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第27号 平成27年7月10日(金曜日)

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平成二十七年七月十日(金曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 鈴木 淳司君

   理事 田中 良生君 理事 三原 朝彦君

   理事 八木 哲也君 理事 中根 康浩君

   理事 鈴木 義弘君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大見  正君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    佐々木 紀君

      塩谷  立君    関  芳弘君

      武村 展英君    冨樫 博之君

      野中  厚君    福田 達夫君

      細田 健一君    牧島かれん君

      宮崎 政久君    若宮 健嗣君

      神山 洋介君    近藤 洋介君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      松原  仁君    落合 貴之君

      木下 智彦君    國重  徹君

      藤野 保史君    真島 省三君

      野間  健君

    …………………………………

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   経済産業副大臣      高木 陽介君

   財務大臣政務官      大家 敏志君

   経済産業大臣政務官    関  芳弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            西田 直樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     寺澤 達也君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           谷  明人君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            鈴木 英夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            佐藤 悦緒君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            丸山  進君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            三好 信俊君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     牧島かれん君

  神山 洋介君     松原  仁君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     井上 貴博君

  松原  仁君     神山 洋介君

    ―――――――――――――

七月九日

 原発からの撤退を求めることに関する請願(大平喜信君紹介)(第三四七一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官向井治紀君、金融庁総務企画局審議官西田直樹君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官寺澤達也君、経済産業省大臣官房審議官谷明人君、経済産業省通商政策局長鈴木英夫君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、中小企業庁長官北川慎介君、中小企業庁事業環境部長佐藤悦緒君、中小企業庁経営支援部長丸山進君及び環境省水・大気環境局長三好信俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神山洋介君。

神山(洋)委員 おはようございます。神山洋介でございます。

 きょうは、経営承継円滑化法についてということでございますが、法案の議論に入る前に、まず一点、現在の中小企業を取り囲む経営環境、経済環境、景気の状況ということについて大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 私が地元で中小企業事業者の方とお話をしている限りは、正直言ってなかなかいいお話には当たらないなという気がしております。待っていると徐々にアベノミクスが波及してくるのではないかというお話も前にはありましたが、最近はいつまで待っても来ないんじゃないかというお話もあるわけです。

 ちなみに、今、私の手元に、四―六の中小企業景況調査であるとか、商工中金がつくっている中小企業月次景況観測というものを見ているわけですが、中小企業基盤整備機構の方でつくっているものでいえば、中小企業の業況は持ち直しの動きを示しているものの一部業種に足踏みが見られる、DIは二期ぶりにマイナス幅が拡大、製造業はマイナス幅が拡大、非製造業もややマイナス幅が拡大。商工中金の方でいっても、景況判断指数は一進一退であるということで、データを見ても、そんな状況なのかなというふうにも思うわけです。

 まず、ここは簡潔でいいわけですが、大臣、現在の中小企業景況についてどういう御認識をお持ちか、御答弁をいただければと思います。

宮沢国務大臣 なかなか私も、地元でいろいろな方、中小企業の方にお目にかかりますけれども、調子のいい方は余りしゃべらずに、ぐあいの悪い方の声がたくさん入ってくるというのが一般的でありまして、声だけで全体を判断するのはなかなか難しいわけです。

 やはり全体としては、間違いなく、昨年は大企業だけでなくて中小企業も史上空前に近い利益を上げているということは確かであります。また、いろいろな調査がございますけれども、いわゆる日銀の短観の資金繰りDIといったものであれば、六月の調査ではプラス五ポイントということで、平成二十四年十二月に私どもが政権に復帰したときがマイナス五ポイントですから、一〇ポイントの改善をしている。また、昨年の倒産件数は九千七百三十一件と二十四年ぶりに一万件を下回っているということで、全体として見れば、私は、中小企業も悪い状況ではないんだろうと思っております。

 ただ、おっしゃるように、地域ごと、業種ごとにいろいろな違いがありまして、苦しい業種もあり、また苦しい企業もあるということも事実でありますので、しっかりと、政策金融を初めとして、資金繰りについては、目くばせをしながら政策を進めていかなければいけないというふうに思っております。

神山(洋)委員 いろいろな見方があるかと思いますし、私も、こう申し上げながら、ちゃんと地域に、または地域の中小企業事業者に景気の好循環の波が訪れるということを望む一人ではありますので、ぜひそこはこれからも目くばせをいただければありがたいなと思います。

 いずれにしても、全雇用の七割を中小企業が占めるということを考えれば、その重要性そのものは全く変わらないというふうに私も思っているわけです。

 今、大臣からも、地域によっても差があるというお話は、これまでもいただいているところではあります。

 法案の話に入る前にもう一点だけ、これに関連をして質問をさせていただきたいわけですが、地域ごとというところでいくと、先日、これは渡辺議員にもこの場で取り上げていただいたわけですが、今、地元の箱根で、大涌谷周辺で火山活動が活発化をしているという事象があるということはもう御案内のとおりかと思います。その地域の実態をここで捉えてどうこうしてくれという話ではないんですが、これは、やはり一つ、今この事象が政治であり政策判断というところに大きなテーマを投げかけているんではないかということを私は考えております。

 それは何かといえば、災害が起きたときに、どこまで国というか公が担保をすべきなのか、それに対して補填をするべきなのだろうかというテーマは、昔から災害対策という類型の中ではありました。ただ、今回の事象は何かといえば、実際に大きな災害が発生をして、それに伴う物理的な被害が生じた後にどうするかというのが今までの主だったわけですが、今回はある意味では初めてと言っていいと私は思うんですが、実際にそういう被害が、今回でいえば具体的に噴火が起こるかもしれない、可能性が高いという中で、安全をより確かなものにするために、保守的にそのための予防措置をとって、規制区域を設けて、それによって経済的な実害が生じるという、実際に発災に至る前の段階でのアプローチに対して、どこまで、誰が、どう責任を持つのかということなんだと私は思うわけです。

 中小企業政策の観点からも、こういう新たな政策判断に対して、この原則みたいなところが、恐らくこれまでの過去の例からは明確にこれですというものを準用することができなくて、きちんと新たにここで決めなきゃいけないんじゃないかなというふうに私は思っているわけです。

 そういう意味でも、実は私、ほかの委員会でも何度かいろいろなやりとりをさせていただいている中で、先日、災害対策特別委員会の中でも山谷大臣とこの質疑をしたときに、安全と経済活動をてんびんにかけて、安全をおろそかにして経済活動を優先するということはあってはならないという大臣の御答弁もいただいて、私もそれは確かにそのとおりだと思うわけです。

 しかし一方で、安全をより確かなものにするためには、それに伴って、安全確保をするための施策によって、そこに生じる経済的な被害に対して、一切国は面倒を見ませんよというのはやはりだめなんだろうと思うわけですね。これは全部国が面倒を見ますという話から、いや、全部地元の事業者の責任ですというものまで極論と極論があって、答えはこの間のどこかにあるんだと私は思うわけです。

 恐らく、このお話をすると、大臣からは御担当ではありませんというお話が来るのだろうなということは類推をしながらも、では、観光政策という意味では国土交通大臣が答えられるのか、それは無理でしょう。雇用という観点から厚生労働大臣というお立場で答えられるのか、それも無理なんでしょう。では、防災担当大臣なのか。要は、これは、内閣であり、政府であり、国家であり、ある意味では政治の判断として、私は、この原則というものを今きちっと定めなきゃいけないというふうに思っているわけです。

 その意味で、大臣、この点、どういう形で責任主体、負担主体を考えるべきだとお考えでしょうか。

宮沢国務大臣 この話につきましては、この委員会でも委員と何回かやりとりがあったと思っております。そして、恐らく箱根が初めてではなくて、例えば阿蘇の噴火等々、制限が加えられると、やはり、阿蘇の観光業の方というのは、これまで大変大きな損害があったという事例は恐らく幾つかあるんだろうというふうに思います。

 そして、今の御質問でありますけれども、我が国の場合は、基本的には、原因者がある場合は当然原因者、福島の場合のようなことでありますけれども、原因者がいない、まさに天災である場合には、私有財産等々については、これは国が補償するものではないというのがずっと基本的な流れとして、まさに自己責任ということで来ておりましたけれども、その例外をつくったのが災害救助法でありますか、家が全壊したときなどにお金が支払われる、こういうのが例外として出てきている、そういう流れの中での恐らく御質問だろうと思います。

 ですから、今後の検討としては、まさに、家が全壊したと同じような状況というときに、では、商工業者の方にどうするかということは、立法論としては恐らくあり得るんだろうというふうに思いますが、一方で、まさに観光地で、箱根山があるがゆえにこれまで利益が出てきたということも確かでありますから、恐らく、いわゆる民間の保険等々で対応を本来はしていかなければいけなかった。

 恐らくそういうことをされている方はごくごく少数だという現実の中で委員がこういう御質問をされたと思っておりますが、まさに大きな流れの中では、絶対に私有財産等々について補償はしないというところから変わってきている流れの中で、まさに立法者の意思としてまたこれからどう判断されていくか、こういうことだろうというふうに思っております。

神山(洋)委員 なかなか難しい判断だとは思いますが、こういうときに、どの程度かは別としてですが、そういう状況に対してできるだけ寄り添うということは、これは政治全体の姿勢として大事なことではないかなと私は考えているわけですので、ここはこれからもまた引き続き議論させていただきたいと思います。

 経営承継円滑化についての法案で何点か議論させていただきたいわけですが、御案内のとおり、平成二十年にこの法律が制定をされたということであります。税制に関しては、各年度の税制改正の中で累次行われてきたということです。基本的には、遺留分の特例と金融の支援と認定制度が柱である。

 一つ問題というか事実関係としてですが、では、その円滑化法が平成二十年に制定をされて、この七年の中で実績はどうなんだというと、税負担の軽減があったのが九百五十八件、遺留分の特例として認められたのが八十一件、低利の融資が行われたのが千七十五件ということで、いただいた資料からすると、約千社の継続、発展及び延べ六万人の雇用に寄与したということでありました。四百三十万件の中小企業事業者からすると、なかなかのボリュームだなというのが正直な印象でもあります。

 まずここで一点取り上げさせていただきたいのは、要は、この後の議論は、今回の改正の内容も含めてですが、よりこの制度がきちんと利用されて、地域及びそういう中小企業事業者の本当の意味での事業承継に資する形をよりつくらなきゃいけないという観点で幾つか指摘をさせていただきたいわけです。

 まずは、遺留分特例制度の対象となる株式の議決権の割合について一点議論をさせていただきたいと思います。

 この議決権の割合は、現状は過半数ということになっているわけです。そもそも、親族外承継を今回の法案によって可能にしようとするということ、これは時代の流れにも適合したいいことだというふうに私は思っているわけです。昔みたいに、長男もしくは親族がずっと引き継いでいくという時代ではない中で、ビジネススキル、マネジメントスキルを持った方、外部の方も含めて、きちっとそういう中に入っていただいて承継を確実に行っていく、大事なことだと思うわけです。

 ただ、問題は、そのときに、平たい言葉で言えば、今までは子供にはいよと渡す、今度からは子供じゃなくてビジネススキルはある、マネジメントスキルもあるでしょう、でも他人にお願いします、渡すというところでは、なかなか数字でははかり切れない心情的な壁というものがあるのかなと私は思うわけです。

 今回の件で、税理士の方であるとか公認会計士の方であるとか、実務として事業承継にかかわっている方何人かとも議論をさせていただいたんですが、基本的には親族外承継はいいことだよねというお話です。ただ、では実際に親族外に承継をするということを考えたときに、いきなり頭から過半数を渡せるのかというと、そこはいろいろあるんじゃないのというお話でした。

 御案内のとおり、株式の議決権の割合というところは、三分の二、過半数、三分の一という大きな区切りがあるわけです。その意味でいうと、いきなり過半数はちょっと抵抗があるけれども、まずは三分の一から始めてみて、様子を見ながら、過半数だったり場合によっては三分の二という形で引き継いでいこう、そういうニーズもあるんじゃないかというお話がありまして、私もそれはなるほどなというふうにも思いました。

 今回のこの法案に至る検討の中で、そういう観点はどこまで議論をされて検討されたのかということも含めて、この過半数以下ということも特例対象にする必要があるんじゃないかというふうに考えているわけですが、この点はまずいかがでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 遺留分の特例制度は、委員御案内のとおり、推定相続人が民法上有している非常に強いもともとの権利でございまして、これの例外を認めてもらおうという趣旨でございます。

 このために、事業がちゃんと円滑に続けられるかどうかという観点は非常に大事でございまして、そういう中小企業のみを対象とする、こういう特例でございます。このため、承継する方が会社の経営権を実質的に有しているかどうか。そうしないと、本当にその事業が続くかどうかわかりませんので、そういった観点から今の考え方になっているということでございます。

 これは両方の考え方がありまして、これを下げるという考え方と、もっと上げたらどうか、両方あります。

 上げる方は、もちろん特例をもっと広げようという話になりますので、それはさすがに会社の実質的経営権を有している範囲でいいのではないかというので今の留保になっておりますし、これを下げる、委員御提案の三分の一ぐらいでどうかとなりますと、逆に実質的経営権を一人の人が持っていないということになって会社が本当にうまくいくのかという問題があります。

 そのような議論から今のような考え方になっておりますけれども、本法案をお認めいただいた後にこれから運用上の問題が出てくれば、さまざまな検討をしてまいりたいと考えております。

神山(洋)委員 さまざまな検討をするということで、それはぜひお願いしたいと思います。

 ここまでの七年間で、あえて申し上げればこれだけの利用実績しかないということは、制度そのものがまだユーザーフレンドリーになっていないからということだと私は思うわけですよ。今回はそれを改善する大事な一歩であると思いますが、恐らくその検討はこれからも引き続き必要だと私は思っています。

 その観点も含めて、時間の関係で一つ飛ばしますが、親族外承継を行う場合には、要は贈与であるとか相続ということではなくて、MアンドAによる対応も最近ふえているという話も伺っております。

 MアンドAでいえば、最近でいえば、MBOであるとかEBOであるとか、マネジメント・バイアウトなのかエンプロイーズ・バイアウトなのかという話ですけれども、そういう親族外承継も大分ふえてきているんだと思うんですね。

 問題は、そのときに、やはりニーズの一つの大きなものは資金なんだと思うんです、バイアウトするための。それに対応して金融支援という枠組みが一応つくられているわけです。中小企業信用保険法の特例であるとか政策金融公庫からの融資というものも、制度としては設けられているわけですが、利用実態としてはこの間で千七十五件ということです。

 多いか少ないか、いろいろな価値判断があるのかなと思いますけれども、私は少ないんじゃないかなと思っています。もっと利用されていいし、利用されるような制度設計というのが私はあってしかるべきじゃないかと思っています。

 その意味で、金融支援制度、今回のこの法案に関しては特段具体的な対応策が見当たらないわけですが、この点についてどういう問題意識をお持ちで、今後どういう対策を検討されていくのか、この点を明らかにしていただければと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、中小企業、小規模事業者の経営者の高齢化が進む中、後継者不在の企業がふえておりまして、MアンドAに係るニーズが高まっているのは事実でございます。しかし、MアンドAにはリスクを伴うことから、譲り受け側の中小企業、小規模事業者の資金調達が課題になっているのはもちろん認識をしております。

 ということもございまして、この法律に認定制度を絡ますということで、日本政策金融公庫では、こうした地域経済の産業活動の維持発展のために必要な事業譲渡や株式譲渡、合併等を推進する融資制度を実施しているところでございます。さらに、この融資制度の貸付対象には、経営承継円滑化法の認定を受けた個人が株を買うといったことに関しても融資をするという工夫をさせていただきました。

 また、この融資制度につきましては、平成二十六年度の補正予算で拡充をいたしまして、貸付対象に地域経済の活力維持に資するMアンドAも追加をさせていただきました。

 しかしながら、まだまだ利用が少ないというのも確かに事実でございますので、さらなる利用の促進に向けて広報活動を積極的に行うなど、中小企業、小規模事業者の事業承継の円滑化に万全を期してまいりたいというふうに思っております。

神山(洋)委員 広報活動をすればこの千七十五件の数字がはね上がっていくのであれば私はいいと思いますが、恐らくそれだけじゃだめなんだと思うんですね。

 理由は恐らくいっぱいあるんだと思いますが、例えば、MアンドAを仲介するビジネスの領域での会社はいろいろあるわけですが、やはりそれは中小企業の中でも比較的大規模のところであったり中規模のところをターゲットとしているわけであって、本当に現場で事業承継が問題になっている、本当に人数が五人、十人という小さなところを対象としている会社というのは恐らく現状非常に少なくて、それはビジネスとしてやはり成り立ちづらいとか、そういうもろもろの問題もあるんだと思うわけですね。

 そういうこともひっくるめて対応していかないと、やはりこの数字というか、数字だけではありませんけれども、MアンドAも含めた中での事業承継を円滑化していくということはできないんじゃないかと私は思います。

 そういう観点からすると、徐々に徐々に状況を見ながらやっていきますというのは当たり前ではあるんですが、若干やはりスピードが緩いかなというのが正直な印象ですので、ここはスピードを速めていただきたいということを要望させていただきます。

 次に、今回の法案の中でもありましたけれども、中小機構に関連をして一点だけ質問をさせていただきます。非常に素朴な質問です。

 今回の改正案の中で、「その経営の承継の円滑化に関し必要な助言を行うものとする。」という文言が、第十五条の二項に記載をされました。何のためにこの文言を入れているんでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 機構法に関する業務追加の規定でございます。

 中小企業基盤整備機構、これは基本的に、中小企業を現に行っている法人、中小企業としての法人あるいは事業体としての個人事業主、こういった方への支援を行っている独立行政法人でございますけれども、今回これを改めて追加するのは、経営者の方あるいは後継者になろうとする方、こういった個人に関しまして、例えば、相続財産の分配方法ですとか遺言の活用をどうするかですとか、あるいは事業承継によって引退した後、個人としての生活をどうするか、こういったものを含めて、事業承継に係る個人の問題、こういったものに関する助言を内容とするものでございます。

 こうしたことを改めて追加することによりまして、中小企業者の形式になる前あるいはなった後、こういったことも含めて措置することによりまして、事業承継の円滑化を進めていきたいと考えているわけでございます。

神山(洋)委員 今おっしゃっていただいたものは、この文言を入れないとできないということなんですかね。日常的に中小機構が行っているさまざまな支援活動の中で、当然、事業承継の話なんというのは出てくるわけですし、それに対してのアドバイスを求めれば、それはやるんじゃないかなと思うわけです。

 深く突っ込むところじゃないのかなとも思いますが、別にこんなことをやらなくたって、そもそもできているんじゃないかなとも思いますし、あえて伺ったのは、もちろん公の独法としてやらなければならないことというのはいろいろあると思うわけですが、しかし、やはり、これまでもほかの法案審議の中でも議論させていただきましたけれども、余りにも民の領域を侵食するようなことはあってはならないなという意味でのピンどめも含めて、あえてこの点だけ指摘をさせていただきたいと思います。

 時間も限られてきましたので、恐らくあと一点になるかと思います。

 小規模企業共済についての改正内容も、今回の法案の中に含められているわけです。本当は、この小規模企業共済のBSからPLから、隅から隅まで全部見てやろうと思っていろいろ見ていたんですが、ちょっとそこまでたどり着きませんで、ただ、やはり気になることがいろいろあるわけです。繰越欠損金が二〇〇八年の段階では約一兆円あって、そこから徐々に徐々に返してきて一四年度末で解消したということで、その間、予定利率を一%に下げたりとかいろいろな工夫はされてきたというふうに承知をしています。

 今後の共済のあり方で考えると、これは共済だけの話ではなくて我が国全体の構造の話ですが、やはり、新規加入者をふやしていって年齢をある程度フラットにしていかないと、共済なんてもつわけないわけですから、新規加入者をふやさなきゃいけませんよねということがいろいろなところに書いてあるわけです。

 確かにそれはそうなんだろうなと思いながら、中小企業の事業承継をある意味では円滑化するということであり、それを経営されてきた方、場合によっては創業者の方に対してきちんとした、創業者利益とまでは言いませんが、老後の生活の支えをするという意味では、この共済の意義は私は一定きちっと認めていると申し上げた上で、しかし、やはりコストパフォーマンスは大事だなと思うわけですね。

 要は、この共済に対してどのぐらいの運営コストがかかっていて、数字化することはなかなか難しいかもしれませんが、どのぐらいの政策効果が出ているのかということはきちんと検証していかなきゃいけないと思うわけです。

 そこで、ここで質問させていただきたいのは、最後になるかと思いますが、この小規模企業共済を維持していく、運営していくに当たってどれだけのコストが年間にかかっているのかというところがまず一点。それで、このコストは、当然、運営費交付金として年間四十数億円入っていることのみならず、共済においては税控除という制度もここには付随をしているわけですから、そこもきちんとコストに盛り込まれなければならない。

 その上で、そのコストも踏まえた中で、今後の小規模企業共済のあり方をどうお考えなのか、前段は事務方、後半は大臣にお伺いをさせていただければと思います。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 共済制度の政策にかかっている費用ということでございますけれども、共済の運営につきましては、先ほど御指摘もございましたが、毎年度約四十億円の事務経費ということで、これは運営費交付金としての支出をしているということでございます。

 それから、税制上の措置というのも講じられてございまして、掛金については所得の控除、それから共済金については退職所得控除の対象とするということで、この点、減税という意味での一定の政策的負担ということになろうかと思いますけれども、実は、個別の事業者ごとに当然所得が違いますし、それから、小規模企業の共済への加入期間などもさまざまであるということで、その負担金額というものを算出するのは、そこが少し難しいのかなと思っているところでございます。

 一方で、効果につきましては、平成二十六年度で申し上げますと、共済金として五・五万人の方々に延べで五千五百六十四億円の支給をさせていただいております。アンケートをとりましても、九一%の方々から、これは役に立った、あるいは、どちらかといえば役に立ったというような回答をいただいておりますので、現在の百二十五万人の加入者の方々をさらにふやせるように制度の運営を進めてまいりたいと考えているところでございます。

宮沢国務大臣 今コストの話があったわけですけれども、保険料と、また保険金に対する措置が税制上講じられていますけれども、これはある意味でコストという意識は正直言って余りなくて、サラリーマンの場合も、厚生年金、また企業年金といったところでほぼ同様の制度があるわけでありまして、退職金が基本的にない自営業者にとっては必要なもので、社会全体がそういう制度になっておりますから、余りこれはコストと意識する必要はないんだろうというふうに思っております。

 一方で、まさに、我が国の小規模事業者は三百三十四万者でありますけれども、現在、百二十五万人が加入しているということでございますので、小規模事業者にとっては大変大事な事業でございます。

 そうした意味では、この事業をまさに継続的にやっていけるような財政措置ということは、私は当然の社会的なコストとして認めていただけると思っておりまして、今後とも、この共済自体が健全な経営をしていくようにしっかりと支援をしていきたいと思っております。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 前段のところで、税控除の算出で、どのぐらいかかっているかというのはなかなか算出が難しいとありますが、しかし、やはりそれをきちっと、いろいろなやり方があるんでしょうけれども、ある程度は算出すべきじゃないかということと、大臣からコストという形にはなじまないというお話がありましたが、私はそこが少し違っていて、必要性は間違いなく私もあると思います。

