衆議院

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第19号 平成25年6月12日(水曜日)

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平成二十五年六月十二日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 石原 宏高君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 近藤 洋介君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    越智 隆雄君

      勝俣 孝明君    小林 茂樹君

      佐々木 紀君    白石  徹君

      白須賀貴樹君    助田 重義君

      瀬戸 隆一君    平  将明君

      武村 展英君    辻  清人君

      冨樫 博之君    長坂 康正君

      根本 幸典君    福田 達夫君

      細田 健一君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      山田 美樹君    吉川 貴盛君

      枝野 幸男君    大島  敦君

      岸本 周平君    馬淵 澄夫君

      木下 智彦君    重徳 和彦君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      井坂 信彦君    三谷 英弘君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   経済産業副大臣      菅原 一秀君

   経済産業大臣政務官    平  将明君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 高原 一郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     長坂 康正君

  佐々木 紀君     助田 重義君

  宮崎 謙介君     小林 茂樹君

  宮崎 政久君     瀬戸 隆一君

  山田 美樹君     白須賀貴樹君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 茂樹君     宮崎 謙介君

  白須賀貴樹君     山田 美樹君

  助田 重義君     佐々木 紀君

  瀬戸 隆一君     宮崎 政久君

  長坂 康正君     大見  正君

    ―――――――――――――

六月七日

 原発からの撤退を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第八二九号)

 即時原発ゼロに関する請願(笠井亮君紹介)(第八三〇号)

 直ちに原発ゼロを求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八四一号)

同月十一日

 原発から撤退し、再生可能エネルギーへの転換を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一一二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一一三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一一四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一一五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一一六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一一七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一一八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電気事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁長官高原一郎君及び資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平です。

 このたび、質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。そしてまた、この委員会で、電事法の改正について、理事の皆さんを初め与野党の皆さん、真摯な御議論が続きました。そして、修正協議もしていただいて、前向きに進んでまいりましたことに、心から敬意を表したいと存じます。

 その上で、安倍内閣の重要閣僚である茂木大臣と、それから官邸の主であられる加藤官房副長官に、一言申し上げておきたいことがございます。

 実は、私、予算委員もしておりましたのですが、今年度の予算が通るときに、予算委員長が、予算委員会の場で、二回、丸二日という意味でありますけれども、集中審議をしますということを理事会でおっしゃって、議事録に残っております。

 私ども野党は、今のような、経済あるいは外交、安全保障、大事な時期に、予算委員長がお約束された集中審議を、丸二日ということについて、これはお約束でありますので、ぜひやっていただきたいということをお願い申し上げておりますが、きょうのこの時点では色よいお返事がいただけていないということでありまして、これは、与党とか野党とかではなくて、衆議院の予算委員長の言を政府が踏みにじられようとされているということですので、厳重に抗議を申し上げておきたいと思います。

 その上で、質問に入らせていただきます。

 本当にこれまでの審議で、いろいろな論点が整理されました。そしてまた、この改革については、私ども民主党政権のときから手がけてきておりましたし、与党、野党関係なく、前に進めるべき課題だと思っております。きょうは最終日でありますけれども、主な議論は出尽くしたと思いますので、私は、短い時間でもありますので、周辺の問題について、二点ばかり政府のお考えを聞きたいと思います。

 一つは、まず、足元の電気料金の値上げということであります。

 もちろん、この改革が進めば、いずれ、自由な競争によって電気料金が下がっていくということを私たちは期待しているわけでありますし、そうなると私も確信しておりますが、喫緊の課題は、今、目の前の電気料金の値上げによる経済への影響であります。

 これも、日本エネルギー経済研究所によりますと、電力料金がキロワットアワー当たり三円上昇するだけで、民間企業の負担が二兆円ぐらいふえるという試算があるわけであります。それはまさに、利益を圧縮し、せっかく皆さんがアベノミクスで経済の風を吹かせておられることに逆行するわけであります。

 そこで、将来の電力システム改革の議論をしている場ではありますけれども、今そこにある危機としての電力料金の問題や電力の安定供給の問題に対して、茂木大臣が今どのようにお考えになっているか、お聞きしたいと存じます。

茂木国務大臣 電力システムを初め、この委員会におきまして、さまざまな御議論、御提言を先生からもいただいたことは、心から感謝申し上げる次第であります。

 よく、日本の企業、四重苦、五重苦に面している、こんなことを言われました。おかげさまで、最近に来て、過度な円高の是正も行われ、労働市場等々の規制改革も進んでおります。そして、TPP初め経済連携交渉を進める、こういったことで、国境措置においてもほかの国に劣らないような制度にしていきたいと思っております。

 御指摘のように、エネルギーコストの問題、そして、三・一一以降の新たなエネルギー制約の問題は極めて重要な、深刻な課題だ、このように捉えております。原発の停止に伴いまして、火力の燃料費、これが平成二十五年度の推計では震災前に比べて年間約三・八兆円増加する、このように試算されておりまして、今、複数の電力会社から料金値上げの申請がされている。これが、電力コストの上昇をもたらしているわけであります。

 このため、電力会社からの値上げの申請に対しましては、前政権のときもそうだったと思いますが、最大限の経営効率化を踏まえた申請であるかどうか、こういったことを電気料金審査専門委員会における中立的、客観的な検討を踏まえて厳正に審査を行っているところでありまして、特に、先般、関西電力及び九州電力の値上げ申請に対しては、燃料費について、将来の効率化努力を先取りしたLNGの調達価格を織り込むなど、厳正な審査を行ったところであります。

 今後の問題を考えてみますと、これはやはり、調達面においても、かなり調達先の多角化を進めていかなきゃならない、そしてまた、エネルギー源の多様化も進めていかなきゃならない、そして、競争のさらなる参入であったりとか料金の自由化を通じて、できる限り電力料金の値上げ、こういったものを抑制していくことが必要だ、このように考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 大臣の御認識と私どもも同じような認識を持っておりますけれども、本当に現場は困っておられます。

 例えば、普通鋼の電炉業なんかは大変な状況で、今取り沙汰されているような電力料金の値上げですと、本当に一年間の収益がそれだけで吹っ飛んでしまうような状況に置かれているわけでありますし、電炉だけではありません、非鉄金属あるいは鍛造、特殊鋼の電炉のほか、シリコン製造、金属熱処理、あるいは産業・医療ガスなんかの業種においても、あるいはチタンの製錬業などにおいても、つまり、電力を多消費する産業においては本当にお困りであります。

 これ以上、彼らを追いやって、それではもう海外に立地しようかというようなことになりますと、また、これらの産業はいろいろな大事な部品をつくっておられるところでもありますから、日本の製造業全体の地力が損なわれるということにもなるかと思いますので、今おっしゃっていただきましたように、ぜひ、いろいろな手だてを使った上での電力料金の圧縮というのを目の前でやっていただいた上で、再生可能エネルギーですとか、あるいはいろいろな技術開発、私も昨年、大臣政務官として勉強させていただきましたけれども、いろいろな技術をこれからトータルで進めていただいて、これらの製造業が困らないように、ぜひ御尽力をお願い申し上げたいと思います。

 もう一つ、二点目の問題なんですけれども、実は、この法律は、附則第十一条第五項第六号におきまして、電力先物、電気の先物取引に係る制度も整備しなさいということが載っております。まさに電力システムも私どもの大事なインフラでありますし、同じインフラの一つとしても、価格変動リスクをヘッジしていくような商品先物市場、これは経済にとって大変重要なインフラではないかと思います。

