衆議院

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第16号 平成27年5月22日(金曜日)

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平成二十七年五月二十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 鈴木 淳司君

   理事 田中 良生君 理事 三原 朝彦君

   理事 八木 哲也君 理事 中根 康浩君

   理事 鈴木 義弘君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大見  正君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    佐々木 紀君

      塩谷  立君    白石  徹君

      関  芳弘君    武村 展英君

      冨樫 博之君    野中  厚君

      福田 達夫君    細田 健一君

      宮崎 政久君    若宮 健嗣君

      神山 洋介君    近藤 洋介君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      渡辺  周君    落合 貴之君

      木下 智彦君    國重  徹君

      藤野 保史君    真島 省三君

      野間  健君

    …………………………………

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   文部科学大臣政務官    赤池 誠章君

   経済産業大臣政務官    関  芳弘君

   環境大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    福山  守君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  谷脇 康彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 山本 哲也君

   政府参考人

   (内閣府地域経済活性化支援機構担当室長)     小野  尚君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           勝田 智明君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     井上 宏司君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           三又 裕生君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           吉野 恭司君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          菅原 郁郎君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     坂口 利彦君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          片瀬 裕文君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          富田 健介君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    小林 利典君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 高橋 康夫君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小川 晃範君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  梶原 成元君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 笠原 俊彦君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 鈴木 敦夫君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官谷脇康彦君、内閣府大臣官房審議官山本哲也君、内閣府地域経済活性化支援機構担当室長小野尚君、法務省大臣官房審議官金子修君、厚生労働省職業安定局次長勝田智明君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官井上宏司君、経済産業省大臣官房審議官三又裕生君、経済産業省大臣官房審議官吉野恭司君、経済産業省経済産業政策局長菅原郁郎君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長坂口利彦君、経済産業省産業技術環境局長片瀬裕文君、経済産業省商務情報政策局長富田健介君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、中小企業庁長官北川慎介君、中小企業庁次長小林利典君、環境省大臣官房審議官高橋康夫君、環境省大臣官房審議官小川晃範君、環境省地球環境局長梶原成元君、防衛省大臣官房審議官笠原俊彦君及び防衛省防衛政策局次長鈴木敦夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穴見陽一君。

穴見委員 おはようございます。自由民主党の穴見陽一でございます。

 本日は、自民党としては大変珍しい三十分という長い質問の機会をお与えいただきまして、委員長を初め理事の皆様方に心から感謝を申し上げる次第でございます。また、本日は、御無理を聞いていただきまして、赤池、小泉両政務官にもお出ましをいただきまして、本当に心から感謝を申し上げる次第でございます。

 私も、前回の質問は参考人質疑で立たせていただきましたので、宮沢大臣に対して質問をさせていただくのは初めての機会でございます。宮沢大臣には、党政調の方でも随分生意気な発言をさせていただきまして、懇切な御指導を賜りまして、その後……(発言する者あり)いえいえ、本当に心からそう思っておりまして、大臣就任後にすぐに言を入れていただきまして法人税減税を進めていただいたことは、この場をかりて厚く御礼を申し上げたいと思います。

 それでは、三十分とはいえ、時間がございませんので、早速質問に入らせていただきたいと存じます。

 きょうは、大きく三つの質問をさせていただきたいと考えておりまして、まず一点目は、アベノミクス第三の矢となるべき成長戦略に資するイノベーションのお話でございます。そして第二点は、まさに今、安倍内閣が主軸としてとり行っております地方創生についての質問。そして三番目に、働き方についての質問をさせていただきたいと思っております。

 先日も、つくばのイノベーションアリーナの方に視察に行ってまいりまして、ナノテクノロジーの現状を見せていただきました。大変すばらしい取り組みであると同時に、まだまだ産声を上げたばかりという中で、さまざまな課題があるというふうに感じました。

 その中で、まず経済産業省の皆さんにお伺いしたいのは、このTIA、つくばイノベーションアリーナ以外に、産総研等、そういった機構を通じたオープンイノベーションの取り組みにどのようなものがあるのかということをお聞きしたいと思います。

山際副大臣 具体的なことは参考人から答弁させますが、基本的な考え方として、オープンイノベーションを国として前に進めないと国際競争力を維持し続けることができない、こういう問題意識を持ちまして、さまざまな形でオープンイノベーションを進めようとしているところでございます。

 先般御視察いただいたという話でございますけれども、それ以外にも多くの試みを我々としては持っておりまして、具体的なことはまたお答えをさせていただければと思います。

片瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先日は、つくばを御視察いただきまして、ありがとうございました。

 ごらんいただいたTIAというのはナノテクに特化しているわけでございますけれども、つくば全体でいいますと、それ以外にも、バイオ、あるいはエネルギー、さらには電子、電気といったあらゆる分野でオープンイノベーションを推進するという観点に立っておりまして、そういう観点から産総研の改革ということについても進めているところでございます。

穴見委員 視察に行かせていただいて、新藤先生が中心になって行ってまいったわけですけれども、そのときにまた産総研の中鉢さん等からいろいろと現状の課題を聞く中で、特に気になりましたのが、やはり、TIAまたは産総研のマネジメント層は、一生懸命、企業との産学官連携を進めていきたいということで、強い意欲を持って取り組んでいるんですけれども、研究者の皆さんが、どうしても、研究者は大学とそういった産総研とを行ったり来たりしているという性質もあるんでしょうけれども、論文による評価ということがベースにあるために、本当の意味で研究者自身が産学官の共同研究に本腰を入れようという姿でない。

 そのために、むしろ、海外の、または日本にも出先を持っている研究所は、本当に親身になって、企業のためにお役に立とうという姿勢で来られるので、日本の企業も海外の研究所と産学官連携をやっての共同研究ということを行っているんだという話がありました。

 または、人事権であるとか、予算の執行に関しても非常に制約が多くて、複数の省庁にまたがるような予算も使っていかなければならないようなときになかなか取り回しが使いづらい。そういう意味では事務部門ももっと強化しなくてはいけない。さまざまな問題をおっしゃっておりました。

 そんな中で、経産省として、今後、TIAも含め、産総研も含め、そういった今のガバナンス上の問題であるとか、または研究者の処遇の問題、こういうことについてどのように取り組まれていこうとしているのか、お聞かせください。

片瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、産学官連携の最大の目的は、革新的な技術シーズを企業のニーズに応じて事業化につなげていく、いわゆる橋渡しが最も重要であるというふうに考えております。そのためには、やはり研究現場の裁量が非常に重要でございまして、研究現場にしっかりまずミッションを与えた上で最大限の裁量を与える、そういう中で、機動的に企業のニーズに応じて、さらに企業の事業化に向けてのコミットメントを高める形で研究を実施していくということが必要であると考えております。

 そういう観点に立ちまして、産総研はことしの四月に新しい中長期目標を設定いたしました。その中長期目標におきましては、企業のコミットメントの尺度については、民間からの資金獲得額が非常に重要であるという位置づけをまずいたしまして、その上で、産総研を七つの研究領域に分けまして、その研究領域の長にそれぞれ民間資金獲得目標というのを割り当てた上で、人事、あるいは御指摘の予算執行、さらには、当然、研究テーマの設定ということについて広範な権限を与えて、それぞれの研究領域の長の責任のもとに実施するという体制にしたところでございます。

 また、論文至上主義の話がありました。

 御指摘のことは一般的には妥当すると思っておりまして、今回の中長期目標に当たりましては、研究者の評価については、論文至上主義に陥ることなく、研究の段階あるいは研究の特性に応じて、企業からの資金獲得額、あるいは知的財産権の質及び量、最も基礎的な分野においては論文の質といったことを用いていくということにしております。

 日本再興戦略では、産総研の橋渡し機能の強化の取り組みを先行的に実施するという位置づけがありますので、このような改革をしっかり進めて、ほかの研究開発法人に対して展開できるようにしてまいりたいというふうに思っております。

穴見委員 そういった改革も進んでいると思いますけれども、やはり現場の実態をこれからもよく観察しながら、ぜひ必要な追加の措置をとっていただきたいと思っております。

 また、それとクロスアポイントメントということで、大学と産総研等で研究者が交流をしていくわけですけれども、産総研の中ではそういった実際の産学官連携の実績を評価軸に据えていくということでありましたけれども、結局、また大学に戻れば論文評価ということに戻ってしまうのであれば、産総研にいる間に実績が劣後するというようなことを嫌って、結局のところ本腰が入らないということになるのではないか。

 そういう意味では、やはり、大学側がもっと産学官連携に前向きな評価のあり方であるとか、または大学の対応を促すような政策が必要ではないかというふうに思うんですけれども、大学評価・学位授与機構がどういう評価を下していくのか、またどういう予算配分をしていくのかというところの基準というのが大きく大学を変えるように思います。

 話に聞きますと、産学官連携に関するインセンティブになるような予算配分が非常に小さい。結果として、大学で産学官連携に本腰を入れてやっていこうと手を挙げているところが非常に少ないというふうに聞いておりますが、そのあたりを文科省さんにお尋ねしたいと思います。

赤池大臣政務官 委員御指摘のように、イノベーションを創出していくということのために、知識基盤社会の中核拠点として高等教育機関がございますし、その高等教育機関の中でも大学、そして大学の中でもやはり国立大学の果たす役割というのは大変大きいというふうに認識しているところでございます。

 その中で、文部科学省としてはイノベーションをどう推進していくかということで、さまざまな大学改革に今取り組んでいるところでございます。特に国立大学に関しましては、経営力戦略ということを夏に向けて取りまとめを文部科学省としてしております。

 その中には、大学が持つ強みのある研究分野、研究成果について積極的な情報発信や、大学側からの提案による共同研究の拡大、これが当然産学連携ということにつながるわけでありまして、大学組織全体で産学連携を進めるための体制整備やマネジメントの強化ということを文部科学省として各大学にしっかり求めていきたいというふうに考えております。教育研究ということのみならず、社会貢献ということもしっかり視野に入れて考えてまいりたいと思っております。

 産学連携による研究成果を社会にしっかり還元する取り組みを国立大学に促すということで、ちょうど国立大学が来年度からの第三期中期目標をそれぞれ今策定中でございまして、文部科学省が経営力戦略を大学に示し、それを大学は大学で、大学の自治、自主性の中でしっかり今計画をつくっていただいている。その中には、教育そして研究とともに、具体的に産学連携を含めた社会貢献をどうするかという形で行っておりますので、そのような視点でしっかり取り組んでまいりたいと存じます。

穴見委員 ありがとうございました。

 まだまだ、私、地元に大分大学がございますけれども、話を聞いても、やはり大学評価・学位授与機構からの助成金を中心とした財政で賄っていると。ほとんど産学官連携を通じた外部からの資金獲得ができていないというのが実態でございまして、やはり大学の評価または研究者の評価、そしてどういった助成金の分配になっていくのかというところの決定権が大きく大学を変えると思いますし、このオープンイノベーションの推進というのはこれからの日本の産業競争力の中核となるべき課題でありますから、ぜひ文部科学省様としても力を込めてもっと産学官連携が進む形で大学改革を進めていただきたいと思います。

 それでは、続きまして、地方創生についての質問に移らせていただきたいと存じます。

 地方創生といいますのは、やはり地方の経済と雇用を維持発展させるということであろうと思います。そういう中では、地方にとって、ある意味では外貨を稼いでくる、外部からの収益を上げていける産業であります製造業であるとか、または観光業であるとか農林水産業であるとか、そういった産業振興が非常に重要である。

 それと同時に、やはり東京一極集中を是正して地方に活力をということであるならば、東京に集中し過ぎたさまざまな公的機関、研究機関や大学も含めて、こういったものの地方移転を進めていくことが大切だということで、石破大臣もいろいろと具体的な取り組みをなさっていることは承知しておりますけれども、そのボリューム感、結局どの程度の雇用というものを地方に移転するおつもりがあるのかということを内閣府の方にお伺いしたいと思います。

小泉大臣政務官 御指摘をいただいた政府の関係機関の地方移転に関してですけれども、政府の関係機関をこれぐらい地方に移転するからこれぐらい雇用が生まれます、そういった数字というものを出すということではないんですが、今回、政府として、地方に国の機関を移転するというまず前提として、地方に今おつくりをいただいている地方の総合戦略、この中で、仮に穴見先生の御地元でしたら、大分県の大分市に、地元の産業やまた地元の特性を生かしてこういった国の関係機関を大分市に持ってきていただきたい、それで大分市にこの研究機関を、また国の機関を持っていくということでこういった効果が生まれますという形で御説明をいただきたい、そういったことの今募集を開始しました。

 三月三日から募集を開始して、これを八月末までに全国の地方から御提案を上げていただいて、その後に、多分いろいろなものが集まってくると思いますので、それをしっかり精査して今年度末までに決定していこうと。

 そういった中で、先生御指摘の雇用の問題など、また経済効果など、こういったものも地方は本気になって考えていただいて、そして私たち国も、募集をしたわけですから、その地方の発意を本気で受けとめなければいけない、そのように感じております。

穴見委員 御答弁ありがとうございます。

 私もそこは承知をしておるわけですけれども、ただ、現実的には、例えば知事であるとか、または市長であるとか町村長でも結構ですけれども、そういった方々が、国にどういう機関があって、そしてどういうものが実際に持ってこられるのか、実際に中央官庁のお役人の経験があったのならともかくとして、そういった経験のない形で地方の首長になっていらっしゃる方、また地方の役所のいろいろな職員の方々も実際はそういうことは余り存じないことなんだろうというふうに思います。そういう意味では、その計画の立案そのものも非常にハードルの高いことになっていくんだろうというふうに思います。

 幸い、うちの地元は県知事も市長も経済産業省出身ということで詳しいので、いい計画をつくってくれるんじゃないかと期待をしておりますけれども、民間出身の首長であれば、そこのところは非常に暗いと言わざるを得ないんじゃないかなと。

 そういう意味では、国としてどれほどのボリューム感での雇用を日本全国全体に対して東京から切り離していくんだという、やはり大ぐくりの、それが今回の地方創生の本気度をある意味では表現することになるんじゃないかなと思いますので、そのあたりの決意のほどをぜひ聞かせていただければと思います。

小泉大臣政務官 今回、地方創生を担当する部局の名前はまち・ひと・しごと創生本部であります。これは、まち・ひと・しごとというこの順番を、順番からすれば本当は仕事が先に来るのではないか、しごと・まち・ひととか、また、中には、いや、ひと・しごと・まちであろう、そういった議論も正直言ってありました。

 しかし、それだけ仕事というものをつくらなければ、地方に人は根づかない。そして、今一番、東京に移動する人口の中で、特に若者は大学に進学をするときに東京に来るというのが一つ、そして、地方の大学に入った後に、就職で東京や首都圏に来るというのがもう一つの人口移動の大きなところになります。

 これが、地方の大学に進学をして、地方で就職をし、そういうサイクルをつくることが必要でありますから、そのサイクルをどうやってつくることができるのかというのが問われている。その認識を持って、これから地方創生が現実的に形として動いていくように、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

穴見委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 先ほど申し上げた地方の産業、特に外貨を稼いでくる、その地域が外部から資金獲得をして、それを地域で回していく中に、地域の生活密着型のサービス産業の発展ということがあるんだろうと思います。

 そういう意味では、製造業、そして観光、また農林水産業の振興についての構想について、経産省から御説明をいただければと思います。

関大臣政務官 このような中小企業に対して、我々は、いろいろな対応をしっかりととっていかないといけないという思いをますます最近強くして、それに対応する対処内容をふやしていっております。

 地方創生の中で、御指摘がありますように、例えば地域活性化の雇用創出が重要であります。そのためには、例えば第二のトヨタのような大きな山をつくるということとはまた別に、小さくとも高付加価値の山をたくさん、地域地域にいっぱいつくっていこう、こういうふうなことが非常に大事だと思っております。

 そして、その担い手となりますのが、先ほど委員のおっしゃられたような地域の中堅・中小企業であることはそのとおりだと思います。現在、どうすればこれらの企業が成長戦略の効果を積極的に受け入れられるのかというふうなことでございますが、成功事例、失敗事例も含めましてしっかりと分析しないといけない、そういうことで、それに対する施策や支援機関を整備しているところでございます。夏前にはその内容を紹介したいと思っておるわけです。

 特に観光業、農林水産業も地域の重要な基幹産業であることはもう間違いない点だと思いまして、海外からの観光客の増加による消費効果を地域にも波及させていこう、そのためには地域の関係者が一体となって地域資源をストーリーでつないでいこう、こういうような取り組みというのは非常に重要だということで考えておりますし、また、地域のブランド化を進めていこうと考えております。

 農林水産業につきましては、成長産業にするとの政府全体の方針のもと、経産省としましても、加工、流通、販売など商工業者の知見を活用しました農商工連携、よく言われますが、この農商工連携や、生産物の輸出拡大を進めてまいりたいと考えております。

穴見委員 ありがとうございました。

 そしてもう一点、地方の中小企業の政策について気になる点が、今、グローバルに産業の再編が行われているわけであります。製鉄や化学、また自動車でも、日本ではまだアメリカの数よりかなり多いのではないかという御指摘も聞こえてまいります。

 そういった既存の非常に大きなボリューム、日本の経済にとって大きなボリュームを持つ産業が、世界的な再編の中で日本の企業再編がどういうふうに進んでいくか。そうしますと、そういった企業にぶら下がっている地方の中小企業も、当然その中で再編ということが起こってくることが見越されるわけです。