 ただ、それにかかる、コストという言葉がよろしくなければ、費用が適正なのか否かという観点はやはりこれからも必要だと思いますし、場合によっては、この小規模企業共済の運営改善の中で、運営費交付金のところは現状をもう少し下回ることができるんじゃないか等々、いろいろな議論があり得ると思いますので、引き続きの御検討をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 おはようございます。民主党の中根康浩でございます。

 遺留分に関する民法の特例、今回、対象を親族外へ拡大するという法案であります。

 経産大臣の確認が必要だとか、あるいは、家庭裁判所の許可が必要だというようなことを聞くと、法律とか制度の素人の私どもにとっては大変な大ごとで、極めてハードルが高くてとても使いづらいのではないかという第一印象を受けるわけであります。しかし、改めてこの手続に必要な書類がどのようなものかということを見てみますと、実は決して難しい、複雑なものではないということがわかりました。もうこれは委員の皆様方もいろいろ参考資料をごらんになって御案内のことと思います。

 もちろん、推定相続人の全員の合意を取りつけるというのは、これはケース・バイ・ケースで、困難を伴うことも多いということではあろうかと思いますが、これはある意味いたし方のないことでありまして、その上で、大臣の確認あるいは家裁の許可に必要な書類は、とかく役所にかかわるもの、例えば、私も、ものづくり補助金についてのいろいろな必要書類、必要手続、こういったものを地元の方々から、書類が多過ぎるんじゃないかとか、あるいは、手続が複雑過ぎるんじゃないか、こういうようなことも聞いたりするわけなんですが、事今回の遺留分の民法特例については、意外と簡素なものであるというような感じがいたしておるわけでございます。

 にもかかわらず活用例が決して多くないと今も神山議員からの指摘の中にもあったわけであります。ということは、制度の存在とかあるいは手続の方法について、十分周知がなされていないことに最大の原因があるということになると思います。これを、せっかく法改正するわけでありますので、十分な周知を図って、多くの方に御活用いただいて、円満、円滑な事業承継につなげていただく、こういうことが必要であるということでありますが、改めて経産省のこの点についてのお考えを伺いたいと思います。

関大臣政務官 中根議員がおっしゃった周知、これは非常に我々も重要なことと考えております。この民法特例の認知度をしっかりと上げていかないといけないと思っておりまして、そのために、中小機構のセミナーとか、また中小企業支援機関によります周知をしっかりと進めていこうと。

 そのために、具体的な話をさせていただきますと、平成二十六年度補正予算の措置におきまして、中小企業新陳代謝円滑化普及等事業ということで八・九億円予算をとらせていただいて、全国各地におきまして、セミナーを約五十回、また、各事業者に対します税理士等の個別相談員の派遣を約七百回、それぞれ行うということで、おっしゃるとおり、周知徹底に努めてまいりたいと思います。

中根(康)委員 衆議院の経産調査室などの調査結果によれば、この十年ぐらいが事業承継のピークである、こういうこともあるようでありますので、わかりやすい、簡単なというか、セミナーを開かれても専門家でなきゃわからない、社長のかわりに税理士とか誰かに聞いてもらって、それを解説してもらわないとわからないということじゃなくて、社長自身が、あるいは事務員さんが出かけていってわかりやすい、そういうものをぜひ八・九億円かけてやっていただきたいと期待をいたすわけであります。

 それと、経産大臣の確認あるいは家庭裁判所の許可、その前後のところには、一カ月以内に申請、一カ月以内に申し立てというような決まりがあるわけなんですけれども、この確認とか許可にかかわるところも迅速に行われるということが必要だと思います。ここを例えば一週間以内とか二週間以内とか、そういうことは定められていないんでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 申請に関する処理の期間の問題でございます。

 まず、経済産業省におきましては、経済産業大臣の確認につきまして標準処理期間を設けておりまして、書面申請については一カ月、電子申請については二十五日とされておりますけれども、この標準処理期間の範囲内でできる限り速やかに処理を進めていきたいと考えております。

 もちろん、個々の事案におきまして、実際に中小企業の実態があるのか、あるいは、提出書類が本当にそろっていなければもう一回改めていただくこともございます。したがいまして、一週間以内というふうに一律に決めていくことはなかなか難しゅうございますけれども、標準処理期間の範囲内で短くしていきたいと思います。

 一方、家庭裁判所の許可につきましては、私どもとして責任を持ってお答えする立場にございませんけれども、個々の事案に応じまして適切に処理を行われるものと考えております。

中根(康)委員 民法の特例を活用して事業承継をしようと決意をされた方々にとっては、本当に素人の方々が一カ月以内に書類の提出を求められる。一方で、経産省という大専門家集団がまた一カ月かけるというのは少し時間をかけ過ぎかなというような気がいたします。活用をしようと決意をされた方々にとっては一日、二日が極めて重要だということにもなりますので、一カ月、これをできるだけ短縮して、迅速に手続が進むように御配慮をいただきたいということでございます。

 次の質問は、先ほど神山議員も取り上げた十五条にかかわるところでございますけれども、中小機構の業務追加、法改正してまでやる必要があるのかどうか、こういうことを神山議員も指摘をされたわけでありますけれども、私はそれとはちょっと違った観点なんです。

 今回の改正案の中に、中小機構の業務に事業承継に係る計画的な取り組みを後押しするため、後継者や経営者に対して専門的な助言を行うことを規定しているということでございます。私は、これは提案でございますけれども、もう既に取り組んでおられるということであろうかと思いますけれども、この中に老舗の研究を盛り込んで、これをぜひ事業承継に反映をするというか、大いに参考にしていただきたいということであります。

 日本は、ある意味、世界一の老舗大国ということも言われておりまして、例えば、三百年以上続いている事業所が四百以上もあるとか、百年以上だと二万社以上あるというようにも聞いております。老舗というのは決して古臭いということではなくて、ある意味、事業承継のハードルを幾つも乗り越えてきたということで、もちろん、起業、ベンチャーということも極めて重要なんですけれども、ある意味、老舗というのはベンチャーを繰り返してきたというようなことも言えるのかもしれません。新しい分野、時代に合った分野を常に先取りして、長年にわたって事業を続けてこられたということもあるかもしれません。

 そういった意味で、もちろん成長も大事なんですが、生き延びる戦略というようなこと、こういう観点からも中小機構がぜひ中小企業事業者に対して適切なアドバイスをしていただく、こういう観点については経産省はいかがお考えでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の老舗企業の研究についてでございますけれども、現在でも機構法の中にさまざまな関連する調査研究というのが含まれておりますので、今般、改めて書き記さなくてもできることではございますけれども、今後とも一生懸命やっていきたいと思います。

 具体的には、既に中小機構が毎年実施しております事業承継フォーラムにおきまして、老舗企業の経営者によります講演をお願いしておったり、あるいは、今後、おっしゃった老舗企業の強みあるいは事業継続の秘訣、こういったものを調査研究いたしまして、それをいろいろなお悩みを持っておられる中小企業、小規模事業者の方に周知するということも検討しているということでございます。

中根(康)委員 もう一つ質問をさせていただきます。

 借り入れをしている中小企業の八割以上が個人保証を提供していると聞いております。個人保証の負担解消というものが承継の一つのポイントであると考えております。次の社長に個人保証を負担させたくない、だから、本来、承継のタイミングであるにもかかわらず、それをちゅうちょしてしまう、速やかなバトンタッチができなくなってしまうということも多いと伺っておるところでございます。

 平成二十六年二月から経営者保証に関するガイドラインがスタートしておるわけでありますけれども、それでも個人保証の問題は依然として解消されていない。

 それゆえに、安倍総理が、この通常国会の冒頭といいますか、二月十二日の施政方針演説において、「一度失敗すると全てを失う、個人保証偏重の慣行を断ち切ります。全国の金融機関、中小・小規模事業の皆さんへの徹底を図ります。」というふうに述べておられるわけであります。

 施政方針演説に盛り込んだほどのことでございますので、二十六年二月からのガイドライン以上に何か有効な対策を打っていくという意気込みだと受けとめることができるわけでありますけれども、具体的には、この総理の施政方針演説の言葉というのは、今後、経産省として何をしていくということになるのでしょうか。お尋ねいたします。

宮沢国務大臣 御質問にありました経営者保証に関するガイドライン、昨年の二月から運用されておりますけれども、これ自体も効果は出ておりまして、昨年の二月から本年の五月末までに、これは政策金融公庫及び商工中金でございますけれども、合計約六万四千件、二兆九千億円の実績を上げてきております。

 そして、これに加えてというお話ですけれども、恐らく、それは私どもが答えるよりは金融庁が答えた方が正確だと思いますけれども、金融庁の政策というものがここ一、二年、特に最近になりまして大きく転換をしてきております。

 それまではまさに金融機関の財務体質等々といったところを見てきていたわけでありますけれども、大きく転換して、まさに、これまでの金融機関、特に中小の金融機関といったものが担保とか保証に頼り過ぎてきている、それが余りにも審査能力がなくなってきているということが一番の問題であるということで、そういう担保とか保証ではなくて、まさにキャッシュフローといったもの、要するに企業の将来性といったものをしっかり評価した上で融資をするようにという方向に変わってきているようでありまして、これが恐らく一番大きな、まさに個人保証偏重の慣行を断ち切るという大きな政策だろうと思います。

中根(康)委員 ぜひ、個人保証の問題については、経産省、金融庁、関係省庁連携して問題の解決を図っていただきたいと思います。

 消費税の転嫁の問題、円安の悪影響、マイナンバーを導入するための中小企業の新たな負担、あるいは、この間も取り上げましたが、厚生年金基金の解散に伴う代行不足分の返上、いろいろと中小企業経営者の責任を問えない制度、法律の改正に伴う事業経営の困難がさまざまあるわけでありますので、ぜひ中小企業の事業承継ということについて、経産省からきめ細かな御配慮を賜りますようにお願いを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 私、地元が品川区、大田区ということであります。大田区の都議会議員を今から三十年ぐらい前にやっておりまして、その意味では、本当に中小企業の町でありました。当時に比べて、中小企業も激減をいたしております。

 私、実は、政治家としてのスタートをするときに、ちょっと個人的なことになりますが、私の応援団長はメッキの方でして、当時、東京都のメッキの中心の方でした。したがって、メッキ業というのは私の政治の原点であり、その課題というのは私にとって極めて重要であるというふうに認識をしてきたわけであります。

 メッキに関していえば、東京都のメッキは、二十年前は千二百社ぐらいあった。今は三百五十。半分どころじゃないんですね。三分の一に激減している。事業承継が極めて中小企業において必要であると言われたのは、我々が都議会議員でやっているときには、工場制限法とか立地法といったいわゆる工場三法、それから事業承継、この二つを何とかせいという話が、大きく商工会議所を含む支援団体から寄せられてきたわけであります。

 この二つに関しては、やはり大分変化をしてきたというふうに、私はそのことは評価をいたしますが、やはり幾つかの課題があるというふうに思っております。

 俗に、メッキに関して言えば、後出しじゃんけんと言われておりますが、刑法の世界では罪刑法定主義というので後のものは遡及しない。刑法でもそうであるように、ほかの分野でも基本的に法律は遡及はしないのであります。時々間違って遡及しているのはありますが。

 私は、その意味では、特にメッキは、最初は土間でやっていいよと。別に、これをするにはこうだああだという規制がなかった。後で、第二部の、冒頭十分間しか質問時間がありませんから、そこで環境省を含めて徹底的に質疑をしていきたいというふうに思っております。

 メッキ業に関しては、土壌汚染防止法で大分がんじがらめになっていて、私の知り合いのあるメッキ会社に行って、それは、お父さんの代に、三十年近い前に私は支援を受けて、この間行ったら息子さんがいて、いや、松原先生、やめるにやめられないと。これをうちがやめたら、行くも地獄、引くも地獄と。やめたら、ずっと汚染が下へ入っていって、遮蔽板を打ってやったらどれだけ金がかかるかわからないと。こういうふうな悩みを聞きました。

 環境省にも後で聞きますが、私は、それはそれで、理屈があるのはわかる。理屈があるのはわかるけれども、しかし、全部それを個人企業に対して責めを負わせると後で決めて、それが妥当かどうかということもまた考えなければいけない。どこをもってその中間点とするかということは、極めて重要なことだと思っております。これは後で聞きます。

 今、中根委員から質問がありましたが、個人保証に関して言えば、私は、これは極めて前時代的なものだと思っております。個人保証というものに関して、もうやはり基本的にはこういったものはなくした方がいいと思っておりますが、これは一般論ですから、大臣の御所見をお伺いしたい。

宮沢国務大臣 個人保証につきましては、先ほど中根委員に申し上げたように、少なくする方向で今いろいろ政策をしているわけですけれども、一方で、個人保証があるからやっと借りられるということもあるわけでありまして、また、これを全部なくすというのはなかなか難しいんだろうなという気がいたします。

松原委員 重要なのは見解だと思っているんですね。

 個人保証があるのが当然であって、例えば三つの条件がそろえばこれはなくしましょうというのではなくて、ないのが前提だ。しかし、中には生命保険を掛けるから金を貸してくれという人がいるかもしれない。そういう個人保証で勝負をしたいという人も百人に二、三人いるかもしれない。そこはそういう仕組みもあっていいでしょう。ベースはなくすべきだという発想は、私は、どちらがメーンか。今おっしゃったようなところで、人によっては個人保証を使う人もいるんだ、個人保証に頼る人もいるんだ、しかし、自分からあえてそうしたいという人は別だけれども、基本は個人保証はなくすべきだと思っています。

 もう一回、御所見をお伺いします。

宮沢国務大臣 今、これは私の立場というよりは恐らく金融庁の方から答弁されるべきだと思いますけれども、個人的に申し上げれば、おっしゃるように基本は個人保証なしということが私は筋だろうというふうに思っております。

松原委員 非常におっしゃるとおりだと思います。世界的に見て、極めてこれはまれな現象であります。

 そこで、金融庁にお伺いいたします。

 今、どんなふうに個人保証に対するさまざまな施策が打たれてなっているか、何件どうなのか、お伺いしたい。

西田政府参考人 お答えいたします。

 金融庁といたしましては、経営者保証に関するガイドライン、これが融資慣行としてやはり浸透、定着していくということが重要であると考えております。

 このため、金融庁では、まずは金融機関に対しまして、中小企業や小規模事業者の方々に積極的にこのガイドラインを周知するということを求めております。

 また、中小企業庁と連携いたしまして、全国各地で金融機関あるいは中小企業関係者の方々に対する説明会を実施したり、あるいはインターネットによるガイドラインの政府広報というものに今取り組んでいるところです。

 さらに、ガイドラインだけではなかなか浸透はしませんので、金融機関等により広く実践されることが望ましいような取り組みというものを具体的に参考事例集という形で取りまとめて、今公表をしているところであります。

 事業者の方々がガイドラインをどの程度認知されているかというところについては、まだまだ確たることは申し上げられないわけですけれども、今申し上げたような取り組みによって、事業者の方々への周知は一定程度進捗はしていると思います。

 ただ、金融庁としては、やはりこのガイドラインというのが融資慣行としてしっかりと定着していくということが重要ですし、そのためにはやはり事業者の方々への周知というものが重要であると考えておりまして、今後とも引き続きこのガイドラインの周知、広報というものに努めるとともに、金融機関による積極的な活用を促してまいりたいと考えているところでございます。

松原委員 私が聞いたところでは、中小企業家同友会の、全組織ではなくて一部の組織のデータでありますが、民間の事業者、民間の金融機関に対して確認したんですよ。新規ですか、継続されているものに対してリクエストしたんですかと。後者でした。継続したものに対してリクエストしたところ、その達成率、成功率は四から七%。先ほど大臣がおっしゃったように、いわゆる公的な金融機関、こういったところはかなり数字が高いというふうに彼は言っていました。

 金融庁にお伺いいたします。数字はどうなっていますか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 金融庁におきましては、地域銀行、信金、信組等を含めた民間金融機関におけるガイドラインの活用件数につきまして、半期ごとに金融機関から報告を求めることによって把握しているところでございます。

 ガイドラインの適用が開始されたのが昨年二月ですので、二月から昨年九月までの八カ月間で、無保証での新規融資あるいは既存の保証契約の解除といったものを行った件数というのは、約八万五千件というふうになっているところでございます。

松原委員 これからぎりぎりと金融庁と議論をしたいところでありますが、とりあえず十分間の質問時間が終わったので、次は三十分あるから、きっちりと答えてもらいたい。

 以上で終わります。

江田委員長 次に、佐々木紀君。

佐々木(紀)委員 自由民主党の佐々木紀でございます。

 きょうは、質疑時間を賜りまして、ありがとうございます。

 私は、事業承継は大事なテーマだというふうに考えておりまして、地方創生を考える上でも大変大事な政策の一つだというふうに思っています。

 先般、地元の飲食業を営む個人事業主の方とお話をしておりまして、その個人事業主の方は、先ほど出ておりましたけれども、いわゆる老舗の看板を背負っておいでる方でありまして、後継者がちょっといないんだよねと、後継者探しに苦慮しておいでるというお話でありました。

 しかし、地方の中小企業、特に小規模事業者の方にとっては、日々経営で手いっぱいで、なかなかそういったことをゆっくり考えるという場もないわけであります。事業承継の必要性は感じていても、誰に相談していいかわからない。そもそも後継者もいない、何から手をつけていいかわからないといったケースも多いようであります。

 後継者不足に悩む経営者、一方で、でも起業してみたいという方もいらっしゃるわけでありますから、そういったマッチングをする仕組みもあればいいかなというふうにも考えたりします。

 そういったときに、小規模事業者、中小企業の経営者の一番身近な相談相手として考えられるのは、行政の窓口あるいは商工会、商工会議所、金融機関、税理士さんとか、そういった支援機関であるとか、そしてまた中小企業基盤整備機構といった窓口も考えられるわけであります。

 そういった経営者の相談に乗ってくれる窓口、事業引き継ぎ支援体制について、対策は十分なのか、あるいはその広報は十分に行われているのかということについてお伺いしたいと思います。

関大臣政務官 お答え申し上げます。

 今、佐々木委員がおっしゃった小規模企業の方々、経営者がいないとか、税金対策どうしようか、事業承継どうしようかと日々大変な悩みを抱えていらっしゃるのは、本当に実態だと思います。

 そういうことに対しまして、行政の方で、去年なんですが、全国の都道府県によろず支援拠点というのを整備いたしました。事業承継の経営改善の支援ができる税理士等をそちらの方に、二万三千九百七十三人に上りますが、認定して公表させていただいております。

 身近なところでそのような事業承継の話を商工会、商工会議所にもやっていただくようにして、また、昨年には小規模企業基本法の改正など、体制を整えていこうということで進めております。

 そうした中におきまして、事業承継の専門分野におきましては、事業引継ぎ支援センター、こういうふうな支援センターを今全国で三十一カ所つくらせていただいておりまして、二十七年度中には全国展開したいと思っております。

 また、委員も御指摘のとおり、このような状況をたくさん広報しないといけないということで、中小機構によりますセミナーを二十六年度には二千七百二十八回やらせていただいたんですが、ミラサポ、これはインターネットの中小企業庁の中での画面なんですけれども、ミラサポでも紹介して、さらにハンドブックやチラシをしっかりと配付してまいりたいと思います。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 よろず支援拠点であるとか、各県に置かれている事業引継ぎ支援センター、そういったところに行けば相談に乗っていただけるということだったかというふうに思います。あと、中小機構の助言のサポートの強化とか、この法案でも盛り込まれているようでございますので、幅広い、窓口に寄って気軽に相談できる体制をつくっていただきたいというふうに思います。

 この事業承継円滑化法に係る制度、いろいろ、るるあるわけでございますけれども、意外に知られていないというわけであります。経営者にしてみれば、後継者を見つけることも大変でありますし、仮に見つけたとしても、資質がどうかとか、あるいはステークホルダーに理解されるかとか、そういった種々のやはりハードルもあるわけであります。せめて制度上だけは、相続の問題であるとか、先代経営者の生活の不安を解消する仕組みとか、そういったことが必要だというふうに思います。

 予算や税制を含めた総合的な対策が必要であろうかというふうに思いますけれども、政府の御見解をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 事業承継に当たりましては、後継者と先代経営者がそれぞれ直面する課題に対応するため、予算、税なども含めた施策を総合的に行うことがまさしく必要だというふうに思っております。

 まずは、遺産分配に伴う株式の散逸に対しましては、平成二十一年に、経営承継円滑化法を制定いたしまして、親族内の承継についての遺留分の特例を創設したところでございます。

 また、税制措置といたしましては、後継者の相続税負担を軽減するため、平成二十一年に今の形の事業承継税制を創設したところでございます。さらに、平成二十五年度の税制改正におきまして、雇用要件等の緩和、親族外承継の対象化を実施し、本年一月から改正になった事業承継税制を施行しているところでございます。

 また、予算措置といたしましては、適切な後継者が見つからないとの課題に対しまして、後継者マッチング支援を行うため、事業引継ぎ支援センターを全国三十一カ所に設置しておりまして、本年度中に全国展開を行う予定でございます。

 また、金融措置といたしましては、会社の資金需要に対応するため、中小企業信用保険法の特例として信用保険枠の拡大でありますとか、後継者個人の資金需要に対応するために、日本政策金融公庫等の特例として低利融資を設置しているところでございます。

 また、御指摘にございましたように、先代経営者について、引退後の生活に対する不安の声を聞いておりますので、これに対し、昭和四十年に小規模企業共済制度を創設し、本法案によりまして、親族内承継や六十五歳以上の役員退任時の支給額を引き上げることを提案させていただいているところでございます。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 予算、税制を含めた総合的な政策はこれまでもつくっておいでるということでございました。民法の特例、金融支援、また承継税制、あと共済制度、こういったものを制度的に整えているというわけであります。

 このたび遺留分の特例を親族外承継まで拡大したということは、これまでもるるの改正があって、金融支援や税制については、会社も個人も、また親族内外もしっかりとカバーをされておったわけでありますけれども、この遺留分の特例だけは親族外承継に関しては認められていなかったというわけでありますから、このたびの制度の改正は大変妥当なものだというふうに考えております。

 それで、これまでも委員の先生方が御指摘されて議論がなされておったことではございますけれども、事業承継支援策の利用実績について、ちょっと少ないのではないかなというふうに思うわけであります。手続の煩雑さや使い勝手が悪いのではないかというような御指摘もありましたけれども、今後、改善や拡充する予定はあるかということをお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど答弁させていただきましたように、経営承継円滑化法におきましては、民法特例、事業承継税制等の支援策が整備されております。

 それで、まず、民法特例の利用実績が約六年間で八十九件で、少ないのではないかという御指摘がございました。これは、そもそも相続時に遺留分が問題になるケースは限定的であり、相続人により遺留分が放棄されるケースはさらに限定的であるのがまず第一の理由であるというふうに思っております。

 しかしながら、先ほど委員から御指摘がございましたように、やはり事業承継に関しましては総合的な施策が必要ということでありますから、紛争の未然防止のための選択肢といたしまして、ぜひとも民法上のルールも整備をしておきたいということで、限定的なケースではございますが、今回の法改正をお願いしているというところでございます。

