感じがあるなというふうに思っているんですね。

 ことし一月でも一番最初のオープニングでメルケル首相が来てスピーチをしました。まさにそこで言われたのは、この夏に行われたサミットに向けてのアピールといいますか考え方を示すというものであって、私は、そういう意味では、世界経済フォーラムというのは、別に政府機関とか国際機関ではなくて一民間のNGOのような形ではありますけれども、しかし、事実上の果たしている役割というものを考えていきますと、サミットに向けてのアジェンダを設定していく、そして、ことしの夏のサミットに向けてこういうことを世界が考えていくんだよといういわば方向づけをしていく、そういうような役割を果たしているというふうな認識をいたしておりますが、大臣の方はあるいは政府の方としては、その辺はどのように認識されておられるでしょうか。

甘利国務大臣 先生の御認識のような形に次第になってきていると思います。

 年明けですぐたちまちの極めて大きな会議でありますし、サミットに向けてのいわばのろしを上げるような役割を次第に果たしてきているということでありまして、民間、シュワブさんが立ち上げてここまでにされた会議でありますけれども、政府関係者、官それから産業界の世界の有識者が集う会議にもう既になっておりますし、日本としても、恐らく来年のダボス会議には総理も出席を検討されているのではないかと聞いております。

古川(元)委員 私は、ダボス会議に行って思いますのは、やはりヨーロッパの人たちというのは非常に知恵があるなという感じがするんですね。これは、大臣もちょっと言われましたけれども、特にやはりヨーロッパの要人が多く集まるんです。世界の中で、どうしても、力関係でいけば、それはアメリカとかそういうところがあるんですが、いろいろアジェンダを設定していくとか、例えば温暖化の問題なんかも、これだけ世界的な一つの取り組みが進んできた、いわばイニシアチブをとっていったのはやはりヨーロッパの国じゃないかと思うんですね。

 ですから、そういう意味では、ヨーロッパは、軍事力はアメリカなんかにはとてもかなわないと思っているかもしれない。しかし、世界をリードしていく、いわばアジェンダとかいうものを先に設定していって、そういうものをこの年明けのダボスという場でオープンにして、これに世界が取り組んでいこうみたいな道筋をつけて、そしてほかのヨーロッパ以外の国をそこに従わせていくというような、そういう意味では、私は非常に巧みな一つのスキームではないかなと。

 ですから、そういうところは日本も、これはそういうところはというよりも、逆に最大限にうまく活用していくということを考えていくことが必要ではないかというふうに私は考えているわけなんです。

 そういう意味でいいますと、来年のダボス会議というのは、特に日本が来年、サミットの議長国として日本が考えていく方向にそのサミットまでのいろいろな議論、大臣も御存じのように、サミットで突然大体のことが議論されるわけじゃなくて、大体そこまでにいろいろなレベルで議論が交わされていって、それがサミットの場で最終的にアピールされるような形になるわけでありますから、まさにその最初の先鞭をつけていくという意味では極めて重要な会議として位置づけてもいいんじゃないか。

 そして、それに対して、経済産業省を初め政府として、ここを、そうしたサミットに向けての日本の考え方をアピールする、そういう絶好の機会としてとらえてもいいんじゃないかと私は思いますが、大臣、いかがですか。

甘利国務大臣 世界じゅうが次第にそうなってきていると思いますし、日本はまだこのダボス会議をどううまく活用していくかという認識は若干浅かったのかなとも思いますが、次第にそういう認識になってきておりますので、ここで、年明けの会議ですから、その一年の世界が取り組む主要テーマの方向づけ等をしていく際にこれをうまく活用していく。それから、日本政府もあるいは政治家も、そこでいかにプレゼンスを保つかということが国際政治の中の発言力にも次第になってきているようであります。

 先生御自身が世界経済フォーラムが選出する若手リーダーのお一人というふうになっていらっしゃるのも心強いと思っておりますが、日本のいろいろな政治家が参加をして存在感を示していく、そして日本の主張を正しく理解してもらう、そういう場に使うべきだというふうに思っております。

 私も、シュワブ代表が来られたときに、来年も出てくれという予約をされまして、国会の事情が許せば出ようと思っておりますが、多くの関係者が参加することが望ましいというふうに思っております。

古川(元)委員 ダボス会議の活用の仕方について少し認識が高まってきたんじゃないかというような今大臣の御発言がありましたが、私から見ますと、まだまだ相当に認識が甘いのではないかな、特に政府の認識が。議員の方は、大臣も御承知かと思いますが、自民党の方にもダボス議連ができて中川前幹事長が会長でやっていらっしゃると思いますが、民主党の方でも鳩山幹事長を会長とするダボス議連というのをつくって、やはり日本のプレゼンスをしっかり発揮していくためにも、政治家がそういう場に出ていってきちんと発言をしていこうと。

 森さんがいらっしゃったとき、当時の民主党の代表でした鳩山さんも一緒に行って、そこでのいろいろな発言には、それはいろいろな評価があるかもしれませんが、しかし、総理とまたそれに対する大きな政党の党首が出ていって発言をする、アピールをするというのはやはり非常に大きなプレゼンスがあったと思うんですね。

 その後も、私はいろいろな形で、それは、我々の党の代表も出したいと思っていましたし、そして政府の方からも、特に総理がタイミングを見つけて行ってほしいというような話はいろいろなところにしましたが、どうも政府の方の関係者の中では極めて後ろ向き、後でちょっと財務省の方にも、宮下政務官はおわかりだと思いますが、とにかく予算の時期に予算最優先だ、もうそこしか見ないし、また某お役人が、それは官邸にいた人ですけれども、そういう人なんかに言わせると、ダボスが日本に引っ越してくるなら行ってもいいけれども、わざわざあんな遠いところまで総理大臣を送るような話はと。

 確かに、このダボス会議も、冷戦崩壊のときのいろいろなそういうきっかけをつくったというので、八〇年代後半から九〇年代初めに脚光を浴びたときに比べますと、いろいろな形、少し変わってきています。

 しかし、後からも申し上げますけれども、この世界経済フォーラムは、非常に今成長著しいインドとか中国とか、アジアの方にかなりその活動範囲を広げてきて、そういう意味では、新しい、いわば八〇年代後半から九〇年代頭のような、そういう役割とはまた別の形で世界経済に対するいろいろな影響力というものを持ち得る、そういうポジションをとりつつあって、やはりこれは特に政治家の方が今まだ進んでいて、政府の方がその認識に届いていないかと私は思いますが、もう少し政府としてもそういう場をどう生かしていくかということをやはりしっかり考えていかなきゃいけないんじゃないか。

 そういう意味では、ぜひ大臣も、事務方の方を、そういう意識を持っていただくように、特に、これは世界経済フォーラムですから、そういう意味ではやはり、もちろん外という意味では外務省かもしれませんが、経済産業省の果たすべき役割というのは非常に大きいと思いますから、そういう意識を持っていただきたいということ、そして、そういう形の指示を出していただきたいということをお願いしたいと思います。

 さて、先ほど経産大臣のお話の中にも、総理も出られるんじゃないかという話がちょっとありました。十月五日の町村官房長官の記者会見で、福田首相が出席し、環境問題に取り組む日本政府の姿勢をアピールしたいという考えを明らかにしたというような報道があるんですけれども、今総理はこのダボス会議に参加の方向で準備を進めている状況でしょうか。外務省の方、答弁いただけますか。

小田部政府参考人 先生御指摘のとおり、ダボス会議は世界各界のリーダーが集まり、国際世論へ極めて強い影響力がある、こういう観点からして、来年、G8北海道洞爺湖サミットとの関係を含めて、対外発信の場としてこの会議を有効活用することは大事だというふうに考えております。

 具体的に、総理の御出席につきましては、事情が許す限り参加していただいて、サミット議長国としての我が国の立場あるいは考え方というのを世界に発信していただきたいというふうに考えております。

古川(元)委員 では、そのための準備は着々と進んでいるというふうに認識をしてよろしいんですか。

 これは、総理が行かれる、よく今まであるように、ただ行って顔見せをした、この前、森さんが行ったときは、初めてでしたから、それでもまだよかったと思いますが、あのときは森さんは、ちょっと行ってスピーチをして、すぐ帰っていっちゃったんですね。

 先ほどから申し上げているように、サミットの議長国としてしっかり日本の立場とかそういうものをアピールするというのであれば、ある程度腰を落ちつけるような形も考えなきゃいけない。行って顔を出して、例えば十五分のスピーチだけして、はい、また、さようならというようなものでは、これはいけないんじゃないかと思うんですね。

 そういう意味では、ただ行ければいいというんじゃなくて、行くに当たっては、先ほど甘利大臣も行きたいというふうなお話をされましたけれども、それこそ政府としてやはりチームを組んで、サミットに向けて、では、何をアピールしていくのか、だれがどういう役割分担をするのかみたいなことも、これは相当事前の準備をした上で行かないと、ただ行ってきました、しゃべってきましたというだけでは、先ほどから私が申し上げているような、この会議をうまく活用したことにはならないと私は思うんですね。

 この辺、特に、私も何年か行ってわかってきたのは、さっき大臣からも、日本人は余りこのダボス会議の意義というのを理解していない人が多いんじゃないかという話もちょっとありましたけれども、経済界の人も含め、ともすると、行って、ビル・ゲイツとか、そういう人もいますから、この人を見たとか、何か有名人を見に行って満足して帰ってくるような、そういうような傾向も多々あったような感じがするんです。

 やはりそうじゃなくて、こういう場で、今お話があったように、国際世論に対して大きな影響力を行使できる、そういうチャンスがある場ですから、そこをどううまく活用していくかということを、これは政府としてしっかり考えた上で、そして準備をした上で送らないと、これはとてもそこの場をきちんとうまく活用できることにならないと思いますが、そういう準備は進んでいますか。

小田部政府参考人 先ほど甘利大臣の方から説明がございましたように、来年の北海道洞爺湖サミットにおきましては、気候変動問題、アフリカを初めとする開発問題、さらには核不拡散の問題、こういった点が焦点になると思っております。

 事務方といたしましては、来年、G8の議長国でございますので、まさにそういった点を中心として我が国の政策というのを検討を始めているところでございます。

 したがいまして、事情が許せて、もし総理が行っていただける、我々は期待しているところでございますが、そうなった場合には、議長国としての我が国の立場、考え方というのをしっかりとダボスの場において世界に発信していただきたい、そのように考えております。