 やはり地方の中小企業の行く末を思うときに、そういった全体の大きな産業政策と中小政策とがきちんとリンクして動いているのか、そのあたりのことを配慮した解を求めようという姿勢があるのかということを経産省にお尋ねしたいと思います。

宮沢国務大臣 先ほど関政務官から少しお話をいたしましたけれども、成長戦略の見える化という作業を、私、大臣になってから指示をいたしまして進めております。

 それはどういうことかといいますと、やはり、成長戦略の大きな中身の一つが、かつての薄利多売型から高付加価値、少量生産に、日本経済、また日本の企業を変えていかなければいけない。当然のことながら、少量生産ということになりますと、大企業だけではなくて、中堅企業、中小企業もその担い手になっていただかなければいけない。まさに成長戦略の担い手として中小企業が、まだまだ自覚されていない方が多いわけですけれども、こういう方に旗を振っていただきたい。

 そして、その背景の一つとしては、おっしゃるように、例えば自動車産業につきましては、いっとき随分海外生産がふえて、今少し戻ってはきておりますけれども、では、中長期で見たときに本当に日本の生産が今のまま確保できるかどうかという見通しはなかなか立たないわけであります。恐らく一次下請、二次下請はくっついていかれるかもしれないけれども、三次、四次といったところがなかなか海外進出ができない。そういう企業にやはり新しい分野にどんどん入っていただかなきゃいけないというような背景もございまして、見える化という作業をしております。

 そしてそれは、今政務官からもお話がありましたけれども、失敗事例も含めて、こういうことをやれば成功しただろうというようなことも含めてケースをお示しした上で、それを実現する手だて、資金の話もあれば、コンサルタントの話もあれば、また、当初お話がありましたような、中小企業は自分で試験研究開発ができませんから、公的な試験研究開発機関とどうつないでいくかというようなことに加えて、高付加価値でありますから、例えばアジアはそれぞれの地域ごとに恐らく違うと思いますので、北京、上海、また大連、広州といったようなそれぞれの地域のある意味では中産階級以上がどういう商品、サービスを期待しているのか、ハノイの人はどうだ、ホーチミンはどうだ、そういうような情報もきっちり把握をして、中小企業の方にそれをお知らせしていろいろなヒントをつかんでいただくというようなことを徹底的にやっていこうということで、この夏前にまず第一弾をお示しした上で、当然これは常にリニューをしていこう、こういうことを考えております。

 それ以外にも、下請中小企業振興法に基づく、ある意味では一者単独ではできない中小企業に対しまして、連携して自立的に取引先の開拓を図る取り組みに対しまして必要な資金を支援するとか、また、中小機構においてもそのような、まさにマッチングみたいなことをいろいろ今やっておりまして、おっしゃるように、これから中小企業にやはり自覚していただいて、新しい道に進めるようなお手伝いを国として積極的にやっていきたいと思っております。

穴見委員 大臣、ありがとうございました。

 ぜひ、そういった世界の産業の動きと、また地域の中小企業の政策というものがしっかりと融合する中で、地域の新しい生きる道が明らかとなる政策を進めていただきたいと存じます。

 それでは、最後、時間がなくなりましたけれども、少し働き方についての御質問をさせていただきたいと思っております。

 今、ほかの委員会でありますけれども、労働者派遣法の審議も進んでいるところでございます。その中で、均等待遇の問題であるとか、または同一労働同一賃金という単語が飛び出してくるわけでありますけれども、日本の雇用慣行の中でこれを実現していこうとしたときには、かなり大きなドライブをかけていかなければならないというふうに思います。

 といいますのも、欧米型の企業であれば、そのポストが、もちろん欧米の企業も随分退職者が出るわけでありますけれども、それを充足するために、欧米型では組織内での昇進というものができない仕組みとなっていて、年がら年じゅう何万人もの面接を人事部の人間はやり続けて、そして不足する人材を外部からほとんど採用するという中で外部の人材市場が形成をされておるわけです。

 日本の企業の場合は、社内で育成して、空席ができればどんどん下から上がっていくということで、外部から人材を求めなくても社内で充足ができて、そして一番最後に新人のところが不足するということで、新卒の大量採用というところで全体の人材不足を補完しているという仕組みで動いているわけであります。

 そういう意味において、外部から途中でそういったポストに入っていく、企業のキャリアの中に入っていくのは非常にハードルが高い。それは、人事そのものの要求が、外部から求めると大変負荷が高い、それは社内で充足されるということからそういったことも出てきているわけであります。

 これを実現しようとすると、強制的にでも社内昇進というものを抑制して、外部から一定数を採らなければいけない。そういった大きな仕組みの変更、そういうこともやらなければ、そもそも外部の人材市場が大きく拡大するような余地そのものがない、空席そのものが存在しないというような問題であろうと思います。

 そういう意味においては、これから均等待遇であるとか、または、その中では、例えば非正規の方々と正社員との差を縮めるということであれば、現実的には給与原資を急に拡大するということはできないわけですから、給与原資を最低限維持した状態の中で給与体系を再構築していくということになると、一部正社員の方々の給与を下げてでも再構築をしなければなかなか均等待遇というものが実現しない、そういうような問題にもなろうかと思います。

 今後、そういった日本が抱える雇用の慣行についてどのような将来の取り組みをされようとしているのか、厚生労働省にお伺いしたいと思います。

勝田政府参考人 先生の御質問にお答えしたいと思います。

 御指摘のとおり、日本におきましては内部労働市場が非常に大きな役割を果たしておりまして、これが日本企業の生産性あるいは効率といったことに非常に大きな役割といいますか機能を果たしておると思っております。

 今後の日本の社会を考えてまいります場合、人口減少下におきましてできるだけ多くの方々が労働市場に参加していただくこと、そしてそれらの方ができるだけ高い生産性の職業についていただき、給与を含めましたより大きな対価を受け取っていただき、それによって日本経済全体を活性化していくことが非常に重要でございます。

 このためには、内部労働市場の機能を維持向上させつつ、外部労働市場の拡大、機能の改善を図っていかなくてはいけないというふうに私ども思っております。

 このため、例えば、客観的に能力評価をできるようにして、個々の労働者が持っている能力を見える化して外部労働市場からの採用を容易にしていく、あるいは、外部労働市場の需給調整機能の強化ということで、ハローワークだけではなく、地方公共団体、民間の人材ビジネス、こういった方々の力を加えまして、私ども、官民の連携を強化していくことによって外部労働市場を活性化していきたい、こういうふうに考えてございます。

 あわせて、今、非正規労働者の労働条件、待遇等、余りよくないというのも実態でございます。私ども、官民も含めました需給調整の機関と合わせて正社員化を図っていくとともに、キャリアアップ等、内部労働市場において非正規からできる限りいい処遇の方へ移っていただく、こういったことを通じまして、日本のいい労働慣行を維持しながら、人口減少社会において、できる限り全員参加と高い生産性の労働市場をつくっていきたいと思っております。

穴見委員 ありがとうございました。

 時間がなくなりましたが、最後にぜひ指摘しておきたいのは、やはり、それだけの空席がなければ市場が拡大する余地はありませんし、外部から人を採らなければならない、そういう義務がなければ、企業側も、人材の評価というものをもっと明確にしていく、そういうインセンティブも働かない。本気で外部市場を育てようというのであれば大きな取り組みが必要だということを御指摘させていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 おはようございます。田嶋要です。

 きょうは、ふだんの質問で聞けなかった残りをいろいろと聞かせていただきたいと思っております。

 けさの日経新聞に、一面トップ、「首相「アジアに十三兆円」」こういう大きな記事がございまして、これは、例のAIIBのこともあり、アジ開も中心としてどうやってこれから日本のプレゼンスを高めていくかということで、若干お尻に火がついている、いい意味では切磋琢磨ということも言えるのかなと思うんですが、その中で、「石炭火力発電の技術で共にイノベーションを生み出す」、これが大きな見出しの横に、総理の演説のポイントということで書いてございます。

 中を見ますと、「エネルギー分野で今後五年間でアジアで五千人規模の人材育成」、これは大変いいことだと思うんですが、と同時に、「低品質で水分量が多く発熱量が小さい石炭「褐炭」を取り上げ「日本の技術で有望な資源、宝の山となる。モンゴル、タイ、インドネシアにもたくさん分布している」と各国との連携に意欲を示した。」こんな記事が載っておるわけでございます。

 まさにきょう私がお伺いしたかったのは、石炭火力発電、そしてその技術のことでございまして、かなり踏み込んでいるというか、余り褐炭の議論はそんなに出てこないのに、あえてこれを総理がおっしゃったというふうに書いておるわけでございます。

 まず最初に、ちょっと順序を入れかえまして、いろいろと問題も指摘されている石炭火力でございます。

 お手元に資料をお配りしておりますけれども、前々回ですか、大臣に御質問させていただきまして、資料の三でございますが、環境新聞がそのときのやりとりも取り上げました。そして、経済産業大臣が、十一・二五万キロワット未満の小型の石炭火力に関するアセスの問題、これに関して、発電効率が低いことを認められて、至急対策を講ずるということに関していろいろ波紋も呼んでいるという記事になっておるわけです。

 私は、これはこれで結構なことだと思うんです。しかし、石炭火力発電全体の問題の話ではないわけで、きょうはそこについてお尋ねをしたいと思います。

 エネルギーミックスも発表されて、政府のエネルギーミックスでは、二〇三〇年、石炭火力とLNG火力はほぼ同じぐらい活用していくというような方向性が示されております。国内において、環境アセスの問題以外の、これから石炭火力をどうしていくのかということ。CCSなしに新設は認めないというような方向性も、一部の国、例えばイギリス、それからアメリカ、カナダなどもかなりきつ目のルールを始めておりますけれども、NPO団体も大変憂慮している点だと思いますが、規模の大小にかかわらず、国内で石炭火力はどうしていくのか、もう一度御見解をいただきたいと思います。

宮沢国務大臣 小規模のものにつきましては、委員おっしゃるとおり、これから規制するという方向で今検討を始めようとしているところでございます。

 そして、石炭火力全体、それ以外のものについて見解をということでありますけれども、まず、エネルギー基本計画におきまして、石炭火力につきましては「安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源」ということを位置づけております。そして、今回のエネルギーミックスの骨子におきましても、それなりの位置づけをしたところであります。

 今後の日本の、これから二〇三〇年までの状況を考えますと、やはり、まず、電力料金の問題といったものにつきまして、今でも家庭用二割、産業用三割ということで高どまりをしておりまして、いろいろなところから悲鳴が聞こえてくる。これ以上上げるわけにはいかないだろうといったことを考えていかなきゃいけませんし、また、エネルギー自給率の話、温暖化対応の話等々ということでこういう結果になったわけでありまして、ベースロード電源をある程度確保する、六割弱確保するという観点から、石炭につきましても今後導入を当然してまいります。

 ただ、一方で、では野方図にどんどんどんどん我々の計画以上に出てくる場合にどうするかということになりますと、それは、かつては環境省において、石炭火力のアセスについて言えばかなりきついアセスを実質的に行ってきたのが、震災後少し緩くなってきているという流れで現在いろいろな動きがあるわけですけれども、そのアセスの基準といったものについても、大型も含めて将来的にどうするかということは状況を見ながら考えていかなければいけないんだろうというふうに思っております。

田嶋(要)委員 まず押さえなきゃいけないことは、繰り返しですけれども、石炭火力で、どれだけ日本の技術がすぐれていても、LNGほどCO2の排出を抑制することはできていないということで、よく見るグラフ、大臣もおわかりだと思いますが、最新のものでも、残念ながらその点に関してはLNGより劣っているということを我々は受けとめなきゃいけないと思います。

 それを踏まえまして、大臣が重要なコストの点をおっしゃいました。そして、私が前回も御指摘申し上げたかったのは、資料で四ページをごらんいただきたいんですが、コスト面で本当に石炭火力は大丈夫なのかという点を一点、国内に関してですが、申し上げておるわけでございます。

 目先のコストだけではありません。なぜならば、これはもう言うまでもありませんけれども、まず動き始めるのに大体十年、石炭火力は大体建設工事に四年かかりますので、LNGよりも一年さらにかかるわけですね。それに加えて、動き始めたら、これは原発でも同じ問題がありますが、やはり四十年とかそういう長いスパンで物を考えなきゃいけないので、今の値段がどうかということは参考にしかならない。

 前回指摘させていただいたのは、今の最新の国際レポートだと、石炭火力は二〇三〇年で大体今から二、三割上がるだろうと言われていて、片やLNGは、シェールガスの件などもあり、むしろ上値が非常に重い、余りこれから値段が上がらないという予測がなされているという点をどう見るかということだと私は思います。

 それから、四ページをごらんいただくと、右端にグラフが書いてございますが、これはまた別の切り口でございまして、設備利用率がどうなんだという議論です。一般に、設備利用率は七割から八割を前提にしてコストをはじいているようでございますけれども、これから再生可能エネルギーがどんどんふえてくると、日本の火力発電は再生可能エネルギーのバックアップとしての調整電源としての役割、すなわち二十年後、三十年後にはだんだん設備利用率が下がってくることを考えなければいけない。そして、これを見ていただくと、設備利用率が六割より下がると、これは明らかに、圧倒的に実は石炭よりもLNGの方が有利になってくるということなんです。

 したがいまして、私が申し上げたいのは、コストという重要な観点に着目すればするほど、先ほどのCO2に加えて、CO2は、若干石炭はハンディがある、しかしコストは有利であるというその前提が崩れる時間はそんなに遠くないんじゃないか、そのことを私は懸念しているんです。

 だから、大臣が今はコストがやはり大事だから民間が石炭火力を広げるのは仕方がないという理論が十年後に本当に通用するのかなということで、経営判断のミスでしたと言って、石炭火力を十年後に動かそうと思っている今の大企業を中心とした皆さん方が、十年後の社長が責任を問われることになるのではないかということを私は懸念しているんです。

 次の資料五をごらんください。これも経済産業省からいただきました。改めて、それぞれ固定費と変動費がどうなんだということですが、石炭火力は、固定費が大体LNGの倍近いんですね。これは設備容量に差がありますので、同じような金額で一千七百二十五億と一千六百二十億ですけれども、設備容量が違いますから。だから、これは単位で見ていくと、固定費は圧倒的に石炭火力が高い。そして、ランニングコストは、要するに変動費は石炭が今のところ安いんです。だから、稼働率が下がると固定費部分が大きいからハンディが出てくるという、これは当たり前のことです。

 ここを私は大変懸念しておるんですが、大臣、それは民間がコストをベースにして今判断をしておるわけでございますが、今四十以上の計画があると言われます。改めて、こういうことを踏まえても、コストという観点を踏まえても、今のは合理的な判断だと必ずしも言えないと私は懸念を持っておりますが、大臣はそこに関しては、基本、今の方向性でいいというふうに考えておられるかどうか、お伺いします。

宮沢国務大臣 私どもは、石炭をベースロード電源と位置づけておりまして、一方で、LNGはまさにミドル電源という位置づけにしております。

 そして、それはもちろんコストの面もありますけれども、それに加えて、やはり石炭というのは、オーストラリアを中心に今輸入してきておりますけれども、いわゆる中東依存度というものに関係がないといったところがございまして、供給といった意味でいえば、自給率に換算できる電源では基本的にありませんけれども、極めて安定的に輸入できる電源であるということ。

 一方、LNGにつきましては、もちろん原油ほどの集中はないにしましても中東依存度がかなり高いということもございまして、そうしたことも含めて、コストプラスそういう世界的な資源の普及状況といったようなことも含めましてベースロード電源としたところでありまして、そういうことまで含めて考えて私どものエネルギーミックスをつくった、こういうことでございます。

田嶋(要)委員 安定した国から安定的に供給を受けられるというのは大変大事なことだと思いますが、そうはいっても、ほとんど一〇〇%依存している石油火力も我々は動かしている。

 LNGは、おっしゃっていただきましたけれども、大体、天然ガスがホルムズ海峡依存度二五%ですね。中東依存度は三割ですから、そのうちオマーンからだけはホルムズを通らないということで二五%ですが、しかし、七五%はオーストラリアを初めそうした国々からも買えている。そして、このデータはアメリカからのシェールガスが入ってくる前の話なんですね。これは、アメリカから、そして将来カナダからということになってくれば、私は、石炭ほどではないかもしれないけれども、その点のハンディもだんだん解消されてくる。

 政府は前提としてLNGはミドルとおっしゃるから、そういう枠組みにはめてしまえばこれはあれですけれども、やはり我々はベースロードとしてLNGをもっと捉えて、石炭の大変経営上の観点からする懸念ということは強く申し上げておきたいというふうに思います。

 そして、これは今国内の話でございますが、それで先ほどの日経新聞の記事もございますが、では海外に向けてはどうするんだ。インフラ輸出ということで、インフラ輸出の政府資料を見ると、やはり一番大きくこれから見込んでいるのがエネルギー分野でございます、まあ、一つですね。エネルギー分野の中には当然火力も入ってくるわけですが、私は、ここはなかなか悩ましいと思っております。

 片や日本の技術が世界一でありながら、国際社会からは日本は化石賞というものを何度もとっておりまして、いまだに石炭火力を世界で広めるけしからぬやつという評価も得ているわけなんですね。