 安倍政権の成長戦略の中にも、我々も同じことを言っていたわけですけれども、総合取引所というものを経済成長戦略の真ん中に置こうではないかということが言われております。電力システム改革自体が円滑に進むためにも、電力供給に市場原理が導入されるわけでありますから、その供給が効率的かつ円滑になされるためには、電力先物は必須のものだと考えております。

 そこで、大臣政務官にお伺いしたいんですけれども、LNG、液化天然ガスについて、一四年度に東京商品取引所に上場する方針が、これはホームページ、あるいは大臣の記者会見でも言及されているというふうに聞いております。この点について、LNG先物市場の協議会、これは省内の勉強会だと思いますけれども、そこの報告書でも前向きのことが書かれています。これを東京商品取引所にどのようにお伝えになっているのか、事実関係を政務官の方で御説明いただければと存じます。

平大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、LNG先物市場については、商社、エネルギー関連企業等によって構成されるLNG先物市場協議会が本年の三月に報告書を公表しております。

 報告書においては、世界最大のLNG輸入国である我が国において、二〇一四年度中をめどに、LNG先物市場の創設を目指すべき旨が提言されているところであります。この報告書では、LNGの先物市場に関する事業者の議論を経て、求められる政策的な方向性が示されたものでありまして、具体的な取引所の名称は明記をされていません。

 エネルギー関連企業のリスクヘッジの場としての利便性の観点から、これまでに上場されてきた原油、ガソリン、灯油、軽油を含めた総合的なエネルギー市場として整備していくべき旨がこの報告書では記述をされているところであり、これらの石油製品を既に上場している東京商品取引所にLNGを上場することが想定されているというふうに承知をしております。

 しかしながら、経産省といたしましては、二〇一四年度中をめどにLNG先物市場の創設を目指してはいますが、具体的にどの取引所に上場すべきかを決めているものではありません。

岸本委員 それは当然のことでありまして、実は、これはもう二〇〇七年の第一次安倍政権において、総合取引所が提案をされております。私ども、それを受けまして、二〇一〇年十二月には、金融庁、経産省、農水省の三省庁が、二〇一三年の総合取引所を目指すとの中間整理をしました。そして、総合取引所についての規制、監督を一元化する金商法改正案も、二〇一二年の九月でありますが、自民党の賛成もいただいて、与野党の合意で成立をしているわけであります。

 また、現在の自民党政権における幾つかの閣議決定、あるいは自民党の中間提言等でも、総合取引所にともかく早くコモディティーを入れるんだ、商品先物を入れるんだ、そして総合取引をするんだということがうたわれているわけであります。それがなかなか進んでいないんです。

 進んでいない上に、そんなことがあってはならないと思うんですが、業界の中の話、私も直接聞いております。したがって、新聞報道等で、結局、その東京商品取引所には天下りがいらっしゃる、いらっしゃると敬語を使う必要はないんですが、経済産業省の天下りが三人もいる、ついては、これは実は、一九八二年、会員制のときから三十一年間、五代連続してトップが通産省、経産省のOBである、今も、社長、専務、子会社社長、三人の天下りがおる、商品取引所が総合取引所と合併すると天下り先がなくなる、しかも、御時世でありまして、これは民主党政権のみならず、自民党だって天下りはやめなさいと言っているわけで、電力もガスも行けなくなった中で、この三人に固執をされているとつまらない勘ぐりをされているわけですよ。

 天下りのために、この総合取引所という日本の経済成長戦略のとても大事な、これは自民も民主も、与野党関係ないんですよ、みんなが合意してやっていることが進まない。実際、進んでいないんです。これについて、茂木大臣の御所見を伺います。

茂木国務大臣 この電力システム改革についても、さまざまな意見がある中で、さまざまな立場の方々がいらっしゃる中で、与野党の協力のもとで審議もここまで進んでまいりました。

 そして、総合取引所の問題につきましても、方向性につきましては、まさに委員と意見を私も共有させていただいております。

 民主党政権時代も重点的にお取り組みをされて、昨年の九月、我々も賛成をさせていただいた改正金商法の成立後、金融庁、農水省とともに、我々が各取引所、そして取引事業者に対しまして総合的な取引所の実現に向けた協力も要請をして、これを受けて、東京商品取引所の取締役会でも精力的な検討が行われていると承知しております。

 日本の金融機能を強化していく、これは成長戦略上も極めて重要なポイントだと思っております。

 総合取引所、他国でもいろいろ導入しておりますが、例えば韓国であったりとかシンガポール、こういった例を見ますと、どうしても資金の方が株の先物に集中をしてしまって、商品の先物、この流動性が低下している、こういう現実もあるわけであります。そしてまた、商品の先物、これは事業者のリスクヘッジとして利用されて、商品の受け渡しを伴うなど、金融とは若干事業の性格が異なるということも勘案しなければいけないところがあると思っております。

 ただ、天下りがあるからとか、OBがいるからこういうことをやらないということではないと思っておりまして、冒頭申し上げましたように、経済産業省として総合的な取引所を目指していくという考え方はこれからも堅持してまいります。

 今後の取引所のあり方については、民間事業者たる取引所みずからの経営上の課題として基本的には検討すべきものでありますけれども、役所のOBの有無によって、こうした検討とかこうした実現が阻害されることがあってはならない、このように考えております。

岸本委員 大体、我々民主党のときは、天下りについてはきちんとした基準をつくりまして、五代続けてトップをとっている場合はもうやめてくださいというような基準をつくりましたが、政権交代によって途中で終わってしまっています。

 これは、皆さんおっしゃるんですよ。民間がやっているんです、民間の社長が後の人を勝手に選んでいるんです、それは知りませんといって自分の後輩を指名する。これはもうそろそろおやめいただくということじゃないでしょうか。そういう、民間がやっているんだからいいんですといって五代も六代も各省で回すというのはおかしい。これについて、もう次はやめさせるというようなことを、茂木大臣のお考えを聞きたいのが一つ。

 それから、時間もありませんので、あわせて、官邸からお越しいただいた加藤副長官にお聞きしたいのです。

 日本郵政の社長が交代をしております。その際、昨年のことでしたけれども、当時の自民党幹事長代行の現菅官房長官が、けしからぬということで、日本郵政の社長が財務省OBの中でかわったことについて厳しい御批判をされました。私も全く同感でした。

 したがいまして、東京商品取引所のようなところについては、官邸として、さらに一段高いところから天下り問題に取り組まれるお立場で、加藤官房副長官の御見解をお聞きしたいと思います。続けてお願いいたします。

茂木国務大臣 重要な立場にある人間ほど、李下に冠を正さずということが極めて重要だと考えております。

加藤内閣官房副長官 岸本委員にお答えをさせていただきます。

 いわゆる天下り、国家公務員の再就職については、御承知のように、国家公務員法上、府省庁のあっせんによる再就職は禁止をするということになっているわけでありまして、当然のことながら、この商品取引所、今御指摘がありますように、株式会社であり、国が株式を所有しているわけでもないわけでありますけれども、当然その例外にはならないというのは、おっしゃるとおりであります。

 国家公務員の再就職規制については、御承知のように、再就職等監視委員会による監視体制のもと、これはもちろん厳格に運用していくというのが我々の立場であります。

岸本委員 私の敬愛する茂木大臣と加藤官房副長官の強い政治的リーダーシップをお願いして、質問を終わります。

富田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 電気事業法の一部を改正する法律案につきまして審議させていただきます。

