衆議院

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第18号 平成27年5月29日(金曜日)

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平成二十七年五月二十九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 鈴木 淳司君

   理事 田中 良生君 理事 三原 朝彦君

   理事 八木 哲也君 理事 中根 康浩君

   理事 鈴木 義弘君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大見  正君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      神田 憲次君    黄川田仁志君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      白石  徹君    関  芳弘君

      武村 展英君    冨樫 博之君

      野中  厚君    福田 達夫君

      細田 健一君    堀内 詔子君

      宮崎 政久君    務台 俊介君

      若宮 健嗣君    小川 淳也君

      神山 洋介君    小宮山泰子君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      渡辺  周君    落合 貴之君

      木下 智彦君    國重  徹君

      中川 康洋君    藤野 保史君

      真島 省三君    野間  健君

    …………………………………

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   経済産業大臣政務官    関  芳弘君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 森  健良君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            鈴木 英夫君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            黒田 篤郎君

   政府参考人

   (特許庁長官)      伊藤  仁君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    堂ノ上武夫君

   参考人

   (キヤノン株式会社取締役・知的財産法務本部長)  長澤 健一君

   参考人

   (日本労働組合総連合会総合政策局長)       川島 千裕君

   参考人

   (三鷹光器株式会社代表取締役)          中村 勝重君

   参考人

   (ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所代表弁理士) アインゼル・フェリックス=ラインハルト君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     務台 俊介君

  福田 達夫君     神田 憲次君

  細田 健一君     堀内 詔子君

  近藤 洋介君     小宮山泰子君

  渡辺  周君     小川 淳也君

  國重  徹君     中川 康洋君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     福田 達夫君

  堀内 詔子君     細田 健一君

  務台 俊介君     大見  正君

  小川 淳也君     渡辺  周君

  小宮山泰子君     近藤 洋介君

  中川 康洋君     國重  徹君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 原発からの速やかな撤退で原発ゼロに関する請願(藤野保史君紹介)(第一二七七号)

 同(真島省三君紹介)(第一二七八号)

 原発ゼロを直ちに決断することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二七九号)

 同(池内さおり君紹介)(第一二八〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一二八一号)

 同(大平喜信君紹介)(第一二八二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二八三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二八四号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一二八五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二八六号)

 同(清水忠史君紹介)(第一二八七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二八八号)

 同(島津幸広君紹介)(第一二八九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一二九〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二九一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一二九二号)

 同(畠山和也君紹介)(第一二九三号)

 同(藤野保史君紹介)(第一二九四号)

 同(堀内照文君紹介)(第一二九五号)

 同(真島省三君紹介)(第一二九六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二九七号)

 同(宮本徹君紹介)(第一二九八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一二九九号)

 原発から撤退し、再生可能エネルギーへの転換を求めることに関する請願(藤野保史君紹介)(第一三〇〇号)

 同(真島省三君紹介)(第一三〇一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、キヤノン株式会社取締役・知的財産法務本部長長澤健一君、日本労働組合総連合会総合政策局長川島千裕君、三鷹光器株式会社代表取締役中村勝重君、ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所代表弁理士アインゼル・フェリックス=ラインハルト君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず長澤参考人にお願いいたします。

長澤参考人 おはようございます。長澤でございます。

 発表の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 手持ちの資料、先週の金曜日に出てほしいと言われたので、ちょっと雑なんですが、考えていることをお話し差し上げたいと思います。

 今回の法改正の意義というふうに下に書いておりまして、これは大きく分けると二つ意義があったというふうに考えております。

 一つは、原始法人帰属。発明が発生したときから帰属を選ぶことができるということが一つ非常に大きい変更だと思います。もう一つが、手続をガイドラインで決めて、その中で無用な抗争が起きないようにしようじゃないかという、この二つは、産業界が常々お願いしていたところであります。

 簡単にちょっと書いていまして、後にもう少し詳しく説明しますが、日本に原始法人帰属を可能とすることの意義なんですが、大企業も中小企業も大学も、昨今はネットワークで全てがつながる時代になりましたから、一社で一つのビジネスをつくり上げるというのが非常に難しくなってまいりまして、いわゆるコラボレーションが非常に必要になりました。

 そのときに、例えばキヤノン、我々の会社が選ぶ相手をどこにするかといったときに、発明とか技術の帰属が不安定であるとなかなか選べない。できれば、物流のことも考えれば、日本のベンチャー、日本の大学と組みたいというふうに思っているところ、日本から発明者もしくは技術者が営業秘密を持って外国に行くというようなことがあってはなかなか組めないわけでして、そういう意味でも、最初から発明は契約で決められて、オープンイノベーションの中で共有できるというふうな仕組みになっていただく方がありがたいと思います。

 これももうちょっと後で説明しますが、必ず技術者の雇用はふえていく方向にこの改正で動くと思います。営業秘密などが流出する懸念もこの改正で減るというふうに確信しています。

 それから、我々は、また弊社のことになりますが、三度ほど発明者から訴訟を受けていまして、そこに費やした人的リソース、弁護士費用は多大なものがありまして、それから、現在の対価制度ですとかなり厳密な審査を要しますので、はっきり数字は申し上げられませんが、十年間で十数億円ぐらいの費用をかけてこれに当たっているわけです。

 人的リソースのこともありますので、社内でのこういうことがなくなれば、その分もっと発明を生み出せるであろう、もっと発明者に対してインセンティブを与えられるであろうというふうに考えているわけです。

 次のスライドに行かせていただいて、今円安が継続しておりまして、これはやはり政策上続いていくのであろうというふうに、私なんかも経営者の一人として理解しております。

 そして、今我々はアジアに多数工場を持っておりますが、円安ということと、カントリーリスクが露見している面、それから営業秘密がそこで抜かれるという面を考慮すると、国内に生産拠点を戻していこうという動きが、うちの御手洗も言っていますが、加速するであろうと思っています。

 特に弊社の場合は九州、東北に数多く工場を持っていまして、そちらに生産を戻したい、そちらに生産を戻したら、次は部品の調達も近くでやりたい、もっと言えば、RアンドD拠点もできれば近くに置きたい、そういう方向に動きたいわけです。そうすることによって、スピードを上げて、グローバルな競争力がつくであろうというふうに思っています。

 グローバルな競争力を考えたときに、今、日本の産業というのは、例えばアメリカのアップルとか韓国のサムスンとかにやられているというふうに言われていると思うんですが、日本がつくっているもの自体は、性能、品質の面ではやはり一番すぐれているというふうに私は自負しておりまして、それをお金につなげる仕組みを今後は考えていかなきゃいけないというふうに思っているわけです。

 そうすると、だんだん、いわゆるコンシューマー向けの製品からBツーBのビジネスに緩やかに移行するであろうというふうに考えるわけです。

 その中で、国内に生産拠点、部品調達拠点、RアンドDの拠点を移すには、そこでオープンイノベーションをやっていかなきゃいけない。そのときに、先ほど言った権利の帰属の安定性というのが非常に重要になってまいります。

 それから、特にデバイスへの価値回帰を図るために私も非常に苦労していまして、仕組みをつくったものがお金を稼いで、ファブレスとかと呼ばれているものがお金を稼ぐ時代から、やはりデバイスに価値を回帰させないと、この国の産業は成長しないし、成長戦略もうまくいかないというふうに思っています。

 いよいよ本題に入りまして、職務発明のあるべき方向性ということで次のページに書いていますが、現在、我々が子会社をつくるとかRアンドDの拠点をつくるときに、どうしても抗争が起きそうな国というのは外したくなります。例えば、中国、韓国は非常に強い職務発明規程を持っていまして、発明が生み出されると逆に危ないぞというような記載をしておるところです。

 あと、権利の帰属性がしっかりしていないと、やはり組んで仕事をすることができない。ぜひ日本の大学、日本のベンチャーを有効に利用したいというふうに思っています。

 これは、契約を仮にやっても安心できない状況でして、発明者が自分の頭の中で発明を生み出していても、それが紙に出てこないと、今ですと、会社がお金を払って買い取ることはできません。

 ただ、その状態で、例えば、ヘッドハントに遭って、アジア諸国にその人が行っちゃうと、営業秘密も発明もそちらに移動してしまう、そこを非常に恐れていますので、私の知り合いの欧米の会社でも、やはりちょっと日本のベンチャーは選びにくいという理由の一つに、それが全てではございませんけれども、それがあることは確かでございます。

 次に、抗争で失われてきた時間というのがありまして、三件の訴訟でおおよそ二千時間ぐらいの時間は、うちの知財のメンバーが費やしています。

 実は、発明というのは、発明者が自分の頭の中で全てをつくり上げるわけではなくて、発明者が設計をしたもの、それを我々知財担当者が見て、ここは新しい、新規性がある、ここは技術的なアドバンテージがあるということを見定めて、これを特許として出願しましょうという行為をします。そのリソースが少なくなると発明の数が減るということになりますので、その時間が取り戻せるということは非常に大きなことです。

 それから、先ほど申し上げましたように、中国、韓国を中心として、余りにも発明者に対して手厚い規程を設けていると、特に抗争が多い中国では抗争が起きるであろうということで、私も、例えば中国にRアンドDの拠点を置くときには、非常に注意をして置かなきゃいけない状況になっています。

 相当の利益という言葉が問題になると思うんですが、これは我々の方で考えるのは、例えば、利益の何%、売り上げの何%、それから最低これぐらい払いましょうというような数字にしますと、逆にすごい不公平感が出てまいります。我々、数字は言えませんが、年間ウン億円を使って発明者に報奨を出していますが、自由競争の原理からいって、これを下げる理由は全くございません。ライバル会社が同じように発明報奨をしていれば、我々はそれ以上にやって、いい技術者を囲いたいというふうに思うのは当然のことです。

 最後のページになりますが、今回、改正で帰属の安定性が担保されたということで、発生した時点から法人、使用者の方が所有権を得ることができるということは、先ほど申し上げましたように、産業の振興に非常に大きな意味があったのであろうと思います。

 これはガイドラインでどういうふうに意思表示をするかということが示されると思うんですが、会社規程を変えるというのは結構時間がかかりますし、発明取扱規程も取締役会にかけてやることですので、できれば最初の意思表示は簡易な手続でできればありがたいというふうに思っております。もちろん、発明報奨規程は追ってちゃんと整備してやる。特に、中小企業の場合、さあ組もうよといったときに、そこでも規程をつくってねと言うと、そこからさらに二、三カ月かかってしまいますので、その間の発明の帰属が不安定になるという問題があります。

 それから、今回の改正で、ガイドラインで手続を正確に定めていただければ無用な抗争が起きないと思っていまして、インセンティブの自由度がある程度認められるようなガイドラインの策定をしていただければ、ほとんどの企業は発明に対してインセンティブを与えることに対しては非常にポジティブですので、そのように動けると思います。

 ちょっと大ざっぱですが、以上になります。ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、川島参考人にお願いいたします。

川島参考人 ただいま御指名いただきました、連合で総合政策局長を務めております川島千裕と申します。

 本日は、このような、私ども連合の意見を表明する場をいただきまして、まず感謝を申し上げます。

 本日は、特許法等の一部を改正する法律案の中の職務発明制度の見直しについて、働く者の立場から三点の意見を述べさせていただきます。

 まず一点目は、法案に対する基本的なスタンスについてであります。

 職務発明制度の見直しについては、連合も参加しました産業構造審議会のもとでの特許制度小委員会において、立場の異なる委員によりますさまざまな議論の積み重ねを経て、報告書が取りまとめられました。

 本法案は、小委員会で確認された報告書の内容を適切に反映したものであり、また、その中で連合の意見も反映をされていることから、妥当な内容であると受けとめております。

 小委員会での議論経過や報告書の趣旨が十分反映された法案となるよう、国会での審議においてこれらの趣旨が確認されることを強く求めたいと思っております。また、今回の法改正は、我が国における職務発明の促進、産業の発展につながるということが重要なことでありますので、法改正後の運用においてもしっかり調査、検証がされるようお願いしたいと思っております。

 二点目は、審議会での議論経過と連合の受けとめについて触れさせていただきたいと思っております。

 我が国が世界最高の知財立国を目指すためには、研究者による研究開発、発明活動と、また、企業における研究開発がともに促進されるような職務発明制度の確立が求められると考えております。そのためには、発明を生み出す研究者、技術者の発明意欲の向上につながるような、従業者へのインセンティブが確保されることを前提とした制度の検討が必要であると考えております。

 連合は、このような課題認識のもと、小委員会に参加をし、法改正の必要はないとの主張を当初してまいりました。といいますのも、現行の特許法第三十五条は、従業者と使用者の双方に発明のインセンティブを与えるための合理的な利害調整機能を果たしており、バランスのとれた制度であること、また、現行の特許法は、二〇〇四年に改正されて以降、改正法に関する判例の蓄積がないことによるものであります。

 さらなる法改正を行うべき立法事実が認められない以上、現行法を維持すべきである、むしろ、二〇〇四年改正法の趣旨を徹底し、社内規程の整備など労使の取り組みを浸透させていく、また、そのためのガイドライン整備を進めていくべきであることを小委員会の中で主張してまいりました。

 その上で、連合は、特許法の趣旨を踏まえ、従業者と使用者の双方の発明のインセンティブを高めるためにはどのような制度にするべきなのか、そういった立場で議論に臨んでまいりました。

 一方、今回の職務発明制度の見直しは、二〇一三年の日本再興戦略において、企業のグローバル活動を阻害しないという観点から検討がスタートしました。その流れの中で、産業界からは、特許を受ける権利を法人帰属へ転換するべき、法定対価請求権を廃止し、企業が自由なインセンティブ施策ができるようにするべきとの意見が強く出され、その意向を全面的に受け入れた方向で議論が進んでいくものと思われました。

 これに対して、連合は、従業者のインセンティブの切り下げにつながりかねないとの大きな懸念を持ち、なおさらのこと、今回の法改正の必要はない、従業者のインセンティブ確保が必要であることを主張してまいりました。

 このように、労働界と産業界との意見の隔たりは大きかったわけでありますが、議論が進む中で、有識者の方から、発明者に対するインセンティブの重要性について複数意見が出されました。また、権利の帰属が使用者、従業者のいずれであったとしても、従業者のインセンティブを確保するべきであるという意見ですとか、また、法改正によって発明者に対するインセンティブが損なわれることがないよう、法的担保が必要であるとの意見も出されました。

 その結果、小委員会の報告書には、本見直しは、インセンティブの切り下げを目的とするものではなく、企業の国際競争力、イノベーションを強化する上では、研究者の研究開発活動に対するインセンティブを確保することが大前提であるという旨の内容が盛り込まれ、小委員会全体で確認がされました。

 加えて、報告書に、従業者には、現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利が保障されるということや、指針の策定に当たっては、労使代表が参加する場で検討する旨の内容が盛り込まれております。これは、私ども連合が働く者の立場に立って主張した内容でございます。

 このように、小委員会の議論経過を振り返りますと、当初の議論から軌道修正が行われまして、最終的な取りまとめとしては、従業者の発明のインセンティブ確保に対する最低限の制度的担保は設けられたものと受けとめております。

 最後に、法案の具体的な内容に対する評価、課題について、四点について申し述べたいと思います。

 一点目は、職務発明に関する権利の帰属についてであります。

 法案では、職務発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることを可能としております。この法人帰属化については、マスコミでも大きく取り上げられたところでありまして、研究者の関心も高い論点であると考えております。

 法案では、法人帰属とするためには、契約、勤務規則等であらかじめ定めることを要件としております。したがって、契約、勤務規則等で法人帰属とすることを定めない会社においては、従来同様、従業者帰属のままであるというように受けとめております。

 また、現行法のもとで、大企業のほとんどは職務発明に関する規程を設け、その中の多くの企業は、規程において特許を受ける権利を従業者から承継するようにしております。

 小委員会の報告書では、法人帰属とする場合の前提条件が必ずしも明らかになっておりませんでした。したがいまして、私どもは、どのような法案になるのか、若干心配をしていたところでありますが、先ほど申し上げましたとおり、特許を受ける権利の取り扱いについての変更は、実質的には小幅にとどまるものと受けとめております。

 いずれにしましても、国会審議において、特許を受ける権利の帰属を見直すべきとした立法事実、法人帰属を可能とすることの意義、さらには、これが従業者のインセンティブ確保あるいは向上にどう寄与するのかという点について、御確認いただきたいと思っております。

 また、職務発明は全て無条件に法人帰属となるといった誤ったメッセージが伝わらないように、その点も御留意いただきたいと思っております。

 二点目は、相当の利益を受ける権利についてであります。

 従業者に対し、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を法定化することは、初めから法人帰属とした場合でも、従来の法定対価請求権に相当する従業者のインセンティブを確保するものであり、妥当と考えます。

 小委員会の報告書には、これにより、従業者には、現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利が保障されることとなる旨の記載があります。間違っても、従業者のインセンティブがそがれることのないよう、この趣旨を十分に踏まえた法律、運用となるよう確認いただきたいと思っております。

 三点目は、指針の策定についてであります。

 法改正後、相当の利益の内容を決定するための手続の指針が策定をされます。現在も特許庁において手続事例集が策定をされておりますが、今回、法により指針を定めることが明記されたことを評価しております。

 指針の具体的な中身は産業構造審議会で検討されることとなりますが、検討に当たっての留意点として三点申し上げたいと思います。

 一点目は、従業者の関与の必要性をより重視するような手続ルール、また苦情処理のあり方について指針に盛り込むという点であります。

 相当の利益の内容は、使用者と従業者の協議や意見聴取が適切に行われ、その結果を十分に踏まえたものでなくてはならないと思います。従業者にとっても使用者にとっても、双方が納得できるような内容となる必要があるということであります。

 また、社内に苦情、異議申し立ての仕組みや相談窓口、あるいは問題解決をする場を設けることも重要だと考えております。そうした場については労働者代表や研究者代表を含めた形で構成するなど、より従業者の納得性を高めるような内容が盛り込まれることが重要であると考えております。

 二点目は、相当の利益の内容に対する考え方について、指針に盛り込むべきであるという点であります。

 法案では、「相当の金銭その他の経済上の利益」と定めておりますが、金銭以外にどのようなインセンティブがふさわしいのかなど、具体的な例を示し、インセンティブの切り下げにならないことを担保する必要があると考えております。

 三点目は、現在、職務発明に関する規則がない企業に対して、規則制定の促進となる指針とすべきであるという点であります。

 特に、中小企業の規則制定を促進するための一助となるよう工夫を凝らし、わかりやすく実効性のある指針となることを求めます。

 最後、四点目ですが、法改正後の調査、検証についてであります。

 今回の法改正が今後従業者のインセンティブにどのような影響を与えるのか、正直わからないというのが実感であります。法改正前後で企業の職務発明規則が変わったのかどうか、変わったとすればどのように変わったのか、また従業者のインセンティブに変化があったのかなど、法改正後の運用に対する調査、検証が重要だと考えておりまして、そうした対応がなされるような御議論をお願いいたします。

 以上、私からの御意見とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、中村参考人にお願いいたします。

中村参考人 三鷹光器株式会社代表取締役、中村勝重です。よろしくお願いいたします。

 当会社はもともとアイデア会社なので、自分のやってきたことをものづくり中小企業の立場でお話ししたいと思います。

 当会社は東京は三鷹市にありまして、おやじが、麻布から三鷹に天文台を移した、今の国立天文台でありますが、そこに関与していましたので、兄と私はその隣で工場を建てた。そして、四十九年目を迎えております。来年、五十年になります。

 アイデアでものづくり五十年というのはなかなか大変です。ネットで調べたら、〇・七%しかない。そういうところでどうやって生き抜いてきたか、それをお話しするのがちょうどわかりやすいんじゃないか、そう思いますので、お話ししたいと思います。

 東京・三鷹はだんだん発展してきまして、天文学者は空が明るくなってどうにもならない。結局、ロケットで、衛星で空に飛びはねるしかありません。私はそういったところにいろいろなアイデアを駆使して出したんですけれども、特許は出しておりません。そういった衛星なんというのは特別な機関ですから、あのようにして解決してあげた、そんなことを幾ら書いても、ただそれだけのことよということであります。特許も出していいものとそうでないものがあります。

 そんなわけで、ただ、ロケットの中でいろいろやりました。皆さんの中では、南極のオゾンホールを御存じだと思うんですが、実はあれを発見した装置は当社がつくったんです。また、宇宙にブラックホールという何でも吸い込んでしまう場所がある、そこを発見した、はくちょう座X1から強烈なエックス線が来たというエックス線望遠鏡は実は当社がつくったんです。そういったようなものを特許を出して世界に知らしめるなんということは、日本の博士たちに失礼だ。ですから、そういったことは秘密にしておきます。

 衛星ですと十六プロジェクトに私は参加しました。そこで、動くようなもの、失敗がすぐわかるようなものは大手は手を出しません。そういった嫌なところを私はずっとやってきました。また、衛星、十六のプロジェクト、車でいえばカーナビ、今どこにいるんだろう、星座で見なきゃいけません。ところが、太陽という強烈な光があります。めくらで見えなくなる。だけれども、どうしてあのエックス線天文学を日本はどんどんやるんだろうと。NASAの方々は三鷹光器の装置をスペースシャトル・コロンビアに搭載することを、日本には大手メーカーがいろいろありますけれども、NASAは、三鷹の案を五分で聞いて、これはすごいということで一発で決めました。そういうことであります。

 ところが、これだけいろいろなことをやっていても、なかなか評価されません。何でアイデアが評価されないんだということで、今から三十年前、兄から、今度医療機器に参入したい、この技術をそちらに使いたいと。大体、医療機器といいますと、こういったピラミッドの頂点のところ、ここのところで手術顕微鏡は、ピーポーピーポーで生きるか死ぬかの世界であります。これぞ日本の技術が発揮できる場所だ、こういうことであります。

 中小企業が大手、また外国に勝つためにはどうしたらいいかということになります。ただ、三鷹光器なんという会社は、世界は何も知りません。ドイツのライカという会社はカメラで有名な会社であります。私は、そこと手を組もう、そう考えたわけであります。一年間、日本の市場でいろいろやりました。特許は現場にあり、設計図は現場にあり、現場の苦しみから出てきたアイデアを特許化したいわけであります。絶対いける、兄貴、これをやりたい、こういうことがあります。

 そんなようなことで、世界展開に行ったんですが、私は、特許を使って有利な契約をする、そういうことであります。一年間数百台注文してください、そして私の銀行に直接振り込んでください。

 ただ、私の弱点は何か。世界に知られていない。ライカ・ブランドはどこも知られておりますので、売った後のアフター、そういったところもできない、そこのところをカバーしてくれないか、そのかわり、私のこの特許をOEMで供給するから、我々の製造のところは紳士的にやってほしいと。ドイツは特許のそういったところは非常にしっかりした国であります。そこでいろいろやりました。

 そういったところでどんどん、その当時ライカはわずか一%しかない市場が、今現在では五〇%行っております。これは、もし特許がなかったら、そんな交渉はできなかった、私はそう思います。

 ところが、そういういいことばかりじゃありません。それを潰そうという競合が出てまいります。もっと大きな、ライカは数万人です、今度は数十万人の大きな会社は、三鷹の特許を潰せば大丈夫だ、こういうことになります。つまり、無効にしてしまう異議申し立てをして、各国からいろいろな声が審理するときに出てまいりました。ちょうど参考人で呼んでおります小野村とそういったところに出向きまして、現場に行きまして、特にミュンヘンで、ドイツで裁判を起こされているわけですけれども、たった五人ぐらいで行きまして、そして、孫子の兵法じゃないが、百戦百勝、ずっと勝ってまいりました。

 もうそれで、特許で負けたら今の私の会社はなかったと思います。それほど知財というのは大事なんです。経営者がまずこの特許というものをいかに理解するか。中小企業の社長はほとんど、まあ特許なんてと、大体そんな雰囲気がありますけれども、私はその環境を、もっと別の方向に行きたい。

 そういった意味で、食堂に、職務発明規程、そういうものをつくりまして、そして、アルバイトでもパートでも誰でもいい、案が出たら私に言いなさい、私がいなかったら小野村が特許、知財を担当しているからそっちへ言いなさい、そんなことでモチベーションを上げているわけですが、とにかく、案を出したら、文書を書かなくてもいい、ポンチ絵でいい、そういうことであります。

 これでちょっと一例をお話ししたいと思います。

 パートで入った女性がいました。ボール盤という、穴をあけるんですけれども、ばんと私に物が飛んできた。そして、しばらくしたら、ポンチ絵で、社長、あのカバーが、一部が透明で中が見えたら私はあんなことをしなかったかもしれないと。我々男は、そういうのをやっていて、そんな不便を全然感じていなかった。パートで働く場は日本全国にいっぱいあります。こういったことがいろいろあるんだな、ああ、女性だから出たアイデア、これはおもしろい、小野村、これをすぐ文書とセットにして出しなさい、そういうことがあります。

 ところが、発明して一万円、それが通って二万円、実績を上げたらそれに対する報酬、そういうふうに考えてはいるんですけれども、部屋の中でこっそり渡しても何ら意味はありません。私は、一年間の間に忘年会をやります。そのときに呼びます。今は三十人から百人近くあるんですが、大抵三百人ぐらい呼びます。これはアルバイトやパートであっても、トイレの掃除屋さんも全部呼びまして、もちろん社員は全員呼ぶんですが、あと協力会社、ものづくり、結構いろいろなアイデアを出す社長もいますので、そういった人も呼んで、それから、大事な私の取引銀行、支店長も全部呼びます。

 何が言いたいか。特許というのは何が有利で、それをやると世の中にどれほど貢献するか、そこが言いたいわけでありますから、それに興味がないという銀行の支店長は、その銀行は取引中止、私はそのくらいの勢いでやっております。また、この忘年会に出席していなかったら、もうこれはしようがありません、だったらもう即ほかの会社に行きなさいという勢いでやっております。

 そのときに、知財部長にちょっと出して、呼んで、私から、何子さん、来てください、あなたはことし、こんなこと、こんなことを考えたよね、そして、発明報奨金として渡すわけであります。みんなの前で渡すんです。そうすると、あれっと、そういうふうにわかります。そうやってモチベーションを持ち上げる。

 中小企業は経営者と社員が密接な関係にあります。そこが大事であります。特に今回、会社帰属、特許は会社が権利を持つんだ、私はそのようにやってきた。それはどうしてかといいますと、これは私の会社だからということはあるかもしれませんけれども、現場の声として言いたい。社長、実はこういった特許を持っているんだけれども、それがもし社員の権利だとしたら、おまえ、これは仕事中考えたのか、そういうことになります。だから、非常に言いにくい話です。

 また、特許を持っていても、そこで社長とバッティングしたらもうやめるしかない。社長の方も、せっかく考えてくれたというのがあっても。ところが、今度、会社が権利を持っているとなると、社員も言いやすい、そういうことであります。

 ただ、そのルールというかガイドライン、それが問題です。

 社長、こんなことを考えた、きょう営業で行ったんだけれどもこんなことを言われた、それを改善するとこれだけよくなるんだけれども、よし、それでいこう。そういうことがあります。顕微鏡とスタンドを開発するのに、顕微鏡一億五千、スタンド一億五千、三億円も投資するのに、その権利が社員にあったとしたら、私は誰とサインするんだ、契約するんだ、そういうことになります。

 そういったようなところで、社員のモチベーションを上げながら、その気持ちも共有できるような、そういう環境が必要だと私は思います。

 また、不正競争防止法。

 昨今、先ほどの手術顕微鏡ですけれども、大きな装置は左か右に置くんですが、これは邪魔なので、私は、背後から、上から来るような方式の特許を出したわけであります。そうしたら、特許は取ったはいいんですけれども、ある限界があります。それの似通った、あの雰囲気でつくれば売れるんだなと、OH3は、それをまねたもの、模造品が出てまいります。これを停止させるには、不正競争防止法しかありません。そういうわけであります。

 最後でありますけれども、中小企業が大企業または他の国に勝つためには、特許と不正競争防止法、これが、中小企業が大手、他国に勝つ唯一の武器であります。

 これから日本が海外に進出していくのに、価値観でいくしかありません。私がこのピラミッドの頂点を狙ったのは、中小企業は数はたくさんつくれません。下を狙うと、すぐ大手さんは安く大量につくってしまいますから、そういったようなところと競う時代はもう終わったんじゃないだろうか。

