衆議院

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第30号 平成27年8月28日(金曜日)

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平成二十七年八月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江田 康幸君

   理事 鈴木 淳司君 理事 田中 良生君

   理事 三原 朝彦君 理事 八木 哲也君

   理事 中根 康浩君 理事 鈴木 義弘君

   理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石川 昭政君    大見  正君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    佐々木 紀君

      塩谷  立君    瀬戸 隆一君

      関  芳弘君    武井 俊輔君

      武村 展英君    冨樫 博之君

      中村 裕之君    野中  厚君

      福田 達夫君    細田 健一君

      宮崎 政久君    若宮 健嗣君

      阿部 知子君    神山 洋介君

      近藤 洋介君    篠原  孝君

      田嶋  要君    馬淵 澄夫君

      渡辺  周君    足立 康史君

      落合 貴之君    木下 智彦君

      國重  徹君    藤野 保史君

      真島 省三君    野間  健君

    …………………………………

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   経済産業副大臣      高木 陽介君

   内閣府副大臣       小里 泰弘君

   経済産業大臣政務官    関  芳弘君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中西 宏典君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 山本 哲也君

   政府参考人

   (消防庁審議官)    熊埜御堂武敬君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    川嶋  真君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       土屋 喜久君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          寺澤 達也君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 日下部 聡君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監)    田中 繁広君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    豊永 厚志君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   荻野  徹君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          青木 昌浩君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 塚原 太郎君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十八日

 辞任         補欠選任

  白石  徹君     瀬戸 隆一君

  神山 洋介君     阿部 知子君

  近藤 洋介君     馬淵 澄夫君

  木下 智彦君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     武井 俊輔君

  阿部 知子君     神山 洋介君

  馬淵 澄夫君     近藤 洋介君

  足立 康史君     木下 智彦君

同日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     中村 裕之君

同日

 辞任         補欠選任

  中村 裕之君     白石  徹君

    ―――――――――――――

八月七日

 原発からの撤退を求めることに関する請願(真島省三君紹介)(第三七五八号)

 同(宮本徹君紹介)(第三七五九号)

同月二十六日

 即時原発ゼロを求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第三九二三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三九七八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第四〇三一号)

 同(志位和夫君紹介)(第四〇五八号)

 原発のない社会の実現に関する請願(宮本岳志君紹介)(第四〇〇五号)

 脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第四〇五七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

江田委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官中西宏典君、内閣府大臣官房審議官山本哲也君、消防庁審議官熊埜御堂武敬君、国税庁課税部長川嶋真君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長土屋喜久君、経済産業省貿易経済協力局長寺澤達也君、資源エネルギー庁長官日下部聡君、資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監田中繁広君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、中小企業庁長官豊永厚志君、原子力規制庁次長荻野徹君、原子力規制庁長官官房審議官青木昌浩君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君及び防衛省大臣官房衛生監塚原太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 質疑の機会をいただきました。久しぶりでございます。

 私は、きょうは、汚染水問題について、福島第一原発、汚染水処理、これは大変まだまだ課題が多いと思っておりますが、総理がアンダーコントロール、このように発言されてから二年が経過しています。しかしながら、一昨年来、また本年も、いわゆる汚染水の流出がたびたび起こる、こういうような状況の中で、現況について、あるいはこの解決に向けての道筋ということについて聞かせていただきたいと思っています。

 まず、本年でありますが、ことしの二月にK排水路から汚染水の外洋流出が明らかになった。そして、これは公表してこなかったことで漁協関係者の不信感を招いたということもありました。さらに、五月には、耐圧ホースからK排水路を経由して高濃度汚染水が港湾内に流出。通常二十九ベクレル・パー・リットルに対して、これは一千二百ベクレル・パー・リットルという大変高濃度の汚染水が漏れたわけであります。また、今月、八月十七日にも、雨の影響によって、同じくK排水路の堰を超えて外洋に汚染水が流出。こういう状況が続いているわけであります。

 こうした状況の中、政府としては、福島第一原発、この建屋周辺から地下水をくみ上げて、そして、その中に含む放射性物質、これを除去して海に流していく、いわゆるサブドレーン計画。これについて東電が進めようということについて、政府としては、それを認め、監督のもとにあるという状況です。

 これに対して、漁協はなかなか簡単にうんとは言えない状況であった、いわゆる信頼関係が崩れたという状況の中で、これを容認することが正式に決まりました。そして、要望書を国と東電側にも提出されたということであります。お手元に配付をいたしました一の資料、これが要望書でございます。

 そこで、まず事務方の方にお尋ねします。

 端的で簡潔にお願いしたいと思いますが、このサブドレーン計画、具体的にどのようなものなのか、そしてその目的と必要性、またくみ上げから海洋放出までのプロセス等について、端的にお答えいただけますでしょうか。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま、サブドレーンについてのお尋ねでございました。

 福島第一原発の汚染水対策につきましては、汚染源を取り除く、汚染源に水を近づけない、汚染水を漏らさないという三つの基本方針のもとで予防的、重層的に取り組みを進めておりますが、このサブドレーンと申しますのは、いわゆる近づけない対策の一つという位置づけになっております。

 具体的には、建屋近傍の井戸になりますサブドレーンピット、さらには護岸にございます地下水ドレーンと言われるような井戸から地下水をくみ上げまして、今ございましたように浄化をきちんとした上で運用目標を下回ることを確認し港湾内に放水をする、そういう対策でございます。これによって建屋への地下水流入量を大幅に抑制することができるという効果を期待しております。

 さらに、サブドレーンの稼働によりまして地下水位の管理が可能となってまいりますので、その結果といたしまして、福島第一原発の護岸部に設置をいたします海側遮水壁の閉合が可能になり、放射性物質の海洋への流出が大幅に低減することが期待されております。

 サブドレーンの運用につきましては、先ほどございましたように、先日、福島県漁連及び全漁連より御容認いただいているところでございます。

 以上でございます。

馬淵委員 ようやく漁協の皆さん方の御承認があったということでありますが、なぜこういうことをしなきゃならぬかというと、結局、タンク貯留は汚染水に対処し切れない状況である。そして、私がかつて総理補佐官としてこの対策を行っていたときにも、いわゆる地下水の流入をとめなければならない、さらには流出をとめなければならないとして地下壁が必要だといったことも検討してまいった。これもこの委員会でも再三指摘をしてきたところであります。

 こうした状況で、今もってこの対策は完遂していないがゆえに、苦肉の策というか、いわゆる流入を抑えるためのドレーン、水の抜き出しということであります。

 こうした状況でありますが、二号機西側にサブドレーンというものがございますが、これは昨年十月にも高濃度の放射性物質が検出されて、そしてピット封鎖を行った。これにもかかわらず、先ほど申し上げた状況で、比較的高濃度の放射性物質が検出されるような状況が続いているということであります。つまり、汚染状況というものが非常に不安定である、あるいは不明の状態がいまだ続いている、こういうことであると私は思っています。

 もちろん、これに対して手をこまねいているわけではないということもよく承知をしておりますが、こうした状況で、漁協側が繰り返し、再三懸念の表明をしてきた、サブドレーンから高濃度の放射性物質が検出される中で、このサブドレーン計画を実施するということについて支障はないのか。あるいは、検出された放射性物質は除去していくということでありますが、それに対する不安をどのように取り除いていくのかということについて、これも端的にで結構ですが、お答えいただけますでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の十月に二号機西側の一部のくみ上げ井におきまして比較的高い濃度の放射性物質が検出をされたわけでございますけれども、現在の時点におきましてはその当時と比べまして濃度が低下をしているものと承知をいたしております。

 さらに、サブドレーンからくみ上げました地下水につきましては、先ほど申し上げましたように、浄化をきちんと行い、WHOの飲料水水質ガイドラインをも下回る運用目標を満たすことを水質分析によりきちんと確認をした上で排水することとしております。その際には、国の職員が排水に適宜立ち会うといったようなことを通じて国としてもその運用をしっかり監視していくことを考えております。

 サブドレーンについては、一昨日、大臣の方から全漁連の岸会長や関係道県の漁連の皆様に対しましても、その運用目標等を厳守するよう国として東京電力をしっかりと指導していくことをお約束した上で御容認をいただいているものでございます。

 運用に当たりましては、引き続き国が前面に立って着実に取り組んでまいりたいと考えております。

馬淵委員 前に進もうとしているわけですから、私はそれにあえて水を差すわけではありませんが、結局は、措置をしてきた、あるいは繰り返し除去をして安全な状況になって、検証をして、その上で放出するんだということを言っておられますが、再三それでも高濃度の汚染水の漏出というものが出るんですね。つまり、このサイクルがうまく回っていない状況。私はこれは否定できないと思います。

 こういう中で、漁協の皆さん方、漁連の皆さん方がこの要望書の中でも特に気になっておられる点、それがお配りした資料一の四のところなんです。

 地下水に関しては一定程度汚染が除去されているものがありますが、建屋内の汚染水、これはもう大変な高濃度であります。もう近づくことも当然できないような状況の中で、この建屋内の水に関しては、四ポツにありますが、「多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事」、このように強く要望を出されておられます。

 これに対して政府はどのように答弁をされておられますでしょうか、大臣からお願いできますか。

宮沢国務大臣 委員御指摘のとおり、八月十一日に福島漁連からサブドレーンの運用に係る要望書を受け取りました。また一方で、先週でございますか、全漁連からも、岸会長からも同趣旨の要望がございまして、私がお目にかかって承りました。

 そして、そのときに私から岸会長に申し上げたのは、東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップに記載した、地元関係者の理解を得ながら対策を実施することとし、海洋への安易な放出は行わないとの方針は、今後も継続しますというふうにお答えをしたところでございます。

馬淵委員 確認ですけれども、つまり、漁連の要望というのは、とにかく建屋内の高濃度汚染水に関しては、除去をする云々ではなくて、このような汚染水を、極めて高濃度なものですから、そもそも海洋に放出するということが地元住民や漁連の理解なしで行われることは絶対にあってはならない、漁業の再興どころではないと、大変な強い懸念をお持ちなんですね。

 それは、大臣としても、このような、いわゆる関係者の理解なしにいかなる放出処分も行わないということでよろしいですか。大臣、確認です。

宮沢国務大臣 まさにそのとおりでございます。

馬淵委員 ありがとうございます。

 そのような政府の姿勢がある上で、私が少し懸念をしておりますのは、実は東電の対応なんです。

 八月十二日、これは毎日新聞で報じられたものであります。済みません、これは資料をお渡ししておりませんが、その報道では、十一日の福島県漁連臨時組合長会議では、計画を認めれば建屋内の高濃度汚染水も処理後に海洋放出することにつながるのではとの懸念に対し、東京電力側は、今現在はサブドレーンのみと述べるにとどめたと報じられています。さらにその上で、これは東電の関係者、幹部の方でおられますが、建屋内の水などの対策は今後検討させていただく、このように述べたと。

 つまりは、漁連の関係者は大変困惑されているんですね。今はやらないけれども、今後検討させていただくというと、いずれかまた東電、一度は信頼関係が崩れたという話も出たわけです。こういう発言に対して非常に困惑されている。

 改めての確認ですが、こうした東電側の発言、これは言い回しやあるいは受けとめ方によっては違うのかもしれませんが、そのようなことは決してないということを、監督の側としての大臣、ここで明言いただけますでしょうか。いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 恐らく、これは規制委員会の方に直接聞いていただいた方が本来いいのかもしれませんが、まさに処理した汚染水を第一原発の中に今貯蔵しているわけでありますけれども、これがどこかで満杯になったときのことといったことは、かなり規制委員会の中で心配をされているということは事実であります。

 そういう中で、まさに先ほど申し上げましたように、地元関係者の御理解を得ながら対策を実施することとし、海洋への安易な放出は行わない。まさに理解を得られないのであれば海洋への放出は行いませんが、一方で、安全だけではなくて安心といった意味でも、地元の関係者の理解が得られた場合には、そういう放出ということは可能性としてはあるということだろうと思っております。

馬淵委員 大臣、私は、全ての可能性を否定するようなことはしたことがありません。あらゆる可能性というのは私もよく理解をしているつもりです。ただ、そうした言葉によって、漁連の方々が非常に不安に思われることがあるわけです。

 繰り返し申し上げますが、信頼関係が損なわれたといった、要は公表しなかった放出もあったわけですね。このようなことが絶対ないように、大臣に重ねて、監督のお立場として、しっかりとそこは監視していただきたいということを改めて申し上げておきます。

 その上で、汚染水問題、今近づけないという話でありましたが、もう一つ、これは出さないということですね、外に出していかない。これも極めて重要です。

 その上で、凍土遮水壁が、実証試験の後に、現時点においてはいわゆる運用に入って、造成という事業工程に入ってきているわけです。大規模実証事業ということになる。これは全体が工事ではなくて実証事業という形で進んでいますので、こういう言葉がついておりますが、いわゆる本体の造成に入っています。

 さて、この本体の造成、どのような形に今進捗状況があるのかということにつきまして、これも端的に事務方の方からお答えいただけますでしょうか。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 陸側遮水壁の進捗の状況でございます。

 こちらにつきましては、現在、凍結管の設置工事につきましては、まず先行して凍結する予定になっております山側部分について、七月二十八日にとりあえず凍結管の設置は終えている状況にございます。その上で、ブライン管を含めた、いわゆる凍結材を流すためのそういった設備の工事を進めているところでございます。一方、海側の方は、まだ凍結管の設置を進めている状態でございまして、まだ全体の七割前後というようなところでございますので、ここもしっかり進めていくということになってまいります。ただ、いずれにしましても、先月末の段階で工事そのものについては認可を規制庁の方からいただいておりますので、粛々と進めていくということになってまいろうかと思っております。

 全体につきましては、六月十二日に改定をいたしました中長期ロードマップにおいて、二〇一五年度内に凍結閉合を完了させるということを目標として掲げておりますので、それに向けてしっかりと進めていくということでございます。直近でも、これは四月の末でございますけれども、試験的な凍結を開始しておりまして、これによって凍結の状況、特に地中温度が順調に低下していくかといったようなことを中心に確認を進めているという状況に現在ございます。

 以上でございます。

馬淵委員 凍結を開始して年度内には閉合、すなわち完全に閉ループにする、こういうことだというふうに承知をしております。

 そして、その状況で、私、この中身についてはまだこれからお尋ねしていきたいんですが、事務方で結構です、さらにお尋ねをいたします。

 今、凍結を開始しているということでありますが、その状況で地下水位やあるいは温度等のモニタリングはできているかどうかというのは、これは極めて重要だというふうに考えます。その上で、建屋周辺に、いわゆる山側からずっと地下水が流入してくるんですけれども、この地下水量はどうなっていますでしょうか。そして、その水位管理というのはできているんでしょうか。お答えいただけますか。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいまございましたように、山側から地下水が常に流れ込んでいるという状況がございます。建屋の中への流れ込みという観点では、大体日々三百トンぐらいが流れ込んでいるという想定になっておりますので、そういったものを凍土壁を含めたさまざまな対策で減らしていくということに注力をしてまいりたい、そういう状況でございます。

 温度管理を含めてしっかりモニタリングができているかという点につきましては、観測孔という形で観測地点を幾つも設け、規制庁の監視のもとに、また私どもとの連携のもとにしっかりとモニターを続けておる状況でございまして、これもこのプロジェクトの肝の部分でございますのでしっかりと進めてまいりたいと考えております。

馬淵委員 ちょっと、田中さん、私、正確に聞いておきたいんですが、水位管理はできているか。温度管理はわかりました。水位管理はできているか、そして、地下水の流入量はどうなっているか、この二つお答えいただけますか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどちょっと試験凍結というお話をいたしましたけれども、あくまでもこれは入っている凍結管の部分的なものだけを今凍らせているという状態でございますので、まだ壁を構成する状態になっておりません。

 したがって、地下水の流れそのものに対しては、実はまだ壁という効果は発揮をしていないという段階でございますので、今の段階はそういう地下水の状況にあるということと、それから、水位管理ということについては、したがいまして、それが壁として機能した段階でどのような形で管理をしていくかということで、これはサブドレーンからの水の引き方、さらには水をまたさらに入れるリチャージウエルといったようなものの活用の仕方、そういったことをしっかりと検討して準備を進めている、そういう段階でございます。

馬淵委員 今の答弁を聞くと、すなわち、壁はまだできていないわけですよ。凍結管の削孔が進み、現時点においては九一%ですか、これだけの凍結管が挿入されている。その状況で一部凍結を開始している。この状況は当然まだ閉合されていませんから、地下水はどんどん流入している。だから、流入の減少があるかどうか、これはわからないわけです。

 さらには、水位管理も、これは閉じていませんから、ドレーンをしても、していくかどうかも含めて、水位管理、上がるか下がるかまだわからない状況なんです。つまりは、現状においても流入し流出している状況が続いているわけですね。

