衆議院

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第10号 平成25年4月26日(金曜日)

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平成二十五年四月二十六日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 石原 宏高君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 近藤 洋介君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      青山 周平君    秋元  司君

      穴見 陽一君    石崎  徹君

      岩田 和親君    越智 隆雄君

      大見  正君    勝俣 孝明君

      熊田 裕通君    小松  裕君

      佐々木 紀君    白石  徹君

      田中 英之君    平  将明君

      武部  新君    武村 展英君

      津島  淳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    根本 幸典君

      福田 達夫君    細田 健一君

      堀内 詔子君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      山田 美樹君    吉川 貴盛君

      枝野 幸男君    大島  敦君

      岸本 周平君    馬淵 澄夫君

      木下 智彦君    重徳 和彦君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      井坂 信彦君    三谷 英弘君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国務大臣         稲田 朋美君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   内閣府大臣政務官     亀岡 偉民君

   総務大臣政務官      北村 茂男君

   財務大臣政務官      竹内  譲君

   経済産業大臣政務官    平  将明君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府参考人

   (内閣官房社会保障改革担当室長)         中村 秀一君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   西川 正郎君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    草桶 左信君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    菅久 修一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 平嶋 彰英君

   参考人

   (石岡商工会議所会頭)  大和田達郎君

   参考人

   (全国中小企業団体中央会副会長)         岡本 楢雄君

   参考人

   (株式会社ライフコーポレーション代表取締役会長兼CEO)

   (日本チェーンストア協会会長)          清水 信次君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     田中 英之君

  越智 隆雄君     岩田 和親君

  冨樫 博之君     津島  淳君

  福田 達夫君     青山 周平君

  細田 健一君     熊田 裕通君

  宮崎 謙介君     堀内 詔子君

  山田 美樹君     武部  新君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     福田 達夫君

  岩田 和親君     越智 隆雄君

  熊田 裕通君     細田 健一君

  田中 英之君     穴見 陽一君

  武部  新君     山田 美樹君

  津島  淳君     小松  裕君

  堀内 詔子君     宮崎 謙介君

同日

 辞任         補欠選任

  小松  裕君     冨樫 博之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、石岡商工会議所会頭大和田達郎君、全国中小企業団体中央会副会長岡本楢雄君、株式会社ライフコーポレーション代表取締役会長兼CEO・日本チェーンストア協会会長清水信次君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず大和田参考人にお願いいたします。

大和田参考人 日本商工会議所の税制共同委員長で、筑波山麓に位置しております茨城県石岡市の石岡商工会議所の会頭を務めております大和田でございます。資本金八千万円の石岡酒造という中小企業を経営いたしております。

 本日は、このような貴重な機会を賜り、心より御礼申し上げます。

 商工会議所の価格転嫁についての考え方を御説明させていただきます。

 お手元の「円滑な価格転嫁に向けて万全な対策の実施を!」と題した資料をごらんください。

 表紙をおめくりいただき、一ページ目をごらんください。

 最初に、基本的な考え方を申し上げます。

 消費税の引き上げに当たっての中小企業の最大の懸念事項は、消費税の円滑な価格転嫁であります。商工会議所では、転嫁対策特別措置法案に、転嫁拒否に対する監視の強化や価格表示の弾力的な運用が盛り込まれております点を評価いたしております。

 先生方のお力をもって、取引上の立場が弱い中小企業のため、一刻も早い法案成立並びに施行と実効性のある高い運用をぜひともよろしくお願い申し上げます。

 次に、二ページ目をごらんください。

 価格転嫁の実態につきましては、一昨年、中小企業関係団体が約一万事業者に対しまして調査を行いました。

 改めて申し上げるまでもございませんが、中小・小規模企業の価格転嫁が極めて困難であるという結果が出ております。中小・小規模企業の五割以上の事業者が、前回の消費税率引き上げ時に消費税を価格に転嫁できなかったと回答いたしております。そして、今後、消費税率が引き上げられた場合には、六割を超える事業者が価格に転嫁できないと見込んでおり、今回の引き上げの方がより価格転嫁が厳しいという結果になっております。また、売り上げ規模が小さい事業者になればなるほど、価格転嫁はますます厳しい状況となっております。

 三ページ目は、事業者の生の声でございます。

 デフレ経済が続く中で、現在でも価格転嫁が非常に厳しく、見積もり段階では税抜き価格で提出したが、支払い時点で税込み価格にされたといった、取引先や消費者からの値引き要請が強いという実態が多数寄せられております。

 三ページ目の一番下をごらんください。

 既に、八%への消費税率の引き上げを見込んで、消費税額分の値下げを求められている事例が出てきております。取引先から、消費税引き上げがあるので、納入商品の見積もりを出してほしいとの要求があり、何度も何度も見積もりを再提出させられるなどの事例が中小企業から寄せられております。はっきりとは言われませんが、消費税率引き上げ直前に値下げを要求するのではなく、今のうちに本体価格を下げておこうという意図ではないかと強く懸念をする声が寄せられております。

 これは大きな問題であり、転嫁対策特別措置法の施行前におきましても、公正取引委員会は実態をしっかり確認し、現行の制度で迅速かつ効果的に取り締まるなどの対処をお願いいたしたいと思います。

 また、地方自治体の外郭団体が、最近、内税取引への変更を通知してきた事例がございます。内税にすれば、消費税額が明示されませんので、八%や一〇%への消費税引き上げ時に、消費税の転嫁を認めないつもりではないかと懸念する声が寄せられております。

 消費税の価格転嫁を認める姿勢を率先して見せなければならない地方自治体や外郭団体が、仮に消費税引き上げ分の転嫁を認めない方策を模索しているようでは、円滑な価格転嫁は進まないのではないでしょうか。

 前回の消費税引き上げの際には、予算を確保していないという理由で、地方自治体に、消費税分の価格転嫁が認められず、消費税を含んだ総額を予算内に抑えるように本体価格の引き下げを指示された例もあると聞き及んでおります。地方自治体や外郭団体は、平成二十六年度予算において、三%消費税引き上げ分の予算確保をしっかりと対処していただきたいと思います。

 現在、商工会議所では、各地で事業者向けに税制改正の説明会を行っております。消費税率の引き上げや価格転嫁対策についても、事業者に対し広報活動を行っております。その際に、事業者から、消費税率引き上げ時に、事業者の都合で値上げをするかの印象を消費者に持たれるのは困る、国が消費税を引き上げた結果として販売価格が上がることを消費者にもよく理解してもらう必要があるとの声が寄せられております。

 消費税率引き上げ時に最も大事なのは、国民や事業者、特に消費者に対する広報の徹底であります。なぜ消費税の引き上げが必要なのか、また、消費税は価格に転嫁されるものであるということについて、政府が明確なメッセージを発信し、国民の十分な理解が得られなければ、事業者はとても消費税を価格に転嫁することはできません。

 現在、こうした理解が不十分であると痛感をいたしております。テレビや新聞、ネット広告など、あらゆる広報手段を使い、価格転嫁しやすい環境整備に向けて徹底的に広報を行っていただきたいと思っております。

 四ページ目をごらんください。

 中小企業からは、書面調査に本当のことを書いて、もしどこかで情報が漏れると、その時点で全ての取引を失ってしまう、会社や従業員のことを考えると、とてもそのリスクを負えないなどといった声が寄せられております。

 中小企業が取引相手を訴える場合、その取引相手のみの取引にとどまらず、全ての取引相手の取引を失う覚悟が必要だということをぜひ御認識いただきたいと思います。声なき声をすくい上げる仕組みが大事であります。

 また、中小企業からは、転嫁調査員という制度ができると聞いておるが、我々に話を聞きに来るよりも、大手を巡回し、牽制効果を高めてもらった方が効果的であるとの声も寄せられております。

 報道によりますと、既に消費税率引き上げ分を値上げしない方針を示す企業も見受けられますが、結局、下請業者や納入業者の負担になるだけなので、こうした動きを取り締まってほしいとの声も寄せられております。

 いずれにいたしましても、消費税の円滑な価格転嫁の実現のためには、実効性の高い価格転嫁対策が必要不可欠であります。そのためにも、本日御列席の委員の先生方におかれましては、早期に法案を成立させていただき、価格転嫁が困難で悲痛な声を上げている中小・小規模企業を応援していただきたくお願いをいたすところでございます。

 以上で説明を終わります。ありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、岡本参考人にお願いいたします。

岡本参考人 全国中小企業団体中央会副会長であり、大阪府中小企業団体中央会会長の岡本でございます。大阪で、駿河屋という、ようかん、生菓子の製造販売業を経営いたしております。

 日ごろ先生方には、中小企業並びに中小企業組合の振興、発展に御尽力を賜り、厚くお礼を申し上げます。本日は、消費税の転嫁対策特別措置法案につきまして意見を述べる機会をいただきましたこと、心から感謝申し上げる次第であります。

 お手元に配っております資料をちょっとごらんいただきたいと思います。

 まず、一ページにありますように、全国中小企業団体中央会は、全国津々浦々に、さまざまな業種の中小企業者で組織された組合等から組織されております。全国中央会は、構成メンバーである三万ある中小企業組合の傘下に三百万の中小企業が所属しております。

 さて、政府の経済対策等により、中小企業をめぐる経営環境は、売り上げの面では改善の動きが見えるものの、円安に伴う燃料、原材料価格の値上がり等によりまして収益の改善に結びついていないなど、依然として厳しい状況にあります。

 今般の消費税の引き上げにつきましては、一つ目には、一〇%とする大幅な引き上げであること、二つ目には、二回にわたる引き上げであること、三つ目には、減税が実施されなかったこと、そして四つ目には、消費税の総額表示が義務づけされた後の初めての引き上げになることがこれまでと大きく異なっておる点であります。

 中小企業にとって、消費税の円滑かつ適正な転嫁ができるか否かが我々の最大の関心事であります。立場の弱い小規模事業者が不当な不利益をこうむらないよう、特別な規制措置が必要であると考えます。

 デフレ経済のもと、消費税が引き上げられますと、限られた市場を奪い合うため、業者間の価格競争はますます激化し、短期的に利益を削っても他社より価格競争力を維持しようとする事業者が出てまいります。従来の法律だけでは転嫁問題は解決されません。自由な価格交渉に任せることは、転嫁問題を放置することと同じことであります。

 税は支払うものであり、企業は収益の中から値引きするのが本来の姿であります。

 実のある転嫁対策として転嫁対策特別措置法案をぜひとも早期に成立させていただきますよう御要望申し上げます。

 資料の裏側、二ページの、上段にありますように、本会では、昨年十二月に、四十七都道府県中央会の会員組合等に対しまして、消費税引き上げにおける転嫁等に関する調査を実施いたしました。

 消費税八%になったときに転嫁ができると思うかを聞きましたところ、四八・七%の中小企業ができないと回答しています。消費税一〇%になったときとなりますと、五一・一%ができないと答えています。

 消費税が三%から五%に引き上げられたときのことを振り返ってみますと、当時、中小企業は、消費税増税分を転嫁できず、みずからの身を削り、結果的に国に納めるべき消費税の滞納が急増いたしました。

 この価格転嫁問題の解決なくして、中小企業の理解は得られないと言っても過言ではありません。

 とりわけ、転嫁対策特別措置法案では、価格交渉において、消費税抜きの価格を用いることの申し出を拒むことを禁止する措置、あるいは、小売業者などによる消費者への広告宣伝において、消費税は転嫁しません、消費税は当店で負担いたします等の表示の禁止、さらには、消費税率分の値引きをします、還元します等の表示の禁止が講じられています。

 これらは、資料の三ページ、裏側の下段にありますように、中小企業の実態に即した対策であると高く評価するものであります。

 一部で、売り方を規制するのはおかしい等の反対の声が聞かれますが、消費税は実質的に負担しなくてもいいものであると誤解されることを放置しておくことは好ましいことではありません。事業者は、消費者から消費税を預かり、国に納める役割を担っております。消費税の増税分は適正に転嫁されなければなりません。

 消費税とは、転嫁する側と転嫁される側がおり、大企業が中小企業から商品を仕入れる際に、転嫁拒否や安値で買いたたきのきっかけとなりやすいものであります。

 お豆腐、コンニャク等の納入業者からは悲痛な声が寄せられております。消費税還元セールと銘打ち、消費税を悪に見立てるように商売の宣伝や値引きセールが行われては、いつまでたっても消費税の理解が進まず、転嫁は浸透していきません。

 転嫁対策特別措置法案は、従来にはなかった特別な措置が講じられております。その一つに、税込み価格を表示することを要しない総額表示義務の特例があります。

 本会の調査では、消費者に販売している事業者からは外税の導入を強く求める声がございました。業種によりまして、外税の方が価格転嫁しやすい業界も確かにございます。みそ、しょうゆ等の食品産業や旅館等のサービス業の組合などから強い御要望をいただいているところであります。

 このたびの法案は、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保の観点から、現場を混乱させない範囲で我々の要望をかなえていただいたものと理解しており、深く感謝を申し上げます。

 価格転嫁に係る表示の問題は、書籍、化粧品、婦人服等の衣料品、食料品など、取り扱っている商品の販売実態等により、実にさまざまであります。

 転嫁に関する価格表示のあり方についていろいろな意見が本会に寄せられたことを踏まえますと、業種、業態ごとに、まさに現場の実態に応じた柔軟な対応ができるよう、事業者みずからが望ましいあり方をつくり上げていくことが重要であると考えます。

 一日も早くこの法案を成立していただき、中小企業が消費税に対応するための準備期間を十分に設けていただきますようお願い申し上げます。

 その際、事業者が消費税に関連するような形で、どこまでが禁止されて、どこまでが許されるのか、中小企業の経営者にわかりやすいガイドラインを早く示していただきますよう、あわせてお願いを申し上げます。

 資料、裏側の三ページの後段、二にありますように、国は、消費税は価格に転嫁されるものであることの明確なメッセージを強力に発信し、国民への周知徹底に万全を期していただくことが極めて重要であると考えます。

 消費税は価格に転嫁されるものでありながら、逆に価格が下がっているような場合を、私どもは便乗値下げと言っています。

 このような便乗値下げが起こりますと、原資を確保する必要から、人件費を削減したり、取引先にさらなる安値を強要したりすることが行われています。こんなことが横行すれば、国民にせっかく高まってきたデフレ脱却への期待が急速にしぼむこととなります。

 国等は、調査、監視を徹底し、違反行為に対しては勧告、公表を積極的に行う必要があると考えております。その意味で、転嫁Gメンの設置による転嫁状況の検査体制を強化していただきますようお願い申し上げます。

 また、消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係るカルテル行為の実施に際しましては、申請手続等の負担が余りかからないようにしていただきたいと存じます。

 価格転嫁は極めて厳しい価格競争にさらされている中小企業の取引実態や経済状況の問題であり、事業者みずからが価格競争力の強化を図っていく必要があります。

 私は、価格転嫁のポイントは、取引先からの対応力を高めることができるかどうかであると考えております。自社の商品力をいかに磨くかが問題となります。

 私ども全国中央会は、現在、「組合 絆 ルネサンス」をスローガンに、会員組合と会員組合の間のきずなの力によって被災地の復興、日本経済の再生を図り、地域の暮らしを支えている中小企業が再び活力を取り戻せるように尽力しているところであります。

 中小企業がみずからの体力をすり減らすことなく、中小企業みずからがきずなの力を強化し、販売増、収益増となるよう、例えば、新たなセット商品の開発、インターネットを活用した新製品の開発や販売など、製品や商品の力をつけて、しっかり価格転嫁できるだけの経営力を持てるよう努力してまいります。

 最後に、国におかれましては、消費税の引き上げに伴う便乗値下げをさせないとの大キャンペーンを打っていただきますよう、改めてお願い申し上げますとともに、中小企業の自助努力、創意工夫が報われますよう、先生方の御指導、御支援をお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、清水参考人にお願いいたします。

清水参考人 私は、日本チェーンストア協会会長、流通業界の日本スーパーマーケット協会と新日本スーパーマーケット協会の名誉会長、日本小売業協会の副会長、それから国民生活産業・消費者団体連合会の会長を務めております。

 以上の立場から、今回の消費税転嫁問題についてお話を申し上げたいと思っておりましたけれども、転嫁問題については、今お二人の方からお話があったとおりだと思います。私は、どちらかというと流通業界の中堅あるいは大企業の組織、それと国民の生活を守り、生命を守り、平和を守る団体の会長の立場から、本件についての考え方を申し上げたいと思います。

 御承知のように、私は、大平内閣のときに一般消費税導入に反対しまして、大蔵省当時の主税局長高橋元さんと担当審議官の福田幸弘審議官と御一緒に、消費税についていろいろ、世界でどういうふうに行われているかという研究をいたしました。大体、毎月二回、三回の検討会をやって、一年たってほぼ成案ができたところで衆議院選挙にぶつかって、大平総理は、地方遊説に行かれて地方の国会議員の反対を聞かれて、とてもこれでは選挙にならぬということで、地方遊説先で一般消費税導入の断念を声明されて本件は落着しました。

 それから八年後、今度は第三次中曽根内閣のときに、中曽根総理は物品税の普遍的拡大、物品税という税制が戦前あって、ゴルフ道具とかじゅうたんとか、ぜいたく品の二十四品目にかけられておったのを、新しい時代にいろいろな製品が、例えば電気冷蔵庫、テレビあるいは電気掃除機、いろいろなものができてきて、これを広げようと製造業者庫出税の拡大をやろうとした。

 ところが、重厚長大代表の経団連の斎藤英四郎会長、新日鉄の当時会長ですが、この方と花村仁八郎事務総長の二人が中曽根総理のところへ来られて、この製造業者庫出税をやるんだったら自民党を応援しない、政治献金も中止するという申し入れをやって、これができなくなった。

 そこで、今度は売上税というものに戻って、売上税導入を指示されて、水野勝主税局長が私のところへ総理の指示で参られて、何とかこの売上税導入について協力してほしいと。もちろん私どもは反対で、それからいろいろ協議したんですけれどもなかなか進行しない。そのうちに、全国の流通十七団体、それに全繊維産業、宮崎輝旭化成会長、それから百貨店協会、三越会長の市原さんと私の三人、それに日本商工会議所会頭の五島昇さんが参加されて、売上税導入反対の全国闘争が始まる。

 全国の百貨店全部に、大型間接税反対、売上税導入反対の垂れ幕が下がり、全国の百貨店、商店の新型売上税導入反対運動で全国問題になって、とうとう自民党の百十余名の国会議員の方が反対の署名をされて、中曽根さんもこれは無理だということで断念された。

 それを引き継いだ、総理指名を受けた竹下登さんが、どうしても前総理の残したものをやりたいというので私どもへ相談があって、私どもも、一般消費税、売上税、今度はまた竹下消費税、この三回の反対運動の中で、全世界の消費税に関する現実の問題を勉強したり、またみずから出向いて調べた結果、世界に百九十三カ国あるんですけれども、百四十七カ国が導入しておる。しかも、最低税率五%というのは四カ国しかない。七%が二カ国、一〇%が十三カ国、一一%から一四%が二十一カ国、一五%が十二カ国、一六%から二〇%が六十一カ国。これはもうほとんど全世界で導入されておるし、税率も日本の五%は最低である。

 それで、日本のような高福祉国家、日本国民は今、世界一ぜいたくな生活をしておる。冷暖房完備、水洗トイレ、ウォシュレットなんて、お湯で排せつ物を洗っているような国は世界じゅうどこにもない。こんなにもいい生活をしておって、それで世界一の長寿国ですよ。これでは、世界一低い税率の消費税が高い、反対だと言っておれないじゃないですか。

 今回、野田総理から、昨年の二月、どうしても私と話したいと。二時間半話をしました。野田さんが、三党合意で何としてでもこれを実現したい、こういうお話でした。

 私自身は今八十七歳ですよ。さきの大戦、日本陸軍に二年間おって、最後は九月出撃の特攻隊基地におったんです。それが、昭和天皇の、私は殺されてもいい、これ以上国民を失うことはできない、日本国が滅びたら先祖に申しわけないという御英断で、私は助かって今ここにおれる。