 日本の技術を世界に展開というのは、どうしてもこの二つの法律は大事であります。ぜひ皆さん、その辺のところを考えていただきたいと思います。

 以上であります。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 次に、アインゼル参考人にお願いいたします。

アインゼル参考人 皆さん、よろしくお願いいたします。

 何でここに外人が出てきたのかと多分皆さん疑問に思われているかもしれないですが、別に僕は外圧をかけに来たわけではないので、そこら辺のことは御了承いただけたらなというふうに思っています。

 うちは明治時代からある法律特許事務所でして、主として欧米のクライアントをずっと代理してきた経緯があるんですね。その中で、百十年以上なぜこうやってやってこられたのかというふうに考えたときに、やはり、何か彼らにとっての大きな文化的なメリットとかそういうものがあったんだろう。

 きょうは、僕は外国人の立場として、今回の法改正というよりは、今後日本が法改正をするに当たってどういうところの視点で考えていけばよろしいのか、一つの提言みたいなものをちょっとしたいなというふうに考えています。

 その提言はどういうところからくるかというと、これは別に僕の意見だけではなくて、大体僕は年に二、三回、ここ二十年間ずっと欧米企業を回ってきて、いろいろなインタビューをしてきたわけなんですね。そのときにそれをまとめたもの、日本の制度に対してこういうふうに考えていますとまとめたものとして考えていただければなというふうに思います。

 日本の産業財産権制度の今後の課題なんですけれども、これは釈迦に説法になってしまうんですけれども、そもそもよい産業財産権制度というのは何なのか。これは当然、自国の産業を発達させ、外国からの投資を呼び込む制度ということになるかと思います。そのためには、まずは投資の回収が図れる、すなわち投資以上のリターンがあることが重要であろう。

 あともう一つは、予見可能性の存在ですよね。例えば裁判所はどう判断するんだろう、特許庁はどう判断するんだろうといって、ある程度の予見可能性があって、それに対するリスク判断が企業ができること、これが非常に重要になってくるのではないかなというふうに考えております。

 一般論としては、産業の発達を図るために、皆さん御存じだと思うんですけれども、発明の保護と利用という両方の側面があるわけです。保護が強ければ当然利用が弱くなる、利用が強くなれば保護が弱くなるという関係にあると思うんですけれども、一般的に、先進国は保護に重きを置いて、発展途上国は利用に重きを置く、そういう関係があるわけですね。

 その中で、どうしても日本の特許制度に対して、先進国の中では、保護がまだまだ弱いんじゃないのかというイメージが特に欧米の中にある、そういう現実が今あります。

 ただ、ここ二十年間の特許庁さんの取り組みというのは、僕は本当に見事だなというふうに実は思っております。小泉首相のもとでのプロパテント政策もそうですけれども、それにのっとって、ここ二十年間で相当なまでに発明の保護というものに重きを置くようになってきて、審査期間についても、今、十カ月とか十一カ月、非常に短くなってきて、非常にいい制度になってきているんじゃないのかというふうに考えています。

 その中で、投資の回収が図れること、これは発明の保護の側面の強化なんですけれども、審査段階で今後ちょっと考えてもいいのかなというふうに思うのが、補正におけるいわゆる主位的請求、予備的請求の導入。これは多分、特許庁さんはすごく嫌がると思うんです。何でかというと、審査官の仕事がふえるからです。

 要するに、我々、一番最初、発明というのはある程度広く出すわけです。そこから取れるところに落とし込んでいくんですね。その落とし込みの過程において、補正というのは、要するに減縮していくわけです。減縮というのは、一つしか提出できないんです。

 それを、例えばヨーロッパ特許庁とかドイツなんかでもそうなんですけれども、幾つでも、これがだめだったらこれ、これがだめだったらこれというふうに、徐々にこうやって減縮していくという制度があるんですね。

 そういうものは、当然これは特許庁の審査官の負担にはなるんですけれども、要するに、なるべく広い範囲で取るためには、その一つの提案だけでは、ここだったら拒絶されるかもしれないからもうちょっと減縮しようかな、どうしてもそういう方向に出願人の考えが働いてしまう、そういうことをさせないためには、そういう制度というのは僕は非常にいいんじゃないのかなというふうに考えています。

 あとは、補正です。要するに、審査をやっている間に、補正の時期的制限というのが日本は実は非常に厳しいんですね。審判請求の段階から、その後はもうほとんど補正ができない、基本的には補正ができないという方向性となっているので、そういうところを、審査に係属中ないしは審判に係属中の間は、やはり補正の機会というのはずっと認めてもいいのかな。補正というのは、さっき言ったような減縮です。要するに、クレームをいじるということです。

 あとは、補正の内容的制限の緩和です。二つ目の、最後の拒絶理由通知が出た後に、いわゆる我々の業界で限定的減縮というふうに言うんですけれども、要するに、上位概念を基本的に下位概念に変えるしかなくなるんですよ。そういう補正ではなくて、もうちょっと幅を持たせた形の補正というのは認めてもいいんじゃないのか。

 何でそういう限定的減縮をさせるかというと、要するに、例えばこの範囲からこの範囲に変えたときに、もう一回先行技術の調査が必要になってくるんです、特許庁にとっても。だから、手続的な負担がすごくふえるわけです。それをしないためにそういう縛りをかけているんですね。そういうことは果たしていいのかなというところはちょっと疑問があるところです。

 あとは、分割出願の時期的制限の緩和。これは補正と同じような感じで考えてもいいんですけれども、Aという親出願があって、そこから分割ができる制度。要するに、もう一回最初からやり直そうよという制度があるんですね。それを日本では、時期的制限、やはりその審判請求段階から後は認めない。そうすると、補正もできない、分割もできないという状況があって、非常に出願人にとっては厳しい制度かなと。

 あと、もう一つは特実。これは、実用新案という制度を皆さん御存じかと思うんですけれども、特許で実用新案というのがあって、特許はいわゆる大きな発明、実用新案というのは小発明というふうに言われていますけれども、同じ発明を同日に出願して、それで両方で登録を得られるという制度がある国がヨーロッパではあるんですね。

 これはなぜいいかというと、実用新案というのは無審査で登録されるんですよ。要するに、出願から二カ月ぐらいでぽんと登録されて、とりあえず自分のコンペティターにプレッシャーをかけられる。特許出願を、そのようにコンペティターの製品に合わせるような形で後から変えていく。早期の保護と、あとは合わせるような保護、これも特許権者の保護に資する制度だというふうに考えています。

 あとは、投資の回収が図れることで、これは権利行使の段階。残念ながら、裁判所は、ここ二十年、知財高裁ができたりとかいろいろプラスの側面はあったんですけれども、思ったほど改革が進んでいないかなというのが僕の個人的な意見です。

 例えば、よくあるケースなんですけれども、企業さんというのは展示会で自分の製品を一番最初に出すわけです。その展示会で出したときに、そこに、例えば自分の特許の侵害品が他社さんからいきなり展示された。それを早急にとめたい。当たり前ですが、展示会が終わってしまったら、それは全部世の中へ出るわけです。世の中に出る前にとめたいといったときに、仮処分という手法があるんですけれども、その仮処分で、残念ながら、日本は、債務者審尋とかいろいろそういうことをやることによって、下手すると、特許の場合、七カ月、八カ月、九カ月とかかってくる。そうすると、もうそもそもそのダメージというものは回復不能になってしまっているんじゃないか。

 特に、日本みたいに中小企業が多くて大企業が少ない産業構造を持っているところというのは、そういう一つの製品、それを侵害されたものによるダメージというのは、僕は非常に大きいんじゃないのかなと。

 そういうことを考えたときに、債務者審尋をしないでも、本当は、二、三日で仮処分決定を出すようなもの、そのかわり、それが間違った判断であった場合は、ちゃんと、間違った判断であったのだから、その損害賠償義務を負いなさいよ、仮処分決定を出した方、債権者の方がと。そういう制度を持ってくれば、余り問題がないのかなというふうに僕は考えています。

 それ以外にも、敗訴者負担の原則。要するに、負けた方が勝った方の例えば弁護士費用だとか弁理士費用を払ってあげるべきじゃないか。損害賠償額が低い訴訟だと、やはり何だかんだ言いながら、特許侵害訴訟というのは何千万とするわけです、弁護士費用、弁理士費用だけで。それよりも損害賠償額が低かったときに、余りやる意味がなくなるということがよく起こる。それが、やはり日本において、出願件数は非常に多いんだけれども、特許の侵害訴訟の件数が百件とか百五十件にとどまっている一つの原因になってしまっているんじゃないのかなというふうには感じています。

 あと、予見可能性で、審査段階なんですけれども、請求主義などの原理原則の不存在。日本はドイツ法を継受しているんですけれども、これはおもしろいんですが、条文は継受しているんですけれども、原理原則というのはほとんどすっ飛ばしたんですね、当時。それがいまだに続いている状況なんです。

 原理原則というのは何のためにいいかというと、例えば、法律が全くないときに、原理原則にのっとって、今回裁判所や特許庁はどういう方向性に判断をするかというリスク管理ができるんです。そういうものが残念ながら今の法律にはない。

 あとは、進歩性判断です。進歩性というのは、特許が、発明が取得可能かどうかというところの一番の要件になるんですけれども、これは、基本的に客観的な判断というのはなかなか難しいんです。何でかというと、結局は価値判断だから。それを、ある程度、事実に基づく主張、立証というものを認めていってもいいのかなと。例えば、引例の数が物すごく多かったとか、長らく未解決であった課題、八十年間みんなこぞって研究していたのにできなかった、その発明をした、その事実をもって進歩性を認定するという、もうちょっと、価値判断だけじゃなくて、事実に基づく主張、立証というのもいいんじゃないのかというような気もします。

 それと、一番最後に、これは日本の産業界にとって、今、ASEAN諸国や東南アジア、中国を含めて、いろいろな企業が出ていって、そこで特許を取って、かつ、そこでいろいろなRアンドDをやる、開発をやって売るということをやっているわけですが、そのときに、いいパートナー、いい特許事務所、法律事務所がそこの地元で必要なわけですよね。

 そういうときに、何らかの国際的な取り決めをやって、日本の特許事務所が、外国の特許事務所、特に東南アジアにおいてオーナーになれるような制度というのを今後設けていく意味というのは、僕はあるんじゃないのかなと。そのことによって、例えば、国際的な特許事務所、法律事務所が日本においてもできるようになって、それで総合的に産業というものをバックアップしていけるんじゃないのかな、そういうことを今後考えてもいいのかなというふうに思っております。

 ありがとうございました。(拍手)

江田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 自由民主党の黄川田仁志と申します。

 本日は、四人の先生方におかれましては、御多用中のところ参考人質疑に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 質問の時間が限られておりますので、早速質問したいと思います。

 先ほど参考人のお話を聞いて、労使双方は今回の改正案について、特に三十五条改正について、おおむね賛成の立場であるということで、少し安心をしております。私も、この原始使用者主義を可能にするということについては、企業間の国際競争の激化と情報漏えいの防止の観点からも、時代の流れだというふうに思っております。

 今回の改正で、職務発明規程などで特許を企業に帰属させるということで、企業の知財戦略を後押しすることとなりましたが、そのかわり、指針に沿って従業者の相当な利益を保護するということで、従業者の発明意欲にも十分配慮しようというものでございます。

 これによって、労使双方、開発に対する意欲を出させるウイン・ウインの関係になればというふうに思っておりますが、それでも私はどうしても心配をしてしまうわけでありまして、指針があっても、企業に所属している従業員がしっかり権利を主張できるかどうか。過去の大きな訴訟の例を見てみても、会社に在籍しているときは黙っていて、退職してから訴訟を起こしております。

 そのあたりの見解について、まず、企業の立場から長澤参考人と中村参考人に、そのあたりの感触といいますか、教えていただきたいと思います。

長澤参考人 長澤です。ただいまの質問にお答えいたします。

 我々、訴訟は三件ですが、それ以外にもかなり苦情とかそういうものを受けます。

 キヤノンの発明取扱規程の中には、出願時に固定額、発明が生まれたときにインセンティブ用の固定額、さらに、登録したらまた固定額、それプラス、一定期間に評価をしまして、六級から特級という評価を、三十人の部長が点数をつけて評価するシステムを持っています。

 それで、いろいろな面から見ると、こういう面から見ると不公平、こういう面から見ると公平ということが非常に起こりやすくなっております。例えば、キヤノンの場合は、一番利益を稼いでいるものはプリンターとカメラになりますが、それ以外の事業にかかわっている発明者は、どうしても収入というかもらいが少なくなる。ただ、発明としては俺の方が全然立派なんだということが出てまいりますので、我々の場合は四つぐらい項目を設けています。

 一つは、経営に対する貢献、これがいわゆる日本の対価制度の基本になっているところだと思うんですが、それ以外に、技術の基本性というもの、どれだけ技術が大きくイノベーションを生み出したかということを別途評価しよう、さらに、それがどれぐらい今後活用できるかという将来性のようなものという四項目ぐらいを、部長以上が点数をつけて評価して、その平均点をとって、それを私なり知財の幹部が見て、それでお金を払っています。一応、上限はありません。

 ただ、そういうふうにいたしましても、いやいや、俺の発明は大発明なんだ、成功していないのは会社が悪いんだという意見が出てまいりますので、それに対しては苦情相談室のようなものがあって、場合によっては私に直接電話がかかってくることもございます。

 その中の一部の方が今訴訟を起こしたりしているわけなんですが、これはちょっと我田引水的になってしまうかもしれませんが、その方々は、現役のときに共同発明者との間で、あなたの寄与はゼロで、私の寄与は十だというふうな話をされていたような方でした。

 逆に、日本人の発明者というのは非常に勤勉で、余りそういう主張もされない方の方が圧倒的に多いんですが、結局、その方々が不利益をこうむっている場面もあります。

 ただ、やはり、大発明だと思って、それがこういう形で使えるんだという話は、会社側で聞く耳をちゃんと持って、話を聞くようにしています。ただ、その話を聞いたときに、わかりました、では、あなたにもうこれだけ払いましょうとやると、今度はほかの従業員の不満がやはり出てまいりまして、そのバランスをとりながら判断するというのが非常に大事なことだというふうに思っています。

 それともう一つ、我々は、発明者だけではなくて、その発明を生み出すために貢献した方々にも、対価とは別に、発明表彰制度を設けまして、お金も払っています。お金を払ったり、それから、社長と握手をして、実は、金メダルをもらってみんなの前で褒めてもらうということをやって、社長賞とかという賞をもらいますと、実際に社長と話ができて、会食ができたりとか、懇親会があったりとかという費用を会社が出すというようなインセンティブも別途やっています。

 発明は発明者が生み出すものなんですが、実は、それを生み出す前には、シミュレーターがソフトウエアで物理的特性を全て解析して、ここが足りないということを指摘するので、発明というのは生まれます。それで、その生まれたものを設計する人がいます。それを今度は発明として権利化をしようとする。これは全て従業員、エンジニアたちです。その人たちにもやはり貢献の度合いがあるわけでして、発明者だけを余りにも優遇すると、今度はそういう方々から苦情が出る。その全てのバランスをとってやれば、できる限り、無用な抗争といいますかが起きないのではないかと思っています。

 今回、法改正があって、その手続の面がガイドラインに記載されると思いますけれども、その手続を恐らくほとんどの大企業は守ると思いますし、我々も恐らく、守る以上に、従業員に気を使ったことをやると思います。ただ、そういう事件が今後も起きないかというと、やはり苦情というものは続くように考えております。

 回答になっていないかもしれませんが、ありがとうございました。

中村参考人 お答えします。

 私はこう考えております。アイデアというのをどんどん言いやすい環境、果たしてそれは、権利があるからやれるか。

 これは非常に大きな問題で、先ほどじゃありませんけれども、発明が社員でありますと、これはいつ考えたんだ、では、誰かとどこかでやるつもりなのか、もうそこで衝突が始まってしまいます。そういう環境で、なかなか中小の中で発明というのがたくさん、日本経済は九十何%が中小企業といっているんですけれども、そこからどんどんアイデアを生み出す環境をつくってあげることが私は大事かと考えておるんですね。

 私の会社はそうやりましたけれども、いろいろな会社がありますので、今回の法改正で、その立場立場でルールをどうつくるか。ガイドラインですかね、そこを非常に上手につくらないといけないのではないかと私は思います。

 これは一例になるかわかりませんが、私の会社に、定年間近い大手さんが、実は私はこういう特許を持っているんだけれどもという方が結構来ます。結局、自分の特許をやっていても、これはどうせ会社のためになるのなら自分でやるんだ、隠してしまう、そういった方もあり得る話であります。

 大手さんでさえそんな環境ですが、中小の場合はどうだろう。

 経営者と社員はいつも顔を合わせ、身近な立場にいます。だとしたら、どういうルールでやればどうなるのか、経営者と社員でじっくり話をする。

 一番の問題になるのはこういうことであります。例えば、五十人でしたら、発明者は一人いるかいないか、そんな感じです。よく発明するのは大体決まっております。ところが、我々がいたから、我々があれをつくって、どこどこに行ってあれを発見して、あれだけが何でいい思いをするんだと。

 結局、発明のできない社員、また、ひたすら生産で頑張っている社員、そこも報いられなきゃ何にもなりません。そこが一番大事であります。それは、薬関係をつくっている、物をつくる、会社の内容でいろいろ変わってきますので、そこのルールづくりが一番のキーであると私は思っております。

 ですけれども、アイデアは現場の苦しみから出るところで、それを生かすわけですから、それが世界に出ていくわけなので、そこのところをどうするか、そこが一番の問題でありまして、経営者と社員がじっくり話をして、ルールづくりをし、反映させていくのが一番だと私は考えております。

 これはまだスタートした段階なので、一、二年、どうなるか。法改正がいい方向に動くように、経営者も考えなきゃいけませんし、社員の方も、発明しない社員も浮かばれるような、そういうルールづくりが必要だと私は考えております。

 以上です。

黄川田(仁)委員 各企業、いろいろ苦労して、発明を促すためにいろいろ工夫を凝らしているんだなというのはよくわかりました。

 特に、私は中小企業が心配なんです。

 知財は大事だということで先ほどお話をされていましたが、実際、現在、八〇%の中小企業、あと大学が六〇%、職務発明規程を持っていないということで、発明者に特許が帰属するわけで、特許の流出、知識、知財の流出という観点からも、この法改正をしても、心配なところがまだまだ残っているというところでございます。

 そこで、中村参考人に再度お聞きしますが、中小企業における知財管理の苦労というのと、あと、国は何をよりサポートしていかなければ、先ほど、ちゃんとしたガイドラインをつくってほしいということもありますが、またそれに加えて国は何をしていけば知財管理を中小企業がよりよくやっていただけるのか、御意見があればよろしくお願いいたします。

中村参考人 おっしゃるとおりでありまして、中小企業の経営者が、特許とは何だということをまだまだよく理解しておりません。私の場合は、特許は武器だと言っているんです。そういった集まりに行きまして、よく言われます、社長のところは小さいながらも大手と同じような内容の仕事をやっている、そんなようなことが多いわけでありますけれども。

 特に、会社帰属というふうに、私がちょっと言われますのは、最近、少子高齢化というか、若い社員がいないので、特許を持って実は国に帰らなきゃいけないというようなところが出てきたときに、中小企業は、お金に余裕があれば、それなりの買い取りもできるかもしれませんが、そういうことは、そのときそのときによっては非常に難しい場合もあります。そういったようなところで、技術継承といったようなときにどういうことをとなると、ある程度限界があるかもしれない。

 そんなような意味で、私はいつも、さっきの忘年会に銀行の方も呼ぶというのはそういった意味なんですけれども、銀行は、知財とかそういったものに対して、これは資産としてはどうのこうの、そんなことを私は聞いたことがあるんですけれども、その事業を継承していくためには、まずは特許があるんですか、ないんですかというところも興味を持っていない。そういったレベルなので、今、中小企業の特許を日本全国に浸透させるというのは非常に難しいと思います。ただ親会社から言われたものをつくっていればいい、そういう会社にとっては、特許なんかどうでもいい、そういったところも大変多いと思います。

 ですけれども、技術を継承していくためには、またその後に継ぐためには、続いていかなきゃいけませんが、どうしてもそれが、技術がどんどんばらばらに出ていってしまうと、将来性が非常に問題であります。これは国にとっても大きな問題だと私は思っております。

 ただ、このルールづくり、どのようにつくるかというのは、これは私は大変難しいと思います。いろいろなところがありますので、いろいろな意見を調整しながらやっていくのがいいかなとは思いますけれども、私としましては、先ほどの、特許を発言できない、言えない、そういった人たちが報いられるような制度、これはまたちょっと違った雰囲気かもしれませんけれども、そこがうまくいきませんと、発明する人たち、そういったところが報いられることはどういうことだということになりますので、もう一度経営者が、特許とは何だ、どれほど重要なのか、そういった、成功した一例じゃありませんが、何かわかりやすいような環境で実際に話をする。その話をするのはどこからが一番早いかといったら、私は、中小企業は毎月銀行に行きますので、まず銀行、お金とアイデアがつながるところ、そこがきちんと理解されないと、なかなか難しいような気もします。

 そこにどういうアイデアがあるかどうか、私も一生懸命考えますけれども、皆さんもひとつ考えていただきたいなというのが、ちょっとそんな感じを受けるところであります。

黄川田(仁)委員 ありがとうございました。

 次に、アインゼル参考人にお聞きしたいと思います。

 我が国を知財立国にするためには、海外からの優秀な研究者に日本で働いていただきたいなというふうに思っております。また、優秀な企業が海外進出を果たして、海外の研究者たちも知的財産権について争うことなくやってもらわなければいけないと考えております。

 そこで、日本の特許法及び本改正の流れについて、国際的に見てどう評価するか、教えていただきたいと思います。

アインゼル参考人 これは、非常に日本における移民政策ともいろいろかかわってくる問題なので、ここでこういうことを言うのが適当なのかどうかわからないですけれども、基本的には、やはり日本で今後労働力というものを考えたときに、多分二者択一だと思うんですよね。女性なのか、外国からの移民なのか、多分この二者択一しかないんですよ。でも、日本が単一民族だということを考えたときは、恐らく女性の方に行くだろう。だけれども、外国からの労働力というのも必要だと思うんですね。

 そのときに、僕の一つの提案として、僕は今そういう活動を少しやらせていただいているんですけれども、もう既に日本にいる優秀な、例えば僕みたいに日本で生まれて育った外国人というのはいっぱいいるんですよ。その人たちというのは、社会に対して別に何の脅威も構成しているわけではなくて、そういう意味では、そういう人たちをどういうふうに積極的に、恐らく、僕なんかもそうなんですけれども、日本で外国の学校に行って、外国の大学に行って、日本に戻ってくる、だから、生活の本拠はこっちにあるわけですよ。そういう人たちをどれだけ技術者の中でもそれ以外の専門家の中でも登用できるかというのは、今後の課題だと僕は思います。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 あと時間も少しなんですけれども、川島参考人にお聞きしていなかったので、お聞きしたいと思います。

 先ほどは使用者側の意見をちょっと聞いてきたんですけれども、本改正において、同じ質問になりますが、やはりまだまだ心配なところがあると思うんですよ。

 四点、先ほどこの法改正についての注文をしていただいたと思うんですけれども、従業者の権利について、それを守っていく上でさらに御提言というかおっしゃりたいことがあったら言っていただきたいと思います。

川島参考人 どうもありがとうございました。

 先ほどの四点でかなり言い尽くしたところはあるんですが、きょう余り議論にならなかった点で、オープン・クローズ戦略の中で、知的財産、特許化をしオープンにするのか、あるいは営業秘密としてこれを秘匿するのかという二つの中で、本日の議論は、特許化した場合にどのように扱うのかという議論が中心でありました。

 当然、特許化しない場合に、営業秘密の管理を行っていくということとあわせて、その発明をした担い手に対しての処遇も適切に行われなくてはならないというように思っております。今回の特許法の改正をめぐる議論、その中での従業者のインセンティブの確保、そうしたものが幅広く企業において運用されていくことが重要だと思っておりますので、今国会で不正競争防止法の改正も議論されておりますが、そうした議論とあわせて、国会審議の中で御検討いただけたらと思っております。

黄川田(仁)委員 どうもありがとうございました。

江田委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 きょうは、御多用な中、四名の参考人の皆様に当委員会までお出ましいただきまして貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回の改正法案は、特許を受ける権利自体の帰属を変えるといった意味で、特許法の基本構造を大きく変える改正法案だと思っております。

 先ほど来るる御意見がございましたけれども、現行法は、特許を受ける権利は発明者に帰属させた上で、それを使用者等に譲渡した場合にはその対価を請求できる権利を有するということになっておりますけれども、先ほど長澤参考人の方から、今の現行法の課題として、今の現行法であれば、相当の対価ということの算定が難しいとかいったことで、非常に無用な抗争がさまざま起きているというようなお話がございました。

 先ほどは、時間が限られておりましたので、表面的なことしか触れられなかったかもしれませんけれども、今の現行法上の課題、特に、相当の対価の算出等に当たって御苦労されている点、また不合理と感じる点について、先ほどお話しされた内容に加えてお話しされることがもしあれば教えていただきたいと思います。

長澤参考人 御質問ありがとうございました。

 確かに、先ほどちょっと時間がなくて、余り話ができなかった面がありますけれども、これは、もともと旧法でもそれほど大きな問題にはなっていなかったことだと思うんですね。ところが、あるときに、やはり非常に大きな裁判があって、非常に多額の発明対価が認められた事件から、会社の中で、ああいうことができるんだ、ああいうふうにすれば何百億もしくは何億なんというお金が入るんだという、ざわざわという動きが始まりました。

 それで、その後、幾つか事件がございまして、例えば、弊社も、最初に訴訟を受けた件の請求額は四百五十二億円という額でした。結果としては、一億円行かない額で終わっているわけなんですが、それに使った弁護士費用が三億、四億かかってしまいます。

 その中で一番困っているのは、発明自体は本当は、もうこれは公知だなというふうに私は解釈していて、例えば、その特許をどう使うかというと、私自身が外国に行って、ある会社と交渉して、あなたはこれを侵害していますよねと。当然、彼らの反論は、その特許は無効ですよ、もしくは、侵害していません。非侵害性というのと無効性というのが必ず交渉の中では争われます。もちろん、ポートフォリオの数というものも交渉の中では大きく意味を持ちますけれども、口論になったときにどちらがそこで言い勝てるかというのが非常に大きなファクターになっていまして、言い勝てる特許、リーズナブルに私の方がアメリカの某社に対して言い勝てるなと思ったものにはたくさんお金を差し上げたいと思いますし、それなりの評価がつきます。

 ただ、発明者自身は広い特許が取れたというふうに理解しているものでも、実際は、先行技術と照らしてみると、これはほとんど使えないなと思うものでも、権利自体は広く読めますから、発明者としては高い請求額を要求してくるということはしばしばございます。そこを理解してもらうというのが、またこれが非常に難しい話でして、知財の専門家から見て、これは裁判に行ったら負けるであろう、これは裁判に行ったら五分五分であろう。

 難しいのは、知財というのは真っ白、真っ黒というのがほとんどございませんで、特に特許は、一〇〇%勝てる特許、一〇〇%負ける特許というのはあり得ないんですね。無効理由というのは何だかんだつけられますし、これは使っていないと言いわけも何だかんだできるわけです。

 ただ、それは裁判に行ったときの話でして、権利行使の九〇%以上は、外国であっても交渉になります。交渉になったときに、どちらがリーズナブルな話をしているかというのが非常に重要になってまいります。そこの駆け引きとかノウハウというのは、実際に交渉をやってみないとわからないところもあって、新規性のグレード、有効性のグレード、それから信頼性のグレードというものを発明者に説明して、これを理解していただくというのが非常に苦労しているところの一つでございます。

