衆議院

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第8号 平成21年4月17日(金曜日)

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平成二十一年四月十七日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 東  順治君

   理事 梶山 弘志君 理事 岸田 文雄君

   理事 櫻田 義孝君 理事 中野 正志君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 大島  敦君

   理事 古川 元久君 理事 赤羽 一嘉君

      飯島 夕雁君    小此木八郎君

      岡部 英明君    片山さつき君

      川条 志嘉君    木挽  司君

      高村 正彦君    近藤三津枝君

      佐藤ゆかり君    清水清一朗君

      新藤 義孝君    平  将明君

      谷  公一君    谷畑  孝君

      土井 真樹君    橋本  岳君

      林  幹雄君    藤井 勇治君

      牧原 秀樹君    武藤 容治君

      安井潤一郎君    山本 明彦君

      太田 和美君    北神 圭朗君

      後藤  斎君    近藤 洋介君

      下条 みつ君    田村 謙治君

      牧  義夫君    三谷 光男君

      高木美智代君    吉井 英勝君

    …………………………………

   経済産業大臣       二階 俊博君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   経済産業副大臣      吉川 貴盛君

   経済産業大臣政務官    谷合 正明君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 堀田  繁君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 原  雅彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小栗 邦夫君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局研究総務官)       塚本 和男君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         瀬戸比呂志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           森川 正之君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          松永 和夫君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          藤田 昌宏君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     上田 英志君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 石田  徹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            羽藤 秀雄君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    黒岩  進君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            横尾 英博君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   岩井 良行君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  中野  清君     谷  公一君

  牧原 秀樹君     飯島 夕雁君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     牧原 秀樹君

  谷  公一君     中野  清君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)(参議院送付)

 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)(参議院送付)

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、不正競争防止法の一部を改正する法律案並びに外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官堀田繁君、法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、財務省大臣官房審議官原雅彦君、農林水産省大臣官房審議官小栗邦夫君、農林水産技術会議事務局研究総務官塚本和男君、経済産業省大臣官房総括審議官瀬戸比呂志君、経済産業省大臣官房審議官森川正之君、経済産業省経済産業政策局長松永和夫君、経済産業省貿易経済協力局長藤田昌宏君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長上田英志君、資源エネルギー庁長官石田徹君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長羽藤秀雄君、特許庁総務部長黒岩進君、中小企業庁事業環境部長横尾英博君及び防衛省防衛参事官岩井良行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川元久君。

古川(元)委員 おはようございます。民主党の古川元久です。

 きょうは、私の方からは不正競争防止法の改正案についてお尋ねをさせていただきたいと思います。特に、この法案は参議院の方で先に議論もされておりますので、参議院の方での議論も踏まえた上での御質問をさせていただきたいと思っています。

 まず、そもそも、こういう法律を改正するとか法律をつくる、つくる以上はちゃんと実効性が伴わないと、何かアリバイのように、いろいろ問題があったらそれに対してやりましたと、やっているふりをするだけではこれは意味がないわけでありますので、今回の不正競争防止法の改正というのは私は必要なことだというふうに思っておりますが、しかし、本当に必要性をきちんと満たして、実際に実効性が上がるような形で運用がされなければいけないと思います。

 そういう意味でも、本当にこの法律がちゃんとうまく機能するのか、そして、逆に思わぬ弊害が生じないのか、その辺のところを中心にお伺いをしたいと思っております。

 まず、営業秘密の漏えいに対して刑事罰を入れる、これが平成十五年に入ったわけなんですが、参議院の方の審議でもありましたけれども、平成十五年の改正以来、実際に立件された件数はゼロだということなんです。平成十五年、当然必要性があって刑事罰も入れたと思うんですけれども、しかし、平成十五年からもう何年もたっているんですが、今まで立件件数がゼロだったというのはどうしてだというふうに考えておられますか。

森川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、営業秘密侵害に対する刑事罰につきましては、平成十五年の不正競争防止法の改正によりまして、とりわけ違法性が高いというふうに考えられる行為に限定して導入が図られたところでございます。

 その後、平成十八年に、光学系の機器メーカーの従業者が、外国の通商代表部に所属する人間に対して、軍事転用されるおそれのある機密部品を不正に開示したところ、不正の競争の目的が認められなかった、こういう事案がございます。

 また、平成十九年に、ある企業に勤務する従業者が、秘密として管理されております図面データを無断で繰り返し自宅に持ち帰り、それを海外に不正に開示していたという疑いがあったわけですけれども、外部への送信、つまり開示行為という、現行の不正競争防止法で罰則がかかる行為につきまして証拠を得ることができなかった、こういうような事案がございます。

 つまり、現行の営業秘密侵害罪では捕捉できないようなケースが現実には生じている。こういったことが、立件が、立件といいますか起訴がこれまでなかったという背景ではないかというふうに考えてございます。

古川(元)委員 今お話のあったようなケース、そもそも平成十五年に法改正をするときに、そういうケースもあるということを予想はできなかったんでしょうか。

 この問題というのは、諸外国などでは相当前から、かなり厳しい管理とかそういう規定もあるわけですね。例えば、アメリカの経済スパイ法なんというのは、もうずっと前からあるわけでありますから、当然そういうことも平成十五年の改正のときに想定をされていてもしかるべきであったのではないかなと思いますが、その時点では、今御指摘のあったようなことはどういうふうに考えていたんだと。そういう事例というのはないというふうに認識をしていたのか。あるいは、その時点では、仮にそういうことがあってもそれは処罰の対象にすべきではない、そういうふうに認識をしていたのか。その点の、平成十五年の改正のときの政府としての判断はどういうことだったんですか。

森川政府参考人 お答えいたします。

 十五年の不正競争防止法の改正におきましては、刑事罰を初めて導入するということもございまして、とりわけ違法性が高いと考えられる行為に限定したという背景がございます。

 御質問にストレートにお答えいたしますと、したがって、当時の状況から考えて、今提案しているようなところまでカバーするというふうには考えておりませんで、また、その前提として、その後出てきた事案のようなものは必ずしも想定していなかったということではないかというふうに考えております。

古川(元)委員 以後出てきた事案は想定していなかったというお話があるんですが、では、本当に想定できなかったのかどうかということを考えると、先ほども申し上げましたが、既に諸外国ではかなりそういう問題になった事案も含めて規制をする、処罰をする、そういう規定が前からあるわけでありますから、それが想定できなかったということであれば、やはりこの法改正のときのきちんとした分析やリサーチというものが足らなかったのではないか、そういうふうに言われても仕方がない面というのもあるんじゃないかと思うんです。

 何で私がこんなことを申し上げるかというと、今回改正をします、では、本当にこの営業秘密がきちんと守られるような体制がこれでできるのかどうか。また数年たつと、いや、そのときには想定していなかった事件が起きましてというような話になるのではないか。やはりきちんと、そこのところはもう少し、特に諸外国を初め前例がないような法律をつくっているなら別なんですが、似たような法律はどこの国にもあるわけですね。そして、もっと日本より厳しいところが、アメリカを初めとしてあるわけなんです。当然これは想定をしてしかるべきだと思うんです。

 そういう意味からすると、例えば、今回この法改正をすれば、そのことによって、ほぼ営業秘密の保持については法律的なカバーはこれで大体必要十分だ、そういうふうに考えておられるんですか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 不正競争防止法につきましては、委員御指摘のとおり、これまで、累次、改正を重ねてきております。どうしても、対象としておりますのは経済実態でございますので、いわば不正に営業秘密を奪うような手段というのも、やはり情報技術の進展ということもございまして、そういうものもにらみながら、絶えずそういう実態に合うような形で対応していくということにならざるを得ないという面がございます。

 ただ、私どもは、今回の改正をすることによりまして、現段階で想定をされるそうした営業秘密侵害の状況につきましてはきちんと対応できるというふうに考えております。

 それから、一方で、諸外国の例についてただいま御指摘ございました。私どもも、諸外国の実態というものを絶えずアップデートで調査をしながら、また、会社の、いろいろな企業の方の問題意識というものもベースに置きながら考えていかなきゃいけないと思っておりますが、一方で、営業秘密といいますのは、いわば従業員と経営者一体となってつくるものでございます。経営者と従業員との関係というものにつきましても、これは諸外国と日本とではかなり違う面もございますので、そういうことも踏まえながら、直ちに海外の犯罪の構成要件というものをそのまま日本に移していけるかどうかということもあわせて慎重に考えなければいけないポイントなのではないかというふうに考えております。

古川(元)委員 では、ちょっと質問の仕方を、少し角度を変えますが、これは親告罪ですよね。要は、告発がないとそもそも捜査も始まらないですし、また罰せられないわけなんですが、これは、十五年に改正をしてから告発があった件数というのはどれくらいかというのはわかりますか。済みません、急に聞いて。

森川政府参考人 お答えいたします。

 起訴がゼロ件でございまして、その前提となる告発も恐らくゼロ件だろうというふうに考えております。

古川(元)委員 これだけ、やはり技術流出というのは、経産省さんがいろいろ調べたりしたアンケートなんかでもかなりの企業においてそういうものがあったという認識があるにもかかわらず、そしてまた、そういうときのための法律改正をしたにもかかわらず、告発自体もゼロだ、多分ゼロだろうという話は、実は、これは参議院の方でもちょっと議論になって、また後で私の同僚議員も多分質問すると思いますが、訴訟とかの刑事手続、やはりこの手続上の問題というのも大きな原因の一因になっているんじゃないか、そういう想定ぐらいはされていいんじゃないかなと思うんですね。

 この問題は、どこまでを守るかという法律の立て方の問題もありますが、親告罪ですから、告発をしようとする企業の側にとって、告発して例えば裁判になる、裁判の過程で営業秘密が守られない、むしろオープンになってしまう、そういうようなことがあったら、やはり告発するのをやめてしまおうというインセンティブが働いてしまうわけです。

 これは本当は、今回のこの改正案の中にそういう部分が、参議院の議論を見ていても、一応大臣からも、法務省とこれからやりますというような答弁があったようですが、本来は、やはりその辺の手続の部分も含めて、きちんと、どこに問題があったのか、あるいは、なぜ法律改正をしたのに一件も告発もない、起訴もない、立件もないという状態だったのか。その一方で、やはり技術流出、秘密が流出しているという問題はかなり起きている。なぜあの時点でこういう今の事態を防げなかったのか。やはりそのことは、しっかりと、こういう法改正をするときには十分検証して、ではこの法律ができれば、この改正が通ればどのような形で改善されるのか。

 きのうもちょっと、では、例えばこの法改正がもし十五年の段階で行われていたら今まででどれくらい立件できたのか推定とかしたことはありますかと言ったら、いや、それはありませんとレクにいらっしゃった方がおっしゃっていましたけれども、ある意味でそれくらいの推計をして、これをすればどれくらいの今まではとらえられなかったものがとらえられるのかとか、やはりそういうところまでしっかり、それこそ関係する人たちも含めて、企業の人たちにもヒアリングするなりして、やはりしっかりとチェックをしていくという必要があるんじゃないかと思うんです。

 そうしないと、せっかく法律はつくった、そして、これで営業秘密が守れるようになりましたよ、これから後でも聞いていきますが、中小企業の皆さんの技術は守れるようになりますよといっても、政府としてはそういうたてつけを用意したといっても、その法律が実際の企業とかの経営者の人たちにとって利用がされない、使われないものであれば、それは法としてしっかり生きているものとはならないわけです。

 ですから、どんなに立派な提案理由説明をされても、それが本当に、我が国の産業競争力を維持強化するという視点でも、技術流出を防ぐ、そのことにちゃんと役立っているという結果が見えないと、やりましたというだけでは、これは単に政府が批判をされるのを避けるためのアリバイづくりだ、そういう批判さえ出ても仕方がない、そういうことになりかねないということをやはりよく認識していただいて、これから質問していきますけれども、改正をした以上は、これがきちんと意味のある形でワークするような、そういう体制をとっていただきたいということをお願いしたいと思います。

 その上で、では次に、ちょっと営業秘密について少しお話を伺いますが、営業秘密として保護すべき客体について、これは、かつては新製品の試作品とか模型なんかの有体物、要するに形のあるものですね。それが、現在は、技術情報が記録された電子データとか、あるいは顧客リストとか、そういう無体物までも含まれるようになったわけですが、こういう逐次にわたって法改正をしている背景というのには、こういう営業秘密というもの自体が時代によって質的に変化している、だからこそ保護のあり方を見直しているということだと思うんですが、ここで確認をしておきたいんですけれども、現時点において保護すべき客体としての営業秘密として政府が認識をしているというものはどういうものですか。

森川政府参考人 お答えいたします。

 営業秘密は、不正競争防止法の定義にございますけれども、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」ということでございます。

 具体的な例を挙げますと、企業によって秘密管理がなされた工作機械の設計図面、溶鉱炉の温度設定ですとか、開発中の新薬の実験データといった技術上の情報、顧客名簿といった顧客情報、販売マニュアル、新製品の開発会議の会議録といった営業上の情報などが当たるということでございます。委員御指摘のような、電子データというような形態をとったものもこの中には含まれるというふうに考えております。

古川(元)委員 今の営業秘密の定義ですが、そうなりますと、今後とも時代の変化に伴っていろいろ営業秘密の範囲も変わっていく可能性はあると思うんですが、それは、たとえ変わっていっても今の定義でそういう変化は全部読める、そういう認識をしていらっしゃるというふうに考えてよろしいですか。

森川政府参考人 お答えいたします。

 今の不正競争防止法で、定義としては先ほど申しましたようにかなり一般的に定義してございますので、新しく出てくるようなものでも、これに当たるものというのはカバーできるというふうに考えております。

古川(元)委員 わかりました。

 では、要は、カバーされるという営業秘密を実際にどう守っていくのか、このところの質問にちょっと入っていきたいと思うんです。

 営業秘密としてこの法律で保護されるためには、ちゃんとそれぞれの企業において管理体制を整備することが必要ですよね。その管理体制の一つの指針として、経産省さんの方で、営業秘密管理指針、こういう分厚いのをつくったり、中小企業向けにはこういうパンフレットもつくっているということでいただきましたけれども、実際に今どれくらいの割合の企業がこの営業秘密管理指針に基づいて秘密管理規程を整備しているのか、そういう調査というものはありますか。

森川政府参考人 お答えいたします。

 今委員がおっしゃったようなタイプのデータは持ち合わせておりません。

古川(元)委員 この辺なんです。最初に申し上げた法の実効性とも絡んでくるんですが、要は、もちろん企業に任されているというのですけれども、政府としては、こういう指針を企業に対してつくりましたよ、いつでも見られるようにしてありますよということにしてありますと。それで何かあたかも役割は終えたかのような感じに思えるんです。

 しかし、どれくらい浸透しているのかなということを本当はちゃんとフォローしていかないと、何か問題が起きたときに、特に中小企業なんかそうですが、実際に報道なんかでも、訴えても、いや、そもそも管理体制があなたしっかりしていなかったでしょうということで、中小企業の方が負けてしまっているという例が結構あるというふうな報道もされたりもしているわけですね。

 そうやって考えますと、役所としてこれをやりましたというだけでは、つくりましたというだけではいけないのじゃないかと思うんですけれども、どうしてその辺のところの、どれくらいの企業でこの管理指針に基づいた管理体制ができているのかという調査をしないんですか。今までしたことがないのか、かつてはやったことがあるけれども今はやっていないということなのか、その辺はどうなんですか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど森川審議官が御答弁申し上げましたように、こうした営業秘密管理指針の浸透度合いにつきまして、いわば体系的な調査というのは確かに行っておりませんでした。

 ただ、今回の法案改正に当たりましては、昨年から産業構造審議会に専門の委員会を設けまして、中小企業関係者あるいは中小企業団体の代表の方にも入っていただいて、企業サイドから見まして今の現状がどういう形でとらえられているのか、そういうことについてヒアリングをしながら今回改正案をまとめたという経緯がございます。

 また、この審議会で報告書を取りまとめるに当たりまして、今回目指す法律改正はかなり大幅な改正でございますので、この内容につきましては、経済産業省あるいは中小企業庁を挙げて、きちんとした施策の普及について、普及の浸透度合いがどう進んでいるのかということもあわせて調査をしながら進めていく、こういう考え方を示させていただいた次第でございます。

古川(元)委員 でも、本当はそもそも、今の時点でまずはどれくらいの企業がちゃんと営業秘密の管理体制をとれているのかということをリサーチして、私は、大企業はやっているんでしょうけれども、中小零細企業までなったら、多分、そもそも今の段階でもそういう体制がとれているところというのは非常に少ないのじゃないかと思うんですよね。

 ですから、まずはこの改正の中身を周知徹底させることも大事かもしれませんが、その大前提として、一番ベースの秘密の管理体制というものが整っていなかったら、一階がないのに二階だけつくるというわけにいかないですから、やはりそこのところの調査というのをまずすべきだったのじゃないでしょうか。

 参議院の質疑の中で、今回こういう法改正によって、この法律を使うのに中小企業や零細企業の皆さんに何か新しく負担がかかるのじゃないですかという質問に対して、森川さんがお答えになっているのは、今回の改正は、違法性の高い営業秘密の侵害行為を新たに刑事罰の対象にすることで、事業者に何か具体的な義務を課すというものではございません、したがいまして、今回の法改正によって事業者に新たな負担が生ずるということはなく、営業秘密の侵害に対して法的な保護を受けるために、これまでと同様に事業者において営業秘密が適切に管理されるということが求められる、そういう御答弁をしていらっしゃるんです。

 これは、そもそも管理体制がなかったら、管理体制をもしつくれといったら、私もこれをちょっと見てみましたけれども、結構手間がかかりますね。そもそも今なかったら、ではこの法律改正に合わせてやれといったら、当然かなりの手間がかかると思うんですよ、コストは。ましてこの大不況の折ですからね。

 こういう、法律上で見たら確かに今までから新たな義務を課すわけじゃない、だからコストはかかりませんというような答弁をしていらっしゃる、そういう認識を示していらっしゃるんですが、そういう認識というのは極めて甘いのじゃないかな。皆さんの認識が、いや、中小企業も大体のところはこういう管理体制がちゃんとあるんですよという認識ならこういう御答弁もいいのかもしれないけれども、もし私と同じように、実態的には中小零細企業においてはこういう管理体制というのはまだ十分にできていないんですよねという認識を持っておられるんだったら、結局、これを周知徹底するということは、要するに新たな事務負担といいますか、手間、コストを、法律上は課していないかもしれないけれども実態的にはかかるということなのじゃないんですか。どうですか、その認識は。

森川政府参考人 お答えいたします。

 確かに委員御指摘のとおり、参議院での審議での答弁におきましては、要するに、今回改正することによって、何か営業秘密の定義が変わるわけではございませんので、したがって、今までと同様というか、きちんとした管理をしていれば、こういうことでお答え申し上げましたけれども、確かに、これまで営業秘密としてきちんと管理すべきものをそういう形で管理していなかった企業が、今後新たにこの管理体制をつくるということになりますと、御指摘のように、一定のコストがかかるということもあろうかと思います。

