衆議院

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第13号 平成22年5月21日(金曜日)

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平成二十二年五月二十一日(金曜日)

    午後一時三分開議

 出席委員

   委員長 東  祥三君

   理事 柿沼 正明君 理事 北神 圭朗君

   理事 杉本かずみ君 理事 三谷 光男君

   理事 吉田おさむ君 理事 塩崎 恭久君

   理事 平  将明君 理事 佐藤 茂樹君

      石井登志郎君    石山 敬貴君

      太田 和美君    加藤  学君

      笠原多見子君    金森  正君

      川口  博君   木村たけつか君

      近藤 和也君    近藤 洋介君

      柴橋 正直君    菅川  洋君

      平  智之君    高橋 英行君

      高邑  勉君    中野渡詔子君

      永江 孝子君    花咲 宏基君

      福嶋健一郎君    藤田 大助君

      松岡 広隆君    向山 好一君

      森山 浩行君    山本 剛正君

      湯原 俊二君    柚木 道義君

      梶山 弘志君    近藤三津枝君

      高市 早苗君    谷畑  孝君

      永岡 桂子君    西野あきら君

      額賀福志郎君    江田 康幸君

      吉井 英勝君    園田 博之君

    …………………………………

   経済産業大臣       直嶋 正行君

   国務大臣         枝野 幸男君

   内閣官房副長官      松野 頼久君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   経済産業副大臣      増子 輝彦君

   防衛副大臣        榛葉賀津也君

   外務大臣政務官      吉良 州司君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   経済産業大臣政務官    近藤 洋介君

   経済産業大臣政務官    高橋 千秋君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          柴生田敦夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     寺坂 信昭君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房技術監) 秋山 義孝君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  稲富 修二君     湯原 俊二君

  斉木 武志君     加藤  学君

  白石 洋一君     高橋 英行君

  田嶋  要君     福嶋健一郎君

  高松 和夫君     中野渡詔子君

  山本 剛正君     永江 孝子君

  塩谷  立君     谷畑  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤  学君     菅川  洋君

  高橋 英行君     白石 洋一君

  中野渡詔子君     高松 和夫君

  永江 孝子君     山本 剛正君

  福嶋健一郎君     石井登志郎君

  湯原 俊二君     石山 敬貴君

  谷畑  孝君     塩谷  立君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     田嶋  要君

  石山 敬貴君     稲富 修二君

  菅川  洋君     近藤 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 和也君     斉木 武志君

    ―――――――――――――

五月二十日

 地域を支える中小業者の支援に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第九六九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

東委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省研究開発局長藤木完治君、経済産業省貿易経済協力局長柴生田敦夫君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長寺坂信昭君及び防衛省大臣官房技術監秋山義孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

東委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高邑勉君。

高邑委員 初めて質問に立たせていただきます、高邑勉と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 思えば、昨年の今ごろは、いつあるともわからない総選挙に向けて、ここにいる多くの議員がそうであるように、私も、選挙区内をくまなく自転車で走り回っておりました。時には、二十人ぐらい若者を引き連れて、一緒に自転車で走っておったこともございました。

 私は長州の出身でありますので、みずからこれを自転車奇兵隊と名づけまして、そう言っていたのは私だけでしたけれども、恐らく、多くの同僚議員がそうであったように、昨年最も自転車の恩恵を受けたのは私たちではないかというふうに思っております。

 本日は、その自転車に関係をいたしまして、競輪について質問をさせていただきます。

 私の地元防府市にも、昭和二十四年に競輪場ができました。これまで、約五十億円余りも、市の財政に、繰り出し金として財政の貢献をしてきたわけであります。しかし昨今、平成十六年になりますと、本場開催では、わずかに車券の売り上げは十六億円、さらに、平成二十年になると九・七億円にまで減ってしまっているんですね。売り上げも、全部の場外も入れて百十億円くらいまで減っているというふうに聞きました。

 また、従業員も、この同じ五年間に、百八十四人いた方が百二十五人までリストラをし、最低賃金に近い、全国でも低い水準の賃金に甘んじて頑張っている職員がいらっしゃるんです。施行者も、固定費の削減努力に励みながら、平成十九年度の制度改正で導入された交付金の還付措置で何とか黒字を維持しているというのが現状であります。

 お手元にお配りをしました資料をごらんください。

 これを見ますと、平成三年度、一番左の上のところでありますが、一兆九千五百億円の売り上げがあった。これがピークであります。そして、右の方に目を転じますと、昨年度、二十一年度の車券の売り上げは、七千二百億円。約三分の一ぐらいにまで落ち込んでしまっているわけなんです。

 施行者がどういう状況かというのを下のグラフで見ておりますと、平成三年度はかなり利益が出ていますね。総合収支で千五百億の黒字だったわけでありますが、平成二十年度は二百四十一億円の黒字にはなっておりますけれども、その下の数字を見ていただきたいんです。

 二十年度の赤字施行者数というのが、四十六施行者がいる中で三十三。ほとんどが赤字に追い込まれてしまっているわけなんですね。右の方に目を転じますと、還付金ありの場合は四十六分の二ということで、還付金措置によって何とか赤字を免れているのが現状であります。平成十四年には、西宮、甲子園、門司の競輪場が閉園に追い込まれました。本年三月の花月園の競輪場が閉鎖をしたのは記憶に新しいと思います。

 黒字転換の見込みがなかなか立たない状況では、存続事由が見当たらないとして退場していく施行者があらわれている。このままでは、だれもが思っていますね、競輪このままじゃなくなっちゃうんじゃないか、そんな不安で夢も希望も抱けない、それが今の競輪の現場ではないかと思います。

 平成十九年度の制度改正で何とか、交付金措置、還付金措置がとられて黒字になっているというふうに申し上げましたけれども、これはあくまでも時限的な措置であります。平成二十三年度にはその時限措置も切れる、財源も枯渇するということが見込まれています。

 そんな中で、私新聞を見ておりましたら、五月十八日の朝日新聞に、「競輪を運営するJKAが行っている機械工業振興補助事業を三分の二減額する。その六十億円ほどを、競輪の集客強化に乗り出している地方自治体に配分する。」という記事を拝見いたしました。

 これは、四月九日に経済産業省が取りまとめた「独立行政法人・公益法人の見直しの「基本」と「三原則」」、いわゆる直嶋三原則を受けての改革案であると伺っておりますが、現行制度のもとでは施行者にとって死活問題のこの財源措置について、その行方が注目をされておるわけであります。

 そこで、お尋ねをいたします。

 この補助金の見直し、交付金還付措置の延長について、具体的にはどのような方向性をお示しになられているのか、教えてください。お願いいたします。

直嶋国務大臣 今の高邑議員のお尋ねでありますので、先般まとめましたJKAの改革案も含めて御説明をさせていただきたいというふうに思います。

 今お話しのように、五月の十七日に、経済産業省所管の公益法人の改革を五十選んで、それぞれについて改革案を取りまとめたところなんですが、その中のJKAについても、競輪事業の改革プランを取りまとめまして、発表しました。

 その内容を簡単に申し上げますと、競輪の売上金の一部を使っております競輪補助事業について、来年度から、機械工業振興補助事業について、交付決定額の三分の二の補助を削減する。これによりまして、社会保障関係のものを合わせて申し上げますと、補助事業全体でいいますと、この削減部分は三分の一になります。この三分の一を削減するということを決めました。

 それから、補助事業についてもう一点補足いたしますと、この補助事業の選定、評価を行う、外部有識者から成る補助事業審査・評価委員会というのをつくっておりますが、これについても、より審査の透明化、厳格化を図っていくということもあわせて取り組みました。

 そして、競輪を主催する地方公共団体の皆さんへの交付金還付制度でありますが、御指摘のように、これは平成二十三年度までの時限措置ということにさせていただいていますが、この補助金改革の成果を活用して、二十四年度以降、制度化するといいますか、恒久化を目指したいということで取りまとめさせていただきました。

 現在、事業仕分けの第二弾をやっておりまして、明日だったと思いますが、JKAも仕分けの対象になっております。したがいまして、今申し上げたような経済産業省としての改革の考え方も皆さんに御説明した上で、仕分け人の方とも議論をしていただくということになっております。

 いずれにしても、我が省としては、今申し上げたような方向で、この交付金の還付制度については、暫定ではなくて、制度として二十四年度以降実施をしたいという考え方でございます。

高邑委員 ありがとうございます。

 まさに現場の声を反映した、将来に向けて競輪事業の活性化を支援していこうという経済産業省、特に大臣のリーダーシップ、英断であると評価できるんじゃないかと私は思います。

 補助事業の削減については、三分の一にしてしまって大丈夫なのかという声も聞かれるかもしれませんけれども、当てにしておられる多くの関係者の方からの抵抗も予想されますが、しかしここは、しっかりとリーダーシップを期待したいと思います。

 さて、ただいま言及がございました競輪の補助事業についてでございますが、実は競輪は、発足以来、戦後復興期を経まして、機械振興のみならず、スポーツ振興や福祉の増進など、補助事業を通じて社会還元がされてまいりました。その総額は、機械振興で八千九百億円、公益の増進事業で八千三百億円、地方自治体の一般会計への繰り入れでいくと何と総額二兆九千億円にも上る巨額の貢献をしてきたわけであります。

 小さな事業に目を向けますと、例えば、私の手元に今このパンフレットをとってきたんですが、国際ボランティア学生協会という団体がありまして、この学生たちは何をやっているかといいますと、NPO組織ではありますが、災害が起きたときに手弁当で現場に出向いて、現場の重機が入れないようなところまで出向いていって、ヘドロのかき出しとか、家の下まで潜っていって泥を一生懸命運び出したり家財道具を運び出したり、避難のお手伝いまでしているんです。若者の実力、力を必要とする、マンパワーを最大限に生かして災害救援活動を行っているのが、このIVUSAと言われる国際ボランティア学生協会さんであります。

 なぜこの話をするかといいますと、実は、私が住んでおります、競輪場のある防府市でありますが、昨年の七月に集中豪雨災害に見舞われました。このときにも、私が、ある方を通してたまたま知り合ったものですから、来てくれと言ったら、延べ百人の学生が現場にすぐに来てくれました。一週間泥だらけになりながら、一緒に泥だらけになって被災地の人たちの支援をしてくれたんですね。

 現地でこれを受け入れた被災地の住民の皆さんは、こんなすばらしい若者たちがいるのか、自分たちは一人じゃない、そうやって勇気づけられたんです。中には、こんなすばらしい若者を支援している、それもこの競輪の補助事業の一端としてあるということを、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。

 そのほかにも、盲導犬の育成とか福祉車両の整備とか、社会のさまざまな場面で貢献をしてきたこの補助事業のいい部分、これだけ役に立ってきたんだということをぜひ評価して、もっと広く社会にPRをしていくべきではないかと私は思っております。

 さて、ここからは、より肝心な、競輪をこれからいかに発展させていくのかについてお聞きしたいと思っております。

 自転車競技法の第二十三条には、経済産業大臣は、全国を通じて一個に限り、競輪振興法人を指定することができると規定されております。第二十四条にはその振興法人の業務が定められております。

 しかし、これをよく読んでみると、不思議なことに、この競輪振興法人の業務の中に、「競輪の公正かつ円滑な実施に資する業務」とは書いてあるんですが、競輪そのものを振興するというふうな表現は一切ないんですね。恐らくこれは、一義的には、自転車競技法の第一条に施行者たる地方公共団体が定義されているわけですから、施行者が主体的に取り組むことが重要なのは論をまちません。しかし、こういった法体系では、競輪振興の権限とその責任の所在というのがあいまいなのではないかと私は思うんです。

 競輪全体の振興に責任を負うのは一体だれなんでしょうか。文字どおり、競輪振興法人と定義づけられている財団法人JKAではないかと私は思いますけれども、関係者に聞いてみると、競輪界がもっと発展、振興していくためには成長戦略本部が要るんだという声が随所に出てまいります。赤字になったときも、何か事業をやって失敗したときも、それはもう全部施行者の地方公共団体のせいなんだよということは、恐らく当たらないんじゃないかと思うんですね。施行者の皆さんにも、当然、自分たちが事業をやっているんだ、経営をしているんだという意識の醸成と専門人材の育成が求められると思います。

 しかし実際、地方の競輪場のトップというのは市役所から大体来られておりますから、必ずしも経営センスがあったり、ましてや、二、三年でかわってしまうというのが現状ですよ。そうなれば、例えば新規事業に失敗したりなんなりしたときに、赤字になったら何か還付金措置で還元して救済されるという、まあ、どこかの省であるような護送船団方式になってしまっては、これは元も子もないんじゃないかと思うんですね。こういう制度疲労が既に起きているということも指摘させていただきたいと思います。

 そこで、お尋ねをします。

 現行、競輪にまつわっては、さまざまな関係団体がございます。競技会とか選手会とか施行者協議会さんとかいろいろな団体がありますが、競輪の振興という目的意識を統一させて業界全体を盛り上げていく仕組みはどのようになっており、またどのように実際機能しているのか、お答えをいただきたいと思います。

近藤大臣政務官 高邑先生にお答えいたします。

 大変現場の実態に根差した、そして問題意識を踏まえた御質問でございますが、全体の戦略なりはどういう形になっているのかという御質問でございます。

 まず、基本的な認識でありますけれども、第一義的には、やはり競輪を主催する地方公共団体が、共通の問題意識のもとで一致して改革に取り組んでいただきたい、これが大前提であります。しかしながら、関係団体が一つの目的意識のもとに競輪を振興していくということも極めて重要であろうかと思っております。財団法人JKAなどの関係機関は、地方公共団体の方々とともに、円滑に支援、協力することが極めて重要だ、こう考えております。

 具体的には、選手会、JKA、施行者団体組織の代表の方々と競輪政策決定会議というものも設けておりまして、この中で重要な政策も話し合われているところであります。

 また、五月十七日に経産省が発表いたしました競輪事業の改革プランにおいても、競輪活性化の推進や、意欲を持って改革に取り組む地方公共団体への重点的な支援の方針を盛り込んだところであり、今後は関係機関との連携を密にし、効果的な活性化策を経産省としても検討してまいりたい、このように考えております。

高邑委員 ありがとうございました。

 JKAに企画機能とかマーケティング機能をより持たせる一方で、やはり責任の所在というのをはっきりさせていくべきではないかと私は思っておりますので、ぜひ、この仕分けを通して、JKAさんにもより競輪の振興に集中できるようなそういう組織へと育っていただきたい、変わっていただきたいというふうに、現場の声を代弁させていただきたいと思います。

 さて、競輪といいますと、どうしてもギャンブルというイメージがあります。競輪場には固定の中高年のファンのみの姿が見られるという、決して明るいイメージにはなっておりません。しかし、競輪という自転車競技そのものの魅力は、これはアテネ・オリンピックの銀メダリストの長塚智広選手に聞いたんですけれども、時速七十キロで、肉弾戦なんですよ。ぶつかり合うんです。はじき飛ばし合ったりする。中には落車する人もいる。まさにこれは格闘技のK―1みたいなんだと。

 ヨーロッパでどうなっているかといいますと、ロードレースとか室内バンクの競走は、実は彼らというのはスター選手なんですよ。私もDVDを見ました。そうすると、そこでは、例えば会社の接待とかデートとか、まさにシャンペンを飲んだりコーヒーを飲んだりしながら、みんなで楽しく競輪を見ているんですね。競輪というか自転車競技を見ているわけです。まさにこれはエンターテインメントなんですよ。これはまさにスポーツショーと言っても過言ではないと思います。

 今、オリンピック競技にもなっている競輪という名前がついた競技こそ、従来のギャンブルというイメージから脱却して、スポーツエンターテインメントとして再定義するべきではないかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

 競輪選手は、今も後ろで太田先生が言っていましたけれども、本当に格好いいんですよ、みんな筋骨隆々としていまして。そうすれば若い方々も女性も競輪場に多くの人が足を運ぶようになるんじゃないかと私は思います。

 また、海外の選手も、日本の競輪は賞金が出ますよね。であれば、多くの選手が、今も一部導入されておりますけれども、喜んで走ってくれるそうなんですよ。そうすれば、世界じゅうからスター選手をこの日本の自転車競技界に呼び込んで、競輪の世界に呼び込んで、日本の競輪はテニスでいうとウィンブルドンみたいになっちゃう、こういうことも可能なんじゃないかと私は思っております。

 ついでに申し上げれば、この競輪、まさに合法的にお金もかけられるんです。ギャンブルもできるんです。そういう意味でいうと、世界に漂っている数千兆円と言われるホームレスマネー、ギャンブルマネーと言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、こういった外部のお金も導入することができるんじゃないか。これも一つの成長戦略ではないかと私は個人的に思料しておるところであります。

 時間があれば、この補助事業についてもう少し質問をしたかったんですけれども、それは仕分けの方で、そして三原則に基づいて前向きな議論が行われているということでありますので、質問を省略させていただきます。

 私は、競輪を本当に振興させていくためには、これは経済産業省だけの取り組みじゃ足りないと思うんです。今申し上げたウィンブルドンみたいな、夢を実現させていくには、例えば、これは観光庁とか、今はありませんけれども、恐らく将来的には日本にもスポーツ省みたいなものができて、そういった他省庁と連携して全体で盛り上げていこうじゃないか、こういう議論が必ず必要になってくると思うんですね。

