衆議院

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第21号 平成27年6月10日(水曜日)

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平成二十七年六月十日(水曜日)

    午前九時八分開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 鈴木 淳司君

   理事 田中 良生君 理事 三原 朝彦君

   理事 八木 哲也君 理事 中根 康浩君

   理事 鈴木 義弘君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大見  正君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    今野 智博君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      白石  徹君    鈴木 憲和君

      関  芳弘君    冨樫 博之君

      野中  厚君    福田 達夫君

      細田 健一君    宮内 秀樹君

      宮崎 政久君    若宮 健嗣君

      神山 洋介君    近藤 洋介君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      馬淵 澄夫君    渡辺  周君

      落合 貴之君    木下 智彦君

      國重  徹君    藤野 保史君

      真島 省三君    野間  健君

    …………………………………

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   経済産業副大臣      高木 陽介君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   財務大臣政務官      大家 敏志君

   経済産業大臣政務官    関  芳弘君

   内閣府大臣政務官     福山  守君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山崎 伸彦君

   政府参考人

   (農林水産省農林水産政策研究所次長)       岩瀬 忠篤君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     井上 宏司君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     寺澤 達也君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           松永  明君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           平井 裕秀君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           赤石 浩一君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          富田 健介君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 上田 隆之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    小林 利典君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         菊地身智雄君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 中井徳太郎君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十日

 辞任         補欠選任

  武村 展英君     鈴木 憲和君

  福田 達夫君     今野 智博君

  神山 洋介君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     福田 達夫君

  鈴木 憲和君     宮内 秀樹君

  馬淵 澄夫君     神山 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  宮内 秀樹君     武村 展英君

    ―――――――――――――

六月十日

 貿易保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、不正競争防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案につきましては、去る五日質疑を終局いたしております。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。真島省三君。

真島委員 私は、日本共産党を代表して、不正競争防止法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。

 本来、企業の私的財産権である営業秘密侵害行為への規制は、民事罰を中心とした救済措置の充実によって行われ、刑事上の処罰は抑制的、補完的な役割に限られるべきです。

 しかし、産業界は、営業秘密の流出は個別企業だけの問題ではなく国富の損失だとし、米国経済スパイ法を参考にした新法の制定を含めた検討を政府に迫ってきました。本法案は、この要求に応え、営業秘密侵害行為を国家的法益の侵害とみなして厳罰化を図るものであり、容認できません。

 反対理由の一つは、非親告罪化が営業秘密侵害を口実とした捜査当局の過剰な介入を引き起こすおそれがあるからです。そもそも、営業秘密は、その外縁や内容が定かでなく、処罰対象も不明確になりがちです。非親告罪化によって警察や検察の独自捜査が可能となることで、捜査や裁判の過程で、被害企業の意に反して営業秘密が流出する危険性が高まります。また、労働者の日常業務や労働組合活動、内部告発などの当然の権利の萎縮や、企業でキャリアを積んだ役職員の転職や退職を制約することにもなりかねません。憲法が保障する職業選択の自由にもかかわる重大な問題であり、看過できません。

 第二は、未遂行為に対する処罰の拡大が、実行の着手の解釈によっては処罰対象を不当に拡大するおそれがあるからです。営業秘密侵害罪に対しては、既に他の経済、企業犯罪と比べても重い量刑が科されており、これ以上の重罰化は罪刑の均衡を逸するおそれがあります。

 第三は、営業秘密侵害行為を受けた企業の立証負担の軽減策として盛り込まれている、被告企業に対する推定規定の創設が、被告の反証を困難にするのみならず、正当な事業活動を行う企業が濫用の被害者となる危険があるからです。

 営業秘密や製造技術が流出する背景には、多国籍企業の海外活動のあり方や国の産業競争力との関係、また大企業と労働者、取引先の信頼関係など、検証すべき多くの問題があります。電機産業に代表されるような無慈悲で一方的な黒字リストラや、下請事業者の知的財産を親事業者が奪い取るような下請いじめを改めることこそ、抑止効果を高める第一歩です。

 日米の刑法体系の大きな違いを無視して、強引に米国経済スパイ法のようなやり方を導入することは、権力が市民を監視する状況をもたらしかねないことを厳しく指摘し、反対討論とします。(拍手)

江田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、不正競争防止法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、鈴木淳司君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。神山洋介君。

神山(洋)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    不正競争防止法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 営業秘密侵害に対する刑事罰の強化に当たっては、事業者及び労働者の間に疑念や過度の萎縮が生じることのないよう、刑事罰の対象となる具体的行為類型を明確にするとともに、事業者及び労働者の日常業務や正当な行為が処罰対象とならないことを指針等により明確に示すなど、その趣旨・内容について、事業者及び労働者双方に周知徹底を図ること。また、企業内における営業秘密の取扱いについて、労使間の協議等により理解の促進が図られるよう努めること。

 二 営業秘密侵害行為に対する抑止力の向上という本改正が実効性の高いものとなるよう、関係省庁間の連携や取締体制の拡充・強化に努めるとともに、捜査当局においては、適確かつ迅速な取締りに努めること。また、今後の技術革新、諸外国の制度動向、経済社会情勢の変化等を踏まえ、さらなる営業秘密の保護強化に向けて、「営業秘密管理指針」を含む営業秘密の保護の在り方等について不断に調査・検証を行い、必要に応じて見直しを行うこと。

 三 中小企業の技術力が我が国産業の強みであることを踏まえ、中小企業の保有する営業秘密が不当に流出することのないよう、営業秘密の流出防止対策だけでなく、オープン・クローズ戦略をはじめとする知的財産戦略について普及啓発を行い、相談体制の充実・強化など中小企業の実態に即した適切な措置を講じること。

 四 政府は営業秘密をはじめとする知的財産の重要性に鑑み、アジアをはじめ他国に対して、営業秘密侵害行為に対しての取り締まり強化や、法制度の整備等を強く働き掛けること。また、制度を早急に確立されるように支援すること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

江田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、宮沢経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮沢経済産業大臣。

宮沢国務大臣 ただいま御決議のありました本法案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

江田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

江田委員長 次に、経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房審議官山崎伸彦君、農林水産省農林水産政策研究所次長岩瀬忠篤君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官井上宏司君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官寺澤達也君、経済産業省大臣官房審議官松永明君、経済産業省大臣官房審議官平井裕秀君、経済産業省大臣官房審議官赤石浩一君、経済産業省商務情報政策局長富田健介君、資源エネルギー庁長官上田隆之君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、中小企業庁次長小林利典君、国土交通省大臣官房技術参事官菊地身智雄君、環境省大臣官房審議官中井徳太郎君及び原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冨樫博之君。

冨樫委員 おはようございます。自民党の冨樫博之でございます。

 本日、質問させていただきますことに感謝をいたします。

 我々は、電気事業法を改正して、六十年ぶりの電力システム改革を推し進め、電力の自由化、そして、新たな市場の創出、成長戦略につなげる活動に取り組んでまいりました。先般、第三弾の改正がこの委員会と本会議で可決され、いよいよその実現も秒読み段階に入りました。国民生活と企業活動に大きな影響を与える電力については、今後も注視し、前に進めていかなければなりません。

 国は、エネルギー政策の将来の需給見通しを策定しておりますが、原発に関して、私は、原子力規制委員会の審査基準に適合した原発は、安全性の確保を最優先にして、国の責任において再稼働を進め、重要なベースロード電源として活用すべきと考えております。また、再生可能エネルギーについては、化石燃料の輸入増大やCO2対策の観点から、積極的にその導入を推進していくべきと考えております。

 そこで、私は、再生エネルギー、特に風力発電と送電網整備を中心に質問させていただきます。

 まず初めに、風力発電の意義について、経済産業省に質問をいたします。

 再生可能エネルギーの最大限の導入は、重要な課題と考えております。FIT制度導入後、太陽光に偏った導入が進んでおりますが、国民負担を考えてみても、大規模に導入すれば低コストで発電できる風力発電の積極的な促進を図ることが重要だと考えています。

 エネルギー政策や産業政策、そして地方創生の観点から、風力発電の持つ多面的な意義について、経済産業省の認識をお尋ねいたします。

木村政府参考人 風力発電の意義でございますが、御指摘のとおり、エネルギー基本計画におきまして、「大規模に開発できれば発電コストが火力並であることから、経済性も確保できる可能性のあるエネルギー源」と位置づけられておりまして、非常に重要な電源であるというふうに考えてございます。

 また、風力発電は一、二万点の部品による組み立て産業であるということで、例えば風車のブレード、羽根でございますとか軸受け、発電機、あるいはタワーとか、さまざまな部品、素材産業の集積が必要でございますし、それに加えまして、その他メンテナンスでございますとか、あるいは送電線、系統連系、運用設備の新増設、あるいは土木建設工事といったさまざまな裾野を有する、産業や雇用への波及効果が大きい事業であるというふうに考えてございます。

 再生可能エネルギーでございますけれども、御指摘のとおり、これまで運転開始までの期間が比較的短い太陽光発電中心の導入が進んできております。今後、風力発電、ほかの再生可能エネルギーを含めて、バランスのとれた導入に向けて引き続きしっかり取り組んでいく、このような認識でおるところでございます。

冨樫委員 次に、風力発電の意義、地方創生の観点について、内閣府に質問をさせていただきます。きょうは、小泉政務官、よろしくお願いをいたします。

 先ほどと同様な質問となりますが、特に部品点数の多い風力発電は裾野産業の広がりも大きく、地域の産業、雇用の発展にもつながると考えております。ポテンシャルの高い秋田県では、地域を挙げてその導入に取り組むと同時に、関連産業の集積や石炭火力発電あるいは地熱発電、そしてまたバイオマス発電の新規参入構想を含めて、さまざまな展開を見せております。

 産業政策の観点だけでなく、地方の特性を生かしたこのような取り組みを地方創生や雇用創出という観点から国としてどのように光を当てていくのか、お尋ねを申し上げたいと思います。

小泉大臣政務官 おはようございます。冨樫先生には、秋田県に行ったときにもお世話になりました。

 秋田県の取り組みというのは大変先進的な取り組みが多くて、例えば風力に関して言うと、風の王国プロジェクトというのがあります。大潟村、そして秋田県の沿岸に千本の風車をつくろう、そういった大変野心的、画期的な目標を立てて頑張っています。最近では地熱の取り組みも進んでおりまして、もともと秋田県民の皆さんの再生可能エネルギー導入に対する理解が大変深まっている、そういうふうに認識をしています。私も近々秋田に視察に行く予定がありますので、また改めて、そういった地域の皆さんとも意見交換をさせていただきたいと思っております。

 そういった観点からも、地方創生も、雇用創出という部分においても、また地域資源を有効に生かしてその地域の活力につなげていくという観点からも、再生可能エネルギーの導入というのは地方創生においても重要である、そういった認識のもと、昨年末に策定をした国の総合戦略の中に再生可能エネルギーの導入ということをしっかりと位置づけて、各省と連携を緊密にして、これからも導入を支援してまいりたい、そう考えております。

冨樫委員 小泉政務官、どうもありがとうございます。

 先ほど来、秋田県の取り組みについてお話をいただきましたけれども、まさに今、県でも総合戦略、地方創生の青写真を描いているところでありまして、きょうのこの話を早速知事にもして、あるいはそれぞれの市町村で取り組んでいるところにもお話をしながら進めていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、エネルギーミックスと風力導入推進への姿勢についてお尋ねをいたします。

 先日示された長期エネルギー需給見通しにおいては、風力発電の二〇三〇年の導入見通し量を一千万キロワット、一・七%としておりますが、一方、諸外国や業界の目標に比べて低過ぎるとの指摘を聞く機会もあります。

 風力発電を導入拡大していく上で、現在直面している課題と、それを克服するために検討されている対策について、お考えをお聞かせください。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 エネルギーミックスでございます。御案内のとおり、今回のエネルギーミックスは、安全性の確保を前提としながら、自給率をおおむね二五%まで改善する、電力コストは現状よりも引き下げる、欧米に遜色ない温暖化ガス削減目標を掲げるといった政策目標を同時達成する観点から検討をさせていただいたわけでございます。

 風力発電を含む再生可能エネルギーにつきましては、最大限の導入を行うという前提のもとで、今既に進んでいる案件、環境アセスメント手続中の案件のみならず、電力コストも勘案しながら、新規案件も見込んで、その導入見込み量の積み上げを行ったものであります。

 その導入量は約一千万キロワットとお話がございました。これは足元の導入量と比べますと実は四倍ぐらいに当たる数字でございまして、これは、多い、少ない、いろいろ議論はあるとは思いますけれども、我々といたしましては、この数字の実現というのは決してたやすい数字ではないと考えております。

 もちろん、国情の違いがありまして、諸外国と全く同じというわけにはいきません。我が国の適地の問題、風向の問題、風力の問題等々あるわけでございまして、我が国の実情に合わせた検討を行っていく必要があると考えております。

 具体的な課題、対策等でございますけれども、御案内のとおり、風力ということでは北海道あるいは東北北部といった風力発電の適地、こういったところは、一般的に言いまして人口が少ないということもあり送電網が脆弱である、あるいは十分な系統の調整力がないということがございます。したがいまして、風力発電のための送電網の実証事業、それから大規模な蓄電池の実証事業等々、風力発電を最大限受け入れるための取り組みを進めているところでございます。

 さらに、地域間連系線の利用ルールを見直す等々によりまして、風力発電の導入に向けて、目標の達成に向けて今後努力してまいりたいと考えております。

冨樫委員 今、環境アセスの話も出ていましたし、私も、環境アセスメントについて環境省にこれから質問させていただきたいというふうに思います。

 風力発電の導入拡大に当たっての課題の一つとして、長期間にわたっての環境アセスメントの問題があります。期間が長期にわたることから、事業への参入障壁や負担の増大との指摘があり、平成二十四年七月からFITが開始され、同年十月から環境アセスが始まったことから、風力事業ではいまだにFITや税制上の恩恵を得られていない状況もあり、このことは大変遺憾な事態と考えております。

 また、諸外国では五万キロワットや十万キロワットより小さい風力発電は規制の対象外としているのに、日本では一万キロワット以上を全て対象にしていることは、国際的に見てイコールフッティングを欠いており、さらに問題があると考えております。

 温室効果ガスや大気汚染物質の排出等、環境への影響がより心配されている石炭火力ですら十五万キロワットより小さいものは対象外としているのに、なぜ風力発電は小規模のものまで環境アセスの対象にしているのか、お尋ねいたします。

中井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、風力発電は、再生可能エネルギーの中でも導入ポテンシャルが最も大きく、低炭素社会の実現のために重要であるため、自然環境や生活環境への影響を回避、低減しながら、可能な限りその導入を促進する必要があると認識しております。

 他方、風力発電施設の設置に際しましては、騒音等による健康影響や、鳥類や景観等の環境影響が懸念され、苦情等が多く生じたことから、環境影響評価法の対象事業とされておるところです。

 規模要件につきましては、我が国における苦情等の発生状況や、動植物生態系への影響等を踏まえた環境影響の程度を総合的に鑑みて、第一種事業につきましては一万キロワットとしておるところでございます。

 諸外国につきましては、環境影響評価の仕組みや社会的状況等が異なることから、一概には比較は困難と認識しております。また、必ずしも我が国より規模要件が大きい国ばかりとは認識しておりませんが、いずれにいたしましても、通常三、四年程度を要する環境アセスメントの期間を最大で半減することを目指し、環境アセスメントの迅速化の取り組みを進めてまいります。

冨樫委員 引き続き質問をさせていただきます。

 環境アセスに関し、五月二十九日の参議院本会議で安倍総理は、こうした問題も踏まえ、環境や地元に配慮しつつ風力発電の立地が円滑に進められるよう、必要な対策を検討してまいりますと答弁をされております。

 環境省としても、総理の発言をしっかりと踏まえ、早急に取り組みを進めていただきたいと思うわけであります。具体的に、どのような取り組みをどのようなスケジュールで検討を行い、結論を出していくのか、環境省のお考えをもう一度お聞かせください。

中井政府参考人 まず、環境アセスメントの迅速化につきましては、既に平成二十四年度から環境アセスメント基礎情報整備モデル事業を実施しております。これは、環境省が調査いたしました環境基礎情報をデータベースとして整備、公表し、事業者が行うべき環境調査の一部を代替することで、アセスメントにかかる期間を短くするものでございます。平成二十七年度までに、二十三道府県、八十一カ所で事業を実施済みでございます。

 また、近年、地元との合意形成の難しさなどから風力発電事業が進まないといった例が見られます。そこで、自治体の主導により、地元や事業者などの関係者との調整等と一体的に環境配慮の検討を進め、風力発電等のための適地をあらかじめ設定しておくことで、事業者の環境影響評価手続などにかかる負担を軽減させ、アセスメントにかかる期間を短くするための事業を今年度よりスタートさせます。

 現在、公募選定されました四地域におきまして、モデル的に自治体主導による適地抽出を進めておりまして、来年度中に、その成果を取りまとめ、全国的に発信してまいる予定でございます。

