衆議院

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第7号 平成25年11月15日(金曜日)

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平成二十五年十一月十五日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 宮下 一郎君 理事 山際大志郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 田嶋  要君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      越智 隆雄君    大見  正君

      勝俣 孝明君    佐々木 紀君

      白石  徹君    菅原 一秀君

      田中 良生君    武村 展英君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      根本 幸典君    福田 達夫君

      細田 健一君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      山田 美樹君    枝野 幸男君

      菊田真紀子君    岸本 周平君

      近藤 洋介君    辻元 清美君

      伊東 信久君    東国原英夫君

      丸山 穂高君    國重  徹君

      井坂 信彦君    三谷 英弘君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   経済産業副大臣      松島みどり君

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           舘  逸志君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            氷見野良三君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 上羅  豪君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           宮野 甚一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西山 圭太君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          菅原 郁郎君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          横尾 英博君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          片瀬 裕文君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            松永  明君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十五日

 辞任         補欠選任

  宮崎 政久君     岩田 和親君

  枝野 幸男君     菊田真紀子君

  木下 智彦君     東国原英夫君

  青柳陽一郎君     井坂 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     宮崎 政久君

  菊田真紀子君     枝野 幸男君

  東国原英夫君     木下 智彦君

  井坂 信彦君     青柳陽一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 産業競争力強化法案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、産業競争力強化法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府規制改革推進室次長舘逸志君、金融庁総務企画局審議官氷見野良三君、国税庁長官官房審議官上羅豪君、厚生労働省職業安定局次長宮野甚一君、経済産業省大臣官房審議官西山圭太君、経済産業省経済産業政策局長菅原郁郎君、経済産業省貿易経済協力局長横尾英博君、経済産業省産業技術環境局長片瀬裕文君、中小企業庁長官北川慎介君及び中小企業庁事業環境部長松永明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤洋介であります。

 質問の機会をいただき、委員長、理事の皆様に感謝を申し上げます。

 産業競争力強化法、本法案の質疑も大詰めを迎えてまいりました。規制緩和、税制、そしてベンチャー投資への支援策等々を通じて産業の新陳代謝を促して産業競争力を高める、こういった本法案の方向性は、我々民主党としても正しい、こう認識をしております。

 我々民主党も、そうした方向感に立って、今般、修正案を提案させていただいております。この法案がよりよく機能するための提案であり、現在、各党、自民党、公明党さん等々と真摯な協議を進めていると伺っております。幾つか大事な修正点も提案させていただいていますので、大臣にこの点についてまず最初にお伺いしたいと思います。

 それは、新法の施行後のフォローアップの体制についてであります。これまで、産業政策に限らず、特に経済政策の法律というのは、制定後のフォローアップにやや問題があったのではないかと、我々は反省を込めて感じておるところであります。

 特に、経済産業省という役所は、大変優秀なお役人の皆さんの集団であります。がゆえに、法律をつくるのは大変得意であります。課長になったら一つの法案をつくるぐらいの勢いで、法律を多くつくったお役人が出世をするとまでは言いませんが、こちらにお並びの幹部の皆さん方も、法律を多くつくった方々がたくさんいらっしゃいます。

 これはこれでいいのですが、また経済産業委員会は数ある常任委員会の中でも大変多くの法案を審議する委員会に相なっておるわけでありますが、問題は、つくるのはいいけれども、その後の執行、進捗管理が果たしてどうだったかということであります。

 やはり、せっかくこれだけの大きな改正で、しかも、これからの産業政策、二十年間とは言いませんが、少なくとも五年、十年を背負う法律。こういう意気込みで出された法律でありますから、施策の進捗状況、また重点施策の効果について、我々は国会で審議をしてきたわけでありますけれども、その状況をやはりきちんと国会に報告すべきだ、そのことが逆に、役所においても施策を実行するいい意味での緊張感になるのでないか、こう思うわけであります。また、この点を法律に明記することが大事ではないかと思うのですが、行政をつかさどる大臣として、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 御質問ありがとうございます。

 経済産業省の人材の評価、これからは法律の数ではなく具体的な成果でしていきたい、このように考えております。

 成長戦略、中身はもちろん重要でありますが、御指摘のように、そのフォローアップ、そして進捗状況等について国民にお知らせをしていくということは極めて重要であると考えております。

 そこで、この法案では、成長戦略を確実に実行するため、当面三年間に確実に実行していくべき施策を盛り込んだ実行計画、これを策定することとしておりまして、毎年度一回、当該施策の進捗及び実施の効果を政府として評価し、実行計画を見直すとともに、施策の進捗状況とあわせて評価の結果を公表する新たな仕組みを盛り込んでおります。

 その上で、御提案がありました、実行計画に基づく施策の進捗状況及び施策の効果について国会に報告するという仕組みにつきましては、与野党間で御議論がまとまれば、その趣旨に即して政府としても適切に対応してまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。ぜひ、この修正がまとまり、また、国会としてもやはりきちんと状況をチェックする、これは国会の大事な役割でありますし、その機能を今後果たしていきたい、こう思うわけであります。

 さて、産業の新陳代謝、この鍵となるのはやはり投資であろうと思います。そして、投資の中でもリスクを負ったものをいかにふやすかがより重要なんだろう。設備投資であれ、ベンチャーへの投資であれ、リスクを負った長期の資金が非常に大事。ところが、この二十年間、こうしたリスクを負う資金というのは、特に我が国においてはその担い手がいなくなってきた。

 かつては長信銀というのがあったわけであります。日本興業銀行を中核とする長期信用銀行が産業金融を担ってきたわけでありますけれども、今や昔の話で、あの興銀が今どこに行ったのか、非常に嘆かわしい限りですが、これも時代の流れだから仕方がございません。

 こうした旧興銀の代替ではないんでしょうけれども、産業革新機構がある意味で旧興銀などが担ってきた役割を果たした部分もあったかと思いますが、産革機構で問題が解決するとも思えないわけであります。

 長期資金がなかなか回らなくなった一つの背景に、会社は株主のものである、株主のものだから短期の利益を追求していきましょうという考え方、言いかえれば株主資本主義が余りにも強くなり過ぎた結果、長期のお金、足の長いお金が全体に行き渡らなくなってしまったのではないか。短期のお金の回し方だけ。その背景には要するに株主資本主義。それはそれで一つの正しい理屈なのかもしれませんけれども、それが余りに強くなり過ぎた結果ではないかと私は思うわけであります。

 こういう株主資本主義偏重の考え方に修正を加えない限り、お金の流れというか、本質的な意味で、長期の資金、リスク性の資金を必要なところに供給することは難しいのではないかと思うのですが、ちょっと哲学的な話で恐縮ですけれども、株主資本主義の行き過ぎ、偏重、またその修正の必要性について、大臣はいかがお考えでしょうか。

茂木国務大臣 株主そのものが大きく変わったかどうか、これについてはさまざまな議論があると思いますけれども、株主が活動する場であります資本市場そのものが大きく変わっているのは間違いない、このように思っております。

 一つには、デリバティブであったりとか取引所のシステムの高度化などによりまして、金融技術が発展しております。そして、これらの技術を活用する投資家の増加というものによりまして、お金を短期で回す、こういった活動が今まで以上にやりやすくなった。また、そういうインセンティブが働いているのは間違いありません。

 それからもう一つは、先進国における成長率の低下の中で、予定利回りを達成するために短期の利ざやを稼ぐ行動がふえている、こういった資本市場を取り巻く環境の変化があると思っております。

 さらに申し上げると、興銀のお話がありましたが、かつては興銀、長銀、日債銀、こういう金融機関もあり、そして銀行を含めたさまざまな株式の持ち合いというのがあったわけでありますけれども、株式の持ち合いの減少の影響もある程度あるのではないかな、こんなふうに考えております。

 もちろん、御指摘のように、基本的にペーシャントつまり忍耐強い株主をふやしていくことは重要であると考えておりまして、そもそも、長期的な株式の保有になじむ年金の運用などの機関投資家の行動にまず注目をしていくことが恐らく有効な手段になってくるのではないかな、こんなふうに考えております。

 こういった認識も踏まえまして、株式を通じた中長期の資金の供給の拡大に向け、現在、年金等の公的もしくは準公的資金の運用のあり方について、内閣官房に設けられました有識者会議、これは公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議という名前でありますが、ここにおきまして検討が進んでいるところであります。

 また、長期的な企業価値の向上に向けて、株主がどのように経営にかかわっていくかというそもそも論につきましても、国内外で広く共有されていまして、英国ではスチュワードシップというのもあります。我が国におきましても、日本再興戦略において、機関投資家が適切に受託者責任を果たすための原則、いわゆる日本版スチュワードシップ・コードを策定することとしておりまして、現在、金融庁におきまして準備が進められているところであります。

 このような取り組みを通じまして、長期的な視点で株式を保有する株主をふやしてまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 確かに大臣おっしゃるとおり、IT技術の発達は大きく世界を変えた、短期で回るような世界をつくってしまった、こう思うわけであります。これがやはり金融を変えて、そして、リーマンもそうですけれども、さまざまなバブルを生み出して乱高下を繰り返すということに相なっているわけであります。

 そこで、今、大臣もお答えいただきましたけれども、行き過ぎたそういったものを是正する考え方として、最近、公益資本主義というものがあります。僕は公益資本主義という言葉自体は余り好きじゃないんですが、会社は株主だけではなくて従業員や顧客や経営者そして地域社会のものであるという観点。大臣におっしゃっていただいたように、長期に保有する株主をもっと大事にしようじゃないか、こういう動きの中で政府も御検討されている、こういうことでありました。この点は、私は、もうちょっとドラスチックに、突っ込んだ日本型のことを提案してもいいんじゃないか、こう思うんです。