 それはいろいろな言い分があります、大企業も中堅企業も中小零細も。だけれども、この消費税については、誇りを持ってこれを納めるんだというのが国民全体の意思であってしかるべきで、そのお手伝いを我々業界はやる。この転嫁問題で、ああだこうだとあげつらうことは私はできないと思います。

 翻って考えると、日本国というのは、世界の百九十三カ国の中で領土の広さは六十何番目ですよ。さきの大戦で海外領土を全部失って、こんな小さな島で一億二千七百万人がどうして食っていくのか。みんなが力を合わせて譲り合って、この国をどうするかということを本当に真剣に考えないと、あの大戦で殺された四百万人の我々の仲間に申しわけない。

 この転嫁問題は、業者、国民の良識に任せる。大企業は、仕入れ価格が違うんですよ、決済条件も違うんですよ、配送費も違うんですよ。私自身、年商五千二百億円、二百三十二店舗の大型の食品スーパーの経営者です。どちらかというと大企業の部類に入ります、従業員が三万七千人もいるんだから。だけれども、中小零細企業の方々と本当にお互いに力を合わせて、どちらかというと大は我慢して惻隠の情を持って、また中小零細の方は頑張って、この国をどうするか、自分たちの仕事をどう守るか、従業員をどう守るか、これに注力しなきゃいけない、かように思っています。

 旧大蔵省、財務省が、内税、総額表示を義務づけた。これはもう大変な間違い。消費税というのは、本体価格、商品の価格、あるいはサービスの対価に何%という消費税、これは幾らだと別に書いて、いわゆる外税方式でなければ、消費税を一体幾ら国民が負担しているか、納めているかというのはわからないんです。それを、総額表示を義務づけて、内税で税金をごまかそうなんて、さもしいことを考えたのが間違いです。だから、今度は時限立法で外税を採用してもらいましたけれども、これは恒久的にやるべきだとはっきり申し上げておきたい。

 税というのは、どちらかというと、暗い、重い、後ろ向き、下向きの感じで今まで来ておる。私は大正の末期に生まれたが、私が生まれ育った大正末期から昭和二十年、敗戦までの日本国民には三大義務というのがあって、教育を受ける義務、兵役の義務、納税の義務、これは国民の義務だった。だから、税金を納めることは、俺は税金を払っていると、昔の人は誇りに思っておった。また、政府も高額納税者を表彰しておった。

 ところが今、戦後、アメリカの変な占領政策で、日本の家族制度は壊れ、教育は壊れ、社会も壊れた。我々が育った戦中、戦前は、他人様の業界に手を突っ込むようなことはなかった。マヨネーズはキユーピー、ケチャップはカゴメ、ソースはブルドックソース、大阪はイカリソース、余計なことはやらないんだ。今はもうめちゃくちゃですよ。もうかるとなればわあっと何でも、陸上の私企業が海上へ行く、水中へ行く、めちゃくちゃだ。

 これは、アメリカのいわゆる日本弱体化政策で、日本を弱くするために、いろいろなことをマッカーサーが七年の占領の間にやったんです。これから脱却しなきゃいけない。本来の日本国民のあれを取り戻さなきゃいけない。

 だから、この転嫁問題は、もう言わずもがな、大企業は大企業でみずから自粛して、少なくとも、消費税を対象にしたセール、これは私はみずから律すべきだと思います。

 今、鐘が鳴りましたから終わりますけれども、どうぞ皆さん、国会議員、衆議院、参議院七百二十二名、与党、野党ないですよ、英知を絞って、この日本国を五十年、百年、二百年先どうするか、この議論をやってください。

 それで、霞が関の世界一清潔で優秀な官僚に、国会の皆さんが決めた日本国のあるべき姿、グランドデザインを渡して、この実行方をやらせる、それに国民は総力を挙げて協力する。二百何十年前、インディアンを追っ払ってアメリカ合衆国をつくって、あんな寄り合い世帯で、ウォール街のギャングか詐欺師か、あんなものの支配する自由とか、あんなものは日本で通用させちゃいけないし、しちゃいけないんです。

 よろしく御奮闘をお願いします。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本幸典君。

根本(幸)委員 おはようございます。

 自民党の根本幸典でございます。

 きょう、私は、当選して初めての質問をさせていただくことになり、委員長そして理事の皆さん方にまず感謝を申し上げます。

 そして、きょうは、参考人の三人の皆様方、遠いところからお越しをいただきまして、ただいま大変貴重な御意見をいただいたことに、まず心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 さて、今ありましたスーパー等々のお話でありますけれども、先週、チェーンストア協会の方から、大手スーパーなど加盟五十七社の三月の売上高が十三カ月ぶりに三・九%増加したという大変明るいニュースが聞こえている中で、きょうは参考人の皆さんに質問させていただけることを大変うれしく思います。

 それでは、早速質問をさせていただきたいと思うんです。

 今回の消費税転嫁法案ですが、私は、このポイントというのは、政府全体で、オール・ジャパンでこの転嫁をしっかりやっていこう、そういうふうに今取り組んでいるということが非常に大きなことではないのかなというふうに思います。

 今までは、どちらかといいますと、公取であったり中小企業庁、こういったところが中心にやっていましたが、今回は、主務大臣にも指導、検査、助言等々の権限を与えて、オール・ジャパンでやっていく。つまり、このことが迅速な対応ができることにつながっているのではないかなと思って、大変期待をしているところでございます。

 先ほどお話がありましたように、やはり、大規模小売事業者と納入業者との間には、優越的な地位の濫用等々いろいろな問題がある。これは、公取の昨年七月の調査でもたくさん出ているんですね。そして、先ほど大和田参考人、さらには岡本参考人からもありましたように、前回の平成九年の増税のときにも転嫁に関しては大変御苦労した、そして中小企業の皆さんも、今度の増税に関しても本当に転嫁できるのかなということで大変心配している。その一方で、一部には、不当なことをする小売業者がいるならば現行法で取り締まればいい、こういう発言をなさっているということも新聞紙上にあります。

 ただ、現行法では、独禁法に違反する行為が行われている疑いがある場合は行政調査を行うんですが、半年から一年かかると言われているんですね。そんなことをしていると、どんどん中小企業の皆さんが弱くなってしまう。その意味では、今回オール・ジャパンで、しかも迅速にやっていくということには大変意義があると私は思っています。

 そこで、三名の参考人の皆さんに、今回、国を挙げて、政府を挙げて、適正な消費税の転嫁に関する特別措置法が今審議できていることに関してどのように評価されているのか、まずお伺いしたいというふうに思います。

大和田参考人 大和田でございます。

 冒頭、先ほども申し上げましたところでございますが、資料の一ページ目をごらんいただきたいと思います。

 その中でも、消費税の引き上げに当たりましては、中小企業の最大の懸念事項と申しますと、消費税の円滑な価格転嫁ができるかどうかということでございます。

 商工会議所といたしましては、転嫁対策特別措置法案に転嫁拒否に対する監視の強化あるいは価格表示の弾力的な運用というものが含まれた点は評価できるところでございますが、その中で重要なことは、取引上の立場が弱い中小企業のため、この法律が一刻も早く成立いたしまして、そして施行され、実効性の高い運用ができなければならないと思っているような次第でございます。

 そういうことからも、この法案の一刻も早い成立並びに実効性の高い運用というものを改めてよろしくお願い申し上げる次第でございます。

 以上でございます。

岡本参考人 岡本でございます。

 皆様にお配りしましたこのペーパーの裏側にも書いてございますが、消費税の是正措置につきまして、転嫁拒否や安値買いたたきの防止をうたっていただいたことは高く評価をさせていただきます。そしてまた、転嫁の確保に係る価格表示につきまして、今まで税込み価格を表示することを義務づけられておりましたが、今度は総額表示義務の特例になりまして、外税表示ができるということで、会員業界組合からは歓迎と感謝をいたしております。

 中小企業の経営者にわかりやすく、どれがいかぬのか、どういうことまでは許されるのかという、広告の表示のガイドラインを早期に御策定いただきたいというのがお願いでございます。

 以上です。

清水参考人 今、私は企業経営をしておって、上場会社に対しては大変厳しい規定がいっぱいあります。例えば、三カ月決算とか内部監査とか内部統制とか、監査法人のいろいろな書類とか、そういうものがいっぱいあります。これは本来、我々日本の企業経営者にとってそんなものは必要なかったんですけれども、アメリカでいろいろな不祥事が起こると、アメリカはそれを日本に要求してきて、日本では国会審議もろくにせずにそんなものが次から次に通って、時間的ロス、費用がかかってしまう。

 法律は、できれば最も緩やかで、適用範囲に幅があって広いほどいいんですよ。国家がこれをがんじがらめにするというのは余りよろしくない。そういう意味で、今回の法律については、でき得る限り緩やかな、業者がみずから律するということをやれるようにしていただくのが本当は一番いい。

 ただ、消費市場という土俵で、はっきり言えば、私どもは大関ぐらい、我々より大きな何兆円企業は横綱です、それと地方の中小零細の方が同じ条件で相撲をとったらたまったもんじゃない。だから、これは、ある程度のハンディとか規制というのは国際競技でもありますけれども、でき得る限り、大企業もみずから律するということをやっていただきたいということで、本法案も、そういう意味でよく御審議いただきたい。

 ただ、大企業は、例えば我々の仲間のイオンとか、そういうものの場合、この人たちは世界を相手に戦っているんです。ユニクロさんもそうです。だから、この人たちの足を引っ張ったり、後ろから撃つようではアメリカや中国あるいはロシアと戦えないので、そこのところは御配慮いただきながら、法案の作成、議決あるいは運用については、公正取引委員会、消費者庁あるいは経済産業省、現場の実情をよく御承知いただいて、場合によってはまた我々を呼び出されて意見を聞いていただきたいという意味で、本件については対応していきたいと思います。

 以上です。

根本(幸)委員 ありがとうございました。

 それでは、二問目の質問なんですけれども、今いろいろ話題になっています表示の問題です。

 消費税還元セール等々の文言をどうしていくんだというようなことなんですけれども、私はやはり、一定の枠組みをしっかりつくってやっていくということが、中小企業の皆さんが消費税を転嫁できる方法だというふうに思っています。

 そこで、今ガイドラインを早急につくっていこうというふうな議論をしているんですけれども、そのガイドラインをつくるに当たって留意する点がありましたら、ぜひ三名の参考人の方にお答えをいただきたいと思います。

大和田参考人 大和田でございます。

 ガイドラインの件でございますけれども、このガイドラインを作成するに当たって留意していただきたいと思っておりますことは、現場が混乱しないようなガイドラインをぜひお願いできればというふうに思っております。

 さらに、消費者庁と公正取引委員会に事業者が表示方法を問い合わせた場合、速やかに回答が寄せられる、またその内容を公表していただきたい、そういうふうに思っております。

 これは、私に間違った認識があるのかもしれませんけれども、消費者庁にいたしましても、公正取引委員会にいたしましても、実務の方はたしか県庁の方に依頼されていると思っております。

 そうしますと、一番困りますのは、その場で違った見解が出るというのが非常に怖い。Aという県ではいい、Bという県ではだめだというようなことになってまいりますと、やはりちょっと問題が大きくなってしまいますので、その辺を特に、調整といいましょうか、国の方の強いリーダーシップでこのガイドラインを作成していただければ大変ありがたい、そういうふうに思っております。

 以上でございます。

岡本参考人 岡本でございます。

 ガイドラインにつきましては、先ほど申しましたとおりに、できるだけ早く、わかりやすいものをお願いいたしたい。

 ただ、価格の問題でございますが、私も申しましたとおりに、業種によってまちまちでございまして、外税がいいと言っておる業種、あるいはそうでない業種もあるようでございますので、できるだけ業種によって柔軟に対応でき得るような形にしていただくのが一番いいのではないかなと思います。強いて統一されると言われるならば、外税にしていただけたら結構かと思います。

 以上です。

清水参考人 ガイドラインにつきましては、はっきり言えば、本当に明確な方がいいんでしょうけれども、なかなか世の中の実態は黒か白かとはっきり分けられない。グレーゾーン、これも一つの緩衝地帯としてあるかと思います。

 そのあたり、黒白をはっきりつけろと、尖閣列島や竹島じゃないけれども、これも、どこからそこだかはっきりせいと言うからおかしくなってくるので、両国政府がある程度、グレー、灰色のところを置いて、運用において、できるだけいい運用をするというのも一つの方法ですけれども、ガイドラインは大変難しい問題だと思います。そこのところをよくお含みの上、御裁断願いたいと思います。

根本(幸)委員 ありがとうございました。時間が来ましたので、終わります。

富田委員長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 本日は、遠いところ、また御多用な中、本委員会までお越しいただき、貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

 早速、質問の方に入らせていただきます。

 新政権が誕生しまして、景気が上向きになってきたんじゃないかということがちまたで言われております。また、今回の消費税の引き上げに当たっては、経済状況の好転を条件として実施するということが消費税法の改正法附則十八条で定められておりますけれども、きょうお越しいただいた参考人の皆様それぞれに、新政権になりまして、今現在の景気の回復の実感はどのようなものなのか、これについてお伺いしたいと思います。

大和田参考人 これは、地方の状況ということでお聞きいただければと思っております。

 私は、先ほど冒頭にもお話し申し上げました、茨城県の石岡市というところでございます。位置関係がちょっとわかりにくいかと思いますが、実は、東京から百キロ圏内、国道の距離数でいいますと約八十キロのところでございます。通勤圏でありまして、かなりの方が東京の方に通勤している。ただ、地場産業といっても大したものがない、本当に地方の人口五万規模の都市であるということで御認識いただければと思います。

 ただいまの先生の御質問でございますが、そういう中での実感はあるのかといったときに、正直申し上げまして、まだ実感はないという状況でございます。

 ただ、そうはいうものの、例えば、株価の問題であるとか円安の問題等々で明るさは見えてきているかなという状況でございまして、そういう意味からいえば、今が底というような感じになって、これから少しずつ上向いてくるんだろうなというふうに思っております。

 同時に、茨城県の場合、実を申しますと、一昨年の三・一一でやはり相当の被害を受けた県でございまして、特に海岸線沿いの漁業関係、そしてまた農家の方も一部にかなり厳しい被害、それも風評という名の被害を今もって受けていることも事実でございまして、物が売れない、あるいは買いたたかれてしまっているというような状況も依然としてございます。

 そしてまた、そのほかの方ではちょっと、残念ながら、今のところ上向きの傾向はまだ少し出ていない、輸入材が上がってきたところが非常に厳しくなってきているかな、そういうふうに思っております。

 以上でございます。

岡本参考人 岡本でございます。

 安倍政権になりまして、円安、株高というものが非常に進行いたしました。その結果、輸出をされておる企業については非常に収益がよくなっておる。しかしながら、反面、輸入される原材料だとか燃料費というものは反対に暴騰してきておりますので、輸出を余りしていない中小企業の経営を非常に圧迫しておるというのが現状でございます。

 新聞その他では、高級品、住宅というものが非常に売れておるようでございますが、私は、これは消費税の増額を見込んだ駆け込みの需要ではなかろうかな、こう考えております。したがって、消費税が上がった後には、今のシャープさんのようにならないかと非常に危惧する一人でございます。

 以上で終わります。

清水参考人 現在の景気の問題ですけれども、確かに、民主党政権から自民党政権になって一番大きいのは日銀の政策が変わったということでしょうが、実態は、国民の生活必需品、衣食住を扱っております我々最末端の業界は、安倍政権ができたのは十二月末ですが、一月、二月は昨年より五%ぐらい悪かった、三月になってようやく大体予算を達成。四月に入って、天候不順もあって予算は未達成です、我々末端の小売業は。

 株あるいは為替、これは関係業界には直接的な影響はあるでしょう。全体から見ると、株が上がった、あるいは為替が円安になって自動車なんかの収益が上がったといいますけれども、我々のところに対する影響はほとんどない。ただ、デパート、百貨店の今までとまっておった高額商品が若干売れ出す、そういうことをメディア、マスコミは非常に大きく取り上げていますが、全体から見ると、ウナギのにおいはするけれどもウナギは出てこないというのが現状です。

 以上です。

國重委員 参考人の皆様、ありがとうございました。

 私も、経済産業委員会の一員として、しっかり皆様に景気の回復を実感していただけるように頑張ってまいります。

 転嫁問題について、次は大和田参考人と岡本参考人のお二人にお伺いします。

 一九九七年に三%から五%に引き上げられた際の皆様の懸念の声と、今回、八%の増税前の現場の皆様の声とで何か違うとか、より皆様が心配されているとか、いろいろな方の御意見を伺って、今こういうところが違うんじゃないかと感じられていることがあれば、お伺いしたいと思います。

大和田参考人 大和田でございます。

 ただいまの先生の御質問の件でございます。

 実は、転嫁の実態につきまして、一昨年、中小企業団体が一万事業者に対しまして調査を行いました。その結果につきましては、五〇%程度の方から転嫁が非常に難しかったというような意見が出てきておりまして、特に小さな事業者ほど転嫁が非常に厳しいという状況が出てきております。

 これは、BツーB取引はもちろんのこと、BツーC取引の中でもそういうようなことが言われてきておりまして、変な話、店頭での値引きの問題だったりとか、そういうようなこともございまして、具体的には転嫁ができていなかったというような状況が生まれてきているということでございます。

 今回、もし仮に、それがさらに三%アップされてトータルで八%になったときにどうなるかという御質問でございますけれども、三%が五%になった、二%のアップでそういう状況が起きております。今回の方がさらに税率のアップ率が大きいということで、私どもの方は、何とかそういったことが起きない方策がないものかということで苦慮しているような次第でございます。

 その調査結果の中にも反映されておりますけれども、何もしないでおくと、多分六〇%、あるいはそれを上回る小規模の事業者の方が転嫁できないでしまうのではないかな、そういうふうに危惧いたしておりまして、消費税はとにかく皆さん方が広く薄く負担する税なんだ、買い物をすれば必ずそれがついてくるんだということを認識していただくような広報活動というものを今後特に消費者向けにも大きくやっていただければ、そういうふうに考えております。

 以上でございます。

岡本参考人 岡本でございます。

 三%から五%に上がったときには、先刻私が申しましたとおりに、事業者がみずから負担しておる、消費税を転嫁しないで自分で負担しておるという業者も多かった、そのために国へ納める消費税を滞納したということがあります。一応、ちょっと申してみますが、平成八年には滞納額は約四千三百億円、九年は五千四百億円、十年は七千二百五十億円、こういうぐあいに多額の滞納が出ております。

 今回、八%、一〇%となってまいりますと業者も耐えられないと思いますので、今度は転嫁をしてくるだろうと思いますが、大幅な値上げであるということは事実です。それから、八%、一〇%と二回にわたっての消費税の値上げという問題、減税が実施されなかったというような問題で、非常に影響は大きかろうと推測いたします。

 以上です。

國重委員 時間がもう迫ってまいりましたので、大和田参考人にお伺いします。

 先ほど、中小企業の声なき声をすくい上げる仕組みが大事なんだという御意見を賜りました。今回、さまざまな書面調査をしていくということですけれども、具体的にどのような調査をさせていただいたら中小企業の皆様がその声なき声を上げやすいのか、何か御意見があれば御教示いただきたいと思います。

大和田参考人 大和田でございます。

 ただいまの御質問の件でございますが、私ども商工会議所といたしましては、中小企業者が不公正な取引を受けたことを公正取引委員会に訴え出ますと、対象の取引のみならず、全ての取引を失うおそれを覚悟しなければならぬということでございます。それは非常にハードルの高いものでございます。

 また、書面調査におきましても、本当のことを書いて出しますと、それが何らかの関係で外に漏れたときにやはり同じように大変なことになってしまうということから、書くことをちゅうちょしているという実態がございます。

 取引上立場の弱い中小企業の声なき声をすくい上げる仕組みといたしまして、大規模な覆面調査や転嫁調査員による大企業への定期的な調査、これがやはり大きなインパクトを与えるものじゃなかろうかな、そういうふうに思っております。