 このような状況で、これがうまくいくという判断をいつどのようにされたのでしょうか。

 つまりは、今実証事業でありますが、凍結実験を事前にやっています。これは凍るか凍らないかの話ですが、この現場において、私、この問題は再三この委員会で、凍結工法で、ダルシー流速という極めて遅いスピードではありますが、とどまっていない水を凍らせていくことについては大変な困難さが伴うと指摘をしてまいりました。これは今おおむね順調に進んでいるというニュアンスのことをおっしゃいましたけれども、何をもっておおむね順調に進んでいるというふうに評価されるんでしょうか、お答えいただけますか。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、この凍土式という方式を採用するに当たりましては、先生も御案内のとおり、さまざまな専門家にもお集まりいただきまして、幾つかの工法を比較検討し、その中で、成功の可能性、コスト等さまざまな要素を勘案して、採択をこの方法についてしているという経緯がございます。

 その上で、今、順繰りに凍結管の埋め込みが進み、部分的な凍結ができるというところに来ておりますけれども、今の段階で、まず設備的に確認ができるのは、そもそもちゃんと土が凍っていくのかということを今確認している段階でございますので、御案内のとおり、その管から、幾つかの地点に温度計を置きまして、ちゃんと近いところから順に温度が下がっていっているか、すなわち想定どおりに凍るプロセスが動いているかということを今確認し、おおむねそういうことができそうだということは確認ができているということでございます。

 今後、もう少し管の設置状況が進み、試験凍結の段階が進んでくるとそこら辺がもう少し明確になってくるわけでございますけれども、現時点、これまでの理論的な想定、そして、それに特にそぐわないという形での検討結果あるいはデータが得られていないという意味において、とりあえず今オン・ザ・トラックで来ている、ただ、決して私ども、これが簡単な道だと思っているわけではございませんので、引き続き心を引き締めてしっかりと取り組んでいきたいというふうには思っております。

馬淵委員 私も、まさに田中さんの立場で、当時、この汚染水問題も、まだそれこそ事態が動いている状況の中で取り組んだわけですから、大変な御苦労はよくわかりますよ。しかし、明らかにしなきゃいけないのは、現状においても地下水は流入し、そして水位管理ができるかも明らかではない、そして、挿入した凍結管、凍結部位に関しては、温度の低下によって凍結しているだろうということは予測がつくけれども、それによって完全に地下水を遮断できるかということの確認もできていないわけなんです。これが現状なんです。

 そして、三月末までにやると言っているのも、その凍結を行っていくということであって、水位管理、三月末になって初めて、いや、これはうまくいっていないねということが起き得る可能性はあるわけですよ。いいですか。これは大変な問題だと私は思っているんです。

 その上で、さまざまな埋設物について、これは当然、私も、かつても指摘をしてきました。私がベントナイトスラリーウオール、これを提唱したときに、それは埋設物と干渉するということで、当時、吉田所長と大変な激論になった。しかし、それでもバウンダリー、境界を決めてきた。当時はそのことが大きな課題でした。しかし、茂木大臣に私が質問したときには、凍土壁、そのようなことでやった場合に、埋設物はどうなるのか、いや、逆に言えば、埋設物に影響を与えないんだ、こうおっしゃっていた。

 そこで、お尋ねします。

 凍結管を通すときに埋設物が障害となる場合に、どのような対処をとられるんでしょうか。お答えいただけますか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 大きく二つの方法をとっておりまして、一つが貫通施工と言われるやり方でございます。こちらは、いわゆる埋設物が、これはボーリングによって穴をあけても差し支えがないというものの場合には、それに実際に貫通をさせるという工法をとることとしております。一方、さまざまな事情で貫通をしてはまずいもの、例えば現実に動いている排水管でありますとか電源ケーブルがある場合には、もちろん穴をあけるわけにはまいりませんので、その場合には、少し距離はあいてしまいますけれども、埋設物の両脇に凍結管を複数本置くことによりまして凍結効果を高めて、実際上、等距離で並んでいる場合と同様の効果を発揮する。そういった二つの方法を組み合わせてとることにしております。

馬淵委員 お手元に、委員長のお許しをいただいてお配りしました資料二をごらんいただきたいと思います。この二の資料は、平成二十五年五月三十日、汚染水処理対策委員会が発表した「地下水の流入抑制のための対策」すなわちここで凍土壁ということを提唱され、それを政府は決めていくわけですが、この中に、ラインを引いてありますが、「施工性を踏まえ、凍土方式が適切である。」こういう説明がされていたわけです。当時も私はこの埋設物との干渉のことを申し上げましたが、「建屋近傍には配管やトレンチ等の埋設構造物が多数あり、そうした構造物があっても施工可能で、周辺に汚染水を流出させない施工方式であることが必要である。」これが凍土壁を選んだ一つの大きな理由です。

 しかし、実際には、この干渉する埋設物によって空隙が生じて、凍結管による凍土の形にならない可能性があるということが今になって明らかになって、当時このような話はなかったですよ。貫通施工などといって、埋設物を貫いていく、こうした話は当時は全く出ませんでした。いや、水だからどのような形でも凍らせることができるという説明だったんです。

 大臣、私、大変な御努力をされていることは承知をしておりますが、このような形でどんどん後退していかないかということを心配しているんです。そして三月に、それこそ、さあできました、でも実際には地下水位の低下がはっきりしてこない、よくわからない状況が起きかねない。そのときには、当時のこの報告書にもありました。恒久構造物は、いわゆるスラリーウオールのようなもの、粘土壁というものも提唱されています。結局は粘土壁で行わなければならないということになりかねないんです。

 この貫通施工については、先ほどお話ありましたように、安全性の確認をしてからということでありますが、ずっとこの言葉を繰り返されているんですよ。だから、ここは相当に役所として厳しくごらんいただかないといけないと私は思っています。少なくとも、順調にオン・ザ・トラックで工程は進んでいるという話では済まないんです。

 繰り返し申し上げますが、貫通施工などというものが突然出てくる、つまり、空隙が生じて地下水をとめることができない状況が今明らかになってきたからこそ、このような施工方法が突然出てくると私は思っています。

 大臣、技術的なことを私は伺っているわけではありません。このように、汚染水のこの問題に関しては根本的な問題があるということを私は指摘し続けてまいりました。これにつきまして、ぜひ大臣、しっかりと監視を高めていただくということをお願いしたいと思います。

 最後に大臣からお答えいただけますでしょうか。

宮沢国務大臣 まさに、過去に例のない作業を私どもやっているわけでありまして、おっしゃるように、できない、成功しない可能性といったものを全く排除して、安全神話のようなものに陥ってはいけないわけでありまして、ともかく目を光らせながら、何とかこれは成功してほしいと思っておりますけれども、なかなかうまくいかないという可能性がゼロではないということは当然のことでありまして、そういう場合にもしっかりとした代替案ができるような、そういうことを事前にもいろいろ頭の中で訓練しておかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

馬淵委員 終わりますが、最後に一言。

 私は、だから、当委員会でも第二壁を提案してまいりました。凍土壁を全部否定するのではないが、第二壁も考えるべきであると。これはぜひ真剣な御検討をお願いしたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 民主党の阿部知子です。

 早速ですが、質問に入らせていただきます。

 ことしの八月は大変暑い夏でありました。この夏に、実は、東電福島第一原発で収束作業にかかわってくださっている作業員の三名の方がお亡くなりになりました。極めて深刻な事態と受けとめておりますし、三例のうち、時系列順に言うと第一例と第三例、三十代と六十代の男性ですが、発見されたときには、ほとんど心肺停止状態、あるいは急速に心肺停止になっていくという状態でありました。

 このお二人について、果たして作業との関係があるのか、あるいはいわゆる労働衛生管理上の労働災害というような観点から見てどうなのかということを、実は、経済産業担当大臣の宮沢さんにお伺いしたいですが、本来は東電に来ていただきたいと思いましたが、きょうかないませんので、東電を管理監督する立場にある宮沢大臣にお聞きするものです。

宮沢国務大臣 まず、亡くなられた三名の方の御冥福をお祈りしなければいけないわけでございます。

 それで、八月八日に発生した死亡災害につきましては、作業起因のものであり、再発防止の徹底や作業環境の改善を東電に対して強く指導してまいりましたし、これからもしていかなきゃいけないと思っております。

 他方、八月一日及び二十一日に発生した死亡事象については、東京電力、元請事業者を通じて、熱中症などの作業に起因するものではないと聞いております。具体的な死因については、御遺族の意向により公表されておりません。

 なお、二件の死亡事象が労働災害に該当するか否かについては、監督部局である福島労働局において、現時点では労働災害をうかがわせる情報は把握していないものと承知をしております。

 今後、仮に新たな情報により業務に起因して死亡したと認められるような場合には、東京電力に対して必要な指導をしていかなければいけないと考えております。

阿部委員 いわゆる熱中症と断定できない、あるいは労務に起因しないといったとしても、現実に、三十代、六十代、おのおの健康診断も受けて作業現場に入った方が、大臣は御存じでしょうか、一例目の方は大体十カ月勤続、二例目の方はまだ七カ月。すなわち、ずっとそこにいる方々じゃなくて、二次下請でこの現場に入っていた方なわけです。

 私が考えますに、そうした場合は、その方たちが作業に入っていくときの健康診断、あるいはその後の健康管理、やはり本当の意味でリスクをきちんと把握していなかったのではないか。だって、異常なことですよね。毎日七千人弱の方が働かれるといっても、作業環境も大変劣悪ですし、もともとのその方の健康状態のフォローがどうであったかということまで含めてきちんとしないと、私は、現在あそこにそれだけの方が働いてくださっている、それなくしては収束しないわけです。

 こうした、ある意味では建設現場に等しく、二例目の方は四十キロの重機のようなものを運んでおられた。一例目は穴掘り作業であったようです。いわゆる建設現場に等しいような作業に従事してくださっている、それも高放射線下、暑い、フルマスクという中で働かれる方のベースの健康管理というのがどうなっているのかということにもう少し経産省も東電も心をいたさないと、私はこのような事故は相次ぐと思うんですね。

 東電の中につくっておられる原子力改革監視委員会、きょう宮沢大臣もごらんになれるよう新聞記事から引き出しましたが、ここのデール・クライン委員長という方が、東電が安全を確保し安全向上を図る責任を担っていると明確におっしゃっているわけです、そこに働かせている。

 もちろん、東電は実は鹿島に発注しているだけで、鹿島が元請であります。通常でいえば、発注者ですから責任はないはずだ、だけれども、この事故の収束、これだけの事故を起こしたその責任の大きな一端、主たる責任は東電にあると思うんですね。

 大臣は御存じかどうか、今の法令上では、発注者には安全管理責任は基本的にはないんです。元請の鹿島、あるいは下請、孫請のその下に行く。だけれども、この作業環境というのは異常なものだと認識してきちんと法令の要請以上のことをしないと、もっと言うと、法令を本当は、私は、例えば東電も元請と等しい責任を負わせるような法令改正があって当然と思っておりますが、この東電の体制、そして経産省の管理の体制、やはりここが緩いと思います。そして相次いでいる。

 私のお願いは二点ありますが、現状で東電の責任をもっと明確に要請すること、そして、日ごろベースの作業員の皆さんの健康管理の向上を図ること、いかがですか。

宮沢国務大臣 まず、法律的に東電の責任をはっきりさせるということは、福島の第一原発だけを特記して法律をつくるということは、なかなかこれは正直言って難しい話だろうと思っております。

 ただ一方で、昨年からことしにかけて、第一原発のサイト内で、水がしみ込まないようにいろいろ舗装したりというようなことが行われておりまして、昨年に比べても作業環境というものはかなり厳しいものになっているということは私は事実だと思っておりまして、まさにおっしゃるように、鹿島の責任にするのではなくて、東電自身もしっかりと健康管理に向けてのいろいろなことをやるように、私どもとしても指導していきたいというふうに考えております。

阿部委員 大臣の答弁にもあるように、法令上は本当に発注者としての責任しかない。でも、おかしいと思います。作業環境はどんどん悪化して、そこに従来働いている人でない人が新たに入って、そして災害が相次ぐ。

 私がもう一つ問題にしたいのは、大臣が先に御答弁ありましたが、八月八日の事案であります。

 これは、作業現場で働くもうベテランの域に入る作業員、五十代の方が、写真に示してあるような大きなタンクローリーの後ろのふたに首を挟まれて亡くなった事案であります。中をのぞき込んで首が入っているのに、前の方で閉めてしまいました。何でこんなことが起こるかというと、後ろは見えないわけです。上の写真で操作者という方と、被災した方が後ろに回り込んだら、見えないところでふたが閉まってくるわけです。

 何でこんなことが起きたのか。これはもう工程を終わって、いわば中を掃除するときだったそうであります。さくが一応設けてあって、この被災した、亡くなった人は、本来さくの外でこの作業を監視する人であった。でも、終わったという安心感もあったんでしょう。この方が中に入って、後ろにいて、ふたが閉まっちゃう。本当に私は過酷過ぎる事故だと思います。

 この事故に対しても、実は一月にも、大臣、覚えておいででしょうか、大きなふたを動かそうとして、つりひもをしていない作業員が転落死。過酷なというか、起こり得ないとは申しません。普通の安全配慮をしていれば恐らく防げた事故がまた相次いでおります。この点について、どう指導なさいますか。

宮沢国務大臣 一月の事故のときにも、東電を呼んで、たしか副大臣から注意をしたわけでありますけれども、残念なことに、八月八日にもそういうまさに業務に基づく事故が起こったということでありまして、しっかりと東電を指導してきたつもりでありますけれども、なかなかそれがまだ行き渡っていないということでございますので、本当にこういう事故が再度起きないような手当てにつきまして、東電を指導するといいますか、我々も主体的に関与して、もう少ししっかりと作業現場で事故が起きない体制を構築していくということを指導していきたいというふうに考えております。

阿部委員 もう再三再四の指摘ですから、政府も経産省も、東電も労働基準監督署も甘いと思います。考えられないです、一カ月に三人亡くなる。日常の健康管理も甘いし、安全監視体制も甘い。

 そこにたくさんの人が働いていただいている、このことはここにいる誰もが忘れてはいけないことだし、一旦事故が起こればそれだけの人的な被害が続いていくということであります。大臣の責任は重いと思いますので、しっかりやっていただきたい。

 次に、川内原発の再稼働のことについて伺いたいと思います。

 今回、事故がないという想定のもとで再稼働がされるわけですが、しかし、事故がないということはない。あり得るとなって、緊急時の被曝の限度を二百五十ミリシーベルトに上げました。これは福一のときにも一時そうしたことがあるからであります。

 では、そこに誰が行くのか。吉田所長も、自分と部下の一人だけ最後は行こうかと思ったというふうなお話が出ていますが、これはあくまで、吉田所長の言葉にあるとおり、命令ではなくて志願なんだと。最後は、おさめられないときには、志願、その人が望んで行っていただくしかない、そういう極めて非人間的なことを要請しなければならない事態も背後にはあり得るわけです。

 二百五十ミリに引き上げて、一応そこまではという話にしてありますが、労働契約上、そうした文面で労働契約をしたとしても、実際その場になって、あなた、あれに書いてあるから行きなさいというわけにはいかないと思います。これは、その時点でどんなことが起きたかを説明して、志願して行っていただく、これしかないと思いますが、厚生労働省、いかがですか。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今先生御指摘のありました二百五十ミリシーベルト、これは電離則の改正によって行うものでございますが、審議会の手続は終了しておりますが、間もなく省令を交付するということでございます。

 この省令に盛り込む内容につきましては、本年の五月に取りまとめられました専門家検討会の報告書を踏まえて対応するということを予定しておりますけれども、この報告書では、特例の緊急被曝限度が適用される作業に従事する労働者は、原子力施設が破滅的な状況に至ることを回避するための作業について必要な知識と経験を有する者であって、原子力事業者が原子力防災要員としてあらかじめ指定する者とするというふうに記載をされております。

 また、この報告書では、今先生が御指摘の点ですけれども、原子力事業者が防災要員を指定するに当たりましては、まずは特例緊急作業に関する労働条件を明示した上で、双方合意の上で労働契約を締結すべきであるという点と、あわせて、今後仮に緊急作業を実施する事態になった場合には、実際の作業への配置については、労働者の意向に可能な限り配慮をすべきだというふうに報告書でまとめられているところでございます。

 先ほど申し上げましたように、電離則の改正は間もなく公布の予定でございますが、今申し上げた報告書の内容に沿って通達等を整備して、事業者にもしっかり指導してまいりたいと思います。

阿部委員 労働契約があっても、そのときにやはり自発性でやっていただくしかない作業だというふうな御答弁だったと思います。きちんと守っていただきたいと思います。

 次に、そうした事態を想定したくはないですが、福一でもそうでしたが、自衛隊員やあるいは消防庁の皆さんに放水を含めてお力をおかりしたわけであります。

 今回、川内原発は電力会社の責任で再稼働したといっても、そうした事態になれば自衛隊の出動、消防庁の出動をお願いせざるを得ないと思いますが、その判断は誰がなさるのか、そしてその判断をなさるに際して今シミュレーションとかは行っておられるのか。小里副大臣、二点お願いします。

