衆議院

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第12号 平成27年4月28日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十七年四月二十八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 鈴木 淳司君

   理事 田中 良生君 理事 三原 朝彦君

   理事 八木 哲也君 理事 中根 康浩君

   理事 鈴木 義弘君 理事 富田 茂之君

      青山 周平君    秋本 真利君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大岡 敏孝君

      大見  正君    岡下 昌平君

      梶山 弘志君    勝沼 栄明君

      勝俣 孝明君    門  博文君

      神谷  昇君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    佐々木 紀君

      笹川 博義君    白石  徹君

      鈴木 隼人君    武村 展英君

      谷川 とむ君    辻  清人君

      冨樫 博之君    中山 展宏君

      野中  厚君    福田 達夫君

      星野 剛士君    細田 健一君

      前田 一男君    宮崎 政久君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      簗  和生君    若宮 健嗣君

      神山 洋介君    篠原  孝君

      鈴木 貴子君    田嶋  要君

      渡辺  周君    落合 貴之君

      木下 智彦君    國重  徹君

      藤野 保史君    真島 省三君

      野間  健君

    …………………………………

   参考人

   (電気事業連合会会長)  八木  誠君

   参考人

   (昭和電気鋳鋼株式会社代表取締役社長)      手塚加津子君

   参考人

   (東京理科大学大学院イノベーション研究科教授)  橘川 武郎君

   参考人

   (公立大学法人都留文科大学社会学科教授)     高橋  洋君

   参考人

   (一般社団法人日本ガス協会会長)

   (一般社団法人日本熱供給事業協会会長)      尾崎  裕君

   参考人

   (東京大学社会科学研究所教授)          松村 敏弘君

   参考人

   (公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問)           杉本まさ子君

   参考人

   (日本生活協同組合連合会会長)          浅田 克己君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     大岡 敏孝君

  石川 昭政君     前田 一男君

  勝俣 孝明君     秋本 真利君

  佐々木 紀君     笹川 博義君

  塩谷  立君     谷川 とむ君

  白石  徹君     勝沼 栄明君

  冨樫 博之君     辻  清人君

  野中  厚君     鈴木 隼人君

  細田 健一君     星野 剛士君

  宮崎 政久君     務台 俊介君

  渡辺  周君     鈴木 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     勝俣 孝明君

  大岡 敏孝君     穴見 陽一君

  勝沼 栄明君     宮路 拓馬君

  笹川 博義君     簗  和生君

  鈴木 隼人君     野中  厚君

  谷川 とむ君     塩谷  立君

  辻  清人君     冨樫 博之君

  星野 剛士君     細田 健一君

  前田 一男君     青山 周平君

  務台 俊介君     中山 展宏君

  鈴木 貴子君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     神谷  昇君

  中山 展宏君     門  博文君

  宮路 拓馬君     白石  徹君

  簗  和生君     佐々木 紀君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     宮崎 政久君

  神谷  昇君     石川 昭政君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 電気事業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電気事業法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、午前の参考人として、電気事業連合会会長八木誠君、昭和電気鋳鋼株式会社代表取締役社長手塚加津子君、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授橘川武郎君、公立大学法人都留文科大学社会学科教授高橋洋君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず八木参考人にお願いいたします。

八木参考人 電気事業連合会の八木でございます。

 本日はこのような機会を賜り、まことにありがとうございます。先生方におかれましては、平素、私ども電力会社の事業運営に関しまして多大な御理解、御協力を賜っておりますことに、この場をおかりしまして、厚く御礼を申し上げます。

 まず初めに、本年三月で東日本大震災から四年が経過いたしましたが、福島第一原子力発電所の事故により、今なお多くの皆様に多大なる御迷惑と御心配、また御負担をおかけしておりますことを、同じ電気事業に携わる者といたしまして改めておわびを申し上げたいと思います。

 福島の復興につきましては、国の方針のもと、一歩一歩取り組みが進められているところでございますが、私どもといたしましても、さらなる復興の進展を切に願うとともに、業界全体でできる限りの支援をしてまいりたいと考えております。

 それでは、今回御審議されております電気事業法等の改正法案につきまして、私どもの考えを申し上げたいと思います。

 電力システム改革につきましては三段階に分けて進められることになっておりますが、本年四月には、その第一段階である電力広域的運営推進機関が発足し、その運用が開始されたところでございます。

 本機関は、広域的な電力運用や需給逼迫時の対応、さらには送配電業務における公平性や透明性を高めていく上で中心的な役割を担うことが期待されております。今後、電力システム改革が進展していく中で、一層その役割が重要になるものと考えております。

 私どもも、これまで本機関の発足準備に積極的に協力してまいりましたが、今後は会員会社として安定供給の確保や中立性の向上といった改革の目的を達成できるよう、円滑な業務運営に貢献してまいりたいと考えております。

 また、電力システム改革の第二段階に当たる来年の小売全面自由化につきましても、お客様に真の利益となる改革となるよう、詳細制度設計に引き続き協力してまいる所存でございます。

 その上で、今回の改正法案は、電力システム改革の第三段階として、送配電部門の一層の中立化を図るため、私ども一般電気事業者の送配電部門を法的分離するとともに、小売料金の経過措置の解除、つまり料金規制の撤廃を主たる内容とするものであると理解しております。

 さらに、本改正法案は、電気事業のみならず、総合的なエネルギー市場の創設を目指し、ガス事業における小売全面自由化、導管事業の中立性確保及び電力・ガス市場の監視を行う行政組織の新設等を規定するという、エネルギー事業の枠組みを大きく変革するものであると理解しております。

 本改革によって、電力市場、ガス市場等への全面的な参入が可能となり、エネルギー市場全体における競争が活性化していくことは、お客様にとって、より最適なエネルギーを選択する機会が広がり、望ましいものと考えております。

 ただし、小売全面自由化以降、私ども一般電気事業者には小売料金規制が課せられることになっており、制度変更に伴う需要家保護策の一環としての暫定的な措置と理解しておりますが、これらの措置は私どもにとって非対称とも言える規制であります。

 今回の法改正には、この料金規制の撤廃に係る規定が盛り込まれておりますが、中立公平な競争環境の確保を狙いとする本改革の趣旨に鑑み、諸情勢を総合勘案した上で早期にこれらの措置を撤廃していただくよう、お願いしたいと思います。

 こうした電力システム改革の実施に当たり、実務を担う事業者といたしましては、お客様の真の利益につながる改革とするためには、いまだに課題や懸念が残されていると考えているところでございます。

 具体的には、安定供給の仕組み、ルールの整備、電力需給の改善及び原子力事業環境の整備という三つの課題について、その課題解消の実現度合いを検証し、必要な措置を講じつつ進めていく必要があると考えております。

 まず、課題の一点目であります安定供給の仕組み、ルールの整備について申し上げます。

 今回の電事法改正法案は、一般電気事業者の送配電部門を法的に分離する、つまり、別会社化することを義務づけるものであります。私どもは、これまで、発送電一貫体制のもとで、高品質な電気を安定的にお届けするよう全力で取り組んでまいりました。このため、今回の発送電分離によって安定供給が損なわれることのないよう、分離を補完する仕組みやルールを慎重に整備することが大変重要であると考えております。

 具体的には、電気の周波数を調整するための仕組みを確実に機能させることで電気の品質を低下させないことや、平常時はもとより、非常時に発電側と送電側が協調するためのルールを策定することが必要であります。

 さらに、小売全面自由化により競争が進展し、送配電部門の法的分離が実施される中で、将来にわたっての供給力や調整力、予備力といった機能を担う電源が確実に確保されるよう、具体的な方策等について検討を行った上で、実効性の確認を行っていくことが必要と考えております。

 加えて、再生可能エネルギーの導入が現在急速に進んでおり、今後さらに拡大することが見込まれる中、供給力確保や需給運用の点で送配電機能の一層の強化が求められているところであります。

 こうした点を踏まえ、改革に当たり、安定供給の仕組みがしっかり構築されるよう、私ども事業者も引き続き協力してまいりますので、詳細制度設計を着実に進めていただきますよう、お願いいたします。

 二点目は、電力需給状況の改善についてであります。

 電力システム改革を実効的なものとするためには、電力の安定供給が確保され、需給状況が安定していることが大前提であると考えております。しかしながら、東日本大震災以降、電力の供給力に余力がなく、夏と冬の電力需給がピークとなる時期につきましては、毎期、政府において需給見通しを検証するという状態が続いております。

 これまでのところ、各社における最大限の供給力の積み増し努力と多くの皆様からの節電の御協力によりまして、何とか安定供給を維持することができている状況にありますが、この夏につきましても、とりわけ西日本地域では厳しい需給状況が想定されているところであります。

 供給力のベースである原子力プラントの再稼働につきましては、現在、十一社二十四基のプラントが新規制基準に対する適合性審査の過程にあり、先月末より九州電力の川内一号機が使用前検査に入るなど、少しずつ前進しておりますが、いずれも再稼働に至っておらず、大変厳しい状況が続いております。

 また、こうした事態により、東日本大震災以降、火力燃料費等が大幅に増加した結果、電力各社の収支は非常に厳しい状況が続いております。そのうち電力七社が電気料金の値上げを実施し、さらには北海道電力及び関西電力では二度目となる値上げを実施あるいは申請するという、非常に心苦しい状況であります。お客様には大変な御負担をお願いしているところでございます。

 今般の電力システム改革は、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を図り、電力の安定供給の確保及び電気料金の最大限の抑制を目指すものと理解しております。

 私どもといたしましては、安全の確保を大前提として、できる限り早く原子力プラントを再稼働し、その結果、電力需給の安定が確保されるよう、引き続き最大限の努力を続けてまいる所存であります。国におかれましても、全面自由化及び法的分離の実施に当たり、それに適した需給状況にあるか慎重に見きわめていただきたいと考えております。

 最後に、三点目は、原子力事業環境の整備についてであります。

 原子力発電は、他の電源と比べて、三つのEの観点からすぐれた特性を有しており、昨年四月に閣議決定された国のエネルギー基本計画でも、「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけられました。

 一方で、巨額の投資を要し、建設から運転期間中はもとより、運転終了後も、廃炉や使用済み燃料の処理、処分に至るまで、安全性を確保しつつ、長期にわたる事業を確実に遂行しなければならないという特殊性を有しております。

 これまで、私どもは、国の原子力推進政策のもと、総括原価方式等の諸制度によって、長期安定的に事業に対する一定の予見性が得られることで、こうした特殊性を有する原子力発電の活用を図ってまいりました。

 しかしながら、原子力依存度を可能な限り低減させるという政策の方向性が示されるとともに、小売全面自由化や発送電分離といった電力システム改革が進められ、今後、原子力発電の事業予見性が大きく低下することとなります。

 こうした環境変化の中にあっても、国として重要な電源と位置づけられた原子力発電を私ども民間の事業者が担っていくためには、引き続き、予見性を持って長期の事業を計画し、実行できる環境整備が不可欠だと考えております。

 この点、昨年末に政府の原子力小委員会がまとめられた中間整理においても、同様の考えが示されるところであります。

 国におかれましても、ぜひとも、民間事業者が長期にわたり原子力事業を担うことができるよう、新たな国策民営のあり方を検討していただき、小売全面自由化の実施に先駆けて、制度の方向性を示していただきたいと考えております。

 例えば、これまで原子力事業者が一体となって支えてきたバックエンド事業等の原子燃料サイクルの推進に当たっては、競争が進展していく中でも長期にわたる処理、処分のプロセスに支障を来さないよう、新たな官民の役割分担に基づく仕組みの構築などが必要と考えております。

 また、今後、原子力委員会において検討が予定されている原子力損害賠償制度につきましても、事業者の予見性を確保するという観点から、事業者負担のあり方等について適切な見直しが必要であると考えております。

 政府におかれましては、こうした原子力事業環境の整備に向け、一日も早く検討の場を立ち上げ、検討に着手していただきますよう、お願いしたいと思います。

 以上、改革を進める上での三つの課題について述べさせていただきました。

 低廉で安定した電力供給は我が国の国民生活、産業活動の基盤となるものであり、電力システム改革は決して失敗が許されるものではありません。この電力システム改革が真に国民の皆様の利益につながる改革となるため、私どもといたしましても、これらの課題や懸念を払拭できるよう最大限の取り組みを行ってまいります。

 その上で、国におかれましては、改革の各断面におきまして、取り組みの成果や課題解消の実現度合いをしっかりと確認、検証いただき、その結果に応じて必要な措置を確実に講じていただくことをお願いしたいと存じます。その際、技術的課題や需給状況、事業環境に問題が生じている場合には、スケジュールありきではなく、実施時期の見直しも含め柔軟に改革を進めていただきますようお願い申し上げます。

 最後になりますが、今回の法改正により、電気事業のみならず、ガス事業のシステム改革についても、今後、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大といった観点から、大きく進展することが期待されます。

 私ども事業者といたしましては、電力、ガスといったエネルギー種別の垣根を越えた総合エネルギー事業へと進化し、我が国エネルギー事業全体の競争力強化と発展をリードするという強い気概を持って事業に取り組んでまいりますので、今後の詳細制度設計について、ぜひ整合性のとれた形で進めていただきますようお願いしたいと思います。

 こうした私どもの考えも含め、十分な御審議を賜りますようよろしくお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、手塚参考人にお願いいたします。

手塚参考人 日本鋳鍛鋼会副会長の手塚と申します。本日は貴重なお時間を賜りまして、まことにありがとうございます。

 私は、日本鋳鍛鋼会の代表ということだけではなく、エネルギー多消費産業の多くの企業、とりわけ日本企業の九九・七%を占める中小企業のエネルギーコスト上昇による窮状をお伝え申し上げたいと存じます。

 初めに、政府におかれては、省エネ補助金を大幅に充実していただくなど、産業界の声に真摯に耳を傾け、影響緩和のための策を講じていただいておりますことを、心から御礼申し上げます。

 しかしながら、その対症療法では手当てができないほどの負担増が私たち電力多消費企業を苦しめております。売上高千円当たりの電力購入量、つまり千円のものをつくるのに使う電気量を電力依存度として計算いたしますと、製造業全体の平均が〇・七キロワットアワーであります。それに対して、十一団体で構成する電力多消費産業全体の平均では約十三倍、鋳造や鍛造業では十倍から十一倍であり、したがって、近年の電力料金の負担増は製造コストを大幅に押し上げております。

 御存じと思いますが、鋳造や鍛造でつくられた製品は素形材と言われ、ものづくりの最も川上に位置する産業であります。あらゆるメーカーの部品をつくり、日本の基幹産業を支えるサポーティングインダストリーと言えます。日本のメーカーからの世界に類を見ないほど厳しい品質、納期、コストの要求をクリアすべく、日夜研さんと努力を重ね、日本メーカーの繁栄、ひいては日本経済の繁栄を導いてきた陰の立て役者であるとの誇りを抱いております。

 アベノミクスにより進行した円安は、輸出をするメーカーに恩恵をもたらしております。しかしながら、国内で操業する我々には恩恵は少なく、また、近年の電気代の上昇分を一〇〇%価格に転嫁することは不可能であります。結果として、省エネルギーやコスト削減といった努力をいかにいたしましても、労務費の削減が不可欠となり、アベノミクスの賃金上昇の流れに同調するのは極めて難しいのが現状でございます。

 特に、鋳造業の企業は、経営基盤の弱い従業員三十名未満の中小事業所が約八割を占め、東日本大震災以降、転業、廃業、倒産がふえ始めて、直近三年間に三十七社が転業、廃業、倒産に追い込まれております。その中で、鋳鋼業だけを取り上げれば、全国の七十五事業所のうち、昨年一社が廃業、本年二工場の統廃合が決定しております。

 昨年一社、本年二工場といいますと、そんなに多くないように思われるかもしれませんが、それは雇用が消失するという重大な問題だけではなく、各社の長年蓄積してまいりました固有の技術、ノウハウが失われるということであります。一度失った製造業を再興させようというのがいかに難しいか、今の米国の苦悩を見ていただければ、日本がそれを失う危機を想像していただけると思います。これ以上エネルギーコストが上昇することは、製造業の崩壊を招くと認識していただきたいのであります。

 鋳鋼の生産量に限って申し上げますと、世界各国の生産量は、リーマン・ショックで落ち込んだものの、その後順調に回復し、米国では一番落ち込んだときの二一〇%、中国では一二〇%になっておりますが、日本のみが回復し切れず下降線をたどり、平成二十六年はリーマン・ショックのときの最低時の八六%に落ち込んでいます。

 これは、世界に需要があるにもかかわらず、日本のみがそれを取り込めずに生産を減少させているということでございます。これは、生産コスト上昇により国際競争力が低下していることを意味します。

 東京電力管内の当社の場合、平成二十四年四月の電力会社の電気料金値上げ一キロワット当たり二・三三円に加え、燃料費調整分の値上げはそれを徐々に上回り大きな負担となっております。さらに、FIT、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度における賦課金については、弊社は電力多消費企業として八割減免を受けておりますが、鋳鋼業では九%の七社、鋳造業では一六%の企業しか減免を受けられておりません。初年度は〇・二二円だった賦課金は、四年目にして一・五八円と約七倍に拡大しているわけで、まさに三重苦にあえいでいると言える状況でございます。

 弊社は社員百名の中小企業でございますが、年間に二十五億四千万円の売り上げのうち、原価は二十四億、その中で電気代は一二・五%の三億円でございます。三年前と比べると、生産量は同じなのに、電気代は一億円の増加でございます。もし仮に一億円電気代が上昇していなければ労務費や設備投資に使えたものと、一経営者として大変残念に思う次第です。

 お手元の御参考資料にありますように、鋳造だけではなく、電力多消費産業十一社は年間約二千億円の巨額な電力負担増になり、どの産業も崖っ縁に直面しております。

 安価で安定的な電力供給は産業の基盤です。この基盤が脆弱であれば、事業経営は成り立ちません。現状を打破すべく、これまでのエネルギー政策を見直し、安定供給の確保、電力料金の最大限の抑制のため、大胆かつ実行可能な改革を速やかに実施していただくことを期待しております。

 資源のない我が国が、将来にわたって国力を維持し、子供たちが夢を持って成長できる日本であり続けるために、そして、綿々と受け継がれてきた製造業のDNAを途絶えさせず、汗して働く労働者に安定した雇用と収入の喜びを与えるために、ぜひとも適切なエネルギー政策が行われますことを望んでやみません。十分な御審議のほど、心からよろしくお願い申し上げます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、橘川参考人にお願いいたします。

橘川参考人 御紹介いただいた東京理科大学の橘川と申します。

 私は、電力のシステム改革の小委員会には参加しておりませんでしたが、ガスシステム改革の方の小委員会の委員でした。そして、今現在、きょうの午後も開かれますけれども、エネルギーミックスを決めます審議会のメンバーでもあります。このような立場から、今問われています電力システム改革、ガスシステム改革、熱のシステムの改革、これをエネルギー政策全体の改革の方向とどう結びつけていくかという立場から、きょうはお話をさせていただきたいと思います。

 お手元に資料がありますので、それを使いながら話させていただきます。

 まず、電力システム改革です。この三段階で進められるわけです。私は、第二段階、全面自由化までは非常に重要なことだと思っております。

 福島第一原子力発電所の事故等に示されました電力問題の本質、福島第一を含め原子力発電所の現場、あるいは火力発電所の現場を回りますと、本当に現場の皆さんは頑張っています。その高い現場力と残念ながら低い経営力のミスマッチというところがやはり電力問題の本質なのではないか、こういうふうに思います。

 そうしますと、経営力を強化していくのに一番有効な手段というのはやはり競争だ、こういうふうに思いますので、そういう観点からいって、全面自由化というのは、ガスも含めまして非常に重要な施策だと思っております。

 一方で、第三段階の発送電分離については、メリットもありデメリットもあるという両面を見て、それに合わせた施策が必要だと思います。

 メリットは、当然のことながら、競争の促進、分散型電源の普及の拡大ということにつながると思います。

 一方で、世界に冠たる停電が少ないという日本の系統運用能力が毀損するおそれもありますし、最も心配しているのは、発送配電のバランスのとれた投資が進むかどうか、特に発電部門であります。発電投資回収には時間がかかります。自由化のサイクルの中で非常に短い視野で経営を考えていくことになりますと、発電のところにちゃんと手当てが行われるかどうかということが大きな問題になると思います。

 そういう意味で、二〇三〇年に向けての電源ミックスをどういうふうに考えていくかという議論は重要な意味を持つと思います。

 次に、ガスシステム改革であります。こちらは二段階で進められるということになっています。

 先ほど言ったような理由で、全面自由化は非常に重要な施策だと思います。特に決定的に重要なことは、電力、ガスとも、需要家にとって選択肢が拡大するということが非常に大きなポイントだと思います。

 今のところ、日本のエネルギーは、非常に高品質な形で、高い価格で供給されています。これしか選択肢がないんですね。高品質なものを高く買うというような需要を持つ需要家もいらっしゃると思いますが、一方で、多少品質が落ちても価格は安い方がいいというような需要家もいらっしゃると思いますので、そういう方たちに選択肢が広がるということ自体は非常に意味があることだと思います。

 ただ、一点気にしますのは、自由化があると自動的に料金が下がるというような議論があるんですが、これは少し考えなければいけないと思います。

 自由化というのは、端的に言いますと、市場に任せる。市場に任せるということは需給関係で決まるということですから、自由化を行った直後は競争の激化とかということである程度料金が下がるかと思いますけれども、各国の経験を見ましても、その後、長期的に見ますと、徐々に料金が上がっていくというようなことが見られるわけであります。

 そこのところは慎重に考えなければいけないわけでありまして、自由化をもって全てよしとするわけではなくて、さまざまなエネルギー政策を使っていかない限り、このコストの問題は解消できないというところが重要なのではないかと思います。

 ガスについては、審議会のメンバーだったのでどうしてもこれだけは伝えておかなければいけないんですが、大手三社の法的分離については、審議会のレベルではかなり慎重論が多数であったということであります。そのときに、電力とガスとの違いで一番大きな問題になったのは、保安問題、あるいは資金調達の影響とかという話が出ていました。ただ、これは皆さんが決めていただくことだと思いますので、そこのところを慎重に議論していただきたいということであります。

 全体としまして、シェール革命も起きておりまして、化石燃料の中では一番CO2の少ない天然ガスの市場の拡大が進むと思います。天然ガスシフトというのが進んでいくと思います。天然ガスシフトというのは、ちゃんと定義づけなければいけないと思うんですが、一つは、火力発電の中心としてミドルの電源だけではなくてベースとしても使うということ、それから、コジェネを全面的に拡大するということが天然ガスシフトの内容だと思います。

 ということで、いずれにしても重要になるエネルギー政策全体のことに移っていきたいと思います。

 昨年の閣議決定で、新しいエネルギー基本計画が決まりました。いろいろいい内容が書いてあるんですが、わかりにくいところもあります。国民の最大の関心であります原子力のところが、やはりわかりにくいんですね。

 重要なベースロード電源と書かれています。しかしと来ます、可能な限り依存度を低減すると来ます。またしかしと来まして、確保していく規模を見きわめると。こういう話になっちゃいますと、余計な話ですが、私は審議会で申し上げたんですけれども、槇原敬之の歌みたいで、もう恋なんてしないよなんて言わないよ絶対みたいで何言ってるかよくわからないよ、こういう話になっちゃうわけでありまして、ここのところがわかりやすい必要がある。

 もう一つは、再生可能エネルギーを最大限導入する。この二つがやはりメッセージだと思いますので、ここのところは、はっきりした政策が出てくることが重要なのではないか。

 そうすると、五ページ目に入りますが、二〇三〇年の電源ミックスですが、やはり、皆さんが言われていますように、Sプラス三Eというのは非常に重要だと思います。

 Sの確保は大前提になりますが、エコノミーのところでは、やはり、ベースロード電源がしっかりする、これが六割くらいあるというのは正しい考え方だと思います。ただ、その中にLNGが確実に、もう既に入っていますし、これからも入っていくので、ベースロード電源の一部に位置づける必要があるのではないかと思います。

 次に、エンバイロンメント、環境に関して言うと、ゼロエミッション電源がやはり四五%程度ある必要があるということで、これは再生エネルギーと原子力が重要ということになります。

 それから、エネルギーセキュリティー。まず自給率で考えますと、再生エネルギーと原子力は一方で大事ですが、これは外から確保していく上でのセキュリティーでありまして、内側のセキュリティーということを考えますと、分散型のエネルギー源というのが非常に大事になります。

 そうなってきますと、コジェネあるいは再生エネルギーが大事になりますし、多少懸念しておりますのは、ミックスの議論をすると、どうしても電源の話ばかりしておりますが、エネルギー全体の中で電力として使われるのは四割強でありまして、一次エネルギー全体で見ますと、石油がやはり一番中心になります。東北の大震災のときに命を一番救ったのはLPガスと石油でありますので、ここについてきちんとした位置づけを与えるということが重要なんじゃないか。

 ということで、政権の公約にもなっています、原発依存度を減らすということと再生エネルギーを最大限導入するということ、上のような諸要素を考慮しますと、これは私の個人的意見でありますが、火力四〇%、再生エネルギー三〇%、原子力一五%、コジェネ一五%ぐらいの組み合わせがベストではないかというのが私の考え方であります。

 そうなりますと、次のページですが、一番難しいのは再生エネルギーの三〇%。こんなことはあり得るのかという話になると思います。ただ、再生エネルギーには二種類ありまして、タイプAと書きました地熱、小水力、バイオマス、これは稼働率も高いですし、出力変動も少ないということで、これは今のところ一〇%強ですけれども、一五%ぐらいに引き上げていく。そのためには、幾つか、温泉業者との、地元に蒸気を供給するだとかというような、いろいろなこと、あるいは規制緩和が必要だと思います。

 問題は、意見が分かれているのはタイプBの方であります。稼働率が低く、出力変動が激しい風力や太陽光。ただし、これが一番技術が進んでいまして、コストも下がりつつあることも確かでありまして、私は前向きな議論が必要だと思います。

 現在、FITの話が問題になっていますが、二〇三〇年のことを考えるときに、げたを履かせて入るようなエネルギーがずっと使い続けられるということはないと思いますので、むしろ、FITの後の市場ベースでどうやって太陽光、風力を入れるのかということを考える方が建設的だというふうに思います。

 そうなってきますと、一番大きな問題は送電線の問題です。現実的に考えますと、原発で廃炉になってきます。これで送電線が余ってくるわけでありまして、これをまずどう利用するかということを考えてみる必要があると思います。

 それから、そもそも送電線に乗せないようにするということ。地産地消、スマートコミュニティーを進めますとか、あるいは、ヨーロッパで進んでいますけれども、風力で余った電気を水の電気分解にして、送電線が足りないのでガスのパイプラインに入れるというパワー・ツー・ガスという考え方があります。

 日本ではガスのパイプラインがないから非現実的だというお話がありますが、もし、今後、天然ガスが重要な電源としてさらに天然ガスシフトを置きますと、全国で十五基から二十基くらいのエネルギーコンバインドサイクルが立ってくる可能性があります。そうなりますと、ガスのパイプラインが経済ベースでつくられるということになりますので、パワー・ツー・ガスの可能性もふえます。

 そして、三番目、電力会社が多分ビジネスモデルを変えてくるのではないかと思います。これからは、原発だ石炭だというのがコアコンピタンスになるのではなくて、ネットワーク会社として、供給サイドに非常に不安定な電源があっても、うちのネットワークを通せば停電なしでお客さんに送りますよという会社が格好よくなって、株価も上がり、金融市場で評価される、こういう世の中がやってこなければいけないのではないか。そういうことを考えますと、再生三〇%も可能なのではないかと思います。

 とはいえ、コストの問題、皆さん、原発の稼働率と、あるいはFITの負担から考えられますけれども、どの計算でいっても一番大きいのは火力発電であります。よって、火力の燃料費を下げるというのがコストの問題で一番のど真ん中の問題だということを忘れてはいけないと思います。

 そうすると、二つしか方法がなくて、火力発電の燃料の中で一番安い石炭をどれだけ使うかということになります。直ちに二酸化炭素の壁にぶち当たります。これをどうするかという問題が一つです。

 そしてもう一つは、天然ガスですね。天然ガスが、原油価格が下がって若干状況をうかがっていますけれども、昨年の夏までは、アメリカに比べて日本の天然ガスの価格は五倍くらいの格差があったわけです。もちろん、運んでくる過程もありますからアメリカほど安い水準にはできませんが、間のヨーロッパ並みの水準には持っていけるはずでありまして、この石炭と二酸化炭素の問題をどう解決するのか、及び天然ガスをどう安く買うかというのがエネルギー政策のど真ん中になるのではないかと思います。

 八ページに、あえて二〇一〇年、つまり三・一一の前の図を持ってきましたけれども、世界でやはり石炭が圧倒的に使われています。したがって、石炭が二酸化炭素をたくさん出すからだめだというのでやめちゃえ、こう言いたいところですが、この選択肢ができない。中国の八割近く、インドの七割近くが石炭であります。

 九ページになりますが、よって逆転の発想が必要で、日本の石炭は高効率です。磯子の二号機は熱効率四二%、アメリカよりも大体五ポイント、中国、インドよりも一〇ポイント近く熱効率が高いということで、これを使って日本の技術を海外に移転し、海外の石炭火力で二酸化炭素を思い切り減らす、そういう人は国内で石炭火力をつくっていい。こういう二国間オフセットの拡張版みたいなやり方、これをやりますと、日本の水準で横展開すると、そこに書いてありますが、日本の排出量年間十三億トンに対して十五億トンくらい毎年減らすことができる。これが日本の世界に貢献する道だ、こういうふうに思いますので、COP21へ向けてこういう政策をぜひ打ち出していく必要があるんじゃないかと思います。

 天然ガスに関して言いますと、大きく言うとシェール革命で供給過剰に向かっているわけですから、このチャンスを生かす必要があります。そのためには、やはりまとめ買いをきっちりやるですとか、あるいはこの件に関しますと、日本と韓国で両方合わせますとLNGの輸入の五割を超えますので、韓国、場合によっては中国、台湾との協力ということもきくと思います。

 ただ、最終的には、長期契約の比率が大きいので、長期契約の条件を有利にしていかなければいけない、こういう問題もあると思いますが、こういうこともきっちりやっていかなければいけないと思います。

 あるいは、原子力について、いずれにしても、何%にするにしても、あるいは場合によっては即時やめるという立場に立つ人にしても、直ちに考えなければいけないのは使用済みの燃料の処理問題でありまして、このためには、私は、最終処分、国が前面に立ってやるということを言っても、その前に空冷式のもう一つの冷却装置を、中間貯蔵というものをきっちりやっていく必要があるのではないか。それを廃炉が進むような原子力発電所、運転するところでもいいんですけれども、オンサイトで進めていくというやり方をとることが、現実的には問題を解決していくための唯一の政策なんじゃないか。

 総合しまして、いずれについても、前向きな形で、しかも現実的な改革を進めながらエネルギー政策を総合的に展開していかないとコストの問題は解消できない、そういうことを感じます。その一環として、今回の電事法等の改正等の法律の審議がしっかりと進められることを国民の一人として希望いたします。

 以上で私の発言とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 都留文科大学の高橋と申します。

 今回、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。

 私は、今は大学の教員をしておりますけれども、三月末までは富士通総研と申します民間のシンクタンクで電力システム改革の研究をしておりました。その間には、資源エネルギー庁の電力システム改革専門委員会の委員をさせていただきまして、この審議会では、二〇一三年二月、約二年前だったと思いますけれども、当時、茂木経産大臣に対して報告書を提出した。この報告書の策定に若干かかわらせていただいたという背景がございます。

 したがいまして、今般の電力システム改革、電気事業法の改正につきましては、基本的に賛同をしております。その上で、さらにこのような改善方向にしていけばいいのではないかという立場から発言をさせていただきたいというふうに思っております。

 主に二点ございまして、一点目が、総論、そもそもなぜこのような改革をするのかという電力システム改革の目的を、あえてもう一度確認させていただきたいと思います。二点目が、各論として、今回の電事法の改正の一番の柱である発送電分離について意見を申し上げます。

 お手元に資料があると思います。まず、電力システム改革のそもそもの目的というところからです。

 今回、第三段階の法改正でございますので、先生方におかれましては、もうよくわかっているというようなお気持ちもあるかとは思いますけれども、やはり、どうしても各論、技術論に入ってまいりますと、場合によっては木を見て森を見ずといったようなことになってはいけませんので、あえて、どうしてその改革をするのかという目的を確認したいという趣旨でございます。

 では、電力システム改革の目的は何なのかということなんですけれども、先ほど申し上げた二年前の報告書、これの冒頭の部分に極めて明快に書かれています。この一枚目のスライドの文章はまさにそこから私が引用したものなんですけれども、この一番上の部分、この一文は私は大好きでよく引用をさせてもらうわけなんですけれども、「料金規制と地域独占によって実現しようとしてきた「安定的な電力供給」」、これを今後は「国民に開かれた電力システムの下で、事業者や需要家の「選択」や「競争」を通じた創意工夫によって実現する」、これは名文だと思います。今回の電力システム改革の本質を一言であらわした文章であります。