 例えば、具体的には、上場企業においてストックオプションというものが本当に必要なのか、経営者をちょっと間違った方向に行かせてはいないか。上場企業においてストックオプションをやめるとか、議決権行使を長期保有株主に限るのはどうか。デートレーダーもとまり木の人も株主だけれども、大事に大事に持っていて、企業をしっかり育てようという人も株主で、これはやはりちょっと差をつけてもいいんじゃないかという議論。または、長期保有の株主に対して配当課税に少しフェーバーをつけてあげたらどうだろうか。長期保有したら配当課税は少しまけてやってもいいじゃないかとか、長期に持っていた人の売却益課税は減免してやるとか。さまざまな手法はあろうと思うんです。

 デートレーダーをだめと言うつもりはありませんが、長く持ったらそれなりのものがあるということを提案する、実行するということも必要ではないか、こう思うんです。かつて経済産業省の大物次官で物議を醸した方もいらっしゃいましたけれども、僕はあの主張は一つ正しかったと思うんです。

 やはり一日しか持たない人と長く持つ人ではおのずと違いがある。そういうものを大事にする日本型の資本主義というか市場のあり方をそろそろ提案しないと、なかなか長期の資金は集まらないんじゃないか、こうも思うんですが、大臣、この点についてはいかがでしょうか。

茂木国務大臣 確かに、デートレーダーの感覚が一般的な時間軸から見て正常かといいますと、経済学では長期は五年からということになるわけでありますけれども、デートレーダーの世界では長期は十分以上ということで、相当時間軸に違いがあるのではないかと思っております。

 そして、企業にとって、株主を重視する、ストックホルダーの概念は、大航海時代、つまり大きな航海に出るには非常にリスクが伴うということで、ストックホルダーを募って航海に必要な資金を集めるということから出てきているわけでありますけれども、同時に、大航海によってもたらされたさまざまな財物、これは、船長、船乗りであったりとか、その国でさまざまな交易を営む人にも裨益をするものでありまして、会社は株主だけではなくて、経営陣そして従業員、さらには顧客、仕入れ先、そして地域社会、こういった多くのステークホルダーのものである、このように考えております。三方よしとか、日本ではそういったいろいろな概念もあるわけであります。

 ですから、企業が株主利益だけを追求するより、企業がこれらのステークホルダーへの貢献を第一に行動することが、より多くの人を幸せにし、そして経済全体を持続的に成長させることができる、このように考えております。そして、中長期的な視点に立った経営や投資を可能にする。

 恐らく、公益資本主義というのは、基本的には今私が申し上げたような考え方に立って論理構成をされているのではないか、こんなふうに思うところであります。

 こういったコーポレートガバナンスに関する問題意識そのものについては、近年、国内外で広く共有をされているのではないか。全体がいいかどうかは別にして、こういった概念に心を砕くということについて共有されている、そのように私は考えております。

 その上で、委員が挙げられた、具体的な企業法制におけますさまざまな制度改革の御提案につきましては、我が国ではそもそも企業の収益性が国際的に低くて、より株主の目線に立った経営を求めるという考え方が可能である一方、手段が行き過ぎた規制となってはならないという考え方もありまして、その両面から慎重に検討する必要があるのではないか、こんなふうに考えております。

近藤(洋)委員 問題意識は大臣も我々と共有していただいたかなと思います。

 具体的に、民主党としても、我々は、会社は誰のものかということをもう一回突き詰めて考えながら、今後も政策を提案したいと思います。

 さて、大臣、本当は最初に伺おうと思っていた景況感について伺います。

 きのう、四半期調査、QEですね、七―九月の国内総生産の速報値が発表をされました。七―九月は年率一・九%実質増ということであります。前期比〇・五%増、四四半期連続のプラスでありますが、年率三・八%増だった前の期、四―六月と比べますと、三・八から一・九はちょっと一服感といいますか、伸びが鈍った感じなんです。特に、消費、そして円安にもかかわらず輸出が弱い、こういうことであります。

 私ではありませんが、口の悪い有識者に言わせると、もう既にアベノミクスの化けの皮が剥がれたのではないかと。もはや、期待先行のバブル、公共投資そしていわゆる復興需要への期待もいよいよ剥げ落ちてきたのではないか、だんだん厳しくなるんじゃないか、こう言う人もいるようであります。もはやアベノミクスへの期待もかなり薄れてきて、実質がなかなか伴っていないことがそろそろ表に出てきたんじゃないかなどと言う人もいるようであります。

 大臣、このQE、成長がやや鈍ってきた、こう言う人もいますが、この数字についてどうお受けとめになっていますか。

茂木国務大臣 昨年の七―九の数字、御案内のとおり、年率にしますとマイナスの三・五でした。それ以降、四期連続でプラスということであります。そして、内需を見ますと、設備投資そして住宅投資、公共投資、堅調であると考えております。その中で、これまで四半期ごとの成長を引っ張ってきた輸出、それからもう一つ個人消費は、若干特殊な要因があって、伸びがとまっているなり一時的な現象が出ている。

 例えば、消費で申し上げますと、前期から伸びが低下をしているわけでありますが、これは天候の影響などによりまして食料品が減少したことが要因でありまして、九月には再び大きな伸び、前月比プラス一・六%を示しておりまして、消費についても食料品を初め持ち直し傾向は続くと見込まれております。

 一方、輸出は三四半期ぶりに減少いたしました。これはタイやインドネシア等の需要の減速などが要因と言われておりまして、米国を初めとする海外景気全体としては堅調さが見られ、これまでの過度な円高の是正、こういった動きの効果が引き続きプラスに働く中で、今後、再び持ち直しに向かうと考えられております。

 ちなみに、民間の機関四十社の予測、ESPフォーキャストでは、十―十二月期及び来年一―三月期の実質GDPの成長率は、それぞれ年率プラスの三・六%、そしてプラスの四・六%という数字でありまして、より力強い成長が見込まれるということであります。

 我々としては、アベノミクスの三本の矢を一体的に進める、その中で投資がふえ、企業の収益が拡大をし、それが賃金や所得の向上につながり、さらに消費を拡大させ、さらなる投資、生産を生む、こういう好循環の実現に向けて、この産業競争力強化法を初め、必要な施策を速やかに確実に実行してまいりたい、このように考えております。

近藤(洋)委員 私は別に今野党の立場にいるからというわけじゃなくて、そんなに来年の四月以降に向けて楽観できるのか、世界経済的に見ると少し心配なところがある、こう思っているんです。せっかく明るい兆しが見えてきた日本経済がへたってしまっては困りますので、ぜひよい方向になるように、我々も、立場は野党でありますが、後押しをしていきたい、こう思っております。

 さて、日本の産業競争力を強化するためには、私は、やはり人材の力、人の能力を高めるのが、足腰という意味では一番重要。先ほど大臣も御答弁されましたけれども、やはり所得がふえ、好循環なんだというお話をされました。私もそのとおりだと思います。

 実は、現在内閣委員会で議論している国家戦略特区法案について本会議で質問申し上げたら、与党の先生から大変な御声援をいただきました。これは皮肉でありますが。

 あの法案は、これはこの場で議論することではないですけれども、首を切りやすくするような話ではなくて、むしろ人の能力を高める方向に政策の軸を移すことの方が大事であって、雇用の流動化を高めようとするのであれば、雇用の機会を増大するような政策の厚みもないとやはり問題だ。国家戦略特区において、もしそういうルールを明示するのであれば、逆に雇用や人の教育の機会をふやすような、再チャレンジがしやすいような手厚い措置と両方ないと問題だ。私はこう思うわけであります。

 そこで、きょうは厚労省に来てもらっていますけれども、日本再興戦略の中にはそれなりにいいことも書いてあるな、こう思って見ているんです。

 若者等の学び直し支援のための雇用保険制度の見直しがこの中に入っているんです。「非正規雇用労働者である若者等」と。この「等」というのは何だと聞いたら、四十代、五十代も含まれますということで「等」だと。若くなくても、人生いろいろなステージで勉強したい人ができるというなら、「等」はなくていいじゃないか。何も若者だけ書かずにあらゆる人がと書けばいいと思うんですが。

 いずれにしろ、若者を含めてキャリアアップできるように、資格取得につながる自発的な教育訓練の受講を初め、社会人の学び直しを促進するために雇用保険制度を見直す、こういうことが掲げられております。

 これは、非常に意欲のある人がチャレンジするために雇用保険制度を見直す、こういうことでありますが、どういうことを今検討されていて、来年から進められようとしているのか、お答えいただけますでしょうか。

宮野政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘がございましたように、日本再興戦略には、社会人の学び直しを促進するために雇用保険制度を見直すということが盛り込まれております。

 これを受けまして、現在、次期通常国会への改正法案の提出を目指しまして、労働政策審議会におきまして御議論をいただいているところでございます。

 去る十月八日に、議論のためのたたき台の案といたしまして、現行の雇用保険制度の教育訓練給付を拡充し、この学び直し訓練を受講する場合に受講費用の四割程度、さらに、資格取得等に至った場合については追加的に二割程度を支給する、加えまして、当面の措置といたしまして、若年の離職者には受講中に離職前の賃金に応じた一定額を支給する、こういった案をお示ししたところでございます。

 引き続き労働政策審議会で御議論をいただきまして、次期通常国会への法案提出に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 もう本当に、人材の底上げというのは、大企業もそうですけれども中小企業にとっても、人材がどんどん出てくるということは非常に大事なことだと思うので、これは法案が出るということですから、また審議をさせてもらいますけれども、ぜひいい制度をつくり込んで提出をしてもらいたい、こう思います。