小里副大臣 事故収束は、まず事業者の責任において実施すべきものでありますが、これが事業者において十分な措置を講ずることができない場合には、原子力災害対策本部、総理が本部長を務めるこの本部におきまして関係省庁と調整を行い、関係省庁はそれぞれの手足となる実動部隊について指示を行う、もってオンサイトにおける対策に当たるということになっております。この際、必要に応じて、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣は、原子力災害対策特別措置法に基づいてこれらの活動に関する指示を関係省庁に対して行うということになります。

 なおまた、シミュレーションについてのお尋ねでございました。今申し上げましたような指示をするための具体的な手順については、国の定めるマニュアルにおいて規定をされております。

 御指摘のシミュレーションに関しましては、原子力事業所における応急対策及びその支援について検討するための連絡会議を設けておりまして、すなわち、防衛省、警察庁、消防庁等の関係省庁と原子力事業者における装備資機材の整備状況や訓練の実施状況等の情報共有を行っております。この情報共有に基づきまして、それぞれの実動部隊がいざというときどう動くか検討しているというところでございます。

阿部委員 正直言うと、その段階ではシミュレーションとはまだ言わないと思います。これはいつでもあり得ることで、あってはならないのですが、やはり、その動きの一つ一つ、前回を参考にきちんとしておいていただきたい。住民保護にもかかわります。

 そして、その中で、防衛省と総務省に伺いたいんですが、先ほど緊急作業に従事する労働者については二百五十ミリシーベルトへの引き上げが電離則で改定されていくと伺いましたが、防衛省並びに総務省にあっては人事院規則や電離則というところには当てはまりませんので、では、その作業現場に防衛省の職員あるいは消防庁の職員が行くときはどうなるのかということになります。

 これは、前回私が防衛省の左藤副大臣にお伺いいたしましたが、この場合も、自発的な志願者であって業務命令ではないというふうにお答えをいただきましたが、おのおの再確認をしたいと思います。現状、防衛省、総務省、どうであるか。

塚原政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のように、国際的には、一定の線量を超える緊急作業従事者につきまして、自発的な志願者であるべきということとされていることは承知をしております。

 部隊等の派遣を要請された場合に、原子力災害等の状況あるいは自衛隊の装備及び能力等を踏まえまして、部隊等を派遣するか否かを適切に判断することになると思いますが、緊急作業時の被曝に関する国際的な考え方の趣旨も考慮し、緊急作業に従事する自衛隊員の安全管理、健康管理が十分に図られることも重要だと考えております。

 これは、四月二十三日の原子力問題特別委員会におきまして左藤副大臣からお答えしたとおりでございます。

熊埜御堂政府参考人 お答え申し上げます。

 消防庁では、「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」におきまして、消防職員の人命救助等の緊急活動時の被曝線量限度は百ミリシーベルトと示しているところでございます。

 消防機関は、先ほど来ありました、常に被曝の危険がある中で作業をされている放射線業務従事者の業務とは異なり、安全確保を行った上で消火、救助、救急等を実施する機関でありまして、消防職員の被曝線量の上限ということはないものというふうに考えております。

 国際的な面の御指摘もありましたが、国際的には、一定の線量を超える場合には自発的であるとか志願者が対応すべきであるとか、そういうこととされていることは承知しております。十分な安全確保を行った上で、消防機関が対応可能であると認めた活動の範囲内において行うということと考えておりますので、国際的な考え方も踏まえてやっていくというふうに理解しております。

 以上です。

阿部委員 では、残余の質問は次にさせていただきます。ありがとうございます。

江田委員長 次に、井上貴博君。

井上(貴)委員 自由民主党の井上貴博でございます。

 本日は、事業承継促進に関する質問をさせていただきたいと思います。特に税制のことについて御質問させていただきたいと思います。

 二〇一二年の総務省、経産省の調べによると、中小企業の総数は三百八十五万者あり、総事業者の九九・七%を中小企業が占めるという統計が出ています。これはもう皆様方御存じのとおりだというふうに思っています。

 戦後七十年を迎え、中小企業の経営者が三代目、四代目を迎えているところであります。帝国データバンクの全国社長分析によると、二〇一四年には、六十歳以上の経営者の割合が五一・九%となっており、今後五年から十年の間が事業承継のターニングポイントを迎えるということになります。

 日本の伝統的な技術や先端的な技術はものづくりで発展してきた技術大国日本の誇りであり、これらの技術は中小企業がその多くを保有しています。資源の少ない我が国がこの先も国際競争力を保っていくためには、これらを次世代に継承し、ものづくりを大切にしていくことが不可欠であると考えます。

 世代を重ねるごとに相続税の負担が重く、事業の承継がうまくできず、すばらしい技術、伝統技能を持っていても事業をやめてしまわなければならないという実情もあります。私自身、祖父がつくった会社を父から承継した三代目でありました。事業承継の際には大変苦労しましたし、雇用を守るために安くても同業者に売却したというような経験もあります。

 経産省、財務省もこのような状況を認識されており、平成二十一年に事業承継税制の創設を行って以来、事業承継のボトルネックとなる相続税、贈与税に係る負担軽減のための税制措置の整備をやってきていただいたところであります。

 そこで、まず、事業承継のこれまでやってきた経過、そしてその成果をお聞かせいただければと思います。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 地域の雇用や経済におきまして重要な役割を担う中小企業、小規模事業者の事業の継続は重要な課題だと承知してございます。このため、事業承継円滑化のための施策を、制度面、資金面、税制面など総合的に実施してきているところでございます。

 まず税制面ですが、遺産分配に伴いまして株式が散逸してしまう、こういう課題がございまして、平成二十年に経営承継円滑化法が制定されてございます。これによりまして、親族内承継について、民法に規定する遺留分につきまして特例措置が創設されております。また、今般、おかげさまで、今国会で経営承継円滑化法の改正がなされてございます。遺留分特例の対象が親族外承継にも拡大されたわけでございます。

 資金面におきましては、会社のみならず経営者個人の事業承継時の資金需要に対応するため、金融機関からの借り入れを容易にするための信用保険枠の拡大や、政府系金融機関から直接経営者個人に低利融資する制度が措置されてございます。

 御指摘の税制面では、後継者の相続税や贈与税の負担が重いという課題に対応するために、これまでの制度を集大成する形で、平成二十一年に、発効済み総議決権株式の三分の二を上限に納税猶予する事業承継税制が創設されてございます。また、平成二十五年度税制改正におきまして、親族外承継も対象とするなどの拡充がなされ、本年一月から施行されております。

 成果についてのお尋ねがございました。

 これらの措置によりまして、平成二十年の創設から昨年度までの間に累計で一千二百件の利用がなされていると承知してございます。これらの支援を受けました中小企業、小規模事業者の従業員数が六万六千人に及ぶというふうに認識しておりまして、事業承継の実現に向け、また、雇用の維持に一定程度貢献をしていると承知していますが、今後ともこれらの施策の展開に努めてまいりたいと考えております。

井上(貴)委員 ありがとうございます。平成二十一年からの歩みは相当効果があったというふうには思っています。

 ですけれども、お手元にお配りした資料をごらんください。

 非公開会社の株式の評価については、類似業種比準価額方式という算定方式があります。この算定方式にのっとってやっていくわけですけれども、この計算式の中で、配当分と利益分、要はBとCです、それとD、これは一対三対一の割合で評価されるんです。

 このうち、配当や利益といった部分に関しては、赤字の経営の場合はゼロになりますので、計算上、利益については三倍の効果がなされていても、場合によっては事業承継に大きな障害とはなりません。これに対して、簿価純資産に対しては、土地を持っていると必ず考慮されてしまう点において、簿価純資産に対する評価のウエートが大きくなってしまいます。

 また、株式の評価を低くしたいがために、経営状況を悪化させて配当と利益の部分をゼロにせざるを得ないという実例もあるというふうに思います。

 本来であれば、雇用を生み、利益を上げて法人税を納めるという社会貢献活動をするはずの企業が、事業承継のために経営状況を悪化させて法人税を納めない状況にせざるを得ないというような不健全な状況が起こっているのも現実であります。

 株価と事業承継に関する実際の中小企業の声を聞いてみると、評価額が余りにも高過ぎるため、承継問題は先送り、悪循環が起こるという懸念をしているということを聞きます。

 そこで、このような状況を踏まえて、配当、利益、簿価純資産の割合をもう一度見直してみてはどうかというふうに思っています。つまり、簿価純資産の割合を低く設定することにより、事業承継をしやすくします。また、配当、利益の割合を高くすることにより、MアンドA等で会社を売却する場合には、ある程度高く適正な価格で売却ができるようにもなると思います。

 このようにすれば、事業承継の場合と会社の売却の場合とで生じる問題の双方を解決できるんだというふうに思っています。また、法人は平時から利益を上げていくインセンティブが働き、法人税をより多く納めようというふうにつながっていくものだというふうに思っています。

 平成二十五年の会社標本調査によれば、資本金一億円以下の会社のうち百七十五万六千九百二十六社が赤字であり、割合にすると六九%にも上ります。そうだとすれば、黒字にするインセンティブを働かせることにより、法人税を少しでも取れるような状況をつくっていくというのも我々にとっての使命だというふうに思っています。

 このような状況を経産省はどうお考えかをお聞かせください。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、最近では、上場企業の株価が上昇しているために、類似業種比準価額の算定に当たりまして、自社の業績が変わっていなくても想定外に株式が高く評価されるという不満の声があると承知しております。加えまして、ことし一月から課税最低額の引き下げ等が相続税でなされておりまして、さらに負担が重くなるのではないかという不安の声があることも承知してございます。

 こうした状況の中では、中小企業の事業承継の円滑化のために、株式の評価のあり方が大きな課題であると認識しております。

 委員から、配当、利益、簿価純資産の割合の見直しや、大会社、中会社、小会社のしんしゃく率についての御指摘もありましたけれども、今後、非上場株式の評価のあり方につきまして幅広く検討を加え、株価と経済実態、とりわけ中小企業の業績との関係や相続税負担による事業承継の影響を踏まえ、中小企業の実力をしっかり反映した、事業者の実態に合った評価がなされるよう、所要の見直しを求めていくことにしたいと考えてございます。

井上(貴)委員 今答弁をいただきました中に、しんしゃく率のことも触れていただきました。横にありますしんしゃく率というのが、大会社で〇・七、中会社〇・六、小会社〇・五という割合があります。これは、上場の会社の業績が上がってくると、要はAの部分ですけれども、これが景気がよくなると上がるわけですから、この割合というのも非常に実際の相続のときには高く評価をされてしまうということにつながってまいります。

 アベノミクスによって株価が上がったことは非常にいいことでありますし、景気が回復したことというのもいいことであります。そういうものがAに当たるわけであります。ですから、実質上の継承をするためには、景気がよくなってきたときには簿価の純資産というものが重くのしかかってくるのが実情であるということを御理解いただきたいというふうに思います。

 そういう中で、幾つか問題提起をさせていただきましたけれども、事業の承継を円滑に進めていく必要性がある状況の中で、類似比準方式の、税制のあり方を含めて、来年度、平成二十八年度に、事業承継に関しての施策を、いろいろなことをやっていこうという政府のお考えがあると聞いております。

 そういう中で、こういう事業承継のあり方も含めて、また税制のあり方も含めて、最後に高木副大臣に決意と考え方をお聞かせいただければありがたいというふうに思います。

高木副大臣 委員御指摘のように、この問題というのは大変重要な問題であると考えておりまして、特に、法人経営者の相続の際の課題である株式評価に加えて、二十八年度税制改正に向けて、個人事業主の事業承継の円滑化を図るための措置を検討しております。

 個人事業者は一般的に資金力が低いため、資産の承継に伴い多額の相続税負担が発生する場合には建物等の事業用資産の売却等をせざるを得ず、事業承継に支障を来す、このおそれがあるということは認識をしておりまして、昨年も個人事業者の事業承継の円滑化のために、建物等の事業用資産の特例を要望いたしました。

 二十七年度の与党税制改正大綱におきましては、小規模宅地特例があり、既に相続税負担の大幅な軽減が図られていること、事業用資産とそれ以外の資産の区別が困難であること等の問題があることに留意し、総合的に検討されることとされました。

 これに関しまして、二十七年度与党税制改正大綱、また建物価額の上昇、相続税の課税強化による個人事業者への影響等を踏まえて、引き続きしっかりと検討してまいりたいと思いますし、特に、これから約十年間の間に半数以上の経営者が事業承継のタイミングを迎える、さらに、少子化等を背景に、後継者難で廃業を余儀なくされる中小企業、小規模事業者がますますふえると予想されますので、この問題に関しましては、さらに事業承継が円滑に行われるように、株式評価問題等の税制についてさらなる検討をしてまいりたいと考えております。

井上(貴)委員 前向きな答弁をいただきまして、本当にありがとうございます。

 今回、平成二十八年度の政府税調でも十分に議論していただきたいと思いますし、党内の税調でもこの問題をよりブラッシュアップしてすばらしいものにしたいと思いますので、何とぞ皆様方の御協力をお願いしたいというふうに思います。

 以上で終わります。

江田委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 九州電力川内原子力発電所一号機が八月十一日に再稼働しました。昨日、出力が九五%にアップしたという報道もされています。

 この夏の連日の猛暑にもかかわらず、電力供給不足にならなかった。原発再稼働は必要ないのではないかという意見もあります。原発の再稼働はなぜ必要なのか、この点についてまず御質問したいと思います。

 二十一世紀政策研究所研究主幹の沢昭裕氏が、八月十二日付の読売新聞で次のような提言をされておりました。

  今の日本の電力供給で最大の問題は脆弱性だ。原発の停止を火力発電で補っており、二〇一四年度は発電量全体の約八八%が火力だった。大規模な停電こそ起きていないが、設備の老朽化でトラブルが増え、ぎりぎりの綱渡りが続いている。

  東日本大震災後、火力発電の燃料に使う天然ガスや石炭、石油の輸入が膨らみ、電力十社の燃料費は一〇年度の約三・六兆円から、一四年度は約七・二兆円に増えた。電気料金が上昇し、上昇分を転嫁しにくい中小企業や低所得者ほど負担は重い。地球温暖化を招く二酸化炭素の排出量も大幅に増えた。 日本は資源に乏しく、一つの電源に依存しすぎないことが大切だ。どの電源にもメリットとデメリットがあり、組み合わせることでデメリットを減らせる。

このように御指摘をされております。大事な指摘だというふうに思います。

 経済産業省は、再稼働の必要性をどう考えているんでしょうか。

高木副大臣 まず、原発については、安全性の確保が最優先であるということは論をまたないと思います。

 原子力規制委員会によって世界最高水準の新規制基準に適合すると認められた場合は、その判断を尊重し再稼働を進める、これが政府の方針でございますが、なぜ再稼働が必要かということになると、まず、今の日本が厳しいエネルギー制約に直面している状況。例えば、我が国のエネルギーの自給率はわずか六%。逆に言えば、九四%は輸入に頼っております。そういった部分では、今御指摘のありましたような、エネルギーの安全保障上、脆弱な側面がある。

 第二に、地球温暖化対策の観点で、これはエネルギーの大半をCO2を排出する化石燃料に依存しているのが現状でございますので、原発が今後の地球温暖化対策に重要な要素となる。

 第三には、効率性、経済性の観点。原発の停止によりまして、燃料の調達費が増大いたしまして、現在は化石燃料価格は下落をしておりますけれども、予断を許さない状況の中で、電気料金は、これまで家庭用で二五%、産業用で四〇%上昇しております。特に、中小企業からは悲鳴にも似た声も出ておりますので、国民生活を守るためには何とかしなければいけない。

 エネルギーは国民生活の経済活動の礎であり、エネルギー源ごとの特性を生かしたバランスのとれたエネルギー構成、つまりSプラススリーEを達成していくことが基本であると考えております。

 先ほど、沢さんの新聞記事の指摘がございました。私も、関西電力の海南火力発電所へ行ってまいりましたときに、これは一旦とめた火力を現在稼働しておりまして、現状はかなり周辺がさびていたり、大変な中で何とか持ちこたえているというのが今の日本の現状である、このように認識をしております。

富田委員 今副大臣が言われていましたけれども、千葉の方でも、火力発電所を再始動するのに、一旦やめた従業員にまた来てもらって教育し直してもらうとか、そういうような大変さを伺ったこともあります。

 ただ、一部には、再生可能エネルギーを拡充すれば原発の再稼働は要らないんじゃないか、こういう意見もありますが、これについては経済産業省はどう考えているんでしょうか。

高木副大臣 再生可能エネルギーは、エネルギー安全保障の強化または地球温暖化対策の観点からも重要であるというふうに認識をしておりますが、現実、この発電コストが相対的に高いというのが、一つ課題が存在しております。

 この中で、安全性、安定供給、経済効率性、環境適合、このエネルギー政策の基本的視点として、各電源の強みを生かし弱みを補完する、このバランスが最も重要であると考えております。

