衆議院

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第3号 平成25年9月30日(月曜日)

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平成二十五年九月三十日(月曜日)

    午後一時十九分開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 石原 宏高君 理事 塩谷  立君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 近藤 洋介君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    秋本 真利君

      穴見 陽一君    石崎  徹君

      小倉 將信君    越智 隆雄君

      大見  正君    勝俣 孝明君

      小松  裕君    今野 智博君

      佐々木 紀君    桜井  宏君

      白石  徹君    白須賀貴樹君

      武村 展英君    辻  清人君

      冨樫 博之君    根本 幸典君

      福田 達夫君    細田 健一君

      宮崎 謙介君    八木 哲也君

      山田 美樹君    吉川 貴盛君

      大島  敦君    津村 啓介君

      馬淵 澄夫君    足立 康史君

      小熊 慎司君    木下 智彦君

      重徳 和彦君    丸山 穂高君

      國重  徹君    井坂 信彦君

      三谷 英弘君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   経済産業副大臣      菅原 一秀君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   国土交通大臣政務官    赤澤 亮正君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           田中 正朗君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)

   (資源エネルギー庁汚染水特別対策監)       糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 上田 隆之君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官)            染矢 隆一君

   政府参考人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (原子力規制庁審議官)  山本 哲也君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力地域安全総括官)       黒木 慶英君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役副社長)       相澤 善吾君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月三十日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     田中 良生君

  越智 隆雄君     秋本 真利君

  平  将明君     今野 智博君

  冨樫 博之君     小松  裕君

  宮崎 政久君     桜井  宏君

  吉川 貴盛君     菅原 一秀君

  枝野 幸男君     津村 啓介君

  木下 智彦君     足立 康史君

  重徳 和彦君     小熊 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     小倉 將信君

  小松  裕君     冨樫 博之君

  今野 智博君     平  将明君

  桜井  宏君     白須賀貴樹君

  津村 啓介君     枝野 幸男君

  足立 康史君     木下 智彦君

  小熊 慎司君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     越智 隆雄君

  白須賀貴樹君     宮崎 政久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件(東京電力福島第一原子力発電所汚染水問題)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件、特に東京電力福島第一原子力発電所汚染水問題について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官田中正朗君、経済産業省大臣官房総括審議官兼資源エネルギー庁汚染水特別対策監糟谷敏秀君、経済産業省大臣官房審議官中西宏典君、資源エネルギー庁長官上田隆之君、国土交通省大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官染矢隆一君、原子力規制委員会委員長田中俊一君、原子力規制庁審議官山本哲也君及び原子力規制庁原子力地域安全総括官黒木慶英君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、本日は、参考人として東京電力株式会社代表執行役副社長相澤善吾君に御出席をいただいております。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 きょうは、金曜日に引き続き質疑の機会をいただきました。

 まず冒頭、先週の金曜日、東電の広瀬社長の参考人質疑でございました。せっかくの機会ということで、本来ならば、大臣も御出席いただいて、参考人質疑のみならず委員会審議という形で行いたかった、それが我々国会議員の思いでありますが、大変お忙しい。事情はよくわかります。しかし、大事な課題です。きょうはお出ましいただきましたが、ぜひ大臣、日程等に関しては、万障お繰り合わせをいただきたいということを冒頭にお願いしたいと思います。

 その上で、きょう私は、この汚染水問題に関しての質疑で、まずは基本的な方針あるいは対策の概要についてのお尋ねと、さらには緊急対策と抜本対策、これらについての課題の確認並びに提言というものをお示ししていきたいというふうに思います。

 まず冒頭、相澤副社長にお尋ねをさせていただきますが、きょうお手元には、九月三日の政府の原子力災害対策本部の基本方針、これは概要版でお配りをしております、資料の1に「基本的考え方」というふうなものが示されております。

 ここでは、政府がこの汚染水問題に対して後手にならないようにということで、「東京電力任せにするのではなく、国が前面に出て、必要な対策を実行する。」、このように書かれております。東電任せで今までうまくいかなかったんだ、こういう政府の厳しい姿勢のあらわれでありますが、東電として、こうした対策本部に対して、みずからもしっかりと取り組むという決意をまず、これは端的で結構です、お答えいただけますか。

相澤参考人 お答えいたします。

 我々も、今まで全力で取り組んできたつもりでございますが、なかなか至らない点があったというのが現実であるというふうに認識しております。

 今後、お国の指導を得ながら、あるいは税金を投入していただきながらということで、我々は身の引き締まる思いでありますが、この汚染水対策につきましては、全身全霊をかけて対策に邁進したいというふうに思っております。

 以上であります。

馬淵委員 東電任せではなく、国が前に出てということでありますが、当然ながら、プレーヤーである東電、当該責任者である東電、これは真っ正面で取り組んでいただかなければなりません。

 そこで、これは大臣に、端的なお答えで結構ですが、私自身は補佐官を命じられ、二年半前にこの問題に取り組んでおりました。そして、先週の参考人質疑でも、当時、遮水壁、地下バウンダリーの構築に取り組みながら、東電は当時、想定外リスクという言葉が次々に出ましたが、後追いにならない備え、さらには、リスクの過小評価をしない、多重の防御が必要だという観点から、私自身は当時いわゆる遮蔽プロジェクトでその施策を打ち出してきたところであります。

 今回、この基本方針にも、「想定されるリスクを広く洗い出し、予防的かつ重層的に、抜本的な対策を講じる。」、このように書かれております。

 大臣、私もたびたびこの委員会でも確認をさせていただきました。まさに、私が指摘をしてきた、リスクの過小評価をしない、多重の防御を行う、この強い意思のあらわれであるということの確認をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。

茂木国務大臣 馬淵委員とは、ことしの三月十五日や四月十日に、この委員会におきまして、地下水の遮水をどうするか、地下水の問題について議論をさせていただきました。御提案いただいた点について、私から、あらゆる手段を排除せず検討してまいりたい、このようにお答えを申し上げました。

 そして私も、議員との議論を踏まえまして、陸側遮水壁の設置の検討を加速いたしまして、既に五月三十日の時点で、政府として、その方針を緊急対策、抜本対策の中にその中核として盛り込んだところでありますし、さらには今月には、これを国費において行う、こういったことを決めさせていただいた次第であります。

 まさに、福島第一原発の廃炉、汚染水の問題、これまでに前例のない大変困難な作業であります。もちろん、現場に精通して、そしてさまざまな作業に当たっている東電には引き続き責任を果たしてもらいたいと思っておりますが、必要な部分ではしっかり国も前に出ていきたい、そして国を挙げて、与野党を問わず、関係者全員が問題の解決に当たっていきたい、いい提案があったら何でも前向きに検討させてもらいたいと思います。

馬淵委員 大臣からは、これまでの経過の中でもそのような姿勢で取り組んできたという言葉をいただきましたが、今回この方針が出ております。しっかりと抜本的な対策を講じるということをお約束いただきました。

 さて、その中で、お手元の資料2には、汚染水問題に対しては、緊急対策と抜本対策、この二つが示されております。いわゆる汚染水対策としては、三つの基本方針、汚染源を取り除く、汚染源に水を近づけない、汚染水を漏らさない、この基本方針に基づいた緊急対策であります。

 そこで、経産省の事務方にお尋ねします。端的にお答えください。当たり前のことを聞きます、申しわけございませんが、緊急対策とは早急に対策を講ずるべきものであるとの認識でよろしゅうございますか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃるとおりでございまして、緊急対策は可及的速やかに実施すべきものと考えております。

馬淵委員 緊急対策は当然ながら可及的速やかであると。抜本対策が、資料にありますように、今後一、二年と書かれています。したがって、緊急対策とは、それ以前でありますから、遅くとも一年以内に講ずるべきものであるとの認識でよろしゅうございますでしょうか。事務方、お答えいただけますか。

上田政府参考人 委員仰せのとおり、緊急対策はまさに可及的速やかということでございまして、そのほとんどの対策については既に着手をしておりまして、一年以内をめどに着手を開始するものと考えております。

馬淵委員 緊急対策でありますから、これは時間をかけては意味がありません。

 その緊急対策について、課題についての確認を少ししてまいりたいと思います。

 これは緊急対策として掲げられているもの、まずは地下水バイパスであります。

 お手元の資料2のところの三ですが、地下水バイパス、これはもう既にこの委員会でもたびたびありましたが、山側から流れてくる地下水を、汚染の帯域に流れ込まないようにくみ上げた後、一旦タンクに貯留して、その水質の確認をして海に放流する、こういう仕組みであります。

 この地下水バイパスというのは、地下水を建屋に近づけない唯一の対策であります。この地下水バイパスの稼働に関しては、当然ながら、これは海への放流ですから、地元の漁協及び関係者の皆さん方の理解を得ることが前提とされています。

 そこで、これも事務方にお尋ねをいたします。地下水バイパスの稼働見込み時期というのはいつでしょうか。

糟谷政府参考人 地下水バイパスは、汚染源の増加要因となる山側からの地下水の流入を抑制する緊急対策であります。

 放水に当たって、地元福島の漁協の皆様を初め、関係者への説明を進めているところであります。地元の皆様の多くは説明を受けとめていただきつつあるというふうに思っておりますけれども、まだ漁協としての御理解を得るところには至っておりません。

 引き続き、個々の対策の取り組みの内容や効果、モニタリングの結果などについて、わかりやすいデータを用いて、御理解を得るべく、丁寧な説明を進めてまいりたいと思っております。

 いつまでという期限を区切るというよりは、むしろ、きちっとした説明の結果、御理解を得て放水につなげるということが筋だと思っております。

馬淵委員 まだ未稼働です。この未稼働に対して、稼働見込み時期というものは今お答えいただけない、努力をされているということでありますが、この地下水バイパスの設備自体は、資料の2にありますように、平成二十五年三月に設置完了なんです。もう既にでき上がっております。そして、それからもう既に半年たっている。六カ月たった今、今日も稼働開始時期は未定だということでよろしいですか。イエス・オア・ノーでお答えください。

糟谷政府参考人 未定でございます。

馬淵委員 緊急対策というのは、先ほど来申し上げている、これは九月三日に決まった原災本部の対策でありますが、もう既に三月に設置されて、今日もまだ未定である、こういう状況の中で、努力はされているということであります。

 一方、課題として次に確認をしていきたいのが、地下水が山側から海側に流れているわけですが、地下水バイパスより山側にあるところ、これは資料の3をごらんいただきたいと思います。

 少し見にくいですが、これもこの委員会の皆さん方はたびたびごらんいただいている、地下水バイパス、左から真ん中辺に、丸の印が十二個並んでいます。ナンバーワンからナンバー十二までの地下水バイパスの井戸であります。その山側のタンクから、八月十九日に三百トンの汚染水の漏えいが明らかになり、堰外に流出ということであります。複数のタンク底部等で高い線量が測定された。このタンクの汚染水漏れによる地下水への影響が懸念をされる、こうした課題があります。

 この地下水バイパス、ナンバー七、十一、十二の井戸におけることし二月、三月及び八月のトリチウム濃度が、資料3の下のところに出ております。

 ごらんいただきますと、七番は三十から四百七十ベクレルへ、十一番は五十七から三百へ、十二番は四百五十から九百へと、いずれも上昇傾向にあります。すなわち、タンクの汚染水の漏れによる影響について引き続き注意をする必要があるということになります。

 一方で、東電は、この地下水バイパスの稼働後の水質確認方法、これは基準ではありません、確認方法というのを整理されています。資料の4でございます。

 東電は、こうした地下水バイパスの稼働後の一時貯留タンクにおける水質確認の方法を定めています。この下にあります四角囲みのところですが、放水可否の判断と長期的な濃度変動の監視、モニタリングであります。ここには、モニタリングを見ますと、周辺の海域や河川で検出された放射能濃度、これはセシウム137を代表目安核種としますが、これに比べて十分に低いことということが記されています。そして、分析項目は、長期的なモニタリングの対象としてトリチウムが挙がっております。

 さて、こうした状況の中で、周辺河川のトリチウム濃度につきまして、事務方から答弁をお願いいたします。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 周辺河川のトリチウム濃度につきまして、平成二十五年三月に、平成二十四年の十月から十一月にかけて福島県が計測した河川等の環境放射線モニタリング結果がございます。いずれも福島第一原子力発電所近傍で計測されたものではございませんが、例えば、双葉地区の太田川につきましては不検出、小高川につきましては〇・五三ベクレル・パー・リットル、あるいは、いわき地区の大久川につきましては〇・三九ベクレル・パー・リットル、小久川につきましては〇・六六ベクレル・パー・リットルということになってございます。

馬淵委員 これはちょっと一年ほど前のデータではあるんですが、当然、事故に近い方が高い数値が出ておかしくないわけですが、大変低い数値です。周辺河川のトリチウム濃度が低い数値になっている。そして、現時点においては、この地下水バイパスのいわゆる井戸からくみ取った水質に関しては、これは基準を超えるものではないんですが、上昇傾向にあります。

 少なくとも周辺河川と比べて高くなりつつあるというこの状況の中で、先ほど来事務方にお答えいただきましたが、少なくとも、漁協や地元関係者等の合意を得る努力をされているということでありますが、この実態を見れば、実は、緊急対策と称している地下水バイパスが稼働していない状況の中で、よりその理解を得るハードルが高くなっている状況があるのではないか、その認識を持つべきではないかと私は指摘をさせていただきたい。

 周辺河川の一千倍近くのトリチウム濃度が、既に地下水バイパスの揚水井戸から検出されています。繰り返し申し上げますが、先ほどの基本方針、緊急対策は、可及的速やかに、一年以内に、建屋に地下水を近づけないという目標を掲げて、そしてその結果を出さなければならない方策のはずです。しかし、これは半年間稼働せずに、その間に汚染水がタンクから漏れ出て、その影響かどうかの確認はまだ確実にとれているわけではないでしょうが、トリチウムの上昇がこのように確認できている。

 私は、この状況を楽観的な見通しで見るべきではない、このように思います。この緊急対策の課題、今申し上げたように、建屋に近づけない唯一の対策である地下水バイパスが機能しないおそれがある、それをぜひ政府側も東電側も認識いただきたい。

 その上で、私は、一つの提案をさせていただきたいと思ってきょうは参りました。

 政府、東電が緊急対策としている地下水バイパスは稼働時期が未定であります。そして、それが今後もなかなかに困難な状況があるかもしれないという中で、先ほど大臣にも確認をいたしました、予防的かつ重層的なまさに多重防御を行うというのが基本的な考え方です。この多重防御を行うということであるならば、さらなる対策を考えるべきである。

 そして、ここに関しては、先週の金曜日、既に、大臣も御出席をされた、第七回の汚染水対策委員会、我々がこの委員会を開く直前に行われた委員会での議論の中で、地下水バイパス等が稼働できない場合のさらなる地下水流入抑制策についての検討がなされています。これは資料の5をごらんいただきたいと思います。

 資料の5は、二十七日に提出された資料であります。この汚染水対策委員会では、場合によっては地下水バイパスだけでは足りないのではないか、まさに予防的な多層的な防御、このことを考えていただいているんだとは思いますが、地下水のさらなる流入抑制、建屋に地下水を近づけないという中で、技術公募、追加的な遮水壁の施工技術、フェーシング技術、これらを公募するといった検討もなされているということであります。

 そこで、私は公募に手を挙げているわけではありませんが、この委員会として私が御提言を申し上げたいのは、本格的な遮水壁ができるのには時間がかかります、そして、今申し上げたように緊急対策は機能していないんです、動いていません、その動いていない状況の中で、実は、鋼矢板などという一般的な道具、材料を使って地下水の流入を低減せしめることができるのではないかということであります。

 これは一度は皆さん方はごらんになったことがあると思いますが、河川などで使われる鋼矢板というのは鉄の板です。これをいわゆる地中に打ち込んで、水の流れをとめたり、あるいは土の崩落をとめたりするための土木材料であり、これを山側に打ち込むこと、あるいは建屋四方にこれを打ち込むことによって地下水の流入量を減らすことができるのではないか、私はこのように思っています。

 お手元に資料の6というのをお配りしております。

 四方を囲むことができればベストです。しかし、先ほど来申し上げるように、緊急対策を早急に打たねばならないということであれば、まずは山側にこの鋼矢板を打ち込んでいく、矢板を打ち込んでいって、そして壁をつくっていく。

 このようなことが効果があるのかということでありますが、お手元の6の資料は、私が補佐官時代にこうした遮水壁の検討を行った中で、米国NRCからの協力を得て提言をいただきました。そこでは、山側の壁は、アンブレラ、傘の効果を生じ、地下水がプラントの周りに迂回する流れをつくり出し、海洋に向かう流速を低減し得ると、我々日本政府にサジェスチョン、提言をいただきました。まさにアンブレラ効果も含めた緊急の対策を、この矢板という工事を使ってできるはずです。

 鋼矢板というのは、余り御存じない方もいらっしゃるので、見たことはあるけれども、どんなものかということで申し上げれば、水をとめたり、あるいは地山が崩れるのをとめたりする目的で使われるものです。設置費用や工期の点から見ても、非常に簡便で安価なものです。

