衆議院

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第11号 平成26年4月18日(金曜日)

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平成二十六年四月十八日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 宮下 一郎君 理事 山際大志郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 田嶋  要君

   理事 今井 雅人君 理事 江田 康幸君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      越智 隆雄君    大見  正君

      勝俣 孝明君    佐々木 紀君

      白石  徹君    田中 良生君

      田畑  毅君    武村 展英君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      根本 幸典君    福田 達夫君

      福山  守君    細田 健一君

      牧島かれん君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      山田 美樹君    枝野 幸男君

      岸本 周平君    近藤 洋介君

      辻元 清美君    伊東 信久君

      木下 智彦君    丸山 穂高君

      國重  徹君    三谷 英弘君

      小池 政就君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   経済産業副大臣      松島みどり君

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           広瀬  直君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           谷  明人君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          菅原 郁郎君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          片瀬 裕文君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          富田 健介君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (特許庁長官)      羽藤 秀雄君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    中尾 泰久君

   政府参考人

   (特許庁審査業務部長)  國友 宏俊君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     福山  守君

  菅原 一秀君     牧島かれん君

  宮崎 謙介君     田畑  毅君

  宮崎 政久君     池田 佳隆君

  三谷 英弘君     柏倉 祐司君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     宮崎 政久君

  田畑  毅君     宮崎 謙介君

  福山  守君     石崎  徹君

  牧島かれん君     菅原 一秀君

  柏倉 祐司君     三谷 英弘君

    ―――――――――――――

四月十七日

 今すぐ原発ゼロの日本の実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七七〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第七七一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七七二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七七三号)

 同(志位和夫君紹介)(第七七四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七七五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七七六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七七七号)

 原発から撤退し、再生可能エネルギーへの転換を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七七八号)

 同(笠井亮君紹介)(第七七九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七八〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七八一号)

 同(志位和夫君紹介)(第七八二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七八三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七八四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七八五号)

 直ちに原発ゼロを求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第七八六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省大臣官房審議官広瀬直君、経済産業省大臣官房審議官谷明人君、経済産業省経済産業政策局長菅原郁郎君、経済産業省産業技術環境局長片瀬裕文君、経済産業省商務情報政策局長富田健介君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、特許庁長官羽藤秀雄君、特許庁総務部長中尾泰久君及び特許庁審査業務部長國友宏俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 自由民主党の宮崎政久です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、委員長、理事を初め皆様に心より御礼を申し上げます。まことにありがとうございます。

 さて、早速質問に入らせていただきます。特許法等の一部を改正する法律案でございます。

 きょうは弁理士会の皆様も傍聴に来ていただいておりまして、今般の弁理士法の改正の中で弁理士の使命の明確化、業務の拡充というのも図られておりまして、我が国の知財戦略を担う弁理士の皆さんの業務がさらに進むことを我々も求めながら、今回の法案審査をしているところでございます。

 冒頭、特許法の一部を改正する法律案、衆議院での委員会審議の最初でございますので、茂木大臣にこの法案の位置づけについて御説明いただきたいと思います。

 政府は、知的財産政策ビジョン、日本再興戦略などなどで、今後十年で知的財産において世界最高水準の国になるという、具体的な知的財産立国を目指すことを示しておりますが、今回の改正法案の中でどのような位置づけとなっているのか。今の位置づけ、そして今後の見通しなども含めまして、大臣から御説明いただきたいと思います。

茂木国務大臣 宮崎議員は弁護士で、那覇地裁で司法研修をされまして、知財の分野にも大変お詳しいと伺っております。

 実はきょう四月十八日は発明の日であります。高橋是清が初代の特許庁長官ということでありまして、明治十八年四月十八日に、現在の特許法の前身であります専売特許条例を公布したということでありまして、この日に特許法の改正の審議ができる、極めて歴史的なことだな、このように今考えているところでございます。

 すぐれた技術や商品を生み出すイノベーションを促進していくためには、特許、実用新案、意匠、商標の各分野での新たな知財戦略の推進が極めて重要であると考えております。これは日本の成長戦略にもつながるものだと思っております。

 このための制度的基盤の整備として、まずは、災害時等におけます柔軟な対応や、既に成立しました特許権の早期の安定化など、我が国制度の一層の国際調和を図ると同時に、地域の経済や雇用を支える中小企業、小規模事業者にとってもさらに使いやすい知財制度とすべく、今回、特許法等の改正法案を提出した次第であります。

 先生がおっしゃるように、弁理士法の改正も行っておりまして、今回、その中で弁理士の使命というのを明確にさせていただきました。きょうは弁理士会の皆さんも傍聴にお越しをいただいているところでありますけれども、弁理士の皆さんが使命を自覚していただく、これは、今申し上げたように地域の中小企業、小規模事業者等にとって一層良質なサービスを提供する上でも極めて重要なものであると考えております。

 加えて、中長期的な取り組みとしましては、世界最速かつ最高品質の知財システムの構築、こういったものを進めたいと考えておりまして、具体的には、二〇二三年度までに特許の権利化までの期間を半減するなど新たな数値目標を定めまして、審査の品質に対する外部レビューを新たに導入してまいります。また、秘密として管理されている技術情報や営業秘密の保護といった取り組みも推進して、企業の知的財産戦略を積極的に国としても支援してまいりたい、このように考えております。

 日本企業においてすぐれた技術や商品を生み出すイノベーションを促進する、それによって世界最高の知的財産立国を着実に実現してまいりたいと考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 この経産委員会、茂木大臣から博識のお示しもありまして、拍手もありましたが、持ち時間十五分ということで、どうなってしまうのかというようなところもあるわけでございます。

 さて、個別の問題を取り上げてまいりたいと思います。

 商標法の改正について一点触れたいと思います。

 今回、商標法の改正で、保護対象に色彩や音というのが入っておるわけですね。記号、文字など伝統的なものから、音が入ってきた。なぜ音が入ってくるのか。諸外国の商標関係の法令における音の取り扱いなども含めて、御説明賜りたいと思います。

松島副大臣 委員がおっしゃいますように、音なんですが、欧米などでは既に音を商標として保護するという制度が整備されております。日本で商標法の保護対象に音を追加するかどうか、それに当たりましては、追加した場合には、独占的かつ排他的な使用が可能となるという知的財産権の基本性格を考えまして、日本の企業などのニーズがどのようにあるか、そしてまた第三者への影響はどうかということを踏まえて慎重に検討してまいりました。

 そして、今回含めたんですが、テレビCMなどで、「ヒ・サ・ミ・ツ」、私ちょっと音痴なので、正しいかどうかわからないんですけれども、結構聞かれる音です。具体例を挙げますと、久光製薬が欧州共同体商標意匠庁というところに、二〇〇二年一月十日に、この「ヒ・サ・ミ・ツ」というのを出願しました。出願は、この言葉と楽譜と、さらに指定の分野が薬剤であるということをあわせて指定し、登録をしております。

 こういうふうに海外で権利を取得する会社があらわれておりますので、海外で、欧州の域内で権利が守られて日本で守られないということがあってはいけませんので、日本においても権利取得に係るニーズを考えて今回取り入れた次第であります。

 こうやって音を商標権として保護することによりまして、権利を侵害した場合には、損害賠償や差しとめ請求による権利行使が新たに可能になるといったような実益が生ずると考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 今の音の標章の件で、実務的なことを一点だけ、ちょっと確認させていただきたいと思います。

 審査基準というのがございまして、この中に識別性という要件がございます。これはどの範囲で使われるのかということをちょっと具体的に聞いてみたいと思います。

 私の沖縄県の地方銀行で琉球銀行というのがあります。この琉球銀行さん、テレビでもラジオでもCMを流しますと、必ず最後に「りゅうぎん」といって、音が流れて終わるようになっておるわけであります。沖縄県民はこの「りゅうぎん」というのを聞くと琉球銀行だと連想するんですけれども、もちろん、沖縄県民以外の人はそういう連想はないわけでありまして、この識別性の範囲についてはどのような観点から考えられているのか、確認させてください。

國友政府参考人 音の商標につきましても、自己の商品を他人の商品と区別するための特徴である識別性を有するか否かの判断につきましては、既存の記号や図形といった商標と同様に考えているところでございます。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 法改正も、この部分はないわけでありまして、実際にこれからこういう音が使われた標章をしっかりとプロテクトしていくためにも、こういう具体的なところで取り扱いが厳しくならないようにぜひお願いしたいと思っております。

 次に、もう一点、地域団体商標についてお伺いしたいと思います。

 今回の法改正では、地域団体商標の登録主体が商工会、NPOなどに拡充されるわけであります。これはいい話であると思います。ちょっと別の観点から御質問したいと思います。

 地域団体商標というのは、そもそも地域名と商品名から成っているわけであります。例えば、茂木大臣の御地元の栃木県であれば益子焼というふうな形で来る。松島副大臣の御地元の東京都墨田区であれば、例えば江戸切子みたいな形。田中政務官の御地元の埼玉県であれば草加煎餅みたいな形になるわけですね。私の沖縄であれば、例えば石垣島で石垣牛みたいな形で登録をされているものなわけです。

 この地域団体商標で、登録主体となっている団体内部で所属についての争いが起きるなどによって、例えば、その地域で商品をつくっているんだけれども団体に帰属ができないことになってしまうような事業者が発生した場合、団体に所属していない事業者は、結局、自分のところの商品の表示には非常に困るわけですね、商標権侵害になってしまう可能性があるわけですから。こういうことについての調整機能を果たすことは予定されておるんでしょうか。

羽藤政府参考人 地域団体商標についてのお尋ねでございます。

 現行の商標法におきましては、商標法自身で権利者団体の内部の運営の調整に関する規定を定めておるわけではございませんし、また、諸外国の同様の制度におきましても、権利者団体の内部の調整を商標制度において行う制度にはなっていないというふうに承知をしております。

 ただ、この地域団体商標制度につきましては、加入の自由が担保されている団体に登録主体を限るということが法律上規定されておりますし、また、出願前から当該商標を使用している者に対しては継続使用を認めるといった調整機能が法律上盛り込まれております。

 いずれにしましても、地域の実情に即しまして、制度の活用についての必要な助言などに特許庁としても努めてまいりたいと思っております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 先使用権をどのように活用していくかとか、さまざまここは検討する余地がある分野だと私は思っておるんです。つまり、そもそも地域名と商品名だけということであれば、誰かに独占させるということは適切でないので、もともとは商標登録の対象にならないわけですね。これが、地域ブランドを育成していく、産業振興を図っていく、こういう観点から、平成十七年に法改正がされて地域団体商標というものがつくられていった。つまり、地域団体商標の始まりは産業振興、地域ブランドの育成だったわけです。

 そこでさまざまトラブルが起きることによって、例えば、地域ブランドの育成のためにやったにもかかわらず、一部、地域で本来であれば統一的に使うべき地域団体商標が使えない人が出てきて、この人が例えば違うものを表示し始めたりして、結果として地域ブランド力が落ちてしまう、複数の表示が出てしまう、結局、こういうものをつくったがゆえに足かせになっちゃったというような事態になっても困るわけであります。

 特許制度や商標制度の中で、どこまでその仕組みの中で担保していくかという問題はありますけれども、こういうことは、実は、知財国家を目指していくという意味では、地に足のついたところで検討しないといけない話だと思います。これから農林水産省の管轄で特定農林水産物の名称保護の法律も閣議決定されて出てくることになるわけでありますけれども、ここでも同じようなことが起こり得る可能性があるわけですね。ですから、この二つの制度の相互の調整も果たさないといけない。

 これは調整ができていないからやるなという話ではなくて、私たちはまだまだ知財立国を目指してやらないといけないことがたくさんあるということを今回の法改正に当たって御指摘申し上げ、また、私もしっかりこれに取り組んでまいりたいと思います。

 最後になりますが、大臣、ちょっと一つお伺いしたいことがあります。

 世界で一番ビジネスをしやすい環境を整備していくんだということで、知財立国を目指すために、今、営業秘密の保護というのが非常に重要な要素になってきていると思います。

 私も、自民党の知的財産戦略調査会の役員の端っこの末席に置いていただきまして、昨年来、ずっと各団体にヒアリングなども重ねさせていただいておりますが、党と政府が一体となって知財国家を目指していかないといけない。

 これは非常に産業界からの視線も強い、また、グローバルな競争の中で我が国の国益を保護するというので非常に重要な点がある。この営業秘密の保護について、今後のスケジュール感も含めて、大臣の意気込みを聞かせていただきたいと思っています。

茂木国務大臣 議員は、自民党の知財戦略調査会においても中心メンバーとして御活躍をいただいております。

 余りうんちくを語る時間はないようでありますけれども、デジカメは日本のメーカーが高いシェアを持っているわけでありますけれども、これは、製造プロセスの中の、CCDといいます、画素といいますか画像を鮮明にするプロセスの技術をブラックボックスにしているからでありまして、こういったブラックボックスがきっちり営業秘密として守られるということは、日本企業の競争力にとっても極めて重要だと考えております。

 日本全体として営業秘密の保護水準を引き上げるために、まず、営業秘密を適切に管理する企業みずからの取り組みレベルの向上が必要であります。また同時に、漏えい事例とそれに対する対策といったベストプラクティスの集積そして共有など、官民が連携した取り組みも必要であります。さらに、国として制度の整備を進める必要があると考えておりまして、官民二人三脚でしっかりした戦略を進めてまいりたいと考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 官民二人三脚、非常に重要でございます。明るく前を向いて、二十一世紀の知財国家をつくってまいります。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸です。

 先ほど大臣から申されましたけれども、本日、四月十八日は発明の日ということで、我が国初の特許制度が公布されてから百二十九年目になるということでございます。この日、この特許法等の改正案について質問をさせていただきますこと、感謝を申し上げる次第でございます。

 本日は、先ほどもありましたように弁理士の皆様も傍聴をされております。知的財産に関する専門家として活躍をしていただいた弁理士の使命を明確にする弁理士法の改正、これも含まれたものでございますので、しっかりと質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、茂木大臣に質問をさせていただきます。

 これまで我が国経済を根幹から支えてきたのは、世界屈指の科学技術力そしてものづくりでございました。今後、国内においては少子高齢化が進んでまいります。一方で、世界的には企業活動のグローバル化が進む。こういう中で、ものづくりの源泉である科学技術力でいかにして経済を成長させていくか、この課題に対する答えがより一層重要性を帯びてくるものと思います。

 こうした状況のもとで、昨年、政府は日本再興戦略において、世界最高の知的財産立国を目指すことを明らかにされました。この実現に当たっては、我が国の知的財産制度の整備を初めとした政府の対応と、企業や研究者による効果的な知的財産戦略の推進の両方が必要不可欠であると思っております。

 先日、茂木大臣が特許を取得したという報道がございました。おめでとうございます。実は、私も、かつて医薬品の研究開発にかかわり、エイズの治療薬など、バイオテクノロジーの分野で十本以上の特許を取得しております。ネイチャーの論文もございます。国内の特許だけではなくて、PCT条約という国際出願の仕組みを使って、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアなど海外での特許権も取得してまいりました。

 そこで、お伺いをいたします。政府はいかにして世界最高の知的財産立国を目指すのか、この最重要の課題について、本法案の意義を含めて、大臣にお伺いをさせていただきます。

茂木国務大臣 江田委員はネイチャーにも論文を出されているということで、私はございません。きっとしっかりした論文なんだろう、そんなふうに思っているところであります。

 日本は、科学技術創造立国、こういう言い方もされるわけでありますが、その一方で、技術で勝ってビジネスで負ける、こういう状況にあるということも言われておりまして、この技術力を特許、実用新案、意匠、商標といった各分野での新たな知的財産戦略につなげていくということは、日本が国際競争力を高めていく上からも極めて重要である、このように考えております。

 世界最高の知財立国を目指す、そのためには、中長期的な取り組みとして、世界最速かつ最高品質の知財システムを実現していく必要があります。二〇二三年度までに特許の権利化までの期間を半減してまいりたいと考えておりまして、こういった新たな数値目標を定め、審査の品質に対する外部レビューを新たに導入することによって、その品質も上げていく。さらに、秘密として管理されている技術情報や営業秘密の保護といった取り組みも推進する必要があると思っております。

 当然、企業自身の取り組みも必要でありまして、技術の現場はもちろん、企業の経営層が、知財戦略はまさに事業戦略であり経営戦略である、こういう考え方のもとで、技術で勝つという経営に取り組むことが重要であると考えております。世界最速かつ最高品質の知財システムの実現を通じて、こういった企業レベルの取り組みを国としても全面的に支援してまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今、国としても全面的に支援すると言われました。世界最高の知的財産立国の実現には相当大きな課題もございます。しっかりと盤石な基盤をつくるために進めていっていただきたいと思います。

 次に、特許法について質問をさせていただきます。

 企業活動のグローバル化がこのように進行していく中で、我が国企業が国際競争に打ちかって、その製品を模倣品から守っていく、このためには、特許や意匠といった知的財産権を海外においても戦略的に獲得していくことが重要となってまいります。

 こうした海外での権利取得の際に有用な仕組みが、パリ条約に基づいて国際的に認められた、いわゆる優先権という制度がございます。すなわち、これは、日本で最初に出願してから一年以内に、それを基礎として後の出願を例えばアメリカ等の外国でした場合に、その最初の出願の日に出願されたものとみなされる制度であります。私も、先ほど申しましたように海外における国際出願をした場合には、この優先権の主張を行ってまいりました。

 今回の改正ではこの優先権の主張の制度がより使いやすいものに改良されたことと思いますけれども、こういう改正の内容の狙いについて、その意義についてもお伺いをしたいと思います。

中尾政府参考人 お答えを申し上げます。

 優先権の趣旨につきましては、ただいま委員からまさに御指摘があったとおりでございます。

 特許の審査は、世界で一日も早くその発明が行われたかどうかということを判定するものでございまして、今回この制度改正で優先権の主張ができる期間を広げるということによりまして、我が国の出願人の方にとりまして、日本のみならず、日本以外の国でも特許を取っていただくことの可能性が広がるというふうに考えてございます。

江田(康)委員 続けて、技術分野によって知的財産戦略も大きく変わってくるわけでございますけれども、例えば医療。ノーベル生理学・医学賞を受賞された京都大学の山中先生が研究に取り組んでおられるiPS細胞というのは、臓器の再生を可能とする細胞でありまして、実用化されれば、がんを初めとする難病のメカニズムの解明、治療にもつながる、人類の医療の歴史におけるマイルストーンともなることを大きく期待するものでございます。私も同様の分野を研究してまいりましたので、大変大きな期待がかかるものでございます。