古川(元)委員 行けるならばじゃなくて、それはやはり行こうというちゃんと意思を示してやるべきなんじゃないですか。大体今まで、過去総理が行けないと言っているのは、そういう日程にとにかく、財務省もいますけれども、財務省が一日も早く国会を開いて予算の審議を始めてほしい、早々と国会を上げて、予算審議をとにかく一日も早くやり始めたい、そういうことで設定するから結果的に行けないということになってきたわけですよね。

 そういう意味では、まさに政府がこの会議の重要性をしっかりと認識して、ここにちゃんと行くということを考えるのであれば、当然それを踏まえた国会の日程の設定や何かを与党の方がきちんとすればいい話だと思うんですね。(発言する者あり)後ろから何か与野党間の協力とか何か言っていますけれども、大体この話というのは、そもそも、与党の方がしっかりとこの会議の重要性とか何かを政府も含めて理解していて、それを踏まえてきちんと設定をすれば、今のお話みたいに、もし行けるならばとその程度であれば、それこそ財務省の方は、もう先に、とにかく予算の方が最優先ですとかいって、国対とかそういうところを押さえてしまって、結局そこは事情が許しませんとかいう話になるという今までの繰り返しになると思うんです。

 だからこそ、先ほど私が申し上げたように、政府としてのしっかりした意思をまずつくる。今、何か準備があたかも進んでいるかのようなお話がありましたけれども、ダボスの話というのは、外務省だけじゃなくて、経産省やあるいは財務省、金融庁、そして来年は健康の問題なんかもかなり大きなテーマになると言われていますから厚生労働省とか、かなりこれは政府全体で幅広い問題が焦点になってくると思うんですね。

 そうであれば、省庁の枠を超えた、きちんと準備のためのそういうような議論とか何かももうされていてもおかしくないと思うんですが、そういうものは今実際されていますか。

小田部政府参考人 サミット関係で議題になり得る、あるいは我が国が議題としたいという事項につきましては、定例的に、外務省のみならず、今先生御指摘のございました関係各省との間での意見交換あるいは協議というのを進めております。

古川(元)委員 甘利大臣、ぜひこれは内閣の中でも大臣も主導的な役割を果たしていただいて、なかなかこの話、事務方に任せておくと進まないんです、これまでのを見ていますと。やはりそれはしっかり大臣が、そして閣僚の中で、こういうものに対する、これを重要だという認識を持っていただいて、そういう議論を、まさにサミットの準備であれば、サミットの準備段階として考えていただければいいと私は思うんですよね。

 ですから、その準備段階としてこれをどう位置づけていくか。そのために、それぞれの役所とかがどういう役割を果たしていくのか。そこで、総理を初め、大臣を初めそういう閣僚、ではどういう人たちが行くのがいいのか。では、それが、ちゃんと行けるためには与党の中でどういう国会日程の設定をすればいいのか。やはり、そういうことをきちんと内閣の中で御判断をいただいて、そういう体制をぜひつくっていただきたいと思いますが、いかがですか。

甘利国務大臣 過去の例を見ますと、ダボス会議で取り上げた主要テーマがそのままサミットの主要テーマになるケースが多い。逆に考えれば、サミットで取り上げたいテーマは早くから仕掛けをしておく、そういう場にもなるわけだと思います。

 世界の政界、経済界、学界の識者が集まる場でありますから、極めて、そういう仕掛けをする、アピールをする、リードしていく場としては有効に活用すべきだというふうに思っております。

 官房長官もそういう意識でおりますから、総理にはかなり強く進言をされているはずであります。

 また、雪の中を一時間も二時間もかけて車で行ってくるわけでありますから、十五分で帰ってくるというようなことではなくて、十分にそれに見合うだけの活用をして帰ってくることが必要だ、それは私もそのとおりだというふうに思っております。

古川(元)委員 ここでちょっと財務省の方にお伺いしますが、今までのを見ていると、やはり財務省の予算最優先主義みたいなところが、ある種、国会日程なんかもそれで決められて、結局そのために総理も行けない。ですから、そっちをやればこちらも行けないというので、日本のプレゼンスというものをなかなか示せないということがやはりこれまでずっと続いていたわけですね。

 今の状況を考えると、この世界経済を見ても、サブプライムローンの話を含め、非常にセンシティブな状況になっています。ここは、財務省はもちろん予算もありますが、国際局も持っているわけであって、それはやはり国際局を持っている立場からいえば、これは財務大臣なんかも招待状が来ているはずですから、出席する方向で考えて、きちんと、この前額賀さんはなかなか、少しいいことを言ったのじゃないかと思いますけれども、サブプライムがこんなことになるというのは大体わかっていたのじゃないかと。

 冷静に考えれば、私なんかが見ても、あのサブプライムなんていうのは何か昔の日本のバブルによく似ているなと思いましたから、どこかでおかしくなるんじゃないかと思ったらやはりそうなったわけですから、そういう意味では、日本なんかはバブルとその崩壊という失敗を見ているわけですから、そういうところから、今世界経済が陥っているこの状況に対して、その後の処理、よかったか悪かったか、あえてここでは申し上げませんけれども、反省も含めても、それを世界に対してアピールしていくということもできるんじゃないかと思います。

 そういう意味では、財務省の中は、私もかつていたからわかるんですけれども、二階の財政当局の意見ばかりが重視されて、四階にいる人たちは何かそこで肩身の狭い思いをしているような雰囲気がかつてからありましたけれども、やはりここはもう少ししっかりと、今のこの世界経済の状況、そしてその中ででは日本がどういうメッセージを発信できるか、そういう視点から、財務省、財務大臣なんかもこれに出席する方向で考えて、そういうことを踏まえて行動すべきだと思いますけれども、どうですか、財務省。

宮下大臣政務官 お答えをいたします。

 まず、個人的な思いを若干述べさせていただきたいと思いますが、私自身も、昨年設立されましたダボス会議議員連盟、自民党の中の議員連盟に所属させていただいておりまして、去年は東アジア会議が東京で行われました。これにも、若干のセッションにも参加させていただいて、自分なりにもその重要性を感じているところでございます。

 また、先生におかれましては、七年にわたって毎年御出席いただいて御活躍いただいているという話も伺っておりまして、個人的に大変敬意を表したいと考えております。

 その上で、財務省としても、今先生おっしゃいましたように、日本の経験、また日本のこれからの改革の方向等々を財務大臣が出席をして表明していただくということには非常に意義があることだというふうに考えているところでございますけれども、一方で、先生から御発言ございましたように、予算を十分な審議を経て早期に成立させていただくというのも財務省、財務大臣としての重要な責務だというふうな認識でおりまして、以上のようなことを総合的に勘案しまして、財務大臣のダボス会議出席について検討させていただきたい、これが省としての立場でございます。

古川(元)委員 宮下政務官が一番よくわかっていると思いますが、省としてのそういう立場で、何かどちらも両方同じ、イーブンみたいなふうに言ったら、財務省は大体予算の方が先になっちゃうんですよ。

 私はここのところ、これは多分、ここにいらっしゃる先生方も、若いといいますか、まだそんなに議員になって長くない方は、予算がとにかく年度内成立しないと大変なことになるとよく言われるんですけれども、私が役所に入ったころは、まだ普通が暫定予算だったんですよね。多分大臣よく覚えていらっしゃると思いますけれども、年度内に通ることなんてまずほとんどなくて、私なんて一回、暫定も通っていなくて、四月の給料が半分しか出なかったということがありましたからね。

 だから、そういうことを考えると、来年の予算の審議はもちろんしっかりやらなきゃいけないです。我々も、このダボス会議、こういうのがあって例えば国会の会期が始まりがおくれたからといって、予算委員会の審議時間を短くしましょうなんて、そんなことは言いません。当然、それはしっかりやらなきゃいけない。

 しかし、そのことと、さっきから申し上げている、来年七月にサミットがある、そこへ向けて議長国として日本が世界をリードしていかなきゃいけない。そういう場としてこのダボス会議の場を活用するというふうに政府として考えるのであれば、そこの予算と、こうしてダボス会議への出席とかそういうものとは、おのずから優劣というのは、そんなに勘案して両方イーブンで考えるような話じゃないはずだと思うんですね。

 これ以上政務官に申し上げても何ともお話しできないでしょうからもうそれ以上言いませんが、やはりそこは、これは政府としての優先順位をきちんとつけていくということ、日本が置かれている立場、特に最近、私は、後でちょっと申し上げますけれども、いろいろな海外の会議なんかに出ていくと、どんどん何か日本は内向きになって、存在感、アジアといえば何か中国とインドだけみたいな感じで、日本は本当に何か、ああ、日本もいたのみたいな、そういうような雰囲気になりつつある。そういう中で来年サミットが行われて、そこへ向けてのこのダボス会議だという、やはりぜひそういう認識をしていただきたいというふうに思います。そのことをぜひ、財務省の中でも政務官からも声を上げていただきたいと思います。

 さて、これは話が少しそこからずれますけれども、もし総理がスイスに、ダボスに行かれるとすれば、私もこの前意外なことを聞いたんですが、実は、スイスに日本の総理が公式訪問したことはないんですね。大臣、御存じでしたか。私も初めて聞いたんですけれども、スイスは総理が公式訪問したことがないんですね。OECD諸国の中で日本の総理が公式訪問していない国は、アイルランドとポルトガルとスロバキアとそしてスイス、この四つだけなんです。その中で、スイスというのはやはりヨーロッパの一つの中心の国ですから、そこに一度も総理が公式訪問をしていないというのもちょっといかがなものかなと。

 七月十日に安倍前総理を表敬したスイスのクシュパン副大統領は、安倍前総理に対して、ぜひ来年、ダボス会議にはG8議長として出席いただいて環境問題に関するメッセージを発信していただきたい、またその際にスイスへの公式訪問をお願いしたい、そういう発言があって、安倍前総理も検討するというふうに回答したというようなことを聞いておるんですけれども、ダボス会議に出席するとすれば、そのとき一緒に、どうせ空港はチューリヒからか、チューリヒからはヘリか何かでダボスへ行くしかないわけですから、チューリヒからベルンまで一時間ほどですから、やはりベルンに行って、これは公式訪問、そういうことも一緒にやるべきじゃないかと思いますが、その辺はどうですか。

