衆議院

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第4号 平成23年4月13日(水曜日)

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平成二十三年四月十三日(水曜日)

    午前十時六分開議

 出席委員

   委員長 田中けいしゅう君

   理事 石関 貴史君 理事 北神 圭朗君

   理事 楠田 大蔵君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 谷畑  孝君

   理事 西村 康稔君 理事 佐藤 茂樹君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      緒方林太郎君    川口  博君

      川島智太郎君   木村たけつか君

      櫛渕 万里君    斉木 武志君

      斎藤やすのり君    柴橋 正直君

      白石 洋一君    杉本かずみ君

      平  智之君    高松 和夫君

      中山 義活君    橋本  勉君

      花咲 宏基君    山本 剛正君

      吉田おさむ君    稲田 朋美君

      加藤 勝信君    梶山 弘志君

      近藤三津枝君    高市 早苗君

      橘 慶一郎君    額賀福志郎君

      望月 義夫君    稲津  久君

      吉井 英勝君    山内 康一君

      園田 博之君

    …………………………………

   経済産業大臣       海江田万里君

   国務大臣         蓮   舫君

   内閣官房副長官      福山 哲郎君

   経済産業大臣政務官    中山 義活君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           伊藤 洋一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     寺坂 信昭君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    高原 一郎君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  熊田 篤嗣君     稲富 修二君

  田嶋  要君     磯谷香代子君

  橘 慶一郎君     稲田 朋美君

  西野あきら君     加藤 勝信君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     田嶋  要君

  稲富 修二君     熊田 篤嗣君

  稲田 朋美君     橘 慶一郎君

  加藤 勝信君     西野あきら君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 この際、蓮舫国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。蓮舫国務大臣。

蓮舫国務大臣 このたび、公正取引委員会の事務を担当することとなりました。

 公正かつ自由な市場競争の中で、日本の産業がしっかりと発展していけるよう、職務に邁進してまいります。

 また、継続審議となっている私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案については、今後の御審議のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 田中委員長を初め、委員各位には、一層の御指導、御鞭撻を賜りたく、何とぞよろしくお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

田中委員長 経済産業の基本施策に関する件並びに資源エネルギー及び原子力安全・保安に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長班目春樹君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官伊藤洋一君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長寺坂信昭君及び中小企業庁長官高原一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤三津枝さん。

近藤(三)委員 まず初めに、志半ばで震災によってお亡くなりになりました多くの皆様の御冥福をお祈り申し上げます。そして、地震の直接的な被害、その後発生しました福島原子力第一発電所の危機などによって、避難生活を余儀なくされている皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 きょうは、四月十三日です。あれから三十三日がたちました。今までおよそ八百時間の時が刻まれました。

 冒頭、一言申し上げます。

 この間、衆議院経済産業委員会の審議は、わずか一回。それも、震災後約四週間たった、先週四月六日に初めて三時間十九分審議されただけです。きょうの経済産業委員会での審議時間を合わせても、わずか五時間です。私は自由民主党の国会対策副委員長として、この間、今回の大震災に対する審議を徹底的に行い、政府も国民への説明責任を果たすべきだと奔走しました。国家の一大事に国民の代表である私たちが知恵を出し合い、しっかりと議論していくべきだと考えています。

 この国難の中、経済産業委員会で審議すべき課題は原子力問題だけではありません。経済産業委員会は、日本の経済、産業全般を議論する場です。震災対策を第一にしっかりとした審議がなされるよう強く求めます。

 まず、政府は、きのうになりまして、原子力発電所の事故の評価を、国際的な尺度であるINESを、これまでのレベル5から最も深刻なレベル7に一気に引き上げました。これまでの政府が示した原発事故の評価が、過小評価であったということです。政府が発表する情報に対する国民の信頼は低下するばかりです。

 海江田大臣、この深刻な評価に引き上げるまでに大変な時間がかかったことに対する担当大臣としての責任、そして、これによる被災地、我が国全体に与える影響をどのように受けとめておられるのか。この国難に対してどう対処していこうとしているのか。海江田大臣のしっかりとした御答弁を求めます。

海江田国務大臣 近藤委員にお答えをいたします。

 昨日、INES、この評価の基準のレベルがそれまでのレベル5からレベル7になったということを官房長官が最初に発表したわけでございますが、政府としまして、一挙に5から7ということで、大変驚かれた方もいらっしゃると思います。

 ただ、これが大分遅かったじゃないだろうかということで、前回が三月の十八日でございますから、そこから二十日以上がたっているわけでありますが、前回は、これはまさに第一回目の評価でありまして、一番大切なのは、それこそどのくらいの放射性物質が飛んだかということでありますが、特にプラントのデータがはっきりしませんものでしたから、その時点でわかる限りでレベル5という形にしたわけでございます。その後、特に、これは十五日ぐらいの爆発で飛んだ量が多かったわけでありますが、そうした放射性物質の飛散の総量、プラントのデータなども勘案をして昨日の発表ということになったわけであります。

 一つだけ、これはもう近藤委員よくおわかりだろうと思いますが、同じレベル7でありますが、チェルノブイリとは様相が違います。放射性物質の飛んだ総量もチェルノブイリの十分の一でございますし、これからの、もちろん今全く完全に放射性物質が外へ飛ぶことを防ぎ切れておりませんが、しかし、チェルノブイリのように瞬間的に爆発をして全部が飛び散るというようなことではありませんで、炉の状況、あるいはプールにあります使用済みの燃料についても一定の抑制がきいておりますので、私は、最終的にはチェルノブイリの放射線の飛んだ量よりも抑え切ることができる、あるいは抑え切らなければいけない、そのように感じているところでございます。

近藤(三)委員 レベル7はレベル7なんです。国民を一時的に安心させてしまおうというかのような過小評価の情報は、かえって国民を混乱させるだけですし、一層不安に陥れることにもなります。大きな影響を及ぼすことになりますから、今回の件は総理の責任問題にも発展すると考えています。政府にはしっかりとした情報を時を逸することなく国民に開示するべきであるし、この国難を乗り越えていくためには、国民に協力を求めるという政府の根本的な姿勢をしっかりと求めたいと思っています。

 さて、三月十一日二時四十六分に発生した大地震、その一時間足らず後の三時三十五分に津波の第二波が福島原子力発電所を襲いました。四月九日になって、初めて三月十一日の、原子力発電所近くの高台から写した津波の衝撃的な映像が映し出されました。まさに、あの瞬間が原子力発電所のすべての電源が喪失するという非常事態の始まりだったと推測されます。

 そして、その十二日後、三月二十三日になって、いわゆるSPEEDI、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの試算が発表されました。レベル7への引き上げがおくれたように、このSPEEDIの予測も、その名前とは大きく違い、発表がおくれました。

 その理由として、私の資料要求に対する原子力安全・保安院の回答は次のようなものです。「今般の事故では、SPEEDIによる放射能影響予測の必須条件である放出源情報が全く得られず、よって、SPEEDI本来の機能である被曝線量予測が全くできていない」と回答しています。

 もう少し平たく言いますと、SPEEDIの予測をするためには、原子炉からどのような放射性物質がどこからどのような状態でどれくらいの量放出されているか、その源のデータがなかったから予測ができなかった、そういう主張をされているのではないかと考えます。

 SPEEDIは、文部科学省によりますと、昭和六十年度から二十五年かけて、これまでにシステム開発、運用に二百十四億円投入されています。そして、経済産業省はSPEEDIの維持管理費にこれまで七億円を投じています。つまり、合わせますと二百二十億円の予算が投じられ、いざというときに備えて構築されてきたシステムです。しかし、原子炉内、原子力発電所敷地のモニタリング機能、電源、そしてデータの送信機能が一たび失われてしまいますと、全く役に立たないことが今回の災害で明らかになりました。

 SPEEDIは、文部科学省が財団法人原子力安全技術センターに委託し、運用しています。気象データは日本気象協会などから提供を受け、原子力施設から放出される放射性物質などの放出源の情報が得られ、周囲の地形データをもとにどのように放射性物質が周辺に拡散していくかを計算し、図表化していくシステムです。二十四時間、三百六十五日休みなく予測ができ、住民の安全を確保するための迅速な防護対策を講じるためのものです。

 今回の福島原子力発電所では、電源の喪失によって、原子炉の冷却がとまっただけではなく、放射性物質の放出の状況を知るための原子炉内の状況やモニタリングポストの基礎的データまでも観測が不可能になってしまったわけです。

 一方で、モニタリングポストの放出源情報をSPEEDIに反映するためには、原子力施設から光ファイバーを通じた情報の送信についても非常時でも通信が可能な状態にしなくてはなりません。

 三月十一日以降、政府は、全国の原子力関連施設に対し、非常事態にこそ能力を発揮しなければならないSPEEDIにかかわる安全性確保のために具体的にどのような改善を指示し、その実効性はいつまでに上がる見込みなのか、経済産業大臣の見解をお聞かせください。

海江田国務大臣 今、委員御指摘になりましたように、SPEEDIは、基本的なデータとしてやはりモニタリングポストが大変重要でございます。ですから、まず差し当たって、モニタリングポストでしっかりと情報提供できるように、特にこのモニタリングポストの設置の数をふやしたのは、福島第一発電所の敷地内でそれまで八つだったのを十五にふやした。それから、今回は、大変残念なことでございますけれども、低濃度とはいえ汚染されました水を海に流しました。結果的に海洋の汚染も心配をされるところでございますので、海のモニタリングポストを、これまで四カ所でございましたけれども十カ所にふやしました。もちろん、これは経産省が所轄をしておりますモニタリングポストの増設でございます。このほかに、文部科学省でありますとか、各自治体が設置をしておりますモニタリングポストがございます。

 このモニタリングポストも、ただ箇所をふやせばいいということだけではありませんで、その頻度が必要だろうと思います。頻度を多くするということが必要だろうと思っておりまして、その頻度を、サイトの中はそれこそ十分置きにしっかりとデータを集めるというような形で、まず、基本的な環境に対する汚染がどういう形で進んでいるかというデータを提供するモニタリングポストの個数と、回数をふやしたというのが今の取り組みでございます。

近藤(三)委員 今回の件で、やはりバックアップ電源のことももっとしっかりと考えていかなければならないのではないかと思います。光ファイバーケーブルを通じた情報の通信機能も万全を期さなければなりませんし、無線での通信のバックアップも考えていくべきだと思います。電源につきましても、バッテリー、太陽光などの再生可能エネルギーの活用なども念頭に置いて、いざというときのために二重、三重の対応がなされるようしっかりとした対応をお願いします。