 しかし、そこで特許権としてそれをしっかりと取得するかどうかが非常に重要でございまして、このiPS細胞に関する特許は、さきに述べた優先権を主張して、国際出願を利用して、アメリカや欧州といった主要国で権利を取得してこられました。このように、基礎研究の重要な成果を確実に権利化した京都大学の特許戦略というのは、大いに評価できると思っております。

 このようなすぐれた知財戦略がほかの大学また多くの研究機関においても着実に実行されるよう、何をもって特許庁はこの支援をしていくのか、どのようにそれを実現していくのか、そこについてお伺いをさせていただきます。

羽藤政府参考人 御指摘がございました京都大学のiPS細胞に関する特許でございますけれども、約三十カ国で特許の登録をしておる、そしてiPSアカデミアジャパン株式会社を設立して権利の一元化、戦略的な知財活用を行っておる、知財戦略の実践の模範的な事例の一つであるというふうに認識をしております。

 経済産業省特許庁といたしましては、大学がしっかり知財戦略を構築する、研究成果を知財として保護する、活用する、こういったことができますよう、大企業などでの知財マネジメントの経験や知識を有する専門家を派遣する、知財戦略の策定を支援するといった取り組みを行っております。

 加えまして、支援先の大学などにおけるすぐれた知財戦略や取り組みを事例集としてまとめて、ほかの大学などにも広く配布をする。こういったことを通じて、大学や研究機関がすぐれた知財戦略を構築し実行できるよう、引き続き支援を行ってまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今長官が申されましたように、特許の戦略、知財戦略というのが、日本が国際競争に勝っていく中においても根幹となるものでございます。今回の法改正を機に、特許の取得が我が国においてより多く実現できるようにしっかりと支援をしていっていただきたいと思うわけでございます。

 私もトータルの時間が十五分という短い中でございますので、最後になりますけれども、大事な弁理士法についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回、知的財産に関する専門家として、弁理士の方々の使命が明確にこの法案に位置づけられることになりました。

 弁理士の皆さんは、知的財産を創造して活用する企業、研究者、そして知的財産を保護する特許庁との間を橋渡しする非常に重要な存在でございます。世界最高の知的財産立国の実現に当たってのいわば人的基盤と言ってもいい、そのように思います。この人的基盤をしっかりと固めていくに当たって、今回の弁理士の使命の明確化は、非常に重たい意味を持つものだと思っております。

 ぜひとも、大臣から、この弁理士の使命の明確化の意義、さらには期待される効果について、御説明をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まさに江田議員が御指摘されたとおりだと思っておりまして、御案内のとおり、職業専門資格士に関しまして、弁護士法、公認会計士法、税理士法といった職業専門資格士法にはそれぞれの使命が明記をされているわけでありますが、現行の弁理士法には、弁理士が行う個々の業務や責務は明らかにされているものの、その活動の理念ともいうべき使命が明らかにされておりません。

 このため、今回の法改正では、弁理士の使命を「知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。」と明確化いたしました。今回の弁理士の使命の明確化には、弁理士の果たすべき社会的役割について社会全体が認識を深めるとともに、何よりも弁理士の皆さん御自身がその役割を自覚することに大きな意義があると考えております。

 あわせて、こうした社会全体での認識の深化によりまして、知的財産の戦略的な保護、活用のために、弁理士の一層の活用そして活躍が促されるとともに、弁理士がみずからの規律を高め、中小企業、小規模事業者を含めた依頼人に一層高品質なサービスを提供することを、今回の改正の効果として大きく期待いたしております。

江田(康)委員 大変明確に弁理士の使命の明確化について大臣から御発言をいただきました。

 今回、大変短い時間でございますので十分な質疑を行うことはできませんでしたけれども、今回の法改正は大変重要であります。きょうできませんでした意匠法や商標法についても大変大きな改正があるわけでございます。しかし、制度整備だけでは意味がなくて、世界最高の知的財産立国も絵に描いた餅となるわけでありますから、今回の法改正を足がかりにして、政府、企業、研究者、さらにはその橋渡しとなる弁理士の皆さん、三位一体となって世界最高の知的財産立国の実現を目指して取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 特許法等の改正についてお尋ねさせていただきます。

 この法案に限らず、国会で最近、このところ御審議いただいているのは、私の在任中に審議会で御議論されていたり、そのころから、次の法改正ではこういうことをやりたいと話を聞いていて、そうですねなんと言っていた話がほとんどなので、聞きにくいことが多い。今回も大筋は適切な中身だと思っておりますので、若干の点を確認させていただくとともに、ここからさらに広がる問題について、時間があれば審議させていただきたいと思います。

 今、弁理士の使命条項のお話がありました。本当に、他の専門士業と比べて、今までこれが規定されていなかったことが不自然でありましたから、今回きちっと規定されることは大変大事なことだと思いますし、また、その内容も適切なものであるというふうに受けとめております。

 と同時に、弁理士の皆さんがこの知的財産に関して大変重要な使命を負っていることを前提としながらも、弁理士の先生だけではなく、この知的財産をめぐる専門業務を担う皆さんがいらっしゃいます。弁護士を初め、知的財産に関する業務に携わる他の専門家の皆さん等と弁理士の皆さん、そして当事者の皆さんが十分に連携協力して仕事を進めていただくことでより大きな成果につながると思いますが、この点についての御認識をまず伺いたいと思います。

松島副大臣 枝野先生が大臣としていろいろ種をまいていただいたことが着実に花開いている、そんな気がしております。

 第一条に、弁理士の使命という条項を今回入れることになりました。

 しかしながら、御指摘のとおり、弁理士に限らず、弁護士を初めとする多くの専門家の方々が知的財産に関する業務に携わっているわけであります。実際に、特許庁が全国五十七カ所に設置しております知財総合支援窓口におきましても、弁理士に限らず、弁護士や中小企業診断士を初めとした専門家の方々に幅広く御協力いただいているわけであります。

 このように、知的財産に関する専門家同士が連携し、知的財産相談に係る高品質なワンストップサービスを実現することによって、中小企業、小規模事業者を含む企業が知的財産を戦略的に活用できるものと考えております。経済産業省としても、こうした環境整備、いろいろな方々の連携による環境整備を積極的に支援していく所存でございます。

枝野委員 その上で、大臣にこれはお答えいただきたい、確認をさせていただきたいと思いますが、法律を素直に読めば当然のことなんですけれども、一つには、この使命条項は、弁理士の皆さんが知的財産に関する専門業務を担うと書いてありますが、弁理士の皆さんのみが唯一の専門家であるという趣旨ではない。今のお話のとおり、ほかにもいろいろな皆さんが知的財産にかかわって、いろいろお仕事をされている、したがって、唯一のという意味ではないということの確認をさせていただきたい。

 それから、具体的な弁理士さんの業務範囲については、今回は基本的には手をつけていない。これは、利用者の権利擁護の観点から、さまざまなバランスをとりながら積み重ねられてきているものでございます。新たに使命条項が置かれたからといって、こうした弁理士の業務範囲の限定については、規定上も変わっておりませんし、解釈、運用上も使命条項が設けられたことで何らかの変更を及ぼすものではないというふうに思っております。

 この二点、確認をさせていただきたい。

茂木国務大臣 委員冒頭御指摘のように、今後の我が国の知財戦略、これは、弁理士の皆さんを含め、我が国が総がかりで当たっていく非常に重要な課題だ、このように考えております。

 その上で、弁理士法の第一条の弁理士の使命条項につきましては、知的財産に関する唯一の専門家という文言は用いておりません。したがいまして、弁理士のみが知的財産に関する唯一の専門家という趣旨ではございません。

 また、弁理士の業務範囲については第四条を初めとする各規定によって明確に定められておりまして、今回の使命条項の創設によりまして、弁理士の業務範囲に規定上も、解釈、運用上も何らかの変更をもたらすものではございません。

 今回の弁理士の使命の明確化、これは、弁理士の果たすべき社会的役割について社会全体が認識を深めるとともに、何よりも弁理士自身がその役割を自覚することに大きな意義がある、このように考えております。

枝野委員 もう一つ、弁理士法で、利益相反規定、利益相反の仕事を受けちゃいけませんよ、これは当然のことでございますが、これについての規定が緩和されて、みずからこれに関与したものを除き利益相反の対象から外れる。

 大きな事務所などでは、自分が全然知らないところで、相手方というか、利害の反する人の仕事をやっていたりするということ、これはあり得る話ですから、その趣旨自体は理解をするものでございますが、具体的な、みずから関与したといった、関与の解釈。

 あるいは、同じ事務所の中で、そういう場合にもちゃんと情報を遮断して、同じ事務所の中だからといって全然別々の、極端な場合は反対側の相談を受けているのに情報が行き来してしまったら困りますので、情報遮断をちゃんとやるという、これもその具体的な中身。実は意外と、個別具体的な案件を考えるとなかなか簡単ではないんですね。

 まず関与の解釈、それから、情報遮断措置の具体的な中身についてどういうふうに適切な執行を担保するのか。これは政府参考人で結構ですが、お答えください。

羽藤政府参考人 利益相反規定との関係での、執行の担保についてのお尋ねでございます。

 利益相反規定におけるみずからこれに関与したものの解釈、すなわちこの規定によって弁理士が行うことが制限される業務の範囲の解釈や、特許業務法人がとるべき情報遮断措置につきましては、日本弁理士会において今後日本弁理士会が改定する弁理士倫理ガイドラインにその具体的な内容を盛り込み、その後、全ての弁理士を対象に実施する義務研修において周知徹底するという方針を打ち出しているというふうに承知しております。

 この利益相反規定に違反した行為を行うことは、日本弁理士会が実施する処分の対象ともなります。日本弁理士会においては、この規定に違反する行為についての処分基準を明確化して、違反行為には厳格に対処するという方針を既に打ち出しております。

 加えまして、この規定に違反する行為を行うことは、経済産業大臣が実施する懲戒処分の対象ともなります。日本弁理士会において弁理士に対して適正な指導監督がなされるよう、経済産業省、特許庁といたしましても適切に監督しつつ、必要に応じ経済産業大臣による懲戒処分を行うことで、この規定の執行の確保に努めてまいりたいと考えております。

枝野委員 本当にこれは、研修等をきちっとやらないとなかなか大変だなというのは身にしみて実感しておりまして、当然、私も弁護士でございまして、弁護士も同じように利益相反禁止が求められています。弁護士の場合は、弁護士会の自治で倫理研修が義務づけられておりまして、たしか十年に一遍だったと思いますが、いろいろ忙しくて、しばらく猶予してもらっていて、大臣を外れたので、もう来られるよなと言われて、昨年研修に行ってまいりました。

 そうすると、この利益相反、こうした場合が利益相反に当たるのか当たらないのか、相当微妙な線のケーススタディーとかが宿題で出されまして、結構頭を悩ませましたし、実際に私が行った弁護士の倫理研修のときには、実は意見が分かれる。弁護士同士の中でも、これは許されないのか、それともぎりぎりセーフじゃないかと意見が分かれる。そういったケースがやはりこういった問題では必ずつきまとう話でありますので、弁理士会としてしっかりとした、そうしたケーススタディーを含めた研修をしていただく。

 しかも、今回の法改正を機に、今の御答弁ですと、全員がそうした研修を受けられるというふうにお聞きしましたが、そうしたことをされるというのは大変結構なことだと思います。弁護士会の場合は弁護士自治がありますから監督官庁というのは具体的にはないんですが、基本的には弁理士さんも自治でやっていただくべきだと思いますが、しっかりと経済産業省、特許庁としても、きちっとした研修、そしてそれが実になったものになっていくようにフォローしていただくことを、これは政務の方からお答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 もちろん、弁理士の皆さんみずからの取り組みによりましてベストプラクティスというものをつくっていくということが基本であると思っておりますけれども、経済産業省としてもできる限りの支援をしてまいりたいと思っております。

 専門士といいますか、プロフェッショナル、これはもともとプロフェスということですから、神に対して誓う、誰も見ていなくても神様は見ている、正しい行為、顧客に対して最も利益になる行為をするかどうかということで行動規範というのは決まるものでありまして、そういった趣旨に沿って弁理士の皆さんが一層活動していただけると思っております。

枝野委員 それでは、ちょっと法案の直接の話から離れまして、特許庁にもっと頑張ってもらおうという観点から質問させていただこうと思うんです。

 我が国の知財戦略という観点からは、国際的な競争も激しいですから、特許等の審査がとにかく迅速に行われないといけない。このニーズはますます高まっているところでございます。

 その一方で、技術が高度化して、複雑化して、審査自体もますます難しい。それから、例えば中国がこの特許の世界にどんどん出てきていて、中国語の文献を読まなきゃならない。英文を読める人は結構いるけれども、中国語まではなかなかとか、いろいろな要因で、スピードアップしなきゃならないんだけれども、どうしても時間がかかってしまう要因が一方でふえる、こういう中で特許庁は仕事をしていただいていると承知しています。

 しかも、公務員全体ということでは、公務員定数の抑制、そしてできれば減らしていくというニーズがあるわけでありますから、人を減らしながら、でも仕事はふえ、複雑化し、もっとスピードアップしろという非常に困難な中で、特許庁の皆さんには審査を初めとする努力をしていただいている。これを両立させる努力、私も私なりに頑張ったつもりですけれども、なかなか難しかったなという思いがあります。

 この間、今のようなニーズに対して実務的にどういった努力を進めてきているのか。あるいは、今予定されているようなことがあれば、まずこれは政府参考人で結構ですので、お答えください。

羽藤政府参考人 技術の高度化あるいは複雑化ということに対応いたしまして、例えば、平成二十年から平成二十五年の五年間におきましても、出願される書類の平均ページ数一つをとりましても二割の増加がございます。

 これに伴って、特許審査、それぞれの審査官の必要となる調査、内外の特許文献などにつきましても、中国における特許や実用新案の出願が急増しておることを背景として非常にふえております。具体的には、平成二十四年において、全世界の出願数約三百二十万件の中で、中国における出願が百四十万件にも及んでおりますので、そういった観点から、私どもは、審査官にとりましても、また出願に当たられるユーザーの方々にとりましても、こうした中国語文献などをどのように把握するのかというのは重要な課題であるというふうに考えております。

 こういった中で、特許庁といたしましては、特許審査の迅速化にも取り組んでまいりました。また、高品質化にも取り組んでまいらなきゃいかぬというふうに考えております。その中でも、今申しましたような先行技術の調査について、民間活力の活用件数なども拡充しながら、中国などを初めとする外国特許文献の機械翻訳・検索システムの整備といった取り組みに努めておるところでございます。

 加えまして、平成二十六年度予算におきましては百名の任期つき審査官の手当てをしておりますので、こういった取り組みの中でしっかりと特許審査の迅速化にもあわせて努めてまいりたいと考えております。

枝野委員 私の知る限りでは、特許庁の皆さんは、今のような状況の中で、人も、少なくとも任期の定めのない公務員の数がふやせないという環境の中では、大変ないろいろな工夫をして努力しておられるというふうに思います。それは敬意を表したいというふうに思っております。

 そこで、これは大臣にお尋ねしたいと思います。

 全体としての任期の定めのない公務員の数を、特許はこんなに大変だからふやしてくれというのはなかなか現実性がないということの中で、正直言ってますます人手がかかる状況に対して、これはやはり大臣として相当頑張っていただかないといけないだろうというふうに思います。大臣の見解、そして決意をお聞かせいただければと思います。

茂木国務大臣 特許の審査に関しましては、特許の権利化までの期間を今後十年くらいで現在の三十カ月から十四カ月に半減して、世界最速、最高のものに持っていくということであります。

 そこの中で、各審査官の処理能力といいますか、処理効率でいいますと、現在でもアメリカの三倍、中国の四倍というレベルでありまして、なかなか効率だけを上げていくというのも難しいところがございます。

 そこの中で、例えば、特許審査のための情報システムの構築、先行技術調査に関する民間活力の活用、こういった取り組みとあわせて、任期つきだけではなくて、全体としての体制、人員の強化、こういったものは極めて重要な課題だと思って、取り組んでまいりたいと思っております。

枝野委員 全体の公務員定数自体については、私も違う立場の大臣をやらせていただいた経験もありますので、そこは抑える方向は続けていっていただきたい。

 その中で、何とか、行政全体のやりくりの中で、ここは本当に物理的に仕事の量が多くて、今大臣御指摘のとおり、他国の同じような仕事をしている人たちの何倍もの効率で仕事をしているという客観的な背景があるわけですから、あそこの役所のあの何百人を減らしてこっちによこせと、表ではやりにくいのはよくわかっていますが、そういったことをぜひうまくネゴして、しっかりとこの特許の審査の人員確保について、これは党派を超えた後押しもしたいと思いますので、御尽力をいただきたいというふうに思います。

 さて、今回、特許法等の改正ということで、知的財産というと、どうしても特許が一番注目されて、科学技術立国日本としてはこれが重要であることは間違いありません。それから、デザインなどを保護する、こういったことも大変重要でありますが、知的財産ということでは特許庁の所管するもの以外にもありまして、その中で重要なものとしては著作権及び著作隣接権と呼ばれる権利がございます。

 著作権の対象になっているものの大部分がいわゆる文化にまつわる部分ですから、文化行政という側面から文化庁、文部科学省が所管してきたという経緯には一定の理解をするものでありますが、知的財産として特に国際的な厳しい競争の中でそれをしっかり守り、そのことによって日本の産業をしっかり下支えし押し上げていくという観点では、特許などの技術的な知的所有権と非常に共通しているという側面がますます強くなっていると思います。

 特に、いわゆるクールジャパン戦略のもとで、ジャパン・ブランド、それは日本全体としてのブランドもそうだし、それぞれの例えばコンテンツであったり、そこの魅力を通じていろいろな日本の製品その他について付加価値が生じている、こうしたものを後押ししていくということは、日本の産業政策の上から大変重要な柱であるというふうに思っています。

 個人的には本当は、特許庁のもとに著作権等も一括して、そして経済産業大臣のもとで日本の産業を下支えする知的財産権としてしっかりとトータルコーディネートしていくことが望ましいのではないかなと思うんですが、それはなかなか、省庁再編になるし、自分のところの仕事が減るのは文化庁は嫌がって抵抗が激しいでしょうから、すぐにそれはできないまでも、産業政策の観点から、文化にかかわることについて経済産業大臣はいろいろとかかわれることになっているし、現実にやっています。