 この法律案も、かなりの審議時間、多くの委員の方々からいろいろな視点から御審議いただきまして、もう審議も採決に向けて大詰めでございます。今回は、前回お話しさせていただいて、さらに少し詳しくお伺いしたい点と、若干追加して、細かい点にはなるんですが、お話を伺いたい点につきまして答弁をいただきたいと思います。

 まず、我が党としましては、そもそも自由化していくという方向性については賛成でございますし、今回は、茂木大臣を含めまして、政府の方々からも、スケジュールの前倒しの可能性も含めてしっかりやっていくんだと誠実な御答弁をいただいております。

 また、今回の法案は第三段階中の一個目であるということと、エネルギー基本計画についてもまだまだ取りまとめ中でございまして、詳細が見えてこないということで、我が党としましては、まずこの第一段階目をしっかりやっていただく、その後、本丸としての第二段階目、第三段階目の小売の自由化そして発送電分離をしっかり議論させていただいて、もしそこできっちりやっていくというところに緩みがあれば、しっかりそこを具体的に指摘させていただくという方向性で考えております。

 そうした中で、先ほど少し申し上げましたエネルギー基本計画につきまして、先日環境委員会でも御質問させていただく機会がございまして、大臣の御見解を伺いました。その中で、ベストミックスについても検討中ということでございますが、エネルギー需給の問題と、逆に言えば、三・一一以降の、ポスト京都議定書を見据えた上でのCO2の排出量等、環境負荷の軽減といった意味でのバランス感というものが非常に難しく、また重要になってきていると考えられるところでございます。

 こうした点につきまして、経産省としてどのような認識でいらっしゃるのか、お答えいただければと思います。

菅原副大臣 まず、三・一一以降、日本のエネルギー需給、大きく変化がありました。そうした中でも、いかなる事態におきましても国民の生活や経済に支障を来さないように、エネルギー需給の安定に万全を期すことが大前提でございます。

 その上で、今、丸山委員御指摘のございました、環境負荷の軽減とエネルギーコストの低減とのバランスを考えていく、これまた重要なことでございます。

 三・一一の大震災以来、安定供給とエネルギーコストの課題が浮き彫りとなったことを踏まえまして、中長期的なエネルギーの政策の方針となりますエネルギー基本計画の策定に当たりましては、環境にも配慮しつつ、安定供給、コスト低減に重点を置いて、この後取りまとめます計画の中で政策の軸、方向性を明確に示してまいりたい、このように考えております。

丸山委員 環境の面に関しましても、しっかり検討していただくことをお願い申し上げます。

 いみじくも先ほどおっしゃいました電力の安定性という意味で、我が国は極めて優秀である電力の安定性というものを有しておりますが、そうした先人の努力の積み重ねでできてきた電力に関しまして、さらによりよいものにしていく。今回は、本当に、先人の積み重ねてきたものを超えていく方向性につきまして、しっかりとやはり細かいところまで含めて議論していかなければ、また失敗のないようにしていかなければ、せっかく安定化という現状がある中で悪い方向にも行きかねないところでございますので、しっかりと細かい部分につきましても制度設計のほどをお願い申し上げます。

 そういった意味で、前回御質問させていただいた中で、電力料金や供給の安定性につきまして、どのように電力システム改革が影響を与えるのかというお話をさせていただきました。基本的には、発電コストの低減を目指していく、なおかつ料金を抑制していく方向になっていくように制度設計をしていくということでございます。

 前回の御答弁では、糟谷部長や茂木大臣からも御答弁いただきまして、ドイツやアメリカ、イギリスといった他国の例を挙げられまして、そうした中で日本に合う適切な制度設計をしていくために検討していくという形で御答弁いただいたんですが、現状としまして、日本は今どういった状況にあり、そして、他国の例を見据えた上で、具体的にさらに現時点でどのような制度設計をお考えなのか、そのあたりについてさらに詳しくお伺いできればと思います。

糟谷政府参考人 電気料金の変動する要因というのはいろいろあるわけでありますけれども、自由化による競争が進展すれば、電気料金を抑制する効果は確実にあると思っております。

 ただ、他方で、海外の事例を見ますと、単に自由化するだけではうまくいかないというのは、前回も御答弁申し上げたとおりでございます。少し重複するところも出てくるかもしれませんが、少し掘り下げまして、具体的に申し上げたいと思います。

 まず、電気料金につきまして、イギリスなど海外の事例を見ますと、競争が十分に行われない中で料金規制を自由化した場合、電気料金の上昇につながったというようなことが見られるわけであります。

 したがって、今回の改革におきましては、海外のこうした教訓も踏まえまして、競争環境が整うまでの間、これまでの地域独占の電力会社に対する料金規制を継続することとしております。すなわち、この仕組みのもとでは、規制料金よりも安い電気料金での新規参入はありますけれども、高い料金での新規参入というのは一般的に考えにくいというふうに考えております。

 また、既存の電力会社も、規制料金は残すわけでありますけれども、その一方で自由な料金メニューもつくれるようにするといったようなことを考えておりまして、こうした経過措置の間においても、電気料金のいろいろな提案競争というようなことを通じて、電気料金の抑制という効果が働くことを期待したいということでございます。

 それからもう一つ、イギリスでは、自由化を行った後、企業が統合しまして寡占化が起きて、それで競争が不十分になったというふうなことが指摘されておりまして、現在、イギリスの規制当局は、競争促進のための追加的な対策を考え始めているというふうに理解をしております。

 我が国におきましては、参入の自由化に先立ちまして、独立性と高度な専門性を有する新たな規制機関に移行するということにしております。この新たな規制機関は、自由化された市場のモニタリングをきっちりと行っていく、一般電気事業者による卸電力市場活性化の自主的取り組みがなされているかどうか、そういうことも見るわけでありますけれども、それだけでは十分な進展が見込まれない場合には、競争促進のための制度的措置を具体的に検討していくということにしたいと考えております。

 先ほどイギリスの例を挙げましたが、フランスにおきましては、自由料金で供給を受けるともう二度と規制料金に戻れない、そういう制度設計でありました。このため、一旦自由料金に行ってしまうと規制料金に戻れなくなるのではないか、そういう懸念から、需要家の多くが規制料金の体系にとどまったということが指摘されております。したがって、我が国では、一旦自由料金を選択した需要家が規制料金に戻ることができる制度にするというふうなことを考えておるわけであります。

 安定供給の関係でいいますと、ドイツにおきましては、再生可能エネルギーの拡大によって広域送電インフラが不足したという問題が指摘されております。我が国におきましては、今回の法案で盛り込ませていただいております広域的運営推進機関を設立いたしますが、この広域的運営推進機関が地域間連系線などの送電インフラの増強に取り組むということをいたしまして、出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大に対応していくということに遺漏なきを期したいというふうに考えております。

 それから、アメリカのカリフォルニア州でありますが、こちらでは小売料金を凍結する規制を行ったために発電投資が進まなかったという問題がありました。日本においては、小売料金の規制を維持する期間を設けるというのは先ほど申し上げたとおりでありますが、この間も現行制度と同様、認可による値上げは可能とするということで、発電事業者にとってはやむを得ないコストの上昇は価格に反映できる仕組みとするということにしたいと考えております。