 したがいまして、私どもとしては、その営業秘密管理指針、あるいはそれを改定して、それを周知徹底するということを通じまして、大体どの程度のことをやればいいのかということをわかりやすく説明していきたいというふうに思っております。

古川(元)委員 まさに、それは法律でいえばおっしゃるとおりなんですよね。別に何ら新しい義務が課されるわけではない。だからこそ、実は、私がさっき聞いた、一体どれくらいの企業がきちんと管理体制をとっているのか、調べたことないというふうに言われたんですが、では、認識としては大体どれくらいの企業がちゃんと管理体制はとっているというふうに、別に公式上ではなくて、皆さんの考え方でいいですけれども、どれくらいのそういう認識でおられますか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中小企業あるいは零細企業への浸透度合いというものにつきましては、現段階では必ずしも十分に行き渡っていないというのが認識でございます。

 これは、先ほども御答弁申し上げましたように、必ずしも体系立った調査を行っておりませんけれども、産業構造審議会での審議に参画をしていただいております中小企業団体の代表、あるいは現場の中小企業の経営者の方から、そうした認識というものについては披露されておりますので、私どももそういう認識を持っているという次第でございます。

古川(元)委員 そのような認識では余り変わらないと思うんですが、今の局長の話を聞けば。

 そうだとすると、参議院の審議のときに、これもまた森川さんがお答えになっているんですけれども、今回の改正案というのは、中小企業にとって大きなメリットをもたらすというふうに御答弁していらっしゃるんですよね。とにかく、営業秘密として適切に管理すれば、特許権の取得や維持にかかるコスト負担あるいは出願公開に伴う侵害リスクというものもないということで法的な保護を受けることが可能になるというようなお話もされていて、中小企業の営業秘密の保護が格段にこれで強化される、だからこれは我が国経済を支える中小企業に大きなメリットをもたらすと胸を張って答弁されたかどうかわかりませんが、ここだけ見ると、何か今回の改正がすごく中小企業のことを考えてやっているんですよというふうにも見えるわけなんです。

 またここで、先ほどの局長の答弁のところへ戻っていくんですが、そもそも、そのためにはやはり管理体制のところがきちんとまずはできている、それに今回の改正のいわば二階の部分を加えれば、一階の土台がちゃんとあれば、この二階を乗っけると中小企業にとっては非常に強い味方になるということなんですね。しかし、まずその一階が、今の局長の認識でも、余りできていないんじゃないのと。

 私は、ぜひこれは一回きちんと中小企業も、別に全部調べずにサンプリングでもいいです、一体このうちどれくらいの企業がちゃんとやっているのかというのを調べた方がいいと思いますけれども、多分そこは、一階の部分がまだきちんとできていないところが多い。

 そういう中で、こんなメリットだけ強調したって、何か言葉がむなしく、私がこれを読んだときに思ったのは、宙を飛んでいるような、中小企業の経営者の立場に立ってみると、役所は、このえらい大不況でこっちが仕事がないと困っているときに、いや、この法改正で皆さんの技術は守られますよと、何かちょっと感覚がずれているんじゃないのというふうに思いたくなるような感じが、私はこれを読んでしたんです。

 そういう意味でも、これは大臣にちょっと、急に振って申しわけないんですけれども、大企業はそれなりに当然やっていると思うんですが、中小企業あたりがこの営業秘密の管理体制をどれくらいちゃんと整えているかどうか、まず実態の調査というものを、これは大臣が指示されて一回やるということをやってみたらどうですか。大臣、どう思われますか。

二階国務大臣 中小企業に対して、当委員会でも、また参議院におきましても、大変、与野党通じて積極的な御意見をちょうだいしておることを、私どもはむしろ感謝いたしております。

 今議員御指摘のように、あらゆる角度から中小企業を守っていかなくてはならないわけであります。特に秘密保持というふうな問題について、中小企業をカバーしていくという観点から我々は考えていかなくてはならない、そういう意味で今調査をしてみてはどうかという御意見でございますが、地方の局長会議等を通じまして、これらの点について効果のあるような対応を考えてみたいと思っております。

古川(元)委員 ぜひこれは、やはり皆さんの声を本当に聞いて実態を把握していただいた上でやらないと、せっかくつくっても、法改正しても、使えなければ何の意味もありませんので、ぜひそのところはお願いをしたいと思います。

 そこの一階の部分がまずあるとしてという話でちょっとまた次に行くんですけれども、今まで中小企業に対して、では何でそこが浸透してこなかったのかというところで考えると、私は、これは周知徹底の仕方に問題があった部分も非常に大きいんじゃないかと思いますが、この営業秘密の管理体制をとるようにという周知徹底、どういう形でこれまでやってこられましたか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中小企業に対する営業秘密管理指針等の周知の徹底ということは非常に大事な課題でございます。経済産業省といたしましては、これまでもきめ細かい周知の努力を積み重ねてきております。

 一例を御紹介いたしますと、全国の商工会、商工会議所に設置をされておりますいわゆる知財駆け込み寺、これは全国で約二千五百カ所ございますけれども、これを活用いたしまして、中小企業に対する説明会の開催、あるいは個別の相談への応対をしております。

 また、この不正競争防止法の営業管理指針に限ってでございますけれども、全国各都市で説明会を毎年行っております。平成二十年度の実績で申し上げますと、全国十五カ所で開催をしております。また、中小企業団体との連携を通じた普及啓蒙活動を行っております。

 先ほども申し上げましたように、今回の改正は、これまでになくかなり大幅な改正でございますし、また、中小企業向けにも非常に大きな効果が期待をされておりますので、これまでの周知の仕方ということも十分検証しながら対応していきたいというふうに考えております。

 ちなみに、先ほども御紹介いたしました産業構造審議会での委員の御発言でございますけれども、中小企業団体の代表の方が言っておられましたが、今回の改正、私ども中小企業にとって非常にメリットのある改正だ、したがって、私ども、私どもといいますのはこの中小企業団体でございますけれども、中小企業団体の総力を挙げて、傘下の中小企業あるいは中小零細企業に対するPRというものについて効果的な対応というものを、経済産業省といわば連携をしながら対応していきたい、こんなような御発言もあったということを御紹介させていただきます。

古川(元)委員 もちろん、これはしっかり、さっき大臣がおっしゃっていただいた調査もしていただいた上で、多分そんなに浸透はしていないだろうという数字が出てくると思うんですね、さっき局長も御認識を示されましたけれども。

 そうなると、私は、そもそも、従来的なやり方で、本当にこれで周知徹底ができるのか。これも最初に申し上げましたが、役所の立場からすると、そういうところに伝えた、いわばそれがアリバイになって、役所は、やりました、あと、伝わっているか伝わっていないかというのは、それは我々が関知するところじゃありません、そういうことになりがちじゃないかと思うんですね。

 何で私がこんなことを言うかというと、何年前ですか、例の電気製品安全法、PSE、あれは五年間の周知期間、何十万部のパンフレットを配りましたと言って、私が予算委員会で質問をしたら胸を張られましたが、ほとんどだれも知らなかった。それで、もう周知期間が終わるときになって慌てていろいろな対応をとるということになったわけですね。

 役所がやる広報、私もかつてちょっとそういうことに携わっていたので、わかるんですけれども、何かパンフレットをつくってそれを各地方のところや関係団体に配る、何かそこのところで終わっちゃっているということが多いんです。実態的にそれが先にちゃんと届いているのかどうか、やはりそこのところをどうやって担保するかということ。私は、よく政府が言う、役所が言う、周知徹底というあり方も、今の時代、根本的な見直しを迫られているんじゃないかと思うんです。

 例えば、今、団体に周知徹底しますと言います、団体も、自分の傘下の、加盟の会員にきちんと伝えますと。では、今、日本にある中小零細企業の中で、そういう団体に加盟している割合というのはどれくらいですか。何かそういう数字はありますか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 申しわけございません、御指摘の数字は今持ち合わせておりませんが、中小企業団体も、いわゆる日本商工会議所あるいは全国の商工会議所に加えまして、全国商工会連合会あるいは中小企業団体中央会、さまざまな組織がございます。それから、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、経済産業省に地方経済局がございまして、そこでも、所管の地域の中小企業につきましては、いわばこういう団体に属しない企業につきましても、政策のPRの対象としてつかんでおりますので、そういうことを通じて、可能な限り、周知徹底をする対象の中小企業者というものについては、幅広く捕捉をしながら進めていくということにしていきたいと考えております。

古川(元)委員 別に、私は具体的な数字を知りたいわけじゃないんですが、ただ、多分、実際の会社の登記とか何かの数と団体の会員の数を比べたら、相当その間に乖離があると思うんですよ。

 ですから、そういう団体のところに伝えて、そこがやってくれれば何か周知徹底が済んでいるかというのは、多分私は、これはわかりませんよ、推測で言っているんですから、そういうところもきちんと、ちゃんとわかった上で、ここに言えばこれだけはカバーできます、例えば、中小企業のこれだけの何割はここでカバーできるんです、そこに対してはこういうやり方でやります、しかしそうじゃないところに対しては別の形で周知徹底をしますとか、やはりそこまできちんと丁寧な対応といいますか方策を考えていかないと、なかなか、これは周知徹底なんて難しいと思うんですね。

 あと、局長は、わかりやすいパンフレットにまとめて、普及に努めてきたというふうにこの「営業秘密管理」の御答弁を参議院でされておられるんですが、私、これを見せていただきました。確かに、こちらに比べれば、こちらの方が絵があってわかりやすいといえばわかりやすいと思います。量も少ない。しかし、中を見ていて、中小企業の人たちにこの書いてあることの中身をちゃんと正確に理解しろというのは非常に難しいんじゃないかなと思ったんですね。

 例えば、不正競争の各類型の中で、何気なく、悪意、重過失、善意アンド無重過失という言葉が出てくるんです。これは法律用語の善意、悪意でしょう。どうですか。

森川政府参考人 お答えします。

 御指摘のとおり、法律用語として書いております。

古川(元)委員 一般の人がどれくらい法律用語の善意、悪意を知っていると思いますか。多分、ここの中で聞いたって、正確に法律用語の善意、悪意の意味を理解している人というのは、法律を勉強した人じゃないと、よく、法学部に入って、私なんかもそうでしたけれども、ここで言う善意というのは、世の中で一般的に言う善意ではないですよ、悪意というのも、世の中で言う悪意とは違いますよというのをまず最初に教えられて、この中小企業向けのわかりやすいパンフレットに、法律用語の善意と悪意と。

 その下には一応書いてありますけれども、普通、注意書きなんか読まないんですよ。よく、いろいろ問題になる、保険とか何かでも、請求したら出てこない、出るはずじゃないかと、いや、下の注意書きをよく見てくださいと。要は、普通の人は、そんな下の注意書きなんか見ないんですよ。

 そういう視点からいくと、局長から見るとこれはわかりやすいパンフレットかもしれませんが、中小企業の人にとってみたら、物すごくわかりにくいパンフレットじゃないかと思うんですね。はっきり言って、このパンフレットをもらったって、中小企業の人はだれも、こんな難しいのはわからぬと言って、見ないですよ。

 やはりもうちょっと、お役人が読んでわかるというんじゃなくて、一般の人たちが読んでわかるような書き方、そういうことにすべきじゃないかと思いますけれども、これは、中小企業の人たちに、これを読んで中身をちゃんと正確に理解できますか、わかりますかと、そういうふうに確認されましたか。どうですか、これは。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のこの営業秘密管理指針のパンフレットは、主として中小企業の皆様に向けて、わかりやすくまとめたものでございますが、ただいま御指摘のとおり、対象が不正競争防止法の構成要件というものをベースにしておりますので、どうしても法律的な用語というものを使わざるを得ない側面がございます。ただ、それにいたしましても、私ども、やはり御理解いただいて初めて意味がございますので、今回の改正を機に、この管理指針も大幅に見直しますし、中小企業者向けのパンフレットもよりわかりやすいものにぜひ変えたいと思っております。

 管理指針を議論するに当たりましては、中小企業の代表の方にも入っていただいた審議会の場で議論いたしますので、そこで、中小企業の現場の方の御意見も踏まえながら、どういう形にすればわかりやすいのかという御意見を十分に踏まえて、ぜひとももっともっとわかりやすいものにつくり変える努力を重ねたいと考えております。

古川(元)委員 現実問題で考えますと、このパンフレットだけ見て、それで管理体制をつくるというのは、なかなか、特に従業員の人とかは自分で現場に出て働いているわけですから、余り余裕もないと思うんです。実際に、ちゃんと法で保護されるような管理体制をつくろうと思ったら、それこそやはりいろいろな人たちのサポートもないと、つくったはいいけれども、それが必ずしも法で保護されるものになるとは保証がないわけですから。

 だから、例えば私なんかが思うのは、こういうことでパンフレットをつくるんだったら、皆さんの営業秘密を守るためにはきちんと管理体制がないと法で守られませんよ、例えばそういうことがまず最初の頭のところにあって、ぱっと見たら、えっ、そうか、おれのところはないな、これはつくらないとまずいのか、では、つくるにはどうしたらいいんだ、そういう、まだつくり方とか聞きたい人は、例えば知財駆け込み寺に来てくださいとか、地方の経済産業局に来てください、そういう相談窓口で、いわば、これをきっかけにして相談に来てもらうとか、やはりそれくらいの、もう少しつくり方も考えないと、ただここで、つくって説明をしました、わかりやすいものをつくりましたと言っても、それは使う人の立場、中小企業の人たちの立場に立っているとはやはり言えないんじゃないかと思うんですね。

 そういう意味では、今度改定をされるときには、そういう本当につくる人の立場に立った、そして、もし自分のところになければ管理体制をつくろう、つくらなきゃいけないな、では、つくるにはどうしたらいいんだ、だれに相談したらいいんだ、どこに行ったらいいんだ、そういうことがわかるようなパンフレットをぜひつくるようにお願いをしたいと思います。

 今のは中小企業中心にお話を伺ったんですが、大企業だと、多分管理体制は普通つくっていると思うんですけれども、しかし今度は、企業の中でいうと、従業員の立場、大企業の場合にはちゃんとそういう部署もあってきちんとその体制があると思いますが、しかし、従業員はそんな知識があるわけじゃないです。そういうことをいつも気にしているわけじゃないです。この法律の保護対象である営業秘密と、企業が自社で定めて運用している営業秘密管理指針に基づく企業内の機密情報とは、これは必ずしも一致しないですよね、当然のことですが。しかし、従業員からすると、要は法で保護されている営業秘密と企業が自分の社内で決めている営業秘密との関係性、そこにはずれがあるということは、なかなか法律的な知識がない人には不明確でよくわからないわけですよ。

 そうなると、今回の法改正で、例えば営業秘密を複写する、そういう普通に職場でやっている作業が、場合によっては刑事罰が及ぶ可能性がありますよみたいなことが従業員に伝わっていく、そういう場合には、これは従業員が仕事をするのに対して過度に萎縮効果を与える危険性もあるわけですね。

 ですから、企業において法の趣旨を踏まえた運用の徹底とか、従業員の人がちゃんと正しく理解をする、やはりそういうことがないと、これは非常に働きにくい。逆に、何か会社から、場合によっては会社の側が従業員をいわばコントロールするための道具としても使いかねない、そういうところもあるわけなんですが、こういう従業員が普通に働くのについて萎縮効果が起こらないために政府としてどういうことをやっていこうというふうに考えておられますか。

吉川副大臣 古川先生の御指摘にございました御懸念、私もよく理解ができるところでございまして、今回の、従業員の業務に対する萎縮効果が生じる、あるいはまた、悪意を持って企業が今回の改正を悪用することへの懸念だと思います。

 先生、この改正法案につきましてはもう十分御承知のとおりであろうかと思いますので、釈迦に説法のような御答弁になるかもしれませんけれども、従業者が保有者の許可に基づいて書類、USBメモリー等を持ち帰ったりコピーをしたりする行為は、営業秘密の管理にかかわる任務に違反する行為ではないということ、これは処罰の対象にはされません。

 また、従業者が保有者の許可に基づかず、書類やUSBメモリー等を持ち帰ったりコピーをしたりする行為であっても、残業のためになされた場合には、不正の利益を得たり保有者に損害を与える目的をもってなされたことではないということでありますので、処罰の対象とはされないということになります。

 万が一にも、御指摘のような萎縮効果や不当な告訴がなされることが生じることのないようにするために、先ほどから先生の御指摘にもございましたように、経済団体、労働関係団体等の参画を得ながら、それぞれが思いやりを持って相互に理解ができるような、共通の認識を得られるような営業秘密管理指針、わかりにくいと御指摘をいただいたところでございますけれども、このガイドラインの改定等を行いまして、今回の改正の趣旨を各界各層に対して広く普及啓発をしてまいりたいと思っております。

古川(元)委員 経営者に対しての周知徹底もそうなんですが、特に大企業を中心として、やはり従業員に対する周知徹底というのは非常に大事なことだと思うんですね。一方で営業秘密を守っていかなきゃいけないというのもありますが、同時に、やはり従業員の人たちの、働いている人たちの働きがこの法律のために萎縮してしまうということはやはり避けなければいけないと思いますから、そういうことは非常に大事だと思うんです。大企業だと大体、そういう従業員の周知徹底という点でいうと、労働組合があるようなところは、これは組合の果たすべき役割というのは、そういう意味では、周知徹底というのは大きいと思うんですね。

 そのためには、これはもう確認になりますが、労働組合による団体交渉や労使協議会などの際に営業秘密に属する情報が提供される必要がある場合もあって、そういうときに、今回の改正が組合に対する企業側からの情報提供や労使協議に制約を与えるものではない、そのように認識してもよろしいですね。

二階国務大臣 労使協議等をこれからしっかり行ってまいりますが、労働組合側に対して労働組合の内部における情報共有等のために営業秘密を開示する行為は、組合活動のために業務の一環として行われるものであるから、こういうことは当然処罰の対象とはならないことは委員も御承知のとおりだと思っております。したがって、先ほどから再々御意見をちょうだいしております、使用者側から労働組合側への情報提供や労働組合内部における情報共有に影響を及ぼすことのないようにということでありますが、十分留意をしてまいります。

 以上のような点から、万が一にも誤解を生ずることのないように、私は、今後この営業秘密の管理指針の改定を行う際に、今回の改正の趣旨の普及啓発活動を強力に推進してまいらなくてはならないと思っております。

 そこで、改定に際して、連合の皆さんやあるいは経済界の代表の方々と積極的に協議をして、今回の改正が十分労使に渡っていい結果を及ぼすように配慮をしてまいりたい、このことをお約束しておきたいと思います。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 時間がなくなってきたんですが、団塊世代の問題をちょっとここで一応確認をさせていただきたいんです。

