衆議院

メインへスキップ



第9号 平成13年3月30日(金曜日)

会議録本文へ
平成十三年三月三十日(金曜日)

    午前九時三十七分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 大村 秀章君

   理事 実川 幸夫君 理事 橘 康太郎君

   理事 玉置 一弥君 理事 樽床 伸二君

   理事 河上 覃雄君 理事 山田 正彦君

      今村 雅弘君    岩永 峯一君

      木村 太郎君    木村 隆秀君

      倉田 雅年君    佐藤 静雄君

      坂本 剛二君    菅  義偉君

      田中 和徳君    中馬 弘毅君

      中本 太衛君    西野あきら君

      福井  照君    古屋 圭司君

      堀内 光雄君    松島みどり君

      松野 博一君    松本 和那君

     吉田六左エ門君    阿久津幸彦君

      大谷 信盛君    川内 博史君

      今田 保典君    永井 英慈君

      永田 寿康君    伴野  豊君

      細川 律夫君    前田 雄吉君

      前原 誠司君    吉田 公一君

      井上 義久君    山岡 賢次君

      大幡 基夫君    瀬古由起子君

      山口 富男君    日森 文尋君

      保坂 展人君    二階 俊博君

      森田 健作君

    …………………………………

   国土交通大臣       扇  千景君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   国土交通大臣政務官    今村 雅弘君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    五十嵐忠行君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  安富 正文君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局

   長)           高橋 朋敬君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  谷野龍一郎君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   政府参考人

   (国土交通省航空事故調査

   委員会事務局長)     中島 憲司君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君

   政府参考人

   (高等海難審判庁長官)  小西 二夫君

   政府参考人

   (海難審判理事所長)   松井  武君

   参考人

   (航空事故調査委員会委員

   長)           佐藤 淳造君

   国土交通委員会専門員   福田 秀文君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  林  幹雄君     岩永 峯一君

  福井  照君     松島みどり君

  佐藤 敬夫君     永田 寿康君

  伴野  豊君     前田 雄吉君

  大幡 基夫君     山口 富男君

同日

 辞任         補欠選任

  岩永 峯一君     林  幹雄君

  松島みどり君     福井  照君

  永田 寿康君     佐藤 敬夫君

  前田 雄吉君     伴野  豊君

  山口 富男君     大幡 基夫君

    ―――――――――――――

三月三十日

 川辺川ダムの年度内本体着工の実現に関する請願(西川京子君紹介)(第八五四号)

 建設労働者の賃金と労働条件の改善に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第九〇七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省鉄道局長安富正文君、自動車交通局長高橋朋敬君、海事局長谷野龍一郎君、航空局長深谷憲一君、航空事故調査委員会事務局長中島憲司君、海上保安庁長官縄野克彦君、高等海難審判庁長官小西二夫君、海難審判理事所長松井武君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君及び警察庁交通局長坂東自朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として航空事故調査委員会委員長佐藤淳造君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。これから質問させていただきたいと思います。

 最初に、先般ありました日航機ニアミス事件のことで、事故調の委員長にお願いいたします。

 事故調は、この事実、いわゆるニアミスがあったということを知ったのは、何時ごろでしょうか。

佐藤参考人 ニアミスの通報があった時刻についてお伺いかと思いますが、航空事故調査委員会は、一月三十一日十九時五十分に航空局から事故通報を受けまして、直ちに航空事故調査官七名を現地に派遣し、調査を開始したと聞いております。私、その時点では、まだ事故調の委員長ではございませんでしたので、これは伝聞でございますが、そういうことです。

山田(正)委員 七時五十分に、事故調としては、日航機ニアミス事件の報告を受けたということですが、扇大臣にちょっとお聞きしたいと思うのですが、今の法律でいきますと、十六条では、事故を知ったら、直ちにいわゆる事故調に報告するというふうになっていますが、直ちに報告ができたわけでしょうか。

 事故を知ったのは、私の調べでは、たしか事故発生が三時五十五分で、東京空港事務所が知ったのが四時二十九分と聞いていますが、早い時間に国土交通省は事故のことを知っておったと思いますが、知れば、当然事故調に直ちにそれを報告しないといけない。それが守られたのかどうか。大臣でなくても結構ですが、副大臣に。

泉副大臣 今、事故調査委員会としては、十九時五十分という御報告をさせていただきましたが、国土交通省が、この状況を知って、直ちに事故調査委員会に報告するということではなく、その内容を確認する必要がございます。それは、ICAOの条約に基づく幾つかの条件の中で該当するかどうかをチェックする時間が実は必要でございまして、そうした病院の判断等をもとにして国土交通省が事故調査委員会への通報をしたのが十九時五十分ということになったわけでございます。発生から、確認をして通報するという時間を今申し上げました。

山田(正)委員 ICAO条約の要件を満たすかどうか確認する必要があったと言いますが、ICAO条約のどの部分の、どのような確認が必要だったのでしょうか。

泉副大臣 第一章の「定義」のところに「事故」ということが書かれてございまして、「人が、次のことにより死亡し、又は重傷を負った場合。」という定義が一つございます。そして重傷の定義というのがまたさらにございまして、負傷した日から七日以内に四十八時間を超える入院加療、あるいは骨折、大出血、内臓の負傷に関するものなど幾つか規定がございまして、これに該当するかどうかを確認させていただくわけでございます。

山田(正)委員 副大臣の答弁、よくわかりますが、このICAO条約では、事故または重大なインシデントとなっております。今回の場合はまさに重大なインシデントであって、当然、ICAO条約に基づけば即刻通告する義務があった。いかがでしょうか。

泉副大臣 非常に厳密に申し上げて恐縮ですが、現在の航空事故調査委員会設置法の中には、航空事故調査委員会がインシデントに対する調査をするということには実はなっていないわけでございまして、今回の法改正によってインシデントも調査の対象にしようということにしておるわけでございます。

山田(正)委員 ICAO条約は条約であって、日本国が批准したものですが、条約と国内法のどちらが大事なんでしょうか。条約と国内法はどちらが優先するのでしょうか。副大臣にお聞きします。

泉副大臣 基本的には、条約を批准した以上、国内法もそれに基づいて整備するというのが普通のやり方だと思います。今回、そうした趣旨も踏まえて国内法を改正させていただくという理解をいたしております。

山田(正)委員 そうすると、この日航機ニアミス事件においても国土交通省としては、ICAO条約を批准しているわけですから、本来、重大なインシデントも即刻事故調に報告する義務はあったけれども、国内法が整備されていなかった、これは国土交通省の重大な怠慢によって今までにすべきところをしていなかった、その結果今回通報がおくれた、そうとってよろしいんでしょうか。

深谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 航空法によりまして航空事故の概念が規定されておりますが、現在の航空事故調査委員会設置法におきましては、その所掌事務を規定しております第三条で航空事故というものの定義が、航空法の規定に基づくという規定がされております。

 それで、御指摘のいわゆるインシデントにつきましては、現在は航空事故調査委員会の調査対象に法律上なっておりませんものですから、今回審議をお願いしております改正法によりまして、航空事故調査委員会が、改めて重大インシデントについても調査対象にされるということに相なるわけでございます。

 では、現在はどうなっているかということでございますが、昨年の二月に施行されました航空法の改正によりまして、重大インシデントにつきましては機長に報告義務を課しまして、国土交通省の方に御報告をいただいて、それを今後のそういったインシデントあるいは事故につながる事案についての未然防止に役立てるような調査、解析をするという仕組みができ上がっているところでございます。

 以上御説明申し上げます。

山田(正)委員 先ほど副大臣の方で、いわゆる事故とは死亡もしくは重傷を負った場合、そういったICAO条約の中の定義の話をなされました。

 今回調べてみますと、事故に遭った当事者の一人が、五時三十八分に一名だけ高野病院の方に救急車で運ばれておりますが、既にその時点でこれはいわゆる重傷。他の六名はまた別の救急車でおくれて運ばれておりますが、一人だけ、これは大変だから早く運べということになったかと思われます。そういう意味では、当然これは重傷だし、ICAO条約あるいは航空法の先ほどの改正等により、重大なインシデントに対しても当然そういうことをやるべきじゃなかったのかと思いますが、どうでしょうか。

泉副大臣 確かに、羽田に着陸後、今先生の御指摘のようなことがあったと思いますが、日本航空から国土交通省に連絡がございました時間は十九時四十分、いわゆる骨折者が確認されたという、対策本部への日本航空からの連絡は十九時四十分でございまして、ほぼ同時に国土交通省の航空局が、負傷された方が運ばれました病院に骨折者の存在を直接確認させていただきましたのが十九時四十二分というような時間でございます。そうした確認をとらせていただきまして、事故調査委員会への通報をやらせていただくという段取りをしたわけです。

 救急車に乗せられて運ばれた方、その事実だけをもって事故調査委員会へのというのは、今までのルールとしてもそういうやり方はやっておりませんので、今回も事実を確認した上で通報をさせていただいた次第でございます。

山田(正)委員 私ども常識的に考えてみて、ICAO条約でも重大なインシデント、事故となっていますが、救急車で駆けつけられるということであったら、本来、この十六条からしてもすぐ事故調に報告しなければならない。大変それは厳しいことであり、それを怠ったということは事故調をないがしろにしているのじゃないか。

 もう一つは、国土交通省として当然、ICAO条約について、もっともっと早い時点に国内法の整備をしなければいけなかった。それを怠っていた、非常に怠慢であった、事故調を軽視しておった、軽んじておった、そういうことのあらわれじゃないか、そう思われますが、その質問はそれぐらいにして、次に進ませていただきます。

 ニアミスの事実の調査ですが、その調査について、一番最初にどの機関がどのような調査をされたか、航空局長、御存じだったらお答えいただきたいと思います。

深谷政府参考人 一般的に申し上げますと、ニアミスにつきましては、機長さんから国土交通省の方に事案として通報はございます。その上で、現在の仕組みといたしましては、航空局におきまして、当該通報を受けまして、それがいわゆるニアミスであるかどうかということを調査いたします。調査の上で事案を判定いたしまして、調査結果を公表する、こういう仕組みが現在の仕組みでございます。今度、現在お願いしております事故調査委員会設置法の改正が成立いたしますと、このニアミスにつきましても、報告は国土交通省が引き続き受けますけれども、ニアミスの調査につきましても航空事故調査委員会の調査対象に相なる、こういうのが一般的な仕組みでございます。

 今回の事案につきましては、事故があった後に事故通報がございまして、先ほど来御説明申し上げましたような経緯を経まして、国土交通省としては、事故調査委員会の方に航空事故として報告をさせていただいたところでございます。

山田(正)委員 そんなことを聞いているのじゃなくて、私が質問したのは、実際に事故があって、ニアミスの具体的な調査は最初にどこが手がけられたのか、警察なのか事故調なのか、それを聞いておったので、端的に答えてください。

泉副大臣 今回の事柄につきましては、時間的経緯は、先ほど申し上げましたように、事故調査委員会が航空局からの通報によりまして活動を開始したのが十九時五十分でございます。ただ、捜査との関係からいえば、御承知のように、それは別の法体系の中で活動を開始しておるわけでございますので、どちらが早かったということになりますと、現場でのやりとりは、原因究明よりも警察の動きの方が早かったかもしれません。

 それから、先ほど、いわゆるインシデントに対して、ICAO条約に規定してあるにもかかわらず、国土交通省としてそういう調査をやらなかったということが怠慢であるというふうに厳しい御指摘をいただきましたけれども、私どもはそうした認識ではなくて、国土交通省の航空行政上やるべきことは今日までそれなりの対応をしてきたわけでございまして、鉄道事故も含めて、インシデントがこれからもっと大きな事故につながる可能性があるということで、今回法改正をさせていただいたということを御理解を賜りたいと思います。

山田(正)委員 では、泉副大臣に重ねて申し上げますが、私の手元にあるICAO条約の第十三附属書が一九九四年七月に第八版となっていますから、もっと前に当然批准されておった。そうだったら、当然その時点では、ちゃんとこのICAO条約そのものには事故及び重大なインシデントとあるのですから、それをしていなかったということは、泉副大臣としては、条約より国内法が有力である、国内法の整備ができない限り条約は無視していいというお考えかどうか、その点を一点だけお答えいただきたい。

赤松委員長 深谷航空局長。

山田(正)委員 これは泉副大臣に。いや、航空局長じゃなくて。局長、いいですから。泉副大臣に。

赤松委員長 では、先に短く。

山田(正)委員 いや、いいです。

深谷政府参考人 簡単に事務的なことだけ御説明します。(山田(正)委員「いや、いいですから。そのことは見解ですから、局長に聞くわけじゃありません」と呼ぶ)

 ICAOの重大インシデントの規定につきましては、これは勧告ということで、むしろ我々は積極的に改正法の中へ取り込んだつもりでございます。

泉副大臣 ICAO条約の中でも、事故と重大インシデントの違いは単にその結果であるという表現もございまして、私どもは、必ずしも先生が御指摘のような見解を持っておったわけではございません。

 繰り返しになりますけれども、そうしたこれまでの経緯を踏まえて、改めてここに法律改正をお願いしておる次第でございます。

山田(正)委員 どうも副大臣も私の問いには答えてくれませんが、国内法と条約、条約を随分早い時期に結んでいて国内法が整備されていないから、それはもうインシデントについては無視して、事故調に報告しなくても、あるいは事故調が調査しなくてもいいんだということになるのかならないのか、その見解だけで結構です。議事録に残りますから、それについてひとつ、副大臣としての見解。

泉副大臣 先ほど申し上げましたように、条約と国内法の関係というのは一体でなければならないというのが原則だと私は思います。

 ただ、先生が先ほどおっしゃいましたように怠慢であるというふうに指摘をされますと、私どもはそれを補う措置を今日までやってきたということで先ほど来申し上げさせていただいておるところでございます。

山田(正)委員 では、泉副大臣、条約と国内法は憲法上どちらが優先なんでしょうか。

泉副大臣 たしか憲法の中に、国際条約を遵守するというような規定があったと思います。詳しい条項は忘れましたけれども。ですから、憲法上の責務は私ども背負っておると思っております。

山田(正)委員 ちょっとしつこいようですが、条約の内容と国内法の内容とがそごした場合、条約の内容に国内法が反した場合、国内法は条約に反して無効である、そうは解されないのでしょうか。

泉副大臣 申しわけございませんが、法律的に厳密な解釈は私にはできません。

 ただ、国内法はやはり生きた法律として国民に課せられた責務であり、義務ではあると思います。条約とそごがあるからといって、必ず条約を守らなければならないということにはならないのではないか、遵守義務はございますけれども、ならないのではないかと思っております。

山田(正)委員 もうこれ以上聞きません。

 では、警察庁の刑事局長にお尋ねしたいと思います。

 今回のニアミス事故で当然先に警察の方が調べに入って、フライトレコーダー、ボイスレコーダー等々もその日一晩領置されたというふうに聞いておりますが、そのこと自体の見解をお聞きしたいと思います。

 ICAO条約の記録の開示というところに、事故またはインシデントがいかなる場所で発生しても、国の適切な司法当局が、記録の開示が当該調査または将来の調査に及ぼす国内的及び国際的悪影響よりも重要であると決定した場合でなければ、調査実施国は次の記録を事故またはインシデント調査以外の目的に利用してはならないとあります。

 その中にボイスレコーダーそれからフライトレコーダー等々がありまして、ICAO条約によれば、これは本来事故調が調べるべきものであって、事故調が調べたものを調査以外の目的、事故調の調査というのは当然二度とこういう重大な航空事故が起こらないようにという調査目的、その目的以外に利用、いわば司法の裁判、刑事裁判等に利用してはならない、これを証拠として開示することを禁止している内容だと私は解釈するんですが、それについてはいかがでしょうか。

五十嵐政府参考人 事故機のフライトレコーダー等につきましては、業務上過失傷害罪の捜査上必要があることから、日航職員から任意提出を受けて領置しております。なお、領置した物件については、航空事故調査委員会が現場に到着した後、現場において、同委員会に対し鑑定嘱託しております。本件領置については、刑事訴訟法に基づきまして適法に領置したものと認識しております。

 なお、刑事訴訟法と条約の関係についてはお答えする立場にございませんので、答弁は差し控えさせていただきたい、このように思います。

山田(正)委員 いわゆる国際法としてのICAO条約の中で、司法、刑事の調べにおいては、被告人、いわゆる被疑者というのは憲法上も黙秘権が保障されているわけですが、その黙秘権もなく、すべての事実を調査して次の事故が発生しないように努めよう、その趣旨から、特別な配慮でもって、調べたことについては刑事事件、いわば調査目的以外に利用してはならない、そういう条約の内容になっているとすれば、刑事的な捜査が先に行われたということは、この条約に反する行為ではないのか。そのことについては刑事局長の見解を述べられるんじゃないでしょうか。もう一度刑事局長、お願いいたします。

五十嵐政府参考人 先ほど来、国内法と条約の関係、いろいろ話が出ておりますが、先ほども申し上げましたとおり、私は、くどいようですけれども、刑事訴訟法と条約との関係についてはお答えする立場にはございませんので、ひとつ答弁は差し控えさせていただきたいと思います。あくまでも、私は、刑事訴訟法に基づきまして、刑事手続に基づいて適法に措置したものと認識しております。

