衆議院

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第7号 平成13年3月27日(火曜日)

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平成十三年三月二十七日(火曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 大村 秀章君

   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君

   理事 玉置 一弥君 理事 樽床 伸二君

   理事 河上 覃雄君 理事 山田 正彦君

      木村 太郎君    木村 隆秀君

      倉田 雅年君    佐藤 静雄君

      坂本 剛二君    菅  義偉君

      田中 和徳君    中馬 弘毅君

      中本 太衛君    西野あきら君

      林  幹雄君    福井  照君

      古屋 圭司君    堀内 光雄君

      松野 博一君    松本 和那君

      阿久津幸彦君    大谷 信盛君

      川内 博史君    今田 保典君

      佐藤 敬夫君    永井 英慈君

      伴野  豊君    細川 律夫君

      前原 誠司君    吉田 公一君

      井上 義久君    山岡 賢次君

      大幡 基夫君    瀬古由起子君

      日森 文尋君    保坂 展人君

      松浪健四郎君

    …………………………………

   参考人

   (東京大学大学院工学系研

   究科教授)        家田  仁君

   参考人

   (航空連合事務局長)   清水 信三君

   参考人

   (財団法人鉄道総合技術研

   究所専務理事)      佐藤 泰生君

   参考人

   (日本乗員組合連絡会議議

   長)           川本 和弘君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  二階 俊博君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  松浪健四郎君     二階 俊博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)




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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学大学院工学系研究科教授家田仁君、航空連合事務局長清水信三君、財団法人鉄道総合技術研究所専務理事佐藤泰生君及び日本乗員組合連絡会議議長川本和弘君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

 議事の順序でございますが、家田参考人、清水参考人、佐藤参考人、川本参考人の順で、御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず最初に家田参考人、お願いを申し上げます。

家田参考人 おはようございます。家田でございます。

 私は、東京大学の社会基盤工学専攻というところで教鞭をとっております。専門は、鉄道や道路などといった交通システムにかかわる工学や、交通政策及び都市政策でございます。

 私は、昨年三月に発生いたしました日比谷線中目黒事故におきまして、事故調査検討会の委員並びに検討会の下に設けられました日比谷線事故調査ワーキンググループのリーダーを務めさせていただきました。また、その前には、この事故調査検討会を立ち上げる契機となりました運輸技術審議会鉄道部会の議論にも参加させていただきました。

 そのような経験を踏まえまして、本日は、特に鉄道事故調査のあり方について意見を述べさせていただきます。

 お手元の配付資料にございますように、まず、日比谷線事故の調査のあらましをお話しいたします。

 まず第一に、事故調査の体制ですが、事故調査検討会とその下のワーキンググループに、大学や鉄道総合技術研究所などからいろいろな分野の多数の専門家を結集し、調査を実施しました。事務局としてのサポートは、当時の運輸省鉄道局の職員の方々にやっていただきました。

 この組織は、手続上は、当時の運輸省鉄道局長の下につくられた懇談会という形だそうでございますけれども、実質的には、かなり活発な活動を行う組織として機能させることができたと考えております。

 これは、もともと事故調査の充実を図るという運輸技術審議会鉄道部会の答申に基づいて日比谷線事故の前年につくられた組織でございます。

 次に、調査の基本方針をお話しいたします。

 これは、実を言うと、あらかじめ明確に定めていたわけではございませんでした。また、事故が発生してからは、こういうような基本的な事柄を議論するというような余裕もほとんどございませんでした。

 ただ、後から振り返ってみますと、おおむね次のような五点が調査関係者の共通の認識になっていたものと思われます。まず第一は、事故の再発防止を目的とする、そしてそのために原因究明と対策提案を行うということです。第二は、極力、客観的な調査方法を採用するということでございます。第三は、極力、早期の成果達成を目指すということでございます。第四は、具体的でかつ現実的な再発防止対策を提案するということでございます。第五は、極力、情報を開示することであります。

 こうした基本的なスタンスは、私は現在でも妥当なものと考えていますが、このような調査方針が調査検討会で堅持できましたことは、一つには、検討会の井口雅一座長の高い見識に基づいた強いリーダーシップのたまものであったと私は考えております。この点、申し添えたいと思います。

 このように、調査検討会は、事故の科学的な原因究明に最大の力点を置きましたので、調査作業の方法論もおのずからかなり広範で、なおかつ密度の高いものとなりました。具体的には、現地調査、車両や線路に関する各種の計測、行政を通じた当該鉄道事業者等からの情報取得、試験列車の夜間走行試験、計算機シミュレーション、得られたデータの分析及び技術的な討論などでございます。

 こうした調査方法によりまして、従来は一部の鉄道事業者を除きますと看過されがちであった車両の輪重バランスの問題などということがおおむね事故の原因と考えられるようなことが明らかになった次第でございます。

 次に、事故調査検討会によって得られました成果の出力を御説明します。

 まず一つは、事故後約七カ月後にでき上がった調査報告書でございます。この最終調査報告書に加えまして、調査の途中でも事故後約四カ月で中間報告を作成しました。

 また、事故の再発防止に向けた実現可能で、なおかつ具体的な防止対策を提言しました。対策に関しては、最終報告の段階のみならず、事故直後それから事故後約一週間後に出した緊急対策やあるいは事故発生箇所での速度規制及びその解除に関する意見をも提案しました。さらに、昨年七月には、鉄道事故調査体制の充実を図るべきであるという意見も、検討会として提言させていただきました。

 続きまして、第二点目の、鉄道事故調査充実の必要性と事故調査のあり方についてお話しいたします。

 まず、その必要性について述べます。

 我が国の鉄道では、他の交通機関あるいは諸外国の鉄道に比べますと、事故の発生は相対的に少なくなっております。しかし、頻度が低いとはいいながらも、社会的な影響も大きい、重大な事故が時折発生しています。また、遅延などの運転阻害事故の発生は、むしろ増大傾向にあります。

 今日、鉄道は、輸送量などから見て成熟期にあり、多くの事業者の経営環境も決して潤沢なものではありません。なおかつ、鉄道事業は、新幹線を運行している世界を代表するような鉄道事業者から、地方の中小事業者、各種のメーカーや整備作業の業者まで、非常に多数の、多様な事業者により営まれています。また、社会の高齢化とともに、現場の人たちの技能にも課題が生じるようになりつつあります。そして、技術の進展とともに、鉄道システムのメンテナンスや、あるいはオペレーションの方法も転換期を迎えています。

 一方、技術基準などにかかわる技術行政も、仕様規定によって事前に厳しく規制する従来の方式から、事前規制はある程度の柔軟性を持った性能規定に変え、同時に、万が一事故が発生した際には、公益的なスタンスから徹底して原因の究明に当たるという事後規制重視型のスタイルに転換が図られてきました。

 さらにまた、我が国は、特に高速、高頻度の都市間旅客鉄道や、あるいは大量、高頻度の都市鉄道では、ハード面及びソフト面ともに世界をリードする立場にあり、安全問題に関しても、世界に対して情報発信し社会に貢献する、こういうスタンスが不可欠でございます。

 こうしたさまざまな視点からいって、科学的に充実した事故調査が実施され、その成果が的確に実務に反映されるような体制を整備することは、やはり社会的な急務であると思います。

 次に、事故調査のあり方について意見を申し上げます。

 第一に重要なことは、調査が、客観的な主体による、科学的で公正なものであるべきことです。

 第二は、事故調査が、事故の再発防止を目的とした事故原因の解明と対策提案にあることを十分に確認することが重要です。この点、違法行為の有無と責任の所在とを明らかにすることを主眼とする刑事司法捜査とは根本的に異なることに注意が必要です。

 第三に、事故調査に当たっては、ハード面、ソフト面の直接的要因ばかりでなく、その背後に潜む潜在的な要因を含めて、事故の本質に迫る調査であるべきことです。

 第四に、既存のルールに違反したかどうかという点にとどまらず、ルール自身のあり方や、ルールの有無の是非にまで踏み込んだ検討がなされるべきことです。

 第五に、事故の原因解明と再発防止対策の検討に加え、この法案では事故の兆候と呼ばれていますが、いわゆる事故の芽を早期に発見することと、事故後のフォローアップにも十分な配慮が必要であると考えます。

 最後に、事故調査体制の整備のあり方についてお話しします。

 まず、何と言っても実効性、機動性のある効率的な調査組織を極力迅速に整備する必要があります。そのためには、既存の技術面、人材面のストックを最大限に活用して、現実的で実効性の高い組織をつくることが有効と考えます。また、内容のある調査を実施するためには、必要な事情聴取や物件の留置などに関しても十分に強力な権限を付与することが不可欠です。

 一方、長期的視点に立って事故防止を考えますと、事故調査体制の充実と並行して、中小の鉄道事業者などに対する技術面での支援や研修の制度、事故や安全にかかわる情報を社会の共有財産として確実にストックし、それを適宜活用する制度、事故の経験を風化させないための方策、安全情報を世界にも発信する制度など、制度面の充実も必要でしょう。また、事故防止のベースとなる基礎研究を鉄道総合技術研究所等において充実することも、長い目で見て重要なポイントであると考えます。

 いずれにしましても、日比谷線事故調査検討会に参加させていただいた者としましては、事故調査体制が一刻も早く充実されることを切望するものでございます。

 以上で、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうも、御清聴ありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、清水参考人にお願いいたします。

清水参考人 航空連合の清水です。よろしくお願いします。

 航空連合は約三万人の労働組合、航空及び航空に関連する労働者で集まっている産別組織でありまして、上部団体の方は、今連合に属して活動を行っております。

 私の方からは、今の国内の航空需要の件、加えて、事故調査のあり方について、今回の改正法案の中で幾つか不足点がございますので、それについて中心的に指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 御存じのとおり、国内航空需要は既に年間九千万人を超えまして、今や米国に次ぐ世界第二位の航空大国という形に日本はなっております。その日本におきまして、まさしく事故の発生する確率というのは非常に少ないわけですが、一たん事故が発生しましたならば多くの人命が失われるということもありまして、航空の安全性を高めることについては、まさしくこれは国家的な課題だというふうに思っております。不幸にして事故が発生した場合には、徹底的にその原因を追求、分析した上で、再発防止策を講じること、これが何にも増して重要だというふうに思います。

 事故調査に当たっては、やはり過去の責任を追及するよりも、あくまでも今後の再発を防止する観点、今後の航空の安全を確保する観点に視点を移すべきというふうに考えております。国際民間航空条約第十三附属書においても、事故またはインシデント調査の基本目的は将来の事故またはインシデントの防止である、罪や責任を課すのが調査活動の目的ではないというふうにしています。事故調査を行っている間も、同型の飛行機が世界じゅうの空を飛び交っているわけですので、一刻も早く原因分析をして再発防止を行う、何よりもこれが事故調査の基本だというふうに思っております。そのために事故調査委員会の果たすべき役割というのはますます重要だというふうに思っております。

 今回の改正法案の中では、航空機事故の兆候、インシデントに関しては対象に含めるということでは、一歩前進ということで評価もできます。しかし、その他の改正法案の多くに関しては、鉄道事故調査の整備体制をつくるということにやはり重点が置かれていまして、その他については単なる航空と鉄道をあわせただけにすぎないというふうに考えております。航空事故調査を強化していくというふうに考えている、必要性を持っている我々からしたら、大いに不足があるというふうに思っていますので、事故調査委員会のあるべき姿について、三点ばかり指摘したいというふうに思っております。

 一点目は、独立性確保の問題であります。国際民間航空条約の第十三附属書では、航空事故調査当局は、調査の実施に関し独立性を有し、かつ制限されない権限を有しなければならないと規定されています。ところが、日本の航空事故調査委員会は、設置法に基づきまして、監督官庁である国土交通省の一機関として設置されており、条約の求める独立性については満たしていないというふうに考えます。

 設置法の第四条に、委員長及び委員は独立してその職権を行うという形の明記がありますが、国土交通省内に調査委員会が置かれ、委員や事故調査官を初めとする事務局スタッフは国土交通省の職員である以上、国土交通省からの独立性については、やはり大いに疑問があると指摘せざるを得ません。事故調査の結果、国土交通省の職員に関する不利益となる取り扱いや勧告なども予想されますので、そういう形になれば、事故調査の任務を遂行するに当たって、支障を来す可能性があるというふうに思います。

 アメリカでは一九六六年に、航空事故調査委員会は、もともと他の交通機関事故調査委員会があったのですけれども、それと合体して、新設の国家運輸安全委員会NTSBと言われるものに移されました。組織的には監督官庁であるCABの中に設置されたわけなんですが、しかし、その後進んだ航空機の大型化あるいは技術の高度化、それに伴う航空機事故の大規模化などがありまして、事故調査委員会の中立性なり独立性が非常に求められるということから、一九七四年に運輸省から切り離されて大統領直属となったというふうに聞いております。

 一方、日本では、今回の改正案でも引き続き国土交通省内にとどまるということになっております。日本においても、事故調査委員会については、国土交通省から分離して、内閣に直結させることで独立性を確保する必要があるというふうに思います。具体的には、国家行政組織法第三条による行政機関としての設置を行うべきだというふうに考えております。

 以上が一点目です。

 それから二点目は、体制強化の必要性について述べたいというふうに思います。

 アメリカのNTSBは、航空のみならず、鉄道、船舶、高速道路などの他の交通機関の事故調査も実施し、再発防止を目的に活動しており、委員長以下五名の委員と約四百名のスタッフで構成されています。安全や技術に関する研究を行う調査部署なども設置されているというふうに聞いています。年間予算に関しても、二〇〇一年度に関しては六千五百万ドル、二〇〇二年度以降については七千二百万ドル計上されています。

 これに対して、今の日本の事故調査委員会については、この改正案の前のところはまだ航空のみを対象としていますし、構成しているのは非常勤を含めて五名の委員と三十一名の事務局スタッフにとどまっています。今回の改正法が成立すれば、鉄道事故も調査対象に含まれて守備範囲は広がるんですが、すべての交通モードについてカバーできるわけでもありませんし、若干の人員増はあるものですが、調査研究を行う専門的なスタッフを多く抱えるというふうになるわけでもありません。日進月歩の技術革新に対応するための事故調としての体制は引き続き不足しているというふうに思います。

 事故調査委員会においては、航空会社とかメーカーと日常的に情報交換並びに技術交流を行いながら、同等の知識、技量維持を行うことが不可欠だというふうに思っています。そういう形でいいましたら、アメリカのNTSBを参考に、現代の技術水準に見合った交通全般にわたる安全を担当する、いわば日本版NTSBに関しての設置を目指す必要があるというふうに考えます。

 以上が二点目です。

 三点目、こちらの方は権限強化の必要性について述べたいというふうに思います。

 事故発生のときに一番問題になるのが、事故調査と犯罪捜査、こちらの方の競合であるというふうに思います。刑法上の罪の存否について行われる犯罪捜査は、再発防止のために行われる事故調査とはその目的が異なっており、しかも強制力に裏づけされていることから、犯罪捜査が事故調査に重大な影響を及ぼすというふうに考えております。

 航空事故調査委員会発足に当たって、一九七二年に当時警察庁長官と運輸省事務次官の間に覚書が、その後七五年には細目協定が交わされて、これらによると、犯罪捜査が事故調査に優先するというふうに読み取れます。例えば、覚書では、航空事故調査委員会による関係者からの聴取や関係物品の提出要求などに関しては、あらかじめ捜査機関の意見を聞き、犯罪捜査に支障のないようにするということが盛り込まれていますし、細目協定においては、現場保存、検視あるいは身柄拘束、関係物品の押収などもすべて捜査当局主導型になっているというふうに思います。