 そこをちゃんと説明して、日本の技術はこれだけすぐれているんだという国際的な発信力も問われようかと思うんですが、私は、石炭を自国にたくさん持っている国に関して、どうしても石炭火力でいかざるを得ないという、その国の、当事国の判断がある場合に関しては、日本の石炭火力でやってもらった方がほかの石炭火力技術よりはいいのかなという消去法的姿勢が必要ではないか。つまり、LNGと競合して石炭を売り込むというのは、やはり私は若干抵抗があるわけでございます。

 大臣、その辺は、こうやって大きく日経にも載っておるので、特に褐炭、要するに質の悪いものに関して、こういう褐炭しかとれないような国に関しては、やはり経済的な力からいって石炭火力を何とか動かしたいんだ、そういう国もたくさんあるということでしゃべっておられるんだと思いますけれども、どのようにこれから石炭火力の海外輸出ということを考えておられるか、御答弁いただきたいと思います。

宮沢国務大臣 総理がたしか「アジアの未来」という日経が主催されるセミナーでお話しになったことだと思いますが、実は私はまだ、日経を朝読む時間がなくて、総理の御発言自体をつまびらかに存じ上げているわけではありませんけれども、やはり今おっしゃるように、石炭火力でなければなかなか難しい開発途上国があるということは事実でございます。

 例えば、インドのような国でも、連休に参りましたけれども、やはりインドは、褐炭なのかどうか、かなり水分を含んだ石炭が随分出るようでありまして、そういうものを使った発電というものを今後しっかりやっていきたい、日本の技術がどうしても必要である、こういう話も実はございました。

 ですから、魚心、水心のようなもので、売り込むのか、向こうが欲しがるのか、これは難しいところはありますけれども、その国の判断として石炭火力でいかざるを得ない。逆に言うと、現状において間違いなくLNGが高いというような中で、LNGもつくれない、やはり石炭だというような国があることは間違いないわけでありまして、そういう国に対しましてしっかりと我々の技術をもって貢献するということは、全体としての地球温暖化対策に大変役に立つんだろうというふうに思っております。

 そういう観点から、政府としても、いわゆるインフラ輸出の一つの柱として応援をしていかなければいけないと考えております。

田嶋(要)委員 石炭火力が地球温暖化対策に役立つという、一見すると矛盾するようなメッセージをどう国際社会に伝えていくかということも大事かと思うんですが、環境省はどういうスタンスですか。ずれていないですね。

梶原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御議論になっておりますように、石炭火力発電は、天然ガス発電等に比べてCO2を多く排出するというものでありますけれども、先ほど経産大臣の方から御答弁がございましたけれども、途上国におきましても、経済性あるいは供給安定性等の観点から石炭火力を活用している国もあり、また今後も活用していくという国もあろうかと思います。

 そういうところにありましては、我が国で培われました高効率の発電技術を導入することにより、地球全体での環境負荷の低減に貢献できるものというふうに考えているところでございます。

田嶋(要)委員 ずれていなくて安心しましたけれども。要は、若干独善的ではありますが、他国の技術で石炭火力がばんばんふえるよりは、日本の技術を少しでも普及してもらって、相対的に抑制できればそれにこしたことはないと私も思います。

 そこで、一つよく指摘されますけれども、官民の連携といいますか、日本の技術は買いたいけれどもやはり割高だ、こういう話もよく聞くわけでありますが、いわゆる公的な金融とかODAとか、そういうことをちゃんと合体させるような形で、何とか世界を守るために、そして褐炭を活用してしか発電する気のない国に対して日本が確実に受注できるような仕組みを、もう少し力を入れてほしい。こういうことを書いていただいているので力を入れていただくんだと思うんですが、そこは大臣、いかがですか。何か具体的な手法、これはいろいろな有識者からも御提案いただいておりますけれども、金利の面とか融資の枠の面とか、どういうサポートがあるのか。何か具体策はありますか、もっと日本の技術を売り込むための強力な武器。

宮沢国務大臣 委員は御承知だと思うんですけれども、今、若干国際的に問題になっている点がございまして、OECDにおきまして、アメリカを中心としてヨーロッパの一部が、要するに、石炭火力に対する輸出信用といった公的信用につきまして、相当制限を加えるべきだということを主張しております。

 一方で、私どもは、例えばドイツも同じような立場でありますけれども、やはり石炭火力というのは一部の国にとってはどうしても必要なものであって、しかも高効率な石炭火力といったものを、そういうどうしても必要な国につくってもらうということは大変大事なことだということで今議論をしているところでございまして、何とかそういう制限がかからない方向でまとまるように努力中というのが、実は今の状況でございます。

 そして、当然のことながら、石炭火力といったものにつきましては、円借款供与国であれば円借款という可能性ももちろんあると思いますし、その他の国におきましても、いわゆる輸出保険であり、そしてJBICの対象になるというようなことで、しっかりとフォローしていかなければいけないと考えております。

田嶋(要)委員 ぜひ、そこら辺はしっかり説明をしていただくということ。

 それと、先ほど魚心あればという話がございましたが、ほかのものと競合するときは、石炭火力のハンディというのをやはりわきまえなきゃいけない。あくまでも、やむを得ない事情で石炭をやられるのであれば日本が売り込む、そういうスタンスで、なかなか難しいと思いますが、やはり臨まなきゃいけないのがこの悩ましい石炭の問題だろうというふうに思っております。

 その関連で、最初の質問に戻らせていただきますけれども、資料の一。

 これは、発表されました政府の温室効果ガス削減目標の数字でございますけれども、政府は二四から二六。ただ、これはよくよく、基準年をずらして、ちゃんと同じ比較をしてみますと、マイナス一六から一八。政府のこの発表数値は非常に見劣りをするものではないのかなということ。二〇〇五年基準で比較をすれば、アメリカも含めて、大体並ぶわけでございます。

 そういった中で、政府の日本の数字というのは、国際社会をリードするとはとても言えない数字ではないかなというふうに思います。もちろん、石炭火力の考え方も違うわけですから、その辺は少し矛盾があるような感じがいたしますけれども、大臣、ここはまだ見直し途中だという理解でいいですか。まだ与党の皆さんの最終的な御判断はないという状況だと理解しておりますけれども、いかがですか。

宮沢国務大臣 まだ与党手続が終わったわけではないと承知をしております。

 そして、今回、基準年につきましては、一三年度比を中心に説明を行う、一方で、一三年度と二〇〇五年度の両方を登録するということにしております。

 特に、一九九〇年比ということは、EUを中心にして主張されているわけでありますけれども、もう四半世紀以上前。その後、東西冷戦が終わり、EUが誕生し、統一通貨もでき、そしてまた今のギリシャ問題等々というものができている。この大変昔の話を基準年としても、正直言って、なかなかぴんとこない。

 まさに温暖化対応ということは、これから何をやるかということが最も大事なことであるという観点から、二〇一三年度比というものを私どもとしては基本として説明をしていこう、こういうことから出しております。

 そういう二〇一三年度比、これからどういうことをやるかという数値であれば、委員の資料には入っていないわけでございますが、少なくとも、EUに比べても、またアメリカに比べても、日本の削減率の方が高いということは事実であります。

田嶋(要)委員 私どもは、政府発表の数字というのは力が入っていない、国際社会からは評価されないものではないかと非常に危惧しておりますので、ぜひさらなる深掘りをお願いしたいというふうに考えております。

 それでは、次の質問に移らせていただきますけれども、電力システム改革、衆議院は通過をしたわけでございますが、システム改革をやるとして、一つ心配されている点が、資料の六ページでございます。

 ことしの二月にこういう新聞記事を出されまして、私たち部門会議でも役所の方の、政府の説明も受けましたが、つい先日も、また、日本の電力改革には盲点があるということで、これは素人考えでも、これから無数の小さな企業も含めてこういう仕組みの中につながってくるわけでございますが、ある意味、電力は一つの大きなネットワークというふうに言えるわけで、サイバーテロに対しては非常に脆弱なのではないかということを、いみじくもアメリカの方の所長さんが最近指摘をしているわけでございます。

 今、日本は、そういった攻撃を受けた場合の報告も義務づけられていないということで、努力義務になってしまっているわけでございます。私は、衆議院を通過したこの時点で、この委員会でもサイバーテロの関係は余り取り上げていなかったと思いますが、ここは、これこそ二千何年ということでターゲットを決めて、全面自由化、法的分離を行っていく中で、特にしっかりと対策を強化していただかないと大変なことになるのではないかということで、一発である意味混乱させられる、これは原発に限らずリスクがあるのではないかと考えておりますが、今どういうような対策強化を考えられておるか、御答弁いただきたいと思います。

山際副大臣 これは委員御指摘のとおり、サイバーセキュリティー、大変重要だという認識は我々も共有してございます。

 現在においても、一般電気事業者がみずからガイドラインをつくって対策を講じてございます。当省でも、こうした事業者の対策について、専門家を交えて確認を行った上で、昨年六月、電力システム改革も見据えた今後の取り組み方針について取りまとめをいたしました。

 また、これを受けまして、事業者と連携をいたしまして、電力システム全体をカバーするガイドラインの策定に向けまして、米国のサイバーセキュリティー対策も参考に検討を進めているところでございます。今後、民間規格の策定を行う日本電気技術規格委員会のもとで、新規参入事業者の方にも参加していただいて、ガイドラインの詳細な検討を進めてまいります。

 また、引き続き、強靱な電力システムの構築に向けて官民一体で検討を進めてまいりたいと存じます。

田嶋(要)委員 もちろん、一番やられているのはアメリカですけれども、被害の伸び率は日本の方が近年高いわけでございます。まあ、桁は一桁違いますけれどもね。そして、過去の事故も、原子力発電所などエネルギー分野を狙われているものが結構あるわけでございますので、必ず狙われる、そういう前提に立って。

 それから、大体日本はこういう分野は弱いものですから、アメリカからしっかり学ぶ、あるいは韓国もいいかもしれない。そういう常に危機感の高い国、緊張感のある国のそういう分野としっかり連携しながら、最上位の防御体制を確立していただくようにお願いをしたいと思います。きょうは指摘だけにとどめたいと思います。

 次の質問に移ります。

 先ほど穴見先生なども、地域の活性化、そして、中小企業を含めて人の流動というふうなことをおっしゃっておりました。

 資料七、以前、配っただけ配って全然話ができませんでしたけれども、信用保証の話が以前ありましたが、このときは、質問を大臣にはせずに、一言しゃべって通過しましたけれども、私は、これはずっと引き続き追っかけてやっていきたいと思っています。

 大臣は正直なお方で、前回の御答弁でも、なかなかこれははっきり言いづらいということをおっしゃっています。

 開業というのは政策的にも大変応援しやすい、ところが、廃業というのは、環境を整えることは政策的にやっていかなきゃいけないけれども、まだやりたいという人にやめろよというのはなかなか政治としては言いにくいと。これは正直なところですね。しかし、日本経済全体として見ますと、やはりやめられるうちに早くしっかりやめていただく政策は本当に大事でありまして、個別に相談を受けるとなかなかそこまでは後援会の小企業、中小企業には言えないということで、私も一緒でございます。私も一緒でございますが、しかし、その前提に立って、やはり必要性はよくわかっておられる。

 そういう中で、信用保証制度というのはメーンバンクの機能じゃなくて、要は、メーンバンクはメーンバンクでついているわけで、そこがしっかり目ききをして、出せるところにはしっかり貸し出すということで、キャッシュフロー重視、保証とか担保とか土地とかそういうことじゃなくて、キャッシュフロー重視の当たり前のことをやってくれれば、日本のめちゃくちゃ多い今の信用保証のボリューム、これも変えていくことができるし、それから、信用保証がないと一切借りられないような企業への貸し出しばかりに今なってきているわけですね、半分も。こういう現状はやはりいびつではないか。

 そして、これは全て国民の税金負担がかかっているということを認識して、やはり新陳代謝のために廃業促進をもっとやらなきゃいけないということを、地元では言えなくても、ここでは言ってほしい。地元では私も言いにくい。だけれども、ここでは、創業と廃業はやはり相関関係は強いんですよ。だから、廃業は暗い話ばかりじゃないんです。三つも四つも潰して成功する人たちが、言うまでもなくアメリカなどでは多いはずなんですよ。そこはやはりそろそろ転換に差しかかっているんじゃないかなというふうに思っております。

 もう一問、環境省にしたいので。その点に関して、いかがですか、思い切った政策転換、これは大事だと思いますよ。これは冨山さんの有名になった本のことも引いておるわけでございますが、申しわけないけれども、ゾンビという表現もありますが、その辺、今までの中小企業対策ではなくて、中小企業政策をしっかりやってもらいたいと思いますが、大臣、いかがですか。

宮沢国務大臣 前回、いろいろお話をさせていただきました。

 一方で、商中法等の審議におきましては、共産党の皆さんからは、一〇〇%保証でなければ、特別小口はずっと続くのか続かないのかというふうなことで、やはり一〇〇%保証が大変大事だという議論をずっとしていただいたこともこれまた事実でございます。

 まさに前回申し上げたことでありまして、やめられるうちにやめられる環境をつくるということ、そして、それについてはまさに金融機関の役割というものが大変大事であるということ、そして、やめられる環境づくりを私どもがやっていくということで、特に今、経営者の方たちがやはり随分高齢化されておりますので、そういう時期に差しかかっておりますので、そういうことは念頭に置きながら政策を進めていきたいと思っております。

田嶋(要)委員 かつてそういう主張ももちろんあったわけですが、一つ重要なことは、雇用状況が今激変してきているということで、いろいろな産業分野で慢性的に人手不足になってきている。こういう時代転換の中で、十年前に正しかった政策がこれからも正しいとはもちろん言えない。社会政策として雇用を吸収していたけれども、これからはもう少し新陳代謝に軸足を移した方がいいのではないかということを申し上げたいと思います。

 最後に一点だけ、お待たせして恐縮ですが、環境省からきょうは政務官にお越しいただいております。

 地元の指定廃棄物の関係でございますが、大変悩ましい問題ですが、一点だけお伺いします。県内で分散で処理をするという手法に関して、首長会議でも複数の方からの御指摘が出ているわけでございます。これはどうも環境省はお嫌なようでございますが、今茨城県でもそういう声が出ていて、今のそれぞれの場所に残置しておくべきではないか、そういう声も出ているようでございます。

 千葉県は千葉市中央区、海のど真ん中、液状化しそうな現地が候補地に挙がりましたが、私は県内分散処理についてもう一度しっかりと考えるべきだと考えておりますけれども、政務官、どのようにお考えですか。

福山大臣政務官 ただいま議員の御説明ということで答弁に立ちますけれども、先般、二十日に千葉市議会全員協議会を開いていただきまして、いろいろ御質問もいただく中で一回目の御説明をさせていただいた次第でございます。

 今、田嶋先生が御質問された件でございますけれども、これまでの千葉県の市町村長会議において、県内に複数箇所設置するとの御意見も確かにいただいております。これに対して環境省から、複数箇所の設置は土地の確保や安全な管理が難しいことから、県内一カ所に集約して管理することが適切である旨を丁寧に御説明させていただき、御理解をいただいております。

 このように、市町村長会議において御議論いただいた上で選定手法を確定したものであり、環境省が恣意的に誘導して決めたものではございません。

田嶋(要)委員 時間になりましたけれども、その御理解をいただいているというところがやはりくせ者だと私は思います。御理解はいただいていないと思います。それは、やはり環境省はこっちがいいと最初から決めているからそうなっちゃっているだけで、本当にトータルでコストを考えたときにどっちがブレークスルーで解決に近づくか、そういうことをもう一度白地から考える必要が私はある、そのことを申し上げまして終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介です。

 早速質問に入りたいと思います。

 委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますが、一枚目をごらんいただければと思います。

 まず、大臣にお伺いしたいと思います。

 各新聞やテレビの世論調査で、原子力発電所の再稼働の問いに対しては、なかなか再稼働に対しての国民の理解は広がっていないというのが現状だと思います。

 こちらの資料は、五月十一日の読売新聞。安倍内閣は安全性を確認した原子力発電所の運転を再開する方針です、この方針に賛成ですか、反対ですか。読売ですが、賛成三十五、反対五十五。朝日新聞、五月十九日、今停止している原子力発電所の運転を再開することに賛成ですか、反対ですかという設問に対して、賛成二十八、反対五十六。こういうことでありますが、大体、各紙こういった傾向で、丸めて倍半分の違いがあるわけですね。反対の方が倍いる、こういうことであります。

 政府はこれだけさまざまな体制を整え、そして規制委員会において慎重な審査を重ね、また事業者においてもかなり大がかりな工事を進めているにもかかわらず、なかなか再稼働に対しての反対が多い、この本質的な理由は、理解が広がらない理由はどこにあると大臣はお考えですか。

宮沢国務大臣 本質的な理由はと言われても、いろいろあるんだろうと思いますけれども、私まだそういう調査は見ておりませんけれども、例えば、政府は温暖化目標で一三年比二六%という目標を立てているけれどもこれが十分かというような設問があった場合に、不十分でもっと上げろという方の方が恐らくかなり多いんだろうと思います。また、例えば、電力料金について今の水準より下げるべきか上げるべきかというような設問があったとすると、恐らく下げるべきだという方の方が圧倒的に多いんだろうと思うんです。