 御存じのように、団塊の世代が今ちょうど退職世代に入ってきて、これから大量に退職していく。このことは、実は技術流出しているケースの一番多いのは、やはり退職者が持っていくということなんですね。ですから、団塊世代の大量退職がこれからどんどんと起きていくということは、それだけ技術流出のリスクというものもやはり高まっていくと思われるんです。

 一方で、ではといってそこを余りきつくやると、今度は、団塊の世代の皆さんが再就職するときに、再就職する自由を制約することにもなりかねない。昔のように、大企業であれば、再就職先とかそういうところまでちゃんと面倒を見てくれたような時代であればいいのかもしれませんが、もう今の時代、そういうことはないですから。

 では、定年になって退職した人が自分で再就職先を見つけようというときには、どうしてもやはり今まで経験してきたこと、受ける企業の側からすれば、その人の持っている前の企業でのノウハウや、そこのところは営業秘密に当たるかどうか非常に微妙だと思うんですが、かなりそこに近いようなものがあるからこそ、そうした退職した人を受ける方は受けるわけですね。

 ですから、そういう意味では、一方で、大量退職がこれから出てくる、そのことによって技術流出のリスクが高まる、それに対応することと同時に、この人たちの再就職の自由を不当に制約しないようにする、この両面からの対応が必要だと思うんです。

 きのう、レクに来た人にちょっと聞いたら、別に団塊の世代のそういうところを特にメーンに考えた対応というのは考えておらないという話を聞いたんですが、私は、これだけ団塊世代の大量退職がこれからどんどん数年間進んでくることを考えると、ここのところを、技術流出の防止と、団塊世代の再就職を不当に制限しない、そのためのこの面からの対応というものをやはり政府として考えておく必要があると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、団塊世代が大量に定年を迎えますので、それだけ営業秘密が侵害をされるいわば契機というものがふえてくる、この辺のところは私どもも十分に認識をしております。

 ただ一方で、やはりこれらの方々の転職の自由ということもきちっと考えなければいけない。そういう意味で、両者のいわばバランスを図るという観点から、今回の改正では、いわば媒体の横領とか、あるいは複製の作成でございますとか、あるいはこうした消去義務違反といったような一定の加害目的が明確な行為類型というものについて、これを領得段階で、いわば横領的に取得する段階で処罰対象に加えたということでございます。

 ただ一方で、不正競争防止法の中での対応ということではそういうことでございますけれども、より根本的に、やはり、定年退職をされる団塊世代の方がもし働く意欲を持たれている場合には、その働きの場を探すということも必要でございますので、そういった意味での厚生労働省中心の対策というものも不可欠だと思っております。

 私どもといたしましても、中小企業庁の政策でございますけれども、大企業等の退職者をいわば新現役という形で位置づけて、二十年度から、新現役チャレンジ支援事業というような形で施策を展開しておりまして、こうした大量退職の方々、団塊世代の方々の再就職というものも支援していきたいというふうに考えております。

古川(元)委員 時間になりましたので、終わります。どうもありがとうございました。

東委員長 これにて古川元久君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。

 不正競争防止法改正法案と外為法改正法案について質問をさせていただきます。

 古川委員がずっと不正競争防止法改正法案について御質問なさっていらっしゃいましたので、私は外為法改正法案の方から質問をさせていただきたいと思います。いろいろと、事実確認が中心ではありますけれども、幾つか質問をさせていただきます。

 今回のこの外為法改正法案、居住者と非居住者の間の取引のみに規制をしているというのが現行制度であると思いますけれども、安全保障上懸念がある技術の対外取引をすべて許可対象にして、USBメモリーなどの国外持ち出しを規制すると同時に、無許可輸出の罰則強化と輸出者に管理体制の整備を求めるというものでありますから、根本的に流出を防ぐというよりは、事後に罰することができる可能性を少し広げたというようなイメージなんだと思うんです。

 例えば、機微技術を記録したUSBメモリー等を国外に持ち出して帰国しないといった場合は、どのように対応なさるんでしょうか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 輸出管理に当たりましては、これまでも、各国の輸出管理当局など関係機関とは情報交換などを行い、連携を図ってきております。ただ、出国した者について、懸念国の捜査当局が我が国の法執行に協力することは期待できないケースがあり得ることも否めません。

 こうした問題点も踏まえまして、現行法の規制体系では、技術が国外において実際に提供されたことが立証されない限り違反を問うことは困難でありますので、今般、規制技術を記録した記録媒体の国外持ち出しを規制対象としまして、国外に持ち出される前の段階で未然に防止し得るよう、改善を図ることといたしております。

 今回の改正を踏まえまして、事前に機微な技術を持ち出される懸念についての具体的な情報を得ているような悪質なケースにつきまして、税関や警察など関係機関とも連携しまして、国外への持ち出しの段階でとめ得るよう、改正法の実効ある運用に努めてまいりたいと存じます。

田村(謙)委員 ぜひ、各関係機関と連携を強化して、実効性がある体制を築いていただきたいなと思います。

 さて、二点目は、海外出張者が業務目的で出張する場合、パソコンやあるいはUSBメモリー等を持ち出すのは普通なわけですけれども、海外で提供せずに持ち帰る場合というのは、今回の規制の対象になるんでしょうか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法改正では、外国で安全保障上機微な技術を提供することを目的とする取引に関しまして、技術を国外に持ち出すことが規制対象となります。

 御指摘のような、海外出張者が機微な技術が記録されたパソコンを例えば自己使用目的で持ち出し、海外で提供せずに持ち帰るような場合は、規制対象とはなりません。

田村(謙)委員 今のお答えの関連、ついでぐらいではありますけれども、例えばテレビ局ですと、海外取材目的で、私のような素人から見るとかなり高度な通信機器というものをわっと持ち出して取材することは多々あると思うんですけれども、その辺に関しても対象ではないという理解でよろしいんでしょうか。

    〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話のございましたテレビ局の使うようなカメラでございますが、このような中で、例えば夜間の高感度カメラなど、特殊なスペックを満たすものについては規制の対象となり、現行においては、その持ち出しについては規制の対象となるというものでございます。

田村(謙)委員 はい、ありがとうございました。

 テレビ局、放送局といっても、一人でやっているようなところもあるわけですので、それは全部信頼できる会社であるということは当然言えませんし、大手の放送局でも、結局個人が違反を犯す場合はあり得ますので、いろいろそこはチェックをしなきゃいけないというのはあるんだと思います。場合によっては、まさに緊急事態で、すぐに日本から飛び立って現地に到着をしなきゃいけない、災害とかいろいろあると思います。そこに支障がないような手続体制にしていただきたいなというふうにお願いをいたします。

 ついでにお聞きしますけれども、現在、そういう規制について、メディアから、もっとより簡易な手続にしてほしいとか、あるいは規制を緩和してほしいといった要望は特にあるわけではないんですよね。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 テレビカメラを使うものについても、大体のものは規制対象外となるものが多うございます。こういう中で、私ども、今先生の御指摘あられたような要望というのは、まだいただいておりません。

田村(謙)委員 はい、わかりました。済みません、一応確認をさせていただきました。

 また別のことをお伺いします。

 そもそも、先ほど、ちょっと今テレビで若干話がそれたんですけれども、出張目的のパソコンやUBSメモリー等を海外に持ち出してそのまま持って帰るというのは、まさに今回の規制の対象ではないということでありますけれども、どのような形で規制から外されるのか。

 改めてになりますが、もし規制のいわば特例だということであれば、企業の社内管理としては規制対象技術として判別して管理しなければならないということになるわけですけれども、そもそも規制の範囲外だということであれば、社内管理としての規制対象技術として判別して管理する、そういうことをする必要がなくなるんだと思うんです。それはどちらかというのを明確にお答えください。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 規制対象外となるというものでございます。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 法文上ですとそれがはっきりわからないという声を聞きましたので、この場で確認をさせていただきました。今後、政省令等でも、いろいろな形ではっきりとしていただいた方がいいんじゃないかなということを申し上げておきたいと思います。

 さて、また別の質問でありますが、企業が雇用している外国人が規制技術を無許可で持ち出した場合も当然違法となるわけですけれども、雇用している外国人が技術を盗んで無許可で持ち出した場合に、企業の管理責任がどのように問われるのかということであります。

 先端知識を有する外国人というのは、今後さらに日本で雇用する人数はふえてくるというふうに私は思っているわけでありますので、企業においても外国人の雇用管理をどうするかということにかなり大きく影響すると思うんですけれども、まさに企業の管理責任というのはどのように問われることになるのか、教えてください。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のような、企業が雇用する外国人が、これは外国人であれ日本人であれ同様でございますけれども、規制されるべき技術を盗み出して無許可で国外に持ち出すような違法な行為を行った場合には、当該外国人は当然罰則、処罰の対象となりますが、企業がその管理責任を理由に罰則の対象となることはございません。

 しかしながら、外国人従業員による技術の違法な国外への持ち出しがなされないように企業において適切な技術の管理、輸出の管理をしていただくことは重要なことでございまして、今般の法律の改正によりまして、新たに、輸出者等に対してこうした貿易管理制度の社内の周知に努めることなど、輸出管理体制の整備を求める仕組みを導入することとさせていただいているところでございます。このような仕組みも活用しながら、企業に対して適切な輸出管理を促していきたいと考えております。

田村(謙)委員 まだ法律の条文しかない段階なので、一部に、企業の管理責任はどうなっているかよくわからない、場合によっては相当責任が問われるんじゃないかとの懸念があるという話をちらっと聞きましたので、今後、当然企業はちゃんとやらなきゃいけないわけですけれども、そこは、御指導とともに、過重な指導にならないようにきっちりとしていただきたいな、適切な対応をしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 さて、次の質問ですけれども、高度先端技術を扱うのは、企業だけではなくて、大学や研究機関も当然扱うわけでありまして、そこに多くの留学生、研究生が来日をしているわけであります。こういった外国人の留学生、研究生の中には、それこそ、中国ですとか中東ですとか、政治的に微妙な地域から来日している人はかなりたくさんいらっしゃるわけですよね。そういう大学などの研究機関におきまして、今回の法律の対象であります機微技術に関する情報管理というのは、まず、現在、十分なレベルなのか、どのように現状を評価していらっしゃるか、お考えがあれば教えてください。

吉川副大臣 御指摘の件に関しまして、国際的な平和及び安全の維持のためには、高度な技術を有する我が国の大学等研究機関から機微な技術が国外に持ち出され、懸念用途に用いられることがあってはならないと思っております。田村議員御指摘のとおりでございます。このために、大学等研究機関における技術の管理を徹底することは、私ども重要だと考えております。

 こうした問題意識に基づきまして、平成二十年の一月に、管理体制の構築など留意すべき事項を簡潔に解説した、安全保障貿易に係る機微技術管理ガイダンスをまとめました。全国の大学等研究機関に送付をいたしまして、各都道府県におきまして、説明会を通じてこのガイダンスの周知を図っているところでもございます。

 さらに、今後とも、この説明会等々を通じまして安全保障貿易管理制度の周知に努めることなどにより、大学等研究機関における安全保障貿易管理の徹底を促してまいりたいと思っております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 なかなか現状の評価というのは、ちょっとあいまいな質問で申しわけなかったんですけれども、今お答えいただいた取り組みというのは、そういった啓蒙活動ですとか指導、まだ始めたばかりだとは思いますが、それを受けた大学側の動きということに関して、現状をどのように評価していらっしゃるか。それもやはりあいまいでありますけれども、例えば大学によって全然違って、それぞれ、おくれたところはさらにやらなければいけないとか、何らかの評価、もし省庁をまたがるのであれば各省からお答えいただいてもいいんですけれども、今お話しになったのは文科省さんですか、違いますか、現状をどのように評価するか、もしお考えがあれば教えてください。

上田政府参考人 大学の方にこのような貿易管理について理解いただく取り組みというのを吉川副大臣の方から今御答弁させていただいたわけでございますけれども、大学の方からは、例えば私どもの方は、大学協会などにこういうことについて説明を行い、また先方からも、これについてはさらに具体的にどうしたらいいかというのをこれから、大学といっても総合大学もあれば技術大学もある、こういう中で、それぞれの取り組みを考えていきたいということをおっしゃられております。

 私どもとしましても、文科省さんとも協力しまして、大学の中でさらに取り組みを深めていくことを一緒にやっていきたいというふうに思っております。

田村(謙)委員 事前にもうちょっと私もレクでお伺いすればよかったので、これ以上は突っ込みませんけれども。

 大学も役所もそうですけれども、動きが、対応が鈍い場合というのは、大学でも、多分大学によって全然違ってくるんだと思います。大学事務局の動きというのは多分相当違ってくると思いますので、それを徹底するためには相当個別の指導というのも必要なんだろうなというふうに思います。そこは、今後、引き続き精力的に取り組んでいただきたいということをお願い申し上げます。

 さて、海外から来日している先ほどの留学生、研究生、あるいは労働者もありますけれども、そういった日本にいる外国人に対する管理というのは、当然、外為法だけに偏っても機能しないわけでありまして、司法、治安、公安当局の緊密な連携によって行われる必要があるということであります。それについては、今後さらにどのように取り組んでいこうと考えているか、できるだけ具体的にお答えいただければなと思うんですけれども、よろしいでしょうか。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、機微な技術が外国へ持ち出されないようにするためには、関係機関とも十分に連携をすることが重要だと私どもも考えておりまして、従来より、例えば入国管理当局、あるいは警察、あるいは税関、その他の政府部内の関係機関と密接に連携をいたしまして、その防止に努めているところでございます。

 今後も、こうした取り組みを通じて、懸念ある者が機微な技術を外国で大量破壊兵器の開発等に利用することにならないように、密接な連携を図ってまいりたいと思います。

田村(謙)委員 私も、関係機関との緊密な連携、そういう意味では、本件について不勉強なところもあるので教えていただきたいと思うんですけれども、大体、連携しますというのはいつも言うわけですよね。あらゆる施策について、関係担当省庁が幾つか絡む場合には、さらに連携を緊密にしますと。結局、お題目だけで終わることが多くて、何も実態は変わらないということが多いわけです。

 今、私はできるだけ具体的にお答えくださいというふうにお聞きをしたんですけれども、具体的な話というのは結局何も出てまいりませんでした。お題目で終わっております。

 今後さらに連携を深めるという場合には、当然、今までは何が足りなかったのか、まさに事後評価的な、今までの連携でどこが欠けていた、あるいは、経産省さんのお立場でいいんです、ほかの省庁にもうちょっとこういうことをしてほしいと思っていた、思っている、なかなか他省庁の話だとこの場では言いにくいと思いますけれども、そういった個別の論点があって、その中で、さらにこの部分を改善していこうということだと思うんですね。それを言ったら何十分でもお話しになれるぐらいきっとあるんだと思いますけれども、例えばどういったところを具体的に変えていきたいのか。

 要するに、緊密な連携、別に新たに始める話ではないはずですので、今後さらにどういった部分を改善する、あるいは強化していくというイメージはお持ちでいらっしゃるんでしょうか。

藤田政府参考人 なかなか定量的に御説明するのは難しいところがございますけれども、私ども、現場で実際に外為法の許可等のさまざまな行政を行うに当たっては、実感としては、ほぼ毎日のように、いろいろな個別の事案につきまして、警察あるいは税関、その他の機関と連絡をとり合ってございます。

 例えば、工作機械の位置決め精度を偽って外為法違反を犯して輸出したという事案が仮にあったといたしますと、私どもは捜査をする権限はございませんので、実際にそれを例えば強制捜査したり、あるいは司法の手続にのせるのは警察当局であり、あるいは具体的に例えば水際で物が出ていくのをとめていただくのは税関でございまして、そういう意味で、許可、不許可を扱う我々行政の立場に加えて、こうした税関であるとかあるいは司法当局と一体になって、日々こうした法律の執行に努めているところでございます。

 そういう意味では、今後も、北朝鮮の問題等々、安全保障貿易管理をめぐる要請というのは強くなってくると思いますので、引き続き協力を図っていきたい、こう思っております。

田村(謙)委員 結局、他省庁の話ですし、より具体的なことはおっしゃれないんだと思います。

 実際、警察にしても税関にしても、マンパワーの限界がありますので、大変重要だからといってそこに人員をさらに充てられるかというのは、税関なら税関、警察なら警察での、まさにそれぞれの優先順位の中で決める話というのはあると思いますので、だからこそ具体的なことは言えないと思うんですね。

 今ちょうど私も思い出しましたのは、そういう各省庁緊密な連携というのは幾らでも話はありましたけれども、私も財務省出身で金融もかかわっておりましたので、貸金業法改正の議論を三年前にしていたときに、当然、やみ金の取り締まりで、警察との連携をさらに深めますというふうな、そういうお題目の話というのはまた出てまいりました。やみ金というのは、そこに入ればすぐわかります。でも、実際、今でも至るところにあるわけですよね。本当に、要は人を割いて取り締まろうと思えばかなり簡単にできる。そういう意味で、一番わかりやすい例で、そこは警察の優先順位、マンパワーの問題で、なかなかそこまで一網打尽に取り締まることができないような事情というのは、特にやみ金に関してはかなり明らかだったなという印象を私は持っております。

 本件に関しては、もちろんそんなわかりやすい例ではありませんけれども、ぜひそこは、経産省さんとしても、重要性を引き続き司法部門に訴えていただいて、さらに動いてくれるようにしていただきたいなということをお願いさせていただきます。

 さて、また別の質問ですが、今回の外為法改正案におきまして、輸出者が輸出者等遵守基準に従うということが定められているわけでありますけれども、そもそも、多くの主に大手企業は、安全保障貿易管理のためのいわゆるコンプライアンスプログラムというものを既に今整備して、自主的に実施しているという話も聞いているわけでありますが、それとの比較というのが法令上ではわかりませんので、ちょっとお伺いをしたいと思います。

 要は、今回の輸出者等遵守基準というのは、大手企業のいわゆる自主的なコンプライアンスプログラムと同じようなレベルのものを義務づける、そういうものなのか。もしそうであれば、何にもではないでしょうけれども、大手企業はほとんど、もともと持っている自主的なコンプライアンスプログラムを若干微修正するとかだけで済むと思うんですけれども、そういう同等なレベルのものなのかということと、あと、中小零細企業になりましたら、そもそもそういう自主的な取り組みというのはまだ手が回らない企業の方が多いと思うんです。そういった中小零細企業に関しても同じレベルの社内管理体制整備を求めるのか、その方向性についてお答えください。

    〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕

吉川副大臣 中小零細・小規模企業に関しましての田村先生から御懸念をいただいたところでございまして、今回の安全保障貿易管理の徹底のためには、中小零細企業を含む幅広い企業が、みずからしっかり輸出管理を行うことが当然必要だと思っております。このために、今般の改正によりまして、経済産業大臣が輸出者等に対しまして輸出管理体制の整備を求める仕組みを導入いたしております。

