衆議院

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第9号 平成25年4月24日(水曜日)

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平成二十五年四月二十四日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 石原 宏高君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 近藤 洋介君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      越智 隆雄君    大見  正君

      勝俣 孝明君    工藤 彰三君

      佐々木 紀君    白石  徹君

      助田 重義君    武村 展英君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      根本 幸典君    福田 達夫君

      福山  守君    船橋 利実君

      細田 健一君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      山田 美樹君    吉川 貴盛君

      枝野 幸男君    大島  敦君

      岸本 周平君    馬淵 澄夫君

      木下 智彦君    重徳 和彦君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      井坂 信彦君    三谷 英弘君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国務大臣         稲田 朋美君

   内閣府大臣政務官     山際大志郎君

   内閣府大臣政務官     亀岡 偉民君

   財務大臣政務官      竹内  譲君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府参考人

   (内閣官房消費税価格転嫁等対策準備室長)     齋藤 哲夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   原  敏弘君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    草桶 左信君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    菅久 修一君

   政府参考人

   (国税庁徴収部長)    岡南 啓司君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    富田 健介君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           毛利 信二君

   参考人

   (立教大学名誉教授)   舟田 正之君

   参考人

   (法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)         小川 孔輔君

   参考人

   (日本税理士会連合会常務理事・調査研究部長)   上西左大信君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  白石  徹君     工藤 彰三君

  辻  清人君     船橋 利実君

  根本 幸典君     福山  守君

  細田 健一君     助田 重義君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     白石  徹君

  助田 重義君     細田 健一君

  福山  守君     根本 幸典君

  船橋 利実君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     辻  清人君

    ―――――――――――――

四月二十三日

 原発からの撤退を決断し、エネルギー政策の転換を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五〇一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五六六号)

 原発からの撤退を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五〇二号)

 原発ゼロを直ちに求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五〇三号)

 即時原発ゼロに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五〇四号)

 直ちに原発ゼロを求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五〇五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五二九号)

 同(笠井亮君紹介)(第五五七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五六五号)

 原発からの撤退を決断しエネルギー政策の転換に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六二一号)

 同(笠井亮君紹介)(第六二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房消費税価格転嫁等対策準備室長齋藤哲夫君、内閣府大臣官房審議官豊田欣吾君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長原敏弘君、消費者庁審議官草桶左信君、消費者庁審議官菅久修一君、国税庁徴収部長岡南啓司君、中小企業庁次長富田健介君及び国土交通省大臣官房審議官毛利信二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介であります。

 きょうは、稲田大臣、茂木大臣初め関係の政府の皆様、御出席をいただきましてありがとうございます。消費税の価格転嫁法案の法案質疑に野党のトップバッターとして入らせていただきたい、こう思います。

 私は、この消費税転嫁法案の質疑に対して、先日、久方ぶりに本会議で代表質問をさせていただきました。六年ぶりぐらいに本会議の壇上に立たせていただいたので若干緊張いたしましたが、大変多くの御声援をいただきまして感激したところでございます。

 消費税をなぜ引き上げる必要があるのかということについては、もう論をまたないわけでありまして、子育て、年金、介護、医療といった社会保障制度、まさに人生のセーフティーネットであるわけであります。ここを持続可能なものにする、そして、より充実をさせるといった目的のために、まことに国民の皆様には申しわけないわけでありますけれども、この消費税の引き上げ、税率を引き上げるほか道はないということで、当時、三党で真摯な議論を重ねて合意に至ったわけであります。

 この合意に至った三党合意を踏まえて、本会議のときも指摘をさせていただきましたけれども、民主党政権のもとで閣議決定をさせていただいた社会保障・税一体改革大綱には、明確に、「自ら身を切る改革を実施した上で、税制抜本改革による消費税引上げを実施すべき」と書いているわけであります。

 「自ら身を切る改革を実施した上で、」このことは、すなわち行政改革を意味するわけであります。また、あわせて、残念ながら、昨日、片肺飛行で本会議で可決をしてしまいました。これは、衆参両院だとは思いますが、衆議院の定数の削減の議論も、当然、立法府としてもみずから身を切る改革、こういうことだろうと思っています。

 ですから、党首討論において、定数削減について公党間で、これを実施しましょうということを当時の野田総理が申し上げ、そして当時の安倍自民党総裁もやりましょうとおっしゃり、山口公明党代表も、これはすばらしいことだ、やりましょうと、三党がまさに党首討論の場で定数削減についても同意をした。次の国会まで、すなわち今国会でありますが、同意をしたわけであります。

 残念ながら、それについては大きな進展が見られないまま、〇増五減のみが先行してしまったわけでありますが、これについては、議会においてぜひ定数削減は進めるべき、我々の責任においてやらなければいけない。あわせて、行政改革についても、これは徹底してやらなければいけない、こう思うわけであります。

 稲田大臣は本法案の責任閣僚でもございますが、同時に行政改革担当の閣僚でもあられます。消費税率を引き上げるに当たって環境を整える本法案の責任者であるわけでありますが、同時に、この大綱にも示されている、みずから身を切る改革、行政改革を実施する責任者でもあられます。

 そこで、お伺いしたいのですが、まず、その中で行政事業レビューであります。

 行政事業レビューについては、我々政権下で、いわゆる行革仕分けをスタートに、それぞれ各省庁において、政務三役が加わってというよりも、主導的な役割を果たしながら、各担当の事業を点検していく、その中で、いわゆる民間企業におけるPDCAサイクルをしっかり行政の中にも根づかせていこうと、全体の行革仕分けはこれで進んだわけでありますけれども、それをさらに踏み込む形で、行政みずからが行政事業をレビューするということでスタートしたわけであります。

 その行政事業レビューでありますけれども、安倍政権になって新しい方針が示された。その中で、政務三役が加わらなくてもよいという方針が示されました。なぜ、政務三役が加わらなくてもよいという方針を示されたのか。

 私は、行政事業レビューについては、政務官時代も、また副大臣時代も、経済産業省にかかわってまいりました。また逆に、行革仕分けの立場では、仕分け人に対峙する立場で、政務官としても主張してまいりました。両方の立場を経験させていただきましたが、非常にこれは、いろいろな御批判はあるにせよ、政治家が加わるという意味は大きかったと私は思います。

 なぜ、政治家が加わらなくてもよいとされたのか。政治家が加わったことで、何か大きな不都合でもあると御判断されたのか、まず、その理由についてお答えいただけますか。

稲田国務大臣 私も、先日、本会議場で初めて趣旨説明をいたしまして、大変緊張いたしておりました。近藤先生が質問を緊張されているようには全く見えませんでした。その中で、行政改革についてかなり厳しい御指摘もございましたが、それは、行政改革をしっかりやるようにというエールだと私は受けとめさせていただいております。

 先ほど近藤先生が御指摘のように、私は、やはり政治に対する信頼というものを取り戻さないと、この増税のような、国民に対する負担を強いるようなことは決して理解をされないと思っております。その意味におきまして、消費税増税に限らず、政治に対する信頼を取り戻すというか、かち取るためにも、この行革についてきちんと取り組んでまいりたいと思っております。

 その上で、先生がお尋ねの行政事業レビューでございますが、私は、民主党政権で行われたものも、いいものはきちんと引き継いでいきたいと思っております。この行政事業レビューを引き継ぐことにいたしましたのも、各府省が五千にわたる事業をみずから見直す、そういう仕組みは非常に重要だと思ったからでございます。

 その中で、改善をしようということも考えました。そして、これまで、政務、担当職員、外部有識者の混成のチームで行政事業レビューを推進していたんですが、今回は、事業の点検にあって、それぞれの役割分担、位置づけを明確にしようということを考えました。

 今回の見直しでは、各府省がみずからの事業の検証を行うという取り組みの趣旨を踏まえまして、予算の企画立案や事業を執行する立場にあり、その必要性や有効性の説明責任を負うべき担当職員が責任を持って事業の点検を行うよう、事務方を基本としたチームを設けたわけでございます。

 そして、その結果を外部有識者がチェックして、そして、民主党政権のレビューシートを改善した形で、有識者の欄というものもきちんと設けて、有識者がどういう意見であったということも明確にするようにしたわけでございます。

 先ほど近藤委員は、政務が参加することに何か問題があったのかという御指摘ですけれども、問題があったというふうには認識をしておりません。そして、この行政事業レビューは、各府省の見直しですから、各府省の判断で、政務が参加するということもやっていただいたらいいのではないかなというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、民主党政権下で行われてきたことを引き継ぎ、そして、その上で、改善をした上で取り組み、また、その取り組みの中で何か問題点があれば、また委員からも御指摘をしていただきながら、改善をした、よりよいものにしていきたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 いいものは引き継ぐという姿勢、これはぜひそうしていただきたいと思うわけであります。

 我々民主党政権時代でも、自公政権下で行われたものについて、いいものはいいといって、三年半、引き継いできたものも多々あるわけでありまして、政権というのは、一種、駅伝のリレーみたいなものであって、それぞれ、日本国の国富をふやし、繁栄をさせるという思いでたすきをつなぐ話でありますから、政権がかわってもたすきはつながれるんだろう、こうは思います。

 ただ、ちょっとあえて申し上げたいんですが、改善をされたとおっしゃいますが、私の目から見ると、どうも改悪をされた部分が多いんじゃないかなと言わざるを得ない部分があるんです。

 代表的な部分で申し上げますと、例えば「廃止」といったことを、今回の行政事業レビューでは基本的にはなくす、レビューで「廃止」という判断はしないというふうに私は受けとめました。なぜ、「廃止」という項目をなくすのか。

 役所というのは基本的には、執行機関でありますから、継続を基本にする体質がある、私はこう思っているんですね。ですから、前任がやったことを基本的には引き継ぐというのが、これは役所の常であり、行動パターンなんだろう、こう思います。なかなか前任を否定できないというのが、これはお役所の、よしにつけあしきにつけそういうものなんだろう、逆に言うと、余りころころ変わられたら、それは国民の立場から見ると混乱するわけでありますから、むしろ、継続を基本とするというのが役所の仕事のスタイルなんだろう、それに対して、変更を迫るのはまさに立法府というか国会の役割なんだろう、政治の役割なんだろう、こう思うわけですね。

 そういう中で、政務が加わらないで、有識者とはいうものの、担当の部署が説明をし、そしてそこで一緒に議論をしてという中でこの「廃止」をなくすということは、すなわち、役所の仕事は継続させる、これは逆に言うと、まさにレビューという本来の目的には反するのではないかと思うわけであります。なぜ、「廃止」というものをなくされたんでしょうか。

稲田国務大臣 行政事業レビューというのは、各府省みずから見直すというところにポイントがあります。また、無駄を排除するという面も非常に重要です。と同時に、その事業をよりよい事業にするとか、無駄な事業はやめるとかいうこともあります。

 先ほど御答弁いたしましたように、政務が参加しないのではなくて、各府省の判断で政務が参加することもやっていただいたらいいと思います。政務が参加することを必要条件とはしていませんけれども、また政務というのは、大きな観点からその府省の事業全体を総括、そして責任を持って、よりよいものにする責任があるというふうに思っております。

 そして、事業レビュー、各府省のみずからの取り組みですので、それを重視しながらも、また行政改革推進会議でも横串を入れて、各府省が見直した行政事業レビューをさらに見直すことともいたしております。

 そして、今お尋ねの、「廃止」という選択肢をなぜなくしたのかということです。事業を廃止しないということではありません。そうではなくて、むしろ「廃止」という選択肢があったために、何となく、「廃止」というその結論に非常に着目されて、本当の意味での建設的な見直しやら議論ができていたのかなというところに疑問を感じたわけであります。

 そして、「廃止」「抜本的改善」「一部改善」「現状通り」と四択だったものを、「事業全体の抜本的改善」「事業内容の改善」及び「現状通り」という三本にいたしました。今、先生が御指摘の「廃止」というのは、「事業全体の抜本的改善」の中に含まれております。どういうことかというと、事業全体を抜本的に改善しない限りそれは廃止ですよというのがその選択肢でございます。

 そして、これは公開プロセスの趣旨、目的を明確化したことに伴う改善であって、決して、事業の見直しを緩めたり、事業を継続することを前提にするというものではございません。先ほど申し上げましたように、各府省の公開プロセスの実施に当たっては、対象事業や外部有識者の選定に対して、行政改革推進会議やその事務局が関与することにもいたしております。

 より効率的で厳格な点検、議論、また建設的な事業の見直しに向けて、改善をしたところでございます。

近藤(洋)委員 大臣、おっしゃることも理解できるんです。もう大臣も霞が関の機構のことはよく御存じであられますから、殊さら申し上げませんけれども、しかし、やはり抜本的改善というのは、そこは、役所側からすると、あの手この手で抜本的改善に見せながら、物を残していくというそのテクニックについては、私は、役所の方々を信用していないわけじゃありません、非常に志を持った職員がたくさんおります、しかしながら、そのテクニック、また、何とかかんとかその事業を残そう、やはりそこを自分の代で潰してしまったら先代たちに申しわけが立たないという思考も、残念ながら残っている部分はあろうかと思っています。

 やはり私は、一種の、言葉はどうか別にして、暴力装置的なと言うつもりはございませんが、廃止があるんだという、そこの緊張感というのは、仕分けされる立場、そして省内において事業を見直す立場の両方を経験した者として、それは廃止もあり得るんだということがやはり本気の見直しにつながる、こう思います。

 いずれにしろ、新しい事業レビューがこれから始まるわけであります。どういうものになり、その結果どういう事業の変化が見られたのかということについては、これは国会においてもきちんと報告をされるでしょうから、それをしっかり、我々としては、逆の意味で行政事業レビューを国会においてレビューさせていただきたい、こう思います。

 私は、やはり政務三役が加わることは意味があったと思います。そこは、やはり真剣に一つ一つ政務の立場で、自分の担当の役所がどういう事業をしていて、どういう仕事ぶりをしているのかというのは、そういう場面に接しないとなかなかわからないというのも実態でありますから、余り役所言葉は使いたくありませんが、ぜひ、大臣のリーダーシップにおいて、政務三役の参加を慫慂というんでしょうか勧めるというんでしょうか、そういうことで、できるだけ多くの政務三役というか、担当の政務三役全員が参加する必要はございませんが、誰かがこの行政事業レビューを責任を持って見るという形で促していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 今、近藤委員からさまざまな御指摘をいただきました。行政事業レビューをよりよいものにして行政を効率的なものにする、無駄を排除する、そして、その目的は、政治に対する国民の信頼を取り戻すということでございますので、全く本当に意識は一致していると思います。

 そして、この行政事業レビューのあり方については、自民党政権になってから、民主党政権で行われたことも踏まえながら、行政改革推進会議で議論を重ねて、こういう取り組みというか実施方法を決めたところでございます。

 何度も申し上げますが、政務三役を排除するとか、民主党政権で問題があったからということではなくて、それぞれ各府省の自発的な、自律的な取り組みを重視したいということでございますので、まずこのやり方で実施させていただいて、また先生からの御意見をいただきながら、改善にも努めてまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 では、法案の中身について質問に入ります。

 今回の転嫁対策法案でありますけれども、我々民主党政権下で議論をしてきたものに加えて、自民党の税制調査会で議論を重ね、幾つかの点が加わったわけであります。そこで、その加わった点について、この場ではただしていきたい、こう思うんです。

 一つには、いわゆる消費税還元セールといったものを禁止するという方針が示されました。

 委員長のお許しを得て、お手元に資料を配付させていただいております。

 まず、消費者庁の方にお伺いしたいんですが、私は、昨日、この1から6まで、現時点で禁止されるものは何なのか、そうでないものはどうなのかというのを課長さんと議論させていただいて、表にまとめました。

 いわゆる「消費税還元セール」、これはだめだ、こういうことであります。「三%還元セール」、これは消費税を想起させる可能性があるので、これから検討しなければいけない。これは還元という言葉が問題、三%と還元がダブルでまずいので検討なんですが、3「全品三%値下げセール」については、やはり三%という数字が消費税を惹起させるというので、これも検討しなければいけない。次が、「生活応援・全品価格据え置きセール」、これも検討中。もう一つ、5番で、「こういう時期だから全品生活応援セール」、見出しに「こういう時期だから」というのが入ってどうですかというと、これもちょっと丸とは言えない、こういうことであります。次、「春の生活応援セール」、私はこれは間違いなく大丈夫だろう、こう思ったら、役所側のきのうの説明では、いやいや、これも時と場合によりけり、こういうお答えぶりでございました。

 確認でございます。この1から6まで、果たして、現時点で確実にだめなのはどれで、あとはどうなのか、お答えいただけますでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 本法案八条では、消費税に関連するような形で、いわゆる消費税の転嫁を阻害する安売り等の表示を行うことを禁止しているものでございます。

 そこで、「消費税還元セール」等、消費税還元セールというように消費税という文言を用いている場合、これだけではなく、消費税という文言を用いていない場合でありましても、例えば、それが新聞折り込みチラシで行われている広告であるような場合でありますと、そのチラシでの表示全体から見まして、一般消費者が消費税に関連した安売り等の表示であると認識するかどうか、そういうふうに認識するものは禁止されるというふうに考えております。

 したがいまして、具体的にどういう表示が禁止されるかというのは、その表示の一部の文言のみを取り出して判断されるわけではございませんで、表示されておりますその値引きの幅でありますとか時期、態様、そうした要素も総合的に勘案しつつ、先ほどのチラシの例でいえば、チラシでの表示全体から見まして、消費税と関連づけて値引き等の宣伝を行っていることが明らかであるかどうか、明らかであるものは禁止されるということでございます。

 したがいまして、お示しされた例で申しますと、2から6につきましては、そういう意味で、その他の表示全体との関連ということを考えて判断しなければいけないというふうに考えております。

近藤(洋)委員 ですから、今の時点では、消費税の引き上げと関連させるものについては問題だ、こういうのが消費者庁の判断です。しかし、これは今の時点では非常に不透明ですよね。

 稲田大臣、ちょっと済みません、通告はないんですけれども、御家庭でも主婦でもあられると思うんですが、最近、スーパーとかはよく利用されますか。大体、普通のスーパーが月に何回ぐらいこういう引き下げセールをやられるか、御存じでしょうか。月に何回ぐらいこういう全品値下げセールというのをやられているか御存じですか。印象で結構でございます。もう大臣がスーパーに行く機会はなかなかないでしょうけれども、月に何回ぐらいされるか、御存じですか。

稲田国務大臣 私の印象としては、二回ぐらいやっているんじゃないでしょうか。

近藤(洋)委員 そうです。二回はやっていますね。毎月二十の日は何とかの日とか、いち・に・さんの市とか、いろいろなことを言いながら、十日とか、二十日とか、全品値下げセールを大体月二回ぐらいやっていますよ、大手のスーパーは。小さなスーパーだってやられています。

 ですから、何を言いたいかというと、セールというのは、本当に、特に小売店は、ゼロのつく日は何の日とか言ったり、全品値下げ、かつ、きょうはお肉が特売だとか、こういうことをやっているのがスーパーの小売の現場です。セールというのは、何もジャイアンツ優勝セールの、年に一回なんというものではなくて、毎月やっている行動なんですね。その毎月やっている行動が、今の時点で、さて、1はだめだけれども、2から6までがどうかわからないというのは極めて不安定な状況なんだろう、こう思うんですね。

 これは、改めて早急にガイドラインを決めなきゃいけないと思うんです。まず、いつまでにガイドラインを、そしてどういう形でのガイドラインになるんですか。お答えください。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 ガイドラインにおきましては、先ほど申しましたような基本的な考え方でございますけれども、消費税と関連づけて値引き等の宣伝を行っていることになるかどうか、これについて判断する際の考慮要素、基本的な考え方、こういうことを示したいと考えております。

 それに加えまして、事業者の方々にとりまして、具体的にどのような表示が禁止されるか、これは事業者の方々からいろいろお話を聞きまして、実際にどういう表示を想定しているかというようなこともお伺いしつつ、具体的にどういう表示が禁止されるかということについて、できるだけわかりやすく示してまいりたいというふうに考えております。

 また、このガイドラインにつきましては、速やかに作成し、公表することで周知徹底を図っていくことが重要と考えておりますので、法律が公布された後、パブリックコメントなどの所要の手続を行った上で、できる限り速やかに公表できるよう、準備を進めてまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 これもちょっとやや実務的な話なのですが、私は、きのう消費者庁の方々と意見交換をさせていただいて、ふと思ったんです。

 この6番の「春の生活応援セール」も、四月、消費税率が引き上げられるその時期だと、やはり誰もが消費税の引き上げなので、場合によっては、普通の時期の生活応援だったら問題ないんだけれども、まさに時期についての問題が生じるというお話だったんですね。

 だから、何を言いたいかというと、この四月というのは、恐らく、来年春は世の中全部が消費税引き上げだということをわかっている時期ですから、値上げの春、こういうことなんですね。だから、こういう値上げの春のときに応援セールというのは、消費税との関連性が出てくるかもしれないので、これもクエスチョンだというお答えだったんです。

 だとすると、審議官、四月ないしは五月の連休ぐらいまで値下げセールはできない、というか、セールはできないともとれるんですが、いかがですか。そういう可能性もあるんですか、今の時点で。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 本法案の八条では、消費税に関連するような形での安売り等の表示を禁止しているということでございますので、いわゆる値引き自体、それから価格設定行動自体を禁止するものではございません。また、先ほどお話が少し出ました、これまで日常的に行っていることをまた引き続き行っていく、それ自体を禁止するものでもないというふうに考えております。

 ただ、今御指摘いただきましたような、いろいろ不明な点があろうかと思いますので、事業者の方々からもいろいろお話を聞きながら、わかりやすいガイドラインという形で示していきたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 非常にここは大事な点だと思うんですね。というのは、稲田大臣、やはりプライシングというか価格の決定というのは、企業にとって最も重要な意思決定なんですね。それは企業経営の基本というか、企業戦略そのものなわけであります。

 その価格設定、売り方について、非常に気持ちはわかるんです。消費税還元セールといったようなものができる大流通企業と、そうできない小規模事業者を、そこはやはりイコールフッティングにしなければいけないということ。今回の法の趣旨というのは私も十分理解するんですが、しかし、これを現実に落とし込んだときに、企業行動にとって最も重要な価格設定について、非常に不透明な運用になるんじゃないか。

 稲田大臣は、この法案の担当大臣であると同時に、公取の担当大臣でありますから、ちょっとあえてこの資料に独占禁止法を。

 経済取引の憲法というのは独禁法でございます。これは経済取引の憲法です。その憲法たる独禁法の第一条には明確にこう書いているんですね。

 もちろん、独占、不公正な取引方法を禁止する、そして、過度な集中を排除、防止するということを書いているのと同時に、下線を引いていますけれども、独禁法の目的に、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用及び所得の水準を高め、もって、国民経済の健全な発達を促進することを目的とする、これが独禁法の目的でございます。

 ここに書いている、まさに公正かつ自由な競争という観点からいくと、今回のこの規制というのは、事業者の公正かつ自由な競争というのを少なくとも一定期間、相当程度阻害するおそれはないか。

 公取担当大臣として、ここの独禁法の精神に照らしても、ちょっと、やりようによっては過度な規制になりはしないかという懸念を持つんですが、公正な競争を所管する大臣として、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 独禁法の一条の趣旨、まさしく自由で公正な競争をもって、経済の発展と消費者の保護ということでございますので、これは、委員御指摘のとおり、価格の設定というのはまさしくその根幹をなすような競争だと思います。

 一方で、先ほど委員も御指摘になったように、この八条の趣旨であるところの、消費者に誤認を与えない、そしてまた、消費者に消費税を転嫁できない買いたたきなどを誘発することがないようにというその趣旨は、御理解をいただけたと思っております。

 八条の中で、一、二、三号とありまして、一号は、「消費税を転嫁していない旨の表示」、私たちは消費税をいただいておりませんという表示ですよね。二号は、「負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示」。三号で、「消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示」、ここが不明確であるという御指摘だと思いますので、ここはきちんとガイドライン等で明確にしてまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 今回の問題は、これは価格だけのことを書いていますけれども、ポイント還元などというのも当然これに類似して起きるわけですね。ですから、相当程度、事業者の活動を制限するおそれがあると思うんです。

 こういう付加価値税を引き上げるに当たって、こうした制限をした例が果たしてあるのかと事務方に聞いたら、余りございません、世界的にも余りございません、こういう話でありました。日本独特の制度であるように思うわけでありますけれども、私は、本来、やはり基本的には慎重に行うべきだ、こう思うわけであります。

 経済、流通業も含めて所管する大臣として、この法のガイドラインの運用についてどうお考えなのか。あわせて、少なくともガイドラインを作成するに当たっては、かなりの部分、要するに、現場の声を相当聞いてもらわないと、これは消費者にとっても不幸が生じる、こう思うのでありますけれども、ぜひ流通の現場の声を十分に反映させるようにということを、茂木大臣、内閣においても主張されるべきだ、こう思いますが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 恐らく、欧米と日本のいわゆるこういった販売促進活動はかなり違っておりまして、委員御指摘の、例えばスーパー等での値引きといいますか、そういうセール、月に何回かやられていると思います。極端に言いますと、特定の売り場に限定したら、ほぼ毎日のような形でやっている。パリなんかは、ソルドは二回ですよ、基本的には春と秋。こういった違いというのがかなりあるのではないかなと私はまず思っております。

 そういった中において、何が問題かというと、この消費税、これは利益還元セールとは違うんですね。スーパーに利益が残ったら、それを消費者に還元することはできるんですよ。ところが、消費税は小売業者に残っては困るんです。それを政府に納入してもらうんですから、やるとしたら、消費税を還元するのは政府しかできないんですよ。