 国交省、ここでの直轄のかつての事業を見ますと、例えば、二〇一〇年、荒川の工事で使われたもの、これは深さが二十一・五メーターぐらいの矢板を使っていますが、延長は二百二十四・五メートル規模で施工されて、直接工事費は八千四百二十万円でした。これは資料はございません。このように、非常に安価にできる、安くできます。今回は遮水壁の構築に予備費百三十六億が措置されるということを考えますと、非常に少額である、安くできる。工期がどれぐらいかというと、荒川の、今申し上げた延長二百二十四・五メーターの工事の例でありますが、これは約三カ月程度で施工が済んでいます。

 私は、抜本的な対策は完全なるものをしっかりと講じていかなければならないと思うんですが、何度も申し上げている、多重防御なんです。想定外リスクなどといって事故が起きてきた、そしてリスクの過小評価を繰り返し繰り返し行ってきたからこそ、二年半たってもこの状況がまだ続いています。

 ぜひともここはとめなければならないという意味においては、これはぜひ大臣にしっかりと、今申し上げた鋼矢板も含めた、緊急でできる、安価でできる、しかも在来工法でできること、こうした対策を講じていただくことができないかというお願いと提言なんです。今私が申し上げたように、この鋼矢板等を含めた、簡便にできること、いつまでも地下水バイパスに頼るのではなくて。

 未定という話でありました。漁協の関係者等に合意を得るのは大変でしょう。これならば、すぐできます。大臣、いかがでしょうか。御見解をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、五月三十日に取りまとめました緊急対策、抜本対策。緊急対策につきましては可及的速やかに行う、抜本対策についてはこの地下水に伴います構造的な問題も含めて解決する、こういう観点から出させていただきました。

 そして、国も前面に立ってこの対策を進めるということで、九月十日の関係閣僚等会議におきまして、アクションプランの取りまとめを行いました。

 アクションプランの取りまとめを行うに当たりましては、単にアクションプランにとどまらず、今後の潜在的なリスク、さらにはアクションプランに盛り込まれております対策、これが十分に効果を発揮しない場合のバックアップの対策もつくっていくということで、お示しをいただきました資料の5の右側の矢印、これがバックアップの体制です。それぞれの対策が、もし十分な効果を発揮しない場合にとっていく対策。そして、下にありますのがいわゆる潜在的なリスク。場合によっては起こるかもしれない潜在的なリスクに対しまして、どういうものがあるか、内外の英知を集めまして、汚染水処理委員会を中心に今後精査をいたします。

 二カ月以内の取りまとめ、こういったことを考えておりますが、全てがここで済んでいるとは、もちろんこれから検討が進むわけでありまして、さまざまな提案、こういうものも受け入れたいと思っております。

 委員の方から、鋼矢板のお話をいただきました。実は、国土交通省、さらには土木学会等々にも、知見をおかりしたい、協力をおかりしたいということでお話をして、快く協力をいただくことになっております。御提言いただいた点も含めて、しっかりと検討させていただきたいと思います。

馬淵委員 提言を含めて検討していきたいという答弁をいただきましたが、これは緊急対策ですから、長々と検討ではなく、二カ月と今おっしゃいました、ぜひその期間内に、多重の防御です、それをしっかりと進めていただくことをお約束いただいたというふうに受けとめます。

 その上で、緊急対策は今申し上げたような課題に対する取り組みが必要なわけでありますが、抜本対策、ここにつきまして、一つ、課題の確認と提言をさせていただきたいと思います。

 この抜本対策、政府は、建屋四方の地下を凍土、凍結管を挿入して土を凍らせて壁をつくり、地下水の流入、流出をとめる、この対策を検討されています。

 そして、先ほど大臣からありました五月三十日の報告書、凍土方式が適切だとした理由ということで、この報告書では、「検討の結果、」「以下の理由から凍土方式とすることが適切であると判断した。」として、そのイの一番に、「遮水能力が高く、地下水の流入抑制効果が高いこと」、このように記されています。

 この地下水の流入抑制効果、遮水能力が高いというのはどういうことか。

 資料の7をごらんいただきますと、これがその報告書の一部、二十五ページと書いてありますが、提案の中には、粘土壁、これがいわゆるベントナイトスラリーウォール、過去において検討したものであります。それ以外には凍土壁、それ以外の提案は少しタイプが違いますので、ここでは省きます。この中で、透水係数が書かれています。これは、水をどの程度通すかという係数です。ここで見ますと、粘土壁は、十のマイナス八乗から十のマイナス九乗ということになっています。そして、凍土壁は、ゼロという表現で書かれています。まさに、遮水性が高い、遮水能力が高いというのは、この透水係数ゼロをもって対策委員会は決しているということを説明されています。

 さて、そこで確認なんですが、この凍土遮水壁の透水係数ゼロについては、実験やシミュレーション等のデータに基づいた数字ではなく、工学的に、水が凍った場合、水は動かなくなるという理論上のものであるということでよろしいでしょうか。事務方、お答えください。

中西政府参考人 先生御指摘のように、凍土方式の透水係数ゼロにつきましては、一応、地中に埋設された冷却管の周りが冷えると水が動かなくなるというふうなことの判断で、透水係数はゼロというふうに考えてございます。

馬淵委員 もう一度、端的にお答えいただけますか。

 これは、理論上、水が凍れば水は動かないという工学的な理論に基づいてゼロという数字が記されていることでよろしいですか。イエス・オア・ノーでお答えください。

中西政府参考人 御指摘のように、工学的な判断に基づくものでございます。

馬淵委員 要は、机上の論理だけで、このゼロという数字がここに記載されているんです。私は、これは検討に値するのかと、本当に正直、説明いただきまして驚きました。

 水が凍れば水は動かない、そのとおりです。しかし、実際には現場は土です、水だけではありません。その粒度も、粘土質のような細かいものから、シルトや、あるいは砂や、れきも含めています。こうしたものがある中で、凍結管を入れて凍らせる、これで透水係数ゼロだと。実験も行わない、シミュレーションも行わない。これで判断しているんです。これは果たしてリスクの過小評価ということにつながりはしないのか、そのことを私は非常に懸念をしています。

 そして、当たり前ですが、地下に配管などの埋設物があったり、あるいはれきや岩があった場合には空隙があります。そこは水が通っていなければ凍りませんし、逆に言うと、汚染水がそこを通って流れ出る可能性もあるわけです。このような状況で、本当に、遮水能力が高い、これはゼロだからだ、こんな単純な議論で、凍土壁で決めました、大丈夫ですと言えるのでしょうか。

 もう一つ課題があります。

 地下水はとどまっていません、流れています。この凍土工法というのは、いわゆる土を凍らせる目的は、トンネルをつくったりするときに、掘ったりするときの土の崩落を防ぐための工法です。止水のための工法がメーンではありません。したがって、通常使われる場合、トンネルを掘るときに崩落を防ぐためのいわゆる土どめ工法として使われる場合は、地下二十メートル、三十メートル、地下水の流れがあるかないか確認をして、ないところに使います。この地下水の流れがもし仮にあれば、その場合は水ガラスなどを入れて、逆に、止水を別の工法で行います。このような凍土工法が、ある意味、今回の地下水の汚染対策に使われようとしていることに対して、私は本当に大丈夫なのかと繰り返し申し上げる。

 そして、今回この福島第一原発に関しては、当時、私が補佐官時代、これも前にこの委員会でもたびたび申し上げましたが、当時の流速に関して、どのぐらいのスピードで地下水が流れているか。前回も言いましたが、八・八センチ・パー・デーです。これは相当に速い。空隙を流れていくと、これは場合によっては数十倍になります。流速は、今、理論値で八・八センチなんです。浸透流解析の結果の理論値、八・八センチですが、もしこの工法を採用して行うとすれば、水の流れがあるところではこれは困難なんです。

 この状況の中で、凍土壁を採用されるに当たって、建屋周辺の地下水の実際の流速をはからなければなりませんが、これもイエス・オア・ノーでお答えください、建屋周辺の地下水の実流速を測定していますか。イエス・オア・ノーでお答えください。

茂木国務大臣 細かい数字等につきましては、この後事務方から説明をさせていただきたいと思いますが、現在、凍土方式によります遮水壁、当然、技術的な課題もあります、八月九日から実際にフィージビリティーを行いまして、その効果等々について検証を行っているところであります。

 先生御指摘のように、遮水効果の高さ、これも、例えば、粘土方式と比べて凍土方式が高い、同時に、工期が短くて済む、さらには、施工エリアが最も小さくなり、ほかの作業への影響を最小限にとどめることができる、そして、構築に当たり作業員の被曝を低減できる、こういったさまざまな観点から、この方式を採用しようということで検討しているわけであります。

 申し上げたように、フィージビリティースタディーをやっております。同時に、我々は、先ほど言ったような予防的な重層的な対策をとる、対策が効果を十分に示さなかったときは、追加的な遮水対策もとってまいりたいと考えております。私は、大切なことは、案をつくることではなくて実行することだ、このように思っております。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 現状、具体的な流速をはかっているわけではございませんので、先ほど大臣からも答えましたけれども、フィージビリティースタディーの中で確認させていただくということになってございます。

馬淵委員 実流速ははかっていないということです。フィージビリティースタディーの中で検討していく。結構です。だから、私はそのことは否定をしていません。しかし、リスクの過小評価になる可能性が極めて高いということを私は指摘しているんです。

 繰り返します。透水係数ゼロ、遮水能力が高いというのはイの一番の理由になっています。その他の理由があるのもわかります。しかし、その他の理由よりも何よりも、水をとめなければならないということで、この二年半、そして今回もこの対策本部で議論されてきているわけです。最も重要な観点のところで、肝心の計測もなければ、それに対してのシミュレーションも行われていないという状況に対して、大臣、ここは指導力を持ってしっかりとやっていただかないといけない部分だと思います。

 その上で、モニタリングの心配もあります。

 モニタリングに関しては、実際にこれもはかれるものではないので、温度計を突っ込んでということでありますが、あくまでも温度計を差し込んでですから、点です。線ではなく、面ではなく、点になるんです。このような形で、本当に一切漏らさず遮水ができるかということの懸念を申し上げているわけであります。

 その上で、私は、提言のお話もいただきましたが、このような状況の中で、この対策委員会、確かに大臣がおっしゃるように、大変御努力をされた中での議論だとは思うんですが、お手元の資料8をごらんいただきますと、「凍土による遮水壁を、大規模にかつ長期間にわたって運用した前例はなく、今後の検討次第では設置が困難となる場合もあり得る。その場合には、粘土による遮水壁の設置を検討するべきである。」、このように書かれています。

 さらに、この上にも、平成三十二年、すなわち今から七年後です、凍土による遮水壁ができても、長期的なメンテナンスは困難であるがゆえに、その後は、比較的高い遮水能力を持ち、維持管理が簡単な粘土による遮水壁へと入れかえを行うことも検討すべきだ、このようにこの報告書でも書いているんですね。凍土壁でよしとしているにもかかわらず、だけれども七年後は粘土壁にかえて、凍土壁がやはりだめならば粘土壁にかえる検討もすぐしてくださいね、このように書いてあるんです。

 私は、この報告書を見ると、これからフィージビリティースタディーをやって検討する、実行することが重要だとおっしゃいましたが、実行するときにもう一つ加えていただきたいのは、脆弱な方法で本当にリスクの過小評価にならないかどうかをしっかり確認した上で進めなければ意味がないんです。そして、その上で申し上げれば、リスクの過小評価にならないように、冒頭に大臣がおっしゃった、多重の防御、重層的な対策を打つ必要があるということです。

 ならば、七年後に粘土壁にかえなきゃならない、あるいは検討中にこれはだめだとかえなければならないのであれば、今すぐに、同時に、第二壁というものをつくられたらどうでしょうか。

 特に、この対策委員会の中でも、「世界に前例のないチャレンジングな取組であり、多くの技術的課題もある」、このようにされています。前例のないチャレンジングな取り組みをやる上で、前例があり今日まで確認されてきた工法、これで取り組むべきではないかということをまず申し上げたい。

 そこで、粘土壁について、事務方に確認です。

 粘土壁というものが遮水壁あるいはこうした汚染帯域に対して使われている実例について、お答えいただけますでしょうか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 実際に粘土壁がどういうところで利用されているのかということでございますけれども、例えば、高速道路の工事におけます遮水壁あるいは汚染土壌封じ込めということなどで広く使われているということでございまして、例えば具体的な例では、首都高の橋脚の工事あるいは豊洲新市場における土壌汚染防止対策といったところでの使用を我々としては認識してございます。

馬淵委員 国内でもこのように事例が多数あります。また、米国ではロッキーマウンテンの兵器工場、これは米軍の核兵器の工場ですが、そこで使われた実例などもございます。このように、在来工法なんですね。在来工法で、極めて汎用性の高い工法です。

 もちろん、先週の金曜日にも私は東電の社長とお話をしましたが、当時は、他の工事との干渉ということが議論でありました。しかし、これは施工の段階に考えればいいことであって、繰り返します、フィージビリティースタディーを行うのであれば同時に検討すべき課題ではないかということです。

 お手元には9で、済みません、私の事務所でつくりました簡便な図なので御容赦いただきたいですが、今この凍土壁の設置を検討し、進めていくというのであれば、まさに第二壁です、その外側に、七年後に入れかえるなどという話ではなく、第二壁の検討も同時に行うべきではないか。私はこのことを強く、当時、二年半前にかかわった者として強くこれは申し上げたい。

 大臣、このように、先ほど来、重層的にやるんだというお話もいただいて、これからまさにフィージビリティースタディーだというお話でありましたが、ならば、繰り返しますよ、リスクの過小評価につながりかねない凍土壁に対して、第二壁の構築というものも、実は、事後の策、次善の策ではなく同時に検討すべきではないか。大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 この報告書、資料でいいますと八ページに書いてあることをよくごらんいただきたいと思うんです。

 「ただし、」から始まる文章のところであります。「凍土による遮水壁は、設置後も長期間にわたって安全面を含め万全な現場体制による維持・管理を続けていくことが必要であり、将来的に、地下水の流入抑制策に対する緊急性・重要性が低下して来た時期(例えば、格納容器の補修が完了し、建屋内の汚染水が完全に取り除かれ、建屋内の除染が完了した時期(平成三十二年頃を予定)など)には、比較的高い遮水能力を持ち、」ということで粘土方式の話が出てくるのでありまして、遮水能力を含めた今の総合的な検討によりますと、凍土方式を採用するのが妥当であろう。

 ただ、それにつきましては、先ほども申し上げたように、フィージビリティースタディーもしっかりやっていきます、そして、効果があらわれない場合については、多重的な追加的な対策もとっていきたい。粘土方式にどこかで切りかえる、この場合は、ある程度汚染源も取り除かれて、現場の状況、若干水が入っても大丈夫なような状況、こういったことが起こった場合には粘土方式にかえるということも検討したらどうですかということがここには書かれているということだと思います。

馬淵委員 私も、その報告書を何度もよく読んでいますから、理解しているつもりです。報告書にはそのように書かれている。しかし、繰り返しますよ、この凍土方式に対する脆弱性というものを本当に否定し得るのか。それはFSでやるというお話ですが、ならば同時に、私は、第二壁もFSの中で検討すべきではないかと申し上げているんですよ。

 先週の金曜日も、ALPSが稼働を始めました、ようやく。しかし、その二十二時間後には停止です。どうも原因はゴム製シートが詰まったとありましたが、想定外のリスクでは済まないことがやはり起き得るんですね。ですから、私は、かねてより、リスクの過小評価はだめなんだと言い続けてきたんですよ。今回も同じことなんです。

 大臣、対策委員会でやった、その報告を受けてやるんだ、そうではなくて、踏み込んでいくしかない、私はそう思います。大臣が、国が前面に立って策を講じると強い意思を冒頭にお示しいただいたのであれば、第二壁の検討、これをぜひ進めていただきたいということを改めて私は提言としてお願い申し上げますが、いかがですか。再三で恐縮ですけれども。

茂木国務大臣 先ほど来申し上げているように、やりませんとは言っておりません、私は。一度も、やりませんとは言っておりません。

 今の段階で、アクションプランの中には凍土方式というものが盛り込まれております。これまでの検討では、それが最も適切であろう。ただ、フィージビリティースタディーを行っております。

 同時に、我々としては、今のアクションプラン、このもとで問題の解決を進めていきたい、このように考えておりますが、それが効果を示さなかった場合、さらには、潜在的なリスクはさらにないのか、こういうことにつきましてもこれから二カ月間かけて取りまとめを行うというわけでありますから、御提案の点を否定しているつもりは全くございません。

馬淵委員 ありがとうございます。

 二十七日の、まさにこの対策委員会で出された多重の防御、さらなる対策というのは、私が繰り返し申し上げてきたことをしっかり受けとめてくださった結果であると思っています。

 そして、今、否定はしませんとおっしゃいました。ぜひ、この第二壁については、これから少し議論させていただきますが、さまざまな課題がありますが、これを全く無視するようなことの決してないように、このことは強く申し上げておきたいと思います。

 その上で、この第二壁、設置を行おうとすると、やはり費用負担のあり方というのが大きな課題になります。

 この費用負担のあり方については、政府は、先ほど大臣もおっしゃいましたが、九月十日の閣議決定で、一般会計からの汚染水処理対策事業費として、技術的難易度が高く、国が前面に立って取り組む必要があるという課題については、この凍土壁と、あとはALPS等々なんでしょうが、これについては国費を投入すると。予備費の利用ということで二百五・七億円、これは閣議決定をされました。まさに政府は、技術的難易度が高いという基準に当てはまるということで確認をしていくということであります。