 国内で航空機事故が発生した場合には、全国の警察組織の協力を仰がなければ人命救助や現場保存に支障を来すのは間違いありません。ただし、その後は、先ほど申しましたとおり、体制を強化した事故調査委員会が主導的に早急に事故調査を進めるべきだというふうに考えております。

 航空事故はその多くが何らかの過失によるものが大多数でありまして、故意によって引き起こされるケースというのはごくごく少数だというふうに思っております。こうしたことから、犯罪捜査を急ぐ必要性よりも、原因を特定して再発防止策を講じることの方がはるかに急ぐ必要性があるというふうに考えております。

 アメリカでは、NTSBの事故調査は犯罪捜査に対して優先権を与えられており、事故調査の過程において故意であるとの疑いが生じた場合には、司法長官と協議の上、FBIに優先権を譲るというふうに伺っております。日本でも、事故調査を犯罪捜査に優先させる枠組みをつくる必要があるというふうに考えています。

 以上の三点の指摘については、多くの指摘が、日本版NTSBを志向すべきだというふうな内容になっています。これは、先ほど言いましたアメリカに次ぐ世界第二位の航空大国である日本は、アメリカのNTSBの方もいろいろ紆余曲折を経ながら何とか今の形にたどり着いたというふうに思っていますが、そのアメリカのように、独立性を保ち、体制を強化して強い権限を持つ、そういった形での日本型NTSBについて、日本国民全体の理解を得ながら着実に変えていく必要があるというふうに思いますので、ぜひそこについても御検討願いたいというふうに思います。

 以上三点に加えて、正確な情報入手のための免責処分制度の必要性についても一言触れたいというふうに思います。

 情報をより多く正確に集めて原因究明するためには当事者からの事情聴取が欠かせませんが、先ほど言いました、当事者が刑事罰を受けることを恐れて真実を話さないことになれば、原因追求、真実解明について大きな支障が発生します。たとえみずからに、当事者にとっても不利益な内容であっても供述してもらうためには、事情聴取に当たり、故意や重過失でない限り刑事訴追を免除することをぜひ検討できないかというふうに考えております。米国では司法取引という形で刑事訴追を免れるケースが一般的にあると思いますが、日本ではそういうのはなじまないと思いますので、免責処分を制度化して刑事訴追を免除する方法を考えるべきだというふうに考えています。そういうことによって、先ほど言った事故の兆候であるインシデントについても当事者から自発的な形での報告などの件数がふえ、結果的には事故やインシデントの防止につながるというふうに考えておりますので、ぜひ御検討願いたいというふうに思います。

 最後に、今回の事故やインシデントを防ぐそもそもの最重要な課題ということで、今回発生したニアミスに関しまして、空域と管制について一言触れたいというふうに思います。

 現在の日本の空域については、七一年の雫石事故を契機に、民間空域と自衛隊訓練空域を完全分離するために見直されたものではありますが、その後の民間航空交通量の飛躍的な増加、あるいは民間機、自衛隊機の技術革新、性能向上、航行援助施設の性能向上等に伴う見直しというのは一切なされてきていないというふうに思っています。民間航空機の需要増加を踏まえて、現行の民間空域と自衛隊、米軍の訓練、制限空域との完全分離を前提に、民間機の飛行ルートを最優先した抜本的な空域の再編もぜひお願いしたいと思っています。

 加えて、日本の航空管制については、国土交通省、自衛隊、米軍、おのおのが担当しているために、極めて複雑で、情報伝達も煩雑になっていると思いますので、これにつきましても、ぜひ国土交通省の一元化に向けて進めていただきたいというふうに思っています。

 以上で参考人としての意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 鉄道総合技術研究所の佐藤でございます。本日は、鉄道事故調査に関し意見を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 鉄道総合技術研究所では、第三者機関として、鉄道事故が発生しました場合、事故原因の究明等の委託を受けて、事故調査のお手伝いをいたしております。また、私は、旧国鉄に奉職いたしまして、土木関係の職場であります線路分区、保線区、保線課、施設部などの責任者として鉄道事故に遭遇いたしましたので、その経験も含めまして意見を述べさせていただきます。

 私からは、鉄道事故の調査につきまして、次の三つの点について意見を述べさせていただきます。まず初めに、鉄道事故調査の目的と必要性について述べさせていただきます。次に、調査の進め方について述べさせていただき、最後に、調査の体制について意見を述べさせていただきます。

 鉄道は、世界的に見ますと、過去二百年の歴史の中で絶えず技術の進歩が図られてきましたが、残念ながら、その歴史の中で多くの鉄道事故が発生いたしました。しかし、鉄道では、事故が発生する都度、徹底した事故の原因究明と事故の防止対策が行われて、この積み重ねにより鉄道の安全性が高められ、今日、その安全性は社会に認められて信頼を得ております。鉄道は今後もさまざまな社会の要請にこたえていくこととなると思いますが、その過程において絶えず安全性を高めていくことが大切であると考えており、不幸にして発生する事故については、徹底的に事故原因を究明して、再発防止対策を立て実施することが必要であります。

 鉄道事故の調査は、責任者の特定を目的に行われることがありますが、鉄道の事故調査は、正確な原因究明とそれに基づく的確で効果的な再発防止対策の確立と実行についても目的とすべきであります。

 鉄道は、運輸事業として多くの企業が経営しております。したがいまして、ある場所で事故が発生した場合、その貴重な教訓をすべての鉄道企業において役立てることが必要であり、そのためには、事故の原因究明を専門的に効率よく行い、事故防止対策を全国的に実施に移す体制が必要であると考えます。

 また、鉄道の大事故には、予兆となる小さな事故、すなわちインシデントが存在するという意見があります。このようなインシデントについても、正確な情報を得てその分析を行い、全国的に的確な措置を行って大事故の発生を予防していくことが必要なことであると考えます。

 鉄道事故の調査は、主として事故に関係する鉄道事業者が行ってきました。鉄道総研では、第三者機関といたしまして、鉄道事業者などからの依頼を受けまして、事故の原因究明や再発防止にかかわる調査を行ってまいりました。

 鉄道総研で行われた調査の例を申し上げますと、例えば平成五年の大阪南港ポートタウン線事故の車両の電気部品、これはリレーの動作に関する調査でございますが、これを大阪市交通局から依頼を受けまして報告いたしました。また、昭和六十一年の山陰本線余部鉄橋事故では、旧国鉄から事故調査委員会を引き継ぎ、風と車両の相互作用、列車抑止について調査の対象を絞って検討をし、報告いたした例がございます。JR等、鉄道事業者の事故に関しましては、適宜依頼を受けまして、調査を行ってまいりました。

 したがって、効率的な事故調査を行って原因を究明し、的確で効果的な対策を立てるためには、客観性、公平性の観点から見ますと、なお中立的な第三者機関が中心となり、これに鉄道の専門知識を有する多くの関係者が協力して調査を行うことが必要であると考えております。また、調査活動におきまして、その調査結果を適切な時期にできるだけ公開していく、このようなことが必要であると考えております。

 次に、鉄道事故の調査の進め方について意見を述べさせていただきます。

 鉄道の事故調査におきまして必要不可欠なことは、事故直後の初動調査であると考えております。事故発生後、まず最優先に人命救助が行われることは言うまでもありません。その後行われる事故調査に当たっては、事故現場の状況と関係者の記憶による証言が正確に調査されることが必要であります。

 私が奉職していた当時の旧国鉄の例を申し上げますと、事故の調査は、運転事故報告基準規程、調査要領などに基づいて、詳細に行われました。これによる、当時経験した調査の例では、数百メートルにわたる事故現場とその前後にわたって、まくら木一本ごとに破損状況を調査し、また軌道の狂いは一メートルごとに、レールの摩耗は二メートルごとに、一ミリ単位で正確に測定されました。したがって、実際の調査は、鉄道線路に関して専門的な計測技術を持っている現場の技術係、検査係などの技術者が実施しておりました。また、車両の状態の調査につきましても、破損したすべての車両の部品、車輪についた傷の痕跡、あるいは車輪の形状等について調査報告することとなっており、したがって、車両についてよく知っている機関区、工場等の技術者も協力して調査が行われました。このような調査の方法は現在もJRに継承されていると思います。

 また、鉄道事故の原因究明のためには、事故後に、事故を再現するための走行試験や実験、破損した部品が存在する場合には部品の強度を測定するための試験など、調査を継続して行う必要がある場合があります。

 過去の大事故の例を見ますと、例えば鶴見事故の場合には、国鉄本社に技師長を委員長とする東海道本線鶴見列車事故脱線技術調査委員会が設置され、一定の原因が究明された後も、脱線事故技術調査委員会が四年七カ月にわたって設置されて、走行試験が繰り返され、新しい軌道の保守限度、新しい車輪形状などの効果的な対策が立てられた例があります。

 したがって、事故の原因究明に当たっては、まず疎漏のない調査を行うこと、次に慎重な原因究明を行うこと、そして的確な対策を立てて事故の再発防止に万全を期すことが必要であります。

 最後に、鉄道事故の調査の体制につきまして意見を述べさせていただきます。

 鉄道は、基本的に、線路の上で車両を運転し、信号保安装置で安全を確保するシステムでございます。したがって、鉄道の事故調査では、まず土木部門の線路の専門技術者、そして車両の専門技術者、運転の専門技術者及び電気部門の信号保安装置等の専門技術者が必要であります。これらの土木、車両、運転、電気の専門家が中心となって、協力して調査に当たる体制がまず必要であります。

 不幸にして鉄道の大事故が発生した場合、調査はでき得る限り慎重を期すべきでありますが、当該鉄道を利用しておられる方には、例えば病院に通院されている方、商売に利用されている方など、一刻も早い復旧が必要な方々が多数おられます。したがって、調査に当たっては、鉄道事故に関係するすべての機関と連携し、協力のもとに、効率的に実施されるべきであります。

 実際の事故調査では、専門の調査員のほか、補助として、第三者機関の専門家、学識経験者、鉄道の産業界、あるいは事故にかかわる内容に詳しい技術者等にわたることが考えられますが、これらの方々並びに所属する組織の協力が得られ、必要な要員を直ちに投入できる体制、また、現場の測定に必要な機械器具などが迅速に整えられる体制が必要となります。

 また、事故の原因究明が行われた後に最も大切なことは、的確で効果的な再発防止対策が立てられることであります。したがいまして、原因究明後、対策の効果についての理論的な検証、例えばシミュレーションとか実験的検証、例えば走行試験や基礎的な研究開発が必要となる場合があります。

 このような試験、検証に必要な要員や設備の使用には、引き続き多くの経費がかかることが予想されます。したがって、事故調査を専門とする委員会の活動が十分に行われ、その効果が発揮できるためには、事故調査の委員会と関係の行政組織がこれらの資金を確保すると同時に、その対策が実効を上げるよう、関係行政組織が責任を持って実施する体制が大切であります。

 以上を考えてみますと、今回、日本で初めて鉄道事故の調査委員会が設置されるのであるならば、まずは、従来から鉄道に対して責任と経験を持っており、情報を豊富に有している国土交通省の関係技術組織とできるだけ協調して事故の調査を実施できる体制から始めることが妥当であると考えられます。一日も早く、信頼できる事故調査を行い、実効のある対策を立てる組織がまず構築されることを望むものであります。

 以上をもちまして、私の意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、川本参考人にお願いをいたします。

川本参考人 川本でございます。

 最初に、委員長初め委員の方々に、私どもの意見をこの場で陳述させていただく機会を与えていただきましたことを大変感謝いたしております。ありがとうございます。

 私、日本乗員組合連絡会議の代表、議長を務めておりますが、日本乗員組合連絡会議は、日本の定期航空に働く五千四百人の機長、副操縦士、航空機関士等、いわゆる運航のプロフェッショナルであります運航乗務員で構成する団体でございます。私も現在、ボーイング747の現役の機長でございます。そういう観点から、今般、改正が予定されております航空・鉄道事故調査委員会の改正案につきまして意見を述べさせていただきたいと考えております。

 清水参考人とダブります点はあえて省略して意見を述べさせていただきますが、今般の法律の改正で、事故の兆候、重大なインシデントが新たに事故調査の対象に加えられたことは、私どもの年来の要望でありまして、大変大きな評価をいたしたいと考えております。しかし、その他の部分につきましては、従来の事故調査委員会をそのまま踏襲するという形になっておりまして、種々の点で私たちは不足点を感じておりますので、その点について意見を陳述いたします。

 本年一月二十六日、扇国土交通大臣あてに、航空事故調査委員会設置法改正についての要望を提出いたしております。要旨については、独立性の確保、委員会の機能の充実並びに警察庁長官と運輸省の事務次官の間で取り交わされた覚書の撤廃、この三点になっております。

 なお、さかのぼりまして、約三年前になりますが、一九九八年にも、当時の川崎運輸大臣あてにもほぼ同内容の提言を提出いたしております。

 現在、世界の空には、いわゆるジェット旅客機が約一万一千数百機飛行しているわけでございますが、あるデータによりますと、二〇一五年にはこの機数が約二万五千機程度になるのではないかと言われています。ジェット機の導入以来、事故の発生率が大変減ってきたわけでございますが、この十年前後は、その発生率は減っておりません。これは百万回当たりに一回前後という極めて少ない割合でございますが、減っておりません。

 そういう推移を考えますと、二〇一五年ぐらいには、世界じゅうで一年間に約五十回前後の大事故が発生するのではないかという予測が出されております。そういたしますと、単純に計算いたしますと、これは一週間に一回、世界じゅうのどこかで大変大きな事故が発生するという計算になるわけでございます。したがって、いわゆる事故調査並びに事故の防止というのが国家的なプロジェクトとして取り組まれなければならないというふうに考えておりますが、具体的に、米国では、前ゴア副大統領を中心とした委員会が提言を出しまして、約六百数十億円の予算をかけてNASAでその研究がなされているというふうに私どもは聞いております。

 現在の趨勢はそういうことでございますが、次に、具体的に、私たちは扇大臣に提出した提言をもとに当委員会でぜひ具体的な事故調査の改善をしていただきたいと考えておりますので、その要旨について説明させていただきます。

 まず、事故調査委員会の機能を充実させていただきたいという点でございますが、これについては五点の具体的な提言がございます。

 まず第一点目については、事故調査能力を高めるために、専門委員または専門委員に準ずる者として、航空の実情または事故調査に精通した者を加えるようにお取り計らいいただきたいということでございます。

 我が国航空事故調査の過去の事例を見てみますと、運航の現場における実態等に精通した専門家が不在であったため、調査の過程で基本的な誤りを犯した例が散見されております。こうしたことを防止するためにも、何らかの形でパイロット、航空機関士、客室乗務員、運航管理者、整備、管制、気象等の専門家を調査の実務に参加させていただきたいということでございます。ICAOのアネックス十三には、事故調査官の資質について非常に具体的に触れておりますが、いわゆる極めて専門的で、いわゆる訓練を受けた人がその調査に当たらねばならないとなっておりますが、現在の事故調査委員会、いわゆる運輸省の中のいわゆるローテーション制度の中では、そういう経験を積む機会が大変少なくなってまいります。そういう意味でも、専門家の養成もぜひ図っていただきたい。

 二つ目といたしまして、事故調査委員会の予算を一層充実すること及び臨時の予算執行が可能な制度を新たにつくっていただきたいということでございます。

 航空事故調査委員会の年間の予算は約六、七千万円と聞いております。現在では、大型ジェット機のエンジンを一台分解するのには二千万円程度かかると言われておりまして、例えば四発の飛行機のエンジンですと、これらの検査だけでもほぼ年間予算を消費してしまうというような予算規模でございます。極めて不足しているのではないかと考えております。例えば、ニューヨーク沖で墜落いたしましたTWA八〇〇便という事故がございますが、その事故調査の過程では、残骸のほとんどを引き揚げたわけでございますが、それに費やされた費用は約三十五億円に上ると私どもは聞いております。