 このポイントは、安定供給のためにやるんだということです。よく、競争すれば電気料金が下がるとか、そういう側面ばかりが強調されがちです。もちろん、そういう側面もあります。非常に重要ですけれども、先ほど八木会長からも御指摘があったとおり、安定供給が極めて重要なわけでありまして、それを新たな仕組みに進化させる、これが今回の改革の一番の目的だと思っています。

 どうしてそういう改革が必要なのか。この辺はもう本当に復習になりますけれども、やはり、福島原発事故が起きたことによってこの改革をしようという機運が高まった、まさにそのとおりでございます。特に、震災後の環境変化というものがやはり同じ報告書の中で大きく四つ指摘されておりまして、この青字の部分なわけなんですけれども、「原子力発電への信頼が揺らいだ」。原子力発電依存度、数字についてはいろいろな御意見があるとは思いますけれども、震災前の水準より下がるということは間違いないだろう。政府もそのような方針を出していらっしゃる。その際には、当然安全規制も強化されましたし、コストも増大をしている。

 では、原子力発電が減らざるを得ないというときにどうするのか。それが次の二番目でありまして、再エネやコジェネなどの分散型電源の一層の活用、これは先ほど橘川先生も御指摘になったとおりであります。ただ、このような分散型電源、これまで日本では極めて量は少なかったわけなんですけれども、原子力や石炭といったような集中型電源を受け入れるための仕組みと分散型電源を受け入れるための仕組み、電力システムは大きく異なります。だからこそ、電力システムの改革が必要であるという話になるわけです。

 三点目が価格による需給調整、これは、私も東京に住んでおりますので、計画停電に直面いたしました。やはりどうしても供給力が逼迫するとき、今後もいつか起きるかもしれません。しかしながら、価格メカニズムを多少なりとも使えば、もう少し、より柔軟な形で需給調整ができるのではないか。これまでは、やはりお客様、消費者の方に御迷惑をおかけしてはいけないというような配慮もあったかもしれませんけれども、今はスマートメーターとか、そういうITの機器もかなり進歩しておりますので、そういう機器の力もかりて、消費者の方にもディマンドレスポンスというような形で需給調整に協力していただく、これも非常に重要な、新たな分散型の仕組みになるわけです。

 四つ目が、いわゆる広域運用ということです。地域別に電力会社さんが切磋琢磨して需給の責任を持ってきた。これがこれまでの仕組みで、大きな成果も上げたわけですが、やはり経済合理的に考えれば、広いエリアでもって需給バランスをとる、これは、以前の、これまでの電気事業法にも広域的運用という項目があったことからも明らかでありまして、ただ、なかなかこれまでそういう仕組みに改革することができていなかった、今後は全国大で需給調整を行う仕組みにしよう、これが四点目の広域運用の話です。

 ここまでの話は、報告書に書いてある審議会としての一つの結論なわけなんですけれども、これを私なりに言いかえたのが次の二ページ目でありまして、電力システム自体を集中管理型から自律分散型へ移行していくんだということであります。

 電源の構成を見直していく、これはもちろん当然でございますけれども、それだけではなくて、独占の仕組みを競争ベースにしていく。

 あるいは送配電ネットワーク、これまでは地域別で基本的には閉鎖的なものであったわけですけれども、これを広域的に有効活用していく、多くのプレーヤーが自由に、公正に使えるようにしていく。

 したがって、産業構造も、これまでは垂直一貫だったわけですけれども、水平分業化していく。もう既に免許制という法律が通っておりますけれども、要するに、送電ビジネスと発電ビジネスと小売ビジネスというのは、今後は違った行動原理に基づくことになる、したがって、それらの業界というものの垣根をしっかり分けましょうという側面もあるわけです。

 最後に、消費者の役割。これまでは、ある意味、我々消費者は非常に恵まれていたのかもしれません。自由に好きなだけ電力が使えるという、非常にありがたい環境だったかもしれません。ただ、それは一方で受動的であり、かつ均一であった。均一であることに価値があるという議論もあるかもしれませんけれども、今後は、より能動的かつ多様になっていく。そういう中で、いかにその複雑なシステムを構築していくのかということが今問われているわけです。

 今申し上げたような変遷、転換というものは、むしろ、欧米諸国ではもう既に当たり前のものとなっているわけです。電力自由化について言えば、もう十年前、二十年前から、欧米諸国は発送電分離も含めて進めていらっしゃるわけですし、再生可能エネルギーを、例えば二〇三〇年断面で四〇%ぐらいにしていこう、五〇%ぐらいにしていこうというのも、おおむね欧米諸国の一般的な、共通的な目標となっているわけです。

 したがって、日本もようやくそういう改革をする段階に入ったのかというところがポイントでありまして、今、エネルギーミックスの話ですとか、再生可能エネルギー、原子力ですとか、電源別、電源ごとの議論も行われています。エネルギー政策は本当に今重要な局面にあるわけなんですけれども、まさにそういうエネルギー政策全体の、特に電力という意味では基盤をつくるのが今回の電力システム改革であり、そういう観点から自律分散型の仕組みに改造していくんだという趣旨をもう一度確認させていただきたいと思います。

 ここまでが総論の話でありまして、次が各論、発送電分離について意見を申し上げます。

 三ページ目のところです。「法的分離から所有権分離へ」というスライドでございます。

 こちらの図は、横軸が一九九〇とか二〇〇〇とか書いてあります。これは時間軸ですね。一般に、発送電分離については、所有権分離、法的分離、機能分離という三種類がございますので、では、どの国がいつごろ発送電分離に踏み切ったのかということをプロットした図であります。

 この図からわかること、まず一点目が、世界の主要国、中国とか韓国とかアジアの国も加えていますけれども、多くの国はもう発送電分離を終えているという事実であります。おおむね二〇〇〇年代半ばぐらいまでには、主要国というのは発送電分離を大体終えている。アメリカについては州によって異なりますので、下の灰色のところですね、テキサス州、ニューヨーク州、カリフォルニア州というような形で書かれていますけれども、大体、多くの国は、おおむね二〇〇〇年代ぐらいまでに発送電分離を終えている。

 日本は、今回の法案では、二〇二〇年に行うことといったような条文になっているわけです。ですので、日本は、ある意味後発なわけであります。後発というのはデメリットばかりではなくて、他国から学べるというメリットもございます。発送電分離については、いろいろと懸念の声もあるということは私も承知しておりますが、これだけ諸外国がやってきた改革、ここから学んで、よりスピーディーに、的確に実施をする。

 例えば、東京電力は二〇一六年に法的分離を行うという計画を出されているわけでありまして、日本の他の電力会社に関しましても、この改革に資する発送電分離という施策をできる限り早く実施するということをお願いしたいと思っております。

 もう一点、この図からわかることは、種別についてです。世界的、特に欧米先進国ということで見ますと、やはり所有権分離というものが主流である。アメリカは、基本的には機能分離、ISO、独立系統運用機関をつくるということが主になっておりますけれども、アメリカの中でも、例えばテキサス州とかニューヨーク州とか、一部では、発電部門を売り払って送電会社のみになるという、いわゆる所有権分離に該当するような例もございます。

 したがいまして、所有権分離というものが競争の促進、送電網の中立化ということからすれば最も理想的な形態であるということは、欧州の政策当局者と議論をしていても、あるいは欧州の送電会社と議論をしていても一般的な認識でございます。

 おもしろい例がドイツでございまして、この真ん中のもの、矢印が伸びていますけれども、もともとドイツは法的分離を選択しました。ドイツも日本と同じように電力会社が民間企業でしたので、やはりなかなか私的所有権の観点から所有権分離はできないという事情がございました。ですので法的分離から始まったわけなんですけれども、やはり法的分離では不十分だったということで、後々、電力会社あるいは規制当局などとのいろいろと交渉なりもございまして、最終的には二〇一〇年前後に電力会社の経営判断として所有権分離を選択した。一部まだ法的分離で残っている会社もございますけれども、ドイツですら、近年、所有権分離を選択してきている。要するに、法的分離から所有権分離に移行したんだという経緯がございます。

 日本については、これは審議会でも議論をしました。私も法的分離に賛成をいたしました。今回の段階で法的分離をするのが適切であると思っております。

 ただ、将来的なことを考えれば、やはり送電事業の発展あるいは再生可能エネルギーを統合していく、スマート化を進めていくというようなことを考え合わせれば、やはり送電会社が子会社ではなくて独立した会社になるということが最も経営合理的であるというふうに考えております。ですので、そこはもちろん民間企業の経営判断になりますが、政府としましても、所有権分離にインセンティブを与えるような施策を打っていくといったようなことを期待しております。

 このような、所有権分離にしろ法的分離にしろ発送電分離をするということになりますと、どうしてもやはり安定供給というところが懸念されるわけなんですけれども、最後の四ページ目のところに、いわゆる停電時間というものの推移のグラフをまとめてあります。

 日本は、世界的に見て極めて停電時間が短い。これは本当に電力会社さんの努力のたまものだと私も思っているわけです。もちろん震災の直後のような例外的な事例はあるわけですけれども、ずっと過去、世界で最も短い停電時間を実現した。

 ただ、見ていただきたいんですが、デンマークとかドイツ、一番下のところ、緑とか黄色の点線、デンマークとかドイツといったような国も決して日本に負けているわけではない。これらの国は、再生可能エネルギー、いわゆる変動電源が日本の十倍ぐらい入っている国ですので、こういう国でも当然、所有権分離、送電会社が独立をしているわけですが、送電会社の努力あるいは技術革新によって十分な安定供給を保っている。

 あるいは、スペインのような国、紫色のところなんですけれども、日本よりも圧倒的に停電時間が長いわけです。スペインも日本よりも十倍ぐらい変動電源が入っている国ですが、ごらんのとおり、歴史的な推移とすれば、ここ十年ぐらい停電時間を減らしてきているわけですね。

 ですので、欧州の方と議論をすると、今後、送電ビジネスといったものが極めて重要だ、投資もたくさんしないといけないし、技術革新も期待されるということもございますので、新たな安定供給の仕組みをつくるという観点から発送電分離は極めて重要であると。

 日本も、さまざまな議論を経て、新しい電力システム、分散型の電力システムを構築していくという方向に今回の法改正が寄与するということを期待しておりまして、その方向で審議をしていただけるよう、切に願う所存でございます。

 以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。白石徹君。

白石委員 本日は、参考人の皆様、本当にお忙しいところ、おいでをいただきましてありがとうございます。また、皆様から示唆に富んだ御意見を賜りまして、本当に勉強をさせていただいている、そんな実感がありました。

 戦後ちょうど七十年になって、この七十年間で今が最も変革の時期ではないかな、そんな感じがする中で、政治家として活動をさせていただいていること、また、社会全体を変革に導いていく役割を、政治家としてその一端を担わせていただいていること、それに感謝をさせていただきながら、質問をさせていただきたいと思います。

 その分、変革への道のりは、先ほど皆様がおっしゃられたように、失敗をするわけにはいかない。失敗は許されない変革への道のりを歩んでいくためにも、このような段階を踏んだ法の改正というのは有効であるというふうに思っておりますし、何よりも、先ほど八木会長もおっしゃっておられましたけれども、例えば安定供給のための分離に伴う補完の措置はどういうふうにするのか。いわゆる変革への道のりを歩みながら、環境を整備していく責任というものも我々にあるというふうに思っております。

 なおかつ、今回の法律の大きなところでありますけれども、その法改正、例えば来年から小売の自由化が始まりますけれども、それと同時に、いわゆる検証を始めていく。その検証によって、できるだけ早い対応をしていく。また、二〇二〇年からは、今回の法律のいわゆる法的分離が始まった上でも、やはり検証をしながら、それに対応していくということが最も重要なところではないかなというふうに思っているわけであります。

 そういう中で、今回の電事法の改正でありますけれども、特に、私が興味がございますいわゆる総合エネルギー産業を創生していくというところでありますけれども、まず最初に、エネルギー改革の全体像として、これは橘川先生と高橋先生にお伺いをさせていただきたいんです。

 橘川先生には、今、いわゆる提案も頂戴させていただいたような気がいたしました。特に、エネルギーのバランス等について、また二国間のいわゆる排出権取引の提案なども頂戴させていただいたわけですけれども、例えば、市場の自由化がずっと進む中で、当然、投資家から考えれば、投資効率のいい石炭に走ってしまうという可能性が出てくるのではないか。それをいわゆる規制する必要が出てこないか。これは自由市場ですから、投資家の考えで物事は進んでいくんでしょうけれども、逆に言えば、再生エネルギーをどんどん進めていくことによって、いわゆるバックアップ電源としての火力発電に投資した人にミッシングコストが生じる可能性もある。

 その辺のバランスというのは大変重要だと思うんですけれども、それを進めていく上で、自由化市場を監視するシステムというか、監視をしていく必要性がある場合に、誰がどのように監視をしていくかということについて、先生から御意見を賜りたいと思います。

 できれば、FITの先生のお考え、FITがこれからどうあるべきかというところも、御意見を賜れればありがたいというふうに思います。

 それと、高橋先生には、いわゆる当初から総研として携わっておられたお立場の中で、今、集中管理から自律分散型へという話もございました。そういう話の中で、新しい価値を生み出していくということは、その新しい価値とはどういうものなのか。新規参入とかそういうお話もいただきましたけれども、その新しい価値というものはどういうものなのかということと、先ほどお話にもありましたけれども、海外の教訓をどのように日本に生かすかということについて、もう少しお話をいただければありがたいと思います。

 特に、例えばドイツが先進といいますけれども、ヨーロッパ全体でいえば、エネルギーバランスというのは、日本のいわゆる震災前とそんなに変わらないんじゃないかと私は思うんです。先進のアメリカでも、四十九州のうち六州か七州しか自由化はやっていない。しかも、カリフォルニアでの失敗の事例もあります。そのあたり、教訓として、また先進事例としてどのように学ぶべきかということについてもお話をいただきたいというふうに思います。

 それと、八木会長、総合エネルギー産業を創出していく上での業界の再編成について、ぜひ会長の御意見を賜りたいと思います。

 とりあえず、お三人にお願いします。

橘川参考人 御質問どうもありがとうございました。

 まず、総合エネルギー企業ですが、私は、エネルギーセキュリティーの一番のポイントというのは、その国に国際競争力を持った総合エネルギー企業があるかないかということだと思います。そこのポイントは、国際競争力であるので、ちゃんと市場で勝てるような力がないといけないわけでありまして、監視のポイントは、保護してげたを履かせて強くしても国際競争力にはなりませんので、きちんと競争に耐え得るような会社かどうかというのがチェックのポイントになってくると思います。

 具体的な話でいきますと、石炭に関して言うと、私は、今、四十年でもし原発をとめていきますと、大体二十五ギガワットぐらい減るわけですが、それをベースロード電源で埋めなきゃいけないとすると、大体五ギガワットぐらいが石炭で、二十ギガワットぐらいがLNGじゃないかと思います。ところが、今、手が挙がっています石炭の計画というのは、いろいろな計算があるんですけれども、十五ギガワットとか、場合によっては二十ギガワットくらいに上がっていまして、やはりちょっと課題があると思います。

 特に、環境アセスメントが楽だということで、十一万キロワット以下のミニ石炭バブルみたいなものが起きているんですが、これは熱効率も悪いので、こういうものがやはり規制の対象になる。だから、規制すべきものとそうでないものの使い分け、最終的に市場で勝負できるような企業をつくり上げていくような政策というのが一番大事なんじゃないかと思います。

 それから、FITについては、私自身はFITそのものよりもその先の方が大事だと思っていますが、現在始まっていますFITの見直しというのが必要だと思います。

 ただ、ドイツの例を見ましても、もう少し、先ほど手塚参考人が言われたような、日本経済に資する、特に中小企業を中心とするエネルギー多消費産業に対する減免措置が、ドイツに比べるとまだ弱いのではないかというふうに思いますので、そこのところは考慮の余地があるのではないかと思います。

 以上です。

高橋参考人 二点、御質問をいただいたというふうに思っております。

 まず、電力システム改革、特に電力自由化による新しい価値とはいかなるものかという御質問にお答えをいたします。

 電力の小売という観点から見ますと、やはり消費者にとっての価値をいかに高めるのかというところが一つ大きなポイントになるわけですが、電力そのものの市場自体は、今後、今も節電がかなりきいておりますし、大きく伸びていくというふうに考えられないと思っております。

 では、何が魅力かというと、やはり電力そのものの売り買いではなくて、それにまつわるサービスというものがたくさん出てくるということが、ある意味、競争の鍵でもあり、かつ消費者が求めているところなのかと思います。

 具体的に申し上げますと、例えば今スマートメーター、政府と電力会社が一体になって導入を進めているわけですが、スマートメーターが各家庭に入ることによって、柔軟な時間帯別の料金ですとかディマンドレスポンスといったようなサービスが可能になります。

 あるいは、その上で、例えば御家庭に、今、蓄電池が入っている自動車、例えばハイブリッド車ですとか電気自動車というものも普及してきております。ですので、その蓄電機能を使って、家の中でエネルギーマネジメントをする、最適化をするといったようなことも、技術的にはもう十分可能になってきています。

 あるいは、太陽光パネルをつけている御家庭ですとか工場ですとか、要するに、これまで純粋な受動的な消費活動をする主体にすぎなかったプレーヤーが、発電をしたり蓄電をしたり、効果的にスマートな節電をするといったようなことが可能になってきておりますので、やはりこういう分野にいかに電力会社あるいは新規参入者が効果的なサービスを提供できるのか。

 電気料金そのものは余り変わらなかったとしても、そういう使い方を変える、あるいはそれ以外の付加価値をつけ加えるというところが非常に重要でありまして、そういう分野に私は大変期待しているということでございます。

 二つ目の、欧州など欧米の事例からの教訓ということですけれども、これは当然いろいろな教訓がございます。

 例えば発送電分離について申し上げますと、私、先ほど申し上げましたとおり、基本的には賛成、特に所有権分離をするべきだという立場なんですけれども、その際には、やはり、送電会社のビジネスというものがここ十年ぐらいの間に大きく変わってきています。いろいろと設備投資をたくさん積極的にされていますし、あるいは、例えば気象予測をうまく使って再生可能エネルギーの変動性を吸収するだとか、広域運用、これも欧州は国境を越えてやるということも当たり前になってきています。

 そういう情報システムも含めて、系統運用のノウハウといったものが新しい仕組みに応じてつくりかえられようとしています。ですので、日本も今後そういう方向に向かうということだと思いますので、そういうところは十分に学ぶことができると思います。

 他方で、停電等が起きているじゃないかという御議論もあるわけです。これはそれぞれいろいろな理由がございまして、ヒューマンエラー的な、ある意味、どういう仕組みにしようが起きる停電もございます。あるいは、よく言われる十年ほど前のカリフォルニア州の事例について言えば、いわゆる規制の失敗が原因である、卸価格の規制と消費者レベルの小売の規制というもののアンバランスの結果、ああいうことが起きたといったような検証がなされているところでございます。

 やはり、システムを大きく変えるということはそれなりに不確実性やリスクも伴いますので、当然そこは慎重に着実にやる必要はある。ですので、先ほどから検証というような話も出ていますけれども、そういう着実にやる、だからこそ、欧米の事例をしっかり学んで、できることは当然スピーディーにやる、そのバランスをいかにとっていくかということが問われていると考えます。

八木参考人 八木でございます。

 エネルギー業界の再編の可能性についての御質問にお答え申し上げます。

 今回の法案は、冒頭に申し上げましたように、電力だけでなく、ガスや熱事業も含めて制度改革を一体的に進める、そういうことで総合的なエネルギー市場をつくり上げることが、お客様のエネルギー選択の自由度あるいは利益の向上につながる、こういう趣旨だと理解しております。

 そういう趣旨から申し上げますと、私ども一般電気事業者といたしましても、これまでのようなエネルギー間の垣根を越えて、電気だけでなくガスも含めて、お客様にベストなエネルギーを御提供する。つまり、総合エネルギー事業に進化していくというのが大きな目標だと思っています。そうしたことによってお客様のお役に立てるとともに我が国のエネルギー事業全体をリードしていきたい、そういう気概で取り組んでまいりたいと思っています。

 そういう過程の中で、御指摘のような、例えば今後、企業間のアライアンスとかあるいは合併とか、これは十分検討の対象になり得るものと思っております。ただ、これはあくまでも各社の事業戦略あるいは経営戦略によるものでもございますし、また何よりも、これはお客様の、やはり、我々は低廉で安定的なエネルギーをお送りする、そういう目的に合致しないといけないと思っています。

 そういったことを踏まえながら、今後検討してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

白石委員 ありがとうございます。

 今、全体像としてのいわゆる総合エネルギー産業の創出について、各視点から意見を頂戴させていただきました。これについて、また後ほど質問をさせていただきたいと思うんですが、産業と今回の電事法の改革の関係という意味で先ほど橘川先生も少しお話をいただきましたけれども、産業にもう少し賦課金の優遇措置をしなきゃいけないじゃないかというお話をいただきました。手塚社長には、私、実は、主婦から企業家へ転身して、そして会社を再建された、その御講演をいただきたいんですけれども、きょうの場は電事法の改革の場でございますので、電事法についてお伺いをいたします。

 今お話をさせていただきました、産業をしっかりと成長できるようにする意味で、この電事法の改革はやはりあるわけでありまして、それに対して、手塚社長は、先ほどの賦課金の補助のこともしかりでございますけれども、これから電事法の改革、そして自由化が進む中で、こういうことを望みたいということがございましたら、ぜひ御意見を賜りたいと思います。

手塚参考人 御質問ありがとうございます。

 私のお答えが妥当なものかちょっと心配でございますが、お答えさせていただきます。

 個人的な見解でございますが、競争原理の働かないところに癒着とかおごりといったものが発生するのではないかと考えております。従来の原発事故の真の原因はやはりそこにあったのかもしれません。

 私どもの同業の中でこういった事例がございました。つい先日ですが、変圧器、トランスがはねてしまいまして、会社じゅうの電気が通電できなくなった。それに至るまで何回も電気会社と交渉しておりましたが、遅々として交渉が進まず、ついに老朽化により変圧器が壊れてしまうということが起こった。また、起きてからも対応がなかなか進まない。要は、大企業病といいますか、今、競争原理が働かないところで電力事業者が非常に大企業としてのゆゆしき問題を抱えているのではないかと感じるわけであります。

 電力会社にすれば、たった一事業者の小さな変圧器かもしれませんけれども、私どもにとっては、一日一日が生きるか死ぬかの戦いの中で、その変圧器が直せるのか直せないか、本当にその企業は大変な思いをしたわけで、電力会社がお客様である私たちを忘れないでいただきたいということを大変強く思うわけであります。

 具体的に申しますと、先ほどのFITの賦課金に関して言えば、賦課金の減免を受けられる企業は、七十四社中のたった七社でしかないと申し上げました。それは、その減免の条件というものが、製造業全体の売上高分の電気量ということで、〇・七が製造業の平均でありますが、それの八倍を超えていなくてはいけない、また一ギガを超えていなくてはいけないというような条件が固定的にありますために、多くの中小企業はその減免を受けることができません。そういったことをもっと自由化していただくこと。また、ドイツの例でいえば、事業用、産業用の電気に関しては税金を大幅に減少させているというようなことで、私どもとしては、全体を通して安定的、安価な電力が供給されることを望んでいるわけでございます。

 以上でよろしいでしょうか。

白石委員 手塚社長、ありがとうございます。

 私の地元にも鋳物団地がございまして、ずっと聞いて回ってみますと、原価に占める電力費が大体二二%ぐらいの企業がほとんどで、今回の電力料金のアップは本当にもうしんからこたえているというようなことをよくお伺いしたりもしました。

 今社長がおっしゃっていただいたいわゆる大企業病の話は、いわゆる企業家としての根本精神の問題ですから、これから我々も気をつけていかなければならないと思います。

 また、FITの減免の条件とか、それと、何をおいても産業用の電力についての考え方、これもこれから課題として取り組んでいかなければならないというふうに思っています。

 時間が参りましたので、あと一問、八木会長にお願いをしたいんですが、いわゆる再編ができた後、先ほど橘川先生、高橋先生も、海外に向けて事業を伸ばしていくその可能性を持つときに、どうしても今の、いわゆる自己資本比率が今一〇%ぐらいしかないような状況でさらに分離をして、そしてまた国際競争力を持つようなことができるのかどうか、それを私は少し疑問に思っているわけですけれども、そのあたりをどのように展望されているか。これは最後の質問です。よろしくお願いします。

八木参考人 お答え申し上げます。

 まず、企業として海外事業をどう見ているかということでございますけれども、私どもは、電力というのは、これまで、いわゆる電気の技術力というのを持っておりますし、いろいろな面で、地球環境問題、エネルギーの安定供給という面で、日本で頑張ってまいったと思っております。

 そういう意味では、これから経済発展が見込まれる地域においては必ずインフラ整備をしていかないといけませんし、そういうインフラ整備の中で、地球環境問題、エネルギー安定供給などの問題も出てまいります。したがいまして、さまざまな期待が私ども日本の事業者にかかってくるといいますか、期待されると思っていますので、海外というのは非常にビジネスチャンスが拡大していくというふうに思っております。

 そういう中で、御指摘のように、海外事業をやる場合にも、やはり本体の体力がしっかりしておりませんと、なかなかできないと思っております。

 今現在は、やはり本体の事業の余力の中で、海外事業そのものも、ビジネスを目的にしているのではなく、我々が培ってきた技術力を海外で活用することによって、ある意味ではそこで我々も国際的な競争力がつく、そういうことで、国内の我々のこれからの競争環境下の競争力強化にもつながる、こういうふうな観点でございますので、今の海外の取り組みというのは、どちらかというと、少しまだ、全般的に、積極的にという状況ではございません。

 したがいまして、御指摘のようにこれからの電力システム改革の中で、先ほど申し上げました大きな課題がございますが、ああいうふうな課題、例えば電力需給の改善あるいは原子力事業環境整備、こういったことによって、分離の中でも各事業が安定して営める環境になるということが海外ビジネスをやっていく上での大変大きなポイントになるんじゃないかと思っております。

 以上でございます。

    〔委員長退席、鈴木(淳)委員長代理着席〕

白石委員 ありがとうございました。終わります。

鈴木(淳)委員長代理 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 四人の参考人の皆様、きょうは本当に貴重な御意見をありがとうございました。大変勉強になりました。

 何点か質問をさせていただきたいと思うんですが、まず、八木参考人に何点かお尋ねしたいんです。

 実は、四月十二日、統一地方選挙前半選の投票日の朝、日経新聞を見まして、びっくりしました。「関電、首都圏初の発電所」ということで一面に大きく出ておりまして、多分、委員の皆さんは選挙の応援で見ていないんだと思うんですが、先週、実はこの件をこの委員会で質問させていただきました。見出しに大きく、「東燃ゼネと三千億円投資 越境、東電に挑む」というような大きな見出しが出ていました。

 こんなふうに書かれているんですね。

 関電と東電と、「これまで両社は互いの市場で電力を販売したことはあるが、大型発電所を建設したことはなかった。」「今回の関電の動きは、自由化を見据えた競争が新たな局面に入ったことを示す。」というふうに評価をされていました。

 私もそのとおりだと思うんですが、こういうふうに解説しているんですね。

 「首都圏で自前電源を持つことは顧客獲得に有利に働く。東北地方などに発電所を建てる場合に比べて送電や維持管理の費用を大幅に抑えられるので価格競争力が高まる。」というふうに指摘をして、また、「送電線を通る過程で電気は徐々に減っていくため、大消費地の首都圏に近いほど無駄なく電気を供給できるメリットもある。 関電が新設する千葉の発電所からは一部の電気を東電に売るが、半分程度は現在の東電の料金より割安に設定し、大口需要家や利幅の大きい一般家庭向けに販売する。送配電網は既存のものを利用する。」というふうに書かれています。

 一方、東燃と一緒にやることによって、「用地取得の必要がない上、燃料を積んだ船の受け入れ設備がすでに整っている。」と、適地であるというようなことを書かれているんです。

 今回のシステム改革の行き着く先がこういうことだったと思うんですが、この報道は事実なのか、また、こういう、東電圏内に発電所を開設することによって、関西電力として、今後どういう方向で電力システム改革に取り組んでいかれようとしているのか。

 もう一つ、先ほど橘川先生の方から、やはり火力発電の方が多過ぎるんじゃないかという御指摘もありました。千葉県の沿岸に、ほかにも二つほど出てきていまして、四百万キロワット級の火力発電所の整備が計画されている、そういった橘川先生の方からの御指摘も踏まえて、関西電力として、今後このシステム改革を踏まえてどういうふうに取り組まれているのか、ちょっと、電気連合の会長さんということになって申しわけないんですが、お答えいただければと思います。

八木参考人 八木でございます。では、関西電力社長という立場でお答えを申し上げたいと思います。

 まず、今先生から御指摘のございました東燃ゼネラル等々の新聞報道でございますけれども、これは、そういうふうな検討をしていることは事実でございますが、まだ具体的な計画が決まったものではございませんということで、まずお断り申し上げたいと思います。

 それで、実は、関西電力といたしましては、今般の電力システム改革で、第二弾が、小売の全面自由化が来年から実施されます。これまで部分の自由化が始まって以降、実は、電力間の競争が非常に少ないといういろいろな御指摘を頂戴いたしました。

 そういう意味では、やはり、電力システム改革が真にお客様の利益につながるようにしていくためには、我々電力としても、やはり、電力間競争といいますか、こういうものに積極的に取り組むべきだという基本的な考え方のスタンスのもとに、特に大消費地であります首都圏を中心に、関西電力としても、子会社のKenesという会社を中心として、今、PPS、いわゆる新電力事業を展開しているところでございます。

 ただ、私ども、そういう意味では、他地域に我々が出ていくときには、いわゆる新電力の立場になっておりまして、つくづくそのときに感じましたのは、新電力の立場で、例えば首都圏の東電さんと競争しようと思うと、やはり、安価な電源をみずから持つということが一番大きなポイントだと思います。

 したがいまして、競争を実効的なものにしていくためには、いかに安価な電源を自前で開発していくか、これが大きなポイントになると思います。ただ、自前の開発というのはなかなか難しゅうございますので、いろいろな企業の方々とアライアンスを結びながら、安価な電源を取得して、それでお客様の料金の低廉化につながっていかないかな、こういうふうな検討を今しているところでございます。

 具体的には、お客様の電力に直接供給するか、あるいは東電さんの入札に使うかとか、そういうことは今後検討してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

富田委員 先ほど橘川先生の方から、磯子の火力についてコメントがありましたが、私たち公明党も磯子を見てきまして、やはり高効率の火力発電所がこれから本当に大事になっていく。関電さんもこれだけ大型のものを東電管内にやるというふうになっていったときに、今後の火力発電所のあり方というか、やはり、IGCC等の本当に高効率の火力発電所で、CO2をできるだけ出さないというような取り組みが必要だと思うんですが、そのあたりはどんなふうにお考えなんでしょうか。

八木参考人 済みません、失礼しました。先ほどの御質問を忘れていました。

 私ども電力会社におきまして、基本的にはこれからエネルギーのミックスが決まっていくと思いますが、そうした中でバランスよく電源を持つというのが、やはり日本の、エネルギー資源がない国の特徴として、バランスよく開発していくべきだと思います。

 そういう意味では、火力電源も、基本的にはLNG、石炭、石油、これをバランスよく開発していくことかと思いますが、基本的には、これから我々が所有している設備自体もいわゆる高経年化してまいりますので、やはり、効率的な設備にこれを置きかえていくという必要があります。そういう意味では、原子力の再稼働、原子力は一定の比率がある上で、火力というのを積極的に高効率なものに変えていくことが大事だと思います。

 そういう中で、石炭というのは、これも一つの大きな、燃料が世界各地にありますし、また燃料資源としても安いということでありますので、我々電力会社からすると非常に興味がある電源であります。したがいまして、石炭というのも重要な電源として開発していくべきだと思いますが、御指摘のように、一方でCO2の問題がありますので、石炭においても、例えば、これから超超臨界圧のボイラーを使った火力とかIGCCとか、できるだけ技術開発によってCO2を発生しないような火力開発を目指しながら、バランスよく火力電源を導入していくべきではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

富田委員 もう一点、八木参考人にお尋ねしたいんですが、先ほどの陳述の中で、これまで電力事業者が一体となって支えてきたバックエンド事業等の原子燃料サイクルの推進に当たっては、競争が進展していく中でも長期にわたる処理処分のプロセスに支障を来さないよう、新たな官民の役割に基づく仕組みの構築などが必要だというふうに御指摘がありました。

 私は、一昨年、昨年と、フィンランドのオンカロを初めとして、スウェーデン、ドイツ、スイス、アメリカと地下研究をずっと回ってきましたけれども、NUMOの皆さんに本当に協力していただきました。関電を初め電力会社の皆さんは、NUMOにいろいろ協力していただいて、人も金も出しているというような状況だと思うんですが、今回、国が前面に立つんだというふうな政府の方針が出てきましたけれども、国のその方針も踏まえて、今、八木参考人が新たな役割分担というふうに言われるのは、どういう構想を描かれているのか、もし御所見があれば伺いたいと思います。