 さて、このパネルをごらんいただきます。

 こちらは、三月二十三日になって原子力安全委員会が初めて公表したSPEEDI、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの試算結果です。等高線が内部被曝臓器等価線量の図になっています。

 この図の特徴的なことは、第一原子力発電所から北西方向の浪江町、飯舘村方向に被曝線量が大きいことです。原子力安全委員会の担当者の方の説明によりますと、浜通りの風の特性があり、昼間は海から陸方向に北西方向の風が吹き、夜は逆に陸から海へ南東方向に風が吹くという特性があると話されていました。こちらの図にありますように、同心円状に広がっていません。このように北西方向に線量が高いのは、三月の福島県浜通り地域の特有の風向きのせいであるとのことでした。

 それならば、原子力安全委員会は、放出源データが電源喪失などで得られなくても、この事故が発生したときから、地形データ、風速データ、雨量データなどから、同心円状ではなく、陸側は原子力発電所から北西方向に卓越した放射線量が拡散することを予測できていたのではないんでしょうか。原子力安全委員会、いかがですか。

班目参考人 あらかじめSPEEDIを使って予測しておくべきではないかという御指摘に対しましては、そのようなことをしておらなかったということに対しては大変申しわけないと思っております。

 しかしながら、この結果というのは、実は逆算で求めているといいますか、モニタリングの結果を、わずか三点しかないんですが、それとそれまでの気象条件を入れて逆に放出源情報を求めたものでございますので、基本的にはこういうふうな特性があるのかもしれませんけれども、私どもとしては、このようになるに違いないので、このような形で避難をしてくださいと申し上げるのは、やはりちょっと危ないのではないかと思っております。そういう意味では、住民の方の安全を考えて、同心円状に避難を呼びかけたということ自体は間違っていないというふうに認識してございます。

近藤(三)委員 危ないとおっしゃいましたけれども、実際の対応は、現実問題としてもっと危ないことが起きているんじゃないでしょうか。

 班目委員長の原子力安全委員会が定めました「原子力施設等の防災対策について」の十六ページに、「緊急時環境放射線モニタリング」という項目がありますね。原子力緊急事態の発生時に何よりも迅速性が必要であり、高い精度は要求されないという趣旨のことが書いてあります。つまり、何よりもスピード感が要求されるときに、精度よりもスピードを持った対応を求めているのが原子力安全委員会ではないのでしょうか。今回の失策を教訓としていただきたいと思います。

 放出源のデータが電源喪失などによって得られなくても、SPEEDIの事前の予測によって放射線量などの拡散特性が予測できたのではないかというふうに申し上げているのです。そして、現地でのモニタリングカーなどのデータからも、放射線量の卓越するエリアはある程度予測でき、その情報をもとに対策を打てれば、住民避難の優先順位、そして農作物や乳牛への被害を最小限に防ぐ措置もとれたのではないか。

 私が申し上げたかったのは、この問題は、福島第一発電所だけの問題ではないということです。万が一の事故の際には、今回のように放出源データが得られないときには、周辺に幾つかのモニタリングを充実させることによって、今回十二日間かかってしまった、モニタリングデータから類推するSPEEDIの予測精度を上げなければならないということが一点。そして、予測データの公表までの時間を短縮するシステムを考えていくべきだということを私は申し上げているわけです。

 システム開発に当たっている文部科学省は、どのようにお考えなんでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、今回の福島第一原子力発電所の事故を受けました対応につきましては、放射線による影響につきましては、専門家から成る内閣府の原子力安全委員会において評価するという役割分担のもと、SPEEDIの運用につきましても、政府の方針として、文部科学省から原子力安全委員会に移管して運用してきたところでございます。

 なお、この間、先ほど委員長からもお話ございましたとおり、モニタリングデータを入れて逆算するというようなことをされているわけでございますが、文部科学省といたしましては、そういった試算の精度を向上させるため、特に二十キロ以遠におけるモニタリングデータを収集いたしまして、これを原災対策本部とか原子力安全委員会に提供し、公表してきたところでございます。

 今後のSPEEDIのあり方といいましょうか、改良についての御指摘でございますけれども、今回の原子力安全委員会における評価あるいは全体の検証結果を踏まえまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

近藤(三)委員 とにかく、申し上げたいのは緊急時は何よりもスピード感、スピードが大切だということです。このシステムは、SPEEDIという名前がついていますけれども、この名前に恥じないように迅速な対応、迅速なシステムとしていただきたいというふうに考えております。

 次に、震災による被災地の産業支援について質問します。

 私、先般、自由民主党に寄せられました救援物資を、地震、津波で大きな被害を受けた岩手県釜石などに届けてまいりました。被災地では、限られた時間ではありましたけれども、直接被災された方、災害対応されている方々、役場の方の切実なお声を伺ってまいりました。地元で頑張ってこられた中小企業の方、すべてを津波に押し流されたという方、資材だけ押し流されてしまった方、機械は残ったがすべて津波で塩水をかぶってしまった、あるいは、工場建屋の損壊だけだったんだけれども従業員がもう戻ってこない、その状態はさまざまでした。

 何とかこの危機を乗り越える資金手当てを公的機関などがサポートしなければなりません。全国銀行協会は、直接被災した中小企業が出した手形が期限までに決済できなくても不渡りにしないことを決めました。一方で、手形を受け取った企業側もこれにより予定していた資金が入ってこない、これによる連鎖倒産を防止するために、中小企業庁は、中小企業倒産防止共済の利用条件を緩和しました。そして、金融機関の中小企業向けの融資を一〇〇%保証する緊急保証、セーフティーネット保証五号は、東日本大震災の被害にも適用されるようになりました。

 このようなきめの細かい対応は大変重要です。このような対応がなされていることを被災地でお話ししたんです。しかし、地域の方々にはこの肝心の情報が十分に届いていなかったというのが現状だったんです。

 例えば、セーフティーネット保証五号の窓口は各地の信用保証協会です。大津波を受けた岩手県の信用保証協会は、釜石支所、宮古支所、大船渡支所が業務を停止しました。このように、最も資金の手当てを望んでいる地域では、その事務を取り扱う営業所が被災しているのです。制度の周知はもちろんのこと、被災地の窓口、現地の窓口の立ち上がりをぜひ支援していただきたいと考えています。

 今申し上げました被災企業、そして、その影響を受ける企業の金融支援のうち、最後のセーフティーネット保証五号につきまして、このような項目が三月二十三日に追加されています。「平成二十三年東北地方太平洋沖地震の発生後、原則として最近一カ月間の売上高等が前年同月に比して二〇%以上減少しており、かつ、その後二カ月間を含む三カ月間の売上高等が前年同期に比して二〇%以上減少することが見込まれること。」これが三月二十三日に追加された項目です。「その後二カ月間を含む三カ月間の売上高等が前年同期に比して二〇%以上減少することが見込まれること。」

 この保証制度を受けるには、このことを示す書類を事業者は作成しなければならない。しかし、津波でこれまでの営業業績の資料が失われ、書類をつくるパソコンも失ってしまった状態です。

 この保証を受ける判断基準について、私は経済産業省に問い合わせをいたしました。その実施の判断基準について、このような答えが返ってまいりました。「個々の企業に対する保証判断については、信用保証協会が各協会の自己責任原則にのっとり判断すること、このため、監督官庁である経済産業省においては、特に保証の判断についての基準を定めていない」このような回答でした。つまり、審査は信用保証協会が自己責任で行うので、経済産業省は関与する立場にはないということです。平常時であればもっともな回答だと思います。

 しかし、地域の被災状況を考えますと、経済産業省も信用保証協会と連携して、この制度が被災者に少しでも利用しやすい、人々を救済できる制度とするために周知に努力しているとか、被災地ごとに保証の仕方に乖離が出ないように指導していくなど、心温まる対応を期待しておりました私にとりましては、この回答は残念の限りであります。

 セーフティーネット保証は、自民党政権下で制度化されました。個人や会社が無担保で八千万円までの保証が受けられ、さらに担保があれば二億円まで保証が受けられる制度です。仏をつくっても魂を入れなければ制度は生きません。経済産業省として、この制度の周知に力を入れ、被災者が利用しやすい環境づくりに被災地への支援をすべきだと考えます。

 今後の対応について経済産業大臣にお聞きします。

中山大臣政務官 中小企業の方は私が担当いたしておりますので、お答えを申し上げますが、近藤委員と問題意識は全く一緒でございます。

 私たちも、柔軟に、しかもスピーディーに各セクションでやっていかなければならないということで、中小企業庁経営支援部長の徳増部長を中心に四十名を福島に集めました。そして、宮城、岩手にも二十名ずつ職員を送りまして、まずは相談に乗ろうということで、君たちは御用聞きだ、地元へ行って今必要なことをちゃんと聞いてこい、こういう命令を大臣からいただきましたので、私がすぐに福島でその命令を出しました。

 私も地元に行きまして、商工会議所や中央会や全国の商店街会長にもお会いをいたしまして、今何が必要かを全面的に調べまして、今、回答しているところでございます。電話も、一本電話をもらえばすぐに回答できるようなナビシステムもつくりました。私たちは、これをもっと知らしめなきゃいけないと思うんですね。

 それと、保証協会は、一生懸命やっている保証協会というのは、これは判定が難しいんですが、代位弁済が四%から五%ぐらいいっているんですね、どうも余り活動が活発でないのか、それとも余りにも慎重なのかわかりませんが、代位弁済が二%ちょっとのところ。これは銀行も全く一緒なんですね。デフォルトの率がうんとあってもどんどん貸してくれる銀行と貸さない銀行があるということもありますので、私は大臣から言われましたので、全国的に保証協会に命令を出します。特に岩手、宮城。そして、さらに福島の場合は、この原発事故によって二十キロの中で仕事ができないわけですね。これに対して、今、持っている工場を担保にできるかできないかとかいろいろなことでお金を融通できるような方向を模索いたしております。

 何か個別的にありましたら、私のところにお電話下さい、本当に。すぐに命令を出します。そのくらいのつもりで、今省庁を挙げて、私ども中小企業庁が全力を尽くして、今こそ国民のためになるときだ、こういう命令を出しておりますので、何かありましたら私のところへ直接命令下さい。そうすれば私もすぐに活動を開始するつもりでございますので。

 今でもやっているんですよ。やっているんだけれども、もし足りないところがあれば、ぜひ先生から直接私にお電話をいただければありがたいと思います。

近藤(三)委員 今の中山政務官の御答弁で安心いたしました。不安を抱える被災者にスピード感を持って適切な対応がなされるように、引き続き経産省としてもよろしく御対応をお願いいたします。