 例えば、映画産業や音楽産業。映画も音楽もそれ自体は文化でありますけれども、それが産業となると、産業政策ということで、経済産業省が積極的に関与してきております。

 東京国際映画祭、私も大臣に就任するまで知らなかったんですが、東京国際映画祭は文化庁、文部科学省がバックアップしているのではなくて、経済産業省が共催という位置づけになっております。ですので、似合わないタキシードを着て、緑のネクタイをしてグリーンカーペットを歩かせていただきました。大臣もされたかどうか。

 こういうふうに、文化という側面は文部科学省かもしれないけれども、ちゃんと産業政策の側面からコミットして、それでしっかりと成果を上げている分野というのはこういった意味であるわけですから、そういった点からは、この著作権などについても、経済産業省として、あるいは経済産業大臣として文部科学省に、物を言うだけではないと思いますが、いろいろな形で積極的にコミットしていって、これが日本のビジネスの種になる、そういった側面からきちっとこれが強化されるというか、そういったことについて頑張っていただきたいと思うんですが、大臣の御認識をお尋ね申し上げます。

茂木国務大臣 東京国際映画祭は、私も昨年、日本の場合はレッドカーペットではなくてグリーンカーペットということでありまして、グリーンのボウタイ、そしてチーフもグリーンで歩かせていただきました。

 委員御指摘の、著作権及びその隣接権をビジネスにつなげていくという視点は、産業振興の観点からも極めて重要だ、そのように考えております。

 コンテンツ産業においては、著作権が生み出されても、その利用であったりとか流通が図られなければビジネスとしても成り立たないわけであります。クールジャパン戦略を進める上でも、特に日本の場合は著作権者等々の利害調整をどうするかという問題が出てまいりまして、コンテンツ産業を所管しております経済産業省としても、著作権の保護は必要でありますけれども、同時に利用とのバランスということで、適切な制度の設計であったりとかビジネス慣行の整備に積極的に関与していきたいと考えております。

 例えば、この国会に、電子書籍の普及に対応するための著作権法の改正法案が提出されております。ちなみに、私の書きました本は六冊とも全部電子化いたしておりますけれども、具体的に、この改正におきまして電子書籍に対応した出版権の整備が行われるために、経済産業省においては、有識者による検討の場を設けて、出版物の電子化や二次的利用等に関して、作家の対価の確保にも留意しつつ、作家と出版社の間での契約のあり方等について検討を行っているところであります。

 文部科学省、文化庁、そして関係機関とも連携を密にしながら、著作権を含めた知的財産のさらなる利活用が図られるように努めてまいりたいと考えております。

枝野委員 大変前向きな御答弁をいただいたことは感謝申し上げたいと思います。

 ただ、ちょっと一点だけ。

 今、権利の保護と利用との関係ということで、その側面も大変大事だと思います。なかなか著作権の関係が複雑で、かかわっている八人ぐらいはオーケーなんだけれども一人だけノーと言っているので利用ができないというようなケースが著作物については生じて、それをそうしたトラブルを生じずにスムーズに使って、それを生かして新たなものを生み出すということのために、利用との調整、これも大事なことですが、同時に、そちらばかりに偏ってしまうと、なかなか実際に著作権で、特に著作隣接権の方に近いかもしれませんが、いろいろな新しい芸術を生み出す人たちが経済的になかなか成り立たないので、再生産につながらない。

 そういった意味では、もしかすると文化行政という観点からも、ビジネスを日ごろから見ている経済産業省の視点の方が、それによってしっかりと対価を得てしっかりと再生産につなげていくのはビジネスの上では必要不可欠のことですから、特に実演家なんかについて、映画などについてよく言われていますが、しっかりと関係者がちゃんとそれで食べていける、そのためにはちゃんと権利に基づいてお金が払われる、ここのところに対しても、大臣は十分御承知だと思いますが、こういったところにも経済産業省の視点からしっかりと物を言って、そしてそれを確立していく、そうしたことも進めていただければと思っています。

 最後に、昔話をきょうは幾つかしたんですが、経済産業大臣に就任させていただいて最初に、その前に三・一一がございましたので、危機管理の体制はどうなっているのか、この経済産業省の本省が地震などで使えないときは、まずどこがバックアップになるんだと聞きましたら、特許庁ですとお答えになったんですよ。最初、私は、えっと思いました。そんな、本省がだめなときは特許庁だってだめだろうと。

 そうしたら、なるほどなという答えが返ってきたんです。特許庁には日本の宝である特許情報についてのコンピューターその他があるので、ここは本省以上に頑丈につくってあるから、災害があっても、ここは本省がだめでも大丈夫なんですと。なるほど、それはそのとおりだ、実際にその現場を見せてもらった方がいいなということで、いろいろなシステムを見せていただきました。しっかりとまず災害などにも備えて、また、これは、相手は災害だけじゃありません、産業スパイとか、テロとか、そういったことからも我が国の大事な特許情報を守っていかなければならない、しっかりとしたことをしておられます。

 残り時間が間もなくなりますので、こんなに頑張っているんだよねと私から言ってもいいんですが、それこそ産業スパイ防止なんかの観点からはどこまでしゃべっていいのかわかりませんので、こうやってちゃんと特許情報は守っているんですよ、物理的な、守っているんですよということを簡単に政府参考人からお答えいただいて、防災の観点からも、テロの観点からも、産業スパイ対策という観点からもここはしっかりとやっていくという大臣の決意をお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。

羽藤政府参考人 特許情報を守るという観点から、例えば昨今サイバーテロ攻撃などがございますけれども、これに対応するための情報セキュリティー対策として、例えば、特許情報を保持する審査システムと外部ネットワークにつながっているOAシステムを分離するということを予定しておりますし、また、現時点においても、非常時における情報システムの維持を最優先業務とするといった業務継続計画を策定する、情報システムに最新鋭の免震設備を整えるなどの措置を講じております。

 大地震等の災害時にあっても、特許情報の保全に万全を期してまいりたいと考えております。

茂木国務大臣 特許情報という極めて重要な情報を扱う部門であります。そこの安全対策は万全でなければいけない、こういう思いで取り組んでまいります。

枝野委員 終わります。

富田委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平です。

 本日は、特許法等の改正に関して御質問をさせていただきます。

 今、枝野委員からもるる指摘がありました。その中でも特許の審査にかかわる人手の問題に触れられていましたが、その点は、何よりこの十年間いろいろな御努力をされてきたと思います。

 一方で、特許庁の特殊性と申しますのは、何よりシステムの塊だということであります。迅速な処理あるいは大容量の処理をする中で、人手ももちろん大事ですけれども、効率的なシステムというのがとても重要になってまいります。

 一九九〇年に、日本の特許庁が世界で初めて電子出願システムを構築しました。これは先駆けていました。それこそ当時、茂木大臣は、IT関係の自民党内での旗頭をされていたと思いますし、そういう中でも御指導いただいて、当時の特許庁がペーパーレス化に成功したわけであります。

 その意味では、九〇年代は実は日本の特許庁がシステムの面では最先端を走っていたわけでありますし、霞が関の中でも非常にすぐれたシステムを持っていたと思います。でありますけれども、実は、残念ながら、その後、それらのシステムが古くなってくる中で、新たにシステム開発をしなきゃいけないということになりました。実は、二〇〇六年に、特許庁の事務処理システムの開発プロジェクトが新たに立ち上がったわけであります。

 その後の経緯について、これは、今の政務三役を責める、事務方を責めるという意味ではなくて、次のシステムの最適化計画に生かせるように、その観点から質問をしていきたい、このように考えております。

 まず、昨年、平成二十五年の三月十五日でありますけれども、特許庁業務・システム最適化計画というのが発表されております。これはまさに今私が申し上げましたように、膨大なシステムが古くなっておったり、使い勝手が悪くなっておったりするのを、十年かけて業務を最適化していく、その上でシステムを最適化していく、こういう計画であります。

 この計画を本当に成功させるためにも、私たちはいま一度二〇〇六年に戻って、なぜこの特許庁の事務処理システム開発プロジェクトがうまくいかなかったのかということについて、立法府からも意見を言わせていただきたいと思いますし、行政側からも、何を学ばれたのか聞かせていただきたいと思います。

 その意味で、まず最初に、二〇〇六年にスタートしました特許庁の事務処理システム開発プロジェクトの設計開発業務の入札の方法、手法ですとか、その後の経緯について、大臣政務官から御説明いただければと存じます。

田中大臣政務官 二〇〇六年にスタートしました一連のシステム開発プロジェクトの調達方法、あるいはプロジェクトの経緯についてのお答えであります。

 御指摘のプロジェクトでありますが、この設計開発業務におきましては、二〇〇六年の七月十日に入札公告を行いました。その際の入札方式は総合評価落札方式といたしまして、技術点と価格点の配分について、当時の政府共通のルールに沿って一対一としたものであります。

 そして、同年十一月に設計開発業者を決定いたしまして、翌月から当該設計開発業者がシステム設計作業を開始したものであります。しかし、システム開発の進捗のおくれから、二〇〇八年の十月、そしてまた九年の十月に納期の変更を行いました。しかし、またこれも依然としてシステム開発の見通しが立たずに、最終的には、弁護士ですとか学識経験者から成る第三者委員会の技術検証報告書というものが出まして、その中で、納期において最終稼働させるのはほぼ不可能とされたということであります。それに至って、二〇一二年一月に中断を決定したという経緯であります。

岸本委員 今の御説明のとおりなんですが、二〇〇六年にスタートして、二〇一二年、六年たって中断を決定しています。正確には六年未満でありますけれども、六年間、システムが全く予定どおりに進まないのに何にもしていない。延期はしました、延期はしていますけれども、何にもしていないわけであります。

 これはもちろん、民主党政権も少しかぶっておりますから責任は負いたいと思いますけれども、しかし、システムの問題ですから、これは主としてやはり、CIOの責任、CIO補佐官の責任、さらには発注者の側の担当官の責任ということになってくるのではないかと思います。

 しかも、中身が問題なんですね。大体五年ぐらいでできますということで、五年間の国庫債務負担行為をとって始めた契約であります。五年たっていたら完成していたはずなんですよ、システム全体が。システム全体が完成したはずなのに、六年たって何もできていない。

 実はこれは、設計段階で何もできていなかったんですよ、六年間。設計ですよ、開発でもないんですよ、設計が六年おくれていた。これを手をこまねいて見ていたというのは、私にはその意味がわからないんです。発注者はどういうお気持ちで、その設計すらできていないのに、六年間、口をぽかんとあけていたかどうかは知りませんが、手をこまねいておられたのか、これは私にはよく理解できないわけであります。

 しかも、なぜ設計がおくれたのか。

 実は、検証委員会というのがありまして、平成二十四年、今おっしゃった二〇一二年一月二十三日の日付になっていますが、二十四日に決定されたフォローアップ結果取りまとめ、余り大部なものではありませんけれども、これを読みますと、なぜできなかったかという主なポイントは、要件定義ができなかった。要件定義ができずに六年ほったらかすというのは、民間の方がおられたら爆笑されると思いますけれども。

 要件定義というのは基本は発注者がするんです。要件定義は発注者がするんです、業務改善をして。システムを入れるときは、もう茂木大臣はよく御存じなんですが、要件定義をする、その前に業務改善をするんです。まず業務改善をしてスリムにした上で、それを要件に落としていく、それに対してシステム化を設計していく。

 普通は要件定義は発注者がするんですけれども、これは契約上、東芝ソリューションがやることになっていました。この報告書を読むと、担当者が全体のアーキテクチャーを理解する能力がなかったと書いてあります。担当者が全体のアーキテクチャーを理解する能力がないまま、要件定義もできず、六年間ほったらかしにしていたということであります。

 その結果として、会計検査院からは、支出の五十四億五千万円が不当であるという指摘をされています。国民の税金五十四億五千万円が不当に使われているという会計検査院の指摘があります。

 この間、経済産業省のCIOはどなただったんでしょうか。CIO補佐官は、どなたというのは名前はいいです、恐らく官房長だと思いますけれども。CIOの責任、CIO補佐官の責任。さらには、この報告書によって、特許庁CIOもつくられた。これはこの後ですから、その六年の責めは特許庁CIOには問えないかもしれませんが、特許庁CIOはどなたがなったんですか。CIO補佐官もできているはずです。

 まあ、そこでとめておきましょう。この六年間の、要件定義ができなかったことをほったらかして五十四億五千万円の不当な支出をしたことについての責任、これは、どのように、どなたがとられたのか。大臣政務官、お答えください。

田中大臣政務官 二〇〇六年からプロジェクトが中断しました二〇一二年までの間でありますが、先ほどお話ししました調査委員会報告書においては、例えば、業務・システム最適化について具体的な方策を検討し助言する役割を担う、そのようにされていたり、また、最適化計画の実施に当たっては、さまざまな仕様書の作成ですとか調達手続、契約等において実務的な助言も一応行ったとされているところであります。しかし、現状は今御案内のとおりであります。

 なお、その責任についてでありますけれども、現在実際に特許庁を担当している同補佐官は一名であり、十分なサポート体制が整備されている状況にもないということも報告書には書かれているところであります。その中で、今後ではありますけれども、特許庁内の人材にとどまらず、やはり外部の専門人材を積極的に活用すべき、具体的には、プロジェクト推進担当者として民間企業等外部のシステム開発経験者を数名採用することが望ましいと考えるところであります。

 なお、このCIO補佐官でありますが、二〇一一年二月に特許庁CIOは設置したものでありますが、その後、特許技監であった者がその任に当たりまして、次はまたその後任というふうに就任したという流れでありますが、両者とも既に退職してあって、その部分に関しての特段の処分というものは行っていないという状況にあります。

岸本委員 別に個人攻撃をするつもりはありません。つまり、特許技監という方がCIOになられた。多分、経産省のCIOは官房長だと思いますが。そういう方は決して専門家ではありません。ですから、専門家であるCIO補佐官を置くということであります。

 この深刻な報告書が出たのが二〇一二年であります。そして、二〇一三年の三月十五日に今申し上げた特許庁業務・システム最適化計画が出ています。

 これは非常に正直な報告書で、私は尊敬します。ここまで正直な役所の文書は初めて見ました。私が担当課長補佐ならこうは書かないと思いますが、立派な文章です。何度も出てきます、フレーズが。「特許庁自身がシステム全体の処理の流れを網羅的かつ詳細に把握し、主体的に業務システムの運用・管理することが困難な状況となっている。」と書いてあります。日本の、あるいは世界のトップを走る特許庁が、審査の中で最も大切なシステムを自分たちが主体的に、網羅的には運用管理できていないということを正直に認めておられます。

 これは、一年前の報告書からまさに一年たって、大反省をして、六年かけて五十四・五億円の大損失を国民に与えた上で、その一年後に書かれた報告書です。

 何の反省もない、何の改善も見られない。一年、何をしていたんですか、このときの特許庁CIOは何をしていたんですか、この反省は何だったんですか。幾ら何でも、特許庁みずからが自分たちのシステムをコントロールできていないんだと堂々と書いておられて何ら恥じるところがない、おかしくありませんか、大臣政務官。

田中大臣政務官 今委員御指摘のとおりであると思います。

 その点も反省を踏まえて、やはり特に、先ほども申しましたが、外部人員登用ですとか、さまざまな人員の確保、そうしたものに取り組んでいくことが今後は必要ではないかなと考えるところであります。

岸本委員 前の報告書にも書いてあるんです、それらしい言葉は。それから一年たって何もしないので、来年また聞きますよ、私。まだ選挙はないと思いますから、議席はあると思いますから、来年またここで聞きます。来年はどうなっているんですか、同じ状況なんですか。再来年はどうなんですか。

 だって、皆さんには、過去六年間、要件定義すらできないのを放置したという実績がおありだ。これから六年また放置するんですかというふうに国民は疑念を持たざるを得ない。大変残念なことであります。

 それならば、もちろん定員の問題もあるでしょう。しかし、システムが重要であるということであるならば、そこは政治主導で、この分野のシステム開発の、外部人材でも結構です、あるいは直接採用されても結構です、CIO補佐官を十人にされても結構かもしれません。そういう具体的な改善策をとっていただきたい。

 今から特許庁の職員をプロにするということはできない、プロを雇うしかない、それが実は、茂木大臣がIT担当で自民党を仕切っておられたころのCIO補佐官という考え方だったわけであります。これはなかなか、しかしながら、うまくはなかなか回らなかった。なので、遠藤さんにリコーから来ていただいて政府CIOになっていただいて、マイナンバー法案で遠藤政府CIOには大臣に対する、内閣総理大臣を通じてですけれども、いわゆる勧告の権限まで与えているんです、今日本政府は。政府CIOには、各大臣にシステム開発で勧告権まで与えた法律改正を去年やったんです。それぐらい政府は本気で、民主党政権も自民党政権も引き続き本気でシステム開発には取り組もうとしているわけであります、ですから、ぜひ頑張っていただきたいと思うわけであります。

 もう一つ、この五十四億五千万円の国民の税金を無駄遣いされた点について。

 まず、当事者である東芝ソリューションは幾らの賠償金を払ったのか、払うのか。さらには、プロジェクト管理責任者というのもあります。このプロジェクト管理責任者も全く無能であったということが報告書に書かれてあります、アクセンチュアさんですが。アクセンチュアさんはどういう責任をとられるのか。五十四億五千万円の損害についてこの二社はどういう責任をとられるのか、大臣政務官、教えてください。

田中大臣政務官 委員御指摘の件でありますが、二〇一二年の十一月に、東芝ソリューションとアクセンチュアに対する支出の全額五十四億五千万円につきまして、会計検査院から不当と指摘されたところであります。特許庁において、両社と協議した結果、二〇一三年の八月、解約の合意に至りました。そこで、二〇一三年の九月に、利息分を含めて、解決金といたしまして五十六億二千万が特許特別会計に支払われたということであります。

 あわせて、この金額でありますが、これは東芝ソリューション、またアクセンチュアの分も合わせてという金額になっております。

岸本委員 内訳はわかりますか。東芝とアクセンチュアの金額、幾らずつか。

田中大臣政務官 内訳に関しては、内容に関してはわからないという状況にあります。

岸本委員 内訳について、わからないということはないと思いますが。これは後日で結構です、ちょっと理事会の方に提出いただければ結構ですので。あるいは、もういいです、それは。ただ、それは多分わかるはずです。わからないということは多分ないと思うので。わかりますか。

田中大臣政務官 今、わからないと言ったのは、解決金の五十六億二千万でありますが、これは東芝ソリューションとアクセンチュアの分という形でありまして、その内訳に関しては経産省の方としては理解していない。要は、この内容に関しては双方の事業者の中で決定しているというものであります。解約のときのそうした調印もそういう条件になっています。