 この仕組みに従いまして、中小零細企業を含む輸出者に求めることとなる事項につきましては、まず、貨物や技術が規制対象となるか否かの確認、次に、需要者、用途の確認を行う際の責任を明確化すること、安全保障貿易管理制度の社内周知に努めることなど、輸出管理をしっかり行うための必要最小限の内容とすることと予定をいたしております。

 いずれにいたしましても、この基準の内容が中小零細企業に対して過度の負担になることのないように、今後、企業の実務家などと十分な意見交換を行いまして、適切な内容を定めてまいりたいと思っております。

田村(謙)委員 ありがとうございます。

 基本的方向性、まさに過度な負担をかけないというのは大変大事なことでありまして、今、それこそ、最近はこの世界不況で余り言われなくなりましたけれども、ちょっと前までは官製不況という言葉があって、過度な規制によって、まさにそれが不況の引き金を引いているというような話もありましたので、もちろん安全保障は大変大事でありますけれども、それによって企業の発展を阻害するようなことはぜひ避けていただきたいという思いで聞いているわけであります。

 今お答えいただいたんですが、さっきもお聞きしたんですけれども、さらに具体的にちょっと分けてお聞きをしますと、まず、大企業の自主的なコンプライアンスプログラムがありますね。私は、あるのは知っていますが、各企業がどういうものかと比べたことはありません。ですから、結局、企業によってまちまちだというお答えならそれでもいいんですけれども、一般人が見るような大手の企業のコンプライアンスプログラムであれば、既にもうほとんどみんなクリアしているから要は何もする必要がないのか、それとも、そういった企業でも、過度とは言わないんでしょうけれども、修正というのは相当いろいろ求める必要があるのか、それについてお答えください。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話のありました大企業につきまして、大企業で、社内で安全保障貿易に関する輸出管理社内規程を設けている企業は、例えば輸出管理体制であるとか取引審査でありますとか、あるいは資料管理でありますとか、幾つかの項目にわたってその規程をつくっておられます。

 こういう企業につきましては、今回の遵守基準について、さらに負担があるということにはならないというふうに理解しております。

田村(謙)委員 今、過度なじゃなくて、さらに負担はないとおっしゃいましたので、それは基本的には、私も全部、全部というか、私の質問がある意味でアバウトでありますから、どの範囲までの企業のそういう社内管理体制は大丈夫だという、範囲までは私は今お伺いするつもりはありませんけれども、それなりのものを備えたところに関しては、それにさらにプラスアルファを求めるものではないというお答えをいただいたんだと思います。

 では、中小零細企業ですけれども、今、必要最小限になさるとお答えをいただきました、社内周知ですとか責任体制ですとか。ただ、結局、例えば零細企業とかになると、対象者も少ないと思いますけれども、本当に少ないマンパワーでやっている。そういう中で、必要最小限というのはもちろんそのとおりなのでありますが、そもそもそういうことの体制を整備しろといっても何のことだかよくわからないという、まさにゼロから勉強するというような企業も多分あるんだろうと思うんですね。その必要最小限というのは、もうちょっと、何かイメージがもしあるのであればお答えください。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な基準の内容は今後省令で定められていくことになるわけでございますけれども、中小零細企業に関して申し上げれば、まず、輸出しようとする貨物や技術が規制対象となるのかならないかをだれが判断するのか、その会社においてだれが責任を持って判断するのか。

 あるいは、輸出するものがどういう需要者に使われ、そして用途が大量破壊兵器の関係ではないというような確認をしていただく必要があるわけですが、その確認をどなたが責任を負っていただくのかというようなことを決めてくださいということ。

 あるいは、今委員おっしゃいましたけれども、貿易管理制度の社内の周知を一度、その企業の規模や業種によっていろいろ差異はあると思いますけれども、その企業がかかわり合いのある規制の部分については社内できっちり周知を図ってくださいというような範囲になってくるかと思います。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 まさに、担当者を決める、そして社内周知を徹底する、確かにそのぐらいの差で、私も素人ながら必要最小限だなというふうに思います。そこは、今後具体的に詰めていく際に、結局さらなる負担にならないように、今おっしゃったラインでぜひおさめていただいて、その部分についてはまさに中小企業への周知徹底を御努力いただきますようにお願いをいたします。

 さて、時間が大変限られてまいりまして、私もいつも時間配分が下手ですので、不正競争防止法について数分間だけ、ちょっとだけ質問させていただきます。

 先ほど古川委員もいろいろと御質問になっていました。もう時間もないので簡単にお伺いしますけれども、今回の不正競争防止法、先ほども議論のあった親告罪について、古川委員に対するお答えでも、もちろん各国のことはいろいろと調べていると。

 そういう中で、ただ、日本といろいろ事情も違うし、海外の事情も踏まえながら日本の制度をという話、まさに営業秘密侵害罪を親告罪としていることに関してそうおっしゃっておられましたけれども、そもそも、主要国で親告罪としている国というのはどこがあるんでしょうか。

森川政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、ドイツの不正競争防止法におきます営業秘密侵害罪は親告罪であるというふうに認識しております。

田村(謙)委員 昨日のレクで、担当者にイギリスの様子はどうなんですかと聞いたところ、単に担当者はその場に資料をお持ちじゃなかっただけだと思うんですけれども、主要先進国の中ではイギリス、フランスも親告罪とはしていないということでよろしいんでしょうか。よろしいんですね。はい、わかりました。もう時間がありませんので。

 結局、ドイツだけで、確かに何でも欧米に倣う必要はないというのは、いろいろな制度、そのとおりでありますけれども、そこは刑事手続、刑事訴訟法が絡んでくる、まさに法務省が絡んでくるという話であるわけであります。

 私も、大学のときも刑訴はとりませんでしたし、いまだに詳しくはない。そこは弁護士の資格を取っている古川先生とは違うんですけれども、ただ、何となくのイメージで、結局、法務省は、あらゆることに関して動きが鈍い。まさに、商法大改正にしても、あらゆるものに関して遅い。それはやはり、商法が典型的でありますけれども、まさに経済に対するマインドが低過ぎるという……(発言する者あり)横で応援もいただいておりますが、その思いは、まさに経産省が常日ごろ思っていらっしゃることだと思います。

 いろいろな審議会で、領空侵犯と言われながら、まさに法務省の管轄の法律改正をいろいろ促してきた、その御努力がむなしく終わった場合も多々あって、それは私は問題だと思っているんです。今回の件に関しても、私は詳しくはないけれども、やはり日本の経済発展のためにも、さらに法務省の重い腰を上げていただく、まさに刑訴法改正を目指してさらに頑張っていただく必要があるというふうに私は思っております。

 その点に関して、ぜひ最後に、担当者としてもしお考えがあれば、その思いをお答えいただきたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、刑事訴訟手続の観点から、営業秘密のいわば侵害を防ぐ対策、非常に重要だと考えております。そうした意味で、今回の法律案を取りまとめる審議会でも、この手続の問題につきましては、かなり議論を積み重ねておりますし、法務省とも緊密に連携をして検討しているところでございます。

 報告書に書かれておりますように、私ども、この手続の問題につきましても、もちろん、憲法上の問題がございますので容易な問題ではないと認識をしておりますけれども、法務省とよく緊密に連携をして、可及的速やかに望ましい結論を得るように努力をしたい、かように考えております。

田村(謙)委員 憲法の制約というのはいろいろなところで、憲法解釈も変わるものでありますので、いろいろとおつらい、法務省とやっていると何も進まないというのはあると思います。ですから、ぜひ経産省さんは、より独自の見解をどんどん明らかにしていただきたいなということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

東委員長 これにて田村謙治君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日は、不正競争防止法そして外為法の質疑機会をいただきまして、委員長、理事の皆様に心より感謝を申し上げます。

 本法案の質疑に入る前に、一点だけちょっとお伺いしたい点がございますので、お答えいただければと思います。

 産活法等でも、中小企業政策、また我が国の金融の目詰まりについてどのように対処するのかという議論を重ねてまいりましたが、昨日、日本政策投資銀行について政府・与党が民営化を三年先送りするという方針を固めた、これを受けて、これについて議員立法という形で法案を近く提出する方針を決めたという報道がなされました。

 私は、かねてから、いわゆる竹中路線といいますか、公的金融の民営化論に危惧を表明してまいった男でありますけれども、この政投銀の民営化先送りというのはよくわからない、民営化の否定なのか、そうでないのか、この段階ではよくわからぬわけでありますけれども、いずれにしろ、この政投銀の民営化を先送りしたという与党の決定について大臣にお伺いしたいんです。

 商工中金、こちらの方も民営化というのが決定をしているわけであります。政投銀が先送りされたということに合わせて、商工中金については、同じような中小企業金融の担い手として課題を抱えているというか、政策の使命を帯びているわけでありますけれども、どのように対処するお考えなのか、お答えいただけますか。

二階国務大臣 議員も御承知のとおり、商工中金の民営化に際しまして、私は、災害や貸し渋り等、つまり、いざというときには国の政策的な要請にきちんとこたえていかなくてはならないということの主張を繰り返してまいりましたが、今ちょうどこういう時期に当たったわけであります。

 そこで、新体制のもとで危機対応業務が制度化され、今そのことに懸命に努力をしているところでありますが、年度末までに商工中金は、中小企業向けで約三千億円、中堅向けには七百億円の実績を上げているところであります。

 今議員が御指摘になりましたようなことで、今後において、政府・与党が必要な予算や法改正の検討を今行っておるということでありますが、御質問の完全民営化の時期につきましても、その中で検討されるだろうと考えております。

 中小・中堅企業の資金繰り支援に万全を期すために、我々は常に必要な措置を講じてまいらなくてはなりませんが、今、この議論も見守っていきたい、このように考えております。

近藤(洋)委員 大臣の御答弁を分析すると、検討をしなければいけないというふうに受けとめるわけですが、すなわち、商工中金についても、したがって、そういう全体の中で検討する、しなければいけない、対象になっている、こういうことでございますね。まだこれはこれから議論されるということでしょうけれども。

 そこで、ちょっとお伺いしたいんですが、急遽の通告で恐縮なので、これは事務方にお答えいただければと思うんです。

 日本政策金融公庫の方でありますが、これはけさの日本経済新聞でありますけれども、人員削減計画を計画しておったわけだけれども、これについて、二〇一〇年までの五年間に合計八千七百名いた役職員数を五%削減する方針を凍結するということを政府に要請している、経済産業省、財務省は近く結論を出すと。この記事の中では、人員不足が原因で貸せないのでは追加経済対策の効果が薄れる(経産省)として、公庫の要請を容認する方針、このように書かれておりますが、経産省、この点について、今どのように対処する予定なのでしょうか、お答えいただけますか。

横尾政府参考人 お答えを申し上げます。

 日本政策金融公庫のセーフティーネット貸し付けは現在急速に拡大をしておりまして、この三月の実績で、国民事業で前年比二・五倍、中小事業でも三・五倍を超える水準になっております。これに伴いまして、業務量が大変増大をしております。これにつきましては、現在までのところ、間接部門の人間を営業部門、審査部門に振り向ける、あるいは夜間、休日に仕事をするといったことで対応をしてございます。

 今般の経済危機対策におきまして、このセーフティーネット貸し付けの規模の拡大等が盛り込まれておりまして、あわせて、政策金融公庫の対策関係の業務の円滑な推進に必要な体制の確保というのも盛り込まれております。

 この具体的内容、経費、人員をどうするかは、今検討中でございます。

近藤(洋)委員 容認する方針と記事には書いてあるので、検討しております、こういうことでしょうけれども、大臣の先ほどの御答弁の流れからいくと、恐らくそういう方向になるのかなと勝手にこちらは推測いたしますが、この場では、ちょっと法案審議とは関係ないので、私の意見だけ申し上げます。

 こういう過去の政策金融、公的金融の見直しはやはり失敗、現状に対応し切れていないんだということは、政府も事実上こういうことでお認めになられているんだと思うんですね。ですから、私は、やはりこれは、ただずるずると、例えば政投銀の民営化を三年半先送りしたところで、本質的な問題の解決にはならなくて、というのは、民営化という大目標がある中で先送りされると、現場は、経営陣自体も、どっちを向いていいのか混乱をすると思うんですね。

 完全民営化というのは、一〇〇%全部売ってしまうということなわけですが、私は、ある程度政府が株を保有するだとか、そういうことも含めて、民営化のスキームそのものをやはりここは立ちどまって見直す時期なのではないか、日本政策金融公庫のありようについても、もう一度この改革というのを、立ちどまって、制度設計し直すべきではないか。ずるずるとなし崩し的に対応することが私は必ずしもいいとは思わないということだけをこの場では指摘させていただきたい、このように思います。

 法案の質疑に入ります。

 先ほど、古川議員、そして田村議員からも指摘をされたところでありますが、この不正競争防止法の営業秘密侵害罪、平成十五年に設けられてから起訴件数はゼロ件であったということが指摘をされておりました。

 このことは、同僚議員が指摘したように、やはり実態にそぐわない、すなわち、構成要件の目的、構成要件を見直さないとなかなか実態に対応できないということで、そのものを見直したということ自体は私も評価をしたい。すなわち、不正の競争の目的を改めて、不正の利益を得る目的、また保有者に損害を与える目的とするという、この侵害罪の目的要件を見直した、このこと自体、私は評価をしたい、こう思うわけであります。

 ただ、問題は、この起訴件数がゼロ件だということの背景には、刑事事件の裁判で企業の営業秘密が公開をされてしまう、そのために告発をする企業側が告発自体をちゅうちょするのが要因だ、このように言われておるわけであります。

 今回の法改正の議論の中で、政府の部内において、この営業秘密の裁判における公開について一部制限をしたらどうかという議論を真剣にされておるわけであります。

 委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますけれども、ここの一枚目に、産業構造審議会の小委員会で、経済産業省側が四つの検討案を具体的に示しております。

 この具体的な検討案、すなわち、それぞれ、公開そのものの停止であるとか、三番には傍聴人の制限だとか傍聴人の秘密の保持であるとか、四つのさまざまな検討案を示しておりますが、残念ながら、法改正では現実には何ら措置がとられなかった。

 なぜこの措置がとられなかったのか、理由をお答えいただけますでしょうか。

森川政府参考人 お答え申し上げます。

 営業秘密侵害罪に係ります刑事訴訟手続において、営業秘密の内容が公判審理の過程で公開するおそれがあるということで、企業が告訴をちゅうちょしているという指摘が、委員御指摘のとおり、かねてからございました。

 こういったこともございまして、産業構造審議会の知的財産政策部会技術情報の保護等の在り方に関する小委員会におきまして、法務省の方のオブザーバー参加も得まして、議論をしてまいりました。

 そしてその中で、営業秘密を訴訟手続上も保護するために、今お配りいただいたような案も含めまして、幾つかの法的措置について具体的に検討を行ったところでございます。しかしながら、この委員会におきましては、こういった提案について、賛成を示す見解がある一方で、具体的な法的措置の詳細等についてさらに検討すべきである、こういう指摘もございました。

 こういった中で、裁判の公開原則、被告人の防御権、こういった点にも配慮しつつ、営業秘密を訴訟手続上においても実効的に保護するために、刑事裁判実務に詳しい、通暁した専門家の方の意見も聞きながら、さらに検討を行っていく必要があるということになりました。

 今後、この営業秘密侵害罪についての刑事訴訟手続におきまして、営業秘密の内容を保護する法的措置を設けるために、法務省と共同いたしまして、可及的速やかに具体的な成案を得ることを目指したいというふうに私どもとしては考えております。

近藤(洋)委員 いずれにしろ、これは今後検討するということなんでしょうけれども、お伺いしたいのは、法務省、お忙しいところ、参考人に来ていただいておりますが、政府部内の議論の中で、経済産業省としてこの四つの案を出されたけれども、この小委員会の中で法務省は、私が聞いている範囲では、否定的な態度をとられた、このように伺っております。なぜ法務省は、営業秘密の公開をある程度制限することについてこの審議会の場において否定的な見解に立ったのか、お答えいただけますか。

甲斐政府参考人 御指摘の小委員会におきまして、今お話がございました四つの措置が提案されたところでございます。

 法務省といたしましても、営業秘密の保護の重要性ということについては十分認識しているところでございます。他方で、提案された四つの措置は、何がしかの形でいずれも刑事裁判の公開を一定程度制限するという内容を持つものでございます。

 刑事裁判におきましては、憲法の八十二条で、裁判の公開が原則であるという規定がございます。さらに、憲法三十七条においては、被告人に公開裁判を受ける権利という、被告人の人権保障という観点からの規定もございます。したがって、こういった裁判の公開の例外を認めるということは、人権保障上の観点からも十分かつ説得的な立法事実の検討ということが必要になるものと思われます。

 例えば、お示しいただいた案の中でも、期日外の証人尋問ということが書かれておりましたけれども、本来これは、証人が入院していて裁判所に出てこられないというようなときに使われる手続でございます。これを裁判の公開をしないために使っていいのかという問題もございますし、また、期日外尋問を実施しても、その結果は次の公開裁判、公開法廷の中で法廷に提出するという手続が予定されているものですから、結局、そこでせっかく秘密にしておいた内容が明らかになってしまうんじゃないか、そういう意味で、実効性がどれほどあるのかという点も問題になるところでございます。

 したがって、こういった措置について真摯に検討しなければいけないと私どもも思っておりますけれども、その措置に合理性があるのか、あるいは被告人の防御活動を制約しないのか、それから実効性という点でどうなのか、こういった点も含めて、なお慎重に検討する必要があるというふうに考えられたところでございます。

近藤(洋)委員 憲法の制約は十分承知した上で伺っているわけですが、しかし、先ほど田村議員も指摘をしたように、憲法に一定の裁判の公開の原則がある国でも、米国でも、営業秘密は守るという形で裁判で手続をつくっている国もあるわけですね。要は、守るべき法益は何か、こういうことだろう、このように思っておるわけであります。

 民事裁判では、こういった営業秘密は保護されているわけであります。もちろん、民事裁判だからということもあるわけですが、その成果もあって、この十二年間で百二件、差しとめ請求だとか、実際行われているわけですね。直近の平成二十年でも十三件、裁判が行われているわけです。かつ、営業秘密を侵害されたと言われている製造業の企業は三割もあるというこの被害実態を見れば、せっかく法律がつくられたのに実際に使えないということでは、これは全く、我々は何のために国会で審議しているのかわからない、このように思うわけであります。

 そこで、大臣、この件については、やはり急いで、いつまでにこの手続をとるんだということをきちんと示された方がいいと思うんですね。

 かつ、これは、法務省の気持ちもわからないではないんですよ。大事な我が刑事訴訟法について産構審で勝手に議論されたらたまらぬという法務省の役所としての気持ちも理解しなくはないですが、しかしながら、だったら合同で審議会で議論すればいいわけでありまして、サボタージュは許されない、このように思うわけであります。

 大臣、これは、期限を区切ってきちんとやる、手続を踏むということをこの法案を審議する場である程度明示されないとなかなか審議に、この法案はいい中身だけれども、素直な気持ちで賛成できない、このように思うんですが、いかがでしょうか。