 全国五十万の競輪ファンの皆さんや、今競輪に携わっているすべての関係者の皆さんが、再び、よし、競輪には夢がある、あしたがある、そう思って日々の仕事に頑張っていただけるように、組織の形態、制度そのものを見直すいいきっかけにぜひしていただけたらと思います。

 かつての栄光ではありませんけれども、競輪は金の卵を産む打ち出の小づちと言われていた時代もあるわけでありますから、地方のためにも、ぜひここで、我々、この経済産業委員会に所属する議員全員の英知を結集して、政務三役のリーダーシップのもとに、ぜひとも再びチーム競輪として金メダルを目指していこうではありませんか。

 以上で私の質問と御提案を終わらせていただきますが、では、大臣から一言、御感想を賜れたらと思います。

近藤大臣政務官 大変熱い思いで語っていただきまして、感動して拝聴しておりました。

 御指摘の発想というのは、大変重要な考え、問題意識だと認識しております。通常のナイター競輪の時間帯よりも遅いミッドナイト競輪であるとか、さらには女子競輪であるとか、こういったものも今検討をしているところでございます。さらには、インターネットによる車券の販売等、こういったアイデアもあるやに承知しております。

 先生のそうした視点も踏まえて、当省としても新しい取り組みを応援してまいりたいと思いますし、引き続き御提言をいただければと思います。

高邑委員 仕分けを契機に、ぜひこれからみんなで頑張ってまいりましょう。ありがとうございました。

東委員長 次に、塩崎恭久君。

塩崎委員 自由民主党の塩崎恭久でございます。

 元気な方の後で、きょうは、枝野大臣に一般質問で、初めてこういう形で、競争政策担当大臣としても来ていただきましたし、少し落ちついて議論をしたいということで、ぜひ両大臣にお答えをいただければというふうに思っております。

 枝野大臣に行く前に、まず、新政権ができて、本当は去年の臨時国会のときに聞けばよかったんですが、残念ながら出る機会がなかったものですから、きょうこうして初めて、新たな政権の中での経済産業省の位置づけ、これは我々経産委員会としては大変大事な問題でもありますので、この役割を大臣はどのように、今大臣として思っていられるのか、まず御認識をお伺いしたいと思います。

直嶋国務大臣 経済産業省の位置づけという御質問です。

 設置法にもございますが、経済産業省は、国富の確保、拡大を目的に、一つは民間の経済活力の向上、二つ目に対外経済の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展、三点目がエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保等を任務とするというふうに思っております。

 特に、私が鳩山総理から経済産業大臣を仰せつかりました際には、四点、総理から重点的にやってほしいということで御指示がございました。それをあわせて申し上げますと、第一点目が、アジアを視野に入れ、日本の強みを最大限に生かした新たな成長戦略を策定すること。二点目に、中小企業の総合的な支援を行う。三点目が、資源やエネルギーの安定供給確保、再生可能エネルギーの普及。四点目が、地球温暖化対策の推進。これらに重点的に取り組むよう指示を受けております。

 したがいまして、これらの御指示も踏まえて、国富の確保、拡大のためにしっかり取り組んでまいりたいというふうに思っております。

塩崎委員 しっかり目標を持っておやりになるということで、総理からも指示を受けたということでありますから、それはそれで大変結構で、意気込みを感じるわけでありますけれども、問題は、大臣としてあるいは役所としてそれをどう実現していくかということなんです。やはり生かすためには仕掛けが要る。

 最近、どうも新聞などを見ておりますと、残念ながら、直嶋大臣の御発言とか、あるいは経済産業省の我が国の経済政策におけるプレゼンスというか、そういうようなものを少し感じられない思いをしています。それは仕掛けが少し足りないんじゃないかなと思うんですけれども、今、御自分の目的とされたものを実現するために十分仕掛けがあると思っていらっしゃいますか。

直嶋国務大臣 いろいろな角度から、また御批判等もちょうだいできればと思っていますが、特に、先ほど申し上げた総理の御指示を踏まえまして、今、例えば新しい成長戦略を取りまとめていまして、これは六月に内閣全体の政策として発表させていただくという予定になっております。

 また、中小企業についても、リーマン・ショック以来の不況の中で、大変多くの中小企業の皆さんが厳しい中で頑張っておられます。それらの人に対する、例えば金融面での手当ても、保証制度もほぼ全業種に拡大をさせていただいて、昨年の十二月、ことしの三月の年度末も着実に乗り越えてきたというふうに思っております。

 三点目の安定供給も、今、特に資源国とか産油国を中心にさまざまな経済対話を重ねながら、安定供給のために努力をさせていただいていますし、四点目の温暖化対策も、きょうから参議院で温対基本法の審議も始まりました。

 精いっぱいの努力をさせていただいているつもりでございますが、さらにこうした方がいいよという御批判等があれば、それは謙虚に承りたいというふうに思っております。

塩崎委員 お人柄ですから、頑張っていられるのはよくわかっておりますけれども、残念ながら、例えば経済財政諮問会議というのはなくなりました。この経済財政諮問会議は、法律でもって大臣を指定して、経済産業大臣はその指定された大臣、つまり指定席があって、何かあれば必ず発言をされるというポジションにおられたわけでありますけれども、今はメーンテーブルに着いているという位置づけが、大臣の場合には余りないように思えるわけで、つまり、国家戦略、今は室ですが、それから行政刷新会議、これらでの定席というものが、指定席がどうも見えない。

 その点について、いかがでしょうか。

直嶋国務大臣 今、塩崎議員が御指摘のとおり、経済諮問会議はなくしたわけでありますが、これは、民主党が野党の時代から主張させていただいていました国家戦略担当大臣、それから、きょうは枝野大臣がお見えですが、行政刷新担当大臣を置きまして、特に先ほどお話しした、成長戦略のような内閣全体で取り組むものについての基本的な戦略を戦略担当大臣がやるということになっています。

 ただ、そうはいっても、戦略担当大臣がすべてやれるわけではありませんので、例えば成長戦略で申し上げますと、関係する閣僚委員会といいますか、成長戦略の本部をつくっておりまして、総理が先頭に立ってやる。その中で私自身は、戦略本部の議長が総理でございますので、副議長の一人になって、全体的なことも把握しながら、経産省の関連のところを特に重点を置いて今取り組んでいる、こういうことでございます。

塩崎委員 成長戦略本部というのは、多分、全大臣が入っていられると思うんですね。私も短いながら官邸の経験をして、大体全大臣が入っているものというのはほとんど意味がないということはよくわかっていられると思うんですね。

 それで、我々は、例えば四大臣会合とかそういうのをつくって、今は閣僚会議とかお名前を変えているだけで、やはり全大臣ではだめだというのがよくわかった上で、限られたメンバーでやるというのをやってきた、それを今別の名前で呼んでいるだけのことをおやりになっていると私は思っているんですけれども。

 それはともかく、経済財政諮問会議というのは、法律で、実は経済産業省設置法に定めがあった。今度、政治主導確立法案で一緒に設置法が直されるのを御存じですか。

直嶋国務大臣 はい、存じ上げています。

塩崎委員 つまり、諮問会議がなくなるということで、それに応じて、経済産業省だけ、指定席といっても指名された指定席を持っている経済産業省だけはこういうくだりがあったんですね、「経済全般の運営の基本方針の審議に係る企画及び立案への参画に関し、所掌に係る政策の企画を行うこと。」というのが入っていましたが、これが削除をされます。ですから、言ってみれば、全体の経済政策の中における位置づけをみずからの設置法で明らかにしていたわけでありますけれども、これがなくなる。

 ですから、特別に重要な役割が法律上宣言されていたものがなくなる、こういうことでありますから、そうなると、今おっしゃったように、副本部長みたいな形でほかの役所と一緒に並んで入るとか、そういうようなことはあっても、やはり一番メーンの経済政策を決める場、諮問会議をやめるのはそれは政権の選択ですからいいんですけれども、では経済政策をつくるのはどこが担うか。それは多分、戦略室、今度戦略局になるのかもわかりませんが、そこか、枝野さんがやっていらっしゃる……(発言する者あり)じゃないのか、あれは仙谷さんか。何だかよくわからないぐらいいろいろ変わっているわけでありますが、刷新会議がある程度何かやるのかもわかりませんが、いずれにしても、両方に定席がありますか。

直嶋国務大臣 基本的に、今御指摘の経済政策については、私は参画しているという意識でございます。

 それで、先ほど成長戦略本部のお話を申し上げましたが、塩崎さんが御指摘のように、関係閣僚を軸にしながら必要なことをやっていまして、これは例えば、自民党政権のころに、関係閣僚会議といいますか、さっきの本部のお話もありましたが、たしかFTAについて、関係する閣僚で人数を絞っておやりになりましたよね。そういう制度をおつくりになったんです、途中で。

 私、実は野党でしたけれども、そういう運びを見ていまして、非常にあれはいいなと。(塩崎委員「ODA」と呼ぶ)ODAもそうですね。そういうことも踏まえて、やはりできるだけ関係するメンバーで重点的に議論できるような仕組みをつくろう、こういうことで今運営させていただいております。

塩崎委員 私は、地球温暖化のための四大臣会合とか、今のODAも、実は外務副大臣のときにそれをいろいろやってつくりました。あくまでもちゃんとしてつくって制度化すればいいんですが、いろいろ法律でもって制度化をされようとしている新政権の中で、経済産業省の位置づけはもう少しあってもいいんじゃないかなという意味で申し上げているわけであって、一生懸命ディフェンドするのはわかりますが、やはりもっとちゃんとした正しいポジションがあってもいいんじゃないかと思うんです。

 どうも、何でこうなっているのかなというと、やはり経済界の声をちゃんと吸い上げて政策にするという制度化されたものがないというのがこの政権の特徴だというふうに我々はとらざるを得ないのかな。多分、経済界の人もみんなそうとっているし、一般の人たちも何となくそうとって、アンチビジネス的なところがたくさんあって、あんたたちは供給サイドの人でしょうとかいろいろなことを言っているわけですから、そういう感じがするので。

 直嶋大臣は経済を、トヨタの方ですからわかっていられるので、やはりきちっとした声を出すならば、制度化された場というものを設けて、経済産業省はもっと大臣を先頭に頑張るべきじゃないか、こういう意味で申し上げているのであります。

 きょうはこれを延々とやるつもりはありませんので、何しろ法律的には何もなくなって、税調でも要求官庁ということになるわけでありますから、本当に成長戦略、成長戦略と、競輪まで成長戦略になるそうでありますが、本当に経済政策を仕切ろうと思うならば、今の仕組みでは力不足じゃないかなというのを感じているので申し上げたということであります。

 それで、きょうは枝野大臣にもおいでをいただいたので、そちらの方に話を移してまいりたいと思っています。

 新成長戦略は去年の十二月に出てきたもので、これで第三の道とは一体何やという話が随分出ましたが、その中でよく、これまでの自民党、自公政権を、市場原理主義だ、格差が生まれた、いろいろな話をおっしゃって、御批判を受けました。

 それはそれとして、しかし、よく考えてみたら、市場原理主義とは何じゃろうかと。どこが市場原理主義で何が悪かったのかということがわからないままに、恐らく、みんな全然違う考えを持ちながら、何となく市場原理主義というのは悪いんだということで批判をされ、この新成長戦略も、「第三の道」の説明のところに、「私たちは、公共事業・財政頼みの「第一の道」、行き過ぎた市場原理主義の「第二の道」でもない、「第三の道」を進む。」、こう書いてあるわけです。そうなると、市場原理主義というのをきちっと定義してもらわないと、第三の道とは何じゃと、もう大分いろいろな委員会で、予算委員会も含めて議論がされてきましたけれども、よくわからないんですね。

 そこで、市場原理主義とは何なのか、そして特に、行き過ぎた市場原理主義というのは何なのか、これをちょっとお尋ねしていかなきゃいけないし、鳩山総理はこの成長戦略を発表したときに何と言ったかというと、これからは人間のための経済でなきゃいかぬ、友愛精神に基づいた人間のための経済という経済政策をおやりになると言うので、これまたよくわからないものであるものですから、市場原理主義とは何か、特に、行き過ぎた市場原理主義とは何か。友愛精神に基づいた人間のための経済、お立場上、これを担うだろうと思いますが、一体何なのかというのを両大臣から簡潔にお話しいただきたいと思います。

直嶋国務大臣 塩崎議員御指摘のように、市場原理主義という言葉について、いろいろな文脈や意図によってさまざまな意味を持っているというふうに思っています。一般的に申し上げますと、経済合理性を追求して、市場に干渉せず市場に任せれば、国民に最も繁栄をもたらすという立場を言っているのかなというふうに思っています。

 これに対して、先ほど総理の言葉がありましたが、総理がおっしゃっている意味は、市場における自由な経済活動が国民生活を豊かにする、このことは当然のことなんですが、そうしながら、自明のこととしつつ、雇用や人材育成といったセーフティーネットを整備して、例えば食品の安全でありますとか、治安の確保でありますとか、あるいは消費者の視点等を重視した、国民の暮らしの豊かさに力点を置いた経済、こういう意味合いで使っておられるというふうに理解をいたしております。

枝野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 市場原理主義の定義ということについては、ただいま経済産業大臣がお答えになったとおりだと私も思っております。

 あえて行き過ぎた市場原理主義という言葉を使っていることは、これも大臣おっしゃられたとおり、市場原理主義というのは多義的に使われておりますので、厳密な意味で市場原理主義というのは先ほど直嶋大臣のおっしゃられたとおりなんですが、一般的には、市場原理主義的な、もうちょっと、すべてが市場に任せているというわけではなくても、そういった傾向自体を市場原理主義というふうに、私自身も呼んできたことがありますし、一般的にも呼ばれているというふうに思っております。それとは区別する意味で、行き過ぎた市場原理主義、まさに市場原理主義そのものを徹底するような考え方はよくないというニュアンスで使っているというふうに理解をしております。

 それから、友愛精神に基づいた人間のための経済ということにつきましても、直嶋大臣と基本的には認識は一緒でございます。

 短期的な市場に任せるだけではなくて、その市場にかかわっている、例えば消費者であるとか、あるいは勤労者であるとか、あるいは、市場には消費者以外の形ではなかなか直接かかわらない高齢者であるとか、あるいは子供であるとか、こうした人たちの安心や安全というものにしっかりと一定の配慮をした中で市場というのはきちっと機能していくんだということを、友愛精神に基づいた人間のための経済というふうに位置づけているというふうに認識しております。

塩崎委員 今おっしゃった程度のことだったらば、麻生政権でも安倍政権でも小泉政権でも、多分、例えば雇用とかセーフティーネットとか消費者とか高齢者とか、ありとあらゆることは、それはやってきているわけで、行き過ぎたというのは、では、例えばどこが行き過ぎて、行き過ぎた市場原理主義であって、これは閣議決定した言葉ですからね。「行き過ぎた市場原理主義の「第二の道」でもない、」と言うんだから、どこが行き過ぎていたというのをちょっと言ってもらわないと、今程度のことだったらば余り変わらないし、消費者庁をつくったのは福田内閣ですから。これは消費者のためにやっているわけですよね。

 だから、どこが行き過ぎたのかというのがちょっとよくわからないんですが。どちらでも結構ですけれども。

直嶋国務大臣 これも内閣として解釈を定めたということではありませんが、私なりに受けとめておるということで申し上げたいと思います。

 先ほどお話ししたように、市場原理主義というのは、経済合理性を追求して、市場に干渉しないで任せれば国民に最も繁栄をもたらす、こういう原理だということであります。ただ、この考え方で物事を進め過ぎると、例えば、行き過ぎた規制緩和が、時として社会的セーフティーネットが十分に整備をされていなかった、例えば一昨年末以来いろいろ議論になっています雇用の問題なんかは、やはり規制緩和を一方で進めたんですが、雇用保険等のセーフティーネットがきちっと整備をされていなかったことによって問題が大きくなったという面はあろうかと思っております。

 その他、日本の経済社会の問題点としてしばしば指摘をされますが、例えば、一部の企業に利益が集中し過ぎているのではないか、そして、一方で中小企業が非常に困っておられるとか、あるいは国民全体の所得が向上しない中で格差が拡大しているとか、こういったことがこの数年の間にいろいろ指摘をされてきたというふうに思っておりまして、こういったことを行き過ぎたという形で申し上げているというふうに理解をいたしております。

塩崎委員 きょうは一回目の一般質問でありますので、余りそれ以上突っ込みませんが、経済合理性を追求しない経済産業省ではないと思いますし、いろいろおっしゃっていることはそう変わらないと私は思いますので、そこのところはもうちょっと、後で改めて議論したいと思いますけれども。

 では、鳩山内閣としては市場というものをどうとらえているのか。市場メカニズムというのを否定するわけではまさかないんだろうと思うんですけれども、今の例えば一部の大企業に利益が集中しているというのは、この閣議決定したのにもそんなようなことに近いことが、「選ばれた企業のみに富が集中し、」というのはどこのことでしょうね、よくわかりませんが。