    〔鈴木(淳)委員長代理退席、委員長着席〕

八木参考人 ありがとうございます。

 私どもの原子力事業環境整備というのは、今回、冒頭の陳述でも、電力システム改革を真にお客様の利益につながるものにしていくための大きな課題の一つであると申し上げた原子力環境整備でございます。特にこの原子力環境整備の必要性ということにつきましては、基本的には原子力という特殊性、長期にわたる事業、建設から最終廃止まで非常に長期にわたる事業を確実にやっていくという中で、これは民間がこれまで主体でやってまいりました。

 そういう中で、実は国の原子力推進政策のもと、民間が、例えば総括原価方式というような制度の中で、先行きの、長期の予見性を持って事業ができたわけでございますが、今回の環境変化、特に原子力依存度を下げるとか、こういった競争環境下では予見性が非常に揺らいできております。そういう中で、私どもとしては、まず、民間として、基本的には原子力事業をしっかりやっていきたいと思っております。

 そういう中で、原子力というのは非常に国の重要な政策として位置づけられておりますので、民間がしっかりやり得るための国のサポートもお願いしたいという意味で、具体的に申し上げますと原子燃料サイクル関係でございますが、いわゆるバックエンド関係のところにおきまして、これを民間がしっかりとできるような形での、従来よりも少し踏み込んだ形での新たな国と民間事業者の役割分担の問題。あるいは、もう一点は、原子力の損害賠償制度がございますが、これにつきましても少し今の制度の見直しを、国と事業者のあり方について御検討いただければというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

富田委員 橘川参考人にお尋ねしたいと思うんです。

 二〇三〇年の電源ミックス、先生がいろいろなところで言われている数字を先ほど御説明いただいたんですが、一月六日号のエコノミスト、調査室の方からちょっと資料をいただきまして、その中に、先生がこの五ページに書かれた二〇三〇年の電源ミックスの記述がそのとおりあるんですが、この記述があった後に、先生はこんなふうに言われているんですね。

 「再生可能エネルギーの三〇%は、自民党が主張する「二一%以上」と公明党が目指す「三五%」の中間値である。コジェネの一五%は、一一〜一二年に民主党政権下で電源ミックスを審議した資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会で、反原発派も原発推進派も中間派も一致して推薦した数値である。」という御指摘をされている。

 政治的にもこの数字でいいんじゃないかというお考えなんだと思うんですが、その上で、先ほどお話しいただいた、「日本において、太陽光発電や風力発電を本格的に拡大していくうえで鍵を握るのは、発電施設と変電施設を結ぶ送電線問題を解決することである。」ということで、三つ、第一は本当に送電線が不足しているのかチェックすること、第二は送電線をつくる仕組みを構築すること、第三はそもそも送電線を必要としない送電方式を導入することである。先ほど幾つか御説明いただきました。

 このとおりだと思うんですが、何かこれにつけ加えることがありましたら、ぜひまたちょっと教えていただきたいと思います。

橘川参考人 私のつまらない論文をたくさん読んでいただきまして、どうもありがとうございます。

 世上伝えられていますけれども、どうも二〇三〇年の電源ミックスで再生エネルギーが二二%から二四%という数字になろうという話が伝わっていますが、思い起こしますと、麻生内閣のときに麻生さんが、二〇〇九年の四月に、二〇二〇年の時点で再生電源の比率を二〇%にするということを言われているんですね。それと比べますと、やはり今の二二から二四というのはちょっと低いんじゃないかな、こういうふうに思います。

 そうすると、そこに書いてあるとおりなので、誰が頑張って引き上げるかとなりますと、公明党に頑張っていただかなければいけない、こういうふうに私は思います。

富田委員 では、先生の声援をしっかり受けとめたいと思うんです。

 実は、先週のこの委員会で、先生の御指摘のように再生可能エネルギーをどういうふうに導入促進していくかという議論の中で、ドイツがすぐ挙げられるんですけれども、私は、ドイツの失敗例もあると。やはりバックアップ火力が本来必要なのに、火力発電所をつくらないで、ドイツの発電会社がみんな風力の方に行ってしまって、結局、ドイツから火力のボイラー会社すらなくなってしまっている。

 そういったドイツの間違いは間違いとして、日本はそういう間違いはしないようにというような質問をさせていただいたんですが、先生が考えるエネルギーミックスの中で、バックアップ火力の問題をどういうふうに組み込んで考えていらっしゃるのか、ちょっとその点を教えていただければ。

橘川参考人 非常に重要な視点だと思います。

 私は、ドイツのようなやり方で、再生をともかく絶対入れなきゃいけなくて、そのためにベースロード向きの、原子力はまだ使っているんですが、石炭を減らさなきゃいけない、これが高コストの原因になっていると思いますので、ベースロードに向くような電源については可能な限りベースロードで使う。そうすると、バックアップの電源として一番機動力があるのがガスなんですね。

 そういう意味で、LPガスあるいはLNG、この二つのガスのシステムをうまく柔軟な対応をするための仕組みとして使う必要があって、そういう意味でガスの問題をきっちり考えなければいけないのではないか、こういうふうに思います。

富田委員 ありがとうございました。

 手塚参考人にちょっとお尋ねしたいんですが、実は、公明党でも、電力多消費産業の皆さんに党の方に来ていただきまして、各団体から御意見を伺いました。先ほど来のお話のように、製造コストに占める電気代が本当に大変だ。

 手塚参考人の資料も調査室の皆さんがいろいろ集めてくれまして、大変御苦労されて会社経営に当たって、本当に従業員の皆さんといろいろやりとりをしながら製造業を維持しているというようなお話も伺いました。

 そういった中で、先ほど、減免制度を受けられるのが七十四社中七社しかない、この条件を変えていただきたいというのは、やはり委員会としても重く受けとめるべきだと思いますので、今後の審議の中、また経産省、資源エネルギー庁に対して、委員会としても申し入れ等をするべきだなというふうに思いましたので、その点は本当に参考になりました。

 御社のお話で、二十五億四千万の売り上げのうち原価が二十一億で電気代が三億円という、この三億円が三年前から一億ふえているというのは、ちょっと余りの負担じゃないかと思うんです。確かに、この一億円がもしなければ、アベノミクスの効果ではないですけれども、従業員のお給料を上げたり、福利厚生とかいろいろ回せるようになっていくと思うんです。

 このあたり、どの程度までの負担だったら、まだ会社を経営者の立場として回していける、こんなふうにあってほしいというような電気料金の設定のあり方等がありましたら、御意見をいただければと思います。

手塚参考人 御質問ありがとうございます。

 いつまでも主婦的な感覚も抜けないわけで申しわけないんですが、私どもの企業としましては、福島の原発事故の以前の料金であること、それが基本として、電気代としてはそれぐらいになっていただきたいと思っております。

 よろしいでしょうか。

富田委員 ありがとうございました。

 ぜひそうなれるように、委員会としても努力をしていきたいというふうに思います。

 最後に、高橋参考人にお伺いしたいんですが、今、FITの問題がいろいろありました。この委員会でいろいろ議論していても、やはりFITの見直しが必要ではないかというような議論が出てきます。どんな形で見直していったらいいのか。先ほど橘川先生の方からは、市場原理に任せるような流れの中でやっていくべきではないのかという御意見もありました。

 先生の方で、何か今のFIT制度の問題点、また、今後こうあったらいいんじゃないかというような御意見がありましたら、最後にお聞かせ願いたいと思うんですが、よろしくお願いします。

高橋参考人 お答えします。

 FITの見直し、これはさまざまなポイントがありますので、なかなか簡単に言うのが難しいんですけれども、まず一つ重要なのは、今後どれぐらいふやすのか、この方向性をはっきりさせるということだと思います。

 もちろん、今はエネルギーミックスの議論をされていますので、それである程度そういう数値目標が出てくるわけですが、これまではそういうはっきりとした目標がないままで、二年間半ですか、固定価格買い取り制度を運用してきた。これは、ある意味、正直、かなり難しいやり方でありまして、これぐらいふやすんだったらこれぐらいの速度でふやしていく必要があるわけだから、では、これぐらいの価格でもってやらないといけないよね、いや、もっと少なくていいんだということであれば、ある程度価格を抑えてスピードダウンさせていくといったようなことができるわけです。ドイツでも、やはり毎年毎年これぐらいふやしていくという数値目標に基づいて柔軟に価格を改定していくといったようなやり方をしてきたわけですので、そういうところを、今回エネルギーミックスを踏まえてやっていく。

 もちろん、もう既に政府の方でも、価格の改定時期を、もっと頻度を高めるですとか、あるいはその設備認定をした後の状況をチェックするだとか、そういう対策をされているところではありますけれども、やはり大きな目標があった上でその導入スピードを管理していくということが一つ大きな基本だと思います。

 その上で、今般、特に送電網の接続問題というものが非常に大きなボトルネックになっているわけです。価格の話と接続の問題は両輪ですので、どれぐらいのスピードでふやしていくのかということに応じて、たくさんふやすのであれば、接続問題も、大きく再生可能エネルギーに親和的な仕組みに変えなければいけない、いや、ほどほどでいいんだということであれば、現行のようなルールでもいいのかもしれない。

 総合的にどれぐらいのスピードでふやしていくのかという方向性のもとに制度を微調整していく、ファインチューニングしていくということが、欧州の事例を見て言えることだと思っております。

富田委員 ありがとうございました。

江田委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 八木参考人、手塚参考人、橘川参考人、高橋参考人、それぞれの先生方、本日は、大変御多忙な中、国会にお出ましをいただきまして、ありがとうございました。

 そして、先ほどから意見陳述あるいは質疑応答の中で大変貴重な、まさに参考になる、示唆に富む御意見、御陳述を賜っておりますことに心から感謝、そしてまた敬意をあらわしたいと思います。

 まず、私の立場からは、橘川先生に一問お尋ねをしてまいりたいと思います。

 先ほど配付をしていただいた、今私どもの手元にある先生の資料の中にも、発送電分離のメリットとデメリットということで、メリットの中に分散型電源の普及ということが記述をされておられるわけでございます。

 橘川先生は、この資料の中においては、分散型電源の代表格である再生可能エネルギーを電源ミックスの中では三〇%に位置づけるべきだというふうに御主張もされておられて、同時に、原子力はその際には一五%程度でいいのではないか、こういう御意見をお持ちになっておられるわけでございます。

 また、橘川先生はこの資料の中で、一方で、原子力発電の位置づけについては、今の経産省、審議会の議論は大変わかりにくいという記述もされておられるわけでございます。私も、橘川先生が御指摘のように、この文脈はとてもわかりにくい、そう言わざるを得ないというふうに思っております。

 さらに、例えばけさの新聞にも、経産省がエネルギーのコストの試算をきのう発表されたというようなことが報道をされているわけであります。このベストミックスの議論なんですけれども、けさの報道においても、発電コストの試算については、原発については対策の強化で事故の発生リスクが下がることを見込んでコストは小幅な上昇幅ということになっていて、結果的に、再エネや火力よりも比較的優位な電源という位置づけがされているわけであります。

 今までの議論の中でも、原発をベースロード電源と位置づけて、どちらかというと経産省の議論は再エネ導入に消極的な姿勢が見受けられるわけであります。一方で、電力システム改革のメリットというのは、分散型電源の普及というものが期待をされるということであるわけでありますけれども、ベストミックスの議論というものが今回の電力システム改革のメリットをある意味阻害するような、あるいは相殺するようなものになってしまっているのではないかという印象も受けるわけであります。

 この点について先生はどのようにお考えになっておられるか、御意見を承りたいと思います。

橘川参考人 私自身もよくわからないところがあります。

 例えば、コスト等検証委員会、きょうの新聞に載っていますのは、原子力発電所を新設した場合のコストを計算しているんですね。ところが、現在、ミックスの議論の方では、原子力発電所は前提として新設はしないで考えようという話になっています。そこでずれちゃっているわけで、何のためにコスト等検証委員会が原子力の新設のコストをこのタイミングで計算する必要があるのかというのがそもそもわからないようなところがある。

 何となく、全体として、やはり、今言われたように、原子力の数字を上げたくて、再生エネルギーの数字を下げたいかなというふうに読めなくもないところがある、これは感覚の問題なのであれなんですが。

 ただ、私は、そういう話とは別に、もう粛々と、粛々という言葉は使っちゃいけないのかもしれませんけれども、分散型電源の方向に進めていく。大事なことは、原子力の話とかというよりも、送配電網をもう少し自由に使える仕組みをつくるということが一番大事だと思います。

 私は、システム改革の中で、スマートコミュニティー的な、非常時だけでも独立運転が可能になるような仕組みが入りますと、実際には相当、地産地消型の電源運営ができるんじゃないかと思いますので、ミックスの議論と切り離して、システム改革の部分からいっても、分散型電源については入れることができるのではないか。ミックスの方はミックスの議論できっちりしなければいけないとは思いますけれども。

 だから、変にミックスの議論とシステム改革の議論をまぜてはいけないような部分もある。もちろん、考えなければいけない部分はある。ともかくわかりにくいというのが率直な意見なので、もうちょっとわかりやすい議論にしなければいけないと思っております。

中根(康)委員 改めて橘川先生と高橋先生に同じ質問を申し上げたいと思います。

 再生可能エネルギー導入拡大のためには、今までのお話のように、送電網の整備が進むことが不可欠だということでございますけれども、発送電分離という今回の改革で送電網は本当に拡充するのかどうかということについては、いかがお考えでしょうか。

高橋参考人 お答えします。

 再生可能エネルギーの普及拡大のための施策、特に発送電分離という観点からということだと思います。

 まず、再生可能エネルギーの普及のために必要なのは、送電網を適正に使えるようにするということだと思います。建設する、太くするということ以前に、なかなか使いづらいといったところが今非常に大きなボトルネックになっています。

 例えば、よく言われるのが北海道。まだまだ風力発電が入るんですけれども、北本連系線が細いから本州に送れないんですよね、広域運用できないんですよねという御指摘が聞かれるわけなんです。確かに太くはないわけですけれども、六十万キロワットという送電網があるわけです。

 残念ながら、今現状のルールでは緊急時、それこそ福島のときのような緊急時のために優先的にとっておくというようなルールになっておりまして、当日にならないとなかなか送電量が読めない、再生可能エネルギーのために柔軟に空き容量を使うといったルールになっていないという状況があります。

 政府もそれは十分理解されていて、そのために、この四月から広域的運営推進機関をつくられたわけでありますから、この機関やあるいは規制当局がしっかりと機能を発揮することによって、まずは既存の送電網を適切に使う、もちろん安定供給を維持しつつ、電源変動のために柔軟に使うということが一つだと思います。

 その上で、当然まだ送電網の細いところというのはたくさんございますし、送電網の建設には十年とかいったような期間がかかりますので、適切につくっていく。

 だから、そういうことの前提として、送電部門、送電会社が中立的である、要するに電源を誰が持っているのかとか電源の種別に左右されずに基本的に使えるようにする。

 あるいは、例えば必要な建設のコストというものは、送電部門は今後も独占でありますので、十分にペイをするわけです。実際、欧州などを見ても、送電会社は送電網の建設を一生懸命やっている。もちろん、地元の住民の反対とかそういう話はございますけれども、基本的には送電網の建設というのは積極的に行われている。

 あるいは、先ほど気象予測とかの話もしましたけれども、そういうITを使ってうまく情報の制御をする、スマートグリッド化を目指すといったようなことも送電事業の大きな今後の課題になっていきます。そういう観点から発送電分離を適切に行って、独立した主体としての送電会社をつくっていくといったことが大きく寄与する、このように考えております。

橘川参考人 御質問ありがとうございます。

 発送電分離の先にあるのは、二つのビジネスモデルの戦いになるのではないかと思います。

 外国を見ていましても、一つのパターンは発電と小売が一緒になる、ジェネレーションとリテーラーが一緒になるジェネテーラーとかというパターンです。先ほど八木会長が言われた、関電が関東に電源を押さえて競争を仕掛けるというのはこちらのパターンだと思います。

 もう一つのビジネスモデルは、逆に今度は、送配電のところをネットワークカンパニーとして勝負するというパターンがあって、利益の上がり方は違います。

 ネットワークカンパニーはそれほど利幅は大きくないと思いますが、皆さん議論しているように、送電線がボトルネックなんですから、ボトルネックのものに投資をすれば確実にもうかるはずなので、利幅は小さいけれども確実にもうけるという行き方でいく。そのビジネスモデル対ジェネテーラーのビジネスモデルになって、私は、今のところほとんど光が当たっていないけれども、ネットワーク会社でいくというビジネスモデルが十分に成り立ち得るのではないか。そういう世界が入ってきますと再生可能エネルギーも入りやすくなる、こういうふうに考えております。

中根(康)委員 今、橘川先生のお話から、ちょっと重ねてお尋ねしたいんです。

 送電会社がもうけたいと思った場合に、託送料金を高く設定することがもうかるということになるとしたら、電線はすいているよりも混み合っていた方が託送料金は高く、要するに売り手市場になるということになるとしたら、送電網は余り拡充しない方が、ぎりぎりのところで抑えておいた方が、託送料金を高く設定できて送電会社はもうかることになるというようなことはこの後あり得るというか、おそれというか、そういうことがあり得るのかどうかということについては、先生いかがでしょうか。

橘川参考人 今のような行動に出た瞬間に、もう送電部門は公営化されちゃうと思います。

 したがって、ちゃんと考える経営者であれば、託送料は安く、そのかわり確実にもうけていく、こういう選択をすべき。それが民間でやっていくための最低条件だと思います。

中根(康)委員 高橋先生にお尋ねしたいと思います。

 これは橘川先生もおっしゃっておられるんですが、火力がやはりこれからのある意味主要な戦力であるということは間違いないということの中において、小売が自由化されると、大消費地である東京を初めとする首都圏にどんどん火力発電所がつくられていくということになるんでしょうか。いかがでしょうか。

高橋参考人 どの電源を使うかというのは、それは経営判断でございますので、当然、各社の戦略に基づいて、とにかく安い、単価が低いものを選ぶのか、あるいは、再生可能エネルギーのようなものを選んでブランド化していくのかとか、そういういろいろと企業が出てくる、それがまさに自由化、競争ということなんだと思っています。

 では、実際にどうなるのかということなんですけれども、ここで重要なのは、来年施行される法律ということになるわけです。小売全面自由化というのは、本来、小売をするための法律の改正なわけですね。ですので、先ほど八木会長の方からも、やはり小売をしようと思ったら電源が必要だと。それは多分、経営者の実感としてはそうなんだと思います。

 ただ、競争政策的に考えると、小売をしたいと思うプレーヤーがいるのであれば、必ずしも電源を持っていなくても小売ができる環境を整えるということが私は重要なんだと思っています。要するに、スーパーの方がわざわざ農地を全部買い上げて、全部食料を生産しなければスーパーが開店できないとなると、これは大変困るわけです。

 電力は、もともと財の性格上、これまで、発電も送電もして小売もするというのが世界でも常識だったわけなんですけれども、今後は、先ほど私もサービスの価値というのをつくっていくべきだと申し上げましたけれども、必ずしも電源を持っていなくても、そういうサービスとかで競争ができる、消費者の方にメリットを届けられるというプレーヤーがどんどん活躍していくということが重要だと思っております。

 そのためには、例えば、卸電力取引所、こちらの規模が今非常に小さい。諸外国と比べても十分の一とか二十分の一とか、それぐらいの規模しかないわけでありまして、今政府も努力されていますけれども、例えば、卸電力取引所の規模を大きくする。そういう競争政策をしっかりと実行することによって、必ずしも電源の所有にとらわれずに小売ビジネスが行える、こういう環境をつくるということも非常に重要なのかな。

 ですので、電源は電源としていろいろな政策手段というものがあります。火力をもう少しふやすべきなのかとか、原子力を維持すべきなのかとか、そういうことはもちろん重要なわけなんですけれども、もちろんCO2の問題もありますので、そういう総合的な政策で決まる部分と、片や、小売の話をするのであれば、やはり卸電力取引所をしっかりと活性化させて、競争的に電力が取引できる。電源の所有が前提条件にならなければ小売に参入できないといったような環境が生じないような競争政策を施行していくことが重要だと思っています。

中根(康)委員 ありがとうございます。

 手塚参考人にお伺いしたいと思います。

 今までの国会での議論、あるいはきょうの質疑、こういったものをお聞きになって、手塚参考人が切望しておられる電気料金の引き下げというものは今回のシステム改革で実現することが期待されるとお思いになられるでしょうか、それとも、何かほかの御感想をお持ちになられるでしょうか。いかがでしょうか。

手塚参考人 お答え申し上げます。

 当然、電気代の低下が期待されることと思っておりますし、それは実現するに違いないと思っています。

 先ほどの参考人のお話の中で、自由化イコール必ずしも電気が下がるわけではないというふうなお話もありました。けれども、自由化があれば必ず下がってくることは期待されるし、あと、私どもが期待しておりますのは、鋳物業というのは非常に特殊な電気の使い方をいたしますので、そういったことに多様な使い方、サービスのメニューというものもできてくるのではないかというようなことも期待しております。

中根(康)委員 ありがとうございました。

 八木参考人にお尋ねしたいと思います。

 八木参考人は、検証規定に基づく発送電分離の実施の見直しについては、検証規定に基づいて、発送電分離の実施時期を延期するということも選択肢の中に入れるべきだというような御発言もされておられるわけでございますけれども、この検証規定の検証する項目の中には、例えば、従業員の兼職規定であるとか、あるいは電力労働者にだけ課せられているストの禁止規定、こういったものも含まれているわけであります。

 今後、こういったものも含めて検証していくということになりますけれども、経営者の立場からして、ストライキというものについて、これまでストが起きるのではないかという御心配をされた経験がおありになるかどうかとか、あるいはストが起きた場合にどういう国民的な影響があるかとか、あるいは電力労働者にだけストが禁止されているということについて経営者の立場でどのようにお考えになられるか、このあたりについて御意見をお伺いできればと思います。

八木参考人 ありがとうございます。

 スト規制の関係でございますが、私ども電力事業におきましては、やはり最大の使命であります電力の安全、安定供給、これをしっかりと維持していくために、健全な労使関係を築いていくということが経営者にとっても非常に大きな問題であります。したがいまして、私が社長として在任している間におきましては、こうした点に注力してまいりましたので、ストが起こるというようなことについて懸念した記憶はございません。

 したがいまして、今後とも、健全な労使関係をきちっと維持していく、そしてまた、そういった争議が起こらないように労使間の密なコミュニケーションを図るということが一番大事なことだと思っています。

 その上で、こういった規制が必要かどうかというのは、やはり、今後の電力の安全、安定供給が損なわれないかどうか、こうしたことをしっかりと検討した上で、また政府の方で御判断いただければというふうに思っております。

 以上でございます。

中根(康)委員 本日は貴重な御意見をありがとうございました。これで終わります。

江田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 維新の党の落合貴之でございます。

 本日は、お忙しい中、まことにありがとうございます。大変勉強になるお話で、いろいろとメモもとらせていただきました。

 私は、日本経済の今後の発展のためには、新しいエネルギー産業を興していくこと、これは大変重要なことだと考えております。そして、電力自由化、発送電分離、そういったこともその手段として必要である。そして、電力はインフラですので、安定的な供給、そしてできるだけ安価にする、こういった点も電力改革の上では見逃してはならないポイントだというふうな認識をしております。

 そこで、質問に入らせていただきますが、先ほど、手塚参考人からも、消費者として料金が上がるのは困る、それから安定的でないと製造業としては困る、一方で、選択肢がふえることは歓迎することであるというようなお話でした。

 そこで、高橋参考人にお伺いしたいんですが、一方で、電力自由化をすると電気料金も上がるというような意見を出されている方もいらっしゃいますが、電力自由化によって、選択肢をふやすことと料金を下げること、この両立は可能なのか。寡占状態になってしまったりですとか、再エネの補助がふえるですとか、送電線への投資がふえてコストがふえるというような意見がありますが、これについて、いかがお考えでしょうか。

高橋参考人 お答えします。

 電気料金についてということで、いろいろな国によって事例が異なるわけですけれども、例えば、よく取り上げられるドイツの事例について申し上げますと、一九九八年に小売全面自由化をされて、家庭用電気料金が二〇〇〇年にかけて二割ほど下がりました。その後、じわじわじわとずっと上がり続けまして、現状では、二〇〇〇年と比べれば二倍ほどになっているという指摘がよくなされるところであります。

 では、どうしてそんなに電気料金が上がったのかという要因を分析してみますと、電気そのものの料金も若干上がってはいるんですけれども、それ以上に税金などの割合が非常にふえている。例えば、消費税、付加価値税がドイツでは二〇%強払っていらっしゃいます。それから、先ほどから出ている再エネの固定価格買い取りの賦課金の割合が電気料金の二三%ぐらいを今占めています。その他、環境税とかいろいろございまして、今、ドイツの一般家庭は、半分以上、五二%ぐらいを税金などに払っている。したがって、商品、電気そのもののコストは四八%分ということです。

 電気そのもののコストもやや上がってはきています。それはやはり、化石燃料のコストが基本的に二〇〇〇年代は世界的に上昇しましたので、今、ドイツでも半分以上が化石だと思いますので、当然、化石燃料のコストが上がれば、これは電気料金にある程度転嫁されるということだと思います。

 したがって、総合的に見ると、先ほどから議論されていますとおり、電力価格というのは、単に自由化したからとか競争をしたから価格が全て決まるというものではなくて、さまざまな要因、原子力のコストの問題だとか、再生可能エネルギーの賦課金の話ですとか、CO2のコストをどう計算するのかとか、そういうさまざまな政策、税制によって電気料金というのは規定されるというのが現実です。これは、世界、自由化した国でもそうなっておりますので、自由化して競争したから一足飛びに電気料金が下がるというわけではないということだと思います。

 では、自由化する意味がないのかと言われれば、全くそうではないと私は思っておりまして、第一には、先ほど先生もおっしゃったとおり、選択肢がふえるということですね。消費者の選択肢がふえるというのは非常に重要な価値だと思っています。

 次に、選択肢がふえるということは、料金メニューなどが多様化をするということです。要するに、電気料金で、単価で考えると、ついつい上がったというような話にすぐなりがちなわけなんですけれども、当然、毎月の電気料金というのは単価掛ける消費量プラス基本料金という額で決まりますので、仮に単価が上がったとしても、使い方を非常にうまくしたとか、節電をしたとか、あるいは、昼間の使用量を減らして夜にふやしただとか、時間帯別の料金制度をうまく使っただとか、そういう消費者の工夫というものが反映される仕組みになるということです。

 ですので、今回、日本も、残念ながら、手塚社長には申しわけないんですけれども、今後五年、十年、電気料金が大幅に下がるのは私はないと思っています。それは、各種のエネルギー政策、エネルギーの状況から見てないだろうということですけれども、消費者がより賢く選ぶということによって、少しでも電気料金を抑えるということがポイントだと思っております。

落合委員 八木参考人にも同じような観点で、電力の事業者側からの意見ということで、電力自由化、特に三段階の電力自由化のこの法案の改正、改革が完了した後に、電力料金についてはどのように見通されているのか、お考えを伺えればと思います。

八木参考人 ありがとうございます。

 電気料金の件につきましても、今高橋様がおっしゃったように、基本的には小売の全面自由化というのは、競争効果が高まることによって電気料金を下げていくというのが、本来、このシステム改革の目的であると思っていますし、そうなるように、いろいろなこれからの制度設計をしっかり組み込んでいくことが大事だと思っています。

 ただ、私ども、実際需給を預かっている立場からいきますと、競争環境の中で需給状況が逼迫しているという状態に今現在なっています。こういう状態が続くと売り手市場になりまして、どうしても売り手市場は高く売るということになりますから、電気料金を下げるという方向性が働かないと思います。

 したがいまして、このシステム改革の目的をしっかりと果たすためには、先ほど私は、三つの課題の一つで電力需給状況の改善というのを申し上げましたが、やはり日本の今の電力需給状況の改善、具体的に申し上げますと、安全が確認された原子力プラントも再稼働しながらバランスのいい電源構成を目指していく、こういう形を早期につくっていく。そういう中で、御指摘のように、電源側の競争力を各事業者が高めるとともに、さらには経営層として各会社が一生懸命最大限の経営効率化努力をする。さらに、お客様にもいろいろと省エネ等のコンサルといいますか、お願いをする。そういうようなことが相まって、ぜひとも電気料金を下げる方向に持っていきたいというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

落合委員 ありがとうございます。

 それでは、今回、電事法の第三弾目の改正案が審議をされているわけですが、発送電分離において、送電線の中立性を担保して公正な競争が行われているか監視する機関が、この法案が通った後に、六カ月以内につくられることになっています。

 システム論として、この監視機関、どうあるべきか。この監視機関のポイントについて、高橋参考人それから橘川参考人にそれぞれのお立場から御意見を伺えればと思います。

高橋参考人 お答えします。

 電力取引監視等委員会のことの質問でした。

 先ほど私が申し上げました電力システム改革専門委員会の報告書にも書かれてありますけれども、専門性と中立性を確保するということが極めて重要だというふうに考えています。諸外国の事例を見ても、自由化と同時にそういう独立した機関をつくるということが一般的であります。競争政策を適切に施行するということの観点からは、例えば政権交代ですとか大臣がかわったりですとか、そういうことによって大きく影響されるのは不適切である、一定のルールに基づいてそれを施行させる、徹底させるということが独立規制機関の考え方なわけでありまして、そういう観点から、諸外国でそういう組織をつくられている。日本で今回初めて電力分野においてそういう機関ができるということは、私も大変望ましいことだと思っております。

 今回、三条機関ではなくて八条機関になったということが一つの帰結なわけです。これについてはさまざまな議論がございます。独立性という観点だけから見ると、確かに三条機関の方が高いということで、私も委員会の場でそのような発言をしたこともございます。

 他方で、日本には日本のいろいろな事情もございまして、なかなか八条機関、三条機関をつくりにくいというような中で、今回、八条機関、八条機関の中でもかなり独立性が高いものをこれから法律でつくられるということだと思っております。今後重要なのは、この機関が適切に機能をすることだと思っております。やはり一番重要なのは人事ということだと思っています。非常勤の方々、五名の委員が選任されると聞いております。さらに専門の事務局ができるということだと思います。

 ドイツの独立規制機関、訪問してヒアリングに行ったこともございますけれども、当初は、やはりドイツの経済省の方々がその機関に移られて仕事を始めたんだけれども、戻ることもできたんだけれども、ほとんど戻らなかった。それ以降、外部の会計士ですとか、弁護士ですとか、電力工学のわかる方とか、そういう専門家を独自にプロパーの職員としてどんどん採用をしていって、規模を二倍ぐらいにしているというふうにも聞いております。経済省の中の組織、そういう意味では日本の八条機関に近い形になるんだと思うんですけれども、経済省の中の組織ではあるけれども、その機関の意思決定は基本的には経済大臣といえど覆せないといったような仕組みになっているというふうにも聞いております。

 各国それぞれ事情がありますので、必ずしも全てドイツと同じようにいくわけではないですし、同じようにする必要もないかもしれませんが、もともとの考え方である、専門家が、かつ中立、独立した立場から適切に競争政策を施行するといったような、内実が担保されるということが重要だと考えております。

橘川参考人 どうもありがとうございます。

 結論から申しますと、非常に機能に期待しております。といいますのは、エネルギー産業で、例えば石油だ天然ガスだとパイプラインを制する者がその産業を制してきたし、ロックフェラーもそうでした、電力でもやはり送電線を押さえる者が産業全体を仕切ることができる、そこのところがきちんと行われているかどうかというのは大事だと思います。したがって、非常に期待いたします。

 今後、私は先ほど発送電分離のときに発電のところを危惧するという話をしましたけれども、もし発電の部門がショートしたりすることになりますと、送電部門から発電部門に働きかけて電力を確保するというような動きにもなりますので、そういう意味で、送電のところが今後の電力の動きを決めていく上で非常に重要なポイントになる。これが、電力会社も多分ビジネスモデルを転換せざるを得ないだろうというふうに先ほど申し上げた根拠になっております。

 以上です。

落合委員 ありがとうございます。

 先ほど高橋参考人から、卸電力取引所の件、少し言及がありましたので、高橋参考人にもう少し詳しく、今の卸電力取引所の取引自体がほとんどないというのはどういう問題点があるのか、そして今後どうあるべきか、お伺いできればと思います。

高橋参考人 お答えします。

 卸電力取引所は、電力についての、そのままですけれども、卸取引をするマーケット、築地市場のようなイメージでいていただければいいと思います。基本的には、発電をしている事業者がそこに入札をする、売りに来る、それに対して小売の事業者ですとかが買いの入札を入れて電気をやりとりするというのが卸電力取引所なわけです。

 残念ながら、現在の、昨年度の約定量を見ますと、日本全体の電力需要に対して一%、日本全体で一〇〇使っている電気のうち一%しか卸電力取引所を通っていない。残りの九九%は相対で取引をされているということです。