 こうした考え方を踏まえて、この間のエネルギーミックスにおいては、安全性を大前提に、自給率はおおむね二五%程度まで改善すること、二つ目が、電力コストは現状よりも引き下げること、三つ目が、欧米に遜色ない温暖化ガス削減目標を掲げることという政策目標を同時に達成するように検討した結果、エネルギーミックスとして、再生可能エネルギーは二二から二四%と拡大、原発は二〇から二二%活用する、こういうふうな形にいたしました。

 再生可能エネルギーは広めていかなければいけないのは事実でございますが、やはり現実論からいって、このバランスをとったエネルギーミックスが重要である、このようにも考えております。

富田委員 私ども公明党も全く同じ考えですが、沢さんは、この新聞記事の中でこうやって指摘していました。

  再生可能エネルギーの拡大は必要だが、コストが問題だ。再生可能エネルギーを一%増やし、原子力を一%減らすと、約二千百八十億円の国民負担が発生する。

こういった現実的な数字もきちんと国民の皆さんに理解していただく必要があるというふうに思います。

 次に、原子力規制委員会の新基準は本当に有効なのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

 この問題に関しまして、原子炉工学が御専門の山口彰東京大学教授が次のように評価されておりました。

  新基準では、二つのアプローチで、事故を深刻化させない手だてが盛り込まれた。一つは、炉心溶融を招いた福島第一原発事故の具体的な原因を調べ、その再発を防ぐ対策を検討する方法で、複数の電源系統の確保、緊急時の炉心や格納容器の冷却機能の強化などが代表例だ。

  もう一つは、「原発敷地外が放射性物質で汚染」「原子炉建屋で水素爆発が発生」といった想定から遡り、事故を起こしうる様々な要因を、福島の事例にこだわらず洗い出す方法だ。こうした二つの方法で定めた規制の要求は質が相当高く、原発の安全性、技術力は向上したと言えるだろう。

このように評価をされておりました。

 この新規制基準について、経済産業省としてはどのように評価しているんでしょうか。

日下部政府参考人 ただいま御指摘のありました新規制基準でございますけれども、この基準は、これまでに明らかになりました福島第一原発の事故の教訓のみならず、IAEA、あるいは、諸外国もさまざまな経験をしております、そうした経験のもとで培われた規制基準も確認した上で策定されたものだと認識しております。

 中身といたしましては、第一に、我が国の地震、津波あるいは火山といった自然条件の厳しさなども勘案して、重大事故を発生させないための対策を規定すると同時に、万が一重大事故が発生した場合に放射性物質の拡散を防止する、いわゆるシビアアクシデント対策を要求しております。

 さらに加えまして、さらなる安全性の向上を目指すという観点から、最新の知見を基準へ反映し、それに対する適合を義務づける、いわゆるバックフィット制度というものも導入しております。

 こうした三層構造になっているこの規制基準につきましては、経済産業省としても、全体として世界最高水準の規制基準だというふうに認識しております。

富田委員 平成二十五年の九月二十六日に、当経済産業委員会で、九州電力株式会社川内原子力発電所を視察しました。原子力発電所の新規制基準対応安全施設の概要等について説明を聴取した後、施設を視察させていただきまして、同社の副社長らと同発電所の安全対策の実情等について意見交換をしてきました。

 この経過につきましては、委員長、理事の皆さんの御了解をいただきまして、机上に派遣報告書の抜粋を配らせていただいております。ぜひごらんになっていただきたいと思いますが、九州電力が新規制基準に対応すべく大変な努力をしていたことを視察で実感をいたしました。

 この資料の中に、十四ページ、資料の二枚目の裏側ですが、川内原発では、福島第一原子力発電所の教訓を踏まえ、さまざまな重大事故を想定して対応手段の多様化を図っており、五段階に分けて対策を進めているというふうに報告しております。その後に、一、二、三、四、五と、五段階での対策が詳細に記載をされております。

 十五ページの一番最後の行をちょっとごらんいただきたいんですが、「原子力発電所においては、通常の淡水保存タンクに加えて、敷地内に二十六万立方メートルの貯水量がある池を有しており、十分な水源が確保できている。」たまたま自然の池だったと思うんですが、本当に大きな池があって、これだけの水量があれば福島のようなことはないだろうというふうに実感をいたしました。

 ぜひ後でこれをごらんになっていただきたいと思います。

 先ほどの山口先生は、新規制基準を評価した上で、次のような指摘もされております。

  一方で、「新しい設備を追加することの副作用がないのか」といった評価は十分でない。設備を増やせば、それだけ操作やメンテナンスで人がミスをする可能性も出てくる。また、長期間の運転停止を経て再稼働するため、新たな問題点、トラブルが明らかになる可能性もある。

事実、今回、川内原発では、復水器と呼ばれる装置三台のうち一台で海水を流す配管五本に穴があいているのが見つかって、これを修理した上でまた出力を上げているという事実があります。また、山口先生は、

 原発がきちんと機能しているかをしっかり検証し、運転経験を重ねていく必要がある。

  我々の知識は完全ではなく、地震や津波といった自然現象の評価も不確かさが存在する。科学技術にはゼロリスクはあり得ず、事故が起こる可能性をはらんでいる。そうした前提で、事故を防ぐ対策だけでなく、事故が起きた後の影響を緩和する策も検討し、適切に組み合わせる必要がある。何層もの独立した対策を講じる「深層防護」という考え方の根幹だ。

  取り入れるべき新知見はないのか、規制基準で見直すべき点はないのか――。現状に満足せず、不断の問いかけと改善を続けることが安全向上につながる。

というふうに御指摘をされています。

 この先生の指摘はまことに正鵠を射たものと思いますが、原子力規制委員会としては今後どのように対応されていくんでしょうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、事実関係ですけれども、御懸念のあった、新しい設備を追加することで他の設備に悪影響を及ぼさないことについては、新規制基準でも要求しておりますし、実際に審査においても確認しております。

 また、今回の基準ですが、先ほど紹介がありましたように、地震、津波といった基準を強化するとともに、さらに、シビアアクシデントが発生した場合においても、炉心損傷の防止、格納容器の破損の防止、そして放射性物質の拡散抑制のための対策を要求しているところでございます。

 原子力の安全につきましては、先生御指摘のとおり、リスクは決してゼロにはならないとの認識のもと、残されたリスクを低減させる活動に継続的に取り組むことが重要であると考えております。こうした考えを原子力規制委員会の基本姿勢としておりまして、今後も、国内外の事故、トラブル情報、その他の新知見に基づきまして、継続的に基準の見直しを行っていく予定でございます。

富田委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 川内原発から三十キロ圏内にある九市町は、内閣府の支援を受けて、重大事故を想定した避難計画を策定しました。地元の住民の方々が最も心配されているのは、この避難計画が実効性あるものなのかということだというふうに思います。

 放射線安全管理学が御専門の福徳康雄鹿児島大准教授は、この点について、まず、計画では、三十キロ圏内の住民約二十一万四千人が原則自家用車で県外へ移動することになっている、避難計画を必要に応じて見直し、避難経路をふやしていくことが重要だ、車だけではなくフェリーなども組み合わせる方法もあるというふうに言われています。

 先日発表されました伊方原発の避難計画では、半島を貫く主要避難道路の国道が寸断された場合は、対岸の大分県や愛媛県の遠隔地へ船で逃げる、あるいは天候がよければヘリコプターでの空路避難も併用するというふうな記述がありました。こういった点も検討する必要があるのではないか。

 また、福徳先生は、警察や道路管理者が的確な交通管制を行えるかどうか避難訓練などで確かめたりすることも必要だ、そして、各自治体が住民に避難計画の内容をしっかり伝えていくことも忘れてはならない、鹿児島県は要援護者の避難に向け、民間のバス会社などと住民輸送に関する協定を結んだ、しかし、バス会社の運転手の間では被曝への不安が根強い、線量計や防護服の使い方といった安全教育の徹底が求められるというふうに御指摘をされています。そして最後に、鹿児島県と薩摩川内市は昨年の夏から、甲状腺被曝を防ぐ安定沃素剤を配るため原発周辺の住民向けの説明会を続けてきましたけれども、対象の約四千五百人のうち配付できたのが約七割にとどまっているという御指摘がありました。

 これら先生の指摘について、内閣府としては今後、地元自治体にどのような支援を行っていくんでしょうか。

山本政府参考人 先生御指摘の川内地域の緊急時の対応につきましては、昨年の九月に地元の避難計画を全体取りまとめいたしまして、政府として実効性あるものという形で確認をしているところではございますが、今御指摘ありました点についてはさまざまな配慮を行っているところでございます。

 例えば、避難経路についてでありますけれども、陸路を中心といたしますが、この場合は複数の経路を確保することによって、一つがだめでもほかのもので代替できるようなこと、あるいは道路が通行不能になった場合には復旧対策をあらかじめ用意していること、さらに、道路による避難が困難な場合には、自衛隊、警察、消防、海上保安庁、この場合は船舶とかヘリになりますけれども、こういった支援を必要に応じて実施するようなこととしているところでございます。

 それから、住民の皆さんへの周知についてでありますけれども、これは、鹿児島県や薩摩川内市などが説明会あるいは研修会などを開催し、あるいはパンフレットを作成して住民の皆さんに配付するなど、さまざまな形で周知に取り組んでいるところでございます。

 それから、御指摘ありましたバスの運転手の方々でありますけれども、こういうバスの運転手さん向けの研修については、既に鹿児島県がことしの八月に、つい先日でございますけれども、研修を開催したところでございますが、これは継続的にやっていく必要が当然あろうかと思っております。

 それから、沃素剤の配付の問題でございます。先ほど御指摘ありましたように、七割の方の住民の配付が完了はしておりますけれども、まだ残り三割の方がおられますので、これに対してはまず薩摩川内市の方で、まだ配付されていない方々の各家を戸別訪問いたしまして、この配付説明会の周知を進めて配付率の向上に努めていくという対応をしているところでございます。

 いずれにしましても、原子力災害というのは終わりとか完璧は当然ございませんので、内閣府といたしましても、訓練などその他を通じまして継続的な改善、強化に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

江田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時二十八分開議

江田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子さん。

阿部委員 では、先ほどに引き続いて行わせていただきます。

 大臣も先ほど来の質疑をお聞き及びと思いますが、実は、消防職員、自衛隊などは上限百ミリであります。電気事業者、作業員に二百五十ミリを規定したとしても、緊急時どうするのか。本当に私は深刻な状況が解決されていないと思いますので、大臣もぜひ念頭に置いていただきたい。

 後段は、電力自由化問題と表示の問題に移らせていただきます。

 まず冒頭、宮沢大臣にお伺いいたしますが、電力自由化の目的は何でしょう。

宮沢国務大臣 電力システム改革の目的につきましては、これは法律にも書かせていただいておりますけれども、電気の安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制並びに電気の使用者の選択の機会の拡大及び電気事業における事業機会の拡大を実現するということでございます。

阿部委員 今の大臣の御答弁にあったように、消費者にとっては、判断に基づいて選択できるという選択の権利を伸ばすものであります。

 大臣のお手元の資料を見ていただきたいと思いますが、いわゆるフィード・イン・タリフ、固定価格買い取り制度の電気であることをどう表示して消費者の選択肢を広げていくかという場合に、下段の方に、この電気はいわゆるFITの電気であるということを記載した上で、さらに、二酸化炭素排出などについては、国民が広く負担しているので、これを買ったからといって二酸化炭素排出云々ではないんだということをわざわざ二行にわたって書いておるわけです。

 いろいろ諸外国を調べますと、表示は各国やっておりますが、わざわざこのように二酸化炭素の付加価値云々まで含めて、こんなわかりづらい、「全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われます。」と、消費者は、読んだって、これは何だということになると思いますが、なぜ我が国だけ、再生可能エネルギーで購入された電気だということ以上に、こういうわざわざ書きをしなきゃいけないんでしょうか。

宮沢国務大臣 FITの制度を利用しない、例えば太陽光発電を行っている方について言えば、まさにクリーンな電気という表示をしていただいていいわけでありますけれども、FITの制度につきましては、事業者がある意味では身を削ってということではなくて、電力の需要者、個人であり会社でありが広く負担している、こういう性格のものであります。

 逆に言えば、ことしでいうと一兆三千億の賦課金が課せられているわけでございますけれども、一方でそれは、例えば一番最初に太陽光を始められた方は、キロワットアワー当たり四十円、四十二円といった数字でございますけれども、実質的に言いますと、二十年間、金利八%から一〇%程度の固定金利を享受できる、こういう状況が一方である。

 さらに申し上げますと、こういうFITという制度につきましてなかなか一般の国民がおわかりになっていないということもあって、ドイツなどはFITというような表示のようでございますけれども、少し詳し目に表示した方がいいのではないかということで書かせていただいたものでございます。

阿部委員 私は、日本の国民はドイツの国民に劣らず賢いと思いますし、FITであるという表示はしていただいた方がいいです。

 大臣に最後の資料を見ていただくと、ここには、例えばFITの電気と再エネの電気と分けて書く、これはいいと私は思うんですね。ああ、こっちはFITの電気、成分はこのくらいと。でも、わざわざそこに二酸化炭素排出云々がみんなに共有されているとかいうことを書くまでもなく、また書いている国もないということで、なぜ日本はこんなにちぐはぐになるのかと思います。

 そして、大臣、消費者が選択するという意味においては、EUなどは電源構成別に、何の電気、ここに書いてあるような円グラフのこういう表示が義務化されて、電源表示の義務化ということがなされているわけですが、それも含めて消費者が正しく選ぶという大きな流れがあると思います。

 今度、全体の事業が電力取引監視等委員会に、事業というか、これをどうするかが移管されて、経済産業省の資源エネ庁から第八条委員会である電力取引監視等委員会に引き継がれるわけですが、そこにあっても、経産省は関与しないというわけではなくて、諮問を受けて方針を決めるわけです。消費者の選ぶ権利が第一で、例えば消費者委員会等の意見も、大臣みずからも重要視するし、またこの監視委員会でも十分聞き取っていただけるものと思いますが、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 まず、電源構成の開示の義務化につきましては、今審議会でいろいろ議論していただいております。これまで、開示を義務づけるべきという意見とか、また、法的に規制せずに電源構成を消費者にアピールしたい事業者の創意工夫に委ねるべきと、両方の意見がございまして、さらに検討が必要だろうというふうに考えております。

 そして、消費者庁等々の意見でございますけれども、まさにおっしゃるように、最終的には経済産業大臣として判断することとなります。電源構成の表示に関する検討に当たっては、消費者の意見を十分に踏まえることが重要であることはおっしゃるとおりでございます。これは、監視委員会も共有できるものだと思っております。

 制度設計の中でどのようにして消費者に意見を伺っていくかについては、来月一日に電力取引監視等委員会が発足しますけれども、それにおいて検討が行われることになろうかと思っております。

阿部委員 電力自由化は、需要と供給、消費者と提供サイド、やはり両方のよりよい選択ということになると思いますので、重ねてよろしくお願い申し上げます。

 終わらせていただきます。

江田委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 田嶋要でございます。

 きょうはちょっと電車がまたおくれまして、今週二回目の人身事故ということで、きょうもNHKで報道されていましたけれども、何か夏休みが終わるころが一番いろいろなそういうことが起きるということでございました。

 委員長、いろいろ御協力いただきましてどうもありがとうございました。御調整いただきました。

 それで、一昨日、委員長のお取り計らいで私も名古屋の方に視察に参加をさせていただきまして、ありがとうございます。

 最初に行った三菱電機とその次の飛行機で、いろいろ考えることもありましたが、前半は、大量に消費者向けに製品をつくるところということで、いろいろな改善を進めていく。しかし、二カ所目の飛行機は大量につくる製品ではないということが大きな違いで、一カ所目がロボットでつくっているのに対して、飛行機は人がいて、静かなところでございました。今まさに、一人一人の、その一機をつくる安全性というのがあのMRJに乗る方のこれからの命を守っていくということで、もう本当にこれは神経をすり減らす、本当に安全性を問われることだろうと思います。

 そして、その二つを見比べるにつけ、原発のやはり安全性というのも、どちらかというと、MRJの安全性、大量にたくさんつくるものではなくて、一キ一キ本当にミスがあっちゃいけない、手抜きがあっちゃいけないということなのかなということを考えた次第でございます。

 まず大臣、そういう思いも含めて、よく言われている安全という言葉と安心という言葉、似て非なるもの。安全性という言葉はあっても安心性という言葉はありません。安心感という言葉はあっても安全感という言葉はありませんね。どういうふうに違うというふうに認識されていますか。

宮沢国務大臣 まず、原子力発電についての安全といった意味では、一般的には原子力発電施設等の安全性を指すものと考えられまして、例えば原子力規制委員会によりまして世界最高水準の新規制基準が定められ、それに基づいて審査が行われ、そして、それに適合すると認められるということが恐らく安全といったような意味合いにつながっていくんだろうと思っております。

 一方、原子力についての安心ということにつきましては、まさに原子力発電施設などの安全性や原子力行政に対する国民や住民の御理解を得るということによって生ずるものと考えられております。