 第三点目として、意見聴取会を原則として開催するということに改めていただきたい、及び公述人を幅広く採用するように取り扱っていただきたいということでございます。

 現在の事故調査委員会設置法では、意見聴取会開催の要件として、委員会が必要と認めるとき及び航空運送事業の用に供する航空機の事故であって一般的関心の強いものに限定しております。委員会の裁量にゆだねる範囲がやや広過ぎるのではないかということで、原則として意見聴取会は開催するんだというように改めていただきたいと考えております。

 これまでの聴聞会は、搭乗者に死亡者が発生した場合だとか機体が大破または焼けてしまう、焼損するなど比較的規模の大きな被災の場合に開催されていますが、今改正案の眼目の一つで、重大なインシデントを事故調査の対象に加えるということになりますと、重大なインシデントというのはそういうような事態に至らないので、今の法案の取り扱いでは開催がほとんどされないのではないかというふうに考えております。

 また、意見聴取会に参加できる公述人を現在よりも幅広く、私どもは四点ほど考えておりますが、事故の原因関係者だとか遺族、被害者、それから事故の原因究明、再発防止の検討、被害の拡大防止策の検討などに関して経験を有する個人、団体、それから四点目といたしまして、これら以外で原因究明や再発防止の検討に寄与し得る航空労働者や目撃者、事故等の現場の周辺の住民、その他の団体等もぜひ加えていただきたい。これらの手法は、NTSBが現在でも事故解明の手順として取り入れている手順でございます。

 四点目といたしまして、事故の再調査の手続を法令に明記すること、及び再調査実施の要件について、事故調査委員会の裁量にゆだねられる部分を極力客観的な要因となるように変更していただきたいということでございます。

 現在の設置法並びに運営規則では、再調査の手続については明文が存在しておりません。国際民間航空条約の第十三附属書にはこれに関する明文規定がございます。日乗連は、過去、独自の事故調査を行うことによって原因究明の手がかりになる物的な証拠を提示したり、事故調査委員会とは異なる具体的な意見を表明した経験を持っておりますが、これらは受け入れられておりません。再調査手続に関する明文規定がないことが障害になっているとするならば、新たに規定を設置していただきたいというふうに考えております。

 具体的にはどういう場合かと申しますと、事故調査報告書に記載のない、あるいは確認されていない証拠の存在が報告されたとき、事故報告書または事故調査記録に触れられていない、もしくは見落とされている事柄が指摘されたとき、三点目として事故の技術調査の手法や手続について異議が唱えられたとき、次に、報告書作成後に新たな研究の成果として、事故調査の過程の一部に疑問が呈されるなど、事故原因究明の手続に影響を与える事実が判明したとき等々でございます。

 第五点目として、私どもでは現在ないというふうに考えておりますが、具体的な航空事故技術調査マニュアルを作成していただきまして、設置法の下位規定として位置づけていただきたいということでございます。これも、具体的にはICAOドキュメントとして第十三附属書の下位規定として具体的に定められたものが存在しております。

 以上が現在の事故調査委員会の機能を拡充させていただきたいという中の具体的な提言でございます。

 大きな二点目として、事故調査委員会を各政府機関から完全な独立組織とすることということでございますが、これは先ほど清水参考人が述べられた意見とほぼ重複いたしますので、内容については割愛させていただきます。

 三点目については、旧運輸省、警察庁間の覚書を廃止し、刑事捜査が事故調査の支障とならないように新たな取り決めの確立を求めたいと考えております。

 現行規定では、よく読みますと、警察の捜査が優先するようになっておりますが、警察本来の任務でございます現場の保存だとか人命の救助等に専念するような、新たな視点での取り決めを結んでいただきたいと考えております。

 時間が来ておりますので、これで私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大村秀章君。

大村委員 おはようございます。自由民主党の大村秀章でございます。

 本日は、航空、鉄道関係の御専門の四人の先生方に参考人としてお越しをいただきまして、非常に御示唆に富んだ御意見をお述べをいただきましたことを心から厚く御礼申し上げる次第でございます。

 それでは、時間も限られておりますので、早速私の方から参考人の四人の先生方に御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 今私ども、この現代の社会、経済、我々の生活も、鉄道や航空といった、飛行機といった大量の輸送手段によって成り立っている、大変便利である、それを抜きにしては我々の社会は成り立っていかないということは、もう私が改めて申し上げるまでもないことだと思っております。いろいろなデータを見ても、これまでは鉄道の輸送量というのはすごいものであるわけでありますけれども、特に航空の輸送量が、とにかく落ちることを知らずにどんどん伸びる。これだけ右肩上がりに伸びていくのも珍しいんじゃないかなというぐらいのものだと思っております。そういう便利な、そして私どもの現代の社会、生活に欠かすことのできない高速で大量の輸送手段、これはもうますます重要になるわけでありますけれども、そこに当然必要なのが安全であるわけであります。

 関係者の皆様方がこれまでに培った御経験なり最新の技術も駆使して、乗客そしてまた利用される方の安全を確保されておられることは、本当に私ども敬意と感謝を申し上げる次第でありますけれども、不幸にして時々どうしても、それは人間のやることでありますし、機械、設備のやることであります、一〇〇%、とにかく安全でなきゃいけないわけでありますけれども、必ず全部、全く無事故というわけにもいかないわけであります。そこで、今回、航空・鉄道事故の調査委員会設置法の改正法案を出して、航空事故に加えて鉄道事故ということもこれに加えるということでございますし、新たにインシデントも加えるということでございます。そういう意味で、今回の改正法案、我々はとにかくこの何年かあった大きな事故を踏まえて、これは当然進めていかなければいけない、そのことが利用者、国民に対して果たしていく我々の責任だと思っておるわけであります。

 そこで、きょう、まず鉄道関係につきましてお二人の先生方にお聞きをしたいと思いますが、これまでに大きな鉄道事故に対しまして、家田先生もそして佐藤先生も、それぞれの御専門の立場でまさしく実際に調査に携わってこられた、調査をリードされてこられたというふうにもお聞きをいたしました。

 そして、まず家田先生にお聞きをいたしたいと思いますけれども、昨年三月、ちょうど一年になりましたけれども、例の日比谷線中目黒事故で、大変痛ましい事故でありました。まさしく首都圏の本当に重要な通勤手段であるわけでありまして、あそこでああいう形の事故が起きたということに、私なんかも本当に背筋の寒くなるような思いをいたしましたけれども、その事故調査に当たって、中間報告が四カ月、そしてまた最終報告七カ月といったことで出されたわけであります。あれだけの大きな事故で、そして先ほど、いろいろな専門分野にわたるありとあらゆる専門家をお集めになり、そしてそれを踏まえて調査を進められ、これだけの期間で調査書をつくられたということ、その御苦労なりいろいろなお話を先ほどお聞きをいたしたわけでありますけれども、それについて、今回の事故調査、特にこの中目黒事故は大きな事故でありますが、この事故調査に当たってどういうふうに、まあ先ほど御説明いただいたことに尽きるのかもしれませんけれども、その調査に当たって御苦労された点、特にこうした点がやはり苦労したんだ、また、こうした専門的な分野で関係者の努力が必要なんだということがあればお聞かせをいただきたいと思います。

 あわせまして、よくこういう大きな事故調査のときに課題になるんでありますけれども、実際に調査をされたことと、それをいかに国民なり関係者に伝えていくかという情報公開の問題、これも今後の事故の再発防止そしてまた関係者の関心も考えれば、この情報公開もやはり的確に行っていかなければいけないと思うんです。ただ、実際、急ぐ余り不確定なものを発表するということもできないと思いますし、そこら辺のタイミングと情報公開のやり方は非常に難しい課題だと思いますけれども、この点につきましてもあわせてお伺いできればと思います。

家田参考人 お答えいたします。

 まず、第一点目の日比谷線の事故調査について特に苦労した点を申し上げますと、一つは、事故調査検討会は日比谷線が初めての経験ですし、常設の組織ではないので、検討会に参加した多くのメンバーが組織づくりとか作業のルーチンとか相互の技術的コミュニケーションに非常にふなれであったところでございます。そこを確立するために、極めて頻繁にミーティングを行ったり、非常に夜間にわたる議論をするというようなことが一つございました。

 それから、むしろ日比谷線の場合にはたまたま問題にならなかった、潜在的な苦労点というのを二つ挙げたいと思うんですが、一つは、東京で起こったために調査がしやすかったところでございます。もしこれが遠隔地で起こったら、ほとんどの調査のメンバーは東京在住でございますので非常に問題が生じた可能性があります。

 それから二点目は、日比谷線の場合、その内容が極めて技術的な側面が多くて、現場の職員の方々の作業ミスによるとか取り扱いミスによるという面がほとんどないわけでございます。そのため、そういう方々に対してこの事故調査検討会が直接事情を伺うというような権限を持っていなかったわけですが、それが余り問題にならなかったことでございます。むしろ鉄道事故というのは、ほとんどの場合に、先ほどの航空の話にもありましたが、取り扱いの問題が多いので、そういったところの権限がないと恐らく苦労することになると思います。

 それからもう一点は、先ほどもお話がございましたように、最終報告を出すまでに約七カ月かかっておるんですが、これは七カ月もかかったというお考えもあるかもしれませんが、むしろ、極めて技術的な事故だったので調査や測定や計算をすることによって七カ月で結論を出すことができたというふうに考えた方がいいと思います。ここにもし職員等の心理的な要素、乗務員の心理的な要素が入ったり、あるいはその他もろもろの制度的な要素が入ると調査期間というのはもう少し長くなる可能性もあるし、あるいは未知の技術的な要素が入るともっと長くなる可能性もございます。

 それからもう一つ、情報公開に関してお答えさせていただきます。

 情報公開は、事故調査の成否にもかかわる極めて重要なポイントだと私は思っています。幾つか理由がございますが、一つは、調査を通じて得られた知見を極力速やかに関係者に伝えるという意味での情報公開、この重要性であります。

 二点目は、調査作業が十分公正なものであるためには情報公開が欠かせないということでございます。事故調査は状況によっては政府の鉄道行政のあり方そのものに対しても何らか物を言っていく必要がありますから、そういったところが重要です。また、私自身は、迅速で効果的な事故調査のためには鉄道事業者やあるいは当該事故の関係者にも何らかの格好で調査に参加してもらうのがむしろ有効だと考えております。ただ、公正な調査を実現するためにはやはり適切な情報公開が必要と思われます。

 それから三つ目の理由は、国民や鉄道事業者あるいは事故の関係者に事故の要因などについて誤った憶測を与えるような事態はぜひ避けなきゃいけませんから、そういうためにもむしろ正確な情報を適切に公開することが必要だと思います。

 日比谷線事故の場合にも、事故調査検討会ではなるべく頻繁に、検討会の実施の都度なんですが、検討事項や得られた結果を文書にまとめましてプレス発表をしたり、あるいはでき上がったレポートをホームページに載せる等のことを努めてきた次第でございます。

 ただ、情報公開に当たりましては、やはり十分な注意が必要なことも事実です。特にこういった問題は安全にかかわる問題ですから、万が一誤報などを行ってかえって危険がもたらされるようなことがあっては大変なことでございますし、また、根拠に欠ける断片的な情報をもたらして事故の関係者に混乱を与えるというような事態も避けなければいけないと思います。こういった視点からしますと、情報公開すべき情報はやはり科学的な視点からきちんとチェックしたものでなければならないし、また情報化する窓口もきちんと一本化しておくという必要があろうかと思います。

 以上、お答えでございます。

大村委員 ありがとうございました。

 続きまして、同じく鉄道の関係で、佐藤参考人にお聞きをしたいと思います。

 佐藤先生からも非常に、国鉄時代の御経験、そしてまたいろいろな事故調査の御経験もお話をいただきまして、鉄道事故調査の体制、そして調査の進め方、極めて詳細にお聞きをいたしたわけでございます。そして、特に最後のところでいろいろお感じになったことをお聞かせいただきまして大変印象に残りましたけれども、特に鉄道の事故は非常に多くの専門分野にわたるということで、事故調査委員会一つをとっても、もちろんそこで完結すること、そこがもちろん中心になって独立的にやるということが当然必要なわけでありますし、今回、当然この設置法で委員会の委員は「独立してその職権を行う。」ということにもなっておりますし、任命も国会同意ということでもございますし、この独立性は十分保たれておると私は思っておりますが、この独立性を生かして、あわせて、先ほど参考人が言われたように、関係者と、特にそういう技術スタッフをたくさん抱えている部局、国土交通省のそうした技術部局と十分連携をとってやっていくという御示唆、御意見を拝聴した次第でございます。

 そういったことも踏まえまして、どういう事故調査の体制が一番望ましいのか、あり得べき姿なのかということにつきましても、そしてそのことと当然関係するのでありますが、事故調査委員会をどういうふうに全体の関係者でサポートしていくか、支援していくかということも含めて、いま一度そのお考えをお聞かせいただければと思います。

佐藤参考人 私、旧国鉄に奉職した当時のことから思い起こしまして、どのような調査体制がよいのかということを考えるわけでございますけれども、旧国鉄では本社の運転事故報告基準規程というものがございまして、これに基づきまして鉄道事故の調査がされて、報告されておりました。当時の重大事故には途中脱線事故が非常に多かったので、先ほどお話し申し上げたのもその例でございます。こういう場合ですと、鉄道管理局の運転部の保安課というのが中心になりまして実際やっていたわけでございますけれども、私、土木部門でございますから、保線課長とか保線区長とかあるいは保線支区長の現地の責任者、これが、十数名になったと思いますけれども、非常に多いメンバーでやはり実際の仕事をしなければならなかったというのが実態でございます。

 こういうことを考えますと、これから事故調査をする委員会ができましても、やはりその辺の支援体制、これは非常に大事なことであるだろうと思います。この支援体制を含めまして、家田参考人からもお話がありましたとおり、その対策を立てるためには非常にいろいろなことを考える必要がございますので、それにあわせて非常に多くの専門家が協力するという体制がやはり必要になろうかと思います。

 したがいまして、よく考えてみますと、鉄道の事故調査でございますけれども、まず初動調査をいち早く行って、事故現場の状況とか関係者の証言を記録して、原因究明に必要な車両や線路の部品を特定したり保存するということがまず必要になります。あとは、鉄道システムの特徴から考えますと、土木、車両、運転、電気の専門家、それから、それに加えましていろいろな専門家が検討していくということが必要であろうと思います。

 こういうことを考えますと、まず公平性とか中立性ということが前提になるわけでございますけれども、従来からいろいろな情報を持っていたりあるいは経験を持っているところが協力できる体制をまずつくるということから始めるのがよろしいのではないかというふうに思っているところであります。

 また、こういう事故調査委員会におきましては、高度の技術とあわせまして、いろいろな鉄道事故調査方法を考えたり、あるいは論理的な結論を取りまとめるということも必要になっておりますので、そのようなことを総合的に考えていく、そういう体制が必要ではないかというふうに思っているところであります。

大村委員 ありがとうございました。

 それでは次に、航空関係に移りたいと存じます。

 大分時間が来てしまいましたので、もっとじっくりお聞きをしたかったのでありますが、航空事故調査委員会はもう長年の歴史もありますし、これまでにも重大な、いろいろな事故についても調査をし、その責任を果たしてきたと思っておりますが、今回、清水参考人そして川本参考人、お二人の先生にお越しをいただきました。まさしく現場でその日常の業務に携わっておられるお二人の先生方の御意見を拝聴いたしまして、大変貴重な御意見、傾聴に値する御意見だったと思っております。