 そういう意味で、特に、大規模な覆面調査、あるいは転嫁調査員による定期的な調査、強力な監視などをぜひとも検討をお願いしたいと思います。

 以上でございます。

國重委員 ありがとうございました。

 先ほど清水参考人の方からも、国会議員がしっかりと団結して英知を結集して、五十年後、百年後へ向けて頑張れというふうに力強いエールをいただきましたので、私もしっかり頑張ってまいります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介であります。

 本日は、大和田参考人、岡本参考人、清水参考人、大変お忙しい中、当委員会に来ていただき、また貴重な御意見をいただいたことに、まずもって感謝を申し上げたいと思います。

 とりわけ清水会長におかれましては、ある意味で日本の政治における消費税導入にかかわる生き証人と申しましょうか、さまざまな局面で御活躍されてきた件、また、そうしたさまざまなことも踏まえながら、特に、昨年の民主党政権下におかれて自民党さん、公明党さんとの三党合意ができたこと、流通業というお立場で、本来ならば税を引き上げるということに対しては極めて消極的な立場であらなければいけない部分もおありになりながら、世界的な潮流また我が国の置かれた状況に鑑みて、ここは消費税率引き上げも選択肢だというふうに御判断されたという御発言に、大変深い感銘を受けた次第であります。

 また、岡本参考人も含めて、清水参考人は大正十五年、岡本参考人は昭和三年生まれということで、まさに戦中派といいましょうか、その世代ならではの大変貴重な御意見もこの消費税の法案の話を通じながら御発言いただいたことに、まず感謝を申し上げたいと思います。

 まず冒頭、清水会長の方から内税、外税の話がございました。本来は総額表示ではなくて、外税の方が望ましいのではないかという御発言がございました。

 そもそも消費税導入に際しては、これは外税でスタートして、そこから、たしか平成十五年、十六年当時だったかと思いますが、当時の自民党税制調査会長山中貞則会長も含めて、これは間違っておった、やはり内税がよかったんだと御発言をされ、消費者向けは内税になった、こういう経緯がございます。

 ただ、清水会長もおっしゃったように、私は、ここの背景に、役所側はいろいろ理屈は言っておりますけれども、基本的には負担感がない取り方がしたかった、この思いがどうしてもあったのではないかと思わざるを得ないわけであります。

 先ほど清水会長の御発言にもありましたように、納税はある意味で義務だ、皆が払うんだという観点からすれば、業界それぞれの考え方はあるにせよ、やはり外税が基本であって、どうしても内税がよいという場合に限って内税というのが基本ではないか。

 これは一般のBツーCだけではなくて、事業者間においても、規制はございませんけれども、やはり外税というものを基軸に置くべきではないか、今回の消費税率引き上げを機にそこに転換すべきではないか。今のところまだ中間的な話になっていますけれども、思い切ってそこは外税に転換する方針を今後は明示すべきではないかと思いますが、お三方、いかがでございますでしょうか。改めてお伺いしたいと思います。

大和田参考人 大和田でございます。

 内税、外税の問題でございますが、確かに、外税の方が転嫁しやすいという声もあることも事実でございます。しかし、扱っている商品やサービス、販売の実態によりまして、やはり多様な意見もございます。

 例を申し上げますと、生鮮食料品等、低価格商品を扱う事業者は外税を希望する意見が強いということが事実でございますが、一方で、消費者とのトラブルを心配する声がやはりございます。業務やシステムを再構築する必要が出てくることから、総額表示を維持していかなければいけないというような意見も多いということで、私どもの方に寄せられている意見といたしましては、やはり業種によってそれぞれの主張があるということで、なかなか難しい点が多々ある、そういうふうに認識をいたしております。

 以上です。

岡本参考人 申しましたとおりに、外税が理想だと思いますが、外税については困るという業種もたくさんあります。例えば、自動販売機、コインで販売をしておる者、あるいはまた、旅行のあっせんというんですか、旅行業者、総額が一体何ぼでヨーロッパに連れていってくれるのかということであって、外税になってくると困るというのが旅行代理店からの意見でもございます。

 したがって、外税一本に強制してしまうということは、今までのように税込みの値段を表示しなければならぬというところはちょっと困ると思うのでございますが、ある程度、業界によっては両方、外税もあり、内税、総額表示もあるということを考えていただいた方がいいんじゃないか。

 したがって、全体としては、やはり総額表示という言葉が一番妥当じゃないかと思っております。

 よろしくお願いいたします。

清水参考人 本件につきましては、原則外税で、ただし、今参考人がおっしゃったように、自動販売機は外税といったってどうしようもないので、総額表示でコインを入れなきゃいかぬ。あるいは外食産業の場合も、しょっちゅうメニューが変わりますので、どちらかというと外税、プラス税の方がやりやすい。あるいはサービス業、先ほどおっしゃった旅行業者の場合は、総額でないとちょっとお客さんは困る。

 要するに、国家は、あるいは財務省、国税庁は税がきちっと入ればいいので、外税、内税、総額の問題は、原則は外税としていただいて、業種、業態によって総額表示、内税も自由にできる、それぐらいの幅があったって、こんな日本のような自由主義国家はいいと思う。これを一つに決めろというのはちょっと間違いだと私は思います。

 外税でスタートして内税になったのは平成十六年、このとき主税局長は大武健一郎さんだったんですが、突然、企画官を連れてみえて総額表示の義務づけを説明されたので、実際に消費税をお客様からお預かりして国に納めるのは、大中小問わず、我々流通業界最末端の小売業者、やはり事前に一言御相談があってしかるべきというのが本来で、私は、決めて、こう決まったからというのはちょっとお上流儀で残念だったと思います。

 本件は以上です。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 やはり、原則外税の世界であって、もちろん業態それぞれ、販売形態によって総額表示というのがあり得る、私はそれが正しい姿ではないかと思います。そこは確認ができたかな、こう思うわけであります。

 いわゆる還元セールの問題もそうだと思うのですが、先ほど清水会長からも御発言をいただいたのでもう聞きませんけれども、基本的には、もちろん枠は決めてもいいけれども、やはり民間の事業者の自律性に任せるということも大事なんだろう、こう思うわけであります。明らかに悪質な、消費税をいただきませんとか、いただかないわけがないので、当然取るわけですから、そういう広告等々は明確に禁止すべきである。ただ、同時に、そこの全てができないかのような一種の統制的なことは、お役所はやはり怖いですから、そういう指導は慎むべきだ、こう私は考えるわけであります。

 税の世界というのは、国税庁というのは大変怖い存在でございますし、公正取引委員会というのも大変恐ろしい存在でございますから、この二つににらまれたら事業者は何もできない。ただ、公取は他方で、恐ろしい存在ですけれどもいまいち足腰が弱い、こういう指摘も受けているわけであります。

 清水会長、規制は規制であっていいけれども、やはり原則、値引きセールの話も含めて、自律した企業の良識というものに任せなきゃいかぬし、実際どうでしょうか、流通業界、特に大手企業はそういった自制心を持っていると信じてよろしいものなんでしょうか。その点、もう一度お答えいただけますでしょうか。

清水参考人 本件につきましては、先ほども申し上げましたように、大中小それぞれの立場で意見はある、これは民主主義国家では当然のことです。ただ、先ほどもあったガイドラインの問題に関連するんですけれども、余りきっちりと決めてしまうというのはなかなか問題が多いので、これは各家庭の御主人と奥さんの関係みたいな部分もある。

 先ほども申し上げたように、大手企業と中小零細は、仕入れ価格の違いとか取引条件の違いとかいろいろありますから、中小零細企業の方もできるようなセールであればいいわけですけれども、どちらかというと、大企業はできるけれども中小零細の方ができないというようなセールのやり方は、法律じゃなしに、大企業がみずから惻隠の情を持って、中小零細企業の存在も、日本国には本当に必要な、むしろ基礎的な存在ですから、大が惻隠の情で自律、自制するというような、これはやはり良識の世界だと思います。行き過ぎることはどちらにとってもよくない。

 この狭い地球で、百万年前の昔、人口が少なかったものが今や七十億にもなって、最近の百年で五十億ふえているんですよ。その前の百年で十億ふえた。その前は、二億が十億になるのに千八百年もかかっているんです。だから、各国とも今大変です、資源は限られているし。今、水の問題とか食料の問題とか、いろいろな天候不順も起こっていますから。

 本件も一緒で、みんなが自制しながら、また全体の立場をむしろ優位な人が考えて自律するということが肝要だと私は思いますから、法律もそういう含みを持って決めていただきたい、また運用面もお願いしたい、かように思います。

 私は、あの戦争で三度死にかけたけれども生き残って、その後、日本が一千万人の餓死者が出ると言われた中、餓死者を出さずに、あの焼け野原、今、丸の内、大手町、日本橋、銀座を見てみなさい、大建築が続々と建ち上がっている。こんな国は世界じゅうどこにもない。私は毎年世界に行って見ていますが、アメリカだって、ヨーロッパだって。今の日本の丸の内、大手町、銀座、日本橋、それからあの皇居、立派なものですよ。

 それから、二千年近い皇位を我々は支えてきた。あの戦争に負けたとき、当然、日本国天皇、天皇制は排除されたはずだけれども、我々日本国民は、一致団結してあれを守ることを通して今日がある。やはり、大も中も小も一緒になって、餓死者を出さずに日本の再建をやったんですから、その精神を忘れてもらいたくない。

 年齢的にはもう私が最後です、戦前を知り、戦中を知り、戦後のあの焼け野原の復興を知っている者は。だから、そういう点で、皆さんに引き継いでいただきたい。お願いします。

近藤(洋)委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

 清水会長、私も昨晩、会長がお書きになった「男の死に方 戦争で生き残ったものの責務」という本をざっと読ませていただきました。大変深い御発言をいただきましたことに、またお三名の参考人の方に心から感謝を申し上げます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 日本維新の会の今井雅人でございます。

 きょうは、三名の参考人の皆様には、御多忙の中お越しいただきまして、また、大変貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。

 近藤委員も言われましたけれども、特に、清水参考人におかれましては、老いてますます盛んという感じで、我々も見習うべきところがたくさんあるなと思いましたけれども、我が党にも元気な暴走老人がおりますので、ぜひこの二人の対談を聞いてみたいなということを、先ほどお話を伺いながら感じた次第でございます。

 最初に外税、内税の話をお伺いしようと思っていたんですけれども、今、近藤委員が御質問されましたので、割愛いたしたいと思います。実は、私も、基本的には外税にした方がいいというふうに思っておりまして、理由は、まさに先ほど清水参考人がおっしゃられました、納税意識を高めるということが非常に大事なんだと思っているんです。

 私、よくこの委員会でガソリン税の話をするんですけれども、地元で皆さんといろいろお話ししているときに、皆さんのふだん買っておられるガソリンの値段、三分の一ぐらいは税金ですよと言うと、ええっと。知っているはずですけれども、みんな忘れているのか、あるいは御存じないのか、いろいろなケースがありますけれども、改めて、そんなに税金を払っているということを皆さんは感じるわけですね。

 やはり、国民は税金を払っている立場であり、税金を払っているということに対しての意識を持ち、そうすることで、逆に、その税金を我々は使わせていただいているわけであって、そういう国会議員あるいは議会、こういうところへの問題意識というのがさらに高まると思っています。

 ですから、そういう意味でも、やはり原則外税にするべきだろうということをふだん感じておりまして、きょうはそのことを質問しようと思いましたけれども、皆さんの御所見をいただきましたので、次の質問に移りたいと思います。

 本件とは直接関係ないんですが、消費税引き上げに際して、今、政府あるいは与党の方で、軽減税率を導入しようということを検討しておられます。一昨日も、実は、学識者の方に来ていただきまして、同じ質問をさせていただきましたけれども、税理士の協会の代表の方は、簡素な税率であるべきで、軽減税率には反対だということをおっしゃっておられました。

 きょうの参考人の資料を見ますと、それぞれの立場で御意見が書いてございましたけれども、改めまして、この軽減税率、どの品目を入れるのかとか、議論が非常に複雑になる可能性がある一方で、目的としては、逆進性、低所得者を何とかしたいという意図もあるということであります。

 軽減税率を導入するに当たっては、インボイス方式というのを導入した方がいいんじゃないかという意見もありますけれども、この点について、お三方、順番に御所見をいただきたいというふうに思います。

大和田参考人 大和田でございます。

 軽減税率、複数税率というふうに理解をいたしておるところでございますが、その件について考え方を述べさせていただきたいと思います。

 複数税率で一番大きな問題になりますのは、失われる財源が大きいという点にあろうかと思っております。食料品を軽減税率の対象といたしまして、仮に税率を五%に据え置いた場合、その額は三兆円にもなるというふうに財務省の方でも試算をしている、そういった指摘がございます。

 この複数税率、軽減税率の導入の意図というか目的ということでいえば、いわゆる低所得者対策なのかなというふうに思っておりますが、もしそれだといたしますと、真に支援すべき方を特定いたしまして、きめ細かく給付することで対応した方がより効果的なのではなかろうか、そういうふうに私どもは考えております。

 そしてまた、複数税率ということになりますと、インボイスの問題がどうしても浮上してくるわけでございます。そもそも、インボイス制度自体に多くの問題点があるというふうに私どもは思っております。

 区分経理、これは税抜き経理が求められるわけでございまして、今まで、月締めあるいは週締めなど、一括で請求や記帳を行っていた作業を取引ごとに行わなければいけなくなるという点が、まず第一点ございます。

 そして、次に、一枚ごとの帳票が消費税の根拠となってまいりますので、法人税、所得税の帳簿の計算に加えまして、消費税の計算が別途必要になってまいります。それがまさに、追加的に煩雑な作業がそこから生じてくるというふうになってこようかと思います。

 そして、この結果、五百万を超える免税事業者が取引から排除されて、廃業に追い込まれる懸念があるというようなことから、複数税率並びにインボイスの制度につきましては、日本商工会議所といたしましては、採用しないでいただきたい、そういう意見でございます。よろしくお願いいたします。

岡本参考人 軽減税率の導入につきましては、このたびの引き上げの際には導入は見送っていただくべきじゃないかと思います。

 日々の取引の都度、税率を判断して、記帳、集計、管理を行うことが必要となるため、特に規模の小さな事業者ほど、新たに複雑な、大幅な事務負担となることであります。手作業で経理処理を行っておる事業者は中小企業の四割ありまして、個人事業主の七割を占めておる次第でございます。

 また、インボイスにつきましては、導入されますと、取引の都度、インボイスを作成し管理しなければならなくなり、中小企業は負担に耐えられない。また、消費税の事務処理能力がない五百万にも及ぶ免税事業者が、取引から排除されることになりはしないかと懸念いたします。

 それから、軽減税率をしてやろうというお気持ちがあれば、私はゼロ税率をやっていただきたいと思います。ゼロ税率であれば、そういうことは割に簡単にいくんじゃないかと思います。先ほどお話がありましたとおりに、食料品を全てゼロ税率にすれば約五兆円ほどの減収になるということでございますが、それらと低所得者に対する補助というものをてんびんにかけていただいて、どうなるかということもお考えいただけたらと思います。

 以上です。

清水参考人 本件、軽減税率の問題は、税率一〇%までは一律で課税すべきだというのが私どもの結論であります。先ほどおっしゃいましたように、もし軽減税率をやるのなら、むしろゼロ税率の品目を選択した方が間違いがないということでございます。

 なお、インボイス方式は、財務省、国税庁、事務当局は割とそれを主張されるんですけれども、これは何の益もないんですよ。納税者を、ごまかすものだという前提条件でおっしゃっているのかと、私は本当に腹立たしく思うのです。

 日本というのは、本当に信頼国家ですよ。だから、世界じゅうで日本ほど夜でも安心、安全な国はないので、こんないい国におって、税金は最低の税金で、払うのは嫌だなんと言っておったら、本当に情けない。我々の仲間は国のために死んでいったんですからね。

 しかも、我々人間は、生まれてくるときは極めて公平じゃないんですけれども、死ぬときだけは、本当に紙切れ一枚持ってあの世へ行けないのだから、余り自分勝手な欲張ったことを考えずに、このいい国をみんなで支えて守ってほしい、家族制度を復活してほしい、教育を直してほしい。

 教育も、家庭教育と学校教育と社会教育とあるんですよ。ところが、今、家庭教育は崩壊してしまって、しかも学校教育も、それはやむを得ないので、戦争で右へ振れておったやつが、逆に、敗戦で、先生方がいとし子をたくさん失った反動で日教組なんかができて左傾してしまったけれども、これは早く真ん中に戻して、右もよくないですよ、だけれども、左もよくない、やはり真ん中で日本を支えてほしい。

 後藤田正晴さんと私は同じとら年で、一回り違いだったけれども、後藤田さんは、いわゆる二度と日本は戦争をやっちゃいかぬということで凝り固まっておって、私もよく官房長官室へ行って後藤田さんと話したけれども、今いろいろなまた問題が出て、日本を軍事国家にするとか、尖閣の問題でも、東京都があんなものを買うと言わなければ、こんなことになっていないんですよ。戦争してもいいなんて、戦争をしたこともない人間が軽々に言うべきじゃないんですね。だから、僕は残念でしようがない。

 何とか、みんなでこの国の平和と安全と安心を守って、それで、税金は、これで弱い人や日本の国を支えているんだという、国民が誇りと明るい気持ちで税金を払うように、国会議員の皆さんも、行政当局も、我々も協力して、この国の本当の根本を変えてもらいたいんです。

 だから、皆さん、これはいい機会ですから、本件を含めて、国民を信頼する、国民も国家を信頼する、その信頼関係で本件は成立したいと思いますから、よろしくお願いします。

今井委員 ありがとうございました。しっかり我が党の暴走老人に伝えておきます。

 もう時間が来ましたので、最後に一点だけ。

 大和田参考人、先ほど、もう既に値引きの要請の声があると伺いましたけれども、元請も値引きをしていれば多分問題はないんですが、元請は値引きしないまま下請だけ値引きさせているということは、消費税を上げるのを目指してやっているということでありますので、そこらあたりはどうなんでしょうか。元請が一緒に下げていればいいんですけれども、元請だけは下げないで下請だけ下げろ、こういう動きが出ているんだったら非常に問題だと思うんですが、最後、この点だけお伺いしまして、終わりたいと思います。

大和田参考人 ただいまの御質問の件でございますが、販売価格まで引き下げているかどうかということにつきましては、確認はとれておりません。

 ただ、BツーBの取引の中で、もう既に、これは私どもの地元でも、一件のみならず数件、見積もりを何度も何度も提出させられているというような事例が出ていることは事実でございます。これは、私自身が直接その業者の方から耳にいたしております。

 以上です。

今井委員 ありがとうございました。

 きょう公取の皆さんもいらっしゃっていますので、これは非常に重要な点だと思いますので、ぜひ気をつけていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 こんにちは。みんなの党の井坂信彦です。

 本日は、お忙しい中お運びいただきまして、本当にありがとうございます。さすが、現場でお商売をやっておられる諸先輩方から、非常に現実的な御発言、御見解を賜っているというふうに思っています。

 その中で、本日、一つは、この法律の実効性ということについてお伺いをしたいと思います。

 日本商工会議所さんの資料によれば、この法案を評価されていると同時に、現場からの懸念の声として、やはり本当に切実で現実的なものが上がってきております。中小企業の場合、やはり、元請との関係が悪くなって、法的に争うことまで覚悟しない限りなかなか言えない、これはまさにそうだろうというふうに思いますし、あるいは覆面調査でも、結局、企業名が記載されてしまっていたら本当のことを書けないとか、やはりいろいろ、この法律が実際にどこまで実効性を持てるのかということについて、現場からのリアルな声が上がってきているというふうに思います。

 この点について、先ほど、覆面調査ですとか大規模な現場調査というようなことをおっしゃっておりましたけれども、そういうことを実行さえすれば、本法律によって価格の転嫁は十分に進むというふうにお考えなのかどうか、まず大和田参考人にお伺いをしたいと思います。

大和田参考人 ただいまの御質問、実効性の高い措置という件だと思います。

 転嫁対策法におきましても、転嫁拒否に対する監視の強化等が盛り込まれているところでございますが、牽制効果を高めるような監視体制づくりや、あるいは不公正な取引に対する取り締まりを強化することによりまして実効性が上がっていかないと意味がないというふうに考えております。