小田部政府参考人 ただいま先生から御紹介ございましたように、七月にスイスの副大統領が日本に来ましたときに、当時の安倍総理に対して公式訪問の要請があった、そのとおりでございます。また、今まで日本国総理がスイスの土地に足を踏み入れたことはございましたけれども、公式訪問がないというのはそのとおりでございます。

 したがいまして、本件につきましては、双方、すなわち我が方、それからスイス側の日程というのを見きわめつつ真剣に検討していきたいというふうに思っております。

古川(元)委員 甘利大臣、これは経済産業省の方で今スイスとの間でEPAの協議をしていますよね。ぜひ、総理がダボスに行く、そのついでに公式訪問する、そのときにEPAもスイスとの間で締結できるようにこの作業を急いでそういう状況をつくったらどうかと思いますが、いかがですか。

甘利国務大臣 なぜスイスとEPAをやるかというと、ヨーロッパの真ん中にあって拠点になり得るということと、センシティブ品目がお互いにそうないということでスムーズにいくという両方の点があるわけであります。

 今作業を進めておりますけれども、加速をして来年の一月までに間に合うかどうかというとまだなかなか厳しい状況がありますが、総理が訪問されるということが実現するとするならば、かなり加速をするのではないかというふうに思っています。

古川(元)委員 やはりこういうのは、どこか期限とか何かを決めてやっていかないとなかなか進まないと思うんですね。今完全にデッドロックに乗り上げちゃっている日韓の交渉なんかを見ていれば、こういう状況になっていると、一体何がきっかけになって協議が再開するのかとか、一体いつになるのか。先にあの韓国はアメリカと結んじゃったような状況まで出ていて、なかなか進まないわけですね。

 ですから、今大臣がいみじくも言われましたように、スイスとの間ではそんなに問題になるようなものというのは貿易の量からいってもないはずでありますから、そうであれば、やはり、ある種ここというところでデッドラインを決めて、そこに向けて大車輪での協議をしてまとめていくということをしていかないと、一つ一つこういうものを処理していかないと、特に、大臣も御存じのように、ほかのアジアの国、韓国もかなり積極的にやっていますし、中国なんかもそういう意味では積極的。もともとは、EPAとか何かも、FTAも含めてですが、日本が最初いろいろとアジアの中で言っていたのが、何か後から言ってきた国の方がどんどん先に進んでいっちゃっているような状況はやはり好ましくないと思うんですね。

 そういう意味では、ある種スイスなんかとの問題については、ぜひ総理のダボス出席、そしてスイスへの公式訪問、そことセットであわせて実現をするように努力をしていただきたいと思います。

 もう一点、ダボスとの関係で、ぜひこれは御検討いただきたいというところの御質問をさせていただきたいと思います。

 実は、ことしの九月初めに、中国の大連でサマー・ダボスと称される大きな会議が開かれました。毎年やる冬の、一月のスイスのダボスでやるダボス会議に対して、この中国で行われたサマー・ダボス、今回が第一回なんですけれども、ニューチャンピオン、今世界の中でここ数年非常な勢いで伸びてきたそういう新興の企業なんかを集めて、そこにまた従来からの大きな、世界経済フォーラムというのは会員制でやっていますから、その会員の企業、例えばインテルだとかマイクロソフトだとか、そういうのも入っていますが、そういうようなところの人たちも集まって二千人規模の非常に大きなサミットが開かれました。

 このサマー・ダボスと称されたイベントは、大連へ私も行ってびっくりしましたけれども、空港へ行きましたら、そのサマー・ダボス出席者は通関も何もかも特別レーンで全部優先的に通れちゃうんですね。空港から市内に入る道も五車線の立派な道路だったんですけれども、領事館の人に聞きましたら、いや、ここ一カ月前まで三車線だったんですね、この会議があるからというので三車線が五車線に広がっちゃいましたと。市も物すごい力の入れようでした。そして、当然オープニングには温家宝首相もやってきて、このまさにこれから成長をしていく企業の集まりが中国で行われるのはすばらしいことだ、今後この会議はずっと中国で行われるみたいな、そういうスピーチをされたんです。

 ただ、実はこの会議というのは、アジアでは行おうというところまでは世界経済フォーラムの方では決まってはいるんですが、別に中国でずっとやるというふうに決まったわけではないんです。しかし、来年の開催地はもう既に中国の天津と決まっています。この大連の会議の中で、大連市長とかも含め、天津でやった後はまた大連に戻ってくる、そういうようなことを中国の人たちが言っています。ですから、中国としては、この会議はずっと中国でやる、サマー・ダボス・イコール中国サミットみたいな、そういう感じでとらえているんですね。

 実は、再来年の候補地というのは、やるところ、場所はまだ決まっていません。多分これがことしじゅうぐらいには決まるんじゃないかというふうに言われているんですけれども、そこに参加をしていた日本人のメンバーなんかで、私たち話をしたんですが、やはり三回目は、これは中国ではなくてぜひ日本に引っ張ってくるべきじゃないかと。

 三回やられてしまったら、もうサマー・ダボス・イコール中国というのが定着してしまって、ほかの場所には行かなくなってしまうんじゃないか。やはり日本が、どこか行っちゃいましたけれども、あのアジア・ゲートウェイ構想というのも、総理がいなくなって。しかし、アジアのゲートウエーというのであれば、まさに成長する産業、実は日本なんかからも、そこには十二社ほどニューチャンピオンという形で参加もしているんですね。その一国からの参加企業の数としては日本の企業が一番多かったんです、その中では。そういう意味からしても、やはりこの会議を、私は、再来年は日本でやろうというふうに、これは政府も考えて、それなりの誘致活動というものをやっていくべきではないかと。

 この世界経済フォーラムは、もちろん先ほどから申しておりましたように民間の団体でございますので、実際に、先ほども宮下政務官が言われた、東京で去年、東アジア・サミットなんかが行われたときには、受け皿的には同友会。だから経済団体がやっている。今までは、どちらかというと、世界経済フォーラムの担当は同友会みたいな感じもあったんですが、今の中国なんかでやっているのを見ていますと、もう経済団体というのではなくて、市や国が、政府が全面的にバックアップしてやっている形なんですね。

 ですから、全面的にやりますよ、すべてやっていきますよというところと、来るんだったら若干協力しますよみたいなところでは、向こうからしたら、では、どっちに行くかというふうに考えれば、それはおのずから結論は明らかでありまして、そういう意味では、このサマー・ダボスというものを中国でやるということを固定化するのではなくて、日本でもやれる、むしろそういうものは日本でやるんだ、アジアのいわば玄関口というのは日本だというようなことを考えれば、これは政府としても、こういう会議を誘致していく、引っ張ってくるというのに、経済団体なんかと、いろいろなところと協力してやるということと、そういう体制をつくっていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思いますけれども、大臣、どうですか。

甘利国務大臣 世界経済フォーラムがこれほど国際社会に影響力のある会議を主催するようになった。冬はダボスで開催をし、夏あるいは秋の開催を日本に引っ張ってくる、これはなかなか魅力的なことだと思います。それと同時に、世界経済フォーラムの国際会議的なものを日本で、ダボス会議に匹敵するようなものをつくれないかという思いを抱いている人も多いんだと思います。

 尾身元財務大臣が、科学技術のダボス会議というのを銘打って京都で会議を開いておられます。ことしもノーベル賞学者が七、八人参加をしました。私も講演をせよということで講演をしましたけれども、何か日本発のものかあるいは海外発のものを引っ張ってくるか、いずれにしても、世界に大きなインパクトを与える情報発信ができる会議が定例的に開催をされるということは極めて有意義なことだというふうに思っております。

古川(元)委員 そういう一般的な話じゃなくて、もうこれは、サマー・ダボスの再来年とか、さっき申し上げたように、ことしじゅうには多分決まってしまうと思うんですね。それで、これもまた中国というふうに決まってしまったら、もうこれは定着してしまう。

 もちろん、日本として日本独自のというものを考えていくというのも、それも一つの方法ではありますよ。ただ、中国がこういう形で、こういうものを、ダボス会議を引っ張ってきたのも、実は自分たちがやろうとした博鰲会議が余りうまくいっていないんですね。やはりこういうノウハウというのは、なかなかヨーロッパ人とかうまいんですよね。むしろ、そういう意味では、うまくそのつくった枠を使って自分たちのPRをしていこうみたいな、やはりそういうしたたかな戦略というものを日本も持っていかなきゃいけないのではないか。

 やはりそのためには、ぜひ政府も、この問題、何かちょっと、今の大臣だと、再来年のについて、どうするかという思いみたいなものが伺えなかったものですから、ぜひ最後にその点を、意欲をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

甘利国務大臣 私個人は極めてその意義、有用性を理解しているつもりであります。

 政府全体として、どこが一番音頭をとって全体をまとめるか、あるいは、民間それから学者も加わることでありますから、少し検討してみたいと思っております。

古川(元)委員 終わります。

東委員長 以上で古川元久君の質疑は終わります。

 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 本日は、私、古川さんと同じで、当経済産業委員会で質問するのは初めてでして、何点か地味なテーマについて質問していきたいと考えております。

 まず、地味なテーマなんだけれども大切なテーマとして、規格の問題です。

 なかなか、役所の方と話してみたんですけれども、規格、標準化のことについて当委員会で質疑されたことが余りないということですので、きょうは規格の問題について何点か、私の考え、そして大臣及び政府の考え方について質問させてください。

 規格というのは、御承知のとおり、すべての製品には規格があり、それに基づいてつくられている。規格の会議というのがあるわけです。自分も、今から二十数年前、ヨーロッパに駐在しているときに、私は事務系なんですけれども、一度私のいた会社の技術屋さんと一緒に、ミラノのこれはISOの多分テクニカルコミッティーの下のサブコミッティーの下のワーキンググループの会議に同行したことがありまして、例えば、こういう鉄のパイプの非破壊検査の一つの傷の形状について、各国の技術屋が集まって、大体六人から十人ぐらいで、お互いのスタンダードを持ち合って一つの合意形成を図るという取り組みをずっと当時しておりました。

