衆議院

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第6号 平成24年4月18日(水曜日)

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平成二十四年四月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中山 義活君

   理事 石関 貴史君 理事 稲富 修二君

   理事 川口  博君 理事 近藤 洋介君

   理事 田嶋  要君 理事 梶山 弘志君

   理事 菅原 一秀君 理事 佐藤 茂樹君

      井戸まさえ君    磯谷香代子君

      大畠 章宏君    加藤  学君

      木村たけつか君    北神 圭朗君

      櫛渕 万里君    熊谷 貞俊君

      斉木 武志君    柴橋 正直君

      平  智之君    高井 崇志君

      高野  守君    高松 和夫君

      中根 康浩君    花咲 宏基君

      平山 泰朗君    藤田 大助君

      牧野 聖修君    松岡 広隆君

      森山 浩行君    山崎  誠君

      山本 剛正君    近藤三津枝君

      高市 早苗君    橘 慶一郎君

      谷畑  孝君    西野あきら君

      西村 康稔君    額賀福志郎君

      江田 康幸君    吉井 英勝君

      中後  淳君    山内 康一君

      園田 博之君

    …………………………………

   経済産業大臣       枝野 幸男君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   経済産業副大臣      牧野 聖修君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   経済産業大臣政務官    北神 圭朗君

   経済産業大臣政務官    中根 康浩君

   国土交通大臣政務官    室井 邦彦君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長代理)      枝広 直幹君

   政府参考人

   (内閣法制局第四部長)  松永 邦男君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     照井 恵光君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          石黒 憲彦君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            佐々木伸彦君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          厚木  進君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          永塚 誠一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 高原 一郎君

   政府参考人

   (特許庁長官)      岩井 良行君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  櫛渕 万里君     森山 浩行君

  花咲 宏基君     高井 崇志君

  山崎  誠君     磯谷香代子君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     山崎  誠君

  高井 崇志君     花咲 宏基君

  森山 浩行君     熊谷 貞俊君

同日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     櫛渕 万里君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案(内閣提出、第百七十七回国会閣法第二六号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 第百七十七回国会、内閣提出、特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、第百七十九回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中山委員長 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房地域活性化統合事務局長代理枝広直幹君、内閣法制局第四部長松永邦男君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官照井恵光君、経済産業省経済産業政策局長石黒憲彦君、経済産業省通商政策局長佐々木伸彦君、経済産業省貿易経済協力局長厚木進君、経済産業省商務情報政策局長永塚誠一君、資源エネルギー庁長官高原一郎君及び特許庁長官岩井良行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橘慶一郎君。

橘(慶)委員 おはようございます。

 朝早々、一首を読ませていただいての質問ということでありまして、きょうの万葉集は、いよいよ桜も散り行く東京であります。桜の花が散る歌がありましたので、これを御披露させていただいて始めたいと思います。巻十六、三千七百八十六番。

  春さらばかざしにせむと我が思ひし桜の花は散り行けるかも

 それでは、一時間よろしくお願いいたします。

 早速、大臣から何か春らしい御答弁をということで始めればいいんですが、時節柄、そうもいかない部分もこの日本の内外にあるわけであります。通称アジア拠点法と言われているこの法案の審議に先立ちまして、一問、北朝鮮のミサイル発射の問題をさせていただいて、あと、法案を全部一通りいろいろと質問させていただいた後、最後に、また幾つか、最近の問題について見解をお伺いしたい、このように思っております。

 そういう意味で、大臣には、最初の質問はなかなか春らしいということにはならないと思いますが、ぜひ現状認識でよろしくお願いしたいわけです。

 四月十三日の北朝鮮のミサイル発射は、断じて容認のできないことであります。衆議院で決議もいたしました。

 この委員会で審査をする案件といえば、四月十四日から外為法に基づく北朝鮮輸出入禁止措置がさらに一年継続ということになって、やがてまたその承認案件というのが上がってくるわけですが、確かに、この委員会の所管するいろいろな手だてという意味ではかなりし尽くしているという部分もあるわけですけれども、そうは言っても、やはりこれは断じて容認できない、こういう事案であります。外交、いろいろなことも考えなきゃいけないわけですけれども、やはりそれなりの我が国としての姿勢も見せていかなきゃいけない。

 そうなりますと、この制裁措置の強化というのは内閣全体として検討されていかないのか、この辺、どのようにお考えになっているのか、まずお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 おはようございます。

 御指摘のとおり、人工衛星と称するミサイルの発射は、我が国を含めた地域の平和と安定を損なう安全保障上の重大な挑発行為でございます。それから、国連安保理決議、これは弾道ミサイル技術を使った発射をこれ以上実施しないことを北朝鮮に要求しておりますが、これにも反するものでありまして、極めて遺憾でございます。

 御指摘のとおり、経済産業省の制裁措置は、安保理決議の求める内容よりも厳しいものとなっており、全面輸出入禁止でございます。経済産業省の所掌範囲の中で、なかなか難しい部分があるというのは御指摘のとおりでございますが、政府全体としては、こうした問題に毅然とした姿勢を示すことが必要だと思っておりまして、米国、韓国、中国、ロシアを初めとする関係国や国連安保理等の国際社会の動きなどを踏まえつつ、引き続き検討してまいりたいというふうに思っております。

橘(慶)委員 出入国措置であったりお金のやりとりであったり、まだきめを細かくできる余地も残っているような話も聞いております。いろいろな提案を我が党もしているということでもありますし、ぜひ、またよく御検討いただきたいということでお願いしたいと思います。

 それでは、アジア拠点法と言われる、昨年の通常国会に出てまいりました特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案、順次質疑をさせていただくわけですが、アジア拠点法というふうに言われてはいるんですけれども、内容的には、必ずしもアジアの会社だけを対象にしているわけでもなく、ある程度広がりを持って、言ってみれば、我が国の国際的な拠点としての位置づけというものを大事にしていこう、あるいは守り立てていこうということでそういう内容がいろいろと込められている、こういうふうに理解をし始めておりまして、そういったことを中心に、この法案の立法の趣旨そして効果ということについて、順次お伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、アジア全体が経済として発展が非常に著しいということでありまして、当然そういうことを狙って、欧米諸国を含めていろいろな多国籍企業がアジアにも展開をしているわけであります。そういう中において、今日、アジア地域の中で、どういった国なり、あるいは町というものが注目され、伸びているのか、この辺の認識からお伺いをしてまいりたいと思います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 アジア地域におけます多国籍企業の立地状況につきましては、各国政府が公表しているデータの制約はございますけれども、例えば香港につきましては、地域統括拠点数が、二〇〇一年の九百四十四件から二〇一一年の千三百四十件へと、この十年間で約一・五倍に増加しております。

 それからまた、シンガポールにつきましては、我が国及び諸外国の有力なグローバル企業が拠点を移転した事例があることを承知しております。グローバル企業の拠点立地が進んでいると推察されるところでございます。

橘(慶)委員 今ほどお話のあった香港、シンガポールということも念頭に置きますと、優位性ということを言われる場合には、今回の措置というのは、例えば投資を促進するとか、特許料を減免するとか、あるいは租税特別措置という、言ってみれば、経済といいますか、企業でいうと収益に係る部分、そういった部分の措置が多いわけですけれども、この優位性という意味で、我が国がやや失われてきているのかな、あるいは競争が厳しくなっているかなと言われる場合には、そういった立地コストの高さのみならず、今ほど香港、シンガポールという例を挙げていただきましたし、また、多分ソウルとか上海もそうなんでしょうけれども、例えば飛行場からのアクセスであったり港湾との関係であったり、あるいはアジアという一つの地域を地理的に眺めた場合の位置関係、どこからどこへ、どれくらい時間がかかるとか、こういった要素もあるようにも思います。

 また、言語ということについて言えば、やはり英語というものがグローバルな言語であるとすれば、日本語というものはマスターしなければいけないとか、あるいは私ども日本人において英語におけるコミュニケーション力、いろいろな要素が拠点性を高めていくためには必要なのではないか、このようにも思うわけでありますが、この辺の認識についてはいかがでしょうか。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十一年度に、経済産業省がアジアの国・地域について、投資先としての魅力を投資環境項目別に、今先生おっしゃられた項目も含めまして、調査した結果がございまして、それを見ますと、本社及び担当地域内の各事務所へのアクセス等の地理的要因につきましては、日本に比べ、中国、シンガポールに魅力があるという回答をした企業が多くなっております。

 また、英語を使える人材を含めた優秀な人材の獲得という観点では、中国、インドに魅力があると回答した企業が多いわけですが、日本もそれに続く回答数を得ております。

 御指摘のように、グローバル企業が立地先を選定する要因は複合的でございまして、コストや事業環境等を総合的に評価して判断を行うと考えております。

 このために、平成二十三年十二月に、ビジネスジェットの受け入れ環境の整備や行政の英語化の推進等、よりよい事業環境、生活環境の整備に向けた取り組みを盛り込んだアジア拠点化・対日投資促進プログラムを策定したところでございます。

 今後、本プログラムを着実に推進して、投資先としての我が国の魅力を高めてまいりたいと考えております。

橘(慶)委員 そういう御答弁であるとすれば、やはりこの法案というもの、ここに盛り込まれたツールも生かしながら、パッケージとして積極的なマーケティングが必要になるんだろう、このように思っております。このことについては、後でまたお伺いをしてまいりたいと思います。

 そして、さきの御答弁の中にもありましたように、シンガポールには逆に我が国の企業がグローバル企業として拠点を一部移したというような話も私どもは聞くわけであります。

 そんな意味で、逆に我が国の日本企業ということで、日本で生まれ育った企業が、アジアの他国に本部機能あるいは研究開発機能を移転したという事例、あるいはそういう構想、計画、そういったものについて、つかんでおられるところで、わかる範囲でお答えをいただければと思います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の企業の具体名を申し上げることは適当ではないと思いますけれども、例えば二〇一〇年に大手の情報通信機器メーカーが研究開発拠点をシンガポールに設立した事例とか、あるいは二〇一一年に大手の総合光学機器メーカーが国際事業本部をシンガポールに移転した事例等があるものと承知しております。

 それから、経済産業省が平成二十一年に実施した日本企業へのアンケート調査によりますと、四社が本社機能を海外へ移転も視野に入れて検討中、それからまた、三十八社が研究開発機能を海外へ移転する、または移転も視野に入れて検討中と回答しております。

橘(慶)委員 そういう意味では、今回の法案は、実は外国企業だけではなくて、そういったいろいろなことを考える日本企業に対してもある意味でメッセージを送るという内容なんだろうと思っているわけであります。

 そして、今ほどお話があったように、いろいろな機能を我が国の企業であっても外へ出そうとする中で、やはりこの日本というものをどういう役割で位置づけていくかということは非常に大事だと思っております。

 いろいろな製品を開発して、それを大量生産ということになると、やはりどうしても人件費の安いところ、あるいは部品産業なども含めていろいろなところへ立地してしまうわけですが、日本で今言われているのは、この国の技術あるいはこの国のそういうノウハウを生かして、まず第一号製品あるいはプロトタイプの製品、そういったものをこの日本の中でつくっていく、そういう付加価値の高いものをまず日本でつくる、そういうマザー工場と言われるものをやはり一つ日本に残していく、そして、そこから海外へ展開していくというのも一つの日本の生きる道ではないか、こう言われているわけであります。

 そういう中で、実は、二十三年度の第三次補正予算で、これは震災対策ということもあったわけですけれども、国内立地推進事業費補助金ということで、福島を除いて二千九百五十億円、福島は別枠になっていたわけですが、これについて七百四十八件も申請がありまして、そのうち二百四十五件、二千二十三億円を採択された。残った九百二十七億円余につきまして二次募集にも入っておる、こういうこともお伺いしているわけであります。

 こういった立地推進事業費補助金の中で、今申し上げたプロトタイプあるいは第一号製品を製造するそういったマザー工場と言われるものについてはどの程度対応を手当てできたのか、どういう状況にあるのか、お答えいただきたいと思います。

石黒政府参考人 お答え申し上げます。

 第三次補正予算の方で措置をされました国内立地推進事業費補助金でございますが、いわゆるマザー工場に限らず、委員御指摘のとおり、震災復興ということもございまして、サプライチェーンの中核的な部品、素材分野と高付加価値の成長分野における生産拠点に対して広く補助を行うことにしております。

 一次公募におきまして、委員お尋ねのマザー工場でございますが、代表事例といたしましては、愛媛に航空機、高級自動車向けの炭素繊維の工場を増設するといったようなものが代表事例でございます。

 ただ、マザー工場の定義もございまして、実は、全体として幾らあるかということについては、ちょっとお答え申し上げるのは難しいのでございますけれども、この厳しい円高の中での国内立地でございますので、全てそういった案件については何らかのマザー工場の機能を持ったものと我々は理解をいたしております。

 さらに、委員が特に御指摘になりましたプロトタイプとか、そういった一号ラインの増設につきましては、この補正予算とは別に、実は当初予算の中で、二十三年度予算といたしまして、革新的低炭素技術集約産業の国内企業立地補助金という制度を設けております。これは、低炭素分野について、まさしくプロトタイプ、一号ラインをつくり出すときに補助をするものでございまして、二十二件、七十一億円の支援をさせていただいております。これは通常予算でございますので、引き続き来年以降も続けてまいりたいというふうに思っております。

橘(慶)委員 東日本大震災を契機としてサプライチェーンの問題等が発生しまして、特に昨年の秋口ごろは、随分、経済的な新聞には毎日のように日本企業の海外への移転というような話が出ているという非常に心配な状況もあったわけであります。

 そういったことに対して、やはりいろいろな形でメッセージを出していかなきゃいけない。そして、やはり日本の中で物もつくっていかないと、そういうノウハウを残していかないと、最終的に、だんだん各国と製品の競争が厳しくなってしまうと、なかなか日本として前へ進めないという問題もあると思います。ぜひ、この辺は力を入れていかなきゃいけない。

 そういう意味において、恐らく、拠点というものについて、いわゆるオフィス的な拠点と研究開発機能というものに着目をされた今回の法案のたてつけであろうと思っております。

 そこで、若干、この法案の条文の問題について、これは法案の性格というか、何を狙っているかということを明らかにするという意味におきまして、省令に委任されている部分も結構ありますので、あえてここで、法案審議でありますから、この委員会の中で明らかにしていきたいと思っております。

 特定多国籍企業というものを支援するという法案であります。この特定多国籍企業、グローバル企業ですけれども、要件としては、法文上は、国際的な規模で事業活動を行っているということ、いわゆる国際的規模であるということ、もう一つは高度な知識または技術を有する、こういう二つの基準を設けながら、それを具体的には主務省令の方に内容的には委任をされているわけであります。

 そこで、この国際的規模、そしてまた高度な知識、技術というのは具体的にどのように定められるのか、まずお伺いいたします。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 主務省令に委任されている事項の詳細につきましては、具体的には主務省令を定める中で検討していくことになるわけでございますが、御指摘の、国際的規模で事業活動を行っているとの要件は、国際的な事業活動の実体があり、いわゆるペーパーカンパニーでないこと等を規定することを想定しております。

 また、高度な知識または技術を有するとの要件は、特許権を保有していること、博士号保有者等の高度な能力を持つ人材を雇用すること等を確認する規定とすることを想定しております。

橘(慶)委員 ちょっと確認いたします。

 そうすると、ペーパーカンパニーでないということになると、例えば確実に従業員を幾つかの国に雇用されているというようなことになるんでしょうか。それから、博士号の人材ということであれば、何人ぐらいは置いておけ、こういうことになるんでしょうか。数値は具体的にはいいんですけれども、考え方を確認させてください。

厚木政府参考人 まさしく先生御指摘のとおりでございまして、まず、ペーパーカンパニーでないことというのは、その実体を確認していくということと、そのほかにも、各国において、各国の企業との提携なり共同開発等を行っているというような実体を確認したいと思っておりますし、それから、博士号等保有者の高度な能力を持つ人材を雇用するというのは、先生おっしゃるとおり、人数はあれにしても、そういった人材について確認したいということでございます。