二階国務大臣 先般からこの件につきまして御意見をちょうだいしておりますので、私どもなりにいろいろ考えておるところでありますが、今、近藤議員が言われたように、素直な気持ちで御賛成いただけるように、最大の努力をしたいと思います。

近藤(洋)委員 ですから、素直な気持ちで賛成したいためにも、これは政府内で調整を進めるということで、大臣、政治家としてよろしいですか。

 吉川副大臣、もしあれだったらば、御決意いただいても結構でございますが。

吉川副大臣 大臣の言われたとおりでございまするけれども、それに付言をいたしまして私からお答えをさせていただきます。

 現時点で結論を得る時期を具体的に明示することは、申しわけありませんがなかなかできないのでありますけれども、営業秘密侵害罪の実効性をより一層高めるために、一刻も早く結論を得られるようにすべきであるということは大臣もお答えをしたとおりでございます。

 経済産業省としては、産業界等からの声を踏まえつつ、刑事裁判の専門家等の意見も聞きながら、法務省と共同して検討を行ってまいりまするけれども、具体的な成案を得るよう最大限の力を傾注してまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 法務省、せっかく来ていただいているので、こういった副大臣なり大臣の御答弁を踏まえて、ぜひ一定の制限を、営業秘密がみだりに流れないような仕組みづくりについて、法務省としてそういう方向で検討するということがないと、この法案が仮にできたとしてもなかなか実効性がないというのは、私が繰り返し指摘申し上げたとおりであります。

 ぜひ、法務省としてきちんと対応する、一定の何らかの措置をとるんだと。これは運用でやる話ではないと思うんですね。刑事訴訟の話でありますから、やはり仕組みが必要だと思うんですけれども、法務省、重ねて御答弁いただけますでしょうか。

甲斐政府参考人 法務省といたしましても、営業秘密の重要性については十分認識しているところでございます。

 秘密漏えい罪につきましては、これまでも、立証上の工夫によって、秘密の内容そのものを法廷に出すというのではなくて、秘密性をきちんと立証するという努力がなされているところでございます。

 今後、経済産業省とも十分緊密に連携して、内容について協議して議論を深めてまいりたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 ぜひ法務省、ここについてはサボタージュしないように、真剣に対応していただきたい。重ねて指摘をしたいと思います。

 続きまして、営業秘密侵害罪でありますが、そもそもの行為も、刑事罰の対象の行為が領得する行為に広がったわけであります。これまで、使用または開示をするということをもって構成要件だったわけですが、領得をするということをもって対象になった、処罰というか規制の対象が広がった、これは一定の前進だろう、このように思うわけでありますけれども、海外においては、ドイツや英国は領得だけでなくて未遂でも処罰の対象になるわけであります。また、最も厳しい米国や韓国では、未遂や共謀をしたということだけでも、産業スパイ法、経済スパイ法などでは処罰の対象となっている。

 企業間の連携であるとか共同開発というのはもう国際的に広がっているわけでして、そういうことを考えますと、ある程度こういったものは国際水準というものに合わせるべきだろう、このように思うわけであります。

 特に日本の場合は、米国との共同開発なり、またドイツや英国との共同開発が多いということを考えれば、米英独並みの水準に合わせるべきではなかったか、このように思うわけですが、その点について、なぜ合わせなかったのか、お答えいただけますでしょうか。

谷合大臣政務官 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、国によりましては、営業秘密侵害の未遂行為また予備行為についてまで刑事罰の対象としております。

 我が国におきましては、これまで、現行の不正競争防止法におきましては、営業秘密侵害罪は不正な使用、開示行為を中心として刑事罰の対象としてきた、ここも事実のとおりでございます。今回の改正では、営業秘密の不正な使用、開示の前段階であります不正な取得、領得の時点をもって処罰対象といたしました。

 なぜ米国、ドイツ並みにしないのかという話でありますが、まず、今回の改正におきまして、処罰対象の早期化を図ったということが一点であります。二点目としましては、刑事罰の対象行為の拡大に際しましては、これは常に謙抑的でなければならない、謙抑的な姿勢が望まれることを踏まえますと、現時点で未遂犯の処罰の規定を設けることについては慎重な議論が必要であると考えております。

近藤(洋)委員 私は、ある程度国際基準に合わせてもよかったのかな、このように思うわけであります。

 重ねてお伺いしたいんですが、国際標準という意味においては、さらにこういった海外の国の中では、外国政府を利する目的や外国での利用について罰則の加重を行っているわけですね。我が国にはそういった規定はない。

 技術立国日本ということを考えますと、国益ということを考えますと、海外での利用について、要するに、海外での技術流出について厳しいチェックをかける、厳しい刑罰を科すということも、これは国益を考えれば一つ理にかなったことではないか、このように思うわけですが、なぜ今回の改正ではこうした改正を行わなかったのか、お答えいただけますでしょうか。

谷合大臣政務官 今回の改正案におきましては、営業秘密侵害罪の目的要件を図利加害目的に変更することから、まず、外国政府を利するために営業秘密を侵害する行為に対してこの図利が入るわけでありますから、実効的な抑止が可能になると考えております。

 アメリカ、ドイツ、韓国のように加重要件を課さないのかという話でありますが、まず、日本の営業秘密侵害罪に該当する行為の場合ですが、十年以下の懲役または一千万円以下の罰金、またはそれらが併科されるということから、この時点で十分に、加重要件が加えられた韓国とかドイツ並みになっておりまして、加重要件を設けずとも十分な抑止を果たし得ると考えております。

 したがいまして、外国政府を利する目的による営業秘密の侵害行為を現行の法定刑よりもさらに加重して処罰することをしなくとも、実効的かつ十分なものであると考えております。

近藤(洋)委員 御答弁、それなりに納得しない部分がないわけではないんですけれども、引き続き、こういった海外の、要するに、国際共同開発、また海外とのアライアンス、事業提携なり取引が当然の常識になっているわけでありますから、そういった海外水準に合わせるということもこういった分野については重要だろう、このように思うわけであります。

 法務省さん、もうよろしいですから、退席されて結構です。ありがとうございました。

 続きまして、外為法関連についてお伺いしたいと思っております。

 この法案の改正そのものは、中身そのものはまさに時宜にかなったものであろう、このように思うわけでありますが、外為法で専ら規制をしている。外為法というのは、技術輸出について大変広範に規制をかけている重要な法律なわけでありますけれども、技術輸出というのは日本の産業にとって、輸出自体は、輸入もそうですが、極めて重要だと思っているわけであります。

 ただ一方で、北朝鮮のミサイル発射に見られるように、いわゆる不心得国家もいつ出てくるかわからない状況にあるわけでして、こういった日本の技術が場合によっては武器に転用される、使われてしまう、こういった問題について不断の注意を払わなければいけない、このように思うわけであります。

 こうした武器の、核の不拡散も含めて、ミサイル関連技術なりそういったものの広がりを防ぐための国際協力の枠組みというのは、それぞれの枠組みがあり、また機能しているわけでありますけれども、こうした国際間の枠組みに参加していない国も多数あるわけであります。例えばワッセナー・アレンジメントであるとか生物化学兵器にかかわる規制の枠組みであるとか、そうした枠組みに入っていない国を経由して、日本の技術が輸出、そして使われるという可能性もある。

 そこでお伺いしたいんですが、通常兵器を扱う、いわゆるワッセナー・アレンジメントと呼ばれる枠組みがありますけれども、この参加国というのは全体で何カ国で、うちアジア地域は何カ国参加しているのか、事実関係をお答えいただけますか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘のありましたワッセナー・アレンジメントに加盟している国は全体で四十カ国でありまして、このうち、アジアにおいて我が国以外にワッセナー・アレンジメントに加盟しているのは大韓民国のみとなっております。

近藤(洋)委員 そうなんですね。たった一カ国しかない。これは通常兵器でもそうなわけであります。

 委員長のお許しを得て配付させていただいている配付資料の二枚目を見ていただければと思うんですが、いわゆるワッセナー・アレンジメント、通常兵器ですね、核兵器に関する枠組み、または生物化学兵器に関するオーストラリア・グループ、またミサイル関連規制、それぞれの参加国を書いておりますが、アジアの国というのはほとんど参加していない、こういうことなわけです。

 この参加国の中での規制の枠組みは、これは皆守ればいいわけですけれども、ほとんどアジアの国が入っていないということであるわけですから、それ以外の国にどうやってきちんとした輸出管理をさせるか。また、日本がそういった国に輸出した場合、第三国にどう流れてしまうのかという管理体制をしっかり組む必要があろうかと思うのです。

 その意味では、アジア各国・地域において輸出管理制度を、対応を各国政府にとってもらうということは日本の技術の不正使用を防ぐためにも極めて重要だろうと思うわけです。政府としてそうした取り組みを積極的にすべきと思いますが、いかがでしょうか。

谷合大臣政務官 委員御指摘の点は大変重要な点であると認識しております。

 国際社会が協力して安全保障貿易管理に取り組んでいく、とりわけアジア各国のお尋ねがありましたが、まず、日本としてどういうことをしてきているのかということについてお答えさせていただきますと、ワッセナー・アレンジメント等の国際レジームに参加せず、安全保障貿易管理が十分行われていないアジア各国におきましても管理がしっかり行われるよう、輸出管理当局間の交流、協力を深めております。

 具体的には、平成四年以降、毎年、アジア諸国の輸出管理関連部局の幹部を日本に集めまして、制度整備に向けたセミナーを開催しております。また、各国におきます産業界向けのセミナーを、現地政府と共催する形で、これまで二十五回開催しております。

 このような取り組みをしながら普及啓発活動に努めているところでありまして、引き続き、アジア各国におきます安全保障貿易管理体制の整備をしっかりと支援してまいります。

近藤(洋)委員 ぜひ引き続き進めていただきたい、こう思います。

 一方で、この技術輸出については、危ないところ、要するに規制を強くしなければいけないところについては厳しくするのと同時に、ある程度信頼のできるものについては包括的に与えるだとか、そういっためり張りというのが大事なんだろう、こう思うんですね。その点からも、ぜひそういった制度の運用もしていただきたい、このように思うことも付しておきたいと思います。

 また、これは本法案とは若干関係ないんですが、技術輸出に関連して一つ、武器輸出に関連してちょっとお伺いしたいと思います。

 事実関係でありますが、我が国は、いわゆる武器輸出三原則というものを掲げておるわけであります。その武器輸出三原則の例外となっている国、また例外となっている対象というものはどういうものなのか、簡単にお答えいただけますか。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員が委員会に提出した資料の中にそういう例示が示されているわけでございますけれども、政府といたしましては、武器の輸出管理について、武器輸出三原則によって慎重に対処するという方針を堅持しつつ、他方、武器に該当するものの輸出等であっても、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等の趣旨を損なわないものとして、例外的に武器輸出三原則によらないこととしているものがございます。

 例えば、日米の防衛分野における相互技術交流の一環としての米国への武器技術の供与、あるいは弾道ミサイル防衛システムに関する案件につきましては、日米安全保障体制の効果的な運用に寄与し、我が国の安全保障に資するという観点から、厳格な管理を行うという前提で、武器輸出三原則によらないこととしております。

近藤(洋)委員 関連してお伺いしたいんですが、そういった一部例外はあるわけですけれども、今、防衛の技術開発というものは大変なお金がかかるわけで、そのコストを各国ともどのように負担するかということに頭を悩ませているわけでありますが、こうした防衛関連の技術開発のために国際共同開発というのがほとんど主流になっているわけであります。

 例えば戦闘機開発などでは、F35は米国、英国、豪州など十一カ国による共同開発なわけでありますけれども、こうした防衛関連技術の国際共同開発というものは、この武器輸出三原則をそのまま適用すると、文字どおり読むと、我が国は参加できないというふうに読み取れるわけですが、これは防衛省に来ていただいておりますが、いかがでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛分野の国際共同研究開発につきましては、今御指摘がございましたように、一般的に申し上げますと、こういうことをやりますと、装備品の開発、調達コストが低減するですとか、相手方のすぐれた技術の取得ができる、技術上のリスクの低減ができる、あるいは参加国間のインターオペラビリティーが高められるというような効果があるということがございます。参加国の国情の違いにより運用要求が異なるために要求性能の調整が難しいとか、相手国の開発計画や調達計画の変更に伴うリスクというものもありますけれども、そういうものを総合的に勘案して国際的な動きが出ているのは、御指摘のとおりだろうと思います。

 そういったものに我が国が参加をしていくという場合には、一方で武器あるいは武器技術の輸出を伴うということになってまいりますので、これにつきましては、政府といたしましては、武器輸出三原則を堅持するということでやってきたわけでございますけれども、先ほどの御答弁がありましたように、防衛分野につきましては、これまでも、必要な場合に個別に対応してきたということで対応がなされてきたものと承知をしております。

近藤(洋)委員 個別に対応はしているものの、なかなかスムーズな共同開発というのはできない状況に今あろうかと思うんですね。

 そこで、もう時間が近づいてまいりましたので最後の質問ですけれども、資料の三のところに、この武器輸出三原則をめぐる動き、発言、各歴代の総理大臣のもとでの動きというのを記載させていただいておりますが、私は、平和国家として、この武器輸出三原則というのはこれまで大変大きな役割を果たしてきたということは評価するものであります。しかし、一方で、その大原則を持ちながら、なし崩し的にその都度その都度ということで認めてきたというか、なし崩し的に動いてきたという面もあろうかと思うんですね。

 武器の輸出というと、何となく死の商人のような印象を与えてしまうわけですけれども、そうではなくて、防衛技術の開発ということを冷静に考えて、また、予算的な我が国の制約ということも考えると、ある意味で国益に合った、信頼できるプロジェクト、信頼できる国に対して、輸出管理をし、技術交流をし、そして効率的な投資をする、そしてその中で日本が不可欠な役割を果たす。そのことによって、ある意味でいうと、日本が防衛産業を単独で突き進むよりも、逆に言うと、周辺の諸外国に対してある程度安心感を持たせるという意味も含めて、日本がどんどんどんどん行け行けじゃないんだ、海外共同開発をやるんだという枠組みになることが、逆に一定の抑止だということの効果もあるかもしれません。

 そういう観点から、私は、この武器輸出三原則というものをもう一回、この運用について整理をするという時期もそろそろ来ているのかなという気がするわけであります。

 その点について、経済産業省、防衛省、それぞれ来ていただいておりますけれども、まずは防衛省の方からお伺いしましょうか。防衛大綱をちょうど見直しているさなかと伺っておりますが、この点についていかがでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、武器の輸出管理につきましては、累次御答弁がありますように、武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念にかんがみて、今後とも引き続き慎重に対処するという方針を堅持することとなっていると承知をしております。

 他方、御指摘がありました大綱上の問題等々につきましては、例えば同盟国たる米国とのBMD以外の共同開発・生産案件ですとか、テロ・海賊対策支援に関する案件というようなものが出てくる可能性がございまして、これにつきましては、既に、個別の案件ごとに検討の上、結論を得るということにしていただいていると承知をしております。

近藤(洋)委員 なし崩し的にずるずるというよりも、一回頭を整理していくことが必要なんだろう、こう思うんですね。その方が私は的確だと思うんですが、最後に大臣、この点についてお伺いして、質問を終わりたいと思います。

二階国務大臣 武器輸出三原則につきまして、いろいろ資料もお調べいただいた上で御質問をちょうだいしたわけでありますが、今、近藤議員が言われたように、防衛技術の交流というふうな視点から、このことは大変重要な視点を御指摘いただいておると思っております。

 ですから、私どもは、直ちに今三原則を云々する状況ではありませんが、御指摘のようなことを十分踏まえて、なし崩しにやっていっていいのかという近藤議員の今の御指摘を十分念頭に入れて、一つ一つ、これから関係閣僚とも機会を見て話し合っていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 時間ですので終わります。

東委員長 これにて近藤洋介君の質疑は終わりました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 きょうは外為法の一部改正と不正競争防止法の一部改正ということでありますが、ちょっと関連の質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、外為法の一部改正について御質問申し上げたいと思います。

 確かに今回の改正というのは、ある意味では必要性があるということで、是としたいというふうに私は思っています。

 ただ、先ほどもちょっと議論があったんですが、今回、現行規制で不十分なケースということで、日本に短期間滞在する者が国内で取得した機微技術を海外に送付する場合、機微技術を記録したUSBメモリー等を持ち出し、海外へ提供する場合というふうな部分を規制ができるようにし、さらには罰則強化をしましたが、であれば、例えば現行の規制というのと今回の改正になったものが、ある意味では国際標準というものが、先ほど近藤議員の議論にもあったように、別に国際標準というものがあるわけでもありませんが、どのような規制水準に現行はなっていて、今回改正をすればどのような国際的なレベルになるのか、政府参考人で結構ですから、質問通告しておりませんが、ちょっと御答弁をお願いしたいと思います。

藤田政府参考人 今委員がおっしゃいましたように、今回の法律改正によりまして、罰則の強化、あるいは技術を海外に移転させる取引に関する規制は、従来はほかの主要先進国に比べて日本の規制は少し甘いところがございましたけれども、今般の改正によって、国際標準と言っていいかどうかわかりませんけれども、他の主要国と遜色のないものになるというふうに考えております。

後藤(斎)委員 であればこそ、局長、お尋ねしたいのは、やはり先進国はきちっと、ある意味では日本が今改正しようとしている方向性にあるものの、アジアも含めたいわゆる先進国以外の地域というのは、なかなかその制度がきちっとしていないということだというふうに思っています。日本だけが規制を強化すればやはりそれなりの抑制というものが当然されますし、そうではなくて、先進国、途上国も含めて、世界全体で同じレベルでの規制をしていかないと、ある意味では、企業にとったら企業の活動が抑制的になるしという、トータルの中で、やはり将来は国連加盟のすべての国がという方向性を持ちながら制度の調和というものを図っていくべきだというふうに思いますけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

藤田政府参考人 まさに委員御指摘のとおり、こういう安全保障貿易管理につきましては、国際社会が協力して取り組んでいくことが重要だと考えております。

 このため、我が国は、国際合意に基づいて制度の運用あるいは規制の対象など、各国と協調して実施をしているところでございます。

 一方、先ほども御審議にございましたけれども、アジアにおいては安全保障貿易管理に係る国際的な枠組みに参加していない国も見受けられるわけでございまして、こうした国々においても輸出管理がしっかり行われるように、先ほども谷合政務官から御答弁申し上げましたが、アジア諸国の輸出管理当局との交流あるいはセミナーの開催等を図っているところでございます。

 今後とも、主要先進国と協調を図るとともに、アジア各国における安全保障貿易管理体制の整備の支援も図ってまいりたいと思います。

後藤(斎)委員 もう一点、国際協調とともに、国内の法規制も、確かに外為法というのが一番ベースの法律としてあって、例えばその下、下というのか、政令で輸出貿管令という形があって、なおかつ、告示や規制というものがかなり多岐にわたってあるのは現実だというふうに思います。以前も中小企業の経営者の方から、輸出したいんだけれども、どういう法体系になっているのか実はわからないと。