 そして、そういうものを全部実現できる政策というのは、もう委員御承知のとおり、あり得ないわけでありまして、やはりそういうことをしっかりと我々が説明していくということが一番大事で、その辺がなかなか、全体をまとめて、説明してこられなかったのかなという思いがいたします。

近藤(洋)委員 大臣がおっしゃるとおり、いろいろな要因がある。そして、一つには、なかなか、さまざまな要点についての説明不足の点があるんではないかという御答弁でありましたが、私は、ちょっと見方を変えますと、基本的に原子力発電所に対する、言い方をかえると、やはり国民の皆様の信頼、原子力発電所に対する信頼というのは、特に危機時における信頼というのがまだ確立されていないんではないか、こう思うんですね。

 まさに三・一一のあの福島第一原発の危機時の、いざ危機に瀕したときの信頼、それは発電事業者への信頼もあったかもしれないけれども、もっと言うと、それは政府に対する信頼というものが、私は当時、政府・与党側でございましたけれども、当時は政権じゃなくて与党の方の、副幹事長の立場でありましたけれども、要するに、政府に対する信頼というものがまだ回復していない、危機に対して大丈夫か、こういうものが根本にあるんだろうと思うんです。この不安が解消していない。

 そういう文脈の中で、私はちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、危機対応という中で、あの震災時に菅直人首相が東京電力の本店に、いわば乗り込まれて、直接指示を出されたことがございました。この行動について、率直に言って、当時、野党、自民党の方からも相当な批判を受けました。その後、政権につかれた自民党の方から厳しい批判を受け、識者からも批判を受けました。

 菅首相が東京電力に乗り込んで、要するに、あのときの判断はいろいろな証言がありますけれども、原子力発電所の、退避する、退却するというんでしょうか、退避するということに対して、総理が、それではいかぬということで陣頭指揮をとった、こう伝えられております。

 いずれにしろ、総理がそこまで行かれて指示を出した、退避はいかぬ、ここで踏みとどまらずしてどうするといった指示を出した、このことについて大臣はどう評価されていますか。

宮沢国務大臣 当時、私もマスコミ報道でいろいろな状況を聞いておりました。

 そして、その後、政府事故調におきましては、本店に乗り込まれたことにつきましては、「情報アクセスの改善という面では積極的に評価をすることも可能であるが、政府の対応に必要な情報は必ずしも東京電力に係る情報のみではない上、東京に本社本店のない他の電力会社の原子力発電所において同様の事故が発生する場合もあり得ることから、今回の事例を普遍的な先例とするべきではない。」と書かれております。

 一方、国会事故調の方におきましては、この東京電力本店訪問につきましては、「菅総理が「全面撤退」を阻止したという事実は認められない。したがって、菅総理がいなければ東電は全員撤退しており日本は深刻な危険にさらされていたに違いない、といったストーリーもまた不自然であると言わなければならない。」こういう報告書がまとめられているということは承知はしておりますが、私自身のコメントは差し控えさせていただきます。

近藤(洋)委員 私は、これはいろいろな、まだもう少し歴史の評価を待たなければいけないんだろう、こう思っておるのですが、少なくとも当時、当時は岡田さんが幹事長で私が総括副幹事長でいて、官邸の動きも見ておりましたけれども、そういう立場で、あの状況下において、まあいろいろな評価ができますけれども、総理がある意味では不退転の決意を示したという部分はあった、こう前向きに受けとめる部分もあっていいとは思うんですね。

 もちろん、例えばキューバ危機のときに際して、ケネディ大統領がオペレーションルームに行くのをロバート司法長官が必死にとめた、大統領はそういうところに行くべきではないと。こういうことをしたという話もありますし、いろいろな評価はあります。しかし、私は、いろいろな評価の中で、全面否定すべきものでもないとも思うわけです。これは歴史の評価を待ちたいと私も思います。

 ただ、ここで何を言いたいかというと、あの緊急事態のときにおいて国家が最後どこまで責任を持つかという議論をきょうはしたい、こう思っているんです。

 二枚目のページをごらんいただければと思うんですが、いざというときの原子力事故、過酷事故における防災計画、避難計画の策定と支援体制というのは、現在、市町村において防災計画、避難計画というのを、中央防災会議の防災基本計画に基づいて、原子力規制委員会の指針に基づいて各市町村が策定する。国においては、この計画を支援する。法的には、これは国のかかわりというのは極めて薄い形になっておりますが、この是非はちょっときょうは議論しないことにしたいと思うんですけれども、支援をするという形になっております。

 ちょっと一枚飛ばしていただいて、次の四ページ目、各市町村の避難計画が、残念ながらまだ策定数ゼロの地域がございます。一覧表で、避難計画策定数、百二十二の立地市町村のうち、まだ八十三しか指定されておりません。いまだにゼロの地域もありますが、おくれている理由、なぜなのか、そしていつまでに策定するのか、担当政務官、お答えいただけますでしょうか。

福山大臣政務官 内閣府大臣政務官として御答弁をさせていただきます。

 ただいまの御質問でございますけれども、原子力発電所が所在する地域における地域防災計画は、平成二十七年四月現在で、対象となる二十一道府県全てにおいて策定済みでございます。また、百三十五市町村のうち、百二十七市町村において策定済みでございます。

 避難計画については、百三十五市町村のうち、現在、八十六市町村が策定済みでございます。具体的には、全国の原子力発電所が所在する十三地域のうち、泊、東通、志賀、福井、島根、伊方、玄海、川内の八地域の市町村において、全て策定済みでございます。一方、女川、柏崎刈羽、東海、浜岡、福島の五地域の市町村では、引き続き避難計画を進めてまいります。

 これらの地域で避難計画がまだ策定されていない理由は、地域によってさまざまでございますが、例えば東海地域及び浜岡地域については、原発からおおむね三十キロメートル圏内の人口が多く、他県を視野に入れた避難先の調整に苦労しております。

 女川地域については、東日本大震災の被災地として、復旧復興を優先的に進めているという事情がございます。

 また、福島地域については、特定原子力施設である東京電力福島第一原子力発電所があり、同発電所の周辺地域などが避難指示区域に設定されているという事情もございます。

 いつまでに計画ができるということを申し上げることはできませんが、現在、各地域に地域原子力防災協議会を設置して計画づくりに取り組んでいるところであり、できる限り早く計画が策定できるよう、国としてもしっかりと支援をしてまいりたいと思っております。

近藤(洋)委員 広域にまたがるから若干おくれている部分がある、煎じ詰めればそういうことかと思いますが、もう事故から四年たっているわけでございまして、やはりこれは急ぐべきだ、こう思うんですね。もちろん、女川地区、まだ防潮堤をつくっていたり、稼働ということは先ということでありますが。

 しかし、論点は、稼働しようがしまいが、そこに燃料棒がある限り、危険度合いは変わりありません、同じなんですね、大きな差はないわけであります。ですから、そこに燃料棒がある限り、燃料プールがある限り、避難計画はつくらなければいけない。これはやはり国の責任なんだろうと私は思うんですね。ですから、私は、国のある意味で責任において、市町村が主体になっていますけれども、ここは強力な指導が必要だろう、こう思うわけであります。

 あわせて伺います。オフサイトセンターなんです。

 次のページ、危機管理体制ということでありますが、この図に、現地対策本部、三・一一のときに、残念ながらこの現地対策本部、オフサイトセンターがほとんど機能しなかったというのが大きな問題点になっておりました。

 このオフサイトセンター、要するに、防護、放射線の対応とかができていない等々の大きな課題が明るみになったわけでありますけれども、このオフサイトセンターの建てかえは、基本的には県が運営するわけでありますけれども、国としてもしっかり財政的な措置はする、こういうことでありますが、現在、全体のどこまでできて、そして残りはいつまでに建てかえる予定になっているんでしょうか。お答えいただけますか。オフサイトセンターです。

福山大臣政務官 今先生が、オフサイトセンターの建てかえはいつまでかということでございますけれども、福島の事故の教訓を踏まえ、オフサイトセンターは、原子力発電所から五ないし三十キロメートルに立地するように改めました。

 このため、オフサイトセンターが原発から五キロメートル圏にあった北海道の泊、静岡県の浜岡、石川県の志賀、愛媛県の伊方の四オフサイトセンターを移転することとし、新たな施設の建設も進めております。

 泊、志賀、伊方のオフサイトセンターの建設は平成二十七年三月に完了しております。本年八月ごろからオフサイトセンターとしての運用が開始できる予定でございます。

 また、浜岡のオフサイトセンターは、本年度末に建物が完成する予定でございます。

 また、福島第一原子力発電所事故により使用不能となった東京電力福島第一及び第二原発のオフサイトセンターについては、それぞれ南相馬市及び楢葉町に再建中であり、平成二十八年度末に完成予定でございます。

 さらに、東日本大震災の津波により全壊した宮城県女川のオフサイトセンターについては、仙台市の旧消防学校を改修し、暫定オフサイトセンターとして平成二十六年十二月から運用を開始しております。オフサイトセンターの本格的な再建については、宮城県とも調整の上、女川町の復興計画と連動して進める予定でおります。

近藤(洋)委員 これもぜひ急がなきゃいけない、きっちりつくらなきゃいけない、こういうことだと思うんですね。

 さて、オフサイトの話をしましたが、いよいよ大事なオンサイトの問題であります。プラントそのものであります。

 規制委員会に伺いたいんですが、過酷事故の際に、原子力の災害時には、プラントが既にメルトダウンをしつつある、ないしはその対応は、その義務というものは事業者にあると。この最終責任は事業者にあるという根拠はどこにあるのか、そして今回の電気事業法改正ではそこの事業者責任というものは変わっていないのか、お答えをいただけますでしょうか。

田中政府特別補佐人 原子力災害対策特別措置法第三条では、原子力事業者は、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し、誠意を持って必要な措置を講ずる義務を有する旨規定されております。

 また、原子力事業者は、同法第七条第一項の規定に基づき、その事業所ごとに原子力事業者防災業務計画を作成するとともに、当該事業所において異常な事象が発生した場合には、同法第二十五条第一項の規定に基づき、原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、原子力災害の発生または拡大防止のために必要な措置を行わなければならないということになっております。

 原子力規制委員会は、今般の電気事業法改正案についてコメントする立場ではございませんが、この改正案によって原子力災害時における原子力事業者の責務が変更されるものではないというふうに理解しております。

近藤(洋)委員 ここをぜひ伺いたいんです。ここから大事な点なんですが、そうなんですね。

 ただ、問題は、過酷事故のときに、これは誠意を持って必要な措置を講ずる義務を有すると。まさにそれは、誠意を持って事業所は対応しますよ。そして、命令権もある。規制委員会の委員長は、事業者に対して命令することがあると。

 しかし、今回、事故が起こってしまった東京電力のケース。ちょっと個社の名前を言ってはあれですからA電力会社にしましょうか。A電力会社の社長に命令をしたところで、従業員の生命の危険があるときにそれに従わせるだけの権限は持つんでしょうか、社長は。私は法的にはないと思いますよ、法的にはないんですよ。行政は行政で、それは会社に対して命令はできるけれども、A電力会社の従業員はそれは拒否することができるんです。

 もっと言うと、では、必要な物資、ケーブルを運べと言った、運送業者はそれは嫌がるわけですね、とても物は運ばないわけです。民間事業者ではとても対応できない状況に追い込まれるのは、今回の東京電力の事故を見ても明らかなわけですね。

 国の責務はどうなっているかというと、この六ページ目、原子力災害マニュアル、これは恐ろしいことにマニュアルになっているんですが、マニュアル、六ページです。オンサイト対策は事業者の責任において実施すべきものであるが、当該事業者だけでは十分な措置を講ずることができない場合には、それまでに得られた情報や通報内容を踏まえて、官邸チーム実動対処班は各省庁との関係調整を行い安全確保を行った上で、実動組織が対応可能であると認めた範囲において、関係各省は実動組織によるオンサイト対策に係る調整等の対応を行うという、マニュアルは一応できています。

 しかし、これも非常に、マニュアルというものにしかなっていないんですね。私は、いざとなったら、やはりこれは、例えば防衛省の部隊であるとか、こういった部隊がどうしても活動せざるを得なくなると思うんです。

 ちょっと時間が迫ってきたので質問をはしょりますが、防衛省、政府参考人に来ていただいておりますけれども、あの福島のときも防衛省が出動したわけでありますけれども、資料に出ているように、化学科部隊が震災時において活動をしております。資料の八ページ目に派遣状態も添付させていただきました。全国の部隊は、九ページ目、私の地元の山形県東根市の第六師団にも化学科部隊はおります。

 しかし、これだけ活動した実績はわかりますが、三・一一を受けて、この部隊の編成を強化したといったこと、能力増強や新たな部隊編成は行ったのでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊におきましては、核・生物・化学、いわゆるNBC兵器というものが使用された場合などに対応するため、汚染された地域における情報収集や除染を任務とする、そのための特殊な装備品を保持する特殊武器防護隊や化学防護隊を全国に配置しております。

 御指摘の東日本大震災以降、これらの化学防護隊につきまして特殊武器防護隊に改編するということを行っているほか、放射能の汚染地域において行動できるNBC偵察車というものを十五両、それから個人用防護装備約五万五千セット、これらを各部隊に配備するなど、原子力災害も含めた各種事態における対処能力を高めるための取り組みを着実に進めさせていただいているところでございます。

近藤(洋)委員 着実に進めている、こういうことではありますが、では、ここで宮沢大臣にちょっと担当大臣としてお伺いしたいんです。

 アメリカは、NRC、原子力規制委員会が、基本的には事業者責任、これは一緒でありますが、最終的には、いざというときは発電プラントの運転もできる。最終的に、民間事業では手に負えない事態が生じた場合は、まさに米国は海兵隊が同様の海兵隊放射能等対処専門部隊を持ち、かつ、NRCの専門部隊がプラントの運転も責任を持つという体制で対処するんですね。

 企業は、避難するとなったら、政府は命令は出せるかもしれないけれども、最終責任は負えないんですよ。確かに防衛省は、部隊はいる、人は運ぶことはできるんでしょう。だけれども、恐らく防衛省にはプラントを運転する人はいませんね。化学科部隊に原発プラントを運転する人はいないはずです、それは間違いなく。潜水艦とかを運転する人はいるかもしれないけれども、発電プラントは運転できない。

 だとすると、日本でも危機管理上、こうした部隊を編成するといったことも私は参考にしていいんじゃないかと思うんですね。原子力規制委員会の中に置くのか、ふだんはそこにいるのか、そして、いざというときは防衛省と一緒になって行動するのか。どういう部隊編成かはわかりませんが、そうしたところまで踏まえて、いざというとき国が最終的に持つんだという構えをきちんと示すことが、国民に対する安心感であり責任ではないか、私はこう考えるわけでありますが、これはエネルギーを担当する大臣としていかがお考えでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

宮沢国務大臣 私は、一一年の事故をまさに教訓といたしまして、今回いろいろな対応策がとられたわけでありますけれども、この原子力災害マニュアルの策定も二十四年十月ということでありますから、民主党政権下で基本的に枠組みをつくられたものを我々が継承しているという状況で、民主党政権下において民主党が考えられる最大限のものを実はつくられたのかなと思っておりましたけれども、今伺っていますと、そうでもなくて、そういう問題もあって、アメリカの例などを参考にして少し考えてみたらどうだという御提言だと思います。

 やはり、なかなか私どもが中心になってということには政府の中ではいかないと思いますけれども、いろいろなシミュレーションを規制委員会を中心にやっていただいて、やはり有事に備えるということは大変大事なことでありまして、もちろん法律改正が必要かどうかということは別問題でありますけれども、そういうまさに有事のときのシミュレーションというものを政府部内でもう一度我々はやってみてもいいのかなという思いが今いたしております。

近藤(洋)委員 時間ですので終わりますが、大臣、前向きな答弁をありがとうございます。

 我々の政権のときは、本当にもう事故対処がぎりぎりで、ようやくマニュアルをつくったところで終わったんです。だけれども、自民党政権になってもう二年ですし、ぜひこういった体制を真剣に考える。あのままで時間がとまっては意味がないわけでありますので、ぜひそういったことをきちんと検討いただきたい。

 電力システム改革ともあわせて、そうしたいざというときの体制、消防車はどうするといって、確かにあのときは想定していない事故でしたから大騒ぎでしたけれども、もう二度とそういうことを起こしてはいけないわけでありますし、起きた場合も、きちんと自衛隊の専門部隊がいる、そしていざとなったら運転もできるという構えをとることが、国民の信頼を回復することになるんだろう。

 安全保障、ホルムズ海峡の機雷の除去もいいかもしれませんけれども、国内のプラントの安全確保の方が、原子力プラントの安全確保の方が極めて重要なことであるということを指摘して、時間ですので、質問を終わります。

江田委員長 次に、神山洋介君。

神山(洋)委員 神山洋介でございます。

 まずは、大臣、きのうの衆議院の本会議で電事法改正案が可決されたということで、大変お疲れさまでございました。

 きょうは、二十五分という時間をいただいておりますので、その関連で、議論をすることができなかった電力の話、エネルギーの話、そしてそれらを含む大くくりのセキュリティーの話、そのセキュリティーも絡めた地域経済の話も幾つかさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まずは、先日、新聞を見ておりましたら、「電力不足も存立危機事態」という見出しが出ておりまして、おやと思って、もともとの議事録もちょっと確認をさせていただきました。十八日の参議院の本会議で、維新の党の小野次郎議員からの質問に対しての総理の御答弁の中で、電力不足によるライフラインの途絶というものもその要件のうちの一つであるという形で例示をされたものかと思います。