橘(慶)委員 この辺は恐らく、やはり租税特別措置等もあるので、かなりきちっとした形で確認をしていく、縛っていくということだと思っております。

 今お話のあった特定多国籍企業が展開する研究開発事業と統括事業、この二つの事業について、今回、支援措置が設けられるわけであります。そこで、この研究開発事業、統括事業についてもまた要件があるわけでありまして、今回、この要件というのは、これは私はある意味で大変評価するんですが、新たな事業の創出、要するに日本で新たな事業が創出される、ビジネスが創出されるんだということ、そしてまた、就業の機会、要は雇用がふえるんだ、就業の機会を増大する、こういう事業創出要件と就業の機会の増大要件というものがまた課せられるわけであります。

 この内容について、具体的にどのように主務省令で定められる予定であるのか、お考え方をお伺いいたします。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の研究開発事業の要件となる、新たな事業の創出及び就業の機会の増大をもたらすことが見込まれるという基準につきましては、例えば、年間一億円以上の試験研究費を支出することや、研究開発事業の内容に新規性や高度性があること等を規定することを想定しております。

 また、統括事業につきましては、例えば、資本金が一億円以上の会社を設立することや、五年目終了時点までに五億円以上の追加投資を行うこと等を規定することを想定しております。

橘(慶)委員 済みません、審議なのでお許しいただいて、確認ですが、就業の機会の方については今お答えがなかったように思いますが、就業の機会の増大というところについてはどのようなことをお考えになっているんでしょうか。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 別のところで、研究開発事業計画及び統括事業計画、それぞれについて記載事項が定められておりまして、それにつきまして、認定の条件を定める際に、従業員の数が主務省令で定める数以上であることというところで就業についてはチェックすることにしております。

橘(慶)委員 そこについては後でまたお伺いするとして、余り法文の、国語の話だけじゃないようになるべく質問していかなきゃいけないと思います。

 今お話のありましたような、グローバル企業の研究開発あるいは統括事業のオフィスといったものについて、では、具体的に、最近我が国で、そういうもので外国からやってきた、こういうのはよかったねという実例、そういうものをこれから応援したいということになるわけですが、あるいは戻ってきたねというのでもいいんでしょうけれども、そういうことについて、実例的にこんなものだよというのを少しお示しいただいたら幸いです。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の特定多国籍企業の要件に該当するかということになりますと、個別具体の計画を踏まえて認定する必要があるのでなかなかお答えするのが難しいんですけれども、例えばアジア拠点化立地補助金の方で見ますと、研究開発拠点としては、米国のヘルスケア関連産業でございますスリーエムヘルスケア社、それから統括拠点としては、フランスの製薬会社でありますサノフィ・アベンティス社等を採択したところでございます。

橘(慶)委員 そんな意味では、介護分野であったり、日本は化粧品等も強いんですが、そういった分野であったり、やはり日本ということの魅力の中で来られる企業もいろいろあるんだろう、そういうものを応援したいということはこれで理解をするわけであります。

 そして次は、もう少しこういう審議を続けて申しわけないんですが、ややこしくなってまいりますので、一応、委員のお手元には、あえて法案の該当の部分はコピーをして資料でおつけしました。

 今お話のあった研究開発事業あるいは統括事業については、それぞれ計画を出していただいて、その計画が言ってみれば主務大臣の認める要件に適合するものを応援する、こういう仕掛けになっているわけであります。

 それで、この計画にはどういうことを盛り込むかということがお手元の第四条にいろいろと書いてあるわけですが、私、これを見せていただきながら、大体、お気持ちということでは、今ほどお聞きしているように、やはり雇用ということは非常に重視するなというのは伝わってくるんですけれども、例えばこの第四条第二項第二号というところで、「研究開発事業に常時使用する従業員の数その他従業員に関し主務省令で定める事項」、後の方が「主務省令で定める事項」となっておりますが、その数以外のことでどのようなことを定められるのか、そしてそれはどういう狙いがあるのか、審議ですから、明らかにしていただきたいと思います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のございました法律第四条第二項第二号では、「従業員に関し主務省令で定める事項」、数以外の部分についてでございますけれども、これにつきましては、今後詳細を検討するわけですけれども、グループ企業から本法案の支援対象となる子会社に派遣される研究者の人数及び派遣期間等に関する事項について規定することを想定しております。

橘(慶)委員 質問の方は、具体的内容及びその狙いというふうに申し上げましたが、そうすると、そういった研究者の数と派遣期間ということはやはり何か狙いがあるんだろうと思うんですが、いかがでしょうか。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の目的、狙いといたしましては、海外から我が国に新たな人材、技術というのを呼び込むというところに狙いがございますので、こうした研究開発拠点につきましては、本社から一定数の研究者が我が国に来て、できれば日本の企業と共同研究をしてもらうとか、そういうことによって我が国の技術の革新性を高めていくというところに狙いがございますので、そういったことを狙った規定でございます。

橘(慶)委員 そんな意味では、日本人を雇用するということだけではなくて、海外からそういう優秀な技術者も来ていただいて、日本の皆さんとある意味でコラボレーションすることによって、また一面、日本の言ってみれば能力が高まっていくということを狙う、だから、派遣期間についても、余り短いと困るので、やはりある程度、日本の食事をしてもらって、日本のお酒を飲んでもらって一緒に取り組んでほしい、こういう狙いがあるということはこれで理解をするわけであります。

 そして、今度は、計画に対して認定基準というものが定まっておりまして、これはきょう最後のここでお伺いしたいことにつながっていくんですが、認定基準の承認の場合は、事前にお伺いしていますと、普通は大体、基本方針に照らして適切なものということで一、二行で終わるんだけれども、今回はあえていろいろなことをしっかり盛り込んだというのが事前の事務方からの御説明でありました。

 その中で、特に、今度は三項の第二号で、今の従業員の部分ですね、「従業員の数が主務省令で定める数以上であることその他従業員に関し主務省令で定める要件に適合するものであること。」ということで、かなりここは詳しくまとめていただいているわけであります。あるいは三項の三号では、実施期間というものを「主務省令で定める期間であること。」ということで、ある程度の期間をとることを予測させるものがあるわけであります。

 この辺の具体的内容及びその狙いについて、お伺いいたします。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、第四条第三項第二号における「従業員の数が主務省令で定める数以上であること」及び「その他従業員に関し主務省令で定める要件」の具体的内容とその狙いということでございます。

 第二号に規定する「従業員の数が主務省令で定める数以上であること」につきましては、例えば、初年度十人以上雇用し、五年目終了時点までに十五人以上を追加的に雇用することを規定することを想定しております。

 また、「その他従業員に関し主務省令で定める要件」につきましては、グループ企業から本法案の支援対象となる子会社に派遣される研究者を、支援対象となる子会社で六カ月以上受け入れようとするものであることや、外国人の在留に関し十分な管理体制を整備することを規定することを想定しております。

 それから、第三号における「実施期間が主務省令で定める期間であること。」の具体的内容でございますけれども、それにつきましては、三年から五年の期間、事業を行うことを規定することを想定しております。

 この狙いといたしましては、これにより、認定後すぐに撤退するような企業を支援対象から排し、グローバル企業の研究開発事業及び統括事業の促進による新事業の創出や就業機会の増大を担保することを狙いとするものでございます。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 そして、実は、次の条文はつけなかったんですが、これとほとんど同じ条文、第六条というのがあります。今度は「統括事業計画の認定」、そういう項目があって、大体同じ条文が並んでくるわけであります。

 そこで、済みません、局長さん、ずっと答弁いただいて申しわけないんですが、今ほどお伺いしてきた、例えば、その計画に載せる従業員の数その他従業員に関し主務省令で定める事項、あるいは計画の認定要件になります従業員の数が主務省令で定める数以上、あるいは従業員に関し主務省令で定める要件、また実施期間、こういったものがコピーみたいに統括事業計画の方もあるんですが、そこは今のお話と同じであるのか、あるいは多少事業の性質が違うので異なるのか、その辺のことを教えていただきたいと思います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 第六条第三項第三号の実施期間につきましては、研究開発事業計画と統括事業計画で共通の内容として、三年から五年間と規定することを想定しております。

 他方、従業員に関する事項につきましては、外国人の在留に関し十分な管理体制を有することということについては研究開発事業計画と統括事業計画で共通しておりますけれども、従業員の数については研究開発事業と統括事業で書き分けることを想定しております。

 これは具体的には、経済産業省が実施いたしましたアンケート調査によりますと、研究開発拠点は統括拠点よりも従業員数が多くなっておりますので、こうした雇用実態を踏まえまして、研究開発事業計画では統括事業計画よりも多くの従業員を雇用することを要件として規定することを想定しております。

橘(慶)委員 そんな意味では、統括事業というと大きなビルのワンフロアぐらいのオフィスかと思えば、そればかりではなくて、ある程度小ぶりなものでも、日本にレプレゼンタティブを置くというようなことでもそれは認める、こういうことで解釈させていただくわけであります。

 以上、大変細かいことをいろいろ聞きましたが、私、何を思っているかといいますと、大臣、こうやってみると、私が今言ったのは学校の試験みたいな話で、主務省令というところには何が書いてありますかと、何かカードをめくっているようなお話をさせていただきました。私は、それが本当にいいことなのかなと。

 というのは、もちろん、全て数字を出せとかそういうことではないんですが、例えばどういう狙いであるのか、あるいはどういうことを考えているのかということについて、形容詞的なことをここに入れることもできるわけですね。

 例えば、ある程度の期間、日本に定着してもらうことが見込まれるということでの実施期間で主務省令に委任するとか、あるいは今お話があった、ある程度の規模の会社ということでそういうものを委任するとか。要は、これはある意味で国会と行政との関係になるわけですが、どこまで委任をし、どういうことを委任したのかということがわからないというのはいいのかな、こういう問題意識であります。

 そこで、ここは全くそういう意味で自由答弁で用意されているわけですけれども、大臣もいろいろな御経験をされているわけでありまして、いろいろな立場も踏まれた中で、そういうところについて、この法案を見て、ああ、そうか、そういう狙いなのかとか、ああ、そうか、そういうことを委任しているのかともう少しわかるようにしてもいいんじゃないかなというのが私の個人的な考えなのですが、大臣の御見解をお伺いいたします。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、できるだけ法文を見てわかりやすくということは立法政策上重要なことだと思います。今局長から答弁させていただいた各答弁は、個々にお尋ねいただくと今のようなお答えになるかと思いますが、全体の法律案、全体を見ていただければ御理解いただける方向性とか目的とかということは明確に示されているのかなと私自身は思っております。

 そうしたことの中で、特に国際的な拠点をつくっていくということでございますので、国内的にはもとより、国際的に非常に事態の流動性が大きい、変化が激しいという状況の中にありますので、全体の法律として、省令委任の許される範囲の中でできるだけ柔軟性を持たせて事態の変化に対応させていただくということで、省令に委任をさせていただいているということかなと思っております。

 もしこれを国会を通していただければ、多くの方に活用いただく、活用いただくに当たっては、省令の中身ももちろんでありますが、できるだけわかりやすく、何を目的としてどういう要件なのかということをお伝えできるように、今の御質問の趣旨も踏まえて対応してまいりたいと思っております。

橘(慶)委員 やはり枝野大臣らしい、爽やかに答弁されてしまって、もう少しひっかかりがあるとうれしかったな、残念だなと思っております。

 実は、この後に石油の法案等もまた審議する。例えば、こういうところでは二百メートルという言葉をとってみたりということがありまして、逆に言うと、昔の立法ではもう少し、例えば何とかを超えない範囲とか、そういう何かある程度限定的なものもつけていた時期もあったんじゃないか。

 それがだんだん非常にさっぱりした形になってまいりますと、法文を読むと、何か本当にクイズ形式のようになっていまして、もう少し法文というのは味があってもいいんじゃないかというのは、ちょっと経済産業委員会の番地からは外れるのかもしれませんが、そういう思いがあるということで、更問いまではいたしませんが、せっかく法制局にも来ていただいていますので、そういったことを含めて、大体こういう省令委任の考え方、最近どのようになっているのか、一応確認だけさせていただきたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 法律におきまして、省令に委任することができる範囲等につきましては、憲法第四十一条が、国会は国の唯一の立法機関である、こういうふうに定めておりますことから、この憲法の趣旨を否定し、いわば実質的に国会の立法権、これを没却するような抽象的、包括的な委任は許されない。省令への委任につきましては、例えば、手続的な事項ですとか技術的な事項、あるいは事態の推移に応じまして臨機に措置しなければならない事項、こういうものにつきまして、個別的、具体的な委任に限られるべきものというふうに解されているところでございまして、御指摘の今回の法案につきましても、こうした考え方にのっとりまして省令に対して委任をするという規定ぶりになっているところでございます。

橘(慶)委員 意のあるところをぜひ、大臣も専門家でございますから、またいろいろ見ていただいて、少し味のある法案にしたらということも言っていただければうれしいなと思います。

 これくらいにしまして、今度は効果に入らせていただきます。

 この法案について、言ってみれば、特典といいますか、計画を認定されれば幾つかの措置がなされるわけですが、その効果はどれくらいあるのか、どのようにお考えになっているかということについて確認をいたします。

 まず、法八条というところで、外国投資家が対内直接投資を行える時期というものにつきまして、普通は届け出をしてから三十日間は投資ができない、そういうたてつけになっているわけですが、この計画で認定されますと、三十日間が二週間ということで半分に短縮をされる、こういうことになっております。

 これは、どういう効果があって、どれくらい期待できるのか、このことについてまずお伺いいたします。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生が御指摘のように、法定審査期間、届け出後三十日の間は投資を行ってはならないとしているところを、今回の特例措置は、認定事業を行う会社の株式または持ち分を外国投資家が取得する場合に、投資の届け出の法定審査期間を三十日から二週間へ短縮しております。

 法律上の投資を行ってはならない期間が短縮されることにより、会社設立までに要する期間が確実に短縮されるということが明らかになりますので、認定計画に基づく事業の円滑な実施に一定の効果が見込まれると考えております。

橘(慶)委員 続けて二点目でありますけれども、この計画を認定された中小企業者における研究開発事業に関しては、特許料の軽減ということを規定されているわけであります。

 これは、やはり国際的な競争力の問題ですから、海外でも同種の措置がなされているのか、この効果も含めてお伺いをいたします。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘がございましたとおり、この法十条におきまして、認定研究開発事業計画に従って行われる中小企業の研究開発事業の成果につきまして、特許審査請求料及び一年目から十年目までの特許料につき軽減する措置が規定されてございます。

 海外におきましては、中小企業に対する一般的な措置としてこのような減免措置をとっておる一部の国がございます。米国、フランス、韓国において一般的な措置は存在をしてございます。しかしながら、我が国で今度お願いをしておりますように、認定を受けた計画に従って行われる中小企業の研究開発事業の成果の活用のために特に特別の措置を講じているという例は、諸外国にはないものと承知をしております。

 その意味で、この法律をお通しいただきますと、中小企業が行います研究開発並びにその成果の利用ということにつきまして、この減免措置を通じて、所要の効果が上がることを期待しているところでございます。

橘(慶)委員 そして、三点目は租税特別措置でありまして、今国全体の企業の法人税についても手当てされたところでありますが、この法案でいえば、計画を認定された法人について、法人税については、実効税率でいうと、大体、五年間にわたって約七、八%の税率の引き下げになる、言ってみれば、今までの租税の体系をさらに深掘りする、これが多分、インパクトとして一番この法律の中では大きい部分かと思いますが、これも相対的なものではありましょうけれども、どれくらい競争面で効果が上がるというような、どういう効果ということで認識されているのか、お伺いいたします。

厚木政府参考人 お答えいたします。

 先生の方から、その効果の具体的な数字ということでございますけれども、我々としてもなかなかそれについては推計できていないところでございますけれども、いずれにしても、先ほど先生が御指摘のように、グローバル企業が立地先を選定する要因は複合的でございます。コストや事業環境等を総合的に評価し、判断すると考えております。

 ただ、その中でも、今回の本法案において、グローバル企業の高付加価値拠点の立地を促進していくために、法人税負担の軽減ということで、五年間、二〇%の所得控除により法人実効税率が約三八%から約三一%に引き下げられるということでございますので、こうした措置を行うこと、また、これに加えまして、立地補助金や総合特区法に基づく規制の特例措置、それから我が国が有する質の高い技術や研究開発環境といった強みとのパッケージでグローバル企業に提示していくことが重要だと考えております。