 このできないことをやっているということにやはり問題があるわけでありまして、その結果として、恐らく、小売でいいますと、かなりぎりぎりのマージンでやる、そこのところにさらに三%を乗せる、五%の値引きをするということになりますと、これが納入業者に対する買いたたきにつながる。さらには、周辺の小売業、さらにマージン、三%までなかなか落とせない、こういうところに対して悪影響が及ぶといったことで、今回の措置はとらせていただいております。

 もちろん、こういった販売促進活動の自由度、これはきちんと確保しなければいけない、その一方で、こういった過剰な、消費税に便乗したような値下げ、これはやはり是正しなければならない、こういうバランスの上で組み立てるべきだ、こんなふうに思っておりまして、今後、ガイドラインをつくる中で、当然、流通業者に対する説明をしっかりする、そしてまたパブリックコメントを通じて現場の事業者の声をしっかり聞いていく、委員御指摘のとおり、大変重要なポイントだと思っております。

近藤(洋)委員 私は、消費税率引き上げは次の世代のために必要だという思いで、党内の議論でもそういう主張を展開してまいりましたし、今もその立場に立つものでありますが、しかし同時に、経済全体に与える影響というのはやはり注意深く見なければいけない、こう思うわけであります。

 配付資料の二枚目を見ていただければと思うんですが、平成元年のときの消費税の、これはチェーンストア協会の統計でありますけれども、やはり三月にどんと上がって、四月、落ちてきた。税率アップ、平成九年のとき、このときはより顕著なわけでありますが、三月に駆け込み需要があり、四月以降はずっと底をはっている、こういうことであります。

 今回の消費税率について、これもいろいろ議論のある中で、二段階、こうなったわけであります。来年の春、そして一年半後の秋。流通の現場の方に聞くと、一発勝負の方がありがたかった、こういう声もある中で、二段階。二段階ということは、来春やって、そして次、間もなく一年半後にあるということは、消費者の心理に立つと、ずるずると消費が減退する可能性、おそれを秘めていると思うんですね。

 消費が減退する、こういうことになると、GDPの六割は国内消費でございますから、大変大きな影響もあると考えるわけですけれども、この消費税率を上げる、日本経済全体に与える影響について、どのように政府は現時点で分析をされているのか、これは内閣府なのか財務省なのか、どちらがお答えいただけますか。

豊田政府参考人 お答えいたします。

 過去における我が国や諸外国の例を見ても、消費税率の引き上げ前後には駆け込み需要及びその反動減による影響等が見込まれておりますが、今回の税制改正で、住宅取得の影響を平準化、緩和する観点から住宅ローン減税の抜本的な拡充などの措置が講じられていること、また、今般は社会保障・税一体改革による消費税率引き上げによる増収は全額社会保障財源として国民に還元されることから、引き上げ前後の期間でならしてみると、経済への影響は限定的になるものと考えられます。

 消費税率の引き上げにつきましては、本年秋に、税制抜本改革法附則第十八条にのっとりまして、名目及び実質の経済成長率等、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案して判断を行うこととなっており、条文の趣旨を踏まえて適切に対応していくこととなります。また、その後におきましても、経済財政状況の激変等が生じた場合には、適切な対応を行っていくこととなります。

 いずれにせよ、デフレを脱却し経済をしっかり成長させていくことが重要であると考えておるところでございます。

近藤(洋)委員 現時点でどれぐらいのマクロに対する影響があるのかと聞きたかったので、ちょっと御答弁になっていなかったんですが、こちらの聞き方も悪かったかもしれません。

 私は、このチェーンストア協会の数値、また、国土交通省が出していただいている、次のページでありますけれども、新規住宅着工の推移等々を見ても、やはり日本の消費及び住宅投資に与える影響はかなり大きいんだろう、こう思うわけであります。

 もちろん、我々は、社会保障を充実するから安心してくださいという思いで消費税率の引き上げに踏み切っているわけでありますが、しかし、現実の経済運営から見ると、どうなんだろうか。

 あえて言うと、例えば、消費税還元セールをやられたのは某大手チェーン店でありますけれども、このチェーン店は、平成九年に消費税率が三%から五%にアップされた、このときまさに消費が低迷していったわけですね。それから約一年後、何ともしようがなくなって、困り果てて、この消費低迷を打開しなければいけないという思いから、ネーミングはともかくとして、五%還元セールというのをどんと北海道エリアで打った。北海道エリアで打った途端、売り上げが七五%伸びた。それで全国展開をした。そしたら、同様に売り上げが七五%伸びた。こういうことなんですね。ですから、五%還元というのは日常の業務でもやっているんだけれども、でも、消費税を返してあげますよと言った途端に気持ちがかっと明るくなって、七五%も伸びた、こういうことなんです。

 何を言いたいかというと、消費税を取られるということがいかに消費者の心理を冷え込ませていて、それを還元すると言った途端にどんと伸びたという一つの事例なわけですね。今回こういうことはできなくなるわけです。

 民間企業の彼らだって、どうやって消費を喚起するかということに必死に、血眼になって行動をするわけだけれども、そういう手だてを奪われていく中で、来年から数年間、果たして消費喚起というのをどうするのか。

 私がここで茂木大臣にお伺いしたいのは、やはり消費喚起のための政策というのを相当力を込めて来年度以降打ち出していかないと、ことし、この前半の判断はいいですよ、私は余り是としないけれども、アベノミクスというもので見かけ上の数字は上がるから、それは消費税の引き上げの判断はできるでしょう、だけれども、問題は、上げたときの運営が相当大変になるんじゃないか。株の上昇だけじゃなくて、今の時期からそういった消費喚起策というものを打つ必要が経済対策上あるんじゃないか、考えていく必要があるんじゃないかと思うんですが、茂木大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 近藤委員御指摘の点は、基本的に私も同じ意見であります。

 消費税の影響が引き上げによってどれだけ出るか。図もお示しいただいたんですけれども、例えば九七年の場合は、ちょうどこの時期がアジアの金融危機と重なってしまったということで強目に出ている。

 いろいろなことがあるわけでありますけれども、基本的には、消費税の前には駆け込み需要があり、そしてその後には反動減が起こるということでありまして、その波を少なくする、住宅ローンの問題もそうでありますが、こういった努力は必要だとは思っております。

 同時に、やはり全体の消費を上げていかなければいけないということから、経済をよくしなければいけないんだ、そんなふうに思っておりまして、そのために、今、政権としてまさに成長戦略というものに取り組んでおりまして、これにつきましても、ことしの六月をめどに取りまとめ、実行できるものから実行していく、こういった中で、基本はデフレから脱却する。

 やはり、これは個人もそうなんですけれども、こういった小売業者にしても、安売り競争ということをやってきたのから、いいものを適正な値段で売る、そういう競争に全体のメンタリティーも変えていかなければいけないのではないかな、こんなふうに思っております。

 消費税の上げ方、例えば今回二段階で上げさせていただくということなんですが、小売業者さんから見ると、一遍に上げてくれる方が楽だったという思いもあるかもしれません。一方、経済に対する影響だったら、一%ずつ上げていった方がいいんですね、六%、七%、八%と。それもできないだろうということで、二段階、八%、一〇%、こういう措置をとらせていただいたわけであります。

 いずれにしても、消費を喚起する、また、日本経済全体として、安売り競争ではなくて、いいものを適正な値段で売る、こういうメンタリティーに変えていくということは極めて重要なことだと思っております。

近藤(洋)委員 大臣、私も同感でございます。これは時間の関係で質問は割愛しますが、中小企業の体質改善、これを機に、小規模・中小企業がよりよいものを売れるような、新しいビジネスモデルを構築するような経営指導、支援策、これは中企庁で既に一部行われているかとは思いますけれども、さらに大臣、こういった分野も、支援策というんでしょうか、元気のいい中小企業をつくるための政策というものもぜひ進めていただきたい、こう思うわけであります。

 国土交通省、来ていただいているかと思うんですが、やはり住宅ですね。三枚目のグラフにもございますが、いっときの新規着工百六十万、百七十万戸時代から、今や八十万戸時代。もういっときのピークの半分まで新規住宅着工が落ち込んでいるわけであります。

 年度がかわって、今年度、駆け込み需要も含めてどうなるのか、また、消費税率の引き上げによって、何の政策も打たねばどのような影響が出ると分析されているのか、お答えいただけますか。

毛利政府参考人 住宅着工についてお答えをさせていただきます。

 現在、公表されております住宅着工、前年度の二月まで公表されておりまして、その前の同じ十一カ月分で比較してみますと、現在は、六・一%増ということで増大傾向にございます。

 実は、今年度の見通しにつきましては、なかなかこれを予測することは難しゅうございますけれども、投資額ベースで、政府経済見通しによりますと、二十四年度投資額十三・八兆円が二十五年度十四・八兆円と、名目で七・五%増と見込まれ、その理由として、増税前の増加を見込むというふうにされております。民間の有識者から聞いても、やはり二十五年度住宅着工の増加が見込まれるということでございます。

 では、消費税の影響についてでございます。

 まず、一般論としまして、住宅取引価格は高額でございますし、家計に大きな負担をもたらしますので、消費税率引き上げの前後、駆け込み需要、その反動等による影響が着工戸数に大きく生ずるという特徴がございます。

 実際に、先生の資料の中にも、前回引き上げ時において、平成九年四月の引き上げ前の八年度に十五万戸の着工増が見られまして、九年度と十年度、二カ年かけまして、四十五万戸落ち込んでいるという状況がございました。

 この原因につきましては、消費税率引き上げ前の駆け込みだけではなくて、あるいはその反動減だけではなくて、当時の経済の先行き不安等もあったというふうに当時の経済白書も分析をされております。

 こうした経緯に鑑みますと、もし何らかの手当てがないとすれば、今回の消費税の引き上げにつきましては、近年の住宅取得能力と価格の関係等もあわせ考えますと、住宅取得に大きな影響が出る可能性があるというふうに考えております。

近藤(洋)委員 そうなんですね。やはりここは、住宅は大変消費税に敏感だ、こう思うんです。

 そういうこともこれありで、税制改正においては、二十六年から住宅取得税の減税が大幅に拡充された。これは、政権において大変思い切ったことをされたと評価したいと思います。我々も、旧政権下時代から、こういうことは必要だということで政府税調において言ってまいりましたし、新政権においても大幅に拡充された。逆に言うと、税においてできることは相当やり切ったかなという感が一方であるわけであります。

 ただ、税の恩恵というのは、やはり、ローン減税は、上限が四千万円に拡充されました、五千万円に拡充されましたというのは、それだけ大きな投資ができる一定の所得層、こういうことでありますから、中低所得者層については限定的だ。そうなると、当然、何らかの給付措置が必要だ。

 与党税調においては、何らかの給付措置が必要だという頭出しをされたのは私も聞いておりますけれども、これは政府において、やはり何らかの給付措置が必要なんだろう。住宅エコポイント、いろいろ批判がございましたけれども、我々はやり切って、非常に効果があった、こう思っています。

 エコポイントがどうかは別にしても、何らかの給付措置が必要だろう、こう思いますし、それは、ありていに言うと、財務政務官も来ていただいていますけれども、百億や二百億の話じゃございません。相当程度の予算規模になろうかと思いますけれども、国土交通省、いかがですか。給付措置の設計、もうある程度財務省と話が内々について、できるという状況まで来ていますか。

毛利政府参考人 給付措置についてのお尋ねでございます。

 その前に一点だけ補足させていただきますと、今回の消費税対策として特徴的なことは、一つは、先生おっしゃいましたように、大幅なローン減税を初めとする税による拡充措置が行われたということでありまして、しかもそれが現時点、二十五年度税制改正として、来年の引き上げに向けてことしの、おかげさまで法案が通りましたので、四月時点でははっきりしていたという点がございます。それから、しかも終わりの期限というのが、消費税、二十七年十月に一〇%に上がる予定でございますが、二十九年十二月までの措置として示されている、非常に先行きについてのビジョンが持ちやすいところがございました。

 しかしながら、加えまして、御指摘のとおり、これだけで十分な措置かということでございまして、御指摘の給付措置というのが盛り込まれているわけでございまして、改めて申しますと、二十五年度の与党税制改正大綱を踏まえまして、住宅ローン減税の延長拡充措置を講じてもなお効果が限定的な所得層に対しまして、別途、良質な住宅ストックの形成を促す観点から適切な給付措置を講じるというふうにされております。

 給付措置の具体的内容でございますが、例えば、対象となる住宅取得者の要件、住宅にどのような性能を求めるべきかといったようなさまざまな論点がまだございまして、現在、精力的に検討を行っているところでございます。

 本年十月一日が現在の税率が適用される請負契約のいわゆる指定日になっておりますことを考え合わせますと、給付措置の具体的な内容につきましては、それまでに一定の周知期間も必要であることを踏まえまして、できるだけ早期に、遅くともこの夏までにはお示しできるように、関係府省とともにしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 まだ要求が出ていない中で財務省に聞くのも酷ではありますけれども、政務官、いかがですか。

竹内大臣政務官 お答え申し上げます。

 住宅取得者に対する給付措置につきましては、与党税制改正大綱におきまして、所得税に加え住民税による住宅ローン減税の拡充策を講じてもなお効果が限定的な所得層に対しまして、別途、良質な住宅ストックの形成を促す住宅政策の観点から適切な給付を講じるとされたところでございます。

 これを踏まえまして、政府におきましては、税制措置とあわせた全体の財源を踏まえながら検討を進め、今後適切に対応してまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 税の方は相当見通しが立つような形になっているわけですから、給付措置の方もやはり同様に早目に見通しができるような状況にするというのが国民目線に立てば当然だろうと思いますので、ぜひ急いでいただきたい、こう思います。

 国交省さん、オーケーです。内閣府さんもいいですので、どうぞ。

 もう一つ、表示問題について財務省にお伺いしたいと思います。

 そもそも流通の多くの現場では、今回の表示では、いわゆる総額表示と外税方式、両方併用が認められる、小売について、今まで総額表示が原則だったものを両方認めるという形になりました。ただ、百貨店業界、高額商品を除くと、流通の現場で聞くと、やはり外税の方が本当は望ましいんだという声もいろいろ聞くとあります。業界さまざまでありますけれども、聞きます。本来、消費税導入時は外税だったわけでありますが、十六年に総額表示に変わったということであります。

 なぜ、改めてそのときに方針が変わってしまったのか。当時、時の税制調査会長、山中貞則先生が何らかの場で、やはり内税、総額表示の方がよかったのだ、俺は間違っていた、こう発言されたという話が何か伝説のように伝わっていて、山中先生までもが内税がいいとおっしゃったからそうなんだというふうに我々後から来た者は受けとめるんですけれども、山中先生の間違っていたという発言が神の御神託のように伝わっているけれども、実はその裏には、内税の方がやはり税を取りやすいという財務省の思惑があって、それが何か山中先生も納得された総額表示というふうになってしまったのではないかとちょっと勘ぐるんです。

 改めて、その経緯と、あわせて、今回二つの方式があるけれども、最終的には政府としては総額表示というものに収れんさせるという方針に変わりはないのか、確認をしたいと思います。

竹内大臣政務官 先生よく御承知のとおり、平成元年の消費税の創設後は、消費者向けの価格表示は各事業者の判断に委ねられてきたところでございます。

 その後、平成十五年度改正におきまして変わった理由というのは、それまで主流であった税抜き価格では、レジで請求されるまで最終的に消費者が幾ら支払えばいいのかわかりにくいということが一つ、それから、税抜き表示のお店と税込み表示のお店での価格の比較がしづらいといった消費者の方々からの声が多数ございまして、これらを踏まえて、消費者向けの価格表示につきましては総額表示が義務づけられることとされたところでございます。

 それから、山中先生の御発言云々のお話がございましたけれども、まず、消費税の総額表示の義務づけにつきましては、今申し上げたとおり、消費者の便宜の観点から導入されたものでございまして、これは、当時の民間事業者の方々の提言とか、それを踏まえた政府税調の答申等におきましても、同様の指摘が数々なされていたところでございます。

 今回、総額表示の義務づけは、値札などに消費税額を含む支払い総額の表示を義務づけるものではございますけれども、あわせて、消費税額とか税抜き価格を記載することを決して妨げるものではございませんで、そういう意味では、総額表示の方が痛税感がないとか消費税を引き上げやすいとかという御指摘は当たらないと考えておるところでございます。

近藤(洋)委員 政務官、もう一つ。

 いわゆるBツーB、事業者間の取引については特段制限がないわけであります。今回の法案では、外税を求めた場合、それを拒否できないという形で、一歩前進されたなと私は思うんですが、事業者間の取引というのは、やはりかなり多くの方々から外税の方がよいという声を聞きます。

 これは決めの問題でありまして、私は、BツーBは原則外税という方針を、もう一歩踏み込んで出されてもよかったのではないかと。今回、半歩前進はされているとは思うんですけれども、やはり将来の一〇%の税率ということも見越しますと、まさに外税であれば、税率の価格転嫁というものも有無を言わさずスムーズにいくわけでありますから、事業者間については、私は、原則外税の方向で今後検討されたらよい、こう思うんですが、財務省いかがでしょうか。

竹内大臣政務官 先生のおっしゃるとおり、私どもも、さまざまな事業者の方々のお声を聞かせていただいております。外税の方がいいというお声も業界によってはございます。

 ただ、この事業者間、BツーBの取引の価格表示につきましては、外税、内税、いずれの方法も可能となっているという現状でございまして、確かに、このBツーBの場合、外税の取引が多いということは事実であろうというふうに思っております。

 その上で、今先生から御指摘がありましたように、規制を設けるべきではないという意見が出ているところもあるんですが、また、事業者によって、業種、業態や事業規模、商慣習など非常に多種多様にわたっておるものですから、一律に特定の表示方法を義務づけることがなかなか難しいということもございます。

 そういうことから、力の弱い事業者が、事業者間取引において、税込み価格による価格交渉を総額表示というようなことから強いられて、結果として、転嫁拒否や買いたたきにつながるという声があるということも踏まえまして、先生が既に御指摘されましたように、大型小売店等に対しましては、納入業者が外税での価格交渉を申し出た場合には、大型小売店等はこれを拒否してはならないこととしたところでございますし、また、業界団体などが外税で取引することについて、業界内で統一基準の策定を行っても独占禁止法を適用しない旨の規定も盛り込んだところでございます。

 また、先ほどからの繰り返しになりますが、消費者に対する利便、便宜というようなこともございまして、さまざまな点を考慮して今回の法案に至ったということでございます。

近藤(洋)委員 時間が参りましたので、質問を最後にできないので言いっ放しでお許しいただければと思うんですが、簡素な給付措置についてであります。

 民主党政権下では、一〇%段階までも簡素な給付措置でやるべきだ、こういう方針でありました。現政権下では、少なくとも八%段階までは簡素な給付措置、こういうことでコンセンサスがあると思っています。

 軽減税率については、私は、本当は軽減税率をやりますと言った方が、御家庭の主婦には、集票活動という意味ではプラスだ、こうも思いますけれども、しかし、残念ながら、いろいろ考えると、一〇%段階までの軽減税率というのは難しいという立場に我々民主党は立っています。

 政府内では現在検討中と聞いていますが、少なくとも簡素な給付措置については、財務省の政務官もいらっしゃいますので、ぜひこれは早急に中身を詰めるべきだ、このことは申し上げたいと思います。

 価格転嫁法案は法律としては審議されているわけですけれども、もう一方の簡素な給付措置については、まだなかなか影も形も見えていないという状況でございますので、自治体への協議等々、実務的なことを考えても、もうそろそろ姿を出さなければいけないと思います。ぜひ、政府内において簡素な給付措置の概要について急いでいただきたいということを申し上げて、時間が来ましたので、質問を終了します。

富田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高です。

 先日、本会議でも御質問させていただきまして、その折も実は近藤委員の後の質疑でございました。近藤委員の後の質疑は非常に難しいのでございますけれども、重なる部分がかなりあります。前回の本会議では、大枠の点に関しまして、今回の法案に関して疑問に感ずるところを質問させていただきましたので、今回は細部に絞って、特に気になる部分に関しまして詳しくお伺いしたいと考えております。

 先日、本会議の質問でも述べさせていただいたように、取引の公正を図るということ、そして、消費税の増税の影響で中小企業の収益が予想以上に悪化して経済全体に影響を与える、それは避けなければならないという趣旨はおおむね理解しておりまして、日本維新の会としても、そして私、丸山としましても賛同するところです。

 しかしながら、先ほど近藤委員の御質問にもありましたような、特に消費税還元セールの広告の禁止といった部分に関しまして、私自身、強い懸念を抱いております。

 三月十九日の日経新聞によりますと、先ほど近藤委員のお話にもありましたが、自民党さんの要望を受けて本セールの禁止規定を盛り込んだということで、いわゆるマル政案件ということでございますけれども、調べていけばいくほど、非常に整合性がとれていないんじゃないか、もっといけば、その先にある民間の活力を奪うことにもなりかねないと危惧しております。

 具体的に申し上げますと、まず消費税を価格に転嫁しないことを規制する、そしてさらに、転嫁しない旨を広告する、それを規制するということに関しては私も理解できるところなんです。

 しかし、今回の法案が可決された場合には、消費税をきちんと価格に転嫁する、中小企業に対していわゆる買いたたきをしない小売業者さん、そして、自己負担で値下げをして、その分を負担するけれどもセールをしたいという業者さんが消費税還元セール、三%値下げセールと銘打ってセールをした、つまり、本法案で規制しようとする消費税の適正な転嫁がされていない状態ではない状態でございますけれども、実際にこの法律によって、そうしたセール広告、この小売業者の広告の行為が違反になってしまうという状態なんでしょうか。

 具体的には、特に八条三号のお話になるんです。一号が、消費税を転嫁していない旨の表示を禁止する、第二号が、取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部または一部を対価の額から減ずる旨の表示を禁止する。それはわかるんですが、一方で、第三号の、消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示、いわゆる先ほどのお話に当たるのではないかと考えるんですけれども、今申し上げた点は八条違反になるのか、その場合には特にどの号の違反になるのか、お答えいただければと思います。

菅久政府参考人 この法案八条では、いわゆる消費税に関連するような形で消費税の転嫁を阻害する安売り等の表示を禁止しております。

 消費税還元セール、そういった表示についてということかと思いますが、これにつきましては、基本的には、むしろ第八条第一号の消費税を転嫁していない旨の表示に当たるのではないかというふうに考えております。

 ただ、もちろん、実際の値引きのやり方、態様によりましては第二号や第三号に該当する場合もあり得るというふうに考えておりますけれども、これにつきましては、いずれにしましても、八条によって禁止される表示のいずれかには該当するのではないかというふうに現在考えているところでございます。

丸山委員 いずれかに当たるということで、現時点ではかなり曖昧だということでございます。

 もう一つ、テクニカルな点をお伺いしたいんです。

 本法案においては、先ほど申し上げたような、消費税の転嫁を行った上で自己負担で値下げしてセールをするという小売業者のケースなんですけれども、その宣伝も規制に含まれるということです。

 消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するというのが今回の法案の法目的でございますけれども、この法案第一条に書かれている法目的の前に、手段という形で幾つか列記されております。この規制は、どの手段の部分に当たるんでしょうか。消費税の転嫁を阻害する行為の是正、三つある中のその部分に当たるという理解でよろしいのでしょうか。その点に関してお伺いできればと思います。

亀岡大臣政務官 丸山委員もさんざんお話は知っておられますけれども、本法案の第八条は、納入業者に対する買いたたきや周辺の小売業者の転嫁が困難になることを防止する観点から、事業者が消費税に関連する形で安売りの宣伝を行うことを禁止するものでありまして、先ほどから言っているように、利益の還元をする場合は一切それを阻害するものではありません。

 そして、今御指摘の小売業者の宣伝が本法案で規制される表示に該当する場合においては、議員の御指摘どおり、本法案の第一条中の消費税の転嫁を阻害する行為の是正に該当するものであると考えております。

丸山委員 非常に誤解が生じやすい部分だと思うんです。この規制は広告を規制する法文だと思うんですけれども、広告を出す業者さんには二種類あると思うんです。

 一つは、まさに今回規制したいと考えている、中小企業さんに対して買いたたきをするような小売業者さん。でも一方で、買いたたきをせず自己負担で安売りセールをしようとして、実際に広告という行為に打って出る業者さんも、今回の法案の特に八条で規制することになるのが問題じゃないかという観点なんです。

 そういった意味で、さきの本会議でも総理に対して御質問させていただきました、消費税還元セールという広告自体を規制する意義について、総理は、本規定は、納入業者に対する買いたたきや周辺の小売業者の転嫁が困難になることを防止する観点から、事業者が消費税に関連するような形で安売りの宣伝等を行うことを禁止するものという、先ほどと全く同じお答えをいただきました。

 しかしながら、それに関してもう少し詳しくお伺いしたいんですけれども、先ほど申し上げた、小売業が買いたたくことなく消費税を価格に転嫁した上で自己負担で値下げするという広告が、どうして納入業者に対する買いたたきや周辺の小売業者の転嫁が困難になるということに当たるんでしょうか。