 もう一点、被災地域に立地する企業の復旧の問題について。

 全国的に展開する企業は、ものづくり東北の被災によりまして、サプライチェーンが切れてしまっている状態です。日本全体に産業のチェーンをつないでいくためにも、地域のサプライチェーンを回復するためにも、被災地に立地する企業の支援をしなくてはなりません。

 企業の復興支援の資金手当てだけではなく、港湾、道路などの企業インフラの復旧が急がれます。何キロも何キロも先のところから津波によって運ばれてきた瓦れきの除去が必要になってきています。こうしたハード面への対応には、まずは民主党政権のばらまきをストップし、財源を有効に活用し、補正予算を組まなければなりません。

 また、阪神・淡路大震災では、震災発生後、速やかに税制面での救済措置が講じられています。例えば国税では、震災損失の繰り戻しによる法人税額の還付、特定の事業用資産の買いかえ特例、被災代替資産の特別償却などの措置が講じられました。地方税の固定資産税や国税の登録免許税等の減免措置などが講じられました。今回の災害は、沿岸部に立地する大企業にも及んでいます。企業の規模にかかわらず、税制面での救済措置が講じられるよう配慮が必要となってきます。

 なお、阪神・淡路大震災では、震災後一カ月余りで対応された税制措置もありました。とにかく、先ほどから申し上げているように、こちらもまたスピード感が大変重要になってまいります。自由民主党も具体的な緊急要望を出しています。税については財務省、総務省との連携が不可欠ですが、産業の復興支援の観点から、税制面でも海江田大臣にしっかりとした対応をしていただきたいと思います。

 この点について大臣の見解をお伺いします。

海江田国務大臣 今近藤委員から、税の中でも、まさに阪神・淡路大震災のときにも行ったということで、震災損失の繰り戻し還付、法人税でございますが、これは必ずやらなければいけません。それから、被災代替資産等の特別償却、従来の償却をまとめて償却するということ。それから、これは地方税ですが、法人事業税、法人住民税も減免措置をとらなければいけない、固定資産の課税免除もやらなければいけないということで、スピーディーにということでございまして、きょう、たしか今夕、政府の税制調査会がございます、それを受けまして、来週早々の閣議になろうかと思いますが、そこで閣議決定をやって、これから国会での法律の成立に向けて動き出すということでございます。

 自民党からの要望は、額賀委員長から私が受け取りまして、そこにも今私がお話をしたような項目が入ってございましたので、これは直ちにやるということでやらせていただきたいと思います。

近藤(三)委員 先ほどから何度も申し上げているように、問題は、項目の数も必要なんですけれども、もちろん中身とスピード感。そして、企業に対しては、中小企業だけではなく大企業も大きな損失、被害を受けています。企業の規模によらず、被災地域の復興、日本経済の復興に役立つ支援税制としていただくよう野党の意見もしっかりと聞いていただきたいと思います。

 さて、政府は、昨年六月にエネルギー基本計画を決定しました。福島第一原子力発電所には六基の原子炉があります。政府が決定したエネルギー基本計画は、現在の五十四基の原子力発電所を二〇三〇年までに十四基増設し、六十八基とする、電源構成に占める原子力及び再生可能エネルギーの比率を、現在の三四%から二〇二〇年にはおよそ五〇%以上、二〇三〇年にはおよそ七〇%とする。改定されたエネルギー基本計画はそのようになっています。これにより、エネルギー起源CO2の発生を、二〇三〇年に九〇年比マイナス三〇%程度もしくはそれ以上削減していくという内容です。

 今回の被災を考えますと、海江田大臣、昨年六月に政府が策定したエネルギー基本計画を抜本的に見直していくと理解してよろしいですね。

 あわせて、エネルギー基本計画の前提となっています地球温暖化対策の中期目標についてもお伺いします。

 民主党が政権をとった直後、鳩山前総理が、国会でも国民的にも議論もせずに、国連の場で二〇二〇年までに二五%CO2削減目標を表明しました。二五%削減による国民負担はどれくらいなのか、産業界への影響も、二五%削減のうちどこまでが国内で削減し、真水部分はどれぐらいなのか、それも明らかにされませんでした。第一約束年の六%削減でさえ今回の原発事故によって達成できなければ、国際的なペナルティーを受けかねない現状です。

 このような状況では、国際的にも二五%削減を取り下げ、現在の危機的エネルギー問題の収束を見てから現実的な削減目標を再検討するべきだと考えますが、経済産業大臣の見解をお聞かせください。

海江田国務大臣 先にエネルギー基本計画の方でございます。

 これは、菅総理もこれまでの会見の中で述べておりますが、どう考えましても、そのままというわけにはいきません。そして、今委員がお話しになりました、やはりエネルギーのベストミックスということですね。これを、どういうバランスをとるのがまさに震災後のベストミックスになるのかということをやはり考えなければいけないんだろうと思います。

 それから、地球温暖化対策の点でございます。

 これは、委員、震災前にも御指摘がありました。今正直に申し上げまして、私どものところですぐにこのことについて結論を出せる、あるいはこうこうすると言える状況にございませんが、環境省などともよく協議をして、世界に向けてしっかりとした発信をしていかなければいけないと思っております。

近藤(三)委員 もともと、日本の経済の実情、エネルギーの構造、時間軸の不整合を来した中期目標であり、エネルギー基本計画だと考えております。この際、国民的な議論をしっかりすることから再出発すべきだと思います。とにかく、今回、対応もエネルギー問題も、スピーディーに、現実に即したことをしっかりと議論していこうではありませんか。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。

田中委員長 次に、稲田朋美さん。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 まず、大臣、本題に入ります前に、一問確認したいことがあります。

 一体、あのTPPはどうなったんでしょうか。平成の開国だの世紀の大事業だのおっしゃって推し進められ、六月に結論を出すとおっしゃっていたTPPについて、六月に結論が出ないとすれば、一体いつ結論を出されるんですか。

海江田国務大臣 TPPの問題につきましては、既に参加を表明しております十一カ国におきましては粛々と会合を開いているようでございますが、ただ、残念ながら私どもは、今、TPPに対して、政府の中での議論などがストップした状況でございます。

稲田委員 しかし、同じように六月に結論を出すとおっしゃっていた税と社会保障、これは与謝野大臣は予定どおり六月に出されるわけです。その税と社会保障よりもと言っては語弊があるかもしれませんけれども、バスに乗りおくれるな、そして、準備段階から入らなければ意味がないんだとずっと国民をあおってこられたTPPについて、六月に結論を出さないとすれば、いつ出すんですか。

海江田国務大臣 まず、TPPの問題というのが六月ということになりましたのは、これは委員も御承知だろうと思いますけれども、食と農業、漁業も含めてでございますが、これの再生の計画というものをしっかりと打ち立てる、そこに合わせて六月ということを表明したわけでございます。

 今、農業、とりわけ東北の農業、米どころでもありますが、こういう状況でございますので、残念ながら、その農業の再生の計画が立たないということでございますから、その意味で六月は無理だろう、こういうことでございます。

稲田委員 結局、私の質問に対してはお答えにならないわけです。

 私は、TPPには反対です。毎週開国フォーラムをやっておられましたけれども、会場からの日本農業はどうなるんだという質問に対して、農業が打撃を受けないようにするという抽象的な回答に終始をされていたわけであります。また、民主党が選挙前に自民党の規模拡大農政を批判して、民主党は零細農家を救うんだ、すべて救うんだ、だから戸別補償をやるんだ、小泉構造改革の市場原理主義に反対するんだとおっしゃっていたことと真逆なことがこのTPPなんです。そして、食料というのは、原発と同じ危機管理なのです。TPPはお金さえあれば世界の食料が集まるという前提でないと成り立たない。そして、民主党の党内もまとまらない。結局収拾がつかなくなっちゃったんですね。

 ですから、震災は免罪符になりませんよ。先ほど質問のあったCO2もそうです。それから、財源がなくて実現不可能なマニフェストもそうです。このTPPもそうなんですよ。震災を民主党のいいかげんな政策の免罪符にはしていただきたくないと思います。

 本題に入ります。

 我が福井県には十五基の原子力発電所がございます。福島原発と同じBWR、今稼働しているのはすべて加圧式のPWR、それから「もんじゅ」もございます。すべての原子炉がそろっているわけですが、今回の福島第一原発のような事故が我が県で起こりますと、二十キロ圏内で越前市など、三十キロ圏内で鯖江市と県都福井の一部も入ります。五十キロ圏内といいますと、県都福井はすっぽりと入ってしまって、機能不全になってしまいます。

 また、我が福井県で関西の電力の約半分をつくっております。したがいまして、今回のような事故が福井県でありますと、その影響は、我が県のみならず日本経済にとっても大変重要な問題になります。

 そこで、今回の事故を踏まえた安全確認について伺ってまいりたいと思います。

 福島の原発はBWRですけれども、現在、福井で稼働中の原子炉はPWR、つまり加圧式なんです。今回出された政府の指針で、PWRについても、つまり加圧式の原子力発電所についても十分なのでしょうか。その点についてお伺いいたします。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおりでございまして、福井県には、廃炉手続中の「ふげん」を含めまして十五基ございまして、そのうち、加圧水型が十二基、沸騰水型が一基あるわけでございます。

 今回、福島第一の事故は、津波によります緊急時の電源を確保できなかったこと、ここが大きなポイントであるわけでございますけれども、この危険性はすべての炉に当てはまる問題でございます。

 このため、三月三十日に指示をいたしました緊急安全対策の実施、それから制度面での保安規定の改定を行っているところでございますけれども、その具体的な内容におきます、緊急時の電源確保あるいは緊急時の最終的な除熱機能の確保、訓練の実施等々、そういったことにつきましては共通の課題でございまして、こういった課題に対応することによりまして、緊急的な安全対策が確保されるべく、今事業者ともども検討を重ねているところでございます。

 既に関西電力自身は幾つかの対応を始めているわけでございますけれども、今その内容について検討を重ねているところでございます。

稲田委員 私が聞きたいことに端的にお答えをいただきたいんです。PWRの特殊性に着目をした安全確認ができているかどうかということなんです。

 具体的に言います。

 福島原発のBWR、沸騰水型は、今回の事故でも制御棒でとめるということはちゃんとできたんです。ところが、PWR、加圧式では、制御棒が落ちても冷温停止できなくて高温停止になる、そして低温停止に持っていくためには硼酸水で冷やさなければならないという違いがある。まさしく、PWRの方がBWRよりも制御するということは結構難しいんです。そういう点に着目して、今回、安全確認は、安全対策は万全ですかという質問です。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 PWRの場合に、制御棒に加えまして、硼酸水の注入という……(稲田委員「Pですね」と呼ぶ)PWR、加圧水型でございます、硼酸水の注入ということが大切であることは御指摘のとおりでございます。