 このように、規格というのは、当時私の属していた会社の技術系の方から教わったのは、これは一つの非関税障壁にもなりがちなんだと。戦後、ガット・IMFの体制の中で、非関税障壁をできるだけ減らしていこうということで、まず関税があり、そして規格についても、ISOという規格、国際スタンダードをつくって、各国のその規格をそこに合わせて非関税障壁を取り除くという動きが戦後ずっと続けられてきたわけだと考えております。

 ですから、恐らく何千というワーキンググループが今あって、日本の中でもこれは百、千に迫るぐらい、数百のサブコミッティーと、千に迫るぐらいの、もっと超えるのかな、ワーキンググループがあるかと思うんですけれども、その規格についての御認識、規格。

 きのう、僕は驚いたんですけれども、この規格の問題について、政府、役所の方にお伺いしたところ、甘利大臣が大分、去年から一生懸命取り組んでいらっしゃるということを伺いまして、なかなかスポットライトが当たらない部分なんですよ、会社の中でも、この規格をやっている人たちはなかなか出世しないんですよ。

 地味なところでして、規格といっても、今の最先端の、DVDの例えばブルーレイのように、もうけの頭になるような規格の技術系の方たちは、スポットライトが当たっているので、一番いい人材を配置して国際的にせめぎ合っているというグループがある。

 そして、今言うこのスタンダードな地味なところというのは、こつこつやるものですから、会社としてもそこに人材を充てるということがなかなかできていないということもあったり、あるいは、会社としては自分のところの仕事をしてもらった方がいいわけで、年に何週間も国際会議にその都度出て、会社の仕事をそっちのけで国際的な、海外に出て迷惑をかけるのかなというような会社の経営者の方も多いということも私感じております。

 その点につきまして、まず、規格がどうして大切なのかということについて、甘利大臣の御所見を伺わせてください。

甘利国務大臣 規格、国際標準、グローバルスタンダード、私はもう随分前から、国際標準化について日本がもっと乗り込んでいって影響力を発揮しなければだめだということをずっと言い続けてきまして、幸い大臣になったものでありますから、すぐにこの問題の会議を立ち上げたわけであります。

 国際標準化というのは、全世界のそれにかかわってくる、何らかの形でみんなかかわるわけでありますが、利便性や安全性に貢献することでありますけれども、私自身の認識は、これは経済戦略なんだという認識なんです。企業も、直接自分の商売とかかわっていないから、そんなところに経費を割きたくないという人も多いんですが、実は、自分の規格を国際規格にすればどれくらいメリットがあるかという視点を考えなきゃだめじゃないかという思いが非常に強くあるんですね。

 サッカーでホームとアウエーという話があります。ホームで試合をすると、応援団、観客を応援につけるから実力以上の力が発揮できる。商売もアウエーで商売しちゃだめなんですね。いつもホームで商売ができるようなことを考えなきゃいけない。

 私は、グローバルスタンダードというと、日本は、何か神様がつくってくれたみたいなもので、それを押しいただくということしか考えないけれども、あんなものはどこかのローカルスタンダードに決まっているという思いがいつもあるんですね。自分のところのスタンダードを国際標準にしちゃえば一番都合がいいんだからと。もちろん、それにたえ得るものじゃなきゃだめですよ。だから、国際標準化をする作り手にかかわってなきゃ絶対だめだ、だれかがつくったのを使わされるだけだったら、それだけ相手にアドバンテージがあるんだからということをずっと言い続けてきた人間であります。

 そこで、常に経済戦略として、ホームで勝負をする、自分の土俵をつくっていく、外国の力士を日本の土俵で勝負させるということが大事だということを言ってきたわけでありまして、世界じゅうのグラウンドを日本のホームにするというのが私の目標であります。

 そこで、国際標準化官民戦略会議というのを開催いたしました。民間企業のトップの人に集まってもらいまして、そういう意識、つまり、うちの会社から国際標準をつくるための人材を派遣するのを余計なコストと思わないでくれ、あなたの会社の戦略上必要ですよという意識を持ってくれということを喚起したいと思いましてこれを開いたわけでありまして、これからは、そういう標準化の会議に一人でも多く人材を割いて派遣していくということにするべく取り組んでいるところであります。

大島(敦)委員 大臣のおっしゃるとおりだと思っておりまして、例えば、よく話題になる京都議定書、これについても個々の国家戦略というのがあって、それで、京都で行うことによって、我が国としては非常に大きな義務を負うことになったわけです。相当メーカーの努力でこれまで省エネ化を進めた上に、さらに省エネ化を進めろということで、相当大きなコミットメントをせざるを得なかった。これが多分一つの国際的な視点に立った戦略だと思っておりまして、それの逆のケースが我が国としても、標準化というツールというのか、国際標準化というツール、考え方を使ってできるのかなと思っております。

 この標準化と国際標準化について若干わかりやすく説明、多分、甘利大臣がおっしゃっていることは、標準化というのは、これは要はISO、国際スタンダードに各国の、例えば日本ですとJIS規格であり、ドイツですとDIN規格であり、英国ですとBSの規格、そしてアメリカですとANSIという規格があって、これを一つのISOの規格に準拠するというのが標準化。国際標準化というのは、我が国のJIS規格を要はISOの規格と同じにするということなんですよ。

 ということは、我が国が幹事国になれるわけですから、我が国を中心にその規格が回るということで、我が国が主導権をとっていろいろな物事を決められる。これは政党で、皆さん、各政党の幹事長というポストがいかに大切かと同じように、規格においても幹事国をとるのが非常に大切だと自分は考えております。

 そうしますと、幹事国をとることとして、今、甘利大臣からは、企業の方たちにさまざまな、要は喚起というのかな、経営者の方たちに、規格が大切だから、会社の、当面の利益を上げることも必要なんだけれども、先のことも考えてしっかりと国際標準化に進んでくれよという要請をされたということはわかります。

 そのほか、財政的な援助も必要かなと思うので、人的なものですね。技術屋さんというのは余り、私たち政治家と違って人との折衝事になれていない方が多いわけで、その技術屋さんが国際会議に出ていって我が国の主張をさらに述べるというのは相当無理があることでもあるんですよ。最初はおっかなびっくりかもしれないし。

 相手方の国というのは、これはよく規格マフィアと言われて、それぞれの規格には、もう長年そこの規格に携わっていらっしゃるドクターの方たちがついているわけですね。そうすると、日本の会社のローテーションの中で、これは役所も同じだと思うんですけれども、二年とか五年単位でかわるようですと、なかなか、その中での発言力というのが弱まってしまうことも考えられると思うんです。

 その点につきまして、もしも財政的側面とか、あるいは国として後押しするような人材育成のシステム等を考えられているようでしたら、その点についてもお聞かせいただければありがたいのですけれども。

中野副大臣 ただいま甘利大臣から基本的な考え方が示されまして、大変心強い限りだと思いますし、大島委員からも大変お詳しく御発表いただいておるわけでございまして、折しも今月が標準化月間ということでもあり、大変心強い限りだなと思っております。

 今お話をいただきましたように、まさに国際標準化活動を積極的に推進する上で、標準化に携わる専門家を育成、確保するということは非常に重要である、これは私たちも認識いたしておりまして、積極的に支援をいたしておるところであります。

 具体的に申し上げますけれども、まず一つは、国際標準案の作成をみずから行うことのできる人材の育成、それから、国際会議においてリーダーシップを発揮できる人材の育成を図るため、標準専門家の育成に向けた研修活動を実施いたしておるところであります。

 二つ目には、標準化活動に多大な貢献を行った方々に対する経済産業大臣表彰を行いますとともに、本年度からは、内閣総理大臣表彰を創設して、国際標準化活動に特に顕著な成績をおさめた方への授与を実施いたしております。

 三つ目でありますけれども、企業において標準化活動に従事する者の活動意欲や能力を有効に発揮、向上させるため、標準専門家に係る資格制度の創設に向けた検討を実施いたしておるところであります。

 なおかつ、標準に関するモデル教材を開発、提供ということで、今、大学や大学院における標準教育にも取り組んでおります。ちなみに、関西学院大、千葉大学、あるいは東京工業大学、こういうところで進められるところであります。

 今後とも、産業界などの皆様とも緊密な連携をとりながら、標準化活動に携わる方々の活動意欲を高め、その人材の育成、また確保に向けて積極的に支援をいたしてまいります。

 今後とも、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

大島(敦)委員 国としてさまざまな取り組みをされていることは評価をいたすとともに、積極的に、なかなか地味な分野なものですから、光が当たるようにしていただけるとありがたいなと。本来であれば、会社の出世の中でこういう人たちが恵まれた出世をしていくと、皆さんもっとやる気を持たれるのかなと思っておりまして、その点についても、大臣の方から、経営者の方とお会いするときには一言言っていただければなと考えております。

 標準化という問題と特に知財とは、知財は特許ですから、標準化というのは日々の産業の中で動いているスタンダードのことでして、私も気づかなかったものですから久しぶりに勉強させていただくと、一九九五年に貿易障壁を軽減するための国際協定というのができて、米国の考え方が九五年以降は変わったというお話を聞きました。

 米国というのは、それまでの考え方というのは、余りISOという国際標準には準拠したがらない国でして、米国は、鉄鋼業、ASMEとかASTMとか、デファクトスタンダード、できるだけシェアを多くとった人たちが、自分たちがスタンダードになるんだということで、それまでは、一九九五年までは国際的な標準については消極的な国だったかなと承知をしておりまして、今回のこの国際協定ができてから、これは今後、各国が標準をつくるときには、先行して国際標準があるときには、それに準拠して国内の標準をつくれという協定なものですから、それ以降、米国が、多くの各幹事国ですか、標準の中のそれぞれのまとめ役としての幹事国を多くとられるようになった。

 日本もそれなりには努力しているんですけれども、なかなかヨーロッパ陣営までには追いついていないというところがありますので、その点につきましても、個々の政策を推し進めていただく中で、多くの幹事国をとれるようにしていただきたいなと考えております。

 そうすると、標準としては、先ほど申し上げましたとおり、本当に時代の最先端で、先ほどのDVDの規格のように、この標準をすれば大きなシェアとか会社にとってメリットがあるというところは積極的に人材を派遣する。そのほかスタンダード、今のスタンダードな商品については今流れていますから、それについては、地味ながらも、こつこつと政府が後押しをすることによって幹事国をとっていく。ですから、もうかるものというのは多分企業の方で積極的に取り組んでいくと思うんです。