橘(慶)委員 そんな意味では、この法案もある意味で一つの核にしながら、いろいろな施策をパッケージにということになると思うので、そこのマーケティングの話に最後は行きたいわけですが、その前に、そういう経済面だけではなくて、やはり企業は人なり、研究開発も人なりであります。

 そういう中で、よく我が国では、日本の若い方々の国内志向の強まりというようなことが指摘されたり、あるいは今グローバルに展開する企業では、かなり今は外国の、言ってみればアジアの方々を採用されるような日系の企業もふえているという話もあったりするわけですが、そんな意味では、この法の効果を真に上げていくためには、最初にもちょっと触れました人材養成面とか言語教育面とか、なかなか経済産業省さんの番地ではないのかもしれませんが、そういったものも含めて、総合的な施策というものが必要になるという気がするわけですが、働きかけということも含めて御認識を伺います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、その人材養成面、それから言語教育面での施策というものも大変重要でございまして、外国人にとってよりよい事業環境、生活環境の整備等を盛り込みましたアジア拠点化・対日投資促進プログラムにおいても、このことについて取り上げているところでございます。

 本プログラムの中では、グローバル人材の育成を図るための体制整備等を推進することとしておりまして、具体的には、関係閣僚で構成されるグローバル人材育成推進会議を開催し、グローバル人材育成に向けた、政府一丸となった取り組みを昨年六月にまとめたところでございます。これに基づきまして、現在、産業界、大学、関係省庁等と連携し、国際的に活躍できるグローバル人材の育成を推進しているところでございます。

 今後とも、関係省庁とも連携をとりながら、本プログラムに基づくグローバル人材育成に向けた取り組みを着実に推進してまいりたいと思っております。

橘(慶)委員 ぜひ、そういったことが具体的な実を結ぶことになるようにしていただきたいと思いますし、そういうことをまた機会があったらお伺いもしていきたいと思います。

 そして、そういった施策のパッケージができました、このパッケージをアタッシュケースに詰めて、いよいよこれを売って歩くというか、マーケティングという段階だと思います。このマーケティングをどういうふうに進めて、より多国籍企業に日本のよさというか立地ということをアプローチしていくお考えであるのか、その姿勢についてお伺いをいたします。

北神大臣政務官 おっしゃるとおり、この国会で通していただいても自動的に企業が来るわけではないので、積極的に誘致活動をしていかないといけないというふうに思っています。

 これまで、ジェトロを通じて、これは大体年間百件ぐらいの実績が平均的にあるんですが、ジェトロが誘致活動に取り組んできた。

 また、平成二十二年度の補正予算によって、委託事業として、いわゆる外国の企業で、日本に新規投資をしそうな企業に対して、大体六百社ぐらいリストアップをしまして、そのうち三十社ぐらいに具体的な投資計画の策定の支援などもやってきました。

 今後につきましては、引き続き、ジェトロとかあるいは地方公共団体、これは以前、藤田大助委員からも指摘があったんですが、東京とかの都会だけじゃなくて、やはり田舎の方にも来ていただいて地方の活力にもつなげていきたい、そういうことで、地方公共団体とも連携をして積極的に誘致活動をしていきたいというふうに思っています。

橘(慶)委員 そして、このマーケティングでありますが、ターゲティングということもよく言われるわけであります。アジアが伸びている、あるいは欧米企業はいろいろな実績があって世界的に展開している、いろいろあると思うんです。あるいは、日本企業が出ていくのをとめるということもあるでしょう。

 実際、ターゲティングといいますか、その辺はどのようにお考えになっているのか、言ってみれば、どういう戦略でこの日本のアジア拠点化ということを考えていかれるのか、そこをお伺いしたいと思います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案は、グローバル企業の研究開発拠点や統括拠点を我が国に呼び込むということに狙いがある。そういう意味では、そういったところにターゲットを当ててやっていくということでございます。欧米企業とかアジア企業とかいうような特定の地域を念頭にターゲットにしてということではなくて、ある意味で、そういった高付加価値な機能をターゲットとして支援措置を講じていくということだと理解しております。

橘(慶)委員 そこは言ってみれば、一面、総花的という感じにもなるんですが、ここはもしかしたら、後から質問する国際戦略総合特区で、各地域に指定したところが、少しは地理的なことも含めて色合いが出てくるのかな、こういうふうにも理解したいと思います。本来は、やはりある程度、的というのは本当は絞られるべきじゃないかなという感じもいたします。そこは、戦略ですから、よくまたお考えになって進めていただきたいと思います。

 そこで、海外企業の対日直接投資ということでありますけれども、これは言ってみれば、日本にとっては黒船だという感じもしないわけではないんですが、先ほど途中で、今回の要件、そこの効果の中でも出てきたように、海外から日本へ来ていただくということは、決して日本の仕事をとるということではなくて、日本企業といろいろお互い刺激し合って、逆にそこから新しいものを生み出すとか、そういった開かれた日本ということが逆にまた国内企業の成長ということにつながる、こういうことを言う見解もあるわけであります。

 この辺、経済産業省さんとしてどうお考えになっているのか、確認をいたします。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 まさしく先生御指摘のとおりでございまして、海外企業の対日直接投資は国内企業にとってもさまざまなメリットをもたらすというふうに考えております。

 具体的には、グローバル企業による研究開発事業の促進により、新規性、革新性の高い研究開発が我が国で新たに行われ、その成果を活用した新たな事業の創出が期待されるというようなこと、それから、グローバル企業と我が国企業や大学等の研究機関との共同開発や技術提携、販売提携、部品、素材供給などにより、我が国企業にも革新的な技術の導入や新製品の開発が期待されるというようなこと、それから、グローバル企業による統括事業の促進により、我が国に新たな経営ノウハウやビジネスモデルがもたらされて、我が国企業の生産性向上や海外販路開拓につながっていくということ、さらには、高度な研究者、経営者といった高度人材が集結するということですので、我が国におけるグローバル人材の育成にも貢献するのではないかということを考えております。

橘(慶)委員 一面、そういう交流ということも非常に大事なんだと思うわけです。

 そして、今回のこの経済産業省さんの法案というのは、言ってみれば、地域を限定しない、日本あまねく、そこでそういう投資計画があればそれを応援しようというものでありますが、もう一つ、昨年の通常国会、同時に内閣府から提案され、成立した国際戦略総合特区というものがあったわけであります。これは逆に、地域を絞って、ある地域においてそこを国際的に伸ばしていくんだ、こういうことがあったわけです。

 この二つの法案はもともと一緒に効果を発揮するものなのか、あるいは、私どもの党内では、一緒にまとめてもいいんじゃないか、こんな議論まであったわけですけれども、もし、きょうこの法案が成立するとすれば、どのような連携を図られるのか、お伺いをいたします。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案によるグローバル企業の高付加価値拠点の立地促進ということと、国際戦略総合特区制度を規定している総合特区法による地域ごとの環境整備というのをあわせて講じて、いわゆるパッケージとして相乗効果を発揮することが重要だというふうに考えております。

 このため、本法案の認定を受けたグローバル企業が総合特区法に基づく国際戦略総合特区内に立地した場合には、原則として、本法案及び総合特区法に基づく支援措置のメリットをともに受けることができるということでございます。

 また、平成二十三年十二月に策定したアジア拠点化・対日投資促進プログラムに基づいて、総合特区制度との有機的な連携に取り組む所存でございます。

 具体的には、経済産業省といたしましては、関係省庁、地方公共団体等と密接に連携、情報交換を行うほか、本法案及び総合特区法に基づく各種支援措置につき、ジェトロにおいて一体的に情報を提供する等、この国際戦略総合特区制度との連携を密接に行っていきたいというふうに考えております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 先行していますこの国際戦略総合特区は、既に七カ所というふうに伺っております。

 そこで、質問は二つに分けていましたがまとめましてお答えをいただければと思うんですが、今七つということで、その展開の考え方、そして、その中で九州北部とか中京圏、これは指定されているわけですが、それぞれやはり対象となる国あるいは業種の面で特色も出てくるように思うわけであります。この辺、どういうふうに進めていくのか、これは内閣の地域活性化統合事務局の方からお答えをいただきたいと思います。

枝広政府参考人 お答えいたします。

 先生の最初の御質問でございますが、今後の特区の地域指定に当たっての考え方ということだと思います。

 この国際戦略総合特区につきましては、成長分野を中心に、我が国経済を牽引することが期待される産業の国際競争力の強化のため、国際レベルでの競争優位性を持ち得る地域を厳選する、こういう考え方に立っております。こうした考え方を踏まえまして、総合特区推進本部からの意見聴取を経て、内閣総理大臣が指定の可否について今後判断をしていくことになろうかと思います。

 それから、既に指定を受けております九州北部、中京圏などの国際戦略総合特区の特色についてのお尋ねがございました。

 九州北部につきましては、福岡県、福岡市、北九州市によるグリーンアジア国際戦略総合特区がございます。ここは、アジアの活力を取り込み、アジアとともに成長することを目指しまして、環境を軸にしたさまざまな産業の競争力を強化、結集していこう、こういう考え方で取り組もうとしてございます。

 また、中京圏につきましては、アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区というもので、アジア最大の航空宇宙産業クラスターの形成を目指しまして、材料を含む研究開発から設計開発、試験、製造、販売、保守管理までの一貫生産システムの構築等による競争力アップ等を図ろう、こういう地域における特色ある取り組みを目指しております。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 今七カ所指定されていまして、九州北部、中京圏、今お話しのような、少しいろいろな特色を出してやっていくということであります。

 実は、この中で、札幌、つくば、東京、川崎、横浜云々とありまして、仙台がまだ入っておりません。そんな意味では、そういうところもあと考えられるんじゃないかなと思っております。

 さて、大震災関連等で、若干幾つか最後にまとめて質問させていただきたいと思います。

 高原長官、二つお伺いしようと思いましたが一つにまとめまして。

 実は、きょう皆さんに、二枚目の方で、損害賠償の仮払い、本払いの支払い状況というのをつけさせていただきました。大分ペースが上がってきたといいますか、自主避難等のものも含めて本賠償がかなり進んできた。前のように、何件中何件というのはまた後で資料をいただければいいかと思います。

 ただ、こうなってきますと、やはり資金の流れもかなりスピードアップしてきているということでありまして、交付国債で五兆円の枠を持っておられまして、保険については一千二百億円先にお金を渡してあるわけですが、この五兆円でこれまでにどこまで手当てをし、今後どのようになっていくのかという見通しについて、長官、お願いいたします。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、原賠法に基づきます賠償の措置額は千二百億円でございますけれども、合わせまして七千八百三十六億円の資金交付がございました。賠償の支払いにつきましては、昨日、四月十七日現在で七千三百四十二億円となってございます。したがいまして、また近いうち、これは恐らく来週になりますけれども、来週にも二千億円強の追加の交付をさせていただくということになると思います。

 以上でございます。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 最初はゆっくり始まったんですが、それはやはり大事なことでありまして、被害を受けた方には当然どんどん交付しなきゃいけないんですが、そうなってくると、だんだんエネルギー特会での借り入れも膨らんでいくわけでありまして、それをまた電力会社みんなで払っていかなきゃいけない部分もあるわけであります。そんな意味で、電力会社の経営、いろいろなことがだんだん複層的に難しくなってくるのかな、こんなふうに今思っているわけで、またお伺いしたいと思います。

 それからTPPでありますけれども、前回この場に立たせていただいたときに、例のアメリカの自動車業界の軽自動車の規格についての意見については取り下げられたというお話であったわけですけれども、せんだって報道に接しますと、四月五日に内閣府の石田副大臣が訪米された際に、また、米国の通商代表部、USTRからは自動車ということがやはり出てきているような感じがあります。

 きょうは経済産業省さんでありますから、引き続き通商政策局長さんだと思いますが、なぜまだ引き続き説明事項になっているのか、その背景なり、聞いておられる範囲、どういうことが焦点なのかということで、わかる範囲でお答えをいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 四月五日の石田内閣府副大臣とマランティス米国次席通商代表との会談におきましては、自動車について、米国の議会それから利害関係者が強い関心を有している問題の一つであるということで説明がございましたが、米国政府から個別具体的な要求はなかったというふうに承知しております。

橘(慶)委員 この辺がやはりなかなかまだわからないところでありまして、自動車ということが本当にどうなっていくのか。私どもとしては、そういう情報をいただきながら、またこのTPPということについていろいろと考えていかなきゃいけないわけでありまして、またわかる情報については、その都度ぜひ出していただきたい、このように思います。

 多分最後になると思いますが、もし時間があったら、枝野大臣に、もう一度アジア拠点法に戻って、最後にお伺いしたいと思います。

 福井の大飯原発の再稼働の問題が出てまいりまして、四月、枝野大臣もこの間現地にも入られたわけでありますが、きょうはその再稼働の条件とかそのやりとりは聞きません。きょうお伺いしたいのは、ことしの夏の関西電力の需給見通しの問題でありまして、一昨年夏並みの気候を仮定すると、需要は三千九十五万キロワット、供給力は二千五百二十五万キロワット。五百七十万キロワットの不足ということで、これは政府からも出ているデータであります。

 そこで、大飯原発が、仮定の話、稼働する場合あるいは稼働しない場合、この二つに当然物事が分かれると思います。その二つの場合において、関西電力管内の皆さんへの節電要請はどの程度変わるのか、このことについて今の御見解を、北神政務官、お願いいたします。

北神大臣政務官 お答えします。

 稼働しない場合、これにつきましては、委員もおっしゃいましたけれども、三通り見通しをやっていまして、二〇一一年夏並み、去年の夏の想定でいけば、これは当然節電のあれも含めて計算をしているんですが、予備率がマイナス五・五%になる。そして、二〇一〇年、さっきおっしゃった猛暑であったんですが、それの想定でいけばマイナス一八・四%。過去五年平均でいけばマイナス一六・〇%。相当需給ギャップがあるということで、相当厳しい節電をお願いしないといけない。

 仮に、地元を初め、国民の一定の理解を得て第三号機、第四号機を再起動した場合でも、やはりまだ需給ギャップというのが残るということで、関西地区の皆さんには、この場合でもやはり節電をお願いしなければいけないというふうに思っております。

橘(慶)委員 なかなか厳しい状況ということで、例えば節電率とか、いろいろ要請の仕方が変わるかというところを本当はお伺いしたかったわけでありますが、かなり厳しい状況ということは一応頭には置きながら、また見ていきたいと思っております。

 一番最後に、ちょっとだけ時間が残りました、何を聞こうかと思っていたかといいますと、自由答弁ですので、アジア拠点ということで、たしか大臣は東北にもお住まいになったことがあったと思います。先ほど仙台というのがまだなっていないというお話をしましたが、仙台はいかがでしょうか、そういう国際拠点、アジア拠点としての可能性ということについて。

 これは自由答弁です。どうぞお願いします。

枝野国務大臣 具体的特区とかということと絡めてしまいますとなかなかお答えしにくいんですが、仙台は、東北の中心都市であると同時に、特に技術系の、私は文科系なんですが、技術系の立派な大学がありますので、さまざまな意味でのアジアの拠点になり得るところだと思いますし、また、残念な地震と津波でございましたけれども、そのことによって仙台の認知度は国際社会に高まっている。今度、実は、ASEANの通商大臣に日本にお集まりいただきますが、それも東京にだけではなくて、まず仙台に入っていただいて、仙台の復興状況などを見ていただこうということもやっております。

 そうした意味では、非常に期待が持てる地域だというふうに思っております。

橘(慶)委員 きょうはどうもありがとうございました。

中山委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、アジア拠点化推進法案に関連して、今後の日本の経済対策についてもお伺いをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、これまでの対日投資促進の取り組みについて、大臣にお伺いをしたいと思います。

 自公政権時代に、二〇一〇年までに対日投資残高の対GDP比を五%とする目標を設定し、積極的に対日投資の促進に取り組んできたところでございます。しかし、これまで着実に増加していた対日直接投資残高が、二〇〇九年、二〇一〇年と減少して、二〇一〇年の対GDP比は三・七%と、二〇〇六年に設定された二〇一〇年までに対日直接投資残高を倍増してGDP比五%程度とするという新目標は達成できずに、諸外国と比較してもいまだ低い水準となっているわけであります。