岸本委員 恐らく、わからないことはないと思いますけれども、まあ、結構でしょう。少しビジネスの話にもなるでしょうから、これ以上はお聞きしません。

 いずれにしても、この失われた六年間の経験をぜひ生かしていただきたい。もう終わった話ですから、済んだ話ですから、きちんと。しかし、同じ金額を払ったからいいというものでもなくて、六年間おくれちゃったので、世界は日進月歩で、中国の特許件数の膨大なスピード感を考えたときに、お金はともかく、六年失ったということの悔しさは、多分、特許庁の職員さんが一番悔しいんだろうと思うんです。それは残念なことであります。もう過去のことはどうでもいいなどとは言えませんが、しかし、終わったことですから、反省を生かすしかないです。

 そこで、今申し上げましたが、大変正直な昨年三月十五日の最適化計画にその六年間の経験をどうやって生かしていただけるのかということについて、今後ちょっと大臣にも聞きますけれども、まずこの最適化計画の概要について、簡単に政務官から御説明いただきたいと思います。

田中大臣政務官 ただいま御指摘いただきました、経緯を踏まえての概要であります。

 特許庁のシステム開発中断の原因につきましては、先ほど申しました第三者委員会によりまして、まず、設計開発業者の技術力、プロジェクト管理能力が不足していた、続いて、調達手続において設計開発業者の技術力を確認するプロセスがやはり不十分であった、また、システムを一括更新する大規模開発であったという要因もありまして技術的にかなり難易度が高かった、こういうことが原因として挙げられるものであります。

 そして、このシステム開発の失敗の反省を踏まえるとともに、システム整備のおくれを取り戻すべく、二〇一三年の三月に新たな情報システム開発計画を策定したものであります。

 その中におきまして、まず、それ以前の開発計画ではシステムを一括して更新することとしておりました。こうした方法によるのではなくて、段階的に個別業務システムごとに更新することといたしました。各業務システムの開発規模を縮小することによって、まずは技術的な難易度を低減させるということであります。あわせて、開発能力の高い事業者を選定できるように、技術審査における審査事項の充実など調達手続も改善するということであります。

 その上において、まずは今年度、中国語や韓国語の特許文献に対応した機械翻訳・検索システムを稼働させる予定でおります。さらに、国際出願におけるオンライン手続の範囲の拡大などについても、順次システムを稼働させていきたいと考えております。

 この開発計画に沿って、しっかりと進めてまいりたいと考えております。

岸本委員 内容は十分事務方の方に伺いました。十年間を二期に分けて、前半五年、後半五年、個別にリアルタイム化を図っていくというお考えは合理的なものがあろうかと思います。あとは実行するだけだと思うんですけれども。

 ちょっと質問通告していませんけれども、では、十年のうち、いつごろになると、特許庁自身がシステム全体の処理の流れを網羅的かつ詳細に把握できるようになるのか。特許庁自身が主体的に業務システムの運用管理をすることがいつごろ可能になるのか。

 大臣政務官、質問通告していませんけれども、流れでお答えください。大臣でも結構です。

茂木国務大臣 二〇〇六年の失敗、これを正当化するつもりは全くありません。この反省を踏まえて、今後のシステム開発を進めていかなきゃなりません。

 今まで一括発注していたものを、段階的に、しかも、今大臣政務官から申し上げたように、優先度の高いものから、分割しながら順次やっていく、このアプローチについては私はおかしくないと思っております。

 問題はアーキテクチャーなんですよ。全体のシステムをどう構築するか。これはある意味、才能です。それを理解して発注する能力というのは才能でありますから、場合によっては外部の人間を活用していくということを考えなきゃなりません。

 同時に必要なのは、これから十年の計画があります。しかし、システムは全く進化しないかといいますと、システムも進化するんですね。世界が巨艦で海上で戦った時代から、空中戦になって空母の時代になっているのに巨艦をつくっていたって負けるわけですよ。どういう時代に変わっていくかということも見きわめながらやっていくということでありまして、今は前半の五年、後半の五年ということで大きく区切りながらシステムの開発を進めておりますけれども、できるだけ早く全体のアーキテクチャーについてグリップできるような体制をつくってまいりたいと考えております。

岸本委員 茂木大臣が一番理解されているので、余り質問することもなかったんですが、全くそのとおりなんです、アーキテクチャーなんです。このアーキテクチャーがわかる人って本当に数少ないんですね。それでとり合いになっているわけです。

 もう時間もあと五分なんですが、一つ、まず大臣とシステム調達の話を少ししたいんです。

 今の法律改正で、色とか音とか、新しい商標といいますか、そういうものが入ってくる、この改正が行われる、そして恐らく来年四月から実施されるということでありましょう。そうすると、あと一年弱あって、これについて、大臣政務官、今までの流れの中で、本当にその二〇一五年四月までに、今回の法改正の結果のものを受けとめるシステム開発は間に合うのかどうか。自信があれば、自信のあるところをここで堂々とおっしゃっていただければいいし、それはまた来年聞きますので、できているかどうかは。

田中大臣政務官 今回の法改正に関するシステム変更ということであります。

 新たなシステム最適化計画が二〇一三年の三月十五日に策定されて、そこに基づいて進めているところでございますが、まず特許庁長官を本部長に、そしてまた特許技監を本部長代理とする特許庁の情報化推進本部を設置いたしまして、当該本部においてこのプロジェクト全体の進捗管理もしっかりと行う推進、監理体制の強化を行ったところであります。

 そして、一番重要な今回の法改正によるシステムの変更でありますが、必ず間に合うように全力で取り組みますし、そうさせたいと考えております。

岸本委員 田中大臣政務官が御担当であれば、ぜひ特許庁長官を直接指揮されて、責任を持って、もちろん法律を施行するわけですから、こればかりは、できませんでしたというわけにはいかないので、必死で皆さんなさると思いますけれども、ぜひ事務方の指揮を大臣政務官みずからとっていただいて、大臣の御指導のもと、間に合わせていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、何度か茂木大臣とは議論したこともあるんですが、システム開発の調達です。これは本当にそろそろ真面目に取り組まなきゃいけない。それは政府CIOの遠藤さんがいろいろ御苦労されてやっていただいていますが、経産省もまさにIT所管の省庁として、みずから積極的に御提案してもいい立場だと思いますので、お願いしたいんです。

 例えば、私がトヨタで二年働いておりましたときに、トヨタは入札なんかしません。システム開発で調達なんかする民間企業はまずないと思います。ずっと一緒に仕事をしてきた、信頼できる、技術力の高いベンダーさんと仕事をするわけです。発注者側が実は能力が非常に高いものですから、工程を出させて、何人日の工程を一つ一つチェックしながらそれを、乾いた雑巾を絞るトヨタですから、削っていくんですね。いや、こんなに要らないだろう、これはダブるからこっちは要らない、このデータベース一つにしろみたいなことで、そいでいくんですね。そいでいって、原価を計算した上に利益を乗せる、そういうやり方です。そういうやり方をやって、信頼関係がありますから回っていくということであります。

 日本は、官公庁の調達は入札が前提になっていますけれども、これも本当は、信頼できるところと随意契約するのが実は正しいんですね。信頼できるところ、技術力の高いところと。ただし、実はイギリスは既にもうやっているんです。イギリスのシステム開発は、ほとんど随契に近い形になっています。

 これはどういうことかというと、最初は入札なんです。最初は入札で、A社に決まりますと、イギリスでは、納期を短くしたり、契約した金額より少なくさせるようにするシステムがあるんです。少なくすると、その業者は次の入札からげたを履かせてもらえるんです。技術点とか価格点のほかに、げたを履かせてもらえるんですね。

 納期を短くすると当然コストは下がりますから、では、五億円の工事が四億五千万で終わりました。契約は五億ですよ、それを四億五千万でわざと終わらせるんです。すると、残った五千万は折半するんです。業者が二千五百万、役所側が二千五百万、担当官にパーセンテージで報奨金が出るんです。だから、担当官は必死でたたいて、その工事を、あるいはシステム開発をモニタリングして、早くしろ早くしろ、安くしろといって、ただ、上限がありますので莫大な金ではありませんけれども、ボーナスが出る、そういうインセンティブがあるんです。

 業者も、げたをどんどん履かせてもらえますから、どんどん短い納期でコストを下げて、信頼を得ていくことで結果的にげたが上がっていきますから、最終的には随契に近い形になるんです。

 ところが、イギリスはアングロサクソン系で政府調達庁もありますので、全部オープンにしています。契約書及びその附属書も全部オープンにして、ホームページに載せています。ですから、ほかの業者が見て、これは変だとかいうことが言える。全部の契約をオープンにした上で、ある特定の優秀な業者とは、げたを履かせて随契に近いことまでできる、これも一つの考え方だと思います。

 そういう意味で、今やっている、いろいろなシステムを変える、やり方を変えることで、必ずしもうまくいっていない部分もあると思うんですけれども、これは本当に土地カンのあられる茂木大臣にはぜひ、システム開発の政府調達について、経産省から一つモデル的なものをつくっていただきたいと思うんですが、どうか御決意をお聞かせ願いたいと思います。

茂木国務大臣 いわゆる入札を何のために行うか、やはり政府としてもできるだけコストは抑えたい、こういう気持ちでありますが、いいものができなかったら意味がないという御指摘は全くでありまして、いかに技術点を高くするかということで、価格点と技術点、これまで一対一だったのを最大一対三にまでできる、こういう形になりまして、これはどんなものを開発するかによって違ってくると思います。ある程度価格を重視してもいいものと、やはり品質を重視しなくてはならないもの、それぞれによってうまい運用をしていく必要があると思いますが、趣旨につきましては十分賛同できると考えております。

岸本委員 今まさにおっしゃいましたけれども、実は、今まで特許庁は一対一以外やっていないんです、入札。今回、二十八年三月のシステムの受付部分と、二十九年一月のリリースされる方式部分については、一対三、技術点三で入札ができる初めてのケースになると思います。ぜひこれは大臣も目を光らせていただいて、すばらしい入札をしていただき、また、田中大臣政務官の御指導のもと、着実にシステムの開発が進みますことをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 日本維新の会の今井雅人でございます。

 きょうは特許法の改正ということでありますけれども、この改正案に入る前に、前回の一般質疑で一つ聞けなかった質問がありましてお伺いしたいと思うんですが、ウクライナのことです。

 昨日、ウクライナとアメリカとロシア、それからEUが武装解除に向けて基本的な合意をしたということでありますが、その後、オバマ大統領は、ロシアは信用ならぬ、信用しちゃいかぬというような発言もしておられます。非常にそういう意味ではまだ不安定な状態が続いているわけでありますが、以前どなたかが質問されていました、これに対してということであって、役所からは、今までもできるだけ安定的に供給ができるように、分散を図るようにこれまで取り組んできた、そういうようなお話があったと思います。

 それはそれで非常に大事なことだと思いますから、ぜひこれからも続けていただきたいと思いますが、当然、もう一つは、コンティンジェンシーをやはり考えなきゃいけないと思うんですね。本当に不測の事態が起きて、不測でもないかもしれません、本当に武力衝突が起きるかもしれませんので。

 最悪の場合、ロシアとの貿易を一回、制裁をするということもゼロではないわけでありますので、そうなった際に、天然ガスなんかのエネルギーが中心となるでしょうけれども、こういうものを安定確保ができるんだろうかということは、想定をして考えておくというのは、大体企業ではこういうことは危機管理をするわけでありますので、当然政府もそういうことは考えておられると思うので、そこのところについての政府の取り組みをまず大臣にお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 まず、ウクライナ情勢につきましては、日々の動きがありますので、その動向を注視していかなければいけないと思っておりますし、力を背景とします現状変更につきましては我が国として断固として反対をしていきたい、このように考えております。

 その上で、ロシアからのLNGの輸入につきましては、我が国全体の輸入量の約一割を占めておりまして、重要な供給元であります。現時点においてロシアからの資源調達について影響は出ておりませんけれども、これはロシアに限らず、調達先を多角化する、エネルギー源を多様化するということで、安定供給に支障がないような状態を常につくるということは必要だと思っております。

 緊急時における備蓄の問題、それからスポット買いの問題等々含めて、万全の準備を進めてまいりたいと考えております。

今井委員 法案の中身に直接関係ないのでこれで終わりますが、やはり何事も最悪の事態を想定して準備をするということが大事だと思いますので、政府もそういう準備をしっかりしていただきたいというふうに思います。

 それでは、法案の中身に入りたいと思います。

 きょうも弁理士の皆様がいらっしゃっていますけれども、きのうの夕方、もう通告をした後だったんですけれども、議員会館の方に来ていただいて、いろいろ意見交換をさせていただきました。

 私、実はすごく不勉強でありまして、弁理士というのは百十五年前、弁護士よりも前にできている、大変権威がある。先人は大変知恵を持っていたんだなということを、私、非常に不勉強でそのとき教えていただいたんです。そういう非常に重要なところの業務が、使命の明確化とか、こういうのが法律に入っていなかったということ自体が非常に不思議なわけでありまして、そういう意味においては、今回、こういうものが明確化されたということを非常に感謝しているというようなお話がございました。

 それで、一つお伺いしたいんですけれども、今回、特許業務法人が協議を受けて取り扱った事件について、その社員または使用人としてみずから関与していない弁理士は、当該特許業務法人から離れた後、別の相手方から依頼を受けて当該事件を取り扱うことができるようにする、そういうある意味緩和規定があります。

 これは弁理士の皆さんにとっては業務が広がるという意味で基本的にはいいことなんじゃないかなと思うんですけれども、実際にこういうことが始まってからいろいろ混乱があってはいけませんので、ここの規定によりますとみずから関与していない弁理士はということでありますので、みずから関与していないという、ここの部分をやはりはっきりさせておかないと、業務をやるのに非常に迷うと思うんですね。

 ですから、現段階で結構ですけれども、例えばというような事例もいただいて、みずから関与している件、あるいはしていないのはこういうものというのを御説明いただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 みずからこれに関与した事件の具体的な事例といたしましては、第一に、特許業務法人内におきまして当該弁理士が出願ですとか審査、審判の請求などといった具体的な手続代理を行った事件、これは当然にみずからこれに関与した事件だと存じます。それに加えまして、直接に手続代理を行わない場合でございましても、例えば当該弁理士が依頼人の相談に応じた事件や特許業務法人内において会議に出席した事件といったような形で、弁理士が一方の当事者に関する重要な情報を入手している場合などが該当するものと考えてございます。

今井委員 もう一度確認します。

 そうすると、例えば一度でも片方の会議に出席したことがあるということでは、この規定にひっかかるということですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 詳細は今後またガイドラインみたいな形で示していくことになろうかと思いますけれども、今委員御指摘のような事例は関与したということに当たり得ると考えてございます。

今井委員 質問した意味は、やはり業務というのはすっきりしてやっていただきたいと思うので、疑義が出るようなラインをつくっておくと非常に迷うと思いますから、今後ガイドラインをつくられるということでありますので、はっきりと線を引いてやっていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

 それと、大臣、通告していないんですけれども、感想だけちょっとお伺いしたいんです。私も余り知見がないのであれですが、きのうお話を聞いている中で、これまでいろいろな司法制度改革の中で、弁理士の試験を受けるときの免除規定というのが拡大されてきていて、例えば大学院を出ているとか、そういうのでだんだん緩和をされてきている。

 特に、平成二十年にさらに拡大しているんですけれども、その後、二十代の弁理士の志願者数が減少している、若い人が弁理士をなかなか受けなくなっている。あるいは、平均年齢がどんどん高齢化して上がってきているということで、ある特定条件で、例えば大学院まで行っているとか、そういうところで緩和されるんだったら、若い人は、じゃ、受けなくていいかとか、ちょっとモチベーションが下がっているんじゃないか、そういう御指摘がありました。

 私は、実は、どちらが正しいかはわからないんですけれども、ぜひお願いしたいことは、これは平成二十年ですから六年たっています。やはり何事も制度というのは、つくった後検証するということが大事ですので、いろいろな問題が起きていないか、そういうことをきっちり検証していただいて、現行の制度でよければそのままやった方がいいですし、原因が別のところにあるんでしたらそれはそれで結構ですし、一回そこら辺の検証と整理というのをしていただけないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 制度を一度つくったら、それをずっと使うというよりも、常に検証を加えながら、必要な見直しは必要だと思っております。

 通告を受けておりませんので詳しいデータについてはわからないんですが、恐らく一つは、制度の問題があるかどうか。もう一つは、弁理士がプロフェッショナルとして魅力ある仕事になっているかどうか。さらに三つ目には、技術立国といいながら、そういう技術に対して日本の若者が魅力を感じなくなっているのではないか。さまざまな観点からの検証が必要だ、このように考えております。

今井委員 大臣がまさしくおっしゃったとおり、制度というのはどんどん、つくって、検証して、もし問題があれば変えていくということでありますので、私自身も、済みません、ちょっときょう通告していなかったのは、通告の後にお話を伺いましたので、内容もしっかり精査しておりませんが、そういう意味においては検証ということは常にしていただきたいということをお願い申し上げます。何かございますか。

羽藤政府参考人 前回の弁理士法改正の五年後見直しということを踏まえまして、昨年来、御指摘の試験制度も含めた弁理士法の改正、制度の改正について、産業構造審議会知的財産分科会の小委員会で検討をしてまいりました。今委員御指摘の点につきましても議論を行ってまいりましたが、結果的には、現行の制度を維持することが適切であるという結論になっております。

 ただ、今大臣からも御答弁ございましたとおり、高い資質を有する弁理士をどのように確保していくのか、これは試験制度のあり方にとって根幹になってまいるものでございますので、随時検討を進めてまいりたいと考えております。

今井委員 ぜひお願いします。

 その際には、やはり現場の皆さんの話をよく聞いて検討していただきたいというふうに思います。

 次に、中国における冒認商標問題についてお伺いをしたいと思います。

 「クレヨンしんちゃん」が中国で商標をとられちゃったということがありましたね、非常に衝撃でしたけれども。それ以外にも、中国ではさまざまな問題が起きています。

 そこで、まずお伺いしたいんですけれども、これまで中国の冒認商標の問題で、日本がどのような不利益というか問題を抱えたかということを、まず教えていただきたいと思います。

松島副大臣 今議員は、「クレヨンしんちゃん」のことをおっしゃいました。

 私、実は、同じ問題意識で、平成十七年五月、この経済産業委員会で質問したことがございます。これは、中国の事業者が無断で登録して、正しい日本の「クレヨンしんちゃん」が中国の店頭から撤去させられた、そういうことだったんです。