冨樫委員 再度お尋ねしますけれども、やはり、総理が参議院の本会議場で答弁をした、これは大きな意味を持つのではないかなと私は思います。

 この環境アセス、三年から四年とか言われていますけれども、先ほど半減するという話もありました。でも、その年度とか、あるいは何年後とか、それが何も示されていないわけでありまして、やはり私は、今の成長戦略等々を考えても、風力発電に事業者が乗り込んでくるためには、環境アセスが時間が長ければ長いほどコストがかかる、こういうことが先ほど来私も話したとおりでありますので、もう一度、では、半減するんだったらいつまでに半減するのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

中井政府参考人 総理の答弁の重要性も認識しております。関係省庁と連携をとりながら、重要な課題であることは十分認識しておりますので、鋭意頑張ってまいりたいと思います。

冨樫委員 頑張るという意味合いはかなり大きなものがあると思いますので、再度、よくよくこれからも注視していきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、地域内送電網整備事業、SPCについてお伺いをいたします。

 環境アセスとあわせて、風力発電の推進に当たって大変深刻な課題が、この委員会でも議論のあった電力系統の問題だと考えております。再生可能エネルギーの事業が進むか否かは、この整備一点にかかっていると言っても過言ではありません。

 日本海側に風力発電の高いポテンシャルを有する地域は、北海道や、先ほど話があった東北地方北部、特に秋田県もそういうことでありますが、集中している一方で、こうした地域の送電網は脆弱なため、せっかく苦労して環境アセスを終了しても接続する送電網容量がなくて結ばれないというおそれがある、こういうことを大変懸念しているところであります。

 経済産業省では、北海道、青森、秋田等の重点地域を指定し、送電網整備を支援する事業を進めてきたと承知しておりますが、現在の事業の進捗状況等々を説明願いたいと思います。

関大臣政務官 今御質問のありました送電網の強化、非常に重要な項目でありまして、北海道そして東北の一部に風力発電の適地があるということで、場所が集中しているのもよく認識しているところでございます。北海道は二〇一三年から事業を開始しておりまして、東北の方は二〇一四年から事業を開始しております。

 まず、北海道の方から事業の状況を報告させていただきます。

 北海道は二〇一三年からやっておるわけですが、送電線のルート、この開発可能性の調査、土地利用区分、地目の確認、地権者の確認作業、そういうふうなところなどを今調査しておりまして、候補の地域内におけます環境影響への予備調査としまして、動植物の生態調査を実施してきているところでございます。

 今後は、具体的なルートを決定いたしまして、実際に用地交渉、用地取得を開始しまして、その後、鉄塔を建設し、送電線の敷設などを行う見込みとなっておりまして、先ほどお話もございましたけれども、着工に向けまして取り組みを加速させていきたい。

 実際、このような送電網の整備につきましては、事業をスタートしましてから十年程度はやはりかかるというところを本当に短くしていこう。よく考えながら加速を進めてまいりたいと思います。

 一方、委員からもお話ありましたが、東北地方、秋田県、青森県、こちらの方でございますが、送電ルートの開発可能性の調査に着手しております。今後、北海道と同様の手順で進めていく所存でございますので、またいろいろ御意見ありましたら聞かせていただきたいと思います。

冨樫委員 関政務官、どうもありがとうございました。スピード感を持って進めて、取り組んでいただきたいというふうに思います。

 送電網整備での電力会社や広域的運営推進機関の役割について質問をいたします。

 今いろいろと御説明をいただいた事業について、国が支援していることは理解をいたしました。こうした発電網の整備は、地域事情を知る各電力会社と再生可能エネルギーの発電事業者が協力そしてまた協調してその整備を進めるべきと私は考えます。

 東京電力では、群馬県等で希望者を募集して送電網整備を進めている例を聞きましたが、風力重点地域においてはどのような取り組みをしているのか。また、広域的運営推進機関や資源エネルギー庁はどのような指導をしているのか、お答えをしていただきたいと思います。

関大臣政務官 群馬県の方、これは東京電力なんですが、募集エリア1、募集エリア2ということで、それぞれ二十万キロワット、十一万キロワットということで募集させていただいているようなところです。

 このような取り組みに加えまして、本年四月一日に発足しました広域的運営推進機関、ここのところで、系統への接続を希望します事業者を広く募集しております。そして、応募してきました複数の事業者が系統の増強に必要な工事費をそれぞれの規模に応じて共同負担するという形で、送電網の整備を円滑に進めるようなプロセスをルール化しよう、ルール化をして見える化しよう、そういうようなところでございます。

 こうしたプロセスのルール化に当たりましては、国の方であらかじめ盛り込む内容を認可基準として示しております。例えば、広域的運営推進機関の業務運営の方法を定めた業務規程、また、全ての電気事業者が守るべきルールを定めました送配電等の業務指針、このような内容を示しております。さらには、広域的運営推進機関が策定しましたルールが国の認可基準に従って策定されているかどうか、また今度国の方が再度確認するというような形をとっておりまして、その認可をするという仕組みの体制で臨んでおるところでございます。

冨樫委員 どうもありがとうございます。

 八問目は、これは今度、宮沢大臣にお聞きをしたいと思います。今の話も全部関連していますので、ひとつよろしくお願いをいたします。

 一方、入札方式での送電網整備を進める東京電力の地域においても、最近では、導入量の増大によるローカルな送電線の問題から、より広域な、より上位の送電線や変電所の整備を求められている状況であります。このため、再生可能エネルギー発電事業者に限らず、地域全体の多数の関係者の間で費用分担をした上で、大規模な改修工事を進めなければならない難しいケースも出てきていると聞きます。これは今後、全国各地で直面する課題だと考えております。

 再生可能エネルギーに限らず、新規の石炭火力等のベースロード電源にも資するものであり、導入をしっかりと進めるためにも、費用負担をめぐる明確なルールの整備を含めて、役所が一定のガイドラインを示して取り組みを促進させるべきと考えております。

 現場では多くの事業者が系統整備の行方に不安を抱えている現状があり、今後どのようなルールを考えるのか、大臣の考えをお聞かせください。

宮沢国務大臣 秋田県が北海道と同様に大型風力発電の大変な候補地になっていること、また、秋田県が大変熱心に取り組まれているということは、先日、佐竹知事も大臣室に来られまして、るる御説明を受けまして、大変強く認識をしております。

 そして、今のお話でありますけれども、まさに、ことし一月の総合資源エネルギー調査会制度設計ワーキンググループにおきまして、発電設備を設置する者の費用負担ルールをより明確化するためのガイドラインを作成するという方向性を既に打ち出しております。

 これまでは新規参入事業者が負担するという原則でやってまいりましたけれども、一方で、託送料金にその電源も乗るということになりますと、まさに送電事業者にも利益があるというような点もこれからは考えていかなければいけないと思っております。

 今後、受益と負担の関係、効率的な送配電網の実現、事業者にとっての予見可能性などの観点から、発電設備を設置する全ての者にとって合理的かつ明確なルールとなるよう、ガイドラインを作成してまいりたいと考えております。

冨樫委員 大臣、どうもありがとうございます。

 いずれにしても、我々秋田県を含め、北海道、東北北部は、エネルギー資源になるべく、風力を初めいろいろな資源があるわけでありますけれども、いずれ電気ができたとしても、大消費地に運ぶためには、やはり電気の道路がなければ運ばれません。私は何も高速道路とは言いませんけれども、二桁、三桁国道でも結構ですので、そういう形の中でこれからも取り組んで、進んでいっていただきたいということを申し上げたいというふうに思います。

 次に、時間がありませんのでちょっと飛ばさせていただきますが、港湾内計画策定ガイドラインの概要について、国交省にお伺いをいたします。

 国土を海に囲まれている我が国では、将来に向けて、洋上での風力発電導入の検討を進めることが重要だと考えております。

 港湾エリアでの導入に際して課題となる船舶航行の安全性の確保や構造安定性等について、国土交通省での技術ガイドラインが検討されていることは承知しておりますが、今後及ぶであろう一般海域の設置に向けたルールづくりや技術革新、そして洋上風力の基点となる新しい港の姿を考えた整備についてのお考えをお聞かせください。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 洋上風力発電の導入につきましては、港湾空間が非常に大きなポテンシャルを有しているということから、既に、全国で七つの港湾におきまして、港湾計画の中でその導入エリアが位置づけられております。また、このうち、秋田港、能代港を初め四つの港湾におきましては、既に事業予定者が選定されているというふうに承知してございます。

 このような状況を踏まえまして、国土交通省におきましては、有識者それから関係機関から成る委員会を設置し、検討してまいりました。本年三月に、洋上風力発電施設の導入に関して、占用許可の審査の際の技術的な判断基準となります技術ガイドラインの案を取りまとめて公表したところでございます。

 国土交通省といたしましては、この技術ガイドライン案を踏まえながら、洋上風力発電の導入が円滑に進むように、適切な海域の管理や港湾の効果的な活用方策について、引き続き検討してまいりたいと考えてございます。

冨樫委員 時間の関係で最後の質問になるかと思いますけれども、これも大臣にお聞きをいたしたいと思います。

 政府一体となって、長期的な視点からの風力の導入拡大、こういうことについてお聞きしますけれども、洋上風力の導入に取り組んでいる姿勢を評価したいと考えております。二〇三〇年の風力発電導入量として一千万キロワットという数値は、直面する課題の現状を考えると妥当な水準と私は思います。再生可能エネルギーの導入は、二〇三〇年は通過点にすぎず、二〇五〇年、そしてそれより将来も見据えて化石燃料に頼らない自給電源を我が国に確保するという観点から、長期間の視点で進めていくことが重要と考えます。

 そういう観点から、将来的な洋上風力の導入拡大を含め、引き続き風力の導入拡大に政府として力を注いでいくべきと考えますが、大臣の見解をお願いいたします。

宮沢国務大臣 まず風力発電につきましては、委員御指摘のとおり、特に大型風力発電について言えば、コスト的にまさに火力に匹敵し得るというようなコストまで見込まれるものでございますので、しっかり導入をしていかなければいけないと考えております。

 御指摘のとおり、その適地が限られている、北海道また東北の北部というわけでございますけれども、送電網の整備等々というものをしっかりやって、大型風力というものを最大限導入するということを政府としても支援してまいります。

 一方で、二〇三〇年より先というお話でございますけれども、今二〇三〇年までをやっと見通し、あるべき姿を決めたところで、なかなか頭がそこまでいっていない部分もございますけれども、やはりずっと風が吹く地域でありますので、風力というものにつきましてさらにその先を見据えて、当然のことながら、技術の開発といったこと、それから低コスト化といったことを図りまして、普及拡大を図っていかなければいけないと考えております。

 一方で、洋上風力につきましては、若干、地上の風力発電に比べますと厄介な問題がございまして、まずコストというものが大変高いということ、それから、海域利用者との調整といったことも、今は実証実験を福島沖でやっておりますので海域利用者との調整は必要ないわけでありますけれども、恒久的に海上に風力を設置するとなりますと相当いろいろな交渉というものが当然出てくるということだろうと思っておりまして、コストの面というのも短期間では正直言ってなかなか解決できない話だろうと思いますので、長い目でしっかりと育てるような支援を行っていきたいと思っております。

冨樫委員 どうも、委員長の計らいで少し時間がオーバーしましたけれども、きょうの質問をこれで終わらせていただきます。

 本当にどうもありがとうございました。

江田委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。民主党の渡辺でございます。

 本日は一般質疑ということで、三点ほど時間の中で質問をさせていただければと思います。

 先日、私、先日というかゴールデンウイークですけれども、拉致問題のシンポジウムがございまして、ロサンゼルスに行ってまいりました。その後ニューヨークにも行ったのですが。

 ロサンゼルスに行きまして、たまたま泊まったホテルがリトル東京にありまして、周辺はリトル東京のモール街といいましょうか場所がございまして、ちょうどその向かいには日本の文化センターのようなものがありまして、有名なキティちゃんというキャラクターのでかい看板があります。ホテルのすぐ裏手のところには、それこそ日本発のキャラクターのブランドから、回転ずし屋さんから、居酒屋さんやら、山崎製パンなんていう普通の日本と同じようなベーカリーがあって、肉まんまで売っていて、非常に快適な思いをしたわけでございます。

 ですから、そこをちょっとぶらぶら時間があるときに歩いていまして、たくさんの国の方が、もちろん現地のアメリカの方もそうですけれども、いろいろな国の方がそこに足を運んで、物珍しそうに買い物をしたり、のぞいているところを見まして、大変、日本人としてうれしくなりました。

 そういうわけで、私自身、このクールジャパン政策については非常に関心を持っておりまして、ぜひとも、日本のよさ、また日本のきめの細かさ、日本人のつくったクラフト、工芸品の質の高さというものをやはり世界に広めていくべきだし、日本のサービスというものを本当に広めていってほしいなと。そういう意味では、クールジャパン政策に対して、私どももぜひ協力をして取り組んでいきたいというふうに思うわけです。

 そんなことで、先日発表されました、平成二十七年五月発表の「クールジャパン政策について」、これは経産省のホームページから、商務情報政策局生活文化創造産業課という大変長いところから出された、クールジャパン政策についての資料をいろいろ読んでおりました。

 そこで、クールジャパンの狙いとして、内需減少等の厳しい経済環境の中で、自動車、家電、電子機器等の従来型産業に加えて、衣食住やコンテンツ、アニメ、ドラマ、音楽等を初め、日本の文化やライフスタイルの魅力を付加価値に変える、日本の魅力の事業展開をする、これが狙いである。海外需要を獲得して、日本の経済成長につなげていくんだと。経産省の役割は、クールジャパン政策を民間のビジネスにつなげ、世界へ広げることというふうに冒頭書いてあるわけでございます。

 このクールジャパン政策の狙いの中で気になることがございまして、これまでの活動では継続的なビジネス展開をしているケースが少ないということが一つの現状として取り上げられていまして、そのためにも、今後の展開をどうするかということで、テストマーケティング等支援事業というのをやっております。

 一つ例を挙げますと、二十六年度のテストマーケティング等支援事業でございまして、経産省が民間のビジネスにつなげて世界に広げるという中で、今後のマーケティングをどう支援していくかということなんですが、ここにあります、タイの地上波ゴールデンタイムドラマを利用したタイ向け九州の物産輸出促進事業というのがございます。ことしの四月から始まるタイのドラマの発表に合わせて、九州の食材を紹介して販売するものだということでございます。

 ここで伺いたいのですが、これに対して補助金は幾ら出ているか、まずお伺いをしたいと思います。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 補助事業の補助金の額でございますが、二千五百万円ということでございます。

渡辺(周)委員 その二千五百万円は、中小企業の補助率は三分の二、その他の法人は二分の一というふうにテストマーケティング等支援事業のスキームの中にあるわけですけれども、その二千五百万円の内訳というものをここで言えますでしょうか。

富田政府参考人 お答えをさせていただきます。

 補助金交付額二千五百万円の内訳でございますけれども、会場借料が約二百四十万円、それから輸送費が約四百六十万円、集客プロモーション費が約三百十万円、それから現地ニーズ調査費が約二百四十万円、それからイベントの運営費が約千二百五十万円という内訳でございます。

渡辺(周)委員 今確認をしましたけれども、会場の借り上げ料からイベントの運営費まで合わせて二千五百万円の総額でございます。

 この補助金というのは、どこから出ているお金ですか。

富田政府参考人 お答えいたします。

 経済産業省の一般会計予算、商務情報政策局に計上されている予算から執行させていただいております。

渡辺(周)委員 では、これは原資は税金ということでございます。

 それで、この促進事業の紹介がクールジャパン政策の経産省のホームページの中にあるんですけれども、このイベント、これはテレビのドラマと連動させて九州の食材の紹介と販売を実施するということでございました。

 その成果として、事業結果が書いてあるんですけれども、三日間でおよそ一万五千五百人の来場者だったと。売り上げが幾らだったかといいますと、ここに書いてあるんですね。よくこんなことを堂々と成果として書くなと思ったんですが、七万二千バーツ、二十七万円です。一万五千五百人の人が来て、売り上げは二十七万円。一人当たりでこれを割りますと、十七円なんですね。一バーツが四円とすると、五バーツ弱、四バーツ強なんです。

 ちなみに、タイで缶コーラが一本十四バーツ、ビールが大体三十バーツぐらい。コーラ一本ほども買ってくれなかったということで、これは非常に残念な結果なんです。わずか一人当たり十七円しか買ってくれなかった。

 これを堂々と事業結果として成果を書くのはいかがなものかというぐらい恥ずかしいんですが、二千五百万円の補助金を出して、残念ながら売り上げは一人当たり十七円、これはやはり失敗じゃないのかなと思うんですよ。これは間違いないですね、この数字は。

富田政府参考人 御指摘いただきました売上高については、御指摘いただきましたとおり二十七万円ということでございますが、この場で一言申し上げたい点としまして、この事業の目的でございますけれども、これは日本の魅力ある商品の海外販路開拓を目指す事業者の試験販売、PRを支援するものでございます。

 この事業としては、商品の売り上げを目的とするということよりも、こういう活動を通じて現地消費者のニーズを確認していく、それから商品の認知度を向上させていく、あるいは製品特性に応じた輸送方法だとかインフラ的な部分、そういったものの検証、あるいは効果的なPR方法など、こういったものを検証することで本格的な事業化につなげていくということを目的としております。