 やはり、過去の引例で、これだけもらった人がいるということをリファレンスにされることも非常に多うございます。私は、知財の責任者として、あなたの発明の評価はこれで、これだけのお金を払いますよと。いや、お金は全部裁判所が決めることなんですという反論も受けます。あなたが決めることではございませんということもございます。それは、新法、十六年法になってかなり緩和されたはずなんですが、実際は、新法の発明についても同じように、相当の対価というのは裁判所で争いたいと思っていますということで会社をやめていかれる方、定年を迎えられる方というのがいまだに後を絶っていないというのが悩みの種でございます。

國重委員 ありがとうございました。

 その前提の上で、今まで、「相当の対価」ということに法文上なっていることで、さまざまな御苦労をされてきた。まだ言い足りない点、るるあると思います。私も、事前に資料を読ませていただいて、現場の御苦労というのは大変なものだなということも感じましたけれども、今回、改正法で「相当の利益」と文言が変わることによってそれが払拭されると考えられているのかどうか、これについてお伺いします。

長澤参考人 「相当の対価」と「相当の利益」という言葉は、言葉だけではほとんど変わらないというふうに思っています。

 今回一番変わってほしいところは、今まで、条文の中で合理的なという言葉が使われていまして、その合理的なの中に、手続規定だけではなくて、幾ら払うかというのも合理的かどうかというのが含まれるように読めている法律だったというふうに理解しております。

 それに対して、今回の法改正は、手続規定を含んだ規程がメーンで合理的かどうかというものが判断されるということであれば、発明報奨規程をちゃんとつくって、発明表彰をして、話し合いの手続が合理的で、必ず従業員の意見を酌み上げているということさえしっかりしていれば、訴訟は起きにくくなった。完全になくなるとは思いませんが、起きにくくなったであろうということは想像できます。

 それからもう一つは、今まで、裁判で争ったときに、やはり金銭で幾ら出しているかということを勘定に入れていただいていましたが、例えば、発明表彰式をやりました、皆さんの前で表彰しました、実験器具を新しくその人のために買いました、それからメダルを上げました、そういうことは全然裁判所ではカウントしてもらえなかったのが事実でして、「相当の利益」にすることによって、そういうこともカウントしてもらえるのではないかという期待はございます。

 我々の中でも、さっき言った、発明者以外の方にも報いたいので、表彰式で、例えば百人を同時に表彰して、あなた方はいい活動をやった、それで二百万円差し上げるからというような賞もあるんです。そうすると、彼らは結局飲みに行くだけということになるわけなんですが、そこで祝勝会みたいなものをやるわけなんですね。

 そういった金銭でないインセンティブ、それから祝勝会の場をつくってあげるとか、そういうインセンティブを苦労してやっていますので、それが、対価という言葉は何となく現金というイメージが強かったものが、「相当の利益」という表現にしていただいたことで、そこの部分はカウントしていただけるのではないかというふうには期待しております。

國重委員 改正法では、「相当の金銭その他の経済上の利益」ということになっておりますけれども、今の御意見を聞いて、川島参考人も思われるところがあるかもしれません。

 従業員側、発明者側として、今回の改正によって、かえって発明者の権利、また対価請求権、もとあったものが切り下げられるようなことがあってはならないというふうに従業員側の代表として思われるかと思うんですけれども、今の長澤参考人の御意見を聞かれて、どう思われるのか。今回の「相当の対価」というものから「相当の金銭その他の経済上の利益」というのは、実質的に同等なんだということが前提としてあるかと思いますけれども、御意見があればよろしくお願いします。

川島参考人 お答えします。

 まず、二つのことを申し上げます。

 一つは、改正法の条文の中身が、言葉遣いは違っていたとしても、構造としては現行法と改正法には変わりがない、ほぼ同じ内容だというふうに思っております。したがいまして、インセンティブが切り下げられるのかどうなのかという点については、ニュートラルなのではないのかと思っております。

 ただ、法律をどう運用するのかというのは、それぞれの企業においてさまざま幅が出てくることだと思いますので、そういった意味で、本日冒頭に申し上げました、今回の改正が実際どのような影響を及ぼすのか、これについては、事後の調査、検証が必要だというように思っております。

 それともう一点、先ほどの長澤さんのお話を伺いまして、対価であったものが、金銭以外のものも含むということによって、争いがふえるのかふえないのかという点についてであります。

 私は、現行法も改正法も、相当の利益であれ対価であれ、その内容が合理的であるかどうなのかというのは、ひとえに、社内規程を策定したプロセス、すなわち、従業者と使用者との間できっちり協議を行って、双方納得できるようなものになっているのか、また、決めたものが職場において広く開示されているのかどうなのかというところにあると思っています。

 したがいまして、金銭であるなしにかかわらず、例えば一〇〇%金銭であったとしても、あるいは、今回の見直しによって、それを五〇%、五〇%、金銭とそれ以外にしたとしても、そう決めたことが納得的なものであれば、私は、紛争は起きないのではないのか、あるいは減少するのではないのかというように思っております。

 そうした意味で、本改正の意味としては、むしろ、ガイドラインを策定することを法で定めました。特に中小企業において規程の整備が進んでいないということもありますので、こうしたガイドラインが定められて、それぞれの企業において職務発明に関する規程の整備がされていく、そのことによって、従業員、使用者とも納得できるようなルールができる、このことが訴訟リスクを低下させることにつながると思いますし、そのことが明らかになれば、訴訟をされる側も、これは勝てないな、では、やめておこうかということにつながるのではないかと思っております。

 以上です。

國重委員 ありがとうございました。

 では、アインゼル参考人にお伺いいたします。

 今、現場の声として、現行法の「相当の対価」、また改正法の「相当の金銭その他の経済上の利益」等についての話がございました。

 ドイツとかフランス等では、こういった争いに関しては、使用者、発明者の紛争に関する特別な仲裁機関があるというふうに、私もいろいろ資料を読んで知りましたけれども、アインゼル参考人が、もしそのあたりのところを御存じで、日本にもぜひこういったものを導入すべきだというような御意見等を持たれていましたら、お話を聞かせていただければと思います。

アインゼル参考人 ドイツの法律のことをちょっと申し上げますと、あの法律というのは、実はドイツでは物すごく悪名高い法律なんです。それはなぜかというと、まず、できた時期が問題なんです。あれは、実はナチス・ドイツがつくった法律をそのまま継承しているという経緯があるんですね。

 高度の予見可能性が保たれているという意味では非常にいいんです。なぜかというと、まず、従業者発明法という一つの法体系があって、それに基づくガイドラインというのがある。詳細に規定されているわけですよ。だから、問題の起きるケースというのは思ったよりも少ない。これは、今回、日本でもやろうとしていることなんですよね。要するに、ガイドラインをつくろうと。

 ただ、僕がちょっと今見ていてあれっというふうに思ったのは、手続的なガイドライン、手続上のガイドラインというのはつくるんだ、だけれども、実体上のガイドラインについては、これは実体がやはり一番問題なんですよ、実体上のガイドラインも入るというようなニュアンスのことは書いてあるんだけれども、でも、実際そういうふうになるのかどうか。

 具体的に言うと、例えば、発明の価値というのは何なんだ、従業者の貢献度が何%だったのか、そういうものについてのガイドラインというものを本来だったら、そこにあれば、紛争というのは事前に相当少なくできるんじゃないのかなというふうには考えています。

 ドイツがやろうとしていたこと、今はガイドラインでやっているんですけれども、先ほど調停機関のことをおっしゃいましたけれども、あれは特許庁の中にある機関でして、年間七十件ぐらいの調停の申し立てがございます。そのうち大体七割が、そこでガイドラインに基づいて合意をしている。そこであぶれてしまった三〇%が訴訟になるわけですよね。

 ガイドラインなので、これは当然、調停機関も裁判所も法的には拘束されないわけですよ。だけれども、一般論として言われているのは、事実上の拘束力はあると。だから、そういう意味では、それに基づいて判断しているということは言えるかなというふうには思います。

 ドイツが導入をしようとして実は頓挫した制度というのがありまして、それがまさにインセンティブ制度なんですね。

 日本のいろいろなところの企業さんの職務発明についての決め事、勤務規則とかを見てみると、大体、出願時、登録時に幾ら幾ら払う、決まった金額で、上限があるんです。

 特許権の存続期間は、今ちょっと日本は平均どのぐらいなのかわからないんですけれども、毎年年金を払っていくわけですよ。最大、出願日から二十年あるんですよね。

 ドイツでは、今、大体八年ちょっとぐらいが平均的な存続期間。だから、八年ちょっとのところで、さっき言った出願時と登録時、あと平均的な存続期間満了時に一番最後の支払いを、要するに、三回やることによって、手続的負担というものを極力限定することができるんじゃないのか。それを要するに法律化することができれば、ガイドラインは実はもう必要ないんですよ、法律の中に規定してしまったら。だから、これはイーザー・オアの選択なんですね。

 ドイツは、実はこれを法律化することに失敗したんです。その失敗した理由というのは、労働者側が、一番最初の議論の出発点を、相当の対価というのは最低このぐらいだと引き上げてしまって、企業側が、日本でいう経団連に相当する機関なんですけれども、そこが、これではもう話にならぬということで、そこで打ち切りにしてしまって、結局ガイドラインに今落ちついたということです。

國重委員 ありがとうございました。

 時間があと一、二分ということになっていますので、では、最後に中村参考人にお伺いしたいと思っていたんですけれども、時間がちょっと限られているので、端的にお答えいただきたいと思います。

 知的財産教育協会中小企業センターが実施したアンケートによりますと、このアンケート対象者というのは知財担当者とか知財に興味のある方が多いんですけれども、そういう方にもかかわらず、そもそも特許のさまざまな支援策に関して知らないと回答される方も結構多い。また、利用したいけれども使えないと言われた方もいらっしゃいます。その中には、例えば中小企業向けのさまざまな制度の要件が厳し過ぎるとかいった声もございました。

 現場におかれまして、さまざまな特許制度、数多くとられていると思いますけれども、現場で思われるところがあれば、簡潔にお話しいただければと思います。

中村参考人 私はいつもこう言っております。先ほどじゃありませんが、いろいろなアイデアを出す、ものづくり、みんな現場から出ておるわけなので、特許法はよくわかりません。銀行の方もわかっておりません。だったら、銀行に、電話がちょうど入るくらいの、あなたが何かひらめいたら、そこに電話番号があって、詳しい方に連絡がとれるように、もうそれだけでいい、そういうことであります。

 それで、ちょっと質問とは違ってくるかもしれませんが、帰属する、そうして本当に中小は大丈夫ですかというんですけれども、私はこう考えております。利益の中から出してあげれば私はいいと思っているんですけれども、その利益は、特許が出ても、そのときに稼いでいるかどうかわかりません、その中で払う、そういうふうにすればいざこざは出ないと私は考えているんです。

 とにかく、銀行の方が特許を全然わからない、経営者がわからない。従業員のひらめきを相談する場所、駆け込み寺、こんな小さなのでいいですから、専門家に相談できる場所、それをつくってあげることだと思います。

 以上です。

國重委員 ありがとうございました。

 きょうは、四名の参考人の皆さん、現場の御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。またしっかり頑張ってまいります。

江田委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 維新の党、鈴木義弘です。

 本日は、大変お忙しいところお越しをいただきまして、まことにありがとうございます。

 今までの議論を聞いておりまして、やはり日本は、和をもってとうとしというのを聖徳太子のときから十七条憲法に書いて、それが一千三百年、四百年脈々と続いている、価値観が変わっていないんだなというふうに思います。

 欧米と日本の一番の違いは、いろいろ考え方はあると思うんですけれども、個人のアイデアを大事にしようというふうに考えるのか、グルーピングでやったんだからグループとして評価しようじゃないか、先ほど参考人の方もいろいろ御答弁いただいている中で私はそう考えるんですけれども、このままその価値でやっていって、果たして新しいアイデアが出てくるのかということなんですね。ですから、一人だけにたくさんの法外な報酬を払うのはいかがなものかというふうに先ほどから言われているんですけれども、それが悪いことのように定義づけされちゃうと、やはりみんな外国に行ってしまうと思うんです。

 欧米の価値観はそうじゃなくて、あなたのアイデアはすばらしいんだから、これだけの報酬を上げます。例えはよくないですけれども、野球選手が日本のプロ野球で仕事をしていて、一億円プレーヤーがいたときに、同じ実力があったらアメリカのメジャーへ行ったら十億円払いますよと言ったら、アメリカに行っちゃうんですよね。

 そこのところの考え方を、一度、お立場は違うと思うんですけれども、大企業とか中小零細とか、お立場はあったとしても、ちょっと最初に考え方をお聞かせいただければと思うんですが、よろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

長澤参考人 御指摘はもっともな面がありまして、日本は悪平等だというふうな議論をやはりよく聞くわけです。一方、欧米は、ある人をスーパースターにするから、アメリカンドリームで物を生み出すんだという話は確かにあります。

 ただ、そこについては、やはり一番報いてあげたいのは、発明の対価ではなくて、給与とか賞与、これをちゃんと差別化してあげることの方が大事だと思います。

 今まで、ほかの大企業さんの話を聞きましても、一番高いというか、ライセンス料の幾らと払っている会社がございまして、その場合は年収に近くなる、年収を超える場合もあるというような話を伺うんですが、それでも年収ぐらいなわけですから、では、例えば年収を倍にすれば、それに相応した報酬は与えられるものだというふうには思っています。

 私が実際にこの運営をしていて、大体クレームがつくのが、不公平だ、不平等だというクレームが多いのはこの国の特徴かもしれません。ですので、例えば、旧法があって、そこでライセンス料の何%という決め事をしている会社さんが、今度の法律になったから、はい、なしねというと、何であいつはもらって、俺はもらわないんだよという話が必ず出てきますので、そこは緩やかな変化しかつけられないというのを伺ったこともあります。

 ただ、一つだけ言えるのは、今、弊社の工場が九州と東北に数多くあるんですけれども、外国の工場も弊社の子会社であるんですが、何が一番違うかというと、やはり平均レベルが圧倒的に高いんです。落ちこぼれが少ないです、それがいいことか悪いことかは微妙なんですが。

 アメリカというのは、スーパースターはいるんですが、不良の山を築いてしまいます。それは、やはりできない人がいるからです。だから、生産とかものづくりには実は向いていない。ただ、アメリカとかヨーロッパというのは、スーパースターがいるので、突拍子もないアイデアを出して、それで資本を投入して、ベンチャーをつくってという動きができやすい国だと思います。

 ただ、日本という国がそれにどうやって対抗するか。個人でゴルフ場を持っている、百億円寄附できる人が日本に何人いるかというと、余りいないわけですから、これはその平均レベルの高さというのをぜひ生かしたいと思っています。

 同じように工場で物をつくっていても、例えば、アジアでつくっているのは、コストは安かったです。すぐキャッチアップしてきました。でも、成長がそこでとまるんですね。日本は、例えば、日本の工場のすごくいいところは、やはり高校を卒業している方ばかりが工場で働いています。しかも、その人たちは、次々、こうやった方がいいんじゃないか、ああやった方がいいじゃないかということを言ってくるんですね。それは外国ではまず起こりません。

 ここというのは、工場で働いている方々が、レベルが我々ホワイトカラーと余り変わらない、すごく高いレベルにあるということが非常に大きなことなので、その平均値の高さというのはものづくりに生かしていきたいし、そのものづくりで日本は勝ってきたので、たまたま今ものづくりにお金が落ちない構造になっているので、我々経営陣はものづくりにお金を落とさせることを考えなきゃいけないと思います。

 ですので、最初の質問については、できればそれは給与で報い、もしくは賞与で報いてあげたいというふうに思っています。ただ、アメリカのように年俸一億円、二億円というのは、さすがにちょっと今の状態だと文化的に出せない面も残っていることも事実でございます。

川島参考人 お答えします。

 我が国の特許法、特許制度が、御指摘のありましたような、優秀な研究者は海外に出てしまうのではないのかという御懸念について、見解を申し上げます。

 二つありまして、一つは、今の三十五条の四項において、当事者同士が議論をし、規程をつくれば、かなりの自由度を持って企業における報奨のルールというのは定めることができると思っていますので、経営戦略として、そういう人間をとどめたいということであれば、そうした規程がつくられるのではないかと思います。

 さらには、そこの枠におさまらない場合には、特許に限らず、個別に嘱託契約ですとか、通常の社員とは別扱いで処遇するということも、これは一般的に企業でされているケースも私は存じております。

 したがいまして、ひとえに、どういった経営戦略を行うのか、そこに大きくよっていることではないのかというように思います。

 以上です。

中村参考人 中小企業は大体、こういうものをつくったらこれだけいいことがあるということは細々わかっているわけです。だから特許を出すんですね。そこで利益が出た。私はさっきから言っております、もし百億利益が出たらあなたに数十億上げますよ、私はそれでいいと思うんです。ところが、大手さんはそういうことをやりますと、何万と出る中で示しがつかないかもしれませんが、むしろ中小企業こそ、サッカーとか野球選手が何億ももらっていて、何でもらえないのと。すごいアイデアでとんでもないことの可能性が、むしろ中小にいっぱいあるんだから。だから、私はそう言っているんですね。

 これは仮の話ですけれども、もし百億円もうけさせてくれたら、私はあなたに二十数億上げますよ、だけれども、みんながいたからできたというアイデアかもしれないので、みんなにもまた二十億上げてほしい、会社の将来に、そんなふうにして私は考えております。

 ぜひそういう方向で、誰かそういった会社が一社でも出るように、私は、一生懸命頑張るように、促進していきたいと思っております。

 以上です。

アインゼル参考人 私も、相当な利益のところで評価というものの幅を非常に持たせることについては、どちらかというと反対ですね。これはやはり訴訟というものを頻発させてしまうんじゃないか、結果的に。

 そういうことをせずに、やはり評価制度とか、あとボーナスというものを用いることによって、そちらでそういうものを支払っていくということの方が、僕は日本の社会には合っているんじゃないのかなというふうに思います。

鈴木(義)委員 それと比較して、特許法の改正の質疑をしているんですけれども、だんだん世の中のトレンドとして、特に、大手さんも、中小の技術系の企業さんはみんなそうだと思うんですけれども、どっちかというと、特許を出さないで営業秘密で残していった方がいいんじゃないかという流れがトレンドになってきているんじゃないかというふうに言われているんですね。

 それは何かといったときに、特許を申請すれば二十年は保護してくれるんですけれども、結局まねされてしまう。ちょこっと味の素を入れたら味が変わるような形で商品化されてしまって、それが労働力の安いところでどんどんつくられてしまえば、売れなくなってしまう。

 例えば、一九四五年にある素材がアメリカで開発されて、今でも、六十年たっても同じ素材を私たちの世の中で使っているものがあります。では、それは特許で保護されているのか、営業秘密なのかといったら、もう特許は切れちゃっているわけです。では、営業秘密かといえば、つくろうと思えばつくれる、つくれなくはないんだそうです。でも、その物を六十年間もつくり続けられるというのは何かといえば、スケールメリットなんです。これ以上安くつくれないよというところまでスケールメリットを高めれば、誰もまねしない。

 そういう戦略もありなのかなと思うんですけれども、そうすると、特許で保護してもらった方がいいという考え、先ほどアインゼル参考人の方から、ドイツでは八年ぐらいしか特許を継続する期間がないと。日本の場合はちょっと私も調べていないんですけれども、特許を取ったとしても、日本の商品としての長さが一年半とか二年しか残っていないというのも事実あるんですね。長澤参考人の、大手のキヤノンさんで、私もカメラを持ったりなんなりしていますけれども、何かすごくサイトが短くて、新しいもの、新しいもの、どんどんつくっていかなくちゃいけない。

 それで、特許を出した方が得なのか、営業秘密でやった方がいいのかといったときに、それはもう企業戦略になってしまうと思うんですけれども、ぜひ、これからちょっと日本の企業に元気が出るような御答弁を四人からいただければありがたいなと思うんです。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

長澤参考人 短目にいきます。

 生産方法もしくは見えないもの、これは営業秘密で保護した方が今は得です。

 昔は、そういうものであっても特許を出して、特許を出したそれにひっかかっていると、行儀よくそのライセンスをもらいに行っていたのが日本の会社でした。ただ、行儀が悪い会社が出てきたということが、営業秘密が注目された一つの大きな理由です。ですので、見えないもの、例えば生産方法、さっきスケールメリットという話がありましたが、スケールメリットを出すための生産方法、これは隠した方がいいです。

 ただ、見えるもの、製品から見てわかるもの、リバースエンジニアができるもの、これは特許として出しておかないと、リバースエンジニアされて、まねされてしまいます。

 さっきカメラの話がちょっと出ましたが、実はカメラの基本特許というのは、デジタルカメラの場合は一九七八年にキヤノンが出願していまして、とっくに切れています。ただ、その技術はいまだに使われています。機種は確かに一年半ごとに変わるんですが、そこで使われている技術というのは永遠に変わっていないものもあります。十年スパン、二十年スパンのものもありますので、特許である程度の保護はできると思いますし、その特許を使っていくことは変わりないと思います。

川島参考人 お答えします。

 御質問の御趣旨が極めて経営にかかわる話でありまして、答えを持ち合わせておりません。

 ただ、黄川田先生からの御質問にお答え申し上げましたとおり、技術をオープンにするにしてもクローズするにしても、やはり発明を生み出す従業者のインセンティブがしっかり確保されるような、そうした環境整備が極めて重要だというように考えております。

 以上です。

中村参考人 先ほど私は、ライカと三十年つき合っていると。特許も二十年、当然切れているわけでございますが、いまだに続いている。

 そのわけは、特許を次々に出すのは誰が決めるか。これは市場であります。現場なんです。現場がもうそれを受け入れていなかったら、我々が特許を持っているのがずっと続いている、これはあり得ません。特許を変えなきゃいけないのは、市場が変わっていったら、それに順次変わっていきます。

 そういう意味で、私は、一種類じゃなく、次々、次々、相場に応じて、状況に応じて特許を出しております。日本は、次々生み出す、そういったことが得意な民族と私は考えております。それが大事だ。この次々生み出すというところが日本の武器だ。

 そのようにして、特に、中小企業の場合はそこが一番の、変わり身ができるので、そこのところを、大手さんは、あるラインをつくると外に行けません。そして、中小企業はコストの世界に入っては私はいけないと思っております、価値でいくわけですから。そして、のほほんとしていてはいけなくて、次のアイデアを出そう。そういうためには、経営者も考えるかもしれないけれども、社員全体がその危機感を持って、そして一体になってやっていこう、そういう方向に今回の法改正が行ったらいいな、私はそう考えているんです。

アインゼル参考人 営業秘密については、今回いろいろな改正があって、僕は改正案は非常に結構な改正だと思うんですけれども、一つ恐らく問題なのは、営業秘密として保護されるボーダーラインというものが日本は非常に高く設定しているんですね、他国よりも。それは、秘密管理性という要件があるんです。例えば、マル秘マークがついているとか、アクセスできる人はこの人とこの人とこの人だけだとか、情報があるところに鍵がかかっているとか。

 中小企業さんがそもそもそんなことを知っているのかという話があって、そうすると、営業秘密の定義というものをもう一回考え直さなきゃいけないんじゃないのかな。そうしないと、確かに最近は営業秘密として保護するというトレンドはあったとしても、実質的に裁判になったときに保護できないという事例が結構頻発しているんですね。ですから、そこをもう一回、営業秘密の定義というところから考え直すことは非常に重要じゃないかなというふうに考えています。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 理想の話なんですけれども、中小企業が知財を持って、安く大量につくって海外に売ってもらうのがメーカーさんという、大手さんがあって下請の中小があるんじゃなくて、中小があって下請の大手さんがあって、ウイン・ウインの関係ができれば一番理想なのかなと思います。まあ、これは理想の話なので。

 知財を生み出すのに、大学だとかいろいろな研究機関、中小さんもそうだと思うんですけれども、これはメーカーさんからすると、そんなの当たり前だというふうにおっしゃられるかもしれませんが、あるプロトタイプの、こういうものをつくってくれと言われたら、ある小さな、本当に町工場の人がつくったんだそうです。それから、量産をしてくれるというので発注を待ち構えていたら、これを中国でつくられちゃったんだそうです。

 中国でつくられたのはいいので、それっきりかなと思ったら、あるメーカーさんがまた来て、ふぐあいができたからこれを直してくれと。その社長さん、私が大変お世話になっている人なんですけれども、技術屋さんが十人も来て、カメラで写真を撮らせろ、直すところをビデオで撮らせろ、それをやったんだそうです。社長さんは、お断りして、させなかったと。そうしないと、自分のところの商売はもう成り立たない。

 というのと同じように、大手さんはメーカーさんで、中小とか零細、下請、孫請さん、いろいろなところから情報を集めて、知財で商品をつくっておられると思うんですけれども、結局、上下関係のあるような立場にありながら、営業秘密だとか、特許権も含めて、知らず知らずのうちに吸い上げてしまっているんじゃないかと思うんです。

 だって、中国では直せないけれども日本のメーカーでは直せるということは、それはノウハウ、製造方法なり修正をするということはノウハウで、知財になるわけですね。それがやはり日本の知的財産である職人わざだったんだと思うんです。

 それを、今までは余り競争相手がいないから日本の中で何とかやれたんだと思うんですけれども、そうじゃない考え方の国の人々もたくさん出てきているということになったときに、一つは、メーカーさんで、確かに知財はその社内のアイデアが花咲いて御商売になったんだと思うんですけれども、そうじゃないところにもっと研究開発を還元させる形を、内部に留保するんじゃなくて、そういうスタイルをとっていって、日本全体でアイデアをもっともっと湧き出させるような、中小零細にも研究開発費を上げたっていいと思うんですね、大学ばかりじゃなくて。

 そういうことを考えたり、知財として保護してもらうようなことをあわせて取り組んでいただけるものなのかどうか、最後にお一人ずつ御答弁いただいて、終わりにしたいと思います。

江田委員長 では、簡潔に。

長澤参考人 私は、中小企業の特許部長に一回招聘されたこともありますし、キヤノングループの中には中小企業がいっぱいあります。彼らに一番注意しているのが契約です。契約を見せると、先ほど先生がおっしゃったようなことが起こります。

 ですので、ノウハウ、情報、これを使うときには、例えばこういう条件で、これにしか使うなと。それでも使って、いや、俺は使っていないよという方がいるようでしたら、こういう技術分野に使う場合には一報をよこせというぐらいの強い契約を結んでいかないといけないんですが、やはり、ちょっと今、中小企業のトップの方がぱっとサインしちゃうと痛い目に遭うかもしれません。

 そういう意味では、そういうサポートを国としてやっていかなきゃいけないですし、それには大企業のOBをぜひ使ってください。よろしくお願いします。

川島参考人 今のお話を伺いまして、知財に関する法整備とあわせまして、独占禁止法ですとか下請法の整備だとか、いわゆる大手、中小の力関係の差によるもの、この点についても同時に対策をとる必要があるというように思います。

 以上です。

中村参考人 今の先生の意見、全くそのとおりでありまして、中小企業はノウハウの塊なんです。それを吸い上げられては、これは本当によくない、そう思います。

 ところが、そこのところの法改正というのが非常によくわからない。図面を渡す、見せる、どこまでというのがあります。

 私の場合は、まねをしてつくったら失敗するようにやっておけ、そんなふうに言っているんです。まねされたらすぐ次のものをつくり出す、それを武器にして当社はやっております。

 確かに、ノウハウというのが中小企業の一番の底力です。つくり方も教えてはいけない、そういうことがあります。

 以上です。

アインゼル参考人 先ほどのお話になると、法律というよりは、どちらかというと文化的なお話になってしまうので、なかなかこれを法律で規制するというのは難しいとは思います。

 ただ、最近、オープンソースとかパテントプールとか、いろいろな企業が自由に使えるような形、これはみんなの、要するに全ての企業が伸びられるような状況をつくり出しているものだと思うので、そういう方向性に今後は、これは業界にもよると思いますけれども、どんどん行くと思います。

鈴木(義)委員 どうもきょうはありがとうございました。

江田委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 四名の参考人の皆様方、現場からのお話で、大変興味深く拝聴させていただいておるところでございます。