 次に、事業承継税制の利用実績でございます。これは約六年間で千二十二件ということであります。

 これは事業者からの要件緩和の要請が非常に強く、平成二十七年一月からの相続税の税率、あと基礎控除の縮減に合わせまして、親族外承継の対象化、雇用八割維持要件を五年間毎年から五年間平均へ緩和、経営者の役員退任要件を代表者退任要件への緩和等、適用要件の緩和を行わせていただきました。この要件緩和を受けて、今後、活用件数がふえることが期待されるところであります。

 これらの支援策の利用に当たりまして、必要書類は必要最小限になるように努力をしておりますが、具体的なニーズがあれば、随時見直しを行ってまいりたいというふうに思っております。

 また、特に税制につきましては相続税も相当変わりましたし、今回行わせていただきました要件緩和でどれぐらい活用件数がふえるかということを見まして、先生から御指摘がございましたように、今後、改善や拡充というのを考えてまいりたいというふうに思っております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、今後の利用状況も踏まえながら改善をし、また広報も十分にしていただきたいというふうに思います。

 時間も迫ってまいりましたので、ちょっと予定していた質問を飛ばさせていただいて、小規模企業共済制度について少し質問をしたいというふうに思います。

 先ほど来の質問にも出ておるわけでありますけれども、事業を引退する先代経営者については、引退後の生活に対する不安があるわけであります。それを解消するために小規模企業共済制度というのができたわけでありますけれども、今回、事業承継の観点から制度改正を行うというふうに承知をしております。

 改正による新たなメリットは何なのか、また、共済金の額がふえると予想されますけれども、共済事由引き上げに伴う共済財政への影響はいかがなものか、政府の御見解をお伺いしたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 小規模企業共済制度でございますけれども、これは、小規模事業者の方々の実態を踏まえまして、事業の廃止あるいは会社役員の退任の際に備えまして生活の安定のための資金を積み立てていただく制度ということで、現在、百二十五万者の方々に御利用いただいているところでございます。

 今回の改正によりまして、従来、共済金を低く設定しておりました親族内の承継につきまして、親族外の承継と同額の共済金を受け取れるというふうに改正をさせていただきたいというふうに考えてございます。

 一つの試算でございますけれども、例えば掛金が四万円で二十年間納付をされたという場合で計算をいたしますと、現状では九百六十八万円の共済金ということになりますが、改正後は千百十五万円ということで、約一五%の増額となるところでございます。

 それから、もう一点の、会社の役員が任意に退任をされた場合。これは、六十五歳以上の場合につきましてはこれまでより高い共済金をお支払いするという改正でございますけれども、これも、例えば掛金が四万円、十年間の納付期間ということで考えますと、現状は四百八十万円の共済金ということでございますが、改正後は五百四万円ということで、五%の増額がなされるということでございます。

 それから、もう一点御質問がございました共済財政に与える影響ということでございますが、今回の共済事由の引き上げという影響につきましては、平成二十五年度の共済金の総支給額の中で見ますと、〇・二%程度の影響というふうに見込まれておりまして、共済財政に大きな影響を与えるものではないというふうに考えているところでございます。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 共済財政は、ここ数年の株価の大幅な上昇によりまして資産の運用利回りが大きく改善したということで、ここにはアベノミクスの効果も大きくあらわれているのかなというふうに思います。

 予定をしておった質問が、ちょっと時間が参りましたので、できませんでした。せっかくお越しをいただいたのに本当に申しわけない気持ちでありますけれども、本当に事業承継は大事だと思います。

 地方創生の観点からも、経営者が若返れば活性化するわけでありますし、経営の革新やイノベーションも生まれる可能性もあるわけでありますから、地方は景況感もよくないと言われておりますけれども、経営者の五二%が六十歳以上というデータもあるわけでありますから、若返りをすることによってこの閉塞感を打破できるのではないかというふうに思います。この事業承継を進めていきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

江田委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 まず、事業引き継ぎ支援事業についてお伺いしたいと思います。

 TKC全国会の六月号の会報に、北川中小企業庁長官と粟飯原TKC全国会会長との対談が掲載されておりました。

 この中で長官は、地方創生の課題は、小規模事業者の活性化、取引単価の適正化に力を注いでいく、また、地域に根差した持続的な事業を支援し、収益性を高めることが事業承継の前提だというふうに、この二点を強調されておりました。

 これを受けまして、粟飯原TKC全国会会長はこんなふうにおっしゃっていました。

 実際にクライアントに接していて思うのは、事業承継がうまく進んでいない例が多いということです。また、国税庁の会社標本調査によれば、依然として赤字企業の割合が全体の七割前後で高どまりしている。

 そのような状況の中で問題なのは、経営者の年齢階層です。昭和から平成の初めぐらいまでは大体四十歳代が中心でしたが、最近の中心は七十歳代です。非常に経営者が高齢化していて、しかも事業承継が進んでいない。事業承継については国もこれから力を入れると伺っていますが、具体的な施策はどうなりますかというふうに尋ねられています。

 長官は、これに対してこんなふうに答えていらっしゃいました。

 事業承継の問題は、中小企業庁としてもかねてより認識してきました。今国会に提出しているのは経営承継円滑化法改正案です。増加傾向にある中小企業の親族外承継に対応するために、遺留分民法特例制度を親族外にも適用できる拡充措置等が盛り込まれています。この背景には、御指摘のように、事業承継がうまくいっていない、廃業もふえているという状況があります。

 社長の息子も娘も会社の後を継がないと言ったら、ほかに誰が務めるのか。社内の人なのか、親族外で探すのか、それとも事業を外へ譲渡する形をとるのか、いろいろな方法があると思います。

 私どもの対応としては、税や民法特例以外には事業引継ぎ支援センターをつくっています。全国各地に事業承継に関する相談窓口を設けており、特にニーズが高い地域においては専門家による支援も受けられます。

 民間企業が手がけているMアンドA等は、やはりある程度の規模がないと双方の話がまとまりにくいようです。小さな事業体だと民間の仲介業者への十分な手数料も払えないということもあるので、公的な形でマッチングして事業を続けてもらえるようにしていますというふうに長官の方で答えられておりました。

 平成二十三年度に開始されました事業引き継ぎ支援事業の概要、特に事業引継ぎセンターの設置状況はどうなっていますでしょうか。また、これまでの相談者数、事業引き継ぎ件数はどのように推移していますでしょうか。お答えいただきたいと思います。

北川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の事業引き継ぎ支援でございます。特に、MアンドAによる後継者マッチング支援、こういうものが中小企業、小規模事業者の分野でも必要かと考えておりまして、平成二十三年度から行っている事業でございます。

 平成二十七年七月現在でございますが、本事業の実施主体であります事業引継ぎセンター、これを全国三十一カ所に設置しまして、全県ということでございますので、他の十六カ所には事業引継ぎ相談窓口を開設しているところでございます。平成二十七年中には事業引継ぎセンターの全国展開を行いたいと考えております。

 これにつきまして、会社間のマッチングを行うMアンドA事業、それから、個人事業主と起業家の方、創業者の方をマッチングする後継者人材バンク、こういった事業も行っておりまして、これらの事業につきまして、発足以来、五千社以上の御相談に応じ、また具体的には百五十二件の事業引き継ぎの成約を見ております。

 引き続き積極的に取り組んでいきたいと思います。

富田委員 今、五千件以上の相談で、百五十二件事業引き継ぎがされたということですが、こういうふうにうまくいったんだというような成功事例はありますか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 特に成功事例といたしまして、小規模事業のような例を出させていただきたいと思います。二つほどでございます。

 一つは、静岡県におきまして、会社に引き継いだ事例でございまして、これは、業務用の中華麺を製造されておられまして地元のラーメン店に販売するA社、これが後継者不在の問題を抱えていたことからセンターに御相談されて、うどんあるいはラーメンの製麺を行っているB社が譲り受けたということでございます。その結果、B社がA社の従業員の方を継続雇用するということとともに、自社の老朽工場を閉鎖してA社の工場に統合してコスト削減も図られたということでございます。

 もう一件、宮城県の事例でございます。これは個人に引き継いだ事例、先ほど申し上げました後継者人材バンクの事例でございます。これは、後継者不在の個人事業主でありますAさん、二十年来地元で弁当屋さんを営んでおられて、地域密着型のおふくろの味ということで事業を展開しておられたんですが、東日本大震災で被災され体調を崩して、なかなか事業の継続が難しくなりました。一時、廃業を考えたようでございますけれども、事業継続に対するお客様からの強い要望あるいは従業員の雇用という観点から、商工会議所へ御相談されて、Bさんという方がAさんの営んでいた弁当屋を承継し起業されました。

 このBさんという方は、もともと地元のIT企業に勤務されていた方でございますけれども、消化器系の持病があったそうでございまして、それでリタイアし、日々のみずからの食事制限の中から、食を通じた社会貢献ができないかということを考えておられまして、もともとのAさんの願いでありました従業員全員七名の雇用が維持され、また地域に親しまれたおふくろの味を引き継ぎまして提供することになった、こういうような事例がございます。

 こうした事例を全国で積み重ねていきたいと思います。

富田委員 今、長官の方から成功事例を二つほど御紹介いただきましたけれども、後継者不在の事業者が事業引き継ぎを活用しやすくするためには、中小企業の事業引き継ぎへの理解を促進して、健全なマーケットを育成することが必要だというふうに思います。

 このために、事業引き継ぎの手続フロー、仲介者等関係者の役割、留意点や、トラブルのときの対応を定めた事業引継ぎガイドラインを中小企業庁の方で、ことしの三月、作成されました。ハンドブックやチラシも作成されました。委員の皆様のお手元にチラシを配付させていただきましたが、このチラシのもとになる事業引継ぎハンドブック、これですけれども、これはやはりかなりよくできています。

 大きな企業ですと弁護士に相談したり公認会計士の皆さんに相談したりですが、なかなかそういう費用も出せないという人たちは、まずこれを手にとってみれば、何が問題になるのか、どういった点に留意して今後交渉を進めていけばいいのかというのがすごくよくわかるハンドブックであります。

 ただ、これを余り小規模事業の皆さんは知らないと思うんですね。今後こういったものをどうやって広報啓発していくのか、その点について長官はどんなふうに考えていらっしゃいますか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 今御紹介いただきました事業引継ぎガイドライン、それに基づきます事業引継ぎハンドブック、これをつくりましてお配りしているところでございます。これによりまして、中小企業者の持たれておられる不安感、抵抗感、こういったものをなくしていただければと思っているところでございます。

 この事業引継ぎハンドブック、大変好評でございまして、全国の中小企業団体、金融機関、あるいは士業の関連団体にお配りしたところ、追加で配布したいという御希望が相次ぎまして、十万部印刷をいたしましたけれども、全部使われておりまして、現在、増刷対応中でございます。

 あと、ミラサポでも周知を図っておりますけれども、具体的にはやはり、税に関係する皆様、あるいは商工会、商工会議所の皆様、中央会、さまざまな中小企業団体がございます。こういったところを通じまして、広報に努めていきたいと考えております。

富田委員 ありがとうございました。

 残りの時間、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた新たな取り組みについて、何点か確認をさせていただきたいと思います。

 基本方針の改定の経緯や考え方につきまして、一般の国民向けの情報提供とあわせて、全国の自治体の方にも情報提供を緊密に行うことを目的に、自治体連絡会、自治体への説明会を非公開で開催してきたというふうに聞いております。

 これに関連しまして、総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物ワーキンググループ第二十一回会合におきまして、複数の委員から、公平性や透明性の観点から、長い目で見ればマイナスだ、こういう形では今後の政策への市民のかかわりに非常に悪い影響があるなどと、非公開としたことへの批判が相次いだというふうな報道がありました。

 事実関係はどうだったんでしょうか。また、なぜ非公開でこういう説明会を行っているんでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 二つ御質問いただきました。

 まず、どうして非公開であったかという点から御説明をさせていただきたいと思います。

 五月二十二日に最終処分の基本方針を七年ぶりに改定させていただきまして、その翌週から説明会をやらせていただいております。私ども、今回の自治体の説明会では、何か最終処分地の受け入れをお願いするという目的では全くございませんで、まさに最終処分の基本方針をどのようにして改定したのか、その趣旨は一体何なのか、特に、この問題の解決が社会全体の利益だということを広く全国の方々に理解していただく、共有していただくということを目的としてやったものでございます。

 したがいまして、数多くの自治体の方に参加をいただきたいということでございまして、仮にこれを公開のもとで行いますと、周囲から受け入れに関心があるのではないかというふうな誤解を受けてしまう、こういったおそれがありますし、また、率直な意見交換としたいわけでありますが、例えば地域に対する支援としてはどんな支援策がありますかといったような御質問というのは、なかなかしにくいのではないか。こういったようなことを考えまして、私ども、説明会の目的を達成するためには非公開の方が好ましい、このように判断をしてやらせていただきました。

 この点につきまして、七月三日に開催させていただきました先生御指摘のワーキンググループ、こちらの方で、私ども、この基本方針改定後の理解活動の状況ということを御報告させていただいたこととの関連で、委員の方々から御意見をいただきました。報道の中で引用されているものに限らず、十一人の委員の中で七名の方が、多かれ少なかれこの問題に触れて御発言をいただきました。

 その中で、報道にございますような、公正性、透明性の観点から、長い目で見ればマイナスといった御意見でございますとか、あるいは、今後の政策への市民のかかわりに非常に悪い影響があるといったような御指摘は確かにございました。

 他方で、今、今後の市民のかかわりに非常に悪い影響があるという御発言をされた同じ委員の先生が、率直に意見交換をするという観点では非公開での開催は十分にあり得る、非公開で開催する場合は、あらかじめその旨をアナウンスしておくとよいのではないかといったようなアドバイスも同じ先生から頂戴をしております。

 また、ほかの先生の中には、自治体の参加、発言を得やすいよう非公開としたということは妥当だと思う、このような御指摘をいただいておりまして、批判が相次いだということではございませんけれども、こうした議論が交わされたということでございます。

 今後の運営で、我々としても工夫をしていきたいと思っております。

富田委員 事実の経過はわかりましたけれども、実は今週、前のこの委員会で質問させてもらいましたスウェーデンのSKBの社長さんが来日していて、一緒にお昼を食べる機会がありまして、この話題が出たんですね。

 最終処分場、ずっと世界を回っていて、やはり透明性が大事だと皆さん言われているんですけれども、スウェーデンでもやはりこういった場合は非公開も十分考えられるというふうにおっしゃっていました。もうケース・バイ・ケースだということで。

 スウェーデンの方では、ことしじゅうに建設許可がおりるんじゃないかと思っていたら、環境裁判所というのがスウェーデンは特別にあるらしくて、そこでまた問題になって、二十年前の議論が蒸し返されて大変困っているというような話がありました。

 そういった意味で、本当にステップ・バイ・ステップで一つずつ積み重ねていくのは大事だと思いますので、今部長が言われたとおり、いろいろな意見を聞いた上で説明していただきたいと思うんです。

 ただ、報道では、都道府県によっては半数の自治体が欠席した。全体的には七割ぐらい出席していただいているということですけれども、こういう欠席した自治体へは今後どういうふうに対応されていくんですか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、自治体の都合を確認して日程を設定したというわけでもなかったものですから、七割弱の市町村から御出席をいただいたことは大変ありがたいなと思っております。

 ただ、やむを得ず欠席された自治体に対しましては、配付資料を提供させていただきますとともに、問い合わせ等々がございました場合には、しっかりと丁寧な対応をさせていただきたいと思います。

 最終処分の基本方針の中でも、地方自治体への情報提供というのは極めて重要だというふうな記述もございます。私ども、それをしっかりと実行してまいりたいと思っております。

富田委員 基本方針の改定を踏まえて、地層処分の必要性や基本方針の考え方について全国の国民に広く情報を提供するために、地域ブロックごとに九カ所でシンポジウムを実施されたというふうに聞いています。参加者からいろいろな質問が出たと思いますし、アンケート等も見せていただきましたが、こういった結果を踏まえて、今後どのように取り組んでいかれるんでしょうか。

高木副大臣 まず、御指摘のシンポジウムで寄せられた御意見また御質問を丁寧に精査して、適切に公表してまいりたいと思います。

 また、今後、若年層を対象とした情報提供、シンポジウムには結構年齢の高い方が多かったということもありましたので、そういう若年層を対象にした情報提供、また、参加者の御意見を聞くことを中心とした対話型の取り組みなど、きめ細かい理解活動を展開していく予定でございます。

 富田委員がこれまでもずっと御指摘いただいた、やはり政治がしっかり主導してやっていかなければいけないということがございますので、この最終処分場の問題というのはまさに信頼関係をつくっていくことがまず第一ですので、政治の方も、しっかりとこの問題に、前面に出ながら取り組んでまいりたいと考えております。

富田委員 エネ庁の方からアンケート結果を何枚かいただいたんですが、そこの中にこんな意見がありました。テレビや新聞では科学的ではない意見を多く見るが、逆にきょうの説明のようなNUMOの意見は見たことがない、NUMOとして広く伝える必要がある。

 やはり、ちゃんとしたことを国民も知りたがっているんですね。ぜひこういう意見に応えるように、今、高木副大臣が言われたように、政治家が前面に立っていただいて、信頼性を確保していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

江田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時十九分開議

江田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松原仁君。

松原委員 事業承継の大きなネックになっているのが個人保証の問題だという議論は先ほどもあったわけです。大臣が前半のときに、基本はしないというのが大前提だろうということをおっしゃって、正しいと思っております。中にはどうしても個人保証を前提によりえぐく借りたいという人がいてもいいかもしれない、事例を私も知っております。しかし、一般論としては、こういう前時代的なものはやらないのは妥当である。

 そこで、金融庁にさまざま聞いたわけでありますが、改善されない理由を含めて把握しているのか、データをとっているのか、どの程度とっているのか、お伺いしたい。

西田政府参考人 お答えいたします。

 金融機関がガイドラインに即して検討を行った結果、それにしても経営者保証を求めざるを得ない場合の理由というのは、恐らく、事業者の置かれた状況がいろいろとありますので一概に申し上げることは難しいと思うんですが、例えば、法人と経営者個人の一体性の解消が十分に図られていない場合などが考えられるのではないかと思っております。

松原委員 まあ、三条件があるわけですから。

 私は先ほど、中小企業同友会の、全国ではない一部の情報の限りにおいて、いわゆる民間の金融機関から借りているところは、ずっと個人保証で来ていて、あるときに個人保証されている主体者がこれをやめたいと言って、通る可能性が四から七。立派と言えば立派と言いたいかもしれないけれども、先ほど大臣がおっしゃった論理からいけば、やはりないのが前提なんだから。

 民間のこの四から七と、どうもこれは数値をまだ持っていないというんですが、商工中金等ははるかに高い水準である。この辺の比較はしていますか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先生の御質問につきまして、申しわけございませんが、そういった比較まではまだできておりません。

 ただ、先ほども申しました八万五千件のうち、既存の保証契約を解除した件数というのは一万三千件程度ということであります。そういった既存の契約を見直すということも金融機関は取り組んでおります。

 ただ、まだまだ経営者ガイドラインの浸透、定着というのは不十分であるとも認識しておりますので、引き続き、検査監督を通じて金融機関に対して積極的な活用を促すとともに、金融機関がどういった取り組みをしているかについても、よくきめ細かく確認しながら検査監督を行っていきたいと思っております。

松原委員 民間のそういったところが、一部であってもこういう数値を出してきている。

 やはり命をとられるわけですよ。私も大田にいて、自殺した経営者を随分知っていますよ。やはりもっと真剣にやらないとこれはいかぬと思うんですよね。千二百が三百五十でしょう。減ってしまっているわけですよ、メッキなどは二十年で。

 だから、金融庁として、これに関して、母集団、つまり案件を持っていく件数、そして成功率。問題は、成功しなかった場合に、なぜだと。

 少なくともこの同友会の認識では、先ほど宮沢大臣がおっしゃったように、公的な金融機関は随分成功率が高い、民間は低い。その人いわく、もっと民間でも、信金とかそういうのはいいけれども、いわゆる都銀クラスは非常に低い。データはまだとっていないからと言っているけれども、彼の直観では低い。

 やはりそこに対して、つまり、なぜできなかったか。これは、さっき大臣がおっしゃったように、それはないのが現実的に一番正しいんだ、中にはどうしても必要という人もいるだろう。ベースが、ないのがベースであるとするならば、なぜ、ないのがベースなのにこれができないのか。おっしゃるとおり、いわゆる経営と家計との分離とか、いろいろとあるでしょう。

 ただ、どこまで厳密にやるかという議論もあるけれども、そういったものをきちっととってくださいよ。今この場で、データをとる、データをとって、だめな場合のものは全部理由を列挙させると。煩雑かもしれないけれども、これだけ事業承継でもどんどん廃業が深まっていて、別に事業承継じゃなくたって廃業しているわけですよ。夜逃げしているのも多いし。

 ちょっと金融庁として、そこはきちっとデータをとって、理由も明快にさせて、金融機関を指導しますと今言ってください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申しましたように、金融庁といたしましては、このガイドラインがやはり融資慣行としてしっかり定着する、そして金融機関が積極的に取り組むということが何よりも重要だと思っております。

 本日の先生の御指摘も踏まえまして、日常のヒアリング等を通じた検査監督を通じて、金融機関からいろいろなデータをもらいながら、それに対して、例えば、どうしてガイドラインの適用が進まないのかも含め、よく実態把握をしながら、場合によっては必要に応じて積極的な取り組みを促すということもやっていきたいと思いますし、データについても、金融機関による積極的な活用を通じて、このガイドラインが融資慣行として定着するような観点から、もう少しわかりやすいデータをとることができないか検討してまいりたいと考えております。

松原委員 非常に前向きで、意欲は感じます。

 しかし、やはり重要なことは、データをとる。つまり、総件数、申し込みがこれぐらいだと。さっきの話で、四から七%ぐらいだというデータが同友会の一部にある、そういったものを民間においてもう一回正式にとる、そして、こちらの公的金融機関もとる。公的金融機関と民間金融機関の差が今かなりあるという認識なんですよ、これをなくす。この二点、そのための努力をする。努力をするとまでは言えるでしょう、言ってください。

西田政府参考人 先生から厳しい御指摘をいただきました。そういった御指摘を含めて、しっかりと、我々が、一つ一つの取り組みがしっかりと金融機関で浸透するように、しっかりと検査監督、データも注目しながらやっていきたいと思っております。

松原委員 今のでもいいんですが、今私が言ったことですよ、その二つ。公的な金融機関とそうでない金融機関の差がなくなるように、だって、差がないのが本当は当たり前なんだから、統計的にはきっと。それが極端にあるような状況だと今認識されているから、これをなくすための努力をします、そのために数字をとります、理由も列記します、努力しますと言ってください。もう一回。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘を踏まえて、しっかりと努力してまいりたいと考えております。

松原委員 今のはやるということだということで、これで数値が四半期とか出てこなかったら、どういうこっちゃということになるので、よろしくお願いします。

 次に、事業承継税制の猶予特例、五年間、八割の従業員ということであります。

 この八割の従業員というのが、平均でならしてなんですが、四人とか三人の中小企業、四、五人、そこの家族が三人ぐらいやっていて、家族外が一人とか、よくあるんですよ。そういうところでは、その一人がリタイアしてしまった、その次に、この時代、そういうところで働こうという人がなかなか出てこないかもしれない、そうすると、これは、なべて八割といっても、三年、四年たってしまうかもしれない。