 最後に、中小企業のことで一点大臣に伺います。

 開業率を高めたい、そうすると廃業率もおのずと高まる、こういうことであります。しかし、問題は個人保証なんです。これが履行されたら二度と事業ができないような状況に追い込まれると今みんな思っているわけであります。そうだとすると、逆にもう怖くて廃業できない、ずっと事業していた方がいい、こういうことにもなるわけであります。

 やはり一定の資産が残るような個人保証制度を、私は個人保証の必要性そのものが問題だとも思うわけでありますけれども、いずれにしても個人保証制度のさまざまな見直し、民主党時代からも言ってまいりまして、政権時代も研究してまいりましたが、現政府においての見直しについてお答えをいただいて、私の質問を終わりたい、こう思います。

茂木国務大臣 中小企業の経営者本人によります個人保証につきましては、思い切った事業展開をしていく、さらには早期の事業再生を阻害する要因となっている、こういう御指摘もありまして、その見直しにつきましては委員御指摘のとおり重要な政策課題、このように我々も考えております。

 この六月に閣議決定をいたしました日本再興戦略におきましても、個人保証制度の見直しとして、個人保証に関するガイドラインの策定を行うこととしておりまして、現在、幾つかのポイントにつきまして既に見直しの作業に入っております。

 早急に取りまとめることによりまして、個人保証に対する経営者の負担、こういったものを軽減して、きちんと産業、事業の新陳代謝が進む、こういう環境を整えてまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 終わります。

富田委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久です。よろしくお願いいたします。

 前回までの質疑で私は、科学技術イノベーションの部分は、シーズから始まって計画を立てていってニーズに至る、そのようなプランがなされることが多いけれども、やはり産業ですからニーズありきではないか、そういった質問をさせていただいてきました。科学技術イノベーションの目玉になるであろう再生医療の中でもiPS細胞にどうしても思い入れがあるので、その実用化に向けた支援策等について質問いたしました。

 前回までは細かい部分をお聞きしたんですけれども、全体像というか、プランについて今回はお尋ねしたいわけです。

 ニーズの部分というのは、研究機関もしくは大学ということになります。今回の産業競争力強化法案で、国立大学法人等によるベンチャーファンド等への出資というのが施策の中にございますが、最後の質疑なので確認になるのですけれども、まず、この具体的施策を整理してもう一度御説明いただけますでしょうか。

片瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 大学発ベンチャーと申しますのは、技術シーズをもとにしたベンチャーが多いわけでございまして、技術の開発に特化する余り、人材やノウハウが不足する、あるいは資金面での手当てが不十分であるというケースが多いと考えております。今回の国立大学法人等からのベンチャーキャピタルへの出資は、これらの課題を解決し、大学発ベンチャーを発展させる上で重要なステップとして位置づけております。

 具体的には、今回の法案は、国立大学法人等と密接に連携しながら大学発ベンチャーに対して経営上の助言等を行うベンチャーキャピタル、そういうものを認定いたしまして、国立大学法人等からの出資を可能とするものでございます。

 これによりまして、大学発ベンチャーは、実用化に向けた研究開発段階から、大学からは技術支援を受ける、同時にベンチャーキャピタルからは経営面でのサポートや必要な資金の供給、そういった形で一体的に支援を受けることができるようなものになる、そういうふうに考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 国立大学法人等によるベンチャーファンド等への出資に関する施策そのものが悪いと指摘したいわけじゃないんです。資金不足とか、人材、ノウハウのことでサポートする、そして助言をということなんですけれども、実際に資金面のことでアドバイスを受けて、大学のスタッフも研究者たちも、我々がイニシアチブを持ってできるということで評判はいいんです。盛り上がりも見せているんですけれども、一方ではやはり、経営の素人である自分たちにできるであろうかという不安の声も上がっております。

 助言ということをおっしゃっていただいたんですけれども、助言というのはやはりどうしてもコーチングであるわけです。サポートということなんです。実際に、iPS細胞研究所の山中先生は、ニーズとしての医療を産業に持っていくのに、研究のところのシーズとニーズという面を考えると、結局、医療技術があってそれを医療製品にするというのは、よく似ているけれども本質的には異なる、ラグビーとアメリカンフットボールぐらいの違いがあるということをよく例えでおっしゃっているわけなんです。

 つまり、最終的には経営という部分、経営者というのをしっかり分けてほしい、大学の中に、コーチではなく、サポーターではなく、CEO、マネジメントする人間が欲しい、どうしてもプロフェッサー、大学教授が、山中先生もそうなんですけれども、選手であり監督であるプレーイングマネジャー的なことをやる自信もないと。

 来年度、ディー・エヌ・エーの、監督になられる谷繁捕手には悪いんですけれども、古田選手しかり、プレーイングマネジャーというのは余り成功した例がないんです。なので、いわゆるCEOたるものをまず施策として考える方が先決なのではないかと思うんですけれども、その点に関してはいかがでしょうか。

片瀬政府参考人 今回の法案で認定されるベンチャーキャピタルですけれども、助言と説明しましたけれども、その助言には、おっしゃるようなCEOに適した経営人材を探してきて、そこの新しいベンチャーのCEOに据えるというような形での、非常にハンズオンのきめ細かな支援も期待しております。

伊東(信)委員 新たに別の法人を大学内につくる、もしくはベンチャーキャピタルの法人をつくるということでは、要するに、資金面と経営面を一緒にしてハンドリングするのか、分けてやるのか、そのあたりはどういうことですか。

片瀬政府参考人 大学発ベンチャーが大学の技術を使って新しい事業を起こすということでございますので、技術開発、マーケティングについては新しい大学発ベンチャー企業で行われるものでございます。

 それに対して、大学サイドからはさまざまな技術的支援を行う、今回の認定されたベンチャーファンドからは先ほどお尋ねのような経営人材を探してくるということも含めてさまざまな支援を行うということでございまして、実際に事業を行うのは大学発ベンチャー、個々の企業が技術開発、事業化、さらにはマーケティングというものを一体的に行うことになります。

伊東(信)委員 現在の具体的な事例で、先日、副大臣が東大と京都大学のお話をされていたと思うんですけれども、京都大学のサイラ、iPS細胞研究所の中に実際にベンチャーがあるんです。そこはどちらかというと、再生医療、iPS細胞製品の知的財産、特許的なこと、その部分だけを扱っているように私としては認識していて、まだCEO的なことはやっていないんです。つまり、現段階では実例がないんですけれども、今回、どのようなイメージでCEO的、経営的なところをつくっていかれるのでしょうか。

片瀬政府参考人 お尋ねの山中先生については、私の認識ではまだベンチャー企業としては起こしていなくて、まだ研究所として運営しているのではないかと思いますけれども、いずれそれが事業化する段階になったときは、会社をつくって、そこにライセンスをしまして、そこで資金を集めて事業化していくということが想定されるわけでございます。

伊東(信)委員 事例の中で京都大学の話を言われていたのでお聞きしたのですけれども、現時点がどうかということよりも、実際にそういった人材面、経営面に関してのノウハウが大学の研究者に不足していますので、やはりニーズありきというのが私の中には研究者としてもございます。シーズではなくニーズというのがございますので、そのあたりのところをよろしくお願いできたらと思っております。

 今回の法案はたくさんの分野にまたがっています。中小企業を救うというところから、先ほど申し上げましたように、新しい技術、イノベーションをアベノミクスの目玉にする。もちろん、産業ですから、大きな企業さんにとってもメリットがなければいけないということなんですけれども、どうしてもやはり気になるのは、今まで戦後の日本の復興に大きく寄与していただいた中小企業なんです。

 やはり、アベノミクスの実現のために、本法案の成立を、我々は産業を強化するという意味では強く希望しているんですが、政府も強く希望されているように感じるんですけれども、再三言っていますように、地域経済への効果はまだ全国津々浦々まで及んでおりません。政策の実効性が強く望まれます。中小企業の中には真面目に再生がしたいという事業体もあると思うんです。

 日程的に私の最後の質疑になると思いますので、再生計画の方法論、プランとしての支援と、資金調達で実効性のある措置の具体内容をちょっと確認したいと思います。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問は、再生計画と資金繰りというお話だと理解いたしております。

 一つは、再生計画の策定についてでございます。中小企業の中では、やはり業況がこれまで厳しくて、財務状況が悪化しておって、経営改善あるいは事業再生に取り組んでいくということが必要な企業がたくさんございます。今、全体の業況が改善の方向にありますので、その機会を捉えて早期にそういったものに持っていければと考えております。

 再生につきましては、これまで、全国四十七の都道府県にあります中小企業再生支援協議会で再生計画の策定支援を実施してきておりまして、例えば平成二十四年度におきましては計画策定完了が千五百十一件と、二十三年度の六倍という大きな伸びを示しております。

 本法案におきましては、今この協議会に対して中小企業再生支援全国本部におきまして支援をしておるわけですけれども、ここの機能をさらに強化いたしまして、各地の協議会を評価して、どのような支援がさらに有効かということを考えていくことと、さらには、地域においては風評などの問題がございまして地域の協議会に持っていきにくい、そういう場合を含めて、全国本部みずから再生計画の策定支援をやっていくということを考えております。

 また、本法案におきましては、協議会において計画が債権者の合意の上でまとまったという際の、実行のための資金調達を支援するため、信用保証協会による新たな保証制度として経営改善サポート保証を創設いたしまして、別枠での保証を利用可能といたしていきたい、このようにいたしまして再生計画の策定支援、その場の資金繰り支援を実施していきたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 プランを立てて資金を調達するということが、事業においては大事なことなんです。私自身は医療をやっておりましたけれども、実は、うちの家は代々呉服屋をやっていまして、大阪の商店街で呉服を売っていました。産業化しているんですけれども、バブル期には八店舗ぐらいございまして、当時、いわゆる洋服、アパレルもブームだったので三店舗ふやしていきましたが、はやり廃りというところで、アパレルの方はテナントだったんですけれども潰れてしまって、呉服の方も、八店舗あったのが今は一店舗です。