 津波との関係で、電源車等々、対応を行っているところでございまして、そういった面のことについて、硼酸水の注入そのものに着目した対応ということには、今現在は直ちにはなっておりませんけれども、別途、蒸気発生器での対応策、そういったことも含めまして、今回の緊急安全対策を進めているところでございます。

稲田委員 直ちにはなっていないところですなんて答えられると不安になっちゃうんですよね。

 もう一回聞きます。

 PWRとBWRの違いは、PWRは、蓄圧タンクから硼酸水の注入というのが絶対条件で、それができないと臨界状態になってしまう、まさしくチェルノブイリ事故のようになってしまう。幸いなことに、福島原発のBWRは制御をすれば冷温停止になるので臨界にならないけれども、Pの場合は、硼酸水を入れなきゃいけないんだけれども、そのときに一緒に窒素ガスが入ってしまうおそれがあるので、その点についての安全対策をしておられますかという質問なんです。

寺坂政府参考人 その点につきましての対応でございますけれども、今回、津波対策ということで電源車等々のことを重ねてございまして、硼酸水の注入そのものについては改めてしっかり検討を進めていかなければならないと考えておるところでございます。

稲田委員 改めてでは困るんですよ。今現在、福井には、点検中で、そして本来ならもう既に稼働していなきゃいけない原子力発電所もあります。夏までにどんどん点検中に入っていくんですよ。夏までずっとこの点検中のが動かないと、福井の原発の半分は稼働できないんですよ。それを、今の、非常に懸念をしております硼酸水注入についての安全確認、これをまだこれからやるなんということをおっしゃると非常に不安になりますので、この点はぜひ早急にお願いをいたしたい、大臣にもお願いをいたしたいと思います。

 では、次に、「もんじゅ」のことについてお伺いをいたします。

 「もんじゅ」は昨年再開をいたしましたけれども、今とまっております。この「もんじゅ」はナトリウムで冷やしておりますから、今回のように冷やすために消防車から水をかけられないんですよ、水をかけたりしたら大爆発になりますから。この「もんじゅ」について、今回の事故を契機としてどういう安全対策を考えておられますか。今回の指針には入っていないと思うので、お伺いをいたします。

寺坂政府参考人 「もんじゅ」に関しましても、電源車の確保等々の対応の対象として今緊急安全対策を考えておるところでございます。

稲田委員 だから、一たん冷却しているナトリウムが漏れたり、そういうことがあった場合は、どういう安全対策ができるんですかと、そういうことまで想定して。今回の津波のことだけじゃなくて、寺坂さんは、昨年の共産党の吉井委員の質問で、今回の事故と全く同じことを想定して質問されたのに対して、それは理論上ゼロではないという場合だとか、そういうことが起こらないように設計をしているんだという答弁に終始をされていたんです。そういう態度自体が私は問題だと思って、今のようなお答えではなくて、「もんじゅ」の場合、ナトリウムという非常に危険なものを使って冷却をしている、今回だけじゃなくてさまざまな場合について想定をして安全対策をされているんですか。されているのか、いないのか、その予定、体制についてお伺いいたします。

寺坂政府参考人 せんだっての緊急安全対策に関しましては、冷やす機能、電源車等々の対策を求めたところでございます。それで十分ということではもちろんございません。全体としての、津波を初めとする安全対策、設備面での工夫なども含めまして、全般的な対策はさらにしっかりしたものを進めていかなければなりません。まずは緊急安全対策として今月中にということで対応を求めているところでございます。

稲田委員 そういう抽象的な話を聞いているんではないので、ぜひ大臣、政治主導で、この点、お願いをいたしたいと思っております。

 大臣にお伺いをいたします。

 日本の原子力発電所、世界一の安全性ですか。

海江田国務大臣 これまでは世界一の安全性だと思ってまいりました。しかし、今回の事故を受けて、今の時点ではその安全性、特に世界からの評価というものは大きく下がったと思います。これを、どういうふうに信頼性を取り戻していくのかということがまさにこれからの私どもの最大の務めだろうと思っております。

稲田委員 おっしゃるように、世界一安全じゃないんです。でも、国民の生命がかかっているときに、二番じゃだめなんですかなんという政権に任せられないんですよ。二番じゃだめなんですよ、一番じゃないと。世界一番の安全性を確保できないと再稼働できないんですよ。

 例えばマグニチュード九、津波十五メートルが来ても、今回のガイドラインを守ればPWRでも大丈夫なんですか。「もんじゅ」でも大丈夫なんですか。大臣、お答えください。

海江田国務大臣 先ほど寺坂院長がお話をしましたけれども、三月の三十日に緊急に指示をいたしましたのは電源の確保ということでございます。

 今回、津波によって、これは委員御案内だろうと思いますけれども、まず、停電になって外部電力が失われた場合には緊急用のディーゼルがございます。これで発電をするということでございますが、この緊急用のディーゼルが水をかぶって機能を果たさなかったということでございます。

 そこで、三月三十日には、まずディーゼルも複数機そろえるべきじゃないかということ、それと同時に、もう一つ、電源車も備えるべきじゃないだろうかということで、まさに電源確保の面からの指示でございますから、今度は津波に対して、例えばしっかりとした建屋をつくって、あるいはコンクリート製の防水性のあるところにディーゼルを設置するなど、そういう形での対応というものが必要になってくるだろうと思います。

 これは、現在すべてのところがそういう形でできているといったことではございません。幾つかの炉においては、そういう機能も既に備わっているところもあります。

稲田委員 もう一回お伺いをいたします。端的にお答えください。

 今回と同じマグニチュード九、津波十五メートルが来ても、今回のガイドラインを守れば、PWRでも「もんじゅ」でも大丈夫なんですか。その点を端的にお伺いをいたします。

海江田国務大臣 先ほどもお話をいたしましたけれども、電源確保ということでは二重、三重の措置を講じたということでございます。

稲田委員 ぜひ大臣、電源だけの問題じゃなくて、想定外ということをつくらずに、さまざまな場合を考えて対策をしていただきたいし、そういう体制もつくっていただきたいと思います。

 大臣にお伺いをいたします。

 そもそも、今の原子力の安全対策、安全審査のあり方を根本的に見直す必要というのがどうなのかなということをお伺いいたします。

 今回の福島原発の対応を見ておりましても、安全委員会と保安院、東電が何かばらばらという印象も受けます。今までも安全審査にはかなり時間をかけてきたんです。屋上屋を重ねるような安全審査をしながら、しかし、今回の重大な事故が発生をしております。結局、ポイントがずれているんじゃないかなという気がするんです。

 例えばアメリカでは、GEが、BWRの改良型として、冷却材が自然循環するようなESBWRを設計しております。世界は技術革新をどんどんしているのに、日本はそういう新技術を取り入れるということができていない、むしろ後ろ向きな審査に終始していたのではないかなというような印象を受けるんですが、その点についての大臣の見解をお伺いいたします。

海江田国務大臣 稲田委員の指摘は、私は大切な指摘だと思っております。

 さっき地元の発電所の問題もお話しになりましたけれども、実は、今とまっているのが、五十四基のうちの半分以上じゃないですか。もちろん、事故でとまったということもございますが、定期点検でとまっているというのもございます。

 御承知のように、定期点検は十三カ月に一度行うということで、しかもこれは一回とめて行うわけでありますから、普通でしたら一、二カ月ですが、その中で、いろいろ検査をしていきますと、ふぐあいが出てくる、分解して検査をするということになりますと、一、二カ月で終わらずに、三カ月、四カ月と続くことも出てまいります。

 それに対して、これは聞いた話でありますが、アメリカなどでは、動かしながらきちっとした定期検査をすることもできるということでありますから、そういうような、動かしながら定期検査をするという最新の検査の手法なども導入をしていかなければいけないかなと思っております。

稲田委員 どんどんと安全なものが開発をされていますので、ぜひそういうものも取り込んでいただきたいと思います。

 また、先ほど質問いたしましたPWRの硼酸水の問題も、燃料を改良すれば、制御棒だけで、硼酸水を入れなくても冷温停止できて臨界を防ぐような技術も開発されているというふうに私は聞いておりますので、そういう新しい、安全な技術も取り込めるような体制もぜひつくっていただきたい、このように考えております。

 次に、総理は、原子力発電所の増設はしないというような発言をされておりました。私は、この発言は大変問題だな、一国の総理が増設をしないというようなことを軽々に言われるのは非常に問題なんじゃないかなと思っております。

 先ほど大臣も答弁の中で、エネルギー基本計画を見直す方針であるということをおっしゃいました。

 ところが、今十四基の新増設計画の中で、既に建設中のものが三基、着工準備中のものが十一基あります。我が福井県でも、敦賀の三号機、四号機は現在、私も視察してまいりましたけれども、準備工事中でありまして、この原子力発電所が一体どうなるのか。この敦賀三号機、四号機については、平成十四年に電源開発基本計画入りが決定をされていて、現在許可申請中であります。

 そういう今建設中のもの、また敦賀の原子炉のように準備工事がもう行われているもの、これについてどうなるのか、お伺いをいたします。

海江田国務大臣 先ほどもお答えをしましたけれども、エネルギー基本計画はそのままでいいとは思いません。

 ただ、片一方で、今、全国的にいうとおよそ三割の電源を原子力に頼っているわけですから、エネルギー全体の中でこの原子力をどういう形で位置づけをするかということで、今回の事故がございました、それから、日本の成長戦略の中でグリーンイノベーションということも位置づけをしておりますから、当然のことながら、太陽光でありますとかその他の再生可能なエネルギーというものがふえていくことは、私は一つの流れだろうと思います。

 ただ、だからといって原子力が全くゼロでは、これはもちろんこの日本の経済が立ち行かなくなるわけですから、そこは現実の問題も踏まえながら、どのようにやっていって、日本の経済の活力を失わせないで、しかも国民が安心をして原子力を利用できるような形にしていきたいと思っております。

稲田委員 大体いつごろをめどに、今建設中の原子炉をどうするかという結論を出されるのか、また、福井には古くなって建てかえをしなければいけない原子力発電所もあるんですけれども、そういう建てかえについてはどういうお考えなのか、この二点についてお伺いいたします。