 もう一つあるのが、政府が後押しをしなければいけないもの。聞くところによると、日本発の規格として、障害者とかあるいは高齢者向けの、例えば、今シャンプーを買いますと、シャンプーの胴体に細かい線が入っていて、目の不自由な方がさわってこれはシャンプーだとわかる。あるいは、点字ブロックの形状にしても、とまるという形状が丸ポチの形状で、進めという形状が線の表示の形状、これを今国際化しようとしているという話がありまして、これは、会社としては、もうかる、もうからないの話ではない。しかしながら、そういう規格自身を日本が立てていくということは、それに付随するさまざまな産業も多分日本の方を向いてくると思うんです。

 ですから、その点につきまして、現状の取り組みについて答えられるようでしたら、政府参考人の方でも答弁ください。

石田政府参考人 今先生お尋ねの点でございますが、昨年、甘利大臣のイニシアチブのもとで、国際標準化戦略目標というのを設定いたしております。その中に、我が国発の国際標準案の提案というのを倍増しようということで取り組んでいるわけでございますけれども、その国際標準案の中につきまして、今先生がおっしゃられたような分野についても、製品規格のみならず、安全、安心などの社会ニーズに対応した標準化でありますとか、あるいはマネジメント分野の標準化といったようなところについても力を入れていく必要があると考えております。

 具体的には、今先生もお話がございましたけれども、社会ニーズ分野の国際標準化に関しましては、高齢者や障害者に配慮いたしました設計技術であるアクセシブルデザインに関するJIS規格、これは今既に幾つかございますけれども、これをベースにいたしまして、日中韓で共同してISOへの国際提案を、これは昨年の十一月でございますが、行っております。

 このように、我が国がこうした分野で主導的に国際標準化を今推進しつつあるということでございます。この分野に限らず、アジアの近隣諸国との連携というのを今後も戦略的に進めていきたいと思っております。

 それから、マネジメント分野の国際標準化につきましても、例えば、リスクマネジメントに関する国際標準の提案を豪州と共同で実施する。あわせて、ISOにおける国際幹事の引き受けも行うなど、こういった分野についても積極的に対応しておるところでございます。

大島(敦)委員 今、マネジメントの規格というお話が出ました。

 ですから、規格には、先ほどの、時代の最先端を行く、民間企業が一生懸命積極的にやっている規格と、地味ながらもこつこつやっている部分、これが商品の規格なわけです。商品というのかな、工業製品の規格とともに、もう一つは、マネジメントの規格ということが多分二十数年前から世の中に出てきまして、皆さん御承知のとおり、ISOの9000番台とかISOの14000番台というのはこのマネジメントの規格だと思うんです。

 自分も、新しい規格というのかな、例えば日本の労働災害の割合が、僕は日本が世界で一番労働災害の発生率が低いかなと思っていまして、この労働災害のマネジメントシステムを国際規格にできないかなと考えたことがあって、いろいろ調べてみると、実は、労働災害で一番少ないのはイギリスなんです。イギリスは、BS規格の中に安全管理の要はマネジメントシステムの規格があり、それを国際標準としようなんという動きもしているわけなんですよ。

 このことは、例えば、考えてみると、日本の規格を国際標準にすれば、中国の会社もその規格で要は工場操業をしなくちゃいけないということにもなるわけです。これは、我が国の国際競争力を保つためには、今、我が国でなかなか環境の規制とかいろいろと激しい。ですから、できるだけ緩い中国の方に行って工場を立地すれば、その分だけコストが下げられるから、日本から中国に行くという会社もあるかもしれない、多いかもしれない。

 その点について、そのようなマネジメントの規格を入れて義務化したり、政府の購買等でそのマネジメント規格に沿ったものを買うようにしたり、あるいは民間でも購買についてはそのような規格で買うようにする。

 ISOの9000番台とかISOの14000番台は、自分の理解ですと、ヨーロッパ陣営がつくった規格だと私は思っておりまして、ヨーロッパのマーケットに入れるためには、ISOの9000番台なり14000番台の規格に準拠した工場でつくった商品しか入れられないよということで、逆に非関税障壁的なものになっている、非関税障壁じゃないんだけれども、安心して買えるためにそういう仕組みをつくった、つくるための戦略として考えることも可能だと思っておりまして、ですから、我が国としても、このマネジメントシステムについてもぜひ取り組んでほしいこと。

 もう一つは、マネジメントシステム、例えば皆さんの地元の役所でも、9000番台をとったとか14000番台をとったとか、皆さんの後援会の会社でもそのような規格を持っていらっしゃるところがあると思うんです。おたくが9000番台とか14000番台をしっかりクリアしているという、これを認証している機関がありまして、これは認証機関です。その認証機関を、おたくは認証機関としてふさわしいですよと認めているのは、これは日本だと日本適合性認定協会という民間企業がおさめている。

 ですから、同じISOの規格であっても、日本のISOの9000番台と中国のISOの9000番台を取得した工場の内容が同じかというと大分違う、国によって差があるかなと私は思うんだけれども、その点について政府参考人からの答弁を求めたいんです。

石田政府参考人 今の認証の問題でございますけれども、まさに先生御案内のように、その認定機関が、日本の場合であれば、日本適合性認定協会というのがあって、そこが認証機関を認定する。その認証機関が審査あるいは認証をして、各事業所などが認証事業所ということになるわけでございますけれども、まさにおっしゃるように、国際的な取引が活発になる中で、この認証のレベルが国によってまちまちだということになりますと非常に問題があると思っておりますし、現にそういうことがあると私どもも考えております。

 この点に関しまして、IAF、国際認定機関フォーラムという国際的なフォーラムがございまして、このフォーラムにおいて、認定機関が認証機関を認定する際の国際ルールの運用についてそのレベルを調整する、あるいは認証レベルの向上と平準化を図るという活動をしておるわけでございます。

 我が国からは、日本適合性認定協会がこのフォーラムの活動に参加をいたしておりまして、これまでもこのIAFの会長職を日本が引き受けるなど、かなり指導的な役割を果たしてきてございます。

 経済産業省といたしましても、引き続き同協会のIAFにおける取り組みを支援いたしますとともに、例えば中国との関係ですと、日中認証協力協議というのを始めるということになっておりまして、こういう枠組みの中で、まさに認証レベルをそろえるためのさまざまな情報交換、意見交換、あるいは人的な交流等を進めてまいりたいというふうに考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 今お話のあったとおり、これは最近の問題だと思うんです。これまでのマネジメントの規格というのは大体先進国の規格だったものですから、日本と欧州あるいは米国でもそんなに大きなレベルの差はなかったのかもしれない。そこにやはり今経済的にどんどん伸びている国が参入というのか、このマネジメント規格をとるようになってきたものですから、そこの認証レベルが、多分同じ規格であっても差が出ている。これはぜひ日本が積極的に国際的な場で同じレベルに合わせるようにしてほしいんです。

 もう一つは、そのマネジメント規格の中に、私が考えているのは、例えば日本ですと、工場を立地するためには結構大変なわけですよ。工場を立地するときの住民との合意形成も必要ですし、あるいはさまざまな騒音等の個々の取り決めも、日本国内の法律ではいろいろと縛りがありますよね。

 もう一つは、排出基準。工場を立地してそこから物を排出するとき、中国ですと、最近は食品の問題、あるいは工場用の排水の問題で病気にかかる方、がんになる方が非常に多いということもありますから、これは我が国としても、マネジメントの規格の中には環境の問題とかあるいは工場から出てくる排水の基準の問題とかをしっかりと盛り込むということが、これは同じ競争力というのかな、中国の人たちにも喜ばれるし、我が国としても安心して中国から物を買えて、中国の方たちからも憎まれることはないかなと思うんですけれども、その点について取り組まれるようなことをお考えなのか、伺わせてください。

中野副大臣 御指摘のとおりだと思います。

 環境マネジメント分野では、積極的な国際標準化活動が行われております。

 一九九六年に制定された環境マネジメントシステム規格であるISO14001に加えて、二〇〇六年には、工場立地における環境配慮や住民との合意形成のあり方などに関する環境コミュニケーションの国際規格ISO14063が策定されたところであります。

 さらに、企業などが社会的責任を果たす上で不可欠な住民との連携やあるいは環境保全などの側面への配慮が大変重要であるため、社会的責任に関する国際規格の審議が二〇〇九年の策定を目指して続いております。これらの国際審議については、我が国の意見を最大限に反映すべく努力を続けているところであります。

 また、環境保全と経済成長を両立させ、環境価値の見える化に有効な新テーマである環境管理会計の国際標準化提案をこの秋にも行うことといたしております。

 我が国のすぐれた環境対策技術やアプローチなどの国際標準化あるいは国際標準案への反映を目指して、戦略的な取り組みを引き続きしっかりとらせていただきたいと思っております。

 これからもどうぞよろしく御支援ください。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 日本発、先ほどのアクセシブルデザイン規格のお話を伺いまして、全く新しいものを提案してみるということも必要かなと私は思っているんです。やはり外交交渉ですから、例えば、先ほど私が述べたように、BS規格の中で、労働災害、工場の安全操業にかかわる規格というのを彼らはつくってそれを国際標準にしようなんというと、周りが驚いたり反応したりするわけですよ。

 ですから、日本として独自の国際規格をアジアの周辺国の皆さんの協力を得ながら出してみるということは、これが国際標準になるには相当道のりは遠いと思うんですけれども、やはり我が国に対する諸外国からの関心を集めることにもつながってくるかなと思います。今、副大臣がおっしゃられたように、環境のマネジメントにしても、日本しかできない規格もあるかもしれないし、日本だったら皆さん到達しているんだけれども、諸外国にこの規格をとっていただくとなかなか到達基準が難しくてコストがかかる、そのかわり住民には非常に喜ばれるという規格は、ぜひ国際標準にしてほしいんですよ。

 そのための努力をぜひ、いろいろな標準の中でも重点的に政府としては気を配ってほしいなと考えるんですけれども、突然甘利大臣で申しわけないんだけれども、その点について大臣としての感想なり御所見があれば、もう一度伺わせてください。

甘利国務大臣 先ほど中野副大臣から答弁がありましたように、日本がどうやってリーダーシップを発揮していくか、それについて、省内を含めていろいろと検討していきたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 国際標準化のことについては、きょうはここでとどめまして、それでは次に、今度は事業承継税制。