 そのうちの一部を、私はたまたま医療をやっているのでクリニックに変えたりもしているんですけれども、日本の伝統産業という火を消したくないというのがうちの親にもあったわけなんです。私どもは小売業なんですけれども、実際は、問屋さんであるメーカー自体がどんどんなくなっていっているのが現状です。

 その中で、いわゆる中小企業の経済界に、経済同友会も含めて私も入っていって、お互いに資金面をどうするとかいろいろな悩み事の話をするわけですけれども、私は、医療法人として当時の国金にお金を借りに行くと、すぐに貸してくれるんです。だけれども、呉服屋としていくと、なかなか貸してくれないんですよ。

 残念ながら、中小企業の経営者が窓口で担当者と面談しますと、相談者によって事情が異なることは当然であると思いますけれども、はっきり申し上げまして、中小企業さんがかつての国金などでお金を借りたりとか、いまだに条件の変更とか追加支援の相談には厳しい対応がされているんです。つまりは使い勝手がまだまだ悪いということなんですけれども、そういったところはいかがお感じになっているでしょうか。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業の資金繰りの関係で、公庫の御指摘がありました。

 公庫は、資金繰り支援ということで、今、約百万社、二十二兆円ぐらいの規模で仕事を行っております。

 御指摘のとおり、この資金繰り支援を行うに当たりましては、中小企業の目線に立った支援が必要だと考えております。

 このため、私どもといたしましても、毎年、年末あるいは年度末といった機会を捉えまして、日本公庫に対しまして、資金繰り支援にとどまらず、経営支援、財務アドバイス、こういったところについても積極的に行うとともに、中小企業の立場になって親身に対応することを要請しております。

 一方で、円滑な資金調達を考えますと、貸し手である日本公庫と中小企業、小規模事業者の円滑なコミュニケーションも大変重要だと考えております。商工会、商工会議所の経営指導員、あるいは最近充実させております税理士等の地域の認定支援機関といったところに、中小企業、小規模事業者へのアドバイスを行いながら、借り手と一体となって貸し手との間をつなぐ役割を担っていただくことによりまして、中小企業の資金調達の円滑化を図ってまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 政府の御答弁をお聞きすると、それを円滑にするためにいろいろ施策を練っている、そしてこれを全国でやっていく、地方でもアドバイスできるようにするとおっしゃっているわけですけれども、やはり地方によってはいろいろな事情もある、地方は地方の商売のやり方があるという御認識はあると思うんです。

 その際に、各職種があるわけです。私どもは繊維の小売をやっている、医療産業というか医療法人もやっている。飲食業をやられている方もおるんですが、例えば、飲食業の方が、有名な鍋のお店なんですけれども、鍋の宅配をやろうということで相談に行くと、夏に行ったものだから、夏に鍋は売れますか、そういうところから始まる。

 次に、もともとそういった中小企業の方というのは今までの債務があってさらに追加したいということなんですけれども、その債務が全部終わってからと。事業計画として金利負担に関しての相談にはどうしても厳しかったり、定期預金を持ってきてくれ、普通預金ではだめだと。定期預金がないから今度は奥さんの定期預金を持っていくと、奥さんのじゃだめだということで、かなり使い勝手が悪いというのを現状ではお聞きするんです。

 もちろん、何でもかんでも手放しで貸した方が中小企業のためにいいということを申し上げているわけじゃないんですけれども、いまだに条件の変更とか追加支援の相談には厳しい対応がされていると聞いていますので、そういったきめ細やかなところまで地方でもできるようにしていただければと思います。

 本日の質問もそうなんですけれども、いわゆる再生医療、私がやっているレーザー治療、医学、工学が連携したイノベーション、そして中小企業ということで、それぞれに異なる産業がございます。日本全体の産業ということで、これを強化法案としてやろうと思えばこのような内容になっていくと思うんですけれども、そこに若干、継ぎはぎ感があるんですね。それは仕方がない。だけれども、一個一個の規制を打ち破るというのではなく、政府の法案なんですから、医療の分野であれば混合診療とかそういったところも一気に取り払えるような、大きな岩盤規制を取り払えるようなものがやはり望まれるのではないか。どうしてもパッチワーク感があるとしても。

 きょうの場合、ちょっと野球の話をしているので野球で例えると、ホームランバッターがいない、シングルヒットの打てるバッターだけをそろえても大きな岩盤は崩せない。ピストルで幾ら撃っても、やはり大砲が必要だということです。規制を前提にして、その規制を部分的に緩和する、そういった姿勢じゃなくて、規制を大きく取り払うホームラン的な施策が望まれるんです。

 今回の法案に対しての理念も含めまして、大臣はどのように思われますか。

茂木国務大臣 ディー・エヌ・エーの問題につきましては、南場オーナーに私からもよく話しておきます。

 パッチワークというお話なんですけれども、確かに、老舗の呉服屋さんから見ると、日本語にしますと継ぎはぎですから、何か余りよくないように聞こえるのかもしれないんですけれども、もともとの意味はそんなに悪くないんですね。

 これは、パッチ、布片を縫い合わせて一枚の大きな布をつくる手芸でありまして、全体のワークということになるんですけれども、この手芸のパッチワークは、古くは紀元前九世紀、古代エジプトから始まっておりまして、例えば、これにアップリケを組み合わせて、女王の葬儀用の天幕等々に使われていた。これが、中世になりまして、サラセン人を通じてヨーロッパに伝わるわけであります。そして、大きなパッチワークは寒い地域で防寒用等々にも使われていたわけであります。

 今、多分、地域で文化祭とかをやられていると思います。いろいろな手芸、パッチワークも出ていると思うんですけれども、構図が重要なんですね。例えば、古い民家がある、そしてまたそこに草花が咲いている、その奥に壮大な山であったりとか空の風景が展開される、こういう大きな構図を描くことによって、それぞれの部分部分というのが生きてくる。

 この法案は、大きく言いますと、日本経済が持っている三つのゆがみ、過少投資、過剰規制、さらには過当競争を是正していくことが必要だ、こういう大きな構図のもとで、それを進めるための規制緩和の措置、そして過当競争、過少投資を解消するための新陳代謝のさまざまな措置、こういったものを盛り込ませていただいておりまして、そこの大きな構図の中には当然、それぞれのパッチの部分というか、その施策が入ってまいります。

 こういった施策は、先ほど委員からも御提起いただきましたけれども、それぞれの業種であったりとか企業の規模等々によりまして効果を上げるものは違ってきますから、うまく組み合わせることが必要だ、こんなふうに思っております。

 同時に、恐らく委員は、各省庁がばらばらではなくて、省庁横断的にというか、一体になってさまざまな取り組みを進める必要がある、こういう問題認識もお持ちなんだろうと思っております。

 委員の御専門であります医療等々の分野におきましては、御案内のとおり、日本再興戦略に基づきまして、研究から実用化まで一気通貫でつなぐことを検討しております日本版のNIHのように、内閣官房のリーダーシップのもとで、これまで、文科省は文科省、そしてまた厚労省は厚労省、経産省は経産省でやっていたのを、三省が連携してしっかりできるような新しい組織、仕組みもつくるという方向で今準備を進めているところであります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 実際、パッチはパッチの美しさがありまして、呉服の世界では余り継ぎはぎというのはないですけれども、洋服の世界ではマドラスチェックをパッチでつなぐクレージーマドラスというのがあったりとか、コマーシャルとかでも、デートでパッチのスーツを着て、思い切ったねというようなものもありますけれども、パッチはどうしても、全体を見ると、ちょっと思い切った感があったりもするんですね。いい意味の思い切った感であればいいんですけれども、何となく違和感もあったりします。

 医療の世界でも、大きなやけどをすると皮膚が足らないので、皮膚を継ぎはぎにする。パッチグラフトというんですけれども、本当は大きな皮膚を張りたい、その意味で、再生医療で皮膚をたくさんつくろうというのがなされているわけなんです。

 何が言いたいかといいますと、やはりパッチは刹那的な感じがするところもあると思うので、大きな岩盤を崩す、規制全体を変える、そのような改革を望むということです。維新の会は、過剰規制を取り払おうということには賛同いたすんですけれども、過剰規制を取り払おうと思うと、やはり思い切った改革が必要ではないかということです。

 時間もなくなってきました。

 本法案を審議して以来、参考人の方も含め、いろいろな方の御意見をお聞きしました。新陳代謝で事業も再編されて、ベンチャーも育ち、企業単位でも規制が緩和される、産業界にとっては明るい未来を創成するように映りますけれども、地方では津々浦々までその辺が行き届かなかったり、競争力のない分野の企業があると、事業が撤退を余儀なくされることもあります。

 残念ながら、うちの呉服屋も縮小しております。皆さん高齢者だったので、定年とともに店舗を閉めて縮小していったんですけれども、定年後の皆さんの生活もあるわけですから、そこからの出口を企業としては考えたわけです。

 つまりは、産業の面で明るい部分もあるんですけれども、それに伴う労働者の移動という負の面もあると予測されるんですが、今回の政府主導の方向性、あり方を再度お聞きしたいと思います。

茂木国務大臣 新陳代謝を進める。同時に、労働の面、失業なき労働移動、成熟産業から成長産業に円滑な労働移動を進める。車の両輪で進めていかなければいけないと思っております。