 今回、この航空事故調査委員会に新たに重大インシデントも加えるということは、お二人の先生方が言われましたように、まさしくこれも当然一歩前進だと思っておりますし、こうした事故に至らないまでのものもあわせてしっかり調査をするということも大事なことだと思っております。

 そういう中で、今回、こういったことについての御意見と、そして、その航空現場の実際の業務に携わっておられる代表のお二人の先生方に、もう時間がありませんので申しわけありませんが、一言ずつ、不幸にしてこういった形の事故が発生した場合の、乗組員なり乗務員の方々とこういった事故調査との関係、どういったふうに関係していったらいいのか、どういうふうに協力していったらいいのかということについて、先ほどお話もお伺いいたしましたけれども、改めていま一度、重大インシデントを加えるという話と今申し上げたことについての御意見を、もう時間が余りありませんので一言ずつで恐縮でありますが、お聞かせいただければと思います。

清水参考人 事故が発生した場合、現場の方の人間が思うことは、まさしく原因究明と再発防止というただその一点でございます。したがいまして、事故発生後の事故調査委員会の体制は先ほど言ったような体制を望みますし、体制を強化しないと早く調査も進まないし事故原因の追求もできない。加えて言えば、その事故調査のときに当たって、現場のノウハウを一番持っている航空会社の職員等についても、積極的にそういう現場の立場の方から関与させるべきだというふうに思っています。これは時々誤解があるかもしれませんけれども、航空事故を起こした当該会社に関しても、決して、その原因なんかについても秘匿するとかそういうことじゃございません。あくまでも原因追求ということですので、そこで持っているノウハウについては積極的に活用してもらいたいというのが現場の方の気持ちだというふうに思います。

 以上です。

川本参考人 一言で申しますと、アネックス十三の規定にございますとおり、事故発生時とその当該人等の関係につきましては、事故調査をする目的が再発防止にあるということで、罪や罰を科するのが調査の目的ではないという、いわゆる調査の目的に沿った趣旨で事故調査を進めていただきたいというのが私の意見でございます。

大村委員 ありがとうございました。

 それでは、きょうお聞かせいただきましたお話をしっかりまた法案審議に生かしていきたいと思います。どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、家田先生、清水先生、佐藤先生、川本先生、貴重なお時間の中、お出ましいただきまして、御意見を聴取させていただきましたことをまずもって御礼申し上げます。ありがとうございました。

 座って発言をさせていただきたいと思います。お許しください。

 安全は輸送業務の最大の使命である。これは多分、鉄道あるいは航空を初め輸送業界で働かれる方が職場に入られてまず先輩からたたき込まれる、そういう言葉ではないか、今も多分この精神は引き継がれているのではないかと思います。ですから、だれしも事故を起こしたくはない、あるいは事故が発生してほしくはないと思うわけでございますが、歴史的に見ましても、残念ながら一〇〇%なくなることはなかなか難しいのかな。

 そういった意味で、今社会情勢をかんがみたときに、高齢化、それから一つのシステムとして考えた場合に、いわゆる輸送システムと申しますのは総合技術産業システムであり、そこの中に複雑化、複合化してまいっている部分もある、技術的なレベルからすれば、ハイテクとローテクが混在する、また労働集約という面から考えれば、これはまさしく労働集約産業でございます。そういうような社会的な流れの中で、また国際的な観点からすれば、家田先生が論文の中でもお書きになっているような、いわゆる被害の回復の困難性というような場合も発生してまいります。これは命だけに限らず、システム自体を破壊する、あるいは社会に甚大な被害を及ぼすというようなことも今後考えられると思います。

 そういった観点の中で、私自身は、航空事故調査委員会をつくるならば、中途半端なものにしてはならない、世界に冠たるものであっていただきたい、そういう願いから、きょうもいろいろ先生方のお話を承っていたわけでございますが、二、三、ポイントをかいつまんでいろいろ質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、航空の方からお二人の先生方に御意見をいただきたいと思うのです。

 まず清水先生から、お話の中にもございましたが、事故調査委員会の位置づけというのは非常に大きなポイントではないか。いわゆるアメリカのNTSBは、私は一つの見本にしていいものではないか。そのスタッフの規模あるいは権限の与え方、アメリカも八年をかけて見直しをしたということでございます。その位置づけについてどういうお考えをお持ちであるか、いま一度お聞きしたい。

 それから、正確な情報を事故の現場から入手するという意味では、いわゆる事故調査と犯罪捜査、これが非常に難しい境界であるわけでございますが、ポイントは免責処分のあり方だと思います。この点についても御意見をお聞かせいただきたい。

 さらに、さきの航空の管制の問題、いわゆるニアミスにおける空域、管制の見直しのお話も出たんですけれども、それについて一元化が可能かどうか、そんなような観点。現在、民間と自衛隊と米軍、これとの兼ね合いがあろうかと思うんですが、そのあたりの御意見を清水参考人からお聞かせいただければありがたいと思います。

清水参考人 三点、御質問いただきました。

 私、先ほど申し上げたんですけれども、日本型のNTSBを目指すべきだということについては、今伴野委員の方からございましたように、やはりアメリカの方も、ここについては随分内部でいろいろな確執があった中でここにたどり着いたというふうに聞いております。あくまでも、先ほど言いました独立性、権限の強化、それから体制強化、この三点なくして日本の航空を初めとする事故調査については前進がないというふうに思っています。

 とりわけ独立性のところについて申し上げれば、国土交通省の中に属する機関ということになりましたが、最終的に、調査をしていった中で、恐らく、今国土交通省の中に属しているということであれば、事故が発生したときの国土交通省の、例えば職員の動員のしやすさであるとか、あるいは、そもそもそういった事故については国土交通省が扱うんだということもあるかもしれませんが、いろいろな形で事故原因の解明が行われれば、間違いなく国土交通省というのが許認可を含めていろいろなことをやっているわけですので、そこに原因があるということを内部調査のような形にならざるを得ないことも発生するんじゃないかということを危惧いたしますので、この独立性についてはまず何をおいてもやるべきだと思います。

 加えて、体制の強化についても、先ほど申しましたとおり、やはり日本は、日本とアメリカ国民ではいろいろ違いがあるかもしれませんけれども、アメリカという、世界に冠たるNTSBという形で事故調査については絶対的な形での信頼を得ている機関があるわけですので、多少言い方は悪いんですけれども、恥ずかしがることなく、まねるところはきちんとまねた上で必要な措置等を行っていくべきだというふうに考えています。

 それから二点目の、事故調査原因と免責の件ですが、ここについては、先ほど申しましたとおり、あくまでも真実を語っていただかないと原因究明は進まないというふうに思っています。恐らくここは、国民の皆様からしても一番関心の高いところだと思います。そこの真実を語った上で、原因分析までいった上で、日本の事故調としても再発防止策を早く、建議等行わなければいけませんし、各国の航空局あるいはメーカー、運航会社に対して、一刻も早く勧告を出すべき責務があるというふうに思っていますので、早く真実を語ってもらうために免責制度、これについては刑事訴追の疑念を早く払拭した上で、そこを進めるべきだというふうに思っています。

 三点目の、空域、それから管制の一元化のところですが、管制については、先ほど言いました国土交通省、自衛隊、米軍、三つでやっていまして、それぞれ引き渡し等を行っておりますが、ここについては、国土交通省が全体を総合的に見ることによってそれぞれに情報を与えていく、それによって民間航空機の運航についての安全性については飛躍的に増大するというふうに思っています。それは空域というものとは違うけれども、管制の話になりますが、やれるというふうに思っています。

 以上です。

伴野委員 改めての簡潔な御意見、ありがとうございました。

 続きまして、航空に関係しまして、川本参考人に一つだけお聞きしたいと思います。

 私は、航空輸送システムというのを一つの系で見た場合に、機械と人間の領域をもうそろそろ科学的な確率論で分担し合っちゃっていいんじゃないか、ある程度割り切りも必要じゃないかと思いますが、そのあたり、パイロットを総括していらっしゃるお立場からしてどんな御意見を持っていらっしゃるか、お聞かせいただければ。

川本参考人 今の御質問、非常に概念的といいますか、包括的と申しますか、お答えが大変難しいと思うんですが、よく私どもはマン・マシン・システムという言葉を使いますが、いわゆる人間と機械がどういうふうにインターフェース、相対していくのかということで、それは機械がすべてでもないし、人間がすべてでもないということで、いわゆるマン・マシン・システムのインターフェースの調和を図るというふうにお答えさせていただきたいと思います。

伴野委員 ありがとうございました。

 では、続きまして、時間がございませんので鉄道の方へ移らせていただきたいと思います。

 家田先生から御意見をちょうだいしたいと思うんですが、先生が国際交通安全学会でもお述べになっていらっしゃる、システムの安全設計について、時間が余りない中で申しわけないんですが、ヒューマンエラーとかあるいは事故統計データの蓄積という観点から、かいつまんで教えていただければありがたいのでございます。

家田参考人 大変難しい御質問でございますけれども、鉄道システムに限らずあらゆる交通システムというのは、いろいろな要素が複合されてでき上がっているものですので、個別の要素ごとに安全性を高めていくのみではベストの解にはなかなか至らない、分野間が上手に連携し合うことが大事だというところがポイントでございます。

 以上です。

伴野委員 ありがとうございました。

 もう一つ、家田先生にお聞きしたいのは、先ほど日比谷線の事故のお話があったわけでございますが、先ほども大村委員の方からも情報提供のあり方というのがお話にあったかと思うんですが、とりわけ結果の生かし方についてちょっとお聞きしたいのです。

 その中でも、報告書の中にもありました、いわゆる静止輪重の管理等々、これはJR本州三社ぐらいならばかなり完璧にやれるんだと思うんですが、ほかの北海道、四国、九州はいかがなものかな。さらには、私鉄の非常に経営規模の弱いところにいわゆるいい設計図を渡しても、できなければなかなか難しいのかな、場合によってはポンチ絵で、これもまた確率論になるのかもしれませんが、ある程度捨てる勇気というのもあって、そこは保険とかほかのソフトで補うというような観点で、情報の出し方あるいは指導の仕方というのがあるんじゃないかなと思うので、そのあたりはいかがでしょうか。

家田参考人 おっしゃるとおりだと思います。すべてを設備や施設によって対応するのではなく、それがカバーし切れない、あるいはむしろ制度的なものと両方連携しながら、一番いい解を見出すというのがポイントだと思います。したがいまして、それは、事業者によって、輸送の状況によって、得られる解も変わってくるかと思います。

 以上です。

伴野委員 どうもありがとうございました。

 いずれにしても、この事故調を初め、現場との連携というのはそういう意味では非常に重要なことになってくると思いますし、やはり最大の情報というのは現場にあろうかと思います。

 そういう観点で、佐藤先生にちょっとお聞かせいただきたいのでございますけれども、列車事故の中の、運転事故の半分は踏切事故だと言われております。そういった観点で、なぜ踏切事故が多いんだという視点でのお答えを一つと、その中で、立体交差化していくことは非常に意味があるんですが、逆行する拡幅というものがまだ考えられているという現状について、踏切事故が多いという現状とあわせて御意見を聴取させていただければありがたい。

 鉄道工学というのはよく経験工学と言われます。いわゆる現場での技術継承、特に、これから高齢化していく中で、技術継承というのがひとつ事故防止に非常に重要な意味を持ってくるんじゃないかと思いますが、そのあたりの点で御意見を賜れればありがたいかと思います。

佐藤参考人 踏切につきまして事故を防止するということは、道路交通との両方がございますので、やはりその観点から考えますと非常に難しいことであるのは事実であります。

 鉄道側といたしましては、一番いいのは、お話のありましたように、立体交差化するということではあります。しかし、現実の場合にはなかなかそれが全部できるということではありませんので、一つ一つの踏切の条件をいろいろ考えて、その前後の例えば道路の状況とかそういうようなことを考えながら、やはり一つ一つやっていく。

 それから、踏切の設備につきましても、今いろいろな形のものがいろいろな会社で試みられておりますけれども、そのような中から適切なものを選んでいくという観点がやはり必要ではないかと思います。

 それから、今お話のありました現場の技術の継承ということにつきましては、私も非常に心配しているところであります。特に、やはり鉄道は現場に必ずしもきれいな場所だけではないところがあるわけでございますので、そのようなところにつきましては、できるだけ機械化をするとかということで若い人が興味を持つような仕掛けにしていく、そういう組織にしていくということがまず必要であろうかと思います。

 しかし、それだけでは十分なことはできないわけでございますので、いろいろな過去の経験というものをやはり蓄積しまして、そういうものがノウハウの形でいつでも提供できるようなもの、あるいはノウハウの形で教育ができるようなことということを考えていくのが適切ではないか、そういうふうに考えております。

伴野委員 適切な御意見、どうもありがとうございました。

 最後に、四人の先生方に一つ共通した質問をさせていただきたいんですが、時間が限られておりますので、一言ずつお聞かせいただければありがたいと思うんです。

 今回、法案の中には、委員の数が九名というのがございます。アメリカのNTSBは四名でございます。ここの部分に関して、どのようなお考えといいますか、数が多い、少ないという話もあるのかもしれませんが、御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。

家田参考人 私は、数は多いか少ないか判断がつきませんけれども、大事なポイントは、どういう場合でも必ず必要になるような専門家はやはりそろえる必要がある。そしてまた、航空にしろ鉄道にしろ、生じる事故の特性に応じて、ケース・バイ・ケースで、必要な専門家をそこにつけ加えていくという体制が必要かと思います。

 以上です。

清水参考人 先ほど申しましたとおり、委員の数については九名というのが適正かどうかちょっとわかりませんが、その他に任命される専門委員の方それぞれの持たれている専門性並びに深度、並びにその質、量ですね。加えて、先ほど申しましたが、何よりも事務局スタッフ、こちらの方については、常日ごろから日常的に研究を行い、試験等を行い、事故に備えてという形で蓄積する、そちらの体制の方がさらに重要だというふうに考えます。

 以上です。

佐藤参考人 鉄道システムというのは専門性がございますので、それから考えますと、少なくとも先ほど申し上げました土木とか車両とか運転とか、あるいは電気とか、そういうものはまず専門家として整えられる体制をつくっておくということが必要であろうと思います。

 数は特に問題はないと思うんですけれども、問題は、専門性のある先生が、事故があったときにまず集まる、集められる、そういうことが大事じゃないか、そういうふうに思っております。

川本参考人 NTSBと単純に比較していいのかどうかというのは、私は見解を現在持ち得ておりませんが、九名のうち航空関係は現在の五名のまま、そのまま引き継がれているんだろうという観点から申しますと、私たち航空の五名が現在多いという意見は持っておりませんので、明快な答えは現状持ち合わせておりません。

 以上でございます。

伴野委員 的確な、手短な御返答をいただきましたので、議事進行に非常に御協力いただきましてありがとうございます。

 最後にもう一つ、時間がございますので御質問をさせていただきたいのでございますが、いわゆるヒューマンエラーというものがございます。このヒューマンエラーというものを防止するという観点、今後事故調査委員会でどう取り扱っていったらいいのか、あるいはそういうヒューマンエラーの専門の方をやはり委員に加えた方がいいのか、そういう心理学的な、あるいは労働の面からもきちっと切り口を持った方がいいのか、御意見がございましたらまたお時間の許す限り御意見をいただきたいのでございますが、家田先生から順番に一言ずついただければ。