 そして、今後、このような対策を幾つか講じていく中で、事故収束に向けた中で、国費投入のあり方、これがやはり問われてくると思うんです。

 私は、この技術的難易度というのは非常にキーワードだと思っています。無尽蔵に国費が投入されることがあってはならない、当然ながら国費を投入してでも全面的にやらなければならない、このジレンマに陥らないようにということで、慎重にこうした言葉を書かれたんだと思います。

 もし今後さらなる事故収束の対策を打とうとしたときに、実は、この国費投入のあり方には、加えて、東電の株主責任あるいは銀行の貸し手責任、さらには救済スキームの見直し、国と東電の役割分担や、東電の処理を含めた立法措置の検討、こうしたところにまで踏み込んでいかなければならない課題があるということは皆さん方にも御認識いただけるかと思います。

 その上で、今回、このような状況で、技術的難易度の高いものに限るとされている。しかし、もちろん出し方はいろいろあるのかもしれません、原賠支援機構のスキームを見ますと、融資や株式引き受け、社債の取得などのお金の出し方もありますが、現状、国が前面に立って国費を投入していくという仕組みを考えれば、やはりここは、法律の見直しということも当然ながら必須課題になってくる可能性がある。

 そこで、大臣、10の資料をごらんいただきたいと思いますが、民主党政権のときにつくったものです、原子力損害賠償支援機構法、原子力損害賠償法とあわせて原賠二法と呼ばれる、支援機構法の附則第六条であります。

 この附則第六条には、政府は、この法律の施行後できるだけ早期に、中略しますが、原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束等に係る国の関与及び責任のあり方等について、これを明確にする観点から検討を加えるとともに、組織の整備について検討を加え、それに基づいて、賠償法の改正等、この賠償法とあるのは、原賠法のみならず、改正等でありますから、これらは「等」でこの支援機構法も読み取れるはずであります、必要な措置を講ずるものとする。そして、政府は、この法律の施行後早期に、原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担のあり方等を含め、必要な措置を講ずるものとする。

 何を申し上げたいかというと、第二壁の検討、通常の在来工法を含めたさまざまな施策を打とうとするときに、このような緊急的な予備費の対応ということは困難になり得る。であるならば、当然ながら、この支援機構法も含めて、救済スキームを含めて見直しを考える必要がある。もう既に法定では検討するということが書かれていますから、検討はしなければならない課題だと思います。

 このような状況の中で、附則六条がございますが、これらをどのように進めていくのか、大臣はこの法改正に対するどのような御見解をお持ちなのか。きょう早朝の通告で大変申しわけございませんでしたが、これに関しては施策を講じていく上で重要な観点でありますので、大臣、その御見解をお答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、基本的な認識から申し上げますと、廃炉についても、汚染水対策、事故の収束については、炉の設置者であり、そしてまた現場に精通し、これまでもさまざまな作業を行ってきた東電に実施主体としてしっかり仕事をしてほしいと考えております。

 東電が行うべき廃炉、そして汚染水対策につきましては、九月十九日、総理が現地を訪問した際に、福島第一原発の廃炉に向けた安全対策に万全を期すため、現場の裁量で使える十分な資金枠をまず確保することについて東電に要請し、東電の側からも、引き当て済みの一兆円に加えてさらに十年間で一兆円の支出枠を用意する、こういう回答があったわけでありまして、まずはその支出枠を適切に使って実行していくということが必要だと思っております。

 そして、原賠法の附則の六条の関係で、まず、国の関与及び責任のあり方等について検討を加える、こういう規定も踏まえて、国としてしっかり前面に出る。その分野については、技術的に難易度が高く、抜本解決のボトルネックになっている分野について、国がしっかりと前面に出て、とるべき責任、果たすべき責任を果たしていきたいと考えております。

 また、賠償法の関係、こちらの方でありますが、機構法の資金枠の中でまずは速やかな賠償を行う、これが基本であると思っております。そして、賠償法の改正等の抜本的な見直しを初めとする必要な措置、これにつきましては、我が国エネルギー政策全体の検討のあり方であったりとか、そこの中における原子力の位置づけ、さらには現在進んでおります福島での賠償の進捗状況等々を勘案しながら総合的に検討してまいりたい、そのように考えております。

馬淵委員 九月二十五日の新聞でも、紙上で私と並んで恐縮ですが、大臣の御見解ということで、今おっしゃったことを述べておられますね。確かに、全体の中で議論しなければならない、おっしゃるとおりなんです。

 しかし、繰り返し申し上げますが、この予備費の投入等、国費を投入していくということについては、もう今のスキームではやはり限度があるのではないか。逆に言いかえれば、株主責任あるいは貸し手責任を含めた、東電のあり方、国の関与のあり方を含めて、抜本的な見直しというものが実は求められてくるのではないか。今すぐとは申し上げません。しかし、重要な議論の対象であるということ、これについて、大臣は十分その御認識がおありだということは私は受けとめました。

 そして、今後、この委員会、あるいは他の、予算委員会も含めてさまざまな場で、事故の収束とは、一方でこの支援機構法も含めた、東電のあり方も含めた議論が当然ながらなされるのである、なされることがこれは道筋として避けて通れないということを私は最後に申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 東日本大震災、東京電力の原発の事故から二年半が過ぎて、過日の報道でもありましたとおり、宮城、岩手では震災瓦れきの処理状況が格段に進んでいる、仙台市では終了したという報道もなされた中で、一方で、私も福島県でありますけれども、福島県においては処理が進んでいない、また原発事故災害はまだ収束をしていない、現在進行形の災害であるということで、そういった段階において、政府が汚染水処理を初め国が前面に立ってこの対応をしていくということは、これは大変ありがたいことであります。

 ただ、これまでの二年半の経過、政権が民主党から自民党にかわったという背景の違いはありますけれども、福島県民としては、とにかくしっかりと成果を出していただきたい、結果を出していただきたいというのが正直なところでもあります。

 また、こうしたさなかに二〇二〇年の東京オリンピックが決定をされた。そのとき総理はレセプションで、東京は福島から二百五十キロ離れているというのは、まあ我々福島県民ものみ込みましたけれども、それは何か福島県が追いやられたような感じを多くの県民が持ってしまったということも事実であります。福島自身も安全だというようなことを国際的にうたっていくことこそが、本来の事故収束、またはオリンピック開催に向けて国際的な信用を取り戻していくことになるというふうに思っております。

 そうしたさなか、この汚染水問題については、国家として、非常事態であるという認識のもとに国が前面に立つということでありますけれども、今後の具体的な対策については、先ほども馬淵委員の議論の中にもありましたけれども、想定外ということを想定外に置かなければいけない。

 あり得ないことが起きたということを言わない、言わせないという状況をつくっていかなければなりませんから、今後は、そうした汚染水対策だけではなくて廃炉といったものも、また各分野においては多重的に、多層的に、しかも具体的に、やります、国が前面に立ちますという、かけ声だけではこれは福島県民はもとより国内外の信頼も得られませんので、具体的にしっかりと情報公開をしながら工程を示していくということが必要だというふうに思います。

 そうしたさなか、安倍総理は、先日、この汚染水漏れをめぐって、二〇一四年度の予算編成で優先的に予算を配分する特別枠設定を検討するという考えを示されました。そこで、このおおよその予算額や新たな対策について、現時点での具体的なものをお示しいただきたいと思います。

糟谷政府参考人 汚染水の処理技術に関します財政措置につきましては、まずは予備費を活用して、技術的難易度が高く、国が前面に立って取り組む必要があるものについて早急に事業に着手するよう準備を進めてきております。予備費の使用額につきましては、約二百五・六億で閣議決定がされております。

 現時点において、この予備費の対象に二つの事業があるわけでございますが、凍土方式の遮水壁の構築に係る事業費全体は約三百二十億円程度、より高性能な多核種除去設備に係る事業費全体は約百五十億円程度、合計四百七十億円程度を見込んでおります。二百六億円ほど予備費で閣議決定をいただきましたので、残りの事業費は約二百六十億円余りになります。

 これをどうするかということについて、また、今後、予防的、重層的な対策を検討していく中で、必要に応じて生じるさらなる対策があった場合にも、今後の予算編成過程において財政当局と必要な調整を行っていくということでございます。

 現時点では、四百七十億円程度の事業費、そのうち約二百六億円を閣議決定しておるということでございます。

小熊委員 その四百七十億云々はもう既に広く県民も国民も承知をしているところで、今ほども議論がありましたけれども、その遮水壁についても有用性がどうなんだろうというところ、また、ALPSを初め多核種除去設備についてもまだまだこれから整備をしていかなければいけない、技術的に確立していないものもたくさんあるという中で、さらなる特別枠というような印象を私は持っているんですね。

 四百七十億はとりあえずということでありますから、これをしっかりと今後新たな年度の中で、大臣、ぜひとも、やってみなければわからないというものも確かにあります。技術的な議論をしながらも、やってみて変わるものもありますけれども、やはり、多くの国民また海外に対しても、これならば信頼が置けるから、これをきちっと実行するのを見ていこう、任せていこう、そういう信頼のある予算づけ、それが私は総理の言った特別枠だというふうに思うんですよ。四百七十億というのは当面の予算ということであって、今後の、本当に国が前面に立つという部分については、この四百七十億プラスアルファのしっかりしたものがなければいけないというふうに思っています。

 この特別枠について、大臣、どうですか。何が起きても対応できるんだ、そして具体的にしっかりと予算づけをしていくんだ、そういう枠が示されるんですか、今後。

茂木国務大臣 福島の再生そして復興、それにも絡んだ廃炉・汚染水対策、安倍政権として最優先の課題としてこれまで取り組んできました。これからも取り組んでまいります。そこの中で、国が前面に出て行っていく必要がある、そう既に明らかになっている事業につきましては、凍土方式によります遮水壁の問題、そして、より高性能な多核種除去装置、四百七十億、予算はしっかり確保してまいります。

 そして、先ほど申し上げましたが、これから予防的な対策、重層的な対策をとっていく。予防的な対策というのは、今後考えられるあらゆる潜在的なリスクを洗い出してみよう、それに対する対策をどう打っていくのか。そして、重層的な対策というのは、もし今アクションプランの中で行おうとしている対策が十分な効果を発揮しない場合に、バックアップとしてどういう対策が考えられるのか。それにつきまして二カ月をめどに結論を出してほしい、当面の取りまとめを行ってほしいと汚染水処理対策委員会の方に私の方からお願いをしてございます。なぜ二カ月か。来年の予算に間に合うようにいたします。

小熊委員 ぜひ、しっかりとしたものが出されることを期待申し上げたいと思いますし、その際には、国が前面に立つと言いながらも、国と東電との責任の分担、また指揮系統がばらばらになってはいけませんから、そうしたことも整理をしながら、また、その予算はどこまで国が出して、一方で東電が出すものもあるとは思いますから、しっかりとしたそうした整理がされるように求めていきたいというふうに思っております。

 次の質問に移ります。

 この汚染水の情報公開のあり方については、選挙中のこともありましたので、いろいろなうがった見方、いろいろな見方もありましたけれども、改めて確認をさせていただきます。

 まず、原子力規制委員会にですけれども、この汚染水の海洋流出、いわゆる開渠部分における放射性濃度の上昇を検知したという公式報告を東電から受けた正確な日付をお聞かせください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 原子力規制庁におきましては、まず六月十七日の日でございますけれども、このときに、東京電力との面談におきまして、東京電力が掘っておりました観測井、井戸の濃度が上昇した、こういう経過の報告を受けてございます。

 この内容につきましては、六月十九日の原子力規制委員会、これは公開で行っておりますけれども、こちらに報告してございます。

 それからもう一つは、護岸付近の前面の海の部分でございますけれども、ここの海におけますトリチウムの濃度がこれまでよりも上昇したという報告が、六月二十四日の日にまず東京電力自身が公表してございまして、その翌二十五日には原災法に基づく報告がございました。

 この内容につきましても、翌六月二十六日の原子力規制委員会、これも公開で行われておりますけれども、こちらに報告してございます。このような形で、報告を受けたものは規制委員会に報告し、公開をしているという状況でございます。

小熊委員 今まで明らかになりましたとおり、海洋流出に関しては、二十二日の発表まで時間差があるんですね。

 金曜日にこの委員会での質疑でもありましたとおり、東電側の言い分としては、しっかりとした情報を開示しなければいけない、データの整理に時間がかかったということと、あとは風評被害といったものを恐れた部分があるという答弁もありました。

 実際、原発事故が起きてからじゃなくて、これまで私はほかの委員会でも、参議院時代でもやってきましたけれども、二〇〇二年に東電はデータ改ざんと事故隠しをして、二年間かけて、私は当時福島県議会議員でありましたけれども、東電と当時の保安院の方々を呼んで、県として、県議会として検証させていただいてきた中でも、東電は情報を小出しにする、ある意味では不都合な真実は隠していく、そのような状況が散見されてきたわけです。

 もういいかげんにしてほしいという状況の中で、この二年半にわたる経過の中でも、やはり何だかんだ理屈をつけて、情報がおくれました、慎重を期しました、何々をしました、そんな状況が続いているんです。

 その当時、データ改ざん、事故隠しのときに、当時の勝俣社長は、データを隠すことは罪だけれども、罪であることは言うまでもなく、情報の公表がおくれることも罪だという意識のもとで企業の体質改善をしますと言ってきたんですね。ところが、先週の金曜日の東電の社長の答弁では、これを踏まえて新しい体制をまたつくっていきますと言っていたんですけれども、結局、この十年間も何もしてこなかったんですよ。今また新たに情報公開について体制をしっかりしていきますと言っても、またか、今までできなかったじゃないか、今後も本当にできるのかと。

 風評被害というのは、逆に後出しにした方が広がるんです。やはり、的確なデータは出さなければなりませんけれども、迅速にするということを念頭に置けませんか。東電側に答弁を求めます。

相澤参考人 お答えいたします。

 今回の七月十九日から二十二日の件、あるいは六月の十九日から二十二日までの件、私どもといたしましては、反省するべき点が多い、このように考えております。本当に、御心配をおかけした点についてはおわび申し上げます。

 我々としては、非常に事の重大さというものをついつい先に配慮してしまいまして、その根拠がはっきりとするまで、確実なデータが得られるまでということがついつい先行してしまった、これが問題であったというふうに思っております。

 冒頭より、汚染水が、海洋といいましょうか港湾の中に流出していないとは申し上げていない、ただ、流出しているという明確なデータがないというところに逡巡してしまったところが反省点であるというふうに考えております。

 今後は、迅速でかつ率直なデータの開示ということ、それについて我々として、十分な解析が必ずしも行われていなくてもデータとして御報告する、公表してまいるということを第一の原則といたしまして、対応してまいりたいというふうに思います。

 そういったことも含めまして、この福島第一原子力発電所に私も常駐をいたしまして、その辺のことを含めて指揮をとってまいりたいというふうに考えております。どうかよろしくお願いいたします。

小熊委員 数年前にも聞いたような言葉です、はっきり言って。これは福島県の県議会の議事録にも残っていますけれども、当時の役員の皆さんは同じようなことを言っていましたよ。

 では、政府として、今言ったとおり、間違った情報は出しちゃいけないんですけれども、迅速性という意味においては、本当に後出しが続いていますから、こういう状況では、とても信頼を得られないということで、改善されませんよ。

 その点について、七月二十二日の公表の前に、政府としても、いや、もっと早く公表しろよと、土日にかかったのでなんて先週の答弁もありましたけれども、関係ないんだ、そういう判断とか検討はされましたか。政府としてどうですか。

赤羽副大臣 お答えします。

 まず、今回の汚染水の海洋流出の件、七月二十二日に東電がこの件を発表したことにつきましては、私たち、その説明を受けたのは当日の朝でございました。

 東京電力からの発表の経緯につきましては、先日の社長の答弁にもあったと伺っておりますが、データの開示は大変遅くて極めて遺憾であるということを申し上げ、加えて、こうしたことが遅滞なく東京電力内で共有され得る組織体制を整えることと、加えて、新しい事実があれば迅速に公表するとともに汚染水の流出防止に係る対応を迅速かつ確実に行うよう東京電力を指導したところでございます。

 ただ、他方、早く事実を出すことを重視する余り、事実の全体像が正確に理解されず、かえって風評被害につながっているとの指摘もあり、正しい理解のための情報発信等に関する取り組み強化も必要と考えておりまして、この九月三日に示された基本方針のもとに、現地におきましても、政府、関係省庁から駐在者を増強するとともに、政府、関係省庁そして東京電力、また規制庁等で構成する汚染水対策現地調整会議というものを九月九日に立ち上げることになりました。

 そこでは、現地で発生したあらゆる予兆については全て報告をする、そして考えられるリスクも全て洗い出す。その現地調整会議において、全ての報告された事象について、関係者が同時にそれを共有するという体制を構築したところでございまして、これを定期的に開きながら、これまでの愚は繰り返さないという決意で臨んでいきたいと思っております。