 したがって、安全というものは例えて言えば左脳で考えるものであり、安心といったものは右脳に係るもの、こういう違いなのかなという気がいたします。

田嶋(要)委員 私も同意見でございまして、私は、安全というのはどっちかというと自然科学の話で、安心というのは人文科学か何かというふうにも思ったんですが、見方を変えれば、安全の外周円よりも安心はさらに広い円を描くような感じもいたします。

 それと、この間テレビで田坂先生がおっしゃっていたのは、やはり安心は信頼に裏打ちをされなきゃいけないということもそのとおりでありまして、政府に対する信頼、規制庁、規制委員会に対する信頼、そういうことも極めて大事だし、そして、国民とどうそれをコミュニケーションするか、情報をどう伝えていくかということが、私は、安全以上に安心ということの方が大事な概念ではないのかなというふうに感じた次第であります。

 後ほどその関連で質問させていただきますが、まずは少し、ちょっと日本の外の話で、中国で二度爆発が起きましたね。

 実は、この委員会そして原子力特別委員会で、日本の原発以上に日本が心配しなきゃいけないのは、これは申しわけないけれども、私の主観ですけれども、中国の原発事故だと私は思っております。

 現地の本部長を経験させていただいて、八割は海側に落ちたということで、日本の事故でありながら、一番落ちたのは東側の海なんですね。

 そういう意味で、中国の沿岸部にたくさん原発が、今五十基ですか、あります。そういう中で、やはりこれは人ごとではないということで、私は、今回続いた化学爆発、そして、何か神経ガスがどうのこうの、何が事実かさっぱりわからないという中で、やはり、これは人の国のことだから、主権があるからどうのというのは、それは限界はあろうかと思いますが、私はそこは本腰を入れてやっていただきたいと思うし、それは国内外関係ないというふうに思っております。

 と同時に、日本もほかの近隣諸国に迷惑をかけ得るわけでありますから、それは全く双方対等であるので、東アジアで唯一大きな事故を起こした日本は、むしろおせっかいも含めて、どんどんやはり乗り出していかなきゃいけないというふうに思っております。

 前回、田中委員長に、五月二十八日の原子力特別委員会で、本件に関しまして御質問をさせていただきました。そのときに委員長の方から、実は、世界の規制者のトップの会合において、「特にヨーロッパは、隣国、フランスとドイツとか、ああいうところは非常に近いところに原子力施設があります」、現にフランスの原発はドイツの国境にあるわけでございまして、それについて、「ヨーロッパの方は私どもよりも真剣に議論が進んでいるということを学んだところでございますので、今後、私としましては、中国、韓国ともその辺についてきちっとした協力体制をつくっていきたい、そのように思っております。」こういう御答弁を五月二十八日にいただいたところでございます。

 改めて、こういった事故がもう現実のものになっております。爆発の事故でよかったね、そういう思いでございますが、次は原発事故が起きる、常にそういう想定をして、規制庁もいろいろ考えていただきたいと思います。この御答弁から、さらにきょう、どういう御答弁をいただけるでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生御指摘の件は非常に私どもとしても重要視しておりまして、現在、日本と中国と韓国の三国においては、トップ・レギュレーターズ・ミーティング、コミッショナーが誰か必ず出るというようなミーティングがあります。

 その下に、昨年九月のミーティングでは、緊急時における情報交換のあり方を検討する作業部会の設置が合意されました。これの座長というか、まとめ役は中国になっておりますけれども、これは非常にいいと私は思うんです。私どもがやるよりは、中国がそういう意識を持っていただいた。

 各国がそういうことで今後具体的にどういう形で情報交換をするかということについて、この枠組みをきちっと進めていきたいと思います。なお、これからどういう形で具体化できるかということであります。

 ただ、世界全体として見ますと、IAEAの加盟国は、自国において何かそういった事態が起こったときにはIAEAを通して速やかに世界各国に連絡するという枠組みはございますけれども、アジアにおいてこの三カ国は特に重要でありますので、そういう枠組みを積極的に構築していきたいというふうに思っております。

田嶋(要)委員 IAEAももちろんお願いしたいというふうに思いますけれども、やはり日本の国民の国益ということを考えますと、東アジア、特に原発が一番ふえている中国、そして、原発がある韓国そして台湾、この辺の連携はやはり独自にしっかりと推し進めていただきたいし、繰り返しですけれども、大事故を起こしたのはこの地域で日本だけでありますから。

 だから、その点、別に自慢できる話では全くございませんけれども、やはり日本にしかない知見、苦労、そして助言できる部分というのはたくさんあろうかと思いますので、大臣に御質問はいたしませんが、そこは規制庁、規制委員会だけに任せることなくお願いをいたしたい。これはどういう政権が今後つこうとも、日本が中国の隣にいる限り、それは一つの宿命としてやはり我々もやっていかなきゃいけないんだろうという感じがいたしてございます。

 続きまして、国内原発に関してお尋ねをいたします。

 川内原発が再稼働をされました。しかし、私、非常に残念なのは、事の大小にかかわらず、一週間ですぐにまたトラブルが起きたということでございました。

 また、出力は今九五%ということでお伺いはしておりますけれども、でき得ることならば、多くの国民の、先ほどの不安、安心感が私は不十分だと思っている中での再稼働でありましたので、ぜひ、一週間以内に突然そういうニュースが流れるというようなことのないようにしてもらいたかったというふうに思っております。

 世界が注目していた最初の再稼働でございますので、だからこそそういう周到な準備。そして、トラブルが起きてしまったことで、やはり新規制基準に対する不安感というのも少なからず高まってしまった、私はそのように思っておりますけれども、委員長、このトラブルに関してどういう御認識をお持ちでしょうか。

田中政府特別補佐人 今回の事象は、川内原子力発電所一号機において、タービンを回してその後の蒸気を冷やして水に戻すための復水器と呼ばれる機器が三台あるわけですが、その一台の一部に海水が混入したということで、内部を点検して必要な補修を行ったものと承知しております。

 本件については、余り使いたくない言葉ですが、想定内の事象であります、私どもにとりまして。つまり、安全上の懸念があるものではなく、規制委員会に報告の義務はありませんけれども、九州電力で適切に補修が行われているということについては、当方の検査官が検査にて確認させていただいております。

 いずれにせよ、長期間停止したプラントの起動でありますので、当初から、こういったことがいろいろ起こりますということは、随分事業者からもメディアに対していろいろなレベルで起こりますということで発信していたんですけれども、残念ながらこういうことが起こると、どうしても、先生御指摘のように不安感というのが出てくることは否めないと思います。

 今後ともこういったことが起こり得ると私は考えていますので、事業者には、細心の注意を払って慎重に、フルパワーに向けて、稼働に向けて取り組んでいただくよう指導しているところでございます。

田嶋(要)委員 ありがとうございます。

 私も事前にいろいろヒアリングさせていただいて、委員長の想定内という言葉は今初めて聞きましたけれども、そういうニュアンスの説明を事務方から受けております。安全上の重要度は余り高くない部分での事故だという説明を受けておりまして、先ほどの安全と安心ということであれば、安全上は問題ない。しかし、安心感は揺らいだんですね。不安になったということは事実なんですね。そうなると、リスクコミュニケーションがやはり極めて大事なんだろうというふうに思います。一般国民は新聞、ニュースでしかわからないわけでありますので。

 私、一つ申し上げたいのは、今回の事故によって放射能漏れはありませんというふうに書いてあったんですね。それは二通りの読み方があるんです。運がよかったから何とか漏れずにとめることができたという意味と、そうじゃなくて、原理的に放射能が漏れない部分の軽微な事故だったんですと、意味が二通りとれるけれども、それは新聞を読んだ限りではわからないんですね。

 だから、やはりそういうところも、それはマスコミのあれでかもしれませんけれども、どう国民に安心感を植えつけていくかということでは、繰り返さないように、特に一番心配するのは放射能が出ているかどうかでありますから、その点に関して二通りの解釈ができるような、マスコミが発表するような形をもともとの説明の部分で起きないようにぜひお願いをしたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

 それから、この川内原発、そういう意味で少し残念なスタートであったわけでございますけれども、大臣にお尋ねします。

 お配りの資料の一番最初のところ、これはエネルギー基本計画でございます。「原子力」の「政策の方向性」というところに、「いかなる事情よりも安全性」、先ほどの安全性ですね、「を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、」この懸念というのはやはり不安がないようにということだと思いますので、安全だけじゃなくて右脳の安心も大事だということをここに書かれておるんだと思います。

 私は、そういう観点からすると、今回の川内原発、後ほど述べますが、幾つかの観点で拙速ではなかったか。逆に言えば、ここに書いている国民の懸念の解消に全力を挙げたのか、そういう前提は本当に果たされたのかということを大臣に改めて問いたいと思いますが、どういう御認識ですか。

宮沢国務大臣 委員の配付された資料にありますように、エネルギー基本計画におきまして、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、」ということで、最終的に再稼働を進めるというところにつながっているわけでございます。

 今回の川内原発につきましても、地元の理解を得るということは大変大事なことでございまして、まず、経産省を初めとする政府関係機関や九州電力が、鹿児島県などが主催する住民説明会に参加して、安全審査の結果や原子力エネルギー政策などについても説明を行ってまいりました。

 また、私自身も、十一月に鹿児島に参りまして、伊藤鹿児島県知事や岩切薩摩川内市長など関係の方々に対して、エネルギー政策上の必要性や再稼働を進める政府の方針等々につきまして丁寧に説明をしました。その上で、昨年、知事また岩切市長から、川内原発の再稼働を進める政府の方針を理解する旨の表明をいただいたわけでございます。

 そうした意味で、全力を挙げて懸念の解消に尽くしてきております。一方で、恐らくまだまだ理解が進んでいないぞ、こういう委員の御意見もまた正しいと思っておりまして、これからもしっかりと説明をしていかなければいけないと考えております。

田嶋(要)委員 反対の方をゼロにすることは不可能だろうと思いますが、今の大臣の御説明の中でも、例えば原発がサイトとしてある町だけで本当にいいのかどうか。

 私が本部長をやったときに再三言われたのは、福島市というのは中通りに存在するわけでありまして、福島、郡山、そういう大都市に対して、彼らの思いは、原発のあるいわゆる浜通りに対して、非常に複雑な心境だったということを多くの方から言われました。浜通りは今までさんざんいろいろなお金も落ちているんだよという話、これは私、詳しく事実はわかりませんが、そういうことを、同じ被災者である福島の中でもいろいろな思いがある中で、大熊町や双葉町の皆さんと福島や飯舘村の皆さんではやはり思いもいろいろあるんだろうというふうに考えたときに、事実上の同意が、原発のあるその町だけの、あるいは県だけの同意で本当にいいんだろうか、そういうような思いをしておるわけでございます。

 順番からいきますと、次の質問で、ページの二でございますが、「新規制基準に係る審査・検査の進め方」、私はこれも一つ不安の材料になるのではないのかなと。

 これは「通常の進め方」というのが上のようでございますが、それに対して、「今回の進め方」は下のやり方で再稼働をしたということでございます。そして、それに対しての枠の中の説明では、右下ですね、一体的審査の導入による審査の効率化を行ったと書いてあるわけですが、これだけ読むと、再稼働を急ぐためにショートカットをしてこっちをやりましたよということが非常に正直に書かれているような印象を受けるんですね。

 何で一般のやり方、今までのやり方と変えたのか。これは国民の安心よりもむしろ不安を惹起することになると考えませんか、委員長。

田中政府特別補佐人 普通、既設の原子力発電所でいきますと、許可の変更申請というのはめったにありません。

 今般、新規制基準では、設置許可に該当する部分の審査から始める、そこに戻って始めるというところがありました。特に今回の新規制基準の最も重要なところは重大事故対策でございまして、それから立地の問題、そういったところについては、ハード、ソフト両面から一体的に確認を行う方が合理的で、効率的という言葉がちょっと誤解を招いているのかもしれませんけれども、合理的であるということで、設置変更許可、工事認可、保安規定認可というようなものを同時申請をしていただいて、それを審査するということにしたものでございます。

田嶋(要)委員 それで、私は何度も聞いたんですけれども、何回聞いてもよくわからないんですね。軽微な事故より常に重大事故の方がみんな心配するわけですから、それに合理性があるなら常に下のやり方を、今までもとるべきだったし、これからもとるべきなんじゃないんですか、委員長。

田中政府特別補佐人 一度きちっとできてしまえば、その後、バックフィットという規制が今回は導入されていますからありますけれども、今までなかった重大事故対策について、新たに今回はたくさんの基準を設けまして、それに対する対応ということで、これは許可のレベルからやらなきゃいけないものです。

 ですから、その許可をした上で、今度は実際に、それが具体的に工事のところできちっとできているか、それからきちっと機能しているか、働かせることができるのかといういわゆる保安規定、そういうところまで一体的に見てやる方がいいということであります。

 一般的にと先ほど申し上げられましたが、ちょっとわかりにくいんですが、最初の許可のところ、重大事故対策みたいなものはもう全部済んでいる、言い方をちょっと誤解しないように。ですから、その後の段階からということが今後多くなりますので、そこのところは従来のやり方に多分多くの場合は戻るということになると思います。

田嶋(要)委員 いや、委員長、私はわからないんですよ。では、これは何で通常の方がうんと時間が長くかかるのかということです。きのうの事務方からの説明だと、二年以上かかるのが通常のやり方。そして、今回は五カ月とか六カ月とか短縮されたやり方でオーケーを出しているんですよ。それの方がすぐれているとか、それの方が一体的に調べられるとか、より合理的だというんだったら、そっちの方がみんないいじゃないですか。だって、政府がそういう資料をつくられているんだから。

 誤解があるかもしれないとおっしゃいましたけれども、より効率的だと言っているわけでしょう。だから、下のやり方の方が常にすぐれているという結論なんじゃないんですか、どんな場合の再稼働であっても。私も事務方に一時間ぐらいこの説明を聞いたんですけれども、何を説明していただいてもよくわからないんですよ、この話は。

 下の方がすぐれているんじゃないんですか。今まで何で上でやってきたのか、私にはよくわかりません。もう一回説明されますか。

 国民の皆さんにわかるように説明していただきたい。ここがまさに安全と安心の差なんですね。このグラフを見る限り、あっ、これは急いだからはしょったやり方をしたんだなととられたって仕方がないでしょう、委員長。

田中政府特別補佐人 下のようなやり方をしなきゃいけないケース、今後、ゼロとは言いませんけれども、既存の原発については、下のような状況は生まれません。許可の三本の線の一番上ですね、変更申請の許可の部分というのは、ほとんどもう既に済んでいるという場合が多いわけですから、既存の原発については。ただ、今回の新規制では、そこを全部含めて、ある意味ではゼロからの見直しと言ってもいいぐらいきちっと見ていますので、そこを一体的に見るということでやらせていただく。

 残念ながら、効率性というのは、確かに、できるだけ速やかに、たくさん審査しなきゃいけないし、安全には手抜きができませんから、そういう点で、効率性は求めたわけですけれども、なかなかそう効率よくは進まなかったというのが実態であります。

田嶋(要)委員 十分わかりませんけれども、国民の皆さんは恐らく私と同じように受けとめる人も多いんじゃないかと思います。効率性という言葉が不適切なら、そこを改善することも含めて、少し見せ方を考えていただきたいというふうに思います。きのうまでの説明と若干委員長の説明は違うような感じもするので、もしそこに鍵があるのであれば、それが国民に伝わるようにお願いしたいと思います。

 資料の五をごらんください。

 これはもう一個の懸念ですが、これは読売の子供新聞でございまして、我が家でとっておるんですけれども、小学生、中学生、高校生が、よく新聞にも、原発は再稼働とこれだけでかく載っているんですが、安全対策は厳しくと。しかし、ただ、地元の鹿児島県は事故のときに住民を避難させる計画をつくりましたが、まだ訓練は行っておりません、こういうふうにはっきり書かれておるわけであります。

 やはり普通に考えれば、動かす前に訓練を一回ぐらいちゃんとやってくれよと。現に、やる予定が五月か何かにあったようでございますが、これは聞いた話でありますけれども、再稼働が忙しくて訓練する時間がないとか、本末転倒のような説明も聞いておるんですね。こういうことをそのままにして再稼働していいのかということを多くの方がおっしゃっている。

 きょうは時間がありませんが、火山の専門家が誰もいないということが、質問主意書でしっかりと、回答で、すれ違い答弁ではありますけれども、資料の四、専門家が誰もいないと。これも多くの方が指摘をしている。

 それから、先ほど別の委員からございました、沃素の配付は七割しかいっていないということですね。わずか四千九百人の人口のPAZの中ですらたったの七割しかできていなくて本当に大丈夫なのか。私が一番現地で苦労したのも、そういう最初の三日間、沃素の半減期までに、多くの子供たちの心配の声がたくさんあって、それが現場で最大の、一種の我々が動くときの大変な作業量につながっていったわけでございます。