 また、別の言い方で、先日の与党側からの質疑の中で政府参考人の方が、消費税に関連づけて値引き等の宣伝を行う場合にはこの法案において禁止されるという旨の御答弁がありました。先ほど来申し上げている、もう既に価格に転嫁されている商取引ですよ。その商取引の表現や広告まで規制するというのであれば、まさしくそれは法目的の転嫁を阻害する行為の是正という手段をかなり逸脱しているんじゃないかと感じるんですが、その点に関しましてどのようにお答えになりますか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 八条で規制している趣旨ということでございますけれども、この八条という規定を置きました理由といたしましては、まず、この八条によって禁止される表示、これが消費税の負担につきまして消費者に誤認を生じさせることになるということでございます。

 その結果、ひいては、政務官からもお話がありましたとおり、一つには、ある地域のある小売業者がこういう表示をすることによりまして周辺の小売業者が追従を余儀なくされ、消費税相当額分を値引きせざるを得なくなる、そのことによりまして消費税の円滑かつ適正な転嫁が困難になるおそれがあるということ、さらに、小売業者がそのような表示を伴う販売行為を行うために、納入業者に対しまして納入価格の減額、いわゆる買いたたきなどの転嫁拒否行為を誘発するおそれもあるということでございます。

 そういう点を踏まえまして、消費者の誤認を防ぐとともに、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保にも資するよう、こうした事業者が消費税に関連するような形で安売り等の表示をすることを禁止する規定を設けたということでございます。

 なお、この規定はこうした表示を禁止するということでございまして、事業者の方が企業努力による価格設定を行う、そういうこと自体を制限するものではもちろんございません。

丸山委員 私は、最後におっしゃったように、別に価格を設定することを制限することじゃないというのはもう十分わかっているんです。問題は、広告を禁止する行為に関してお伺いしたいということなんです。

 先ほどお話しされた消費者の誤認を招くという点と、あともう一つの価格転嫁拒否を誘発するという点に関しましては後ほど少し詳しく伺いたいと思います。

 一方で、少し切り口、言い方を変える形になるんですけれども、先ほど少し申し上げた八条の三号に関しまして、消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示の全体を禁止するということが書かれているんです。

 これが、どうして消費税を価格に転嫁した取引に関する広告や表示のケースについても規制に含まれてしまうことになるのかという点が、私の中でどうしても腹に落ちないところでございまして、きちんと消費税を価格に転嫁した取引に関する広告や表示まで禁止するということの、そもそも今回の法目的との整合性、法的な整合性といいますか、もっといけば手段と目的の因果関係と申しますか、このあたりはどのように整理されているのか、その点に関しまして御答弁いただければと思います。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示でございますけれども、この経済上の利益で想定しておりますのは、いわゆる消費税分の例えばポイントを差し上げます、商品券を差し上げます、そうしたものを想定しているわけでございます。

 こうした表示につきましては、消費者から見ますれば、実態として値引きなどと同様の経済的な利益がもたらされるということになりますので、消費税を転嫁していない旨の表示、また消費税に相当する額の全部または一部を対価の額から減ずる旨の表示、これと同じように消費税の負担について消費者に誤認を生じさせることとなり、消費税の転嫁を阻害する表示であるというふうに考えられますので、これらにつきましても、事業者が消費税に関連するような形で行う安売り等の表示ということで禁止するということにしているものでございます。

丸山委員 その点に関しましても私は非常に疑問に感じるところでございまして、消費者の誤認を招くということなんですけれども、しかし、消費者の誤認を招いたとしても、実際の取引としましては、消費税が円滑かつ適正に転嫁されている状況があるということですね。

 つまり、現在、ある小売業者さんの方が、買いたたくことなく中小企業さんの卸の方から商品を仕入れた、それに関して自己負担で値引きセールと銘打った。現実に消費者は、消費税を含んだ製品の価格を対価として支払う。それは小売業者さんから消費税としてもちろん支払われると思うんですけれども、この一連の商取引に関して、もし消費者が消費税に対して誤認を生じていたとしても、現実面として、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保という点では実際に転嫁されていますし、国庫に消費税も入るという点では、かなり因果関係が弱いのではないかというふうに危惧しているんです。

 一方で、先ほど来、消費者庁さんから消費者の誤認のお話がありましたけれども、消費者庁さんが作成されたいわゆるポンチ絵、御説明いただいたときの資料によると、今回の消費税の転嫁を阻害する表示の是正の特別措置について、消費者の誤認を招いて、他の事業者による円滑な転嫁を阻害する宣伝、広告等を是正または防止するため、さらには、消費者に誤認を与えないようにするとともに、納入業者に対する買いたたきや、競合する小売店の転嫁を阻害することにつながらないようにするためという理由を挙げられております。

 先ほど来同じことをおっしゃっておりましたけれども、これは総理答弁をさらに詳しくされた御答弁という理解でよろしいでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、この消費税の転嫁を阻害する表示の是正の特別措置を設けた理由というものにつきまして、同様のことを申し上げたものというふうに理解しております。

丸山委員 とすると、一つ矛盾が生じるんじゃないかなということがございます。

 さらに別の資料なのでございますが、平成二十五年の三月に、「規制の事前評価書 消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示への対応」という形で消費者庁の表示対策課さんが出されているものがございます。

 そちらに書かれている中身でございますけれども、それによりますと、一般消費者に誤認を与えるものではない場合、景品表示法で対応することができない、そのために今回の特別措置法案で規制しようとしてしているんだと。一般消費者に誤認を与えるものではない表示については、今回の本法案で規制したいんだという旨のことがありました。

 つまり、今までは景品表示法で規制していたけれども、要は消費者に対して誤認を与えるものではないから、規制できないから今回の法律を特別につくるという話なのに、今のお話だと、消費者に誤認を与えるものを出さないためにという御答弁だったんですが、このあたりの関係性はいかがなんでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 景品表示法は、いわゆる商品、役務についての不当な表示を規制しております。景品表示法での不当な表示と申しますのは、実際のものなどよりも著しく優良または有利であるというふうに一般消費者に誤認される表示というのが不当な表示ということで禁止されているものでございます。

 一方、本法案第八条の規定でのいわゆる誤認と申しますのは、消費税の負担についての消費者の誤認ということでございまして、その誤認の内容が異なるものだというふうに考えております。

 したがいまして、第八条で禁止される表示でありましても、いわゆる著しく有利であるというふうに一般消費者に誤認を与えるものでない場合、こういうものが考えられますので、そういうものは景品表示法では違反とすることはなかなか難しいというふうに考えております。

 またさらに、景品表示法におきましては、違反行為に対して行政処分を行うということになりますけれども、このためには相当の調査を要するということでございます。そのため、こういう消費税引き上げ時の表示に迅速に対応するには適さないという問題もございまして、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示につきまして違反行為があった場合、指導、勧告という行政処分でない措置で簡易迅速に対応するということにしたものでございます。

丸山委員 つまり、現行法で規制できていない部分に関してさらに詳しくやっていく、ただし、そこに関してはかなり曖昧な部分があるという御答弁だと理解しているんですけれども、となると、先ほどの近藤委員のお話にもありましたが、では、どこまでやればいいか、今までできた部分ができないというところに関してやはり明確に示していかないと、どうしても小売業の方から不満が出るというのはいたし方がないことかなと思います。

 もう一つ、先ほどおっしゃった八条の三号の規制理由に、転嫁拒否等を誘発するということ、もしくは納入業者に対する買いたたきや競合する小売業の転嫁を阻害する等というものがあるということですけれども、これが本当に誘発するのかどうかという点に関しまして、やはり根拠がないと、そのような政策を打つのは危ないことだと思うんです。そのあたりに関する根拠や因果関係を示すようなデータというのは、政府の方でおとりになっているんでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申しましたが、八条を設けた理由、まずは、このような表示が消費者に消費税の負担について誤認を与えることとなるということでございますけれども、それとともに、小売業者が第八条で禁止される表示をすること、このことによりまして納入業者に対する買いたたきが行われることを懸念する声がございます。それから、消費税の引き上げを見越して、中小事業者が小売業者から消費税分の値引きを求められているとの声、また、地域の商店街の方々が追従を余儀なくされて、消費税相当額分を値引きせざるを得なくなって、円滑な転嫁を行えなくなることを懸念する声といったものも聞かれるところでございます。

 このため、第八条に規定される表示を禁止することは、消費者に誤認を与えないようにするとともに、納入業者が消費税の転嫁を適正に行い、また、地域の商店街の方々が消費者に消費税を適正に転嫁できる環境を整備するものに資するものであると考えております。

 これらは必ずしも具体的な数字等であらわせるものではございませんけれども、本法案の目的であります消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するに当たりまして、必要な措置であるというふうに考えております。

丸山委員 どうしてデータを求めたかといいますと、つまり法的整合性の話なんです。

 消費税の増税時のみ今回は規制するということでございますけれども、先ほどの近藤委員の話でもありましたが、このセールというものは常にやっているものでございます。そうした中で、ふだんも値引きセールが行われている、その場合のセール広告は規制しない、同じように買いたたきが起こる可能性があります。なのに、今回、消費税というときの表現のみを規制することに対して、どのような法的な整合性があるんでしょうか。

 消費税増税時のみ転嫁がされやすいという統計があるのかどうか、非常にその点が説明理由のわかりやすいところだと思うんですけれども、もし消費税増税時のみという点で統計データ等がありましたら、もしくは何かその点に関しまして御所見がありましたらお伺いできればと思います。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 消費税の転嫁を阻害する行為につきまして、必ずしも具体的な数字等であらわせるものではございませんけれども、特に消費税率引き上げ時に集中的に生じるということが強く懸念されているところでございまして、そうした点から、消費税率の引き上げがなされる時期、この一定期間に限って特別の措置を講じるということにしたものでございます。

丸山委員 前段の、ふだんはやらないけれども今回の消費税のときのみやるという、法的な整合性に関してはいかがですか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 本法案の八条につきましては、いわゆる消費税の転嫁を阻害する表示ということを禁止しているものでございまして、それは、消費税の引き上げ時、それからこの一定の期間に特に出るであろうということで、特別の規定を設けているものでございます。いわゆる通常のセール、そうした価格設定行動それ自体を禁止しているものではないということでございます。

丸山委員 お聞きしていても、法目的と規制の手段の因果関係が極めて不明確な気がします。いかなる商品も、広告がなければ売り上げは激減するのがやはり商売でありまして、民間の自由な取引についての広告にルールを課す場合はこの自由主義経済においては相当慎重な注意が必要だと思うんですけれども、そうした中で、先ほど申し上げたように、自由な価格決定に基づく販売広告戦略がやはり売り上げを左右しておりますので、それまで認めないというのはいかがなものかなというふうに思います。

 このようなセール自体を禁止するんじゃなくて、むしろ逆に、今の御答弁だと、セール広告を行った場合はかなり怪しい業者さんもいる可能性があるという御指摘なんですから、そうしたセール広告を行っている業者さんについてはよりきちんとチェックしていくという監視強化策とか、実際に行われたものを禁止していくということが本筋であって、それで十分なんじゃないですか。広告まで規制するということはかなり危うい過剰規制ではないかと考えておるんですが、その辺に関しまして、できれば政務の方の御答弁をいただければと思うんです。

菅久政府参考人 八条は、繰り返しで申しわけございませんが、いわゆる消費税の転嫁を阻害する表示、これはまさに消費税の円滑かつ適正な転嫁のために、表示の観点からの規制を設けているものでございます。もちろん、消費税の円滑かつ適正な転嫁のためにはこの特措法案全体で対応するということでございますので、表示に加えてその他の取り組みというものもあわせて規定されるところでございます。

丸山委員 できれば、今の議論を聞いてきて何か所感があれば、どなたからでも構いませんので、お答えいただきたいと思うんですけれども。

亀岡大臣政務官 まさに、宣伝は大事な販売手段でありますから、規制するということはあれなんですけれども、利益の還元セールとか、そういう表示の方法はたくさんありますので、企業努力で値段を決めるのは自由で構いません、規制するものではありません。

 ただし、税の公平性というものから、意識して税を取らないとか、それをまけるとかという意識を持たれないようにするためには、宣伝も広告もその辺はきちんと規制をしなければならないという観点から、今回はしっかりとそういうことをうたっております。

丸山委員 私も、公正な取引を害することに関してきちんとやっていくことは大事だと申し上げているんですけれども、手段が問題だという点に関してかなり懸念があるということを申し上げているんです。

 さらに、先ほど来の審議でもありましたけれども、また前回の与党さんの方の審議もありましたけれども、非常に規制される表現が曖昧である。肝心な部分が、先ほど来ずっと同じような答弁で、これから決めるとか、そんな、これから決めるということでは国会で審議のしようがないというか、どういうものが規制されるのかということが一番大事なところでございまして、それによってこの法案が、悪法にも、ざる法にも、いい法律にもなりかねない部分でございます。

 また具体的な点に関して伺っても恐らく同じ答弁になると思いますので、今回は割愛させていただきますけれども、やはり早急にきちんとこの点に関して決めていただくということが、恐らく、きょう審議をお聞きの委員の皆さんも、また並んでいらっしゃる政務の方々も同じ思いだと思いますので、このスケジュール感に関しまして、もう一度、もうちょっと具体例な形での御答弁をいただけますようお願い申し上げまして、お聞きしたいと思います。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 既に、来年予定されております消費税率引き上げに向けた準備活動が民間事業者の方々の間では始まりつつあるというふうに聞いておりますので、できるだけ速やかに、禁止される行為を示しまして、周知徹底を図っていく必要があると考えております。

 したがいまして、ガイドラインにつきましては、事業者の方々から並行していろいろ御意見を聞くとともに、法律が公布された後に、パブリックコメント等の所要の手続もございますので、そうしたものを行った上で、できる限り速やかに公表できるよう準備を進めてまいりたいと考えております。

丸山委員 私も役所にいましたので、役所答弁だなというのは感じるんですけれども、仕方ないものは仕方ないと思いますが、思いは一緒だと思いますので、できる限りの早い御対応を切にお願い申し上げます。

 どうして、特にこういった細かい点に関しましてお伺いしたのかといいますと、先ほどの近藤委員のお話にもありましたけれども、消費税を上げることで消費者心理が落ち込むことと、そしてまた買いだめによってその反動があって、容易に経済が落ち込むんだということが予想されるからです。

 消費者心理の冷え込みによって物が売れなければ、小売業者だけじゃなくて、実際、今回守ろうとしているような卸の中小企業さんだとかは、苦境に立つかもしれない、経営を危うくするかもしれない状況にあります。そうした状況でやはり何らかの販売促進を打たなければならないのが普通の民間企業さんの商売であって、このような反動を景気が落ちる中でカバーしようとする民間企業さんの努力まで封じ込めてしまう、政府が禁止してしまうような法律や方針だとするならば、これはおかしいと言わざるを得ないと私は思います。

 そのような中で、現状の法案であればそうした懸念が考えられる中で、では、政府の方でどういったそれをカバーするような経済対策、景気対策を行っているのかということも、禁止される側の小売業者さんからすれば非常に気になるところだと思いますけれども、現時点で、そのような消費者心理の冷え込みに対する具体的な対策や景気対策について検討されているのかどうか、検討される予定があるのかどうか。

 実は、先日の本会議でも総理にお伺いしましたが、総理のお答えでは、現時点で予断を持ってお答えすることは困難という、これまた役所のおつくりになった答弁をお読みになった形になってしまったんです。

 過去二回も既に日本では消費税導入のステップを踏んでおりますので、増税時の事例の研究や調査についての言及が総理答弁にはなかったんですけれども、お伺いしたところでは、少しされているところもあるということでございますので、そういった点に関して過去の調査がどうであるのか、国民経済に対して大きな影響を与えることなので、最低限のショックにとどめるための対策が必要だと考えていますけれども、それに関してどのようにお考えになるのか。

 もし仮に、していないというお答えであれば、どうしてそういう検討をしないのか、している場合には、どういう対策をとるのか、スケジュール感も含めまして御答弁いただければと思います。

山際大臣政務官 委員御指摘のとおり、消費税を上げるということにおいて少なからず影響があるというのは、一致した認識だというふうに考えてございます。ですから、当然、過去にも調査研究等々はやっておりまして、経済白書や内閣府においての有識者の整理した研究報告書等々を見ますと、全体としてどういう形になるかというのは、概論としては何となく形はわかってございます。

 委員が御指摘になられましたように、まず駆け込みの需要というものが起きて、消費税が上がった後に今度はどんと落ち込んで、その後が問題なんですけれども、割に早期にその落ち込みというのは戻ってくるというのが過去のデータから見てとれます。

 例えば、九七年四月に消費税の税率を上げたときには、上げた後の四月から六月は落ち込みましたけれども、七月から九月にはもう戻っております。しかし、このときは、不幸なことに、その後、金融ショックがあって、山一証券が破綻したり、拓殖銀行の話等々があって、その翌年、九八年にはかなり経済が冷え込んだということがございます。

 いろいろな要因はあろうと思いますが、消費税を上げたということが主たる要因として景気が悪くなったというふうには、調査研究の結果からは見てとれないという話になってございます。そうなっておりますけれども、委員が御指摘になられましたように、そうはいっても絶対にこのショックはあるわけでございまして、それに対して、ショックを最小限にとどめるためのでき得る対策はしていかなくてはいけないという意識は当然ございます。

 一例といたしましては、税制改正におきまして、住宅ローン減税を抜本的に拡充したり、あるいは自動車取得税を段階的に廃止するというような方策はこれまでにもとってございますし、また、これから消費税を本当に上げられるかどうかということは、景気がどのように向かっているか、経済状況がどのように向かっているかということをきちんと判断した上で消費税を上げるかどうかということを決めてまいりますし、何よりも、経済再生そのものが一番ショックを和らげる最大の手でございますので、いかにして経済を再生させていくか、このことに政府としては注力していくところでございます。

丸山委員 ありがとうございます。

 前回の本会議では、かなり大枠の幾つかの論点で御質問させていただいて、今回は、特に気になる点、一番これが問題じゃないかという点に絞って御質問させていただきました。

 いずれにしましても、維新の会の方針は是々非々ということでございまして、今回の法案の消費税の転嫁を阻害する行為を是正するという点は非常に重要なことで、消費税を円滑に転嫁するという点に関しましてはきっちりやっていかなければならないと考えておるんです。

 一方で、難しいところは、審議すると一括で、マルかバツかという形で賛成か反対かを示さなければならないんですが、やはり中に、こういった点でかなり怪しい、これは除いた方がいいんじゃないかとまで考えるようなものが入ってしまう、その点を危惧するところでございますので、先ほど来申し上げた、早目早目に、きっちりとわかりやすく示していただくことで不安を消していただくようお願いしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 本日は、稲田大臣に御答弁いただけるということで、先ほどの近藤先生じゃないんですけれども、私は本当に緊張しておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 時間がないので、早速、ばんばんとお話を聞きたいと思います。

 まず最初に、今回の法案の中で、消費税の転嫁拒否などの行為の是正に関する特別措置というところがあります。

 これは、私の解釈では、卸売業者がいて、大規模の小売事業者がいますときに、消費税分は何とかそっちで持ってよとか、そういうふうな形で、力を持っている者が力の弱い方に対して何とかしてよということをなるべくさせないようにすることが一つの趣旨なのかなと思っているんですけれども、ここの目的。それから、特定事業者と特定供給事業者、これが小売側と卸売側だと私は解釈しているんですけれども、そこについてちょっと御説明をまずいただきたいなと思います。よろしくお願いします。

杉本政府特別補佐人 法律の趣旨は、先生がおっしゃるように、価格形成において非常に弱い立場にあります中小企業者から、今回の消費税の税率引き上げに関しまして、消費税分が転嫁できるのかどうかということについて多大な懸念があることから、消費税の転嫁を阻害する行為につきまして必要な措置を講じようとするものでございます。

 御質問の特定事業者と特定供給事業者でございますが、本法案においては、特定事業者、特定供給事業者という法律的な用語で定義させていただいております。

 特定事業者というのは、商品や役務の買い手でございまして、まさにその規制の対象となるといいますか、消費税転嫁拒否行為をするおそれ、可能性のある方でございます。それに対しまして、特定供給事業者は売り手の方でございますので、まさに保護の対象となる方ということで、今先生が御指摘された認識で全く問題ないと思います。

 具体的に申し上げますと、大規模小売事業者との取引におきましては、買い手である大規模小売事業者が特定事業者として規制の対象になりまして、これと継続的に取引を行う納入業者の方々が特定供給事業者として保護の対象になると考えております。

 これ以外の取引におきましては、資本金の額が三億円以下の事業者等と継続的に取引を行う買い手が特定事業者となりまして、また、売り手、これが三億円以下の事業者が特定供給事業者として保護の対象になるという構造になっております。

木下委員 今の定義なんですけれども、私はこれはちょっとおかしいんじゃないかなというふうに思っているんです。というのは、大規模の小売事業者というのはわかるんですけれども、特定供給事業者から継続して商品または役務の提供を受ける法人事業者というのも特定事業者の中に入っているんですね。これは継続していなきゃいいのかという話がまず一つあると思っています。

 ちょっと後で私の経験も含めてお話しさせていただきたいんですけれども、セールの場合は、スポットで契約をとる形でやって、売り上げがよければ、これから先、もうちょっと違う商品を入れていいよというふうな会社も多いんですね。

 それから、それ以外のところでも、資本金などが三億円以下である事業者もしくは個人事業者が特定供給事業者というふうな形になっているんですけれども、ここをそれに絞っていいのかな、私としてはちょっとおかしいんじゃないかなと思っております。というのは、私は、比較的大きな会社に勤めておったんですけれども、昔、大手の量販店さんに相当な数の商品を納入しておりました。

 そのときの話をするとあれなんですけれども、例えば、大手の量販店、このごろはもう体質が変わっていらっしゃるかと思うんですけれども、バイヤーさんのところに物を売りに行く、お願いしに行くわけです。私がお願いしに行っても、ほかの納入業者さんもそうなんですけれども、六時間ぐらい待たされたりすることもあるんですね。そうじゃなくても二、三時間はざらなんですよ。何時に来てねと言っても全然、なかなか来ない。どうするかというと、私なんかは、受付の方と仲よくなって、順番を前にしてもらうようにしたりとか、そういうことを毎日やっていたんです。

 それで、バイヤーさんが来て話をするとき、待っているときに、打ち合わせの場所もとり合いなんですよ。もっと言うと、相手の会社さんに行っているんですけれども、打ち合わせの部屋の中に自動販売機が置いてあるんです。何をしているかというと、先に、バイヤーさんが来る前に、私がそのバイヤーさんの好みのコーヒーだったりジュースを買っておかなきゃいけないんですよ。これは本当の話なんです。違うものを上げたりすると、もうそこから機嫌が悪いんです。こんな状態で、これが普通の状態でした。今は大分改善されているかと思うんですけれども、そういう状態が卸売と小売の関係だったと思います。

 もっと言うと、これはバイヤーさんだけじゃないんです。例えば、土曜日、日曜日はセールをやっています。ああいうときに、最近は少なくなっていますけれども、エスカレーターのところに、どこどこの商品というふうにのぼりが立ててあるんですね。あれも、私が土曜日の朝、開店前に行って、そこのフロアマネジャーの人にここに立てさせてくれと言って、ああ、いいよというふうにして立てるんですけれども、昼御飯を食べに行っている間に違う業者にかえられちゃう。

 それぐらい競争がばあっとあって、そのためにもう必死になって、例えば、裏の在庫の整理から何まで全部私がかわりにやりますよとか、あとはパートのおばさん、年期の入ったような人に、私がかわりに売りますからその売り方をまねてやってくださいと、これを毎週続けるんです。そうしたら、そのうち楽しくなってくるんですね、売れるので。行かなくなってもどんどん売ってくれる。

 こういうような努力を卸売の人たちはやっておりまして、これを考えると、別に、中小であるとか小規模であるとか三億円以下がどうとか、そういう問題じゃなくて、実態は、卸と小売の関係というのはこういうものだと私は思っております。今はインターネットの販売もどんどん売り上げが伸びてきてはいますけれども、インターネットの販売でも、モールに商品を上げさせてくださいというのも、やはり同じようなことをやっているんですね。

 これは、やはり私は大阪出身なので、お客さんは神様ですと。小売業者は卸売業者にとっては神さんなんですね。神さんと言ったら関西弁ですけれども、神さんなんです。ただ、神さんは悪いことはしないというのが普通の話なんですけれども、そうはいいながらも、競争が相当あるので、ここの規定で、例えば中小に限ったり個人事業者だったり、三億円以下だというふうにやっていること自体がおかしいんじゃないか。

 ましてや、それをやると逆のことが起こると思っているんです。なぜかというと、それ以外の大きな会社さんはやってもいいんですよというふうになっちゃうと、小売業者からしたら、ここの規定にない人たちだから、あんたたちは消費税分を持ってもらってもいいよねというふうに言われちゃう、小規模の会社さんは逆に損を、なかなか納入させてもらえない状態になる。そういうことも考えられるので、この辺をどういうふうに考えていらっしゃるのかということをお聞かせ願いたいんです。

杉本政府特別補佐人 本法案につきましては、先ほど申し上げましたように、中小企業者の方々が価格交渉力が弱いということから、消費税の転嫁に対していろいろな阻害要因があるということを除去しようというような趣旨でございます。

 先生がおっしゃるような経営実態というのを十分踏まえなきゃいけないと思いますので、大規模小売事業者の取引におきましては、買い手である大規模小売事業者が規制の対象になりますので、これと継続して取引を行う納入業者は大小にかかわらず対象としているところでございます。そうしたことで、大規模小売事業者との取引関係においては、経営規模の大小にかかわらず対象にしているところでございます。