 きょうは経済産業委員会の場ですので、安全保障法制の議論をするつもりはないわけですが、しかし、やはり、総理の御答弁の中で具体的な例示として電力不足によるライフラインの途絶というものが出てきたという意味は、一つ重たいものがあるというふうに考えておりますので、ここは宮沢大臣に、電力不足によるライフラインの途絶というものは、一体、具体的にどのような電力不足であり、どのようなライフラインの途絶を想定されていて、かつ、その上で、国民生活への影響というものは、具体的にどのようなレベルのものが想定をされていてこの例示に至っているのかということについて、御所見をいただければと思います。

宮沢国務大臣 エネルギー政策に責任を持つ大臣といたしまして、一般的に申し上げますと、今、エネルギーの自給率は六%に下がっている、九四%、化石燃料が海外から輸入されている、そして、低下させてまいりました中東依存度というものも逆に大変上がっている。

 こういう状況の中で、原油、またLNGといったものが例えば中東から入ってこなくなるというような事態になりますと、原油につきましては、これは備蓄をしております。しかし、残念ながら半年分にすぎない。LNGにつきましては、これはまさにガスでありますから、備蓄が基本的にできないということを考えますと、中東からの原油、LNGが入ってこないという事態になった場合に、まさに、大きさ自体はなかなか申し上げられないにしても、国民生活にも、また国民経済にも多大な影響があるということはまさに想定されるところであります。

 一方で、存立危機事態との関係で申し上げますと、これにつきましてはまさにこれから委員会において議論されるわけでありまして、どのような状態が存立危機事態かというようなことにつきましては、具体的な法解釈について、安全保障法制担当大臣から答えさせていただくということが適当だろうと思いまして、私自身はコメントする立場にはないと思っております。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 もちろん、法制の部分についてはおっしゃるとおりだと思っておりますが、どういう具体的な事例があって、どういう状況がその要件に値をするのかということは、これから国会の中で、委員会の中で議論をされつつも、同時にやはり、国民の多くの方々に御理解をいただかなければならない大変重要なポイントだと思っておりますので、関連のある部分については、機会がございましたら、ぜひそれは丁寧な御説明をこの場で要請させていただきたいと思います。

 おっしゃっていただいたとおり、電力の安定供給という話はこれまでの議論の中でも大変長くさせてきていただいたわけですし、エネルギー自給率の向上であるとか、いわゆるエネルギー安全保障というものも、私は大変重要な要素であろうと思っております。

 その中で、これは前段のきょうの委員会の質疑の中でも何回か出てまいりましたが、自給率の話です。

 先日お示しをいただいた長期エネルギー需給見通しの中でも、おおむね二五%を目標とするのだというお話、そして、現在わずか六%になってはいるものの、震災前の二〇%から二五%への上積みを目指していくのだという大方針は示されているわけです。

 例えば、二〇一〇年、自給率が二〇%だったときの、では二〇%の内訳はどうかといえば、二〇%のうちの四分の三、一五%は原子力で賄われていたわけです。では、今後、二五%をおおむね目指していくのだという際に、この内訳をどう考えておられるのか、この点も含めて、エネルギー自給率の向上のために、どういう手段を組み合わせて、どういう方針でいかれようとしているのか、この点について御答弁をいただければと思います。

宮沢国務大臣 まず、エネルギー基本計画におきましては、「我が国は、海外からの資源に対する依存度が高いことから、資源調達における交渉力の限界等の課題や、資源調達国やシーレーンにおける情勢変化の影響による、供給不安に直面するリスクを常に抱えており、エネルギー安全保障の確保は、我が国が抱える大きな課題であり続けている。」と位置づけております。

 そして、今回二五%程度を目指すということに目標を置いたわけでありますけれども、これは、主要先進国で最も自給率が低いのがイタリアで約二〇%、そしてその次がスペインでございまして、下から二番目になりますともう二六%ということでございまして、やはり二五%程度は目指さなければいけないだろうということで、エネルギー需給見通し小委員会におきまして、震災前を上回る、おおむね二五%程度まで改善するという方向を示していただいたものでございます。

 どういう形でそれを実現していくかということになりますと、まず、再生可能エネルギーといったものをまさに最大限導入していくというようなこと。ただこれも、これまでもいろいろ議論をしてまいりましたけれども、やはり電力料金との関係でいろいろな問題が生じてきますので、それは、例えば水力であれば、可能な限りこれはふやしていくことを完全に努力すれば、これはコスト的にも安いし、極めて安定している。また、地熱も安定している、バイオマスも安定しているというようなことでありますから、こういうものはもう最大限導入してまいりますが、一方で、例えば太陽光ということになりますと、いわゆる電力料金を現在よりも上げない範囲でどの程度最大限入れていくかという努力をしていく、こういうことになろうかと思います。

 そしてさらに、IEAでも準国産エネルギーに位置づけられております原子力についても活用することによって自給率を上げていく、さらに、これを二〇三〇年というところで見ますと、少し期間的には先の話かもしれませんけれども、メタンハイドレートといった新しい国産のエネルギーといったもののまさに商用化に最大限努力をしていく必要があろうかと思っております。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 そうはいっても、相応の部分は原子力で賄っていくということはやはりお考えなのかなというふうには思うわけです。そのこともありながら、この場でももう数度、大臣とも議論させていただきましたが、やはり、だから、どの程度までいけるか、そして、地熱部分というのは大事だなということで、大臣からは前向きな御答弁を数次いただいているわけです。

 これは、確認も兼ねて、経済産業省、環境省にそれぞれお伺いをしたいわけですが、この地熱発電をでき得る限り活用していくということに関して、経済産業省、環境省、それぞれどういう方針で臨まれているか、端的に御答弁をいただければと思います。

住田政府参考人 委員御指摘のとおり、地熱発電、これは積極的に導入すべき電源だと認識をしております。

 一方で、導入に当たりましては、開発リスクがある、あるいは地域の方々の理解を得なければいけない、また環境規制といった課題もあるということで、これらの課題の解決のためにさまざまな支援に取り組んでおるところでございます。具体的には、予算の措置を講じますとか、あるいは環境規制につきましては、環境省ともよく連携をしながら検討を進めておるところでございます。

 予算に関連いたしましては、平成二十七年度の予算では総額二百四十億円を計上いたしまして、さらなる地熱発電の導入促進に向けて強力に推進してまいりたいと考えております。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

小川政府参考人 お答えいたします。

 再生可能エネルギーであります地熱発電は、安定的な電源として位置づけられており、地球温暖化対策としても効果的であるために、環境省としても、その推進が重要であると認識をしております。このため、環境省におきましても、環境に配慮した地熱や温泉熱の利用に関して、計画策定や設備設置などについて助成なども行っておるところでございます。

 一方、貴重な自然を有する国立・国定公園内などにおける地熱開発に際しましては、自然環境や景観等に配慮しつつ推進することが重要と考えております。この地熱発電の推進のために、平成二十四年には、それまで開発が制限されていた国立・国定公園の第二種、第三種特別地域における地熱開発につきまして、自然環境と調和した優良事例であれば認めるという規制緩和を行ったところでございます。

 さらに、その優良事例の形成を円滑に進めるために、この三月に検討会を立ち上げまして、そこで自然環境との調和を図りつつ優良事例の形成を円滑にするための考え方につきまして御検討いただいて、夏ごろまでに取りまとめるという予定でおります。

 よろしくお願いいたします。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 特に今おっしゃっていただいた優良事例の取りまとめ、いろいろな意味で今後の規制のありようということにも大変重要な影響があろうかと思いますので、くれぐれもよろしくお願い申し上げます。

 ここで大臣には御答弁を求めませんが、やはり殊さらに対立構造に持ち込むつもりは私はありませんが、やはりこの地熱発電に関しては、経済産業省のポジションと環境省のポジションと、それぞれ原点を含めて違いがあろうかと思っております。それぞれ、御担当の中でいろいろ工夫をいただいて御苦労をいただいていることは重々承知をしておりますが、それを超える部分については、やはり政治判断というのも時にあってよかろうかと思いますし、恐らく、そのことの御答弁をお願いすれば、大臣からは前向きの御答弁をいただけるということは承知をしておりますので、ここでは要請をするにとどめさせていただきたいと思います。

 残り時間がもうわずかとなってまいりましたので、少しはしょりぎみに行かせていただきたいと思います。

 きょうは、電力エネルギー、そして大きな意味でのセキュリティーに関連をしてということで、実は、これは先ほど田嶋議員からも言及がございましたが、サイバーセキュリティーに関して、数点、質問をさせていただきたいと思っております。

 まずは、その前提として、特にきょう議論させていただきたいのは、いわゆる制御システムに対してのセキュリティーインシデントがどういう状況になっているかということでございます。

 まずは、前提として、国内での制御システムに関して、セキュリティーインシデントの発生はどういう状況になっているかということについて、これはNISCにお越しいただいていると思いますので、御答弁いただけますか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 工場や発電所といったプラントの機器制御に用いられる、いわゆる制御システムに対するサイバー攻撃の脅威が近年高まっているところでございまして、制御システムのサイバーセキュリティー確保は極めて重要な政策課題であると認識しております。

 こうした問題意識に基づきまして、政府といたしましては、平成二十六年五月に決定をいたしました重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第三次行動計画におきまして、電力等の十三分野を重要インフラとして位置づけまして、情報セキュリティーの観点から厳重な防護体制を講じることとし、官民の間及び民民の間におけるインシデント情報の共有等を推進しているところでございます。

 こうした重要インフラに対するサイバー攻撃につきましては、不審メールによる不正プログラムの感染、ホームページの改ざん等の事案については報告を受けておりますけれども、いわゆる制御システムに関する攻撃等については、現時点では報告を受けていないところでございます。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 どういうカウントの仕方をするかによっても、ここは変わってくるものだろうと思いますし、顕在化しているものもあれば潜在的にまだ未知のものもあろうかと思います。

 試しに、アメリカ国土安全保障省、DHSの数字でいえば、二〇一一年は百四十件、一二年百九十七件、一三年二百五十七件、一三年の二百五十七件のうち、エネルギー分野へのインシデントは、半数以上を占める百四十五件、そんな数字もあるわけです。

 この質問をさせていただいたのは、端的に言えばスタックスネットのことが頭にあるからでありまして、二〇一〇年、もう五年ほど前になりますが、イランの遠心分離機がスタックスネットと呼称されるマルウエアによって物理的にも破壊をされたという事例は広く知られているところでもありますし、近年ではそれの亜種も既に発生をしているということも知られているとおりだと思います。

 やはり、これを非常に大きく私は見ておりまして、そもそもネットワークで接続をされていないスタンドアローンのシステムにおいても、これはUSBを介してというふうには言われておりますが、感染をさせられて、システムの障害のみならず物理的な破壊にも至らしめられた経緯があるということなわけです。

 原子力発電の話もきょうも累次ありましたが、では、原子力発電が仮にそういう形で乗っ取られたり、場合によっては感染をして、場合によっては破壊的な、破局的な被害を受けるということは、これは何が何でも避けなきゃいけないという事態だと私は思いますし、ある意味では、存立危機事態なんというのはまさにここにあるのではないかというふうにも私は思うわけです。

 その観点で、スタックスネット及びその派生型のマルウエア、これはもう既に対応がなされているとは思いますが、こうしたものに対してどういう対応状況が今あるか、加えて言えば、既知のリスクに対しては対応されていていいはずですが、まだ未知のものがあるという前提に立ってきちんとこういう対応は考慮されているか、この点について御答弁をいただきたいと思います。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるスタックスネット等によりまして海外の電力設備等においてサイバー攻撃による被害が生じているという点につきましては、報道等によりまして承知をしております。

 いわゆる政府系システムのサイバーセキュリティーの確保は、電力等重要インフラ等の事業継続を確保する観点から、極めて重要な政策課題であるというふうに認識しております。

 このため、サイバー攻撃等から重要インフラを防御する観点から、先ほど申し上げました行動計画に基づきまして、NISCが中心となりまして、さまざまな措置を講じているところでございます。

 具体的には、IT障害の未然防止及び再発防止の双方の観点から、必要な情報セキュリティー対策を盛り込んだ安全基準等の整備、浸透、官民の情報共有体制の強化、IT障害発生時における対応能力向上のための分野合同での演習、こういったことを推進しております。

 また、委員御指摘のとおり、この分野におきましては急速に技術革新が進んでおります。サイバー脅威についても急速に深刻化が進んでいることを踏まえまして、本年六月を目途に、重要インフラ防御対策を含む新たなサイバーセキュリティー戦略を決定すべく、現在検討を進めているところでございます。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 全てをこうした公の場で明らかにしてくださいなんということを私は申し上げるつもりはありません。しかし、これはやはり極めて重要な部分だと思いますので、ぜひ大臣におかれましても、強く御認識をいただけたらありがたいなと思っております。

 本来はあと幾つか質問したかったんですが、前段の関係で私の質問時間が五分短くなってしまって、若干はしょらせていただきます。

 今、原発の制御システムの話の観点でこれを申し上げましたが、実はこれは原発とか重要インフラだけの話ではなくて、例えば電力システム改革の話をしてきた経緯の中では、二〇二〇年をめどにスマートメーターを各家庭に整備しましょうという話にもなっているわけです。スマートメーターが整備をされて、例えばネガワット取引等々いろいろな意味で活用されたらいいと思う一方で、実はそれに対しての、先ほどのサイバーセキュリティーの観点からしたら、脆弱性は明らかに高まりますので、その点もあわせての御検討をぜひすべきだということを申し上げて、御答弁はいただかずに、最後の質問を一点させていただきます。

 これは少しローカルな話になりますが、具体的に言えば、今私の地元の箱根で火山活動が活発になっているという状況があります。これを少し一般化して考えて、現地に今起きていることを申し上げると、自然現象に起因をして、まだ爆発をしているわけではないんだけれども、する可能性があるということに対して、一定の予防措置、立入禁止ということをやるわけです。これは正しいと思います。

 そうすると、当然ですが、その一定の予防措置に基づいて、地域の中小企業を含めた経済活動は一定の制約、制限を受けるわけです。それに対して、もう既に具体的に相当な被害が出ているという状況なんですが、ではどう対応できるかということを考えていくと、実は私、ここに法の穴があると思っています。

 平時の法律はあります、中小企業に支援しましょう。いざ災害、要は災害救助法の適用を受けた後の災害時には、それなりのスキームもあります。しかし、実質災害でありながら、一方で、法律で言う災害ではないというすき間の状況に今入っていて、これは別に箱根だけの話じゃなくて、現時点で蔵王も似たような話なんですが、地域の中小企業は事業経営がかなり困難になっているという状況が実情としてあるわけです。

 これを考えると、今申し上げた法の穴に対して、やはり何らかの手当ては私はすべきではないかというふうに考えているわけです。これは、役所の御担当の方は、それぞれの今ある既存の法制の中でどうできるかということで汗をかいていただいていますが、やはり我々は、政治家として、立法府の人間としてそこには大きく着目をすべきだと思います。

 最後に、大臣に、これは政治家としてお伺いをさせていただきたいのは、今まではなかった法のすき間に対して、我々は立法府の一員としてやはりきちんと目を向けるべきではないかということを私は考えているわけです。最後に、この点、一言御答弁をいただきたいと思います。

宮沢国務大臣 いろいろな被害がいろいろな局面で出てきているわけでありますけれども、例えば、東京電力の事故のように原因者がはっきりしている場合は、基本的に原因者が損害賠償に応じますが、今回の例のように大変大きな額ということになったときには、政府においてもそれなりのシステムをつくってお手伝いをしてきているところであります。

 一方、自然災害の場合は、基本的にはこれはまさに原因者というものがないわけでございますので、基本的には自助ということになりますけれども、それと共助、公助をどういうふうに組み合わせていくかということで対応してきております。

 例えば、家屋が全壊して激甚災害指定などされたときには、これまでなかなかそういう国の制度はなかったわけですけれども、まさにそれについて、補償といいますか、建て直しのお金を直接個人にお渡しするというような制度も出てきているという中で、基本は、恐らくこれは自助、共助、公助、公助の部分は金融対応ということになろうかと思っております。

 そして、今の場合、激甚災害指定をされますとそれなりにしっかりした制度融資があるわけでありますけれども、その期間が抜けているとおっしゃればそのとおりでありますが、一方で、セーフティーネット貸し付けといったものは御利用ができるわけでありまして、そういう意味から、関係者と政府、公的な金融機関だけではなくて、商工会、商工会議所も窓口になっておりますので、丁寧に対応して、そういう融資をできるだけ使えるような配慮をしていくということが大事なことだろうというふうに思っております。

神山(洋)委員 ありがとうございました。

 さきに商工中金の議論をここでもさせていただきましたけれども、危機対応業務ということもありますので、さまざまな既存の制度も含めて柔軟に丁寧な御対応をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 維新の党、木下智彦でございます。