 まず、長澤参考人にお尋ねをしたいと思います。

 先ほど来、特定の発明者の方に大きな利益を与えるということが不公平であるとか不平等であるとか、ほかの従業員の方々からこういうクレームが出てくる、こういうお話があったんですが、発明当事者の方以外の不公平だ、不平等だというクレームを発する従業員の方というのは、この発明に関してどのようなかかわりを持った方がそういう苦情を申し立てになられるのか、そしてまた、そういう方々に対して御社としてどのような解決といいますか苦情処理などをなさっておられるのか、お尋ねをしたいと思います。

長澤参考人 今の法律の上で、クレームをつけるのは発明者そのものです。発明者そのものが自分の発明はすぐれたものであるという主張をして、これぐらいの価値があるということなんですが、もし本当にそれが、さっき百億円稼いだらという話が出ましたけれども、そういうものであれば、うちも対価の上限は無制限なので、払ってもいいと思っています。ただ、それが誰から見てもそうだというものは払えますけれども、横並びで百件あって、それとほとんど変わらなくて、一人だけに何千万なんというお金を上げて、ほかは一律百万ということになるとやはり不公平感が出ますので、その横並びを調整して、同じような価値ですよねということを納得してもらうのに苦労しております。

中根(康)委員 次に、川島参考人にまず一問お尋ねをしたいと思います。

 先ほど来のお話で、特に長澤さんとか中村さんから、発明というのはあくまでも、やはり何だかんだ言ってもチーム力で出てくるものだ、アイデアというのはそういうものなんだ、こういうお話があるわけであります。だからこそ、会社帰属、法人帰属の方が望ましいのではないか、こういう御意見であるわけでありますけれども、これまでといいますか、現行法の従業者帰属であればこそというメリットというものがあればお示しをいただければと思います。

 それから、ちょっと順序が行ったり来たりになりますけれども、例えば、社長賞であるとか表彰状の授与であるとかメダルの授与であるとか、こういったこともなさっておられるというような話も今出てきたわけなんですけれども、こういったものが発明当事者にとってどれぐらいの満足感が得られるものなのかどうか、十分なものであるのかどうか、こういったことについて御意見をお聞かせいただければと思います。

川島参考人 ありがとうございました。

 一つ目の御質問ですけれども、従業者帰属であればこそ、発明のインセンティブ、従業者のインセンティブとしてプラスの面があるのかないのか、ちょっとここは非常に難しい内容で、答えを持ち合わせておりませんが、ただ、一つ言えますのは、発明者に特許を受ける権利が帰属するということが九十四年にわたって維持されてきたわけで、そのことが発明者にとっての安心感だとかいうことにつながっているのではないのかという気はいたします。

 二点目の、金銭と金銭以外。今現在の法制度のもとにおいても、金銭以外で従業員に報いるという制度もあるというように承知をしております。表彰ですとか、海外への留学ですとか、あるいは、その研究者の希望する設備を入れるだとか、さらには、建物を建てて、その建物に研究者の名前を冠するだとかいうのを聞いたことがございます。

 申し上げたいのは、そこはまさに各企業が工夫をされて、また、従業者との間でどんな仕組みがいいのかと協議の上で決めたということであれば、それはそれで、よいことではないかと思っております。

 ただし、詳しく申しませんが、やはりメーンは金銭、従来の対価ということを主に置いた方がよろしいのではないかと思っております。

中根(康)委員 重ねて川島参考人にお尋ねしたいと思います。

 納得感、満足感が得られる一つの重要なポイントは、手続が丁寧に行われているかどうか、こういうことであると先ほどから意見を御開陳されておられるわけなんですが、こういった十分な対価が、あるいは満足感、納得感が得られているかどうかということと秘密が社外に漏えいするということ、漏えいを抑止することと言ってもいいかもしれませんが、これとの関係というものは、要するに、満足感が得られていないときに、場合によっては秘密が漏えいするということにつながるのかどうかというような点については、どうお考えになられますか。

川島参考人 両者のかかわりというのは大きいと思います。私も、営業秘密が漏えいをする、それによって訴訟が起きるというそれぞれをつぶさに存じているわけではありませんが、よく聞きますのが、会社をリストラに遭って、会社への恨みを返すということではありませんが、そうした企業と本人との関係がこじれることによって、本来あってはならないことを行ってしまうということがあると思うんです。

 したがいまして、会社に不満を思う、処遇に対する十分な納得感がない場合と、そうではなく、十分納得感がある処遇を受けているといった場合では、前者に比べて後者の方が、営業秘密の漏えいですとか、それにかかわるトラブルというのは少ないのではないのかというように個人的には考えております。

中根(康)委員 中村参考人にお尋ねしたいと思います。

 改めてちょっと確認をしながらお尋ねしますけれども、中村さんのところの会社では、発明がどこに帰属するかというようなことをどういう社内規程をつくっておられるかということと、それと、特許、知財で稼ぐということであろうと思いますけれども、先ほどから銀行という話もよく出ておりますが、お話しいただける範囲で、可能な範囲で結構なんですけれども、知財、特許というものを担保にして融資を受けておられる、そんな御実績があるかどうかについてお尋ねしたいと思います。

中村参考人 中小企業はなぜ特許を出すか。やはりそれは、それを事業化してもうけようと。

 ただ、発明というのは、書類を出せばすぐ、おもしろいアイデアだったら通るかもしれませんけれども、中小企業の方々はものづくりですから、これをつくるとこれだけの利益が出るはずだ、そういう中で動いているわけです。ですから、それに対して対価をこのように考えようと。

 ところが、先ほどの一例では、パートの方を正社員にしてあげた、これも一つの報奨かもしれませんが、中にはやはり、専門の勉強を私は大学でやってきた、また、そこでこういうことをやってきた、そういった方の対価は、メダルを上げても、中小、五、六人のところで、十人、三十人でもらっても、そこでぱちぱちで終わっても満足しません。

 それが事業化できて、そして世界展開で、すごい測定ができたら、おまえ、その学会に行って発表してこいと。例えば精密学会、いろいろな学会があります、そういったところで発表させる。

 または、先ほどの、この部分をつくったんだけれども、それがどんなふうに世界で本当に評価されているのかわからない。我々は知っていても、それを伝えるためにはどうしたらいいか。そういったところに実際行かせる、そして実際の医療現場で、これはすごいアイデアだ、誰が考えたんだ、そういうことになります。

 特にアメリカなんかの場合は、ドクターといったら教授、すごく評価されますけれども、発明者だというだけで、お人払いで、記念写真、記念写真、大変です。全然それがレベルが違うんです。私は、そういった場をつくってあげる、そんなふうにやっているんです。それが答えになっているかどうかでありますけれども。

 実際、いろいろ私、先ほどのそういう戦略があります。特許を取っても、先ほどのライカに行く前に、何か実際の病院で使ってもらわなきゃいけない。そういうことを考えたときに、私は国の補助金を使う。そして、補助金で、税金でつくった顕微鏡です、そういうふうにしている。これも一つの方法なんですが、ところが、つくった後、特許法違反でがりがり言われたのでは国も困ることです。

 そういう意味では、もう既に特許出願し、こういった評価がされています、これをつくらせてください、そしてこれを国の技術として世界展開したい。そういうふうに、私は既にそういったところで、国からの予算を使うところにも特許を使っておりますし、こういうものをつくるためにはこれだけの資金が必要です、それに対して銀行はどうですかというときに、中小はそういったところにも特許があれば、国も安心、銀行も安心、よし、それでいこう、こういうストーリーができ上がると思います。これは既に国が実行しているところです。それを私は大いに利用した、そういうことであります。

中根(康)委員 続きまして、川島参考人にお尋ねしたいと思います。

 連合は、当初、法改正の必要はないというお考えであったと思います。つまりは、特許を受ける権利は発明者に帰属すべきで、法人への帰属については現行法でも可能だというお考えをお持ちであったと思います。

 今回、法改正の立法事実があるかないかということについては、これまでの委員会質疑でも必ずしも明確な答弁は得られていないということでございまして、立法事実のない法改正ということになりますと、時の政権の恣意的な法律ができ上がってしまいかねないということにもなるし、今でいえば、企業が世界で一番というようなことの中で労働者が置き去りにされてしまうというようなことにもなりかねない、こういうことでありますので、法改正あるいは法律をつくるということについては、立法事実の有無というのはやはりとても重要なことであると思います。

 立法事実が必ずしも明確になっていない中で、今回、法改正について容認というような形に考え方が産構審の審議などを通じて変わってきたということについて、御見解をお聞かせいただければと思います。

川島参考人 ありがとうございました。

 二つのことを申し上げますが、まず、法改正の必要がないと私どもが申し上げた一番の理由は、今回の特許法の職務発明制度の見直しの目的、企業のグローバルな活動を阻害しないということの中で、二重譲渡に係るリスクを下げるだとか、あるいは従業者のインセンティブを向上させるといったようなことで、法人への帰属への転換、また、法定対価請求権をなくして企業の自由裁量によってインセンティブを設けたい、インセンティブ施策を行いたいというような議論がありました。

 私どもが考えておりますのは、一点目の二重譲渡の件については、今ある法の運用ですとか、あるいは不正競争防止法での対処で対応可能ではないのか、リスクを下げることができるのではないのか。これは専門家の御意見も伺いました。

 また一方で、従業者のインセンティブ向上という点では、法定対価請求権をなくすことによって下がる可能性もありますし、上がればそれにこしたことがないわけで、九十何年来の法定対価請求権の今日に至る仕組みをなぜ変える必要があるのか。

 例えば、ガイドラインを策定することによって、インセンティブ強化につながるような従業者と使用者の協議を行って職務発明規程を整備する、これもインセンティブ向上につながることではないかと思っておりますし、両者が合意すれば、かなりの自由度を持ってその施策の内容も決めることができるというように、二〇〇四年の改正法で、このように承知をしております。これが法改正の必要はないと申し上げた理由です。

 もう一つ、なぜ連合は今回の法改正の内容は妥当だと考えたのかということであります。

 最大の理由の一つといたしましては、私どもが懸念をしていたインセンティブの切り下げについては、法改正後の内容自体は、条文上は基本的には現状の構造を維持しているというように考えております。最大の懸念がまずなくなったというのが一つございます。

 もう一つは、では、私どもにとって評価できる点があるのかないのかということで申し上げますと、私どもはガイドラインの整備が必要だということを一貫して主張してまいりました。今回の改正法の中で、ガイドラインの整備、策定を法で明確化しておりますので、この点についてはプラスになるものとして評価をしているところであります。

 それと、今回インセンティブを維持する、確保される前提で、審議会の中においては企業側の皆さんも、これによって従業員のやる気を引き上げることができるんだということをおっしゃって、本日の中でもそういう御意見も伺いました。

 したがいまして、ここは個人的にですが、ぜひそういうことにつながるように、今後の法運用について期待をさせていただければと思っております。

 事後の調査、検証、何度も申し上げますが、ここが一番重要だと思っておりますので、その点での御対応もお願いをしたいと思っております。

中根(康)委員 ガイドラインがやはり重要だ、これはかなめである、こういうことでありますけれども、このガイドラインに書き込まれるべきものはどのようなものであるべきか。例えば何か具体的に例示を含めて書き込むべきだとか、何か御意見があれば川島参考人にお伺いしたいと思いますし、また、ガイドラインを決めるメンバーがどういう構成であるべきかということについて御意見を承りたいと思います。

川島参考人 ありがとうございます。

 ガイドラインに盛り込まれるべき内容はどういったものなのかという点について、三つほど申し上げます。

 やはり一点目は、従業者と使用者双方の協議がしっかりと尽くされる、そうした手続について、具体的なやり方、例示などが必要だというように考えております。

 特許庁の調査研究でも、企業向けのアンケートの中でも、協議を行う態様についてはそれぞれ幾つかのパターンがあって、必ずしもそれによって、十分に協議がされているのか、されていないのかというのをはかることができないと思っておりますので、その点が一点目であります。

 二点目につきましては、規程をつくった後に、例えば苦情ですとか不満ですとかがあった場合に、それを処理する、あるいはそうしたときに従業員が気軽に相談できるような窓口をつくるといったような規定も盛り込む必要があると思っております。

 先ほどのアンケート調査でも、異議申し立て制度を規程の中に設けているという企業の割合は全体の大体六割となっておりまして、規程があっても、問題が起きたときの解決方法について記載されていないというのは不十分だと思っていますので、それが二点目であります。

 三点目は、相当の利益について、金銭と金銭以外といったことが今回注目されておりますので、では金銭以外というのはどういったものが適当なのか、適当でないのかということについて記述が必要だと思いますし、御指摘されたように、適当な例、好事例なども例示としてあるというのも有益ではないかと思っております。

 最後におっしゃられました、そうしたガイドライン、指針の策定をどういったメンバーで行うべきなのかという点についてでありますが、幸いにして、この改正法において、産業構造審議会で議論をするということでありますので、何も特段のことがなければ、特許制度小委員会だとか、この場には私ども労働者、働く者の代表も入れさせていただいておりますので、そうした多様な立場のメンバーで議論できるような場が必要だと思っておりますし、また、場合によっては、小委員会のヒアリングにおいて、委員以外の立場から、働く者、それ以外、いろいろな代表の方からヒアリングを受ける、そうしたことも有益ではないかと思います。

 以上です。

中根(康)委員 時間が来ておりますが、済みません、もう一問だけお願いいたします。

 川島参考人、先ほど来、改正法案成立後の事後の調査、検証が極めて重要だという御発言がありますが、これは具体的にはどのような調査、検証が行われるべきだと、何かイメージというか、お考えがありましたら、お聞かせいただければと思います。

川島参考人 詳細についてまでは、私ども内部での議論というようなものは尽くされておりませんが、一つは実態がどうなったのかということです。

 例えば大量調査、大量観察を行うのであれば、企業向けのアンケート調査、あるいは研究に従事している従業者に対する調査もありますし、また、客観的に、制度改正前、制度改正後において、特許の出願の件数がふえたのか減ったのかですとか、あるいは、それに伴う紛争、訴訟が減ったのかふえたのか、そういったような、幾つかやり方はあると思います。

 ただ、改正後すぐというよりは、やはりある程度期間を置いた中で、定期的にそういった調査、検証をしていくということも重要だと思っております。

中根(康)委員 アインゼル参考人には、御意見を承る機会がありませんで、申しわけありませんでした。

 四名の参考人の皆様方、本当にきょうはありがとうございました。終わります。

江田委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 参考人の皆様、本日はありがとうございます。

 まず、キヤノンの長澤参考人にお聞きいたします。

 私は、衆議院調査局から資料として事前にいただきました「知財管理」六十四号の座談会の記事を読ませていただきました。一台のカメラで大体一万件以上の特許が今関係している、そういう中で、キヤノンには一万人の発明者の方がいて、そして、御社の二〇一四年の出願登録件数はナンバーワンの四千五百九十七件、本当に社員の皆さんが頑張っておられるんだなというのを思いました。

 社員発明家が一万人、そして年間の出願登録件数が約四千六百件ということで、そういう中でも、先ほど来御苦労をおっしゃっていますけれども、非常にいろいろな大きな不公平感が発生して、そのバランス、調整に長澤さんが担当者として御苦労されているということがよくわかりました。組織が大きいゆえの御苦労だと思うんですけれども。

 二つお聞きしたいんですけれども、一つは、昨年八月二十六日の日経新聞の記事で、参考人は、キヤノンでは、特許出願や訴訟などの知財関連コストの約一%を発明対価などに充てている、意欲をそがないためにも、法人帰属になっても原資を減らすつもりはないとおっしゃっています。

 御社としては、法人帰属になって、発明対価に充てていた原資を減らせば、約一万人の社員発明家の方の意欲をそいでしまうというふうに判断されているということでしょうか。

 それともう一つは、特許庁の二〇一三年のアンケートで、原始法人帰属となった場合、報奨金原資を現行よりも減額すると答えた企業が全体の二七%を占めるという結果が出ています。これは、私は決して少なくない数だと思うんですね。他社の判断はよくわからないと思うんですけれども、やはりこのアンケート結果のように、それぐらいの企業さんが報奨金原資を現行よりも減額するというふうに思われるでしょうか。これは個人的な見通しで結構ですので、お答えください。

長澤参考人 最初の御質問からお答えさせていただきます。

 おっしゃるとおりで、やはり競争社会ですので、よい技術者を我々のところに置かなければいけない、発明を生み出す人を置かなければいけない。今、キヤノンは日本で一番登録件数が多くなりました。アメリカでもかなりの件数を登録しています。それは、我々がネットワークにつながるビジネスをやっていて、先生がおっしゃったように、一万件以上の特許が関係しているからです。スマホなんかだと十万件と言われています。その中で、やはり優秀な発明者を数多く置きたいので、そこのインセンティブをそぐということは我々はできません。我々がしなければ、我々のライバル会社もできないでしょう。

 それはあると思うんですが、もう一つ理由があるのは、やはりこれまで表彰してきたものからいきなり減額すると、これもまた要らぬ不公平感を生じます。ですので、二七%の会社が減額をするということは、正直言って余り理解できないですが、もし理解できるとすれば、これまで相当高く払われていたんじゃないかなという気がします。横並びで見たときに、大体こういう相場ですねというのは何となく産業界はわかっていますので、それに対して自分たちは相当高く払っていたなという会社があれば、減額ということも考えるかもしれません。

 ただ、ここからは自由競争の原理が必ず働きますので、そこの中で、イノベーションを起こすためにどういう発明者をキープするか、考えをめぐらせて、原資は減らさないですけれども、例えば配分を変えるとかピークのものを高くするとか低くするとかというのは、これから考えようと思っています。

真島委員 ありがとうございました。

 次に、連合の川島参考人にお聞きします。

 五月十八日の日経新聞で記事が出ていたんですが、その中で川島さんは、「二〇〇五年施行の現行法は社員と会社の双方に発明のインセンティブを与えていた。特に問題はなかったのに、法改正ありきという産業界の意向で議論が始まった」という思いを語っておられました。

 私も率直に言って同じような思いがしたわけなんですけれども、それだけに、特許小委員会の中で連合の土井さんの方から、現場の労働者の立場で、インセンティブをどう確保するかという観点で非常に大事な御意見を出していただいたというふうに思っております。

 参考人は、十八日のその日経新聞で、国会審議では、改正案の「相当の利益」は現行法の「相当の対価」と同等の権利であることをぜひ確認していただきたいと、きょう議論になっておりますけれども、おっしゃっております。

 現在我が国で出願されている特許の九七%が企業から出願されている、大企業の皆さんは九九%が職務発明規程等を制定しているという中で、今回の法改正で実質的に大きく変わるのは、労働者の方から見れば、大企業に働いている労働者の皆さんが、発明者としての特許を受ける権利を唐突になくしてしまうというのが大きく変わってしまうところですね。我が国の発明のインセンティブに、一歩間違えば大きな負の影響が及ぶんじゃないかということもちょっと心配をしております。

 二十七日の当委員会の審議の中で、特許庁の方が、改正案での「相当の利益」というのは現行法の「相当の対価」と同等の権利なんだということを繰り返しおっしゃったわけなんですけれども、私は、今までの審議を聞いている限り、どうやってそれを担保するのかというのがまだはっきりしていないと思うんですね。

 そこで、参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどキヤノンの長澤参考人は、社員の意欲をそがないために、法人帰属になっても発明対価に充てていた原資は減らさないんだとおっしゃいました。こういう企業ばかりだったらいいんですけれども、今後、やはりそれを企業がかなり自主的に決めていくという側面が強くなると思うんですね。そうなりますと、同等の権利として保障されるということを担保していくために、先ほど来何度も答えておられますけれども、私は手続の面だけでそれは可能なのかなと。

 あるいは、先ほどアインゼル参考人にも御紹介いただきましたけれども、ドイツのような対価の算出基準のある程度のルールづけとか、そういう方向も考えていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、そういう点で御意見を再度伺いたいと思います。

川島参考人 ありがとうございました。

 相当の利益の算定について、ルールづけが必要なのではないのかという御質問でありました。

 ルールづけをする場合としない場合、やはり一長一短があると思いまして、現行法、改正法においても、ここは企業の当事者、従業者と使用者に任せたらどうかというのが趣旨だというように承知をしております。

 私どもも、職務発明に限らず、労使交渉を行う場合に、労働組合も、いろいろな意見、ある施策に賛成、反対、どちらでもないと。しかし、議論を通じて、集団として、労働組合全体としてどう意見をまとめていくのか。やはり、こうしたメカニズムというのは、集団としての意思統一といいますか、合意形成に非常に重要な仕組みだと思っております。

 そうした意味で、この三十五条の四項にあります、当事者、従業者と使用者とが協議を尽くす。ぜひ、この法改正において、それを今まで以上に充実したものにしていく。私どもは、現時点では、そちらの方が有益ではないかというように考えております。

真島委員 ありがとうございました。

 次に、三鷹光器の中村参考人にお聞きします。

 特許制度小委員会での社長の発言なども拝見いたしました。本当に、日本のものづくりを支えている、まさに中小企業魂に物すごく感動しました。

 特許法改正の議論の中で、ともすれば、何万人も社員がいらっしゃる大きな企業の皆さんからは、一人の社員の発明が特許を受ける権利を得てしまうと、グループ内の不公平感とかチームワークが大きな問題になってしまうとか、相当の対価をめぐって訴訟リスクが恐ろしいとか、あるいは、社員が会社に不満を持って、自分の技術を他社に売り飛ばしてしまうといういわゆる二重譲渡が心配だとかいう声がしきりに聞こえてきたわけなんです。

 しかし、社長さんのお話を拝見していますと、そういう職務発明をめぐる紛争をなくしていくには、つまるところ、企業経営者と研究者の間の信頼関係をいかに構築して維持していくのかに尽きるのではないか、私はこう思うんですね。

 そういう点で、きょう、いろいろ御紹介いただきましたけれども、社長さんがおっしゃっていた、誰であろうが一つ屋根の下で働いたらみんなで出願する環境、社員の皆さんの発明のモチベーションを高めるために、きょう、もういっぱい話されましたけれども、言い足りないことがありましたら、ひとつ御紹介いただきたいんです。

 もう一つは、先ほども御紹介しましたけれども、特許庁の二〇一三年のアンケート、原始法人帰属になった場合、報奨金原資を現行よりも減額すると答えた企業は二七%もあったという点についてなんです。

 もちろんそうだと思いますけれども、社長さんも、キヤノンの長澤さんと同じように、意欲をそがないために、法人帰属になってもきちっと原資を確保する、モチベーションを高めていくために頑張るというふうにお考えなのかどうか、ちょっとお聞かせください。

中村参考人 繰り返しになるかもしれませんけれども、法改正したら下げるなんというのは、それはちょっとおかしいなと私は思います。

 それと、ちょっと質問とずれるかもしれませんが、先ほどのモチベーションを上げるということなんですけれども、社員の方は、ルールというのは全然わかりません。ガイドラインもどうなるかわかりません。

 ただ、私も、いろいろな協力会社と仕事をしていて、立場立場で全然内容が違いますので、これを自分が言うのもどうかと思いますけれども、ガイドラインも、東名高速があったり中央高速があったり町の道があったり、私のところはものづくりですから、そういった一つのラインが引けるかもしれませんが、例えば薬屋さんみたいなところは、何万件も出すところと、薬屋さん、相当大きな事業をやっているんですが、年で数件しか出さない、そういうのを聞きますと、余り一方的なことを言ってもいけないかなとは思います。このガイドラインをつくるのは、各企業でちょっとルールをつくってくださいというのが、まずは私はそれは正直だと思います。ぜひ、その方向でやってほしいなと思います。

 そういった報奨の中で私が一つやりたいなと思っているのは、これから、女性が、いろいろ、どんどんアイデアを出してくれ、事務であろうが経理であろうが出してほしい、そんなふうに言っているところでもあります。

 なぜそんなことを言っているかといったら、精密光学器械の小さな部品です、あなたが考えたアイデアは自宅でつくってほしい、そして、一カ月なり、何セットだけ納めてください、そうしたら何十万円を私が払いましょうと。そういった産業が、私もドイツやスイスへ行きましたら、そうやって一体になってやっている。そういった姿を見て、また、やはり技術継承、たたいてからこうやるといいんだという、そういったノウハウは余り出してはいけませんけれども、従業員のやる気を上げる。育児になって飛ばされちゃうのかな、そういうことはありませんよ、だから、あなたもアイデアを考えなさいよと。そういうふうにして、いろいろな上げ方、社員の恩返しというのはいろいろやり方はあると思います。

 以上です。

真島委員 ありがとうございました。

 最後に、アインゼル参考人に二つお聞きします。

 一つは、欧州や日本の知財の動きをつぶさに見てこられているわけなんですけれども、日本では、二〇〇五年に施行された現行の特許法の職務発明制度というのがあります。もう十年たちました。

 特許庁は、十年の間ずっと運用状況を調査して検証しているとおっしゃったんですが、その検証結果はいまだに発表されていないんですね。それで、この二〇〇五年にスタートした現行の職務発明制度についてどのように評価されているか。そして、特に二〇〇五年の現行法施行後、相当の対価をめぐる訴訟の事例が、十年でわずか三件という状況になっているんですね。これがどういうふうに現行法との関係で関連していると見られているのかというのが一つ。

 それからもう一つは、ドイツの職務発明制度は、日本の現行制度と同様に、職務発明に係る権利を従業者に原始的に帰属させるという制度を採用しています。

 悪名高いナチス・ドイツの時代にできたとおっしゃいましたけれども、日本では、実は今の原始発明者帰属になったのは大正時代で、九十四年前、大正デモクラシーという民主的な機運が盛り上がる中でできる。それぞれ違ったスタートをして、ずっと日本は九十四年間の間にいろいろな改定を重ねてきたわけなんですけれども、ドイツでは、従業者への報奨金の算出基準について、法的拘束力はないけれども、先ほど事実上の拘束力があるとおっしゃったガイドライン、詳細なガイドラインをつくっておられると。そのことによって、紛争の抑止や予見可能性が非常に高くなっているというふうにおっしゃいました。

 日本のガイドラインは、先ほど来議論になっているように、いわゆる手続の指針なんですね。紛争の場合、焦点となるのは対価だとか報奨の部分だと思うんですよ。手続というのは、川島参考人などがおっしゃったように、使用者と労働者の間で自主的に、納得する基準になっているかどうかという部分だと思うんです。

 そういう点で、今後、よく言われる無用な紛争を減らす、そういう納得、合意も含めてつくっていくというのを促進していくことを考えた場合、どういう方向がいいのか。ドイツと日本と、日本の場合は今度法人帰属になるから、ちょっと変わってしまう面もあるんですけれども、その点、今度の法改正を含めてどのように今後の方向を見ておられるか、お願いします。

アインゼル参考人 これについていろいろなことを言ってしまうと、僕は本当に日本にいられなくなる可能性があるので、ちょっと問題かなと思うんですけれども、僕としては、まず、根本的な違和感として、特許法の中にああいう三十五条という規定を設けるのはいかがなものかというそもそも論があるんですね。それは何でかというと、あれは労働法の領域の法律だと僕は思うので、そういう意味では、それがちょっと一つ疑問点としてある。

 今回の法律については、言葉は悪いですけれども、やや玉虫色的な解決というような感じがするんですね。僕らはずっと、日本の弁理士会の勉強をしたときもそうですけれども、特許を受ける権利というのは発明者に帰属するんだ、実体的権利は発明者に帰属するんだというふうにずっと教わってきて、その原則をそこで崩すというのは非常に大きな変革なんです。

 ただ、その一方で、ちょっと僕ももう一回ドイツの法律を見てみたんですけれども、特許とか実用新案ではないんですけれども、意匠法の中に、これは当事者で法人の原始帰属もありだよという規定がどういうわけか残っているというのがあって、必ずしもこれもやはりナンセンスということではないのかな。ただ、原理原則論から考えると、要するに法律というものを若干わかりにくくしているかなと。

 あと、二〇〇五年の法改正についてどのように考えているか。その後、裁判が三つしかなかったということに関しては、そういう意味では、それをうまく運用できていたんだろう、結果論ですけれども、そういうふうなことが僕は言えるんじゃないのかなというふうに思います。ただ、さっきも申し上げましたように、僕の意見としては、手続的なガイドラインだけじゃなくて、実体的なガイドラインというのは絶対必要だろう。