家田参考人 ヒューマンエラーというのは、どの交通システムでも古来から最も重要なエラー要素の一つであって、それは必ずしもヒューマンエラーの専門家ということじゃなくても、各分野ごとに勉強してきたところだと思います。

 先ほども申し上げましたが、事故に応じて、非常にヒューマンエラーの要素が多い、あるいは新しいヒューマンエラーの要素というような場合には、その筋の専門家が必要かと思います。

 以上です。

清水参考人 私の方もヒューマンエラーの専門家がいた方がいいかというのはちょっと申し上げられませんが、技術の高度化とともに、そういうインターフェース、人間についての、やはりそこの研究については今後も必要だというふうに考えておりますので、常設、常にということではないかと思いますけれども、技術を追い求めておく、ともに加えてそちらの方の専門分野からもやはり指摘する方については必要だというふうに考えます。

 以上です。

佐藤参考人 私どもの研究所におきまして、やはりヒューマンエラーというのは一つの研究部門でございまして、その関係の研究者が多数いるわけでございます。そのことから考えてみますと、やはり鉄道の事故におきましては一つの重要な要素であり、またそれを当然事故が起こったときには考えなければならないということは確かであります。

 しかし、ヒューマンエラーといいましてもいろいろなことにわたるわけでございますので、やはりその都度専門性のある人が集められるということが大事じゃないかというふうに思っております。

川本参考人 御存じのように、航空事故というのは一つの要因で起こることはほとんどないというふうに言われておりまして、いわゆるいろいろな要因が重なり合って最終的に事故に至るケースが大変多い。また、その中で、人的な要因で事故に至るケースも、これは統計上、相当な割合を占めているという統計がございます。私の今の記憶では、多分七割だとかそういう形になるのかなと。

 そういう意味では、いわゆる人的な要因に関する研究なりそれの専門家の方が、事故発生時だけではなくて、常日ごろから事故防止という観点で研究をしていただきたいというふうに考えております。

伴野委員 きょうは、貴重なお時間の中、お出ましいただきまして、たくさんいろいろな御意見を賜りましたこと、この場をもって御礼申し上げます。ありがとうございました。

 これにて時間を終わらせていただきたいと思います。

赤松委員長 次に、河上覃雄君。

河上委員 公明党の河上でございます。きょうは、参考人の皆様には、大変御多忙の折、当委員会に参考人として御出席いただきましてありがとうございました。

 初めに家田参考人にお尋ねをしたいんですが、先ほど意見陳述の中で、鉄道事故の大きな項目の2の最後の(3)の中で、「事故調査体制整備のあり方」という項目がございますが、実効性、機動性のある効率的な調査機関を極力迅速に整備するという御指摘がございました。特に技術面あるいは組織面の観点から整備が必要だ、こういう意見陳述がございましたが、参考人におかれましては、この組織的側面における整備というのは、具体的に言うとどんなことをイメージされているのか、家田参考人にお尋ねいたしたいと思います。

家田参考人 お答えいたします。

 実効性と機動性のある組織というのは、やはりこの整備のポイントかと思います。

 具体的に言いますと、遠隔地であっても初動調査が迅速にできるような体制をつくる、あるいはこれまで長年にわたって蓄積されてきました我が国の鉄道の技術やノウハウ、人材を最大限活用できる、それから研究者から実務者まで幅広い人材を結集できる、しかもそれを事故後の初期に立ち上げることができる、こういうようなところかと思います。

 それからまた、こういう組織的な機能を確保するベースは何といっても人ですので、調査組織のメンバーの構成であるとかあるいはその選定、そういう作業のみならず、調査組織を支える事務局の職員の鉄道実務に関する知識やノウハウを維持向上できるような研修面での方策も必要かと思います。

 以上でございます。

河上委員 ありがとうございました。

 佐藤参考人にお尋ねしますが、調査機関の中立性という、意見陳述の中でお話がありました。

 当然、中立の機関を中心に関係者が協力し、中立的な第三者機関が実施することが望ましいというお立場だろうと思いますが、そして調査体制の二番目の方、運営組織の条件、特に鉄道に対し責任と経験を有する行政組織との協調ということを先ほどお話しをいただきましたが、この点につきましても、責任と経験を有する行政組織との協調というのは、具体的にどのような視点からお述べになられたのか、御説明をいただきたいと思います。

佐藤参考人 お話のありましたように、やはり一番大事なことは中立でありまして、そして公正な事故調査ができる、これは一番大事なことであろうと思います。

 そのほかでやはり大事なことは、その次には、その事故調査がやはり正確でありまして、適切であって、そしてそこから出てまいります対策が効果的であって説得性を有している。そういうことからやはり組織の信頼性というものが出てくるんじゃないか、そういうふうに思います。

 したがって、そういうようなことを考えて新しい体制を組むということがまず必要ではないかというふうに考えたわけでございます。

 そのようなことを考えますと、ここに書きました鉄道に対して責任と経験を有する行政組織ということで考えてみますと、やはり国土交通省の中にあります現在の鉄道技術の組織でございますが、やはりそれが今までの、最近の、特に家田先生からもお話がありました日比谷線の事故などにおきましても非常によく機能しているということがあるわけでございます。

 やはりその辺を念頭に置きまして、協調し、連携をするという体制がまず必要ではないか。そのようなことを念頭に置いてお話ししたわけでございます。

河上委員 ありがとうございました。

 家田先生にお尋ねをいたしたいと思いますが、今回の調査は、中間報告で約四カ月後、そして最終報告が約七カ月後。こういう、大変御苦労なさったんじゃないか。御多忙の中、精力的にお取り組みになられたんじゃないかとは思いますけれども、この中目黒の事故の場合、調査期間として一年未満になっておるわけでございますが、これで十分だったのか、あるいはやや時間が足りなかったのか、どういう御感想をお持ちでございましょうか。

家田参考人 調査期間というのは、要するに報告書をまとめるまでの期間というふうに理解いたしますと、これは絶えず二つの要素のトレードオフになるかと思います。一刻も早く知見を出して、それを実務に反映し、再発防止を図る、こういう面と、なるべく調査を充実させて内容をよくしたい、こういう面のトレードオフになります。したがって、一概にどのくらいの期間であるというのがベストということにはなかなかならないと思います。

 この日比谷線の事故の場合は、先ほども申し上げましたとおり、技術的な要素が非常に強かったので、比較的淡々と研究を進めることによってこういうような結果が出て、私としましては、大方のところがわかった段階で、しかもそんなに遅くない時期に実務的に反映できるような結果を出せたというふうな感想を持っておりますが、一概にこの七カ月やあるいは一年というのがどんな事故にも適用できるとは必ずしも思っておりませんし、それを余り決めつけでやると、かえってきちんとすべきところをしないとか、あるいは妙に長くなってしまうというようなことがあってはいけないと思っております。以上です。

河上委員 佐藤参考人、今の点についてどういう御見解をお持ちでしょう。

佐藤参考人 鉄道総研で、実はいろいろな事故の調査のお手伝いをしている立場でございますけれども、いろいろな事故におきまして調査を依頼されますと、その内容におきましては、やはり相当長い期間が必要なものもあるというふうに思っております。それから、鉄道総研の、過去に事故につきまして委員会などを開いたことを考えますと、やはり初めからこれを何カ月でやろうということは無理があります。

 先ほど家田参考人からもお話がありましたように、トレードオフではありますけれども、鉄道総研といたしましては、やはり内容の充実した調査をいたしたいという立場でございますので、必要な期間をとった上で調査をするということが私どもの立場としては大事だというふうに認識しております。

河上委員 佐藤参考人にもう一点お伺いいたしますが、鶴見事故のお話の、後に四年七カ月間ですか、その後もさらに継続して対処をなさってきたというお話を承りました。

 私も知りませんでしたけれども、このような事例は他の事故の中でも、やっていらっしゃるところはその他あるんでしょうか。あれば教えていただきたいと思うんです。

佐藤参考人 鶴見事故について一つ例をお話し申し上げましたけれども、当時、途中脱線が非常に頻発いたしまして、これは二軸の有蓋車とか、あるいはセキという車両だったと思いますけれども、そういう貨物の特殊な車両が途中脱線を頻発したということがございました。

 したがいまして、四年七カ月という試験は、実は、その辺の貨物の実際の事故について、各車両について、狩勝の実験線を使いました事故調査がやはり主体になったわけでございますので、これがすべての鉄道事故に当てはまるというわけではございませんが、非常に難しい事故が起こったためにこのような例が起きたというふうに御理解いただければいいのではないかと思います。

 そのほかですと、私どものいろいろやりました例では、やはり一年以上かかったということもございますので、どれぐらいのことが通常試験期間としていいのかということは、適切なことはお答えしにくいというのが実情でございます。

河上委員 今回の改正案の主要な一つといたしまして、従来、鉄道局長の懇談会であった鉄道事故検討会を常設の調査機関といたしまして、航空関係と一緒に、調査機関を改めて再編成をするという考え方になるわけでございます。

 鉄道事故の視点と航空事故の視点とやや質的に違いがある、しかし、今回は一緒の機関として改めて、同一組織で調査を行うこととしているわけでございますが、このあり方について、特に何かお考えの点がございますでしょうか。あるいは、これでは支障があるとか、あるいは支障はないとか、そういう観点について、佐藤参考人並びに家田参考人にお尋ねをしたいと思います。

佐藤参考人 航空の事故と鉄道の事故についての特殊性は間違いなくあると思います。先ほどもお話し申し上げましたように、その専門性が若干違っているところもあるかと思いますが、ただ、事故調査の対象が違いましても、事故というものは、そのノウハウとか、やはり共通するところは多々あるのじゃないか、そういうふうに思います。

 したがいまして、これを一元的な組織で活動するということについて、やはりメリットもあるだろうと思いますので、必ずしも同一の組織でやるということが悪いことではないというふうに思っております。

家田参考人 基本的なところでの技術的な要素というのは、それぞれの交通機関によって独自の技術がございますから、別個のものかと思います。ただ、事故が発生した場合のその潜在的な要因、ヒューマンエラーの問題であるとか、設計の発想の問題であるとか、トータルシステムの設計の問題であるとか、こういうところは、交通システムによらずかなり共通している要素が多いかと思います。

 したがいまして、同じ組織の中に二つ分かれていたとしても、航空と鉄道があって、事故の調査の結果を時々意見交換するというようなことは、技術的にも極めて有効な方策ではないかと私は思います。

 以上です。

河上委員 さらにもう一点、具体的な側面からちょっとお尋ねをしておきたいと思いますが、平成十二年度の改正航空法におきまして、ニアミスやオーバーラン、アンダーシュート、滑走路からの逸脱、発動機等の破損、これらの重大インシデントについては国土交通大臣に報告をするということが義務づけられました。

 鉄道事故のインシデントについては、どのようなケースを重大インシデントとすべきか、法律が通ればこれから具体化をしていくことになると思いますが、鉄道事故の場合における重大インシデントというのは、佐藤参考人あるいは家田参考人は、どういうケースをお考えか、この点についてお尋ねをいたします。

佐藤参考人 重大なインシデントというのは、いろいろなケースが考えられるものですから、特定するのは非常に難しいと思いますけれども、やはり一番重要なのは、脱線事故が起きまして、それとあわせてまた事故が起きるというようなことが、過去に非常に大きな痛ましい事故を起こしたことでございますので、途中脱線につながるような事故、こういう前提となる小さな事故、そういうものについては、やはり非常に重要視して考える必要があるんではないかと思います。

 また、特に、そういうことを考えますと、車両の部品が壊れるとか、例えば車軸が壊れるというようなことが起きたとき、これはそれと併発して非常に大きな事故が起こる可能性があるわけでございますので、車両の部品の破損とかそういうものについては、一つの重大なインシデントとして考えられるのではないかと思います。

 また、そのほかにも、ヒューマンエラーとしてもいろいろなところで同じような事故が起こる可能性があるものがございますので、こういうことを考えますと、鉄道事故の中では、いろいろなことを考えた上で、併発する事故、また将来非常に大きな事故が起こる可能性のあるものというものをやはり洗い出していくというようなことが必要になってくるのかな、そういうふうに考えております。

家田参考人 インシデントの定義はなるべくきちんとしたいところではあろうかと思うのですが、私はむしろ、最後としてあいまいさを少し残しておくことがポイントかと思います。

 と申しますのも、日比谷線の事故の場合も、日比谷線の事故が起こった後からしますと、あのとき、あそこでこういう現象が起こっていたのは兆候であった、こういうふうに思えるところがあるわけですね。まあ後知恵になります。したがいまして、これとこれとこれのみがインシデントというよりは、むしろ、高度な技術判断によって、これは将来的に問題が起こるぞというようなのを個々に判断していくという要素が必要かと思います。

 以上です。

河上委員 大変痛ましい残念な事故がございまして、この間、私も新大久保駅へいろいろと事情聴取に行ってまいりました。事故直後でございましたけれども。重大なインシデントとはやや質が異なるかもしれませんけれども、安全上の対策としてさまざまな問題をいろいろとその現場で思うことがございましたし、ちょうど新大久保の構内というのは、進入路が百メートル手前ぐらいからカーブをして入ってくるような構造になっておりまして、そういう意味では、さまざまな視点がございますけれども、駅や駅周辺の構造上の問題あるいはそういうことの中に事故というインシデントが内包されているような気もしなくはない。

 こういう、人身事故ではあるわけでございますけれども、駅の構造や駅の周辺状況等も重大インシデントとしてとらえ得る可能性があるのか、あるいは、これは全く別な次元だとお考えになられるのか。やや具体的な例を挙げてお話しを申し上げましたが、これについてのお考え方をそれぞれ、佐藤参考人と家田参考人にいただきたいと思います。

家田参考人 鉄道によらず、あらゆるインフラストラクチャーあるいはシステムは非常に長い歴史をかけてつくられてきたものでございますので、現時点で見て、あらゆる面で完璧なものは非常に少ないと思います。そういう意味からすると、ホームの構造等々は非常に潜在的に大きなリスクファクターを持っていると思うわけです。

 ただ、世の中には、決してそればかりが問題なんじゃなくて、例えば普通の道路の交差点、あるいは密集市街地、こういったものの潜在的危険性というのも極めて大きいものです。大事なことは、個々に現象が起きたときに、そこだけに着目するのではなくて、我が国の社会が世の中でどういうようなリスクファクターを持っているかというのをより一般的にアプローチすることが重要かと思っております。

 以上です。

佐藤参考人 新大久保の例を引いてお尋ねでございますので、またその点についての意見というのですか、感じを申し上げたいというふうに思います。

 やはりホームの上の安全性というのは昔から非常に大きな問題であって、いろいろな技術者が、ホームの上でのいろいろなハードな対策をとった方がいいのではないかという意見が多々あるわけでございます。しかし、実務的に、完全な対策をとるというのは非常に難しい点があります。したがいまして、ホームの上でのいろいろなソフト的な、お客様に対する注意とか、あるいはすぐとめられるとか、そういう実務的なところをまずやっていく、そういう対策がとられることがまず大事であろうというふうに思います。

 したがいまして、これも一つのインシデントと考えればインシデントかもしれませんが、やはり一つ一つの対策を地道に出していくというのが今までの鉄道の一つのやり方でございましたので、そういうことを考えて今後とも続けていくということが大切な考え方ではないかというふうに思っております。

河上委員 航空関係に移ろうと思いましたが、これで時間がほぼ参ってしまいましたので、終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。

 家田先生にお聞きしたいのですが、地下鉄の日比谷線中目黒の事故調査に当たられたということですが、そのメンバーの構成と、実際の調査に当たった、例えば鉄道の摩耗の度合いとか、そういった専門家が当たられたと思うのですが、どういうスタッフで、どのようなメンバーでやられたか、期間もどれくらいのスピードでやられたか、それをちょっとお伺いしたいと思うのですが。