山田(正)委員 お答えする立場にないと言うが、私がきょうこうして委員会に呼んでいるわけでして、委員会としては、当然その見解についてはいわば個々の事実捜査について聞いているわけじゃありませんし、事故調の調査と司法調査がぶつかった場合において、司法調査については、条約に照らしてそれが正しいのか正しくないと思うのかという見解を聞いているので、それも聞けないというのは、委員長、いわゆる答弁拒否だ、そう考えますが。もう一度、これは大事なところでございまして、ひとつ委員長からも証言するように勧告いただきたいと思います。

赤松委員長 山田君に申し上げますが、今警察庁刑事局長がお答えする立場にありませんと言いますから、お答えする立場にある人を呼ばれて聞かれたらどうでしょうか。

山田(正)委員 この昭和四十七年二月五日の、当時の警察庁長官、後藤田さんと運輸事務次官の町田さんの覚書がございますが、この覚書、さらに昭和五十年八月一日の警察との細目等々あります。

 この中で、「委員会が現場に先着した場合は、臨場した警察の現場保存責任者に引き継ぐまでの間、委員会において行なうものとする。」これもですが、その後の五の一、「警察の行なう関係者からの事情聴取及び委員会の行なう関係者からの報告聴取は、それぞれの責任者があらかじめ対象、順序等を協議して行なうものとする。」等々。

 この覚書等は明らかにICAO条約の内容に反する、日本においては司法調査が中心であるという見方になると思いますが、刑事局長にもう一度お聞きしたいのは、アメリカにおいてこういう事故が起きた場合に、いわゆる事故調、NTSBとFBI、それの捜査がどういう関係になっているか。きのう通告しておったんですが、ひとつ事実を知らせていただきたいと思います。

五十嵐政府参考人 米国における法制度や運用について必ずしも詳しいわけではございませんけれども、米国では過失犯は原則として犯罪とされていないというふうに承知しております。(山田(正)委員「ちょっとよく聞こえなかったんですが」と呼ぶ)アメリカでは、過失犯は原則として犯罪とされていない、要するに処罰の対象となっていない、こういう趣旨でございます。

 このような事情を背景にいたしまして、米国では、外見上事件性がない事故の場合、NTSB、今言われました事故調査委員会ですけれども、これが調査活動を行いまして、その過程で事件性が認められれば、捜査機関、FBI、こういうところに通報している、このように伺っております。

 なお、我が国では、刑法の業務上過失致死傷とか、あるいは航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律、こういったものに見られますように、過失犯が犯罪とされておりまして、また刑事訴訟法百八十九条では、「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」こういうふうにされておるわけであります。したがいまして、警察といたしましては、航空機事故が発生した場合には、故意犯はもとより、過失犯についても法に基づき所要の捜査を実施しているものでございます。

山田(正)委員 アメリカにおいては過失犯は処罰の対象になっていない。では、すべての過失犯は処罰の対象になっていないと。(五十嵐政府参考人「原則としてですよ」と呼ぶ)原則として。

 それじゃ、例えば交通事故で何十人も、例えばこの前の原潜でのえひめ丸事故みたいな事故で死亡者が出たような場合、そういった場合にもアメリカが重大な過失を罰せないとは考えられませんが、そのような場合でも、過失の場合には、いわゆるNTSBの方が調査に当たって、そしてFBIは、その後捜査に当たる、そのように解していますが、そうではないんでしょうか。

五十嵐政府参考人 先ほど申し上げましたように、原則として過失犯は犯罪とされていない、処罰の対象とされていないということでございまして、重過失、認識ある過失とか未必の故意、こういった非常に故意に限りなく近いような重過失については犯罪として処罰の対象とされておる、このように認識しております。

山田(正)委員 どうも、一番大事な国内の法律といわゆる国際条約の効力の問題で、答弁する立場にないと言われれば、それ以上話を進められませんので、では、次に移りたいと思います。

 えひめ丸の問題では、NTSBと米海軍の調査はどちらが早かったのでしょうか。

小西政府参考人 えひめ丸の事件に関しましては、NTSBがいち早く稼働したのじゃないかなと思いますが、確証はございません。

山田(正)委員 私どもの調べでもそのように聞いておりますが、そういうふうに、事あるごとに、アメリカにおいてはNTSBがああいう事故については先に捜査に当たる、そう考えていいと思いますが、日本ではそうではない。

 それで、実は、海難審判庁は、海難審判法によりますと、海難審判庁の審判によって海難の原因を明らかにする、いわば海難の原因を明らかにすることが役所の一つの務めになっております。ハワイ沖で起きた事故についても、日本も旗国主義をとっていますから、当然のことながら、海難審判庁もしくは海上保安庁か、現地に行って調査に当たらなければいけないと私は考えますが、実際えひめ丸の海難現場まで行って現地で調査に当たったかどうか、それをお聞きしたいと思います。

小西政府参考人 えひめ丸の事件につきましては、現地に行って調査には当たっておりません。

 と申しますのは、本件事故においては、行方不明者の捜索活動が最優先されるべきものであったということ、それと、調査に関しましては、本件が米国の領海内で発生した事件でありますから、第一義的には米国側に調査権があるということ、それと、米国側が明らかに非を認め謝罪しているということ、以上の点から、私どもといたしましては、NTSBの調査を見守ることにしたということでございます。

山田(正)委員 今言った事情で、調査を見守るという立場はわからないではありません。しかし、あれだけ国内でも騒がれ、宇和島のいわゆる研修生たちがあれだけ行方不明になったわけですから、重大な事件として、ただ黙って見逃すということは海難審判庁としての義務に反しているのではないか、当然、捜査官の一人ぐらいは、立ち会いとして、NTSBの方かあるいは海軍の調査等に立ち会うということぐらいは必要だったのじゃないか、私はそう思いますが、いかがでしょうか。

小西政府参考人 海難審判法上は、日本籍船が関係した海難の場合は世界じゅうのすべての海域が海難審判の対象となります。したがいまして、えひめ丸に関しましては海難審判法の適用があり、調査権限が及ぶことになります。しかし、グリーンビルに対しましては、同船が米国船であり、なおかつ本件事故が米国の領海内で発生したということから、調査権限が及ばない、そのように認識しております。

山田(正)委員 調査権限が及ばないと言われました。(小西政府参考人「はい」と呼ぶ)ちょっと私の解釈ではよくわからないのですが、時間もありませんが、当然、旗国主義のもと、捜査権限はある、私はそう考えております。過去においても、ギリシャ沖か何かの事故では海難審判庁は出張して調べられた経緯もあるようです。今回に限って捜査権限がないということは理解に苦しむところですが、いずれにしても、海難審判庁のあり方そのものをお聞きしたいと思います。

 海難審判法によりますと、このような海難事故の発生の防止に寄与すると明確にうたわれておりますが、海難審判によって、海難事故発生を防止するためにこうこうしなければならないという勧告とか、いわば行政処分的なことですね、そういったことを過去やったことがあるでしょうか。あれば少しお話しください。

小西政府参考人 海難審判法上は、海技免状を受有している人は受審人として、そのほかの方は指定海難関係人として、調査の対象になりますが、勧告は、通常、指定海難関係人に対して行われるもので、これは自然人とか法人とかございます。それに対して私どもはかつては何回も勧告したことがございますし、つい最近も、漁船が転覆した事件で、安全性の確保についてもっと注意するようにという勧告をいたしました。

山田(正)委員 航空機事故、鉄道事故それから海難事故、陸上でのハイウエー等の玉突き事故等々、いろいろ事故はあるわけですが、私どもは、海難事故において、海難審判庁がその原因究明に当たるというのは大変無理があるんじゃないかと。

 こう言っては長官に申しわけないのですが、私も弁護士として、実際に、海難事故で亡くなった人の民事損害賠償請求の訴訟をやって、実際には海難審判で争われたわけですが、その結論を待つのに四年も五年もかかった。それまで民事裁判はストップする。そういういきさつもあって、我々弁護士の間では、海難審判は時間がかかるな、困るな、そういう感じが大いにあるわけです。

 そういう意味で、海難審判庁としては、海難の事故は確かに特殊な部分がありますので、その審判にだけ当たって、言ってみれば、事故の原因調査等はむしろ事故調、そういったものにゆだねるべきじゃないか、そう思いますが、長官はいかがですか、考えとして。

小西政府参考人 確かに、今先生がおっしゃられたように、海難発生から裁決の言い渡しまでの平均期間が二十・五カ月でございました。それが平成十二年度は二十・〇カ月に、一応減少しています。

 処理期間の短縮ということは大きな課題でございまして、一昨年十二月にベーリング海で発生しました第一安洋丸沈没事件では事故発生から十四カ月で、また昨年九月浦河沖で発生しました漁船第五竜宝丸転覆事件では事故発生から六カ月で、裁決を出しました。今後とも、事件の早期認知、調査の迅速化、審判の迅速化、こういうことを図っていって、事件処理期間の短縮に努めてまいりたい、そのように思っているところでございます。

山田(正)委員 副大臣に。

 今聞いておられたと思いますが、今言った海難審判庁は審判だけで大変である、実際には審判の仕事が主だと思うのです。それで、原因の調査というのはむしろ事故調に任せた方がいいと思うのですが、副大臣としてはどうお考えになるでしょうか。将来に向けてで結構です。附帯決議も踏まえて。

泉副大臣 陸海空の事故について、私どもは、今回の法案を、航空と鉄道について事故調査委員会で事故原因の究明をさせていただきたいということでお願いをいたしております。

 しかし、今般の当委員会の御議論を聴取させていただく中で、我々も、諸外国の例、これは御承知のように、アメリカ、カナダとそれからヨーロッパ型、それぞれの国の歴史でありますとか地域的な状況等によって違っておりますので、一概に全部を一つにするということがいいとは思えませんが、外国の例も参考にしながら、また当委員会の御意見を踏まえながら、今後検討させていただきたいと思います。

山田(正)委員 今後前向きに検討させていただきたい、前向きにと私は思っているわけですが。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 事故調の委員長に質問させていただきたいと思いますが、九九年の九月三十日、関西空港での滑走路逸脱事件について、実は機長さんのアンケート調査を見ていましたら、九七・三%の機長さんが、いわば不信である、信頼できない、そういう調査ニュースがございまして、私も驚いたのですが、聞いてみますと、機長さんの組合というのは、一部の人の組合ではなく、管理職を除いたほとんど全部の機長さんが入っている組合だ。その組合さんがそれだけ不信を持つということは、事故調の調査に何らか問題があるのじゃないかと思います。

 委員長は就任してまだ一月にもならないということですが、そういった事情というのを聞かれたことがございますか。まずそれからお聞きしたいと思います。

佐藤参考人 お尋ねの件でございますけれども、私の聞いておりますところでは、これはいわゆる事故という範疇には入っていなかったものである、そういうふうに伝え聞いております。

山田(正)委員 私が今委員長に質問したのはそうではなくて、委員長に就任して、いわゆる機長さんの組合、ほとんど全部の機長さんが入っているその組合のアンケート調査では、信頼できない、九七・三%の方がそうおっしゃっている。事故調の調査に対して機長さんの方から大変不信感が強いという事実を、御承知か御承知でないかということをお聞きしたわけです。

佐藤参考人 事故というようなものでは、いろいろな利害が相反するようなグループがたくさん存在しているかと思います。

 機長さんのグループというのもそういった一つのグループであるかと思いますが、事故調査におきましては、いろいろなグループの方たちのおっしゃることに、特別なグループに対して偏った感情的なものを持ったりしているというふうにほかのグループからとられるようなことがございますと、それは事実でない場合でありましても、その後、あらゆるグループからいろいろな再発防止に役に立つような情報をちょうだいするという事故調査委員会の活動、それを支援していただけなくなっていく危険性があるということで、しばしば特定のグループから事故調の調査に対して厳しい御批判をいただく機会がこれまでも多かったということは承知しておりますが、そういう場合にも、事故調査委員会といたしましては、公正中立の立場、そういうことから物事をはかる。

 かなり、特にある種の団体の方に対しては、どちらかといいますと、委員も心情的には偏りがちな気分を持ちかねないような場合もございますが、そういうようなグループに対しましても、事故調査というのは独立の立場をとる、そういうグループに対しましても距離をちゃんととって、あらゆる利害相反するグループから、あそこはちゃんと公正中立にやっている、そういう御理解を最後にはいただける、そういうことが大切なのであると考えてやっておりますので、機長グループからの御批判もそういったようなものの一つであったと私は感じております。

 そういうことで、事故調査に関しまして、特に公正中立の立場、独立に活動を行うと言っているその中身について、皆様方の御理解をいただきたいと思っております。御理解いただければ幸いである、こう思っておるところでございます。

山田(正)委員 委員長のお話を聞いていますと、特別のグループから云々という形で、私にすれば、公正中立ではなく、かなり偏見を持って特別のグループをとらえているような、そう解されてもおかしくないような発言内容じゃないかと聞いていて思ったのですが、それはぜひ気をつけていただきたい。

 機長組合にしても、ごく一部の機長グループではなくて、管理職を除いてほぼ全部入っている機長組合だと聞いております。

 実は、南西航空のB737の石垣事故というのですか、この中で、実際に事故調の報告書ですと、「不適切な制動停止操作」というふうな内容になっているようですが、実際に今度は、日乗連、いわゆる機長さんの組合は、いろいろと自分たちの立場にかかわるものもあって、相当自分たちで、一つの事故によっては二千万ぐらい皆さんで出費して、どうも事故調の調査は信用ならぬ、そういうところから独自の調査をやったようです。

 滑走路面に残ったタイヤ痕跡、実機、実際の飛行機による荷重試験とかコンピューターによる航空計算などを地道にやったようですが、その中で、残骸から焼け残った一つのリベットを証拠として発見した。それをもとにして、「機長の不適切な制動停止措置」じゃなくて、十分なブレーキの効果が得られなかったからそうなったのじゃないか、機長さんたちの組合の中ではそういう結論を出したようです。

 それについて再調査の申し立てをいたしたようです。それを取り合わなかったということですが、その事件についてはどうお考えでしょうか。

佐藤参考人 ただいま、石垣空港事故につきましてお尋ねいただいたと思います。

 事件は、御承知のとおり昭和五十七年の八月二十六日に発生しまして、昭和五十九年の十一月二十二日に事故調査報告書を発表しております。これらの事故調査は、さまざまな角度から事故の原因究明に真剣に取り組みまして調査及び解析が行われました上で、報告書がまとめられたものでありました。

 その後は、新しくかつ重大な証拠というものが入手されていると判断されましたならば、その場合には再調査ということに我々も踏み切るわけでございます。そういうルールになっておりますが、現在のところまでではそういった証拠が入手されているというふうに判断されませんで、再調査を行うことは考えておりません。

 いずれにしましても、再調査に関しましては、国際民間航空条約の第十三付属書の五の十三に調査の再開ということで、調査終了後に新しくかつ重大な証拠を入手した場合には、調査実施国は調査再開しなければならないと規定しておりますので、我々もこれに従いまして、今後とも与えられました任務を果たしていくつもりでございます。

山田(正)委員 事故調というのは厳格そして公正でなければならない。刑事訴訟でもそうですが、刑事の調べでもそうですが、新しい証拠があれば、例えば後でそれがわかったとしたら、本来ならばすぐに再調査に入るというのが建前だと思うのですが、今回の石垣事故においても、後でリベット、いわゆるびょうがわかったということであったら、それが重大であるかどうか判断するのはそのリベット、その証拠を調べた後に判断すべきであって、最初から重大な証拠とは言えないとして、調査にも当たらないというのは怠慢ではないのか、そう考えますが、いかがですか。

佐藤参考人 この結論は、あくまで公正中立という立場からおろしました結論でございまして、関係します航空会社の中でも、この再調査に対する機長さん側の要求に関しては、会社としての御意見も統一されていないというふうに聞いております。そういうようなことがございまして、公正中立な立場から判断いたしますと、まだ新しく重大な証拠が提出されたと判断するわけにいかないという結論に達した、そういうふうに聞いております。

山田(正)委員 会社側がそういう意向に至っていなかったから、公正中立な立場からそこは至らない、何か大変おかしな答弁だと思うのですが。それは会社側がどうであろう、組合がどうであろう、いわゆる新しい証拠があったら直ちに調べるのが事故調としての責任である、私はそう考えております。

 これ以上言っても、時間がありませんのでやめますが、一つ委員長にぜひ言っておきたいのは、私の手元にこれだけの資料があります。合計六件。いわゆる日乗連、機長さんたちのほとんど、さっきから申していますように一部の機長さんたちだけが入っている組合ではありません、その中で、皆さんがその後随分綿密に調査して調査して、ここの見解が違うということがこんなにあるわけです、ずっと。私、全部読ませていただきました。

 そういった内容をひとつ謙虚に受けとめて、会社側がどうだこうだではなくて、新しい事実があると思ったら、その事実、そのリベットならリベットを調べてみて、そしてその結果、これが重大な証拠でないとなったら、それは再調査をしないという、それも結構ですが。そういう意味では、これから事故調というのは大変大事な役割を鉄道と一緒になって負うわけであります。その委員長に先ほどのような発言があっては、これは厳正中立ではない、そう思わざるを得なくなってしまいますし、十分留意してこれから調査に当たっていただきたい、そう思っております。

 ところで、委員長にお伺いいたしますが、いわゆる事故調の委員について調べてみましたら、職業等については、運輸省のOB、それから大学の名誉教授、教授等々が委員としては多いようですね。これをとかく、それだからいいとかいけないとかと言うわけではありません。しかし、アメリカにおいてのNTSBの委員の略歴、経歴、これも私調べさせてもらいましたが、委員長もそういったことを見たことがございますでしょうか。まず、そういう事実を知っているか知っていないか、それだけお答え願いたいと思います。