 そのためには、国民への広報や、あるいは転嫁拒否への対応など、円滑な価格転嫁に向けた施策を実施するとともに、やはり、公正取引委員会、あるいは国や地方自治体が価格転嫁拒否に対する強力な監視を行うことが必要だと思っております。

 転嫁対策の実効性ある運用ができて初めてこの転嫁というものができてくるのだろう、そのためにも、ぜひとも、監視すること、そしてまた実態をよく把握していただく、そういう作業が必要なことになろうと思いますので、その点、よろしくお願いをいたします。

 以上でございます。

井坂委員 ありがとうございます。

 実は、ちょうどおととい、同じような参考人質疑がありまして、そのときは、学識経験者、いわゆる学者さんに来ていただいての参考人質疑がありました。

 その日は、我が党の三谷議員が参考人の方に質問申し上げたところ、私も横で聞いていて大変びっくりしたんですけれども、学者さんとは思えない、非常に率直な、正直な御見解をいただきました。

 そのときの御見解というのが、この方は、法律家ですけれども、過去の例からも、結局、法律による取り締まりというのは、実は事実上非常に難しいのではないかというふうに思っているというようなことまでおっしゃったわけですね。

 次に、岡本参考人にお伺いをしたいんですけれども、法律的なことはさておき、貴団体の方では、本法律を非常に高く評価するというふうに表明をしていただいております。

 先ほど申し上げた、現場の懸念、実際に本当に実効性があるのかということ、加えて、法律の専門家が、実は事実上、本当に摘発、取り締まりというのは法律的に難しいと思っているというような見解がおとといあったわけですけれども、現場の方から見て、この法律が施行されれば、きちんと取り締まりがされて転嫁が進むというふうにお考えかどうか、お伺いいたします。

岡本参考人 先ほども申しましたとおり、転嫁Gメンとでも申しますか、そういう制度を設置していただきまして検査体制を強化してもらわなければならぬと思います。それに対しては、我々事業者みずからが価格競争力の強化を図っていかなければならないと思います。

 そのためには、先生方のお力をかりて、何とか、中小企業の経営が強化できるというんですか、競争力がつけられる中小企業に成長するように御支援をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

井坂委員 ありがとうございます。

 ちょうど私、今、次の参議院選挙の我が党の政策集の中で、中小企業対策の部分を特出しで強化しよう、追加しようということで作業させていただいておりますので、今の御意見もしっかり承ってまいります。

 次に、清水参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 転嫁が本法律によって、きちんとほぼ十割方、仮に進むといたしますと、これまでスーパーで税込み九十八円で売っていたものというのは、当然、本当に最終消費者への消費税が単純上乗せされて転嫁をされた場合には、百三円弱、百三円というようなことになろうかと思います。

 これは現実の問題として、これまで税込み九十八円という値札がだあっと並んでいたスーパー各社のチラシが、軒並み百三円、百三円というようなことに現実としてなるものなのかどうなのか、御見解をお伺いいたします。

清水参考人 本件は、これはなかなか難しい問題で、先ほどの下請の問題もそうです。我々のお客様というのは、もちろん、消費者の皆さんがお客様。だけれども、お取引先も大事な相手だし、それから従業員も大事です。企業というのは、従業員を大事にし、お取引先を大事にし、しかもお客様を大事にし、それで成り立つんですね。

 ところが、中には、そうでない経営者もおれば、あるいは、経営者はちゃんとしておっても、担当部門で心得違いをして、いわゆる下請をいじめたり、お取引先に無理を言ったりということも起こり得ますから、その組織の問題、それから経営のポリシーの問題、これを厳に徹底して、防御しなきゃいけない。

 今の具体的なお話ですけれども、きょうも、出しなに、食品のチラシがないかと思ったが、なかったんです。これはニトリさんのチラシ。それからユニクロさんのチラシ。大きなチラシです。このごろのチラシはとても大きくなって、値段の半端の問題を消費税のアップでどう転嫁するか。

 これも、今申し上げたように、その企業、企業、あるいは担当者、担当者にどこまで徹底するかということに関連してきますけれども、私は、業界の代表として、会員の皆様に、最も適切な方法で、本件、消費税アップ、あるいはお客様に対する周知徹底、それから社内の教育訓練、これを、きょうは協会事務局の専務も来ておりますから、部門委員会でもよく相談してやります。

 この端数の九十八円とか八十三円とか、今おっしゃった百三円の問題も、私は直接の担当ではないので、そこまでどうするのか、細かいことは御返事できないけれども、御質問の意味はよくわかりますから、周知徹底して、世界で、日本の消費税というのはよくやっているな、立派だな、模範にするべきだと言われる消費税にしたいというのが念願でありますから、どうぞひとつ国会の方で御指導、御協力をお願いいたします。

 ありがとうございました。

井坂委員 ありがとうございます。

 実は、私も消費者に直接商品を買っていただく商売をしておりますので、今のユニクロさんの値札と同じように、大台のぎりぎり下の値段をやはりつけるわけですね。では、実際、百三円で物が売れるかというと、少なくとも私自身は、何とか税込みで従前の価格で消費者の皆さんに提供できないかということを、やはり商売人としてはまず工夫しようとしてしまう部分があるんです。

 実は、おととい、学識経験者の方も、これも率直な御発言で、どんなガイドラインをつくっても、どんな法律をつくっても、商売人は、そこから先、工夫するものであるというような御発言があったぐらいでして、これがやはり現実かなというふうに思うわけであります。

 私は、実はこの法案審議初日の本会議壇上にて、この問題、結局、最後、消費者に売る値段が本当に消費税を上乗せした百三円で売れない限りはやはり九十八円で最後の小売をしなきゃいけなくなる、そうすると小売が頑張る、そうするとやはり仕入れ値も何とか安くしたいという値下げ圧力が働く、ここを解決する一番ストレートな方法はやはり本質的には外税表示ではないかということを申し上げたわけであります。

 今回、外税方式に反対の業界もいろいろあるというふうにお答えをいただきました。主な理由というのは、やはり、総額表示でこれまでつくり上げてきた仕組み、あるいはシステムの変更が本当に手間であり、お金がかかる、負担だということではないかというふうに思うわけですが、外税方式を恒久的に仮にするとして、その際の負担に対して、政府からの何らかの支援があればこういった反対意見というのは弱まるものなのかどうか。

 これは、大和田参考人にお伺いをしてもよろしいですか。

大和田参考人 外税方式にすれば円滑な価格転嫁ができるかというような御質問だと思いますが、外税表示にいたしましても、税額が明記されるので、一見転嫁できたように見えておることは事実でございます。

 ただ、BツーB取引の実態は、外税取引ではあるものの、価格交渉そのものは税込み価格で行われる場合が多く見受けられます。その場合は、価格から逆算いたしまして、後づけで税額が決定される、こういうような仕組みをとられているところがかなり多いというふうに報告を受けているところでございます。

 また、BツーC取引では、扱っている商品やサービス、販売の提供の仕方、実態によって多様な意見が寄せられておりまして、生鮮食品などの低価格商品を販売している小売店舗からは、先ほどからお話が何度も出ておりますが、九十八円などの、消費者に受け入れられやすい端数価格は値上げできないので、外税を認めてほしいという意見は確かにございます。

 その一方で、外税表示にすると消費者が混乱をするのでトラブルになってしまう例もあるということで、同じ店でありながら、片方は総額表示、片方は外税表示ということでのお客さんの混乱がかなり心配されるというような報告も出てきておることも事実でございます。

 以上でございます。

井坂委員 ありがとうございます。

 消費者の側から考えたら、例えば、一カ月、ある家庭で食費が十万五千円だったとしますと、商品代金十万円で消費税五千円。では、消費税が一〇%になったら食費を十一万円出せるのかというと、出せないんですね。十万五千円の食費。そうすると、九万五千円強の商品代金と一万円弱の消費税ということになって、この減ってしまった売り上げを小売と卸でいかに負担するのかというのは、結局、突き詰めると、転嫁問題の本質ではないかなというふうに考えています。

 ウナギのにおいはするけれども、ウナギは出てこないだけでなく、気づいたら御飯も少し減ってしまったというようなことを大変懸念する立場であります。

 本日は、具体的な御意見を本当にありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、参考人の皆さんにそれぞれ貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 冒頭の意見陳述や同僚委員の質疑の中で、今の中小企業が置かれている実態、また消費税の転嫁が困難な実情についてのお話を伺いました。重複しない範囲で何点かお尋ねをしたいと思っております。

 最初に、中小企業団体を代表しておられる大和田参考人と岡本参考人にお尋ねをいたします。

 中小企業の景況が厳しい、将来の期待はあるけれども、現況は非常に厳しい、地方には景気回復の実感がない、原材料高や燃料高が経営を圧迫している、こういうお話がございました。だからこそ、中小業者は、消費税の価格転嫁が困難な状況にもあるんだということであります。

 実際に価格転嫁が困難という具体的な事例についてなんですけれども、特に、消費者との関係もこれはこれであるわけですけれども、BツーBの取引先から消費税の転嫁が認められないような事例があるということもお話しでございました。

 この点で、具体的な事例などについて、御認識のところに関してお答えいただけないでしょうか。

大和田参考人 大和田でございます。

 実態でございますけれども、会員の中小企業の皆さん方からは、既に消費税引き上げを見込んだ値引き要請が来ておるということは、先ほども申し上げたところでございます。

 先ほどお配りしました資料の二ページ目の一番下に記載している事例をごらんいただきたいと思います。

 消費税率の八%への引き上げを見込んで、消費税の引き上げ直前に値下げを要求するものではなく、今の段階から見積もりの再提出を求めているという行為がもう既に行われているということを先ほども申し上げました。事実、まだ一年前になるわけですけれども、既に、業種、業態に関係なく、数件の実例を私自身聞かされております。

 ただ、その内容等につきましては、この場で公表はちょっと差し控えさせていただきますけれども、実は一昨日も、得意先に参りましたら、もう来ているんだよということで、何回提出したのと言ったら、今度で二度目なんというような話もしておりましたので、これが実態ということで、多分、我々のところに入っているということは、全国的に見ても相当の数がある、そういうふうに私は認識をいたしております。

 以上でございます。

岡本参考人 我々、食料品の中では、皆さんもよく御存じのとおりに、お弁当は昼前に買えば六百円だ、これが一時に行ったら四百円になっておった、一時半になったら二百円だというのが実情であります。売れなければ、値段を下げてでも売ってしまわなければお金にならないというのが実情であります。

 弁当だけじゃありません。豆腐やコンニャクも同じでございます。したがって、転嫁対応は非常に難しいだろうと思います。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、岡本参考人にお尋ねいたします。

 大和田参考人のお話の中に、公正取引委員会の調査のこともございました。公取の調査に本当のことを書くと大変なことになるということがありましたけれども、公正取引委員会の書面調査なども行われますが、取引先に対して、名簿を公取に提出して、それで書面調査で答えてもらう。ですから、逆に特定されてしまうことが推測をされるので、答えるのは怖いとかという話なんかも私も直接お聞きしているわけです。

 岡本参考人として、公正取引委員会の調査の現在のやり方について、こんな問題点があるんじゃないか、あるいはこういう改善策が必要なのではないか、このことについて、お考えがありましたらお聞かせいただけないでしょうか。

岡本参考人 公正取引委員会に訴えるためには、対象取引のみならず、それ以外全ての取引相手を失う覚悟が必要であります。書面調査においても本当のことを書くと困るというわけで、ちゅうちょしているのが実態であります。

 そうすると、中小企業の声なき声をすくい上げる仕組みとしては、大規模な覆面調査や、転嫁調査員による大企業への定期的な調査、強力な監視などをしていただいて、それを補っていただくしか方法はないのではないかと思います。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 清水参考人にお尋ねいたします。

 今、中小企業団体から、消費税の価格への転嫁は困難だ、取引先、特に強い大手との関係で転嫁は困難という実情にあるというお話もございました。

 流通ですから、それとの関係がどのような形で当てはまるかというのはまた違う形態だと思いますけれども、大手から見て、消費税の価格転嫁が困難だという中小企業の声、こういうものについてどのように受けとめておられるでしょうか。

清水参考人 本件につきましては、私どもは直接、公正取引委員会との話は具体的にはしておりませんけれども、公取の取引部長、幹部の諸君とは、しょっちゅう協会に出向いていただいて、意見交換をしたり、公正取引の問題で間違いの起こらないようにということで、会員企業にも全部参加してもらってやっております。

 ただ、公正取引委員会の存在、これの役割、これは、本件、消費税の転嫁問題について、具体的に大きな不祥事の問題は現在まで余り聞いたことはないので、問題が起これば、あるいはそれを防止するためにあらかじめどういう方法があるかということは、また公取の責任者、担当者とよく話し合ってみて、我々の立場で本件についてどれだけ貢献できるか、防止できるか等々は、意見交換で万全を期したいと思います。

 先ほどからの中堅、中小の代表の方のいろいろな御心配、御意見がありますので、不祥事、あるいは過度な影響、御負担をかけないように、先ほどから申し上げているように、我々はどちらかというと中堅以上、大企業が多いので、よく話をして万全を期したいと思います。

 今後とも、公取あるいは経済産業省、消費者庁ともども連携をとりながら、消費税に対する私どもの役割、責任を痛感して果たしていきたいと思いますから、よろしく御指導をお願いいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

塩川委員 ありがとうございます。

 重ねて清水参考人にお尋ねいたします。

 消費税増税についてですけれども、参考人が会長を務めておられるチェーンストア協会でも、昨年末の要望書では、経済状況が好転するまで消費税増税は凍結をすべきだ、こういう要望もなされておられます。清水参考人御自身も、報道、インタビューなどで、デフレがとまらない中での増税は無謀だということをおっしゃっておられるということもお聞きしております。

 消費税増税そのものについて、こういう経済状況を踏まえて今はどのようにお考えか、お聞かせいただけないでしょうか。

清水参考人 消費税法案が通過のときに、前提条件として、経済情勢を配慮しながら最終的な実施時期の決定をするということが含まれておりましたので、我々としてはそういう意見を申し上げておるわけです。

 問題は二つあって、二度にわたって、来年の四月に五%から八%、翌年の十月に一〇%、これは、その都度、大変な労力と費用、値段のつけかえとか労力もかかるし、経費もかかる。これは一遍に、五から一〇に、一年半我慢してもらってやったらどうかということも、景気情勢とつけ加えて意見を出しているわけです。

 ただ、一方、先ほど冒頭に申し上げたように、我が国の消費税は世界一低いということと、日本の高福祉に対する負担の割合。

 消費税を実施した平成元年から本年二十五年までの消費税の税収総額は、二百六十三兆に及びます。さらに、国家財政の税収から見たら大変大きな税源です。一%で二兆五千億ですから、一〇%になりますと二十五兆円の税収。今、四十兆ちょっとです。最高六十兆を超えておったんですが、今は税収が落ちて、何か法人税をまた下げるということで、大丈夫かなと心配するんですが、消費税については、申し上げたように、一〇%までは当然我々は義務として、もっと強い言葉で言えば、喜んで受け入れ、協力しなきゃいかぬという信念を私は持っています。

 だから、正直、悩んでいますよ。というのは、景気情勢で見送ることがあると言っているけれども、五%の低い消費税で高福祉が支えられるか。高齢者の介護、医療、それから年金の問題、あるいは失業手当とか、生活保護とか、至れり尽くせりの高福祉国家を支える財源をどうするかということを考えますと、先ほど申し上げた消費税の世界の平均値までは国民は覚悟すべきだろう。そうでなければ、現在の生活水準を引き下げるか。はっきり申し上げて、一割、国民の生活水準を引き下げる、そうしたら一〇%の消費税の財源なんて何でもない、あの戦争が済んだとき、あるいは戦争中のことを考えてみろというのが偽らざる私の意見であります。

 ただ、今の若い人にこれが通るか通らぬか、これは甚だ疑問でありますけれども、やはり勇気を持って、この国をどうするかということを、我々のような最後の生き残った者が、たとえ非難を浴びようが、そしりを受けようが、もっと強い言葉で言えば、もう殺されてもいいからこの国の将来についてのあるべき姿を言えばいい。

 それから見れば、景気がちょっと悪いから消費税のアップを見送るなんというのは、今私の申し上げていることからいえば、逆にやるべきではない。一〇%までは予定どおり頑張ってやれと言いたいところですが、じっと我慢しているわけです。

 どうぞよろしくお願いします。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

富田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時三十分開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房社会保障改革担当室長中村秀一君、内閣府政策統括官西川正郎君、消費者庁審議官草桶左信君、消費者庁審議官菅久修一君及び総務省大臣官房審議官平嶋彰英君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平でございます。

 本日は、質疑に立たせていただきます機会をお与えいただきまして、本当に委員長初め理事各位に感謝を申し上げたいと存じます。

 まず最初に、消費税の法案について一言申し上げたいと思います。

 社会保障と税の一体改革は、民主党政権のもとで、社会保障の安定財源の確保をまず行う、そして財政健全化を同時に達成していくことを目指して策定した施策であります。

 私どもは、国民が将来にわたって安心して暮らしていけるよう、社会保障制度を持続可能なものとしていくために、消費税を社会保障財源化した上で、税率を段階的に一〇%まで引き上げるという決断をいたしました。そして、自民党、公明党とともに三党合意を行い、実行していったわけであります。そして、来年の四月、再来年の十月と、見直し規定はあるものの、スケジュールは淡々と進んでまいります。

 国民の皆様に、この社会保障と税の一体改革の中での消費税率の引き上げについて十分な理解を得るためには、現在、社会保障国民会議や三党における社会保障の見直しに向けた議論が行われているわけでありますけれども、これは残念ながらスピード感がないと言わざるを得ないわけであります。早急に国民の皆様に社会保障と税一体改革の全体像をお示しする、これはまさに、転嫁対策もその一つでありますけれども、転嫁対策だけではありません、低所得者対策など、本当にさまざまな課題が山積みの中で、これらの議論を進めていく、そのことが重要だと思います。

 きょうは、内閣官房から来ていただいていますので、内閣官房としての御所見をお伺いしたいと存じます。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたとおり、社会保障・税一体改革につきましては、社会保障の安定財源の確保と財政の健全化の同時達成を目指す観点から取り組む改革であり、昨年八月に自民、公明、民主、三党の合意に基づく関連法案が成立し、それに基づき現在改革を推進しているところでございます。

 特に、一体改革におきましては消費税率引き上げによる増収分を全額社会保障の充実と安定に向けることになっており、社会保障改革の全体像を明らかにしていくことは、委員御指摘のとおり、本当に必要なことだと認識いたしております。

 このため、昨年八月に成立いたしました社会保障制度改革推進法において、社会保障制度改革国民会議が設置されております。

 また、この国民会議は、同法に基づきます基本的な考え方、とりわけ年金、医療、介護、少子化について定められております基本方針に基づきまして、改革を総合的かつ集中的に推進する、それを、国民会議での審議も踏まえ政府として取り組んでいくということとされておりますので、国民会議におきましても、今週月曜日、第十回目の国民会議を開催し、医療、介護について一わたりの議論が行われて、一定の議論の整理もさせていただいたところでございます。今後、少子化や年金についても鋭意審議いただくこととなっております。

 また、お話がございましたように、三党実務者協議におきましても、国民会議と並行して、三党合意に基づき、精力的に御議論されているところでございますので、こうした取り組みも含めまして、今後、一体改革について、社会保障の姿をより明らかにして、国民の皆様の御理解を得られるように配意してまいりたいと考えております。

岸本委員 ありがとうございました。中村室長は、これで御退席をしていただいて結構でございます。

 この後、消費税の転嫁対策法案についての審議をさせていただきたいと思います。

 消費税は、消費に対しまして広く公平に負担を求める税であります。納税義務こそ事業者に課されておりますけれども、当然その最終的な負担は消費者の方々にお願いする、そのために価格への転嫁を行うということであります。そして、その御負担いただいた消費税は社会保障を通じて国民の皆様に還元される、こういう仕組みになっております。