 本日も、お時間いただきましてありがとうございます。

 きょうは、大臣と、以前に一般質疑の際にちらっとお話しさせていただいた中小企業関連の対策について、少しお時間いただきましてお話しさせていただきたいなと思います。

 以前、先ほど田嶋委員もちらっとお話しされていましたが、冨山和彦さんから出ている著書の中で書いてあったんですけれども、日本の企業全体の企業数を見た場合に、約九割弱が非製造業と言われている。しかも、中小企業の非製造業の企業数だけで八八%ぐらいだったと思うんですけれども、あるというお話がありました。もう少し掘り下げると、企業の従業員数で見た場合には、全日本の産業の従業員数のうちの約六割が、中小企業のうち、しかも非製造業の従事者の方々だというふうに言われている。

 その中で、中小企業対策というふうに言われると、政府では私はそういうことはないと思っているんですけれども、やはり、テレビであるとかメディアで取り上げられるのは町工場の人たち、東京でいうところの大田区であるとか、大阪でいえば東大阪であるとか、そういったところの町工場の人たちに割とフォーカスが当たっている。これにフォーカスを当てることがだめだというわけではないんだけれども、非製造業、例えば飲食業であるなり交通機関の人たちであるなり、サービス業と言われるような人たち、そういうところにもっとフォーカスが当たっていいのではないかなというふうに思っているんですね。

 そう思って、そういうことを気にしながら最近テレビとかを見ていると、意外と、そうはいいながら、ちょっと、政府の対策でどうこうしていますよとかそういうのではないんですけれども、例えば、町をうろうろ歩いて、食べ物屋さんに行って、その食べ物屋さんのお父さんがどういう人生を歩んできたかとか、ああいうのは実はすごく多いんですよね。それをもっと政策の方とかかわりがあるように報道もしてほしいなというふうに私は思って、最近テレビを見ています。

 そこで、まずちょっと省庁の方に聞きたいんですけれども、今、中小企業対策として、非製造業をフォーカスしたような施策というので代表的なものというのはどういうものがあるのかなということで、お聞かせいただければと思います。

北川政府参考人 商業、サービス業向けのどのような施策があるかというお尋ねでございます。

 基本的には、補助金といたしまして、これまでものづくり補助金というのをやってきましたが、そこにサービス業、商業も加えていく、あるいは、高度なものづくりにつきまして、サポーティングインダストリーというのをやっていましたけれども、これにも、サービス業の難しい連携事業も対象にする、こういったことをやっております。

 それ以外にも、国会で御審議いただいた、例えば地域における創業支援、これも、地域の創業の実態を見ていますと商業、サービス業がかなり多いわけでございまして、実はそこに結果的にはフォーカスが当たる。あるいは、昨年御審議いただきました小規模企業振興基本法でございますけれども、これも小規模企業は、地域に行きますとサービス業、商業がほとんどでございます。

 こういった観点からいたしますと、実質的には、商業、サービス業向けの施策は最近かなり重点的にやってきているという状況にございます。

木下委員 ありがとうございます。

 そうなんですね。やられているんだと思うんですよ。ただ、一番最初に今出てきたところでも、名前もものづくり補助金と。ものづくりがやはりどうしても、名前だけでもフォーカスが当たってしまう。難しいんだと思うんですね。そういうものを一くくりにしてどういうことをしようというのはあるんだけれども、やはり名前からしてもう少し、もっと工夫がまず必要なんじゃないかなというのが、私は最近本当によく思うんですね。

 だから、そこの部分も、経産省、中小企業庁としても、もっとそこにフォーカスを当てたような広報活動であるとかネーミングのやり方であるとか、そういうことももう少し工夫をしていただきたいなというふうに思っております。

 そういう観点の中で、あとは大臣に御所見等々をいただければいいなと思って、きょうはそんなに大した話は用意してきていないんです。

 資料を配らせていただいたんですけれども、これが、第一回まち・ひと・しごと創生会議という中で、去年の九月十九日に先ほど出ました冨山和彦先生が出されている資料の中から抜粋を数枚用意しております。

 その中で、まず最初に、地方経済にないものは何なのかというところで、「地方に「しごと」が無いわけではない」「Lの経済圏は」と。このLというのがローカルの経済圏という考え方、Gというのがグローバルの考え方ということで、この二つの考え方に分けた方がいいんじゃないかなというふうに言われているんですね。

 この図を見ていただいて、左下の方に書いてありますが、Gモードの産業というのとLモードの産業という二つの分け方をしております。

 Gモードというふうに言われる、それはグローバルのモードですね、そこは、製造業であるとかIT産業それからプレミアム特産品という形で、物にある程度特化した、ITはどうかというのはありますけれども、物にある程度特化したもの。これは、物は財としていろいろなところへ移動が可能だということで、そういう意味でグローバルというふうな捉え方をしているんだと思うんですね。

 片や、Lモードの産業というところでは、小売であるとか卸売、物流、公共交通、宿泊、外食、医療、介護、保育というような対面型サービスの産業。これは結局は、対面型だということは、人が、相手がいて、そこに対するサービスを提供するという形になります。これは移動が非常に難しい、地域に密着したものである必要があるということで、実際に地方経済を支える、そういうモードということで、Lモードの産業というふうに言われている。

 そういう意味でいうと、地方に仕事がないわけではないんですよというふうなこと、これは、Lの経済圏は生産労働人口の先行減少で恒常的な人手不足になっている、だから人手不足になっていて、仕事はあるんだけれども人手不足の状態になって、どんどんどんどんそれによって悪循環が生まれていますよというふうに言われている。

 ないのは何か。ないのは、相応の賃金と安定した雇用形態、それからやりがいやプライド、この三点が言われています。こういうことを持って働けるような仕事がなくなっているんだ、だから若者の流出が続いている、そういうことを言われております。

 だから、こういうことを考えると、今地方創生というふうに政府・与党は言われていますけれども、やはり焦点を当てるところは、今のものづくりというような名前じゃなく、もっと、中小企業対策に特化してきょうはお話ししていますけれども、もう少しそういうサービス業であるとか非製造業に対して大きく花火を上げるような、そういう目玉政策というのを中小企業対策としても私はちょっとつくっていくべきではないかなというふうに思っておるんですけれども、まず、ちょっとここまでで大臣の御所見をいただければなと思います。

宮沢国務大臣 おっしゃるとおり、まさに中小のサービス業をどれだけ生産性の高い産業に仕上げていくかということは、恐らく成長戦略という観点からも地方創生という観点からも大変大事なことなんだろうと思います。

 そうした意味も含めて、例えばものづくり補助金であったものをものづくり・サービス補助金というふうに変えてきたわけですけれども、まだまだ政策として足りないこともあるし、もっと言いますと、なぜ日本の労働生産性はサービス分野で低いのかという分析をもう少しきっちりやっていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 今考えていたんですけれども、例えば食料、要するに飲食店といった意味でいいますと、例えば私の地元、広島県福山市ですと、ラーメンは大体五百円前後、それからちょっとした定食も六百円、七百円で食べられる、東京だとそれがもう少し高い。しかし、シンガポールに行くと三千円はかかるとか、アメリカ・ニューヨークにおいても、またヨーロッパの主要都市においても、十ドルで食べられるものはほとんどないと言われていまして、そういうような価格がつけられている以上、労働生産性はやはり低くなってしまうよなと。

 また、ホテル一つとりましても、あるオセアニアの国の大臣が東京に来ようと出張計画が立てられて、出張の稟議が回ってきた。見ると、ホテル代が三百ドルと書いてある。こんな安いホテルに私は泊まれないからかえてくれ、千ドルしないと真っ当なホテルではないと。

 こういうような中で、デフレの結果、日本の物価というものがあらゆる意味で安くなってきていることも、いろいろな意味でこの労働生産性には影響しているんだろうと思っておりますけれども、そうしたものをやはりもう少ししっかりと、サービス業と一口で言わないで、いろいろな業種ごとに分析をして、どういうものが労働生産性を上げていく政策になるのかということを本腰を入れてやっていかなければいけないということを今思っておりまして、しっかりこれから指示を出させていただきます。

木下委員 ありがとうございます。まさしくデフレの影響というのは大きいんだと私も思います。

 ただ、そう言いながら、私はシンガポールに住んでいたことがありまして、日本のラーメンは千円とか千五百円するんですけれども、地元の人たちが食べているのは、ホーカーセンターといって、いろいろな食材が集まって、そのまま食べられるようなところがあって、三百円ぐらいで物すごいおいしいものがいっぱいありますので、なかなかそうはいかないでしょうけれども、行かれるようなことがあれば、ぜひ試していただければなと思います。

 そうなんですね。労働生産性というのが非常に、一番難しいところ。この資料の三枚目の右側にそれを書いて図を出しているんですけれども、日本、米国、ドイツ、英国、それからフランス、これを比較してみて、日本が一番下なんですね、二十七・六ドル。これは、アメリカと見ると半分なんです。労働生産性という水準で見ると、日本は半分の水準でしかないということで、これが一つ。

 それから、もうちょっと戻って言いますと、左側の図では、製造業とサービス業の平均給与と給与所得者数というのが書いてありますけれども、これを見ていただくとおもしろいんですけれども、二〇一二年と二〇〇二年とを比較しているんですけれども、左側の製造業の方では、実質的な賃金は年間所得でいうと二万円ほど増加している。わずか二万といいますが、二万円増加している。そのかわり、労働人口は二百六十五万人も減少している。

 ただ、サービス業の方は全く逆の状態で、平均給与は年間で二〇〇二年比でいうと四十六万円も減少している。これは正規、非正規という問題もあるんだと思いますが。ただ、労働者の数は二百八十五万人増加と、全く逆の構造になっているという中で、サービス業は生産性が低いんだ、これはやはりどうにかしなきゃいけないよねと。

 戻りますが、二枚目の図のところに、これはまた冨山和彦さんがまとめられています。これは全部は読まないので、また資料を読んでいただきたいんですけれども、一番重要なテーマは何かというと、先ほど田嶋委員も言われていましたが、新陳代謝、ここにはもうちょっと詳しく、「「新陳」と「代謝」の同時促進による労働生産性と賃金の上昇」をしなければいけないと。

 要は、ローカルの中でいろいろなサービス業があっても、ここにも細かく書いてあるんですけれども、一番下の方の4のところに、「穏やかな退出・集約化政策とスマート・レギュレーション」というふうに書いてあるんですけれども、穏やかな退出を促していかなければ新陳代謝はできないよと。急激にやるのは市場インパクトが相当大き過ぎる、市場もそうですし、労働市場を失ってしまうことになりますので、穏やかにやりながら集約をしていかなきゃいけない。

 ただ、先ほど言われていましたけれども、政治家がそれを言うのは相当困難だということで、私ども維新の党は結構平気でそういうことを言っていますけれども、そういうことを政策としてやはり大きく私は打ち出すべきなのではないかなというふうに思っておりますので。

 ぜひとも、そういう観点で、今後の中小企業対策、特に非製造業に対する部分というのに大きくフォーカスし、なおかつ、多少痛みを伴ったとしても、全体的な最適を求めているんだということを明確に表に打ち出すということをこれから先は政府が主導してやっていかなければいけない。それこそが地方創生にもつながるし、日本全体の景気の底上げにつながっていくのではないか。まるで私が自民党の党員であるかのようなお話をさせていただいておりますが、ぜひ、そういうふうな観点でやっていただきたいなと思います。

 これについてはもう御答弁は結構です。

 では、次に行かせていただきます。

 もう一つ大きな点というのが、これも同じく中小企業対策の中で一番課題になってくるであろうと思われるところ、老齢化がどんどん進んでいったときに、これから先、では具体的な施策というのはどういうものがありますかということなんです。これはおのずと今国会でも出てきておりますが、先ほどもお話しされていましたけれども、事業承継をちゃんとしていこうであるとか、いろいろなことを言われております。ただ、まだまだ足りないんじゃないかなと思っているんですね。

 その四番のところに、ちょっと関係ないような資料も入っていますが、見ていただきたいんです。この左の方、私は、維新の党といいながら大阪維新の会のメンバーで、今回の都構想の住民投票、積極的に推進、賛成ということでやりましたが、残念ながら負けてしまいました。テレビ局がした出口調査の結果、左側につけておりますけれども、これを見ていただくと、上の方から、七十代、六十代、五十代、四十代、三十代、二十代と年齢が書いてあって、賛成と反対の比率というのが出ております。

 これは投票に行った人たちの比率なので、具体的な数字、細かい数字はこれから先出てくるでしょうけれども、六十代以上の人たちの投票率は非常に高い。その中で、特に七十代の人たちは反対の方が多いんですけれども、それ以下、六十代以下の人たちを見てみると、実は、賛成の人たちの方が、投票に行った人の中では多い。投票に行っていない人は、そもそも住民投票に失望感があって投票に行かなかった可能性もありますので、一概にこれをもって全ての傾向だと言うことはできないけれども、こういう状態なんですね。

 これを見ていて、私が相当活動させていただいて、町の中でも、例えば街頭演説をしたりビラを配ったりとか、いろいろしました。そうしたら、物すごい抵抗をされる方々がいるんですね。ばあっと来てどなったりとか、余り言う話じゃないですけれども、街宣車に乗っていると水をかけてきたりする人もいたり、毎日誰かがどこかで殴られるんですよ。それが、ほとんどやられる方は相当御年配の方です。

 それがいい悪いとか、そういうのは別においておいて、言われているのが何かというと、何か、都構想になることによって、年がいった人がいろいろ物が奪われていくと。

 例えば、具体的に言うとあれですが、地下鉄の敬老パスというのがあるんですけれども、それを橋下市長になったときに、もともと無料だったものを一回五十円取るようにしました。最初に三千円払っていただいて、五十円。それでも反発があったんですけれども、今度、特別区になっていくと、特別区長の権限でそれすらもなくしてしまうんじゃないかというような形で、そんなのは許せないと。いや、なくしませんよと言っても、やはりそういう不安を感じられている。もっとひどいのは、年金まで下がってしまうんじゃないかと。いや、違いますよと言っても、やはり奪われることに対する不安感というのは物すごく多かったんです。

 そういうのを見ていて私は思ったんですけれども、とにかく元気なんですよね。ただ、やはりこれから先お金が出ていくことばかりになってしまっているから不安を感じられているんだと思っていて、こういう結果も出ている中で、今私がすごく懸念しているのが、若者とお年寄りの人たちの間の世代間闘争というのを政治家が助長してしまうようなことをやってはいけないというふうに思っているんです。

 その中で考えたときに、中小企業対策で、今見ていると、年がいった方で中小企業をそのまま継続されている経営者の方々がたくさんいらっしゃいます。でも、そうじゃなくて、私は今事業継承の話をしましたけれども、事業継承した後もそのまま職場に残って働くような、そういう仕組みになっていかないかなと思っているんです。

 年がいっても働くことはできます。働いても、パフォーマンスとしては落ちてくるかもしれません。ただ、知恵もあります。そういう人たちが事業承継しても残っていけるような職場環境をつくっていく、そういう施策があってもいいんじゃないかなと。

 これは、中小企業だけじゃなくて大企業でも同じようなことが言えるんですね。

 私は、二十年ほど大きな企業に勤めておりました。そうしたら、役職定年というのがあって、五十三歳―五十七歳でどんどん役職定年していくんですね。していって、ただ、ほとんどの人たちがどうするかというと、そのまま退職を選んで、退職を選んでといいながら、実質的には、関係会社の役員というポジションをもらうことと引きかえに退職していくんです。官僚とすごく似ていますね。もしくは、そのまま残る人もいるんです。残る人たちは給料を四割ぐらいカットされます。そのまま残っていって、仕事の内容も変わっていく。

 ただ、一番最初に、一枚目のページのところで、ないのは相応の賃金、安定した雇用形態とやりがいやプライド、これがないから若者の流出が続くんだよというふうに冨山和彦さんが言われていますけれども、私、お年を召した方でも同じだと思うんです。

 というのは、急に、きのうまで一〇〇%給料をもらっていたのが四割カットされますよと。その中で、仕事も窓際に追いやられて、プライドもなくなっていく。だから、私たちが見ていて、私はそういう見方はしませんでしたけれども、大半の見方が、会社の中に残っている人たちは、あの人たちは余り、だめな人だというような文化ができ上がっているんです。それよりも、関係会社に自分の仕事を見つけて行った人の方がよかったかのような、そういうイメージも社会全体としてでき上がっているんじゃないかな。私は、全くそれは違うと思っているんですけれどもね。

 というのは、関係会社の社員とふだんは一緒に仕事をしています。若い人間で物すごくやりがいがある人間がたくさんいるんですね。なのに、いきなりぽっと、もともと親会社もしくは関係会社、親会社のちょっと偉かったような人たち、私からしても、そんな働いていないとか思っていたような人たちがぼんと来て役員になる、俺たち、何にプライドを持って働けばいいんだ、何にやりがいを持って働けばいいんだと。

 それを考えると、若い人たちに対する施策も必要ですけれども、お年を召されたが、まだこれから働けるような人たちに対する施策というのは、恐らく、本当は厚生労働省が相当こういうことをいろいろ考えてやられていると思いますけれども、経済産業省、中小企業庁ともども、そういった社会の仕組みにしていくような、そういう施策というのをもっと真剣に私は考えてほしいなと思いまして、非常に長々と話してしまいましたが、最後に、その辺を踏まえて大臣にコメントいただければと思います。

宮沢国務大臣 大阪都構想のアンケート結果みたいなのがどうつながるのかなと思って伺っておりましたけれども、御老人が元気だというところにつながるということで、よくわかりました。