佐藤参考人 私もこういう航空事故調査委員会の委員になるということを以前から知っていたわけではございませんので、NTSBという組織についてはよく存じておりましたが、そこの委員の方がどういう経歴の方であるかということを勉強する機会はありませんでしたので、残念ながら余りよく知りません。

山田(正)委員 まだ就任されて一月にもならないということですからもっともだとは思います。しかし、私の方で申しておきますが、アメリカの場合の委員長、副委員長、そういった委員さんというので、いわゆる大学の先生とか運輸省のOBとかではなくて、会社の社長さんとか、あるいは航空整備の将校であったりとか、いろいろな方々、いわゆるバラエティーに富んで、それぞれ委員になっておられるようです。

 そういう意味では、ひとつ泉副大臣にもお伺いしたいと思いますが、いわば事故調が本当に事故調として、大事な調査の機能を発揮できるかどうかというのは、ひとえに委員長初め委員の選任にかかっていると思いますが、副大臣として、アメリカとか各国の例を見ながら、これから委員の選任についてどうお考えか、十分そういったことに留意できるものかどうか、ひとつ、附帯決議にも一部あるようですが、前向きな御答弁を期待したいと思っております。

泉副大臣 事故原因の究明には、事故調査委員会を構成する委員の諸先生、そしてそれを支える調査官、さらに国土交通省の各地方支分部局の職員の協力があって初めて原因究明がなされるものだと思っております。

 私どもも、今の事故調査委員会の中では、各分野にわたる、航法でありますとか、あるいは機材でありますとか構造力学とか、そうした分野の方々を網羅していただき、調査をさせていただいておりますし、また、必要に応じて専門委員の方をお招きして、御意見をちょうだいするということをやっておるわけです。しかも、日本の事故調査委員会の調査報告は世界的にも高い評価をいただいておりまして、これでいいということはもちろんございませんが、我々としては、なおスタッフの充実等あるいはまた専門委員の選び方等について今後とも十二分に配慮してまいりたいと思います。

山田(正)委員 今副大臣の御答弁がありましたが、ぜひそういう方向で積極的に委員、調査員、特に調査員は今までですと、この前の参考人質疑での話によりますと、三年か四年で国土交通省の人事でかわっていく、そういうことのなきように、ひとつ調査員及び委員の選任、それから研修等々には十分な配慮をいただいて、この日本で、将来においてNTSBみたいな、事故があれば直ちに調査に入り、事故の究明を果敢に行って、そして果敢な勧告を続けていく、そういうことになりますように、ひとつ関係各省庁の皆さん、大臣にお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

赤松委員長 日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 重複する質問もあるかと思いますが、大変この法案、重要法案だというふうに考えておりますので、質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、副大臣、これからも、世界というか国際的な事故調査機関を参考にしながら充実を図りたいという趣旨のお話がございました。もちろんそのとおりなんですが、実は、今回の事故調査委員会、この法律の改正に当たって、諸外国の事故調査機関の調査をどの程度行ったのか、そして、その調査で得た教訓、これが今回の法改正にどのように生かされたのか、具体的に、まず最初に御報告いただきたいと思います。

安富政府参考人 諸外国の事故調査機関の調査をやったかということでございますが、これまで、職員をイギリス、ドイツ等の事故調査機関に派遣しまして実情把握を行ったほか、今回の法改正に当たりまして、諸外国の事故調査機関の現状につきまして、大使館等を通じまして最新の情報を入手するといったようなことでいろいろ調べております。また、NTSBを初めとする諸外国の政府機関等に対しても現在の調査委員会の調査官を派遣して、具体的な事故調査の体制、手法といったことについて、研修等も受けさせるというような形で、その具体的な調査体制等について把握に努めているところでございます。

 これらの調査等から、各国の実情をいろいろ調べましたところ、それらの機関の所属であるとか、あるいは担当する交通事故の範囲であるとか、あるいは組織、規模、かなり国によってさまざまでございますが、今回法改正を行うに当たりまして我々として参考にしました点は、一つは、鉄道についても多くの国で事故調査に必要な権限を持った常設の調査体制をしかれている、それからもう一つは、これは一部の国によっては違いますが、重大インシデントも含めて事故調査対象としていろいろ調査しているということがわかりましたので、今回の法改正については、既に御承知のとおり、重大インシデントを新たにこの事故調査委員会に加える、それから、当然のことでございますが、常設の調査体制とするということで生かしているつもりでございます。

日森委員 常設と重大インシデントを含めた、それから権限の問題ですか、それが今回の教訓であるということなんですが、しかし、世界の事故調査委員会の実態を見ると、今回の法改正で出されている我が国の航空・鉄道事故調査委員会よりもはるかに整備されているというか、もう少し、事故の原因究明とか、さらに安全性確保のための勧告とか、こういうことをきちんとできるような体制が整っているんじゃないかというふうに思っているんです。

 イギリスでいうと、HSE、HMRIというんですか、それからオランダは、九八年に変わりました、SORから、鉄道事故委員会からTORという運輸安全委員会にいわば格上げというか統合されて、すべての事故について統合して調査しようという機関になっていますし、それからカナダは、御存じのとおり、NTSBと同じような格好でやられているわけです。こういう機関を見てみると、これは一歩前進だというふうに評価はしているんですが、せっかく法改正をして、事故の原因究明、安全確保にきちっと取り組んでいこうということでつくられた我が国の機関と大分差があるというふうに感じてしまうんですね。

 その辺について、特に、先ほど言われましたけれども、独立性とか専門性、それから特に統合性ですよね、それから権限の問題、勧告権の問題とか、その勧告したことがきちんと実施されているかどうかをずっと検証していくような、そこまで含めてそれぞれ進んでいる国ではやられているわけなので、この乖離みたいなものを感じざるを得ないんですね。これについて、副大臣、何か感想があったらお聞きをしたいと思うんです。

泉副大臣 先ほど鉄道局長がお答えをいたしましたように、今回の法律改正に当たりましては、諸外国の調査委員会の権能あるいは組織等について我々なりに調査をし、判断をさせていただいた次第でございます。

 独立性あるいは権限というものにつきましては、御承知のように、法の四条によって独立して行うということが明記してございますし、法の六条では、国会の御同意をいただいて国土交通大臣が任命するという、そうした形をとらせていただくことによって、独立性でありますとかあるいはその権威というものは位置づけられると思っております。

 報告から勧告、建議といういろいろな手だてをとらせていただきますが、今日までの航空事故調査委員会が行ってまいりました幾つかの建議等につきましては、それなりの成果を上げてきた。例えば、シートベルトを常時締めておくようにというようなことも、事故調査委員会からの建議に基づき、国土交通大臣がそのことを行政の中で実現させるように航空会社を指導するということを行ってまいっております。したがって、今回の法改正によりまして、航空、鉄道が、従来に増しましてインシデントを含めました事故原因等について調査ができる、私どもはそのように思っておるところでございます。

 ただ、これで十分かどうかというのは、これからの調査委員会の活動等を見た上で判断をしなければならない部分があると思いますが、何よりも事故がないように国土交通省としてはその先手を打っていかなければならない、このように思っております。

日森委員 私ども、評価をするというのは、これは第一歩として評価をしたいということでございまして、副大臣が今おっしゃったとおり、十分であるかどうかは今後の活動にかかっているんでしょうけれども、しかし、世界の潮流からいうと決して十分ではないというふうに言わざるを得ないと思うんですね。そういう意味で、ぜひ御努力いただきたいと思うんです。

 そこで、アメリカのNTSBの話は随分出されていますので、その内容については触れませんけれども、これを中心に、世界の事故調がそれぞれ国際的に連携しながら、もちろん安全を確保するというのは一国の問題じゃないわけなので、しかも、事故というのは共通した原因とか背景があるという認識に立って、国際機関をつくりました。国際運輸安全連合、ITSA、これはオランダの運輸安全委員会の会長がその会長を務めているというお話で、何かオランダの王室の親戚だそうでございまして、日本にも皇室を訪ねていらしたことがあるというお話でございますが、このITSA、国際機関が設立をされたわけなんです。

 ここで理念としているのは、独立した事故調査を、これはきちんとやらなきゃいかぬ。それがないと社会から信用されない。先ほど山田委員からお話がございました、航空事故調の結果に対して、機長の九十数%が信用していないという話もありましたけれども、そういう団体だけではなくて、社会全体から事故調査の結果が信用されないようなことになってしまう。だから、しっかりと独立をすべきだ。言ってみれば国土交通省からも独立をします、それから警察からも独立をしますということが重要なんだというふうなことを一つ、理念として掲げているわけです。

 それからもう一つは、すべての交通モード、陸海空、大臣もその陸海空の全面的な安全を確保したいというお話を何度もされていますが、そういうすべての交通モードの事故調査、これを統合してやることが大事なんだということを二つ目の理念に挙げています。

 それから三つ目に、勧告は当然します。今度の法律でも建議、勧告とありますが、この勧告をきちんと守らせること、これが非常に重要なんだという、ほかにもたくさんあるようですが、基本的にはこういう三つのことを理念として掲げて、国際運輸安全連合というのが設立をされているのです。

 こういう国際的な組織に対して、これは世界の事故調の流れだと言っても過言ではないと思っているのですが、これについて、どのように受けとめておられるのか、ちょっとお聞きをしたいと思います。

泉副大臣 先生お話ございましたITSAというのがつくられて、御指摘のような、独立した調査をする、あるいは安全性に関するデータを交換して各国が協力し合うというようなことを目的に設立されたことを承知いたしております。

 今、私どもが、このいわゆる国際運輸安全連合に参加をしておる国というものを調べてみますと、御指摘のように、全体のモードを一つの調査委員会で調査しておる国の参加がなされておるようでございまして、日本と同じような、ドイツでありますとか、そういう個々の事故調査委員会を持っておるところは参加をしていないということに現実はなっておるようでございます。

 したがいまして、私どもが今参加する資格があるかどうかということについては若干疑念を持っておりますが、この安全連合が掲げておりますような、独立した調査を行う、あるいは結果を公表するというようなもろもろの理念と申しましょうか趣旨につきましては、十二分にこの意を体して、今回の法律改正後も対応してまいりたいと思っておるところでございます。

日森委員 私どもとしては、こういう国際的な機関にぜひ参加をしていただきたいというふうに願っているのですが、今副大臣からお話ございました。

 このITSA、目的があるのです。明確にしてありまして、他国の事故調査機関の経験に学ぶことによって、各国における運輸の安全性向上を実現したいんだ、それから運輸事故の原因と安全上の欠陥についての独立した調査を推進するためにいろいろ努力しようとか、かなり具体的に書かれていまして、むしろ、これまでずっとこの委員会でも議論のありましたことについて、いわば網羅をしたような目的を持ってこのITSAが進められているわけです。

 同時に、先ほど副大臣、今参加しているのは確かにそういう国々なんですが、正会員になるための資格というのがございまして、独立した調査を行う機関であること。私は不十分だと思っていますが、そちらはもう独立していますというふうにおっしゃっているので、これはクリアしていますね。それから事故調査報告書を公表する機関であること。これもクリアしていますね。それから恒常的組織であること。これもクリアしているじゃないですか。その次が大事なんですが、一つまたは数分野にわたる運輸事故調査について責任を有していること。航空、鉄道、二つも有しているんですから、これもクリアしているんですね。それから事故調査報告書、事故のデータ、安全性についての勧告、年次報告書その他安全に関する情報をITSAの参加機関に提供できる。これはもちろんやろうと思えばできる話。それからあとは金を出しなさい。これは大臣の剛腕じゃないですけれども、細腕かわかりませんが、大臣に努力していただければ、それは何十億も出しなさいという話じゃないんでしょうから、できる話。そうすると、このITSAにどうも参加をできる資格を持っているんじゃないかと思うのですよ。

 ですから、積極的にこういう国際機関に参加をして、事故の調査に、あるいは安全の勧告に対しても、国際情報交換というのを深めていって、そのことがこの国の事故調のさらに充実した体制をつくる条件になるんじゃないか、そんなふうに思っているのですが、その参加について改めて、難しければオブザーバーでも参加できないのか。オブザーバーというのはもうちょっと資格が緩くなっていまして、参加できるわけなんですが、これについて、ちょっと展望をお聞かせいただきたいと思います。

泉副大臣 今、参加資格の列挙をいただきまして、確かにほぼ該当するかな、正直そのように思います。

 今日までも、ITSA側から、日本に加盟案内の手紙をちょうだいいたしておるわけでございまして、我々としては、平成九年の四月には一応加盟を見送らせてほしいという御返事を差し上げております。

 しかし、このような情報交換等は当然必要でございますし、また各国の調査委員会のあり方あるいは実態等を見せていただくというようなことも必要でございますので、今直ちに参加をしなければならないという思いは私どもは持ち合わせておりませんが、もう少し様子を見て検討させていただきたいと思います。

日森委員 余り自信のないようなお話をなさらないで。

 実は、私もその辺を後でちょっと聞こうと思ったのですが、三回にわたって我が国の航空事故調査委員会に、お入りになりませんかという文書が届いた。今の御答弁で加盟を見合わせたというお話がございましたけれども、資格は十分有しておりますし、我々の質問に対しても、独立しています、権限も有しています、しっかりやりますというお話ですから、これは自信を持ってこのITSAに参加をして、大いに国際交流をしていただけたら、こんなふうに思っているのです。これはお願いで、ぜひ積極的に検討していただきたいと思っています。

 またITSAのお話で恐縮なんですが、この問題意識、将来展望も含めてなんですが、一番今ITSAの中で問題意識として出されているのが独立性の問題ですね。それから、インシデントの調査の重要性、これは当然なんですが、それからもう一つ、事故の被害者、遺族へのケアの必要性ということを触れているわけですね。問題意識として持っていらっしゃるということで、これに関連してちょっとお伺いをしたいのですが、最初に、統合した調査機関であることということが言われているわけです。

 今回、航空と鉄道は統合されたわけですが、先ほど山田委員のお話にもございましたけれども、道路というか自動車といいますか、それと海難審判庁、道路については事故調査の正式な機関があるのかどうかちょっとわかりませんけれども、こういうところとの経験交流というか経験交換、これはどんなふうにお考えになっているのか、まずお聞きをしたいと思います。

安富政府参考人 今回、航空と鉄道という二つのモードについて事故調査を同一の機関で行うこととした理由の一つとして、航空と鉄道の事故調査を行う上で必要な専門事項のうち、例えばヒューマンファクターであるとか金属疲労の問題であるとか、あるいは自動制御システムの問題といったような幾つかの共通の分野があるんじゃないか。さらには、調査のやり方、調査の手法、分析手法といったことについても幾つかのノウハウの共有というのが可能ではないかということで、今回、同一の組織でやることにしたわけでございます。

 自動車、海難事故についても、現在、自動車については交通事故総合分析センター、それから海難については海難審判庁というところで具体的な調査をやっておるわけでございますが、今後、共通する専門分野や事故調査の方法の情報を交換するということは、お互いの事故調査の的確化、効率化を図るという観点で非常に重要だと考えております。

 そういう意味で、今後、自動車、海難の事故調査機関との間で、これらの幾つかの共通する分野での解析の方法あるいは事故調査の手法等について情報交換をすることとして、その具体的な進め方について、今後検討していきたいというふうに考えております。

日森委員 ぜひそれは積極的に進めていただきたいと思っています。

 同時に、先ほど、道路については事故分析センターというところで事故の調査について行っているというお話でしたが、実際にそこで専門的な調査が行われているのかどうか。ちょっと私は存じ上げないもので、申しわけないのですが、実際には、航空事故調査委員会のような専門的な観点から、道路に関する事故、これを調査する機関は実質的にはないのじゃないかという気がしてならない。

 特にそれが必要だというのは、いろいろな複雑な要因が重なった交通事故だとかがありますね。例えば、トンネルの中で事故が起きた、玉突きになってしまった。その原因についてきちんと調査をしていく。それは、例えばトンネルに欠陥があったのか、あるいは道路なのか、車両なのか、運転者が悪いのか。そういうことについてきちんと、航空事故調のような感じで、そういう中身でその原因究明をしていく機関があってしかるべきじゃないのかというふうに思っているのです。警察の捜査では、やはり彼がわき見運転したことが事故の原因といって、運転者が逮捕されて終了ということで終わってしまうのじゃないかという気がしてならないのです。

 そういう意味で、現在事故分析センターでは、自動車事故についてどんなような対策がとられているのか。それから、重大しかも複雑な自動車事故については、専門的な調査機関、これが必要ではないかというふうに思っているのですが、その辺について御見解をお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 我が国の自動車の事故の調査というのは、人、道、車、三つの要素から、警察、道路管理者、地方運輸局がそれぞれの立場において必要な調査をしているというのが現状でございます。自動車事故は、年間九十三万件、死亡事故だけでも八千七百件、これは十二年の数字でございますが、極めて数多く発生しているために、個別の事故の原因究明だけではなくて、傾向的な分析の視点から、事故原因の総合的な調査分析が必要だというふうに思っているところでございます。

 このために、先生御指摘ございました、財団法人の交通事故総合分析センターというのがございまして、専門の事故調査分析機関でございますが、ここで調査分析を行っておりまして、交通事故発生の人、道、車の観点からの傾向分析に基づきまして事故多発地点三千二百カ所につきまして、道路管理者及び公安委員会が対策を行うなどのことをやっておりますし、それから、常設の事故調査拠点というのがつくば市にございまして、この周辺の主要事故、年間三百件につきまして、やはり人、道、車の三点から詳細な調査を行っております。さらに、テーマを絞りまして、例えばエアバッグに関係した事故とかということで、あるいはチャイルドシートの問題とか、そういった特定のテーマに絞りまして調査も行っております。これらの結果に基づきまして、車両の安全基準の見直しなどの安全対策を行っているところでございます。