 ただ、ドイツで今問題になっているのは、実体的なガイドラインというのは本当に産業の分野ごとにやっているんです、例えば化学だとか機械だとか。そういうことをいろいろやっているわけなんですけれども、ガイドラインというのは、やはり時代とともに変化するものなんですよ。だから、そのガイドラインを絶えず合わせていく作業というものを当然やっていかなきゃいけない。

 ということは、要するに、社会の変化、企業が変わっていくに従って、そういうものをどんどん合わせていく作業というのは今後やっていかなきゃいけないんだろうなというふうに考えております。

 以上です。

真島委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。いろいろな角度からの御意見、大変勉強になりました。

 以上で終わります。

江田委員長 次に、野間健君。

野間委員 無所属の野間健と申します。

 きょうは、四名の参考人の皆様、本当にお忙しい中、貴重な御意見また御示唆をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、長澤参考人にお聞きしたいと思うんです。

 参考人の記事を読ませていただいて、平成十六年の規程の改定のとき、キヤノンさんに一万名の発明者の方がいて、ずっとその規程の改定について説明会をされて、そのうち、ほとんどの方が納得をしてくれたけれども、百人ぐらい納得されない方が出てきた。また、さらに三回、四回説明されて、七十人、四十人、最後は十名のみ納得されない方が出てきたということですから、一万人からしたら〇・一%、九九・九%の方が納得されたということなんです。

 この特許権、帰属の問題というのも非常に文化的な側面もあると思うんですが、この一万名の方々というのは、外国人も含まれているということなんでしょうか、ほとんど日本の方ということなんでしょうか。

 そしてまた、ということであれば、キヤノンさんもグローバル企業ですから、いろいろ海外でも、先ほど国内回帰されているとはいっても、世界じゅうで研究開発、いろいろなことをされていると思いますけれども、そういった外国人の持つ、インセンティブとかそういうことについての気持ち、価値観と、国内の和をもってたっとし、先ほど話がありましたけれども、かなりそういうギャップはあると思うんですが、その辺、グローバル企業としてどういうふうな対処をされているのか、お聞きしたいと思うんです。

長澤参考人 最初の質問の方ですが、手続面のガイドラインをつくって納得感を出そうという今回の案というのは、実は私も賛成です。

 と申しますのは、先ほどの、あのときは我々、発明報奨規程を変えまして、報奨金額を一・五倍にふやしたときです。ふやしたにもかかわらず、納得されない方がいらっしゃった。十倍にすべきだとか百倍にすべきだとかという方がいらっしゃるわけです。

 その方々が百人ぐらいになったときには、まだこういう場所で説明会を開いて、意見の交換をして、やはり二十人ぐらいの方というのはそもそも応じる気が全くなかったと思います。八回やってもだめ、十回やってもだめ。では、弁護士さん、これはどうしたらいいんですかというと、割とコンサバな答えが返ってくるんですね。二十人というのはそれなりの数ですねとか、そういうふうに言われると、ずっと続けなきゃいけないのかと。

 逆に、ガイドラインで手続面がある程度規定されれば、今回はこのガイドラインに沿ってやらせていただいていますというふうな回答ができるのかなという面で、我々大企業にとってもメリットがあるのではないかというふうに思いました。

 あと、海外の方々ですけれども、キヤノンの発明者の九五%ぐらいは国内ですが、海外にも拠点がございまして、海外の発明者が日本に来たりもします。日本に来て発明した場合は、日本法に従っていただきますので、対価をお支払いしています。

 ただ、アメリカもしくはヨーロッパで同じような活動をしている方が全然報われないというのも、ちょっとこれはまずいので、参議院の定員制ではないですが、平均額をとって、大体三倍以内ぐらいであれば一応合法であろうということで、それぐらいの額。

 例えばヨーロッパとかアメリカの場合は、貢献があった人に対する支払いが少し高かったり、全くないというのを契約で取り交わしたり、給与に反映させるという会社があったり、ばらばらなものですから、一応、キヤノングループ内では大体これぐらいだねという基準をつくりまして、一件当たりの平均額がウン万ウン千円、そうしたら、それぞれの会社で自分で発明報奨規程をつくってもいいけれども、上限を三倍にしてくれ、それ以上やったら不公平感が出るよというふうな指導をしています。

 ですので、例えば、こちらで働いていた人がアメリカに出向に行った場合でも、向こうに行って発明しても同じような額が大体もらえるんだなという納得感を得るようにしています。それは、実は、アメリカ人、ヨーロッパ人は若干違和感があるらしいんですが、いや、これは同じグループ会社だから一緒でいこうぜということで、今のところは納得していただいています。

野間委員 ありがとうございました。

 続いて、川島参考人にお聞きしたいと思うんです。

 先ほどからお話が出ていますように、今回、相当の利益についてガイドライン、指針をつくるということなんです。今もお話がありましたけれども、手続面が主であって、こういう言い方をしたらあれなんですけれども、この手続をこうこう踏んでいけば、一応やりましたということになりやしないか。使用者、従業者の力関係からいっても、手続は踏まれたけれども、ちょっと不満感が残る、不平感が残るということもあるでしょうし、正直、なかなか、苦情を言ったりなんかすると、会社の中で出世できないとか昇進できないとかというのも現実的にはあるんじゃないかと思うんです。

 今も議論がありましたけれども、ガイドライン、当然、労働者側も入って産業構造審議会の中で議論されるわけですけれども、繰り返しになると思いますけれども、従業者側の利益の確保に配慮した審議が行われるべきだと思いますので、もう一回、ちょっとその辺の所見を伺いたいと思います。

川島参考人 ありがとうございました。

 まず、ガイドラインの話から少々外れるかもしれませんが、結局、従業者が納得できるような規程を設けることができないということは、これはすなわち、企業にとって、最終的には裁判で争うかといったような訴訟のリスクが高まるということを、一般的な話としてこの種の法改正の際には皆さんが理解をする、そのための広報を行うということが重要なのではないかと思います。

 したがいまして、話は戻りますが、手続をしっかりやる、あるいは、不満があった場合には、社長に直訴するというよりは、職場のある管理職のところに気軽に相談しに行くだとか、何で自分はこういった扱いなのかといった説明を受けることができる窓口をつくるですとか、あるいは苦情処理に係るルールを設けるだとか。

 企業のアンケート調査では、そうした規定というのはまだ六割、異議申し立て制度というものが職務発明に係る規程の中に盛り込まれたものは六割しかないということもありますので、まずはできるところからというところからいたしますと、今申し上げました、規程をつくった後の対応についてガイドラインの中で示す必要があるのではないかと思っております。

 あとは、話は戻りますが、規程をつくる際に、実は私ども労働組合だけでは不十分なんですね。研究者には管理職もいますし、役員ももちろん入ってくるわけですので、一般従業員、組合員、あるいは管理職も含めたところでどうやって合意形成をしていくのか。ここはやはり、知恵を出しながらそれをガイドラインに落としていくということも重要ではないかと思っております。

野間委員 ありがとうございました。

 それでは、続いて、中村参考人にお聞きしたいと思います。

 先ほどお聞きしていますと、南極のオゾンホールの発明の測定器ということになるんでしょうか、またブラックホールですとか、またスペースシャトルですか、ロケットとかそういったものにもいろいろな部品を供給されています。海外で非常に高い評価を受けていらっしゃると思います。

 そうした場合、やはり海外にも当然特許の申請を随分されると思うんですが、大企業と違って、なかなか、手続とか言語の問題とかお金の問題とか、相当な御苦労があるんじゃないかと思うんですけれども、そのあたりをちょっとお聞かせいただければと思います。

中村参考人 おっしゃるとおりでありまして、ほとんど紛争は海外です。そこで勝つためにはどうしたらいいかということになります。

 当然、世界特許を出していますけれども、彼たちは待ち構えて、この特許を、いずれ出たところで潰す、そういうことをやってきます。そういうことで、ライカとパートナーを組んでいますけれども、競合は、三鷹を潰してしまえばライカも潰れる、こういう戦略で、我が国の特許の審査が済むのをじっと待っております。そこでの戦いですから、しかも外国に行っての戦いですから、中小がそこでどうやって勝つか、そういうことになります。

 そういった意味で、海外展開するときに、私は、海外に自分たちの意思がよくわかる代理人を最初から選びます。自分が行って会います。やはり人柄が非常に問題でありまして、いろいろな法律をよく私わかりませんが、かみつくような勢いで来られると、ちょっと私困ります。

 そういった意味では、絵で描いて、法律の言葉は非常にわかりづらいので、敵は何を私に言っているんだ、私はそれに対して何を答えればいいのか。また、国によっても風土が違いますので、その国その国で得意な、そういったようなところでやっておりますけれども、大体特許の半分以上は皆海外で戦うための準備で、相当お金も使います。それも何でできるかといったら、その利益の中で特許が動いているからということなんですね。

 ですから、先ほどちょっと、そういった制度をつくったら下げるという意味は、上げ過ぎていたのかもしれませんけれども、私は、あなたの特許は海外展開するのにどうのこうのというときに、法人帰属になったということは、社員が海外までやるということは大変なことです。それを私が受けるから、ヒントだけでいいから、紙一枚で、ポンチ絵でいいから出しなさい、あとは私の部長が一生懸命やるからと。

 そして、その内容を見たら、おい、ちょっと待てよ、これは海外展開にすごくいけそうだぞ、そうなります。そうなったら、どんどんそういったことを出して、そしてその報酬として、おまえの考えたのが外国でこれだけ評価があるぞ、そういうところに行かせるのも、メダルをもらうよりは、これはもうこんなだった、そんなふうに浮き浮きになるような、そういった体制でやっていきたい。

 何でかというと、中小企業は経営者と社員が身近な距離なんですよ。そういった特許化するに当たって、ぐるぐる回るにはちょっと緩衝材がありますけれども、社長が目の前にいるわけですから、おまえのその考え、おまえが権利を持っているのか、そういったことですぐ変なふうになってしまいますので、むしろ言いやすい環境になってきたということなので、ここを何とか使って、日本の中小企業の力の活性化をばっとやっていけば、私はいい方向に行くんじゃないか、そう信じております。

野間委員 ありがとうございます。

 やはり今、政府の知財戦略も、本当にそういう中小企業の皆さんが海外で活躍できる何か助けをできるようにしていかなきゃならないというのを改めて感じた次第であります。

 続きまして、アインゼル参考人にお聞きしたいと思うんです。

 先ほどの御提言の中でも、もちろん今、中国、東南アジア、あるいはこれからアフリカとか、世界に、グローバルに日本の企業も展開しているわけですけれども、そういった海外での日本企業の出願活動も活発化しているけれども、それを担う日本の特許事務所とか、そういったところがないというか、余り存在しないということだと思うんです。

 アインゼルさんの事務所はもう日本で百年以上ずっとそういう橋渡し役をされてきているわけですけれども、ちょっと私も不勉強であれなんですけれども、日本にそういった特許実務ができる人材とか事務所というのは育っていないということなんでしょうか。

 そしてまた、法律事務所、会計事務所はかなりいろいろな世界的な提携をしていますけれども、海外では、特許、法律も含めてでしょうけれども、そういう特化した総合的なファームというか、そういうのがあって、そういったところと日本の特許事務所との連携とか提携というのは余り行われていないというのが現状というふうに考えていいんでしょうか。

アインゼル参考人 今回の法改正でも国際的調和というキーワードが結構出てくると思うんですけれども、法律というのはどんどん国際的に調和させているんですけれども、だからといって、法律が国際的な調和を図ったところで実務までがそこに追いつくかというと、これはまだ非常に大きな隔たりがあるんですね。

 ですから、簡単な例を申し上げますと、例えば明細書、特許明細書と我々呼ぶんですけれども、権利行使をするための書面なんですけれども、それでさえも、つくり方というのは国によって全然違うわけです。

 そうすると、要するに我々が日本で明細書をつくるときに、これはこの後どこに出されるんだと。例えばアメリカに出されるんだったら、アメリカ的に書きかえたような形で最初から出さなきゃいけない。それを国際的に通用するような明細書にするためには、やはりそれぞれの国にちゃんとしたパートナーというものが、パートナー事務所というものが必要になってくるんですね。

 そうすると、まずはやはり、基本的には日本で明細書というのを日本企業さんというのは書かれるわけですから、ドラフティングするわけですから、その段階で海外をどれだけ意識した形、要するに情報勝負なんですよ。

 ASEAN諸国なんかでも、ここはこういう明細書じゃないと権利行使ができないとか、あるいはドイツと日本なんか、もっとすごいなと僕は思うのがあって、例えば機械系の用語。要するに、一対一で我々翻訳するわけですよね。だけれども、例えばドイツで存在している技術用語で日本語で存在しないものなんて腐るほどあるんです。それをどうするんですかという話なんです。そうすると、技術用語を自分で発案するしかないんですよ。そうやって発案して出すと、不明確だといって、拒絶理由が当然来るわけですよね。

 でも、そういうものを含めて、やはりグローバルに日本の弁理士が出ていって、それで、グローバルな、連携した形で同じ事務所が世界規模のファームというのを特許事務所でつくって、一つの日本の産業をそれぞれサポートしていくという体制をつくるのが、僕は将来的には一番いいんじゃないのかなというふうに考えています。

野間委員 ありがとうございます。

 もう一問、アインゼル参考人にお聞きしたいんですけれども、今回の法改正では、シンガポール条約あるいはPLTに日本が加入しようという、その準備の法案も入っているわけですけれども、企業にとったら、本当は日本で出せば世界じゅうばっと広がるようになるのが一番いいわけですけれども、そういう潮流に世界は行っているのか。これは文化的な摩擦の問題もあると思いますので、かなり時間はかかると思いますけれども、どうなんでしょうか、各国そういう条約を結びながら行っているのか。ただ、この条約も中国とか東南アジアとかはほとんど入っていないので、意味があるのかなという気もするんですが、欧米あるいは先進諸国は、そういう方向に行っているということなんでしょうか。

アインゼル参考人 一般論としては、世界特許というキーワードがいろいろなところで出てきているわけなんですけれども、これは十九世紀にさかのぼりますけれども、要するに、パリ条約というものができて、優先権をそれぞれの国で主張できるようになって、PCTができた。

 今回、欧州なんかでは、欧州単一特許といいまして、今EUは二十八カ国ですよね、初めて二十八カ国全体で一つの特許権というものが付与される。これが要するに、一つの地域、国をまたがる地域に一つの特許が付与されたという恐らく非常に珍しい事例なんだと思うんです。

 それと同じような考え方を、今後、日本がどこと交渉しながらそういう世界特許というものをつくっていくのか。さっきも言ったように、明細書一つ違うわけです。

 そうすると、パリ条約というのは、さっき言ったように優先権、PCTというのは、要するに入り口だけを一緒にして、そのあとは各国で国内で移行していく。

 日本というのは、英語で明細書をつくって、それで権利のあるものというふうに日本で言ったら、これはやはり、日本は公用語が日本語であるわけで、そんなことは絶対あり得ないわけです。そういうふうに考えたときに、翻訳文は絶対出させるということになるんですけれども、要するに、翻訳文は権利を持っていて、それに基づいて裁判所で権利行使するわけですよね。

 だから、そこら辺で、それぞれの国の法律、実務、言語がやはり本当の意味で統一されない限りは、最終的には世界特許というのは、これは僕は難しいんじゃないのかなというふうに考えています。

野間委員 大変勉強になりました。ありがとうございました。

 終わります。

江田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十分開議

江田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官森健良君、経済産業省通商政策局長鈴木英夫君、経済産業省製造産業局長黒田篤郎君、特許庁長官伊藤仁君及び特許庁総務部長堂ノ上武夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神山洋介君。

神山(洋)委員 神山洋介でございます。

 午前中の参考人質疑に引き続きまして質疑をさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私は、きのうから久しぶりに体調不良に陥りまして、若干お聞き苦しい点があるかもしれませんが、御容赦をいただければと思います。

 今回、特許法に関しての議論ということで、先般の質疑ときょう午前中の参考人質疑という形で、この午後に至っているわけです。

 実は、特許という話をすると、私は幼心に思い浮かべる光景があります。

 私の父親も、会社勤めをする、今回でいう従業者としての研究者、技術屋さんでありました。小学生のときだったと思うんですが、父親の書斎の辺に、本棚にちょっときれいな紙がかかっていまして、横文字で書いてあったので、それが何だかよくわからなかったので、これは何という話をしたら、これが特許というものなんだというふうに見せられたことを、実は今回の質疑も含めて思い起こしたところです。そのときに、たしか母親が横から口を出してきて、実際これをもらっても大してお金なんかもらえないのよという話をしていたことも、今回のここまでの議論に至る経緯も含めて、印象深いなというふうに思っているところです。

 これは一つの引き合いかもしれませんが、エジソンのような大発明家というところと、一方で、私の卑近な例でいえば、父親が会社の従業員として研究をして、それによって特許を得たというところでは、その受けとめ方とか評価のされ方というのもやはり違いがあるんだろうなということは感じているところでございます。

 そのころのことを思い起こすと、そのころの父親との話の中で、今は有名になりました中村教授の話がよく出てきました。青色ダイオードの話、LEDの話です。当時、仕事で恐らくそういうおつき合いをしていたんだと思うわけですが、それから何年かしてそれが開発をされて、今回、何度か質疑の中でも例として引き合いにされているわけですが、二百億円とかいう訴訟の話があって、いかに処遇をされるべきか、評価されるべきかという話にも至って、実は現行法の、平成十六年の改正に至るところというのは、そんな流れの中から改正をされて今に至るものであるというふうに承知をしているわけです。

 大分質疑も押し迫ってまいりましたので、改めてということではありますが、今回改正をされるわけですが、現行法そのものの、十年ちょっと施行されてきたわけですが、どう総括をされているのか。その効果が一体どうだったのかということについての総括を、まず大臣からいただければと思います。

宮沢国務大臣 神山委員のお父様というのは、私よりまだわずかに上ぐらいの世代かなと思いながら伺っておりましたけれども、恐らく団塊の世代前後のお生まれで、まさに企業戦士として日本を支えてきてくださった、そういう世代の方。そういう世代の技術者が今の日本をつくってくれたということで、私自身、大変感謝をしております。

 まず、平成十六年改正前の状況からお話ししますと、まさに中村教授の件でありますけれども、青色発光ダイオードの訴訟ということで、一審で二百億云々というような話があり、最終的に、和解金を含めて、損害遅延金を含めて八億円で和解ということですし、また、日亜化学だけではなくて、日立製作所とか味の素とか、億を超えるような訴訟がたくさん行われておりました。

 まさに、職務発明の対価の額について予見可能性が低いという指摘があったため、平成十六年改正で、企業が対価の取り決めに基づいて発明者たる従業者に対価を支払う場合、従業者との協議や意見聴取など、取り決めが当事者間の適正な手続を経て策定及び運用されるよう、規定を新設したところであります。

 その結果と申しますか、平成十六年以降、職務発明の対価をめぐる訴訟は今まで四件と少なくなってきておりますし、また、一億円を超えるような高額判決は確認されておりません。

 そうした意味で、職務発明の対価の額について予見可能性が一定程度高まったものと認識しておりますが、一方で、十六年以降の特許につきましてでございますので、今後、四件にとどまるかどうか、またさらに出てくるかというのは予断を持ってはいけないところだろうというふうに思っておりますが、やはり一定の成果があったものと思っております。

 一方、今回の改正につきまして、やはりその後十年間において、グローバル化、また水平でいろいろ協議をするというような状況の変化がたくさん出てきておりまして、また、一つの製品をつくるのに使う特許の数というのも圧倒的に多くなっているというようなことから、本改正法案の審議をお願いしている、こういう状況でございます。

神山(洋)委員 今、大臣からもお話がありましたし、実は次のところももう前もって御答弁をいただいてしまったようなところがありますが、お話があったように、この間、四件という具体的な数字がありましたけれども、四件というものを多く捉えるべきなのか、少なく捉えるべきなのかというのはいろいろな議論はあろうかと思いますが、少なくとも、平成十六年の改正の基本的な動機であった、法的な予見可能性を高めたいのだということに関しては、これは私は一定の効果があったという理解をしていいんじゃないかと思うわけです。

 今、例として引き合いに出されました日亜化学の訴訟の件が、それはいろいろな評価はあるのかもしれませんが、できればそういう訴訟は、従業者の側からしても経営者の側からしてもそうだと思うんですが、ないにこしたことはないわけであって、そういったことを減らしていきたい、減らすために、では、どうできるかというそもそもの法目的は、私はかなり効果があったとすることができるんだと思うわけです。

 その上で、もう一回、これは確認までなんですが、では、今回の法改正に至る理由は何だというときに、今お話があったように、例えば、それはグローバル化ということがあったりとか、状況の変化があったというお話もありました。もう一つ、例えば、平成十六年改正によって予見可能性を上げようとしたんだけれども結局上がりませんでした、それを今回改めましょうというんだったら、これはすっとわかるんですが、その効果は比較的すっと認められてきた、認められていいと思うわけです。

 だとすると、きょうの午前中の参考人質疑でもそんな議論が一部ありましたけれども、今回の法改正そのものに私は別に反対をするつもりもないんですけれども、ただ、では、何でここであえてこれを出してきたのかなという素朴な疑問は残るわけです。

 確認も兼ねてではありますが、今回の法改正の目的をもう一度御答弁いただければと思います。

宮沢国務大臣 先ほどの答弁と少し重なる部分がありますけれども、まさにこの十年でグローバル化がさらにさらに進展した、またオープンイノベーションというような形が進展してきたということを背景に、知財戦略といったものがやはり企業にとって大変大事になってきているというような中で、先ほど申し上げましたように、一つの製品をめぐっても、特許の数というものが格段に大きくなっているというような背景がありまして、産業界からも要望があった、そういうことを受けての法改正であることは事実であります。ただ、産業界及び労働界の代表、また学識経験者などから成る審議会において、制度改正を検討していただきました。

 こういう中で、今回、まさに契約等があれば、企業が特許権を最初から有する、こういうことができるようにするということで、特許の二重取得等々に対する対抗を考えなくてもいいというようなことで、企業からすると、円滑かつ確実に特許が取得できるようになる。一方で、従業者の立場からしますと、法律によってガイドラインを策定するということで、従業者との協議や意見聴取などのあり方について明確化することで、ある意味では、従業者であり研究員の納得感といったものがそのプロセスの中で形成されるというような状況が出てきて、まさに企業側にとっても従業者側にとってもそれなりの透明性である。

 企業からいえば、円滑かつ確実に特許を持つ環境が生まれるとともに、従業員側からすれば、そういうプロセスを通じて、納得感のいく、まさに相当な利益といったものを予見できる、こういうことになるのかと思っております。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 今、大臣からのお話がありました、ここまでも何度か議論になっていますが、二重譲渡の問題は今回の法改正の中で解消されるであろうというお話、これは確かに大事なことなんだろうと思います。やはり、我が国の技術、知財をいかに守って、そして我が国が、知財立国であり、イノベーションをさらに高めていくかという観点は極めて大事だと思いますので、そういう観点では、この効果というのは今回よかったんだろうなというふうに思うわけです。

 ただ、例えば二重譲渡の問題を考えると、そもそも、我が国が固有の権利として行使をし得る、しなければならない、もしくは我が国の企業がということかもしれませんが、そういう中で二重譲渡を回避するのだということは、恐らくこれは、私の感覚からすれば、特許法というよりは、例えば不正競争防止法であるとか、別の枠組みで規制をされるべきなんじゃないかなということも思うわけです。

 今回の特許法の中にそれを入れ込んだ何か合理的な理由があるのかないのか、ここは一点確認で、事務方で結構なんですが、お答えいただければと思います。

宮沢国務大臣 もちろん、そういう二重譲渡をするようなことについてはきっちり取り締まっていかなければいけないということで不正競争防止法等々といったものがありますし、契約をこう結ぶといったようなものもあるんだろうと思いますが、そういうことがあっても、本当は違法であるとか悪意のある申請であったとしても、一旦、第三者から特許の申請があった場合には、まさに先願主義のもとでそこに特許が認められるということになった場合、不正競争防止法などで、それをやった本人に対してペナルティーはかかるかもしれませんが、特許自体は法律的に成立してしまう、こういう問題があります。

 特許法でこれを書くことによって、特許は成立しないということになりますので、法的な安定性といった意味では特許法に書いておかなければいけない、こういう問題でございます。

神山(洋)委員 ありがとうございます。よくわかりました。

 そういう意味で、今回の法改正の中でもう累次、何度も議論になっている話が、やはりガイドラインの話なんだろうと思うわけです。

 確かに、大正の時代から特許の権利はそもそも従業者が有するのであるという基調をここで根本的に変えるという意味では非常に大きな意味があると思いますし、ここまでさまざま議論があった中で、それぞれの、発明者、開発者、研究者、従業者のモチベーションをやはり下げてはいけないという意味では、このガイドラインのありようというのは、ここで改めて確認をするまでもありませんが、やはりすごく大事なところなんだろうと思うわけです。

 これは、先ほど自分の家庭の例を引き合いに出しましたが、言葉は交わしませんけれども、話を聞いていても、例えば、では、特許を取ったから会社に評価されて百億円欲しいと思っていたかといったら、多分そうじゃないんだろうなというのは見てとれるわけです。

 一方で、ちょうどそのとき、たしか一万円ぐらいしかもらえないんだと言っていましたけれども、一万円じゃなかなかなと思っていたのも、多分そうなんだと思うんです。

 でも、それ以外に、研究設備とか施設とか、環境を整えるとか、今回もいろいろな議論がありましたけれども、そういったことというのはすごく大事なんだろうなと思っているわけです。

 やはり、ガイドラインがどうできるかというのは、最終的には、これは会社の中で従業者と経営者の側で握っていくということになるかと思うんですが、そのガイドラインがそれぞれの会社の中の規程にどの程度きちんと拘束力を持ち得るか。法的拘束力とは言えないのはわかっていますけれども、どの程度きちっと波及するとお考えか。この点について御答弁をいただければと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 効果と、それがどういった拘束力を持っているかというお尋ねかと思います。

 このガイドラインの性質に鑑みまして、企業と従業員との間で適正な手続に基づいてインセンティブを決めるといったような形になりますので、職務発明に関する紛争といったようなものが、かなりの程度未然に防止されるという効果があるかと思っております。

 それから、これが仮に紛争として訴訟にまで発展した場合でも、裁判所での不合理性の判断といったようなところにおいて、ガイドラインにおいて定められた手続をきちっと適正に運用しているか、踏まえているかといったようなことが重要な判断要素になるというふうに考えておりまして、そういったような意味で、効果があるものだというふうに考えておるところでございます。

神山(洋)委員 今のお話であれば、いざ仮に裁判になったときでも裁判上の規範ともなるということは合理的に類推をされるがゆえに、拘束力がある、そういう論理の仕立てだろうと思います。

 やはり、ここはすごく個々の利益という意味でも大事だと思いますし、今回の法改正でありこういった分野の議論は、我が国であり我が国の企業でありがいかに技術力を高めて、それがきちっと保護をされて、そこに対してしかるべき正当な利益なり収益が上がっていって、最終的に公のための利益に尽くすのだという、そこに結実をしなきゃいけないと思っていますので、今お話しいただいたことも含めて、この効果、拘束力というところはぜひこれからもウオッチをしていただければなというふうに思います。

 今のガイドラインの中身の話を一点だけお伺いさせていただきたいわけです。

 ガイドラインの内容としては、今までの例も含めて、例えば協議の状況、開示の状況、意見の聴取状況という話は挙げられていますが、そういったところにあとは何を加えてより緻密な精緻なガイドラインにしていこうというおつもりか、この点について御答弁をいただければと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 今委員がおっしゃられました三つの点について、そもそもその手続のあり方を具体的に記載する、明示するということがまず想定されるわけでございますけれども、それらの項目以外にも、例えば、今回の改正によりまして金銭以外の経済上の相当の利益といったようなものが対象になるわけでございますが、こういったものは具体的にどういったものであるかといった事例、あるいは、こういった適正な手続に従った場合の先ほど申し上げました効果といったようなものについても、このガイドラインの中で記載するべきものだというふうに考えておるところでございます。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 その事例というところも含めて、ここでは御答弁を求めませんが、ここまでもるる議論があったように、ガイドラインの中身を詰めていくに当たっては、やはりいろいろなお立場からの考え方があろうかと思いますので、その点は、ある意味でのバランスには配慮をいただきながら作業を進めていただきたいということは、この場で御要望させていただきたいと思います。