 それで、今回の成果の私どもなりの評価でございますけれども、確かに売上高としては二十七万円と大変少ないというふうな御指摘、御批判がございますでしょうけれども、来場者は一万五千五百人を超えたということと、それから、何より現地のテレビあるいは新聞で非常に数多く報道されまして、広告費に換算をいたしますと一億二千万を超えるような効果的なPRの手法であったということでございます。

 そういったことでございますので、決して私ども、国の予算として費用対効果にもとるというふうには考えてございません。

渡辺(周)委員 今、この資料の中にそのようにあるんですよ。五十を超える現地メディアでも大きく取り上げられ、広告換算効果はおよそ一・二億円と。しかし、括弧して補助事業者の試算と書いてあるんですね。

 補助事業者というのは、補助金を受けた人たちがそう言っているんですが、よくある、我々も水増ししてよく言うんですよ、主催者発表というものですね。本当は会場に三百人しか来ていないんだけれども、何か千人来たことにして、後援会の総会はよくそうやって書いたりするんですけれども。

 現実問題、これは経産省は試算していないんですか。つまり、公金を使ってこれだけの事業をやっている以上は、やはり経産省としてそれをフォローアップしないと、売り上げはちょっと残念な結果ですよ、これは一%、入場者数の、残念ながら一人やそれぐらいしか買ってくれなかった。

 では、この補助事業者が試算した一・二億円をもってして広告換算効果というのはこれだけあったというんですけれども、ちょっと伺いたいのは、こういう、よく言われる広告換算効果というのはどうやって調べるんですか。

 それと、経産省としては、補助金を受けた人たちの言い分だけをそのまま成果として書いていますけれども、経産省としては把握していないんですか、どういう効果があったかということを。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘をいただきました広告換算の数字でございますけれども、確かに、事業者の一員であるリサーチコンサルティング会社が行ったものでございます。ただ、換算に当たりましては、その積算の根拠をしっかり私どもに御提示をいただいた上で内容を確認させていただいております。

 例えば、テレビの広告換算値につきましては、現地のニュースあるいはテレビ番組で取り上げられた時間を把握いたしまして、それに現地での広告費単価といったものを掛けて算出をする等、そういった客観的な根拠に基づいて試算がなされたということを私どもは把握をしているところでございます。

 また、報道された媒体につきましても、いろいろな手法を使いまして確認をいたしておりまして、資料にもございますとおり五十以上のメディアで確認されてございますが、ニュースですと十四以上、あるいはウエブでも二十、それから新聞では六、雑誌で五以上と、これは事業直後の数字でございまして、現時点に至るまでの累計のマスコミの取り上げは百五十を超えておりますので、非常に、私どもはそれなりの効果があったというふうに考えております。

渡辺(周)委員 いろいろ見方はそれぞれだとは思うんですけれども、やはりここには公金が使われていますから、当然、どれだけメディアに露出したとか取り上げてもらったかじゃなくて、先ほど最初におっしゃったように、これは売り上げを目的としたものではなくて販路を拡大していくものなのだというふうにおっしゃっていました。では、その成果というものは今どうなのか。

 もっと言いますと、この事業自体の呼びかけが、これもやはり過去のホームページにあるんですね、このプロジェクトの。「実施内容とスケジュール」と非常に綿密に、二〇一四年の六月の上旬から始まって、タイのバイヤー、サプライヤーと打ち合わせ、輸出物産のFDA登録、HSコード取得云々、タイの物流関係企業との調整その他もろもろ、ずっと書いてあって、報告書の作成まで。

 でも、これはなぜか番組が始まる前に報告書の作成ができているんですけれども、大分前のめりで、こういうプロジェクトの概要で促進事業の案内をした。それで、それによって募集が行われた。これだけのことをやりながら、残念ながら、今のところ華々しい成果が出ていないんだけれども。

 そもそも、この事業の採択というのは誰がどうやって決めるんですか。例えば、その見通しが本当に甘くないのか、本当に現地のことを考えたら、そんな甘い見積もりで大丈夫なのか。やはり何らかの形で、私は、公募を開始して受け付ける時点で必要なことだとは思いますけれども、その点についてはどういう手続、仕組みになっているんですか。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 この事業につきましては、公募により提案を事業者から出していただいた上で、第三者の有識者から成る委員会を構成いたしまして、その委員会の中で厳正な審査を行って採択をしているということでございます。

渡辺(周)委員 こうした事業をこれからもやっていくと思うんですよ。その中で、第三者というのを、そこには当然、経産省のしかるべき人間が入って、公金を使って行うわけですから、それは第三者の民間の会社任せにしてやるというわけにはいかないと思うんです。

 そこはどういう仕組みになっているんですか。また、そのやりとりについては何らかの形で公表されているんですか。なぜその会社が、あるいはその団体が採択をされたかということについてのやりとりについては、それは公表されているのでしょうか。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど第三者委員会と申しましたのは、経産省から見て第三者ということでございます。もちろん、事業者等、利益相反に係るような者は、一切委員の中にはメンバーとして入ってございません。そういう意味で、公正中立な審査ができる体制でもって審査を進めているところでございます。

 ただ、審査委員のお名前あるいはそういったプロファイルを公表するということはやっておりません。これは、審査の公平性、透明性を図る上で、事業者の方から見て、審査委員が公表されていますと、そういった事業者の方のアプローチがあったり、かえって公正をゆがめる可能性がございますので、そういった意味からも公表はいたしていないというところでございます。

渡辺(周)委員 これは民間の団体ですよね、もう既に窓口としてはありますけれども。民間の団体に任せて選定をさせて、その上で、どのようにして選ばれたかということについては、今おっしゃったように公表はされないということなんですけれども、そういうことでよろしいですか。

 民間の団体ですね、民間の団体が委託を受けて、そこで、こういう補助事業があって、海外展開の補助事業がある中で、そこにお任せをしているということなんです。経産省は入っていないというんですけれども、そういうことで理解してよろしいですか。

富田政府参考人 お答えを申し上げます。

 ちょっと私のお答えが舌足らずでございましたが、この事業は、民間に委託をして進めているわけではございませんで、経済産業省が直轄で進めているものでございます。したがいまして、委員会も経産省として設置をしているということでございます。

 経産省から見て公正中立、第三者的な位置づけということでございますので、先ほど私が申し上げましたが、その委員会のメンバーとして経産省の人間が入っているわけではないということを申し上げたところでございます。

渡辺(周)委員 もう一回伺いますけれども、このクールジャパンの政策について、私は決して否定をしているわけじゃないんです、むしろ積極的にやるべきだと思うんですが。であるならば、たくさんの方がこのプロジェクトを利用したいと思うんですね、三分の二まで出してくれるわけですから。

 先ほどあったように、大変な、打ち合わせも綿密にやってくれて、しかも、さまざまな、会場の借り上げ料から輸送に至るまで、一番負担となるところを三分の二も出してくれる。だとすれば、大勢の方がこのプロジェクトを利用したいんだけれども、どうやってこの会社が選ばれて、どうしてこの団体といいますか組織体が選ばれて、これが選ばれなかったのかということについては、やはり、私は、公正性という意味では、何らかの形でどこかで公開されていないといけないと思うんですが、その採択に至るまでのプロセスについてはどこかで公表されていないんですか。もう一回聞きます。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 国の事業として公募によって採択をするということでございますので、公募の際に応募要項というものを一般にお示ししまして、その中に採択の基準、そういったものを明記いたしております。

 その中で、提案のあった事業者の方々を有識者がそれぞれ評価をいたしまして、それでその基準に照らして十分な成果が見込めるかということを委員会のメンバーに御判断をいただいて採択をするということでございます。

 ただ、採択結果につきましては、採択された方、されない方、いろいろなお立場の方がおられますので、その採択結果そのものの内容を、あるいはどういう評価であったかというようなことを一般に公表するということはやっておりません。

渡辺(周)委員 採択されなかった方のことを、おたくはこういう理由で採択されませんでしたと本人にお伝えすることはあるとは思うんですよ。でも、それを公表しろとは私だって言っていない。ただ、採択されたのはこういうことがそろっていたから採択されましたよということをやらないと、それを見て、落ちた人は、そんなんだったらうちの方が条件よかったじゃないかということになるんですよ。

 つまり、どういう採択基準で、どうしてこの人たちは選ばれたのか、それについては、やはり結果について公表すべきじゃないですか。振り落とされた人の話まで、こういうわけでこの人はだめでしたということは書くことはないと思いますが、その人たちの名誉のために。それについてはどうして公表していないんですかという話をしているんです。

富田政府参考人 私が公表していないと申し上げた意味は、一般に広く公表していないという意味でございまして、もちろん、応募をしたけれども採択されなかったという事業者の方々から、どういう理由で採択されなかったのかということでお問い合わせがあれば、それはしっかり御説明をするということで対応させていただいております。

渡辺(周)委員 いや、だから、採択された理由をやはりどこかで公表しなきゃいけないんじゃないか、公金を使っている以上は。それは、私的な金で、私の部分だったらいいんですよ、プライベートセクターの話ならば、そこまでやらなくても。ただ、税金を使った補助金を出している以上は、どうしてこの人たちが選ばれたかということは、その採択されたプロセスについては出さなきゃいけないんじゃないですかと言っているんです。出せないんですか、それは。

富田政府参考人 採択の基準につきましては、先ほど御説明をさせていただきましたように、応募要項の中に明確に定めております。

 具体的に申し上げますと、応募書類が事業の目的を理解した上で作成をされているかとか、事業の実施方法、実施のスケジュールが現実的かとか、あるいは事業を遂行するための資力、資金調達能力を有しているかと、かなり細かい審査基準を設定いたしまして、それを広く一般に公表させていただいております。

 その基準で個々の案件がどのように評価をされたかという評価内容そのものについては、事業者のいろいろな事業上の秘密等もございますので、そういったことも配慮して、評価の評点そのものについては公表していないという意味でございます。

渡辺(周)委員 だから、公募の中身については、それはここにあるんだから、ちゃんと申し込みのフォームがあるわけですよ。それはわかっています。それにかえて、選ばれたということについて、この業者が採択された理由というのは、やはり何らかの形で公表しなきゃいけないんじゃないか。別に、その会社の、その団体の事業計画から資金計画まで出せと言っているわけじゃないんです。その点を聞いているんですよ。話をすりかえないでください。そのことを言っているんです。

 どうして、税金を使って、ここまでやるクールジャパン戦略のこれだけのプロジェクトがあるのならば、なぜこの会社が、このグループが、あるいはこの組織体が選ばれたかということをちゃんと発表しなければフェアじゃないんじゃないですかと言っているんです。それをもう一回。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの今までの運用としては、先ほど申し上げたとおり、そういった公表をしていないということでございますけれども、今委員が御指摘いただきましたような、まさに国の公的費用を使って事業を行っていく、その選定のプロセス、できるだけ透明性を持って、あるいはできるだけ一般の方にわかりやすくという御指摘だと思いますので、今後の運用でどのようなやり方があり得るか、検討を進めさせていただきたいというふうに思います。

渡辺(周)委員 これは、クールジャパンの海外展開ということは後押ししますけれども、プロジェクトも精査をして、その成果を検証してやらなかったら、結局お金出しっ放し、やりっ放し。何だ、結局、その成果は全然検証されないまま、どこへ行っちゃったんだろうということになってしまうわけでございます。

 ぜひ、透明性を上げていただいて、その成果をきちんと、どういう究極の目的である販路開拓ということに至ったのかということは数値も含めてしっかり出していただきたいと思いますし、また、これは改めてフォローアップを我々もこの委員会の中でしていきたいというふうに思います。

 ちょっとここで時間を割きましたので、改めて、またちょっと質問の内容を変えますけれども、一つ残りの時間の中で、スポーツビジネスを核とした地域活性化ということについてお尋ねしたいと思います。

 これは、平成二十一年の三月と平成二十二年の三月に、経済産業省の関東経済産業局がスポーツビジネスについての調査をしているんですね。二十二年三月の方は、「スポーツビジネスを核とした地域活性化フィジビリティ調査」。フィージビリティーというのは何かといったら、どうも実現可能性という訳のようですが、こういうものを出しているんですね。

 それで、今プロスポーツにもヒアリングをしていますけれども、まだマーケットとして大きくない、草創期にある、例えばJリーグの下部組織であるとか、あるいはバスケットボールであるとかバレーだとか、さまざまなスポーツがあります。

 この経産省が出した報告の中でいろいろな指摘があるわけですが、メリットとしては、やはり集客交流、スポーツツーリズム。これは、世界のツーリズムの中の一〇%に当たるのがスポーツ分野である、その金額たるや五兆円を超えておりまして、当時の換算でございますけれども、あると。日本においてはまだまだこの点についてのマーケットが、これからできていかなければいけないんだというような指摘でございます。

 その上において、スポーツのいわゆるビジネスとして、もちろんアスリートがひたむきに頑張るから、当然そこにみんな感動して、ファンになり応援しようと思うわけですけれども、チームが強くなったりするのは、チームやあるいは個々の編成の方針で戦力を強化したりレベルアップしていくんですが、ただ、スタジアムの運営であるとかあるいはそれ以外のマーケティング、地域に対しての貢献ということは、これまた残念ながらそこまで、地方のスポーツという、運営しているところは限られた財源と人材でやっている、そういう現状があるわけでございます。

 そこに、これから、健康づくりという意味でのスポーツは厚生労働省なんだけれども、それでまた、体育という意味においてはこれは文科省ですけれども、一つのスポーツコミッションというんでしょうか、トップチームの地域密着活動を支えるという意味において、経産省として今後どのような機運を高めていくか、また取り組んでいくかということについて、お答えをいただきたいと思います。

宮沢国務大臣 私も実は、先週の土曜日、地元で広島カープの試合を見に行っておりまして、予想に反して最下位にいるんですけれども、大入り満員でございましたし、残念ながら負けた試合でしたけれども、最後の最後まで観客はほとんど帰らない。そして、カープ女子といって東京からも応援に来てくれるといった意味で、しかも、これがスポンサー企業のない球団でありまして、ある意味ではまさに理想的なスポーツビジネスをやっている球団だと思っております。

 一方で、ほかのプロ野球球団になると、スポンサーがあるとか、一方、Jリーグになりますと、まさにビジネスとしてきっちりでき上がっているところがほとんどであるといった意味で、日本は少し実業団等々といったようなことが多くて、なかなかいわゆるスポーツビジネスというものが育ってこなかったわけですけれども、やはりこれからは、おっしゃるように、海外からの観光客も含めて、スポーツビジネスをしっかりやっていく素地といったものを、文科省、厚労省と協力しながら我々も相当知恵を出していかなければいけないのかなと思っております。

 先ほど御質問があったクールジャパンの関係の補助金でも、一つはJリーグの関係で、東南アジアでJリーグを広めるといった意味もあってマーケティングをしたというような事例もございますので、そういった意味も含めて、まさにこれから日本においてもしっかりとしたスポーツビジネスが根づくような、そういう知恵を経産省としても積極的に出していきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、鈴木(淳)委員長代理着席〕

渡辺(周)委員 時間が来たので終わりますけれども、やはりスポーツの、見るスポーツ、支えるスポーツということで、公共財、広告塔としてやはりしっかり売り出していく。それによって、私は経産省の役目もあるんじゃないかと思いますので、同じカープファンとして、ぜひ大臣の御活躍をお祈りしたいと思います。

 以上です。

鈴木(淳)委員長代理 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 六月一日、第十回長期エネルギー需給見通し小委員会が開かれました。そこで、かねてより議論がなされていたエネルギーミックス、二〇三〇年、この断面におけるエネルギーミックスの最終案が提示ということで、原発の比率は二〇から二二%と示されました。

 これについて、たびたびこの委員会でも私は質疑をさせていただいていますが、一つ一つ検証していきたいと思います。

 政府は、宮沢大臣にお尋ねしましたが、再三にわたって、原発の新増設やリプレースは現時点においては想定していない、このように説明をされてこられました。また、前回の質疑でも、いわゆる原発の固定価格買い取り制度に類するものということでCfDの話をしたところ、大臣からは、「CfDであり、原子力の発電コストを何らかの形で消費者に負担させるという制度について、少なくとも私が経済産業省の責任者である間に、そういうものの検討を指示するとかいうことは一切行うつもりはございません。」と明言をされました。

 こうした中で、経産省は二〇三〇年の原発比率、震災前は二八・六ですから、数%しか下がっていない二〇から二二という数字を出しているわけでありますが、大臣、改めてお尋ねいたします。この二〇から二二%という原発比率を具体的にどうやって達成していこう、このようにお考えなんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

宮沢国務大臣 エネルギーミックスは、これまでも申し上げてきておりますように、二〇三〇年の電源構成であり、エネルギー構成の見通しであり、あるべき姿、こういうふうに申し上げてまいりました。

 そして、前回も議員から、二二から二〇といったことについて、いろいろな角度から御質問をいただいたところでありますけれども、前回申し上げましたように、まず、再稼働するかどうか、また四十年を超えて延長するかどうかの判断は事業者にしていただくことになります。そして、事業者が申請した後、規制委員会において新しい規制基準において審査をして、適合されたと認められたものについては、再稼働であり、延長を進めていくというのが私どもの方針であります。

 そして、その中身がどうなるかということは、これはまさに事業者がどう考えるか、また規制委員会がどう考えるかということにかかってくるわけでありますけれども、少なくとも、事業者の方には相当いろいろな意欲があるということを考えますと、もちろん規制委員会の審査いかんではありますけれども、さらに稼働率を高めるということを加味すれば、二〇から二二といったものは実現不可能なものではないと考えております。