 これに対して、例えば最も卸電力取引所が成功していると言われる北欧のノルドプールは、北欧の電力需要に対して八〇%、八割が卸電力取引所を通っている。ドイツとかイギリスの事例を見ても、三〇パーとか四〇パーだとか、それぐらいが一般的な数値ですので、ある程度競争が起きる環境という場合には、電力取引所を通して自由に電気が売れる、あるいは買えるという環境を整える必要があるということです。

 では、日本はどうしてそれほど小さいのかということなんですけれども、昨今、直近について言えば、先ほどから話が出ているとおり、そもそも需給が逼迫しているわけですから、なかなか売り物がないといったような御意見もあるかとは思います。

 ただ、この状況は震災の起きる前から、できたのが二〇〇五年だったと思いますけれども、歴史がまだ十年ぐらいしかないということももちろん影響はしているとは思いますけれども、震災前から非常に約定量が少なかったというのが実態でございます。やはり、ほとんどの電源を持っているのは既存の電力会社であって、経済合理的に考えれば、マーケットに売るよりも直接みずからの顧客に売る、発送電一貫体制のもとで安定供給を担う立場からすると、マーケットを通す必要はないと考えるのが極めて自然な流れだったわけです。

 ですが、そういう状況が続く限りは、小売、いわゆる新規参入者、新電力の立場からすれば、マーケットに電力がおりてこないわけですから、なかなか売り物がない、したがってシェアも伸ばせないといったような状況が続いています。

 既に政府も、そのような状況に鑑み、電力会社に対して、玉出しといいますけれども、要するに卸電力取引所に電気を売るようにといったような、一種自主的な要請をされています。その結果、若干約定量もふえてきているといったような状況にあります。

 ですので、今後は、そういう競争環境を適切に整えていく。そのためにも、先ほど御質問のあった監視機関が適切に、例えば電気が余っているのであれば、当然市場に出した方が経済合理的なわけですから、そういう観点も含めて、競争政策を徹底していく、卸電力取引所の約定量をふやしていくといったような施策をとるということは重要かと思います。

落合委員 ありがとうございます。

 先ほど富田委員から橘川参考人に質問がありました、バックアップ火力の問題ですね。同じ質問を今度は高橋参考人にもしたいと思うんですが、いわゆる再エネが急拡大することに対する危惧であるんだと思います。

 ドイツでは、火力が撤退、その産業自体がなくなってきてしまっているということですが、この現象に対してどのようにお考えになるか、高橋参考人の御意見を伺えればと思います。

高橋参考人 お答えします。

 ドイツでは、再生可能エネルギーの電源の割合が今は二五%ぐらいになっています。新しい数字では二八パーとかという数字もございます。それだけの再エネが入ってきた結果、火力の設備利用率、特にガス火力の設備利用率が非常に下がっているといった現象に対しての今御質問だと思います。

 ただ、まず最初に確認しておきたいのが、再生可能エネルギーを特別に優遇しているから、火力を無理に動かせなくしているということではないということです。

 すなわち、欧州の場合は、市場で電気が取引されるのが主流になっております。再生可能エネルギーは、限界費用が最も低い部類に値する電源ということです。限界費用というのは、単位当たりの発電量に占めるコストということです。

 要するに、太陽光とか風力というのは基本的には燃料費がゼロでありますので、既に発電設備が存在しているとすれば、当然、太陽光とか風力のような限界費用が低い電源をまず動かすべきである、その次に限界費用が低いのは原子力であるから、次に原子力を動かすべき、それで、石炭火力、ガス火力といったような順番で続いていく、これをメリットオーダーと呼ぶわけなんです。

 基本的には限界費用が低い電源から動かしていくから、再生可能エネルギーが優先をされて、結果的に比較的限界費用が高いガス火力などの設備利用率が落ちているということです。したがって、市場の観点だけから見れば、これは極めて経済合理的な選択をしているということです。

 ただし、問題は、再生可能エネルギーには固定価格買い取りという形でげたを履かせていますよね。他方、ガス火力に対しては基本的にはげたを履かせていないわけですから、ガス火力をやっている事業者からすると、これはちょっとかなわぬと。もともとは設備利用率が例えば五〇%ぐらいで動くと想定して建設をしたのに、現状は例えば三〇パーぐらいしか動いていない、何とかしてください、何とかしてくれないならばもう廃炉にしますよといったようなことが、今ドイツで起きている問題なわけです。ですので、まずその基本を御理解いただきたいというのが一つ。

 その上で、では何もしなければいいのかといったら、それはそうではなくて、バックアップ電源という言葉は私は余り好きではないんですけれども、そういう調整運転が多くなりがちな電源に対して、いかに、キロワットアワーではなくて、キロワットの価値に対して支払いを保証するのかということが、今欧州では積極的に、前向きに議論をされている話であります。

 例えば容量市場、キャパシティーマーケットというふうに言われるんですけれども、そういうキロワットの価値に対して価格をつけて、一定の待機している電源に対して保証をするといったような仕組みが、例えばイギリスでは今導入されようとしている。日本の電力システム改革においても、先ほどの報告書の中にはそういう文言も入っております。

 ただ、日本はまだ再エネはほとんど入っていませんから。二〇パーとか入った国で今何とかしなきゃならないという議論が積極的になされていますけれども、まだ二%の段階なので、もちろん先のことを考えて今から準備しておくということは極めて重要ではありますけれども、まず、どれぐらい再生可能エネルギーを入れるのか、その際には、火力に対してこういう影響が出ますよね、では、例えば二〇二〇年ぐらいにはキャパシティーマーケットが必要になるかもしれないよねと、そのような順を追った議論が重要であるというふうに考えております。

落合委員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。お時間ありがとうございました。

江田委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 参考人の皆さんには、大変お忙しい中御出席いただきまして、また、大変示唆に富むお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。

 時間の関係で早速質問に入らせていただきたいと思うんですが、まず、電事連の八木会長にお伺いしたいと思うんです。

 今回の法案の目的の一つが、需要者の、国民のエネルギー選択の自由度の拡大、あるいは料金の最大限の抑制ということで先ほど来お話があるわけですけれども、関西電力としては二度目の値上げ申請ということで、かつ、理由としては、原発が動いていないことによるさまざまなコストアップということだと思うんです。

 先ほど手塚参考人からも大変リアルなお話をいただいたわけですけれども、しかし、若干、私不思議に思うこともありまして、といいますのは、今、電気料金をめぐっては、原発が動いていないからコストが上がって料金が上がる、こういうルートの話はたくさんあるんですけれども、しかし、電気料金が上がる話だけなのか。

 といいますのは、経産省の総合資源エネルギー調査会、フォローさせていただいているんですけれども、その中で電気料金審査専門小委員会、この議論も大変重要だと思っているわけですが、そこに関西電力の方から大変興味深い資料が毎回のように提出されておりまして、それをちょっと御紹介させていただきたいんです。

 大変多いので一部なんですけれども、例えば、関西電力さんが三月十七日に美浜一号、二号と廃炉を決められたということで、それを受けての審査なんですけれども、この廃炉に伴って、今までかかっていた修繕費とか諸経費、補助ボイラーの燃料費だとか、さまざまなそういうものが要らなくなる。

 その表も出されておりまして、例えば、発電が減っていろいろ事業報酬も減るから、それに伴う公租公課も減るとか、あるいは先ほど言った修繕費が減る、あるいは日本原電から買っている電力量も減る、日本原電も一号廃炉しますので。かつ補助ボイラーも減るということで、もちろん解体費などの積み増しというか費用計上も、プラスもあるんですが、全体としてはマイナスが百十八億円、プラスが二十二億円、引いて九十六億円が一応今回の廃炉分に伴ういわゆるランニングコストの減少という部分として紹介されていると思うんです。

 廃炉全体としてどういうコストがかかるかというのは大変大きな問題ですし、これは今、会計制度も含めて議論のまさに途上で、それはそれで私も大変重要な問題だと思うんですが、今御紹介したのは、それとは別に、要するに、運転を停止したことによって今までかかっていたコストが減るということなんですね。

 さらに興味深いのは、関西電力さんが三月二十四日に提出されている資料なんですけれども、この中で、ではこの減った分どうするんだという基本的な考え方も示されておりまして、それによりますと、こう書かれているんですね。「運転停止によって生じる費用の減少分については、お客さまの電気料金のご負担の軽減をはかるべく、活用してまいりたい」と。ですから、とまったことによって減ったコストの分は電気料金を軽減する方に活用してまいりたいというふうに関西電力としては小委員会で説明をされているということで、大変興味深かったわけであります。

 そこで、会長にお聞きしたいんですけれども、二点お聞きしたいということになると思うんです。

 一つは、要するに、原発が動かないからコストが上がって電気料金が上がる、こういうルートの話ばかり今一般的には、マスコミ的にもやられていると思うんです。しかし、実際には、とめた、停止した、廃炉にしたということによって要らなくなる費用もあって、それを関西電力さんとしては電気料金の軽減に活用してまいりたいと。やはり、こういう形の情報発信というのが、個々の会社だけじゃなく、電事連として大いにイニシアチブを発揮する必要があるのではないかというのが一点。

 そしてもう一点、今紹介させていただいたのはあくまで関電美浜一号、二号と原電にかかわる話だけなので、やはりここは、ぜひ電事連として、全体として日本の原発は今とまっている、ゼロだ、それがランニングコストでという、今関電の美浜で紹介したような、とまったことによる電気料金が下がる可能性ということについても、同様の試算をお示しいただけないかということなんですが、いかがでしょうか。

八木参考人 八木でございます。

 まず、電気料金の再値上げ、関西電力として、お客様に再度の御負担をおかけしておりますことを大変申しわけなく思っておりまして、おわびを申し上げたいと思います。

 それで、今御指摘の点でございますけれども、今回の料金の値上げの大きなポイントは、原子力発電所が停止していることによる火力燃料費の増加でありまして、この増加部分が経営効率化をしても吸収できないということで値上げをさせていただいているわけであります。

 そういう意味では、御指摘の、原子力発電所が停止、要は廃止をすればその部分の修繕費がなくなることは事実でございます、短期として。ただし、それでもって電気料金の値上げが回避できる問題ではございませんで、トータルとして電気料金の値上げを判断する上では、やはり今の原子力が停止していることによる燃料費の代替が大きなウエートを占めているということでございます。

 それから、基本的には、御指摘のように、それじゃ、全ての原子力発電所を廃炉にしたらどうかということになるかもしれませんが、具体的に……(藤野委員「廃炉までは言っていません、試算で」と呼ぶ)そういう試算、具体的な試算は実は今やっておりません。稼働を前提と今しているところでございます。

 御指摘のように、原子力発電所を全て停止したとして、その修繕費、やめるということは、恐らく短期的にはマイナスの方向に働くと思うんですが、長期的に見ると、供給力をどう確保していくかという中で、今、火力の発電所は、御承知のように、定期点検も、ある意味では必要な点検を飛ばして、ぎりぎりの状態、過酷な状態でやっておりますので、こうしたことを回避するための電源をきちっと確保する、あるいは将来的な火力燃料費が今の状態で続いていくというようなことを考えますと、必ずしも廃止することが電気料金の低減につながるとは、私はむしろ、原子力発電所をきちっと、安全を確認されたプラントを運転して火力燃料費を抑える方がトータルとして燃料費は下がるというふうに思っております。

 以上でございます。

藤野委員 お話の、トータルとして見るとどうなるかとか、あるいは長期として見るとどうなるかというのは、私も御指摘のとおりだと思うんです。

 ただ、要は、私が御質問した趣旨というのは、そういう情報が国民にないということなんですね。こうした委員会をフォローしていれば、多少は見えるかもしれない。しかし、圧倒的な今のメディアの報道としては、コストが上がって料金が上がる、こればっかりですから、やはりそこは電事連として、いやいや、こういう情報もあるんだと。それは、トータルとして、いや、今の現実を見れば火力の増加をまだ賄えないというのは、見て初めて、ああそうだなというふうに国民は納得するわけで、やはりこうした情報開示ということを、ぜひイニシアチブをお願いしたいというふうに思っております。

 そして、もう一点会長にお聞きしたいんですが、私、予算委員会で若狭の原発の集中立地の問題を質問させていただきまして、そのときに、規制委員会としては、集中立地の問題というのは自分たちの委員会では勝手に決められないとか、あるいは、新規の場合は集中立地についての考えを示すことはあるかもしれないけれども、既存については、これはあるものを審査するんだというような、率直に言って、いかがなものかなというお答えだったんです。

 この点に関して、電事連から昨年、いわゆる原子力リスク研究センターというのを設立されたというふうに伺っております。やはり、原子力にかかわるリスク、さらに高いレベルで確保していこうという趣旨だというふうに伺っているんですけれども、国会事故調の調査報告を私も読ませていただいているんですが、この集中立地の問題も指摘をされております。

 この中では、いわゆる「同時多発事象に対する備え」という一節が設けられて、福島の事故で明らかになった集中立地の問題というのは、「この特徴に関する潜在的な問題点について十分に考察する必要がある。」というふうに指摘されております。国会事故調は潜在的な問題点と言っているんですが、やはり今の福島の現実を見れば、この問題が顕在化してからでは遅いというふうに思うんですね。

 ですから、この研究センターの役割というのは非常に重要だというふうに思うんですけれども、今、この原子力リスク研究センターで、原発の集中立地の問題、国会事故調が指摘しているような潜在的リスクの問題をどのように研究されているんでしょうか。教えていただければと思います。

八木参考人 まず、集中立地の件でございますが、現在は、福島事故を踏まえまして新しい規制基準というものができ上がっておりまして、重大事故への対応について、電力各社が対応して安全対策をとっているわけでございますが、この新規制基準の中での考え方としては、同一サイトの中の運転中の原子炉が同時に発災をしても大丈夫な設備、安全対策の設備、手順、体制等、こういうのを検討しているところでございます。

 したがいまして、仮に一つの集中立地したサイト全体の原子炉が同時に炉心損傷に至る事態に至ったとしても、重大事故等の対処設備を対策することでそうした影響を回避できる、こういう考え方のもとに今、安全対策をやっております。

 ただ、御指摘のように、そうしたリスクというのはできるだけ小さくしていく必要があると思います。そういう意味では、御指摘のように、原子力リスク研究センターというのは、原子力に潜むリスクを解析し、そしてまた、それをできるだけ除去、低減していく取り組みをしていく機関でありまして、今御指摘の集中立地の問題につきましては、いわゆる中長期的な研究課題ということで、今後対象にしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

藤野委員 ありがとうございます。ぜひ、中長期的課題として緊急に検討していただければと思っております。

 規制委員会の点でいいますと、国会事故調の指摘というのは、同一サイトの中での複数プラントではないんだという指摘なんですね。複数プラントの中での同時事象ということですので、そこはやはりちょっと違う問題として、ぜひ多角的に検討していただければというふうに思います。

 そして、大変時間が押していて恐縮なんですけれども、残り御質問させていただきたいんですが、まず、高橋参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど規制機関のお話がありました。

 ちょっと時間の関係で、二つあわせて質問させていただきたいんですが、人事が重要だというお話でしたけれども、先日、当委員会でもそのやりとりもありまして、結局、今回の八条委員会でいうと、委員長、五人の委員は独立性が高いんだけれども、いわゆる事務方というのは経産省の大臣が任命するんだ、こういう人事だというやりとりがありまして、自然体でそれが移行していって、独立性がいつの間にかつくのかもしれませんけれども、こういう仕組みだと大変やはり不安だというふうに思うんですが、それについて、欧米等の関係でどのように思われるかというのが一点。

 あと、いただいた資料の中で、週刊東洋経済の中で、再エネ導入に関連しまして、揚水あるいは地域間送電網といった既存設備が有効利用されていないという御指摘をいただいているんですが、この点についてのお話、重ねてになるかもしれませんけれども、教えていただければと思います。

高橋参考人 お答えします。

 まず、規制機関、事務方のあり方ということだと思います。

 先ほど、ドイツの事例も具体的にお話をしたと思います。当然、当初は、全員ごそっと、例えば百人とか五十人を雇うというのはなかなか難しいでしょうから、やはり既存の資源エネルギー庁の方ですとか経済産業省の方々がメーンになる、これはやむを得ないと思っています。その後がやはり重要でありまして、先ほど申しましたとおり、役所の外から適切な専門性のある人材を雇うということが一つ重要なポイントになります。

 もう一つが、役所の中にもいろいろな役所がございまして、例えば、公正取引委員会という役所のやっていらっしゃる所掌事務というのは、当然、こちらの電力の監視委員会の所掌ともかなり重なる部分もございます。もちろん、意思疎通をしっかりされるといったようなことも言われていますけれども、当然、人事交流という面からも、そういう、ある意味プロ、専門家がこちらの方に来るとか、あるいは、各省庁の中にも似たような審議会といいますか監視機関のようなもの、例えば総務省の電気通信についてもそういうものがあるといったようなこともございますので、政府全体として、そういう専門性のある人材を、ここの機関、委員会の方の事務局にしっかりと配置をして専門性を確保していく、専門性を確保すると同時に、独立性を確保していく。そこはさまざまな知恵があると思いますので、私も期待をしているところでございます。

 二つ目の話ですけれども、東洋経済というのは、再生可能エネルギーの普及施策のことについて私が書いたエッセーなわけなんですけれども、先ほど、送電網の話を一つ申し上げました。

 日本は、確かに細いところもあるんですけれども、既存の送電網はそこそこはございます。欧州の事例と比べても、例えば、スペインといったような国は半島の国ですので、フランスとの間はピレネー山脈という山があって、たしか百万キロワットぐらいの細い国際送電網でしかつながっていない。だから、基本的には国内の送電網であれだけの二十何%という再生可能エネルギーを賄っているわけです。

 ですので、まずは、日本国内の中で既存の送電網を使う。ただ、それは、先ほど申し上げたように、ルールがなかなか再エネの変動性に適合的にできていないといったような状況もございますので、これについては、今般設立された広域機関の方で指針を新たにつくり直されるというふうに聞いておりますので、ここにも期待をしているところです。

 揚水発電についても同様でございまして、日本は、世界最大級の二十五ギガワットという揚水発電、これはアメリカとほぼ同じで世界最大の容量の揚水発電を持っているんですけれども、その設備利用率を見ると、三%ぐらいと非常に低いんですね。例えば、アメリカとかドイツとかイギリスの事例は、一〇%を超えているぐらいの設備利用率です。

 ですので、やはりこれは既存の設備投資が終わった天然の蓄電池でありますので、もちろんそのコストをどうやりとりするのかという問題は残っておりますけれども、なるべく既存の設備を積極的に使うことによって、追加的な投資を抑えつつ、変動電源を入れていくということが極めて重要だと思っております。

藤野委員 ありがとうございます。

 橘川参考人にお聞きしたいんですけれども、私、参考人が、「希望の福井、福井の希望」というプロジェクトの中で、福井の現地に足を運ばれて、いわゆる商工会青年部の方々とお話しされているというのを大変興味深く聞いているんです。私も北陸信越ブロックの者なので、大飯の若手の漁業の方とか小浜の商工会の方とも懇談したんですが、参考人が話して感じた可能性というんですか、いわゆる原発とは共生するけれども依存はしないというキーワードだとか、そういう参考人が感じられた方向性の可能性と、そしてそれを政治家はどのように応援すべきかという点についてお聞かせいただければと思います。

橘川参考人 どうもありがとうございます。

 私は青年部の方たちとお話ししまして、まさに言われた点なんですが、彼らは年が若いので、生まれたときには大飯の原発も高浜の原発も動いていました。よって、原発は与件なんですね。そういう意味で、原子力とともに生きるということは最初から決まっているような形なんですが、一方で、自分の町を原発の町だと言われたくない。もちろん、原子力の恩恵をたくさん受けていることは確かです。でも、一方で一番危険にさらされていることも確かで、その最前線にいる人たちがどう考えているかということが、やはり東京目線や大阪目線ではなくて、原子力政策にあってしかるべきだと思います。

 私自身は、そういうことを考えますと、もし原発がなくてもやっていけるような町というオプションを考えることが重要で、原発というオプションを選ぶかもしれない、だけれども、ない町というオプションも考える道筋が重要だと思っています。

 三つあると思っていまして、一つは、原発というのは発電設備は危険ですが、送変電設備は立派なわけですから、それを使って火力にシフトしていく。ただし、そうすると雇用が減っちゃいますねと必ず言われますけれども、廃炉のビジネスというのは相当の雇用を生みます。ですから、廃炉ビジネスと結びつける。そしてもう一つは、先ほど言った話なんですけれども、オンサイトの中間貯蔵、空冷式の中間貯蔵で使用済み核燃料を保管した場合に、消費地から保管料を払っていただく、こういう仕組み。

 この三点セットでいくと、原発の出口戦略というものも描くことができて、そういうオプションと原発をずっと使うというオプションと両方のことを考えながら住民が選択していくというような、そういう前向きな議論がこれからあってしかるべきなのではないか、こういうふうに思います。

藤野委員 ありがとうございます。大変示唆に富んだ御指摘だと思います。

 最後に手塚社長にもお聞きしたいんですけれども、先ほどお話で、小さな変電施設、会社にとっては大変重要な変電施設だけれども、なかなかそれを電力会社の方でというお話、大企業病というお言葉を使われたかと思うんですが、今回の法改正でこれがどういうふうに変わるといいますか、改善していくというふうに認識されているか、あるいは期待をされているか、ここのところをお聞かせいただきたいと思います。

手塚参考人 やはり、自由化されるということで企業の意識が変わるのではないかと思います。そこが一番大事なところで、そのことによって、先ほどお話しいたしましたが、需要家は誰なのかというところをもう一度再確認していただくような企業姿勢になっていただければ、あらゆることが変わってくるのではないかと思っております。

藤野委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

江田委員長 次に、野間健君。

野間委員 無所属の野間健と申します。

 きょうは、四人の参考人の皆様に、お忙しい中、大変貴重な、示唆に富む御意見を頂戴しまして、本当にありがとうございます。

 まず、八木参考人に御質問させていただきます。

 きょうのお話の中にもありましたけれども、原子力の、三・一一以降の環境の中で、国策民営の新しいあり方をというお話がありました。

 私自身も、鹿児島県の薩摩川内市、九州電力の川内原発の立地しているところの住民の一人であります。そうした立場から、自由化がどんどん進んでいくと、きょうお話にもありましたけれども、従来であれば、立地から含めれば六十年とか八十年とか長いスパンで投資が回収できた原子力の事業自体が、自由化のある意味で嵐の中で、きょう富田委員からもお話がありましたけれども、例えば、関西電力さんにしても、首都圏で新たな発電所をつくる、あるいは九州電力にしても、千葉で新しい石炭火力をやるとか、もうそちらに、当面の収益を上げるためのこととして、どんどん新しい手を打ってやっていかなければならないという事態に来るわけです。

 一方で、原子力のある町、原発のある町としては、原子力事業、産業は、誰も投資をしない、誰も今後取り組まない産業として取り残されてしまうのではないかと非常に不安に思っているわけであります。

 これは原発のいい悪いとか好き嫌いということを抜きにして、今後、四十年あるいは六十年以降の廃炉の問題も含めて、そのときにそれに携わる人材ですとか技術ですとか企業がもうなくなってしまっているということになるのは、本当にそれは立地の住民としては大変な事態になるわけであります。

 その辺のことも含めて新たな国策民営のあり方を、自由化に先駆けて方向性を示すべきだというお話があったんですけれども、これをもうちょっと具体的に、先ほどちょっと、無限責任とかそういう賠償の問題、あるいはバックエンドの問題も出ましたけれども、事業の存続という意味でどういう具体的な仕組みが考えられるか。ただ単に政府にこうだということではなくて、事業者の立場として、こういうことをやっていけば存続が可能なんだということについて、ちょっと御意見をいただければと思います。

八木参考人 ありがとうございます。

 原子力、基本的に私ども、これまでも、国の政策のもと、民間が自主的に、創造性を発揮して実施してまいりました。

 基本的には、今後の自由化環境の中にありましても、私どもとしては、これまで原子力を立地していただいた地域の皆様の思いもしっかりと受けとめ、今後ともその地域の皆様と共存共栄を図るという精神の中で、私どもはやはり、民間が自主的にこの事業をやっていきたいという強い思いを持ってございます。そういう中でこうした事業環境の変化が起こったということで、そういう意味で、新しい国策民営のあり方についていろいろと御検討をお願いしたいというようなことを今申し上げています。

 具体的なことでございますが、具体的なことは、これから国の方々と一緒になって議論をさせていただきたいと思っています。

 一つは、原子燃料サイクル事業、この事業自体は大変巨額な費用も要りますし、超長期の事業でございます。そしてまた、今までの基本的な考え方は、我々民間が共同でバックエンドの事業をやってきたわけですけれども、この事業をしっかりとやっていこう、逆に言うと、これをしっかりと完遂しないことには原子力の存在そのものも危ないというふうに私は思っております。

 したがいまして、これをしっかり安定したスキームでやっていく意味では、従来の我々民間が主体でやる中において、国の方から少し関与していただいて、例えば、少し全体的な枠組みを整理していただくとか、あるいは、実際のバックエンドの事業そのものが進みやすい環境を整備していただきたい。具体的なことは、今後いろいろと議論をさせていただきたいと思っています。

 それから、もう一点は、原子力の損害賠償制度。これは先生御指摘のように、今の原賠制度というのは原子力事業者に対して無限責任が課せられておりまして、世界に例のない制度になっているということでございます。

 そういう意味では、そういう制度の見直し、あるいは、現在、相互扶助の考え方になっているんですけれども、例えば、先ほどの原子力の廃止とかそういうようなこと、あるいは、極端に言ったら、原子炉から脱退するといいますか、そういう事業者が出てくると、全体で必要な費用をどう割るかという費用負担のあり方というのも変わってくるんじゃないかと思っています。

 したがいまして、具体的な、賠償の相互扶助の費用負担のあり方をどうするか、あるいはもう少し言いますと、事業者と国の負担の問題、無限責任の問題をどう取り扱うかとか、こういったことを今後いろいろと我々も一緒になって検討させていただきたいというふうに思っております。

 ぜひ、国にも積極的な御検討をお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

野間委員 海外では、イギリスですと、新しい原発を今後つくるに当たって、三十五年間の固定価格買い取り制度というような話もあるようでありますので、さまざまなことが考えられるかと思います。

 もう一点、現在、原発の再稼働に当たって、いろいろな避難計画を各自治体が一生懸命策定しているわけです。自治体が主体としてやっておりますけれども、事業者の皆さんが原発の中での安全性、避難等についてはやっておられるんですが、周辺自治体に対する避難計画への関与といいますか、なかなか姿が見えないということをよく言われるんです。そのあたり、ちょっとこれは関連する質問ですけれども、いかがでしょうか。

八木参考人 避難計画の件でございますが、避難計画を含める地域の防災計画は基本的には自治体の方が策定されるというふうに私どもは理解しておりまして、現在、その具体化に向けまして、国の方から、地域原子力防災協議会というのが設立されて、国と自治体、ここに電力事業者がオブザーバーという形で参加しているところでございます。

 私ども電気事業者といたしましては、当然のことながら、まずはそういったことにならないようにするのに最善の安全対策をするのが務めでございますが、万が一の場合のこういう避難に対して、防災計画にやはり積極的に御協力をしていくということが大事だと思っています。

 今、具体的には、我々ができることということで御相談しておりますのは、例えば、避難する場合の皆様を輸送する輸送手段の確保という面で、私ども事業者で、例えば福祉車両の手配とか、バス、場合によっては船舶、ヘリ、こういったものを手配する、こういう点と、それから、御避難される方がその地域から移られるときに、当然そこで検査を行いますけれども、いわゆる放射能のスクリーニング検査というのが必要でございます。こうしたところについて我々が御協力させていただくというふうなことで、今御相談をさせていただいているところでございます。

 私どもといたしましては、いずれにしても、今後そういった中で、我々にもっと何かできることがないか、積極的な御支援策について協力してまいりたいというふうに思っているところでございます。

野間委員 ありがとうございました。

 手塚参考人にお聞きしたいんです。

 先ほど、鋳造、鍛造業は直近三年で三十七社も転廃業、倒産、非常に身につまされるお話をお聞きしたんですけれども、鋳造や鍛造でつくられる製品、素形材ということで、一番川上の、いろいろなものづくりの原点になるということで、倒産したり廃業したり、そういう技術を持った会社がなくなってしまう。

 そういった製品は、日本のメーカーというのは、どこから、海外からやはり買うようになっているということなんでしょうか。コストがもっと安いものを海外から輸入しているというふうに、置きかわってしまっているんでしょうか。ちょっとその辺をお聞かせください。

手塚参考人 そのとおりでございます。

 また、電気代が高いということで、メーカーの方が海外に移転する、それに伴い、部品をつくっておりましたサポーティングインダストリーもともに海外へ出ていってしまうというような空洞化がたびたび起こっておりました。

 部品については、よく今も弊社でも、この部品を海外でつくるということで技術的な指導をしてほしいというようなことを言われますが、とんでもないことで、技術は一度お教えしたら、その安いものを海外から転注されてしまうという危機にいつもさらされています。

 よって、一〇〇%価格をお客様にお願いし切れない、もし君のところが電気代が上がったからといって価格が上がるなら、よそに行くよということは、いつも脅かされている状況であります。

野間委員 本当にその意味でも、ものづくりの日本の技術力を守る意味で、やはり先ほどのドイツの減免制度など、もっともっと我が国でも取り上げていかなきゃならないということがよくわかりました。ありがとうございました。

 続いて、橘川先生にお尋ねしたいんです。

 先ほど、ポストFITこそがこれから一番大事である、げたを履かせない、きちっと勝負ができる価格での電力というお話なんですけれども、その中で、送電線を必要としない送電方式というお話もありました。あるいは、廃炉になった送電設備の活用というお話。

 もう少し何か具体的に、先ほど水素の話もちょこっと出ましたけれども、お話しいただけるとありがたいんですけれども、お願いいたします。

橘川参考人 送電線問題に関しては三つの点が大事だと思っています。

 一つは、廃炉ですね。今の四十年基準どおりいきますと、四十八基の原発のうち三十基が二〇三〇年までに廃炉になります。全部が廃炉になるかどうかはわかりませんけれども、相当送電線が余ってくるわけでありまして、少なくとも、そういうものを使った場合に風力や太陽光がどれくらい乗るのかという具体的な試算みたいなものがもうちょっと行われてもいいんじゃないかな、それが一点目です。

 二点目は、使わないという話は、現状でも電力の大体三%から五%が発電所から需要家に行くところで消えてなくなっちゃったりしているわけです。それを地元でつくると送電線自体が要らないわけでありまして、自家発ですとかコジェネだとかを入れることによって、可能な限りロスを減らしていくというのも大事です。

 大きく言うと、水素あたりのうまい使い方なんですけれども、どうしても風力は余ってきちゃいますから、それをどうやって、水素を使って、水素でためるだとか水素を燃料として使うだとかという仕組み、これはヨーロッパあたりで始まっています。水素に関して言うと、燃料電池は日本は先進国ですけれども、水素インフラに関しては後進国だと思いますので、学ぶべきことはたくさんあるんじゃないかなと思います。

 でも、やはり一番決定的なのは、電力ないしガスとかというようなエネルギーに携わっている人たちが、自分たちはシステムインテグレーターなんだ、ネットワークの会社なんだというふうに思ってビジネスモデルを立てるかどうか。今の事業者の方がそれをやらなければ、ほかの産業をやっている人がそこに入ってくるのではないかと思います。そのビジネスモデルの転換こそが一番大事なのではないか、こういうふうに思います。

野間委員 先ほどちょっとガスのこともお触れになったんですけれども、これは、その因果関係というのはよくわかりませんけれども、ヨーロッパでガスが自由化になって、アメリカもそうですけれども、爆発事故が二〇一〇年以降、アメリカとかフランスとかでもかなり起きている。自由化との因果関係というのはわかりませんけれども、この辺は非常に保安の問題で危惧されるところですが、どうなんでしょうか、やはり自由化によって何か緩みとかいうことがあったんでしょうか。お願いします。

橘川参考人 申しわけありません、専門家ではないので、それに対する確たる答えはないんですが、私は石油の方の審議会の座長をさせてもらっています。

 最近コンビナートの事故が多いんですが、やはり、かなり人の要因が多いと思います。ほとんどの事故が、点検から立ち上がるときとか、平時じゃない操作のところで起きていまして、そのときに、やはり年期の入った熟練の方の知見がうまくつながっていないとかという要因が多いと思いますので、多分ガスの問題でもそういうところに気をつけた方がいいのではないか、こういうふうに思います。

野間委員 ありがとうございました。

 高橋先生に伺いたいんですけれども、今回の電力システム改革、総合エネルギー企業をつくろう、また海外にも出ていこうということが一つの目標にもなっておりますけれども、先ほどからお話がありましたように、電力料金はともかくとして、やはりネットワークをつくった者が勝つと。