 このときは、正当な権利を持っています日本の出版社の双葉社が中国で訴訟を起こしました。この訴訟は平成十六年に起こされたのですが、結果からいいますと、平成二十四年三月に中国の当局が、販売の差しとめと損害賠償を認める、つまり日本側の勝訴判決を行いました。画期的な判決だったんですけれども、それでも八年かかっております。

 その間、私ども政府の方、中国にあります日本大使館とか特許庁から何度も申し入れを行う、こういうことをして、事業者を支援して、やっとそれにこぎつけた次第であります。

 また、おっしゃいました冒認出願の中で、地域ブランドなんかもたくさんございます。地域ブランド、日本の地域団体商標というのはことし二月末時点で国内で五百五十五件登録されているんですが、それが中国で冒認、勝手にやられていないかどうかというのを、ジェトロが毎年調査しております。

 このジェトロの中国での調査によりますと、昨年の三月末時点で、九谷焼とか宮崎牛とか十二の冒認出願の例が確認されております。これらは、日本の地域の関係者が本当に苦労して地域ブランドを育て上げても、勝手に向こうで名乗られて、海外での事業展開が難しくなるという、本当に深刻な問題だと考えている次第であります。

今井委員 事前にいただきました資料を見ますと、これは都道府県とか市の名前までやられています。都道府県も二十六都道府県がやられていまして、我が岐阜県も被害に遭っております。政令指定都市でいいますと川崎、浜松、名古屋、北九州。

 そういう意味では、これは日本のある意味国益でもありますので、この辺のところは本当に緊張感を持って対応していただきたい。それぞれの個別案件に対応していくということしかないのかもしれませんけれども、やはり前さばき、前さばきでもってきちっと対応していただきたいと思いますが、何かございますか。

松島副大臣 先ほどは、どのような事例というか、被害かということでしたのでそこまで述べたんですが、対策としては、おっしゃるように、前もって、前もってということでございます。

 日本で登録されている地域団体商標を中国で勝手に無関係の第三者が登録していないかどうかというのを、ジェトロが毎年調査しております。そして、こういう登録事例があった場合には、日本の正当な権利者に対して情報を提供して、一緒に闘っていくということになっています。

 こういう状況を把握するということとともに、平素から、ジェトロの北京事務所に窓口を設置いたしまして相談に応じたり、冒認出願の被害に遭った場合の法的対応措置に関するマニュアルをつくって日本の正当な権利者に対して提供するなどして、具体的に個別の問題事案への対応を支援するとともに、常日ごろからそういうことを情報提供する、そういうふうにしている。

 これからも、日本のブランドを守るために努めてまいりたいと思います。

今井委員 ぜひしっかりやってください。

 ちなみに、栃木県はとられておりませんでしたので、御安心ください。

 次に、今回新しく入ります色彩とか音等の商標ということであります。

 今回新たにここの部分を創設ということでありますけれども、現在の主要国のここの部分での保護状況というか取り組みについて、まずは御紹介いただきたいと思います。

國友政府参考人 御説明申し上げます。

 色彩や音等の商標の保護につきましては、例えば米国では一九四六年から、欧州連合全域で効力が生じる共同体商標につきましては一九九六年から、これらの商標を保護することが可能となっているというふうに理解しております。

今井委員 そうなんですね。アメリカでは一九四六年からです。第二次世界大戦が終わった翌年ですよね。欧州も、ある意味、ユーロが入ったすぐ後ぐらいですよね。非常に早く取り組んでおります。

 事前にレクでいただいた分で見ると、オーストラリアは既に全部保護されています。それから、韓国も全て保護の制度ができています。台湾もできています。中国はことし施行の予定らしいです。

 日本として、これだけ主要国が先に取り組んでこられたのに、今回やるということはそれでいいんですが、この問題について、どうしてここまで放置されていたということなんでしょうか。

羽藤政府参考人 商標法の保護対象の拡充という点でございますけれども、これは、知的財産権の基本性格であります独占的かつ排他的な使用が可能となるという観点がございますので、我が国企業のニーズ、そして第三者にどのような影響をもたらすのか、こういったことを踏まえて慎重かつ詳細な検討を行ってまいった、そのことでやや時間を要したという背景がございます。

茂木国務大臣 一言だけ。

 放置をしたというよりも、今政府参考人の方からも答弁ありましたように、これはかなり企業ニーズによっても違ってくる部分があるんだと思います。その意味では、日本の企業が、音であったりとか色であったりとか、そういったことまで含めてブランディング化する、そういったことを行う努力といいますか、そういう戦略をとってこなかった、この裏腹な面もあると思いますが、そういったニーズが生まれてきたということはいいことでありますから、速やかに対応したいということで、今回法改正をお願いしている次第であります。

今井委員 別に批判しているわけじゃないんです。どうしてこういう背景になっていたのかなということをお伺いしたかったので。

 確かに、日本のカルチャー、そういうところまでまだビジネスマインドが広がっていなかったのかもしれません。しかし、現状でいえば、この部分というのは、においとかいろいろなものも含めて大変なブランド力を持っているわけでありますので、これは日本のある意味強みにもなりますから、ここはしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 次に、今回、特許異議申し立て制度というのが新しく創設されていますけれども、今までも実は、第三者の知見を生かすという取り組みはずっといろいろな方法をつけ加えてやってこられていますよね。今回また新しい制度をつくるということでありますけれども、新しい制度をつくるに当たっては、今までのまず総括が必要だと思うんですね。今まで取り組んでこられたもろもろの、第三者の知見を活用するということが一体どういうことであって、どういうところに問題意識があって、この制度を新たに創設されるんでしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 我が国の特許法では、一九五九年に現行の特許法ができて二〇〇三年に至るまで、簡易な手続によります特許異議の申し立て制度、それから本格的な当事者主張を行わせます特許無効審判制度という二つの制度を用意してまいりました。

 このうち、異議申し立ての制度につきましては、権利が付与される前に申し立てを行う形式であったものを、権利の付与がされた後に申し立てをするというような変更を、一九九四年に改正いたしまして、そこで早期の権利付与を可能とするということにいたしました。

 その後、この特許異議の申し立て制度につきましては、異議申し立ての請求者にとりまして、申し立てた後に意見を述べる機会が制度上与えられていないことから、特許庁と権利者とのやりとりだけで審理が終了してしまうという仕組みでございましたので、仮に異議が認められなかった場合には、請求者が改めてもう一度今度は特許無効審判を請求するという事例がしばしば見られ、紛争が長期化しやすいという問題がございました。

 そのために、紛争の解決をできるだけ一回の手続で終わらせるということを狙いまして、二〇〇三年に特許無効審判制度に一本化するという改正が行われまして、現在に至っているところでございます。

今井委員 わかりました。

 今回、私が余り食いついていないのか、皆さんの説明がすっきりしているのか、大体いつも質問の半分も終わらないんですが、どんどん進行していっていただきまして、次に移っていきたいというふうに思います。先ほども議論があったと思いますが、特許に関する人員の確保の問題です。

 これまで、審査が非常に長いということが問題になってこの迅速化を進めてきた、とても重要なことだと思いますけれども、ここまでの、知財戦略計画も含めて、審査の迅速化というもののまず実績を教えていただきたいというふうに思います。

羽藤政府参考人 これまで審査の迅速化に取り組んでまいりました。

 二〇〇二年、三年当時は、一次審査期間、通知まで約三十カ月を要しておりましたけれども、これを、任期つき審査官の採用などを含めまして人員の充実をし、この三月末までの目標として、FA11ということで一年を切るという目標を立ててまいりました。この目標をこの三月末をもって達成したということで、審査の迅速化の実績を上げております。

今井委員 その点は非常に短くなったということで評価できるのではないかなと思いますが、一つやはり懸念されるのは、早く審査するのはもちろんいいんですけれども、審査を早くしたことによって質が落ちてはいけない。今回のSTAP細胞じゃありませんけれども、やはりきちっと確かなものを認める、強化するということをしていくことが信頼性を高めるということでもあるわけであります。

 そういう意味でいったら、短くすることによって、当然その人員の量とか質とか、これも上げてこないとそういう問題が起きかねないわけですけれども、その点についてはいかがでございますか。

松島副大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 そして、私は、ちょっとけさ経験したことをお話しさせていただきたいと思っております。

 きょうは、先ほど出ましたように発明の日でありまして、けさ、知財功労者表彰というのがございまして、私は行ってまいりました。大臣表彰を受けられた、四人、四社あったんですけれども、その中で代表して挨拶をされた方が日東電工という会社なんです。グローバルニッチトップを目指している。自分のところでは液晶用の光学フィルムを、いろいろなものをつくっている中で一つが液晶用の光学フィルムなんですけれども、この製造工程を取引先の工場内で行うことを決断した。そうすると、早くて安くなるんだけれども、しかし、その場合に、いろいろな人が来るから、外国の工場もあるし、秘密がばれちゃう、特許のことが気がかりになった。

 そこで、特許庁に相談したところ、特許庁がそこを見に行きまして、その必要性を理解して、例えば、フィルムとか機械とかばらばらに特許ができ上がったんじゃ意味がない、全部パッケージにして急いでやる。それは、スピードだけでなしに質という意味において、一体となってまとめて審査することに意味があるだろうということに決めまして、その声をもとにして、平成二十五年度、昨年から事業戦略対応まとめ審査というのをスタートさせました。ここも順調に早く、いろいろなものをまとめてパッケージにしてやってもらうことができたという感謝の言葉があったんです。

 これは、二十五年度から始めまして、ほかにどんなところが使っているかというと、赤ちゃんの紙おむつのユニ・チャームなどが、特許だけでなくて、デザイン、それから商品名のエアフィットという商標、それもまとめてダブル、トリプルで保護する。赤ちゃんの丸いお尻にフィットする構造だとか、しなやかストレッチギャザーだとか、そういう特許の部分と、それからネーミングだとか、あとデザインとかというのもまとめてでき上がり、そういう戦略対応まとめ審査というのを始めました。

 これなどは本当に、特許などを取得しようとする企業側のニーズ、お客さんのニーズに合わせて特許庁がいろいろその質を高めつつ、人数がそれほど多くない中でやりくりして頑張っている実例ではないかと思いましたので、御報告をさせていただきます。

今井委員 金曜日ですから、さらっと終わりたいと思います。ぜひ質もしっかり確保していただきたいというふうに思います。

 最後に、今回、特許異議申し立て期間六カ月ということでありますけれども、もう少し長いということがどうも一般的なようにも伺っていますので、今回六カ月としたというこの数字の根拠、この点について確認したいと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 今回創設いたします特許異議の申し立て制度の検討に当たりましては、実際に本制度を利用されます我が国の企業のニーズということを第一に考えてまいりました。

 産業界の方々からお伺いしますと、その異議申し立てを請求する側からしますと、技術が高度化、複雑化していく中で、他社の特許の内容を理解して、それに異議を申し立てるための十分な期間が必要だという声も確かにございました。一方で、特許権を持っている側からいたしますと、権利を早期に安定化したい、したがって、申し立ての期間が長く確保され過ぎると望ましくないという声がございました。

 この両方の声を勘案いたしまして、また、諸外国の立法例も九カ月とか三カ月とかいろいろあるようでございますけれども、審議会にかけまして検討した結果、請求者の申し立ての準備負担の考慮と特許権の成立後の早期の安定化という両方の観点から、申し立て期間を六カ月としたということでございます。

今井委員 どうもありがとうございました。

 疑問に感じていることが大体クリアになりましたので、あと二分残っておりますが、これで終わります。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうはお昼からということで、江田議員のネイチャーに出ているというようなお話があったり、あと、宮崎委員であったり枝野委員であったり、弁護士の免許を持っていらっしゃる方、私の後の三谷委員も弁護士免許を持っていらっしゃるということです。しかも、きょうは弁理士の皆さんに来ていただいている中で私がお話しするのは非常に恐縮なんですけれども、しばらくお時間をいただければと思います。そうは言いながら、ちゃんと質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 きょうのお話なんですけれども、この法案は、私は基本的に、これから先、世界最高の知財立国にしていくんだという大臣のお話が先ほどもありましたとおり、本来であればできていなきゃいけなかったところ、それが今までできていなかった、ちょっとずつになるかもしれないけれども前向きなことをしていくんだという意味では、全体的に、書いてあるいろいろな施策について特に問題はないのかな、方向性としてはこういうことをこれから先どんどんやっていくべきだというふうに思っております。まずはその点を御理解いただいた上で、私の質問につき合っていただきたいなと思っております。

 まず最初に、事務的なことになるんですけれども、さまざまあるんですけれども、この中で一つとらせていただいて意匠権のお話。意匠法で、今までの存続期間のお話について聞かせていただきたいんです。

 今まで存続期間は登録から二十年としておりますということで、海外は十年であるところもあったり、存続期間が違うところもある。今回のこういう法案、それから、これから先の方向性も含めて、恐らく国際協定なども含めて考えていったときに、この存続期間というのはどういう位置づけ、どういうふうな解釈をしていけばいいのかというところをまず御説明いただければと思います。

    〔委員長退席、渡辺(博)委員長代理着席〕

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 意匠権の権利期間についてのお尋ねでございました。

 まず、一九九四年にWTOのTRIPs協定というのが採択されまして、発展途上国がWTOに加盟するのを阻害しないようにということで、意匠権の保護期間につきまして、少なくとも十年という規定が置かれております。

 他方、この後、デザインをとても重要視しますEUにおきまして、特に模倣品被害への対策ということを念頭に置いて、十五年から二十年程度でございました各加盟国の保護期間を一律に二十五年に延長する欧州統一意匠指令というのが一九九八年に出ております。

 我が国におきましても、製品のデザインを重要な経営資源としたいという企業がふえてまいりまして、家電分野あるいはおもちゃの分野といったところを中心に、外国企業による模倣品被害から何とか救ってほしいということで、産業界からの強い御要望をいただきまして、二〇〇六年の法改正で私ども日本の意匠権の存続期間を十五年から二十年に延長いたしました。

 これから先も、デザインによるイノベーションの推進ということで、我が国の産業界のニーズを踏まえた形で制度のあり方を考えてまいります。

木下委員 ありがとうございます。

 今のお話で、やはりしっかりと保護していくためには期間が長い方がいいということだと解釈をするんですけれども、これから先、私、最初に説明を受けたときにはそれはそうだなと思ったんですけれども、いろいろなケースを考えてみると、もしかしたらそうじゃない部分も出てくるんじゃないかと。

 どういうことかというと、例えば、日本がこれで二十年になりましたということで、二十年間国内では保護されている状態になります。それで、さっきの話ですけれども、よその国が十年であったりしたところが十五年ぐらいに引き上がったところも出てくるといったときに、ある国が十五年です、日本は二十年ですといったときに、例えば、日本ですばらしいデザインを持っていて、とても売れるようなものがありました、これが二十年間保護されていて、国内では誰もがその形をまねることができない状態があります。

 ただ、海外でも協定があったりということで十五年は保障されますというふうになったときに、十五年を過ぎた時点で、日本国内のケースを考えて、日本国内ではA社という会社がもともと持っていたものが二十年、ただ、B社が二十年過ぎたところであれと同じような形のものをつくりたいというふうに言って、A社もある程度認めていたとしても、それより先に、他国で十五年たったところでまねをされてしまっても、余り何か文句が言えないという状態が起こるんじゃないかなと思っているんですね。そういうふうなことというのは起こり得ないのかどうかということを、ちょっと教えていただければなと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの委員の御指摘は、私どもが進めております制度の各国間の調和をできるだけ急ぐべしということともつながってまいろうかと思っております。

 ただいまのお話にございましたとおり、各国で制度が異なっておりますと、その違いというところから、いろいろ思わぬ問題が生じ得るということでございます。私ども、いずれにしましても、これは産業界の声を聞きながら、少しでも多くの国々との間で、一刻も早く制度の国際調和を進めてまいるということで対応してまいります。

木下委員 ありがとうございます。

 今回の法案からその先に進んでいくところ、御認識があられるということなので、特にこの法案としてどうこうというお話ではないんですが、冒頭申しましたとおり、今回のこの法案というのは、今までやれていなかったところの第一歩という形だと思っていますので、これから先、そういったことも踏まえて、よりよい制度を確立していっていただきたいなと思います。

 きょうは、そういう意味でいうと、ほとんどそういうお話をさせていただくことになりますので、そういう観点でよろしくお願いいたします。

 次に、今回の法案にも余り明確には書いていないのかなと思ったんですけれども、ビジネスモデル特許についてお話をさせていただきたいなと思います。

 これも、本日、大臣の御答弁の中で、我が国が技術で勝ってビジネスで負けるという状態があった、これがやはり問題だ、だからこういうふうな制度をどんどんやっていくんだというお話をされていて、私もすごく共感をしたんです。

 ビジネスモデルというふうにいいながら、これは結構難しい問題だと思っておりまして、日本国内でも、ビジネスモデル特許というのは、それ自体、名称としては認識があるけれども、一つ一つの技術がしっかりと確立されているところの組み合わせで特許というのが成り立っているということで、特にコンピューターであるとかソフトウエア技術を応用したようなものについて規定をされているというふうに私は理解しております。

 これも同じように、海外でどういうふうに認識されているのかと。アメリカなんかはある程度はあると思っているんですけれども、中国なんかはそういう考え方がないのかなと思っているんですけれども、各国の大体の状況について教えていただければなと思います。

茂木国務大臣 確かにきょうは弁護士御出身の先生の御質問が目立つわけでありますが、木下委員も、きょうはラガーマンらしい服装での御質問だな、こういうふうに思っているところであります。

 ビジネスモデル特許、例えばアマゾンが、ワンクリックで商品を購入できるネットワーク販売、これはビジネスモデル特許として登録をされております。こういったものが典型だと思いますけれども、基本的な考え方は、我が国では、この適格性につきまして、ソフトウエアによります情報処理が物理的装置でありますコンピューター等のハードウエアを用いて具体的に実現されている場合に特許の保護を受けることができるということになっております。

 こういったビジネスモデル特許の適格性につきましては、欧米諸国においても、判例の蓄積などを通じて基本的に同様に判断されていると考えておりまして、我が国企業のビジネスモデル発明についても、欧米と同じような取り扱いということになると思います。

 そこの中で、中国でありますけれども、中国は、我が国や欧米諸国と異なりまして、特許の保護の対象と認められるために、技術的課題、技術的手段、技術的効果という技術的な三要素が要求されておりまして、ビジネスモデル発明が相対的に特許とされにくい、こういう傾向にある、このように認識しております。