 ここを、やはり多少アローアンスを持たせてもらった方が、事業承継を含め、中小企業の収縮に対しては歯どめになると思うんですが、お答えいただきたい。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、先生御指摘のように、事業者から、この要件、五年間で雇用の八割維持が厳し過ぎるのではないかという声が強かったのは事実でございます。これを受けまして、平成二十七年一月の相続税の税率の見直しに合わせまして、雇用八割維持要件につきましては、五年間毎年八割以上から五年間平均で八割以上へと緩和をしたところでございます。

 それで、あと、先生から御指摘がございました四人以下の企業に関しましては、これは従来、この税制をつくったところから、そうすると全員を雇用しなければならないじゃないかという御指摘がございました。ただ、制度をつくったときは、四人以下でこの税制を使うような、相続税が事業承継に相当な重荷になるような企業というのは、これは実体の事業をやっているというところよりも資産管理会社的なところが多かったというのもまた事実でございます。

 ただ、しかしながら、平成二十七年一月の相続税、贈与税の税率引き上げ、また、基礎控除が四割カットになったということで、従来は相続税がかからないような企業もかかるということに、代表者の方がかかるということもなり得ることになりますので、そういった、今回行いました八割平均に変えた要件緩和、それと、相続税、贈与税の基礎控除、税率の引き上げの影響を両方見まして、さらなる特例が必要かどうかということを先生御指摘のところも含めまして考えていきたいというふうに思っております。

松原委員 考えている方は霞が関のエリートですから、私は、中小企業を回ってきましたよ、今から三十年ぐらい前、まだ中小企業がたくさんあったころですよね。それを今言うけれども、二人だってすごい技術を持っている企業はたくさんあるんですよ。資産管理型だとかそういう話じゃないんですよ。もっと現場を見てほしい。

 この議論というのは、恐らく五十人とか六十人のところだったら、社会的なそういう責任も持ってやれよという話だけれども、四人とかそこらの企業に、もちろん社会的使命はあるんですよ、技術を持ってやっているというのは、名人芸というもの。しかし、そこに対して、だから今みたいな議論をしていても、これは現実と違うと思うんだよね。廃業に追い込まれたらどうするんだと。二人でやっていて、父ちゃんと母ちゃんでやっていて、母ちゃんが死んだ、半分ですねと。しかし、一人だって、本人がやる気があったら、やらせればいいじゃないか。極めて高度な職人芸的な技術があるなら、やってもらえばいいじゃないか。それは日本の産業の強みじゃないかと私は思うんですよ。

 ですから、今検討すると言ったので、これは、大臣、そういう認識でよろしいですか、現場はそう言っていますが。

宮沢国務大臣 私は、ことし一月から制度が少し改善されたわけですけれども、この制度を入れるときは自民党の税調の方で取りまとめ役をやっておりました。

 経産省の方からの希望、また私自身のところにもいろいろな今の状況が問題があるという話がある一方で、この納税猶予の制度というのは、ある意味では税法からいうと極めて特殊な制度であることも確かでありまして、そういう引っ張り合いの中で当初の制度ができた。そして、なかなか使い勝手が悪いというような話があって一回目の改定をした、こういうことであります。

 今後、やはり使い勝手のいい制度ということで、当然、さらに変更を加えていくということは検討していかなければいけないと思いますが、一方で、極めて特殊な税制であるという財務省的な論理をどう打ち破っていくかということに努力をしていかなければいけない、こう思っております。

松原委員 表現としていろいろとおっしゃったけれども、結論は、財務省の壁を打ち破って頑張るという理解でよろしいですね。

宮沢国務大臣 私が今の立場にいる限りは、その努力をしていきたいと思っております。

松原委員 政治家というのは信念が必要ですから、これは、大臣、笑い事じゃないんですよ。これを見たら、何だと思いますよ、中小企業は。今笑っておられたけれども、そんなものじゃないというふうに思います。

 私は、担当の方にも言いたいのは、やはりもっと現場を歩いてもらいたい。歩くだけじゃなくて、場合によったら、一週間、二週間入って旋盤とかをやればいいんですよ。なかなか、俺はあれだからできないと言うかもしれないが、それはやればいいんです。そうするとわかりますよ、空気感を。それがわからなかったら、これは千二百社が三百五十社になったという経緯もわからないと思う。

 次に、事業承継において、企業合併などを検討すべき、MアンドAですね、と考えております。これは極めて重要な論点だと私は思っておりますが、メッキ業においてこうした企業合併の事例があるのか、お伺いします。

谷政府参考人 お答え申し上げます。

 メッキ業界におきますMアンドAの例といたしましては、経営者が高齢化し、事業を継承したいものの、後継者がおらず、事業を他の事業者に譲渡するために企業合併を行った例などがあると承知しております。

 一例でございますと、二〇一三年十二月に、岡山県のメッキ業者が、後継者の不在に悩んでおりました石川県のメッキ業者の事業を継承したケースなどがございます。

松原委員 メッキ対メッキというのは、ほとんどないんですね。実際は、メッキ業の場合は土地担保の価値がほとんど認められない。後で議論しますが、土壌汚染の問題がありますから。つまり、やってみたら、どれぐらい地面にそれが行ってしまっているか、深さと幅と、わからないんですね、なかなか。だから、そのことが極めてリスクになっていて、このことに対して金融機関もなかなか担保として価値を認めないというのが現在あるというふうに聞いております。

 こういった合併等も、メッキの場合、非常に実際はやりづらいというのを私は現場から聞いております。事例はもしかしたら若干あったとしても、実態としてはほかに比べて非常に進みづらいという現実が一つあるということも指摘をしておきたいと思います。

 先ほど、後出しじゃんけんだということを言いました。環境省、来ていますよね。後出しじゃんけんの前に、私が仄聞した話ですが、トリクロロエチレンというのが最初に使われていた。これは毒性が高い、だめですと、それをトリクロロエタンに変えた。しかし、このトリクロロエタンというのは大気汚染になると、再びトリクロロエチレンに戻した。こういった事実があるかどうか、まずお答えいただきたい。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 トリクロロエチレンとトリクロロエタン、トリクロロエチレンは地下水汚染等の有害性の問題、それからトリクロロエタンにつきましてはオゾン層の問題等がございまして、それぞれ、そういう事象を認識し、対策を講じていくという検討が進められた時期がずれがございますものですから、それぞれの使用について、我々の立場から申し上げますと規制の観点から、順次規制を導入していくということになっておりまして、その間で代替物質として活用されていた場合には、それの使用がまた難しくなるといったような事例があったというふうに承知をいたしております。

松原委員 私が現場で聞く限りは、こういう認識です。今言った、トリクロロエチレンでやっていたら、毒性が強いからトリクロロエタンに変えなさいと。変えたらば、大気汚染だからトリクロロエチレンにまた変えなさいと。朝令暮改とは言わぬけれども、こういう取り組み、今ちょっとぼかして言っているけれども、恐らく現場はそういう認識ですよ。

 こういう指導のあり方というのは妥当性があるのかどうか、お伺いしたい。環境省。

三好政府参考人 先生御指摘の点でございますけれども、私ども、環境汚染を防止するという観点からは、それぞれの物質につきまして、順次、科学的な知見が明らかになって、それぞれのものについての使用あるいは排出等につきまして規制が必要であるという事態がございます。これは国際的な知見の進展ということもございまして、そういうものに的確に対応していくという観点から、順次規制が導入されていくということが現実にございます。

 そういう意味で、事業者の方にとりましては、次から次に規制が入ってくるという感じをお持ちになるかもしれませんけれども、環境保全の観点からは、環境リスクを最小限にしていくという観点で、そういう方向で進めさせていただきたいというふうに考えております。

 なお、現実の規制の導入等につきましては、公害防止等に関して事業者を御指導いただく立場の経済産業省ともよく調整をして、実態上、円滑にそういう対策が導入できるように進めていくということを心がけていきたいというふうに考えているところでございます。

松原委員 ちょっと時間がないのではしょりながらいきますが、環境省として、メッキ業を廃業したときに、基金がありますが、この基金を使うことができるのか、お伺いしたい。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘は、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染対策基金の活用ということかと存じますけれども、これは、土壌汚染によって健康被害を生ずるおそれがある区域、法律上、要措置区域と呼んでおりますけれども、そこにおきまして汚染の除去や封じ込めの措置を講ずる方に対しての助成を目的として設置しております。

 この基金からの助成を受けるための要件でございますけれども、これは汚染者負担の原則との関係から、措置を講ずる土地の所有者等の方がその汚染原因者でないということが条件でございます。

 したがいまして、先生の御指摘が、メッキ業を廃業された場合に、そのメッキ業を営んでおられた、いわば汚染の原因者として施設を設置した方ということの場合には、この基金からの助成の交付を受ける対象とはなっていないところでございます。

松原委員 東京のあるところでメッキ工場があって、メッキ工場は率直に言えば本当に厳しい境遇の中で、私も入ったことは何回もあります。大変に親しいところが何カ所もありました。においといい、それから環境といい、劣悪ですよ。極めて厳しい労働環境ですよ。その中にいて、支えて、日本の今日の繁栄を築いてきた。私はとうとい作業だと思っております。

 このメッキ工場において、今でも、部材において、さまざまな部品において、パラシュートの一部とか、それから飛行機のいわゆる脚の部分とか、ここはどうしても厳しい環境で働くメッキが必要だという部分もあるというふうに仄聞しております。

 そうした中で、実際、あるところで、メッキ工場が廃業、自己破産。自己破産をしないとやられちゃうというので、自己破産した。そして、土地を何メートルか掘って、御案内のとおり、場合によったら、一キロ先まで横で見なきゃいかぬわけですよ。縦だとどこまで行くかわからない。こういう環境ですよね。そのことで二億円かかったと。最終的に、そのメッキ工場、廃業したところは、自己破産して、もうお手上げですと。どこが払ったかというと、大家さん、地主。地主はかなり大きな地主だった。二億円払ったというんですが、このケースではこの基金は活用できるんですか。

三好政府参考人 今私がお聞きした範囲では、原因者の方が土壌汚染対策を講じられるということでございますので、先ほど御答弁申し上げましたとおり、原因者負担の原則の観点からこの基金の活用は難しいというふうに考えているところでございます。

松原委員 ちょっと時間がなくなってきたので簡単にやりますが、これは本来は、こういう基金も、後出しじゃんけんで、彼らは、日本の産業の振興のために本当に厳しい環境で働いてきた。そのときは、最初は土間でオーケーだったと。今は、行くも地獄、引くも地獄。この状況は、私は国のそういった基金を活用するべきものだと思います。

 ただ、その中で、彼らは努力をしながら、メッキ業界において、廃業時土壌汚染対策として積立金を検討したいという意見があるということであります。本来はこの基金を使うべきだけれども、こういうふうな積み立てでやろうという話がある。

 経済産業省、これは私は、当然の自己防衛本能だと思うし、こういうものがなければ事業承継は難しいと思う。経済産業省、中小企業庁長官かな、お答えいただきたい。これは評価されるかどうか。

関大臣政務官 松原委員が地元を本当によく回られて現状を把握されているのを、実は私も、戸越銀座商店街のところに長いこと住んでいましたので、よく姿をお見受けして、本当によく回っていらっしゃるんだなと。本当に敬意を表したいと思いますし、よく御存じだと、本当にそのとおりだと思います。

 メッキ業界を含めまして、中小企業、零細企業、廃業また事業承継のときに、土壌汚染対策、多額の費用が要る件、本当に大変なことだと思いますし、この場合、費用について何らかの支援を求める声がある、これは承知しております。

 つきましては、これは産業界の方から具体的に相談が参りましたら、どのような支援があるかというのをしっかりと検討していきたいと思います。

松原委員 今のお答えは、要するに、メッキに関して、ほかも、クリーニングなども場合によってはちょっと入るかもしれませんが、廃業時土壌汚染対策としての積立金は経済産業省としては応援したい、こういうことで理解させていただきました。

 環境省、このことについてお答えいただきたい。

三好政府参考人 先生御指摘いただきましたとおり、汚染の原因となる可能性が高い施設を設置されておられる事業者の方が、あるいはその団体が廃止時の土壌汚染対策のために積立金を積んでおかれるということにつきましては、先ほど来申し上げております汚染者負担の原則を実効あらしめるという観点から有効なものというふうに考えておりまして、環境省といたしましても、そのようなお話が事業者の方からございましたら、経済産業省と御相談して、どのような支援が可能か検討してまいりたいというふうに考えております。

松原委員 経済産業省もまた環境省も極めて前向きなお話をいただきまして、この議事録を後で読んだメッキ関係の方々も、一条の光を見出すようなことになるのではないかというふうに私は思っております。

 問題は財務省でありまして、いわゆる企業には引当金とかそういう制度もあるわけですが、いろいろな応用編というのが私はあろうかというふうに思っております。メッキ業に関しては引当金を通常の五倍にしますとか、わかりませんよ、理屈はどうなるか。

 こういった制度を、経済産業省も、今さっき言ったように、だって、本人が自己破産したら、大家さんが払わないといけない。大家さんが払うことに対して基金が使えないというんですよ。これも後で議論しなきゃいかぬけれども、硬直的なんですな。はっきり言って、そういうのが使えるのは、極端なことを言えば、B29で爆撃された東京で鉛がたくさんあって、そういうものしか使えないかもしれない、これはわからないけれども。

 私は、その意味において、財務省が、少なくとも企業が積み立てをするということに関して、これを認める、そこは課税対象ではないと。ただ、幾つかありますよ、理屈として。それは例えば、積み立てが一億積み上がった、土壌汚染の費用が六千万で終わった、では四千万をどうするのかという議論があるし、もしくは、そういうお金をプールして違うところに投資をされても困る、それじゃ第三者機関をつくろうかとか、さまざまな議論があろうかと思います。

 そういった知恵を出すことも含めて、財務省として、いわゆるこういった日本の今の近代化の礎を支えたものに関して、全力で取り組みたい、前向きに取り組む、必要だ、こういう発言をしていただきたい。

大家大臣政務官 先生の御指摘はよく理解できるところであります。

 今言うリスクに備えて資金を積み立てた、それを例えば損金算入できないかというような御提案だというふうに思っていますけれども、先生もお詳しいんだと思いますが、これは不確実な費用という点があったり見積もりが難しいというようなことがあって、公平性の観点から、これについては抑制しているという現状があります。

 それからもう一点は、法人税改革、今、数年かけて二〇%台という中で、課税ベースを広げるということでやっていますので、これを狭めるという点はどうかという点があります。

 ただ、私も地方議会を経験しまして、実はクリーニング業の皆さんの似たような話、御相談をいただきました。百坪に満たない土地、まず、これを調査するのに相当なお金がかかりました。結果、対策を打つにも、百坪未満だったんですけれども、これは本当に数千万円というお金がかかった、時間もかかったというような点がありました。

 いずれにしましても、この問題につきましては、本当に、少し逃げるようで恐縮なんですけれども、所管の省庁、環境省であったり経産省においてどのような対策を講じていくかということが検討されるのがまず順番だというふうに思っていますので、租特を含めて税制措置ありきという形で議論が進むことは適切でないというふうに考えております。申しわけございません。

松原委員 政務官から申しわけないと言われても、こっちも申しわけないけれども、それでいいですよとは言えぬわけであって、やはり経済産業省の政務三役の方も必要だと言っている。環境省は政務三役じゃないけれども、彼が願いたいと言っている。

 きょうは出番がなかったので、中小企業庁長官、どうですか。どう思いますか。

北川政府参考人 私どもとしては、中小企業、小規模事業者を支援していく立場ですので、どのようなものがお役に立てるか、よく検討していきたいと思います。

松原委員 長官、もうちょっと思い切って言ってもらってもよかったんですよ。

 私は、それは直接いろいろと聞いていますから、これは悲願ですよ。しかも、それでもって、さっき言ったように、パンクしてそのメッキの地主さんが二億払うなんて、どう考えたってこれも変な話で、基金すら使えない。

 私は、大家政務官、これはやはり政治のリーダーシップで、この部分はやるのが社会正義だと思いますよ。もう一回答えてください。

大家大臣政務官 先ほども答弁させていただいて、その現状の苦悩というのは、僕は理解できるつもりでおります。

 ただ、仮にこの税制措置を検討すべきという結論が出た場合においても、それはやはり、まずは関係省庁できちんとした議論をなされることが適切だというふうに考えています。

松原委員 政治は本人の信念、それは現状を維持するんじゃなくて、現状をどう変えて、そして日本の製造業の活力を維持するかだから、そこは財務省は、やはりきちっとそのことに関して、そんなのがどんどんなくなっちゃったら税収だって入らなくなっちゃうんだから、それはやってもらわなきゃいけないと思っております。ぜひ、この積み立てというのは、経済産業省、環境省、そして財務省で、両省で検討した上で財務省へ持っていった方がいいけれども、前向きにやってもらわなければいけないと思っております。

 最後に、宮沢大臣、今私が話をしたことを含めて、特に今の点、これはもう経済産業大臣として今この立場にある限りは全力で闘う、これをやはり誓っていただきたい。

宮沢国務大臣 今伺っておりまして、メッキ業は大変厳しい状況にあるという中で、無税か有税かといいますと、繰越欠損等々あると、余り法人税を払っておられない企業の方が多いとなると、これは有税でも無税でも割合関係ないよなと実は思って伺っておりましたが、メッキ業は大変厳しい状況にあるし、また、たしか中小企業団体中央会の会長に今度なられたのは東京のメッキの方でありますから、そういう方とも相談しながら、しっかり対応していきたいと思っております。

松原委員 もう終わりますが、要するに、後出しじゃんけんになっているというのは極めて大きな要素だと思います。当初からそういうことであれば、そうしたでしょう。やらなかったかもしれない。当初はそうではなかった。それが、環境問題でさまざま言われてきて、今やそれで二億円取られたりする。であれば、ほかと違ってここに関しては、そういったことを考える余地は、僕は財務当局も当然あると思いますよ、後出しじゃんけんなんだから。このことを強く申し上げて、私の質問を終わります。よろしくお願いします。

江田委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 民主党の篠原です。

 松原節が終わりましたので、その後は篠原節とは言いませんけれども、篠原レクチャーの時間にさせていただきたいと思います。

 私は、今回の法律改正はなかなか立派だと思います。もう申し分ないと思いますので、余り法律については質問いたしません。つまり、どういうことかというと、こんなのはとっくの昔にやっておかなくちゃいけないことなんです。今ごろやっているのは遅いということで、頑張ってやってください。

 中小企業行政全般について質問させていただきたいと思います。

 今回、経産省の方からいろいろ資料を示していただきました。最近、親族内の事業承継が少なくなって、それで親族外の承継というのが四割になっていると言っています。何となくそっちを歓迎するような感じなんですよね。くるくるかわった方がいいんだ、そういう価値観もあるかと思いますけれども、宮沢大臣は、これは別に政策として聞いているわけじゃないんです。親から子へ、あるいはなるべく近くの人に継承されていくのがいいのか、次々かわっていろいろな人が入ったらいいのか、どっちの方がいいと思われますか。

宮沢国務大臣 これは価値観の話なので、大臣としてというよりは、恐らく個人的なということだろうと思いますけれども。

 やはり、かつては、我が国においては、子供は親の面倒を見るもの、そして、親の職業をなるべく憧れを持って継ぎたい、それはサラリーマンであっても、同じような企業に入りたい、こういう風土があったことは確かだと思います。残念ながら、やはりこの二十年、三十年の間に日本の状況は大きく変わってしまって、親と同居する方も大変少なくなってきているという中で今回の法改正をお願いしているわけでありまして、どちらがいいというわけではないと思いますけれども、子供が親の職業または事業に憧れを持つという世界は、私はいい世界だと思っております。

篠原(孝)委員 大臣は抑えて言っておられましたけれども、私に言わせていただきますと、周りで近い方が圧倒的にいいと思います。そんなくるくるくるくるかわるのはよくないと思う。日本がちょっとおかしくなっているのかどうかわかりません。おかしくなっているとしたら、この辺に経済学者とか学者めいた人がいっぱいいるかもしれませんけれども、過剰流動性ですよ。みんな何か動き過ぎている。やはり、そこで生まれてそこで育って、隣近所みんな知り合いで、みんな助け合って生きていく、そういう社会が私は一番安定した社会じゃないかと思います。

 今、労働者の関係で労働の流動性とかいってやっていますが、僕は反対ですね、ああいうのは。やはり、この前も申し上げましたけれども、終身雇用、年功序列、会社のために尽くす。会社のために尽くすことが地域社会のために尽くすことにもつながるんだろうと思います。

 だから、中小企業でうまくいっているところは、ずっと続いているのは福井県の眼鏡フレーム、ちょっと私はそれを使っていなくて、安いので恐縮ですけれども。それから今治のタオルとか。そうすると、これはどうでもいいことですけれども、非常に安定した社会になるんです。この両県とも民主党の衆議院議員はゼロですね。自民党の議員ばかりです。そういうふうになっていくんですよ。いいところだということで。

 別に自民党のためにやっているわけじゃないですけれども、考えてみると、片方は非常に何か保守的な方で、片方はちょっと違う方のリベラルな政治家で、バラエティーに富んでいいことだ。誰を言っているかはちょっとすぐおわかりいただけないかもしれませんけれどもね。

 つまり、ここの表にも、二十年前は九割近くが親族内承継だったのが今は六割になってきている。やはりこれは私は問題だと思います。なるべく同じ人たちがやっていくというのがいいんだろうと思います。

 どういう社会で事業承継がうまくいっているかというと、とっぴなところですけれども、ちょっと私が得た知識で紹介しますと、保険の外交員、保険のおばさん、御存じですか、身近にもいるのでわかるんですけれども、三代、四代続けてやっている人が多いんです。なぜかおわかりになりますか。ちょっと地頭を働かせて考えてください。わかりますよね。

 家族の構成とかみんなわかっているんです。自分がずっとやっておるところを息子の嫁さんに引き継ぐわけです。その嫁さんがまた、クロスしたりしますけれども、ともかくノウハウを全部伝えていく。多分、保険会社もそういう人たちを優先して採用しているはずです。

 お医者さんの世界もそうです。それは、患者さんとお医者さんで、家族構成もわかって信頼されてと。

 もう一つ、これは余りよくないんですけれども、政治家のところも、承継がうまくいき過ぎているのがよくないと思いますけれども、これはかわった方が私は絶対いいと思う。そういう場面じゃないので、その話はやめておきますけれどもね。

 だから、私は基本的には血が続いた方がいいと思う。

 日本の強さのもとですけれども、今、民主党が総力を挙げてやっていまして、今、田嶋委員から、ちょっと調べていただいたりして知識を拝借したんですけれども、世界で一番長い企業というのは、千四百三十五年続いている大阪の金剛組というのだそうです。法隆寺の建設にもかかわったと。

 歴史がちゃんとわかっている国が限られているから、きちんとしたのじゃないかもしれませんけれども、統計によりますと、千年以上続いている会社が十二社あって、そのうちの七社が日本だそうです。