小熊委員 これまでの愚は繰り返さないと。この二年半だけではないですからね。この十年間、今副大臣が言われたようなことは、やっていきますと言っていたんです、東電としては。だから、これは、やれなかった企業ということを前提に、やってこなかった、努力できなかった、結果も出せなかったという前提に、ちゃんと東電をそこはしっかりと見ていってほしいというふうに思います。

 時間がないので、次に移ります。

 いわゆる浄化をやるために、多核種除去設備、もう三十五万トンもたまっていますから、これは来年度中に全部きれいにするといっても、今のALPSだけでは足りない。さらに高機能のものを、大量に処理できるものをつくっていかないといけないというのは、これも質問したかったんですが時間がないので、しっかりと具体的に工程表が示されることを今後求めていきたいと思います。

 それで、処理したとしても、トリチウムが取れないわけですよね。トリチウムの海洋放出について今後どうするのかということが決められなければ、処理したとしてもタンクの水はそのままになるわけですよ。毎日四百トンずつまたたまっていくわけです。

 このトリチウムの海洋放出について、今どのように考えているのかお示しください。

糟谷政府参考人 汚染水の処理につきましては、廃炉に関する中長期のロードマップにおきまして、基本的な考え方として三点、すなわち、建屋への地下水の流入に対する抜本的な対策を講じ、汚染水浄化処理システムを強化し、タンクの増設計画を検討するということにしております。

 これらの対策は地元関係者の御理解を得ながら対策を実施することとしており、汚染水の海への安易な放出は行わないという方針に変わりはございません。

 現在、国内外の英知を集めるべく、こうした技術的に困難性が伴うものについて技術提案を求めております。トリチウムについても、その分離技術ですとか長期安定的貯蔵方法などについて、幅広く技術提案を募集しております。これを受けて、今後どういう対策が可能か検討をしてまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 となれば、まだ見えていないわけですよ。汚染水処理もどうなるか、今設備がないという中で。二〇一四年度までにやると総理は言っているわけですから、これはある意味で国際公約ですよ、広く国民への約束だけではなくて。

 そういう意味では、しっかり処理ができることと、あと、今言われたとおり、地元の理解というのはなかなか大変です。専門家によれば、トリチウムは大して影響はありませんという御意見もありますし、いや全然違うんだという意見もある中で、理解を得るというのは大変な御苦労があるというふうに思います。だから、理解が得られなければ、トリチウム以外のものは除去できても、トリチウムが放出できなければ、処理水がタンクの中にたまったままで現状と変わらないということになります。

 あと二年ないわけですよ。一年半でやらなければいけないという状況ですから、これはしっかりこのトリチウムの扱いを、トリチウムも除去することを国際的に募集しているのはわかっていますけれども、取れない場合はどうするのかというのも示しておかなければまた後手後手に回りますから、ここも大臣、しっかりとリーダーシップを発揮して、この方向性をしっかり今後御検討いただきたいと思います。

 そしてまた一つ、総理が十九日……

富田委員長 いいですか。

小熊委員 いや、いいです。次に移ります、時間がないので。

 いわゆる五、六号機の廃炉を要請されましたけれども、福島県としましては、御承知のように、県としても県議会としても、県民の総意として、これは第二原発まで含めて全基廃炉ということをうたっています。そうした意味では、県の意向に沿った形の五、六号機の廃炉ということは、これは歓迎すべきことではあるんですけれども、では、第二原発についてはどうですか、廃炉について。

茂木国務大臣 まず、簡単に多核種除去装置について。

 今の技術で、現時点でトリチウムを除去することはできません。しかし、それ以外の放射性物質を除去することはできます。これによりまして漏えい等のリスクは大幅に下がる、このことは間違いない、このように考えております。

 その上で、今、福島第一原発において一番重要なことは、一号機から四号機の廃炉、そして汚染水対策をしっかり進める、それに集中できるような体制をつくる。この意味から、五号機、六号機の廃炉が妥当である、このような判断を現地において総理がされ、東電の方に要請をしたところであります。

 第二原発については、今後のエネルギー政策の全体の検討であったり新規制基準への対応、さらには御指摘がありましたように地元のさまざまな御意見も総合的に勘案して、事業者が判断すべきものと考えております。

 ただし、現在の福島県の皆さんの心情を考えると、福島第二原発について、現状で他の原発と同列に扱うことはできない、そのように考えております。

小熊委員 時間がありませんので。

 まさに、第二原発については、さきの参議院選挙で、自民党の福島県連は全基廃炉と入れているんですね、党本部は入れておりませんけれども。そういうことを公約しているんです、地元では。県内の出身の閣僚はそれを是としているわけでありますから、そんなにもったいぶらないで、これも言うべきだというふうに思います。

 あと、総理が発表したときに、事前に福島県にも立地町にも通告がなかったわけです。本来であれば、先に福島県や地元の町村に報告をして発表するということが、まさに今後の事故対応においても、福島県または地元町村との協力関係を得る意味では必要なことだったというふうに思います。

 今、東電のふぐあいも言いましたけれども、政府も含めて、これはパフォーマンスで五号機、六号機廃炉なんて言ってもらったら困るんですよ。本当に福島県、また事故処理、日本、そして国際的な信用といったものを含めてやるのであれば、当然さまざまな配慮といったものが必要だというふうに思いますし、政府においても今後こうした情報発信についてはしっかりと慎重を期す中で地元への配慮を含めてやっていただくことを求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 ふだんは厚生労働委員会で社会保障の議論を主として担当しておりますが、きょうは閉会中審査ということで、大変貴重な機会でございますので、若干お時間をいただいて、どうしても確認をしておくべきことについて、二、三お伺いをしてまいりたいと思います。

 きょうお伺いしたいのは、総理のコントロール発言もそうですし、それから予算のこと、あるいは原賠法について、いろいろあるわけですが、今、我が党の小熊議員から、七月二十二日の東電の発表ですね、汚染水が海に到達をしたということが断定できたという発表があった、この点について、要はもっと早くできなかったのかという趣旨のお話を申し上げました。

 きょうお配りをしている資料の四枚目の配付資料二は、東電のホームページの写しでございます。七月の二十二日、要すれば参院選の翌日に公表したことについて、いろいろとマスコミからも、また各方面から批判が出た。これに対して、東電が七月二十六日付で「汚染水の発電所港湾内への流出に関する公表問題について」という経緯説明の紙を公表してあります。

 この紙を私が読んだところの最大のポイントは、海に到達をしたと断定する根拠がなかなか見つからなかった、でも最後に判断した根拠になったのは、地下水位と潮位の相関が発見できたこと。この文書では「最終的な拠り所」と書いてございますけれども、私はこの整理はよくわからないですね。

 もともと地下水位というものは潮位に影響されます。大体、潮位よりも地下水位というのはちょっと高いんですね。当然、潮の満ち引きに応じて、雨が降るとちょっと混乱するそうですけれども、基本的には地下水位というのは潮位とある程度相関があるものです。ところが、地下水が汚染された、その汚染水が海に到達したその根拠が、何か潮位と地下水位の相関であるかのような整理が今世の中でまかり通っている。私はどうしてもこれが理解できない。

 きょう、ちょっと急遽ですけれども、東電の方にもお越しいただいているので、この点をまず御説明いただけますか。

相澤参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、潮位に左右されて地下水のレベルが上下するということがすなわち海の水、海水が遡上しているということには全くつながらない、おっしゃるとおりであります。

 我々としては、そういったことも含めて改めて総合的に判断し、これまでなかなか、これが流出の決定的な要因であるというのはなかったんですが、総合的に判断いたしまして、そういった流出ということを判断させていただいたということであります。

 あえて申し上げれば、海とのバウンダリーである矢板の前後で潮の満ち引きによって若干の出入りがある可能性はないわけではないんですが、繰り返しになりますが、遡上をしているという可能性は全くございません。

 そういった意味で、それが基本的な原因あるいは根拠で判断をしたということではなく、総合的な判断をさせていただいたということであります。

 以上です。

足立委員 総合的という説明は、もう反論の余地がない、反証不可能な物の言い方ですので、私は余り評価しませんが、東電がいつ何を根拠に海への到達を判断したか、この点はぜひまた、臨時国会が始まりましたら、過去のことですけれども大変重要なテーマですので、引き続き追及というか確認をさせていただきたいと思っています。

 もう一つ、本件について、先ほど小熊議員が、いつこれを知ったかというようなことがございました。

 私はきょう、経産省の関係の資料は手元に持ち合わせておりませんが、規制庁の、規制庁はもう今すばらしいですね、全ての会議を動画も含めて公表されている。

 ちょうど今焦点になっています七月の十八日と二十二日。ちょっとこれは配っていませんけれども、議事概要があります。これは大事なんですけれども、東京電力は十八日の打ち合わせで海への到達を確信した、こういうことです。違ったら後で言っていただいたらいいですけれども。ところが、この十八日の議事録には一切書いていないんです、規制庁がつくった七月十八日の議事要旨には。

 幾つか報告、説明を受けています。湾岸部の地下水の挙動についても説明をしています。しかし、それについて規制庁はコメントをしているという形跡はここには載っていません。むしろ全く別の、地下水のサンプリングの試料分析云々ということについて引き続きよろしくという言及があります。

 十八日にこの重要な問題が討議された形跡が十八日の議事録にはないんです。

 では、二十二日。二十二日に発表するに当たって、この文書、分厚い資料です、七月の二十二日、参議院選挙の翌日に、東京電力がこの資料を持って規制庁に説明に来た。これも、説明を受けた、規制庁からは二点ほど説明を求めたとありますけれども、これはきょうの議論とは関係ありません。

 さて、私は、この経緯についてもどうもよくわからないんですね。

 大きく言うと、六月十九日や二十九日あるいは七月の七日に、海に近い地点で高濃度の汚染水が見つかった。しかし、東電はこれに対して、最終的なよりどころにはならないと判断した、こう言っているわけです、さっきの紙で。その後、七月の十日に、規制委員会、これは島崎委員から、要は、潮位をちょっと見たら、地下水位を見たらという御発言があって、調べてみた報告が十八日になされた。その十八日の報告の際の議論が最終的な判断のよりどころになったと東電は言っている。しかし、東電と規制庁のその議論をした議事録にはそれが書いていない。

 非常に不可思議なことが多々あります。ただ、きょうはこれを実は時間をかけてやりたかったわけではないので、これは問題があるんじゃないかということを指摘だけしておきます。

 もっと重要な問題があと三点あります。

 まず、総理のコントロール発言でございます。

 直近のいろいろな世論調査でも、汚染水に関する総理のコントロール発言については、八割以上の方が違和感を覚える、妥当であるというのは一三%、こういう調査もございます。

 やはり、私も同様ですが、オリンピックの招致に係る選手たちのプレゼンテーションはすばらしかったし、感動もした、また東京に招致ができたことについては当然喜んでいる。しかし、この福島に係る総理の発言については多くの方が違和感を持っているし、私も同じでございます。

 福島で今制御されているか制御されていないか、この問題については、やはり何が起こっているのかということについては国民に明らかにしていかないといけないと思うし、また、総理がコントロールできているんだと発言されたその意味、経産省からそう言ってくれということだったそうですが、これは大変重要な問題ですから、確認をしておいた方がいいと思います。

 ただ、ちょっと結論を急ぐと、これはぜひ茂木大臣にもお聞きしたいですが、田中委員長にもぜひ御見識をお伺いしたいですが、汚染水が海に到達したということを計測するということは、私は難しいことだと思うんです。

 すなわち、もともと海は三つの要因で放射性物質があるんです。一つは、もともと福島第一原発が商用運転していたときの排水、これもいわゆる年間の総量排水基準の範囲内では出ているわけですね、それが一つ。もう一つは、一昨年の発災直後の、汚染という言葉がいいかわかりませんが、発災直後の影響。それから三つ目が、今回、今回だけじゃないかもしれない、一連の最近の汚染水の海への流出。この三つがあるわけです。

 きょう、配付資料の一枚目、二枚目、三枚目に英語の資料をつけてあります。二キロ圏、二十キロ圏、二百キロ圏のこれは数値だけですけれども、要すれば原発に近いほど数値は高いんです。それはそうですね、あれだけの爆発が起こったんだから。だから、三・一一で海の放射性物質の濃度はもともと高いんです。

 そういう中で、地下水、汚染水の海への到達云々ということについて、あるいは湾内、湾外ということについて、モニタリングをし、分析をし、そして検証するということは大変難しいことで、そんなにはっきりと影響はありませんと言える類いのものではないと私は思っているんですけれども、田中委員長はどうですか。

田中(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 海洋のモニタリングは事故直後から継続的に行われておりまして、今回、総理が発言されたことについては、モニタリングの結果、港湾の外においてはいずれの核種も検出限界未満である、大きな変化はない、もちろん土壌等にセシウム等が蓄積しているということはあるんですが、今回はそういった状況がないということで、総理はコントロールされブロックされていると御発言されたというふうに考えております。

 今後、この状態がどこまで続くかということの御懸念はあろうかと思いますが、これにつきましては、政府を挙げて汚染水の漏えいを防止するために全力を尽くしているところでございます。

 私どもとしては、その状況をきちっと監視するということで、モニタリングをきちっと継続して進めていきたいというふうに思っております。

足立委員 委員長、いろいろ政府に本件を聞くと、今おっしゃったように、総理はこういうつもりでおっしゃったんだろう、こういう話が必ず返ってきます。

 ただ、私が今申し上げているのは、湾外に影響がないとか、東電の社長も二十七日に言われました、湾外に影響はないんだと。あるいは、総理がコントロールされていると言った。こういう御発言は、規制委員会の立場からいうと、意味のある発言ですか。

 私は、意味のある発言というのは、田中委員長、例えば、コントロールできていると言うのであれば、コントロールできていないという概念もありますね。では、どうなったらコントロールできていないと判断できるのか。これは、さっき申し上げたように三つの影響でコンタミしている中で、とても難しい問題だから、現時点でコントロールができていない、できているという論争があります。東電の方が、役員ができていないと言ったとか、マスコミがいろいろ書いています。私はその議論は意味がないと思うんです。委員長はどうですか。

富田委員長 茂木経済産業大臣。(足立委員「規制委員長にお願いします」と呼ぶ)

 大臣を指名しましたから、まず大臣に答えていただいて、その後に。

茂木国務大臣 何がコントロールできているか。総理の発言は、ザ・シチュエーション・イズ・アンダー・コントロール。つまり、汚染水の影響、全体の状況はアンダーコントロール、制御をされているということで発言をされたわけでありまして、その根拠につきましては、汚染水の流出、これは湾内〇・三平方キロメートル弱にとどまっていて、外洋におけますモニタリングの結果、これは福島県沖を含みまして広い範囲で行っておりますけれども、測定できない値もしくは基準値以下、こういう状態であります。

 一方、この汚染水問題の抜本的な解決に向けて、アクションプランを実行し、さらには予防的、重層的な対策を立てていく、こういったことを進めております。

 こういった対策について全面的な見直しが必要になる、もしくは全体の状況が制御できない状態に陥る、この場合にはコントロールできていない可能性があるということであると思います。

富田委員長 田中委員長はいいですか。

足立委員 今大臣がおっしゃったのも、それは総理はこういうつもりで言ったんだ、だから俺たちはこうやっているんだ、こういうことですけれども、私が申し上げているのは、総理が、総理だけじゃない、今、総理のコントロール発言をめぐってさまざまなところで、コントロールされているんだとか制御されていないんだとか、いろいろな議論がありますが、余り意味ないよねと。委員長はどうですか。

田中(俊)政府参考人 大変お答えにくい御質問なんですけれども、コントロールできているかできていないかというのを今ここで科学的に議論する、定義するということはなかなか困難なことだと思っております。

 大事なことは、こういった汚染水の影響が環境、生活圏に影響しないようにするということが最も大事な、あえて言えばコントロールかと思いますので、そういう環境への影響がないように、間違っても影響がないようにしていくということで私どもも全力を尽くしていきたいと思っています。

足立委員 ありがとうございます。

 まさに非常に困難なことを言葉尻でやっても余り生産的ではないので、私は、コントロール議論はもうやめた方がいいという意味で、あえて、マスコミの方もいっぱいいらっしゃるので、申し上げたわけでございます。

 あと、もう時間がないんですけれども、どうしても予算のことと制度のことはやっておきたい。

 予算については、いろいろ質問も用意していますが、今回の二年間で四百七十億円、これはあくまでも研究開発予算ですね。経済産業省は、これまでも研究開発予算は投じてきています。ロボットの開発とかなんとかということで。あるいは、前面に立つとか一歩前に出るということも前からおっしゃっています。茂木大臣も、さかのぼれば三月七日の衆議院の予算委員会で、特に研究開発の部分については国が前面に出てしっかりした廃炉を進めていきたいと。それから、これは配っていませんけれども、二枚にわたって、総理、茂木大臣、さまざまな方が前に立つと三月から言い続けてきた。

 でも、今回の予算を見ると、今回の予算四百七十億で何か国が前面に出た、政府が前面に出たかのようなイメージで報じられていますが、私は、基本的に、研究開発予算を投じている限り、それは今までと変わらない、線引きは変わらない、こう感じていますが、茂木大臣はどうですか。

茂木国務大臣 まず、廃炉対策と汚染水対策、これは密接に関連をいたしますけれども、廃炉対策費については、既に平成二十四年度の補正予算におきまして八百五十億円を措置しております。実際にそれでこの事業が進んでいるわけであります。モックアップ施設をつくる。遠隔操作ロボットの実証を初め研究の分野にこれを使っていく。二十五年度予算におきましても措置をしております。