 では、それは、ゆがんだ市場原理主義、行き過ぎた市場原理主義で一部の大企業に集まったのかというと、一体それは何を否定して、その結果を非難されているのかよくわからないので、今後議論をしていきたいと思います。

 そこで、市場をどうとらえて、どう向き合うのか。特に、産業政策を担う直嶋大臣と競争政策を担う枝野大臣、きょうはたまたま並んでいただいていますけれども、その市場と政府との関係を含めて、それぞれどんなふうにお考えになっているのかお話しいただきたい、簡潔にいただきたいと思います。

直嶋国務大臣 先ほどのお話の中で一点申し上げますと、経済合理性というのは、さっき申し上げたとおり、市場の役割というのは当然我々は認めた上で、さっきの行き過ぎたの話のところで申し上げたようなことを問題意識として持っておるということでございます。市場そのものを否定しているわけではございません。

 それで、市場というのは、やはり価格を媒介にして、財やサービスの需要と供給を調整するメカニズムであるというふうに思っております。市場における自由な経済活動というのは、社会の活力を生み出し、国民生活を豊かにする、そういうものだという認識を持っております。

 他方で、実際の市場経済においては、いわゆる市場の失敗と言われますが、最適な資源配分がかえって阻害をされる場合もあるというふうに思っていまして、こういった場合に、それを補正するための代替的な資源配分メカニズムとして、政府の役割が重要になる、そういう場合もあるというふうに思っていまして、バランスのとれた政策運営が重要であると思っています。

枝野国務大臣 直嶋大臣の今の御答弁と基本的には一緒でございますが、特に競争政策を担当している立場から申し上げますと、適正、公正な競争の行われる市場における自由な経済活動が、社会の活力を生み出し、国民生活を豊かにするものと考えております。

 適正、公正な競争が確保されるための基盤というものは、政府においてしっかりと確立、確保していかなければならない。そういった意味で、市場が機能するための前提条件の整備が政府の大きな役割であるというふうに認識しております。

塩崎委員 今、枝野大臣が、適正、公正な競争が確保される市場経済ということなので、そうなると、では、ちょっとお話を進めたいと思いますけれども、競争政策を推進するお気持ちがありやなしやという質問をしていますが、それについてと、何をやればいいとお考えになっていらっしゃるのか、枝野大臣にお聞かせいただきたいと思います。

枝野国務大臣 市場が適切に機能するためには、そして、その結果として自由主義経済のもとで自律的な経済成長と発展を維持するためには、競争政策を積極的に展開することが重要であるというふうに考えております。

 そのためには、直接私がこの委員会との関係で所管をしている公正取引委員会関連のいわゆる独占禁止法の厳正、的確な運用、あるいはその制度設計を初めとして、一方で、私は規制改革も担当いたしておりますが、規制改革の積極的な推進などを通じて新規参入が盛んに行われる一方で、参加をされた市場のプレーヤーの皆さんが、公正な競争のもとで、個々の事業者の創意工夫によって活発な事業活動が行われる条件を整え、市場における事業者間の公正かつ自由な競争を維持促進してまいりたいというふうに思っております。

塩崎委員 そうすると、産業政策を担う直嶋大臣は、産業政策と、今おっしゃったような競争政策、これはどういう関係にあるというふうにごらんになっていますか。

直嶋国務大臣 経済産業省は、経済産業省設置法の第三条にございますが、先ほど申し上げた民間の経済活力の向上と産業の発展等を任務といたしております。

 私の解釈で申し上げますと、一方で、公正取引委員会は、独占禁止法第一条にあるように、公正かつ自由な競争の促進を通じて、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」、これを任務としているというふうに理解をいたしております。

塩崎委員 一方で、独禁法を所管される枝野大臣は、多分これは独禁法の第一条というところに、最終的には、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進」ということになっているんですが、それには、何によってというところにいろいろあって、当然、私的独占とかいろいろありますが、「その他一切の事業活動の不当な拘束を排除する」ということがあります。恐らく、今、枝野大臣がおっしゃった規制緩和なんというのは、やはりここに入ってくることなのかなということも考えながら、枝野大臣は競争政策と産業政策の関係というのはどういうふうにあるべきとお考えなんでしょうか。

枝野国務大臣 例示的な話を、比喩的な話をすると、かえって違うところがあるんじゃないかという御批判も受けそうなんですが、あえて比喩的に申し上げますと、私の担当している部分は、市場という、プレーヤーがプレーをする場をきちっと公平公正に設定し、そこでのルール違反がないかどうかをチェックするという役割だろうというふうに思っております。これに対して、産業政策は、そこで実際にプレーをする皆さんを市場主義経済に反しない範囲で後押しをする、プレーヤーに対してバックアップをする。私の方は、プレーヤーが公正に、公平にプレーできるような環境を整える。

 こういうことが産業政策と競争政策の役割分担であり、その双方がしっかりと機能することによって、この国の経済と国民生活の安定と繁栄がもたらされるというふうに思っております。

塩崎委員 ありがとうございました。

 そこで、十八日に産構審が産業構造ビジョン、きょうお手元に資料としてお配りをしていますけれども、本物は何か分厚いもので、我々もこの間お話を聞きましたけれども、この中に、直嶋大臣、これは一枚目に「日本企業は低収益体質、国内予選で消耗」と書いてありますね。韓国企業は云々かんぬん、こう書いてあって、何しろ同一産業内にプレーヤーが多過ぎる、こういうことを御指摘されています。

 これは、一ページ、直嶋大臣、何を言いたいんだと思いますか。

直嶋国務大臣 これは、現在の日本企業の状況といいますか、その背景にありますのは、全体的にグローバル経済が進む中で、日本の企業といいますか、日本そのものの競争力が低下をしている、こういう認識でございます。

 その中で、例えばこの右部分のことで申し上げますと、日系企業はプレーヤーがたくさんいて、国内の競争が激しいと。このことは実は、ここで市場がどうだということではなくて、日本の企業のビジネスモデルのあり方に対して一つの問題提起をさせていただいているということであります。

 つまり、何を言いたいかといいますと、特に八〇年代、日本企業は国内で切磋琢磨することによって世界に羽ばたいていきまして、非常に強い競争力を発揮したわけです。しかし、現時点では、もう既に経済がグローバル化されておりますので、日本国内で切磋琢磨して、その上で世界に出よう、こういうビジネスモデルを続けていったのでは、逆に国内で消耗してしまって、世界全体の争いの中では勝てないのではないか、こういう意味合いで問題提起をさせていただいているということでございます。

塩崎委員 これを見ていると、要は、やはり世界で勝つためには国内予選なんかやっている余裕はないよ、世界で頑張らないかぬ、こういうふうなお話だろうと思うんです。

 枝野大臣、どうですか。国内予選なしで韓国企業はやっている、これがいいんだということで、また、国内予選で消耗している日本は余りよくないというふうに読めますよね。そうすると、さっき大臣が適正、公正な競争を積極的に進めるとおっしゃり、規制緩和も、それをやれば当然競争になるわけで、それも積極的におやりになるとおっしゃったら、消耗戦はもっとひどくなるんじゃないかと思うんですよね。

 そもそも、これで言いたいことは、日本は数が多いんだと。ということは、数を減らそうよというふうにおっしゃっているんだろうというふうに普通はとりますね、これは。そうなると、数を減らすと国際競争力が増すかということをちょっとお聞きしたいんですね。

 枝野大臣、まず、いかがですか。

枝野国務大臣 数を減らせば競争力が増すという単純なことをここでおっしゃっている、あるいは示しているということではないだろうというふうに思っています。

 客観的な事実、比較として、国内における競争は同業他社が多いということでございますから、他国の類似、同業の他社と比べて違いがあるということは間違いない。

 その上で、競争という観点から申し上げますと、私が申し上げてきている適正な、適切な市場というのは、必ずしも国内に限定された、あるいは国内に閉じた市場ということではなくて、市場としての一体性がどういう範囲で行われているのか。つまり、国内に閉じた市場であるならば、それは国内において適切な、適正、公正な競争が行われなければいけないというふうに思いますが、国境を越えて競争が行われているのであれば、その一つの、単一の市場として適切な競争が行われていればいいわけであります。

 そうした観点から従来も公正取引委員会は法執行に当たってきているというふうに思っておりますが、ただ、こうした現実的な比較のもとにおいて、これまでの、適切だとは思いますけれども、執行のあり方を踏まえつつも、こうした現状を見ながら、それぞれの商品分野ごとに、市場という単位で、どういう単位で見るのか、国内だけで見るのか国際的に見るのか、そういったところについてさらに見直すべきところがないかどうかということは、内閣府の担当大臣の立場としても検討しているところでございます。

塩崎委員 直嶋大臣には、数を減らしたら競争力が増すかというのに簡単に答えてもらいたいんですが。

 同時に、二ページ目を見ると、アメリカでは株主によるコーポレートガバナンスの圧力がある、EUは市場統合に伴う圧力、韓国は政府の圧力、日本は政府の圧力と書くこともできないのでこんなことを書いているんでしょうが。同じ圧力で統一したらそれで同じことを言っているかというと、これは全然違うことを言っていて、多分、これはみんな、どこもやはり、株主によるコーポレートガバナンスの圧力、つまり市場の圧力、これで動いてきているんだろうと思うんですね。アメリカ、EU、韓国がこう書いていますけれども、「日本は、メインバンク、政府ともに、関与が大幅に縮小」と書いてある。これは一体何を言っているのかさっぱりわからぬなと思っていますが。

 さっき申し上げた一枚目は、これは要するに低収益体質だというわけですね、ガバナンスを見るとこうだと言っているんだけれども、では日本は、つまり、EUもやはり市場統合には、EUなんて市場をつくったから圧力がかかったんじゃなくて、EUという市場をつくったからコーポレートガバナンスを通じた株主の圧力が増して、それで収益力が上がっているということなので、結局どの国もやはりコーポレートガバナンスがきいて、株主による圧力、市場の圧力というのがあって初めて高収益体質になり得るんだろうというふうに思うんですが、直嶋大臣、いかがですか。

直嶋国務大臣 まず最初の御質問の、企業を減らせば国際競争に勝てるというふうに考えているわけではありません。そういう単純な問題じゃないと思っています。もう一つ申し上げますと、規模が大きくなれば勝てるというものでもないと思っています。

 やはりグローバル時代ですから、この時代に合った形での商品とかサービスをきちっと提供していく、そしてそれを継続的に提供できるシステムを、一種の経営としてのビジネス的なシステムをきちっとつくっていかないとなかなか厳しい、こういう認識をしているということでございます。

 ヨーロッパとアメリカのとらえ方は議論があるところかもしれませんが、私どもとしては、今後の方向性として申し上げますと、やはりコーポレートガバナンスの機能を強化しつつ、基本的には民間主導で、思い切った事業の再編とかそういったことをやっていく必要があるというふうに思っています。

 政府の役割は、その中で申し上げますと、先ほどお話があったようなさまざまな制度でありますとか、あるいは投資が大規模になって、しかもスピードアップをしなきゃいけないというのが全体的な要請でございますので、そのための資金でありますとか、あるいは人材、雇用面でのさまざまな阻害要因を除いていって、民間のそういう努力がやりやすい状況をつくっていくというのが基本的な役割だというふうに思っています。

塩崎委員 きょうは余りにも時間が短いので、もう結論を先に言ってしまうと、今回の産構審のを見て思ったのは、公的な関与が余りにも何かふえ過ぎていないかと。それはやはり、民主党の政権になって、さっきの話じゃありませんけれども、何でも政府がやりますというようなものがたくさん出てきて、もちろん、足りない部分が確かにあったことも間違いない。さっきからお話が出ているように、市場でプレーする場のルール違反を取り締まるというのと、それからプレーを後押しするというような組み合わせでいくということなんですけれども、どうもそういうふうになっていないんじゃないかなという心配を大変しています。

 改めてまたこの議論をやりたいと思いますけれども、例えば、郵貯、簡保の限度額の引き上げ、これはもう哲学的な転換をしちゃったんじゃないかというふうにもとれる。つまり、政府が、あれは民営化なんて言っていますけれども、三分の一、三分の一でちゃんと持っているわけですから、暗黙の政府保証がついているとみんな思っているわけですから。そういうようなことで、本来は五百万に限度額を引き下げると言っていた民主党の哲学と今度法律を出してきた哲学は変わっちゃったんだなというのがみんなの印象ですよね。

 それから、例えば企業再生支援機構、これは我々がもともと地域力再生機構ということでつくったもので、中堅企業を対象にしようと思ったら、いつの間にかウィルコムとかJALとか、こういうものをやって、特にJALの問題については、大変大きい問題があるんじゃないかと私は思っているんですね。

 つまり、会社更生法が適用になっているということはもう経営に失敗したということですから、この失敗したところに政府が介入をして、公的資金を使って、そして、我が国はもう一社民間の企業がある、その二社に今大変な試練が来ていると思っています。JALはもちろん再生の試練ですけれども、全日空は、何も関係ない、他の会社の再生が行われるという中で、いろいろな形で、公的資金で例えば新機材を買うとか、あるいはきのう新聞に出ていましたけれども、アメリカとの間の、オープンスカイのはずなのに、なぜか国交省が、二ルート、二ルート、JALとANAで分けろとか、こんなことを言っている。

 もともとオープンスカイというのは、エアラインが空港とかけ合って決めればいいことなので、スロットが限られているといえども、その哲学が全くやられていなくて、では、結局、JALとANAの競争というものを枝野大臣が見て、これで本当に公正なルールで競争が行われていると思われるかどうか。

 一番大事なのは、独禁法の第一条の、一般消費者と国民経済の発展、利益であるわけですけれども、本当にこれでいいのかなということで、枝野大臣にぜひ、この郵政の哲学的な転換、つまり、官に任せないで民に任すことで国民の負担を軽くして利便を高めようということが心だったはずだし、このJALの問題も、同じような問題が起きているんじゃないかと思いますし、それから産業革新機構についても、水ビジネスに出ていくと。水ビジネス自体、私は否定しないし、どんどんやったらいいと思うし、公的な関与もある程度あって、コーディネーションする、それもいいと思います。しかし、金まで出してやることなのかというのも私はよくわからないということで、官業の、言ってみれば外延というのはどこにあるんだと。

 つまり、官と民の役割分担というのがぐちゃぐちゃになってきて、官の方が出張り過ぎていて、我が国の経済というのは結果として元気がなくなる、効率性も悪くなる、結果、国民の負担が多くなる、そうなろうとしているんじゃないかということを私は大変心配して、きょうは基本的なことということで、特にお二人そろってお話を聞きたかったということであります。

 枝野大臣、今私が申し上げたようなこと、郵政それからJAL、こういう問題について、本当にフェアな競争がこれで行われていると思うか。結局両方がだめになるということだってあり得るし、それから郵政の問題は、結局国民経済全体がだめになる、そういうことを私は非常に懸念をしているので、競争政策を仕切る大臣として、ぜひお答えをいただきたい、お考えをお聞きしたいと思います。

枝野国務大臣 まず郵政について申し上げますと、いわゆる独禁法関連の競争という観点からは、政府出資があろうとなかろうと、それぞれ純粋民間の銀行や生命保険会社と、独占禁止法関連については対等、平等の競争をしていただくということについては、これまでも、そしてこれからも徹底してまいりたいというふうに思っております。

 官が出張っているのではないかという観点については、私自身も個人的には郵貯、簡保縮小論でございました。しかし、いわゆる民営化以降の経営において、これは数日前、総務省の方から発表されているかというふうに思いますが、民間にすることによって、民間の手法を取り入れることによって国民の負担が小さくなるということが期待されていたわけでありますが、むしろ経営状況から財産の状況から、大変急速に劣化をしたという構造の中にあります。

 こうした中で、郵便のユニバーサルサービスをしっかりと守るためには、かなり早期に税金等を投入してユニバーサルサービスを守らないと、いわゆる郵貯、簡保の利益で郵便のユニバーサルサービスを守るというスキームは、この数年間の経営状況から見て成り立たなくなっているというふうに私は判断をいたしております。

 そうだとすると、選択肢は二つで、今のままの方針でいって、結果的にユニバーサルサービスを守るために税金を投入するのか、それとも……(塩崎委員「競争政策に関係ないでしょう、その話は」と呼ぶ)ただ、官が乗り出しているということについての、つまり従来のスキームと変わっているということの理由について申し上げれば、そうした構造の中では、むしろ郵貯、簡保の利益でユニバーサルサービスを守るというスキームを前政権で大きくつくられている以上は、その郵貯、簡保の部分のところをしっかりと収益を上げてユニバーサルサービスを守るための財源を確保するということでないと、国の財政の方の状況からすると、とてもユニバーサルサービスを守れない、こういう状況の変化というものがありました。

 であっても、国が出資をしているにしても、その競争条件については対等でありますので、俗に政府の事実上の保証がついているとか言われておりますが、しかし、それぞれ同じように、いわゆる預金、保険として守られるのは一千万円だけでありますので、そういったところの対等な競争条件はしっかりと確保していくべく、直接の独占禁止法の適用以外のところについても、競争政策担当としてはしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