 また、カリフォルニア州では、需要の伸びに応じて発電投資が進まなかったという問題も指摘されております。こういう教訓を踏まえて、日本では、小売事業者に空売り規制をかけるとか、それでも市場に任せるだけでは発電所が不足すると懸念される場合には、広域的運営推進機関が発電所の建設者を募集する仕組みを取り入れまして、最終的には必ず発電所が建設される仕組みにするということで、単に市場に委ねるだけではないという仕組みを導入することといたしております。

 それからまた、ニューヨーク州の大停電などが問題に挙げられました、米国の東部での停電の例でありますが、この場合には、事業者間の連携不足が停電範囲の拡大を招いたというふうに指摘をされております。こういう教訓を踏まえまして、電力供給に携わる事業者が協調して対応するための仕組みが必要であります。

 このため、我が国では、法的分離の方法によりまして、同一の者が系統運用と送配電設備の保有、保守を行う仕組みとすることに加えまして、送配電事業者と発電事業者が協調するためのルールの策定をきっちり行っていきます。

 実際、具体的には、今後、第二段階、第三段階も含めた詳細な制度設計の中でまた御審議いただくことになりますけれども、そういうような考え方に従って進めてまいりたいと考えております。

丸山委員 具体的な部分は今後つくられていくこととは思いますが、大まかな方向性につきましては今の御答弁でよくわかりましたので、よろしくお願いを申し上げます。

 やはり、他国の例をしっかり見ていくという姿勢を今感じたところでございます。そして、なおかつ他国とともに過去の例もしっかり見ていただいて、問題がある部分は直していくということが大事だと思います。

 今回、罰則規定のない勧告を追加されたということでございます。前回、理由をお伺いしたときに、需要家が罰則を恐れて使用制限命令以上の過度の節電が行われた、次回以降そういうふうにならないようにするために、今回の罰則規定のない勧告をおつくりになったということでございます。

 一方で、前回、命令を出されたときに、違反された方々もいた。そうした方々に対して、結局、前回は罰則の適用がされなかったということでございます。

 今回、罰則のない勧告も定めるということでございますので、これが改正された場合には、罰則のある方を出した場合に、それに違反した者に対してはきちんと対処していく、罰則を科していくというお考えなのか。またさらに、それでも従わない方も出てくる可能性がございます。そうした場合に、命令の罰則強化等のお考えまであるのか。そのあたりのデマーケーションについて、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。

高原政府参考人 一昨年に東京電力と東北電力の管内で、大口需要家の方でございますけれども、一万八千八百五十九件の方々に対しまして使用制限命令を発動いたしました。その際には、全体で八百三十一件の違反事例がございました。

 これらの需要家の方々から、書面で違反理由の調査を行いました。そしてまた、必要に応じまして、どういった節電の取り組みをそもそもされていたのかということにつきましてもヒアリングを実施させていただきました。

 この結果、故意による違反ではないことを確認いたしております。例えば、豪雨があって、そのために排水ポンプを動かしてしまったとか、あるいは、自家発にトラブルがあって、どうしても頼らざるを得なかった、そういったような例が多くございました。

 今後、電気使用制限令、命令の方を発動した場合にも、前回と同様に、違反の理由でございますとか、あるいは場合によっては節電の取り組みなどを調査した上で、経産省として告発するか否かにつきましてきちっと判断していきたいというふうに考えております。

 また、一昨年に電気の使用制限令を発動した際には、今申し上げたような調査結果でございましたので、改めて罰則を強化しなくてはいけないような悪質な違反事例は見受けられなかったということをあわせて申し添えさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

丸山委員 御答弁ありがとうございます。

 この件に関しましては、故意かどうかというのは非常にその見分けが難しいところではございます。故意がある方でも、いや、故意じゃないんだと言うこともできますので、状況も見ながらということでございますけれども、運用していくところではしっかりやっていくことが大事だと思います。きちんと今回は分けられたということでございますので、しっかりとした運用のほどをお願い申し上げます。

 今回の電力システム改革の目的としまして、需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大するということを掲げられております。そうした中で、今回、附則にスマートメーターの導入のことが書かれているんですけれども、そのほかに関して、具体的な部分に関しましては見えにくいところでございます。

 現段階で、政府としまして、需要家の選択肢の拡大といった意味や、事業機会を拡大するという意味では、具体的にほかにどのようなものをお考えなのか、お答えいただければと思います。

糟谷政府参考人 需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大のための措置についてのお尋ねでありますけれども、これは何といいましても、電力の自由化によって多様な事業者の参入が可能になること、それから料金規制を自由化することで柔軟な料金設定が可能になること、さらに送配電部門の一層の中立化によって送配電網を公平に利用できるようになる、こういうことが新規参入、競争を促す上ではやはり一番大もとのところだろうと思います。

 その上で、スマートメーターの導入促進以外の具体的な方策としてどういうものがあるかというお尋ねでありますが、例えば、需要家に対しまして改革に関する情報提供を充実強化していくということでありますとか、卸電力取引所における取引量を増加させるための措置でありますとか、そういうことを考えておるところであります。

 例えば、改革に関する情報提供の充実強化につきましては、消費者に対して、新たな制度ですとか、電力会社を切りかえる具体的な方法などについてしっかりとお知らせする、そういうことによって消費者の皆様が電力自由化によるメリットをしっかりと享受できるようにしていくというようなことが考えられますし、卸電力取引所における取引量の増加ということでありますれば、取引所において商品の種類を拡大する、もしくは取引のルールを見直していく、そういうことが考えられるのではないかというふうに思います。

丸山委員 そういった意味で、供給側の一般電気事業者に比べて、今回、競争を促していくということで新規の事業者が参入してくる状況でございますが、やはり規模の経済もございますし、新規の事業者が新しく入ってくる中で同じ条件で競うということが容易ではないことは、容易に我々でもわかるところではございます。

 そうした中で、競争原理の整備が不可欠で必要だと思いますが、具体的には、新規参入者もある中でどんな施策として掲げられているのか。例えば、電電公社の民営化のときには、ドミナント規制といった形で、ある程度制度設計の中でそういった新規参入の促進という措置をとられておりましたが、今回そのような点に関しましてはどのようにお考えなのか、お答えいただければと思います。

菅原副大臣 電力の自由化のための公正な競争の促進は極めて重要であります。

 本年二月に取りまとめをいたしました電力システム改革の専門委員会の報告書によりますと、まず、小売市場への新規参入を促進するためには、必要な供給力を卸電力市場から確保できる環境というものを整えることが必要であります。あわせまして、送配電網へのアクセスの中立性に懸念があるとすれば、電気事業において競争が不十分である、こういったことの一因となっているわけでございまして、これらを踏まえまして、法案附則の改革プログラムにおきましては、卸電力取引所における電気の取引量をふやすための措置を講ずる旨を規定いたしております。

 具体的には、委員からもお話がありましたように、必要最低限の供給予備力を超える電源を全量市場に投入することを一般電気事業者に求めていく、こういったことを踏まえ、卸電力取引所における電力の取引量をふやすための取り組みを進めてまいります。さらに、本年三月から一般電気事業者が自主的に余剰電力を卸取引所に売電する、こういったことのモニタリングも行ってまいりたいと思っております。