馬淵委員 いわゆる再稼働、そして運転延長、あと稼働率を高めるというのもお話ありました、これはいろいろな事情がありますけれども。この三つ、一番重要なのは再稼働と運転延長である、これは不可欠の前提だということでよろしゅうございますか。イエスかノーでお答えいただければと思います。

宮沢国務大臣 そのとおりでございます。

馬淵委員 そこで、少し事務方の方にお尋ねをします。

 今おっしゃった前提において、二二から二〇、どっちから読んでもいいんですが、二〇から二二でもいいですが、これを達成していくというその可能性の検証をしていきたいんですが、我が国に存在する原発の中で、廃炉済み、そして廃炉決定したものを除いて、建設中のものを含めると合計何基でしょうか。お答えいただけますか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 端的にお答えしますと、四十六基となります。

馬淵委員 建設中の三基を含む四十六基ということになりますね。

 その中で、原則から確認をしていきたいんですが、仮に、今後この既存原発が全て審査をクリアして、全て再稼働をしていく、そして炉規法のとおり、これらの原発が順次四十年、いわゆる運転制限のそのタイミングが来たときに、運転を終了して、延長しなかったという前提をとるとしますと、二〇三〇年段階の稼働原発は何基になりますか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇三〇年一月一日時点で四十年未満ということになりますと、これは一九九〇年以降に運転が開始されたものとなりますので、先ほどの建設中の三基を含めた四十六基のうち二十三基が該当いたします。

馬淵委員 ありがとうございます。

 二十三基の運転延長をしなければ、二〇三〇年現在、その二十三基は動いているという前提になります。

 この二十三基、二〇三〇年のときに動いているものという想定でいきますと、これは発電設備容量を全部足していきますと二千五百三十六万キロワットになります。政府は、今回の発電コスト検証ワーキンググループの試算では、設備利用率を七〇%として計算しておりました。これらを計算しますと、合計の年間発電電力量は一千四百八十二億キロワットアワーとなります。そして、二〇三〇年の発電電力量を、これも長期エネルギー需給見通し小委員会のスタンスと同じく一万六百五十億キロワットアワーとしますと、二〇三〇年の発電電力量に占める原発比率というのは一三・九%になります。

 お手元に資料を配付させていただきました。これは私の事務所で作成したものでありますが、運転延長がない前提で全ての原発が再稼働を行う、そして二〇三〇年、この段階では、ここにありますように、一三・九%、すなわち政府試算には全く及ばないということになります。また、実際には、再稼働、今私は全基がというふうに申し上げましたが、順調に進むという保証はございません。

 そんな状況の中で、現状では、いわゆるPWR原子炉、これについては、新規制基準に適合すると規制委員会が判断した原発は現在五基です。一方、国内炉の半数近くを占めるBWR、これがどうかといいますと、規制庁の事務方にお尋ねいたしますが、いわゆるPWRよりも古い、旧式の炉が多いBWR、これは審査基準をクリアした原発は現在何基でしょうか。

櫻田政府参考人 お答え申し上げます。

 BWR型の原子炉施設に関する新規制基準への適合に係る審査につきましては、現在、七つの事業者、八発電所の九基について、厳正かつ速やかに審査を進めているところでございますが、現時点で審査が終了したというものはございません。

馬淵委員 そうですね。現時点では一基もありません。

 こういう状況で、私、この委員会でも大臣と議論させていただきましたが、いわゆる東電の柏崎刈羽、BWR型炉です。これに関しては、フィルターつきベントの問題がありまして、装置の設置をめぐって一旦不適合となり、まさにこれからということになるかもしれませんが、審査の見通しはなかなか立っていない状況なんです。

 大臣のお立場では、規制委員会のことに対して言及されないということはよく承知をしておりますが、私、この試算で挙げましたように、全ての原発が再稼働したとしても、二〇三〇年、四十年制限制でそこで延長がなければ、一三・九%という非常に厳しい数字が出る。実際には恐らく再稼働も、BWRは今ゼロですから、なかなか厳しい状況だということを考えていくと、想定される原発比率というのはこれに比べればはるかに低い可能性がある。これは逆に言えば、容易に想像できるのではないかというふうに思います。

 では、次の仮定を考えたいと思います。

 四十年運転制限ルールの例外として、二十年の上限、これを運転延長という形で申請をする。その場合、運転延長審査というのが、これは新規制基準を満たしていることはもちろんとして、老朽化対策ということで、いわゆる二重の審査、二重のバリア、このように規制委員会でも言われています。こうした状況が生まれたときにどうなるかということなんです。

 これも規制庁の事務方にお尋ねをいたします。

 私は、特別委員会でも、いわゆる運転延長申請についての困難さということについて質問をさせていただきました。四月十六日、田中委員長に対して、原子力問題調査特別委員会におきまして、四十年を超えて運転するというのはなかなかに厳しいのではないかということでお尋ねをしました。そのときの委員長の答弁を端的にお願いします。私の質疑に対して、冒頭、「結論から申し上げますと、」ということで、どういうふうにおっしゃっていますか。お答えいただけますか。

    〔鈴木(淳)委員長代理退席、委員長着席〕

櫻田政府参考人 お答え申し上げます。

 今手元に当日の議事録がございます。

 「結論から申し上げますと、なかなか大変なハードルだろうというふうに思っております。」ということをお話しされた後に、新規制基準への……(馬淵委員「そこだけでいいです」と呼ぶ)はい。

馬淵委員 規制委員長は、はっきりと結論をおっしゃっておられます、「なかなか大変なハードルだろうというふうに思っております。」と。

 つまり、規制委員会としては、運転延長を申請されても、簡単に順次これが認められるということは見込まれないのではないか、こういうことを規制委員会委員長としても、繰り返し国会で答弁されておられます。

 そして、では、この運転延長という、今なかなか厳しい状況があるのかもしれないという中で、先ほど、四十六基のうち、運転延長をしなければ二十三基となりますが、逆に、二〇三〇年までに残りの二十三基が運転延長に該当することになります。

 そこで、大臣、二十三基が運転延長という状況が到来するわけでありますが、今掲げておられる数値二〇から二二というこの原発比率を維持するのに大体どれぐらいの基数が審査をパスしなければならないか、およその見当がおつきになられますでしょうか。いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 個別にどこの原発がということは、これからのまさに事業者の判断、規制委員会の判断でございますから、私の方からもちろん申し上げる立場にはございませんけれども、二〇から二二というものを達成するためには、三十基台半ばの原発が稼働しているということが必要かと思っております。

馬淵委員 今三十基というお話がございましたが、私、試算をしてみました。

 お手元の資料の中にその試算のベースをお配りしておりますが、四十六基の原発の合計の設備容量は四千六百十八・九万キロワットであります。これは単純計算で、概略でやりますよ、四十六基ですから四十六で割りますと、一基当たり百・四万キロワットとなります。

 これをもとにして計算をします。今申し上げたように、十二基以上、まずこの四千六百十八・九万キロワットに対して、十二基の原発が仮に動かなかったとします。運転延長ができなかったとします。ざくっと計算しますと千二百四・八万キロワット。したがって、差し引くと三千四百十四・一万キロワットです。

 そして、この三千四百十四・一万キロワットに計算式を当てはめます。年間三百六十五日二十四時間、そして稼働率は七〇%、これは長期需給の見通しの中でも用いられた計算数値です。これを計算しますと二千九十三・五億キロワットになります。この二千九十三・五億キロワットを、総量であります、資料3の一番下のところにありますが、一万六百五十億キロワットで割りますと、すなわち比率が出ます。この数値が一九・七%なんですね。

 つまりは、ざっくりした計算で、今大臣は三十基とおっしゃいましたが、残りの二十三基のうち十二基以上の原発が運転延長不可能になった場合には、二〇三〇年断面では二〇%を切るんですね。ざくっとした計算です。おおむね当たらずとも遠からずだと私は思います。つまり、運転延長に係らない原発全て稼働した上で、さらにハードルの高い運転延長審査が半分以上認められなければ、二〇%の達成ということは不可能なんですね。

 こういう状況だということを、大臣、御認識いただいた上で、次に、では全原発が運転延長した場合を想定してみます。

 仮に四十六基全ての原発が再稼働申請をクリアして、二十三基も、私は先ほど十二基がとまればもう無理だという数字になると申し上げましたが、二十三基も運転延長申請全部クリアすると想定したところ、この数字というのは、お手元の資料2にありますが、原発比率が二六・六%となります。これは、全て運転延長、これから先、廃炉という判断がないという前提です。しかし、既にことしの三月、自主判断で五基の原発の廃炉が決定しています。

 これは、報道によりますと、いわゆる原発の不採算に耐えられないと。これは報道ベースでありますが、例えば一つで見れば、これは関電の美浜の件でありますが、規制基準を満たすには一千億円超の安全投資がかかる、費用に見合う効果が得られない、出力が五十万キロワット以下と小さいから、このような報道も上がっています。

 採算が合わないからだというような状況の中で、今後、電力システム改革が進むわけですから、そうした全面自由化が進んで、過剰投資や不採算、こういった問題で自主廃炉が進むケースは想定されます。ここでも、十二基以上の原発の運転停止があれば、やはり二〇%未満となってしまうという状況が生まれることが十分考えられるわけですね。つまり、今申し上げたように、この二〇から二二というのが極めて高い数字であるということを私は申し上げたい。

 では、今、私は全部が運転延長になる可能性ということを申し上げましたが、そのようなことはなかなか難しいのではないかというのが、「エネルギーフォーラム」の二〇一五年六月号の記事にもそのような資料が載っておりました。ここでは一つ一つ細かくは申しませんが、例えば、欠陥を抱える格納容器、マーク1を採用しているとされている女川の一号機。また、この記事には、地元感情の問題がある福島第二原発の一号機から四号機、これは廃炉予備軍とされている。活断層問題などで先行きが極めて不透明な原発として、柏崎刈羽の一から七号機、浜岡の三から五号機、志賀の一から二号機、東海第二、敦賀二号機が挙げられている。これだけで十九基あります。

 この十九基を除いて、四十六から十九基を除いた二十七基が運転延長を含む再稼働を行ったとしても、年間の発電電力量は一千五百五十九億キロワットアワー。比率としては一四・六%にとどまるんです。私は、逆に言えば、現実的にはこれぐらいが妥当ではないかというふうに想定しています。

 このように考えると、大臣、二〇三〇年に原発比率二〇から二二を達成する、これは経産省で議論して決めようとしているんですね。大臣は常々、エネルギー問題は私が決める、経産省で決めるとおっしゃってこられた。こうした状況の中で、これは余りにも楽観的な仮定を何重も積み重ねる、こういう状況じゃないでしょうか。

 大臣、このような形で十分達成可能だと、こうした数字を試算してみてもお考えになられますか。いかがですか。

宮沢国務大臣 委員がおっしゃるように、決して易しい話ではないと思っておりますけれども、一方で、原子力規制委員長におかれても、四十年未満のものに比べればもちろん高いハードルということでありますけれども、それをパスする可能性を否定されているわけではもちろんございません。また、私どもは事業者の方とは、いろいろな情報をいただいておりますけれども、事業者側にはかなり高い意欲があるということを考えてみますと、決して達成できないと委員がおっしゃるようなことではなくて、達成できる可能性は十分あると考えております。

馬淵委員 お立場上、そう答えざるを得ないのはよくわかりますが、私は、これは客観的に見ても、どう考えても難しいと思いますよ。

 その上、実現可能性の低い目標であるということは明白だと私は思っているんですが、では、困難な状況を想定して、私が申し上げたように、セカンドプランというのを考えるべきじゃないでしょうかということなんですよ。

 そこで、このセカンドプランについて、六月一日の第十回長期エネルギー需給見通し小委員会。坂根委員長及び山名委員が、注目すべき発言をなされております。

 まず、山名委員は、仮に規制委員会が寿命延長を認めないケースが多発するということがあれば、そのときはそのときに、また新たなベストミックスのあり方を考える必要があるということにすぎないかと思いますと述べています。つまり、だめだったらそのときに考えればいいと、ある意味、開き直りにしか私には聞こえません。

 坂根委員長は、私は、このタイミングで一基も動いていない中で、その寿命延長とリプレースのどちらをとるかという話は、規制委員会が動き始めてしばらくたって、何年かたって、状況を見ながら判断する話であってと述べられています。先送りです。これはごまかしだとしか私には見えない。

 経産省として、このような状況で見通しが立たないことを認識しつつも、再稼働と運転延長、これが進む想定をもってリプレースは状況を見て議論をするということでよろしいんでしょうか。大臣、改めてお尋ねします。

宮沢国務大臣 現段階におきまして、原発につきまして、新増設、リプレースは想定していないという立場に変更は一切ございません。

馬淵委員 それは、繰り返しそのように答弁されているわけでありますが。

 では、私、セカンドプランと申し上げているんですね。先ほど試算をお示ししたように、非常にこれは実現達成困難な状況だと。そして今後、運転延長がなかなか進まない場合等々を考えて、そして新増設、リプレースも行わないということであるならば、では、大臣、翻れば、この原発比率の二〇から二二%を見直すということになるんでしょうか、いかがですか。

宮沢国務大臣 なかなか仮定の御質問にはお答えできないんですけれども、一般論で申し上げますと、三年ごとにエネルギー基本計画を見直すということにしております。そして、基本計画を見直した結果、エネルギーミックスを変更せざるを得ないという場合には、エネルギーミックスというものも変更されていくということになりますが、一方で、温暖化対策の目標のマイナス二六%、二〇一三年比というものは、これは国際公約ということになろうかと思いますので、その枠組みの中で見直しが行われていく、こういうことだろうと思います。

馬淵委員 CO2の問題は、私も、民主党の中では所管をしている立場でありますから、よく承知をしております。だから、私は繰り返し申し上げてきたんです。

 今、大臣は重要な発言をされましたよ。つまり、三年置きのエネルギー基本計画の見直し、もう既に一年たっているわけですから、二年未満で見直しのタイミングが訪れるわけです。

 繰り返し申し上げているように、運転延長もなかなか進まない状況等々、今後発生する場合には、当然ながらエネルギーミックスの見直しということが必要になってくる可能性が高いわけです。一方で、長期需給見通し小委員会の皆さん方は、原発比率を維持することが必要だと、繰り返し、委員の御意見として述べておられます。

 大臣、確認ですが、大臣は、そこは、見直す必要がある場合には、当然見直していかなければならないというお立場に立っているということでよろしいですね。他のあの長期需給の委員の皆さん方は、比率を維持することが重要だと述べられています。大臣はお立場が違うということで、そこははっきりと述べていただきたいんですが、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 まず、委員の発言につきましては、別にその委員の発言によって報告書が変わったということではなくて、ある意味では委員会の中で御自由に発言されているということで、我々を一切縛るものでは当然ありません。

 そして、先ほど申し上げましたように、一般論として申し上げれば、エネルギー基本計画が変わった、そしてその変更によってエネルギーミックスを変えなければいけないときにはエネルギーミックスの変更をする、こういうことでございます。

馬淵委員 大臣がおっしゃったように、エネルギーミックスは国際公約でも何でもありません。また、政府は閣議決定もしないということだそうですが、一方で、CO2削減に関しては国際公約であり、これは閣議決定して、まさにこの年末のCOP21に向けて、約束草案として固めていく作業です。だから、私は申し上げているんです。

 厳密な議論が必要なんですよ。先送りの大ざっぱな議論ではなくて、事業者が努力する、意欲的だ、あるいは委員会に任せている、そんな話ではなくて、一つ一つ厳密な議論を突き詰めていかなければ、二六%どころか、この約束草案、CO2の問題のみならず、何一つ決まらないことになってしまいかねないんですよ。

 大臣、私、この委員会で何度も何度も申し上げている。大臣にはその責任があるんです。このことをしっかりと大臣に受けとめていただかなければならないということを、私は、時間が参りましたけれども、申し上げておきたいと思います。

 今回の二〇三〇年のこの断面を、エネルギーミックスの議論、私から申し上げれば、残念ながら、大変穴の多い、ずさんな議論であったと言わざるを得ないということを最後に申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 きょうは、地元の中小企業の方々からいろいろお寄せいただいていることについて取り上げてまいりたいと思います。

 まず、厚生年金基金について尋ねたいと思います。

 平成二十五年に厚生年金保険法の改正案が成立して、厚生年金基金は実質的に廃止されるということが決まったわけであります。基金継続のためには積立準備金を代行部分の一・五倍以上とするというように、大変厳しい基準が設けられましたので、これは事実上解散しか選択肢はないというようなことになっております。

 この厚生年金基金解散に伴う代行不足分の納付によって、これは、企業経営上ということではなくて、経営者にとっては予定外というか想定外というか、思わぬ重い負担を課せられるということになっておりまして、中小企業がこのことによって厳しい状況に追い込まれかねないということでございます。