 それから、継続的な取引関係がある場合ということでございますが、これは、買い手が売り手に対して転嫁拒否等の行為を行った場合に、売り手にとりまして買い手の取引の継続が困難になるということが経営上大きな支障を来すため、売り手はこれを受け入れざるを得ない、そういう事情に鑑みまして、本法案では、売り手と買い手の間に継続的取引関係がある場合を規制対象としております。

 ただ、この継続的取引関係というのは、業者間、事業者同士の関係でございまして、個別の商品だけを見るものではございません。本法案の施行に当たりまして、そういった価格形成のときに弱い立場にあるということから、転嫁がなかなか難しいというような事情を背景に、こうした人を対象にしてやっているわけでございます。

 それから、大企業同士の取引に関しましては、改めまして、別の法律、すなわち独占禁止法等で対象になることはあると思っております。

木下委員 そうなると、やはりここの法案だけではカバーし切れない、もしくは認識として、一般の人たちというのは余りちゃんと、これだけが話題になってしまうので、ガイドラインを書く際に、ほかの法律もしっかりと加味した形でガイドラインを書かないと、相当ミスリードが起こるだろう。

 きょう朝からずっと皆さん質問をされていますけれども、いろいろやはり懸念が出てきます。そこを考えると、そのガイドラインというのは、たくさん書いちゃうとまた読まないんです、だから、そういう意味では、相当わかりやすく、シンプルで、かつ網羅的に書けているものがどうやってつくれるかというのが一番ポイントになってくるかなと思っておりますので、ぜひ、その辺をしっかりと検討いただきたいなというふうに思っております。

 次の質問をさせていただきます。

 この法案なんですけれども、平成二十九年の三月三十一日限りで効力を失うというふうに書いてあります。ここをどうするか、施行をいつにするのかというところが、ちょっと私は懸念していることがありますので、なぜ年限を設定されているのかということを御説明いただければと思います。

杉本政府特別補佐人 本法案につきまして、施行は、国会を通していただきまして、いろいろな、先ほど先生がおっしゃいましたガイドラインの準備、それから周知期間、そういうものを勘案しまして、できるだけ速やかに施行したいと思っております。

 その上で、失効日との関係でございますが、これは、税制抜本改革法を前提といたしまして、その法律の七条で転嫁を円滑かつ適正に行うということになっておりますので、それを踏まえてこの法案を出させていただいています。その関連で、来年の四月一日が八%、再来年の十月からが一〇%となりますので、そこからまた一年半ということで、失効日を二十九年三月三十一日とさせていただいているところでございます。

木下委員 私は、そこがちょっと問題なんじゃないかと。

 消費税法の中にもともと書いてあるのが、「平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。」これをどう捉えたらいいのかというと、これは前の政権のときに決まった法律なのであれなんですが、やはり消費税引き上げの条件のように国民にとっては見えていると思うんですね。

 それが、三十二年度までだといいながら、八%にするんだ、その後一〇%にするんだ、今おっしゃられた日付でやられるんだというような形になっているものとの整合性が私はまずわからないんです。

 今、政府は頑張っていらっしゃいますけれども、その条件がクリアできない、見込みが全然立たない、もしもそうだった場合に、わからないものに対する対処として、この年限を二十九年三月三十一日までだというふうに決めてしまう、その前後関係が私にはクリアではないので、その辺をもう一度説明いただけますでしょうか。

杉本政府特別補佐人 まず、この法案につきまして、先ほど申し上げたようなことで、国会を通していただけましたらできるだけ速やかに施行したいと思っています理由は、この法律に基づきますと、来年消費税率の引き上げということになるという前提になっておりますので、そういたしますと、既にさまざま来年の春に向けた価格交渉とか準備活動が始まっておりますために、それによりまして中小企業者等が買いたたき等の被害に遭いますので、そういうことで、施行の日にちを考えさせていただく必要があろうと考えているところでございます。

 失効日の話につきましては、あくまでも税制抜本改革法が前提となっておりまして、そういう前提のもとで考えている話でございます。

 先生がおっしゃるように、消費税に対して経済状況等の判断はあるかと思いますけれども、それはそれといたしまして、もしそういう場合には法律の改正も必要でございましょうし、法律上はそういう判断をするということが前提になっておりますが、施行期日まで入っておりますので、それを前提とした、抜本改革法に基づいた法案ということで、失効日を二十九年三月三十一日とさせていただいているところでございます。

木下委員 そういう意味では、当然、先に措置をやっておかなきゃいけないということでは、今やらなきゃいけないことだと思うんですね。

 ただ、ちょっと間違うと、消費税を上げることが、条件も何もなくて既成事実化しているような解釈もされる可能性があると思っていまして、今の景気動向を見ていると、このままやっていって成長戦略がうまくいけば、すばらしい形になって、消費税も上げていける条件がそろってくるだろうとは思っていますけれども、ここはやはり気をつけなきゃいけないことなんじゃないかなというふうに私は思っております。

 それから、二十九年の三月三十一日までとする一つの理由のように私は説明を経産省、公正取引委員会の方から聞いたんですけれども、要は、この法律施行に当たって、人員を、転嫁対策調査官という形で相当な方を使われるというふうに聞いております。その人数を、今わかっている範囲内で結構なので教えていただきたいんです。

 二十九年の三月三十一日までにしているのは、たくさんの人数を抱えてずっとやっていくわけではなくて、ある程度年限を切って、そこまでに実行していくためにこの日付を設けたという理由も聞いております。その人数についてちょっと教えてください。

齋藤政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、今御審議中の法案を受けまして、転嫁対策にしっかり取り組むため必要な体制整備を行うこととしております。

 具体的には、転嫁拒否等の行為の取り締まり、監視強化などのために、公正取引委員会、中小企業庁合わせて六百名程度の増員を臨時的に行うものと承知しております。その他の、各業界の所管省庁におきましてもそれぞれ数名から二十数名程度配置する予定と承知しておりますが、転嫁拒否等の調査、指導などの業務を行うに当たりまして必要な人数について、さらに具体的な検討が必要な状況にあると承知しております。

木下委員 私の手元にあるものだと、公正取引委員会から百十九名、それから中小企業庁から四百七十四名というふうな数字が出ております。

 さっきの話じゃないですけれども、これがいつ施行されるかによって、いつからそういう人たちを配置するのかということだと思うんですね。というのは、まず最初に八%になりますといったときには人がいなきゃいけないんですけれども、いつちゃんとやっておくのかということ。

 それから、これは本当に必要なのかどうかということもあるんです。なぜならば、これだけの多い人数、六百名ぐらいの人数になる、各省庁さんもほかで出してこられるということなんですけれども、これは普通に考えたら、年限があるということは、その後、その人たちはどうなるのかなということを考えるわけです。

 一般企業だったら、そういう人数を投じた場合に、その後のグランドデザインもちゃんと考えて措置をとっていくというのが普通だと思っているんですけれども、その辺はどういうふうな仕組みになっているのかをちょっと詳しく教えていただきたい。

齋藤政府参考人 お答えいたします。

 いつからということに関しましては、この法律の施行に合わせてということになろうかと思います。

 先ほど御答弁の際に、臨時的にというふうに申しました。それぞれの役所で、今先生が御指摘のような問題も十分認識した上でそれなりの対応を考えていると思いますけれども、一つのやり方としては、非常勤職員という形で仕事に携わっていただくというやり方があろうかと存じます。

 各省それぞれの考え方があろうかと思います。これは一例ということでお考えいただければと思います。

木下委員 非常勤職員ということになると、言えば非正規な人たちを六百名ぐらい雇って、二十九年の四月一日になったらもう要りませんという形になる。これは、今政府が考えている非正規社員をどうするのかという話を考えても、余りにもおかしいんじゃないかなと思っているんです。

 それからもう一つ、転嫁対策調査官というふうなものを考えたら、私のちょっと経験を述べさせてもらいましたけれども、実際に何が調査できるのか。プロフェッショナルな人が中を見て、あなた、ちょっとこのやり方、法律とそぐわないことをやっているよと言うのはできると思うんですけれども、実際に商売をやっている人の間に入っていって、ちょっとおかしいというふうなことを見られるようにするというのは、普通に非常勤の人たちが入ってきてできるようなものかと考えたら、これは絶対あり得ないと思うんですね。この辺、人だけやってしまえばいいのかという問題がある。

 逆を言えば、六百人、多いように思うんですけれども、実際に、世の中いろいろなところで商売をやられている、そこに対してある程度どんどんと中に入っていくといったら、六百人で足りるのかという話も考えられるわけです。

 だから、聞いていると、前回消費税を上げたときの人数感に即してこういうふうにしたと言っているんですけれども、ここに実効性は私はないんじゃないかなと。人数でやるんじゃなくて、やはり罰則規定とか、そういうものもあわせ持った形でしっかりとやっていく。

 それからもう一つは、さっきお話ししましたけれども、そうじゃなくても、わかりやすいガイドラインとか、そういうものの整備の方をしっかりやっていけばいいと思っていて、この人数が無駄になる可能性もあり得ると思っているんですけれども、その辺のことはどうお考えでしょうか。もしよろしければ、ずっと見ていただいているので。

稲田国務大臣 きょうは、委員の御自分の経験に基づいたさまざまな御指摘をいただきまして、私も引き込まれながら聞いていたところでございます。

 委員長から答弁しましたように、一般的には独禁法で、不公正な取引、優越的地位を利用したと。そして今回は、消費税増税に伴って集中的に起きるであろう中小企業に対する転嫁拒否等にきちんと取り組んでいこうということでございまして、今人数の問題なども御指摘がありましたが、政府一丸となって体制を整えて取り組んでまいりたいと思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 大臣のお言葉をいただくのを実は待っておりました。ありがとうございます。

 もうほとんど聞きたいことは終わってしまったんですけれども、こういうことを考えるときには、商売を実際にやっている中で起こったことというのが、普通、省庁にいらっしゃれば、これは失礼な言い方になってしまいますけれども、なかなかわからないと思うんですね。

 そうじゃなくても、例えば商売をやっている人間からしても、よそが何をやっていて、どういうふうな交渉をしているのかというのはなかなかわからないんです。当然、卸売が小売に対して話すときは、消費税分はうちが持っておきますわ、ほかが何を言っているかわからぬけれども、うちは何とかこらえてやりますよと言ったところがやはり勝っていく、そういう図式があって、それが競争を生み出して商売を強くしていくことだと思っているんです。

 だから、ある程度の法の規制というのは、きょう、うちの丸山議員も言っておりましたけれども、しなきゃいけないです。経済的な成長を促すためには競争を助長してやらなきゃいけない、助長してやらなきゃいけないけれども規制はやるんだ。ただ、規制をやるときには、実効性のある形でやはりやらなきゃいけない。

 今、正直言って私はこれはまだまだ対策が十分じゃないんだろうなと思っておりまして、やはりこれから詰めていくところはいっぱいあると思うんです。そのために、今の状態だけではなくて、プロフェッショナルな人の意見をもっと聞いて、中身のある法律にしていっていただきたいなというふうに思っております。

 その点について、最後にもう一度、稲田大臣、よろしくお願いいたします。

稲田国務大臣 さまざまな観点を御指摘いただきました。

 やはり、今回、二段階にわたって消費税が増税される、その集中的な期間に限ってですけれども、法案を出させていただいて、これを実効性あるものにするために政府一丸となって取り組んでいきたいと思っております。

木下委員 ありがとうございました。質問を終わらせていただきます。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案、この法案ですけれども、そもそもの目的というものは、中小企業における消費税の転嫁をしっかりと行っていくというような目的だと考えられます。この点について、本日も、そして前回も、何度も何度もいろいろな観点から質問が繰り返されておりますので、若干違った角度も交えながら質問させていただきたいというふうに考えております。

 それは何かというと、まずは、この転嫁させるということが、実はある意味よくない部分もあるのではないかというような観点から伺いたいと思います。

 先日の党首討論の際におきましても、みんなの党代表渡辺喜美から安倍総理大臣に対して質問をさせていただきました。今、アベノミクスが非常にうまくいっているというような状況でございます。この一本目の矢という中で金融緩和を行っておる、その中でインフレターゲットを二%に設定する、これを続けることができれば、賃金が三%、四%ぐらい上昇するだろうということが見込まれている、これは先日渡辺代表が党首討論の際に言ったことでございます。

 賃金が上がる前に消費税の増税をしてしまうということになると、せっかくうまくいっているアベノミクスが失敗に終わってしまう可能性も出てきてしまう。取引が行われれば行われるほど消費税の税収がふえていくということは、当然のことでございます。しかしながら、増税されることによって取引が減ってしまい、かえって税収が減ってしまうということだけではなく、一つ一つの業種の利益が減ってしまうことにもつながってしまうのではないかというふうに考えられるわけです。

 消費税の増税に踏み切った一九九七年におきましては、このような法案はございませんでした。今回の法案がつくられたそもそもの契機というのは、前回の反省を踏まえてということだというふうに聞いておりますけれども、しかしながら、このときは転嫁がうまくいかなかったということかもしれないんですけれども、それでもこの消費税の増税というもので景気の大幅な悪化へとつながったわけです。

 もし、前回も消費税の増税が景気の悪化につながったということであれば、今回、こういう法案を通すことによって、転嫁がうまくいく、今までの百五円のものが百八円に売られていく、百十円に売られていくということになると、前回の増税のとき以上に、物価の上昇圧力というか、個人の懐を直撃する割合が大きくなってしまうということになるわけです。

 その意味で、逆説的な質問になりますけれども、事業者全体で、この消費税の増税分を価格に転嫁しない方向で努力をしていただく方が、もしかしたら景気全体への悪影響を防げるのではないかというようなことも考えられるわけでございますけれども、この点、いかがお考えでしょうか。

稲田国務大臣 大変逆説的な質問だと思いました。

 今、アベノミクスの景気回復、非常に明るい見通しを、歓迎を持って見られているんですけれども、でも、当委員会でも、前回の質問でありましたが、地方に行きますと、なかなか景気回復の実感がまだ伴っていない。特に、地域経済を支えているところの中小の事業者の方々は、地方の経済だけでなくて地域のコミュニティーも支えられているという面があるかと思います。

 今回の消費税の増税に当たって、そういう中小の事業者の方々がまた打撃を受けないようにということが目的でございます。先ほど委員も御指摘になった一条、「転嫁を阻害する行為の是正、価格の表示並びに消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別の措置を講ずることにより、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する。」というのがこの法律の目的でございます。

三谷委員 今、お答えいただきました、中小企業というものが非常に困ってしまうということに対してしっかりと手当てをしていかなければいけないという観点は、もちろん持ち合わせております。その上で、先ほどの質問をさせていただいたわけですけれども、後ほどまた、その点についてはお話をさせていただきます。

 今回の法案ですが、主にBツーB、ビジネスとビジネス、業者との取引の問題、そして、業者と個人、消費者との取引の問題、大きく二つに分けられるということがあるかと思います。

 業者間での取引ということについては、割といいことが書いてあるんじゃないか、もちろん、個別に言うと問題もあるかもしれませんけれども、いいことが結構書いてあるのかなというふうに思っているんです。先ほどの木下委員の質問にもありましたけれども、資本金の額によって差を設けるべきかということが一つ問題点として挙げられるのでないかというふうに考えております。

 これは、まさしく独占禁止法における優越的地位の濫用、同様に、ケース・バイ・ケースでありますので、この資本金について特段限定する必要はないということも考えておりますけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 先ほどから御議論になっていますように、今回の消費税率引き上げに際しましては、中小企業者を中心として消費税の価格への転嫁の懸念が示されているところでございます。したがいまして、この法案は、これらの中小企業者の方々が消費税を価格に転嫁しやすい環境を整備していくものでございます。

 中小企業者に対する転嫁拒否等の行為を規制対象とするため、中小企業者の資本金の基準として一般的な資本金三億円以下の事業者を主として保護対象としているものでございますが、大規模小売事業者に関しましては資本金の規制も設けておらないところでございますし、資本金だけで見るというところも、消費税の転嫁問題というものが短期間に大量に起こるということを考えまして、むしろ安定的な基準で三億円とさせていただいたところでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 この三億円という要件が特になくてもいいんじゃないかというような観点から、中小企業の保護というのはその意味では十分図られた上で、さらに消費税の転嫁の促進というものが図られるのではないかというような質問であったわけですけれども、その必要性も余りないということなんでしょうか。

 それでは、続きまして、BツーBではなくて、BツーCの方の質問に移らせていただきます。これは多くの委員から質問がありました。

 この法案第八条というところが、やはり最大の問題ではないかというふうに考えております。この第八条第一号に規制される、取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示というものについては、そもそも消費税の元来の性質から、消費者に消費税を転嫁していないなんてことはあり得ないんだから、それは消費者に誤認を生ぜしめるということで、そういうのはだめですよというのはわかるところでございますけれども、その二号、三号ですね。消費税が上がる分相当額について割引をするですとか、そういったものをポイントで還元していくというようなことについてもだめだと言っていく、その趣旨はどこにございますでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 第八条第一号、ただいま御指摘のとおり、消費税を転嫁しない旨の表示ということでございまして、消費税を転嫁しない旨を直接的に表現しているわけでございますけれども、そのようなものでない場合でありましても、相手方が負担すべき消費税の全額また一部を減ずる旨、または、消費税に関連して経済上の利益を提供する旨の表示、こういうことをすることによりまして、転嫁をしていない旨の表示と同じように、消費税の負担につきまして消費者に誤認を生じさせることとなるというふうに考えております。

 したがいまして、これらにつきましても規制の対象とするということにしたものでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 そして、このガイドラインというのは、いつぐらいに具体的な、こういう表示だったら大丈夫、こういう表示だったらよくないと。

 これは実は、以前に消費者庁の方に話を聞いたところ、一つの広告の文言だけとっても、それによってよいとか悪いとかと言うことはできないと聞いております。その文言とほかの全体的なものを総合的に考慮すればそれがよいか悪いかというようなことが判断できる、非常に難しいガイドラインだと聞いておりますけれども、これはいつぐらいにできるというふうに考えておりますでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 この八条で禁止しておりますのは、まずは、消費税還元セールのような、もちろん、消費税という文言の入った表現ということでございますけれども、そうでないものにつきましても、いわゆるチラシなどで広告している場合には、その表現以外の場所で消費税に言及している、そういうこともございますので、そうした面で、そういうチラシなどの表示全体から見て判断する必要があるというふうに考えているところでございます。

 具体的には、どのような表示を予定しているか、そうしたことを事業者の方々などからよくお伺いした上で、法律が公布された後にパブリックコメントなど所要の手続を行った上で、できる限り速やかに公表できるよう、準備を進めてまいりたいと考えております。

三谷委員 できるだけ速やかにということだと思いますけれども、実は、消費税の増税の問題、増税されて値段が上がってしまえば、もちろん業者としては、今までのようには売れなくなってしまうということですから、何とか値下げをして売っていきたいというふうに考えるのは当然のことでございます。そして、安売りをして需要を喚起していくというのもまた当然のことでございます。ここなら安いというふうに思わせることが必要ですから、死ぬ気で、何とか安く売ることができないかということを考えていく、それが事業者の常ではないかと思うわけです。

 ガイドラインというのをできるだけ早期に出してほしい、これは多くの事業者が当然のごとく求めていることではございますけれども、それはある意味、早くガイドラインを出していただければその分だけ、そのガイドラインに書いていることを何とかくぐり抜けて安売りをする方法を考える、それだけの時間が欲しいということにもつながってくるわけであります。

 だからこそ、正直、どういった形でガイドラインがつくられるにせよ、消費税が増税された分だけ何らかの形で安売りされることは防げないわけですから、このガイドラインによって防いでいくということよりは、何とか、逆に中小企業の方で消費税の転嫁ができるというような仕組みをつくっていく方が直接的ではないかというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案の検討に際しましては、私ども、中小企業団体から、より実効性のある転嫁対策という観点から、消費税分の還元、あるいは値引きを連想させるような表示方法についてはぜひ禁止してほしいという大変強い要望を受けてまいったところでございます。

 私ども中小企業庁としましては、こうした転嫁を阻害する表示の是正というものが消費税の円滑な転嫁を実現する上でぜひとも必要であるというふうに考えてございます。

 他方、議員御指摘いただきましたように、中小企業者が消費税を転嫁できるような仕組み、これも大変重要な観点でございまして、この法案の中では、御指摘の転嫁を阻害する表示の是正に加えて、買いたたき等による消費税の転嫁拒否行為の取り締まりでありますとか、あるいは総額表示義務の弾力化、さらには転嫁カルテル、表示カルテルに対する独占禁止法の適用除外制度の創設など、さまざまな措置が盛り込まれているところでございまして、私ども中小企業庁といたしましても、こういった措置を通じて、中小企業、小規模事業者の消費税転嫁を円滑に進めるために全力を挙げて取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。

三谷委員 そうなんです。この法案で、消費税の増税分を転嫁させていくことを中小企業に行わせていくためには、消費税の還元セールというものを何とかやめてほしい、そういう中小企業の団体の側の要望があったということは伺っております。

 しかしながら、前回の、一九九七年の消費税の増税の際にうまく消費税の増税分を転嫁できなかったというふうに認識されている、理解されているとすれば、その原因はどこにあったというふうにお考えでしょうか。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、常々、中小の小売業者の方々からは、消費税の転嫁に関するさまざまな御意見、御要望をいただいているところでございますけれども、消費税の転嫁が困難な理由として、一つには、大変熾烈な低価格競争というものがございまして、消費者、取引先から消費税額を含んだ値引きを強く求められるという中で、なかなか転嫁ができないという声がございます。

 また、特に中小商店におきましては、大型店舗との価格の比較、こういったことから消費者から特に値引き要請が強い、そうしたことで転嫁がなかなかできない、このような切実な声が寄せられているところでございます。

 先ほども申し上げましたとおり、こうした中小企業者の声を背景といたしまして、今回、中小企業団体からさまざまな御要望をいただいたものと考えてございまして、私ども、そういった観点からも、転嫁の阻害を是正するような措置、これはぜひ必要だというふうに考えているところでございます。

三谷委員 そうなんですね。なかなか転嫁ができない理由というのは、消費者から求められるということで、何とか安く売ってほしいというような要請が非常に強いということ、それからスーパーとの価格競争というような視点があるというふうに言われております。

 しかしながら、今、地域を支えていただいている商店街の皆様、お肉屋さんだとか八百屋さんですとか小売店、いろいろな店舗がございますけれども、そういった店舗で、なぜ地域の方々がそこで買い物をするかというと、それは必ずしも、今はもう値段が安いから買おうというふうに考えているわけではないということが一つ挙げられるかと思います。今までの人間関係等々を含めて、引き続きそこで買っていくというような観点もありますし、スーパーも遠いから、やはり近くで買いたいというような方々もいらっしゃるかと思います。

 もともとバーゲニングパワーというのは大手スーパーと地域の商店街ということでは全然違うわけですから、値段競争という観点からいくと、中小企業ですとか商店街の店舗等々を潤していくということはなかなか困難ではないかというふうに考えるわけであります。

 今、経済産業省等々を含めて、地方の中小企業の振興策ですとか地域の振興策、いろいろとられているわけですから、そういった制度を活用していくという中で、中小企業等々というものに対しての手当てを考えていくということでやっていくことを考えてはいかがかなというふうに考えているわけでございます。

 他方で、便乗値上げという問題についても伺ってまいりたいというふうに思います。

 今回の消費税の増税という問題が出たときに、当然ながら、便乗値上げは防止しなければいけないという観点での検討も消費者庁の方でなされているという話を伺ったことがあります。けれども、ここで言う便乗値上げというのは、具体的にどのようなものを指すでしょうか。

草桶政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、個々の商品の価格は、競争のもとで、市場の条件全体を反映して決められるものでありますために、実際にどのような場合に便乗値上げに該当するかを判断するに当たりましては、それが税負担の上昇率を超えているかどうかということだけではなくて、商品の特性でありますとか、需給の動向でありますとか、コストの変動とか、種々の要因を総合的に勘案する必要があるというふうに考えております。

三谷委員 これは個々の取引実態ということにもよると思いますけれども、例えば八百屋さんですとかお肉屋さんですとか、地域の商店ということですと、ノートが百円ですとか、トマトが二個で五十円とか、そういった観点で取引されていることが多いのではないかというふうに考えられるわけです。それが、例えば、消費税が上がったから、では、五十円を五十二円、五十三円ということで取引してもらえるかというと、なかなかそういうわけにはいかないという実態があるのではないかと思います。

 そういったときに、その五十円で売っていたものを五十五円または六十円で売っても、それはそれで構わないんだというようなことを言っていかないと、これは中小企業からすればたまったものじゃないというふうに考えることもできるわけです。これは取引の実態にぜひとも目を向けていただきたいというふうに考えるわけでございます。

 もちろん、大手のスーパーはできるだけ安く売りたいということで、できるだけ自由競争の中で、消費税増税分を下げて売っていきたいというふうなことを考えるのは当然です。

 一方で、そういう中小企業ですとか地域の商店ですとか、小銭を大量に取り扱うことが余り通常でないような企業においては、便乗値上げだからたたくんだというようなことを方針として示していただくと、なかなか怖くて値段が上げられない。本当だったら五十二円、五十三円取っていきたいようなものを、我慢して、便乗値上げと言われるのが怖くて五十円で取引をせざるを得ない。これは、どっちも非常に不幸だと私は考えているわけでございます。

 なので、今回の消費税の増税に当たって、還元セールといったものを禁止するということがおかしいのと同じように、中小企業に、便乗値上げだ、便乗値上げだというふうに言っていくのもおかしいのではないかというふうに考えているわけでございます。