 少し細かい点になるんですが、法が施行された後、もちろん労使で合意をしていくわけだろうと思うわけです。そこがすっと合意されれば別段問題はなくて、新法下の新しい規程に基づいて社内での権利についてのやりとりが、評価がなされていくわけですが、仮に、新しいガイドラインのもとでの労使でのこの辺の合意がなかなかうまくいかないという会社があった場合に、最終的にはどういう形になっちゃうかなと。

 今までであれば、従業者が特許を持っていたわけですから、それで訴訟になっちゃったりするかもしれません。ただ、今後でいうと、原則としては、これは従業者の原則から逆になったわけですから、こういう状況の中で、万が一その合意がなされなかった場合にどういう形で取り扱われるかという点、細かいですが、これを一点だけ確認させてください。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 二段階あると思っております。

 まず、企業がガイドラインに沿った職務発明規程をまだ整備できていないといった段階におきましても、当該企業が、契約とか勤務規則その他の定めで、職務発明に係る特許権はあらかじめ企業に帰属するということを定めているのであれば、その企業に帰属するということになります。ただし、この場合においても、三十五条四項の規定によって、従業員が相当の利益を受ける権利というものは有するという形になります。

 他方で、ガイドラインが整備されていないといった企業において、従業者との間の協議とか意見聴取の手続を経ていないという状態になりますので、従業者に与えられるべき相当の利益というものが、その手続を踏まえていないということによって、司法によって不合理と認められる可能性はあるということになります。

 したがって、企業が相当の利益をめぐる紛争を未然に防ぐというためにも、ガイドラインに沿った職務発明規程をできるだけ早期に整備することが必要だと思っているところでございまして、この改正案が成立、施行された場合には、ガイドラインに沿った職務規程の整備ができるだけ円滑に進展するように、情報提供とか支援といったようなことをしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 今のガイドラインの話でいえば、やはりこれからいろいろなことが起きるんだと思うんです。先ほど申し上げましたように、大正の時代からずっと従業者が有するのであるというふうに来た原則をごろっと変える。もちろん、今回はいろいろな調整の中で、そういった問題が起こり得ることを排除してきたという話ではあるわけですが、やはりいろいろな話というのは起こり得るんだろうと思います。

 その意味で、ここまで何度か議論になりましたけれども、今後の効果をどう測定するか、どうやって今回の法施行後の調査を、リサーチをしていくのかということはすごく大事だと思うわけです。

 前回の質疑のときの、これは長官のだったか、御答弁の中でもお話があったと思うんですが、アンケートなんかをそれぞれの企業等にとって、いろいろな調査をしますというお話がありました。もちろん、アンケートをとることも当然大事でありましょうけれども、ただ、恐らくアンケートだけとって終わりじゃないんだろうなというふうに思うわけです。

 問題は、今回の法改正をどういう指標によって評価しようとしているのか、そこだと思うわけです。平成十六年改正と同様に、訴訟の件数でやろうとするのか、もっと言えば、これは理想に過ぎるかもしれませんが、今回の法改正によって職務発明がさらにエンカレッジされて、もっといい企業研究が生じましたということになるのか。こういうのはいろいろな指標があり得るんだと思いますが、具体的にどういう指標でここを検証していこうとされているのか、この点を教えていただければと思います。

関大臣政務官 ガイドラインの策定によりまして、今回はインセンティブを法定化したわけでございますけれども、そのときには十二分に企業側と従業者が話をされてということが前提となっておりますので、そういうふうな満足度のところをいろいろ、項目を定めて、効果の測定、調査、また検証をやらないといけないと思いますけれども、やはりそのときの基本となりますのはガイドラインでございます。

 ガイドラインに沿った形での職務発明規程が整備されるのに、法律が施行されてから一定期間かかると思いますので、適切なタイミングで、以前に法律改正がありましたとき、約二千社ぐらい調査をして、大体半分ぐらい回答率があったんですが、そこからしますと、今回も千五百社前後ぐらいをめどにして、従業員の満足度、そういうふうな、いわゆるガイドラインに沿った形でのアンケート調査を行いたいと思います。

神山(洋)委員 ありがとうございます。そこはいろいろな細かい作業も含めて必要だと思いますし、ぜひ丁寧な検証を行っていただきますようにお願い申し上げます。

 繰り返しになりますが、この法改正が、もちろん、先ほど大臣からの御答弁で、産業界からの御要望もあったというお話もありますし、実務上のそういった負担感が減るということも大事だとは思いますが、最終目標は、やはり我が国のこういった分野が、知財の分野がさらに大きく伸びていくことを後押しするということであるべきであろうと思っております。しつこいようですが、ぜひこの点をよろしくお願いします。

 その観点から、もう一回、これは大臣に集約として御答弁をいただければと思っているんですが、今回の法案が、産業界であり、先ほどの知財分野の方々のいろいろな意味での実務的な負荷がなかなか多いというお話もいただいて、それは避けなきゃいけないというのはもちろんわかるわけです。

 ただ、やはりもうワンプッシュ、従業者のモチベーションがいかに上がるか、職務発明の環境そのものがどうやったらもっと向上するか、その結果として、どうやったら我が国のこうした職務発明そのものがさらに向上していくのかという、この後押しをする部分というのはもっとあっていいのかなというふうにも思いますし、今回の法案、ほかも含めてでもいいんですけれども、どの程度そういった環境に資するとお考えか。また、ほかの部分でそれをプッシュしようと思うのであれば、その部分も加えて御答弁をいただければと思います。

宮沢国務大臣 今回の改正につきましては、発明の奨励を目的といたしまして、従業員に対する発明のインセンティブを決定する手続に関するガイドラインを法定するということにしておりまして、まさに、それを通じて企業及び発明者の双方の納得感を高め、予見可能性を向上させる、こういうことを目的としているものであります。

 一方で、十六年に改正をいたしまして、今回また大きな改正をする、やはり、改正をするということは、恐らく企業にとっても、また研究者にとっても、もう一度この職務発明というものを見直す契機になって、もちろんこの法律の解釈についてコンメンタール等々も今後売り出されるでしょうし、そういう大きな契機になるんだろうというふうに思っております。

 そして、やはり職務発明及び職務発明に対する相当の利益といったものについて予見可能性があるということは大変大事でありまして、もちろん、相当の利益につきましては、民民で、当事者間で当然決めていただかなければいけないわけでありますけれども、それこそ中村さんのような一人の天才が発明者となった場合とか、十人の努力家が発明者になった場合とか、いろいろなケースがあるんだろうと思うんです。

 そして、その相当の利益について、もちろんこれは企業の秘密に属する部分もあるかと思いますけれども、ある程度のモデルケースみたいなものをいろいろな企業、研究者が手に入れて、それでもってその会社のまさに相当な利益を決める参考にするといったようなことも我々は今後やっていかなければいけないんだろう。

 そういうことによりまして、まさに発明者のインセンティブといったものを与えていくことを御支援していくということも我々はしっかり今後やっていかなければいけないことだろうというふうに思っております。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 今、大臣の御答弁の中にもありましたが、やはり、一つよかった、よかったと後から評価をされるであろうという意味でよかったですが、みんなが評価をされやすくなった、チームとして評価をされやすくなるという意味においては、私はプラスアルファの部分というのはあると思うんですね。

 例えば、エジソンであれ、それは中村さんの件はどうだったか、私もよくわかりませんが、突出した一人の発明が評価をされる場合と、あとは、これは特に会社の中等でだと思いますけれども、チームでいろいろな役割分担をしながら一つの研究成果に結びついた場合と、これはやはり評価のされ方というのは当然違ってしかるべきだろうと思いますし、だからこそ、それを一般化してガイドラインに落とし切ることは非常に難しいということもよくわかっています。

 その意味で、今回、余り実質的には変わりないのだという議論が数度ありましたが、現行法で言う「相当の対価」と新法で言う「相当の利益」という言葉があります。要は、ここで私が伺いたいのは、これは実質的に同等という意味でいいですよねという、これは確認ではありますが、そういう理解でよろしいですね。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 改正法案の三十五条四項で、現行の特許法三十五条三項の「相当の対価」という言葉を、金銭以外のインセンティブも含めた「相当の利益」という形に改めまして、従業者がその給付を受ける権利を有するというふうに法文上明記しております。

 したがいまして、従業者が受けることができる相当の利益は、現行法上の相当の対価と実質的に同等であるというふうに考えております。

神山(洋)委員 ありがとうございます。そこが確認をできればいいと思います。

 その上でなんですが、これは実は、先日の質疑で維新の落合議員がこれを出されたのをちょっと見て、はあと思ったんです。

 今回の新法で、相当の金銭その他の経済上の利益ということで、金銭以外にも当然これは広げるんだ、私は、それはそれでいいと思います。

 ただ、この前も取り上げられていましたが、アンケートがあって、アンケートの中で、企業の側からすると、職務発明に対するインセンティブの筆頭に来ているのは、社長表彰とかそういう話が来ているわけですよ。

 一方で、これは当然ですけれども、従業員の側からすると、職務発明に対する非金銭的な報奨、賞状や盾等というのはもう断トツに低くて、重要と言っている人は、ほかが八割、九割いるのに、二割ぐらいしかいなくて、重要でないと言っている人が約半数ということで、これは非常に開きが大きいと思うんです。

 これは恐らく、きょうお集まりの委員の方々から個人的に考えても、盾なんか欲しいと思っちゃいないよというのは、これは誰もがそう思うことでありながら、しかし、こういう調査で堂々とこの数字の乖離が出てくるというのは、半分笑い話のようではありますが、でも、これは結構深刻な問題だと思うわけです。要は、経営側と従業者側との意識のギャップ、乖離、これを埋めていくということは極めて大事だと私は思っていますし、そのことができて初めて、予見可能性を高めていくというそもそもの目的が達成されると思うわけです。

 こういった部分を、もちろんこれは経営判断の部分が大きいと思いますが、そこをサポートする意味でも、この大きなギャップをどう埋めていこうとされているか、この点について最後に御答弁をいただければと思います。

伊藤政府参考人 そのギャップということでございますけれども、この法律でも、相当の利益といったものについては経済上の利益ということに限っておりますので、経済上の利益と言えない、例えば単なる表彰ということはこの法律上の相当の利益というものには該当しないというふうに考えております。そういったような意味で、研究者の利益というものは、経済上の利益というものは保護されるというふうに考えております。

 他方で、活発な職務発明を行う意味で企業と研究者が協力していろいろなインセンティブを高めるという工夫は、法律が求めている経済上の利益以外にもさまざまな工夫があるとは思っておりまして、相対的に従業員の中で評価されることなども非常に大きなインセンティブになるとは思っております。

 したがって、そういった、この法律で求めている以外の部分の工夫というものはさらに推進されるべきものだというふうに考えているところでございます。

神山(洋)委員 ありがとうございます。以上で終わります。

江田委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 篠原でございます。

 二度目の質問をさせていただきたいと思います。

 資料もお配りしてあります。一番最後に私の意見をとっぷり言わせていただきます。質問を早くしろというやじが飛ばないように、質問を先にさせていただきたいと思います。

 まず、いろいろ勉強させていただきました。相当にわか勉強ですけれども、にわか勉強も、しないよりはましじゃないかと思っております。

 それで、特許を出願して得ようとする人たちの立場に立った場合なんですが、特許法は結構改正してきているんですが、最初のころのを見ると、昔、一九八七年、九三年、出願料とか特許料とかいろいろなものを引き上げられているんですね。その後、九八年から下げ始め、二〇〇八年に下げ、二〇一一年と三回引き下げられている。下げていただくのは、出願したりする人たちからは非常にいいことなんですが、余りちょろちょろ変わるのはよくないというふうな気がするんです。

 真面目に対応しているあらわれといえばあらわれかもしれません。この法律案関係資料の後ろの方の参照条文のところにあるんですけれども、見たら、法律にみんな幾ら幾らと、「毎年二千三百円に一請求項につき二百円を加えた額」と細かく書いてあるんですね。非常に真面目な法律だと私は思います。

 今とまってしまっている安保特委の方は、どういったところが戦闘地域じゃないとかいうときに、状況が変わるからそんなことは法律に書けないと言っているのと比べて、こっちの法律をよく見習って均衡をとったらいいんじゃないかと思うぐらい、書いている。

 だけれども、こちらの経済情勢が変わるので、こんなに細かく規定しなくたっていいんじゃないかと思うんです。経産省の皆さんもおわかりだろうと思いますが、こういうのは政省令に委任しておいて、よほどよくなかったら、検討委員会の意見を聞いて、これでいいですなとやっていけばいいのに、一々法律改正でやるというのはいかがなものかと思うんです。

 一番の理由は、私は、ここは真面目だと思うんです。ほかの特別会計なんというのは、赤字のものばかりですね。

 私なんか、農林水産省で三十年やって、林野会計なんか赤字赤字で、怒られてばかりです。あんなもので採算が合うようにするというのがそもそも間違いなんですね。こうやってちゃんと収入が入るのと、山を守ってやっていて、みんな自由化しているから、山の木は二束三文でしか売れないわけです。誰も手入れできなくなっちゃっている。そんなので収入が得られるはずがないんです。

 というのと比べたら、予測可能性、予測可能性と、午前中の参考人質疑でもキヤノンの長澤さんはおっしゃっていました。予測可能性、予測できるんです。できているから、収入がふえるとわかっているのに、やはりため込もう、ため込もうという卑しい気持ちがあるのかもしれません。これは国のためにはいいんでしょうけれども、もうちょっと柔軟にやった方がいいような気がするんです。

 こういうところはどのようにお考えになったんでしょうか。発明者主義の根幹を変えたりするのは、大法律改正でやっていかなくちゃいけない、ちゃんと議論してやらなくちゃいけない。こういう事務的、技術的なのは、一々法律改正でやる必要はないと思うんです。普通はお役人はそういうことをやっているはずなんです。これは何でこういうふうに丁寧にやっているんでしょうか。ちょっと考え直したら、今回は間に合わないですけれども、この次はもっとうまくやられたらいいんじゃないかという私のアドバイスです。

山際副大臣 少し細かくなりますが、産業財産権制度に係る行政経費について、これは利用者から納付される料金を財源としており、特許特別会計において、受益と負担の関係を明確にしつつ、収支相償の原則のもとで財政運営を行っている事実がございます。

 その中で、出願料及び審査請求料、これは実費を伴う特定の行政サービスの対価としての手数料であることから、法律において、実費を勘案しつつ上限のみを決めてありまして、発明奨励などの観点から、政令においてこれを下回る額を定めてございます。

 一方、これに対しまして、特許料、これは特許権という排他的かつ独占的な特別の権利設定に対して納付すべき料金という性格を有するものでありまして、このような性格の料金については、その設定に際し、法律により定めるべきものとの考え方から、これまで特許料が法定されてきたものと認識してございます。

 以上のような料金体系の考え方につきまして、現時点におきまして変更すべき特段の事情は認められないというふうに考えておりまして、今般の料金改定においても、具体額について、これまで同様、法定とすることとしてまいります。

篠原(孝)委員 それでしたら、これも中小企業者は、特許料、出願料とか、やはりお金がかかり過ぎる。

 国際比較を見たら、そんなに高くないんですね。中国なんかの方が、出願料で見たら高い。物価水準とか何か比べたりしたら、中国はあんな高いのに、よくあれだけ出願数が伸びているなというふうな気がするんです。日本は下がってしまっているんですよね。

 だから、そういうことを考えたりしたら、特許は大事だ、知財大国になっていくんだということを考えたら、どんどん出願してもらって、その一つに、特許料を安くし、審査料を安くして、登録料も安くしていくというのが私はあるんじゃないかと思います。ぜひこれは検討していただきたいと思います。

 一昨日の質問で、出願数が下がったりしているのは問題じゃないかということを指摘いたしました。だから、ありとあらゆる努力をして、どんどん出願して、どんどん特許を取って、しかし、企業の戦略として、オープン・クローズ戦略でクローズというのを、僕は余りこれはよくないような気がしますけれども、せっかくいい発明というか、いいことができたんだったりしたら、一刻も早くみんなに知らしめて、全部がその恩恵をこうむるようにしていった方がいい。ある程度のRアンドD、研究開発費の回収とこの次の投資のためのお金を得たら、もう開放していく、そういう姿勢が僕は企業の経営者にも必要なんじゃないかと思います。

 二番目の質問ですけれども、この前の二〇〇四年改正時の附帯決議の三項に、職務発明規定の整備を促進するために事例集をつくってやっていくと書いてあるんですが、それから十数年たっているんですけれども、中小企業のは伸びていない。

 それから、その当時も、これはアンケート調査で、厳密に調査しているんじゃなくて、わからないんだろうと思いますけれども、質問の中でもみんな引用していた、八〇%しかつくっていない、二〇%はつくっていない。特許が何だかもわからないでいる中小企業もある。それはもったいないわけですよね。

 それから大学も、先生方がいるくせに結構だらしなくて、何%なんですか。大学は中小企業よりもっと少ないんですね、つくっている率が。格調高い勉強ばかりして、こういうところがおろそかになるんですね。よくないことだと思います。

 それで、トラブルは起きていないんですけれども、経産省は中小企業のために何か努力してこられたんでしょうか。事例集とかいうのはちゃんとつくったのか。十年前の数字があるんだったら教えてください。きのうはわからなかったんです。例えば、十年前、中小企業の六〇%しかつくっていなかったのに、経産省が一生懸命やったので今八〇%になったのか、前から七七、八%だったのに、今、まだもって八〇%程度なのか、その点はどうなんでしょうか。

関大臣政務官 そのパーセンテージを上げるのは、本当に取り組んでいかないといけないという認識を十分持っているところなんですが、今の御質問におきまして、二〇〇四年の特許法改正のときの附帯決議に沿いまして、二〇〇四年の九月、同年九月に、立法趣旨を明確にするとともに、関係者がこういうふうな事例を参考にできるようにということで、新職務発明制度における手続事例集というのを作成して、公表を行ってまいりました。

 また、しっかりと広く改正内容が浸透するように、二〇〇四年度には全国三十八カ所で新職務発明制度説明会を開催して、七千三百七十三人と多数の方が参加してくださいました。このような説明会は、毎年開催をいたしておるところでございます。

 二〇〇五年から二〇一〇年にかけましては、全国の各地で合計百四十回以上の新職務発明制度相談会を開催させていただきました。そして、企業からの相談に対して弁護士が直接対応できる機会を設けたほか、知財総合支援窓口で年間三百件以上の相談支援を行ってきているところでございます。

 しかしながら、他方、今委員がおっしゃったような感じで、東京商工会議所の調査によりますと、中小企業におきましては、この規程を独自でつくっているのはまだまだ二〇%ぐらいしかできていないのも、これは重要な課題として認識をいたしております。

 今回の法改正におきまして、こういうふうな中小企業に対しましては、また全国規模での説明会を開催しまして、この規程の中小企業の経営に与える重要性をしっかりと啓発してまいりたいと思いますとともに、全国五十七カ所の知財総合支援窓口というのがございますから、そこを通じまして普及、支援をもっともっとやっていかないとと今考えておりまして、実施をしてまいりたいと思います。

篠原(孝)委員 僕は、現実問題として、そんなに数字に一喜一憂する必要は本当はないと思っております。

 なぜかというと、午前中の参考人の方の質疑の中にもありました。中小企業なんだろうと思います。数百人、数十人とかいうところだったら、一致団結して、社長も従業員も、きょうも午前中の方で、パートの人、アルバイトの人、アイデアがあったら、紙なんか書かなくたっていいから何でも言ってくれといって、一丸となって工夫してやっていくということ、そういうのでいいんだろうと私は思います。

 いやいや、日本は発明者主義だったけれども、例えば、中国とか、韓国とか、アメリカも発明者主義だけれども、ほかの国はいっぱい法人帰属になっているよと言われます。だけれども、国の体質があると思いますよ。

 中国人や韓国人、こういうことを余り言うといけないかもしれませんけれども、一般的に言って、あちらの方が自己主張はずっと激しいですよね。ああいう国では法人帰属にしておかないと困るところがあると思いますけれども、日本人は逆で、みんなのため、会社のためといって抑えたりするということの方が先に立つような国民ですよ。そうやってやってきた。

 私は宮沢大臣と同じころアメリカに留学させていただいていますけれども、向こうで言われたときの話をしますと、中国人と日本人と韓国人、顔を見ても全然わからない、違いないと言われるんですよ。だけれども、みんな知っていまして、日本人は、一人一人見ると個性はそんなになくて、みんな抑えている、韓国人や中国人の方が、個人個人だけ見ると優秀だ、だけれども、まとまると日本人の方が力を発揮してしまう、だからいいんだと。日本の企業がどんどん出て、高度経済成長の真っただ中のころに行っていますから、そういうふうに見られていて、団結力の勝利だと。

 そういうのが発明の分野なんかにも出ていて、私は、実態は、一人云々じゃなくて、みんながやって、一人の研究者、天才もいると思いますよ、だけれども、その一人じゃなくて、みんなが助けているからできているんだろうと思います。そういう点では、一人だけを優遇するというのはよくない、不平等感が漂うので、みんなを一緒に表彰するグループ表彰とか、ああいうのがあるというのは、へえ、やはり日本の企業は大したものだな、法律なんかできたりする前に、もう実地でうまくやっているなというふうに感心いたします。

 それで、資料をちょっと見ていただきたいんですが、一ページ目のところ。

 ちょうどおととい、質問した日にこの新聞が出ていたんですよ。いろいろ問題がありました理研の新理事長松本さんです。京都大学の前学長です。個人的にもいろいろ話したりして、そこそこ知っておるんです。

 この中に、研究者任期の延長示唆と。線を引っ張ったところを見てください。三千人の理研のような立派な研究所、立派だから、理研にいた研究者だからといって引き取られるからいいのかもしれませんけれども、九割が五年程度の任期制で採用されていると。研究者の実態はそうだと思うんですよ。大学も厳しくなってきて、五年契約が多いんですね、助教授とか准教授とかそういうのって。

 僕は、会社は違うと思います、日立に入ったら日立、東芝なら東芝、三菱なら三菱でずっとやっている人が大半だと思いますけれども、そうでもない。自分の研究分野を、この企業は例えばテレビのことをやっていたのにテレビの製造をやめるといったら、やっていられないから、ほかの企業に移っていきますよ、多分。自分の研究分野をやりたいと思う。

 そういうふうになってきているときに、前回も申し上げましたけれども、労働者も流動化していく、研究者はもっと、一足先に。労働者派遣法でもそうですけれども、特殊な技術を持っている人たちはいいんだと言っている。労働者派遣法の対象にもともとなっていますよ。いつもタイピストと通訳というものをやりますけれども、私は、研究者も労働者というふうに例えるなら、そうだと思います。企業統合もあります。そして、あっちの企業に行かせて、いや、そんなのだったらいい、こっちだとかいって、移る。

 それから、最も大事なのは、後でまた触れますけれども、アメリカとのTPPですよ。知財の問題で同一化していて、農産物の関税なんかでは大もめにもめ切って、もめた方がいいと思っているんです、もめて日本に頑張ってほしいと思っているんですけれども。TPPの中で対立しています、ほかの国とは。だけれども、この分野は、私が聞いている限りでは、日米が相当手を握って、同じ主張をしているはずなんです、相変わらずの秘密主義で、わかりませんけれども。オープン・クローズ戦略だったら超クローズ戦略でやっておるので、さっぱりわからないんです、余りよくないと思うんですけれども。

 それで、その新聞記事の下ですけれども、見ていただくと、大学も結構特許件数が多いんですね。

 それで、こういったものから考えると、やはり僕は発明者主義の方が時代に合っていると思うんですが、どうしてこの時期にわざわざ法人帰属というものにするのか。

 アメリカも発明者主義です。そうはいったって、あっちは契約、契約でやっている、契約でうまくいっているんだからというんだったら、日本もアメリカに倣ってそうすればいいじゃないですか。発明者主義にしておいて、契約や職務発明規程でもって縛ってやっていった方がいいのに、何で、だから、一周おくれ、二周おくれというのを、二周おくれたりしたら、その一番先頭のところで早く追いついた方がいいと思う。何か、また同じ段階をこう来て、もう一周、三周おくれるのを、今度二周で、そしてもう一周でいい。僕は、三周おくれだったら、いきなり追いついてもいいと。発明者主義のままやって、そして契約や職務発明規程でもってうまくやっていくという方がいいような気がするんです。

 僕は、そういう点ではこの改正は、大反対はしませんけれども、やはり間違っている。精神は発明者主義にしておいて、そして、企業もそんな、二百億円とか三百億円とか四百億円、毎度言われたんじゃたまらぬですよ。そんなことはないようにしておけばいいのであって、法律の根本を変えるんじゃなくて、運用でやっていく。

 この方が賢いような気がするんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。大臣が大臣に就任される前に検討されていたので、大臣の責任じゃないので、虚心坦懐、好きに言ってください。

宮沢国務大臣 今質問を承りながら、極めて論理的に質問をされる篠原委員にしては少し論理がぐるぐる回っていたなと実は思っておりました。

 日本は団結心が強く、そして会社人間が多い、アメリカとは違うんだ、こういうお話から始まったので、だからアメリカと違う制度にすべき、こういうところにつながるかと思っておりましたら、今度はアメリカと同じ制度、こういうことでございまして、どう答えるかなと実は思っておりました。

 まさに日本の特質からすれば、会社に帰属意識が強いということを考えれば、職務発明規程等があれば、会社に帰属するというのを割合すんなり受け入れやすい素地というものはあるんだろうというふうに思っております。そして、今のお話にもありましたけれども、一人がする発明というのは恐らくかなり数が限られておりまして、大半の発明、特許というものは相当な人数の方がかかわっているということを考えますと、今回の改正のような、会社に最初から帰属するということがあって、私は日本にとっていいんだろうというふうに思っております。

 また、労働が流動化しているというような話もございまして、これは、せっかく特許を取ったのに、会社をやめたら利益が来なくなる可能性が高い、こんなことにつながるのかなと思って伺っておりました。

 当然のことながら、会社にいる間にそういうものをお払いするという決め方もあろうかと思いますし、また、会社をやめてもお払いするという相当の対価の決め方というのもあろうと思っておりまして、やはりそれぞれの企業の風土に合った決め方をぜひしていただければいいんだろうというふうに思います。

篠原(孝)委員 私は余り論理的だとは思っていませんので、御心配なく。

 だけれども、日本はもともと、法人とか企業とか、みんなで仲よくやっていこうというのが前面に出過ぎたりするから、ほっておいたってそうなっていくんだから、個人を重視するような形に法律ぐらいはしておいても、実際の運用はみんなでやっていくようにというふうになっていくんじゃないですか。だから、わざわざこのときに直す必要はないんじゃないかなというので申し上げているんです。

 アメリカは、契約社会で何でもやっていって、それでうまくいっているんだろうと思います、契約概念が先に行っているので。企業の方はちゃんとわかっているから、相当な対価が法外な対価、そんなふうにならないように歯どめがかかっていて、うまくいっているんだろうと思います。

 だから、アメリカは外国人、これはそういうのじゃないと思いますが、僕はもう一つ気になって、これはどういうのかわからないけれども、いただいた資料の中で数字を見たら、特許、外国人の登録しているのはどのくらいかなと、日、米、EU、中国、韓国。そうしたら、日本が外国人の登録が一九%で一番少ないんですね。その次は韓国で、EUは、インターナショナライズしていますから当然ですけれども、EUは五〇%で多くて、アメリカは五二%で、意外に中国も三一%も外国人が登録しているというのを、お配りしてありませんけれども、僕が調べた数字の中では。