海江田国務大臣 いつごろまでにというのは、今の段階ではなかなか言いにくい点があります。特に福井の点につきましては、今定期検査などでストップをしているものについては、先ほどもお話をしましたけれども、三月三十日に緊急の安全基準を設けまして、一カ月以内にとにかくこれを守ってくださいということを言いましたけれども、今まさに建設中のものがいつぐらいからもう一回作業が続けられるのかということは、今の段階では言うことができません。

稲田委員 ぜひその点もなるべく早く結論を出していただきたいと思います。

 次に、補償問題です。

 経団連が、原子力損害賠償法の三条の例外規定を適用するような事例なのではないかと。言ったら、東電の免責をすべき場合じゃないのかというような発言をされています。政府は、一義的には東電、そして最終的には政府というような発言をされております。

 私自身は、最終的に政府が責任をとるというのは重要なことだと思っているんですけれども、でも、軽々にこの例外規定を適用して免責するというのはいかがなものかなと。東電が持っておられると言われる三兆円に及ぶ資産も提供することなしに、政府に、つまり国民に負担を押しつけるというのはいかがなものかなと私自身は思っておりますけれども、この点についての大臣の見解をお伺いいたします。

海江田国務大臣 私も、一義的には東電だと思っております。ただ、東電だけでは払い切れない補償の問題が出てまいりますから、これは原賠法に基づきまして、補償額として政府が出すお金も決まっております。ただ、それだけでもまだ足りない点があろうかと思います。そのときの支援ということも考えております。

 ただ、私は、先日の記者会見で、東電は逃げずにこの補償、賠償の問題と向き合ってもらいたいということを言いましたので、その考え方を今も持っております。

稲田委員 ぜひその点の発信もお願いをしたいと思います。

 それから、夏の電力需要抑制に向けた対策のことです。

 今回、計画停電という名の無計画停電で、東京は混乱をいたしました。私は、消費者や企業に一律に需要抑制を要請するのではなくて、石原都知事がおっしゃったように、例えば、かんかん照りの夏にコンクリートの上に冷えたジュースを出す自動販売機が果たして必要なのか、そして、パチンコや遊興施設のようなところの電力を抑制するような、そういうめり張りのきいた需要抑制の政策も必要なんじゃないかと思いますが、その点、大臣、いかがでしょうか。

海江田国務大臣 需要の方で、もちろん大企業、中小、それから家庭ということがございます。その中で、とりわけ家庭の占める役割というか、使用量も、例えば七四年ごろの第一次エネルギーショックのころと随分変わってきましたので、やはり家庭の方々にも協力をいただかなければいけないということ。

 それから、今、特殊なというか幾つかの業種についての御意見もちょうだいをしましたが、そういうところからも、今回は計画停電に対してやはり自分たちが何とかしなければいけないということで、大分節電の計画を出してきまして、そのレポートなんかもこの間受け取って、一読をしました。

 やはり、世の中で過度に電気を消費しているところについては、それはおかしいんじゃないだろうかということを声を上げていただくことによって、そういうところが自主的に判断をして節電をするということも大事なことではなかろうかと思っております。

稲田委員 もちろん、パチンコとかゲームセンターとか、そういうところをねらい撃ちにするということは、営業権の問題だとか公平性の問題だとか、そういうことも考えなきゃいけないと私も思います。

 しかし、やはり、今回の原発事故で、私たちが余りにも豊かさというものを貪欲に求め過ぎてきたんじゃないか、今までの私たちの生活様式だとか価値観の転換ということも必要になってくるんじゃないかなということを思っております。

 そうだとすれば、やはり政府としても、そういうメッセージを発信するためにも、ぜいたく品だとか、遊興施設については電気代を高くするとか、自家発電とか自己調達を原則義務づけるというような、そういう発想に基づいた思い切った政策も必要ではないかなと思いますので、ぜひ御検討をいただきたいと思います。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 まず、このたびの東日本大震災でお亡くなりになられた方に対しまして心から哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さんに対してお見舞いを申し上げたいと思います。

 質問に先立って、この委員会は、先週と今週の二回でワンセット、今回の福島第一原発の問題に対して集中的一般質疑をやろうということでやってまいりました。そういう意味で、きょう、私は、内閣官房長官に先週と同様答弁に立っていただけるものと思っておりましたけれども、御答弁いただけないのは極めて遺憾であるということだけ申し上げておきたいと思います。

 まず最初に、大きな話からですが、きょうの委員会の冒頭でも自民党の近藤委員からもありましたように、昨日、原発事故の国際評価、INESで最悪のレベル7、二段階引き上げたということを発表されたわけでございます。レベルとしては最悪のチェルノブイリの事故と同レベルであるという発表をされたんですが、私が今の菅政権に申し上げたいのは、こういう大きな情報発信というものをなぜ閣僚みずからがされないのか、そこが不思議でならない。菅政権というのは、民主党政権そのものもそうですが、情報の発信も含めて政治主導でやられるのが筋ではないかなというふうに私は思うんです。

 昨日の夜、総理が記者会見されていました、いろいろなことを言われていましたが、もう完璧に色あせてしまっている。世界じゅうにはどのニュースが流れているのか。要するに、お昼に原子力安全・保安院と原子力安全委員会で共同で発表されたレベル7の話というのが世界に大々的に発信されているわけでございまして、そういう意味からいうと、悪いけれどもこういう重大なニュース、情報というのは、先日の汚染水の海への流出という、低濃度ですけれども、流出させるという発表とは次元が違うぐらいに大きな話ですから、やはり政権の閣僚である海江田大臣、スポークスマンである官房長官、あるいは総理みずからが政府の責任者として昨日の評価については発表すべき問題であったのではないのかな、そのように思いますけれども、まず海江田大臣の見解を伺っておきたいと思います。

海江田国務大臣 佐藤委員にお答えをいたします。

 佐藤委員のおっしゃることは一つの考え方で、私も、どちらかというとそのとおりだろうと思います。

 昨日、レベル7への引き上げということを最初にお話ししましたのは、さっきもお話をしましたけれども、官房長官であります。

 ただ、具体的な、あるいは技術的な問題については、その後、まさに今お話のありました、保安院と安全委員会で説明をします、こういう言い方であったと思いますので、最初の発信は、政府のスポークスマンであります官房長官が行ったということは一つの事実でございます。

佐藤(茂)委員 通告はしていませんでしたけれども、先ほどの、冒頭の答弁で、経済産業大臣として、放射性物質についてはチェルノブイリまでいかないんだ、そういう答弁をされました。しかし、私は、これは単なる決意ならわかります。どこまでの科学的根拠があってそういうことが言えるのか。要するに、今回の原発事故の違いというのは、長期にわたっている、まだいつ収束するかわからない、そういう大きな問題になっているわけですね。

 チェルノブイリのときは、結果として五百二十京ベクレル。今回は、班目委員長にお越しいただいていますが、原子力安全委員会の試算では、今の段階では六十三京ベクレル。これはあくまで試算です。これが本当に、今の時点だけとって、放射性物質について最終的にチェルノブイリまでいかないんだと。これは決意発表としてはいいかもわかりませんが、科学的根拠に基づいた話でも何でもないと思うんですけれども、経済産業大臣、どのように考えておられますか。

海江田国務大臣 もちろん、委員御指摘のように、今まだ収束をしたわけではありません。ただ、放射されました放射性物質の放射能程度というもののグラフがございますが、やはり十五日ぐらいがピークになっているわけですね。そして、そこからずっと低減をしているということで、私は、もちろんこれ以上悪化をさせないという決意もございますが、今の時点で比較をしますと、例えば、きょうの産経新聞の朝刊の社説にございました、チェルノブイリと福島は大変大きく違うものだと。

 ちょっとお時間をいただいて読ませていただきます。

 「福島事故とチェルノブイリ事故は重大度が全く違う。チェルノブイリ四号炉は、運転中に暴走して大爆発を起こし、炉心ごと吹き飛んだ。だから外部にばらまかれた放射能の量も汚染面積も比べものにならない。 福島事故では放射線被曝による死者が皆無であるのに対し、チェルノブイリでは約三十人の発電所員らが死亡している。 福島では、四基の原発から放射性物質が漏れたのに加え、収束に日数を要しているものの最悪の方向には進んでいない。」と。

 私どもがそういうことを直接言うわけにはまいりませんので、今あえて産経新聞の社説を引用させてもらいましたが、私は、この方向に向かって、まさにこれ以上水素爆発でありますとか、放射性物質の大量飛散を妨げるために、本当に何とか頑張らなければいけない、そのために皆様方のお力添えもちょうだいしたい、そんな思いで先ほど答弁をさせていただきました。

佐藤(茂)委員 各国の報道を見ておりますと、レベル7に引き上げたことについては大々的に報道していまして、日本は今まで過小評価しておったのではないか、情報を隠していたのではないのかと、事故の過小評価と情報隠しという疑いの目で見られている。

 今後、そういうことを払拭するためにも、この原子炉や今おっしゃいました放射性物質の流出の状況、さらに事故の評価について、こうこうこうなんだということをしっかりと国内と、国民にですね、国際社会に向けてきちっと情報公開と情報発信をして説明を尽くしていくということが大きな問題として何よりも必要だ、そのように思うんですけれども、所管の経済産業大臣としてどのように考えておられるのか、見解を伺いたいと思います。

海江田国務大臣 この事実は事実としてお示しをするということ。それから、今お話のありました、世界に向けての発信ということで申し上げますと、これは大分おくれたなということは事実であります。

 昨日の官房長官の会見、特に最近の官房長官の会見については同時通訳が入っております。それから、昨日はたしか、これは福山副長官がいるから、もし間違っていたら指摘をしていただきたいのですが、その後、外国人の特派員協会の皆さん方を集めて別途会見をやったということでございますから、そういった外国の方々向けの発信というものが、経済産業省ももちろん同様でございますが、特に必要だなと思っております。

佐藤(茂)委員 もう一つは、非常に長期にわたっていて、一カ月たってもなかなか復旧の見通しが立たないという、手間取っているというイメージがあるわけですね。そこで、今後の収束の見通しであるとか、収束に向けてこういう工程を今歩んでいるんです、最終的には、冷却機能を回復させて冷温停止させ、廃炉に持っていくまでの作業としてこういう作業がきちっと見通しとしてあって、今この段階をやっているんですということを、当然、国内はもちろんだけれども、国際社会にも常に発信していく。