 まず、きょうは厚生労働省にお越しいただいておると思いますので、事実確認でございますが、これまでに解散を決めた基金の数、そこに加入している企業数、加入者数、そしてそれぞれの代行不足額、この数字についてお示しをいただきたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年三月末現在で現存いたします四百四十四基金のうち、三百八十三基金が解散または代行返上をする予定でございます。これらの基金の平成二十五年度末におきます加入企業数は七万四千七百五十八社でございまして、加入員数は三百二万人となっております。また、これらの三百八十三基金のうち、いわゆる代行割れ、資産が最低責任準備金に達していない基金が七十基金ございまして、それらの基金の代行の不足額は総額で二千四百億円となっているところでございます。

中根(康)委員 今お示しいただきましたように、七万社以上、三百万人以上の国民にかかわる問題である、極めて重要な課題であるということでございます。

 代行不足がなぜ生じたかということでいえば、これは一つ一つの企業の経営責任ということでは全くないわけでありまして、サブプライム問題だとか、リーマン・ショックだとか、そういう国際的な運用環境の変化とか、あるいは、もともと基金制度そのものが五・五%もの高利回りで設計されている、こういうようなことであったりするわけであります。

 そもそも、国あるいは厚生労働省は長年代行割れを事実上容認しておりまして、積み立て不足は長期的に回復していけばよいというようなスタンスであったと思います。それが、これは民主党も賛成をしたという法律ではございますけれども、法改正によって五年以内に解散をするという選択肢を余儀なくされているわけであります。

 その後つくられた政省令によりまして、代行不足分の返済にかかわる分割納付計画書をつくるようにということが決められたわけでありますが、これを出さないと連帯債務を負わされるということで、グループに入っている企業が倒産とか廃業とかした場合に、その倒産、廃業した会社の代行分まで強制的に連帯債務を負わされる、こういうことでございます。その企業においては、そのほかに代行部分を返済するための特別掛金というようなものも毎月払っているわけでありまして、これも払い続けて、加えて、代行不足分の負担額も上乗せをされる。

 一つ一つの七万社、三百二万人、それぞれの企業とか、あるいはそこに働く人たちにとっては何の責任もないというような状況の中において、これだけの負担を背負わされることになるわけでありまして、何でこんな目に遭うのかというようなことをおっしゃっておられる企業経営者も私の地元には幾つかあるわけでありまして、それも自然な感情であると思います。

 社会保険料もそうなんですけれども、基金の代行不足分の負担金、幾ら事業経営で頑張っても、いい技術を持っていても、ここから免れることはなかなかできない、そういう決まりになっているわけでありまして、このことによって中小企業の経営が厳しくなったり、場合によっては倒産、廃業ということに追い込まれかねないというようなことも聞いておるわけでございます。

 こういう厚生年金基金をめぐる問題について、これは厚生労働省にだけお任せしているということではなくて、中小企業の経営にかかわることでございますので、経産省としても何かこういう状況の中で苦しんでおられる中小企業に対して支援をするという考えはないかどうか、答弁をいただきたいと思います。

宮沢国務大臣 私も委員ももともと厚生労働関係が長かったわけでございまして、私も野党の終わりぐらいからこの厚生年金基金の問題はやってまいりまして、ちょうど、与党になって、当時同じメンバーだった田村大臣が担当大臣になられたということで、それまで自民党で温めてきていた改正を田村大臣の手でやっていただいた。

 もともと、制度におきまして、高度成長期、まさに経済が大きくなっていくときには成り立つ制度だったものが、経済が小さくなってくる、従業員も減ってくるという中でその制度を維持するということ、極めて小さい固まりで永久に年金を払い続けるということが本来可能かどうかといったこと等々。

 またさらに、おっしゃいましたように、五・五%という高い利回りを想定しているところが多くて、これ自体は、まさに、現在の従業員からいえば掛金が少なくて済む、一方もらっている人からすればもらう額が減らなくて済むということで、みんながある意味ではぬるま湯の中で、まさに豆腐が中に入って煮え立ってしまったような制度でありまして、今回大なたを振るったということは、正しい方向だったと思います。

 ただ一方で、そういう中におきまして、株がかなり上がったことによって随分皆さん楽になられてきておりますけれども、それでも厳しいところがあるということは確かでありまして、そういう企業、組合等につきましては、政策金融機関、中小機構を含めて、しっかりとそういうところの資金繰り等については応援をしていかなければいけないと思っております。

中根(康)委員 今大臣から、そういう企業については資金繰り面で応援をしていかなければならない、こういう御答弁をいただいたわけでありますので、ぜひ、今後、代行不足分の負担金の返済状況を厚労省と経産省がそれぞれ十分見きわめていただいて。

 このことによって企業経営が立ち行かなくなる、そうすると地域の雇用とか地域経済にも悪影響を及ぼすということにもなるわけでありますし、せっかくいい技術を持っていても、このことによって倒産するということになれば、国益を損ねるということにもなるわけでございますので、ぜひ、厚生年金基金をめぐる問題については、十分目を光らせてといいますか、見きわめていっていただきたい。

 必要な対策、資金繰り、場合によっては補助金、あるいは何か税制面で支援できないかというようなことを、経産省、厚労省、力を合わせて考えていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 厚労省につきましては、ここで御退席いただいて結構でございます。

 続きまして、日本年金機構の年金記録情報漏れ問題、これでマイナンバーも大丈夫かというようなことになっているわけでありますけれども、ことしの十月から市町村から全国民にマイナンバーが通知をされて、来年の一月から本格実施される、こういうマイナンバーであるわけでありますけれども、企業においても、まだまだ、制度の周知も、あるいはマイナンバー導入における必要な対応も進んでいないということであろうと思います。

 二〇一六年、来年の一月以降は、税や社会保障の手続でマイナンバーに対応する、従業員あるいは家族のマイナンバーの管理をしなければならないということでございますけれども、具体的に中小企業が行わなければならないマイナンバー制度への対応というのはどのようなものがあるか、お示しをいただければと思います。

関大臣政務官 平成二十八年一月から開始されるマイナンバー制度でございますが、中小企業を含めました民間事業者の方々につきましては、国税、地方税、雇用保険、健康保険、厚生年金などの手続を行う際に、税務署や市町村、ハローワーク、健康保険組合、年金事務所などに提出する書類に、従業員などのマイナンバーを記載するという手続が発生してくると承知しております。

 これに伴いまして、民間の各事業者様におかれましては、従業員などのマイナンバーを扱うための準備としまして、まず一つは、社内規定をつくっていただかないといけない、そして社内の情報安全管理体制の整備もあると思います。また、マイナンバーを扱うための会計システム、よく勘定奉行とか入れていらっしゃる企業もありますが、そういうふうな会計システムなどの改修など、こういうふうな対応が発生してくると見込まれております。

 我々経済産業省としましては、このようなマイナンバー制度に中小企業の人たちが対応できますように広報に努めているところでございます。ことしの三月にも、中小企業団体に対しましてそのような制度の周知徹底の協力を要請しました。また四月には、内閣官房と経産省が連携をいたしまして、中小企業団体や所管の団体向けの説明会を開催してきております。

中根(康)委員 今、政務官からお示しをいただいたような、中小企業が行わなければならない対応、これにおいて、企業においてはどれぐらいのコスト負担が想定されるか、初期費用あるいはランニングコスト、こういったものを、それぞれ今経産省として想定している金額をお示しいただければと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 マイナンバー制度導入によりまして中小企業が負担するのは、主には、社内規定の整備、そして社内の情報安全管理体制の整備といったようなこと、そしてまた、マイナンバーを扱う会計システムなどの改修に必要なコストというふうに認識をしております。

 社内の情報安全管理体制の整備につきましては、中小企業への過度な負担とならないよう、特定個人情報保護委員会が作成した事業者向けのガイドラインにおきまして配慮がされているというふうに承知をしております。

 一方、会計システムなどの改修に必要なコストにつきましては、企業によりまして、市販のパッケージソフトを利用されている企業であられたり、あるいは自社で独自のシステムを開発されている企業など、非常に状況はさまざまでございます。一概に改修に必要なコストを推定することは困難であることを御理解いただければと思っております。

中根(康)委員 これは、企業が自分の判断で行うというか、ビジネスの一つの稼ぐ、もうけるツールとしてというわけではなくて、政策的な状況の中で、ある意味強いられるコストであるわけでありますので、企業がどれぐらいマイナンバー制度に対応するために費用負担をしなければならないのか、それを強いられるのかということが全く数字的に示されないというのはいかがなものかというふうに思いますが、全然把握していないんですか、その数字を。

小林政府参考人 情報システムの価格は民間のサービスごとにさまざまでございますので一概には申し上げられませんが、例えば、パッケージソフトウエア、会計、人事の関係でシステムを入れていらっしゃるような方、この場合は、これもソフトウエアによりますけれども、物によっては、安いものでは四万円台のものからございますし、あるいは三十万、四、五十万といったようなものまでございます。

 そのほか、例えば、クラウドのサービスを使う場合におきましては、これはもう使われる状況によって全く値段が変わってまいりますので、一概には言えないというようなところかと存じ上げます。

中根(康)委員 今、四万円だとか数十万円程度の数字をお示しいただいたわけでありますけれども、これは中小企業全体でだと思いますけれども、初期費用だけで一兆円というような数字が報道されているというようなこともあります。従業員百人規模の企業を想定した場合の初期費用で一千万円、毎年の費用が四百万円という試算もあるわけでありますので、今、中小企業庁がお示しをいただいたような数字とはかなりかけ離れた数字が示されている。

 どちらが実態かということも含めて、これはもう少しマイナンバー制度導入ということに対して、中小企業の立場に立って、切迫感を持ってといいますか、事に当たっていただかないといけないのではないかなという今感想を持たせていただいているわけであります。

 もし報道等に示されているように、一兆円であるとか一千万円だとか四百万円だとか、こういうような経費がかかるということであれば、これは厚生年金基金も、先ほどの話もそうなんですけれども、法律がつくられたから対応しなければならない、やむを得ない、思わぬ費用負担であるということであるわけでありますので、これは中小企業庁としても十分実態を把握して、調査して、必要があれば、補助金だとか、あるいは税制上の措置などを私は行うべきだというふうに思っております。

 改めて、報道とかなり違う数字が出されているということと、中小企業の経営を圧迫するほど大きな費用負担が強いられる場合には、何か中小企業庁として支援をするお考えはないかというようなことについてお尋ねしたいと思います。

宮沢国務大臣 私も、その報道、一兆円という数字は承知しておりませんけれども、一兆円というのが中小企業だけだったら、とてつもないすごい数字だなという気がいたしました。ただ一方で、少なくとも私の地元からはそういう声が、中小企業を含めて、コストがかかって大変だというのは今のところ入ってきていないものですから、どの程度なのかなと思って今議論を聞いていたところでございます。

 ただ、コストが間違いなくプラスアルファでかかるということは事実だと思っておりまして、そういう場合に何が一番大事かといいますと、やはりそれは経済をよくするということが一番大事でありまして、アベノミクス、二年半でございますが、昨年は、中小企業を含めて、もちろん各社によってはそれぞれ違うわけでありますけれども、全体としては、中小企業も史上空前と言っていい利益を上げているという状況をつくり出すということがまず一番大事なことであります。

 またさらに、中小企業のまさに生産性を向上させるということも大事なことでありまして、これにつきましては、ものづくり・サービス補助金といったもので応援をしてきているところであります。さらに、資金繰りにいろいろ問題があるということになりますと、政策金融といったところでしっかりと応援をしていかなければいけないと思います。

 正直、一兆円を超える負担が中小企業に来るとなると、これから相当大きな話として我々の耳にも入ってくるのかもしれませんけれども、そのときにはそのときで、いろいろな知恵を出していかなければいけないんだろうと思いますが、何とかそういうことにならないで乗り越えていただきたいと思っております。

中根(康)委員 まだ大臣のお耳には直接地元の方からはいろいろな御意見は聞こえてこないということなんでしょうけれども、これはまだまだ、冒頭申し上げましたように、マイナンバー制度そのものに対する中小企業、あるいはもう国民全体と言ってもいいかもしれませんけれども、認識が広がっているわけではない、周知が広がっているわけではないということの中において、そこにある危機がまだ顕在化していないということだけなのかもしれません。

 したがって、これはもう厚生年金基金と同じように、繰り返しになりますけれども、もう想定外の、事業の失敗とか、何かの責任、事業者の責任とかというところではないところにおける新たな上乗せ費用負担でございますので、この点につきましても、ぜひ中小企業に、むしろ、経産省、中小企業庁として、マイナンバー制度導入について、いかがですかと積極的に問い合わせるぐらいの姿勢で臨んでいただきたいというふうに思います。

 このマイナンバー制度の導入で、法人あるいは給与支払いあり、社会保険未加入もしくは未納、こういう検索をすると、対象企業がすぐに出てきてしまうということにもなるようでありまして、社会保険料の未納などがある場合、時効である二年前までさかのぼって徴収をされてしまうというような心配といいますか、そういうケースもあり得るということでございます。

 その場合、もちろん、政府の財政、あるいは社会保険の財政そのものは助かるということになるわけでありますけれども、中小企業の経営にとっては、事実上、大きなダメージになるということでございます。

 払ってこなかったのがいけないというのが正論であろうとは思いますけれども、中小企業にとりましては、マイナンバー制度に対する対応策として、その初期費用あるいはランニングコスト、こういったものがかかる上に、今までちょっとおいておいた未納分まで一気に社会保険料の徴収がなされてしまうということになると、これもまた大変なダメージということになるわけであります。

 こういうマイナンバー制度導入に伴う企業経営の困難さ、あるいは、さかのぼり徴収による、場合によっては倒産ということについてはどのようにお考えになられるでしょうか。

関大臣政務官 そもそも論で、社会保険料でございますから、事業者の負担、これは雇用者としての法律上の義務でありますので、事業者はまず原則としましては社会保険料は確実に納付してくださいというのを我々もお願いしているところなんですが、中根委員おっしゃるとおりで、雇用を守る上でも、赤字でも支払い続けなければならないという意味合いを持つ社会保険料の負担が非常に重たいというふうな御意見を伺っております。

 そういうような中におきまして、我々経済産業省としましては、厚生労働省がどのような対応をとっていただいているかというのを認識している限りでは、起業、創業時に厚生年金への加入手続を確実に行うように促すとともに、納付期限を過ぎても社会保険料を納付いただけない事業者に対しては、直ちに差し押さえ等をするのではなくて、保険料の納付方法につきまして日本年金機構の職員の方々が相談に乗っていただいて、分割納付とか柔軟な対応を行っていただいているものと認識しております。

 我々経済産業省の方からは、厚生労働省の方に対して、そのような資金繰りに困っていらっしゃる中小企業、小規模事業者の方々にはきめ細かく対応していただけるようにというお願いをしているところでございますが、我々としましても、中小企業、小規模事業者の方々が苦しんでいる事情はよく聞いておりますので、相談に乗って、丁寧にそのような対応を、必要に応じて既往の貸し出しの返済条件の変更とかまでも含めまして、柔軟に対応していこうと思っております。

中根(康)委員 厚生年金基金、それからマイナンバー、中小企業者の責任でないところで大変中小企業に大きな経営の困難さを強いるという状況が続いております。

 もう一つ、消費税、あるいは円安、これも同じようなことだと思います。きょう質問を用意いたしましたけれども、もう時間がありませんので、そういったことにつきましてはまた次回にさせていただきます。

 最後に、外形標準課税でございますけれども、これも、取りやすいところから取るということで、中小企業に負担を強いるということではいけないということだと思います。

 来年度の税制改正に向けて、中小企業に対する外形標準課税の強化というものを、まさか経産省としては考えておられることはないであろうと思いますけれども、これは政府全体として、検討することすら私はだめだと思いますけれども、経産省としてはどのようにお考えになっているかお聞きして、終わりたいと思います。

宮沢国務大臣 まず申し上げておかなければいけないことは、経産省として、中小企業に対する外形標準課税を強化する、広げるということを主張したことは一回もございません。

 二十七年度、今年度の税制改正におきましては、外形標準課税につきまして、地域経済、企業経営への影響を踏まえながら引き続き慎重に検討を行うとされたところでございまして、年末に予定されておりますけれども、来年度税制改正において、中小企業に対する外形標準課税の導入が議論されることは、私どもは考えておりません。

中根(康)委員 終わります。ありがとうございました。

江田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 維新の党、落合貴之でございます。

 本日は、安保法制でも存立危機事態にエネルギーもかかわるというふうなことですので、まず前半にエネルギーの問題について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、石油についてですが、我が国の原油輸入量における中東依存度、つまり、全輸入量に占める中東諸国からの輸入量の割合は何%でしょうか。

高木副大臣 二〇一四年におきまして、我が国の原油輸入における中東依存度は、約八三%となっております。

落合委員 それでは、我が国の原油輸入量におけるホルムズ海峡をタンカーで通過して輸入している原油量の割合は何%でしょうか。

高木副大臣 サウジアラビア、またUAE等を含めまして、我が国の原油輸入におけるいわゆるホルムズ海峡依存度は約八割になっております。

落合委員 ホルムズ海峡の問題は、特に三十年以上前のイラン革命以降、注目されてきました。リスク分散等のために、ホルムズ海峡を迂回するパイプラインがUAEやサウジなどにつくられてきました。

 この迂回パイプラインの存在については把握されていますでしょうか。

高木副大臣 ホルムズ海峡を経由しない原油の輸送経路としては、UAEにペルシャ湾側とオマーン湾側のフジャイラ港を結ぶ石油パイプライン、もう一つは、サウジアラビアにペルシャ湾側と紅海側のヤンブー港を結ぶ石油パイプラインが存在しております。