 また、送配電部門の法的分離を実施するに当たりましては、送配電部門の一層の中立性を確保するために、人事あるいは予算、こうした部分に係る行為規制をしっかり強化して、加えて、ほかの発電・小売会社に比べましてグループ内の企業を優遇することがないようにしていきたい、行政が監視することが極めて重要でありますので、こうした行政の監視機能を強化いたしまして、実質的に送配電部門の中立性、独立性を担保すべく、また新規参入がしやすくなるような環境を整えてまいります。

丸山委員 しっかりとやっていただきたいと思います。

 先ほど来申し上げているように、先人が積み上げてきたものをよりよくしていく、そして三・一一以降の環境の変化に適応していくという非常に大事な法案でございまして、大臣もこの法案は非常に重視されてきたということでございます。一時は採決まで行くのは難しいんじゃないかというお話もございましたが、そうした中で、きょうの採決に臨みまして、最後に大臣の思いと決意を伺って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

茂木国務大臣 日本は、一九七〇年代、二度の石油ショックを経験いたしましたが、民間を中心とした省エネの努力によりましてそれを克服し、省エネの技術、そして省エネの製品、すばらしいものを確立したわけであります。

 そして、今回、東日本大震災を契機として、また世界的なエネルギー需要の増大に伴いまして、日本が新たなエネルギー制約に直面している、こういった中で、電力システムの改革は、新規参入の促進そして競争環境の整備により、電力の低廉かつ安定的な供給を一層進めていくものでありまして、エネルギー制約の克服に向けて必要不可欠な、まさに待ったなしの改革である、このように考えております。

 これまで、この委員会におきましては、エネルギーの需給そして電力システムのあり方等々につきまして、多方面から非常に活発な御議論をいただいてまいりました。人類で初めて月面着陸に成功しましたアポロ十一号のアームストロング船長は、月におり立ったときに、この一歩は一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な飛躍だと述べておりまして、私はこの言葉が大変印象に残っております。

 この法案をこの国会で成立させていただくということが、まさに六十年ぶりの大改革を進める第一歩だと考えておりまして、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

丸山委員 しっかりとやっていただきたいと思います。

 これにて私の質疑を終わります。ありがとうございました。

富田委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 みんなの党の井坂信彦です。

 本日、十分ですので、大体三問用意してまいりました。

 まず、原発の廃炉費用について伺います。

 先日、廃炉に係る会計制度の検証のワーキンググループというものが設置されました。趣旨は、電力会社が原発を廃炉にする場合、巨額の損失を一度に計上しなくても済むようにということかと思います。しかし、現実的には、廃炉費用は、電気料金への上乗せ、また、問題がありますが、送電料金への上乗せ、税金投入などなど、いずれにしても国民の負担となることが想定されます。

 今、原子力政策の変更による電力会社の損失面ばかりが問題となっておりますが、一方で、これまで原子力政策により利益を得てきたのも電力会社ではないでしょうか。この電力会社が得てきた利益というものをどのように評価して、そして廃炉費用の見直しのときにどのように考慮していくのか、伺います。

茂木国務大臣 誰が利益を得るか、損をこうむるかより、制度としてどうあるべきか、こういう観点からの議論が必要だと考えております。

 廃炉に係る費用については、現行の解体引当金制度では、原発の運転をすることができなければ、引き当ては御案内のとおり進まないわけであります。また、早期に運転が終了になった場合には必要な廃炉費用が確保できない、こういった課題もあるわけでありまして、その点は先日もこの委員会でも申し上げたところであります。

 バックフィット制度の導入を初めとする新たな規制であったりとか、運転終了後も一定期間にわたって放射性物質の安全管理が必要、これはちょっと普通の工場と廃炉は違う、そういった実態も踏まえて、廃炉に係る現行の会計制度が廃炉に必要な財務的な基盤を確保する上で適切なものかどうか、こういう検証をすることは必要だ、このように考えております。

 具体的には、原子力発電施設解体引当金制度のあり方、そして原子力発電設備の減価償却制度のあり方、さらには電気料金との関係などについて、設備利用のあり方を踏まえた検証を行っていきたいと考えておりまして、今般、総合エネルギー調査会のもとに廃炉に係る会計制度検討ワーキンググループを設置することを発表させていただいたところであります。この場で有識者の皆さんから十分な御議論をいただき、速やかに結論を得ることとしたい、このように考えております。

 あと、電気料金との関係でありますけれども、一定の費用を料金原価に上乗せすることが妥当、こういう結論となったとしましても、それを反映した料金改定を行うかどうか、これは一義的には電力会社の判断であります。そして、仮に電力会社から電気料金値上げの申請が行われた場合にいたしましても、それが本当に最大限の経営効率化を踏まえた申請かどうか、それは私どもが厳正に審査してまいりたいと考えております。

井坂委員 ちょっと聞き漏らしていたら申しわけないんですけれども、利益の面については特に考慮の必要がないということをおっしゃったでしょうか。

茂木国務大臣 委員御指摘の過去の経緯も含めて、まずは現行の会計制度を検証した上で、必要に応じて費用負担制度のあり方を検証していくことになる、このように考えております。

井坂委員 次の問題に移ります。

 電力自由化で立ち向かうべき岩盤ということについて伺います。

 安倍総理がおっしゃったとおり、規制改革こそ成長戦略の一丁目一番地、成長のためならどのような岩盤にも立ち向かう覚悟とおっしゃったわけですが、電力自由化に際して、電力の安定供給と競争というものを同時に果たすためにも、大手電力会社同士が競争するということが必要だと考えます。

 発送電分離をしても、地域には巨大な大手の発電会社が残り、また全く同じ地域をカバーする大手の送電会社というものが残り、そして大手発電会社と大手送電会社には資本関係が残り、大手発電会社は隣同士では互いに遠慮して参入しないというような状況がもし続くのであれば、これこそがまさに電力自由化で立ち向かうべき岩盤ではないでしょうか。

 そこでお伺いをいたします。

 電力システム改革の専門委員会でも、各電力会社は他地域にも必ず発電所を持ったらいいのだというような発言をされた委員もいらっしゃいます。現在の大手電力会社が、他地域に発電所をつくるなどして、他地域の利用者に電気を売っていくということについてどう進めていくのか、お伺いをいたします。

糟谷政府参考人 御質問いただきましたように、一般電気事業者、これはそれぞれ資本関係が今でもないわけでありますけれども、それでもそれぞれの供給区域外への供給というものはほとんど起きておりません。これまで、九州電力から広島のスーパーに供給が行われた一件だけでございます。

 こういうことを背景に、一般電気事業者間の競争促進をすることが大事だということで、今御質問がありましたように、電力システム改革専門委員会でも、ある委員の方から、供給区域外に、すなわち自分の供給区域以外の地域に発電所をつくることを義務づけする規制が必要ではないか、そういう問題提起をいただいたところであります。

 これにつきましては、現在でも供給区域外の発電所というのはあるわけであります。原子力発電所がよくそういう例に挙げられますけれども、原子力発電所以外でも、火力発電所で、例えば東京電力の広野発電所、これは福島県に石炭火力とか石油火力が立地をしております。それから、中部電力の上越火力発電所、これはLNG火力でありますが、新潟県に立地をしております。そういう意味では、既にほかの供給区域に発電所を設置している例がある。にもかかわらず、なかなか供給区域を越えた電力の供給というものが起きていない、そういう状況であります。