 先ほど政府参考人の方からも答弁をさせていただきましたが、ビジネスモデル特許も含めて知的財産権といったものは国際的に調和的であるべきだということで、二国間、多国間での特許庁の協議であったりとか、さまざまな貿易の協議におきましても、単に物だけではなくて知財も含めた協議というのがマルチのテーブルでも進んでおりまして、今後はそういったものを活用しながら、各国の制度が調和的になるように努めてまいりたいと考えております。

木下委員 ありがとうございます。

 きょう、これがラグビーの服装であるとよくおわかりで、実は、先ほどまで座っていらっしゃった松島副大臣の出身校が同じでして、私のOB会、二週間後に四十五歳になるんですけれども、この四十五歳でまだラグビーをしておりまして、伊東議員の高校とあした試合をすることになっておりまして、それで、きょうはちょっと準備で着させていただいております。余計な話で申しわけございません。

 続いて、ビジネス特許のお話なんですけれども、何をちょっと危惧しているかといいますと、これも先ほどの意匠権のお話とすごく似ているんです。日本ではある程度そういうふうな認識があるものだけれども、海外に行ってはなかなかそうでない、特に中国なんかはそうだと。

 日本では、一つ一つの要素技術というのか、コンピューター、ハードウエアを使ったような技術であるとかの組み合わせをうまく使って一つのアイデアという形にして、ある程度の保護はされているという状態になっているんです。それが日本では、ちゃんとした商売として成り立っているもの、利益を生み出すような形になっている。ただ、それが中国に行ってみると、一つ一つの技術については特許権はある程度認められていたとしても、その組み合わせの部分が模倣されたりとかすることに対してはなかなか防ぐことは難しい、そういう理解をしております。

 ですから、ここについても、これは特許庁だけではなかなかこの問題を解決するのは難しいと思っておりまして、国際的な枠組みに対して働きかけをしていくであるとか、そういうことについては政府として一丸となってやっていき、そして日本の産業を守っていっていただきたいなという思いがありまして、このお話を出させていただきました。

 そこで、余談なんですけれども、そうはいいながら、このビジネスモデルというのはすごく難しいものだなと、大臣に御説明いただいたんですけれども。私も実は、そういうビジネスモデル特許みたいなものを十数年前に取ったことがあります。どういうものかというと、皆さん電話をすると、もともと、着信があるとプルルルと鳴っていたのが音楽になる、着メロというふうなものがあるんですけれども、そうじゃなくて、電話をして、プルルルと中で聞こえている音、相手によって音楽が流れたりするものがあると思うんですね。あれは実は日本で十数年前に最初に私が紹介しまして、もともと韓国の携帯電話事業者がやっていたものを見つけて、日本に持ってきたんですね。

 そうしたら、どういうことがあったかというと、それでパテントを取って何とかしようというふうにしたんですけれども、技術がそれなりに伴わなければいけないというふうにいいながら、全ての技術がもともとあるものの組み合わせを使って実現は可能だというふうになってしまいまして、結局、今携帯電話事業者さんがやられているあれは私の最初に持ったパテントじゃない形で実現されている、ほぼ同じような状態なんですけれども。だから、なかなか、ビジネスモデルというふうにいいながらも、発案したからといっても、ちゃんとした技術が伴っていなきゃ難しいというお話でございました。

 もうちょっと言うと、電話をしたらいきなり音楽が流れているだけだったら、ちょっと何だこれはというふうになることを懸念しまして、最初にそういう指摘を受けたので、数秒間ごとに、ただいま呼び出し中ですという言葉が入るんですね。あれも私が実は今の携帯電話事業者さんに提案をさせていただきましたので、この場でアピールさせていただきます。また余談でございましたけれども、ありがとうございます。

 次に、同じように中国の話で、先ほど来、今井委員も「クレヨンしんちゃん」のお話をされておりましたけれども、日本製品の模倣品の被害対策について少しお話をいただきたいなというふうに思っております。

 私は、いろいろ調べさせていただいて、ネットであるとか、そういうところでいろいろなことが書いてありました。ネットで書いてあることなので事実的な裏づけはないので、少し教えていただきたいんです。

 聞いたところによると、日本企業の模倣品被害というのがあります。中国の企業によって模倣されていたりというのが日本の模倣品の被害の中の何%ぐらいを占めているのかというお話を、見ているとすごかったので、具体的な数字を教えていただきたい。

 あともう一つ、それと同じように書いてあったのが、中国の国内で、音楽CDであるとかレコードであるとかというのが出回っている。あの中で海賊版の率、それもすごい率だったので、その数字を教えていただければなと思います。

    〔渡辺(博)委員長代理退席、委員長着席〕

谷政府参考人 お答えさせていただきます。

 経済産業省に設置されております政府模倣品・海賊版対策総合窓口へ二〇〇四年から二〇一三年までに寄せられました模倣品被害に関します相談件数四百四十六件のうち、中国に関する相談が二百七十七件、全体の六二・一%と最も多くなっております。

 また、特許庁の調査によりますと、二〇一二年に中国において被害を受けたとする企業は六七・八%となっており、中国における模倣品被害が最も多くなっております。

 また、レコード、CD等の権利侵害状況につきましては、二〇〇五年の国際レコード産業連盟の調査によりますと、中国市場の八五%が海賊版によって占められているとされております。

木下委員 ありがとうございます。私の手元の数字と全く一緒でございました。信じられないと思ったんです、だからなんですよ。

 結局、日本の被害の六割は中国から来た。CDに関しては、これは日本全体じゃなく中国の中ですけれども、海賊版が出回っているのが八割以上という状態だ。これは、すごく憂慮するようなお話だと思っておりまして、なぜそんなふうになるんだというところなんですね。

 先ほどいろいろなところで、TRIPs協定であるとか、そういうのがあるということを言われていましたけれども、中国も国際協定に入っていて、国内の法律もどんどん強化されてきているということは聞いておりますので、今、端的な数字を挙げていらっしゃいましたけれども、だんだんその数字は低くなってきているというふうには聞いております。

 だから、これから先のことは期待すべきなんだろうと思っているんですが、やはり日本の被害を考えると、もっと強く中国に対してはそういう要請をしていっていただきたいなと。これも、恐らく、特許庁だけではなくて政府一丸となってお願いをしたいところなので、こういうお話をさせていただいております。

 この話なんですけれども、何でそんなになるかと。これもネットで書いてあったことで、ほかの文献でも同じようなことが書いてあったので、また一つ紹介をさせていただきます。

 中国では、人のものをとるというのは悪い、それは当然です。これは私たちと同じです。ただ、人が考えてつくったものと同じもの、もしくは、それをまねてつくったものというのは、人の物理的なものをとっているんじゃないわけだから何が悪いんだ、そういう考え方を持っている人も結構いらっしゃるようだというふうに書いてあったんですね。

 それからもう一つ、彼ら庶民のいにしえからの文化の中で、山塞文化というのがあると書いてあったんですけれども、これはどういう意味かというと、人里離れたような山の中で、模倣品であるとか、そういうものをこっそりとつくるような要塞、これを山塞と言うようで、そういうところで物がつくられて市中に出回っている。庶民の文化でそういうものをつくって今までもやってきたというのが、いにしえからあるようなんですね。これがいい悪いという話ではないんですけれども、もともとそういうふうな文化を持っているところ。

 なおかつ、余り言うとあれですが、経済が急速に発展していく中で、庶民と特定の階級の人たちの間の貧富の差というのが相当広がってきたというところで、やはり正規のものを庶民がなかなか買えないというところが今の状況を助長しているというふうに書籍などで書いてあったんですね。

 やはりそういうところに対して、どうやって対抗していくのかというのはすごく難しいなと。私、さっき携帯電話のお話をさせていただいたんですけれども、山塞文化を本で読んだときはそういうことなんだと思っていて、同じような感じのことで山塞手機という言葉を昔聞いたことがあって、ああ、その山塞と同じだなと。

 山塞手機というのはどういうものかというと、手機というのは携帯電話のことなんです。これは彼らの中で一つの単語として、中国に行くとたまに、お店で山塞手機と書いてあるところがあるらしいんですね。これはどういうものかというと、例えば韓国のサムスンであるとかLGとかだと思うんですけれども、そういったところが、まず最初にODMであったりOEMで、中国の国内に生産拠点を構えて、中国の会社が携帯電話の組み立てをしている。

 最初のうちはそうやって仕事をしているんだけれども、その中で技術的にこうやったら携帯電話はつくれるんだと思ったら、契約を中国の会社が打ち切ってしまうんです。打ち切ってしまって、自分でそれを模倣して、もっと安いコストでつくって市場へ出す。そうやって出てきたのが山塞手機というものだと。それが東欧諸国といったところも含めて相当出回っているという状態で、これはビッグビジネスになっているというところなんですね。

 話がどんどん逸脱しますけれども、そういう形で、中国はそういう文化がもともとあるところ、そういったところに対して、もう少し、今回の法案ではなかなか難しいところがあるかもしれませんが、願わくは、そういったところにも踏み込んでいくような形、もしくは国際的にいろいろな要請ができるようなことをするべきだと思っております。

 その点では、何度も言いますが、政府一丸となって力を注いでいっていただきたいなと思いますので、大臣、もしよろしければ御所見をいただけますでしょうか。

茂木国務大臣 山塞文化、それから山塞手機、初めてお聞きしまして、勉強になったなと思っております。まねをする、禅の教えでは守破離でありますから、最初はまねをすることから始めて、修行を積んでいく、そういう文化は確かにあるのかもしれません。

 しかし、先ほど政府参考人の方から答弁申し上げましたように、それによって日本の企業のデザインとかブランドを模倣されまして、平成二十四年度、経産省が調査しただけでも、回答企業三百七十四社で、被害金額、単純合計しましても一千億円ということでありまして、これは五社に一社が被害を受けているということで、極めて深刻な問題だと思っております。

 一方、中国の側から見ても、結局、まねをしているだけではイノベーションというのは生まれないわけでありますから、それは中国が今後発展をしていくという意味からもプラスにはならない、そのように考えております。

 そういった観点に立ちながら、これは、外務省、文部科学省、さらには民間団体とも協力しながら、さまざまな取り組みをしていかなければいけないと思っております。官民合同ミッションを派遣して、法制度、運用の改善であったりとか取り締まりの強化を働きかけるとともに、にせものを見分ける能力を高めるための真贋判定セミナーの開催を通じまして、各国取り締まり機関への研修などの協力を引き続き実施していきたい。

 骨とう屋の修行というのは、弟子に入りますと、いいお店は絶対に三年間はまがいものは見せません。本物しか見せないんです。三年たって、まがいものを見ると、わかるんですね。やはり、こういう見分ける力を持つためのセミナー等々も開催していくということは、極めて重要だと思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 また、大臣の、私の山塞文化のお話なんかより、もっと深いお話をしていただいたので、いつもありがとうございます。

 そういうところで、先ほど大臣も言われましたけれども、件数は徐々に減っているようなんですけれども、その被害金額は大きくなっていることもすごく大きな問題なので、やはり本格的に、いろいろな面においてそういうことに対する対策をこれから先も続けていっていただきたいなと思います。

 もう一問、お話をさせていただきます。これもちょっと海外関連のお話なんですけれども、特に意匠法の部分ですね。

 今回から、法改正前は出願人が各国に対してそれぞれ出願をしなきゃいけないという状態だったのが、今回は特許庁を介して各国に出願ができるというのは、これまたすばらしいことだなというふうに思っているんです。

 ここでちょっと聞かせていただきたいのが、例えば日本国内でもともと何かの意匠権を持っていたところが、今回のことを契機に、まあ日本国内はいいとして、海外に対して、その部分だけを特許庁に対してお願いしますということができるのかということ。

 それからもう一つ。日本国内でその権利を持っている人じゃない人が海外に対して出願できるのかということなんです。考えられるのは、私は日本国内であればいいんだという人、海外はどうでもいいよという人がいてもおかしくないなと思っていて、でも、それを高く評価している第三者が、海外に対してこれは取っておくべきだというふうにして、特許庁に対して出願の手続をするという形のことができるのかどうか。この辺を教えていただけますか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 意匠につきましては、まず、世の中に新しく生み出されたデザインを保護するということが制度の目的でございまして、一度その内容が公開されてしまいますと、ほかの国では既に知られたものであるというふうに扱われてしまうものですから、日本で権利を取ってからほかの国に出願をするということは原則として難しいと考えております。

 唯一例外になりますのは、先ほども議論がございましたけれども、優先権の主張というのがございます。最初の出願から六カ月の範囲であれば、意匠権については別の国に出すということが可能でございまして、逆に、六カ月を過ぎますと、一旦、先に日本で権利を取った後、その同じ意匠権を外に出すということはなかなか難しかろうと考えております。

 それから、二つ目の御質問でございますけれども、商標権につきまして、あるいは意匠権につきまして、真正な権利者でない方が真正な権利者の許諾を得ないで出すということについては、これは基本的に信用なりデザインをつくった人というのを保護する仕組みでございますので、これも国際的にも難しかろうと考えてございます。

木下委員 ありがとうございます。

 そうなると、今度は、最初にお話しさせていただいたところで、存続期間の問題も出てくるのかなと。

 例えば、存続期間がもう過ぎている、世の中で出回っている、日本国内では物すごく有名なブランドだというふうにいっても、海外では知られていない。存続期間ももう過ぎているけれども、誰もそんなのまねしたって国内では利益がないだろうというものだってあると思うんです。

 それを、海外から来て日本に住んでいるような外国人が、これは海外へ行ったらいけると思って、世の中で知られているといいながら国内だけだし、存続期間ももう過ぎている、だから海外に対して出願をするといったときに、これを防ぐことはできるのかどうかというところです。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、意匠権では難しかろうと思います。というのは、新しいデザインでないと保護されないということでございます。ただ、商標権は確立された信用であれば世界じゅうで広く保護していただくということになっておりますので、商標であれば、まず日本で権利をとった後、海外に、何カ月たった後、あるいは何年たった後でも、同じ日本のブランドで出していただくということは可能でございます。

木下委員 ありがとうございます。明確に理解させていただきました。

 今のお話で大分わかったんですけれども、いろいろそういうケースが考えられて、国内のものだけではなくて、海外を含めて総合的に考えていかないとわからない部分であったり、どういうふうになるのかというのが明確にならない部分がまだまだ私は残っているのかなと。素人考えで大変申しわけございませんが。そういう意味では、何度も繰り返しますけれども、政府一丸となって、これから先もこういうことに取り組んでいただきたいなと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 きょうの午後の時間の質疑を聞いていると、本日も和やか国会という感じが非常にいたしますので、私もそのトーンのまま質疑をさせていただきたいと考えております。

 どうしても政治家をやっておりますと、弁護士のときは考えもしなかったようなことをいろいろ考えるわけでございます。その中で一つ、スーツというのが基本的には政治家としては一般的に着るものですから、その意味では、スーツに何をつけるのかというのが、自分の主張を明らかにするという観点で見られるということもありますので、きょうは私も、弁護士バッジのほかに、ブルーリボンというものをつけさせていただいております。

 見るところ、田中大臣政務官には同じものをつけていただいているというところもあります。あと、こちらから拝見いたしますと、ちょうど緑のの羽根募金の期間というものもありまして、緑の羽根をつけていらっしゃる。

 自分がこういうものを大事にしているんだよというような意味で、スーツにいろいろなものをつけて、それをアピールするというのは一つの方法だというふうに思いますけれども、そのほかに、加えて、政治家になって実は始めていることがあります。

 それは、地元では常に同じ色のネクタイをするということなんです。本日もつけさせていただいておりますけれども、黄緑色のネクタイというものを地元でずっとつけておりまして、地元にいると、黄緑色のネクタイを見たら三谷を思い出すというふうに大分言っていただけるようになりました。

 何でこの話から始めたかというと、二つありまして、一つは、きょう、大臣のネクタイの色を拝見いたしまして、ちょっとこれは触れたいなと思ったので、同じ色のネクタイをつけていらっしゃるということで、ありがとうございます。うれしく思っております。

 もう一つは何かというと、要は、地元でこの色のネクタイを見たら三谷を思い出す、これは特許の世界、商標の世界、不正競争防止法の世界では識別力というふうに言うわけでございます。自分では、地元に関して言うと、この緑のネクタイというのが識別力を有しているというところで何となくきょうのテーマに近づいたかなと思っているところでございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 きょうは三つ質問を考えております。一つは、先ほども申し上げましたけれども、商標の改正の部分、もう一つは、特許の異議申し立ての部分、三つ目として、不正競争防止法、営業秘密の部分。この三つについて、時間も二十分と限られておりますので、これからいろいろと質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず、商標に関して質問させていただきます。

 商標に関して言うと二つありまして、一つは、今回の法改正によって、色彩とか音というものが商標の登録の対象になったということでございます。その意味では、例えば、においとか触感とか味というものは、もちろん、今回の改正がされたとしても商標に該当しないということで、だめだというふうに言われております。今後、においとか触感、味というものが商標登録されるようになるための手続といいますか、要件というものについて教えてください。

茂木国務大臣 一般的に商標として認められるためには、どこまで類似した商標とするかなどの権利範囲の確定を行いまして、そのための審査を客観的かつ予測可能性のある形で行うことができる必要があり、今委員が御指摘された香りやにおい、味等、今回保護対象への追加を見送った商標については現段階でこういった要件を満たしていないということでそうしたわけでありますけれども、なかなか、例えば香りは深いというか難しいんですね。

 香りというのは二つありまして、鑑賞する聞香というのがあります。私は山田松香木店というところでブレンドしてもらっているんですけれども、香りをどう聞くかというのが非常に重要なんですね。もう一つは、組香といいまして、香りを組み合わせていろいろな遊戯をするということであります。夏の組香とか、秋の組香とか、月見の組香とかがありまして、これは基本的に香りを、例えば月見をする、月とススキにします。それで、月の方だけ一回、香りが違うんですね、嗅ぐんですね。月の香りを嗅いで、三回香りが出てくるんです。例えば、月、月、月というのがあるんですね、これは十五夜というんです。それから、月、ススキ、月とか。ススキ、ススキ、ススキだったら雨の空というあれなんです。なかなかこれは難しいんですよ、香りというものを具体的に定義していくということは。

 ただ、今後、先ほど申し上げたように、権利範囲の確定というものが行われれば追加することも可能だと考えておりまして、同時に、企業ニーズがこういったものに対してどこまであるかということで検討してまいりたい、このように思っております。