 というのは、先週もありましたけれども、場当たり的な、何かおがくずを投入したりとか、そんな作業を見ていると、本当にこれはきちっとそういう先まで確信を持った見通しで対策を打っているのかと不安にならざるを得ないわけでありまして、やはり政府は、現場の東京電力ももちろんですが、国内外の信頼をきちっと回復するために、事故の今後の収束の見通しと明確な工程表を常にこれからも示していくべきである、そのように思いますけれども、経済産業大臣の御見解を伺いたいと思います。

海江田国務大臣 これは佐藤委員の御指摘のとおりでありまして、たしか前の委員会でもそのような御指摘をいただいたかと思っております。

 昨日、総理が会見の中で、まず事業者がそれをつくる責任もあろうかと思いますので、もちろん政府の側もしっかりとそれをバックアップするなり、あるいは政府なりのコメントを加えたものをつくる必要もあろうかと思いますが、そういう指示をいたしました。

 実は、その指示に先立って、東京電力の側ではそういうものを今鋭意準備していたところでございますから、これは双方が日にちを置かずに、ステップワン、ステップツー、ステップスリーというんですか、最終的な廃炉に向けてのステップがお示しできるものだと思っております。

佐藤(茂)委員 ぜひそういうものをしっかりと提示していただきたい。ただ、申しわけないけれども、東京電力が示したのでは信頼度が低いんですよ。だから、政府としてもそれをきちっとチェックした上で、こういう段取りで今やっていますということをぜひ発表していただきたい、そのように思います。

 続いて、福山副長官に来ていただいているので、避難区域の拡大というか見直しについて聞きたいと思うんです。

 新たな計画的避難区域に指定された福島県の南相馬市と川俣町について、その中の一部が対象となると述べただけで、具体的にどの地域が避難区域になるのかという、住民が最も知りたい情報が官房長官の発表の限りにおいては示されていないと私は認識しているんですね。町の一部と言われても、極めてあいまいな指示では住民の皆さんも対応のしようがない。だから、町の方も市の方も、問い合わせがあってもどこがどうなんだということも答えようがない。そういう状況に今陥っているというふうに聞いております。

 だから、南相馬市、川俣町で、それぞれの一部と言われるのはどこなのか、具体的な避難地域をいつどのように示されるのか、政府の考え方を伺っておきたいと思います。

福山内閣官房副長官 佐藤委員にお答えをいたします。

 もう御案内のように、福島第一原子力発電所から半径二十キロメートル圏外の地域において、気象条件や地理的条件によって放射性物質の累積が今後局所的に高まる可能性のある地域について、この地域に居住されていると累積量が上がっていくということを恐れて、我々としては、今回、計画的避難区域を設定するという考え方を発表させていただきました。

 佐藤委員御指摘のように、川俣町の一部、南相馬市の一部が該当しておりますが、私、この官房長官の発表に先立ちまして、四月の十日の日に飯舘村の村長さんと話し合いの場を持たせていただきました。そして、政府の考え方を実際の公開させていただいている数値をもとに御説明をし、大変厳しい話になりますが、飯舘と川俣町の一部は長期にわたると放射性物質の累積が大変高くなる可能性があるというようなことをお話をしました。

 そして、川俣町の一部についても、これは町長さんとお話をさせていただいたんですが、ここは調査の結果を含めて、町長さんの意向もあり、町としっかりと調整をし、話し合いをしていただいた後にその一部の地区については発表いただきたいというお話を承りました。

 その地域におかれましては、それぞれの住民の皆さんが、自分の村や町の放射線量がどのような状況なのかは本当によく御存じでいらっしゃいます。その中で、町長さんからそういったお話をいただきまして、上からというか頭越しに国が指示をするというよりかは、そこで町長さんとも話し合いをしながら指示したいというふうに思っておりますので、現実には告示行為が必要になりますが、まだ告示はしておりません。ですから、川俣町の一部、南相馬市の一部という表現をさせていただいて、今それぞれの市町村の首長の皆さんと話し合いを継続して行っているところでございます。

佐藤(茂)委員 私は、こういう災害で緊急のときの発表というのは、あいまいな発表はだめだと思うんですよ。やはりきちっとわかりやすい方針というものを明確に出して、その前には、調整すべきところは、例えば関係省庁にもあるでしょう、今回の場合は地元の自治体、住民の皆さんに事前に根回しをしっかりした上で明確な方針を出すことが私は大事だと思うんですね。

 今副長官が答弁の中でも言われていましたけれども、四月の十一日に発表された。しかし、その前の日の四月の十日に、今言われたように飯舘村を初めほかのところも行かれたんでしょうけれども、そういう具体的なやりとりが始まった。現実に、発表の前日に行かれたけれども、地元の自治体と調整が済んでいるとは思えない。そういう状態の中で、要するに地元の自治体と調整、根回しが不十分なままの見切り発車の発表をなぜ四月十一日に急いで突然されたのか、それがよくわからない。なぜそういうことをされたのか、御答弁いただきたいと思います。

福山内閣官房副長官 佐藤委員にお答えを申し上げます。

 佐藤委員の御指摘、私は考え方としてはごもっともだというふうに思います。拙速にとおっしゃいますけれども、実は、我々は地元の自治体とお話をして、考え方はこういうことだというふうに話をして、先ほど申し上げましたようにいろいろな調整をお願いしますということをお願いしました。町長さんも村長さんも苦渋の中で、今後、町や村をどうするのかということについて、本当に真剣に悩みながらお話をいただきました。

 そのような中で、我々が恐れたのは、こういったことを国が申し上げに行ったということについて、地元や東京から情報が漏れて住民の皆さんに混乱を与えることは避けたいというふうに思いました。ですから、我々が町や村に上がらせていただいて、時間がたてばたつほど漏れる可能性がある、それはよくないということで、実は十一日の夕方の長官の考え方の発表をさせていただくときも、それぞれの自治体の皆様にも長官が発表させていただくということは事前にお話をさせていただきながら、どの時点で発表させていただくかについても話し合いをさせていただきながら、あの時点で長官に発表いただいたというのが経緯でございます。

 だからといって、例えばすべてを今の町や村のそれぞれの皆さんが御了解いただいているような簡単なものではないということは私も理解をしておりますが、発表に関してはそれぞれの町や村の首長の皆さんには御了解をいただいた上で発表させていただきました。

佐藤(茂)委員 ですから、ああいう発表の後、住民が本当に混乱と不安を持っておられるわけです。やはり住民の理解と納得を得なければこんなものはきちっとした対応ができないわけでありまして、きのうもどこかの、川俣町を含め、報道でも見る限り、住民説明会があった。しかし、肝心のやった町の方がきちっとした情報とか知識もないから、質問があっても答えようがない、そういう状況がどんどん起きている。

 だから、少なくとも避難地域にいるとどれくらい健康上の危険があるかとか、今のところ見通しはどれくらいの期間避難しないといけないのかも含めて、当然住民の皆さんに納得いただける住民説明会をやらないといけない。私は、それを町任せにするんじゃなくて、政府の方からもしかるべき人がきちっと質疑応答できるように行っていただいて、丁寧な説明会を対象となった地域については行っていくべきである、そのように思いますけれども、副長官の答弁をいただきたいと思います。

福山内閣官房副長官 お答えいたします。

 その御指摘も、私は全くごもっともだというふうに思います。今、説明会の計画をそれぞれの自治体がしていただいておりまして、どういう形で政府がかかわるかについても、それぞれの町と御相談をさせていただきながら対応をさせていただきたいと思っております。

 また、現在、もう報道が流れているかもしれませんが、申し上げますと、ある自治体からは政府のしかるべき人が来て説明をしてほしいというような要請ももちろんいただいております。そこも、それぞれの自治体の首長さんと相談をしながら対応していきたいと思っておりますので、今、海江田経産大臣にそのお願いをして、経産省、保安院の方で準備をさせていただいているところでございます。

佐藤(茂)委員 少なくとも、今回も前回と同様ですが、そういう国の指示で、まだ告示までいっていないと言われましたけれども、避難されるわけですから、避難先については、やはり国が責任を持って探して、各自治体とも交渉をして決めるべきであると私は考えるんですけれども、政府の考え方を伺っておきたいと思います。

福山内閣官房副長官 お答えをいたします。

 まさに、それもごもっともな御指摘だと思います。

 ただ、避難先については、例えば県外であるとか、県内であっても、ここはどうですかと国が御提示しても、住民は、いや、そこではなくて、なかなか厳しいけれども村からそんなに離れてないところにいたいとか、地域の状況を考えるととか、仕事や職場のことを考えるとというニーズがございます。そのことについても、国はここだとなかなか決め打ちができない現状がございまして、仮設住宅をどうしていくかということも含めて対応していきたいというふうに思っておりますので、国としては、できる限りの用意をしながら、しかし、それぞれの市町村の住民の皆さんの御要望にこたえていきたいというふうに思っております。

 それから、避難期間がどのぐらいなのか、先の見通しはどうなのか、はっきりさせないと住民の皆さんは不安ではないかという先ほどの御指摘も、私はごもっともだというふうに思います。

 それは、先ほど海江田大臣がお答えになりました、東京電力が一定の見通しを出すようにと、東京電力に総理から指示を出していることも踏まえて、我々は状況とは違う誤った見通しをお伝えすることもよくないと思いますし、だからといって、住民の皆さんに将来的にその地域に戻ってこられるような形に何とかこの事態を収束させて、この避難をしていただきたいという思いもありますので、その中でぎりぎり申し上げられる点を、東電の今後の見通しも含めて、政府としては住民の皆さんにお伝えをしていきたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 副長官、これで最後にします。

 もう一つは、二十キロ圏内をどうするかという問題で、災害対策基本法に基づいて立入禁止や退去命令を出すことができる警戒区域とする方針を固めたというような報道が先週ぐらいからありました。四月十日に、官房長官は、今、最終段階の詰めをしているんだというように語っておられるんですけれども、この二十キロ圏内は警戒区域の指定をされるのかどうか。

 その際には、避難住民の方は今度は入れないことになりますから、当然、一カ月以上避難されている方の一時帰宅という希望もかなえてあげないといけないと思うんですが、そのことについてどう考えておられるのか、伺っておきたいと思います。

福山内閣官房副長官 お答えをさせていただきます。

 二十キロ圏内の住民の皆様にとりましては、本当に着のみ着のままというような状況で緊急に御避難をいただき、不自由をおかけしていることに関して、心からおわびし、申しわけないというふうに思います。