 したがいまして、事業者の方々に消費税の負担をかぶっていただく、のみ込んでいただくということがあってはいけません。円滑に価格に転嫁できる環境を整備することが、政府にとって極めて重要な責務であると考えております。

 しかも、今回は、二度にわたり税率が引き上げられるということもありまして、中小事業者からは、本当に円滑な転嫁が可能かどうか心配する声、不安の声が多く寄せられております。これは、与野党それぞれの先生方、皆さんが聞かれていることだと存じます。

 私ども民主党におきましても、昨年来、ワーキングチームをつくりまして、転嫁対策の検討を進めてまいりました。その中で、既存の独占禁止法や下請法に基づく規制だけでは不十分であり、新たな立法措置が必要であるということを指摘し、また、昨年六月の民自公の三党合意においてもこの方針が確認されたところであります。

 独禁法は、本来自由であるべき経済活動に対して介入を行っているわけであります。下請法もそうでありますし、今回の特別立法もそうであります。これについて、行き過ぎてはいけないという要請もありますが、しかし、現実の経済を見ますと、やはり、価格支配力が強い事業者、力の強い事業者と、これらの事業者の言うことをのまざるを得ない、弱い立場に置かれる中小の事業者がおられます。

 これは私がメディアコンテンツ課長のときにやったんですけれども、テレビ局とプロダクション、特にアニメーションのプロダクションは非常に弱い立場に置かれておりました。大体、十三週で一つのクールなんですけれども、始まるときに契約書がないんです。十三週間終わったころにようやく、契約しましょうかと言ってこられまして、実は局によって違いまして、どこの局とは言いませんけれども、非常に著作権に対して、中小プロダクションをリスペクトする放送局から、実はその契約書の中に、著作権もよこせ、著作権も放送局がとるぞというような契約までして、しかも、およそ信じられないような安い値段で買いたたくということが行われていました。

 これは、下請法の対象にしていただいたんです。いわゆるテレビの下請プロダクション、それからITのソフトウエアハウスも四次、五次の孫請がありますので、大変弱い立場であったということで、当時、下請法にプロダクションとITソフトウエアの会社を入れていただいた、ポジティブリストでいくわけですけれども、それで少し進んでいった、ようやく契約書が正常化されていったということでありますが、今回のような場合、下請法がなかなかきかない、独禁法もいろいろな問題があるということであります。

 しかし、今言いましたようなテレビ局とプロダクション、弱い立場と強い立場、これらの関係について、独禁法がまずもって規制をしているわけですけれども、改めて、基本的な考え方について公取委員長にお聞きをしたいと存じます。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 独占禁止法は、私的独占、不正な取引制限、それから不公正な取引方法の禁止というのを主な禁止行為としてございます。その中で、不公正な取引方法の中に、優越的地位の濫用や不当廉売といった行為を禁止しているところでございます。

 その趣旨はと申しますと、不公正な取引方法というものが公正な競争を阻害する、それから公正な競争秩序に悪影響を及ぼす、こういった趣旨から禁止することにしてございます。自由な競争を減殺する行為だとか、不公正な競争手段を用いる行為、自由な競争の基盤を侵害する行為、こういった行為から競争を保護しまして、公正ということが非常に重要だと思いますが、公正かつ自由な競争を促進するということから規定しているものでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 独禁法は、今委員長がおっしゃったような総論を実施していくのに大変強いツールだと思います。しかし一方で、違反業者に対する罰則、ペナルティーは排除措置命令やら課徴金ということですので、大変重いペナルティーが科されるわけであります。したがいまして、公正取引委員会としては、当然、厳しいペナルティーを科す以上は手続に非常に慎重にならざるを得ません。時間も要るということで、迅速な対応が困難になっております。

 ここ数年で結構なんですが、独禁法における優越的地位の濫用としていわゆる行政処分が行われた件数は、どのような推移になっていますか。

杉本政府特別補佐人 委員御指摘のように、独占禁止法は、違反業者に対して排除措置命令とか課徴金といったかなり重いペナルティーを科すものでございますから、要件もきちっと規定されているところでございます。

 優越的地位の濫用について申しますと、優越的地位にあること、正常な商慣習に照らして不当であること、さらに利益の提供だとか購入強制といった濫用行為をすること、こういう要件になっておりますので、かなり重畳的、重層的な要件を満たすということになっておりますので、その事実の認定、それから手続等に時間を要する面もあると思っております。

 お尋ねの件でございますが、公正取引委員会がこの五年間、平成二十年度から二十四年度までの間でございますが、優越的地位の濫用として排除措置命令や課徴金命令を行った事件数は合計十件でございます。

 このほか、優越的地位の濫用となる違反の疑いがあるということで警告、公表を行ったものが合計三件、また、違反行為の未然防止を図る観点から注意を行ったものがそれぞれ五年間で百九十四件ございます。

岸本委員 そういう意味では、大変立派なツールでありますけれども、そう簡単に発動するわけにはいかないということが今の件数でも明らかになりました。

 今私が申し上げましたように、次は下請法なんです。

 下請法は、事業者の優越的地位に関する認定が、資本金の大小等の外形標準によって簡便に行える、一方、ペナルティーは勧告や公表ということですから、独禁法に比べて軽いものとなっております。結果として機動的な運用ができるということで、私の担当のプロダクションを対象にしていただいたわけでありました。

 そこで、下請法違反として勧告や公表を行った件数は今のと比べてどのような推移なのか、また、具体的な事例として御指摘いただけるようなものがあればいただきたいというのと、それから、処分にまで至らないにしてもいろいろな御相談が行っていると思うんですけれども、そういう状況についても、よろしければ教えていただきたいと存じます。

杉本政府特別補佐人 下請法に関しましては、委員御指摘のように、形式的な要件で形式的な行為を確認するということで、迅速かつ的確に対処できるような枠組みになってございます。

 さらには、不利益をこうむった人々に対しまして、下請代金の減額分の返還等、そういう被害回復を行えるようなことになってございます。

 平成二十年度から二十四年度までの五年間におきまして、下請法違反として勧告、公表を行いましたのは七十九件でございます。

 違反行為の類型別には、下請代金を事後的に減額するとかいうものが最も多く、これが七十六件でございました。次いで、担当者を派遣させまして関係のない業務に従事させるといった、不当な経済上の利益の提供要請が十件ございました。業種別で見ますと、卸、小売業者によりますプライベートブランド商品等の製造委託に係るものが三十九件でございまして、全体の七十九件の約半数ということになってございます。

 このほか、勧告、公表に至らないまでも、違反の程度が比較的軽微な事案についても指導を行い、下請業者の不利益の早期回復を図っておりまして、五年間におきまして、約一万九千件の指導を行ってございます。

 この勧告、指導等によりまして、この五年間におきまして、下請事業者がこうむった不利益について、下請代金の減額分の返還等、合計約百四十二億一千万円相当の原状回復が図られているところでございます。

岸本委員 下請法でありますと、少し弾力的運用が行われている、そのことをさらに進めて、今回の特別立法で十二分に対策をとっていただきたいということで、私どもは今この委員会で審議をさせていただいているわけであります。

 既にこの間、いろいろ各同僚の委員の質問等で何度も出てまいりましたので、少し通告の質問を割愛しながらお聞きしていきたいと思いますけれども、一番私どもが事業者から聞く声は、そうはいっても、自分たちがこんな違反行為を受けたんだということを、法律はあっても、公正取引委員会に言いに行く、相談に行くことすらなかなかこれはしんどいことだというのが、実際のビジネスをされている皆さんの正直な声であります。

 結果として、どうしても理不尽な契約があり、下請法であっても今のような件数ということでありますけれども、公取委員長に、各委員が聞いていますけれども、このようなビジネス慣行を前提に、どのような指導をなさっていかれるのか、御所見を伺いたいと存じます。

杉本政府特別補佐人 消費税率引き上げに当たりましては、仮に立場の弱い中小事業者が消費税の転嫁を拒否されるなどによって被害を受けたとしても、みずからその事実を申し出ていただくことが期待しにくいというのは、おっしゃるように実態だったと思います。

 このため、情報提供を受け身的に待つだけではなく、大規模な書面調査を実施するなどによって積極的に情報収集に努めることによりまして、転嫁拒否等の行為に対してしっかりと取り締まっていくこととしてございます。

 さらには、そういった情報を受けた場合、その情報の出し手といいますか、そういったところがわからないように、それについても万全の注意を払ってやっていきたいと思っております。

岸本委員 ぜひ、今回の二度にわたる消費税の引き上げに際して十全な監視をお願いしたい、取り締まりをお願いしたい、御指導をお願いしたいと存じますが、一方で、これは杉本委員長の前職にもかかわりますが、財政制約、予算の制約がありますから、どんどこ公取委員会の公務員をふやすわけにもまいらないということであります。一方で、しっかりと人員を厚く手当てしていただいて、取り締まりをしていかなきゃいけない。

 この両方の要請を踏まえて、より実効性のある監視、取り締まり体制、新任公取委員長として、どのように取り組まれるおつもりでしょうか。

杉本政府特別補佐人 厳しい財政事情ではございますが、一方で、消費税の円滑かつ適正な転嫁に取り組むという観点から、転嫁対策にしっかりと取り組むための体制整備ということも重要であると考えております。

 このため、転嫁拒否等の行為の監視、取り締まり等のために、臨時的に、公正取引委員会、中小企業庁合わせまして六百人程度の人員を手当てしていただくことにしてございます。

 また、今回の話は非常に大量に、短い期間で起こる可能性がありますので、公正取引委員会や中小企業庁だけではなく、事業を所管する省庁においても調査や指導を行う権限を付与することにしておりまして、これら省庁とも連携いたしまして、政府が一丸となりまして、転嫁拒否等の行為に対して実効性のある監視、取り締まりを実施していくということにしてございます。

岸本委員 今まで、私も含め同僚委員が議論してまいりましたのは、規模の小さな事業者と優越的な地位に立ち得るような大きな事業者との関係での買いたたき、優越的地位の濫用の話でありましたが、実は、私は和歌山市の選出でありますけれども、和歌山市の商店街はシャッター通りになっているところが多いわけであります。

 つまり、地方の商店街の小さな小売店は、これはもうそういう問題ではなくて、小売店そのものがお客様に価格を転嫁することが非常に難しいということが現実であります。それは和歌山市だけではなくて、恐らくきょうおいでの同僚議員の選挙区においても同じような状況でありましょうから、本当に今厳しい商店街の皆様が一番心配をなさっているんだろうと思います。

 その意味で、商店街というか小売業を所管されている経産大臣にお聞きしたいんですけれども、現在、シャッター通りというか、日本の商店街の空き店舗の状況はどのようになっているのか。また、その原因、当たり前のように大規模な小売事業者やチェーン店などと言われますけれども、その要因等についても御所見を伺いたいと存じます。

茂木国務大臣 確かに、委員御指摘のように、地方の商店街は今大変厳しい状況にございます。

 直近の平成十九年の商業統計を十年前の平成九年の統計と比べてみますと、年間の商品販売額は二四%減、従業者数は一二%減、そして店舗数は三一%減と、いずれも大きく減少しております。

 そして、空き店舗の増加状況でありますけれども、依然としてこれにも歯どめがかかっていないという状況でありまして、平成二十四年度に中小企業庁が行いました商店街の実態調査によりますと、商店街当たりの空き店舗の割合は一四・六%ということですから、七つの店のうち一つが空き店舗、こういった状況になっております。もちろん、地域によって、また同じ町でも商店街が幾つかあったりしますので、状況は違ったりしてきております。

 商店街のこういった衰退の原因、確かに大型店、チェーン店の進出等の影響もありますけれども、大きくは少子化によります人口減、さらには景気の低迷、そして商店街の固有の問題も幾つか挙げられております。

 先ほど御紹介いたしました平成二十四年度の商店街の実態調査によりますと、固有の問題として一番大きいのは、経営者の高齢化による後継者難が六三%、次に、魅力ある店舗が少ないが三七・八%、三番目が、店舗の老朽化三二・八%、四番目が、商圏人口の減少三〇・四%で、大型店との競合というのはこれより少ない二〇・一%、こういう問題が指摘をされております。

岸本委員 ありがとうございます。

 そのような状況で必死で商売をされている皆さんにとりまして、消費税の円滑な転嫁は死活問題であります。

 そして、これまた同僚委員が、おとついは近藤委員が質問されましたけれども、いわゆる消費税還元セールを禁止することの問題点であります。

 あのとき、六つぐらいの例を近藤委員が出されまして、大変だなということでありますけれども、実は、今衆議院の経済産業委員会で私たちはこの法案を審議しております。審議する際に、本来であれば、消費者庁として、どういうのはだめですよということをわかりやすくガイドラインにされるわけですけれども、そのガイドラインを本当は法案審議のときにお示しいただかなければ、我々は国会として認めるわけにはいかないのであります。

 これは、政令、省令に落としていくいろいろな手法の中で、ガイドラインですから、まさに行政の裁量の範囲であります。行政の皆さんにお任せをする。今はパブリックコメント制度もありますから、できる限りいろいろな方の意見はお入れになるんでしょうけれども、国会議員がその審議をすることができない、国会議員に示すことなく、法案が通った後、ちゃっちゃとやりまっせということでは、私どもが真剣な議論をここで幾らやっても。

 何がいけないのかというのが一番大事なんです。私も、きょう夜帰って、連休中に商店街を回りますけれども、彼らが一番心配しているのは、何て書いちゃだめなんですか、どんなチラシをつくっちゃだめなんですかということなんですね。

 このガイドライン、もう衆議院はかなり大詰めに来ていますので、私が質問に立つのが今ですのであれですが、少なくともガイドラインのガイドラインぐらいは早急に出していただかなければ、なかなか審議が続けられないと思うんですが、消費者庁、どうですか。

亀岡大臣政務官 今委員が言われたように、まさに事業者側の皆さんの不安というのは間違いなくあると思います。

 事業者側の皆さんが不安にならないように、予見可能性を高めるためにしっかりと事業者側から意見をヒアリングしながら、本当にわかりやすい、明確なガイドラインを出せるように、法律の公示をしっかりと、パブリックコメント等、所定手続を経て、速やかに公表していきたいというふうに考えております。

 なお、本規定によって禁止される表示に該当するかについては、法律に基づき行政側が立証責任を負うものでありますので、特に消費税や税などの表現を伴わない場合には、宣伝や広告全体から見て消費税を意味することが誰の目にも明らかであるような場合でなければ、禁止される表示には当たらないと考えております。

 そのような不安を与えないように、しっかりとやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

岸本委員 これはインターネットで中継されているんですけれども、今の政務官の御答弁が腑に落ちた、安心したよという商店主がどれだけいると思われますでしょうか。

 私でも、聞いていてイメージが湧かないんですね。ですから、ガイドラインを出せとは言いません、ガイドラインのガイドラインぐらい、基本的な、今こういうふうに考えていますというものをやはりこれは何か参考の形で出していただきたい。

 これは、委員長、理事会で御検討いただくようにお願い申し上げます。

富田委員長 後刻、理事会で協議いたします。

岸本委員 これは押し問答になりますので、ここでとめさせていただきます。

 残された時間ですけれども、消費税の問題でありますので、きょうは財務政務官にも来ていただいていますので、竹内政務官にお聞きをしていきたいと思います。

 実はこれも転嫁と同じなんですが、値札の張りかえ、表示の問題、これも中小の事業者の皆さんは一番心配をされているところであります。内税がいいのか、外税がいいのかという話であります。

 これも参考人のときに私は申し上げたんですが、日本の消費税のモデルとなったフランスのVAT、付加価値税は、第一次大戦後、ドイツで売上税ができて、翌年導入されている古いものであります。この付加価値税が、形をとるまでには五十年ぐらいかかるんですけれども、最初は税額控除ができなかったんですね、累積的なものだったんです、カスケード型というんですが。しかし、本場では、実は、消費税が引き上がるときの前日に値札を張りかえたりはいたしません。

 日本でもそうなんですけれども、消費税というのは、課税売り上げ全体に対して税率を掛けたものから課税仕入れの全体の金額に税率を掛けたものを引くという考え方なのでありまして、百円のものを百五円で売る必要はないんです。これを百三円で売って、これを百八円で売って、トータルで五%分の税額をきちんと払えばいい、仕入れ後に税を引いて。売り上げ税というのは実はそういうものなんです。

 ただ、そんなことを言ってしまうとこの委員会の議論が成り立ちませんので、フランスはそうであるということだけ申し上げておきます。

 さはさりながら、日本が物品税を廃止して消費税を入れる、売上税の大議論があった後、大変な思いをして入れたときに、やはりまさに転嫁の問題が心配だから、最初は外税で入って、弱い事業者の方も安心してお商売ができるようにということで外税になっていったわけであります。そして、午前中の参考人の質疑のときもいろいろあって、外税の方がいい事業者もおられれば、内税がいい事業者もおられるということであります。

 しかし、そうなると、今度は消費者からしますと、外税もあれば内税もあるということでは、同じスーパーで、これはどういうあれかわかりませんが、同じスーパーでも同じ商店街でも外税と内税が混在するということになりますと、これはまた困るということであります。このあたりの問題について、政府としてどのような措置を講じる御予定でありましょうか。

竹内大臣政務官 お答えをいたします。

 先生御指摘のとおり、私どもも、団体を含めさまざまな皆様から、先生の御指摘されたようなさまざまな御意見をいただいてきたところでございます。

 その上で、今般の法案につきましては、消費税率の引き上げ前後の期間におきまして、消費税の円滑な転嫁の確保や事業者による値札の張りかえなどの事務負担への配慮の観点から、消費者に誤認されないための対策を講じていれば税込み価格を表示しなくてもよいとするとともに、一方で、消費者にも配慮する観点から、事業者はできるだけ速やかに税込み価格を表示するよう努めるとしているところでございます。

 政府としては、総額表示の特例に伴う消費者の混乱をできるだけ防止するために、事業者など関係者の御意見を聴取した上で、今後作成するガイドラインにおいて、消費者に誤解を生じさせにくい値札表記の具体例などを明らかにするとともに、事業者及び消費者への広報活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 ガイドラインにおきましては、消費者に誤解を生じさせにくい措置の例として、例えば、値札やチラシなどにおける百円括弧税抜き、百円括弧本体価格、百円プラス税といった表示や、値札には本体価格の百円とだけ表示した上で、商品の陳列棚や店内の目につきやすい場所に明瞭に、表示価格は税抜きです、消費税八%は別途いただきますといった掲示を行う方法など、できるだけわかりやすく示してまいりたいと考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 ぜひしっかりと御指導いただいて、ともかく零細な事業者が安心して、そして消費者も安心して買い物ができるように、私どもを含めて、これは政府、政治家が一体となって頑張っていかなければならない課題だと思います。

 あと少し残っておりますので、転嫁の問題、それから先ほどの値札の問題、さらに中小零細事業者が心配されていますのは軽減税率の問題であります。

 もちろん、消費税引き上げにおいては低所得者対策が一番大事であるということは与野党を通じての問題意識であります。したがいまして、三党協議の中でも、自民党さん、公明党さんからは、税率が上がっていく中で、軽減税率、複数税率というような考え方をやってはどうかという提案をいただきました。

 一方で、私どもは、低所得の方にターゲットを絞って、マイナンバー法案も通るわけでありますので、給付つきの税額控除のような形で、ピンポイントで、しかもこれを勤労型にすれば生活保護の問題までクリアできるという意味で、勤労型の給付つき税額控除、公明党さんはそういう意味での給付つき税額控除は賛成だというふうに理解しておりますけれども、そういう議論をこれからやっていくわけであります。

 私は、主税局の勤務が長かったものですから、実務家として、なかなか軽減税率、複数税率というのは大変だなという立場で質問させていただきます。

 これはまた事業者の中にも二通りあって、ぜひ複数税率にしてほしいという方から、もう勘弁してくださいという方。というのは、インボイスが入る入らないだけではないんです。さっき言いましたように、消費税の計算というのは割と簡単なんです。課税売り上げ掛ける税率、仕入れ売り上げ掛ける税率。これは、複数税率になりますと、物すごく複雑な計算をしなきゃいけないんですよ。実は結構大変なことであります。