三谷委員 非常に格調の高いお答え、ありがとうございました。

 今回の色ですとか音に関して言うと、例えば色ですと、ティファニーのあの乳白色のちょっと青い色というものが何となくもう既に組み合わさっている、あの色を見れば、宝飾品であれを見れば何となく、ああ、ティファニーだなというふうに思う、そういった関係があるというものはもちろんございますので、権利の範囲というのはこれからなんだろうと思いますけれども、アメリカではもう既に、においとか触感、味というものは一部実際に登録されているということもありますし、そういう意味ではこれから必要になってくる場合もあるだろうというふうに考えております。

 必要性と許容性、両方の観点からこれは考えていかなければならないとは思っております。必要性というものは、先ほど大臣がおっしゃった企業のニーズが高まってくるということだろうと思いますけれども、そういった日が来るときに備えて、許容性、どういうふうなシステム、どういうふうな仕組みを整えておけば、色彩とかにおいとか触感とか味というものを商標登録できるのかというところについて、今研究されているのかどうかということについて、お答えいただきたいと思います。

羽藤政府参考人 今回、法改正でお願いしております色、あるいは新しい商標の扱い方でございますけれども、法案が成立しました暁には、私ども、具体的に権利の対象となる個々の商標の範囲を明確に決定できるように、どういう商標が既に登録されている商標と類似するのか否かということが客観的に判断できるように、そういう意味合いでの、実務家や有識者から成る検討会において検討を進め、基準の明確化、規格化を図ることとしたいというふうに考えております。

三谷委員 そういう意味では、まずはそこからということなんだろうと思うので、現時点ではこれで結構でございます。

 それからもう一つ、商標に関してなんですが、今回、地域団体商標を取得できる、その対象が広がっております。

 商工会とか商工会議所というものが加わるということについては、もちろん、そういった団体に関して言うと、その地域に根を張って、ずっと伝統もあるというところが多いでしょうし、そこでうまくやっていくということをまずは考えられるということでしょうから、その意味では特段不都合は生じない、生じる可能性は極めて低いのではないかと個人的には推測するところでございます。

 ただ、今回対象として加わりましたNPO法人というもの、これはもちろん、すばらしい活動をされているNPO法人もあるかとは思いますけれども、一方で、NPO法人だからといって全て生来的にいいものだ、善良に振る舞ってくれるというようなことではないはずですから。

 今回の地域団体商標も先願主義がとられているということですので、これは仮定の話ですが、NPO法人、または商工会でも商工会議所でも構いません、そういったところが取って商標権をある意味濫用する、特定の理由がないのにほかのところに使わせないですとか、NPO法人が加わることを拒絶するというようなことがあった場合の措置というものを考えられているかどうか。お答えください。

國友政府参考人 お答え申し上げます。

 地域団体商標は、地域ブランドの名称として一般に使用される地域名と商品名から構成されるものでございまして、その地域の事業者によって広く使用されるべきものでございます。

 このため、既に現在も、地域団体商標の審査に当たっては、その地域名が商品の産地等に該当するといった商品との密接な関係性を有していること、さらに、出願団体がみずから地域ブランドの普及に主体的に取り組んでいることといった要件を設けておりまして、厳格に審査をしてきてございます。すなわち、地域に根差した活動を行っていない団体に対しては登録が認められないというような制度設計になってございます。

 今回の法改正によりまして登録主体に追加されるNPO法人からの出願につきましても、このような要件に鑑み、厳格に審査を行っていく所存でございます。

三谷委員 これも仮定の話なのですが、ちょっと心配性なもので、この点について加えて聞きたいんです。

 登録の時点では地域に根差した活動をしていたということですが、その商標を取った後、ころっと態度を変えるというような場合には、例えば更新できないとか、そういった何らかの措置というのは考えられているでしょうか。

羽藤政府参考人 お答え申し上げます。

 地域団体商標の制度でありますけれども、現行の商標法におきましても、一定の拒絶理由のもとで、商標についての例えば取り消しがある、あるいはそれを否定する、商標を受けることができないという事由があります。

 したがって、個々のケースに即しまして、そういった事由に該当するかどうかに即して判断してまいる、そういうことになろうと思います。

三谷委員 この点について、ぜひとも鋭意検討していただければというふうにお願い申し上げます。

 それでは、続いての問題点、質問に移らせていただきます。

 特許異議申し立て制度について質問させていただきます。

 今回、特許庁からいただいている資料を見ると、特許異議申し立て制度の創設というふうにさらっと書いてあるわけですけれども、これはもう御案内のとおり、二〇〇三年に廃止された異議申し立て制度が基本的には復活するというようなことなんだろうというふうに思っております。

 今回、特許異議申し立て制度が復活した趣旨というのを手短に改めてお答えください。

茂木国務大臣 名前としてはおっしゃるとおりなんです。二〇〇三年、法改正した経緯についても御説明した方がいいですか。それについてはよろしいですか。(三谷委員「大丈夫です、そこは」と呼ぶ)はい。

 そうしましたら、改正した特許無効審判制度に一本化したわけであります。この特許無効審判制度に対しては、権利者、請求者の双方から、特許権の成立後の紛争をさらに早期に調整できる簡易かつ迅速な手続の導入が望ましい、こういうニーズが高まってきたことから、今回の法改正で新たな特許異議申し立て制度を創設することといたしました。

 名前はおっしゃるように一緒でありますけれども、一旦廃止したものを単純に復活するわけではなくて、実際には、今回つくります制度は、廃止前の制度に対する批判も十分に踏まえて、仕組みは大きく変更いたしております。

 具体的に申し上げますと、一つは、請求者に対して必要に応じて意見提出の機会を与える。二〇〇三年まではこの機会がありませんでした。この意見提出の機会を与えるということと、全ての審理を書面による簡易な形式として、負担の大きい口頭審理は行わない、こういった改正を行っているところであります。

三谷委員 ありがとうございます。

 実質的な、新旧、名前だけで言うと同じ、特許異議申し立て制度の相違点ということについてまで踏み込んでお答えいただきまして、ありがとうございます。

 今回の特許異議申し立て制度ができることによりまして、他方で無効審判の申し立ての側も多少変化を受けるということで、今までですと誰でもという、特定の申立人に対する法文上の制限がなかったところに関して、今回に関しては利害関係人と明記されるということですけれども、この点、無効審判を申し立てられる主体に関する変更が加わったのか。その点について、いや、実質的には変わらないんだということなのかどうか。お答えいただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員の御指摘がございましたとおり、今回の法改正で、特許無効審判の請求人は利害関係人に限定するということで、つけ加わるということでございます。

 何が利害関係人かということにつきましては、個々の事件に個別判断ということでございますけれども、例えば、実際に特許権侵害で訴えられている方とか、あるいは類似の特許を持っている方とか、あるいは特許発明と同じような製品をつくっておられる方とかいったような方々がこれまでの裁判例で利害関係人というふうに認められておりまして、このような趣旨を私どものガイドライン等で公表してまいりたいと考えてございます。

三谷委員 今の答弁の趣旨をちょっともう一度明確にさせていただきたいんですけれども、そういうことでありますと、以前の裁判例からしても、法改正前から利害関係人に事実上絞られていた、それを今回、法文上に明記するというような趣旨でよいということでしょうか。お答えください。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、法改正する前の現行の無効審判制度では、どなたでも起こしていただけるという制度でございました。今回、新しい異議申し立てを入れるということで、利害関係人に限る形での法改正を新たにお願いしてございます。

 私が今申し上げました利害関係人の定義等は、現在の無効審判制度ということではなく、特許庁はいろいろな制度を持ってございます、その中での過去の事例がそうであったということを御説明申し上げました。

三谷委員 今までも、事実上、利害関係人に限るというような判断がなされているというふうに理解しているんですが、そういうことではないということですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の制度では、無効審判のみが唯一、瑕疵のある特許権を取り消すという制度でございましたので、どなたでも無効審判を起こしていただけるという制度でございます。

三谷委員 例えば、手元にある資料によりますと、東京公判、昭和四十五年二月の事件ですけれども、弁理士には法律上の利害関係がないため、無効審判を請求することは認められないというような判断があるんですけれども、この理解はどのように考えればよいか。お答えいただきたいと思います。

中尾政府参考人 今委員から御指摘がございました判決は承知してございませんけれども、先ほど申しましたとおり、制度自体が何度か変遷を遂げております。いずれにしましても、現行の制度は、利害関係人ということに特段絞らずに、どなたでも審判を起こしていただけるという仕組みでございます。

三谷委員 この点についてはまた改めて機会を設けたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 それから、三点、営業秘密の保護について質問させていただきます。

 これは実は、前回の質問の中で、海外から例えばサーバーをクラッキング、ハッキング等々されて情報が漏えいするというような事案があるではないか、そういった危険性が非常に高まっている中で、どうやって国内にある営業秘密を保護していくべきかというような観点からの質問をさせていただきました。そのときに、国外犯処罰というものについて、あるものとないものがありますよというようなことを質問させていただきました。

 単純に言うと、刑事罰がないもの、いわゆる国外犯処罰規定というものがないものというのが、例えば、単に営業秘密を侵害する、単に領得する行為というようなものについては国外犯処罰がないというところですけれども、海外から例えば日本の中にあるサーバーがハッキングされて、情報がとられてしまったというときに日本の刑事罰が適用できるのかどうかということについて、これは実は答えを知っていますが、念のためお答えください。

菅原政府参考人 委員御指摘のとおり、海外犯処罰規定で、営業秘密侵害の類型、一号から七号のうち、一号、三号の単なる取得、領得については、この海外犯処罰規定の除外になってございます。

 ただし、今委員からあったような、国内で例えばサーバーに機密管理している営業秘密を海外の人が例えばインターネット等を通じて侵害した場合にどうなるかということでありますが、これについては、国内で保管、保護しているものをある意味で不正行為で取得するということですので、国内規定が適用されまして罰則がかかるということでございます。

三谷委員 今お答えいただいたとおりです。

 もう時間もなくなってしまったので、私の言いたいことだけを最後に手短に言わせていただきますと、日本の中にサーバーがある場合にはちゃんと日本の法律によって保護されるんだと。特に、サーバーはこれから非常にいろいろな情報が保管されていくということになりますので、海外に置くよりは日本の中に置いた方がいいんじゃないかということを改めて強調させていただきたいと考えております。

 大臣に余り出番がなくて済みませんでした。今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 結いの党の小池政就です。

 きょうは、弁護士勢ぞろいの中で私も非弁護士なので肩身はかなり狭いんですが、頑張っていきますので、よろしくお願いします。

 ただ、もう八番バッターということで、今回の質問がそんなに中身が厚いものでないのでダブる可能性があるんですが、ただ、委員会質問は特許がないわけでありますから、ダブったとしても、まねをしたということではありませんし、また、国によっては、今、先願主義の話がありましたけれども、アメリカみたいな国、先に発明した人が権利を持つという国もあるということでありますから、ダブった質問についても、私が多分先に考えたと思っていただけたらと思います。よろしくお願いします。

 まず、商標についてでありますけれども、範囲の拡大ということが今回つけ加えられました。そのときに、ではこれからどこまで広げていくのかなということを確認させていただきたいんです。当然、拡大する際にはデータベースでありますとかシステムの整備というものは必要でありますけれども、ただ、これから国際的に展開していく上で、例えば日本企業が海外で登録している商標の種類とかもやはり参考にしていく必要があるんじゃないかなと思っております。

 例えば、ロゴの動きでありますとか、それから、これはニコンとかが登録しているんですけれども、ホログラムでありますとか、そういう部分についても、今回は音とかでありますけれども、まだ拡大の余地はあるんじゃないかなということを考えております。

 海外でやっているということは特定が可能であるということでもありますし、このような件について、恐らく知的財産分科会等でも議論がされているかとは思うんですが、これからの見通し、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。

茂木国務大臣 小池委員は八番バッターということでありますけれども、きのうのプロ野球は九番バッターのホームランで試合が決まったりしていますので、大変重要な質問だと思っております。

 近年のデジタル技術の急速な進歩や、商品、サービスの販売戦略の多様化に伴いまして、企業は、みずからの商品、サービスのブランド化に際して、文字や図形といった伝統的な商標だけではなくて、音や色彩を初め、非伝統的な商標も用いるようになってきております。

 特に、グローバル展開している企業、こういったところは、諸外国の制度におきまして、電気自動車の起動音であったりとか消しゴムの包装に使用される色彩などを商標として登録して、言語を超えたブランドメッセージ、こういったものも出している事例がありまして、我が国においても、ようやくといいますか、こういう非伝統的な商標に対する保護ニーズが高まってきていると考えております。

 そういったことも踏まえまして、色や音など非伝統的な新たな商標についても、産業構造審議会知的財産分科会での議論を経て、今回、商標法の保護対象に追加することとした次第であります。

 先ほど答弁したことに若干ダブる部分はあるんですが、においや触感、味等々につきまして権利範囲を明確に特定することが現段階では困難ということでありますけれども、今後も、我が国の企業の保護ニーズ等々を把握しながら、独占的かつ排他的な使用が可能となるという知的財産権の基本的性格に鑑みまして、我が国商標法の保護対象の追加に関する検討を進めてまいりたいと思っております。

 においについてもお話ししたかったんですが、先ほど三谷委員のところでお答えしましたので、割愛させていただきます。

小池(政)委員 ありがとうございます。この後に塩川ホームランバッターも控えておりますので、私も大変期待しているところであります。

 二問目であります。

 これまで議論されております、これからの検査の体制でありますけれども、量も確かに足りない、また質の面でも大事だという話がされてきたところでございます。

 量でいいますと、ことしは百人程度ですか、任期つきの審査官を募集していくということでございますが、ただ、ことしから、二〇〇四年で百人採用して、任期五年で再任が五年ですから、その人たちがだんだんとこれから毎年毎年、マックスで百人ぐらい、やめていくのをこれから補充していくにすぎないわけでございます。

 そのような形の量を維持していきながら、かつ質の面におきましても、取り消しが結構多くの特許で行われてしまっている。七割ぐらい取り消しがされているんじゃないかという議論も参議院で行われておりました。

 取り消しの面についても、やはり質を高めていかなくてはならないということから、今回新たに補充していくわけでございますが、それも何とか現状維持ということでもございますし、かつ、新しく入ってきた任期つきの審査官というのは、最初の二年は審査官補という形で、なかなか、一〇〇%ほかの人たちみたいな実力が発揮できるかどうかというのは厳しいわけでございまして、そう考えると、量と質の面ということで少し心配が残ってしまうわけでございますが、その点、いかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。

茂木国務大臣 特許審査官の数につきましては、国際比較をしますと、米国が七千八百人、中国の五千七百人に対しまして、我が国はわずかに千七百人という数字であります。他方、特許の審査の処理件数につきましては、米国の六十万件には及びませんけれども、中国の三十六万件を超える四十一万件に達しておりまして、審査官一人当たりの年間審査件数で見れば、米国の三倍、中国の四倍という高い処理効率を実現しているわけであります。もちろん、審査の質を高めるということも同時にやっていかなければいけないと思っております。

 特許庁におきましては、これまでも、類似の特許の検索の外注であったりとかデータベース化を進めるなど、取り組みを行ってきているところでありますが、世界最速かつ最高品質の特許審査を実現する観点からは、現在の体制では必ずしも十分と言えない。審査官の増員を含め、さらなる体制の強化が必要ということでありまして、平成二十六年度の予算におきまして、委員御指摘のように、百名の任期つき審査官を手当てしたところであります。

 もちろん、情報システムの構築であったりとか、先行技術調査に関する民間活力の活用、こういった取り組みも進めてまいりますけれども、数にしましても、例えば、仏壇の関係の商標というかデザインをやっている人は、大体半年らしいんですよ。半年以上、仏壇とかお棺を見ていると、やはり何となく暗くなっちゃうらしいんですよ。だから、ローテーション上、回していかなくちゃならない。こういう問題なんかもいろいろあるようでありまして、さまざまな意味での体制の強化ということは必要だと思っております。

小池(政)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 実は私の実家はお寺でありまして、仏壇があって、確かに憂うつにちょっとなってくる、そんな環境でもあります。ちょっと落ちつきはしますけれども、たまにということで。

 今回、大きく質問を広げていきたいと思っているんですが、知財立国というのは、当然、知財で日本が稼いでいくということも一つの方針としてあるかとは思います。経常収支を何とか改善するためにもそれは大事なことだと思いますが、ただ、その前の、貿易赤字をどうするかという観点もやはり非常に大事なところでございまして、日本の産業競争力ということをこれからしっかりと再興していかなくてはいけない時期に来ていると思っております。

 当然、付加価値の向上ということが必要なわけでございまして、付加価値を向上させていかなければ、生産がだんだんと汎用化していって、それが新興国に導入されることによってだんだんと追いつかれてしまうということから、付加価値を向上させるために努力が必要だと思っております。また、そのために国内においては新規事業をどんどん広げていかなくてはならないわけでございまして、国内においてだんだんと産業構造の転換ということも必要になってくるわけでございます。

 このようなことから、付加価値の向上でありますとか新規事業の拡大、発展等につきまして、これは非常に大事なことだと思うんですけれども、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

茂木国務大臣 極めて重要な御指摘だと思っております。産業競争力を高めるということと、製品、サービスの付加価値を向上する、ある意味イコールな部分というのはあると思っておりまして、もちろん産業や企業によって課題は異なってくると思うんですが、幾つか共通している点があるなと思っております。

 その一つは、例えば、日本の企業でいいますと、設備がかなり高齢化している、人口だけではなくて。この二十年間で、日本の設備は年齢が一・五倍になっております。そのために生産性が三割下がるという状況が生まれているわけでありまして、新陳代謝といいますか、事業の再編、そして最新の設備投資を促進するために、これまでにない投資減税を導入したところであります。

 同時に、もう一つは、顧客ニーズに対応するという言い方をよくされますけれども、一般的に言うと、お客さんというのは、見たことのないものは欲しがれません。一度も見たことのない商品を欲しがるということはなかなかできないということであります。むしろ提供する側からイノベーションを生み出して、新しい機能をつけ加えたり、サービスをつけ加える。まさにイノベーションを進めることが重要だと考えておりまして、そのための企業の研究開発、そしてそういったものを生み出すベンチャーに対する優遇税制もとっているところであります。

 アメリカでは、世界トップ二千社のうち四百五十社ぐらいがランクインしておりますけれども、そのうち三分の一は一九八〇年以降にできた会社なんです。比較的若い、言ってみるとベンチャーであります。それに対して日本は、ランクインしているのは百五十社ぐらいでありますけれども、そこの中で一九八〇年以降にできた会社というのはたった二十四社、八分の一なんですね。

 もっと産業の新陳代謝が進む、開業率、廃業率ともに上がって新陳代謝が進むような状況をつくっていくということは、極めて重要な御指摘だと思っております。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 イノベーションは大変大事だということは私も重々感じております。