 JALについても、同社が我が国の航空ネットワークの重要な部分を担っているということの中から、航空政策の観点で今回のようなスキームをとらざるを得なかったということについては意見を全く同一にするものであります。

 そうしたものの中で、公正かつ自由な競争を確保するという観点からは、公的資金の投入を受けた事業者であれ、そうでない事業者であれ、同様でありますが、特に公的資金の投入を受けているというその公的資金をもって、例えばコスト割れでの廉売により競争に悪影響等を与えるようなことがある場合には、公正取引委員会において独占禁止法の規定に基づき厳正に対処されるというふうに思っております。

 法執行機関としての独立行政委員会ですので、直接に私の方から指揮命令はできませんが、特に、公的資金が入っておりますので、その公的資金に基づくコスト割れでの廉売等ということのないように厳重に監視をしていただきたいというふうに希望しているところでございます。

塩崎委員 ミクロの小さいところを見て説明されても困るので、大きな競争政策、経済をどう回していくのか、言ってみればこの国の経済の秩序をどうするんだ、それを言っているのであって、郵政の経営の問題とかJALの再生の問題に落としてはいけないのであって、特に航空産業はたった二社しかないんです、そこの中で競争がちゃんと行われているか。

 例えば、不当なことが行われていたらとおっしゃったけれども、では、バースデー割引なんかはどう考えたってうまくいくわけないのにやっているとか、それから、公的資金で新機材を買うということは相当ハンディがあるわけでありますから、アメリカの路線だって、もともと羽田から飛ばすことはJALは反対だったんですからね。エアラインが決めるのがオープンスカイですよ。この市場のルールにも間違っている。

 だから、そういう意味で、今の枝野さんの、私の親しい枝野さんではありますが、やはり、今のは競争政策についての答えは全く入っていないというふうにしか言いようがないのであって、これでは、日本の経済のフェアな競争、公正な競争と御自身がおっしゃっている、秩序を持って繁栄をしていくような方向に行くというふうにはとても思えない。やはり政府が出張り過ぎ、官の関与があり過ぎの経済になるんじゃないかということを私は大変心配していることをつけ加えて、終わりたいと思います。

東委員長 次に、高市早苗さん。

高市委員 自由民主党の高市早苗でございます。

 まず、貴重な質疑時間をお与えいただきました同僚委員の皆様に感謝を申し上げます。

 冒頭に、このたびの口蹄疫の発生によりまして、まさにあすの生活も見えない、そして人生設計が根底から覆ってしまうような悲惨な状況に追い込まれておられます宮崎県の畜産関係者の皆様に、心からお見舞いを申し上げたいと思います。とともに、無為に命を落とすことになりました多くの家畜の死に対して哀悼の意を表したいと思います。そしてまた、現地で、昼夜を分かたずこの状況の終息に向けて汗を流してくださっている多くの関係者の皆様に感謝を申し上げたいと思います。

 さて、きょうは、官房副長官においでいただいております。

 三月三日に宮崎県都農町でPCR結果が陽性の繁殖牛が出て、四月二十日に口蹄疫と確定、翌二十一日に殺処分などの防疫措置を完了した、これが一例目だったわけでございます。

 それから一カ月も経過いたしました五月十七日になって、ようやく鳩山総理を本部長、内閣官房長官と農水大臣を副本部長、全閣僚を本部員とする口蹄疫対策本部が設置されました。

 内閣全体としての取り組みを行うためのこういった本部の設置、体制づくりが非常に遅かったということについては私は強い怒りを覚えておりますけれども、それでも、構成員を見ますと、やはり多くの省庁にまたがる総合的対策を打たなきゃいけないものですから、総理を本部長とし、官房長官も副本部長という構成につきましては当然のことだと私は考えております。

 ところが、昨日、内閣官房長官または官房副長官に口蹄疫に対する政府全体の取り組みについて御答弁をいただきたいと私は考えまして、質問通告書を送りましたところ、内閣官房総務官室からお電話がありまして、口蹄疫については内閣官房では答弁できるほどの立場にないので、農水省に答弁いただいてもいいかというお話でございました。私は、内閣官房がそのような姿勢でいること自体がけしからぬと思っております。

 本部長である内閣総理大臣及び副本部長である官房長官というのは、まず、宮崎県の現場がどういう状況であり、現地の方々がどういうことを望んでおられるかについては、農水省以上に、すべての省庁にまたがる案件について最も多くの情報を持っていなければいけない立場でありますし、そしてまた、各省庁が何をやるべきかについて総合的に判断をしながら指示を飛ばしていくべき立場にあると思います。副長官もそのお一人だと私は思うんですね。

 ですから、内閣官房には、国会に対してもう少し誠実に対応をしていただきたいと思っておるんですけれども、副長官のお考え、お伺いいたします。

松野内閣官房副長官 高市先生にお答え申し上げます。

 今回の口蹄疫の問題でありますけれども、先生最初にお話しになりましたように、まず宮崎県の畜産農家の方、本当に今大変な思いをされているということを申し上げなければいけないというふうに思っております。

 そういう中で、対策が遅いんではないか、また官房の反応が鈍いんではないかというような御指摘でございますけれども、まず、PCRにおきまして、四月の二十日に口蹄疫だということが認定をされました。その後、二十三日、二十八日とずっと政策を打っているんですけれども、まず、四月の二十八日、内閣官房主宰の関係省庁幹事会、課長級というのを開催してございます。その後も、四月の三十日、この課長級を局長級に上げまして、官房として行っております。

 また、五月の一日には、私もえびの市に入りまして、現地を見させていただいております。また、その後、七日には関係閣僚会議、そしてまた十四日に関係省庁連絡会議、十六日には官房長官が現地に入り、そして五月の十七日に本部という動きをしてございます。

 ですから、官房としても、この口蹄疫の問題、相当私どもも深刻に見ておるつもりでございます。(高市委員「だから、なぜ農水省に答弁を振られたんですか」と呼ぶ)

東委員長 挙手をして発言を求めます。

高市委員 私が伺った質問部分は、なぜ官房でそれほど答える立場にないとか、その後も情報がないとか、農水省に答弁をしてもらっていいかとか、そういう国会への対応になるのかということ、ここが質問部分です。

松野内閣官房副長官 ちょっと事務的にどういう経緯かわかりませんけれども、各省ということで、口蹄疫であれば農水省がお答えになるのではないかというふうに事務的に思ったのかもしれません。ちょっとそこのところは確認をしてございません。

高市委員 それでは、経済産業大臣にお伺いをいたします。

 畜産農家の被害も相当なものなんですけれども、既に飼料販売ですとか食肉加工、それから運輸、小売、ネット通販なども含まれると思います。そして、飲食、観光。観光業といえば、ホテル、旅館業などもございますけれども、ほかの業種にも随分被害が出てきつつあるんじゃないかなという心配をいたしておりますが、現段階で経済産業省として把握しておられます九州及びほかの地域の各産業の被害状況について、おわかりの範囲内で簡潔にお答えいただければと思います。

直嶋国務大臣 現在、宮崎の現地の対策本部の方に九州の経済産業局から人員を配置しておりまして、毎日、午後二時に状況報告をもらっているということでございます。

 したがいまして、きょうも多分新しい報告が来ているのではないかと思いますが、昨日までの状況ということで申し上げますと、高市先生御指摘のように、畜産業にとどまらずに、移動制限とかさまざまなことがなされているものですから、食肉加工業、小売業、飲食業、宿泊業、運輸業などの広範囲に影響が及んでいるというふうに思っていまして、特に地元の中小企業の皆さんへの影響を危惧いたしております。

 具体的に少し申し上げますと、ホテルの宴会の予約がキャンセルされたとか、飲食店の客が減ったとか、もちろん観光客も減っているということでありますし、資材の搬送とかそういったものにも影響が出始めているというふうに聞いております。

 そんな中で、当面、特に資金的に急を要する方について、窓口でも相談を受け付けておりますが、きのうまでの段階で五十四件の金融に関する御相談もちょうだいしたということでございます。

高市委員 さまざま御相談があるようでございますけれども、中小零細企業、個人事業主への支援ということで、特別に具体的にはどのようなものを用意されておりますでしょうか。

松下副大臣 今、大臣からもお話がありましたけれども、宮崎県のみならず、熊本県、鹿児島県の隣県にも、政策金融公庫を初め商工会議所、全部について窓口を開いて情報収集と相談に乗っております。

 従来やってまいりましたセーフティーネット貸し付け、それから景気対応緊急保証、こういう政策をさらに条件緩和して、こういう時代でありますので、売り上げが前月と比べて減ってきたからそれに対してやるとかいうことではなくて、そういうことの相談があればすぐ対応していきたいということで、臨機応変、全力を挙げてやっていきます。

高市委員 今、緊急保証などのお話がございましたけれども、これは財務省ともいろいろお話し合いの上実行されるものかと思うんですが、いつから実行できますか。

松下副大臣 四月二十八日から窓口を設けて動き出しておりますので、全部に五月の二十一日付でしっかりと皆さんに広報して、受け付けております。

高市委員 それでは、例外的な緊急措置としてもう使えるということでよろしゅうございますか。

松下副大臣 本日から使えるようになります。

高市委員 今後、感染が全国規模に拡大してしまったり、それから、終息までに長期間かかってしまうという可能性も皆無ではないと思いますので、私は、最悪のケースも想定した対応が必要だと思います。ぜひとも、全国規模また長期化、そういうことが起こってほしくはないわけですが、そういう事態に陥ったときのことも考えて、予算措置も含めて備えを進めていただきたいということを希望申し上げます。

 次に、農水省なんですけれども、本日は政務官でございますね。実はきのう、質問通告に当たりまして、山田副大臣が宮崎県に張りついておられるということで、郡司副大臣の御出席を私求めたんですけれども、副大臣は本日午後から福島県に戸別所得補償加入促進PRに行かれるので政務官対応でと言われてしまいました。できたら副大臣でということをお願いしておりました。

 農水省が本日時点で、国民の代表に対して、農水省が行っている口蹄疫対策を説明するということよりも戸別所得補償加入促進PRのキャンペーンを優先されるという理由は何でしょうか。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。政務官で大変恐縮でございます。

 今、あぜ道キャラバンという名前でキャンペーンをさせていただいているんですが、これはずっと予定を早くから組んでございまして、それぞれの地域にもそれなりの準備をしていただいているものですから、政務三役それぞれ手分けをして出席することにしてございますが、ちょうどきょうは郡司副大臣の出番だったということでございまして、そういうことで、先方様に急に事務方になりますというわけにもいかないというような事情でございますので、御理解いただきたいと思います。

高市委員 そのキャンペーンの方に政務官が行かれたらよかったんじゃないかと思うんですけれども。決して政務官ではだめだということではなくて、優先順位を伺ったつもりでございました。政務官は非常に口蹄疫の問題に精通していらっしゃるということを、農水委員会におります主人からも聞いております。

 さて、対策の中心になっておられます農水省にも、先ほど私が経済産業省にお願いをいたしましたとおり、最悪の事態を想定した備えというものを進めておいていただきたいと思います。

 全国規模への拡大という懸念とともに、口蹄疫はイノシシ、羊、シカなどにも感染し得る疾病でございます。私の地元奈良県では、現在、平城遷都千三百年祭が開催されておりますので、全国、世界から多くのお客様が来てくださっております。

 不幸にして、この後、開催期間中に口蹄疫の感染が近畿地方にも広がってきたような場合に、人の靴ですとか、それから車両の消毒というのが徹底されていなかったら、まさにウイルスが県内に持ち込まれてくる状況下にあることも確かだと思います。

 奈良公園の約千百頭のシカなんですけれども、これはおりに入っているわけじゃなくて、放し飼いでありまして、自由に農家ですとか民家の庭先にも入っていきます。そしてまた、天然記念物に指定されておりますので、消毒徹底などの事前対策が非常に難しい。そういうことから、万が一シカが口蹄疫に感染した場合に、その被害というのははかり知れない、これは多くの奈良県民が心配していることでございます。

 そしてまた、あのシカは天然記念物でございますので、文化財保護法によって守られておるんですね。文化財保護法第百二十五条は、「史跡名勝天然記念物に関し」「その保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。ただし、現状変更については維持の措置又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。」と規定しております。

 このシカが口蹄疫に感染したときにどのような措置がとられるんだろうかと文化庁に伺いましたら、文化財保護法には疾病に関する規定はないので、文化庁としては判断できない、鳥インフルエンザのケースの先例に準じ、文化財保護法第百二十五条一項ただし書き、先ほど私がただしと読み上げました部分ですが、このただし書きによる緊急事態に該当し、農水省が判断されるものとなるというお答えでございました。

 天然記念物である奈良公園のシカというのが口蹄疫に感染した場合、農水省は、天然記念物として特段の保護や保全は行わずに、殺処分をするということになるんでしょうか。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 今、文化財保護法の動物についてというお話でございますが、現時点で我々が実施をしているのは、今の地域よりできるだけ拡大しないということが何よりも大切でありますので、そのための消毒と、それから殺処分、速やかな埋却ということを徹底してやるということが口蹄疫にとっては何よりも大切でありますので、まずその対策に現地で万全を期しているということであります。

 今の、文化財並びに文化庁の話がございましたが、家畜伝染病予防法の対象外でありますので、これはまたその時点で、そういうことが予測あるいは危惧されるというような時点で、文化庁と相談をさせていただくことになろうかというふうに思います。

高市委員 いや、危惧される事態になってからではもう遅いと思います。既にもう皆さん危惧されていて、奈良の鹿愛護会などでも、消毒液のストックなど、また公園内のパトロールで、様子のおかしいシカはいないか、そういうもののチェックなどで今大変御苦労をされております。

 これは家畜ではないので、本当に広大な地域に生息し、移動しておりますので、奈良市内にいるシカがすべて殺処分の対象になる可能性があるのか、また、感染が確認されたシカが発見された地域を中心に、一定面積内にその時点でいたシカが殺処分の対象になるのかとか、いろいろ心配事もあり、どのような防疫基準を考えておられるのかというのは大変重要です。奈良県のことだけじゃなくて、やはりイノシシ、羊、シカに感染の可能性ありということになると、全国ほぼすべての都道府県で心配になっていることだと思うんですね。

 現時点では対応していない、宮崎県に集中していて、危惧されたら文化庁と相談するというようなことでは、文化財保護法と関係のないよその県に生息する野生のシカとか、こういったものへの対応もできませんし、早急にこの対応をマニュアルとしては決めていただきたいんですが、いかがでしょうか。

佐々木大臣政務官 私ども、この先一番心配されるのは、今委員御指摘の偶蹄類のシカあるいはイノシシなどでありますが、偶蹄類の場合は発症するということでありますが、偶蹄類でなくても、例えばネズミのような場合は、発症しなくても伝播をしていくということもありますので、いずれにしても消毒が一番大切であります。

 家伝法の適用外ではありますが、家伝法でいいますと、それは知事が要請をいただいて、そして消毒を許可する、消毒薬を手配するというような仕組みになってございますので、そうした関係省庁と連絡は密にとらせていただきたいというふうに思います。

高市委員 先を見越した、そして対象を広げたプランもしっかりとつくっておいていただくようにお願いを申し上げます。

 それで、農林水産政務官にまた再びお願いをいたしますが、五月十八日、今週の火曜日でございます。十一時半から、山田副大臣は、宮崎県の川南町におきまして、川南町長それから都農町長も同席をされ、川南町の農業担当課長、県の担当者、JAの職員と打ち合わせをしておられます。「口蹄疫・現地対策本部(日報)」という書類の中に会議録が掲載されておりまして、私の手元にございますので、その文書を読み上げさせていただきます。

 まず、都農町長が御発言されました。「四月段階から両町で消毒を徹底しているが、まん延が止まらない。獣医が足りないので明日からの作業ができるかどうか分からないといわれる。」「疑わしい症状が出た時点で獣医師が派遣されず、経過観察を求められる。その間に感染が拡大することを懸念。」ということで、町長は獣医不足を訴えておられるんですね。これに対して山田副大臣は「農家が自分で採材できるだろう。そうすれば作業が進む。」とお答えになり、これに対して県の対策本部が「検体採取は獣医師でないとできません。家伝法上できない。」とおっしゃっておられます。その後、山田副大臣が「綿棒で取るだけなら自分でできるだろう。細かいこというな!!」、こうおっしゃっているんですね。

 町長が、疑わしい症状が出たら、家畜から検体採取をする獣医師が足りないということを訴えておられるのに対して、山田副大臣が、綿棒でとるだけなら自分でできるだろう、細かいこと言うなということで、農家が検体採取をするべきだという考えを述べておられるんです。

 法律上、農家が自分で検体採取をするということは可能なんでしょうか。根拠条文とともに伺います。

佐々木大臣政務官 農家自身が検体をとるということについては、個人の財産ですからそれは可能でありますが、しかし、獣医師が足りないということは、それもまた、今増員をして、きのう、おとといの本部会議でもさらに増員しようということにしてございまして、全国の獣医師、家保あるいは都道府県の機関の獣医師の皆さん方に交代で今宮崎の方に行っていただいておりますし、OBの獣医の皆さん方もボランティアで今どんどんと参加をしていただいているところでございます。