 したがいまして、こういう中では、電力システム改革専門委員会で御指摘があったような、他地域に発電所をつくるという義務づけをやって本当にそれが進むのかどうかということはちょっと疑問であるというふうに思っております。すなわち、供給区域外に発電所をつくりましても、仮にそれを義務づけたとしましても、そこで発電した電気を結局自分の供給区域内に持って帰ってしまうということになる限りは、供給区域を越えた電力の供給というのは起きないわけでありまして、発電所をほかの地域につくればそれで済む、そういう単純なことにはなかなかならないんだろうというふうに思います。

 したがって、今回の電力システム改革においては、いろいろ多面的、多角的な取り組みをするということにしておるところでございます。

井坂委員 同様に、大手同士の競争という観点で、例えば中部電力と大阪ガスさんなんかが合併したり、あるいは大手の電力会社の二地域が合併したりというようなことで、要は発電会社と送電会社の地域割り、縦の一対一の関係を崩していく、こういったことも有効かと考えます。こうした地域を越えた、いわゆる総合エネルギー企業のような形での合併促進策などについてどのようにお考えか、お伺いをいたします。

茂木国務大臣 この電力システムの改革によりまして、今、言ってみますと、公共インフラであります送配電部門と、本来自由化されるべき発電部門等々が一緒になっているわけであります、これが完全に分かれるという形になるわけでありまして、こういった一般電気事業者の制度が見直されることで、例えば発電事業者同士そしてまた送配電事業者同士の統合など、事業者の自主的な判断による、それは業種を超えたこともあるかもしれません、そういった組織再編を行いやすい環境が整備されるということになってまいると考えております。

井坂委員 ちょっと一点だけ。

 自由化すれば自然に競争が起こるというふうにお考えなのか、あるいは、やはり競争環境をきちんと、特に大手同士、いわゆる横綱同士と言われるものをつくっていく、そのためには競争政策をきちんとそれが起こるまで矢継ぎ早に打っていくということなのか。最後に、その一点だけお答えください。

茂木国務大臣 基本的には、競争環境をつくっていくということであります。しかし、そのためには競争が進むような仕組みというものも必要でありまして、例えば一般電気事業者には一定期間規制料金をかけるとかいうことによりまして、競争条件が一緒になっていくということがやはり競争を促進する上で重要だと考えております。基本は競争環境をつくることでありますが、そのための仕組みも同時に組み込むということで考えております。

井坂委員 終わります。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 電気事業法の改正案について、きょうは、安倍内閣におけます原子力に対する政策、基本姿勢について経産省に確認をし、最後に、大臣に、電力システム改革との関係についてお尋ねをいたします。

 骨太方針素案ということで六月六日に出されたものを見ますと、安価で安定的なエネルギーの確保として原発が位置づけられています。ここでは、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、立地自治体等関係者の理解と協力を得るため、政府一丸となって最大限取り組む。」このように書かれているわけであります。

 この間の答弁でも繰り返された内容ではありますけれども、原発の再稼働の推進のための地元対策を政府一丸となって行うこととしているわけであります。

 その上で、六月五日、安倍総理が成長戦略第三弾スピーチを行いました。そこでは、今後十年間の日本の電力関係投資は、過去十年間の実績の一・五倍である三十兆円規模に拡大できる、このように述べておられます。

 そこで経産省の方にお尋ねをいたします。

 過去十年間の電力関係の投資実績がどのようになっているのか、その中で原発の占める額がどのくらいになっているのか、この点についてお答えください。

高原政府参考人 過去の電力関係の投資、これは二〇〇三年から二〇一二年の十年間でございますけれども、二十・五兆円でございます。これは十電力による発電及び送配電に係る投資実績を含めておりまして、その中には原子力発電への投資も含まれております。

 原子力発電設備への投資実績でございますけれども、各電力会社の有価証券報告書やヒアリングなどによりますと、同じ過去十年間で約三・二兆円というふうに把握をいたしております。

 以上でございます。

塩川委員 送配電を含めた設備投資ということで二十・五兆円ですけれども、原発は三・二兆円ということですが、電源関係はどのぐらいになるのか。

高原政府参考人 ただいま申し上げました、原子力発電設備に関しましては三・二兆円でございますが、全体の発電に関しては、他の水力発電、火力発電等々を合計いたしますと全体で七・五兆円というふうに把握いたしております。

塩川委員 この数字は、年度ごとで出すことはできますか。例えば、直近でいえば、平成二十四年度とかという数字は可能でしょうか。

高原政府参考人 年度ごとに出すことはできます。

塩川委員 それは、改めてお尋ねし、御回答いただきたいと思っております。

 この間、規制緩和の省令改正で、事業者から報告を求める項目として入っていないなどということもあって、実際には実態がわからなくなっているということもありますから、こういう点について、ぜひ改めて開示を求めたいと思っております。

 続けて、これから先の話ですけれども、今後十年間の電力関係投資、これは二〇二〇年で三十兆円規模ということもスピーチではあるわけですけれども、この中に原子力というのはどのぐらい含まれているものでしょうか。

高原政府参考人 今後十年間の日本の電力関係投資につきましては、足元の実績から全体の規模を見込んだものでございまして、どの発電設備をどのようにしていくかなど、その内訳について見通しを持っているわけではございません。

 以上でございます。

塩川委員 今後の電力関係投資の推計というのは、過去の原子力を含む実績を踏まえて出されているものであります。ですから、今後、国内において原発の新規投資を行うことは否定されないような中身だと思うんですけれども、その点はいかがですか。

茂木国務大臣 今後の成長戦略の中で、大きな柱として、効率的、安定的なエネルギー、こういった分野が出てまいります。そこの中には、例えば蓄電池、今世界的に一兆円の市場でありますが、これが例えば、電力系統用、そして自動車、こういった分野に応用されますと、二十兆円の市場に拡大をしていく。

 いずれにしても、エネルギー、どのようなベストミックスになったにしても、これからの日本としては成長戦略として位置づけていく、こういった意味から、一・五倍、三十兆円、こういう数字をはじき出しております。

塩川委員 ベストミックスということですから、原発は排除されていないということではあります。

 そこで、成長戦略の素案ということで六月五日に出されております。それを見ますと、三つのアクションプランというのがあって、そのうちの一つとして国際展開戦略があります。その中に、インフラシステム輸出戦略を迅速かつ着実に実施するとしております。

 このインフラシステム輸出戦略を見ますと、後ろの方に、将来のインフラシステム輸出の主要分野における日本企業の海外受注額の推計が出されております。

 その中身について教えていただきたいんですが、インフラシステム輸出戦略では、官民連携のもと、我が国企業が二〇二〇年に約三十兆円、現状約十兆円のインフラシステムを受注することを目指すとして、原発や高速鉄道等、熾烈な競争を勝ち抜くべき個別案件について、官民一体で取り組み、政府全体として支援していくとあります。

 そこでお聞きしますが、このインフラシステム輸出戦略の中で、原子力分野の二〇二〇年における海外受注額はどのように推計しているんでしょうか、どのような額になるんでしょうか。

糟谷政府参考人 お尋ねのインフラシステム輸出戦略におきまして、二〇二〇年の海外受注額でありますが、将来推計として、エネルギー分野全体で九兆円程度、うち原子力分野については約二兆円程度という推計でございます。