 そういうことをしていたら、やはり問題というのは、職務発明規程や就業規則やそういうのでそこをきちんとやっていく。よく、日本は行政裁量で、通達でもってやっていると言われていました。だけれども、そんなことをしないで、みんな法廷でやっていけというのがアメリカスタイルです。法律でぎちぎちやっていく。法律と真逆のことをしちゃいけないけれども、相当裁量権を役所なりあるいは企業に与えてやっていくという仕組み、これはこれで非常にいいことじゃないかなと思っているんです。

 同僚委員の中根委員が一番最初に質問されたときに、これはよくよく考えたら、契約とか職務規則でもってやっていけばいいので、わざわざ大改正をしなくたって済むんじゃないですか、立法事実がないんだしと言っておられましたけれども、僕は、それはなかなか的を得たものじゃないかと思います。

 だから、お願いですけれども、法人帰属にしたからといったって、法人に絶対帰属するんだ、帰属するんだというふうにじゃなくて、みんなでやったんだから法人に帰属するようにしている、それが中心だけれども、やはり、法律はそう変わったけれども、そうはいったって研究者にということで、職務発明規程の方で従業者や発明者を相当救うような形にしていけばいいと思うんです。当然、そういうふうにガイドラインのところで考えておられるんだろうと思いますけれども、法律では法人帰属というのを明確に打ち出した、だけれども、今、発明者も相当インセンティブを与えなくちゃいけないので、きちんとやっていく。

 これは、会社と個人というか発明者と考えれば、ちょっとわからないかもしれません。こういうふうに頭を切りかえて考えていただきたいんです。大企業と三鷹のような中小企業、あるいはまたキヤノンという大会社と小さな中小企業と一緒に共同開発した特許があったとした場合、我々一般の心情として、どっちの特許にしておくべきだと思われますか。カメラ一台に千、一万の特許がある、だけれども、重要な部分が小さな中小企業の部分だったら、ほとんどの人たちは、その中小企業のところにいっぱい利益が行くようにすべきだと思われるんじゃないでしょうか。そういうふうに考えていただければいいんです。

 そういう形にぜひしていただきたいというのが私のお願いです。いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 契約や規則で帰属や報酬を決めれば、こういう話であります。

 これは先ほど神山委員にもお話ししたことでございますけれども、契約や規則でその旨決めてあったとしても、その契約や規則を守ればいいわけですけれども、守らない場合というものも当然考えられて、その場合に、まさに二重の権利といったもの、要するに、ほかの会社が契約や規則に違反した行為によって特許権を得る、そして先願主義で審査して特許を得る、こういうことが起こり得るわけであります。もちろん、契約違反等々といった問題は別途あるわけでありますけれども、一旦別会社が特許を得た場合には、実は、実際に職務発明を行った企業には特許権を取り戻すすべがないというのが現行法であります。

 今回の改正によりまして、そういう場合でも、まさに本来の職務発明の権利を持つ企業に職務発明規則等々があれば特許権が最初から帰属するということで、法的安定性といった意味でこういう規定を設けている、こういう面もございます。

篠原(孝)委員 時間がなくなってきているんですけれども、TPPのことを聞きたかったんですが、では、これは内閣委員会のところでやりますけれども、一つだけちょっと申し上げておきます。

 首席交渉官会合、うまくいかなかったですね。一番どこがもめているかというと、知財です。どこでもめているかというと、医薬品の開発したデータ保護期間を何年にするか。これもわかりませんが、アメリカは十二年、日本は八年、ほかの全部の国が五年といって、もめているんです。非常に大問題なところなんですね。

 だから、それだけ私は大事なんだろうと思いまして、ここのところをきちんと考えてやっていただきたいので、これをやりたかったんですけれども、時間を勘違いしていて、時間が足りなくなっちゃったので、これは私の警告というか、三枚ペーパーを用意してありますので、ちょっとだけ時間を下さい。お願いします。

 二ページ、三ページ、四ページを見てください。

 午前中も、中小企業の中村さん、顕微鏡をやっていた人、医療の関係をやり出したと。僕は、今後の成長産業の一つとして医療、医療機器とか医薬品があると思います。

 これは、四つの業界で研究費と国内総生産と輸出というのをちょっとやってみたんです。研究費を分母にして、一億円の研究費が一体どれだけの生産を生み出して、どれだけの輸出を生み出して、どれだけの技術輸出を生み出し、どれだけの登録案件に結びついているかという数字を出したんです。

 医薬品、だめですね。三千六百億しか輸出していないんです。農林水産物ですら、過大な目標だと思いますけれども、一兆円輸出産業にしようというので、去年、五千億円を突破して六千億、七千億になんなんとする。それを、医薬品に限っていますけれども、三千六百億しか輸出していないんです。

 どうしてか。その次の三ページ。これは、WIPOのところの統計で、ちょっとこうやってみました。

 欧州とアメリカは、医療機器がこれだけ多いんです。そして、医薬関係、これが完璧な医薬関係かどうかわかりません、結構多いんです。欧州が一番。意外と中国も割合が多い。それが、日本と韓国が、オールドファッションドスタイルなんて言っちゃ悪いんですけれども、コンピューターとか光学機器とか半導体とか。これが大事じゃないとは言いません。医薬品の方に向いていないんです。こういうところに問題がある。

 それで、次のページを見てください。

 これは、身につまされる思いがするんです。千人当たりの臨床医師。ギリシャは、経営危機で国ががたがたしていますが、見てください、医者が多いんです。4一人当たりの医薬品支出も多いんです。医薬品支出の対GDP比のところも。医者にかかり過ぎているからああいうふうになっているのかは知りません。

 それで、アメリカが医薬品や何かで相当日本にいろいろ要求をしているんです、TPPでも。根本はどこにあるかというと、3のところを見てください。アメリカは、GDP比の総保健医療支出が一七・七%。日本は半分ぽっちなんです。アメリカは、日本はいずれアメリカと同じようになる、もっと医療費に金を使えと。その金を使うときに何に使えと言っているかというと、アメリカの高い医薬品を使えと言っている。我々団塊の世代は、働いて、退職しています。体にがたがき始めておる。

 それで、8世界大手製薬企業上位十社。びっくら仰天です。アメリカが上位十社のうちに五社入っています。日本はというと、下を見てください、注のところ。武田十二位、アステラス十七位です。このていたらくです。

 私のお願いです。大臣、ぜひ、日本株式会社、やはり医療関係、医療機器、医薬品のところを経産省がてこ入れして、特許から始めて、日本のリーディング産業にしていただきたいんです。大臣、これは本当に、忘れているところじゃないかと思うんです。昔とったきねづかですよ。こういうことをやっていたんです、日本は。だけれども、今はそういうのをやらないで、はい、民間に任せといてといってやっているからいけないのであって、こうやっていただきたいという気がするんですが、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 医療機器含めて医薬品の産業というものは、本当に委員おっしゃるとおり、我が国にとって大変大事な産業であります。

 今、表を拝見しておりまして、輸出のところがかなり落ちているという数字でしたけれども、たしか、しばらく前はかなり大きくて、ちょうど日本の医薬品の大きな商品の特許が切れてしまったのがおととし、去年ぐらいにあって、がくんと落ちているというのが今の状況だったと思います。

 したがって、これから新たな、まさに世界に売れる商品、医薬品の開発ということは大変大事でございまして、そういうこともあって、日本医療研究開発機構というのがことしからスタートしたわけであります。

 日本版NIHと言って、少し怒られたりしておりましたけれども、そういうことに力を入れるのは大変大事なことでありますし、正直、医薬品自体ということになりますと厚労省がメーンの所管になりますけれども、経産省も決してはたから見ていていいという話ではなくて、私自身も医薬品産業の勉強をつい最近も省内でいたしましたし、しっかり応援をして、次の商品を早く育てて、二、三年前に特許切れになった部分を補うような輸出産業に育てていきたいと思っております。

篠原(孝)委員 どうも、超過して、ありがとうございました。

江田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 維新の党、木下智彦でございます。きょうもお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 いつも結構質問が粗いというふうに言われているので、なるべく細かくお話をさせていただければと思います。

 きょうは、先ほどからいろいろ聞いていて、ちょっと同じような内容になるんですけれども、まず、今回の法案で、先ほども関政務官がおっしゃられていたんですけれども、特許の出願料、特許料、それから商標の登録料であったり更新登録料、この辺も改定される。

 ここでもう一遍ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども、そもそも、それぞれが何の対価なのかということ、それから、なぜその引き下げ幅に差があるのかといったことについてお答えいただきたいなと思うんです。

関大臣政務官 そもそも論で、まず我々が考えておりますのは、こういうふうな特許の出願をできるだけたくさん数をふやしていきたいなというのがありまして、そのためには、この権利を取得する際及び維持に係ります利用者の負担軽減が料金の引き下げによって図れればなというところでございまして、産業財産権の制度のさらなる活用を促そうというのがそもそも論の考え方なんです。

 その際に、この産業財産権の制度といいますのは行政経費に当たります。これは委員も御指摘のとおりでございまして、利用者から納付される特許料等を財源といたしております。特許の特別会計におきまして、受益と負担の関係を明確にしよう、そして収支相償の原則のもとで財政運営を行うというのがそもそも論の仕組みでございます。

 それで、この利用者から納付されます料金についてでございますが、特許特別会計の収支見通しというのを勘案しております。おおむね数年ごとに改定を行っているような状況でやっているわけでございますが、今後の中長期的な収支の見通しにおきまして、近年、特許の登録件数の増加に起因いたしまして、料金引き下げの余力が生じてきたというのがそもそも論の背景でございます。

 それで、具体的なところを申し上げますと、部門ごとの収入と支出の状況でございます。特許部門と商標部門がございまして、そもそもこの二つが収入が支出を上回るんですが、まず、特許関連料金につきまして申し上げます。

 日本の料金は他の主要国と比べますと必ずしも高い水準ではございませんが、先ほど申し上げましたような利用者の権利の取得、維持に係る負担軽減でもっともっと利用していただこうということを勘案しまして、特許料及び出願料それぞれを一〇%程度引き下げることといたしました。

 もう一方の商標関連料金というのがございます。こちらの方は、他の主要国より比較的高い水準で今されておるわけでございます。また、この商標は特許に比べましても中小企業の利用率が高うございますので、実質的な費用負担の軽減を図っていきたいということでございまして、設定登録料を二五%程度、更新する際の更新登録料につきましては二〇%引き下げよう、そういうふうな考え方でございます。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

木下委員 ありがとうございます。細かくお話しいただいたと思います。

 ただ、今のお話、特許料自体は、権利というところで少し毛色が違うのかなと思うんですけれども、それ以外のところ、登録関連の手数料については、手数料というだけあって、そもそも手数がかかることの対価ということだと理解したんです。

 そうしたときに、その一番の手数というのは何かというと、その事務に係る人件費だろうと思われるんですね。そうなったときに、適正であればその料金だし、適正でなければ、人員を削減することもあり、逆に増員することもあるというのが、割と普通、健全なやり方なのかな。ただ、公務員という中でそういうことはなかなか難しいんだと思うんですけれども、そういうことも含めてやはり考えなきゃいけないんじゃないかなと思うんですね。

 それともう一つは、先ほど言われていたように、中小企業の方々の利用率というのが高まっている中で、それの中で値段を下げていくということとこれの両立を進めていくということをやはり省庁内でもう少し本格的に私は考えていただきたいなというのが、結論というのか、提言なんです。そういう考え方がもう少し広まっていけば、海外との間の競争力というのはもっと高まってくるのではないかなというふうに思います。今のお話を聞いていても、考えようによってはちょっと後づけの理屈のような気がしてしまって、ちょっとこういうお話をさせていただいたんです。

 では、次にもう一つなんですけれども、今回、特許協力条約に基づく国際出願に係る調査などについて、明細書及び請求の範囲が日本語または外国語で作成されている場合に応じて、それぞれ手数料上限額を定める改定というふうに言われております。

 ちょっと調べてみると、今までは外国語は一律の金額であったというふうになっていて、今回からは、今言っていたような手数とか発生費用に応じてその実質的な手数料の設定をする。そういう意味では健全だと言えるんじゃないかな、私の言ったもともとのロジックからしたらそうだというふうには思うんです。

 逆に、そうなったときに考えられるのが、手数料が高い設定にされてしまったような言語に関しては、今まで以上に手数料がかかるから、その言語に関してはやめておこうというようなことが起こるんじゃないか。そういうことに対しては何らかの手だてというのが実際想定されているのかどうかということ、その辺がちょっと聞きたいところ。

 それからもう一つは、そういう意味でいうと、先ほど言われていたように、その手数に合わせて手数料が本来であれば設定されていなければならないはずにもかかわらず、外国語は一律だったということは、その趣旨が、今までの手数料の考え方がそもそも間違っていたんじゃないかというところなんですね。それについてお答えいただければと思います。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

堂ノ上政府参考人 特許協力条約に基づく国際出願、PCT出願と申しますけれども、これは条約の加盟国のうちで一つの国の特許庁に出願することで、加盟国全ての国に同時に出願するという効果が得られる制度でございます。

 現行、我が国特許庁におきましては、その手続の一部でございます国際調査及び国際予備審査の手数料につきまして、使用言語にかかわらず、画一的な料金を設けております。

 PCT出願の出願数は、全世界においても増加傾向にございまして、今後、我が国におきましても、国内外からの外国語による出願に対して処理すべき事務の件数が拡大していくことが見込まれております。

 その中で、実際には、外国語の調査等の事務処理に要する実費は、日本語に比べて高額となっておりまして、委員御指摘のとおり、外国語と日本語の出願人の間で、実質的に負担の不公平、公平性が損なわれた状態となっているということが事実でございます。このため、今般、日本語と外国語の別に手数料を設定する体系に改めるということをもって適正化を図るものでございます。

 具体的には、法律において、それぞれの手続の実費を勘案して算定した金額を上限額として定めまして、法案が成立した際には、政令において、日本語の手数料については、国際出願を推進する観点から、実費より低い現行の料金水準を引き続き政令において定めることといたしたいと思います。

 また、外国語の手数料につきましては、現行より一定程度引き上げることを予定してはおりますけれども、実費に対する料金負担の公平性の観点、それから諸外国の料金水準等も勘案した上で、利用者負担にも配慮しながら、実費を下回る適正な料金水準を設定すべく検討してまいります。

 なお、諸外国の料金水準を見てみますと、例えば国際調査手数料につきまして、アメリカ、ヨーロッパ、いずれにおいても、本改正案における法定上限額の二十二万一千円よりも高額に設定されております。

 いずれにいたしましても、法律施行後におきましても、料金水準については、国内外の出願人の出願動向等も注視しながら、妥当性について不断に確認をしまして、適切に対応してまいりたいと存じます。

木下委員 ある意味で非を認めていただいたかなと思うんですね。今回の改正でそれを適正化するという意味では、非常に私は評価できるなと。

 ただ、高い言語に対してはやはりどうしてもちゅうちょしてしまうということは一つ残ってくるのかなと思っていて、その辺についても引き続き御検討いただければなと思っております。

 それに際して、特にニーズが高いところに対しては、それだけの出願が出てくるわけですから、そういうことによって、人員の関係等々も含めて、料金の適正化というのが自然にできるような、そういう環境をつくっていただきたいというふうに思っております。

 では、次にお話をさせていただくのが、職務発明の定義、それから、それにあわせて、こんなときどうなるんだろうなというケースについてお答えいただければと思うんです。

 ちょっと長々、最初、読ませていただきますけれども、私がこちらの方でいただいた資料を見ていて、まず、職務発明制度は、職務発明に係る権利が従業者に原始的にもともとは帰属するという発明者主義を原則としていると。これは今でも実質的に、企業の取り決めを決めなければ変わりはないと私は認識しているんです。

 ただ、その中で、職務発明とは、従業者などが行った発明のうち、その性質上、当該使用者などの業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在または過去の職務に属する発明をいうというふうに定義されている。

 片や、従業者等の職務として、発明することが当該従業者等の職務である必要はなく、職務として行った結果なされた発明であってもよい、職務とは、使用者等から具体的に指示されたものだけではなく、自発的に研究テーマを見つけて発明を完成した場合であっても、使用者等が研究開発を援助するなど、発明完成に寄与している場合にも職務に含まれているとされる。

 これはどっちなんだろうなと思いながら読んでいたんですけれども、ここで考えられるケースとして、企業に属している人が本来の職務から外れ、まあ、日本の企業に勤めている人はそういう人は私は多いと思うんですけれども、自分が発明したものを新たに自分の所属している会社などに事業として提案した場合、これを職務発明とみなすのかどうかというところなんですけれども、これはどうでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる職務発明は、先ほど先生おっしゃいましたように、その性質上企業の業務範囲に属していることと、それからその発明に至った経緯がその職務に属するということで定義してございます。

 したがいまして、企業の指示によらないような、従業員の職務に属しない発明、講学上は自由発明などと呼んでおりますけれども、そういったようなものはそもそも職務発明には該当しないということでございまして、したがって、その関連のことで全くなくて、みずからの発意でこういったようなことが発明されたということでありますれば、職務発明の外側であるというふうな理解でございます。

木下委員 そうですね。私もそうかなと思ったんです。

 というのは、その後にちょっと書いているところが、予約承継というのがあって、予約承継は、事前に契約、勤務規則その他の定めにより使用者へ譲渡することができることを定めることができる、ただ、それは職務発明についてということで、職務発明以外の発明に関しては予約承継が認められないということですから、恐らくそうなるんだろう。

 そうしたら、今度は逆に、会社のためを思ってそうやってやりましたといったときには、今回定めるようなガイドラインというのは適用されにくいんじゃないかな、適用もされないだろうなと思うんですけれども、実際問題としてそういうことは起こり得る。起こり得たときは、恐らく、私の想像の中では、会社にそういうことを従業者が持っていったときに、そのときに会社と話をして決めていくことになると思うんですね。これが非常に私は健全かなと思っております。

 これが、もともと研究者の人の場合というのはすごく微妙だと思うんですけれども、そうじゃなくて、一般の、研究職にないような、そういう人もやはり会社がよくなってほしいというふうな思いがあるでしょうから、そういう意味では、一般の人がそういうことを持っていって、会社に、新たな事業をやろうよというようなことなんかも考えられると思っているんですね。そういうことというのは、実は私は多いんじゃないかなと。

 というのは、私も、いつも言いますけれども、二十年近くサラリーマンをしていて、そういう感覚で会社に勤めておりました。夜、飲みに行ったりすると、そういう話はやたらと盛り上がるんですよね。大体が稟議を書いて落とされたりとかして、たまにうまくいって、ビジネスモデルがうまくいくときもあるんですけれども、そういったことも含めて考えたときに、そもそも、そういうときなんかは、結局、話し合いで決まるわけですよ。

 と考えると、そもそも、今回の法律で、予約承継についてもそこまで決めてしまう必要があるのかなという気もしてしまうんですね。ちょっと飛躍しているような感じもありますけれども、本来は、そういうふうな関係性が保たれるのが一番健全な会社と従業者の関係、そういう環境をつくるようなことをするのがこういう法律でなければならないんじゃないかなというふうに私は思っているんです。

 大臣、うなずいていらっしゃるので、もしよろしければ、その辺どうお考えかなと思って、御所見をいただければと思います。

宮沢国務大臣 自由発明を承継することをあらかじめ定めておくことはできない、こういうことでありますけれども、企業に属する人がどういう発明をするか、これは正直わからないわけですが、発明者、従業員の立場からいいますと、会社と仕事と関係ない、とてつもない発明をしたときに、これをあらかじめ企業のものだと言われても、それはかなり愉快でないことだろうなという思いがしながら、今実はうなずいておりました。

木下委員 ありがとうございます。率直な御意見をいただきました。

 そうしたら、ちょっと続きを話させていただきますが、それ以外も、特に中小企業を思い描いて考えていたんですけれども、こういうことというのは結構あり得るのかなと思ったのが、会社でお父さんがいつも働いてもらっています、ただ、奥さんが、あんたの会社でこういうのをやったらいいんじゃないのというようなことがあるんじゃないか。よく百円ショップなんかで売られているような、洗濯機の糸くずみたいなのを取るような、ああいうのは主婦が発明したとか、いろいろ聞いたりするんです。

 そういったときには、当然これは予約承継も当たらないでしょうし、ただ、当然何らかの形で手当てというのはするべきものなのかなというふうに思っているんですね。

 ただ、今回、特に中小企業の人たちにそういう発明をどんどんしてもらえるような環境をつくっていくというような趣旨から考えると、そこをどう手当てするんだろうなというのが現実問題としてはあるんじゃないかと思ったんです。そこは私の勝手な想像のあれなので、御答弁いただかなくて結構なんですけれども。

 そういうことをいろいろ考えていったときに、私、説明資料であるとかいろいろな資料を見させていただいていたんですけれども、ちょっとわからなくて、一つ質問したいんです。

 例えば特許とか商標に関して、その権利を、もともとは発明者主義という形ですけれども、逆に、分割するようなことというのはできるのかどうか。

 今回の場合は、会社に属するようにするというふうに言われている。でも、もともとは発明者。そうじゃなくて、話し合いで決める中で、実質的に分割するようなことというのはできるのかどうかというところはいかがでしょうか、ちょっと答えにくいところなのかもしれませんが。

伊藤政府参考人 もしその発明が特定の発明者が行ったものとして、共同でやるようなケースというのはありますから、そうすると共同の名義になるということですけれども、一つの発明ということになりますと、その一つの発明を分けるというのは難しいと思います。

木下委員 済みません、通告にないことを聞いたのであれなんですけれども。

 ただ、先ほど大臣だったかな、前の方の答弁で言われていたんですけれども、集団で発明するパターンというのがよくあると。その場合は、一つのチームの中で発明されて、チームとしてその権利を有しているような形になると思うので、場合によっては、実質的に会社に属する人と、会社に属していないけれどもその奥さんみたいな形の者が話し合いの中で、実質的には分かれているんだけれども、便宜的には権利が一つに偏るということも、私は、これはあるなというふうに思って解釈したんですね。

 そういうことも含めて考えると、やはりどうしても、そもそもこんなことを決めなきゃいけないのかどうなのかということに対して不安があるというのか、本当にいいのかなという思いがちょっとあるんですね。その辺は、もう少し後でもお話をさせていただきたいと思います。

 次は、職務発明制度の勤務規則その他の定めの設定についてお話をさせていただきたい。

 ここでは、使用者がこれらの定めを行わなかった場合は、原則発明者主義として従業者に権利は帰属し続けると考える、私、間違いないかというふうにさっき言いましたけれども、多分これは間違いないなと思っているんです。逆に、雇用契約であるとか勤務規則その他の定めを設定しているにもかかわらず、従業者があらかじめその定めを守りませんよというふうに言った場合、どんなことが起こり得るのか。

 現実問題、そういうことがあるのかどうかということはちょっと思ったんですけれども、たまたま、この間東京都で、東京地裁の判決が出ていたんですけれども、学校の先生が、校長先生が決めた君が代の起立それから斉唱、ちゃんと歌おうよというふうな取り決めをしていたにもかかわらず、しなかったような人たち、二十二名の方が退職した後に再雇用されなかったということで裁判を起こしたら勝っちゃったというのか、裁判所から賠償命令があったというのを聞いていて、そんなことがあり得るんだと私はちょっと首をかしげたんです。

 そういうこともあり得ることを考えたときに、特に、もともと研究開発をする能力を持ったような人たち、それだけの能力を有した人たちですから、自分としても自負があるでしょう。そうなったときに、今回ガイドラインができます、そのガイドラインに従って会社がそういうふうな取り決めをしましたというふうに言っても、いやいや、私はそういうふうなことはしたくない、ただ、実際に発明がちゃんとなされたときに会社と話し合いをしようじゃないかというふうなことがあり得るというのか、あってもいいんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そういうことはここで聞くような話かどうかというのはありますけれども、そういうことも想定されているのかどうか、それからそういう対処というのはあるのかどうかというところを。

伊藤政府参考人 雇用契約などに定められた職務発明の取り扱いに納得しないという場合に、従業者は企業に対して、個別にまず雇用契約なり規則についての見直しを求めるということは当然あると思いますし、その企業内に労働組合などがありますれば、こういうものを通じて見直しを求めた交渉ということはまず想定されると思います。

 それから、規程全般ということではなくて、その規程に基づいて、規程がある中で、自己の職務発明に対して利益の給付がおかしいといったようなことを考えられる場合には、相当の利益を給付することが不合理であるということで、この法律にあります第七項に基づく訴訟といったようなことが可能であるというふうに考えております。

 こういった紛争をできるだけ避けるという意味でも、職務発明の取り扱いに関する定めにおいて、今回定めますガイドラインによって適正な手順を行うといったようなことで明確化させるということが必要だというふうに考えているところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 政府としては、そういう取り決めをすることによって紛争を避けるという考え方だと思うんです。ただ、私、これは篠原先生のお話とかも聞いていて思ったんですけれども、そもそも紛争だというふうな意識が今までの日本の企業の中にあり過ぎるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そういう事象が起きたときに、ちゃんと取り決めをその場でする、調停をするなり裁判ということも、別に激しく争う形ではなくて、文化としてそういうことが私はあってもいいんじゃないか、そういうふうにならなければ、海外のそういう文化のあるようなところには勝っていけないんじゃないかなというような気がちょっとしているんですね。

 一概に全てがそうだとは言いにくいし、政府としては、当然のことながらそういうことに対する対処として取り決めをするということには理解はあるんですけれども、やはりそういう形の社会に変えていくことが私はすごく必要なんじゃないかなと思うんですけれども、大臣、その辺はいかがでしょうか。

宮沢国務大臣 おっしゃることは、まさにそんなにがちがちに決めておかなくても、いい発明が起こったときに適宜対応すればというお話なんだろうと思いますけれども、一方で、十六年以前に億単位、億を超える訴訟というものが多数あったということを考えますと、やはり事前に一定のルールを設けておくということ、そして企業側からも、また研究者から見ても、予見可能性の範囲がかなりあるということは、私は大事なことなんだろうというふうに思っております。

木下委員 ありがとうございます。

 それが政府としては当然の答えだろうなと思いながらお聞かせいただいたんですけれども、そういう懸念について、懸念というのか、そういう問題点がいろいろ出てくるのかなと思って、もう少しお話を用意させていただきました。

 それは、発明に対するインセンティブ施策という部分なんですけれども、現行法上の金銭だけではなくて、相当の利益として、海外留学とか研究設備の整備、それからストックオプションなどの、職務発明と関連があるような経済上の利益を含むという形にされるということなんですけれども、その算出というのが実際にできるかどうかということが一つ大きな問題かなと思っているんです。

 それからもう一つは、相当の利益というものの決定手続について、契約もしくは勤務規則の定めるところによって支払うということが不合理なものと認められるものであってはならないと。不合理であってはならないということが決められるということなんですけれども、そうなったときに、私はまた今度これを思ったんですけれども、対価を支払うことが不合理と認められない限りは、その対価が相当の対価と認められることになっている。では逆に、対価だと思って会社が支払ったことが、その従業者にとって不合理と認められる場合というのが大いにあるんじゃないかなと私は思うんですね。

 そういうケースが何個かあるんですけれども、ちょっとここで私の用意したケースなんです。

 例えば、Aという人が発明しました、会社が利益は上げられなかったけれども、Aは、自分の希望していたアメリカで勉強してこいというような、会社から給料をもらって、ある程度会社で働きながらも勉強してこいということで、アメリカに栄転できましたという場合。

 一方、Bという人が発明しました、そのBという人が発明したことによって会社が利益を上げたけれども、Bさんは国内の特別研究施設に、特に希望せずに、ただ、あなたはこれだけの発明をしたんだから、そういう特別研究施設をつくってそこの長にしてあげますよと言われるというケースがあったとき。

 これは往々にしてあると思うんですよ。なぜならば、会社に勤めていたらそうなんですよね。働ける人、よく働く人が必ずずっと、一つのプロジェクトが終わっても、ああ、やっとこれで終わった、これで普通に、順当に行けば海外に転勤できる、海外でGMになれると思っていたら、これは私のケースだったんですけれども、そうしたら途端に、次のプロジェクトをもう一遍任されちゃうんですよ。