 いずれにしても、獣医師をしっかりとふやしていくということに今我々も努力をさせていただいておるところでございます。

高市委員 それでは、農家が検体をとって検査に回すということは法律上何の問題もない、各農家でやっていただければいいということで間違いございませんね。

佐々木大臣政務官 それは問題ありませんが、できれば専門家がとった方がより望ましいというふうには思います。問題はありません。

高市委員 次に伺いたいのは、四月二十日に口蹄疫とされて翌日に殺処分された事例が一例目ということを申し上げましたが、その後、本日までに、殺処分は完了したものの埋設地などが不足しておるようでございますから、埋却処分が完了していない数、殺処分はしたけれども埋却処分はできていない数というのはどれぐらいでしょうか。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 五月二十日現在でございますが、現在の発症が約百五十九例、牛、豚合わせて約十三万頭が殺処分の対象になってございます。このうち、二十日現在で約七万四千頭が殺処分を終了いたしてございます。六万二千頭については既に埋却も終了してございますが、五万七千頭についてはまだ殺処分中、または今後実施という状態にございます。

高市委員 やはり埋却地の確保というのが非常に急がれると思います。五月十九日に政府の口蹄疫対策本部が決定されました「新たな防疫対策について」という書類にも、「埋却地の円滑な確保」と書いてあります。

 五月十八日の十五時から、山田副大臣が、新富町の町長や町議会議長と打ち合わせをされております。

 この会議録でございますが、町議会議長が「豚・肥育牛中心の畜産団地なので、埋却地は容易には見当たらない。」とおっしゃっています。これに対して副大臣が「土地は国で買い上げるとしても見当たらないか。」と聞いておられます。副町長が「甘藷の苗床として使われている土地を買おうとしているが、その苗を用いて営農を計画している農家への補償問題が生じている。家伝法ではこういうところの補償までカバーされていない。」とおっしゃっています。これに対して副大臣は「一年間の補償をすれば売ってくれるのか。」とさらにおっしゃっています。町議会議長は「来年以降の生計を失うので、売却側は迷うだろう。」、副町長は「一年間の補償をして、来年度以降の代替農地があれば、可能かもしれない。しかし、補償をしっかり国が支えて欲しい。」、このようなやりとりがあったわけです。

 まず、山田副大臣が現地で「土地は国で買い上げるとしても見当たらないか。」とか「一年間の補償をすれば売ってくれるのか。」とおっしゃっていますけれども、埋却地を国が買い上げる予定と予算はあるんでしょうか。

佐々木大臣政務官 口蹄疫に関しては、発症の一番近くに埋却をするというのが基本でございますので、余り移動をさせないというのが本来的には一番望ましい形でありますが、今委員御指摘のように、埋却の場所が足りないというようなお話も伺ってございます。

 国の土地についてもできるだけ提供したいということで、御相談もさせていただいているところでありますが、今の山田副大臣の御発言というのは、いろいろな対策の中で、検討の材料として申し上げたんだというふうに思いますが、そうした具体なものについては、できるだけ県の対策本部の皆さん方や現地の皆さん方と相談をさせていただきたいというふうに思います。

 できるだけ円滑な確保というものに努めてまいりたい。その前面に、現地の本部長であります山田副大臣が、いろいろな関係者の皆さん方との話し合いに当たっていただいているという中での発言だろうというふうに思います。

高市委員 翌日の十九日の十六時十五分から、山田副大臣は宮崎県知事と会談しておられます。前の日に「土地は国で買い上げるとしても見当たらないか。」とおっしゃっておいて、知事らとの会談の中では、県の方から埋却地買い上げの財政支援を要請しておられるんですが、山田副大臣は「ここ二日間調整したが、買い上げは難しい。」と回答しておられるんですね。

 普天間移設も同じですけれども、全体計画も、それから調整もないまま、地元に期待感を持たせる発言をして後で撤回するというのは、鳩山内閣の特徴なんでしょうかね。

 埋却の予定もない、財務省などとの詰めもないまま、山田副大臣は買い上げについて言及しておられたんでしょうか。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 現地のそうした詳しい報告を受けているわけではありませんが、山田副大臣が現地の本部長として、いろいろな関係者の皆さん方とお話し合いをされ、いろいろな、あらゆる可能性を探ろうということで、いろいろな皆さん方とお会いをされている。その中で、可能性の、いろいろな中のお話としてお話をされたものではないかというふうに存じているところでございます。

高市委員 ついでに申し上げますと、十八日の川南町での打ち合わせの会議録でございますけれども、この日、川南町から、先に自力で埋却した農家と公平性を確保してほしい、後で国が支援して埋却する地域、農家などとの公平性を確保してほしいという要望がなされています。山田副大臣は「公平性の観点から措置を考えている。」と答えました。その後、同行されていた小川総理補佐官が「検討を指示する。」と発言しておられます。その直後に、川南の町長さんが「補償を検討するでは現場は動けない。決断して欲しい。」と発言されたんですけれども、先ほど書類名を申し上げました会議録には、町長の「補償を検討するでは現場は動けない。決断して欲しい。」の御発言の後にわざわざ括弧書きをして、「(……としつこくゴネる。)」と書いてあるんですね。

 町長は、本当に苦労しておられる、心身ともに衰弱されるぐらいの御苦労だと思いますよ。その町長が一生懸命、山田副大臣に対して御要望されている。その記録をとっていたのはだれか知りませんけれども、町長のお言葉を括弧書きで書いた後、「(……としつこくゴネる。)」こんな記録が政府の中に残っているということ自体が、私は大変失礼な、許せない姿勢だと思っております。責任者を明らかにしていただいて、それなりの処分をしていただくこと、また謝罪をしていただくことを要求いたしますが、いかがでしょうか。

佐々木大臣政務官 その文書について、私、まだ見ておりませんで申し上げるのもどうかと思いますが、そういう表現、あるいは表示、あるいは書き込み、あるいは記録があったとすれば、それはしっかりと指導をしていかなければならないというふうに思いますので、早急に手当てをさせていただきたいと思います。

高市委員 ありがとうございます。恐らく農水省にも行っていると思います。現地対策本部の日報でございます。

 次に、四月三十日の夜に、内閣官房は危機管理監を長とする局長級の会議も開催しておられたと存じますし、自衛隊派遣の方向で急遽調整されたと聞いております。そして、五月一日の午後、十五時五十分に第四三普通科連隊先行班が川南町に到着、十六時二分には油圧ショベルを含む第四三普通科連隊本隊が到着したと記録をされております。

 ところが、五月一日、出動してみたものの、農水省と宮崎県の調整がまだ十分じゃなかったのかもしれません、到着日には、自衛隊は活動する場所も与えられないままだということを聞いております。翌日からは活動に入ったようなんですけれども、町が民間業者を雇ってそれまで対応していたことから、派遣された自衛隊の活動は当初は低調であったということも聞いております。

 宮崎県からの要請によりまして、殺処分後の家畜の埋設用地の掘削支援、それから輸送支援、牛舎や豚舎の消毒支援というものを担当することになったものの、また埋設用地の手配ができていなかったために、五月十一日時点までの仕事というのは家畜のふん尿の除去というのが主任務だった、これも現地からの情報で伺っております。

 私は、先ほどから農水省の御答弁も聞きまして、シカやイノシシの話も聞きましたけれども、ちょっと、政府による全体計画というものをつくるのがおくれているということから、当時は全体計画そのものがなかったことから、自衛隊が場当たり的な対応を強いられている、今後もさまざまな影響が出てくるんじゃないかと考えているんです。

 防衛副大臣がおいでになっているので、伺います。

 まず、自衛隊員及び重機の派遣時期というのは五月一日で適切だったとお考えでしょうか。

榛葉副大臣 高市委員にお答えいたします。

 まず、冒頭の質問に、現地で汗をかいている自衛官を含めた現場の皆さんに温かいお言葉をかけていただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 御質問の内容でございますが、五月一日土曜日十二時に、宮崎県知事から、陸上自衛隊第四三普通科連隊長、これは都城駐屯地でございますが、に対しまして、いわゆる自衛隊法八十三条に基づく災害派遣要請がございました。この災害要請を受けまして、埋却場所の掘削作業、そして、殺処分後の死体、先ほど先生おっしゃいましたふん尿を含む汚染物質の運搬及び埋却作業、そして消毒作業を実施したということで、宮崎県知事からの要請に基づいて、この日から活動を開始したということでございます。

高市委員 では、適切な派遣だったというお答えかと思います。

 自衛隊の災害派遣につきましては、慣習的なものでございますけれども、緊急性、公共性、非代替性、これを要件として、この三要件に該当するかどうかということで、それを判断して対応することとなっていると承知しているんですが、それでよろしいでしょうか。

榛葉副大臣 平成十六年に、自民党さんが政権をとっていらっしゃったころ、京都で鳥インフルエンザが起こりまして、このとき私は外交防衛委員会の委員でございました、野党でございましたが、さまざまな議論がありました。

 先生御質問の点につきましては、今先生がおっしゃったとおりでございます。

高市委員 今回の派遣は、その三要件すべてを満たしておりますか。

榛葉副大臣 満たしているというふうに考えております。

高市委員 私は、今回のケースでは、非代替性というよりはむしろ緊急性を優先されたものだと理解いたしております。

 当初、宮崎県では、自衛隊が派遣されるまで、主に民間事業者を使って処理をしておりました。町が雇った民間事業者などが処分に当たっておりましたので、どちらかといえば、私は、ゴールデンウイーク中ぐらいの政府が最も急ぐべき対応というのは、早急に財政支援を決め、場合によっては県外の民間事業者などの雇い入れも含めて、初期の処分を迅速化するということだったんじゃないだろうかと思うんです。

 ただ、自衛隊派遣は現地からの要望であったということですし、緊急性というものでは実際に人手が足りなかったんだろうと思いますので、そこは理解いたします。

 ただ、今後、不幸にして、先ほど来申し上げておりますように、口蹄疫が全国に拡大していった場合、と同時に、不幸にして朝鮮半島情勢への大がかりな対応が必要になるという本当に最悪のシナリオを想定した詳細な派遣計画、人員配備、こういったものを詰めておく必要がある。これは私は非常に強く思っている点なんです。

 川南町に派遣された陸上自衛隊なんですけれども、一たん派遣されてしまいますと、ウイルスをほかの地域に運んでしまわないようにということで、事態が収束するまで、基本的には川南町に張りついて任務に当たらなきゃいけないということになります。

 自衛隊は陸海空それぞれありますけれども、私は、それぞれの部隊が持つ特性、能力、それからまた装備というものを十分に熟慮していただいて計画的な人員配置を行わないと、もしも他県で対応が必要になった場合、一たん張りついている自衛隊を長距離動かすとウイルスを運ぶ可能性がやはりあるわけですから、他県で対応が必要になったり、また、朝鮮半島有事で非常に広範な対応が必要になったというときに、取り返しがつかないことになります。

 重機を持って現場入りした陸上自衛隊による埋却処分と輸送の業務というのは、やはり自衛隊の能力を大いに発揮できる任務だと思います。ただ、全く代替性というものがないかというとそうじゃなくて、感染地が拡大してしまった場合には、国で費用負担をした上で、全国各地の土木事業者にも応援を依頼するといった取り組みも可能なんだろうと思っております。

 それから、航空自衛隊。

 航空自衛隊は今、消毒ですとかふん尿処理に当たっているようなんですけれども、これは、非代替性という意味では、私は航空自衛隊でなくてもできる仕事だと思っています。消毒ポイントをふやすという計画があることから、航空自衛隊には追加派遣を要請して、航空自衛隊の方もそのつもりでおられるようなんですけれども、仮に朝鮮半島情勢が悪化したような場合には、日本国として最も早期に求められるのは、航空自衛隊と海上自衛隊によります警戒監視業務になります。だから、ここに万が一にも影響が出るようなことがあってはいけません。

 現地の人手不足という事情からやむを得ないことはわかるんですけれども、消毒業務については、例えば全国の都道府県警、今は既に警察も消毒業務を手伝っておられると思いますので、都道府県警への応援要請ですとか、それから民間事業者への応援要請も含めて、安全保障上の対応というのも頭に入れて今後の人員配置計画を立てていってほしいんです。

 副大臣にお伺いしたいのは、今申し上げたのは本当に最悪のシナリオですけれども、長期化、感染拡大、そしてまた朝鮮半島対応、こういったものも見通した上で、自衛隊の各部隊の派遣計画についてどう考えておられるのか、どういう御予定があるのか、教えてください。

榛葉副大臣 委員が非代替性ということをおっしゃいましたが、当初民間でこの埋却活動をやっておりましたが、感染する家畜のふえるスピードといわゆる埋却するスピードが、質と量が追いつかないということで、まさに自衛隊でなければ、鳥インフルエンザのときではないですが、対応できないということでございます。

 先ほど委員が御指摘になりましたように、この感染が、動物から動物もそうですが、人の出入りによってこれが他の地方に感染をするということはやはり避けなければならないということで、第四三普通科連隊が集中をしてやり、先ほど消毒作業を航空自衛隊がやっているというふうに御指摘になりましたが、そのとおりでございまして、これは、新田原基地にあります第五航空団が作業しております。

 なるべく半径を小さくして、その中で処理をしていく、他の都道府県から人員要請をいたずらにふやしましても、それがまた感染の原因になってはいけないということですので、今このように対応しているというふうに御理解をいただきたいと思いますし、今おっしゃいました、北朝鮮有事を含めたさまざまな安全保障環境にきちっと対応できる体制を構築するということが、我々の本来の、そもそもの任務でございますから、これをそごのないように、また、穴のあかないようにしっかりと対応してまいりたいと思います。

高市委員 それでは、官房副長官にお伺いいたします。

 五月十六日十時から、平野官房長官が、宮崎県都城市で通行車両の消毒ポイントを視察されています。

 その折に、地元のJAの組合長さんから「事業団の種雄牛四十九頭も殺処分の対象となっているが、種牛を作るのに最低でも五年はかかる。超法規的措置で四十九頭を殺処分しないように出来ないか。何とかよろしくお願いしたい。」と頼まれています。官房長官は「ああ、そうですか。」と言われた後、同行の事務方の人に対して「ちょっと今のことをメモしておいて。」と指示されたという記録が残っています。

 その後、十二時過ぎから、宮崎県庁の講堂でマスコミのぶら下がり取材に官房長官は応じられて、記者から「種牛四十九頭を処分するのか。」という質問に対しまして、「後のことを考えれば、時間軸として、五年から十年かかる。慎重にする必要がある。」と答えておられます。

 この官房長官の答えぶり、これを受けまして、地元の方は非常に大きな期待を持たれたと思うんですけれども、この種牛の処分について、どのような方針でございましょうか。

松野内閣官房副長官 今先生御指摘のお話、今の段階で細かくつかんでいるわけではございませんけれども、今政府の中で検討しているのではなかろうかというふうに思っております。

 ただ、やはり法の問題がございますので、そこのところはしっかり見ながら検討していく必要があるのではないかというふうに思います。

高市委員 済みません、詳しくつかんでいないというお答えじゃ困るんです。官邸にいらっしゃって、それじゃ困るんです。

 私自身も、自分自身が閣僚を務めたり副大臣を務めたりしたときに、やはり省内のだれかが、特に認証官が外に出かけていったときにどういう発言をしたか、どういう話を聞いてきたか、残っている記録というのはすべて読んでおりました。

 そしてまた、官邸で全部の対策を取り仕切っていただいているわけですから、状況を把握していないということじゃなくて、官房長官がおっしゃったら、地元の方は大変期待を持たれますから、実際にそれができるのかどうか、どういう方針にしたのかということをきょうの時点でお答えになれないということでは、もう時間もたっておりますから、大変困ると思います。

 最後に、副長官にお願いがございます。

 ゴールデンウイーク中の大臣の海外出張ですけれども、これは、大臣が海外に出られますと、それぞれ代理も立てますから、官邸の方でさまざまな調整をされているということは承知をいたしております。

 例えば、この鳩山内閣で最大の課題として、まず、五月末までに普天間の決着もしなきゃいけない、一方で、宮崎県では、口蹄疫が大変な状況になっている。そうなると、私の思いとしましては、やはり農水大臣には、海外出張の方は代理の人を手配していただいて、すぐさま宮崎県にお入りいただきたかったです。メキシコ、キューバ、コロンビアと農水大臣は回っておられますけれども、もう既にかなり事例が発生していた後のことでございますね。

 それから、普天間に関しましても、鳩山総理は、沖縄県の皆さんが納得し、また日米両方が納得できる、そういう結論を出すということをこれまでおっしゃっているわけですよね。沖縄県の人も日本もアメリカも納得できる、そういう結論を五月末までにきっちりと決める、得るということになりますと、私、岡田外務大臣は外交の顔でございます、外交一元化の原則でございますので、やはりアメリカの外交責任者としっかり話を詰めてほしかった。岡田大臣は南アフリカ、タンザニアに行かれていますけれども、そういう時期じゃなかったんじゃないかと思います。