 先ほども、今回、議論が各委員からもありますように、やはり軍事技術と民生技術というのは、ある意味では、同じものをつくったにしても、使う方によっては、それが軍事転用できてしまうということがあると思います。

 ですから、私は、以前、一年か二年前のこの委員会でも御質問させていただきましたが、法体系を含めて、できるだけ例えば中小企業の経営者の方やそこで働く方にもきちっと理解をしやすいような仕組みにすべきだというふうに思います。そして、中小企業は大企業と比べれば、当然、法令の知識があっても、例えば総務や人事や経理もすべて一緒にやってしまっているところがほとんどであります。そういうところの事務手続の軽減ということも含めて、やはりできるだけわかりやすく、なおかつ、中小企業には、今回の法改正の意義というものも含めて、きちっと周知をしていくべきだというふうに考えますが、その点についての御見解をお願いしたいと思います。

二階国務大臣 ただいま後藤議員が御指摘のとおり、私は、できるだけ制度を簡素化し、そしてわかりやすく周知するということがまず第一に重要なことだと思っております。

 政府としては、貨物の種類や仕向け地に応じて一括して許可を付与するなど、制度の簡素化のためにさまざまな工夫を凝らしているところであります。

 また、ホームページなどにより情報提供を充実するとともに、商工会議所等の御協力をいただきながら、日本全国においても制度説明会を開催するなど、制度の周知も図っていきたいと思っております。

後藤(斎)委員 例えば、中小企業の方がインターネット等を通じて契約して製品をつくった、そこで輸出をした途端、手続的に不十分であって、なおかつペケになってしまったというふうな事例が過去幾つかあったようなお話は聞いています。その点も、善意かどうかは別としても、少なくとも周知という部分がきちっとした中であるべきだと思いますので、その点のこれからの啓発についての大臣も含めた御努力をお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、不正競争防止法の方に移らせていただきます。

 営業秘密の漏えいということは先ほど古川議員がかなり細かく御議論をされておりますが、私も、一番この部分で大切なのは、今、この外為法の改正の問題もそうなんですが、現場に、事業者の方にこの法改正の内容と意義がきちっと伝わることがやはり必要だというふうに思います。その点については、多分同じような御答弁ですから結構なんです。

 もう一点、今回、この法改正をして水際でチェック体制を厳しくしたり対象者を拡大しても、やはり行うべきは、技術というのは、ある意味ではすぐ目に見えるものではありません。そして、技術輸出や商品輸出というのは、大きな経済政策の転換ということで、この数カ月間、内需拡大、拡大ということを言っていますが、これから一億二千八百万の我が国国民がすべて内需拡大ということだけで働き、生活することは不可能だというふうに私は思っています。

 そういう意味で、以前大臣とも御議論をさせていただいたように、中国を中心としたアジアの国や、ヨーロッパやアメリカも含めて、いいものをつくり、そしてそれを付加価値をつけて売っていくということは当然のベースであります。そのときに、水際でチェックするものがたくさんありますけれども、水際のチェックとあわせて、特許や商標や意匠という形で知的財産は保護されつつありますけれども、まだそれは実は十分ではありません。

 大臣の御地元の和歌山というのも中国ではもう商標として登録をされておりますし、いろいろな意味で、都道府県の名前や市町村の名前までそういうふうな、それがブランド力をすぐ持つのかは別としても、要するに商標ビジネスみたいなものも大きく問題になっているという中で、この不正競争防止法に基づく取り締まりというのは、平成十七年の法律の改正の中で、十八年から行われているという話を聞いております。

 水際の部分で輸入差しとめが、その後、前回の改正の中でどのように現状がなっていて、それに基づいて、それをゼロにすることはできないのかもしれませんが、対策としてどのような対策を通じながらこの不正競争防止法違反物品の取り締まりを行っていくのか。きょうは、財務省がおいでになっています。簡潔で結構ですから、現状、対策についてお伺いをしたいと思います。

原政府参考人 不正競争防止法違反物品は、具体的には、周知表示混同惹起品、著名表示冒用品、それから形態模倣品でございますけれども、これにつきまして、税関において水際で取り締まりを行っているところでございます。

 平成二十年度、税関におけるこの差しとめの実績でございますけれども、不正競争防止法違反物品につきましては七十九点でございました。

 この知的財産侵害物品の効果的な取り締まりには、権利者からの輸入差しとめ申し立てを通じた情報の提供が有効でございまして、税関では、この制度の活用を権利者などに慫慂しているところでございます。また、税関における取り締まり体制の強化、それから諸外国の税関との連携、情報交換を進めているところでございまして、今後とも、知的財産侵害物品の水際での取り締まりに万全を期してまいりたいと考えてございます。

後藤(斎)委員 あわせて財務省にお尋ねをしたいと思います。

 この不正競争防止法違反物品の取り締まりとあわせて、特許権並びに商標権等の違反の事例も多発をし、お聞きをしている範囲では、二〇〇〇年から昨年まで、十倍以上の差しとめ物件があったというお話も聞いております。

 特許権並びに商標権等の違反の輸入差しとめの現状と対策についてもお尋ねをしたいと思います。

原政府参考人 特許権それから商標権侵害物品でございますが、これは、昨年、平成二十年の差しとめの実績でございます。

 知的財産侵害物品全体で、件数で二万六千件でございました。点数で申し上げますと約九十四万点ということでございますが、このうち、商標権侵害物品が約六十九万点、それから特許権侵害物品が約七万点というような状況でございます。

 これらの物品の効果的な取り締まりにつきましては、先ほど申し上げましたように、輸入差しとめ申し立てを通じました権利者からの情報提供が有効でございまして、これらについての慫慂を図るとともに、税関における取り締まり体制の強化に取り組んできているところでございます。

後藤(斎)委員 大臣にお答えをいただくのはもう結構なんですが、今回、不正競争防止法を改正して水際でチェックができても、やはり中国が一番多いようなんですが、海外における特許や商標違反というものをきちっと摘発し、それを今、どこの国でその裁判をするか。要するに、例えば日本の事業者が不利益を受けたという場合でも、どこで裁判するかといえば、なかなかその裁判所を特定することも、今の国際ルールの中では非常に難しい部分があります。

 最終的にお答えをお聞きする前に、海外における特許権や商標権の違反の現状と今後の対策ということでお尋ねをしたいんですが、特許庁が既に過去何年かから年度報告みたいな形で模造被害調査報告というものをお出しになっております。例えばそれを見せていただくと、模造品の販売・消費地域では我が国と中国が突出している等々、非常に興味深い調査の内容があります。やはりこの調査に基づいていろいろな対策を立てていると思うんですが、その点について、まず特許庁の方からお話をお伺いしたいと思います。

黒岩政府参考人 委員御指摘のとおり、特許庁の調査、昨年、特許庁が日本企業などを対象に実施したアンケートによれば、模倣被害を受けたと回答した企業等のうち、特許権の模倣被害があったと回答したところが三三%、商標権の模倣被害があったと回答したところが五四%に上っております。

 こういった状況を踏まえまして、特許庁では、国別の模倣品対策マニュアルを作成して配布したり、模倣被害の実例を紹介するセミナーを開催するなど、企業などへの情報提供支援を行っております。

 加えまして、特に模倣被害の多い中国に対しましては、関係省庁とともに官民合同ミッションを組織し、中央政府や関係機関に対して取り締まり強化を働きかけるとともに、地名商標などの適正、公平な審査を要請してまいりました。

 経済産業省といたしましては、今後とも、関係府省や団体等と緊密に連携を図りつつ、各国における知的財産権の適切な保護の実現に努力していきたいと考えております。

後藤(斎)委員 今、部長から答弁をいただいたように、財務省、税関とも協力をしなければできない部分があると思うんです。先ほどもお話をしたように、これは政府全体の問題だと思うんですが、これだけ模倣品の差しとめが二万四千件以上あり、物品数にして今九十万点を超える。水際でいかに差しとめるかというのは、やはり人的な対応、増員というものも当然必要だというふうに思っています。

 特に、先ほどもお話ししたように、二〇〇〇年に比べて、要するに八年間で十倍以上の件数になってしまったということでありますから、これは輸出関連の部分もそうですが、やはり水際対策というのは、外に出すとき、中に入れるときというのは当然一番大切な部分なので、これは御答弁は結構ですが、ぜひ政府全体の中でもその点についての、当然限られた予算、人的な部分でありますけれども、増員確保についての最大限の御支援を私からもお願いしたいというふうに思います。

 この模造品とか商標法違反、特許法違反というのは、ある統計では、全世界で七十兆円を超えるというふうに言われています。経産省が以前おまとめになった部分では、我が国の知的財産権侵害の被害額というのは、中国、台湾、韓国、タイの四カ国だけでも売り上げベースで十七兆九千億ですから、十八兆弱を上回るとも言われています。利益ベースでは一兆円を超えるというふうに言われております。

 やはりそれだけ多い金額が、一生懸命技術開発に努力をし、企業がブランドイメージ、地域がブランドイメージを高めるという中で、当然消費者も、同じ格好をして、同じ素材であれば、少しマークがかしげていても買ってしまいたいという意識の中で、そういうものが蔓延するのは当たり前のことであります。

 真正品と模造品の違いというのは、例えば女性のバッグを僕らが見てもなかなかわかりませんし、ただ、見る人が見るとわかるということで、現在は特許庁と財務省、税関も協力をしながら、やはり専門性がないといけないということで、特許庁にもいろいろな御相談をしながら、税関が差しとめをするかどうかという判断もなさっているというお話もお聞きをしています。

 これは後ほど、最後に大臣に一括して知財の部分をお答えいただきますが、やはりそういう部分の対策というものを、今までどうしてもばらばらに各省庁やっていた部分についての大臣のリーダーシップをぜひ発揮していただきたいと思います。これは要望であります。後でお答えをいただきます。

 あわせて、今、農業分野でも同じように、地域商標や種苗法とかいろいろな、これも法体系が縦割りになっているのでやむを得ない部分もありますが、例えば「松坂牛」という、名前を偽って売っている事例であるとか、「一目惚」という、名前が漢字で、日本のブランド力を使っている。いろいろなものが散見というか、かなり多くなっています。

 今までやってきたのは、いずれにしても各省庁がどうしても縦割りで、自治体の部分であれば自治体がそこにクレームをして申請取り消しとか自粛を要請する、農水省がそれをする、経産省がする、国交省がする、本当にばらばらなんですね。農水省ができればまだいいんでしょうけれども、例えば農協さんや食品メーカーということになれば、もっと小さな中小企業という単位ですから、そこで例えば裁判をするにしてもお金が非常にかかってしまう。一説によると、二百万くらいかかって情報収集をし、同じくらいの金額で裁判をし、そこで撤回ないし自粛を要請するしかない。それにも時間が非常にかかってしまう。いろいろな不利益があります。

 そんな中で、まずお尋ねをしたいのは、農水省の事例というのは、ある意味では、今度は機械のものと違って、例えばお米にしても、見ただけでは、あきたこまちなのか魚沼のコシなのかわかりませんよね。牛肉にしても、今、食品の偽装というのが国内でも大きな話題になっていますけれども、やはりブランド力をもって、同じ形状と見た目であれば高く売れるだろうというところで、どうしても利益を得たいという方がその地域にいれば、その名前を語って商売をするということであります。

 これから農水省は、この円高の中で輸出という部分では非常に厳しい部分があるのは承知していますが、これからの農林水産行政全体の、輸出という点をもっても、やはりきちっとした現状の認識と対策というものを講じながらブランド力を高めていくことが必要だと思うのです。

 農林水産物における商標権等の違反の事例と対策について、簡潔で結構ですから、お答えをいただければと思います。

小栗政府参考人 農林水産物の輸出などにつきましては、これから、地名などのブランドが非常に大事なわけでございます。

 日本の地名が商標出願されているような問題につきまして、中国につきましては、例えば青森といったような県名が出願されて、これにつきましては青森県が異議申し立てをいたしまして、申し立てが認められて商標は登録されなかったというような事例がございます。今後、こういった面につきまして、非常に大事な分野だというふうに考えているところでございます。

 このため、農林水産省といたしましても、この問題の解決に取り組むということで、例えば具体的には、中国の商標法では、一般に知られた外国地名は商標とすることができないと定められているわけでございますので、日本政府といたしまして、中国政府に対しまして、外国地名の公正かつ適正な審査の実施について、機会あるごとに、連携をしながら申し入れているところでございます。

 また、農林水産省といたしましては、今年度から、中国などの海外におけます日本の地名などの商標出願状況につきまして、地方自治体や、あるいは農林水産業の関係団体が一体となって監視できる体制を整えることによりまして、疑義のある出願が発見された場合には、関係者に速やかに中止させる仕組みを整備することとしているところでございます。

 今後とも、関係府省とも連携しながら、我が国農産物の知的財産面での保護強化に取り組んでまいりたいと考えております。

後藤(斎)委員 昨年、農商工連携の法的な枠組みができて、経産省と農水省も熱心に今交流というか連携をしながら、地域も含めて各施策を展開なさっています。

 もともと知財というのは、特許法というのがまずベースにあって、どちらかというと工業製品を中心に回ったのは事実だと思います。私も、以前農水省に勤務したときに、知財なんということは余り考えずにやっていた。多分今でもそんなに、意識の変化はあるのかどうかよくわかりませんが。

 三月十日に経済財政諮問会議で、大臣も多分お聞きになったと思いますが、私もこれは以前からお話をさせてもらっているんですが、私も花粉症で非常に悩んでいるんです。日本では二千万から三千万いるという中で、杉花粉症が緩和するお米、これは、薬事法ということで、今度は薬になってしまうようなんですが、米の形状をしていても薬になるという技術開発を今熱心に農水省はやられています。

 これは、お米の中にペプチドを蓄積し、このペプチドというのが杉花粉を何か緩和する、治すところまでいくのかどうか知りませんけれども、ということで、私も、二倍か三倍でも毎日食べるというふうにいつも公言をしているんです。

 やはりこれも、例えば今後どれだけの期間で実用化できるのかとか、そのときにどれだけの圃場で生産ができるのかとか、それでどれだけの生産額になって、雇用がどれだけ担えるのか。これはかなりの税投入をして、どうしても私は早期にやってもらいたい。エネルギーでいえば、大臣とも何度も議論したメタンハイドレートと同じようなものの意識があるんです。実用化に向けてなかなか進まない面もあるということなんですが、ぜひそういう目標設定を農水省もしていただいてやる必要があると私は思うんです。

 この杉花粉症緩和米について、まず、現在の実用化へ向けての取り組みと、そこで知財の保護というものをどう絡めているのか、簡潔で結構ですから、お答えをいただければと思います。

塚本政府参考人 杉花粉症緩和米につきましては、独立行政法人の農業生物資源研究所の方で、先ほどおっしゃいました杉花粉症の原因物質の一部を含んだ遺伝子組み換えの稲の開発に成功しております。その後、有効性、安全性に関する動物試験、こういったことを実施してきたところでございます。

 医薬品として実用化するというためには、先生が先ほどおっしゃいましたような、製薬企業と連携した、医薬品としての人においての治験というものが必要になってまいります。現在のところ、この連携先になる製薬企業というのはまだ見つかっていないという状況でございます。

 農林省としましては、今後、栽培条件の管理が容易である植物工場、こういったものを活用しまして杉花粉症緩和米を栽培することを考えております。こういった取り組みを通じて人での治験を促進しまして、医薬品としての実用化を目指していきたい、かように考えております。

 それともう一つ、知的財産の保護に関しましてですけれども、杉花粉症の原因物質を米に蓄積させる技術というものについては、国内それからアメリカ、カナダにおいて特許出願を行っているところでございます。

後藤(斎)委員 大臣、後で結構ですから。

 もう一つ、私は、石破大臣がおっしゃった中で、今、遺伝子組み換えの蚕で人工血管をつくる、これもすごい技術だなと私は思って、よくこんなことを考える人がいるんだなと、本当に心から敬服をするんです。

 人の細胞と蚕の細胞が何か非常に相性がいい、何で相性がいいのかもよくわからないんですが。これもある意味では、心筋梗塞を患われている方のバイパス手術みたいなものが非常にやりやすくなるとかいって、医療の部分でも非常に画期的な開発、発明だと私は思うんです。まだ実用化までには至っていないようでありますけれども、やはりこれも、できるだけ早期に実用化に向けて御努力をしてもらう必要があると思うんです。

 この点についても、現状と今後の見通しについて、特許の問題も含めてお尋ねをしたいと思います。

塚本政府参考人 蚕を使いました人工血管につきましてですけれども、これも、遺伝子組み換え技術によりまして、人の細胞とより適合しやすい、こういった絹糸を生産することが可能となっております。この絹糸を使いまして、人工血管の試作に成功いたしております。ラットで移植試験を行ったところ、血管が詰まりにくい、こういった結果も得られているということでございます。

 今後につきましては、医療機器という取り扱いになりますこういったものの実用化に向けまして、ラットが終わっておりますので、今度は豚での実験を経まして、最終的には人での安全性なり有効性の試験を行っていくことになるというふうに考えております。

 それと、知的財産につきましては、この蚕の絹糸を使って人工血管をつくる技術といったことについては、現時点では国内のみで特許出願を行っております。一方で、蚕によります医薬用途に用いられるような有用たんぱくの生産技術といったものにつきましては、アメリカほか、海外にも特許出願をしているところでございます。

 今後とも、先ほどの花粉症緩和米と同様の面もございますけれども、実用化が見込まれる技術、それと重要な技術が開発された際には、国内のみならず、積極的に海外での知的財産取得に努めていくこととしたいと考えております。

後藤(斎)委員 今、総務官からお話をいただいたように、例えば杉花粉症緩和米を開発するにしても、実用化に当たって、多分、日本の医薬品メーカーがなかなか連携をしてくれないというのは、これは私の想像ですけれども、医薬品メーカーからいえば、既存の自分たちのつくった現行の薬がやはり売れなくなるというのは当然ですよね。そことの差だと僕は思うんです。

 この間、この委員会でもやったベンチャーの育成というのがどこまでできるかは別としても、私は、これはやはり日本農業の大きい転換だと思うんです。減反、減反と言っている仕組みが、スタートは植物工場でということを私もお聞きしていますけれども、いずれは圃場を確保しながら、この花粉症緩和米が薬としてできれば水田というものがもっと利活用できますし、私、やはり大きく発想の転換をしなければいけないと思うのは、先ほどもお話ししたように、いつまでにどのくらいの例えば雇用規模とか生産規模を目指してということがやはり足りないんです。