 また、消費税を入れたときの議論が、若い先生が多いので物品税を御存じない方が多いでしょう。近藤委員も御存じないと思いますが、物品税というのがあったんですよ。稲田大臣も御存じないと思います。万年筆から始まって、ありとあらゆるぜいたく品というものにかけられていて、全部税率が違う。自動車の物品税は全部税率が違うんですね、オートバイから始まって。これは、自民党税調の当時のいろいろな、電話帳ができるゆえんでもあったわけであります。

 これはやはりいかぬだろうと。特にあのときの議論は、政府が、国が、何がぜいたくで何がぜいたくでないかを決めちゃいかぬと。だから、フラットに消費税で、あとは、たくさん使う人はたくさん消費税を払うわけだから、お金持ちはたくさん払ってもらおうじゃないかという考え方でできたわけです。

 その前の売上税、私はちょうどそのときは、大蔵省から出向して、中曽根首相の秘書官の補佐をやっていました。売上税がまさに提案されて廃案になるのを目撃していたわけでありますが、あのときはすごかったですね。非課税が五十品目できたんです。タクシーは非課税、ハイヤーは課税、こんなことをやっていたんです。食料品は当然非課税ですから、お魚は非課税。お魚をとるための船は非課税、お魚をとるための網は非課税、そのお魚を運ぶクール宅急便は非課税だったんです。

 複数税率というのは、こんなことになりかねないんですね。実際、そういう法案が政府から出ているんです。ですから、できればそういうことのないような、ともかく消費税は税収を上げるものだ、それは、使うときに低所得者の方に公平に渡していって対策をするというのが私どもの立場であります。

 この点について、竹内政務官にちょっと御感想をいただきたい。軽減税率に御賛成の立場は存じ上げております。

竹内大臣政務官 財務大臣政務官としてお答えをしたいと思っております。

 消費税の軽減税率につきましては、昨年六月の三党合意を踏まえた税制抜本改革法、昨年の八月に成立いたしましたが、この法律におきまして、給付つき税額控除や簡素な給付措置と並んで、低所得者に配慮する観点からの検討課題とされたところでございます。

 この軽減税率でございますが、与党の二十五年度税制改正大綱におきまして、消費税率の一〇%引き上げ時に、軽減税率制度を導入することを目指すとされたわけでございます。

 一方で、財源の問題のほかに、区分経理に伴う中小事業者の事務負担、対象となる品目をどう線引きするかなど、先生が今御指摘されたような課題があると承知をしております。

 政府といたしましては、低所得者対策につきまして、本年二月の三党合意において、引き続き協議を行うとされておりまして、今後、与党間及び三党間での議論を踏まえた上で対応していくものと考えております。

岸本委員 政務官としての御答弁として承りました。

 最後に経産大臣にお聞きしたいんですけれども、複数税率の問題には、やはり中小零細の事業者の方々は大変な関心を持っています。

 一方、都会型のちょっと気のきいた人であれば、今はパソコンを使っているでしょう、POSレジでしょうと。今回を入れると二回ですが、ここは一回、一〇%のときにソフトウエアを変えればいいんだということで、それは簡単じゃないかとか、あるいは、そうはいっても税理士さんに頼んでいるんじゃないか、税理士さんと相談してやればいいんじゃないかというようなことを軽々におっしゃる方もおられるわけです。

 経産大臣、まず、そういうコンピューター経理とかPOSレジを使っている方の比率といいますか、あるいは税理士さんとかに相談している比率、あるいはコスト、その辺について一括して御答弁をお願い申し上げます。

茂木国務大臣 まず、パソコン、POSレジ等の導入の割合でありますけれども、売上高に沿って申し上げますと、売上高が一千万円以下の事業者では三六・五%、売上高が一千万円超五千万円以下の事業者で五三・九%、売上高五千万円超の事業者で八二・三%、こういったふうに、小さい事業者ほど利用率が少ないということであります。

 また、税理士や公認会計士等の利用につきましては、まず個人事業主ですと使っている方が七・六%、法人で七六・〇%ということであります。売上高別に見てみますと、売上高一千万円以下が六・九%、売上高一千万円超五千万円以下が二四・四%、売上高五千万円超が六八・七%ということで、売上高が小さい事業者ほど、税理士などに経理を依頼する割合は低い傾向にございます。

岸本委員 まさに今大臣におっしゃっていただきましたけれども、売り上げ一千万から五千万は、簡易課税を使えるわけですけれども、免税事業者じゃありません。一千万以下は免税事業者であります。その一千万以上五千万未満が、二四%、四人に三人の方は自分で経理をしているわけであります。

 その意味では、きょうは冒頭、転嫁の問題を公取委員長を中心にお願いいたしましたけれども、今後、我が経産委員会としても、来年の四月、再来年の十月に向けて、このような意味で、中小零細の事業者の皆さんの立場に立って、彼らの目線で、さらにいろいろ消費税をこれから三党合意あるいは社会保障国民会議でやっていく中で、私どもは、政府だけではなくて、ぜひ彼らの思いを深く感じながら議論を進めていきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 消費税転嫁法案について、きょうは、八条、いわゆる消費税還元セール禁止の問題について質問をいたします。

 法案では、消費者に誤認を与えないようにするとともに、納入業者に対する買いたたきや競合する小売店の転嫁を阻害することにつながらないようにするため、事業者が消費税に関連するような形で安売りの宣伝や広告を行うことを禁止する規定を設けるとしております。

 それでは、具体的にどういう表示が禁止をされるのかということで、一昨日のこの委員会の審議で、近藤委員の質問に対して消費者庁の答弁では、具体的にどのような表示が禁止されるのかは、その表示の一部の文言のみを取り出して判断されるわけではなく、表示されている値引きの幅とか、時期、態様といった要素も総合的に勘案しつつ、表示されている全体から見て、消費税と関連づけて値引き等の宣伝を行っていることが明らかであるものは禁止をされるとしております。

 これは、そのとおりでよろしいでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 先日そのように答弁したことは事実でございます。

塩川委員 ですから、値引きの幅、時期、態様、こういった要素を総合的に勘案して、消費税と関連づけているかどうかで判断をするということになります。

 ですから、例えば、値引きの幅についてなんですけれども、消費税と関連づけるという点では、値引きの幅が増税分と同じ三%になるような表示だとだめということでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 少し基本的な考え方を御説明させていただければと思います。

 本法案第八条は、いわゆる消費税分を値引きする等の表示を行うことを禁止するものでございます。

 そこで、その対象に該当するかどうかにつきましては、当然ながら行政側が立証責任を負うということになりますので、消費税とか税、こういった表現を伴わない宣伝、これが時々議論になっているわけでございますけれども、消費税や税という表現を伴わない宣伝などの場合は、行政側がその表示全体から見まして、消費税を意味することが誰の目から見ても明らかと立証できるような場合でなければ、基本的には本法案の禁止の対象にはならないものというふうに考えております。

 そういうようなことで、今、パーセントの話も出ましたが、いわゆる三%値下げとか、こうした表現というのもよく指摘されております。

 こういった表現につきましては、それだけをもって禁止するということにはならないと考えておりますけれども、例えば、新聞折り込みチラシなどで広告をしている場合であれば、三%値下げという表現が書かれているとともに、チラシのほかの部分に消費税とか税についての記載をしているということもあり得るかと思っておりまして、そのような宣伝や広告全体を見まして、明らかに消費税を意味する、そういう場合には禁止の対象になり得るというふうに考えております。

塩川委員 三%値引きと書いてあっても、消費税という文言がそのチラシの中に出てこなければ、税という言葉が出てこなければ大丈夫ということなんですか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 三%値下げというその表現だけを取り上げて見ますれば、それをもって直ちに禁止されるということにならないと考えております。

 ただ、広告の場合には、さまざまなことが表示され、またそういう組み合わせで宣伝されることがございますので、先日来の答弁になっておりますが、事業者の方々から具体的な表示の計画など、そういうことも十分伺いまして、わかりやすく実例を含めて示していきたいというふうに考えております。

塩川委員 わからないんですよ。

 例えば、では、その三%値引き、全品三%値引きです、四月からやります、こういうのはどうなんですか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 消費税や税ということに全く言及していない表示の場合には、基本的にはこの第八条の対象にはならないものと考えております。

 ただ、繰り返しで申しわけございませんが、いわゆる表示のその他のところとの組み合わせということも考えなきゃいけないということを気にしているということでございます。

塩川委員 来年四月になったときに、四月は物入りの時期、全品三%値引きセールというのは、大丈夫なのか、だめなのか。

菅久政府参考人 ただいま御指摘いただいた表現のみ、つまり消費税や税に全く触れていない広告ということでございますれば、基本的には禁止の対象にはならないものと考えております。

塩川委員 これまでの答弁と違ってきているんですけれども。

 その辺について、説明が大きく変化しているんですよ。そういう点でも、先ほど岸本委員もおっしゃいましたけれども、ガイドラインのガイドラインのようなもの、こういうものを示さないと、何か議論の土台がどんどん変わってきているんじゃないのかという疑念が当然出てくるわけで、禁止かどうかの区分というのが、これじゃわからない。

 まずは、この委員会審議の中でしっかりと提示をして、それを土台に議論するということが必要だ、こういうのはぜひ出していただきたい。

 先ほど委員長にもお願いした経緯がありますけれども、私の方からもお願いをしたいと思います。

富田委員長 後刻、理事会で協議させていただきます。

塩川委員 そういう点では、消費税に便乗して、取引業者や中小小売店いじめを伴うような安売り宣伝とそうでない安売り宣伝の線引きがよくわからないということで、もちろん現に、消費税を価格転嫁できていない中小の事業者の方から、買いたたきにつながるおそれや周囲の小売事業者が転嫁しにくくなるおそれがある、こういう声が上がっているのは、きょうの午前中の参考人質疑の中でも伺ってきたところで、そういう実態、気持ちというのはよくわかるわけであります。

 しかしながら、稲田大臣、こういう表示にだけこだわるようなやり方というのが、かえって取引業者いじめとか中小小売店いじめのやり方というのを巧妙化させる、あるいは潜在化させる、こういうことになりはしないかという懸念を強く持つんですが、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

稲田国務大臣 今、一連の質疑を聞いておりまして、やはり八条の、消費税を転嫁していない旨、また、消費税に相当する額の全部または一部を対価の額から減ずる旨、三号の、消費税に関連し、取引の相手方に経済上の利益を提供する旨のガイドライン、なるべく早く策定をするべきだと思っております。

塩川委員 いや、法案が通ってからの話ではなくて、今必要だということを改めて求めておくものであります。

 そもそも是正すべきなのは、大規模小売業者による納入業者などに対する買いたたきであり、このような優越的地位の濫用を背景とした大型店の安売りによって、周囲の中小小売店の営業が侵害されるという問題であります。

 消費税の転嫁を阻害する宣伝というのは、過去の消費税率の引き上げ時にも生じていたわけであります。三%から五%に引き上げられた一九九七年ごろはどうだったのか。この点について、消費者庁から説明を伺いました。

 資料を配付いたしましたけれども、消費者庁からいただいた説明によりますと、「消費税転嫁特措法第八条が規定された経緯等」ということで、「以下のような資料等に基づいた中小事業者の実態等を踏まえて、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示を禁止することとした。 (1)一九九七年に消費税率が引き上げられた際に大手の小売業者が「消費税還元セール」を行ったことにより、納入業者である中小事業者が消費税を転嫁することが困難となった実態があったこと。」

 その例示として、右側につけてあります、一九九八年十一月十七日付、日経流通新聞の十六面、これが示されております。この中でも、上から二段目のところですけれども、大手スーパーでセールが始まったときに、取引先の量販店から突然、セール期間中の仕入れ分は五%値引きしてもらいたい、こういう要求があったということが紹介をされているわけであります。

 (2)として、昨年、二〇一二年四月二十日の民主党転嫁対策・価格表示のあり方検討ワーキングチーム、これがいろいろな事業者団体を呼んでヒアリングを行っていたわけですけれども、ある中小企業団体から、「「大企業と中小企業が競合関係にある市場では、大手が価格転嫁をわざと見合わせて、体力勝負を仕掛け、中小企業の淘汰を狙うケースも想定される。某流通大手は「消費税分五%還元セール」を仕掛け、業界の盟主となったと言われている。一〇%時代では?」として、消費税還元セールが中小事業者に対して与える影響について懸念が示されていたこと。」こういう過去の消費税引き上げ時のことを挙げて、価格転嫁が困難になる、こういう事態が今回も生ずるおそれがあるということで挙げているわけであります。

 つまり、消費者庁は、この八条が規定された経緯として、一九九七年の五%増税時の中小事業者の実態等を踏まえて、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示を禁止することとしたと説明をしているわけです。五%への増税時に消費税転嫁を阻害する表示があったから今回禁止の措置をとるということです。

 消費者庁にお尋ねしますけれども、この(1)で例示されている、納入業者いじめを行っている大手の小売業者というのは具体的にはどこなんでしょうか。また、(2)で例示されている某流通大手、これはどこを指しているんでしょうか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 消費者庁といたしましては、与党における御議論、また今御紹介いただきました、そのような御議論を伺ってはおります。また、そういう御議論の中で、消費税還元セールなどの表示について、まさに消費税の負担がないかのような誤認を与えないようにする観点でありますとか買いたたきを防止する観点、また周辺商店街の転嫁の妨げにならないようにする観点、そういった御議論があって、今回その表示を禁止することにしたということでございますが、具体的に、買いたたきなどを行われた事業者、BツーBのところについては、消費者庁としては承知しておりません。

塩川委員 ここの部分は消費者庁の担当ですからお聞きしているわけです。

 過去、九七年の増税時に、実際に価格転嫁が困難になるような事態があったということを実態として踏まえて今回出してきているという経緯が説明されているわけですけれども、九七年の増税時でどんなことが行われていたか、そういう実態については、消費者庁さんとしては把握もされないでこの法案を出してきているということですか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 第八条の規定につきましては、このような消費税の還元セールのような表示というものが、そもそも消費者に消費税負担がないかのような誤認を与える、消費税負担についての誤認を与えるということから、このような表示についての規制がされているものと理解をしております。

 その結果、ひいては、そういう買いたたき、またはその周辺の商店街の方々の転嫁の妨げになる、こういう懸念が、与党の御議論の中でも、事業者の方々からいろいろ御指摘があったというふうには伺っております。

 ただ、具体的にどのような事業者がどうだったかということについては、我々、BツーBのところにつきましては承知していないということでございます。

塩川委員 BツーCは知っているんですか。

菅久政府参考人 さきの増税時に、まさにこの報道にありますように、消費税還元セールというのがいろいろ行われたということ、もちろん、いついつどのスーパーがということを今把握しているわけではございませんが、そういうことが行われたということは承知しております。

塩川委員 それは、消費税の価格転嫁を阻害する行為だったということについては確認をされているということなんですか。

菅久政府参考人 お答えいたします。

 与党の中の御議論、御検討の中などにおいて、まさにそのような強い懸念が示されたということは伺っております。

塩川委員 これでは与党にお聞きしなければならないという話になってくるんですから、閣法について聞いているわけですから、政府として責任を持って答えていただきたい。

 BツーBの話をされたんですけれども、では、公正取引委員会にお尋ねします。

 五%の増税時にこういう価格転嫁できない実態があったということで議論されているということが、この法案が出てくる背景にあるという説明でしたけれども、では、五%の増税時にBツーBで価格転嫁ができないという実態があったとすれば、適切に対処されるべきことだったわけですが、何らかの対処を行ったんでしょうか。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会では、下請法に基づいていろいろな勧告、指導等を行っておるところでございますけれども、平成九年度以降、明確に消費税にかかわるものとして、下請法の関係で二十件の指導を行っております。

 ただ、下請法というのは、形式的な要件、すなわち親事業者と下請事業者の関係で見ておりますし、形式的な、買いたたき、減額、購入・利用強制、不当な経済利益の強要といったことで見ておりますので、その行為の内容についてまで詳しく精査せずにやっておるところもございます。

 本法案で規制しております転嫁拒否行為の類型でございます、減額、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請につきましては、平成九年以降で見ますと、四千九十六件の勧告、指導を行っているところでございます。この中には、消費税の転嫁拒否に関する行為を含むものもあるかと考えているところでございます。

塩川委員 平成九年以降の数字を言っているだけで、平成九年の五%の増税時に適切に対処したのかという質問なんですが、いかがですか。

杉本政府特別補佐人 平成九年度で見ますと、消費税にかかわるものとして、下請法に係る指導件数は四件でございます。

塩川委員 消費税にかかわるという点で、実際、どう具体的に対処されたんですか。

杉本政府特別補佐人 消費税で、減額という事態がありましたときには、その減額を戻すようにというような指導をしておるところでございます。

塩川委員 四件ですから、物すごく多数の取引の中で、実際にはそれしか対応されていないわけで、四半世紀にわたって中小事業者は消費税の転嫁に苦しんできたのに、是正の取り組みというのが、下請法に基づくものでも指導はわずか二十件ということであるわけで、公取はそもそも何をやってきたんだということが問われるわけであります。ですから、五%の増税時にも大手による優越的地位の濫用行為などがあったにもかかわらず、是正してこなかった公取の責任こそ問われているんじゃないのか。

 この点について、稲田大臣はどのように受けとめておられますか。

稲田国務大臣 今、公取の委員長からも報告がありましたように、平成九年時から下請法違反などがあったということも踏まえて、また、今回消費税を増税するに当たって、優越的地位を利用した、不当な、転嫁を拒否するような行為を取り締まるために、特別措置法を提出した次第でございます。

塩川委員 五%の増税時に公取は特別調査をやっているんですけれども、このときには、価格転嫁はできているという結論なんですよ。まさに、実態を見ていないということじゃないですか。まさに、公取が仕事をしていないということが問われているわけです。

 茂木大臣にも最後にお尋ねしますけれども、何よりも、大手流通企業が市場を支配し、納入業者や取引業者が弱い立場に立たされている、こういった下請、中小小売業者いじめの構造にこそメスを入れる、この取り組みにこそ全力を挙げるべきではないのか。この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

茂木国務大臣 厳正な監視、そして厳しい取り締まりをしっかりと行ってまいります。

塩川委員 こういった価格転嫁できない根本原因に重層的な下請構造がありますし、大手流通企業が市場を支配して、納入業者、取引業者が弱い立場にある、こういう根本原因こそ是正をすべきであって、消費税還元セールの禁止などという、宣伝文句に文句をつけるようなやり方は筋違いだということを申し上げて、質問を終わります。

富田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後一時二十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十四分開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。重徳和彦君。

重徳委員 日本維新の会の重徳和彦です。

 本日は、消費税の適正な転嫁について議論をさせていただきます。

 稲田大臣、大変お忙しいところ、どうもありがとうございます。中小の商店街などの状況についてこの後議論してまいりたいと思いますので、できれば後ほど所感を少しお聞きできればと思っております。

 先日、週末に、私の地元、愛知県の西尾市の商店街、中小企業を訪ねまして、消費税が来年にも増税される可能性があるということで、それが上がったらうまく転嫁できるかどうか、どうでしょうというようなお話を伺ってまいりました。

 業界は、卸売業、飲食店、建築業、小売店などさまざまでありましたが、BツーB、いわゆるビジネスとビジネスの間の場合と、BツーC、コンシューマーとの間でもそれぞれあると思うんですけれども、きょうは、小売業に少し焦点を当てて議論をさせていただきたいと思います。

 整理すると、中小の小売店の方々の今後の対応としては、大きく分けて現時点では三通りありました。大変迷っておられましたし、悩んでおられましたが、大きく分ければ三通り。

 まず一つ目は、もう値段を変えるわけにはいかない、税込みの、総額としての値段を変えるわけにはいかない、かぶらざるを得ない。よく言えば、例えば食べ物のケーキだとかパンの場合は、お客様にとにかく安くておいしいものを提供したいんだ、そういうことをおっしゃる方もいらっしゃいました。それから、二つ目のパターンは、そうはいっても、お客さんに転嫁しないとやっていけないということで、きちんと転嫁するんだとおっしゃる方もいました。それから三つ目は、この際、値上げせざるを得ない。これは、今まで抑えていたんだ、便乗値上げと言われるおそれはあるけれども、今まで我慢してきたところを、この際、上げざるを得ないかなと。いずれにしても、大変苦しい経営状況の中で苦渋の決断をいずれ迫られる、そんな状況でございました。