 それから、個別の自動車事故でございますが、これも事故の形態の区別なく、警察、道路管理者、地方運輸局がそれぞれの立場から調査を行っているわけでございまして、重大な事故あるいは複雑な事故につきましても、必要に応じて連携をとりますが、同じように調査をしております。この中で、特に車両の安全にかかわる要因の事故調査が必要だといった場合には、自動車交通局に産学官の専門家が参加する車両安全対策総合検討会がございまして、ここで調査分析を行いまして、所要の安全対策を行っております。

 それから、特に事業用のバス、タクシー、トラックの場合には、地方運輸局が事故情報を収集しまして、特に運行管理面なども含めまして原因を分析いたしまして、また専門家の意見も聞きながら調査結果を出しまして、必要な再発防止対策を行っております。

 長くなって申しわけございません。もう一点でございますが、道路交通環境面のことでございますが、社会的に大きな影響を与える重大事故が発生した際には、交通警察と一体となりまして、学識経験者それから専門家の協力を得まして、事故が起こった箇所の道路環境など事故原因の要因について調査をしまして、発生要因に即した対策を講ずべく、地域に道路交通環境安全調査委員会を設置するように、平成十二年三月二十三日に道路局長と警察庁の交通局長の連名で関係機関に通知をしたというところでございます。

 このような体制でやっておりますので、現時点におきまして、新たな調査機関を設ける必要はないのではないかと思っているところでございます。

日森委員 結局、世界の事故調査機関が統合化の流れに進んでいったのは、個々の事故について原因を明らかにするという事故調査と同時に、そういうところから出発をしつつも、システム分析、そこにもう発展をしつつあるのだということで、その統合化の動きなんかはずっと進んできたわけですね。

 今のお話を伺っていると、もちろん道路は道路で頑張っていらっしゃるというのはありますけれども、しかし実際としては、そこで得られた教訓なりデータというものは、背景などを考えると鉄道や航空とも共通した問題もあるのじゃないかというふうに思うのです。そういうものを共有していく、そのことによって、安全システムとかいうことについて、いろいろ検討していけるような条件ができるのじゃないかと思っているのです。

 ですから、道路の方は道路に任せておけば大丈夫だよということではなくて、道路も海も空も、やはり事故という意味では共通した課題がたくさんあるわけですから、その情報を共有する、データも共有する、そして安全対策をシステムとしてどうつくっていくかというところは、共同して行っていくような機関がないとだめなのじゃないか、そういうふうに思っているのです。

 そこで、世界の流れでもあります、これは最後にもう一度、きょう大臣に来ていただいたのでお聞きしたいと思うのですが、これは大臣、最後でいいのですが、統合した調査機関の設置、これは非常に望ましいことだと思っているのですが、御見解を伺いたいと思っています。

泉副大臣 先生御指摘のように、共通する要素があるわけでございます。例えば金属疲労というような問題を取り上げましても、それぞれの原因究明に共通する事項ではないか。あるいは、構造の力学的な解析等につきましても、ある意味では共通する部分があるかもしれません。

 ただ、例えば自動車事故一つとってみますと、これは道路と車と運転手という、一つ一つの発生状況が違う中で起きておりますので、直ちに統一的に陸上の自動車事故も含めてやる方が効率的か、原因究明が直ちになされるかどうかについては、私どもは少し疑問を持っておるわけでございます。また、海難の事故につきましても、非常に証拠物件が上がってこない、得られないというような中での分析を強いられることが多いわけでございますので、今のところ、共通性は認めながらも、とりあえずは航空と鉄道を一緒にさせていただきたいということで、今国会に法案を出させていただいたところでございます。

日森委員 当面航空と鉄道を一緒にするということですから、将来は恐らくもっと違ったものが出てくるのじゃないかという期待を込めて、ぜひ統合した事故調の設置について御努力いただきたい、これはお願いをしておきたいと思います。

 それから、ちょっと幾つか先にお答えいただいちゃった質問がありますので飛ばしまして、今回法案の中で、重大インシデント調査というのが事故調の重要な課題に含まれたわけですけれども、事故及びその事故の予兆の範囲、これをどう設定していくのか、ちょっとお聞きをしたいと思っているのです。

 第二条の二第四項で鉄道事故の定義、五項で事故の兆候について定義をしているわけです。この定義自体はわかりますが、そもそもこの定義に当てはまらないものの取り扱い、これをどうしていくのか、これについてお聞きをしたいということと、少なくともこの定義に当てはまらない事故やインシデント、これについて、この航空・鉄道事故調査委員会が自主的に資料を収集したりあるいは任意の調査を行う、これは鉄道事故なり航空事故防止の、航空事故の方はかなりやられているというのがあるようですが、事故防止に対して大変重要な役割を果たすことになるんじゃないのか、しかもこれは法律が禁止をしているものではないというふうに思うのですが、この辺についても同時に一緒にお答えをいただけたらと思っております。

安富政府参考人 今回の航空事故調法での事故及び事故の兆候の範囲については、委員御存じのとおり、第二条の二の定義の中で書いてございますが、基本的に今回、こういう事故に当たるものについて、あるいは事故の兆候に当たるものにつきましては航空事故調で原因究明をしていただくということになるわけでございます。

 これに当たらない事故の兆候、例えば鉄道事故で申しますと、事故の兆候のうちの極めて重大なインシデントについて事故調でやっていただくということにしておりますが、これは、例えばいろいろな事故の兆候がございますが、事故調法で定義している事故の兆候に当たらないもので我々が報告として事故の兆候を集めるものは、往々にして原因が極めて単純であるとか、単純なミスであるとか、事故の兆候があらわれた状況で原因がはっきりしているものでございますので、そういうものについては、極めて専門的な、技術的な立場から行う事故調査委員会がやる必要はないだろうというふうに考えて、これは従来どおり我々鉄道局あるいは航空局の方で実施するということになりますが、それは当然、事故の兆候であるとか対象にならないものについては、お互い我々としても航空局、鉄道局の中でいろいろな統計的手法で分析をして、これの分析結果については当然事故調査委員会に情報交換するとか、逆の場合もあるでしょうけれども、そういう形で両者の連携といいますか、協力を密接にやっていきたいというふうに考えております。

日森委員 逆の場合もあるということで、実はその逆の場合の方が望ましいのではないかというふうに思っているのです。

 事故調査委員会にすべての情報が収集される、これは事故調査委員会としてきちんと調査をしなければならないインシデント、事故、これは例えば鉄道の安全対策室でやってもらってもいい仕事とかいう割り振りを、割り振りと言うとおかしいですが、そういうことができるような事故調査委員会であってほしいという気がしているのです。

 イギリスなんか、小さな故障であるとかホームでの事故とか、それからインシデント、もちろんそうですが、これはもう事故調査機関に全部情報を集中するということが制度として確立をされていて、それをデータベースとしてきちんと事故調は確保している、そういう中で、それぞれの課題についてどう解決をしていくのかということについて判断されておるわけですね。

 実は、この間鉄道の駅で聞いたら、余談的な話になって申しわけないのですが、新大久保駅で悲惨な事故が起きました。ホームというのは、真ん中あたり、中央が一番安全だと言われているんですが、ところが、実際にはそこに立ち食いうどん屋が入っていたりいろいろな店ができたりして、ラッシュ時なんかは、一番広くて安全なホーム中央が一番危険になっている、こんなことがあるんですね。こういうことについて、これはこのまま放置しておいたら転落事故が起きるかもしれない、起きたらもうすぐにひかれてしまうという危険性が予知できるようなホームの構造になっているわけですね。

 こういうことについても、実は先ほど言ったようにきちんと調査をしたり、実際に乗客の意見を聴取したりして対策を講じられるような、そういう随分きめの細かいところまで目の行き届いた調査委員会ということになっていかなきゃいけないんじゃないかという気もしているのです。

 そういう意味では、その話は別にしても、一つは、鉄道事故の報告規則、これについて見直す必要があるんじゃないのか。実は、JRの方の資料を見せていただいたら、運転阻害事故というのが驚くほど多いんですね。これらの事故は、重大インシデントではありませんから当然報告がないかもしれないし、あっても実際に調査などは行われないようなことになっているんじゃないかと思うのですが、さっき言ったイギリスのような例から見ても、鉄道事故等報告規則、これを見直して、もう少し幅広く情報が収集できるような、そういうことを実現すべきではないのか、そんなふうに一つは思っています。

 それから、それらが報告された事故のデータについても、これは有効に活用していかなければいけないわけであって、系統的な調査分析作業、それから、その分析作業の結果を関係者にフィードバックしていくような、そういうシステムを同時に事故調としてできないのかというふうに思っているのですが、それはちょっとお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。

安富政府参考人 鉄道事故に絞って申しますと、先ほども申しましたように、鉄道の方で報告しておりますいわゆる鉄道事故、この中の列車衝突事故あるいは脱線、火災、これは当然事故調の調査対象になってまいります。

 ただ、例えば踏切障害とかあるいは運転阻害とか、そういう問題につきましては、当然それも報告に上がってきますが、事故調が対象とするものについては、例えば、今考えておりますのは、乗客、乗員に死亡が生じたであるとか、あるいは五人以上の死傷者が出てきたとか、特異なもの、やはりちゃんと調査をしてやらなきゃいけないものに絞っていきたいと考えております。

 ただ、先生おっしゃいますように、運転阻害事故とか、我々が把握する幾つかの、あるいは踏切事故でもそうでしょうし、転落事故等もそうでしょうし、そういうものについては、我々としても、報告規則等で今後きめ細かくそういう阻害事故についても拾っていこうということで考えております。

 それの事故の分析、統計的な手法を用いた分析等もぜひやっていきたいと思いますし、そういうものを、もちろん事故調は当然でございますが、鉄道事業者等も含めた関係者にフィードバックしていくというシステムはつくっていきたいというふうに考えております。

日森委員 ぜひそういう形で進めていただきたいと思っているのです。

 オランダなんか、踏切事故については事故調がちゃんと対応しているとか、それからイギリスとか、ちょっと忘れましたけれども、ホームで転んでけがをしたというような事故もきちんとその事故調で対応していくとかいう、範囲も大分広いところで事故調が活動されているようなので、その辺も参考にされて、ぜひ今局長言われたようなお考えで進めていただきたいと思っています。

 次の質問に移りますが、先ほど言いましたITSAの三つ目の問題で、これは信楽事故で犠牲になった方々の遺族や、それから弁護士さんや関係者が集まってつくったTASKという鉄道安全推進会議の方々も強調されていることなんですが、事故に遭った被害者、遺族、この方々へのケアの問題というのは非常に重要じゃないか。これは、ITSAもそのことは大事だということは強調されていますし、大変難しい問題だと思うのです、ですが、しかしこれはもう当然なければならない課題だと思っております。

 そういう意味で、今回の法改正の中で、こうした被害者や遺族に対するケアの問題というのはどういうふうに対応されるのか、それをお聞きしたいと思っております。

安富政府参考人 事故の被害に遭われた方あるいは遺族の方々に対する支援というものにつきましては、原因究明とともに非常に重要な問題だと我々も認識しております。

 こういう観点から、従来から国土交通省の方で、事業監督という立場から、事業者に対して、被害者やその遺族に対して適切な対応をとるようにという指導を行うとともに、事故の被害者に対する必要な情報の提供であるとか、場合によってはカウンセリングを適切に実施する機関の紹介であるとか、そういうことについては努めてまいったところでございますし、今後とも努めていきたいというふうに考えております。

 ただ、今回の航空・鉄道事故調査委員会は科学的、専門的な立場から原因究明を行って、事業者、被害者への対応については国土交通省が別途やるという形で、いわゆる両者の機能分担を図って、車の両輪というような形でございますけれども、事故への対応を適切にやっていきたいというふうに考えております。

 このため、今後とも国土交通省としては、被害者または遺族の方々に対する情報提供、あるいは事業者の被害者への対応についてのいろいろな指導、こういう点につきまして、誠意を持って対応していきたいというふうに考えております。

日森委員 そういう意味でもやられていることはもちろん大変評価をしたいと思いますが、先ほど言いましたようなITSA、国際的な事故調の機関でも、そこできちんとやろうじゃないかというところで随分話が進んでいるようですし、これも参考にして、ぜひ有効な手だてを講じていただきたい、これはお願いをしておきたいと思います。

 先ほど申し上げましたTASK、鉄道安全推進会議の皆さん方のお話に戻りますが、海外視察なども含めて大変熱心に事故の再発防止に取り組んでいらっしゃる団体なんです。その報告書も読ませていただいたりしているのですが、この中で、やはりTASKの皆さん方も強調されているのが、先ほども山田委員のお話に出ましたけれども、警察の捜査が優先で、再発防止や被害軽減、こういう観点から事故の分析をするというのは非常に弱いのじゃないのかということが指摘をされています。三点ほど指摘があるので、順次そのお答えをいただきたいと思います。

 警察との関係、きょうもそれから一昨日も御答弁がありましたけれども、やはり非常に不十分だという気がしてなりません。これは山田委員も強調されましたし、ほかの委員もそれぞれ強調されていることなのですが、特に七五年の覚書、これがやはりネックになっていて、あれは常識的に読むと、どう見ても警察の捜査優先としか読めない覚書になっているのです。こういうことだと、法律が第一条で明確にしている目的といいますか、これが阻害されるおそれは本当にないのだろうかという疑問が消えないわけです。そういう意味で、ぜひ七五年の覚書、これは見直すべきではないのかというふうに思っているので、改めて御見解を伺いたいと思います。

泉副大臣 再三御指摘を受けておるところでございますが、繰り返しになって恐縮でございます。

 この覚書ができますまでは、いわゆる犯罪捜査が常に先行するというか、事故調査、事故原因を究明するということが組織立ってなされていなかった時代だったと思います。鉄道の事故は、いわゆる国鉄でございましたので、国がそれなりの調査をしておったと思いますが、一般的に、航空事故等については犯罪捜査が先行するという時代が続いていた。そこに、再発防止をするためには事故原因の究明がどうしても必要だということで、警察との関係が改めて問われる時代が来たと思います。

 そういうことが背景にあってこの覚書を読ませていただきますと、確かに犯罪捜査優先ではないかというふうに受け取られかねない表現がないとは申し上げられませんが、五十年八月にできましたいわゆる実施に関する細目を見ていただきますと、そうではない、ICAOの条約に基づいて、やはり独立してそれぞれ調査をする、そして必要な協力はお互いにやっていく、実はそうした条約の趣旨を反映した細目になっておると思っております。

 また、私自身も、今日までの事故調査にあって、犯罪捜査が先行したために不都合が起きたことはないかということを担当の方に確認させていただきました。それは、そういうことはなかったというふうに聞いておりますし、こうした覚書がない中で、一年前になりますが、日比谷線の事故の場合も、まさに警察と一体となって国土交通省に設置しておりました検討会の皆さん方が調査をし、原因究明をやることができたという事実を承知しておるところでございます。

 したがいまして、今のところ私どもは、この覚書を変えなければ原因究明ができないという実態を承知していないわけでございます。しかし、再三先生方から御心配をいただいておりますように、事故原因究明にこの覚書が支障を来すような事態が今後出てまいりますならば、その時点で改めて検討することが必要かとは思っております。

日森委員 副大臣のお答えはよくわかりました。だったら、覚書をなくしてしまった方がいいのじゃないのかというふうにも思うのです。

 法律で事故の原因究明と事故の防止を図るということが目的になっているわけですから、これを徹底的にやるわけですから、誤解が生ずるおそれなしとも言えないような覚書というのはない方が事故調としては仕事がしやすいというふうに思うのですが、なぜその覚書を後生大事に持っていなければならないのか。

 第一条を中心に事故調の活動をやっていただくということになれば、この覚書ではなくて、別の協力のための、覚書じゃなくてもいいですが、何か文書に差しかえても差し支えないのじゃないのかというふうに思うのですが、どうでしょう。

泉副大臣 今申し上げましたように、今日までの経験からしますと、犯罪捜査と私どもの原因究明の調査が、お互いに譲るところは譲り、協力するところは協力してなされてきたという実態からしますと、恐縮ですが、この覚書を今変えなきゃならないという現場からの意見もございません。

 したがって、なくしてしまえばいいではないかということになりますと、ICAOの条約をどういうふうに理解するかということが一つございますし、実態的に現場を保存していただくというようなことが事故調査委員会で必ずしもいつも十分にできるということにはならないわけでございます。御巣鷹山の例を申し上げるまでもなく、あの広範な山中にああした事故が起きましたときには、やはり警察の力でもって現場を保存していただく、そうしたことが必要なわけでございまして、やはりここは警察と私どもの事故調査委員会がこうした精神に基づいて、ICAOの精神に基づいて、あるいはこの覚書の意図するところを酌んでお互いに協力して調査をさせていただくということが私どもにとっては大切なことだと思っておるところでございます。

日森委員 ですから、警察が初動捜査で現場を保存するというのは当然のことでして、それは警察の仕事。

 それで、一昨日もお話がありましたけれども、直ちに犯罪捜査に踏み込んでしまうというようなことがこの覚書がある以上可能になるのだと思うのです。ですから、今副大臣がおっしゃいました、誤解を招く可能性があるかもしれない、そういう文章を例えば外してしまうとか、もっと率直に、ICAOに準じてやりましょうという覚書に変えるとかいうことがあってもいいのじゃないかというふうに思うのですが、ちょっとしつこくて申しわけないのですが、それはどうですか。