 今回の四百七十億、これにつきましては汚染水対策であります。そして、これは単に研究にとどまらず、実際に凍土方式の遮水壁をつくるんですよ。そして、高性能の放射性物質の除去装置、これは今のALPSと違って、実際に除去した後に出て沈殿をしてくる汚染物の量を圧倒的に減らす、そしてまた吸着力を圧倒的に上げる、そういった高性能の設備を具体的につくっていくわけでありますから、これは研究開発にとどまらない、具体的な対策、具体的な事業、こちらに踏み出しております。

足立委員 本当に確認なんですけれども、私が事務方から聞いているのは、今回の予備費も含めて、これは研究開発費だと。今大臣がおっしゃった点についても、これは実証事業だと。実証事業というのは、要は、まだ余りやったことがないから実証的にやるんだと。違いますか。これも研究開発予算ではない、これはいいですか、もう一回確認です。

茂木国務大臣 考えてください。凍土壁をつくることが単なる研究なんですか、具体的につくることが、足立さんの定義では。私は事業だと思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 私は、本当に今大臣のお言葉を伺って安心しました。

 心配していたのは、やはり研究開発バイアスなんですよ。結局、馬淵委員の議論もありましたけれども、いろいろな議論が当初から東電そして規制庁、経産省でありました。しかし、やはり予算制約があるんですね。予算制約というのは、別に量だけじゃない、予算の趣旨についても線があるんです。だから、そういう中で、もし本当に今回の予算、大臣がおっしゃるんだからそうでしょう、もう既に研究開発の線は取れているんだということであればこれはすばらしいことで、少なくとも研究開発バイアスはもう取れている、こういうことで確認できて本当に私は安心をいたしました。

 この予算について一言だけちょっと。

 馬淵委員が、二十七日の参考人質疑で、総理補佐官の時代からやってこられた地下バウンダリーについての資料を出されています。私はそれをきょうもう一度出す予定だったんですが、先ほどもめていました理事会でどうしても出せないということでしたのでもうございませんが、当時、東京電力は、馬淵補佐官から、これを国のプロジェクトにするという議論があった、当初は国交省予算で議論していた、こういう記述があるんです。これは金曜日に配られています。

 国交省はこの経緯を御存じですか。

赤澤大臣政務官 国土交通省としては、そのような示唆があったことは承知しておりません。

足立委員 民主党の当時のハンドリングというかマネジメントを云々してももう遅いんですが、当時、総理補佐官が東電とそういう議論をしているときにも、事務方は知らないと、役所は。馬淵当時総理補佐官は、これは国交省の予算でやっていくというけれども、これを国交省は知らないと、また細野原発大臣への引き継ぎもあったのかなかったのか。非常に残念な経緯があったことを改めて確認しておきたいと思いましたが、もう時間がなくなりました。

 最後に一点だけ。

 原子力賠償法、これは先ほども資料の提示がありましたが、法律にはできるだけ早期にと書いてありますが、そのときの国会の附帯決議で、できるだけ早期にというのは一年をめどとすると書いてあるんです。支援機構法の施行から一年をめどというのは、去年の八月です。

 本来、去年の八月に見直しておくべきであるという国会の意思に反してこれを放置したことが、国が福島第一そして汚染水対策に予算を投じる際の判断の足かせになってきたということをきょうは検証したかったんですが、時間がなくなりました。この続きは、ぜひ、臨時国会が開会されましたら、引き続きやってまいりたいと思います。

 本日はありがとうございました。

富田委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 本日は、福島第一原発の放射能汚染水漏れ事故について、三十分間質問をいたします。

 なお、委員会の開始が大幅におくれたために、原子力規制委員長の退席の時間が迫っておりますので、ちょっと順序を変えて、まず、先ほども少し議論がありましたが、事故の公表経緯について最初にお伺いをいたします。いわゆる参院選翌日の七月二十二日に汚染水の海洋流出が公表された経緯についてであります。

 東京電力が七月二十六日に公表した報告書によれば、東電は、七月十八日の段階で、地下水位について原子力規制庁に報告をしています。報告書によると、観測孔内の水位について説明した、その際、潮の満ち引き、潮位との相関が港湾内への流出を認める最終的なよりどころになり得ると判断したというふうに書いてあります。

 そこで、まず東電にお伺いをしたいのですけれども、七月十八日にどのような報告を規制庁にしたのか。特に、そのときに持参された資料については私も事前にいただいておりますが、加えて、口頭ではこの水位の連動ということも話したのではないか。このことについてお伺いをいたします。

相澤参考人 データに基づきまして、これは生のデータであったかと思いますが、水位が連動しているというお話は申し上げたという認識であります。

井坂委員 水位の連動の話もおっしゃったということであります。

 次に、規制委員長にお伺いをしたいのですが、規制庁としては、この十八日の段階で、どのような資料に基づいてどのような説明を受けたのか、そして何を判断したのかということについて伺います。

田中(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 七月十八日には、規制庁職員が東京電力と面談し、汚染した地下水の海への流出を念頭に、その経路に関して、海側トレンチの構造や、調査孔の地下水位と潮位の関係などの説明を受けました。

 しかし、海への流出に関する明確な回答はなくて、地下水位と潮位の関係性を示すデータ、これは生データが示されたわけですが、これについてまだ信憑性に疑義があるということで、後日改めて説明するように求めております。

井坂委員 水位の話もあったけれども、それについてはまだ生データで、信憑性に疑義があるので、また後日というお答えであります。

 しかし、七月十二日の段階で、むしろ規制庁の方から東電に、地下水位と潮位、潮の満ち引きの関係を調べるようにという要求が、これは規制庁の側からされております。また、その後、マスコミも含めて関係者全員で、地下水位がその当時最大の関心事になっていたということからすると、実際の水位の相関があるという話を受けてなお、よくわからないので後日ということでは、これは非常に緊張感に欠ける対応であったのかなというふうに聞かせていただきました。

 同じことを、今度は経産省についても伺いたいと思います。

 まず、東京電力さんにお伺いをするのですが、この報告を十八日の時点で経産省にするというお考えはなかったのかどうか、伺います。

相澤参考人 生データであって、我々としてももう少しデータを整理しなくてはいけないという認識はありました。ということで、その時点で経産省に御報告をするということはいたしておりません。

井坂委員 私が事前に事務方に伺った中では、十八日の段階で、東電さんは規制庁に報告に行きましたよと。行きましたよという報告については少なくとも経産省にしているというふうに伺っているのですけれども、その内容について、本当にただ行きましたよということだけを報告されたのか、それに加えて水位のこととか、少しこういう内容を報告したということも伝えたのかについて、中身をお伺いいたします。(発言する者あり)

相澤参考人 失礼いたしました。大きな声でお答えいたします。

 経産省に報告をいたしました。中身につきましては、どういうやりとりがあったとか、あるいはこちらからの説明の中身の詳細については御報告いたしませんでした。

 以上です。

井坂委員 詳細についてはということではありますが、本当に、行きましたよということだけなのか、それとも、これこれこれのテーマについて報告しましたという項目ぐらいは経産省に伝えたのかどうか。ちょっと改めて、申しわけありません。

相澤参考人 報告の中身につきましても、どんなものであったかということにつきましても、特に報告はしておりません。

 以上です。

井坂委員 次に、経産省に伺いますが、十八日の段階で東電からどのような報告を受けたのかについて、御回答を願います。

糟谷政府参考人 東京電力が七月二十二日に公表した内容について経済産業省として報告を受けましたのは、二十二日の朝、当日でございました。もちろん、その前に、規制委員会に出された情報については、これは当然公開ですので、知り得たということなのかもしれませんが、個別の説明を受けてはおりません。

井坂委員 十八日に規制庁に報告に行きましたよということについては経産省にも確かに報告があったけれども、またあるいは、そのときに提出された書類そのものについては経産省も把握していたけれども、十八日にどういう情報がやりとりされたかということについては、一切報告もなかったし、知り得る立場になかったという今の御答弁と理解してよろしいでしょうか。

糟谷政府参考人 少なくとも、規制庁に対して報告をされた内容については聞いておりません。規制庁に行ったということについて報告があったのかどうか、そこはちょっと現段階で確認できておりません。

井坂委員 行った報告があったかどうかも少し、報告された側は今、されたというふうに御発言があったわけですけれども、受けたかどうかわからないということであります。

 当時、実際まさに汚染水問題が最大の懸念となる中で、しかも規制庁の方から東電に、潮の満ち引きと地下水位の連動が最後の決め手ですよということがあった中で、まさに十八日に東電が海に漏れているなと確信を深めたと、東電内部の今回の報告では書いてあるわけでありますが、本当に経産省が二十二日まで何も知らなかったのか。今お伺いするとそういうことでありますけれども、これはちょっとにわかには信じがたい。もし事実であれば、また余りにも緊張感に欠ける対応だと言わざるを得ないというふうに思います。

 規制委員長がもうお戻りですので、順番を飛ばして、規制委員長にもう一点だけお伺いをしたいというふうに思います。

 今回の汚染水漏れ事故について、これまで起こった事故について、規制委員会にはどのような責任があるというふうにお考えでしょうか。

田中(俊)政府参考人 汚染水に限らず、原子力発電所一般の安全確保については、事業者が一義的に責任を負うべきものというふうに認識しております。

 当委員会は、原子炉等規制法に基づき、東京電力を規制する立場にあります。汚染水対策に関する内容を含め、廃炉に向けた具体的な計画として東京電力が作成した実施計画を審査し、汚染水対策への対応など留意すべき点を示した上で認可をしております。

 なお、今般設置されました廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議には規制当局として参加し、技術的、専門的な助言をしております。

 結論的に言いますと、規制庁が汚染水問題について責任があるということは認識しておりません。

井坂委員 まさに規制当局として、東電の計画を事前にチェックしていて、その計画では、あらゆる放射性物質を外に出さないという計画のもとに認めているはずではなかったかというふうに思いますから、それが実際、計画と違ってどんどん出ていたということでありますから、一切責任がないと言われてしまうと、これまた、そんな無責任なというような感じがいたします。

 ちょっともう時間でしょうから、規制委員会に対しての質問はここまでとさせていただきまして、次に、大臣に幾つかお伺いをしたいと思います。

 先ほど足立議員の方から安倍総理のスピーチについてということでありましたので、質問はもうここは飛ばしますけれども、こういうふうにおっしゃっている。状況はコントロール下にあることを保証します、これまでも、これからも、東京にはいかなるダメージもありません、こうスピーチでおっしゃった。また、十九日に総理は、現場視察後も、汚染水の影響は湾内の〇・三平方キロメートル以内の範囲で完全にブロックされていると。

 しかし、実際には、先日、二十六日には、汚染物質が外洋に出ないようにするシルトフェンスが破損していたりと、まだまだいろいろなことが起こっているわけであります。

 また、東京には影響がないと言われれば、東北の方々はお怒りでしょうし、また、これまでも東京にはいかなるダメージもないと言われれば、東京に住んでいる方々も、冗談じゃないと怒るに違いないわけであります。

 そのとおりだなとうなずけるような御発言の内容では到底ないと私は思いますが、ただ、既に世界じゅうに向けて総理が約束をされてしまったことでもあります。後々、世界の国々から、あれはうそだったのかと言われないためにも、国が責任を持って、スピーチに現実を合わせていくしか道は残されていないと考えるものであります。

 そこで、今後の国の責任範囲についてお伺いをしたいと思います。

 今回の汚染水問題において、今後、国が前面に出るということが非常に強調されておりますが、これまでと具体的に何が変わるのかということについてお伺いをいたします。

茂木国務大臣 総理のスピーチに状況を合わせなければいけない、それは私は正確ではないと思います。今の状態について、総理として責任を持って発言された。汚染水の影響、これはまさにアンダーコントロールである、制御されていると。

 実際に、この範囲につきましては、湾内の〇・三平方キロメートル弱、〇・二九八四だったと思いますけれども、そこに限られているということでありまして、外洋におきましてはモニタリングを継続的に行っておりますけれども、この結果は、測定できない低い値、もしくは基準を大きく下回る値。

 さらには、これは東京……(井坂委員「大臣、時間もありますので、ちょっと」と呼ぶ)いや、ただ、おっしゃっていることについてはちゃんと答えさせていただきます。水、そして食品につきましては、日本は世界最高水準の安全管理、安全基準を設けておりまして、厳格な検査、流通管理を行っているところであります。また、水や食品の放射線量は、福島も含めて、基準値の百分の一以下である、これが実際の計測の結果である、このように考えております。

 それから、国が前面に立つとどういうことが変わっていくかということでありますが、このたび、国も前面に立って、廃炉・汚染水問題の全体の進捗の管理、そして新たな技術開発に対する予備費も活用した資金的な支援、さらには国内外への正確な情報発信、こういうことに取り組む予定でありまして、国が明確なアクションプランを示す、そしてそのアクションプランについて国としても進捗管理を行うということによりまして、対策のより確実な、着実な実行が可能になると考えております。

 そしてまた、国が、廃炉に対する研究開発、そして汚染水について、技術的に難度の高い問題について対策を担うことによりまして、対策全体の加速化が図られる、このように考えております。

 さらに、汚染水の問題に係ります原因究明の結果や対策の進捗状況につきまして、正確かつ迅速な情報提供を行い、特に国際的にも、外務省等によりまして、こちらの大使館、さらには国際機関、そして在外公館への情報発信によりまして国内外の理解の促進に資する、このように考えております。

井坂委員 アクションプランの策定、それから進捗の管理を国が前面に出てやっていくというお答えでありましたが、ここでもう一問お尋ねをいたします。

 国が作成して進捗管理をするということでありますが、このアクションプランがそのとおり実現せず、また、狙った効果が出ない、いわゆる失敗に近い状態になったときには、これは誰が責任をとることに今後なるでしょうか。

茂木国務大臣 我々としては、アクションプランを着実に実行することによって、汚染水問題の解決の取り組みをしっかりと進めていきたい、そのように考えております。

 しかし、もちろんこれは、ある意味世界で初めての試みでありまして、大量の地下水、これは敷地内でいいましても八百トン、そして建屋付近でも四百トン、こういう大量の地下水が阿武隈山系から毎日流れ込んでくる、こういう地下水、さらに放射能、こういったものとの闘いでありまして、予防的、重層的な対策を講じることが必要と考え、今検討を進めているところであります。

 重層的な対策、こういう観点からいいますと、取りまとめた対策のバックアップを検討する。例えば、さらなる地下水の流入抑制策、こういったことも検討していく。

 予防的、こういう観点から申し上げると、あらゆる潜在的なリスクを潰していく。例えば、建屋から汚染水の漏えいがさらに起こらないか等々、さまざまな潜在的なリスクを潰していく。

 それらについて、まず国内外の知見を集め、汚染水の処理の委員会におきまして精査を行い、どういう対策が追加的に必要になるか否か、こういったことを二カ月をめどに取りまとめを行っていきたい。

 今必要なのは、政府、与野党、関係者を挙げて問題解決をするということでありまして、誰が責任をとるかよりも、解決をしていく、実行していく、このことが何よりも大切だと私は考えております。

井坂委員 今後の話なんですけれども。

 まさに今おっしゃった、プランニングは国が前面に出てされるということでありますけれども、一番最後に、実行、そして問題解決と力強くおっしゃいましたけれども、そこも国が責任を持ってやっていく、責任をとっていくということでよろしいでしょうか。確認です。

茂木国務大臣 この廃炉・汚染水対策、まずは、炉の設置者であり、そして現場をよく知り、これまでさまざまな作業にも当たってきた東電がみずからの責任を果たす、このことが大前提であります。

 しかし、初めての試み、世界にもない困難な作業でありますから、事業者任せにせずに、国も、必要な部分については前面に出て対策に取り組んでいきたい、そのように考えております。

井坂委員 この件、事前に事務方と議論したときは、国が策定したアクションプラン、また重層的、予防的というところも含めてでしょうが、失敗した場合、結果が出なかった場合は国に説明責任と解決責任があるんじゃないか、さらには、国に賠償責任はないかもしれないが道義的、社会的責任はあるのではという話もあったわけでありますが、こういう理解でよろしいでしょうか。

糟谷政府参考人 事務方がどういう御説明を申し上げたかちょっと承知しておりませんが、大臣の御答弁のとおりでありまして、国として、結果がしっかり出るように全力を尽くしていくということでございます。

井坂委員 あと、幾つか今後のことについて。

 先日、委員会で現場視察をさせていただきましたので、それに関連して二点ほど伺います。

 一号機から四号機までの建屋の浜側に、相変わらず大きな、海から押し寄せられた瓦れきですとか車が、二年半、まだ放置されている状況でありました。いろいろ目先のことに忙しくて手が回らなかったと東電からは説明を受けましたが、しかし、今後の浜側の舗装ですとか、水ガラスを打ち込むような作業に、その瓦れきの場所を避けて施工しなければいけないのだというような話も当時伺いました。

 あるいは、ちょっと時間がないのでもう一つまとめますけれども、免震重要棟、これも大変狭い中で作業しておられました。事故直後であれば、もちろんこういった野戦病院のような状況は理解できるわけでありますけれども、二年半ずっとあの中で作業しておられた。しかも、単に狭いというだけでなく、要は、現場に張りつける人員が非常に少ないままこの二年半事態が推移してきたということでありますから、大変問題を感じた部分でもございます。