 新成長戦略においても、二〇二〇年までに実現すべき成果目標として、高付加価値拠点数の増加、また、外資系企業による雇用倍増、対日直接投資倍増を掲げておられますが、二〇〇九年以降、政府は対日直接投資の促進にどのように取り組んできたのか、また、二〇〇九年以降の政府の対日投資促進に向けた取り組みが十分であったのかと私は疑問を持ちますが、新たな目標はどのように達成していくつもりなのか、大臣の御見解をお伺いさせていただきます。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、対日直接投資が減ってきてしまいました。シンガポールや韓国など、他の地域の誘致支援策の強化であったり、それから、アジアの新興国の経済成長によって我が国市場の相対的な地位が縮小しているということがございます。また、個別具体的に見ますと、外資系企業の我が国への立地が、二〇〇八年から方向性が、やはりトレンドが変わってきている。リーマン・ショック等の影響などもあったのかなというふうに思ってきております。

 ただ、まさにこうした状況を変えないといけないということで、二〇一〇年六月に策定された新成長戦略において、アジア拠点化の推進を改めて位置づけたところでございます。これに基づいて、研究開発拠点や統括拠点の初期投資を補助する立地補助金を措置する一方で、今御審議いただいている法案を国会に御審議をお願いして、アジアの拠点化を資金面と法制面両面から推進していこうというところでございます。

 また、さらに昨年十二月、アジア拠点化・対日投資促進プログラムを策定いたしまして、高付加価値拠点の増加や外資系企業による雇用者数倍増等の目標を掲げております。

 今申し上げましたとおり、既に行っている財政的補助金によるインセンティブとこの法案によるインセンティブ、それから、先ほど橘先生からの御議論でもございましたグローバル人材の問題を初めとして、海外企業の事業環境あるいはさらには生活環境の整備等、関係省庁が連携しながら包括的に取り組んでいるところでございます。

 この法案を成立させていただきましたら、これを一つの区切りとして、さらに強力にこうした施策を推進してまいりたいと思っております。

江田(康)委員 対日投資促進に向けたアジア拠点化推進法案の位置づけについても今大臣が申されたところでございますが、まず幾つか、このグローバル企業年間三十社の経済効果とその目標について、お伺いをさせていただきたいと思うんです。

 アジア拠点化の推進に向けまして、今後、年間三十社、グローバル企業の高付加価値拠点を誘致するということでございますけれども、政府は、その経済効果については約八百七十五億円、そして雇用効果は六千四百人と試算をしておられます。一方で、我が国の外資系企業の新規立地社数と撤退社数の推移を見てみますと、二〇〇四年度には新規参入企業社数が百三十九社、撤退企業社数が百六社であったところが、二〇〇九年度には新規参入八十二社に対して撤退企業数は百六十四社と、撤退が大きく上回っているような状況にございます。

 年間三十社という目標は、経済効果から見ても撤退企業の推移から見ても、これは少な過ぎるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました撤退企業数につきましては、年間三十社の目標が対象としております研究開発拠点と統括拠点に限らず、ほかの機能を持つ企業も含めまして、日本から撤退した外資系企業全体の数字ということでございます。

 経済産業省といたしましては、我が国やアジア新興国における研究開発拠点等の直近の新規立地動向等を踏まえまして、三十社との誘致目標を掲げております。ちなみに、二〇〇九年度の新規参入企業数を見ますと、研究開発拠点では十三社、統括拠点ではゼロ社ということになります。

 これにつきましては、グローバル企業の研究開発拠点や統括拠点の誘致により、高度人材の雇用、技術革新、経営の効率化等の波及効果がもたらされることを踏まえまして、この対象をこれら高付加価値拠点に限定して目標を設定したものでございます。

江田(康)委員 高付加価値拠点に限定してこういう目標が立てられているということでございますが、やはり対日直接投資の促進につながる、そういう効果があるかどうかということでございます。

 この法案がそのように対応するものであるということでございますけれども、幾つかこの法律案の効果について、さらに深掘りしてお伺いをさせていただきます。

 まずは、法人実効税率の引き下げについてお伺いをさせていただきます。

 この法律案の支援措置の柱、これは法人実効税率を七%程度引き下げることにあるかと思います。現行が三八%でございますので、これを最終的には二九%へと引き下げていくということでございます。

 他方で、我が国から企業が流出しているシンガポールでは、そもそも法人税は一七%なんですね。統括拠点や技術革新企業については、さらにこれを〇%から一〇%まで引き下げて、人材育成等の補助金も支給する、さまざまなインセンティブを設けております。韓国でも、二二%の基本税率を、ハイテクなど戦略分野の外資系企業に対しては、五年間は全額、その後の二年間は五〇%免除する制度を設けています。また、日本と同様に法人税率が高い水準にあるアメリカも、現在、減税の方針をオバマ大統領は打ち出している、こういうような状況ですよね。

 本法律案による優遇策を取り入れたとしても、このようなライバル国と比べて、税制面からはなお不利な状況であることに変わりはないと思われますが、グローバル企業の誘致のためにはもっと大胆な措置が必要かと考えるわけであります。例えば、五年間は全額免除していくとか、その後二年間は五〇%免除していく、そういうようなことも大胆に考えることはできるわけでございますけれども、ここまで大胆にはできない理由もあろうかと思います。

 それらを含めて、もっと大胆な支援措置というものが必要であると思うんですが、大臣の見解をお伺いいたします。

枝野国務大臣 グローバル企業の立地に当たって企業側が考慮する要素として、法人税の実効税率というのは一つの要素であるのは間違いないと思います。したがいまして、今回の法案でも、この点についての特例措置を設けてということになります。

 他の競争相手と想定される国々の状況との比較の中で、さらに大胆なという御指摘があり得るということは十分承知をしております。ただ一方で、現実的にまだ国際協調までなかなかいっておりませんが、各国が減税競争をやり続けていって、それぞれの国が本当に成り立っていくのかというような問題点も考えなければなりません。

 それからもう一つは、もちろん実効税率も要素ではありますが、特に今、アジアの伸び行く新興国であったりとか、アジアの拠点として歴史的にもそういう立場を持っているシンガポール、香港等と比較をしたときに、我が国に立地をして、そこで例えば拠点としての活動をする、あるいは研究開発をすることで利益がちゃんと上がるのか。つまり、いい研究をしたり、拠点としての成果が上がるのか。利益が上がらなければ、そもそも法人税の前の問題です。

 そういった意味で、きちっと、我が国で拠点を置いていただければ利益が上がりますよ、もしかすると若干他の国より法人税率が高いかもしれないけれども、それでも我が国の方が利益が上がりますよ、やはりこういう環境をつくっていくことも同時に重要なことではないか。

 そうした観点からは、立地の補助金もございますが、先ほど来議論になっている国際戦略総合特区における規制の問題等、こういったところをトータルでしっかりと売り込みをして、立地を引っ張ってくるという努力が必要なのではないかというふうに思っております。

江田(康)委員 今大臣がおっしゃいましたように、法人税の実効税率の引き下げは一つであろう、そのほかに、やはり外資系企業が利益を上げる、これができる環境が日本に整っていることということでございました。その一つ、今最後に申されましたが、立地補助金とか総合特区制度等についてお伺いをさせていただきます。

 政府が、法人税率の引き下げのほかに、今言いました立地補助金、総合特区制度、国際戦略特区ですね、これを柱として、このアジア拠点化施策を位置づけられている。

 そこで、立地補助金についてまずお伺いしたいんですけれども、日本へ研究開発拠点、統括拠点を設立する外資系企業に対して、拠点整備に係る費用の一部を補助するアジア拠点化立地推進事業費補助金、それと、国内企業向けの国内立地推進事業費補助金、これが外国企業の進出に活用されると考えられますが、この二つの補助金の違い、これについてどうなのか、また、これは併用が可能なのか、お答えいただきたいと思うんです。グローバル企業の誘致のためにこれらがどの程度の効果を有していると考えているのかをお伺いしたいと思います。

 また、この総合特区制度、国際戦略特区でございますが、これは全国に七カ所決まったわけでございますけれども、規制のほか、税制面などの優遇支援措置により、外国企業が日本進出することを誘引するためにも大変有用であるとして私も支援してきたわけでございますが、外国企業の日本進出においてはどの程度の効果を期待しているのか、ここについて改めてお伺いをしたいと思います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、アジア拠点化立地推進事業費補助金と国内立地推進事業費補助金との差異等についてでございます。

 アジア拠点化立地推進事業費補助金は、グローバル企業の我が国への呼び込みを目的として、日本国内における研究開発拠点または統括拠点を支援対象としているものでございますが、国内立地推進事業費補助金は、サプライチェーンの中核的な部品、素材分野と高付加価値の成長分野における生産拠点を支援対象としているということで、支援対象が異なりますので、その意味では併用はできないということになります。

 また、アジア拠点化立地推進補助金につきましては、グローバル企業を支援対象としておりますので、外国親企業による英語申請を可能としているところでございます。

 各事業者が投資形態に応じて適切な補助金の適用を選択することにより、効果的にグローバル企業の誘致が図られる、その一定の効果があるというふうに考えております。

 それから、総合特区制度についての御質問がございました。

 総合特区制度につきましては、特定の地域において規制の特例や各種の支援措置を集中的に講ずるものでございまして、外国企業にとっても魅力のある、当該地域に進出するメリットを感じるものだと考えております。

 我が国経済の持続的な成長の観点からは、このアジア拠点化推進法案によるグローバル企業の高付加価値拠点の立地促進ということと、総合特区法による地域ごとの環境整備というものをあわせて講じて、相乗効果を発揮することが重要でございます。

 経済産業省といたしましては、関係省庁、地方公共団体等と密接に連携して、事業者の手続面での利便性を向上させつつ、つまり、ワンストップで対応できるようにするということ等でございますが、アジア拠点化推進法案及び総合特区法等の各種支援措置をパッケージで提示いたしまして、グローバル企業の高付加価値拠点を誘致することによって我が国経済を活性化してまいりたいというふうに考えております。

 ちなみに、韓国でも、こうした高度な技術を伴う事業に支援措置を講じる制度があるとともに、経済自由区域等を指定し、その中で支援措置を講じる制度が存在していると承知しております。

江田(康)委員 この国際戦略特区では、私も九州でございますので、グリーンアジア国際戦略総合特区、これは福岡県、北九州市、福岡市ということで、環境を軸とした産業の競争力を強化する、そういう特区として進めていくというものでありまして、大変に期待をしております。また、政府としてもしっかりと支援をしていただきたいと思っております。

 今おっしゃいましたように、パッケージとして支援をしていくということが本法律案の趣旨であるし、また、グローバル企業の誘致のためにも、これがインセンティブとなるということを考えておられるということでお伺いをいたしました。

 しかし、その一方で、先ほど申しましたように、法人税の実効税率の引き下げの効果は、他国、ライバル国と比べてやはり見劣りするものであることは間違いないわけで、それらを立地補助金や総合特区制度でカバーしていくということでありますけれども、やはり我が国としてもっと大胆に措置をとらなければ、この目標、三十社ということではございますけれども、さらに日本経済の発展に寄与する、そういうアジア拠点化を進める政策としてはいかがであろうかというふうに心配するわけでございます。

 これら総合的な効果というものを今の段階でどのように評価されているのか、大臣のその決意についてもお伺いをしたいと思います。

枝野国務大臣 この法律案を成立させていただいたときの直接の効果の見通しとしては年間三十社の誘致ということでございますが、我が国に拠点を海外から誘致する全体としては、これでは足りないというのは御指摘のとおりだというふうに思っております。

 大切なことは、例えば、この法律案に基づき来ていただく企業、海外企業、それから補助金で来ていただく企業、それから特区をインセンティブとして、それらの複合的な形で、これから間違いなく一定程度、我が国に拠点を持ってきていただけるところが出てくると思うんですが、やはりそうした皆さんが、日本に拠点を置くことはいいことだ、それぞれの企業にとってプラスなんだということを思っていただく、そのことがさらに新たな投資を呼び込んでくることになっていくだろうというふうに思います。

 その場合、やはり重要なのは、この法律や補助金や特区だけでなくて、例えば研究拠点であれば、日本に来ていただいて、近隣の大学研究機関、あるいは近隣の他の企業との共同研究等が大きな意義を持つ。やはり研究開発は日本じゃないかというようなことを思っていただくとか、そういった総合的な我が国の底力というか潜在力を、こうした法案でインセンティブを与えて日本に来ていただくと同時に、しっかりと発揮をしていくことが重要であろうというふうに思っております。

 そうしたことを、この法律を通していただきましたら、申し上げている補助金や特区との総合的なパッケージと同時に、しっかりと底上げをしていくというか、潜在力を発揮させていくように、経済産業省としても努力をしてまいりたいと思っております。

江田(康)委員 それでは、さらに、この法案にも関連することでありますけれども、今後の経済対策がそういう意味でも重要であろうということで、円高、デフレ、また我が国の経済対策についてお伺いをさせていただきたいと思っております。

 今回提出されているアジア拠点化推進法案に基づく支援措置でグローバル企業を誘致するということでありますけれども、そもそも誘致される日本の経済環境がどうかということがございます。日本経済は、今、円高、そして電力不足等の六重苦と言われるような状況下にあるわけで、こういう状況下でグローバル企業誘致に向けた支援策を講じたとしても、その効果というのがやはり低く、むしろ、まずはグローバル企業が日本に投資をしたいと思えるような魅力的な国内市場をつくっていくということが非常に重要だと思われます。

 大臣も先ほどからそのこともおっしゃっておられるかと思いますが、そのためには、円高対策やデフレ対策、我が国経済を活性化するための抜本的な経済対策が求められていると思うんですね。二〇一〇年には政府は新成長戦略を策定されました。これを踏まえて、今後の経済産業省の経済活性化に向けた取り組みについて、これから幾つかその見解また我々としての提言を申し上げたいと思っております。

 まず、円高、空洞化対策としての国内立地補助金についてでございます。

 円高の影響によって国内企業が海外に流出して産業空洞化が懸念される現状では、グローバル企業の誘致の前に、国内に十分な投資機会をつくり出して国内企業の競争力を維持強化していくことが急務であります。

 先般、空洞化対策の一環として、平成二十三年度の第三次補正予算で国内立地補助金を設置いたしました。その一次公募の結果が示されましたけれども、採択件数に占める中小企業の割合は三割程度に低迷したと聞きます。

 この件に関して、先日、同僚の佐藤議員の質問に対して、本委員会で大臣は、書類記載の支援やその慎重な審査のために審査委員を大量に増加したなど、手続面でのサポートばかり言及されていたように思います。手続面でのサポートといった小手先の対応ではなく、我が国産業を支える中小企業が十分に採択されるように、やはり国内立地補助金のさらなる大幅な拡充を行って、より効果のある制度にすべきではないかと思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 一次公募で中小企業の比率が少なかったことについては、先般の委員会で佐藤議員にお答えしたとおり、若干、手続の面のところで改善すべき点があったのではないかということで、その改善を行っております。

 その上で、全体の規模等との関係で申し上げますと、そもそもが、この国内立地補助金が大変異例の措置だという位置づけでございます。そうしたことの中で、まさに補助金を出して設備投資はしたけれども、大赤字でその企業にとっても実は重荷になってしまうというようなことがあってはいけないわけでございます。

 そうした意味では、しっかりとその補助金によってインセンティブを与えて、それが個々の企業にとって、そして今の日本経済にとってしっかりと回っていく、利益を上げていくという構造でなければならないだろうというふうに思っています。

 もちろん、先々のことを縛るつもりはございませんが、現時点では二次公募の手続を進めているところでございます。そうしたことの中でしっかりと審査を行って、補助金を出せば成功するのにお金がないから出ないというようなことがないのかどうかということは、これは一次と二次に分かれているわけですから、二次公募のところで見てまいりたいというふうに思っております。

 これまでのところは、必要な、適切なところについてはしっかりと補助金を出せるというような枠で、予算を国会で御承認いただいているというふうに認識をしておりますが、御指摘も踏まえて、しっかりとウオッチをしてまいりたいと思います。