 この法案の位置づけについて、また一つ伺いたいと思います。

 今回の表示の規制というものについては、消費者庁が所管されることになっておりますけれども、そもそも消費者庁というのは、消費者の利益というものをまず保護するために生まれた官庁ではないかというふうに考えている次第でございます。

 今回の表示の規制というものを行うことによって、消費者の利益が保護されるというよりは、実は中小企業の利益を保護するということになるわけですから、そもそも消費者庁の発足の目的とは異なっているものを取り扱っているのではないかというようなことも思われるのですけれども、その点、いかがでございましょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 八条で禁止しております表示は、いわゆる消費税の転嫁を阻害する表示ということでございますけれども、消費税をいただかない、還元する、こうした表示につきましては、いわゆる消費税の負担につきまして消費者に誤認を与えるものということでございます。

 そういう意味では、必ずしも適切な表示ではないわけでございまして、消費者の場合、適切な表示に基づきまして合理的、自主的に商品を選択できるというのは消費者の利益ということでございますので、このような表示が蔓延するということは必ずしも消費者の利益になるものではないんじゃないかなというふうに考えております。

 また、表示につきましては、適正な表示に向けての規制またはその取り締まりというのは消費者庁に知識ないし経験がございますので、政府全体で対応することになっておりますこの消費税転嫁対策につきましては、表示の部分については消費者庁で担当するということになったというふうに理解しております。

三谷委員 ありがとうございました。

 続きまして、外税の問題について伺っていきます。

 以前、外税方式が採用されておりまして、その後、内税方式に変更されて、今回、改めて例外的に外税方式が採用されるということになりました。一般的に、日本だと、例えばスーパーですと、九十八円ですとか百九十八円、二百九十八円というようなセールがなされております。これは各国でいろいろであります。例えばアメリカだと、九十一ドル九十九セントですとか二百九十九ドルとか、九十九というのを使うことが商慣習となっておりまして、それは、税率がどうであろうと、そういった今までの商慣習に基づいた表示を行っていくというのが一般的なことではないかというふうに考えております。

 以前、一九八、二九八というふうに取引をされていた商品が、では、消費税の増税が導入されて内税方式になったら、二百二円、二百三円という表示に変わったか、三百五円、六円という表示に変わったかというと、変わっていない。そういうのは一九八、二九八のままということになるわけです。

 そもそも、内税に変えたとしても、その表示する値段は変わらない。では、具体的に業者はどのように対応しているかといえば、幾つかの業者に話を聞きましたけれども、実は同じクオリティーのものを同じ形で出しているわけではないという話をよく聞くわけであります。分量だったらより少なくするとか、粗悪なものを使うとか、そういったもので、原材料のクオリティーを落とすということによって、当然ながらコストが下がるわけですから、それによって同じ価格を維持するということを、これはもう生活の知恵というか業者の知恵としてやっているわけであります。

 幾ら内税方式というものを維持したとしても、一九八、二九八というものは変わらないということですから、そういう意味では、もう既に消費税の転嫁というのはされているというふうに見ることもできるわけであります。

 本当の意味で、今までと同じ商品を提供していただくことが消費者の利益に沿うということを考えるとするならば、今までの商慣習を尊重していただいた上で外税方式に変えていただいた方が、よっぽど消費者の利益にかなうのではないかというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、渡辺(博)委員長代理着席〕

竹内大臣政務官 お答えいたします。

 小売業界におきましては、先生御指摘のように、税率引き上げ後も値ごろ感のある価格表示を維持する観点から、外税表示の方が望ましいとの意見がある一方で、顧客との関係や公平な競争環境を確保する観点から、総額表示を維持すべきとの意見もございます。また、事業者の中にも、さまざまな意見があるものと承知をしているところでございます。

 このような状況の中、中小企業団体からは、総額表示を維持した上で、本体価格、税抜き価格を強調して表示することにより値ごろ感のある価格表示を行うことが現行法においても可能であることを明確にしてもらいたい、そのような要請がありました。

 このことを踏まえまして、本法案におきましては、税込み価格が明瞭に表示されているときには、本体価格である九十八円や百九十八円といった値ごろ感のある価格を強調して表示する場合であっても、景品表示法の不当表示に当たらないことを条文上明確化したところでございます。

 よろしくお願いいたします。

三谷委員 明瞭に表示したという、そこの限定の部分ですけれども、それは、どの程度の表示をすれば明瞭に表示したというふうに捉えていただけるものでしょうか。

菅久政府参考人 法のその規定は、ある意味確認的に規定したものでございまして、現行の景品表示法におきましても、明瞭かどうかというのは、消費者から見て、例えば、税抜き価格で強調された表示を見たときに、これを消費者が税込み価格と誤解するというのが問題になる場合でございます。

 したがいまして、そこに並べて税込み価格を書く、または、その他の方法はありますが、少なくとも、消費者が見た価格が、税抜き価格である価格が税込みと誤解しないように表示していただければ問題ない、そういうふうに書いておけば明瞭に表示した価格と言えるということでございます。

    〔渡辺(博)委員長代理退席、委員長着席〕

三谷委員 その意味では、割と緩く税抜きと書いておけばいいと捉えておいてよろしいということでしょうか。それは回答は求めません。

 それから、残り時間が限られておりますので、最後に一点、お伺いいたします。

 消費税増税という問題です。

 先ほど申し上げましたとおり、党首討論の中で、そもそも消費税の増税というものをやるべきではないというようなことは、みんなの党の立ち位置として訴えさせていただいたところでございますし、安倍総理大臣は、厳正にこれを判断していただくということになろうかと思います。また、今、消費税が八%に上げられる、そして一〇%に上げられるという中で、軽減税率というものをこれから認めていくというような話もございます。

 その中で、お伺いをいたします。

 今、増税が決定されていない、また、どの品目について軽減税率が適用されていくかというのも決まっていない中で、今の取引について、もう既に、消費税の転嫁をさせない買いたたきだというようなことで、これを指導、勧告、そして公表していくことが適切かというような問題があるわけです。

 これは何かと申しますと、百円のものをその後も百円で取引しろというようなことを大企業が言ったとして、結局、言った当時は確かによくない話だったかもしれないけれども、消費税が増税されなかったということからすれば、何だ、杞憂で終わったじゃないか、買いたたきにはなっていないというような結果にもつながるわけでございます。

 特定の、例えば食料品ですとか、そういったものについて、今までと同じ値段で納入しろという話をしたところで、軽減税率が適用されるという話になれば、確かにそういった態度は問題かもしれないけれども、実害が中小企業の側に全くもって生じていないというような結果にもなるわけです。

 中小企業に実害が出ないというようなこともあり得るわけですから、消費税の増税が決まっていない段階で、そしてどの品目について軽減税率が適用されるかというのも決まっていない段階におきまして、余りこの法律に基づいて積極的に指導、勧告していただきたくないというふうに思うわけですけれども、この点、いかがでしょうか。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 今般の消費税率引き上げに際しましては、中小企業者を中心に、消費税の価格転嫁への懸念が示されているというのは繰り返し申し上げているところでございますが、こうした消費税の転嫁に関するものに関連しまして、来年の春を見据えた交渉だとか価格に関する準備、そういったものがもう既に始まりつつあるかもしれないと思っております。

 そうしたことを考えますと、そうした行為に対して、ただ黙って見ているわけにもまいりませんので、そこは、そういった準備行為、それから準備交渉に関しましても、価格転嫁がきちっとできるように、そういった体制といいますか、そういうシステムを導入していくことは今重要だと考えております。

 したがいまして、軽減税率を導入するかどうかにかかわらず、本法案が成立しましたら、これを適切に運用することによって、中小企業者の方々の消費税の転嫁の環境を整えていくということは必要なことじゃないかと考えているところでございます。

三谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 消費税転嫁法案について質問をいたします。

 きょうは、法案に直接関連する点で稲田大臣にお尋ねをし、また、中小業者の実態については茂木大臣にお聞きする、こういうことで質問したいと思っております。

 法案の提案理由説明の中では、今回の法案は、消費税率の引き上げが二段階にわたるものであることもあり、中小零細事業者を中心に、消費税の転嫁について懸念が示されていると述べています。ついては、消費税の価格転嫁が困難という現状認識についてまずお尋ねしたいと思います。

 資料を配付させていただきましたが、一枚目、「中小企業四団体による消費税転嫁にかかる実態調査結果」ということで、これは、二〇一一年十二月十二日の政府税制調査会で経済産業省意見として紹介された、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会の中小四団体による中小企業における消費税実態調査の結果であります。

 ごらんいただいてわかりますように、売り上げの規模などによって当然差も出てくるわけですけれども、現在、消費税五%を販売価格に転嫁することができていますかという問いに対して、多数の事業者が転嫁できていないと回答していることが見てとれます。消費税を価格転嫁できないのが実態だと事業者の方が訴えているわけですが、こういう声、価格転嫁できないという中小業者の実態について、稲田大臣、そして茂木大臣も同じ認識か、この点についてまずお答えください。

稲田国務大臣 今、塩川委員から示されました「中小企業四団体による消費税転嫁にかかる実態調査結果」を見ましても、明らかに、規模が小さくなるほど、売り上げが小さくなるほど、現在でも消費税を転嫁することができないという状況になっております。

 昨日の予算委員会でも、ある委員から、御自身が調査された結果で、商店街のところで調査をしたら、百人中九十八人が消費税増税に反対で、転嫁に対して大変不安を持っている、そういう結果を出して質問されておりましたが、規模が小さくなるほど消費税の転嫁に対して不安があり、そして今回の法案はまさしく、消費税増税時において集中して起こるであろう転嫁拒否事案に対して対応をするものでございます。

茂木国務大臣 御指摘の調査は、一昨年の平成二十三年八月に、中小四団体が共同で調査をしたものであります。

 消費税に関しては、委員も御案内のとおり、さまざまな調査が行われておりますが、御指摘の調査結果に限れば、中小企業、小規模事業者の方々が、消費税の転嫁について、まさに現在も困難に直面しており、かつ今後にも不安を感じていることがこの調査結果で示されていると思います。

 政府としては、こうした事業者の方々の御懸念も踏まえて、本法案の内容を中心にして、政府一丸となって実効性のある強力な転嫁対策を実施していきたい、このように考えております。

塩川委員 稲田大臣からは、現在でも消費税を転嫁することができないというお話がございました。茂木大臣からも、現在も転嫁について困難に直面している、いわば法案の趣旨としては、消費税の引き上げの際に転嫁ができない懸念と言いましたけれども、現時点で転嫁ができていない実態があることを意味しているという点での認識を示していただきました。転嫁できない苦しみというのが、消費税導入以来、四半世紀続いているという業者の方の悲痛な叫びも寄せられております。

 そこで、茂木大臣にお尋ねしますが、消費税を価格転嫁できない、しかし消費税は払いなさいと言われた場合に、そのときにこの消費税分というのは誰が負担するのか、お答えいただけますか。

茂木国務大臣 さまざまな取引において、これは消費税の転嫁にかかわらず、例えば付加価値を売り手、買い手のどちらがとるか、こういう問題というのが出てくるわけであります。そういった商取引の中で、その企業の持っている技術であったり部品であったり、その独自性であったり価格支配力、こういったものによっても相当違ってくるのではないか。

 ただ、一般的に申し上げて、多くの先から調達を行う、調達のオプションを持っている大きな企業と、納入のオプションが限られる中小企業の場合には、どうしても力関係は大きな企業の方が大きくなるであろう、こういったことから、不当な価格転嫁の阻止が起こらないようにということで、今回の措置を導入させていただきたいと考えております。

塩川委員 質問にお答えいただいていないんですが、消費税を価格転嫁できないというときに、その消費税分は誰が負担するのかという点については、最終的に消費税を負担するのは消費者とされているわけですが、納税義務者は事業者の方であります。この分離が矛盾となって価格転嫁問題というのが生じるわけで、改めてお尋ねしますが、価格転嫁できなければ、事業者の方が自腹を切って払わざるを得ない、それが消費税ということになるんじゃありませんか。

茂木国務大臣 それぞれの企業の活動の中で、原材料に係るコストであったり、人件費に係るコストであったり、そういったコストを売り上げから除いた部分が利益として計上される、そして、その利益がどこまで大きいか、消費税の分も含めて利益が圧縮される、場合によっては、売り上げよりもコストの方が大きければマイナスになる、こういった状態は出てくるのではないか。

 ただ、これは付加価値税でありますから、それぞれの段階で計上していただき、そしてそれを消費税として国に納めてもらう、これを国民全体の社会保障の安定に使っていく、こういった方向で考えております。

塩川委員 全国商工会連合会、全国連も、ちょうどこの実態調査を行った際に「消費税の問題点」という資料を出しました。そこの中でも「規模の小さな事業者ほど、立場が弱く、販売価格に消費税を転嫁できないため、消費税率が引き上げられると、転嫁をできない分を自らの利益を削って納税することとなる。」というふうに述べて、つまり、価格転嫁ができずに、身銭を切って納税せざるを得ない、これが中小業者の実態だと。これは受けとめていただけますか。

茂木国務大臣 先ほど正確に答弁をさせていただいたと思います。

塩川委員 消費税は、赤字でも売り上げに応じて課税されるわけで、国税庁にお尋ねしますが、全法人に占める欠損法人、赤字法人の割合、国税の新規発生滞納額に占める消費税の割合、新規発生滞納件数に占める消費税の割合について、一九九一年度と直近の二〇一一年度の割合をそれぞれお答えいただけますか。

岡南政府参考人 お答えいたします。

 国税庁の会社標本調査によりますと、欠損法人割合は、一九九一年度が四九・七%、二〇一一年度が七二・三%となっております。

 また、新規発生滞納全体に占める消費税の割合でございますが、まず税額ベースでは、一九九一年度が一三・四%、二〇一一年度が五三・〇%となっております。また、件数ベースでは、一九九一年度が九・六%、二〇一一年度が四一・五%となっております。

塩川委員 今お答えいただいた数字をグラフにしたのが資料の二枚目であります。

 全法人に占める赤字法人の割合及び国税の新規発生滞納に占める消費税の割合、これは金額ベースと件数ベースですけれども、一九九一年度以降、二〇一一年度までの推移をここで紹介しております。ごらんいただいてもわかるように、消費税導入後、赤字法人の割合が増加するとともに、ほかの国税に比べて消費税の滞納の割合というのが、納税額でも滞納件数でもどんどん高くなっております。

 重ねて国税庁の方にお尋ねしますが、本会議の私の質問に対して安倍総理は、このような滞納となった消費税額のほとんどは翌年度末までに納税されていると言うけれども、どのような徴収が行われているのか、この点についてお答えください。

岡南政府参考人 お答えいたします。

 消費税につきましては、平成二十二年度の徴収決定済み額が約十兆六百二十八億円ございましたが、このうち約三千三百九十八億円が滞納となりました。したがいまして、消費税の徴収決定済み額約十兆円に対する割合は三・四%でございまして、逆に言いますと、九六・六%は督促前に収納されておりました。滞納にならなかったということでございます。

 御指摘の点でございますけれども、平成二十二年度に新たに発生しました消費税の滞納税額約三千三百九十八億円のうち、同二十二年度中に約二千百五十七億円、さらに翌二十三年度末までに約七百二億円、二年間の合計で二千八百五十九億円が徴収されております。

 なお、平成二十三年度末における消費税滞納残高は約四千百六十九億円でございまして、平成十二年度以降、十二年連続で減少しているところでございます。

塩川委員 滞納そのものについて、消費税の占める割合が高くなっているというのは先ほども示しました。

 その上で、実際には翌年度末までには納税がされている、今の数字でいいますと、大体八四%まで徴収されているということですけれども、現状は、結局、転嫁できない事業者が身銭を切って納税せざるを得ない。身銭を切ることもままならず、滞納せざるを得ないという実態に陥ったときに、結果として、どういう実態の中で消費税を払い、あるいは滞納せざるを得なくなっているかというところに心を寄せることが必要なんじゃないでしょうか。

 グラフで見ていただくと、件数ベースで、新規滞納に占める消費税の割合が大きくふえているのが、二〇〇四年から二〇〇五年にかけてであります。これは、消費税の免税点が二〇〇四年に売上高三千万円から一千万円に縮小されたときに対応しています。そういう中で、滞納の件数もふえているということが見ていただけると思います。

 売上高一千万円の事業者といえば、単純計算で月八十三万円強ですし、ここから仕入れ経費や水光熱費などを引くとどれだけ残るかという状況で、粗利の二割として十七万円弱であります。非常に零細な小売店程度の規模ということで、一千万円に対し消費税が五十万円ということがどれだけ過酷なものかわかるんじゃないでしょうか。

 茂木大臣に重ねてお尋ねしますけれども、こういったまさに生業に近いような小規模零細な事業者は、もともと内部留保などはありませんし、経営者の給与も報酬も受け取らない、預貯金を取り崩して、保険も解約する、こういう状況で納税し、結果として滞納せざるを得ない、それが消費税だという実態を受けとめていただけますか。

茂木国務大臣 法人税に限らず、消費税についてもそうだと思いますけれども、根本的な解決策は、やはり日本の経済を再生して、そして多くの企業が納税できる、利益が上がる、こういう環境をつくることだ、そのように考えております。

 今御案内のとおり、安倍内閣におきましては、三本の矢ということで、長引くデフレからの脱却、そして経済の再生というものに取り組んでおります。そういった中で、中小企業、小規模事業者がしっかりと収益を上げて、それが所得にも還元される、そして税もしっかりと払える、こういう環境をつくるために全力で取り組んでいきたいと思っております。

塩川委員 安倍内閣の三本の矢、経済再生ということですけれども、しかし、アベノミクスの恩恵というのが中小零細企業に及んでいるのかという問題があります。逆に、円安に伴う資材高騰により仕入れコストが上昇して、経営を圧迫するような事態になっているんじゃないのか。

 中小企業家同友会全国協議会の方が各議員を回られまして、私のところにもおいでになりましたが、二〇一三年一―三月期の景況調査の速報を示していただきました。そのタイトルは「アベノミクス効果 中小に及ばず」であります。

 若干紹介しますと、「一部の大企業景況の上向きと対照的に中小企業景況は後退が続いている。売上・業況・採算DIは、いずれも水面下で悪化、特に製造業での悪化が大きい。円安の影響で仕入単価が大きく上昇し、採算が圧迫されている。次期以降に改善への「期待感」が存在する一方、製造業などで業界の先行き不透明感がぬぐえず、設備投資に踏み切れない状況もある。アベノミクス効果が中小企業景況に及んでいるとは現況ではいえない。むしろ円安先行による利益圧迫との攻防が当面する課題となっている。」こういう指摘こそ真摯に受けとめることが必要だと申し上げたい。

 消費税の滞納割合が増加しているというのは、価格への転嫁ができないもとで、受け取ってもいない消費税を払えと言われても、赤字経営のもとで払うに払えないという中小業者の実態を示しております。実際、売り上げも減少して、この十年でもうけを吐き出したという業者の方の声もよく聞くわけであります。

 資料の三枚目、「資本金別配当金、利益剰余金、給与等の増減比」これは、資本金十億円超と資本金一千万円以下で九一年を一〇〇とした増減率を示したグラフであります。この間、資本金十億円を超える大手企業においては配当金や利益剰余金を大きくふやしているのに対して、中小企業における経営は深刻になっているということが見てとれます。

 茂木大臣に重ねてお尋ねします。

 消費税の増税というのがこういった中小企業、小規模事業者の廃業や倒産の引き金になるのではないのか、こういう強い懸念の声もあります。この点についてはどのように受けとめておられますか。

茂木国務大臣 委員のお示しいただきました図を拝見いたしましたが、この図の起点は九一年というバブルが崩壊する前であります。これは、中小企業、小規模事業者も比較的業況がよかった年でありまして、それ以降の落ち込みということになると、大企業の回復の方が早かったということなんだと思います。恐らく、九三年を起点にとるとかなり違った形のグラフになってくる、私はそのように思っております。

 いずれにしても、立場の弱い中小企業、小規模事業者が消費税を転嫁できず経営に悪影響を及ぼすことがないように、今回の法案による措置を中心にして、政府一丸となって転嫁対策に万全を期していきたい、このように考えております。

 同時に、日本政策金融公庫によりますセーフティーネット貸し付け等々もしっかり行っていきたいと思っております。

 さらに申し上げると、日本は今開廃業率がいずれも五%前後なんですが、廃業率の方が高い。アメリカそしてイギリスは、開業率が大体一〇%から一二%ぐらいまでいっております。そういった状況に中期的には持っていけるように、これからの成長戦略の中で、開廃業率の逆転、そして開業率の上昇に重点的に取り組んでいきたいと考えております。

塩川委員 バブルを起点にすると大企業の回復が早いのではないのかというお話がありましたけれども、であるならば、バブルを起点としても、大企業がこれほど大きな配当金、利益剰余金を積み上げていることに、中小企業との大きな格差が生まれているということこそ見なければいけないんじゃないでしょうか。中小企業は本当にこの景気回復の恩恵に浴していないということを示すものだと考えます。

 消費税増税なら来年四月の前に廃業しようという業者の方というのも少なくないんですよ。ですから、開廃率の話をされたけれども、廃業率をさらに高めるのが消費税の増税だということこそ真摯に受けとめるべきだと思います。

 消費税の価格転嫁の問題ですけれども、そもそも、大企業は消費税についてほぼ一〇〇%転嫁できるのに、中小業者はなぜ転嫁できないのか。冒頭お話がありましたように、現在でも消費税の転嫁について困難に直面している、転嫁することができないという実態にある。なぜ中小業者は転嫁できないのか、この点についてはどのようにお考えですか。

茂木国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、取引関係において、いろいろな意味で、どちらに選択の幅があるかによって価格交渉力というのは違ってくる、そういった影響も出ているんだと思っております。

 ただ、繰り返しになりますが、今の日本は、全体的に申し上げて、余りにもコストダウンというか、価格競争に陥っている。全体の経済が、もう少し高付加価値なものを適正な価格で売る、こういったマインドに転換していくことが必要だ、そんなふうに考えております。

 同時に、根本的な解決策というのは、やはり景気をよくしなくちゃいけないんです。みんなが景気がよくなかったら、消費税だけじゃなくて、法人税だって払えない。

 ですから、我々は、まずデフレからきちんと脱却して日本経済を新しい成長軌道に乗せる、それによって所得がふえる、所得がふえれば消費は当然伸びます、消費が伸びれば企業の設備投資が膨らむ、設備投資が膨らむことによって企業の収益が上がり、また所得がふえる、こういったいい循環をつくり出していきたいと思っております。

塩川委員 勤労者の報酬の引き上げを安倍総理も要請したということですけれども、結果は去年の春闘の結果と変わらない、並びなんですね。

 そういう点でいえば、四万人の雇用創出なんて総理は言いましたけれども、どこに根拠があるのか。そういう実態が今あるということを厳しく言わなければなりません。本来、勤労者の、国民の所得をふやすというところにこそ政策を行うべきであって、そういう点でも、内部留保をきちんと還元していくような仕組みづくりこそ行うべきだということを申し上げておきたい。

 そもそも、中小企業が転嫁できない根本原因というのは、製造業や建設業に典型的な重層的下請構造にあるわけで、大企業と下請中小企業との間に圧倒的な力の差を背景とした支配関係があるからであり、小売業でも大手流通企業が市場を支配し、納入業者や取引業者は弱い立場に立たされております。消費税というのはトランプのばば抜きのようなものだ、大企業はさっさとジョーカーを押しつけて高みの見物を決め込み、中小業者と消費者がジョーカーを押しつけ合っている、こういう声もあるわけであります。

 消費税は、転嫁できなくても赤字であっても納税を迫る、弱い者いじめの税金であり、営業破壊税と言わざるを得ません。消費税増税ありきで目先の対策だけを行うような今回の法案は、結果として、下請いじめ構造にメスを入れることを棚上げすることになり、かえって有害にもなりかねない。

 消費税増税そのものの中止の決断こそすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

富田委員長 午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後一時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、立教大学名誉教授舟田正之君、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授小川孔輔君、日本税理士会連合会常務理事・調査研究部長上西左大信君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず舟田参考人にお願いいたします。

舟田参考人 本日は、このような場にお招きいただき、私の意見を陳述する機会をいただき、ありがとうございました。

 お手元に私のレジュメが行っていると思いますけれども、私は長く独占禁止法あるいは景表法を勉強してきた者でございますが、本法案については賛成という立場で意見を述べさせていただきます。

 一に、本法案のポイントと書きました。これは、皆さんよく御存じのことを念のため書いただけですので、ここは省略いたします。

 一つの問題は、消費税の転嫁拒否という行為を規制するかどうかということであります。

 私は独占禁止法の勉強をしてきましたけれども、消費税法は余り勉強してこなかったので、今回、もう一度見直してみますと、昭和六十三年に税制改革法で消費税が導入されたわけですけれども、そこでは「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとする。」という規定があるわけでございます。

 当時、私はこれだけを覚えていまして、「するものとする。」とは何だということで、これが法的義務かどうかということで議論があって、学会ではいろいろ議論があるようでございます。しかし、一応このように定められているということでございます。

 消費税は、御承知のとおり、納税するのは事業者ですけれども、実質的な負担者は消費者、そういう仕組みであります。現行は仕入れ税額控除方式をとっておりますが、これは消費の流れの各段階の事業者がそれぞれ自分の付加価値分に税金をつけて川下に転嫁するという仕組みになっていると思います。

 しかし、実際にはこのような転嫁が必ずしも行われるとは限らないということが問題であるわけでございます。いわゆる益税、損税の問題ですが、ここでは主として損税の問題、消費税によって損をする事業者が出てくるということが問題であると思います。