 その二十キロ圏内の避難をされている皆さんは、一度自宅に大切なものをとりに帰りたいといった御要望が強いことも我々承っております。しかし、そこは、二十キロ圏内でございますので、放射性物質の累積の状況や現実に今の炉の状況を総合的に判断し、また、風向き等も判断をしながら対応していかなければいけません。

 その中で、まず警戒区域を設定することを検討しておりまして、今それぞれの市町村と詳細を詰めております。御案内のように、警戒区域の設定は市町村の権限になりますので、それぞれの市町村が御了解をいただいた上で区域を設定する。設定をしてすぐに一時帰宅というか一時立ち入りができるかというと、今申し上げた条件が整わなければいけないのと、そちらに入るには例えば除染やスクリーニング、さらに言えば、もう県外へ出ておられますので、それぞれの市町村に避難されている方々をどういった形で、例えば一家族一名とか、それを募って、バスをこちらで準備して、自衛隊や機動隊の皆さんにも御協力をいただきながら対応するというようなオペレーションをしっかりとつくっていかなければいけませんので、警戒区域に指定をさせていただいた後に、もう今も実は計画は並行して動いておりますが、その計画を立てさせていただいて、順次実行をしたい、なるべく早く実現をしたいというふうに思っております。

 これも、もう一度申し上げますが、原子炉の状態や、今のように余震が、これほど大きい余震が続いている状況ではなかなか、まあ、余震はいつ来るかわからないんですけれども、そういった状況、風向き等も判断して、それは避難されている住民の皆様にも説明をし、御理解をいただきながら、実現に向けて最大限努力をしていきたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 最後になりますけれども、きょうは、原子力安全委員長、班目委員長にお忙しい中来ていただいているので、一点だけお聞きしたいと思うんです。

 先週の当委員会でも電源の問題が大きなテーマになりましたけれども、原子力安全委員会は、一九九〇年に定めた発電用軽水炉の安全設計審査指針の解説で次のように言われています。「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない。」とする考え方をその時点で明記されていました。

 それで、長時間の全電源喪失について考慮する必要はないという考え方は、今回の福島第一原発の事故を見ても、これは全く間違っておったことは明らかになっているわけでありますから、非常用電源を含むすべての電源喪失について万全の備えを当然今後はしていく必要があると思うので、原発のこの安全設計審査指針をしっかりと見直して改める意思があるのかどうか、原子力安全委員長に最後にお伺いしておきたいと思います。

班目参考人 設計指針に関しましては、まさにおっしゃられるとおり、抜本的な見直しが必要だというふうに思っております。

 そういう意味では、まだ事故は収束してございませんが、何が大きな問題であったのかというのをしっかり調べ、それへの対応ができるような形にこれから指針を根本的に見直したいというふうに考えてございます。

佐藤(茂)委員 もう質問時間が参りましたので申し上げますが、私どもは、この原発事故、事態を収束させるためには、本当に与党も野党もない、だから、当然、我々も批判するだけではなくて、こうしたらどうかという提言は、今までも福山副長官にもさせていただきましたけれども、引き続きさせていただくことをお約束して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、きょうは、原発関係は一番最後に時間があれば、なくなったときには十二時十五分から内閣委員会で引き続いてやりたいと思いますので、まず中小企業の支援策について最初に伺っておきたいと思います。

 店も家も機械も商品も、そして帳簿も伝票も、全部この津波でなくなってしまって、残ったのは借金だけ、これが、今回の地震、津波による、過去に例のないほどの被害でありました。

 その中で営業を再開するのは容易でないわけですが、被災地の中小企業の皆さん方も、何とかという思いで頑張っておられるときです。全国にその関係は及んでいって、取引先まで広く、さまざまな影響が広がっています。既存の枠組みを超えた支援策が必要だというふうに思うわけです。中小企業庁でも支援策ガイドブックをつくって広報しておりますが、残念ながら、支援策というのは既存の制度の範囲内ですね。

 それで、金融対策として、まず中小企業庁長官に伺っておきます。

 災害復旧貸し付けや災害関連保証などを講じられているわけですが、既往債務の返済すらままならないという中で、新たな融資や保証を受ける条件にはないと思うんです。保証つき融資を受けている中小企業の皆さんがどうしても返済できない場合、どういうふうになるのかをお聞かせいただきたいと思います。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 被災された中小企業者の方々は、既往債務の返済負担が問題となるために、震災が発生直後に、三月十一日でございますけれども、速やかに信用保証協会に対しまして、既往債務の返済猶予などの条件変更に柔軟に対応するよう要請をいたしました。

 民間の金融機関の方々にも返済猶予を行うように金融庁から要請が行われておりますので、安易な代位弁済の請求が行われることはないと考えておりますけれども、いずれにしましても、この点につきましてもしっかりと注視をしていきたいと考えております。

 また、返済期日が経過をいたしましても、返済期日にさかのぼって柔軟に条件変更に対応することでございますとか、あるいは代位弁済後に発生する遅延損害金の軽減、要すれば、最終的には遅延損害金のカットでございますけれども、こういったことについても弾力的な対応を要請しているところでございます。

 いずれにいたしましても、これらの点につきましては、委員の御指摘も踏まえまして、今後ともしっかりと対応していきたいと考えております。

 以上でございます。

吉井委員 今お答えがありましたように、要するに、保証協会などが代位弁済するわけですね。

 しかし、保証協会には求償権が残りますね。求償権に基づく債務を返済するまでは、保証つき融資が受けられないということになってしまうんじゃありませんか。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、中小企業者の方々が保証協会の求償権先となる、こういった事態に陥らないためには、通常であれば中小企業者の方々の、もちろん御自身の経営努力も必要なわけでございますけれども、今回大変な事態が起こっているところでございまして、安易に代位弁済を請求せずに、期中における経営支援といいますか、そういったことを強化していくことが必要でございます。金融機関に対しまして、そうした取り組みをまた一層強く求めていきたいと思っております。

 それから、今回のケースのような場合でございますけれども、実は、中小企業者の方々の再生を支援する観点から、求償権の完済と新規の事業資金を対象といたしました借り入れに対しまして保証を行う求償権消滅保証という制度もございます。これは平成十八年に創設されているのでございますけれども、最近、金融円滑化法の影響もございまして、実績は落ちております。まだまだ少ないのでございますけれども、昨年末までに五百件の実績を上げております。

 今後、この制度の一層の普及促進を図っていかなくてはならないというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

吉井委員 実績が落ちているというお話なんですが、求償権が保証協会に残っておっても、求償権に基づく債務返済、そういうことはそもそも、今度の大震災、津波で、もうどうしようもないところに行っているわけですから、このときは、保証つき融資、求償権に基づく債務返済をしなきゃいけない部分があったとしても、いわばこれはもう無視して、それで保証つき融資はきちんと受けられる、こういう立場で中小企業庁は臨むんですね。

高原政府参考人 これはいろいろなケースがあると思いますけれども、いずれにいたしましても、求償権の完済と新しい資金の貸し出しということを対象にいたしました制度を用意いたしておりますので、この制度を積極的に使うように一層頑張っていきたいと思っております。

 以上でございます。

吉井委員 制度を一層活用するように頑張りたいといっても、実績はどんと落ちているというときなんですよ。

 そこで大臣に伺っておきたいんですけれども、被災中小企業や業者の皆さんの声は、せめてゼロからのスタートをと。ですから、既往債務を免除することがやはり大事なんですね。必要になっているんです。その際、債権放棄をする金融機関とか保証協会とか信用保険の財政に十分な財政措置を講じて、安心して、業者の側からすれば債務放棄とか無期凍結、あるいは二十年、三十年という、もっと長いかもしれませんが、うんと長期にわたる返済猶予とか、やはりこういうことのできる体制を整えていかないことには、今度の場合、復旧だ、復興だといったって、これはなかなか簡単な話じゃないと思うんです。

 やはりこれは国しかできないんです。このことを国としてきちんとやっていくという考えをお持ちかどうかを海江田大臣に伺っておきます。

海江田国務大臣 まず信用保証協会でありますが、これは地域地域にございますが、この信用保証協会の、特に東北地域の信用保証協会は体力が弱るということもありますので、信用保証協会に対するバックアップというものをしっかりやっていこうということは一つございます。

 それから、今御指摘のありました、吉井委員は中小企業ということでお話がありましたけれども、今回は中堅企業も大分傷んでおりますので、従来の中小企業という枠組みだけでなく、中堅企業にもしっかりとした支援の枠を広げていくことが必要かなと私は思っております。

 それから、その次に出てきます、最終的に、今回の震災そして津波あるいは原子力による被害についてはゼロから出発をしたい、そういうお気持ちは、もちろんわかるわけであります。ただ、最初から、これはゼロですよ、ここで貸し付けをしました資金については返す必要がありませんよなどということは、やはりこれは申し上げられないわけでありますね。

 ですから、例えば生業をやっていくためには、まず店舗も必要でしょう、仮の店舗になるでしょう、あるいは仮の工場も必要でしょう。そうしたところにも、しっかりとした、ごくごく低利の融資を行って、そしてそこで雇用も確保していただく。雇用を確保していただいたときには雇用調整金などもしっかりと払っていくというような形で、そして、できるだけ利益を上げていただいて、その利益の中から借りたお金を返していただいて、しかもそれは時間的には、これは今委員御指摘のような、十分なゆとりのある時間でなければいけないというふうに思っておりますので、そういう形で、なるべく自立的に立ち上がっていけるように、ただ、自立的とはいっても最初はなかなか自立できない部分もありますから、そこは後押しをしていこう、助走のところはしっかりと後押しをしていこうという基本的な考え方でございます。

    〔委員長退席、楠田委員長代理着席〕

吉井委員 ゼロからの出発というのは、債権放棄ないしは債権の無期凍結ですね、金融機関からすれば。あるいは二十年、三十年、もっと長いかもしれませんが、長期にわたる返済猶予とか、その仕組みを本当に考えていかないと、幾ら金融メニューをつくってもなかなか使えないんですよ。それが現実だということを見ておかなきゃいかぬと思うんです。

 ある工務店の話なんですが、新築の家を八軒建てられたんですけれども、建てた家がみんな津波で流されたんですよ。だから売れない。売れない、建築費用の請求はできない、しかし材料代などの請求書は来ている。ガラス、サッシ、畳、木材、全国各地に取引先があるわけですね。その取引先にとっても、被災地からの売掛金回収はできない、できないと資金繰りに困る、そういう深刻な事態にあるわけですね。