江田(康)委員 まずは国内立地補助金、しっかりと今後の二次公募の結果も踏まえて、効果のあるものにしていっていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 このデフレ対策について、さらに少しく提案をさせていただきたいと思っておりますが、まずはその前に、このデフレ対策について大臣にお聞きしたいと思います。

 経済活性化のためには、デフレからの脱却が急務ですよね。高齢化が進んで、人口減少社会を迎えている我が国では、国内で新たな需要を創出して、市場の拡大を図ることは困難な状況にあると思います。しかし、海外から企業を呼び込むためにも、税率等の事業コストの高低だけではなくて、国内で十分な市場の拡大が見込まれることが非常に重要であります。長引くデフレからの脱却に向けて、内需の拡大が図られるように、新産業の創出に積極的に取り組むべきと考えますが、この取り組みについてお伺いをしたいと思います。

 政府は、先日、ようやくデフレ脱却検討会議をスタートされて、本格的な対策に着手したように見受けられますけれども、枝野大臣もこのメンバーであると聞いておりますが、その目標、またタイミング等々について、大臣はどのような見解をお持ちか、お伺いをしたいと思います。

枝野国務大臣 過日、第一回を開催しましたデフレ脱却等経済状況検討会議では、デフレ脱却と経済活性化に向けて、政府と日本銀行の連携のもとで、効果的かつ体系的に経済政策を構築し、物価等経済状況の点検を行っていくことといたしております。これまでも、デフレからの脱却と経済活性化に向けて、さまざまな政策を積み重ね、また日本銀行との連携もしっかりと行ってきたところでございますが、さらにこれを強力に進めていく上で、こうした会議体を設けたところでございます。

 特に、この場において、経済産業省としては、産業政策の観点から、価格競争ではなくて、高くても売れる高付加価値の分野への産業構造の改革や、それから、国内のマーケットの拡大、需要の拡大ということで、家計が本当に必要とする財やサービスを提供できるような産業構造への転換、それから、家計所得をふやさないとなかなか国内での消費が伸びないということの中で、今悪循環の中に入っているわけでありますが、特に男女共同参画、ダブルインカムで家計所得をふやすということをいかに推進していくのかというようなことが重要であるということで、しっかり取り組んでいきたいということを私の方から申し上げているところでございます。

江田(康)委員 このデフレ脱却に向けた取り組みというのは、総合対策であり、大変難しく、また重要であるかと思っております。その中で、やはりデフレからの脱却というのは大胆な施策が必要ではないのかというのは一致した意見だと思います。

 私どもは、やはりデフレからの脱却は、今こそ真に必要な公共投資を行うことによって、デフレ対策として効果のあるものにしていくべきだと考えております。その一つとして、公明党が主張する防災・減災ニューディール政策についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 防災・減災ニューディールというのは、安心、安全な社会、持続可能な社会の構築とともに、デフレからの脱却につながる内需拡大を実現する政策提言でもあります。

 東京湾北部地震を初めとした首都直下型地震、また、東海、東南海、南海の三連動地震の発生が懸念されているわけでありますが、都市を初めとする防災機能の向上は喫緊の課題でございます。

 二月に発表された総務省の調査によれば、社会資本は、一九五〇年から六〇年の高度成長期に集中的に整備されたために、トンネル、橋梁、港湾施設、上水道というのは、二十年後には建設後五十年を超えるものが約半数になってしまうわけでございます。未来の財産である子供たちが通う学校に関しても、建築後二十五年以上経過した非木造建築が七割を超えているという状況です。さらに、公共事業はピーク時よりも半減しております。老朽化が進んでいる施設がふえている中で、社会資本の維持管理というものもできていない状況にあろうかと思います。

 今後は、防災、減災の観点からも、増加しつつある老朽化した社会資本に対して、思い切った維持更新のための集中投資を行うべきであるというのが、公明党の主張する防災・減災ニューディールでございます。この政策によって、国民に安心、安全を届けることに加えて、都市だけでなくて地域中小企業における雇用も生み出す、内需拡大による需給ギャップ解消とデフレ対策ともなり得るものと思っております。

 今こそ、公明党が主張する防災・減災ニューディール、この政策を実施すべきである、国の施策として実施すべきであると強く主張したいと思うのでございますが、まずは見解をお伺いしておきたいと思います。

室井大臣政務官 先生の御質問にお答えをさせていただきます。

 公明党の防災・減災ニューディールでお示しのとおり、老朽化が進む社会インフラの更新など、国民と日本の国土を守り、安全、安心な社会基盤を再構築するため、全国的な防災・減災対策を緊急かつ集中的に講じていくことは極めて重要な課題だと認識をしておるところであります。

 したがいまして、具体的には、社会インフラの老朽化の問題に対しては、国土交通省所管の社会資本の実態把握に努めるとともに、定期的な巡視、点検の実施や、さらに長寿命化計画の策定、予防的な修繕や計画的な更新を進めるなど、戦略的に維持管理、更新を実施してまいりたい、このように考えているところであります。

 さらに、今後とも安全と安心の確保された社会を目指して、人の命が第一、災害には上限がないという考えを基本に、社会資本の老朽化対策はもちろんのこと、先生がお示しされました住宅そして建築物や公共施設の耐震性の向上、津波対策の強化など、ハード、ソフト政策を適切に組み合わせ、災害に強い国土構造や危機管理体制の強化に全力で取り組んでまいりたい、このように思っております。

 基本的に、公明党の防災・減災ニューディール政策に対して同じような方向で進んでいきたい、このように思っているところであります。

江田(康)委員 この経済産業委員会で公明党の防災・減災ニューディールを今取り上げているわけでございますが、デフレ対策として、こういう大胆な、また真に必要な、あの震災を経験した我が国において、それを踏まえて、今喫緊の課題である防災・減災対策をデフレ対策に結びつける、こういうものとして大変重要であるということで、取り上げさせていただいております。

 さらに、経産省ではなく財務省にお聞きすることになるかと思いますが、デフレ対策としても重要な防災・減災ニューディール、これを行う上において、その財源というのが必要でございます。これについて、幾つかの観点から質問をさせていただきたいんです。

 資金面については、従来どおりの財政出動は望み得ない、そういうような中でございます。建設国債などの公的資金だけに頼るのではなくて、我々は民間資金を活用することを提案しているところであります。

 民間資金の活用としては、官側が基本的な事業計画をつくって民間が資金やノウハウを提供する民間PFI、さらには、設備は官が保有したままで設備投資や運営を民間事業者に任せるPPP、こういうような民間資金の活用というものもございますが、そのほかに、これは財務金融委員会等で同僚の竹内議員が紹介しておりますレベニュー債の発行というようなものがございます。きょうは、このレベニュー債について取り上げたいと思うんです。

 これはアメリカで多用されているものでありまして、公共事業などの事業収益を返済原資として発行される民間債のことであります。つまり、事業収益を返済原資とするわけで、レベニュー債を投資家が買うことによって、国からの財源を用いずに事業を行うことができるというものであります。また、政府による債務保証が禁止されております。であるから、無駄な事業を抑制する可能性も高いわけで、財政再建に寄与できるものであります。アメリカでも大変普及してきております。

 全ての公共事業にレベニュー債を活用するというわけではなくて、例えば、都市部を中心に、事業収益が見込まれる、返済ができる事業に関してはレベニュー債を活用する。一方で、地方を中心とした、事業収益が見込めない、返済が困難な事業に関しては、そもそも収益が期待されない事業は従来型の建設国債の活用というふうに振り分けていくということができるかと思います。

 こういう民間の知恵と資金を積極的に取り込めるところには民間の力を活用して、その浮いた分を、私も地方出身でございますけれども、地方の公共事業に回すことができる、これが民間債の活用であろうかと思っております。

 防災・減災ニューディールを実現するためにも、我々はこういう資金の活用、財源の確保等についても提言をしているところでございますが、PFI、PPP、レベニュー債などの民間資金の活用について、政府としてどのように考え、また検討を進められておるのか、私は積極的に取り組むべきと考えますけれども、見解をお聞きしたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 江田委員から大変貴重な御提言をいただいた、こう思っております。公共事業の財源調達手段として民間資金を活用すべきという御意見でございますけれども、その問題意識は同じものを持っているということで、PFI、PPP、レベニュー債なども、活用できるものは活用をしたらいいというのは基本的な考え方でございます。

 ただ、アメリカでも、先生御承知のとおり、ヤンキースタジアムのようにうまくいっているものもありますが、破綻しているものもございます。アメリカと日本とでは、国と地方の関係、アメリカは合衆国で、州が独立し、地方自治体も独立性が高いわけですね。その分、破産制度もあるということでありますけれども、日本は、地方自治体は最終的に国がその財政の面倒を見るということになっておりますので、仕組みが違うということも考えなければなりません。

 お尋ねのレベニュー債でございますけれども、キャッシュフローが生じる事業としてインフラ整備事業を具体的に見ていった場合、有料道路整備や上下水道整備などの事業については、既に、高速道路会社や地方公共団体が事業主として、借り入れによって資金を調達した上で事業をやっている。ただ、国が直轄事業としてやる分については、レベニュー債が活用できそうなものは、そうした元利払いに必要なキャッシュフローを生む事業は、今のところ見当たらないという状況であります。

 先生が御指摘のとおり、地方で、あるいは都会の部分でいいものはやったらいいではないか、そのとおりだと思うんです。ただ、日本の場合は国と地方との関係もあって、地方の方で、余裕があるところはむしろ料金を下げてくれとか、地方の中で活用してくれというような話もあると思いますので、事業目的別にうまく仕組めるかどうか。仕組めるものがあれば、私は、それは進めていくのに決して否定的になる必要はないものだ、こう考えておりますが、いろいろ研究をさらに進めて、やれるものを見つけ出して活用していくというのはいいことだ、こう思っております。

江田(康)委員 やれるものは活用して、勉強して取り組んでいくということでございます。

 総理も猛勉強するとおっしゃいました。猛勉強して、仕組みや、また国と地方の関係等、日本とそれは違いますよ。しかし、できない、できないではなくて、今後の我が国においてこういうことが本当に必要なのではないかということだと思いますので、猛勉強して、できるように、できるところから進めていけるように取り組んでもらいたいと申し上げておきます。

 残り時間も少なくなってまいりましたが、枝野大臣にもう一つ。

 やはり、我が国の経済を活性化する上において、改めてでございますが、我が国の法人実効税率についても言及をしておかないといけないと思っております。

 海外から企業を呼び込むだけでなくて、国内産業の競争力強化や空洞化防止の観点からも、そもそも我が国の法人税率が諸外国と比較して高い、これが問題ではないかとずっと言われているわけでございますけれども、先ほども申しましたように、オバマ政権も連邦法人税率を三五%から二八%に引き下げる、また、イギリスも二〇一四年に二二%まで引き下げると聞いております。

 それに対して、我が国はやはり依然として、今回初めて法人実効税率を引き下げたことになるんですが、二〇一五年度にその規模は三六%でございます。これでは、大胆な優遇措置を講じている近隣のアジア諸国との競争に勝てない。

 我が国においても、国内産業の競争力の強化の観点からも、諸外国並みの法人税率を何とか実現できないか、さらなる法人税率の引き下げを検討していくべきであると思っておりますけれども、この法案に関連しても、大臣、どのように見解をお持ちか、お答えいただきたいと思います。

枝野国務大臣 法人の実効税率が我が国の企業の国際競争力や海外企業の我が国への立地に大きな要素であるということは、御指摘のとおりであると思います。そして、残念ながらとあえて申し上げますが、かなりの国が世界の中で法人税の引き下げ競争をやっている。ただ、これは継続性のあるやり方ではないというふうに思っております。ただ、現実として、近隣諸国を初めとしてさまざまな動きがあるということは十分踏まえて対応しなきゃいけないと思っております。

 そうしたことの中で、社会保障・税一体改革大綱では、御指摘のとおり、復興特別法人税課税期間終了後において実効税率の引き下げが実現をすることとなりますが、同時に、その後も引き続き、雇用と国内投資拡大の観点から、今般の税率引き下げの効果や主要国との競争上の諸条件等を検証しつつ、新成長戦略も踏まえ、法人課税のあり方について検討をしてまいりたいと思っております。

江田(康)委員 そういうことであろうかと思いますが、最後に。

 今、大きな影響を及ぼすのは円高、デフレだけではございません。原油価格高騰の影響も、今、我が国経済に深刻な影響をもたらすところでございます。特に最近、欧米諸国がイランへの経済制裁として、イラン産原油の輸入禁止措置を講じたことによりまして、世界的に原油の需給が厳しくなっております。原油高は、ガソリン、軽油の値上がりにつながることはもちろん、家計所得や企業収益を悪化させていくわけであります。また、原発にかわる火力発電用の燃料の価格上昇を招いて、電力料金の引き上げにもつながるものでありまして、我が国の実体経済に与える影響は非常に深刻であると思っております。

 政府として的確な対応を講じることが今まさに必要であるわけでございますが、現在の政府の対応は危機感が足りない、そう指摘せざるを得ないと思います。

 このような政府の対応に対して、公明党は、四月の四日に、原油価格及び電気料金に関する提言を行わせていただきました。原油価格高騰に関する関係閣僚会議を早期に開催せよ、また、国際協調による原油価格高騰対策の推進、さらには、大臣は以前よりこの対応を積極的に申されておりますけれども、自由化部門の電気料金の値上げへの積極的な対応、これらの提言に対して、経済産業省の取り組みについて最後にお伺いをしておきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

枝野国務大臣 一月末から原油価格が上昇し、それを受けて、国内の石油製品価格も上昇傾向で来ております。四月九日の週から一応頭を打って下落に転じていますが、引き続き高い水準でありますので、このような事態が継続すれば、国民生活、企業の生産活動への影響が懸念される状況でございます。

 四月四日に、御党から大変貴重な御提言をいただきました。関係閣僚会議ということで御指摘いただいておりますが、現時点では、事務レベルで相当密接に連絡をとり、連携をしているところでございます。こうした状況を踏まえて、必要に応じて、閣僚レベルということも当然視野に入れながら、各省の連携した対応を進めてまいりたいと思っております。

 また、国際的な協調による対策の推進ということで、戦略備蓄の放出は基本的に量の問題で対応するものですが、それを前提としつつも、IEAや欧米各国とも具体的な対応について検討を行っていきたいと思っております。

 それから、新興国に対する省エネの呼びかけ等については、さまざまな機会で積極的に対応しております。

 それから、不公正な価格操作等の市場監視も、これは、例えば本年三月に国際エネルギーフォーラム閣僚会合がございまして、予算審議中で私は伺えませんでしたが、牧野副大臣に参加をいただき、今のような働きかけを各国に対しても進めているところでございます。各国とも大変な問題意識を持っていただいているというふうに思っております。

 それから、電気料金につきましては、いつも申し上げていることで、電気事業法の規制対象外でありますが、東京電力に対しては、引き続き、需要家の皆さんに対して徹底した説明責任を果たしていくように、さらに促してまいりたいと思っております。

江田(康)委員 時間が参りました。

 このアジア拠点化法案に関して、また、これを効果的なものとするためにも最も大事な国内の経済対策について、きょうはお伺いをさせていただきました。経済産業省の取り組みで、しっかりとした経済対策に取り組んでいかれるよう強く要望をいたしまして、きょうは終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、多国籍企業の海外移転に歯どめがかかるのかどうか、どう歯どめをかけていくのか、そういう問題から入っていきたいと思います。

 九〇年代の半ばでしたけれども、規制緩和論が一時期はやり病のようになったときに、「光り輝く国をめざして」というのを閣議決定して、それで進めてきた結果についての検証が本当は必要だと思うんです。

 この決定に基づいて、その文書を読みますとよくわかりますけれども、企業が国を選ぶ時代だと。だから、多国籍企業の海外展開を後押しするということをやってきました。その結果、今どうなっているかということが問われていると思うんです。

 その検証がないままに、財界が言っている成長戦略を受けて策定された新成長戦略をベースにした今度の法案で、外需頼み、多国籍企業呼び込みという新たな大企業本位の経済政策の一つとして今出てきておりますが、これをやって本当にうまくいくのかどうかということをきちんとやはり検証しておくことが大事だと思うんです。