 オフィスのこと、免震重要棟に関しては、先週の金曜日、東電さんの方から、今後、二〇一四年には仮のものを、休憩所も含めて建設する、二〇一六年には本格的な、八百九十名入れるものもつくるというプランをいただきました。

 本日、大臣にお伺いしたいのは、瓦れきの撤去であるとかあるいは現場のオフィスの拡張、作業環境、よりスピーディーに作業ができるような現場をつくっていくということに関しては、国がもっともっと後押しできることがないのかどうか。こういったことについて、一点お伺いをしたいと思います。

糟谷政府参考人 瓦れきの処理でございますが、これを撤去するに当たりましては、大型のクレーンが必要になります。今、サイトの中には七百五十トンのクレーンが二台、六百トンのクレーンが二台ありますが、これは、一号機のカバーをつけたり、または、四号機のたくさんあります使用済み燃料を燃料プールから取り出すための作業等にフル回転しております。

 要するに、瓦れきの撤去をするときに、こういうほかの作業をとめて瓦れきを撤去するのかどうかという問題になるわけでありまして、ただ他方で、二年半たっていまだにこんなに瓦れきを置いておくのか、そういう御指摘も多々いただいております。

 現在、ほかの作業との兼ね合いも考慮しながら、建屋の海側の瓦れきについて撤去がもっと早くできないものか、東京電力と相談をしておるところでありまして、なるべく早いタイミングで、しかし、ほかの作業に悪影響を与えることなく撤去ができるように、ともに考えてまいりたいと思っております。

 それから、新しい事務棟につきましても、関係者間の情報共有とか、トラブルなどに迅速に対応するために、作業環境を整えたり、現場マネジメントを強化するために、これの建設の前倒しが望ましいというのはおっしゃるとおりであります。

 他方で、先ほどのように、これを前倒しすることがほかの事故の収束作業にどのような影響があるのか、この辺もよく把握して、どれぐらいの前倒しができるのか、よく東電と相談をしてまいりたいと思っております。

井坂委員 ほかの作業の邪魔をするようであってはいけないということで、目先の作業を優先して、そういったいわば机を片づけるということよりも、まず、あいたスペースで急ぎの書類を書いていく。こういう仕事の仕方はこれまではやむを得なかったということかもしれませんが、しかし、これは事故後数カ月の話ではなくて、もう二年半たって、また今後何十年も作業していく場所のことでありますから、作業環境を整えるということについても精力的に進めていただきたいというふうに思います。

 時間がもうあれなので、最後の質問に移らせていただきたいと思います。

 事故後初めての委員会ですので、基本的なことからお伺いをしたいと思いますが、今回の汚染水問題の責任関係についてお伺いをいたします。

 まず、大臣にお伺いをいたしますが、今回起こった汚染水の海洋流出、いわゆる汚染水問題は、誰に責任があるというふうに御認識でしょうか。

茂木国務大臣 汚染水をめぐっては、例えば汚染水の流出につきましても、さまざまな原因も考えられます。直接の原因、遠因を含め、それは管理体制の問題であったり、さらには、先ほど申し上げたような、地下水の大量の流入をどうとめるか、こういう構造的な問題など、さまざまな問題があって、多面的な検証が必要だと思っておりますが、今最優先なのは、これらの課題をどう解決するかということなんだと思います。

 それに向けては、東電がみずから行うこと、そして国として前面に出て行うこと、国、東電が連携しながら進めること、このことにつきまして明確にアクションプランの中に書き込みをさせていただきました。

 そして、それを進める中で、さらなる潜在的リスクがないか、こういったものも洗い出し、また、そういったアクションプランの対策が本当に効果を発揮するのか、もし十分な効果が発揮できない場合のバックアップの対策、こういったことについても今検討を進めているところでありまして、いずれにしても、こういったことを含めて、総力を挙げて問題に取り組んでいく、これが最優先だと考えております。

井坂委員 事前に通告してお伝えしていることですので、もう一度お尋ねをいたします。

 今後のこと、一生懸命やっていかれる、あるいは今後の責任関係ということについては先ほどお伺いをいたしました。本日最後にお伺いをしたいと思っておりますのは、今回の汚染水海洋漏れは誰に責任があるとお考えですかということでありますので、そのことについてストレートに御回答いただきたいと思います。大臣に事前に通告をさせていただいているとおりであります。

茂木国務大臣 通告はいただいておりませんが、先ほど申し上げたように、汚染水の流出といいましても、直接の原因、それから間接の原因、複数の要因が絡まっている、その検証が必要であると考えております。

井坂委員 責任の細かい分担に関しては、総合的、複合的な問題であるので今後の検証が必要であると考えているというお答えでありました。

 それでは、経産省自身のことについてでありますが、御省は、今回の事件、事故についてどのような責任があるというふうに、反省を踏まえての今後の対策を練っておられるのか、これまでのことについてお伺いをしたいと思います。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 東京電力は、原子力事業者として、資源エネルギー庁の監督下にございます。また、廃炉を進めていくという責任を持っております。

 そういう意味では、経産省におきましても監督責任というものは果たしているわけでありますが、今回の汚染水、廃炉につきましては、今大臣の方から申し上げましたけれども、さまざまな要素が絡まっているわけでございまして、多面的に検証しながら、むしろ具体的な対策をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

井坂委員 これはどちらも事前に、大臣でお答えをお願いしますということでお伝えしている内容であったわけですけれども、なかなか直接お答えいただくのは難しいことでしょうか。

茂木国務大臣 別に、答えることが難しいということではなくて、事前にいただいたものと、いただいていないものはいただいていないもの。ただ、先ほどもお答えをいたしました。

 そして、今回の福島原発の事故、これは、振り返ってみますと、やはり、これまでの原子力政策の中で、シビアアクシデント、複合災害、こういったものを十分認識していなかった、また、規制にかかわる機関の独立性が十分ではなかった等々、安全神話に寄りかかっていた、こういう反省を我々は持っております。

 その反省の上に立ちまして、新たに独立した規制委員会をつくり、七月から規制委員会のもとで、世界でも最も厳しい安全基準、こういったものもつくり、それに適合するかどうかの審査が現在行われている、このように考えているところであります。

 そして、汚染水・廃炉対策、これは福島の復興とも密接にかかわってまいります。そこの中でこの加速化を進めなければならない。当然、東電が事業者として、炉の設置者として進めるべき部分はたくさんありますが、その加速化のために国としてもでき得ることはやっていく。

 こういう観点から、廃炉につきましては、我々が政権についたのは昨年の十二月二十六日でありますが、一月に策定しました補正予算におきまして、モックアップ施設、さらには遠隔操作ロボットの実証実験等々、八百五十億の補正予算をすぐに措置いたしたところであります。

 また、汚染水の対策につきましても、五月三十日に既に緊急対策や抜本対策を取りまとめ、そういった中で、しかし、タンクからの漏えいが発覚する、こういう事態を踏まえて、事業者任せにするのではなくて、技術的に難度が高く、そしてまた抜本解決のボトルネックになる分野については国が前面に出る、こういう方向から、凍土方式によります遮水壁の設置の問題、さらにはALPSの高性能化、こういったこともしっかり事業として進めるようにいたしております。

井坂委員 これは大事件ですから、世が世なら、経産大臣または東電の社長、こういったトップが事故の責任をとって辞任して、国費の投入、血税を使わせてくださいとお願いしなければいけないぐらいの問題だと私は認識をしておりますので、そのことだけ申し上げて、本日の質問を終わりにいたします。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 汚染水問題について、茂木大臣を初め政府に質問をいたします。

 この間、汚染水対策に対して、政府として、予備費等国費を使って、凍土方式の陸側遮水壁や、より処理効率の高い汚染水浄化処理設備の財政出動を決定いたしました。

 一方で、九月十九日、安倍総理の「廃炉に向けた安全対策に万全を期すため、現場の裁量で使用できる資金・予算の枠を確保すること」という要請を受けて、東電は、「これまでに手当てした約一兆円と同程度の支出が必要になっても対応できるよう、コストダウンや投資抑制により、今年度から十年間の総額として更に一兆円を確保してまいります。」と回答しております。

 そこで、お尋ねします。

 総理の要請どおり、廃炉に向けた安全対策に万全を期すため、東電がさらに一兆円積み増しして二兆円といたしました。ですから、凍土方式の陸側遮水壁とか、あるいはより処理効率の高い汚染水浄化処理設備についても、この二兆円の中から経費として東電が払えばいいのではないかと思うんですが、その点についてはどのようにお考えなんですか。

茂木国務大臣 この廃炉・汚染水対策、さまざまな事業がございます。アクションプランに盛り込んだ事業、これは全部お答えすると多分二十分ぐらいたってしまいますので割愛をさせていただきますが、そこの中で、役割分担、特に国が前に出て進めるべき、技術的難度が高いもの、そして、それをやらないことによって、それが進まないことによって抜本対策のボトルネックになる、こういうことについては国が前面に出るという形にいたしました。それが、凍土方式によります陸側の遮水壁であったり、高効率の放射性物質の除去装置であります。

 これは、単に大きくするということではなくて、例えば、当然、この除去の処理をしますと放射性物質の沈殿を起こす、化学反応によって沈殿をさせるわけでありまして、その量を大幅に減量するとか、吸着力を大幅に上げる、技術的に難度のかなり高いものでありまして、そういったことにつきましては国がしっかりと取り組む必要があると考えております。

 ただ、さまざまな対策があるわけであります。一つ一つは時間の関係で申し上げられませんが、東電は、既に引き当てた一兆円、そしてこれから十年間で積んでいく一兆円の資金枠、これを有効に活用して、そういった対策を速やかに実施に移してもらいたい、このように考えております。

塩川委員 その役割分担というのがよくわからないわけです。

 大臣がおっしゃったように、技術的に難度が高いもので、抜本的対策のボトルネックとなっている分野、こういうものに対しては国が前に出てやるんだ、国費、税金も投入しましょうということです。

 例えば、技術的に困難という、より処理効率の高い汚染水浄化処理設備についての公募要領を見ますと、もちろん減容化の話もありますよ。ただ、処理水に関する目標放射能濃度というのは、大臣は吸着量を圧倒的に高めるとおっしゃいましたけれども、しかし、この公募要領を見れば、ALPSと同程度の除去能力を有するものというのが要件なんですね。

 ALPSそのものも、実際に試運転もままならない、稼働にも至っておりません。そういう点では、ALPS自体が技術的に困難という設備になっているわけで、大臣がおっしゃるような、技術的に困難で、抜本的対策のボトルネックとなっている分野にこのALPSも入っちゃうんじゃないのか。東電が負担しているALPSの経費などについても、技術的困難という理由で国が負担するという理屈にもなっちゃうんじゃないのか。そういう点では、私は理屈が通らないんじゃないかなと思うんですが、いかがですか。

糟谷政府参考人 ALPSにつきましては、試運転、ホット試験を始めました後、一旦とまってちょっと御心配をおかけしましたが、きょう未明、午前二時半過ぎからまた再開しております。

 公募要領でございますけれども、放射性廃棄物の減量につきましては、現行の放射性廃棄物を八割以上削減するということになっております。それから、処理能力につきましては、公募要領上、具体的に、ALPSで処理ができる濃度というのを六十二の放射性物質について掲げまして、それと同程度でいいということではなくて、それ以下に除去可能な能力を有するものということを要件として求めております。

 こういうものは現段階で世の中に存在しないものでありまして、これまでなかったものをつくるというところで、難易度の高いものだというふうに考えておるところでございます。

塩川委員 ALPSの技術も、その時点では見通しが立たなかった、そういう話でもあるわけで、私が言いたいのは、こういった技術的困難云々という分野で国費を使うことになると、その先どうなってくるのかという話があります。

 資料を配付させていただきました。

 二十七日の汚染水処理対策委員会の資料ですけれども、その中で、資料の一枚目に「三、今後の検討の進め方」というのがあります。ここにありますように、(1)に、「技術的に困難性が伴うものについては、国内外の叡智を結集すべく、技術提案を求め」ていく、こういうふうにあります。

 この技術提案というものについてどのようなことをやるかというのが、一番後ろの四ページ、四枚目の真ん中、「二、技術提案の対象分野」というのが掲げられています。「汚染水問題への対応として、以下六分野について幅広く技術提案を募集」する、1汚染水貯留、2汚染水処理、3港湾内の海水の浄化、4建屋内の汚染水管理、5地下水流入抑制の敷地管理、6地下水等の挙動把握等々となっているわけであります。

 そうなると、技術的に困難性を伴う、難度が高いものということで、これらの技術提案を行うような対象分野についても、東電には経費負担を求めず、国が負担するということになりはしませんか。

茂木国務大臣 難しいといえば何でも難しいんだと思います。

 今回の福島第一原発におけます事故の処理、廃炉・汚染水対策、世界で初めて経験することでありますから、既に進めております海側の水ガラスによります地盤改良、これも難しいといえば難しいわけでありますけれども、炉の設置者であり、そして現場に通じ、さまざまな作業を担ってきた東電において行っているところであります。

 そして、今後の潜在的なリスクへの予防的な対応策につきましても、当然それは技術的に難度の高いものでありますけれども、そこの中で、東電が行うもの、国が行うもの、しっかりと仕分けをしていきたいと思っております。

塩川委員 仕分けをして、役割分担をして、国費も使うということは、そもそも国が汚染水対策に税金を投入するということが汚染者負担原則そのものに反し、汚染者である東電の責任を免罪するものではないのか。また、原子力損害賠償支援機構法に基づく総合特別事業計画で、汚染水対策を含む事故プラントの廃止措置の責任を負う主体として東電があらゆる手段を総動員し、責任に正面から向き合うという、これまでの基本方針も投げ捨てるものになるのではないのか。

 大臣に伺いますが、汚染水対策に税金を投入するということは、東電には汚染水処理能力、事故対応能力、当事者能力がないということを政府自身が認めるということではありませんか。

茂木国務大臣 何度も申し上げておりますが、一義的には、炉の設置者であり、現場に精通し、これまでさまざまな作業に取り組んできた東電に実施主体としての責任をしっかり果たしてほしい、このように考えております。

 国としても、アクションプランをつくり、さらには予防的、重層的な対策というものもこれから検討していく。そういうアクションプランの中で、東電の作業の進捗状況、こういったことについてもしっかりと管理していきたい、そのように思っておりますが、問題を解決する上で、技術的に難度が高くて、問題解決のボトルネックになるもの、これはやはり国の責任で除去していきたい、そう思っております。

 決して、東電に責任が全くない、東電は仕事をしなくて結構です、そういうことを申し上げているつもりは先ほどから全くございません。

塩川委員 政府は、汚染水対策の責任は東電にあるとしてまいりました。

 しかし、税金投入というのが、汚染水対策に東電が責任を負うというスキームそのものが破綻したことを示しているんじゃないのかということを私は申し上げているわけです。それなのに、事実上破綻している東電を存続させたまま、事故に何らの責任もない国民の税金を投入するというのは筋が通らないということを言っているわけであります。この点についてはいかがですか。

茂木国務大臣 先ほどから申し上げているように、事故処理の実施主体は基本的には東電だという話を申し上げているところであります。

 実質的に破綻している、破綻処理をお進めになりたいということなのかもしれませんけれども、会社更生法を適用したらどのような状態になるか。御案内のとおり、内外の機関投資家を初め、電力債が優先弁済になるわけでありますよ。それにはこの債権がまず払われる。それで、福島の方々や被害に遭われた方の賠償、さらには現場で本当に困難な作業に当たっている協力会社の債権、これが十分に払われなくなる可能性もある、そういったことも念頭に入れて検討する必要があると私は思っております。

塩川委員 原発事故被害者、福島の皆さんは、東電そのものが賠償の障害物になっている、こういう思いを強くしているんですよ。また、東電を存続させたことが、コスト優先で安全軽視の仕組みとなって、汚染水対策など事故収束でも障害物となっている。

 東電を破綻処理して、利害関係者の責任を問うて、国の汚染水対策を初め、事故収束等、賠償、除染に全面的に責任を果たす体制を構築すべきだということを私どもは申し上げてきているところであります。経営責任、株主責任、貸し手責任を問うべきだという点で。

 そこで、上田長官にお尋ねします。

 九月二十八日付の日本経済新聞に、首相が福島に赴く前日の十八日には東電の取締役懇談会に上田資源エネルギー庁長官が出席、一部に慎重論があった社外取締役に対し柏崎刈羽の再稼働の必要性を訴えたとされると報道されております。

 そこでお聞きしますが、この取締役懇談会に出席をされたのか、その場で柏崎刈羽の再稼働の必要性を訴えたのか。このことについてお答えください。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 私が東電の取締役懇談会に出席をしたのは事実でございます。

 その場におきましては、私の方から汚染水対策をしっかりやること等々についてお話をいたしました。東電の取締役、社外取締役の方々とさまざまな意見交換、情報交換を行わせていただきました。

 ただ、その具体的な内容は、懇談会の席上であるので、ここで申し述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。

塩川委員 いやいや、政府を代表して行っているんですから、政府の姿勢としてどうなのか。再稼働の必要性は訴えたんですか、訴えていないんですか。その点、もう一回答えてください。