 同時に、事業承継がなかなか困難になっている事業者、高齢になって、息子も後を継がない、店を閉めようかどうか、ただ、いい資産は残っている、こういう方に対しては、事業の譲り受けを希望する方とのマッチングを支援する事業引継ぎ支援センターを整備することによりまして、雇用が失われることもない、そしてせっかくの引き継いできた資産というものも失われることはない、こういった状況をつくってまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 細かいことを聞いていくと、それに対する施策というのはあると思うんですけれども、ただ、アベノミクスの最大の目玉である三本目の成長産業、その中の過剰規制を緩和するには、やはりラジカルな、大胆な改革が必要であると思っております。

 新陳代謝がなければ、細胞というのは悪性化していくんです。私はどうしても発想が外科医なので、この政治の世界に来たときも、国政にメス、日本を大手術ということでした。大手術ができるような法案をやはり望みますと最後に申し上げて、質疑を終わらせていただきます。

富田委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 おはようございます。

 もう最終日ということで、各党が議論を続けてきたわけですから、本日、時間も短いですが、残された課題について質問をさせていただきます。

 本法律は、日本経済の三つのゆがみを解消するということであります。一つ目が過剰規制、規制が厳し過ぎるのではないか、二つ目が過少投資、投資がまだまだ少ないのではないか、そして三つ目に過当競争、競争が激し過ぎるのではないか、政府はこの三つをゆがみとして是正するということであります。

 過少投資、過当競争についてはやや現状認識の異なるところもありますが、本日、この三つのゆがみについて、それぞれ質問をしてまいります。

 一つ目は、まず過剰規制についてです。

 今回の規制緩和はやや小粒な気もいたしますが、しかし、小さな規制緩和でも数多くきめ細かくやって、結果的に社会全体の規制緩和が大きく進めばよいという考え方もあろうかと思います。個別の政策の進捗については、もちろん、そちらで成果測定をして、足りなければてこ入れということでありますが、私は本日、日本の規制緩和全体の進捗を図るKPIはないかという議論をしたいと思います。

 いろいろ探しましたら、世界銀行のガバナンス指標という中で、規制の質というものもかつてありました。例えばこのような形で、経年比較できる、規制緩和全体を包括的に測定できるKPIということについて、お考えをお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 今、世界銀行、規制の質というお話をいただきましたが、かつては規制緩和という言葉が使われておりました。今は恐らく一般的には、規制改革という言葉を使うことの方が多いのではないかと思っております。

 例えば、安全上の規制であったりとか、さまざまな規制の全くない社会、こういったものは現代社会においては成り立たないのであろう。ただ、安心、安全な生活を営んでいく上で、また経済を大きく成長させていく上で障害となるものは取り払い、改善していく、これが規制緩和であると思っております。

 そこの中で、KPI、キー・パフォーマンス・インディケーター。我々は、例えば、日本再興戦略におきましても、開廃業率を英米並みの一〇%台にする、また設備投資につきましても今後三年間のうちに年間の設備投資額を七十兆円台にする、こういう目標値、KPIというものを定めているところであります。そして、そのKPIの達成に必要なさまざまな施策を盛り込んでおります。

 恐らく、規制改革は、その達成に必要な施策、手段ということになるんだと思います。規制改革は、私は目的であるとは思っておりません。手段であって、あくまで経済を成長させる、企業の活動を活性化する、富を大きくする、こういったことがKPI、まさに目標であり、それを達成する手段の一つとして、大切な手段でありますが、規制の改革というものがある、こういう位置づけをいたしております。

井坂委員 規制改革は手段であるということで、それは確かにそうなんですが、手段と目的というのは延々連鎖するものだと私は思っております。

 例えば、開廃業率を大きな目標として掲げておられますが、それはさらにもう一つ上の目的に対する手段ということでありますから、私は、規制緩和、規制改革、特に規制の質ということについては、手段であると同時に、やはり、その下にたくさんぶら下がっているものの大きな包括的な目標として掲げ、測定するべきだということを申し上げたいと思います。

 ちょっと時間がないので、二つ目に、過少投資ということについてであります。

 設備投資の促進ということで、普通はこれは供給側の政策であります。しかし、アベノミクスでは、設備を買ってもらう、需要促進という意味合いもあろうかと思います。

 今回の法律でもハード面での設備投資を促進する政策はありますが、私は、事業効率を高めるためのソフト投資であったりとか、製品の付加価値を高めるためのデザイン投資であったり、あるいは従業員の能力を高める人的能力投資であったり、こういったことも促進すべきだと考えております。

 今回も、ソフトつきのハードウエアは設備投資とみなすとか、あるいは革新的なデザインは研究開発費で見るとか、いろいろ工夫はされておられますので、別に全否定するわけではありませんが、ソフト面の投資そのものを直接促進できないかということについてお伺いをいたします。

茂木国務大臣 投資はもちろん、単にハードの設備投資に限らず、ソフト面の投資、さらには人材面の投資が極めて重要だ、そんなふうに我々も考えております。

 例えば、経済産業省といたしましても、中小企業向けに、コンピューター、ソフトウエアなども広く対象とした中小企業投資促進税制を実施しております。この秋の税制改正におきまして、最新型のサーバーであったりとか稼働状況等の情報を収集、分析、指示するソフトウエアにつきまして、特別償却率三〇%を即時償却できる、もしくは税額控除率、税額控除を行う、これは、資本金三千万円以下の小規模事業者については七%を一〇%に上げる、さらには三千万円以上のものにつきましても七%を適用する、こういった形をとらせていただきまして、中小企業におけますソフトウエア、ソフトも含めた投資の促進を図ってまいりたいと考えているところであります。

 また、人材育成の観点から、ものづくり小規模事業者等におけます中核人材からの技術、技能の継承を支援するための予算事業、ものづくり小規模事業者等人材育成事業、これは本年度で三・五億円の予算でありますが、こういったことも実施しているところでありまして、設備投資、そしてソフト面の投資、人材投資、それぞれを組み合わせながら日本の競争力を高めていくことが重要だと考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 三つ目に、過当競争について伺います。

 六月に出された日本再興戦略で、開廃業率一〇%台という、先ほど大臣がおっしゃった目標が掲げられております。開業率ではなくて開廃業率ということで、これまで政府は廃業が少ないことをよしとしてきたわけでありますが、これは一つの大きな思想の転換かなというふうにも思っているところです。

 事前の当局との議論では、開業がふえれば結果的に廃業もふえるだろうという話でありましたが、私はそうは思っておりませんで、例えば、毎年一〇%会社がふえる、そうすると、百社で競争していたところが毎年百十社で競争する、そこで本当に競争を激しくやり合って、ぼろぼろになって負けて、十社が最後の最後に退場していくということになりますと、これは、政府が是正すべき三本柱に掲げている過当競争そのものの状況ではないかとも思うわけであります。

 起業の促進だけで、深い傷を負わない早目の見切り、あるいはスムーズな廃業への支援がないと、結局、過当競争のあげく、立ち直れないほど傷つく企業、廃業がふえるとも考えるわけです。

 先ほど議論があった個人保証の見直しは私は高く評価いたしますが、ほかにも廃業支援の政策セットが必要ではないかということについて、お考えをお伺いいたします。

茂木国務大臣 もちろん、我々も、廃業率を上げることを目標にしているわけではありません。何を進めるか。産業の新陳代謝を進めていくということであります。その結果として、開業率も上がり、廃業率も上がっていくということになる。しかし、企業として残せるもの、これをきちんと残していく仕組みであったりとか、再チャレンジできるような仕組みというのはつくっていかなきゃいけないといった意味で、経営者の個人保証のあり方についても見直しを進めております。

 同時に、事業としての資産はあるけれども後継者がいない、こういう方に対しては、一方で、事業をやりたいと思っている人とのマッチングを行うようなセンターの機能も持つことにいたしまして、そういった資産が受け継がれるような形はつくっていきたい。

 ただそのまま事業を残せばいいのではない、ただそのまま雇用を維持すればいいのではない。それは、事業環境も変わる、国際的な状況も変わる、こういった中で、産業の新陳代謝、そしてまた雇用の流動性、両方を高めていくことが極めて重要だと考えております。

井坂委員 時間も残り少なくなりましたので、最後に、私のライフワークでもあります起業促進ということについて一点伺います。

 アメリカでは、ベンチャーキャピタルが投資したベンチャーが成功する形としては、株式の上場が一割で、大企業に会社を買ってもらうMアンドAが九割というふうに認識しております。米国ベンチャーはIPOよりMアンドAによってキャピタルゲインを得る例が多いという理由の大きな一つは、のれんの非償却という日米の会計制度の違いだという指摘もよく見られます。会計制度はもちろんお互い一長一短あるわけでありますが、大企業がベンチャーを買いやすいのは、のれんの非償却という会計制度ではないか。

 現在、国際会計基準が日本でも今後強制適用されるのかどうか、あるいはどう変わるのか見通せない状況ではありますが、現状、日本でも国際会計基準に乗りかえればのれんの非償却の恩恵は受けられますよということであります。

 しかし、会計基準を変えるというのは大変コストのかかることでもありますし、一長一短ある中で、そもそも、日本の会計制度でも、MアンドA促進、ひいては起業の促進のために、のれん非償却を認めるべきではないかということについてお伺いいたします。

氷見野政府参考人 御指摘のとおり、大企業がベンチャー企業を買ったような場合には、買収価格とベンチャー企業の純資産の差がのれんとして計上されることになります。

 また、御指摘のとおり、日本基準の場合には二十年以下の期間を定めまして定期償却を行いますが、国際会計基準、米国基準では定期償却を行わないことになっております。

 この点につきましては、経済界でもさまざまな御意見があるというふうに承知しております。委員御指摘の日本基準の扱いでは、償却の分、毎年の利益が抑えられてしまうので買収が行いにくくなるという意見もあれば、逆に、国際会計基準の扱いでは、経営環境が変わった際に一気に巨額の減損処理を強いられることになるので、日本の風土ではかえって買収を行いにくくなるという御意見もあると承知しております。