 おっしゃるように、まさに高齢者にしっかり仕事をしていただくということは、今後の日本のことを考えますと当然やっていかなければいけない施策でありまして、慶応の塾長の清家教授、労働経済学の専門家で、私も大変仲がいいんですが、彼はいろいろな場で、七十まで元気な方にはみんな働いていただくような制度をつくらない限り、日本の成長というものはもう望めないんだ、こういうことをおっしゃっていまして、私もそのとおりだろうと思います。

 そして、今おっしゃったように、基本的に日本の大企業、ちょうど私はことしで、まさに介護手帳が来る年、六十五になったわけでありますけれども、大学の同級生たちに聞きますと、現役で働いている人はもちろんごく一部いますけれども、一方で、大企業ですと六十で大体定年、そして六十五まで再雇用という形でいる。人によっては、六十二、三でやめて、町内会でボランティアのお世話をしている。あんな優秀なやつが何でと思うんですけれども、正直言って、大変もったいない状況になっていると思います。

 したがって、そういう方たちにやはり七十まで仕事をしていただくような状況をどうやってつくり出していくかということが最も大事なことであります。例えば、中小企業の側からいいますと、特に技術系の高齢者の方には随分期待している部分があって、そういう方が欲しいという方もいらっしゃいますし、また、地方に行きますと、例えば金融機関で働いていたというだけで、それなりの知識がある高齢の方というのは、いろいろなところで働いていく場は多々あるわけでありますから、そういうものをマッチングしていくということを、少なくとも経産省としてはもう始めております。

 まだまだ小さい動きでありますけれども、やはり、七十までしっかり働くということを政策的にしっかり進めて、これは御本人がその気になっていただかなければいけないわけでもありますから、そういう政策を政府を挙げてやっていかなければいけないと思っております。

木下委員 今、小さい動きだけれどもと言っていたのを、ぜひとも大きな動きにしていただいて、日本全体の仕事に対する感覚というのを変えていっていただきたいと思いますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 維新の党、落合貴之です。

 本日は、まず官民ファンドについて質問をさせていただきます。

 経産省の行っている健康寿命延伸産業創出推進事業についてお伺いします。

 この事業に関連して、昨年九月に地域ヘルスケア産業支援ファンドができました。いわゆる官民ファンドです。この健康関連の分野は、アベノミクスの第三の矢の規制改革、成長産業の一つですし、民間企業も注目し、進出し始めています。

 その中で、官が出てきて半官でやる理由は何なのか、教えていただければと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問のございました、地域経済活性化支援機構が組成いたしました地域ヘルスケア産業支援ファンドは、地域のヘルスケア関連事業者に対しまして資金供給や経営ノウハウの提供等を行うことを通じ、地域におけるヘルスケア産業の創出や拡大を支援することを目的としたものでございます。

 このファンドにつきましては、REVIC、地域経済活性化支援機構が、これまでの医療機関や介護施設などの事業再生等を通じて蓄積いたしました知見やノウハウを活用するとの観点から、REVICの運営子会社等が無限責任組合員、いわゆるGPとして運営を行っておりまして、ファンドの安定的な運用が図られることによります地域の関係者の信頼や安心の醸成、さらには、ヘルスケアファンド運営に係るノウハウなどを地域の民間事業者が取得していくことにも資するというふうに考えてございます。

 また、民間のみでは必ずしも十分な資金が集まらないとの指摘があることを踏まえまして、ファンドの円滑な設立、規模の拡大に向けまして、民間資金の呼び水となることを目的として、民業補完の立場から、REVICがLP、有限責任組合員として出資を行っております。

 なお、REVICがこのようなLP出資を行うことのできる要件は告示において定められておりますが、その中には、民業補完の観点から、REVICが出資をしなければ地域経済の活性化に資する資金供給を行うために十分な資金が集まらないと見込まれること、REVICのほかに一または二以上の民間事業者がLPとして出資しているまたは出資する見込みがあること、原則として一ファンドへのREVICの出資限度額は全体の二分の一以下であることなどが基準として定められているところでございます。

 今後、地域ヘルスケア産業支援ファンドの取り組みを通じまして、ヘルスケア産業に対する資金供給及び経営ノウハウの提供が行われることによりまして、地域のヘルスケア産業の創出、拡大が図られていくことを期待しているところでございます。

落合委員 これをきっかけに民間のベンチャーキャピタル等もこういうものにどんどん進出していくといいと思うんですが、このファンドの総額は百億。今、この中で、政府出資、それから民間出資の割合、そして、民間出資は何社で、幾らなんでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 地域ヘルスケア産業支援ファンドに対する出資比率につきましては、地域経済活性化支援機構及び同機構の一〇〇%子会社であるREVICキャピタルが三五・五%、民間金融機関等が六四・五%になってございます。

 また、民間金融機関等からの出資につきましては、地域銀行を中心に二十一社となっております。

 なお、同ファンドの投資実績につきましては、これまでに、ヘルスケア関連の七事業者に対しまして、総額約十五億円の投資が行われているところでございます。

落合委員 ファンドの存続期間が、当初の予定では七年で百億と設定されていますが、今、実績が十五億ということです。

 ファンドが打ち切りになるまでに資金の回収まで行わなければならないわけですが、百億ぐらい出資できそうな見通しというのはいかがなんでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 このファンドにつきましては、去年の秋に、最終的には去年の十二月にできたわけでございますけれども、そこからカウントしまして約半年で今もう十七億できているところでございますので、今後もこのような調子で順調に伸びていくのではないかというふうに期待しているところでございます。

 なお、このファンドは確かに年限が決まっておりますが、必ずしもそこで完全に打ち切るのではなく、REVICの出資分につきましては、例えば、民間事業者なりがまたかわって出資するということも考えているところでございます。

落合委員 このファンドの特徴は、お金だけではなくて経営人材も投入するということです。

 この人材の方の実績、それからどういう方を派遣しているのか、教えていただければと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、この地域ヘルスケア産業支援ファンドにおきましては、投資対象事業者に対しまして、事業の成長に必要な資金供給のみならず、支援の実効性を高めるという観点から、同ファンドの運営を行うREVICキャピタルより経営人材などを派遣することによりまして、地域のヘルスケア関連産業の事業の成長を支援しているところでございます。

 この経営人材につきましては、投資先事業者の経営管理体制や今後のビジネス展開などを踏まえながら、ヘルスケアの分野におきましての事業育成や、ファンド投資に係る知見やノウハウを有する人材を派遣しているところでございます。

 具体的には、投資先事業者七事業者に対しまして、非常勤の役員という形で現在十九名を派遣しているところでございます。

落合委員 これはファンドですので、このファンドのスタッフの人数、それから、審査ですとか、専門性が必要だと思います。この専門性についてはいかがでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 地域ヘルスケア産業支援ファンドにつきましては、先ほど申し上げました地域のファンド運営子会社であるREVICキャピタルと、投資ファンドの運営経験が豊富な民間のコンサルタント会社AGSコンサルティングが、共同の無限責任組合員、GPとしてこのファンドの運営を行っているところでございます。

 なお、REVICキャピタルの従業員数は現在四十名となっておりまして、コンサルティングの出身者、あるいはファンドの組成、投資、管理業務の経験者など、専門的な知見やノウハウを有する実務経験者を中心に構成されているところでございます。

落合委員 この組織の役員の方々の経歴なども調べさせていただきましたが、今のところ、専門分野を持った方々、そして民間金融機関で経験を積んでこられた方々で占められておりまして、ファンド自体は割としっかりと運営をなされているというふうに私は感じました。

 こういった事業は、うまくいけば医療費の削減にもつながりますし、また地域の雇用も生まれますし、国民の健康も増進していくということで、いい視点であると。

 それから、先ほどの答弁の中で、出資したお金を民間に引き継いでいく可能性もある、そういう手法もとる可能性があるということですので、いい方向性で進んでいるのではないかなと私は思っております。

 一方、官民ファンドですので、投資の責任が明確でないことが多いということも言われております。失敗するケースも多いとも言われています。このファンドが存続期間七年ですので、今後どうなっていくのか、今後も注視させていただきたいと思っております。

 それでは、次の話題に、武器輸出についてお伺いをさせていただきます。

 私が十代のころ、一九九〇年代は、教科書に武器輸出三原則という言葉が載っておりました。戦後の平和主義の象徴として、非核三原則や武器輸出三原則、こういったものが挙げられておりました。

 一九六七年に、佐藤総理の答弁によってこの武器輸出三原則が打ち立てられ、その後、三木内閣が内容を強化して、一方、中曽根内閣や野田内閣では内容が少し緩和されております。そして、昨年四月に防衛装備移転三原則が閣議決定をされております。これは、従来の佐藤内閣以降の武器輸出三原則がなくなって、そして防衛装備移転三原則にかわったということでよろしいでしょうか。

関大臣政務官 武器輸出三原則がなくなったのでしょうかという御質問でございますが、この防衛装備移転三原則は、武器輸出三原則がこれまで非常に重要な役割を果たしてきました、そのことを十分配慮しました上で、これまで積み上げてまいりました例外化の実例を踏まえまして、これを包括的に整理しつつ、明確な原則として定めたものという位置づけでございます。

 このような考え方からしまして、防衛装備移転三原則につきましては、武器輸出三原則にかわる新たな原則という捉え方をしていただきたいと思います。

落合委員 武器輸出三原則という言葉は、何を意味するか国民にはわかりやすい。しかし、防衛装備移転三原則となると、漢字自体も多くなっていますし、その言葉だけでは内容が少しわかりにくくなったと思います。

 防衛装備という言葉の意味、そして移転の意味、そして、なぜ武器から防衛装備に言葉を変えて、輸出を移転と変えたのか、お聞かせいただければと思います。

関大臣政務官 この武器輸出三原則等にかわる新しい原則の名称につきましては、政府が実施いたします規制の狙いとその内容を可能な限り正確に表現しよう、そのように考えたものでございまして、防衛装備移転三原則としたところでございます。

 具体的に申し上げますと、武器を防衛装備といたしますのは、例えば、自衛隊が携行いたしますブルドーザー、また重機、そのようなものもございますが、これを、被災国等への供与に見られますように、移転の対象となり得ますものが平和貢献、国際協力にも資するものでありますこと等から、防衛装備の文言が適当、そのように考えるからでございます。

 また、輸出を移転とすることに関しましては、貨物の輸出に加えまして技術の提供が含まれるために、このような文言にさせていただきました。

落合委員 今まで武器と言っていたのがブルドーザーなども指していたので防衛装備に変えたと。それから、輸出ではなくて自衛隊が持っていくものも入っていましたし、それから技術を持っていくのも入っているので移転にしたということでありますが、安倍内閣以前、海外に持ち出していたのは、今おっしゃったブルドーザーですとか地雷探知機ですとか防護服、巡視艇、平和国家としての理念にこれを見る限りは沿っていたと思います。しかし、安倍内閣になって、この言葉が変わってからは、戦闘機のF35が出てきていますし、潜水艦、パトリオット、これは大きな変更であると思います。この閣議決定によって、今までの武器と言っていたものの範囲、持っていけるものの範囲が広がったというふうに考えてよろしいですね。

関大臣政務官 まず、このような取り組みをさせていただいているところですが、理念について先に申し上げたいと思うんです。この理念につきましては、先ほど委員もいろいろ前段階でおっしゃっておられましたけれども、平成二十五年の三月一日に、F35の製造等に係る国内企業の参画についての内閣官房長官談話が行われておりますが、そこでは、政府として、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念は維持していく考えであるというのを、ここを明確に申し上げておるところでございます。

 また、防衛装備移転三原則におきましては、我が国としまして、国際連合憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念及びこれまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持する、このような考え方を持っておりますので、この理念に沿った考え方を遵守し、また、そのような基本的な理念の考え方に変更はないというところをもちましての行動をとらせていただこうというところでございます。

落合委員 理念につきましては、閣議決定にも書いてありましたし、官房長官談話にも最後の方にありまして、この理念は外してはいけないと思います。

 その理念を踏まえた上で今回の閣議決定は発表されていて、それに基づいていろいろと行動が行われているわけですが、安倍内閣の前と後で、戦闘機や潜水艦やパトリオットミサイルの部品が出てきているわけですから、明らかに中身は変わっていると思います。ですから、先ほどお伺いしましたが、この閣議決定で、今まで使っていた武器とそれ以降使っている防衛装備、これは武器の範囲は広まったということでよろしいですね。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛装備移転三原則におきましても、武器の定義は、以前の武器輸出三原則と同じ範囲でございます。

落合委員 法的に変わらないと。しかし、内閣がやっていることは明らかに変わっています。

 とにかく、政務官がお持ちになっているその資料を見てもわかりますけれども、野田内閣で運用が緩和されたといっても、巡視艇でとまっています。巡視艇ですから、軍事というより警察権を行使するに当たって使うものだと思うんですが、安倍内閣以降は、戦闘機、潜水艦、ミサイルになっている。これは大きな変化でございます。

 この武器ビジネスに踏み込むということは大きなことで、思いっ切り踏み込めば後戻りはできなくなる。日本国憲法の柱である平和主義も形骸化する可能性があります。やはり、もっとしっかりと国民にもこの今の変更、実態は説明しなければならないと思います。

 今、武器輸出三原則がなくなって防衛装備移転三原則にかわった、これは国民の皆さんはしっかり認識していると思いますでしょうか。

宮沢国務大臣 防衛装備移転三原則につきましては、二十五年の十二月十七日に閣議決定されました国家安全保障戦略において「武器等の海外移転に関し、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定める」とされ、それに基づきまして二十六年四月一日に閣議決定されたものと承知しておりまして、私も、昨年かなり大きく報道をされておりましたので、もちろん担当の大臣ではなかったわけでございますけれども、随分詳しく読んだ記憶がございます。

 一方で、この点、なかなか国民の理解が得られていないのではないかということにつきましては、ことしの三月六日、衆議院の予算委員会で質問がございまして、それに対して安倍総理からは、政権発足以来、防衛装備移転に関し、延べ約四十名の議員から御質問があり、私を初め関係閣僚から御説明をしているとおりでありますということに加えまして、おととしの参議院選挙、そしてその前の、二十四年の衆議院選挙におきまして、自民党の政策集の中にしっかり書き込んで、政策をしっかりと明記いたしまして選挙戦に臨んでいるという意味で、選挙に当たってもしっかり有権者にそういう政策をとるということをお伝えした上でやっているものである、こういう答弁をされております。

 国会において丁寧に説明しておりますので、まだまだ国民の理解が足りないということがあるのであれば、引き続きしっかりとした説明をしていく必要があろうかと思っております。

落合委員 この問題は、今、安保法制が取り上げられていますが、その問題と同じように、しっかりと国民的な議論も、理解も行っていかなければならないことと思います。この問題につきましては、また改めて取り上げさせていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

江田委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 福島第一原発で廃炉・汚染水対策に従事する労働者の皆さんの安全と健康の管理に万全を尽くし、労働条件を可能な限り改善することを求めて質問をいたします。

 東京電力の廣瀬社長にもおいでいただきましたが、私は、十八日の月曜日、我が党の福島県議団の皆さんに同行し、東京電力の福島第一原発の構内を視察いたしました。

 全面マスクを装着し、防護服に着がえ、多核種除去設備、原子炉建屋周辺の井戸、サブドレーン浄化設備、約千基の汚染水タンク群、凍土遮水壁工事現場など汚染水対策の施設を中心に視察をしたんですが、四号機原子炉建屋に近づきますと、毎時約五十から六十マイクロシーベルトを記録いたしました。構内用バスに乗って、要所でバスをおりての一時間半の視察でありましたけれども、それでも私は、なれない全面マスクが大変息苦しく、耐えられなくなりました。

 東京電力が昨年八月から九月に実施しました作業員の皆さんへのアンケートでも、構内の現場環境でよくないと感じる理由のトップは、全面マスクで見にくい、声が聞こえづらい、このことを六割の方が挙げておられます。

 同原発では、今、一日約七千人の作業員の皆さんが、なれない現場で意思疎通も困難な中で作業を行っておられる、そのことの苦労を痛感いたしました。この場をおかりして、現場で困難な作業に当たっておられる皆さんに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 これから暑くなる中で、作業員の皆さんの熱中症対策も心配でありますけれども、被曝を伴う過酷な労働条件、作業環境の中、健康への不安を抱えながら働いておられる方に、それに見合った賃金が支払われているのかという問題が、この間、何度もこの委員会の場でも取り上げられてまいりました。

 東京電力が二〇一二年十月に実施した福島第一原発の作業員に対するアンケートでは、あなたの賃金には特別手当、線量の高さや特別な装備に対する手当等、いわゆる危険手当が加算されていますかという問いがあり、加算されていると答えた作業員は半数しかありませんでした。

 その後、廣瀬社長御自身が、二〇一三年十一月八日に記者会見をされて、設計上の労務単価を引き上げるという方針を発表されました。具体的には、全面、半面マスクの着用の場合は二万円、ボンベをしょったりアノラックを着用する場合には三万円などというものです。

 そこで、廣瀬社長にお伺いしたいんですけれども、発注元であります東京電力が引き上げた設計上の労務単価、これはまさに危険手当に当たるものだと思いますけれども、重層的な下請構造の中で、実際に作業に当たっている末端の作業員の一人一人にまでしっかり行き渡っているんでしょうか。東京電力としてどのように実態を把握されているでしょうか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘がございましたアンケートは、二〇一二年の九月から十月に、就労実態に関するアンケートということで私どもがやらせていただいた結果だというふうに承知しております。