 あわせて、もう一つ言わせていただくと、平成二十一年度の農水省の知的財産の戦略的創造、保護、活用という対策費でも、十三億なんですね。この部分で全部を賄えというのは、大臣、余りにも酷だと思うんです。大臣がいつもおっしゃっている、健康だとか医療だとか環境だとか、バイオの力を使った、今お話をしたこの二つだけとっても、多分これから、輸出化も含めて、日本でつくった技術というものが諸外国に非常に大きく売れていくというものを、本当に真正品として確立できるすごいものだというふうに僕は思っているんです。

 ですから、私は、これをぜひ大臣のリーダーシップで、石破大臣とも相談していただいて、私が農水大臣になればまた違った考えをしますけれども、そうではないので、大臣、本当にぜひそれをやり遂げていただきたいんです。

 あわせて、時間も来ているので、大臣にお尋ねをしたいんですが、大臣が石破大臣と、ことしになってから植物工場というのをつくりました。これも、今つくると、例えばフレームだけでも、ハードの部分だけでも、資材費も含めて、大体十アールくらいで三億円かかります。光熱費が、一年間に一千八百万もかかります。通常の施設型の野菜のハウス栽培みたいなものに比べると、やはり十倍以上初期のコストがかかってしまう、ランニングコストも、年間二千万近く電気代がかかってしまうということでは、多分、どうしても植物工場は進まないと思います。

 今、単価を下げる努力をこれからコンソーシアムでやるという話はしているんですが、やはりそれも含めて、農商工連携ということで、LEDを使った青い光を当てると野菜が、ビタミンが強化をされたりポリフェノールが強化をされたということで、差別化ができる。少なくとも、それをつくった農家の方や例えば農協の方というのは、そこで付加価値を高めて小売に売れるという大きいメリットがあるわけです。

 その実用化に向けて、三年間で、今五十ある植物工場を百五十くらいには持っていこう、そういう計画があるんですが、先ほどもお話ししたように、例えばそこでどのくらいの生産量が見込まれるとか、どのくらいの出荷額が見込まれるとか、そこでどのくらいの雇用があるというのは、今一番、大臣がいつもおっしゃっているように、これだけ厳しい経済環境の中で、なかなか出口が見えない、新しいものをという中で、本当に新しい仕組みなわけですよ。植物工場も、お聞きをすると、ビジネスモデルみたいな形で、そのハードやソフトも一体的になって、養液も一体になって特許みたいなものを取るということはまだお考えになっていないようなんです。

 ですから、そのフレームも含めて、例えばサウジアラビアに売れる、砂漠の国に売れるということになれば、やはり大きな日本の雇用や産業の創造ということになりますから、私はそれをぜひ一体にしていただきたいんです。

 その点について、いろいろな農水省の御意見もあるかもしれませんが、大臣としてのお考えをお示しください。

二階国務大臣 後藤先生は農業の面での大変専門家でございますが、先ほどから、花粉症の問題等も含めて、お米の生産一つ考えても、あらゆる可能性を持っておるんだということを御指摘いただき、私も、かねてそういうことに対して関心を持っておりますだけに、早速、この問題について、農林省とも御相談をして対応したいと思います。

 幸いにして、きょうは、夕刻といいますかもっと遅くなりますか、石破大臣が海外出張しますので、私はきょうの閣議で農林水産大臣の臨時代理を仰せつかったところでありますから、先ほどの後藤議員の御質問の趣旨を農林水産省と御相談して、また適当なときにお答えをしたいと思います。

 今の知的財産の問題でありますが、私は、小泉内閣のころに、知的財産の問題で、これは中国に話をしなきゃだめだということで、中国と話をするということになりました。中国の閣僚とこの問題の話に入りましたら、早速にしてフランスの閣僚やアメリカの閣僚から、話はどうだったということで、大変世界的にこの問題に関心を持っているということを私も肌身で感ずることができました。

 こうした問題につきまして、お互いに指摘し合うだけではなくて、もっと建設的に、今御質問にありましたように、世界経済全体としても見過ごすことのできない重大な課題でありますだけに、私は、あらゆる機会を通じて、国際的な場でも御相談を重ねていきたいと思います。

 まずは、やはり政府部内、今御指摘にありましたように、一体的にこれに対応していくということが大事だと思います。今、たくさんの問題を御指摘いただきましたが、そうしたことについて、医療の問題等についても、私どもは、例えばがんの問題でありましたら、文部科学大臣とかあるいは厚生労働大臣とかと一堂に会して相談をして結論を出すということを時々やっておりますので、そんな場でも御提案をいたしたい、このように思っております。

後藤(斎)委員 ありがとうございます。

 大臣、ぜひ予算の拡充についてもお願いしたいのと同時に、やはり模造品や商標、特許の違反というのは国際的な枠組みをつくることが非常に大切だと思うので、その点についてもこれからも鋭意御努力していただくことをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

東委員長 後藤斎君の質疑は終わりました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 最初に、不正競争防止法にかかわって質問をしたいと思います。

 今、金融危機に入ってから、持ち帰り残業とかそういうのは随分減ってはおりますけれども、従業員が残業のために営業秘密を持ち帰ったりUSBなどの媒体にコピーする、こういうことはこれまでから日常的に行われているのが実態です。いずれも、目的が残業のためなんですね。不正の利益を得たりとか企業に損害を与える目的というのは、これは全くそういう意味での持ち帰りじゃない。これは当然処罰対象外だというふうに思うんですが、例えばその場合、上司の許可を得て持ち帰る場合だけじゃなしに、明示的な許可は得ていないけれども黙示の業務指示に基づく場合も同様に対象外になると思いますが、最初に政府参考人から確認しておきます。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘で、残業をする場合にUSBメモリー等を持ち帰ったりコピーしたりする行為は日常想定されるわけでございますが、保有者の許可に基づく場合も基づかない場合も、いわばそういう図利加害目的を持たないということが通常だと思っておりますので、御指摘のとおり、こういうものにつきましては処罰の対象にはならないというふうに考えております。

吉井委員 それから、労働組合などとの関係についても確認しておきたいと思うんです。

 労働組合では、例えば春闘の時期の賃上げとなったときに、相手の方、経営側は、いや、それはなかなか大変だという話になったときに、賃上げ財源をめぐって、企業の財務分析とかあるいは企業の合併や業務提携、資産売却などの経営側の重要な経営方針に対して、その情報を事前に察知して、必要な意見を申し述べたりとか交渉する、こういうことはよくあるわけですね。

 日ごろから企業のさまざまな情報を収集して、労使交渉とかあるいは労使協議に際して、使用者側から労働組合に開示された営業秘密を組合活動に必要な情報の共有として労働組合内部や上部団体に開示するという行為、これは正当な労働組合活動として行われるものなので、労働側に営業秘密の侵害という罪には当たらないということは当然だというふうに思うわけです。

 労使協議の場以外で、組合員などが個々に持っている情報を持ち寄って、それぞれ情報を突き合わせて分析を行うとか、そういう中で営業秘密に該当するものが含まれていた場合、これも労働組合活動という正当な目的であれば処罰の対象にはならない、こういうふうに理解していいですね。確認しておきます。

    〔委員長退席、中野(正)委員長代理着席〕

森川政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のような幾つかのケースにつきましては、いずれも、不正の利益を得るとか保有者に損害を加える目的、こういうことでございません。正常な労働組合の活動の一部ということでございますので、この罰則の対象にはなりません。

吉井委員 次に、使用者による処罰規定の濫用という問題について伺っておきたいと思うんです。

 そもそも、不正競争防止法で言う営業秘密には三つの要件、秘密管理性、有用性、非公知性というのがあって、単に社外秘という判こをぽんとついているだけのものでは営業秘密には当たらないと思うんです。しかし、労働者の方は、就業規則などで企業の内部情報全般についての守秘義務を負わされております。中には、従業員に対して誓約書などを書かせて、その中で、民事賠償請求や刑事告訴を受けることがあることについて同意をさせられたり、民事賠償や刑事告訴について異議を申し述べないと書かされている場合もあるわけです。

 労使の現場では、これらの就業規則上の守秘義務としての秘密、不正競争防止法上の営業秘密、さらには個人情報保護法上の個人情報などがぐじゃぐじゃになっているというか混然一体というか、そういうふうに区別されていない場合も多いわけですが、使用者側からすれば、コンピューターのログなどを確認すれば、外形上の持ち出し、コピー等の行為は特定することは簡単なんです。

 ですから、もともと労働者と使用者の間には圧倒的な力関係の差というものがありますし、特に最近は雇用情勢が極めて悪化している中でですから、その力関係の差というのはさらに拡大していっております。

 そこで、使用者側が、この法律の規定を濫用して不当に労働者を萎縮させたり組合活動を制約することにならないように、この法改正の中身をわかりやすく示すことが大事だというふうに思うわけですが、どのように周知徹底を図られるのか、これを伺います。

森川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来、営業秘密管理指針あるいはさまざまな広報活動については御答弁申し上げてきているところでございますけれども、労働者との関係におきましても、使用者が不当に告訴するとかそういったことがないように、改正の趣旨を周知徹底していきたい、こういうふうに考えております。

 先ほども答弁申し上げましたけれども、営業秘密管理指針を策定する過程では、労働組合の代表の方にも参加していただくということでやっていきたいというふうに思っております。

吉井委員 次に、この問題というのは、内部告発との関係が出てくるわけですね。

 法律上、公益通報者保護法というのがありますけれども、実は、例えば最近も光学機器メーカーでの訴訟が起こっておりますが、上司の不正を察知して、社内で、コンプライアンス室ですか、内部告発したら報復措置を受けている。これは、アメリカとかオーストラリアなんかのホイッスルブロアズ・アクトなどでは、州とか国にもよりますけれども、法体系の違いはあるんですけれども、内部告発をして、正しいものであるのに報復された場合には、報復を行った上司を罰するという規定まで持って正義が尽くされるようにという、そういう法律までつくっているところがあります。

 この点では、三笠フーズのあの事件にしても、あるいはミートホープなんかも、あれは一年前から内部告発があったわけですね。農水省がぼうっとしておったという問題がありますけれども。それから東京電力の、GE社の子会社が、原発のコアシュラウド、炉心隔壁でひび割れがあるということをかなり前からちゃんと保安院などにも内部告発しておったのに、ほったらかしにして大問題になったという事件もありました。

 ですから、この内部告発というのは、営業秘密の問題と、営業秘密といっても、隠すことが営業の利益になるということで営業秘密というようなことにされてしまうととんでもない話で、私は、内部告発という問題は、企業内で不正があったときに労働者が内部告発をしようとした場合、内部告発に至るまでに得たさまざまな情報には、明らかに違法なものだけでなくて、業界内での長年の慣行の積み重ねによるグレーなものもある。

 ですから、明確な法律違反に当たるものは、それがたとえ営業秘密であっても、不正情報ですから、保護対象にならないことは当然として、グレーの情報を入手したことをどう取り扱うのか、こういうことはやはり出てくるわけですね。入手した情報が違法なのかそうでないのかを判断するのは、法律の専門家である弁護士でもなかなか難しいわけですから、まして従業員であればなおさら難しい。グレー情報を得たことで処罰対象になるならば、内部告発を萎縮させてしまうということにもなります。

 改正案と内部告発との関係はどういうふうになっておるのかということを次に伺いたいと思います。

森川政府参考人 お答え申し上げます。

 内部告発行為は、対象となります情報が営業秘密として認められるための要件でございます有用性を欠くということで、そもそもこれが営業秘密を侵害するということには当たらないわけでございます。

 御指摘のグレー情報ということですけれども、そういったものが仮に混在しているということがあった場合にも、これは図利加害目的ということではございませんので、営業秘密侵害罪に当たるということはございません。

吉井委員 それで、二階大臣に一言伺っておきたいんです。

 きょうの午後の本会議で、消費者関連の三法が全会派共同修正で実現するというところへ今来ておりますが、あの議論の中でも、内部通報者保護が、そういうことによって消費者利益を守るということで議論もされてまいりましたけれども、この法律案によって内部告発等が萎縮するようなことがないようにさせるということは、これはやはり、法律をつくるときになかなか微妙なところです。一方では、不正な競争防止のために処罰しなければいけない営業秘密の持ち出しというものがあるし、見方によっては営業の利益とか秘密にかかわってくるんだけれども、しかし公益にかなうというもの、それを萎縮させるということはあってはなりませんから、その点を考えた法の執行というのが必要だと思いますので、この点は大臣に伺っておきたいと思います。

二階国務大臣 内部告発等によって不正を防止するということは、一方では大変大事なことでありますから、そうしたことを行った人たちが不当な扱いを受けるというようなことのないように十分配慮してまいりたいと思っております。

吉井委員 次に、外為法関係について伺いたいと思います。

 外務省の方に最初に確認しておきますが、非核三原則と武器輸出三原則を日本はずっと国是としてきたわけですが、これは変わっておりませんね。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生が御指摘いただきました、我が国が核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず、この非核三原則を堅持することにつきましては、これまで歴代の内閣によりまして累次にわたり明確に表明されてきておるところでございます。政府といたしましては、今後ともこれを堅持する立場に変わりはございません。

 武器の輸出管理につきましては、武器輸出三原則などのよって立ちます平和国家としての基本理念にかんがみまして、今後とも引き続き慎重に対処する、この方針を堅持することとしております。

吉井委員 そこで伺っておきたいんですが、アメリカとインドとの間で原子力協力協定が結ばれておりますが、インドはNPTに加盟していない国だと思うんです。わかり切ったようですが、念のために確認しておきます。

中島政府参考人 先生の御指摘のとおり、インドは、NPT、核不拡散条約には加入しておりません。

吉井委員 それで、NPTに加盟していない国であっても、原発技術の供与とか原発建設を売り込むということが日本としてできるのかどうかという問題ですね。この点についてのお考えを伺います。

石田政府参考人 お答え申し上げたいと思います。

 まさに、インドにおいて今、原子力の平和利用に向けた取り組みが進められていることは御案内のとおりでございます。

 昨年の九月に、原子力供給国グループ、いわゆるNSGの臨時総会におきまして、インドの核実験モラトリアムの継続等を含むインドの約束及び行動というものが表明されたことに基づきまして、インドへの原子力資機材及び技術の輸出を可能とするという声明が採択をされたわけでございます。このNSGの合意を受けまして、米国、ロシア、フランスなど各国は、インドへの原子力協力を進める動きを活発化させているのは御案内のとおりでございます。

 我が国の原子力産業に対しましても、世界でもトップクラスの経験、実績を有しているということで、インド政府から、我が国の原子力発電技術への関心というものも示されているところでございます。我が国としても、原子力平和利用の技術、経験を、むしろ、インドの核不拡散、あるいは原子力安全及び核セキュリティーについての取り組みを促していくために使うという視点も重要ではないかというふうに考えております。

 ただ、御案内のように、原子力分野の協力に当たりましては、核不拡散、原子力安全及び核セキュリティーを確保するために、二国間の原子力協定を締結するなどの適切な仕組みが必要でございます。インドとの関係におきましては、そういった具体的な資機材あるいは技術の移転ということになりますと、先ほど述べました、インドによる約束と行動がどういうふうに実施されていくのかというようなことも含めまして、さまざまな要素を考慮して判断をしていく必要があるというふうに考えております。

吉井委員 重ねて伺っておきたいんですけれども、日本は今、軽水炉を中心とする原発推進路線をとっているわけですね。御承知のように、日本の軽水炉では、使用済み核燃料の中にたくさんのプルトニウムが生まれてくるわけですが、日本の今持っているプルトニウムの量だけで、長崎型原爆の六千発分を超えるプルトニウムを既に蓄積しているわけですね。

 核兵器開発と軽水炉の扱いというのは非常に悩ましい問題で、ですから、一方では、NPT体制にはインドは入っていない、しかし、そこに日本が軽水炉を輸出する。そうすると、当然のことながら、プルトニウムはどんどん蓄積されていくわけです。要するに核兵器の材料ですね。ですから、今、NPTに加盟していない国であっても、よその国はともかくとして、日本として原発技術の供給とか原発建設を売り込むことはできるのかどうか、このことについての考え方というのを重ねて伺っておきたいと思います。

    〔中野(正)委員長代理退席、委員長着席〕

石田政府参考人 基本的に、二国間の原子力協定が締結されていない国に対して、そういった資機材あるいは技術の移転を日本から行うということはできないというふうに考えています。

吉井委員 アメリカがダブルスタンダードをとっていることは公知の事実で、NPT体制に入っていない国であっても、原発を輸出しましょう、あるいは原発技術の協力をやりましょうという国と、やりませんという国とあるんですね。スタンダードが二つあるわけですね。インドの場合は、NPT体制には入ってこないんだけれども、米印原子力協力協定でやりましょう、こういうわけですね。この問題が、昨年二月十四日の予算委員会では、ちょうどいらっしゃいますが、高村外務大臣の方からも、インドについては大変悩ましいというお話がありましたけれども、実際、悩ましいところに今来ていると思うんですよ。

 東芝なら東芝を見たときに、もともとGEの技術で沸騰水型原発をやってきて、その技術を持っているわけですね。一方、三菱がもともと技術を得ておりましたウェスチングハウスと三菱とが関係が切れていますから、今度、ウェスチングハウスを子会社化するということで株式を持ったわけですね。このほか、日立はGE、三菱はフランスの昔のコジェマ、アレバとの協力関係にあります。

 そうすると、米印原子力協力協定でアメリカがインドに原発を輸出する。しかし実際には、その技術は日本の技術なんですね。今アメリカは、三十年近く、長く原発をつくっておりませんから、スリーマイルアイランドの事故以降新しくつくっていませんから、技術的には日本の方が技術を持っているわけですね。だから、日本の東芝などに頼らないことには、実際には、アメリカがインドに原発を輸出しようとしてもできないわけですね。

 そうすると、アメリカが輸出するから、日本は、日印間で協定を結んでいなくても技術供与するのか、あるいは原発の資機材を送るのか、原発の建設を行うのか、アメリカの下請という形になるか、あるいは、例えば東芝の子会社化したところがアメリカ政府の意向で輸出するとなったときに送るのかという、この問題が出てくると思うんですが、これについてはどういうふうに臨んでいこうとしているのか、伺います。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、委員御案内のとおり、米国との間で原子力協定を締結しておるところでございます。この協定に基づきまして、我が国から米国に移転されます原子力関連資機材、これは我が国の同意なく移転されることはございません。

 では、我が国がどうするかということでございますけれども、先ほどエネルギー庁長官の方からお答え申し上げましたとおり、インドは、核実験の一方的モラトリアムの継続、それから民生用原子力施設へのIAEAの保障措置の適用ないしはNSGのガイドラインの遵守、こういった厳格な輸出管理の実施を含みます約束と行動を表明してきているところでございます。我が国の関連資機材のインドへの移転など将来におけるインドとの原子力協力につきましては、先ほど述べましたインドによる約束と行動の実施といったさまざまな要素を考慮する必要があるということになろうと思います。