 例えば、小売業者が現在税込み百円で売っている場合に、五%が消費税分でございますけれども、来年から八%に引き上げられる。としますと、小売業者としては百円を維持するために納入業者に仕入れ値をそれだけ下げてくれという要求があるのではないかということでございます。

 これを納入業者に要求した場合には、多くの場合、小売業者の方が力が強いですから、のまざるを得ない。そうしますと、消費税の本来の仕組みである転嫁がなされないことになり、本法案でいいますと三条一号、消費税の転嫁を拒むことに該当するということで、禁止されるべきではないかなと思われます。

 本法案は独禁法の特例法でございますので、同じことをもし独禁法を適用しますと、優越的地位の濫用ということになるだろうと思いますが、それを、より簡易な、あるいは迅速な手段で規制しようというのが本法案であろうと思います。

 商品本体について、価格交渉し、自由に決めるということは、これはもちろん市場経済の本質であって、原則として自由でありますが、先ほどのような転嫁を拒否して納入業者に不当な不利益を負わせるというのは許される行為ではないと思われます。

 次に、転嫁を阻害する表示とは何かということで、そこにもう一度法案を並べていますけれども、消費税を転嫁していない旨の表示はいけないというのが案でございます。具体的には、消費税を転嫁しませんとか消費税還元とかいう宣伝文句がこれに当たると言われて、私はこれは賛成いたします。

 消費税はもともと転嫁されることが前提で立法されているものだ、その制度趣旨に反するような表示は規制されるべきではないか、特に、還元という言葉は何を意味しているか、ちょっとはっきりしないと私は思っております。

 何となく、消費者が本来は消費税を負担すべきなんですけれども、それを小売業者が戻してくれる、消費税を負担しなくていいというふうに受け取られるおそれがあるわけです。しかし、それは事実に反すると思われるわけです。消費者は正しい情報を受け取る、いわば消費者の権利があるわけで、それを侵害するというのはむしろ望ましくないということであります。

 それから、第二の理由としては、還元セールなどの表示を許容すると、その小売業者は、安くしたい分を納入業者に押しつけることになりがちだということであって、これは皆様御承知のとおりに、前回の引き上げ時でも転嫁できなかった中小企業者がたくさんいたということであります。

 そのように、ここは納入業者と書いてありますけれども、もちろん下請の場合は下請事業者になりますが、それらに不当な負担を負わせるようなことにつながる表示を規制するのは望ましいということであります。

 それから、転嫁カルテル、表示カルテル、これは独禁法の適用除外にするということですけれども、これは転嫁を容易にするために中小企業者に認めるということで、これも賛成でございます。

 あと少し、一分ほど時間がありますので。

 今回、本法案では、転嫁拒否についてはさまざまな仕掛けをつくりまして、違反行為の取り締まりに臨むということになっているわけです。

 ちょっと言いにくいことですけれども、しかし、幾ら一生懸命公正取引委員会以下の各省庁が取り締まりに努めたとしても、限界はあるということはやはり認めた方がいいのではないか。ちょっと古い話ですけれども、戦前、以後の統制経済、がっちりやったといっても、しかし、実は統制は完全に行き渡ったわけではないわけで、今回も、膨大な取引について全て転嫁があるかないか調べることは非常に難しいと思われるわけです。

 また、本法案は、買いたたきなり転嫁していない旨の表示を規制しているわけですけれども、これに当たるかどうかは、実は、関連する諸事実を総合して判断する必要があり、そう簡単なことではないと思われます。特に買いたたきは、後で御質問があればお答えいたしますけれども、なかなか難しい。

 そういうことで、各省庁、公正取引委員会等、臨時の増員などで対処いたしますということでありますけれども、失礼ですけれども、やはり限界があるのではないか。第二に申し上げたようなことを総合して判断するためには、専門的な行政職員を育成するということが大事ではないか。

 もともと公正取引委員会というものは、ルール型行政といいますか、戦前の警察のようなことではなくて、競争のルールをみずから形成し、明確な先例とし、企業には自主的に法令遵守を呼びかけるというスタイルでございます。そういう意味で、審判制度でしっかりルール形成するということが大事ではないかということです。

 横道にそれましたけれども、独占禁止法改正案では審判制度を廃止するとしておりますけれども、その意味で、公正取引委員会の役割から若干疑問があるということです。

 あと、(2)、(3)を書きましたけれども、私は消費税法の専門ではございませんので、もし何か議論があったらということで、これで一応私の意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、小川参考人にお願いいたします。

小川参考人 このような席にお招きいただきまして、ありがとうございます。

 私は、法政大学ビジネススクールの教授をやっております。法律の方はほとんどわかりませんので、それはお答えできないと思いますが、専門でありますマーケティング、これは表示関係、それから小売業、サービス業が専門でありますので、この観点から、表示に絡む事柄、それから取引の価格の転嫁に関すること、プロモーションに関すること、この三点から意見を述べたいと思います。

 まず結論を述べたいと思いますけれども、私は条件つきでこの法案に賛成です。条件というのは後で申し上げます。その理由も後でお話しさせていただきたいと思います。

 私、大学以外に、実は日本フローラルマーケティング協会といいますお花の団体の創業、会長をやっていますので、わかりやすくするために花束の例を取り上げながらお話ししていきたいと思います。

 皆さんはお花を贈ったことがあるかどうかわかりませんが、今、お店に行きますと、三つのタイプのお店がございます。これは一つの典型例としてお聞きください。

 一つは、スーパーマーケットですね。三本束、菊とかバラが三本束で大体二百九十八円という表示がされています。これは御存じですね。これは端数価格といいます。

 二番目は、普通の花屋さんに行きますと、値段がついている場合もない場合もありますが、大体三百円ぽっきりのお値段を提示します。

 それから、比較的大きなチェーン店、これは名前を挙げてよろしいのですかね。例えばということで、日比谷花壇さんとか青山フラワーマーケットさんという百店舗以上あるチェーン店へ行きますと、大体、三百円プラス税ですので、三百十五円という表示が普通です。

 同じことは花屋さんでなくても、今、三つの業態をお話ししましたけれども、大体、端数価格と、ぽっきりの価格、ジャストプライスと、それから消費税プラスの総額表示。あるいは、税も書いてある場合もありますが、これは書籍の場合です。こういう三つのタイプがあります。

 まず一つ、これは私の推測です。以前の三%から五%に上がったときのことを思い返していただきたいんですが、多分こういうふうになると私は推測します。もちろん、規制の仕方とか指導によりますけれども。まず、二百九十八円については転嫁されない。つまり、この価格で、一年後、四月一日、このままである可能性が高いと思います。その理由は後でお話しします。

 それから、真ん中の三百円については、恐らく、これは私の推測ですが、三百八円になる可能性もあるのですが、端数が切り上がって三百十円になるか、あるいは三百円になるか、このどちらかの選択です。これは、そのお店が置かれている状況に従うと思います。

 それから最後の、転嫁が一番起こりやすいのは、百貨店もそうなんですけれども、比較的ハイプライスのお店ですね。チェーン店で、しっかりした割と上の方のクラスのお店というのは、三百二十四円、これはわかりませんが、恐らく転嫁できるのではないかなというのが推測です。

 その理由は、そこに書いてありますが、心理的な価格づけというところです。

 二九八というのは、結局、三百円が大台になっていますので、消費者心理を考えたり商売をするときにこれを値上げすることは結構難しいのではないかなという想像をします。それから、もともと三百プラス十五、税という表示をしている場合は、これは上げやすいということになります。これが推測です。

 私の基本的な立場をまずお話ししますと、条件つき賛成なんですけれども、二番の(1)です。「基本的な立場 特殊なケースを除いて、「自由な商取引行為」に対する過度な規制は慎重に」というふうに書いてあります。賛成ではありますけれども、規制を強くするということについては余り賛成ではございません。

 ですから、「ただし」というところがありまして、ただしの場合は、販売、表示等で消費税を払わないような印象を持つ表現、そういうプロモーション行為に対しては例外というふうに考えておりますので、ある程度の規制は仕方がない、これが例外の条件つきです。

 それから、これは結論ですけれども、時限立法になっておりますので、たしかおよそ三年間だと思いますが、その点を評価いたしまして、ある程度制度が変わるときに混乱を避けるためにはこういう制度というのはいたし方ないというか、規制は余り賛成ではありませんが、こういうことはあり得るだろうなというふうに思います。

 次は、実は業種や商習慣によりまして転嫁の仕方あるいは表示の仕方が違いますので、一律に規制することを慎重に考えた方がいいだろうなと思います。そのためのガイドラインを設けるような必要があるというふうに考えます。

 後でお話しいたしますが、国内事情だけではなくて、ビジネスはグローバル展開されていますので、海外のいろいろなことを考慮しながら考えるべきであるということです。

 三番へ行きます。

 消費税の表示と価格転嫁の実態について、これは外税、内税という話がありまして、実は、ラテン系の、全部ではないんですが、欧州は基本的には内税方式ですね。しかし、アメリカはどちらかというと、これは場合にもよりますけれども、税金を分離していることが多いです。日本は、先ほど申し上げましたように、両方のパターンがあります。これは業種とか置かれた状況によるということになります。

 基本的に賛成なんですけれども、ただ、こういう事情もありますということを二つ私の知識でお知らせしておきたいと思います。

 日本の大手の流通業というのは、かなりの部分が、例えばカジュアル衣料品とかホームセンターなどについて言いますと、海外調達が主流になります。したがって、下手に日本の国内の中小企業に対して保護しますと、結局輸入の方に調達が回ってしまうという危険もありますので、これはちょっと御注意いただきたいなというふうに思います。

 転嫁拒否等の行為に対する処理スキームについては、私は賛成であります。

 最後ですが、条件つきの一番重要な私の論点なんですが、消費税還元セールの禁止がうたわれて、多分そういうふうに今の法案が通りますとなりますが、これは増税時の消費刺激策への規制ということになりますので、全体的に、日本経済が今上に行こうとしているときにこういうビジネスに対する規制というのは、消費を拡大するという意味では余りプラスにならない可能性があると思います。

 それから、二九八のような端数価格で表示している企業について言いますと、実行しない、転嫁しないという可能性もありますので、その辺は慎重に考えるべきであるというふうに思います。

 そろそろ時間ではないかと思うんですけれども、最後の総額表示義務の特例ということに関してです。

 問題点として、消費者の誤認になる。つまり、現在は総額表示が義務づけられているわけですけれども、これは分離の表現も可、それだけで可というふうになります。そうすると、複数の表示法が実は混在するという危険性を懸念されている方がいらっしゃいます。

 しかし、私は、これは周知徹底しさえすれば、表示の仕方は自然に淘汰されるというふうに考えます。これは、前回の三%から五%のときも大体そういう決着になったのではないかなというふうに思っております。

 少し時間が早いですけれども、よろしいでしょうか。

 どうもありがとうございます。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、上西参考人にお願いいたします。

上西参考人 税理士の上西でございます。

 本日は、経済産業委員会にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。

 お手元の資料、二点ございます。一点が、きょう説明で使わせていただきます説明用の資料でございます。もう一点が、「平成二十五年度・税制改正に関する建議書」でございます。現在、平成二十六年度版を取りまとめているところでございます。

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案につきまして、参考人として意見を申し述べたいと思います。

 まず、大前提としまして、税理士について少し御説明を申し上げたいと思います。税理士の使命であります。

 税理士法第一条に、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」とあります。

 この税理士の使命をもとに、毎年、税制改正建議書を作成、公表いたしております。この税制改正建議書は、税理士法の規定に基づくものでありまして、五つの視点に基づいて作成しております。公平な税負担、理解と納得のできる税制、必要最小限の事務負担、時代に適合する税制、透明な税務行政、この五点でございます。

 そして、税理士が社会的にどのように期待そしてまた評価されているかでございますが、税理士は、決して中小企業の代弁者ではございませんが、日常、中小企業と多く接しており、中小企業も含め法人事業者の八六・八%に関与させていただいております。また、中小企業庁の資料でございますけれども、六八・一%の中小企業が顧問税理士、会計士を相談相手としております。

 そして、今回の特別措置法案についてでございますが、四つの特別措置が予定されております。

 一つ目であります。消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置であります。対象となります、保護されるべき特定供給事業者が妥当であるかについてであります。

 まず、法人税法における中小企業者、これは幾つもの定義がございますけれども、代表的なものといたしまして、資本金の額または出資金の額が一億円以下の法人、資本または出資を有しない法人のうち従業員数が千人以下の法人があります。これ以外にも中小法人等の定義はございますが、代表的なものがこれでございます。

 次に、中小企業基本法でございます。こちらも、同法二条におきまして中小企業者が定義されております。例えば製造業でありましたら、資本金の額または出資の総額が三億円以下の会社または常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人となっております。以下は少し省略をさせていただきます。

 そして、この恒常的な施策を踏まえまして、特定供給事業者がどのようなものであるかでございますが、今回の特別措置法案の二条二項で、大規模小売事業者に継続して商品または役務を供給する事業者、資本金等の額が三億円以下である事業者、個人事業者が掲記されております。上記一、二をほぼカバーしておりますので、妥当であると考えております。

 二つ目の特別措置でございます。消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置です。

 まず、消費税の負担と納付でございますが、消費税の納付、納税する義務者は事業者でございます。そして、転嫁を通じて最終的には消費者が負担するとなっております。

 そして、消費税法の目的でございますが、消費税法が改正されまして、第一条の二項に趣旨が追加されております。重要でございますので、少し読み上げさせていただきますと、「消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」とあります。

 すなわち、消費税の引き上げによる増収分は全額が社会保障四経費に充てられ、そして転嫁を通じて消費者が負担した消費税の増収分は全て国民に還元されるというプロセス、仕組みとなっております。

 これらを踏まえまして、税理士として申し述べたいのが次の三番でございます。知識と情報の適正化です。

 まず、正しい知識をもって転嫁は行われるべきであります。次に、誤った情報、セールストーク等は規制されるべきである。この二点であります。

 一番目の、正しい知識をもって転嫁は行われるべきであるにつきましては、全ての消費者に消費税制の仕組みについて理解を求めることが理想ではございますが、一定の限度があることは否めません。そこで、周知広報活動についてはしっかりと行っていただきたいと考えております。税理士会としても、できる限り協力する所存でございます。

 次の、誤った情報の規制についてでございますが、具体例をガイドライン等で明らかにする必要があると思います。ぜひとも、これはわかりやすいものをつくっていただきたい。そして、希望でございますけれども、このガイドラインの冒頭のところに、消費税が社会保障給付に充てられるんだということをきっちりと御明記していただきたいと希望しております。

 三つ目の特別措置であります。価格の表示に関する特別措置であります。

 消費者保護の観点、消費者の利便性をまず第一に考えるべき、こうした観点から、従前、税抜き価格、税込み価格等が混在している中で、消費者の最終負担額がわかりにくかったという指摘を踏まえ、平成十六年四月から総額表示が義務化されました。

 対消費者の取引、いわゆるBツーC取引のうち、不特定かつ多数の者に対してあらかじめ価格を表示するものについては、この総額表示が日常の消費活動の中で定着しております。この定着しているということは、事実として非常に重いものであると認識しております。

 ところで、事業者からの要請が最近行われております。消費税の転嫁の確保、値札の張りかえ、レジのプログラムの変更等の事務を担当する部署から、事実上これが事業者の声となっているわけでありますが、税抜き価格の表示の要請がございます。

 そこで、意見でございますが、表示の原則と経過措置についてであります。

 今後とも総額表示義務を維持すべきであると考えます。ただし、事業者からの要請がございますので、これを例外措置として認めることも経過措置として妥当である。ただし、消費者保護等のために何らかの担保措置は必要であると考えます。

 レジのところに行って初めて別途消費税ということに気づくことがないように、店の入り口であるとか、店内、棚等に、税抜き価格である旨、本体価格である旨、あるいは別途消費税がかかりますよという旨が示されるような措置は当然のことながら必要であると思います。

 次に、例外措置でありますけれども、三年間で、二十九年三月末までの予定とあります。この部分について、実務家の視点から意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 二十六年四月から八%、二十七年十月から一〇%でありますが、この時期をカバーすることは当然必要であります。二十七年十月一日から一年間、多くの事業者は一年間を事業年度、課税期間としております、そうすると、二十八年の九月末までは当然のことながらカバーしておいた方が妥当であろうと考えます。

 次に、個人事業者は暦年でございます。そうすると、二十八年、丸一年間をカバーしておくことも妥当ではないか。となりますと、二十八年十二月までは最低必要となります。

 そして、中小企業者、法人でございますけれども、三月決算法人が多いことを考えますと、二十九年三月までが一つの時期であるとして、多くの事業者から納得できるものとされるのではないかと思います。

 ただし、延長というものが適切ではございませんので、二十九年三月でエンド、終わっていただきたいと考えているところでございます。

 四つ目の特別措置でございます。消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置でありますが、転嫁カルテル、表示カルテルの二つが示されております。

 実務家の視点から申し述べますと、転嫁カルテルにつきましては、例として、消費税額分を本体価格に上乗せした結果、端数処理ですが、円未満の端数について切り上げ、切り捨て、四捨五入等がございますが、これは現在でもございます、ですから、この部分について転嫁カルテルがあっても、実際に現行と同じように適正な申告をするに際しては何ら支障はないものでございます。

 もう一点、表示カルテルでございますが、例えば商店街の各店が共同して税込み価格表示をしますというようなことをしても、これについても適正な消費税申告については何ら支障はないと考えております。

 したがいまして、今回の特別措置法案につきましては賛成の立場を表明したいと思います。

 なお、重要なものは執行ではないかなと思います。

 今後作成されますガイドラインにつきましては、利便性の高いものにしていただきたいということと、監視、取り締まり等の措置を適切かつ迅速に行っていただきたいということを考えております。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武村展英君。

武村委員 自由民主党の武村展英でございます。

 参考人の先生方におかれましては、ただいま大変貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。

 貴重な時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず初めに、本法案において政府による広報活動が規定されていますが、政府による広報活動の重要性についてお聞きをしたいと思います。

 本法案は、特定事業者による消費税の転嫁拒否等の行為を迅速かつ効果的に是正するための特別措置等が規定されているところでございます。こうした行為は全国至るところで発生します。集中的に生じる可能性もございます。公正取引委員会や中小企業庁の職員を幾ら増員しても現実的には足りるものではありません。そのため、事業を所管する官庁の職員に調査権限等を付与して、政府一丸となって取り組まれるということでございます。

 しかしながら、適正な申告納税制度を維持発展させていくという観点からは、こうした事後の規制、行為の規制だとか表示の是正、こういったことをしていくということも確かに重要ではあると思いますが、それにも増して事前の、十四条にある、国が徹底した広報活動を行う、そしてまた国と都道府県が指導または助言等を行うための万全な体制の整備を行っていく、こうしたことによって未然に違反行為を防止していく、こういった観点も大変重要であるというふうに考えます。

 三人の参考人の先生方には、政府による広報の重要性、そしてまた留意すべき点等がございましたらお伺いをいたします。

舟田参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、私も賛成でございまして、政府の広報活動は重要である。先ほど私は消費者の権利と申しましたが、消費者の知らされる権利を実質化するということが大事ではないか。

 そういう意味では、総額表示は私はちょっと疑問があるんですけれども、消費者は何が本体価格で何が消費税なのかを知る権利があると同時に、やはり知ってほしいということがありますから、そういうことも含めて、政府の各省庁、公正取引委員会を含め、消費税というのはこういうもので、こういう転嫁がなされることを予定しているということの周知徹底をぜひお願いしたいと思います。

 以上です。

小川参考人 御質問ありがとうございます。比較的答えやすい質問をしていただきました。

 私はマーケティング専門ですので、割と広報関係についてはデータを持っているんですが、例えばテレビと新聞。

 これはもちろん、広報活動はやらなきゃいけないです、五が八になって、八が一〇になるわけですから。どのくらいの方に知らせるかという話なんですけれども、二つあると思います。それは、事業者に対する広報活動、それから消費者に対する広報活動があります。

 雑誌とか新聞、いろいろありますが、テレビの例で申し上げます。おおむね五%の視聴率がある番組に、大体千本のコマーシャルを打ちます。これは十五秒コマーシャルです、どうやってお金を工面するかはわかりませんが。そうすると、大体が日本国民の七〇%ぐらいまで到達します。

 ですから、今予算が幾らになるかわかりませんが、これはビデオリサーチさんあたりに聞けばわかることなんですけれども、そういうことを調べられて、どのくらい広報をしたらどのくらいの人に到達するかというプランニングを立てればよろしいかなというふうに思います。ぜひやっていただきたいと思います。

上西参考人 上西でございます。

 先ほど申し述べましたとおり、約七〇%弱の中小企業者が顧問税理士、会計士を相談相手としております。私どももそれについて広報の一端を担いたい、こう思っているところでございますし、また、今回は、公正取引委員会のみならず、所管するそれぞれの省庁そして中小企業庁が含まれておりますので、オール・ジャパンで広報活動をぜひともやっていただきたいと考えております。

 そして、ガイドラインが重要であると思いますが、具体的な事例でわかりやすいものをぜひともお願いしたいと同時に、基本的な考え方は変わらないかと思いますけれども、表現ぶりであるとか、加工等に応じてより見やすいものに、途中でまた改訂版をつくる等やっていただいて、三年間の期間であるとはいうものの、事業者と消費者のそれぞれの立場のバランスのとれた広報活動をやっていただきたい、こう思っているところでございます。

武村委員 ありがとうございました。

 政府におかれましては、ぜひとも効果的な広報活動に邁進していただきたいというふうに思います。

 次に、消費税の転嫁を阻害する表示を是正する、こうした規制のあり方について御質問をさせていただきます。

 現在、この法案で最も大きな問題となっている点は、消費税還元セールといった実態とは異なる表示、そしてまた、消費税をいただいておりませんといった、あたかも消費税を転嫁していないかのような表示を行うことを禁止している点でございます。消費税の税率を上げることに乗じてこうした表示を行う行為は、私は、税制の趣旨に反するものであって、消費税を転嫁する環境を著しく損なうものであるというふうに考えます。

 言うまでもなく、税というものは国家の根幹をなすものでございます。憲法第三十条には、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」このように規定されるわけでありますが、税法を定めるだけでは、円滑な税務行政の執行は到底できようはずもありません。円滑な税務行政を執行していく、そしてまた申告納税制度を維持発展させていく、そのためには、税に対する正しい知識の普及、そしてまた納税意識を高めていく、このことが何よりも重要であって、これを阻害する行為に一定の規制を行うことは許容されるべきものというふうに考えます。

 三人の先生方には、消費税の転嫁を阻害する表示を規制することの妥当性についてお伺いをいたします。また、実務的にはガイドラインを策定するのは大変難しい側面もあろうかと思いますけれども、ガイドライン策定に当たっての留意点がございましたら、あわせてお聞きをしたいと思います。

舟田参考人 私のレジュメの三ページ、さっきちょっと飛ばしたんですけれども、前回の引き上げのときはどうだったかといいますと、景表法で対応したということで、今回の本法案の目玉は、転嫁しない旨の表示と明示してそれを禁止した、その違いがある。

 レジュメの三ページの真ん中あたりに、前回の消費税引き上げ時における公取の文書で、消費税等を事業者が負担している旨をその根拠が曖昧なままに殊さら強調することにより、その販売価格が他に比べ有利であるかのような表示はいけない、景表法違反であるとしたんですが、実際にはこれは機能しなかった。還元セールがたくさん行われたわけです。そういう意味で、景表法ではなくて、このような特別法で事前に明確化するということが大事であると思います。

 以上でございます。

小川参考人 私の立場をお答えいたします。

 基本的に、先ほどの説明でお話ししましたとおり、原則、私のレジュメに書いてありますように、消費税を払わないような印象を与える販売行為に対しては反対なのですが、例えば、非常に規制が難しいケースがあります。それは、八%に上がったときに、同時に八%値引きしますという表現とか、価格を据え置くというのを規制するかどうか。

 この辺はグレーゾーンですので、実は心配なのは、やった方とやらない方が不公平になる、先にやった方が勝ちということになりますと抜け駆けになっちゃいますので、この辺、私は、いいアイデアがあるわけではないのですが、平等に扱うべきだというふうに思っております。

 以上です。

上西参考人 事業者の企業努力の結果、供給されます財・サービスについての価格が値引きをされたり据え置かれたりすることは、市場経済の活性化の観点からは決して制限されるべきものではございませんが、コスト削減等の企業努力ではなくて、明確に間違っている宣伝トークであるとか、誤認させ得るような表示に基づいて消費者が消費行動をするようなことは事前に防止すべきであると考えます。

 消費税を還元しますという代表的なセールストークがございますが、それは、レジのところで購入しようとする者に還元するのではなくて、一旦国庫に収納されてから社会給付という形で還元されるわけでありますので、そのようなセールスが行われないようにきっちりとガイドラインをつくっていただきたいと考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 次に、損税に関連しまして、上西先生に御質問をさせていただきたいと思います。

 本法案は、消費税法の定める取引類型のうち、課税取引について規定するものでございます。課税取引について事業者が消費税の一部または全部を転嫁できない場合に、転嫁できなかった額に相当する金額が事業者の負担となる、いわゆる損税の問題であるというふうに捉えることもできます。

 この問題を損税の問題であるというふうに捉えたならば、本法案が対象としていない非課税取引、あるいは課税取引であっても事業者が簡易課税を選択した、こうしたケースで、特に多額の設備投資を行った場合は、今後税率が上がった場合に多額の損税が生じるというふうに思います。