 そして前原大臣も、沖縄担当大臣です。沖縄の皆さんの納得も得るということでしたら、ぜひ、沖縄県に入って、ゴールデンウイークの間じゅうでも、すべての市町村を回りながらやはり調整をしてほしかった。確かに、高速鉄道の売り込み、重要だということはわかりますけれども、ベトナムに入られている場合じゃなかっただろうと思います。

 また、防衛大臣もインドに行かれておりますけれども、普天間の問題というのはやはり日本の安全保障上も物すごく重要な問題でございますので、インドに行っている場合じゃなかったんじゃないかと思います。

 やはり、日本が直面しているさまざまな課題の中で、優先順位を決めながら、今回、閣僚にとって非常に貴重なゴールデンウイークの時間だったので、国益に資するような調整を今後ぜひともお願いをしたいと思います。

松野内閣官房副長官 内閣府及び内閣官房に大変お詳しい先生のお言葉でございます。しっかり受けとめさせていただいて、官房長官にもお伝えさせていただきたいと思います。

高市委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

東委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 当委員会は、今週火曜日に続いて二回目の質問の機会を与えていただきまして、感謝申し上げる次第でございます。

 それで、今、高市委員からも、ゴールデンウイーク中の閣僚の皆さんの海外外遊という話がありました。私は、直嶋大臣は、所管は貿易であり、また通商、さらには資源エネルギーという、そういうところも所管されているわけですから、国益に資するものであれば、どんどん海外に行って国益のために頑張ってもらいたい。今週末も韓国、あるいは来週はフランスですか、そういうところで大いに頑張っていただきたいと思うわけでございます。

 ただ、やみくもに動くのではなくて、結論から申し上げると、日本は日本としての国の方針というものをしっかりとバックに持った上で、そして国益にどう資するのか、そういうやはり原理原則を持った上での国益ということを考えていってもらいたいな、そういうことがきょう言いたい結論でございます。

 きょう、最初に扱わせていただきたいのは、日本と各国との原子力協力について、今の鳩山政権の考え方というものをこの際しっかりと確認をさせていただきたい、そのように考えているわけでございます。

 特に、まず申し上げたいのは、ゴールデンウイークに直嶋大臣はインドに行かれました。四月二十九日から五月の二日にかけてインドを訪問されて、日本とインドのEPA、経済連携協定、さらには、省エネ技術の供与、インフラ整備事業などの幅広い分野での協力で前向きな協議をされて戻ってこられたと報道ベースでは伺っているんです。

 まず最初に、直嶋大臣の方から、このインド訪問の内容と、目的も含めて言っていただければありがたいと思うんですけれども、成果について御答弁いただきたいと思います。

直嶋国務大臣 四月二十九日から五月二日にかけてインドを訪問しました。もともとこれは、目的は、昨年末に総理がインドへ訪問されてシン首相と首脳会議をおやりになって、その中で、特に経済関係について、両首脳間で、さまざまな連携を強化していこう、こういう方針が確立されました。そのフォローというのが最大の目的でございます。

 それからもう一点は、現地でカウンターパートとエネルギー対話とか経済対話をやりましたが、これは、日印双方で原則的に二年に一回ぐらいやっているものでありまして、実は、今回は日本がインドへ出かける番だったということで、国会日程等もいろいろ考えまして、行くならインドがいいだろうということで、インドに決めさせていただいたということでございます。

 内容は、一つは、エネルギーに関してアルワリア計画委員会副委員長と、今、ワーキンググループを五つぐらい両国間で回しておりまして、それらの議論を踏まえた形での次のステップへの議論をさせていただきました。

 それから、シャルマ商工大臣とEPAについて、本年中にインドのシン首相が日本へ来られる予定になっていますので、首相が来られるまでにできるだけ合意をしたい、それで双方で、できるだけ我々も詰めようじゃないか、こういう確認をして帰ってまいったということでございます。

 それから、特にその後、チェンナイに参りました。これは実は、昨年の暮れ、シン首相が来られた際に、ぜひチェンナイにジェトロの事務所をつくってほしい、こういう御要望がございまして、我々も即座に対応させていただいて、ちょうど開所式をこのころにやりたいということでございましたので、私ども出かけまして、あそこは連邦制ですから、州が実質いろいろなことをやっていくということになりますので、地元のタミルナド州というところのトップを初めとした幹部と懇談をいたしました。

 あちらには日本から企業がたくさん出ていまして、今、道路を中心にした、あるいは港湾整備とか、要するにインフラが不足していまして、この要望が非常に強うございまして、それらについても、私の方からも州政府のトップにぜひお願いしたいということを申し上げて、双方でさらに連携をとっていこうということで確認をして帰ってまいったということでございます。

    〔委員長退席、杉本委員長代理着席〕

佐藤(茂)委員 それで、私は、これから日本が二十一世紀、さらに発展していくためには、後にもその話題をしようと思ったんですが、アジアの成長をどう取り込むかということでいうと、中国とインドというのはもう無視できない国になってきている。この二つがやはり大きく台頭してきているので、そういうことを、やはり通商関係を中心にこれからどう構築していくかというのは大いにやってもらったらいいんです。

 ただ、そのときに、インドについては一番気にかけないといけないのは、原子力協力について、きちっとした考え方のもとにやっていかないといけないだろう、そういう観点から、何点かきょう質問させていただきたいんです。

 まず、皆さん御存じのとおりに、インドは、国際的な核軍縮・不拡散体制、今、見直しの会議をニューヨークでやっておりますが、核不拡散条約、NPTに未加入でございます。昭和四十九年、また平成十年、二回にわたって核実験を実施いたしました。

 日本は、さまざまな機会をとらえて、インドに対して、NPTへの加入あるいはCTBT早期署名、批准等を中心とする核不拡散上の具体的な取り組みを行うように働きかけてきております。

 日印間の原子力協力についても、日本は唯一の被爆国でございますから、核不拡散条約に加入していないインドに対しては、インドへの原子力協力が国際的な核不拡散体制に与える影響を考慮して、原子力協定を締結して技術等を供与するなどの原子力協力を行うということについては、今までは極めて慎重な立場をとってきたと私は認識しているわけでございます。

 きょうは吉良政務官に来ていただいておりますので、外務省としてぜひ明確にお答えいただきたいのは、日本とインドの間、日印間の原子力協力を行うためには原子力協定というものを結ばなければいけません。その結ぶことについて、今までの政府の考え方をぜひ明快に御答弁いただきたいと思います。

吉良大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今、佐藤委員が御指摘のとおり、我が国としては、一方で、インドの戦略的重要性、そして原子力の利用による地球温暖化問題への貢献、そして一方で、あれだけの人口大国であるインドの増大するエネルギー需要の手当て、このような必要性が一方の極にあり、また一方の極では、まさに御指摘のありました、NPTに加入していないインドへの協力によって国際的な核軍縮・不拡散体制に与える影響、これらを十分考慮した上で、日印の原子力協定については考えていかなければいけないということでございますけれども、今申し上げたこれまでの政権の立場と、現時点では、両方を考えながら総合的に判断して対処していくという考え方でございます。

佐藤(茂)委員 そこで、今までもそうだったんですけれども、つい最近では、国際的にどういうことが起きたかというと、今から二年前の平成二十年、二〇〇八年の八月、また九月に、原子力供給国グループ、NSGの臨時総会というのが開催されまして、NSGガイドラインからのインドの例外化という議論が行われました。

 これはどういうことかというと、IAEAがその原子力活動のすべてを保障措置の対象としていない国には原子力関連資機材の輸出をしないというNSGガイドラインに対して、インドを例外扱いとする、そういう修正の議論がこのときに行われて、最終的に、その結果、原子力供給国グループ、NSGは、インドとの民生用原子力協力に関する声明をコンセンサスにて採決されたわけであります。そのときに日本が非常に悩まれた、日本政府として。これは我々の政権のときでもあったんですが。

 平成二十一年度の外交青書によりますと、「大局的な観点からぎりぎりの判断として、日本は同声明に関するコンセンサスによる採択に加わった。」と。ぎりぎりの判断として加わったんだ、そういう表現に、そこにあらわれているように、非常に難しい選択をされたんです。

 そこで、もう一度吉良大臣政務官にお伺いしたいのは、今申し上げました二〇〇八年の原子力供給国グループ、NSG臨時総会で、インドとの民生用原子力協力に関する声明を採択された経緯と、そして、ぎりぎりの判断と言われるんですけれども、その採択された理由、どういうことでインドを例外扱いするということの声明を採択されたのか、外務省としての御答弁をいただきたいと思います。

吉良大臣政務官 お答えをいたします。

 先ほどの答弁と多少重なるところがあろうかと思います。委員御指摘のとおり、前政権下の中でコンセンサスに参加したということでございますので。一方では、先ほどの繰り返しになりますけれども、インドの戦略的重要性、そして、こういう地球温暖化の対策が必要な状況下における原子力の平和利用の必要性ということの意義を大変大事に考える一方、御指摘のとおり、NPTに加入していないインドでありますので、その二〇〇八年九月のNSGの採択に当たって、前提となっておりました約束と行動、その中で核実験モラトリアムの継続を初めとして、私ども政府として懸念しているところが、ぎりぎり否定するところまでには至らないという、まさにぎりぎりの判断でコンセンサスには参加した、こういうことでございます。

佐藤(茂)委員 要するに、そこで苦渋の判断を前政権のときにもしたわけでございますが、そこでぜひ外務省として、もう一回確認したいのは、その声明の採択をしたことによって、今の外務省の判断としても、NPTに加入していないインドとの原子力協力を行うことに慎重な態度をとってきた日本政府の立場が、それを契機に大きく変わった、そういうように考えておられるのか、いや、それまでと、やはりいろいろな総合的な判断をするというスタンスは全く変えていなくて、具体的に言うと、原子力協力を行うことについては、両方を考えた上でも、これは慎重に考えていかないといけない問題である、そういう考え方をとられているのか、そこはぜひ、外務省の見解として、今明快にお答えいただきたいと思います。

    〔杉本委員長代理退席、委員長着席〕

吉良大臣政務官 お答えを申し上げます。

 現時点で言えることは、基本的に慎重に原子力協定については対処していかなければいけない。ただ、先ほど来申し上げていますように、インドの重要性等を考えたときに、静かなる対話を行いつつ、この原子力協定についても検討しているということでございます。

 現時点で申し上げられるのはそういうことでございます。

佐藤(茂)委員 そこで、直嶋大臣にお聞きしたいのは、四月三十日にインドのアルワリア計画委員会副委員長とニューデリーで会談されて、原子力発電の技術協力に向けてのワーキンググループ、作業部会と日本語では言うんでしょうけれども、それを立ち上げることで合意されました。

 この日印間の原子力ワーキンググループというのはどういうものであって、何の目的で立ち上げられたのか、ぜひ大臣から直接御答弁いただければありがたいと思います。

増子副大臣 申しわけありませんが、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 先ほども大臣の方から答弁がありましたとおり、大臣がこのゴールデンウイーク、インドに訪問してシン首相との間でさまざまな協議をした中で、大事な一つとしてこの原子力に関するワーキンググループを立ち上げたものと私ども理解をしております。

 その上で、昨年十二月二十九日の鳩山総理とインドのシン首相の共同声明で、両国は、原子力がエネルギー需要の増大に対応するためのクリーンなエネルギーとの認識を共有するとともに、日印閣僚級エネルギー対話のもとで、両国のエネルギー担当大臣が、おのおのの原子力エネルギー政策に関する見解と情報をやりとりするとしたところでございます。

 これに基づいて、今、佐藤先生御指摘のとおり、原子力に関するワーキンググループは、この共同声明の趣旨を踏まえて、日本・インド閣僚級エネルギー対話での情報交換をより実務レベルで詳細なものとするために立ち上げたものであります。今後、インドの原子力発電所の建設計画や課題、各国との協力の状況などについて情報交換、意見交換を行っていく予定といたしております。このワーキンググループ、大変私ども重要だと認識をいたしております。

佐藤(茂)委員 そこで、先ほどから吉良政務官も外務省の立場から言われているんですけれども、インドは、我々も情報で聞くところによりますと、二〇二〇年までには二十基以上の原子力発電所を建設する計画であると。また、具体的に、日本以外のアメリカやフランスは既に原子力協定を締結して、原発受注にこぎつけていると伺っているんですけれども、そういうことも含めて、インドの電力需要、さらには原子力発電所の建設、そして諸外国の協力状況について、経済産業省の方から御答弁いただきたいと思います。

増子副大臣 お答え申し上げます。

 インドの電力需要は、二〇〇七年の時点で約八百テラワットアワーでありまして、今後、経済成長によるエネルギー需要の急増などを背景として、二〇二〇年には約千六百五十テラワットアワー、約二倍になります。二〇三〇年には二千七百テラワットアワー、約三・五倍に増加すると見込まれております。当然、それだけ原子力発電所が増設されるということになっていくわけでございます。

 また、インドの原子力発電所の建設状況については、現在、十九基、約四百五十六万キロワットの規模で運転されており、電力需要の増加に対応するため、二〇三二年までに現在の約十三倍の六千万キロワットに拡大する目標を掲げているところでございます。大変な数であります。

 さらに、インドと諸外国との原子力協定については、現在、ロシア、フランス、アメリカ、カナダ、韓国といった国々が積極的にインドとの原子力協定を展開していると私ども承知をいたしております。原子力協力協定についても、フランスが二〇〇八年九月、アメリカが同じく十月、ロシアが同じく十二月に署名している状況でございます。

佐藤(茂)委員 それで、直嶋大臣に核心の部分を聞いておきたいんですけれども、日本は、これは諸外国も一緒ですけれども、原子力発電の技術を輸出したり協力する場合には、核兵器に転用しないことなどを相手国に宣誓させる二国間の原子力協定というのを結ぶ必要があるんですね。

 今回の、先ほど言われた原子力ワーキンググループの立ち上げは、情報交換や意見交換などの既成事実を積み重ねていって、最終的にはなし崩し的に原子力協定を結ぶための伏線あるいはきっかけではないか、そういうようなトーンの論調もあるんです、そういう見方や懸念も。

 ですから、ワーキンググループの今回の立ち上げと原子力協力、あるいは最終的な原子力協定の締結との関係をどのように大臣として考えておられるのか、御答弁いただきたいと思います。

増子副大臣 私の方からまたお答えさせていただきたいと思います。

 原子力に関するワーキンググループは、原子力がエネルギー需要と気候変動問題を同時に解決できるエネルギーであるとの共通の認識のもとで、日本・インド閣僚級エネルギー対話のもとに、原子力に関する意見交換や情報交換を行う場として設置されたものでございます。目的等は先ほど申し上げたとおりであります。

 原子力に関するワーキンググループは、インドにおける原子力発電所建設の今後の見通しや各国との協力状況等について実務的に話し合う場であり、原子力協力協定に関する調整を目的とするものではございません。私どもはこの件についてははっきりとしておりますので、あくまでも原子力の今後の建設の見通しや協力状況について話し合うということが目的でございます。

佐藤(茂)委員 ですから、今、情報交換あるいは意見交換、こういうのはいいでしょう。しかし、増子副大臣が最後に言われた、協力状況等について話し合うんだというのは、もう一歩踏み込んでいることになっているわけですよ。だから、どこの一線をしっかりと経産省として明確にされているのかというのをやはりはっきり言っておくべきだと思うんですよ。

 ワーキンググループを立ち上げるということ自体、何かその先に目的があるのと違うか、そういうふうに誤解されるわけでありまして、何のためのワーキンググループなんだ、そこをやはり明確にしておく必要があるんじゃないのか、そのように考えるんです。

 要は、インドの電力需要とか、これから原子力がどうなっていくかとか、そんなことを日本が情報として得て、それで何をするんですか。ただ情報を得るだけが目的なんだ、いや、そこから先の日本として協力できることを考えるというなら、これはやはり協定に結びつく話でありますから、そこをどう考えるのかというのを明確にしていただきたいと思います。

増子副大臣 私どもは、先ほども申し上げましたとおり、あくまでもこれは原子力協力協定に関することが目的ではございません。いろいろな情報交換をしたり、あるいは実務的な面についていろいろな意見交換をしていきながら、ともにクリーンな社会をつくるために協力していこうということでございます。

 そういう意味では、もう佐藤先生御案内のとおり、原子力はクリーンエネルギーの四番バッターとも言われるわけでありますから、原子力について幅広くいろいろな意見交換をしながらお互いの関係を築いていこうということでありまして、何度も申し上げますが、原子力協力協定がその先にあるということを私どもは一切考えていないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

佐藤(茂)委員 そこで、アメリカが今、まともな国から批判されておるわけです。それは何かといったら、ダブルスタンダードの国だ、そういうふうに言われておるわけですね。

 具体的に言うと、先ほど言いました二〇〇八年の原子力供給国グループ、NSGの臨時総会で声明の採択の後に、アメリカ国内の手続が急遽行われて、先ほど答弁でもありましたけれども、平成二十年十月には、アメリカとインドの原子力協力協定が調印されました。さらに、フランスもまたロシアも、原子力協定が、NSGの臨時総会の後に、同年に九月、十二月と署名をされるというように、各国との協力協定が進展する。