 それで、百年以上続いている企業が二万五千社世界にあって、そのうち五七%が日本で、次に多いのがドイツで一五%だそうです。二百年以上は五千五百八十六社で、三千百四十六社が日本で、日本がやはり半分近く、五六%だそうです。やはりこれが日本の安定の支えなんじゃないかと思います。ですから、私は、これができにくくなっていくということは、日本のよさが崩れていくことだと思います。ここのところは本当にきちんとバックアップしてやらなくちゃいけない。

 ところが、どうも、でっかい企業やそっちの方で、くるくるかわったりした方がいいんだとか、何か、途中でのし上がってきた人とか、そっちの方ばかりもてはやす気配があるんですね。そっちでのし上がってきた人を違う企業のCEOにスカウトしたとか。僕は、あれは余りうまくいかないと思います。新浪何とかさん、余り名前を挙げちゃいけませんけれども、農業にまで口を挟んで、でたらめなことを言っています。あれもやはりよくないと思います。

 では、一つだけ、この法律に絡めて聞きますけれども、遺留分の特例制度だとかをもう直しているわけですね。だけれども、余り使われていないんですよ。

 やはり、経産省はそういうところが冷たいと思いますよ。法律だけやたらにつくるんです。それで、大したことはないのにいっぱい法律改正をやって、いっぱい質問しなくちゃならない、私なんかが。

 だけれども、そのフォローアップが足りないんですよ。農林水産省は、文句を言われるかもしれませんけれども、非常に懇切丁寧に、一生懸命、優しくやっていますよ。やったやったというので、これもまた二年ごとに課長がかわって、長官がかわるから、やったやったで、後、フォローは余りしなくて、すぐ新しいことをしようとするんですよ。経産行政の欠陥がここにあるんだろうと思います。

 フォローアップはどうやってやっているんですか。何でここはうまくいかないかというのを、副大臣か政務官、どちらでしょうか。

関大臣政務官 今篠原委員がおっしゃられたようなことでございまして、遺留分特例制度、実績は六年間八十九件という少ない数字でございまして、背景にはいろいろございます。

 それを端的に申し上げますと、相続時に遺留分が問題になるケースはそもそもは限定的であることもあるんですけれども、平成二十五年を例にとりますと、死亡者数は約百二十六万人でございました。家庭裁判所への遺留分放棄の認可の申し立て件数は、そのうちの千百五十四件ですね。

 そうした中で、その遺留分をめぐる紛争の未然防止を目的とする遺留分特例制度、これが利用されることはさらに限定的であるんですけれども、しかしながら一方で、実際には紛争が起きそうな場合には、これを未然に防ごう、この民法上のルールを整備しておくことというのは、これは本当におっしゃるとおり重要なことであって、我々もこれに対してしっかりと認知度を上げていかないといけないということは本当に肝に銘じておきたいと思っております。

 二十六年度補正なんですけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、中小企業新陳代謝円滑化普及等の事業に八・九億円の措置をもらいまして、セミナーを全国各地で五十回やって、また、各事業者に対しまして税理士等の個別相談を七百回、それぞれやっていこう。

 本当に、もともと目指すところは認知を広げていかないといけない、その意識はしっかりと持って進めてまいりたいと思います。

篠原(孝)委員 中小企業の置かれている環境と農業の置かれる環境を見ると、似ているんですよ、後継者不足とかいうのもそっくりなんですよ。

 間違った方向に農業の方は行っているんですよ。これは比べて見ていただくとすぐわかると思うんですけれども、農業はやたら企業の農業参入とか、新規参入新規参入とばかり言っているんですよ。新規参入はあってもいいんですけれども、一番自然なのは、農家の息子なりがおやじさんの後を継ぐのが一番いいんですよ。一緒に仕事をして、一緒にやってという。気候条件も違いますから。工場の中だったら寒いところでも暑いところでも同じものができるかもしれませんけれども、農業というのは、山を一つ越えたら違うやり方をしなくちゃならないんですよ。私のところは、一里一尺といって、一里行くと雪の量が一尺違う。全然違うんです。

 豆は特に土地を選んで、米は結構、福井県でできたコシヒカリは新潟県でもできるけれども、豆はだめなんですよ。だだちゃ豆というのを山形で、うまい豆で、確かにうまいんですが、あれはほかの県、ほかのところでつくろうと思ったって、どうやったってうまくいかないんです。そういうのがあるんですよ。

 だから、やはり同じ人がやって継続していくというのを中心にしてやっていかなくちゃいけない。次善の策として、やはり違う人、外の人を排除するわけじゃありませんけれども、優先順位はやはりなるべく身近な人、そして次、次に広げていくというのがいいんじゃないかと思いますよ。

 相続の関係ですけれども、中小企業の承継の方からも考えていただきたいんですけれども、農地も、民法の均分相続という、こんなの特例法をつくって例外にすべきなんですよ。片っ方で農地の集積集積、大規模な専業農家に農地を集めなければいけないと言っておいて、片っ方では、大変なんですよ、今の遺留分の制度と同じで、相続放棄をみんなにしてもらわないとできないんですよ。

 それで、三人兄弟がいて云々と。農家で生まれて育っていたら、とてもじゃないが、次男坊、三男坊は、あんちゃんに、大した金にならないのを家を守って村を守るために農業の後を継いでもらった、どこかにもう離れているのに、おやじさんが死んだからといって三分の一の土地をよこせなんて誰も言いませんよ。しかし、その嫁さんが、長野の山の中の土地なんて二束三文なのに、勘違いして、三分の一よこせとか言い出すわけです。身近でこんなばかなことが、長野の山の中だったらいいけれども、長野市の平らな土地になるとこれはもう起こっているんです。

 こんなのを排除するためにも、こんな御時世に農業をやっている長男が、次男でもいいですけれども、跡をとったら、そこに全部何にもしなくたって自動的に行って、弟どもの金をよこせと言ったっていいぐらいなんです、農地を守ってやっているわけですから。そうなっていないんです。どうしてそんなこと一つできないのか。僕が農林水産大臣になったらすぐやるんですけれども。どうでもいい話ですけれども。

 だから、中小企業等の抱えている問題と農業の抱えている問題は同じなんです。そういう点では、農業、農政を参考にしていただきたいと思うんです。

 それで、これは承継のときに問題になったりしますけれども、富田委員がリーフレットをさっき配っておられましたけれども、後継者がいないという。何かやめるときになって慌てふためいたってだめですよ。

 農業者の平均年齢は六十六・八歳とかで、もう高齢者になっているんですね。中小企業の経営者の平均年齢は五十九歳で、まだましですけれどもほとんど変わりないですよね。それで、いつリタイアするかというと、七十歳前後だと。あと十年以内に半分以上がリタイアする。手がつけられないですよね。だから、おやじさんが、今の経営者がしっかりしている間に、もう既に後継者がやりたいな、やってもいいなと思わせるような政策を講じなければいけないんです。

 農業の例でいいますと、大した政策をやっていないんです。口だけなんです、これもまた。ただ、部門経営開始資金というのがあるんです。おわかりになりますか。

 おやじさんが米とリンゴをやっていた。後継者は、このおやじはぎゃあぎゃあ言っていてうるさい、このおやじと毎日同じ畑へ行くのは嫌だ、そういう息子もいっぱいいるんです。だけれども、同じ家に住んでいる。では、俺はサクランボをやってやろうと。それに対しては、全面的に資金援助をして、三年据え置き、十年均等年賦償還というような優遇措置を講じているんですよ。そうすると、そんなんだったらやってみるかというふうになっていくんです。

 私は、中小企業にも、全く違うというのはなかなかやれませんけれども、先ほど松原委員が言っていましたが、メッキにしても、違うスタイルのものをやり、それについては、初動的経費がかかる、全面的に援助してみる。それで、危険ですから、それだったら、千三つだか万三つだかわかりませんけれども、もっと優遇したっていいと思うんです、新しいことにチャレンジするものについては。そういう制度を仕組まれたらいいと思うんですが、そういうことを考えられたことはあるんでしょうか。

 研究についてだけは、何とか研究開発機構というのでやたらお金をつぎ込んでいる。それは大企業のところへ行っているんです。だけれども、中小企業のそういうところにこそお金をつぎ込むべきだと僕は思いますけれども、いかがでしょうか。

高木副大臣 御指摘のとおり、事業承継をスムーズにさせるためにも、中小企業、小規模事業者の新事業の展開を支援する、これは大変重要なことだと思いますし、若いころからそういう形で支援をするということは本当に大切なことだと思います。

 そういった中で、まず、事業承継を契機に既存事業を廃業して新分野に挑戦する第二創業者などに対して、廃業コストを含む創業費用の一部を補助するとともに、全国各地で創業スクールを実施して、第二創業者などに対して、基本的知識の習得、ビジネスプランの作成等の一貫支援を行っております。

 また、地域資源活用や農商工連携により行う、ふるさと名物などの新商品やサービスの開発、また、販路開拓などの新たな取り組みを行う中小企業、小規模事業者を支援していくという形もとらせていただいています。

 ただ、いずれにしても、今委員御指摘のように、本当に後継者がいろいろなことをやっていく、そういうところからしっかりと引き継げるようにしていく、こういった観点は大変重要なものだと思いますので、さらに検討も進めてまいりたいと思います。

篠原(孝)委員 だから、承継のときになってあたふたするんじゃなくて、地道に唾をつけて養成しておくことが必要で、そのための援助をしておくという。

 これはまた手前みそになりますけれども、農業の分野でも、これは農業に手厚過ぎると言われるとまたよくないんですけれども、青年就農給付金というのをつくったんです。後継者対策なんて言っていますけれども、ろくすっぽしていなかったんです。どういうのかというと、やはりおやじさんと違う分野です。おやじさんと違う分野について五年間の計画を立ててやる場合は、百五十万、五年間出すということ。

 何で農業はそういうことをできるかというと、あのうちの息子が帰ってきたけれども、百姓をやらずに遊びほうけていると言ったら、隣近所はみんな見ていますから、そんなごまかしはきかないんですね。そのぐらいやらないともう農業はやっていけないというのでやっているんです。

 中小企業はそこまでするかどうかというのはありますけれども、日本の産業を下支えしていたメッキ工場千二百社が、松原委員の指摘によると三百五十社になっている。これは大問題なんです。農家はもっとひどいんです。これはやはりよくないんです。日本の安定の基盤が音を立てて崩れつつあるんです。

 私は、そういう中では、一番、二番というのはないですけれども、深刻なのはシャッター通り化だと思うんです。どうしてこれを言うかというと、残念ながらというか、流通業の人には悪いんですけれども、製造業や何かと比べると流通業というのはそれほど長続きしていなくて、商店街が急に変わったりというのは昔からあるんですね。結構浮き沈みが激しいんですけれども、日本の祭りは大体商店街の人たちが支えてきたんです。だから、お祭りができなくなってきているんですよ。

 皆さんは中小企業というと製造業を念頭に置かれるんですが、数字をちょっと調べてみましたら、倒産とか廃業とかいうのが一番多いのは建設業です。そこそこ調子がよくなってきているのに、二〇一四年の休廃業と解散、東京商工リサーチでも帝国データバンクでも同じですけれども、一番多いのは建設業なんです。次に、分かれていますけれども、一緒にすると卸売業、小売業の方が一五%と一〇%とかで二番目。建設業と同列なんですよ。意外に製造業はしぶとくて、一〇%しか占めていないんです。建設業が一番、二番目が卸売、小売なんですよ。

 それで、火が消えたようになってしまっている。これは僕は大問題だと思っているんですよ。これは皆さん、あるいは経産省だけの問題じゃないですけれども、やっていないんですけれども、私の選挙区は、長野市はそれでもまだましですけれども、県庁所在地以外の中小都市になったら本当にめためたですね。買い物難民というのも生じている。これは手をつけなければいけない問題だと思うんです。

 これも、もとを正せば、日米構造協議でもって大規模店舗法がさんざんぶったたかれて、これを全く廃止して野方図にしたせいなんですけれども、これは何か手だてを考えておられるんでしょうか。

宮沢国務大臣 商店街についてお答えする前に、中小企業の新規事業参入といったことにつきましては、私が大臣に就任したときから、まさに成長戦略の担い手は中小企業だろう、そして、中小企業にまさに第二の創業に挑んでいただいて、そして成長戦略の中核になるような施策を講じなければいけないということで、この見える化をしろ、こういうことを命じました。

 具体的に言いますと、まさに知恵の泉みたいな、失敗例も含めていろいろなケースをお示しする。そして、やる気になっていただいた中小企業につきましては、それを応援するプラットホームのようなものをつくって、例えば、アジアのお金持ちたちはそれぞれの都市においてこういうものを欲しがっている、こういうものを輸出すればかなり成功するだろうというようなこととか、また、試験研究開発が自分でできない中小企業にそういうものと結びつけるような制度とか、先ほど言いましたようないろいろ応援する施策も多岐にわたっておりましてなかなかわからないところがあります。

 そういうものを一元的にお示しし、また、ある意味ではそれを通訳ができるような方に入っていただいて、中小企業にその気になっていただきたいということで見える化というものを進めてまいりまして、恐らく来週ぐらいには第一弾ということで公表をして、全国的にそれをお示しすることによって、少し中小企業に今までと違った行動をとっていただくようなことを大々的にやっていきたいと考えております。

 そして、商店街についてのお尋ねがありました。

 いろいろなことをやっていることは確かであります。我が省においてもこれまでいろいろやってきましたけれども、正直言いまして、では明らかに商店街の衰退がとまったかというと、それは、各地においてシャッター通りがふえてきているという状況の中で、それぞれ効果はあったんだと思いますけれども、大きな効果ではなかったという中で、やはりもう一度商店街の政策についても見直そうじゃないかということを、大臣になったときに、これは中小企業庁だけではなくて省を挙げてちょっと検討してみようということで、今実は検討しております。

 そして、例えば、成功した例をいろいろ分析していきますと、まず、良好な立地環境というものがどうしても必要であります。それから、すぐれたリーダー、キーパーソン、有志グループの存在といったことも必要であります。さらに、人を集める取り組みと、売り上げを増加させる、双方の取り組みが重要であるといったこと。

 逆に言えば、良好な立地環境にないところはどんなに頑張っても正直言うとなかなか難しいということは確かでありますから、例えば、同じ地域の中でも、幾つかある商店街の中で、良好なのはここだということがわかれば、そういうところに、ほかの立地環境でまだ元気がある商店が移っていくような施策も含めて、商店街に対する政策を相当変えていかなければいけないということで、今まだ検討中でございますけれども、何とか少し商店街に対する政策が変わってきたなということを商店街にもわかっていただき、また、地方公共団体も相当力を入れていただかなければいけませんから、そういうところと力を合わせながら、少し方向を変えていきたいということを今考えているところであります。

篠原(孝)委員 今、大臣のお答えの中にいろいろなヒントが隠されているんですけれども、人がいないんですよね。駅が、鉄道利用者がいなくなっていますから、人の集まるところがなくなって、みんな車で行っている。車で行けない人たちは買い物にも行けないとかになって、悪循環なわけですね。

 なかなか悩みは深いと思いますけれども、私は、集積のメリットというのはやはりありますし、商店街があって、買い物、ショッピングの楽しみというのがありますから、何か、これは言っちゃ悪いんですけれども、コンビニやスーパーで、コミュニケーションもなしで物だけ買っているというのは味気ないですよね。だから、それはみんなそう思っているので、直す手立ては僕はいっぱいあると思います。

 最後に、時間がなくなりましたけれども、今、TPPで日米の二国間の交渉をやっている最中ですね。何か甘利TPP担当大臣は非常に調子のいいことを言っておられまして、アメリカも、初めてホノルルで、初めてじゃないかもしれませんが、少なくとも日本が参加してからは初めて、閣僚会議を今月末にセットするということをやっている。どういう交渉状況かというのをテレビのニュースでも新聞でも報じています。

 農産物については、米が、アメリカは十七・五万トン。何でそんな変な数字が出てくるか、根拠はないんですよ、そんな数字に。日本側は、なるべく少なくして、五万トン程度だったらいいとか、これもまた根拠はないんですけれども、輸入量が具体的に出てきているんです。

 自動車協議については、二・五%の関税をいつ撤廃するかとか、それだけで、あと何にも出てきていないんですね。情報公開が全く進んでいない。今は超円安になって、七十八、九円から百二十円を超えているんですから、四十円近く上がっているというのは、関税が四〇%下がったと同じ状態だから、二・五%の関税は当座は何ともないというので経済界も関心がないのかもしれませんけれども、大事な問題だと私は思います。

 関税はどうでもいいんですけれども、大臣、どういうふうに聞いておられるか。

 原産地ルールというのがあるわけですね。日本のEPAは大体相手国に対してもそうですけれども、部品の四〇%がその国でつくったものでないとその国の製品と認めないというふうになっているというんです。NAFTAは六二・五%で始まっているんです。

 TPPについても、全然情報が流れてきませんけれども、結構きついパーセントでやっている。日本の場合は、中間財を、サプライチェーンのタイとかインドネシア、韓国、中国、みんなTPPに入っていないところですね。ここの部品を相当使っていると日本製品とみなされないんです。

 これは自動車だけじゃなくて、ほかの工業製品にも全部悪影響を及ぼすはずなんですけれども、こういうことについて、経済産業大臣はちゃんと聞いておられて、ちゃんとやれよという指令をびしばし出しておられるんでしょうか。

宮沢国務大臣 原産地の規則というのは、これは緩過ぎると迂回輸出のようなものが出てくる、そして厳し過ぎると、自由度が奪われて域外からの部品調達に支障が生じるといったところで、大変大事なものであります。

 交渉の中身については、これまでも申し上げておりましたように交渉中でございまして、私の方から申し上げるわけにはまいりませんけれども、日本の産業界にまさに利益をもたらすようなものにしていかなければいけないということで、今努力をしているところでございます。

篠原(孝)委員 閣僚の一人として、自動車工業界も大事ですけれども、そういった判断をするときに、ちらっと農業界にも思いをはせて交渉していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 落合貴之でございます。

 本日も、維新の党のトップバッターで質問をさせていただきます。

 本日は、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案、並びに、それに関連して、独立行政法人中小企業基盤整備機構について質問をさせていただきます。

 通告の三番目から行かせていただきますが、中小企業基盤整備機構についてお伺いします。

 この機構は、中小企業庁のもとで中小企業に対するいろいろなサポートをしていますが、小規模企業共済の運営主体にもなっています。この共済は長年、繰越欠損金を抱えていましたが、経営努力や昨今の運用環境の改善により、平成二十六年度にようやく欠損金は解消して、余剰金が積み上がり始めています。

 その中で、今回の法改正では給付の範囲を広げるわけですが、加入者の高齢化なども進んで、財務基盤は万全ではありません。給付水準を上げて財源は大丈夫なのか、これを聞きたかったんですが、先ほど佐々木委員が同じような質問をされまして、〇・二%程度の影響しかないとの御答弁でした。

 したがって、財源は大丈夫ということでよろしいですね。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

関大臣政務官 今、落合委員の言われたとおりでございまして、今回の法改正、給付額の増加で、全体で年間十三億円程度の支給額増加になるわけですけれども、〇・二%程度の状況にとどまるということでございますので、大きな影響はないと受けとめているのが実態でございます。

落合委員 昨年度の決算を見てみますと、掛金等の収入が支出よりも少ない。一方で、資産運用の収入が三千六百十九億円で、その分で全体が黒字になっています。予定利率一%に対して、運用利回りが四%を超えている。

 この共済の資産運用の基本ポートフォリオを見てみますと、二割ぐらいは市場で運用されています。国内外の株式ですとか国内外の債券ですとか。最近は円安、株高、低金利が続いていたので、全部の運用環境がよかったわけですが、この環境が続くわけではありません。加入者をふやすといっても、加入者からの収入がそもそも六割程度で、あとの四割は運用収益。今の状態でも、運用収益がゼロになったら赤字になってしまう。今後、運用収益自体も赤字になってしまうこともあり得ます。

 この今の財務状況をしっかり御認識されていますでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 財務状況でございますけれども、これまでさまざまな予定利率の変更等の努力もしてまいりました。財務の健全性が基盤でございますので、そこで運用の効率を上げていくことが、また一方で共済を掛けておられる方への利益にもつながるということでございますので、財務の健全性、そしてまた運用の効率化、成功には努めてまいりたいと思っております。

落合委員 運用の効率化を進めても、マーケット環境によってはどういう運用収益が上がるかわかりません。今回、給付の水準を引き上げるのに財務基盤は大丈夫ですということですが、そもそも掛金だけの収入では赤字になっているわけですので、これは大丈夫な状況ではないと私は思いますね。

 全資産の二割程度を市場で運用していらっしゃいますが、この運用資産は信託銀行などの民間金融機関に委託しているということでよろしいでしょうか。

北川政府参考人 御指摘のとおり、二割につきましては市場での運用ということで、その際には専門性を有する信託銀行、あるいは投資顧問会社に委託して運用を行っております。

落合委員 平成二十六年度末でこの共済の資産が八兆六千九百五十五億円、このうちどれぐらいの資産を民間金融機関に預けて、年間で幾ら手数料を払っているんでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年三月末時点で委託している資産の総額は一兆七千八百四十三億円でございます。

 また、平成二十六年度に委託先の十六機関に対して支払っております委託手数料の合計額は二十四億九千三百万円となっております。

落合委員 二十四億ということで、一・何%ぐらいですかね、手数料が。この手数料は適正と考えていることでよろしいですね。

北川政府参考人 民間への委託でございますので、ほかのいろいろな条件を見ながらやっておりますから、適正だと考えております。

落合委員 続きまして、この中小機構は貸付事業も行っておりまして、いろいろ調べて思ったんですが、この貸付事業の名前が高度化事業という名前でして、制度の概要を見ると、長期の融資を固定金利で行う、要は融資の制度なんですが、どうして貸し付けとか融資という名前がついていなくて高度化事業という名前なんでしょうか。

 過去の議事録を見ても、高度化貸し付けというふうに口では言っているんですが、役所がつくった書類は全部高度化事業と書いてあるんです。これは融資とか貸し付けとか、名前をつけない理由は何かあるんでしょうか。

北川政府参考人 高度化事業そのものの趣旨は、御案内だと思いますけれども、もともと中小企業制度の中で非常に古い制度でございまして、中小企業は単独でなかなか大きな事業が行えないという実態を踏まえまして、例えば大きな設備投資を共同で行う、あるいはアーケード整備みたいなものを共同で行う、こういったものを支援しようということでございます。

 一義的には、都道府県がまず応援を考えていただきまして、基盤機構はその財源の一部を貸し付ける制度ということでございますので、そういった趣旨から、中小企業の高度化を図るという観点で高度化事業と称しておりました。

落合委員 ここの部分はそんなに聞く予定もなかったんですが、高度化の意味は十分今の説明でわかるんですが、高度化貸し付けと書いた方が題名を見ただけでわかりやすいと思うんですが、何で貸し付けじゃなくて事業という名前にしているのか。どうしてでしょうか。

北川政府参考人 まず都道府県が貸し付ける、その後ろから、ある意味バックファイナンスのような格好で貸し付ける、もともとそういう制度設計でございましたので、中小機構が直接事業者に貸し付けるということではなかったので、恐らく高度化事業と称したのではないかと思います。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