 結論的に言えば、やはりそういう全体からして拙速ではないのかなというふうに思うんですが、避難訓練を行わなかったことを副大臣はどのようにお受けとめになりますか。

小里副大臣 川内地域につきましては、規制委の指針が出された直後の一昨年十月に国の主催による原子力総合防災訓練を実施いたしました。これを踏まえまして、関係省庁を挙げて、鹿児島県等と協力して、避難計画の具体化、充実化を進めてまいりました。そして、昨年九月に原子力防災会議でこれを確認し、国として了承したところでございます。

 このように、川内地域につきましては、既に国と関係自治体が一体となって、防災体制がしっかり構築をされております。その上で、住民への説明を行い、また県や関係自治体の役割に応じた訓練、例えば自治会単位の訓練であるとか、内閣府を交えましたところの避難経路確認訓練等々も行ってきたところでございます。その上で、地域の住民、原子力事業者も含めた関係機関が参加して行う鹿児島県の訓練につきましては、住民や関係機関の参加しやすい時期を選んで実施をするということになってまいります。

 国としましても、県の訓練を企画段階から支援しておりました。国の機関も積極的に参加するなど、引き続き強力にバックアップをしてまいります。

田嶋(要)委員 いいことをいっぱい言ってくださるんですけれども、やはりこういうことというのは、実際に人が外に出てみて、車にみんなが殺到してみてどういうことが起きるかというのをやった方がいいんじゃないですかね。福島だってやはりそういうところで苦労したんだし、鹿児島ではこういう経験はしていないわけですから、やってみて初めてわかることというのはたくさんあるんだろうと。机上のプランが幾らしっかりしていても、私は、それは再稼働の条件としては満たしていないんじゃないか、別に法律には書いていなくても、そこはそういうふうに感じますよ。

 もう一点、先ほどの沃素でございますけれども、例えば、お医者さんの説明が必要だから一回来てもらわなきゃいけないということですね。だから、郵送でばっと配るわけにはいかなかったというのはわかるんですが、一年も二年もあるわけですから、幼稚園や保育園の入学式、小学校の入学式、卒業式という親が一緒に来るようなタイミングでそういう会もセットするとか、やる気になれば幾らでもそのチャネルはあったと僕は思いますね。そこはそれなりの努力はしたけれども、最後の最後、子供さん、特に小児甲状腺がん、そういったことの影響を一番受けやすい方々にしっかりと手を打つということは、私は欠落をしていたというふうに考えております。

 時間になりましたので最後に一問だけお伺いをいたしますけれども、国の最終責任ということですね。

 いろいろなことを聞いてくると、政府の説明は往々にして伝聞になるんです。というように県はやってくれていると思いますと。これで本当にいいんでしょうかということなんですよ。それは県もしっかりやっていると思うんですが、ここが大臣、先ほどの安全と安心の違いだと思いますね。やはり国民の多くは、県境は関係ないんですよ、原発事故は、実際問題として。したがって、再稼働をさせるのであれば国が全責任を負うというその姿勢を見せることが大事であって、それは安全の問題じゃなくて安心の問題なんです。

 私たちは法案を出させていただいております、七月三十一日に。その法案の中で、やはり住民避難計画、避難訓練も含めて、お墨つきを国がしっかり与えるということが大事だと。形式かもしれませんが、最後の責任は国にあるぞという中身、そして、鹿児島県は福島の経験はしていません。しかし、国は福島と一体になってさまざまな御苦労をしてきたわけだから、知見はやはり国にあるはずなんです。

 そういうことを含めると、オンサイトは原子力規制委員会、しかし、オフサイトの住民避難計画までしっかり国が責任を持つということを法律で形に示していくということが私は大事だというふうに考えておりますが、その点はそのようにレベルを上げていくというお考えはございませんか。いかがですか。

小里副大臣 御指摘のとおり、避難計画、防災計画につきましては、自治体だけでなく、国の関係機関が大きく役割を担って責任を果たしていくべきであると思います。関係自治体が国に対して求めておりますのは、上から目線ではなくて、第三者的なチェックや審査でもなくて、国が積極的にかかわって一体となって取り組むということを求めております。

 このため、政府としては、原発立地地域ごとに地域原子力防災協議会を設置して、国と関係自治体が一体となって防災計画の充実強化を行ってきているところでございます。その上で、その内容については、全閣僚がメンバーであるところの国の原子力防災会議、これは規制委員長が副議長でもありますけれども、ここで了承する、いわばお墨つきがそこにあると認識をするところでございます。

 こうした取り組みにつきましては、災害対策基本法に基づく法定計画でありますところの防災基本計画に位置づけられておりまして、地域の緊急時対応に対する国の責任は明確になっていると考えるところであります。

田嶋(要)委員 上から目線を求めているわけではございませんで、やはり原発は国策であるし、いろいろな意見がある中で、そして、完全に不安が解消されていない中で原発再稼働ということになったわけであります。しかし、そういうことであればなおのこと、先ほどの国民へのリスクコミュニケーションという観点からすると、最後の責任を国がとるんだという形をやはり示すことが私は大事だというふうに思っておりますので、その点を最後に申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

江田委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 八月十一日に川内原発一号機が再稼働されまして、この再稼働の後の世論調査でも、反対が多数という状況は変わっておりません。共同通信では五五・三%が反対、読売新聞の世論調査でも五八%が反対。まさに多くの国民の意思に反して再稼働が強行されたということについて、まず強く抗議をしたいと思います。

 そしてまた、地元の南日本新聞は、再稼働の翌日の社説でこう指摘しております。「最終的な責任の所在をあいまいにしたまま、反対の声を押し切って再稼働へ突き進む日本の姿勢は、福島以前と何ら変わっていないように見える。」こういう指摘であります。そのとおりだと思うんですね。福島以前に逆戻りする、それにつながる再稼働ということで、私たちはこの運転停止を強く求めたいと思います。

 その上、この川内にとどまらず、今の安倍政権の動きを見ておりますと、再稼働を促すようなさまざまな動きがある。とりわけ、今、来年度予算を検討されている時期でもありますけれども、この中にある交付金や事業費補助金などについても、そこがちょっと透けて見えるような感じもいたしておりますので、きょうはこの点をお聞きしたいと思います。

 二十六日の報道で、経済産業省が来年度概算要求として、新たにエネルギー構造転換理解促進事業として四十五億円の事業費を要求していると報じられました。

 大臣にお聞きしたいんですが、こうした制度を検討されているのか、それが事実なのかということと、事実とすればどういう趣旨から御検討になっているのか、お聞かせ願えればと思います。

宮沢国務大臣 まず最初に、委員から、福島以前と同じではないか、こういうお話があったわけでありますけれども、かなり状況は変わってきていると私は思っております。

 福島以前であれば、原子力発電の電力というのは、ある意味では理想の電力だったわけです。経済性にもいいし、また一方で、国内で、ある意味では準国産エネルギーといった意味で自給率も高くなるし、そして環境にも優しいということだったわけですけれども、残念ながら福島の事故が起こって、やはり安全性といったものをしっかりチェックしなければいけない。こういうことで独立した規制委員会を設けまして、ある意味では世界最高水準の新規制基準をつくりまして、そして、審査をしていただいて、適合していると認められたものについては再稼働を進める、こういうことでございまして、福島の前と同じというわけではないということだけまず申し上げておかなければいけないと思っております。

 そして、今、原子力発電所をめぐる動きというのは、例えば川内原発を初めとして再稼働の動きがある、一方で幾つかの廃炉が基本的に決まっているというようなことで、いろいろな状況が出てきておりまして、それぞれの各立地地域に即したきめ細かな取り組みというものが必要と考えております。

 今、報道の件がございましたけれども、二十八年度の概算要求、これはまだ要求をしたわけではなくて、月末にすることになりますけれども、廃炉になる原発が存在する立地市町村等が取り組むエネルギー構造の転換を図るための事業を支援するため、エネルギー構造転換理解促進事業、四十五億円を要求するという方針で臨んでおります。

 具体的には、地域のエネルギーインフラを活用し、水素発電、高効率LNG火力などの導入のための実現可能性調査や、廃炉に関する正しい知識などを地域住民に説明するための講習会、説明会の開催など、ハード、ソフト両面からの支援を想定しております。

藤野委員 福島以前に戻る、何もそのまま戻ると言っているわけではなくて、あれだけの事故があったにもかかわらず再稼働するということで、そのことを問題にしているわけです。

 そして、私の質問をちょっとお聞きになっていなかったかもしれませんが、どういった趣旨からこうした制度を検討されているのか。昨日のレクでは、原発依存度の低減、これも一つの趣旨だというふうに説明をいただいたわけですけれども、この観点からしますと、廃炉が決まった自治体に限定するという理由はないと思うんですが、今四十五億円とおっしゃった、検討しているとおっしゃった制度は、対象自治体として廃炉が決まった自治体に限定するものではないという理解でいいでしょうか。

宮沢国務大臣 まさに、これまでの国会の質問でも、廃炉の時代に入ったという趣旨で質問を受けたこともありますけれども、廃炉というものが現在、大変大事なことになっているということは確かでございまして、そうした意味で、今回の補助金を予算要求しているわけでございます。

 そういうことでございますから、基本的には、当然、立地市町村が中心になると考えておりますけれども、制度的には、立地道府県、立地市町村以外の道府県または市町村についても、補助対象から排除するということは想定しておりません。

藤野委員 原発依存度を低減していくという趣旨からすれば、当然のことだというふうに思います。

 そして、そういう趣旨からしますと、今回、事業費という形なんですけれども、私は、そういう単年度の、しかも、事業に対する、ある意味ちょっと限定された形ではなくて、交付金制度のあり方そのものを全体として抜本的に見直していくべきだというふうにも感じております。その点からしますと、交付金本体といいますか、交付金制度について非常に大きな問題があるのではないかと感じております。

 例えば、今年度予算で既に設けられているわけですけれども、原発が再稼働した場合に、交付金を整備支援事業として出す。これが、報道ですけれども、来年度では二・五倍に拡充される。再稼働したらもらえるよという交付金が拡充する。あるいは、再稼働しようかどうか、とめたままになっているという自治体に対して、大臣が八月十一日の記者会見でも表明されましたけれども、いわゆるみなし交付金制度を、現状の八一%を見直していく、七割程度に減らすということになるわけです。あともう一つ、報道で、これもきょうありましたけれども、使用済み核燃料のいわゆる貯蔵可能量をふやしたら交付金をふやしましょうというのも検討されていると。

 こうした交付金制度の増減を見ていきますと、再稼働したらもらえる量がふえるとか、再稼働していなければ今までもらえていた交付金が減るとか、あるいは、核のごみが出た場合に、それをたくさん持てるようにしたら交付金がふえるとか、こうした交付金制度そのものだけ見ますと、一体どういうインセンティブを与えるのか。大臣、こういう制度は、こういう交付金の増減は自治体にとってどういうインセンティブになると思われますか。

宮沢国務大臣 まさに出発点が委員と私とは全く違うわけでございまして、私どもは、先ほど申し上げましたように、規制委員会の基準に適合していると認められた原子力発電所については再稼働を進めるということであり、二〇三〇年のエネルギーミックスにおいて原子力発電の割合が二〇から二二%程度必要だという方針で進めております。

 そういう中で、まさに、例えばみなし交付金制度については、インセンティブといいますか、もともとの制度が全国一律八一%という極めて高い稼働率を前提として交付されておりまして、これをやはり実績にするというのは極めて合理的なものだろうと思っております。

 したがって、インセンティブ云々というよりは、まさに実態に即した交付金に変える、こういうことだろうと思っております。

藤野委員 質問にお答えになっていないわけで、これはインセンティブがどうなのかということをお聞きしました。

 時間の関係もあるので言いますけれども、要するに、再稼働すればもらえるのがふえる、しなければ減るというわけですから、明確にインセンティブとしては再稼働を促進するということになると思うんですね。再稼働すれば、その立地自治体はますます原発に依存をするということになってきます。

 政府は一方で、原発依存度を可能な限り低減するという大方針を持っておられるわけですけれども、こういう交付金制度があれば、むしろ自治体の原発依存度をますます高めてしまうということになると思うんです。

 私は、一方で、政府がどんなことをやっているかということもちょっと調べてみたんですが、総合エネルギー調査会のもとに廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループというのがつくられて、議論もされておって、私も議事録を読ませていただきましたけれども、ことし三月に報告書も出されている。

 この報告書に何と書いてあるかなんですが、なかなかいいことが書いてあると思うんですね。どういうことを書いてあるかといいますと、「現行制度では、財務・会計上の理由から事業者が廃炉判断の先送りや運転を継続する判断を行うなど、事業者の合理的判断を歪め、廃炉が円滑に進展しない可能性がある。」「財務的な影響をより考慮し、廃炉を行わないインセンティブが生じることも想定される。」というふうに指摘しているんですね。今の現行の制度では、会計上ですけれども、事業者の合理的判断をゆがめると。

 それで、結論としてこう言っております。「廃炉を円滑に行っていく中において、会計ルールがネックとなる事態は避けなければならず、むしろ、廃炉を円滑に進めるために、会計はどのようにあるべきかという視点で考えることが重要である。」と。ですから、視点がはっきりして、その視点から、例えばこれでいえば会計をどう考えるかというしっかりした視点がある意味あるわけですね。

 事業者については、廃炉したら大変だ、一括計上、損失が大変だということで、こういう検討もしっかりといいますか、ワーキンググループまで使ってやられているわけですけれども、廃炉で財務上の影響が生じるのは、事業者だけではなくて、自治体も同じだと思うんですね。むしろ深刻だと思います。では何で、その自治体について、財務上の影響で合理的判断をゆがめるようなおそれがあるわけですから、そこはやはり廃炉という視点を据えていろいろな制度を見直していくべきじゃないか。この点については会計制度を見直しております。

 私は、同じように、廃炉についても、交付金制度について、廃炉を円滑に進めるという視点から抜本的に見直すべきじゃないかと思うんですが、大臣の御認識はいかがでしょうか。

宮沢国務大臣 廃炉を進めていくということは、当然のことながら、大変大事な政策であります。したがって、原子力発電施設立地地域基盤整備支援事業交付金として本年度から新設をいたしましたけれども、今般の要求においては、これは、再稼働だけではなくて、廃炉の進展を踏まえて必要な額を要求するということにしておりまして、廃炉についても、やはり自治体にそれなりの配慮はしていかなければいけないと考えております。

藤野委員 おっしゃったとおり、配慮はしていますね。しかし、私が質問したのは、廃炉という観点から、単なる配慮、配慮と廃炉、似ていますが、配慮じゃなくて交付金制度そのもののあり方を抜本的に見直すべきだという質問なんですね。

 先ほど公平だみたいなことをおっしゃいましたけれども、原子力小委員会の中間整理を見ますと、八一%のみなし制度を見直すのが公平だと確かに言っているんですが、要は、交付金制度というのは、原発を初めとする発電装置を設置し、あるいは円滑に運転するというための交付金制度。この交付金制度の制度趣旨からすれば、とまっているんだから減らすのが公平だ、こういう論立てなんですね。あくまで、現時点の、あるいは福島以前の、原発を促進する交付金制度の制度趣旨が前提になっているというのは私はおかしいと思うんです。

 事業者についてはこういう角度で検討されているわけだから、同じように財務上の影響を受ける自治体についても、その交付金制度についても、私は、廃炉という観点から抜本的に検討すべき時期だというふうに思います。

 その上で、今必要なのは、そういう再稼働を応援することじゃなくて、先ほどもお話が出ましたけれども、やはり福島の現実にしっかり応えていくことだと思います。

 我が党の国会議員団は、この立場から、八月九日、十日と福島現地調査を行いまして、楢葉町の松本幸英町長からもお話を聞いてまいりましたし、仮設住宅でもお話を聞いてまいりました。ぜひ大臣に伝えてほしいという生の声がありましたので御紹介したいんですが、繰り返し聞いたのは、政府のやり方は逆じゃないか、こういう声なんですね。

 例えば、楢葉町に住んで、今いわきに避難されている方はこうおっしゃっていました。息子は鎌倉に移住した、家族みんなばらばらだ、以前は周りに九軒の御近所さんがいたが、帰ると言っているのは私だけだ、これじゃ帰っても意味がない、総理大臣さんは国道や電車ができたからもう帰れると言うけれども、帰れる状況なら、偉い人に帰れるよと言われなくたってすぐ帰るんだ、飛んで帰る、でも帰れないんだ、こういう声がありました。

 また別の方は、お母さんでしたけれども、楢葉の水源である木戸ダムというのがあるわけですが、木戸ダムの水は安全なんですか、上澄みをすくうから大丈夫と政府は言うけれども、台風で攪拌されたら、底にたまっていると言われる放射能が拡散されるんじゃないか、この木戸ダムの水でミルクをつくって子供に飲ませられるのか、こういう声もありました。

 大臣や議員の人たちは、自分の子供や孫たちを連れて楢葉で一緒に住んでほしい、一週間とかではだめだ、半年、一年、実際に住んでほしいという声もありました。自分は遠くにいて、帰れ帰れと言う、それは違うだろう、こういう指摘もありました。