泉副大臣 今の覚書が、私が歴史的な背景を若干申し上げましたので、誤解を招くという表現を使ったかもしれませんが、覚書自体をつくるときの背景からしますと、ああいう表現にならざるを得なかったかもしれないという思いでございます。

 ただし、例えば、現場保存については今申し上げましたし、実況見分につきましても、実施の日時、範囲、方法等は事前に協議するというふうに書いてございます。事情聴取につきましても、それぞれの責任者があらかじめ対象、順序等を協議して行うというようにきちんと決めてございますし、関係物件の押収及び留置につきましても、証拠保全上支障のないものについては、それぞれの責任者が協議の上、委員会が留置する場合もありますし、警察の方で手続によって押収していただくということもございます。

 ですから、文章上、変えることによって実益がどう出てくるかということはもちろんあると思いますが、繰り返しになりますが、今のところ、私どもとしては、事故原因の究明に当たって、うまく警察当局と歩調を合わせてやれておる、原因究明に何ら支障を来していないというこれまでの実績を踏まえて、今直ちにこのことを、覚書を変えなきゃならないという判断をしていないということでございます。

 事故がないことを願うわけですが、これからの事故の調査を踏まえまして、必要が生じました場合には、また検討をさせていただきたいというのが私どもの思いでございます。

日森委員 わかりました。ただ、これまで支障がなかったからこの文章は生かしましょうという消極的な立場ではなくて、新たな事故調が出発をするわけですから、その第一条をきちんと国民が納得いくような格好で遂行できる、そういう積極的な意味で覚書についても再検討していただけたらというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、次に移ります。

 それから、TASKの皆さん方の二つ目の指摘になりますが、情報公開の問題なんです。これも再三論議になっていますが、今度の法律の中でもそれについては一定お触れいただいているのですが、特に、事故の関係者の証言について、これまでの報告では十分に触れられていなかったのではないかという気がしてなりません。これらを含めて、情報公開のあり方について、改めてお聞きをしておきたいと思います。

泉副大臣 被害者の方々あるいは関係者への情報公開についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおりに、被害者の方、遺族の方々の心情を思いますときに、その状況等を御報告するし、再発防止を講じるということが基本的には大変重要なことでございまして、経過報告などの情報公開に努めていかなければならないということは私どもも認識をいたしております。

 そうはいいながらも、断片的な情報と申しましょうか、それを差し上げることが、事実または原因の最終結果にある影響を及ぼす、あるいは憶測等を招きまして不適切な世論を形成するというようなことがあってはならないわけでありまして、私どもがそうした分野にまで踏み込んだ情報公開を差し控えておりますのは、やはり科学的な調査を妨げるようなものについてはできないということが第一でございます。

 また、関係者からの証言、これは法律にも明定してあるところでございますが、関係者の責任をいたずらに追及するようなことにつながることもあり得るわけでございまして、その結果として正確な情報を得ることが阻害されるというおそれがあるために、十分注意して情報を公開しなければならないというふうに思っております。

 したがって、被害者、遺族の方々への経過報告等の情報公開につきましては、我々も努めてやらせていただきたいと思っております。殊に、また日比谷の事故を出して恐縮でございますが、このときも、中間報告、そして最終報告につきましては、国土交通省から直接、被害に遭われました方々に御報告を申し上げる、郵送という形をとらせていただきましたけれども、そういうことをやらせていただいております。

 検討会の開催に当たって、どういうことを検討しておるのかということ等につきましては公表をさせていただくというようなことで、多くの方々に事故原因の究明のステップを承知いただくというようなことに努めてまいったわけでございます。ですから、関係者の方あるいは被害者の方々への情報公開については、許される範囲の中でできるだけ取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

日森委員 それはもう、被害者、それから遺族の方々の要望があれば、速やかに情報の公開は行っていただきたいと思います。

 それから、関係者の証言の問題なのですが、これはさきの参考人質疑でも参考人から御意見がございました。結局、これは事故調の独立の問題とも関係してくると思うのですが、警察捜査との関係、そういう、司法からもきちんと独立をした事故調査、そういう権限を有する調査委員会であるならば、関係者の証言についてきちんと聴取をするし、それを公表することもできる。しかし、その際、先ほどのお話でありましたけれども、それが即、責任を問われる、犯罪に関与してしまうことの証言になってしまうというようなことがあって、なかなか関係者の証言というのが迅速に聴取できない、そんな状況があるのじゃないかと思っているのです。

 これは国土交通省の範疇を離れることなんですが、関係機関と協議を重ねて、将来の課題になるかもしれませんが、免責処分とかいうことについて検討していくことも当然必要なんじゃないか、それは事故調の仕事が本来の意味での独立をする上でも当然必要なことではないのか、そんな感じがしているのですが、この辺について、お考えをお聞きしたいと思います。

泉副大臣 今先生におっしゃっていただきましたように、この問題は、いわゆる法務当局あるいは日本の司法制度のあり方全体にかかわる問題でございますので、私どもがある種の解釈をするということは差し控えさせていただきたいと思います。ただ、今日までの調査の経緯からしますと、刑事免責がないから十分な情報をいただけなかったというような実態はなかったと承知をしております。

 また、法の十五条によりましても、証拠、御発言をいただきましたそうした調査の内容を犯罪捜査のために使ってはならないという規定もございますし、二十四条においては、事故調査委員会の事故調査にかかわったこと、そうした事柄を理由に不利益な扱いをしてはならないという関係者の保護がなされておるわけでございまして、事故調査委員会に限って判断をいたしますと、刑事免責の導入については、今我々が考えなければならないことではないと思っております。

 それからアメリカの場合も、我々が承知した限りでは、NTSBの方にそういう権限が認められておるわけではなくて、特別にある事件に関して司法当局からのそうした権限が許されるという実態を承知しておるところでございます。

日森委員 時間が来てしまいました。

 最後に、大臣にお聞きをしたいと思うんです。

 今回の事故調査委員会法の改正は、鉄道分野が今までなかったわけですが、これをつくるという意味で、最初に申し上げましたけれども、一歩前進という意味で評価をさせていただいております。ただ、先ほどずっと国際的な調査機関の例なども申し上げましたけれども、将来的にアメリカのNTSBあるいはオランダのTORのような統合された調査機関、しかも独立性を持った第三者機関として事故調査委員会を発展させるということが必要なんじゃないかというふうに一貫して思い続けています。

 そういう意味で、大臣に、事故調査委員会の将来のあり方について、大臣のお言葉をかりると、二十一世紀の事故調査委員会ですか、について、ぜひ見解をお伺いしておきたいと思います。

扇国務大臣 きょうは本会議があって失礼をいたしましたけれども、先ほどからいろいろ伺っておりまして、大変重要なことを御論議いただいたと思っております。

 また、今おっしゃいましたように、航空と鉄道の事故調査委員会の独立性の確保に関しましては、航空と鉄道の事故の調査委員会の中立性、公正性、そういう意味の確保というものがいかに重要であるか、それは当然のことでございますけれども、委員会の設置法の第四条、委員会の委員長及び委員は、独立して職権を行う、この趣旨というものが独立性の確保というもの、また公正性、中立性というものを、私は、的確な事故調査に十分配慮するというのは当然のことだろうと思います。

 けれども、今後また先を見越してどうなんだというお話もございましたけれども、私は、いつも申しますように、陸海空のモード間の横断的な事故調査体制のあり方、そういうことから考えますと、今回はまず前進をさせていただいて、そして、鉄道も航空も一体となったということが戦後の日本の中では大事なことであったと思いますので、まず今回この法案によって皆さん方に御賛同いただければ、私は大事なことだと思っていますし、大事な時期に来たと思っています。

 そして、今先生のお話を伺っておりまして、世界の、ITSAのお話もおっしゃいました。けれども、このITSAに関しましても、加盟国の中でもアメリカ、カナダ、オランダ、先生がおっしゃったとおりでございますけれども、これは複数のモードの事故調査というのをやっておりますけれども、一方またイギリス、ドイツ、フランスというのは、それぞれ安全行政を所管する行政みずからがそのモードごとに事故の調査を実施している国もまだございますので、どっちがいいかというのは、私はまだ一概には言えない。これに加入すれば事故がなくなるという保証があるわけではございませんので、私は、少なくとも今後は事故をまずなくすという大前提に立って行っていかなければならないと思います。

 また、やりとりの中で、日森先生がおっしゃっていました、覚書というのをもうそろそろ見直したらどうだというお話もございましたけれども、これは私も、少なくとも、一九七二年でございますから、警察との覚書も三十年たっているわけでございますから、そういう意味では、今後二十一世紀として、半永久的にこれを見直さないという意味ではございませんで、まずこの法案を通させていただいた後、今後の日本の安全のあり方というものを検討する上の材料としては、十年一昔と言うんですから三十年は三昔ぐらいになるんじゃないかと思いますので、それも今後の検討材料として私は見守っていきたいし、まずこの法案が通って、空と陸とが一緒になった安全の調査、そして安全確保のために見守っていき、なおかつ手直しするところがあるのであれば、これは将来性として幅を狭める、一切シャットアウトというのではないということだけは申し上げながら、今まで議論していただいたことに御礼申し上げたいと思います。

日森委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫でございます。

 私は、これまでいろいろな形でこの委員会でも議論をされてまいりましたけれども、国土交通省の所管であります陸海空それぞれの交通モードにおける事故に対してどのように原因を解明して、そして再発防止に取り組んでいったらいいのかということで、交通事故の全体についてお聞きをいたしたいというふうに思います。

 これまで私も、国土交通省の前には運輸委員会などにも属してまいりまして、その中で交通事故、特に鉄道事故などについてもいろいろと当時の運輸省に申し上げてまいりました。特に鉄道事故につきましては、信楽事故がございましたときに、遺族の方たちからも、アメリカのNTSBのような機関をつくってはどうか、こういうような要望がありましたので、私たちも同感をいたしまして、いろいろと政府にも申し上げてまいりましたけれども、しかし、そのときにはいろいろな理由で拒否をされてきた経過がございます。

 そういう意味では、今回このような法案が出されまして、鉄道についても事故調査委員会ということで一体となってこれから事故の原因の解明、再発防止に向けて取り組まれていくということ、その法案が出ましたことは、私は一歩前進だというふうにも思いますし、しかし、一方では、やっと出てきたかなというような感じもいたしております。さらには、監督官庁から独立した機関とかいうようなこともこれまでもずっと言ってまいりましたけれども、そういう意味では依然として国土交通省の所管ということでは、ちょっと満足もできないというようなところもございます。

 それはさておきまして、先ほど申し上げましたように、陸海空それぞれの交通モードの中で事故が起こったときに、その事故にどう対応するか、どのように事故原因を究明して、そして再発防止に向けてどう対応していくか、これがそれぞれ各モードで違っております。陸につきましては、これは道路、鉄道がございます。道路につきましては交通事故総合分析センターというところが担当をいたしております。鉄道につきましては、これまでは鉄道の会社が担当しておりましたし、今度の法案でこれが事故調査委員会ということになるわけです。一方、空についてはこれまで事故調がございました。

 ところが、海についてはどうか。海で事故が起こりますと、これは海難審判庁で審査というものがございます。この海での海難についての事故原因の分析といいますか解明、これは、今回の事故調査委員会なんかのやり方とは全く違う形でやられます。これは対審構造という形で、今の日本の裁判所みたいなもので、裁判でいう原告と被告がお互いに証拠を出し合って、そして裁判官が事実認定をして判決をする。それと同じような形の対審構造でその原因を事実認定していく、こういうやり方を海難審判庁としてやっているわけでございます。

 したがって、国土交通省の所管をする陸海空のこの交通モード、各モードで、起こった事故に対してその原因を究明するやり方がそれぞれ違う。やっと今度、航空機と鉄道が事故調査委員会というもので一緒になって、事故原因を解明して再発防止に資する、こういうことになるわけなんですけれども、そこについては一歩前進してきたというふうに私は思っております。

 そういう意味で、私、今回、全体的なことでお聞きをしたいと思います。各モードでの状況をお聞きいたしまして、国として全体的にどういうふうにやっていかなければいけないかということをお聞きしたいというふうに思っておるところでございます。

 そこで、まず最初にお聞きをいたしますけれども、道路についての、この交通モードでの事故の問題でございます。

 交通事故に関しては、厚生省の統計では年間で一万三千人ぐらいが亡くなっている、件数にしては九十万件が起こっている、そういうような大変とうとい人命が交通事故で失われ、負傷している。それに対してその原因を究明するのが先ほど申し上げました交通事故総合分析センターで、この交通事故総合分析センターという組織そのものが、これが本当に、年間に一万三千人も亡くなるような、そういう事故があるのに、果たして国の体制としてこんなものでいいんだろうかというような気持ちでございます。

 交通事故については三つの側面がございまして、一つは運転手の責任ということもあろうかと思います。二番目は自動車の構造なんかもあると思います。それから三番目としては道路とか信号の設備によるというような、この三つがあろうかと思います。運転手の責任の問題については、これは、主たる任務として刑事責任を追及すればいいというふうに思いますけれども、自動車の構造あるいは道路や信号の設備というようなことについては、これは交通事故総合分析センターで原因を究明しているわけでございます。しかし、この交通事故総合分析センターは、航空事故調査委員会の法律的な位置づけ、権限その他と比べますと、いわば本当にお粗末ではないかというふうに思います。

 そういう意味で、まずお聞きをいたしますけれども、この分析センターは一九九二年に、当時の警察庁、運輸省、建設省の三省庁によってつくられましたけれども、現在どのような予算、どのような事業をやっておられるのか。そもそもこれは財団のようですけれども、その財団のお金は一体どういうようなところから出されているのか、そういうことからお聞きをしたいと思います。

坂東政府参考人 お尋ねの交通事故総合分析センターでございますが、このセンターは、交通事故と、それから、委員御指摘のように、事故の側面でございます人、道路、車、これに関しまして、人身事故データ等をもとに作成された交通事故統合データベースによるマクロ調査分析とか、あるいは実際の交通事故現場に臨場して行うミクロ調査分析、こういった手法を駆使いたしまして総合的な分析、調査研究を行うことを目的として、平成四年三月に設立された法人でございます。

 当センターの予算でございますが、例えば平成十一年度決算で申しますと約六億五千万円でございまして、その運営資金につきましては、基本財産の運用による収入のほか、警察庁、国土交通省等からの調査研究の受託に伴います収入、あるいは補助金等の収入ということによっているところでございます。

 当センターの事業概要でございますけれども、この分析センターは、マクロ調査分析あるいはミクロ調査分析等のほかに、社会的な反響の大きい重大事故について科学的あるいは総合的な調査研究を行っているところでございまして、最近では、全国の交通事故多発地点約三千二百カ所というものを抽出しておりまして、これが公安委員会とかあるいは道路管理者の具体的な対策に生かされているところでございます。また、チャイルドシートあるいはエアバッグの使用の効果等に関する調査研究といったようなものも実施しているところでございます。さらにはまた、広報誌を毎年数回発行いたしまして全国の関係機関あるいは団体等に無償で配付したり、研究発表会等を開催するなどいたしましてこれらの調査研究の成果の広報等にも努めているところでございます。

細川委員 そもそも、この交通事故総合分析センター、この収入というのが、いろいろな事業を引き受けたその受託収入であるとか、あるいは運用益とか、あるいはこれも自賠の方の特会なんかからも出ているようでありますけれども、そういうようなところからの費用で運営をしていく、しかも予算は七億円ぐらいですか、そういうことで果たして本当に年間一万三千人以上も亡くなるような事故を十分に分析できるのかどうか、もっとしっかりと法律の根拠に基づくものにしていかなければいけないんじゃないかというふうに私は思っております。

 今回のこの航空事故調査委員会設置法等の改正案、これは本当に、こういう法律に基づいて委員会を設置して独自の調査をしていく、しかも、法律に基づいて設置をされまして、いろいろな権限も与えられる。この事故分析センターというのは民法の三十四条の財団法人として設立をされておりまして、これが道路交通法によって指定法人というのになって、そこで先ほど言われたような事業をしている。そういうことで、いかにも何か、お粗末と言ったら表現が悪いんですけれども、国民が本当に関心があって、日々事故も起こっているわけですから、もっと強力な、法律にもっと権限が与えられるような、そういうセンターをつくるべきだというふうに私は思いますけれども、そういう点については一体どういうふうに考えておるのでしょうか。

坂東政府参考人 交通事故総合分析センターは、委員御指摘のように、交通事故調査等の事業を適正かつ確実に行うことができると認められ、道路交通法に基づきまして、国家公安委員会によりまして指定されているところでございまして、必要に応じまして警察の保有する情報とか資料の提供を受けることができるというようにされているなど、本来国が行うべき業務をこれにかわって行うという側面もある意味では有しているところでございます。

 そしてまた、当センターの目的あるいは事業内容からいたしまして、このセンターは、多くの事故例というものを分析し、そこから得られる知見というものを今後の交通安全対策に生かそうとするものでございまして、これまでも、このセンターの調査分析結果が、政府の交通安全計画の目標設定とかあるいは各都道府県公安委員会規則の改正、こういったものにも反映されて、行政に生かされているところでございます。