 特にアメリカは、何でダブルスタンダードだと言われるかというと、NPTに加盟しているイランには非常に厳しくて、NPTに加入していないインドに対しては非常に甘くて、加入していないインドに対して民生用の原子力の協力をやりますよという。こういうことをやるからダブルスタンダードだと言われているんです。

 ですから、私は、今の経済産業省の姿勢として、一線をきちっと画さないといけないと。要するに、原子力協定を結びませんよと言いながら、どうもそれにつながるような情報交換や意見交換は片方でやっておるというのは、アメリカほどではないけれども、やはりダブルスタンダードだと批判を受けるわけですから、何のためにそんな、ただ情報交換だけなんて言われても、これは普通聞くと、その先に何か目的があるんだろう、そういうふうに言われるわけです。

 ですから、逆の意味でちょっと外務省にお尋ねしたいのは、唯一の被爆国である日本としては、NPT未加入のインドに対しては、今既に協定を結んでいる、例えばアメリカやフランス、ロシアなどとは違う立場だ、そのように私は考えているんです。少なくとも、自民党さんと我々公明党と連立を組んできた政権まではそういう考え方でございました。

 インドがどういう状況になれば、あるいは言い方をかえると、日印間の関係がどういう環境整備が整えば、日本とインドの間の原子力協定の締結の動きへとつながっていくと考えておられるのか。日本政府としての、日本とインドの間の原子力協定に関する方針あるいは基本的な考え方を明確にされる必要があるんだろう、そのように私は思うんですが、外務省の見解を伺っておきたいと思います。

吉良大臣政務官 お答えを申し上げます。

 再び、先ほど来の答弁と多少重なる部分があるかもしれませんが、まず、これは前政権時代から、そして我々の政権になりましても、核実験モラトリアムの継続についてインドに申し入れ、また、NPTへの加入、またCTBTへの早期署名、批准については機会あるごとに申し入れている。その意味では、NPTの枠外にあるインドに対して、これまでの基本どおり申し入れているというのが一方の立場でございます。

 ただ一方で、先ほど来申し上げておりますとおり、いろいろな意味で、原子力の平和利用がもたらす貢献ということも考慮しながら、先ほど来何回も言っておりますけれども、まさに総合的に判断しながら、原子力協定締結に向かって進むのかどうかも含めて、今静かに検討しているところでございます。

佐藤(茂)委員 今、政務官の範疇では、そこから先の答えはできないと思うんです。答弁を求めても難しいと思うんですけれども、要するに、NPTに加入していないインドに対して、原子力協定を結ぶような余地が総合的に勘案したらある、そういうように受け取られかねない答弁というのはやめた方がいいと思うんですよ。

 最低限、まずはやはりインドにNPTに加盟してもらう、原子力協定というのはそこから先だ、そういう判断を明確に言うべきだと思うんですけれども、政務官で言えなければ、直嶋大臣、どうですか。

直嶋国務大臣 先ほど来、吉良さんや増子副大臣から御説明しておりますが、私も先方のエネルギー担当の閣僚と話したときに申し上げたのは、今までの日本の立場はきちっと申し上げました。また、日本は唯一の被爆国であるし、核に対する国民の意識というものが当然ほかの国とは違いますと。したがって、そういうことも考慮をした上でないと、もちろん原子力協定そのものも結べないと思います。これは今、吉良さんから経過も含めてお話があったとおりでございます。

 そういうことを申し上げて、インドはインドで、なぜNPTに入らないかとか、そういう話がありました。しかし、日本の立場をきちっと申し上げた上で、先ほど増子副大臣から御説明があったように、しかしインドの計画そのものは持っていますので、それも、いきなり協力を前提にやっているわけじゃなくて、どんなことを考えているのかということと、それから、いずれこれは、すぐ議論にはならなくても、では日本が本当に何ができるのか。具体的なことをやろうとすれば原子力協力協定というのが必要になることは当然なんですが、仮に協力協定が結ばれても、ひょっとしたら日本はやれないかもしれません、いろいろな意味で、場合によっては。

 そういうことも含めて、むしろ今後の経済政策を考える上で重要な情報交換をしっかりしていこう、そういう意味で、実務的なワーキンググループということで、その設置をしようじゃないか、こういうことにさせていただきました。

 したがいまして、ワーキンググループの設置そのものは明確に、今の御議論の、日本とインドの政府間でどういう協定を結ぶのか、結べないのかという話とは切り離した形で動かしているということで御理解をいただきたいと思います。

佐藤(茂)委員 ですから、私が申し上げたいのは、政府として、この会談自体が、鳩山総理とシン首相との首脳会談を受けてからそういう流れになってきたんだというんですけれども、できたら、総理がおられたら総理にも考えを聞きたいんですが、政府の方針及び基本的な考え方というのがきちっと明確に根本にあって、そのもとに、経済産業大臣は経済産業大臣、外務大臣は外務大臣が、それぞれのつかさつかさで、役割分担してしっかりと動いていく、そういう統一した考え方のもとに当然動くべきである。そのときに、このインドとの関係、特に原子力協力という極めて機微な問題について、どういう方針で鳩山政権としては進むんだ、そういうことに基づいてやはりやっていくべきである。

 その前提として、私どもも今、後で言いますが、産業構造ビジョンの中でも打ち出された、アジアの成長力を日本の成長に生かすということは重要であるということも思っておりますし、また、インフラ整備の協力というのは推進すべきだと思うんですけれども、その際に、冒頭も申し上げましたけれども、日本政府としての他国とは違う原理原則というものがあるわけですから、やはりそれをしっかり持って今後やっていくべきだろう。

 特に、このインドとの原子力協力の問題というのは、過去からの経緯もあって、唯一の被爆国である日本がどういう対応をするのかというのは、国民も見ているし、国際社会も見ている問題ですから、日本政府としての原理原則を総合的に勘案するなどという抽象的な言葉で終わらすんじゃなくて、しっかりと立ててやってもらいたいと思うんですけれども、何か経産省として答弁がありましたら。

増子副大臣 お答え申し上げます。

 佐藤先生のおっしゃるとおりだと私も思っております。日本の歴史的な過去の経緯を踏まえても、唯一の被爆国としての日本の立場というものはやはりしっかりと世界に訴えていくべきでありますし、核の平和利用ということも当然のことであります。

 そういう状況の中で、先ほど来話が出ておりますとおり、やはり地球環境問題も含め、クリーンエネルギーの一つである原子力政策をどのように平和的に進めていくかということは極めて重要な課題だと思っております。

 そういう中で、私どもとしても、大臣がゴールデンウイークを利用して積極的にエネルギー外交を進めていくという中で、今回のワーキンググループがつくられることになったわけでありますから、先ほど来申し上げているようなことを私どもはしっかりやっていきたい。

 その上で、原子力の協力には、必ずしも原子力協定が必要ではありません。特定の技術移転というものが行われる際には当然原子力協定というのが必要になってまいりますが、今回はあくまでも、特定の技術の移転ということではなくて、平和利用も含めながら、原子力政策のあり方をどのようにしていくか。

 それと同時に、先ほど来、吉良政務官が答えているとおり、インドも静かに今いろいろなことを考えているわけですから、私どももそれを注意深く見ながらしっかりと対応していきたい。私たちの国の立場というものを世界じゅうにしっかりと発信しながら、私たちは、このワーキンググループの進め方、原子力政策のあり方というものを外交的にも進めていきたいと思っておりますので、ぜひこの点も含めて御理解をいただきながら、御支援をいただければ大変ありがたいと思います。

佐藤(茂)委員 もうこの質問を終わろうと思ったんですけれども、今、増子副大臣の答弁で、逆に心配になりました。

 要するに、原子力協力というのは原子力協定だけじゃないんだと。そうすると、原子力協定を結ばなくてもインドとの間で原子力協力をやっていく、平和利用という名前のもとにやっていく余地がどんどんあるんだ、そういう見解を今言われたんですよ。今、鳩山政権というのはそういう立場なんですか。そこをちょっとはっきりさせてください。

直嶋国務大臣 私の認識としましては、もし日本とインドの間で原子力発電に関するビジネスを実行するという場合には、当然、原子力協力協定が必要である、そういう前提に立って初めて事業の協力は可能になるというふうに思っています。

佐藤(茂)委員 ぜひ私は、この核の問題、平和利用では原子力ですけれども、この問題というのは、時の政権として、やはり本当にもう少し敏感にきちっと扱わないといけない問題だという緊張感を持ってこれからも対応していただきたいなと。別にこれはインドだけじゃありませんけれども、そのことを申し上げておきたいと思います。

 これはまた、この後動きが出てきましたら、このテーマで質問させていただきたいと思うんです。

 そこで、次のテーマに移りまして、先ほど塩崎委員の方からも、産業構造ビジョンの骨子案について、こんな分厚いもので、まだ全部読み込んでおりません。塩崎先生はもうすべて読まれたみたいですけれども。また引き続き、これは次回以降やっていきたいと思うんですけれども、非常に材料がいっぱいありますので、それを取り扱っていきたいと思うんです。

 きょうは一つだけ、この十八日の翌日の新聞なんかでも一番大きな見出しで扱われていたのが、法人税の実効税率の引き下げのことでございます。

 今、現行の四〇・六九%を、この産業構造ビジョンの骨子案では、二〇一一年度に五%程度引き下げて、将来は二五から三〇%を目指す、そういうふうにされているわけですね。私は、経済産業省として初めて具体的な引き下げ幅を示されたというのは評価したいと思うんです。というのは、我々も、やはり国際競争力の観点から法人税の引き下げというのは必要である、そういうように思っているからであります。

 それで、特に国税と地方税を合わせた法人税の実効税率というのはヨーロッパやアジアの諸外国に比べて突出して高いというのはだれが見ても明らかなことでございまして、重い税負担というのが企業の利益を圧迫して投資余力をそいで、対内投資を阻害したりする要因になっているということは、私どもも同感しているわけであります。

 ですから、ヨーロッパの三〇%前後や、アジアは二五%以下だと思うんですけれども、そういうところにまで軽減をしていくというのは、日本の企業の国際競争力を高めるとともに、また、日本の企業が海外流出をしていくのを防ぐ、そういうことでは、方向性としては大事だと思うんです。

 ただ、今の現下において、果たしてこれだけのことができるのか。例えば、景気の低迷で税収が非常に落ち込んでおりまして、多分これから閣内で議論されたときに、某省、某省というか、はっきり言いましょう、財務省なんかから恐らく出てくるのは、この減税分の財源をどう確保するんだと、財政悪化への懸念に、どう説得力ある議論で経産省として説明できるかというのが問われてくるんだろうと思うんです。

 きょうは一問だけぜひお聞きしたいのは、このビジョンの骨子で法人税率引き下げを発表された理由と、法人税の実効税率引き下げの影響、財政面に与える影響もそうですけれども、また、それを乗り越えてこういう効果があるんです、そういうことをきちっと議論されたから出されたと思うんですけれども、具体的な数字を交えてぜひ御説明いただきたいと思います。

直嶋国務大臣 これからの日本の成長戦略を考えた場合に、確かに佐藤議員が言われるように、今の日本の財政状況というのは真っ正面から受けとめなければいけないかもしれませんが、同時に、財政の健全化を実現していくためにも、成長戦略と財政再建とがやはりきちっと平仄が合った形でなければいけないというふうに思っています。ですから、基本的には、私はそういう方向でこれからの議論をしていきたいというふうに思っています。

 それからもう一点は、税制をどうするかという議論は常にあるわけですが、私は、法人税の問題は税制の問題ではない、むしろどう成長していくか。あるいは、これは企業の国際競争力じゃなくて、日本の立地競争力が極端に低下しているわけですね。だから、日本の立地競争力をどう維持しながら経済成長を図っていくか、むしろこういう観点から議論をすべきではないかというふうに思っています。

 それで、もう時間があれですから簡単に申し上げますが、今議員御指摘のように、我が国の法人税の、これは実効税率ベースで見ても、国際水準から見て極端に高い、これはもう事実だと思うんです。ですから、この極端に高いものをやはりできるだけ早く国際水準に下げていく、それが必要だ。

 さはさりながら、そのためにはやはり相当なお金がかかるわけですから、まずそういうメッセージを国際社会に対して出すという意味合いも含めまして、来年度は五%程度ぜひ引き下げたい、こういうことを先ほどの産構審の場で私の方から提案させていただきました。

 具体的にどうするかというのは、これから財務省と詰めなければいけませんが、なかなかこれは簡単じゃないということは、そう思っています。

 したがいまして、ぜひ、先生を含めた皆さんの応援をよろしくお願い申し上げたいと思います。

佐藤(茂)委員 最後に一問だけお聞きしたいんです。

 法人税の実効税率引き下げの議論は私どももやっていかないといけないと思うんです。そこで、民主党さんが昨年の衆議院選挙のときに目玉の一つとしてやられておりました中小企業の法人税率の一一%への引き下げ、何点か聞きたかったんですけれども、まとめてお聞きします。

 今回の産業構造審議会の議論の中で、中小企業の法人税率について、マニフェストに掲げられたんですから早々とあきらめておられるということはないと思うんですけれども、これはどのような議論をされて、ことしはだめだったんですけれども、来年度以降一一%に持っていくという方向でされるんですか。明快に御答弁いただけたらありがたいです。

近藤大臣政務官 お答えいたします。

 産構審では、中小企業の軽減税率については議論をしておりません。

 ただし、もう先生御案内のとおり、平成二十二年度の税制改正大綱において、課税ベースの見直しによる財源確保などとあわせ、その早急な実施に向けて真摯に検討する旨を閣議決定しておるわけでございます。

 これを踏まえて、経済産業省としては、その早急な実施に向けて真摯に検討してまいりたい、このように考えております。

佐藤(茂)委員 以上で終わります。

 来週も機会があるようですから、続きをさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

東委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、最初に「もんじゅ」について伺いたいと思います。

 以前から、高速増殖原型炉「もんじゅ」の燃料の方の、特にプルトニウムにかかわる同位体組成はどうなっているのかということを伺ってまいりました。

 「もんじゅ」が動いたときの、初めての装荷のとき、それから九五年の「もんじゅ」事故のときには燃焼度が上がっていますから変わっているわけですが、現在、改めて入れるわけですから、装荷しているときの同位体の組成はどうなっているのか、最初に伺います。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 プルトニウム同位体の組成は、炉心における発生エネルギー量あるいは燃料の溶融点などに影響して、高速増殖炉炉心設計に不可欠な大変重要な情報でございます。

 先生御案内のとおり、高速増殖炉開発、従来からフランス、ロシア等々の国が取り組んでおります……(吉井委員「そんな話を聞いているんじゃなくて、アイソトープの組成を聞いているんです」と呼ぶ)はい。

 日本は現在、この分野で先進しているわけですけれども、先生ただいまおっしゃられました、プルトニウムの高速増殖炉炉心における同位体の組成比、これは、先ほど冒頭に申しましたように、非常に重要な、ノウハウ的な情報でございますので、これが仮に公開された場合には、諸外国はその当該情報を活用してそれぞれの研究開発を加速し、その結果、この分野における日本の技術的優位性が、今あるということでありますけれども、それが損なわれるおそれがあるという観点から、プルトニウム同位体組成の比については公表していないというふうに聞いております。また、各国においても、この技術データにつきましては、同様に公表していないというふうに聞いております。

 なお、「もんじゅ」の安全性の評価……(吉井委員「いや、安全性の評価はまだ聞いていないんですけれども」と呼ぶ)はい。失礼いたしました。

吉井委員 先日紹介いたしました、文科省、経産省共管にある社団法人原子燃料政策研究会の報告書の中で、プルトニウムの組成が、アメリカの一九七〇年代以降におけるプルトニウムのグレードについてというのがありますけれども、プルトニウム240が七%までであればウエポングレード、核兵器用のプルトニウムになる、七%から一九%までであれば核爆発物になるプルトニウム、一九%以上であればリアクターグレードだということが報告されておりますが、「もんじゅ」で使っているのは、要するにこのどれに当たるのか、伺います。

藤木政府参考人 大変、重ねて恐縮でございますが、プルトニウム同位体比の組成につきましては、先ほど申しましたように、ノウハウ的なデータでございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

吉井委員 これは、炉心設計、核燃料設計にかかわる問題です。どの位置にどういう組成のMOX燃料を、どこにどういうものを配置するか、燃焼度が高まるにつれてどう変わるのかということにかかわってくるわけでありますし、それは使用済み燃料の放射線濃度の強度にもかかわってくる問題なんです。

 これがわからないということでは、もともと核設計ができないということになりますし、公表できないというのでは、核兵器生産能力を持つプルトニウムが使われているということを否定することはできないわけですよ。ですから伺っているんです。どうなんですか。

藤木政府参考人 改めてお答え申し上げます。

 先ほど申しましたように、同位体比そのものは申し上げることはできませんけれども、先ほど先生が幾つか分類された中では原子炉級に該当するというふうに承知しております。

吉井委員 アメリカの国防総省などの研究の中でも、爆縮技術とか核設計によっては原子炉級プルトニウムでも核兵器はつくれるんだ、あるいは、それを起爆剤にして核融合、水素爆弾の方ですね、これもつくれるんだという報告を、皆さんが管轄していらっしゃる社団法人の方でもそういう報告書を出しているわけです。