 この推計の方法でございますけれども、IAEAが二〇一二年九月に発表した原子力発電に関する予測がございます。

 これは二〇一一年の実績と、それから二〇二〇年時点の設備容量の予測の数値が出されております。この二〇二〇年時点の予測の設備容量と二〇一一年との差分を九年間で割りまして、これも高い数値と低い数値と両方ありますので、平均いたしまして中間値をとりまして、年間千六十万キロワットの原子力発電の設備容量がふえるというふうに仮定をし、原子力発電所一基百万キロワット当たり〇・五兆円という数字を掛けますと、一年間に五・三兆円の原子力発電設備の受注がなされるということでございます。

 世界の原子力発電の主要メーカーが八社ありまして、そのうち日本の企業が三社であります。これが全く同じ比率で受注したと単純に仮定いたしまして、一年当たり五・三兆円に八分の三を掛けて、約二兆円という数字を出しております。

塩川委員 八分の三に五・三を掛けて約二兆円ということです。二〇一〇年の原発輸出実績は、このインフラシステム輸出戦略では〇・三兆円とあります。ですから、この〇・三兆円を二〇二〇年には二兆円にふやすという推計であります。日本の原子炉メーカーの市場確保を優先した成長戦略として原発輸出を政府を挙げて行うということであります。

 大臣にお尋ねします。

 この成長戦略において、原発の活用と原発輸出が位置づけられております。国内では、原発再稼働のために政府一丸となって地元対策を行い、海外に向けては、原発輸出を官民一体で取り組み、政府全体として支援していくとしております。

 そうなると、政府が原発にてこ入れすることが電源構成において原発を優先することになり、結果として九電力と原子炉メーカーを優遇することによって、本来、国民の多くの方々が願っておられる再生可能エネルギーの普及とか分散型電源などの電力システムの改革、国民が願うこの電力システムの改革に反するものになってしまうのではないか、このことを強く感じておりますが、その点、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 国内における成長戦略と、そして成長戦略の一つの柱であります国際展開戦略は一貫して進めていきたいと思っておりまして、例えば国内における高効率の石炭火力、こういったものは海外に応用した場合にグローバルなCO2の排出削減、こういったものにもつながってまいります。

 また、先ほど申し上げましたような燃料電池、こういったものにつきましても、日本の最高の技術は十分海外に打って出られるものだ、このように考えております。

 そして、先ほど鉄道のお話もいただきましたけれども、日本の強みというのは、単に技術じゃなくて、その設備を運転するシステムであったりノウハウ、こういうところにあると思っておりまして、鉄道の発着時間がこれだけしっかりしている国はない、こんなふうに考えているわけであります。

 原発の輸出につきましては、過去のこれまでの事故の教訓であったりとか経験を踏まえた安全技術を世界と共有することによりまして、世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献していくことは我が国の責務である、そのように考えております。

塩川委員 朝日新聞の世論調査でも、安倍政権が成長戦略に原発の活用を盛り込んだことに反対が五九%、原発再稼働についても反対が五八%。安倍政権の原発推進政策というのは原発ゼロを願う国民世論に逆行するものだということを申し上げ、これでは国民の願う電力システム改革は進まないということを最後に申し上げ、質問を終わります。

富田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 この際、本案に対し、塩谷立君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。近藤洋介君。

    ―――――――――――――

 電気事業法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました電気事業法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 本修正案は、電気事業に係る制度の抜本的な改革に係る措置について定める附則第十一条に所要の修正を行おうとするものであり、その内容は次のとおりです。

 第一に、政府が段階的に電気事業に係る制度の抜本的な改革を行うこと等の目的として、電気の安定供給の確保、電気の小売に係る料金の最大限の抑制並びに電気の使用者の選択の機会の拡大及び電気事業における事業機会の拡大を実現することを明記することとしております。

 第二に、電気の小売に係る料金の全面自由化の実施の時期の見直しについて、電気の使用者の利益を阻害するおそれがあると認められるときに限られるという趣旨を一層明確化することとしております。

 第三に、電気事業制度の抜本的な改革に係る法律案の提出に当たっては、特定の電気の小売業者等の競争条件が著しく悪化することが明らかな場合についてもその競争条件を改善するための措置を政府が検討等を行う対象として追加することとしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。今井雅人君。

今井委員 私は、日本維新の会を代表いたしまして、電気事業法の改正案原案、修正案ともに賛成の立場で討論を行います。

 電力の自由化は、我が党も昨年の衆議院選挙において選挙公約に掲げました。

 今回の法案は、こうした電力システム改革の第一歩となる法案であると認識しております。本法案は、広域的運営推進機関の設立が主たる内容でありますが、附則において電力システム改革のスケジュールを示すいわゆるプログラム法案ともなっておりますので、この点も踏まえまして意見を述べたいと思います。

 今回の改革案で重要な点は、二点と考えております。

 まず一点目は、スピード感です。

 茂木大臣の持論であります、改革は大胆に、スケジュールは現実的にという考え方自体は理解いたします。だからといって、慎重にするが余り、時間がかかり過ぎてしまうようなことがあってはなりません。問題点、課題を早急に解決し、一日でも早くスケジュールを実施していく必要があります。当委員会の質疑でもこの点について質問いたしましたが、現在計画されているスケジュールには幅があり、その中でスケジュールを早めることもあり得るとの答弁をいただきました。今後、本委員会においても、スピードアップを図れるよう具体的な質疑を行ってまいります。

 二点目は、競争政策による新規参入者の誘導であります。電力の自由化は、競争を促すために新規参入を誘導できるかが成功の鍵であります。

 具体的には、まず、卸売電力取引所の活性化です。この点に関しましては、本年開始されております一般電気事業者の自主的取り組みの状況を見ながら、必要であれば、さらなる活性化政策をとるとの政府の見解を確認させていただきました。

 また、参考人の意見にもあったとおり、スマートメーターの普及による電力のディマンドレスポンス体制を同時に実現することが極めて重要となってきますが、この点についても、質疑の中でその重要性を確認させていただきました。今後、具体策を議論していきたいと考えております。

 発送電分離においては、送配電部門の中立性を担保することが極めて重要であります。法的分離という方法において、役員の兼任を禁止する等の措置による中立策を講じるとの政府からの答弁がありました。さらに、持ち株会社の監視を強化する必要性も質疑の中で共有されました。具体策については今後さらなる議論をしてまいります。また、その先にはさらなる改革の検討の余地があるとの答弁もいただきました。

 加えて、本法案成立により設立されます広域的運営推進機関に関しては、人事等での中立性の確保に努め、国のチェックも厳しくするとの見解が示されました。

 以上、述べましたように、現状では、電力システム改革全体としては不明瞭な点も幾つか残っているものの、その点に関しては、今後さらなる審議を進め、明らかにしていくこととした上で、いたずらに反対するのではなく、本改革をまず一歩でも進める必要があるという観点から、我が党としましては、本法案に賛成する次第であります。

 以上です。(拍手)

富田委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 みんなの党です。

 みんなの党は、福島原発事故の直後から、一貫して発送電分離を初めとする電力システム改革を一日も早く始めるべきだと訴えてまいりました。

 私も、理事会の中で、火曜も水曜も金曜もフルに使って、とにかく一日も早く法案を参院に送るべきだということを主張してまいりました。

 本法案が今国会で衆参の審議を終える見通しが立ったことについては、立法府として責任を果たしたということで、与野党の諸先輩方の御尽力に感謝を申し上げる次第です。

 その上で、本法案の内容については、大きく以下三点を追加すべきと考えるため、参議院で党として対案となる電力自由化推進法案を提出し、本法案には反対をいたします。

 一点目は、所有権分離についてであります。

 委員会で大臣及び参考人と議論をさせていただきましたが、発送電分離の理想型はあくまで所有権分離であります。

 憲法上の問題があるのは、法的分離も試さないうちから強制的に民間企業を所有権分離するケースに限られます。

 前段階として法的分離を行った後に所有権分離を行うケース、強制ではなくインセンティブによって所有権分離を促すケース、また事実上の国有になっているようなケースにおいては、所有権分離について法律に書くことに何ら問題はないと考えます。