 非課税取引では、例えば医療機関。これは、社会保険診療報酬に課税がなされませんので、非課税取引は確定申告を行わないことから還付がなされず、医療機関が仕入れに係る税額を負担することとなってしまいます。もちろん、名目上は診療報酬に仕入れに係る税額分を考慮しているという当局の見解もございますが、実際には十分考慮されていない現実がございます。

 こうした非課税取引、そしてまた課税取引のうち事業者が簡易課税を選択している、こうした場合の損税の問題について、税率を引き上げる際に制度の見直しが必要であるというふうに考えますが、上西先生の御見解をお伺いいたします。

上西参考人 まず、損税全体のことでございますけれども、いわゆる損税というのは、転嫁ができないというところがそのメーンではないかなと思います。そうしますと、今回御審議いただいております特別措置法案の実効性のある施行が重要になってくるかなと思います。

 個別の議論でございますけれども、まず簡易課税でございます。簡易課税におきましては、益税、損税の両方とも議論がされているかと思いますが、これにつきまして、私どもは税制改正建議書の中で税制改正要望をしているところでございまして、事業区分及びみなし仕入れ率については見直すべきであるという意見を申し述べているところでございます。

 また、先生から御質問のございました一定額以上の設備投資については、みなし仕入れ率とは別枠で控除を認めるべきであるという税制改正建議をしておりますので、おおむね同意見かな、こう思っております。

 また、非課税につきましては、政策的な非課税の部分が多うございますので、非課税であることが適切か、あるいは課税にした方が適切であるかどうかという大枠での議論が前提になるかなと思います。

 ただ、消費税の中で、全ての転嫁ができないという損税の問題であるとか、仕入れ税額控除を規律することにはいささか無理があるかなと思いますので、他の給付とか、今事例に挙げられました社会保険診療でしたら、点数等の見直し等も含めて、総合的に見直していく必要があるかなと思います。

 ただ、税の分野で、いわゆる簡易課税の問題につきましては先生の御指摘のとおりでございます。

武村委員 ありがとうございました。

 先生方からいただきました大変貴重な御意見を生かして、これからも議論してまいりたいと考えております。

 本日はまことにありがとうございました。

富田委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、参考人の先生方、大変貴重なお時間、そして貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げます。短時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思っております。

 今回、消費税の転嫁対策法案についてでございますけれども、我々公明党は、小売事業者に納入されている事業者の皆さん、また中小企業の皆さんが、消費税の引き上げを前に、消費税額を十分転嫁できないのではないか、こういうような根強い不安があるということから、さまざまな方々とヒアリングをさせていただいて、その結果を踏まえて政府に要望しております。

 その要望を踏まえて、この法案はその提言が盛り込まれたものでございまして、これまでにない強力な転嫁対策が実行されるものと私は評価をしているところでございます。そのような観点から幾つか確認させていただき、今後の審議に反映させていきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、独禁法の専門家でもある舟田参考人にお聞きをいたします。

 この法案では、単に転嫁拒否等の行為を取り締まるだけではなくて、転嫁拒否等の行為を監視していくこととしております。いかにして情報を集めるか、事業者の声なき声を吸い上げて取り締まっていくことが非常に重要だと考えております。

 しかし、被害を受けている企業が取引先との関係からなかなか声を上げられないというのもまた事実でございまして、この点については、政府が大規模な書面調査を行うことによって情報収集に積極的に取り組むとともに、被害を受けた企業が政府に申告したことを理由として、取引を切ったり取引数量を減らしたりすることを報復行為として禁じているところでございます。

 そこで、御質問でございますけれども、こういう立場の弱い中小零細企業が転嫁拒否行為等を受けたとしても、相手からの報復を恐れるために政府に申告することをちゅうちょしてしまう、そういうようなことがそのまま来れば、なかなか正確な情報は集まらないわけでございまして、こういう点について、申告者をどのように保護し、そして報復を防止していくのか、政府の情報収集の取り組みのあり方について御意見を賜りたいと思います。

舟田参考人 この問題は、本法案のみならず、一般的に、独禁法の優越的地位の濫用あるいは下請法違反について、従来から言われてきた問題であろうと思います。

 それに対して、公正取引委員会は従来から、申告してきた者をどうやって保護するかということに工夫を重ねてきていると思われ、今のところ、秘密が漏れて報復がなされたというようなことが実際にあったかどうかについては、恐らく余りないのではないかなと思われますけれども、事業者としては報復を恐れてそもそも申告しないということが、やはりおっしゃるとおり心配であるわけです。

 そういうことから、公取がみずから書面調査する。書面調査は意外と答えてくるので、違反行為と思われる行為を受けたことがありますかというと、かなりの方からありますということが出てくるので、私はそれは一定の意味があるのではないかなと思います。

 それでも、やはり先ほど申しましたように限界があるので、なるべく不当な不利益を放置することがないような仕組みが望まれる。これは、法的に一番いいのはもちろん民事訴訟で、違法行為だから損害賠償を請求すればいいんですけれども、それをやったらもちろん取引を停止されますから、民事訴訟が行われるのは大概、倒産した企業の破産管財人から出されるという悲惨な結果になってくる。そういう意味からも、今御質問にありましたように、予防するような対策が必要であろうと思われます。

 以上でございます。

江田(康)委員 同じ質問でございますが、済みません、小川先生にも一言よろしいでしょうか。

小川参考人 基本的に、これだけ大規模な、恐らくかなり広報活動をされると思いますし、既にテレビで何回か国会中継もされていますので、こういう事態が起こるということについては次第に認知されていくと思うんですね。

 特に、事業者双方はかなりこういうことを知りますので、実際に下請さんに対していろいろな行為が行われた場合は、同じ意見ですけれども、かなり調べれば案件が上がってきます。しかも、これは公表するということになっていますので、社会的に制裁が大きいですから、そういうあからさまな行為というのは比較的抑えられるのではないか。これは法律のいい側面だというふうに思います。

江田(康)委員 次に、先ほどの質問と重なるわけでございますけれども、御了承いただきたいんです。

 この法案では、消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置というものを盛り込んだわけでございますけれども、先ほどから先生方がおっしゃっているように、消費税は転嫁しません、もしくは消費税率の上昇分を値引きします、こういう明らかなものは、当然のことながらその表示については規制の対象となる。還元セール等の表示については、消費者に誤認を与えるだけでなく、納入業者に対する買いたたきを引き起こしたり、また、ほかの小売店による消費税の転嫁を阻害しかねないものでございますから、今回の禁止措置というのは必要不可欠で適切なものだと思っております。

 他方で、やはり、禁止される表示の内容については、小売店の創意工夫による自由な宣伝行為を過度に阻害しないようにすることが大変重要でございます。景気が冷え込まないようにしていくことも、経済対策として大変重要でございます。そういう場合において、政府はガイドライン等において明確かつ具体的なものを示すということでございますけれども、ここで確認をさせていただきます。

 そういう両面があるわけでございますが、今回の法案においては、納入業者に対する買いたたき等を防止する、また消費者に誤認を与えない、消費税は事業者が納税するものであり、消費者が負担するものである、そういうことを阻害するような行為は防止する、これを最優先して今回の措置をとったかと思いますけれども、その点について所見をお伺いしたいと思います。

 二点目に、この委員会でも審議がさまざま行われておりますけれども、この表示というのは確かにわかりにくいものがある、還元セールか一般セールか。

 例えば、午前中も議論がありましたけれども、消費税還元セールといえば規制の対象になりますが、三%還元セール、全品三%値下げセール、さらには全品価格据え置きセールというような表示は今後検討していかなければならない、総合的に判断するというようなことでございましたけれども、今回こういうものをガイドライン等で明示していく。先ほども、グレーのままにしないできちんと明示していくことが重要だとおっしゃいましたが、このようなことについてもガイドラインで明示していく必要がございます。

 具体的なガイドラインの策定のあり方について、政府に対してどのように思われておるか、それをお聞きしたいと思います。

 済みません、先に申し上げておくべきでしたが、お三方にお聞きいたします。

富田委員長 済みません、質疑時間がもうすぐ切れますので、参考人の皆さん、簡潔にお答えいただきたいと思います。

舟田参考人 繰り返しは避けますけれども、ガイドラインでもやはりグレーゾーンは残るんだろうと私は思うんですね。法律の規定というのは、どうしてもそういう点がある。

 したがって、大事なことは、こういうふうに表現したいけれども、どうもわからないなというときに、どこへ相談すればいいのかということを、きっちり事前に相談する窓口を整備しておく。そうすれば、グレーゾーンについて、個別によく事情を聞いて答えるということになるんだろうというふうに思います。

小川参考人 余りお時間がないようですので、経験則、先ほどの視聴率みたいな話をさせていただくと、こういう例があります。

 例えば、値引きしていますというふうに、二百九十八円と表示していますね。そのときに、五%還元セールといったときに、頭に消費税がつくとつかないでどのくらい違うかというと、例えば、同じ値段で商品を棚に並べておいたときに、それをエンド陳列で横に置きますね、たくさん陳列したとき、大体五倍から十倍違います。

 ですから、規制の問題というのはそういうものが科学的にわかっている状況の中でやらなきゃいけないので、つまり、そういう知見を消費税を上げる前にいろいろ調べられたらいいと思います。

上西参考人 上西でございます。

 消費税という文言、フレーズを使わなくても、三%還元セール、全商品五%値引きとかいうふうな、消費税と関連するようなうたい文句が行われている場合については、幅広く規制をした方がよいかなと考えております。

 といいますのは、今お話がありましたように、グレーゾーンは残るかと思いますけれども、できる限りグレーゾーンは狭めておく必要があると思います。

 そして、ガイドラインにつきましては、事業者各層から幅広くヒアリングを行っていただき、できることであれば、一カ月程度のパブリックコメントを行っていただきたいと考えております。

 以上でございます。

江田(康)委員 大変貴重な御意見でございました。

 最後の時間まで御質問をさせていただきます。

 もう一つは、価格表示に関する特別措置でございます。先ほどからありますけれども、今回、総額表示義務を緩和する特別措置を盛り込んだわけでございます。消費税の総額表示義務の緩和については、消費税の転嫁の確保また値札張りかえの事務負担の軽減等の観点から、多くの要望が寄せられました。それを踏まえて今回の法案に盛り込まれたわけでございまして、これは評価できると思います。

 また一方で、ヒアリングでは、総額表示の義務の緩和に加えて、事業者間での外税での価格交渉を推進することが転嫁の円滑化に資するということから、外税での価格交渉を求められたときには拒むことができないように法案に盛り込んだ。

 このように、総額表示義務の緩和についてさまざま対応をとっているわけでございますけれども、将来的なことと時限的なことにおいて、総額表示と税抜き価格の表示のあり方について今後のガイドラインできちんと示すということでございますけれども、このあり方について、最後に先生方の御意見をお伺いしておきたいと思います。

 時間がございませんので、代表して、小川先生と上西先生にお伺いをさせていただきます。

小川参考人 先ほどお話ししたとおりでございます。よろしいですか。

上西参考人 新たな項目といたしまして、今回の法案の三条に、次の行為をしてはならないとして、その三項に「商品又は役務の供給の対価に係る交渉において消費税を含まない価格を用いる旨の特定供給事業者からの申出を拒むこと。」と入っております。

 BツーBでありましたら、価格についての計算は合理的に行えるものと理解しておりますが、こうした要望が中小事業者さん等を中心として出ている以上は、この要望を踏まえて、こうした禁止行為も入れておかれているのは妥当であると考えております。

 以上でございます。

江田(康)委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平でございます。

 きょうは、お三方の参考人、御多忙の中、我々のためにお運びをいただきました。まず感謝を申し上げたいと思います。

 この問題は、そもそも、競争政策というもののあり方をどう考えるかというところから出てくる問題だろうと思います。自由な経済活動をできるだけ政府が規制しないことが正しいんですけれども、時として、大手のスーパーとそれに対する仕入れ業者、あるいはテレビ局とプロダクションというような形で、どうしても強い者がいわゆる十全なビジネスを妨げるということで、競争政策が行われているわけであります。

 私は、経産省でメディアコンテンツ課長をしておりましたときに下請法を改正させていただきまして、これは話すと長くなるんですけれども、放送局がプロダクションに対して相当ひどい商慣行を持っておられたものですから、下請法の対象にそういうプロダクションを入れる。一方で、IT関係のソフトウエアハウスも、下請が四次、五次になるような中で、大変ゆがんだ商慣行の中でビジネスをせざるを得ないということで、下請法の対象にさせていただきました。

 それはどういうことかといいますと、独禁法はとてもすばらしい法律でありますけれども、これは罰則が大変きつうございます。罰則がきついので、当然、調査等にはとても慎重な手続が行われますから、スピード感覚には欠ける。下請法は比較的、公表等はありますけれども、独禁法に比べると罰則がより緩和されますので、割とスピーディーな活動ができるものですから、それを組み合わせながらやっていく。

 ただ、残念ながら、下請法は対象業種が非常に少のうございます。まさに、プロダクションとかITソフトウエアハウスとかをポジティブに入れていくということです。したがいまして、今議論されているような普通の小売とか、そういうものは入ってこない、ですからこそこのような法律が必要になる、このように理解しております。

 そこで、私はこの法改正には賛成の立場でありますけれども、大体今のお二方が主な論点を尽くされましたので、少し観点を変えて皆さんの御所感を伺いたいと思うんです。

 要するに、ビジネスですから、消費税もコストです。原油が上がる、いろいろな材料費が上がる、仕入れ値が上がる。その仕入れ値が上がるという普通のビジネス慣行の中で、大きいところと小さいところの力関係というのは常にあるわけでありまして、そこを政府は基本的には独禁法なり下請法で見ているわけです。

 ところが、今回のような消費税、政府が一方的に何かお願いをする、政府側が通常のビジネスに対してある意味攪乱的な要素を入れるから、できる限り転嫁がしやすいようにこのような法律をつくる、こういうふうに理解しております。

 そこで、実は消費税というのは、もともとのモデル、お手本がフランスのVATであります。付加価値税、バリュー・アデッド・タックスなんです。これは、いいか悪いかではなくて、本家本元のフランスの場合は、消費税はコストだと考えているんです。したがって、消費税率を引き上げるときに値札を張りかえたりしません。もちろん内税です。コストですから、ほかのものと同じですから、それは当然内税でしょう、別に消費税だけがコストじゃないわけでという考え方なんですね。いいか悪いかは別です。

 したがって、消費税率を引き上げる場合は、値上げできるものは、期日に関係なくぼんぼん値上げして値札を張りかえていくんです。高くてもお客さんが買ってくれる商品を上げていく。これは絶対上がらないなというものは、消費税率を上げるのと関係なく、値札はそのままなんですね。課税売り上げ掛ける消費税率から課税仕入れの税額を引いたものを国庫に納めればいいだけでありますから、転嫁はトータルで考えるんです。一つ一つの物品の転嫁なんということは、フランスの商売人は考えないんですね。

 トータルで考える、それはコストだからということなんですけれども、そういうふうに考えてもいいんですけれども、そこは我が国は、今私たちの頭は、一つ一つの物品について、これを正確に、百円のものは百五円から百八円、百十円に、この一個一個のものの転嫁を議論しているわけであります。したがってこういう議論になっていくんですが、この辺、どっちがいいか悪いかではないんですけれども、この二つの考え方について、先生方の御所見をお伺いしたいと存じます。順番によろしくお願いします。

舟田参考人 冒頭にありましたが、別の例で言いますと、放送局が番組プロダクションに制作を委託する、納入された場合、何を支払うか。これは著作権の対価なのか、それとも制作委託費なのか、その辺は、書面もないこともあって、いわば丼勘定であることが非常に問題だと思っております。

 今回のことも今おっしゃったとおりで、一つ一つの商品について、これが本体の価格で、これが消費税分だということをやはり分けて考えてくださいというのが日本の消費税法の建前で、なるべくそれに合うような仕組みをつくっていく。それはちょっとフランスのようなことと違うのかもしれませんけれども、丼勘定にならないような仕組みをつくっているんだろうというふうに理解しております。

小川参考人 ありがとうございます。お答えします。

 先ほど、私が一番最初に例を挙げた花束の例は非常にはっきりしていると思いますけれども、三百円で花屋さんが売っている花束というのは丼です。ですから、三百十五円が通用するように、これは八円オンする、そういうビジネスの仕組みだからこれができる。それから、二九八の場合は、これは中で恐らく経営努力をしたりすることによって圧縮するから、多分発想的にはコストとして考えていると思います、ビジネス上は。

 ですから、別のやり方を考えるわけですね。それは我々は規制はできないと思います。つまり、コストと考えるか、コストでないと考えるかはビジネスの勝手でありまして、それは我々が判断することではなくて、自由にやってよいのではないかなというふうに思います。

上西参考人 消費税もコストの一つであり、原油や通常の製造コスト、流通コスト等も同じであるという考え方も十分に成り立ち得るものだと思いますし、現場現場においてその考え方は支持されていると思います。

 消費税の計算の仕組みは、御案内のとおり、現行でしたら、税込み価格の一〇五分の一〇〇相当額を課税標準とし、それに四%を掛けて国税部分を確定し、それのまた二五%、全体から見れば一%部分ですね、地方消費税を算定するわけですが、その途中段階、前段階で課税されております、表示上、仮払い消費税となっているもので控除するわけでありまして、基本的には付加価値税でございますので、流通段階において適切に転嫁していくということも同時に必要でございます。

 ですから、コストという考え方も重要であるかと思いますけれども、基本的には転嫁されていくべきものであるというところにより重点を置いて行っていく必要があると考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 あくまでも、私自身は、現行の制度を前提にこの法案に賛成の立場でありますけれども、お昼の時間で眠くなってはいけないので、少し聞かせていただきました。

 ちょっと上西参考人に聞きたいんですけれども、実はこの話は、消費税ですので、いずれ軽減税率を入れるのか、あるいは給付つきの税額控除にするのか。これは低所得者対策なりそういう議論もあるわけですし、あるいは、先ほども少し議論が出ていましたので続けたいと思うんですけれども、消費税の課税対象あるいは非課税の問題であります。

 日本の付加価値税は、幸い非課税は少のうございまして、十数項目であります。これが本当に何で非課税なのかなという気もしないわけではないんですけれども、埋葬の費用とか、そういうものが非課税になっております。

 それで、医療についても実は今非課税になっております。ところが、当然ですけれども、医療をされる病院でもお医者様でも、仕入れたものには必ず消費税が乗っていますので、実はなかなか税額控除ということができない。

 一方で、たてつけでは、診療報酬改定で消費税導入と引き上げ時に面倒を見ていますので大丈夫ですよといういいかげんな説明をしているわけであります。これを病院側は損税と言っていまして、一・数%の損税があるとおっしゃっています。

 それが妥当かどうかは別にして、そこは非常に政策的な観点と、それからやはり消費税そのものの持つ、できるだけほかの業種と公平にやった方がいいというふうに思うわけですけれども、端的に、医療について、いろいろな御意見はありますけれども、現行非課税で、仕入れ税額については過去二回の診療報酬改定で面倒を見ているというのを続ける方がいいのか。

 これはもちろん、八%、一〇%で、政府も、あるいは自民党、民主党、各党それぞれに方向性は出しているんですけれども、上西先生、税の専門家として、医療の課税、非課税問題について御所見があれば、お伺いさせていただきたいと思います。

上西参考人 我が国の課税ベースは比較的広いものであると国際的に認識されておると思います。非課税項目が非常に少ない税体系であるとして、IMFの報告等においても評価されているところでございます。

 ただ、先生がおっしゃいましたように、社会保険診療をどうするのかでありますが、例えば病院等で診療機器は多額のものが多いかと思いますが、それを購入した場合、課税仕入れでありますが、社会保険診療報酬そのものが非課税でありますので、非課税部分から仕入れ税額控除はできないという形で、いわゆる損税というものが指摘されているところでございます。

 これを改めるに当たりましては、一つの考え方としては、社会保険診療報酬を通常の物品、財貨等の取引と同じように課税にするということも考えられるのではないかなと思います。これは個人の意見としてです。

 そうした場合に、どこで調整するのかとなりましたら、社会保険診療そのものの点数等の見直しの中で行い、税の中で調整することは避けるべきである、この部分については日本税理士会連合会の意見でございます。私どもは、単一税率を維持するということを主張しておりますので、社会保険診療だけはまた別の税率を使うとかというようなこと、いわゆる軽減税率の導入については避けるべきであるという主張を持っております。

 以上でございます。

岸本委員 どうもありがとうございました。

 参考にさせていただきながら、審議を続けたいと思います。

 私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。

富田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 日本維新の会の今井雅人でございます。

 きょうは、貴重な意見をいただきまして、どうもありがとうございました。

 最初に、舟田参考人にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど、検討すべき課題のところで、専門的行政職員の育成が重要で、特に買いたたきのところが問題だということでお話しされておられましたので、もう少し詳しく説明していただけますでしょうか。

舟田参考人 本法案の三条の一号「商品若しくは役務の対価の額を減じ、」ですが、これは従来も、例えば九十五円で仕入れると決まっているのを、今度増税になったから、自分は苦しくなるから値下げしてくれと、決まっている価格を後から減じることでございます。

 それに対して、「又は」の後ですが、「商品若しくは役務の対価の額を当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定める」というのが買いたたきでございまして、多くの場合は、これだけ議論があったんですから、不当な減額というのは幾らひどい事業者でもないのではないかと思って、むしろあるのは、この「又は」以下の、買いたたきの方が心配であります。

 つまり、来年の四月一日から仕入れ額を引き下げますよ、その場合に、引き下げる理由が、増税になったから増税分を引き下げさせてくれというのは、まさにこれは転嫁を拒否することに当たるということで、この一号に当たるのではないかと思います。

 しかし、これは建前の議論でありまして、実際の取引の場では、九十五円を今度は九十三円にしてくれというときに、転嫁を拒否するから九十三円にしてくれと言うはずがないわけで、そうしないと売れないからとか、いろいろな理由で仕入れ値の引き下げを納入業者に対して要請する、あるいは下請の場合には下請事業者に対して要請するということになります。

 そうしますと、それはここで言う一号に当たるのか当たらないのか、不当な買いたたきなのか自由な価格交渉なのかの判断が非常に難しくなるということで、これについては、周囲の諸状況を考え、あるいは従来の取引の実態を見ながら考えなきゃいけないわけで、これはかなり難しい仕事で、臨時の職員にはできないだろうというふうに申し上げた次第でございます。

今井委員 大変重要な指摘だと思います。これは参考にさせていただきたいと思います。

 次に、小川参考人にお伺いしたいと思います。

 いただいているペーパーの四番のところがちょっとはしょられたというか、余り説明されていなかったと思うんです。「どの行為が可で、何が不可なのか? グレーゾーンを無くしておく」という中で、事前にシミュレーションをしておく必要があろうということを御指摘されています。私もそう思うんですけれども、これは、行政だけでは恐らくできないと思うんですね。

 実際に、どういう方々を入れてシミュレーションをやっていけば有効な対策が打てるというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

小川参考人 先ほどの、他の議員から質問をいただいたときと同じなんですけれども、例えば、たくさん陳列していたり、たくさん広告すれば、それが同じ値段でも五倍から十倍売れるんですね。そういうことというのはマーケティングサイエンスといいまして、これは調査、リサーチというのですけれども、調査業界の方とか消費者行動を研究していらっしゃる方、これはアメリカ、ヨーロッパ、日本、たくさん蓄積があります。

 ですから、そういうものを参考にしながら、実際の調査会社の方、それからアカデミックの方が一緒になって、このケースではこうなりそうだという当たりをつけることはできるというふうに思います。それは、研究者の方でも実務家の方でもたくさんいらっしゃいます。

今井委員 ありがとうございました。

 次に、上西参考人にちょっとお伺いしたいと思います。

 私、日ごろから、実はタックス・オン・タックスの問題が非常に日本の税制で問題だなと思っているんですね。例えば、一番いい例はガソリン税でありますけれども、ガソリン税に消費税がかかるということで、税金に税金をかけている形になっているわけでありますね。これを何とかやはり解消しなきゃいけないと思っておりまして、税金部分に消費税をかけないとか、あるいはガソリン税自体を下げていってしまうとか、いろいろな方法があるんじゃないかなと思っているんです。

 このタックス・オン・タックスの問題について、税理士の立場で、ちょっと御所見をいただきたいと思います。

上西参考人 私どもの日本税理士会連合会の税制改正建議にはそのタックス・オン・タックスの問題については触れておりませんが、税理士会員から、これを回避してはどうかという意見は多く上がってきております。

 これにつきましては、制度のたてつけ方で、法律上手当てをするしないというところで決まるのかなと思いますので、幅広く御審議いただきたいと思います。そういう声は現実に幾つか上がってきております。

 以上でございます。

今井委員 ぜひ、要望書に載せていただくと力になりますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、また舟田参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど二番のところの説明で、これは独禁法では優越的地位の濫用ということで違反というふうに判定できるであろうが、今回の法案はそれを簡素化するために別につくられた法律であると理解しておられるというお話があったと思いますけれども、もう少し具体的に、どういう感じで簡素になっていって、簡素にならないのであればわざわざ規定をする必要はないと思いますので、そのあたりがどういうふうに変わるのかという御所見をいただきたいと思います。

舟田参考人 優越的地位の濫用はいろいろな類型があって、一番はっきりこれはまずいというのは押しつけ販売であります。大規模小売事業者が納入業者に対して、納入させてあげるから俺のこれを買ってくれとか買えという押しつけ販売ですね。