 同じ報告の中で、各種のプルトニウムのアイソトープ組成というのを示しておりますが、スーパーグレードの場合は、プルトニウム239が九八%、240が二%ということなんですが、ウエポングレード、核兵器級になると、238が〇・〇一二%で、239が九三・八%、240が五・八%、プルトニウム241が〇・三五%、プルトニウム242が〇・〇二二%。リアクターグレードの場合は、238が一・三%、239が六〇・三%、240が二四・三%、241が九・一%で、242が五%。また、MOXグレードというのもありますが、高速増殖炉の燃料集合体、FBRブランケットでは、プルトニウム239が九六%で、240が四%だと。

 ですから、高速増殖原型炉「もんじゅ」の燃料集合体は核兵器用プルトニウムの組成を持っているのではないかと。これは、諸外国からしても、この皆さんが調査された報告書の中ではFBRの燃料集合体の方は非常に高い割合ですから、何か大したことないようなお話とは必ずしも言えない。これは、燃焼の進行によって、燃焼度がゼロから四十メガワット・デー・パー・キログラムの範囲について、プルトニウム239については、仮に一〇〇%239であっても燃焼によって六〇%まで落ちてくる。逆に、240の方がゼロの方から二〇%まで上がっていく。

 つまり、どの段階にあるかというのは、これは炉心設計にもかかわってくるし、同時に、国際的にも、ちゃんとしないと信頼されないものになってしまう。

 燃焼してもそうなんですが、自然崩壊によっても変化するわけですね。ですから、事故でとまったときと、そのままだったらいわゆる劣化ということではありますが、しかし、自然崩壊によって、240の自発核分裂で239の劣化ということが起こってくるし、それはまたその中で放射線被曝の問題が出てくる。

 これは、実は240の比率の多い核兵器を使った場合には、兵士がそれを取り扱っているだけで被曝するということが問題になっているぐらいですから、やはり、初期段階のプルトニウム組成というのは、これは核兵器級のものであって、非常に慎重に扱うべきものになっているということを考えなきゃいけないと思うんですが、どうですか。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、日本の原子力利用は平和利用に厳に限るということを原子力基本法をもって定め、国是としているわけでございますので、そういった平和利用にいささかなりとも疑念が生じてはいけないということは当然のことであると思います。

 先ほど申しましたように、「もんじゅ」の燃料につきましては、原子炉級ということでございますし、またあわせて、国際原子力機関との保障措置も厳密に受けているわけでございますので、もちろん平和利用に関して常に必要な対処をしていくということは当然でありますけれども、その点と「もんじゅ」の同位体組成の詳細な点という点については、別の話というふうに理解しております。

吉井委員 非核三原則が国是であるとか、核兵器をつくらない、自主、民主、公開とか、その原則があっても、非常に危ない問題がいろいろ出ているのが現実なんですよ。だから、オープンにすることが必要なんです。

 一九九五年の「もんじゅ」事故で問題になったのは隠ぺい体質でした。今問題になっているのは、プルトニウムの同位体組成についても明らかにしない。最初に装荷したときと、ずっと運転中もちろん組成が変わっていくわけですから、どうなっているのか、これさえ明らかにしない。

 それから、警報が再開後もたびたび起こり、トラブルも発生しておりますが、何か最初は七十五件ぐらいの話だったかと思ったら、いつの間にか二百二十件ぐらいトラブルが起こっていたり。ところが、その報告が遅過ぎる。

 だから、九五年に問題になった隠ぺい体質というのは今もなお変わっていないというのが、今のお答えによっても明らかになったというふうに思うわけです。

 ここで大臣に伺っておきたいんですが、「もんじゅ」には危険な要素が非常に多いんです。その一つが核兵器可能なプルトニウム組成を持っているという問題なんです。二つ目に、プルトニウムそのものの毒性が高くて、事故時の放射能汚染の危険性。そして、三つ目に空気や水と爆発的に反応するナトリウムを使うという問題なんです。

 核兵器可能性の問題については、明らかにしないんですから、否定もしていないんですよ。否定もできないんです、明らかにしないことには。

 しかも、研究開発が進んだとしても、通常の軽水炉に比べてコンポーネントの数がうんと多いわけですから、建設コストが軽水炉よりはるかに高くなるんです。それから、再処理コストを含む燃料コストがさらに高いものになります。日常的にナトリウム配管というのは一定温度に保っておかないと固まってしまいますから、そのための燃料費を初めとする維持管理コストがこれまた高い。そして、商業炉として採算性のめどがつくのかといったら、めどが立たないというのが、実は現在の軽水炉の方の動力炉と比較して全く違ってくるものなんですよ。採算性のめどがつかないんです。

 それなのに、数多くの警報の発生とか検出器の異常などが相次いでおっても、「もんじゅ」というのは、新幹線誘致など地元の公共事業を推進するための言ってみれば条件闘争の道具としての意味になっているんじゃないかと言われるぐらいの問題が今出ているんですよ。

 私は、政府として、将来性、採算性のめどが立たないものについてやはり中断を、もう中止することを決断すべきだと思うんですが、これは大臣に伺っておきます。

直嶋国務大臣 先般もお話ししたとおりでございますが、政府としては、原子力発電それから核燃料サイクル、高速増殖炉、しっかりと推進をしていこう、こういう立場でございます。

 もちろん、先生御指摘のように、まだ実証段階といいますか、実用化までは至っておりませんので、さまざまな課題があることは事実でございます。しかし、将来の日本のエネルギー確保を前提に考えました場合、やはり高速増殖炉技術も必要であるということで、今回再開に踏み切らせていただいたということでございまして、御指摘のような御心配の点についてはしっかり留意をしながら進めてまいりたいというふうに思っております。

吉井委員 今のような発想で、それ行けどんどんでいくのは大変危険な道だということを指摘しておいて、次に画像ジャイロの問題について質問したいと思います。

 ことし二月十七日に、岡田外務大臣はルース在日大使に対して、MDA、相互防衛援助協定に基づいて、防衛省と国防省当局との間で画像ジャイロ計画を進めることについて了解覚書を交わし、事業取り決めから実施細目の取り決めを行うことなどを確認した日本政府の書簡を送っています。

 最初に防衛省に伺っておきますが、画像ジャイロというのは、航空機に六個ぐらいの複数の特殊なカメラを積載して地上を撮影し、画像を分析することや、蓄積されたデータと突き合わせて瞬時に自分の位置を確認したり、航空機自身がどの方向へどれだけ移動したかなどを確認できる装置、そして、仮に敵方からの妨害電波でGPS機能が阻害されたとしても、偵察機や攻撃機が自分の力で航行できるようにするもの、もちろん従来からの慣性航法装置やGPSを利用する技術や運用を補完する上で有用なものというのが、これがお考えになっている画像ジャイロと言われているものかと思うんですが、こういうふうに理解していいんでしょうか。

秋山政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、従来のGPSであるとか慣性航法システムの補完用ということで、カメラに撮った画像と記憶している画像を比較して、航法に使うものでございます。

 ただ、現在の技術ではかなり時間がかかりますので、今現在、GPS並みの精度を持つことはちょっと時間がかかるのではないかというふうに思っております。

吉井委員 画像ジャイロというのは、無人機などの測位、航法装置としての応用が期待できるということの御説明もいただいておりますが、防衛省がこの画像ジャイロを使用する場合の無人機というのは、これは軍用機という考えでいいですか。

秋山政府参考人 現在、画像ジャイロを何に使うかはまだ決定しておるわけではないんですが、仮に将来、この技術を使って我々が無人機を開発ということになれば、一般的に軍用機と言われることはあると思います。

 ただし、例えば、我々、無人機として民間で使われているものを使ったりしておりますので、そういうものに使われた場合は、一概に軍用機というふうな範疇には入らないのではないかと思っております。

吉井委員 ヘリコプターの農薬散布の話じゃないですから。

 防衛省では、今年度から日米共同で画像ジャイロ研究も始めておりまして、日米共同研究の課題に挙げて進めてきております。今、アメリカの空軍省での、航空機を使って、米国内の基地を使って、二〇一〇年度につくり上げる予定の防衛省の試作品を搭載してテスト飛行を計画しているというのが現状だと思うんですが、間違いありませんか。

秋山政府参考人 今、日本でつくっておりますが、それとは別にアメリカでも、航空機に搭載する画像ジャイロをつくっております。それを、アメリカ国内において、民間のプロペラ機を借り上げて、それに取りつけて試験をするというふうに承知しております。

吉井委員 いずれにしても、アメリカの空軍省と共同しての研究だということは、既に取り決めの中であるわけですから。

 それで、MDA協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器及び武器技術の供与に関する交換公文というもので、JAMTC、これを協議機関として設置しておりますが、このJAMTCとは何ですか。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的には外務省等の所管でございますが、武器技術供与等に当たりましての、日本とアメリカの政府間で実施細目等を協議する機関というふうに理解しております。

吉井委員 これはちゃんと書いてあるように、防衛、外務、経産、三者の代表でやっているものですね。

 それでこれは、この了解の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項について協議する機関がJAMTCと。JAMTCは、特に供与されるべき武器及び武器技術を識別するに当たっての協議機関ということだと思うんですが、確認しておきます。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 JAMTC、武器・武器技術共同委員会でございますけれども、具体的には、先生言われました武器及び武器技術に関しての決定等、具体的な技術供与の関連について協議を行うという委員会でございます。

吉井委員 二月十七日の交換公文において、細目取り決めを行うための討議を行ったとしておりますが、その討議というのは、この画像ジャイロについてJAMTCで行っているわけですね、三者で。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 JAMTC自体につきましては、武器及び武器技術の供与に関連して開催されるということでございますので、供与がない場合にはこの協議は行われておりません。

吉井委員 アメリカの三者、日本の三者で協議するわけなんですけれども、しかし実際には、これは武器に当たるのか武器技術に当たるのかという識別自身が、アメリカの方は一般防衛分野の技術ということにしていて、別に分けていないんですね。

 日本の方が、これは一九八四年の国会での議論もあるんですが、武器技術というのと防衛関連技術というのを分けているんですね。そしてその範囲、どれがどういうものに当たるのかということについては、これはそもそも、アメリカ側からすると、全部一般防衛技術として、防衛分野の技術として日本に協力を求めてくるわけですから、日本は、これはできます、できませんというのは、これは日本の側できちんと考えるだけじゃなしに、日米間で協議をして、討議をしてやっていくというものじゃないんですか。

柴生田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、この日米間の協議は、武器ないし武器技術に関する供与を行うという場合に開催されるという形になってございます。したがいまして、技術協力の中で武器及び武器技術に関連しない場合には、このような協議は行われないということでございます。

吉井委員 そもそも、アメリカからすると一般防衛分野の技術なんです。日本は、これは八四年の国会で議論になった部分ですが、武器技術と防衛関連技術というのを分けているわけですね。ですから、相手国からすれば、日本に対して、まず一般防衛分野の技術として協力を求めてくる。これに対して日本はどうなるのかということの議論を行って、そしてその判断は、物によっては日本国内で行う、こういうふうになってくるわけです。

 やはり、JAMTCを開いて議論しているわけですから、まず、これは岡田大臣の公文書にあるわけですから、討議記録、交換公文をまず明らかにしていただいた上で、経産省は、画像ジャイロは武器技術供与に当たらないものだとした、その判断の基準というもの、これは一般的、抽象的に考えておったのでは始まりませんから、それを明らかにしていただきたいと思います。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘になりました画像ジャイロでございますが、これは、日米間で共同研究の対象ということでございまして、研究段階にある技術であり、まだ実用化されているものではありません。

 現時点で得ている情報で判断する限りは、航空機等の位置特定のための機能を有するというのみでございまして、特定の武器を想定した形状とか属性等を有しているということではございませんことから、武器技術ではないと判断しております。

吉井委員 武器技術じゃないというお話なんですけれども、しかし、共同研究はやるんだと。それが武器技術なのか、あるいは防衛関連技術なのか、そしてこれは経産省として、武器輸出にかかわってくる武器技術供与に当たるものになるのかならないのかということについて、やはり物差しをきちんとしないと、役所の方が法律とか政令とか基準を明確にしてきちんとしないと、結局それはうやむやになってしまうと思うんですね。

 そして、今のお話を聞いておりますと、武器技術供与に当たらないという判断が何か当たり前みたいな話ですが、そういう話じゃないでしょう。別に、実際に日米間で軍事研究を共同してやる場合に、ピクニックに行って使うようなものを、これは汎用技術だ、民生にも使えるものだ、とにかく研究しましょうというものじゃないんですよ。これは軍事にかかわる研究を一緒にやろうというわけですから。ですから、それについてきちんとした基準も何もなくやっていくというのは、私はやはりこれは問題だと思うんです。

 大臣に伺っておきたいんですが、MDA協定に基づく軍事目的の画像ジャイロというのは、やはりこれは武器技術供与に当たるものだと思うんです。汎用品だから問題がないと考えているようですが、共同研究の成果物には、実は軍事機密特許に係ってくるものが出てくる可能性があるわけですね。防衛省が軍事目的の共同研究を行い、民生分野の研究開発や商品化に軍事機密特許が係ってくると、今度は日本の産業政策にとって大変な問題がまた出てくるわけなんですよ。

 無人機に画像ジャイロを搭載して、GPSが電波妨害等によって機能しなくなっても、独自に位置を確認しながら警戒機としての機能を果たす、その情報を高速インターネット通信衛星で司令部に送り、指令に基づいてこの無人機からミサイルの発射も行えると。

 現実に、先進国の戦争の無人化と、途上国における誤爆による市民の犠牲という事態が進んでおります。そうした無人化の方向については、実は自衛隊装備年鑑でも詳しく紹介されているんですが、世界的に進んでいるわけですね。

 だからこそ、経産大臣に伺っておきたいのは、武器輸出三原則を厳格に守って、武器技術供与の基準を明確にしてきちんと、これは武器技術だとして承認事案にしない、承認事案に入れない。要するに、武器技術に使われるものについては、武器輸出は当然、武器技術供与も認めないという立場を、私は、武器輸出三原則を持つということをとるならば、そういう立場をきちんと経産大臣として明らかにするべきだと思うんです。

 大臣に伺っておきます。

直嶋国務大臣 武器技術の供与につきましても、武器の輸出と同様、武器輸出三原則等により、これまで慎重に対処してまいったところであります。

 それから、先ほどちょっとお触れになった、インターネット等、先進的な複合材などは、軍事用途で開発された技術が民生用途に用いられているということでありまして、武器技術の開発が民生技術の発展を阻害するものであるかどうかというのは、必ずしも明確に言えないというふうに思っております。

 いずれにしても、さっき申し上げたとおり、武器の輸出等に関しては、今後とも、武器輸出三原則等によって、引き続き慎重に対処する方針を堅持してやってまいりたいというふうに思っております。

吉井委員 実は、画像ジャイロについて、アメリカ、日本双方が四億円ずつ出すことになって、既に始まっている話ですが、偵察機、攻撃機など、軍事目的の画像ジャイロの活用ということになってくると、これは防衛装備年鑑でも書かれているように、先進国の戦争の無人化、日本は憲法九条でみずから戦争しないにしても、そういうところへ使われるものに結びついてくるということで、私は、これは改めてまた取り上げたいと思います。

 時間が参りましたので、本日の朝、金星探査機PLANET―C「あかつき」の打ち上げが成功して、金星の観測やそのデータを送ってくるだけじゃなしに、これは地球温暖化問題の解明にとっても非常に大きな、宇宙科学の分野での世界的な貢献だと思いますから、私はこれは大事なことだと思っているんですが、実は、この「あかつき」を打ち上げたH2A十七号機と準天頂衛星を打ち上げるH2A十八号機について、文科省にロケットの契約金額を聞いたら、前は教えてくれたんですが、民間会社に移管したからといって、もう契約金額も知らせないというふうになっているんですね。

 ロケット契約は情報を公開してきたのに、民間移管だから、ロケットの国際競争力の観点からもうやらないというんですが、これは、競争力という観点が入った法的根拠はないと思うんです。宇宙基本法を逆手にとってそういうことをやってしまうと、せっかくの日本の、もともと平和目的を掲げてやってきた宇宙研究開発がゆがんでしまいますから、ここは、そうした秘密主義に走らないようにさせるという明確な立場というものを大臣にとってもらう必要があると思うんです。

 このことだけ伺って、時間が参りましたので、質問を終わります。

直嶋国務大臣 H2Aロケットの製造等にかかわる契約の内容については、経済産業省の方では承知をしておりません。したがいまして、その公表の是非についても、私の方から直接お答えするというのは難しいというふうに思っております。

吉井委員 内閣は一体ですから、内閣としてはきちんとこういうものを掌握して、日本の産業と結びついた宇宙科学については、平和目的を明確にしているわけですから、その点で、非公開、隠しながらやるような、いかがわしいと言ったら言葉が変ですけれども、そういう技術にならないように、これは大臣としてしっかり取り組んでいただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

東委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十六分散会


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