 そこでは、御指摘のように、特別手当が加算されていますかという質問に対して、されているというお答えが五一%ございました。されていないというお答えが三二%、されているかどうかわからないが一五%、無回答が二%ございました。

 先生御指摘のように、一昨年の十一月に、緊急安全対策の一環として、少しでもよい環境で働いていただこうということで、私ども、労務費増額、さらにその割り増しというのを始めたわけでございます。

 それを受けまして、昨年の夏、八月から九月あたりに、改めて第五回目のアンケートを、今大体年一回のペースでやらせていただいておりますけれども、ここで、この割り増しの増分がちゃんとお手元に届いていますかというアンケートをやっております。

 この結果、七〇・八%の方が、まず、賃金割り増しや新規手当について説明を受けたとおっしゃっている、もしくは、検討中であるという説明を、契約元の、雇っていらっしゃる会社から説明を受けたという回答をされています。このうち、賃金割り増しや新規手当について説明を受けたと回答されていらっしゃる方のうち九三%の方が、説明どおりに割り増しをされた、あるいはまた、まだ割り増しの時期が来ていないというふうにお答えになっております。

 こうしたことで、まずはとにかく、私どもがお金をお出ししますので、その目的であるお一人お一人の作業員の方までちゃんと届かないと、私どもにとってもどこに行ってしまうかわからないということで、これは我々もしっかり効果を確認していかなければいけないというふうに思っています。

 したがって、アンケートに加えて、元請企業さん、対象工事を選びまして、そこの下請の方の社長さん等々も御同席いただいて、私ども、それから元請、それからその下請の方々も一緒に立ち会った上で、労働条件の通知書や賃金明細書等書面によってちゃんと増額が確認されていますかというのをやっております。今現在、五十七社中五十五社でこうした確認を行っておりまして、この五十五社についてはいずれも増額されているということは確認できております。

 このように、今後とも、私どもも、お金を出している側でございますので、しっかり確認していきたいというふうに思っておりますし、これには元請企業の皆さんにも当然御協力いただかなければいけないところでございますので、一緒になって今後とも、しっかり届いているかどうかの確認をしていきたいというふうに思っています。

真島委員 東京電力が昨年の八、九月に実施しました作業員の皆さんへのアンケートでは、先ほどおっしゃったように、賃金割り増し、新規手当について説明を受けたという方が五三・二%、そのうち、説明どおりに割り増しされている、まだ時期が来ていないという方が九三%と。しかし、説明を受けたという方そのものが半数程度でありますので、このアンケートを見る限り、結局、作業員全体の中では、割り増しまたは割り増し予定と確認できた方がこのアンケートの中では半数程度しかいないということになるんですね。

 今お答えになった、元請と一次下請の方、書面で確認したということなんですが、五十七社中五十五社と。これと、重層下請の中で実際の現場に届いているかというと、まだまだギャップがあるのは間違いないと思うんですね。五十七社中五十五社と言われましたけれども、これで現場の作業員の数は、この五十七社、五十五社というのはどのぐらいの方に当たるのかというのがわかれば、お答えください。

廣瀬参考人 元請会社のところは五十七社で全てでございますけれども、一つ一つの件名ごとに当然その構造があって、それぞれの工事をお願いしておりますので、ちょっと手元にございませんけれども、とにかく我々はお金を出している方ですので、そこは必死に調べていきたいと思いますし、末端まで届いていただきたいというふうに切に願っているところでございます。

真島委員 東京電力が昨年八月に実施しました、今も紹介したアンケートでは、作業員全体の中で、今述べたように、割り増しまたは割り増し予定、半数程度という確認しかできていないわけですので、今おっしゃったように、これは本当に現場に行き渡っていくように、引き続き、実態もしっかりつかんで取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そして、同じ昨年八月のアンケートを見ますと、福島第一で働くことにやりがいを感じていない理由は何ですかという問いに対して、ほかと余り賃金が変わらないと答えた作業員の方が一番多くて、五四・七%に上っています。

 こんなに危険で困難な作業をしているのに、五四・七%の人が、例えば除染だとか一般の建設土木作業などと比べても賃金がそんなに変わらないと答えていることは、大変モチベーションに影響をしていると思うんですね。

 廣瀬社長にお伺いしますけれども、実際の現場の賃金水準というのは、アンケートでほかと余り変わらないと半分の方が答えられているんですけれども、実際はどうなんでしょうか。

廣瀬参考人 個々の作業の方々と私どもが直接雇用関係にない場合が多いということは御理解いただきたいと思います。私どもは元請の企業に工事をお願いしておりますので、個々で、私どもが一対一で契約をしておりませんので、そこについては、賃金について一つ一つ把握することは難しいんでございますけれども、ただ同じアンケートで、先生おっしゃったように、他と余り賃金が変わらないとお答えになった方、三百五十七名いらっしゃいます。

 まずそもそも、やりがいを感じている、まあ感じているとのお答えをいただいた方は四七・四%ございました。他より賃金がよいというふうにお答えになった方が六百七十四人いらっしゃいます。同じアンケートです。ですから、他と余り変わらないとおっしゃった方は三百五十七名いらっしゃるんですが、他よりいいとおっしゃった方も六百七十四名いました。

 したがって、これはお一人お一人が、他と、ほかとというのは何とお比べになっているのかも難しいところですし、なかなか賃金水準ということについて、それぞれやっていらっしゃるお仕事も違いますので、それを一つ一つ確実に把握するということはなかなか難しゅうございます。

 ただ、必ずしも非常に悪い、劣悪な賃金体系でお仕事をお願いしているというふうにもそのアンケートだけでは言えないのではないかと思っていますし、何より賃金だけではございませんので、まずは、先ほど先生もおっしゃいましたように、全面マスク、厳しいですので、そこを省略できるようなエリアを今ふやしておりますし、さらには給食センターも今動き出しましたので、三食温かいお食事をとっていただけるようになっておりますし……(真島委員「質問以外のことは結構ですので」と呼ぶ)はい。

真島委員 この問題は、この委員会でもずっと繰り返し議論されてきて、それで、いまだに現場の賃金水準がどうなのかというのをつかんでもおられない。これは調べることは別に法律違反でも何でもないし、東電の姿勢が問われていると思うんですね。

 配付しております資料一は、いわき市の日本共産党といわき市労連が作成して掲示をしております原発労働者向けのポスターの中の一つです。昨年の三月二十八日の当委員会での塩川鉄也議員の質問に、廣瀬社長が、労務費の割り増し分を線量の高さや特別な装備等に対する手当が作業員の皆さんにわかりやすいようにということで、いろいろ説明資料に、全面、半面マスクは二万円、アノラックは三万円、タングステンベストは三万円以上、こう明記したということもおっしゃっているんです。その内容を紹介したポスターなんですけれども、これを見た作業員の皆さんが、インターネットからプリントした塩川鉄也さんの質問原稿を握り締めて、いわき市の共産党の事務所に相談に来られるということが起きているんですね。

 宮沢大臣にお聞きしたいんですけれども、二〇一四年三月二十八日の当委員会で、我が党の塩川鉄也議員が、作業員に発注元の東京電力が増額した労務費を賃上げとして確実に届かせるように求めました。その際、当時の茂木経産相はしっかり指導していくというふうに答えましたけれども、経産省はその後どのような指導を行われたんでしょうか。

宮沢国務大臣 基本的には、個別の賃金や労働条件は労働契約で定められるものでありますので、個別具体的な賃金水準に国が立ち入る性格のものではないと思っております。

 ただ、まさに福島の件でございます。福島第一原子力発電所の労務費割り増し分の増額については、作業員に確実に行き渡ることが望ましいと政府としては考えております。

 そうした中で、茂木大臣がそういう答弁をされたということだと思いますが、事務方から東京電力に対して、労務費の割り増し分が下請業者の作業員まで確実に行き渡っているのか調査を行い、必要な措置を講ずるように指導を行ったところであります。

真島委員 廃炉・汚染水対策で国が前面に立つとおっしゃったわけですが、その作業を本当に困難な中で支えている作業員の皆さんの労働条件、賃金の問題を解決するために全力で取り組んでいただきたいと思います。

 一月十九日に福島第一原発で転落死亡事故が起きましたが、私も五月十八日にそのタンクを見てまいりました。タンクの検査をしている際に天井部のふたをあけようとして転落した。亡くなったのは、安全管理を指導する立場のベテランの作業員だった。

 また、その翌日には、これは福島第二原発ですけれども、点検用機具に頭を挟まれて作業員の方が死亡しております。

 廣瀬社長にお聞きしますけれども、二〇一四年度と二〇一三年度、作業災害発生件数とそのうち休業を伴う災害の発生の割合を御紹介ください。

廣瀬参考人 これは、先生のお配りいただいた二枚目にもございますが、一三年度には総件数が三十二件、一四年度は六十四件。もちろん、作業の量が違いますので単純には比較できませんけれども、ちょうど倍になっております。

 そのうち休業を伴う災害というのは、先生の資料では、真ん中辺の表のちょうど真ん中あたりの休業災害の小計というところでございます。二〇一三年度五件となっておりますが、これはもう一件、熱中症による方がいらっしゃいましたので、私どもは六件というふうにカウントする場合もございますけれども、いずれ五件、六件です。一四年度は十三件ということで、全体の中の比率では両方とも二割ぐらいという形になっております。

真島委員 先に配付資料を紹介されましたけれども、この配付資料二の下の部分、災害発生状況の分析というのがあります。

 そこで、作業員のうち、震災後の福島第一での作業経験が半年未満の人が三〇・三%、一年未満の人が四七・六%ということになっていますけれども、社長、こうした作業経験が少ない作業員がふえているということと事故の多発との関係をどういうふうに見ておられますか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 まさに先生がお示しいただいた下の円グラフのとおりなんですが、ここは、東日本大震災以降に福島第一で作業に従事された方ということでございますので、このアンケートは昨年の夏、もとより三年ちょっとぐらいしかまだたっていない段階でのアンケートですので、どうしても、四年も五年もの人はなかなかいないというところがまずはございます。確かに、半年未満であるとか一年である方が多いというのは事実でございます。

 ただ、全ての方がいわゆる未経験の方かというと、そういうことはなくて、別のアンケートでは、半数以上の方が同じお仕事を十年以上やっていらっしゃる、五年以上やっていらっしゃるという方がいらっしゃいますので、必ずしも、全くの素人の方を福島に連れてきてということではないというふうには、これはぜひ御理解いただきたいと思います。

 いずれにしましても、経験がおありになろうともなかろうとも、いわゆるマスクをしてタイベックを着て仕事をするというのは、これはどなたも、はっきり申し上げて、経験のない厳しい環境で作業していただいているということは事実でございますので、そうしたことにしっかり対応していくべく、安全の講習をしっかりやるとか、それからそうしたことに対して十分に認識をしていただいた上で作業していただくというような対策をとっていく必要があるというふうに考えております。

真島委員 時間の関係でこれは質問しませんけれども、一月に、福島第一、第二原発で先ほど紹介した労災死亡事故が相次いだという問題で、東京電力の数土文夫会長は、一月二十九日の会見で、収束作業の現場では、元請の現場監督が人的にも技量的にも不足し、安全手順に違反する作業があっても見過ごされるずさんな実態だったということを述べられております。

 非常に深刻な状況だと思うんですけれども、本当に、廃炉・汚染水対策に取り組む作業員の士気を高め、質の高い労働者を確保するためにも、国と東京電力は、作業環境の改善や、今も言われましたけれども、訓練のしっかりした実施、賃上げや危険手当の完全支給、安定雇用に待ったなしで取り組んでいただきたいというふうに思います。

 先ほどから紹介しております昨年八月の作業員の皆さんへのアンケート、約半数の作業員と家族の方が福島第一で働くことに不安を感じていると回答をして、その理由として、被曝による健康の影響としている作業員と家族の方が一番多くて、半数以上に上っています。これはちょっともう時間の関係で聞きませんけれども。

 それと、昨年四月十六日の当委員会で、我が党の塩川鉄也議員が、昨年の三月に起きた福島第一原発での作業員死亡事故を踏まえて、当時三千四百人が働く場にふさわしい救急医療体制として、常勤医師の確保やドクターヘリの運用など、東京電力自身が資金面でも積極的に進めるべきだと提起をいたしました。

 それに対して社長は、固定して確保している医師は一名で、あとは二十名程度の登録医師のローテーションで二十四時間体制だ、固定している医師をふやすべくお願いをしています、構内をなるべく早く除染して、ドクターヘリがおりても大丈夫という状態にしたいと答弁されておりますけれども、これはどうなっているでしょうか。

廣瀬参考人 まず、おっしゃるように、ヘリコプターが着く、そして、看護師さんそのほかの方ももちろん当然被曝する可能性がございますので、エリアをとにかくきれいにするというのは必要だと思っております。

 本当にいろいろやらせていただいておりますけれども、一例として、真島先生も先週入っていただいたときにごらんになっていただいたと思いますが、入退域管理棟といって、入ってきて最初にいろいろなバッジ等々をもらうところですけれども、あそこは、御記憶のとおり、アスファルトを全部きれいにしてございます。これによって、それまで一時間当たり三十四マイクロシーベルトだったものが二・一マイクロシーベルト、九四%低減するなど、こうした例は場所場所によってございますので、とにかくそうしたことをやっていくというのが一つ必要だと思っております。

 また、あわせて、医療体制ですけれども、現状、まだ固定のお医者様は一名だけでございます。ただ、その周りに三十機関四十名程度の医師団にエントリーしていただいています。これは、昨年塩川先生にお答えしたときよりも倍増しております。したがいまして、現在、個々のお医者様に頼るのでなくて、しっかりとしたバックアップの体制を構築して、いろいろなことがあっても、入れかえ、いろいろな緊急的な対応ができるようにということで体制を組ませていただいております。

真島委員 もう時間が来ましたので、まとめます。

 今紹介しました昨年の委員会のやりとりから一年がたちました。作業員の数は、一年前の約三千四百人の倍の七千人になっているんですね。ところが、登録医師は四十名になったけれども、固定医師は一名のまま。ドクターヘリの問題も、除染は必要だとおっしゃっていますけれども、ほとんど進んでいないですね。重症患者を近隣の病院に陸路で搬送するのに、片道一時間かかるんですね。東京電力は、これから三十年、四十年、そこで、現場で働く労働者の命と健康を守っていく現場の体制を急いでつくっていく責任があると思います。

 危険手当の支払いを求める裁判をやっていますけれども、二月四日に実名で意見陳述された提出者の須藤一昭さんは次のようにおっしゃっています。私は、名前を公表すれば仕事をもらえなくなるのではないかと思って今まで公表できませんでした。しかし、労働災害やトラブルがたびたび発生し、一刻も早く労働条件を改善しなければならないと考え、少しでも改善する力になりたいと、今は実名で陳述することを決意しましたと。

 この須藤さんは、二〇一一年の四月末に、福島原発で働いてほしいと勤めていた土木建築会社の社長から言われたとき、正直、不安や恐怖もありましたが、しかし、福島県出身の人間として少しでも皆さんの役に立ちたいという思いから決意しましたというふうにおっしゃっています。

 福島第一原発の約七千人の作業員のうち、半数近くが地元の人だとお聞きしました。大震災と原発事故の被災者の皆さんが、福島県の復興は汚染水対策、廃炉なくしてあり得ないという使命感で廃炉・汚染水対策に立ち向かっている。このことを国と東電はしっかりと受けとめていただいて、本当に誇りを持って働ける労働条件の改善等待遇の抜本的な改善を急いで実行していくことを強く求めまして、私の質問を終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

江田委員長 次に、内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。宮沢経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 特許法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

宮沢国務大臣 特許法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 グローバル競争が激化する中、我が国のイノベーションを促進するためには、研究者の研究開発活動に対するインセンティブの確保と、企業の競争力強化をともに実現するための環境整備が重要であります。

 そのため、発明の奨励とあわせて、企業の知的財産戦略の迅速かつ確実な実施を図ることが必要であります。また、知的財産権の取得、維持などに係る企業などの負担を軽減し、知的財産権の活用促進を図ると同時に、国際的な制度調和を促進し手続の利便性を向上させることが必要となっております。

 こうした事情に鑑み、知的財産の適切な保護及び活用を実現するための制度を整備し、もって我が国のイノベーションを促進することを目的として、本法律案を提出いたしました。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、企業が組織として行う研究開発活動は我が国のイノベーションの源泉であることに鑑み、職務発明制度を見直します。具体的には、権利帰属の不安定性を解消するため、職務発明に関する特許を受ける権利について、権利が発生したときから企業などに帰属することを可能とします。また、従業者などは、特許を受ける権利などを取得などさせた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有するものとし、企業などと従業者などがその内容を決定するための手続に関する指針の策定を法定します。

 第二に、特許料や商標登録料などを引き下げるなど、料金の見直しを行います。

 第三に、国際的な制度調和を促進するため、各国で異なる国内出願手続の統一化及び簡素化に関する条約である特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約への加入を国内法上担保するため、手続期間経過後の救済規定の整備などを行います。

 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

江田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

江田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十九日金曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十七日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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