 大臣、これは現地の声であります。しっかり受けとめていただきたいと思うんですね。これは、私が聞いた一部の声ではなくて、オール福島といいますか、福島全体の声でもあると思っております。

 大臣のもとにも届いていると思うんですが、福島県原子力損害対策協議会、これは、県の医師会や中小企業団体を初めとする二百六団体、まさにオール福島の団体が、与党の第五次提言に対して意見をまとめたものでありまして、まさに福島の政財界を代表する声であります。

 この中で指摘されているのを二つほど紹介したいんですが、一つは、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合はこうおっしゃっています。賠償の問題です。「「二年分一括支払い」については、今後原発処理作業等の事故による風評再発等も懸念されることもあり、一括払いは安易に受け入れることはできない。」こういう指摘でありました。

 また、福島県の中小企業団体中央会はこうおっしゃっています。「風評被害は噂によって生じるものであるため、その原因物質、」すなわち「福島第一原発の溶融核燃料や汚染水が撤収されない限り収まらないと考える。従って風評被害に対する営業損害賠償は福島第一原発が更地になるまで続けるべきである。」これは、大臣も恐らくお会いになったことがあると思うんですが、福島県の中小企業団体中央会の意見であります。

 大臣にお聞きしたいんですが、例えばこの中央会の、その原因物質、溶融核燃料などが撤収されない限り損害や被害というのは出続けるんだ、原因がなくならない限り損害は出続けると。大臣、このとおりだと思われませんか。

宮沢国務大臣 実際に、例えば福島県の修学旅行が減っているとか、また物が売れないということが起きているわけであります。特に、例えば福島県の小学校の給食でも、地元産は使わないでくれという父兄がたくさんいてなかなか地元産が使えない、こういう状況があって、やはり風評被害というものがかなり根強く残っている。

 これにつきましては、やはり政府を挙げて粘り強く安全と安心といったものを福島県の方に持っていただけるような、また全国の方に持っていただけるような、そういうことをやっていかなければいけないと思っております。

 そして、営業被害また風評被害については、二年間において東京電力が営業被害、風評被害への賠償について適切な対応を行った上で、その後はまさに被害が出ているというような個別の事情を踏まえて適切に対処するということで、二年で打ち切りということではないということでございます。

藤野委員 私が聞いたのはそういうことではなくて、原因物質がある限り被害というのは出続けるんだと。この点についてそのとおりだと思われませんかという質問です。もう一度お答えください。

宮沢国務大臣 原因物質といったものが恐らく最終的に除去されるのは、廃炉が完成するということになりますと三十年、四十年先ということであります。ただ一方で、既に福島県のほとんどの地域におきましては、生活においてもまた営農するにおいても何ら問題がないわけでございまして、そういうことをしっかりと説明することによって、永久に続くというようなことがないようにしていかなければいけないと思っております。

藤野委員 結局お答えになっていないわけですね。原因がある限り損害や被害は出続ける、これは中小企業団体中央会の指摘であります。そのとおりだと思うんですね。いろいろ周知徹底してもその原因物質がある限り被害はなくならない、出続けるということでありますから、二年で打ち切りではないという話がありましたけれども、しっかりそこはこの声を受けとめていただきたいと思います。

 そして、もう一問。帰りたくても帰れないという声をお聞きだと思うんですけれども、その大きな理由として、特に若い世代なんですけれども、福島第二原発の廃炉が決まらない、大きな余震も続く中でこれが決まらない問題が、帰る決断をしないという、特に若い世代の中でも大きな原因になっているわけです。

 これを受けて、県議会ではまさに全ての会派が第二原発の廃炉を求めておりますし、自民党も事実上支持した内堀知事も、当選してすぐに大臣はお会いになったと思うんですが、そのときにも第二原発の廃炉を求めました。

 これは政治の決断、国の責任で決断すべきだというのが県議会の要望書にもあるわけですが、これは本当に今こそ決断すべきじゃありませんか。大臣の御認識をお願いします。

宮沢国務大臣 第一原発の五号機、六号機につきまして、ある意味では安倍総理から要請した結果、事業者が廃炉を決断したということがあったので、第二原発も、こういうお話があることは私も知事からも伺っておりまして承知をしております。

 ただ、第一原発につきましては、原子力災害対策特別措置法に基づく緊急事態宣言のもとにありまして、法的に実は総理大臣に廃炉にする権限があるという中で行われたものでありますが、一方で第二原発についてはそのような位置づけがされていないということになりますと、我が国は法治国家でありますから、例えば多数の民間株主がいる、東電の株主についてまさに損害を与えるというようなことについて、国として法律なしに決めるわけにはまいりませんので、基本的に東電自身が判断していただくということだろうと思っております。

藤野委員 株主ということをおっしゃるんですけれども、ではあえてお聞きしますけれども、この東電の最大の株主は誰でしょうか。

宮沢国務大臣 申し上げましたのはまさに、最大の株主は国でありますが、国といいますか原子力賠償機構でありますけれども、一方で、まさに五〇%近い民間の株主、当然外国人もいらっしゃいますけれども、そういう方の憲法上の財産権といった問題があるということを申し上げております。

藤野委員 株主ということでいえば、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が五四・六九%、半数以上を持っているわけですね。しかも、この原子力損害賠償・廃炉等支援機構を担当する大臣、これは宮沢大臣ですよね。

 ですから、株主、株主とおっしゃるのであれば、まさに大臣がイニシアチブを発揮して、これは地元が全て求めているわけであります。だからこそ、県議会も全ての会派が一致しているし、内堀知事も繰り返し求めているし、損対協でも本当に何度も何度も求めている。

 政府が帰れ帰れと言っている。帰れ帰れといいますか、政府が進めようとしている帰還政策についても、ここが非常に大きなネックになっているというふうに地元で言われているわけでありますから、ここは、本当に今こそ、株主云々ということで逃げるのではなくて、しっかりイニシアチブを発揮していただきたい。

 最後になりますけれども、安倍政権のやり方というのは、現地で、先ほど紹介しましたけれども、本当にやり方が逆だと。帰れないのに帰れますよ、あるいは、営業の損害、さまざまな損害、被害が続いているのに、事実上収束していきますよ、打ち切っていきますよということで、そういう意味では、やり方が逆というのは、私、そのとおりだというふうに思っております。

 福島の事故を経験した日本が今やるべきは、再稼働ではなくて原発ゼロの日本を実現することだということを述べて、質問を終わります。

江田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 落合貴之でございます。

 本日も、維新の党のトップバッターで質問させていただきます。

 まず、貿易保険について伺います。

 貿易保険法改正案は、先月、参議院も通過しまして成立をしております。衆議院経産委員会での審議では、私は、経済、金融のグローバル化で保険の財務リスクが高まる可能性、そして再保険をなくすデメリットなどを指摘させていただきました。

 先月、七月十日金曜日に参議院本会議を通過して成立しましたが、それを待っていたかのように、翌土曜日の日経新聞朝刊で「対ベネズエラ貿易保険停止 原油安で代金焦げ付き 日系企業関連損失二百億円」と報道されて、そして、翌日曜日の日付でNEXIのホームページに、ベネズエラに対する取引停止が発表されています。

 NEXIの最新の財務諸表を見ますと、二〇一三年の経常利益は六十九億円、経常収益百四十二億円。報道では日系企業損失二百億円とありますが、保険金の支払い金額は実際幾らになるんでしょうか。

寺澤政府参考人 お答えします。

 独立行政法人日本貿易保険、NEXIにおきましては、保険契約者からの保険金請求を受けまして、本年七月十日に約百二十四億円の保険金の支払いを行ったところでございます。

落合委員 大臣、これは結構大きな金額です。

 二年前の経常収益が百四十二億円で、経常利益は六十九億円、その中で、この件での支払いが百二十四億円。この事態を法案成立直後に発表しているということで、この時間について、けさ気づいたので通告はしていないんですが、七月十日の参議院の採決の際に、もう大臣は、この巨額の保険金支払いが発生すること、これは認識していたんでしょうか。

宮沢国務大臣 正確に申し上げますと、私も新聞報道を見て知ったということでございます。

落合委員 これは、役所を管轄する責任者として、法案の審議をして、国会、採決で通る前にやはり知らせなければならない重要な問題であるということを私はここで指摘させていただきます。

 NEXIのホームページ、取引停止の事由に、「同国の外貨事情の一段の悪化が懸念されるため」とあります。この国は、そもそも輸出収入の九六%が石油である。

 これは想定できなかったんでしょうか。

寺澤政府参考人 お答えします。

 委員御案内のとおり、ベネズエラは世界有数の産油国であって、年間の産油量は世界十一位、原油埋蔵量は世界第一位ということでございます。NEXIとしても、ベネズエラのこうした重要性に鑑みて、貿易保険の引き受けを通じ、ベネズエラで活動する日本企業を後押ししてきたところでございます。

 他方で、長年政権にありましたチャベス大統領が二〇一三年三月に死去し、また、御指摘があったような原油価格の下落、特に昨年の七月以降の原油価格の急速な下落を背景として、ベネズエラは外貨事情が急激に悪化したところでございます。

 こうしたリスク状況を踏まえて、NEXIにおきましては、原油価格が急落する以前の二〇一三年の十月から、第三国での支払い保証がなされている場合などに限定して、対ベネズエラ向けの貿易保険について極めて慎重な引き受け方針をとっているところでございます。

落合委員 過去の巨額の支払いはどういうものがあるのかと調べてみますと、湾岸戦争の年は三千四百億保険金を支払っています、旧ソ連の崩壊の関連では十年ぐらいで二千億円超、アジア通貨危機の年は五百億円。これは、保険料収入をはるかに超えた支払いがやはり数年ごとに起こっているわけでございます。

 経済環境、国際環境によっては、再保険制度を復活させたりですとか、再び制度に手をつけるということは選択肢にはあるんでしょうか。

宮沢国務大臣 ベネズエラの件が最近こういうことになったわけでありますけれども、もともと制度の趣旨といたしまして、当然リスクがあるから輸出保険を掛けるわけでありまして、運営としては、先ほど局長から答弁しましたように、非常に防御的な運営を最近やってきておりましたけれども、やはり、まさにリスクが顕在化して支払いをするということは当然のことながらあるという前提でこういう制度をつくっているわけであります。

 そして、今、成立したばかりの法律をさらに変えるつもりはあるか、こういうようなお話がございましたけれども、現在の御賛同いただいた貿易保険法の改正案におきましては、引き受けリスクに見合った責任準備金の積み立てをNEXIに義務づけるとともに、NEXIが保険金を支払えなくなった場合には国が必要な財政上の措置を講ずるということとしておりまして、再保険制度の復活といったことは考えておりません。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

落合委員 リスクがあるから保険が成り立つ、だからこそリスクをプロが管理していかなければならない。

 これは、今それなりの金額、余剰金がありますが、大臣がおっしゃったように、履行担保で、これからは一般会計が、もしものときは負担することになる。これは国民負担の発生となります。再来年から特殊会社化しますので、株式会社ということで、国会の予算のチェックなども行き届かなくなる。やはり、監督官庁の経産省そして株主としての国の責任は、よりこの制度変更で大きくなると思いますので、ぜひ厳しく注意を払っていただきたいと思います。

 それでは、次に、青森県の六ケ所村の核燃料再処理施設に関連する問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、今月上旬に一人で視察をしてきました。日本原燃の方がかなり丁寧にいろいろなところを見せてくださいまして、核燃料サイクルの重要性もじっくり説明をしていただきました。本当に勉強になりました。

 そこで、六ケ所村の核燃料再処理工場は、もう二十二回完成が延期されています。着工したのが二十二年前の一九九三年。二十二年かかってもまだ完成しない。建設費を調べてみますと、当初の見込みが七千六百億円、これが今二・二兆円にふえて、さらにふえる可能性もなきにしもあらずである。延期を重ねて建設費がふえ続けている。

 これは何で二十二回も延期されているのか。この原因は何なんでしょうか。どうお考えでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日本原燃株式会社の六ケ所再処理工場でございますが、二十二回の竣工の延期という経緯を踏まえております。

 この原因でございますけれども、まず延期そのものの原因を考えますと、御存じのとおり、放射性廃棄物のガラス固化の工程で技術的なトラブルがございました。それに加えまして、耐震性向上のための詳細設計の変更、震災での中断、さらには、現在申請中でございますけれども、新規制基準への適合審査が長期化している、これらのことが挙げられると考えております。

 ただ、特に、二十二回はなぜなのか、この点について申し上げますと、先ほど申し上げましたガラス固化工程、これは技術的課題があったわけでございますが、これを克服する過程におきまして、やはり、ある意味ではこの課題の深刻さというものに対する認識が不十分なままに小刻みに延期を重ねてしまった、これで回数がふえてしまった、こういった側面があったかと存じます。

 それから、御指摘の総工費の増加という点でございますけれども、これも八九年当時、当初の想定から先ほど御指摘のようにふえているわけでございますけれども、これも耐震強化等の新たな対策によってふえたというところがございますけれども、それに加えまして、たび重なる竣工の延期ということで維持管理費がふえてしまっている、こういったことがあろうかと思います。この点につきましても、あえて申し上げますとやむを得ない面もあろうかと思います。

 ただ他方で、やはり日本原燃株式会社は御存じのとおり寄り合い世帯という面があったかと思いまして、プロジェクト管理という点で十分だったかというところについては反省すべき点もあるのではないか、このように承知をしております。

落合委員 やはり反省すべき点はあると思いますね。なぜなら、当初の見込み七千六百億円が、少し上振れしたどころではなくて三倍になっているわけです。

 では、今の計画ではいつ完成する予定なのかというと、来年の三月ということになっています。これは本当に来年の三月で完成するのかな、そもそも何で来年の三月なのかなと考えてみますと、はっきりとはわかりませんでしたが、今、この六ケ所村の再処理施設のあり方自体、それからどういうふうにコストを負担するのかということが話し合われていて、来年の三月の翌月、電力自由化が、小売の自由化が始まる、その前までに完成させなきゃいけないということで来年三月というふうに設定したんじゃないかなというふうにも捉えられると思います。

 これは今まで、もうすぐできますできますと言って完成してこなかった。電力の小売自由化の前までに急いで完成させようということも、やはり事故のリスクもありますので危険なことだと思います。核燃料が濃縮されていますので、原発よりも事故が起きたときの被害は大きくなるという指摘をする専門家もたくさんいらっしゃいます。また、海外でも事故が起きています、実際に。

 この次の期限、完成予定までに実際に完成しなかったということであれば、もうこれは中止をするということも検討に値をするのではないかと思います。次の期限がまた延期された場合、中止を検討するという選択肢はありますか。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

宮沢国務大臣 昨年の四月に閣議決定いたしましたエネルギー基本計画におきましては、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減、資源の有効利用などに資する核燃料サイクルについて、引き続き関係自治体や国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、再処理やプルサーマル等を推進することとしておりまして、この方針には変わりはございません。同工場が早期に竣工することを期待しております。

落合委員 推進の方針には変わりがないということですが、今巨額の資金が投入されていて、これは、民間企業としての決断では絶対に中止の決断はできないと思います。もし中止をするのであれば、政治が決断するしかない。やはり私は、中止をするという選択肢は排除すべきではないということを指摘しまして、次に移らせていただきます。

 低レベル放射性廃棄物の処理の問題についてですが、これから東海発電所を先頭に廃炉の作業が始まるわけですが、今我が国では、福島第一原発以外でも五基、原発の廃炉が決まっています。そして、今ある四十三基も順次廃炉になっていくわけです。

 ここで大量に出る放射性廃棄物の問題が出てくるわけですが、資源エネルギー庁は放射性廃棄物を三つに分類、高レベル廃棄物、低レベル廃棄物、クリアランスレベル以下の廃棄物に分類をしていまして、クリアランスレベル以下のものというのは、汚染度が極めて低いので再利用する。高レベル廃棄物は、使用済み核燃料を再処理する際に出てくる高レベルの廃液をガラス固化する。それ以外が低レベル廃棄物に分類されております。

 低レベルという名前でも、放射能レベルの高い廃棄物も含まれているわけで、例えば制御棒、これは炉心の中心部分ですので放射能レベルはかなり高いというわけですが、これも低レベル廃棄物に現状分類されているということでよろしいですね。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 放射性廃棄物の分類でございますが、先ほど資源エネルギー庁がと御指摘ございましたけれども、正確には、原子炉等規制法で、政令あるいは省令によって、放射能濃度によって区分がされているところでございます。

 御指摘の制御棒でございますけれども、御指摘のとおり、低レベル放射性廃棄物というものに整理をされるわけでございます。この低レベル放射性廃棄物、濃度の高いものからL1、L2、L3という形でそれぞれ分かれておりまして、その処分の仕方につきましても、余裕深度処分というものから、ピット処分あるいはトレンチ処分、このように分かれているところでございます。