 大臣の、これまでも何度かこの場でも質問、あるいは予算委員会でも質問があったと思うんですけれども、事業承継、特に事業承継税制というのが来年の法改正の大きなテーマになっているやに伺っていまして、そこまでにはまだ経済産業省の皆さんと財務省の皆さんとの政府内でのいろいろな打ち合わせ等もあるかなとは承知はしているんですけれども、自分の今までの経験、私も十九年間ほど勤め人をしておりまして、十四年間がメーカーで、五年間が保険業でずっとセールスをしていたものですから、大体中小企業、何百という中小企業を台所口から僕は見ていまして、事業承継税制といった場合に、そんなに多くの会社が対象じゃないなと僕は思ったわけです。

 保険業で、保険を自分で飛び込みセールスをしながら売る中で、十五万人の町のすべての会社を訪問したり、あるいは周辺の会社も、何百という会社を個別に訪問して、それぞれの企業データを見ながら訪問していたものですから、そうすると、事業承継と言われても、おおむね、中小企業のうち大部分は相続税の控除の中で事足りるのかなと。

 事業承継というのは、私の当時の開拓したお客さんの中でも、四百年の伝統を持っている会社とか二百年の伝統を持っている会社は、会社の中に事業承継のDNAがあるわけですよ。しにせの会社というのは、ちゃんとバトンタッチしていくようにさまざまな事業承継のシステムというのかな、要は、社長は亡くなるものだという前提に立っての事業承継ができていますから、ちゃんと後継者も育成しているわけです。

 会社の規模は、自分の営業経験からだと、メーカーだと五億円ぐらい、流通産業だと二十億円ぐらいまでは会社の社長が携帯電話で常時指令を流しながら、指示を流しながら走っていけば、どうにかその売り上げは保てる。これが、五十億円ぐらいの会社になると、会社の社長は暇じゃないとマネジメントできないなと僕は思っていまして、そうすると、事業承継税制の対象になる会社というのは、恐らく、自分の理解だと、比較的大きい町のロータリークラブのメンバーの方の会社かなとか、あるいは商工会よりも商工会議所の役員の方の会社かなとか、そういうイメージがわいてくるんですよ。

 ですから、事業承継税制といった場合に、本当に百万社が対象になるんじゃなくて、もっと少ないのかなという感じがするんだけれども、その点について、どのくらいの会社が対象になるのかのイメージを教えていただければ助かるんですけれども。

福水政府参考人 お答えいたします。

 地域経済の活力の源泉である中小企業の事業承継税制について、相続税の八〇%以上を軽減しようというふうなことで今要望しているところでございますが、財務省の資料で、平成十六年の資料でございますが、同族会社の株式を相続財産として残した被相続人というデータがありまして、それによりますと、平成十六年は七千五百人というふうな数が出ております。したがいまして、この税制が継続的に使われると、十年で七万五千人とか七万人とか、そういうオーダーになるんじゃないかというふうに思っております。

 本税制の対象企業は、地域経済を支えております、まさに中核的というか非常に大切な企業であるということが想定されますので、地域経済の活性化と雇用を守るという観点から、非常に重要なものじゃないかというふうに考えております。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

大島(敦)委員 多分、自分の感覚と合っていると思うんですよ、七千五百人とか七千五百社ぐらいというのは。多分、毎年そのくらいだと思うんです、全国で。そんなに多くの対象じゃないと思うんですよ。

 ただ、おっしゃるとおり、恐らく、皆さんの御地元だと、結構大きい、大会社なんですよ。上場企業じゃないんだけれども、五十人とか百人ぐらい雇用されて、しっかりとした会社が対象なのかなと思っていまして、その点については雇用の問題に僕は着目をしていて、雇用を守るためには事業を継続しなければいけないなと思っていて、事業承継税制も大切かなと思うんです。

 そうすると、今回は、事業承継の税制を受けるために、一応今のところの案だと、事業承継の計画を事前に必要だというのは、僕は非常にここは正しいかなと思っているんです。

 これは、なかなか、会社の息子とか二代目があるいは三代目が親に向かって、そろそろ危ないから事業承継を考えてくださいよと言いづらいんですよ。皆さん、自分で、特に創業型の経営者のところは一生自分は生きていると思っているわけです。そんなことを周辺が言ったら、すぐ怒られる、おまえ何を考えているんだと言われてはじかれてしまうリスクが非常にあるので、今回の、事業承継の税制を使うためには事前に事業承継の計画を出さなくちゃいけないよということを義務化するというのは非常にメリットがあると思うんですけれども、その点について、ちょっと説明してください。

福水政府参考人 先生御指摘のように、計画的に事業承継する、先ほどしにせの会社はそういうDNAとかノウハウがあるという話がありましたが、ある調査によりますと、既に後継者を決めている、そういう企業が四三%、したがって、半分ぐらいの人が後継者は決めている。その方々に、では、承継の準備は十分されていますか、いかがですかというふうなアンケートをしますと、おやじさんの方ですね、八割の方が何もしていないんだというふうな結果があります。

 そういう意味で、中小企業経営者の認識をどう変えていくかというか、計画的に進めていくかというのが非常に大事なことだというふうに思っています。

 私ども中小企業庁では、日本弁護士連合会あるいは税理士さん、公認会計士さん、そういう方々の団体、あるいは金融機関、それから中小企業団体を集めまして、昨年の六月に事業承継ガイドラインというふうなものを策定しています。

 これは、世の中の中小企業の方の事業承継が円滑に進むように、計画的に進むようにというふうなことで、ガイドラインの中では、早期に後継者を決めなさいとか、社内教育、社外教育をちゃんとやっていきましょうとか、それから経営権をどう段階的に移譲していくかとか、そういうふうな、まさに計画的な事業承継対策を具体的にやっていこう、そんなガイドラインをつくって周知に努めているところであります。

 今回の事業承継税制の適用についても、こういうふうな計画的な承継をされる方を対象にしていきたいというふうに考えておりますので、やり方についてはまだ十分検討できておりませんけれども、今後検討していきたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 繰り返しにはなるんですけれども、事業承継計画をつくるだけでも、おおむね税制を使わなくても解消する会社が多いと思う、自分は。いろいろな事業承継のやり方がありますから、問題提起をして、社長さんが自分もバトンタッチしなければいけないなという動機づけだけでも私は多くの成果があるかなと思っておりますので、その計画、特にその中に、何ゆえに税金を軽減するかというと、地域の中での雇用、あるいは、その会社があることにおいての税を国なり地方公共団体に納めてもらうというメリットがあるということで軽減するわけですから、やはりその内容についても十分精査をしていただければなと考えております。

 質問時間も残り少なくなってきましたので、あともう一つ、来年中に割賦販売法の改正という問題があると思うんです。昨年は内閣委員会で私は消費者契約法の改正案に携わったものですから、今回の割賦販売法の改正についても、比較的というのかな、大きな関心を寄せておりまして、その中でも、今までですと、割賦販売で、クレジット会社、その会社が業者さん、商品の販売者にクレジット、与信を与えて物を売るという、それで、なかなかこちらの方の、商品を売った会社には責任を求められるし、クレジット会社の方も、これから払う分については免除はされるんだけれども、今まで消費者が払ったものについては裁判等を起こさないとなかなか返してくれないということがあって、私は、このクレジット会社ですか割賦販売業者がしっかりとした仕事をするためにも、今まで消費者が払ったものについてもしっかり、自分が、要はクレジットの販売を委託したのがその商品の販売会社なんですから、それは同じだという見方で払うことを認めるのか、あるいは共同責任として認めるのか、それは法律的にはいろいろな御議論があるんでしょうけれども、今までお支払いしたものをしっかりと返すということが一つのルールとして必要なのかなとは思うんです。

 その点について、大臣に御所見を伺わせてください。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、現状では、これから払う分についてはそれは払わなくていい、しかし、払った分についての対処が適切にできておりません。その際、消費者にとって負担の重い制度であってはならないわけでありまして、つまり、立証責任を消費者の方が負えとか、そういう過大な負担があっては制度が生きないわけでございます。

 悪質商法による被害者が、クレジットの既払い金の返還を過大な負担なく求めることができるようなルールの整備が必要だと思っておりまして、現在、産構審において検討しているところであります。

大島(敦)委員 検討中だということで、ぜひ、検討の中では既払い金についても返還するようなことを考えてお願いしたいなと思います。

 もう一つは、私も驚いてしまったんですけれども、個別契約型というんですか、クレジットカード会社じゃなくて、これを使わなくて個別契約型の、個品割賦購入あっせん業者というんですかね、これは、僕は登録制だと思っていたら全く登録制ではなくて、勝手にできるということだったので、やはりお金を扱って、割賦販売のあっせん業者についてもこれは登録制にすべきかなと思っているんですけれども、その点についての御所見を伺わせてください。

寺坂政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、個別の購入あっせん、個品割賦購入あっせん事業者については、現在、登録とする制度とはなってございません。一方で、クレジット取引に関します苦情相談の約八割がその個品割賦購入あっせんに係るものである、そういう実態もございます。

 そういった状況を踏まえまして、今般、産業構造審議会におきましては、個品割賦購入あっせんを行う事業者に関しましても登録を義務づけることによって、一定の資産などを有していない事業者の事前排除、あるいは行政が監視、監督する仕組み、こういったものを導入していくことを検討しているところでございまして、そうした検討結果を踏まえまして、必要な措置を講じてまいりたいと考えているところでございます。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

大島(敦)委員 ここで、私の質問を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

東委員長 大島敦君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは、最初に大型店の問題について質問したいと思います。

 この問題は、ちょうど九〇年代半ばごろでしたか、甘利大臣とも一緒にUSTRへ行ってバシェフスキー女史などと議論したころは、アメリカのすさまじい、アメリカとの貿易摩擦で、その後もアメリカが大店法を廃止しろと随分圧力をかけてきておったころからの問題で、それで、あのころは、大店法を廃止して、その結果、全国各地にシャッター通りが広がっていくのは大変だということで、そこは共通の認識を持って取り組んでいたと思うんです。

 大店法廃止、そしてまちづくり三法ということで、私は、大店法は改正強化すべきだということでしたから、孤立無援でやっておりましたけれども、しかし、実際には、シャッター通りにとどまらないで、商店街はもう焼け野原みたいな感じにかなり広がってきております。