吉井委員 平和利用という点では、ウランの濃縮技術も平和利用なんです。それから軽水炉も平和利用なんです。しかし一方、濃縮によって生まれてくるウランも、それから原発使用によって生み出されてくる使用済み燃料の中のプルトニウムも、両方ともこれは核兵器の材料そのものなんです。

 一方ではNPT体制には入ってこない。ですから、平和利用の方でアメリカが協力されると、間接であれ、実際には、インドへ日本の原子力の技術とか資機材が流れていく、それは十分可能性があるわけなんです。平和目的ということであるはずであっても、しかし同時に、NPT体制に入っていないわけですから、それは核兵器につながっていくということを阻止することはできないわけですよ。

 そのときに、日本の政府としては、たとえ日本とアメリカの間で原子力協定があったとしても、そこで取り決めがあったとしても、アメリカがインドに技術輸出なり原発の資機材の輸出なり、あるいは原発建設にかかわるときに、日本は、これはだめなんですよということをきちんととるのかどうか。これは、核兵器廃絶ということを目指す日本の国としては大変重要な問題だと思うんですが、どういう考えかを改めて伺います。

中島政府参考人 先生が先ほど来から御質問なさっていることにつきましては、インドに対して、そもそも原子力の供給国全体としてどういうふうに臨むのかということが背景にあろうかと思いますので、ちょっとその背景となる事実関係を簡単に御説明申し上げさせていただければと思います。

 昨年九月に、原子力供給国グループ、この臨時総会が開かれたわけですけれども、我が国は、三点の観点を踏まえまして……(吉井委員「知っていますよ」と呼ぶ)はい。

 そういうことで、約束と行動の中には、先ほど申し上げましたとおり、インドの核実験モラトリアムの継続といった非常に大きな要素もございまして、これが今後どうなるかということを政府としては十分見きわめるということが必要であるというふうに思っております。

吉井委員 そこで、二階大臣、アメリカに引っ張られ続けていきますと、アメリカはダブルスタンダードで来るわけですね、このような矛盾にやはり直面するわけですよ。

 ですから、日米軍事技術協力の強化とか軍事秘密特許の要求が出されてきても、やはりこれははねつけて、非核三原則、武器輸出三原則をきちんと守っていくというこの態度を経産省の貿易政策の中で明確にして貫くということが大事だと思うんですが、ここは大臣に伺っておきたいと思います。

二階国務大臣 武器輸出三原則につきましては、佐藤内閣以来、歴代内閣がその都度確認をしてきておるところであります。我々においても、この武器輸出三原則というのは日本の国是でありますから、しっかりと守っていきたい、このように思っております。

吉井委員 この法案の背景に、世界の核兵器、通常兵器と安全保障貿易をめぐる状況の変化というのがありますけれども、ココムが一九九四年三月に正式に解体した後、核・生物・化学兵器など大量破壊兵器の国際管理体制の再編及びワッセナー・アレンジメントの発足のもとで、ある意味では、大国間の兵器貿易の駆け引きとともに、核のやみ市場の存在などが問題になってきました。

 本来、兵器の削減の方向に向かうべきワッセナー体制のもとで、実は、大国の軍産複合体による兵器市場の独占と武器輸出による利権確保が横行しているというのが現実の問題だと思います。

 そこで、二階大臣に伺っておきたいのは、日本としては、核兵器廃絶と通常兵器貿易の抑制へと、やはり大国が兵器の輸出でもうけるような仕組みから通常兵器を含めた貿易の抑制へと進んでいくリーダーシップをとっていく、そういう役割を果たすことが、被爆国である日本、そして九条を持つ国日本としてのやはり国際貢献といいますか、国際的に非常に大きな貢献をしていく問題ではないかと思うんですが、お考えを伺っておきます。

二階国務大臣 我が国は世界唯一の核被爆国であるということは、我々としては、歴史的にも重い我々自身としての責任も担っておると思うわけであります。

 したがって、先般も、オバマ大統領も、日本がそういう唯一の被爆国であるということを演説でも述べておられるように、認識を持っておられるわけでありますから、我々はそのことを着実に世界の人々に改めて認識をしていただくべく、懸命の努力をやはりすべきであるというふうに考えております。

吉井委員 オバマ大統領も、今まではパールハーバーなどでの被害者側だけの発想から、広島へ原爆を落としたという加害の歴史をきちんと考えていこうという、私はこれは非常に歴史的な変化であるというふうに思うんです。ですから、この点では、日本自身も、加害の歴史と被害の歴史をきちんと逃げないで見詰めることによって対処していくことが必要だということを申し上げて、質問を終わります。

東委員長 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。

 次に、川条志嘉さん。

川条委員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 本日は、不正競争防止法と外為法の質問をさせていただきます。

 この改正というのは、アメリカにおける経済スパイ法に匹敵するものであり、コンピューター技術の進歩による情報のデジタル化の現状とか、先日の北朝鮮によるミサイル発射等、北東アジアにおいても核の脅威というのが身近になってきた現状を考えると、企業の生み出す研究、技術の保護育成のための基盤整備の重要性というのは、非常に大きくなってきたような気がします。今回の改正は、この現状にようやく追いついたという感もあります。しかし、実効性については、この法律以上に、省令やガイドラインの作成など、もっと細かい現場での作業が必要になると思われます。

 その中で、まず不正競争防止法についてお聞きしたいと思います。

 二〇〇四年、二〇〇五年、二〇〇六年と、毎年のように改正が行われていますが、どちらかといえば、模造品とか海賊版対策という側面が多いように思います。そして、今回のはちょっと趣が違うかなという気がするんです。世界最大の金融危機を踏まえて、転職がこれからますますふえるであろうという社会状況、それと、若年者によく見られる傾向なんですが、就職よりも就業、こういった状況の中で、企業秘密というのをしっかりと守っていかなければいけない、この基盤整備の必要性というのがどんどん認識されてきたわけです。

 今回の法律の改正におきまして、企業秘密の保護の重要性に着目したというふうに聞いております。この企業秘密の保護の重要性についての、今回の改正についての見解をお伺いしたいと思います。

吉川副大臣 川条議員の御指摘のとおり、人材の流動化に伴う転職者数の増加や情報化の進展に伴いまして、近年、企業の競争力の源泉である営業秘密保護の要請がますます高まっております。こうした要請にこたえていくことが、私どもといたしましては重要であると考えておるところでございます。

 営業秘密は、これから生み出される個々の製品や財物よりも高い財産的価値を持つ一方で、侵害行為に対する予防措置には限界がございます。また、一たん侵害されてしまえば、その原状回復は極めて困難だと思っております。そうした状況を踏まえて、不正競争防止法におきましては、とりわけ違法性が高いと考えられる行為に限定して、営業秘密の侵害に係る刑事罰を設けているところでございます。

 このたびの改正におきましては、一つには、不正の競争の目的を改めて、不正の利益を得たり、保有者に損害を加えたりする目的をもってなされる行為を処罰の対象とする。二つ目には、営業秘密の管理任務におきまして、営業秘密を領得する行為、例えば、無断でコピー禁止の資料をコピーする等の行為をいうわけでありまするけれども、こういったことは新たに刑事罰の対象といたしておるところでございます。

 このような措置によりまして、営業秘密の侵害を実効的に抑止いたしまして、営業秘密の一層の保護を図ってまいりたいと考えております。

川条委員 ありがとうございました。

 余り厳格にし過ぎると、企業活動を規制する、労働者の権利の侵害という声が起こる。そういった中で、この法律の中で積極的に営業秘密の保護に取り組まれてきたことを心から感謝申し上げたいと思います。

 次に、現在、営業秘密とか技術情報というものは、コンピューター上のデータとして記録されていて、本当に、二百五十ギガバイトの大容量のハードディスクですらたばこ一箱に匹敵するぐらい、ちょっとポケットに隠して持って出たりしたらわからないという状況があります。

 今、副大臣の御答弁にもありましたが、実際の現場でのガイドラインの制定とか指針の作成、こういった具体的な対策と、それから会社をつくるときに、例えば、法務局に行く、税務署に行く、労働基準局に行って労災の手続をする、そういったことと同時に、危機管理に対しても、商工会議所かどこかでそういうガイドラインをもらってきて、社内規則をしっかりつくる、そういった必要性が出てくると思います。

 この点についてどのように取り組まれるのか、お聞きしたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、情報技術が大変進展をしております。大変重要な情報も極めて小型な記録媒体におさめられますので、それだけ営業秘密がいわば侵害をされますと、瞬時にその被害がさらに拡大をする、こういう問題がございます。

 そのために、今回、法律改正を提案させていただいたわけでございますけれども、これがやはり企業、中小企業、あるいは企業の中で従業員、さまざまな形でどういうふうに守るのか、何をしてはいけないのかということについて、きちっとした制度の啓蒙普及ということが非常に大事だと思っております。

 特に、中小企業の経営者の皆様に対して営業管理指針を作成して、これまでも普及啓発に努めてまいりましたけれども、本日も御議論いただきましたように、この内容につきましては、さらにわかりやすく、また内容を大幅に改定したいと思っておりますし、ただいま委員御指摘のとおり、例えば、全国にございます日本商工会議所といったようなところもうまく活用いたしまして、そこに行けば、いろいろなことについて直ちにアドバイスしてもらえる、そんなような仕組みづくりみたいなことについても、これから鋭意検討してまいりたいというふうに考えております。

川条委員 ありがとうございました。

 ぜひ、そこのところは、経済産業省主導でリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 次に、大学についても同じような側面があるわけでして、特に大学は、これから知識のプラットホームとして日本の社会の中で機能していかなければなりません。その中で、軍事転用可能なデュアルユースという技術、これを持つ研究室や研究機関がふえてくると思います。この学内管理の重要性についてお聞きしたいんです。

 特に大学は、海外からの人材を非常に幅広く受け入れていて、また、比較的外部との交流が高い。さらに、政府のお金、これは科研費という形で非常に多くを使っております。そんな中で、研究室内の情報管理、それから研究成果の公開、こういったものに対して一定のガイドラインを、これも経済産業省主導でつくっていただき、全国の研究所や大学における安全管理体制の構築というものを早急に行っていく必要があると思います。

 全国一斉にこういったガイドラインを配る、担当者を決めて講習を実施する、こういった情報管理の促進に対する取り組みの仕方についてお聞きしたいと思います。

谷合大臣政務官 御指摘のとおり、大学が、外国の企業との共同研究におきまして、安全保障上機微な技術を提供するような場合もあります。大学における安全保障貿易管理の徹底は重要と考えております。

 こうした問題意識に立ちまして、大学等におきます安全保障貿易管理の徹底を図るために、平成十八年以降、各都道府県におきまして、大学等を対象に安全保障貿易管理に関する説明会を開催してきております。

 また、平成二十年一月には、管理体制の構築など、安全保障貿易管理の観点から留意すべき事項を簡潔に解説した安全保障貿易に係る機微技術管理ガイダンスをまとめました。今、全国の大学等に送付するとともに、説明会等におきまして周知徹底を図っているところであります。

 引き続き、委員の御指摘のとおり、大学等におきます安全保障貿易管理の徹底を図ってまいります。

川条委員 ぜひ文部科学省とも連携の上、この安全管理の徹底をお願いしたいと思います。ありがとうございます。

 次に、刑事裁判の公開性についてお聞きしようと思ったんですが、先ほど近藤委員の質問にも出てきましたが、営業秘密の侵害等においては、民事訴訟については公開停止の規定が設けられているんですけれども、刑事訴訟においてはこのような手続は規定されていないんですね。公開停止の手続がないために、検察官の工夫、それから裁判官の訴訟指揮、こういった現場の運用に頼らざるを得ない。これが刑事告訴を思いとどまる一因になっていると指摘されています。

 被告の人権尊重とか裁判の公開性という憲法で保障された権利との兼ね合い、ここからは慎重に検討する必要があるとは思いますが、今回の法改正の実効性を確保するために、公開停止のための指針と手続を早急に作成する必要があると私も思います。

 そして、二階大臣が参議院において行われた報告にもありましたとおり、私もこの問題の解決というのは決して不可能ではないと考えております。産業の健全な発展のためにも、刑事裁判の過程において営業秘密の内容が明らかになることを防ぐための具体的な制度のあり方について、経済産業省と法務省が一緒になって検討を行い、できるだけ早く具体的な成案を得るよう努力していただきたいと私からもお願い申し上げます。

 次に、二階経済大臣にお伺いしたいと思います。

 今回、ようやくアメリカの経済スパイ法に匹敵する法律が提出された背景には、新経済成長戦略があると思われます。新経済成長戦略をつくられたときから二年、さらに、大臣に再び就任されてすぐ取り組まれた原油高対策や経済危機対策、追加経済対策、そして新経済成長戦略のフォローアップと、経済産業省主導で日本を牽引する大きな国家戦略が進んできたと私は思っております。

 この戦略に基づき、これから産学官の連携を進めるに当たって、さらに環境整備を進めていく必要があると思います。知的財産権の保護に対する大臣の思いと今後の決意をお伺いしたいと思います。

 さらに、あわせまして、長期的視野で国際競争力を増強するためには、知的財産権の保護とともに技術開発の育成が重要な課題になってきます。太陽光発電の例もありますが、世界最先端を走っていた技術が、予算を削っている間に他国に先を越されたという事例もあるんです。

 このように、太陽光発電に対しては、やはりこれからも世界最先端を走れるように、さらに研究開発、普及促進に向けて一層の取り組みをお願いしたいと思います。あわせて見解をお伺いしたいと思います。

二階国務大臣 知的財産の問題でございますが、極めて重要な役割を担っておると思います。

 ちょうど昨日でありますが、私は、鈴木特許庁長官に対して、もう少し国際的な枠組みで知的財産の問題に取り組むことができるように、積極的に日本が主導して国際会議を開くなど、その点に力点を置いてやっていただいたらどうだろうかということを、きのう本人に申し渡したところであります。今の御質問の趣旨も踏まえて、また先ほど後藤議員からも御指摘がありましたところも十分に勘案して、速いスピードでこうしたことに対応できるようにしたいと思います。

 太陽光発電の問題について、予算を渋っている間に抜かれてしまったではないかということでありますが、私は一概にそうは思ってはいないんです。思ってはいないんですが、今ドイツに抜かれていることは事実でありますから、あらゆる方策を講じて、世界第一位の地位を取り戻すべく、今全力を注いでおるところであります。

 今度の補正予算等におきましても、小学校や中学校、あるいは高速道路や、あるいはまた今まで思いも及ばなかったようなことについて、ここに太陽光発電をやったらどうだ、ここへつけたらどうだというような御意見、毎日のように経済産業省にそういう御意見が届けられております。

 私は、それらの問題について、これを採択して、前へ進めるべきものについてはちゅうちょすることなく前進をさせていきたいと思っておりますので、ただいまの御意見等を十分に勘案して対処してまいりたいと思っております。

川条委員 ありがとうございました。知財の国際会議等、二階大臣ならではの企画力、そして実行力にこれからも期待したいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

東委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

東委員長 これより両案に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、参議院送付、不正競争防止法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、中野正志君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。太田和美さん。

太田(和)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    不正競争防止法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  経済のグローバル化の進展に伴い、技術やノウハウ等の知的資産の価値がかつてなく高まる中、企業の競争力の源泉である営業秘密が適正に保護される必要性が高まっていることにかんがみ、政府は、本法施行において、以下の諸点について適切な措置を講じるべきである。

 一 営業秘密侵害に対する刑事罰の強化に当たっては、その趣旨に関し、事業者、労働者双方に周知徹底を図るとともに、労働者の間に疑念や過度の萎縮が生じることのないよう、労働者の正当な行為や日常業務が処罰対象とならないことを指針等により明確に示すこと。また、企業内における営業秘密の取扱いについて、労使間の協議等により理解の促進が図られるよう努めること。さらに、今後の技術進歩や経済社会情勢の変化等を踏まえ、営業秘密の定義や保護の在り方について十分な検証を行い、必要に応じ見直しを行うこと。

 二 国民生活の安心や安全を損なうような事件が次々と明らかとなる中で、労働者等による公益通報の重要性が増していることにかんがみ、公益通報者保護制度の趣旨を勘案しつつ、必要に応じて柔軟な法の運用に努めること。

 三 中小企業や下請事業者の技術力が我が国産業の強みであることを踏まえ、これらの者の保有する営業秘密が不当に流出することのないよう、中小企業の実態に即した適切な措置を講じること。また、元請企業等の有力な取引先による営業秘密侵害に対しては、厳正に対処すること。

 四 営業秘密侵害に係る刑事訴訟手続については、公開裁判を通じて営業秘密が公になるとの懸念から、被害者が告訴を躊躇していると見られることにかんがみ、関係各省庁間において、営業秘密保護のための特別の刑事訴訟手続の在り方等について、早急に検討を進め、適切な法的措置を講じること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、二階経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。二階経済産業大臣。

二階国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

東委員長 次に、内閣提出、参議院送付、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

東委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

東委員長 次に、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。河村内閣官房長官。

    ―――――――――――――

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河村国務大臣 ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる独占禁止法については、平成十七年の一部改正法の附則第十三条において、「施行後二年以内に、新法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされております。

 施行後二年以内の見直しの結果、公正かつ自由な経済社会を実現するために競争政策の積極的展開を図ることが必要であることにかんがみ、排除型私的独占、一定の不公正な取引方法等に対する課徴金制度の導入、企業結合に係る届け出制度の見直し等の所要の改正を行うため、政府といたしましては、独占禁止法等の一部を改正する法律案を第百六十九回国会に提出いたしましたが、継続審査となった後、第百七十回国会において廃案となり、成立を見るに至りませんでした。しかしながら、一刻も早くその実現を図るために、所要の修正を加えた上で、ここにこの法律案を提案し、御審議願うこととした次第であります。

 次に、この法律案について、その主な内容を御説明申し上げます。

 第一に、課徴金の適用対象について、排除型私的独占及び優越的地位の濫用など一定の不公正な取引方法を新たに課徴金の対象とすることとしております。

 第二に、不当な取引制限において、主導的役割を果たした事業者に対する課徴金を割り増す制度を導入することとしております。

 第三に、課徴金減免制度について、減額対象事業者数の拡大、企業グループ内の事業者の共同申請制度を導入することとしております。

 第四に、課徴金の納付を命ずる手続について、会社分割等により事業を承継した会社に対して納付を命ずる制度の導入等をすることとしております。

 第五に、企業結合に係る届け出制度等について、会社の株式取得に係る事前届け出制度の導入、株式取得会社の届け出基準の変更、合併、分割及び事業等の譲り受けの届け出に係る規定の見直し等をすることとしております。

 第六に、不公正な取引方法による侵害の停止または予防に関する訴訟上の救済を円滑化するため、文書提出命令の特則を導入することとしております。

 第七に、不当な取引制限の罪等に対する懲役刑を引き上げることとしております。

 なお、これらの改正は、一部を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。

 以上でございます。ありがとうございました。

東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

東委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十四日金曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十八分散会


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