 きょうも日経新聞で、例えば東京電力とソフトバンクが組んで、通信と電力の販売を一緒にやっていこうというような話も出ておりましたけれども、そういう一つのモデルができると、海外にも当然、アジア中心に売り込みができてくると思いますが、逆に言いますと、また海外から日本にそういうのも入ってくるということも当然なってくると思うんですね。

 エネルギーのセキュリティー、外資規制はあるんですけれども、この辺、海外の実例といいますか、どうなんでしょうか、ヨーロッパですと各国入り乱れていますし、外国の企業だからエネルギーとかそういうものを扱っちゃいけないというわけでもないように見受けますけれども、今後、日本が外にどんどん出ていこうとするということであると、外からも入ってくる時代になってくると思いますけれども、その辺の見解をいただきたいと思います。

高橋参考人 お答えします。

 自由化、競争をするわけですから、当然、さまざまな合従連衡が起きるだろう、MアンドAも起きるだろう。その際に、国内企業は特別扱いするけれども海外企業は排除するというのは、これは考え方としてはおかしいわけでありまして、むしろ、海外企業の優秀な技術ですとか優秀なノウハウだとかをどんどん国内にも持ってきてもらうといったような観点から、消費者のメリットになるといったようなこともあると思いますので、個人的には、日本企業がもちろん海外に出ていくというのも大賛成ですし、海外企業が日本にも入ってくるというのも賛成です。

 実際、欧州では、そもそも欧州域内は、もう完全に経済自体が電力に限らず自由ということになっていますので、例えば、イギリスの大手五社ですか、電力会社五社のうち四社はもともとイギリス以外の国籍の会社がやっているとか、ドイツにも、スウェーデンの電力会社がドイツの四大電力会社の一角を占めているとか、そういうことが普通に起きております。

 では、エネルギーセキュリティー上問題がないのかということなわけなんですけれども、一つ考えられるのは、先ほどから、ネットワーク、ネットワークと。ネットワークというのは、今後も独占でありまして、極めて公益性が高い分野でございますので、ちょっと欧州のどの国だったかというのは覚えていませんけれども、送電事業に対しては、そういう外資規制的なものを設けているという国があったというふうに記憶をしております。

 日本でそれをすべきかどうかというのは議論が分かれるところかもしれませんが、そういう、完全に競争に開放する、競争分野にする発電と小売といったようなものと、他方、今後も法定独占で続ける送電事業、ネットワーク事業といったものを峻別して考えるというのは一つの考え方かと思います。

野間委員 貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 終わります。

八木参考人 済みません。

 先ほどの野間先生の御質問の中で、私、原賠制度が、日本の無限責任というのが世界に例がないと発言いたしましたが、正しくは世界に例が少ないということで、ちょっと修正をさせていただきます。

 申しわけございませんでした。

江田委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

江田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、本案審査のため、参考人として、一般社団法人日本ガス協会会長・一般社団法人日本熱供給事業協会会長尾崎裕君、東京大学社会科学研究所教授松村敏弘君、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問杉本まさ子君、日本生活協同組合連合会会長浅田克己君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず尾崎参考人にお願いいたします。

尾崎参考人 どうもありがとうございます。日本熱供給事業協会及び日本ガス協会の尾崎でございます。

 本日は、説明の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。また、平素より、私どもの事業運営について御協力、御理解を賜り、厚く御礼を申し上げます。

 本日は、熱供給及びガスのシステム改革について意見を述べさせていただきます。

 お手元にお配りしております資料に沿って御説明を申し上げます。

 資料の右下にページが打ってありますが、その資料の三ページをごらんください。まず、熱供給事業について申し上げます。

 熱供給事業とは、一カ所で水を加熱または冷却し、温水、冷水、蒸気として、導管を通じて複数の建物に供給する事業であります。まとめて製造、供給するため、省エネ、省スペース等のメリットがあります。

 次に、四ページをごらんください。

 熱供給事業は全国各地で行われており、現在七十六社、百三十七地区で供給されております。地区別では、関東、近畿、中部、特に、東京、大阪、名古屋等の需要密度の高い地区に集積しております。供給面積は国土の〇・〇一%、事業者規模は平均で資本金八億円、従業員十七人と小さく、周辺エリア一帯に供給するというよりは、地点型のビジネスと言えると思います。

 事業主体としては、ガス、電力などのエネルギー事業者や、不動産会社、鉄道会社、自治体などが参画しております。原燃料の多くは都市ガス、電力ですが、清掃工場の廃熱や河川水、コージェネレーションの廃熱など、未利用エネルギーも一三%活用されています。

 次に、五ページをごらんください。

 五ページは、熱供給導入の効用について記載をしております。

 個別熱源システムと比較して、約一〇%の省エネや省CO2に貢献します。未利用エネルギーを活用できれば、その効果は倍増いたします。また、お客様先の熱源機が不要なため、省スペースや景観の向上にも寄与いたします。さらに、地域防災への貢献が可能なサイトもございます。

 次に、六ページをごらんください。

 このページでは、改正法案に対する意見を述べさせていただきます。

 まず、今回の法改正については賛同いたします。また、事業者としては、引き続き安定的なサービス提供に努める所存でございます。加えて、多様なサービスの提供を通じて、一層の顧客サービス向上を目指してまいります。

 一方、さらなる熱供給事業の推進政策の追加的な措置、例えば、各地の都市開発における熱供給を推奨する制度などを期待しております。

 このような事業者の努力と推進政策等の御支援により、熱供給事業のさらなる発展を通じて、省エネ、省CO2やレジリエンスに配慮したまちづくりへの貢献など、社会的要請にもしっかりとお応えしてまいりたいと存じます。

 熱供給事業については以上でございます。

 続きまして、都市ガス事業について述べさせていただきます。

 資料の八ページをごらんください。

 まずは、都市ガス事業の概要から説明いたします。法案審議に当たっては、都市ガス固有の状況を御理解いただきたく存じますので、他のエネルギーとも比較しながら説明をさせていただきます。

 まず、都市ガス事業とは、導管によりガスを供給する事業であります。したがって、需要が多く、導管の利用効率が高い都市部から普及が進みました。左の地図の着色部分が都市ガスの供給区域ですが、その面積は国土の六%弱にしかすぎません。

 お客様件数は約二千九百万件であります。ボンベでガスを供給するLPガスよりやや多く、電力の半分程度のお客様の規模でございます。また、電力会社は国内に十社ですが、都市ガスは二百六社存在します。全国のガス販売量の四分の三を大手四社が占めており、ほとんどのガス事業者は中小規模の事業者です。

 続いて、九ページをごらんください。

 このページの左の図は、主要な都市ガス導管の整備状況を示しております。

 ガス事業では、原料の大半を海外のLNGに依存しています。したがって、ガス導管は、海岸部のLNG受け入れ基地を起点に、需要の拡大に応じて延伸されてまいりました。

 日本の場合、大都市と大都市の間は需要密度が低く、かつ導管コストも高額となりますため、必ずしも導管整備が進んでおりません。都市間を結ぶ導管網を充実させるには、導管整備とガス需要の拡大を一体的に進めることが不可欠と思っております。

 次に、十ページをごらんください。

 ここでは、都市ガスの利用拡大の歴史を説明いたします。

 百四十年前、横浜のガス灯から始まったガス事業は、電気や石油、LPガスとの激しい競争の中で、照明から厨房、給湯、暖房へと、また、家庭用から商業用、工業用へと用途を拡大してまいりました。

 特に、一九七〇年代以降は、天然ガスへの転換とともに、ガス事業者が主体となって機器の開発や需要の開拓を進めてまいりました。ボイラーや空調、天然ガス自動車、コージェネレーションなどへの用途が広がり、工業用を中心に販売量も大幅に増加しました。

 次に、十一ページをごらんください。

 このページは、都市ガスのエネルギーとしての特徴を記載しております。主原料である天然ガスは、安定供給と安全性、経済効率性、環境適合性の全てにすぐれ、いわゆる三EプラスSをバランスよく実現できるエネルギーであると考えております。

 次に、十二ページをごらんください。

 ここでは、私どもが二〇一一年に公表した二〇三〇年ビジョンを記載しております。電気、熱、輸送など、天然ガスはまだまだ普及拡大の可能性があり、三EプラスSの実現にも大いに寄与できると考えています。

 次に、十三ページをごらんください。

 特に、コージェネレーションは、発電と廃熱利用を同時に行い、省エネルギー性の高いシステムであります。先ほどの私どものビジョンでは、年間電力需要量の一五%をコージェネレーション等で賄うことが可能であり、電力需給安定やCO2削減等に大いに貢献できると考えております。

 引き続き、十四ページをごらんください。

 ここからは、競争状況について説明をいたします。

 ガス事業は、電力に先んじて、二十年前から段階的に自由化を行ってまいりました。現在では、年間使用量十万立方メートル以上、販売量ベースで六割のお客様が自由化されています。

 次に、十五ページをごらんください。

 このグラフは、都市ガス市場における新規参入の状況を示しています。青色が都市ガスの新規参入者のシェアですが、現在、一二%に達しています。新規参入者のうち、特に電力会社などは、LNGや基地を保有しているためガス事業への参入が比較的容易で、強力なライバルでもあります。

 十六ページをごらんください。

 先ほどは都市ガス同士の競争でしたが、このページでは電気との競争を示しています。右のグラフのとおり、都市ガスは、他エネルギーとの代替性が高く競争も激しいのですが、最近は電気との競争が顕著であります。

 オール電化のフローを示す電化率は、全国平均で二五%。すなわち、新設住宅の四分の一がオール電化です。特に、北陸、中国、四国エリアの電化率が高く、都市ガス普及の脅威となっているところであります。

 引き続き、十七ページをごらんください。

 ここでは、都市ガスの保安制度を説明します。

 日本では、ガス事業者がお客様資産であるガス管や消費機器まで保安責任を負っており、欧米に比べて高い保安水準を保っています。現在は、お客様設備の保安を担う小売部門と、ガス導管や緊急時の保安を担う導管部門が一体となって保安に当たっています。

 全面自由化後も保安水準を維持するには、小売事業者と導管事業者の密接な連携が重要です。日ごろから情報連携、共同訓練などを通じ、切れ目のない保安体制を維持することが望ましいと考えております。

 次いで、十八ページをごらんください。

 災害時においては、両者の一体的な連携が特に重要です。大規模な地震が起こると、ガス会社の社員は近隣の拠点に出社しますが、休日、夜間や交通が麻痺した場合など、必ずしもルールどおりに態勢が構築できるとは限りません。まずは、集まった社員で全てに対応せざるを得ない、そういう状況がしばしば起こります。

 その際、小売、導管、本社スタッフなどが、本来の仕事とはかかわりなく、経験と知識を生かして臨機応変に対応いたします。このとき、導管部門での保安経験のある社員が特に力を発揮します。法的分離により人事異動や兼職に過剰に制限がかかると、経験者の適切な配置が難しくなりますので、十分配慮いただきたいと思います。

 次に、十九ページをごらんください。

 十九ページは、総合エネルギー企業への取り組みについて記載しています。

 都市ガス事業者は、従来の都市ガス供給に加え、エネルギーマネジメントサービスや、エネルギーの融通、制御を行うスマートコミュニティーなど、熱と電気の最適なソリューションへと事業フィールドを拡大していきます。

 全面自由化後は、さらに電力事業への参入や生活サービスなどを通じて地域に根差した総合エネルギー企業へと進化してまいります。

 次のページからは、法案について私どもの考え方を記載しています。

 まず、小売全面自由化については、積極的に対応してまいりたいと考えます。また、先ほどの総合エネルギー企業への取り組みについても加速してまいります。

 次に、導管部門の法的分離については、調達、導管投資、災害対応等の点で懸念があるのは事実ですが、今後は、懸念の解消に向け、円滑な事業運営に支障を来さない行為規制の検討や、検証規定と責務規定を確実に実施していただきたいと思います。

 さらに、改革の重要な目的である天然ガス利用拡大については、各事業者が利用拡大に取り組む仕組みや、需要と一体での導管整備策について議論を進める必要があると考えます。

 最後に、二十一ページをごらんください。こうした点を踏まえ、私どもの課題認識を述べさせていただきます。

 最も重要と考えていますのは、天然ガスの利用拡大であります。

 天然ガスは、先ほども述べたとおり、三EプラスSをバランスよく実現できるエネルギーであり、目下のエネルギー制約を克服する最も有力な選択肢と考えます。天然ガスの利用拡大のために、コージェネレーションや燃料電池、産業用等の普及拡大が重要であることは、エネルギー基本計画にも記載されたところです。

 これまで我が国のガス事業は、需要が導管の建設を促し、技術が需要開拓を促進するというサイクルのもとで発展してまいりました。今後、小売事業者と導管事業者に分かれ、それぞれが部分最適を追求したとしても、天然ガスの利用拡大を支えるサイクルの維持、すなわち全体最適が重要であり、そのための方策が必要だと考えます。

 二十二ページにつきましては、法的分離についての意見を書いてあります。二つあります。

 一つは、行為規制についてであります。

 ガス事業では、災害対応や供給オペレーションや導管投資において、導管部門と小売、製造部門が密接に連携しています。特に、保安については、両部門が一体となって高い水準を維持してきました。行為規制の検討に当たっては、公平な競争を阻害しないことを前提に、安定供給や事業運営の効率を損なわないよう、最大限配慮していただきたいと存じます。

 二つ目は、検証規定についてです。

 ガス市場は、現在でも新規参入が一二%まで進展していますが、新規参入が一層進展した場合や保安に対する懸念が残るような場合、あらゆる可能性を排除せず、必要な措置を講じていただきたいと考えます。

 最後になりましたが、私ども既存のガス事業者は、今回の法改正で都市ガス事業がどのように変化しても、安定供給、保安の確保に全力で取り組んでまいります。

 少し時間が超過しましたが、私からの説明は以上です。

 どうもありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、松村参考人にお願いいたします。

松村参考人 東京大学社会科学研究所の松村と申します。このような機会をいただき、とても感謝いたしております。

 配付しております資料に基づいてお話しさせていただきます。

 言いたいことの要旨はスライド二枚目と三枚目にほぼ全て書いてあるので、ここを見ていただければ、言いたいことが全て伝わるかと思います。

 それで、きょうはガスのセッションということですので、一番大事なのは、スライド二のところの二番目だと思っております。

 これは、従来でも一定の競争というのはあったけれども、電気は電気、ガスはガスという形で縦割りになった、非常にゆがんだ、考えようによっては非常に不公正な競争という状況だったのを、電力市場とガス市場を両方自由化し、システム改革をすることによって、効率的で公正な総合エネルギー企業同士の競争というのに道を開きたいというのがこのシステム改革の大きな目的だと考えております。

 それでは、スライドの四ページ目をごらんください。

 電力のシステム改革に関しては、この四月から、まず広域機関というのがつくられまして、次に、一六年度中にも家庭用も含めた全面的な小売自由化というのが今回の法案で盛り込まれており、さらに、二〇二〇年度には法的分離を中心としたネットワークの中立化というのが行われるということにスケジュールとしてなっております。

 五ページ目をごらんください。

 それに対してガスの方は、一年おくれて二〇一七年度に家庭用も含めた小売を自由化し、二年おくれて二〇二二年度に大手三社に限定して法的分離というのを行うということになっております。とりわけガスに関しては保安というものの確保が非常に重要ですので、自由化の段階でも法的分離の段階でも、保安というのを最重視しながら、そのほかのこともきちんと考えながら制度設計をしていくということになると思います。

 電力のシステム改革に関しても都市ガスのシステム改革に関しても同じですが、自由化して制度を整えるということによって、環境が大きく変化したとしても柔軟で効率的に対応できるというような仕組みをつくるということですので、ほかの政策が決まらないと自由化できないなどということは決してない。むしろ、そういうところがどのようになったとしても柔軟に対応できるということが重要な点だと思います。

 したがって、このスケジュールに従って自由化していくということが非常に重要なことだと考えております。

 七ページ目、八ページ目をごらんください。

 自由化をすることによって消費者にも事業者にも選択肢を与えて、価格を下げて、より効率的な市場にし、さらに安定供給というものにも資するような制度を設計していくということなのですが、都市ガスと電力の一体改革ということに関して言うと、エネルギー間競争というのを望ましい方向に持っていくということが重要なのだろうと思います。

 エネルギー間競争で本来望ましい姿というのは、例えば電気事業者というのは系統電力の方が得意ですから、系統電力を主力として、しかし、ガスの方がより望ましいという用途に関してはガスも組み合わせて売る。ガス事業者の方はガスの方が得意ですから、ガスを主力として売るということで、違う販売戦略を持っているんでしょうが、系統電力がふさわしいところにはみずから系統電力も販売する。こういう形で、総合エネルギー企業がそれぞれの強みを生かしながら、必要に応じて外部の企業と連帯しながら競争していくというのが本来の望ましい姿だと思います。

 九ページ、十ページ目をごらんください。

 ところが、まだ自由化されていない市場、電気は電気、ガスはガスと分断されている市場では、電力事業者にとってみれば、拡販するためには、今までガスが担っていた厨房だとか給湯だとかというところを引っ剥がして電気で供給するということをしないと拡販できないし、ガス会社の方は、そのようなものに対抗してコジェネのようなものを売り込んでいくという形でないと競争できない、こういうことになります。

 そうすると、オール電化というのは全て悪だとは思いませんが、拡販するために無理やりこういうことをする、本当に効率的なところ以上にふやしていくという強いインセンティブがあり、したがって、震災前には膨大な営業経費というのを投入し、物すごい割引というのを設けて一生懸命普及させるということをしてきました。

 オール電化でそんなコストをかけて本当にペイするのかというと、一旦オール電化で囲い込んでしまうと、その後ガスに切りかえるというのはとてつもなく難しいということになるので、かなりしばらく電力というので供給できる。仮に自由化されたとしても、系統電力というところで圧倒的に自分に強みがあるとわかっているので、この後ずっと優位なポジションが築けるということで、囲い込みのために膨大なコストというのを投入するということになっていたわけです。

 因果関係がないことに関して言うのは若干はばかられますが、例えばインフラの整備、FCの整備のようなものに関して、一般電気事業者は震災前はずっと消極的だったというわけなんですが、その理由としていろいろありますが、コストがかかり過ぎてお客様の利益にならないというんですが、そのコストとオール電化に投入していたコストというのを比較してみれば、どれぐらい説得力があったのかということは考える必要があると思います。

 こういうゆがんだ競争から解放して、より健全な競争ということに持っていって、本当に消費者の利益というのに資するような改革をするというのが電力と都市ガスの一体の改革だというふうに考えております。

 次に、十一ページをごらんください。

 とはいっても、都市ガスには電力にない特徴というのがあるので、電力でやったことをそのままコピーすればいいというわけにはいきません。

 都市ガスの大きな特徴として、一つは、実際に日本の中で半数程度の人しか都市ガスは使っていないのに対して、電力に関してはほぼ全ての人が系統電力を購入しているということになります。

 それから、都市ガスの場合には、需要稠密地帯というのはパイプラインを使って供給するというのが効率的で、需要が薄そうなところはLPガスでボンベを運んでいって供給するというのがよりコストが低くなるということで、需要稠密地帯でパイプラインで供給するものが効率的な事業者から順番に並べていって、LPガスとコストの面でほぼ拮抗するという状況がほぼ境界になり、それよりも導管事業者のコスト高になるところは、基本的に都市ガスが進出しないということになります。

 したがって、日本全国の国土でいうと六%程度しかカバーしていないというのは、こういう理由によるということになります。そうすると、必然的に小さなネットワークというのがたくさん生まれてくるということになり、一般電気事業者が十社しかないのにもかかわらず、都市ガス事業者が二百社を超える数があるというのは、そういう理由によるんだろうと思います。

 さて、次に十二ページを見ていただきたいんですが、自由化したときの最大の懸念というのは、規制なき独占になってしまわないか。自由化をすると、値上げする自由というものだけが得られて、実質的な競争が起きないということになったら大変だということで、競争基盤を整備することと、それから一定の規制料金を残すことによって対応するということになっております。

 次に十三ページ、そのうちの規制料金のところなんですが、電力では、基本的に、経過措置料金というのを設けて、しばらくの間は、一般電気事業者は、規制価格と同水準の価格で供給するというオプションをつくらなければいけない、別の料金体系をつくることは自由だけれども、それで供給しなければいけない、こういうことになっています。

 これは物すごく事業者の評判が悪いというか、事業者は一刻も早く廃止したいと思っているし、実は新規参入者も同じです。どうしてかというと、こんなものがあると、一般電気事業者は無体に高い価格がつけられない、無体な高い価格をつけてくれた方が新規参入者は入りやすいということになりますから、新規参入者にも既存事業者にもとても評判が悪い制度なんですが、しかし、これは消費者の保護のためにあるんだということは考える必要があると思います。

 それからもう一つ、こちらは正当な理由だと思いますが、料金のリバランスをしたいということで、全般的に値上げするんじゃないんだけれども、今まで少し安過ぎたところを少し高くして、高過ぎたところを低くする、そういう帳尻合わせをしたいということだと思います。

 これはガスについては非常に重要でして、スライド十四をごらんください。

 小規模事業者で実際にヒアリングをした段階で、伊東ガスという事業者がこういうプレゼンをされたわけです。自分のところには別荘のお客さんがかなりいる、別荘のお客さんというのは使用量が少ない、つまり、そこに住んでいる期間が短いからということで使用量がすごく少ない、そうすると、固定費というのを基本料金だけでなく従量料金でも賄っているんだけれども、使用量が少ないお客さんだと固定費の回収漏れになってしまう、その回収漏れというのを、ずっと一年じゅう住んでいる普通の住民の方からの収入で補填するということにならざるを得ないと。しかし、これは本当に公平なことなんでしょうか。こういう料金体系を変えたいと思っても、経過措置料金のために変えられなくなるということになると弊害がとても大きいのではないか、こういう問題提起がなされました。

 これは小規模な事業者にとっては本当に深刻な問題で、この点は確かに考える必要があると思います。

 次のスライドをごらんください。

 しかし、この問題は、供給区域が比較的広い大手の事業者には相対的に小さいと思います。別荘需要が集中しているとかということは通常なくて、例えば東京ガスの管内で、別荘需要というのは確かにあることはあるんだけれども、全体として見れば小さな割合ということになるのに対して、小規模な事業者にとっては、そういうところが集中的にある可能性があるというわけですから、大きな問題が出てくる。

 それから、電気の場合には、さらに供給区域というのが広いので、この問題点というのは相対的に起きにくいと思います。したがって、ガス事業特有と言うと言い過ぎですが、比較的小規模なガス事業者に特有の問題だろうと思います。

 それから、次に十六ページですが、ガス事業者の場合、経過措置料金というのが本当に必要なんだろうか。

 先ほども申し上げましたが、LPガスの方がコストが低いところというのは都市ガスは出ていかなくて、都市ガスの方がコストが低いところで範囲がとまる。こういうことになると、範囲の境界のあたり、つまり需要密度が比較的小さな小規模事業者の場合には、コスト構造からして、LPガスのコストと大きな差がないということになります。そうすると、コストベースの規制料金というのをつけている段階で、規制が外れて値上げするということになると、たちまちLP事業者に需要家をとられてしまう、こういう構造になるというわけなので、相対的に規制なき独占のおそれが小さいということになります。

 しかし、需要が非常に密で、LPガス事業者に比べてかなりコストが低いところに関しては相当な心配があるということですが、そうでないところについては比較的心配が小さいということになります。

 したがって、十七ページのところをごらんください。そういう小規模な事業者に関しては、相対的にリスクが小さいので、そういうところには全部にはやらせないということをするわけですが、一部は免除してもいいんじゃないかと思っています。

 それから、経過措置料金からの卒業に関しては、リバランスに関しては届け出で認めて、全般的な値上げについては依然として規制するという形で経過措置料金から卒業する、こういうオプションもあり得るのではないか、全般的に廃止するというのが唯一のやり方ではないのではないかと思います。

 それから、十八ページ、法的分離に関しては、一般電気事業者九社と大手都市ガス三社ということになっていますが、一旦決めたスケジュールというのを安易に延期したりすると信頼性を一気に損ねるということになるので、スケジュールを決めたらきちんと守るということが重要なことだと思います。その意味で、電気二〇二〇年ということを決めた、もともとの範囲内で押さえたということはとても意義のあることだったと思います。

 残された課題ですが、電力市場では、託送料金についてはまだ詳細を決めなければいけない。託送料金は、私の一番大きな問題意識は、分散型電源に不利な託送料金になっていて、大規模電源を遠隔地に建ててこれを需要地まで大送電線で運んでくるというのが有利な体系になっていないかということに関しては懸念を持っていまして、この点については、分散型電源が大規模電源とイコールに競争できるような効率的な託送料金というのにするようにこれから努力していかなければいけないと思います。

 それから、都市ガスに関して言うと、競争基盤というのは、電力会社という強力なコンペティターはいますが、電気に比べて潜在的な競争者の数が少ないという決定的な問題があります。

 もし電力会社とガス会社が、下品な言葉で申しわけないんですが、手打ちしてしまうなどということになると、本当に競争が死にかねない、こういうことを本当に懸念していまして、そのためには、大手のガス事業者から卸供給を受けて供給する、こういう人たちというのが入ろうと思えば入れるという余地を残しておくことが非常に重要。そのためには、卸価格の規制というのも非常に重要だろうと思っています。

 最後に、二十一のところですが、インフラについて言うと、電力に比べてもガスのインフラ整備というのはおくれていると認識しています。

 ガス版の広域機関というのはつくらないということにはなっているわけですが、日本全国を見て、効率的なインフラの形成がされているかどうかということをどこかが見なくてもいいのかということは、今後の意識として考える必要があると思います。

 大規模な機関をつくらなくても何らかの形で考える、しかも、電力会社が持っているLNG基地それからパイプラインを一体で考える、石油会社が持っているパイプラインも一体で考えるというような全国的な効率的なインフラ整備、インフラ利用というものの視点をこれから持っていく必要が出てくるのではないかと思いました。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、杉本参考人にお願いいたします。

杉本参考人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の杉本と申します。

 本日は、電気事業法等の改正法案の審議で、消費者の意見を申し上げる機会をいただいたことに感謝申し上げます。

 主にガスの消費者保護について発言させていただきます。お手元の資料をごらんください。

 なお、今回の法律改正に含まれる電気の議論は、私と同じ団体の辰巳常任顧問が参加しておりますが、私は制度の経緯に詳しくありませんので、御質問には家庭の電気消費者の感想程度となりますが、御容赦ください。

 電力は、国民の意識調査を行って家庭用自由化は法律改正を行いましたが、ガスは、電気の一年半おくれで審議が始まり、多くの内容が急ぎ足で審議された感があります。

 電力の小売全面自由化は、三・一一による電力不足や値上げに対する地域独占への不信感もあって、小売会社の選択肢拡大には家庭消費者からの期待が大きかった点がガスの自由化と背景が違うように思います。確かに、電力の国民意識調査では、セット販売に過半の人が興味を持っていますが、家庭での電気とガスの受けとめは違い、安全と安価あっての選択肢拡大だというふうに思っています。

 そこで、資料一で、家庭用における電気とガスの違いを整理してみました。それに基づく意見として参考二を読みます前に、都市ガス自由化と消費者団体の関係をお話ししておきたいと思います。

 都市ガスの審議会は、一昨年秋から都市ガス事業者へのヒアリングを開始しました。そこで事業者から、料金はある程度シークレット部分が自由化のだいご味で、それを明確にしたら自由化ではない、消費者が納得しなければほかに行くのが自由化という発言があり、びっくりいたしました。消費者が事業者を選択できる一方で、事業者も値上げや公開する情報や消費者自体を選択することが自由になることが小売自由化のもろ刃のやいばだというふうに再認識させられました。

 事業者ヒアリングが終了した四月には、都市ガスへの新規参入の可能性がない地域も含め、他燃料との競合で代替性もあり、その保護策を不要とすべきかとの論点が出されました。その日に、経産省の有識者会議でガス料金規制撤廃を大筋了承と全国紙で報道されました。

 それに対し、主婦連の学習会では、参加者の皆さんから、電気と違い消費者の誰が都市ガス自由化を望んだのか、消費者の知らない改革だ、自由化で保安は大丈夫か、料金が下がるかと紛糾いたしました。このふんまんは、六月のガス保安審議会でも、複数の消費者委員から同様の意見がありました。

 それから多くの消費者団体が何度も勉強会などで問題意識を共有化しました。また、消費者活動をする方への緊急アンケートでは、七割がガス小売自由化を知らなかったですし、八割以上が料金規制や供給義務など消費者保護策の維持を希望するということを把握しました。参考三のところです。

 そして、多くの消費者団体が一致団結して、猛然と多数の保護策撤廃反対の国民の声が出され、私にとっては大変心強い援軍となりました。

 その結果、従来の料金規制と供給義務につき経過措置が必要とされました。また、経過措置となる対象事業者や解除に関する競争の進展状況の基準づくりに、消費者団体も参加した透明性のある委員会で決めるとガス市場整備課長から御明言いただく御英断もいただき、大変安堵いたしました。

 しかし、審議会では、抽出地域や条件の不明確な競合サンプル事例が紹介されたり、経過措置の対象基準は都市ガス利用率が、参考四のところに書いてあります、七五%以下でもとの意見があり、そうなると、公営事業者を除き百万件規模の西部ガスも含めた約九割の事業者で消費者保護策がなくなる骨抜きとなります。それが独占力の基準とは、到底納得できません。同じ事業者でも地域により独占力が違うので、経過措置の対象基準を事業者全体区域ではなくて市区町村単位の普及率などを参考にきめ細かに評価するなど、家庭消費者が納得できる基準づくりを先生方の国会附帯決議に反映していただくよう、強くお願い申し上げます。

 参考二のところです。

 全国五千万以上の世帯では、暖房は灯油やエアコンも多いんですけれども、大多数となる都市ガス件数の約三千万、LPガスの約二千万世帯の台所やお風呂にはガスが利用されており、いずれのガスも日常生活に必須のエネルギーです。

 そのガスは、約二百数社の一般ガスや、約千四百社の簡易ガス、また二万社のLPガス会社が供給しています。三大ガス会社が大都市圏で供給する一千九百万世帯だけでなく、他の一般ガスやLPガスが供給する残り三千四百万世帯も、同じように消費者利益を得るべきだと思っています。

 海外でも、自由化当初は消費者トラブルが発生したようです。日本でも、悪質な小売事業者による苦情が発生しないよう、今回の法律で、書面交付義務など消費者保護策や、電力・ガス取引監視等委員会が創設されて監視をする制度は非常に安心できます。

 しかし、参考五にありますが、LPガスは料金表も含む書面交付義務にもかかわらず、料金などの苦情が数千件もありまして、これも氷山の一角ではないかというふうに思っています。書面の未交付など、制度がうまく機能していないからだというふうに思いますので、他山の石ではなく、監視等委員会がLPガス取引も監視や取り締まりをすべきだというふうに思います。

 ガスは、電気や水道と同じく配管や器具の工事負担をして、日々の生活で継続した供給を望みますので、公益事業として料金や保安の規制があります。低所得者や高齢者など生活弱者も含めた家庭消費者全体が、安心して毎日継続してガスを利用してきた背景も大切です。

 台所やお風呂のガス消費量は、世帯収入別では大きく変わらず、世帯人数によって変わります。単身世帯は少量使用で、生活保護、年金生活、シングルマザーなど低所得者層や、在留外国人などの家庭生活の弱者も年々増加しております。自由化に伴うガス料金値上げは打撃となり、本末転倒です。

 都市ガス自由化は、新規参入者による都市ガス同士の活発な競争が起こり、大多数の家庭消費者には多様なサービスが安く安全に供給されるのであれば賛成です。しかし、電気は太陽光など地域で発電できますけれども、輸入者も限られ全国で導管がつながらない天然ガスは地方の新規供給者がわずかで、また少量で利益の少ない家庭まで全国に新規参入が活発化するか、これは不明です。

 活発化しなければ自由化しても従来の都市ガス事業者の独壇場になり、さらに、消費者保護策がないと、価格交渉力の少ない生活弱者や少量使用世帯に、競争の激しい大口需要のコストを転嫁した値上げや、それらが不服なら供給拒否など、多くの消費者が被害者となる可能性もあります。

 特に、地方の家庭消費者、飲食店や中小工場のガス料金が値上げされれば、アベノミクスの目玉である地方創生に大きく逆行することになります。

 また、家庭消費者はガス保安の知識が乏しく、ガス漏れや器具の誤使用着火、無臭の一酸化炭素中毒などのガス事故対応は、料金低下よりも最優先だと考えます。そのため、家屋に立ち入る保安は安心して顔の見える地元のガス会社に頼るので、海外と同じく、電話や新聞のように販売店を変えない消費者が大多数ではないかというふうに思います。

 保安は従来どおり全て導管事業者が実施すべきものと考えますが、器具点検や安全周知などは小売事業者の責任となりました。昨年でも、ガス器具関連の四百件以上の事故が発生しておりますし、三十人以上の死傷者との報告もあります。