落合委員 わかりました。

 この高度化貸し付け、平成二十五年度末では残高が六千八百四十五億円です。昨年度末、平成二十六年度末では貸付残高は幾らで、このうち不良債権額は幾らか、そして不良債権比率は何%でしょうか。

関大臣政務官 二十六年度末の貸付残高は、六千六百三十億円となっております。そのうちの不良債権額でございますが、七百七十七億円でございまして、不良債権比率は一一・七%となっております。

落合委員 一般の金融機関と比べれば不良債権比率は高いということで、ちなみに、昨年の経済産業委員会でも機構の不良債権が多いと指摘をされています。

 しかし、もっと調べてみますと、十年前の平成十六年度末、不良債権額が今より三倍くらいの二千二百五十四億円、貸付残高は今とほとんど変わりません。その二年後には不良債権額が半減、約一千百億円減っていて、貸付残高も千五百億円ぐらい減っています。これは何らかの形で処理したとは思うんですが、この二年間で不良債権をどうやって処理したんですか。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 高度化融資につきましては、御指摘のような不良債権の問題というのがございまして、我々もこれを解消するべくさまざまな努力をしてまいりました。主体は中小企業基盤整備機構でございますけれども、今御指摘のありましたような回収見込みのない債権につきましては償却の処理をする、あるいは、回収に向けまして経営改善の指導等を機構自身が行うといったような努力を続けてきたところでございます。

落合委員 十六年から十八年の間に不良債権額が半減した、この理由は何かあるんでしょうか。

丸山政府参考人 今申し上げましたような償却処理等の手続等を踏んで、さまざまな努力をしてきた、そういう結果だと認識をしてございます。

落合委員 次に、中小機構は事業承継業務も行っています。しかし、中小機構がこのような業務を行っていることが余り知られていないと先ほどからもありまして、それが課題で、商工会議所などを通じて宣伝をされているということでした。

 一方で、相続ですとか事業承継は、民間金融機関にとっては大きな収益源であるということで、大手の都市銀行でさえ、ちょっと前までは法人部門と個人部門を分けていましたが、中小企業のオーナーに対する営業がこれから収益になるということで、法人部門、個人部門をくっつけ始めています。

 この事業承継業務は、基本は民間の金融機関がやるべきではないでしょうか。機構が前に出れば民業圧迫にはなりませんでしょうか。

高木副大臣 御存じのように、中小企業基盤整備機構は、我が国唯一の中小企業政策の総合的な実施機関として、創業そして新事業展開の促進、または経営基盤の強化、経営環境の変化への対応の円滑化という三つの政策課題に対応するために、経営や技術面での専門的なアドバイスとともに、長期、低利の貸し付けや、リスクマネーの供給などを業務として実施しております。

 国内の三百八十五万の中小企業者の中には、資金力や情報の収集力、経営ノウハウが不足している業者が多く、そのため、必要な情報の提供、中小企業の経営力の向上につながる場の提供、または中小企業者の安心を支える仕組みの提供を行うことが必要であると考えています。

 こうした中小企業者の支援事業については、民間事業者の営利事業としてはなかなか成立しにくい。今御指摘のあった金融機関、これは融資が基本的な事業となっておりますので、融資を前提とした相談という形となりますが、それ以外のさまざまな角度のことから考えた場合に、政府と一体となって中小企業政策を進めていく、そういった中小企業者の成長発展に寄与していくもの、このように考えております。

落合委員 中小機構が認知不足であると。情報提供というのがやはり鍵になると思うんですね。

 商工中金法の改正の審議のときは、商工中金はフルバンク機能を持っていて、メーンバンクになり得るから中小企業のサポートをしっかりできるというお話でした。この機構はフルバンク機能を持っていない。だから、最初にアクセスするきっかけがない。メーンバンクにはなり得ません。

 ふだん、やはり社長とおつき合いしているのは信用金庫や地銀などですから、そこにまず窓口を一本化して、信金や地銀が受けられない案件を機構に紹介してもらって機構が受ける、そういう仕組みにした方が機構の存在価値は高まるんじゃないでしょうか。

高木副大臣 今御指摘ありましたように、地域の中小企業、小規模事業者の支援に当たって、信金または地銀といった地域の金融機関の役割は重要であると考えています。これまでにも百八十六の地域金融機関等と業務提携を結び、連携を強化しているところでございます。

 経産省としては、中小機構が中小企業者の多種多様な経営課題に適切に対応していくために、地域の金融機関とともに、それぞれの強みを生かす形で連携強化していく。もちろん、相談をするときに、それぞれいろいろな形があると思います。そういった中での連携を強化していくということは大変重要であるということで、これについてはしっかりと強化をしてまいりたいと考えております。

落合委員 よく考えてみますと、民間の金融機関は金融庁の所管で、中小機構は経産省の所管ということで、それで民間金融機関とのおつき合いより商工会の方がやりやすいのかなとも思ったんですが、次の質問に移らせていただきます。

 通告の二番目のところに戻りますが、今回の法改正で親族外の事業承継がやりやすくなるというわけですが、中小企業白書を読んでみますと、事業承継の推移についてグラフが載っていまして、今、親族への事業承継が半分くらいで、内部昇格してきた後継者、親族でない後継者に引き継ぐのが四割近くと。

 これはだんだん親族外がふえてきているわけですが、よく見てみると、そのグラフの一番左側の二十八年前、一九八七年でも親族への承継というのは三分の二ぐらい、六割台で、三割近くはもう既に親族外の承継が行われています。要は一割、十ポイントぐらいふえただけなわけです、三十年間で。これは昔も親族外が多かったのに、なぜ今こういう法案が出てきたんでしょうか。

宮沢国務大臣 先ほど篠原委員とも議論をしておりましたように、篠原委員は、やはり本来であれば子供が親の跡を継ぐべきだ、こういうお考えでありました。

 私も、その質問に対しまして、子供が親の職業、事業に憧れを持つということは大変いいことだろうということを申し上げたわけでありますけれども、そういう中で、まさにまず親族内ということについての承継、親族内の承継につきまして法改正をして、そして施行したのが平成二十一年三月でございます。六年たったわけでございますが、その状況を見て、親族外にも今回広げることにしたということであります。

 それが遅過ぎたのかどうかという話はあろうかと思いますけれども、新しい制度をつくって六年程度状況を見て、その後でさらに改良を加える、対象を拡大するということは、それはそれで今のタイミングとして適切であったのだろうと私は思っております。

落合委員 では、この中小機構をいろいろ調べていて、一昨年十一月、中小機構による地域中小企業応援ファンドの基金が少したまり過ぎているんじゃないかというふうに会計検査院が指摘をしておりました。これはどのように対応されましたでしょうか。

宮沢国務大臣 御指摘の地域中小企業応援ファンドにつきましては、中小機構が都道府県に無利子貸し付けを行い、地域金融機関などによる拠出分を合わせて財団法人などに基金を造成して、その運用益による助成事業によりまして地域中小企業の新事業を支援するために平成十九年度に創設されたものでございまして、現在、全国で四十四都道府県に基金が造成されております。

 そして、この事業につきまして、平成二十四年度決算検査報告において、会計検査院より、利用実績が基金規模に比して少ない基金が見受けられる状況で、基金の規模を的確に把握する指標を設定していないことなどについて指摘を受けました。

 この指摘を踏まえまして、中小機構といたしましては、四十四都道府県に対し、基金規模の適正化のための必要な措置をとることについて周知徹底し、基金造成から五年を目途に基金の見直しを行うよう助言する、加えて、ファンド事業の運営状況をより適切な指標を用いて都道府県から毎年度報告させるように通知する、こういう措置を講じたところであります。

 これによりまして、平成二十五年度決算検査報告では、検査院指摘の趣旨に沿った処置を講じていたとして、処置済みということになっております。

落合委員 中小企業、小規模企業のサポート先としては、この基盤機構だけではなくて、日本政策金融公庫もありますし、ほかにも関係機関が経産省の周りにはたくさんございます。これらとこの中小機構のすみ分けの問題もあると思います。このあたりも今後注視させていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

江田委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 維新の党、木下智彦です。

 きょうもお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど篠原議員もお話ししていましたけれども、私もこの法案自体、非常にいいなというふうに思いながら見ていたんですね。なぜいいかというと、事業を承継していくといいながら、経営者が新たにかわっていくんだということを、これはいろいろな形で促そうとされているんだと思うんです。

 そういう意味でいうと、大きな流れ、一般質疑であるとか、今までのいろいろな質問をさせていただいた中でも、私が思っているのは、やはり中小企業、小規模事業者というのは日本の中の大半を占めている、ただ、そこをうまくてこ入れをしていかなければ我が国の経済状況というのはよくなっていかない、成長戦略の一番鍵だと思っている。その中では、やはり生産性を高めていくこと。でも、そのためにやらなきゃいけないのは、ある程度身を切るところもやらなければいけない、緩やかな退出ということも促していかなければいけない。

 そういう意味では、いろいろな形で、事業は承継されるといいながら、新たなマインドが出ていくことというのを促すような、そういう政策をどんどん打ち出しているというふうに私は理解しているので、非常にこういうことをどんどんてこ入れをしていくのがいいのかなというふうに思ってはいます。

 ただ、それを考えたときに、まず一番最初に考えなければいけないのは、こういった法案を出すときに、過去のしっかりとした反省というのか、過去の分析をした上で、その改善を法案の中でしていくということが一番私は重要なことなのではないかなというふうに思っております。

 そういうことで少し質問を考えてみて、お話を聞かせていただきたいんです。

 まず最初に、遺留分特例制度ということ。

 今回、特にクローズアップされているのが、遺留分特例制度に関しては、もともとその企業にいた従業員の方々、そういった人たちが事業を承継する際に、その前の経営者の方々の御家族が、株であるとかそういったものを持たれている。そういったものを次に承継するときに、新たな会社の方向性を決める際に、いろいろなところからいろいろな意見が出てしまうと、なかなか思い切った方向転換をすることができないとか、もう少し新たな事業をやっていくといったときにも、なかなか役員の人たちの意見をそのまままとめ切れない。そういうことを何とか集約化しようということだと私は思っているんですね。

 ただ、そうやって考えたときに、今までの制度では、一々、遺留分というふうな部分については、株もしくはそういう権利を保有されている方々一人一人が裁判所に行って、その遺留分の権利を放棄するといった形のことをしなければいけなかった。しかし、今回のこの法案では、それがしっかりと、許可というのか、一人一人がいいよというふうに言っていれば、手続をする面では、今度の新しい経営者の人が一人で裁判所に出向いて、それを手続上は進めていけるということだと思うんです。

 これは、話を聞いていたら、うん、いいなと思うんですけれども、実際、そういう事前合意ができるのかどうかというところが私は一番大きな問題だと思っているんです。事前合意ができるのであれば、そういう手続をもともと集約化というのか、一人にしておけばいいわけですけれども、この事前合意ができないから、そもそも今までの制度では一人一人が裁判所に行かなきゃいけなかったんじゃないかと私は思っているんです。

 これは何で今まで一人一人が行かなきゃいけなかったのか、この辺、どういう理解をしたらいいのか、教えていただきたいんです。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 何点か先生から御質問いただいたと思います。

 まず、最後の方から申し上げますが、一人一人がなぜ家庭裁判所に行かなきゃいけないかということなんですが、これは、遺留分は非常に強い権利でございますので、それを放棄するというのは、本当にその人がみずからの意思で放棄をするのかどうかというのを家庭裁判所の裁判官の方がきちんと見なければいけない。なので、一人一人の方が行かれて、許可までするという制度になっておりました。

 そうなりますと、先生から御指摘がありましたように、やはり非常に大変ということもあって、なかなか遺留分放棄ということができないということで、事前に合意ということを考え出しまして、この法律をまず出させていただきました。

 その際、では、どうやって合意をするのかということでございますが、この合意に関して非常に重要なのは、何といっても、先代経営者がまだ生きている間にリーダーシップを発揮して、とにかくみんな合意をしてくれよと、生きている社長さん、経営者の方が非常に強いリーダーシップで合意をしていただくようにお願いをするということであります。

 あともう一つ、単にお願いをするだけではこれはどうしようもないことでございますから、経営承継円滑化法第六条に、後継者が株式を取得するかわりに、推定相続人が先代経営者からその他の財産を取得するなど、後継者と推定相続人との間の衡平を図るための措置、つまり、後継者の方は株なんだけれども、ほかの相続人の方はほかの土地であるとかほかの株であるとかお金というふうに、そういうほかの財産のところもきちんとどうするかというふうに取得とかを決めるということも法律に書いております。

 そういうものも含めて、先代経営者のリーダーシップで合意をするようになるような仕組みをつくらせていただいたというところでございます。

木下委員 そうですね。一番懸念されるのが、本人の意思を明確に第三者が認定しなければならない、強引にそれが取りつけられたりとかすることがあっちゃいけないということで、今まで、裁判所にそれぞれちゃんと行くような形だった。だから、やはりこれを考えたら、今までのやり方自体も、果たして悪かったかというと、悪いわけではないと私は思うんです。やはり歯どめをしっかりきかせる。

 ただ、今回、こういうふうな形に持っていくのであれば、今言われていた措置というのが、実際に実効性があるかどうかという問題はありますけれども、そこをしっかりと固めていかなければ、一概に、そのまま、改善したよというふうには言いにくいんじゃないかなと思うんですね。

 そもそも、考えたときに、引き継ぎをした人、引き継ぎをしたというか、お父さんがもともと会社をしていました、お父さんが、経営者の人に譲りたいからそういうふうにするといっても、お子さんだったり奥さんだったりとかは、まだお父さんが生きていたとしても、お父さんはもう年いっているからしようがないかもしれないけれども、でも、新たな経営者の人にむちゃくちゃにされちゃうんじゃないの、お父さんが死んだ後に何かされちゃうんじゃないのというふうに思ったら、文句は言わないし、それなりに納得させてくれればいいけれども、でも、今の時点で全部の権利を放棄したいとは思わないという人が私はほとんどなんじゃないかなと思うんです。

 だって、その後継者の人がまともにやってさえくれていれば、何も意地悪することはないよと、ただ、まともにやっておいてもらいたいからこそ、私たちが意見を持つ権利を持っておきたいというのが普通の感情じゃないかなと思うので、それが全てではないでしょうけれども、やはりそういうふうな感情も含めて、この制度の中でどうやって解決していくのかというのは、これは難しい問題だろう。

 それをしっかりと打ち出せなければ、この制度は、せっかくうまいぐあいにつくったというふうにいいながら、なかなか活用をしてくれる人たちがふえないんじゃないかなというふうな思いで、今のお話をちょっと聞かせていただきました。

 では、どんどん次へ行かせていただきますけれども、次に、小規模企業共済についてお話を聞かせていただきたいんです。

 これは、先ほどとは逆に、親族内の事業承継について、今までの共済の事由というところから引き上げてやろうということだと思っているんです。今までの共済の事由というのは何かというと、そのまま親族に承継をした場合には、その承継をしたもともとの経営者の人は、共済を受ける金額というのが満額じゃないというのか、A共済と言われている一番高いものではなくて、準共済であったということで、それをA共済、一番高い金額に引き上げてやることによって、親族にスムーズに承継をしてやろう。

 どんどん承継を早めてやろうという意味では私はわかるんですけれども、さっきの遺留分の特例制度では、親族外に対して事業承継を進めてやろうといいながら、この二番目の小規模共済、これを外観から見たときには、親族内に対して有利なというのか、親族内に引き継ぎをしたときにある意味で有利な条件を付すような形になっている。

 これは、外観だけで見ると、ちょっと相反しているような感じもしなくもない。ただ、全体を見たときには、私、冒頭言わせていただいたとおり、どんどん集約化していこうとか生産性を高めていこうということにつながるだろうと思うので、いいとは思うんですけれども、ちょっとこの二点が外観上矛盾しているんじゃないかという部分もあるので、その辺も含めて、この二本の部分の位置づけというのを説明いただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどからお話が出ておりますとおり、中小企業、小規模事業者につきましては、従来、親族内承継が九割ということで、大変高い割合であったわけでございますけれども、近年では親族外承継が四割ということで、この状況を見ますと、事業承継を円滑に進めるに当たりましては、親族内か親族外かということを問わず、環境整備を進めるということが必要な状況になっているものという認識をしてございます。

 こうした中で、御指摘がございましたように、経営承継円滑化法につきましては、これまでは親族内承継について遺留分の特例があるということでしたが、今般の改正でこれを親族外に拡充するというふうにさせていただく趣旨でございます。

 一方で、小規模企業共済につきましては、事業を廃止した場合に共済金を支払う、これが本旨の制度でございますけれども、親族外承継につきましては、この制度の中で廃業と同様の取り扱いができるということで、これまで進めさせてきていただいております。こうした現行制度に加えまして、今般の改正によりまして、親族内承継も親族外承継と同様に最も高い共済金額に引き上げるということです。

 以上の二つの法律の改正によりまして、親族内承継か親族外承継かということを問わずに、事業承継が円滑に進むような措置を講ずるということにさせていただきたいと思っているところでございます。

木下委員 同等にしようと。いろいろな理由を言われていました、数字も上がってきているからと。ただ、では、もともと何でこれは分けていたのか、なぜ減額されていたのかというところなんですね。

 その一番大きな理由、私が思うのは、もともとは、親族が引退した場合、お父さんが引退した場合に、引き継ぎを受けた親族の人たちは、そのお父さんの老後を支えてやる、ある意味で扶養を前提としたようなことを考えていたから、お父さんが共済金額をたくさんもらう必要はないよねということがもともとの理由だったんです。

 数がふえたからというふうにおっしゃられていますけれども、親族に引き継ぎをしたとして、直接的に扶養する人が少なくなったとしても、全てがそうとは言いませんが、その人が親族であった場合には、将来的にもともとの経営者の資産を引き継ぐ、遺産を引き継ぐだけの法定の遺産の分割取得権、これを有していることになると思うんです。それは、この数字が変わろうが何しようが変わらない。

 それを考えたときに、同じ共済金額にしておいて、私はいいのかなと。というのは、同じだけの能力のある人が従業員にいました、片一方は親族です、片一方は親族じゃありませんというふうにいったときに、同じになっていれば、後で考えたときに自分の遺産がどこへ移るかということも考えたら、そういうことも総合的に考えたら、ああ、では親族に引き継ぎをした方がいいよなと思ってしまう可能性の方が私はあると思うんです。

 そもそも、これを分けていた理由もそういうところにあるのであれば、ここを全く同じにする意味合いというのが、なぜ全く一緒にするということを選んでいるのか、ちょっと私は理由がわからないんですけれども、大臣、今のお話を聞いていて、どう思われますか。

宮沢国務大臣 今ふと思っておりましたのが、最近、家具屋さんでいろいろあって、経営者は一緒にやっていても親族間で仲がいいばかりじゃなくて、番頭さんの方が仲がいいというケースもいろいろあるんだろうなと実は思って聞いていたわけですけれども。

 基本的に、今回の改正は、事業承継がやりやすくなる方向で、小規模共済につきましても、また民法の遺留分についても改正したということでありまして、方向性としては、親族外、親族内、ちょっと違った手当てはしておりますけれども、同じ方向のものだということを思っております。

 そして、今のお話はなかなか難しいところで、自分の財産を誰が受け取るのかというようなことの中で、恐らく、企業であり事業でありといったものの占めるウエートのようなものがどの程度財産の中にあるのかということもありますし、また一方で、当然のことながら、親族外の方、娘婿さんとかいうことであれば別ですけれども、全くの他人ということであれば、その中でやはりお金が当然動くわけでありますから、そのお金がどうだということも絡んでくる。いろいろなケースがあるんだろうというふうに思います。

木下委員 いろいろなケースがあるんだろうということは納得できます。

 ただ、引き継ぎをする人、特に外から、外からというのか、第三者ではなくて、ほかの従業員の人たちのやる気をやはりなくさせてはだめだと思うんですね。だから、そういうところも含めて、今回、これでも全体的な部分は私はいいと思いますので、もう少し、そういうやる気をそのまま維持できるような、そういった施策をとっていってほしいなと。

 きょう五つぐらい用意していたんですけれども二問しか聞けなくて、最後ちょっとだけお話をさせていただきますけれども、やはり一番大きなところは、要は、親族、それからそれ以外のもともとの従業員の人たちに引き継ぐところをやろうということで、今回この法案になってきた。でも、やはり一番本当に重要なのは何かというと、先ほど富田委員もお話しされていましたけれども、事業を引き継ぐ人が社外の人であってもちゃんと施策上うまく回す、これができて本当にすばらしい施策全体だと思っているんです。社外、親族、それから親族外のもともとの従業員、これが全て全部でき上がってだと思っていて、この部分、やはりもう少し、ここに本来は重点を一番置いていくべきなんじゃないかなと思っているんです。

 いろいろネットでも見ていて、中小企業庁であるとか経産省自体がこういうマッチングみたいなことをやられて、いろいろなケースが出てきています。きょうはもう聞きませんけれども、たくさんやられています。こういうことをもっとアピールしていただいて、ああ、こういうふうな施策をやっているんだな、だったら私もそういうところに挑戦してみたいな、例えば脱サラするような人でも、こういうことをやりたいという人が、まさかそんなことをやっていると思わなかったと。だったら、こういうことをやってくださいというのをもっとアピールするべきだ。

 先ほど言われていましたけれども、もともとはお父さん、お母さんがやっていたのをそのまま引き継ぐのがいいというふうに言われながらも、ちゃんと、しっかりした後継者が新たな事業としてやっていくというのが社会全体でうまく回っていく本当の仕組みだと思いますので、これをもう少しアピールを最後にしていただいたら私の質問を終わりたいと思いますので、大臣、最後にお話をいただければと思います。

宮沢国務大臣 いろいろな施策をしてきております。昨年の四月からは後継者人材バンクといったことをやったり、その前からは、事業引き継ぎ支援事業といったものは二十三年度からやっておりまして、こういうものがあるよということをしっかり広報はしてまいります。

 ただ、もう一つ、やはり恐らく一番大事なことは、引き継いでもいいと思われるような魅力的な事業というものにしていくということが一番大事でありまして、そういった意味で、例えば中小企業の生産性向上等々について、経産省の施策を総動員して、それに向けた動きというのをしていきたいと思っております。

木下委員 ありがとうございます。ぜひ頑張ってください。よろしくお願いします。

 ありがとうございます。

江田委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 三人目の維新の党、鈴木義弘です。

 政治家は自分の意見をどんどん言いたい人種なんだなというふうにつくづく思いますが、私もその一人でありますので、お許しをいただきたいと思います。

 きょうの議論を聞いておりますと、やはり今の時代は昔と余り変わっていないなと思うのは、やはりストック社会なんだと思うんですね。どうやって富を蓄積していくのか。事業継承するに当たっても、やはりある意味では富がなければ次の世代に送っていかれない。それをどう残していくのか。自分が稼いだ金を自分の代だけで使ってしまえばこういった事業承継の法案をつくる必要もないし、一代一代でばさっばさっと切っていかれればいいんですけれども、これはやはり人間の本能にあるんじゃないかなと私は思っています。だから、子供を産み育てるというのは、やはりそこから来ているからじゃないかと思います。