 法的分離を実施困難とする新たな課題が生じた場合には、機能分離を検討するなどと、具体的にまだ想定すらされていないケースに備えて機能分離への逃げ道を書き込むぐらいであれば、所有権分離について法律にきちんと記載すべきです。

 二点目は、競争促進政策についてであります。

 委員会を通じて、電力システム改革を待たずに実行できる競争促進政策や、自由化本来の目的である大手電力会社同士の競争促進について質疑をさせていただきました。しかし、本日最後の大臣答弁でも、大手と新規の競争促進については触れていただけましたが、大手同士の競争促進ということについてはお答えをいただけませんでした。

 まずは、市場価格で精算する計画値方式や発電コストの報告義務化、ネガワット入札、環境アセスの迅速化などを矢継ぎ早に実施すべきだと考えます。

 また、本法案では、競争が進まずに電気使用者の利益を阻害するおそれがあるときは実施時期を見直すと、先送りの規定が書き込まれております。

 我が党は、むしろ卸電力市場の活性化なども含め、期限を法律に明記して、競争促進の具体策を実行すべきと考えます。

 三点目は、原子力政策についてです。

 政府は、今後のエネルギー政策をゼロベースで見直すと言ったまま、将来ビジョンが事実上ゼロの状態で電力システム改革を始めようとしています。

 自然エネルギーの割合をふやし、将来の脱原発につなげるという大きな方針を示した上で、そのための電力システム改革を行うべきと考えます。

 以上三点、本法案の修正では追いつかない根本的な相違点があるため、参議院で対案として電力自由化推進法案を提出し、本法案には反対をいたします。

 以上です。(拍手)

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、電気事業法の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。

 電力システム改革は、三・一一東日本大震災と東電福島原発事故を直接の契機とするもので、その教訓を踏まえたものでなければなりません。

 改革すべきは、我が国の戦後六十年にわたる、主要国では特異な地域独占、民営の発送配電一貫体制という電力独占によるガリバー支配です。このシステムを根本的に変革し、再生可能エネルギー電源を初め技術進歩を生かし国民が選択できる二十一世紀型の持続可能なエネルギーシステムに転換すべきです。

 しかし、本法案は、こうした大方向への改革方針を具体化するものとは言えず、以下三つの理由で反対します。

 第一に、福島原発事故の教訓を酌み取っていない、破綻が明らかな原子力損害賠償スキームを温存したまま電力改革だけを切り離して進めるものだからです。

 我が国最大の電力会社で実質破綻している東京電力並びに原発のあり方をどうするのか、この二つの大問題こそ電力システム改革の出発点です。

 原発事故は収束していません。十五万人を超える避難者や事故の被害者の存在を忘れたエネルギー、原発政策は、その立脚点を危うくするものと言わざるを得ません。

 第二に、小売料金等の全面自由化を初めとする附則は、小泉構造改革論者の失敗、エンロン破綻事件や米国の大停電など市場原理主義、規制緩和の危険性を拭えないものだからです。

 欧米での電力自由化の経験を見ても、全面自由化は少数派です。電気料金の総括原価主義、ブラックボックスの開示や最終保障サービス等の制度設計に当たって、全面自由化ありきの法案は問題があります。

 第三に、発送電分離を掲げながら、法的分離の名で、持ち株会社グループ一体経営によるガリバー支配の実質を維持したい電事連の望む規制なき独占にならない保証がないからであります。

 そもそも本法案は、日米原発利益共同体の市場確保を最優先に、原発の再稼働、原発輸出と一体となった成長戦略の柱の一つとされております。

 しかし、本来あるべき電力改革は、三・一一原発事故の教訓を踏まえ、先月末の本会議で主張したように、原賠機構スキームの見直し、大規模集中電源から小規模分散電源の二十一世紀型電力システムへの移行及び明確な発送電分離によって東電と送電網を特別な公的管理下に置き、電力独占への民主的規制と国民的監視による原発ゼロに向けた電力民主化を進めるものでなければなりません。

 なお、修正案は、以上の反対理由を変更するものではないので賛成できません。

 以上、申し述べて、反対討論を終わります。(拍手)

富田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、電気事業法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、塩谷立君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、塩谷立君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。宮下一郎君。

宮下委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    電気事業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、電力システム改革を着実に推進するため、本法施行に当たり、以下の点に留意すること。

 一 電力システム改革の目的である「電気の安定供給の確保」と「電気の小売に係る料金の最大限の抑制」の実現のため、原子力発電の稼働が進んでいない中で海外からの化石燃料の輸入が増加し、国民負担の増大が懸念されていることにも鑑み、第三段階までの法的措置の期限を待つことなく、スマートメーターの普及、卸売市場の拡大、発電所の環境アセスメントの緩和等の施策を検討し、可能なものについては早急に措置を講ずること。

 二 原子力政策の抜本的見直しが求められる中、原子力発電所の廃炉に係る電力会社の負担の軽減策など競争環境下における原子力発電の在り方、原子力賠償の在り方の見直し及び我が国における核燃料サイクル政策の位置付けについて早急に検討の上、電力システム改革と同時並行的に適切に措置を講ずること。

 三 今後、第三段階の法的措置の実施を通じて達成するものとされている「送配電部門の中立性の確保」及び「電気料金の全面自由化」は、競争促進の効果と電力の使用者の利益を併せて実現する観点から同時に実施することを原則とすること。また、これらの事項を含む今後の電力システム改革の詳細な制度設計及び実施については、当該改革に当たっての課題検証とその結果に基づく課題克服のために必要な措置を講じて進めるとともに、今年中に策定される予定である新たなエネルギー基本計画の内容と整合性をもって進め、関係方面に十分な説明を行うものとすること。

 四 電力システム改革の遂行に際しては、今日まで電力の安定供給を支えてきた電力関連産業の労働者の雇用の安定や人材の確保・育成、関連技術・技能の継承に努めるとともに、改革の過程において憲法並びに労働基準法に基づく労使自治を尊重するものとすること。また、当該労働者について一定の形態の争議行為の禁止を定める「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律」については、自由な競争の促進を第一義とする電力システム改革の趣旨と整合性を図る観点から再検討を行うものとすること。

 五 電力システム改革を推進する上で阻害要因となり得る地方自治体による売電契約や交付金の運用等に関する現在の行政規制及び事実上の慣行の有無に関して早急に検証を行い、可能なものについては前倒して是正し又は撤廃する等の適切な措置を講ずること。

 六 電気事業の規制に関する事務をつかさどる新たな行政組織は、実効性のある送配電部門の中立性の確保、電気の小売業への参入の全面自由化等の電力システム改革を推進する上で、必要な電気事業の規制に関するモニタリングを実施する等、必要最小限な組織とし、肥大化は極力避けること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審議の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

富田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、茂木経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。茂木経済産業大臣。

茂木国務大臣 ただいま御決議のありました本法案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいります。ありがとうございます。

    ―――――――――――――

富田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

富田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十一分散会


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