 その際に、今回の特許法等の関係でありますと、イノベーションも今までの自前主義という形だけでもなくて、やはりオープンイノベーションという形で技術をみんなで生み出していくというようなやり方であったりとか、自分の持っている技術を提供していくというやり方も、これから非常に重要なモデルでございます。

 また、技術を生み出すということだけでも、なかなかこの先、日本の今までのやり方だと闘っていけないんじゃないかなということを思っております。イノベーションというのは、今までは技術を持てばそれでいいというような認識があったわけですが、これからはビジネスモデルと知財マネジメントというのが非常に大事なことでございます。

 実は私は、弁護士ではないんですが、工学博士でありまして、ネイチャーには出していなくて、博士論文も今調べられるとちょっと怖いなという感じがするわけでございます。ただ、私の専攻は技術経営戦略というところでございまして、もともと、MOT、マネジメント・オブ・テクノロジー、その技術をどうやって生かしていくかということを考えるような専攻でございまして、やはり、技術を持つだけじゃなくて、それをどうやって生かしていくかということが大事なわけでございます。

 当然、技術を持てば、自社で実施するということだったり、宣伝効果というものもあるわけでございますが、それを他社に実施させるというやり方であったりとか、もしくは、技術をオープン化させることによって市場を拡大していくということも重要な戦略でもあります。逆に、技術を広げていかないと市場が立ち上がっていかないようなものも多々あるわけでございまして、このような観点というのも大事でございます。

 また、きょうは弁理士の皆さんがいらっしゃっているのでそういうところもぜひコンサルしていっていただきたいと思うんですが、無駄だと思える技術についても特許を取っておくことによって、粗悪なものが市場に参入できないように防護することができるわけでもございまして、それによって、自分が持っている技術と似たような技術が粗悪品で入ってきて、逆に自分たちのマーケットまで一緒に潰されてしまうということも何とか防ぐことができることから、非常にこの知財マネジメントというのは大事な点であると思っております。

 そのような国内の取り組みだけではなくて、これから海外に対してもそのような観点でぜひ日本が進出もしくは発展していっていただきたいと思っているんですが、政府の方に海外の標準化戦略ということでお伺いさせていただきたいと思います。

 海外にも国際標準化機関というのが幾つかありまして、例えば、ISO、国際標準化機構でありますとか、国際電気標準会議、IECでありますとか、国際電気通信連合、ITUというものがあったりするわけでありまして、またWTもあったりするわけであります。

 このときに、標準化を取る際には一国一票の投票で行われることが多いんですが、ヨーロッパは、自分たちのEUの加盟国とかで協力して何とか取ろうとしてくるわけでございます。この中で、日本は孤立していると大変厳しくなっていくわけでございます。

 ただ、日本も、このような機関に対して人を副会長という形で出したり、特にIECというところ、経産省の審議会から人を出したりしているわけでもありますし、ぜひ、このようなところからも、日本の技術の標準化、知財マネジメントを世界にも広げていく、そのような取り組みにも後押しを考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 標準化戦略は極めて重要だと考えておりまして、自国内だけでやっていても、せっかくいい技術を持っていても、世界でやはり標準化していかないとマーケットは広がらない。

 前の世代の携帯電話もそうであったと思います、日本の場合。技術的にはさまざまな機能があるわけでありますけれども、全く世界には通用しない、ガラパゴス化が進んでいた。私は、携帯も、前に特許を取ろうと思っていたんですよ。絶対に、磁石のついている携帯があれば中東で売れるなと。メッカの方向がわかりますから、それによって。でも、つくられちゃったんですね、先に。

 これはともかくといたしまして、標準化というのは重要であります。しかも、それを進めていく上で、今委員御指摘のように、そういう国際的な機関のトップをとっていくということは極めて重要な戦略であると思っておりまして、政府を挙げて、こういった標準化戦略、また、それに関連した機関での日本人のプレゼンスというのを高めていきたいと思っております。

小池(政)委員 その際にぜひここは留意しておいていただきたいんですが、IEC、国際電気標準会議、こちらは、スマートグリッドの標準化に関する動きというのが非常に加速化しておりまして、非常にこれから大事なところでもあります。

 ただ、このIECは、今度、次期会長にパナソニックの顧問であります野村淳二さんがなるということでございますから、これはぜひ、日本がしっかりとこのスマートグリッドの件で、先進的な技術を持っているわけでございますから、先導して取り組んでいただきたいと思います。

 時間になりましたので、九番バッターにバットを渡させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 九番バッターということで、大臣の期待に応えて、しっかりと試合を決めてまいりたいと思います。

 きょうは発明の日ということで、記念日にこういう審議をするというのも大変意義あることだと思っております。

 特許について、私の出身、埼玉県の日高市というところなんですが、御縁がありまして、というのは、民間の特許第一号というのが埼玉県の日高市出身の方なんですね。特許の第一号というのは、宮内省の技師の人の軍艦に塗る塗料が第一号で、第二号以降、民間の第一号というのが高林謙三の茶葉を蒸す機械。

 埼玉は、昔、室町からの川越茶で知られ、その後江戸時代から狭山茶がありまして、非常に江戸時代から明治にかけて産業も盛んで、そういう中での近代化を図る特許の二号、三号、四号というのがこの高林謙三でありまして、これは埼玉でも偉人として紹介をされている。そういう点でも非常に誇りにも思いますし、こういう特許制度というのが国民生活の向上に資するものになるように、ぜひとも私どもとしても努めていきたいと思っております。

 そこで、きょうの質問の中では、最初に、商標法の改正案で色彩と音のところがございます。今回の改正案において、他国では既に広く保護対象となっております色彩、音といった商標を我が国における保護対象に追加するということです。

 これまで、色彩は、文字とか図形とか記号などと合わさって初めて商標の構成要素となる付随的な構成要素であったわけで、そのため、輪郭のない色彩のみから成る商標はこれまで登録が認められてこなかったということであります。

 そこで、質問ですが、こういう色彩のみから成る商標登録について、どのように登録を行っていくのか。カラーコード、パントーンとかいろいろあるんでしょうけれども、欧州などでどういうふうになっているのか、この日本でそれをどういうふうに具体化していくのか、この点について最初にお尋ねしたいと思います。

羽藤政府参考人 色彩の商標の関係でございますけれども、実際に出願されることになります商標の色合い、鮮やかさ、明るさといった具体的な特性を考慮した上で、商標としての類似性を厳格に審査する、そういう基準を作成するということが今後まず必要になってくるというふうに考えております。

 そのため、自己の商品を他人の商品と区別するのに、カラーコードといった、それぞれ企業が持っております、いわば色の見本のコード、こういったものを用いるということも一つ大事な点ではありますけれども、ただ、それを用いれば登録が可能であるというふうに基準として定めるというだけでは不十分ではないかというふうに考えております。実際に自己の商品を他人の商品と区別するのに使用することができるのかどうか、そういった観点から商標登録の可否を判断してまいりますので、今後、実務家や有識者から成る検討会において、そういった基準づくりについての検討を進め、明確化、客観化を図ることとしたいと考えております。

塩川委員 色にはいろいろ種類も当然あるわけで、JISの規格などでもそういう種類もあるでしょうし、それぞれの企業の色見本というのもカラーコードとしてあると思います。

 日本の場合には古来から使われてきた伝統色もございます。そういう点では、あかね色ですとか藤色とかもえぎ色とか、こういう色などについてもきちんと定めていくようなことが可能となるものになるんでしょうか。

羽藤政府参考人 繰り返しになりますが、どのような商標が既に登録されている商標と類似するのか否か、そして他人の商品と区別するのにどういう形で使用できるのかどうかという点について、今後、基準の中で、今御指摘の点も含めて、明確化、客観化を図りたいというふうに考えております。

塩川委員 次に、音から成る商標登録についてですけれども、実際、どんな音か、音符であらわすのかどうかというのもありますけれども、記録媒体に標章を記録することとありますが、この条文上の規定を踏まえて、どんなふうなやり方というのが考えられるものでしょうか。

羽藤政府参考人 音の商標についてのお尋ねでございますけれども、やはり、その具体的な内容を特定できるように、他人の商品との識別ということがまず不可欠になります。そのためにも、音を記録した記録媒体の提出を求めるということがまず必要であろうと考えております。

 改正を今お願いしています法律が成立いたしました暁には、この法律の規定に基づいて、記録媒体の具体的な種類については経済産業省令において定めたいというふうに考えております。また、今回のこの法案の成立後速やかに、実務家、有識者から成る検討会において検討をいたしまして、パブリックコメントなどの所要の手続もとり、具体的な記録媒体などの提出についての方策について内容を定めてまいるというふうに考えております。

 現時点では、その音を録音したCD、DVDといったものをまず想定しておりますけれども、今後、技術進歩、IT化のさらなる進展などによって、出願人の利便性に即した手続が可能となるよう、必要に応じて検討を進めてまいりたいと考えております。

塩川委員 出願者の利便性に即した、当然、記録媒体もよりよいものが出てくるでしょうから、そういう点に配慮した取り組みということに配意していただきたいと思います。

 次に、異議申し立て制度の創設についてですけれども、その理由は何なのかについて御説明をいただけますか。

羽藤政府参考人 今回の特許異議申し立て制度の導入についてでございますけれども、現行の特許法において措置をされております特許無効審判制度は、原則口頭審理とし、誰でもいつでも請求が可能な審判制度でございまして、この制度については引き続き重要な意義を持つというふうに考えておりますけれども、この特許無効審判制度に対しまして、まず一つには、特許権の無効を主張する請求者からは、請求料金や口頭審理の負担が大きいということ、また第二に、特許権を取得した権利者からは、権利を得たにもかかわらず、いつ誰から無効の主張を受けるかわからない期間が半永久的に続き、権利が極めて不安定であるということ、そして第三に、双方にとりまして特許権の成立後の紛争を早期に調整できる簡易かつ迅速な手続の導入が望ましい、こうした指摘が行われてまいりました。

 このため、制度利用者のニーズに対応しながら、特許権の早期の安定化を図るべく、今回の改正によって、簡易かつ迅速な特許異議の申し立て制度と、現行の厳正かつ丁寧に主張や立証を尽くす特許無効審判制度という二つの制度を並立させる、こういうふうに考えた次第でございます。

塩川委員 現行の無効審判制度ですと、料金の負担が大きい、注文がつく期間もずっと長くなる、また簡易で迅速な制度の必要性ということ、いろいろ、知財部などについての負担の大きさの話なんかもあるということでお聞きしております。

 異議申し立て制度ですけれども、もともと異議申し立て制度があったというのは、きょうの審議の中でもありました。それを二〇〇三年のときに廃止したわけですけれども、二〇〇三年まで行われていた以前の異議申し立て制度と今回創設する異議申し立て制度というのは一体どこが違うのか。この点について御説明をいただけますか。

羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回お願いをしております特許異議の申し立て制度でございますけれども、二〇〇三年以前の制度と名前は一致をしておりますが、まず一つには、特許権者が異議申し立てに応じてみずからの特許権の権利範囲を訂正しようとする際に、請求者にも十分な意見提出の機会を与え審理を尽くすということで無用な特許無効審判の請求を抑制するということを考えております。第二に、全ての審理を書面による簡易な形式として、権利者にも請求者にも負担の大きい口頭審理は行わない、そういった改良を施しております。このことによって特許権の早期安定化を図りたいというふうに考えております。

塩川委員 二点の理由についての御説明があったわけですけれども、二〇〇三年の特許法の改正のときに私どもは幾つかの理由で反対をしたわけですけれども、その一つがこの異議申し立て制度の廃止であったわけです。それは、広く国民が特許に異議申し立てを行う権利を狭め、費用の面からも制限することになる、これが二〇〇三年のときの制度改正に反対をした理由だったわけであります。

 そこでお尋ねしますが、無効審判の請求件数、それから旧特許異議申し立て件数、この推移について、二〇〇三年よりさかのぼって紹介をしていただけますか。

羽藤政府参考人 二〇〇三年に廃止がなされました、前の特許異議申し立て請求件数についてのお尋ねでございますけれども、これは、おおむね年間三千件から六千件の間で請求件数が推移をいたしたという事実がございます。

塩川委員 特許無効審判の数の推移はどうなっていますか。

羽藤政府参考人 特許無効審判の請求件数についてでございますけれども、二〇〇三年に特許異議の申し立て制度の廃止がございました。この直前の二〇〇三年には二百五十四件でございましたけれども、廃止直後の二〇〇四年には一旦、三百五十八件という増加を見ました。その後は二百件から三百件の間で請求件数が推移をいたしております。

塩川委員 資料を配付いたしました。

 これ自身が今お答えいただいた内容ですけれども、九七年から二〇〇三年まで、薄いグレーの方が旧特許異議申し立ての制度であり、下に小さくずっと続いている濃いグレーの方は特許無効審判の数であります。それ以前は特許異議申し立ての制度で三千から六千件ぐらいあったわけだけれども、この制度の廃止に伴って特許無効審判が一時的に、二〇〇三年の二百五十四件が二〇〇四年に三百五十八件、百件ほどふえたけれども、その後は落ちて二百件台でずっと続いているということであります。そういう点でいっても、特許に異議申し立てを行う、そういう国民の権利が結果として狭められたということを指摘せざるを得ません。

 次に、費用負担の面ですけれども、二〇〇三年以前の異議申し立て制度のころの負担と廃止後の無効審判制度における費用負担、今回新たに異議申し立て制度をつくるわけですけれども、その改正による負担というのは幾らぐらいを見込んでいるんでしょうか。

羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 特許異議申し立て制度が二〇〇三年に廃止をされましたけれども、それまでにこの制度において請求料金として設定されたものと今回想定をしておりますものでございますけれども、まず、特許異議の申し立て料金につきましては、約三万六千円という水準で今後運営をしていきたいというふうに考えています。

 この水準は、現行の特許無効審判の請求料金が約九万四千円、これはいずれも特許が登録される際の平均的な請求項数で試算をしたものでございますけれども、個別ケースによって額は変動いたしますが、こういった形で、当事者の負担を軽減するという視点から制度の運営をしてまいりたいというふうに考えております。

塩川委員 新たにつくる異議申し立て制度については三万六千円ぐらいを考えているということですけれども、そもそも負担軽減になるという趣旨でおっしゃっておられたんですから、現行の無効審判でどのぐらいの経費がかかりますかというのをお聞きしましたし、さらにさかのぼって二〇〇三年まで続いていた異議申し立て制度についての費用負担というのはどのぐらいだったのかという質問なんですけれども、その部分、お答えいただけますか。

羽藤政府参考人 現行の特許無効審判制度の請求料金が、先ほども申しましたように九万四千円ということでございまして、基本的には今後もこの水準を維持していくというふうに考えております。

 なお、かつて特許異議の申し立て制度のもとで料金の設定がございましたけれども、この点につきましては、先ほど申しましたように今三万六千円という水準まで若干下げましたけれども、八千七百円に請求項数を掛けて、個々のケースで異なりますけれども、大体四万円から五万円の水準であったということが、かつての異議申し立て制度での平均でございます。

塩川委員 この辺は改めてまた確認したいと思いますけれども、今の説明のように、二〇〇三年以前の特許異議申し立て制度では五万円台だった。それが無効審判だと九万四千円。今後の特許異議申し立て制度については三万六千円。

 ですから、いわばもとに戻ったというか、そういう点でいうと、指摘をしたように、結局、特許異議申し立て制度を二〇〇三年に廃止したということが、費用負担の面からもユーザーに出費を強いるものとなって、結果として権利行使を制約するようなことになったことは否めなかった、それは我が党が指摘したとおりの事態であろうということを言わざるを得ません。

 大臣にお尋ねいたしますが、今回の改善点として先ほど説明のありました、異議申立人の意見表明の機会を新たに付与して当事者の不満をなくすとか、以前は口頭審理だったものを書面審理のみでオーケーとかというのは、二〇〇三年の廃止のときの議論でも課題になっていた話なんですよね。要するに、二〇〇三年まで続いた特許異議申し立て制度の不備として、不十分点として指摘をされていたものだったわけです。

 当時はそれを廃止の理由にしていたわけですよ、不備を。だとしたら、その二〇〇三年当時に、今回改善する、以前と違う新しい制度の特徴だと言っているものを措置していれば、このような権利を制約する事態は生じなかったんじゃないのか。こういうことについてはどのようにお考えでしょうか。

茂木国務大臣 まず、費用面から申し上げますと、以前は、特許の異議の申し立て制度で、結局、申し立てた人間が意見提出できないということで、さらに特許無効審判制度に移行するとなりますと、それで十三万円、十四万円という費用になってしまうというのが、今回、意見提出の機会も含めまして三万六千円ということになるわけであります。

 これは、二〇〇三年当時、権利者、請求者双方から負担が大きいということで廃止をした制度であります。ただ、特許無効審判制度に一本化した上で、その後の経緯を見、そしてまた権利者、請求者双方の意見を聞いた上で、名称は一緒でありますが、運用を大幅に改善した今回の新たな特許異議申し立て制度を創設することにした次第であります。

塩川委員 ですから、二〇〇三年当時にそういう改善を行っていれば、この権利者の不利益というのも解消する道があったんじゃないのかということを申し上げたわけですけれども、その点はどうですか。

茂木国務大臣 当時は双方の負担が大きいということで廃止をいたしました。そして、今回、その後の経過を見ながら、双方からニーズが高いということで、制度に大きな改善を加えて新たに創設をすることになった次第であります。

塩川委員 こういう異議申し立て制度がなくなったということが、特許の質の問題にも影響が出るんじゃないのかという指摘もあったわけです。

 今回の改正案に向けた議論を行った特許制度小委員会報告では、「異議申立制度に対するニーズを無効審判に吸収するという法改正時に期待された効果は十分に得られていない」、つまり、あのときの改正というのが期待された効果を発揮しなかった、不十分だったという指摘をしているわけです。「二〇〇三年当時、異議申立制度により年間二千件以上の特許権が取消し又は訂正の上で維持されていたことを考えると、現在も同様の割合で存在する可能性の高い瑕疵ある特許権が、現行制度下では、見直しの機会なくそのまま存在し続けている可能性があり、ユーザーからは特許の質に対する懸念が示されている。」と指摘をされているわけです。

 結果的に、異議申し立てを行う権利が狭められただけではなく、特許の質に対する懸念も生じているという点で、私は、あの二〇〇三年の廃止は不適切だった、本来はそういうことに対しての反省の言葉があっていいのではないのかということを一言申し述べて、質問を終わります。

富田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十四分散会


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