 点検能力が低いと、マンションや飲食店など一酸化炭素中毒の広範囲の死傷事故につながり、また高齢者への点検商法も予想されるので、点検員はLPガスと同様に国家資格にし、また、ガス器具の異常など不安があれば夜間でも小売事業者に緊急連絡できるような体制をとるべきです。

 自由化している大口でも、新規参入が盛んなのは大手都市ガス三社内です。私の住む地元のガス会社は大手ガス会社からの導管卸ですが、直接に大手ガス会社から買うにも、地元ガス会社の託送料金が加算されて高くなると思います。また、大口新規参入の件数は二%なので、少量の家庭用まで競争が起こらず、自由化するLPと同様に料金が高どまりするのも心配です。

 小売自由化が先行した海外でも、自由化後もガス料金が上昇しており、自由化の効果を検証しているとのレポートもあります。都市ガス同士の競争による料金値下げなど、自由化の利益が全国的に広く家庭用消費者に行き渡るかは不透明だというふうに思っています。

 新たに、二千四百万軒を超える一般家庭が都市ガス供給における事業者を自由に選択できると言われますが、卸導管から孤立した都市ガス事業に新規参入するのは絵空事のようにも感じます。

 しかし、自由化の目的は、都市ガス同士の競争活性化を通じ、ガス事業者の選択肢拡大と低廉な料金を実現することで、電力同様に供給者変更の費用がないことが前提です。

 それを、都市ガス同士の競争の可能性が低い従来のガス事業者も他燃料との競争があるので料金規制を撤廃すると、料金規制撤廃の対象を他燃料転換への負担をも前提として、都市ガスの競争のない事業者に拡大したことは、到底納得できません。新築など新たな他燃料を選べる新規消費者と、従来から今後も継続して都市ガスを利用せざるを得ない継続消費者の消費者保護を分けて考えるべきだというふうに思っています。また、他燃料との競合力のある事業者も多いとの意見もあります。

 持ち家戸建ての新築や改装では、太陽光発電をきっかけにオール電化にすることもあります。しかし、賃貸や集合住宅では戸別の変更は困難です。マンションの二階に大きなオール電化の貯湯器やLPボンベを戸別にベランダに置けるでしょうか。持ち家でも、ガス料金が高いという理由で器具の買いかえや改築までしてオール電化をすることは、低所得者層や年金世帯には負担も大きく、都市ガス同士の競争がなければ、従来の都市ガス事業者から継続してガスを受けざるを得ません。公道の都市ガス管に面した引き込み費用のない都市部は都市ガスの消費者件数がふえている地域もあり、都市ガス同士の競争がなければ、LPガス並みに値上げする心配もあります。

 マイカーと競争のある鉄道やバスにも上限料金があります。海外と同様に、規制料金などを経過措置として残しつつ、それより安い料金も自由に設定できることになりました。

 今後の最大の懸念は、経過措置の対象事業者及び解除する競争実態の基準が骨抜きになることです。地域で異なる他燃料競合も基準とするならば、その基準を、電力のように事業者全体ではなくて、市区町村単位で評価すべきです。また、基準の策定には、消費者団体とともに、公正取引委員会や消費者庁も参加する透明性のある委員会で、家庭消費者が納得する形で進めてほしいと思います。

 最後に、熱事業法の改正についても簡単に意見を述べさせていただきます。

 全国の三万五千家庭世帯と、都市ガスに比べて少ない家庭消費者にも当初から丁寧なアンケートを実施して、マンション型簡易ガスと同様に、給湯などの必需性あるいは熱料金への受けとめや意見がよく把握できました。その上での消費者保護策などの対応方針による改革案は全幅の信頼が置ける内容だと思いました。

 以上です。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、浅田参考人にお願いいたします。

浅田参考人 日本生協連の浅田でございます。

 きょうは、電気事業法等の一部を改正する法案審議に際しまして、消費者の立場からこうして意見を申し上げる機会をいただきましたことに、まずもって感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 時間の関係もありますので、簡単な資料を準備してまいりました。その資料に沿ってやらせていただきたいと思います。

 資料一は、まず、私ども生協と日本生協連の概要の説明でございます。

 御存じかと思いますが、生協というのは、消費生活協同組合法に基づいて設立をされ、利用者である消費者自身が出資をして組合員になる、組合員になってからその意思決定、運営に参画をして、事業と活動を通していわばよりよい生活をみずからつくっていく、こういう組織でございます。

 事業はそういう内容なんですが、全体の概要はそこにあるとおりでございます。今、直接間接に日本生協連に加盟をいただいている生協数が五百七十七。組合員数は、今全国では二千七百万人。各地区でお店であるとか宅配で商品を供給させていただいている、地域生協と言っておりますが、この地域生協の組合員の数が昨年二千万人を超えました。全世帯数の比率でいうと大体三六%、こういう概要でございます。

 それでは、早速、資料二の方に移っていただきまして、意見をまとめてまいりましたので、きょうは消費者の立場から、電力・ガスシステム改革について若干の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、私ども生協といたしましては、今回の法律案に対しまして、基本的に賛成の立場から発言をさせていただきたいというふうに思います。

 消費者は、今回の改革によって、電力そして都市ガスについての消費者の選択肢が拡大をする、同時に、公正で透明な競争市場がつくられることによって、より安価で電気あるいはガスが供給されることを期待しております。ただ、事業者間の大きな取引と異なって、家庭向けということになりますと、事業者と消費者の間で、持っている情報量であるとか交渉力に決定的に大きな格差がございますので、その点についてはいささか、御審議いただく中で御検討いただきたい課題があるというふうに思っております。

 また、電気、都市ガスはまさに必需性が極めて高いわけでございまして、言うまでもなく、寒冷地では、まさに暮らしの中で命にもかかわるという重要なものでございますので、この公共性の高さということについても十分目配りをいただきながら法案審議をしていただきたいというふうに思っております。

 そんなことで、大変、組合員の暮らしに直結する、影響が大きいということもございまして、広い意味で家庭用エネルギー全般にわたって、消費者の権利を守るための政策、制度のあり方等も私どもの中ではこれから研究をしていこう、こういう計画を持っております。

 きょうは、その中から絞りまして、今回の法改正に当たって、消費者にとって重要と思われる四点について意見を申し上げたいというふうに思います。この中から、可能なものについては法案の内容の修正、あるいは、場合によっては附帯決議等に盛り込んでいただくことも御検討いただければありがたいなというふうに思っております。

 まず第一でございますが、消費者への情報公開、情報提供についてでございます。

 消費者が、電力等の供給事業者、あるいは料金、サービスメニューなどにかかわる情報を容易に得られて選択ができる。そのためには、料金体系であるとかサービス、あるいは供給条件、電気については電源構成ということになると思いますが、こういった情報提供とインターネット上での情報公開を義務づけていただく。そして、消費者がそれらを容易に比較できるような条件整備を図っていく。自由化になれば、こういうふうなバックアップが消費者にとってみれば大変ありがたいということになります。

 現在、一般の商品でもインターネット上には数々の比較サイトがあるのは御承知のとおりです。電気についても、ヨーロッパではもう既に、ネットで自分の住んでいる住所の郵便番号等を入力すると、事業者の一覧が出てくる、あるいは、そこでの料金、サービス、電源構成等の情報も見られるということでございますので、そういった条件整備等も考えていただければというふうに思います。

 しかし一方で、こういうインターネットサイトというのは、国が義務づけなくても、民間に任せればよいんじゃないかという御意見も論議の中ではあります。ただ、どう考えましても、消費者が安心して全ての事業者の情報を公平公正に比較できるようにするためには、やはり国がきちんとその公正なルール、公平なルールを決めて、情報公開を義務づけていただくということが大変大事なんじゃないだろうかと思います。

 私ども生協は食品が中心の取り扱いの事業をやっているわけですが、この三十年の間に、食品添加物や農薬、あるいは栄養成分表示、原料原産地表示など、いわば国がルールを決めて表示を義務づけることが大変大きく前進をしたわけですね。これをもって、消費者、組合員が食品を選ぶに当たっての重要な情報源になってきた、こういう経過もございます。ぜひこの辺のところについては御検討いただければというふうに思います。

 また、電源構成につきましては、原子力発電あるいは石炭火力発電、太陽光発電など、具体的な発電源の名称とその比率を示していただければ大変ありがたいなというふうに思います。

 固定価格買い取り制度を活用した再生可能エネルギーの表示の取り扱いについては、経済産業省の審議会でも論点の一つに挙げられたようでございますが、やはり国民、消費者の意見を十分聞いていただいた上で、ぜひこの点については慎重に御検討いただきたいというふうに思います。伺うところによりますと、ヨーロッパ等あるいはアメリカ等では発電源証明という制度もあるやに聞いております。こういう制度の活用もあわせて御検討いただければというふうに思います。

 二つ目が、電力・ガス取引監視等委員会への消費者の参画、意見反映についてであります。

 この委員会は大変重要だというふうに思っております。家庭用を含む小売市場の競争状況の監視あるいは健全性を担保するという意味では大変重要だというふうに思うんですが、この委員会あるいは事務局構成を見せていただきましても、消費者の参画あるいは意見反映に関することが現時点では見当たりません。この委員会の組織の中に、消費者代表が参画できる、あるいは消費者の意見を適切に聞き取ることができる、反映することができる、こういうふうな保障を図っていただくことが大事なんじゃないだろうかというふうに思っております。

 総合エネルギー市場が生まれることを想定した場合には、エネルギー間の枠組みを超えたそういう対応も必要になると思いますので、電力、都市ガスとある意味で競合、補完関係にありますLPガスあるいは灯油等、いわば家庭用エネルギー全体の監視の必要もこれからは考えていただきたいというふうに思うわけでございます。

 ことしは原油価格が下落をしたということで、灯油は少し価格が下がりました。しかし、LPガスについては高値が続くということが一部新聞等でも報道されました。そういう意味では、液化石油ガス取引の透明性向上というふうなものについても、幾つか指摘をされた経過もございましたので、ぜひこの点も監視対象に含めていただきたいというふうに思います。

 三点目、小売事業者の切りかえなどに伴う苦情処理、紛争処理体制の強化でございます。

 自由化というのは、恐らく新しい問題も、新しい仕組みですから惹起することになるだろうというふうに思います。消費者が小売事業者やサービスメニューを変更するときにトラブルが起きる可能性もあることから、そうした際に消費者の立場に立って苦情処理ができる、あるいは紛争処理ができるというような体制づくりは必要なのではないだろうかというふうに思います。特にエネルギー分野はある意味で専門性の高い分野ということでもございますので、従来の消費生活センター等に加えて、より専門的な相談を受け付けていただける、そういう組織の御検討もいただきたいなというふうに思っております。

 既に自由化されておりますLPガスについては、こうした専門の相談窓口が設置をされております。ただ、これからは、エネルギーごとにつくるのではなくて、まさに、家庭用エネルギー全般といいますか、総合的な相談センターというふうなものが必要になるのではないだろうか、こんなふうに思います。来年四月には家庭用の電力自由化が始まることを考えますと、早急にこの点については御検討いただければ、関係省庁でチーム等をつくっていただいての検討をお願いできればというふうに思います。

 四点目、送配電部門の法的分離、いわゆる発送電分離の確実な実施についてということでございます。

 送配電部門の中立性の確保、この視点から、二〇二〇年四月一日に確実に法的分離を行うようにお願いをしたいというふうに思います。既に法律に書かれておりますので、これは期日どおりにぜひお願いしたいという要請になります。

 何となれば、やはり、既存の電力会社あるいは新規参入者が本当の意味で対等に競争するためには、送配電部門をできるだけ中立的にするということが今回の改革の肝だというふうに思っておりますし、多くの国民、消費者の願いといいますか期待がここにあるということをお伝えさせていただきたいというふうに思います。

 最後に、資料三は、私ども日本生協連で行いました節電と再生可能エネルギーに関する消費者意識調査の報告書でございます。お目通しいただく機会がありましたら、見ていただければと思います。なお、クリップでとめております別紙のカラー刷りの資料は、二〇一二年一月に私ども日本生協連でまとめました、エネルギー政策の転換を求めた報告書を紹介したものでございます。これもお目通しいただければ幸いでございます。

 ぜひ、今回の法改正で、私たち消費者にとってわかりやすい、そして、こうした改革があってよかったな、そういうふうに思える制度設計の御審議、御検討をお願いいたしまして、私からの意見の陳述にさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 自由民主党の鈴木淳司です。

 きょうは、参考人の先生方、本当にお忙しいところ、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。

 いよいよ電力システム改革、電気・ガス事業法を含めて、改革第三弾であります。私は、第一弾からこの委員会に参加しておりましたけれども、いよいよここまで来たか、そんな感慨を持つ次第であります。時代の中でこうした改革は必要だ、それは片方でわかりますが、片方では、既にある完成形を一旦壊して新しいシステムに移行する、なかなか難しい部分もたくさんあろうかと思いますが、よくここまで来たというふうに思います。

 また、きょうは、松村参考人の方から、ガスも含めた総合エネルギー産業のあるべき姿ということをお示しいただきました。極めてある意味でわかりやすい話だと思います。

 それにしましても、二弾目の自由化まではまだいいんですが、三弾目につきましてはさまざまな御意見もありますね。それについてもありますが、まず、ここまで来たことにつきまして、議論を主導されてこられました松村参考人に、これまでの経緯について御紹介をいただければありがたいと思います。

松村参考人 三段階目の改革、法的分離に関しては、確かにいろいろな議論があり、私は、中立化のためには必要不可欠なものだと思っております。一方で、法的分離の仕方を誤ると、確かに、大きくいろいろなものを損なってしまう、今までせっかく築いてきたものを失ってしまうということがあるかと思いますので、十分な配慮をして、資金調達、安定供給、それからガスでいえば保安のようなものに関して決して支障を来さないように、最善の監視というのをしていかなければいけないと思います。

 しかし、私は、法的分離という方針がこれだけ明確に出てきて、これをさらに延期するだとかやめてしまうとかということをすると、改革に関する打撃が余りにも大き過ぎるのではないかと思います。着実に進めるべきだと考えております。

鈴木(淳)委員 今回、ガスが加わったわけでありますが、ガスのシステム改革につきましては、審議会の議論の中で、導管の法的分離、大変な議論があったというふうに聞いております。これについて、さまざまな保安の問題等もこれありましょうけれども、委員の中でもさまざまに意見が分かれたと聞いておりますが、これにつきまして、松村参考人はどんな御感想をお持ちになられたのでしょうか、御自身の中で。

松村参考人 確かに、委員会で激論になったところであり、さらに意見が大きく分かれました。それで、私は、その中では最も法的分離というのに積極的な発言を繰り返してまいりました。

 法的分離というのは、ある種、ネットワークを中立化するためには非常に強力な武器であり、進めるべきだというふうに考えております。しかし一方で、確かに、特にガスに関しては保安の問題などが非常に重要な問題であるということで、保安を損なうような改革は、法的分離に限らずどのような改革だって消費者は決して望んでいないと思うので、その点については最大限配慮すべきだと思います。

 法的分離に関しては、今回、二〇二二年になっている、これだけ時間をかけるというのは、特に保安を中心にして、資金調達、安定供給に関して決して弊害にならないように慎重に行為規制などを設計せよ、こういう基本方針が出たというふうに理解しております。この点について、万全を尽くして、決して消費者に迷惑をかけないような制度設計をするということだと思います。

鈴木(淳)委員 それでは次に、杉本参考人にお尋ねしたいと思うんです。

 今回参加をされていて、この議論の中で、全国の消費者を代表するお立場として、最も重視された観点というのはどんなことだったでしょうか。

杉本参考人 法的分離の点でですか。(鈴木(淳)委員「全体です、ガスの」と呼ぶ)

 法的分離は、導管部門の中立性確保のための方法論だというふうに思っています。

 導管の中立性確保自体は、消費者が小売事業者を選べる制度として異論はないと思います。大口では小売価格の約一割を占めると思われる託送料金も、家庭用小売価格でも、その一部となる適正な価格にすべきだというふうに思っています。

 託送料金は総括原価での認可料金ですから、その算入コストのルールをきちんと決めて、コストの情報公開を徹底して、それを行政が厳しく監視すれば信用できるというふうに思っています。

 その中立性の確保は、対象を狭めると、地方消費者には託送料金の低下を通じた料金低下につながりません。

 大手ガス会社から導管で卸を受ける事業者、多くの家庭消費者がいます。従業員百名以上のガス事業者、またはヨーロッパと同じく需要家件数十万件以上の大手会社は、自社の託送料金上乗せの緩和や託送料金の透明性につき、大手ガス三社と同様に、中立性確保の措置の時期を決めて実施すべきだというふうに考えています。

 また、卸受けガス事業者の約半数以上は国産天然ガス事業者ですが、昨年春に、LNG基地を持ち高圧導管を持つ国産天然ガス会社がLNGを導入し、二十社以上の卸受けガス事業者が最大一四%の値上げをしました。海外でも上流の施設から開放されたと聞いております。国産天然ガスも大手三社と同じ条件で中立性を確保して託送コストの情報公開をすべきであり、天然ガス三社と区別する必要はないというふうに考えています。

 ガス導管の中立性では、ガス業界の不公平な取り扱いについて電力業界の説明を聞き、ガス業界の対応は問題があるというふうに感じました。

 その一方で、関西電力からは、法的分離をしても規制強化ですぐにでも解決できるとの指摘がありましたので、ガス業界の自主的な取り組みだけでなく、規制強化した改善策やルールを学者と行政だけで一年間どんどん決めればよいというふうに考え、発言をいたしました。

 また、料金規制の経過措置と法的分離とを交換条件とするような議論もありましたけれども、法的分離をしてもしなくても、既存ガス会社の独占力があるうちは料金規制などの消費者保護策を維持すべきだというふうに思っています。

 ガスは電気と違い、震災時の広範囲な二次災害が最大の心配です。

 法的分離をすると、これまで公道からガス器具まで会社が一丸となって対応してきた使命感や組織力などが発揮できないとガス労働組合委員がガス保安審議会で主張しておりましたので、導管等工事事業者の連携や協力など、単なる言葉では不安でした。しかし、横島ガス市場整備課長から、法的分離は保安を盾に頭からだめと言われると永遠にできない、保安の心配がない制度を見きわめて判断するのが筋であるとアドバイスを受けまして納得しました。

 それで、法的分離をしても大丈夫な、罰則などお墨つきの制度がガス保安審議会で決められてから法的分離を判断すればよいというふうにも思いました。

 そのような背景で、私は、すぐに法的分離を進めるのではなく、ガス保安審議会の制度対応を待つとともに、会計分離の中で改善の結果を見て、それでも不十分であれば一年後に法的分離の導入を検討するという意見を表明しました。しかし、意見が割れたので……。

江田委員長 御意見、手短に、よろしいでしょうか。

杉本参考人 はい。済みません。

 私は、消費者委員として固執せずに、法的分離は、各委員会の意見を正確に反映してまとめて、それを参考に、ガス会社の了解がなくても、経産省が法的分離が最適と判断したのであれば経産省にお任せする、そう考えて審議会で発言いたしました。

鈴木(淳)委員 詳細な答弁、ありがとうございました。

 では、浅田参考人に簡単に一点。情報提供の必要性をよくおっしゃっていましたが、電源構成を見て、価格以外に、相当数の方が電源を変えられると思われますでしょうか。

浅田参考人 鈴木先生、今、消費者の皆さん方というのは、やはり、その商品だけじゃなくて、その商品の成り立ち、どんな背景があるんだろうということについては大変深い認識を持ち、また同時に、そのことを商品選択の一つの基準にしていらっしゃいます。それは電気でも同じだろうというふうに思います。

 ただ、これはやはり一方で、家庭事情から考えますと、当然コストパフォーマンスの問題もございますので、まず、そのことの情報をしっかり知り得るということと、どれだけシフトするかということがパラレルにはなかなかならない部分があるかと思います。

 ただし、やはり、そういうふうなことが認識できる、学習できる、そういう情報提供がある、そういう企業に対しては、絶対、印象としてはいい印象を持たれるだろうなというふうに私は思っております。

鈴木(淳)委員 きょうはガスが主力でありますから、お尋ねしたいと思うんですが、まさに、天然ガスの利用拡大というのは大きなテーマだと思うんです。

 こんな中、先ほど、御意見の中で部分最適と全体最適がありましたね。これはある面で私は電力システム改革そのものの問題だと思うんですが、ある面で、自由化でありますとか自由競争の中で、片方で望むべき姿を求める、そうすると、それを、いろいろな制度、詳細な設計とか監視の中で実現しなきゃいけないということなんですが、これにつきまして、これは検証規定もありますけれども、ガス事業者としてはどんな制度を望まれるのかということがまずお尋ねしたいし、国としてどう促進策があるのか。

 同じことを松村参考人にもお尋ねしたいんですが、まさに、自由化の中で多様なプレーヤーが参加する中で、しかもその中で望むべき姿をつくっていくときに、ある面で相反する規制と自由化というその両方があるんですが、これは極めてある意味で難しい問題なんですが、これまでは比較的事業者も少ない、いわゆる国の施策がすぐききます。これからは手を離すところもありますから、このあたりの実現に向けての導きについてお話しいただければありがたいです。

尾崎参考人 これは非常に難しい問題だというふうに思います。我々、過去の取り組みで、やはり需要とインフラの形成、導管の延伸というのを一体的にやってきまして、そういう点では、そういう思考回路の中で事業運営をやってきました。

 これから、エネルギー基本計画にもうたわれていますように、さらに天然ガス利用拡大ということをしていこうと思いますと、そうすると、我々が過去やってきたことだけではなくて、もっと新しい人が新しいアイデアで、そして、いろいろな利用策というのをつくっていかなきゃいけないというふうに思っています。そういう点で、新規参入者がガスの産業に入ってくるというところは、大歓迎というわけでもないですけれども、非常に政策としては正しい方向になるのではないかというふうに思います。

 ただ、天然ガスの場合は、先ほども御説明しましたように、まだまだ発展途上であるという中では、さらにインフラをつくっていく、特にパイプラインをつくっていく、将来的にはパイプラインの輸入、それから国産資源を開発ということを考えていくと、一定の国の政策といいますか、長期的な見通しというのをつくっていただいて、そういうのを見据えて既存の事業者も、それから新規参入者も事業展開をしていくということが必要なのではないかなというふうに思います。

 そういう点では、今まで事業者の中でやってきたサイクルをもう少し、国全体としてそういうサイクルになるような、そういう政策をつくっていただければ、天然ガスの発展のためには非常に役に立つのではないかなというふうに考えています。

 そういうことによって、もっともっと天然ガスを事業としてやってやろう、そして、ひょっとしたら、インフラをつくってやろう、そういう人も出てきて、そういう人と一緒になって日本の天然ガスの利用拡大というのが進んでいけばいいのではないかなというふうに私は思っています。

 以上でございます。

松村参考人 御指摘の部分最適と全体最適というのはまさに最も重要な視点で、部分最適の結果として全体最適が実現できるように、自由化と、それから御指摘になった規制というのを両輪として設計していくということが非常に重要なことだと思います。

 規制に関しては、例えばネットワーク部門の利用の仕方だとかあるいは競争基盤を整備するだとかということに関しては、やはり一定の合理的な規制を考えていかなければならず、その規制のもとで、ルールのもとで最大限創意工夫をするということによって部分最適が全体最適につながるような制度設計というのをしていくべきだ。今、まさにそういう方向でワーキングなどでも議論されているというふうに理解しております。

鈴木(淳)委員 松村参考人の御意見の中で、電力については広域機関で対応する、ただ、ガスについてはまだ、これからの設計でしょうけれども、こうしたことがありますね。

 まさに、ガスについても、ある面で、あるべき姿を誘導していくための監視ではありませんが、リードが必要だと思うんですね。これについて、具体的に何かプランニングがあれば、お聞かせいただければありがたいですけれども。

松村参考人 私は、まず一番大事なことは、今、電力市場整備課、ガス市場整備課という形で縦割りになっている発想を変える、何か委員会だとかそういうものが出てこなければならないと思っています。

 電力事業者がLNG基地をつくって発電所を設けるのか、あるいはパイプラインで持ってきてやる方が全体として効率的なのかというようなこともきちんと考える必要があり、そうすると、LNG基地というのは、ガス会社のものだけを見ている、別の課は電力会社のものだけを見ているというのではなく、全体を見る組織というか箱をまず考えるということが重要なのではないかと考えております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。

 ガスについては、電力と全く違った市場があるわけですよね。つまり、大手の三社プラス、準大手、あるいは小さな業界、そしてまたLPもありますね。こうした中で、先ほども話がありましたけれども、どこまでその範囲を広げるのかというのもあろうかと思いますが、これは電力だけでも大変でありますが、極めて難しい、また、多様なプレーヤーの参加の中で全体最適を求めるということになりますから、これについては本当に知恵が求められる。

 そしてまた同時に、これは失敗の許されない改革でございまして、日本の場合、とにかく、民生あるいは産業全て、基幹がこのエネルギーでありますから、まさに大きな大きなテーマに取り組むわけでありますけれども、これからいよいよ三弾目でありますので、それについて、担い手の一人でもあられますガス協会の方々の思いと、また、これにつきましても松村参考人の思いをお聞かせいただければありがたいです。

尾崎参考人 ありがとうございます。

 電力は三弾目ですけれども、ガスは一弾目で全てが終わるということになっております。

 やはり、天然ガスにつきましては、いろいろな意見はございましたけれども、業界の認識としては、他のエネルギー、電力、そしてLPG、石油との激しい競争の中で我々は事業をやっているというふうに思っております。そういう点では、ある意味では、他のエネルギーのいいところ、そしてガスのいいところを自分自身で非常に比較検討して、そして事業をこれまでやってきた。どうしても負けるところにガスを販売するわけにはいきませんし、ここは強いぞというところは積極的にやってきた、そういう歴史がございます。

 そういう点で、これからエネルギーの垣根が低くなっていって融合していくという点では、我々としましては、今までやってきたことをもう一回見詰め直して、そして天然ガスのいいところは我々の得意な分野としてやっていく、そして天然ガスの足りないところはほかのエネルギーを供給していくという形で事業を発展して、お客様の選択肢をふやし、そして日本のエネルギーの供給構造をさらに強靱なものにしていきたいというふうに思っております。

 そのためにも、やはり天然ガスのインフラというのをきちっと整備できるような、そういう施策をぜひ国の方でも用意していただければというふうに考えているところでございます。

 以上です。

松村参考人 御指摘のとおり、失敗の許されない改革ということで、全くそのとおりだと思います。

 それで、三段階目に関しては、二〇一八年から二〇年に法的分離というのがもともと言われていたのを二〇年にしたというのはよい選択だったと思います。これは失敗が許されないものですので、一年早くすることによって粗雑な制度をつくるよりも、そこまでの時間が与えられたということを最大限使って、しっかりした制度を、国民に対して、失敗は許されないということをきちんと認識した上での詳細制度設計の時間が与えられたと思っています。

 それから、ガスについては二〇二二年になっているというのも、これはのんびり過ぎるんじゃないかという意見もあり得ると思いますし、私もつい口が滑ってそんなことを委員会で言ってしまったんですが、今、反省しております。この時間というのが、これだけ時間が与えられたんだから、絶対に失敗は許されないし、本当にきちんとした制度をつくるというスケジュールとしては現実的なものが与えられたという中で、きちんとした制度をつくっていくということだと思います。

 それから、ガスは電力と全く違う市場だということは確かにちゃんと認識する必要があり、電力ができたもののそのままコピーというわけにはいかないのだということについてはきちんと認識し、LPガスとの競争ということもありますし、コンペティターというものの構造がまるで違うということもありますし、インフラの整備状況が違うということもありますので、これからの改革の詳細な制度設計にはその視点というのを決して落とさないように、私自身も胸に刻んで考えていかせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 時間が参りました。終わります。

江田委員長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 本日は、四名の参考人の皆様に当委員会にお越しいただきまして貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。

 きょうは政府に対する質疑ではなくて参考人の皆様に対する質疑ですので、余り自分の意見をとうとうと言うよりは、皆様の御意見を忌憚なくお伺いしたいと思います。

 今回、審議の対象となっている電気事業法等の改正法案、電力システム改革の総仕上げとなる法案であるとともに、きょうも意見陳述していただきました、ガスシステム改革、また熱供給システム改革、これを合わせた改革の法案でございます。

 では、そもそも、電力システム改革だけではなくて、なぜガスシステム改革が必要だったのかということで、先ほど松村参考人の方から、スライドの資料、この中でも二ページ、三ページの要旨が特に重要なんだということで、特に二ページの(2)のところが重要なんだということで、触れていただきました。

 二〇一三年、平成二十五年の二月に作成された電力システム改革専門委員会の報告書、この報告書の中におきまして、「電力システム改革を貫く考え方は、同じエネルギー供給システムであるガス事業においても整合的であるべきであり、」云々「ガス市場における競争環境の整備が必要である。」ということが述べられております。

 松村参考人もこの電力システム改革専門委員会の委員でいらっしゃいますけれども、べき論でガスシステム改革のところが触れられていますけれども、この平成二十五年の二月の報告書を出すに当たって、ガスシステム改革について委員会内でどのような議論、検討がなされて、最終的にガスシステム改革も必要なんだというような結論に至ったのか、これについてお伺いしたいと思います。

松村参考人 まず、この委員会では、基本的には電力システムの改革を議論する委員会であったということですので、具体的に都市ガスシステム改革がどのような姿であるべきかというようなことが議論されたわけではありません。したがって、ガスの特殊性だとかというようなことについては全く議論されていなかったと理解しています。

 ただ、一体で改革するということは極めて重要なことであり、これはエネルギーシステム全体の改革なので、電力だけにはとどまらないという認識は共有されていたかと思います。具体的にどういう形にすべきかということについては議論されていなかったと理解しております。

國重委員 そうしますと、先ほど松村参考人がおっしゃっていた総合エネルギー市場の創出というところに関して、当初は出ていなかったわけでしょうか。

 ガスはガスシステム改革でやるということなのか、ここの二ページで書いていただいているとおり、ガスが出た時点でもうそういうような、電力もガスも熱も同じような総合エネルギー市場みたいな話が、何かそういうことがあったのかどうか。

松村参考人 まず、間違いなく、総合エネルギー企業という発想はあったと思います。電力市場においてもほかのエネルギー事業者が総合的な力を発揮して入ってきてほしい、そういうことがあったと思いますし、その反対ということも当然意識はされていたということだと思います。

 それから、電力市場においてガスというのは物すごく大きな役割を果たしている。LNG火力発電にしても、あるいは潜在的にはコージェネレーションによる発電にしても、電力のプレーヤーとして、熱源としてというか、燃料源として非常に重要ということは意識されており、その重要な燃料であるLNGの市場の改革と完全に無関係にはできないという意味では、認識はあったと思います。

國重委員 時間の関係で、ちょっと質問を変えていきたいと思います。

 次は、ガスの法的分離、先ほど鈴木委員の方からもありましたけれども、少しお伺いしたいと思います。

 本法案では、ガス市場における競争環境の整備ということで、これを実現するために、導管部門を中立化させて、どの事業者も公平に導管を利用できるようにする必要があるということで、大規模導管を持つ大手三社を対象に法的分離を実施するということになっております。

 ただ、ことしの一月のガスシステム改革小委員会報告書では、ガスの法的分離に関しまして各委員からさまざまな意見があったことを前提にそれぞれの見解が併記されていて、この段階で法的分離の確定的な結論が決まっていたわけではないと思います。

 尾崎参考人が会長を務められる日本ガス協会も一月十三日付の文書を出されていますけれども、この中におきましても、どちらかというと、法的分離ではなくて、現行の会計分離を前提に、中立性を高めるためのさまざまな取り組みの実現に努めていきたいというようなことを記述されていたかと思います。

 尾崎参考人は、今回、法的分離が法文に盛り込まれたことについてどのように捉えているのか。また、法的分離は、先ほど、いろいろ三つぐらい懸念を挙げられていましたけれども、事業者の目から見て特にどのような点が懸念があるとお考えなのか、より具体的に教えていただければと思います。

尾崎参考人 ありがとうございます。

 法的分離について、日本ガス協会としては、一月に申し上げた点から大きくは変わっておりません。それは業界の意見として、今もそういうふうに思っています。

 そのときにも申し上げた懸念ですけれども、一つは、やはり保安といいますか、緊急時を含めまして保安というのをきちっとやるためには、ガスの供給にかかわる人間、それから小売にかかわる人間の非常に切れ目のない連携が必要である、それが別会社になって本当にうまくできるかどうかというのは、これは検証していかなきゃいけないというふうに思っています。

 そういう点で、検証規定ができましたし、そこできちっと検証して、我々も保安をないがしろにすることはできないと思いますし、それから保安というのはお客様のために絶対必要なことでありますから、先ほども申し上げましたように、どうシステムが変わろうと、これはもう絶対に守っていくというかたい決意を持っております。そういう決意のもとに、本当にどういうシステムができるのだろうかということがあります。