 そこで、政府参考人に伺いますけれども、大企業の海外展開、多国籍企業化が進んで、今、国内産業が空洞化しておりますけれども、それが進む中で、資料一に見るように、海外生産が拡大するに伴って、企業の海外純所得ですね、純受け取りがぐんと伸びているというのがこの間の実態だと思うんです。そういう立場に立っての政策を考えていかなきゃいけないと思うんですが、まず、資料一のこういう流れについて、このとおりであることは政府資料ですから間違いないんですが、あらかじめ確認しておきます。

    〔委員長退席、稲富委員長代理着席〕

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 日本企業の海外生産比率の動向とか海外収益の現状とかを見てみますと、経済産業省の海外事業活動基本調査によりますと、平成二十二年度における製造業の海外生産比率は一八・一%ということでございます。前年度に比べて一・一%増加となっております。

吉井委員 要するに、資料一に見るように、海外生産は伸びる、それに伴って、多国籍企業化した大企業の海外純所得ですね、受け取りはどんどんふえていくという形なんです。

 それで、今、海外展開が進んでいるんですが、枝野大臣に伺っておきたいのは、なぜ企業が海外展開するのか、その主な理由は何ですか。

枝野国務大臣 昨年の七月に経済産業省で調査を行っているんですが、平成二十二年度に海外で新規投資または追加投資を行った我が国企業が投資をしたポイントとしては、現地の旺盛な製品需要が見込まれるとした理由が全体の七割強と最も高く、次いで、現地の近隣国での需要が見込まれる、納入先などの他の日系企業の進出実績があること、良質で安価な労働力が確保できることなどと回答した企業の割合が、ともに三割弱で続いております。

 一概に申し上げることがなかなか、それぞれの企業や業種によって違うとは思いますが、全体として申し上げれば、やはり需要が国内よりも海外で伸びている。これはもう、我が国の人口減少を初めとして客観的な状況であり、そうなると、需要地に近いところに進出をするというのも、これも必然だというふうに思います。

 それから、同時に、やはり大きなトレンドとしては、我が国が経済成長をなし遂げて経済大国となった結果として、かつて高度経済成長時代に我が国の強みであった、安い労働力で価格が安い、価格競争力で勝負をするという部分が、これはもう完全に、むしろ追われる立場というか、こういう状況になって、価格で競争する製品については国内で生産して勝負をするということが困難になっている、こういったことが背景にあると思っています。

吉井委員 内閣府の経済社会総合研究所のデータによっても、今大臣がおっしゃったように、需要が四九・四%、それから人件費が安いというのが一九・四%で、現地政府が法人税率の優遇措置をとるとか産業育成政策があるなどということは、あるにはあってもほとんど数字にのってこない、〇・〇%台、非常に低い。だから、税率の高低にかかわらず、もともと利益が出ないときは、法人税率が高くても低くても納税額はゼロになってきますから、余り大きな理由になってこない。

 それで、同様のことは、経産省の政策資料によっても、第四十回海外事業活動基本調査などを見ても、今大臣が言われたようなことは数字的にもきちんと裏づけられていると思うんですが、念のために政府参考人の方からも確認しておきます。

厚木政府参考人 そのように承知しております。

吉井委員 それで、需要が伸びて、海外生産の労賃が安いというのが大きな理由になっているわけですけれども、資料二に見るように、図二と書いておきましたが、企業の海外生産に合わせて、企業の内部留保も株主配当もどんどん膨らんでいっている、これが実態じゃないでしょうか。これがもし働く人たちの雇用とか国内に還元されておれば、この形は大分変わってくると思うんです。

 企業の内部留保と株主配当がどんどん膨らんでいっている、こういう形になっていると思うんですが、これは政府参考人に確認しておきます。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが実施いたしました海外事業活動基本調査を見てみますと、現地法人から還流をさせた配当金の用途としてどのようなものを考えているかというアンケート調査がございまして、それを見ますと、現地法人からの配当金の用途について、研究開発、設備投資と回答した企業が四割弱、それから雇用関係支出と回答した企業も二割弱というようなところを目指しているということでございます。

吉井委員 目指している話をお聞きしたんじゃなくて、内部留保も株主配当もふえているのはこの表に示すとおりでしょうということをまず確認しているんです。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。

吉井委員 そこで、枝野大臣に伺っておきたいんですが、いろいろなことを目指すというのは企業として当然あるわけですね。しかし、内部留保の国民所得への移転とか、それから税の仕組みなどを使っての再配分その他の再配分で、やはり国内産業への投資に回すということになれば、これは内需の拡大と国内雇用の増大、地域経済の再生につながっていきますし、国内の税収自身が上がってくるわけですね、国も地方も。内部留保というのは今そのように使われているんでしょうか。

枝野国務大臣 内部留保は、御指摘いただいた資料でも、利益剰余金と資本剰余金と引当金を合わせたもので、これが伸びているわけでありますので、引当金のところについてのいろいろな評価はあるかと思いますけれども、投資をするのではなくて内部留保に回っている金額が伸びている、この実態はあるというふうに思います。

吉井委員 その内部留保がどんどんふえていくわけなんですけれども、内部留保をしたものが国内で雇用や産業の拡大につながり、地方経済や財政につながっていけば、これは好循環といいますか、日本経済の持続的発展につながっていく道だと思うんですが、資料三のように、法人税率を引き下げても、企業利益、内部留保もふえているのに、海外生産比率がどんどん上昇していく。タックスヘイブンの国への飛ばしとか所得移転による税金逃れなどを加えると、企業の利益はもっと多いものになるだろうと思われます。

 法案では、財界の成長戦略を受けた新成長戦略をベースにしたもので、外需頼み、多国籍企業の呼び込みという新たな大企業本位の経済政策、産業政策の一つになっております。しかし、法人税を減税すれば国内雇用がふえるとか企業立地が進むというのは、現実と全く乖離した話というふうに見なきゃいけないと思うんですが、これは枝野大臣に伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、例えば日本企業が海外に進出するに当たっての理由は必ずしも税ではない、そういう調査の結果があるのも間違いありません。

 ただ、例えば一方で、海外に進出をしようとしている海外企業が、アジアの拠点をどこかに置こうと思って、そのときに、韓国がいいのか、日本がいいのか、シンガポールがいいのか、中国がいいのかということを比較する中では、法人実効税率というのが一定の要素になっているのは、これは否定できないのではないかというふうに私は思っています。

吉井委員 この法案では、法人税率と所得税率の引き下げによって就業機会を拡大するというふうに言っているわけなんですけれども、これまで、アジア拠点化推進事業費補助金による支援措置額は幾らで、何人の就業者の増加があったのか、実績を政府参考人から伺っておきたいと思います。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 アジア拠点化立地補助金は、グローバル企業の高付加価値拠点、研究開発拠点それからアジア地域統括拠点の立地に係る費用の一部を補助するものでございまして、予算額は、二十二年度補正予算額で二十億円、二十三年度予算額で五億円、それから二十四年度予算額で五億円となっております。

 これまで同補助金で採択した企業が、五社と十社で十五社ございますけれども、公募申請時に企業から提出された計画によりますと、事業開始当初に一社平均約八十人の雇用が生まれることとなっております。

吉井委員 だから、今年度予算を別にすれば、今まで二十五億かけてきて、十五社ふえたんだ、一社平均八十人だと、これは掛け算すれば出てくるけれども、わずかの数なんですね。金は投じたけれども雇用はふえなくて、そして空洞化がさらに進んでいく、ここにどうメスを入れるかということが現実の問題だと思うんです。

 実は、ことしの三月十九日の新聞にも紹介されておりますが、二〇〇二年度からの十年間に、国内の四十七都道府県が一億円以上の補助金を投じて誘致した企業は一体何社あるのか、この間、撤退、縮小した製造業は何社になるのか、これは政府参考人に伺っておきます。

照井政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県が誘致した企業の立地件数については把握しておりませんけれども、工場立地動向調査による製造業等の工場立地件数では、二〇〇二年から二〇一一年までで、累積で一万二千四百六十七件となっております。

 また、工場の撤退件数については把握しておりませんが、厚生労働省の大量雇用変動届の集計結果によりますと、調査開始が二〇〇七年度からでございますので、それから二〇一一年度までの届け出事業所の累積数は一万四千四百三十九事業所となっております。

吉井委員 二〇〇二年度から二〇一一年度までで八百六十三件あったわけですが、このうち、十四の県で二十一社、二十三件が既に撤退、縮小という方向で、補助金は三百七億円出してきて、交付決定額五十億円以上の超大型の企業誘致が全体で十件あるんですが、そのうち三件が既に撤退。これは、シャープ亀山工場の六十億円とか、パナソニック液晶ディスプレイ茂原工場やプラズマディスプレイの尼崎工場など、大型のものがあります。

 ですから、補助金を出して雇用がふえたのか、あるいは地域経済が潤ったのか、税収が上がったのか、これらの企業の撤退、縮小が進む中で雇用が一体どうなっているのかということをきちんと日本経済の問題としてつかんでおかないと、税金をまけたり補助金はどんどんつけるんだけれども、いろいろな仕掛けを今までつくってきましたよ、しかし、これで一体どうなったのかということをやはりこの機会にきちんと検証することが大事だと思うんです。

 今数字をおっしゃったんですが、補助金を企業に出して、一体、雇用はどれだけふえて、撤退、縮小はどれだけ進んで、雇用はどうなっているんですか。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、特に補助金のように税金を直接使って政策を実行した場合には、その効果が上がったのか上がらなかったのか、それを踏まえてまた次の施策を考えていくということは重要であるというふうに思います。

 今御指摘いただいている自治体からの補助金で企業誘致ということでございますので、これは、国と地方との関係の中で、国がどれぐらいそこにかかわるべきかという問題が一つあろうかというふうに思います。それから、撤退についてはなかなか把握がしにくいという実態もございます。

 ただ、撤退については、今、地域経済に与える影響が大きゅうございますので、先日も地方の経済産業局長を集めた会議がございまして、私の方からも、地域の経済、雇用に影響を及ぼすような大きな企業の撤退等の情報についてはアンテナを広く張ってしっかりと把握をし、自治体とも御相談をして、できるだけ前広に対応するようにという指示をしたところでございます。

 その上で、政策効果の把握との関係ということからいえば、今後、特に国が直接行う補助金政策等については、そのお金は出した後どうなっているのかということについては、今まで以上に一層しっかりとフォローができるように、御指摘を踏まえて検討してまいりたいと思います。

    〔稲富委員長代理退席、委員長着席〕

吉井委員 いろいろな政策を打ってきたわけですよ。例えば、私のような大阪ですと、堺泉北コンビナート、巨大な投資をやって、新日鉄も日立造船もやってきたけれども、全部撤退してしまいましたね。投資したものに対する非常に大きなツケが残ってくる。これは地域経済、地域社会にとっても深刻です。

 その後、テクノポリス法とか、さまざまな仕掛けをつくりました。全国各地に工場、工業団地造成をやって、結局、企業が進出しなくて、借金だけが地方自治体に残されていく。最たるものの一つが、むつ小川原開発のように、大きな借金をつくって、この後始末をどうするかということで、最後は核のごみ捨て場にしよう、そういうふうなやり方ですね。そんなやり方までやられてきました。

 ですから、私はやはり、こういうことをきちんと一つ一つ検証して、どういう政策を打っていくのかということを考えていかなきゃいけないと思うんです。

 それで、大体、どこでも期待した雇用や税収は得られていない。逆に返還請求まで出てくる。それをやらないと地方自治体がもたないというところが出てきています。

 アジア拠点化法では、総額三十億円の支援を行って二千二十五人、波及効果を合わせて六千四百人の雇用増というお話をレクのときに伺いましたが、現実には、二〇〇二年から地方の企業誘致の補助金二百億円の資金を出して、企業の撤退、縮小が二十三件、数千人の雇用を失っているというのが事実です。ですから、大企業に減税したり、誘致補助金を出しても、それだけでは国内産業の発展につながらない。やはり今、根本的に考え直さなきゃいけないときだと思うんです。

 法人実効税率の比較をしますと、法人税率を下げても大企業の海外生産比率は上昇の一途だというのは、先ほどの資料、図の三に見たとおりです。企業の税と社会保障費の負担の合計額、国際比較をやるときは大体これが中心になりますが、日本は、ドイツ、フランスに比べて、合計額で見ると企業の負担額は低いわけですね。これが現実だと思いますが、こちらの方は政府参考人に先に確認しておきます。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 直接の担当ではございませんけれども、そのように私も考えております。

吉井委員 これは枝野大臣に伺っておきたいんですが、現実には、大企業の法人税の実際の負担率というのは、例えばソニーでいうと一二・九%とか、住友化学は一六・六%というふうになっているわけですが、法案では、当該事業計画は、経産大臣など主務大臣が定める基本方針、認定要件に照らして適当である場合には、主務大臣が認定するというふうにしております。

 今の実例で見ると、グローバル企業の研究開発拠点や地域統括拠点を法人税軽減等の優遇措置によって我が国に呼び込んで、新事業の創出、就業機会の増大に寄与するとしているこの目的には、これはなかなか合わないんじゃないかと思うんですが、大臣、どうですか。

枝野国務大臣 私も、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、法人実効税率が、それだけで企業誘致ができるとも思っていませんし、企業誘致についての一つのファクターであるということで申し上げてきているつもりでおります。

 したがって、この法律と、特区法であったりとか、これは先生から御批判があるかもしれませんが、補助金等の組み合わせ、さらには、全体としての我が国の潜在力をしっかりとアピールすることによって誘致をしなければならないというふうに思っています。

 その上で、これまでの企業誘致が必ずしもうまくいっていないという御指摘は、私も同じ問題意識を持っています。率直に申し上げれば、今まで特に地方が行ってきた企業誘致は、大型の工業団地をつくって、大きな工場をつくって、そこで雇用をたくさん生み出していくという高度経済成長の時代のパターンをそれぞれの地域がさらにやろうとしてきた。これは、まさに日本が高度成長をなし遂げて先進国になった結果として、高度成長の時代のような大型の工業団地で大型の工場をつくって規格大量生産でたくさんの雇用を、このパターンはもう成り立たないと私も思っています。にもかかわらず、その転換がおくれた。転換がおくれたのは、企業にもあるかと思いますが、自治体、場合によっては国にも転換のおくれた理由はあったかもしれません。

 だからこそ、今回の法案は、従来型のいわゆる大型の工場で規格大量生産を誘致しようという法案ではございません。まさにアジアの拠点であったり、あるいは研究開発の拠点であったりということで、我が国が相対的に力を持っている部分のところで、しっかりとそれを生かしていくという方向に企業を誘致していこうというものでございまして、私は、従来の必ずしもうまくいかなかったことを踏まえた対応であるというふうに思っております。

吉井委員 法案の前提とは逆に、この現状を見ると、先ほど来申し上げてきましたように、大企業への税の優遇措置によって、我が国法人税の実際の負担率等は、国際比較で見て余り高くない。それなのに、法案は、立地競争力強化の名による多国籍企業への一層の税負担軽減策というふうになっております。

 法人税の減税については、実は、米倉経団連会長が、法人税減税をやるのと引きかえに雇用や投資の具体的な約束を求める声が出ていることについて、何を考えているのか、資本主義でないような考え方を導入してもらっては困ると表明しているように、法案の投資、雇用増は、裏づけのない、根拠が非常に不確実なもので、幾ら減税したってそんなものに縛られませんよというふうに彼は言っているわけです。

 そこで、大臣に伺っておきたいのは、こうした支援策は、法人税の有害な税の引き下げ競争ということが今国際的にもOECDなどで問題になっておりますが、この引き下げ競争はやめようという声が今出ているときだと思うんですね。多国籍企業にとって利益となっても、かつて産業活力再生法で議論したときに与謝野大臣が答弁されたように、合成の誤謬と一緒で、一つの企業だけを見れば、法人税減税をやりました、税金を引き下げました、投資がちょっと一時的にふえましたと、何か調子よくいったように見えても、各国が同じことをやれば、結局、負のスパイラルの中で世界経済全体がおかしくなるわけですね。