家田参考人 お答えいたします。

 事故調査検討会は十一人で構成されております。学識経験者が六人、機械、電気、土木等々の専門家、運転の専門家で運転協会の方、それから運輸省の研究所の方、それから三名、専門委員で鉄道総合技術研究所の線路や車両に関する専門家、こういう構成でございます。それからワーキンググループは、そういったメンバーに加えて、作業協力として、もう少しメンテナンスの専門家やなんかにも協力していただきました。

 それで、ワーキンググループが全部で二十回くらいでしょうか、それから検討会が都合六回くらいでしょうか、実施いたしました。期間は、調査報告書ができ上がるまでに約七カ月を要しております。

 以上でございます。

山田(正)委員 そうすると、家田先生、その六回の検討会の中で、先生自身としては、十分な検討がなされた、あるいはちょっとまだ不満であったとか、あるいはワーキングの調査結果が不十分であったとか、そういうところの先生の感じといいますか、それはいかがだったでしょうか。

家田参考人 この調査の根本の目的は事故の再発防止でございますので、再発防止に必要な対策を何か提言する、その提言するのに必要な事故究明を行う、こういうつくりでございます。その意味では、私としましては、このくらいの期間とこのくらいの回数、それから、そこではバックに膨大な作業が控えているわけですが、それでおおむね満足できる結果になったと思います。

 ただし、現象そのものの解明につきましては、個々にまだ継続して研究しなきゃいけない課題が幾つか残っております。それは調査の終了直後から継続して、現在も、研究所あるいは大学等々で分担して研究を進めていただいているところでございます。

 以上です。

山田(正)委員 佐藤さんにお伺いしたいんですが、鉄道総合研究所におられて、先ほど、いろいろな専門家、例えば土木、車両、電気、運転等々の専門家が必要であるというお話でした。

 それで、実際にいろいろな鉄道事故、地下鉄の事故に限らず、佐藤さんとしてはそういう専門家が十分に調査できる体制にある、調査に当たられる、いわゆる専門家は、例えば専門家以外の方、評論家みたいな方が事故究明とか云々に当たっているんじゃないとか、そういった形での御感想としてはどう思われていますか。

佐藤参考人 今までの鉄道事故の調査を考えますと、やはり専門家が十分な調査をするような場が提供されているというふうに考えております。

 現在、鉄道総合技術研究所では、お話のありましたように、車両の専門家とかあるいは線路その他構造物、いろいろな専門家を有しておりまして、それぞれの事故の都度、いろいろな調査の依頼を受けております。その中でも、調査を依頼するところから非常に細かなお話をお互いに話し合いながらやっておりますので、現在の事故の調査の感じからいたしますと、それぞれの専門家がやはり十分な調査ができるような環境は一応整えられている、そういうふうに思っております。

山田(正)委員 飛行機事故の場合に、国際民間航空条約の中の事故調査マニュアルの第一章ですか、事故調査に当たる調査員あるいは委員を決めるに当たって、特に重要なのは探求心、この種の仕事に対する献身、勤勉さと忍耐といった素質を備え、訓練を受けた人員によってのみ実施されるべきであると。事故技術調査官がその技量を伸ばす基礎として、職業操縦士の素地、航空工学の知識または運航、航空管制、気象、航空力学、設計などの航空専門分野の適切な経験を持つことが望ましいと、かなり具体的なマニュアルが出されているんですね。

 これを例えば鉄道事故と称した場合に、この前の地下鉄の日比谷線の事故では十分であったと家田先生は御判断のようですが、佐藤さんは、今のお話では、今までの鉄道のいろいろな事故調査において、専門家として、そういう意味での調査に当たる人の人選も十分であるとお考えですか。

佐藤参考人 先ほど、私が奉職しました旧国鉄の例も含めましてお話し申し上げましたが、鉄道はかなり長い歴史がございまして、その中で、大変残念なんですが、非常に多くの事故を経験してまいりました。したがいまして、そういうマニュアルという点につきましては、それぞれ旧国鉄時代にほぼ完成したものが一応残っていると思いますし、それはその後承継されました例えばJRを初めとしまして、いろいろなところで十分残っているんじゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。

山田(正)委員 航空機の事故等に関して、清水さんと川本さんにお聞きします。

 いわゆる航空事故の調査に当たって、調査員が操縦士の経験がないとか、日本の場合にはいろいろ問題があるやに聞いておりますが、先ほどの国際民間航空条約においてもかなりきちんとしたマニュアルがあって、実際そのとおりなされているかどうか、感じというかお考え、それをお二人にお聞きしたいと思います。

清水参考人 現在の航空事故調査委員会の編成の中においても、先ほど言いました調査官、これは国土交通省の職員が当たるわけなんですが、その中ではバランスよく、例えば操縦士の方あるいは管制の方等々が入られて、今三十一名のスタッフの方は構成されているというふうには伺っております。

 ただ、私どもの方で申し上げたいのは、それについては圧倒的にやはり人質、今の方たちの技術がということだけではないのですけれども、常日ごろからの技術向上に対する試験であるとかさまざまな実験等を含めて、そこについては圧倒的に不足しているんじゃないかというふうに思っておりますので、もしそこについて今マニュアルどおりになっているかといえば、申し上げることはできませんが、少なくとも、もっと早期に事故調査、原因等の分析まで行うためには今の人質ではだめなので、もっとふやしていただきたい、それからもっと専門的な方も入れていただきたい、さらには、さっき言いました民間側のノウハウについても事故調査のときに生かしてもらいたいという考え方を持っております。

 以上です。

川本参考人 今先生の方から、事故調査官はこういう人が当たるべきだという事故調査マニュアルの御紹介がございましたが、なおその後に、事故調査官は経験を積めば積むほどいいんだというのがございます。要するに、長い経験が必要なんだというふうにその調査マニュアルは述べております。

 私が先ほどの意見陳述でも申し上げましたとおりに、国土交通省の中の人事発令によるいわゆる異動という形がございまして、私どもがお伺いしているところでは、事故調査をなさる調査官の方の平均経験年数が三ないし四年というふうに伺っておりますが、それでは、先ほどの事故調査マニュアルに規定されている事故調査官の資質とはかけ離れたものではないかと。したがって、過去の事故調査でも私たちは独自に調査をいたしまして、大変僣越ではございますが、事故調査委員会と異なる見解を持った事故調査も数々ございます。

 紹介させていただければ、八二年の石垣事故、八三年の中標津事故、八八年の米子事故、九三年の花巻事故等々は、かなりの部分において事故調査委員会の調査結果と異なる見解を今でも持っております。

 以上でございます。

山田(正)委員 川本さんにお聞きしますが、確かに、そういう事故調査委員会の結果と違う、例えば機長さんたちの独自の調査で出てきているということ、そしてまた私の方もいただいた資料の中で、九九年九月三十日の関空事故、滑走路逸脱事件の調査の中、いわゆる機長組合ニュースという中では、アンケート調査の結果、九七・三%の乗員が信頼をしていないという、大変驚いたのですが、今のお話を聞きましても、非常に事故の調査について不信を持っている。そして、別に調査をやっている。これは、我々、客観的に見て考えられないことなんですが、それはなぜそのようなことに至ったとお思いでしょうか。

川本参考人 先ほど、私ども独自の調査を幾つか行ったと述べさせていただきましたが、今まで日本の事故調査の原因におきまして、いわゆるパイロットエラーと言われますか操縦士の操縦ミスという形で終わっている事故調査が大変多うございます。例えば、今先生が御紹介されました九九年の関西空港での滑走路からの逸脱、これは重大なインシデントとして取り扱われて調査を行ったわけでございますが、これも当該乗員が、私はそういう操作をしていないと否定しているにもかかわらず、あなたはそういう操作をしたのではないかという認定が、当該人の証言を超えて認定されてしまうというようなことがたびたびございます。

 具体的には、石垣の事故でございますが、これは当該機長が、いわゆる飛行機をとめる制動装置が三つあるのですが、この三つがいずれも十分に機能しなかったというふうに証言して、私どもは具体的にそれを証明する結果を得ているにもかかわらず、そのままの事故調査報告書が現在も残っているというような状況があるのではないかなというふうにこれは推測いたしております。

山田(正)委員 三つのその機能が機能していなかった機能していたということは、客観的な証拠として、事故調査委員会では具体的な結果、事実究明については、結局出ていなかったのですか、出ていたのですか。

川本参考人 事故調査が終わりまして具体的に事故機が返還されたときに、私どもも独自に再度調査いたしまして、具体的な事実を発見いたしました。その事実をもとに事故調査委員会に事故の再調査をお願いしたわけでございますが、再調査はしない、私たちはそれについて関心を持たないという御返事でございました。

 したがいまして、先ほどの陳述の中にも、ぜひ再調査の手続を日本の設置法の中にも明文化していただきたいという要望は、そういうところから出ております。

山田(正)委員 例えば、そういう航空事故において大変形式的で、実務の関係者にとっては不満である、なぜそうなっていくのかということなんですが、一言で言って、いわば三十五人の事務職、いわゆる航空事故調査委員会、その中に実際には調査に当たっての専門家がいない、例えば飛行機を操縦した経験者がいない、そういったことが言えるということはありませんか。

川本参考人 今先生がおっしゃいましたのは少し極端ではないのかなと。それぞれ専門家の方はいらっしゃいますが、操縦士の経験の方もいらっしゃいますが、私どもが要望いたしておりますのは、いわゆる定期航空会社で大型機の機長等の経験をなされたパイロットの方がいらっしゃらないという指摘はしておりまして、私たちが事故調査に協力をさせていただきたいという要望を持っております。

山田(正)委員 よくその内容はわかったのですが、先ほどお話を聞いていて、アメリカのNTSBの場合に、予算だけで六千五百万ドルから七千万ドル、ニューヨーク沖の事故についても飛行機を引き揚げた。日本の場合は、日本航空の相模沖に沈んでいる航空機もそのまま、引き揚げないままになっている。いわば予算の面で大変不十分である、そういう指摘もあるようなんです。

 家田先生にお聞きしたいのですが、鉄道の事故に先生が調査に当たられた限りにおいて、例えば経費が足らなかったから不十分であったとか、こういうところにもう少し予算をつけてこれからも継続して事故を防止するためにかなり予算措置が必要だとか、そういう感じは持たれたことはありませんか。

家田参考人 どのくらい予算がかかったかは、私は承知しておらないので正確な答えができませんけれども、想像するところで申し上げますと、日比谷線の事故調査に当たりましては、現地走行試験からいろいろなことをやりましたので、かなりの経費がかかっていると思います。現在、予算要求されているものがどのくらいか承知しておりませんけれども、きちんとした調査をやるにはやはりしかるべきお金は要るということは認識しておくべきことだと思っております。

 以上です。

山田(正)委員 そうすると、川本さん、清水さんにお聞きしたいのですが、いわば航空機事故の調査ではこれまで十分なお金といいますか、十分な予算がつけられていない。例えば、アメリカのNTSBでは四百人いるけれども、日本では三十五人しかいない、そういう面での大変不満といいますか、それはありませんか。

清水参考人 アメリカのNTSBは、先ほど言いました予算に加えて、さらに事故が発生するたびに二百万ドルですか、さらにオントップされるという形なんかでも伺っております。

 そういう形でいいましたならば、日本の事故調査委員会の予算規模はどれだけが適正かというのは申し上げるあれはございませんが、例えば、今、日本の国土交通省の方では、三鷹の方に電子航法研究所等を持って、管制あるいは衛星関係含めてさまざまな形でのシミュレーションなり実験というのはやられているというふうに伺っていますが、こちらの方の年間予算規模、実際、研究費に充てられるのは十億円程度ということで伺っておりますので、そういう形からしても、日本の調査研究に係る事故調における予算については相当少ないんじゃないかということは指摘せざるを得ないというふうに思います。

 以上です。

川本参考人 航空に限って言いますと、NTSBの体制と日本の事故調査委員会を単純に比較することは、これは大変困難だと思っております。例えば、アメリカでは全土で十数万機の飛行機があると言われている現状と日本とでは違うという前提がございますが、そういう全体を考えましても、極めて予算は不十分ではないか。

 例えば、先ほど御紹介がございました御巣鷹山事故、一機の事故では世界最大の事故でございますが、私どもは、事故発生時飛行していた相模湾上空、当然相模湾には大変膨大な残骸等が残っていると思うのですが、それの捜索をかねてより主張しているわけでございますが、それが不可能であったというのは、やはり一義的に予算が大変不足していたのではないか。

 それで、先ほども申しましたけれども、事故発生時に予備費が使えるという御答弁を今までいただいておりますが、その予備費の使い方をもっともっと機動的に使えるようにぜひ司法なり行政当局でお考えをいただきたいというのが私たちの要望でございます。

山田(正)委員 時間が参りましたので、家田先生に最後にお聞きしたいのですが、日本の場合に、海難事故については海難審判でやっておりますが、これは大変時間がかかる。四年、五年、六年というのもざらですし、原因究明ができても、その対策、例えばこれからどうしなさいという対策の進言まではなされていないんではないのか。例えば、ハイウエーでの事故といったものはどうなるのか。そういった意味で、鉄道と航空は今回、ある程度の事故調査についてやれるとしても、そういった問題について、このままでいいのかどうか、先生のお考えを最後にお聞きできればと思います。

家田参考人 海難審判の方は、私は余り承知しておりませんので、ちょっとお答えができないんですが、道路交通事故については、何らかの仕事をしておりますので申し上げると、道路交通事故は、事故分析センター等ができまして、やはり同様に、少しずつ、事故の調査と分析をきちんとやって対策を進めるという方向に一歩一歩進んでいると思います。ポイントは、仮に組織として分かれていても、あるいは航空と鉄道のように一緒になるかもしれませんが、そういう場合でも、いずれにしても部門間の、事故の調査結果や見識、結果を相互に情報交換し合って、共有化するということが今後の課題だと思っております。

 以上です。

山田(正)委員 どうも、きょうは本当に四人の先生方、御苦労さまでございました。ありがとうございます。

赤松委員長 次に、瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。

 きょうは、専門の分野から、また現場で御苦労されている分野からお越しいただきまして、ありがとうございます。

 では、質問させていただきます。

 まず、清水参考人と川本参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、先ほど、専門家、専門的な立場からの人の配置、こういうものが大変大事だということもお話しになったわけですけれども、例えば大型機のパイロットがそこに参加していないという問題なども指摘されたのですが、そういう方が実際にいないという場合に、どういう具体的な誤りといいますか、不都合といいますか、そういうものが生じているのかということが、もしわかりましたら具体的に教えていただきたいと思います。

清水参考人 御質問の趣旨の方は、もし大型機の機長ということでしたら、ちょっと私の方はわかりかねますので、答弁は控えたいと思いますが、その他の専門性という形でいいましたら、先ほど言いました整備、それから航空事業でいけば運航管理者等々について、そういった知識の方と常日ごろからの十分な情報のやりとりについても、まだまだ不足しているというふうには感じております。

 以上です。

川本参考人 具体的な誤りがありますかという御質問だと思ってお答えいたします。

 先ほど、私たち独自に何件か事故調査を行ったというふうに御返答いたしましたが、それらはいずれも具体的な、私どもの目から見れば誤り、事故調査委員会の結論とは異なる見解があるということで、先ほど石垣事故のお話をさせていただきましたが、その他でも、例えば米子で八八年に起きましたYS11の事故では、私どもは、調査の過程で推論に大いに疑問を持ちまして、これはアンカレジまで行きまして、実際に飛行機をお借りして、膨大な費用をかけて実験した結果、ある結論が得られた。これは操縦装置の凍結であるということで、そういう発表を行っております。それで、この事故調査に関しては、どういう経緯かわかりませんが、私どもの見解が事故調査結果に取り入れられたという、極めて有効な事例ではなかったかというふうに考えております。