上田政府参考人 政府の姿勢といたしましては、安全性が確認された原子力発電所については再稼働を進めていくというのが政府の一般論としての考え方であると承知しております。

 東京電力の取締役、社外取締役等々を含めた懇談会の中身につきましては、今申し上げたとおりでございまして、これは懇談ということでございますので、非常に非公式なさまざまな意見交換をさせていただいたということでございまして、その内容については差し控えさせていただきたいと思います。

塩川委員 ですから、エネ庁、経産省自体が再稼働に前のめりだということが、汚染水問題解決のために持てる人材、人的、物的資源を全て集中するというその妨げになるんじゃないのか。柏崎刈羽が再稼働になれば、当然そちらに人手がとられる。そうなれば、福一の対策に対しての人手が削られることになる。こういうこと一つをとっても、私は、再稼働の動きそのものが、汚染水対策を初めとした廃炉に向けた安全対策そのものをおろそかにすることになる、こういうことを言わざるを得ない。

 経産省、政府としてのこの原発再稼働の動きが汚染水対策の妨げになるということが今問われているんだと思うんですが、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 先日、東電の広瀬社長が、柏崎刈羽原発六号機、七号機の安全適合審査の申請を行ったと、この報告が、申請を行った日の午前でありますが、私のところに参りました。

 その際、私が一番強調させていただいたのは、安全審査は安全審査として、福島第一原発の廃炉・汚染水対策が全くおろそかになることがないように、これに最優先で取り組むように、このことは強く申し上げております。

塩川委員 再稼働になれば柏崎刈羽に人手がとられる、それが結果として廃炉対策に対する人材投入を妨げることになるのではないのか。この点についてはどうですか。

茂木国務大臣 電力会社、これは東電だけではなくて、さまざまな事業を行っております。電力の安定供給、そして低コスト化、さらには社内の合理化の話。

 東電の場合は、この福島第一原発の事故処理、こういう大きな問題を抱えているわけでありますが、では電力の安定供給はもう諦めていい、こういうことにはならないんだと思います。さまざまな重要課題について適切に資源配分を行っていく、同時に、そこの中で福島第一原発の廃炉・汚染水対策に最優先で取り組むよう指示をしておりますし、そのような体制をとっている、そう考えております。

塩川委員 最優先といいながら、再稼働を進めるということが、かえって、人手を投入することなどを含めて、最優先となるべき汚染水対策の妨げになるということについて、具体的に事実をもって反論ということはございませんでした。

 広瀬東電社長は、一昨日のマスコミのインタビューで、除染や廃炉費用について、一つの企業ではとても負担できないと、国の支援への要望をしているわけであります。これは昨年十一月にも東電としても表明されていたことですけれども、この除染、廃炉費用などを一つの企業ではとても負担できないということについては、大臣としてはどのように受けとめておられるんですか。

茂木国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、廃炉・汚染水対策は極めて重要な事業でありまして、福島の一日も早い復興再生のために関係者一丸となって進めなきゃならない、そこの中で、技術的に難易度の高い分野につきましては、国が前面に出てそういったことを進めてまいりたいと我々は考えております。

 何から何までちょっと一緒に議論されると困る部分がありまして、先ほどの東電の破綻の問題にしましても、では、共産党としては、そういう機関投資家、例えば外資系のファンドに対する電力債の支払いを賠償より優先するという考えに私には聞こえるんですけれども、そういうことなんですか。

塩川委員 私が質問しているんです。

 今の除染や賠償の問題についても、きちんとした政府としての姿勢についてのお話はございませんでした。今後大きな課題になってくるわけであります。

 日経の九月二十七日付に、融資の借りかえに関連して、金融機関は、再稼働できないなら電気料金値上げをしてほしいと東電を突き上げた、こういう話も報道されております。これが柏崎刈羽再稼働申請につながったという報道でありますが、私は、メガバンクがみずからの貸し手責任を棚上げして原発の再稼働を要求する、こういうあり方そのものが許されない、これが国民の声だということを改めて申し上げて、質問を終わります。

富田委員長 次に、宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、議題となっております汚染水問題への対応、また中長期的課題も含めて質問をさせていただきたいと考えております。

 今回の福島第一原子力発電所の汚染水問題は、特に、八月二十八日、国際原子力事象評価尺度で評価レベル3、こういう評価がされたということを契機に、やはり国際的にも注目をされているということであります。こうしたことも受けまして、当委員会としては九月十二日に福島第一原子力発電所の現場を視察するということで、私自身も参加をさせていただきました。

 その視察の際、特に過酷な状況の中で関係者の皆様が本当に真剣に取り組まれている様子を拝見させていただき感銘を受けたところでございますけれども、一方で、一つ一つ、目の前の課題に全力で対処するので精いっぱい、ぎりぎりというところなのではないかというイメージも逆に持ったところでございます。

 こんな中、九月三日には、政府の原子力災害対策本部が東京電力株式会社福島第一原子力発電所における汚染水問題に関する基本方針を出されまして、政府が前面に立って汚染水問題に当たる、こういう姿勢が示されたものと理解をしております。

 今回の国そして政府が前面に立つということについては、先ほど来お話がありますように、凍土壁の設置、新型多核種除去装置、これを国の事業として取り上げる、こうしたことが大きく報道されております。これは一つの柱ではありますけれども、私自身は、体制の整備、これが一つ大きな前進なのではないかなと感じております。

 お手元に、ちょっとA3の大きな資料を三枚お配りしておりますけれども、九月三日の基本方針が出される前の体制が一枚目、そして九月三日以降の体制が二枚目、こういうことであります。

 連携はとりつつも以前は東京電力に多くを任せておった、その部分を国全体として二枚目のように体制をつくって、一つは国際廃炉研究開発機構、内外の英知を集める、こういう役割を果たす機関をしっかり設けて、また、廃炉・汚染水対策チーム、汚染水処理対策委員会、こうしたことの連携で中長期的な大きな方針を策定して、そして東電に対して、下の方で、現地事務所等々を通じてしっかり指示をできる体制を整えた、このことの意味が非常に大きいというふうに感じております。

 そこで、改めまして、この九月三日の基本方針決定を受けて、国と東電のかかわり、また役割分担はどのように変化したのか、また、国として今後この枠組みを生かしてどうリーダーシップをとっていかれようとしているのか、大臣よりお考えを伺いたいと思います。

茂木国務大臣 先ほど来、どうしても、国の役割といいますと、質問が、凍土方式によります遮水壁の設置であったりとかALPSの設置であったりとか、そちらに傾きがちであったんですが、宮下委員御指摘のように、まずはきちんとしたアクションプランをつくり、国としてその進捗状況を管理していくことにより対策が着実に実行される、こういう形をとったわけであります。

 同時に、委員の方からお示しいただいたように、組織体制も抜本的に変えさせていただきまして、国際的な英知を集約するような体制もつくり上げました。

 同時に、原災本部のもとに、私をチーム長といたします廃炉・汚染水対策チーム、さらには、現場をやはり強化しなけりゃいけないということで、赤羽副大臣を議長とする汚染水対策現地調整会議を設けるとともに、局長級の汚染水特別対策監も新設をいたしまして、また経済産業省のみならず他の省庁の協力も得ながら体制を強化して実行していきたい、このように考えております。

宮下委員 ありがとうございます。

 あわせまして、今は国、東電の役割を中心にお答えいただきましたけれども、内外の知見を集めるという意味からしますと、原子力規制委員会また規制庁は、JNESとの統合もありますし、多くの専門家の方々を擁している、こういう意味では、やはりその知見も生かしていかないともったいないし、問題だというふうに思います。

 我々はチェックの立場で、離れたところで傍観させていただきますみたいなことはあってはならないというふうに思うわけですけれども、こうした観点から、規制委員会がこの新しい体制の中でどのような役割を果たして関与されようとしているのか、お答えをいただきたいと思います。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど茂木大臣から答弁させていただきましたように、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水対策につきましては、政府が全力を挙げて取り組んでいく、こういう枠組みができているところでございます。

 それで、私ども原子力規制委員会におきましても、今般設置をされました廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議、それから支援チームができておりますけれども、それぞれにまず原子力規制委員長が規制当局の立場から参画してございますし、それから現地の会議でありますとか汚染水の委員会、これは規制庁の職員、実際には私になりますけれども、参画をさせていただいております。

 御指摘のとおり、規制の立場でございますので、規制機関が持っております力、特に、所管をしております御指摘のような原子力機構とかさまざまな研究機関、JNESのような研究組織も持ってございますので、そういう専門的な知見、経験、こういったものを生かしながら、技術的な立場あるいは専門的な立場から、さまざまな観点から助言をしていきたいというふうに考えております。そういう意味での協力はしっかり進めていきたいというふうに考えているところでございます。

宮下委員 ありがとうございます。原子力規制委員会としても、しっかり役割を果たしていただきたいと思います。

 また、この三枚目の資料ですけれども、これは諸先生方にも配付されているものなんですが、これが一番大きいので、見やすいかなというふうに思います。汚染水対策のリスクの洗い出しということで、九月二十七日に政府の汚染水処理対策委員会が出された資料の一ページということでありますけれども、このように体系的、大局的にリスクの洗い出しが行われたというのは高く評価されるべきことだと思います。

 同時に、この全体図を見ますと、改めて汚染水処理問題がさまざまな課題と関連をして、さらに予防的、重層的な対応、また将来的なリスクまで考えると広範囲の対応が必要なんだということを再認識させられたペーパーであります。

 こうした広範な対策事業がある中で、先ほど言及しました、また大臣も言及されましたが、この赤い枠で囲みました、上の方が、より処理効率の高い浄化処理施設による汚染水の浄化、新型の浄化装置、真ん中辺にあるのが建屋の周りを囲む凍土方式の陸側遮水壁、この二つを今回予備費の対象事業として取り上げられたということであります。

 私は、これだけのやるべきことがある中でこの二つが選ばれた、それはきょうも累次先生方の御議論にありますけれども、やはり内外の英知を結集して、そしてこれを成功させなければいけない中核的技術であること、また難易度が高いということなのかなというふうに考えておりますけれども、この二つを選び出した考え方について、改めてお考えを伺いたいと思います。

 また、これらの事業実施に当たりましては、一応、大きな方向性はこういう機能、こういう処理ということは決まっておるわけですけれども、実際にその具体化に当たっては、多くの技術、知恵を集めて最善の処理方法を見出していく努力がやはり本当に大切だというふうに思います。

 この事業開始までにそうしたことも考慮されるのか、今後の手順、国としてこの二つの事業にどのようにかかわっておられるのか、改めてお伺いをしたいと思います。

菅原副大臣 宮下委員御指摘のとおり、目下の最優先課題であります汚染水の処理につきましては、これまでの経緯を見ますれば、どうしても後手に回りがちな東京電力に任せておったのでは、さらにスピードや決断等、非常に心配があります。だからこそ、茂木大臣のイニシアチブで国が前面に出て、そして予防的かつ重層的な汚染水対策を迅速かつ確実に実行していくということが、私どもの今のスタンスでございます。

 大きく二つありまして、まず、汚染水の増加を抑制するためには、地下水を汚染源に近づけない。これは、先ほどもお話あったように、一日に八百トンの水が一号機から四号機に、地下水が流れ出ている、日に建屋に四百トン。これは大変な水量であります、一日にその汚染水を四百トン容器に吸収したとしても。こういう状況をまず凍土方式の遮水壁によって遮断していく。これは粘土方式という議論もありましたけれども、遮水性が高いことが一つ、二つ目は工期が短い、そして施工エリアが最も小さくて済むといったこと。

 あわせて、汚染水の処理をするに当たりましては、汚染源を取り除く。これが三月に試験的に始めた既存のALPSではどうしても、御案内のとおり汚染水を処理する能力が不足することが判明をいたしたものですから、また固体の放射性廃棄物の増加も課題となっております。したがいまして、こうした滞留水の処理に当たって、固体として出る放射性廃棄物の大幅な減量や、いわゆる吸着剤の処理能力の大幅な向上、こうしたことで、いわば技術的に難易度が高いもの、あるいは高効率のALPSを新たに整備することといたした次第であります。

 お話がありました手続につきましては、九月の十一日から十月の一日、あしたでございますが、広く提案書を今受け付けております。各方面からいただいてございますが、こうしたものを外部有識者を委員とする技術審査委員会の場において審議をいただきまして、その中で最もすぐれた提案を選定する予定といたしております。

 なお、この事業開始後に当たりましては、定期的に事業の進捗状況等の報告を受けまして、国が責任を持ってその推移をチェックしていく、こういう考えでございます。

 以上です。

宮下委員 ありがとうございます。

 技術的な面についても少しお伺いをしたいと思います。

 お話によりますと、ALPS自体も増設を考えているということもお聞きしたんですが、そうしますと新型の多核種除去装置というのはALPSとは違うということなんだと思いますが、既存の処理設備とはどういうところが違うのか。素人ですので余り詳しいお話を聞いてもわからないかもしれませんが、どういうところが新しいのか、違うのかというところをもう少しお聞かせいただきたい。

 また、凍土方式については、累次、これで本当に大丈夫なのかという御議論もきょうの委員会でもありましたけれども、私が東電の皆さんに現地でお伺いしたところでは、やはり、地下水のハンドリングが、部分的に壁をつくっていくよりも、きちっと準備をして遮水を全面的に短期間にできるというようなことで、地下水のコントロールはむしろこの方がすぐれているんじゃないかというような御意見もありました。政府としてはどのように認識されているのか、お聞きしたいと思います。

 あわせまして、先ほど来お話しのように、この凍土方式、メリットはあっても、逆に、長年にわたって冷却液を循環させるコストがかかる、また配管でありますとかポンプの故障などのリスクを新たに抱えることになるという面もございます。そうしたことを考えると、他の方式への転換、またそれを併用するということもやはり考えるべきなのではないかなと感じますが、それについてもお考えをお聞かせいただきたいと思います。

糟谷政府参考人 まず、高性能な多核種除去設備でございますけれども、すぐれている点は二つございます。一つは、発生します放射性廃棄物が大幅に減量、八割減量して二割程度になるというものが一つであります。二つ目に、除去性能が今のALPSよりも高い。この二点でございます。

 それから、凍土方式の陸側遮水壁でありますけれども、これは粘土方式などに比べて、遮水効果が高い、工期が短い、施工エリアが最も小さくできる、したがって汚染の範囲とか地下水のコントロールしなきゃいけない範囲を最小限にできるということ。それからまた、段階的に遮水をしていくのに比べて、段階的に遮水をしていきますと地下水流が複雑に変化をする、その影響がどうなるかということを考えなきゃいけませんけれども、凍土方式は同時に遮水をしますので、一遍に凍らせますので、地下水の変化による悪影響が生じにくい、こういうこともあろうかと思います。

 他方で、いろいろと技術的に難しい点もあるのも事実でありまして、きょういただきました御指摘も踏まえて、重層的、予防的な対策を講じてまいります。

 国内外の英知を結集して、いろいろと技術的な提言をいただき、そのいただいた提言を整理、分類を行った上で、汚染水処理対策委員会で必要性を含めて精査を行い、必要な対策については早期に実施に移してまいるということで進めてまいりたいと思っております。

宮下委員 ここで一つ、中長期的な課題について御質問させていただきます。

 今後、廃炉作業に三十年から四十年以上要するとも言われております。一方で、残念ながら各大学で原子力工学を志す学生さんは減っているというお話も聞いておりますし、相対的に技術者の皆様の平均年齢も上がってきているというようなお話も伺っております。また、廃炉といいましても、まさに最先端の技術を持った人材がなければ実現できませんし、今後、高レベル廃棄物をどう処理していくのかという面でも研究開発は欠かせないと思います。

 各大学、研究機関、メーカー、電気事業者など、それぞれが連携しながら、研究開発の促進、また人材の育成、確保、こうしたことをしっかり行っていくことが大変重要だと考えますけれども、政府としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

菅原副大臣 大変重要な御指摘だと思います。

 この福島第一原発の廃炉に向けて、その作業の期間が三十年から四十年、こう言われているわけであります。廃炉に係る現場作業に携わる人員のみならず、やはりこの研究開発をいかにしていくか、これをまさに国家的なプロジェクトとしていかに進めていくかという御指摘かと思います。

 中長期的な視点で人材確保、育成ということが何よりも重要でありまして、中長期ロードマップにおきましても、大学、政府、研究機関等としっかり連携して、民間企業も含めて、廃炉技術をイノベートして、今言われている三十年、四十年というスパンをいかに短縮させるかということを国家の目標として、そのための人材育成を進めていくことが重要だと思います。

 また、国は、主導的な役割を果たすこととしております放射性物質の分析、遠隔操作ロボット、こうしたものに関する開発やフィージビリティースタディー等の推進において、実施主体である民間企業に対しまして、中長期的な人材育成という視点に立って、大学等との連携を行うよう求めていくなどの取り組みを行ってまいります。