 この三つの対応、いずれも問題はあると思います。問題といっても法的な問題という意味じゃないんですけれども、まず一つ目は、値段を総額で変えないということは、消費税増税分だけ逆にお店がかぶる、あるいは量や質を下げざるを得ないということでありまして、お店がかぶるということは、お店の利益を下げる、人件費を切り下げるなど、あるいは仕入れ先にかぶせちゃうということだって当然、今回の法案で危惧されているような状況が生まれ得るということなんです。

 今回の法案でいいますと、転嫁を適正化するということが目的なわけですから、仕入れ先にかぶせる、かぶってもらうということはだめだということですけれども、やはり、お店がかぶって、小売店が利益を下げざるを得ないとか、商品の量や質を下げざるを得ない、こういう声がありますが、こういう声をどのように受けとめておられますでしょうか。中小の小売業者に対しまして、御答弁をいただければと思います。

竹内大臣政務官 お答えいたします。

 今般の消費税率の引き上げが二段階にわたるものであることもあり、先生御指摘のように、多くの中小事業者の方々から、消費税の価格転嫁について不安の声が寄せられていることはよく承知をいたしております。

 消費税の最終的な負担者である国民の皆様に今般の税率引き上げの趣旨をよく受け入れていただき、ひいては小売店における円滑な転嫁を確保していくためには、消費税率の引き上げによる増収分は全額社会保障財源化する、そして国民に還元するとしていること、そしてまた、消費税は転嫁を通じて最終的には消費者に御負担をお願いする、そういうことが予定された税であるということなどにつきまして、国民の皆様に丁寧に説明をしていくことが重要なことと考えておりまして、今後も、以上申し上げましたような点につきまして、しっかりと周知広報に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

重徳委員 もう本当に苦渋の決断で、それでもきちんと転嫁するという決断をされたお店に対して、お客さんが、便乗じゃないかとか、何でこんなことになるんだというようなことで、お店の方々をまた苦しめるようなことがないように、しっかりと広報に努めていただきたいと思います。

 そして、きちんと転嫁するという二番目のケースは、まさに今回の法案の趣旨にも適合するわけでありますけれども、これが本来の姿だということなのかもしれません。これは、当然ながら駆け込み需要を喚起して、増税後には需要が冷え込むという、小売業者にとっては本当の意味で一番危惧される状況になるわけですが、この対策についてどのようにお考えか、御答弁をお願いします。

赤羽副大臣 私も今回の総選挙の前は浪人をしておりまして、地元神戸の下町の商店街、数多くありますが、どこへ行っても、全国、議員の皆さんの各地域と同じように、小売商店街、大変な苦戦をしております。私も、先生と一緒だと思いますが、一軒一軒消費税のことを聞くと、消費税を上げたらもう商売できないという声が大半を占めておりました。

 ですから、消費税を一応政府では上げるということになりますが、その前提となる日本経済全体の回復というのを、本当に今、安倍政権、自公政権挙げて最優先にやっていかなければいけないというのが大前提だと思います。

 消費税の転嫁問題については、転嫁はされるべきものであって、どこかがかぶるものではない。それは当たり前のように、今、財務省の答弁がありましたように、周知徹底してもらわなければいけないと思っております。

 さはさりながら、これだけ売り上げが減っている。例えば、町のラーメン屋さんが一杯五百円のラーメンを売っていて、消費税を三%上げなきゃいけない。十五円上げるにしても、売り上げが減っているときに末端の売価を値上げするというのは自殺行為。うちは実家がパン屋だったものですから、全くそういうことはわかるので、そのことを本当にどうしていくのかということを、新しい制度を決める以上はしっかりとしていかなければいけない。

 経済産業省の立場としては、同時に、小売商店が、例えばレジスターなんかを入れかえるときとか、そういったものについては、もう御承知だと思いますが、平成二十五年度の税制改正におきましても、中小小売店の魅力向上や事業効率の改善のための設備投資を支援する税制を創設いたしまして、商業などを営む中小企業、小規模事業者がレジスターですとかショーケースですとか照明設備などの器具や備品を取得した場合に、取得価格の三〇%の特別償却ですとか、または七%の税額控除を認めるということを決めたところでございます。

 あとは、商店街に対して、さまざまな継続的なイベントについては、二十四年度の補正予算で百億円を計上させていただきましたし、また、商店街というのは、実は商機能だけではなくて、治安とかまちづくりという公共的な機能があるわけですから、防犯カメラとか街灯とかにつきましても、施設整備として二百億円を計上したところでございます。

 いずれにしても、苦戦をしているといっても、商店街は小売業全体の販売額で約四割を占めておりますので、政府を挙げて、経済産業省を挙げてしっかりと支えていきたいと考えているところでございます。

重徳委員 ある意味、小売の場合は、BツーBのときの転嫁拒否という目に遭うわけではないんですね。逆に、知らず知らずのうちにお客さんに来てもらえなくなるという、見えざる相手の反応を予想しながら対応を考えなきゃいけない、こういう決断をしなきゃいけない、そういう声が本当に上がっているわけでありまして、パン屋さん御出身ということでよく御承知だというふうに感じますけれども、本当に切実な問題であります。

 まして、これまで、例えば総額表示で、切りがよく百円とか千円とかやっていたものは、千円の場合は本体価格は九百五十三円なんですね。そのままこれを八%分にしていくと千二十九円という非常に中途半端な数字になりますし、さらに、そのまま一〇%に消費税率が上がったら千四十八円。非常にわかりにくいですね。

 二段階だからなおさら、一年半たったらまたちょっと値段が変わったけれども、何でこんなに変わるんだ、どう変わったんだ、よくわからないと。ですから、お店の方も、こんなことなら、八%という段階を経ずして、最初から一〇%にしてもらった方がわかりやすいという声まで上がっておりました。

 こうした総額表示の問題、それから二段階引き上げの問題について、どのようにお考えか。これは竹内政務官でしょうか、よろしくお願いします。

竹内大臣政務官 お答えをいたします。

 まず、小売業界におきましては、税率引き上げ後も値ごろ感のある価格表示を維持する観点から、御指摘のように外税表示の方が望ましいとの意見がある、他方、顧客との関係や公平な競争環境を確保する観点から、総額表示を維持すべきとの意見もあるわけでございます。事業者の皆様の中にもさまざまな意見があるものと承知をしているところでございます。

 本法案では、事業者の円滑な転嫁の確保や、値札の張りかえなどの事務負担への配慮の観点から、消費税率の引き上げ前後の期間においては、消費者に誤認されないための対策を講じていれば、税抜き価格のみを表示することも可能となっております。

 また、中小企業団体から、総額表示を維持した上で値ごろ感のある本体価格、括弧税抜き価格を強調して表示することが現行法においても可能であるということを明確にしてもらいたいとの要請もありました。このことも踏まえまして、本法案におきましては、税込み価格が明瞭に表示されているときは、九十八円や百九十八円といった、値ごろ感のある本体価格を強調して表示しても景品表示法の不当表示には当たらないということを条文上明確化したところでございます。

 このように、今回の法案は、外税で価格表示を行いたい事業者や、外税の価格を強調して表示したい事業者の要望を十分に踏まえた内容となっていると理解しております。

 それから、二つ目、消費税率を二段階で引き上げることとしたのはなぜかという御質問でございます。

 当時の議論を申し上げますと、まず、税率変更は事業者における値札の張りかえやシステム改修などの事務コストを増加させることから、引き上げ回数がふえることで事業者の事務負担に与える影響に留意する必要があるということもございました。一方で、税率を一度に大幅に引き上げる場合には、やはり経済の変動を増幅するおそれがあるため、税率を段階的に引き上げることによって、駆け込み需要や反動減などの変動を平準化する効果が期待できるという点が考えられるわけでございます。

 こうしたことから、一回で消費税率を一〇%に引き上げるよりも、二回に分けて引き上げることが妥当だとされたものであるということでございます。

重徳委員 今の、外税の例外的な表示を認めること、それから二段階引き上げの問題、少し後にもう一度議論させていただきたいと思います。

 その前に、商店街の第三のケースですね。この際、値上げをしようというふうにおっしゃる方がいるわけなんですけれども、これも非常に悩ましいですね。

 例えば、税込み千円で、つまり本体価格九百五十三円で商品を売っていた。これを、わかりにくいので、この際、本体価格を千円に値上げした上で、そうすると八%ですから千八十円。つまり、総額で千円から千八十円にこの際上がるというのは、見る人によっては便乗値上げだ、お客さんには非常に評判が悪かろう、こういう悩みに直面するわけであります。

 しかも、これは、先ほどちょっと言いましたように、もともと切りがよく千円で売ろうと決めただけの話でありまして、別に価格というのは、厳密に、原価だとか経費とか利益とかそういうものをきちんと積み上げて、この価格しかないなんというような決め方をするわけではなくて、要は、千円だったら売れるかなとか、五百円だったら売れるかな、そういうことで価格を決めるわけです。そういう意味では、今までなかなか利益が上がらないという状況を我慢していたことも往々にしてあったかと思います。

 ですから、世に便乗値上げというのは問題だとよく言われますけれども、しかしながら、もともと低く抑えていたんだ、この際少しついでに上げざるを得ないかなというケースと両方あると思っておりまして、この際という場合には、物すごく問題かというと、一概にこれは問題とは言えないんじゃないかということで、何が問題かというのが非常に見えにくい状況だと思うんです。

 この点につきまして、消費者庁さんでしょうか、どのようにお考えでしょうか。

草桶政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、個々の商品の価格は、競争のもとで、市場の条件全体を反映して決定されます。したがいまして、実際にどのような場合に便乗値上げに該当するのか否かということにつきましては、それを判断するにつきましては、それが税負担による上昇幅、率を超えているかという点だけではなくて、商品の特性でありますとか需給の動向、コストの変動など、種々の要因を総合的に考慮する必要があると考えております。

 このため、御指摘のケースでございますけれども、これが便乗値上げに当たるかどうかにつきましては、単に価格の引き上げ率だけではなくて、これに加えまして、ただいま申し上げた、いろいろなコストの変動でありますとか市場の動向でありますとか、そういったようなことを総合的に考慮いたしまして、実態に即して判断をする必要があるというふうに考えております。

重徳委員 ちょっと稲田大臣に、感想でも構いませんけれども、結局、小売店の方々は、値段を上げないにしても適正に上げるにしても、あるいはこの際ちょっと大幅に上げてしまおうか、いずれにしても、非常に大きな悩みに今直面をしております、そういう状況に置かれている小売店に対して、一言コメントをいただければと思います。

稲田国務大臣 今、重徳委員から、小売店に着目をして、この法案をめぐって、さまざまな観点から、また委員が実際に小売店の方々から聞かれた意見をもとに質問をいただきました。

 それを聞きながら、やはり一つは、消費税を上げなきゃいけない現状にある社会保障の伸び、そして、ひとしく消費税の負担分を負担しなきゃいけないということを国民全体が認識する必要があると思いますし、また、委員が御指摘のように、弱い立場にある中小事業者が消費税の値上げに際して不当な不利益をこうむることがないように、この法案もきちんと転嫁ができる環境を整備していくという法案でありますので、早期に成立をして、環境整備に努めたいと思っております。

重徳委員 ありがとうございます。

 それでは、先ほどちょっと問題提起をしました総額表示か外税かという問題に戻りたいと思います。それから、二段階で引き上げるという問題についてです。

 まず、二段階で引き上げることにつきまして、経緯は先ほど竹内政務官からお話しいただきましたが、実際に、一度引き上げるということと二段階、二度引き上げることによって、経済的な影響というのは違うと思うんですね。そのときに、実際、一度よりも二度に分けた方が本当に景気への影響というものは軽いんだというふうな何か客観的、数値的な分析、あるいは過去の経験に照らしたものがありましたら、教えていただきたいんです。

西川政府参考人 消費税引き上げの経済に及ぼす影響、特に一度か二度かということで御質問いただきました。

 消費税率の引き上げが経済に及ぼす影響につきまして、過去の例、あるいは諸外国にもそういう例がございますので、そういうものを見ますと、引き上げ前後の期間で、耐久財を中心に、税率引き上げ前の駆け込み需要、またその後の反動減というのが見られるということがやはり一般的ではないかと考えております。

 したがいまして、消費税率を一度に大幅に引き上げるような場合には、経済の振幅が増幅されるおそれがあるのに対して、段階的に引き上げを行うような場合には、そうした影響が緩和されるものと見込まれております。

重徳委員 大体理解はされるところです。

 それにしても、段階的に引き上げていく。もっと長いスパンで見れば、平成に入りましてから、まず消費税が導入されたとき、三%でした。それから五%に一九九〇年代に上がりまして、このたび、いよいよ八%、一〇%と、どんどん上がっていくんですね。

 きょうの午前中、ライフコーポレーションの清水会長から、欧米ではもっともっと高いんだ、今まで低過ぎたんだというようなお話もございましたけれども、一〇%ならもう十分だ、これ以上上がらないんだということは、多分多くの方々もこれで終わりだと思っておられないんじゃないかと思うんですね。人口減少は進む、高齢化も進む、社会保障は増大する、財政も好転しない、そういう中で、こうした不安心理というものが経営者にも消費者にも希望をなかなか持てる状況を生み出さない、こんな状況です。

 社会保障国民会議の議論もなかなか進んでこないというか、明らかになってこないんですけれども、消費税率というのは一体どこまで引き上がっていくものになるのか、現時点での見通しがあれば御答弁願います。

竹内大臣政務官 消費税率の水準がどこまでが適正かという問題は、本当にもう社会全体で考えるべき問題である。社会保障の水準とか、大きな政府を目指すのか、中程度の政府を目指すのか、小さな政府を目指すのか、それは大変総合的な御議論が必要なんだろうというふうに思っております。

 まず、政府といたしましては、今回の消費税率の一〇%への引き上げを含む社会保障と税の一体改革を確実に実現するには、三本の矢で長引くデフレ不況から脱却し、日本経済の再生に全力を挙げていくことが重要であると考えておるところでございます。

 したがいまして、その後の消費税率につきましては、現時点で政府としてはお答えできる段階にはないということでございます。

重徳委員 当然想定内の御答弁なんですけれども、逆に言えば、もうこれで十分だという御答弁でもないわけです。

 これはやはり、国民的な議論の中でこれからの社会保障の水準を考えながら、私は本当は、今の少子化の傾向を、もっともっと子供をふやしていくんだという断固たる政治の姿勢が必要だと考えておりまして、日本社会がいろいろな意味でこれから持続できないんじゃないか、発展していかないんじゃないか、こういう不安感を与えているのは、少子化、そしてそれによる人口減少という問題、高齢化という問題だと思っておりますので、そういったことにこれからもっともっと政治が取り組んでいかなければならない。つまり、増子化という言葉を私は使っているんですけれども、子供をふやす、増子化という方向での政策もどんどん打っていく必要があるのではないかと考えております。

 それはさておいて、今度は総額表示の議論に入ってまいりたいと思います。

 きょう、午前中からずっと、外税の話、外税の方がいいんじゃないかということが議論になってまいりました。

 ここで改めてお聞きしたいんですけれども、消費者からすれば、内税、総額表示にすると、これは外税にした場合に比べて税の負担感というものが軽くなるような気がいたしますけれども、これはもう直観的なものですが、このあたり、財務省としてどのようにお考えかということ。

 結局、トータル幾ら払えばいいのかわかりやすくするというのが総額表示を導入した経緯であると思います。そうした結果、ある意味でのわかりやすさはあるけれども、税を幾ら負担しているかということがわかりにくくなり、込み込みで一九八と言われたら、何の税負担の抵抗もなく買い物をしちゃうというような気がします。

 きょうは割とそういう議論が多かったわけなんですが、このあたり、税の負担感というものについてどのように捉えられているか、お聞きいたしたいと思います。

竹内大臣政務官 お答えいたします。

 先生よく御存じのこととは存じますが、過去の経緯から申し上げたいと思います。

 まず、現行の総額表示が導入された理由につきましては、平成元年の消費税の創設後は、消費者向けの価格表示は各事業者の判断に委ねられてきたところでございます。その後、平成十五年度改正におきまして、それまで主流であった税抜き価格ではレジで請求されるまで最終的に幾ら支払えばいいのかわかりにくい、それからまた、税抜き表示のお店と税込み表示のお店で価格の比較がしづらいといった消費者のさまざまな、多くの声がございまして、これらを踏まえて、消費者向けの価格表示につきましては総額表示が義務づけられることとされ、平成十六年四月から実施されているところでございます。

 その上で、総額表示は外税に比べて消費者の税負担感がわかりにくい、少ないというような先生の御質問であろうと思いますが、消費税の総額表示の義務づけは、今も繰り返し申し上げましたように、消費者の利便性の観点から導入されたものでございまして、この点につきましては、当時の民間事業者の方々の提言もございました。それから、政府税調の答申等におきましても同様の指摘がなされていたところでございます。

 総額表示制度は、値札などに消費税額を含む支払い総額の表示を義務づけるものでありますけれども、あわせて消費税額や税抜き価格を記載することを妨げるものではありません。したがいまして、消費者の税負担感を減らすことを目的として導入したものではないということでございますので、御理解を賜りますよう、よろしくお願いしたいと思います。

重徳委員 お伺いしているのは、確かにそのために導入したことはないと思うんですけれども、現にお買い物をする方が何となく税を払っている感じがしないというか軽く感じる、外税方式よりもそう感じるんじゃないかということについて、それが目的ではないとは思いますが、実際どう感じておられるとお思いでしょうか。

竹内大臣政務官 繰り返しで恐縮でございますけれども、私どもとしては、総額表示制度は消費者の利便性の観点ということから導入したわけでございます。

 先生がおっしゃることもわかる点はあるんですが、消費者がどのような場合に税負担を感じるかはケース・バイ・ケースであると思われまして、価格表示の方法と税負担感の関係につきましては、一概に申し上げることはちょっと困難ではないかと考えているところでございます。

重徳委員 これは、安易に認めてしまうと財務省としてもいろいろとやりにくい部分が出てくるという面もあると思うんです。しかしながら、やはり総額表示方式をとっているがゆえに、先ほどから申し上げているような税負担のわかりにくさ、あるいは小売業者としてはかぶらざるを得ないというような状況だって出てくるわけですし、どうも、よらしむべし、知らしむべからずとまでは言いませんけれども、何となくそういうような面は内在された仕組みのような感じがいたしております。

 まして、今回のこの転嫁に関する法案は、そこのわかりやすさを明確にするため、あるいは値札張りかえとかいろいろな事務手続の簡便さのために外税方式もあえて時限的に認めているわけでありますし、逆に、税の負担感というか、税は負担しなくてもいいんだというような消費税還元セール、こういうような売り方だってだめだと言っているわけです。税をちゃんと負担しているんだ、転嫁しているんだということをはっきりしないとだめだよ、これが今回の法案の大きな趣旨だと思いますので、そういう意味では、総額表示方式の問題点といいましょうか、その基本精神とやはりちょっと違う部分がどうも見受けられると感じております。

 しかも、平成二十九年三月までという時限的なものですから、平成十六年から九年でしょうか、ようやく定着してきたこの総額表示に対してまた例外をつくって、それでまた数年たつとその例外もなくなってしまうというようなことで、非常に中途半端な措置のように見えてまいります。

 その意味で、ここはあえてお伺いしますけれども、今後、私の感覚では八%、一〇%で終わらないんじゃないか、これからも引き上がっていくんじゃないかと思われる消費税の引き上げ、こういう局面において、外税方式というものを改めて検討してみてはいかがかと思うんですが、いかがでしょうか。

竹内大臣政務官 少し申し上げたいと思いますが、先生の御趣旨はよく理解できるところでございます。

 価格表示のあり方を検討するに当たりましては、消費者からの視点と事業者からの視点の両面からの検討が必要と考えております。総額表示の義務づけは消費者の便宜の観点から導入されたものでございまして、繰り返しで恐縮ですが、基本的には引き続き維持していくべきものと考えているところでございます。