 いずれにいたしましても、我が国の会計基準は、民間の独立した基準設定主体であります企業会計基準委員会が作成しているところでありますが、金融庁としてもこれをよく見守ってまいりたいと考えております。

 また、国際会計基準への転換の点についても御言及がございましたが、本年十月に、企業が国際会計基準を選択しやすくするための制度改正も行っておるところでございます。

井坂委員 最後に、選択しやすくという話がありましたけれども、それは、移りたいと思えば移れる、要は任意適用の範囲が広がるという話。しかし、移る面倒くささ、コスト、それから会計基準の一長一短、ここは何も変わらないわけですから、移ればやれるから移ったらいいというのは、私は当たらない話だというふうに思います。

 本法案の審議もきょうで終わりであります。

 きょうは周辺の話が主でありましたけれども、産業競争力の強化という本法案の目的はもちろん異論がないところであります。しかし、その手法や根本思想については、やや我が党と意見の異なる点があると考えております。

 根本的な部分については、政府が規制緩和の対象事業やあるいは合併すべき事業について選別、指定していく、こういった発想自体に問題があると考えておりますので、本法案については修正案を提出することを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。最後の質問でありますが、税の問題についてお尋ねをいたします。

 最初に経産省にお尋ねをいたします。産業競争力強化法案に伴う減税措置の一つであります生産性向上設備投資促進税制の創設について、その趣旨及び減収額についてお答えください。

菅原政府参考人 お尋ねの生産性向上設備投資促進税制でございます。

 委員御案内のとおり、ここ数年、設備投資が進まなかったゆえに、製造業の設備の老朽化が生じまして、これまで日本企業の強さの源泉となっておりましたマザー工場としての役割を果たせないような状況に立ち至っております。

 デフレから脱却して、我が国の産業競争力を強化するとの観点から、生産性の高い設備への投資を加速する必要があるとの認識のもと、生産性の高い先端の機械装置への設備投資に対し、即時償却や税額控除を認める措置を講じていくこととしております。特に、その中でも中小企業については、よりインセンティブが高く、より幅広い多くの中小企業をカバーできるような大胆な設備投資減税の内容となってございます。

 お尋ねの本税制の減収額は、四千四百億円程度を見込んでおります。

塩川委員 中小企業向けも含めてということですけれども、民間設備投資活性化のための税制改正ということで、リーマン・ショック前の水準から民間設備投資が約一割低下、今後三年間の集中投資促進期間においてこれを回復させることを目指すということです。

 大臣にお尋ねしますが、この促進税制で投資が、また結果として雇用がふえる保証はあるんでしょうか。

茂木国務大臣 高い目標だと思っております。しかし、達成できる目標だ、こういう思いで全力で取り組んでいきたい。

 デフレから脱却をして、さらに中長期的に我が国の産業競争力を強化していくためには、省エネ性能のよりすぐれた設備の更新を含めた設備投資を促進していくことが極めて重要だと考えております。

 ことし一年がどうなるかということでありますけれども、本年一月の緊急経済対策で講じました立地補助金、そしてまた設備投資減税の効果により、本年度の設備投資は前年度に比べて約一・八兆円増加する見込みになっております。六十三兆から七十兆に持っていくということでありますから、七兆円、大体一割になると思います。

 ことし講じました施策に加えて、十月一日に決定をいたしました経済政策パッケージにおきまして、設備投資をさらに促進するために、これまでにない大胆な設備投資減税を決定いたしました。産業競争力強化法案におきましても、リース手法を活用した先端設備投資の促進策を新たに盛り込んでおるところであります。

 こういった措置も含めまして、予算、税制、金融措置などあらゆる政策手段を動員いたしまして、今後三年間でリーマン・ショック前の水準であります七十兆円以上の年間設備投資額を実現してまいりたいと考えております。

塩川委員 増加をする見通しというお話がございました。七―九月のGDPにつきましても、やはり輸出や個人消費の落ち込みもあります。先ほどの答弁で、設備投資について堅調というお話がございました。四―六月期に比べれば減速している状況はもちろんあるわけであります。

 きょうの朝日新聞に、ホンダが埼玉県寄居に立ち上げましたマザー工場のことが紹介されていました。ホンダの伊東社長によると、市場の拡大が望めるのは新興国で、工場建設も海外が中心、こういう言葉もあるわけであります。これまで行ってきた国内設備投資の促進策がどうだったのか、この点での総括が必要だと考えます。

 二〇〇九年度から実施をされております外国子会社配当益金不算入制度は、経産省の説明によりますと、国際展開する我が国企業の外国子会社が獲得する利益について、税制に左右されずに、必要な時期に必要な金額を国内に戻すことが可能となるよう国際租税制度を整備する、国内に還流する利益が設備投資、研究開発、雇用等幅広く多様な分野で用いられ、我が国経済の活力向上につながることが期待される、このように述べております。国内設備投資促進や雇用につながることを期待された制度であります。

 国税庁にお尋ねをいたします。

 この外国子会社から受ける配当等の益金不算入額について、二〇一〇年度分及び二〇一一年度分が幾らなのか、その額をお示しください。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁の会社標本調査によれば、外国子会社から受ける配当等の益金不算入額の総額は、二〇一〇年度、平成二十二年度は三兆九千四百十七億円、二〇一一年度、平成二十三年度は三兆九千三百八十四億円となっております。

 以上でございます。

塩川委員 数字が出ています二〇一〇年度分、二〇一一年度分、約四兆円ということであります。その九割が資本金百億円以上や連結法人企業、いわゆる多国籍企業でありまして、当然、当該企業には減税効果となり、国、地方には税の減収となる措置であります。

 そこで経産省にお尋ねしますが、この外国子会社配当益金不算入制度導入後の対外直接投資収益と配当金の推移はどうなっているのかについてお答えください。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 日本銀行の国際収支統計によれば、対外直接投資収益は、二〇一〇年の三・二八兆円からふえておりまして、二〇一二年に五・三九兆円になっております。

 これは、御指摘のとおり、外国子会社における内部留保と国内還流した配当金等に分けられるわけでございます。外国子会社における内部留保につきましては、二〇一〇年〇・一五兆円、一一年一・二三兆円、一二年二・一二兆円。また、国内還流した配当金等につきましては、二〇一〇年三・一三兆円、一一年三・二三兆円、一二年三・二七兆円という推移になってございます。

塩川委員 資料をお配りさせていただきました。「国内還流した配当金の推移」ということで、今御説明があったとおり、「「外国子会社配当益金不算入制度」の導入等により、国内還流した配当金は〇八年の二・四兆円から、〇九年は三・〇兆円と約二割強の増加。」ここに制度が導入されたということがあるわけです。「二〇一〇年以降においても国内還流した配当金は安定的に推移。」と書かれております。このグラフを見ると、リーマン・ショック対応で一時的にふえ、その後、国内還流した配当金は横ばいで、一方、海外での内部留保が一貫して増加をするという状況であります。

 こういった外国子会社配当益金不算入制度ですけれども、制度を導入した趣旨でもありました国内の設備投資はこの制度を通じて実際にふえたのか。この点については大臣はどのように受けとめておられますか。

茂木国務大臣 図をお示しいただいたんですけれども、こういう状況であるから、やはり成長戦略をきちんとつくらなければいけない。

 別に、民主党政権、その前の自民党政権、どこが悪かったと申し上げるつもりはありませんけれども、デフレ、円高だったんです。ですから、国内に資金を還流してもそこで新しい事業展開がなかなかできない、そして、国内の需要が低迷をしているという状況でありますから、そういったことが起こったんです。

 先ほどホンダの寄居工場のお話をしていただきました。御案内のとおり、あそこは、一旦つくり始めたのをとめたんです。ところが、安倍政権になって、新しいアベノミクスのもとで国内も変わっていくということで、世界の中心になるようなマザー工場をホンダもつくるようになってきた。こういった動きを我々は本格化していきたい。そのためにも、そのキードライバーとなる法案として、この産業競争力強化法案の早期の成立をお願いしているところであります。

塩川委員 ホンダの埼玉工場は、私は狭山市のそばにずっと暮らしておりましたが、あそこ自体が手狭になったことも背景にあります。寄居に移る際には、地元自治体のいろいろな支援もあった中での建設でもあるわけです。そういったものがこの先、こういった大きな企業において、国内の設備投資に本当につながるような取り組みになってくるのかということが今問われているわけであります。

 この間ふえているのは海外での設備投資でありまして、最新の「我が国企業の海外事業活動」、経産省の貿易経済協力局がまとめているものですけれども、これによると、設備投資全体に占める海外の割合は〇九年の一五・九%、一〇年度一七・一%、十一年度二一・六%と上昇し、一方、国内設備投資は落ち込んだままであります。ですから、外国子会社配当益金不算入制度自体が国内設備投資促進につながっているものではないということが、この数字でも見てとれるわけであります。

 内部留保が積み上がっているわけで、その内部留保が、海外で留保するか、国内で留保するか、そのどちらかの違いでしかない。この制度によって実際に起こったのは、税収にその分穴があいたという現状であるわけです。

 そういった点で、ずっと議論してまいりましたように、多国籍企業への支援が国民の利益、日本経済の産業競争力の強化につながるのかということが問題です。

 経産省にお尋ねしますが、産活法の経産省認定企業約四百社のうち、いわゆる多国籍企業は何社あるのか、この点についてお答えください。

菅原政府参考人 前回の塩川議員の御質問に対して、大臣から、多国籍企業の定義はOECDガイドラインによれば複数の国に拠点を設立している企業というふうにお答え申し上げたと思います。