 個々の事案の真相究明あるいは責任追及というものは、交通事故事案というものが交通業務上過失事件と事実上一体となっているということから、一次的には警察がその任務に当たっているところでございますが、このセンター、先ほど申しましたように、総合的あるいは科学的な交通事故調査分析を行うということを目的として設立されたものでございますので、こういった設立された趣旨にかんがみまして、委員御指摘の点も参考にしながら、このセンターの一層の機能の充実強化に努めまして、今後ともその成果というものを交通安全対策に反映してまいりたいというふうに考えているところでございます。

細川委員 交通事故分析センターは、これは道路交通法によりまして指定法人になっているというようなことから、いわばこの分析センターは警察庁の方の所管になっておるようでございます。

 したがって、いわば縦割りみたいな形になっておりますので、いずれ私は内閣委員会の方で先ほどお聞きをしましたことも議論をしたいというふうに思っておりますけれども、交通に関して、事故が起こったときに、その事故の原因、そして再発防止の対策、こういうことをやるのは一体どこのところでやるべきか、あるいはどういう形をつくってやるのが一番効率的、有効なのかというようなことについては、縦割りの行政ではそういうことはできないんではないかというふうに思っております。そういうことも含めまして、また別のところで議論をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。

 道路はそういうような形で、事故原因の究明のところは財団法人の交通事故分析センターでございます。

 ところが、では海の方にいきますと、海で事故が起こった場合には、どこでどのように原因を究明して再発防止をするのかといいますと、これは、先ほども申し上げましたように、海難審判庁というものがございます。この海難審判庁でのやり方というのが、これまた何か明治以来の百年の歴史を持つような対審構造、これは私も詳しく知らなかったんですけれども、いろいろ調べてみまして、本当にこういうことでいいのだろうかというのをつくづく感じたところでございます。

 これは、海難が発生をいたしますと、海難審判庁の理事所というところで調査をいたしまして、そして海難審判庁に審判の開始の申し立てをする。申し立てをしたら、例えば船の船長がいましたら、その船の船長が受審人、いわば普通の刑事の裁判でいえば被告人だろうと思いますが、被告人の席にいて、そして海難審判庁の理事官という人が、いろいろ調べた証拠とか、そういうものを審判官の方に向かって出す。そして、補佐人という人が、これは受審人という例えば船長なら船長の弁護をするといいますか、擁護する補佐人という人がいて、それがまた証拠をいろいろ出す。お互いに証拠を出して、そして最終的には、この審判体が、一体この海難の原因は何だったかという事実認定をする。簡単に言うとそういう構造になっておるわけですね。

 こういう構造がいわゆる海難での事故の原因を解明するのに一番いいという形で採用されたんだろうと思うんですけれども、しかし、ほかのモードのあれは全部やり方が違うわけですよね。航空機にしたってそうですよね。それから鉄道、道路、事故原因の解明はこういう形ではやっていないわけですね。

 確かに、海での海難の場合には船が沈んでしまって、残った人は、人だけだから、人に対するいろいろな聞き方というのなんかも工夫をしなければいけないということで対審になったんだろうと思いますけれども、しかし、果たして今そういう合理性があるのかどうなのか、これについてお聞きをいたします。

扇国務大臣 今、細川先生が最後におっしゃったことでございますけれども、果たしてこれでいいのか、そして海難だけがなぜ独立しているのかと。独立しているのかという意味ではございませんけれども、現体制のもとでは別個になっております。

 けれども、少なくとも海難事故におきましては、海上で発生するために、ほとんど物的証拠あるいは情況証拠が乏しいわけですね。運航に当たっている船長の判断によるというところが大きゅうございますし、事故当時の状況を把握するためには、海難関係者の証言が重要な証拠となっております。

 また、御存じのとおり、イギリス、ドイツ、フランス、これもすべて海上事故に関しては独立した調査、例えば海難調査局とか、あるいは海事審判庁とか、あるいは海上事故調査事務局とか、それぞれ別に持っております。それはもう先生御存じのとおりだから重ねて言うこともないと思いますけれども、ほとんど海難に関しましては、今申しましたように、船ですので船長の判断というものが大変重要視されております。

 他方、航空ですとか鉄道、そういうシステム的に管理された運行、それを行っているためのさまざまな要因が航空、鉄道には絡み合っているわけですね。そういう意味で、専門的な知識を持つ者が合議により原因を究明するということでは、今のような状況が一番適切でないか。

 また、先ほども私が申しました、船長の判断によるということによっては、船長の過失の認定が大きなウエートを占めているわけですね。そういう意味で、審判制度が現段階では、先生がおっしゃいましたように鉄、空と、海難というふうに分かれているというのが今の現実でございます。

 そして、重ねて言わせていただきますと、事実の究明に当たりましては、御存じのとおり、対審制というのが行われておりますけれども、その対審制は証言をもとに審判手続により事実を究明する制度でございますし、また補佐人制というのがございますけれども、この補佐人は弁護人というふうに御理解いただければいいと思いますし、また参審員制というのがございますけれども、これは御存じのとおり学識経験者等を審判に参加さすことができるという、独立性あるいは専門性、すべてを公開性という極めて民主的な手続が現段階で行われておりますので、私は、先生がおっしゃいましたような全部一緒にしたらどうだということとは少し性質が違うものであるということを、私どもはそれぞれの特徴に合った、またそれぞれに特異性を持った、諸外国と比較しましても、現段階の、海難審判制というものが海難審判庁によってとり行われているということは御理解いただけるところであろうと思っております。

細川委員 御理解いただけるだろうと言われましたけれども、ちょっと私は理解できないんですけれども。

 なぜ対審によらないと原因が究明できないんですか。海難審判庁として独立をしていろいろ原因を究明するということは、これはこれでもちろんいいですね。大臣、そうですよね。そういう組織があるということはいいと思う。では逆に、そこでお互いが証拠を出し合って、そしてその原因は何なのかということをどうして決めなければいけないのか、海難に限って。

 それは、船長の証言が非常に重要だとかということはありますよ。大昔だったらなかなか証拠も揚がらないような場合もあったかと思いますけれども、今は救助だとか、いろいろな形で証拠の物件なんかも揚がりますから、それは本当の専門家が船長から事情を聞いて、そしてその原因はこうだったという事実を決めていけば、それでいいんじゃないか。なぜわざわざ対審構造にして裁判みたいな形でやらなければいけないのか。私にはちょっと今の大臣のあれでは理解できないんですけれども、大臣じゃなくても結構です、どなたでも答えてください。

松井政府参考人 ただいまの先生の質問に対して、海難の原因究明が特に審判といった対審の手続をとっている理由と申しますのは、まず第一に、海難は、人の故意または過失のみならず、船体、機関等の構造、港湾、水路の状況、さまざまな要因が複雑多岐に絡み合って発生するものであります。また二つ目に、海難事故の特性は、労働条件が長期間陸上から孤立した二十四時間就労体制であることや、事故が海上で発生するため、先ほど大臣が申されました、物的証拠や情況証拠が乏しい場合が非常に多いということ。それから三番目に、特に海難事故の大半を占める衝突事故では、その事故当時の状況を把握するためには両船の海難関係者の証言が重要な証拠であることなどから、海難事故の原因究明には、慎重を期し、的確で公正な判断を行う現在の海難審判制度が適していると考えております。

細川委員 一番最後の、証言が大事だということについては、これはどの事故だって、車だったら運転している人、それから列車だったらその運転手ですか、機関手、みんな同じじゃないですか。関係した人の話を聞くということについては同じでしょう。労働条件が二十四時間労働だなんて、今は飛行機なんというのも結構長い時間乗っているわけですよね。

 それから、構造だとか水路だとかいうようなことも関係があるなんというように言われましたけれども、そんなものはほかの事故だって同じじゃないですか。それだけで何で対審にしなきゃいかぬかというのは僕はよくわからないんですけれども、そういう形で真実というか事故原因がはっきりわかるというのならば、航空機の方だって対審にすればいいと思うんですね。そうしたらはっきり真実がわかるということになるんじゃないでしょうか、そちらに合理性があるというならば。

松井政府参考人 ただいまの対審の問題でございますが、航空、鉄道の事故については、システム的に管理されている運行状況のもとであり、一方、海難におきましては、先ほども述べましたとおり衝突事故が大半を占めております。

 基本的には、船の運航については船長の判断によって行われるものであります。したがって、海難の原因においては過失の認定が大きなウエートを占めており、現在の対審の審判制度が的確なものと考えております。

細川委員 ちょっと私にはよく理解できませんけれども、ぜひ大臣、海上の事故につきまして、海難審判庁というのがあって、非常に歴史が古いようでございます。明治九年からのいろいろな歴史で今の海難審判法というのができているようなんです。したがって、果たして今こういう形の原因究明、そして事故再発防止というのがいいのかどうかということについてもひとつ御検討をいただけたらというふうに思っております。

 そこで、海難についてのことなんですけれども、海難事故が最近またやたらにふえているんですね。ちょっとお聞きをしましたら、平成十年と十二年を比較しますと、プレジャーボートなんかの関係ですけれども、衝突で二百七件が二百四十六件で一九%の増、合計で八百二十八件が千百四十二件で三八%の増加。何でこういうようにプレジャーボートなんかの海難がふえているのか。どうしてでしょうか。

縄野政府参考人 今先生が御指摘のように、プレジャーボートなどによります海難は増加をしております。海上保安庁としても危惧をしているところでございます。

 今数字についてお示しがありましたが、平成十年から十二年への二年間でプレジャーボートなどに係ります海難は、八百二十八隻から千百四十二隻、三百十四隻、三八%増加をしておるところでございます。

 その主に増加した原因でございますけれども、私どもから見ますと、エンジンの故障、あるいは浅瀬への乗り上げ、バッテリーが上がってしまう、あるいは燃料の欠乏、それからスクリューに網などが絡まってしまう、そういうことによる障害などでございます。

 私どもが思いますに、プレジャーボートなどは、漁船や貨物船、自動車に比べて非常に使用頻度が低うございますので、いわゆる仕業点検、出港前点検が重要であるにもかかわりませずこれが十分に行われていない、あるいは、見張りあるいは船の位置の確認、水路の調査、そういう基本的な行為が十分に行われていない、そういう初歩的なミスによるものではないかというふうに考えております。

細川委員 事故の原因はたくさんあろうかと思います。

 大臣、これはぜひお願いなんですけれども、水上でプレジャーボートならプレジャーボートを運転するのに、幾ら酒を飲んでやっても構わないのですね。全然、何のあれもないんですよ。運転するのに、運転免許を持っている人が横に座っていれば無免許の人が運転できるんですね。免許を持っている人が寝ていたっていいんです。免許を持っていない人が運転できる。こんなことが果たしていいのかどうか。それで、スピードについて制限はないわけですから、どんなにスピードを出したっていいんですよ。出したいだけ出せばいい。それがいわゆる違反とかなんとかにはならないんです。事故が起これば別ですよ。それで事故を起こしたら、業務上過失傷害罪だとか業務上過失致死罪ということで処罰をされますけれども、お酒を幾ら飲んで運転したって全くおとがめなし。それによって処罰というか行政処分なんかはやりようがない。

 陸上で、道路で私が車を運転するのに、酒を飲んだらもちろん処罰されますよね。今度だって、道路交通法改正で二年が三年になるんです、処罰が重くなるんですけれども。これは、パイロットだって多分酒を飲んじゃだめだと思います。中華航空か何かの、名古屋で起きたときに、操縦士が飲んでいてちょっと問題にもなったと思いますけれども。

 そういう海でのことについて、規制がないんですよ、例えば道路交通法のような、水上交通法みたいな。これは、ぜひひとつつくってもらいたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

扇国務大臣 私、免許を持っていないものですから余り詳しくなくて申しわけないんですけれども、免許を持っていなくても、今おっしゃったように、数字を見ただけでも、このプレジャーボートの五年間の海難発生件数という、これを手元に持っております。年々件数がふえております。平成十一年でいいますと九百三件、十二年では一千百四十二件と件数自体もふえております。今先生がおっしゃいましたように、これだけふえていて、しかも、小型船舶の操縦士の免許の受有者数、免許を取った人、この数が物すごいのですね。十一年で二百六十三万二千人、さかのぼりますと、平成五年、二百九万八千人なんですね。それが、もう既に二百六十三万二千人になっているわけですね。

 ですから、今おっしゃいましたように、これだけ免許取得者が多い、そして事故件数も数字の上でもふえているということから考えますと、今細川先生おっしゃいますように、何らかの検討が必要であるというのは、おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、今先生がおっしゃいましたように、あらゆる点で、飲酒運転の禁止とかあるいは操縦に関する一般的な行為規制、こういうものが全部ないということですから、改めて、免許取得時あるいは免許更新時、そういうものに的確に対応していかなければ防げないだろうと私は思っています、取締法がないんですから。

 そういう意味では、今後、海洋レジャーを安全にあるいは健全に楽しんでいただくという本来のものから外れて、今の状況であれば、プレジャーボートとしても、運航の実態、事故の状況等を踏まえながら、今後どのような政策、方策をとっていくか。また、そういう人たちの事故というものを規制がないんですから罰することもできない。そういう意味では、私は、免許取得時、免許更新時、そういうもので改めてどういうものが必要かというのは検討する必要性を大いに感じておりますので、検討していきたいと思っています。

細川委員 大いに検討していただくということでございますから、よろしくお願いしたいと思いますけれども、結局、海難事故がふえている原因を徹底的に究明していただいて、どういう規制が必要かということになろうかというふうに思います。

 そういう意味じゃ、アメリカなどではほとんどの州で、さっき言いましたような、例えばお酒を飲んで酔って運転をしちゃいけないだとか、あるいは麻薬だとかあるいは睡眠薬だとか、そういうようなことでやってはだめだとかいう規制をつくっているんですから、ぜひそういうことも参考にしながら、私は、水上交通法というのですか、海の上での交通の規制をする、そういう法律、水上交通法のようなものをぜひ国土交通省の方で検討していただいて早急につくっていただくということが、これは海難の事故の防止にもつながっていくのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 道路、それから海の事故の問題についていろいろと申し上げてまいりました。今回は、空、航空機等、それから鉄道の事故に関しての事故調査委員会を法的にきちっとつくる、こういうことでございますから、あと、鉄道、航空についていろいろお聞きをしたいということで準備をしておりました。

 特に、鉄道、航空に関しましては、私は今までも、アメリカにありますようなNTSBのような組織をつくって、航空機、鉄道だけではなくてほかの交通のモードについてもやるべきではないかということを主張してまいりましたけれども、今回は一歩前進だということで評価をしていきたいと思います。

 そのほかにも、捜査機関、捜査とそれから事故の原因究明との関係、これもこれまでいろいろな方がもう質問をいたしましたから、私の方からはもう詳しく申し上げません。

 ただ、一つだけ申し上げておけば、刑事の関係では初動捜査でしょうが、事故調査委員会でもやはり最初の調査というのは非常に大事じゃないかというふうに思います。

 そのときに、事故調査委員会の専門委員の方が現場に行ってやる場合のいわゆる知識を持って初動で現場をどういうふうに保存するかということと、それから捜査の関係で現場を保存すること、この二つを考えた場合にどっちが優先をするかということは、もちろん私は事故の調査の方が優先しなければいけないと思うんですけれども、聞くところによりますと、鉄道の事故だとかあるいは航空機の事故が起こったときに、一番最初に初動で刑事捜査の方で行く、そういう方は、なかなか専門家はいないというふうに私はお聞きをしているわけなんです。しかし、航空事故調査委員会の方が初動捜査で行くときには、これは専門家が行くわけでしょう。

 一方では素人、一方では専門家が行った場合の現場の保存なんかについては、これはもう専門の方にきちっと保存をしてもらうということが私は当然だと思うんですけれども、あの覚書だとか細目からいきますと、最初の方の保存のようなものは、いわゆる刑事訴訟法にのっとってやるということになっておりますから、ちょっと私は、そういうことから考えましても、覚書それから細目については検討をし直していただけたらと。そのことについては、先ほど大臣からも、余りにも古過ぎるということで、御検討の向きもあるようなことを言われましたので、ぜひその点、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 それから、刑事免責の問題についても詳しくお聞きをしようと思ったけれども、これも既に前の委員の方からお話がありましたから、私の方からはもうお聞きはいたしませんけれども、関係者がいろいろなことを話をする場合に、自分が話をすれば刑事訴追を受けるということになって、この話をしない、あるいはぼやかすとかいうようなことがないように、真実を話したならば刑事訴追の方は心配しなくても、真実の話ができるんだというような、何かの工夫をしてもらえないだろうか。

 これは、刑事全般に行きますと大変難しい問題もいろいろあるようでございますから、今司法制度改革審議会というものが行われておりまして、その中でこういう刑事免責のことについても検討をしなきゃいかぬというようなことが中間報告でもなされているようでありますから、これは例えば航空機あるいは鉄道の事故に限って、そこで何らかのそういう免責的なことができるのかできないのか。私は、そういう何らかの工夫をしていく方が、真実の発見というか、事故原因の究明のためにはいいんではないかというふうに思っております。

 いろいろお聞きをしたいところがありますけれども、委員の皆さん方、あるいは大臣もお疲れでしょうから、ちょっと時間を十分ぐらいあれしまして、私の質問はこれで終わります。

赤松委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十四分開議

赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。瀬古由起子君。

瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。きょうは、時間が少ないので、答弁は簡潔にお願いをいたします。