 昨年も、まちづくり三法改正ということで、歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりを進めるため、郊外部への床面積一万平方メートル以上の大規模集客施設の出店は原則禁止と。このことを進める上では、当時、甘利さんも自民党の中でまちづくり三法見直し検討ワーキングチームの座長として随分頑張ってこられて、法改正ができたというふうに思うわけです。

 この国会審議のときにも、実際には都計法猶予期間一年半では駆け込み出店の問題とかあるのではないか、そういう議論が随分ありまして、しかし、国交省の加藤審議官は、施行までに駆け込み出店することは実態上は難しいのではないかという答弁を国会でもやっておりました。ただ、現実を見ると、やはり駆け込み出店申請というのは随分あるんですね。

 私はきょう、一例として、今九州で問題になっております、十三万四千四百平米、店舗面積で七万三千平方メートルという長崎県のイオンモールの問題について伺っておきたいと思うんです。

 まず、国交省に最初伺いますが、一カ月前の九月二十日に長崎県長与町に開発許可申請を提出してきて、九月二十一日に都計法三十二条の同意文書の添付がないということで長与町が申請書を返却する。同じ日にイオンモールが県に開発許可申請を提出しましたが、県は、長与町を経由していないので受け取れないと回答する。イオンモールは、申請書の正副本は持ち帰り、コピーのみ置いて帰るということになりましたけれども、十月十二日になって、イオンモールが再度開発許可申請書を提出してきた。県は、行政手続法に基づいて受理はするが、瑕疵のある書類の不備を正せと。つまり、三十二条の同意文書を添付せよと今指導中です。

 これは、長崎市も長崎県も三十二条の開発同意をしていない段階にあるものだと思いますが、国交省、政府参考人に最初このことを伺っておきます。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 都市計画法の第三十二条第一項では、先生御指摘のとおり、開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得ることとされております。また、その手続といたしまして、都市計画法第三十条第二項により、開発許可を申請しようとする者は、公共施設の管理者の同意書を添付するというふうに定められております。

 今回の長崎県の案件でございますが、先ほど御説明をいただきましたように、本年の十月十二日にイオンから長崎県に申請が出され、これについては、申請は受理したが、公共施設の管理者の同意書がこの三十条に基づく添付をされていなかったということで、長崎県では、行政手続法に基づきまして同意書を添付するように文書の補正を求めている、このような状況にございます。

吉井委員 では、あわせて国交省に伺っておきますが、都計法三十二条の同意書も得ないで申請書の提出を強行するというふうな、こういう事例というのはほかにもありますか。

石井政府参考人 ただいま先生の方から、開発許可の事務について同意書なしにこういう申請がされるような例があるかどうかということでございますが、実は、開発許可につきましては、自治事務ということで、私ども政府全体として、全体の動向ということで、年度ごとに開発許可の申請が何件出てきているかとかその面積であるとか、どういう理由でというような全体の動向はつかんでおりますが、特に今回の場合、非常に個々の案件にわたる取り扱いということで、その一つ一つについては、残念ながら、把握をいたしておりません。

吉井委員 こういう事例というのは普通ないんですよね。

 大臣に伺っておきたいんですが、長崎県では、もともと、大規模集客施設等立地ガイドラインというのを公表して、県民から意見募集中ですけれども、コンパクトシティーの構築というのを掲げて、大規模集客施設、床面積一万平方メートル以上の立地は「まちなか」へ誘導すると。これは、大臣も昨年そういうことを考えて随分取り組まれた、その方向へ今頑張っているときですよね。その県の方針に反する計画であるわけですし、今もお話ありましたように、公共施設管理者の協議という中で、地元の長崎市も県も同意してもいない。それをこの十一月三十日のそれを前に駆け込み出店の手続を強引に進めようとするのは、私は、そもそも昨年の改正まちづくり三法の趣旨に反するんじゃないかと。当時、国交省の審議官も答弁しておられることですが、私はやはりこういうことは好ましくないと思うんですが、大臣にこの点を伺っておきます。

甘利国務大臣 国交省から答弁がありましたとおり、これは地元自治体の同意がなければできない話ですから、許可はおりないんですね。おりないのに申請を受理したのか、それとも黙って置いていっちゃったのかよくわかりませんが、いずれにしても、これはおりませんから。

 基本的には、自治体のまちづくりの中にどう協力してもらうかということですから、自治体がグランドデザインを描く中の一つのパーツとしてどう協力していくかということですから、その基本が自治体のプランニング、都市計画の意向ですから、そのもとの同意がない限り、これはもともと成り立たないということになります。

吉井委員 大臣からも成り立たないというお話で、そのとおりだと思うんですけれども、私も現場を見てびっくりしたんです。普通は、例えばマイカル小樽にしても、国鉄清算事業団用地をつぶしてやったわけですね。ここの場合は、自然豊かなミカン山など、山をばっさり削って、山そのものを崩してやろうという計画ですから、どだい、余りにもむちゃくちゃだというふうに思いました。

 ただ、大臣も取り組んでこられたまちづくり三法のこの趣旨からしても、本当に好ましくないものですから、もともとできないということはもとより、こうした法の趣旨にも反するようなことについては、やはり厳しい態度で臨んでいただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 次に、私は、老朽化してくる原発が巨大地震と重なったときどうなるかということが、ことし七月十六日の中越沖地震で、柏崎刈羽原発で実際の姿を見ることができたと思うんです。

 それで、毎週集計がされていますけれども、集計するたびに調査が進んで、柏崎刈羽原発で事故あるいは故障、損傷の件数というのはふえてきて、十月十八日現在で二千八百九十八件ですね。おおよそ三千件もの事故や故障というのが発生している。原発の安全上、考慮しなければならないもので六十八件もある、そういうことが確認されております。

 最近も、柏崎刈羽原発の七号機では、制御棒一本が抜けないとか、これが見つかったり、使用済み核燃料プールのところでは、コンクリートの壁にひびが入っていて、放射能を帯びた冷却水が漏れてくるとか、それから、停止中の六号機のタービンを調べてみたら、静翼も動翼も傷ついていた。実際、運転中であったタービンの静翼、動翼がどれぐらい傷ついているかというのは、まだ調査が進んでいないからわかりませんが。

 いずれにしても、原発は、ただ件数だけじゃなしに、内容においてもかなり傷んでいると思われるんですが、どれぐらい傷んでいるのか、これは政府参考人から伺います。

薦田政府参考人 まず、七号機の状況をお話ししたいと思います。

 先ほど先生から御指摘ございましたように、柏崎刈羽原発七号機におきましては、燃料集合体、これは八百七十二体あるわけでございますが、これを使用済み燃料プールに移し、制御棒、二百五本でございますが、これを引き抜く作業を行っていたところ、十月十八日に、百本余りの制御棒を引き抜いた後、一本の制御棒を引き抜くことができないということを確認したところでございます。ただ、その後も作業は継続実施しておりまして、当該の制御棒を除きまして、現在は、すべての燃料集合体、そして制御棒の引き抜き作業は完了したというところでございます。

 ただ、中越沖地震の際に、七号機を含むすべての運転中のプラントにおきまして制御棒が安全に挿入されておりまして、とめる、冷やす、閉じ込めるという原子力の最も重要な安全機能は維持をされているというところでございます。

 今回の事象につきましては、制御棒が安全に挿入されて原子炉がスクラムした後、制御棒の一本が挿入した状態から引き抜けないといった状況のものでございまして、本事象が直ちに原子炉の安全性に影響を与えるものではないというふうに考えているところでございます。

 また、その他、先ほどこれも先生から御指摘ございましたように、十月二十一日そして二十三日にも、原子炉建屋内での管理区域内で放射性物質を含む水が壁面から漏えいしている、あるいはにじみ出しているというようなことが確認をされております。ただ、当該の漏えい水等は管理区域内にとどまっておりまして、外部への影響はないものということでございます。

 こうした事象を含めまして、現在、新潟県中越沖地震が同発電所に与えた影響につきまして徹底した調査を行っているところでございまして、今後、この調査結果を踏まえて、今当方に設置をしております、中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会等に諮りながら、この発電所の安全性について厳格に確認をしていきたい、かように考えているところでございます。

吉井委員 原子力安全・保安院というのは、本来規制機関ですから、チェックしなきゃいけないですね。しかし、現在は経産省資源エネルギー庁の中にありますから、推進機関と規制機関とが一体の形になっているものですから、私、今のお話を聞いておりましても、本来、もっとニュートラルの立場できちんとその安全性について見ていかなきゃいけないんです。

 制御棒についても、実は、東京電力ではもともと、制御棒駆動水圧系配管に随分たくさんの、八五%でしたか、損傷が生まれて、ピンホールもあいていたのもありますから、それが巨大地震とぶつかって破断してしまったときには、そもそも制御棒が入らないということも出てくるわけで、今回は、何といいますか、たまたまうまいこと入ってくれた。それでおさまったということは、私はよかったと思っているんですよ、事故にならずに。しかし、もっとそのことを深刻に受けとめて、調べるのが原子力安全・保安院の仕事だと思いますから、そこのところをきちっとしてもらいたいと思います。

 あわせて、例えばコンクリートの問題については、「ふげん」の建屋でのコンクリートでは、三十六本の試験体の中で、十本で設計強度不足というのが最近見つかっていますね。強度の弱いものであった場合に、実際に強い地震動に遭ったときにどうなるかということが今問題になっているときなんです。現に、柏崎でも、ひびが入って水が漏れてくるとか出ているわけですから。

 そこで、柏崎原発でも、アルカリ骨材反応の問題とか、それから加水生コンの問題とか、鉄筋そのものが腐食、膨張している問題とか、きちんとしたことをやはり調査して、そして、その点で大丈夫なのかということを、コンクリートの壁にひびが入っていて漏れたりしているわけですから、強い地震動に遭ったときに大丈夫なのかということを、コンクリートの内部の傷み、損傷についてはきちんとした調査、評価というものが必要だと思うんですが、これは既に始めているんですか。

薦田政府参考人 まず、「ふげん」のコンクリートの問題との関連について申し上げますと、これにつきましては、つい先日、JAEAの方から報告がございまして、確かに、今回コアを大分抜いてみまして、そのうちの何割かが規定値以下であったけれども、しかしながら、平均値あるいは建物としての全体の強さを確認したところ、問題はないという返事をいただいたところでございまして、我々の方でも、ここのところについては確認をしていかなければいけないと考えておるところであります。