 具体的には、日本企業であって他国に設立されている販売拠点や生産拠点を海外子会社として連結している企業などが多国籍企業に当たるものと考えられます。

 これに対して、議員御案内のとおり、産活法は国内で事業を営む事業者の国内事業の生産性向上の支援を目的としていることから、先ほど申し上げた、たとえ海外に連結子会社を持っている多国籍企業でありましても、国内で事業を行っている単体ベースでの申請を受け付けてございます。このため、産活法認定事業者については、厳密にOECDガイドラインの定義を適用しますと、ほとんどの認定事業者が多国籍企業ではない、国内単体事業者ということになります。

 ただ、もしお尋ねが、こうした産活法で認定した単体ベースの事業者を連結ベースでの企業グループとして見た場合にどれだけ多国籍企業があるかということでしたら、申請書には海外拠点についての記載はございませんので、正確な数字を把握することは不可能だと思っております。

 ちなみに、経産省が認定した四百社のうち東証一部に上場している企業は約百社ございます。東証一部に上場している企業であれば海外にも拠点を有していると推定されますので、少なくとも百社は連結ベースでは多国籍企業に当たるというふうに考えてございます。

塩川委員 全体はわからないということで残念でありますが、海外拠点が多い企業は皆大手企業でありまして、私の事務所で九九年の発足から二〇〇四年六月までを数えました。もっとやりたかったんですけれども、時間がないものですから。そういう中で見ますと、百七十四分の九十四で、五四%が多国籍企業に相当する。しかも、巨大な企業でもあります。

 ですから、私が指摘しましたように、産活法そのものが多国籍企業支援法だと。九二年の通商白書をいつも引用しますが、国家の産業競争力が当該国企業の産業競争力と厳密に一致しなくなっている、こういう事態が生まれている。多国籍企業の産業競争力強化策は日本の産業競争力強化にはつながっていない。こういう点を改めて指摘して、時間が参りましたので終わります。

富田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 この際、本案に対し、塩谷立君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による修正案、今井雅人君から、日本維新の会提案による修正案並びに三谷英弘君外一名から、みんなの党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 各修正案について、提出者から順次趣旨の説明を求めます。田嶋要君。

    ―――――――――――――

 産業競争力強化法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田嶋委員 ただいま議題となりました産業競争力強化法案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 本修正案は、産業競争力の強化に関する実行計画について定める第六条に所要の修正を行おうとするものであり、その内容は次のとおりであります。

 第一に、政府は、重点施策の進捗及び実施の効果に関する評価を行ったときは、重点施策の進捗及び実施の状況並びに評価の結果を公表するものとすることとしております。

 第二に、政府は、重点施策の進捗及び実施の状況並びに評価の結果に関して、各年度ごとに、報告書を作成し、これを国会に提出しなければならないこととしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 次に、今井雅人君。

    ―――――――――――――

 産業競争力強化法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

今井委員 ただいま議題となりました産業競争力強化法案に対する修正案につきまして、日本維新の会を代表いたしまして、その主な内容を御説明申し上げます。

 第一に、基本理念に、産業競争力の強化は、徹底した規制の撤廃及び緩和が我が国経済の成長の促進に資することに鑑み、国が積極的に規制の撤廃及び緩和のための措置を講ずることを旨として、行わなければならないことを追加することとしております。

 第二に、国の責務に、国は、徹底した規制の撤廃及び緩和を推進する責務を有することを追加しております。

 第三に、新事業活動に関する規制の特例措置の整備等及び規制改革の推進に関する規定を削除することとしております。

 第四に、政府は、我が国経済の成長の促進に資するため、この法律の施行後三年以内に、社会経済活動に関するあらゆる分野における徹底した規制の撤廃及び緩和のための見直しを行い、その結果に基づき、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとしております。また、この場合において、規制は原則として撤廃するものとし、撤廃しないこととする規制については、その理由を国会に報告するものとしております。

 第五に、独立行政法人中小企業基盤整備機構の行う特定新事業開拓投資事業円滑化業務に関する規定を削除することとしております。

 第六に、政府は、この法律の施行後三年以内に、事業活動に対する支援に係る組織及び制度について統合、廃止等の見直しを行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

    ―――――――――――――

 産業競争力強化法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

三谷委員 ただいま議題となりました産業競争力強化法案に対する修正案につきまして、みんなの党を代表いたしまして、その主な内容を御説明申し上げます。

 第一に、国の責務として、国は、規制の見直しを行うに当たっては、産業競争力の強化を阻害することのないよう配慮しなければならないことを追加することとしております。

 第二に、新事業活動に関する規制の特例措置の整備等に関する規定を削除することとしております。

 第三に、政府は、この法律の施行後三月以内に、株式会社に社外取締役の選任を義務づけることについて検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置を講ずるものとすることとしております。

 第四に、政府は、この法律の施行後一年以内に、株式会社の業務の適正を確保するための体制の強化に係る方策及び雇用に関する規制の緩和について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることとしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 これにて各修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより原案及びこれに対する各修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、産業競争力強化法案について、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党共同提出の修正案に賛成し、原案に賛成する立場から討論を行います。

 バブル崩壊後の日本経済は低成長を続け、失われた二十年とも言われています。また、リーマン・ショックが発生した二〇〇八年以降では、名目GDPは実額ベースで見ても五百兆円を割り込んだ状態が続いています。

 長引くデフレ、生産年齢人口の減少による国内需要減、新興国の急速な経済成長と相対的な産業競争力の低下など、日本の低成長の要因はさまざまあります。

 近年の日本の産業政策は、選択と集中により、生産性の低い部門から高い部門へ経営資源のシフトを図ろうとし、歴代政権はさまざまな成長戦略を提起してまいりました。第二次安倍内閣における日本再興戦略の実行ツールとなるのが本法案の位置づけであると理解しております。

 実行体制を確立するための実行計画の策定、規制の早期改革への突破口とすべく規制横断的な企業実証特例制度とグレーゾーン解消制度という試み、産業の新陳代謝の促進に資する先端設備投資の促進策やベンチャー投資の促進など、産業政策を推し進めるべく施策が並べられた点は、半歩前進として一定の評価はいたします。

 しかし、今後実施に当たって課題もあることは指摘をしておきたいと思います。それは、幾ら器をつくったとしても、それをいかに実効的に運用できるかです。

 例えば、実行計画の策定において実行すべき制度改革を高らかに並べたとしても、仮に実行できなかった場合、実行計画の改定ごとに担当大臣が理由を述べて代替案を出すだけでは、単にお題目を述べたにすぎず、改革の先送りと同じです。その繰り返しではなかなか前には進みません。

 今回、我々が提出した修正案で、産業競争力の強化に関する実行計画に係る重点施策の進捗及び実施の状況並びに評価の結果に関して国会報告を行うことを追加しましたが、これは政府の成長戦略の施策の実施状況を国会がチェックできるようにし、実行度を見える形にするためです。

 やるべきことは明確です。これまでも同じように成長戦略はたくさんありました。違いは実行が伴うかどうか。もはや作文には意味はありません。実行なくして成長なしと総理は今国会の所信表明演説で発言しましたが、それが空文にならぬよう改めて申し上げます。

 なお、日本維新の会、みんなの党各党提出の修正案につきましては、趣旨が異なることから反対いたします。

 以上、討論を終わります。(拍手)

富田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 私は、日本維新の会を代表いたしまして、ただいま議題となりました産業競争力強化法案原案に反対の立場で討論いたします。

 まず、本法案では企業実証特例制度の新設が目玉政策として盛り込まれています。大臣の答弁では一定期間を過ぎた後、特例を開放して全国展開するとのことでありますが、法案では必要があると認めるときはとの記述にとどまっており、どれぐらいの期間で特例が開放されるかも担保されておらず、案件によっては、ある特定企業に優位な状況が長期間にわたって続くことにもなりかねません。

 一定の企業に対して全国一律の規制改革を先導して特例を認めるより、当初より徹底的な規制改革、撤廃を進めるのが王道と考えます。

 また、本法案のもう一つの目玉政策であるグレーゾーン解消制度の創設は、企業が新分野に進出するに当たり、事業所管大臣を通じ規制大臣に計画の適法性を確認するという制度が盛り込まれていますが、そもそもグレーゾーンなどという言葉が存在しないよう徹底的な規制の見直し、撤廃をすることこそが異次元の改革であります。

 税制面で企業、ベンチャーキャピタルなどに直接支援する政策が盛り込まれているのは十分評価に値しますが、金融面での支援策には問題があります。

 例えば、本法案ではベンチャーキャピタルの資金調達に対しても公の機関が保証するという制度が盛り込まれています。資金調達まで保証するということになれば、モラルハザードを生みかねません。

 また、本法案では廃業経験のある創業者への無担保保険に係る保険価格に対する保険金の額の割合を引き上げる政策が盛り込まれていますが、これも保証協会の審査能力を低下させるリスクを秘めている点では同根であります。

 リスクマネーを供給できる強い民間金融を育成することこそが日本経済を発展させる重要な鍵であり、公的金融支援を拡大することには反対であります。

 さらには、本法案では中小企業基盤整備機構、産業革新機構など、独立行政法人を活用してさまざまな支援策を講じるとされておりますが、それが支援制度をより複雑にするとともに、天下りの温床となりかねません。簡素なシステムにするためにも、徹底的な見直しによる整理統合をする必要があります。

 以上、本格的な規制改革こそが日本経済成長に寄与するとの考え方から、官の関与を深める本法案には反対せざるを得ないことを申し上げておきたいと思います。

 なお、自民党、民主党、公明党の修正案は本法案の微調整にとどまっているため反対、みんなの党の修正案は我が党と考えを一にするものであるため賛成することを申し上げて、討論を終わります。(拍手)