瀬古委員 今の事例ですと、実際には皆さんのかなりお金をかけた、そういう実験が取り入れられたケースなんですが、それ以外にもそういう例はございますか、川本参考人。

川本参考人 例えば、お金をかけたという意味では、九三年の花巻空港事故で、これは日本エアシステムのやはり旅客機が、ハードランディングという、滑走路にかなり強い接地をして事故を起こして炎上したわけでございますが、この私ども独自の事故調査過程では、二千万円以上かけまして、ドップラーソーダーといういわゆる空気の流れを測定する機械を独自に借用して事故原因の究明を行った結果、花巻空港には具体的に極めて強いウインドシアがあるという結論に至りました。その結論をもとに、日本ではなかなか難しゅうございましたので、アメリカに渡りまして、アメリカでシミュレーターを借り上げて、非常にたくさんのボランティアのパイロットに参加していただいて、その実験データをもとにシミュレーター実験を行った結果、この事故は不可避であったという結論に達して、現在もその結論については変わっておりません。

 そういう意味では、大変お金をかけているというふうに申し上げられます。

瀬古委員 実際には、今もお話がありましたように、実際に実験したり調査するとなると予算不足の問題もあるかと思うんですが、鉄道の分野で、佐藤参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、この分野で今の財源不足といいますか、もっとやりたいんだけれども、なかなかそういかないという問題点など、御経験ございますでしょうか。

佐藤参考人 鉄道総合技術研究所でございますので、できるだけたくさんのお金をかけて、そして内容の濃い仕事をしたいというのはやぶさかではございませんけれども、私ども、五年ぐらいの計画を立てまして、その中でこのようなことを進めようと。例えば、非常に鉄道にとって新しい知見の必要な、将来に必要な鉄道の研究であるとか、それからいろいろな、JRを初めとするいろいろな鉄道事業者が今望んでおられるような研究であるとか、あるいは将来基礎的にこの部分は必要な研究であるとかというようなものをそれぞれ立てまして、そして鉄道事業者といろいろ協議する場がございますので、その中で、こういうふうにしていこうじゃないかということを相談しつつやっているところであります。

 したがいまして、そういう意味から考えますと、現在の鉄道の持っているお金というのはそれほど多くはありませんけれども、百数十億円の規模で私どもの研究所は経営しておりますけれども、その中で、やはりそれぞれの鉄道の事業者の御満足のいくような形で計画を進めているというのが現状でございます。

瀬古委員 先ほど再調査の問題が出てまいりましたけれども、後で調べてくるといろいろな問題が生まれてくる。そういうときに、一たん報告書の結果が出たんだけれども、ぜひ再調査をしてもらいたいという要請があったときに、そういう手続的なものがないという問題が指摘されておりました。

 川本参考人にお聞きしますけれども、先ほど一つの事例で、関心がないというお話が事故調査委員会から返ってきたということなんですが、それ以外にも再調査の申し入れをされたことは今までございましたでしょうか。

川本参考人 大変近々でございますが、九七年だったか、ちょっと九七年か八年かは不正確でございますが、名古屋空港への進入中に、機体の振動によるものと言われておりますが、一名の客室乗務員がお亡くなりになられて、何名かのお客様が負傷された事故がございます。これについて、つい先日でございますが、当該機長の所属いたします日本航空の機長組合の方から事故調査委員会あてに事故の再調査の要請を行っております。

瀬古委員 それに対しては返事はいかがですか。

川本参考人 期間もそんなにたっていないということもあるかどうか、私はちょっとわかりませんが、現在では御返答いただいておりません。

瀬古委員 家田参考人にお聞きしますけれども、今回鉄道の事故を担当していただきまして、調査して、一たん結論が出て、後で不都合な問題や御指摘があった場合に、こういう再調査の扱い、手続、この辺はどのようにお考えでしょうか。

家田参考人 私はエンジニアですので、調査の結果がその後別の事実によって変更せざるを得ないような状況があったら、当然それはちゃんと対応すべきだと思います。ただし、再調査という手続がどういうふうにしたらいいかどうかは、ちょっと私はわかりません。

瀬古委員 行政機関からの独立、それから警察のやり方と違う事故調査の問題についてお聞きしたいと思うんですが、これは家田参考人と川本参考人にお聞きしたいと思います。

 日比谷線の事故の調査をされたときに、警察の場合には、だれが一番の責任者というか犯人かという、そういう問題なども出てくるだろうと思うんですが、今回は作業ミスがなかったために、そういう問題が大きくならなかったという面もあったかと思うんですけれども、やはり現場では、事故調査のメンバーと警察との調整みたいなものがかなり必要な場面が出てくると思うんですけれども、その辺はどのように今回の場合は扱われたのかという点をぜひお聞きしたいと思います。

 それから、川本参考人には、警察のあり方と、事故調査委員会は再発防止という観点から、やはりきちんと分けて調査というのはやられるべきだ、こういう御見解で、航空機の事故の場合に、警察とそれから事故調査と、なかなかスムーズにいっていない問題点が具体的にありましたら、教えていただきたいと思います。

家田参考人 日比谷線の事故の調査に当たりましては、私どもが所属していた事故調査検討会は鉄道局の下につくられた組織でございますので、警察当局と私どもがどういうような協調をとるかという打ち合わせ、それは運輸省がおやりになったので私は承知しておりませんが、現場的に申し上げますと、余り問題はなかったですね。警察と極めて協調的に調査ができたと思っています。

 ただし、これは先ほども申し上げましたとおり、この事故は極めて技術的な要素が多くて、現場の職員に事情を聞くという要素が非常に少ないわけですね。ですから余り問題が生じませんでしたけれども、そうじゃない場合には、やはり職員からきちんと状況を聞くことができるという権限を調査の組織にきちんと与えておくというようなところがクリティカルかと思います。

 以上です。

川本参考人 まず、一般論で、警察が行う調査といいますか、それと事故調査委員会が行う事故調査というものは、本質的に全く異質の、異次元の問題だと考えております。今先生がおっしゃいましたように、事故調査委員会が行う事故調査というのは、将来の事故を防止する、いわゆる再発防止のために行うものでありまして、警察の行う調査というのは、これは具体的に申しますと、刑法の二百十一条に該当するかどうか、いわゆる過失があるかないかという観点での調査ですので、本来の事故調査とは異質のものであるというふうに私どもは考えております。

 それで、具体的なふぐあいがあったかなかったかということでございますが、二点ほど指摘をさせていただきたいんです。まず一つ目が、一月の三十一日に起こりました日本航空機同士のニアミスでございますが、飛行場へ帰ってきまして、到着後機長が行う責任なり義務なりを、警察のいわゆる事情聴取が行われましたためにそれがほとんどできなかったという実態がございます。あともう一つは、先ほど米子事故の話をさせていただきましたが、米子事故が発生後、当該乗員は非常に長期間、機長が八日間、副操縦士が十日間、現地鳥取県警で拘束を受けまして、自宅に帰ることも許されなかった。これはまさに被疑者としての取り扱いに近いものでありまして、任意捜査の範囲を大幅に超えているのではないかなというふうに考えております。

瀬古委員 行政からの独立という場合に、家田参考人にお聞きしたいんですけれども、例えば、国土交通省のもとで、運輸省のもとでいろいろ調査する場合に、運輸行政のあり方そのものに問題があるという場合にはなかなか物が言いにくいという面は出てこないだろうか。こういう点なんかは、独立したものでなきゃならないというこの調査委員会のあり方についていかがでしょうか。

家田参考人 大事なポイントだとは思うんですが、今回の事故調査検討会は鉄道局長の下に置かれたもので、まさにその直下にある、今回提案されているものよりもはるかに表面上の従属度は高い可能性があったものですが、それでもかなりのことを私ども提案していますし、それをかなり真摯に実現していただいています。

 したがいまして、問題は、組織の姿によってそれを担保するんではなくて、その中にきちんとした見識とその組織の目標をきちんとうたい上げて、行政に対してもきちんと物を言うとか、あるいはそれを担保するために情報公開を適切に行うというようなことで十分実現が可能だと思います。

 以上です。

瀬古委員 生存率、サバイバルファクターの問題についてお聞きしたいんです。

 NTSBの報告書などは、生存率というか、もっとこの人たちがこの事故で助かったんじゃないか、こういう検証も含めて検討をされています。例えば、今後の事故調査委員会のあり方としてそういうものも報告の中に入れていくべきじゃないかと私は思っているんですが、その点、家田参考人と佐藤参考人にお伺いしたいと思います。

家田参考人 重要なポイントだと思います。

 鉄道につきましても、例えば乗務員室が一番物とぶつかるわけですから、それのプロテクションなんかについては随分改善がなされてきているというふうに伺っておりますし、今回の日比谷線につきましても、あの車両の中でどの位置で負傷者や死者が出たというようなことを調査の上、車両の構造や何かについても、サバイバルファクター的なスタンスから今後きちんと研究を進めるべきであるというようなことを言っておりますけれども、限られた調査期間の中では、車両構造そのものをどこまで強くすべきか云々までは結論まで至ってございません。

佐藤参考人 サバイバルファクターの検討というというのは、やはり事故発生時の被害者をより少なくする上で必要であるというふうに考えております。

 鉄道総研におきましても、このような項目の検討は、実際にはかなり難しいんですが、一応、衝突時のいろいろな研究課題を持ちまして研究を進めているところでございますので、将来、実際の調査に当たりましても、そのような視点で検討することはできるようになってくるのではないか、こういうふうに考えております。

瀬古委員 清水参考人と川本参考人にお伺いしたいんですけれども、旧運輸省と警察庁間の覚書等の問題なんですけれども、この中にやはり、先ほどもお話がありましたように、刑事捜査優先という形になっています。この覚書など、細目も含めてですけれども、これについての御見解をお伺いしたいと思います。

清水参考人 先ほど申し上げたとおり、覚書並びに細目協定に関しましては、国土交通省の方にお伺いすると、特に支障はないという形、役割分担させられているという形なんですが、その文面からは、やはり犯罪捜査の方が事故調査に優先すると読み取れるというふうに思います。

 かといって、私の方は、特に全国のやはり警察当局の協力がなければ、先ほど言いましたとおりに、現場保存なり人命救助という最優先のことがなせると思っていませんので、そこはそこできちんと警察当局と役割分担をした上で、その後については事故調査委員会の方が責任を持って事故調査を優先的に当たっていく、そういう体制の組み直しという形の方が必要だというふうに考えております。

 以上です。

川本参考人 今清水参考人がお答えになった部分は、全く私どもも同じ見解を持っておりますので省略させていただきますが、もう少し詳しくお話をさせていただきますれば、国会等では双方の活動が円滑に行えるように調整をこの覚書等で図っているというふうに御答弁をいただいているというふうに理解しておりますが、現実はかなり違うのではないかな。

 例えば、事故調査に必要な残骸だとか部品だとか、これについても、かつてかなり手荒い取り扱いがされて後々大変支障があったという事例もございますし、例えば具体的に、フライトレコーダー、飛行記録装置でございますが、それからボイスレコーダー、音声記録装置等、これらは第一義的には警察が押収する証拠物件でございまして、それで事故調査委員会に鑑定嘱託という形で依頼をされるということになっておりますが、これらは、私どもの見解では、明らかに国際民間航空条約の附属書第十三に定める規定には違反しているのではないのかなという見解を持っております。

瀬古委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 大変お疲れのところ恐縮でございますが、四人の参考人の方々に御質問させていただきたいと思います。

 最初に、鉄道問題なんですが、実は、九一年に信楽鉄道の大事故がございまして、そこの事故の関係者や弁護士さんや従業員の方々も含めて、通称TASKなんですが、鉄道安全推進会議というのがつくられました。実は、きょうもう少し時間があれば、そのTASKの方々もここにお呼びをして、もう十数年にわたって、鉄道安全について海外の視察を行ったり、あるいはその団体から意見を伺ったりして随分精力的に勉強をやられているところなので、ぜひ参考人として意見を聞きたかったんですが、残念ながらきょうは午前中しか時間がとれないということでございまして、それはちょっと断念せざるを得なかったんですが、先ほどからお話が出ていますが、そのTASKの方々が、十数年間活動してきて、やはり幾つか基本的な問題点について指摘をされています。

 改めてお聞きをしたいと思うんですが、信楽事故のときも、やはり警察の捜査と実際の事故の原因を究明する調査というのがどうもしっくりかみ合わないということになっていました。警察の捜査の問題点としては、非常に時間が長くかかるというふうなことが言われていましたし、これは、例えばTASKの方が言っているのは、信号技術者が逮捕されたのは一年半後だというふうなことですね。同じようなことがあり得るわけなのに、一年半たたないと結論が出ていかないという状況があったりする。あるいは、インシデントのマネジメントによる事故の防止だとか、いろいろな問題点で警察の捜査というのは限界点があるんじゃないのかということを言われているわけなんです。それから、先ほど瀬古先生が言われたサバイバルファクター、これについても明確にならないというふうなことが言われていて、これは何とか改善をしなきゃいけないというお話だったんですが、それについてちょっと感想を、家田先生と佐藤参考人ですか、お聞かせいただけますでしょうか。

家田参考人 TASKの方々の活動は私も承知しております。先ほど途中で紹介いたしました運輸技術審議会鉄道部会で、今後の技術行政、その中では安全対策なんかも込みになっているんですが、それを検討する際もTASKの方々から参考の御意見を伺うような機会も持ちましたし、極めて立派な御見識と御活動をされていると認識しております。

 それから、今議員がおっしゃられたような問題点もそのとおりの問題点だと思います。ただ、その問題点を解決する方策がどういうふうにすべきかというのは、国によって状況も違いますし、またTASKの方々がおっしゃっているNTSBタイプのものが世界の共通点とは必ずしも限りませんので、やはり状況の中で最も迅速に、最も効果的に目標を達成できるような手段をとるべきかと思っております。

 以上です。

佐藤参考人 私どもの研究所では、研究開発を進めている立場でございますので、実はTASKの皆様の仕事とは直接の関係を今のところ持っておりません。また、信楽事故につきましても、私どもの方に調査依頼みたいなものが特になかったわけでございますので、信楽事故につきましては、外から見ていたというところはございますけれども、直接いろいろな調査結果その他は出ておりません。

 ただ、警察の捜査と事故原因の調査というのは必ずしも一致しない点があるのは重々承知しているところでございますが、事故がありますと、やはり共同して捜査なり調査なりを進めるという場面は当然必要になってくるわけでございますので、私も現場等で事故に何回も遭遇したわけでございますけれども、その経験からいたしますと、鉄道においては、事故を究明するという点についてでございますけれども、今までそれほど大きな問題は経験したことがございません。

 以上でございます。

日森委員 その警察の関係なんですが、先ほどもお話ございました。結局、後でNTSBの話はまたお聞きしたいと思うんですが、警察からきちんと独立をしていないと、原因を究明して再発を防止していく、そういう調査よりも、先ほどもお話がございましたけれども、やはり犯人捜しの捜査ということが先行してしまって、本来の事故調査委員会の任務というのが十分に全うできないような結果になってしまうんじゃないかという気がしてならないんです。

 そういう意味では、それはNTSBもそうなんですが、ともかく歴史を積み上げて、実績を積み上げていく中で警察ときちんと一線を画そうというのが世界の潮流になっているわけですから、そういうことについてもう少し感想があったらお聞きしたいと思うんですが、四人の方で結構です。