 私から言ったらあれですけれども、明らかに私よりも年はいかれているけれども何も仕事をしていない人が海外のGMになっちゃう。何だというふうに相当私も言いましたけれども、こういうことがあり得ると思っていて、それは、その従業者の方にとっては、会社に相当の利益だというふうにいって支払われたものが全くもって相当の利益じゃないということが起こり得ると思っているんです。

 ただ、これを一律にガイドラインなどで決めてしまって、しかも、会社の就業規則というふうなところで事細かにもしも決めるようなことがあった場合には、不幸な出来事だと思うんですけれども、そういうことが私は起こり得るんじゃないかなと思うんです。そういったところはどういうふうに考えられているのかなと思いまして、質問させてください。

伊藤政府参考人 委員御指摘のとおり、さまざまなケースがあるかと思います。

 したがって、今回も、民間の中で使用者と従業者との関係でどういう発明に対しての奨励をするかということについて、十分よくまず相談をし協議をしというルールをつくることと、加えて、実際にその発明に係る報酬を与える際にもきちっと意見を聞くという手順を踏まえなければ合理的な手続にはならないんだというふうに法文上書いてあるわけでございます。

 したがいまして、ガイドラインで細かく決めるというのは、ガイドラインでまさにそういう手順をきちっと踏まえるということをもって、民間の中での協議がきちっと行われることが手続として保障されるであろうという形でもって、今のようなケースをできるだけ解消するようにしてもらいたいという趣旨でございます。

 ただ、具体的な適用については、各企業ごとに、それぞれ戦略なり、これまでの雇用関係とかがあるかと思いますので、そこの自由度はできるだけ、最大限認める。

 やはりポイントは、そういった民間の中で十分な協議が行われているということが基本だろうというふうに思っておるところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 そういうことであればいいと私は思うんですね。

 ただ、そういう趣旨でこういう法律がつくられようとしていながら、会社側は余りそこまで考えない。要は、規則をつくっちゃってそれで何とかしようというふうな、そういう考え方になれば必ずこういうことは起こってくると私は思いますので、そこをしっかりと浸透していただくように御努力いただければなというふうに思います。

 最後に、先ほどから何度か同じような話をしているんですけれども、そもそも、この法律自体がなくても適正にそういう話し合いができたり、調停だとか裁判だとかというのができるような、そういう文化になればいいんじゃないかなというふうに思ったんです。

 一つのパターンとして、どうしてそう思うかというと、例えば誰かが物を発明しました、発明したんですけれども、例えばその発明をした人が属していた会社では、もともと小さな企業であって、販路、ネットワークを全然持っていない。これからその商品が開発されたことによってその販路も一緒に開拓していこうと思っても利益が限られているといった場合、そうであったとしても、これが相当の利益として、それをもとに計算されてしまう可能性があるんじゃないかなと私は思ったんです。

 そうであれば、逆に言うと、そこはすごく難しいところだと思うんですけれども、例えばそういう人たちがこういう発明をしましたということが明るみになった、特許だからなかなかそうはならないことが多いでしょうけれども、何らかの形で明るみになった、そうしたときに、日本だったらいいという話なのかもしれないですけれども、例えばアメリカの販路を世界じゅうに持っているような会社が、あなたのやられていることをうちの会社で商品開発して、そして売ったら莫大な利益になりますよというふうに言ったら、それは当然、普通は、従業者の方はそっちに行きたいと思うと思うんですね。

 行きたい、行きたくないというふうな話以前に、私が思うのは、消費者の立場で言ったときには、どっちが世の中のためになるかというと、便利になる方がいいわけですから、おととい、またこれも篠原委員が大勝軒のお話をされていましたけれども、やはり全体の利益を考えたときには、わざわざそれをがちがちにするようなことをしなくて、実際にそのときそのときに起こったことによって、ちゃんとした調停であるとか裁判であるとか、そういう文化を醸成していくような、そういう何か施策という方がすごく効果的なんじゃないかなというふうにちょっと私は思っているんです。

 だからといって、この法律自体が全然だめというわけではないですけれども、そこは自分の心の葛藤なんですけれども、その辺について、大臣、もう一度ちょっと御所見をいただければなと思います。それを最後にさせていただきます。

宮沢国務大臣 今御質問のあった件を私なりに少し整理して考えますと、まず、特許を獲得した後、特許権を取った後ということになりますと、契約上、例えば企業にその特許が属している、発明者は別にいるといって、その会社では大した利益が見込めないけれども、別の会社なら見込めるというときには、当然のごとく、別の会社からその特許権を持つ会社にオファーがあって、特許権をそれなりの額で売って、その中からしかるべき割合が発明者に行く、こういうことになろうかと思います。

 特許権を取る前でありますと、これはまさに営業機密の問題でありまして、恐らく、営業機密上そういうことは起こり得ないし、下手なことをすると犯罪行為になる、こういうことじゃないかと思っております。

木下委員 最後、ちょっとあれだったんですけれども、私が思うのは、それだったら、そもそも発明権者、もともとの発明をされた方がその発明の権利を持っていってもいいんじゃないかな。会社の中で発明したら、会社がそれに対して対価を、外から何か買われるのと同じように、その従業者と交渉すればいいんじゃないかなと思うんですね。

 それと全く同じ構造が外だからあるだけの話だと思っていて、だから、まだまだ腑に落ちないと思っているところは少しあるんです。ここは難しいところなので、これ以上は、もう時間が来ましたので聞きませんが、ちょっとそういうふうな不安を感じておりますということで、以上とさせていただきます。

 ありがとうございます。

江田委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 二十七日の当委員会で、我が党の藤野議員が、本改正案においても、原則は原始発明者帰属であり、原始使用者帰属は職務発明規程等がある場合の例外であるのかと確認した際に、特許庁長官は、原則とか例外とかいった言い方は使っていない、企業が法人帰属か従業者帰属かを選択できるような形にするものだと答弁をされました。

 大臣にお聞きしますけれども、職務規程を有する企業で、特許を受ける権利が初めから使用者帰属になる新設の第三十五条三項と、従業者帰属を特許法上の大原則としております第二十九条、第三十五条の一項、二項、この整合性はどうなるんでしょうか。

宮沢国務大臣 特許法第二十九条第一項におきまして、発明一般について、その特許を受ける権利が発明者自身に属することとまずしております。

 これに対しまして、三十五条におきまして、発明のうち、職務発明について定めておりますけれども、三十五条の第一項で、職務発明については、企業に無償の通常実施権、いわゆる法定ライセンスを与える規定であります。

 第二項は、職務発明以外のいわゆる自由発明については、企業が契約、勤務規則その他の定めによりあらかじめ職務発明の特許を受ける権利を承継することはできない旨定め、従業者の自由発明の権利を保護するための規定であります。

 そして、今度新設される三十五条第三項は、職務発明について、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ定めた場合には、職務発明の特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることができる旨定めたものでございます。

 基本原則がどうだというようなやりとりがあったのは私も聞いておりましたけれども、法律の構成上は、やはり従業員帰属をまさに大原則としていると思います。ただ一方で、現実に起こる世界では、大半が使用者帰属になるのが恐らく現実だろうというふうに思っております。

真島委員 実にわかりやすく言っていただいたと思うんですけれども、第二十九条に、大臣はちょっとここのところまで言われませんでしたけれども、産業上利用することができる発明をした者に発明者としての権利を与えるというだけではなくて、その発明についての特許を受けることができる、そういうふうに書かれているわけなんですね。

 おっしゃったように、法律の構成上は、どう見ても原始発明者帰属が原則です。三十五条の三項の原始使用者帰属というのは例外的な規定という形にはなっているわけですね。

 今、特許庁のホームページに「職務発明制度に関するQ&A」というのが出ています。これは現行制度について説明するものなんですが、その問い一が「「発明」ってなんですか。」ということで、こういうふうに書いてあります。「発明は、人間個人の頭脳から産み出されるものですから人間ではない会社は発明することはできません。 また、発明をした者は、その発明について特許を受けることができますし、この「特許を受ける権利」を譲り渡すこともできます。」と。

 この大原則は法改正後も変わらないわけです。ところが、本改正案は、実際の経過を見ますと、産業界の求めに応じて、職務発明の権利自体を従業者から使用者に百八十度変えて、何が制度の原則かも非常に曖昧になっている。企業が、発明者帰属にするのか使用者帰属にするのかを選択できる。特許庁に聞いたんですよ。こんな制度は世界に類がありますかと言ったら、一つもないと言っていましたね、こんなねじれた制度は。

 現行法がなぜ発明者帰属にしているんでしょうか。一旦権利を従業者に帰属させて、その上で法人に承継をさせる。承継の対価として相当の対価を得られるという非常にややこしいプロセスの仕組みをつくっています。発明を行った従業者の創造に報いよう、かつ、公正な給付、適切な利益を保護していこうという目的でわざわざ回りくどいことをしているわけですね。だから、従業者から使用者に特許権を承継する対価を請求する権利が保障されているわけです。

 つまり、言われている相当の対価というものは、従業者が自身が行った発明に基づく特許を受ける権利を使用者に承継させた。つまり、権利保有者としての従業者の法定対価請求権なんですね。それが原始使用者帰属になったらどうなるかといいますと、従業者は、自身が発明したけれども、その権利については初めから持っていない。特許に対する権利を持っている使用者に対する請求権となります。

 従業者の権利は、いわゆる改正前と改正後で明らかに変わってくるわけですね。改正後は権利のないところから従業者は請求をしていくということですから、明らかにその権利は次元が違うほど弱まってしまいます。

 大臣に聞きたいんですけれども、それでも実質的に同等の権利が保障されるというのであれば、それは法的にどこにどう担保されているのかを示してください。

宮沢国務大臣 現行特許法第三十五条三項におきましては、従業者が職務発明に係る特許を受ける権利を企業に承継した場合、「相当の対価の支払を受ける権利を有する。」ということが規定されております。

 改正法の三十五条四項では、現行法三十五条第三項の「相当の対価」を金銭以外のインセンティブも含めた「相当の利益」に改め、従業者がその支払いを受ける権利を有することとしております。

 したがいまして、現行法と実質的に同等の権利が保障されているということになろうと考えております。

 恐らく、委員の御質問の趣旨というのは、まさに発明者が自分自身で権利を持っていて、それを企業に渡すときにいろいろな条件をつけられて、そこで交渉が行われるであろう、今度の法律になりますと、そこで立場が弱くなっているので、交渉を行う権限が小さいだろう、こういう趣旨だろうと思いますけれども、そうした意味で言えば、あらかじめ、まさに就業規則等でしっかりそういうことを書き込むことによって、また従業者が納得することによってこの制度を担保することによって、同等の権利になるというふうに考えております。

真島委員 午前中の参考人質疑でも御紹介したんですが、二〇一三年の特許庁のアンケートで、原始法人帰属になった場合、報奨金原資を現行より減額すると答えた企業が全体の二七%。

 現在、我が国で出願されております年間三十万件を超えます特許の九七%が企業によって出願されている。大企業は、九九%が職務発明規程等を持っている。大企業にとっては、改正されれば、原始使用者帰属が基本の制度となります。それで、大企業の場合、そこで働いている人たちの権利が大きく変わるわけですね。

 だから、私は、先ほど大臣がガイドラインとおっしゃったけれども、これはあくまでも手続の妥当性についてのガイドラインでしかないんですね、その指標、指針としての。このガイドラインに従って職務発明規程を策定したとしても、従業者の皆さんが納得しなければ、司法に判断を委ねるしかないということになりますから、結局、紛争の種はなくなることはありません。それは午前中もキヤノンの方もおっしゃっていました。

 しかし、従業者である発明家の方が、今後、特許を受ける権利をなくしたというもとで司法の場で争うという場合、明らかに、以前の司法の場での争いとは立場が違ってしまっているということになるわけですね。

 本改正案は、我が国の発明を奨励するどころか、私は、発明者の権利を奪うことで逆に意欲をそぐ結果になってしまうんじゃないかなと心配しています。

 二〇一一年の二月に、産業構造審議会知的財産政策部会で、報告書、「特許制度に関する法制的な課題について」が取りまとめられた際に、日本経団連や日本知的財産協会から、職務発明制度の見直しを求める意見が寄せられております。その意見に対して、特許庁は、職務発明制度の見直しについては、その必要性について意見が分かれている、慎重に検討するべき問題だと考える、現時点では、平成十六年の制度改正後の職務発明制度の運用状況について、継続的に情報収集及び評価を行っており、今後も継続してまいりますと回答して、その後、そのことが部会でも確認されているわけです。

 ところが、特許庁が継続して行ってきたと言っていた、二〇〇四年度の制度改正後の職務発明制度の運用状況についての情報収集及び評価、これについての取りまとめというのは今までどこにも見当たらないんです。それはどうなっているんでしょうか。

伊藤政府参考人 平成十六年、二〇〇四年の改正後の二〇〇六年、平成十八年に、まず、企業における運用状況というものを確認するため、中小企業を含む企業、それから大学、公的機関二千十九者を対象に調査を行いました。九二%の企業が社内の職務発明規程を変更または変更する予定ということを確認しました。

 その後の状況につきましては、二〇一三年度に職務発明制度に係る調査研究を実施いたしまして、これは企業向け、大企業、中小企業合わせて二千四百八十五者に対して職務発明制度に対する調査を行いました。社内の運用状況において課題があるということを指摘する企業が五九%に及ぶといったようなことを確認したり、あるいは、現場で具体的にどういう運用上の課題があるかということも把握させていただきました。

 あわせて、二〇一三年度ですけれども、研究者や技術者の状況、企業ではなくて従業員の方ということになりますけれども、現状を把握するために、これは国内外の研究者一万五千三百五十九者に対しましてアンケートによる調査を行いまして、その中で、以前も御紹介いたしましたけれども、金銭以外のインセンティブも発明の奨励のためには重要だという意見が多かったということも把握いたしました。

 こうした運用状況の調査結果を踏まえて、産業構造審議会において議論を行って、今回の法改正が必要であるというふうな結論に至ったものでございまして、今申し上げました調査については特許庁のホームページなどで公表させていただいているところでございます。

真島委員 先ほど、その当時、運用状況について情報収集し、評価をして慎重に検討すると。財界の側から、その当時から職務発明制度の大きな見直しが求められていたんですね。それに対して、いや、現行制度をちゃんと検証した上で結論を出していくんだ、慎重にやるんだと答えられているのに対する回答としてのものじゃないんです、今言われたのは一つも。

 それで、その後どうなったかといいますと、安倍政権が発足した直後の二〇一三年六月に閣議決定した知的財産政策に関する基本方針、この中には、職務発明制度の発明者帰属規定を抜本的に見直すというのがいきなり出てきたんですね。

 二〇一三年の日本再興戦略でも、企業のグローバル活動を阻害しないための職務発明制度の見直しとして、職務発明の法人帰属化、これを来年度中に結論を得るという方針が出てきて、そして、いつの間にか、二〇〇四年の法改正の検証の上に慎重に検討を進めるという約束は吹っ飛んで、制度見直しありきで議論がどんどん進んできて、実際の特許制度小委員会の議論でも、先日、藤野議員が、途中で不自然にひっくり返されたという経過を紹介しましたけれども、そういう経過をたどってきているわけです。

 それで、特許庁にちょっとお聞きします。

 イノベーションをめぐる環境が変化しているもとで、いろいろな具体例を挙げて制度見直しの必要性を説いておりますけれども、二つだけ聞きます。

 一つは、発明者のみが相当の対価を受ける現行制度では、グループ内の不公平感、チームワークの阻害の問題を生じているということを挙げておられます。しかし、これは発明制度の問題というよりも、個々の企業のインセンティブ施策のイロハの問題ではないかと思うんですよ。この点についての、そういう根拠になるのかという問題。

 もう一つは、相当の対価をめぐる訴訟リスクが高まるおそれや、特許権の二重譲渡の問題も制度見直しの根拠として挙げておりますけれども、こういう紛争の解決というのは、つまるところ、企業経営者と研究者の間の信頼関係をいかに構築して維持していくかに尽きると思うんですけれども、なぜこれが根拠になるんでしょうか。

伊藤政府参考人 職務発明制度の見直しの必要性といたしまして、例えば企業間で共同研究を行い、その成果を企業が知的財産として活用する際には、現行の制度ですと、企業間の合意のみならず、企業内の研究者の同意も必要であるといったようなことがございます。近年、企業間で進むオープンイノベーションについて、こういった共同研究をめぐる手続の煩雑さがいわば阻害をしているという意見もございました。

 こういったことについて、初めから法人帰属を可能とすることで、権利帰属の不安定性の問題といったようなものを解決して、これによって企業が特許を円滑かつ確実に取得するということで、企業の知財戦略が迅速に進むということが可能になることを期待しているものでございます。

 他方、委員御指摘のとおり、グループ内の不公平感やチームワークの問題というものは、企業のインセンティブ施策のあり方が一因となっているのは確かでございまして、この法案の中においても、こういった両者の間のインセンティブを決定するための手続をガイドラインで策定して、かつ、従業員との協議とか意見聴取などのあり方を明示するという形にします。

 こういったことによって、グループ内で行うインセンティブについても発明者の納得感が高まることとなりまして、不公平感とかチームワークの問題の解消にも大きく貢献するものだろうというふうに考えているところでございます。

 それから、もう一点お尋ねの二重譲渡の問題といったようなことでございますけれども、ここは、企業経営者と研究者の信頼関係の内部関係だけにとどまるものではないという認識でございます。

 これまでもいろいろ意見を聞いてまいりましたけれども、現行の制度ですと、第三の企業に対するいわば対抗力がない。第三者が二重譲渡を受けまして特許を申請する場合には、それを特許としては受けざるを得ないという状況でございますので、原始的に帰属させるということが二重譲渡の解決のために不可欠であるというふうに我々は認識しているところでございます。

真島委員 特許制度小委員会が一月にまとめた報告書では、「企業における研究者のインセンティブ施策については、基本的には、企業の自主的な創意工夫に委ねることが望ましい。」と言っているわけですね。こういうグループ内における不公平感、チームワークの問題は、午前中、キヤノンの方もおっしゃっていましたけれども、もう本当に日常茶飯事、そういうバランスをとる、不公平感を残さないということで普通に努力されているわけですよね。それをわざわざ書いて、制度を見直さなきゃいけないというのになぜつながるのか、私は非常に無理がある根拠づけだと思います。

 もう一つ、相当の対価をめぐる訴訟リスクが高まるおそれがあるということが強調されているわけなんですが、これは御存じのように、二〇〇四年の法改正以降の訴訟の事例は四件しかない。二重譲渡がいかにも何か大きく広がっているような言い方をされておりますけれども、レクで特許庁に聞いたら、一件しか事例を示せませんでした。十年間で一件しか具体的な事例を私に持ってこれませんでした。

 これを制度見直しの根拠にしているけれども、これは、社員が会社に不満を持って、自社の技術を他社に売り飛ばしてしまうという極めてレアなケースなんですよ。だから、何かいかにも制度を変えなきゃ非常に大変だみたいな書き方をしているのは、本当にどういう根拠づけなのかなと思います。

 最後に、大臣にちょっとお聞きします。

 これは通告していませんけれども、本改正案は、九十四年も続けてきた我が国の職務発明制度、発明者帰属の原則をなくして使用者帰属に大半を変えてしまうというものなんですけれども、過去、現行法の十年間の運用状況もまともに検証していない。しかも、今ちょっと紹介しましたけれども、こんな粗い根拠ばかりでこんな大転換をやっていいんでしょうか。最後にお聞きします。

宮沢国務大臣 今、たしか最初の質問で発明者帰属の原則は変わっていないかというお話があって、法律的には変わっていないと申し上げたわけでありまして、最初の質問と今の質問と、少し趣旨が違う質問を受けたなというふうに思っております。

 やはり、この十年間に、まさにグローバル化が進む、また、企業間のいろいろな製品のつくり方についても横展開が進む等々といったことで、特許、また知的財産の保護というものは大変大事な時期に来ております。

 知財をめぐる状況というのが大きく変わるという中で、今回の法案を提案いたして御審議をいただいているところであって、まさに日本の知財戦略のために大変大事な法案だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

真島委員 時間が来ましたので終わりますけれども、何か繰り返し、抽象的な、イノベーションをめぐる環境が変化したとか、いろいろ知財の問題が云々とおっしゃるんですけれども、一つ一つの具体的な根拠を確認すると、全く、先ほど言ったような状態なんですね。私は、それでこのような大転換をして、日本の発明奨励の今まで頑張ってきた歴史を本当に傷つけることになるのではないかと非常に心配をしております。

 以上、こういう法改悪は容認できないということを申し上げて、質問を終わります。

江田委員長 次に、野間健君。

野間委員 無所属の野間健です。

 本日最後の質問となります。時間をいただきまして、ありがとうございました。

 今回の特許法の改正は、特許法条約、PLT及び商標法に関するシンガポール条約、STLT、これに加入するための法整備という内容も含まれているわけでありますけれども、両条約の概要、どういう加盟国、何カ国ぐらい入っているのか、また、それに加入するメリットはどこにあるのか、お答えいただきたいと思います。

関大臣政務官 特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約でございますが、各国で異なります特許及び商標の出願等の手続の統一化及び簡素化を目的としておりまして、出願人の利便性向上及び負担の軽減を図るという国際的な手続調和条約であるのがそもそも論でございます。

 両条約につきましては、米国、英国、フランス、オランダを含みます欧米主要国が既に加盟しておりまして、国数ですが、特許法条約の締約国におきましては三十六カ国、商標法に関しますシンガポール条約の締約国は三十七カ国及び一政府機関となっております。

 この条約への加入につきましては、先ほども少し申し上げましたが、国際的に統一化された様式によります手続を可能とするなど、手続に関する国際的な制度の調和を促進しよう、また、手続のための期間が遵守されなかった場合の救済措置が導入されることによりまして、制度利用者、特に手続等に明るくない国内外の中小企業の手続の負担軽減を図っていこうというところでございます。

 それが目的と加入国の数でございます。

野間委員 特許庁の第九回の特許制度小委員会の資料を見ますと、これはちょっと通告していませんけれども、これに加入することが我が国が加入を検討する各種経済連携協定に入る際の要件とされることも想定されると。ということは、これはTPPの何か要件になっているというふうに考えられるんでしょうか。

宮沢国務大臣 そういうことは、少なくとも私は承知しておりません。

野間委員 昨年六月に発表された日本再興戦略改訂版の中で、シンガポール条約等に加入を検討するとともに、アジア各国における知財制度の構築、運用のための協力スキームを構築するなどの取り組みによって我が国知財システムの国際化を推進するんだということで加入をするというお話が出ているわけですけれども、これは、実際、この両条約、中国、韓国、台湾、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど、日本が非常に活動している、またこれからマーケットとしても有望視している、あるいは中南米とか、こういったところは入っていないわけですね。

 ですから、入るということはいいと思うんですけれども、こういったところが入ってこないとなかなか実質的な意味がないように思われますけれども、そのあたり、これからどうやって推進していくのか、お聞かせいただきたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、アジア諸国の加入を大変重視しております。中国及び韓国を初めとしたアジア諸国への我が国国民による出願は、我が国国民による海外への特許出願の約四割、商標出願の約六割を占めております。したがって、今後、その働きかけを強めていきたいと思っております。

 多くのアジア諸国におきましては、両条約を締結するということになりますと、まずは国内の制度の整備というものが必要になることが多いと考えております。つまり、出願に関する制度を両条約の内容と整合的なものにするよう改革をしていくといったことが求められるわけでございます。

 そういった分野におきまして、我が国はこれまでも、一般にアジア諸国を中心とした新興国を対象に、知的財産制度の整備に関するセミナーの開催、あるいは視察団や研修生の受け入れ、専門家の派遣など各種事業を実施してきておりまして、こうした人材育成事業を通じて、各国の知的財産関係部局と非常に緊密な協力関係を構築してきております。

 したがいまして、今後、そうした信頼関係に基づきまして、両条約の締結に向けた外交上の働きかけを行うとともに、今後、具体的に、締結のためにここがわからない、あるいはここを助けてほしいということがあれば、積極的に支援をするという形でその働きかけを行っていきたいと考えております。

野間委員 ありがとうございました。終わります。

江田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。藤野保史君。

藤野委員 私は、日本共産党を代表して、特許法等の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。

 本法案は、職務発明に係る特許を受ける権利の原始的な帰属先を、発明を行った従業者から使用者へと百八十度転換しようとするものであり、容認できません。

 特許法第二十九条は、産業上利用することができる発明をした者は、その発明について特許を受けることができると規定しています。この条項に照らし、我が国ではこれまで、職務発明について原始発明者帰属の立場をとってきました。

 そもそも、二〇〇四年改正後の判例の蓄積もほとんどない中で、法改正を行わなければならない立法事実はありません。

 にもかかわらず、職務発明規程を改正するのは、産業界の長年の要求に応え、原始使用者帰属へと権利主体を変えるためです。まさに、安倍政権が進める企業が世界で一番活躍しやすい国づくりのために、発明者の権利を奪うものにほかなりません。

 経団連を初めとする産業界が原始使用者帰属を要求してきた理由は、企業同士の共同研究や大学等の研究機関との産学連携の拡大、グローバルな企業再編を進める多国籍企業にとって、現行制度は業務負担が大きく、訴訟リスクが高いというものです。それを解決するために、職務発明を原始使用者帰属とし、発明者への報奨水準は企業に委ね、法定対価請求権をなくす。企業の予見可能性を高めるために、司法判断は排除せよと主張してきたのです。

 先ほど大臣も答弁されましたが、本法案によってもなお、特許法の原則は原始発明者帰属であることは間違いありません。ところが、特許庁は、原則、例外という言い方は使っていないなどと、この原則を認めることをかたくなに拒みました。これは、産業界の主張を無批判に受け入れ、発明者の権利を奪うものです。

 さらに、質疑の中で、産業構造審議会の特許制度小委員会の議論の流れの不自然さも明らかになりました。審議はいまだ尽くされておりません。

 すぐれた職務発明は、使用者と従業者、研究者の共有、協働の中で生み出されます。発明者の知的創造に報い、適切な報奨を付与することにより、発明を奨励し、我が国産業全体を発展させる道にこそ進むべきであることを最後に指摘し、反対討論といたします。(拍手)

江田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、鈴木淳司君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読いたします。

    特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 職務発明制度の見直しについては、従業者と使用者の双方の発明のインセンティブの向上という本見直しの目的を含め、本改正内容について広く国民に対し周知徹底を図るとともに、特に中小企業における職務発明規程の整備に係る相談・支援体制の充実を図ること。

 二 職務発明制度に係る相当の利益については、現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利となるよう保障すべく、「指針」において企業による従業者等の研究開発に係るインセンティブを高めるための創意工夫が生かされるよう具体例等を例示すること。また、同指針の策定に当たっては、策定に係る検討メンバーに労使代表をはじめ幅広く関係者を参加させるとともに、職務発明制度に係る苦情処理のあり方等について明示するなど、企業の予見可能性と従業者等の処遇との均衡を図るよう適切な措置を講じること。さらに、今後の経済社会情勢の変化等を踏まえ、従業者等のインセンティブへの影響など本法の運用について、適宜調査・検証を行い、必要に応じ見直しを行うこと。

 三 特許料等の引下げ及びPCT国際出願の料金体系の見直しについては、特許権等の取得・維持に係る中小・小規模企業等の負担軽減が我が国企業の国際競争力及び知財戦略の一層の支援強化を図る上での重要性に鑑み、附則の見直し期間にかかわらず施行状況を見つつ、適宜検討・見直しを行うこと。

 四 特許特別会計において、収支バランスを適切に確保することが重要であることに鑑み、これまでの特別会計改革の議論や会計検査院の指摘を踏まえ、今後とも、可能な限り利用者の負担軽減に務めるとともに、特許料等のあり方について、適宜、柔軟な見直しを行うこと。

 五 知的財産の裾野を拡大する観点から、中小企業の知的財産活動を支援するため、「知財総合支援窓口」の一層の強化拡充を図るとともに、海外展開を指向する中小企業の知的財産の権利化及び模倣品対策に係る支援策のさらなる強化を図ること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

江田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、宮沢経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮沢経済産業大臣。

宮沢国務大臣 ただいま御決議のありました本法案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

江田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

江田委員長 次回は、来る六月三日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


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