 他方、税率の引き上げ時におきましては、総額表示義務を厳格に適用することは、事業者にとって値札の張りかえなどに多大のコストがかかり、ひいては円滑な転嫁の確保も困難になることが考えられます。このため、本法案では、消費税率引き上げ前後の期間に限り、消費者に誤認されないための対策を講じていれば税込み価格を表示しなくてもよいとするとともに、消費者にも配慮する観点から、できるだけ速やかに税込み価格を表示するよう努めなければならないとする特例措置を設けたところでございます。

重徳委員 必ずしも歯切れのいい御答弁ではなかったと思います。

 今回、外税方式を部分的に、時限的に容認するということによって、いろいろなところにさらなる混乱を招きかねないと思います。とにかく、やるからにはしっかりと周知というか徹底するということが必要だと思いますので、この点、強く要望させていただきます。

 最後に、少し違う観点の議論です。

 今回、消費税が最終的には五%から一〇%に上がります。今までは、五%のうち一%分は地方消費税でした。さらに、残りの四%の国税分の三割は地方交付税の財源でした。こういう経緯があるんですが、これから一〇%に消費税率が上がった場合に、地方の取り分というのはどのようになるのか、御答弁いただければと思います。

平嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 今、お話のありました地方消費税につきましては、平成二十六年四月一日の八%段階のときに一・七%、それから二十七年十月一日からの一〇%段階で二・二%に引き上がることになっていることは御案内のとおりでございます。

 それで、交付税を合わせたものでございますけれども、これは、交付税の方は年度単位で交付税率を決めているものですから、ちょっと詳細はあれですけれども、最終的に一〇%段階になったときには、交付税と合わせまして、国の方が六・二八%、地方の方が三・七二%を持つということになっております。

重徳委員 今の御答弁によりますと、地方消費税と地方交付税分、つまり地方の取り分を全部合わせると、消費税一〇%のうち、トータル三・七二%ということですね。

 現行においては、地方の取り分は、消費税五%のうち一%分、プラス残りの四%のうちのたしか二九・五%ということですから、足し合わせると、これは一〇〇%換算しますと、私の手元の数字では、消費税全体のうち四三・六%。これに対して、先ほど御答弁いただいた、これからは地方の取り分が三七・二%ということですから、四三・六から三七・二に減るんですよね。

 この、取り分が減るということについて、これはどのような理由によるものか、お願いします。

平嶋政府参考人 今、数字につきましては、重徳議員が御指摘のとおりでございます。

 なぜそういうことになったかということでございますが、御案内のとおり、今回の社会保障・税一体改革で引き上げます五%分については、全て社会保障に充てるということになっております。その中でも、特に社会保障四経費と言われる、年金、医療その他に充てることになっているわけですが、そのために、その四経費にのっとった範囲内の社会給付におきます、国と地方がそれぞれどれぐらいの割合を持つかということに応じて配分しようということで、国と地方の協議の場において、国側と地方側でも協議が行われまして、そういった合意がございました。

 その際、国と地方の社会保障四経費の範囲を比べますと、御案内のとおり、基礎年金の国庫負担分について極めて国側の負担が重いということもございまして、社会保障四経費にのっとった範囲でございますと、大体、国、地方の割合が七、三になる。そういう関係がございまして、五%分についてそういう配分をした結果、先ほどのような国分の割合がふえるという結果になったものでございます。

 以上でございます。

重徳委員 国税と地方税の割合というのは、非常に地方分権論においても重要なところでございまして、確かに今回の、五から一〇に消費税が上がる、これは社会保障財源になって、そして基礎年金の財源に充てることがかなり多いものだから、国の取り分が結果的にふえちゃう。これはこれで、理屈としては、経緯としては理解しないでもないんですが、やはり大きな流れとして、これまで地方というのは三割自治と言われていて、その昔は国税対地方税は二対一ぐらい、これがようやく最近では五五対四五、かなりフィフティー・フィフティーに近づいてくる、こういう長い営みがあったはずです。

 ですから、今回、消費税という、非常に、地方の偏在性、地域による偏在性が少ない、地域にとって、地方にとっては安定財源と言われる、そういう税源を引き上げるに当たりまして、結果的に地方の取り分が減るというのは、やはり全体的に見ると、どうも腑に落ちない面があります。

 これは、いろいろなことを考えれば、確かに消費税、基本的には国税ですから、だから幾ら地方の取り分があるといっても、では、その地方の首長や地方議員が、自分のマニフェストで、地方消費税増税ということを、あえて、政治生命をかけて選挙を戦った人が今までいるかというと、正直、いないわけなんですね。

 やはりこれは、基本的に、制度的に国税であるから、地方消費税というのが部分的にあるにしても、国が、あるいは財務省がしゃかりきになって税率を上げるということに熱心になるわけなんですけれども、これからの時代は地方の時代です。

 私ども、道州制ということを高く掲げております。今までのように、国が地方にいろいろな仕事を、あれやれこれやれと全部決めて、そのかわり金は面倒見たるでという方式で、地方交付税で全部財源保障する。保障する、保障すると言っているうちに、この間予算委員会でも申し上げたんですが、年間必要な二十三兆円のうち、半分以下しか本来の形で地方交付税源を確保できていない、こんなようなことになるわけです。

 この点につきましては、私からの意見を申し上げておしまいにしようと思いますが、とにかく、これから地方の自立、これは財政的な自立というのは何よりも重要なところですから、ぜひとも、消費税の地方税化ということも掲げておりますけれども、重要な地方の財源だと思いますので、この点、しっかりとこれからも議論をさせていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 二十分という限られた時間でございますが、質問させていただきます。

 この法案につきまして、まずは買いたたきの部分について質問をさせていただきます。

 この法案における買いたたき、消費税分を転嫁させないような取引を規制するということでございますけれども、これは、先日の舟田参考人にも、これまで買いたたきを理由として優越的地位の濫用に当たるとされた例はないんです、本体についての自由な価格交渉ではないかと言われたら、それは買いたたきではないということになります、買いたたきを認定するのは非常に難しいというふうにお答えをいただいております。

 また、下請法で一件ということではあるんですけれども、下請法では、通常支払われる対価に比して著しく低い下請代金の額を不当に定めるということが買いたたきとされているんですけれども、これは事実認定としては、通常の対価よりも本当に顕著な例に見える場合であっても、事業者間の取引の価格というのは尊重されるわけですから、そこは事業の中で決めた価格ですというふうに言われたら、それを覆すことはなかなか難しい。だから、今まで一件しか摘発はないということになっているわけでございます。

 本法案の第三条においては、通常支払われる対価に比して低く定めることということが規制されておりますけれども、やはり通常支払われる対価は何かというものがそもそも不明確なので、消費税分を転嫁させないということをやったところで、たかだか三%の話なんですね。それが通常支払われる対価に比して低い金額だと認定することは、本当に難しいのではないかというふうに思うわけでございます。

 そういう意味で、買いたたきを規制する、転嫁させないという部分、これがどのくらい実効性があるというふうに判断されているのか、お答えいただけますでしょうか。

杉本政府特別補佐人 今回の消費税の引き上げに関しましては、中小事業者を中心に、果たして消費税の価格への転嫁がうまくできるのかどうか、円滑にできるのかどうかという点に強い懸念が示されているところでございます。

 五%から八%への三%といいましても、これは企業にとりまして非常に影響の大きいところでございますので、この転嫁がスムーズに、円滑に、かつ適正に行われるための環境整備をしていくことは非常に重要なことじゃないかと思っております。

 買いたたきという面でございますが、そういうことからいたしますと、特段の事情がない限り、直前の価格に対して五%から八%部分の価格が乗っているかどうかということが一つの大きなメルクマールになっていくんじゃないかと思っております。

 そうしたことも踏まえまして、下請法の手段もございますし、今回いろいろ追加的な手段も設けられておりますので、そういったことで買いたたきにつきましても適切に対応していかなければならないと考えておりますし、対応できないものとも考えておりません。

三谷委員 今まさにお答えいただきました、直前の価格が一つの参考になるという、その基準自体が、だからこそもう既に今から値下げを求めるところがふえているというところにもつながってくるのでありまして、民間というのは、そういう政府が定めた基準というのを何とかくぐり抜けていく、これを一生懸命考えていくところであるかと思います。

 また、先日参考人にお答えいただいた機会に、小川参考人は、価格弾力性の低い商品についてはできるだけ同じ価格を維持しようとするとまずおっしゃっておりまして、そのためには、メーカーさんと卸と小売、三つあれば全部一%ずつ痛み分けしようという話になるんです、これは規制できないものではないかと思うんです、商業道徳上もやっていいんじゃないかというふうな意見もおっしゃっておりました。

 今の商取引の実態からすると、一%ずつ痛み分けというのは、ある意味、商業道徳上も当たり前というふうな見解もある中ですけれども、こういうビジネスの実態というのを認めるつもりはありませんでしょうか。

杉本政府特別補佐人 今回の消費税の引き上げにおきまして、繰り返しになりますが、その転嫁が円滑かつ適正に行われることは非常に重要なことだと思っております。それは、中小企業者を中心としまして大きな懸念が出されていることからも、非常に重要な政策課題だと思っておるところでございます。

 したがいまして、今回の法律におきましては、消費税を除く本体価格において交渉するという申し出に対して、それは断れない、断ることを禁止行為にしておりますので、そういった形で、下請といいますか、売り手の方から交渉していただくということも可能になっております。そういうことも踏まえて対応していくことが必要じゃないかと思っております。

三谷委員 中小企業を守っていくという要請があるのはもちろんですけれども、その一方で、商売道具としての商品を売っていくわけですから、できるだけ今までと同じ値段、よりよい品質のものをより安い値段で提供したい、そういう事業者の思いを理解した上で、みんなで頑張って何とかコストを下げていく努力をする、その中で当然ながらみんなで痛み分けするということ自体は、全くもっておかしいことではないのではないかというふうに考えるわけでございます。

 そうはいっても、先ほど申し上げましたとおり、なかなか摘発というものも難しいのではないかというふうに考えられるわけですから、そういうふうにはお認めいただけないと思うんです。ですので、これはある意味、空文として、そういったものをやってはいけませんということを言うだけ言っておくことになる可能性が極めて高いように私自身は感じているところでございます。

 続きまして、表示規制の問題について伺います。

 第八条の表示規制、先日も申し上げましたとおり、第一号の規制は、消費税への理解を妨げるという意味では規制せざるを得ないということについては理解できるところでございますけれども、第二号、第三号についてはやはり行き過ぎかなというふうに思うところでございます。結局これも、民間事業者において、同じ価格をできるだけ維持しようというような努力をどこまで認めていくかという問題に帰着するわけでございます。

 価格弾力性のことを考えると、民間事業者が同じ価格で売りたいと考えるのは当然でございます。そしてもちろん、身を削る努力をして同じ価格を維持するということであれば、当然ながら、それを売り文句にしたくなるのは世の常でございます。

 この法案を通したとしても、もともと価格弾力性がないような商品については、できるだけ同じ価格を維持しようと頑張るわけですから、政府が今考えられているとおりに消費税の転嫁を確保することは困難ではないかというふうに思うわけであります。

 だからこそ、今回の規制というのは、ある意味、合理性を欠く規制ということになります。これは営利的表現の自由に対する規制ということになりますので、憲法上の疑いというのも出てくるように考えておりますけれども、この点についてどのような御見解でしょうか。

亀岡大臣政務官 今、八条のお話が出ましたけれども、これは平等に税を取るという意味においては非常に大切なことでありまして、憲法上の問題ではなくて、社会通念上、消費税というものは平等に取らなければいけません。

 この八条は、事業者が消費税の転嫁を阻害することのないように、値引きや安売りの表示や、その広告をしないようにするために禁止したものでありますので、これはまさに一番大事な、消費税を平等に取る意味において、公平に行われるべきものとしてしっかりと捉えてやらなければいけないと考えております。

三谷委員 今お答えいただきましたけれども、この表示の問題というのは、実は、先日の小川参考人も、幾らガイドラインをつくったとしても、極端なケースは別にして、そうでない限りなかなか取り締まりは難しいという意見を述べていらっしゃいました。そういう意味では、ガイドラインをつくっても実効性がないところでございます。

 しかも、本日ですけれども、麻生財務大臣がこの法案について、今までの政府見解というものを修正する旨の内容を記者会見でお答えいただいておりました。

 今までどういったやりとりがなされたかと申しますと、先日、公明党の國重委員から、三%還元セールですとか全商品三%値下げ、価格据え置きセール、こういったものが大丈夫かだめか、それとも三角かというような質問をされたのに対して、現時点では全て三角だというようなお答えがなされております。

 また、先日、近藤洋介委員から質問いただきました、例えば、三%還元セール、全品三%値下げセール、生活応援・全品価格据え置きセール、そういった問題についてどうなのかという話をしたら、明らかであるものは禁止される可能性が高いというような趣旨のお答えをされているわけでございます。

 しかしながら、きょう麻生財務大臣がお答えいただいたのは、消費税との関連がはっきりしないような、春の生活応援セールとか、税率の引き上げ幅と一致する三%の値下げといった表示が行われるだけで禁止するというのは解釈として無理がある、そうした規制は行うものではないと、今までの話と全くもって異なる話がここの委員会の外でされてしまっているわけであります。

 今まで、この委員会の中で、ガイドラインを早くつくってくれ、どういうものができる、どういうものができないというのがわからなければ審議なんかできないんだという話をしていた、それに対して、後でやるんだという話をしていたにもかかわらず、それと全く別のところでこういう話が出てきてしまうとすると、やはりこの八条の問題については、森大臣に出てきていただいて、しっかりとその辺の答弁をいただくということを含めてやっていただかなければ到底理解ができない、この委員会を軽視していると言わざるを得ないというふうに考えております。

 この点についてお答えいただきたいと思います。

竹内大臣政務官 お答えいたします。

 けさの記者会見におきまして、麻生大臣は、転嫁を阻害する表示の禁止規定に関しまして、消費税との関連がはっきりしない、単なる春の生活応援セールといった表示や、たまたま消費税率の引き上げ幅と一致するだけの、三%値下げといった表示が行われているだけで、これらの宣伝が禁止の対象になるものではなく、表示全体を総合的に判断して、明らかに消費税を還元するといった表示と同様の内容を意味している場合にのみ禁止の対象となる旨を申し上げたものと承知しております。

 これは、これまで本委員会において消費者庁より御答弁があったことと同様の趣旨を申し上げたものと考えております。

三谷委員 いや、それはそういうことではないんだろうと思っております。

 実は、昨日の山口財務副大臣の記者会見の中でもこの点について述べられておりまして、総合的に判断して明らかにこれは消費税還元セールと思われるのは、これはだめということになりますよねというような答えをいただいているわけです。具体的にどういうものですか、消費税還元・三%割引セールなんていうと、これは明らかだと。ここまで言って、初めて明らかだというような具体例を挙げられているので、今までの三%割引セールですとか価格据え置きセールというのとは明らかに温度感が違うわけです。

 普通の理解によれば、今までの見解を修正したと考えるのが当然だろうというふうに考えておりますので、この点、明確に、これから政府の見解というのを明らかにしていただきたい。そもそも、その具体的な内容というのが、この場ではなく外でそういった議論をされてしまうということ自体がこの委員会を軽視しているというふうに思わざるを得ないので、その点、指摘をさせていただきます。

 続きまして、今の表示の問題も、今までの規制の網が広過ぎるところをある程度狭く絞っていくような形になろうかというふうに思いますし、先ほどの買いたたきもなかなか取り締まりが難しい、やはりこの法案というのはなかなか実効性に乏しいと全体として評価せざるを得ないというふうに考えております。

 今回の法案が通った後に、この法案を実施するための人員の確保をやっていくというふうに伺っておりますけれども、先日の答弁の中で、六百人、この法案を実施するために人間を確保していくというようなことを答えておりました。六百人を採用してこの法案のために動かしていく、それに恐らく、例えば一人平均五百万円だとしても、年間三十億円のお金が使われていくわけであります。

 はっきり言えば、この法案というのは、今の政府・与党が、中小企業対策をしっかりとやっていますよ、消費税を上げるだけではありませんよということのためのアリバイにその三十億円を使っていくというような話になっていくわけでございます。今の日本にはそんな余裕はないんじゃないかと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 買いたたきを認定するのが非常に難しいというのは、参考人質疑の中で参考人が述べられておりました。

 ただ、この法案の趣旨、そしてこの法案の目的は、消費税を上げるに当たって集中して起こるであろう買いたたきというか転嫁拒否、それを防ぐ環境を整備するということであって、参考人も、実効性、運用の面での懸念は示されましたが、この法案自体については賛成の意見であったかと思います。

 今委員が御指摘になったような、この法案を実効あらしめるために、きちんと運用もしてまいりたいと思っております。

三谷委員 その趣旨はわかるんですけれども、結局、費用対効果の話かと思います。

 今回、中小企業を何とかして守っていきたい、そういうふうに考えるのはわかるんですけれども、そのために、実効性があるかないかわからないような法案を通して、それに何十億円お金を使っていくということが適当かどうかということを、改めて考えていただきたいというふうに考えております。

 もう一つ、今の外税方式の問題について伺いたいと思います。

 平成十六年四月一日に、消費税額を含む総額表示というものが義務づけされております。消費者の利益というものを考えると、確かに、幾ら支払えばよいのか、それが明確になるという意味では総額表示方式ということについても一理はある、そのように考えてはいるんですけれども、しかしながら、物の価格というのは、人件費ですとか原材料費、燃料、輸送費、そういったもののコストの積み上げで決まっていくという話でありますから、その中の一つのコスト要因として消費税というものも考えることができるわけです。

 それはなぜかといえば、全体の価格の中で何割が消費税だ、そういう取り方がされているから、そういう意味でコスト要因なわけであります。だからこそ、人件費とか原材料費とは別に、消費税だけは特別なコストとして考えることができるというか扱われるということは、なかなか無理があるのではないかというふうに考えるわけであります。事業者としては、最初は頑張って同じ価格に据え置こうというのは当然ですし、それができなければ、事業者の判断で好きなだけ値上げをするということを認めるしかないのではないかというふうに考えております。

 そこで伺います。

 消費税導入当初から、総額表示をするべきかどうかという議論はありましたけれども、やはりこれは、転嫁の懸念から総額表示の義務づけがなされなかったという経緯がございます。とすれば、平成十六年、ここで事業者に総額表示を義務づけたことによって、これはある程度、もう価格への転嫁は難しいというような方向にかじを切っていたというふうに判断するんですけれども、その点は違うのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

竹内大臣政務官 これまで繰り返し申し上げておりますとおり、平成元年の消費税の創設後は、消費者向けの価格表示は各事業者の判断に委ねられてまいりました。

 その後、今委員からも御指摘がありましたように、平成十五年度改正におきまして、それまで主流であった税抜き価格では、レジで請求されるまで最終的に幾ら支払えばいいのかわかりにくい、また税抜き表示のお店と税込み表示のお店で価格の比較がしづらいといった消費者の多くの方々からの声がございまして、こういうことを踏まえて、消費者向けの価格表示につきましては総額表示が義務づけられた、そして十六年四月から実施されているということでございます。

三谷委員 当初は転嫁が難しいのではないかと見送った総額表示を義務づけたわけですから、転嫁が困難になるということは、ある程度、あらかじめ織り込み済みだったというふうに理解するのが当然かと思います。

 そして、本日の参考人質疑の中でも説明されておりましたけれども、もちろん業態ですとか商品によって、この業態については外税がいいとか、この商品については内税がいいというような話はありますけれども、今回の法案で一番やはり問題だと考えるのは、同じ業態や同じ商品について外税のものと内税のものが同時に併存するということになることです。

 消費税の本当の転嫁ということを考える上では、もちろん外税にした方がよほどわかりやすいですし、今財務省さんがおっしゃるように、できるだけ総額表示を維持したいということであれば、消費者の利益というものをもし仮に考えるのであれば、両方併存するということはやはり妥当ではないのではないかというふうに考えております。

 質疑の持ち時間が終了いたしましたので、これにて終了させていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十五分散会


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