 それから、先ほどもありましたように、全体最適と部分最適といいますか、サイクルで需要があって導管を引いて、そして導管が引かれるとさらに需要を開発して、そして需要開発をした結果、また新たな導管が引ける、そういうシステムが本当に分離したときにどういうふうに機能していくかということも考えていかなきゃいけないというふうに思います。これについてもこれから検証していただいて、本当にきちっとそういうことが達成できるということを確認した上で前に進んでいきたいというふうに思います。

 最後に、やはり我々も、自由化によっていろいろな競争が起こるということについては、天然ガスの利用拡大のためには必要な要素であるというふうに思っていますので、そういう点では、導管の中立性それから利用の透明性というのは、これからも最大限、我々としても納得をいただけるようなシステムをつくっていきたいというふうに思います。

 その結果として、どんどん新規参入が進んで、いろいろな新規事業者が我々の導管を使えるようになれば、そこで、あえて導管を法的分離する必要があるのかというのは、これも将来、検証していただきたいというふうに思っております。

 以上です。

國重委員 ありがとうございました。

 次に、法的分離に関して、消費者の立場からお伺いしたいと思うんですけれども、先ほど杉本参考人は大分お話、御意見いただきましたので、浅田参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど浅田参考人は、御意見の中で、特に法的分離が肝なんだということでおっしゃっていました。会計分離を前提にした取り組みでは不十分で、消費者の立場から見て、やはり法的分離なんだと言われる背景というか根拠等、より具体的に教えていただければと思います。

浅田参考人 率直に申し上げまして、消費者皆さん方が、会計分離、法的分離あるいは所有権分離というのをわかっているのかというところについては、残念ながら、我々も一生懸命、学習会をやりますから、そういう中でお伝えすることはできますけれども、クリアにそこがわかっているという状況ではないというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 ただ、やはり、この間、特に電気のところで発送電分離というふうなところがずっと議論をされてきた中で、これはやはり非常に消費者としては、そこをクリアにしていくというのは、融通性がある例えば会計分離、そういうことだけではないと思うんですけれども、それよりももっとクリアな形でという気持ちはどうしても、そこはやはり願いとしては持っているというふうに思います。

 そういう意味でいいますと、やはり一旦、松村先生もさっきおっしゃいましたけれども、ガスでいえば二二年までという長い期間があるわけですから、その間にきちっと行為規制等も整えていただいて、そして、やはりスケジュールどおりに進捗していくというのがやはり最大の安定感だろうと思って、先ほど、決められたスケジュールというのは、たびたびリスケジュールするんじゃなくて、やはりそれをきちっと進行していくということも、国民、消費者にとってみれば大きな安定感になるので、その方針で臨んでいただきたいというふうなことでございます。

國重委員 では、松村参考人。

 今、尾崎参考人また浅田参考人が法的分離のことについてまた改めてお話しいただきましたけれども、先ほどもお話しいただきましたけれども、尾崎参考人等の意見も踏まえた上で、法的分離、一番先頭に立って指導されてきたかと思いますけれども、こういった意見を踏まえて、改めてお話しいただければと思います。

松村参考人 ガス事業者さんが自主的に中立性を高めるようなことを提案していただいたというのはとても感謝しています。それで、ぜひやっていただきたい。これは、法的分離するかしないかにかかわらず、やるべきことだと思いますので、直ちにやっていただきたい。

 ただ、それだけで本当に中立性というのが担保できるのかということを考える必要があると思います。このような構造的な分離というものなしに監視というものだけで機能させるということをすると、どれだけマンパワーが必要なのかということはきちんと考える必要があるかと思います。

 ほとんどの接続は恐らく大手三社に集中するということを考えれば、ここを法的分離しないで本当に機能するのかというのは、私はとても疑問に思っており、やるべきだと思っています。

國重委員 ありがとうございます。

 次に、尾崎参考人にお伺いします。

 先ほどの資料二十二ページの中で、「法的分離の懸念払拭のための措置」ということで、行為規制について記述がされております。先ほど、検証のところをお話しいただきましたけれども、行為規制について二十二ページで書かれておって、「ガス事業では、災害対応や供給オペレーション、導管投資等において、導管部門と小売・製造部門が密接な連携を行っている。特に、保安については、両部門が一体となって高い水準を維持してきた。 ガスの行為規制の検討にあたっては、導管部門が公平な競争を阻害しないことを前提として、安定供給や事業運営の効率を損なわないよう最大限の配慮を求める。」というふうに書かれていますけれども、尾崎参考人が考える最大限の配慮というのは具体的にどのようなことを考えられているのか、お伺いいたします。

尾崎参考人 ありがとうございます。

 現在でも、我々は、法的分離しないのが最大にいいことだというふうに思わないこともないわけですけれども、そういう点で、完全に違う会社にして、そして、もう顔も見えない、情報もそんなに、ふだんの仕事のやり方もよくわからないというような関係になると、どんどんいろいろな連携ができなくなってくるという点では、一つは、人的交流といいますか、そういうのがある程度可能な形にしておかないと、実際の作業をやるときにやはり、ちょっと言い方は曖昧としていますけれども、企業文化とかそれから価値観の共有化、そういうものがあるということが最低限必要ではないかなというふうに思います。

 多分、例えば大阪ガスでも東京ガスさんでも東邦ガスさんでも、法的分離となったときに、当面は我々のミッション意識といいますか使命感というのは維持できるというふうに思いますけれども、それを維持していく、さらに新しい世代へ引き継いでいくというときに、本当に完全な別会社というもの以上の交流といいますか連携というのを考えていただきたいというふうに思います。

國重委員 では、松村参考人、今の尾崎参考人の意見を踏まえて、御意見があれば、よろしくお願いします。

松村参考人 人事交流に関しては、基本的にガス事業者さんが選択するということ、交流が望ましいと思えば交流すればいい。それを行為規制で著しく制限してしまうということになると、確かに、保安の点で不安だとかいうことが出てくると思います。

 ただ、常識的に考えても、詳細制度設計をするときに、そこを著しく制約して保安に悪影響を与えるなどというようなことを支持する人がいると思えないので、実際の行為規制では、そういうことはきちんと考えられて、過度に人事交流を制約しないというような制度になるものと考えております。

國重委員 では、時間も残り少なくなってきましたので最後の質問になるかもしれませんけれども、松村参考人にお伺いいたします。

 今、一般電気事業者は十社のみということですけれども、都市ガス事業者は二百六というふうに、数は多いということでございます。ただ、東京、大阪、東邦の大手三社以外は中小規模の事業者で、卸受けガスを販売しているというような現状でございます。

 今回の改正案では、電力分野での卸電力取引所に相当する卸ガス取引所の設置は盛り込まれませんでしたけれども、先ほど、松村参考人の意見の中で、ガス市場の競争を活性化させるためには卸価格の監視が必要なんだということで、スライドの二十ページで書かれていました。

 こういったことを踏まえて、卸電力取引所と同じような卸ガスの取引所、これの設置についてどのようなお考えを持っているか、お伺いしたいと思います。

松村参考人 卸ガス取引所というのは、長期的にちゃんと考えるべきだと思います。ただ、電力に比べて相対的に必要性が小さく、なおかつ実現性にハードルが高い。

 まず、電力の場合には、昼間の電気と夜の電気というのは全く価値が違うということがあり、昼の電気を得意な人が売り、夜は買ってくるとか、そういう多様なプレーヤー、逆のプレーヤーと取引するとかということは考えられるんですが、ガスの場合にはその類いの取引というのはほとんど考えられなくて、その意味で相対的にニーズが小さいのですね。

 それからもう一つは、パイプライン網がつながっていないものですから、大阪ガスが売ったものを東京ガスが買うとか、そういうような類いのものというのがとても難しいということになり、分断した、東京の市場、大阪の市場、東邦ガスの市場、こういう格好にならざるを得ないということになり、そうするとプレーヤーの数が相当制約されてしまうということになり、本当に競争的な市場ができるのだろうかというのがとても心配。

 そうすると、相対取引というのがやはり主役となるということを考えると、相対取引で競争基盤を整備するというのを先行させるのがより現実的なのではないかと思います。

國重委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

江田委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要でございます。

 きょう、四人の参考人の方、そして午前中を含めて八名から貴重な御意見を賜りましたこと、私からもまずは心から御礼申し上げます。本当にどうもありがとうございます。

 きょうは、ガスの関係に関してを中心に、電力との比較もしながらお話を進めていきたいというふうに思っております。

 先ほど、電力は三弾目、ガスは一弾目という表現がございましたけれども、一弾目が最終弾、私も正直言ってそういう感覚でおるんですね。

 そこで、必要性ということでございますが、まず尾崎参考人にお伺いしたいんですが、日本の都市ガスというのは高いんでしょうか。

尾崎参考人 それはどの断面で考えるかということにもよるというふうに思います。

 確かに、最近、五年、十年ぐらいかもわかりませんけれども、アメリカの場合はシェールガスというのがどんどん産出されるようになりまして、結果的に生産者同士が競争するという形になって、ガスの値段がどんどん下がってきました。そういう点では、昨年までは日本のガスがアメリカのガスに比べてかなり高かったというような状況にあります。

 それから、ヨーロッパに比べましても、やはりヨーロッパはパイプラインと、それから国産といいますか、地域で生産されるガス、それからLNGという形で供給されておりますので、ある程度の供給側の競争というのも働いています。したがって、アメリカほどではありませんでしたけれども、ちょうど日本とアメリカの中間ぐらいの値段でガスが取引されました。

 日本の場合は、残念ながら、今のところは大部分がLNGという形で供給されておりますので、そういう点では、特に昨今、LNGの需給の逼迫ということもありまして、値段が上がってきました。ただ、日本の場合は天然ガスは原油とリンクしている部分が多くありますので、したがいまして、今後はかなり下がっていくのではないかなというふうに思っております。

田嶋(要)委員 プロパンガスとの比較においていかがですか。もう一言だけ。

尾崎参考人 プロパンガスにつきましては、これも、プロパンガスは非常に値動きの激しいガスでありまして、原油と必ずしもリンクはしていないんですけれども、我々の感覚でいえば、プロパンの方が熱量当たりはLNGよりも平均したら高いのではないかなというふうに考えています。

田嶋(要)委員 プロパンガスの方が少し高いということですね。

 それでは、同じ御質問を杉本参考人にお伺いしますが、消費者の目線から、日本のガス料金というのは基本どういうふうに世の中は受けとめているという印象ですか。

杉本参考人 ガスというのは、高いとか安いとか、何かそういう意識が余りなくて、預金口座からおろされていっちゃうというせいもありますけれども、いつも、ひねればというかスイッチを押せば出てくるというような感覚で、余り高い安いということは意識がないんですけれども。

田嶋(要)委員 大変大事な肌感覚を言っていただいたと思うんですが、要は、話題にもならないと思うんですよ。だから、そもそもそういった分野を、今回、電力とセットで改革するところのプロセスが、私は、何か釈然としないものをやはり感じるわけでございます。

 そこで、前回の委員会でも申し上げたんですが、例えば、先ほど、午前中の委員のお一人が、中小企業の経営者でございまして、これだけ電気代が上がって大変だという悲鳴を上げておられる。それはそれで身につまされますね。まさに、原発事故もあり、こういう状況にある。ところが、ガス代がこれだけ上がって大変だという声は、日本全国どこからも上がっていないと私は思っておるんです。

 それから、もう一つ、何から電気ができているかということが今すごく関心が高まるということで、先ほど、生協の方ですか、情報公開の義務づけ、こういう話がございました。私のところにもいろいろ来ていただいております。要は、本当に再生エネルギーはできているのか、原発なのか、そういうことが国民的関心事になってきていますが、ガスが何からできているかといったって、ガスしかないわけでありまして、そういう意味でも、全く関心が出ようがない。

 そして、もう一つ、私が思うのは、イノベーション、技術革新ということであります。

 電力をめぐり、今何が起きているか。キーワードだけでも、法律の、FIT、再エネ、スマートメーター、自律分散型、双方向、それから、ディマンドレスポンス、蓄電、あるいは、送電網は、将来超電導、こんないろいろなことが出てくる。

 ではと思って、キーワードをグーグルで入れてみました。ガス事業、イノベーション、何にも出てこないんですよ。申しわけないですけれども、これは、実は大阪ガスさんのイノベーションのホームページが出てきたんですね。しかし、そこを見てみると、末端のガスを利用する機器に関するイノベーションの話と、最上流のいわゆるシェールガス、こういったところのイノベーションというのは私は当然あると思うんですが、こういった技術の面でも、余りにも私は違う感じを印象で受けるんです。

 そこで、お伺いをします。

 であるにもかかわらず、自由化、そして、今、料金の話も冒頭させていただいた。仮に、自由化によって料金が上がるとしても、この自由化には価値があると考えるかどうか。その点に関しまして、尾崎参考人、松村参考人、そして浅田参考人からいただきたいと思います。

尾崎参考人 PRが下手で申しわけございません。決して、都市ガス産業がイノベーションがないとか、そういうことはないというふうに思っております。

 今、盛んに我々がプロモーションしていますのは、エネファーム、家庭用の燃料電池を一生懸命普及拡大しようというふうに思っています。そういう点では、これはかなり長期に取り組んでいるイノベーションであります。

 それから、ガス代が非常に話題にならないということをおっしゃっていただきましたけれども、実は産業用、それから商業用といいますか、ビルとか病院とかホテルとか、そういうところは非常にガス代に対してシビアな要求をいただいております。特に、産業用などで大量に使われるところは、ガス代が高いと燃料を切りかえたりされます。したがって、常に、ガス代が変わるときには、お客様に呼びつけられて、非常に説明をしなきゃいけないという状況になっております。家庭は、若干そういうプレッシャーは小さいのかもわかりません。

 そのほかにも、例えば供給システムにつきましても、これは、耐震性を上げるために鉄のパイプをポリエチレンのパイプにかえていく、それとか供給圧力を上げていくというようなことをやっております。

 それから、天然ガスの生産方式も、シェールガスを何とか日本へ持ってこようというようなことを考えて、いろいろやっているところです。

 世の中、余り見えないところではありますけれども、決してイノベーションをやっていないというわけではございません。

松村参考人 まず、私自身は、前提となる認識が大分違います。日本のガスの価格は高いと思っています。

 高いというのは、シェールガスが出てきて差が開いたのではなく、シェールガスなどという議論がされるはるか前から内外価格差というのはずっと審議会で議論されてきて、したがって、差が開いたということはあるかもしれないけれども、いずれにせよ高かったという認識があり、したがって、部分自由化というのが始まったんだ。現在でも、決して世界に誇れるような安価な調達というのはしていないし、安価な価格で供給はしていないと思います。

 それから次に、プロパンに比べてという点。

 もしプロパンに比べて燃料費が都市ガスの方が高かったとすれば、日本全国ほぼ全てプロパンで供給されているはず、設備費が都市ガスの方がかかるわけですから。したがって、当然に都市ガスの方が低いし、だから、一定程度普及している。だけれども、日本全体で半分しか普及していない、国土面積でいうと五%ちょっとしか普及していないというのは、一つの大きな原因はガス価格が高いからだと思います。

 それから、全体として天然ガスシフトが進んでいないというのは、いろいろな理由がありますが、諸外国に比べて天然ガスのシフトが進んでいないのは、それもやはり価格が高いという要因があるのだと思っています。

 その意味で、価格を下げる努力というのはいろいろな形でしなければいけない。システム改革というのは、そのための一つの重要なピース、唯一の手段ではないけれども、そうだと思っています。

 価格が高くなっても自由化する価値がありますかというふうに言われれば、もし確率一で、価格が高くなるとわかっているのにもかかわらず自由化すべきですかと言われたら、私はすべきでないと思います。ただ、その認識が一致しているかどうかということだと思います。

浅田参考人 率直に申し上げて、自由化して価格が上がってもいいのかと言われたら、消費者はそんなことは期待していない。当然だと思います、上がることは歓迎しませんし。

 ただ、やはりこの論議の中では、しかし、新規参入がなくて、一社あるいは数社独占になって、いわゆる規制なき独占というような形になるのであれば、これはまた別の問題として大変重要な新しい問題が惹起される。

 先ほど申し上げましたけれども、監視委員会の中に、例えば消費者の声というふうなものも反映できるようにしていただきたいなというのはそういう意図もございまして、そういうことはきちっとウオッチしていかなきゃいけないというふうに思います。

田嶋(要)委員 ありがとうございます。

 イノベーションを何もしていないというのに失礼があったらおわび申し上げますが、そういう意味ではなくて、自由化を正当化できるような状況がかなり違うという印象を私は持っているということでございます。

 もう一点、今、松村先生からおっしゃっていただきました、高いという御指摘でございますが、やはり、日本は、日本国内で生産をしていない、ガスを取り出していない部分が多いわけでございますので、基本的に、液化して、また気化するというプロセスも含めて、当然コスト高になりがちだ。そこの部分を差っ引いてもという、そういうことをおっしゃられているんだろうというふうに思いますが、さらに私も研究をさせていただきたいと思います。

 次に、この自由化の中でのいわゆる法的分離について、お尋ねをさせていただきます。

 松村先生の方から事前にいただいておった資料を参考にさせていただいておるわけでございますが、先ほども御指摘ございました二〇一五年一月の小委員会の報告書でございますが、これを素直に読むと、やはり先生の御意見というのが一番ある意味際立っていて、ほかの委員の皆さんは法的分離の導入を直ちに決めるべきとは主張していない。先生だけがそういう御主張をされた。なぜお一人の主張が通ったのかよくわからないわけでございますけれども、ほかの先生、午前中の橘川先生なども含めて、慎重論をおっしゃっております。

 先ほどからの先生のお話の中で、失敗は許されないという御指摘が一つ出ました。失敗が許されないし、そしてもう一方、逆の側面からいうと、民間のガス会社三社が提案した自主的な取り組みで本当に十分なんだろうか、それはそれで全くそのとおりの質問は当然出てくると思いますが、その両面のリスクを考えたときに、失敗は絶対許されないという言葉の方が私は非常に重く感じるわけでございます。であるならば、法的分離ということをこの段階で法律でピンどめする必要はなく、方向性としては法的分離を視野に入れつつも、しかしピンどめする必要はないんじゃないか。先生は、むしろ、ピンどめしてそこから考えることが大事だという御主張をされていますけれども、私はそこは若干違和感を感じるわけですが、なぜでしょうか。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

松村参考人 まず、委員会で私一人が強く法的分離を主張したというのは事実で、もう一年議論を続けるべきだということを言った人と、そもそも必要ないということを言った人もいた。

 それで、なぜおまえの意見が採用されたのかに関しては、報告書は私の意見が採用されたわけではない、両論どころか四論併記という格好になっており、したがって、委員会の意見としては収束しませんでした、どうしましょうという形で出し、その中で一番説得力があると思われたものが採用されたと私は勝手に思っております。

 それで、具体的に、保安に関しては制度設計を間違えると確かに大変なことになるので、この点は事業者の意見を十分よく聞いて、何が問題なのかというのを十分時間をかけてやる、だから二〇二二年まで、こういうことになったんだろうと思うんですが、なぜ法的分離をすると保安に直ちに大きな不安が出てくるのかという理論的な根拠を委員は誰一人として出さなかったということも、きちんと事実として考えていただきたい。

 それは、自由化すれば、一般ガス事業者が小売市場で完全に負けて、新規参入者が全部需要をとっていくということだって原理的にはあり得るわけです。そうすると、法的に分離された会社どころか所有権まで完全に分かれた会社が小売を担い、ネットワークは今の一般ガス事業者が担う、こういう状況があらわれるのにもかかわらず保安はちゃんと維持できるということで自由化が多くの賛成を得たにもかかわらず、なぜ法的分離をすると深刻な保安の問題が出てくるのか。

 そういう素朴な疑問に対して、反対の意見を言う委員はそれはもう勝手に言ってくれればいいんですけれども、何でというようなことをちゃんと説明できなかった、それが採用されなかったということが私はそれほど変なことだとは思わないのです。

 ただ、いずれにせよ、保安の問題が物すごく重要だということは十分承知していますので、事業者の意見を十分聞きながら、法的に分離するということによって決して保安の問題が起きないように、行為規制については十分時間をかけてやっていくべきだと思います。

田嶋(要)委員 先ほど尾崎参考人がおっしゃったとおり、やはり既存の組織側の立場としては、当然、新しいことをやれと言われると警戒するというのは、私は自然の反応だと思いますね。

 ただ、先ほど松村参考人もおっしゃったとおり、失敗が絶対に許されないほどに大事なのが人の命にかかわる保安の問題なので、そこはどうなのかな、そういう説明ができないからおかしいというふうに本当に言い切れるのかなという感じも私は持っておるわけでございます。

 その保安の問題に加えて、資金調達の面と、それから投資が逆にブレーキがかかってしまうんじゃないか。ヨーロッパでは格下げがどんどん出たという話もございまして、それは保安とはまた違う話でありますが。

 会社の規模も小さくする。ただでさえ、二百社ある会社のうち従業員三百人以上というのは本当にわずかでございまして、定義上、製造業その他に当たるそうでございますが、都市ガス事業は三百人以上が九三%を占めるわけでございます。

 そういった中で、本当に、これからガスの使用をいっぱいふやそう、導管をふやそうと言っているのに、そういう観点からすると今の保安の点に加えて若干マイナスじゃないかなという懸念もありますが、改めまして、先生、どうですか。

松村参考人 まず第一に、法的分離を三社に限定したというのは、まさに先生が御懸念のとおり、非常に小さな会社というものにそれを強制し、法的分離にはある種の固定費用のようなものがかかりますから、規模が小さくなれば小さくなるほど影響は大きくなるということがありますので、かなり大きなところに限定したということだと思います。まず第一にそれですね。

 次に、資金調達の問題が問題でないとは思いません。したがって、資金調達面で一番中立性が高いのは、それぞれの子会社、ネットワーク部門が独自に起債し、販売部門あるいは調達部門が独自に起債するということをすれば中立性は最も高まるのかもしれないけれども、そういうやり方しか認めないということはしないで、例えば持ち株会社が全体として資金調達するということも認めるべきではないかというのは重要な点だと思います。

 それは電気も同じだと思います。電気でも、基本的に持ち株会社が調達することは禁止するという方向に進んでいないと思います。それを、ガスの方ではそれを禁止するという不自然な行為規制をつくるなどということは絶対にないと私は思います。少なくとも、私が委員であれば絶対にそんなことは支持しないと思いますが、そういう点について万全のことを考えろということに関しては全くそのとおりだと思いますので、資金調達面でも支障のないように、持ち株会社が資金調達できるという道を閉ざさないということを基本に考えることになると思います。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

田嶋(要)委員 先ほど松村先生が縦割りの例を出されました、電力の方でもガスの方でもということで。確かに、そんな弊害は一日も早くなくしていきたいというふうに考えますが、最後の質問は尾崎参考人と松村参考人にお伺いします。

 それでは、ガスの三社の、非常に限定した三社の法的分離、それなくして総合エネルギー会社というものをこの日本に広げていくことはできないのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

尾崎参考人 総合エネルギー会社になるということと法的分離をすることは全く関係ないと私は思います。

 現に、大手のガス会社は、コージェネレーションや発電所を建設したりして、電気とガス、そしてそれにかかわるエネルギーサービスという営業をやっておりますので、法的分離をしたらできる、しなかったらできないというようなものではないというふうに理解しています。

松村参考人 全く同意見でして、私のスライドがわかりにくくて申しわけありませんでした。私は、これは自由化をすることが重要であるということを説明するために書いたつもりでして、法的分離をしなければ総合エネルギー企業は生まれないというつもりで書いたのではありませんでした。法的分離はネットワークの中立性という問題ですので、全く別の問題です。

田嶋(要)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

江田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 大阪維新の会の木下智彦でございます。

 本日は、お忙しいところ、四人の参考人の方々がいらっしゃいまして、本当にありがとうございます。

 一番最初にお話をさせていただきたいのが実は尾崎会長なんですけれども、今尾崎会長の御経歴を調べていましたら、私の高校の大先輩でございまして、こういう中で質問させていただくのは本当に光栄でございます。

 私、今ちょっと大阪維新の会というふうに言ったら、後ろからいろいろ言っている人もいましたけれども、なぜちょっと言わせていただいたかというと、大阪で生まれて育ちました。大阪ガスさんに経営者としてお話をちょっと聞きたいんですけれども、大阪ガスさんは、私が生まれて育ってきて、独占的な事業体であったからというのもあるんでしょうけれども、非常に地域密着型。

 検針に来られる方、先ほどから言われている保安関連の方であるとか、そういう方々を見ていても、検針に来られたりいろいろしたときにもおじいちゃん、おばあちゃんと長い間お話しされて、そうやりながら機器も売られるんですね。そういうふうにしながら、うちの家には大阪ガスさんの機器がすごくたくさんあるという状態で、非常にうまい商売をされていたなというふうに思っているんですけれども、これは皮肉ではなくて、大事なことかなと思うんですね。

 それは何かというと、やはり保安面、安全面といったところでは、正直、今いろいろ聞いていて、昔のことを思い出していたんですけれども、非常に安心感がありました。私の家には、当然、こんろであるとか、オーブンだとか、炊飯器もそうですし、たこ焼き器みたいなものも大阪ですからありまして、それは全部大阪ガスさんだったんですよ。

 私見なんですけれども、一つだけ違うガス機器がありまして、それは大阪の昔の家庭だったらよくあったんですけれども、普通の食卓の真ん中に切り込みが入っていまして、こんろにして使える。それは家具屋さんみたいなところが販売しているもので、やはり、これは本当に申しわけないですけれども、たまたまいつも壊れるのはそのガスがついている食卓だけだったんですね。

 そういうのを考えてみても、非常に安心感があるし、例えばうちの母親は、ガスを使ったお料理教室もすごく大阪の地域では浸透していたりとか、そういう意味ではすごくいいあれだったと思っているんです。

 もう一つお話を思い出しました。その機器の中には、子供のときからあるんですけれども、ガス警報器「ぴこぴこ」というものがありまして、頭の中にその「ぴこぴこ」というのが鳴り響いているんですけれども、そういうものでも安心感があった。

 それが、今回の法改正によっていろいろな事業者が入ってきたときに、家庭それぞれでそういう機器の統一性が、今でもだんだん崩れてきてはいると思うんですけれども、その統一性がなくなってきて、保安であるとか町の安心とか、そういった部分ではどうなっていくんだろうなというのが想像がすごくつきにくいところなんですね。そういったところを会長はどういう対策を考えられているのかな、もしくは、どういう形で経営的な部分でやっていこうと思われているのかというところを聞かせていただければと思います。

尾崎参考人 ありがとうございます。長年大阪ガスを御愛用いただいて、心から感謝いたします。

 まず、おっしゃいましたように、ガス会社のビジネスモデルは、前にも説明しましたけれども、需要開発というのをやります。需要開発というのは、やはり器具を買っていただくということから始まります。その器具を買っていただいて、ガスを使っていただいて、それでもし利便性を認識していただいたらそれが広がっていくということで事業が発展してまいりました。これはこれからもずっとやっていきたいというふうに思いますし、よりよい、より効率的で、より使いやすくて、より便利な器具というのを各御家庭に買っていただけるような活動をしていきたいというふうに思います。

 日本のガス会社に特徴的なのは、器具を使っていただく、ガスを使っていただくということに関する保安というのもガス会社が担務しています。厳密に言いますと器具の商売と保安の商売は違います。したがって、大阪ガスだけでなくて、リンナイさんとかパロマさんとか、幾つかのガス器具メーカーも当然同じように売っていらっしゃいます。ただ、保安については、それをひっくるめてガス会社が担務しているところです。

 今後、器具と導管の中立性といいますか、導管事業といわゆるガスの小売の自由化というので、必ずしもそこがひもつきにしてやっていける、今までもひもつきではないんですけれども、ひもつきにしてやっていけるかというと、それはできないというふうに思います。したがって、そこでの連携といいますか、小売の事業者と導管の事業者がきちっと情報交換をして安全に使っていただくということは、新しい仕組みをつくってやっていく覚悟であります。

 それから、もちろん、我々はガスの小売、器具の販売ということでもう百年以上やっておりますので、その部分は新たな小売事業者としてさらに力をつけていって、ガスの器具を含めた販売をさらに進めていきたいというふうに考えています。

 以上です。

木下委員 ありがとうございます。

 そこで、消費者代表という形で杉本参考人に。

 今のお話を聞いていて、消費者にとって一番大きな問題というところでいうと、機器の安全性という部分では、私の感覚ですけれども、独占企業の機器であったために安心感が非常に高かった。そうはいいながら、消費者としてはいろいろな機器を選ぶ権利というものは持っていたと思うんですけれども、今後、そういったところに今回の法改正によっていろいろな事業者が出てきます。機器も恐らくそれに合わせてセット販売みたいなことをするようなところも出てくる可能性は僕はあるなと思っているんですけれども、その辺、どういうふうに感じておられているかといったところを端的にお話しいただけますか。

杉本参考人 多分、セット販売というか、そういう機器の点検時に器具を売ったりということはふえてくると思うんですね。それで、いろいろな人が自分のうちに入ってくると、やはり煩わしいということもありますし、それのところでお年寄りが悪徳商法みたいなのにひっかかるということも多数出てくるのではないかというふうに不安を感じております。

 ですから、器具は、自分でやはり自分の家庭に合ったものをちゃんと吟味して買いたいなというふうに思います。

木下委員 ありがとうございます。

 時間がないのでどんどん行きますが、これも、尾崎参考人、会長の方からお聞かせいただきたいんです。

 私は地元が豊中市。豊中に、この間ちょっと委員会でもお話ししたんですけれども、千里ニュータウンということで、熱供給事業を日本で初めてやった事業者、その事業者は、一〇〇%大阪ガスさん出資でやられているということなんですけれども、そこで見ていて、最初にお話しいただいたときに、今回の法改正に賛同されるというふうにおっしゃられていたんです。

 実際に、私が思っているのは、そういう千里ニュータウンという昔の古い団地、熱供給していたようなところ、それがどんどん、今、三十年、四十年たって建てかわっていく。そうすると、一つ建てかわると利用者が急激にぼんと減ってしまう、そういう可能性が高い。といいながら、千里ニュータウンの周辺のところでは、事業としては、周辺の会社さんであったりとか商業施設であったり、そういうところにも供給されているので、そういう緩衝部分はあるとは思うんですけれども、一般的な熱供給事業をやっていらっしゃる事業者というのは、常々、そういうマンションの建てかえ、団地の建てかえであるとか、そういうことで、とても事業リスクを抱えていらっしゃるんじゃないかなと。

 その中で今回の法改正があることに賛同されるというふうに言われていたんですけれども、そこがどうしても私的には余りまだ理解ができないんです。どういった意味で賛同とおっしゃられているのかというところをもう少し詳しく教えてください。

尾崎参考人 熱供給事業の場合は、まちづくりといいますか、町の発展、そして町の変化にどうしても対応していかなきゃいけない部分があるというふうに認識しております。

 そういう点では、町というのは、二十年、三十年、四十年とたちますと、当然形が変わっていく。そのときに、やはり、規制という形で、今までどおり全ての人に同じようなサービスの提供をしていく、そういうことではなくて、新しく建った施設にはある意味では自由度の高いサービスの提供、熱の提供ということができる方が、もちろん、町が衰退していくという前提に立ちますと、いずれにしても苦しいわけですけれども、維持発展していくという前提に立ちますと、新しいところに新しい形態で供給できるという余地がある方が、我々としたら事業運営がやりやすくなるというふうに考えているところであります。

 したがって、自由度が高まる、規制でない部分がふえるということは、そういう町の変化に対応する力がより増していくのではないかなというふうに考えているところです。

木下委員 ありがとうございます。

 次に、これはちょっとお答えできる方々にお答えいただきたいんですけれども、ガスの輸入量なんですね。輸入量というか、輸入割合、LNGですね。割合を見ていると、日本の輸入の六五%以上が、電力会社が輸入されて使われているという形で、今回、電力も自由化されていく、それからガスも自由化というか、こういう形になっていくというふうにすると、実際に、ガスの事業というのは、やはり、規模の経済というのを考えたときに、輸入量の多い今の既存の電力会社が相当恩恵をこうむる可能性が私はあるんじゃないかなと。

 端的にそれを言えるかどうかという問題はありますけれども、ましてや、電力会社が、一般担保つき債券というものが二〇二五年ぐらいまで残るという状態の中で、資金調達力は残るわけです。

 しかも、法的分離がされるといいながら、持ち株会社も一般担保つき債券がまだそれまでの間起債できるという形で相当な資金調達力があるというふうになると、輸入して供給するというところと、それから、小売部分についても、安定供給のために使うんだといいながら、持ち株会社が小売に対する投資をして、いろいろなところで買収みたいなことを起こしたりとかすることだって考えられる。

 実質的に、そういうふうになれば、寡占状態になる可能性もはらんでいるというふうに思われるんですね。そうはいいながら、規制するため、監視するための委員会があるというふうには言っていますけれども。

 そういうことを考えたときに、一つは供給者側の立場というところ、小売の立場、それから消費者の立場という、それぞれの考え方があると思うんですけれども、そういうおそれに対してはどういう感覚を持たれているのかということをお聞かせ願えればと思います。お答えできる方で結構です。