 それで、一番この事業承継の中でボトルネックになっているのは、相続税、贈与税に係る税負担の軽減をしていこうというのが事の始まりなんだと思います。しかし、事業資産である土地や株式の承継に関する税制措置を整備するために、昭和五十八年から何回かこの改正を行ってきているのがきょうのこの法案の審議になってきたんだと思うんですけれども、では、そもそも相続税や贈与税に累進課税をきつくしてきた国の一つが日本なんですね。

 事業継承の税制のものを、アメリカを初めフランスだとかドイツだとかイギリスだとかの比較表を見ても、その国の歴史があったり、文化があったり、思想があったりして、みんな制度がばらばらです。

 日本もその中で累進課税をずっと進めてきたんですけれども、お聞きになった方もいらっしゃると思うんですが、「ハイエクの租税論」の中に民主主義と累進課税に対しての記述を、広島の国税庁の職員さんが記述したものを目にしたんです。その中で、ああ、やはりそうだなと思っているんです。

 ある一定の所得水準こそが望ましいという考え方には、大きな利益を得ることが社会的に望ましくないという一般的な信念がある。難しい言い方なんでしょうけれども、このぐらいのお金を持っている人、財産を持っている人でいいんじゃないのという考え方なんだと思うんですね。しかし、一個人が行うどんな活動も社会全体の尺度で見ればある一定以上の価値を持たず、短期間で多くの財産を築くことを正当な報酬形態と認めないことである。一代でいっぱい財産をもうけた人は何らかの形で税金を納めてもらいましょうというのが、今の日本がとっている相続税の累進課税なんだと思うんですね。それを言い当てているんだと思います。

 そして、今日の大部分のサラリーマンのように、固定給や固定賃金により自分の時間を切り売りしている人たちがこの考え方を支持する中心的勢力となっているんだというふうにうたっているんです。これは私が言っているんじゃないんですけれども。

 毎期一定額の賃金や報酬を受け取るだけで、大きな利益を受け取ることもなければ大きな損失をこうむることもない。しかし、経営者のような自己の危険負担と責任により財産を管理する人々にとって、この考え方は意味がないということなんですね。経営者というのはそういうことなんだと思うんです。

 一定の水準の所得が社会的に望ましいという考え方、公平公正というのをよく口に出すんですけれども、社会のある特定の階層の人々の考え方にしかすぎず、社会全体から見れば、経営努力による成功者を発生しにくくすることで社会発展を阻害し、貧しい者が富める者になる機会を失わせることで現在の不平等を存続させており、決して望ましいこととは言えないというふうに述べているんですけれども、この考え方に対して、大臣の御所見をまずお伺いいたします。

宮沢国務大臣 大変高度な御質問をいただきました。

 恐らく、一定水準の所得が望ましいという考え方は、少なくとも資本主義の国においては当然とられているわけではなくて、一方、現在、ある意味では修正資本主義的な考えのもとで、最低賃金といったものを決めて、そして、最低は保障するという中で、あとは個人の能力に応じて所得が得られる、また勤労所得で払われる、こういうことで行われているんだろうというふうに思っております。

鈴木(義)委員 そうしますと、もう二点質問があるんですね。

 ある一定の水準の所得が望ましいという考え方は、社会的正義として主張されてきていて、その社会的正義の言葉が曖昧なんだそうです。社会的正義の名のもとに、政府や議会は、人は何をすべきかを命令し、義務を課してきたと言っているんです。そして、政府が事前に考えている分配パターンを実現しようとすればするほど、政府はさまざまな個人や集団をますます自己の統制下に入れようとしている。所得再分配のような結果の平等ではなく、機会の平等こそが重要であるというふうに指摘しているんですけれども、最低賃金を設けるとか、努力した人は報われてもいいんじゃないかと言いながら、日本は、累進課税を所得税でも、相続税だとか贈与税もくるっと上げるんですね。

 そうすると、今私が二問目の質問で申し上げたことと、結果の平等を求め過ぎているんじゃないかということなんです。

 チャンスの平等は国民に広く当たり前のようにあるべきなんだと思うんですけれども、そこのところが、今の社会というのは、どちらかというと、自分の代でいっぱい稼いだ人は、そこから相続で次の代に継承するときにはたくさん相続税を納めてもらえばいいじゃないかという考え方では成り立たなくなってきているんじゃないかという考え方なんですけれども、御所見を伺えればと思います。

宮沢国務大臣 結果の平等か機会の平等かと言われますと、基本的には、これは機会の平等というものが大事なわけであります。では、全ての結果の不平等が望ましいかと言われますと、やはり、社会的に見ますとある程度の是正はしていかざるを得ないという中で、税制が決まり、政治が動いてきている。

 例えば、最近、昨年の夏ぐらいからよく議論されましたのがピケティの格差論の話でありまして、格差というものが拡大している。例えば、アメリカのような社会を見ますと、やはり相当格差というものが拡大してきていることは間違いないと思っておりますが、一方で、では日本はどうかといいますと、日本とかフランスのような国というのは、そこまで大きな格差拡大といったものは見えてこない。

 そういう中で、例えば所得税の累進課税といったものについて言えば、かなり累進がきつかったのを、地方税との関係もありますが、税率を単純化し、そして最高税率を四〇%といったところにまで下げてまいりましたのを、ことしから四五%に戻しているというのは、まさに社会の状況を見ながら、社会が安定するような形での税制といったものを政治として判断してきた結果だろうと思っております。

 一方で、相続税につきまして言えば、それこそ日本の税制というのはシャウプ勧告、シャウプ税制と言われたところから始まっておりますけれども、シャウプさんの基本的な考え方というのは、まさに亡くなったときに精算課税で済ませればいいというのが基本だということでありますけれども、なかなかそういうわけにはいかないという中で、今の相続税制、また贈与に関する税制ができている。

 そして、日本の相続税の特徴の一つと言えるのは極めて控除が大きいということでありまして、相続税を払う方というのがほかの国に比べれば大変少ないというところが特徴でありますが、これもまた、いろいろな社会の状況の中で政治が判断した結果だろうと私は思っております。

鈴木(義)委員 私はひいおじいさんに育てられた一人なんですけれども、やはり昔の人がよく口癖に言っていたのは、人よりうまいものを食べたくて、人よりもいい車に乗りたければ倍働けと言われたんです。でも、今は、ある一定の時間で働けばもっと給料をよこせ、そういう話なんですね。

 だから、自分が努力できるんだったら努力して、その分報酬が多くなっていいはずなのに、それで報酬をたくさんもらうと、人の倍働いているんですよ、そうしたら、おまえは働き過ぎだというふうに言わんばかりに、累進課税でお金を税金として納めなくちゃいけない。それで労働意欲をかき立てろといっても、やはりそこが今ちょっと限界に差しかかってきているんじゃないかということなんです。

 格差社会を助長しろと言っているんじゃないんですね。でも、やってもやらなくても同じような生活ができるんだったら、やらない方がいいだろうということなんです。だから、少しそこのところの考え方をちょっと変えていかなければ意欲がかき立てられないだろう、そこのところを私は申し上げたいと思うんです。

 せっかく財務省からお見えをいただいておりますので、累進課税で利益を得るのは、最も貧しい者ではなくて中間所得の下層の人たちであると言っています。民主主義的な過程を経て、恣意的に累進課税税率を決定することができて、これは多数派が少数派に対して行う差別であり、民主主義が必然的に持っている性質の一つだというふうに言われているんです。

 累進課税は、いかなる意味においても、個人を区別しない課税方法ということはできないものであり、個人を区別して課される累進課税がどの程度なら適当であるという基準は誰にもわからない、だから累進課税は恣意的に決めざるを得ない、これに比べると、比例税は少数派だけ個別の取り扱いをしないという点ですぐれているのではないかというふうにハイエクは述べているんですね。

 ただ、それで全てがうまくいくわけじゃないから、ある一定のところではサポートはしなくちゃいけないのはわかるんですけれども、では、なぜ我が国は累進課税を、ことしの一月一日から、相続税も含めて、控除額を引き下げたんです。額を上げたんです。なおかつ、そこの緩和策として、事業承継の中で、先ほど、午前中答弁があった中でも幾つか例示を挙げられていましたけれども、では少し緩和しましょうというのをやったんですけれども、そもそも、もとの考え方が違うんじゃないかというところなんです。そこについて御答弁いただければと思います。

大家大臣政務官 お答えさせていただきます。

 大変難しい質問だというふうに思うんですけれども、まず、税制、釈迦に説法だと思うんですけれども、基本的な原則としては、公共サービスの財源の調達、いわゆる財源調達機能、これがまず一点ある。もう一つは、国民の所得や資産を再分配する再分配機能、この二つの機能を果たすことが基本的には求められているんだろうというふうに思っています。

 現状は、今の日本の状況は消費税率の割合が高まっています。そういう中では、逆進性が強まっているのではないかという指摘等もあります。

 税制全体の再分配機能を維持していくという観点からも、先生の考えとは違うのかもしれませんけれども、ハイエクですか、累進構造を有している現在の所得課税や資産課税は、引き続き日本の税制においては重要な役割を担っておりますし、累進緩和は適当ではない、現行の税率構造は維持していくべきだというのが考え方であります。

鈴木(義)委員 今私が三問目でお尋ねしたことで、民主主義にはもう欠陥として必然性が伴っているというふうに前置きしたと思うんですね。社会の中で結局逆進性が強まってきているんだというふうにおっしゃられるのは、どの立場の人たちなのかということになっていくわけです。

 それを政治で決めていかざるを得ないんですけれども、多数派が少数派を助けるためにみずからが犠牲となって課税を受ける場合は例外として、多数派は自分たちが社会的に見て正当であると考える負担でも、自分たち自身に課さない限り、それを少数派に課してはならないというルールが必要じゃないかと言っているんです。

 少数派というのは、どちらかというとお金持ちの人なのかもしれません。この社会、中流、中間層の人たちの意見が多数なのかもしれません。でも、多数の意見を聞いて政治は行っていかなければならないんですけれども、それにはやはり、ルールをきちっと、お互いのルールを決めましょうというのが必要なんだろうということなんです。

 そうしないと、民主主義で私たちは選挙を経て選ばれている者ですけれども、その者同士がどちらの方を向いて物事を決めていくかといったら、多数の人の意見を聞こうとするのは、みんな政治家誰一人一緒だと思うんですね。だから、そのためにルールを決めた方がいいんじゃないか、そのルールというのは日本のこれからの方向性だと思うんです。

 だから、中小企業をきちっと支えていこうとする国であろうとするならば、もとの税制もその基準で考えてもらえないかということなんです。きょうの御提案いただいている法律の改正で少しずつ少しずつ改正することよりも、根本を見直したらどうだろうかという考え方なんですけれども、大臣からも御答弁いただければと思います。

宮沢国務大臣 恐らくこのハイエクさんの時代にはなかった要素というのが、社会保険料の要素がありまして、所得税の累進税率と社会保険料の負担といったものを足し合わせると、このところ間違いなく所得の多い人の方が負担割合が減ってきているということは事実でありまして、そういうことも含めて私どもはこの議論をしていかなければいけないんだろうというふうに思っております。

鈴木(義)委員 ぜひ、大蔵省御出身の経産大臣という立場で、先ほども立場が変わると何とかとおっしゃられたんですけれども、変わらない今の大臣の立場で、ぜひ、中小企業を助ける、財務省に物を言う大臣として頑張っていただきたいと思います。

 アメリカやドイツが相続税そのもの自体を再検討しているという話が出ています。なくしていこうということなんですね。それがいいかどうか、もともとの考え方が、法人というふうにいっても、そこで利益を生み出すのは人間ですから、機械が動くだけじゃないんですよね。人がそこで働いているから法人として成り立っているわけですから、どちらから税金を納めてもらった方が得なのかという考え方が基本的な思想になっていくんだと思うんです。

 日本は、取れるところから、余り文句を言わないところからどんどん取ればいいじゃないかという考え方で今まで税制というのが動いてきたんだと私は認識しているんですけれども、そこのところを、ぜひ中小企業の立場に立って物を申していただければなというふうに思います。

 事業承継の支援が日本は極めて限定的だというふうに言われています。アメリカ、ドイツ、フランス、各国の制度が違うのはもう大臣が御案内のとおりだと思うんですけれども、各国の制度の運用を、どこまで成果が出ているのかというのをきちっと検証して、日本はいいとこ取りしたらどうかというふうに思うんですけれども、その辺は今やられているのかどうか、お尋ねしたいと思います。

北川政府参考人 お答えいたします。

 事業承継に関する相続税の議論につきましては、大きな改正を私どもが行おうとするたびに、海外の状況をいろいろ調べております。

 私自身も、十数年前に各国に出かけて調べてまいりました。各国の当局者が申しておりますのは、やはり事業体の継続が大事なので、それをどれぐらい全体の税制の中で見るか、こういう視点であるということがございまして、これは私どもも変わりません。そういった観点から、各国の状況を見ながらやっていきたいと考えております。

 特に、私どもが調べた中では、イギリスがかなり思い切ったことをやっておるんですけれども、それも、こういった事業者に対する社会全体の評価という中での位置づけだろうと思います。

 引き続き、また各国の状況を調べながら議論をしていきたいと思います。

鈴木(義)委員 今、だんだん生活保護を受ける受給者の方がふえているんですね。

 年金を掛けている人、掛けていない人もいらっしゃるんでしょうけれども、やはり、働いてもらう、働く場をつくって、その人たちが豊かさを享受しながら働き続けてもらえればいいわけです。極端に言えば、亡くなるまで働いてもらっても私はいいんだと思うんですね。そういう社会をつくっていかないと、誰も働かないで、逆に、恩恵を受ける側の人間ばかりが日本の中でふえてしまったら、やはり国が成り立たないんです。そこのところをやはりよく考えてやってもらいたいなと思います。

 まだ時間があるので、もう一問御質問したいんですけれども。

 平成十六年七月に中小企業基盤整備機構が発足したときに九千四百二十億円の赤字が出ていて、少しずつ解消されてきたんですけれども、これは、無計画な予定金利を設定して、なかなか予定金利を下げなかったのが一つの要因だというふうに言われている。

 ギリシャでは、国債が、まだデフォルトという言葉を使わないだけで、危ないかなと私は思うんですね。きょうは株価が持ち直したのかどうか、ちょっとネットで調べていないんですけれども、中国株が暴落したんです。もしかしたら、中国のバブルがはじけるのかな。日本に対する影響もすごく多いと思うんです。そうなったときに、世界的な経済に雷雲が立ち込めてきちゃったのでは困るなと思うんですけれども、この共済制度をこれからも国がやっていくべき制度なのかどうか。

 私は、直接政府として国が、自治体のとき、私も県会議員のときに、直貸しはなるべくしない方がいいというふうな考え方でいろいろ提案をしてきた一人です。奨学金も、直貸しをしないで、民間の金融機関に債権は持ってもらうけれども、そこに利子補給をする考え方です。そのかわり、債権は転売させないというルールでやってもらって、当時五百人だった対象者を五千人に広げてもらう制度で、今も運用してもらっていると思うんです。

 こういった共済年金の制度も、独法とはいいながらも国が直接手を出すというよりも、民間で、ある一つのルールは決めて、税制的なルールも決めておいて、民間でやってもらうということをやって、リスクをなるべくヘッジしていった方がいいんじゃないかという考えなんですけれども、いかがでしょうか。

関大臣政務官 小規模企業共済制度なんですが、そもそも論の考え方ですが、昭和四十年に制度ができて以来なんですけれども、基本的に、小規模事業者、経営基盤も安定していない脆弱な事業者でございますので、小規模事業者のセーフティーネットだという考え方をまず基本にとっております。ですので、加入者に対して最大限の利益が還元されるような制度設計になっておりますし、引退後の生活の安定なども、資金を積み立てていったりというふうなことで、できるだけ小規模事業者の人たちが生きやすいようにと。

 この制度自身の性格からしますと、それは今もずっと引き続き持っているわけなんですが、そういうところからしますと、まさに利益が本体の運営のところからすると出にくかったり、何とか安定させていかないといけないわけではございますが、できるだけの利益は事業者の方に渡すわけでございますので、そこの運営につきましては、どんどん利益を出そうということ自身が目的となり得る民間企業が運営するのではなくて、この事業から任意に撤退ができないというふうな独立行政法人の中小企業基盤整備機構というところが運営をしていくのが、入る側の事業者も安心して入れるのではないか、そのように私どもは考えております。

鈴木(義)委員 過去にバブルがはじけたときもそうだったと思うんですけれども、社会的な影響が大きいといって金融機関も助けたり、証券会社はちょっと退場してもらったり、JALが潰れても助けてあげたり、今東電を助けてやっているのと同じで、いざとなって経済危機になれば国が助けてあげていたんです。だから、民間でやってもらっていて、もし本当に経済が疲弊してしまったらそれは国が助けてあげればいいのに、なぜ最初から国がやっていなくちゃいけないのかというのは論法が成り立たないと私は思うので、ぜひそこのところは御一考いただければなというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

江田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

江田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 最初に、中小企業、小規模事業者の現状について、中小企業と従業員二十人以下の小規模事業者の数の推移、一九八一年と二〇一二年の実数と増減数は幾らですか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 事業所統計調査及び平成二十四年経済センサス活動調査によりますと、中小企業の数は、一九八一年では約五百二十六万者、二〇一二年では約三百八十五万者でございまして、この三十三年間で約百四十一万者の減少となっております。また、小規模事業者の数は、一九八一年では約四百七十四万者、二〇一二年では約三百三十四万者でございまして、この三十三年間で百四十万者の減少となっております。

真島委員 中小企業全体で百四十一万者減、小規模事業者は百四十万者減ですから、減っているのはほとんど小規模事業者なんですね。

 二〇一五年版小規模企業白書では、地域に根差した事業活動を行う小規模事業者はその地域に住む人々と密接な関係がある、小規模事業者が地域経済の担い手として地域住民に商品、サービスなどを提供していると同時に、地域住民がそれらを購入することによって地域の小規模事業者は持続的な事業展開を実現していると述べております。

 三十年間で百四十万もの地域経済と雇用の担い手が消失した、これは本当に地方にとって大変なことです。だからこそ、昨年、小規模事業者の役割に光を当ててその振興を図る必要があるということで、全会一致で小規模企業振興基本法を制定したというふうに思います。

 その基本法には三つのポイントがあると思います。

 一つは、小規模企業については、中小企業基本法の基本理念である成長発展のみならず、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持等を含む事業の持続的発展が重要だという位置づけがされました。

 二つは、小規模企業を単に個者として支援するにとどまらず、商業集積や産業集積に果たす役割を評価し、面として支援する必要性が述べられています。

 三つは、従業員五人以下の小企業者に着目し、小規模企業の九割を占める小企業者の振興が必要だというふうにされております。

 私はこの三点はとりわけ重要だと思いますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

宮沢国務大臣 なかなか、真島委員とはこれまで意見が一致するところは少なかったということは事実でございますが、この点については全くおっしゃるとおりだと思っております。

 まず、事業の持続的な発展につきましては、規模の拡大を意味する成長発展のみならず、地方で雇用を維持して頑張る小規模事業者の方々を正面から支援したいという考え方のもとで、新たに小規模企業の振興の基本原則、第三条に位置づけたところであります。

 また、第二に、面として支援する必要性については、小規模事業者の振興と地域の活性化は表裏一体という考え方のもとで、地域経済の活性化を小規模企業振興の基本的施策の一つとして位置づけました。

 第三に、従業員五人以下の小企業者は、個人の技能や経験をもとに多様な事業を営んでおり、我が国経済の重要な担い手であります。一方、小企業者は、組織体制が整っておらず、環境変化に脆弱な面があることも事実であります。このため、小規模企業の振興に当たって、このような小企業者に対し、政府としても特別な配慮を払う必要があると判断し、基本法の第二条で定義し、第四条で小企業者への考慮を規定したところであります。

真島委員 そういう中で、本法案、経営承継円滑化法による遺留分特例制度の対象を親族外に拡大するとともに、経営者の退職金制度と言われている小規模企業共済制度について、個人事業者の親族内における事業承継の際などに支払われる共済金の支給額を増額することや、小規模企業の経営状況に応じて掛金を柔軟にする、非常に利用者目線に立った拡充が行われているもので、評価できるものだと思っております。

 ただ、このメリットを受けることができる小規模事業者は、遺留分特例制度であれば、法人化しているところに限られますから約四割。小規模企業共済の加入者数約百二十三万人というのも、小規模事業者の中で約四割です。

 そこで、改正案の中身に加えて、中小企業、小規模事業者全体を下支えして丸ごと支援していく施策を求めて質問をしたいと思います。

 まず、法案の提出理由であります中小企業、小規模事業者の事業の円滑な承継について質問をいたします。

 経営承継円滑化法のこの間の利用実績は、遺留分にかかわる民法特例が八十九件、金融支援が百件、事業承継税制が千二十二件とお聞きをしました。承継法を活用した事業継続の効果がどの程度上がっているか、何者の事業継続に活用をされ、何人の雇用が維持されたかについて御紹介ください。

北川政府参考人 お答えいたします。

 経営承継円滑化法には三つの施策が盛り込まれておりまして、事業承継税制、そして民法上の遺留分に関する特例、そしてまた政策金融機関による低利融資ということでございます。

 これらの支援を通じまして、平成二十年の制度創設以来昨年度末までの累計で、委員御指摘のような千二百件を超える支援を行っておりまして、この支援を受けられた中小企業の従業員の数は約六万六千人にも達しておりまして、雇用の維持にも貢献したものと考えております。

真島委員 先日、私、事業を引き継ぐ業者青年がどういう実態にあって、事業承継のためにはどういう施策が必要だと望んでいるかについて、全国商工団体連合会と同青年部協議会から意見を伺いました。

 全国商工団体連合会は、全国六百の民主商工会の都道府県連が加盟し、会員は、建設、製造、料飲、小売、サービスなどいろいろな業種にわたって、従業員九人以下の個人事業主が中心で、会員数は約二十万人を超えております。

 そこで聞きました話は、例えば、山形県の看板屋さんは、この先十年、二十年、先々まで仕事量が確保できるのかと考えると、息子に継がせることにちゅうちょがある、今の商売に必死で、なかなか事業承継まで頭が回らないとおっしゃっている。また、宮城県の製本屋さんは、売り上げで足りない持ち出し分は、娘が副業で稼いだ費用を足している。製本業自体が減っているので、踏ん張れば一定の仕事はあると思うが、やはり将来が不安だというふうにおっしゃっている。共通しているのは、小規模の企業の皆さんは、本業だけで生活するのはもう困難という声があるんですね。

 小規模企業者の年収はどのくらいか。法人化していない個人事業者について調査されていると思いますので、御紹介ください。

北川政府参考人 お答えいたします。

 中小企業庁で本年一月に実施いたしました小規模企業等の事業活動に関する調査におきまして、三千百二十一者の個人事業者の方にアンケート調査を行ったところ、その結果を申し上げますと、個人事業者の手取り年収につきまして、三百万円未満の方が六一・一%、三百万円から五百万円未満の方が二三・七%、五百万円から八百万円未満の方が七・一%、八百万円から一千万円未満の方が〇・八%、一千万円を超えておられる方が〇・九%となっております。