落合委員 低レベルの廃棄物でもかなり高レベルに近いものがあるということで、今、高レベル廃棄物の処分場の問題も議論されていますが、低レベルの中で汚染度の高いものも同じようにかなり難しい問題であると思います。

 それから、低レベル廃棄物は量の問題がある。例えば東海発電所の廃炉で、低レベルの廃棄物、どれぐらいのトン数が出て、低レベルの処分場をつくるとなると、どれぐらいの面積が必要なんでしょうか。

高木副大臣 東海発電所の廃炉に伴い発生する低レベル放射性廃棄物の量は、事業者である日本原電の推定によりますと、制御棒などの放射能レベルの比較的高い廃棄物、いわゆるL1廃棄物が約千六百トン、原子炉圧力容器などの放射能レベルの比較的低い廃棄物、L2廃棄物が約一万三千トン、熱交換器などの放射能レベルの極めて低い廃棄物、L3の廃棄物が約一万二千三百トンでございます。

 このうち、放射能レベルの極めて低いL3の処分場の面積は、事業者から原子力規制委員会に提出されている埋設事業許可申請書によれば、約八千平方メートルというふうになっております。

落合委員 それだけ、二万数千トンの廃棄物がまず出る。それから、L1に関してですが、規制委員会の検討チームも二カ月前に、低レベル廃棄物でも放射能濃度の高いものは深さ五十メートルに十万年保管するという案を示しています。これは相当費用がかかってしまう問題なわけですが、東海発電所の廃炉においては、この低レベル廃棄物の処理にどれぐらい費用がかかると見込んでいるんでしょうか。

高木副大臣 東海発電所の廃炉に伴い発生する低レベル放射性廃棄物の処分費用については、解体後の除染費用などの処理費も含めまして、事業者において約五百億円と見積もられております。

落合委員 これは、去年の東京新聞によると、経産省も、中型のもので四百四十億から六百二十億ということで、その範囲に入っているというふうに思います。

 それで、いろいろな専門家の意見を見ますと、ドイツの廃炉コストは二千五百億から三千五百億程度、実際にはかかっているということです。これは、実際にやってみたら、物すごくコストがかかるという可能性はあり得ると思います。高レベルの廃棄物の問題に加えて、この低レベルの廃棄物もかなり重要な問題です。原発自体が国策民営と言われてきたわけですので、国として、この問題、責任を持って取り組まなければならないと思いますので、ぜひ私もいろいろと注視させていただきたいと考えております。

 本日は、ありがとうございました。

江田委員長 次に、足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 経産委の皆様方も御無沙汰をしておりますというか、ふだんは厚生労働委員会で仕事をしておりまして、きょうも久しぶりに経産委に来させていただきましたら大変整然と審議が行われていて、厚生労働委員会にいますと、もっと、大変整然とは言えないような、きょうも法案の審議だったんですが、年金情報流出の集中審議みたいな感じになっていまして、私も質問してまいりましたが、ようやく抜け出してくることができまして、ほっとしております。

 きょうは、私の方からは、お手元に資料を配らせていただいています。ちょっと字が多くて恐縮ですが、いわゆる原発再稼働責任法案という形で、我が党、維新の党が、今まだ法案の提出には至っておりません、大変膨大なものでありまして、今、衆議院の法制局と調整しながら条文に落とす作業をしておりますが、ここにお配りをしているのはその骨子であります。

 それで、きょうは、こういうものも背景に、川内原発も再稼働されましたので、原子力政策について幾つか御質問をさせていただきたいと思います。

 こういう議員立法といいますか、これがすぐに成立するとは思っていませんが、我々がもし政権をとることが将来あったときにはこういう枠組みで議論をやはりするだろうというものを、具体的な法案のレベルでつくっていくことが大事だと思っております。与党と、あるいは政府と議論をさせていただくときにも大事だと思っております。

 きのう、我が党でも若干、報道の言葉で言うと内紛とか分裂とか、そういう議論がありますが、一体何をもめているのかというと、結局、こういう真面目な仕事をするのか、あるいは山形の市長選挙のような、地域の大事な四年に一度の選挙で、あたかもそれを安保法制一色にするのか、そういう政治への姿勢、これをめぐって若干党内でがたがたしたということで、何とぞ皆様におかれましても御理解のほどをいただきたいと思います。

 ちょっと余計な前置きが入りましたが。

 それで、経済産業委員会あるいは予算委員会でるるこれまでも御質問を申し上げてきたことは、二〇一一年の東日本大震災に伴う福島第一原発の事故、これを受けて、同じ二〇一一年の八月に、賠償責任あるいは廃炉に係る支援機構法ができています。この支援機構法の附則に、原賠制度あるいは国の責任のあり方について、そもそもこれは速やかに見直すんだ、こう書いてあります。

 これは、宮沢大臣、ふだん御挨拶もできていなくて恐縮でありますが、改めて、私は、川内の再稼働が、もともと、これだけの長期間、日本じゅうの原発がとまっていなければ、それはそれで一つの考え方だと思うんです。

 しかし、政府も、政権がまた違ったということもあるかもしれませんが、一旦これはとまっているわけでありまして、いわゆる保安院を改組して規制庁ができ、規制委員会を整え、原子力委員会を整え、やってきている中で、安全規制については一定の、これはまた見直しの議論もあるかもしれませんが、一定の段取りを整えて、エネルギー基本計画の閣議決定に至り、そして今日を迎えたわけでありますが、きょう私が御質問させていただくのは、では、それ以外はどうなっているんですかということなんです。

 大臣、まず、支援機構法で、法律が求めている国の責任、原子力事業に係る国の責任というものはきちっと見直しが行われたと考えていいのか、いや、それはこれからだということかを含めて、ちょっと御紹介いただければと思います。

宮沢国務大臣 これは正確には内閣府の方から答弁していただいた方がいいと思うんですけれども、そういうふうに附則で定められているのに基づいて、現在、原子力委員会において検討が行われていると承知をしております。

足立委員 失礼しました。

 内閣府の方からちょっと御紹介ください。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の原子力賠償制度の見直しということにつきましては、この五月から、原子力委員会のもとに設置されました原子力損害賠償制度専門部会といったものが立ち上がりまして、いろいろな形の専門的かつ総合的な観点で検討が進められております。

 既に、五月の第一回から三回にわたってこの委員会を鋭意進めているというところでございます。

足立委員 中西審議官、まことに恐縮ですが、一つ更問いですが、今おっしゃったように、五月から、あるいはこの八月二十五日にも第三回が開かれたということでありますが、二〇一一年に事故が起こって、もちろん、さまざまな優先事項があったことは承知をしていますが、逆に言うと、ことし、この五月に検討を始めたということで、始まったばかりなんですね。

 これはちょっと全体の話になるかもしれませんが、大臣、恐縮です、規制委員会は、原子力規制委員会に係る事項はあれだけ大議論をして状況を整えた。この賠償を初めとするある種の、特に事故があったときの国の責任とか、事故に限らないと思います、そういう国の権限と責任について抜本的に見直しを行う、速やかに見直すと法律に書いてあるんだけれども、これがなぜ行われないまま再稼働に至ったかということが問題なわけであります。

 それは、やはり民主党政権のときですね、あの法律は。民主党政権のときに書いちゃったと。それほどそれは重要な問題ではなくて、今検討されている中で、もしかしたら将来必要になるかもしれないけれども、その程度の問題だということなのか、それが一つの仮説です。もう一つの仮説は、余りに重たい課題だから、まず再稼働しながら考えていこうということか、これはどっちでしょうか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 機構法の制定以降、先ほど宮沢大臣の方からもお話がありましたけれども、いろいろな、エネルギー基本計画であるとか、さらには、賠償という関係では国際的な条約がございまして、CSC条約、そういったものの検討のために時間がかかったのも事実でございまして、そういったものを踏まえながらようやく福島の賠償も進んできたということを踏まえて、この五月から検討が開始されたというところが事実でございます。

足立委員 あと、きょう御提示をさせていただいている紙、一枚大きなものをめくっていただくと五兆円という数字が出てきます。野党でありますので必ずしも十分な議論が尽くされているとは思っていませんが、大体、電力会社の責任を有限にする、これは私は当然のことだと思いますが、東京電力が事故を起こした中で、その電力会社の有限責任の枠組みをつくるということは政治的には必ずしも容易ではないのはもちろんわかります。

 東京電力に既に七兆円を超えるお金が流れている中で、諸外国の有限責任のラインは、ここに書かせていただいていますが、これはレートにもよりますが、米国で一兆五千百億円、英国では二百五十二億円、フランスが百十九億円、こうなっています。端的に言うと、この間をとって五と書いてあるわけです。

 これは、ぜひ御紹介いただきたいのは、今、議論を始められています。当然、有限責任の枠組みはつくられると思うんですが、まず、有限責任の枠組みはつくるということかどうか、つくる場合のレベル感、端的に言うと数字です。

 これは、見込み、頭の中にあれば、御紹介できる範囲で教えていただきたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のような視点での有限責任をどうするかどうかといった論点も含めまして、まさに先ほどの専門部会の方で検討を進めているというところでございますので、また引き続き検討を進めていくという状況でございます。

足立委員 こだわりますが、有限責任、今は無限責任ですね、無限責任の枠組みを維持する可能性もありますか。

中西政府参考人 有限責任、無限責任の件につきましても、まだそこは両論、白紙の状態で、ゼロからの検討を進めているというところでございます。

足立委員 本当は、ここに電力会社の社長さんがいれば、無限で新設ができますかとか、そういうことになるわけですが、厚生労働委員会の雰囲気ですとまたこれは突っ込んでいくんですが、経済産業委員会ですからこの程度で終わります。

 これは大事なテーマだと思いますし、私どもとしては、党内にもいろいろな意見がある中で、とりあえずこういう紙を出したというところの思いはぜひ政府も理解をいただければなと思いまして、御紹介そして質問をさせていただきました。

 それからもう一つ、きょうは内閣府から原子力災害の御担当にもお越しをいただいています。皆さんも大先輩でありまして、恐縮であります。

 私が避難計画の問題で一番違和感があるのは、実は先日、私は災害対策特別委員会というところにも属していまして、活火山の防災の法案が出てきました。すばらしくよくできているんですね。もう全て法律に書いています。一体誰と誰と誰が参画をして協議会をつくって、何をするんだということが全て法定されています。ところが、この原子力の世界は、防災基本計画に書いてあるんです、いろいろなことが。

 何となく、やはり原発については、非常にセンシティブなのでできれば国会で議論したくない、できれば静かに、着実に粛々と作業をしたいように見えるんですが、活火山並みの法制度が私は必要だと思いますが、それはいかがでしょうか。

山本政府参考人 御指摘の活火山に関します法律のもとで、火山防災協議会が法定で設置されるというふうに決められたところでございます。

 私どもが承知している範囲内で理解しているところによりますと、まず、この火山の協議会につきましては、自治体の主体的な取り組みのために具体的な避難計画の策定まで至っていないようなケースがあるとか、あるいは、その構成員に専門家が含まれていないといったような、必ずしも十分な取り組みが行われていない、こういう実態を踏まえて火山防災協議会については法定化がなされたものというふうに承知しているところでございます。

 一方で、原子力分野の地域協議会につきましては、各地域ごとに設置をしておりまして、それぞれの緊急事態への対応が実効性があるのかどうかというのを確認しているところでございます。さらに、地域協議会で確認が終わったものについては、全閣僚の皆様がメンバーとなられます原子力防災会議、こちらの方で報告し了承するという形をとっているものでございます。

 いずれにしても、大きな違いは、国が主体的になってこの仕組みを動かしているということでございますので、もちろん法律に書くのも一つの案かもしれませんけれども、国が主体となっておりますので、十分な実効性があるような仕組みになっているのではないかというふうに理解しておるところでございます。

足立委員 私自身は、活火山並みの法制度が望ましい、こう思って、この紙にもそういう形で、三枚目の紙ですが、書かせていただいています。その二という紙に書いていますが、原子力規制委員会が今でも原子力災害対策指針を示されています。基本的に、これまでは指針を示しているだけに見えるわけです。

 一昨日、何かまた規定の改定もあったやに伺っていますが、いわゆる避難計画に原子力規制委員会が一体どういうふうに関与をしてきて、もしそれが、強化されたのかこれまでどおりかわかりませんが、その辺の規制委員会の関与を御紹介ください。

荻野政府参考人 地域防災計画の策定に関します原子力規制委員会の関与についてのお尋ねでございます。

 地域防災計画につきましては、災害対策基本法に基づいて、地域の実情を熟知する自治体が中心となって策定することとされておりますが、政府としてもこの取り組みを全面的に支援するため、各地域ごとに、ただいま内閣府の御答弁もありましたけれども、地域原子力防災協議会において、内閣府原子力防災が中心となって支援をしているわけですが、当然、原子力規制庁を含む関係府省庁の担当者が関係自治体と一体となって地域防災計画の充実強化に取り組むということになっております。

 その上で、計画の具体化、充実化が図られた地域につきましては、その計画が原子力災害対策指針等に沿った具体的で合理的なものであることを原子力規制庁を含む地域原子力防災協議会で確認いたしまして、さらに、原子力規制委員会委員長も参画する原子力防災会議において国として了承するということでございます。

 このような形で、原子力規制委員会としても、専門的、技術的観点から役割をしっかり果たしてまいりたいと考えております。

足立委員 今現状を御紹介いただきましたが、私は、繰り返しになりますが、規制委員会の果たす役割も含めてしっかり法定化をさらにしていくということを提言させていただきます。

 次に、もう時間がなくなってまいりましたが、いわゆる地元同意についても、私どもの骨子案では法定化をすると。

 ただ、これはやみくもに法定化すると事実上原発ゼロ法案になってしまいますので、それは我々の本意ではありません。むしろ、一体誰に、どういう権限が、どういう理由であるのかということを法律上明確にしていく中で、国の責任、加えて地域の責任も明らかになる。

 地域というのは、決して受け身だけではなくて、電力の発電をするし、また電力の消費をする地域でありますから、また、一旦事故が起これば大変な損害をこうむるわけでありますので、一体それは都道府県なのか市町村なのか、しっかり議論を深めていくべきだと私たちは思っています。

 我々の提案では、これはUPZ圏内の都道府県ということに限定をしておりますので、基本的な同意権者は、川内原発の場合は鹿児島県、そして高浜原発の場合は福井県、京都府、滋賀県、こうなっておりますが、関係の市町村あるいは広域連合の意見も聞くという枠組みをつくらせていただいています。ちょっと時間がないのでこれについて御意見を求めることは割愛しますが、そういうことをやっている。

 それからもう一つ、これも議論があるところでありますが、今、原発再稼働について、やはり国民の理解が進んでいません。

 世論調査は私は余り重視しない方でありますが、その背景には、冒頭私が内閣府に、また大臣に答弁いただいた、やはり国がしっかりと権限、責任をはっきりとしていない。大臣も、再稼働のときの記者会見では、しっかり国の責任を果たしていく、しっかりと、はっきりとそうおっしゃっているわけですが、一体何の責任をどこまで負うのか、その法的な枠組みがないわけであります。

 例えば、再稼働についても、一つの考え方としてわからないではありませんが、閣議メンバーが、内閣がしっかりと再稼働のボタンを押すというのがやはり私は国民に対して必要なことであった、こう思いますが、では、政府はいつボタンを押したんだというと、エネルギー基本計画の閣議決定がそれだと。

 理屈はわかるわけでありますが、それについても一定のスキームを、若干無理筋を含んでいるようなところはありますが、法律上の理屈も一応盛り込んだ上で、供給計画の認可という一定の枠組みをつくりながら、関係閣僚会議が個別の原発の稼働についてボタンを押す枠組みを維新の党としては提示させていただいているところであります。

 それから最後に、最終処分ですね。これは、小泉元総理やあるいは我が党の最高顧問、きのう最高顧問をやめちゃいましたが、橋下徹前代表がずっとこだわってきているのが最終処分なんです。これについても枠組みを提示しています。

 例えば、東洋町が、町長が文献調査をすると言っただけで、えらい騒ぎになって選挙になるわけです。これが日本の最終処分の現状、現実です。それに対して我が党は、例えば、川内原発を再稼働するのであれば、九州においては文献調査は協力してよ、福井で高浜原発を再稼働するのであれば、関西がその責任を負う、大消費地を含む地域に一定の責任を課するべきじゃないかという提案をしています。

 この点についても、最後、これは大臣にお願いしていいのかな、我が党のこういう、若干、野党だからこういうことを言えるのかもしれませんが、御感想があれば御紹介いただければと思います。

宮沢国務大臣 我々は今、事故の起こった後で、民主党政権時代につくられた法的枠組みの中で仕事をしておりまして、これ自体、私としてはよくできたスキームだろうと思っております。

 ただ一方で、完全無欠というわけではございませんので、こういうような提案をいただいて、いろいろ将来にわたって検討するということは大変ありがたいことだと思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 ぜひ、今、安全保障法制は大変な議論になって、議論が深まってきていますが、原子力についても引き続き議論を深めさせていただくようお願い申し上げて、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。

江田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会


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