尾崎参考人 今おっしゃいましたように、特に原子力発電がとまっている状況で、電力会社さんのLNGの使用量がかなり大きくなっているのは、間違いない事実です。ただ、これから先、電源構成が変わっていく中で、本当に電力会社さんがこれだけの量を輸入し続けられるかどうかというのは、私にはわかりません。

 しかし、今まで電力会社さんはかなり大量のLNGを買っていらっしゃいましたので、部分自由化で六割のマーケットが今自由化されておりますから、そこでは当然のごとく競争が起こっているというふうに認識しております。特に、大阪ガスの管内では、ガスとガスのかなり強い競争が起こっているのは事実であります。

 したがって、将来的にもし電力会社さんが、どんどんガス事業をやって、天然ガスを調達されるというのであれば、我々はそれに対して商売として競争していく、我々はサービスに付加価値をさらにつけていく、あるいは、我々も電気の方で販売していくというようなことで、これは、まさに今行われている自由化がさらに進んでいくプロセスではないかなというふうに認識しています。そこは、好むと好まざるとにかかわらず、競争していくことになるというふうに思います。

松村参考人 まず第一に、現実の世界において、規模が大きい方が安くLNGを調達できているかというと、そうなっていません。東京電力と東京ガスに比べて、調達量は確かに電力会社の方が大きいんですが、その大きさを生かして安く調達していたということは今までなかった。あるいは、東京ガスと大阪ガスでは、やはり規模が違いますが、大阪ガスの方が圧倒的に高いLNGをつかまされていたと私たちは認識しておりません。

 ただ、これは問題意識は持つ必要があって、大きくなって、それでコストを下げようというような発想を促すようなことは、何らかの形で考えていかなければいけないかもしれない。その場合には、例えば共同調達のようなものに関して、今後も事業会社さんには真剣に考えていただきたいし、邪魔にならないような規制改革というのも重要かと思います。

 ただ、電力会社が震災前からガス会社よりもっと多く輸入していたというのは確かに事実です。発電用にLNG基地を持っていて、それをすぐ転用すればガスの販売の方に持ってこれるというのも事実ということで、その意味で、物すごく強力なコンペティターであるということになると思います。

 ガス会社も電力施設は持っていますが、これは、総括原価と地域独占に守られた形で発電所をつくったのではなく、完全に自由競争の世界でつくった発電所。それに対して、電力会社が持っているLNG基地というのは、総括原価と地域独占に守られたところでつくられた基地。それで本当にイコールフッティングと言えるのかというようなことについても、確かに考えていかなければいけないことだと思います。

 それに関しては、私は、王道は、電力に関してもガスに関しても、競争基盤をきちんと整備し、寡占化が起きないように、きちんと競争メカニズムが働くような基盤を整備していくということによって、その懸念というのを払拭していく。その意味では、電気の方がその必要性というのは大きいという議論が十分あり得るとは思います。

 一方で、ガスの方は、確かに、電気は強力なコンペティターなんだけれども、ほかのコンペティターが少ないじゃないかということに関しては、やはりそちらも考えていく必要があるのかと思います。

 以上です。

木下委員 ありがとうございます。

 松村参考人、もう少し突っ込んで、今のお話を聞いていてお聞かせ願いたいんですけれども、確かにLNGの価格というのはそんなに変わらないと。その一つの要因というのが、日本の輸入が石油価格と連動している形になっているということだと思うんですね。

 そういいながら、今後シェールガスのお話であったりとか、そういうものも出てくる。今の感じで言うと、全てに商社が絡んで、全体的な形で輸入してきて、またそこを、いろいろなユーザーというのか、電力会社であったり、ガス会社に対して一次的に供給しているような形になっているということだと思うんです。

 今後、恐らく、一つは、石油価格連動型の形がこのまま維持されていくかどうか。これを払拭していった方が本来であればいいとは思っているんですけれども、そういう可能性というのは、シェールガス等々ほかのエネルギー源ということもあると思うんですけれども、その辺についてはどういうふうに見込まれているかというところを最後にお聞かせいただければと思います。

松村参考人 原油価格連動の輸入価格というのが、本来売り手にとっても買い手にとっても合理的だとは到底思えないので、これは何らかの形で変えていくべきだと思います。

 ただ、原油価格がこの後さらに急落するなんということになって、実は原油価格連動の方が得だったなどというようなことだってあり得なくはないので、一定の割合、そういうようなタイプの契約が残るということを事業者が自主的に選択するということであれば問題はないと思うんですが、いずれにせよ、その割合が高過ぎるというのは間違いない。

 それから、私は、売り手に足元を見られて、そういう合理的だと思えない契約が変えられない、こういう状況になっているのではないか、その意味でも交渉力を高めていくということは不可欠なことだと思います。

 私は、自由化がその後押しにならないかなと期待しています。自由化の市場では、高値づかみをしたら、本当に、競争者に負けちゃってやっていけなくなるわけでして、足元を見られるというようなことが相対的に減るのではないか。本当に死に物狂いで、一円でも低い価格というので調達しないと生き残れないという環境は、そういう意味でも国策にも沿うような改革なのではないかと思っております。

木下委員 ありがとうございました。以上で終了いたします。

江田委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 参考人の皆様、本日はありがとうございます。

 まず、松村参考人にお伺いします。

 きょう配付していただいた資料の十二ページの中で、「自由化しても競争が機能しなければ、消費者は実質的な選択の自由が与えられず、潜在的な新規参入者も実質的な選択の自由が与えられず、ただ現状の独占事業者が規制からの自由、自由に値上げする権利を与えられるだけになりかねない。」と。

 つまり、規制なき独占を招きかねないというふうにおっしゃっているわけなんですが、現在、参考人は、電気料金審査専門委員会の委員として、各社の値上げ申請の原価算定をされておられます。

 二〇一四年の二月七日の日本経済新聞の記事を見たんですけれども、「電力システム改革進展へ 広域運用の環境整備を」という表題の記事で先生がお話しになっているんですけれども、その中で、「査定の過程で、一般電気事業者の経営がいかに非効率的で、過大な費用を原価に算入してきたかが明らかになった。」と述べられております。この間、ブラックボックスとも言われた総括原価に三十年ぶりにメスが入れられたという点で、審査専門委員会の皆さんの果たした役割は非常に大きかったというふうに私は思っております。

 委員として査定に当たってこられた中での所感と、審査の中で明らかになった、先ほど紹介したような、非効率的な経営ぶり、過大な費用、これについて具体的な例を御紹介いただきたいと思います。

松村参考人 ありがとうございます。

 奮闘して、努力してきたかいがあったかなと思って、ありがたく拝聴いたしました。

 まず第一に、具体的にどういうものかというのに関しては、私たちは守秘義務契約というのを結んでおり、それを公開の場で軽々しく言うというのは信頼性を著しく損ねることになりかねないので、大変申しわけないんですが、どうかお許しください。

 ただ、もし、全てのところで過大な見積もりが全くなかった、盛り込みがなかったとすれば、私たちは、査定の結果として申請どおり認めますということになったはず。実際には全ての申請に対して大きく査定したということから見ても、当然合理的とは思えないようなコストが相当入っていたということは言えるかと思います。

 さらに、それにさかのぼって、具体的にルールというのを整備した段階で、こういうコストは認めませんよということをあらかじめ言った。自主的に今まで料金に入っていたものを落とした、こういう面もあるわけで、実際の審査で査定されたというようなもの以上に自主的にカットしてきた部分というのも、今までであれば素通りで認められていたというようなことになるかと思います。オール電化営業の類いのものというのは典型的にそうなのだと思いますが、ほかのことは申しわけありませんが細かくは申し上げられません。お許しください。

真島委員 査定の中でどういうものが落とされたかというのも、私もこの間、この委員会の中でも御紹介もしてきたんです。

 松村参考人に重ねてお伺いしたいんですけれども、配付資料の二十ページで「託送料金の姿がまだ見えない」というのが冒頭から指摘されまして、従来の遠隔地の大規模電源から大送電線で需要地まで運んでくる一般電気事業者に有利な託送料金体系を変えて、大規模電源も分散型電源もどちらも重要という観点に立った託送料金体系にすべきだというふうに提起をされておられます。

 原発に代表されるような大規模集中電源中心の電力供給システムを転換して、再エネ電源を大いにふやす、地域で電気をつくって地域で使う地産地消型にするというのは私も必要だと思います。そのためにも託送料金体系を変える必要があるという指摘は、非常に大事だと思うんです。

 ただ、第二弾の電気事業法改正で、託送料金は経産大臣の認可となる、それは事業者間取引だということで、これまでのような公聴会といった消費者や国民が参画する仕組みがなくなってしまったんですね。それで、小売料金に託送料金が含まれるわけですから、私は国民の中にその中身を公開する必要があると思うし、国民参画の仕組みというのは、私は、この間の公聴会などは機能していたと思いますので必要だと思うんですけれども、託送料金についてどのような制度設計が必要だというふうに考えておられますか。

松村参考人 託送料金というのは、いわば企業の構成項目の一つということになっており、小売価格そのものではないということから、公聴会という制度にはなじまないのではないかと思います。

 ただ、確かに小売価格に大きな影響を与えるというようなこともありますので、この料金規制というか、それが適正かどうかを見るという監視委員会だとか、そういうところに消費者の代表が参画しなくてもいいのか、そういう問題提起だとすると、それは、消費者の代表が参画するということも選択肢の一つとして十分あり得ると思います。そういう形で道を開く方がはるかに自然なのではないかと思います。

真島委員 貴重な御意見をありがとうございます。

 次に、杉本参考人と浅田参考人にお伺いいたします。

 日本生協連の資料をいただきましたけれども、消費者意識調査というカラー刷りのもので、電気料金が値上がりするとしても再生可能エネルギーを利用したいが五割半、再生可能エネルギーの利用を促進している企業や組織を応援したいという方が九割弱ということで、非常に高いなというふうに思ったんです。

 この間、東日本大震災や福島の原発事故を通じて、消費者の皆さんが今まで当たり前のように使っていた電気がどこでどうつくられて、どう運ばれてきたのかということや、特に、原発によって多くの電気がつくられていたということを改めて実感し、同時に、福島の事故に思いをはせて、いわゆる電力、電気ということについて、深く皆さん考えるようになったと思うんですね。

 私、地元が福岡ですので、先ほどもちょっと言いました、九州電力の公聴会、会議録などを見ました。その中で、陳述された消費者の皆さん一人一人が、正確で十分な情報を得たい、また納得できる説明をしてほしい、公正で持続的な社会の形成に自分たちも積極的に参加したいんだという強い思いを表明されているというのを感じました。

 消費者がこのように直接経済産業省とか電力会社に意見表明する機会というのは、非常に画期的な場だったというふうに思うんですね。また、電気料金の仕組みの中では、事業所管官庁である経産省という視点だけではなくて、消費者庁が消費者の視点から原価を独自に精査していくという二重の視点が働いていました。

 そういう点で、杉本、浅田両参考人にお聞きしたいのは、現行の電気料金審査の仕組みについてどう評価されているのかということと、自由化後、消費者参画の仕組みについてどのようにあるべきだというふうに考えておられるか。

 電気料金というのは、私、自由化されたとしても、あくまでも公共料金だと思うんです、料金価格設定が自由化されたとしても。だから、その中で、先ほど来議論されているように、原価や電源構成などの情報開示といったルールづくりがどうしても必要だと思うんですけれども、そういう点についてどのように考えておられるか、ちょっと簡単に教えていただけますか。

杉本参考人 自由化になっても、やはり公共料金だというふうに私は理解しております。

 それで、経済産業省には公聴会というのがありますけれども、それから消費者庁でも審査をしておりますが、それは消費者も入った委員会ですので、大変重要な委員会であるし、これからも続けていっていただきたいというふうに思っています。

浅田参考人 基本的には杉本さんと同じ意見であります。極めて公共性が強いということなので、どこかでやはり消費者の意見をきちっと受けとめられるような制度設計が要るだろうというふうに思います。

 私ども、この間、食品安全基本法という、これも随分審議を国会でいただいて成立して、消費者のために立法化されていったという経過があるわけですけれども、これを見ていますと、やはりその中にも、リスクアセスメント、リスクマネジメント、リスクコミュニケーションと、全体のリスクをアナリシスしていく、分析していくためには幾つかの方法論がある。

 前半のリスクアセスメントであるとかマネジメントというのは、専門領域の部分として先生方の知見というのは使えると思うんですけれども、最後のリスクコミュニケーションというのは、まさに、使われている、一般的な消費者の方々に対する情報提供と、それによるフィードバック、こういう方法もあるわけですから、ぜひ、委員会の形式としても、こういう先行しているいいパターンがあるわけですから、それも織り込みながら御検討いただければありがたいな、こんなふうに思います。

真島委員 どうもありがとうございました。

 尾崎参考人に、LNGの調達について、先ほども議論がありましたけれども、お伺いします。

 昨日、私、藤野議員と一緒に、東京ガスの扇島LNG基地、そして扇島パワーステーションを視察してきました。

 天然ガスのコンバインドサイクルの発電所、扇島パワーの一号機、二号機というのは既に稼働しているんですが、来年の二月からは三号機が稼働する。これを合わせたら約百二十万キロワットということで、原発一基分を超えるガスコンバインドサイクル発電が、私の想像よりも非常にコンパクトなスペースで三基が並んで、百二十万キロワット。しかも、首都圏の真ん前、巨大な需要地のすぐそばに、原発と違ってこうやって立地して電気を送れるというので、非常に目からうろこが落ちた思いがしたんです。

 そういう意味で、LNGというのは、これからエネルギー制約を克服していく非常に重要な選択肢になるというふうにガス業界も言われていますけれども、本当にそのとおりだなというふうに思いました。

 一方で、日本は世界最大のLNGの輸入国で、主な輸入元が電力会社、ガス会社なんですが、この間、いわゆる総括原価というところに、厳しい言い方をしますとあぐらをかいてきたんじゃないか、バイイングパワーがほとんど発揮されてこなかったんじゃないかという問題が指摘されてきました。

 国会でも、これまで、先ほど議論になった原油に連動した高い価格で購入しているという問題だとか、揚げ地ごとに価格差がなぜこんなに出るんだという問題などが指摘されてきたわけなんですが、今後、やはり温暖化対策として、石炭などから天然ガスへのシフト、転換が非常に急がれていると思うんですね。

 そういう点で、業界として、購買力をどう高めて、LNG価格を引き下げる努力をどのように今されているのか、講じられているのか。そしてまた、今後、北米からシェールガスの調達、この取り組みをどのように進められているのかというのを教えてください。

尾崎参考人 決してあぐらをかいていたわけではございませんで、現にガス会社の場合は、もう何度も繰り返しになりますけれども、ほかのエネルギーと完全に競争している状況でガスの販売をやっておりますので、いわゆる市場価格より高く買ってしまうと販売できないというところがあります。したがって、一円でも安く買う、そういうことを常に目指してきました。

 LNGの場合、我々は今三つほど買い方を考えようというふうに思います。

 一つは、いろいろな国、いろいろなサプライヤーから買っていく、すなわち、サプライヤー同士を競争させる、そういう仕組みをもっともっとつくっていきたいなというふうに思います。そういう点では、供給国の多様化というふうなことをこれからも進めていきたいというふうに思っています。最近では、パプアニューギニアからLNGが来るようになりましたし、それから、将来的にはアフリカなどからも購入できるのではないかな、さらには、ロシアからも、パイプライン、またはシベリアから天然ガス、LNGの形で購入するというふうなことをさらに追求していきたいと思っています。

 それから、今おっしゃいましたように、シェールガスというのは原油価格とは違った価格体系を持っている商品ですので、それを日本に持ってくることによって、そして、ほかのサプライヤーに対する刺激を与えるといいますか、競争環境を整えていくというふうなことを考えていきたいというふうに思います。

 さらには、日本の近海にたくさんあると言われておりますメタンハイドレートなどを将来的には資源化することによって、海外だけではなくて国産のエネルギーも利用できる、そういう展開にできたらいいというふうに考えております。

 シェールガスも、二十年前は誰一人現実のものと思っていませんでしたので、これから先、二十年後、いろいろな形で天然ガスを日本へ持ってこれる、そういうことをやりたいというふうに思います。

真島委員 ガスの保安について、先ほども議論がありました。尾崎参考人と杉本参考人にちょっとお聞きしたいんですが、まず尾崎参考人。

 おっしゃっているように、私は、現在のガス会社の保安の体制、仕組みというのは一朝一夕にできたものじゃないと思います。長年にわたって、やはり公益事業者として努力されて積み上げられてきた結果、できているものだと思うんですけれども、特にこの間、都市ガスのLNGへの転換というのは非常に大規模な取り組みだったと思うんですが、その中で努力されてきた内容をちょっと簡単に紹介していただいて、今後、自由化の中で、安全、安心を一層向上させるというふうな決意も述べられておりますけれども、どのような仕組みが自由化の中で必要だというふうに考えておられるかということをお聞かせいただきたい。

 杉本参考人には、消費者から見たガスの保安。

 台所のガス機器の保安がおろそかになれば、命にかかわるといいますか、爆発や火災などにもつながるわけで、特に、二〇〇六年に明らかになりましたパロマ製のガス瞬間湯沸かし器の事故、これが、一九八五年以降、二十一名が死亡して、重体、重症が三名、軽症が三十六名もいたということが後になってわかったんですね。これは大問題になった。後に調べてわかった。

 経産省が縦割りで、いろいろなところから報告が来て、全体像がつかめていなかったということで、長年にわたり事故が放置されていた問題。これを通じて、そういう縦割りを超えた、消費者行政の司令塔として消費者庁が設置されるということにもなりました。

 そういう点で、消費者に安全な使い方を教えてあげたり、あるいは機器の点検も含めて、今後、事業者がどういう役割を果たすべきだというふうに考えておられるか、教えてください。

尾崎参考人 ガスの保安につきましては、大きく分けて二つのフェーズがあるというふうに思います。

 一つは、いわゆるガスの供給導管の保安を確保するということ。これは、建物の中の配管も含めて確保するということ。それからもう一つは、お客様がお使いになるガス機器を安全なものにするということを考えなきゃいけないというふうに思っております。

 先ほどおっしゃいましたように、天然ガスに転換したことによりまして、COを含まない、一酸化炭素を含まないガスになりましたので、生ガスによる中毒というのは非常に減少というか、全くなくなってきております。したがって、CO中毒というときには、不完全燃焼、機器の操作、機器の劣化というところでCO中毒が発生するということになります。

 最初に申しました導管の対策としましては、腐食ということによる事故をなくす。それには、きちっとした防食措置を施す、または、腐食をしないポリエチレン管にかえていくというようなことを事業者としてはやっておりますし、定期的にガスのパイプラインの上を漏えい調査、これも法律で決まっているわけですけれども、やることによって、漏えいがないことを確認しております。家庭用につきましても、いわゆる各御家庭の配管についても漏えい調査を行っております。

 それから、機器につきましては、いろいろな安全装置を組み込んでおります。例えば、鍋が乗っていないと火がつかないとか、火が途中で立ち消えするとガスがとまるとか、地震が起こるとガスがとまる、そういうふうな装置をガス器具に組み込んでおります。それから、CO検知器を各家庭に設置していただきまして、ガスが不完全燃焼することによって警報が鳴るというようなことをやっております。それから、家庭内のガスの微量漏れに対応するために、メーターにそういう機能を搭載しまして、長期的に微量に漏れているときもガスを遮断する。急激にガスが流れたときも遮断する。いろいろなことを現在やって、ガスの消費機器の安全というのも格段に高くなったのではないかなというふうに思います。

 ただ、不完全燃焼というのは、これから先も、いろいろな、お客様の御使用方法によって発生する可能性があるので、こういう点では、これも定期的に、各家庭を訪問したときに、きちっと給排気がとれているかというところを中心に点検していくというふうに考えているところであります。

 以上です。

杉本参考人 今、尾崎参考人もおっしゃっておりましたけれども、ガス機器については、大分、いろいろなことで改善されてきまして、事故がないような器具が生まれてきています。

 それで、今現状で、保安のところは大変うまくいっているんだと私は思うんですね。それを壊してまで何もいく必要はない、今の現状を続けていった方が、安全で安心な生活が送れるのではないかというふうに思っています。

真島委員 時間が来ましたので、以上で終わります。

 どうもありがとうございました。

江田委員長 次に、野間健君。

野間委員 無所属の野間健と申します。

 きょうは、四名の参考人の皆様、大変貴重な卓見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。

 まず、尾崎参考人に御質問したいと思います。

 海外のいろいろな事例、ヨーロッパなどを見ますと、必ずしも、自由化したからといって価格が下がる、ガス料金が下がるというわけでもない結果が出ているわけです。例えば、国内でも地域独占のLPガスはちょっと高値で値がそのまま高どまりになっているとか、そういう例もあるわけです。

 非常に大きな今回のガスシステム改革の目標である、価格の最大限の抑制という意味で、どのような見通しを、これは下がるんだという、なかなかおっしゃりづらいかもしれませんけれども、そのあたりの御意見を聞かせていただきたいと思います。

尾崎参考人 事業者として、必ず下がるんだということはもちろん言えないわけでありますけれども、海外の例も含めまして、自由化とは少し関係のないところでガスの値段が上がったり下がったりしているという事実は、間違いなくあると思います。

 いわゆる天然ガスは、いろいろなところで取引されていて、それなりに市場商品になっています。これは、エネルギー価格全体がずっと高くなってきていましたので、それに引きずられてガスの原料価格が高くなってきているという中で、自由化された市場も、そうでない市場も、それを反映してガスの価格が上がってきているという事実があるというふうに思います。

 現在の日本のガス事業に関しましては、そういう、外生的といいますか、原料価格の変化を除いた部分のいわゆる供給のコスト、固定費部分、それから若干の比例費部分につきましては定期的に我々は値下げをさせていただいていまして、競争力確保という点からもコストダウンについては今まで十分取り組んできましたし、これからもやはり、競争の中でガスを安く提供しなきゃいけないという要請がある以上、そこについては引き続き努力をしていきたいというふうに考えています。

野間委員 ありがとうございます。

 今回、大手三社のみの導管部門の法的分離になったわけですけれども、先ほどいみじくも、そういうことがない方がいいのではないかという本音のお話も出たわけですが、この委員会での議論でも、例えばJAPEXとかINPEXとかそういった一般の導管事業の方々に対しての適用は今後も要らないのか、三社だけでずっと法的分離をしておけばいいのか。いささか法的な公平性といいますか中立性という意味で疑問がないでもないような感を受けるわけですけれども、どのようにガス協会会長としてお考えでしょうか。

尾崎参考人 法的分離につきましては、これからいろいろな制度設計がさらに深められていくということで、実際にガス事業の円滑な運営に関して支障を来さないような制度にしていただきたいというふうに思っておりますし、その中ではいろいろ検証をしていただきたいことも申し上げましたので、それは繰り返しませんけれども、そういう中で行われていくものだというふうに思います。

 それで、本当にガス事業がどんどん発展していくという絵がもしあるとすれば、そういうふうにしたいと思っているわけですけれども、そういう中では、いわゆる導管の法的分離の対象も、業界が変わっていくことによって当然見直されるということもあると思いますし、今回、一般ガス事業者に対しましては、導管に対するいろいろな義務もあれば、ある意味では権利もあるという中で、その権利義務関係をきちっと合わせた上で、本当に、得か損かという言い方はおかしいですけれども、不公平か公平かというのも考えていかなきゃいけないのではないかなというふうに認識しております。

野間委員 ありがとうございました。

 都市ガス事業で、結構、地方自治体というのは、市でガス局をやっているとか、公営企業の形態のところもかなりあるわけですけれども、そういったところが、その地域に新規の事業者が入ってきていろいろな競争が起きてきますと、公営事業的な性格とそういった自由化の競争の中で、公営事業体としてやっているところは非常に厳しくなってくることも大いに考えられるんですが、この辺、自由化の負の部分を受ける公営企業体が出てくるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

尾崎参考人 地方公共団体がやっていらっしゃるガス事業については、ちょっと私も、いわゆる自治体との関係でどういうことになっているかというのは確たる知見がありませんが、一つは、市営といいますか、公営のガス事業でありましても、エネルギー市場という中で見ますと、いわゆる電力、それからLPG、石油と競争してやっているわけでありまして、そういう中では、地方自治体のやっているガス事業だから強制的にみんな使えというようなことはあり得ないと思いますから、一定の競争の中で企業としてやられているというのは事実あるというふうに思います。

 ただ、いろいろなガス新規参入者が入ってきて、いわゆる託送をしろとか、いろいろな新しいサービスを提供するという中で、やはり地方自治体がやっていらっしゃるガス事業は、そういう機動的な対応は少し難しいのではないかな。特に、条例とか議会とかいうところの承認を得つつやらなきゃいけないとしますと、若干難しいところがあるのではないかなというふうに思います。そこをどういうふうにされるのかということについては、各地方自治体が決められることだというふうに考えています。

 以上です。

野間委員 ありがとうございました。

 次に、松村参考人にお尋ねしたいと思います。

 先ほどから保安、安全のことについて、年数をかけてしっかりやるべきだというお話がありました。これは因果関係はもちろん説明できているわけではないんですけれども、海外で、アメリカとかフランスで自由化後に大きなガス事故が結構発生しているということも報道されています。

 きょう午前中、橘川参考人から、これは石油コンビナートのお話でしたけれども、やはり事故が結構最近多発している。熟練した社員の方たちが減ったり、人手が減らされたりしていることによって、通常の運転の際ではなくて、定期点検とか検査のときのいろいろな誤りで爆発事故が起きているケースがあるということからしますと、今後、自由化の、必ずしももちろん欧米の爆発に因果関係があるかどうかわかりませんけれども、そういう懸念があるとすると、法の運営上非常によくないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松村参考人 まず第一に、日本では大口の市場というのは既に自由化ということになっています。大口の市場というのを見て、日本では市場が自由化された結果として大きな事故が頻発しているのだろうかということをまず考えていただきたい。私は、決してそんなことはないと思っています。

 しかし一方で、確かに、家庭用まで自由化すると、対象となる件数は物すごく大きくなるということになるので、その点をきちんと考える必要はあると思います。大きな事故というイメージは、家庭の一軒一軒のところで物すごく大きな事故というイメージではないのではないかというふうに思っておりますので、そういう点からすると、その事例をそのまま引いてきてもいいのかということについては若干疑問を持っています。

 いずれにせよ、ずっと繰り返し尾崎参考人もおっしゃっているとおり、機器のことも含めて、保安のことを十分考えなければいけない。連帯がとれないということによって事を起こしてはいけないということもあります。

 もう一つは、ガスで事故が起きると、起こした人だけじゃなくて、ほかにもイメージの悪化というのが当然出てきて、事故を起こした事業だけでなく、全般として都市ガスのイメージが悪くなり、都市ガス離れということが起こると、とても大変なことになる。

 しかし、これは明らかに外部性ということになるので、市場メカニズムに任せておいて、各自が努力すればいいんだというだけでは済まない、一定の監視が必要だというのは全くそのとおりで、自由化になるとその必要性がさらに高まるということはあるかと思います。その点についてきちんと考えてやらないと、本当に事故を頻発させかねないというような御指摘をいただいたのだと思います。

 制度設計については、その点でも確かに万全を尽くす必要があるかと思います。

野間委員 先ほどの御意見の中で総合エネルギー企業、今回の法の目的としても、国内だけにとどまらず海外にも出ていこうという総合エネルギー企業をつくっていこうというのが一つの目的になっております。

 先ほど尾崎参考人の方からもちょっと指摘されましたけれども、例えば、ロシア、サハリンからパイプラインを引いてくるというような話も、今いろいろ政治的なことがあってとまっておりますけれども、議員連盟もできているぐらいで、そういった、外からこちらに入ってくる。日本のエネルギー企業が総合化していくことも、外に出ていくこともありますけれども、同時にまた外からも日本に入ってくる。市場に入ってきて、いろいろなサービスやエネルギーに関するビジネスを行うこともこれから出てくると思います。もちろん、エネルギーの外資規制の問題はあるにしても、ヨーロッパでは国が一つの市場になってしまっているので、電力にせよガスにせよ各国が入り乱れて供給をされているわけですけれども、いずれ日本もそうなっていかざるを得ないのかと思いますが、どうなんでしょうか。恐らくそういう見通しになるということ、お二人にお聞きしたいと思います。

尾崎参考人 おっしゃるとおり、いわゆる資源を確保する、エネルギーを確保するという方策の一つとして、やはり、みずからが海外に出ていって、そして資源開発をする。そして、天然ガスの場合は液化して日本へ持ってくる、あるいは全体的に世界じゅうに供給していくということも、一つの資源確保策としては有効であるというふうに思っています。

 そういう点で、まだまだ件数は少ないわけですけれども、日本のガス会社も海外の天然ガス資源それから液化基地などに投資を始めているところであります。そういうことによって、資源の確保策、さらには確保する資源のコストを下げていく、価格を下げていくということに寄与していきたいというふうに思っています。

 引き続き、そういう点では、やっていこうというふうに思いますし、この面でもできるだけ政府の御支援をいただけたらというふうに考えております。

松村参考人 まず、国際的な問題に関しては、日本の企業が海外の企業と組んでいろいろな事業をするということをとても期待しています。

 例えば、シェールガスとかを手に入れたときに、それを日本まで持ってくるのか、あるいは、ヨーロッパとバーターの取引をして、より近いところから熱量等価で安い価格で別のところから持ってくるのか。そうすると、ウイン・ウインというようなこともあり得ると思いますし、日本で需給が逼迫しているけれどもヨーロッパでは需給が実は緩んでいるときにうまく取引するとかというような、そういうプレーヤーがどんどん出てきてほしいし、大阪ガスさんはもう既にそういうのになりつつあると思っております。

 外資が日本に入ってくるというのに関しては、まず、外資規制というのはこの自由化と全く独立にあるもので、かつてのJパワーのときにもそういうことがありましたが、自由化によって緩めるとかという議論を私は全く聞いていないので、一定の規制はある。したがって、外資が日本の企業を買ってくるというようなものに関しては、依然としてまだ制約は残るというふうに考えています。

 特に、電力だけでなくネットワーク部門を持っているような、仮に法的分離をしたとしても持ち株会社としては当然ネットワーク部門を持っているわけで、そのようなところに規制が入るというのは決して不自然ではないと思っています。

 一方で、外国の新しい発想を持っているところが日本に入ってきて、日本の企業がそれ以上に効率的で革新的なアイデアを持って、外資を迎え撃って、結局駆逐してしまうというほど物すごく効率的な日本企業になってほしいなとも思っています。

 以上です。

野間委員 ありがとうございました。

 浅田参考人にお聞きしたいと思います。

 今、生活協同組合で、先ほど電源構成の表示をした電力の販売をというお話があったんですけれども、一部の生協ではそういう電力の小売を検討していた、あるいは地球クラブですか、こういう新電力も設立されたということで、ある意味農作物の、これは有機でつくった、あるいはどこどこでとれたものを消費者に届けるという発想と一緒かと思います。

 これはもう既に、現実にこの地球クラブという会社でこれから始まるということなんでしょうか。また、そういう表示をこれからされていくということなんでしょうか。ちょっと教えていただければと思います。

浅田参考人 ありがとうございます。

 地球クラブは四月一日から事業開始をしておりまして、実は、私もせんだって岩手県の野田村の方に行ってまいりましたが、来年以降になりますと、バイオマスの方の電源もジョイントできるような形になっております。

 日本生協連としては、各会員生協の方も物流施設の上あるいは建屋の上を使って太陽光発電にも随分取り組んでおりますが、我々自身もそういった内容で事業を開始しよう、既に開始をしたということでございます。できるだけ、内容については、組合員に向けて、こういう内容で構成をしておりますよということについてもアピールをしてまいりたい。

 そういう学習を含めて、エネルギーというのは一体どうなんだということを組合員の皆様方と御一緒に考える機会をつくっていくのが生協の仕事だと思っておりますので、具体的な事業を通してそんなことをやってまいりたい、こんなふうに思っております。

 ありがとうございます。

野間委員 ただ、そういう電力ですと、通常の電力よりも多分価格が高くなる可能性があるわけですが、それでもそれを選んで使いたいという消費者が出てくるということですか。

浅田参考人 きょうお手元の方にお配りしましたアンケートは一年前のもので、新しいものをこれからとろうとしておりますので、また皆様方には日本生協連の方から新しいアンケート結果を出せるかもわかりません。ただ、そのアンケートを見ていただきますと、五四%の方が、再生可能エネルギー、若干値段が高くてもいいよという御返事なわけでございます。

 極めてリアルに考えると、いざそのときにどうなんだということはあるかもわかりませんが、しかし、経済産業省さんのとられているアンケートでも、二〇%までは届きませんけれども、そのこと自身を高く評価していらっしゃる、そういうお声もありましたので、やはり内容についてはつまびらかにして、その上での選択ができるような、そういう情報提供はしっかりやるべきだというふうに思っております。

野間委員 それでは、時間ですので、ありがとうございました。

 大変貴重な意見をありがとうございました。

江田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る五月十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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