落合委員 この迂回するパイプラインについてですが、有事ではなく、ふだん、平時において、日本への原油の輸出において、このホルムズ海峡を迂回するパイプラインは使われていますでしょうか。また、使われている場合は、どの程度の原油量、使われているんでしょうか。

住田政府参考人 御指摘の点でございますが、ホルムズ海峡を経由しない輸送経路となりますパイプラインの終点である、UAEのフジャイラ港、そしてサウジアラビアのヤンブー港からの輸入量につきましては、統計上は公表されておりませんが、実際に我が国の事業者が輸入している原油の一部がこれらの港から積み出されているものと承知をしております。

落合委員 万が一有事が起こって、ホルムズ海峡が封鎖された、その場合に、このパイプラインを使うこと、これは経産省として想定されていますでしょうか。

住田政府参考人 委員御指摘のような危機時におきまして、ホルムズ海峡を迂回するパイプラインにつきましても、この空き容量の範囲の中で追加的な輸出が可能になるのではないかというふうに認識をしております。

 政府といたしましては、危機の場合にこれらのパイプラインを最大限、我が国の輸入においても活用することができますように、関係国との関係を強化していくというところでございます。

落合委員 有事に備えなきゃいけない、ホルムズ海峡の掃海だけでなくて、こういったパイプラインも選択肢に入れて備えなきゃいけないということで、有事の際にどれぐらいの量がこのパイプラインは使えそうか、何バレルぐらい使えそうなのか、タンカー何隻分ぐらい使えそうなのか、把握はされていますでしょうか。

住田政府参考人 ホルムズ海峡を迂回するパイプラインを通じました危機時の追加的な輸送可能量についての御質問でございますが、これは、実際の輸送能力、あるいは、そのとき実際どれだけそのパイプラインを使っているかということにもよりますため、正確な数字を予測するということは難しいのでございますけれども、公開情報によりますと、先ほど申し上げたUAEのフジャイラ向けのパイプラインは日量約九十万バレルぐらい、また、サウジアラビアの方の東西パイプラインにつきましては日量約二百八十万バレルぐらいの余剰の輸送能力があるというふうにされてございます。

 しかしながら、これらの余剰輸送能力が物理的にあるわけでございますけれども、技術的な面で安定的にフルに活用できるものではないというような見方もございます。さらに、それに加えまして、ホルムズ海峡が封鎖をされるといったような危機の場合において、利用の要望が当然各国から殺到するということが予想されます。したがいまして、我が国がこれらのパイプラインを通じまして平時にホルムズ海峡を使用して輸入している原油の全量を輸入するということは、これはなかなか難しい、できないことだというふうに認識をしております。

 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、危機の場合におきましてもこれらのパイプラインを日本の輸入にも最大限活用することができるように、日本としても関係国との関係の強化を図ってまいりたいと考えてございます。

落合委員 最初におっしゃっていただいたフジャイラへのパイプライン、これはホルムズ海峡を通らないでインド洋の方に出ているわけですけれども、九十万バレルあいているということで、これは恐らく輸送能力は百五十万バレルですので、半分以上今あいている状況だと思います。

 UAEの原油の生産量を計算してみますと、百五十万バレルですと七割ぐらいはいっぱいいっぱいまで使えば運べるというような状況で、これは、中東に石油を依存しているのは日本だけの問題ではなくて、多くの国がそういった状況であると思います。我が国だけの問題ではないので、ホルムズ海峡を迂回させるということは世界的なニーズがある。したがって、有事への備えとしても経産省として取り組むべき問題だと思いますが、これについてはいかがでしょうか。

高木副大臣 今御指摘いただきましたように、原油の依存、中東に依存しておりますので、これらの有事に対しての対策というのはしっかりとやっていかなければいけない、このように考えております。

 そういった中で、今回、先ほど申し上げた、原油については八割が中東産油国から調達されておりますので、まず、需要面、需要の九割を石油に依存する運輸部門を中心に燃料利用の多様化を進めるとともに、供給面では、アメリカを含めた原油の調達先の多角化、アジア等での上流資源開発などに取り組んでまいりました。

 こういった中で、ことしの四月でございますが、国際石油開発帝石、いわゆるINPEXが、世界屈指の規模を誇るアブダビの陸上権益取得にアジア企業として初めて成功したところでございます。この油田からの原油は、ホルムズ海峡を回避した輸出が可能となってまいりますし、今回獲得した権益量は、二〇〇三年に我が国がクウェートで失った油田の権益量に相当しております。

 このINPEXの問題でございますが、ことしの一月に宮沢大臣がアブダビに訪問いたしまして、また、私も昨年の十一月とことしの二月に行ってまいりまして、そういったことに経済産業省を挙げてしっかりと対応している、こういう状況でございます。

 いずれにしても、こういった原油を含めた多角化をしていくということは大変重要であると認識をしております。

落合委員 このエネルギーの問題は経済活動の根幹を担う問題ですので、今後も、私も注視をさせていただきたいと思います。

 では、エネルギーの問題から少し絞って、電力の問題に絞らせていただきます。

 お手元に資料を配らせていただきました。これは、六月八日、日本経済新聞の一面でございます。「再生エネ買い取り 登録制」、これは一理あると思うんですが、その隣に「太陽光総額に上限」というふうに書かれております。

 これは日経新聞の一面なんですが、本当に検討しているんでしょうか。少なくともこの記事が出ているわけですから、この記事に相当するような検討が進められている、そういうようなことがあれば、御教示いただければと思います。

関大臣政務官 この再生可能エネルギーの導入に関しましてなんですが、その実態やエネルギーミックスにおけます導入見通しを踏まえまして、今月中にも審議会におきまして制度の見直しについて検討を開始する予定になっているんですが、この記事にありますような登録制や上限設定、そのような報道につきましては、今後の議論の方向性については、まだ現時点では決まっていないような状況でございます。

落合委員 方向性は決まっていませんが、一応選択肢の一つにはあるというふうに考えてよろしいでしょうか。

上田政府参考人 再生可能エネルギーの問題につきましては、御案内のとおり、さまざまな課題が指摘されているわけでございます。やはり、国民負担との関係をどうするか、あるいは、太陽光は非常に足が速いために、ほかの再生可能エネルギーの導入とのバランスをどうとっていくか、さまざまな課題があると考えております。

 私ども、エネルギーミックスというものを、現在、策定作業を進めているわけでございます。そういったものも踏まえて、再生可能エネルギーに関するさまざまな諸制度につきましてはいろいろな角度から検討していく必要があると考えておりますけれども、具体的にこれをどうする、あれをどうするということについては、今、政務官が申し上げたとおりでございまして、これから検討を行うわけでございます。

 幅広い観点を議論する必要があると思っておりまして、さまざまな選択肢はあり得ると思いますけれども、現段階で何をどうするということを決めたという事実は全くございません。

落合委員 幅広い選択肢の中に入っていなくはないというようなことでしょうが、以前の、数カ月前の指定電気事業者制度の、出力制限のときもそうでしたが、再エネの参入に一個の制度で大きなブレーキをかけてしまうということがありますので、電力自由化、衆議院は電事法改正案は通ったわけですから、ぜひこういった問題に関しては慎重な対応、政省令で電力自由化にブレーキをかけることのないようにお願いをしたいと思います。

 それでは、関連して上田長官に、私が四月二十二日に行った質問の答弁についての再質問をさせていただければと思います。

 この日、電気事業法改正案についての私の質問の最後の方で、電力自由化を監視する監視機関の独立性、中立性を高めるためにプロパー採用をしていくべきではという質問をさせていただきまして、山際副大臣の答弁に対して、私が、会計士や弁護士など士業の専門職しかプロパー採用をしないのかと質問したところ、上田長官が答弁してくださったんですが、後で議事録を読んでみると、広域運用機関がプロパー採用を検討しているというようなお答えでございました。

 その日の私の質問の前半が広域運用機関のプロパー採用でしたので、紛らわしくて、ちょっと答弁がまじってしまっていましたので、改めて、この電力自由化を監視する監視機関のプロパー採用について、会計士や弁護士などの専門職、士業の方々ではない職員を新卒でプロパー採用することを検討しているか、お答えいただければと思います。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 電力・ガス取引監視等委員会でございますが、これは広域的運営推進機関とは異なりまして、国の行政組織の一部ということでございます。したがいまして、ここの委員会の職員というのは、通常、いわゆる国家公務員、一般職の国家公務員ということになるわけでございます。

 この職員のプロパー採用をするのかというお尋ねでございますけれども、私ども、もちろん、電力取引の監視といった非常に重要な任務に当たる監視委員会でございますので、電気事業のほか、法律、経済、工学等、専門性が非常に必要であると考えております。そういう人材育成というのは今後行っていきたいと思います。

 他方で、プロパー職員ということになりますと、そこのところだけに採用されて、そこのところの業務だけに長年従事するといったイメージになろうかと思いますけれども、電力取引の監視といったことにつきましては、そういった取引の監視という現場に加えまして、エネルギー政策に関するルールの制定、あるいは市場制度の設計といったエネルギー政策そのものの実務ということについても、その専門性を高める上でも必要と考えておりまして、この組織のためだけの採用枠ということは余り想定しておりません。全体、この組織は経済産業大臣のもとに置かれるわけでございますので、経済産業大臣が職員の一元的な人事管理、育成ということの中で考えていくというのが適切であると考えております。

落合委員 国のエネルギー政策に沿った運用がされる、それはある意味重要なことだと思います。ただ、専門職以外が経産省、エネ庁からの一〇〇%出向だという必要はないのではないでしょうか。

 参考人質疑でも、高橋参考人ほか言っていましたが、この監視機関、最初はいろいろなところからの寄せ集めだ、ただ、独立性、中立性を高めていくためにプロパーの採用をふやしてきました、最終的にはかなりプロパーの比率が高まっていますというような外国の事例もありました。

 何割かプロパーで採用していくことが、法律にも規定されている独立性、中立性を高めることになる。一〇〇%省庁からの出向だったら、独立性、中立性は担保されないと思うんですが、どうでしょうか。

上田政府参考人 独立性それから専門性の担保ということは非常に重要なことであると考えております。御案内のとおり、この監視委員会は委員が独立して職務を果たすということでございます。

 ただ、職員につきまして、この組織でプロパー職員を採用するということになりますと、さっきもちょっと申し上げましたが、この監視委員会に採用されて、取引の監視という業務を長年にわたって行う、そういうことを専らやる職員ということが果たして国家公務員の採用として適当かどうかということもございます。

 例えば、証券取引等監視委員会の職員というのは金融庁として一括採用されているといった事例もございますので、私ども、職員の専門性を高めるための努力というのはもちろん行っていかなければならないと考えますし、その人事配置においても、そういうことを勘案しながら行っていく必要はあると考えておりますけれども、プロパー職員そのものを雇っていくということにつきましては、むしろ、先ほど申し上げましたように、大臣のもとで、一元的な職員管理の中で専門性を高めていく人材育成をしていくというのがやはり適当なのではないかと考えております。

落合委員 独立性、専門性というふうにおっしゃっていただきましたが、中立性というのも入っていますので、法案は通りましたけれども、その後、細かい採用のこういう件ですとか、そういうのは政省令で決めるというふうになっています。これは、法案が通っても公正な競争が確保されるのか、注意しなければならない部分がたくさんある。

 したがいまして、今後も、この電事法の細かい部分、どうやって政省令が決められていっているのか、私も注視をさせていただきたいと考えております。

 それでは、最後にお伺いしたいんですが、前半、石油の問題、そして、後半、電力の問題を質問させていただきました。エネルギーにおいて、石油に頼らない、そして、私の思いとしては原発にも頼らない、そういったエネルギー政策を行っていくために、電力に限らず、エネルギー源の多様化のために、どのように施策に取り組んでいかれるか、意気込みを聞かせていただければと思います。

宮沢国務大臣 現在、エネルギーの自給率がわずか六%まで下がってきております。そして、委員が先ほど御指摘のように、日本のエネルギーの状況というのは大変リスクにさらされている状況であることは間違いないということも考えまして、今回、エネルギーミックスを検討するに際しては、自給率を欧米主要国の一番低いイタリア、スペイン並みぐらいはという思いで、二五%程度まで改善するという目標をつくらせていただきました。

 その前提といたしまして、当然のことながら、徹底した省エネルギーということが大変大事でありまして、今回のエネルギーミックスの前提といたしましても、産業部門におきましては、ボイラーなどの高効率設備の普及促進、また工場などにおいてはIoTを活用したエネルギーの管理の実施とか、また民生部門においては、トップランナー制度を活用した照明やエアコンなどの機器の効率改善、新築住宅、建物における省エネ基準適合の推進など、現時点で見通せる最大限の省エネ対策を行っていくこととしております。

 そして、再生可能エネルギーにつきましても、電力コストを現在よりも低減するという制約のもとで、最大限導入するということで検討させていただいております。

 さらに、将来を見据えまして、まさに多層、多様化した柔軟なエネルギー需給構造の構築というものが大事でありまして、例えば水素社会の実現を目指した技術の開発、利用の促進、さらに、メタンハイドレートなど、我が国のまさに排他的経済水域、我が国の中に眠る資源の活用のための取り組みといったことも推進していきたいと考えております。

落合委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたので、この答弁をもとにまた改めて一般質疑で質問させていただければと考えております。どうもありがとうございました。

江田委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 維新の党、鈴木義弘です。

 すぐに質問に入らせていただきたいと思います。

 昨年の十二月の衆議院選挙の際に、知り合いのケーキ屋さんに寄りましたら、鈴木さん、バターがないんだよ、うちはいつ店を閉めようかなというふうに思っているんだと。その後特に御依頼がなかったので、何とかなったんだと思うんですが、先日もやはり新聞の記事に、「今年も悲鳴」という新聞の見出しで、昨年からバターがなかなかないというのが大きく報道されました。このことにつきましては、農林水産省所管の酪農の問題だけじゃなくて、経済政策全体にかかわることの一つの現象だと思うんです。

 この新聞記事の中に、ああ、なるほどなと思うんですけれども、国家貿易から自由貿易、自由に貿易をしていった方がいいんじゃないかというのでTPPに、今交渉をしているんだと思うんですね、いろいろな考え方は別として。でも、国家は国家として、このものは入れないでくださいよというから、関税をかけたり促進策をとったりして今日までやってきたんだと思うんです。ですから、国家貿易を自由貿易に、もう好きにやった方がいいんだというふうに言う学者だとか評論家の方もいれば、やはり国家貿易として維持すべきものは維持していった方がいいんじゃないかという考え方もある。

 そこのところを、まず初めに大臣の御所見を伺いたいと思います。

宮沢国務大臣 バターにつきましては、本当に昨年来大変不足しておりまして、女房からも、スーパーに行ってバターがあったら、あなた、買ってきてよねといつも言われておりますが、一個しか売りませんなんて書いてあるというのはよく承知しております。

 バターにつきまして、産業用を中心に大変不足をしているという中で、農水省が緊急に輸入することを決めたということは報道で承知しております。

 そういう中で、国家貿易と自由貿易という御質問でありますけれども、やはり基本は私は自由貿易だろうというふうに思います。やはり自由に貿易することによって、そしてそれぞれの国がそれぞれ利益を得るという姿を描くことが一番大事なことだと思います。一方で、それぞれの国の成り立ち、また状況というものはいろいろ変化がございまして、それぞれの国がいろいろな問題を抱えているという中で、ある種の農産品等について国家貿易にするということは国際的には認められているものでございますので、そういう枠内でなるべく自由貿易を多くしていくということが我々の政策だろうと思います。

鈴木(義)委員 大臣から、そういう自由貿易が主体だということで御答弁いただいたんですけれども、アメリカあたりは戦略物資というのがあって、それをやはり自分の有利な方向に持っていく。資源であったり、食べ物であったり、知財であったり、そういったものはきちっと戦略として考えている国があるんです。でも、表面的には自由貿易を唱えようとするんですけれども、その裏側にはきちっとした戦略に基づいて自由貿易をしているということを忘れないでやらないと、何でもどんどん安いものが海外から入ってきたときに、日本は物が残らない、誰もやる人がいない、それが今の状況じゃないかと思うんですね。

 例えば鋳物屋さんの仕事、中国にみんな行っています。昔は日本でやっていたにもかかわらず、安い方がいいから、大手のメーカーさんについていった方がいいからということで、みんな中国にどんどん出ていったんです。それは自由貿易だからいいじゃないかといっても、いざとなって、では、一部の残ったメーカーさんというんですか、中小企業さんだけで日本の鋳物業界を全部支えられるかというと、安い製品がどんどん海外から入ってくるわけです。片や、ものづくり大国日本だ、技術立国日本だというんですね。

 全然、相矛盾しているんだと思うんですけれども、そこのところをもう一回本音の部分で、もし大臣が今お答えできる限りのところをお聞かせいただければなと思います。

宮沢国務大臣 恐らく、物によって少し違ってくるんだろうと思っておりまして、今例に出された鋳物の関係、まさに電力料金が上がって大変苦労をしている業界でありますが、一方、例えば特殊鋼を使う鋳物等々といったところは、日本のまさに技術の中心のようなところもございます。私の地元にも、鋳物をやって、いわゆるロストワックスで相当精巧なものをつくっているところはしっかりと国内で事業を、もちろん厳しくないわけではないんですけれども、継続して利益を上げております。