 では、事故調査委員会にお聞きいたします。

 日本が第一理事国であります国際民間航空条約、ICAOは、事故調査当局は調査の実施に関し、独立性を有し、かつ、制限されない権限を有すると述べております。警察と旧運輸省との間に交わされた覚書では、「あらかじめ捜査機関の意見をきき、当該処分が犯罪捜査に支障をきたさないようにするものとする。」と、事故調査が刑事捜査を制限しない、障害にならないようにするという、明らかに捜査優位の項目がございます。これは、前回私が質問の中で問題点として指摘をいたしました。

 ICAO条約の、調査委員会が独立性を有し、かつ制限されない権限という場合は、少なくとも、調査委員会の立場からして、刑事捜査は事故調査委員会の調査を制限しない、障害にならないようにすると考えていいのでしょうか。いかがでしょう。

中島政府参考人 私どもの実態として申し上げますと、現場において警察の犯罪捜査が行われる場合においては、委員会の調査に時間的、手順的に十分な配慮がなされており、調査に円滑を欠くような制限を受けることはありません。

瀬古委員 当然、刑事捜査が事故調査委員会の調査の障害にならないようにするというのは当たり前のことだと思うんです。

 そこで、お聞きしますけれども、事故調査委員会が提出を要求した警察の押収物は、当然警察は応じるものと考えてよろしいでしょうか。

中島政府参考人 御説明いたします。

 御指摘をいただきました警察の押収物件の提出につきましては、これまでも当方の要求にすべて対応してもらっており、調査に支障を生じたことはありません。今後とも、このような協力関係を維持すべきものと考えております。

瀬古委員 当然、無条件で警察は応じていただきたいというふうに思うわけです。

 そこで、記録の開示と公開の問題について伺います。

 ICAO条約では、司法当局が決定した場合を除いて、航空機の運航に関与した者のすべての交信、関係者の個人情報、ボイスレコーダー、フライトレコーダーの記録や情報など調査目的以外の利用の禁止、最終報告書の解析に関係する以外の記録の開示を厳しく禁止しております。これはなぜか。このような情報が流布されることが調査の過程に支障を来し、航空の安全に著しく影響を及ぼすことになる、このようにしております。

 事故調査委員会が調査をやり始めたばかりなのに、先日の日航機のニアミス事件では、航空局が交信記録や航跡図まで勝手にどんどん発表いたしました。ICAOでは厳しくこれは禁じられているものですよね。このようなことは、事故調査委員会は一体どのように考えておられるんでしょうか。ICAOの条約の精神を踏みにじるようなやり方に、この航空局のやり方に何らか物を言われたんでしょうか。

中島政府参考人 御説明いたします。

 ICAO条約第十三附属書の五の十二によれば、航空機の運航に関与した者のすべての交信を事故等調査以外の目的に提供してはならず、解析に関係のない部分の記録は開示してはならないとなっております。

 同附属書の当該規定について事故調査委員会に遵守義務があることは論をまたないものでありますが、今回公表されたことについては、航空事故調査委員会による原因究明には何ら影響がないものと考えております。

瀬古委員 要するに、ICAO条約では、これは言ってはいけませんよ、今後の事故の調査に大変重要な影響を与えるからということで、厳しく開示を禁止しているわけです。ところが、もちろんあなたたちが出したと言いませんよ、あなたたちが出さなくても、一方では航空局がどんどん同じような交信記録などを出しているということになれば、事故調査委員会は出さないけれども、航空局がじゃんじゃん出しても、それは影響ないんだ、こんなことは言えないでしょう。ICAOでいえば、こういうものを出せば、これがひとり歩きして、実際には事故調査に重大な障害を与えるということで厳しく禁止しているわけですよ。それについて、はいどうぞどうぞ、何でもやってくださいなんということを言えないでしょう。

 やはり、ちょっと国土交通省やり過ぎじゃないか、これはICAOの条約の精神に反するんじゃないかと物を一言言っても当然じゃないかと思うんですが、なぜ言われないんですか。

中島政府参考人 御説明申し上げます。

 ただいま申し上げましたとおり、同附属書の当該規定について事故調査委員会に遵守義務があることは論をまたないものでありますが、今回公開されたことについては、航空事故調査委員会による原因究明には何ら影響がないものと考えております。

瀬古委員 こういうことを発表されては事故調査の原因究明に問題があるといって、ちゃんとICAOに書いてあるわけですよ。それを関係ない、問題ないなんて。私は、ここに一番端的に事故調査委員会が独立性がない、自分たちは守らにゃあかんぞと言われていても、一方ではじゃんじゃんそのようなことが発表されて、物も言えない、これが一番わかりやすい、独立していない例だと思うのですね。

 ICAOの条約が禁止している、調査が妨害されるようなことに物も言えなくて、どうして、公正な、公平な、国民が納得できる調査ができるのだろうか。その点は、十分、今後の問題としても厳しく反省していただきたいし、改善していただきたいと私は思います。きょうは時間もございませんので、指摘だけしておきます。

 言ってはいけないよということがじゃんじゃん発表されているわけですけれども、一方、ICAOは、開示を禁止している項目以外は原則公開を前提としているわけですね。情報公開をきちっとするということが前提になっております。いよいよ四月一日から情報公開法が施行されるわけですけれども、これに向けて、委員会としても、情報の収集、保存、公開、こういうものについても検討されていると思いますけれども、どのような手続で行うのか。どのような検討をされているのでしょうか。事故調査委員会、お願いいたします。

中島政府参考人 御説明いたします。

 現在、航空事故調査委員会におきまして、行政機関の保有する情報公開に関する法律に沿って作業を進め、最終的な調整を行っているところであります。情報公開につきましては、今後とも適切に対応していく所存でございます。

瀬古委員 本当に事故の調査、再発防止にかかわって大事なものは、やはり出してはいけないというものはありますし、そして国民には本当にこれが必要だというものについては大いに積極的な適切な公開というのがやはり必要だと思うのです。そういう意味では、手続的に、ちゃんとルールをつくってやっていただきたいというふうに思います。

 そこで質問いたしますけれども、これはさきの質問でも私は言いましたけれども、再調査の問題についてお伺いいたします。

 ICAOの第十三附属書の中には、調査の再開ということで、明確に再調査が明文化されております。そして、その中には、調査終了後に新しくかつ重大な証拠を入手した場合の調査の再開を命じております。

 新しくかつ重大な証拠を入手した場合、このようになっているわけですね。これは参考人質疑でも提案されましたけれども、一つには、事故報告書に記載のない、あるいは確認されていない証拠の存在が報告されたとき、これが一番です。それから二番目には、事故報告書または事故調査記録に触れられていない、もしくは見落とされている事柄が指摘されたとき、これは二番目。三番目は、事故の技術調査の手法や手続について異議が唱えられたとき、これが三番目。四番目は、報告書の作成後に、新たな研究の成果として事故調査の過程の一部に疑問が呈されるなど、事故原因究明の手続に影響を与える新しく重大な事実が判明したときなどは、ICAO条約の言う再調査の条件を満たしたと考えられると思いますけれども、その点、見解はいかがでしょうか。

中島政府参考人 御説明いたします。

 ただいま先生御指摘ございましたように、国際民間航空条約第十三附属書の五の十三には、調査終了後に新しくかつ重大な証拠を入手した場合には、調査実施国は調査再開しなければならないと規定されており、したがって、当委員会は、これに該当する場合には、当該事故に係る調査を再開することとなります。

 先生がただいま御指摘の四つのケース、これが再調査を開始する要件となるか否かについては、個々の具体の事案に即して判断すべきものと考えております。

 いずれにしましても、私どもといたしましては、事故原因の究明という任務を的確に遂行する立場から、今後とも適切に対処してまいります。

瀬古委員 私が今具体的に言いましたけれども、例えば一番の事故報告書に記載のない証拠の存在が報告されたとか、それから見落とされていたものが新たに指摘されたというのは、それは当然再調査の対象になるでしょう。ならないんですか。個々のケースといったって、新しくちゃんと証拠が出てきた場合はどうするんですかと聞いているんです。これは当然、なるというのははっきりしていますでしょう。いかがですか。

中島政府参考人 御説明いたします。

 ただいま申し上げましたように、個々の具体の事案に即して判断すべきものと考えております。

瀬古委員 新しく証拠が出てきても、個々の具体的な事案にと言って、それはそうですけれども、いろいろなものが出されても、先ほども発言の中でも出されておりましたよ、苦労して新しい証拠を見つけても、それを門前払いすると。

 こんなことがあってはならないので、少なくとも最低これだけは、事故調査報告書に記載のない証拠の存在が新しく報告されたときとか、記録、報告書に触れられていない、見落とされている、はっきりとそれがわかる場合は、当然それは再調査の内容になるのははっきりしているじゃないですか。それをまた個々のケースなんて言っているから、事故調査委員会のこういう手続的なやり方が本当に透明性がない、国民から信頼されないと言われるわけですね。

 もう時間がございませんので、こればかりやることはできませんけれども、これ以上あなたは答えてはならないということになっているんでしょう。これでは本当に情けないと思うのですけれども、やはり、明確にこのICAOの条約の中に書いておりますように、新しくかつ重大な証拠を入手した場合は当然再調査の対象になるというのは、明確にはっきりしているわけですよ。これをいつまでもまた、それとは別個にみたいなところで言っているから、本当に問題だと思います。以後、再調査の問題についても、ぜひこれは検討していただきたいというふうに思います。

 次に参ります。

 救命率の問題、これは鉄道局長にお伺いしたいと思うのですけれども、鉄道の場合、今まで第三者的な事故調査委員会がなく、重大な事故を除いて、警察もしくは事故を起こした当事者による事故調査が行われてまいりました。その点で、今回の法改正は一定の改善だと私は考えております。

 鉄道の場合は、とりわけ救命率の向上が大変重要だと、関係者よりも指摘をされておりました。調査に当たっては、このような救命率の向上の視点に立った勧告ができるような原因究明が必要だと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

安富政府参考人 先生おっしゃいますように、鉄道事故の場合には、特に事故が起きた際、どのようにすれば被害が軽くて済むかという、いわゆるサバイバルファクターの検討というのが重要な課題だというふうに認識しております。

 これにつきましては、現在、調査委員会という形ではございませんが、先般の日比谷線の事故調査における最終報告でも、今後の検討課題として、具体的に、乗客の被害の軽減を図るための、例えば衝突の際の車体構造の研究を行う必要があるという旨の記述がされているところでございます。

 そういう意味で、今後の鉄道事故の場合についても事故調査委員会においていろいろ調査、原因究明をしていくわけでございますが、サバイバルファクターの視点を十分に踏まえた事故調査を行っていただきまして、人命第一の事故防止対策を図ってまいりたいというふうに考えております。

瀬古委員 これは鉄道だけではありませんので、航空機の場合もそうですけれども、いろいろサバイバルファクターの面から点検することによって、本来ならもっと、この人は助かったかもしれない、そういうケースも幾つかあるわけですね。そういう視点でぜひメスを入れていただきたいし、勧告の中にもそれが、鉄道も航空機もそこに加味されて勧告できるように、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 では、最後の質問になりますけれども、事故調査官の専門職としての養成、訓練の問題について伺いたいと思います。

 これも前回の質問のときにさせていただいたわけですけれども、ICAOの条約の航空機事故技術調査マニュアルの中では、技術調査官の資質として、適任の人が長く務めるほどより専門家になるものである、このように述べているわけです。

 先日、私がお聞きしたときには、平均在任年数が三・五年ということを言っておられましたけれども、この平均在任年数の三・五年の枠内では、国土交通省の人事の異動の範囲内では、やはりこのマニュアルの要請からいってかなりかけ離れてくるのではないかというふうに思います。

 確かに、七年の方が何人とか、そういう方もいらっしゃいました。しかし、あくまでも事故調査にかかわって訓練された、熟練されたメンバーでなければならないという点で言いますと、一般的な異動とは違った、新しい仕組みの中での調査官の教育とか、訓練の充実というのが私は必要だというふうに思うのです。

 今国土交通省の中でも、この新しい事故調査の調査官を育てていくためには、海外に研修の学校があって、そこにもお金をかけて研修させていらっしゃるわけですね。一人ずつなんというのがちょっと寂しいのですけれども。しかし、せっかく研修してきても、またぐるぐるとかわってしまうというのでは、これはやはり本当に事故調査の専門家を養成していくということにはなっていかないというふうに思うのです。

 そういう意味では、調査官の教育訓練の充実を図り、抜本的な見直しをする必要があるのではないかというふうに私は思うのですけれども、その点いかがでしょうか。

中島政府参考人 御説明いたします。

 航空機の多様化、航行システムの高度化等の状況にかんがみても、調査官の資質の向上を図ることは重要であると考えております。

 このような視点に立ちまして、外国研修を含む研修制度の充実、海外機関との積極的な情報交流等を行うことにより、先生御指摘の教育訓練の充実に努力を重ねてまいりたいと思います。

瀬古委員 最後に、これは私、通告しておりませんけれども、大臣に一言お聞きしたいと思うのですけれども、この法案をめぐって一番問題になっているのはやはり事故調査委員会の独立性の問題だと思うのです。

 大臣も今まで答弁の中でお答えいただいたと思うのですけれども、いろいろな場面の中で、本当に事故調査委員会が独自で調査を開始して、そして事故防止にふさわしい調査内容をきちっとつくっていくという点でも、さらにもっと独立して、もっと自立してやれるような、そういう体制を今後ともぜひ御配慮いただく、そういう検討をいただくことが本当に必要だというふうに思います。

 その点、最後に大臣の御感想を伺いたいと思います。

扇国務大臣 先日来からこの法案に対しての御質疑をるる拝聴しておりましたし、私たちもできる限り誠意を持って御答弁申し上げておりますけれども。

 調査委員会の必要性というものを、今先生がおっしゃいましたように、私は冒頭に陸海空というふうに申し上げました。とにかく事故がないことが第一でございますので、事故防止ということが一番にしなければなりません。

 ただ、事故原因を調べることと、そして人命救助という点から、警察が先なのか調査委員会が先なのかということではなくて、もっと単純にわかりやすく言えば、私たち、一軒の家が燃えていますと、まず行って火を消します。火を消さないで原因はどこだなんて言いません。それと同じことで、やはりどっちが先というよりも、両方が相まって、必ず二度と事故を起こさないように調査していくというのが、私は、お互いの協調性がなければできないと思っていますから、どれをどうしたら一〇〇%大丈夫だということは言えませんので、でき得る限りのことを、先ほども外国の例も申し上げました。そのように、私は外国の例もとりながら、やはり日本でできること、また日本は全部海に囲まれておりますから、陸続きのところとは違うというお国柄もございます。そういうことを先ほども申し上げましたので、それぞれ相まちまして、私たちは二度と事故を起こさないという原則に一番確実に近づけるのはどこかということを今後も検討し続けるというのが私たちのとるべき姿であろうと私は思っております。

瀬古委員 火事が起きているのに、実際には犯人はだれだといってやっているところに今の運用の問題があるわけで、まず消さなければなりませんけれども、消す前に犯人がだれだだれだというような捜査優先のやり方についてもぜひ改善していただいて、本当に事故防止、再発防止のために御尽力いただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 玉置一弥君。

玉置委員 事故調査委員会の設置法につきまして、いろいろ参考人の方から御意見を伺い、また関係業界の方からもお話を伺ってまいりまして、ともに皆さん方おっしゃるのは、先ほどからも論議の中に話が出ておりますが、事故調査委員会の中立性と独立性、この確保が大変重要であるということをおっしゃいました。そして調査の中でも、初動調査というものが事故の究明に対してのかなり大きな要素を占める、こういうお話もございました。そういう中からいきますと、私たちが従来の審議の中で指摘をしておりました事項について、いろいろもう一回確認をしながら、最終的には附帯決議なり法案の修正という形でおさめていきたいということでございまして、ぜひ真摯なる御答弁をお願い申し上げたいと思います。

 そこで調査の方法についてでございますが、事故調査委員会の調査能力について、委員の先生方は大学教授が主体で構成をされているということでございまして、中には、機体について構造的な分野とか、いろいろな面で専門家というのはおられるのですが、調査についての専門家がおられないのですね。それからその下に、専門委員あるいは専門官、こういうふうな仕事がございまして、業務分担として、総務関係が今度は十一名ですかね、というふうになっておりまして、今まで八名だ。調査で何で総務の方がそんなにたくさんいるのかとか、いろいろな心配事が出てまいりまして、それから各分野に分かれておりますと、二名とか三名ということなのですね。

 そこでまずお聞きを申し上げたいのは、日ごろから、先ほどもちょっとお話が出ておりましたけれども、調査ということに対して、いろいろな分野の調査がありますが、どういう研究をされたり、あるいは訓練をされたりということで、判断力を養うためのことをされているのか。また、それだけの専門家としての職歴を持った方なのか、その辺を含めて、まず構成についてお伺いしたいと思います。

佐藤参考人 それでは航空事故調査委員会の構成についてお答えいたします。

 まず、委員長として私、佐藤淳造でございます。

この下に常勤の委員が二名おりまして、さらに非常勤の委員がもう二名おります。

 私、専門といたしましては、航空宇宙工学と略称しておりますが、ここへ参りますよりも前には、大学でもって航空機設計法を教えておりました。そういったようなことで、私は航空工学の専門家であるということでこの仕事をちょうだいしているということであるかと思っております。

 それから、委員の中で、常勤の委員の勝野良平委員は航空法制の専門家でございます。ここへ参ります前は気象庁の次長をしておられた方ですが、それまでの間にも、東京航空局の局長でありますとか、そのほか幾つか航空局関係の仕事、要職を経られた方で、そういうことで、航空法制を詳しく御存じの方です。