 ただ、なぜこのようなことが起きたかについては、現在、JAEAの方に徹底的に調べるように調査を指示しているところでございまして、近く返事があるのではないかと思っております。

 また、これと柏崎等々ほかの発電所との関連について見ますと、私どもの方も、同じような、こういうようなコンクリートの問題がないかということで、既設の発電所についてコア等を抜いて調べておりますけれども、これまで私ども見ておるところにつきましては、「ふげん」で生じたようなコンクリートの強度が落ちているというようなものは発見をされていないという状況でございます。

 ただ、今回、この地震におきまして、発電所のコンクリートにどのような影響を与えるかということにつきましては、これはもう、今先生御指摘ございましたように、我々としてもしっかりと見ていかなくてはいけない問題と思っておりまして、先ほど御説明いたしました、当方に設置をしております委員会に諮りながら、何を我々としてすべきなのか、どのような基準で見ていくのか、このようなものについて現在審議をいただいておりまして、これを踏まえて、我々としても適切に対策をとっていきたい、このように考えているところでございます。

吉井委員 コンクリートの問題というのはなかなか深刻な問題ですから、現に、ひび割れがあって冷却水が漏れてくるとか、そういう事象が起こっているわけです。ですから、これは、軽く見てはとんでもない話だということだけ言っておきたいと思うんです。

 あわせて、この間九月に、関電美浜二号と原電敦賀二号で見つかった、蒸気発生器の入り口部分の配管に割れ目が生じていた問題ですね、ひびが入っていた。これは国の技術基準を割り込むものもあったわけですね。それがたまたま巨大地震と重なっていなかったから、私はこれは幸いだと思っているんですが、巨大地震と重なったときに一次冷却水配管が蒸気発生器の入り口で切断、ギロチン破断みたいになると、最悪の場合、これはかなり深刻な事態を考えなきゃいけない。それは、二〇〇四年八月のあの美浜三号機のタービン建屋の事故ぐらいの話じゃないですから。

 だから、これは私は、もしそういうギロチンなどが起こったときにはどういう事態が発生するかということと、あわせて、そのために何をするかということをきちんと考えなきゃいけないと思うんですが、原子力安全・保安院として、ギロチン破断したときにどういう事態が起こるというふうにお考えか、伺っておきます。

薦田政府参考人 まず、先ほど先生から御指摘のございました美浜二号機や敦賀二号機で発見されました蒸気発生器入り口部の配管の亀裂でございますけれども、これにつきましては、割れの方向というのが軸方向でございまして、この割れは、ほかで見られますような配管を輪切りにするようなものではないということから、先生が今お話のございましたいわゆるギロチン破断に至る方向に進むものではないというふうに考えているところでございます。

 また、割れが発生している部位というのはニッケル基合金部でございまして、この材料は延性がある、延びやすいということもございまして、この点からもギロチン破断を仮定することは控えたいというふうに考えているところでございます。

 なお、一般論といたしまして、御存じのように、原子力発電所におきましては、安全審査においては、最大級の一次系配管が破断したことを想定して、ECCS等がどのように働いて最終的に原子炉の安全が確保されるのかということを、また、安全が確保される設計となっているかどうかというものを安全審査において確認をしているわけでございます。

 今の美浜二号とか敦賀二号とは無関係の世界で申し上げますと、当然、こういう一次系、大きな配管が割れたことを、ある仮定をして、ECCS等が働くか、どのような機能が働いて最終的に安全に落ちつくかということを見るわけであります。

 地震との関係で申し上げれば、仮に大きな一次系配管が破断をしたといたしましても、そのときにECCSが働けば問題ないわけでございますけれども、これまでの多度津等の実証試験などの結果を見ますと、ECCSを構成いたします配管であるとかポンプとか、このようなものにつきましては、我が国におきますS2クラスの最大級の地震を考慮いたしましても、その四倍以上の耐力を持っているということを確認しておりますので、そのような観点からも、仮に今先生がおっしゃったようなことがございましても、ECCS等は適正に機能し安全は確保されるもの、このように考えているところでございます。

吉井委員 最悪の場合は、原子炉の暴走とか炉心溶融とか考えなきゃいけないので、それでECCSが働くといっても、大量に冷却水喪失となってしまうときに、そう簡単にいく話じゃないというのはわかった上でのお話だと思うんです。だから、非常に深刻なことになるということをまず考えなきゃいけない。

 多度津のお話がありましたが、実は、さらっぴんのデータはあるんですが、老朽化した原発の実証データは全くないというのが原子力安全・保安院のこれまで一貫しての答弁です。多度津の試験所というのは、実は、売り飛ばしてしまってもうないんですね。スクラップにして、もう装置そのものがないんですから、そもそも実証データがとれないという状況に皆さんがやっちゃったということをよく考えた上で物を言わなきゃいけない、このことを言っておきます。

 さて、それで、老朽化する原発の巨大地震対策は今緊急を要するわけですが、一つは、地質、地盤、活断層の調査、もう一つは、原発そのものの各号機ごとの地震動の測定が継続的に行われていく、このことが必要なんです。

 私、この間、北海道泊原発を調査に行ってびっくりしたんですが、一号機には地震計があるんです、しかし二号機には地震計がないんですね。きょうお配りさせていただきましたこの資料をごらんいただきたいと思うんですが、泊二号、大飯二号、高浜二号、玄海一号、二号、四号、川内原発二号、地震計がついていないんですよ。これだけ柏崎刈羽の問題なんかがあって、あそこは全部地震計がついていて、調べたんですが、地震国日本で地震計がついていない原発が現実には存在するという事実に私は驚いたんです。

 それで、原発の基礎地盤に地震計がない、九州電力ですと原発の三分の二は地震計がそもそもない、こういう実態ですが、最初にこの事実を原子力安全・保安院に確認しておきます。

薦田政府参考人 まず、地震計といいましてもいろいろな種類がございまして、最も重要な、すなわち、地震が起きたときに原子炉をすぐにとめるために使います地震感知器がございますが、これにつきましては、すべての原子力発電所に設置をされているところでございます。また、これも地震動を調査する上で極めて重要な、岩盤の中の振動をはかる地震計につきましても、これもすべて設置をされております。

 ただ、今先生から御指摘のございましたように、地震観測のための、実際の地震による施設への影響を把握することなどを目的としましたこういう地震計につきましては、現在は、事業者の自主的な取り組みとして設置をされているというところでございます。

 結果的に、今先生から御指摘がございましたように、このような振動計につきましては、現在運転中の原子炉五十五プラント中、七プラントで設置をされていないということは事実でございます。

吉井委員 日本の原子炉の一二・五%には地震計がないんです。それから、九州電力は六つの原発を持っていますが、四つはないんです。しかも、玄海原発の一号機、二号機をつくられて三号機がつくられるまで、一号機から三号機の間は十九年間、十九年間ずっと地震計なしにやってきているんですよ。それが地震国日本の原発の実態なんです。

 私は、原発については、推進した方がいいと言う人やら反対の人やらいろいろな人があるのは、これはもう百も承知の上での話なんですよ。しかし、少なくとも、地震国日本の原発の持つ本来的な危険性から住民の安全、国民の安全を守るということは、政府として非常に重要な責務があるわけですね。どういう政策をとるにしても、安全を守るというのは一番大事な肝心かなめの政策なんです。ところが、肝心の地震動というのが、最初から測定されない原発があったということ自体が余りにも異常なことなので、私は、政府は地震計を設置しないことを知っていて原子炉の設置工事認可をしたということになってしまうわけなんですよ。

 だから、柏崎刈羽で約三千件近い事故、損傷が起こっているという現実を踏まえて、地震による施設への影響を把握することを目的として、つくっているところは事業者が自主的にやっているという話なんです。しかし、地震計のデータというのは原発の震災対策にとっても基礎的で基本的な地震対策の中心的な役割を担うものですから、これは、甘利大臣、やはりすべての原発に少なくとも地震計はきちんとつけて、そして、もちろん周辺の陸域も海域も含めた地質、地盤、活断層の調査はもちろん必要なんですけれども、しかし同時に、今ある原発についても、日常的にそれぞれの原発の基礎地盤、岩盤もそうですが、建屋の上のところはどうだとか、私は、そういうデータはまずとるように、やはり地震計を設置させるということはこれをやらせなきゃいけないと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

甘利国務大臣 すべてのプラントに地震計がついているわけではない、それは御指摘のとおりであります。ただし、すべてのプラントに感知器はついているわけであります。

 大事なことは、地震が来たときに安全に原子炉が停止をする。とめる、冷やす、閉じ込めるという機能が発揮されるということが大事で、その上で、地震を感知して運転をとめるという連動性は確保されているわけであります。ただし、中越沖地震の影響を受けた柏崎刈羽のあの原発でも、それぞれのプラントで大分、地震の地震動の大きさとか伝わり方、いろいろと違いがあるようであります。そういった知見がそれから先の原子炉の耐震性、耐震安全について重要な知見となるということも指摘をされております。

 この問題については、今、専門家から成る委員会に検討を依頼するところでありますので、この委員会の議論を踏まえて、適切に対処していきたいと思っております。

吉井委員 時間が参りましたので。

 大臣もよく御存じのように、柏崎刈羽の一号機、地下五階の基礎地盤のところにあって六百八十ガルを記録したんですね。二号、三号、四号とずっとありますけれども、それぞれのところでデータが皆違うわけですね。それは、当然のことながら、震源域との関係その他いろいろなことがありますから違ってくるんです。それぞれに応じて、建物にどういう影響が出てくるかということは日常的にきちっと把握して、そして基礎的なデータをもって地震対策というのを考えていかなきゃいけないわけです。

 泊へ行きましてお話ししたら、来年からつけたいと北海道電力の方も言っておられました。だから、電力としても今まで黙ってほっておいてきたけれども、感知器だけで済ませたけれども、やろうと言われればやるわけですから、これは大臣の方から、それは専門家の意見も聞くにしても、きちんとやらせるということだけ、もう一言伺っておいて、質問を終わりにしたいと思います。

甘利国務大臣 専門家の検討結果も、恐らくそういう方向になるんじゃないかと思います。

吉井委員 終わります。

東委員長 以上をもって吉井英勝君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.