 ですから、やはり売掛金の問題を、国が肩がわりするかどうするかも含めて、本当に抜本的、根本的な対策を考えないと、これはなかなか、中堅もとおっしゃったけれども、中堅にしても中小にしても、この地域で立ち直るということは大変なことなので、そういう点ではグラウンド・ゼロからの出発なんだということをきちんと腹に置いた対策が必要であると思うんですが、もう一度聞いておきます。

    〔楠田委員長代理退席、委員長着席〕

海江田国務大臣 委員の建設的な意見をしっかりと踏まえて対処していきたいと思っております。

吉井委員 これは例えばの例なんですが、ある地域の大工さんが、自分も被災して全部道具を失ったと。その思いがあるからこそ、被災地へ大工道具一式を送られたんですよ。

 腕はあるんですね、家を建てるにしても修繕するにしても、腕はあるんだが道具がない。そういう道具とか、建設業者の人にしても、全部流されて、ないんですね。西日本の方には建設機械のリース会社だっていっぱいあるわけですけれども、そういうものを国の方で段取りしてあげたら。腕はあるんです、地域の実情、現状もよくわかっているんですよ、地域で建設業をやってこられた方であれば。だから、やはりそういう点では、まず、そういう復興復旧に当たる、官公需に当たるものは地元の業者の皆さんに仕事を回して、道具や機械等は国でも応援して仕事ができるようにしてあげる、そういう本当に心のこもった対策というものが私は今必要だと思うんです。

 海江田大臣と私は、財務金融委員会のときによく金融問題をやりましたけれども、金融システムが破綻したときは国が全面的に見ていったんですね。今起こっている事態というのは、世界の部品供給や日本国内の各地の素材供給の上でも大事な役割を果たしているし、そして同時に、そういうところで地域経済も産業システムも傷んでいるわけですね。

 これは何としても立ち直ることができるように、中小企業の中には、福島の中通りの小さい商店ですが、店にあった商品がすべてなくなった、納入の予定もなく店を閉めようとしていたら、近所の住民から、商品がなくてもいいから店をあけておいてほしい、こういう声があってお店をあけておいて、物流が回復し、これまでの三倍の仕入れをして全部売り切れるほど、地域の中小業者が住民の暮らしを支える役割をしているということも例としてあります。

 そういう社長さんやら商店主の方とか、みんなやる気を持っているんです。それに対して、官公需の地元業者への優先発注、道具や機械などを国の方でも段取りして、本当に応援して、一刻も早く立ち直ることができるようにやる取り組みが必要だと思うんですが、最後に大臣の決意を伺って質問を終わりたいと思います。

海江田国務大臣 既に平成二十三年度の予算が通過をしたところでございますから、これから予算の具体的な執行過程、それから、恐らくこれから数次にわたる補正も考えられるところでありますから、そうした予算の執行については、おっしゃるように、必ず、被災地域の中小企業、あるいは本当に小規模な企業、こういうところに発注をするように私からも各府省に働きかけをしたい。

 それから、腕とツール、道具のお話も承りました。融通をするように努力をいたします。

吉井委員 時間が参りましたので、終わります。

田中委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 原子力発電所のテロ対策についてお尋ねします。

 昨年の十一月二十六日に、この経済産業委員会において原発立地法の審議が行われておりました。そのときの質疑で私は、原子力発電所のテロ対策ということについて当時の大畠大臣に質問をさせていただきました。そのときの大臣の答弁として、テロ対策をしっかりするように指示をしているということ、それから、テロリストによる強行突破があったと想定した対応訓練を実施しているという御答弁がありました。

 ところが、新聞報道によりますと、三月三十一日、福島第二原発に街宣車が突っ込んで、西門のゲートを突破して敷地内の警備区域に侵入した、こういう事件が報道されております。その後、侵入した男性は二時間後に警察に逮捕されたそうなんですけれども、仮にこういう非常事態、事故の最中とはいえ、それを理由にしてテロ対策の手を抜いていいということには決してならないと思うんですね。

 テロリストという人種は、恐らく、被災者が困っているから仕事をやめようということはなくて、むしろ危機につけ込んでそういう事件が起こり得るんだと思うんです。そういう意味では、テロリストの侵入対策が不十分であったのではないかと私は思いますが、その点について大臣の御答弁をお願いします。

中山大臣政務官 今の問題意識は当然だというふうに私たちも考えます。

 こういう事故の折に、そのすきを突いて、まず第一の方に来たわけでございますが、そこで拒否をされた。そこで、第二の方に回って正面を、本当は一生懸命みんなで閉じてやったんですが、今度は西門に回って、すきを突いて体当たりして入ってきたということでございます。

 どんなことがあっても、体当たりしようと何をしようと、入られたということ自身は大変問題があったというふうに思いますので、今後こういうことのないように、徹底して警備は怠らないようにしてもらいたいと。特に、先ほど大畠大臣がお答えしたと言っていましたが、これも、テロ対策については十分我々もやっていこう、こういうことでございます。

 ですから、事故中であろうと、もう一度警備体制をしっかり締め直して、こういうことのないように私たちも全面的にやらせるように努力いたします。

山内委員 ぜひお願いしたいと思います。この一カ月、想定外という言葉をしょっちゅう聞いていましたが、やはり想定しなくちゃいけない、しかも想定の範囲内の今回の事件だったと思いますので、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 原発の二つ目の質問は、ちょっと時間がなさそうなのでスキップさせていただきます。

 今後、被災地の復興に当たって、ぜひ経済産業省の持っているノウハウ、リソース、あらゆるものを動員して復興に当たっていただきたいと思うんです。

 例えば、今、自粛ムードがありますが、自粛したからといって被災地の経済が復興するわけでもありませんし、ぜひ前向きに、被災地の産品をもっと買ってもらうということ、それと、寄附とかボランティアもありますけれども、同時に、岩手や宮城のものを積極的に消費者が買うことで地域の復興を支える。非常にわかりやすくて、すぐに考えつきそうな手ですけれども、ぜひ具体的なアクションを早目にとっていただきたいと思っております。

 例えば、アメリカ議会は、バイ・アメリカン条項みたいなものをつくって、アメリカ製品を買わないとだめだみたいな規定もつくっています。そこまでやる必要があるかどうかは別として、国を挙げて、バイ東北キャンペーンみたいな、例えばそういう広報にも予算をつけて、今ACの「ありがとウサギ」みたいな広告ばっかり流れていますけれども、もっと前向きな、被災地の復興を支えるために物を買いましょうみたいなキャンペーンをやったらいかがかと思うんですけれども、経産省のお考えをお聞きします。

中山大臣政務官 まさにそのとおりだと思いまして、まず、経済産業省の食堂では、茨城産の野菜を率先して買うということをやっております。各省庁でも、経済産業大臣から各省にそういうことをお願いして、どこでも、被災地の野菜をまず一番初めに省庁が買うんだ、こういうことが大事だというふうに思っております。

 それと同時に、多くのスーパー、私たちが知っている限りの、ダイエー、イオン、イトーヨーカドー、東急ストア、サミット、こういうところには、できるだけ災害地の産品を売るようにということもお願いをしているところでございます。

 今言ったように、大々的なキャンペーンをすることがすごく必要だというふうに思うんですね。私どもの大事な三社祭りもできなくなりまして、これは二日で百万人ぐらい来るわけですが、こういうことをやめてしまったら本当に産業全体がだめになると思いますので、経済産業大臣が先頭に立って、できる限りイベントをやるべし、このように言ってもらうことにいたしております。

山内委員 ぜひその意気込みでやっていただきたいと思います。

 例えばエコマークという制度がありますね。エコマークがついている製品だと環境に優しいということは、消費者がすぐわかるわけですね。ですから、例えば被災地産品シールみたいなものを経産省がつくって、手にとった缶詰を見て、ああ、これは被災地でつくったんだなというのがわかれば、消費者も十円高くてもそっちを買うというようなことはあり得るかもしれない。

 そういった意味では、例えば被災地の商品であることがすぐわかるようなマークをつくるとか、ロゴをつくるとか、そういう認証制度をつくってエコマーク的につけるとか、そういうアイデアはいかがでしょうか。大臣、お考えを。

海江田国務大臣 有益な意見として承りました。

山内委員 ありがとうございます。

 それと、先ほど吉井委員からの指摘も全くそのとおりだと思います。東北、被災地の復興のために税制とか融資の制度がたくさんある。阪神のときの制度もずらっと一覧表を見ましたけれども、正直言って、一般の方が見てもなかなか効果がわかりにくい。これは恐らくインパクトとイメージが大事だと思うんですね。

 ですから、思い切って震災特区でもつくって、工場の再建に関する投資にはかなり税制優遇を与えるとか五年間免税にするとか、中国、インドに工場をつくるよりも岩手とか宮城につくった方がもうかるというぐらい、非常にわかりやすいパッケージと売り込みが必要ではないかなと。インベスト東北キャンペーンみたいなものを、ぜひ経産省の持っている資源とノウハウを使ってやっていただいてはどうかなと思うんですけれども、そういう構想はおありでしょうか。

中山大臣政務官 多分、予算委員会をやって予算をつけてもらってから中小企業のお金をつける、これではもう間に合わないと思うんですね。中小企業庁では、アイデアをつくりましたら、まず出口論をどんどんやっていこうと。今、二百五十人ぐらいを災害地に送り出します。そして、相談を受けることにいたします。それから、きのうは四十名に福島に行ってもらって、二十名、二十名、私どももそれぞれ人間を送りまして、相談を受けろ、御用聞きをしろ、こういうこともやっておりまして、まずはきょうあたりから、中小企業に対してこういうことをやっているということを表に押し出していきたい、このように思います。

 その節は、予算委員会等が、これから補正予算がありますが、御協力をいただいて、その前にどんどん政策を実行していくという形をとりたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

山内委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 産業活力再生法が今後議論されることと思いますが、例えばこの事態を受けて、その条項の中で、全国一律ではなくて、被災地の県に限ってはもっと優遇する条件をふやして修正するとか、状況が変わりましたから、法案も、もし可能であれば委員会でみんなで議論して変えてもいいと思いますし、政府の方でもよりよいものに、特に被災地の企業を助けるために必要なこと、あるいは、海外から企業を誘致するどころか、今や海外に工場が逃げていかないようにしなきゃいけないという問題意識で、よほど思い切ったことをやらないといけない時期だと思うんですね。

 そういう意味では、内閣提出法案、そのままである必要はないと思いますし、よりよいものにする必要があるんじゃないかと思います、この被災を受けて。それについて、大臣なりのお考えをお聞きします。

海江田国務大臣 まさに国会の重要な機能であります立法機能を果たしていただいて、御意見をちょうだいしたいと思います。

山内委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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