 多国籍企業にとって、個々の企業にとっての利益になっても、国民経済との矛盾を深めるばかり、このことをやはりきちんと考えていかなきゃいけないと思うんですが、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 先ほど来御答弁しておりますとおり、今の問題意識は私も全く共有をしております。各国が、企業の事業環境を相対的によくするための手段として法人税の引き下げ競争を繰り返していけば、結果的に世界経済を破滅させると私も思っています。

 したがって、御指摘のとおり、OECDにおいてもこうした問題についての議論がなされていますが、残念ながら、現状で国際的な合意ができるという見通しにはなっていない状況であります。これは特に新興国が顕著でありますので、国際社会に対して粘り強く働きかけていく必要があろうというふうに思っております。

 一方で、現実に引き下げ競争がなされている中において、引き下げ競争を加速させるようなことをすべきではないというふうに思いますが、現実に各国が引き下げ競争をしているという状況の中で、我が国が全くその実態を無視して我が国経済を成り立たせていくことができるのかということは、これは考慮せざるを得ないんだろうというふうに思っています。

吉井委員 いずれにしても、引き下げ競争では負のスパイラルに落ち込むだけですから、世界経済全体を考えて、やはり国際的に、この誤った税引き下げ競争というものはやめる方向へきちんと進めないと、それから、そのことによって海外進出して得た大きな利益については、国にきちんと還元させるという政策手段をとるべきだというふうに思います。

 法律にかかわって、今度はTDKの問題を伺っておきたいんですが、TDKの海外法人も、申請すればこの法律の対象になりますね。

厚木政府参考人 この法案は、新たに研究開発拠点を呼び込むということでございますので、仮にTDKがそうした場合に、今までと全く違う研究開発を行うという場合にはあれですけれども、そうでない限り、対象にはならないと思います。(吉井委員「いや、新たなものを出したら法律の対象になるんでしょう」と呼ぶ)はい。今までと全く違う研究分野ということであればでございます。

吉井委員 対象になるわけなんですよ。

 ところで、国内のTDKというのは、一九九八年三月の決算時には、従業員が七千六百七人でした。それが、二〇一一年、十三年後の三月の決算時点で、従業員三千四百五人と半分以下になっているんですね。一方、海外法人を含めた従業員数で見ると、一九九八年三月で二万九千七百四十七人であったものが、二〇一一年三月では八万七千八百九人へと約三倍にふえているんですよ。

 今、TDK発祥の地である東北で、TDK東北五工場の閉鎖、リストラが問題になっています。日本企業の国際競争力をよく口にするんですが、しかし、例えばサムスンのスマートフォンのふたをあけて見れば、部品の八割は日本製なんですよ。その中でも大事なリチウムイオン電池については、TDK香港ですね、香港ATLが製造しています。ここの従業員は一万三千八百六十六人いる。国内TDKをはるかに超えているんですね。それだけの雇用をふやしているんです。

 枝野大臣に伺っておきたいのは、せめてTDKの東北工場の閉鎖、リストラにストップをかけなければ、税金を使って多国籍企業の応援ということにしかなってこないんじゃないかと思うんですが、伺っておきます。

枝野国務大臣 まず、御指摘のTDKの再編については、秋田県からも、経済産業省としても相談に乗って対応をしてほしいというような御相談等もございまして、いろいろと情報把握等を行っておりますが、秋田県を中心に、分散している小規模工場の生産の効率化を図るための拠点の集約化であって、生産規模や従業員の雇用については維持しつつ、国際競争に対応するものであると承知をしています。直接の従業員以外についても、特にTDKへの依存度の高い取引先企業についても、希望する全ての従業員について再就職支援を行う予定であるというふうに承知をしているところでございます。

 その上で、大量生産の分野のところでは、どうしても人件費が安い等のさまざまな事業環境の中で、国内から海外に出ていく部分が多くなっていくというのは現実としてございます。だからこそ、そうしたことの中で、人件費の安い海外に立地をするというような場合との競争上、国内に残し得る拠点としての高度な研究開発拠点であったり、アジア全体のさまざまな中心地という機能を日本に残してもらわないと、このままいきますと、研究開発拠点、アジアの拠点という位置づけから、根こそぎ海外にどんどん行ってしまう、少なくともそのことはとめなければいけないという問題意識が今回の法律のベースにあるところでございまして、大量雇用の大きな工場がこの間海外に出ているということ、だから今回の法律は要らないというのは、むしろ逆ではないかと思っています。

吉井委員 TDKは、先ほど御紹介しましたように、一九九八年には国内の従業員は七千六百七人だったんです。十三年後の二〇一一年三月では従業員は三千四百五人と半分以下に減っているんです。

 今度の東北五工場の閉鎖、リストラも、本体の問題もありますけれども、下請の企業とか働いている人たちをどんどんリストラしていく。そうすると、日本国内の失業した人たちに、私も研究開発が必要だと思っているんですが、一体、新しい産業をどう起こして、そこにどのように海外でもうけた所得を移転して、どのようにして地域経済を発展させるのかという筋道をきちんと描かないと、ただ、これはもう国際的な流れだから仕方がないだけで済む話じゃない。既に半分になっているのに、さらに、東北というのはTDKの発祥の地ですよ、それで五工場の閉鎖、リストラというのを、これは見過ごしちゃならないと思うんです。経済産業大臣としてもその立場で臨んでいただきたい。

 新しい展開なら展開で、どういう分野で展開を図るかということについて、例えばそれは再生可能エネルギーとかいろいろなものを含めて、一体、地域経済をどのように発展させるか、これは雇用の面でもエネルギーの面でもやはり考えていかなきゃいけない問題だと思うんですが、TDK一社にもちろんとどまらない話です。

 だからこそ、法律をつくるときには、かかわる企業だけの問題を考えてじゃなくて、もっと大きく、日本経済をどうするのか、この発想が必要だと思うんですが、大臣のお考えを伺っておきます。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、従来型の高度成長型の大型工場はなかなか競争上苦しくなってきているということの中で、今回御審議いただいているのはアジアの拠点を立地するということでございますが、それはあくまでもワン・オブ・ゼムであって、全体としては、まさに競争力を今後も維持、高められる分野、あるいは国内においての需要が見込まれる分野ということで、別途、課題対応型の産業を支援する法案も国会に御提起させていただいているところでございます。

 それは一般論として申し上げた上で、TDKについても、具体的なところまで外に言っていいのかどうかちょっと確認してこなかったので、具体的なことは申し上げませんが、秋田県の佐竹知事と私自身もお話をさせていただき、TDKにおいても一定の理解をいただいており、東北経済産業局が御協力をしながら、従来とは違う分野において、特に発祥の地である秋田で雇用や経済の活性化につながるような対応についても検討をしている、それについて経済産業省としても可能な範囲で御相談に乗っているという実態もございます。

吉井委員 実は、九〇年代の後半になりますが、熊谷さんという方が通産大臣のときに、三洋電機が大規模にリストラして、もう下請企業を切ってしまって海外へ工場を移すというときに私は取り上げまして、熊谷大臣は友情ある説得を試みたいといって三洋電機にも働きかけて、結局、三立電機は三年間事業転換をみずからも図りながら移行していく、そういうこともやっているんですよね。

 私は、大きな社会的影響を持った企業には、社会的責任を果たす、地域経済に責任を果たす、そういう立場で臨むように、ただ応援する法律をつくるだけじゃなくて、具体的にそういう取り組みというものをやってもらうことが大事だと思うんです。

 産業活力再生法の改定を行った後、二〇〇九年六月三十日にエルピーダメモリの事業再構築計画を認定しました。この法律改定というのは、実質的にはエルピーダメモリのために改定したみたいなものですが、国が日本政策金融公庫に出資して、ここが日本政策投資銀行の損失の八割を補填する、こういうことにしました。日本政策投資銀行から三百億円の出資と百億円の融資を行ったんですが、会社更生法を申請して、最大二百七十七億円の国民負担が生まれています。

 経済産業省が主導して、国民負担をこれだけつくって、なぜこういう事態になったのか、一体誰がどのように責任をとるのか、この問題が今国民的に問われていると思うんですが、枝野大臣のお考えを伺っておきます。

枝野国務大臣 エルピーダの会社更生法の適用は大変残念なことでございます。また、今御指摘いただいた資金のことについては、平成二十一年度の予算において予算措置がなされておりますので、新たな国民負担は生じないものでございますが、やはりこうした形で使われることになるというのは残念なことだというふうに思っております。

 これは三年前の計画認定でございますので、政権交代の前で、別に守る必要は政治的にはないんですが、客観的な状況として、私自身今判断をしても、当時の金融情勢等を踏まえた中で考え、なおかつ、その後実際に二〇〇九年、二〇一〇年には利益も上げているという意味では、その時点の判断としては適切だったのではないかと思っています。

 特に、昨年ですか、東日本大震災とタイの洪水等で急激に需要が落ち込み、需要が落ち込めば値段も大幅に下がるという不測の経済状況の急変というものが、今回の会社更生法の適用の原因になったというふうに思っているところでございます。一定のこういったことについてのリスクがあることは、これは御理解をいただきたいと思います。

吉井委員 このエルピーダメモリについては、インサイダー情報に基づく証券取引で経済産業省の担当者が不当利益を上げていた。一体、企業を支援してさまざまな恩典を与えながら、雇用の増加につながらない、損失を出しても全部国民の税金で負担、不正も生まれる、誰も責任をとらない、こういう仕組みでいいのかということについて、やはり大臣のお考えをきちんと示していただくことが必要だと思うんですが、最後にこのことを伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 インサイダーの件で当省の職員が捜査をされているということは、大変遺憾に思いますし、申しわけなく思います。今後そうしたことのないように、省内の綱紀粛正を徹底してまいりたいと思っております。

 ただ、そのことと、当時の支援をすることについての判断、決定には関連性がないということも、これは私自身、省内でかなりきちっと改めて確認をさせているところでございます。

吉井委員 あとの意見は討論で申し述べます。終わります。

中山委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、本法案の三条に定めます特定多国籍企業による研究開発事業及び統括事業の促進に関する基本方針ということについて質問します。

 この基本方針というのは具体的にどういうものになるんでしょうか。そしてまた、その基本方針に基づいて研究開発事業や統括事業の認定を行うわけですけれども、その認定の客観性や公平性をどういうふうに担保していくんでしょうか。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 第三条の基本方針には、特定多国籍企業による研究開発事業及び統括事業の促進の意義等について定めるものとされておりまして、具体的には、まず一つに、特定多国籍企業による研究開発事業及び統括事業の促進の意義及び基本的な方向、第二点目として、研究開発事業及び統括事業の内容、第三点目として、我が国事業者の特許発明、技術等の国外流出の防止その他特定多国籍企業による研究開発事業及び統括事業の促進に際し配慮すべき事項について定めることとしております。

 認定に際しましては、今申し上げました基本方針のほかに、別途定めることとしている主務省令におきまして、研究開発事業または統括事業に使用する従業員の数や事業期間、試験研究費等の要件を設けることとしております。

 先生御指摘のような客観性、公平性を担保するという観点から、この基本方針、あるいはそれぞれの要件に基づき認定を行うということにしておりまして、そうすることにより、客観性、公平性を確保してまいりたいというふうに考えております。

山内委員 今、局長、具体的にはとおっしゃいますが、全然具体的ではなくて、条文をお読みになっただけだと思うので、もう少し誠意ある答えがあるんじゃないかと思うんです。ただ単に条文を読み上げられただけですけれども、具体的にもうちょっと何かないんでしょうか。

厚木政府参考人 例えば、促進に際し配慮すべき事項というところには、一つは、そうしたグローバル企業が買収、売却ということを繰り返すことによって、ここで書いてあるような技術等の国外流出とか、あるいは地域経済の疲弊ということが起こらないようにというようなことを記載するということも考えております。

 それから、例えば地方公共団体あるいはジェトロの関係支援団体と幅広く緊密に連携して、展示会等を通じた我が国中小企業とのマッチング機会の提供というようなことを書こうということを考えております。

山内委員 枝野大臣、もし可能であればコメントをいただきたいと思うんです。

 認定基準が、もし客観性あるいは公平性を担保できないものであると、役所の裁量とか担当者の裁量でいかようにもなってしまうと、もしかすると、それが役所の既得権になってしまう、気づいたら、特定多国籍企業に経産省のOBとかジェトロのOBが顧問で天下っちゃうとか、そういうこともあり得るかもしれないと思うんですね。

 そういうものを防ぐためには、どうやって客観性を担保して、そういうことが起きないように未然に防げるか、大臣として何かお考えがあればお尋ねします。

枝野国務大臣 これから決める省令で、さまざまな要件、事実上の要件を決めていくことになります。ここをできるだけ具体的、明確に決めていくということが重要だろうと思います。

 一方で、完全にこれは裁量性のないやり方でできるのかということになると、事柄の性質を考えると、本当に研究開発の拠点になり得るのか、こういうものだととても研究開発の拠点じゃないですよねとはじくネガティブ要件をつくることは十分できると思うんですが、本当にここが研究開発拠点としてうまくいきそうなのかとか、アジアの拠点になりそうなのかということについて、こういうところはだめだよねという要件はかなりきちっと書けると思うんですが、最終的には裁量性は全くゼロにはできないのではないのかなというふうに私は思っています。

 そうした意味では、まさに一件一件の認定に当たって、しっかりと役所が天下り云々とかとならないように、実際に法律上の権限を持つのは大臣でございますので、政務がしっかりとチェックするというか判断をすることが重要ではないかと思っています。

山内委員 私も裁量が全くなくなるということはないと思いますが、ぜひ、許認可が変な利権にならないように、しっかり省令の段階でもモニターをしていただきたいと思います。

 次に、この法案による優遇措置がいろいろあるかと思いますが、その優遇措置を受けたいがゆえに、例えばペーパーカンパニーを設立して特定多国籍企業の認定を受けよう、そういう悪いことを考える会社が出てこないとも限らないと思うんですが、それをどういうふうに排除できる仕組みがあるんでしょうか。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、グローバル企業が研究開発事業計画または統括事業計画を作成し、これを主務大臣に提出し、主務大臣が定める基本方針や認定要件に適合すると認められた場合に、本法案に基づく優遇措置が講じられることとなっている、まず計画認定のスキームをとっているということがございます。

 また、この認定要件といたしましては、先ほど御説明いたしましたように、従業員の数とか事業期間とか試験研究費等の要件を主務省令で定めることとしておりますので、これらに基づき認定を行うことで、実体のない企業は排除されるものと考えております。

 なお、法第十四条におきまして、主務大臣は、認定事業者に対し、事業計画の実施状況について報告を求めることができるとされておりまして、この報告を踏まえて、事業者が計画に従って事業を行っていないことが判明した場合には、法第五条及び第七条に基づき認定を取り消すことができることとなっております。

山内委員 次に、グローバル企業のアジア本社や研究開発拠点を呼び込むということに関しては、この法案とは別に、やはり海外の高度人材が日本に住みやすい、あるいは住みたいと思わせるような政策のパッケージを用意する必要があるんじゃないかと思います。

 実際、内閣府を中心に対日投資促進プログラムというのを準備されているようですけれども、その際、いろいろな政策が含まれます。例えば、子供の教育の問題、あるいは医療の問題、あるいは家事使用人と法律で言うようですけれども、メードのビザの取得の問題、こういういろいろな問題があります。

 その中で、恐らくビザに関しては、法務省の入管とかはそんなに前向きというか、言われればやるけれども自分から積極的にビザの要件を緩和しようと法務省が提案するとは思いにくいです。あるいは、教育の問題、外国人の学校に関しては、文科省は昔から結構厳しい規定を使っていることも多いので、そんなに前のめりで文科省が協力するとも思えません。恐らく、唯一経産省が対日投資促進のプログラムのために前向きに努力をする役所じゃないかと思います。

 そういった意味でも、経産省以外は余り興味を示しそうにない案件のパッケージになりますから、経産省の大臣である枝野大臣の役割は非常に重要だと思うんですけれども、外国の高度な人材が日本に住みやすくなるための政策のパッケージ、これを取りまとめる体制というのは今のような体制でいいんでしょうか。あるいは、もっと強化すべき、どこかが中心になって取りまとめるということが必要だと思うんですけれども、どういう体制が望ましいとお考えでしょうか。