 そういう中で、ごく簡単な鋳物を日本でつくり続ける必要があるかどうかというのはまた別問題であり、日本の中に置いておいてほしいものが残れるような政策といったものを我々がしっかりと打っていかなければいけないんだろうというふうに思っております。

鈴木(義)委員 そういう話をいただくと、では、一億三千万人、何で飯を食っていけばいいのか、こういう話になっていくわけですね。

 第二次世界大戦のころまでは、植民地政策をどこの国もある程度とってきたんだと思います。戦後は、通貨である金融資本主義が中心的な施策になって台頭してきて今日まで至っていると思います。

 本来、需要と供給が市場という枠の中でバランスをとって価格が決定されるべきものが、今や、国家や一部の意図的に価格を支配しようとする人々によってそのシステムを歪曲しているのが実態ではないかというふうに私は考えるんです。特に顕著なのは、実体経済と、思惑だらけの先物取引を初めとする金融経済がどんどん乖離している状況が今日ではないかという考え方なんです。

 この認識を大臣にお尋ねするのと、この二つの経済システム、実体経済と金融経済、ここのところに翻弄されているような見方を、私は日本経済の中で見られるんですけれども、今後とるべき方向を大臣にお尋ねしたいと思います。

宮沢国務大臣 たしか、大阪の米の先物というのが世界で最も早い、江戸時代にあった先物だというような話があるように、決して、先物というのが昔はなかったわけではないわけであります。

 今の現状の御質問ですけれども、ちょうど私が大蔵省におりましたときに、八〇年代終わりから九〇年代にかけて、例えば日経二二五という株式の先物を入れるかどうかとか、オプションを入れるかどうかというような議論をしておりました。したがって、二十五年ほど前にまだ実はそういうものが金融市場では整備されていなかったわけで、この二十五年間に大変大きく成長してきたということであります。

 そして、その二十五年前の議論というのも、ですから、わからないものを、なかなか先物と言われても偉い方は特に理解できない、オプションって何だみたいな話から始まって議論しておりましたけれども、かなり懐疑的な意見が多い一方で、やはり先物というものがあることによって、多様な参加者がまさに入ることができる、実際に持っていない人でも売ったり買ったりできるといった意味で、多様な参加者が入ることによって、逆に現物市場が一方に雪崩を打つようなものに対して歯どめになって市場の安定感につながる、こういう議論があったことも事実でありまして、恐らくそういう役割も果たしているんだろうというふうに思います。

 ただ一方で、例えば九〇年代の終わり、二十世紀の終わり、九八年ぐらいのアジア金融危機というようなときを考えてみますと、大量の資本が、特にASEANの国、アジアの国に入っていたものが、突然それが引き揚げられるということでアジア金融危機というものが起こったわけで、資本というものが余りにも何の制限もなしに世界を飛び回っているということについて、私は少しこれは制限をかける時代になってきているのかなと。

 かつてこの委員会でも、いわゆるトービン・タックスというような話がありましたけれども、金融の動きに対して負荷をかけるような税制、これは世界各国がやらなければ何の意味もありませんので、世界の意思統一というものが必要になりましたけれども、そういうものは少しもう検討し始めてもいいのかなという思いを持っております。

 先物につきまして、例えば日本の国債が将来暴落するとすれば、それは、先物市場で相当悪さをする外国の投資家等々が空売りを仕掛けて大変な勢いで売って価格を下げて、それを現物の世界で国債を持っている人たちが慌てて投げ売りに出たら暴落するというシナリオが言われておりますけれども、まだそこまでの悪さができる状況ではなくて、先物市場をそんなに規制する必要は私はないというふうに思っております。

鈴木(義)委員 先物の話は一つの事例でありまして、金融だけがどんどん世界的にぐるぐるぐるぐる動いて、実態、日本の中ではグローバルだ、ローカルだという議論もあるんですけれども、その中で、需要と供給のバランスでいろいろなものが動いているにもかかわらず、海外からいろいろな物資も来るし、人も来るし、こっちからも出ていくわけですね。

 だから、そこのところのバランスがどうとれていくのかと言っていながらも、ここ三十年、四十年はちょっと金融の方と実体経済が乖離してワニの口みたいになっているんじゃないかということなんです。だから、ぜひ、経産大臣お一人だけで何とかなるものじゃないと思うんですけれども、引き続き、システムをつくっていくなり、今の中で少しブレーキをかけるところが出てくるのではないかなと思います。

 その一つの中で、これも所管外だと思うんですけれども、私が子供のころ友達のうちに遊びに行ったら、そこのうちのお母さんが一生懸命、座布団に座ってゴムの加工品のばり取りをしているんです、はさみを使って。俗に言う内職だと思うんです。

 私がお世話になっている人が、シャープペンの先っぽに何かおもちゃみたいなものをつけるんですね。私は、自分より年上の人はみんなお姉さん、七十になっても八十になってもそういうふうに言うんですけれども、お姉さんに一個幾らなんですかと尋ねたら、三円だと言うんです。一時間に幾つつけるんですか、これは三年、四年ぐらい前の話なんです、そうしたら、六十個つけられると言うんです。大したもんだねと。ぱっと考えたら、一時間で百八十円。コンビニで働いた方がもっともらえるんじゃない。七百円、七百五十円、当時は。この年じゃもう雇ってくれないのよ、だから内職やっているの、こういう話だったんです。

 そういった先輩方が、戦後の復興期の中で、高度経済成長期における重要な労働力として大きな役割を果たしてきた。昭和四十五年から、四十年代から五十年代にかけてだと思います。

 他方、近年の急速なIT化の進展により、情報通信機器やインターネットの普及が驚異的なスピードで広まったことにより、個人が自宅にいながらにして起業、独立して仕事をするという新しい就労形態が見出されたんだということなんです。

 今、家内労働者、在宅ワーカー、在宅勤務、三つぐらいのジャンルに分けられて、一応、家内労働者は家内労働法というので定義をされている、在宅ワーカーはガイドラインという形で定義がされている、在宅勤務者は労働基準法と、定義が三つ分かれているんだそうです。

 家内労働者は、製造加工業、販売業者またはこれらの請負業者からの委託を受けていること、そのほか四つの項目全て合致しないと、家内労働者という定義に当たらないんだそうです。それも、都道府県別に業種がまちまちで、指定をする業種もあれば指定をしない業種もあって、そこのところは最低賃金をきちっと設定して守られているんですけれども、そうじゃないものを内職でやっている人は対象外なわけです。今申し上げましたように、一時間働いても百八十円、そういう業種を内職でやっている人もいらっしゃるということですね。

 これはまた、労働局の方の、何とか労働局というのが各県にありますから、そこのホームページのところにうたってあったんですけれども、労働請負契約を結んでいる場合が多く、契約に当たっては十分注意する必要がありますと労働局は注意喚起をしているんです、ホームページの中で。四十七都道府県に労働局がありますから、そこの一つなんです。

 これは、昭和四十五年のとき二百万人を超えている人たちが、平成二十四年で十二万四千人と激減しているんです。いろいろな働き口ができたんだと思います。この平均賃金が、一時間当たり五百円、一カ月で四万二千七百二十六円と、サービス業の平均最低賃金の七百八十円を、これは二十六年度の最低賃金です、大きく下回っている状況なんですね。

 だから、アベノミクスで確かに、金融緩和をして、財政出動して、第三の矢を打って構造改革をしてきたんですけれども、結局、日本の製造業の下支えをしているのはこういった方々じゃないのかということなんです。そこにきちっと光を当ててやって、内職の、家内労働者という定義だけで、五つの項目に全てマッチングした人だけを最低賃金を法律で守らせるんじゃないところもきちっとカバーしてやらないと、アベノミクスの、隅々までといって、こういった人たちはやはり今でも、東京都のホームページを見たら、業種によって、何をつけたら一個一円五十銭とか、一円しない内職の単価まで出ていますよ、最低単価。そこのところをやはりきちっとカバーしていかなければ、本当の意味でのアベノミクスは成功したというふうに言えないんじゃないかと思うんですけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

山際副大臣 おっしゃるように、アベノミクスの効果が、今のお話のように家内労働者にまで行き渡るようにという御指摘は、そのとおりだというふうに考えてございます。

 他方で、もちろん、最低賃金、最低工賃等々を引き上げていくというのは必要なことではありますが、これでコストが増加することによって、企業の経営が圧迫されて、仕事が失われる可能性もある。要するに、そのバランスをとっていかなきゃいけないという大変難しい問題があるということも、我々としては認識してございます。

 それを解決していくためには、特に、中小・小規模事業者の収益力をどのように向上させていくかということが肝でございまして、その環境整備というものをこれからもしっかりやらせていただきたいと考えております。

鈴木(義)委員 副大臣からの答弁は、これから後、五年、十年たっても同じような答弁しか返ってこないんじゃないかなと思うんです。

 次に、これもインターネットで、個人のブログなんだと思うんですけれども、オープンにしているからいいと思うんですが、「コーラ一本四百円!?涙目なオーストラリアの物価四十三品を紹介します」こういう話なんです。五百ccのペットボトルに入っているコカコーラが、これは多少為替の動きがあるんだと思うんですけれども、三百五十円なんだそうです。ジュース類、二リットルで三百五十円とか、ミネラルウオーターが三百五十ミリリットルで二百十七円。日本の倍ですよね。オーストラリアの特産品なんでしょう、牛乳、これが二リットルで二百円。水よりも安い。これはやはり産業政策としてはおかしいんだと思うんですね。

 今お答えいただいた副大臣のことを返すようなお言葉になってしまうんですけれども、結局、オーストラリアでは、物価が高くても、最低賃金をきちっと提示することによって、時給十七ドルだとか二十ドル、約千七百円、二千円でしょう、いいかどうかは別ですよ、中には、支払いをきちっと振り込みでやっているところはいろいろな最低賃金のものが出てくるんですけれども、そうじゃなくて、キャッシュで渡して、最低賃金を下回っちゃってでも、これであてがいぶちでやれというお店の経営者もあるんだそうです。

 そうすると、やはり、今アベノミクスでデフレを解消してインフレにするんだといってどんどん上げていったときに、今の内職をやっている人で、それは経営も厳しいかもしれませんけれども、百八十円とか二百円で一時間働いている人たちがきちっと賃金が上がっていかなかったら、物価だけどんどん上がったら生活できなくなるんじゃないですか。そこのところをきちっとバランスよくやっていかなければならないということですね。

 特に、やはり日本で問題になっているのは、オーストラリアでは、石炭掘りしている人だとか、結局、農業に従事していて、汚いとかきついだとか危険だとかというところの仕事についている人は時給が高いんですよ。でも、日本の場合は、ホワイトカラーというふうに今は死語になっている職種の人たちの方が給料が高い。現場で働いている人の方が給料が安い状況が、今日の日本経済の下支えをしてくれているんです。その人たちの給料を上げない限り、幾らホワイトカラーの人たちの給料を上げたとしても、いつになっても現場で働く人たちは報われないという社会構造を変えなくちゃいけない時期に来ているんじゃないかということなんです。

 今例示を幾つか挙げさせてもらったんですけれども、御答弁を大臣でも副大臣でもいただければと思います。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

山際副大臣 では、まず僕の方からさせていただきます。

 全体、事実としてのマクロの数字で、総雇用者所得を見ますと、これは二〇一四年の三月以降ずっと前年比プラスでございまして、物価上昇を加味した実質でも、消費税率引き上げの影響を除いてみれば、足元は前年比プラス傾向となってございます。これは、過去十五年で最高であった昨年同様、ことしも高い水準になるということが期待されております。

 また、今委員から御指摘のあった、いわゆる三Kになるのかもしれませんが、その一例として、建設業におきまして、厚労省の調査によりますと、二十五年度、二十六年度の月間現金給与額の増加率、これは全産業平均よりも高くなっているという事実もございます。

 それから、全体のバランスとして賃金を上げていくということは大変重要な話でございますので、経済産業省といたしましては、経済界に対して賃上げの要請等を行ってきておりますし、これからもしっかりやらせていただきたいと思っております。

宮沢国務大臣 まさに今、二十年近いデフレの結果、我が国というのが本当にあらゆる物価が大変低い国になってきているということは、ある意味では、ほかの国はめちゃくちゃ高いんだということで、本当に物価が安くてという実感をもう少し国民に持っていただければ実はありがたいと思っているところはありますけれども、一方で、今の話で、まさに最低賃金等々を上げていくということは大変大事なことですが、上げていく状況というものをつくる、上げられる状況をつくるということがやはり我々にとって最も大事なことであります。

 そうした意味で、例えば成長戦略につきまして、中小企業を中心に生産性を上げていくということを、やはりしっかりと我々の具体的な政策をつくって応援していかなければいけない。まさに生産性を上げる、特に中小企業の場合はサービス業が七割を占めておりますけれども、それぞれのサービス業で性格が違っております。これらの中小企業、サービス業の生産性を上げるということが何よりも我々の政策目標であり、それを実現していくことにより最低賃金も上がっていくという状況をつくっていきたい、こういうふうに考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 一つ事例を挙げさせてもらいたいと思うんですけれども、これは私の解釈ですから、間違っていたら指摘してもらいたいんですけれども、今までの日本のいろいろな政策の中で、許認可権を法律をつくって与えると思うんですね。その許認可権を与える前提として資格を取りなさいと、いろいろな資格をどんどん取らせるんです。それで、資格を取ったら許認可を与える。それをずっと、過去、戦前からやってきたんだと思いますけれども、特に戦前の場合は認可制で、それから少しずつ、緩和というんですかね、許可制にして届け出制にして、いろいろな業種でワークシェアしながら仕事をしてきたんだと思うんです。

 そうすると、資格を取れば給料が上がる、学校も上級の高校、大学、大学院に行った方が給料は上がるといって、みんなそちらにシフトしたわけです。でも実際は現場で働いている人たちの方が日本の経済を支えているのにもかかわらず、みんなそちらに向かったわけですね。

 でも、その考え方を少し変えていかないと、現場で従事する人たちがいなくなっていくだろうということなんです。特に、人口減少社会になっていく中で、東京はいいでしょう、でも、地方はどんどん流出したり、高齢化率が上がっていって、実際、サービス業でも人が集まらない状況がもう顕著に見えてきているんです。ですから、そういった人たちをカバーする意味でも、やはり業種だとか業態に応じて最低賃金の設定の仕方をもっと差をつけないとだめなんだと思うんですね。

 そこのところを、産業政策だけで、経済産業省だけでできるわけじゃないんですけれども、ぜひリーダーシップをとってやってもらって、経済産業省ですから、産業全般にひとつお力添えいただくような決意を聞かせていただければ次に移りたいと思いますので、よろしくお願いします。

宮沢国務大臣 先ほど、鉱山で大型のトラックを運転している技師の話がございましたけれども、たしか今、オーストラリアとかブラジルのそういう鉱山の運転手さんというのは、逆に引き抜き合戦で、ブラジルの人がオーストラリアに引き抜かれたりというような状況が起こっているようでございまして、それこそかつての大阪の市バスの運転手さんよりも高い給料をもらっているというような現状。

 一方、それはなぜできているかといいますと、やはり、オーストラリアの鉱山でありブラジルの鉱山というものが、大変競争力の高い、生産性の高い企業であるからこそできていることでありまして、卵と鶏のような話になりますけれども、やはり私は、企業、中小企業を含めての生産性を高めるということが何よりも大事なことだろうと思っておりまして、それを通じて、まさに最低賃金も上がる、働く人の給料も上がる、こういうことをつくっていきたい、こういうふうに考えております。

鈴木(義)委員 ぜひ産業政策として、今すぐとは言わなくても、きちっと落とし込めるような制度をつくっていただければありがたいなと思います。

 以上で終わります。

江田委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは、原発事故と避難の問題を中心にお聞きをしたいと思っております。

 全国保険医団体連合会という団体が、ことし二月、鹿児島、静岡、滋賀、佐賀の四県で医療介護施設にアンケートを行いまして、原発事故の際の避難計画についての対応などを調査されております。

 この全国保険医団体連合会というのは、開業医の方の六二%が加入されておりますし、勤務医の方も多数加入されている全国組織であります。

 このアンケートに寄せられた声に基づいてきょうはお聞きしたいと思うんですけれども、例えばこういう声です。

 シミュレーションが多岐にわたり、素人が短時間でつくれるものではないと思う、それでよいならその計画はざるである、これは鹿児島のお医者さんの声であります。別の声としては、原発事故が起きた際、どのように動き、避難するのか、対応が全くわからない、こういう声もございました。また、事故が起こったらPAZ住民がまず避難し、その間、UPZ住民は自宅待機とされているようだが、事故報道があれば皆一斉に避難するに決まっている、再稼働ありきの机上の空論だ、これは佐賀のお医者さんの意見であります。本当にどれもそのとおりだなと思うわけであります。