真島委員 手取りの年収が三百万円未満という方が六割もいるんですね。ワーキングプア状態です。

 同じ調査で、一日の経営者の労働時間も聞いておりますけれども、八時間という方が三四・七%で最も多いんですけれども、十時間と十一時間を合わせますと三割、十二時間と十三時間以上という方を合わせますと一四・二%と、長時間身を粉にして働いても、売り上げや利益に結びついていないという実態があります。これでは、息子や娘に継がせられないと親の世代の方が考えてしまうのは当然だと思うんですね。

 ところが、私が意外だったのは、後継者の候補者である業者青年の皆さんの思いなんです。

 全商連の青年部協議会の方が実態アンケートをやっています。そうしたら、事業を継ぐという方が七割なんですよ。継がないという方はわずか七・八%。多くの業者青年が、家業に誇りと、そして地域社会に貢献していくという社会的な意義を感じておられるんですね。

 私、これは大変頼もしいと思うんですよ、大臣。事業を継いで、自分の代で発展させていきたいというこの若い皆さんを力強く応援していく施策が必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 全商連は、私もかつて税務署長をしておりまして、余り良好な関係とは言いがたかったわけでありますけれども、今のお話を聞きまして、正直、大変頼もしいと思いました。やはり、先ほど篠原委員とも議論させていただきましたけれども、親の仕事に誇りを持つ、そして親を尊重するというのは大変いいことだと思っておりまして、本当に、七割の方がそういう気でいただけるというのは大変ありがたいと思っております。

 経産省といたしましても、第二創業促進補助金等々、いろいろ応援をしてまいりました。先ほども申し上げましたけれども、来週にも、中小企業がまさに成長戦略の、あなたが主役だというものの見える化を図ってきておりまして、それを公表させていただこうと思っております。

 まさに、代がわりをして第二の創業をしていただく事業者が大変多いわけでございますので、こういう成功例がある、こういう失敗例があるけれどもこうすればちゃんとしたはずである、またいろいろな、海外も含めてニーズがこういうところにある、また試験研究開発をする場合にはこういう公的機関につなぎますよ、また資金的な話、ノウハウの話等々といったものをプラットホームをつくりまして、しっかりと、まさに代がわりをしてそして新たな事業に臨まれる方たちの応援をしていきたいと思っております。

真島委員 業者青年の皆さんの具体的な要望についてお聞きしていきたいと思うんですけれども、京都の牛乳販売業者さんなんですけれども、五年前にお父様が急逝されまして、娘さんが事業を承継しました。彼女は当時大学三年生で、一般企業への就職が内定していたんですね。この内定式の前日まで悩んだそうなんですけれども、結局、家業を継ぐことにしたそうです。

 ところが、学生だった娘さんには、相続のことも申告のことも経営のことも何にもわからない。とにかく、お客さんを困らせてはいけないということで、お父さんの商売仲間の皆さんの支えを受けて、本当に必死に努力をされました。今では、市が支援している地域の高齢者の居場所づくり事業への協力とかお年寄りの安否確認にも一役買うなど、地域で信頼を築いて頑張っておられます。

 事業承継までに一定の期間があって引き継ぎを受けられる方だったらいいんですけれども、この方のように突然事業承継を迫られるというケースもあるわけです。その場合、後継者の方が商売のイロハを学べる場所が身近にあればどれだけ助かるかと思うんですね。後継者同士の横のつながりをつくっていくことにもなります。

 このようなことに現在どのような支援措置があるのか、そして、ないのならば具体化が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、後継者の方が経営ノウハウを習得するとともに、後継者同士の横のつながりをつくるための場があるということは非常にいいことだというふうに考えております。

 具体的には、全国九カ所の中小企業基盤整備機構の中小企業大学校におきまして、経営者そしてまた後継者を対象に人材育成を行っております。平成二十六年度には、中小企業者等研修として三百四十六回、九千四百二十三名の受講があったと聞いております。

 具体的には、さまざまなメニューを用意しておるんですけれども、例えば後継者を対象といたしました中小企業経営のあり方を学ぶ研修、あるいは、経営者、後継者が必要とする幅広い知識、マネジメントの実践法などを少し長い時間をかけて習得する研修、このようなさまざまな研修を準備しておりますし、また、その研修後の交流等も行っております。

 また、国だけではなく地方自治体におかれましても、後継者育成講習を行う、あるいは受講者による情報交換の場を設けるということで、後継者の相互交流も通じて資質向上、知識の習得を支援されておられると伺っております。

 また、もう少し広い話になりますと、ことしから本格的に稼働しております、よろず支援拠点、これにつきましては、平成二十六年六月に全国四十七都道府県に整備しておりますが、二十七年度には、さらに地方自治体、他の支援機関と連携しながら出張相談も行い、あるいは二十七拠点中三十拠点においてサテライトオフィスを設置するなど、身近な相談も行っていくということでございます。

 国、自治体、さまざまな中小企業支援機関が連携しながら、後継者育成、相談体制の整備を行っていきたいと考えております。

真島委員 今紹介されました中小企業大学校の経営管理者養成コース、今年度のカリキュラムをいただいたんですけれども、七月から十二月までの半年間、一月に三泊四日で、それが二十四日間ですか、受講料が二十九万三千円、定員二十名。その中の一つのカリキュラム、直方校の資料をいただいたんですけれども、これはいわゆる小規模な企業の経営者の方は参加できないと思うんですね。これはちょっと非常にかなり高度な内容である。

 もっと身近なところで経営のイロハについて学べるような場をつくっていくのも、県や市町村を支援して、今おっしゃった、国がつくっているそういう経験や教訓というのは非常に大事だと思いますので、それをもっと身近な県や市町村段階でも広げていくようにぜひやっていただきたいというふうに思います。

 もう一つは、事業承継とものづくり技術の継承の両立という問題です。

 東京大田区など、ものづくりの集積地では、この間、製造業の海外移転に伴って仕事量が大きく減っています。特に、簡単な仕事はほとんど海外の企業に発注されてしまって、生き残っている町工場には、一定仕事はありますけれども、難易度の高い仕事ばかり残っているんですね。

 それで、私の地元の福岡県直方市の町工場にも行きました。そうしたら、中国で粗削りしてきた部品が山積みされているんですよ。どうしたんですかと聞いたら、粗削りは中国でやって、それをまた日本に戻して、最後の精密な仕上げ加工は日本でやるんだというふうにおっしゃっていました。

 後継者に事業とともに技術を引き継ぐために、これまでだったら、汎用品の加工から始めてだんだん高度な加工に、腕を磨いていくということができたわけです。ところが、今はもう難易度の高い仕事しかありませんから、仕事をさせながら後継者を育てるという場をつくれなくなってしまっているんですね。

 それで、小規模企業同士の後継者がものづくり技術を引き継いでいくために、例えば集積地の異業種同士でグループをつくって試作品の開発を行うことを支援するなど、そういう施策が必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 長年研さんを積んでこられた技術をもとに、試作品の開発を行い、新しい分野へ出ていく、これは大事なことだと思っております。

 一つは、補正予算で行っておりますものづくり・サービス補助金につきましては、革新的な製品、サービス開発にチャレンジする中小企業の方に対して、試作品開発、設備投資、こういったものを支援してございます。その際に、個別企業の支援だけではなくて、複数の事業者の方で共同して行う事業についても提案可能としております。

 また、二十七年度当初予算におきましては、異なった事業でございますけれども、下請中小企業の連携に係る取り組みを支援するために予算を五億円計上してございます。これによりまして、下請中小企業が連携した共同受注システムの構築、試作開発や展示会出展などを支援しております。

 中小企業同士の横の連携、さかのぼれば組合事業ということにつながるんですけれども、そういった中小企業者同士の連携は非常に大事だと思っておりますので、施策も充実させていきたいと考えております。

真島委員 ちょっと紹介されました補正予算の中での地域企業人材共同育成事業、成果目標は六十人程度。ものづくり中核人材育成事業というのがあるんですけれども、この成果目標は百者ちょっと。たったのと言いたいですけれども。もっと本気でやっていただきたいというふうに私は思います。

 二〇〇八年の九月、リーマン・ショックに端を発した世界的な金融危機の後、仕事量が大幅に減って、貸し工場の家賃や機械のリース代、そういった固定費の補助を求める声が強く上がりました。それで、町工場は日本の宝だ、灯を消してはならないという議論になって、リース代の支払い猶予通知が出されました。それで、その支払い猶予の通知を受けて、実際にどのくらいの対応がとられてきたのか、お答えください。

寺澤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、平成二十二年四月に、中小企業金融円滑化法の趣旨も踏まえて、中小企業からリース料の支払い猶予について申し込みがあった場合には柔軟な対応をしてください、こうした要請を経産省からリース業界に行ったところでございます。

 この要請を受けまして、その後、リース事業者は、八千百十九件、総額千七百七十億円の支払い猶予に応じたと承知しております。また、件数ベースでの支払い猶予の実行率は九五・三%と非常に高い割合となったと承知しております。

真島委員 町工場のものづくり技術を守るために、現場の実情を踏まえた本格的な支援を強く求めたいと思います。

 次に、小規模企業共済ですが、先ほど申しましたように、その加入割合は四割で、六割が加入に至っていない。今回の法改正で制度が拡充されることによりまして、加入が促進されることに期待をしておりますけれども、加入を五割、六割と広げるためには、制度自体をもっと魅力的なものにする必要があると私は思います。

 我が党は、小規模企業共済に休業補償制度の検討ということを一貫して求めてまいりました。古くは一九七五年の参議院本会議で、休業期間中の生活を保障する休業補償制度の確立を求めて以来、不況や親会社の倒産、仕事の打ち切りに対応した休業補償、病気やけがで商売ができないときの疾病保障も含めた制度にしてほしい、収入が途絶した場合、休業を共済事由に追加するように検討をと求めてきました。

 年収三百万円未満の小規模事業者が六割に達しているということを先ほどお答えありましたけれども、多くの小規模事業者が共済金の負担すら、そういう状況では困難なのではないかと思いますけれども、休業補償制度の創設も含めて、制度を抜本的に拡充することが必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 御指摘の休業補償の導入の可否につきましては、中小企業政策審議会において平成十年に審議され、報告が出ております。そして、休業時の資金需要に対応するため、民間保険商品の利用が既に進んでいること、休業の要件認定などにおいて実務上多大な困難が伴うことなどの理由によりまして、導入の必要性は認められなかったという結論になっております。

 その後、私どもが把握している限り、平成十三年、十五年と、御党の議員からの御質問をいただいておりますが、そのときの答えと同じでございますけれども、現在もこうした状況は基本的に変わっていないと考えております。

 なお、この共済制度におきましては、もともと掛金の納付を停止する措置というものがございましたけれども、今回の改正によりまして、掛金の減額についても自由に行うことを可能にしておりまして、そういう、休業した場合に柔軟な対応ができるということがございます。

 さらに、掛金積立金の一定の範囲内で、無担保無保証の低利融資を受ける契約者貸付制度もございますので、これを利用していただくという方法も本共済制度の枠内にあるということを申し上げておきます。

真島委員 今おっしゃった、貸付制度をより借りやすいものをつくったということなんですけれども、その背景には、小規模事業者にとって、休業補償といいますか、そういう支援がやはり大事だという考えが政府にもあるということなんですけれども、私は、本共済が小規模企業者を下支えするセーフティーネットとしての役割を強めて、かつ安定的にその役割を果たしていく、そういう観点に立つならば、一定の国庫負担も必要だというふうに思います。ぜひ研究していただきたいというふうに思います。

 加えて要望したい、これは要望だけにしておきますけれども、中小・小規模事業者の多くが金融機関から融資を受けております。事業承継の際、先代の借金を背負った、いわばマイナスからのスタートとなるわけですね。

 経営者保証に関するガイドラインでは、事業承継時等における既存の保証契約の適切な見直し等について規定しておりますので、改めて金融機関側が親身になって相談に応じる体制をつくることが求められていると思います。

 また、後継者の側から見ますと、経営者保証をなくすかわりに金利が上がるという側面もありますので、小規模事業者にとって身近な地銀、信用金庫、信用組合など地域の金融機関が、地域で集めた資金を地域に融通する、資金循環のかなめとしての役割を果たすことは大変重要だと思います。

 中小・小規模事業者の事業承継という立場から、政府としての対応を強めるように求めたいと思います。

 時間の関係で一問飛ばしますけれども、そもそも、我が国における中小企業、小規模事業者の大幅な減少というのは、先ほど冒頭に数字を示していただきましたが、これは自然現象じゃないですね。政治の姿勢を反映していると私は思います。

 中小企業庁の委託調査、小規模企業等の事業活動に関する調査のアンケートで、事業が不調であった要因を尋ねております。これはもう私の方で答えますけれども、一位が、「経済全体が停滞・悪化している」、これが五九・三%で六割、二位が、「消費者の購買意欲が減退した」三八・八%、三位が、「販売価格が下落基調になった」二八・七%です。

 長年にわたる内需の不振、消費意欲の後退、そして低価格競争、このデフレスパイラルがとりわけ小規模事業者の皆さんを苦しめてきたというふうに思います。

 ここで配付資料をごらんいただきたいんですけれども、これはOECDの統計から、各国の自営業者数の推移を示したものです。一九八〇年を一〇〇として、二〇一三年までの増減率をグラフにしております。

 特に、イギリスは二倍を超えてふえております。あとの国はごらんのとおりなんですけれども、一〇〇を割り込んできているのは日本とフランスだけなんです。フランスは、三百四十八万九千人から、二〇〇〇年には二百十七万九千人にまで減少したんですが、その後増加に転じております。一貫して右肩下がりで自営業者数が減り続けているのは日本だけで、一九八〇年の六割まで落ち込んでおります。

 私は、減少から増加に転じたフランスの取り組みに学ぶべきものがあるんじゃないかと思うんです。

 二〇〇二年にシラク大統領が、大統領選挙の公約として、五年間で百万社の創業を実現するということを掲げて、二〇〇三年八月に起業促進法、デュトレイユ法を制定しました。創業手続の簡略化や、創業、事業承継への大幅な税優遇措置を講じることで、創業ブームがもたらされました。続いて、二〇〇八年八月には、サルコジ大統領が経済近代化法の中で導入した個人事業者制度、これも起業に寄与したと言われております。

 二〇一四年版中小企業白書でも紹介しておりますけれども、このフランスの個人事業者制度について、もう時間がないので、簡潔に。

北川政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇九年一月に始まった個人事業者制度でございます。これは、自宅のインターネットを使って短時間で起業できるなど、手続の簡素化、こういったことが盛り込まれておりまして、起業数は倍増しております。このほか、フランスではこれに限らず、起業後三年間、一種の地方税が免除になるなどの支援措置もございます。

 先ほど私、よろず支援拠点の数を二十七と申し上げましたかもしれませんが、四十七でございます。失礼いたしました。

真島委員 今御紹介いただいた制度、起業した個人に対して日本の地方税に当たる地域経済拠出金の支払いを三年間免除する、日本の消費税に当たる付加価値税の徴収も免除する、所得税、社会保障費は売り上げがない期間は免除するという非常に思い切った措置がフランスではやられているんですね。フランスは、今御紹介いただいたように、この制度で開業数が倍増したというふうに言われています。

 EUでは、二〇〇八年十二月に欧州小企業議定書が採択をされています。この中で、シンク・スモール・ファースト、何事も小企業のことを第一に考えるというのが掲げられているんですね。

 我が国でも、昨年成立しました小規模企業振興基本法、これを生かして、事業承継や開業を支援するためにも、小規模企業の立場に立って税や政策体系を思い切って見直していくということが必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 税につきましては、なかなか、中小企業の中で小規模事業者だけを取り上げてということは正直言って難しいので、所得に関する税についてはそういうものはないわけですけれども、一方で、消費税につきましては、これはフランスの例にもありましたけれども、売り上げ一千万円以下の事業者は日本においての消費税は取らなくていいということでございますので、恐らく同じような意味合いの税制は既に導入されているんだろうというふうに思います。

 そして、まさに昨年、小規模企業振興基本法が成立したわけでございまして、これにのっとりまして、予算措置については、二十六年度補正、二十七年度当初予算、合わせて措置をしてきておりますけれども、まさに中小企業、とりわけ小規模事業者をどう育てていくかということはこれからの成長戦略の中でも大きな位置づけがあるものでございますので、経産省としてもいろいろ政策のアイデアを出して実現していきたいと思っております。

真島委員 冒頭に、この三十数年間で小規模企業が百四十万者減少したということですが、この百四十万という数は大変なことなんですね。小規模事業者数の上位七都道府県、東京、大阪、愛知、神奈川、埼玉、兵庫、北海道、この全部の小規模企業がなくなったのと同じ数が減っているんですよ。九州・沖縄八県の小規模企業者数の三・七倍、西日本十七県の小規模企業者数の倍が減ってきているんですね。これをどうフランスのように持ち直すかというのは、私、大臣、税制や社会保障の問題をもっと真剣に検討していただきたいと思います。

 特に最後に申し上げたいのは、いまだに業者青年や家族の働き分を認めない所得税法五十六条の見直しさえできていないというのは、私は国際的な小規模企業支援策の到達点から見ても恥ずかしいことだというふうに思います。全国商工新聞、この中で、ことし七月七日現在、四百五の自治体が所得税法五十六条廃止の意見書を採択していると。政府の小規模企業支援の本気度が問われていると思います。

 また、一年九カ月後の消費税再増税は、事業を譲る側、引き継ぐ側、双方にとって大きな負担となり、承継にとって最大の阻害要因だという声も上がっております。さきに紹介しました全商連の方に今回の法案への意見を伺いましたが、その冒頭に言われたことは、今回の改正内容とは違うところがかゆいんだとおっしゃったんです。私は言い得て妙だと思います。かゆいところに手が届くために、質問の中でも紹介しましたような小規模企業者の声に応えて、全ての中小企業、小規模事業者を視野に入れて、経営を下支えする施策を講じていただくことを強く求めまして、質問を終わります。

江田委員長 次に、野間健君。

野間委員 無所属の野間健です。

 本日最後の質問となりました。時間を与えていただきましたことを心から感謝申し上げます。

 中小企業、小規模事業の円滑な経営承継上の問題点として、きょうもたびたび議論になりましたけれども、個人保証、経営者保証の問題があります。

 昨年二月に中小企業庁、金融庁で経営者保証に関するガイドラインという非常に画期的なものが出されて適用がされているわけですけれども、私も地元の経営者の皆さんと話すと、そういうものがあるのか、知らないという方も多いんです。

 どこまで周知をされて、そして効果がどれだけあらわれているか、きょうの議論の中でもなかなか民間の数字は出てきていないということでしたけれども、繰り返しになりますけれども、ちょっとそのあたりを教えていただきたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 金融庁といたしましては、経営者保証に関するガイドラインがやはり融資慣行としてしっかりと浸透、定着していくことが何よりも重要だと考えております。

 まず周知につきましては、金融機関に対しまして、営業の現場の第一線までガイドラインの趣旨とか内容を周知徹底するよう要請しております。あわせて、中小企業等の顧客に対して積極的にガイドラインを周知するようなことも要請をしてきているところであります。また、中小企業庁と連携いたしまして、全国各地で金融機関あるいは中小企業関係者を対象にしまして説明会を実施したり、インターネットも活用してガイドラインの政府広報も進めてきているところです。

 さらに、ガイドラインそのものだけではなかなか浸透もしませんので、金融機関にとって広く実践されることが望ましいような具体的な取り組み、これを参考事例集という形で取りまとめて継続的に公表してきているところでございます。

 先生から御質問がありました、事業者の方々がこのガイドラインをどの程度認知されているかというところについては、なかなか確たることは申し上げられないわけですけれども、今申し上げたような取り組みによって事業者の方々への周知は一定程度は進捗しているのかなとは思いますけれども、まだまだ道途上だと思っております。

 金融庁としては、ガイドラインが融資慣行としてやはりしっかりと定着していくためには今後も引き続き事業者の方々にまずもってその周知が重要であると考えております。その周知の活動についても続けていきたいと考えているところでございます。

 それと、具体的なケース面でございますが、民間金融機関におけるガイドラインの活用実績について申し上げますと、無保証での新規融資、あるいは既存の保証契約の解除を行った件数につきましては、昨年二月にガイドラインが開始されて以降昨年九月までの八カ月間で約八万五千件となっております。当然、今後一層の取り組みが重要であると考えておりますので、引き続き金融機関による積極的な取り組みというものを促してまいりたいと考えているところでございます。

野間委員 ありがとうございました。

 経営者の皆さんが承継する際も、いろいろな情報を受けるのが顧問の税理士さんとか会計士さんとかあるいは商工会とかですね。ですから、ぜひそういう方々に対してのPR、周知もお願いしたいところであります。

 経営の承継、事業承継に個人保証制度が一つの大きな問題になっているということ自体は、例えば経済産業調査室の方で四月に出された報告書の中でも、四割近い経営者の人たちがやはり個人保証の問題で、特に親族外への承継をする場合にネックになる、問題になるということを述べておられますし、また政府の方でも、半数近い方がやはり個人保証の問題があるからできないという声も、中小企業庁でのさまざまな調査の結果でも相当上がっているわけです。

 きょうは大臣と松原委員のやりとりの中で、個人保証はある意味でノーマルというか原則ではないんだ、ある種の例外と考えるべきではないかという趣旨の御答弁があったと思うんですが、やはり企業は創業期は個人の経営者と会社が一体であるということはある意味やむを得ないかもしれませんけれども、承継してずっと代が続いていくに当たっては、やはり企業と個人というのがある意味分離していくことが承継という意味にもなると思うんです。

 この原則、大臣のきょうの御答弁にもあったこと、個人保証というのはある意味でノーマルでないんだ、ちょっと例外的なことであるということをもう一回確認をさせていただきたいということと、二〇一三年の日本再興戦略でも、一度の失敗で全てを個人保証で失ってしまう可能性がある、こういう現状をやはり改めなきゃいけないということがうたわれていますし、調査でも、経営者の個人保証の金額が個人資産を超えているというのが半分という結果が出ています。完全に根こそぎ失敗した場合、やられてしまうということが現状でありますので、先ほどの御答弁の趣旨をもう一回お聞かせいただいて、終わりたいと思います。

宮沢国務大臣 日本の金融は、伝統的に物的担保、人的担保に頼って行われてきたわけであります。これは、ある意味では物的担保、人的担保、特に物的担保がそうですけれども、があればお金を貸してくれるということで、特に資本金の小さな企業、中小企業にとっては意味があったということも恐らく正しいんだろうと思っております。

 一方で、そういう伝統の中で、金融機関自身が、特に中小金融機関において、担保に頼り過ぎるということがずっと傾向として行われてきておりまして、本来、特にアメリカまた欧州の金融機関であれば、まさにビジネスプランを評価する、将来のキャッシュフローを評価するということで融資を行ってきている。やはりそういう姿の方が正しいんだろうと私も思っております。また、金融庁の行政においても、そういう方向でかじが切られているということは大変評価できることだと思っております。

野間委員 ありがとうございました。ぜひ、そういうことで今後も政策を展開されることを期待いたします。

 ありがとうございました。

江田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十二分散会


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