枝野国務大臣 御指摘のような側面があるのは、これは否定できないだろうというふうに思います。

 例えば、家事使用人の件なども、後で御質問が別途あるかもしれませんが、ポイント制を導入しようということで、経済産業省としてはぜひ早く、できるだけ大規模にということで強く働きかけまして、その結果、十分という御評価をいただけるかどうかわかりませんが、導入することが決まりました。

 どういう体制でやるのがいいのかということは、実は、グローバル人材、できるだけグローバル企業を呼び込むための施策といっても、今御指摘のとおりいろいろな側面がありますので、一つの決まった形でこういう体制でやるというよりは、案件ごとにやった方がいいんじゃないか。そして、恐らく前に進めるためには、やはり内閣府なり内閣官房なりが取りまとめ役をやっていただいて、経済産業省の立場からは、グローバル企業を呼び込むためにより積極的なことを強く申し上げる中で折り合いをつけていくということがいいんじゃないか。

 経済産業省が取りまとめをしますと、今度は強く必要性を訴える立場がなくなってしまいますので、そういう視点の中で一個一個テーマごとに必要な枠組みで議論を進めていきたいし、また、何の議論が必要かということは経済産業省から提起をしていかないとなかなか進まないと思いますので、その役割はしっかり果たしていきたいと思っております。

山内委員 今、ビザのポイント制というお話が既にありましたけれども、やはり法務省というのはどうしても取り締まる側の発想で厳しくしたがる。経産省は何とか緩和してほしいというところでせめぎ合いがあると思うんですけれども、メードさんのビザの取得、これは税金の投入は全く必要ありません。お金をかけずにできるだけのことをやった方がいいと思いますので、ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。

 他方で、ポイント制になってくると、場合によっては濫用者というか、制度を悪用するような人も出てくるかもしれません。具体的に、この在留資格のポイント制というのはどういうものを今想定されているんでしょうか。

石黒政府参考人 我が国が導入予定のポイント制でございますが、学術研究、それから高度専門技術、経営管理という三分野につきまして就労資格を有する者の中から、一定のポイント計算によって資質、能力を有すると認められた者に対しまして優遇措置を講ずるものでございます。

 具体的に例を申しますと、高度技術人材の場合ですと、学歴項目として博士号をお持ちの方は三十点、職歴として、例えばその当該業務に五年間従事されていますと十点、年収項目として、例えば六百万円お持ちであると二十点、年齢項目として三十歳代前半でありますと十点、日本語能力検定試験を受けて一級であれば十点といったような格好で加算をしてまいります。合計七十点以上であれば在留資格が得られるということでございます。

 この結果、従来でありますと十年間在留をされました上で永住許可要件がとれるところでございますけれども、このポイント制によりますと五年間で永住許可の対象になり得るということと、配偶者の就労が認められるということ、それから年収の要件等ございますが、親の帯同、家事使用人の帯同が許されるという仕組みになっております。

山内委員 ありがとうございました。

 次に、本法案の中にもジェトロの役割が書かれております。ジェトロがワンストップサービスで外国人材、外国企業の誘致の窓口になるということはいいことだと思うんですけれども、今のジェトロのそういったサービスの体制についてお伺いします。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 ジェトロでは、これまで日本への立地を検討しているグローバル企業の支援に向けて取り組みを強化してきておりまして、一元的な相談窓口を設置し、個別企業からの相談対応や関係省庁の紹介、国内企業との面談のアレンジ等の各種サポートを実施しております。また、各種士業サービスと連携いたしまして、ワンストップで行政手続の書類作成等のサービスを実施しております。このほかにも、住居や外国人学校、医療機関等の情報提供等、生活関連のサポートも実施しているところでございます。

 経済産業省といたしましては、昨年十二月に策定されたアジア拠点化・対日投資促進プログラムにおきまして、グローバル企業のニーズを踏まえながら、ジェトロや外国企業が必要とする行政手続を所管する関係省庁と連携し、引き続き、対日投資支援のためのサービスの充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

山内委員 こういう体制ということに関して、大体どれぐらいスタッフとか予算というのは確保してあるんでしょうか。もし時間がかかるようだったら、別の質問をしている間に調べていただければと思います。

 大体、九〇年代のフィリピンとかタイには投資促進庁みたいな役所があって、BOI、ボード・オブ・インベストメントとか、そういう投資促進に特化したような役所を置いて、一生懸命投資を誘致しているということが東南アジアではありました。日本でも、役所をつくれとは決して言いませんけれども、それに近いサービスをやれるのはジェトロしかないかなと思っているんです。

 教育と医療ということに関しては、資料を読む限りは、士業関係、行政書士、司法書士、会計士、社労士、こういったことは丁寧にやれるんだと思うんですけれども、子供の教育とか、言葉も通じないし、ジェトロの担当者がその場で地元の公立小学校に電話をかけてくれる、それぐらいのサービスがあってもいいかなと思うんですけれども、そういう手厚いサービスができる体制になっているんでしょうか、お尋ねします。

中山委員長 先ほどの質問も同時に答えてください。

厚木政府参考人 誘致関係を担当している職員は五十名でございます。ちなみに、韓国のKOTRAが約百二十名ということでございますので、先生御指摘のとおり、今後アジア拠点化施策を推進していく上でさらに強化していく必要があるというふうに思っております。

山内委員 五十人というと、ジェトロの事務所は全国にありますから、一カ所当たりだとそんなに手厚い人数はないと思いますし、恐らく五十人だと、英語で対応できるとか中国語で対応できるとかスペイン語でできるとか、いろいろな語学に対応できるというところまでは十分じゃないと思いますので、もう少し体制の充実ということが必要ではないかなというふうに思います。それは、質問というよりは意見ということで申し上げます。

 次に、ちょっと一問飛ばしまして、行政の英語化について質問します。

 行政の英語化は必要だと思いますが、どこまでやるかが大事だと思います。あらゆる公文書を英語に訳すとなると手間もお金もかかりますし、無駄にもなると思います。どの程度まで行政の英語化を進めるのか、そのためにどういう人員配置とか人材育成をやられているのか、質問します。

厚木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、何でもかんでも英語化するということではないと思います。グローバル企業が我が国のさまざまな情報に直接的に接することができるよう、そうした企業の関心のあるものについて行政の英語化を進めていくということが重要だというふうに思います。

 アジア拠点化・対日投資促進プログラムにおいても、外国企業等が我が国で活動しやすくなるよう、行政の英語化や許認可等の審査等に当たる職員への研修等の実施が盛り込まれているところでございまして、経済産業省といたしましても、外国企業が利用する情報や手続について英語化に努めてきたところでございます。

 具体的には、グローバル企業の高付加価値拠点の初期投資費用を補助するアジア拠点化立地補助金への申請については英語での申請を認めているということ、そのほか、本法案に基づく申請についても同様に英語での申請を認めるということを考えております。

山内委員 これは質問というか、意見ということになるかもしれませんが、枝野大臣もコメントしていただければと思うんです。

 行政の英語化、特に経産省だけでいっても、本気でやろうとすると、相当お金もかかる、人もかかる、同じペーパーを二種類つくるわけですから相当手間もかかる。だから、どこまでやるかというのを、全省的とか全政府的に考えなきゃいけない時期なんじゃないか。私は、英語化を何でもかんでもやると費用対効果が悪いと思いますので、今局長がおっしゃったように、限られた部分でいいと思うんですけれども、その限る範囲というのをある程度みんなで話し合って決めておかないといけないんじゃないかと思うんですけれども、そういう行政の英語化、経産省はどのように取り組まれているか。

枝野国務大臣 山内さんのように国際派だと、余り広げ過ぎるとという方向に目が行くのかなと思いますが、逆に、私は、どちらかというとドメの人間で、昨年、大震災の後、官房長官として広報をやっていましたときに、外国語による発信がなくて、早くしてくれという非常に強いさまざまから御要望をいただいて、正直言って、対応に苦慮したという経験をしておりますので、今の国際社会の中における日本の立場からすれば、やはり必要とされる情報は少なくとも英語化する必要性を非常に強くそのとき感じました。

 まさにやり過ぎても効率が悪いということでございますので、経済産業省としては、特に通商政策を初めとして、海外の方のニーズがある部分というのはかなり明確に存在をしますので、海外の方のニーズ、それから海外の人に知っていただくことによって我が国にメリットがあるのか、この二つの軸で英語化すべきところはしっかりしていく、ただしやり過ぎはしないということだと思いますので、まずは、省内についてしっかりとその線で進めていきたいと思っています。

山内委員 ありがとうございました。

 次に、ちょっと経産省の領域からまた外れる質問になりますけれども、医療についてお尋ねをしたいと思います。

 やはり医療サービスを自分の国の言葉で受けられる、あるいは最低でも英語で医療サービスを受けられるというのは外国の人にとっては非常に大事なポイントだと思うんですけれども、これまた厚労省が前のめりでやるとはとても思えない領域です。そういった意味でも、経産省としても、何らかの提言なり働きかけが必要だと思います。

 あるいは、フィリピンの看護師さんを受け入れるスキーム、経産省を中心にやっていたと思うんですけれども、フィリピンの看護師さんは大体英語で教育を受けていますので、日本語がだめだというデメリットよりも、むしろ、英語ができるというプラス面をうまく使えば、これからいい戦力になるんじゃないかと思うんですけれども、そういった外国人向けの医療のサービスに関する規制の緩和、こういったことについて政府としてどのようにお考えなんでしょうか。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、海外の企業から我が国に立地をしていただくに当たって、教育と医療というのがやはり大きなポイントだろうと思います。

 私も、この半年ほど、経産大臣の仕事で、日本から海外にいろいろ投資等を進めていくに当たって、相手国の教育と医療、特に医療の最低限の水準が確保されていないと、なかなか日本企業の進出が加速しないという実態といいますか、話をいろいろなところで聞いておりますので、それは全く逆、裏返し、水準は高いわけですから、母国語または英語、少なくとも英語が使えるという状況を確保するということは大変重要だろうと思っております。

 そうした意味では、新興国からの外国人患者の受け入れということを政府の方針として実施してきているところであります。外国人患者の受け入れのためには、医療通訳の育成や、さまざまな広い意味でのインフラが必要だということでこれを進めているところでありまして、これは結果的に、日本に住んでいただく外国人の方にも、住みやすさの向上につながっていくものだと思っています。

 厚生労働省とも連携をいたしまして、医療特区、それからさらに必要な規制緩和についても、先ほどのお話のとおり、経済産業省から強く必要性を訴えていきませんとなかなか進まない課題だと思いますので、御指摘を踏まえて、さらに厚生労働省などに働きかけてまいりたいと思っております。

山内委員 ぜひお願いしたいと思います。

 最後に、半分質問、半分意見ということで、大臣に感想をお聞かせいただければと思います。

 今回の法案、年間三十社対象ということで、やはりこれだけでは十分ではないと思いますので、いろいろな別の政策が必要だと思います。と同時に、本当に補助金とか減税政策でいいのかなと、先ほど共産党の吉井委員の質問を聞いていて、意外と、補助金をもらっても、後で無駄になっている企業が多いというような話がありました。どれぐらいの割合かはわからないかもしれませんが、やはり補助金にしても減税にしても、税収減になります、あるいは歳出がふえます。

 そういった意味では、まず補助金、税金よりも先にやるべきことを全部やって、その後に補助金と減税ということが順序じゃないか。増税の前にやることがあるではなくて、減税の前にやることがあると思うんです。

 例えば、規制緩和、規制改革、先ほど来のビザの話、学校や医療の話、そういう補助金、減税よりも先にやることを全てやり尽くして、その後、補助金、減税を考える、そういう順序で今後考えていった方が財政再建の観点からもいいんじゃないかと思うんですけれども、大臣のお考えをお聞きします。

枝野国務大臣 一般論として申し上げれば、御指摘のとおりだと思います。補助金とか減税とかということで財政に影響を与えるやり方以外のことを、あらゆることをやり、それでも足りないところを財政的なやり方で補うというか、底上げをするというのが基本だろうというふうに思います。

 ただ一方で、この政策に限らず、大変強く感じておりますが、時間を全部とめて、いろいろなことを順番にやっていって、それでどこかからまた時間を動かすということができれば今のような順番でできるんですが、現実に、激しい国際競争の中で、いろいろな意味での空洞化が進んでいる、各国との競争が進んでいるという状況の中で対応していかなきゃならないということですので、全て、こっちが終わっていないからこっちはやらないということはなかなかできない。

 御指摘を踏まえて、財政的な手段によらない部分のところをさらに強化していくということで御理解をいただければと思っています。

山内委員 以上で質問を終わります。

中山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案に対する反対討論を行います。

 反対理由の第一は、本法案が、企業が国を選ぶ時代という多国籍企業の目線に立って、財界、日本経団連の成長戦略を受けて策定された、外需頼み、多国籍企業呼び込みという新たな大企業本位の経済産業政策だからであります。

 この間、国内における大企業への誘致補助金政策がことごとく失敗したように、多国籍企業の呼び込み誘致政策が成功するどんな保証があると言えるでしょうか。投資、雇用効果についても、願望以上のものはありません。

 第二は、法案が、法人税法本則の税率引き下げに加えて、立地競争力強化の名による多国籍企業に対する一層の税負担軽減策であり、OECD、経済協力開発機構がたびたび戒めている、有害な税の引き下げ競争だからであります。個別の多国籍企業にとって利益となっても、経済全体では負のスパイラルに落ち込み、国民経済との矛盾を深めるだけです。

 本法案は、我が国の法人税率が国際的に高いという前提に立っております。確かに、地方税と国税を合計した表面税率はアメリカのカリフォルニア州と同水準です。しかし、多国籍企業である日本の大企業は、既にさまざまな大企業優遇税制によって、法人税の実際の負担率は決して高くありません。

 例えば、二〇〇九年度に新設された海外子会社配当非課税制度は、海外子会社から受け取る配当益金の九五%を非課税とするものです。国税庁の調査によれば、二〇一〇年度の益金不算入の総額は三兆九千四百十七億円にも及び、計算上、およそ一兆円以上もの減税となります。また、研究開発減税制度によって、同じ年度には三千七百億円もの減税となっております。

 しかも、OECDの企業負担の国際比較のように、税と社会保険料との合計で見るならば、日本はフランス、ドイツより低く、国際的には高いとは言えません。

 オバマ大統領もことしの一般教書演説で、国内の雇用と税を空洞化させる多国籍企業に対する規制と課税強化を強調しました。今こそこうした方向が求められます。

 日本の産業、雇用、税収の空洞化に歯どめをかけるため、法人税引き下げ競争にストップをかけ、最悪の大衆課税である消費税の大増税をやめて、真に内需中心、地域、中小企業主導の産業経済政策への転換を求めて、討論を終わります。

中山委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより採決に入ります。

 第百七十七回国会、内閣提出、特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、近藤洋介君外四名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。菅原一秀君。

菅原委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 関係各府省庁等は、特定多国籍企業誘致の実現に向け各般の施策の実施に当たって緊密に連携するとともに、諸外国との競争に打ち勝つため、必要な予算の確保や税制上の更なる対応をはじめ、一層の優遇措置の拡大等に努めること。

 二 外国企業の誘致に当たっては、総合特区の活用をはじめ、国際競争力の強化に資する他の関連制度との窓口をワンストップ化するなど利便性を高め、関係行政機関等の積極的な対応を確保することにより、関連制度間の緊密な連携による相乗効果を生み出しつつ効果的な実施に努めること。

 三 事業計画の認定に当たっては、我が国事業者の特許発明、技術等が国外へみだりに流出することのないよう措置するとともに、地域経済を支える我が国事業者の健全な発展を阻害するなど地域経済の疲弊につながることのないよう十分に配慮すること。

 四 我が国の産業空洞化に歯止めをかけ、地域経済や雇用への悪影響を回避するため、円高・デフレの解消に一層の努力を払うとともに、電力システム改革等を通じてエネルギーコストの上昇を極力圧縮し、種々の規制の見直しを進めるなど、産業競争力の回復、強化に向けて総合的な政策対応を早急に講ずること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、今申し述べましたことをもって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

中山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、枝野経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。枝野経済産業大臣。

枝野国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

中山委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

中山委員長 次回は、来る二十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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