 しかし、それ以外のものになりますと、協賛金の要請なり、あるいは手伝い店員の派遣についても、全く黒というわけではなくて、場合場合で判断せざるを得ない。例えば、デパートに手伝い店員がたくさんいますね。あれはオーケーなんですね。そのための条件がついているわけで、その辺の判断は非常に難しくなるということです。

 転嫁拒否の場合は、例えば大規模小売事業者が転嫁を拒否しますよと相手方に言えば、それははっきりしますけれども、さっき言いましたように、そう言わないわけで、いずれにしろ、値段を下げてくれと言うだけであろうと思います。

 やはり、独禁法の優越的地位の判断が難しいのと同様に、本法案でも判断が難しいということになりますが、しかし、これは違法だろうと思った後の手続が独禁法よりは簡便、あるいはスピードのある仕組みになっているというふうに理解しております。

 独禁法の場合には、排除措置命令をかける、それに対して異存があれば審判手続ということで、延々一年、二年のこともあります。それに対して本法の場合には、これは違反があるなと思った場合には勧告をする、それに従っている限りは独禁法を適用しないということで、勧告そして公表するという軽い制裁にとどめている。

 そういう意味では、事業者も、そうだったのか、これは違法だったのかということで受け入れることができる。しかも、勧告以前に、指導という、一種の行政指導で対処できるというものが恐らく多いでしょうから、そういう意味でも、本法案をつくることによって、実効ある転嫁拒否の防止ということが可能になるのではないかなと思っております。

今井委員 ありがとうございました。

 それでは、今度は小川参考人と上西参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど上西参考人が軽減税率の話を少しされましたけれども、改めてもう一度お伺いしたいんです。

 今、政府の方で軽減税率というのを検討しておられるようでありますが、非常に課題もあると思うんです。先ほどもお話があったとおり、税が非常に複雑になるということと、それから、どの品目を軽減税率の対象にするかということで物すごい政治への陳情合戦が始まって、下手すればお金の問題に飛び火するんじゃないかということもありまして、果たしてこの軽減税率はうまくやれるのかなということ。それからもう一つ、軽減税率を導入するに当たっては、インボイス方式をやはり適用するべきじゃないかという意見もあったりして、いろいろ課題が多いんです。

 この軽減税率について、あるいはインボイス方式の導入についての是非というか、お二人の御意見をお伺いしたいというふうに思います。

小川参考人 済みません、この辺は私は余り詳しくないものですから、お答えができません。

上西参考人 お手元の日本税理士会連合会の「平成二十五年度・税制改正に関する建議書」の目次の、ページ数の付されている一ページから二ページにかけて、消費税についての基本的な考え方について述べております。

 一ページの下の数行から二ページにかけてですが、結論は、単一税率を維持すべきであり、複数税率は導入すべきではないという意見でございます。

 その理由は、特定分野に恩典を与え、社会的な公平性が維持されない事例が出てくると思いますし、また、政治的な恣意性の介入につながるのではないかと思います。

 また、諸外国におきまして、キャビア・フォアグラ論であるとか、ドーナツの個数、あるいはイートイン、テークアウトの違いによって適用される税率が違うような、ある意味、笑い話のようなエピソードも伝わっているところでございます。こうしたものが合理的とは認められません。

 そして、納税義務者の事務負担が増大すること、これは社会的なコスト増でありまして、この点からも反対でございます。

 そして、税財政の、財政の面から申し上げましても、軽減税率の導入による減収分は、標準税率の引き上げにより補填する必要が出てまいります。例えば、よく試算されている事例でございますけれども、課税ベースの四分の一について、将来五%の軽減税率のまま据え置いた、あるいは引き下げた場合におきまして、他の部分でその減収分を補填するとなりましたら、標準税率は、一〇%にあらず、一一・六七に引き上げなければならないという試算もあるようでございます。

 この点から、単一税率を維持すべきであるというのが私どもの強い主張でございます。

 以上です。

今井委員 では、最後の質問です。

 小川参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、内税、外税、総額表示の件ですけれども、先ほど、上西参考人は総額表示賛成、舟田参考人は総額表示には問題がある、どちらかというと反対ということでございましたけれども、小川参考人は、この点についてはどちらがいいというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

小川参考人 これについては、ちょうど私が真ん中になるわけですけれども、選択できるような形にしていった方がいいなと思っています。

 これは、先ほど、いろいろな商品カテゴリーによって税の表現の仕方が違うという話をしたと思いますけれども、それが基準になるのではないかなというふうに思っていまして、実際、私のレジュメにも書いてありますが、諸外国でも、その国の方たちが税をどのように見るかによって、実は表示の仕方を変えてあるんですね。

 ですから、まだ日本の場合はこういうふうな形で表示の仕方を変えていますので、決着をつけるためにはもう少し時間を見た方がいいようにも思います。これは個人的な意見です。

今井委員 大変参考になりました。どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 三谷英弘です。

 本日は、お忙しいところ、お越しいただきましてありがとうございます。

 それでは、限られた時間ではございますけれども、質問させていただきます。

 まず、舟田参考人にお伺いをいたします。

 自分自身の観点といたしましては、この法案においては、主にBツーBの側面、そしてBツーCの側面、二つあるかと思いますけれども、BツーCの側面、消費者との関係を規制し過ぎているんじゃないかというような観点をどうしても持っているわけでございます。そういった観点から若干お伺いをしていきたいと思います。

 いただいている資料も拝見させていただきました。結局、この二ページ目の中で、総額百円のものを、百円を維持するために、仕入れ値をその分だけ下げてくれと要求するようなことは違法となるというような結論がつけられております。

 端的にお伺いをいたします。

 一般的な業者が、今まで売っていた値段と同じ値段を維持しようという努力をどこまで認めていくかというような観点に帰着するのかなというふうに思います。もちろん、独占禁止法上、優越的地位の濫用に当たる場合は、それはだめということになりますでしょうし、これは下請法の適用があるわけじゃないですけれども、下請法における買いたたきというような場合に相当する、これと類似の場合というものも認めるべきではないというふうにも思われるわけです。

 例えば、五%の消費税を八%に上げていくということで、大体三%分ぐらい安く何とか仕入れて、今までと同じ値段の価格を維持しようという努力を認めない。これを認めないということは、独占禁止法のそもそもの観点、自由な競争を促進したり、事業者の創意を発揮させるということに真っ向から反するのではないかというふうに考えるのですけれども、この点、いかがでしょうか。

舟田参考人 おっしゃるとおりで、難しい問題なんですね。

 実は、これまで、買いたたきを理由として優越的地位の濫用に当たるとされた例はないんです、公取委としては。下請法で一件、それから大規模小売事業者に対する特殊指定違反で一件あるだけで、理論的には買いたたきはいけないとあるんですけれども、しかし、中身を見て、これは本体についての自由な価格交渉ではないかと言われたら、それは買いたたきではないということになりますね。

 ですから、先ほど申し上げたように、買いたたきについては、単に税率が上がったということだけではなくて、いろいろな諸事情があるから値下げしてくれと言われた場合に、実は、私の本音を言いますと、買いたたきと認定するのはかなり難しいだろうなと思っております。これで、お答えになっているかどうかわかりませんけれども。

 ですから、法律の建前はそうですし、単純に、八%になるからその分下げてくれと言われたら、それは買いたたきですけれども、恐らく、事業者はそう言わない。いろいろな諸事情を勘案して下げてくれと言った場合には、それについて違法な買いたたきと言うのは難しいということを申し上げたということでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 私もまさに同感で、そもそも法が予定している自由な競争という部分をこの法案が超えてしまっているのではないか、そういうような懸念を持っているところでございます。

 それから、いただいた資料の三ページの中で、「納入業者に不当な負担を負わせることにつながるような行為は厳に慎むべきである。」というようなことがございます。

 もちろん、私も、不当な負担を負わせるということに関してはしてはならないということは、一般論としては考えているわけですけれども、それにつながるかもしれないというような行為自体を規制するということが、自由競争という観点から適当と思われるかどうか、その点についても舟田参考人に伺いたいと思います。

舟田参考人 これは、不当な負担を負わせることにつながるような表示行為、ここは表示の問題ですね。

 なぜかといいますと、そこに書いていますように、今までがそうだった。前回の例も、恐らく八九年に導入したときも、消費税が上がったからということで、特に下請事業者にはしわ寄せが行ったのであろうと思います。

 そのことが表示規制とどういう関係にあるかということについては、おっしゃるとおりで、別物ではないか、表示は勝手にさせろという意見もあるとは思いますが、しかし、例えば、当店は転嫁しませんと言うのは、やはりこれは事実と反すると思うんですね。

 そういう意味で、納入業者に負担を負わせる表示につながるような行為はやり過ぎではないかというのは、一面では私もそのとおりですが、しかし同時に、明らかに表示として不適切な行為というのはある。そこの判断がガイドライン等でできるだけ明確になることを望んでいるということでございます。

三谷委員 まさに今、舟田参考人がおっしゃったとおりの懸念というのを私も感じているところでございます。

 この法案の第八条第一号におきましては、明らかに法律というか、そもそもの消費税の趣旨に反するような記載というのはだめですというような規定がありますので、それについては規制をしても仕方ないかなというふうに考えているところですけれども、消費税が上がってしまう分だけ値引きしますとか、その同額をポイントとして還元しますといった二号、三号に関しては、先ほどもまさに参考人がおっしゃったとおり、そこまでというような感想を自分も正直持っているところであります。

 そういう意味で、できるだけ自由な競争というものを活性化させていくという観点でこの法案を捉えていきたいなというふうに考えております。ありがとうございました。

 続きまして、小川参考人にお伺いをいたします。

 小川参考人にいただいたメモの中に、二番「価格転嫁確保のための法的規制の必要性とその是非」、その(1)「基本的な立場」の中で、「「自由な商取引行為」に対する過度な規制は慎重に」「ただし、「消費税を払わないような印象を与える販売・表示行為」は例外」というふうに記載されております。

 先ほどの、舟田参考人に伺ったことと同趣旨の質問をさせていただきます。

 同じ値段をできるだけ維持しようという努力をどこまで認めていくべきなのかというところに関して、これは民間の事業者という観点もお持ちだと思いますので、お答えいただきたいと思います。

小川参考人 お答えいたします。

 実は、私のレジュメの、何度も引用していただいていますので、一番のところに「分離価格」とか「心理的な価格づけ」という項目があるんです。これは、ちょっと専門的になってしまうんですけれども。

 値上げをしたときに物すごく売り上げが落ちてくる商品と、そうでもない商品というのがあるんですね。今、対象になっているのは、物すごく売り上げが急に落ちる、例えば三百円、大台といいますけれども、三百円で物すごく落ちてしまう商品があります。わずか二円なんですけれども。その場合に、値上げできないわけです。これは、先ほどのコスト議論になってしまいますけれども、そういうお店はどうするかというと、その中を、例えばメーカーさんと卸と小売があれば、一%、一%、一%ずつ痛み分けしようという話にもなるんです。

 これは規制できないのではないかなと思うんですね。みんなが商売をうまくやるために応分の負担をするということに、これは見方によりますけれども、そういうふうな多分ビジネスの中での話し合いになります。これは多分規制ができないと思います。そういうことは実際的に規制はできないし、それは私は、ある意味では商業道徳上もやってもいいんじゃないかと思うんですね。それはいろいろな立場があるので、だから、どこまでオーケーなのかということはわかりませんけれども。

 済みません、お答えになっているかどうかわからないんですけれども、基本的には、この法律で、非常に極端な場合については規制できますけれども、現実問題としてはなかなか難しいというのは、舟田参考人と全く同じ立場に立っています。

三谷委員 ありがとうございます。

 私も、先ほど御指摘いただいた、二百九十八円、三百円、そして三百円プラス外税という三つの事例があるということで、この法案があることによって、では果たして、三百円プラス税というものに関してはもちろん税金として転嫁するというのはやりやすいだろうなと思ったんですけれども、三百円のもの、そして二百九十八円として取り扱われているものに関しては、幾らこの法案があったって、消費税転嫁というのは事実上難しいのかなというふうに思った次第でございます。そういう意味で、新しい視点を与えていただきまして、ありがとうございます。

 それから、いただいたこの資料の、先ほどの質問にありました四番の消費還元セールの禁止等々、この規制の問題です。できるだけ、(1)「グレーゾーンを無くしておく」というようなことがあります。

 これは、ぜひとも民間の視点からお答えいただきたいと思うんですけれども、幾ら、どんなガイドラインがあったって、何とかそれをすり抜けて、事実上、自分たちが売りたいように売っていくというのが、割と民間のさがではないかと思うんです。そういったところ、ガイドラインがあれば、この転嫁を実効的に確保できるというふうにお思いでしょうか。それとも、やはり民間は、そういったガイドラインがあっても、すり抜けていこうというふうに思っていくものでしょうか。感想をいただければと思います。

小川参考人 質問、ありがとうございます。

 私も商人の息子ですので、おやじの商売を見ていますから、こういう規制があっても、結局、商売人というのは、一生懸命抜け道を探すと思います。それはいいか悪いかは別にして、これは世の中の常ですから。

 しかしながら、極端なケースというのはあるわけで、やはりそれは、皆さんが今まで議論されている中で、それこそ、あからさまに税金を払っていないような表現というのは明らかに違法でありますし、これで取り締まることができます。ただ、本当にそれが取り締まれるかどうかというのは、恐らくこれはもう戦いですので。

 規制する必要があるのは、二つあるんです。

 一つは、皆さんが公平な土俵で戦う。これは、商売人同士でも、公平に戦って努力することは私はいいと思うんです。それから、もう一つ重要なことは、制度が変わるわけなので混乱が起こらないことなんです。混乱が起こらないようにする規制はいいと思います。ですから、私は、三年ぐらいの、もうちょっと長いという議論もあると思うんですけれども、時限立法でなるべく早くもとに戻すというこの案に対しては、とても賛成なんです。

 お答えになっていますでしょうか。

三谷委員 今おっしゃっていただいた、まさに、混乱をできるだけ起こさないというような観点は非常に重要だと私も思っておりますし、そのためにガイドラインというものが有効に生きればいいなというふうに思うものの、私自身も商人の孫ということもありまして、そういった大阪商人のやり方も見てきましたので、そこも、必ずしもどうだろうなと思った次第でございます。ありがとうございました。

 それから、次に、上西参考人に伺ってまいりたいと思います。

 上西参考人の先ほどの御意見の中で、総額表示というものはできるだけ維持していくべきだというようなお答えがありました。ただ、どうしても、先ほど来の、例えば二百九十八円、三百円というような価格のつけ方というものを見ると、逆に、総額表示というものを維持することによって、消費税の転嫁というのをしづらくしてしまっているというような現状があるのではないかと思うんですけれども、その点について御意見をいただきたいと思います。

上西参考人 御指摘のように、例えば、二百九十八円とか三百九十八円という価格を店頭で表示している場合について、別途消費税ということになりますと、総額表示になりますと三百何円であるとか四百何円になりますので、価格の訴える力が弱まることは事実でございます。

 ただ、事業者の観点のみならず、消費者の保護の観点からもあわせて議論すべきではないかなと思います。例えば、レジに行って初めて支払う金額の総額がわかるということは避けて、商品を棚で手にするときに幾らになるのかという総額がわかる仕組みというのは、私は重要であると思います。

 また、いずれが適切であるかという問題と同時に、現在、平成十六年四月から総額表示が義務化されておりまして、それが日常の消費、購買活動の中で定着しているという事実もあわせて考えるべきではないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

三谷委員 私も、今の総額表示が定着していると思っておりますし、できるだけわかりやすい値段の設定をしていただきたいと思っております。その意味で、総額表示を維持するということについては賛成なんです。ただ、だからこそ、同じ価格を維持するということについて事業者が努力するということについては、それを妨げないでいただきたいなということを思っている次第でございます。

 時間となりましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、三人の参考人の皆さんから貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。早速、質問をさせていただきます。

 最初に、お三方皆さんにお尋ねしたいと思うんですけれども、この消費税そのものが、現在でもきちんと転嫁をされているのかという問題があります。

 というのは、今回の法案というのは、八%、一〇%、二段階で増税を行う、その際に、転嫁ができないのではないかという中小零細事業者の懸念があるからというのが今回の提案理由の説明として行われているわけですけれども、事業者の皆さんにすると、いやいや、そもそも、今、消費税そのものが転嫁できていないという声があるわけですね。

 おととしの政府税制調査会に経済産業省が提出をいたしました商工会議所や商工会など全国団体、中小四団体が実施をしました消費税に関する実態調査、アンケート調査がございます。これは全国商工会連合会が作成したものですけれども、消費税の問題点として、消費税の価格への転嫁は困難だ、売り上げの規模によって差はありますけれども、三割から七割の事業者の方々が現在でも転嫁が困難だという声を上げておられる、これが実態だという事業者の方の声があります。

 この点について、参考人の皆さんが、転嫁できていないという現状についての認識がいかがかということをぜひお聞きしたいということと、転嫁できていないということであれば、その理由、要因が何なのか、この点について、ぜひお聞かせいただければと思っております。

舟田参考人 法律的に言いますと、規制の実効性はあるのかということであります。特に、優越的地位の濫用あるいは下請法については、従来からざる法ではないかということが言われてきたわけです。しかし、私が習っていたころは、ざる法ではないかという批判はありましたけれども、ここ十年、二十年、下請法は著しい変革といいますか、さまざまな工夫を重ねてきて、大分浸透してきたというのが一般的な認識ではないかと思います。

 そうはいっても、では、全ての下請いじめがなくなっているかというと、そんなことはもちろんないわけですが、制定当初のざる法と言われたころから比べれば、実効性が少しずつ出てきたという程度ではないかと思います。

 それから、優越的地位の濫用もそのとおりで、確かに今の転嫁されていないことについて、優越的地位の濫用、やっていないじゃないかと言われればそのとおりでございますが、これも前回の独禁法改正で、優越的地位の濫用があった場合には課徴金をかけるという制度ができて、次第に執行力が高まるということが期待されているわけです。

 そういうことで、お答えになっていないかもしれませんけれども、少しずつ改善が見られている状況だというふうに認識しております。

小川参考人 お答えしたいと思いますけれども、ちょっと誤解を招く表現になるかもしれないので気をつけて言いたいと思います。

 転嫁ができないという場合に、二つのポイントがあると思っております。

 ちょっと微妙な発言になりますけれども、基本的に、やはりビジネスが厳しいんだと思います。というのは当たり前の話で、三から五になって、五から八に行って、八から一〇になりますと、価格的に言えばどんどん上がっていくわけですね。それは、税を納めているという形ではありますが、商品に対する対価は上がっているんです。その中で商売をやっていかなきゃいけませんから、商売は、普通同じ状態で戦っていれば厳しくなっていくと思います。ですから、なかなか転嫁が難しいというお答えは、やはりそれは環境が、商売をやる人間から見れば、ビジネスをやる人間からいえば、同じ条件のもとでは厳しくなる、利益は減るに決まっているんですね。

 もう一つです。重要なポイントは、これは誤解していただきたくないんですけれども、アンケート調査で、生活が苦しいですかといったときに、これは操作概念じゃないんですね。これは主観です。事実でもあるんですけれども、主観でもあるんです。これは難しいです。つまり、転嫁できない、生活が苦しいというのは、何をもって苦しいですかという調査をしていませんね。ですから、私、参考人としてこれを発言するために、いろいろな資料を調べて、転嫁の問題についていろいろ聞いたんですけれども、およそ六割、七割の方が、普通の調査をすると、転嫁できないと言うんです。それは、だけれども、操作概念じゃないんです。科学的ではないんです。

 ですから、誤解していただくと困るんですけれども、私は、科学的には証明されていないというふうに言って、これは一応置いておきます。確かに苦しい方が多いけれども、転嫁できない方が多いけれども、その五〇とか六〇とか七〇という数字は科学的ではない。誤解しないでください。これは事実です。

上西参考人 消費税につきましては、先ほどお答えさせていただきましたように、前段階で課されました消費税を控除していくために、その事業者においても適切に転嫁していくということが大前提でございます。

 また、一面、消費税もコストであるという見方もできるかなと思います。そのコストが吸収できないという面も否定できないことは事実でございますし、また、二十三年の中小四団体様がされました中小企業における消費税実態調査の結果についても、なるほどなという結果が示されております。ただ、全ての価格形成要因が価格の中に盛り込めるかどうかということにつきましては、全てのものが必ずしもできるものではない、こう認識しております。

 ただ、消費税の価格転嫁が十分でないということだけではなくて、今後、引き上げに際して円滑、適切に転嫁されるような特別措置法案については、より一層迅速かつ適切に執行されるように期待されるところでございます。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 やはりそうはいっても、力関係の差がありますので、優越的地位の濫用に当たるような、あるいは下請法に対しても違反するような行為が現行行われているという実態があるのはそのとおりだろうと思います。

 そういう点では、やはり製造業や建設業の場合ですと、重層的な下請構造の問題もございますし、小売関係でも、大手の流通業者と小規模な事業者においての差も当然あります。当然、大手の流通業者は仕入れや納入業者との関係でも強い立場にありますから、そういう点で、コストの一部という形であれ、消費税の転嫁が困難になるような事態というのは生まれ得るだろうと思うわけです。やはり、そのものにメスを入れるような取り組みこそ必要だと思っておるんです。

 舟田参考人にお尋ねいたします。

 この法案というのが、実際にどの程度、いわゆる下請いじめの構造というものの是正という点で力になるのかという点での率直な受けとめをお尋ねしたいんです。

舟田参考人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、もちろん政府側としては、さまざまな体制を整備して、なるべく転嫁拒否が行われないようにということを努力なさっているだろうと思います。いろいろ、表示の仕方等も含めて、今回新しい手法もとられましたので、明確な、あるいはあからさまな違反というのは少しずつ減るのではないかなと思っております。

 しかし、では、全ての違反行為がこれで取り締まれるでしょうかという質問であれば、それはやはり難しいであろうと思います。転嫁できなかったとか、そういう表示なのかということで、消費者が惑わされることもどうしてもあるのではないかなと思っております。

 そういう意味で、規制の実効性は少しは上がったけれども、しかし、十分ではないということを申し上げざるを得ないと思います。

塩川委員 舟田参考人が冒頭の意見陳述で、検討すべき課題でも述べておられます。臨時の増員などで対処できることは限られている、専門的行政職員の育成が重要ということを述べておられます。

 この間、下請法も対象拡大をして、役務ですとか、先ほどのコンテンツの制作委託などについても拡大をする。そういう点でいえば、事業者にすれば倍にこの間なってきているわけですけれども、公取の体制もふやしておりますけれども、今の対象業種が拡大した中でふさわしい体制なのか。特に、やはり専門性を持った体制ということで、今の公取の現状について、率直にどのように受けとめておられるか、何が必要なのか、この点についていかがでしょうか。

舟田参考人 独立行政委員会というのは、一般の省庁と違って、政治的な圧力にさらされることなく、委員会として独自の法執行を行うということであります。

 その理由の一つは専門性ということで、優越的地位の濫用も下請法も、原則はむしろ自由な取引なんですから、それを規制するにはよほどの明確な違法性がなければいけない。そのためには、さまざまな取引の実態、あるいはこれまでの法執行がどれだけ社会に浸透しているか、つまり法意識の問題ですが、その他さまざまな要因を勘案して規制を進めていかなければならない。

 それは、非常に難しいことで、単に臨時の増員などで対処できない問題がやはりあるのではないか。特に、正式な法の適用、単なる行政指導ではなくて、勧告、公表あるいは独禁法違反とするためには、裁判で勝てるだけの証拠を集めて、あるいは理論武装するということが必要で、これはかなり専門的な知識を持った、あるいは訓練された職員が必要であろう、そのためのバックグラウンドとして研究所あるいは経済学の知識の援用等が必要ではないかなと思っております。

塩川委員 検討すべき課題で、その後に、独禁法の改正案についての御意見もありました。廃案にはなりましたけれども、今の政権のもとでも、同趣旨の独禁法の改正案の提出に向けて作業をしていると承知しております。

 公正取引委員会から行政処分を受けた企業が異議を申し立てることができる審判制度の廃止が柱となっているわけですけれども、この間、例えば経団連などからは、審判を担当する公正取引委員会が検察官と裁判官を兼ねるようなもので公平性に欠けるということなども言われているということが紹介されております。

 舟田参考人が審判制度を廃止する独占禁止法改正案は疑問と述べておられる趣旨について、御説明いただけないでしょうか。

舟田参考人 私、きょうは慌てて自分のを調べてきたところ、二〇〇九年に参議院で参考人として反対意見を述べているんです。そのときは、ここに書いたことに重なるんですけれども、単なる経済官庁といいますか、違法行為を取り締まる官庁ではなくて、ルールをみずからつくっていかなきゃいけない。例えば、優越的地位の濫用と言われたって、何が実際にいけないのかということは難しいものですから、それを、個別のルールを具体化して示していくという仕事がむしろメーンであろう。

 それは行政庁の中で考えるだけじゃなくて、一旦、違法で、命令を出した後で、審判手続の中で被審人の意見も聞きながら、もう一度、公正取引委員会が考え直す。場合によっては、最初は、命令のときには違法と考えたけれども、被審人の意見を見て、これは違法ではないかもしれない、そのような慎重な手続が審判制度であるわけで、このような手続は一般の行政庁とは違うであろうということで、しかも、その審判制度については、今言ったような、もう一度考え直す、あるいは証拠をもう一度出してもらうということが非常に大事なことである。

 そういう意味で、独立行政委員会として特殊性を維持すべきではないかということであります。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

富田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る二十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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