家田参考人 非常に重要なポイントかと思います。ただ、何といいましょうか、事故やいろいろなトラブルが起こったときに、原因を解明して再発を防止するというのは、科学的なスタンス、つまり合理的精神からは大いに尊重すべきことではあります。ただ、世の中の国民の意識としては、必ずしもそういうことのみならず、だれかを罰したいという面がございますよね。実際、マスコミもそういうところに関心を持つ側面がございます。

 したがって、あらゆる国のつくる制度、あるいはあらゆる制度、システムというのは国民あってのものですから、今議員がおっしゃられるようなことを究極進めようとするならば、やはり国民の意識、こういうところからの啓発が重要になるかと思います。当然のことながら、そういうことは時間がかかる話ですから、やはり地道に、一歩一歩進めていくべき仕事じゃないかと思っております。

 以上です。

清水参考人 ただいまの御指摘ですけれども、それぞれ、犯罪捜査とそれから事故調査が違う法体系に基づいて行われているということがございますので、やはりそれぞれの責任において役割をきちんと分担した上でやる必要があるというのは、これは大前提であるというふうに思います。

 ただ、何にも増して申し上げたいのは、やはり再発防止の観点から事故調査をきちんと優先させるべきでもありますし、逆に言えば、その事故調査のために重要である各種の本当の事実を探るための各種証言等に関していえば、先ほど少し触れましたが、やはり当事者からもきちんと意見聴取できる制度、それをやった上で、そちらの方を事故調査の方に優先するということだと思います。

 そういう形でいえば、やはり、重大な過失あるいは故意以外であれば刑事訴追等については免れる形で、日本においてはそういう形の体制を整備した上で事故調査をやり、それから、警察捜査についても違う法体系のもとで進めるという形になるかというふうに思います。

 以上です。

佐藤参考人 私の現在の仕事そのものが研究開発の仕事でございますので、直接適切な感想を述べるには至らないかと思いますが、過去の例を何度も申し上げましたけれども、私の経験では、協力体制が一番大事じゃないか、特に初動調査における協力体制が十分できるような形であるならば実際の原因究明においてそれほど問題はない、私の経験では問題はなかったというのが私の感想でございます。

川本参考人 先ほどから警察との関係についてはかなり私の方からも意見を述べさせていただきましたので、違う視点からお答えをさせていただきたいと思います。

 航空の世界では、だれかを処罰することによってある程度の満足を得られる物の考え方、ブレームカルチャー、非難する文化、直訳すればそうなるんですか、ブレームカルチャーというふうに呼ばれておりますが、世界的にこういう考え方、先ほど家田先生でございますか、社会一般のある程度のニーズもあるということでございましたが、これは航空の場合は、はっきりとした、やめるべきだという考えがございます。

 例えば、アメリカの連邦航空局では、国際民間航空機関に対して、いわゆる犯罪捜査が優先される傾向を是正すべきだという勧告といいますか問いかけを行っております。それから、事故調査それから航空安全の活動に関しては、世界的に有名なフライト・セーフティー・ファウンデーションでは、事故に関連した人々、特に操縦士はそういった処罰主義から防護されるべきだ、それによって飛行安全が増進されるんだというふうに財団としての考えを持っておりますし、また、世界で一番大きな製造メーカー、ボーイングは、クルー、要するにパイロットですか、パイロットはしばしばそういうブレームカルチャーにさらされるが、彼らは航空事故を防ぐいわゆるラストライン、最後の一線に立っているんだ、彼らをそういうブレームカルチャーから守らなければならないというふうにやはり述べております。

 したがいまして、いわゆる世界の文明国ないしはそういう最先端で活動している機関は、そういう非難をして事足れりという考え方はフライトセーフティーには貢献しないという考えをはっきりと持っております。したがって、私たちも、いわゆる国際民間航空条約第十三附属書に従って事故調査をやっていただきたいというのは、そういう考えに基づいているからでございます。

 以上でございます。

日森委員 ありがとうございました。

 それで、NTSBの話なんですが、先ほどどなたかは、将来的にはNTSB的な調査機関をこの国でも設置する方が望ましいという御意見もございましたし、必ずしもそれがこの国に適したものではないという御意見もございました。NTSBが結局、最初はやはり役所の下請であったわけですが、それが実績を積む中で役所から独立をする、結局議会にだけ責任を持つ調査委員会として機能しているということになっていますね。それは、もうある意味では、今NTSBを中心に、ITSA、国際運輸安全連合という国際的な協議機関までできまして、それぞれ各国の独立した専門の調査機関が国際交流を始めている。まさに安全管理の面でもグローバルスタンダードがきちんと進みつつあるんだという話になっているんです。

 結局、NTSBのような組織は、完全に独立しているがゆえに調査結果が公平であるということがちゃんと保証されるんじゃないかということが国際的にも明らかにされています。それから、航空、海運、鉄道それから道路も含めて、大変難しい交通事故があるわけですから道路の事故も含めてここで調査をするということによって、事故の原因、その背景にあるものについてきちんと掌握をしていく、その調査の手法を統一していくとかいうことができるようになるとかさまざまないわば成果を上げたのがNTSBであったというふうに評価をされた上で、国際的なITSAというものが結成をされつつあって、そこで国際的な安全管理に対する交流あるいは調査研究、情報交換が行われているということになっているんです。

 これは、全く感想というか、先ほどお聞きしたのですが、NTSB、やはり長い歴史の中で、これはもう安全、事故調査委員会の国際水準じゃないんでしょうか、というふうに私は考えるのですが、参考人の方々、一言ずつで結構ですが、どんな感想をお持ちなのか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

家田参考人 NTSBが非常に立派な活躍をしていることは、私も同感でございます。

 ただし、システム、制度というのは、やはりその国の土壌、特にその国の国民性というのに極めて依存しますので、例えばアメリカの大統領選が直ちに我が国に適用できないのと同様に、よその方式が直ちに適用できるとは限らないと思いますし、大事なポイントは、どういうシステムを理想として追うかよりも、なるべく早く実効性のあるものをつくるということが国民の福祉のためだと思います。

 以上です。

清水参考人 私の方は、随分、日本版NTSBを目指すべきだという形で言ってきたのは、まさしく、先ほど言った独立性、それから組織、体制、それから権限を含めて、アメリカのNTSBに比べて、やはり今度つくる日本の事故調査委員会は相当劣っているというふうなことが確信としてございます。

 加えて、アメリカのNTSBについても、四百名近い職員がいるんですけれども、航空に関係する方が非常に多くを占めていまして、そういう形で行われているということについていえば、まさしく今の日本の三十五名体制が、今度ふえて五十一名体制になっても、ほとんど仕組みは変わっていないというふうに思いますので、やはりきちんと学ぶべきことについては学んだ上で、先ほど家田先生からお話があったように、それは日本国民全体の中で理解できる形で、いきなりそこまでたどり着くのは無理かもしれませんが、一歩一歩でもやはりそういうことを目指しながら、組織運営体制、人員を含めて変えていく必要があるというふうに思っております。

 以上です。

佐藤参考人 NTSBにつきましては、私どもは研究機関でございますので、文書とか資料でしか実はよくわからないのでございますけれども、感想で申し上げますと、やはり独立的で中立、公平ということはまず必要なんですが、日本におきましては、鉄道につきましてはこのような事故調査委員会はまだないのが実情でございますので、事故調査委員会の信頼性、そちらの方がまずは必要じゃないかというふうに私は思っております。

 したがいまして、まず正確で適切な事故調査をなされて、そしてあわせてその対策が実行できる、そういうようなところからまずスタートすべきじゃないかというのが私の感想でございます。

川本参考人 私の考えは家田先生のお考えにやや近いのかなと思いますが、NTSBは確かに事故調査体制の究極の一つの形である部分については、まさにそのとおりだと思います。ただ、私、航空に働く者からいえば、国際標準に従った航空事故調査をやっていただきたいというのが第一義的にございます。

 現在、世界的に事故調査についていわゆる権威のあるものと一般的に皆さんが認識しているのが、一つはNTSBでありますし、もう一つはイギリスの航空事故調査委員会。このイギリスの場合には、これはいわゆる日本でいう運輸省の中にある機関でございますが、それからあとカナダ、オーストラリア等、この四カ国ぐらいは、平均的な目で見て航空事故調査に関してはかなり権威があるというふうに見られておりますが、私どもの希望としては、日本もぜひそういう形に近づいていただきたいというふうに考えております。

日森委員 ありがとうございます。

 時間がなくなりましたけれども、あるべき姿を追うということももちろんそうなんですが、と同時に、今度は航空と鉄道が一緒になった。海難審判というのは別にあるわけです。

 つまり、あらゆる事故、例えばスウェーデンなんかでいうと、あらゆる社会的な事故について一つの調査委員会で調査をして、もちろん鉄道とか航空事故が九割ぐらいを占めるとか言われていますが、社会的な安全を阻害する事故について調査をする機関があって、そこでいろいろな研究調査をしていくということがあるのです。この国も鉄道、航空が一緒になったけれども、もう一つ、道路ですね、NTSBは道路も担当していますが、道路の事故についても大変難しい事故というのはあると思うのです。今の段階では警察に全部ゆだねているわけですが、実際、道路の構造上の問題から車の欠陥の問題からいろいろな問題があって、果たして警察だけに任せておいて現在の交通事故についてきちんと防止、事後対策あるいは改善勧告なんかできるのかという限界もあると思うのです。そういう意味では、ぜひここに広げていきたいという我々の気持ちがあるのですが、それについてそれぞれ参考人の方々から一言ずつ御感想をいただけないでしょうか。

家田参考人 道路交通事故につきましては、個々の交通事故が起こったときの対策は別ですが、旧建設省、現在の国土交通省道路局の仕事や、あるいはヒューマンファクター、人と道路と交通、これを全部まぜて大いに取り組まれている事故分析センターなんかは共同の勉強施設だと思いますし、そういったところとこういう鉄道や航空あるいは海難との、組織が仮に別であっても、情報交換をするということがまず第一歩かと思います。

清水参考人 交通事故に関していえば、やはり交通事故総合分析センター、そちらの方のノウハウの活用みたいなものと、今回やろうとしています事故調査委員会の活動内容の方をどういうふうにリンクさせていくかということが重要だというふうに思っています。

 個人的なイメージとしましては、やはり重大な自動車事故等に関しては、共通の形で扱える、そういうものができてもいいのじゃないかなということは思っています。

 以上です。

佐藤参考人 かなり専門性が違いますので、私の立場から適切な感想を述べるということは難しいかと思いますけれども、やはり事故でございますので、共通性は十分あるというのが感想でございます。そういうところが生かされるような組織というものはやはり必要なのかな、こういう感想でございます。

川本参考人 前段部分の地上交通部分については、私ども見解を持ち合わせておりませんので、発言を控えさせていただきます。

 一番最後の部分のお問いかけにつきましては、警察の行う捜査がいわゆる安全というものにどう寄与するのかということであったというふうに思いますが、先ほども言いましたように、警察が行う航空事故調査というのは、それにかかわった人々に過失があったかなかったかということを捜査するわけでございまして、航空の安全にその調査が寄与するとは到底考えられないわけでございます。

 以上でございます。

日森委員 時間が来ました。どうもありがとうございました。

赤松委員長 松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 早朝より長時間にわたりまして貴重な御意見を開陳していただいて、まことにありがとうございます。私が最後の質問者でございますので、いましばらく御辛抱賜りたいと思います。

 日比谷の地下鉄で大変な事故がありました。しかし、ずっと眺めてみますと、インドで大きな事故があり、イギリスで事故があり、そして先日もアメリカで鉄道の事故がありました。最近日本でも起こったときには大きな事故に発展しておるわけですけれども、私は、諸外国を旅し、生活をした経験から、日本の鉄道の技術力は相当高い、そして防止策も相当行き届いているのではないのかという思いを持っておりますが、それはいかがなものか、まず家田参考人にお尋ねしたいと思います。

家田参考人 議員のおっしゃることに同感でございます。

 ただし、日本の鉄道も新幹線を運行るというようなシステムから地方のローカル線まで非常に幅がございまして、トップの技術水準についてはおっしゃるとおりかもしれませんけれども、ボトムの技術水準については、必ずしもいつもよその国に比べて上にいるとは思えない状況でございます。

 以上です。

松浪委員 続いて、佐藤参考人にお尋ねしたいと思います。

佐藤参考人 私ども鉄道の研究開発をやっている立場でございますけれども、確かに鉄道は、事故が発生するたびにいろいろな調査をやりまして、それにあわせて基礎的な研究も随分進んでおりますので、一歩一歩、ほとんど事故がなくなるところまでは近づいていけるように思ってはおりますけれども、ただ、鉄道事故をいろいろ考えてみますと、必ずしも技術的な要素だけではなくて、例えばヒューマンファクターのようなところもございますので、そういうようなことを含めながら、やはり将来も研究開発、あるいはいろいろなところで努力をしていくことが必要ではないか。確かに私どもの日本の鉄道は世界に誇るべき技術を持っていると私も確信しておりますけれども、まだ油断できないところは多々あるというのが私の感想でございます。

松浪委員 それで、今度の一部改正案についてであるわけですけれども、多くの皆さん方から、委員の人選がいわゆる国土交通省OBに偏っているのではないのか、そういう批判がございます。当然、鉄道や航空を預かっておるのは旧運輸省であり、国土交通省の人たちになりがちであるというふうに私は思っておるわけでございますけれども、これらの批判に対して家田参考人はどのようにお考えでいらっしゃいますか。

家田参考人 現在の委員のメンバーについては、まだ鉄道に関する部門はできていないので、私は航空については承知しておりません。

松浪委員 清水参考人、いかがでしょうか。

清水参考人 現在の航空事故調査委員の方等を見れば、今の松浪議員の指摘、すべてというわけじゃないとは思いますが、そういうことなんかも含めてあるのかなという気はいたします。

松浪委員 次に、川本参考人にお尋ねをいたします。

 世界じゅうで乗務員の方がいらっしゃるわけでありますけれども、パイロットの待遇、勤務時間であるとかあるいは収入の面であるとか、それは日本のパイロットは世界的に見てどのような形になっているのか、お教えいただけるでしょうか。

川本参考人 今の具体的な、収入なり勤務実態ということで限ってお答えすれば、いわゆる収入というのは、年収ベースで考えれば、多分世界のトップクラスの中に位置していることは間違いないと思います。

 それから、勤務実態につきましては、これは大変問題がございまして、現在、日本航空に所属いたしております機長、副操縦士等々が、勤務に関して裁判で係争中でございます。日本から西海岸へ交代要員なしで飛行しているというのは、航空先進国の中では例がない実態だというふうに私どもは考えております。

松浪委員 いずれにいたしましても、人為的なミスによって事故を招来さすというようなことがあってはならないわけでございますけれども、私の持ち時間が少ないので端的にお尋ねしなければなりませんけれども、過日、日航機のニアミスの事故がございました。これについての印象を川本参考人からお尋ねしたいと思います。

川本参考人 大変幅広い御質問でございますが、現在、事故調査が行われているわけでございますが、先ほどから再々申しておりますとおり、国際標準にのっとった形での事故調査を行っていただきたいというのがまず全体の感想でございます。

 その中に、警察と事故調査とのかかわり方、それからマスコミ等に発表されるいわゆる事故調査に関する情報の公開の手法については、私どもは大変疑問を持っております。国際標準では、そういうものはむやみに情報を開示してはならないということになっておりますので、その精神なり手法がきちんと守られているのかという大変疑いがございます。

松浪委員 時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

赤松委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、心から御礼を申し上げる次第でございます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会




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