 いずれにしましても、こうした研究開発を通じて、原子力に関する技術を維持するとともに、廃炉を担う人材育成の強化を政府として行ってまいりたいと考えます。

宮下委員 最後に、九月十二日、経済産業委員会福島県視察の際に行いました、福島県漁業協同組合連合会の皆様との意見交換の席で出されました連合会の野崎会長からの言葉でありますけれども、放射線量のモニタリング結果の数字も、東京電力の発表ではなく、国でもデータそのものをオーソライズしていただきたいと思う、我々が説明を受ける数字は国もオーソライズしたものでないと判断が全然違ってきてしまう、その責任ははっきりさせないといけない、データがオーソライズされているのが試験操業の大前提でもある、こうした発言がございました。

 そもそも、累次の汚染水漏れと、また公表のおくれなどもございまして、残念ながら、東電のデータや発表は信用できないという声も聞かれます。これが風評被害につながるという可能性もあります。

 そうした風評被害発生防止の観点からも、私は、国みずからがモニタリングを行って、責任を持って公表していくということが大事だと思いますけれども、原子力規制庁としてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 放射線モニタリングにつきましては、現在、標準的なモニタリング手法等について、政府が教本的に定めております放射能測定シリーズに従って測定することにより、データの信頼性、統一性の確保に努めているところでございます。

 また、原子力規制委員会におきましても、各機関で実施したモニタリング結果のデータを定期的に評価、公表するとともに、IAEAなどの海外機関にもモニタリング結果を発信しているところでございます。また、さらに信頼性を高めるべく、IAEAとも連携した海洋モニタリングの実施を予定しているところでございます。さらに、先生ただいま御指摘の、国みずからの海洋モニタリングを実施することにつきましても、現在実現に向け検討を行っているところでございます。

 いずれにしましても、引き続き、東京電力が行いますモニタリングも含めまして、モニタリング結果の信頼性の確保に努めてまいる所存でございます。

 以上でございます。

宮下委員 ありがとうございました。

 多方面にわたりますけれども、この福島第一原発の廃炉に向けまして、国が責任を持って、リーダーシップをとって、問題解決への道をしっかり切り開いていただくことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 私も、九月の十二日、衆議院の経済産業委員会として福島第一原発の汚染水対策の現状を視察してまいりました。本日は、汚染水問題に関して、現地視察の結果を踏まえて、政府に質問させていただきます。

 汚染水漏れにつきましては、事故直後の二〇一一年の四月から、原発建屋の海側にあるトレンチから高濃度の汚染水の流出が始まりました。また、浄化装置の配管さらには地下貯水槽など、各所から汚染水漏れが見つかったわけでございます。ことし八月には貯水タンクから三百トンの汚染水漏れが発生し、一部は海洋に流出したとされ、原子力規制委員会が原子力事象尺度のレベル3に認定する、そういう事態になっておるわけでございます。

 福島の復興のためには、東電福島第一原発の廃炉を安全に着実に進めることが必要不可欠でありまして、特に汚染水処理は廃炉作業と福島再生の大前提であると思われます。ここでもたつけば住民帰還がおくれて、また風評被害も広がる。ひいては、事故収束が遠ざかり、廃炉計画の破綻にもつながりかねない重大な事態でございます。日々ふえ続ける汚染水への対応は、時間との勝負、まさに国家の非常事態であると思っております。

 そこで、質問に入らせていただきますけれども、先日の東京電力への質疑においても私は指摘をさせていただきました。これまでの東電の汚染水対策は後手後手であります。適時適切に必要な措置が講じられてこなかったのも事実であります。もはやこれは東電一社の能力を超えつつあるのではないかと言わざるを得ません。

 このような中で、政府が、九月の三日、安倍総理また茂木大臣が、東電任せではなく国が前面に出て、逐次的な事後対応ではなくて、想定されるリスクを広く洗い出して、予防的かつ重層的に抜本的な対策を講じるとして、凍土方式の陸側遮水壁の構築、また、高性能の多核種除去設備、ALPSの実現等を初めとする総合的な抜本対策を発表されました。

 しかし、半減期の極めて長い放射性物質を含み、日々発生し続ける汚染水対策は、この二年間で全てし尽くせるわけではないと思われます。今後何年にもわたり、総額でどれぐらいに及ぶのかわからない完全な封じ込めが完了するまで、政府が前面に出続ける必要があるわけでございますけれども、財政的な面も含めて、今後の中長期的な将来において、政府が前面に出続けることについて、茂木大臣の見解と決意をお伺いしたいと思います。その際、東電との責任分担についてもどのように考えておられるか、まずお聞きしたいと思います。

茂木国務大臣 福島第一原発におけます事故処理、特に汚染水対策は、委員御指摘のように後手後手に回ってきた部分が多いと思っております。

 先日、視察でごらんいただいたということでありますけれども、進んでいる部分もございます。私も、一月に実際に四号機に入ってみたときと八月に四号機の建屋にまた入ってみたときで、例えば燃料棒の取り出しについてかなり準備は加速をしておりまして、恐らく、当初の目標、ことしの十二月より一カ月前倒しでこれも実行できるのではないかと。

 また、海側の水ガラスによります地盤改良等々も進んでおりますが、全体として見るとやはり後手後手、これは否めないことだと思っておりますし、同時に、タンクからの汚染水漏れ等々の問題が起こる中で、国も前面に出て対策を進めていかなければいけない。

 委員御指摘のように、技術的に難易度の高い二つのプロジェクトについて国が事業費を投じてしっかりと推進をしていく。同時に、全体のアクションプランについて進捗管理も行っていきたい。さらには、今後二カ月の中で、予防的、重層的な措置についても検討をしていきたいと考えております。

 もちろん、東電にも、炉の設置者として、また、現場に精通して、さまざまな作業をこれまでも行ってきた当事者として、実施責任を果たしてほしいと思っておりますが、問題が解決するまで国としてもしっかり前面に出てやってまいりたいと考えております。

江田(康)委員 それでは、具体的な項目について質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、陸側凍土遮水壁についてでございます。先ほど来から質問もあっておりますけれども、この質問をさせていただきます。

 毎日八百トンも流入してくる地下水をいかに断つか。これが汚染水対策の鍵を握っていると思っております。地下水流入防止のための抜本対策として、陸側遮水壁を凍土方式で整備するとの対策を示されたわけで、政府は総額三百二十億円の支出を決定したところであります。

 この凍土壁についてでございますけれども、これは海底トンネルの掘削工事等で既に使われている技術であるということであります。また、遮水効果もすぐれているということは承知しております。

 しかし、この凍土壁は通常二、三年しか使われない工法であるということ、また、長期にわたる原発の廃炉作業に使うのは一種の挑戦であるとも言われております。経費の問題、また配管の保守管理ができるか、そういう課題もありまして、恒久的な利用のためにはさらなる技術開発が必要とも指摘されているところでございます。先ほど来からの質疑にもございました。

 そこで、政府においては、今回採用される凍土方式がどの程度のものか、万全なものか、その辺についてどう考えているかお聞きをしたい。

 また、凍土壁で多量の地下水がその行き場を失うわけでありまして、その凍土壁よりもさらに深い箇所から不透水層の割れ目を通じて流入して、また汚染水が流出してくることはないのか。そのようなことについて、政府は基本方針で予防的、重層的に対策を講じるとしておるところでありますけれども、このようなリスクに対して二重、三重の予防策を考えているのか。

 まずは政府の見解を赤羽副大臣にお願いしたいと思います。

赤羽副大臣 同様の質問が何回か繰り返されているところでございますが、凍土方式につきましては、五月三十日の汚染水処理対策委員会で、他の方式に比べますと、遮水効果が高いですとか、工期が短い、また、施工エリアを最も小さくすることが可能である等々から、最善の策だということで判断されたものと承知をしております。

 さはさりながら、ある意味ではチャレンジングなことでございますので、汚染水処理対策委員会等におきまして、想定されるリスクを広く洗い出して、何回も繰り返すようですが、予防的かつ重層的に対策を講じる中で、この凍土方式の遮水壁につきましても同様にあらゆる検討を行っていきたい、こう考えております。

 また、地下水の挙動についても汚染水処理対策委員会に報告がなされており、その概要は承知をしておりますが、私どもは、さらなる詳細について地下水挙動把握を行う必要があると考えておりますので、この点についても万全を期して対策をとりたいと思っております。

江田(康)委員 既にお答えもありましたけれども、この凍土遮水壁を初め、地下水の流れを変えていくということが非常に重要なんですけれども、その地下水の流れを把握するということが非常に重要であるということが指摘されているわけであります。二号機と三号機の間、また四号機の下、さらに南側にはかつて川が流れていたことがわかっておりますし、また、実際この流れに沿って地下水は動いていることもわかっております。

 こういうような地下水の流動解析を踏まえた上で先ほどの抜本的な対策を決定していくことが重要と私は考えておるところでございます。こういうことについてどのように進めていくのかもお聞きしたいところであります。

 さらに、東電の発表で、敷地内には毎日八百トンの地下水が流れて、そして、このうち四百トンが原子炉並びに建屋に流入して、冷却水として循環処理した後に地上タンクにこれが貯蔵されているわけですが、残りの四百トンの一部がトレンチなどの高濃度放射性物質に触れて汚染水となって海に流出しているということが試算されているんですね。

 これを政府においてはどのように評価しているか。この地下水の流れ、また、そこからの汚染水の状況を正確に知悉しておかなければ、その対応は適切かどうかはわからないわけであります。東電のデータの信憑性をどこまで評価しているか、また政府独自の調査はされないのか、あわせて伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

赤羽副大臣 これはもう繰り返しになりますが、九月三日の原災本部で汚染水問題に関する基本方針が決められました。そのポイントの一つに、潜在的なリスクを洗い出して、対策をさらに予防的、重層的に講じることとしております。

 東電のこれまでの対応は対応として、政府としても責任を持って、例えば現地事務所についても国土交通省河川局の専門官を常駐するようにもいたしておりますし、産総研の専門官からのアドバイスもいただいております。

 改めて、地下水の挙動は、先ほども答弁したように大変重要でありますので、もう一度しっかりと把握をするということを念頭に置きながら対策をとっていきたい、こう考えております。

江田(康)委員 次に、高性能の多核種除去設備、第二ALPSについて、私の方からも聞かせていただきたいと思います。

 国費百五十億円を投入することとした高性能の多核種除去設備、いわゆる第二ALPS。このALPSは、現在試運転を行っている既存のALPSと性能や規模についてどのような相違があるか。先ほどもありましたけれども、改めて。また、既存のALPSと合わせて第二のALPSの導入による効果はどのようなものになるのかも、あわせてお伺いをさせていただきたいと思います。

 さらに、ALPSが二台体制で稼働するとしても、汚染水と混和するトリチウムについてはALPSでも除去されないとされているわけでありまして、現に原子力規制委員会の田中委員長からも、トリチウムについては希釈して海洋に放出することが避けられないとの発言もございました。

 この海洋放出については、大きな課題ではございますけれども、海洋放出以外の選択肢は本当にないのか、また、希釈するとはいえ放射性物質を海洋に放出することの影響についてどのように評価しているのか、お伺いをさせていただきます。

赤羽副大臣 これもまた他の委員からの御質問にもあったとおりでありますけれども、より高性能なALPSにつきましては、先ほどの御答弁にもありましたように、九月十一日から十月一日まで広く事業者から提案書を受け付け、外部有識者を委員とする技術審査委員会の場において審議いただき、すぐれた提案を選定することとしております。

 その要件として、既存のALPSに比べまして放射性廃棄物を容積比で八割以上削減することができる、また、汚染水中の放射性物質の除去性能が今のALPSよりもよりよいということを要件としているところでございます。

 トリチウムにつきましては、現状の分離技術について、現時点ではこのトリチウム水を大量に処理できる技術は見つかっていないんですが、これもチャレンジングに、例えば国際廃炉研究開発機構等を通じまして技術公募を行っておりまして、内外の英知に期待をしているところでございます。

 また、現在の汚染水の扱いにつきましては、一つ目には、これも繰り返しになりますが地下水の流入抑制による汚染水の増加の抑制、二つ目には今申し上げましたような汚染水処理システムの強化によるトリチウム以外の抑制、そして三つ目にはトリチウム以外の放射性物質を除去した汚染水をためるタンクの増設計画といった手当てを行うことで、海への安易な放出は行わないという予定でございます。そういう前提でございますので、現時点では汚染水の海洋への放出を前提とする影響の評価は行っておりません。

 以上でございます。

江田(康)委員 大臣にお聞きしたいと思います。

 九月十日の廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議で、茂木大臣は汚染水問題の解決のために国内外の英知を結集するという発言をされております。今まで議論をしてまいりましたように、私も本問題の解決については、原子力分野だけではなくて、地下水の流れのあり方や海洋における放射性物質の拡散の動き等、多岐にわたる学問的知見が必要になると考えております。そのような英知を結集して初めて、新たに発生する事象に対して機動的また臨機応変の措置を講ずることが可能になるものと思われます。

 この専門的知見という観点では、政府の廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議のもとに廃炉・汚染水対策チームというものがございます。ここが汚染水問題を検討する主体であり、その本部長が茂木大臣でございます。大臣を初めとする政府高官で構成されておるわけでありまして、ここにはいわゆる現場で技術的な、専門的な、またガバナンスまでわかるような、そういう専門家は含まれていないわけであろうかと思います。

 幅広くリスクを洗い出して、その対策を講じるということにおいては、汚染水処理対策委員会並びに国際廃炉研究開発機構、IRIDにその検討を依頼して潜在的リスクを洗い出して、その検討結果を政策に反映させる、こういうようにされているわけです。これは非常に大事な組織体制であると思います。

 しかし、やはり汚染水の対策は現場で迅速に、かつ正確な情報に基づいて行わなければならない。そこに国が前面に立つということが実現されなければならないわけですので、その廃炉・汚染水対策チームにおいても、技術的知見を有する技術者や専門家を現地事務所の構成員として、現場においても、より直接的に技術者の知見を活用すべきではないかと考えますが、大臣、どのように思われますでしょうか。

茂木国務大臣 委員御指摘のように、この汚染水問題の解決のためには、例えば土木であったり水質であったり、さまざまな分野の技術者そして専門家の知見をかりることが重要だと思っておりまして、私が主宰しますチームにおきましても関係機関との連携をとっていきたいと思っておりますが、太田国土交通大臣とも御相談をして、国土交通省また関係の学会等々の協力もいただきたいと思っております。

 そして、何より現場を強くしていく、こういうことが重要だと考えておりまして、廃炉や汚染水対策に専門性を有する技術者等を廃炉・汚染水対策現地事務所の構成員として登用してまいりたい、このように考えております。

江田(康)委員 最後の質問をさせていただきます。

 先ほどもございました、私も大変に印象深く残っております、風評被害、実被害対策についてでございます。

 先日、当委員会で福島県漁連との意見交換をさせていただきました。七月二十二日以降明らかになった汚染水問題は、既に風評被害ではなくてもう実被害であるという認識を伺いました。これまで地元では出荷検査の充実によって必死で風評被害を払拭しようとしていたところに、この汚染水問題が発生した。そこで試験操業の再開の延期を余儀なくされて、まさにこれは現実的な実被害になった。さらに、このままでは、試験操業が再開できなければ、漁業自体がもう衰退してしまう、将来世代にこれは引き継げない、そういう危機感を述べられておりました。

 そこで、政府においては、このような風評被害、実被害が漁業者に与える影響についてどのように認識をされているのか、また、その払拭については、これは最終的には広い意味では汚染水が完全に封じ込められることをもって達成されることだと思いますけれども、それまでの間、政府として措置できる対策についてどのように考えているのかをお聞きします。

 最後に、現地の漁業者の皆さんは、モニタリングされている放射線量についても、ばらばらに認識され、また発信されていく、そういう体制ではなくて、やはり試験操業再開のためには政府のオーソライズが必要であるという声が多く寄せられました。海水中の放射線のモニタリングについては、東電のほか自治体そして学術機関、水産センター等でも実施されているものと思いますけれども、国がそれらの数字を検証して取りまとめ、オーソライズすることが必要と考えますけれども、大臣の見解をお伺いいたします。

 それとあわせて、政府や東電の保有している情報全体の開示のあり方についても、まだまだ十分ではないという声がございます。それが汚染水問題に対する不安を招いている。政府ないし東電が保有している情報の、網羅的かつわかりやすい形での汚染水関係情報の公開のあり方についても、大臣の見解を最後にお伺いいたします。

茂木国務大臣 汚染水によります風評被害そして実被害につきましては、漁業を生活のよりどころとしている現地の漁業者の皆さんにはいずれも大変深刻な問題だと捉えております。

 根本的な解決というのは、汚染水問題そのものの解決ということになるわけでありますが、まずは、国内外の消費者が科学的に正確な情報により適切な判断が行えるよう、海洋モニタリングの情報等をできる限り一元的に発信していきたい、そう思っております。

 同時に、食品、水産物等は国際的な基準を踏まえて厳格な安全管理を行っているわけでありますが、放射性物質の検査結果が基準値を上回った食品等につきましては、出荷制限措置によりまして市場に流通することがないような体制をとっているところであります。

 こういった海洋モニタリングや食品に係る取り組みの関連情報について正確な情報提供を行うことで、風評被害そして実被害、こういったものの影響を最小限にしていきたいと考えております。

江田(康)委員 時間でございますが、この対応についてよろしくお願いを申し上げます。

 国家の非常事態であるこの汚染水問題については、国、東電、規制委員会、総力を挙げて汚染水対策に取り組んで、安全、着実に廃炉作業を進めていただきたいと申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十八分散会


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