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 産業競争力強化法案について、自民党、公明党及び民主党提出の修正案及び原案に反対の立場で討論をさせていただきます。

 本法案は、アベノミクス三本目の矢、成長戦略の重要な一つとして位置づけられています。みんなの党といたしましても、経済成長には規制改革及び産業の新陳代謝はいずれも極めて重要だとの認識を有しており、その意味で本法案の大きな方向性に違いはありません。

 しかしながら、まず規制改革の目玉の一つとされている企業実証特例制度ですが、一企業にのみ規制を解除するというのでは、特定の企業とその事業を所轄する官庁との癒着、なれ合いを必要以上に強くし、ひいては便宜供与することと引きかえの天下りポストの創設という結果にすらつながりかねません。

 また、今までの規制改革のつらい過去に鑑みれば、民間の有識者を交えたワーキングチームを創設したり、総合的な調整役として当初から内閣が行司役を担ったりという仕組みのないこの制度がどれだけ機能するかについて疑わしいと言わざるを得ません。

 そもそも、今国会で議論されている国家戦略特区制度を、いわゆるバーチャル特区の考え方を踏まえて柔軟に運用することで、特定の企業に限らず、先端的な取り組みに関する規制改革を進めることができることから、あえてこの制度を採用する必要はありません。

 次に、グレーゾーン解消制度です。

 この制度を使えば、ノーアクションレター制度と異なり、事業所管官庁が間に入り、ビジネスのあり方の変更、具体的なアドバイスを含め、親身な対応をしてくれるということですが、ビジネスの魅力を維持したまま、規制が適用されない形へとつくりかえることができるのでしょうか。ビジネスの門外漢がビジネスのあり方に口を挟むことこそ、角を矯めて牛を殺すという結果を招来しかねません。

 以上の理由から、規制改革として提案されている二つの制度は、いずれも導入するべきではありません。

 他方、産業の新陳代謝の点についてです。

 本法案には、ベンチャーファンド支援に関する減税措置を含め、魅力的な施策は含まれています。しかしながら、本法案では国が産業の過当競争、過剰供給の有無を判断する仕組みになっておりますが、こういう産業のあり方そのものについて国が有効、適切に判断をすることができるか甚だ疑問ですし、産業の再編に関しても何が有効かを霞が関にいるビジネスの素人が判断できるとも思えません。

 ちなみに、本当に産業の新陳代謝を進める観点からいえば、人材の流動化やコーポレートガバナンスの強化に直接注力すべきです。しかしながら、現時点でこれらに向けた動きは鈍く、この点でも政府の産業新陳代謝への取り組みの真摯度が伝わってこないのは残念と言わざるを得ません。

 以上のとおりですので、自民党、公明党及び民主党の修正案及び原案には反対を、他方、みんなの党修正案にはもちろん賛成、そして、同趣旨の修正が施されております日本維新の会の修正案にも賛成させていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、産業競争力強化法案に対し、反対の討論を行います。

 本法案は、日本再興戦略を具体化し、世界で一番企業が活動しやすい国に日本を変えると称して出されました。成長戦略により経済の好循環が実現するとしていますが、この二十年間に及ぶ規制緩和と構造改革は、大企業を筋肉質にしただけで、国民には貧困と格差しかもたらしませんでした。大企業の競争力を強化することが、国民全体の利益と一致しないばかりか、対立するものとなっていることは明白です。本法案はこの矛盾を一層深めるものです。

 理由の第一は、本法案が株主資本利益率、ROEの向上を最優先とした大企業のリストラ支援法である産活法を継承するものだからです。

 政府は、産活法によるリストラ支援に加え、持ち株会社の解禁、会社分割や株式交換制度など企業組織再編制度は整備する一方、労働者保護に係る制度の整備は放置したままであります。その結果、持ち株会社や企業を実質支配するファンドらによる不当労働行為を招き、労働者の地位は不当に害されているではありませんか。

 OECDの調査でも、我が国の雇用保護に関する規制は緩く、解雇のしやすさは三十カ国中七番目です。産業競争力会議では、雇用分野を岩盤規制だと敵視し、さらなる労働法制改悪を企てておりますが、許されません。

 理由の第二は、企業実証特例制度やグレーゾーン解消制度を突破口に、規制緩和を全国展開する仕組みとなっているからです。

 これらの制度で企業が提案できる規制には、何ら制約がありません。労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準である労働法制を企業単位で緩和するなど、認められません。そもそも、環境、安全規制を乗り越える企業努力の中から新たな事業や技術革新が生まれ、それが真の競争力となるのではありませんか。企業のビジネスのために国民の暮らしや安全を損なうことは到底容認できません。

 国立大学のベンチャー出資解禁の問題など、いまだ法案の審議は尽くされておりません。

 海外子会社配当益金不算入制度の実績を見ても、大企業は内部留保を積み増すだけです。法案と一体に整備される与党税制大綱による措置を加えても、投資と雇用がふえる保証はありません。多国籍企業支援ではなく、国民の所得をふやし、中小企業を応援する方向に政策を切りかえてこそ、日本経済全体の発展につながります。

 なお、自民、民主、公明三党、維新の会、みんなの党提出の三件の修正案については、法案の問題点の解消にはつながらず一層の規制緩和を進めるものであり、反対であることを申し述べ、討論といたします。(拍手)

富田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、産業競争力強化法案及びこれに対する各修正案について採決いたします。

 まず、今井雅人君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、三谷英弘君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、塩谷立君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、宮下一郎君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。田嶋要君。

田嶋委員 案文を朗読いたします。

    産業競争力強化法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法案が成長戦略実行のための重要な対策であることに鑑み、その施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 産業競争力の強化は、民間の自発的な取組によって行われるべきものであり、政府の関与は最小限とし、あくまで民間の活力を支援するための環境整備にとどめること。また、企業収益の改善が雇用増大、賃金上昇及び消費拡大につながる好循環を安定的に生み出していくために、供給サイドだけでなく需要サイドも加味した施策を講じること。

 二 企業実証特例制度において、事業所管大臣と規制所管大臣の協議が整わない場合、法律の趣旨に則り、内閣総理大臣が適切に調整を行うこと。

 三 企業実証特例制度及びグレーゾーン解消制度の運用に当たっては、新たな規制の特例措置の求め及び規制の解釈及び適用の確認の求めについて、原則として一ヶ月以内に回答を行うこととし、この期間に回答できない場合には、一ヶ月毎にその旨及び理由を通知すること。また、新たな規制の特例措置の求め及び規制の解釈及び適用の確認の求めの件数については、四半期毎に公表すること。さらに、ユーザー企業の視点に立って、二つの制度が一体的に進められるよう配慮するとともに、早期にモデルケースを実現し、可能な限り情報公開を進めることを通じて、企業にとっての予見可能性を高めるよう努めること。

 四 事業再編計画、特定事業再編計画及び中小企業承継事業再生計画について、計画に伴う失業の予防等雇用の安定に万全を期するため、計画の作成に当たり、事業者が労働組合等と協議により十分に話し合いを行い、また、計画の実施に際して、事業者が雇用の安定等に十分な配慮を行うことを確保することにより、労働者の雇用の安定に最大限の考慮を払いつつ当該計画が実施されるよう、厳に適切な運用を行うこと。

 五 中小企業承継事業再生計画については、人員削減が主たる目的とならないこと、第二会社に移行する労働者の労働契約及び労働条件が不当に切り下げられないこと、また、第二会社に移行しない労働者がいる場合にはその選定が恣意的にならないよう、労働組合等と協議により十分に話し合いを行うことを要件として認定すること。

 六 ベンチャー企業の支援について、従前の施策が必ずしも十分な成果を上げられなかったことに対する検証を行い、開・廃業率十パーセント台の目標達成に向けて、大企業と比べて十分な経営基盤を構築することができないベンチャー企業がその成長過程に応じた支援を受けられるよう、資金、経営ノウハウ、人材確保等、多方面に亘る支援の仕組みを構築するとともに、本法に基づく地域の創業支援に当たっては、十分な体制の整えられない市区町村に対し国として必要なサポートを行う等、実効的な創業支援体制の構築に万全を期すこと。なお、特定新事業開拓投資事業計画の認定の基準は、経済の実態に合わせ、可能な限り弾力的に設定、運用することにより、ベンチャーファンドへの投資を促進することができるよう積極的に取り組むこと。

 七 大学のイノベーション機能の強化に当たっては、これまでの実態を踏まえつつ、資金供給の拡充に加え、経営や営業面での資質を有する経営人材の確保及びそれらを補う存在としての外部ネットワークの活用も含めた総合的な支援体制の整備に積極的に取り組むこと。また、大学等における研究開発の成果をうまく実用につなげていくため、研究開発所管官庁と産業所管官庁が協働して総合的な支援体制を構築すること。

 八 中小企業の再生支援に当たっては、今後、事業再生を要する中小企業の増加が予想されることから、追加された仕組みを含め、関係者に広く周知するよう引き続き努力するとともに、再生支援の強化に寄与する専門人材の育成・確保に取り組むこと。

 九 株式会社産業革新機構については、過去の類似施策の検証の上に立ちつつ、民間の目利き人材の十分な確保及びその積極的活用等を図り、出資対象の審査を継続的かつ厳格に実施する体制を整備するとともに、中長期の産業資本を提供することを通じて次世代産業の育成を図るというミッションの実現に向けた適切な運営に努めること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

富田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

富田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、茂木経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。茂木経済産業大臣。

茂木国務大臣 ただいま御決議のありました本法案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

富田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

富田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時一分散会


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