 もう一人の常勤の委員は加藤晋委員ということで、運航・整備の専門家でございます。同委員は、最終的には航空局の技術部長をしておられた方で、そういうことで、航空行政の実際の場でもって運航とか整備に関していろいろやってこられたという経歴を買われて、委員として活躍しておられます。

 それから、非常勤の委員でございますが、垣本由紀子委員というのが、私と同時に新しくこの二月から委員になりました方で、専門は人間工学でございます。非常勤の方でございますので職業が別にございますが、実践女子大学の教授として人間工学を学生たちに教えておられるようです。

 もう一方の非常勤の委員は山根晧三郎委員でございまして、御専門は航空機の構造力学でございますが、この委員は科学技術庁、今の文部科学省でございますが、このもとにございました航空宇宙技術研究所の構造力学部長をやっておられた方でございます。そういうことで、構造に関して詳しいということでこの仕事をしておられます。

 こういう委員が選ばれました基準というのは大体皆様方よく御存じかもしれませんが、航空に関するさまざまな分野における専門的な知識とか経験が委員になるために必要でありますので、科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者であって、航空工学、航空機の構造、あるいは航空機の運航・整備、さらには人間工学などの分野において高度の学識あるいは経験を有する者が任命されてきたと理解しております。

 さらに、この委員会の委員として活躍される方には、専門委員という方を任命することができるようになっておりますが、これは極めて専門的な事項というのが調査の過程で必要になりました場合にお願いするということになっておりまして、専門委員の専門分野と職歴は、そのお願いする事項によりましてさまざまでございます。最近の事例といたしましては、操縦に関して航空会社のパイロットのOBの方にお願いしたこともございますし、それから、飛行機を構成しております新しい材料でございますが、複合材料というようなものが破壊をした、それについて細かいことを知っている人にひとつ見てもらわなければならないということで、これは先ほどの航空宇宙技術研究所関係の方でしたが、そういった研究所の職員の方をお願いしたりしております。

 委員長、それから委員というのは、委員会の所掌事務となっておりますところの航空事故調査の実施に当たって、調査官に対する指導でありますとか、調査指針の提示及び調査報告書の作成業務、さらには事故防止のために講ずべき施策についての勧告、あるいは建議書の作成、さらに外国におきます事故事例の調査研究等の業務、こんなものを日ごろ行っております。

 さらに、我々の下にいわゆる事故の調査官がおりますわけですが、この航空事故調査官につきましては、もともと採用の時点から、航空機の操縦でありますとか整備でありますとか管制でありますとか機体の検査あるいは無線技術といった、航空に関する極めて高度な専門的知識及び経験を有しているという者を配置するようにしてまいりました。また、これらの者の業務分担につきましては、事故の態様に応じましておのおのの航空事故調査官の専門分野及び経験を生かした現場調査に従事してもらっております。つまり、事故ごとに内容が多少違いますので、どういう専門の人が出ていくことが必要であるかということを判断いたしまして、その調査官の専門に合わせて任命をすることで現場の調査をしていただく。その持ち帰りました情報、資料をもとにさらに調査報告書を作成する、そのために必要な資料の分析とか整理の業務をさらに行う。

 こういったようなことが、現在この委員会を構成しております者とその業務分担でございます。

玉置委員 大変詳しくお教えいただきまして、ありがとうございます。

 委員の方はいろいろなデータをもとに判断できるという能力がある、私はそういうふうにお見受けをしたのですが、あとの心配は、ある事故が起こったときに体制を組む、これが非常に時間がかかるのではないか。この間の参考人の御意見の中にも、スタート時点でどういうスタッフをどういうふうに組み合わせてどういう体制をとっていくのかということが非常に大変だというようなお話をされておりました。また、専門的な分野で、やはり、日常から顔合わせとかすり合わせをし、訓練をやっていかなければいけないというふうに思います。そういう意味では、何か起きたらという状態の中でやっていかれるということよりも、常時いろいろな分野を想定しながら訓練をされていくということが大変必要かと思いますが、このことについてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。

佐藤参考人 調査官の訓練、研修などの件についてお尋ねかと思います。

 こういう者たちの資質の向上などというのが大切ではないかという先生の御意見、全く賛成でございまして、我々もそういうことを常日ごろ心がけているわけでございます。

 航空事故の調査官に採用いたします者は、先ほどもも申しましたように、もともと、航空機の操縦でありますとか整備でありますとか管制でありますとか機体の検査あるいは無線技術といった、航空に関連いたしました極めて高度な専門的知識及び経験を有する者を配置しておりますが、さらにこれらの者に毎年研修を行いまして専門的知見の維持向上に努めると同時に、事故調査官としての技能の維持向上を図るために講習会などをやっております。新しく採用いたしましたときには三カ月間の座学あるいは実務の研修を行いますし、さらに毎年そういった技能向上の研修を行います。さらに、外国の大学で幾つかの大学はこういった事故調査の専門コースというようなものを持っているところがございますし、政府機関の中に、これは多くの場合は米国のNTSBなんでございますが、そういったところで外国の事故調査官に対しても講習をしてくれるという制度がございまして、そういったところに調査官を派遣して事故調査の研修を受講させるなどということで、能力をさらに高めるという努力を重ねているところでございます。

 ということで、先生の御指摘を踏まえまして、今後とも資質の向上に努力を重ねてまいりたいと思っております。

玉置委員 引き続きお伺いしたいのですが、事故調査委員会の独立性というものですね。これはICAO条約にも述べられているわけでございますが。それから、やはり調査、勧告の後の権限強化、この辺をどういうふうに考えるかということで、私どもの方は、当初はこの法案の修正をやろうということで、八条委員会から三条委員会の格上げをやったらどうかとか、あるいは所轄官庁を国土交通省から内閣府、総理大臣の直轄にするべきじゃないかという御提言を申し上げました。

 果たして委員会独自で今より以上に権限強化ができるかどうか、また独立性が確保できるか。二分以内でお答えいただきたいと思います。

安富政府参考人 委員会の独立性と権限についてお尋ねがございました。

 事故調査は、当然のことながら、科学的、公正な見地から行う必要があるということで、委員会の独立性を十分に確保するということは当然必要だというふうに考えております。

 このため、この事故調査委員会法の第四条におきましても、委員会の委員は独立してその職権を行うこととされるとともに、法第六条におきまして、委員の任命は両議院の同意を得た上で国土交通大臣が行うという形で、独立性の担保をしております。そういう意味で、この独立性の点で問題が生ずることはないというふうに考えております。

 また、権限でございますが、的確な事故調査を遂行するために、一つは、法第十五条によって、具体的な調査の実施に当たり、必要な報告聴取あるいは物件留置等の処分を行うこと、あるいは十七条で、国土交通大臣に必要な援助を求めることができるというような規定、さらには、具体的な事故防止対策を求める手段として、法二十一条における国土交通大臣に対する勧告であるとか、あるいは法第二十二条による関係行政機関の長への建議といったようなことが定められております。

 そういう意味で、これらの権限を使うことによって、業務の遂行上、中立性あるいは公正性が十分確保されていくものというふうに考えております。

玉置委員 扇大臣にお伺いしますが、内閣府、総理大臣直轄ということと、国土交通省所管の諮問機関的要素もあるこの調査委員会、この辺を考えてみた場合に、各省庁にまたがる問題、防衛庁関係とか、空軍とか米軍ですね、あるいは海洋の、先ほど海難審判のお話がございましたけれども、あるいは大規模な交通事故とか、そういうところに警察庁あるいは地方自治体等もかなり関係してくるわけでありますが、勧告等、調査の結果をより大きく影響させて再発防止につなげるという観点からいきますと、どうも航空事故調査委員会が国土交通省だけに所管をされているということについて若干の危惧を持つのですが、この辺について、御答弁いただきたいと思います。

扇国務大臣 先ほど冒頭に玉置先生が、こういうふうにしたらどうだというふうにおっしゃいましたけれども、私は一つの御提案であろうと思います。

 ただ、現在ではどうかということでございますけれども、今、発生時の通報でありますとか応急措置、あるいは現場の保存等々、航空、鉄道、あらゆるところでいろいろなことがございますけれども、国土交通省の航空局やあるいは鉄道局、それから海上保安庁、気象庁初め地方の運輸局、そして地方航空局、航空交通管制官、あらゆるところが私どもの機関の援助と協力がなければできない、こういう現状でございますので、あらゆるところの、国土交通省に関連がございますところの協力を不可欠とする。

 事故によっては、それは今先生がおっしゃいますように、特例として、別途国を挙げての調査ということもこういう二十一世紀には予想されなくはない、そういうふうにも私は思いますけれども、現段階では、委員会の委員はそれぞれ独立して権限を有するということにもなっておりますので、今のイギリスとかドイツ、フランスというところの航空の事故の調査委員会も運輸担当省に設置されておりますので、今度の法案によって私は新たな展開がまた開けてくるというふうに思っていますので、そういう意味で今回の法案を提出させていただいた基本であるということを申し上げさせていただきたいと思います。

玉置委員 権限よりも、実効が上がるかどうかということだと思います。

 私たちが協議の中で、最終的には附帯決議でお願いしようということで、今後の体制整備についてぜひ検討いただきたい、それから、陸海空にわたる業務範囲が拡大されていく、そういう中で、諸外国の例をやはりよく考えていただいて、日本独自なものをぜひつくっていただきたいということでございまして、またお話しすると長くなりますので、お願いにとどめておきたいというふうに思います。

 それで、うちの細川委員の方からも質問がございましたけれども、重大な自動車交通事故がいろいろと発生をしておりまして、要因分析とかいろいろなことが一応なされておりますが、年間約百万件近く発生をし、その一%強の方が亡くなっておられる。要するに一万人前後ですね、超えたり下がったりということなんですけれども。そのことが、交通事故センターとかいろいろ対応するところがあるのですけれども、どうも運輸行政や道路行政にリンクしていないというような感じを受けますので、警察庁の坂東さん、お見えでございますね、交通事故対策の要因分析の後、どういうことをされて、どういうところと連携をとっておられるかということをお聞きしたいと思います。

坂東政府参考人 大規模な事故を初め、交通事故が発生した場合におきましては、当然、私ども警察といたしましては、刑事責任の追及を行うことは当然でございますが、あわせて同時に、事故原因の究明というものを行っているところでございまして、必要によりましては道路管理者あるいは運輸当局、さらには学識経験者等の御協力を仰ぎながら、関係機関との連携も図って事故原因の究明というものを図っているところでございます。

 そして、その結果得られたいろいろな教訓とか知見、そういうものは、やはり同種の事故再発防止に我々交通警察としても生かしているというところでございます。

玉置委員 何か後ろの都合で早めてくれという話がございますので、短くいたします。あと一分で終わります。

 最後に申し上げたいことは、行政改革とか省庁の統廃合とかの形で、人員をふやしていくことは非常に難しい状態であるということはお聞きしておりますが、最初に佐藤委員長の方からお話がございましたように、専門官をたくさんそろえていただいて訓練をされるということでありますが、やはりいろいろな部門別の想定をして、いつでも、備えあれば憂いなしという形で、できたら、事故が起こる前から、いろいろな業界なり、あるいはそれぞれの乗員の方とか整備の方とかいう方たちとお話をされることが大事ではないか。いわゆる予防医学的な感じでやっていただく。だから、事故が起こってから対応するのではなくて、もう既に起こる前から安全対策をやるというようなことにまでむしろやっていただければ非常にありがたいというふうに思います。

 そういう意味では、体制整備をもうちょっと拡充して、何も四十一名の方にこだわらず、ここまではできるんだということを示していただきたい。そのための陣容をそろえるという意味では何にもむだなことはないというふうに思いますが、そのことを一言だけお答えいただいて終わります。

泉副大臣 今先生御指摘のように、これからの事故の予防そして原因究明をさらに進めますためには現在の陣容で必ずしも十分と言えるかどうか、これは今後の課題であると思います。

 この委員会で一昨日来御議論をいただいておりますように、一層の研さんを積むということと同時に、幅広い観点から人材がいつでも登用できるように我々としても努力をいたしますので、国土交通委員会の諸先生方にもぜひお力添えをくださいますようにお願いを申し上げます。

玉置委員 終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、本案に対し、赤城徳彦君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び21世紀クラブの七会派共同提案による修正案、また、瀬古由起子君から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者より順次趣旨の説明を求めます。樽床伸二君。

    ―――――――――――――

 航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

樽床委員 ただいま議題となりました航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び21世紀クラブを代表して御説明申し上げます。

 本修正案の趣旨は、航空・鉄道事故調査委員会は、事故等調査の終了前においても、事故等が発生した日から一年以内に事故等調査を終えることが困難であると見込まれる等の事由により必要があると認めるときは、事故等調査の経過の報告及び公表を行う旨を明示するものであります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

赤松委員長 次に、瀬古由起子君。

    ―――――――――――――

 航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

瀬古委員 航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案に対して、日本共産党を代表しまして、修正案の動議を提出いたします。

 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。

 これより趣旨を説明いたします。

 航空事故調査委員会設置法第十五条で明らかにされているように、国際民間航空条約第十三附属書に基づき現行の航空事故調査委員会は設置されております。同附属書は航空事故及びインシデント調査のための事故調査のあり方や手続等を定めたものです。

 その中で、調査実施国の責任として、事故調査当局は調査の実施に関し独立性を有し、かつ制限された権限を有する、罪や責任を課するためのいかなる司法または行政上の手続も本附属書の規定に基づく調査とは分離されるべきであると述べています。この調査実施国に対する同附属書の要請は、活動の独立にとどまらず、組織の独立性を求めております。しかも、航空、鉄道、海難、高速道路などの事故調査機関の独立は世界的な流れとなっています。

 今まで鉄道事故調査は鉄道事業者や関係行政当局など任せで、しかも事故発生ごとに行われてきましたが、今回の航空事故調査委員会設置法の改正によって常設の専門の調査機関となります。この常設の鉄道事故調査機関の設置を契機に、名実ともに独立した航空・鉄道事故調査委員会を発足させるために提出したのが本修正案でございます。

 その内容は、一、航空・鉄道事故調査委員会を内閣府設置法第四十九条第一項の委員会とすること、二、委員会の委員長及び委員は両院の同意を得て内閣総理大臣が任命することとする、三、その他関係する所要の規定を改正するものでございます。

 以上が、この修正案の提案の理由とその内容です。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたしまして、趣旨説明を終わります。

赤松委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。

 この際、瀬古由起子君提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。国土交通大臣扇千景君。

扇国務大臣 ただいまの修正案に対しましては、政府としては反対でございます。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、瀬古由起子君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立少数。よって、瀬古由起子君提出の修正案は否決されました。

 次に、赤城徳彦君外六名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、赤城徳彦君外六名提出の修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除いて原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、赤城徳彦君外六名より、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び21世紀クラブの七会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。阿久津幸彦君。

阿久津委員 ただいま議題となりました航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、保守党及び21世紀クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。

    航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行にあたり、航空事故及び鉄道事故並びに重大なインシデントの原因を究明するための調査等に十分な実効をあげるため、次の事項について万全の措置を講ずるべきである。

 一 航空・鉄道事故調査委員会は、委員会設置法第四条の趣旨に則り独立性を確保し、公正中立な立場で適確に事故調査を行うこと。

 二 航空・鉄道事故調査委員会は、事故再発防止に万全を期するため、必要があると認めるときは、積極的に、事故防止のため講ずべき施策について勧告・建議すること。また、勧告・建議を受けた国土交通大臣、関係行政機関の長は、関係事業者への安全対策の指導・徹底など講ずべき施策を着実に実施すること。

 三 航空・鉄道事故調査委員会と捜査機関は、国際民間航空条約の趣旨を尊重し、事故調査と犯罪捜査のそれぞれが適確に遂行されるよう、十分協力すること。

 四 委員については、事故調査の中立・公正性を確保するために、適確な人材の選任を図ること。

 五 適確な事故調査を行うために、研修、海外機関との情報交流などの方策を講ずることにより、事故調査官の資質の向上に努めること。

 六 航空・鉄道事故調査委員会の予算及び定員については、事故調査が円滑に実施できるよう十分に確保するよう配慮すること。

 七 航空・鉄道事故調査委員会は、今回の体制整備を契機として、更に徹底した原因究明と事故の再発防止を図ること。調査委員会の組織のあり方については、今回新たに整備される委員会の活動を踏まえ、その体制・機能の強化、陸・海・空にわたる業務範囲の拡大等の必要性につき検証したうえで、諸外国の例を参考にしつつ、今後の課題として検討を行うこと。

以上であります。

 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立総員。よって、赤城徳彦君外六名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、扇国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣扇千景君。

扇国務大臣 航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律案につきまして、本委員会におかれましては御熱心な御討議をいただきました。また、ただいまは全会一致によって可決していただきましたことをまず心から御礼申し上げたいと思います。

 審議中に賜りました多くの委員の皆さん方の御高見、ただいまも附帯決議において提起されましたこの事案につきましても、航空・鉄道事故調査委員会の公正中立な立場を、適切な、的確な事故の調査の実施など課題につきましては、今後、その趣旨を十分に反映して対応してまいりたいと存じます。

 委員長初め、皆様方、委員にいただきました多くの御意見、御指導、御協力に対して心から御礼を申し上げ、ごあいさつとさせていただきます。ありがとう存じました。(拍手)

    ―――――――――――――

赤松委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 次回は、来る四月三日火曜日午前十時十分理事会、午前十時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十一分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.