 例えば、最後に紹介した、皆一斉に避難するに決まっているという言葉でありますけれども、これはちょっと委員長にお聞きしたいんですけれども、仮に百歩譲って、規制委員会がおっしゃるように、段階的避難が理想だという立場に立つとしても、やはりこういう声が実際に起こっているし、多くの国民もそう思っているというもとで、これはこれで、そういう方針を持たれるとしても、そういう立場に立たれるとしても、そうしない人がいる、段階的避難をしない人がいる。こういう想定をしっかりしないといけないんじゃないかと思うんですが、この点について、想定しているかしていないかで結構ですので、端的にお答えください。

田中政府特別補佐人 先生御指摘のように、原子力災害対策指針では、五キロ圏内のPAZについては、そういった緊急事態が起きたときには速やかに避難する。それ以遠、五キロから外については、屋内退避していただくということで、退避する場所についての機密性等の向上を求めております。結局は、むやみに外に行きますと、逆に被曝線量がふえるという問題がありますので、こういうことを申し上げています。

 それから、福島の教訓で、個人の判断でむやみに逃げてしまうと、かえって犠牲者をふやすといった経験もありますので、そういったことについてはきちっと説明をして御理解いただくことが大事だと思います。

藤野委員 説明してというお話ですけれども、やはり現実はなかなかそういかないと思うんですね。

 福島の実例を見ましても、NHKが「クローズアップ現代」で去年の三月五日に放送している番組を見ましても、福島の場合は、三月十二日の午前五時四十四分に、当時、十キロ圏内の住民への避難指示が出た。しかし、この避難指示が出た途端に、十キロ圏外の人には避難指示が出ていないにもかかわらず、大量の住民が逃げ出したということを、一万人のアンケートに基づいてNHKが報じておりました。やはりこれが実態だというふうに思わざるを得ない。だから、そこを想定して、基準なり考え方を整理していく必要があると思うんですね。

 次に、屋内避難についてもお聞きをしたいと思うんです。

 規制委員会は、屋内避難がベストだという立場で、事前にいろいろとやられているとは思うんです。しかし、政府の方針でも、三十キロ圏外であっても、空間放射線量率が毎時二十マイクロシーベルトを上回る地域については一時移転を指示するということを決められているわけですね。だから、屋内避難は原則だけれども、一定の線量を超えたらば、それはやはり避難してもらう、こういう方針を持っていらっしゃると認識しております。

 要するに、屋内避難をやっていたけれども、もうこれじゃだめだというときには逃げるということが想定されてはいるんです。しかし、その地域の住民に安定沃素剤が配られていない。配らなくていい、事前に備蓄しなくていいという方針も持たれているわけですね。

 これも委員長にお聞きしたいんですけれども、屋内退避を指示しておきながら、一定の場合にはそこから出て逃げてもらう、一時移転してもらうということも想定しておきながら、安定沃素剤は飲ませない、備蓄もしないでいい、こういう指示を出しているということで、このままでは、そういうケースの場合は、安定沃素剤を飲ませないまま、ある意味被曝するがまま、どうぞ一時移転してください、こういう基準になっているというふうに思うんですが、端的に、そういう基準でしょうか。

田中政府特別補佐人 UPZ内においては、少なくとも沃素剤の備蓄あるいは個人に配付しているところもあります。それから、それよりさらに遠くについて、必要があれば沃素剤の服用ができるよう、しかるべき場所で備蓄しております。

藤野委員 そのしかるべき場所というのが問題で、地方自治体には三十キロ圏外でしなくていいという方針なんですね。これにも書いてあります。このパブリックコメントに対する答えの中で、別二の六という場所に、「このため、今回の原子力災害対策指針の改定では、UPZ外におけるプルーム通過時の防護措置として、安定ヨウ素剤の服用を求めておらず、UPZ外の地方公共団体がそのために安定ヨウ素剤を備蓄する必要はありません。」と書いてあるんですね。必要ないと言っているんですよ。にもかかわらず、一定の場合には一時移転しなさい、何にも飲まずにただ逃げろ、こういう基準になっているんじゃないかという質問なんです。もう一回お答えください。

田中政府特別補佐人 安定沃素剤を服用するということは、要するに放射性沃素の取り込みをできるだけ少なくするということなんです。大体、基準としては、安定沃素剤を服用しなきゃいけないのは五十ミリシーベルトを超えるような甲状腺への被曝が予想されるときということなんですね。(藤野委員「そういう基準だということですね」と呼ぶ)そうですね。ですから、そこを原則として、ただ、一時移転をするというか、ある時間がたって、事故が起きて一時移転をするときには、プルームと一緒に大体沃素とか希ガスは遠くに風とともに拡散しますので、そう大きな被曝が短時間で起こるということは想定しておりません。

藤野委員 結局、備蓄もしないでいい、けれども一定の場合には逃げてもらうよという基準だということが明らかになったというふうに思うんです。これではやはり非常に現場は不安に思っている。実際、保団連のアンケートでもそういう声が出ておりますし、お聞きしたある県の保険医協会の医師の方は、事故のときは安定沃素剤の服用と迅速でかつ遠距離の避難が何よりも重要という声も私はお聞きをいたしました。ですから、やはりこの基準そのものが大変大きな問題を含んでいると言わざるを得ないと思うんです。

 その上で、このアンケートの全体もちょっと御紹介したいと思うんですが、配付資料の一を見ていただければと思うんです。

 鹿児島の例なんですけれども、非常に共通しているといいますか、特徴的な状況なので御紹介しているわけですが、要するに、この赤いところがメーンなんですけれども、作成済みのところというのは鹿児島市内で八施設だけ、今後作成予定が二十四、作成していないというのが百六十五ということになっておりますし、私が驚いたのは、避難計画作成に関する地方自治体等からの説明があったかなかったかというので、あったというのはわずか十二で、説明はないというのが百八十六に達しているわけですね。

 ですから、これではやはりつくれないだろうというふうに思いますし、何も説明がなくて、おまえのところでつくれと言われても無理だという声がこのアンケートにはあふれております。結局、そういうことでおまえのところでつくれと言われて放り出されてつくらなかったところに、何でつくらなかったんですかと理由を聞くと、作成方法がわからないというのが百九で、避難計画自体が無意味だというのも三十三に上っているということで、今田中委員長がおっしゃったように、こういう大事なあれがあるんだ、意味があるんだという説明すら受けていないものですから、避難計画そのものが無意味だということがこれだけ上っているし、作成方法もわからないというふうになっていると思うんですね。

 ここでやはり大臣にもお聞きしたいんですけれども、安倍総理はことし三月の予算委員会で、避難計画について、まさに「介護を必要としている方々はどこにいるのか、施設には何名ぐらいがおられて、どういう補助が必要なのかどうかということもしっかりと決めました。そして、移動する際の車両等の対応等についても、かなり緻密に決めてきた。」と答弁をされていらっしゃいます。

 総理大臣は原子力災害対策本部の本部長でありますし、経産大臣は副本部長であります。原子力災害対策本部は、二〇一四年九月十二日の会合で、川内地域の避難計画、これが全部具体的かつ合理的だと確認、了承もされているということで、そのときは小渕大臣ですけれども。

 ですから、かなり緻密に決めてきたとまさに介護施設について総理がおっしゃっているわけでありますけれども、実際に地元で現場でアンケートをしてみるとこういう状況である、配付資料一のような状況であるということで、大臣にお聞きしたいんですが、ギャップが大きいと思われませんか。おかしいと思われないか。この認識をちょっと。

宮沢国務大臣 御承知のとおり、避難計画また地域防災計画については私の担当ではございませんけれども、まさにおっしゃるように、この川内地域につきましても、内閣府が中心となって、関係省庁と関係自治体が参画する地域原子力防災協議会を設置して、避難計画等についての支援をしてまいったところ。その上で、昨年の九月に、総理を議長とする原子力防災会議で、川内地域の計画の内容を確認し、了承したという経緯でございます。

 そして、原子力災害対策につきましては、九月の時点でそれなりの判断をしたわけでありますけれども、これで完璧ということは当然ないわけでありまして、まさに議員の御指摘のようなアンケート調査も含めて、現地の要望を丁寧に聞きながら、不断にその改善強化を図っていくことが大変大事だろうと思っております。

藤野委員 私はギャップについてお聞きしたんですけれども、やはり物すごいギャップがあると思うんですね。国会で総理が、かなり緻密に決めてきた、もうばっちりだと言わんばかりの答弁をしているんですが、ことし二月の調査でまさにこれだけできていないという状況なわけですから、これは本当に大きな問題があると思います。

 その上で、もう一回、屋内退避についてお聞きしたいんですけれども、全国保団連のアンケートで共通して見られたのが、職員の避難と患者の安全の両立をどう図るかという切実な声であります。

 例えば鹿児島では、こういう声です。一刻を争う場合、職員の家族と入院患者の安全をどう確保していくか、両立していくか。また、従業員の避難は考えなくていいのかという声もありました。また、佐賀のアンケートでは、職員それぞれの家族も自分たちの手を必要とする、優先順位もつけにくい、こういう声でありました。また、ひな形として示された避難計画には職員が避難の誘導を行うようになっているが、非常事態の中、職員が施設に集まることができるのか疑問である、こういう声も寄せられております。

 つまり、屋内退避という方針を規制委員会は示されている、政府が示しているわけですけれども、屋内退避するその施設に職員がいるということが前提、あるいはその施設に残る、あるいはその施設に外にいたら戻ってくる、これが必要になってくると思うんですけれども、そうした想定が現実的なのかということなんですね。職員も、ここにありますように、家族もいます。自分の子供たち、あるいは親や親戚の避難をどうするのか。危険を冒して屋内退避、施設に戻る、残るという決断、これがやはり迫られてしまうというふうに思うんですね。

 ここでもやはり、現実に起きた事態を見てみたいと思うんですけれども、先ほど紹介したNHKの番組というのは、福島での屋内退避の経験も紹介しております。

 配付資料の二を見ていただければと思うんですけれども、これはNHKのホームページにあったワンシーンなんですけれども、少し紹介させていただきます。

 福島で事故が起きたとき、医師や看護師はどう考えたのか。屋内退避を経験した南相馬市の病院を訪ねました。院長の金沢幸夫さんは、事故の四日目、職員一人一人に、病院に残るかどうか判断を任せることにしました。

 その一人、看護師の佐藤理香さんという方は、悩んだ末、小学生の息子さんたちと一緒に県外に避難した。その方はこうおっしゃっております。ふだん余り言わない子供たちが、もう行かないでと。スタッフが頑張っていたのを知っていて、それでも戻らなかった、戻れなかったというか、戻らなかったんですね。最終的には自分の判断なので。今もつらいです、本当に。本当に無責任だったなと思っている。こういう声であります。

 一方で、残った方もいらっしゃるんですけれども、残った方もこうおっしゃっています。娘に、死んでもいいからお母さんのそばにいると言われて、そういうのを後から聞いた時に、何て自分勝手というか、自分の好きなことをさせてもらったとしか言えないというふうにおっしゃっています。

 つまり、福島で実際に屋内退避をめぐってこういう事態が起きているし、これからも起きるということだと思うんですね。

 規制委員長にお聞きしたいんですけれども、政府は屋内退避の方針を決められました。この方針の善否というよりも、この方針を決める際に、こうした問題、つまり、医師や職員の方に、自分の命と患者の命、あるいは家族の命と患者の命、去るも地獄、残るも地獄というような状況を強いることになる。こういう問題、つまり倫理的な問題を、この屋内退避の方針を決める際に検討されたのかどうか、この点、御答弁ください。

田中政府特別補佐人 まず、私どもが屋内退避の方針を決めるときに議論したことは、基本的に、命にかかわるような、そういう被曝を前提とはしておりません。国際基準を前提として、放射線障害が急速に出るようなレベルにはないというところが前提ですから、ちょっとそこは違う。

 ただ、今先生が御指摘のような、人間の心の問題として、いろいろそういうことはあろうということは理解しております。ですから、これを克服するためには、やはりきちっとした正確な知識を持っていただけるように、いろいろそういった取り組みを強めていく、そういうことが大事だというふうに思います。

藤野委員 まさにいろいろな災害でこういう状況が起こるわけですけれども、とりわけ原発というのは、まさにこの問題が最も過酷に厳しく問われる局面になるわけですし、そこで医療や介護に携わっている方々がそういう局面に立たざるを得なくなってしまう。屋内退避という方針は、そのことを職員に強いるわけです。物すごい倫理的な問題を提起されているというふうに思うわけです。

 この点をしっかり検討せずに、単に屋内退避が一番ベストだという話だとすれば、これはそこで働いている方にとっては本当に厳しい問題だし、二人の方は同じように家族から言われているんです、もう行かないでくれと。そして、一人の方は、家族が、死んでもいいから来たいというふうに、どちらを選んでも本当に厳しい状況に追い込まれて、今も苦しんでいらっしゃるということであります。ですから、こうした問題をしっかり検討しないといけないんじゃないか。

 配付資料の三を見ていただきますと、これはアメリカのルールなんですけれども、去るも地獄、残るも地獄という状況をつくらないための一つの試みとして御紹介しております。これは、ハリケーンなどのある意味で事前に予測可能な災害についてのルールなので、原発とは若干違うわけですけれども、あえて紹介させていただきます。

 ハリケーンのように大分前に来るのがわかっているときには、大体百二十時間前までにはこうしましょう、三十六時間前にはこうしましょうと。そして、上陸時、ゼロアワーと言われるこの時間には、現場には誰もいない。要するに、消防や緊急な活動をするいわゆるプロです。医療、介護者もいるでしょう、そういうプロがいないでいいような状況をつくる、そのためのルールであります。これは、国交省と災害関連学会の合同調査団が二〇一三年にアメリカに行かれて、このことを報告書でも紹介されて、高く評価をされております。

 これは確かに、事前に予測可能な災害に関するルールでありますので、これを例えば原発に当てはめるわけにはいかないと私も思います。ですから、こういうルール、ゼロアワールールをつくれと言っているわけではないんです。しかし、福島の事故を経験したわけですから、この福島の事故をめぐって、去るも地獄、残るも地獄という状況をつくらない、知恵と力を尽くす必要があるんじゃないのか、こういう提起であります。

 これはちょっと大臣にも認識をお伺いしたいんですけれども、そういう意味で、こうした状況、福島の事故を経験した日本として、こうしたルール、日本の原発事故に対応したルールが必要じゃないかと思うんですけれども、この点の御認識をお伺いしたいと思います。

宮沢国務大臣 まさに、台風のようなルールが原発に適用できないことは明らかなわけでありますし、また、おっしゃるように、まさに事故が起こったときに、誰が被災者になるのか、また救護に当たるのかということがあらかじめなかなかわからないというところもまた事実でありますし、また、おっしゃいますように、例えば救護に当たる、看護に当たる方がどの程度残るかということを事前にということもなかなか難しいというのもまた事実であります。

 しかし、委員の問題意識というのは大変私もわかるところがありまして、まさにそういうリスクをいろいろ常に頭で想定しながら、それを改善していく努力ということをやはり我々はしっかりやっていかなければいけないんだろうというふうに思います。

藤野委員 やはり、政府がそういう屋内退避という方針を出しているわけですから、そこで屋内退避ということは、介護される方はもちろんですけれども、医療や介護に携わる方を大前提としていると思うんですね。

 その方々にも家族がいて、親や親戚がいるということも含めて、こうした問題は避けて通れないし、実際福島で経験したわけですから、ぜひこれはしっかりと検討していただきたいというふうに思うんです。周知徹底するだけでは絶対無理だと思うんですね。そのところに置かれた人の義侠心なり使命感なりに依存するような避難計画であってはならないというふうに思うんです。

 その上で、同じNHKの番組というのが玄海原発の三十キロ圏内の医療、介護機関にもアンケートを実施しております。そのことを紹介されているんですが、百十三の施設のうち六割以上が屋内退避はできないというふうに回答していることが番組で紹介されておりました。六割以上が屋内退避はできないというふうに言っているわけであります。その理由は、設備の対策が進まないということが一点と、もう一つが、今私が申し上げた職員のリスクの問題であります。

 この屋内退避という方針は、いろいろ考えた上でやられたという先ほどの答弁でしたけれども、現場の声としては、先ほど言ったように、六割以上が屋内退避できないということなんです。

 規制委員長に、今の大臣の答弁もお聞きした上でもう一度お聞きしたいんですけれども、今の現場の声とその倫理的な問題について、もう一度御所見をお伺いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 感情、心の問題としては、先生御指摘のようなことはあろうかと思います。ただ、福島の苦い経験を踏まえまして、やはり、結果的に、犠牲になる方あるいは被害者を少なくするのにはどうしたらいいかということで検討したことが、屋内退避という一つの考え方です。

 ですから、そのことについては非常に理解しにくいところもあろうかと思いますけれども、きちっと説明をして、なぜ屋内退避がいいのか、そういうことを御説明して理解をしていただくように努めていく以外は多分ないんだろうと思いますし、そのことをぜひやっていただきたいと思っております。

藤野委員 説明ということなんですけれども、鹿児島の例だけでも、自治体等からの説明がないというのが百八十六に上っているわけで、結局、現場には何の説明もないというのが実態だと思うんです。

 ですから、今説明とおっしゃったけれども、それが実際にはやられていないということですし、しかも、その中身としても、本当に切実に医療や介護の労働者の皆さんが求めていることが中身としてもない。これではやはり、現場の声に応えることにならないし、再稼働を認めるわけにはいかないということを指摘して、質問を終わります。

江田委員長 次回は、来る十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十四分散会


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